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1983-09-30 第100回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年九月三十日(金曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       植竹 繁雄君    粕谷  茂君       木村武千代君    熊川 次男君       小泉純一郎君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩川正十郎君       白川 勝彦君    玉沢徳一郎君       津島 雄二君    平泉  渉君       藤井 勝志君    森田  一君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       阿部 助哉君    上田 卓三君       沢田  広君    塚田 庄平君       戸田 菊雄君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    正木 良明君       正森 成二君    簑輪 幸代君       小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局次         長       保田  博君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 垂水 公正君         大蔵省理財局次         長       吉居 時哉君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         厚生大臣官房審         議官      古賀 章介君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   田中  努君         外務大臣官房審         議官      川村 知也君         大蔵大臣官房参         事官      野尻 栄典君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         社会保険庁年金         保険部厚生年金         保険課長    小林 廉夫君         通商産業省貿易         局輸入課長   奈須 俊和君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 佐藤ギン子君         日本専売公社総         裁       長岡  實君         日本専売公社管         理調整本部職員         部長      伴内 昭彦君         日本国有鉄道共         済事務局長   岩崎 雄一君         日本電信電話公         社厚生局長   中原 道朗君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      澄田  智君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 九月三十日  辞任         補欠選任   笹山 登生君     津島 雄二君   平沼 赳夫君     玉沢徳一郎君   柳沢 伯夫君     植竹 繁雄君   塚田 庄平君     沢田  広君 同日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     柳沢 伯夫君   玉沢徳一郎君     平沼 赳夫君   津島 雄二君     笹山 登生君   沢田  広君     塚田 庄平君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  国家公務員及び公共企業体職員に係る共済組合  制度統合等を図るための国家公務員共済組合  法等の一部を改正する法律案内閣提出、第九  十八回国会閣法第五三号)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第六号)      ――――◇―――――
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  国家公務員及び公共企業体職員に係る共済組合制度統合等を図るための国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案につきまして、社会労働委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時につきましては、委員長間において協議の上決定いたしますので、御了承ください。     ―――――――――――――
  4. 森美秀

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。簑輪幸代君。
  5. 簑輪幸代

    簑輪委員 今回の法改正は、国鉄共済を救うために、国鉄労使負担をふやすというだけではなくて、他の国公公企体共済掛金も引き上げて、それで協力させようというものではないかというふうに指摘されますけれども、その点いかがでしょうか。(私語する者あり)
  6. 森美秀

    森委員長 少しお静かにお願いします。
  7. 簑輪幸代

    簑輪委員 わかりませんか。――わかりませんでしたか。  今回の法改正の問題で、国鉄共済を救うということのようですけれども、実際には国鉄労使負担をふやすということにもなります。それだけではなくて、国公公企体共済、それらの掛金も上がっていって、そしてそこで協力させようというような中身ですけれども、それでよろしいでしょうか。
  8. 保田博

    保田政府委員 今回の法案中身は、これまでもたびたび御説明をいたしましたが、わが国公的年金制度を長期的に安定させるために、将来の一元化に向けての第一ステップとしまして、国家公務員共済組合公企体共済組合統合を図るというのが第一点。そのために、給付面及び負担面におきまして、やや負担給付との関係におきましてアンバランスに給付の面が高い公企体共済につきまして、国家公務員並み調整をさせていただくというのが一つ。  それから、あわせまして支払いが非常に困難になっております国鉄共済組合に対して財政的な援助を行うというのが第二点でございます。
  9. 簑輪幸代

    簑輪委員 結局、国鉄共済を救うために国公公企体の方が協力させられるということになると私は思うのですね。  それで、国鉄共済救済という問題について緊急にどうしなければならないかというようなことは、何も将来展望、全体的な展望が少しも明らかでないまま急ぐ必要は毛頭なくて、それらの公的年金制度全体の青写真が明らかでないままでこういうものが急いで出されるということは、非常に問題だろうと思うのですね。関係当事者方々につきましても不安がいっぱいであって、一体どうなるのだろうか、果たして今回の国鉄共済救済という形は、一時的にはできるかもしれないけれども、それによって他の共済組合も一蓮托生で同じ運命に落ち込んでいくのではなかろうかという問題があるわけですね。ですから、そういう問題点が解明されないまま急いでこういう法案を出すというのは非常に不適切だと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  10. 保田博

    保田政府委員 国鉄共済組合財政状況は、先生すでに御承知のとおり大変切迫をしておりまして、現行の制度のままでまいりますと、昭和六十年度には単年度で収支が赤字になります。六十二年度には積立金を食いつぶしまして、まさに破産状態になる、こういった危機的状況にあるわけでございまして、早急にその手を打つ必要がありますのが、今回御提案しましたこの法案一つの目的でございますけれども、同時に、先ほど申し上げましたようなわが国公的年金制度の持っております構造的な弱い部分を直していくために、将来の一元化に向けての第一歩という位置づけをわれわれはさせていただいておるわけでございます。
  11. 簑輪幸代

    簑輪委員 国鉄共済財政的に切迫しているということはそのとおりなんですけれども、それはそれで政府責任を持って解決すべきであって、特に国鉄の場合は国鉄固有の原風があると指摘されているわけです。その点、もう一度かいつまんで御説明いただけますか。
  12. 岩崎雄一

    岩崎説明員 財政破綻原因は、基本的には給付負担が見合ってないことによりまして不足財源が増大していることだというふうに考えますが、国鉄共済年金が非常に早く破綻をいたします理由というのは、一つ輸送構造変化に伴う国鉄本体減量化施策によって現職組合員数が減ってきておることでございます。そして一方で、戦中戦後の混乱期に、復員者を含めまして積極的に採用をいたしました団塊年齢層といいますか、そういう人たちが現在退職時期を迎えている。それによりまして、平均で言いますと毎年一万人ちょっとというところでございますけれども、実績としては二万数千人に上る退職があり、そのほとんどが年金受給者になっておる、こういうことが原因だというように考えております。
  13. 簑輪幸代

    簑輪委員 おっしゃるように、国鉄財政的に困難になった原因というのは、二つの大きな点があるということだと思うのです。それらについて、果たしてそれが国鉄労働者責任によってもたらされたものだろうか、あるいは国鉄当局によってもたらされたものだろうかというふうに考えますと、決してそうではなくて、国の施策、国策によってそれが遂行させられてきた、それに労働者は協力してきたわけですし、そしてさらに一定程度歴史的な中で重要な役割りを果たしてきたというふうに思うのです。そのために、こうした国の施策が間違っていた、あるいは展望が正しくなかった、それからまたある程度やむを得なかった、そのときどきの施策必然性があってゆがみが出てきたというようないろいろな原因の中で、そのしわ寄せが労働者のところに全部来るというのは、いかにも納得できないと思うのです。基本的な責任国鉄労使にはなくて政府にあるというふうに言っていいと思いますけれども国鉄としてどうお考えでしょうか。
  14. 岩崎雄一

    岩崎説明員 ただいま申し上げましたように、原因については二つございまして、その原因によって招来した現在の状況でございまして、構造的なものと言えば言えなくもないと思いますが、だれの責任というようなことではないと思います。
  15. 簑輪幸代

    簑輪委員 だれの責任でもないというのは、いかにもそれは無責任だと思うのですね。だれかが責任をとらなければなりません。そういう結果になったというのは、それを遂行してきた者が責任をとるのはあたりまえじゃありませんか。だれの責任でもないというのはおかしいと思いますけれども、もう一度御答弁ください。
  16. 岩崎雄一

    岩崎説明員 先ほど申し上げましたように、輸送構造変化に伴う減量化と、それから終戦直後の団塊年齢層が現在集中的に退職していることによる分母と分子の関係異常値になっておるということが原因でございまして、そのことに対して早急に対策をお願いしたいというのが国鉄の現在の立場でございます。  それで、いま言葉が足りませんでしたが、要するにそういう意味の構造的な原因に起因するということを申し上げたかったわけでございまして、国鉄としては、そういう状況に対しまして、現在まで保険料の引き上げとかあるいは国鉄負担をいたします追加費用繰り入れ方式変更等財源確保策を通じてその対策に一応努めてまいった、こういうように考えております。
  17. 簑輪幸代

    簑輪委員 いま大臣お聞きになっていらっしゃって、構造的な原因であるというお話で、先ほどはだれの責任でもないとおっしゃいましたけれども大蔵大臣としてはどのようにお考えですか。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 責任の所在を明確にするという場合、簑輪さんの責任でもなければ竹下登責任でもないという意味においては、だれの責任でもないということも言えると思います。が、総体的に考えれば、いわゆる経済構造変化というものはなかなか予見しがたい問題もございます。それから、いわゆる人員構造変化、これもまたそうであろうとも思うのであります。しかし、あえて体制側と反体制側という立場に立ては、三十九年以降国鉄赤字になったとすれば、その間政権を担当しておったのはわれわれでございますから、その責任はわれわれが大いに背負うべきである。これはやはり議会制民主主義における鉄則はそういう感じでもって初めて、改まるべきものも改まるという姿勢は持っておるべきであると思っております。
  19. 簑輪幸代

    簑輪委員 大臣は結局政府責任があるというお考えを示されたと思うのですね。決して国鉄労使責任があるというふうに言えないという私の見解も認めていただけたものと思います。だとするならば、この解決について、国鉄労使負担を負わせ、さらにまた国公公企体労働者責任を負わしていくというのはやはり間違っているのじゃないか。国鉄共済財政逼迫については、この際政府が独自に国鉄共済だけを解決する思い切った手だてを講じていけば、当面の財政逼迫は解決できるというふうに思うのです。だからその点について、将来展望の、公的年金制度全体の一元化第一歩であるというようなことはこじつけであって、やはり国鉄の困難な状況を他に転嫁するものであるというふうに私は言わなければならないというふうに思います。  ところで、国鉄といいましても、諸外国ではいろいろな形をとっていると思うのですね。こういう諸外国国鉄共済制度といいますか、あるいはその労使負担とかそういうような問題について、実情を御存じでしたらお話しいただきたいと思います。
  20. 岩崎雄一

    岩崎説明員 明確なお答えはちょっといまいたしかねるのですが、ドイツなんかの例ですと、やはりまだ官吏の部分と、それからいわゆるブルーカラーといいますか、そういう人たち対象年金というのは違えて、それぞれに労使負担のほかに国の負担が導入されているというふうに聞いておりますが、現在資料を持ち合わせておりませんので、確かなお答えはいたしかねます。
  21. 簑輪幸代

    簑輪委員 フランス国鉄の場合は、年金について労使拠出賦課方式というのをとっていて、掛金は、俸給の六%を労働者負担し、それから国鉄が三六・九%を負担するというふうになっているように聞いています。それからドイツは、恩給の面もありますけれども年金の面で言いますと労使折半である。それからアメリカでは鉄道退職年金というようなことで、労使拠出賦課方式で、労働者の方が俸給の五・〇五%、事業主の方が俸給の一四・五五%というようなことになっているわけですね。いま申し上げましたフランスアメリカの例を見ますと、労働者負担割合に比べて事業主負担割合というのはかなり高いものになっているわけです。  そういった面で、わが国においても、事業主としての国鉄、それからまた国有鉄道という意味での由の責任、そういうようなことからいいますと、資本家という意味ではありませんが、事業主という立場国鉄の果たすべき役割り、それから国として果たすべき役割り、これをもっと高めていって解決すべきではないかというふうに思うわけですね。その点での国鉄のお考えはいかがでしょうか。
  22. 岩崎雄一

    岩崎説明員 大変むずかしい御質問でございますが、現在事業主としての国鉄といたしましては、保険料折半ということで、労使で均等に持っているわけでございますが、それ以外にいわゆる公的負担というものを持っております。これは年間の所要保険料に対しまして一五・八五%、そのほかに、これは事業主としての負担ということになりますが、要するに旧法期間新法施行以前の期間に対する給付費用というものを、これは事業主として、国有鉄道事業というのは引き続いておるわけでございますから、現在それを負担しておるというのが現在の姿でございます。
  23. 簑輪幸代

    簑輪委員 余り明確にお答えになりませんけれども、要するに私どもの方としては、労働者にこれ以上の負担をさせてはならないというようなことを強く言いたいわけですね。  この法案に関連していろいろな方々から要請を受けております。特に国鉄OB会というようなところで、私どもの地元の大垣の志水銀次郎さんというような方から直接お話を伺い、また、要望書もいただいているわけですけれども中身は早く法案を通してくれというようなものなんですね。私どもとしては、はい、結構でございますというようなわけにはいかないのですけれども、この陳情書中身を見てみますと、非常に複雑な心境があるわけですね。特に「私ども国鉄退職者はこれからの老後生活を思うとき、深刻な不安と焦燥の念に駆られざるを得ません。」というふうなことで切々と訴えられているわけで、労働者に何の責任もないのに、労働者側からこういう法案の成立の陳情をしなければならないような事態に追い込んでいるというのは、まことに許しがたいことだと私は思うわけです。この方々にとりましても、仲間の労働者方々負担において自己の将来の年金を確保したいというようなことはとても複雑な思いでして、こういうようなことを何の責任もない労働者にさせていくということは、いかにも情けないことだというふうに私は思うのです。そういう点で、このような思いをさせないで解決していくことが絶対に必要だと思うのです。その点について、労働者の心情を踏まえて大臣の御感想をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  24. 竹下登

    竹下国務大臣 これは皆さんの御質問を聞いておりますと、一貫して、国鉄当局あるいは労働者にその責任はなくて、政府にみんな責任がある。体制側にあって長らく政権を維持しておる者は、どういう批判にもこたえて、みずからの責任といつ自覚を持って事に当たらなければならぬというのが政治哲学でございまして、だからおまえだけに責任があると言って一方的に結論を出すということは、議論の過程においては、私どもとしてはとるべき手法ではないと考えております。  そして、基本的にいま一つ考えなければならぬのは、すべての施策は、負担する者もこれは国民でございますし、受益者もまた国民である。別に天から金が降ってくるものでもなければ、大蔵省印刷局で札が印刷されるものでもない。そういう負担する者も国民受益者もまた国民という鉄則の上にまず立って御議論をいただきたいものだ。しかし、私はどのような角度から議論をなさいましても、あなたの議論はけしかりませんなどと言うつもりは毛頭ございません。謙虚に耳を傾けますが、そのような観点に立ったときに、政策遂行の手段としてはおのずからそこに調和というものが存在する。その調和の存在は、法律で定められた審議会等議論を通じながら、そこで連帯の精神で、まあ答申してやろうじゃないかと言われて、国共審社会保障制度審議会等々に答申をいただいて、今日御審議をいただいておるその経過の中に、私はその政策遂行における国民調和の思想というものが出てきたのが本法律ではないか、こういうふうに理解をいたしておるところであります。
  25. 簑輪幸代

    簑輪委員 おまえの議論はけしからぬと言うつもりは毛頭ない、毛頭ないけれどもというおっしゃりようの中に、暗にけしからぬと言わぬばかりのおっしゃり方で、私としては非常に納得できません。そして、マクロ的な言い方で負担受益割合というような抽象論で言って、事が解決するものではございません。いま当面している問題については、まさに国鉄危機について、なぜ国鉄労働者がこんな思いをしなければならないのかということに焦点を当てて言っているわけでして、その点の労働者の気持ちというものをやはり十分理解する立場施策を行っていただかなければ、責任があると口先で言ったとしても、本当に責任を感じておられるようには私には見られないわけです。その点を指摘し、審議会等議論を踏まえてとおっしゃいますけれども、この審議会自体にも私はいろいろ意見があります。しかし、そこまで触れると時間がありませんので、次に進みます。  国鉄共済赤字の深刻さというのは先ほども御説明のあったところでございますけれども昭和六十年度に財政がパンクしてしまう、そしてそれ以後の五年間では年平均年金給付額が約九千二百億円、収入額の方は六千六百億円で、約二千六百億円不足すると言われております。この二千六百億円を、国鉄労使で二千億円、他の国公電電専売で六百億円を捻出するということになるようです。そうなると、国鉄関係のないところの他の組合員負担がふえるということになってくるわけですけれども、この計算でいきますと、他の組合員は一人月平均で一体どれくらいの負担増になるものか、わかりましたら教えてください。
  26. 保田博

    保田政府委員 平均しまして、給与を一人二十万円といたしますと、月額約千二百円になります。
  27. 簑輪幸代

    簑輪委員 国公電電専売人たちにとっては、自分たちに直接責任のないことで結局毎月千二百円ずつ余分の負担を強いられるということになって、これはもう大変な問題だと私は思うのですね。臨調答申では、特に電電とか専売、そしてもちろん国鉄民営化の方向といつものを打ち出されているわけです。そういうことから見ますと、将来、民営化との関係で一体何を考えているのだろうか、当面はこうやってごっちゃにするのだけれども、それぞれの母体が民営化されていくということになった場合、国公労働者との関係やらはどうなるのだろうかという疑問が非常に出されているわけですね。その点はちゃんと十分検討された上のことなんでしょうか。
  28. 保田博

    保田政府委員 御承知のように、わが国の被用者に対する年金制度といたしましては、一般的には厚生年金、それから特殊な制度として共済制度、それから船員保険といったようなものがございます。民間部門厚生年金適用を受ける、それから政府部門共済年金適用を受けるというのが原則でございます。しかし、年金制度にはそれぞれ古い歴史と沿革がございまして、公庫、公団が厚生年金適用を受ける場合もございますし、民間部門でございます私学共済あるいは農林共済といったものが共済制度適用を受けておるわけでございまして、年金制度適用区分経営形態というものは必ずしも一致をしていないわけでございます。今回御提案申し上げましたこの統合法案におきましては、それを踏まえまして、三つの公共企業体につきましては当分の間、経営形態変更がございましても共済組合制度に残っていただく、そういう前提で法案を御提案しておるわけであります。  なぜそうしておりますかということでございますが、これは、厚生年金共済年金との間には、給付要件等において非常に大きな差があるわけでございます。したがって、大きな企業体が一括しまして二つ制度の間を移りますときには、過去の積立金をどうやって持っていくのかとか、あるいは給付要件をどういうふうに評価がえするとかいったような大変むずかしい問題がございまして、この際は、経営形態が多少変わりましても、現在の三公企体につきましては共済制度に残っておる方がむしろ好都合なのではないか、こういうふうに考えておるわけです。
  29. 簑輪幸代

    簑輪委員 いま当分の間とおっしゃいましたが、どれくらいのことなのですか。
  30. 保田博

    保田政府委員 御提案申し上げております国共済公企体共済との統合が行われました後、これはもちろん五十八年度を予定させていただいておるわけでございますが、その後五十九年から六十一年にかけましては、昭和七十年におきます公的年金制度全体の一元化を踏まえまして制度全般の見直しを行う、その一環としまして五十九年から六十一年度にかけまして厚生年金、それから船員保険国民年金関係整理を行う、同時に共済組合につきましても、それらの関係整理の趣旨を踏まえまして厚生年金あるいは国民年金との関係整理を行っていく、それらの段階を経まして将来の統合に向けて進んでいきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  31. 簑輪幸代

    簑輪委員 先行きの展望がはっきりしない中で問題を先送りしているという感じがするわけですけれども、どんどんと統合を進めていく中で年金がうんと充実していくというよりは、逆に低位に水準が合わせられるという不安がすごくあるわけですね。そういうことを私は強く指摘しておきたいと思います。特に、いま国公労働者の場合は人勧も凍結されて、この問題について非常に心配が大きいわけですけれども、ちょっと関連して、この人勧の実施の問題について現在どのようにお考えか、大臣に一言お聞かせいただければ幸いです。
  32. 竹下登

    竹下国務大臣 人事院勧告の問題につきましては、昨年来の経緯があります。それは各党合意に基づく議長見解というものがありまして、二年続けて見送るようなことはしない、こういう表現か使われておるわけであります。今日、国会及び政府に対して勧告をいただいて、政府部内における取り扱いとしては、給与関係閣僚会議というものがございます。これでいま三回議論をいたしましたが、最終的には国民立場に立って決めていこう、こういう話し合いをしておるわけであります。  ただ、強いて私に財政状態はどうだというお尋ねがあったといたしますならば、財政状態は非常に厳しい状態にある、したがって、厳しい対応をせざるを得ないという一つ財政当局としての主張というものもあり得ることではないかというふうに考えておりますが、いままだ、これから恐らく何回かあるでございましょう。その中で、まさに国民的背景においてこれを解決するということが、統一された、閣僚会議等が終わった後の、内閣官房長官の記者会見での正確な発表の文言となっております。
  33. 簑輪幸代

    簑輪委員 御答弁はわかったようなわからないような話で、結局のところ、国公労働者の皆さん方の強い期待に果たしてこたえていただけるのかどうか、非常に疑問があるのですけれども、とにもかくにも生活実感から言いましても、昨年、完全に凍結されたということで、家計を預かる主婦の人々からも強い要求をいただいておりますので、人勧の完全実施に向けて、財政問題はあるかと思いますけれども、それをうまく大蔵大臣の力で解決していただきたいということを強く要望申し上げておきたいと思います。  ところで、こういう年金に絡んで幾つかの基本的な点をお尋ねしたいと思いますけれども大臣は社会福祉とか社会保障とか、そういう問題について一体どのような基本的認識をお持ちですか。
  34. 竹下登

    竹下国務大臣 社会福祉という定義について若いころからいろいろ国会でも、私ども個人的にも議論をした。一つの物の考え方としては、およそ働く意欲のある国民が、その能力、適性に応じて職場のある社会、こういう定義が一つあります。しかし、それは完全雇用的な角度からの定義ではないかという疑問が一方にあるわけですね。したがって、その場合に年金制度というようなところで、社会保障か、いわゆる連帯の精神に基づく社会保険かという議論になりますと、これは確たるものを申し上げるとすれば、昭和三十七年八月の社会保障制度審議会答申で一応基準が示されて、その基準によれば、社会保険である公的年金保険料で賄うべきものである、そういうことであって、国鉄共済年金も社会保険の一環として解決すべきものということに結論的にはなろうというものではなかろうかということでございます。したがって、いわゆる社会保障とは何ぞやということになりますと、これはいろいろな定義がございますが、私が昭和三十九年の佐藤内閣の一番最初の演説のときに定義づけたのは、勤労意欲ある国民がその能力、適性に応じて職場のある社会。したがって、勤労意欲あるなしにかかわらず、病気とかいろいろなことがございますね、働き得ない人々、これに対しては徹底的な公的保障がなさるべきものであるという定義づけになっておりますが、その後大きな変化はないんじゃないかと思っております。
  35. 簑輪幸代

    簑輪委員 この社会保障制度に関して、憲法二十五条があるわけですね。「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む権利を有する。」二項で「國は、すべての生活部面について、社會福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」ということが明示されているわけですね。ここが基本となって社会保障というものを考えていかなければならないと思うのです。  昭和二十五年十月に出されました社会保障制度審議会の「社会保障制度に関する勧告」というのがございまして、ここでは「いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、」「もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。」というふうに書かれているわけですね。そして続いて、「このような生活保障の責任は国家にある。」ということが書いてあるわけです。「この制度は、もちろん、すべての国民を対象とし、公平と機会均等とを原則としなくてはならぬ。またこれは健康と文化的な生活水準を維持する程度のものたらしめなければならない。」ということが書かれているわけでございまして、国がこの社会保障制度の全面的な責任負担しているということは明らかだと思うのです。  ところが最近では、臨調とかいろいろなところから、社会保障とは一体どういうものなのかということがまたいろいろな角度から言われているわけですね。たとえば臨調で見てみますと、「活力ある福祉社会の建設」というようなことが言われておりまして、第一に、「個人の主体性・自立性が」云々とあって、「個人の自助努力」というのが掲げられております。第二に、「家庭や近隣、職場等において連帯と相互扶助」。第三には、「民間部門がより自由に、積極的にその役割を果たしていけるようこというようなことが掲げられているわけです。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  臨調で掲げられていますこの自助努力とかというのは、これは国の基本的な責任というのを緩めてしまって、個人責任の方を非常に強調するものであって、私は間違っているというふうに考えます。なぜなら、社会保障というのは、一定の歴史を持って生まれて育ってきたものでございまして、その点から言えば、社会保障制度というのは自立自助ということで、資本主義の社会が発展してくる中で、それだけではどうしようもない部分について、労働者階級全体の生活問題を解決するために自立自助の修正という形で生まれ、発達してきたものではないか。したがって、それに対して公的年金制度というものは、被保険者以外の第三者の財政参加、雇い主なりあるいは国家というものが社会的扶養という形で進めてきたものではないかと言えると思うのですね。  この臨調の考え方などを基本にして考えていきますと、公的年金制度における国と雇い主の責任というものをできるだけ少なくしていって、その分を国民の自助努力というところに押しかぶせていく。さらには、臨調で言いますと、公的関与を見直して民間部門をより、というふうに書いてありますので、民間保険というような形の方への移行まで考えていて、社会保障制度そのものがひいては利潤の対象にさえされかねないという危惧を持っております。私はやはり、国の責任というものを基本的にしっかり踏まえなければならない。そして、特にこういう問題が出てくる背景の中に財政危機という問題が出てまいりますけれども、それは事の本質の問題ではないわけで、財政的見地で事を処理していくというのは、社会保障制度という公的年金制度の基本がないがしろにされるものだというふうに思うのです。公的年金制度というものは、国の責任によって老後の最低生活保障という、憲法で定めている生存権の政策、そこから来るものでなければならないし、そのように実施されなければならないというふうに思うのですね。大臣の御答弁は、御自分でもおっしゃっておられましたように、雇用政策的な側面が非常に強いものだというふうに私も思いまして、それは社会保障という事の本質ではなかろうと思うのです。  そこで、もっと憲法をいろいろ見てみますと、特に十三条では、「すべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に封する國民の權利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」というように、幸福追求の権利というものが高らかにうたわれておりまして、十四条で法のもとの平等も定められている。こういうものを総体として社会保障制度というのが確立されていかなければならないというふうに私は思います。  そこで、これに絡んで幾つか婦人の年金権についてお尋ねをしたいと思います。  昨年の四月二十一日の大蔵委員会で私が婦人の年金権について質問させていただきました。そして、そこでの御答弁は、「婦人の年金保障を充実をするという基本的な立場に立って、この問題に真剣に取り組んでいきたいと思っております。」という答弁をいただいているわけです。  御存じのように、年金問題というのは婦人にとって非常に重要な関心事でございまして、老人問題は婦人問題であると断言してもいいほど、その比重が大きいわけです。なぜなら、六十五歳以上の女子というのは六百十五万人いて、男子よりも百六十五万人多いということですね。それから、あの戦争の時代を踏まえまして、戦争による独身世代というのも婦人の場合にたくさん生まれておりまして、そういう方々が老齢期を迎えつつあるわけですから、どんどんとその婦人の比重が高まっていくと思います。あわせて平均寿命の差やら、あるいは夫婦の年齢の差とか、あるいは中高年の離婚の増加とか、それから女性の再婚率が低いとか、いろいろな問題があって、高齢婦人の有配偶率というのも男性に比較して非常に低いわけですね。そういう意味で、婦人が年金問題に重大な関心を持つということを深く認識をしていただきたいと思います。  そこで、いま「二十一世紀の年金考える」というのが厚生省から出されておりますけれども、ここで、「婦人の年金権の確立」というのとあわせまして、「厚生年金保険の支給開始年齢、保険料率の男女差についても見直しを進める」ということが掲げられております。それから給付水準の適正化ということで、併給調整というような問題もここで触れられているわけです。そういう中で、すべての婦人に固有の年金権を保障するという措置は、これはもうかねてから婦人が強く要求してきたとこ養いまして、当然の結論だとは思いますけれども、それをどのように実現していくかということを踏まえて、幾つかの問題点があるかと思います。  ことしの七月十五日に社会保険審議厚生年金保険部会というところから「厚生年金保険制度改正に関する意見」というのが出されております。ここでも触れられておりますけれども、婦人の年金考える場合、婦人の労働実態とかけ離れて考えていくことはできないというふうに思うのです。この意見書でも、「女子の支給開始年齢については、労働条件における男女差の解消などのすう勢を考慮し、」「見直すべきである。」というふうになっております。  そこで、労働条件の実態というものを明らかにしていかなければならないと思いますけれども、いま婦人労働者は、八二年で千四百十八万人といわれ、全労働者の三四・六%を占めているということですが、老齢年金の額は男性に比べて非常に低い水準になっていますが、一体どの程度か、わかりましたら教えてください。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 山口剛彦

    ○山口説明員 昭和五十八年三月の老齢年金平均年金額でございますが、男子は月額十二万八千円弱に対しまして、女子は七万六千円程度でございます。
  37. 簑輪幸代

    簑輪委員 女性は男性の三分の二程度にとどまっているわけですね。この原因は幾つかあると思いますけれども、女性の賃金格差やあるいは出産や育児による雇用中断など、さまざまの労働条件に起因してこういう結論になってきているというふうに思うのです。わが国は、年金との絡みで言いますと、母性が尊重されているとは言えないと思います。そこで、本来、出産、育児ということで中断するのではなく、引き続き働きたいと思う場合に、それを保障する保育所というのも非常に不十分ですし、また、育児休業制度というものも全労働婦人に開かれているわけではありません。  そこで、この育児休業制度についてですが、現在ある育児休業制度のもとで、その普及率について教えてください。
  38. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 民間の勤労婦人につきましては、勤労婦人福祉法によりまして、事業主が育児休業制度を導入するように努力するということで、努力義務が決まっております。私どもでは、この法律の趣旨に基づきまして少しでも普及が進みますように、奨励金制度を設けましたり、普及のための相談員、指導員を設けましたり、あるいは一般の啓蒙のために旬間などを設けまして努力をしているところでございまして、普及率は徐々に上がってまいりまして、現在私どもの調査によりますと、一四%ちょっとというところまでいっております。
  39. 簑輪幸代

    簑輪委員 これは全体で一四%ということでしょうか、民間だけのパーセンテージでしょうか。
  40. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 いま申し上げましたのは、労働基準法の対象になっております方たちについての調査でございますので、いわゆる育児休業法によりまして育児休業の請求権が認められている方が全部入っているわけではございません。
  41. 簑輪幸代

    簑輪委員 非常に低い普及率、努力をしていただいていることは十分承知しておりますけれども、まだまだ低い普及率だというふうに思うのですね。これが全体に適用される新しい育児休業法などが制定されるということになってこないこと。には、一〇〇%に近づくというのが困難だとは思いますけれども、これが婦人労働の実態だということなんです。  それから、婦人労働の実態の中で、賃金格差というのが非常に激しいというふうに思います。そこで、賃金格差の実態をお尋ねしたいと思いますけれども、男女の平均賃金の差を、最近の推移を含めて簡単に教えてください。
  42. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 労働省の毎月勤労統計調査によりますと、月間の平均賃金総額で見ますと、男子を一〇〇といたしました場合の女子の数字は年々徐々に格差は縮まってきたわけでございますが、五十五年ごろからやや拡大いたしておりまして、現在、男子を一〇〇といたしました場合に五三となっております。
  43. 簑輪幸代

    簑輪委員 格差が縮まりつつあったのに、最近また開いてきているという重大な問題があると思います。そして、平均賃金を男女出した場合に、その平均賃金以下の婦人労働者の数というのは一体どれくらいいるものなのだろうか、わかれば教えていただきたいと思います。
  44. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 ただいま申し上げました平均賃金の格差がかなり拡大してきているという御指摘でございますが、これにつきましては、最近パートタイマーがふえているとか、いろいろな要因があって拡大してきているわけでございます。  それで、ただいまお尋ねの平均賃金以下の者がどのぐらいいるかということでございますが、先ほど申し上げました格差を計算いたしました調査からは賃金階級別の数字が出てまいりませんので、ちょっと計算ができないわけでございます。そこで、別の賃金構造基本統計調査の方から一応計算をいたしまして、これは全く私どもの、急なお尋ねでございますので、暫定的な試算ということでございますけれども、所定内給与に限ってみますと、まあ大体六割程度の方たちが平均賃金以下ということになるかと存じます。
  45. 簑輪幸代

    簑輪委員 そういうことで、婦人労働者は非常に劣悪な労働条件のもとで働いているわけですね。そして、パートの拡大などはそれに拍車をかけているわけですけれども大臣のお時間が十一時までということでございますので、大臣に二言だけお尋ねをしておきたいと思いますのは、婦人の年金権について、いまちょっと指摘を申しました以外に、雇用における男女差別というのは無数にございまして、それを一日も早く是正するために男女雇用平等法の制定ということが強く望まれておりますが、一方では日経連がこの男女雇用平等法反対というような意見を出したりもしている状況でございます。しかし、先ほど申し上げました意見書でも、雇用の労働実態を踏まえてこれを解決していくべきだというふうに言われておりますように、この労働実態を離れて、形式論理的に支給開始年齢を一緒にしてしまうとかいうようなことは、実に無謀だというふうに思うのですね。  一方、この労働婦人の定年と年金年齢との間というのはまだ埋まってない状態でございますので、そこら辺の政策も十分とられていないうちにこういう支給開始年齢の同一あるいは併給調整とかという形で、結局のところ、婦人の年金権を保障すると言いながら、現実にはいまもらっている労働婦人たちが逆に不利益を受けるというようなことが指摘されるわけです。そういう問題を踏まえた上で、大臣は、婦人の年金権の確立という問題についてどのような所感をお持ちか、そのことだけをお聞きしておきたいと思います。
  46. 山口剛彦

    ○山口説明員 大臣お答えの前に、私ども考え方を申し上げさしていただきたいと思います。  現在年金制度の改革に取り組んでおりますが、その一つのテーマといたしまして婦人の年金問題に取り組んでおります。御指摘がありましたように、いまの年金制度の中での婦人の位置づけ、大変複雑でございます。私ども制度的に欠落している部分もあるという判断もいたしております。今度の制度改正の中で真剣に取り組んでまいりたいと思っております。  ただ、今度の制度改正の目指すべきところといたしまして、私どもは、長期的に安定した年金制度の確立を目指すということが一つございますけれども、もう一つは、年金制度間における公平あるいは世帯間、世帯内の公平ということにも十分配慮した制度改正をしていかなければならないというふうに考えております。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕  その場合に、現在の婦人のいろんな特例等ございますけれども、これに限らず、年金制度における特例というものを総点検をしてみようじゃないかというのが関係者でも非常に強い御要請でございまして、その一つのあらわれとして、意見書におきましても、婦人の年金保障についての特例というものも、現状をよく見て見直しをしてみたらどうだろうかという御指摘でございます。  支給開始年齢の問題にいたしましても、雇用状況等を勘案をしていけという御指摘でございますが、従来に比べますと男女の平等という点でもかなり進んでまいっておりますし、また婦人が大変長生きをするということからいたしますと、婦人の年金に係る費用というのは、男性と比べてかえって多いというようなこともございますし、また、先ほど来御指摘がありますように、低所得の方が多いということは年金制度上もそれだけ優遇されているというような面もあるわけでございますので、果たしていまの時点でそういう男女の差というものをこのまま将来とも延長していくべきなのかという点については、現状を十分踏まえなければなりませんけれども、この際見直しをして、将来に向けて合理性のない差というものは年金制度上も同一にしていく方向で努力をしていくことが、今後私どものとるべき立場ではないかというふうに基本的には考えております。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 感想を述べろということでございますが、私もこの間興味本位――いろいろな統計をつくる勉強をすることは好きなものでございますから……。この前、四万八千人の国がまた独立して、いま世界の国が北朝鮮を入れれば百六十七になりました。その百六十七を平均寿命で全部順番をつけてみました。そして日本が、一番新しいので男性が七十四・二二歳、女性が七十九・六六歳。一番低いのは、エチオピアが三十七歳、アフガニスタンが三十九歳。ただ、どこの国も例外なく言えることは、女の方が五つ長生きしていらっしゃいます。ただ、アフガニスタンなんか、そうりっぱな統計じゃないと私も思いますけれども。そういうことから見て、確かにいまの答弁を聞いておっても、長生きされるということが一つある。しかし、雇用の実態というものはそうじゃない。そういうところに、歴史的経過の中で特例というものができているのだな、まだこういう素朴な勉強でございます。  基本的に年金権の問題については、私はおっしゃる意味は十分理解できますが、何分乏しい知識でございますので、これからも御指摘の御趣旨などを念頭に入れながら勉強させていただきたいものだな……。考えてみると、明治二十三年七月一日に選挙が行われまして、そのときは男性であって、年齢も三十でございますが、地租十五円。それが十円になり、五円になり、二円になり、それから大正十四年の法律改正で昭和二年からいわゆる普選。それから今度戦後の二十一年の選挙からいわゆる女性の参政権。だから、そういう民主化の歴史の中と、いわゆる宿命的にと申しますか、世界のどこの国を見ても四・二歳ないし五・三歳多いのですよ。それの調和が歴史的経過の中でこうなっているのかなというようなささやかな私の勉強と、今後先生のおっしゃったことも十分勉強させていただきますということを申し上げて、行革の委員会へ行ってまた帰ってまいります。
  48. 簑輪幸代

    簑輪委員 大臣が婦人の年金権について一層深めていただくということで御答弁いただきましたけれども、もう少し議論をしたいと思います。  民間企業に雇用されている婦人でありながら、厚生年金から締め出されている婦人というのが非常に多いわけですけれども、一体どれぐらいいるのか、わかりましたら教えてください。
  49. 小林廉夫

    ○小林説明員 パートタイマーにつきましては、就労の実態がその事業所の同種の常用的な就労者に準ずる場合、すでに適用いたしておるところでございます。  御質問適用状況につきましては、いわゆるパートタイマーを区分して適用いたしておりませんものですから、御指摘のような数字については把握いたしていないわけでございます。
  50. 簑輪幸代

    簑輪委員 民間企業に雇用されている婦人で厚生年金に入っていないのが一体どれぐらいいるのかというのがわからないとおっしゃるのですけれども、ある程度わかると思うのですね。私どもの資料の方では大体五百万人はいるというふうに言われているわけです。これはいろいろな原因がございまして、強制適用事業と任意包括適用事業という仕組みになっておりまして、強制適用事業でないところでは主に婦人が非常に多いということから、こういうことになってきているわけです。サービス業とか農林水産業等が強制適用事業から外されておりますし、さらに五人未満の小規模事業所も外されております。それからさらに、正式採用の婦人以外のパート、臨時、日雇い、そういう人々も外されているというわけですね。このように、現実に労働に従事しているたくさんの婦人が厚生年金からはみ出しているということは非常に重大な問題だと思います。  そこで、任意適用事業を強制適用事業に改めていく、あるいはまた強制適用の対象の労働者の枠を広げていく、そういう努力をすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  51. 山口剛彦

    ○山口説明員 御指摘のように、被用者につきましては原則として厚生年金適用するということになっておるわけでございますけれども、原則として五人未満、あるいは業種によっては適用除外になっておりまして、国民年金適用されておる実態にあるわけでございます。同じ被用者という立場にあるわけですから、できるだけ被用者年金の方でカバーをしていくべきだという御指摘はもっともだと思いますし、今回の厚生年金部会の意見書におきましても、現在ある任意包括適用制度を活用するなど積極的にそういう方向での施策に取り組めという御指摘をいただいておりますので、厚生年金適用いたしますと、事業主負担あるいは事務処理能力その他現実問題としていろいろな問題が出てまいりますけれども、基本的な方向としてはそういう方向で私どもも努力をしてまいりたいと思っております。
  52. 簑輪幸代

    簑輪委員 そういう観点でこの意見書もできているわけですけれども、一体現在の実態はどうなっているのかということですね。包括適用事業を少しでも広げていく、そういう行政指導がやられているのかどうか、それをお答えください。
  53. 小林廉夫

    ○小林説明員 任意適用につきましては、当該事業主が事業所に使用される者の過半数の同意を得まして、都道府県知事に申請することによりまして適用事業所になる、こういうことになっておるわけでございます。私ども任意適用の促進につきましては、各種の広報等を通じまして制度の周知に努め、その適用促進を進めてまいっておるところでございます。  なお、お尋ねの任意適用状況でございますけれども昭和五十六年度末におきまして事業所数で二十六万カ所、被保険者数につきましては百八十九万六千人ということになっております。
  54. 簑輪幸代

    簑輪委員 そういう制度があるという広報はしているということですけれども、現実にそれを促進していくための具体的な手だてというのはほとんどとられていないということを、昨日ちょっとお聞きしてびっくりしたのですけれども、そういう広報を受けて、それで自分の事業所はそういう適用を受けたいと申し入れがあったら、それについて具体的に教えてあげるというような、そういう姿勢でおられるやに伺ったわけで、私はそれは非常におくれていると思うのです。この際、こうした意見書もございますので、従来の形ではなくて、飛躍的にこれを前進させるための特別な手だてをとっていただく必要があると考えますが、その点はいかがですか。
  55. 小林廉夫

    ○小林説明員 非常に数の多い対象、それから事業所数も非常に多いという事情がございます。私ども従前に引き続きまして、関係行政機関の間の連絡でございますとか、あるいは地域の商工会議所等が用います広報とかを通じまして、適用促進のために努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  56. 簑輪幸代

    簑輪委員 余り積極的な御答弁のように聞けなかったのですけれども、私は社会保険庁がこうした前向きの姿勢をきちんと明確にした上で、必要ならばそれにまつわる関係省庁に対してリーダーシップを発揮し、たとえば労働省職安の窓口において求人の事業所などがある場合には、このような行政指導を積極的に行うということがとられるべきだと思うのです。その点も含めて御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  57. 小林廉夫

    ○小林説明員 引き続き適用拡大のための努力をしてまいりたいと思います。
  58. 簑輪幸代

    簑輪委員 いま申し上げました点を踏まえて、ぜひお願いしたいと思います。  最後に、時間がございませんが、婦人が非常に長生きをするという中で、婦人の年金に対する重大な関心と期待は高まっていくばかりでございますけれども、この年金制度のあり方について論議をされております各種の審議会がございます。たとえば、昨年もこの点私お聞きしているのですけれども、各種の年金に関する審議会に、必ず婦人の代表を正式メンバーとして入れてほしいという問題なんです。国共済審議会は九人ですけれども婦人がゼロ、それから社保審の方は二十七人ですがこれもゼロ、国民年金審議会は十二人中ほんの一人というような実情にあります。婦人の人生と暮らしがかかる重要問題が結局男性だけで決められてしまうということになるのは、非常にぐあいが悪いわけですね。その点は、婦人が明確にそこで位置づけされて、きちんと審議会に、尊重される意見として反映される必要があると思います。  特に、男女差別撤廃条約の批准を目指しまして、後半期の重点目標が掲げられておりますけれども、政策決定の場への婦人の積極登用ということがうたわれております。そこで、各種審議会の中に特に婦人の代表を入れていただく。このことは、国際婦人年日本大会の決議を実現するための連絡会、いわゆる四十八団体と言われておりますけれども、ここで「年金制度改正案策定における婦人の地位改善についての要望」というのがことしの七月出されております。ここで、たくさんの要望がある中で、この審議会への婦人の登用という問題も述べられておりまして、非常に強い強い要望なのです。ぜひ各種審議会でそれを実現していただきたい。これにかかわる大蔵省、厚生省からの御答弁をいただきたいと思います。
  59. 保田博

    保田政府委員 政府の各種委員会における婦人の参加の問題でございますが、私、本日ちょっと手元に資料を持ってまいりませんでしたけれども政府全体としては、各省庁におきまして、所管する各種審議会の任期が参りますたびに、徐々に増加を図るように努めていると思います。大蔵省としましても、所管の委員会の構成につきましては今後とも努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  60. 山口剛彦

    ○山口説明員 私はお答えをすべき立場にはございませんが、年金関係審議会ということでちょっと実情だけ申し上げさせていただきますと、年金関係審議会の構成がどうなっているかということについては、いま先生のおっしゃったとおりだと思います。しかし、私ども、たとえば厚生年金部会の構成を見ましても、三者構成になっておりまして、たとえば労働代表の方につきましても、その組織の中から代表の方が出て御審議をいただいているわけでございまして、もちろん女性の組合員方々の御意見も十分くみ上げていただいて、実際の審議会では御議論をいただいているということは、お認めいただきたいと思います。ただ、先生御指摘の趣旨は十分わかりますので、厚生省全体の審議会の問題としても取り組んでいることは事実でございます。きょう再びそういう御指摘があったという点については、省に帰りまして十分伝えていきたいと思います。
  61. 簑輪幸代

    簑輪委員 これは目標が一〇%というふうになっているのですけれども、現状ははるかに低い水準です。各省庁ともにその課題があるわけですけれども、特に年金にかかわるところについては、緊急にお願いをしたいと強く申し上げて、終わりたいと思います。
  62. 森美秀

    森委員長 広瀬秀吉君。
  63. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 いわゆる共済年金統合法案について、若干質問をいたしたいと思います。  この法案質問に具体的に入る前に、年金というのは一体何だろうかということについて、基本的な問題といいますか、理念的な問題というか、そういう問題を少し取り上げてお聞きしたいと思うのです。大臣はおりませんが、優秀な副大臣もおられることですから、お答えいただきたいと思います。  先ほど簑輪委員質問をしておりましたが、かつては年金と言えば恩給ぐらいしか、日本の歴史、もう数十年前になりますか、戦前と申しますか、そういうときには恩給、年金、こういうものが対象であって、その中で旧令共済、旧法共済、こういうようなものが雇用人等に対して行われ、しかも現業部門において行われたという歴史はあもわけでありますが、そういうものは後で若干、国鉄問題を扱うときに問題になってきますけれども、新憲法下において年金の原点と申しますか、これはやはり憲法二十五条の、国民は健康にして最低限の生活を享有する権利があるということ、したがって、社会保障等について政府は努力しなければならぬという二十五条の規定があるわけでありますが、年金の理念というのは、今日の憲法体制のもとではこの二十五条の規定に基づくものである、こういう位置づけが当然なされてしかるべきだと私は思うのですが、いかがでございますか。
  64. 山口剛彦

    ○山口説明員 年金は、改めて申すまでもありませんけれども、老齢、障害、遺族というような、事故が起きまして生活の安定が損なわれるという場合に、その生活の安定のために、社会連帯の精神にのっとってこれを保障していこうということでございますので、御指摘をいただきましたように、現在の憲法下におきましては、憲法二十五条の精神にのっとった制度であるというふうに理解をいたしております。
  65. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 年金につきましてといいますより、日本のすべての政策運営等の原点は憲法にあるわけでございまして、まさに憲法の趣旨に沿った上での年金運用ということを目指していかなければいけない。ちょうど昭和三十五年に、社会福祉元年というような位置づけがございまして、私、まだ小学生でございましたけれども、大変に自分の将来にバラ色の感じを持ったことがございます。このときに出ておりましたのが、国民皆保険、皆年金という文字を新聞で拝見をいたしたわけでございまして、そういう方向へしっかりとこれからも向かっていかなければいけないと思っております。
  66. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 年金の原点というのは、やはり今日の法体系から言えば、憲法二十五条の生存権の規定、ここにあるということを認めていただいたものと理解して、次に進みたいと思います。  そういうことになりますと、その給付水準、老齢年金もあるし、障害年金もあるし、遺族年金もある、こういうことにはなっておりますが、長い労働者としての生活、あるいはまた家族を養うために、一家の主人としていろんなところで働く、いわゆる被雇用者として働く場合もありますし、自営業で働く場合もある。あるいは自由業で働く場合もある。しかし老齢を迎えて、この際障害あるいは遺族年金というのをわきに置いて、原則的な基本的な問題として考えれば、これはやはり稼得能力、所得を稼ぐ能力がなくなる、あるいは社会的にもそういうことができない状態になるということは常識の範囲でおわかりいただけるわけでありますが、そういう段階になって、いわゆる高齢者の列に入って、しかも人生最後の段階において、いわゆる生きがいのある老後の幸せな暮らし、幸福追求の権利が、老人といえども保障されなければならないわけでありますから、そういうものに対して健康で文化的な生活を保障するということはやはり考えていかなければならない。これはこの年金制度を論ずるに当たって一番基本的な点であろうと思うわけであります。  それならば、しばしばこの委員会でも議論をしたところでありますが、年金というのはやはり健康で文化的な生活を稼得能力を失った人たちに保障するものである、こういうことを基本に置いて考えていかなければならないのではないか、こう思うのです。それに対して、生活費全体をカバーすべきなのかどうかということについてはいろいろ問題があるというようなことを言われるわけでありますが、私はやはりこの年金というのは二十五条に基礎を置くとすれば、そういうものに向かって最大限の努力をするべきである。どの程度のものが健康で文化的な生活かということを定規ではかったようにきちんと、今日の経済社会の中で幾ら幾らであるということは数字的になかなか証明できないかもしれぬけれども、少なくとも基本的にはそういう構えで、姿勢で、スタンスで年金の水準というようなものは考えていくべきであろう、こういうように思うのですが、その点いかがでございますか。
  67. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 まさに理想的な姿に向かいまして年金制度というものをしっかりと整えていくということは、日本の国の政治がその最終目標に近いぐらいな形で向かっていかなければいけない道だと思います。国も今日まで努力をしてまいりましたし、各政党も大変な御努力をいただき、またそれぞれの団体も大変な御努力をいただきまして、その上で今日のいろいろな年金の形というのが出てきております。過去の一つ一つ問題点というものをより理想的な姿に持っていくために、今回の法案というものを私どもは御提案をさしていただいたわけでございまして、できるならば本日御審議いただいておりますこの法律案が、先生の御主張になられます理想的な年金の姿になっていく一つの道しるべ、第一歩になればというふうに考えております。
  68. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 この問題をやると、いつもそういうように、だんだん答弁しているうちにぼけてしまってあれなんですが、一体この法案を提案している大蔵省として、今日の段階でこの共済年金の老齢年金にだけ限って、いわゆる被保険者である現職者、現に国鉄に働いている、公務員で働いている、公企体に働いているそういう人たちの所得に対してどのくらいの年金額というものが、健康にして文化的な生活を営むについて必要と思われるものであるか、こういう点についての何か試算したものでもありますか。
  69. 保田博

    保田政府委員 退職後の老齢年金が、現役で働いている皆さんの所得との関係においてどの程度が適当であるかということは、年金のもたらす福祉の水準でございますか、それと負担との関係ということでいろいろ御議論もあるわけでございます。人によってさまざまでございますけれども、一応老後の生活の安定のために基礎的な役割りを果たす、心理的にも安定感を与えるというような意味からすれば、現役の皆さんの六割ぐらいがあれば適当なのではないかというのが、多くの御意見の一致するところではないかと思っております。
  70. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 それでは、大体六割ぐらいはせめて保障したいという多くの意見がありますというだけでなくして、主体的に大蔵省としては、そのくらいのものはせめて保障する体系にならなければ   もちろん、その反面として、給付水準の問題を論ずれば当然保険料負担の率の問題もあるわけだから、年金水準としてはその程度のものは確保していかなければなるまいな、今日の諸般の要素を考えてそのくらいのところは当然、あるいはそれ以上が理想であるということは、大蔵省としてもそういうお考えであるということでございますか。
  71. 保田博

    保田政府委員 年金の水準を個人単位で見るかあるいは家族単位で見るかといったようなことにつきましてもいろいろ議論がございまして、先ほど申し上げましたのは、できれば家族単位でそれぐらいのものができればいいなというのが理想的なことではないかと私は思っておりますけれども、今後、高齢化社会の確実な到来を控えまして、それからまた経済成長が低成長の時代に入っていくということでございますから、この低成長でもたらされる、従来の高度成長下で考えていた所得の伸びに比べますとかなり低い所得の中で、いずれにせよ税金か保険料かによって負担せざるを得ない年金の水準をどう考えるかといったようなことにつきましては、厚生省を中心としまして、政府としてそのバランスをいかにとるかということについて検討を続けている段階でございます。
  72. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 これはいろいろな研究会やら社会保障制度審議会やら、いろいろなところからいろいろな構想が答申をされたり意見書が出されたりしておりますが、そういう中に、おっしゃったようなことはみんな書いてあるわけだけれども、現時点において、この法案を提出している立場として、当面統合のワンステップである、将来の統合の姿がどうなるかというようなことについても必ずしも明確になってない。明確になってない中で、成熟度の最も高い国鉄がもう財政破綻年金給付ができない状態が目の前に見えてきている。こういう数字的にあからさまな事態に到達をしたというところで、今度これは何年間このままでいける法案なのか、その辺のところもわからぬ。しかし、現実のこの法案が予定している期間内におけるその水準というものは、少なくとも六割以上は保障されていかなければいかぬであろう、こういうようなお考えは述べられないですか。
  73. 保田博

    保田政府委員 年金の水準につきましては、従来から官民格差論とかいろいろ御批判があったわけでございますが、特に公企体の職員の年金水準というのは各種の年金の中では比較的高い水準にございまして、特にそれが負担との関係におきまして長期的な年金財政を維持することが非常にむずかしくなるのではないかということが懸念される状況にございました。したがいまして、将来の年金制度一元化に向けまして、当面は似た者同士と申しますか沿革、歴史の非常に類似しております国共済公企体共済統合するということが、今回御提案の法律中身一つでございます。  統合という意味はいろいろございますけれども、やはりその中で一番大きいのは、比較的高い公企体給付水準を国共済の水準まで引き下げていただくということでございまして、今回御提案いたしました法案では、その国共済給付水準より引き下げることを前提としたものではございません。
  74. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 現在でも公企体共済あるいは国家公務員共済、勤続年数四十年にして最終俸給あるいはやめる前一年間の平均俸給の百分の七十、七割給付というものが、最高では保障されておるわけですね。先ほどの六割というのと七〇%までいけるという、こういう点もあるわけです。六〇%、七〇%、その辺のところはやはり妥当な水準である、こういう見解は変わらぬでしょうね。
  75. 保田博

    保田政府委員 六〇%と申し上げましたのは、私のかつての、いわば私が役人としまして若かりしころの、ということは高度経済成長時代から抱いていた理想の姿であります。その姿が低成長に移りつつある、しかも高齢化社会を迎えつつある現在でも存在しておりますので、その数字をとりあえず申し上げたわけでございますが、将来の年金像といいますか給付の水準につきましては、負担との関係考えながら、今後厚生大臣年金担当大臣を中心としまして、政府部内で検討を進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  76. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 基本問題ばかりやっていますとかなり水かけ論になる部分もありますので先に進みますが、今度の法案を出された。これは単に国鉄がもう六十一年からは完全に年金支払い不能になるということに対する救済措置、こういうことだけでこの法案を出されたのですか。それとも、それにプラスする見通しを持った理由というものがあるのですか。
  77. 保田博

    保田政府委員 今回御提案申し上げております法案の目的は、先生御指摘のとおり、逼迫しております国鉄共済組合財政に対する援助のためというのが一つでございます。  もう一つは、先ほど申し上げましたような国共済公企体共済との統合ということでございますが、この国共済公企体との統合と申しますのは、将来の公的年金、現在八つの年金制度が分立しておるわけでございますが、この八つの年金一元化するという展望のもとに立ちまして、ことしの五月二十四日に政府といたしまして「臨時行政調査会の最終答申後における行政改革の具体化方策について」というものを閣議決定いたしておるわけでございます。この閣議決定では、「昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了」するという展望に立ちまして、公的年金の諸制度の見直しを行いましてということでございます。その具体的な手順としまして、昭和五十八年度におきまして「国家公務員公共企業体職員共済組合制度統合を行うとともに、国鉄共済組合に対する財政上の対策を図る。」それから「地方公務員共済年金制度内の財政単位の一元化を図る。」この上で昭和五十九年から六十一年度にかけまして「国民年金厚生年金保険及び船員保険関係整理を図る。」と同時に、共済年金につきましても、国民年金厚生年金等の改革の趣旨に沿いまして、これらとの関係整理を図るということでございます。将来の公的年金制度一元化へ向けての第一歩というふうに考えておるわけでございます。
  78. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 公的年金制度改革の進め方で、五十八年四月一日に、関係閣僚懇談会が設置をされて、いまおっしゃった内容のことが決まったということは承知をしているわけです。  厚生省に伺いますが、このスケジュールで同時に行く体制というものは、いま間違いなく、この決定は非常にいろいろな意味での裏づけといいますか、作業の進捗状況、そういうようなものから見て、あるいはまたいろいろその間に克服しなければならない実に複雑きわまる問題点が数多くあるだろうと思うのです。こんなことで七十年を目途に公的年金制度の全統一ができる、このことは絶対可能であるかどうか。その辺の見通しをもう一遍、どういう問題点があって、それを克服しなければ次の段階に移れないんだという問題点を明らかにしながら、閣僚懇談会でつくったスケジュール、これが大丈夫なんだ、そういう方向で間違いなくいける、こういう確信を持った答弁をしていただきたいと思うのです。
  79. 山口剛彦

    ○山口説明員 ただいま御指摘のありました「公的年金制度改革の進め方について」という方針に従っていま鋭意準備をしているわけでございますが、先ほど御紹介のありましたように、今後の年金制度の改革の方向を決める上で最も重要な地位を占める部分、これが先ほど申し上げましたように五十九年から六十一年にかけて措置を講ずるとされている、まず第一点といたしまして「国民年金厚生年金保険及び船員保険との関係整理を図る。」ということであろうかと思います。と申しますのも、国民年金厚生年金わが国年金の被保険者の九割、受給者の九割を占めておりますので、この二制度が将来どういう方向に向かっていくのかというところが決まりませんと、共済組合との関係その他も整理ができないというふうに考えております。  そういう認識のもとに、私どもいま国民年金厚生年金の改革に取り組んでおるわけでございますが、関係審議会から七月十五日に、その改革をするに当たってこういう基本的な考え方で臨めという御意見をいただいております。その御意見に従いましていま案を作成中でございますが、できるだけ早く案をつくりまして、改めて関係審議会にお諮りをして御議論をいただき、最終的な政府案というのを次の通常国会に提出をしたいという事務的なスケジュールのもとでいまやっておるわけでございます。  そのときに一体何がポイントになるかということでございますが、この意見書の中でも、公的年金のいままで三種類八制度でやっております分立の体制、これをこの際おのおのの制度の枠にとらわれないで再編成をせよというのが関係者の強い御意向でございます。その方向といたしまして、各制度を一本にしてしまうというのは現実性がないという御判断だろうと思いますが、各制度に共通した部分は設けられるはずであるということで、意見書におきましても、各制度に共通する給村を導入するといった考え方のもとに、全体として整合性のとれた制度にするようにということでございます。  これを具体的にどう仕組むかという点については、まだ申し上げられる段階にはございませんけれども、私どもも、俗な言葉で言えば、各制度に共通する基礎的な年金制度というものを御示唆をいただいたというふうに思っております。そういう基礎的な年金制度をこの際つくっていくという方向で再編成ができれば、各制度に共通したルールのもとにいろいろな調整等も行えるわけでございますので、今後の公的年金の再編成の方向としては、具体的なことは申し上げられませんけれども、この御意見の趣旨からいたしましても、ほぼいま申し上げましたような基本的な方向で改革案がまとまれば、わが国公的年金制度の将来の方向づけというのも相当はっきりしてくるのではないかというふうに思っております。したがいまして、その第二段階での方向づけが明らかになった上で、さらに関係の部局とも詰めまして、七十年を目途にしている一元化の具体的な構想というのをより明らかにしていきたいというのが、私どもの現時点での考え方でございます。
  80. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 臨調の基本答申等においてもそういう方向が打ち出されて、年金統合の方向に向かっていけというようなことが言われておるわけであります。五十八年度においては、いま論議をしているこの法案と、それから地方公務員の制度内の財政単位の一元化ということ、これは地方公務員の方はできた。いま審議中の問題があるわけでありますが、次の段階で、五十九年から六十一年の間に国民年金厚生年金保険及び船員保険との関係整理を図るということが言われている。この中身は一体どういうものになるのだろうかという問題。それから、共済年金について、いま申し上げた国民年金厚生年金保険などとの関係調整を図るという改革の趣旨に沿って、上記制度との関係整理を図るのだ、こういうことなのですが、この辺のところになりますと、もう少しわかりやすくこれを説明すると一体どういうことになるのですか。どの辺のところまで統合に向けて作業が進んでいき、現実に法改正というようなもの、厚生年金法の改正なり国民年金なり船員保険法の改正なり、そういうようなものがどういう時点でどういう形で出てくるであろうかというようなことについては、まだ固まったものは何もないわけですか。いま審議している共済年金も、そういうようなものとの見合いにおいて、五十九年から六十一年にまた何か制度調整を進めるという。制度調整というものはどういうようなものがあるのか。こういう点で、いま議論しているものが五十九年、来年あるいは六十一年までの間にそういう状態になるというこの辺のところは、これは山口課長、それから保田さんから答えてもらうのだけれども、どういう中身になっているのですか。このことを確かめておきたい。
  81. 山口剛彦

    ○山口説明員 まず厚生年金国民年金船員保険関係でございますが、具体的な案は近く審議会にお示しをしたいということで、それはまだお許しをいただきたいと思いますが、考え方といたしましては、まず同じ被用者保険であります船員保険、これにつきましては、従来は船員保険は総合保険ということで独自の保険制度を持っておりますけれども関係審議会の御意見もございまして、これは厚生年金年金部門については統合すべきであるという御意見を七月にいただいております。私どもは、それを踏まえまして、厚生年金船員保険年金部分については統合をする、一本化するという案をいま具体化すべく検討をいたしております。(広瀬委員「いつごろになります」と呼ぶ)近く厚生省案をお示ししたいと思っております。  そういたしますと、あとは具体的には国民年金との関係になるわけでございますが、これは先ほど申し上げましたように、関係者の御意見も一本化するということではなくて、国民年金厚生年金の共通にやっていける部分というのがあるのではないかということで、共通の給付を導入するという考え方で案をつくってみよ、こういう御意見でございます。浴室言葉で言えば、先ほど申し上げましたように、基礎年金あるいは基本年金というようなもの、厚生年金国民年金に共通をする部分としてそういうものを考えたらどうかということでございます。  同じような構想は、各種の審議会等の御意見でもございます。たとえば社会保障制度審議会におきましても、従来基礎的な年金という制度の上に各制度独自の年金制度を上乗せしていくという二階建ての年金構想が示されております。構想としてはそういうものに近いものと受けとめておりますけれども、ただ御意見としてもう二つ条件がついておりまして、その基礎的な年金というものの財政をどうするかという問題については、社会保障制度審議会等の基礎年金構想というのは税金で処理をしていくということでございますけれども厚生年金部会の関係者の御意見は、それは給付負担がかかわり合いを持つ社会保険方式を今後とも維持してやっていくべきだという御意見でございますので、そこは構想として大きく異なるところでございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  それからもう一つは、現在の制度、すでに国民年金厚生年金、相当の歴史を持っておりますので、その現行制度からの円滑な移行ということに十分配慮して再編成をせよという御意見でございます。その点も十分踏まえまして具体的な制度をつくりたいというふうに思っておりますが、具体的な、いつまでにというのを申し上げられる段階ではございませんが、できるだけ早くお示しをしまして、次の通常国会にはそういう年金改革の法案を出したいというのが私どもの希望でございますので、それに間に合いますように、できるだけ早く検討を進めたいと思っております。いろいろ困難な問題が出てまいりますけれども、私どもの目標としては次の通常国会に提出をするということで努力をしている最中でございます。
  82. 保田博

    保田政府委員 共済制度につきましては、御提案申し上げましたように、本年度におきまして国家公務員共済公企体共済統合をお願いをいたしまして、その統合を前提としまして、先ほど申し上げましたように五十九年度から六十一年度にかけまして、厚生省の方のいろいろな作業の趣旨を踏まえながら、われわれの方も検討を進めるということでございます。  それで、厚生省当局からただいま御説明いたしましたように、被用者年金とそれから国民年金との間の統合はどんな姿になるのか、われわれとしても非常に大きな関心を持っておりますけれども、いずれにせよ国民の非常に大きな部分を覆いますのがこの厚生年金国民年金でございますので、共済年金制度をどう持っていくかということにつきましては、現在厚生大臣を中心として行われております検討の作業の結果を見ながら、これとの関係調整を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  83. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 三制度年金、こういうことになっているわけですけれども、まず公企体と公務員の統合を今回図る。これは国鉄救済という問題と同時に、将来へのワンステップであるという位置づけもなされている。次の段階、この右の厚生年金国民年金船員保険関係整理というものを横目に見ながら公企体と国共が合体する、統合されるわけですから、あと残るのは地方公務員共済、これは財政調整一元化ということがもうできている。そういう点で、今度はさらに国公公企体共済とそれから地方公務員共済統合を果たすという段階があるのか。今度の統合が仮に通ったとすれば、地方公務員共済がまだ残っている、その統合というようなことを考えない。で、閣僚懇談会で進めていく国年と厚年と船員保険の方の進みぐあいによっては、一気にそれとの統合の方向にいくのか、その辺のところはどういう構想を抱いておりますか。
  84. 保田博

    保田政府委員 共済年金制度につきましては、先生篤と御承知のように、厚生年金等と同じように社会保障制度としての一面、老齢後の所得保障を付与するといった社会保障制度の一面も持っておるわけでございますが、と同時に、国家公務員の特殊性あるいは公企体職員としての職務の特殊性に応じたいわば職場年金的な制度部分もあるわけであります。それで、当然のことながら五十九年から六十一年にかけましての関係整理と申しますのは、社会保障的側面を持った部分についてできるだけ関係調整を図っていくということでございまして、いわば職場年金的な側面についてどう考えていくかということにつきましても、その段階でできるだけ調整を図っていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  85. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 その関係、閣僚懇で言っている一、二ということで山口課長が与えた問題と、それを見ながらということに共済組合はなっているのだけれども、次の段階がどういうものであるかということについては必ずしも明確にならない。これは今回積み残ししておきます。したがって、端的に例えば、いままでの歴史から見れば大きな、画期的な一つ制度改正が今度行われるわけですけれども、次のステップがどうなのかという問題については、きょうは大分時間がたっちゃいましたものですから、次の質問に移ります。  国鉄に伺いたいのだが、国鉄がこれだけ財政が窮迫し、そして年金においても、六十一年にはもう支払い不能であるという状況に到達した最も大きな理由から順に、幾つか簡潔にひとつ述べてください。
  86. 岩崎雄一

    岩崎説明員 国鉄年金財政破綻原因は、基本的には給付負担が見合っていないことによる不足財源の増大ということになろうかと思いますが、国鉄共済年金が他に先立って破綻をする理由というのは、一つ輸送構造変化に伴う国鉄本体減量化による現職組合員数の減少が挙げられると思います。  それからもう一つは、戦中戦後の混乱期復員者を含めて多数職員を採用いたしておりますが、そのいわば団塊年齢層が現在ちょうど退職時期を迎えておることによりまして、毎年平均的には一万人ぐらいのところが二万数千人ぐらいの退職者がこのところ続いておる。それがほとんど年金受給者になる。つまり分母の被保険者数が減少し、分子である年金受給者が急増しておる、これが原因ではないか、このように考えております。
  87. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 なぜそういうような年齢構成になったのか。さかのぼって当時の状況、これは国鉄企業体であったならば、そういうことはあり得なかったという事情があったに違いないわけであります。特に戦後のあの混乱の状況の中でのことは、国鉄として、そういうことは将来のことを考えてできないと拒否できる立場になんか全くなかっただろうと思うのです。全部そういう職員も受け入れなければならぬ、そしてまたそれだけの当時のやむを得ざる事情があったということ、そういうものと見て差し支えないだろうと私は思うのですが、それでいいですね。たとえば満鉄職員、引き揚げてきた者はもう優先的に採りなさい、当時の国策である。復員軍人も現業はどんどん採りなさいということ、これも国策として当時の国鉄に押しつけられた。そしてその後二十四年から公共企業体に変わった。そういう状況で、全部その職員を国策のもとに抱えてこざるを得なかった。そういう事情、これはまさにそのとおりですね。
  88. 岩崎雄一

    岩崎説明員 当時の混乱期に、雇用政策の一端を担って積極的に取り組んだ結果だ、このように考えております。
  89. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 まあわれわれの立場から見れば公経済の主体と国の責任、こういう問題で、私も十年前、四十九年、五十年、ずっとこの問題で、国鉄財政は悪化する、まさにいま言った被保険者と年金受給者の比率、いわゆる成熟度と言われるものが大変な勢いで悪化しつつあるということで、国の負担というようなものについて何とかしないと早々にパンクするぞという警告を発し続けてきたわけだけれども、公経済の主体としての公共企業体――いわゆる厚生年金などで国が負担をしている二〇%、あるいは私学共済やその他に対して一八%を負担している。国庫の負担分として、そういうものを当然負担すべきであろうという主張をしてきたわけです。  それでそのときに、いま公取委員長になっている高橋元さんがちょうど保田さんの立場であったわけです。きょうは議事録を持ってこなかったのだけれども、この閲読み返してみた。そうしましたら、国といい、あるいは公共企業体といえども、いずれもその性格は同じようなものだ、公共企業体になったからと。いって、やはりそれはちゃんと独占的な地位も与えられているであろうというようなことも言われておるわけです。これは議事録で調べていただければすぐわかることです。ところが十年前、十五年前あたりから、あるいは二十年前から、国鉄の人員輸送、貨物輸送、そういう輸送に占める比重というものは独占どころじゃない、もう完全な競争社会にずうっとなってきた。電電の場合あるいは専売の場合は独占的な地位が保障されている、なるほど公経済の主体として経理もりっぱに成り立っている。そういうことであるけれども国鉄の場合はそういう状況ではなかったということですから、パンクすることは十年前、十五年前から目に見えておったわけですね。  その間、政府も手をこまねいて何にもしなかったということが非常に大きな原因であったろう。今回、こういうふうに国鉄共済の長期収支が完全にバランスを失って、年金支払い不能という事態を迎えるに至ったという点での政府責任というものは、かなり追及されなければならない問題があるんじゃないか。したがって、そういう公経済の主体論だけではなしに、少なくとも国の政策として企業体である国鉄に押しつけた分、過去勤務債務と言っていいかと思うのですが、しかも財政が悪化するから、どうしたってその整理資源、追加費用の積み立てなんというのは十分には行われないということにもならざるを得ないわけです。それに対して二足の国の助成金は出るけれども、これは特に一部、特定人件費ということで、退職手当、退職一時金に対する若干の手当てはあるようですけれども、それ以外に、年金追加費用の積み立て、あるいはそういうパンクするであろうということについて、国が責任を持って何らかの手だてをするというようなことが行われてこなかったことについて、大蔵省としては一体どういうように責任をお感じになるのか。
  90. 保田博

    保田政府委員 大先生の前でいまさら公経済主体の負担論を展開するのは差し控えたいと思いますけれども、いま御指摘の国鉄共済組合赤字になった原因については、いままでにもたびたび触れましたように、国鉄に特有の問題もございますが、基本的にはやはり長い目で見た負担給付との関係がアンバランスであったということが一つ。それからもう一つは、やはり年金の基礎を一つの企業に求めていた。その企業が産業構造、輸送構造変化に対応し切れなくなってきて、その職員と卒業生との関係が非常にアンバランスになってきたということにあるわけでございます。  この基本的な二つの要因は、わが国公的年金制度に全く共通するものでございまして、まず給付負担とのアンバランスにつきましては、今回とりあえず公企体共済国共済との間で合致を図るということにおきまして若干の是正をする。それから第二の点につきましては、一つ企業体年金制度を持っていくことがやはり非常に世の中の変化についていきにくいということでございますから、この際は保険集団のすそ野を大きくする必要があると考えまして、これもまたとりあえず国共済並びに専売電電の二公企体共済組合とも統合を図る。これらにつきましては、将来の年金制度一元化の段階に進みましてさらに調整を続けていきたいというふうに考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、年金負担というのは保険料か国庫の負担。国庫の負担ということは、やがては税の負担にかかるわけでございまして、そのいずれがより適正であるかということにつきましては、先ほど来御議論もございましたように、社会保険はやはり被用者と使用者との折半負担によります保険料をもって維持していくのがたてまえでございまして、安易に国庫に依存する、そして国民の税負担に転嫁していくということはいかがなものであろうか。やはりこの際は社会連帯の精神に沿いまして、相互扶助、社会保険の枠内で処理していくことが適当ではないか、共済というのはまさにそういう言葉をあらわしているものではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  91. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 大蔵大臣もおいでになりましたし、時間が大分足らなくなってしまったので……。せっかく専売の総裁もお見えになっておりますが、国鉄と同じような状況専売公社が立ち至る時期はいつですか。  それともう一つ経営形態変更で、臨調からは販売部門について特殊会社にすぐに移行しろとか、あるいはその後特殊会社に移行しろと言われているわけですが、そういう状況を踏まえてどうお考えになっておられるか。  そしてまた、今回専売公社も、国鉄財政破綻を救うために組合の掛金を引き上げて、そして国鉄に十五億ですか拠出をする、こういうことになっている。電電からおいでになっている方も、その点同じような質問をいたしますので、簡潔に……。特に専売の場合には、その拠出をするものよりも、六十年ぐらいになると財源率が国鉄の財源率あるいは掛金率よりも上がるではないか、そういう逆転のおそれありとすら言われているのだけれども、そういうことに対して専売としてはどのように考えているのか。その辺のところをちょっと総裁と、それから電電の方に……。
  92. 長岡實

    ○長岡説明員 専売共済国鉄のような状態になるのは一体いつであるかという御質問でございますが、共済年金制度基本問題研究会の意見の資料によりますと、専売の場合には五十九年度で単年度収支が赤字となり、八十四年度には積立金もなくなって賦課方式に移行せざるを得ないのではないかというような試算がございます。これは一応の試算でございますけれども、私ども年金の成熟度は国鉄に次いで高い方でございますから、将来のことを考えますと、やはり相当深刻な問題を抱えておると言わざるを得ないと思います。  それから、経営形態問題との関係でございますが、経営形態の問題につきましては、私どもは現在鋭意詰めてはおりますけれども、まだ現在の公共企業体である公社制度がどのような経営形態変更されるかという結論には至っておりません。したがいまして、将来どうなった場合にはどうするかというお答えは的確にはいたしかねますけれども、ただ、現時点において私ども、この問題の受けとめ方といたしまして、経営形態いかんとこの年金制度のいかんとは、そう直接的に結びつけなくてもいいのではないか。と申しますのは、民間部門の被用者は厚生年金、公共部門の被用者は共済年金と一応分かれておりますけれども、中を見ますと、公共部門に属する公団、公庫等について厚生年金適用されている例もございますし、また逆の例もございます。そういうような現実を踏まえまして、仮に経営形態変更になって一般的な形態である厚生年金適用になるということを考えた場合にも、技術的には非常にむずかしい問題が出てくるわけでございます。移行前の期間にかかわる共済年金の支払い義務、これをどこが一体承継するんだといったような、大変むずかしい問題がございます。したがいまして、私どもとしては、当面経営形態のいかんにかかわらず、共済年金制度を続けていくことが現実的ではないかというふうに考えております。  それから第三番目の、国鉄負担との関係の問題でございますが、これは、大蔵省が非常に粗い試算と申しますか、そういうことで国共審に提出された資料によります予想財源率を見ますと、専売の場合には、国共済とか電電共済とはおおむね均衡がとれたものになっておりますけれども国鉄との比較におきましては、国鉄については財政調整を前提として策定されましたいわば賦課方式的な計算、それから私どもの方は所定の保険数理に基づいて計算をするという計算の違いもございますので、比較はなかなかむずかしゅうございますけれども、どうも私どもの方が高くなっているというのが現状でございます。この点につきましては、協力側の財源率が、受益者という言葉はどうかと思いますけれども、を結果的に上回るというのは、どうも私どもとしては均衡上不合理な点がございまして、組合員の理解を得ることは非常にむずかしいのじゃないか、率直に申し上げましてそういう感じを持っております。したがいまして、財政調整委員会においていろいろ議論されることになろうかと思いますけれども、いま私が申し上げたような点を踏まえて、十分今後議論を尽くしていただきたいというふうに考えております。
  93. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 ちょっと中原さんが答弁される前に、保田さん、財政調整委員会でこれはやはり助けてやる、そういう言葉はいいか悪いかわからぬけれども、とにかく拠出をして急を救おう、そういうところが逆に負担が高くなるというようなことは、やはりこれはおかしい姿だろうと思うので、その辺のところは財政調整委員会にそういう事態のないように、これはやられる気持ちはあるのでしょうね。その点だけ、簡潔に。
  94. 保田博

    保田政府委員 先ほど来御議論の素材となっておりますのは、本法案を御提案申し上げる作業の段階で一応のめどとしてわれわれが試算したものでございまして、具体的な援助の仕方につきましては、この御提案しました法案の中に書いてございます長期給付財政調整事業運営委員会において御議論をいただくことになっておりまして、先ほどの数字で決めたということではもちろんございません。
  95. 中原道朗

    ○中原説明員 私ども共済組合につきまして御説明いたします。  昭和五十年におきましては、収入が二千二百三十七億、支出千百九十二億、収支差額一千四十五億、年度末の積立金が一兆七百七十一億、成熟度二二%という形で、現在は一応順調な共済組合であろうかと存じております。  なお、将来の見通しにつきましては、非常に多くの仮定が必要にはなりますけれども、現在の財源率というものを全く動かさずにこのまま推移する、かつまた要員状況も変わらないというようなことで計算をいたしますと、十年後、昭和六十七年までは単年度黒字である、それから単年度赤字になる、そして積立金の取り崩しというものは七十八年度に取り崩されてしまうという計算になります。なお、この財源率につきまして、現在の制度によりまして五年ごとに一定率計算をし直して引き上げていくというふうに計算をいたしますと、二十年後の昭和七十七年度までは単年度収支が黒字で続く、そして積立金を取り崩すのは三十年後の昭和八十七年度になるというような試算をしてございます。  なお、経営形態との絡みにつきましては、いま御返事がございましたように、変更後どのような形でお決めいただくかということによるわけではございますけれども、いまお聞きしておるところによりますと、当面統合された共済組合法の適用になるというふうに聞いておりますので、それもそのようになっていくのかなと思っておるところでございますが、私どもとしては、経営形態の推移いかんということによりまして、筋としては厚生年金の方向へ行くのが筋だろうというふうには思っておりますが、これは決め方いかんの問題だというふうに思っております。ただし、経営形態変更後生じてくるその他の条件というものがいろいろあるわけでございますので、それと共済年金との調和ということについては、種々これから先例検討いただかなければいけない問題は出てくるというふうに考えております。  以上でございます。
  96. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 それぞれ公企体共済関係の三公社の意見を聞いたわけでありますが、いま国鉄共済がそういうピンチに陥っている、これを何とかしなければなるまいということで、この法案では、国公を含めてそれぞれの二公社の方から拠出をして六百億を埋めていこう、そしてその財源として被保険者である在籍者の掛金率を〇・六%上げて負担していこう、こういうことになっているわけであります。  大蔵大臣もお見えになったのですが、そこでこれを掛金分にストレートにはね返らして、それを国鉄に差し上げるのだ、拠出するのだ、こういうことになりますと、いままで長い歴史を持った組合ごとにそういうことをやる前に、国として当然やるべきことがあったのではないか。しかも、国が本来責任を持つ恩給部分からの受け入れの問題、それを公経済の主体としてやってやる。しかもその公経済の主体である国鉄は、いまやまさにもう坂道を転がり落ちるような状況で現職者がどんどん減ってしまって、輸送の面で占める独占的地位なんというものは、もう数十年前のことであって、いまではどうにもならない、競争社会で蚕食されているという状況。しかも、そこへもってきて特定人件費というようなことで、あの終戦直後のどさくさの中で政府の国策として押しつけられたものがそのまま尾を引いて今日の共済組合財政ピンチ、そのバックにある国鉄財政のピンチも招いておる。  小坂運輸大臣に予算委員会で質問したのですが、少なくとも国鉄赤字のうち三分の一はそういうもので占められておりますと、運輸大臣も認められたわけです。公経済の主体ということで、ほかの二公社の独占的な地位とは全くさまを異にしている。そういうものに対して何らかの手を――そういうことをやるような財政状況ではない。それは確かに財政が今日苦しいこともわかっておるけれども、本来国がやるべきそういうものを企業体に押しつけて、企業の経営を悪化させた。そういうものについてはもう少し国の何らかの特別な施策というものがあってしかるべきだったろうと私は思うのですが、その辺のところ、いかがですか。大蔵大臣、どうぞ。
  97. 保田博

    保田政府委員 先ほどお答えしたことに尽きると思うのでございますが、なおつけ加えますと、公経済の主体として国鉄が、国鉄共済組合に対していろいろ御負担されている金額が非常に多いということは、国鉄の経営収支にあらわれてくるわけでございまして、その国鉄の経営の収支に対しましては、国として非常に乏しい中ではございますけれども、経営全体を考えまして、金額としては七千億程度だったと思いますけれども、何とかやりくりをさせていただいておる、こういうことで何とか御容赦をいただきたいと思います。
  98. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 これは少し政府責任がなさ過ぎたと思うのです。日本の場合は高齢化社会が急ピッチで、ヨーロッパ諸国では百年以上かかって到来した一二・四%とかそれ以上の老齢人口というものが、もうここ三、四十年の間に来てしまった。そういうものに対して備えるところ、対応の仕方というのがすべて非常におくれおくれ、後手後手に回っていることからこういうことになったとは思うけれども、まあ国もなかなか大変だということはわれわれもわからぬではないが、そうかといって、いままでの長い歴史を持った中で、国鉄がパンクしたからといって、それを今度は仲間で見てやれ。これはなるほど共済組合の助け合いという原点、ごく常識的な立場で言えばそういうことかもしれぬけれども国家公務員はいま人勧が一年凍結されて、ことしの人勧も、これは先ほど大蔵大臣もちょっと簑輪委員質問に答えておられました。二年続きの凍結はしない、五十八年度の人勧は尊重する、これは与野党の申し合わせになっているわけだけれども、これすらわからぬ。どうなるんだろう。まだ閣議決定も何もしてくれない。いまその点でも非常に不安を持っている。そういうところから〇・六%、金額にすれば大体千二、三百円のところでしょう、そういうものを拠出するんだということについて、やはり非常に拒否反応がある。国鉄の事情は何とかしなければならぬ、しかしながら、そういう分をその人勧凍結をしている公務員から出させるのはひどいじゃないか、こういう気持ちだってあるわけだ。したがって、そういうものに対しては、やはり国として果たすべき責任、そして労働者の権利というものはきちんと守ってあげる、これが憲法に忠実な政府の道であろう、こういうようなこともあるわけですね。そういう点で、この人勧の問題も解決することによって、そこまで政府も苦しい中でやったんだから、そういうお互いの共済組合の本当に原点みたいなところで皆さんの助け合いの精神をひとつやって、痛みを分かち合ってくれということだって言えるだろうと思うのですね。その辺のところ、いかがですか、大臣
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、日本国有鉄道というものの今日まで果たしてきた役割り、なかんずく広瀬さんやわれわれの年配の者が雇用の場として多数そこに吸収されたという事実、これらは十分理解するものであります。  今日、共済赤字というものに対して、国鉄当局がみずからの収支に影響を及ぼしながら支出をしていらっしゃる。それが全体の国鉄の収支に影響を与えておるだけに、政府としてもそれらに対して、共済というものを特定しないで、国鉄全体に対する財政支出も今日までやってきた。だから、おっしゃる心情というのは私にもよく理解できる問題でございますが、今日の共済制度そのものに対処する方策として、いろいろな角度から審議会等議論され今日に至っだということは、やはり基本的に労働連帯というものが、御答申までいただける背景にあったのではないかという気持ちを強くいたしておるわけであります。だから、その心情の問題については将来の問題として、われわれがどのような形で持ち続けていくべきものかということについては、私どもが勉強しなければいかぬ問題も数あるというふうに考えております。
  100. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 必ずしもストレートな、率直な答弁とは受け取れないのですけれども、そういう問題意識は持って対処していきたいというように理解をいたします。  そこで、国鉄救済するために〇・六%掛金率を上げる。そして総体的には来年の十月までには三・三五%一気に上がるわけですね。この前国鉄がやったときにも三%ぽんと上げた。これはやっぱり組合員にとっては大変なショックだったんですね。それを今度は三・三五%、そのうちにやっぱり〇・六%が含まれているんだ、こういうようなことですから、これは出す側からすれば財布は一つだから、どれを出したってということになるかもしれぬけれども、それぞれまだ若干、積立金の面では余裕がある二分社である。そういうようなことですから、直接組合員が――特に国共なんかの場合には、人事院勧告もどうなるやらわからぬ。去年はストップされた。曲がりなりにも去年、公企体は仲裁裁定が一応実行された。国鉄の場合は、期末手当では大分ダウンさせられたけれども。そういう気持ちもあるわけですから、その積立金というものの利息ぐらいのところでそれを賄ってあげる。そうすれば、〇・六%引くということになれば、かつて国鉄がぽんと三%掛金率を上げたけれども、それ以上の掛金率ということにならないで、二・七五%ぐらいでおさまる、こういうようなことにだってなるわけだ。そんな手だてだってあるじゃないか。そのあたり、どうですか。
  101. 保田博

    保田政府委員 先生の御提案、ちょっとストレートに、正確には理解できない面もあったのでございますけれども、いずれにいたしましても、国鉄共済組合に対する財政調整事業の中身は、今後運営委員会において議論をされるということでございます。ただ、いずれにいたしましても各共済組合、助ける組合と助けられる組合がお互いに共済の原点に返ってその姿があらわれるのも、非常に美しいことではないかと思うのでございます。  それから、あるいは積立金を取り崩して国鉄共済への援助に充ててはどうかという御提案かとも思うわけですが、そういうことをやりますと、いずれにせよ積立金に穴があくわけでございまして、それらの共済組合の将来の年金財政の基礎を危うくするものでありますので、われわれとしては基本的にはどうも賛成いたしかねるというふうに考えます。
  102. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 時間もありませんので、これ以上詰めませんけれども積立金にまだ余裕のある段階が二公社の場合でありますから、その積立金の利息で拠出金の額ぐらいは当分賄っておく、組合員負担にそれを持っていく。まあ二・七五%はみずからのものに返っていくわけですから、その分は納得が得られるとしても、〇・六は国鉄救済するためだけなんですということでは、なかなかいろいろな感情的な面もあるだろう、そういう問題意識だけひとつ頭に入れておいてもらいたいということ。  それから、平準保険科の修正率ですね。これを〇・八から〇・九に引き上げるというようなこと、これもまた何かどさくさに紛れてちょっとさじかげんをしてごまかしてしまうということで、この掛金率の引き上げに結びついていると思うのですが、その辺のところも考慮したらどうですか、こういうことを要求します。
  103. 保田博

    保田政府委員 最初の、利子を使ったらどうかとおっしゃった御提案でございますが、お気持ちとしては私としてもよくわかるのです。しかし、その利子を使うとおっしゃいますが、使わなければその利子は各共済積立金の増につながるものでございますから、基本的には同じことなのではないかと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、二番目の御指摘の修正率の問題でございますが、先ほど来各共済組合年金財政の将来について当局の方から御説明がございましたが、各共済年金とも遠からず単年度収支は赤字になり、やがては積立金を取り崩して修正積立方式へ移行せざるを得ない状況にあるわけでございます。その時期はどういう時期かと申しますと、生産年齢人口に対しましてOBが非常に大きくなってくる時代でもあるわけでございまして、そういう二つ意味で、後代の世代は非常に負担が大きくなってくるということでございます。したがいまして、後世代との負担の公平という観点から、われわれとしてはできるだけ修正率は高い方がいい、引かれる率は非常に少ない方がいい、そういうふうに基本的に考えておるわけでございます。
  104. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 委員長、ちょっと戸田先生の御了解をいただいたものですから、もう一問だけ大蔵大臣に……。  さっきの年金改革の閣僚懇談会でスケジュールを発表した、そのスケジュールの中でどういう段取りになっておるか。五十九年から六十一年の間に厚年と国民年金船員保険関係調整を図っていくという中で、そのときの被保険者の負担の問題として、年金税の導入ということが考えられるということを厚生省の方から言われたのですけれども大蔵省としては、やはり税ということになれば大蔵省の所管だと思うのですが、大蔵大臣の頭の中にそういう構想があるのですか。相談を受けてますか。
  105. 山口剛彦

    ○山口説明員 ちょっと一言。  先ほどお答えをさせていただきましたけれども、私どもが検討している中に、年金税を取って基礎的な年金部分を賄っていこうという構想があるということは、ちょっと私も申し上げたつもりはございません。先ほど申し上げましたのは、基礎的な年金制度をつくるという構想はいろんな審議会等でもございます。その一つとして、その部分は税金でやったらどうかという御提案がある一とは事実ですけれども厚生年金保険部会の御士見では、社会保険方式を維持すべきだという御上見をいただいておりますので、私どもといたしましては、基礎的な年金というものをつくるにしても、その財源については社会保険方式を維持するという審議会の御意見は尊重して、具体的な構想についての成案を得ざるを得ないということで、私どもは税金でということを毛頭考えておりませんので、その点は御了解いただきたいと思います。
  106. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 大蔵大臣も同様ですか。
  107. 竹下登

    竹下国務大臣 恐らく、きわめて常識的に、年金の基礎部分はいわば税にして、そうでない部分はそれぞれの保険制度のもとに負担したらどうかというきわめて粗っぽい議論がよく出るということは、私も常識の範囲内においては聞いておりますが、いまの審議会等からも、そのようなことは言われていないようでございますし、また今日、私ども相談を受けたこともございません。
  108. 広瀬秀吉

    ○広瀬委員 まだ大変たくさん残っているのですが、時間が大分超過しましたので、終わります。
  109. 森美秀

    森委員長 戸田菊雄君。
  110. 戸田菊雄

    ○戸田委員 最初に、厚生大臣はおりませんから審議官に伺います。  過日、五十八年五月十日でありますが、私の本会議での質問に対して、「政府としては、年金制度一元化など、制度体系のあり方を含めまして、昭和五十八年度末までに、公的年金制度改革の具体的内容、手順等につきまして成案を得る」ようにしております、こういう答弁があったわけであります。具体的にその時期は一体いつごろになるのか。おおむね予想としては九月、十月あたりに大臣から諮問案を作成して社会保障制度審議会に諮問をする、こういう予測だというのですが、そういった時期を明確にしていただきたい。  もう一つは、社会保険審議厚生年金保険部会が七月十五日に「厚生年金保険制度改正に関する意見」、これをまとめまして、厚生大臣に提出をいたしましたね。この内容、要点を説明していただけませんでしょうか。
  111. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先生の御質問二つあろうと思います。  一つは、厚生省が現在改正案をまとめるべく準備をいたしておりますのが、厚生年金保険、国民年金、それから船員保険、厚生省所管の三つの制度につきまして、五十九年に改正法案を提出すべく、現在準備を進めておるわけでございます。その提案の前には、関係審議会に諮問をしなければいけないわけでございます。当面は社会保険審議会と国民年金審議会でございますけれども、この両審議会に諮問をする時期はいつかというのが一つであろうかと思います。これにつきましては、現在鋭意改正案につきまして作業を進めておるところでございますので、成案を得次第、速やかに関係審議会に諮問をいたしたいということでございます。  もう一つは、これが先生の本論がと思いますけれども公的年金制度全体の再編統合の具体的内容、手順等につきましては、これは五十八年度末までに成案を得るというのが閣議決定でございます。昨年の九月及びことしの五月の行革大綱におきましても述べられておるところでございますけれども、その公的年金制度全体の再編統合の具体的内容、手順等についての成案は五十八年度末までにつくるということでございますので、これも厚生省の成案を得ました後で、全体の、いま申しました成案というものがつくられる、閣議決定が行われるという段取りになろうかと思います。
  112. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、まだ昼食もとらずに御奮闘なされているようでございますから、最初にひとつ食事をしていただいても結構です。人権尊重のたてまえ上からゆゆしい問題だろうと思いますので、どうぞ。  いまの回答の中で、手順等についてまだ決まっていない、こう言うのですが、これはもうすでに決まっているのですね。これは公的年金制度に関する関係閣僚懇談会というものが設置をされまして、それで年金大臣が厚生大臣、こういうことで設置をされた際に、いわゆる当時の前文を読み上げますと「昭和五十八年度末までに、公的年金制度改革の具体的内容、手順等について成案を得るため、下記に沿って今後の検討を進めるものとする。」作業手順は決まっている。一つは「昭和五十八年度において次の措置を講ずる。」「国家公務員公共企業体職員共済組合制度統合を行うとともに、国鉄共済組合に対する財政上の対策を図る。」「地方公務員共済年金制度内の財政単位の一元化を図る。」これはすでに前通常国会で決定済みですね。それから「高齢化社会の到来に備え、長期的に安定した制度の確立を図るため、公的年金制度一元化展望しつつ、制度全般の見直しを行い、昭和五十九年から六十一年にかけて次の措置を講ずる。」「国民年金厚生年金保険及び船員保険関係整理を図る。」「共済年金について、(1)の改革の趣旨に沿って、上記制度との関係整理を図る。」「以上の措置を踏まえ、給付面の統一化に合わせて負担面制度調整を進める。これらの進展に対応して年金現業業務の一元比等の整備を推進するものとし、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了」するんだ、こういう一定の手順は閣僚懇談会でちゃんと決まっておるのです。それに従って、さしあたって現下の統合案というものがまず行われる。地方公務員制度財政一元化の問題について連合会制度がつくられて、これも決定をされる。次にやってくるものは国民年金といわゆる厚生年金、この一番大物と言われるものをどういうことでこれから整理統合をするか、こういうことになっていくのじゃないでしょうか。そして、七十年ですから十二年間、そういう中で統合法案というものは五年間財政調整をやる、こういうことでしょう。
  113. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先生の御指摘の、本年四月一日の公的年金制度関係閣僚懇談会の決定は、昨年の九月二十四日の閣議決定において決められておりますところの「五十八年度末までに改革の具体的内容、手順等について成案を得る」というその成案そのものではないのでございます。その成案を得るためのおおよその方向と段取りの目安を定めるということで決められたものが四月一日の閣僚懇の決定であり、それを受けての五月二十四日の行革大綱でございます。繰り返すようでございますけれども、五十八年度末までに得る成案、その得るための今後の検討の方向といいますか、おおよその方向、それから段取りの目安を定めるために大枠を一応決めたということでございますので、本体の方の五十八年度末までの成案というのはこれからでございます。
  114. 戸田菊雄

    ○戸田委員 七十年までにはいずれにしても統合一元化を図ります、こういうことですね。手順としては三段階方式でやっていきます、こういうことでしょう。その中身はこれからいろいろと検討し作成をいたしますと。そこで問題は、いま私が前段で質問いたしました「厚生年金保険制度改正に関する意見」というものですね。有識者に対する調査もやりましたでしょう。同時に、年金懇談会の基本問題研究会に一応の諮問というか、御見解を伺いますということでやったものの意見が出てきたわけでしょう。その意見の内容の要点について先ほど若干説明をいただいたけれども、時間が余りありませんから、この中を一つ一つ詳しくは触れるわけにはまいりませんけれども、要は今後の全年金統合展望、いわゆる全像がどういう形になっていくのかということを知りたいわけです。  それで、社保審のいわゆる「厚生年金保険制度改正に関する意見」というものが出てまいりまして、その中身を見ますると、基本的考え方の課題、もう一つは具体的改正事項、この大綱二項から意見書のまとまったものが出てまいりましたね。その基本的考え方の課題としては、現に支給されている年金老後生活にかなりの役割りを果たす、給付費の増大で将来の高負担は否定できない、整合性、長期的に安定した制度運営確保のため、個々の制度の枠組みにとらわれないで見直しをいたしましょう。そして課題として、一つ制度の分立と格差を解消するためには社会保険方式の維持だ。さっき大蔵省の次長も同僚委員の話にちょっと回答されておりました。それから、共通する給付の導入、各制度からの円滑な移行により制度の再編成を進める、婦人に独自の年金権確立の方向で年金給付水準を見直します、年金水準は現行とのバランス、負担急増を避けるために見直しをいたします。そして具体的改正事項として十八項目羅列をして、一定の指示を求めているのですね。  その一つは何かというと、給付水準であります。そして報酬比例部分、重複給付調整問題、支給開始年齢、四十歳以後十五年間の受給資格期間、第四種被保険者制度については通算年金が定着しておるので廃止。六番目として第三種被保険者の廃止、在職老齢年金あるいは脱退手当金、事後重症、遺族年金、スライド、標準報酬、保険料、国庫負担適用範囲、年金業務、年金基金、積立金等々の内容について、今後十分検討しまして青写真を出しましょう、こういうことだろうと思うのですね。この内容はおわかりでしょう。
  115. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先ほどの先生の、前回の御質問に関連しましてちょっと補足説明をさせていただきますと、やはりこれからの段取りと申しますのは四月一日の閣僚懇の決定でございます。それにのっとって第二段階として、五十九年から六十一年にかけて次の措置を講ずるということが決められておりまして、そのうちの第一段階として厚年、国年、船保の関係整理を行うということでございますので、その点は先生の御指摘のとおりでございます。  それから、先生がお述べになりました去る七月十五日の社会保険審議厚生年金保険部会の意見書、これはそのとおりでございまして、一昨年の十一月から検討を重ねまして、一年八カ月ほど検討を重ねた結果まとまったものでございます。
  116. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それで内容をいまいろいろ検討しますと、審議官の方で発行された「二十一世紀の年金考える」ですね。これは「年金制度を取り巻く社会経済状況変化」それから「年金制度の現状と課題」そして「年金制度改革の基本的な考え方」この三大項でそれぞれ情勢を分析をし、一定の改革というものをこっちもやっておられる。その三番目のいわゆる「年金制度改革の基本的な考え方」ですが、これをずっと見てまいりますると、いまの。この意見書の中身とやや一致しているのですね。  たとえば制度体系の一覧を見ますと、「現行の公的年金制度を次のように再編成する。(ア)公的年金制度に共通する基礎的年金を導入し、これをすべての国民に対して保障する体制を確立する。①現行の国民年金給付及び厚生年金保険の定額部分を基礎的年金として再構成する。」恐らくこれは私の理解では、支給年齢には触れていないのですね。しかし、この厚生年金保険の定額部分を基礎としていわゆる基礎的年金を再構成するということになると、国民年金の年齢状況に応じていくんじゃないかという気がする。いわゆる六十五歳、年齢は書かれておりませんが。それから「この基礎的年金は社会保険方式による給付とする。」さっきの社会保険を維持すると、こういうことがちゃんとあるんですね。「被用者については、この基礎的年金のうえに、従来同様、所得に比例した給付を行う。」大体おやりくださった検討項目の中身というものは、この「二十一世紀の年金考える」、この厚生省試案として出して各般の試算をやっているものが大体追認をされたというかっこうじゃないか。その辺は理解どうでしょうか。
  117. 古賀章介

    ○古賀政府委員 この「二十一世紀の年金考える」という小冊子は、先生御承知のように、昨年の暮れに実施をいたしましたいわゆる有識者調査の際に参考資料としてっけたものでございます。その資料の構成は先生先ほど御指摘のとおりでございますけれども、この参考案というのは、厚生省案と実はよく誤解されるのでございますけれども、実は厚生省案ではないのでございます。アンケートに答えていただくためには、何か具体的なイメージといいますか、具体的な案というものがないとなかなか答えにくかろう。ことに試算A、試算Bというようなものも示してございますけれども、これは従来ややもすれば給付水準と負担というものがそれぞればらばらに議論されておる。それを結びつけまして、一つのモデルとしてお示しをしたというものでございますので、あくまでも有識者調査に答えていただく際の参考として使っていただく、こういう性質のものでございます。  それで、片や社保審の厚年部会は五十六年の十一月から審議をずっと重ねてきたわけでございますが、その途中で昨年の暮れに有識者調査を実施したわけであります。この小冊子もその厚年部会に審議材料の一つとして提出をいたしまして、委員の先生方の判断の参考にしていただいたことは事実でございますけれども、この意見書と申しますのは、あくまでも厚年部会の先生方が独自で御判断をいただいたものである。しかも労・使・公益全会一致の意見書でございますので、私どもはこの「二十一世紀の年金考える」の追認というようなものではないというふうに理解をいたしております。あくまでも厚年部会独自のお立場で御判断をされ、取りまとめられたものが去る七月の意見書であるというふうに考えております。
  118. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私も、そういった優秀な学者やあるいは有識者が集まって意見書を作成したのですし、それぞれベテランの皆さんですから、すべてとは言いません。中身においても、従前よりは若干改善された部分もあるなというふうに見ているものもあるのですよ。だから、そういう意味合いにおいてはありますが、しかし要は、やっぱりこれと相似しているのですね。だからそういう点では、今後恐らく九月か十月でしょうが諮問案を作成する。これは厚生省で責任を持ってやるわけですからね。そういうことになれば、当然こういうものがおおむね集大成として具体化されていくんじゃないだろうか、こう思うわけです。  その骨組みは、一つ負担給付の問題、それから婦人年金を今度新しく制度化しようというのでしょう。それに全的統一、一元化、こういうことを大前提に置いて、それらの問題が中心で検討される、こういうことだと思うのですが、具体的にいま指摘した十八項目の中で三点ほど伺っておきたいのです。  それは、一つはさっき私が指摘をしましたように、四十四ページ、四十五ページに参考案としてですが、いわば試算A、試算Bという案ができておるのですね。こっちの意見書の内容を検討してみますと、これはどうも試算Bの方に近いんじゃないか、こう見ているのですが、その見解はどうでしょうか。  それからもう一つは、さっき指摘をしました四十二ページにあるいわゆる制度体系の中で、いわば支給年齢に触れておらないというのは、一体どういうふうに置きかえていくのか。  それからもう一点は、積立金の自主運用等について、これは臨調等でも効用、活用のいいようにと、効率化させろということになっているのですね。  この三項を見ますると、いま国公共済公企体等からいっているものは、国公共済は大体三〇%ですね。これは資金運用部に納めるわけです。それから公企体の場合には政府保証債、こういう形で大体やられておると思うのであります。そういうものを見ますと、この活用の還元方式その他も全部資料としてありますが、時間がありませんから一々指摘をしません。こういう問題についてもう少し自主運用を図るべきではないだろうかと考えますが、これはひとつ次長の方とそれから審議官の方と、両者の御回答をお願いしたいと思います。
  119. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先ほどお答えと重複するかと思いますけれども、意見書の内容は試算Bを追認するようなものではないかという御指摘でございますが、この試算A、試算Bと申しますのはあくまでもアンケート調査の際に参考として考えていただく、そういう具体的なイメージを一応お示しをしたというものでございますので、これはもちろん厚生省案でないことは先ほど申し述べたとおりでございますけれども、この試算Bと今度の意見書とは必ずしもイコールのものではない。先ほど申しましたように、この小冊子は判断材料の一つとして御提出をいたしましたけれども、そのものを厚年部会が採用したものではないことは申し上げられようと思います。  それから第二点の支給開始年齢でございますけれども、意見書では、先生御案内のように「老齢年金の支給開始年齢の問題は、今後の高齢化社会を展望するとき、避けて通れない問題であるが、定年の動向、高齢者の雇用実態等に着目すると、現時点における引上げは時期尚早であるとの意見もあることから、当部会において引き続き検討する」ということでございますので、これは「引き続き検討」というのがこの意見書の結論でございます。私どもは、この意見書全体につきまして十分これを尊重して原案をつくってまいるという考えでございます。  それから第三点の積立金の管理運用問題でございますけれども、この問題は従来から関係審議会、労使双方からも強く要望されておる問題でございます。五十九年改正の一環としてもその検討を避けて通れない課題であると考えておりますが、私どもとしましては、一歩でも前進するという考え方に立ちまして、大蔵当局と今後とも協議をいたしまして、できるだけその有利運用の方向に参りますように、最善の努力をいたしたいと考えております。
  120. 吉居時哉

    吉居政府委員 ただいま先生から厚生年金積立金について、もう少し自主運用を考えたらどうかというお話があったわけでございます。  いまさら申し上げるまでもございませんが、厚生年金資金やあるいは郵便貯金など、国の制度や信用を通じまして集められました各種の資金というのは、資金運用部資金として統合され、そして一元的に管理運用されているわけでございまして、このように統合運用することによりまして、第一には政策的重要性に応じた、バランスのとれた資金配分ができる。また第二には、これによりまして財政金融政策との整合性の確保もできる。また、効率的あるいは機動的な資金運用が可能になるということでございます。したがいまして、こういう統合運用の原則というものは、年金資金や郵便貯金などの貴重な公的資金の運用のための最も合理的な仕組みではないかとわれわれ考えているところでございます。  さらに、いまも御指摘ありましたように、この問題につきましては臨調の最終答申におきまして「統合運用の現状は維持されるべきである。」とされておりまして、この臨調の答申につきましては、政府は新行革大綱において最大限に尊重するということを明らかにしているわけであります。  したがいまして、私どもとしましては、年金資金等について自主運用を認めるという御指摘に対しましては、以上申し上げましたような理由から、やはり資金運用部資金による現行の一元的な管理運用の仕組みを堅持するのが最も合理的だという考え方を持っておりまして、今後ともそういうふうにしていきたい、こう考えておるところでございます。  また、いま厚生省の方からもお話がありました、有利に運用するという点についてでありますが、いまも申しあげましたように、年金資金等国の制度、信用を通じて集められる資金は公共的な資金でございますので、その運用に当たりましては公共的な運用を行うとともに、他方ではやはり預託者の利益を十分考慮して、できるだけ有利運用にも配意してきたつもりでありますし、また今後ともそういう努力をしていきたい、かように思っているわけです。臨調答申におきましても、この「資金の運用においては公共性の観点も重要である」とした上で、「これまで以上に有利な運用にも配意する。」こう述べているところでございます。したがいまして、今後とも臨調答申を踏まえまして、公共性とのバランスをとりながらできるだけ有利運用に努めてまいりたい、かように考えております。
  121. 戸田菊雄

    ○戸田委員 長岡総裁、大分お待たせして申しわけなかったのですが、最初に、今回の共済統合問題についての基本的な考え方をお伺いします。  それから、専売共済組合はその基本的な考え方に立って、国共審等に対してどのような主張を今日までやってきたのか。  それからもう一つは、今回提出された法案についてどのようにお考えか。まず三点についてお伺いします。
  122. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  第一点は、今回の統合問題についての私どもの基本的な考え方でございますが、公的年金制度の再編統合の問題は、今後の高齢化社会の進行から見て必然的な要請であり、その一環としてきわめて性格が似ております公企体共済国家公務員共済との統合という問題は、現実的な対処策としてやむを得ない措置であろうと考えております。この考え方につきましては、広く私どもの公社内の合意が形成されているものと理解いたしております。  第二点の、今回の統合問題について国共審等の場で一体どのような主張をしてきたかという点でございますが、私ども専売共済も、各共済の中では国鉄に次いで成熟度が高いわけでございまして、しかも最近の組合員の減少傾向等から見ますと、今後も成熟度の上昇は避けられない状態にございます。このような状況について公的年金制度の保険集団のあるべき姿から考えまして、専売共済のような小規模の保険単位では、将来とも単独で長期安定的に維持していくのは大変むずかしいことであるというふうに認識いたしております。したがいまして、今回の統合問題につきましては、私どもは当初から関係各方面に対しまして、保険単位は国家公務員共済組合連合会に完全に統合一本化すべきであるという主張を強く繰り返してきております。  その他につきましては幾つかございますが、公的年金制度の将来像について具体的な姿を示してほしい、それから制度統合に当たって適切な経過措置をとってほしい、財政調整による負担増につきましては各保険者の実情に応じて均衡のとれたものにしてほしいというようなことを主張してまいっております。  ところで、そのような主張を続けた結果、今回の法案に至るわけでありますが、この法案についてどのような考え方を持っておるかという点につきましては、お答えが重複する点もございますが、内容の異なる制度統合に当たりましてある程度の条件変更が生ずることはやむを得ないところでございますが、今回の統合問題について、保険単位は国共済連合会に統合一本化すべきであるといったようなことについて組合員からの強い要望もございまして、そういう点についてこの法案では、いろいろと調整上やむを得ない点はございますけれども、当分の間の措置とはいえ、公企体の各共済が単独で運営されるということにされております。こういったような点につきましては、今後とも十分に議論が尽くされて、できるだけ早い機会に完全な統合一本化が図られることを希望いたしております。その他経過措置につきましても、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますけれども、十分に御考慮いただきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  123. 戸田菊雄

    ○戸田委員 続いて、あと二点ほどお伺いしますが、財政調整事業による負担増についてどう考えておりますか。  それからもう一つは、負担増の内容について各保険者間の均衡を欠いている、こういう主張があるように聞いているのですが、この点についてはどうでしょう。
  124. 長岡實

    ○長岡説明員 財政調整事業による負担増についてでありますが、国鉄共済年金財政の窮状をそのまま放置することは、公的年金制度に対する信頼を失墜させることにもなりますので、私どもといたしましても、国鉄共済に対して財政協力の必要性があることについては十分認識をいたしております。その対策として、今回の法案財政調整事業を実施することとされておりまして、これの運営に関する事項及び財政協力の負担額等の決定については、財政調整委員会で行われるというふうになっております。  この事業が実施されますと、協力する側の保険者は、従来の負担水準に加えて新たな負担増が求められることになりますので、負担額の決定に当たりましては、各保険者間の実情を十分勘案した上で、均衡のとれたものとなるように、この委員会で慎重に検討していただくことを要望する次第でございます。現在のところ、大蔵省のごく粗い試算ということで国共審に提出されました資料による予想財源率を見ますと、専売共済の場合、国共済とか電電共済とはおおむねバランスがとれていると考えておりますけれども国鉄共済と比較した場合には、その負担が逆転しているというふうに受けとめざるを得ない状態でございまして、この点につきましては、組合員の理解を得るためにも、今後財政調整委員会におきまして、この逆転現象の解消がどの程度できますかわかりませんけれども、十分に議論を尽くしていただきたいという気持ちでございます。
  125. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それで、いまちょっと総裁の方からもあったのですが、大臣受益者の方が低くなって、協力する方がこれが逆転をして悪い状況になっていく、こういうことはやはり非常にうまくない現象ではないかと思うのですが、そういった点、どうお考えでしょう。
  126. 保田博

    保田政府委員 恐らく専売公社共済組合の五十九年十月からの財源率と国鉄の同じ時期の財源率の比較の問題であろうと思いますが、この数字は、先ほど来御説明いたしておりますように、今回御提案を申し上げております統合法案を作成するに当たりまして、皆様の御検討の素材として、大蔵省の方でごく粗い試算をいたしたものでございます。この財政調整事業を具体的にどう行うかということにつきましては、この法案が成立いたしました後につくられます運営委員会において協議をされるわけでございまして、その場で、各共済組合の代表者も参加されるわけでございますから、十分な御協議にまちたいと思います。
  127. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ありがとうございました。結構でございます。  それでは本題に戻りまして、審議官、五十七年の七月十四日、共済年金制度基本問題研究会、ここでいろいろ検討された内容がございますね。大綱四項目、一つは公務員年金制度の沿革、第二は官民格差論、第三は給付水準の改定問題、第四に国鉄年金の緊急対策、この中で一番重視されているのはどの項目でしょう。
  128. 保田博

    保田政府委員 御指摘の四項目のいずれもが大事なものでございますから、そのうちどれに最重点があるかという順位はなかなかつけがたいわけでございますが、基本的には、保険料負担というものと給付の水準が長期的なレンジに立ちました上で安定的に保てるように考えなければならない、そういうことであろうかと思います。
  129. 戸田菊雄

    ○戸田委員 全年金統一の一連をずっと経過的に考えてみますと、今回、四共済統合で、結局は公企体の進んだ分を国公共済並みにしてしまう。今後国民年金なり厚生年金と全統合をやっていく場合には、その過程でもって、地方公務員共済とかいろいろ入ってきます。入ってきますが、結果的。にはやはり国民年金主体でそこへ寄せていくのじゃないですか。これが年金統一の全像です。そうじゃないのですか。大臣、どうでしょう。(保田政府委員「ちょっと最後のお言葉が……」と呼ぶ)  たとえば今度の、国公共済公企体の三公社が合併するわけでしょう、いまやっているやつ。これをやりますと、私調べてみましたら、十四項目ぐらいいろいろと、ダウンした部面、廃止になった部面等々がございます。たとえば年金計算方式についても、従前は公企体はやめたときの直近号俸、これが国公共済の場合は一年計算ですから、それだけダウンしましょう。それから船員関係ですね。こういうものについて一つの加算年的なものがあった。そういうものについてもこれは没になってきますね、新移行の体制でも経過措置はないわけですから。そうすると三公社の中では、専売でも、いま総裁が答えられたように、逆転現象を生じたりいろいろあるわけです。結局、給付水準が下がって掛金が上がって、余分なものは全部一つ一つ整理をされていく、こういう状況ですから。そういうものを統一をしておいて、今度は全年金統一ですから、地公共済その他いろいろ入ってきます。そうすると、国民年金は実際はうんと低いでしょう、給付においても負担においてもそうですけれども、そういうところに全部合わせていって、年金統合というものをやっていこうという構想ではないのでしょうか。これは厚生省、大蔵省大臣、どうでしょう。
  130. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先ほど来たびたび引用されております七月の厚年部会の意見書でございますけれども、その中にも、これは先生も御指摘になりましたが、「各制度に共通する給付を導入するといった考えの下に、全体として整合性のとれた制度とすること。」という指摘がございます。やはりこれは基礎的な年金を導入するということを意味するものと私どもは理解しております。したがいまして、そういう考え方のもとに、厚生年金国民年金船員保険の改正作業を現在やっておるところでございます。四月一日の閣僚懇の決定にもございますように、昭和七十年を目途に公的年金制度一元化を図るということでございますが、それまでにはいろいろな段階、過程があろうかと思います。当面は私どもは、この厚年部会の意見書の趣旨を尊重いたしまして、基礎的な年金を導入するという考え方のもとに、厚生省所管の三つの制度の改正作業を行っておるということでございます。
  131. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、どうですか。
  132. 竹下登

    竹下国務大臣 戸田さんから私も個人的にと申しましょう、いわゆる船員の方のある意味において既得権という問題でございますが、そのようなお話を伺ったことも記憶しております。が、それらのことがいろいろ調和された中で今日の制度がいって、一方から見ていけば、労働連帯の責任とはいえ悪い方へ右へならえをすると申しますか、そうなれば将来展望の中で国民年金という既存のものに対して右へならえした場合、統合等が進めば進むほど条件の悪い方へ右へならえしていく可能性というものがある、それに対して所見を求める、こういう粗筋のお話でございますが、確かにいろいろな制度間の調整をしますとそのようなことが、年金のみならずございます。が、しかし今回は、いま厚生省からもお答えがあっておりましたが、年金大臣が中心になられて、いわゆる基礎年金部分をどうするかというような大所高所に立った議論の中で結論が出ていくことであろうと思いますので、私はすべての制度が、言ってみれば下の方へ全部右へならえしていくという惰性で車の歯が回っていくようなことを念頭に置いて対応してはいけないじゃないか、私自身もそれはそういう認識は持っております。
  133. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私は本会議でも大蔵大臣質問をしておるわけでありますが、年金制度一つにする場合には統合するということですから、最小限、やはりばらばらの現行年金システムを同一負担、同一給付の原則の確認と推進、こういう原点を踏まえて積立金の移管とかあるいは既裁定年金費用や過去勤務債務、こういったものについても保険者の負担とする方向が明確に打ち出されなければいけないんじゃないかということを質問として出したわけでありますが、いずれにいたしましても、現下のところはこれは回答いただいておりまするから、あえて回答は求めませんが、本当に単に国鉄救済、それにその場しのぎですね、そういう状況だと私は思うのですね。それでいて三公社、国公共済全部苦労して、結局これ国公共済が総体で四百六十五億円ですね。電電が百二十億、専売先ほど指摘されたのが十五億、そしてなおかつ国鉄も六十年から六十四年までの五年間において年間九千二百億必要と見込んでおる年金受給額の支払いについて、保険料収入は六千六百億円しか出ないですから、そうすると不足分が二千六百億、国鉄労使を含めて自助努力で二千億やりなさい。その内訳は一千四百億円国鉄負担増。その一つは拠出時の負担給付時に切りかえる、これで四百五十億。厚年、国年は給付負担、こういうことになっておるわけですが、それにまねたわけですね。それから、追加費用の当年度払い、未払い分の繰り入れ約九百五十億。それでも六百億不足しますからね。  そうすると、これは保険料率の負担増でカバーする。五十八年の国鉄財政再建計画の中で一たんは料率引き上げをやった。これは六十年度まで大丈夫ですよと、大臣、総裁その他全部が決定して判こを押して承認をした財政再建計画が、みんな御破算になっちゃう。それでなおかつ二百七十億、これは再度また料率引き上げですね。それから五十八年から、これは三公社全部同じです、スライド制――国鉄だけですかね、スライド制廃止、こういうことになるんですね、三年間。このくらい本当に四苦八苦してやっておるわけです。そしてなおかつそれで六百億不足分がある。このくらいは何も三共済から出させなくても、何らかの運用でもってできるんじゃないだろうか。たとえばいままで国家財政が非常に破綻を来して、それはもう財政特別措置法という、競馬の納付金から、専売の納付金から、あるいは電電の納付金とか、いろいろな特別会計を取り崩して、そして何千億と集めた。だからそのほかにも、やり方によっては六百億の補てん策くらい国庫で見ることができないのでしょうか、こう考えるのですが、その辺は大臣どうでしょう。
  134. 保田博

    保田政府委員 やはり社会保険制度というものの一環として、強い者が弱い者を助けていくという社会連帯の精神でやっていかざるを得な。いんだ、こういうふうに考えておるわけであります。  五十八年度予算編成におきまして、確かに国の一般会計が特別の金として、雑収入で二兆円ばかりの金をとにかくやりくり算段して集めましたけれども、これはまさに昭和五十六年度の予期せざる税収入の落ち込みを決算処理いたしますためのやむを得ない措置で、洗いざらい集めた結果なのでございまして、国庫にもそういう余力はございません。と同時に、先ほど申し上げましたように、大きな社会連帯の中で処理をしていかないといけないものだと考えておるわけでございます。
  135. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間がありませんから数字は余り読むことはできないのですけれども、スウェーデンの社会保障政策をちょっと私資料をいただいてきたので、これをいろいろ見たんですが、全く徹底して保障政策をやっていますね。たとえば国の予算総体で二八%、地方自治体において二八%、それから事業主で四三%、被保険者の負担は一%なんです。八百三十万人ぐらいの人口ですから、これはどうでしょう、日本の一集団の組合ぐらいじゃないでしょうか。国家公務員が、とにかく余り大きくない。それでこういう状況で全部やっているんですね、微に入り、細に入り。そしてそのほかに住宅手当もくれれば、いろいろ積み重ね方式があります。だからそういう面からいきますと、イギリスを含め北欧の年金は直轄型、こう言われておりますが、フランス、西ドイツとはまた若干違った関係がある。  日本は日本としてまた別な、一つのユニークなそういうもの、いいものを取り上げてつくったこともありましょう。いずれにしてもこのくらい徹底した保障政策、年金その他においてもそういう状況をつくり上げている。これは経済大国、第二位と言われて、ことに二次産業その他では世界一だ、こう言われておるわけですから、もう少しその辺の再分配方式について根本的に考えてみる必要があろう。いずれにしても、今後高齢者は世界的に大体増の傾向にあることは間違いないですね。ここの「考える」の資料によりましても、平均余命というものが非常に延びてきておりまするから、大体あと三十七年後、二〇一八年かそのくらい、二〇年近くになりますると、二一・六%くらいになるんじゃないでしょうかね。世界の趨勢が大体そうです。スウェーデンもそうです。先進資本主義国は大体そういう傾向にいっていると思う。それにやはり追いついてやっているわけです。だから、日本の有能な皆さんがおられたり、世界的に形容詞を持たれるくらい優秀な方ばかりおって、この点だけ落ちているというのはどうもわれわれとしては解せない、そういう考えを持ちます。したがって、今度の統一についても、やはりこの六百億の補てん策というものは国で何かの創意工夫をやってもらう、それとこの条件ができたときに統合をやる、こういう道筋が一番いいんだろう、こういうふうに私は考えます。これは回答要りません、要望しておいて……。  それで、時間がなくなりましたから、あと項目的に質問をしてまいりますが、国公共済の運営の民主的な方向をひとつ御検討願えないだろうか、こう考えます。内容につきましては、けさほど質問要旨聴取に来られた方に具体的に言っておきました。項目だけ言っておきますが、「運営審議会」の第九条三項、これを「組合員の」と、一行目の後段から五番目のここに「もしくは組合員の推薦する者」こういうものを入れてもらいたい。これを検討していただきたい。それから二十七条「役員」の項でありますが、これに三項、「前項を除く理事、監事には組合が推薦する者を加えなければならない。」このような一項を起こしていただきたい。それから「評議員会」の三十五条です。これも話をしておきましたから、ひとつその内容を御検討願いたい。それから「審査会の設置及び組織」これの三項。それから百十一条等々の内容についてよくお話をしておきましたので、項目的にひとつ御検討していただいて、もう少し国公共済の運営、真に組合員の一一番多い代表もいるわけですから、一名入れられるならそういう運営方式を確立をしていただきたい、このように考えます。どうでしょう。
  136. 保田博

    保田政府委員 国家公務員共済の運営につきましては、かねてからわれわれとしても、構成いたします組合の意向を反映するように努力をいたしておるわけでございます。  労働組合の代表者の意見を聞く最高の機関としましては、運営審議会に多数を配慮いただいておりまして、今後ともそれらの機関を通じまして、できるだけ御意見を拝聴しながらやっていきたい、こういうふうに考えております。
  137. 戸田菊雄

    ○戸田委員 最後に二点ほどお伺いをしておきたいのであります。  その一つは、年金基本問題研究会、ここでいろいろ検討されて、その基本問題研究会で当面の年金負担限界、こういうものをいろいろ検討されたようであります。それによりますと、将来の保険料負担はどの程度現役に期待できるかということで、参考資料をグラフでもっていろいろとあらわされているものがあるわけでありますが、それによりますると、国庫負担を除いて、負担限界は千分の二百から千分の二百五十、この間だ、こういうことになっていますね。つまり、月収の一〇%ないし一二・五%が限界ではないか、こういう見解を示しておるようでありますが、この点に関してどう御判断をされておるか。それが一つであります。  それから、今後の国鉄、今回の財政調整で果たして再建できるんだろうか。その一つは、たとえばこのままいけば、研究会でもって出した内容というものは、おおむね六十一年には限界領域を飛び出して、千分の三百になってしまう、こう言っているんですね。それから、昭和九十年までいきますと、これはとても問題にならない。千分の三百五十、千分の四百、こういうかっこうですから、逐次上がっていく。平均賃金は大体二十三万で計算しているようでありますけれども。そういう状況なんですね。  最近は仲裁裁定その他も、三公社ほとんど皆同じ。ことし国公共済等も人勧凍結その他でもってずっと抑えられましたから、所得増というものは大変な減少、可処分所得も実質は下がっている。それに税金やその他いろいろな保険料、社会保険料というようなものを取られますから、そういうことになりますると、総体三〇%くらい引いて七〇%で消費生活をやらなければいけない。三公社五現業、国公を含めて、いまの公務員関係を含めて、私の推測値でいくと大体そういう結果になりますね。そうしますと、いまの千分の三百五十、四百になりますと四〇%近く取られるわけですから、六〇%で生活、これはとても限界だというのですね。食えない。二十三万にしたって、四〇%引かれれば十四万円くらいの手取りしかないわけです。現職は四人標準世帯ですから、これじゃとても生活は成り立つまい、こういう状況にあるわけであります。そういうときに各共済がこういう状況でいくわけですから、そういう問題に対して根本的にいまのうちに何とか手を打たないと、第二の国鉄、第三の国鉄、全部出てきますね。そういう点については、年金は何といっても十年、二十年の見通しでもって改善策をとっていかなければ間に合いません。そういう意味合いにおいてはぜひ御当局の、大臣等の御検討をひとつお願いをしたいと思いますが、大臣どうでしょうか。
  138. 保田博

    保田政府委員 まずお尋ねの第一点、年金保険料負担限界はいかんということでございますが、社会保険の負担というのは、いずれにいたしましても保険料か最終的には税が、そのいずれかといいますか、その合計によって負担せざるを得ないものでございます。したがいまして、年金保険料だけを取り出しまして、それが重いとか軽いとかというわけにはいかないわけでございまして、全体の税負担保険料負担の合計で判断されるべきものではないかと思います。先ほどお示しの数字は、ある研究会の意見として存在することはよく承知しておりますが、われわれとしてはそういう理解をいたしております。  それから、国鉄の再建が今回のような――今回のようなと申しますよりは、現在のような国鉄共済に対する負担が非常に大きいことによって、再建計画がやっていけないんじゃないかという点でございますけれども、再建監理委員会の御意見も聞きながら、政府としてできるだけ検討をしていきたいと考えております。  それから、国鉄共済組合の非常に悪い状態について、先ほど先生御心配の数字をいろいろ御披露になりましたが、そういうことでありますので今回のような法案を御提案しておるわけでございます。ぜひとも速やかな御賛同を得たいと思うわけでございます。  最後に、このような状況は、あながち国鉄共済制度が持っている特有の状況ではないわけでございまして、遠からず一共済だけではなくていずれの公的年金制度につきましてもやってくる危機なのでありますから、そういう危機状態を踏まえまして、政府全体として将来の公的年金制度をどう安定的に持っていくか、今後検討していきたいと考えておるわけでございます。
  139. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ありがとうございました。時間がなくて急いで申しわけありません。
  140. 森美秀

    森委員長 沢田広君。
  141. 沢田広

    沢田委員 前回質問をいたしまして留保しておきました点について、限られた時間でありますが、御答弁をお願いする次第です。  厚生省の方おられますから、ちょっと最初に二つ問題提起しますが、厚生省は一つですね。たとえば厚生年金に入っているだんなさんが死亡されて遺族年金。たとえばいま平均百七十六万と仮定をして、まあ百七十万でもいいのですが、二百万と仮定しましても、遺族年金百万ということになりますね。三十年の国民年金に入っていれば、モデルとして大体百二十万くらいの国民年金がもらえる。そうすると、だんなさんが亡くなったことによって奥さんは二百二十万のいわゆる年金二つでもらえる、こういう計算になります、若干の数字上の問題は別として。このことは厚生年金ばかりではなくて、共済年金も同様のことが言えると思いますが、この点いかがですか。
  142. 山口剛彦

    ○山口説明員 現行の制度を前提にいたしますと、大体そんなたてまえになっております。
  143. 沢田広

    沢田委員 それから、これは大蔵省ですが、昔甲と乙種がありまして、恩給制度から共済組合に変わりました際に、甲と乙とを併用して掛金を掛けていた人は、いわゆる文官恩給をもらい、同時に共済恩給をもらう、こういう条件でやめておられる方もOBの方にはいると思うのでありますが、そういうことは御承知ですか。
  144. 保田博

    保田政府委員 申しわけございませんが、ちょっとそこまで勉強が行き届いておりません。
  145. 沢田広

    沢田委員 じゃ、それは後で事務当局からちょっと聞いておいてください。  それで、日本の年金というものを考えた場合には、本人が掛金を掛けているわけですから、その掛けた部分については、最小限度といいますか、その権利というものは当然残されていくというのが、百年に及んだ歴史の足跡であったと言えるのですね。ですから、たとえばいまの厚生年金みたいに、だんなさんよりも収入が多くなってしまう場合がある。まあ、だんなさんより多くなるかどうかは別物ですが、たとえば厚生年金の遺族年金国民年金を掛けていれば、だんなさんがいなくなった分だけかえってよけいになってしまう。食べる人がいない、小遣いも使わないのですから逆に多くなる、現行制度の中にはそういう矛盾があるのですね。たとえば軍人恩給をもらっておる方が、あるいはまた他に奥さんが勤めて厚生年金をもらうということもあり得るのですよ。いまの日本のこの年金制度の中においてはそういう状況がある。これだけは一つ、時間がないですから、そういう矛盾が今日混在しているということをまず考えの中に入れておく。  それから、もう一つは、老齢化社会を迎えて、ここはミクロとマクロの議論が両方されているわけですが、だんだんお年寄りの数がふえていく。共済でも年金受給者がだんだんふえていく。だれかが負担しなくちゃならない。全体で負担をする場合は税金で負担をする。それから、組合で負担をするときは掛金負担をする。年金をもらう人は、多い方がいいに決まっている。掛金を掛ける人なり税金を取られる人は、少ない方がいいに決まっておる。これは二律背反の問題で、どう調整するかという議論である。しかも、老齢化社会を迎えて、千百六十六万、さらにこれから千五百万あるいは二千万と、こういうふうに年金受給者がふえていくわけです。ですから、どういう調整の仕方をするかということを考えていかなくちゃならぬ。そういう時期に直面している。このことは、厚生省であろうと大蔵省であろうと関係ないと思うのですが、大臣、このことだけはまず先に大臣としてお答えをいただきたい、その原点だから。
  146. 竹下登

    竹下国務大臣 原点として、今後とにかく人口構造等からいってもそういう傾向にあるということは私も同じ認識です。
  147. 沢田広

    沢田委員 ですから、あともう一つ言えることは、この間の質問大蔵大臣いなかったのですが、年金とは国民に対する一つの約束であり契約である。いまあなたに五千三百円の掛金をもらっています。使用者も五千三百円掛金を出します。そして、その五千三百円の掛金を出したならば、三十年後になれば十六万六千円程度の年金を支給するようにします、四十年勤めれば約二十万の年金を支給いたします、これは現行の二千五十円という基礎単価を中心として勤続月数に、そして同時に標準報酬を掛ければ当然支給されるという金額を示しているわけですから、当然この方程式の中に含まれるとすれば、これは約束なんでありますね。この点いかがですか。これは両方同じですよ。
  148. 山口剛彦

    ○山口説明員 年金制度におきましては、先生おっしゃるように、国民の信頼感というものを尊重するということは大変大事なことだと思います。ただ、現在いろんな要件等で将来の給付水準についてもお約束をしておりますけれども、一方、世の中がどんどん変わってくるということもあるわけでございます。そういう世の中に応じた制度の再編成ということも、これはどうしてもしていかなければならないわけです。  たとえば……(沢田委員「わかった、わかった」と呼ぶ)まあそういう要素がございますので、いまの制度を今後とも絶対変えられないというふうに御理解をいただいてはならないと思います。
  149. 沢田広

    沢田委員 私は変えちゃいけないなんて言っているのじゃないのだ。そういう約束事に基づいて成り立っているのだという基本を聞いているわけなんです。何とかねじ曲げよう、ねじ曲げようという答弁の仕方をせずに。いままではそれでわざわざ値上げもしてきたわけだよね、この間二千五十円にまで値上げまでしてきた。だから、そういうふうに改善もしてきたという歴史的な過程というものだけは、考え方というものだけは、お互いに意見の一致をしておかないと、何かバナナのたたき売りか朝鮮あめ売りみたいに、こういうふうにちょこちょこ、ちょこちょこやって変わっていってしまうのだということじゃないのですよね。朝鮮という言葉は、もし差別用語であったとかとすれば、これはもちろん訂正し取り消しますが、昔の、露店で商売をやっていたという、まあ私の子供の時代の話なんです。要するに、そういうような形の中で、歴史的に継続されてきている、そのことだけは否定しないでほしいと思うのです。  これは大臣、今後変えるにしても変えないにしても、その考え方というものはそういうものなんだ。いま掛けてもらっている年金は、あなたが三十年たったときはこれだけになりますよということをいわゆる世の中に約束をして、今日その政治に信頼感を持たせながら働いてもらっておる。だから、働いている人は、おれはこれだけもらえるのだなということを心の中に期待をしつつ汗みどろになって働いているということだけは間違いないことじゃないかと思うのです。金額云々じゃありませんよ。考え方として、ひとつ御答弁いただきたい。
  150. 竹下登

    竹下国務大臣 諸制度の中において、その種のものがその制度の仕組みの対象になった途端から、将来にわたってのある種の期待権、これは発生すると思います。
  151. 沢田広

    沢田委員 それは事情変更の原則もありますから、全然変えることがだめだとは私は言いません。しかし、それにはやはり納得してもらえる条件が必要である。それから、非常に急激な変更は避けなければいかぬ、そういう二つがあると思うのでありますが、その点はいかがですか。
  152. 保田博

    保田政府委員 今回御提案申し上げております統合法案中身といたしましては……(沢田委員法案のことじゃない、考え方だけでいい」と呼ぶ)考え方としましては、両方の兼ね合いの問題ではないかと考えております。
  153. 沢田広

    沢田委員 兼ね合いでやることは承知です。ただ、急激な変更を避けようとする努力が必要である。もう一つは、やはり期待権を持っている人が納得できる条件をつくるように努力しなければいけない。このことは間違いないことじゃないでしょうか。いかがですか。
  154. 保田博

    保田政府委員 年金制度全体の話としますと、私が御答弁するのもいかがかと思うわけですが、できればそれにこしたことはないのじゃないかと思います。
  155. 沢田広

    沢田委員 別にそのことで言質をとろうという気持ちじゃないのですよ。素直にひとつ受けとめていただきたいのです。逃げようとするとかえって問題を生ずる。これは素直に、私は一般論として言っているわけです。やはり、自分の一生に関係するような約束を行うということは、まず急激な変更を許されないことは当然でしょう。それから、緩やかな変更をすることが必要になってくるということも当然じゃないですか。それが、何か原則的にとかまた何とかと回りくどく言うとよけいに問題になってくるので、いまの質問の段階は、何もそのことでこのことを変えようということとは、とりあえずは関係ないのです。安心して答えてください。
  156. 保田博

    保田政府委員 現在の私の心境としましては、なかなか安心して素直な御答弁がいたしかねるような心境でございます。お許しいただきたいと思います。
  157. 沢田広

    沢田委員 しかし、このことは世間どこへ行っても一般論として通る話だと私は思うし、あなたの方の話が通らないですよ。これはやはり法案だけにこびりついちゃって、そして法案で自分の良心をねじ曲げちゃっている、そういうものになっちゃっている。これは答弁は要りません。この法案が何とか処理された後ゆっくり考えてみれば、あのときおれはあんなことを言ったけれども、悪かったな、こういうことを思われるだろうと思う。  そこで、細かい点はいままで同僚、先輩が言いましたから多く申し上げませんが、いま年金をもらっている人、その既得権については最大限に確保してやるように努力をする。そしてそれももし移動があるとすれば、それは長期的な展望に立って調整する。そのときの物価の状況あるいは社会経済の状況、そういうものを勘案しながら調整をしていく。私は文書に書いて大臣のところにも出しましたが、すでにもらっている人、きのうも言ったが、時間がないですから簡単に言うと、国家公務員と三公社のものとは違う。違うけれども、だからおまえけしからぬからぶっ切るぞと言うのじゃなくて、それはそれなりにひとつ時間をかけていこうじゃないか、そういう一つ考え方になってもらいたい。それが一つ。  それからもう一つは、現行の各共済組合に存在する、現在勤めている人ですが、いま言った約束でこれだけもらえるという期待権を持っている人、それは期待権として尊重する。厚生年金の方もまた将来、三十年で十六万円が四十年で十九万円、それが今度は四十年で十六万円ぐらいに下がってしまうのですね。そういう状況になる時代は時代としてまたこれは考えるとして、相互の調整については長期的な展望の中でお互いに措置していきましょう、お互いに助け合っていきましょう。しかし、東海道五十三次で、長い旅でひとつこれは調整していこう、これが二番目です。  三番目は、今度の財政調整に伴う負担増赤字の六百億のかわりの負担増についても、積立金の運用を考えるとか、あるいは残額なども勘案しつつ、それぞれの共済組合の単独の運営を行うとともに、全体的な財源、積立金というものを考えて微調整の中で処理をしていく。千分の大なら千分の六というのを一度にはっと出すのではなくて、もし変えれば、とりあえずは千分のゼロから二にするとか一にするとか、これは残金に関係しますが、そういうことを勘案しながら調整をしていく。しかし、千分の一とか何かだけじゃなくて、この間の答弁のように、それぞれの年金財政はもっと大きな変動が来るわけですね。それぞれの単位組合でもう来てしまうのですよ。そんな千分の六どころの騒ぎじゃないですね。本質が変わってくる条件は持っている。だから、千分の六だけが目立って大きく議論されるけれども、もっと本体が――それぞれの単位組合の独自性はある程度認めていくのですから、そういう中で、微調整の中で処理をしていくことを考える。それで急に負担が重くなるということは最小限度避けたい。  最後は、年金で生活をしている者、これはどこまでか線の引き方がむずかしいのですが、年金で生活している者に課税上特別の措置は講じられないか。そういうこともあわせて勘案して、あめとむちではありませんけれども、プラスもある、マイナスもある、こういう条件の中で配慮していただけないだろうか。  まとめて私は質問をしたわけでありますが、大臣からこの趣旨、考え方についてお答えをいただいて、質問を終わります。税金の方は後でお答えいただきたい。
  158. 保田博

    保田政府委員 既得権と期待権に分けてまず御説明いたしますが、先生御承知のように、今回御提案しております法律では、厳密な意味での期待権は……
  159. 沢田広

    沢田委員 ちょっと、大臣忙しいから、その前に大臣に答えてもらって、あなた、その次にしてください。大臣はすぐ向こうへやらないと悪いから……。
  160. 竹下登

    竹下国務大臣 今度の年金法案そのものに関して、いまのような趣旨がどのような形で運営の中で生かされるかということになりますと、これは保田次長の答弁にゆだねておきます。  政治家沢田広の政治哲学としてのいわゆる期待権は、それが減殺される可能性のあるときには、期待権者に対し、納得のいく説明というものが好ましい姿として存在をする。  それから今度は、すべての政策は、年金という意味じゃございませんが、激変緩和という措置は間々とられて、それが社会のニーズに適応する場合が多い。  それから、税の問題は具体的な問題になりますが、これは梅澤主税局長がおりますので……。
  161. 保田博

    保田政府委員 今回の法案におきます既得権と期待権の問題でございますが、御承知のように、公企体の職員のOBにつきましては、年金給付国家公務員共済組合OBへのさや寄せがされるわけでございます。御主張のように、急激な変化は極力避けるようにということでございますので、すでに年金をいただいておられる既得権者、厳密な意味での既得権者につきましては、もう先生御承知のような措置をとらせていただいておるわけでございますし、これから年金をもらわれる新規の裁定者につきましては、これまた退職金の調整の問題と一緒に検討した結果、ああいう措置をとらせていただいておるわけであります。  それから、年金制度全般につきましてはまた厚生省の方から御答弁があろうかと思いますが、国鉄共済組合に対する財政調整事業で、国共済電電専売共済組合組合員負担がふえるわけでございますが、われわれとしましては、これらの年金の将来における健全性をできるだけ維持していきたいという観点、それから一昨日御質問がありましたときに御指摘がありましたように、年金制度が近く積立金を食いつぶしまして賦課方式に移行せざるを得ないという時期も非常に差し迫っておるわけでございます。その時期はまた高齢化社会への進行が非常に多く進んでいる段階でございまして、生産年齢人口に対してお年寄りの数がふえる、割合がふえるという時期でありますから、そういう意味でも後世代の負担は大きくなる時期でもあるわけでございます。したがいまして、私といたしましては、将来の年金制度の健全性、後世代との負担の公平といった観点から、できれば原案といいますか、われわれがお示しいたしましたような試算の線でできればありがたいなと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、財政調整事業の運営の具体的な方法につきましては、法案成立後できます運営委員会において検討される問題であろう、こういうふうに考えております。
  162. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 年金の課税問題につきまして簡単に御説明を申し上げます。  年金の課税問題につきましては、ちょうどいま政府の税制調査会で中期的な御審議をいただいている最中でございますが、この機会にぜひ御理解いただきたいのは、わが国の場合、年金掛金の段階で本人の所得控除が認められておる、つまり非課税になっておるということは御案内のとおりでございますが、受給の段階におきましても、遺族年金とか障害年金はそもそも課税の対象になっておりません。一般の老齢年金につきまして、日本の所得税法ではこれを給与所得ということに分類されるわけでございますが、その段階で給与所得控除、かなり手厚い控除が働く。同時に、所得制限がございますが、受給者が六十五歳以上になりますと、老齢者年金特別控除というものが働きます。したがいまして、仮に夫婦二人の課税最低限ということで比較いたしますと、現役の労働者の課税最低限の大体倍くらいの水準にあるわけでございます。六十五歳以上の年金だけで生活しておる夫婦二人の課税最低限。そういうことで、先進諸国に比べまして課税面ではかなり手厚い制度になっておりますが、ただいま政府税調で議論の焦点になっておりますのは、先ほど来御議論が出ておりますように、今後老齢化が進みまして、現役労働者に比べまして年金受給者の数がどんどんふえていくという段階になりますと、果たしていまの年金課税でいいのかどうか、むしろそういう角度から議論されるべきではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  163. 沢田広

    沢田委員 答弁漏れ。さっきの甲と乙。もとの恩給の……。まあ、あなたらはOBだから。
  164. 保田博

    保田政府委員 担当の参事官からお答えします。
  165. 野尻栄典

    ○野尻説明員 昔の公務員の年金制度は恩給と共済と分かれておりまして、その共済適用を受けていた人が十数年たって任官する。任官すると恩給の方へ移るわけでございますわ。恩給に移る途端にそこを脱退しなければいけませんから、そのために十数年の期間年金に結びつかないでだめになってしまう。一時金になってしまう。そのために、恩給に移った後も共済掛金を引き続き掛けながら、つまり恩給と共済の二重適用を受けながら共済年金権がつくまで、いわば任意継続をするという制度が、昔はございましたことは確かでございます。
  166. 沢田広

    沢田委員 時間が過ぎましたから終わりますけれども、この既得権はそれだけ歴史的に守られてきたというその証左として例示をしたのでありますから、改めてひとつこの点は尊重されるよう要請して、質問を終わりたいと思います。
  167. 森美秀

    森委員長 御苦労さまでした。  この際、申し上げます。  社会労働委員会との連合審査会開会の件につきましては、来る十月四日火曜日午前十時から開会いたしますので、念のためお知らせいたします。  なお、お諮りいたします。  連合審査会において、参考人から意見を聴取する必要が生じました場合には、その出席を求めることとし、人選等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後三時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後二時七分休憩      ――――◇―――――     午後三時三分開議
  169. 森美秀

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府より趣旨の説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。     ―――――――――――――  国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  現下の債務問題等に適切に対処し国際通貨金融体制の安定を図るため、国際通貨基金がその資金基盤を強化することが必要と考えられ、このため先般、その出資総額を現行の約六百十一億特別引き出し権から約九百億特別引き出し権へと約四七%増資することが合意されました。今回提案されております増資は、増資総額の六割を各国の経済実態に応じて配分し、四割を現行の出資割り当て額に応じて配分するものであります。この中でわが国の出資額は、現行の二十四億八千八百五十万特別引き出し権から四十二億二千三百三十万特別引き出し権に増額することが提案されており、その増加率は約七〇%と先進国中最大のものとなっております。また、これにより、出資総額に占めるわが国の出資割合は、わが国の経済力の伸びを反映して、四・〇八%から四・六九%に拡大することになります。わが国としては、国際金融面での協調を推進し、世界経済の健全な発展に貢献する見地から、この提案を受け入れることが適当と考えております。  本法律案は、この新たな出資に応じられるよう、国際通貨基金へ出資することができる金額を引き上げる等、所要の改正を行うものであり、この法律の成立後、国際通貨基金に対し同意通告を行いたいと考えております。  以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  171. 森美秀

    森委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  172. 森美秀

    森委員長 この際、お諮りいたします。  本案につきまして、本日、参考人として日本銀行副総裁澄田智君の御出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  174. 森美秀

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  175. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 本改正案に係りまして、若干の質問を申し上げたいと思います。  現在、世界的な不況といいますか、非常に深刻化する中で、とりわけ発展途上国の経済状況国民の生活というものは大変な苦しみにあるわけでありまして、そういう中でIMFあるいは世銀の果たす役割りというものは非常に重要なるものがあろう、こういうふうに私たちは考えておるわけであります。特に第三十八回の世銀とIMFの総会がいまアメリカのワシントンで開かれ、きょうが四日間の最後の日、こういうふうに聞いておるわけでございます。  そこで特に私がお聞きしたいのは、日銀の前川総裁は総会で日本政府を代表して、国際協調を推進するかなめとしてのIMFにふさわしい貢献という言葉を発せられておるわけでありますが、このIMFにふさわしい貢献ということはどういうことであろうか、こういうように思うわけでございます。特にアメリカのリーガン財務長官は代表演説の中で、ブレトンウッズ精神に戻れ、こういうような言葉を言っておるようでございまして、本来は加盟各国の短期的な国際収支危機を救う目的で発足したIMFが、融資条件を緩和し、あるいは期間を長期にするうちに、ずるずると発展途上国に対する援助機関になっておるのじゃないか、こういうようなことに警告をしたのではなかろうか、このように考えておるわけでありますが、こういうアメリカの態度に対して日本政府はどのように考えておられるのか、そういうことも含めて、まず冒頭にお聞かせいただきたい、このように思います。
  176. 酒井健三

    ○酒井政府委員 ブレトンウッズ協定に基づきまして国際通貨基金制度が設立されましたことはお説のとおりでございます。  御承知おきのように、昨年の夏以降、メキシコ、ブラジル等中南米諸国を中心に債務問題が深刻化してきておりまして、これにどういうふうに対処していくのかということが国際金融社会にとっては非常に大きな問題であったわけでございます。そこで、その問題の対処の一環といたしまして、私どもといたしましては、国際通貨基金に、核と申しますか触媒と申しますか、そういう役割りを果たさせていくことによって、この問題の一環を担うことが必要であるというふうに考えて今日まで参ったわけでございます。  IMFは、この債務問題につきましては、債務累積しております開発途上国に対して、融資に伴いまして経済政策についていろいろのアドバイスを行い、それから現実的な形としてはコンディショナリティーというようなことで、開発途上国の自助努力を求めるという機能を果たしてきたわけでございまして、その果たしてきた役割りはきわめて大きかったのであろうと思います。  しかし、IMFの本来の機能は、相互扶助的なことにょりまして短期的な国際収支の困難を支援するというところでございます。私どもといたしましても、その基本的な精神はあくまでも維持するという立場は変わっておりませんで、ブレトンウッズ体制の一つといたしまして、御承知おきのように世界銀行とかあるいはその姉妹機関である第二世銀という援助機関がございますが、それらの援助機関と国際通貨基金との役割りの違いははっきりと区別していくべきであるというところにつきましては、関係各国とも共通の認識を持っているわけでございます。先ほども申し上げましたが、IMFはこの問題について触媒としての機能を果たしていかせるというスタンスを維持していくことが必要だと思いまして、その機能を果たしていく意味でも、今回の増資によってIMFの機能を強化していくことが必要だというふうに考えております。
  177. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 けさの朝刊にも報道されておったわけでありますが、今回のこの世銀の第八次の増資におきまして、発展途上国は二百億ドルほどを要求しておったようでございますが、アメリカを除く、日本を初めとする先進国の約八十億ドルくらいが相当ではないかという意見に対して、アメリカが三十億ドルを固持したと聞いておるわけであります。それは事実なのか、あるいはアメリカの意図がどこにあるのかというようなことをお聞かせいただきたい。また、第二世銀の第七次の増資につきましても、増資額は百二十億ドルくらいがいいのではないかと日本政府初め先進国が主張したようでありますが、アメリカは依然として九十億ドルという形で、前回以下の主張をいたしておるようでございます。IMFあるいは世銀に対するアメリカ役割りが大であるにもかかわらず非常に消極的になっておるのではなかろうか、このように思いますので、その点につきまして、大臣も後ほど退席されるようでございますから、竹下大臣考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  178. 竹下登

    竹下国務大臣 国際連合百五十七、IMF百四十六、世銀が百四十四というように加盟国があるわけでございます。一応世界百六十七カ国として、これだけの国が加盟しておりますと、南北問題が議論になりますと、勢い南側は南側の立場、その中に産油国と非産油開発途上国とのそれぞれの利害の対立が存在するわけであります。したがって、いわゆる先進工業国家グループと南側との意見調整というのはその都度難航をいたしますが、今日アメリカ立場から申しますと、かつてそれらが出発した当時の世界のGNP全体に占める比率とかいうものは相対的に下がってきております。そういうことから、どうしてもアメリカの主張は、国会との関係も大変あるようでございますけれども、少な目であって、開発途上国側、なかんずく非産油開発途上国の方は非常に大き目になる。その間に立つのが結局日本を含む他の先進国。そうなりましたときに、かつては日本も世銀から金を借りて新幹線をつくりましたり、そういう時代もあったわけでございますから、そういう立場から言うと、勢い今度はまだその調整役を演ずる先進国の中でもパフォーマンスが一番いいから、日本にその調整役割りをとらせるような雰囲気があることは事実でございます。したがって、日本の場合、世界の中で果たさなければならない役割りはもちろん痛感しつつも、その辺の調整をどういうふうにしていくかということが、いつの場合でも、ここ数年日本に与えられた役割りである。  ただ、その場合に、されば日本はどのような態度で増資等に応じていくか、こういうことになりますと、百五十七カ国の国際連合というのは、一億も一票、十万も一票、こういうことでございますが、金融関係のものには出資額に応じたいわば発言権あるいは採決権等があるわけでございますので、そのことを考えますと、かつてまだ日本がいまのような地位にないときに決められたシェアにプラスした増資額等を含めて、言ってみれば、世界の中で第二のシェアを持つ出資国になるということと金額との兼ね合いでいつも交渉に臨むというのが、成り行きもありますが、大体のいまの考え方でございます。
  179. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私は、アメリカがIMFの、あるいは世銀も同じでありますが、最大のスポンサーと言ってもいいのじゃないか、こういうふうに思っているのです。にもかかわらず、アメリカがその出資といいますか増資に非常に消極的である。その結果総会では合意に至らない、こういうことのようです。きょうもまたやっているわけですから、最終的にどうなるのかということもありますが、そういう点で、本来のIMFの精神というものがあるにしても、現実的には世界不況の中でのそういう発展途上国に対する救済措置というのですか、これももとを正せばアメリカの高金利政策で、わが国自身も被害をこうむっておるわけでありますが、やはりそういう発展途上国の債務を焦げつかすような状況になっておるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  新聞などの報道によりますと、アメリカの共和党、特に保守派の中とかあるいは消費者団体の中では、そういうIMFの資金が結果的にはアメリカの大銀行のそういう発展途上国に対する、特に中南米を指しているのかもわかりませんが、貸し付けの焦げつきの穴埋めをすることになりはしないだろうか、こういうようなことを言って反対しておるようでございます。それが事実であるならば、わが国においてもやはり考えなければならぬだろう。あるいは日本の民間銀行も相当な額を、そういうところに経済援助という形で協力をしておるようでありますが、そういう点についてアメリカの事情をもう少し詳しく大臣からお聞かせいただきたい、かように思います。
  180. 竹下登

    竹下国務大臣 私もきわめて正確な分析と言われると自信がございませんが、率直に申しまして、私は、一つにはアメリカの財務当局と銀行との関係と申しましょう。日本は、相互銀行を含めて百五十七、ちょうど国連加盟国と同じほど銀行があるわけでございますけれどもアメリカは万の数を超しております。したがって、日本の銀行法を見ますと、御案内のように投資家保護、銀行の場合で言えば預金者保護というようなものが徹底し、アメリカの場合はどちらかと言えば自己責任というような感じでございますので、いわゆる財務当局と金融機関との関係が、日本ほど政策の整合性がとれていないと言わざるを得ないのではないか。それがまた数が大変多うございますから、いま消費者団体とか文化団体、そのとおりでございます。国会の議論を見ましても、国際機関への増資とかそういうものは、みんなアメリカの銀行のいわば自己責任による、極端な表現をすれば野方図な融資の穴埋めをしているのではないか、こういう議論があることは事実でございます。  しかし、そればかりではないと思うのです。やはり全体の、かつてのアメリカが持っておった経済力と、今日の力はかなり少なくなっております。相対的に日本などが上がっておるわけでございますけれども。したがって、そういう事情があるということは、私も会合に出るたびに痛感するところであります。が、いま国際金融局長からも申しましたように、IMFというのはあくまでも触媒的役割りを果たすのであって、言ってみれば、よく日本でいいます誘い水的役割りとでも申しましょうか。したがって私は、そういう一部の世論というものは必ずしも当たっていないのではないかというふうに考えております。  いずれにしましても、いま債務累積問題が起こりますのは、委員御指摘のとおり、一つは第一次、第二次石油ショックでぼこっと上がったために、非産油開発途上国の負担が耐え切れなくなった。それと世界が同時不況になったために、一次産品等の輸出もふるわなくなった。それから開発途上国にはままございます、われわれが考えても少しオーバーなぐらいの開発計画、それが足かせ手かせになって債務問題というものが生じたのではないか。したがって、そこで国際機関のIMF等ございますといろんな条件を、コンディショナリティーをつけて融通しますから、そうすれば対で民間銀行がその国に対しての条件を提示する以上にそれがオーソライズされたものになって、ひいては累積債務国のためにもなっているのではないかというふうに私は考えております。
  181. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにいたしましても、やはりアメリカの高金利政策の犠牲として発展途上国のいまの債務の問題があるのではないか、こういうように思っておるわけです。アメリカが高金利政策をとるために、当然景気が抑えられる。そうすると、発展途上国の輸出の伸びが思わしくない、こういうことになるわけであります。また同時に、わが国も一緒でありますが、世界の各国が、アメリカが高金利政策をとっているために、景気回復のためのそういう金利の引き下げというような部門もやはりなかなかむずかしい、こういうことになっておるのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで、このアメリカのレーガン大統領がとっている高金利政策というものを、われわれは本当に諸悪の根源だと考えざるを得ないわけでありますが、これに対して日本政府がどういう努力をしているか、というよりもまず、高金利政策が当分まだ続くというように考えておるのか。あるいは、アメリカの経済が今後どうなるのかということについてお聞かせいただきたい、このように思います。
  182. 竹下登

    竹下国務大臣 アメリカの高金利政策、根源をさかのぼればやはり財政赤字だと思います。何分にもその年度の預金の伸び率よりも政府が借りるお金の方が多いから、それで需要と供給の関係からしても高金利をもたらしていく。そこのところに一つの問題がありますのは、たとえば、おまえのところの財政赤字をもっと少なくしろ、少なくした方が好ましいという意見は吐かれても、言ってみれば内政干渉みたいな形にもなります。  そこで、これがお互いの立場で最も効果的にそういう建言ができるかということになると、これはサミットじゃないかな。あるいはその前に行われますわれわれの、七カ国大蔵大臣会議、そこで政策の整合性というようなことで合意をしたら、勢い高金利に対して、財政赤字の削減に努めなければならぬと言うと、これは原則的にアメリカも合意せざるを得ない。それで、合意したわけです。したがって、その合意を土台といたしまして、折に触れと申しますか、絶えずこのアメリカの高金利問題についてのわが国の指摘というものを繰り返して今日来ておる、こういうことであります。  したがって、今度は米国の経済はどうなるか。確かにこの間の四-六の結果等を見ますと、年度は違いますが、三・一%を目標としております、向こうの経済運営は。それはできるんじゃないかと、だれしもそう思うようになりました。日本の場合は三・四でございますけれどもアメリカの場合の三・一というのは、もともとのげたが低いだけに、瞬間風速では相当高い率を示しておるわけであります。そこで、アメリカの場合はそれによって、いま住宅がまず牽引車になった。二番目には自動車だとか、こんなことを言われておりますが、これだけ高金利でございますし、経常収支はまた大赤字でございます。ただ、それが何で埋まっておるかと言えば、高金利だから、オイルダラーを含め、日本も影響を受けますが、世界じゅうの金がアメリカヘ流れていく、外国の借金を決算資金にまた充てておるというような循環をしておるわけでございますので、本来大変健全な運営と言われるかどうかということになると、いろんな議論のあるところでございます。それでにわかに、今後どうなるか。私は、今年は三・一%、それ以上の実質成長をするかとも思うのでありますが、今後の問題についてはまだ不確定な要素がかなりあるのではないかな、そういう見方をしております。
  183. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 アメリカ財政赤字は相当構造的なといいますか、抜本的な改革をしない限りむずかしいのではないか、私たちはそういうように思っておるわけでありますが、やはり財政赤字という状況の中から高金利政策というのですか、そういうものもおのずから出てくるだろう、こういうふうに思っているわけです。そうすると、財政赤字が構造的でなかなか抜本的に改革されない状況のもとで、果たして高金利が解消されるのかどうか、ひいてはアメリカの景気がその結果回復するのだろうか、こういうようにわれわれ考えざるを得ないわけであります。そういう点で、やはりそういう楽観的な考え方ではなしに、アメリカに対してもっと厳しく、その点について抜本的に、いまやっていることが決して諸国民のためにもなっていないだろうし、いわんやアメリカの経済の活性化のためにもどれだけの貢献をしているのかということをわれわれやはり考えざるを得ないのではないか、こういうふうに思うのです。  それに加えて、財政赤字だと言いながら、一方においては軍拡といいますか、そういう点で、アメリカがやっていることと言っていることとは全然ちぐはぐではないか、こういうふうに考えておりますので、そういう点でこの軍縮との関係についてどう考えておるか、大臣に一言答えていただいて、次に行っていただいて結構でございます。
  184. 竹下登

    竹下国務大臣 お答えになるかならぬかと思うのでございますが、確かにいわゆる軍拡というものは、これは国の東西を問わず、多少GNPを押し上げる要因はありましても、原則的には戦争は浪費だということになろうかと思います。したがって、軍拡そのものがいい影響を与えるわけのものではございませんが、言ってみれば、米ソのいわゆる力の均衡の中においてそれが保たれておるという現状認識の上に立ては、アメリカがその国内政策として選択されることに対して、私どもからとやかく言うことではなかろう。しかし、少なくとも現状を固定して、それから削減していくといういわゆる軍縮交渉という芽生えはできてきておるわけでございますから、それに対しては、ソ連の側もそのテーブルに着いていただけるような環境づくりに、私どもは軍事的な力はないにしても、あらゆる場を通じでそのことをアピールしていかなければならぬ問題ではなかろうかというふうに思っております。確かに二千億ドルを超す財政赤字というものは、私は、もちろん軍事的要請というものがあるということは決して否定するものではございません。
  185. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いま大臣からお答えがあったわけですが、恐らくレーガン大統領も軍縮のために軍拡をしているのだ、こういうことではなかろうか。軍拡のための軍拡というよりも、軍縮のための軍拡だ。結局そのことが軍拡競争をあおり立てるわけでありまして、いま世界の核兵器が二万発はどあって、地球を二十回も破壊するだけの威力があるのだと言われておるわけですね。  それと、何を言いましても軍備は最大のむだでありまして、世界の軍備が一年間だけでも二百兆円になんなんとする。ところが、発展途上国に対する援助と言えば、日本円にして七兆円そこそこで、三十分の一、こういうことではなかろうか、こういうように思うわけでございます。先般もWHOの総裁が、そういう発展途上国を中心とした国民の健康状態を維持するだけでも、軍備に割かれている費用の一五%ですか、半分ですかを割けば事足りるのだ、それで何百万という人々が救われるのだというようなことも言われておるわけでありますから、そういう点でやはり、そういう軍縮のために軍拡だと言うのじゃなしに、そういうことは結局軍拡ばかりに行くわけですから、どこかで歯どめをしなければならぬ、こういうように考えておるわけであります。  しかし、わが国の中曽根内閣も、アメリカのレーガン大統領と同じような路線で、アメリカに協力するということになりますと、日本自身がアメリカに対して、アメリカのいまのああいう冷戦政策といいますか、軍拡路線に忠告する何らの資格もないということになりはしないだろうか、こういうように思っておるわけであります。そういう点で、今度レーガン大統領が日本を訪問されるわけでありますから、当然そういう世界の反核、軍縮のための米ソの対話といいますか、そういう場を早急に持つようなこととか、あるいはアメリカの高金利政策が諸国民に大変な損害を与えておるわけでありますから、そのことについて一言強く提起をするということが必要ではないか、このように考えておるわけであります。  さてそこで、次の問題として提起したいわけでありますが、IMFあるいは世銀を通じて発展途上国に対するいろいろな援助があるわけでありますが、特にそれに見合った形で民間の銀行が相当融資をしておるようであります。特に日本の場合を考えますと、これは去年の十一月二十二日の新聞に出ておったわけでございますが、大蔵省のまとめだというようなことになっておるようでございますが、去年の六月末で、中長期の対外債務の残高が五百五十四億ドルという数字で、何とこれ、日本円にして十四兆三千億、こういうことのようでございます。このうちの約三割の百九十億ドルが中南米、またその中でも非常に金融危機に見舞われておりましたメキシコには五十八億ドル、そしていま問題になっておりますブラジルへは五十六億ドル、こういうような金が出ておるようでございまして、本当にこういうものの回収の見込みといいますか、そのためにもまた今回の増資によって、そういうブラジル等に対して援助するということであるようですが、何かサラ金財政のもと、借金を返すために借金をするのだという状況で、今回の増資で根本的な解決になるのかどうか。そういう意味で、何かどぶに金をほかしているような結果に非常になっているのじゃなかろうか。何を言いましても、IMFあるいは世銀等につきましてもこれは国民の税金でありますし、また民間の銀行資本と言うたって、結局これは預金者の金なんでありますから、そういう点で、銀行が金を貸すなんて勝手だというわけにはいかないだろうと思いますが、そういう点についての考え方をひとつお聞かせいただきたい、このように思います。
  186. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  日本の民間の金融機関が対外貸し付けをしている残高でございますが、ことしの六月の数字でまず申し上げますと、中長期の外貨建てで五百四十億ドル、円建てのものが三兆五千億円、合計して約十六兆円相当くらいの中長期の貸し付けがございます。民間銀行の対外貸し付けにつきましては、本来、民間銀行自身が内外の金融市場を勘案しつつ自主的に決定するということで行っているわけでございますが、大蔵省といたしましては、従来から、民間が外貨資金を調達をしてきて運用するときに、中長期の外貨貸し付け等はできるだけ中長期の外貨資金調達を行うようにするとか、さらにまた、貸付先のカントリーリスクに対しまして、貸し付けが一つの特定国に偏ることのないようにするとか、いろいろのガイドラインを設けて、銀行の業務の健全性を確保する観点から指導監督を行っているわけでございます。  昨年夏以降、いろいろの国で債務支払い遅延の問題が起きておりますので、私どもも、先ほど申し上げましたいろいろな監督指導の強化をいたしまして、詳しくはお求めがあれば御説明させていただきますが、監督を強化しまして、日本の銀行に債務累積問題で大きな損失が起こることのないように、十分な注意をあらかじめ配慮をするようにいたしておる次第でございます。
  187. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても、民間資本といいますか、そういうものが先行して、その失敗の穴埋めを公的機関、国民の税金を使ってしているというような疑い、先ほど申し上げましたアメリカにおいてもその点を明確にすべきだという動きがあるようでございますから、わが国においてもそういうことは十分に配慮していかなければならぬだろう、このように思っております。  特に、経済援助においてもその中身がやはり問題ではないか。その国の経済自立といいますか活性化のために使われるのであれば非常にいいわけでありますが、そうじゃなしに、一部の特権階級を肥え太らせたり、あるいは軍部に力を入れたり、あるいはその国にあるところのアメリカを中心とした多国籍企業が結局もうけて、自国へ持ち帰るというようなことであってはならぬだろう、その穴埋めのためにまた国民の税金が使われるということになっておるのではないかと私は考えざるを得ないわけであります。  そういうことに関連いたしまして、わが国はアジアの一員でありますから、世界の困った国々にいろいろな形で協力することは当然でありますが、特に東南アジアの国々に対して、かつてアメリカが失敗したような経済援助じゃなしに、本当に自立自助というなら、そういうものを助けられる援助の仕方というものがありはしないだろうか、こういうように思っております。わが国の東南アジアに対する援助額といいますか、そういうものも、絶対額では多いのだろうけれども、国力に見合った出資にはなっていないのではなかろうか、私はこういうように思います。特に技術援助なども非常に要望しておるようでございますので、外務省の方もお見えのようでございますから、そういう対外援助のあり方というものについて、また、その中での東南アジアに対する援助について、どのように一般的に考えておるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  188. 川村知也

    ○川村説明員 わが国、特に政府ベースの対外援助を行うに当たっての基本的な考え方でございますけれども一つには、わが国が平和国家であるということ、それからさらには、自由世界第二位の大きな経済力を有するに至った国として、経済協力ということは、またそれを通じて世界経済の発展に寄与するということは、わが国の国際的な責務ではないかという考え方に立っております。また、このような援助を通じて世界経済の発展あるいは世界の平和と安定に寄与するということは、ひいてはわが国自身の平和と繁栄につながるものであるという考え方に基づいております。  そして、その経済協力を行うに当たっての基本的な目的と申しますか、そういう点から申しますと、経済協力というのはあくまでも南北問題の解決のために進めるべきである。南北問題の根底にありますものは、政府といたしましては、一つには諸国間の相互依存の関係、それから、いま一つは人道的な考慮、この二つの基本的な理念をもとにいたしまして、開発途上国の経済社会発展、それから民生の安定あるいは福祉の向上、これを支援するために行うものである、こういう考え方に立っております。  それから東南アジアでございますけれども、基本的には世界のいかなる開発途上地域にいたしましても、いま申し上げたような基本的な考え方に立って経済協力を推進しておりますけれども、申すまでもなく、東南アジアはわが国にとって地理的にはもちろん、歴史的、政治的、経済的、文化的、あらゆる面で最も近い開発途上地域の一つでございます。そこで御指摘のありましたように、わが国政府ベースの援助の地域的な配分の姿を見ましても、大体におきまして政府開発援助の七割はアジアに行っております。そのまた半分、したがいまして全体の約三割五分程度でございますけれども、これは東南アジア地域に配分された姿になっております。
  189. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 対外援助に対する姿勢について、各国に比べて日本は非常に少ない、総じて少ないということははっきり言えるのではなかろうか、このように思いますし、その中身においてもいろいろ問題があると思います。時間の関係がありますので、この問題については後日に発言したいと思います。  最後に、世銀のクローセン総裁はこういうことを言っておるのですね。「世界の軍事予算の総額は増額を続ける一方、それに比べてわずかな経済援助は増額が一段とむずかしくなっている」。あるいは「すべての政府は軍事費に百万ドルを追加することが途上国の開発に追加投資する百万ドルより世界の安全保障に役立つかどうか、自らに問うべきだ」こういうことで、世界の経済の活性化あるいは発展途上国に対する援助ということを考えた場合に、そういうむだな軍備拡張に予算を使うよりも経済の方に予算を回すべきだ、こういうことを言ったものだろうと思っておるわけでありますが、その点について塚原政務次官から後で答えていただくということと、それからアメリカのモルガン銀行の会長のプレストンという方がこういうことを言っているので、一回政府はどういう考え方を持っているのか聞かせていただきたい。「日本は、インフレ率が低く、経常収支も黒字を計上しているのだから、財政再建策を一時的に緩和して公共投資を増やし、内需を喚起すべきだ。」こういうことを言っているのですね。恐らくアメリカですから、貿易摩擦の解消という意味で、日本はもっと内需の拡大をすべきだ、あるいは日本の景気を回復すべきだという立場だろうと思うわけであります。  われわれは、われわれの立場考えるならば、本当に世界の景気が落ち込んでいるから日本も仕方がないんだということじゃなしに、世界をリードするというような意味も含めて、もっともっと内需の拡大を図って景気回復策をとり、雇用の増大、失業をなくする、そういう政策をとるべきじゃなかろうかと思いますし、また同時に、財政再建という名のもとで教育とか福祉が切り捨てられる。人勧、仲裁裁定、あるいは減税についても、大幅なものが御破算にされても、またそれが大型間接税との見合いじゃないかというようなことも出ておるわけでありまして、そういう点でわれわれ自身、いまやっております財界主導型といいますか、そういうものの弱い者いじめの臨調行革、財政再建というものに疑問を持っておるわけでありまして、そういう点について政府のお考え方を聞かせていただいたらありがたい、このように思います。
  190. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 まず私の方に御質問をいただきました内容につきまして、上田委員の国際情勢に対する御見識というものは、私どもたびたび各委員会で拝聴いたしまして敬服をいたしております。  防衛力の問題でございますけれども、これはそれぞれ御見解の相違というものはあるわけだと思います。総理もいろいろな委員会で御答弁を申し上げておりますが、最小限度の防衛力の必要性並びにそのことからの軍縮の重要性というような御答弁も申し上げているところでございます。  あわせまして先生にずっと御指摘をいただきました対外経済援助、これはもう日本の、これから世界において、世界の平和に大きく貢献をしていく、あるいは今日の経済力を持った日本が世界の中で貢献していく上にきわめて重要な、第一義的な要因であるというふうに考えております。十分に先生の御趣旨等も今後勉強をさせていただきまして、でき得る限りの対外経済政策というものをとっていけますように、全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  191. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 モルガン銀行のプレストン会長の御意見でございますけれども、こういう意見はプレストン会長のみならず、世界でも幾つかあるわけでございます。日本が経常収支の黒字を出して、ある程度の経済パフォーマンスもいいので、したがって財政支出を拡大して内需を拡大すべきではないか、これは第一次石油ショック以降いつでもよく出てきた意見でございます。顧みてみますると、五十二、三年のころもそういう意見が出まして、日本が財政で、あるいは世界の景気の中で機関車を演ずるべきだ、こういう議論でございます。そういうことで、財政の中でも許す限りにおきまして公債を発行するなどによりまして、内需を振興するなどの景気振興とか、機関車の役割りを果たした時期もございます。現にいまでも相当の公債を発行しながら財政支出を賄っているというのが、結果的というような面もございますけれども、景気の維持、あるいは後退を防いでいるというような面があるかと思います。  現在のわが国では、一つには、先ほど先生がよくおっしゃいました世界の高金利現象という問題を抱えておって、それで国内の景気を振興するためには金利を引き下げてということでございますけれども、それはまた為替の円安になる。円安になりますれば国内の企業利潤その他に響くというような矛盾もございます。いろいろの矛盾を抱えながら経済運営を図っていかなければならないということでございます。全体として眺めてまいりますときには、そういう行財政改革の問題なども抱えておりますので、そういう全体の姿を見ながら経済運営並びに財政運営をやっていかなければならないと思いますが、何といっても、仮に日本、がまた公共債などを発行することによりまして金利が上がる。いまアメリカの高金利だけでも世界は苦しんでおるわけです。第二の経済大国でございますわが国が高金利になりますことは、世界経済にとってもよろしくないのではないかという点で、先生の御意見も十分わかるところでございますけれども、慎重な財政運営、経済運営が必要ではないか、かように考えておるわけでございます。
  192. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 時間が来たようですから、終わります。
  193. 森美秀

    森委員長 阿部助哉君
  194. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 委員長にお伺いしたいのですが、尊敬する森委員長にして、これだけの大きな問題を二時間や三時間で片づけてしまおうというお考えはどこにあるんだろうか。私はちょっと不思議でしょうがない。アメリカでも両院でまだ協議が調わないとか、いろいろな意見があることは先ほど指摘したとおりでありますが、こういう問題を三時間やそこらで片づけようというのですか。私はちょっと委員長の気持ちをはかりかねておるのですが、どうなんです。
  195. 森美秀

    森委員長 委員長発言いたします。  たびたびにわたるこの大蔵委員会の理事会におきまして、結局のところ、最後は各党間の話し合いが無事決着いたしましてこういう次第になったわけでございます。あえて感想は申し述べません。終わり。
  196. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 先ほど委員長権限でちゃんと開会されるのです。国会法を見たって、理事会の理の字も出てこない。委員長権限なんです。大委員長ともあろう者がそれぐらいな見識を持ってくれなければ、この委員会をただ形式的にやりました、通しましたということだけでは済まぬのじゃないだろうかという点で、もう少しこういう問題はお互いに話し合いながら日本の進路を決めていく重要な案件だと私は思うので、そういう点で私は委員長にひとつ反省を促して質問に入りたいと思います。
  197. 森美秀

    森委員長 どうもありがとうございました。
  198. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この増資の問題は、十カ国蔵相会議というようなことで大体大筋が合意されたようでありますが、なぜ平均四七%にもなる大幅増資を必要とするのか、これが第一。第二に、わが国はその中でも七〇%にもなる大幅な増資。平均を大きく上回っておりますが、なぜそうなったのか。第三に、その効果はどのように考えるのか。時間が非常に制約されておりますので、これを簡単にお答え願いたい。
  199. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申します。  増資の全体的な規模でございますが、IMFの協定では、出資の総額につきまして大体五年ごとに見直しを行うということになっておりまして、最近における開発途上国の債務の問題、それから世界経済の伸び等を勘案しまして、今回平均して四七・五%の増資規模といたしたわけでございますが、過去の増資のたびの増資割合と比べてみましても、四七・五はさほど大きな数字ということにはなっておりません。  二番目の、平均が四七・五であるのに日本はなぜ七〇%の増資割合になっているかという点につきましては、今回の増資に当たりましては各国の経済実体に応じた増資を相当程度考えようということで、今回六百十一億SDRから九百億SDRに、約二百九十億SDR増加することになっておりますが、その増加額の六割は各国の経済実体に応じて配分するというようなことで、わが国の経済の力の伸びというものが勘案された結果七割ということになったわけでございます。保  今回の増資の結果どういうようなメリットが日本に及ぼされるのかという第三番目の点につきましては、今回の増資の結果わが国のIMFにおける出資割合、シェアが高まります。これは私どもの発言権がそれなりに高まることを意味するとともに、そしてまた出資割り当て額がふえておりますと、将来万一日本が外貨の面で困難なときに、IMFの資金を利用しなければいけない場合が起こらないとも限りませんが、そういう場合にはIMFの資金利用可能額がそれなりに大きくなるというメリットがあるかと思いますし、そういう具体的な個別的なメリットを離れましても、世界経済、金融社会の安定のためにIMFの資金力を強化するというグローバルな意味で、日本として力に応じた協力をするという意味でメリットがあるというふうに思います。
  200. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 後でこれはまた私の意見を述べることにして、一応この問題は聞いておきますが、ただ発言権が大きくなった、一体日本はどういう態度で第三世界に対応しておるのかということになると、何か私には疑問があるわけです。これは後でもう少しあれをいたします。  先ほど上田委員質問でもありましたように、アメリカにおいてもいろいろな意見があるわけですよ。やはり私もそう思う。何と言ったって物すごいインフレで、IMFのブラジルに対する――韓国にしたってインフレ率を九〇%に抑えなさい。これは九〇%以上なんだ。九〇%に抑えなさいなんというのは日本では考えられない。そうすれば当然金利も高い。しかも、これももう少し時間があれば後でゆっくりやりますけれども、変動金利制度をとっておる歩合がだんだん大きくなってきておる。そんな高い金利のところへ貸しました、まともに元利が返してもらえるなら、金さえあればだれだって貸したいですよ。そうすると、そういうことでアメリカの民間銀行がどんどん貸してしまった、民間銀行はもうけるだけもうけた、今度取れない、困ったから政府めんどう見ろ、そんなばかなことはしりぬぐいしておれるかいという意見があることは当然だと私は思うのだ。後で、民間銀行がいままでそういうことでもうけた金額もひとつ皆さん検討して出してもらいたいのだ。ちょっとこれは出にくいでしょう。だけれども、実際はそれをちゃんとしてくれなければ、民間銀行はもうけるときはもうけました、困ったから政府国民の金で何とかせいと言ったって、これは、資本主義というのは金持ちに都合がいいもんだ、私はこう思うので、ちょっとわからない。その点もありますが、累積債務がきわめて深刻になったということでやっておるが、累積債務の残高は幾らなのか。数字だけでいいです。
  201. 酒井健三

    ○酒井政府委員 開発途上国の累積債務につきましては、いろいろな機関が推計をしたりいたしておりますが、IMFが発表しております見通しては、実績見込みで、一九八二年末で債務残高が六千百二十四億ドルということになっております。
  202. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 八二年で六千百二十四億というのは非産油国だけじゃないのですか。産油国も合わせて残高がこれだけですか。ちょっと少ないと思うが。
  203. 酒井健三

    ○酒井政府委員 いま申し上げました数字は非産油開発途上国の対外債務でございまして……
  204. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いいですよ。  その累積債務は特定国に著しく集中しているはずでありますが、上位五位の国の名前と累積残高、それと輸出に対する比率をお示しいただきたい。
  205. 森美秀

    森委員長 早くしてください。時間がありません。
  206. 酒井健三

    ○酒井政府委員 これはモルガン・ギャランティーの発表でございますが、それによりますと、上位五位、一番債務の大きいのは一九八二年末でブラジルでございまして、八百六十三億ドル。それの輸出に対する比率でございますが、三四五%になります。その次が、メキシコが八百四十六億ドルでございまして、輸出に対する比率が二五三%。その次がアルゼンチンでございまして三百八十八億ドル、輸出に対する比率が三八八%ということになっておりまして、その次が、韓国が三百七十二億ドルの残高でございまして、輸出に対する比率が一二一%。その次が、ベネズエラが三百三十二億ドル、輸出に対する比率が一五五%というふうに推計されております。
  207. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまの数字で明らかなように、輸出総額よりも大きいのですよ。これでは勤勉に元利を払っていくなんというのは非常にむずかしい。しかも、私はここで指摘したいのは、この大きな借金をしておるブラジルにしても、アルゼンチンにしても、ベネズエラにしても、メキシコにしてもそうでありますが、韓国を除けばアメリカの裏庭みたいなところにある。ここに集中しておる。また、別な意味で言うと、メキシコはちょっと政権交代がありますけれども、韓国もひっくるめて大体軍事独裁政権であるというところに累積債務が集中しておるという点は大変特徴的だ、こう言わざるを得ないと思うのです。その点は認めざるを得ないと思うのです。  そうすると、一体なぜ国際金融の問題がこう問題になってくるのか。そこで私は、原因というか、なぜこうなったかという問題が解明されなければ、少しずつこの程度の増資をしてみたからといって解決ができないんじゃないだろうか。病気を治すのには、その病気のもとを解明をしないと治らないけれども、サラ金の手当てみたいなもので、困っておるから、いまやらないと大変なことになるからやるのだということだけなのか。多少将来の展望を持って、これで何とかなるのだ、何とか解決のめどが立つのだ、こういう考えでおやりになるのか、これは大変な重大なことなんです。何かどぶへ捨てるようなことでやってますます――援助必ずしもその国にプラスしないことだってあるのです。やればやるほど深みにはまるということだってあるのです。だから、これで本当にこの国々が何とか健全になっていくという見通しを持っておやりになるのか、それは先のことはわからぬ、とにもかくにもいまやらなければ大変なことになるからやるのだ、こういうことなんですか、どっちなんです。
  208. 酒井健三

    ○酒井政府委員 開発途上国がこういうふうに多額の債務を負うようになったまず原因でございますが、いろいろの原因考えられるかと思います。  御承知おきのように、過去二度にわたりまして大幅なオイルショックがございました。石油代金が二ドルのが、一時は三十数ドルというふうに上がってまいったわけでございますが、そういう石油価格の急騰に伴う支払い代金の増高。そしてまた、そういう石油の値上げというものが、開発途上国のみならず先進国にも大きな負担をもたらしまして、先進国がそのために景気低迷に陥る。先進国が景気低迷に陥りますと、先進国の輸入もかつてのようではなくなる。それがまた開発途上国からの輸出というものに大きく影響する。それから三番目には、先ほど大臣が触れましたように、一部の開発途上国では、行き過ぎた国内開発計画等による財政赤字や輸入の急増がある。さらに、最近の米国を中心とする高金利による債務国の支払い負担の増加というようないろいろの要因が重なっておるものと思います。その結果が現在の累積債務の問題でございます。  今回のIMFの増資によってそういう問題が解決できるかというと、それはそういう簡単な性格ではないと思います。今回のIMFの増資の規模は二百九十億SDRの増加額でございます。これをもって今日の大きな累積債務問題を解決することは無理でございまして、これは、この資金の充実にょりましてIMFから開発途上国、債務国に対する資金協力を行うとともに、開発途上国に対するいろいろな指導を行っていくことによりまして開発途上国の信認を回復させるというところにねらいがある。信認が回復すれば、民間の金融機関も融資をある程度維持することができるということでございます。  そういう意味で、この累積債務の問題の解決のために最も基本的なことは、債務国の厳しい自助努力が指摘されるのだろうと思います。厳しい自助努力によりまして経済調整を進めていくということを行わなければ、この問題について明るい見通しを持つことができないわけでございます。具体的にはIMFが融資をする際にいろいろ融資の条件をつけます。それによって開発途上国が節度ある経済運営を行い、そして国際収支の赤字を縮小改善する、黒字に持っていくというふうに努めて信認を回復していくことが大切だ。そういうような自助努力によりまして、開発途上国の経済再建の青写真ができ上がることが、経済再建中のその国に対する国際的ないろいろの金融的な支援を引き出すためにも不可欠でございます。そういう開発途上国の自助努力を促進させるという意味でIMFの融資の機能は考えられるべきであると思いますし、そういうことによってこの問題について明るい道を見つけていけると私ども考えている次第でございます。
  209. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 局長、大変懇切でありがたいのですけれども、時間がないので。石油ショックと言えば皆さんわかるんだよ。第一次石油ショックでどうだこうだなんてくどいことを言わぬでも、皆さんもう百も承知の先生だから、過大なプロジェクトと言えばそれでわかるのだから、もう少し短くやらないかな。  自助努力と言いますけれども、それが簡単にできると考えるのかというのが問題なんですよ。大体軍事独裁政権は、やはり無理をしておるから、どうしても大衆に迎合する、夢を与えたり、いろいろなことをしなければいかぬということになる。だから、IMFが自分で自粛しろと押しつければ軍事政権はひっくり返る、その可能性の方が強い。だから、なかなかうまくいかない。もう一つは、何といってもいままで軍事独裁政権アメリカの一部勢力と強く結びついておるところにいろいろな問題を持っておるのであって、もう少しアメリカの援助が  アメリカ自体にも大きな責任があると私は思う。そういう点で、これという程度の発言権もふえた。もっとも発言権が仮にあったとしても、日本がアメリカにそう文句を言うなんという度胸はないと思うので、それはやめますけれども、もう少し日本は日本独自の外交、平和外交を推し進めるくらいの気構えでなければ、私は幾ら金を出したってだめだと思うのですよ。アメリカの「タイムズ」、これを内閣調査室が出しておる。これを見たって、もう全然解決のめどがない、こう言っておるんだな。私も、いまのままだったら解決のめどはないと思うのですよ。そういう点で、呼び水になるかもわからないけれども、私はその可能性が非常に少ないと思うので、日本はもっと平和外交に徹して、多少つらかろうと、アメリカにもちゃんと物を申すようなことをしなければ、私はだめだと思うのです。  もう一つ、いま上田さんがちょっとお伺いしたようだったけれども、私ちょっと聞き忘れたので。大場財務官は、ブラジルへの輸銀の融資はむずかしいようなことが新聞に出ておった。ところがきょうの日経新聞にはまた五億ドルの援助をするようなことが出ておるのですが、この問題はどうされるのですか。やるのですか、やらないのですか。
  210. 酒井健三

    ○酒井政府委員 ブラジルの債務の救済の問題、IMFの総会の際に主要国が集まったときにいろいろ話が進みました。全体で百十億ドルくらいの金が今年の後半そして未年いっぱいにかけて大体必要であるというような感じでございます。そのうち民間銀行に六十五億ドルくらい金融支援をしていただきたいということで、それについては民間銀行の幹事行の基本的な合意ができたと聞いております。残りの四十五億ドルについてどうするかという問題で、これは民間も背負い切れないということで、公的な支援を何がしか行わなければいけない。そこで、そのうち二十億ドルくらいは既往の債務のリスケジューリングと申しますか、繰り延べで対応したい。それから二十五億ドルくらいを何か新しい資金調達ができないかというような話がIMF、アメリカ等からございました。  ところが、私どもが現在まで聞いているところでは、これに対しましてアメリカ以外の主要国はおおむね慎重な態度をとっておりまして、現在までのところ具体的な合意には達しておらず、日本としても何らの具体的な決定も行っていない段階でございます。もちろんわが国としては、国際金融不安を回避する上で、ブラジルの債務累積問題を円滑適切に処理する必要性は十分認識いたしております。しかし一方、債務累積問題の解決のためには、先ほど申し上げましたように、債務国の自助努力が基本でございますので、公的支援措置につきましては、今後ほかの債権国の対応ぶり等をも踏まえつつ慎重に検討いたしたいと考えておる状況でございます。
  211. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ずいぶんご、ちゃごちゃおっしゃったけれども、結局は、やらぬではないけれども、よその国の動きを見て決める、こういうことなんですな。そうじゃないんですか。
  212. 酒井健三

    ○酒井政府委員 まだ公的な支援をどういう形でどの程度行うかというようなことについて何ら決めておりません。しかし、そういうアメリカとかIMFの提案というも例もございますので、ほかの国々の動向等をも勘案しまして今後検討してまいりたいということでございます。
  213. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 何といっても、さっきもちょっと御答弁をいただいたのでありますが、この解決はなかなか容易じゃないと思います。累積債務が、先ほど言ったように、輸出総額の何倍にもなっておる。それで、この十年間に債務の残高が十倍にもふくれ上がった。それで、いろいろな資料を見てくると、これからますます増大する。その一つの大きな原因は、やはりその国のインフレとアメリカの高金利ですね。そこへもってきて変動金利制をたんたんとる。それは貸す方としては、金利が上がっていく傾向にあるとすれば当然変動金利制をとっていく。それがますます債務国の負担を大きくしておるというようなことを考えていくと、全く出口のないところへはまってしまったのじゃないだろうか。そうかといって、あなたがおっしゃるように自助努力――結構です。自助努力というのは大変いい言葉ではありますけれども、自助努力がどこまでできるかが一番問題なんですよ、どこの国でも。無理してやれば内乱が起きるかもわからぬ、政権がひっくり返るかもわからぬというところへはまるからいま難儀なんでして、その問題がなければ私はまだまだ楽だと思うのですけれども、その問題があるだけに、簡単にはできないという問題がある。  そういう点で、ここまで来てしまったんだから、皆さんの立場政府立場からいけば、これで世界が金融恐慌になっちゃ大変だということでやらざるを得ないこともわからぬではないけれども、それだけにもう一遍アメリカのいまの姿勢、特に財政赤字、そうして高金利、そのもとはと言えば、これは軍備拡張競争ですよ。一番大きな問題は、ベトナムでアメリカがあれだけ金を使って負けたというあたりから国際通貨が混乱をしてきた。今日なお軍備にあれだけ金をつぎ込んでいく、そして高金利政策をとっていくとすれば、低開発国の、借金国の自助努力だけでは私は問題は解決しないと思う。そういう点でもっとアメリカにも物を申すべきだし、日本自体も余り軍事予算なんていっぱい組むのじゃなしに、むしろ対外援助に回すぐらいの平和国家の姿勢をとるべきであって、IMF、アメリカが何か言うから金を出すのじゃなくて、シェアが幾ら大きくなったって、何も発言しないのでは、こんなものは何の足しにもならない。そういうことにいまの姿勢はなっておるのじゃないだろうかという懸念を私は持たざるを得ないのです。  そこで、もう少し詳しく申し上げますと、七八年から八二年にかけて、発展途上国の変動金利債務の比率は二三%から四一%へと幅が広がってきたのですね。変動金利は固定金利に比較して、金利低下局面ではいいけれども、金利が上がってくるときになると、債務国は大変な負担増になってくる。八二年平均の変動金利と固定金利を比較すると、変動金利は一七・五%に対して固定金利は七・九%と、二倍以上の高金利なんですね。そうすれば発展途上国の債務がだんだん重くなって、債務の七五・五%はメキシコ、ブラジル、アルゼンチンの中南米三カ国に集中しておるのですが、これらの国の外貨のやりくりが悪化するのはもう当然のことであります。高金利のために、主要借入国は利息の伸びが債務の伸びの三倍近くにもなっている。政府の通商白書か何かでも、高金利が累積債務問題を深刻にしている直接の原因であると言っておるのでありまして、私は、これをつくっておる一つの大きな責任は、繰り返すけれども、やはりアメリカであると思うのであります。  そういう点で、日本政府アメリカにもっと強く注文をすべきだし、もう一つ、時間がないからはしょって申し上げますけれども、やはり余りにも選別融資が過ぎるのじゃないだろうか。確かに、ある意味で言えばメキシコは石油を持っておる、ブラジルは資源が多い。だから、まさか取りっぱぐれはないだろうという気分がなきにしもあらずだったと思います。それで、金利が高いから、銀行はみんなもうけるために貸していった。そのしりぬぐいを国民の金でやらなければいかぬということは、アメリカの議会だけではなしに、われわれにとってもやはり不満なんだな。そういう点で私は、大体この五年間ぐらい、日本の銀行はどれくらい利息を取り上げたのか、一遍調べて出してもらいたいと思いますが、どうです。
  214. 酒井健三

    ○酒井政府委員 この問題は、債務累積額が非常に大きいだけに、私どもとしても短期間のうちに解決できる問題だとは思っておりません。この問題の解決にはかなりの期間を要することを覚悟しなければならないと思っております。  それから、この問題に対する対応といたしましては、先ほど申し上げました関発途上国の自助努力が基本でございますが、先進国としても幾つかなすべきことがあると思います。  その一つは、開発途上国の債務返済能力を向上させるために一先進国として持続的な経済成長を維持するということ。それは開発途上国からの輸入に大きく影響するわけでございます。そしてまた、その輸入の際に、開発途上国の産品に対して開かれた市場を設けておく、そういうようなことで輸入制限的なことを避けるように努めていかなければならない。そしてまた、資金繰りのためには金融市場を開放するということが必要でございます。  さらに、先生御指摘のように、債務国の負担軽減のために金利低下をさせるということがきわめて重要でございまして、日本といたしましても機会あるごとに、たとえばウィリアムズバーグ・サミットであるとか、それから今回のIMF総会の際におきましても、ほかの主要国とともどもに、米国に対しまして金利低下の重要性を指摘し、そのためにも、先進国における一層の財政赤字削減が必要であるということを主張してきているわけでございます。  日本の発言の仕方がやや手ぬるいんじゃないかというような御指摘でございますが、かっての日本の発言の強さに比べますと、今日においてはその発言の重みというものは非常に大きくなっているというのが現実の姿でございまして、今後も機会あるごとにアメリカに金利低下の必要性、世界経済のためにいかに重要であるかということを強く指摘していきたいと思っております。  さらに、先進国におきましては、この債務累積問題がなかなか長引く問題でございますので、民間銀行が中長期的な視点に立って貸付方針を考えるというふうにしていくことが必要だろうと思います。  さらに、先進国を含めたところでできております国際金融機関、IMFとか世銀等が開発途上国の自助努力による経済成長を助けるというようなことで、今後より一層大きな役割りを果たしていかなければならない。こういうような開発途上国、先進国、国際機関、金融機関、そういうもののそれぞれが、いま申し上げましたような多様な努力を今後続けていく必要があるというふうに考えております。今回の増資は、規模から言いましても、決して民間の銀行の貸し付けの肩がわりをするというような規模でもございませんし、また性格もそういうものではございませんで、触媒的な役割りを果たすということを主眼としているわけでございます。  最後に、民間の金融機関がそれでは開発途上国に対する融資によっ七一体どれだけ利益を上げたかという点につきましては一現在ちょっと数字を持っておりませんので……。
  215. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは今回の融資が直接反間の肩がわりと私は言っておるわけじゃないのですよ。確かにいろいろな呼び水的な役割りや何かはするけれども、ある意味でこれだけの債務がなければこんなに金を出すことはないのでして、やはり多少は回り回るだろうけれども、私は肩がわり的な面を持たないではないと思う。全然否定はできないと思うのですよ。そういう点で、出した金がすぐ銀行く行くなんということを私は考えませんよ。それはだれだってわかっておる話だ。だけれども、結局これはそういう後始末をしなければいかぬようになってしまったのだ。私はこの増資が、結局はアメリカの軍拡、高金利政策を支え、またアメリカを中心とする金融機関がこれを救済する、そして中南米の独裁政権や何かを援助するためのカンフル注射になるだけじゃないかというおそれを抱くのです。皆さんは恐らくそう肯定はされないとは思うが、私はそういう可能性すら持っておると思うのでして、そういう点でこのIMF増資、そしてIMFのこれからのあり方というものに一つの大きな反省がなければいかぬ。そのためにはやはりこれのよって来る原因をもう少しきちんと解明しなければいかぬです。やはり私は大きな意味で言えば米ソの軍備撃と思います。これがなければ世界経済というものはもう次から次へとこういう問題を起こしてくるのじゃないか、こう思うのでして、皆さんの方が私の意見をすぐ肯定するとは私は思っていないのですよ。だけれども、私はそう思っている。  そこで、最後に、大体時間のようでありますからはしょりますけれども、開発途上国では、かねてから新国際経済秩序、NIEOというのですか、この実現を熱望しておりまして、今日の経済困難、経済危機を打開する方策を主として国連の場で決定したい、こういう願いを持って提案をされておるわけですね。IMFにしたって、ある意味では株式会社的な方式で、発言権が出資額に応じて決められるというような傾向を持っておる。国連はそうではなしに、総会になれば一国一票であります。そういう点で開発途上国の発言権が大きくなるということは当然のことなのです。また、ある意味で先進国ではそうなっては困る、わがままを言われては困るという気分もないではないと思う。しかし、その辺が私は国際協調のあり方だと思うし、新国際経済秩序の要求しておる中では、第一次産品の価格補償の要求であるとか、援助のあり方に対する要求であるとか、幾つかのものがあるけれども、方向としては、私はIMFなんというものじゃなしに、やはり国連の場でみんなで話し合いながら、世界が話し合いの中からこの新しい世界経済というものを形成していく、こういう方向をたどるべきじゃないだろうかと思うのですが、これは本当を言うと皆さんよりも政府考えを私は聞きたいのです。
  216. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 第二次世界大戦が終了いたしまして、世界が知恵を出し合っていろいろな国際機関をつくってまいりました。それなりの活動もしているところもあれば、また大変大きな貢献をしている機関もあるわけでございます。ただいま先生から大変御心配をいただきましたIMFの問題につきましても、これは大体五年ぐらいで毎回このような形の法律というのは恐らく出てくるものでありましょうし、今後のますますの勉強、また国会で御議論をいただくという形のものが出てくると思いますけれども、この機関もやはりきわめて重要な機関であると思います。  また、先生から御指摘いただきました国連というものを中心とした平和維持のための努力をするというのは、これは何といっても重要な問題であろうと理解をいたしております。唯一の被爆国としての日本が世界の平和にますます貢献できるように、世界のあらゆる機関を通じまして政府といたしましてもがんばってまいると言うと、何か総理大臣のする答弁のようになってしまいますけれども、ただいま一応政治家の政府側は私だけでございます。阿部先生の御質問に対しても、はなはだこれは失礼でございます。その辺おわびを申し上げまして、御答弁にさせていただきます。
  217. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 以上で終わります。
  218. 森美秀

    森委員長 柴田弘君。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  219. 柴田弘

    ○柴田委員 いまいろいろと質疑があったわけでありますが、私からはまず今回のこのIMFの増資問題に関連をいたしまして、世界的な金融不安、この問題は三月三日の予算委員会において質問をいたしまして、大蔵大臣並びに当時の国際金融局長からいろいろ答弁があったわけであります。そのときに大蔵大臣は、IMFの機能がきちっと働いておれば国際的な金融不安は起こらない、こういうふうに答弁があって、その理論的な根拠として、国際金融局長からは、ユーロ市場の規模は七千億ドル近くに達しているが、このうち産油国が先進国の銀行に預けている預金が一四%であるから、多少取り崩しても大きな影響はない、原油の値下がりで産油国の収入は減るが、その分石油消費の多い先進国の収支が改善をされる、累積債務に悩んでいたメキシコは先進各国の追加融資で当面最悪の事態は乗り切れる、こういう見通しである、だからまあ大丈夫だろう、こういうふうな答弁がありましたね。あれから約半年たって今日になるわけでありますが、現状のこの世界的な金融不安は大丈夫かどうか、大蔵省当局としての御認識をまずお伺いをしておきたいと思うのであります。
  220. 酒井健三

    ○酒井政府委員 昨年の夏以来、中南米その他の非産油開発途上国におきまして債務返済に困難を来す国が出てきたわけでございます。昨年のIMF総会の際には、メキシコに対する債務救済をどうするのかということが非常に大きな問題でございました。今年のIMF総会の際に、確かにブラジルに対する追加的な資金援助をどうするかというのはかなり大きな問題ではございました。しかし、アメリカ、カナダを初めその他の諸国においても景気が回復の道に向かっているということ、それからまたこの一年間の国際金融社会における先進国、国際金融機関の経験、また民間銀行の対応のしぶり、そういうものから考えまして、債務累積問題が国際金融不安につながることはないというような見方が広まっているというのが現状がと思います。
  221. 柴田弘

    ○柴田委員 そういった心配はない、こういう判断でよろしゅうございますね。  そこで、先ほどもいろいろと議論がありましたが、ブラジルに対する累積債務問題、一応総額で百十億ドル、このうち六十五億ドルを民間が請け負う、四十五億ドルを先進国の政府、IMFなどの公的機関が負担する。この四十五億ドルのうち二十億ドルは返済繰り延べ資金だ、二十五億ドルが各国の輸銀の信用供与、新規融資ということになりますかね。それですでにアメリカはこういった方向で、この新規融資の二十五億ドルのうち十二億五千万ドルは出そう、こんなように言っておるということであるわけでございますが、わが国先ほど答弁がありましたように、いままだ決定をしておりませんね。きょうの新聞を見ると、返済の繰り延べで五億ドルを負担しよう、こういうふうに出ておるわけです。これはまだ決定していませんね。それはそれでいいわけでありますが、すでにアメリカの輸銀が全体の半分に当たる十二億五千万ドルを負担する、こういうふうに表明をしているわけでありまして、もし日本が新規融資しない、繰り延べだけだということになりますと、これは全体の救済計画というものが狂ってくるのじゃないかと考えられるわけであります。でありますから、この辺きちっとしていかなければいかぬのじゃないか、こういうふうに思います。いまのようなそんなあいまいな返事ではなしに、そこら辺、一体どうしていくのかという確たる答弁を一遍お願いをしたいわけでありますが、どうですか。
  222. 酒井健三

    ○酒井政府委員 御指摘のように、ブラジルに対する公的な金融支援といたしまして四十五億ドル、そのうち二十五億ドルを新規の融資というような話がアメリカ、IMFからあったというふうに聞いております。しかし、それをどういう分担割合で、そしてまた国によりましては制度的な困難を伴っている国もございます。具体的に申しますと、片っ方でいままでの融資というのが返済繰り延べになっている、そういうところに輸出信用を供与する機関から追加的な新規融資を出すというのが非常にむずかしいという国もございます。そういうようなこともございまして、公的金融支援について各国がどういうスタンスで臨むのか、アメリカ以外についてははっきりした話をまだ聞いていないわけでございます。  そういうようなことで、今後アメリカ・からは、先生御指摘のように全体的なスキームというものを維持するために協力をという要請が来ることは十分予想されますが、ヨーロッパの主要国なんかも、一体どういうやり方で、そしていかなる程度、どのくらいの分担割合でやるのか、現在のところはまだ何にも話が固まっていない状況でございますので、今後主要国が相談し合って、どういうふうに対応するのか固めていくことになるのだろうというふうに考えております。
  223. 柴田弘

    ○柴田委員 アメリカは大体出そうと言っているわけです。日本とヨーロッパ各国がまだはっきりしないわけですね。それで、日本としては、アメリカ以外のヨーロッパ諸国が新規融資に応じましょうと言ったら、やはり新規融資に持っていくのか、それでも日本の立場として、どうしても繰り延べだけでしかいかないのか、どうでしょうかそこら辺は。
  224. 酒井健三

    ○酒井政府委員 その辺につきまして、まだIMFへ行った私どもの方の代表の連中が帰ってきておりません。帰ってきましてからもう少し話を聞きまして、どういうような対応を日本としてすることができるのか、そういうような日本の対応でも国際的な理解が得られるのか、その辺を十分検討したいと思っておりますが、現在のところ具体的には先生の御設問に対する結論は出ておりません。
  225. 柴田弘

    ○柴田委員 では、次に進みます。  次は、対外経済対策の問題であります。貿易摩擦の激化を避けるために、黒字減らしというのはわが国にとって非常に必要である、こういうように考えます。そこで、九月に入りましてから、内閣官房を中心にいたしまして経済企画庁、大蔵、通産、農水、外務省、関係五省庁による連絡会議を設置されまして、対外経済対策についていろいろ御検討をなされている。何とか九月いっぱいでこの経済対策のきちっとしたものを打ち出していきたい、こういう政府の方針だと伺っているわけであります。事務局案としては内需の拡大策、輸入促進策、市場開放対策等々五項目あると思うわけでありますが、この辺の具体的な取り組み、考え方、経済企画庁の方で御答弁できれば、簡単で結構ですからよろしくお願いします。
  226. 田中努

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  最近の経済情勢を見ますと、経常収支の黒字がかなり大幅な水準で続いておる、また国民所得統計の速報等から見ましても、内需の盛り上がりを欠く状態にあるというふうな経済情勢を踏まえまして、経済企画庁といたしましては内需中心の経済成長を確実なものにしていく、また調和のある対外経済関係を維持していく必要があるという考え方に立ちまして、所要の措置の検討を行っておるところでございます。経済企画庁が取りまとめ役となりまして、関係省庁にそれぞれ所要の対策の御検討を進めていただいておるところでございまして、関係省庁と御相談しながら鋭意取りまとめを行っておるところでございます。
  227. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで私は、この対策の目玉はやはり内需拡大策、その中で特に必要なのは、予算委員会あるいはしばしば当委員会等で議論もあっているわけでありますが、やはり所得税減税、景気回復に役立つ相当規模の減税、それから公共事業の追加、公定歩合の引き下げを含む長期金利の引き下げ等々の金融措置が必要である、こういうふうに私は考えているわけであります。その辺はどうお考えになっていらっしゃるか。特にこの辺は私は要求していたわけでありますが、いかがでしょうか。
  228. 田中努

    ○田中説明員 ただいま御指摘の内需拡大策につきましても、検討の一環といたしましてただいま検討いたしておるところでございます。
  229. 柴田弘

    ○柴田委員 特に御要望をしてまいります。  それからいま一つ、黒字減らし対策としての輸入促進策。当初の政府見通しては、経常収支の黒字幅は九十億ドルであったのが、どうも最近の試算によれば百八十四億ドルぐらい、倍以上になるのではないか。この輸入促進対策についてもひとつ、お考えになっている点があれば具体的に御説明を賜りたいと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  230. 田中努

    ○田中説明員 輸入の促進につきましては、市場の開放、それからいろいろな財政、金融的な措置によります輸入の奨励というふうなことも含めまして、対策の重要な項目の一つといたしまして検討いたしておるところでございます。
  231. 柴田弘

    ○柴田委員 具体的に、輸入促進策に関連をいたしまして私の方へ要望がありました。通産省あるいは大蔵省へも要望があったと思います。  電子機器、部品、材料等の輸入促進に関する要望でありますが、通産省の貿易局には局長あてに、特別低利円融資制度適用、あるいは政府機関における輸入品の優先購入及び新規発明品に対する輸入税の免税、日本のメー力ーによる模倣の防止、製品輸出企業に対し外国品を採用するような行政指導、関税の引き下げ及び通関手続簡素化についての要望、これは大蔵省かもわかりませんね。あるいは会計上の配慮、輸入品に関する国内代理店の保護、輸入機械展示会への助成等々九項目にわたって要望がありました。これに対して今後どういうふうに取り組んでいかれるか。中には大蔵省に関連するものあるいはその他他省庁に影響することもあるかもしれませんが、ひとつあなたの方のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  232. 奈須俊和

    ○奈須説明員 お答えいたします。  先生御指摘の、貿易収支黒字幅の拡大傾向という問題につきましては、もちろんこれは輸出サイド、輸入サイド、要因としてはあるわけですけれども、現在のものは原油価格の低下等を反映しました輸入の減少に主として起因することでございますので、この貿易収支黒字幅という問題につきましては、輸入の拡大により問題の解決を図ることが重要であると考えております。そのためには、通産省としましても、新たな輸入促進対策を展開していくことを非常に重要と考えておりまして、現在、関係各省庁とともに具体的な策を検討中でございます。いま先生のお話のございました要望につきましても、十分耳を傾けまして検討させていただきたい、検討の中に取り込んでいきたいというふうに考えております。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕
  233. 柴田弘

    ○柴田委員 漠然としたお答えでなくて、これは大体いけるようだ、これはちょっと無理だとか、検討していらっしゃる、たとえ二点でも三点でもいいから、ちょっと具体的な答弁をできればお願いしたい。
  234. 奈須俊和

    ○奈須説明員 御要望の各項目についていろいろ考えておりますが、これは全部含めまして先ほど来御議論のございます輸入促進対策の一環ということで、関係各省庁とともに検討中でございますので、現在、まだちょっとその辺の結論を申すことは控えさせていただきたいと思うわけでございます。
  235. 柴田弘

    ○柴田委員 わかりました。  では関税局長、関税局の方にも要望が四項目行っておると思います。関税の引き下げ、あるいは機械本体の附属部品の課税率、修理のために機器を外国メーカーに返送する場合の手続簡素化の問題等々四項目ありますね。これはどう対処されますでしょうか。
  236. 垂水公正

    ○垂水政府委員 ただいま御質問のありました日本電子機器輸入協会の御要望につきましては、貴重な御提言の一つとして私ども現在検討をさしていただいております。先ほど委員御自身御指摘になりましたように、この要望の中には、細かく申し上げますと、私どもによこされました中にも他省庁の所管に属するものがございますので、それにつきましてはそちらにゆだねたいと思います。  さはさりながら、一般論として関税の引き下げと輸入検査手続の簡素化について申し上げますと、まず関税の引き下げにつきましては、国内産業事情及びわが国の市場の開放の要請等を踏まえて適切な対応策をとることにしております。現に、御要望のうち医療機械の一部の関税につきましては、本年四月の五十八年度改正において、東京ラウンドの交渉で国際的に合意を見ました最終譲許税率にまでもうすでに引き下げを行っておるわけでございます。今後ともこの基本方針に沿って適切な関税を引き下げを行ってまいりたいと思っております。  片方、輸入検査手続の方でございますが、これにつきましては、委員御案内のとおり、昨年の四月から通関手続の改善五項目というものをすでに実施に移しております。これにつきましては、米国の政府当局あるいは国内の関係方面からも高い評価を受けていると考えております。しかしながら、通関手続について、あるいは輸入検査手続について、これから関心は高まってまいるものと思っておりますので、そういう客観情勢を十分勘案の上、また御提起の点についても勘案しまして検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  237. 柴田弘

    ○柴田委員 いずれにいたしましても、秩序ある商業活動、自由主義貿易体制を堅持して、お互いに各国との貿易の振興、国際経済社会の発展に寄与する、こういう観点から、どうかひとつ通産省、大蔵省ともども十分に御検討をいただきまして対処をしていただきたい。心から御要望しておきたいと思います。  最後に、時間がありませんので一点御答弁をいただいて終わります。  変動相場制の見直しの問題です。この問題はやはり私も先般の予算委員会でやりました。まだ固定相場制への移行というのは考えられないけれども、やはり今日のようにこんなに円が上下してしまえばだめだ、こういう観点から、変動相場制というものをどういう方向へ持っていこうかという、その見直しが検討課題だということで、去る九月二十四日に先進十カ国蔵相会議が開かれて、その通貨改革作業を開始していこうということで合意されたと新聞は報道しているわけでありますね。こういった問題を大蔵省としてはどういうふうにいま御認識なさり、対応していかれるお考えであるのか、お聞かせをいただきたい。
  238. 酒井健三

    ○酒井政府委員 国際通貨制度の問題につきましては、御指摘のようにウィリアムズバーグ・サミットで合意ができておりまして、その後具体的な進展がなかったわけでございます。ところが、今回の会議におきまして、この問題の検討の場を十カ国蔵相会議にしようということで関係国の意見が一致をいたしまして、近くこの蔵相の代理の会議を数週間以内に開催をいたしまして、一体どういうことを検討するのか、どういうタイミングで検討を進めていくのか、そういうものを協議をいたしまして、その蔵相代理会議における検討の結果を、明年初めごろに恐らく十カ国蔵相会議がまた開かれるだろうと思いますが、その場に御報告をする。そして、十カ国蔵相会議でこの検討の結果について御了解が得られれば、その線に沿って検討を進めていくということになっております。  今後のあるべき通貨制度はどういうものが望ましいかということについては、いろいろまだ意見がございまして、フランスのミッテラン大統領がかなり主張したことは御承知おきのとおりでございます。しかし、現実の問題として考えた場合にどういう制度が可能かという点につきましては、これもまたいろいろの意見がございますので、今後その辺も含めて議論をしていくことになるだろうと思いますが、私どもとしては、今日の世界経済情勢のもとで固定的な相場を維持するのはなかなかむずかしいという現実を踏んまえて、考えていかなければならないかというふうに思っております。
  239. 柴田弘

    ○柴田委員 時間が参りましたので、終わります。
  240. 森美秀

    森委員長 御苦労さまでした。  米沢隆君。
  241. 米沢隆

    ○米沢委員 今回の国際通貨基金の第八次増資並びに本年一月十カ国蔵相会議で合意が成立いたしました一般借り入れ取り決めの拡大、改組等の対策は、もとより特に昭和五十七年の夏以降の開発途上国の債務累積問題に端を発する国際金融不安に対処するものである、こう理解をいたしております。しかし、OECDの調査等によりますと、発展途上国の八二年末の対外中長期債務残高は推計六千二百六十億ドル、七一年末の七倍近くにふくれ上がっておる。毎年返済する元本は、もちろんアメリカの高金利で利息も急膨張し、八二年末の元利返済額は千三百億ドルを超えると言われております。同時にまた、住友銀行の調査等によりますと、いまから八七年までの五年間の借入純増額は、ブラジル、メキシコ、ベネズエラ、アルゼンチン、フィリピンの五カ国だけで計約七百億ドル、途上国全体で約二千億ドルになると見られておりまして、今後も途上国の累積債務はふくれ上がる可能性が大変強いのであります。先ほど議論にもありましたように、その上これらの国々の今年度の必要支払い額は、これらの国が稼ぐと見られる輸出額を上回っておる。こういう状況を前にいたしまして、果たして今回とられた措置でねらいどおりに国際金融不安を静めることができるのか、まず基本的な問題について政府の認識と、その金融不安が解消に向かうと見ていいのか、その見通し等について所見を伺いたい。
  242. 酒井健三

    ○酒井政府委員 今日の累積債務の問題は、なかなか早期に解決のできない、非常に頭の痛い問題でございます。この問題に対応するのには、先ほど申し上げました開発途上国のみならず、先進国、国際金融機関がそれぞれの分野で努力をしていく必要があるわけでございます。今回のIMFの増資及びGABの拡大、改組によりましてこれがすぐ解決できるという問題ではございませんが、IMFの資金力、指導力の強化によりまして、われわれとしては債務累積問題に明るい道を開いていきたい。これによりまして国際経済社会は、この累積債務問題を何とか克服していくことが可能になるというふうに考えておる次第でございます。
  243. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、今後の国際金融不安に対処する立場で三つのポイントがあると思うのです。一つは、先ほどから言われておりますように、アメリカの高金利が是正されるかどうか、第二は、今回のIMFの強化策によって、民間の金融機関がIMFに対して信認を高めたかどうか、第三がいわゆる世界不況の克服、先ほどから議論になっておりますように、途上国の経済安定の度合い、この三つが大きなポイントだろう、こう思うのですね。  そこで、簡単にお答えいただきたいのでありますが、第一の、アメリカの高金利が是正されるのかという問題です。御承知のとおり途上国の金融危機続発というものは、アメリカの高金利、ドル高によって世界不況が長引いておるというのが大きな原因でございます。アメリカは巨額の財政赤字を抱えたままでありまして、本当にインフレなき持続的成長という軌道に乗ってアメリカの金利が下がる方向にあるのかどうか、そのあたりの見通しについて大蔵省の見解を聞かしてもらいたい。  第二に、御承知のとおり、国際金融不安の高まりによって、昨年後半から民間金融機関が途上国からの資金を引き揚げたりあるいは新規貸し出しの縮小等をやっており、それがまた途上国の資金繰りを一段と悪化させて不安をさらに高めるという悪循環をつくっているわけでありまして、今回の措置が民間金融機関をして、これならばまだ開発途上国とおつき合いをしていいという気持ちを起こさせるかどうか、今回の措置がそういうふうに民間金融機関にとって歓迎するようなものであったのかどうかというこのことが大変大事だ、そう思うのですね。そういう意味で、今回の措置によりまして国際金融界が、これで安心して途上国融資をふやし、世界の資金循環が正常に向かうという保証があると言えるのかどうか、大蔵省はどういうふうに理解をされておるかが第二点。  第三の問題は、何といいましても基本的には発展途上国の経済が回復して発展をしていく、そしてもうけて返す余力ができてこない限り基本的な解決にはならないわけでありまして、そういう意味では、先進国の立場としてはやはり発展途上国の経済を回復さしていく、そのために汗をかくことが先進国の責任だと思う。そういう意味で日本政府としては、そのような先進国の責任というもの、あるいはその施策を実行していく場合の実施方のやる気というものをどれくらい持っているのか、その三点について聞かしていただきたい。
  244. 酒井健三

    ○酒井政府委員 アメリカの金利の動向につきましては、先ほど大臣が御答弁なされましたですが、アメリカの中におきましても、財政赤字が解消しない限り高金利は是正されないという見方と、財務省やなんかは財政赤字と金利とは余り関係がないというような言い方をしております。しかし、アメリカの高金利がいろいろの弊害を世界経済にもたらしておることを、私どもとしてはアメリカにも強く認識してもらう必要があるということで、さきの先進国首脳会談におきましても、アメリカの金利の是正、そのためには構造的な財政赤字の解消というものに努力すべきだということが強調されており、私どもも機会あるごとにアメリカに高金利の是正を主張しております。  それから第二の、民間の金融機関の開発途上国に対する信認の問題でございますが、IMFめ資金力を強化することによりまして、IMFからの融資条件、コンディショナリティーと申しておりますが、それによって適正な経済運営を行っていく。開発途上国におきましては、それはある場合にはかなり厳しい政策を求める場合もございますが、それによりまして開発途上国が調整をうまくやってくれるという自信を民間金融機関に持たせることが非常に重要でございまして、そういう意味でIMFは融資に伴って触媒的な機能を果たしていく、そういう意味合いからして、今回の増資によりましてIMFの資金力を強化することが、民間の金融機関の開発途上国に対する信認を維持させることに大きく貢献するものだろうと思っております。  それから、三番目の御指摘の問題でございますが、債務累積問題への対処としましては、もちろん開発途上国の自助努力も必要でございます。しかし、先進国におきましてもインフレなき持続的な経済成長というものを維持することがきわめて肝要であることは、過日のIMFの暫定委員会でも、各国とも意見を同じくしたところでございまして、インフレなき持続的成長を維持することによりまして、そしてまた開発途上国の輸出に対して門戸を開いておく、自由貿易体制を維持することによって、先生御指摘のように、彼らの輸出によってこの債務問題に対処していくというのが基本的な方向だろうと考えております。
  245. 米沢隆

    ○米沢委員 この問題を考える場合、現在の国際金融不安の原因になっておる発展途上国の累積赤字、これが一時的な不況によってもたらされた、だから不況が克服されればさっと解決していくものなのか、それとも構造的なものなのかという判断が大事だと私は思うのですね。私どもはすべて構造的とは言いたくはないのですが、かなりの構造的な要因を持っておる。そうなりますと、将来的にもわれわれはIMFを通じて陰の経済協力みたいなものをやっていかざるを得ない、そういう立場にあると思うのですね。  そこで、先ほどから議論がありますように、それぞれの国の財政出費まで余り理屈は言えませんけれども、軍事がどうだとかいう議論をやって、結果的には自分たちででたらめをやって、それに対してわれわれが貴重な税金を出して救うなんというのはちょっと理解しかねるという議論があるかもしれませんけれども、それは内政干渉にわたる問題でありまして、確かにその国の自助努力を要請していかなければなりませんが、やはりおつき合いする立場は今後も変わらない、そう思うべきだと思うのですね。  そこで、さきの発展途上二十四カ国蔵相会議のコミュニケを読んでおりますと、われわれは確かに大変なのだ、経済成長は四年連続マイナスで、非産油途上国の対外債務は一九八二年末に六千億ドルに達し、一次産品価格はここ四十五年間で最低水準に落ち込み、貿易条件は大幅に悪化しておる。したがって、IMFを強化してもらいたい。そして、IMF第八次増資は不十分だ、第九次増資の繰り上げ実施を検討してもらいたい。そして、第八次増資実施後もIMF融資の現行限度枠は継続すべきだ。IMFは融資に伴うコンディショナリティーを緩和し、八三年の流動性不足に緊急に対処すべきだというふうに――今回のIMFの措置に加えて、今度は限度枠を決めたりしましたね。そういうものに対してかなりの不満をぶち上げております。そういう意味では、今後の問題として、日本も開発途上国のこういう不満に対処してやらねばならぬ、そういう立場にあるのですが、そのあたりをどういうふうにお考えでしょうか。
  246. 竹下登

    竹下国務大臣 これはお説のとおり、そういう国際会議の場において、特に開発途上国グループとでも申しますか、そういう会合におきましては、絶えずそのような主張が行われます。そのときに心していなければならぬのは、国によっては多少金持ちは貧乏人に恵むべきだというような宗教上の気持ちのある国もございましょうが、総体的に言われた場合、その国自身のいわば開発に対する自助努力が足りないからそういうわけにはいかないのだというような対応の仕方だけで済む問題ではないと私は思っております。これがサミットにおける中曽根総理の、「南の繁栄なくして北の繁栄なし」という言葉に象徴されたごとく、これからのわが国の経済協力の基本的な考え方として持ち続けていかなければならぬ気持ちだと考えております。  それと同時に、これはいささか私見にわたりますが、実際問題、東海道新幹線を見、東名高速を見、あるいは黒四ダムを見た場合に、かつての日本はそういう借りる側におった。それが国民の自助努力とともに今日あるというようなことを考えると、なおのこと、国際社会の場における経済協力の使命感というものを維持し続けていかなければならぬ問題だと考えております。
  247. 米沢隆

    ○米沢委員 そこで、いま国際援助機関の資金調達が大変苦しくなっておる、こう言われております。先般は、米州開発銀行の第六次融資では貸出条件の緩やかな特別業務基金の伸び率が抑えられた。また、国際開発協会いわゆる第二世銀における第七次増資の問題も交渉が難航しておる。ことし四月の世銀・IMF合同開発委員会は、その共同声明の中でアメリカを名指して非難するという異例の事態があったと言われておりますが、それもこれも、ともにアメリカが自国の資金難を理由として新たな資金拠出に非常に消極的な姿勢を示しておるということに端を発しておる、そう思うのです。また、新聞等を読みますと、現在アメリカではIMFの増資法案審議が難航しておるとも言われておりまして、最大の拠出国であるアメリカのIMF増資がおくれれば、ただでさえ苦しいIMFの資金繰りは一段と苦しくなるのは明白であります。その影響はひとりアメリカ一国云々の問題ではなくて、今後の国際金融不安に対する世界各国のスタンスが崩れる危険性がある生言わねばならぬと私たちは考えます。  そこで、アメリカが国際援助機関に対して、資金難を理由にして出し渋る、こういう問題について政府はどういう認識、気持ちを持っておられるのか。私は、このアメリカの消極的な姿勢に対しては、大国は大国としての責任を果たせとやかましく言ってしかるべきだ、そう思うのですが、大蔵大臣の見解を聞かせていただきたい。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 私はいまの意見に全く同感でございます。国際会議の場、なかんずくそういう機関への出資、増資等の問題になりますと、米側の主張というのは、いわば個人的な主張になると国会が大変だ、こういう議論になるわけであります。  いささか言い過ぎかもしれませんが、私なりに考えてみると、ニューヨークに大半の支出をもって国際連合というものができた。そして百五十七国がそれに加盟して投票権を行使して、自分たちのいわば犠牲に対する国連部内における投票権等の結果は、いつでもじゃございませんが、間々反する結果に終わることが多いというようなことも、ある種の国民感情の中にはあるんじゃないかな、こういう感じを持たないわけでもございません。  しかしながら、GNPにいたしましてもまだ日本の倍ちょっとありますし、経済大国として、かつての世界全体のGNPに占める比率よりは低下しておるとはいえ、やはり日本を初め米国等先進国がそれらの役割りの中心になっていかなければならぬという意識を持ち続けなければいかぬ。だから、そのことは私どもは絶えず米側に対しても主張し続けて今日に至っておるところでございます。  ただ、幸いにして今次のアメリカの議会の問題は、下院においてまだ歳出法は残っておりますものの、私どもが予測しておったよりはと言えばいささか非礼に当たるかもしれませんが、スムーズに国会の了承を得られて現在時点に至っておる、こういうふうに理解をいたしております。
  249. 米沢隆

    ○米沢委員 IMFの増資問題については、日本政府は増資問題に積極的だった、あるいはまた出資比率が上がることを望んでおる、こういうふうに言われておるのですが、たとえば、今度もまた世銀の増資問題がこじれておりますけれども、ここでも従来のような計算のやり方をやっておりますと、増資規模にかかわらず、日本は今度はアメリカに次いで第二位になる。また、こういう状態に対してイギリスやフランスがどうも機嫌が斜めだ、こういうのはちょっと僕にはわからぬのですが、どういうことで日本がこのように発言力を強化することを英仏が嫌がるのか、これが事実だとすればどういう原因なのか、そのあたりを教えてもらいたい。  それから、そういうものに関連いたしまして、イギリス、フランスの両国は、日本の第二位を認めるかわりに、それならば無償援助機関に近い第二世銀にもっと日本は金を出したらどうだという意見をかなり強く持っておって、いずれ日本に対してもそのような要請をなしてくるのではないか、こう言われておりますが、第二世銀に対する日本の出資比率も大幅に引き上げようなんという気持ちがあるのかどうか、日本の政府考え方を聞かせていただきたい。
  250. 竹下登

    竹下国務大臣 私ども出かけて感じますことは、今度は、私個人ではございませんが、日本国が議長国になるわけです。そういう意味においては確かに、客観的に見てもその地位は上がっておるということは言えると思いますが、政治家同士の議論として申しますならば、かつての問題意識から発生する戦勝国と戦敗国と言うとちょっと表現が適切でないかもしれませんが、そのような問題がやはりあったのではなかろうか。しかしながら、私どもが主張いたしますいわゆるハーモナイスさるべきであるという主張は、原則的には認められる範疇の中にある主張でございますので、そういう方向に物は進みつつある、そういう環境が醸成されつつあるというような感じがいたしております。なかんずく、言ってみれば総裁を初め事務当局などはそういう素直な主張というものには内々賛成でございましょうから、そういう空気が醸成されつつあると私は思っております。ただ、どこの国ともそれぞれ国会を抱えておりまして、その中ではいろいろな議論もなされるようでございますが、日本の国会はそのことにつきましては絶えず鞭撻をいただいておるという立場においても、またその舞台に出たときには大変私どもが腰を強くして主張することのできる問題ではないかと思っております。  IDAの問題につきましては、私自身が折衝の当事者でございましたが。数字にわたりますので、酒井局長から簡単にお答えさせます。
  251. 酒井健三

    ○酒井政府委員 今回のIMFの第八次の増資を行いますと、慣例といたしまして世界銀行の特別増資を行うことになっております。従来の増資のやり方でございますと、世界銀行では日本の地位が第二番目になるというような計算の仕方が慣行でございますので、私どもとしては世界銀行の特別増資を早期に行うようにということを強く主張しております。  それとの関連で、第二世銀、IDAの特別増資をどうするかという問題が出ているわけでございますが、これにつきましては、その規模をアメリカは九十億ドルぐらいというふうに申しておりますし、それから日本とかイギリスとかドイツとかフランスは、百二十億ドルぐらいの増資を主張しているわけでございます。したがいまして、まだ主要国におきましても増資の規模をどのくらいにするかという問題が決着がついておりません。恐らく年内には決着がつくことを期待いたしております。そして、増資の規模の中で、そのシェアをどういうふうにするのかという問題につきまして、これからの議論の焦点になろうかと思います。第六次のIDAの増資のときには、日本は一四・六五%出資をいたしまして、現在日本は第六次増資後でドイツと並んで第二位になっております。御指摘のように第七次の増資に際しましてイギリスが少しシェアを下げたい、そのシェアを下げる分の一部は日本が単独二位ということを主張するなら、その辺の資金協力を考えてほしいというような主張をいたしております。  国際機関における地位の問題というのは、ややプレスティージの問題がございます。大臣お話しのように、それぞれの国会等も抱えておりまして、なかなか実力が素直に反映されない場合がございますが、私ども委員会の附帯決議を外しまして、実力に応じたシェアということの実現に今後とも努力してまいりたいと考えております。
  252. 米沢隆

    ○米沢委員 最後になりますが、先ほど議論がありましたが、例の国際通貨制度を改善するためにいまからその検討をやっていこうということが合意されたことは、大変歓迎すべきことだと思うのです。  そこで、むずかしい話はもうしませんが、大蔵大臣にお聞かせいただきたいのであります。為替相場を安定したものにするためにはいかなる制度が望ましいと考えておるのか、これからの検討課題ではありましょうけれども、現在の段階で政府考え方をちょっと聞かせてもらいたいと思うのです。現在の変動相場制を堅持していくのか、あるいは変動相場制を堅持していく中で問題があれば、いまやっておりますような協調介入等でそれをカバーしていく、そういう方向はやはりベターだと考えておられるのか、あるいはまたECにおけるEMSのような、一定の範囲内における変動制がより望ましいと考えておられるのか、簡単に現段階での見解を聞かしていただきたいと思います。
  253. 竹下登

    竹下国務大臣 各国間におけるインフレ率、経済成長率等格差が縮小しつつございますものの、やはりまだございます。したがって、好んで変動相場制によっているわけではないが、現状認識としては、変動相場制のもとにおいて、そこで、私ども会議で合意したものがサミットにおいても確認されました協調介入、あるいはもちろん独自の介入等でもって対応していくというのが、現状においては一番適しておるのではないか。ただいま御主張にありましたように、通貨問題をどうするかという国際会議、これは、手順からいいますとどういう問題を議論するかというところから始めなければなりませんので、いきなり固定相場是か非かという議論にはならないのじゃないかというふうに思っております。
  254. 米沢隆

    ○米沢委員 それから、先般大蔵省が決められました対外融資の貸し倒れ引当金、これを無税にしようという話はその後どうなっておりますか。
  255. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 御承知のように、国内におきますところの金融機関の貸付債権につきましての扱いといたしましては、制度といたしましては貸し倒れ引当金があるわけでございます。実績率による積み立てあるいは法定概算率によりまして千分の三を積み立てる貸し倒れ引当金制度があるわけでございます。この制度以外に、また一方、債権償却引当金勘定への繰り入れという実行上の制度もあるわけでございます。  これは国内の制度でございまして、現在の問題でございます発展途上国に対します累積債務の扱いにつきましては、これは全く新しい問題でございます。この点につきましては、こうしたカントリーリスクの実態でございますとか、対外債権の動向でございますとか、このリスクに備えるために現実にどのような引き当てが行われておるかとか、そういった状況につきましてよく検討する必要があるわけでございます。またさらに、先ほど申し上げました現在の国内の債権の扱いとの関連をどう考えるか、そこらも勉強する必要があろうかと思うわけであります。そうした新しい問題でありますとともに、また現在の厳しい財政事情を考えますとなかなかむずかしい問題であると考えるわけでございますが、なお慎重に今後検討を要する問題である、このように考えておるわけでございます。
  256. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  257. 森美秀

    森委員長 正森成二君。
  258. 正森成二

    ○正森委員 今回、IMFの第八次増資というのですか、六百十一億SDRから九百億へという増資の問題があるわけですが、それに関連して、短い時間でございますが若干質問させていただきたいと思います。  今回の増資を決めるに至りました非常に大きな誘因が、途上国の巨額の累積債務、その激増にあることはきわめて明らかであります。そこで伺いますが、一九八二年末において判明している途上国百五十八カ国の累積債務は、中長期で幾らあるのですか。
  259. 酒井健三

    ○酒井政府委員 OECDが開発途上国の対外債務を報告しておりますが、この推計によりますと、開発途上国の中長期の累積債務は、一九八二年十二月末で六千二百六十億ドルとなっております。
  260. 正森成二

    ○正森委員 七一年ぐらいは幾らありましたか。
  261. 酒井健三

    ○酒井政府委員 ちょっといま七一年の数字はございませんが、七六年末で二千二百億ドルでございました。
  262. 正森成二

    ○正森委員 私の手元にある論文では、七一年末は九百億ドルであったというようになっております。そうしますと、約十年余りの間に実に七倍になったということになるわけで、発展途上国の累積債務の急増がいかにはなはだしいものであるかということがわかると思うのですね。  しかも問題は、その内容が変化いたしまして、公的な資金でなしに民間銀行の貸し付けが非常に急増しているという事実がございます。同じくこれについて、OECDの調査にあるかもしれませんが、八二年末現在でどのくらいか、あるいは七一年、あるいは七一年がなければ七六年でも結構ですが、どのぐらいありますか。
  263. 酒井健三

    ○酒井政府委員 一九八二年末で公的資金の債務が千三百十億ドル、それから七六年で六百三十億ドルというふうになっております。(正森委員「民間、民間」と呼ぶ)このOECDの発表では、その他ということで、ノンコンセッショナルというふうになっておりますが、それは八二年末で四千九百五十億ドル、七六年末で千五百七十億ドルということになります。
  264. 正森成二

    ○正森委員 いずれにいたしましても、公的なものでない――いまのものすべてが民間銀行がどうかわかりませんけれども、それが非常に急増しておる。私の持っております資料では、七一年に比べると実に十九倍ぐらいになっておるという数字もあるわけですね。これは発展途上国に対する民間銀行の貸し出しが非常にふえており、しかも途上国が、累積債務の急増によってそれが返済できない状況になってきておる、そこへのてこ入れのためにIMFの増資という問題が起こってきておるというのが学者の言われておるところであります。  そこで伺いますが、この中で米国銀行が主要途上国の債務の中で占めておる比率はどのくらいですか。
  265. 酒井健三

    ○酒井政府委員 アメリカの銀行の占める比率の算出につきましては、データの制約もございましてなかなか正確に算定することはできないのでございますが、公表されている統計を使いますと、まず一つは、モルガン・ギャランティー・トラスト銀行の発表の資料で、二十一カ国を主要開発途上債務国としておりますので、この二十一カ国で八二年末で対外債務残高は合計で約五千億ドルになっております。  この二十一カ国をベースといたしまして、これらの諸国に対する民間銀行貸し付けにつきまして国際決済銀行、BISの資料による西側十五カ国の民間銀行の貸し付けの残高をとりますと、これが一九八二年末残高で約二千六百五十億ドルというふうに発表されております。そして、これらの諸国に対するアメリカの銀行の貸し付けにつきましては、アメリカの連邦金融機関調査委員会が発表をいたしております。それによりますと、一九八二年末残高で約千二百億ドルということになりますので、これらのことを前提として単純に計算をいたしますと、二十一の主要開発途上債務国に対する西側主要十五カ国の民間銀行貸し付けのうち、アメリカの銀行の占める比率は約四五%という数字になります。しかし、この開発途上国は、西側の主要十五カ国以外の銀行からも借り入れを行っておりますので、実態としては四五%よりももう少し低い比率になるのだろうというふうに理解いたしております。
  266. 正森成二

    ○正森委員 ほぼ正確だと思います。私の持っている論文の資料で、「ワールド・フィナンシャル・マーケット」の一九八三年の二月号ではほぼ四〇%弱ということになっておりますが、それは恐らく西側の主要銀行以外のものも含めた統計だからそういう数字になっておるのだろうというように思われます。ここから言えることは、発展途上国の累積債務というのが、最近十年間に七倍ぐらいに激増しておる。その中で民間銀行の貸し付けというものの比率は、この七倍の速度を上回る速度である。しかもその中で、いわゆる西側諸国をとりますと、四〇%ないし四五%は米系あるいは米国銀行が占めておるということになるんですね。それが、いま非常に発展途上国が返済能力が減退いたしまして、デフォルトといいますか、債務不履行の危険さえ起こっている。リスケジュールなんかは、これはもう日常茶飯事的なものになっている。それを救済するために、つまりアメリカの銀行が取りつけ騒ぎを起こさないようにするために、今回の増資が呼び水になって、こういうぐあいにIMFも力を入れているのだから、まだまだデフォルトというようなことは起こらないので、民間銀行も協力せよといってこ入れになっておるということだと思うんですね。そうすると、それによって一番利益を受けるのは、メキシコ等に非常に貸し込んでいるアメリカの銀行であるというように言わなければならないと思います。  そこで、次に伺いたいのですが、この累積債務国の借り入れ条件がすこぶる悪化しているんですね。これは、普通、変動金利制というのを最近とられておりまして、ロンドン・インターバンク倍り入れの金利にスプレッドといって上乗せ金利を乗せるんですね。それは、いま現在どれくらいのパーセントになっておりますか。さらに民間銀行は、ロールオーバーというのですか、先へ返済を延ばしてくれというようなリスケジュールの場合には金利を上乗せするということをやっております。そうすると、それは一層金利が高くなるわけですが、現在のデータでのこれらの金利がどれぐらいであるか、御答弁を願いたいと思います。
  267. 酒井健三

    ○酒井政府委員 民間銀行からの融資の金利の条件、スプレッドの幅というのは銀行によって若干の違いがあろうかと思います。そしてまた、開発途上国と申しましても信用度に大分差がある状況でございますので、なかなか一概には申し上げがたいのでございますが、最近のおおよその状況というのを申し上げさせていただきますと、開発途上国のうちでも信用度の比較的高い国、この中にはなかなか中南米の諸国は入らないと思いますが、これにつきましては、ことしの初めごろまではLIBOR、ロンドン銀行間取引金利に対するスプレッドが八分の三%程度でございましたが、最近ではそれが四分の三%、〇・七五%程度に近づいておるというふうに聞いております。他方、この債務累積額の比較的大きな国でも、まだ債務救済という形になっていないような開発途上国がございます。そういう国に対しては大体一%前後のスプレッドというふうに聞いております。さらに御指摘の、リスケジュール等によって債務救済を受けている国の場合には、おおむね二%前後のスプレッドになっているというふうに理解いたしております。
  268. 正森成二

    ○正森委員 いま発展途上国が非常に困っているのは、なぜこんなに累積債務がふえるかといえば、いわゆる先進資本主義国と言われているのが非常に不況であって貿易が思うように進まない。一次産品の値段が下がる上に輸出が思うようにいかない。そのくせ先進国から輸入しなければならない工業製品は非常に値段が上がっている。そして金を借りますと、アメリカに膨大な財政上の赤字がありますために金利が非常に高い。それによって世界金利が高くなる。その上に、いま言いましたスプレッドとかあるいはリスケジュールの上乗せ金利というので金利が非常に高くなる。したがって、発展途上国の累積債務はますます拡大するというかっこうになるんですね。私が持っております資料では、これはOECDの「エクスターナル・デット・オブ・デベロッピング・カントリーズ」一九八二年のサーベーでありますが、それを見ますと、一九八二年には変動利子債務の利率は実に一七・五%になっているんですね。それは十年前の一九七二年には幾らであったかというと八・三%です。だから実に二倍以上に上がっているんですね。こういう状況では、発展途上国がとてもやっていけないというのは無理はないと思うんですね。  そこで、さらに伺いますが、この累積債務、つまり貸し付けですね、それが後発の発展途上国に向けられるのではなしに、発展途上国の中の新興工業諸国というのに集中しているのじゃないですか。現段階における発展途上国全体の累積債務のうち、新興工業諸国の占める比率はどのぐらいあるのですか。
  269. 酒井健三

    ○酒井政府委員 OECDの推計によりますと、一九八二年末の中長期の開発途上国の債務総額は、先ほど申し上げましたように六千二百六十億ドルでございますが、そのうちNICS、新興工業国は二千六百六十億ドル、パーセンテージにして四二・五%というふうに理解いたしております。
  270. 正森成二

    ○正森委員 物の本によれば、統計のとり方もあるでしょうが、もっと高く出しているところもあるんですね。しかも注目しなければならないのは、その中でメキシコやブラジルという一つ二つの国に二〇%以上貸されているということが出ているので、それが果たしてそういうことでいいのかどうか。これらの国が過大なプロジェクトを実行して、そしてお金を先進国から借りる。ところが、それが現実性を持たないというようなことのために、債務がなかなか返しにくくなっているということが起こっていると思うんですね。  そこで、事務方ばかりに聞いてえらい申しわけございません、後で大臣に聞きますが、デット・サービス・レシオというのがありますね。これは発展途上国全体の平均では現在とのぐらいになっているのか。その中でも問題のあるメキシコ、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラではどうなっているか、お答えください。
  271. 酒井健三

    ○酒井政府委員 デット・サービス・レシオにつきましては、モルガン・ギャランティー・トラストが推計をいたしております。しかし、全途上国の平均というのがちょっと手元にございませんで、メキシコにつきましては五九%、ブラジルにつきましては六七%、アルゼンチンは八八%、ベネズエラは二五%というふうになっております。
  272. 正森成二

    ○正森委員 デット・サービス・レシオというのはいろいろ物の言い方もございますが、結局支払わなければならない元本を分子として、その国が稼ぐ輸出額といいますか、それを割るわけで、そんなものが八二%にもなれば、これはもう返済が不可能になっていくというのは非常にはっきりしているんですね。ですから、たとえば毎日新聞の二月十五日付によりますと、こう書いてあるんですね。「メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラなど少数の国に集中している。むろん、これらの国は、その債務の元本の一部と利息を年々、支払わなければならないが、八三年の必要支払額は、これらの国が稼ぐとみられる輸出額を上回っている。輸出で稼ぐ外貨はすべて元利の返済に充てられるわけではなく、一部は、国民生活の向上や経済開発の促進に必要な輸入の支払いにも充てなければならない。  このままでいけば、元利の返済が不可能になるのはあきらかであろう。」こういうように言っておるのですね。そうすると、これらの国に多額の資金を貸し込んだ欧米や日本、特にアメリカは四〇から四五%を占めているのですから、そういう先進国の民間金融機関が経営危機に陥るということはきわめて明らかなんですね。これはだれが何と言おうと客観的には、それを救済するために今回増資が実行されることになるということを私は明らかにしておきたいと思うのですね。  そうだとすると、先進資本主義国としては高金利を抑えるとか、あるいは発展途上国に本当に役立つような援助を行う、そして返済可能な状況に持っていくということでなければ、少々増資をしても焼け石に水であるというようにも思われると思うのです。その一つ対策として、一九七八年だったと思いますが、第九回の特別貿易開発理事会の百六十五号の決議で、七七年以前の後発発展途上国へのODA、政府開発援助については棒引きをするということがたしか決められておったと思いますが、この点について、OECD加盟だと思いますが、十七カ国ぐらいがどういうぐあいにそれを履行したかということがわかっているはずですが、それの概略を説明してください。
  273. 酒井健三

    ○酒井政府委員 UNCTADの一九七八年の第九回の特別貿易開発理事会の百六十五号の決議でございますが、これはLLDC及びMSAC十八カ国に対しまして無償援助を供与することを内容とする債務救済の特別措置が決まっております。実施状況につきましては、UNCTADの事務局により調査が行われておりますが、詳細は必ずしも明らかになっておりません。UNCTADの資料によりますと、本件債務救済の実施見込み額は、DAC諸国全体で約五十六億ドルというふうになっているそうでございます。なお、アメリカは本件債務救済措置は実施していないというふうに聞いております。
  274. 正森成二

    ○正森委員 UNCTADの事務局の資料を見ますと、たとえば中にはオーストラリアのように、そもそも初めから全部贈与である国とか、あるいはノルウェーのように全部棒引きしてしまったというような国もあるようですが、ただ一カ国アメリカだけが全くこの決議を実行しないということがUNCTAD事務局の報告にも出ているのですね。そうするとアメリカという国は、自分自身は民間銀行が非常に大きな割合を持っておって、それが債務不履行にでもなったら困るから、IMFに対して増資してこれを救済するようにしろと言いながら、UNCTADで決めた、救わなければならないから先進国が全部で一九七七年以前の債務を棒引きしようじゃないかというようなことを、一国だけが頑としてやらない。しかもこのごろアメリカ考え方は、こういう公的機関には金を出さないで、自分の国と特別に関係のある二国間については金を出すという考え方が、あらゆる国際機関について非常に濃厚ですね。  今度の問題でも、上院は一応通過したようですが、下院は当初反対でございました。何とか通過して協議会にかかっておるというのですが、どういう点で意見が違って協議会にかかっているのですか。
  275. 酒井健三

    ○酒井政府委員 よその国の議会審議の過程での話でございますので、私ども必ずしも十分承知いたしていないわけでございますが、私ども承知している限りでは、IMF資金利用国の貿易政策の改善、それから銀行監督の適正化等につきまして、上下両院で同じような趣旨の修正条項が付されているということのほか、下院ではSDRの配分についての議会承認とか、それからGABの発動の条件づけとか、増資払い込みの方法に関する協定改正、銀行の対外貸し付けの過剰利益の取り扱い等について修正条項が付されている模様でございまして、この両院の修正条項の違いについてこれから協議がされるというふうに承知しております。
  276. 正森成二

    ○正森委員 いまお聞きのように、アメリカは自分の国の銀行の取りつけ騒ぎを事実上防ぐということにも大きな効果のある本件増資についても、いろいろ条件をつけてなかなか実行しようとしていないという状況なんですね。しかも途上国のこれだけの累積債務の増大については、アメリカの高金利あるいは財政赤字というのは非常に悪い影響を及ぼしているのです。まことに得手勝手だと言わざるを得ないのですが、大蔵大臣、こういう問題について大蔵大臣は種々国際会議にも出られるわけですが、どういう御所見をお持ちになり、また将来求められて発言をされるときにはどういう識見をお述べになろうとされているかお聞かせ願いたいと思います。
  277. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、アメリカのこういう国際機関等への出資等に対する姿勢というものは、いま正森さんが御指摘になった、理由は別として、しぶる傾向にあることは、これは事実であります。率直にこれは認めます。私どもは、その背景にある一つとしては、確かにかつての世界経済の中に占めるアメリカのシェアというものは相対的には落ちておると思います。日本などが相対的に上がっておるということでありましょう。したがって、一応そのような数値に基づく反論と申しますか理由はそれなりに存在していると思います。いま一つは、アメリカ自身は、これはお互いとはいえ国会を抱えておるということ。それから、特に民間銀行等は、日本の銀行等と遠いまして非常な自己責任主義とでも申しましょうか、そういうところにある種のエゴが出てくる経済体制にあると思うのであります。したがって、私どもといたしましては、各種国際機関の設立されたその趣旨等からして、私どもの主張というものにアメリカも同調してくれる方向で、これからも不断のアプローチをしていかな付ればならぬ課題だというふうに私は理解をしております。
  278. 正森成二

    ○正森委員 ここにある新聞がございますが、「国際金融「暑い夏」? 難航するIMFの増資」という見出しのコラム欄がありますね。そこにどう書いてあるかといいますと、下院で非常に反対の声が強かった。その理由で、民主党を中心にしてレーガン政権財政危機を理由に福祉削減に大なたをふるっている一方で、他国の救済に回す金はないはずだ、こう言うんだというのですね。これはちょっとわが国で言っても通るような議論でありますが、こういうことをアメリカの民主党が言っておる。共和党の議員は、IMF増資は体のよい大銀行救済策だ、こう言っているとこの新聞には書いてあるのです。さらにアメリカの消費者運動のラルフ・ネーダーやあるいは徹底した市場経済尊重を唱える保守派の市民団体も呉越同舟で反対運動に乗り出して、ラジオのコマーシャルで、国民の税金で大銀行をもうけさせるIMF増資を許すな、こういうように宣伝をしておる、こう書いているのですね。私は、金融の総本山であるアメリカで、しかも国会の民主党にも共和党にもこういう声があるということは、わが国においてもよく考えてみる必要があるのではないかというように、問題提起として申し上げておきたいと思うのです。何事も結構だ結構だというわけにはまいらない。その点ではアメリカの方が進んでおるのじゃないかという気もするわけであります。  そこで、せっかく日銀澄田副総裁においで願っておりますので、お待たせいたしましたが、最後にお伺いいたしたいと思います。  伺いますと、何か日本時間で本日の午後八時に前川日銀総裁が演説をなさるそうであります。その中で、ただいま衆議院大蔵委員会を通過いたしましたということを入れれば、これは議長国になる者としてはなはだ都合がいいというようなこともあったようであります。そのあおりで本院の審議も種々これありましたが、ここではそれは申しません。しかし、せっかくそういう高邁な演説をなさったということであれば、演説の事後で結構ですし、日本文に翻訳しないで英語のままでもいいから、当委員会が、少なくとも私にはそれを提出していただきたいと思いますが、いかがですか。
  279. 澄田智

    ○澄田参考人 正森委員よく御承知のように、前川日銀総裁はいま、日本のIMFの総会に対する総務ということで、本来ならば大蔵大臣が行かれるところを、そのかわりに総務として出席いたしておりまして、きょうの、伝えられます、来年議長国になることに際してそれを受諾する意味のスピーチを行うのも、これも総務、いわば大蔵大臣のかわりにいたすわけでございます。したがいまして、いまのお話の点でございますが、大蔵大臣の方のお許しを得まして、差し支えないということでございますれば後からお届けを申す、それは演説後になると思いますが、そういうことにいたしたいと思います。
  280. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、前川氏は、国際決済銀行などでも非常にお顔が広くて、英語も御堪能でございますし、各国の中央銀行総裁等の間では愛称をもって呼ばれているそうですが、その愛称を御存じですか。
  281. 竹下登

    竹下国務大臣 たしかマイクと呼ばれていると思います。
  282. 正森成二

    ○正森委員 前川というのは、英語や外国人は言いやすいのでマイクと言うのですね。  そこで、ここに「カントリー・リスク」という本があるのですが、その中で、メキシコの去年の八月の危機の場合に、前川日銀総裁のところに直接電話がかかってきたという秘話が載っているのですね。もちろん澄田さんは御存じだと思います。ボルカーFRB議長が日本時間の八月十四日に「マイク、手を貸して欲しい」と、「マイク」とこうくるのですね。それでたちまち十八億ドルほどの救済措置が決まったというように書かれているのですが、日銀としては、メキシコだとかブラジルだとか、こういう途上国の非常な累積債務増大による金融危機、そういうものについてどう評価し、どう対処しようとされているのか、その点を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  283. 澄田智

    ○澄田参考人 日本銀行の立場におきまして、私どもとして最も留意いたしております点は、やはりこれが全般的な国際金融不安に発展することは何とかして回避しなければならない、そうして国際金融資本市場が円滑に機能をするというふうにそれを確保していくということにしなければならない、こういう立場で終始この問題に対処しているわけでございます。そういう点から、債務累積問題に対しまして、何としてもやはり国際的な機関でありますIMFの機能を活用することによりまして、それと同時に民間金融機関に融資協力を要請する、そうしてさらに各国当局といたしましてもできる限りにおいてこれに協力をする、こういうことであろうかと思うわけであります。もちろんその基本は累積国それぞれが自国の立て直しに鋭意努力するということが前提でございます。また、IMFもそれを前提に救済融資をする、こういうことでございます。  そこで、本行も各国中央銀行と協力いたしまして、特に中央銀行の集まりの組織でございます国際決済銀行を通じまして、債務累積国に対して当座のつなぎ融資を行うというようなことが、これは国際決済銀行においてメキシコの場合に行われましたし、その後のケースにおいても行われておるわけであります。その場合におきまして、この国際決済銀行がそういったつなぎ融資を行うためには、各国中央銀行のいわばバックアップという態勢のもとにこれを行うということでございますので、それに協力をするということでいままでやってきておる次第でございます。
  284. 正森成二

    ○正森委員 時間でございますのでこれで終わりますが、いわゆる先進国の中央銀行や財政当局が、先進国の民間大銀行が大きな被害をこうむらないように、金融不安を起こさないようにということだけでなしに、そのもとになる発展途上国の経済の本当の再建あるいは建設にどういうぐあいに援助なり金融が役立つかという観点を常に持って対処していただきたいということを最後に申し述べまして、時間でございますので、私の質問を終わらせていただきます。
  285. 森美秀

    森委員長 小杉隆君。
  286. 小杉隆

    ○小杉委員 大分限られた時間でありますので、個条書きというか、続けて質問を二、三問したいと思います。  まず、今度の第八次の増資が、前回一九八〇年に行われたのに、わずか二年ということでなったわけですけれども、本来五年ごとに増資の検討を行うというIMFの増資が、今回なぜ二年で再検討せざるを得なかったのか。その背景というか、その理由をはっきりしていただきたい。前々回はたしか一九七八年だったと思うのです。これもやはり二年。そういうことで、従来の増資の経過を見てみますと、最近二年とか三年でどんどん増資が行われているわけですけれども、今回増資をしてもなおかつ、先ほど来の説明では、世界の累積債務の問題は非常に深刻でありますので、これから先どんどん増資が行われていく可能性があるわけですが、今後とも二年とか三年ごとに行われていくような可能性があるのかどうか、それをまず第一点にお伺いしたいと思うのです。  それから第二番目に、今度のIMFの増資が、果たして現在抱えている途上国の累積債務問題に対してどれだけの役割りというか機能を果たし得るのかということなんです。先ほど来の説明では、現在、六千二百六十億ドルの累積債務があって、そのうち民間銀行の占める割合が四千九百五十億ドルというのですから、七九%に達しているわけですね。しかもいま、西側の銀行は、貸し出しはもう限界に来ているという状況になっているわけでして、昨年来ずっと、西側諸国の銀行は途上国に対する融資をむしろ減らしている。こういう中で、仮に公的資金のIMFが六百十一億SDRから九百億SDRに増資することによって、公的資金のシェアというのは、さっき申したようにわずか二一%ですから、この程度の増資で果たしてこれだけ膨大な累積債務の一つの問題の解決にどのくらい寄与し得るのかという点をわれわれは危惧するわけですけれども、その点についての見解を伺いたい。  それから第三の問題は、本来、出資額というのは各国の経済実体に応じたものとするということが決められているわけです。これがIMFの原則ですが、いま日本は、世界各国に比べていわゆる失業率とか経済成長率、ファンダメンタルズは非常にすぐれていると言われている中で、今回の増資によって二十五億SDRから四十二億SDR、確かに七〇%ということで、全体の伸び率の四七%よりは大幅にふえておりますが、それでもなおかつ日本の占めるシェアというのは四・〇八%から四・六九%に上がったにすぎないのであって、いま日本の世界経済の中で占める地位というのはアメリカに次いで第二位、その規模というのは一〇%に達している。どうしてこのような経済実体にそぐわない出資となっているのか。これは過去からの経緯がずっとあると思いますのでむずかしいと思いますが、その辺の背景をひとつお知らせいただきたい。  それから、今度の増資で、確かにシェアは四・〇八から四・六九と上がっていますが、どういう方法、手法で増資の配分をしたのか。何といいますか、日本の経済実体とシェアとの乖離という問題を解消するためにどんな努力をしたのか、この点もあわせて伺いたいと思うのです。  それから、全体的に見まして、先進国とか石油輸出国は出資割合というのが経済実体よりも下回っている、逆に非産油開発途上国はその経済実体を上回っているということでありますので、それはたとえば、先進国にとってはその力よりもむしろ過小な出資しかしていない、それから逆に開発途上国は過大な出資を余儀なくされている。逆に今度融資の場合竹、たとえば先進国が借りたいと思っても、むしろ過小な融資しか受けられない。逆に途上国の方はその経済力よりも過大な融資が行われるということで、IMFの財政にも悪い影響が出るのじゃないかということなんですが、そういう点についての考え方をひとつまとめてお答えをいただきたいと思うのです。
  287. 酒井健三

    ○酒井政府委員 第一の御質問の、IMFの増資の間隔と申しますか、それについてでございますが、前回の第七次の増資のときには、総務会決議が成立しましたのが一九七八年の十二月でございます。IMFは協定上五年ごとに見直しをするのを原則としておりますが、状況に応じましては五年以内の見直しをすることもできることになっております。今回の総務会決議が成立しましたのはことしの三月でございますから、総務会決議のベースでいきますと、七八年から八三年の三月までですから四年半でございます。増資の発効は一九八〇年の十二月でございますが、その後、御承知おきのような累積債務の問題等もございまして、早急に第八次の増資をしようということで関係国の意見の一致を見たわけでございます。  それから第二の、開発途上国の債務問題について、今回の増資がどれだけの効果、役割りを果たすのかという問題につきまして、私どもも、九百億SDRに出資の規模を引き上げることによってこの累積債務問題を克服できるというふうには考えておりません。これが触媒となりまして、開発途上国に対して、IMFの融資に伴う融資条件、コンディショナリティー、そういうような経済政策についていろいろアドバイスをすることによりまして開発途上国の経済調整が進められ、その前途について青写真ができると申しますか、明るい展望をつくり上げることによって民間金融機関が引き続き金融をするというような触媒的な役割りを期待しているわけでございまして、そういう意味で、今日、IMFから資金供給している国はかなりございます。今回資金補充をすることによりましてIMFの機能をより十分に果たせるようにするということが、今回の増資の意義であろうかと思います。  それから第三番目の御質問の、どういうふうに経済実体に合わせてやったかという点でございますが、今回の増資額のうちの六割につきましては経済実体に応じて、四割につきましては現在の出資割り当て額に応じて配分するということでございます。前回の増資の場合には、全額それまでの出資割合に応じての配分で、その後の情勢変化、経済実体の変化を十分反映したものではございませんでした。今回、私ども、当委員会の附帯決議等を外しまして強く主張いたしまして、経済実体をできるだけ反映するようにということで、六割は経済実体を反映するような増資を実現することができたわけでございます。  どういうような方式で経済実体を反映させるかという点につきましては、GDPとか輸出入、外貨準備などを考慮した方式を理事会で協議をいたしまして、その方式で計算する。ただ、遺憾ながら、各国共通のデータとなりますと必ずしもアップ・ツー・デートのものにならなくて、若干、過去一九八〇年ぐらいの数字にならざるを得ないのでありますが、そういうような各国共通に使えるデータをベースにしまして、二足の方式に従いまして比例増資と申します六割の増資の方の算出をしたわけでございます。  開発途上国の割り当て額をもう少し拡充すべきではなかったかという点につきましては、開発途上国の出資割り当て額は、現在のシェア三九%から一%落ちて約三八%に、今回の増資の際にはなるわけでございます。  まあ、私ども、開発途上国も含めまして、今回の増資の案を提案をいたしまして、九九%の賛成を得て総務会の決議が一応成立しているという状況でございます。
  288. 小杉隆

    ○小杉委員 もうすでに時間が過ぎておると思いますが、あと、大臣に最後に一、二お伺いしたいのです。  この累積債務問題を解決するためには、今度のIMFの増資とか、あるいはGAB、借り入れ取り決めですか、この拡大とか、あるいはODAの拡大とか、いろいろそういう国際的な金融の支援というものがもちろん大事だと思います。しかし、先ほどからもお話があったように、やはり世界経済の一つのメカニズムの中でこういう問題が起こっているので、この金融だけの支援ではとてもこの問題は解決つかない。したがって、こういう開発途上国が貿易の面で黒字が出るような積極的な対策を講じていかなければいけない。これはもちろん、自助努力ということで、途上国自身の努力もさることながら、先進国、特に日本も含めた先進国のこういう国々との貿易の拡大という努力を大いに払っていくべきだということで、具体的に政府はどんな努力をし、また、これからはどんな努力を続けていこうとされるのか、その辺のお考えを伺いたいと思います。  まだたくさんありますけれども、時間の制約がありますから、以上でとどめます。
  289. 竹下登

    竹下国務大臣 確かにおっしゃいますように、金融は本当にワン・オブ・ゼムだと思います、かなり大きなウエートを占めておるにしても。事実、私も思いますのは、実際そういう会合に行ってみても、一人当たり所得等を計算すれば、日本の一人当たり所得の四十分の一とか、そういう国もたくさんあるわけでありますから、金融メカニズムの中へ乗っていかないようなところも確かにあります。そこに、ODAとかいろいろな問題があるわけでございますけれども、確かに、いま御指摘になったように、先進国のいわゆる景気がよくなった場合に、一次産品等の輸出に頼る非産油開発途上国の輸出もまたそれで伸びてくるということにおきましては、まさに「南の繁栄なくして北の繁栄なし」、中曽根総理がおっしゃったとおりでありまして、その辺をまさに、国際機関への協力という金融上の問題のみでなく、あるいは二国間の問題、なかんずくアジアにおいて占める役割りも大きいわけでございますから、これはODAとかそういう問題になるわけでありますが、それらを総合して対応していくと同時に、総理の言葉にもありますが、言ってみればそれのもう一つ以前の、いわゆる人づくりに協力するとかいうような問題もやはり私どもの念頭に絶えず置かなければならぬ問題ではなかろうかというふうに理解をいたしております。
  290. 小杉隆

    ○小杉委員 終わります。
  291. 森美秀

    森委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  292. 森美秀

    森委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  293. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ―――――――――――――
  294. 森美秀

    森委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。伊藤茂君。
  295. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して提案の趣旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、一部の開発途上国では、輸出の鈍化や高金利等の影響によって対外債務が累増し、その返済に困難を来す国がふえております。  このような国際金融不安に適切に対処し、世界経済の健全な発展に資するためには、債務当事国の自助努力はもとより、先進諸国政府の協力、国際金融機関の役割りの充実等が一層求められているところであります。  本附帯決議案は、このような状況に顧み、国際通貨基金の活動に対する積極的な貢献、開発途上国の累積債務問題の打開のための協力等について一層の努力を要請するものでありまして、案文の朗読により、内容の御説明にかえさせていただきます。     国際通貨基金及び国際復興開発銀行くの加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。  一 国際通貨基金が、本来の設立目的に即し、世界経済の健全な発展と安定した国際経済秩序の形成をめざして、通貨に関する国際協力の促進などの活動を推進するよう努めること。  二 開発途上国の累積債務が深刻さを加えていることにかんがみ、その打開のために、我が国が国際的に開発途上国の経済運営を円滑ならしめるよう、積極的に努力すること。  三 国際通貨基金及び国際復興開発銀行の果たすべき役割の重要性にかんがみ、その増資に当たっては、最近における加盟国の経済の実態を十分反映したものとなるよう努め、その運営にも積極的に貢献すること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  296. 森美秀

    森委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  297. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本動議のごとく本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  298. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  299. 森美秀

    森委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  301. 森美秀

    森委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十四分散会      ――――◇―――――