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1983-09-28 第100回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年九月二十八日(水曜日)委員長の指 名で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した 。  税制及び税の執行に関する小委員       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       大原 一二君    木村武千代君       笹山 登生君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    平沼 赳夫君       柳沢 伯夫君    上田 卓三君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       正木 良明君    米沢  隆君       正森 成二君    小杉  隆君  税制及び税の執行に関する小委員長                 大原 一三君  金融及び証券に関する小委員       大原 一三君    熊川 次男君       笹山 登生君    塩川正十郎君       中西 啓介君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    森  喜朗君       森田  一君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    米沢  隆君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  金融及び証券に関する小委員長 中西 啓介君  財政制度に関する小委員       粕谷  茂君    小泉純一郎君       椎名 素夫君    中西 啓介君       中村正三郎君    平泉  渉君       森田  一君    柳沢 伯夫君       与謝野 馨君    阿部 助哉君       伊藤  茂君    野口 幸一君       柴田  弘君    玉置 一弥君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  財政制度に関する小委員長   中村正三郎君  金融機関週休二日制に関する小委員       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       越智 伊平君    熊川 次男君       白川 勝彦君    中村正三郎君       藤井 勝志君    山崎武三郎君       与謝野 馨君    伊藤  茂君       塚田 庄平君    野口 幸一君       鳥居 一雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    小杉  隆君  金融機関週休二日制に関する小委員長                 越智 伊平————————————————————— 昭和五十八年九月二十八日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    粕谷  茂君       小泉純一郎君    椎名 素夫君       塩川正十郎君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山崎武三郎君       阿部 助哉君    上田 卓三君       沢田  広君    鈴木  強君       戸田 菊雄君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    柴田  弘君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       小野 博義君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主計局次         長       保田  博君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省理財局次         長       吉居 時哉君         大蔵省証券局長 佐藤  徹君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         国税庁次長   岸田 俊輔君         厚生大臣官房審         議官      下村  健君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         日本国有鉄道共         済事務局長   岩崎 雄一君         日本電信電話公         社厚生局長   中原 道朗君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 九月二十八日  辞任         補欠選任   阿部 助哉君     鈴木  強君   塚田 庄平君     沢田  広君 同日  辞任         補欠選任   沢田  広君     塚田 庄平君   鈴木  強君     阿部 助哉君     ————————————— 九月二十七日  大幅減税即時実現等に関する請願金子満広  君紹介)(第一一号)  同(正森成二君紹介)(第一二号)  同(簑輪幸代紹介)(第一三号)  同(渡辺貢紹介)(第一四号)  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願  (渡辺貢紹介)(第一五号)  一兆四千億円減税早期実施等に関する請願  (井上一成紹介)(第五八号)  同(岡田利春紹介)(第五九号)  同(川本敏美紹介(第六〇号)  同(小川国彦紹介)(第七三号)  同(武部文紹介)(第七四号)  同(戸田菊雄紹介)(第七五号)  同(野口幸一紹介)(第七六号)  同(米田東吾紹介)(第七七号)  同(串原義直紹介)(第一二五号)  同(城地豊司紹介)(第一二六号)  同(渡部行雄紹介)(第一二七号)  旧東京教育大学農学部跡地の利用に関する請願  (山本政弘紹介)(第六一号)  所得税減税年内実施に関する請願長田武士  君紹介)(第七一号)  同(鈴切康雄紹介)(第七二号)  同(西中清紹介)(第一四六号)  同(市川雄一紹介)(第一四八号)  同(大橋敏雄紹介)(第一四九号)  同(山田太郎紹介)(第一五〇号)  減税早期実現に関する請願青山丘紹介)  (第八九号)  同(稲富稜人君紹介)(第九〇号)  同(小沢貞孝紹介)(第九一号)  同(大内啓伍紹介)(第九二号)  同(岡田正勝紹介)(第九三号)  同(春日一幸紹介)(第九四号)  同(神田厚紹介)(第九五号)  同(木下敬之助紹介)(第九六号)  同(小渕正義紹介)(第九七号)  同(近藤豊紹介)(第九八号)  同(佐々木良作紹介)(第九九号)  同(塩田晋紹介)(第一〇〇号)  同(竹本孫一紹介)(第一〇一号)  同(玉置一弥紹介)(第一〇二号)  同(塚本三郎紹介)(第一〇三号)  同(中井洽紹介)(第一〇四号)  同(中野寛成紹介)(第一〇五号)  同(中村正雄紹介)(第一〇六号)  同(永末英一紹介)(第一〇七号)  同(西田八郎紹介)(第一〇八号)  同(西村章三紹介)(第一〇九号)  同(林保夫紹介)(第一一〇号)  同(部谷孝之紹介)(第一一一号)  同(三浦隆紹介)(第一一二号)  同(宮田早苗紹介)(第一一三号)  同(横手文雄紹介)(第一一四号)  同(吉田之久君紹介)(第一一五号)  同(米沢隆紹介)(第一一六号)  同(和田一仁紹介)(第一一七号)  同(和田耕作紹介)(第一一八号)  同(渡辺朗紹介)(第一一九号)  同(田島衞紹介)(第一四三号)  同(山口敏夫紹介)(第一四四号)  同(依田実紹介)(第一四五号)  共済年金改悪反対等に関する請願外二件(上  原康助紹介)(第一二〇号)  同(塚田庄平紹介)(第一二一号)  同外一件(戸田菊雄紹介)(第一二二号)  同(野口幸一紹介)(第一二三号)  同外一件(渡部行雄紹介)(第一二四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国家公務員及び公共企業体職員に係る共済組合  制度統合等を図るための国家公務員共済組合  法等の一部を改正する法律案内閣提出、第九  十八回国会閣法第五三号)  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 森美秀

    ○森委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 この前の国会一般質問をやらせていただいてから大分時間がたっておりまして、その間いろいろな新しい問題も出ておりますし、古い問題でありますけれどももう一遍今日的に見直してみなければならない問題もあると思います。こんなふうに実は考えておるわけであります。  そこで、本日の一番の入り口としまして、最近のアメリカ経済の動向について、事務当局の方から少し詳しい報告をいただきたいと思います。
  4. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 お答えいたします。  ちょっと前の方からいままでの経緯をたどって御説明させていただきますと、米国経済は八一年の夏以降調整局面に入りまして、八二年には実質GNP成長率が前年比マイナス一・九%となるなど、景気は低迷を続けておったわけでございます。しかし、八二年十一月ごろからようやく底を打ちまして、本年に入ってからは特に個人消費住宅投資中心回復を続けておりまして、在庫の減少幅の縮小がGNP上増加に働いていることもこざいまして、四−六月期の実質GNP成長率年率九・七%となっておるわけでございます。  今後の見通してございますけれども、最近一部に、景気回復一服感が出てきたという見方もございますけれども、七−九月期のGNP速報が最近出たのですが、それは前期比年率七・七%になったということもございまして、米国政府は順調な景気回復局面が続いているという見方をしておりますので、八三年の政府見通し三・一%の達成可能率は高いというふうに思われるわけでございます。九月の二十日でございますけれども、フェルドシュタイン大統領経済諮問委員長は、八三年後半の実質成長率が六ないし七%、八四年は回ないし五%となろうという予測を明らかにしております。  来年につきましては、なお物価安定基調が持続するというふうに思われますこと、それから、数年にわたりました長期かつ深い景気後退の後であるということなどから、さらに着実な景気回復が続くという見方も多いわけでございますけれども、一方で大幅な財政赤字による高金利がございます。それが民間設備投資などの制約要因となることも考えられますし、それからもう一つは、ドル高貿易赤字を拡大させるおそれがあるというような不安要因もございますので、予断を許さない面もあるのではないかと考えております。  ちなみに、OECDがことしの七月に成長率その他の主要な経済見通しを立てておりますけれども、八三年は、米国成長率を通年で三%と見ておりますが、八四年はこれよりも高い四・五%を見込んでおるわけでございます。それから失業率も、八三年は一〇・二五と見込んでおりますが、来年は九・五というふうに見込んでおるようなところでございます。
  5. 堀昌雄

    堀委員 いま大体のお話がございましたけれども、あれだけ落ち込んでおったアメリカ経済がこういう形で回復をしてきたのは、一体どういう要素によってこういうふうに回復をしてきたのか。アメリカ経済回復にもたらした要素、それを答えてください。
  6. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 これについてはいろいろ説もございますけれども、一つは、七九年にボルカー連邦制度の議長が就任した後でございますけれども、第二次石油ショックによる相当の物価の上昇、インフレというようなことが続いたと思います。それで、それに対する一つの大きな対策といたしまして高金利政策というのをとったわけでございますけれども、それによる物価の鎮静ということが一つ大きな働きを示しているのではないか。たとえば個人消費伸びなども、インフレに対するしんぼう強い闘いを続けてきたというような要因があるかと思われます。そこが一つ個人消費などにも効いてきたのではないか、そういうふうに考えております。
  7. 堀昌雄

    堀委員 アメリカ景気がよくなりつつあるのには、私は幾つか問題があると思っているのですが、まず一つアメリカ税制の問題があると思います。アメリカ日本と違って、個人が金を借りましても、その借り入れの利子については税の対象にならない、非課税になる、こういうようなことで、引いてくれるということになりますから、インフレがかなり進行していても、金を借りて物を買ってもいけるんだという要素があります。いまさっきのあなたのお話のように、アメリカ経済住宅個人消費が前に出ているわけですが、特に個人消費の場合には、自動車は非常に大きなウエートで回復をしつつありますし、耐久消費財はどんどん出ている。さらに住宅が百七十万戸ベースですか、かなり高いベースでいま伸びつつあるというのは、まさに一つはこの税制関係が非常に働いているのじゃないか。  二つ目は、物価が安定してきて、そこの状態が非常にうまくいっているということがあると思いますが、実はレーガン考えは、減税によって貯蓄をふやして、それによって民間設備へと、こう考えたんですけれども、その方には行かなくて、減税は特にアメリカ高額所得者に対して大変なフェーバーを与えているものですから、高額所得者の方を中心にかなり個人消費が広がってきておる。ですから、そういう意味では、アメリカにおける減税というものは、かつてわれわれが日本でやってきたと同じように相当な効果をもたらしておるのではないかというふうに私は分析するので、いまの二つはいずれも税の問題というものが中心になって、実は問題が動いておるというふうに見ておるわけです。  そこでもう一つ、ちょっと伺っておきたいのですが、いまのアメリカ財政赤字、これは八三会計年度、大方終わりに近づいておるわけですが、八一年、八二年、八三年の、現在時点に近いところでのアメリカ連邦予算における財政赤字はどうなっているのかをちょっとお答えいただきたいと思います。
  8. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 アメリカ財政赤字でございますけれども、八一年には五百七十九億ドル、八二年には千百六億ドルでございますが、八三年度の見込みは二千七十七億ドルということでございます。
  9. 堀昌雄

    堀委員 もう一つアメリカ貯蓄は大体四、五%だ、こう言われておるのですが、古い方はいいですから、八二年と八三年、八三年はまだ終わってないわけですけれども、大体のいまのアメリカ貯蓄総額というのはわかりますか。——それ。じゃ調べてあれしてください。  要するに、私は特に八三年の財政赤字の問題で、ことしの一月に民間エコノミストの人と懇談をいたしました。一月の十五日くらいでしたか、そのときには、ほとんどの日本エコノミストは、ことしは円高だ、こういうのがことしの一月の情勢だったわけです。私は、そういかないだろう、日本円高になることを期待するけれども、円高になる可能性は少ない。それは、もう昨年の暮れから、ストックマンその他がいろいろと財政赤字問題について触れておることをずっと見ておりますと、アメリカ財政赤字はふえることはあっても減ることはないという見通しでありましたから、財政赤字が減らないのにアメリカ金利が下がるはずはないので、そこでアメリカ金利が高い限り日本の為替が高くなるというのは考えられない。そのときは、まさに私だけが円は安くなる、依然として安いという意見を述べたのに対して、出席したエコノミストはいずれも全部、先生、そんなことはありませんということでございました。しかし、二月に予算教書が出、いろいろと問題が発展をしてきて、三月に皆さんにお会いしたら、やあ、堀さんの方がどうやらことしも正確でしたなということに実はなったわけであります。  ただしかし、私が一つ見落としておりましたのは、アメリカ貯蓄というのは、後で正確にお答えいただきますけれども、大体年間千四百億ドル程度ではないか、こう見ておるわけであります。その程度貯蓄のところに二千億ドルの赤字が出るならば、当然金利はもっと上がっていいというふうに思うのでありますが、思ったように金利が上がらなかった。その金利が上がらなかったのは何かというと、結局ユーロダラー日本の円もアメリカにざあっと流れ込んで、アメリカ貯蓄の上に約七、八百億ドル積み上がった結果、かなりバランスがとれて、思ったほどは上がらなかったけれども下がりはしないというのが現状で、この点は率直に言って私も少し見落としておったという感じがするのであります。  しかし、ではこれからのアメリカ金利がどうなるのだろうかという点でありますけれども、昨日からですか、ニューヨークのシェラトンホテルでIMFの会議が行われておりまして、レーガン大統領はこの総会の開会式演説で、  「連邦財政赤字は部分的には、軍事力と安全を確保しようというわれわれの決意によってもたらされたことをはっきりさせたい」と軍事費増強財政赤字急増関連を認めた。  しかし、「軍事力強化によって米ソ核軍縮交渉を有利に運び、結局は軍事支出の削減を実現させるのが狙いだ」として当面、軍事費を削る考えがないことを強調した。  世界景気回復にとって、重大な障害になると懸念されている米金利を、押し上げる米財政赤字の膨張については「米国景気拡大による税収の伸び回復が進めば赤字は減ってくる」と楽観的な見通しを語った。こういうふうに言っているわけですね。  そうしますと、八四年度予算というものが依然としてまだ確定してないというのがいまのアメリカ情勢ですね。八四年度予算で議会のいろいろな考え方も出ていますけれども、いまのレーガン政府が出しておる八四年予算赤字幅というのは幾らでしょうか。
  10. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 八四年予算の最近の見通してございますが、歳出が八千五百八十九、歳入が六千七百九十六で、財政収支上は千七百九十三億ドルということが、第一次予算決議の内容として出ておるわけでございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 竹下大蔵大臣、以上のアメリカ経済問題の下敷きを事務当局から説明を受けました。そこで大蔵大臣は、アメリカのそういう景気回復及び現在の状態、さらには来年度の、いま千七百九十三億ドルと言っておりますけれども、八三年の当初予算も二千億ドルを超えるようなことになってなかったのですが、こういうふうになるのでして、八四会計年度アメリカ財政赤字は、いまのレーガンの発言から見てかなり大幅なものになるだろう、そういうような将来見通しを控えてアメリカ経済、これはあなたの政治的な御判断でいいのだけれども、今後日本経済との関連でどういうふうにごらんになるのか。アメリカ経済回復してきたことに対するあなたの政治的な立場でのお考えをちょっと伺いたいと思うのです。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 いま御案内のような数字で、少なくともアメリカが当初見込んでおりました三・一%は、前年度が低かっただけに達成されるのじゃないか。四−六に九・七が出ましたときに、さてそれでは七−九がそれに類して続くだろうかというようなことも見ましたが、七−九もあるいは七%とかいうことになりますと、七−九がたしか六%程度でも三・一にはなるのじゃないかということがございましたので、私はこれは達成されるのじゃないかと思っております。その中には、いま堀さんおっしゃいましたように、私自身も一月は、二百二十七円台までになったときに、それはむしろ円高基調の定着のあらわれだぐらいに申しておりました。これは堀さんと違っておりました。私のみならず大部分の者がそんな感じで見ていたことは事実であります。きょうは幸い、寄りつき二百三十七円十銭、愁眉を開くという表現は適当でないかもしれませんが、多少円高になったな、こういう印象は持っております。したがっていま、アメリカ経済というものに対する見方は、こういう状況が続いていくではないかと言う人もおるし、一方、これはある時期まで、すなわち選挙とか、そういう極端な見方をする人もおります。  だから私自身は、結論的に申し上げますと、このいわゆる財政赤字はそう大変に減っていくとは思いません。それから高金利。これもおとといの十カ国蔵相会議暫定委員会からの報告が毎日来ますが、二人のトップに話すと、片方は年末にかかって下がるだろうと言うし、片方はいや下がらないだろうと言う。そういう意味においても、いわゆる高金利民間設備投資等制約要因にはなるじゃないか。それから、多少の変化はあったとはいえ、ドル高というものはどうしたってやはり貿易赤字を拡大させる大きな一つ要因にもなりますから、そういう不安要因というのはやはりあると見ておるべきではないか。  そうすると、結論から言うと、大きな違いが出て後から言い直ししなければならぬようなこともございますが、正直に言って予断を許さない状態だというふうな表現が、いまのところ一番適当じゃないだろうか。私も出かけるつもりでおりましたけれども、最近密接になっております関係で、ときどきいろいろな手紙も参りますが、確かに、たとえば連銀の見方財務当局見方とは、日本ほどにすり合わせをやっていないじゃないかというぐらいな髪もございまして、その限りにおいては不安要因もぬぐい切れないから、予断は許されないというふうに言わざるを得ぬじゃないかという率直な感じを持っております。
  13. 堀昌雄

    堀委員 実は、非常にアメリカ経済というものがむずかしい、ある意味では剣が峰のようなところを通っておるのじゃないか。ということは、金利が高いから、実はいま七百億ドルも八百億ドルも、ユーロダラーもそれから日本の円も流れ込んでいるのですが、この金利がどんどん縮んできますとどうなるかというと、うまみがなくなるわけですから、これはまたもとへ戻る可能性が十分あるわけですね。もとへ戻っていくということになると、必然的にこれは金利が上がるということになりまして、どうもここのところはそう簡単に金利がどんどん下がっていくというふうにはなりにくいメカニズムが、実はいまアメリカ金融市場の中にどうもある。それはいまの財政赤字が減りさえすれば、これは話は別なんですが、いまやどうも私が見ている限り、昨日ですか、INFのレーガン演説を見ても、要するに軍事力を強化することによって軍縮にという話です。これはこの間から大分この国会におけるハイライトになっているのですが、大蔵大臣、いまの世の中で、軍拡をやっていく結果で軍縮になるという話はどうも——中曽根さんはロンとヤスで大変レーガン考え方を強く言っておられるようですけれども、この問題のもとは一体何かといいますと、私は人間恐怖心だと思っているのですよ。人間恐怖心というのは、二つのものが対立をしていて、片一方がさらに力をふやしたと思えば、こっちは、これは負けてはいかぬというのでさらにふやそうという恐怖心ですね。そうすると今度はこっち側は、こっちがふやしたのに負けてはいかぬというので、さらにふやす。そうやってふやしている中で、それじゃどうして軍縮の方に転換できるめどが出てくるかと言えば、やはりこれは財政がどこかで、どうにもならぬという壁に行き着くまでは、両方は、よくわかっているけれどもやめられない軍拡というコースに入っていくんじゃないだろうか。私は、まさに人間の英知というものの働かない、人間が本能で競い合っているというのがいまの世界経済の中における軍拡競争だ、こう見ているわけです。  そうすると、私は、いま確かにINFの問題で欧州は大変だと思うのであります。しかし、ずっとソ連経済を私もそれなりに見ておるのでありますけれども、ソ連経済も御承知のようにだんだんと成長力は低下をしてきておるわけでして、そう簡単に経済回復する見通しはありません。最近、ちょっと「エコノミスト」に出ましたソ連経済に関する報告などを詳しく読んでみましても、確かにソ連の経済システムを変えなければソ連経済が活性化する可能性はないな、私はこう見ておりますから、だんだんと成長率が下がっておるところが依然として軍拡をやらなければならぬというのは、これはソ連にとっても大変な問題だと思うし、アメリカも、これだけの財政赤字があるのに、レーガンがこんなことを言って、要するに軍備をふやすことが将来の軍縮につながるという、そういう認識でこの問題を考えている限り、暇まあ、私どもの石橋委員長と中曽根総理の論議は確かに一つの形でありますが、そういう問題を国民生活、世界経済という視点でどう受けとめてこの問題に対処するかということの方がより重要な問題ではないか、私はこう思うのです。  そこで、ちょっと本筋から離れますけれども、私が申し上げたそういう問題に対して、世界経済を活性化へ持っていくためには、軍拡競争がいいのか、軍縮をやって、そして中島さんがおっしゃっているような、要するに世界的なビッグプロジェクトの方に金を回すことが世界の活性化につながるかということになると、私ども経済を専門にやっておる者から見たら論議の余地のない問題のような気がするのですね。軍縮をやって、それを設備に回して新しい需要を喚起して、世界の国民が喜ぶような、たとえばヒマラヤに一つ大きな水力ダムをつくろうとか、パナマ第二運河もそれでありましょうし、中島さんがたくさん提起されていることは私も大変すばらしいことだと思うのでありますが、どこかがイニシアチブをとらなければ——いまのこういう、周りが同じ方向へどんどん回っていく、どこかで歯どめがかかったそこから逆に徐々に動き出せば、これは世界の経済の活性化と、不安が除去されて、いい方へ行く。悪循環か、いい方へ循環するかという、きわめて大事な選択が求められているのがいまの時期ではないか、こう思うので、竹下さんのそういう問題に対する政治哲学をここで一遍明らかにしてもらいたい。将来あなたもそういうことを責任を持ってやらなければならぬ立場になる可能性を大変たくさん持っておる一人でありますから。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 要するに、今日のいわゆる力の均衡によって戦争が抑止され平和が続いておる、こういう見方、そしてそれが、経済なかんずく国民生活に影響をもたらして、おのずからそれがチェックの機能を果たして、お互いに同じ程度軍縮をしていこうじゃないかという雰囲気が、世界全体なかんずく二大強国とでも申しましょうか、その中に心情的には存在しておると思います。しかし、同じレベルに達して初めて同じレベルダウンができるのであって、その同じレベルという見方が双方に、まだ向こうの方が優位である、これが軍拡競争というものに拍車をかけるのじゃないか。  したがって、その場合は、たとえば先般のサミットでも中曽根総理からも主張があって、やはり西側なら西側が一体となって共通の認識の上に立って、ソ連ならソ連がいわば軍縮交渉のテーブルに着くような環境をつくるべきではないか。私はそれは正しいと思っております。しかし、現実問題として、いまいろいろな人が観測するのには、お互い言葉だけで、現実に実を結ぶかどうかということになるとかなり疑問があるという見方もあることは事実でございます。しかし、基本的に申しますならば、軍拡というものは全くGNPにカウントされないものではございませんにしても、言ってみれば浪費につながるものが多くて、そうして、まさに新ニューディール政策でございますか、開発途上国を含め地球的規模の中において大型プロジェクトが、先進国等の共通認識の場においてやられていくということ、それはまさに世界全体の経済の活性化につながるものであるという認識は、堀委員と等しくするものではないかというふうに私自身考えております。だから、現実問題として、今日世界にいわば完全な軍備撤廃とかそういう空気はないにしても、軍縮という機運が生まれていくその何がしかの役割りは、その意味においては、いかに小国といえども日本も果たしていかなければならぬ役割りである。そして、たとえばIMFでもそうでありますが、世銀でありましても、国際機関へ出れば、いま日本経済問題に関する発言力は確かに高くなっておることは事実であります。そういう角度からいわば世界経済の活性化を行うべきであるという発言力は、かつてよりははるかに強まっておるのではないかと思いますだけに、そういう趣旨は絶えず私どもの心の底に持っていなければならぬ課題ではないかというふうに理解をしております。
  15. 森美秀

    ○森委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  16. 森美秀

    ○森委員長 速記を始めて。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  17. 堀昌雄

    堀委員 大臣、いまのお話、私と基本的に重なる部分があるので、それは私も大臣の見識として評価をしたいと思うのです。いまおっしゃったように、国際会議の中で日本が大きな発言力を持てるようになったのは、やはりさっきおっしゃったように、軍事費というものが、全然それはGNPに出ないわけではないけれどもやや浪費に近いものだとおっしゃるように、日本ではここを抑制して民間設備にその資金が回ってきたことが今日の日本経済を築いてきたし、そのパフォーマンスについては、世界の先進国でそれを認めない国は現在ないのではないか。要するに、日本が軍備よりも民間経済にウエートをかけてきたということが、やはり政治の上でも、経済の上でも、国民のためにも大変プラスな方向だったという認識を、世界の先進国は、先進国に限りませんが、特にいまそういういろいろパフォーマンスの点で苦しんでおる先進国はそれを痛感しておるのではないか、私はこう思うのです。大臣、そこはいかがでしょうか。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 私も国際会議に出かけるたびに思いますのは、お互い考えてみますと、ちょうど堀さんと一緒に昭和三十三年に議席を持ったときを見ますと、予算規模が四十倍、それで社会保障が七十倍ぐらいでございますか、防衛費は十八・七倍。それは当初は一%というのはございませんでしたけれども、一%というような数字があって、それがとにかく圧縮圧力のてこになって、そのような形で今日あるということがいわゆる民間経済、国民の暮らしとでも申しますか、そういうところへ大きくウエートがかかったから今日の日本があるという認識は共通であります。ただ、その問題を先進国の方々あるいは開発途上国の方々もどう評価しているかというところに、一画言葉の端々に、おまえのところは自己防衛努力を怠ったからそれだけの余裕があったのじゃないかという気持ちも、全く底意にはなくはないという感じは率直に私も持ちます。  事実、国際会議に出ますと、本当にわれわれの一番繁栄の時代という六〇年代に、新幹線にしてもあるいは東名高速にしても、黒四ダムにしても、世界銀行の金が入っている。いま行くと、今度は世銀の増資の方の親玉になってくれということでございますだけに、当時を想起すれば、そういう国際的な役割りは、いま比較すればパフォーマンスはいいし、それには応じなければいかぬという気持ちがいつでもいたします。今国会で急ぎIMFの増資法案などをお願いするということになったのも、そこに私どもの考え方が存在しておるというふうに理解していただきたいと思っております。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 堀昌雄

    堀委員 それじゃ大臣、一応退席していただいて結構です。大変段取りが狂いましたけれども、次へ入ることにいたしましょう。  そこで、いまのようなアメリカ経済というものを下敷きにして考えながら、日本経済——私は経済問題について、中曽根さんほどではありませんけれども、成長が何%だったらどうという話よりも、要するに経済の中身がうまくいっていれば、成長が高いから必ずしもいいんでもないし低いから悪いんでもなくて、そこは全体のバランスと個々の国民経済との関係ということを考えてみたいと思うのです。  そこで、厚生省に入ってもらっておりますから、この間にちょっと厚生省から聞きたいのですけれども、いま日本の医療費はどんどんふえておるということですね。五十六年でしたかよくわかりませんが、発表になっているのではたしか十三兆台だと思うのですが、国民医療費の一番最近のデータとその一年間の増加分を、厚生省の方でお答えをいただきましょう。
  20. 下村健

    ○下村政府委員 直近の実績が出ている数値ということになりますと昭和五十六年になるわけでございますが、五十六年度の医療費は十二兆八千七百九億円。対前年で伸びた額が八千九百四億円、伸び率で対前年比七・四%ということになっております。伸び率七・四%の内訳でございますが、人口増によるものが〇・七%、医療費改定増が一・二%、自然増五・五%というふうに見ております。
  21. 堀昌雄

    堀委員 たしかこの前十三光幾らというのを新聞で見たように思うのですが、これは速報か何かでしょうか。
  22. 下村健

    ○下村政府委員 これはまだ実績が出ておりませんが、五十七年度が十三兆八千八百億円というふうに見込んでおるわけでございます。
  23. 堀昌雄

    堀委員 そこで、この前厚生省の概算要求で、健康保険の保険本人は、これまでは初診料以外には、入院料の一部負担はありますが、基本的には保険ですべて賄われてきた。自己負担はなかった。これを二割負担、八割給付に変えるというのが五十九年度の概算要求で出ているわけです。  そこで、たしかいまの五十七年見通しは一兆を超えていましたね、ちょっと大体の増加分の見通しをもう一遍おっしゃってください。十三兆八千八百億から十二兆八千七百億を引き算をすればいいわけでしょう。
  24. 下村健

    ○下村政府委員 五十七年度が十三兆八千八百億、五十六年が十二兆八千七百億でございますから、約一兆百億円ばかりの増ということになります。
  25. 堀昌雄

    堀委員 そこで、その一兆円の増加分の中で薬剤費というのは大体幾らくらい占めているのですか。それから、最近は医療機器というものがどんどん新しいものが出てきます。この前、例の埼玉県の富士見病院でCTスキャンを片っ端から、必要もないのにやって問題が起きているわけですが、CTスキャンなんというのは大変高額な機械なんでありますが、そういう医療機器ですね。昔はもうレントゲンとか、レントゲンも断層撮影機とかいうくらいが高い医療機器であって、そう大したものはなかったのですけれども、いまやたくさんあるわけです。だから、そういう医療機器と薬剤費と、その他の、医師及び薬剤師あるいは検査員等のパラメディカルの人たちの一種の人件費といいますか、大まかにこれは三つに分けられると思うのですが、大体どんな割合になりますか。一兆円の方がわかりやすいから一兆円で言っていただきましょう。
  26. 下村健

    ○下村政府委員 増加額分の中におけるシェアというのははっきりわかっておりませんが、医療費総体で見ますと、これは支払いの方から見ました内訳になるわけですが、薬剤費が五十六年六月で三八・七%、それから高額医療機器という形にはなりませんが、検査関係の費用が一一・五%ということになっております。
  27. 堀昌雄

    堀委員 いまのは支払いの関係ということですから、医療機器の購入費その他が医療費にどうはね返ったのかというのはちょっとわからないのだろうと思うのであります。  そこで、実はこの間から大変新聞をにぎわしておりますところの薬剤関係のノーハウの問題です。私も、厚生省がこういう企業戦争の中に巻き込まれるなどということは想像もしなかったことで、わりに日本の官庁というのは、それはちょいちょい汚職はありますが、汚職というのはやや個人的な問題なので、よその会社のノーハウをよそへ渡してやるなんというようなことは、これは私どもの想像できなかった事態が起きておるわけであります。テレビや新聞を見ていますと、ある一つの薬品の開発に四十億円くらいの開発費用をかける、しかしそれがうまいこといくと月に二十億ずつくらいの収益になる、こういうふうな解説なんかがあるのです。  そこで、よく医療で薬漬け医療ということが言われておるわけですが、私はこれはいまのシステムに一つ問題があると思っているのです。だけれども、さらにそれを超えて、いまの新薬開発競争というもののために薬剤費の単価が相当高いものにすでになっているのじゃないか。薬品会社はいま収益状態が非常にいいということで、株式市場における薬品株というのはおおむね千円台というのが多いのですね。そうでなくても千円台に近いのが多くて、大変いま薬品株というのがいい。なぜいいか。高収益だからいい。高収益だということはどういうことかと言えば、高い商品を売って利益をたくさん上げるということです。国民医療というものは、要するに医療法で、医師は医療を営利の対象にしない、こうなっているわけですよ。営利の対象にしない医療をダシにして巨額の金をもうけようという産業があるということは、国民経済の観点から見て大変問題がある、私はこう見ているのです。  それで、臨調の方たちは、何でも民間でやったら効率がよくて、もうかっていいという話でしょうけれども、私の立場からすると、現在の健康保険というシステムは、私なりに言うと大変便利な医療国営だと思っているのです。それはともかくも、施設は民間持ち、それから給与も民間払いでやれ、しかし、やる内容はこういう内容で、費用はこの枠で公定価格でやれ、こう言っているわけですから、こんな国にとって都合のいいものはないぞと言っているのですが、その公定価格で医療が強制をされておる中で、薬剤だけは自由価格でもうけほうだいでもうける。この一兆円の中の四〇%ほどは、薬剤費でがばがばもうけているやっがここへ出てくるわけです。だから私は、これからの日本の社会保障を考えるときには、第二臨調とは逆に、医薬品工業については専売制にするか強固な公的管理によって、国民が納得できる適正価格で、そういう過当利潤を許さない。要するに医療そのものも配当は認めないというかっこうでやっている、きわめて公共性の高い行為が国民に保障されておるときに、それを利用してもうけられるだけもうければいいという話は、私は国民経済的に見て納得ができない。これが一つあるのです。  もう一つは、いまの医療機器に対するコントロールの問題です。幾らでもCTスキャンのようなものを入れれば、一個十億も十五億もするのがあるわけですから、これを償却しようと思えば——ともかく痛くもかゆくもないのですから、行って電気をぱっとやれば、そこでもうコンピューターが働いて写真がこう出てくる。ですから、撮ってもらう方にすれば、これは大変結構だということになるでしょうね。片一方は、それをどんどん撮ることによって早く償却したい。一体だれがもうけているかといったら、医療機器メーカーがもうけているのです。その医療機器メーカーにもうけさせるために、一兆円の中の一一%ほどのもの、全部がそうとは言いませんが、かなりの部分は医療機器メーカーに金が行っておる。実はそういう医療費の実態を無視をして、そして医療費を圧縮をするためには、受診制限になるように二割の負担をして、要するに診療所、病院に行きにくくする。これは日本の医療の大変な逆向きのスタート、逆噴射だ、日航事件の。とんでもないと問題提起が行われておると私は思うのです。  要するに健康保険の趣旨は、早期受診、早期治療というのが実は一番重要な柱なんです。早期受診、早期治療で、軽いうちに診て発見して治せば何でもない。ところが、負担額があるとすれば、まあそれじゃちょっと買い薬ででもやろうかと、自己判断でやっていれば重くなる。重くなって行けば、本人も大変だけれども、費用もまたたくさんかかる。要するに医療というものの本質をわきまえない、経済計算だけから医療にタッチするというこの考え方は、国民経済の立場から見て大変大きな問題だ、私はこう見ているわけです。  後で大臣が来られてからそれも伺うつもりですが、大蔵省主計局は私がい言っておる考え方についてはどう考えるのか、担当次長、お答えをいただきたい。
  28. 保田博

    ○保田政府委員 お答えいたします。  堀先生つとに御指摘のとおり、経済が高度成長から低成長時代へと移り変わる中で人口の高齢化が非常に進んでおるわけでございまして、社会保障の分野では年金と医療の二つの部門で国民経済が支え切れないような時期が来るのではないかと、大変危惧をいたしておるわけであります。したがいまして、医療の面でも、もちろん負担の公平ということも考えなければなりませんが、同時に、やはり財政だけの立場じゃなくて、国民経済全体の立場からいたしましても、これが負担できるようなものに適正化、合理化を図っていかなければならない、重点化も必要であろう、こういうふうに考えるわけです。  先ほど来御指摘の薬剤費の問題、それから医療機器の問題でございますが、私は、医療費の中で薬剤費それから医療機器の償却費が非常に大きい負担になっているということもわかります。したがいまして、それらの適正化を図るために、診療報酬の改定の際あるいはそのほかの機会をとらえまして、薬剤費の健保の点数を切り下げるといったような合理化は、厚生省の方にお願いしましてやっていただいておる。それはそれなりに一つの方法であろうかと思うわけですが、来年度の概算要求におきまして、厚生省から提案のありました健保の二割負担というものも、確かにいろいろ御批判もあろうかと思いますけれども、やはり医療費の適正化に資する面もありますし、それから医療を受ける本人が多少の負担をするということによりまして、医療のプライスメカニズムというようなことも働くことが期待できるのではないか、そういう意味でやはり一つの評価を与えてしかるべきものではないか、こういうふうに考えています。  ただ、それによりまして、いずれにしましても現在の医療の分野においてむだがないということではないわけですね。そのむだというのは、結局いま国民のだれが負担しておるかといいますと、患者の自己負担あるいは保険料負担、それと税金というかっこうでの国の負担、こういうことになるわけでございます。したがって、あらゆる手だてを尽くしまして乱診乱療をとにかく防ぐということは、結局は国民の負担を軽減するということにもつながるのではないか。ただ、それが個人の非常に過大な負担になるような場合にはこれを防ぐ必要がありますので、先生御承知のように、高額医療費の自己負担という制度もございますので、それらをもちまして総合的に国民の医療負担を図っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  29. 堀昌雄

    堀委員 主計局というところはお金ばかり見てやっているところですからね、多少そういう意見があるのはやむを得ないと思うのですが、ここにはたくさん大蔵省の皆さんがいらっしゃるから申し上げておきたいのですが、一体、人間にとって一番大事なものというのは何か。ちょっと各局長、一人ずつざっと答えてください、宮本さんからそちらへずらりと。人間にとって一番大事なものは何か。
  30. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 心だと思います。
  31. 堀昌雄

    堀委員 心。はい結構です。
  32. 佐藤徹

    ○佐藤(徹)政府委員 やはり人によってそれぞれ価値観は違うと思うのですけれども、一般的に言えば、健康な体と健全な心ということだろうと思います。
  33. 酒井健三

    ○酒井政府委員 ことわざに「健全な精神は健全な肉体に宿る」といいますので、やはり基礎は健康であろうかと思います。
  34. 西垣昭

    ○西垣政府委員 私も健康であろうかと思います。
  35. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 やはり健全な体と心だと思います。
  36. 堀昌雄

    堀委員 大変いいお答えをいただきました。まさに私は、「健全な精神は健全な肉体に宿る」のですから、健全な肉体が一番先だと思うのですね。  私は予算委員会やその他で何回も言ってきたと思うのですけれども、要するに金というのは、それは豊かであることはいいと思いますよ。しかし、病気で寝たきりの人にとって、どんなにお金があったって幸せはないのですね。しかし、貧しくても健康で働けるというのは、人生にとって大変意義のあることなんですね。だから私は、そういう意味で健康というのが人間にとって最も大事な要素でありますよと。その健康で働けるようにするというのが、本来健康保険の目的なんですね。健康なときに金を積んでおいて、病気になったらできるだけ早く受診をして、重くならないうちに治療をする、そして早く健康を取り戻す、これが健康保険というシステムを支えておる土台なんですよ。ところが、最近ずっと見ていますと、いまの健康保険、私も医師としてやっていて気に入らぬことがいっぱいあるわけですが、要するに医療というのは人間中心の問題なんですね。よろしゅうございますか。そして医療保険経済というのは金の話なんですよ。完全に金の話。そのときに私が言いたいのは、皆さんもおっしゃったように、健康の方が先で金の方は次なんじゃないか。保田さんもそうじゃないですか。ちょっとそこのところだけお答えください。
  37. 保田博

    ○保田政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  38. 堀昌雄

    堀委員 きょう、主計局は保田さんしかいまお見えになっていないけれども、後でちょっと平澤さんも入ってもらわないと困るので、平澤さんにも連絡をとってください。  予算を査定するということは何をやることかといいますと、日本国民の幸せになるような予算をやる。対象はあくまで人間なんですよ。よろしゅうございますか。数と経済ではないのですよね。私も長年経済をやっていますけれども、スタートは医者なんです。人間を治そう、こう思ってスタートしてきたわけです。しかし、人間をよくするためには経済をよくしなければなかなか人間はよくできないということで、経済を専門にやっておるわけです。ところが、どうもそれが逆になって、経済の方が大事なのであって人間が二の次だ、それがいまの八割給付に象徴的にあらわれているのですね。  これは自民党も、この間日本医師会が大会をやったら、田中政調会長も、これは党として検討をいたしますとか、私が医師会の方に聞いたら、居並ぶ代議士はみんな、要するに日本医師会の皆さんの応援がなければわれわれは当選できません、われわれも政調会長の方針に従って一生懸命やりますと言って一大体、自民党どうですか、そこらにおられる方は。私と余り意見が違わないのではないですか。(「そのことは同じだ」と呼ぶ者あり)同じでしょう、皆同じですね。だから、ここで大事なのは、要するに行政が重要なのか、政治が重要なのかということがいまや問われているわけですよ、こういう問題を通じて。  私は、この委員会の中で、かつて竹下さんが大蔵大臣になったときに、竹下さん、あなた将来のある人だ、私は過去にこの大蔵委員会でいろいろな大蔵大臣とつき合ってきた、いまは十月十二日の判決を目の前にしておるけれども、ともかく大蔵大臣として、人間の方が先で経済は後でもいいという判断を主として示した一人は田中大蔵大臣だった。はっきり言っているわけですよね。だからあなたも、要するに官僚出身でないのだから、政治家として政治的に大蔵大臣を務めてくださいよ、官僚の皆さん優秀だけれども、どうしても官僚の皆さんは、そういう数字だとか経済だとかいうものが先になって人間が後になる、だから政治家は、人間が第一だ、一番前に人間を置いて、その人間がいかにあるべきかということからすべてを考えるのでなければ政治家じゃないわけですから、竹下さん、そういう立場でやってください、こう言ってお願いをした歴史があるのですね。  官僚の方は立場上いろいろやむを得ないところがあります。しかし、この優秀な大蔵官僚は、ちゃんといま皆さん本当のことをここの委員会で言ってくれているわけです、健康ですと。だからもう聞きませんが、恐らく、私がさっき保田さんに伺ったように、人間が大事か経済が大事か、予算が大事かということになったら、それは皆さん人間の方が大事ですと。これはお尋ねしませんけれども、同じだと思います。政務次官、ひとつそこのところを、代表してどうですか。要するに人間の方が大事か、予算の方が大事か、どっちですか。
  39. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 私ども、選挙のときには常に、国民の生命と財産を守るというお訴えをいたしてまいるわけでございます。何としても国民の命を守るための行政をしていくためには、どうしても金銭的な面というのも必要になってまいります。そういう意味で、ただいまの先生の一つ一つの御意見、まさにこれからみずからの政治活動の指針として、私もがんばらせていただきたいと思っております。
  40. 保田博

    ○保田政府委員 お言葉を返すようでございますけれども、私は、健康を犠牲にして財政なり国民経済をとにかく守ろうというつもりはございません。それは、経済があってのさらに国民であり人間であるということはよくわかっておるわけです。ただ……
  41. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと待ってください、経済あっての国民……国民あっての経済でしょう。
  42. 保田博

    ○保田政府委員 国民あっての経済である……ごめんなさい。
  43. 堀昌雄

    堀委員 大体本音が出たよ、いま。
  44. 保田博

    ○保田政府委員 でございますけれども、先ほど来申し上げておりますし、先ほどから堀先生も御指摘のように、現在の医療にはやはりむだがあるわけでございまして、そこに何とかメスを入れなければ、先ほど申し上げましたように、財政がもたないというだけではなくて国民経済全体がもたなくなるということで、われわれは危機感を持っておるわけであります。  もちろん今度の厚生省の概算要求が唯一無二のものとも思いませんけれども、やはりそういう意味での何かのプラスにはなるのだと思っております。ねらいといたしておりますのは、先生が御心配になっておりますような、健康を犠牲にするという意味での正当な受診を抑制するということではなくて、むだを排除するための方策である、そういうふうに考えておるわけでございます。
  45. 堀昌雄

    堀委員 主計局次長の立場として、私はわからぬではないのですね。それはなぜかというと、あなた方は専門家じゃないから。要するに、二割の負担があったら早期受診の抑制になるかならないかという問題は、私はこう見ているのですよ。何ともないのに医者に行く人はいないのですよ。どこかがぐあいが悪いと思って行くのでして、お医者さんに行ったら必ず待たされる、時間もかかる、そうしてそこへ行くための問題もあるわけです。だから、どこかが自分はくあいが悪いと思うからお医者さんに行っているのですよ。まあ、老人保健の場合は多少違う点もありましたから、これは別としても、いまは健康保険なのだから。これはやはり非常に大きな問題があると思うのですよ。受診抑制になる、これは間違いない。受診抑制になると何が起こるかというと、買い薬で済ませる場合もあるでしょう。できると思いますよ。しかし、百のうちの幾つかの中で、実はもっと大変な病気になるおそれがある場合は十分あるわけですね。  だから、この問題は厚生省が考え出したことだけれども、厚生省も——議官は技官ですか、そうじゃないでしょう。要するに、医者以外の人間が主体になってやっているわけですよ。医療というものは、やはり自分が医療を担当してやったことのない人にはわからないものがうんと大きいのですよ。そういう意味では、お医者さんの会合に出席して、お医者さんたちはどう考えているか、保田さんにぜひ一遍聞いてもらいたい。あなた自身がもっと、さっきぱっと出たように、経済あっての国民ですというのがもう無意識に出てしまうのだから。ここで黙っていても、国民あっての経済ですと出るようなら私も心配しないけれども、こういう次長がこれから厚生予算をやるというのは大変なことですよ。ひとつ、十分そういうあれで考えていただきたいと思います。  この問題は、別にここで物を決める気はないのでここまでにしておきますけれども、自民党もそれなりの対応をされるだろうと思います。それなりの対応をすると何が起こるかというと、予算上に穴があいてくるという問題が起こるのでしょうね。ところが、そのときに何が何でもマイナス一〇%シーリングでなかったらいかぬのだ、私はこれがまたおかしいと思っているのだ。まさに保田さんがいみじくも言った、経済あっての国民ですというのが、いまのマイナス一〇%シーリングの中にあらわれているわけです。一体予算というものはだれのためにあるのか、これは大蔵省のためにあるのじゃないですよ、各省のためにあるのじゃないですよ。これは国民のために予算があるのであって、予算のために国民があるのじゃないのですよ。主計局はいまあなたしかいないから、保田さんばかりでえらい悪いけれども、予算もやはりそうじゃないですか。国民のための予算であって、経済のための予算とかそんなものではないのじゃないですか。予算があって国民があるのでは、なくて、国民のために役に立つ予算をつくるということだと私は思うのだけれども、主計局の考えをちょっとひとつ聞かせていただきたい。
  46. 保田博

    ○保田政府委員 先ほどは言い間違えまして大変失礼をいたしました。私も、財政経済との関係につきましても、福田元総理がよく言っておられましたように、経済あっての財政というふうに理解をしております。
  47. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、三段論法でいくと、国民あっての経済経済あっての財政ですね。それだけきょうは主計局を代表しての答弁として承っておきます。
  48. 下村健

    ○下村政府委員 大変恐れ入りますが、お話を伺っておりまして、医療について大変御心配をいただきましてありがとうございます。ただ、厚生省といたしまして五十九年度予算の問題は確かに念頭にあるわけでございますが、今回こういう考え方を出したのは、もう一つは中長期的な展望といたしまして、毎年一兆円というふうに先ほど申し上げたわけでございますけれども、現状からいきますと国民所得を上回る医療費の伸びがある。これを将来的にどういう方向で負担をしていくのかという点があったわけでございます。  それから、今回の八割ということになると患者負担がふえるという御指摘で、これは確かにそのとおりでございますが、逆に十割給付のままにしておいて退職者医療のようなことをやりますと、保険料負担をふやさざるを得ないという問題も出てまいります。そこをどう考えるかということで減税というふうなお考えもあり、社会保障負担と租税負担を合わせて、長期的な負担をヨーロッパより低くすべきだという臨時行政調査会のような御意見もございます。そういう負担限界というふうなことも考えて、むしろ保険料負担を抑えていくという観点に立って八割給付を考えてみた。  それからもう一つは、国民健康保険と家族の場合には、現状七割あるいは八割給付ということで、それではその結果国民健康保険の被保険者あるいは家族の被扶養者の場合に、医療上あるいは健康上に重大な支障が起こっているかと言えば、私どもは必ずしもそうは見ていないわけでございます。  それから、むだの議論があるわけでございます。確かに現実の数字としては若干の差はありますけれども、受診率の面から申しますと、本人と家族の間にそう大きな開きはないわけでございます。むしろ一件当たりの診療費の面から見ますと、薬代と検査代の面で、実は本人と家族ではかなりの隔たりがあるというのが実態になっております。その辺の評価をどうするかという辺は、また意見が分かれるところかもしれませんが、そういう面から言いまして、若干のむだ、これは私はお医者さんの側と患者の方と両サイドに問題があるのではないかという気がいたしておりますが、そういう乱用防止というふうな意味も込めて、また家族等の状況から見まして、実質に支障のあるような障害が起こることはないというふうに判断をいたして、今回のような措置をとったわけでございます。
  49. 堀昌雄

    堀委員 それはあなた方の立場で、わかりますが、私が問題提起をした、要するに薬剤に対する公的コントロール、ともかく多額の投資をして、多額の開発費をあれしてできたものが、毎月二十億ずつもうけるなんという話。私は、薬剤費なんというものはある意味では公共性の高いものですから、そういう意味では電力会社や何かと同じように配当制限もあってもいいし、ともかくいろんな点でより公共的なものにしていかなければいかぬ、こう思うのですね。薬剤生産に対する厚生省の考え方、医療機器の売り込みその他の配置の問題、要するに一定地域において一定のそういうものがあれば、公的医療機関はそういうCTスキャンは一般の医師に開放する、どうぞお使いください、もう二重投資、三重投資はやめましょう、そういうような基本方針をきちんとして、そして医療費の増高が抑えられなければ一その次に考えるというなら話はわかるのですよ。非常に大きな問題、もうけほうだいな問題はほっておいて。本来これは質的転換なのですね。国民健康保険は初めから本人は無料じゃないのですよ。ちゃんと自己負担があったわけですからね。それの話と、長年にわたって、健康保険ができてから今日まで何年になります。ちょっと答えてください。
  50. 下村健

    ○下村政府委員 昭和の初めでございますから、健康保険ができましてもう五十年を過ぎておるわけでございます。
  51. 堀昌雄

    堀委員 五十年やってきた一つのシステムは、質的に一つのシステムとして成り立っているので、それをただ量的にさわったらいいじゃなくて、私から見ると、量的な変化は質的な変化をもたらすわけです。だから私は問題にしておる。薬剤の問題と医療機器の問題を先に厚生省が真剣にやるのでなければ問題がある、私はこう思っておりますので、どうぞお帰りになって、医務局、業務局、いろいろあるでしょうが、ひとつ厚生省にあれしてください。この次、一般質問のときには林厚生大臣に入ってもらって、とっくりとこの問題をやらせていただきますから、予告をしておきます。  じゃ結構です。どうぞ御退席ください。  ちょっと大臣のおられないときに医療関係の問題をやって、あと時間が……。
  52. 森美秀

    ○森委員長 十分延長。
  53. 堀昌雄

    堀委員 はい、わかりました。  次は、国債の問題を先に少し伺いたいと思います。  この休会中に十五年国債、二十年国債という新しい国債が発行されることになりました。私は、国債についてはっとに国債多様化論者でございまして、日本の国債というのは、当初は七年の長期国債というのが出ておったのです。たしかあれは福田大蔵大臣だろうと思うのですが、私は、長期国債で七年というのはおかしいのじゃないですかという話をいたしました。というのは、少なくとも利付債が五年なのですね。この利付債五年というのは、私は中期債だと見ていたので、やはり国債は十年債にすべきではないかと言って、この委員会で提案をさせていただいて、十年債になりました。  その後、実は昭和五十年に大変なギャップができて、当時、自民党の松野頼三政調会長が、私、政審会長をしておりましたので、堀さん、ことしは大変な財政ギャップが出るので、赤字国債を相当出さないと財政はどうにもならぬ、ひとつ赤字国債の発行について理解をしてくれという話ですから、まあ理解するとかなんとかよりも、当初だれも予想しなかったのに税収が落ち込んだので赤字国債を出す、それはやむを得ないだろう、しかし松野さん、一つ条件がある。要するに、いま国債は十年の国債しかない、国債で中期国債を出せ、それをあなたが約束してくれるなら私なりに対応しよう、こういう話を松野さんにいたしました。これがその後一御承知のような五年の割引債ということで実は実現をしてきたわけであります。  その後今度は、私落選をしたときに、五十一年でありますが、「レファレンス」だったと思いますけれども、何か書いてくれというお話がありましたので、国債多様化論をそこで書きまして、今後は二年、三年、四年というふうにいろいろなバラエティーのある国債を出すべきだという提案を書きました。その後、今日、二年、三年、四年、五年、六年とバラエティーのある国債が発行されるようになってきた。ただ長期債が実はこれまでなかったのですね。私はもう一つ考えとして、永久国債論というのを持っているのでして、ともかく一遍出したらそれはもう永久国債だということで、それなりの考えを持っているのです。これはなかなかそう簡単にはいきませんが、十五年国債、二十年国債を出したことは、私はよかったと思っているわけです。  そこで、十五年国債は御承知のような変動利付債になっていますね。皆さんよく御存じないと思うので、理財局長の方からちょっと簡単に十五年国債の変動利子のメカニズムを御説明をいただきたいと思います。
  54. 西垣昭

    ○西垣政府委員 いま堀先生からお話がございましたように、私どももかなり大量な国債の発行を円滑に進めていくためには多様化を図っていくことが必要であるということで、十五年利付国債と二十年利付国債、超長期国債でございますけれども、今年度に入りましてから二回発行いたしております。  十五年利付国債につきましては、いまお話がありましたように変動利付ということで仕組んでおります。この考え方は、現時点の金利水準が高いか低いかということはよくわかりませんので、これは市場の状況によって高くなることもあれば低くなることもある、後になってみなければよくわからないわけでございますけれども、投資家が投資しやすいように、十年利付国債の市況を中心にいたしまして、それに従って変動する、こういう仕組みでございまして、実際には、非常に大まかな言い方でございますが、前の一年間の十年利付国債の平均的な利回りに〇・三%乗せる、そういう変動利付というふうに仕組んでおります。  なお、二十年利付国債につきましては、これは固定利付ということで発行いたしております。
  55. 堀昌雄

    堀委員 それはわかりましたが、保有期間といいますか、いま両方とも私募債ですから、発行して、据え置きというか市中に売らない期間がついているのじゃないかと思います。そこをちょっと……。
  56. 西垣昭

    ○西垣政府委員 十五年利付国債につきましては、ずっと持っていてもらうという仕組みでございます。二十年利付国債につきましては五年間譲渡を控えていただく、こういう条件になっております。
  57. 堀昌雄

    堀委員 これが出て、私じっと見ていまして、この十五年変動利付国債というのは国民は相当関心を持つのじゃないか、こう実は見ているのですよ。というのは、あれはいまは主として信託会社ですか、どこですか。
  58. 西垣昭

    ○西垣政府委員 信託のほかに信用金庫、それから農中、こういったところに引き受けてもらっております。
  59. 堀昌雄

    堀委員 私はこれを一遍公募で出したらおもしろいだろうと思っているのですよ、変動利付債、十五年債ですからね。そして、そのかわり、それは市場で売買する性格のものではないので、いまのように、買った方は持っていてくださいよ。これを出したらかなり国民の中に、いま国民は昔と違って、資金運用をそれなりにいろいろ考えておられますからね。かなりの資金で長期に置いておいて心配がないというようなものの場合には、それはかえって売ったり買ったりではなくて資産として残しておいてもいいのじゃないかというようなものもあるのじゃないかと思うので、御検討いただければと思うのです。だから必ずしも信託その他だけでなくて、市場には出さないという原則なんですからそれはそれでいいのですが、ただ、これを国民が買うのは、いきなり国から買いませんから、要するに証券会社を通じて買ったら、そこから登録債になるか何かで処理ができるようになればいいのです。そこらのところをひとつ検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  60. 西垣昭

    ○西垣政府委員 先ほども申し上げましたように、多様化の研究は続けていきたいと思っております。いまの十五年超長期債の市場での公募、こういったこともその中の一環といたしまして研究してまいりたいと思います。
  61. 堀昌雄

    堀委員 大臣、私どもはこの国債問題というのを、昭和四十年、初めて戦後に国債が出たときからずっとかかわりを持ってきておるわけでありますけれども、アメリカ金融市場でいろいろな新しい金融商品が開発をされて、それがなかなか国民のニードに合ってどんどん売れるというかっこうになってきておる。日本でも一番初めはビッグですかワイドですか、ああいう商品が出て、それで今度は国債定期というのですか、いろいろな商品が出てきた。どうもこれまでは、国債を単品で買うという話はなかなかなじみにくいものですから、私は一般国民の中に国債というものがもう一つ入りにくかった、こう思うのですね。私は、いまの国債特別マル優というものも、実はここで、委員会で提案をしてつくっていただいて、国債消化のために役立つということでそれは取り入れていただいてきたのですが、ここへ来て国債の国民に対する消化という問題は非常に新しい段階に入ってきた、こういうふうに私は見ているわけです。恐らく大蔵大臣もそういうお感じで見ておられるのだろうと思うのです。  そこで、要するにこの間国債定期ができた。十月から中期国債が窓販になりますね。恐らく中期国債も、こういう新しいものが出てくるのではないか、私はこういうふうに見ます。そうなると中期国債は、片方では証券会社が中期国債ファンドというのでいま一生懸命売っている。かなり伸びてきました。今度は銀行その他の金融機関が中期国債定期というんですか、それを売り出す。そうするとこれは公募ですから、市中でともかく出す。私は、西垣理財局長は大変幸運な時期に理財局長に来られて、大変おめでとうと、こう言いたいのでありますけれども、これは十月以降の経過がそうなると、中期債はオーバーパーになる可能性が十分ある。ところが、いまの予算の形では、予算総則に発行量を書いているのではないですか。たしかそうだと思うのですが、どなたが答弁してくれますか。
  62. 西垣昭

    ○西垣政府委員 予算総則で国債の発行限度額が書いてございまして、あと償還計画表の内訳ということで期間別の国債の予定が書いてございます。  ただ、それは拘束されるものではありませんので、市場の状況によって変更いたしまして、その都度償還計画表の改定という形で国会にお出しをする、こういう扱いにいたしております。
  63. 堀昌雄

    堀委員 私、ちょっとそこのところがはっきりしなかったのですけれども。ですから、中期債が余りオーバーパーになるというのも適当でないし、しかし国民の需要があるのなら、私、中期債を出していいと思うのです。中期債を出して、そしてその処理をする。同時に、中期債がかなりこうなると、これは長期債に波及してくるのでして、だからそういう意味では、国債政策というのはちょっと新しい段階に入ってきたな、これから売り手と買い手の条件がちょっと変わってきて、これまではともかく買い手の方が強くて、いやそれならわれわれは買いませんと、大蔵省は何回も外債なんというようなことに追い込まれてきましたけれども、今度は値段の折り合いがつかなければ、ではひとつ今月は外債させてもらいますと、今度は大蔵省の方が外債というと、これはいまの国債定期という品物が売れなくなってしまうわけですから、それは困ります、やはり出してください、売り手と買い手の市場がここで逆転するだろう、どうも私はそういう感じがしておるわけです。大蔵大臣はどういう御認識が、ちょっと大蔵大臣のお考えを。
  64. 西垣昭

    ○西垣政府委員 技術的な問題でございますので、ちょっと私から御説明いたしますが、国債の発行条件につきましては、そのときそのときの市況をにらみながら、発行者にとりまして有利な条件で発行するということでやっております。この点につきましては、十年利付国債につきましても、二年、三年、四年の中期の利付国債につきましても同じでございます。したがいまして、市況が非常にいいときには割引価格を大きくするとか、それがさらによくなりますと、クーポンレートそのものをよくいたしまして、それで発行するという形でございます。  そういう形で発行しておりますので、急に市況が変わらない限りは大体アンダーパーで発行する、こういう状況でございます。いままでオーバーパーで発行したことがございますけれども、これは技術的な問題でございまして、大体においては市況に応じて条件を設定して発行いたしますので、アンダーパーでございますが、市況がよくなりますと、さっきから先生おっしゃってくださっておりますように、非常にハッピーではございますが、いい条件で、つまり発行者の負担が軽い条件で発行できる、こういう状況でございます。いまは幸いにして、この二週間ばかり市況がよくなっておりますので、確かに先生のおっしゃられるような条件が現在あるわけでございます。
  65. 竹下登

    竹下国務大臣 私は最近金融、いわゆる銀行といわず証券といわず新商品ラッシュ、こういう感じを率直に持っております。ワイドからビッグから、三菱のやりましたMMCでございますか、国債定期口座、それから国債定期口座と同じように今度は長国と金銭信託とを組み合わせた国債信託口座、そういうのが出てまいりますと、最近は農業協同組合の方もお見えになる、あるいは信用組合の方までお見えになって勉強なさっております。この新商品を覚えるだけでも大変でございまして、十万円ずつ、五人の孫がおりますので、三口ずつやって十五種類はこなせると思って、この間孫を呼んで調べてみましたら、一つだけは百万単位だということになりますと、贈与税の関係があるからこれはだめだな、そういうふうに私なりにも、肌で感じませんと覚えにくいものですから、勉強をしております。  確かに、発行形態が多様化して、しかもそれがそれぞれの金融市場の中で国民のニーズにこたえて新商品が開発されておるということは、監督官庁たる私が種類が覚えにくいとかいう問題は別として、いいことだと率直に思っております。したがいまして、窓販が去る四月から長期利付国債で開始されまして、そしてこれから中期国債と、ずっといくわけでございますので、そういう過程においていわゆる国債、これは管理政策というよりも、あるいは発行の多様化政策のようなことになろうかと思いますが、それは絶えず関心を持って勉強していかなければならぬ課題だというふうに考えております。
  66. 堀昌雄

    堀委員 そこで、そういう情勢の中で、しかしこれから一方では借換債の問題がそろそろ重要な段階に入ってくる、こういう問題があることは大臣も御認識のことだと思うのであります。  私は、渡辺大蔵大臣のときに国債特別会計論というものをこの委員会でやりまして、大蔵省で御勉強していただいておるんだと思うのですね。——平澤次長は入りましたか。——ちょっと平澤さん、前へ来てください。平澤次長に入っていただいたのは、たしか法規課担当次長でございますね。
  67. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 そのとおりでございます。
  68. 堀昌雄

    堀委員 実は私が国債特別会計論をやったときの一つの目玉は、要するに政府短期証券、蔵券と言われておりますけれども、現在は蔵券というのはどういうために発行されているかというと、税収その他の関係財政調整の手段として発行されている。それはそれでいいのですけれども、私は新たにこれから大量の国債が転換をしてくるときには、それに一々物を合わせて処理することは現実的に困難だという判断をしておるものですから、短期国債というものを発行することによって国債借りかえをうまくスムーズに調整できるようにしたらどうだろうか。そこで、そういう意味での短期国債の市場をできるようにしていくということにすれば、借りかえ問題にも大変いい。  もう一つあわせて私ちょっと伺っておきたいのは、いま為替の問題でともかくも日本は経常収支大変な黒字になる。それで頭を悩ませるような状態であるにもかかわらず、金利差の関係でなかなか円高にならない。さっきも大臣が二百三十七円とおっしゃいましたが、われわれから見ると、いまの日本の全体から見て、仮に安くても二百二十円、まあまあ適正な価格は二百円と二百二十円の間ぐらいではないかと思うのに、四十円に近い方に来ているというのはどこに最大の問題があるかというと、金利差のために日本の長期資本がアメリカヘ行っている、さっきも申し上げた、これに関係があるわけです。  そこで、保険部長に入っていただいているから、生命保険が最近外債その他を買っておる状態をちょっとお答えいただきたいのです。古い話はいいですから、八〇年ぐらいから。八〇年、八一年、八二年、八三年は四月−八月ぐらいで結構ですが、外国証券を一体生命保険はどのくらい買っているかということを伺っておきたいのです。
  69. 加茂文治

    ○加茂説明員 生命保険会社の海外投資につきましては、先生御承知のとおり資産運用の多様化によります運用利回りの向上を目指して行われてきておるものでございます。しかしながら、外国有価証券投資につきましては、カントリーリスクあるいは為替リスク等国内の投資とは異なった困難な問題を含んでおるということから、その投資額を総資産の一〇%以内にとどめるように従来から指導をしておるところでございます。  本年の四月以降八月までの数字をとりあえず申し上げますが、その間の生命保険会社の外債投資額は三千八百三十億円となっておりまして、この結果、外債投資残高は二兆一千百八十億円となっております。生命保険会社は、八月以降は外債投資を増加資産の一〇%台に抑える旨の自主的な申し合わせを行っておりまして、この結果、八月の外債投資は六百六十三億円、対増加資産の割合は一六・五%。また、九月につきましては五百二十四億円、一〇・七%とさらに鈍化するものと見込まれておるわけでございます。  なお、先ほどから話が出ておりますけれども、生命保険会社は九月から十一月にかけまして満期二十年の国債を毎月二千億円ずつ、通常のシ団引き受けの上乗せとして引き受けることといたしております。これは同期間におきます生保の増加資産の約二分の一に相当する規模でありまして、この間生保の余資はかなり減少し、外債の投資につきましては引き続き穏やかに推移をするものと見込んでおるわけでございます。
  70. 堀昌雄

    堀委員 運用ですから、私は別に生保が外国証券を買ってよくないなんて思ってないのです。思ってないのですけれども、現実に日本の円が向こうに打っちゃうということは、やはり円安に無関係ではあり得ないという点では、全体的な視野も含めて対応してもらうのが望ましいなと思っておるのですが、その中でいまの二十年国債というのが、それなりに生保にとっても望ましい資金運用の対象になるということで、これは大変結構だった、私はこういうふうに思っているのです。  ただ、そういう問題も含めてでありますけれども、いろいろなところの資産運用の場所として、現在短期市場というのはコールがあって、手形があって、現先があって、CDがある。これだけなんですけれども、日本でもさっき申し上げた国債、大蔵省の短期証券というものは、アメリカではTBとして非常に権威のあるものであって、これが短期市場の中心をなしておる。そういうものがないために、現先のようなものが出てきたという歴史的な経過もあるのじゃないかと私は思うのですが、どうも私どもが承知している範囲では、理財局はこの短期証券は必ずしも反対じゃないと思うのです。この前ずらっと皆さん並んでもらったときに、一人ずつ聞いた覚えがあるのです。そのときに反対だったのは、当時の国際金融局長の加藤さんだけは、どうもそれはちょっと了解しがたいというお話がありました。加藤さんは主計局に長くいらして、財政単年度主義ということを非常に強くおっしゃっていまして、私も財政単年度主義はよくわかるのですが、一体財政単年度主義というのは、大蔵大臣、何のためにあるのかということなんですね、一つは。要するに、財政のけじめをきちっと単年度でつけるという問題があると思うのです。  もう一つ、特別会計は短期証券を年度越しで発行できる。これもいまの法律の定めで、糧券だとか外為だとかは年度にかかわらず出せる、こうなっているわけですね。だから私は、どうもそこのところが少し入りまじり過ぎているのではないだろうか。いまの蔵券について出しておる、財政調整で出しておるものは一般会計が出すんだから、これは私は単年度主義の枠内で処理するというのは当然だと思うのですが、名前を国債整理基金特別会計というけれども、これは昔の言葉だからもうやめちゃって、国債特別会計というすっきりしたものにすればいい。そうしてこの国債特別会計で、いまの償還表の問題もありますが、まあ国会からの要請でそうなっているんでしょうけれども、これは党内で諮ったことはありませんが、これだけ多様化した国債発行をしているのに、それの償還計画なんて話は過去の話であって、これから先の話だと思わないのですよ。それはやはり償還はもちろん必要でありますよ。その償還計画を含めて大蔵省が責任を持てばいいのでありまして、そんな細かいことまで国会が関与できるたちのものではないのでありますから。  だから、そういう問題を離れて、国債特別会計がフリーハンドで市場の状態を見ながら、最も適切な商品を公募によって市場に出して、そこで市場価格によって物が処理されるという方向にするための独立性を国債特別会計に与えよう。特別会計でありますから、そこでは年度越しとかなんとかいうものは関係ないのでありまして、これは資産運用の問題であって、財政プロパーの問題ではない、こういう認識なんですが、まあ主計局にはいろいろな意見がやはりあるんだろう。山口主計局長は、官房長時代以来、私の国債特別会計論はよく理解できます、こう言うのですが、主計局長、偉くなっちゃうとなかなかあれなんで、きょうは担当次長の平澤さんから、私が言っておる財政単年度主義という財政関係と、国債特別会計で出す蔵券というものが年度越しにいこうがどうしようが、これは国債の借りかえだとか発行だとか、その他の要するに現業部分の処理だから、外為、糧券と同じような性格のものを国債特別会計でやるのであって、いまの財政単年度主義の蔵券はまた別です。財政単年度主義で財政調整のためにやるのは別個にやればいい、こういうふうに私は整理をしておるのですが、主計局としてはどういう認識に立たれるかを伺いたい。
  71. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 堀先生のそういう御構想につきましては、われわれ前からいろいろ伺っておりまして、内部でもいろいろ検討しているわけでございます。いまの御構想でお述べになりましたように、弾力的に短期債も含めた国債を発行するということは、発行当局といたしましては金融の繁閑に応じて弾力的に発行できる、あるいはその発行する国債の中身を長短いろいろなものにできるという弾力性があるという点で大変メリットがあるわけでございますけれども、片方、その財政の立場で考えますと、明治以来、財政単年度主義というものをとっておりまして、この単年度主義というのは御指摘のようにいろいろ硬直的な面はあるかと思いますけれども、財政の節度を保つ上ではきわめて有効に機能しているわけでございます。したがって、いま先に申し上げましたようなメリットと、後で申し上げましたようないろいろな単年度主義に伴うメリット、この二つを、ではどういうふうにうまく調和させていくかというところに私は検討を要すべき問題があるんじゃないかと思っておるわけでございます。
  72. 堀昌雄

    堀委員 竹下さん、ここで私は、あなたの政治家としての真価が実は決まると思うのだ。それはどういうことかというと、私がすでに前段で言ったように、糧券、食糧証券というのはどうして出すのか。要するに物と見合いになっているわけでしょう。外為券も、ある意味では金ですけれども、それと見合いになっておる。それから私が言っておるのも、国債を買うための、国債との見合いになるわけですよ。短期債で出すけれども、それで長期債を処理するための、言うなれば引き当てとしてのものなんだから、これはリンクしているわけです。いまの糧券、外為それから国債特別会計、蔵券というのはリンクしてくっついている。いまの片方の、これまで出しておるものは、税収だとかいろいろな財政運営上の繁閑、そういうものの調整のために出しておるのであるから、あくまでこれは財政の部分なんですね。だから、そこのところは、名前が同じだから問題があるのなら、大蔵省証券と国債短期証券と名前を変えればいいと思うのだ。名前を変えたってちっとも構わないのであって、要するに私が言っているのは、質の違うもので、そして——私も最初に言ったように、財政単年度主義はけじめをつけるために必要だと思っているわけですよ。財政単年度主義を崩せなんということは一回も私は言ってないのだ。しかし、それとは別のものをもう一遍考えたらどうかと言っているのに、何だかどうもそれが入りまじるようなかっこうで問題が発展しないというのは、今後重要な問題だと私は思う。  竹下さん、政治家としてよくわかるでしょう、私の言っていることは。わかったら、この問題について速やかに結論を出すと、ひとつきょうここでお約束いただきたい。
  73. 竹下登

    竹下国務大臣 前々から、私どもから言うならば堀構想とでも申しますか、聞かされております。いわゆる大蔵省証券、TBというものに対する物の考え方というのは、アメリカ予算制度と、いま重ねておっしゃいました日本の単年度主義というものの相違で、私もいままでの堀構想の中でいささか誤解しておったのは、TBも食糧証券も同じ扱いというふうに実は理解しておりましたが、それは明確に分けてあるわけですね。したがって、いわゆる短期国債ということになるのでございましょう。そういうものの発行については勉強しなければならぬ問題だ。が、これがまさに一年というようなことになりますと、他の金融機関との競合というものも出てくる問題ではないかということを考えました場合に、いろいろな勉強をしながら、なおいま結論が出ておる問題ではございません。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 が、基本的に私の考えが絶対であるとは申しませんが、いわゆる国債性悪説という言葉が適当であるかどうかは別として、そういう考えがやはり今日までわれわれの根底にあると思うのです。したがって、これに対してはISバランス論でございますか、そういう議論が出たり、それから、国債というものは、最終的にはもちろん後世の納税者にツケを回すという意味においては、またしかし後世の者がそれを保有しておるわけですから、債権であると同時に債務であるという物の考え方からすれば、これに対すみ考え方を窮屈な性悪説てはかり通すのはいかがか、こういう議論も最近わりにかまびすしく行われておりまして、その都度私も耳を傾けさせていただいておりますが、基本的には性悪説の問題は一つあると思うのです。  そこで、いわゆる一年国債というようなことになりますと、言ってみれば、いろいろな国債を金融状態の閑繁というものの中で多様化して発行できる妙味というのは一つの魅力であると私は思いますけれども、もう少し時間をかけてこれは勉強させてもらいたいというふうに考えております。
  74. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとそこは認識が違うのです。私が言っているのは、一年国債の話は全然関係ないのです。大体サイト九十日でいいのですよ。長いものを出すとほかのところと競合しますが、サイト九十日程度のものならちっとも構わない。九十日あって資金を集めますと、それによって次の問題の処理をするのにつなげるわけでして、九十日、九十日とつないでいけばいいわけです。だから、私の考えは一年国債の話ではないのです。一年国債というのは全然別の、いわゆる中期国債のうちだと思います。一年、二年、三年というのは中期国債のうちですが、私は必ずしも一年国債を出さなければいかぬと思ってないのです。短期国債で、要するに国債特別会計での資金繰りを容易にすることによって、借りかえ期のギャップが出てくるものを調整しようというだけですから、そこはひとつ竹下さん、十分理解をしてほしい。  そうして、これはやったらすぐ間に合うようにならないのです。だからひとつ時間を限りたいと思う。あなたが永久に大蔵大臣をするわけじゃないのだから、少なくともわりに短い期間に、あなた方これに対してしっかり勉強して制度をちゃんとつくって、そういうものが動き出していたら、これからの大変な借りかえにスムーズにいくのであって、そんな直前になってやったってなかなかうまくいきませんから、ひとつ竹下大蔵大臣が決断をしてできた制度、これは日本のそういう経済運営上には非常に大きな問題だと私は思うので、ぜひひとつその点は大蔵大臣の賢明な決断をお願いをしておきたいと思います。時間は拘束をいたしません。  その次に、公定歩合を下げろ公定歩合を下げるという議論がしょっちゅう出ておるのです。私がこの前、やはりいまの短期市場問題と公定歩合の関係の話を日本銀行の前川さんに来ていただいてやったのは、大蔵大臣も御記憶のとおりであります。四月二十六日でありましたかな、やったのは御記憶のとおりなんですが、調べていてちょっと銀行局長に伺いたいのは、実は私はかつて大蔵委員会で歩積み両建て問題というのをずいぶんやっておったのです。よく御承知だと思います。最近ちょっと歩積み両建て問題というのをやらなくなっている。それは、いまは資金が余裕がある。資金がタイトなときには、貸し手の方が強くて借り手が弱いものだから、当然そういうことが起きやすかったのだが、ここまで資金が緩んできたら、普通ならそういうものは余りないのだと私は思っておった。いろいろな関係者の話を聞いてみると、やはり現実に歩積み両建てはありますよ、こういう話なんです。ははあ、こういう経済情勢で、要するに借りてくださいというぐあいになっていて、なおかつ両建てや歩積みが要求されているのはどういうことかな、こう思うのです。  銀行局長、どういう調査方法をとっていただくのがいいのかよくわかりませんけれども、これを一遍調査をしていただきたいと思うのです。それで、私は大きなところがそうやっているとも思いませんが、やはり公平という意味で都銀から信用金庫まで、何らかのサンプル調査によって、歩積み両建てが現状でどういうふうになっておるのかをちょっと一遍調査をしていただきたいということをぜひお願いをしておきたいのですが、どうですか。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 歩積み両建て問題につきましてはもう二十年以来の話でございまして、私どもも行政上の大変大きな重要課題として取り組んできたわけでございます。つきましては、調査の問題は、もうすでに毎年一回やっておりまして、この五月で調査をいたしましてまたことしの結果も出るようでございますので、早速御報告をいたしたいと思っております。  いま先生御指摘の歩積み両建てにつきましては、私どもの指導いたしておりますのは要するに過当な歩積み両建てでございまして、一般的な経済金融の取引現象といたしまして、アメリカではコンペといいますか、そういう歩どまりみたいなものとか、それは取引上必然的に出てくる歩どまり、あるいは担保などを、当然担保権の設定などもいたしました上で納得ずくでとっているものもございますので、そういう点におきましては過当な歩積み両建てというのはずいぶん減ってきているのじゃないか、私はこういうふうに思っております。
  76. 堀昌雄

    堀委員 いまのはこういうことだと思っているのですよ。要するに、担保をとっていれば、大体必要な担保をとっていると思うのに、拘束預金があるということがどうも多いようですね。そこらのところ。  私は、いまの通念上の問題は確かにありますが、やはり金融が緩んでいるときとタイトなときで、通念が変わっていいんじゃないかと思うのです。タイトなときの通念をずっと持ってきて、当然これだけやれというのもおかしい話でして、要するにそこらを含めて繁閑期に応じてそういうベースは多少は移動があってもいいんじゃないか。小さい企業はやはり借り入れ以外に資金調達の道がないのですね。これからベンチャービジネスなんというものが出るけれども、成長ビジネスならいけますが、そうでない一般の小企業はなかなか資金調達ができませんで、どうも見ていると結構そうなっているということのようですから、少しそこらを踏み込んだかっこうでひとつ調査をお願いしたいと思います。
  77. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 きょう改めて御指摘のあったことにつきまして、十分金融界にも伝えたいと思います。調査は、いまのを含めた意味で五月にいたしましたものを御報告申し上げます。
  78. 堀昌雄

    堀委員 それから、時間がないのであちこち急ぎますけれども、私ども、予算の問題を見ておりまして、国庫債務負担行為というものがずっとあるのですね。国庫債務負担行為というものは、かなり前の年度にすでに契約をやって、資金がどこかの年度で頭を出す、こういうかっこうのものになっているのですね。  それで、ちょっと資料をつくっていただきました。というのは、五十六年度予算額四十六兆七千八百八十一億、うち国庫債務負担行為の歳出化分が一兆四千三百五十七億ということで、これの中身として五十二年度が四百七億、五十三年度が千二百六十九億、五十四年度が二千五百五十二億、五十五年度が七千百八十三億、五十六年度が二千九百四十六億で、合計して一兆四千三百五十七億円になっておる。こういうことで、これは主計局からいただいた資料だから間違いがないと思うのですが、私どもから見ますと、マイナスシーリング問題というものと国庫債務負担行為の関係というのはどういうことになってくるのだろうかということなんですね。これはだんだんふえてきているのです。五十六年度が一兆四千三百五十七億、五十七年度が一兆五千三百四十五億、五十八年度が一兆七千九百五十七億。私は本当はもうちょっと先まで知りたかった。五十九年度になったらこういうものは一体幾らになっているのか、六十年度幾らになるのかというのも知りたかったのですが、きのうお願いした資料ですからここまででいいのですが、これだけで見ても、五十六年と五十七年では少なくとも一千億違う、五十七年と五十八年では二千六百億ぐらい違うということでふえてきているわけですね。特にこれで見ると、五十八年度は五十七年の八千九百九十二億円というのが一番大きなあれで、繰り越しになっている。  そうすると、五十九年度予算はすでにもう頭から国庫債務負担行為として予算化しなければいかぬものがあるだろうと思うので、ちょっとそれを答えてくれませんか。この資料で計算したようにトータルでいいです、過年度のしりが来るわけですから。五十九年度は予算編成の根っこの中に債務負担行為の歳出化というのがぼんとあるに決まっているので、それは一体幾らなのか、ちょっと答えてください。
  79. 保田博

    ○保田政府委員 申しわけございませんが、ちょっと手元に資料を持ってまいりませんでしたので……。
  80. 堀昌雄

    堀委員 次の委員会で、法案審議の前にそれじゃ一回報告をしてください。  大臣、この問題は非常に重要な問題だと私は思っているのです。要するに、国庫債務負担行為というのは、マイナスシーリングとの関係ではどういうことになっているのかということですね。表へ出る予算だけは今度はマイナスシーリングだという話になっているけれども、債務負担行為についてはどうしているのか。これはもう御自由にどんどんおやりくださいと言うのなら、国民にすればずいぶんひどい話ですよ、債務負担行為で先食いしてしまった方が得だということになったら。これは既定事実で、予算の中に何年先の既得権をある年度に決めちゃって取るということになれば、いまの財政をシーリングだなんだといって押さえ込んでいく過程の中で、これこそまさに聖域だと私は思うのです。こんな取り扱いは、非常に重要な案件ですから、次の予算委員会で私は党の立場でやらしてもらおうと思っておりますけれども、こんなことはこれからの財政運営上、特に五十九年度予算なんというのは大変問題があると思うので、大蔵大臣にひとつ御答弁をいただきたい。
  81. 竹下登

    竹下国務大臣 国庫債務負担行為、典型的なものとしては公共事業関係費あるいは航空機の調達等に関する二年以上かかるものとかいうような経費がございます。したがって、後年度の国庫負担となすべき契約を締結してもよろしいという権限を付与するということになるわけであります。したがって、後年度負担をある意味において義務づけるわけでございますから、毎年度の予算編成においては、翌年度以降の予算編成を過度に圧迫しないような配慮、これは十分考えながら今日まで計上しておるわけでございます。  国庫債務負担行為の歳出分が歳出総額に占める割合はここ数年三%程度でございますので、特に歳出の硬直化要因にいま直ちになっておるということは言えないんじゃないか。がしかし、私自身考えまして、国庫債務負担行為というもので権限は付与されるわけでありますが、とにかく大なり小なりそれは後年度に影響を与えることは事実でございますから、そこにまた予算の単年度主義の問題との矛盾とか、これはあるいは古くて新しい問題として議論されておるところでございますけれども、どうしてもその調達にある種の年限がかかるというものはやむを得ないものである。それが国際取引に基づくものというようなものも確かにございます。がしかし、予算編成する側に立った場合は、できるだけ後年度負担というものにしわ寄せしないような配慮はいつでも加えて、これに対応していかなければならぬ問題だというふうに思っております。  特に、私自身、党におるときでございますけれども、その間に入りながら、景気対策として五十七年度の補正で二兆七百億でございましたか、その中のある部分がこの債務負担行為だけでもって、予算総則で書くわけではございますけれども、そのときにも実は私自身ある種の矛盾を感じながら、しかし言ってみれば、そういう真水がない場合は後の真水に期待するしかないというような気持ちで、当時は大蔵大臣は渡辺さんでしたから、頼んで踏み切っていただいた。しかしその際にも、やはり後年度負担ということに大きな精神的かせを、ある程度感じておったことは事実でございます。
  82. 堀昌雄

    堀委員 財政伸びていくときは、私はそうやかましいことを申し上げる気はないのですよ。しかし、前年度比でマイナスにするというときに、これだけはそれに関係なく出てくるというのは、これは量の話よりも質的にどういうことになるのかなというように、大変大きな疑問を持っておりますので、そこらを含めて一遍十分この問題については御検討をいただきたいと思うのです。  それから、長いことお待ちいただいておりましたけれども、あとちょっと税の問題をこれから少し伺います、十分間ありますので。  ちょっと急だったので、準備が整ってないのですけれども、現在法人税で各種の引当金、準備金、その他法人税法に書いてあるものと租税特別措置法にあるものとがあると思うのですね。私は、これは広い意味で言いまして国が民間に対する補助を与えておる、こういう認識なのです。税の上での減免というのは、裏返せば、本来税金を払うべきものを払わないでいいというのは、補助金を与えたと同じことなのです。ともかくもいまのこういう大変厳しい情勢の中でもあるし、諸外国との経済競争の中で貿易摩擦その他いろいろな問題が起きてくるときに、日本政府はどうも企業に対してフェーバーを与えて、そういう保護政策によって公正競争でない貿易のあれをやっておるという意見が非常に強いわけであります。臨調の皆さんのような民間大企業の方は、これにはそうお触れになる気はないかもしれませんが、私どもの立場からすると、国際的に公正競争ということを確保するためには、この類の補助金は原則的に漸減してゼロにする、一遍にやめるというのは無理かもしれませんが、短期間に漸減してゼロにする必要があるのではないか、私はこう思っておるわけです。制度の違いもいろいろあると思いますけれども、退職給与引当金一つ例をとってみると、主税局長アメリカ、イギリスには退職給与引当金という制度はありますか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  83. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税法上、ただいま御指摘になりました引当金の制度は、御指摘になりました国の税制にはございません。
  84. 堀昌雄

    堀委員 きょうは時間があれですから詳しくはあれこれ伺いませんけれども、主税局として、諸外国にはないけれども日本だけにある、そういう式の引当金は、残っておるものでどのくらいいまありますか。
  85. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 余り時間がございませんので、かいつまんだ御説明をすることをお許し願いたいわけでございますが、ただいま委員が御指摘になりました法人税法上の各種の引当金、準備金でございますが、われわれ日本税制上では、この引当金と準備金というのはかなり性格を区分して考えておるわけでございます。引当金と申しますのは、法人税法上当期の損金になりますのは、減価償却費を除きまして当期に債務を確定したものだけでございますけれども、特に将来の債務にかかわるものにつきましては、ごく限定的に所得計算上引当金を認める。法人税法上で認めておりますのが引当金でございます。一方、準備金と申しますのは、御案内のとおり企業会計上はむしろ利益留保と申しますか、利益処分にかかわるものでございまして、特別の準備金を租税特別措置で認めておりますのは、これはむしろ一定の租税政策を遂行する上でのいわば政策税制として、私どもは区分して考えておるわけでございます。  ただいま御指摘になりました退職給与引当金につきましては、主要諸外国を見まして、ドイツにやや似た制度がございます。私どもの考えといたしましては、実は退職給与引当金と申しますのは企業の従業員に対する退職後の所得保障と申しますか、政策といたしまして、わが国の場合はむしろ退職時に一時的に退職金として引き渡す制度が慣行として非常にあるわけでございます。諸外国におきましてはむしろこれが企業年金として、社会慣行として形づくられておりまして、税法上も、企業が企業年金に対しまして掛金を払います場合は、原則として損金として認めておるわけでございます。したがいまして、退職給与制度が諸外国であるかないかというのが、税法上わが国の税制が諸外国に比べてその分だけ公平性を欠いておる、あるいは企業に過大にフェーバーを与えておるという観点の御指摘は、私どもはそのまま首肯することはできないわけでございます。  ただ、税調の五十八年度の税制改正の答申にも述べられておりますように、現在の退職給与引当金は、企業の所得計算上合理的な制度としては認められるけれども、その繰入率については絶えず見直さなければならないということで、私どもも近年、五十六年でございましたか、この繰入率の引き下げを行っておりますし、累積限度の引き下げを行っておりますし、引き続きこれは検討しなければならない。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、最初に委員が御指摘になりました引当金は、現在わが国の法人税法上六つございます。そのうち各国に共通して認められておりますのは貸し倒れ引当金でございます。退職給与引当金につきましては、先ほど申しましたように企業の賃金慣行が違いますので、これに類したものはドイツだけにしかない。あとの四つにつきましては、原則として諸外国にはあるいは認められていない制度であるかもしれません。  ただ、もう一つ付言いたしたいのは、わが国の場合は近年とみに、諸外国に比べまして、企業会計税制上の所得計算をかなり連続してきちっと並べるかっこうで行われております。諸外国の場合はそういう引当金が認められておりませんかわりに、各種の償却とかいろいろな意味でその国その国の実情に即して、企業の所得計算上、いわば財政日本にないようなフェーバーを与えている面もございますので、やはりこれはトータルとして物事を判断しなければならないのではないかというふうに考えております。
  86. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣、いまの五十八年度の税制調査会の答申どおりに、確かに理屈はあるのです。しかし、日本も退職金の時代から企業年金時代にどんどん移行しつつあるわけです。これは主税局か国税庁かわからないけれども、実際に退職給与引当金が積まれて、退職金は一体どのくらい払ってきているのか、そういうのは資料としてお持ちなんでしょうか。何も特定企業を言うわけじゃないけれども、何かのサンプルをとって、それは一体どうなのか。私から見ると、ずいぶん内部留保に結果的に回っている。実際には退職金をそれだけ払っていないけれども、あるルールで積める分をやって引き当てをやっているのだというものが相当にあるから、いまの見直せという話がその後ろへくっついて、税制調査会でも出ているのではないかと思うので、これは事実関係をわれわれも承知しなければ正確な議論ができませんので、ひとつサンプルでも何でもいいですから、実際に十年なら十年間にわたってどれだけ引当金で処理をし、どれだけ退職者があって退職金を出したのか、そういうデータを当委員会に提出していただきたいと思うのです。  あわせて、ともかくもいまの情勢は、国税庁が「民間給与の実態」で出しておるのを見ると、サラリーマンは九一%、事業所得者は三十七%、農業所得者は一二%というのが最近出ておるわけでございまして、何としてもこの問題については、減税をちゃんとしてもらわなければいけませんけれども、税は公平が大変重要なんでありますので、税の公平を損なわないように、今後ともひとつ大蔵大臣が善処していただくように要望いたします。それについてのお答えを承ります。
  87. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、各国は各国の抱える特別な事情によりまして税制をいろいろされておるわけでございますので、いま議論の出ておりました退給でございますとかあるいは貸し倒れもその一種でございましょうが、とにもかくにもこの問題は、税制調査会でも、五十八年度税制に対する答申の中でも御指摘いただいております。そして、そういう問題がえてしていわゆる税の不公平という議論に結びついてまいりますので、現在、私は不公平そのものが現実このように存在しておりますということを申し上げるわけではございませんけれども、不公平感というものが存在しておることに対しては、納税環境の整備とかそういうことから、きちんとした対応を不断に努力しなければならない課題だと認識をいたしております。
  88. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣、結構です。  梅澤さん、答弁あるならひとつどうぞ。
  89. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま委員が御指摘になりました資料につきましては、国税当局と協議いたしまして、なるべく御意向に沿うような資料を提出いたしたいと思います。  それから、もう一言補足させていただきたいわけでございますけれども、現在の退職給与引当金の制度は、企業と従業員との間の労働協約等によって一定の条件、つまり、企業として退職給与債務を確定的に引き受けたという条件のもとに引き当てを認めておりますので、引き当てが行われて現実に退職給与債務が履行されていないということは、事実問題としては考えられないということだけは付言しておきます。
  90. 堀昌雄

    堀委員 退職給与引当金は、大企業は別ですけれども、本来なら外部に積まなければいかぬと私は思うのですよ。企業内に内部留保のようなかっこうで置いておいて、自分のところで勝手に使って、そしてそれは債務の引当金ですでは話がおかしいので、ルールとすれば、労働組合と協約してやるのなら、外部に積んで、そして処理をするのなら、会社がつぶれたって退職給与はもらえるわけでして、少なくともそういうような担保をちゃんとしないで内部留保のために手をかしているということは、私は税の公正から見て望ましくないと思いますので、税制調査会でこの問題を含めてひとつ検討していただきたいと思います。
  91. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまの委員の御意見につきましては税制調査会に御報告申し上げますが、これも私どもの立場から一言補足することをお許し願いたいわけでございますけれども、退職給与引当金の外部積み立ての議論は従前からございます。むしろこの問題は、労働者の退職金債権の保護をどう考えるかという問題でございまして、ただ私どもが承知している限りでは、外部引き当てになりますと、どういたしましてもそのファンドの利回りが低くなります。そういたしますと、退職金の支給水準そのものに影響するという問題もございまして、これは企業側のみならず、従業員、労働組合の方も、外部に引き当てることについてはいろいろ議論があるということを従来から聞いておるわけでございます。私ども税制当局といたしましては、その点も考えまして、すっきりした制度になることはむしろ非常に歓迎すべきことではございますが、従来からそういうむずかしい問題があるということだけは御承知おき願いたいと思うわけでございます。
  92. 保田博

    ○保田政府委員 先ほどの数字をお答えいたします。  五十九年度の要求の中で過年度の国庫債務負担行為の歳出化額一兆六千四百六十六億、それに見合います五十八年度の予算における過年度の国庫債務負担行為の歳出化額は一兆五千四百二十九億、したがいまして千三十六億の増、こういうことでございます。
  93. 堀昌雄

    堀委員 ありがとうございました。
  94. 森美秀

    ○森委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際休憩いたします。     午前十一時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  95. 森美秀

    ○森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国家公務員及び公共企業体職員に係る共済組合制度統合等を図るための国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田弘君。
  96. 柴田弘

    柴田委員 大臣、どうも御苦労さまです。大臣への質問は最初の方二、三問ですから、言いますから、どうぞまた適当に御退席いただいて結構でございます。  そこで、最初に、今回の統合法案、厚生省にお尋ねをしておきたいわけでありますが、私は、年金の将来のビジョンといいますか年金制度のあり方、特に具体的な内容というものが現在の段階においてまだはっきりと示されていない、こういうふうに思っているわけであります。今日、御承知のように厚生年金、国民年金、両年金を初めとして各種の共済年金、三種八制度に分かれているわけであります。今後の公的年金制度のあり方については、各方面でいろいろな議論が行われているわけであります。国民の年金制度に対する関心の高まりあるいは将来に対しての不安感があることもまた事実であるわけであります。こういった中で、厚生省は年金制度基本構想懇談会を設置いたしまして、年金制度全般にわたる研究を進め、昭和五十四年四月、「わが国年金制度の改革の方向」と題する答申を行ったわけであります。そして今回、昭和五十七年七月には、大蔵省が共済年金制度基本問題研究会、厚生省が社会保障長期展望懇談会、あるいはまた臨時行政調査会が打ちそろって年金制度の一元化の問題、あるいは給付水準の問題、保険料の問題、これを内容とする答申、意見書等々を出しているわけであります。しかし、どれを見ましても、確たる将来の年金制度のあり方、その内容等がいま一つ不明確であるわけであります。  厚生省にお尋ねするわけでありますが、一体、将来年金がどうなるか、その展望、特に具体的内容についてのビジョンというものをお伺いをしておきたい、こういうふうに思います。
  97. 山口剛彦

    山口説明員 ただいま御指摘がありましたように、年金の将来のあり方をめぐりまして、御指摘いただいたようないろいろな御提案がございます。また、七月には、私どもの専門審議会であります社会保険審議会の厚生年金保険部会から、次期制度改正に向けての基本的な考え方というものを御意見としていただいたわけでございます。私どもは、その御意見等を踏まえまして、現在、五十九年に大きな制度改正をしたいということで準備をしている最中でございます。  したがいまして、まだ私どもの具体的な構想をお示しできる段階にはございませんけれども、基本的には、私どもは、わが国が高齢化を控えまして大変な時期を迎えるわけでございますので、そういう時代になっても、長期的に安定をした年金制度にしていく、そのための基盤を整備するというのが第一の課題であるというふうに考えております。  それから第二には、年金制度というのは社会的な連帯というものが基礎になっておりますので、年金制度間あるいは受給者間、世代間、そういった間において公平な制度でなければならないという観点から、制度全体整合性のとれた公平な制度にしていくという基本方針のもとに、現在鋭意検討を続けているところでございます。
  98. 柴田弘

    柴田委員 私は、今回の四共済年金の統合に際しては、公的年金制度全般について統合のスケジュールを示す必要がある、こういうように考えております。政府は、昭和五十七年、昨年ですか、五月二十四日の閣議で、一応の大まかなスケジュールを示しているわけであります。しかし、その内容について、一体中身、統合された姿というものがどうなるか、厚生年金を含めたこういった全体的な考え方について、明確かつ具体的な内容のある、全体的な総合スケジュールというものを確立をしていかなければいけない、こういうふうに考えているわけでありますが、この辺はどのようにお考えになっているでしょうか。
  99. 山口剛彦

    山口説明員 ただいま御指摘いただきましたように、政府といたしましては、今後の公的年金制度の改革の進め方につきまして、行革大綱におきましてその基本方針を明らかにしております。たびたび御紹介になったところでございますが、簡単に申し上げますと、第一段階としては五十八年度、今年度において地方公務員共済年金制度内の財政単位の一元化を図る。それから、ただいま御審議をいただいております国家公務員公共企業体職員共済組合制度との統合を図るというのが第一段階でございます。  第二段階に、高齢化社会の到来に備えます本格的な制度の見直しということで、年金制度の一元化を展望しつつ、制度全般の見直しを行い、五十九年から六十一年にかけて、まず第一に国民年金、厚生年金、船員保険の関係整理を図る。それとあわせまして、共済年金についても、その改革の趣旨に沿って関係整理を図る。  第三段階といたしまして、昭和七十年度を目途に、年金制度全体の一元化を完了させるというスケジュールを、一応おおよその段取りとして持っておるわけでございます。  このスケジュールから申し上げましても、まず五十八年度において予定をされております問題について決着をつけるというのが第一でございますが、今後の公的年金の改革の方向を明らかにする意味でも、第二段階の、私どもが五十九年に予定をしております厚生年金、国民年金の制度改革をどういう方向でどういう内容のものにしていくかということが、今後の公的年金制度の改革の方向を決めるものだというふうに私どもも考えております。  そういう意味で、いま私どもが検討しております厚生年金、国民年金の具体的な構想が明らかになってまいりますと、この改革の方向というのも相当程度明らかになるものと思いますが、先ほど申し上げましたように、いま一生懸命やっている最中でございますので、具体的なことは申し上げられませんけれども、若干触れさしていただきますと、先ほど申し上げました専門審議会である厚生年金保険部会から、次の改正の大きな課題ということで三点御指摘をいただいております。  私どももそれに沿って検討をいたしておりますので、ちょっと御紹介をさしていただきますと、一つはいまの年金制度の体系、先ほど御指摘ありましたように三種八制度でばらばらでやっているこの姿を、公的年金制度全体の整合性を図るという観点から再編成をしていくべきだという御意見でございます。その場合に、各制度に共通をした給付を導入をする。俗に言いますと基礎的な年金とか言われておりますけれども、そういったような考え方に従って再編成をしたらどうかという御示唆をいただいておりますので、そういう問題に対してどう対応するかというのが一つの課題だと思っております。  それからもう一つは、婦人の年金問題にも関連をいたすわけですけれども、いまの年金の制度体系あるいは水準のあり方、いわゆる個人単位の年金と世帯単位の年金、各制度によってばらばらでございます。この辺のところを、婦人の年金問題あるいは年金の水準等との関連も見ながら整備をしていくべきではないかというのが第二番目の問題でございます。  それから三番目に、結局若い人たちが高齢者の生活保障の安定を図っていくということでございますから、その間にほどほどのバランスがとれたものでなければなりません。そういう意味で、給付と負担のバランスがいまの制度で果たして将来ともいいのかどうかという点については、見直しが必要ではないかという御指摘をいただいておりますので、年金の給付水準、将来の負担のあり方にかかわる問題でございますけれども、この問題が第三番目の課題でございます。  そういった大きな御指摘をいただいておりますので、その御意見も十分踏まえまして、そういった問題について今度の五十九年改革の中で何とか具体的な方向を出していきたいということで、いま作業している最中でございます。
  100. 柴田弘

    柴田委員 いずれにいたしましても現在作業中でありまして、今回のこの共済年金統合法案が提出をされる今日の段階においては、まず確たる中身があるわけじゃない、こういうふうに思うわけであります。  大蔵大臣に質問いたします。本委員会においても、再三にわたって大臣も答弁してみえるわけでありますが、今回のこの年金統合法案は、年金全体にわたってどのような位置づけがなされるものであるか。大蔵大臣は、やはり年金統合の第一段階である、このように御説明なさって位置づけをされているわけでございます。とするならば、先ほど来私が申しておりますように、全体の年全体系というか将来の構想、全体の年金の考えがあって今回の法案提出、こういうことならばこれは話がわかるわけであります。また国民も安心するわけでありますが、今回そういった全体像も将来像も確固たるものがない中で唐突に出てきたというような措置がなされたところに問題がある、私はこういうふうに考えているわけであります。今回の統合が制度再編成の第一段階であると位置づけるのであれば、再編成後の年全体系その他制度の具体的内容が関係者に示され、合意されたものでなければならないということは言うまでもないわけでありまして、それが今日まで政府によって示されていない。先ほど来厚生省から御答弁をいただいたように、五十九年度には大きな制度改正をやるわけであるけれども、現在の段階ではまだ示されていない、まことに遺憾である、このように私は思うわけでありますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの御指摘は、この法律案を提出するに至った間の二つの審議会でも、そのような御指摘が正式にあるいは懇談という形の中で出てきたポイントの一つであったと思います。  振り返ってみますと、五十七年九月二十四日の閣議決定というのがまずございまして、これで「年金問題担当大臣を指名するものとする」ということから、この年金問題担当大臣のもとでいわゆる長期ビジョンがこれから検討されるわけであります。そうしてその次は、経過的に見ますと今度は五十八年四月一日の「公的年金制度改革の進め方について」、これは関係閣僚懇談会の決定でございますが、これにも、たびたび申し上げておりますように、いわば三段階、こういうような考え方が申し述べられておるわけであります。そうしてもう一つが、今度は五十八年五月二十四日というのですか、これが昭和五十八年度において次の措置を行うということ、それからいまも御議論になっておりました五十九年から六十一年にかけて行うべき措置、そうして三番目が、最終的には七十年をめどに公的年金制度の全体の一元化を完了させるという具体的な方策が示されたわけであります。その中で二つございました、五十八年度において措置を講ずるべき問題の地方公務員共済年金制度内の財政単位の一元化を図るという問題につきましては、前国会で議了していただいた。そうすると、まさに五十八年度において行うべき措置というのが、いま御審議をしていただいておる法律案であるというふうに位置づけができるではないかというふうに考えるわけであります。  したがって、いま柴田さんがおっしゃる、将来の方針が示されて、その一環だという形の方が素直じゃないかという御議論は、私としてもそのままちょうだいすべき議論だと思っております。この二つの審議会の経過を見ましても、しかしながら、やはり第一段階として急ぐ問題であるからというので、ある委員会は中間報告をもっていわば答申にかえてやろうというような配慮がなされたのも、言ってみればいま厚生省のお方からお話がありました一つの連帯意識というようなものがあって、そういう審議会でいささか草々の間と言われるような間にもかかわらず答申がいただけたゆえんのものではなかろうか、こういうふうに思いますので、御趣旨の、まずビジョンが示された後提出さるべきであるという御議論は、私はそのままちょうだいするといたしまして、そういう経過的な審議の過程の中で第一段階としての位置づけが行われておるという認識で御理解をいただければ幸いである、このように考えております。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
  102. 柴田弘

    柴田委員 今日までの経過、つまり統合法案が提出されるまでの経過を見れば、年金が将来どうなるかという確固たる展望もないまま提案されたものであるということは一目瞭然でないかと私は思っております。これはずっと私、申していきますので、お聞きいただければ結構であります。  政府は、昨年の九月二十四日、今後における行政改革の具体化方策を閣議決定し、その中で、年金一元化の第一段階として国家公務員及び公共企業体職員の両共済組合を統合することを決めた。この閣議決定は、臨調の基本答申を受けて行われたものとはいえ、共済組合に関する公的諮問機関である国家公務員共済組合審議会及び社会保障制度に関する公的諮問機関である社会保障制度審議会の議も経ないでなされた決定であったということであります。  それから、このように年金一元化の具体的内容が政府によって示されず、また、関係者の合意もないまま行われた閣議決定であったために、国家公務員共済及び公共企業体職員共済の統合について諮問を受けた国家公務員共済組合審議会は紛糾をした。  まず、公共企業体共済組合に審議会が設置されていない事情から、諮問を受けた国家公務員共済組合審議会は、公共企業体労使の出席をも求めて意見の調整を図ったが、今後の公的年金制度のあり方について政府の方針が明らかでないこと及び三公社の経営形態の問題等不明確な点が多く、結局、同審議会は、国鉄共済の破局を回避するための救済措置の必要性についてのみ認識を得たにすぎなかった、こういうことであります。  また、この問題について諮問を受けた社会保障制度審議会は、この政府の方針についてはきわめて厳しい指摘をしている。  すなわち、一、「今回の諮問を公的年金制度の再編・統合の第一段階として位置づけていることは、甚だ理解に苦しむ」。  二、「本審議会は、長期にわたり安定した国民皆年全体制を確立するために、既に再度にわたり公的年全体系に関する新しい全体構想について建議を打つたところであるが、政府は、これら建議の意図するところを踏まえて、早急に公的年金制度の将来の在り方の具体策を改革の手順を含めて明らかにするよう強く要望する。」として、これまでの政府の年金改革への努力が不足していたということを指摘している。  国鉄共済問題については、かなり以前から予測されていたこととして、三、「今日まで国の責任にも触れた具体案が提示されていないことは遺憾であり、さらに国としての格段の配慮が望まれる。」としている。  こういうわけでございまして、いまお話がありましたように、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させる、こういうことを政府は決めているわけでありますが、年金一元化の具体的内容は明らかにされていない。これは事実であるわけであります。  ですから、今回の国家公務員共済、公共企業体共済の統合法案というものは、政府の言うような年金一元化の第一段階として位置づけるものではなく、あくまでも国鉄共済の破局を回避するための救済措置であり、社会保障制度審議会も指摘するように、国鉄共済が破局に至る原因として国の責任があるならば、当然国の責任にも触れた救済策が講ぜられなくてはならない、こういうふうに私は考えているわけでありますが、この辺、再度大臣恐縮ですが、御感想を承って、退席していただいて結構でございます。
  103. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに制度審それから国共審でございますか、二つとも厳しい御指摘を審議の段階にいただいたことは事実でございます。さはさりながら、二つの審議会がやはり答申をしていただいたということは、事ほどさように、第一段階としてウエートは国鉄共済の救済という方にかかっておるという御議論がたくさんございましたものの、それを含めて、法律案国会に提出するまでの手続はせめてきちんとしてやろうという配慮が、あるいはお集まりになった審議会の先生方の中にある種の連帯意識として出たからこそ答申がいただけたものじゃないかな、こういうふうに受けとめております。二つの審議会の御答申の中身、率直に申しましてこのような指摘を受けるのはもっともだと思う点もございました。が、それ以上に、お互いの連帯意識というものが審議会の答申を出していただいた一番のポイントじゃないかというふうに受けとめまして、そこで、その答申をいただいた後、諸手続を終えて前国会、九十九国会に御提出申し上げ、継続審議になり、この第百国会でいまのような御審議をいただいておるという歴史的経過というものは、それなりに御理解をいただかなければならないと私どもが、いささか答弁長くなりましたが、苦衷を訴えて御審議をお願いしなければならない背景であるというふうに理解をしておるところであります。
  104. 柴田弘

    柴田委員 いま大臣から答弁ありましたが、私としてはやはり今回のこの統合法案は、年金一元化の第一段階として位置づけることはできない。あくまでもこれは国鉄救済、そのための一つの便法にしかすぎない。もしそう言うならば、確固たる将来ビジョンというものを、具体的な中身を伴ったものをつけ添えて提出してからでなければいけない、こういうことを申しているわけでありまして、まさしくこの点が大臣と議論の食い違うところである、こういうふうに思うわけであります。この点は特に強く指摘をし主張してまいりたい、こういうふうに考えているわけであります。  そこで国鉄にお聞きをいたします。今日国鉄共済が危機的な状況に陥った原因でございますが、これは私どもなりに考えているわけであります。かつて国鉄は、昭和初期から太平洋戦争に至るいわゆる戦前、戦中期において、国の戦時体制強化に伴う輸送力の増強によって職員の増員を余儀なくされ、また満鉄などへの海外派遣のほか、応召による職員の不足拡大をも余儀なくされた。こうして昭和十二年から十九年にかけて五十九万人を新規採用し、その結果、国鉄職員の数は昭和十一年度末に二十三万人であったものが、昭和十九年度末には四十五万人の規模へと倍増してしまったが、これが今日における年金受給者の異常な増大と職員構成上の高齢層の肥大化をもたらした大きな要因となっているのである。終戦後も、国鉄は国策上の要請から若年層を中心に大量の採用を行い、また復員者や満鉄などの海外からの引き揚げ者を積極的に吸収し、昭和二十二年度末には国鉄職員は六十一万人に達してしまった。こうした状況から、昭和二十四年には行政機関職員定員法を制定して、国鉄職員は若年層を中心に十万人の人員整理を行ったが、それでもなお若年層の過剰性は解消されず、これらの職員が今日退職期を迎えて、国鉄年金の成熟度を高くしているというわけであります。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕  今日国鉄は、行政改革の象徴的な存在として、すでに五十七、五十八両年度の職員不採用の方針が貫かれ、五十九年度もさらに続けられて、その結果五十四年度末には四十二万人であった国鉄職員は、五十九年度末には三十二万人となると、国鉄年金は、これを支える現役職員の面からも、すでにみずからの努力によっては回復し得ない危機に立たされているのである。  以上の事情は、戦前、戦中、戦後の異常な社会的、経済的、政治的情勢の中で国策に従って行った政策の結果である。その結果を是正するための行政改革の結果でもあるから、国家公務員共済と公共企業体共済の統合が国鉄共済の救済を目的とする以上、やはり私は国の責任を無視して賛成するわけにはいかない、こういうふうに考えているわけであります。この点、国鉄当局のお考えをお示しいただきたいと思います。
  105. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 ただいま先生おっしゃった事情はそのとおりでございまして、いま年金財政の破綻の原因としては、そもそも給付と負担との関係がアンバランスであるということ、それから年金改定等によりまして不足財源が増大し、それが現職者の負担の限界を超え始めておるということが各制度に共通の原因がと思います。  国鉄年金の固有の問題といたしまして、まさに御指摘のとおりでございまして、一つは、輸送構造の変化によりまして国鉄本体の減量化を進めなければならない。そのために、被保険者である職員数がどんどん減ってきている。いまおっしゃったとおり、六十年度初めには三十二万という数字を目標にいたしております。その反面、戦後の混乱期に、復員者等を含めまして積極的な雇用を行ったということでございまして、そのために年齢的な団塊が生じ、ちょうどその年齢的団塊がいま退職時期に差しかかっておる、こういうことでございます。現在、平均的に言えば一万人ちょっとの退職者数であるところが、毎年二万数千に上る大量の退職がございまして、これがほとんど年金受給者になる。つまり、分母でございます被保険者が減少し、分子である年金受給者が急増しておるということが、現在国鉄の年金財政が破綻に瀕しておる原因だ、このように理解しております。
  106. 柴田弘

    柴田委員 いま国鉄当局からも、全くそのとおりだという御答弁をいただいたわけであります。でありますから、私が先ほど来申しておりますように、今回の統合法案というのは、要するに一つのバロメーターというかビジョンがあって、その中で位置づけられた第一段階というものじゃない。これは国鉄救済、これしかない。そうであるならば、今日の国策に従って国鉄共済を破局に陥れてきた国の責任で対応していってもよかったじゃないか。しかも、関係者全部が賛成をしているわけじゃないわけでありまして、私のところへもよくいろいろな関係各方面からの陳情も来るわけでありますが、今回の統合法案は時期尚早であったというように私は思います。だから、国鉄共済を何とか救うということであるならば、政府の別個の対応の仕方があってしかるべきであった、こんなふうに考えているわけであります。しかも、先ほど来御説明がありましたように、そういうふうに見てまいりますと、国鉄共済年金の問題はもうずっと以前からの問題であって、今日のこの危機的な状態を予測することは決して不可能ではなかった。そういった状態の中で今日まで放置してきた政府の責任というものは免れない。いまになってようやく行政改革だ、ほら国鉄再建監理法案とか、何だかんだとか言っておるわけであります。私はこういうふうに考えているわけでありますが、この考えに対し、政務次官はどうでしょうか。
  107. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 今日までの経緯につきまして、いろいろな御意見等、皆様方から私どもにもお教えいただくわけでございますけれども、その時点その時点ででき得る限りいい方向へ向かっていく政策をつくり上げていかなければいけないと思います。いろいろな担当部局で一生懸命知恵を出しまして、このような形の法律案を今回出させていただきました。ある意味では一つの成果でございますので、ぜひとも御評価のほどをお願い申し上げまして、これが将来へのすばらしい道しるべとなるように、私ども努力いたしてまいりたいと考えております。
  108. 柴田弘

    柴田委員 政務次官、私の質問に対する答弁になっていませんけれども、これ以上どうこう申しませんが、私はそういうふうに考えるわけです、政府側と私どもの立場は議論がかみ合わないのは当然だと思いますけれども。  そこで、今日の国鉄の問題でありますが、私は昭和三十年代以降における産業構造や交通体系の変化に対応できなかった国鉄当局の責任も、度外視しようというものではもちろんないわけなんです。しかし、大半は国の責任である。ですから、今回の統合法案によって国鉄以外の共済組合が毎年負担することになっている六百億円、これは自分の方へ来てもらっては困る、何でわれわれが国鉄を救済するために保険料をアップするのだという声があるわけでありまして、せめてこの六百億円ぐらいは国で負担してあげてもいいのじゃないかという考え方を私は持っているわけであります。これはもう議論がすれ違うかもしれませんけれども、私はそういうふうに考えます。どうでしょうか。
  109. 保田博

    ○保田政府委員 国鉄共済組合財政が非常に悪化した原因につきましては、先ほど国鉄当局から御説明いたしましたように、国鉄の共済組合の持つ特有の問題点があったということは確かだと私は思うわけでありますが、同時に、長期的視野に立ちました給付と負担の関係について非常に大きなアンバランスがあったことも事実であります。それからもう一つは、保険の基礎を国有鉄道という一つの企業に求めていた、したがって輸送構造の変化といったようなことで国鉄の経営が非常に悪くなったことが、共済組合にも大きく波及することになったのだと思うわけであります。  それで、前者の給付と負担とのアンバランスといったようなことにつきましては、長期的な視点に立ってこのアンバランスを是正しなければならないわけでありまして、今回の統合法案では、とりあえず一般職の国家公務員に比べて高い給付を国家公務員にさや寄せをするといったような是正をする。同時に、負担についても多少の調整をお願いしなければならない。また、二番目の問題ですが、一企業に保険の基礎を求めていたということは放置するわけにはいかないわけでありまして、これは弱い保険経済というものと強い保険経済というものを、相互に連帯の精神で扶助し合うことによって救っていくのが筋である、それが社会保障の精神である、そういうふうに考えておるわけであります。当面、国鉄共済組合の長期給付の支払いに事欠く状況でございますから、今回のような特別の財政調整事業をお願いしている、こういうことでございます。
  110. 柴田弘

    柴田委員 社会保障という観点に立ってお互いが相互に負担し合って助け合っていく、それはわかります。しかし、事年金問題ですから、そうばかり言っていられない。国策に従って今日の危機的な状態を招いた国鉄共済に対しては、国の責任もあるわけでありますから、せめて他の共済が負担すべき六百億円は国の責任の上において負担してあげてもいいと私は思っているわけであります。これは一点、強く主張し指摘しておきたいと思います。  そこで、国鉄側にお聞きしていきたいわけでありますが、今回、財政調整といいますか、をやられるわけであります。六十年から六十四年までに費用の不足額が年平均で二千六百億円、このうち国鉄負担が千四百億円となっております。そうですね。それで、今日の危機的な国鉄財政で、この千四百億円の負担というものは、国民にしわ寄せしないで、あるいは国鉄への国庫補助というような形で国民が負担する結果にならないでやっていけるかどうか。  それからもう一つは、今回のこの措置によって財政的な問題はもう解決した、これっきりでいいのか、そのように考えていいのか。今後の国鉄の共済の財政計画を含めて、ひとつ見通しを御説明をいただきたいと思います。
  111. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 今回の法案に織り込まれております財政調整案の試算でございますけれども、それによりますと、公的負担の給付時負担化ということで、公的負担は国鉄が支払っておるわけでありますが、その措置と、追加費用を現在一年おくれで国鉄から国鉄共済に支払いをしておりますが、これを当年度化する。この二つの措置によりまして、国鉄本体は六十年から六十四年までの五年間の一年平均で、先生おっしゃったように千四百億くらいの負担増ということになります。この負担は、国鉄共済年金の支払いを確保していく上ではぜひとも必要なものでございまして、これは何としても、苦しい中ではありますが繰り入れなければならないというように考えております。しかしながら、国鉄本体にしますと、従来からの五千億を超えます年金負担金に加えましてさらにその負担が重なるわけでございますので、国鉄の財政再建を進めていく上での障害になるおそれもある。こういうことで、国鉄といたしましては、これらに対して何らかの対策をお願いしたいというふうに考えております。その具体的方策につきましては、御承知のように国鉄再建監理委員会の中で、国鉄経営に絡む請負担の問題の一つとして御検討いただけるのではないかというように考えております。  それから、これですべて解決かという御質問でございますが、いまの年齢、今後予測される年齢構成、それから国鉄が三十二万になりましてその後どうなるかということは、今後の輸送の推移によるわけでありまして、そういうような状況を見きわめた上でないと何とも判断はできませんが、はっきり申せますことは、これによって向こう五年間の支払いは確保できる、こういうことかと思います。
  112. 柴田弘

    柴田委員 きわめて不安であるわけであります。千四百億円、先ほど御答弁がありましたように非常に厳しいと思います。それで、国鉄再建監理委員会の中で御討議をいただくということでありますけれども、やはり終局は国民に何らかの形でしわ寄せないし負担はかかってくるし、五カ年間こういう財政調整をやっても、その先の見通しというものは、現在の段階では確固たるものがない。やはりそこら辺がまた一つの問題ではないかというように私は思っているわけであります。  その点を申し上げまして、次は具体的な法案の中身の問題についてお聞きをしていきたいと思いますが、四共済年金統合法案では、当分の間各共済年金の単独運営を認めているわけであります。この「当分の間」というのは一体いつまでのことでしょうか。
  113. 保田博

    ○保田政府委員 今回御提案申し上げております法律案では、公共企業体の共済組合はおっしゃるとおり当分の間、それぞれの組合が長期の給付事業を行うということにいたしておるわけですが、われわれとしましては、当分の間ということは、財政調整事業にかかわる部分、国鉄の援助にかかわる部分も含めまして、国鉄共済組合とその他の共済組合との組合員の負担水準が大体近づいてくる、かつまた、いろいろな意味での諸条件が一致しまして、統合についての合意が得られたという段階で、年金保険者の完全統合が行われるということでございます。  その完全統合の時期でございますが、先ほど厚生省の方からお答えいたしましたように、政府としましては一応昭和七十年を目途といたしておりますので、最大限七十年、それ以前のしかるべき段階にというめどを持っておるわけであります。
  114. 柴田弘

    柴田委員 明確に御答弁いただいたわけでありますが、念を押しておきます。「当分の間」とは、つまり公的年金全体が統合されるときまで、すなわち最大限昭和七十年まで、こういう理解でいいわけですね。(保田政府委員「そのとおりです」と呼ぶ)  この「当分の間」の各共済の単独運営ですが、財源率、資産運用などについて、やはりそれぞれの共済の自主性というものを最大限尊重をしていくべきである、こう思いますが、この辺についてはどうお考えになっていらっしやるでしょうか。
  115. 保田博

    ○保田政府委員 昭和七十年の公的年金制度の統合ということでございますから、現在ございます八つの年金について給付と負担の水準を合わせていく、こういう作業が続けられるわけでございまして、その完全統合に向けまして、その統合の精神に反しない範囲内におきまして具体的に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  116. 柴田弘

    柴田委員 それでは、その統合のあれに反しないように、ちょっと言葉はむずかしいのだけれども、まあできる限り最大限に尊重していく、そういうことですね。もう一遍ちょっと。
  117. 保田博

    ○保田政府委員 基本的にはそういうことでございますが、と同時に、年金の積立金、原資というものは、多くの組合員からいわば預かっている貴重な財産でございます。もちろん、それの運用利益が将来の長期給付の財源に充てられるということでございますから、できるだけ有利かつ効率的に運用されなければなりません。と同時に、貴重な財産でありますがゆえに、安全性という点を非常に重視しなければならない。この安全性、有利性、それから統合の方向に反しない、この三つの原則をもって具体的に判断をさせていただきたい、こういうふうに考えております。
  118. 柴田弘

    柴田委員 よくわかりました。それではその三条件のもとで最大限尊重してもらう。  それで、関連でちょっと質問しておきますが、いま原資を有利に運用していくと言われましたね。厚生省の方は、これはきょうは質問しませんが、自主運用さしてくれ、いまの七・三%をもうちょっと、たとえば〇・一%運用しても年間四百億浮いてくる。四十兆になんなんとするわけでありますからね。いま有利に運用するというお話があったのですが、現在よりもより有利に運用される方法を大蔵省としては考えていらっしゃるのですか、どうですか。
  119. 吉居時哉

    吉居政府委員 先生すでに御承知のとおり、資金運用部資金というものは、国の制度や信用を通じて集められる公共的な資金でございます。年金資金や郵便貯金というものがこの資金運用部資金の大宗を占めているわけでございます。したがって、その運用に当たりましては、たとえば住宅や生活環境整備、あるいは中小企業対策といったような公共的な運用を行いますとともに、他方では、預託者の利益を考慮しまして、できるだけ有利運用にこれまでも配意してきたところでございます。また、臨調の答申におきましては、資金の運用においては公共性という観点も重要であるとした上で、これまで以上に有利な運用にも配意すべきである、こう述べているところでございますので、今後とも、臨調の答申も踏まえまして、公共性とのバランスをとりながら、できるだけ有利運用に努めてまいりたい、かように考えているわけでございます。  ただ、なお、預金者の利益のために資金運用部の預託金利を引き上げるためには、資金の有利運用としまして、資金運用部から財投機関への貸付金利を引き上げなければならないという事情にございます。そうなれば、このように融通金利を引き上げますと、結局は中小あるいは国民公庫あるいは住宅関係といったようなところの貸出金利の引き上げ、あるいは利子補給等の財政負担の増大ということにつながってくるというような事情もございますので、資金運用部資金の有利運用という点につきましては、いわば国民経済的な、総合的な見地に立って慎重に検討を進めていかなければならない問題だという点につきましても御理解を賜りたい、かように思います。
  120. 柴田弘

    柴田委員 次は、いま一つ法案の問題ですけれども、この四共済年金の統合に際し、公企体職員の場合、懲戒処分等を受けた者に対する年金の給付制限については、現行の公共企業体共済法の水準を維持すべきではないか、こういった考え方であるわけであります。この辺の考え方、それから、これは法律事項ではなくて政令で定めるのかどうか。もし政令で定める場合には、基本的な考え方についてお聞きをしておきたい。
  121. 保田博

    ○保田政府委員 現在の共済年金制度というものは、いわば二つの面を持っていると思うのであります。一つは、公的な年金制度、社会保障制度の一環としての公的な年金制度の一環である。と同時に、一方では、その淵源を恩給公務員、恩給制度といったようなものに持っておることに伴いまして、国家公務員制度あるいは公共企業体の制度を円滑に運営していくための一つ制度といった二つの側面があると思うわけであります。したがいまして、国の行政または公企体の企業経営の円滑な運営に資するといったような目的と相入れないような行為を共済組合員が行った場合には、従来から一定の給付制限をしてきた、それは先生の御指摘のとおりであります。  その具体的な措置をどう決めるかということについては、先生御指摘のとおり、法案の成立後の政令以下の段階にゆだねられることになろうかと思うわけでございます。従来までの公社の組合、公企体組合といったものと国家公務員共済組合連合会というものは、やはりそれぞれ独立した存在でございましたので、その辺の扱いが必ずしも一致していないことは御指摘のとおりでございますが、今度の統合によりまして、公社間及び公社と国といったような間で職員が異動したような場合にも通算制度を設ける、完全通算が行われるということで、従来よりも多少は有利な面もあるのではないかと思います。そういうことも考えまして、一つ制度として異なる扱いをするのはいかがかというふうに考えておりますで、できれば現行の国家公務員共済組合の厳しい給付制限が、国家公務員並びに公企体職員の規律を正しく維持するために必要なことではないか、かように考えているわけでございます。
  122. 柴田弘

    柴田委員 いま御答弁いただいて大体わかりましたけれども、要するに、懲戒処分等を受けた者に対する年金の給付制限は、いまの法律があるわけでありますね。その水準はせめても維持する、こういう理解をしていいわけですか。
  123. 保田博

    ○保田政府委員 済みません、もう一遍おっしゃってください。
  124. 柴田弘

    柴田委員 懲戒処分を受けた者の年金の給付水準があるわけです、現行法で。政令をつくられた場合に、その程度の水準は維持できるだろう、そういう理解をしていいかということです。
  125. 保田博

    ○保田政府委員 具体的に政令の中身まで立ち至った検討はいまのところしておりませんけれども、いまのところ、現在の国家公務員の給付制限よりぜひとも厳しくしなければならないという事情はないのではないか、そういうふうに考えております。
  126. 柴田弘

    柴田委員 じゃ給付水準を維持していく、こういう基本的な考え方だというふうに理解をしておきます。  それからもう一つ、細かい問題でありますけれども、四共済年金統合法案施行後の財源率の再計算の実施時期については、現行どおり五年後とし、たとえば電電公社の場合で言えば、前回は昭和五十六年であったから次回は昭和六十一年四月とする、このようなことはできないのかどうか。もしこれができるとすれば、法改正が必要であるのか、あるいは大蔵大臣の権限でできるのかどうか。ちょっと細かい問題になりますが、一応お聞きをしておきたい。
  127. 保田博

    ○保田政府委員 財源率の再計算は、現在の国家公務員共済組合法上は少なくとも五年ごとに行うこととされておりまして、国共済の各組合は五十九年十月がこの次の再計算の時期になっておる。このことは、先生御承知おきのとおりでございます。  そこで、公企体の方でございますが、公企体の共済組合につきましては、現行の公企体の共済組合法上、特に明文の規定はないわけでございます。例を国鉄の共済組合にとりますと、その運営規則におきまして、国共済と同様のことを定めておるわけでございます。他の二公社につきましては、特に規定もないといったような状況でございますけれども、従来からの慣例といたしまして、国共済と同様に五年ごとに行ってまいっておるわけでございます。  財政再計算の意義は、先生篤と御承知かと思いますけれども、保険料の計算の上におきまして、さまざまな前提条件が変わればそれにふさわしい保険料を設定をする、あるいは制度の改正を大幅に行いました場合にはそれに応じた適正な保険料を設定しなければならない、そういったことで再計算をするわけでございますが、三公社の共済の場合、通常であれば六十一年の四月が、国共済の半年おくれでございますが、五年目の再計算期に当たっておるわけでございます。しかし、今回の統合法案でいろんな面での諸制度が統一されるということでございますので、変更時点——現在はその施行時期を五十九年の四月と予定しておりますけれども、その時期に合わせて再計算されるのが当然なのではないか、こういうふうに考えております。  時期のずれを先ほど半年と申し上げましたが、一年半でございます。申しわけありません。
  128. 柴田弘

    柴田委員 最後に、厚生省に尋ねてまいりたいと思います。  厚生省が先日試算をされました一つの収支見通しがあるのです。それで、現行制度がこのまま続いていった場合に、いわゆる給付と保険料の支払いというのはどのようなカーブをしていくのか。漏れ承りますと、やはり相当高い負担になる、こういうふうに考えておるわけであります。一方、社会保険審議会は、サラリーマンの場合、給付水準は六〇%、保険料は段階的に引き上げなさい、このようなことであります。二倍ぐらいというような話も漏れ承っておるわけなんですが、一体、将来のその見通しというか、この給付水準と保険料の支払いという点では、将来、七十年に年金が一元化されるわけでありますが、まあ五十九年度の抜本的な法改正もあるわけなんですが、現時点においてはこの辺についてどう考えていらっしゃるか、具体的なものをひとつ承っていきたいわけであります。
  129. 山口剛彦

    山口説明員 厚生年金、国民年金の財政再計算、前回は昭和五十五年にいたしておりますけれども、そのときに、現在の制度を全くそのままにして、一定の賃金上昇率等の前提を置いておりますけれども、それで将来、特にわが国が高齢化のピークを迎える二十一世紀にどんな姿になるのかという一つの試算がございます。  簡単に申し上げますと、厚生年金だけ申し上げさせていただきますと、今後制度が成熟化をしてまいりまして受給者がふえてまいりますので、老齢年金につきまして受給者は二十年後には現在の約四倍ぐらいになると推定をされます。また給付費は五・四倍、また三十年後にはさらに成熟化が進みまして、受給者はいまの五倍、給付費は八倍、こんな見当になることが推定をされます。  それで、わが国の高齢化のピークを迎える大変厳しい時期というのが大体昭和九十五年ぐらいというふうに推測をされますが、いま申し上げましたような状況でございますので、いまの制度設計をそのままにしておきますと、そのときの若い人たちに負担をしていただく保険料の水準、これも現在の負担の三倍以上は御負担をいただかないと収支合わないという計算になることは事実でございます。このことは、結局、いまの年金制度の設計をそのままにしてそういう高齢化のピークを迎えることが果たして適当かどうかという問題になるわけでございますけれども、私どもの認識といたしましては、仮に厚生年金の場合で申し上げますと、いま平均的なサラリーマン生活を送られた方が引退をして年金生活に入られるという場合の年金の水準というのが、大体現役の方の六割を超える、七割弱というようなところでございます。これをこのままにしておきますと、加入期間もどんどん延びてまいりますので、サラリーマンをやめられた方が現役の方の賃金をどれくらいの年金水準になるかというのを試算をしてみますと、これから二十年、三十年後には、現役の方の賃金の八割を超える水準の年金額を老夫婦でもらうという計算になります。  それが年金の制度として目指すべき水準だということになりますと、先ほど申し上げましたような試算なり負担になるわけでございますが、厚生年金保険部会の御意見にもございますように、いまのそういう制度設計は、若い人とのバランスからいってちょっと問題ではないかという御指摘をいただいております用意見書でも、八割を超えるというのはちょっと高過ぎる、大体六割ぐらいを基準にして将来の年金の水準を考えるべきだという御指摘でございますので、私ども、そういった御意見を踏まえてこれからの年金水準のあり方というものを設計してまいりたいと思っております。そういたしますと負担の方もおのずから、いま申し上げました三倍を超えるというような御負担をいただかなくても、安定した制度運営ができるのではないかというふうに考えております。
  130. 柴田弘

    柴田委員 では最後に、これはやはり厚生省ですが、婦人の年金保障の問題です。  現行制度では、サラリーマンの奥さんの場合は国民年金に任意加入することが認められているわけであります。強制でありませんから、サラリーマンの主婦で年金に加入していない場合は、高齢になって離婚した場合、その人は年金を受給することができない。でありますから、私ども昭和五十一年に福祉トータルプランを発表いたしまして、基礎的年金と二階建て年金ということで、いわゆる国民皆年金といいますか、そういったことを主張してきておるわけでありますが、婦人の年金保障、先ほど、一番初めの答弁の中にも、三つの課題の中の一つとしてあったわけでありますが、現段階においては婦人の年金保障をどのように改善をしていかれるお考えであるかということで、確固たる御答弁をお聞きいたしまして私の質問を終わりたいと思います。いかがでしょうか。
  131. 山口剛彦

    山口説明員 婦人の年金保障に関しまして、現行制度で御指摘をいただいたような問題点があるということは私どもも十分認識をいたしております。また、関係の審議会におきましても、先ほど申し上げましたように、次期制度改正の大きな課題として取り細めという御指摘をいただいております。またその中で、いま申し上げましたような問題点を踏まえまして目指すべきところといたしましては、すべての婦人に独自の年金権を確立する方向で検討すべきだという御指摘をいただいております。  御承知のように、この問題を解決するためには、わが国の年金制度制度体系のあり方、先ほど申し上げました給付単位をどういうふうに整理していくかという大変基本になる問題をいろいろ含んでおりますけれども、御指摘をいただきましたような問題点もございますので、何とか次期制度改正の中でこの問題をきちっと整理をしていきたいということでいま取り組んでおります。
  132. 柴田弘

    柴田委員 では、ひとつ婦人の年金権の確立ということ、国民皆年金を目指して努力していただきますことを御要望いたしまして、時間が参りましたので、私の質問を終わります。
  133. 森美秀

    ○森委員長 御苦労さまでございました。  玉置一弥君。
  134. 玉置一弥

    玉置委員 二番手でございまして、なかなか聞くのが——毎年毎年いろいろなことを聞いておりまして、的も非常にしぼられてくるような感じがいたしますけれども、今回の統合法案、まさに国鉄の年金の救済というような形でわれわれは受け取っておりました。もう一方では、大蔵当局あるいは厚生省から、七十年に向けての第一歩である、こういうような話を承っております。しかし、年金制度がいままで、戦後、特に国家公務員の場合におきましては恩給制度からの移管ということもございましたし、各企業におきましてはやはり自分たちで行う社会保障ということでやってきた。わけでございまして、性格の違うものが同じ方向を目指しているというのが現状ではないか。当然その両者にはいろいろないままでの経過からいって差がありまして、これを一つにしていこうということで、ことしの四月ですか、公的年金制度に関する関係閣僚懇談会というもので一応原案が決定をされて、今度閣議で了承されたというお話を聞いております。そういうところから見て、これからの公的年金のあり方、これについての若干の論議をしていきたいと思います。  公的年金というのは、雇用、医療、福祉を含む総合的政策の一環として位置づけ、支給開始年齢は引退の年齢、いわゆる退職の年齢と連係をさせる、これが本来の姿ではないかと思いますし、また老後の最低生活は公的年金によって保障され、かつ、実質価値が維持をされること、実質的な生活が堅持をされていく、これが条件ではないかというふうに考えるわけでございます。年金の水準の問題、あるいは逆に現状から言いますと、こういう統合問題、特に財源不足という面から見た統合問題というものが生じてきたときに、国民の側、国民でも特に現在掛金を払っておられる方々、そういう方々が、自分たちが十年後、二十年後、三十年後、今度は年金を受ける側になったときに、果たしてどういう生活の確保ができるのかというような心配があるかと思いますし、そこまで維持していくためには、国鉄の年金の試算でも出ておりますように、掛金率が四百何%というとてつもない大変大きな数字が出てくることもあり得ないことじゃない。国鉄を救済しなければそういう形になるということでございますから、それを防ごうというのが今回のねらいでございますけれども、救済をしても少なくとも二〇〇%を超える。現時点、厚生省等で試算をされております掛金の限界率というのが二〇〇から二五〇であるというようなことが言われておりますけれども、その上限に非常に急速に近づいてきているということで、これから七十年を目途に新しい年全体制を考えられるということでございますけれども、生活保障としての年金とその財源措置という面から考えていくと、これは並み大抵のことではないというふうに思うわけです。  先般、これは七月十九日の朝日新聞ですけれども、社会保険審議会の厚生年金部会の意見書ということで、林厚生大臣に出された内容をまたかみ砕いて書いてあるわけでございますけれども、こういう新しい方向が検討されているように伺っております。  そこで、まずお聞きを申し上げたいのは、四月に出されました関係閣僚懇談会の決定、この決定に基づいてどういう動きがいまなされているのか、先ほどから具体的にはいろいろな話を聞いておりますけれども、正式に私としてお伺いしたいということが一つ。それから、この七月十五日の厚生部会の意見書を受けて、またそれをどういうふうに考えておられるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  135. 山口剛彦

    山口説明員 ただいま御指摘のありました、四月一日に関係閣僚で了解をいたしました「公的年金制度改革の進め方について」という文書は、御指摘のように五十七年九月の行革大綱の閣議決定を受けまして、五十八年度末までに政府としては年金改革の具体的内容、手順等について成案を得るというお約束をいたしておりますので、その成案を得るためにおおよその方向と段取りの目安を定めて、それをもとにこの成案を得ていこうということで、政府部内で意思決定をしたものでございます。  それによりますと、簡単に申し上げますと、まず第一段階として五十八年度に、いま御審議いただいております国家公務員公共企業体職員共済組合制度の統合を初めとした措置を講ずるということと、地方公務員共済年金制度内の財政単位の一元化を図るということでございます。それから第二段階といたしまして、いよいよ本格的に高齢化社会を迎えるための準備ということで、五十九年から六十一年にかけて制度全体の見直しを行いまして、まず国民年金、厚生年金、船員保険についての関係を整理する。また、その趣旨に沿いまして共済年金についても関係の整理を図るというのが第二段階でございます。そして第三段階といたしまして、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させるというおおよそのスケジュールを決めたわけでございます。  現在、政府部内でこのスケジュールあるいはこの内容自体、さらに成案を得ることを五十八年度末までにするということでお約束をしておりますので、それに向けて検討しているわけでございますが、いずれにいたしましても、このスケジュールからもおわかりいただけますように、第二段階として五十九年に、厚生省が中心になりまして現在準備をしております厚生年金、国民年金の制度を今後どういう方向で改革をしていくかということが、今後の公的年金制度の改革の方向を決める上で非常に大きなポイントになろうかと思います。そういう意味でこの準備をいま急いでいるところでございますが、御指摘をいただきましたように、関係の審議会からも七月に具体的な御意見をいただきましたので、いま私ども鋭意その御意見を踏まえまして、五十九年度に改正をしたいと考えておりますこの国民年金、厚生年金、船員保険についての改革案を作成中でございますで、できるだけ早い時期にそれをまとめまして、改めて関係審議会にお諮りをして、私どもとしましては次の通常国会には御審議をいただくように提出をいたしたいという心づもりで、準備を進めているところでございます。
  136. 玉置一弥

    玉置委員 いまの国民年金、厚生年金、船員保険、これを一応五十九年度の通常国会に提出するということでよろしいですね。
  137. 山口剛彦

    山口説明員 はい。
  138. 玉置一弥

    玉置委員 三つ一緒に、そういうことですね。  それで、ちょっとお聞きしますけれども、今回の共済年金の統合についても相当の年数がかかっているというふうに聞いておりますけれども、当初、共済年金の統合の話が出てから今国会までどのくらいの年数がかかっているか、その辺についてお伺いします。
  139. 保田博

    ○保田政府委員 今回の統合法案では、国の共済組合と公企体の共済組合を統合することによりまして、給付の面あるいは負担の面で、現在ございます相違点を解消し統合するということでございます。  それ、からもう一つは……(玉置委員「それの期間」と呼ぶ)最初は五十三年に国鉄の中で、五十年代に入りまして国鉄の共済財政が急激に悪化してきたというようなことが発端でございますから、まあ十年以上の期間になっております。
  140. 玉置一弥

    玉置委員 十年じゃなくて五年ですね。  大蔵当局の今回の共済の統合法案、これは似たような性格の企業体というか、公社と国家公務員ということで統合される、これだけで五年かかっているわけですね。今度国民年金と厚生年金と船員保険という全く性格も違うところが合わさっている。世帯も非常に大きいのですね。これを説得していこうというと、五十九年の通常国会に出されてから単に法案の審議ということだけで進められますと、それこそ七十年に間に合わないのじゃないかというような気がするのですけれども、そのためにいろいろな方の理解を得るということで、厚生省はいまどういうことをやっておられますか。
  141. 山口剛彦

    山口説明員 確かに先生の御指摘をいただきましたように、いま八つの制度、三種類の年金制度に分立をいたしておりまして、それぞれ沿革、経緯等もございますし、性格、機能も異なりますので、これを再編成していくというのは大変な問題だろうと考えております。  ただ、現在その制度が分立をしていることに伴ういろいろな矛盾、問題点が出てきていることも各方面から指摘をいただいているところでございまして、年金制度の将来のあり方をめぐっていろいろ御提言等もございますけれども、今後の制度のあり方としては、内容はそれぞれまちまちでございますけれども、ほぼ将来の方向としては、年金制度全体を展望して、一元化をしていくという方向がいいのではないかという御指摘も相当いただいております。また具体的に、先ほど申し上げました関係の審議会、これは労・使・公益と三者の構成になっておる審議会でございますけれども、その中でも、意見書にありますように、「従来の改正においては、公的年金制度全体の整合性を図るという観点が必ずしも十分でなかった」という反省をいたしておりまして、「今後は、個々の制度の枠組にとらわれない広い視野からの見直しが必要となってくる。」ということを関係者自体がお認めになって、具体的な御提言をいただいている。その一つの課題として公的年金制度の再編成をしていけということでございますので、確かに大変むずかしい問題はございますけれども、この意見書にもございますように、すべてを一本にしてしまうということではなくて、各制度に共通する給付を導入する、共通部分を含めて、そこを一緒になってやっていく方向を目指せという具体的な御指摘もいただいていますので、そういう御意見等も十分に踏まえまして、むずかしい問題でございますけれども、公的年金制度全体の再検討というものにぜひ具体的な案を出しまして、御批判をいただきたいということで、いま準備を進めております。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  142. 玉置一弥

    玉置委員 案が出されてからではなかなか変わりませんので、案ができるときにいろいろな方面と十分論議をしていただかないと、かえって非常に進みにくい状況になるのではないかというふうな心配をしているわけで、私も統合には反対というわけではないですから、そういう面で十分慎重に、いままでたとえば厚生年金なり共済年金なり、いろいろな年金の組合の方から、現制度に対するいろいろな要望というものが出ていると思うので、そういう面をぜひ中心に吸い上げるように検討をお願いしたいと思います。  この新しい年金制度というか、七十年を目途に提言をされたということで受けとめますけれども、それは制度がまるまる一本化されるのか、先ほどから話が出ておりますように、基礎年金とその上に所得比例年金というふうに分類ををれるようなお話を聞いておりますけれども、現在厚生年金、国民年金、共済年金、いろいろな政府管掌の制度がございますけれども、それの公的年金の給付あるいは要件、そういうものが全部統一をされて、運営は個別になるのか、あるいは全体をプールされてやられるのか、その辺についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  143. 山口剛彦

    山口説明員 具体的な構想についてはまだお示しできる段階にございませんけれども、先ほど申し上げましたように、まず制度体系といたしましては、意見書におきましても、いままでの制度を全部一本にしてしまうという方向ではなくて、共通の給付を導入する、俗な言葉で言いますと、基礎的な年金というものをつくって、いま御指摘をいただきましたように、その上に、各制度に独自の給付を上乗せしていくという二階建ての構想を具体的には御示唆をいただいたというふうに私どもは受けとめております。したがいまして、制度体系としてはどこに共通の給付を求めるかということが具体的な課題になってくるわけでございますが、その辺のところは、いま具体的には申し上げられませんけれども、大枠としてはそんな方向を目指した制度体系にしていきたいというふうに考えております。  それから水準につきましては、この意見書の中でも、特にサラリーマンの年金の水準については現役の方の賃金の六割ぐらいをめどに考えていったらどうかという御指摘をいただいておりまして、私どももその線は尊重すべきだというふうに考えておりますので、いままでの制度からの円滑な移行という面で大変むずかしい問題も出てまいりますけれども、水準についてはそんなところを目指しながら制度設計をしていくということで、いま準備をいたしております。
  144. 玉置一弥

    玉置委員 水準につきましても、自立して正常な生活ができるということがやはり基準になると思う。しかし、年金全体の長期的な安定化ということから考えると、ある程度引き下げざるを得ないだろうというふうな感じがするのです。そのかわり、ある程度所得配分的な要素、それから生活保障的な要素、この両面に分けてぜひ積極的にお取り組みをお願い申し上げたいと思います。  それから、忘れておりましたけれども、きのう小杉委員からお話がありましたように、いわゆる指標といいますか、年金のレベル、要するにいつごろどうなるという指標、七十年に統合されるということで話が進んでいきますけれども、その間いろいろな制度が動いたり、給付水準とか、あるいは掛金が変わったりとかということで大変な混乱が出てくるかと思うのです。現時点は、改定をされると掛金率が上がるというのが、今回の共済制度を見ても常識的な考えだというふうに国民に映る可能性があると思うのですね。そういう面から見て、国民の側が七十年までに向かっていく、これからの公的年金の統合化の過程の中で、要するに掛ける側がどういう位置づけか、あるいはもらう側がどういう位置づけか、そして、いわゆる給付の水準とかこういうものをそれぞれの時点で示していかなければいけないんではないか。こういうことがなければ、要するに財源率が悪化する、そして掛金率をどんどん上げていかなければいけない。トータルで二百から二百五十ということは、一人当たりの掛金からいきますと、大体一二、三%だと、大体給与の一二、三%までしか払えないよというふうな限度があるわけですけれども、しかし、このままずるずるいきますと、本当にどこまで上がっていくかわからないというような心配もあるかと思うのです。  そういう意味で、ある時点をとらえ、それぞれの時点で、そして長期的な見通しというものも含めて、やはりわかりやすい数字で示していただきたい。これはどういう数字になるかわかりませんけれども、たとえば、いまを一〇〇とするとどうなるとか、あるいは全体の給与体系からいくと何%くらいですよとか、そういうふうなその時点で大体推定のできる数字、そういうものをつくった指標というものをぜひ出していただきたい。これは、共済年金の統合が七十年までいくその間、財政問題がまた出てくるかと思いますけれども、その辺についてもこういうことも言えるわけですし、国民年金、厚生年金についても同じようなことが言えるということで、全制度を見てその統合に向かっての指標という、その辺をぜひお願いを申し上げたい、かように思います。これについて出せるか出せないか、その辺、また、いますぐ検討できないとすればいつごろ返事をいただけるか、その辺についての回答をお願いしたいと思うのです。
  145. 山口剛彦

    山口説明員 ただいま御指摘をいただきました点は、私どもも十分御趣旨はわかります。それからまた、年金制度を長期的に安定をさしていくためには、先ほど来申し上げておりますように、将来、特にわが国が高齢化のピークを迎える大変厳しい時期に本当に乗り切っていけるんだろうかという面で、数字の上でのチェックというのがどうしても必要でございます。したがいまして、次の制度改正の中で、一つの大きな課題として、将来の給付と負担の水準をどの程度のところに設定をしていくかという問題がございますので、そこにコンセンサスが得られれば、先生御指摘のように、そこへいくために負担はどの程度のものをお願いをしなければならないか、そのときに、たとえば昭和七十年あるいはピークを迎える昭和九十年くらいにどうかというのは、やはり私どもとしてもどうしてもお示しをしなければならないと思っております。  ただ、将来の世の中を推測をするわけでございますから、前提に置きます指標、たとえば賃金の上昇率をどう見込むか、物価の上昇率をどう見込むか、なかなかむずかしい問題はございますけれども、御指摘の趣旨は十分わかりますし、再計算というのはまさにそういうことをするわけでございますから、御趣旨に沿った数字が今度の改革の案の一環としてお出しできるように努力をいたしたいと思います。
  146. 玉置一弥

    玉置委員 次に国鉄の問題に移ってまいりたいと思います。  試算によりますと、六十年から六十四年の五年間に年平均二千六百億円という財源不足が生じる、こういう試算が出ております。国鉄にお伺いする前に大蔵省に、六百億を国家公務員、電電、専売のそれぞれの共済に負担をさせるということになっておりますけれども、何でまず国の負担として考えなかったのか、その辺についてお伺いしておきたいと思います。
  147. 保田博

    ○保田政府委員 国鉄の共済組合財政が悪化した原因につきましては、すでに国鉄当局からもたびたび御答弁をしたわけでございますが、もちろん国鉄に特有の原因もございます。しかし同時に、わが国の公的年金制度に共通の問題として、負担と給付との間に長期的に見て非常に大きなアンバランスがある、そのアンバランスが、国鉄の場合には産業構造、輸送構造の変化に伴いまして経営に非常に大きな影響を与え、その経営を立て直すために職員の合理化といったようなこともしなければならないといったようなことから、非常に成熟度が高まったといったような理由があるわけでございます。  まず最初の給付と負担とのアンバランスといった点につきましては、今回御提案申し上げております法案で、これを国家公務員並みにとにかくさや寄せをさせていただきたいということでございます。第二の、年金の基礎が一つの企業に乗っかっているということにつきましては、これは強い企業あるいは弱い企業、あるいは共済組合も含めまして強弱いろいろあるわけですが、社会保障という制度の枠の中で考える以上、やはり強いグループと弱いグループが一緒になって社会連帯、相互扶助といった考え方で処理しなければならないものだと考えておるわけでございます。これが安易に国庫負担にいきますと、結局これまた将来の国民の税金負担にはね返ってくるわけでございますし、そういう点も勘案いたしまして、今回御提案申し上げておりますように、相互扶助の考え方で各共済がお互いに助け合っていこう、こういう考えに立っておるわけでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  148. 玉置一弥

    玉置委員 助け合うために、電電そして専売の組合員の方々は月々大体千分の十二増額される。これは言ってみればよその会社の人のために違う会社の人がお金を出す、こういうことになるわけですね。  この試算を見ておりますと、不足額約二千六百億円、国鉄等の負担分二千億円というふうにありまして、その残りが六百億円で、これを連合会と電電と専売に分けて負担をしている。ところが、国鉄負担増加分というのが千四百億円あるわけですね。そして給付のスライド停止それから労使の負担。国鉄の負担と労使の負担がどう違うのかというのはちょっとわからないのですが、労使というのは掛金率の折半の分ですか。
  149. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 国鉄の負担がこれはあくまでも試算の数字でございますが、千四百億というの一は、国鉄本体が共済組合に対して負担するということでございまして、あとの労使の負担というのは、国鉄共済が自助努力の結果、それだけのものを生み出す、こういう意味でございます。
  150. 玉置一弥

    玉置委員 大蔵省にお伺いしますけれども、国鉄負担増加分千四百億円、これは年々千四百億円上がりますと、いま国鉄再建を一生懸命やっておられますけれども、この千四百億円をいまの国鉄の財政状態の中で考えたならば、果たして国鉄が払えるかどうか、その辺はどう思いますか。
  151. 保田博

    ○保田政府委員 国鉄の経営につきましては、こういう国鉄の共済組合に対して国鉄の経営体が助成をしなければならない。年々千四百億円の負担増になるわけですけれども、それを前提としまして、経営体をどうやってうまくやっていくかということについて、国鉄の再建監理委員会中心としまして財政の立て直しをするように検討をしていく、それらの検討の結果を待ちまして対処をさせていただく、こういうふうに考えております。
  152. 玉置一弥

    玉置委員 何か自信なさそうに言われますから、ちょっとよくわからないですけれどもね。  たとえば、いま国鉄本体が大体四千数百億、約五千億負担されていますね。そこに千四百億円乗っかるわけです。そうすると大体六千四、五百億という数字になりますね。いまの年間の赤字額が一兆三千数百億円という数字ですけれども、大体その半分に近い数字がこの共済年金で占めておるということにもなるわけです。そしてそこに今度は六百億円、他の共済にお願いした分があるわけであります。そこまでやるならば、何であと六百億くらい持てないのかということがあるわけですね。国鉄再建の数字を合わせる、つじつま合わせのためにほかの組合員に負担をかけるということであれば大変な問題でありますし、逆に、これも含めて本当は国鉄が財政再建を図らないといけない、国鉄の再建を図らなければいけないということになるわけで、肩がわりをされるとかえってそれが表面化しないのではないかと思うわけです。そういう意味では管理ができる国の方で、そういうものがあるんだということがわかるように、一カ所でまとめて負担を見るべきではないか、そういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  153. 保田博

    ○保田政府委員 国鉄の今後の経営状態がなかなか大変であるということはよくわかるわけでございますが、年金制度というのはやはり社会保障の非常に大きな一環として位置づけられておるわけでございます。それであります以上、社会保険制度における保険料というのは、事業者と被用者が分担するというのが基本でございます。ただ、社会保険制度を推進しなければならないという立場から、社会保険の各制度の成熟度あるいは被保険者の所得水準といったような観点を考えながら、国、地方公共団体、公企体といった公経済の主体が一定割合の公的な負担を行うというのが原則なのであります。  国鉄共済組合の場合も、公社というのはその事業の沿革あるいは企業の態様あるいは事業収入の性格といったようなことから、所属する職員に対する関係におきましては、先ほど申し上げましたような国、地方公共団体に並ぶ公経済の主体という立場から、その責めを負うべきものと考えておるわけであります。現行の社会保険制度の枠内で相互連帯の精神に立ちまして、他の公社と同様に当局に負担をお願いする、こういうことでございます。
  154. 玉置一弥

    玉置委員 先般からの委員会の質問の中に、今回の国鉄共済の財政悪化の責任の一部は国にあるのではないか、これは各党からいろいろな質問が出ておりますけれども、それを考えてみても、その悪くなった部分、これが国にあるといたしますと、これをほかの共済組合員の方々に負担をさせるということは大変おかしなものじゃないか、そういうふうに思うわけです。千四百億を国鉄が負担する、どうせ貯えないから国が出す。多分そうなると思うのですね。それに六百億を足して二千億、これは数字が非常にぴたっとそろいますから、そういうので、六百億ほかに負担をさせる。本当に何にも責任のないところに負担させているわけですから、むしろ国が責任があるのだったらそれをやるべきじゃないかというふうに思います。余りこれを言っていると、この間から話が全然うまくいかないみたいですからやめますけれども……。  そこで、国鉄共済にお聞きをしますけれども、いままでずっとお話を聞いておりますと、国鉄さんかどういう努力をしておるか、体質改善ができてからでないといやだよと言うところが非常に多いように思うわけです。そういう意味でも、国鉄は共済組合としてこういうことをやっているんだ、その辺をぜひ高らかにお願いをしたいと思います。
  155. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 国鉄の共済年金財政が悪化し始めましたのは昭和五十一年でございます。一つは、石油ショック後の大幅年金改定、これによる支出増でございまして、もう一つは、このころから退職者の数がふえ始めた、この二つ要因財政を急速に悪化させ始めたということでございます。これに対する対策といたしましては、昭和五十一年、五十二年度にそれぞれ千分の十、千分の二十の保険料の引き上げを行っております。あわせて追加費用の繰り入れ方式の変更を行いまして財源確保に努めたということでございますが、それでもなかなかこの赤字基調は改善されなかった。そういうことで、五十六年度には四カ年計画を立てております。  年金の場合は、先ほど次長からもお話がありましたが、五年ごとというのが通例になっておるわけでありますが、五年の計画はとても立たないということで、きわめて異例でございますが四カ年計画を立て、その際さらに保険料を千分の三十引き上げております。同時に追加費用については一年払いということに、先ほどの五十三年度に制度変更したわけでありますが、その時点でさらに過去の未払い分をこの期間に集中償還をする、そういうような施策を講じております。  そういうような措置によりまして、現在、五十九年度までは何とか年金支払いが確保できるという見通しになっておりますけれども、何回も申し上げますが、六十年度以降は単独運営がきわめて困難になってきておる。そういうことで国鉄が、保険者としていまの財源確保施策を講じたことはいま申し上げたとおりでありますが、そのほか、先ほどちょっとお話が出ましたが、五十二年に有識者を集めました委員会をつくりまして、これは国鉄総裁の諮問機関でございますが、それに、今後非常な危機が予測される年金財政にいかに対処すべきかという諮問をしておるわけであります。その際の答申の中に、やはり類似の年金制度の統合一元化ということが処方せんではないかというお考えをいただきまして、それに沿って、国鉄としては各方面に解決施策の樹立についてお願いをしてまいった、このようなことをいままでしております。
  156. 玉置一弥

    玉置委員 いま国鉄再建のための人員合理化というか、入減らしをやっておられますけれども、退職者を募って人を減らすと、逆にそれを支える人数が減ってしまう、そして一方では退職者がすぐ年金受給者になる、そういう状態が続いて悪化が加速度的に進行している、こういうようなお話を聞いておりますけれども、いま国鉄再建の人員削減のやり方を見ておりますと、どうも退職者の方しか減らしてない、こういうことなのですね。  これは余り言うと組合に怒られるかもわかりませんけれども、実際の合理化というのは適正配置が必要で、組織が機能的に動くかどうか、それが安定的に継続的に機能を発揮するかということが基本でございます。そういう面から見ると、いまは退職者を募って減らしていく。一方では二年間新卒の採用ストップということをやっておられますけれども、そうやっていきますとまたどこかで大きな断層ができまして、そこがネックになり、また太いところができということで、一つのサイクルで国鉄がまた悪くなりよくなりという形にならざるを得ない。普通の企業ですとこういう形を絶対とらないのですね。必ず定期採用で無理してでも採る。そのかわり合理化のときは血を見る思いで合理化をやるわけですけれども、その辺が、これはたまたま年金財政悪化ということでお話しを申し上げておりますが、結果的にはそうなってきている。長期的な年全体制という面から考えると、民間活力の活性化なんていま盛んに政府の方で話をされておりますけれども、むしろ国鉄のノーハウを生かしたような民営会社をつくって、そういうところへまだまだ十分働ける世代、三十代、四十代、各世代から人を抽出して持っていって、共済制度から外してしまうというのもいいのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  157. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 輸送構造の変化によりまして、お客それから貨物が減りまして営業収入が伸び悩んでおる、それが国鉄経営の最大の悩みと言ってよろしいかと思いますが、そういう中において国鉄再建をやっていきますためには、やはり減量化経営というものを推進しなければならないわけでございます。そういう意味で、いま全社を挙げまして最優先の課題としてこれに取り組んでおります。  最近の数字を申し上げますと、五十七年度には二万二千六百人の人員削減を実行した。今年度は二万八千九百人の職員数を減らすことを計画をし、現在着々とこれを進めておるわけでございます。そうしますと、四十五年には四十七万人であったものが、六十年度初めには三十二万人台になる。かなり身軽になってくるわけでございます。  この職員数の減少の方法として、先生からいろいろ御提案がございました。国鉄としては新規採用のストップ、あるいは退職者数に対する補充数を少なくするという方法によって現在進めておりますが、現在の社会情勢の中でいろいろ考えますと、これが最も現実的だという考え方もとに現在進めておるわけでございます。おっしゃるように、要員構成上の問題は確かにございます。この問題がまたいずれ繰り返されてくるという認識は持ちながらも、現実的な方策としてやむを得ないということで現在進めておりますことを、ぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。御指摘のような方法についても、今後の課題として検討は必要かと考えておりますが、いろいろなむずかしい問題があることをぜひ御理解をいただきたい。つまり、一方で希望転職といいますかそういうことを進めながら、二万数千名に上る減員が果たして同時並行的に進め得るかという問題があることを、ぜひ御理解いただきたいと思います。  なお、年金に限って申し上げますと、年齢構成のひずみとか職員数の減少ということが年金財政に非常にゆゆしい影を落としておるということは、結局、国鉄という一つの企業の中に保険の基礎を求めておる、こういうことに起因しておるというふうに考えるわけでございます。そういう意味で、政府の「公的年金制度改革の進め方について」にも示されておりますように、統合等により保険集団を拡大することによってこの問題もおのずから解消していくのではないか、そういうようにわれわれとしては期待をしておるわけでございます。
  158. 玉置一弥

    玉置委員 共済組合には年金つき再就職というのがあります。厚生年金では、再就職すると、年齢と所得によってそれぞれ減額をされるということがございますけれども、共済組合は退職年金が一〇〇%支給ということになっています。いま非常に状況の悪いときで、ふだんから官民格差ということで大変話題を呼んでいる現状の制度でございますけれども、ここに全然手がつけられてない。われわれから見たら、ここはまだまだやることがあるじゃないかというような気持ちがするわけです。確かに現在両方から年金ももらっている、給与ももらっているという方になると、生活設計が狂うということもありますけれども、しかし、全般が切り下げられるよりは、そういう方々に耐えていただくということが必要ではないかと思うわけです。ところが、いままでいろいろなお話を聞いておりますけれども、ここに全然触れられてない。そういう面から、自分たちが努力をする分野の中での最も重要な内容がまだ抜けているのではないかというふうに思うわけです。この辺、いますぐ返事をいただくのはむずかしいと思いますけれども、まだやる中に抜けているところがあるということで、ぜひ見直しをしていただきたいと思います。  時間がありませんので次に行きますけれども、今回国家公務員、電電公社の方々の掛金が五・一五%から来年十月になりますと八・五%に上がる。専売公社の方は五・八%から九・七%に上がる。国鉄の方は、現在からまたことしの十月に八・二五%、そして来年の十月には一〇・二%というふうに上がります。これが上がったのは、いろいろな負担増という、要するに財源調整ということもありますけれども、保険料率、いわゆる修正率が〇・八%から〇・九%に上がった。このいろいろな要素が全部重なってこのように高くなったわけです。これは国家公務員、電電公社の方の例で見ますと、一年間に三・三五%上がるということになります。いま御存じのように仲裁裁定なりあるいは人事院勧告というものが出ておりますけれども、その数字から見ても、ほぼ近い数字が一挙に上がってしまうということになるわけでございます。人事員勧告なり仲裁裁定というのは平気で抑えられますけれども、値上げの方もまた平気でやるということになりますと、まさにこういう方々にとってはダブルパンチということになるわけでございます。本当は大蔵大臣がいると、この辺でじっくりやろうかと思ったのですけれども、どうもうまいぐあいにおられないので、政務次官、いかがですか。
  159. 保田博

    ○保田政府委員 事実に関する部分を申し上げたいと思います。  先生が先ほどおっしゃいましたように、五十九年十月以降は、現在の一応のわれわれの試算によりますと、保険料が確かに三・三%程度上がるわけでございます。国家公務員共済組合の例で申し上げますと、現在は保険料が千分の百三程度でございますが、それが大体百七十程度に上がる。これがパーセンテージにしまして大体三・三%に相当するということになるわけでございます。千分の百三から千分の百七十に、千分の六十七上がるわけでありますが、大別して三つの要因があるわけであります。  その一つは、御指摘のように、国鉄の共済組合を救済するための拠出金の財源となるべき部分として千分の十二でございます。
  160. 玉置一弥

    玉置委員 中身よりも、人勧との比較とか仲裁裁定との比較とか、そっちの方でお願いします。
  161. 保田博

    ○保田政府委員 結局申し上げたいのは、かなり大幅な引き上げではございますが、それは国鉄をあながち救済するためということよりも、みずからの保険財政を将来にわたって安定させるためのものである、こういうことでございまして、このことは必ずしも気の毒、そういうことではない。結局みずからのためになることだと思うわけでございます。将来の年金財政をしっかりしていくためのものである、こういうふうに考えております。
  162. 玉置一弥

    玉置委員 それはよくわかるのですけれども、上げるべきときに上げる、ある時期があると思うのです。それで本来は、こういうふうに重なったときは一つずつずらしていく。増税のときがそうでしょう。いろいろ上げると何兆円にもなるから、ずらしてやっていますね。あれと同じで、やはりずらしていかないと、急激な負担というのは大変なことになるわけです。五十八年は多分人勧、仲裁裁定も上がると思いますけれども、五十九年はこういう条件がありますから、そういう意味では上げなければいけない条件になっている。そういうことも考えて、時期をずらしていかないと、人勧でさえあれだけもめるのですから、片方を、上げるときは黙って上げるというのはとんでもない話で、やはりもっと衝撃を少なく、やわらかく——これは毎年上げたってしょうがないというときもあると思うのです。上げるという話でなくしょうがないときもある。しかし、重なって一度に上がるよりはむしろ衝撃が少なくなるのではないかというふうに思いますので、長期的観点に立ってそういう財源調整ということを考えていただきたい。  それから、あと一分で終わりますけれども、この間から、電電公社の経営形態が変わったときにどうなるかというお話がございまして、現在の共済年金から民営化しても共済年金のままに残るのだというお話がございました。その辺について、もう一回確認をいたします。
  163. 保田博

    ○保田政府委員 年金制度は現在八つ存在するわけですが、そのどれを適用するかといったことと経営形態というのは必ずしも一致していないわけでございます。公庫、公団が厚生年金の適用を受けておる。一方、片や私学の共済とか農林共済というのは共済組合の適用を受けておるということでございまして、経営形態というものと年金制度の適用形態というのは必ずしも一致しなくてもいいものである、そういうふうに考えております。
  164. 玉置一弥

    玉置委員 いままでは共済組合のままで残るのではないか、そういう話をされていましたね。それは共済組合の側に選択権があるわけですか。
  165. 保田博

    ○保田政府委員 公的な年金制度のどこに入るかということでございますが、国家公務員共済組今ないしは公企体の三共済組合は、今回御提出しましたような法律で引き続き共済制度として残っていただく、こういう前提でございます。
  166. 玉置一弥

    玉置委員 今回共済制度が統合されるということですけれども、今度個々の独立した企業体から見ていけば、国鉄、電電公社、専売公社、それに国家公務員——国家公務員の場合はどうかわかりませんけれども、少なくとも電電公社というのはまだ非常に業績がいいわけですね。まだいいというのはおかしいですけれども、いい。いま民間では企業年金というものが非常に普及をしておりまして、これがいわゆる社会保障の民営化というか、その部分を補っている。いわゆる退職金を後ろへ回して、少ない部分を補っていこうということでやっているわけですけれども、こういう方式をもし電電公社がとりたいといったときに、果たして現在の共済の中で上積み分のいわゆる企業年金ができるのかどうか、その辺についてお伺いしておきます。
  167. 保田博

    ○保田政府委員 共済組合の中で特定の組合の給付だけを優遇する制度を設けるということは、非常に困難であると思います。
  168. 玉置一弥

    玉置委員 共済のままでは企業年金は無理だということですね。そうなりますと、状況の悪いところに引っ張られて掛金を高く取られ、いざもらうときは、状況の悪いままに給付をされる、こういうことですね。
  169. 保田博

    ○保田政府委員 極端に言えばそういうことでございますが、それがまた社会保障、社会連帯の精神のあらわれでもあるわけでございます。  御指摘の企業年金を、たとえば電電公社の場合にできないかということでございますけれども、これはたとえば昭和七十年に年金制度の統合が行われたというような後に、企業業績が非常にいいとか、あるいは組合員がみずからの保険料を積み上げるということで上積みの年金をされるというようなことは、考えられないわけではないと思います。
  170. 玉置一弥

    玉置委員 せっかく大臣が来られましたから、一問だけお伺いして終わりたいと思います。  先ほどもちょっとお話を申し上げたんですけれども、今回の統合の中で、各共済の組合員の方々の掛金率が非常に大幅に上昇する。国家公務員の方あるいは電電公社の方になりますと三二二五%ぐらい上がるわけですね。人事院勧告とか仲裁裁定というのは政府の方で平気でよく凍結をされるわけですけれども、値上げのときは偏見と独断で一斉に上げる。今回の値上げは、いわゆる掛金率の修正率も含めて、財源調整という形で上げられるわけですけれども、こういうことで考えていきますと、少なくとも五十九年についてはもう何もしないうちに仲裁裁定あるいは人事院勧告、これが上げざるを得ないような状態になっていると思います。そのくらいまで大変大幅な掛金率の引き上げということで、実質的には相当収入減という形になるわけですけれども、先ほどから、上げる時期をばらばらにできないか、そういうお話を申し上げているわけですが、人事院勧告、仲裁裁定を絡めてどういうふうにお考えになっているか、その辺をお伺いしたいと思います。
  171. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のように、まず仲裁裁定につきましては、一口に申しますと五十八年度予算が通過成立いたしましてから日いまだなお浅く、予算上それの裁定に応ずる、にわかにこれに対する、可能であるという判断がしがたい、よって国会にこれを付議して国会の御意思に任す、こういう決定をしていま国会でまさに、継続審議でございますか、になっておるわけであります。  それから人勧につきましては、これは国会及び政府に勧告する、こうなされてありますが、従来の経緯からいたしまして、政府部内においては、最終的には給与関係閣僚協議会、ここでいままでたしか三回相談はいたしました。最終的には国民的立場に立ってこれが方向を決めなければならぬ、こういうことでございます。  しかし、私の、財政当局の現段階における対応といたしましては、百兆にも上る財政赤字を抱えておる今日、この問題については、人事院勧告のよってもって立つことは十分尊重しながらも、厳しい態度で対応せざるを得ない、こういう趣旨のことを申し述べておるという段階でありまして、最終的には国民的次元に立って、閣僚協議会で議を尽くし、そして内閣一体の責任においてこれを決める、こういう立場でございます。したがって、平気で凍結したわけじゃございませんので、大変平気でなく、従来の経緯をいろいろ考えた結果、昨年は見送るという結論を下し、そして、その後、本院の議長裁定等に対して、政府を代表し、後藤田官房長官から、二年続きで凍結はしないという趣旨のお答えをして今日に至っておる、こういうことでございます。  また、今度の法律改正の問題につきましては、いわばいろいろな経過を経ながら、両審議会においても連帯の責任で答申をいただいて、いま御審議をいただいておるわけでありますので、言ってみれば、これまた独断と専権に基づく提出の仕方ではない。大変懇切に御議論をいただいた後の問題であるというふうに理解をいたしておるものであります。
  172. 玉置一弥

    玉置委員 じゃ、終わります。
  173. 森美秀

    ○森委員長 鈴木強君。
  174. 鈴木強

    鈴木(強)委員 お許しをいただきましたので、ただいま提案をされております法律案につきまして、若干の質疑をさせていただきます。  私は、具体的な質疑に入ります前に、若干基本的な問題についてお伺いをしておきたいと存じます。  御承知のように、わが国におきましては、今日、男子の平均寿命は約七十五歳、女子は約七十九歳となっております。総人口に占める老人の数は一〇%を超そうとしておる現状でございます。これらの御老人は、明治、大正年間の最も苦しかった時代を生き抜いてこられた方々でございます。同時にまた、今日の日本をつくり上げてくださった恩人でもございます。したがって、これらの御老人が老後を明るく、楽しく生活していただけるような、よりよい保障制度を確立することは、今日、政治に課せられた緊急な課題ではないかと思います。  政府は、このような高齢化社会の到来に対して、いかなる総合的政策をお考えでございましょうか。現在の年金制度を含めて、基本的な構想がございましたらお聞かせいただきたいと存じます。
  175. 竹下登

    竹下国務大臣 いまお説がございましたように、一番最近の分で、男性が七十四・二二歳、女性が七十九・六六歳だったと思います。私が初めて国会に議席を得ましたときから見ますと、ちょうど十一歳すっ平均寿命は上がっております。昭和二十二年は五十歳でございますから、ずいぶん長生きするようになったものだなあ——七十歳以上男女ともに平均寿命を持つ国は、アイスランドを抜いて日本が一番で、あとはスウェーデン、ノルウェー、オランダ、イスラエル、デンマーク、スイス、ギリシャ、カナダ、イギリスの順だったと思います。これはよく演説しますので覚えておったわけであります。しかしながら、他の国と違いますのは、余りにも高齢化が急速であったために、もろもろの点につきまして将来に備える対応策が必ずしも十分でないというふうに思っております。  急速に対応する施策といたしましては、言ってみれば、老人年齢層対いわば勤労者年齢層の対比が、まだいまのところは分母の方が大変に多うございますので、それなりに対応がなされておるというふうに思いますが、将来にわたっての考え方ということになると、今次の年金法の審議に当たりましてもいろいろと御議論をいただいておりますように、いまから本来あるべき方法を考えなければいかぬという意味においては、これからいろいろな問題が年金のみならず出てくる、そういう認識に立っております。  ただ、共通して言えますことは、明治四十五年生まれの人がことし誕生日を迎えれば、ことごとく七十一歳におなりになるわけであります。国会議員でも、明治生まれの人が六十九名おりまして、三人お亡くなりになりましたからいま六十六名、衆議院でございます。大正、昭和がほぼ一緒。これは一般の国民の階層から言えば、多少まだ高齢者の方が多いということになりますけれども、そうしたことも考えながら見ますときに、結局、戦前を生き、戦中を生き、戦後を生きていただいて、私どもにしたところで、いわば本来物心がついたのは戦中であるとすれば、その方々によって今日の日本の繁栄があったということに対しては、大変な感謝をすべきことではなかろうかなあという感じがいたしております。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理者席〕 したがって、年金のみならず、将来の高齢化社会に対応するもろもろの施策に対しましては、衆知を集めて対応していかなければならない課題ではなかろうか。平素演説なんかで言っておることの数字を申し上げたのはあるいは非礼であったかもしれませんが、そのような気持ちでおります。
  176. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大蔵大臣でございますから——きょうは厚生大臣がお見えでございませんが、むしろその方の問題であるかもしれません。しかし、こういう委員会でございますので、大臣から——基本的な認識については私と一致していると存じます。したがって、これからどうするか。総合的な、基本的な保障政策というものを一日も早く策定をして、そしてそれに向かって政治が総力を尽くして実施に移るような方向に行くためにも、この基本構想というものを具体的に決める必要があると私は思うのでございます。ですから、その点をひとつ大臣、厚生大臣等とも十分御連携をいただきまして、むしろ所管は厚生大臣の方かもしれませんが、ひとつできるだけ早い機会に総合的な政策を決めていただくようにお願いをしておきますが、どうですか。
  177. 竹下登

    竹下国務大臣 最初の閣議決定の際、いわば中長期にわたる問題につきましては年金担当大臣を設け、初代の年金担当大臣は前厚生大臣森下さんだったと思います。いまは林厚生大臣が年金担当大臣、こういうことになっておるわけであります。したがいまして、年金担当大臣を中心にして当面、五十八年度行うべき措置、それから五十九年度からやる措置、最終的には七十年度というスケジュールに従って、年金についてはいわゆる青写真をりっぱなものにつくっていこうという趣旨の、たまたま第一段階のイ、ロとありまして、ロは地方公務員共済でございましたが、イの方の担当大臣としていま法案の審議をお願いしておるという立場にあるわけでございますので、当然のこととして、いままで本法律を提出しまずに当たりましても、私が大蔵大臣に就任しましてからこの問題についての会合が三回ございました。年金担当大臣のもとにいろいろな御意見を伝えていく、なかんずく本委員会等でなされた議論を素直に伝えていくというのが私の役目ではなかろうかと考えております。
  178. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大臣、少しずれがあるのです。私の申し上げておりますのは、老後保障の総合的な対策といいますか、これは年金、医療その他を含めまして、そういうことでございます。ですから、年金問題については私はまたさらに所信を伺いたいと思っておりますが、大蔵大臣は大変重要な立場にいらっしゃいますし、実力も持っておられる方でございますから、ぜひ閣内におきましても、さっき私が申し上げましたような総合的な御老人に対する保障制度というものの構想を、認識は一致したようでありますから早くつくられて、そしてこれが実施に移されるような御努力をお願いしたい、こういう趣旨でございました。よろしゅうございますね。
  179. 竹下登

    竹下国務大臣 当然のことでございまして、法案に関連して、年金のビジョンというお話にとどめて、年金担当大臣を中心としてと申し上げたわけでございますが、もとより政策遂行に当たりましては内閣一体の責任で、なかんずく急速度にできてきた高齢化社会に対応するための施策については、政治家としても、また、もちろん政府の一員としても、いま真剣に対応すべき課題であるという認識はひとしくいたしておるつもりでございます。
  180. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そこで、いま公的年金制度は大きく分ければ厚生年金、国民年金、それに各共済年金、この三つから成り立っておると思います。そしてこの三種の年金と八本立ての制度は、考えてみると、発足に当たっては、それぞれその時代の要請と置かれていた立場、政治的背景など、非常に複雑な歴史的経過の中で別々に発足した経緯があると私は思うのでございます。ですから、これを見逃すと大変問題になるような気がするのです。したがって、いま私ども選挙区を回りましてもみんを言っておるのは、現在制度上のゆがみがあみのではないかとか、あるいは制度上の矛盾とか不公平とか格差について、これを何とか早く直してもらいたい、こういう国民の意見があることは事実でございます。  ただ、私はさきに述べましたように、歴史的な背景、それから時代の要請、こういったものを全然無視して一挙にそこへ到達するということは、非常に無理があると思うのです。私自身、逓信省に就職を希望いたしまして職を奉じたのでございますが、当時私が逓信省を希望した動機の大きな一つは、小役人であっても、給料は安いけれども老後に恩給がもらえる、これがもう何よりの望みであったわけです。そういうことで、恩給制度というものが戦後共済制度に変わっておるわけですが、その歴史的な経過の上に今日の共済年金制度があるということを忘れてもらっては困ると思うのです。  ですから、今度出されております法律案の内容等を見ますと、いまも大臣からお話がございましたが、三つの種類と八つの年金制度、これにおける格差の是正、不公平をなくする、こういった国民の世論というものがあります。したがって、これについては一つ見通しだけは私ども伺っております。制度審からも答申が出まして閣議も了解しておりますけれども、これはほんの道筋だけであって、具体的な内容については何ら触れておられない。そういうときに私は、今回のような国家公務員と公社の統合をするような改正案というものについてはどうしても納得ができないのです。ある程度道筋を決めまして、具体的にこうするのだという上に立ってこうするのだということであればわかるのでございますけれども、そこら辺が非常に欠落しておると思うのでございますが、その具体的なスケジュールというのはいつごろできるのですか。
  181. 竹下登

    竹下国務大臣 まず私からお答えをいたして、正確には事務当局からお答えをさすことにいたしますが、確かに私も大蔵省へ参りまして、よく恩給史というようなものを見ますと、いつになったらなくなるだろうかな、そうしたら大体三十三年採用、ちょうどいまの文書課長から地方局の局長ぐらいが三十三年採用、その方々も若干の部分は恩給部分があって、そうするとこの方々の十歳下のお嫁さんが亡くなるまでというと、相当まだ恩給部分も残るなというようなことで勉強させていただいたことがございます。  確かに、いわゆる昔の官員に対するところの恩給制度というものが、いわば自己の職業の選択の際も大きな要件の一つになったであろうということは、推測するに十分な要件であると思っております。したがって、それがまずそれぞれ国家公務員共済になり、あるいは地方公務員共済となり、そして三公社の共済組合になった時点、これの変化に対応するということもやはり大きな変革であったと思うのであります。そのときもいろいろな既得権でございますとか、そういう議論がずいぶんなされたというように、私も物の本で読ましていただいております。  そうして今度このようなことになりますと、大筋で申しますならば、決めた一、二、三の方式で考えるその一といたしましては、言ってみれば、類似した形、これは歴史的にも考えまして、そこから手をつけ、そしてそれが国鉄共済の救済にもなるという考え方から手をつけられたものでございますが、いまおっしゃいますように、基本的な道筋というものが明らかにされる前にこれをやることはいかがかというような議論は、社会保障制度審におきましても、また国共済の審議会におきましても一番多く議論された焦点でございます。ただ私もこれに対して大変な感激を覚えましたのは、そのような審議をしながらも、政府の決めた手順に従って法律を出すということになるならば、やはり答申という形式が必要だろう、それは言ってみれば中間報告をもって答申にかえるという内容のものであっても、そこはお互いの連帯の中で調和をとろうというような背景で御答申がいただけるに至ったというふうに考えて、かねて私は、謹んでその両審議会に対して感謝を申し上げておるわけでございます。  そうした形の中でございますし、当然一つ一つ制度は歴史的背景のもとにできておりますので、それらの既得権の問題とかあるいは連帯の精神の中に吸収される問題と、どうしてもされない問題と、いろいろなことについては、具体的にやはり対応していかなければならない課題があるというふうに、私も中身をそのような形で理解をさせていただいておるところであります。
  182. 鈴木強

    鈴木(強)委員 いま大臣がおっしゃいましたように、この法案を提出する過程におきましては当然国共審あるいは制度審の方に諮問をなさいました。その国共審があれだけもめたこと、制度審の方も大論議があったと聞いておりますが、まず第一番には、公的年金改革構想を早期に具体化しろ、それがないのはおかしいじゃないか、こういう論議が一つあったと聞いています。それから、三公社の経営形態と年金制度を切り離して審議することは非常にむずかしい。三つ目には、本諮問は関係者の間で多くの利害が錯綜し、答申は非常に困難である。こういうのが国共審の答申のように私は聞いております。  さらに、制度審におきましては、国鉄共済年金問題に対する国の責任のとり方が不明確であるということが一つ二つ目には、制度審の建議しております「皆年金下の新年全体系」、これは五十二年の十二月十九日のものでありますが、その趣旨を公的年金改革に生かせ。三つ目には、統合法案の成案に際しての関係者の基本的合意が欠如しておる。そのほか給付水準の問題だとか保険料の引き上げの問題だとかについて述べておりますが、少なくともこのような議論がそれぞれの審議会において行われた以上は、政府としてはこれに対してより慎重な検討を加えて、そしてこの法案を提出すべきではなかったのでしょうか。  聞くところによりますと、こういう答申は得たけれども、当初大蔵省が提案いたしました原案をそのまま国会に出しておる。これは制度審そのものを無視するというようなことで、非常に非民主的ではないかと私は思うのです。非常に賢明な大蔵大臣に大変失礼なことを申し上げて恐縮でございますけれども、私はそういうふうに思うわけです。ですから、制度審から得たこの五つの建議に対して、原案にこだわらずに、直すところは直して、そしてわれわれがより皆さんの原案を理解できるような、そういう配慮の上で法律というものは提案すべきではないか、こう私は思うのです。これは大臣、どうでしょう、その辺。ちょっと私の方が言い過ぎですか。
  183. 竹下登

    竹下国務大臣 私は言い過ぎではないと思います。そういう考え方は私もあるであろうと思っております。ただ、そのような中身にならざるを得ないほど、われわれもある意味において不満なところを指摘した。が、しかし、政府としてもこの手続を通らなければ法案が提案もできないじゃないか。なれば、このような形で率直に批判すべきものは批判しても答申はしてやろうという高度な判断というものに甘えて、私どもはいま法律を提案して御審議いただいておる。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕  実際、一つには、三公社には審議会みたいなものがございませんので、経営者の側の人の意見を聞いたり、それから組合の方の側の意見を聞いたり、国共審の方も運営に苦労していらっしゃいました。それを国共審の委員の方の、きれいな言い方をすれば良識でもって、とにかく時に中断し、時に懇談会に切りかえながらこれを進めていただいた集積がこれだな、こういう認識を私も持っておりますので、いまのような批判がなされるであろうということはもとより当然のことである。それは政府に対していただく当然の批判であって、別に非礼であるとかいうような考えは持っておりません。
  184. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大臣が率直にお認めになられましたので、これ以上また申し上げるとどうかなと思うのでございますが、これはひとつぜひ今後の問題として御配慮いただきたいのでございます。せっかくの審議会があるわけですから、少なくともそこで激論になり、意見が完全に一致しないような問題については、何とかさらに中間的なコンセンサスを得られるようなことがないだろうか、そういうことは当然御検討、御配慮いただいたと私も思います。思いますが、結論としては、政府原案どおり国会に提案したということは、やはり二つの審議会における審議権というものが入れられておらないということはもう間違いないわけでありますから、そういうことになりますと、やはりわれわれ審議する場合でもいまのような意見が出てくるわけでございまして、法律というのはよければ修正してもいいじゃないですか。私はそういう意味におきまして、もうちょっとコンセンサスが得られるような方向に持っていく努力を大臣としてもしていただきたいし、もちろん、これは国会に提案してありますから国会の問題でございまして、われわれも大所高所から考えなければならぬと思いますが、行き方としては非常にまずいやり方だし、力で強引に出してきたというふうに思われても仕方ないんじゃないか、こんなふうに思うわけであります。それは今後十分制度審議会の御意見も尊重していただけると確信をいたしますので、今度の問題については、ぐちになりますけれども、私はそういう感情を率直に持っておりますし、大臣もそれを認めてくれましたので、今後はわれわれからこういう意見が再び出ないような形にしていただきたいことをお願いをしておきたいと思います。  それから、ちょっと問題が外れて恐縮ですけれども、さっき年金の基本的な問題で伺いましたが、実は女子の年金権の問題なんです。私ども選挙区を回ってみまして、女子年金権の確立については非常に強い期待があります。それに対して政府はどういうふうに考えておられるのか。  それからもう一つは、国民年金は六十五歳支給開始になっております。しかし、六十歳で減額されることを承知でもらう人たちが非常に多くなっているのです。なぜ皆さんは六十五歳になってもらわないのですか、半分近くも損するようなことをなぜするのですかと聞きますと、いや六十二、六十三で死ぬかもわからぬ、だから早いうちにもらった方が得だ、こういう意識になっているのです。ここいらについてはやはり個人の意思でありますから、国が強制的に指導するとかなんとかということは無理だと思います。しかし、六十五歳支給になりますればもらう額も多くなるわけですから、その辺の個々の被保険者に対する理解と納得を得るための行政的な宣伝というか周知といいますか、そういうものはなされていらっしゃるのでしょうか。全国から見ると大体どのくらいの方が六十一歳あるいは六十二歳、六十三歳と、六十五歳に満たないのにもらっているという比率がいまわかりますか。わからなかったら、これは資料で結構ですから後から出してもらいたいと思います。それに対してちょっと考え方を聞かしてもらいたい。
  185. 山口剛彦

    山口説明員 婦人の年金保障の問題でございますが、現行の制度の中で婦人の年金保障について非常に問題があるんじゃないか、不十分な点もあるんじゃないかという御指摘がいろいろございます。  簡単に整理いたしますと、一つは、年金というのはそもそも夫婦単位で考えていくべきなのか、個人単位で考えていくべきなのかという問題がございます。現行の年金制度におきましては、被用者年金につきましては夫婦単位で考えるという構成がとられておりますのに、国民年金につきましては個人単位。しかも、任意加入制度を認めているということでございますので、その結果、世帯としては幾つも、何人分も年金をもらうというような問題も出てまいりますし、また任意加入をしておられない奥様方には、場合によっては無年金になってしまうというような問題がございます。したがいまして、これは、わが国の年金制度を将来夫婦単位で考えていくのか、あるいは個人単位の年金にしていくのかという年金の基本的な問題について整理をいたす必要が一つございます。  それからもう一つは、給付の水準を考えます場合にも、老夫婦としての世帯の水準をどの程度にするのかという目標設定をしていくのか、あるいは個人単位にばらばらにしてしまって水準を考えるのかというようなことで、水準設定等とも関連をいたしてまいります。そういう意味で大変大きな問題でございますけれども、御指摘いただきますようにいろいろ問題点があることも事実でございますし、わが国の年金制度、いま再編成のための準備をしておりますけれども、婦人の年金問題にどう対応するのかという方向づけをしない限り年金制度の再編成の方向も決まらない、そういう大きな問題だというふうに受けとめております。関係の審議会におきましても、基本的にはすべての婦人に年金権を確立をする方向で制度改革に取り細めという御意見をいただいておりますので、大変むずかしい問題がございますけれども、次の制度改正の中でこの問題についてぜひ整理をしていきたいということで、いま検討をいたしております。具体的な方向はまだお示しできませんけれども、十分意識をして作業をいたしております。  それから、国民年金の支給開始年齢との関係で、いわゆる繰り上げ支給の方がどれくらいかということでございますが、大体七割ぐらいの方が繰り上げ支給を受けておられるというのが実態でございます。  この制度の趣旨は、そもそも国民年金というのは自営業、農業の方を対象にした制度でございますから、サラリーマンの場合とは支給開始年齢等についても下がってやむを得ないのではないかということで制度ができておるわけでございますけれども、現実には厚生年金が六十歳になっておりますので、国民年金の階層の方たちでも六十からぜひ年金が欲しい、また、いただかないと生活もなかなかできないというような方もおられるだろうということで、そういう特別な事情がある方については、サラリーマンの年金との均衡からいっても、六十歳からの支給を認める制度を設けざるを得ないだろうということでこの制度ができておるというふうに理解をしておるわけでございますが、現実には、先ほど先生の御指摘がありましたように、もらえるものはできるだけ早くいただいた方がいい、それから、生活の糧というよりはお孫さん等に何かお小遣い等も差し上げたい、それから、周りの人がみんなもらっておるというようなことで受けておられる方が相当多数おられるというのが私どもの調査でもわかっております。そういたしますと、制度を置きました本来の趣旨とちょっと違ったところで機能しているということでございまして、審議会等でも、この制度についてはちょっと見直した方がいいのじゃないかという御議論もございます。ただ一方で、こういう制度を存続させるべきだという御要請も大変強いものでございますから、私どもといたしましては、年金というのは本来、生活の糧がなくなったときに本来の年金を六十五歳から受給をしていただくというのが望ましい、また、それを前提にして水準等も考えておりますので、そうしていただきたいということで、いろいろPR等をしておりますけれども、まだまだ不十分な面がありますので、制度制度といたしましても、そういう趣旨は今後とも十分PRをしてまいりたいと思っております。
  186. 鈴木強

    鈴木(強)委員 後段の方はわかりました。  前段の、婦人の年金権の確立については制度改正の際、こうおっしゃいましたが、制度改正の見通しは大体いつになりますか。
  187. 山口剛彦

    山口説明員 現在、国民年金、厚生年金、船員保険の制度改正の準備をいたしておりますけれども、私どもの心づもりといたしましては、できるだけ早く案をまとめまして審議会に諮問をさせていただいて、御答申をいただいて、次の通常国会にはその改革案を提出をして御審議をいただきたいということで準備を進めております。
  188. 鈴木強

    鈴木(強)委員 わかりました。ぜひよろしくお願いいたします。  そこで、ちょっとまた本論に戻ります。  この法案を見ますと、公企体共済組会は当分の間単独運用を認めるというふうになっておりますが、この「当分の間」というのは何年なのか。ちょっとはっきりしておりませんから、「当分の間」とは当分の間だなんという答弁をしないで、国民にわかるような答弁をしてください。
  189. 保田博

    ○保田政府委員 先生御指摘のように、今回御提案申し上げております法律案では、公企体の共済組合は当分の間それぞれの組合が長期給付事業を行う、要するに、財布はしばらくは別々でございます。そういう意味では完全な統合ではないわけでございますのでありますが、その場合の当分の間というのは、財政調整事業、国鉄共済組合の援助のための措置でございますが、この財政調整事業にかかわる部分を含めまして、国鉄の共済組合とそのほかの共済組合との負担がおおむね一致をする……(鈴木(強)委員「バランスがとれる」と呼ぶ)はい、バランスがとれる、そういうのが一つ。それから同時に、負担は先ほど申し上げましたが、給付につきましては、今回御提案申し上げております法案で合致をするわけでございますから、そういう意味での給付と負担の両面におきまして大体統一性がとれるという条件が達成されました上で、各組合の合意が得られました段階を考えておるわけでございます。先ほど来御説明申し上げておりますように、わが国の公的年金制度の統合は、現在政府としましては昭和七十年をめどといたしておりますから、最大限七十年までの間に、先ほど申し上げましたような条件が成就されることを期待しておる、こういうことでございます。
  190. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうなればまことに結構でございますが、果たしてどうなりますか、非常にむずかしいような気がしますが、その「当分の間」というのはよくわかりました。昭和二十八年につくった学校図書館法という法律がありまして、「当分の間」というのが、今日も「当分の間」で生きている条文がある。だから私は、この点は念を押して伺ったわけです。いい答弁をしてくれました。わかりました。  そこで、今度のこの法案の提案理由を見ますと、また内容を見ますと、一つは、公企体共済年金国家公務員共済年金を統合する、二つ目には、公企体共済年金水準と国家公務員の年金水準を合わせる、もう一つは、国鉄の共済年金財政赤字国家公務員と電電、専売の各共済組合に負担をさせる、この三つに尽きていると思うのでございます。  私はさっき、前の委員の質問も伺っておりましたが、前のこの一、二はつけたりであって、問題は、国鉄の今日の共済年金財政赤字を負担させるというのが本当のねらいではないかと思うのです。もちろんこれは誤解があってはいけませんが、今日国鉄の共済年金がなぜこういうふうな事態になったのか、これはきのう、きょうわかったことではないと思います。保険数理で計算してみれば、十年先、十五年先どうなるかは、もう早い機会にわかっておるはずだと私は思うのです。それに対して国鉄当局がどういうふうな措置をしてきたのか、そこらについてはさっぱりわからない。私ちょっと二番せんじの質問ですから、すでに質疑があったとすればお許しをいただきますが、私はそういう点がよくわからない。しかし、国鉄の共済年金財政赤字になって、長いこと国鉄事業のために苦労された皆さんに年金が支給できないのだぞということは許せないわけであります。私たちもそのことについては深い理解をしておるし、何とかその方法はないかということについて意見が一致していると私は思うのです。  ただ、問題は、そのやり方であります。よって来る原因は何か、それをわれわれがよく理解して、そうか、それならばこうしてやろうという気持ちになれるような、国民にわかる話をしてもらいたい。何か人が借金したのをおまえ払えというような、これは極端なことを言えばそうとられるようなものなのです。それでは国家公務員の諸君だって、電電や専売の諸君だっていい顔できないでしょう。理屈にならぬじゃないですか。そんなむちゃくちゃなことはないでしょう。だから、それには今日までこういうふうに自助努力をしてきた、しかしいかんともしがたい、国においてもこういうふうな協力をする、だからあなた方も少し協力してほしいという、われわれにもう少しわかりやすいような話をしてもらえるのですか。そこらをひとつはっきりしてくださいよ。そうしないとこれは困る。
  191. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 ただいまお話がありました、なぜこういう状況になったかということでございますが、一つは、各年金制度に共通の問題かと思いますけれども、そもそも給付と負担との問のバランスを失しておるということが第一点でございまして、財源の裏づけのない年金改定が行われておることによる不足財源の増大が現職組合員の負担を上回りつつあることが第一点ではないかと考えております。  国鉄共済年金固有の問題といたしましては、御承知のように、輸送構造の変化に対応して現在減量化を進めておりますが、そのために被保険者数がどんどん減ってきております。六十年度初めにはおよそ三十二万人台になるのではないか。その反面、戦後の混乱期に雇用政策も兼ねて、復員者を含めましてかなり積極的な職員の採用を行っておりますが、そのことによって生じました年齢的な団塊が、ちょうど数年前から退職時期に差しかかっておる。このことによりまして、平均的に言えば、一万人ぐらいの退職者であるべきところが、現在二万数千人ぐらいの退職が続いておりまして、これはほとんど年金受給者になる。つまり、分母となる被保険者数が減少いたしまして、分子である年金受給者が急増しておる、これが原因ではないかと考えておるわけでございます。  これに対して一体何をやっておったかという御質問もいただいたわけですが、大体五十年くらいあたりから先行きに国鉄共済としては不安を感じておりまして、つまり石油ショック後の大幅な年金改定があった、さらにちょうどそのあたりから退職者が増加をし始めておるということが年金財政を非常におかしくしてきたということで、これに対する対策といたしましては、五十一年から保険料の引き上げという形でございますけれども、何回か手がけております。具体的に申し上げますと、昭和五十一年に千分の十の保険料の引き上げ、それから五十三年には千分の二十の引き上げをやっております。あわせまして、五十三年からは追加費用の繰り入れ方式を変更いたしまして、前年度に発生した追加費用を全額翌年度に繰り入れる、こういうような方法によりまして財源確保策を講じてまいったわけでございます。  それでもなかなか財政事情が好転をしないということで、五十六年度からは緊急四カ年計画というものを策定しております。年金で四カ年というのはやや異例でございますけれども、五年計画は組めなかったという事情がございます。この中で、五十六年から五十七年の二年にかけておりますが、千分の三十の財源率の引き上げをやっております。そのほか、先ほど、一年おくれの追加費用の繰り入れ方式に変更したと申し上げました。が、さらに過去にさかのぼって追加費用の未払い金をこの緊急四カ年計画の間に集中的に償還をしていく、そして財源確保を行う、こういうような措置を講じておるわけでございます。これによりまして五十九年度までの年金支払いは何とか確保できるのではないかと考えておりますが、六十年度以降は単独では年金財政を運営していくことは困難であるという状況に立ち至っております。その対策として今回財政調整をお考えいただいておるわけでございますが、国鉄共済といたしましても、他共済に大変御迷惑をおかけすることでありまして、大変心苦しく思っておりますが、以上申し上げましたように、事態は非常に切迫いたしておりますので、何とぞ御理解をいただきたいものだと考えている次第でございます。
  192. 鈴木強

    鈴木(強)委員 いまあなたのお答えを聞いておりましたが、どうも五十一年ごろからぼつぼつ考えたというようにしか受け取れないんです。これはもう保険数理ですからね。退職者がどの程度出るか、この見通しについては自然退職、それと合理化というものがかなり国鉄は要請されておったわけですから。確かに最近のように数万人という人が一挙にやめるということは、一つのファクターの中ではむずかしかったかもしれませんけれども、少なくとも十年なり十五年前に、国鉄財政はこうなるんだというその見通しは私はあったと思うのです。その十年前、十五年前から、国鉄の共済年金財政というものはどうなっていくのか、その辺の見通しに対してのちゃんとしたものを持っておらなかったんじゃないか。五十一年に千分の十上げたというようなところから話が始まっている。私は、そうではなくて、確かに一つ理解できるのは、国鉄の合理化が非常に進みまして、最近非常に退職者がふえてきている、このために支出がふえていくということはわかるのです。それを一つ見通しの中に入れることがむずかしかったかどうかということについては私は理解を示すけれども、もっと早目にこういうものは計算すればわかるはずです。もっと十年、十五年前からやるべきじゃなかったですか。そこを聞いているのです。
  193. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 先ほど、年金財政破綻の原因の一つとして年金改定というものも挙げておりますが、年金改定が始まりました四十年あたりから今日の原因の芽のようなものが出てまいったのではないかと思うのです。しかしながら、具体的に国鉄の年金財政が数字の上でおかしくなってまいった、はっきりそれが出てまいりましたのは五十一年からではないかと考えておるわけでございます。これは、先ほど言いましたように、大幅な年金改定、それから退職者がこのあたりからふえてきた。そういうことで五十三年に、実は先ほどは御説明いたしておりませんが、先ほど申し上げました財源確保策のほかに、国鉄としては総裁の諮問機関として、御承知かと思いますが、国鉄共済年金財政安定化のための研究会というものを設けまして、それに、今後年金財政が非常に悪化することが予測されるが、これにいかに対処すべきかということを諮問いたしておりますが、五十五年五月にその答申が出まして、一言で申し上げますと、国家公務員と公企体職員グループの共済年金制度の統合一元化という方向が示されておるわけでございます。国鉄としては、その提言に基づきまして財政の実情を訴えるとともに、将来の抜本策が講ぜられるよう各方面にお願いをしてきたというのが経過でございます。
  194. 鈴木強

    鈴木(強)委員 だから、聞いてもまだそこは理解ができない。もっと長期見通しに立って、何事と言わずちゃんとやらないと、こういうことになるのではないでしょうか。これ以上聞きましても同じようなことしか言えないのじゃないかと思いますけれども、私は決して皆さんを非難しようとかなんとかという気持ちではなくして、やはり十年、十五年前に保険数理からすればわかったのではないでしょうか。したがってもっと早目に手を打っておくべきではなかったか。ただ同情できるのは、最近非常に退職者が多くなりました。そういうことは予測の中に入れられなかったかもしれない。したがって、十五年前からこういうふうにやっておりました、何十年になったら赤字になる、それを赤字にならないようにするために、二年でも三年でも向こうにやるためにこういう努力をしました、その上に合理化によって人が大変減りましたのでこういう羽目になった、ついてはひとつお願いします、そういうわれわれに理解できるような答弁をあなたはしなければだめですよ。いまのような答弁ではまるっきりなっておらぬ、そういうことを私は言うのですよ。ですから、私もそうむちゃなことを言っているとも思いませんので、私の意見を十分かみしめてこれからやってください。そして、さっき、バランスがとれるまでは当分の間ということで、大蔵省もおられるようですから、早くこのバランスがとれるようにやっていただいたらどうでしょうか。  それから、年間二千六百億赤字になるわけですね。そのうち二千億は自助努力でやります、あと六百億を国家公務員と二公社に出してください、こういうことでございますが、この各共済組合に対する負担の問題について、それぞれの共済組合の年金財政というものにかなり影響が出てくるのではないかと思うのですけれども、それらの問題については大蔵省は調査してありますか。
  195. 保田博

    ○保田政府委員 数字でお答えいたしますが、国鉄の共済組合に対します財政調整の具体的な内容につきましては、委員会をつくりまして検討するわけですが、大蔵省がこの法案を作成いたします段階での試算というものがございます。それによりますと、年平均で国共済の連合会が四百六十五億、電電が百二十億、専売が十五億ということになっております。
  196. 鈴木強

    鈴木(強)委員 電電公社から来ていただいておりますが、これは一つの例として、年間百二十億負担をする、そのために職員一人当たりでどの程度の負担増になるのか、これをひとつ教えてもらいたいのです。
  197. 中原道朗

    ○中原説明員 ただいま大蔵御当局から出てまいりました数字でもって、私どもの職場の方で割り算をするという形で計算をいたしますと、百二十億円を保険料に換算いたしますと約一・二%程度という数字になります。この百二十億なんですが、これを労使で折半をする形で負担をするというふうにいたしますと、個人の負担分が年間六十億。六十億を一人当たりで割り当ててみますと、保険料率にいたしまして〇・六%、それを給与だとかそういうものの中に入れて計算をいたしますと、月額千二百円程度の負担増になるであろうというふうに試算をしております。
  198. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それからもう一つ公社に伺いたいのです。年金の給付率でございますが、この法案が通った場合にはどうなりますか。損になるのですか、得になるのですか、給付率の方は。
  199. 中原道朗

    ○中原説明員 個々に計算するのはなかなかむずかしいことでございますけれども、一般的なモデルでこの法律案の規定に基づく試算を行ってみますと、大きなものは、これは例外でございまして、たとえば三〇%程度も給付が落ちるという面もございますが、一般的なモデルで見ますと三%ないし五%程度給付水準が落ちる、ダウンするというふうに見込まれる、そのように試算してございます。
  200. 鈴木強

    鈴木(強)委員 これは職員の退職手当の問題等との関連もあるようですね。従来三%マイナスになったもの、これは復活するようですね。ただし退職時の最終の給与によって年金ははじかれているわけです。一方は年間の平均でやっていますから、そういう面も関連をして、にわかに損得ということも言えないと思いますけれども、いずれにしてもプラスになることはない。マイナスになることばかりだと私は思うのですね。  そこで、もう一つ聞いておきたいのは、大蔵省の方では国家公務員共済組合財政の再計算の実施時期を五十九年十月ということにしているようですね、私、試算をもらっていますが。ところが公企体組合の場合には、たしか五十六年四月に改正されていると思うのですね。国家公務員の場合。には、再計算の時期が五十四年十月でございます。したがって、五十九年十月というと、五年ごとにという線に沿ってくるわけですが、公企体の場合は一年半も早くまた再計算されるというようなことで、この面の負担もかなり大きくなるように私は思うのですね。大蔵省、まだ一年半も早いのに、なぜ公企体の財政再計算をやろうとしているのですか。
  201. 保田博

    ○保田政府委員 御指摘のように、国共済の場合は財源率の再計算を少なくとも五年ごとに行うということが、国共済の法律によって決められておるわけでございまして、前回から勘定しましてちょうど五年目の五十九年十月ということになっております。各公企体の共済組合につきましては、その辺について明文の規定はないわけでございますが、財政再計算は五年ごと、あるいはその制度上の大きな改正が行われるときには、その改正を織り込んで同じ時期に再計算を行うというのが慣例になっておるわけでございます。  今度の場合は、国共済は五年ごとということで再計算を行わなければならない。公企体の共済につきましては、今回御提案申し上げております法律によりまして、給付の面、負担の面で制度の改正が行われるものですから、この際両者軌を一にして、同じ時期に再計算をさせていただくというのが適当ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  202. 鈴木強

    鈴木(強)委員 試算を私は拝見したのですが、現行保険料率は、職員は掛金の半分、これは折半になるわけですが、たとえば国共連の方を見ますと、現在が千分の百三ですね。それから電電が千分の百三、専売が千分の百十六、国鉄は非常に財政がむずかしいところで百四十八になっていますが、今度改定しようとする上げ幅を見ますと、国共連の方が千分の百七十、電電も百七十、専売が百九十四、国鉄が二百四ですね。そうすると、引き上げ幅で見ますと、国共連が六十七、電電も六十七、専売が七十八、国鉄が五十六、こういうことになるわけですね。これはちょっと感ずることですけれども、国鉄財政が非常に困難なときですから、少なくとも上げ幅についても多少考慮しておかないと、何か出すためにそっちの方がまた余分な負担をさせられているというような感じを持つのは無理からぬことでしょう、次長。その辺の配慮というのは、これは決まったものじゃないのですか。そうでなかったら、私はそういう点も十分配慮してやってほしいな、こういう気がするのですけれども、どうでしょうね。
  203. 保田博

    ○保田政府委員 各共済組合の負担金といいますか保険料率のアップは、先ほど先生が御指摘になったとおりでございます。ただ、これは先ほども申し上げましたが、仮の試算でございますので、おっしゃるとおり修正の余地が全然ないというわけではございませんが、国共済、それから電電と専売についての上げ幅のうち、試算では、先ほど申し上げましたが、千分の十二程度が国鉄の共済組合に対する拠出、残りの大半はみずからの年金財政を将来にわたって健全化するための予算ということなのでございます。  国鉄の上げ幅が多少相対的に低いではないかという御指摘がございましたが、その点につきましては、国鉄の共済組合も、先ほど来国鉄当局から御説明いたしましたように、現在に至るまでかなりの努力をされておるわけでございまして、二割程度が負担の限界に近いものではないかというふうに考えたわけでございます。
  204. 鈴木強

    鈴木(強)委員 私がなぜこういう質問をするかというと、これは理論的にも法律的にも私は非常にむちゃなことを言うわけですから、その点をあらかじめ前提にして聞いていただきたいのですが、国鉄事業というのは国の事業ですから、公企体にはなっておりますが、資本も投下しているわけでございますし、したがって、これは独立した共済組合制度の中で財政は特に考えておるわけですから、ちょっとむちゃなことになるのですけれども、この際、これは非常事態ですから、超法規的な立場に立ってこの国鉄の瀕しております危機を救うということは、私はこれは国の責任でもあると思いますよ。だから、会計上ストレートに国鉄にこの二千億のうち、では六百億なら六百億を国が出して、そして公社の負担はなくするとか、国鉄財政に協力してやるとかというようなことになることは、非常にむずかしいとは思いますけれども、非常事態ですから、何かそのくらいの配慮をしてもらわないとこの問題は解決しないと思うのですよ。国鉄だって、いま十七兆ぐらいの累積赤字があると聞いておりますけれども、これは国鉄職員が怠けておって出た赤字じゃないですよ。みんな胸に手を当てて考えてみれば、われわれ政治家にも大きな責任があるはずです。大変な苦労をして鉄道を守り、正月元日から働いてくれているのですよね。そういう人たちでありますからして、われわれもその人たちが年金をもらえなくなるなんということは、さっきも私申し上げましたけれども、そんなことは言えませんよ。何とかしなければならぬ、これはもうみんな意見が一致しているわけです。だから国の方でも何か知恵を出して、超法規的なことになるか知らぬが、この責任の一端を担ってやるというような決断はできないのですか。これは大臣がいないから、政務次官どうですか。
  205. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 先生のただいまのお話は決してむちゃなお話ではございませんで、国民のかなりの多くが意識の中で持っている御意見だと思います。  昭和三十五年だったと思いますけれども、社会福祉元年ということで、国民皆年金、皆保険ということを目指しまして、日本の国は諸先生方の御指導をいただきながら、政府も、そして国会も努力をいたしてまいったわけでございます。そして今日、それぞれの現場段階の努力ということもございましたけれども、それなりの年金制度というものができてまいりました。その中でのいろいろな問題点、弊害というものができてまいりました。いま非常にむずかしい完成された年金ができれば、その国は完全に、完璧になるとまで言われております年金問題に対して、日本人の知恵というものがまさに結集をしようとしているこの段階は、よりすぐれた年金づくりというものをしていくきわめて絶好のチャンスであろうと理解をいたしております。  そういった中で、政府といたしましては、いろいろな方々からの御指導をいただきながら、今日の弱きを助けるといいますか、そのような形での年金に関する一つの法律というものを出させていただいたわけでございます。これからの、よりすばらしい年金づくりの一つの道しるべとなればと思いまして、私どもも誠心誠意、諸先生方からいただきました注意を十分に御配慮させていただきながら進めてまいりたいと思っておりますので、どうかこの法律に対します御理解のほどをよろしくお願い申し上げる次第でございます。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  206. 鈴木強

    鈴木(強)委員 次官から丁重なお答えをいただきまして恐縮に存じますが、もし金が出せないというならば、さっきもバランスをとるためにやるというお話もありましたが、たとえば国がある期間そこへ貸してやるとか、そういうふうなこともできないものなんでしょうかね。とにかく五年間は毎年二千六百億円足りないから、その分はこの法律によってやれるわけですが、六十五年以降については何か委員会をつくって、さらにその先については考える、こうおっしゃっておりますが、果たしてそこで、五年後に国鉄年金財政が健全化して、この法律が実施を中止するということになればいいわけですけれども、なかなかその辺はむずかしいようにも私は思うのですよね。ですから、どっちにしても補てんをしてやらなければならぬわけですから、国が英断をもって出す。それができないならば、次善の策として一時貸しておいて、その財政を負担してやるとか援助してやるとか、そういうこともこれはできなかったのですか。
  207. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 ただいまの御提案につきましては、多分に技術的な面もございますので、保田主計局次長の方からお答えさせていただきます。
  208. 保田博

    ○保田政府委員 財政から国鉄共済に対して援助してはどうかということでございますが、先ほど来繰り返しておりますように、そのお気持ちはわからないわけではないわけでございますけれど保も、やはり公的年金制度の一環としましてこれは相互扶助、大きな連帯の中で、強い者も弱い者も一緒になった大きな保険集団をつくることによって助け合っていくのが本筋ではないか、こういうふうに考えているわけでございます。国の財政も大変苦しいわけでございまして、その余力もないということも事実でございます。よろしく御理解をいただきたいと思います。  国が国鉄にお貸しできないかということでございますが、国といいますのは、たとえば運用部資金とかそういう意味でしょうか。そういう趣旨でございますか。——これは理財局の次長の方から……。
  209. 吉居時哉

    吉居政府委員 ただいま国から貸せないかというお話で、国と申しますのは、たとえば財政投融資の一環としてどうかというお話かと思いますが、私どもは郵便貯金や年金などを預って安全確実に運用する義務を負っておるわけでございまして、償還のめどがあるのかどうか、そういう問題できわめてむずかしいかと思います。
  210. 鈴木強

    鈴木(強)委員 次長がおっしゃることはわかりますけれども寸できないはずもないようなのだな、この答えを聞いていると。これはできないこともないのだ。だから、もう少しそれを検討したらどうだね。検討の余地はないわけではないでしょう。
  211. 吉居時哉

    吉居政府委員 現在資金運用部資金の貸し出し対象は法律で決まっておりまして、共済組合に対しては貸し付けできない、こういうことになっているわけでございます。
  212. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それでは、それもちょっとむずかしいようでございますが、法律を変えればできることだから、そこまで親切丁寧に、大蔵省もこの問題の解決には頭をひねってもらうことも必要じゃないでしょうか。とにかく非常事態ですよ。超法規的ということもある。緊急避難ということもある。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味において、この財政の危機を見殺しにはできないでしょう。だから、その前に法律を変えてやろうという意気込みを示してみて、それでもだめだから、それじゃひとつ頼むということになればわかる。それは胸に落ちますよ。ところが、残念ながら落ちないのだ。やるべきことをよくやってないのだ。それじゃちょっと困るのですよ。これはひとつさらに検討してみてください。法律を変えればできるなら法律を変えて、早速これを出して直ちに可決、成立する、こういうことにすれば一挙に解決する。それはひとつ懸案問題として提案をしておきますから、検討してください。僕の意見を次官、どうですか。
  213. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 国のお金と申しましても、国民の皆様方からお預かりをしているきわめて貴重なお金でございまして、どうしても、サラ金会社では全くないわけでございますが、返済のめどというのはきわめて大切な要因になってまいります。ともかく先生の御提案に対しましては、そういった大変大きな前提の縛りというものがどうしても背後に出てくるわけでございまして、よく私ども勉強させていただいてというようなお話をすることが答弁等であるわけでございますけれども、この問題に関しましては大変にむずかしい大きな、貸したお金は返ってこなければいけないという、うまく表現ができないわけでございますけれども、大前提のようなものがございまして、なかなか御趣旨に沿えるような結論を出すことができないわけでございます。その点はまことに申しわけないと思っております。
  214. 鈴木強

    鈴木(強)委員 申しわけないということで逃げるよりも、いい提案ですから、ひとつ英知をしぼって検討してみる必要はあるじゃないですか。これは価値があるでしょう、どうですか。委員長、私はこれは強く要望しておきますから、ひとつ検討してみてください。いいですね、次官。  それから、あと幾つか質問がありましたが、時間が参りましたので、最後に希望だけ申し上げておきます。  この法案に盛られておりますが、さっき私が申し上げました理由で、単位の共済組合年金について単独運営をできるだけ確保するようにしていただきたいということが一つです。大蔵大臣の方へ全部移っていくというようなことですけれども、当分の間は各共済年金がそれぞれ運用してもいいわけですね。単独運営を確保していただく。  それから、既得権益というものが大事なんです。雇用された人は、当時は何年勤めればこれだけの恩給がもらえる、年金がもらえるという大きな雇用契約の一つなんです、それが中途で変わってくるわけですから、その辺から、採用された人たちから見ると不満が出てくるわけです。既得権益を共済年金の場合でもできるだけ尊重して、財政非常に不如意のときですから私もよくわかりますが、長い歴史の中にある制度でございますから、悪い方へしわ寄せをしないで、できるだけいい方へ右へならえしてもらうような形のものにぜひしていただきたいということです。  もう一つは、今後の受給額の問題について、いま申し上げましたように、従来の既得権益といったものをぜひ尊重していただくようにお願いをしたい。  最後には、さっき申し上げましたような国鉄財政についての問題は私たちもひとしく憂えていることでありますから、国におきましても、私の申し上げましたようなことを含めてもう一度検討していただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  215. 森美秀

    ○森委員長 御苦労さまでした。  沢田広君。
  216. 沢田広

    沢田委員 最初に全体的な問題でお伺いをしておきます。きょうの分は重複することはないと思うのですが、以前においては重複する点があったらお許しをいただきたいと思います。  まず第一に、年金改定のスケジュールで、七十年というのは政府見解としてはほぼ統一的なものと解釈をしていいのか、とりあえずは事務局の案ということなのか、その点だけまずお伺いをいたしておきたいと思います。
  217. 山口剛彦

    山口説明員 「公的年金制度改革の進め方について」ということで政府として閣議で決定をいたしておりますが、そこでは「昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させるものとする。」ということに現在のところなっております。ただ、これは五十八年度末までに正式に公的年金制度改革の具体的内容、手順等についての成案を得るための、おおよその方向と段取りの目安ということでそういう意思決定をしているということでございまして、最終的には五十八年度末までに得る公的年金制度改革の成案において明らかにされるものと考えております。
  218. 沢田広

    沢田委員 そうすると、七十年というのは、一応目安としては決めであるけれども確定的なものではない、こういうふうに理解してよろしいですね。
  219. 山口剛彦

    山口説明員 そういうことで私どもも作業をしております。
  220. 沢田広

    沢田委員 そうしますと、国共済、公企体の統合、これが現在の法案。地方共済は現在一応済んだ。それで厚生年金と国民年金——船員を含むと思いますが、これは来年の一月、通常国会に一応提出をする。あと私学と農林は一応そのままの状態で、大体いつまでいくという考えか。これは目安で結構です。目安としては、その状態は大体いつまで続くと考えておられるわけですか。
  221. 保田博

    ○保田政府委員 国共済と公企体の共済は、今回御提案申し上げております法律で一応統合が成り立つわけでございます。この統合をいたしました後に、先ほど厚生省の方からお答えしました年金の統合の手順、閣議決定されたものでございますが、それによりますと、五十九年から六十一年にかけまして、さっきおっしゃいましたように厚年、国年、船保の関係調整が行われますので、それをにらみながら同様の趣旨での関係調整を同じく五十九年から六十一年の間に行いたい、こういうふうに考えております。
  222. 沢田広

    沢田委員 これも、いまは事務当局段階の見解ですか、それとも政府の統一見解の段階までいっているものと解していいですか。
  223. 保田博

    ○保田政府委員 本年の五月二十四日に閣議決定をいたしましたものの中身でございます。
  224. 沢田広

    沢田委員 そうすると、六十一年段階になりますと共済と厚生年金と国民年金との法案の整理をするようになってくる、そしてそのときの法案の整理は、実施時期は七十年のものをつくるのである、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  225. 保田博

    ○保田政府委員 年金制度全体の改正の具体的な内容は、現在まだ政府部内で検討中でございまして、具体的な内容をお示しできる段階ではございません。何年度にどこまでの関係整理ができるか、まだ必ずしも明確ではないわけでございますが、厚生大臣が年金担当大臣として指名されておりまして、政府全体として、厚生省あるいは大蔵省、自治省といった関係省庁がいま鋭意検討を進めておる、こういう段階でございます。
  226. 沢田広

    沢田委員 とにかく十一年後のことを言っているのですから、若干の誤差というか、若干どころではない、相当の誤差が出てくることは予期されるのであります。ただ問題は、こういうものが示されたことによって、国民なりそれぞれの関係者が非常に動揺している。きょう今日の段階もそういうことなんですね。なるのならなるとはっきりしていれば、またそれなりの考え方が皆あるわけです。ところが、十一年先のものの形がどうなるのかということが明らかにされないと、現在掛けている掛金に対する信頼感、保証、これがないわけですね。いまわれわれの年金というのは賦課方式じゃありませんから、結果的には十年なり十五年先の制度として、あなたのこの掛金をやれば、いま三十歳の人なり四十歳の人がもらえるときには、あなた、こうなりますよ、その保証があって初めてその掛金というものは生きてくるわけなんですね。  いま私は中身は言っていないのですが、七十年段階にはきちんと全部やってしまうんだということを国民に発表するかどうかが、国民がそのことによって選択をする中身の材料というものになっていくわけなんです。その意味において必要性が強い。ところが、いまのようにぼけた話をしていると、国民年金を掛けている人も不安になるし、厚生年金を掛けている人も不安になるし、共済年金を掛けている人も不安になってしまう。先にいってどうなってしまうのだろうか、この不安感を政治家は与えてはいかぬのです。国会もいけないです。これは政府もいけない。どうなってしまうかという不安感を与えたら、こういう問題はその途端に問題が起きてきますよ。だからその辺は、スケジュールを出すならきちっと、こうなりますよというものを出さなければ、これはやはりうそを言うことになってしまう、いま毎月掛金を掛けているのですから。その人がもらえるときに、あなたはこうなりますという保証がなかったらいけないと思うのですね。この点いかがですか。
  227. 山口剛彦

    山口説明員 ただいま申し上げております公的年金改革の進め方のスケジュールは、先ほど申し上げましたように、今後政府としての成案を得るためのおおよその方向と段取りの目安を定めたということでございます。そういうものを示すにしても、もっと具体的なものがないと国民に不安を与えるじゃないかという御指摘でございますが、このスケジュールにもございますように、結局は高齢化社会に向けて年金制度をどう再編成をしていくかというのは、五十九年に私どもがやろうとしております国民年金、厚生年金が、九割の方にお入りをいただいている年金制度でございますから、国民年金、厚生年金を一体将来どうするんだ、その水準はどういうところに目標を置いてやっていくんだということをはっきりさせることが、そういう不安にお答えをすることでもあると思います。そういう意味で早くしなければならないわけですけれども、いま関係審議会からの御意見等もいただきまして、できるだけ早く、私どもはこう思うという案をお示しをして、関係の審議会等でそれを土台にして御議論をいただきまして、その成果を踏まえて来年の通常国会には法案を提出したいというのが私どもの事務的なスケジュールで、いま準備を進めているところでございます。
  228. 沢田広

    沢田委員 これを今度は裏返した物の言い方をしますと、いま掛けている掛金で将来あなたは幾らの年金がもらえますということは、これは一つの公約であり、約束事なんです。契約なんですね。ですから逆に言うと、これからどう改定しようとも既得権は侵害しません——これは厚生年金の答申にもありますが、既得権は侵害しませんということが担保になれば、今後の改定がどう変わろうと、現在もらっている人あるいはこれからもらうべき人、そういう条件が変わらなければ——もちろんこれは掛金にも関係しできますよ。掛金には関係しできますけれども、既得権は侵害しませんということが約束されれば、いまのスケジュールも、ある程度の移動性はあっても、次の次の移動になってくるのですから問題はないと思うのです。その点はいかがですか。時間がないですから簡単に答えてください。
  229. 山口剛彦

    山口説明員 ただいまの点につきましては、御指摘ありましたように、意見書におきましても、現に支給されている年金についてその水準を維持すべきだということを明確に意見として言っております。私どもは、この点は十分尊重して案をつくらなければならないと考えております。
  230. 沢田広

    沢田委員 だから、ここはあなたの答弁じゃなくて大臣の答弁が必要なんですが、要すれば目安である、目安であるけれども現在掛金を掛けている国民大衆がいる、そしてその国民大衆は、期待権といいますか、この程度もらえるという約束でいま掛金を掛けているわけです。それを裏切ってはいけないというのが、いま私が言っている大前提なんです。だからそれには、その約束は守るということを政府は公の場ではっきりさせることが必要である。これがまず今後いろいろな問題を改定していく場合にも大前提の要件であろうと思います。これは、後で委員長の方から、大臣が来たらこの点だけ、突然来て答えられるかどうかの面はありますけれども、そのときはそのときの措置として、一応これは大臣に答えていただきます。  次に、各年金の、これはそれぞれの関係機関の赤字になる時期が出ているわけです。いま電電に大変御迷惑をかけている法案も出ているわけでありますが、この電電さんも七十八年になりますと一現在の一二二・五%の賦課率をもしも上げなかったならば、幾らでいつ赤字になるかわかりますか、電電さん。それは答えられますか。
  231. 中原道朗

    ○中原説明員 六十七年に単年度赤字という数値になると試算しております。
  232. 沢田広

    沢田委員 続いて専売さんは、これは賦課率がこのままでは五十九年に赤字になるようになっておりますから、言わずもがなということであります。  それから、厚生年金も保険料は一〇・六ですね。労使の一〇・六をそのまま置いたと仮定をすれば、いまのままでは八十年ということになっておりますが、いつから赤字になるようになりますか。
  233. 山口剛彦

    山口説明員 厚生年金の場合、保険料はこれから上げていかざるを得ませんので、上げないでいつになったら収支残が赤字になるかという計算はちょっと手元にございません。従来の上げ方で、五年に一・八ずつ上げていくという計算はございますけれども、それでまいりますと昭和七十三年には単年度赤字になる。ただいまの制度をそのままに据え置いた場合という前提でございます。
  234. 沢田広

    沢田委員 七十三年というのは、既定の積立金がゼロになることを言っているわけですね。そういう意味ですね、特に厚生の場合は。収支でももちろんそうですね。
  235. 山口剛彦

    山口説明員 単年度収支が赤字になるという時期でございます。
  236. 沢田広

    沢田委員 続いて国公の関係で、これも掛金を現在の一二三をそのまま置くと仮定をすれば、結果的にはいつから赤字になりますか。
  237. 保田博

    ○保田政府委員 単年度赤字になります時期は六十六年度でございます。
  238. 沢田広

    沢田委員 続いて、郵政は今度国公の方に入られますから、いま計算外だと思いますが、同じく郵政の一三二を据え置いたと仮定すれば、何年度から赤字になりますか。
  239. 保田博

    ○保田政府委員 お答えします。  大体六十四年か五年ごろになりそうであります。昭和六十五年度に収入と支出がおおむねでとんとんかというようなことであります。
  240. 沢田広

    沢田委員 それは普通このまま上げていったって六十七年に赤字になるのですよ。それを一三三でそのまま置いておけば、もっと早く赤字になるでしょう、単年度で。
  241. 保田博

    ○保田政府委員 先ほどお答えしましたのは国共済の場合でございまして、いまお答えしたのは郵政です。
  242. 沢田広

    沢田委員 とにかく一八八に上げていっても、郵政は六十七年には赤字になるのですね。だから、一二三に置いておけばもっと早く赤字になる。  それから地方公務員共済、これも現在一二四ですね。一二四で置いたとすれば、いつになったら赤字になりますか。
  243. 保田博

    ○保田政府委員 申しわけございませんが、ちょっと手元に資料を持ち合わせておりません。
  244. 沢田広

    沢田委員 国鉄は言わずもがな。現在一七七でありますが、六十年から赤字になる、こういう状況ですね。  それで、いままでの質問を通じて、各共済組合が単独で歩いていくと仮定をし、掛金をもし現状のままで置いておくとすれば、結果的にはいつの日か、いま言った年度には赤字になってくる、こういう状況を迎える。これに対してどう対応するかというのが今回の案だ。  そこで、いを言った大前提として考えられることは、既得権の侵害についてはとにかく何とか配慮して、これは侵害しないようにする。これは一つの大前提、約束だ。これがどの程度の金額になるかということが一つ今後問題になると思うのでありますが、既得権を減らしていくということはやはり問題がある。たとえば二千五十円に上げたときと千円——厚生年金のことですよ、厚生年金の基礎額が上がった場合も同じようなことが言えるわけですが、国民の生活を下げるというわけにいかないですから、やはり既得権は守るという原則は確立されなければいかぬ。微調整は若干あるかもしれませんけれども、原則として既得権は守る、これはいかがですか。
  245. 保田博

    ○保田政府委員 今回御提案申し上げております法律案では、公企体の卒業生に対する共済年金の額について、厳密な意味での既得権は保障させていただくという措置を講じております。
  246. 沢田広

    沢田委員 では続いて、時間の関係で厚生年金の答申との関連を言っていくわけですが、厚生年金の答申では「こうした分立が、いわゆる官民格差問題に象徴されるような制度間の不均衡を生じる原因ともなっている。各方面からの公的年金制度の一元化の提言もこうした問題を解決する立場からなされているものと理解される。」と書いてあります。現在の法体系で厚生年金は厚生年金、いつか、七十年の時期には一緒になるのでありますが、それまではお互いが足を引っ張り合うという議論が果たしていいのかどうかということが若干私には気になる。  そこであえてお伺いするのですが、この前も若干触れましたし、予算委員会でも言ったのですが、厚生年金の法律第一条とそれから共済年金の法律第一条とどう違うか、一応御回答をいただきたいのです。
  247. 保田博

    ○保田政府委員 いま法文をここに持ち合わせておりませんけれども、いわゆる厚生年金と国共済との違いは、一つには、国共済は、公企体共済の場合もそうですが、非常に社会保障的な制度としての性格を持っていると同時に、その淵源が恩給にあるといったようなこともございまして、公務を適正に執行しなければならぬ、それが当然の前提であるというようなことに法律の第一条に書いてあるはずでございます。
  248. 沢田広

    沢田委員 もう一つの方……。
  249. 保田博

    ○保田政府委員 法文でいきますと、まさに厚年の場合には「生活の安定と福祉の向上に寄与すること」ということで、社会保障の側面、社会保障の制度であるということを明確にいたしております。
  250. 沢田広

    沢田委員 ですから、もし今後七十年を目指して考える場合には、この第一条のあり方が改正できるのかどうか。この原点をきちんとわきまえませんと、結果的には途中ですれ違ってしまうということになります。考え方はいいのです、これは。ところが、この第一条の目的を厚生年金に、国家公務員なり公企体なりが改正できるかどうか。昔は無定量のいわゆる官吏の服務規律がありましたけれども、いまは官吏の服務規律がないにいたしましても、果たして国家公務員としての、国民に奉仕をするという大前提の表現を外すことが可能になるかどうか、その点はどうでしょう。
  251. 保田博

    ○保田政府委員 完全統合後の国家公務員等に対する年金制度のあり方については、先ほど厚生省の方からお答えいたしましたように、今後基本的な検討が行われるわけでございますが、国家公務員、公共企業体の職員の共済組合については、先ほど申し上げましたような第二の側面があることを完全に抹消することを考えているわけではございません。
  252. 沢田広

    沢田委員 厚生年金は、御承知でもありましょうが、いわゆる雇用契約と掛金という二つの条件を満足すれば、例示は大変申しわけないのでありますが、留置場にいましても年金はつくという仕組みになっている。これは要すれば雇用契約が成立をし、賃金が支払われ、掛金が納入されておれば、厚生年金加入の条件は満足することになるわけであります。  しかし、この方の法律は、いわゆる企業の円満な運営あるいは能率的な運営ということが条件ですから、そういうような場合については年金が二割カットされたりあるいは五割カットされたりということで、制裁措置が講ぜられておる。この第一条の精神が一致しませんと、後の制度の一致はできないわけですね。ですから、七十年で一致をさせるという方向を考えるとすれば、第一条をどちらかに割り切らなければいけない。いわゆる国民の奉仕者としての義務は要らない、雇用者としての役割りだけ果たせばいいのである、こういうことで割り切るか、さもなければいわゆる企業運営の能率に寄与する義務を負わせるか、昔の官吏服務規律の精神を入れるか、いずれかを選択しなければならない。政府がもし一元化することをスケジュールと考えたとすれば、第一条のこの矛盾をどう調整するかがわかっていなければならないはずなのです。それを回答してください。
  253. 保田博

    ○保田政府委員 昭和七十年の統合された後の年金制度の姿を具体的に描いているわけではございませんので、具体的なお答えはいまの段階ではなかなかむずかしいのでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、現在の共済年金というのは社会保障の制度としての側面と、もう一つは公務員としての規律を保持しておるということのためのプラスアルファがあるわけでございます。この後者を完全に払拭するということを申し上げているつもりはないわけでございます。
  254. 沢田広

    沢田委員 これもいまの答弁で満足したわけじゃありませんし、問題は、こう整理していきますよと言ってみたが、壁にぶつかってしまう。これは必ずぶつかる。予言しておきますよ。これは恐らく国家公務員の義務をこの恩給、年金の中に外すわけにいかない、国民の奉仕者としての役割りを。それによって年金は支給しますよという条件がなければ、恐らく国家公務員としての役割りを果たしていくのに不十分になるだろうと思う。みんなを信用しないというわけじゃないですよ。信用しないというわけじゃないが、それが魅力になっている、こういうことだと思います。  次に、今度の改正案で一番つらいのは——電電さんはとにかくこのままでいけば六十七年までは赤字にならない、こういう答弁でしたね。電電さんとしてみれば、掛金は上がりますわ、いわゆる既得権みたいなものは侵害されるわというようなことが悩みの種になっている。悩みの種というか不満の種というか、いま鈴木さんも遠回しか直接かわかりませんけれども、ざっくばらんに言えばそんな赤字のところへ金を出したくはない。私も立場を変えれば恐らくそう言うのじゃないかと思うのです。国家公務員も同じだと思うのですよ。ですから、もう少し緩和していくという考え方はないか。同じぶん殴るにしても、何か帽子をかぶっている上からぶん殴るのとじかにぶん殴るのとでは痛さも違う、あるいはヘルメットをかぶっている上からぶん殴るのならもっと痛さが違う。ですから、やはり何か衝撃を緩和していく方法を考える必要性があるのじゃないのかという気がするのでありますが、いかがでしょう。
  255. 保田博

    ○保田政府委員 先生の御指摘は、恐らく保険料率のアップ率のことかと思うわけでございますが、国共済と電電、専売の保険料率は確かに上がるわけでございますが、その上がる部分の千分の十二程度が、われわれの試算では国鉄の共済組合に対する財政調整のために上がる。非常に大きな部分は、むしろ自分たちの年金を将来にわたって健全に維持するためのアップなのでございます。現在楽をしたいという気持ちは確かにわからぬわけではないわけですけれども、同時に、現在楽をしますと将来の子孫が苦しむということにもなるわけであります。そういう意味では世代間の公平という観点も大事である、そういうふうに考えております。
  256. 沢田広

    沢田委員 原案提出者としてはそうお答えされるのが当然だと思うので、いまさらそれが間違っていましたとも言えないし、ひどかったとも言えないと思いますから、それはそのとおりだと思うのです。ただ、そういう立場を考える気持ちはわかってもらえるでしょう。片方赤字だからしょうがない、助けてやってほしい、われわれもそうお願いします、こう言います。けれども、同じ助けるにも、やわらかく助けていく方法と、がちっと助ける方法とある。そういう意味において、なるべくやわらかく助けてほしいという気持ち——方法論は別ですよ。方法論は別として、その気持ちはわかるでしょう。国共の皆さんもそうだ。なに、電電も退職最後の号俸じゃないか、国鉄も最後の号俸で年金をもらっているじゃないか。おれらは一年間の平均でもらっているんだ。うまいことをやっていやがるんだから、少し足を引っ張らなければ気がおさまらない。これも気持ちとしてはわかります。けれども、これも激しい変化を与えないようなお互いの配慮が必要じゃないか。理屈としてはきちっとした方がいいでしょう。しかし、激しい変動を与えることを避けようという気持ちはいかがですか。
  257. 保田博

    ○保田政府委員 現在の世代が楽をしたいという気持ちもわかりますが、同時にやはり将来の年金財政ということも考えなければならない、その両方のはざまで苦心をした結果が、御提案申し上げているような保険料率になっておる、こういうことでございます。
  258. 沢田広

    沢田委員 だから、気持ちがわかってもらえるかどうか聞いている。自動車でも、百キロでぶつかるのと十キロでぶつかるのとは違うだろう。だから、せめて十キロでぶつかるというような物の考え方をひとつ——この法律でこだわってもいいのですよ。この法律は変えられませんと言っても構わないが、気持ちはわかるでしょうと言うのです。
  259. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 ただいま先生から三つの例を挙げて御指摘いただきました。直接頭を殴るか、帽子をかぶっているところを殴るか、ヘルメットをかぶっているところを殴るか、まさに私どもの心境もそこにあるわけでございまして、ヘルメットをかぶっているところを殴りますと、これは殴った方が確実に骨折をするということになります。直接殴りますと、今度は殴られた方がけがをするということになります。そういった中で、いわゆる綿入れをかぶっていただいて、先生の表現をかりればなでさせていただくというような形、今回の法律案提出の過程にそういう背景があることは事実でございます。先生のお気持ち、まさにそのとおりだと思いますけれども、どうぞその辺のところを御考慮くださいますようにお願いいたします。
  260. 沢田広

    沢田委員 政務次官は昔、本会議に出るとずいぶんやじ将軍みたいにやっていたわけなんだが、きょうはきわめて常識的、丁重な答弁をいただいて、見違えたというか非常に成長されたなということで敬意を表するわけであります。そういうようなことの中で、いま言われたようにソフトに影響を与えていくという方向で、ただ考え方として趣旨が一致をすれば、後どうするかの問題は後刻相談をしていきたい、こういうふうに思います。  次に、この法案の一番問題になっておりますのは、いまのそれぞれの組合員の感情がどうなるかということです。一方、OBの人たちはこれによってまた大変不安を感じておる。だから、この不安に対して早く解決をしてやらないと、その不安はさらに激化していく一方であろうと思うのです。そういう人たちの不安の解決というものは緊急な課題として処理されなければならない、こういうふうに思いますが、その点はいかがですか。
  261. 保田博

    ○保田政府委員 公企体共済のOBにつきましては裁定のし直しをするわけですが、その裁定をし直しました額が現在受けておられる給付よりも下回る場合には現行の給付を保障する、そういうことになっておるわけでございます。
  262. 沢田広

    沢田委員 ですから、いまさっき言った、いわゆる震度四とか丑とかというのじゃなくて、震度一ぐらいの影響力はある程度考えなければならぬけれども、激しい震度を与えるような改革はなるべく時間をかけてやっていくという方向で、これも委員長にお願いをしながら後でそれぞれ相談をさせていただきたい、こういうふうに思います。  続いて厚生年金の方でお伺いします。  厚生省で考えております案は、基礎年金制度を置きます。基礎年金制度の上に——さっきもちょっと答弁で触れられましたが、基礎年金は婦人の年金権を確保して、それぞれの個人の年金なんであります。上に上がります年金については、共済年金と同時に厚生年金、これについてはどういうふうな判断をされておられるのですか。厚生省として、個人的なものとして考えますか、世帯的なものとして考えているのですか。言っている意味はわかりますね。基礎年金は各個別々ですから、それはいいでしょう。その上の、二階に乗ります厚生年金なり共済年金なりあるいは今度一本になってそれぞれの年金がありますから、それは世帯なんですか、個人にしようと考えているのですか、どちらですか。いまのところでいいです。
  263. 山口剛彦

    山口説明員 いま検討しております制度体系、具体的にどうするかというのはまだ申し上げられる段階じゃないのですが、考え方としましては共通の給付を導入する、それは個人単位でやったらどうかという関係者の御意見でございますので、そんな方向で検討をいたしております。  それから、二階建ての部分につきましては、従来の制度それぞれ沿革等もございますから、そういうものとの円滑な移行にも配慮しながら検討せよということでございますので、厚生年金の部分についてそれほど大きな改革をするつもりはございませんが、そのところを具体的にどうするかという点については、いまはお許しをいただきたいと思います。
  264. 沢田広

    沢田委員 大臣が来られまして、あと四つばかり残っているのですが、これは省略いたします。  国鉄の中における、これは戸田さんあたりが質問されると思いますが、船員であるとか危険職種であるとか、その他電電には電電の細かいものがあると思います。それから国共には国共の細かい点があると思うのです。その細部の調整は法律によらずして政令で処理する、こういうふうに考えてよろしいですか。たとえば遺族年金の所得制限であるとかそういうようなものは今後政令で検討して、この法案の中には対象としては含まれていない。わかりますか、言っている意味
  265. 保田博

    ○保田政府委員 基本的な給付の要件は当然法律で決めさせていただくわけですが、先ほどの給付の制限あたりも、年金のまさに基本的な部分でございますから、これは法律によって規定をする。したがいまして、現在の改正法案に書いてないものは現在は改正を考えていない、こういうことになります。
  266. 沢田広

    沢田委員 大臣、いまの問題若干解釈の違いがあるようですけれども、これはそのままにしておきます。若干違いがあるようです。だけれども、それはそのままにしておいて、まあいまの答弁でも、まあまあ全然間違ったとも言えないでしょうから、いいです。  大臣、時間がない、あと三分なので。今度の統合法案を出して、国鉄などが救済されるということは大変御苦労いただいたことだと評価をするわけですが、問題は、他の組合から見れば、大きな掛金も人のために出さなければならぬ組合もある、それには余り劇的な変化を与えない措置は考えられないだろうかということの提案なんです。法律を改正してくれという意味で言っているのではないのです。法律の改正じゃなくて、劇的な、激しい変動を与えるような措置はしないでどうだろうかというのが一つ。それから、既得権を守るという原則を確立をすることはどうだろうか、こういう二点がいま大臣が来るまでの話です。あと二分になっちゃいましたから、明快な回答は次回、あと二十分余裕をとってありますから、後でまたやらしていただくことにして。じゃ、いま感想だけ述べていただいて、はっきりした回答はあとの二十分の段階でひとつ大臣からお答えをいただく。  一つには、うんと、ぼかっとやらないで、少しずつじわじわとやわらかくやる方法はないだろうか。それからもう一つは、既得権は守るという原則をやはりある程度確立をしていくという原則が必要なのではないだろうか。この二つは大臣が来てから、こういうことになっておりますので、あと二分ですが、そういうことでお考えをいただきたい。それで、もしきょう御回答いただかなければこれで終わって結構です。で、次の機会に十分相談をされて御回答いただく。ここでだめだという回答をもらうよりはその方がいいと思いますから、あえて時間をお与えする、こういうことで既得権を原則的に守る、それから激しい変動要素を与えないように努力する、この二点でいかがでしょうか。
  267. 保田博

    ○保田政府委員 事実だけ御説明いたしますが、まず既得権の保障につきましては、法的に厳密な意味での既得権は保障をさせていただきます。  それから、保険料率の引き上げにつきましては先ほど申し上げたようなことでございまして、二つの観点のバランスをいかにとるかということ一で、先生のお気持ちもわかりますけれども、将来の年金制度の健全性を維持するという観点から非常に苦慮しております。
  268. 沢田広

    沢田委員 わかりました。二十分間留保させていただきましたので、後でまた質問することにして終わります。
  269. 森美秀

    ○森委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会