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1983-10-06 第100回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十月六日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 江藤 隆美君 理事 海部 俊樹君    理事 津島 雄二君 理事 三塚  博君    理事 細谷 治嘉君 理事 矢山 有作君    理事 正木 良明君 理事 吉田 之久君      足立 篤郎君    稻村佐近四郎君       今井  勇君    小里 貞利君       大村 襄治君    片岡 清一君       亀井 善之君    澁谷 直藏君       田中 龍夫君    竹中 修一君       谷  洋一君    中村  靖君       西岡 武夫君    橋本龍太郎君       原田昇左右君    保利 耕輔君       宮崎 茂一君    村田敬次郎君       井上 一成君    伊賀 定盛君       加藤 万吉君    後藤  茂君       沢田  広君    森井 忠良君       安井 吉典君    湯山  勇君       渡部 行雄君    草川 昭三君      草野  威君    平石磨作太郎君       岡田 正勝君    木下敬之助君       浦井  洋君    三浦  久君       小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  宇野 宗佑君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君  出席政府委員         内閣審議官   手塚 康夫君         内閣審議官   百崎  英君         内閣総理大臣官         房総務審議官  橋本  豊君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    林  淳司君         行政管理政務次         官       菊池福治郎君         行政管理庁長官         官房審議官   古橋源六郎君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         北海道開発庁総         務監理官    楢崎 泰昌君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         沖縄開発庁総務         局長      関  通彰君         国土庁長官官房         長       石川  周君         法務省保護局長 吉田 淳一君         大蔵大臣官房審         議官      川崎 正道君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主計局次         長       的場 順三君         大蔵省理財局次         長       志賀 正典君         国税庁調査査察         部長      冨尾 一郎君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省体育局長 古村 澄一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省公衆衛生         局老人保健部長 水田  努君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       松田  泰君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 棚橋  泰君         運輸省航空局次         長       栗林 貞一君         気象庁長官   末廣 重二君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       守屋 孝一君         建設省都市局長 松原 青美君         自治大臣官房審         議官      金子  清君         自治大臣官房審         議官      吉住 俊彦君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         会計検査院事務         総局第三局長  秋本 勝彦君         会計検査院事務         総局第四局長  磯田  晋君         日本国有鉄道常         務理事     三坂 健康君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         日本国有鉄道常         務理事     岩瀬 虹兒君         参  考  人        (石油公団理事) 勝谷  保君         行政改革に関す         る特別委員会調         査室長     大澤 利貞君     ───────────── 委員の異動 十月六日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     竹中 修一君   後藤  茂君     伊賀 定盛君   沢田  広君     井上 一成君   渡部 行雄君     加藤 万吉君   鈴切 康雄君     草野  威君   和田 一仁君     木下敬之助君   中路 雅弘君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   竹中 修一君     愛野興一郎君   井上 一成君     沢田  広君   伊賀 定盛君     後藤  茂君   加藤 万吉君     渡部 行雄君  草野  威君     平石磨作太郎君   木下敬之助君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任  平石磨作太郎君     鈴切 康雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出、第九十八回国会閣法第三九号)  国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案内閣提出第一号)  総務庁設置法案内閣提出第二号)  総理府設置法の一部を改正する等の法律案内閣提出第三号)  総務庁設置法等の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案内閣提出第五号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国家行政組織法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案総務庁設置法案総理府設置法の一部を改正する等の法律案総務庁設置法等の一部を改正する法律案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案の各案を一括議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。草野威君。
  3. 草野威

    草野委員 本日まで、行政改革関連法案審議につきまして各党より数多くの論議が重ねられてきたわけでございますが、私は、本日は確認の意味も込めまして何点かについて質問を行いたいと思います。  この行革関連法案につきましては、かねてから地方公共団体のいろいろな意見として、地方分権促進という臨調の精神にはほど遠いのではないか、こういうような受けとめ方があったわけでございます。五次にわたる臨調答申、また、答申を最大限尊重したという新行革大綱、これの大幅後退、このような印象も否めなかったわけでございますが、具体的問題といたしまして、地方事務官は九割までを国に吸収する、機関委任事務は二年間に一割程度委譲とか、出先機関の統廃合はブロック機関を一部廃止とか、府県単位は全廃としたわけでございますが、権限配分は不透明になっておる、このような問題がいろいろと指摘されたわけでございます。  そこで、きょうはまず行管庁長官お尋ねするわけでございますけれども、今回の行政改革は、中心が国の行政改革という視点にあったわけでございますが、地方分権による国の行政減量、こういう視点が欠けているのではないか、このように思われるわけでございます。そこで、国の事務地方団体に委譲することによって国がもっと身軽になって、国は国際化に対応した新しい行政を行う、こういう方向を大きく打ち出すべきではなかったか、このように私は考えるわけでございますけれども、まず、この点について行管庁長官の御見解を承りたいと存じます。
  4. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私どもの考えておりまする行政改革は、国、地方を通じまして簡素効率的な行政の実現を図るということがねらいでございますから、中央省庁行政機構行政運営だけでなく、国、地方を通じての行政事務減量化、それは最も必要なことであると考えておるわけでございまして、御提案申し上げておりまする許認可の整理あるいは機関委任事務委譲の問題、地方のいろいろな出先機関整理合理化、そういうものもその一環をなすものでございまして、基本的にはあくまでも地方自治というものを尊重しながら、国、地方減量化、それに重点が置いてあると私は考えておりますし、またそうあらねばならないと考えておるものでございます。
  5. 草野威

    草野委員 では、中身につきまして若干お尋ねしたいと思います。  初めに機関委任事務の問題でございますが、新行革大綱によりますと、機関委任事務の二年間一割整理、こういうものを打ち出しているわけでございますが、今回は四十四本の法律改正が行われるということでこの要件は一応満たしている、このように言われているわけでございます。しかし、実際に今回のこの四十四本の法律内容を見てみますと、従来から地方団体等から提案されているものはほとんど含まれていない、このような感じがするわけでございます。  これ自体が一つの大きな問題であろうかと思いますけれども、さらに、今回改正された中身を見ると、たとえば添付書類の一部省略とか登録事項からの一定事項の削除などを行う、こういうための改正法律を一法律、このように数えているのですね。これだと、わざわざ数字合わせをするために軽易な事項改正して、そしてその数合わせをやっている、このように見えてならないわけです。  そしてまた、機関委任事務を全く廃止した、こういうことで地方自治法別表の第三また第四、これから落としている法律は四十四本の法律のうちわずか十本の法律しかない。こういうことで、一割という話ですが、一割という要件を果たして満たしていると言えるのかどうか、こういう問題。  それからまた、二年間という話でございますけれども、二年間というのはいつからいつまでか、これは不明でございます。少なくともあと三十本の法律、これは機関委任事務の規定を完全に落としたものでなければならないわけでございますけれどもあと三十本の法律、このくらいは必要じゃないか、このように私は考えるわけですが、いかがでしょうか。
  6. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 機関委任事務につきましては、臨調答申指摘いたしました三百九十八のうち、正確に申しますと四十五法律になるわけでございます。これは、ことし、来年というのが大体二年だと私は考えておりますが、法律件数から言うと、指摘事項について三百九十八のうちの四十五件ですから、まあまあのところではないかと思いますが、事項別に、おまえ、なっておらぬじゃないか、まあ確かにその点は御指摘のとおりだと思っております。  それで、私どもが今回御提案申し上げておりまする法律案はこれで全部終わるわけではなく、今後とも引き続き検討を続けていきまして、地方自治尊重を頭に描きながら各省の協力をいただいて、さらに機関委任事務整理合理化していきたい、かように考えておるわけでございます。  今後三十法律くらいはという御意見でございますが、そうなりますかどうかわかりませんが、私どもとしては、これをもって満足しない、今後一層強力に進めていく。御意見にありましたような三十本で足りるのかどうか、そういう問題もあろうかと思いますが、今後大いに努力していきたいと考えております。  そこで、お尋ねにはございませんでしたが、この機関委任事務整理合理化というのは、やはり私は本当に思い切ってやるべきだと思うのです。そこで、臨時行政改革推進審議会、御審議いただきまして成立いたしました審議会に、機関委任事務というものの根本的なあり方というものを真剣に検討していただこうというので、近く数人の専門家にお集まりいただいて、今後どういうふうに進めていくか、そういう問題も御検討いただき、さらにまた三百九十八という件数がございますから、その中で御意見のありました三十本を今後目標にしろというふうな御意見等も、その参与の方方には十分お伝えいたしまして、今後大いに努力を進めてまいりたい、かように考えておるものでございます。
  7. 草野威

    草野委員 機関委任事務あり方についてさらに検討を進めるということでございますが、この機関委任事務はやはり地方に委譲する、これが本筋だと思うのですね。しかし、今回の四十四本の法律の中を見てみますと、たとえば電気工事士法改正というのがございますけれども、これでは知事の電気工事士試験事務が今回の場合は通産大臣の方に吸い上げられてしまう、こういうことになっておるわけですね。それから、民間に委譲されるということになっているそうでございますけれども、ただいまも申し上げたとおりに、機関委任事務地方委譲というのが本筋なのにもかかわらず、逆に国の方に吸い上げるというのはきわめて異例なことではないかと思うのですね。おかしいのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  8. 山本幸雄

    山本国務大臣 機関委任事務の性質といいますか法律的な性格というのは一体どんなことかということを、私ども、やはり根本的に一遍見直しをするということをやらないと、整理する場合にいろいろな障害が出てくるのではないかといま思っております。  先ほど来のお話のように、確かに今回整理しましたものは、やはり従来から地方公共団体事務として同化定着しているようなものあるいは社会経済の変化に伴って縮小あるいは廃止すべきものといったような、そういう一つ目標整理をしたのでありまして、それはそれなりにあったと思うのですけれども、しかし今後のこの機関委任事務整理につきましては、そういう法律的な機関委任事務性格というものについて十分検討をして、そして地方自治の拡充という方向にどういうふうに踏み出していくかという問題をひとつ検討していきたい、こう思っております。
  9. 草野威

    草野委員 いずれにしても、これは異例なケースだと思うのですね。やはりこういうことについてはさらに検討をすべきじゃないかと私は思うのです。  引き続いて、地方出先機関の問題でございますけれども、今回府県単位機関整理合理化ということで、地方行政監察局それから財務部、こういうものの現地的事務処理機関、こういうような案が出ているわけでございますが、お尋ねしたいことは、現在の監察局とそれから財務部事務について、一つ廃止するものはどれだけあるか、二番目は府県に委譲するものはどの程度あるか、三番目はブロック機関に吸い上げるものはどのくらいか、四番目は新事務所に残すものはどのくらいあるか、それぞれ数字を挙げてお示しをいただきたいと思います。行管庁大蔵省お願いしたいと思います。
  10. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  地方行政監察局のやっております仕事、大ざっぱに分けると五つの分野で十六の事項になります。地方ごと仕事やり方は若干違っておりますが、統一的に現在検討しております案では、廃止が三、縮小が五、管区局への集中が四、合理化の余地のないのが四つでございますが、大体そういう内訳になっておりまして、たとえば廃止の問題で例を申し上げますと、二十万件の苦情が来ておりますが、大体このうちの五万件が地方公共団体なり農協なり公益法人といったところの問題でございますが、私どものサービスとしてやっておりましたもの、こういうものを廃止の方へ持っていきたい。五万件でございますので、約四分の一の廃止になろうかと思います。それから縮小の例でございますが、定例相談所というのを委員さんの要望等でやっておりますが、この辺は自治体との問題もございますので約半分くらいに縮小したい、こういうふうなことでございます。行政監察につきましては、俗に言う新規施策定期評価、それから行政機関総合調査、それから特殊法人総合調査、こういったものは管区機関に全部集中をする、こういうことになっております。  簡単に申し上げると以上のとおりでございます。
  11. 川崎正道

    川崎(正)政府委員 御承知のように、臨調答申でも、現地事務処理機関処理する仕事必要最小限のものとするように、こういう御指摘を受けておりますので、その方向で私たちも考えていきたいと思っております。  具体的に申し上げますと、主計事務あるいは金融機関の検査の事務、こういった仕事につきましては財務局の方に集中して処理してまいりたい、このように考えております。  それからまた、現地事務所で行います仕事といたしましては、国有財産管理、処分あるいは信用金庫の監督あるいは地方公共団体に対する融資の事務、こういった非常に現地性の強い事務、こういうものに限定して処理する、こういう方向で考えてまいりたい、このように考えております。     〔委員長退席江藤委員長代理着席
  12. 草野威

    草野委員 大蔵省の方は数字をお示しいただけなかったわけでございますけれども、話の内容から察しますと、府県に委譲するものはわりあいに少ないのじゃないか、新事務所に残るものがきわめて多いのじゃないか、こういうように感じたわけでございます。もしそういうようなことになりますと、やはり臨調の趣旨には合致をしないのじゃないか、こういう気がするわけでございます。  そこで、行管庁長官に伺いますけれども、新事務所に残る事務につきましては、やはりこれは府県機関委任だとかまた委譲できるものはそのようにどんどん処理をしていかなければならないと思いますし、その他はブロック機関に移す、そういうことにして、新事務所そのものをこれから計画的に廃止をしていかなければならないのではないか、このように考えますが、いかがですか。
  13. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 県の行政監察局についてだけ私は申し上げてみますと、基本的には、共通の管理部門は当然ブロック機関に移しますが、監察事務も大体ブロック機関中心になって行う、現地においては行政苦情処理といったふうな行政相談的な仕事、それから行政監視、そういったふうな仕事にだんだん縮小していくべきものだと私は考えております。したがって、要員の方も、大体二〇%程度府県監察局からブロック機関に移すというやり方で進めていきたいと考えております。この監視なりあるいは行政相談というのは、御承知のように、国の機関の行うものについていろいろな監視をしたりあるいは苦情処理ということでございますから、府県に委譲するということは余り仕事はないのではないかと私は考えております。  そういうふうなこともありまして、私は、だんだんと府県現地処理機関というものも、現地性の強いものを処理するということが基本であってみるならば、おのずからに減量方向要員規模縮小していく。これは廃止するというわけにはいかぬと思います。これは当然現地性現地処理が最も適当なものはやはりありますから廃止するというわけにはいきませんが、徐々に減量化方向に進めていくべきものであろう、かように考えておるものでございます。
  14. 草野威

    草野委員 次に、官房長官お尋ねしたいのですが、官房長官お見えになっていますか。
  15. 江藤隆美

    江藤委員長代理 十時三十分に見えるそうです。
  16. 草野威

    草野委員 私はそういうことを伺っておりません。初めから見えるというふうに伺っていますが……
  17. 江藤隆美

    江藤委員長代理 草野議員には大変恐縮ですが、官房長官は十時半に入るそうですから、時間の都合上、他のことで質問が続けられますならば、ぜひお願いをいたしたいと思います。官邸を出ましたそうですから、間もなく着きますと思います。
  18. 草野威

    草野委員 次に、住民税減税の問題について若干お尋ねをいたします。  まず、自治大臣お尋ねしますが、所得税減税方法として、税調におきましては、課税最低限の引き上げ、また中堅所得層累進税率の緩和、この二本柱で行くべし、こういうような意見が多かったというふうに伝えられておりますけれども住民税の場合、住民税ではどのような方法が考えられますか。
  19. 山本幸雄

    山本国務大臣 減税の中で地方税減税も必ず実施いたしますということは……
  20. 草野威

    草野委員 答弁が小さくて聞こえませんので、もう少し大きい声でひとつお願いします。
  21. 江藤隆美

    江藤委員長代理 答弁が小さいそうですから、自治大臣には声を大きくお願いをいたします。
  22. 山本幸雄

    山本国務大臣 地方税減税は必ず実施するという方針は決まっておるのです。  そこで、どういう方法でやりますか、実施方法規模、時期、そういったような内容のことにつきましては、従来から政府は、これは国の方の所得税を含めまして政府税調にいま諮問をしているということでありまして、その答申を待って実施をする、こういうことであります。承れば、大蔵大臣から政府税調に対して、答申を急いでいただくようにというお願いもしてあるそうでありまして、私ども地方税減税につきましても、内容的にはそれを待って実施方向をひとつ決めていきたい。やることは必ずやる、こういうことでございます。
  23. 草野威

    草野委員 私は、いま決定的なことを伺っているわけじゃないのですが、政府税調では、先ほど申し上げたような二つの方法というのが非常に有力である、こういうことが伝えられておるわけですね。住民税の場合、減税方法としてはいろいろな方法があると思いますけれども自治大臣としてはどういうやり方でやったらいいか、自治大臣のお考えをひとつお聞かせいただきたいのです。
  24. 山本幸雄

    山本国務大臣 いずれにしましても、減税やり方はそうたくさんやり方があるわけではありませんから、おのずとそのやり方内容は決まってくるものだと思うのです。しかし、まだここでどういう方法でやるかということについて私の口から申し上げるのは少し時期が早い、こういうふうに思っております。  ただ、いまお尋ね課税最低限という問題は、国税の方もそれは一つの課題でありますし、地方税につきましても課税最低限の問題は減税の場合に一つの大きなテーマになる、私はこうは思っております。
  25. 草野威

    草野委員 課税最低限の引き上げということになってまいりますと、当然、住民税の場合におきましては三控除の引き上げ、こういう問題にすぐつながってくるわけでございますけれども、やはり本格的なまた恒久的な減税をしなければならないという観点から立てば、当然三控除の大幅引き上げ、こういうことになってくると思うのですね。そういうふうに考えた場合に、五十六年からずっと実施されておりますいわゆる住民税の非課税措置の問題、こういう非課税措置の問題は、来年度昭和五十九年度はとらないという方向に行くのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  26. 山本幸雄

    山本国務大臣 課税最低限一つ減税やり方としては大きなテーマになる、それはいま申し上げたとおりでございます。しかし、それをどの程度にやるか、いまお話しのように、課税最低限の問題は必ず三控除の引き上げということになるわけでございますが、これをどの程度にやるかということについてはまだ決まっておりません。いま私から申し上げる段階にない。したがいまして、従来から地方税の場合にとっておりました生活保護基準というものとの間差といいますか、間の違いというものについては非課税措置で措置をしてきたわけでございますが、その問題についても、非課税措置とそれから課税最低限との関係については、まだどういうふうになるかということについてはいまの段階では何とも申し上げられないような状態であります。
  27. 江藤隆美

    江藤委員長代理 官房長官見えましたから。
  28. 草野威

    草野委員 官房長官がお見えになりましたので、早速お尋ねしたいと思いますが、初め長官お尋ねするのは住民税減税の問題でございます。  長官は十分御存じだと思いますけれども、ことしの三月二日衆議院の予算委員会におきまして、いわゆる減税に関する官房長官の見解というものが出ました。このことはいまでも変わりがない、私はこのように思っておりますけれども、三月二日のこの見解、いまでも変わりはございませんか。
  29. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 全く変わっておりません。したがって、その線に沿って現在政府部内で減税の取り扱いについて政府税調等で御審議を願っておる次第でございます。
  30. 草野威

    草野委員 私ども野党としましては、一兆四千億減税、びた一文まけることはできない、こういうことでいまやっているわけでございますけれども、ともかく景気浮揚に役立つ相当規模減税ということでございますので、われわれもそれなりに期待をしているわけでございます。  いま長官がお見えになる前、山本大臣にこの住民税問題につきましていろいろとお尋ねしておったわけでございますけれども、与野党の幹事長・書記長会談の合意の中で、一つは五十八年中に実施をする、このようにあったと記憶しておりますけれども、その点は間違いございませんか。
  31. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 減税実施の時期、規模等につきましては、これは政府税調審議の結果を待ちたい、こう考えておりますけれども、いまは御案内のように政党内閣、議院内閣制でございますから、与党の幹事長が公にせられた御発言というものはそれなりの重みを持って政府としても対応しなきゃならぬ、かように考えているわけでございます。
  32. 草野威

    草野委員 そういたしますと、五十八年実施ということが実際の問題となってくるわけなんですけれども、いま現在までの地行委員会におきます住民税減税の議論の中には、やはり事務的に非常に大きな問題がたくさんある、したがって、住民税の場合には年内に実施するということは非常に困難である、来年の六月以降になる、こういうようなことが話の中に出てきているわけですね。住民税についても年内実施する、このように受けとめてもよろしいでしょうか。
  33. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御案内のように、所得税住民税は徴税の仕方が変わっております。したがって、私が先ほど御答弁申し上げたのは、政府としても与党幹事長の発言は最大限尊重しなきゃならぬそれなりの重みを持つ、こう申し上げておるわけでございますが、しかし、それを具体化する場合にいろんな技術上の問題で越えがたいという難問があった場合は、これはお許しを願わないと幾ら言われてみましてもできないことはできない、こう申し上げるほかないわけでございますが、精神としては、これは与党幹事長の発言を最大限尊重申し上げる、こういうことでございます。
  34. 草野威

    草野委員 どうもおかしいんですね、そこの御答弁は。  後藤長官は以前に自治大臣もおやりになっておりまして、こういうことについてはもう百も精通しているわけですね。ことしの三月にあのような見解を示された当時は、まさか住民税処理について事務的にどのくらいむずかしいかむずかしくないか、こんなことは百も承知なわけですよ。そのときは承知しておって、いまになったら事務的にこういう問題があるからもしかしたらどうかというような、そういう御答弁だと、これは国民を欺くようなことにもなりかねないと思うんですよ。もう一回御答弁お願いいたします。
  35. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 私は、自治大臣どころじゃないんですよ、税務局長をやっているのです。(「それなら一番よく知っているはずじゃないか」と呼ぶ者あり)だから、よくわかっているだけに、やはり技術上の難問というものは、これは幾ら言われてもできぬことはできないな、こうお答えせざるを得ないわけです。  しかしながら、与党幹事長が言っていることなんですから、それなりの重みを持ちますから、何とかそこは打開する道はないのかということは、これは私は事務当局にも言ってあるんですよ。だから、政府税調でそこらをどう御判断になるか。といって、いま徴税の仕方が違いますから、これをできないことを幾らやれと言われても、それはひとつ御勘弁を願わないとどうにもならない、こう申し上げておるので、私は徴税の内容はよく承知をしておりますから、自治省当局がいろいろ言っているのでしょう、言っている理由がわからぬわけではない、そこをどう考えるかということでいませっかく苦労をしておる、こういうことでございます。
  36. 草野威

    草野委員 長官がかつて税務局長ですか何かやられた時代といまとは違うんですよ。この事務処理の仕方は、いまコンピューターをたくさん導入してかなりスピードがアップして処理できるようになっているのじゃないですか。だから、技術的にできるかできないかなんということじゃなくて、これはもう政府が年内に実施をするのだ、このように決意をしてやればできることじゃないかと私は思うのですね。だから、いまのような御答弁、非常にわれわれ期待している国民の側にとってみればそういうことじゃ困るのです。したがって、きょうはこの席上で住民税については年内に、技術的な問題があるけれどもそれを乗り越えてやって見せるのだ、こういう御答弁をされたらいかがですか。
  37. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 技術上の問題を乗り越えることができるかどうかということは最大限の努力をしてみたい、こう思いますが、万一できないというときは御勘弁を願いたい。それは別段お約束をたがえるとかなんとかということじゃないのです。真剣にそこのところは事務当局に私の方から何とかできないのかということは検討してもらっておるのだということだけは、ひとつお答えをしておきたいと思います。
  38. 草野威

    草野委員 いまの長官の御答弁は必ずしも満足できるものじゃございません。しかし、与党の幹事長の約束したことに対して尊重して、しかもその重みを十分に受けとめていらっしゃるという長官のお言葉ですから、これは何としても実行されるように、実現されるように心から強く要望いたしたいと思います。  次に、問題を変えまして、異常気象の問題につきまして何点かお尋ねをしたいと思います。  この異常気象の問題といいますのは、実は最近いろいろと世界的に話題になっております炭酸ガスの問題でございますけれども、ことしもアメリカの熱波の問題、アフリカの干ばつの問題、またわが国におきましては冷害の問題等々、いろいろございます。こういう問題が果たして炭酸ガスによる地球の温度上昇、こういう問題とどこで結びつくとか、そういうことは私わかりません。わかりませんけれども、この異常気象の問題についてはわれわれも重大な関心を払わなければならない、そういう一つの時期に差しかかっているのではないか、このように思うのですね。そんなことで、きょうはこの席をおかりいたしまして各大臣にお尋ねをしたいと思うのです。  今月の三日、三宅島で噴火がございました。二十一年ぶりでございます。幸いに死者はなかったわけでございますけれども、今回のあの大噴火で気象庁の観測体制の不備というものがわれわれ国民の前に明らかになったと思います。少なくとも微小地震については一時間半前からキャッチすることができた。しかし、それを警報を出すことはできなかったということは、やはり観測データの不足によるものである、こういうようなことが言われているわけでございます。こういうような天災というものは、国民の生死にかかわる非常に重大な問題でございますので、やはり行政のサイドからもこれは十分に取り組んでいかなければならない重要な問題であろうと思います。今回の三宅島の噴火の場合は、一部学者には予知されていた、こういう話が新聞で報道されておりました。だから犠牲者がきわめて少なかった。また、その前に避難の予行演習も行われたということも聞いておりますが、ともかく不幸中の幸いではなかったかと思うのです。  私は、先ほど申し上げました地球上の炭酸ガスの濃度の上昇という問題は、これは三宅島の噴火とはとうてい比較にならない重大な問題だと思うのですけれども、この現象によって農業の壊滅、これは食糧危機につながるわけでございますけれども、また将来海面上昇の危険というものは、世界じゅうの数多くの学者またはまじめな出版物、そういうものによって警鐘がいま現在乱打されているわけでございます。  日本に余り資料はございませんけれども、たとえば米国の大統領府環境質委員会一九八一年一月の資料でございますれども、この中にはこんなことが書いてあります。「二十一世紀には、世界の農業生産は壊滅的な打撃を受け、海面は五ないし八メートル上昇し、世界の主要な海岸都市などは水没してしまう」、こういうような資料が出されております。  また、最近日本の出版社からもいろいろな書物が出ております。たとえばシミュレーション小説を持ってまいりましたけれども、こういう「ラスト・ウェーブ」なんという小説も、この問題につきましてはかなり克明に響いております。たとえば、この本の中でもこういうような記事が一つあるのですね。「大気の温度上昇で、南極の氷が解け出して海水量が増え続けている。五十~六十年後には、アメリカ東海岸地方は海中に没する恐れがあり、東京もその危険性がある」とアメリカの科学者が昨年の三月二十五日米下院科学技術委員会の公聴会で警告した。この科学者はメルビン・カルビン・カリフォルニア大学教授、このようになっておりますけれども、こういうような報告もされているわけでございます。  実際に、現在地球大気の炭酸ガスの濃度というのは毎年どんどん増加している傾向があるのですね。私は、きょうここにデータを持ってまいりました。ごらんになっていただきたいと思います。これは「炭酸ガスの急増現象」でございます。遠くからよくわからないと思いますけれども、このデータは米国海洋大気庁の資料によるものでございますが、一九六〇年から一九八〇年までの二十年間、この地球の大気の中で炭酸ガスがどのくらい急激にふえているか、こういうような表でございます。この黒い線の方はハワイ島のマウナロアで観測した線でございます。それから下の方は南極点で観測した線でございます。これから見ますと、一九六〇年では三一五PPm程度でございました。それが現在では三四〇PPm、約二五PPmほど上昇している。問題なのは十九世紀の末、いまから百年前でございますけれども、約二九〇PPmくらいしかなかった。それが今世紀に入って、しかも最近になって急激に炭酸ガスの濃度がふえ続けている。こういう現象が報告されております。  また、これに関連いたしまして、この表はWMO、世界気象機関のデータからつくった表でございますけれども、これは「平均気温に対する気温差」と申しまして、前年度の温度に対しましてことしはどれほど温度が上がったか下がったか、そのプラスマイナスをこの百年間にわたりまして記録したデータでございます。ごらんのように線が上がったり下がったりしております。要するに、暖かくなったりそれから冷えたり、こういうことをずっと繰り返しております。この百年間にこういう現象を繰り返しながら、このグリーンの線でおわかりになりますように、上がったり下がったりしながらも、この百年の間には気温はかなり上がってきている、こういうことがこのデータでおわかりになると思います。  こういうことで、この問題に対しまして、わが国におきましてもいろいろな取り組みがされておりますけれども、わが国の気象庁におきましては現在どのような観測体制をしかれているか、まず一番初めにこの点についてお尋ねをしたいと思います。
  39. 末廣重二

    ○末廣政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、大気中における炭酸ガスの濃度がふえていくということは、気候変動等に与える影響が大変重大でございます。その見地から、気象庁におきましては所属の気象研究所が、筑波の学園都市及び気象庁に所属いたします海洋観測船を使いまして、日本周辺の海洋において研究、調査、観測を実施しております。
  40. 草野威

    草野委員 この気候の変動というものは、人類、社会経済に大きな影響を与えると思います。しかし、最近は、われわれの人間活動そのものが気候に対して大きな影響を与える、このように言われているわけですね。ここのところは、私は非常に重要な問題だろうと思うのです。いま長官の方からお話ございましたように、炭酸ガスの濃度の測定ということについては海洋における測定をやっておる、こういうお話でございました。  一つ一つお尋ねしたいと思うのですけれども、たとえば通産省。通産大臣お尋ねをしたいと思うのですけれども、人間活動が気候に大きな影響を与えるということになると、非常に重大な問題が幾つか出てくると思うのです。たとえば、現在原発が日本におきましても数多く建設されつつあります。しかし、そのほとんどは海岸線に建設をされてまいりました。巨額な建設費を投じたわけでございますけれども、先ほど申し上げたようなことで将来海面上昇によって水没、もしこういうような事態になった場合に、これは一体どうなるか。日本の海はもう放射能でそれこそ死の海になってしまう。  また炭酸ガスは、現在化石燃料とそれから森林伐採、こういう結果によって起きてくるのではないかと言われておりますけれども、米国とかソ連から、日本は炭酸ガスの大放出源だ、こういうふうに非難をされ始める、そういう事態もこれから予想されるのですけれども、そうなった場合には、日本独自の調査というものは全然ないのですね、いまのところ。そういう場合に一体どうやってそれを反論したらいいか、そういう問題。また炭酸ガスの問題は、これは直接エネルギー問題と結びつくと思うのです。これから将来のエネルギーの長期ビジョン、こういう問題の中で、どうやってそれを考えていったらいいか。水素エネルギーだとか太陽電池だとか、いろいろあると思いますけれども、そういうことをあわせてひとつお考えを承りたいと思います。
  41. 松田泰

    ○松田政府委員 お答えいたします。  最初の、原子力発電所に与える海面の水位上昇の影響をどう考えるかという点でございますが、原子力発電所の現在の設計は、先生御存じと思いますけれども、海面の上昇について考えられます高潮でありますとか台風でありますとか、そういったもろもろの影響につきましては、過去の歴史等にあらわれましたデータを全部洗いまして、それに相当の余裕を持ったものをつくっている状況でございます。  しかし、いまお話のありました炭酸ガスによる、南極の氷が解けて海面が上がるというような現象につきましては、これは現在いろいろな説がある状況でございますので、われわれも重大な関心を持って学者、学問的な研究の動向あるいは観測の動向等注意してまいりたいと思っておりますが、設計に反映いたしますまでには、ある程度定量的な把握がどうしても必要でございますし、またこの問題は、三宅島の噴火のようにある日突然起こります問題と違いまして、相当長期間にわたって少しずつ動向が把握される問題だと思いますので、そういう目でこの問題を十分検討していきたい。しかも、原子力発電のみならず、非常に大きな、海岸線のあらゆる構造物に対する影響でございますので、国としては総合的に考えていくべき問題ではないかというふうに考えている次第でございます。  それから第二の、炭酸ガスを発生しないようなエネルギー源のあり方というようなことにつきましては、もちろん私どもは長期的に考えまして、あらゆるエネルギー源の最も合理的な組み合わせ、それは一つには環境に与える影響もございましょうし、一つにはエネルギーの供給コストを安定かつ低廉に保ちたい、そういった側面から、最も合理的な組み合わせはそれぞれの年代に応じてどういうものであるかということを検討しております。そういう意味で、太陽エネルギーのような、あるいは原子力発電もその一種でございますが、炭酸ガスを発生しないエネルギー源につきましても、現在非常に重点的に予算を投じて検討している状況でございまして、そういう目で将来のエネルギー事情も、もちろん環境の影響特に地球に与える影響等につきましては、国際的な情報交換等をとりつつエネルギーの計画を立てていきたい、そういう所存でおります。
  42. 草野威

    草野委員 農林省に伺いますが、気候の変動で現在世界的に農産物はいろいろ影響は受けておりますけれども、今後異常気象がますます進んでいく、こういうことが予想される中で、農産物はそれこそ甚大な影響を受けるのではないかと思うのですね。どういう対策を現在立てておられますか。
  43. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  大気中の炭酸ガス濃度の上昇が農業生産にどういう影響を与えるかというのは今後の重要な研究課題と考えております。農林省におきましては、野菜等の個別作物に対しまして炭酸ガスの濃度が生産にどのような影響を与えるかという点につきましては従来も研究も行われておりますし、また、一部これが実用化されているものもございます。それによりまして生産性の向上も見られるというようなものもございます。  ただ、御指摘のように地球的な規模で大気中の炭酸ガス濃度がどのように農業生産に影響を与えるかという問題につきましては、農業生産の特性といたしまして、炭酸ガスだけでなしに、降水量であるとか気温であるとかその他の気象要因あるいはこれが土壌中にどのように蓄積されるかというような非常に複雑な問題がございまして、まだまだ研究としては世界的に進んでおりません。したがいまして、関係各省庁と共同で五十七年度から、地球的な規模におきます炭酸ガス循環についての測定方法であるとかあるいは欧米諸国におきます農林耕地におきます二酸化炭素の循環蓄積等につきまして、そういう研究状況の調査をいま実施しておりまして、私ども現在その研究結果を取りまとめているところでございます。
  44. 草野威

    草野委員 建設大臣に伺いますが、現在の海岸都市、また海岸線の道路、護岸壁、またこれから建設される施設、こういうものがいまのような理由で水びたしになった場合、こういう事態が予想されるわけですけれども、そういう場合の対策、また、大気中の炭酸ガスの濃度の上昇に伴っていわゆる異常気象の激化、こういうようなことで全国的にがけ崩れだとか河川の決壊だとかまた道路の寸断だとか、いろいろな事故が予想されるわけですね。こういう問題について現在何か対策をお考えになっておられますか。
  45. 内海英男

    ○内海国務大臣 建設省といたしましては、従来から津波あるいは高潮対策といった観点からそれぞれ対応してきておるわけでございますが、お話のように地球が温暖になって五メートルから八メートル海面が上昇するということを前提にして、いままだ具体的に物を考えておりません。したがいまして、今後の関係方面の調査研究によって、そういう事態が起こり得る可能性というものが出てきて必要ということになれば、それに対応するように私どもは対策を立てていかなければならぬ、こう考えておるわけでございます。
  46. 草野威

    草野委員 各大臣に一通りお伺いしたわけでございますけれども、現実的な問題じゃない、相当先の問題であるということで、実際の対応だとか考え方というのはまだこれからの問題だと思うのですね。しかし、先ほどから申し上げましたように、これは単なるSF小説の世界の話じゃないと思うのですね。いまから取り組まなければならない重大な問題だろうと私は思うのです。気象庁の中にも気候変動対策室が昭和五十六年から設けられているようでございますけれども、観測体制というものはまだまだいろいろな面で不十分だろうと思います。  WMO、世界気象機関ですね、ここから重要問題として日本に依頼している問題が二つあるのですね。一つは炭酸ガスの連続測定という問題、もう一つは炭酸ガスが気候にどういう影響を与えるのか、こういう問題について依頼をされております。当然わが国としてもそれは協力しなければならない重大問題だろうと思うのですね。聞くところによりますと、気象庁としては、小笠原諸島、父島あたりにそういう定期的、連続的に測定できるような観測所を設けたい、こういうような考えもあるやに聞いております。しかし、そういうWMOから七年も前から協力要請をされていながら、そういう問題もまだ実現もしていない、こういう状況なんです。この辺のところはもう少し本気になって取り組まなければならない重要なことだと私は思うのですね。気象庁の長官並びに運輸大臣からひとつお答えをいただきたいと思います。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  47. 末廣重二

    ○末廣政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、WMO、これは国連傘下の、国連麾下の気象に関する専門機関でございますけれども、そこから大気の状態が長年月にどう変わっていくかという、バックグラウンド基準観測と申しておるのですが、それの要請があったことは事実でございます。特に、その中でも炭酸ガスの定期測定ということは重要な項目でございますけれども、これをいたしますためには、植物が周りに余りありますと、植物は逆に炭酸ガスを吸い取ってしまって酸素に変えるわけでございますから、緑の国と言われているような日本のように非常に植物の繁茂している国では、地点を選ぶことがなかなかむずかしい点がございます。しかし、私どもといたしましては、御指摘の小笠原諸島はどうであるかということにつきまして相当検討いたしたのでございますが、その後、一般的な大気の状態がどう変わるかということの問題が、御指摘の炭酸ガス濃度の測定ということに最近重点が移ってまいりました。したがいまして、父島も非常に緑の島でございますので、必ずしもWMOから要請を受けております測定に適するかどうかという問題が新たに生じましたものでございますから、これに対応すべく、新しい条件に合う適地の再検討を現在行っておる次第でございます。
  48. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 人間が生きていくために、いろいろな場合を想定して研究は必要でございます。そのうちの一つが、いまお話のある炭酸ガスもふえるということでございます。南極が溶けてしまうと八メーターも水がかさ上げする。私は、二十一年前に南極に行ったときにそういう話を聞きました。そして、イギリスの地理学会の雑誌にもそのことが書いてある。そういたしますと、ちょうどニューヨークの自由の女神の鼻のところまで水が上がる、そういうことですから、非常に世界が心配しているわけであります。そうしたことやら、日本が炭酸ガスの天国だ、そういうふうな話などもあるが、これは緑の国で、水があって、緑がどんどんふえるところ、しかもなおかつ炭酸ガスについては研究しなければならぬ、こういう世界的な話の中には、私の方でもそうした機関に沿うて共同の計画なり研究に協力してまいる、こんな考えであります。
  49. 草野威

    草野委員 最後に、官房長官お尋ねをいたします。  いままでいろいろとお話が出て、理解していただいたと思います。ただ、この炭酸ガスの問題というのは非常に重要な問題でございますけれども、まだ成熟してない問題なんですね。数十年先の問題じゃなかろうかと思うのです。いま運輸大臣が、南極の氷が全部溶けてしまったらニューヨークのという話がありましたけれども、これは両極の氷が全部溶けるなんて事態になったら大変な問題です。そんなことじゃなくて、わずか五メートル、八メートルの海面上昇によっても、かなり地球上の農作物を初めとして大きな被害が出てくるということなんですね。しかも、この問題は、数十年先ということになると、われわれの孫子の時代の問題だと思うのです。現実に、われわれの問題じゃなくても、二十一世紀に向かって、長官のお子さん、お孫さんですな、その孫子の問題にこういう事態が起きてくるかもしれない。だから、この問題は単なる一部の学者の方々だとかまた一部の関心を持っている人たちだけに任しておけばいいという問題じゃなくて、行政の責任として、国の責任として取り組まなければならない重要な問題だろうと私は思うのですね。  この問題は、実際にあらゆる省庁にわたる問題ですから、本当だったら、きょうはここで総理に直接お話ししたかったわけでございますけれども、きょうは残念ですが見えておりません。それで官房長官お尋ねするわけでございますけれども、いま直ちにやらなければならない問題が二つあると思います。その第一は、定期的に連続して観測をできるような、そういうものをつくることです。いま長官が言いました、それは父島かもしれません、富士山かもしれません。さらに、南極に測候所をつくるということも大事だろうと思います。そういうように、定期的に連続して観測できる、そういうものをつくることが一つです。それからもう一つは、この異常気象に対する研究というものをもっと推進していただきたい。とりあえずはこの二点だろうと思います。  政府の中にも、気候変動対策関係省庁連絡会、こういうものがあるのですね。私は初めて知りました。この機関がどの程度機能しているかわかりませんけれども、こういう組織もあるわけですから、とりあえずはこういう組織もうんとフル回転してやる、私は、こういうことも真の行政改革一つだと思うのですね。こういうことを含めて、これから政府としてこの問題に大いに関心を持って取り組んでいただきたい、このように思いますが、最後に御見解を承りたいと思います。
  50. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御指摘の問題は中長期の課題であろうと思いますが、しかし、事柄はきわめて重要な御指摘であろう、私はこう考えております。  御案内のように、国連の専門機関等で異常気候の原因等についての問題についてすでに決議があり、八項目が挙げられております。政府としては、それを受けて気象庁においてすでに対策室を設け、関係省庁との連絡機関もつくっておりますが、さらに一層国際協力あるいは実態の解明、観測体制の整備、あるいは非常に科学的な問題でございますから研究の推進、こういったことにできる限りの努力を払ってまいりたい、かように考えております。
  51. 金丸信

    金丸委員長 これにて草野君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤万吉君。
  52. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今度の法改正は、地方公共団体との関係がきわめて大きい。しかも地方公共団体にとっては、今度の法改正によってどのように地方行政を運営するか、そういうきわめて重視をしなければならない要素を持っておると私は思うのです。  そこで、行管長官にお伺いをしますが、今度のこの答申に基づく法改正地方団体で特に問題になるのは、やはり機関委任事務の問題、許認可、それから地方出先機関、これと地方団体との関係だろうと私は思うのですね。先ほども答弁にありましたが、どうも長官答弁は、国と地方減量するあるいはこの行革を通して国民サービス面を拡充強化する、そういう意思があるのですが、私は、それだけではなくて、実は地方団体との関係を見る場合には、仮に許認可問題、機関委任事務一つとらえてみましても、国の意思がどこにあるかということが明確にならなければいかぬと思うのですね。単なる減量だとか整理合理化だとかいう問題ではないと思うのですね。いうところの旧憲法から新しい憲法になった、地方自治体との関係という視点が欠けているのではないか、私はこう思うのです。たとえば旧憲法では、知事が包括的行政事務処理し、国の後見的監督を受けることを中心に旧憲法は成り立っておるわけですね。新憲法は、御案内のように、国と地方との有機的な協力関係として、機関委任事務をどう位置づけるのか、そういう有機的な関係ですから、包括的な行政事務あるいは国の後見的監督の要素というものをできる限り排除するということが、今度の出先機関の問題にいたしましても、あるいは機関委任事務にしてもあるいは許認可にしても、そういう政府の意思がなければいけないと思うのですよ。どうでしょうか。今度の法律を提出するに当たって、大臣はどのようにその視点をお考えになったか、まず聞きたいと思います。
  53. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私どもは、行政改革は中央地方を通じて簡素効率的な行政を実現するということであろうかと思います。  そこで私どもは、地方の問題につましては、新しい憲法で厳正に規定されておりまする地方自治の尊重、地方自治体の自律性、自主性、こういうものをあくまでも尊重するという方向でそういう問題に取り組むということが必要ではないか、私はさように考えております。
  54. 加藤万吉

    加藤(万)委員 自律とか地方自治の本旨の尊重、こう言いますけれども地方自治の本旨というのは、私は憲法で定められているところだと思うのです。すなわち、国の後見的な監督、指導、そういうものをできる限り排除をするということが具体的に出てこなければだめですよ。いまおっしゃったように、単なる自律とかあるいは地方自治体との有機的な関係だけを概念としてとらえるのじゃなくて、それは技術論、具体論として出てこなくちゃいかぬと思うのですね。  そこで大臣、私はひとつ問題提起をするのですが、いま政府側が「小さな政府」とか「増税なき財政再建」というキャッチフレーズをされていますね。どうでしょうね、私の考え方。これは地方自治のまさに本旨、憲法で規定する本旨ですから、それに基づけば、地方自治の充実あるいは地方分権への重視ということが、このキャッチフレーズと一緒に提起されてしかるべきではないか。いわゆる「増税なき財政再建」あるいは「小さな政府」、同時にいま一つ地方自治の充実。充実ということは、結果的には地方分権の重視ということになるでしょうけれども、そういうキャッチフレーズといいましょうか、そういう理念を持ってこれからの行革大綱処理あるいはこれからの審議会に臨まれる意思が必要ではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  55. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 地方自治の尊重というたてまえから、国が地方に関与するということをできるだけ減らしていくということが私は基本だと考えております。したがいまして、機関委任事務整理合理化の問題でも許可認可制度の問題につきましても、県の自治というものに国が関与するということは今後ともできるだけ縮小していく、これは私は本態じゃないだろうか、かように考えております。
  56. 加藤万吉

    加藤(万)委員 初めてお言葉が出てきましたね。関与という言葉は非常に大事だと思うのですよ。先ほど言いましたように、それは単に事務的な合理化の問題じゃないのです。整理の問題じゃないのです。政府の意思として地方自治体に関与することをできる限り排除しましょう、その視点から許認可制度を見直しましょうというのですから、これは臨調の基本方針でもその部分は述べていますけれども、非常に政府の執行者として重要な点ですから、ぜひひとつそうしてほしいと思います。  そこで、さてそれではそういう関与という視点、あるいは許認可制度もそうですが、あるいは機関委任事務もそうですが、そういう面をもう地方自治体に任してもよろしい、あるいはこの部面は緊急的に処理してほしい、あるいはいまの国との関係でいけば、この部面までは国がやり、この部面まではもう地方自治体が本来たとえば財源の再配分も含めてやってもいいという意見が何回か出ているわけですね。地方制度調査会というのが御案内のようにあります。これはもう何次にもわたってその答申をしているわけですね。  そこで大臣、お聞きしますが、地方制度調査会は御案内のように内閣の諮問機関です。私も一時やったことがありますが、辞令は前総理であります鈴木総理にいただきました。臨時行政調査会も実は同じですね。しかも、いま臨調答申で、基本的部分については大臣がおっしゃったとおりの答申があるのです。  さて、具体論になってまいりますと、たとえば機関委任事務についても二年間で一割程度、こういうことで具体的な御指摘がないわけです。こことこことの機関委任事務はこうしなさい。許認可についてはありますよ、二百二十二。しかし機関委任事務についてはない。そこで地方制度調査会なりあるいは全国知事会なりあるいは地方六団体なりが意見の提言を何回か政府にしている。ところが、どうしてもこれが、本来ならば臨調と同様に扱われて、行革を推進する所管大臣の手元で具体化されなければならぬと私は思うのですが、一体この臨調答申地方制度調査会の答申、この関係についてどのようにお考えになりますか。
  57. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今回御提案申し上げておりまする許認可等の事務簡素化法律案は、臨調の第三次答申を受けて出していることは事実でございます。したがいまして、臨調答申の御指摘がありましたように、三百九十八の件数のうちで二年間に一割、こういうことで出ておるわけでございますが、この指摘された事項は、地方制度調査会においても今日まで指摘された事項はたくさんあるわけでございます。  そこで、それとの関係を件数をちょっと調べてみたのです。きょう加藤委員が御質問なさるというわけなものですから、数を調べてみました。そうしましたら、地方制度調査会からたくさんの項目、現実問題として百何十か出ております。そのうち七件はこの中に含まれております。それから、さらに全国知事会とかその他の地方団体の方でも、機関委任事務をやってくれという要望がございましたから、それを調べてみましたら、それは十三件やはり入っているのです。ということであってみれば、土光臨調というものは、私が先ほど申し上げましたように、地方自治尊重という観点から、できるだけ県の自治に関与することを減らすべきであるという基本精神でございますし、それから地方制度調査会の方も大体そういう意見だと思います。ですから、その部分については、臨調答申を踏まえて法律案を作成いたしましたけれども、実際的には、やはり地方制度調査会の御意見も十分踏まえて立案されていると理解していいのではないだろうか、かように考えておるものでございます。
  58. 加藤万吉

    加藤(万)委員 よく勉強していただいて感謝します。ただ、大臣、いま地方制度調査会の七点あるいは知事会の十三点。たくさんあるわけでしょう。たくさんある中でそれだけなんですよ。しかも、私は問題は優先順位の問題だと思うのですね。これは後でいろいろ述べていきますけれども。何がいま地方団体として問題なのか、何をしてもらいたいのか。たとえば神奈川県でいま長洲知事が行政改革システムの検討委員会を持ちまして、地方市町村への分権をやっていますね。分権といいましょうか、ときには事務の委譲といいましょうか、そういう問題を含めてやっている。最近また広島でもそういう動きが県を中心にしてありますね。そのときにどうしても障害になる壁が幾つかあるわけです。それは国の許認可であり、国が機関委任事務として締めつけている問題ですよ。たとえば土地の区画整理事業とかそういう問題については、国がこの枠を外してくれれば、これだけ市町村に事務の再配分ができるのだ、いわゆる減量ができるのだ。にもかかわらず、実際はそこには触れてない。  今度の場合も、私は土光臨調会長がここで参考人で御意見を述べられたときに聞いておりまして、これは第一歩です、こういうお話でございました。まさに私は第一歩だと思うのです。本来触れるべき、もっと触れてもらわなければならない部分が、率直に言って後送りになっている。しり送りになっている。したがって、当面いまできるものの限界でということだと思うのですよ。ですから、いまおっしゃった七点、十三点、それなりに私は取り入れてはあると思いますけれども、問題は、必要度、緊急度から見て、これではお粗末ではございませんか。これではまさに大山蠢動ネズミ一匹ではございませんか。こういう批判が起きているのです。  自治大臣にお聞きしますが、いま地方制度調査会のそういう意見ないしは自治大臣所管の市長会あるいは知事会、それらの提言を受けて、いまのこの法律案ないしは臨調答申の中に繰り込まれるべき許認可事務機関委任事務、それをどういうふうに考えになりますか。
  59. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 でございますから、地方制度調査会の方からいろいろ指摘された事項のうちのわずかでございますから、余り自慢できる数字でない、私は率直にそう思っております。しかし、これは一歩であるということはどうか御理解いただきたいと思います。  そこで、私は、たびたびよその委員の方々からの御質問にお答えをしておるのですが、機関委任事務というもののあり方その他、私はやはり根本的に考えるべきだと思っているのです。そこで、いまお話しのような優先度の問題とか、いろいろな問題があります。それから機関委任事務性格というものはどうあるべきものか、国と地方との関係はどうあるべきものか、やはり基本的に考えるべきものがたくさんあると私は思います。  そこで、土光さんが会長になっていただきました行政改革推進審議会に近く参与制を設けたいと考えておるわけなんです。そういう点に理解のある数人の専門家の方に御委嘱申し上げて、地方制度との関係がございますから、機関委任事務あり方というものから根本的に考えていただいて、その観点から今後どうあるべきものかということを検討していただこう、こういうわけでおるわけでございまして、今後とも私としては前向きにこの問題は取り上げていきたい、こう考えております。
  60. 加藤万吉

    加藤(万)委員 自治大臣答弁は後で一緒にしてもらいます。後でいいです。  私が政府の意思が今度のこの改正法案に出てないと言うのは、実は、具体的に言えばこういうことになるんですよ、大臣。たとえば機関委任事務一つとってみましても、機関委任事務の制度の合理化をするのか、それとも先ほど大臣がおっしゃった、国の関与の面をできる限り削減するために今度機関委任事務整理統合をされているのか。あるいは事務の権限を地方に委譲しよう、関与と権限と一緒になる部面もありますけれども、権限を委譲しよう、そのために今度許可認可制をこういうように廃止しましたというのか。あるいは、先ほど神奈川県の例をちょっと申し上げましたけれども地方自治団体自身が事務整理合理化をしようという中で、国がこういう歯どめをかけておいちゃいけないよ、だから機関委任事務はこの際外そう。  幾つかそういう視点があって、いわゆる政府側の意思があって、この法案ができてくるなら、総花であるいは一歩で非常に物足りない面はありますけれども、しかし、それなりに意思があれば、地方団体にしても納得すると私は思うんですね。ところが意思がないんですよ、後で細かなことを言ってもいいですけれども。いわゆる総花式で、数合わせなんですよ。だから、地方団体の首長等から見れば、意思がないものですから――今度の臨調答申に基づいて政府側はいい法律案を出してくれるだろう、ならばおれの方は機関委任事務はこうしてこうして、そしてこの部分は市町村にも譲ってというような、その意思に基づく行政機能ができるわけですよ。いま言った四点の問題の中の、たとえば機関委任事務についての合理化あるいは国の関与の削減あるいは事務の権限の委譲、どこかに意思があれば、それなりに地方団体はできるんですね。ところが、それがないものですから、新聞で書かれておりますように、夢しぼんだ三割自治だとか、あるいは分権促進に実は悲観だ、道遠しとか、あるいは地方自治そのものを押し戻す今度の法案ではないか、そういうひやかしに似た言葉が出てくるんですね。  自治大臣、どうでしょうか。私は、先ほどの知事会なり市長会なり六団体のそういう意思を、大臣を通して、審議会を通してあるいは大臣の手元に来ていると思うのです。あるいは、いま言いましたように、今度のすべての問題を通して、そういう意思というものは自治大臣の手元で行簿長官に出され、ないしは閣議で決定されて、この法案が出たというふうにお考えになりますか。これは自治大臣に聞きます。
  61. 山本幸雄

    山本国務大臣 まず、今回御審議お願いしておる法律案内容は、臨調答申に基づいて新行政改革大綱というものを政府が決め、それに基づいてできているものなんです。  そこで、臨調答申は、総論的な理念としましては、確かに住民の身近な行政地方に任せるべきである、ことにそれは市町村を重視すべきであるという基本理念は出たわけです。そこで、その理念に基づいて、さて具体的な行政改革あり方というものを考えていく場合に、これはなかなか具体的な内容になってきますといろいろ問題点も出てきた。そこで私は、たとえば機関委任事務にいたしましても、先刻来申し上げておるように、すでに地方公共団体でもう全く同化定着しているものとか、あるいはもう新しい情勢に応じて廃止してもいい、縮小してもいいというようなたぐいのものを今回は挙げられたと思うのです。  問題はやはり今後にありまして、一つの例は、機関委任事務は今後一体どういう法律性格を持たせるか。これは、いまは国の統一性を保つということを考えながら、同時に地方の実情を反映すべきものである、こういう一応の定義づけはあるわけです。概念づけはあるわけでございますが、さて、そういうことだけで一体機関委任事務のいまある壁が破っていけるか、こういうふうな感じもいたすわけでございます。そうなってまいりますれば、もう根本的に地方と中央とのあり方という問題を何らかの理論的解決をしなければならない、こう思うのです。そういうことを考えてまいりますと、今後はひとつそういう、いまもお話がございましたが、地方と中央とのあり方地方分権という立場に立ってそういう問題をどういうふうに考えていくかという基本的な理論の詰めをやはりしなければならないのではないか、私はこういうふうに思っておるわけでございます。  先ほど来、地方公共団体の具体的な問題のいろいろな提案はもうたくさんございます。しかし、ただそれは件数だけではいけないのであって、やはり実質的な内容というものも私どもも十分に考えていかなきゃならないのではないか、こう思っておるのでございまして、自治省という役所は、地方の立場に立って地方の自治を守っていくという立場にあるわけでございますから、そういう立場を堅持しながら今後の問題の処理に当たっていきたい、こう思っております。
  62. 加藤万吉

    加藤(万)委員 自治省は地方の立場に立ってという大臣のお話ですが、地方団体から見ると、このごろは自治省と大蔵省が一緒になって地方団体をいじめているんじゃないか、こう言っていますよ。  そこで行管庁長官、先ほどの機関委任事務の問題ですけれども、三百九十八に対して二年間で一割、したがって今回はと、こういうお話ですね。どうでしょうか、三百九十八でしょうかね。私は、実は御案内のように、昭和二十七年に機関委任事務がどのくらいあるかということで検討されたその資料をいただいたのですが、県に対して百二十八件。昭和四十九年にこの機関委任事務を見直しをいたしまして、そのときが三百二十七件、二十七年から二・五倍ですね。それから市町村では二十七年が七十四件、四十九年には百三十九件、二倍ですね。いま五十八年ですから約九年。大臣がおっしゃった三百九十八件、これは臨調でもそうとらえているようですけれども、三百九十八件ではなくして、実際は機関委任事務が五百件を超えているのではないか。  さてそこで、これは実態がつかめませんから、実は私もそれなりに勉強してみたのです。たとえば御案内のように、地方自治法の別表三表、四表というのが機関委任事項法律案件と、こうこうこういうものは機関委任事務にしますという表ですね。今度の法改正でこれに載ってない面が幾つかあるのですね。たとえば、法務省見えていますか。売春防止法に絡む法務省提出の問題ですが、これは法律に載っていますか。別表三表、四表に載っていますか。同時に、この案件で昭和五十六年、五十七年に現実にそれで処理された事案がありますか。いわゆるこれの法律に基づいて地方団体処理しました、こういう事実がありますということはありましょうか。  それから労働省おられますか。労働省、失業保険関係の廃止条項がありますね。これも別表三表、四表に載っていますか。あるいはこれに対する実体上の案件はありましたか。これはひとつ法務省から簡単に。
  63. 吉田淳一

    吉田(淳)政府委員 別表第三表、第四表の関係から申しますと、第四表に犯罪者予防更生法が載っております。売春防止法はその規定を準用しておりますので、いわば犯罪者予防更生法に準じてお考えいただきたいと思います。  次に、実績があるかどうかということでございますが、売春防止法は昭和三十三年施行された当時は、当時の社会経済情勢でかなりの検挙実績あるいは補導処分を言い渡された者、それから補導処分から仮退院いたしますと法律で保護観察に付するわけでございますが、そういうものについての若干の実績がございました。ところが昭和四十年代以降になりますと、わが国の社会情勢を反映していたと思いますが、現在保護観察に付されるものももう本当にまれになりまして、それとの関連もあるのですけれども、費用徴収あるいは機関委任事務関係の嘱託規定を適用した件数はございません。
  64. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 労働保険の特別保険料の徴収に関する事務は、地方自治法の別表には載っておりません。その理由はつまびらかではございませんが、なお実績としましては、保険料の徴収の仕組みとして、いわゆる都道府県労働基準局を通ずるルートと都道府県を通ずるルートと二つございまして、いままでのところ特別保険料の徴収実績は、都道府県基準局を通じてはございますが、知事を通じたものはございません。
  65. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣、お聞きでしょう。いわゆる三百九十八じゃないのですよ。準用規定を適用しますといういまの売春防止法の問題も、それから労働省の失業保険も記載事項にないのです、三表、四表には。ですから、私が五百何件、これは把握はできませんから言っているのであって、五百何件ということになると、今度の改正で一割、二年間でというふうになりませんでしょう。私は、まだしっかりそこは一体準用規定でどのくらいまで量があるのかということはわかりませんが、恐らく五百件を超えるのじゃないですか。しかも私は総花的と言ったのは、売春防止法に関する機関委任事務廃止ですね、今度の廃止ですけれども、実績がないのですよ。何ら意味ないのです、これをやったって。労働省の失業保険問題も、基準局では多少あるようですけれども、いまの御説明のように、都道府県ではないのですよ。ないものを挙げているのですよ。どうですかね。私は、四十何件ですかね、今度出された中で。それこそ土光さんが恐らくそこでおっしゃったんだろうと思うのですね、第一歩というのは。まさに気恥ずかしい思いで出されたのではないかという気がするのですよ。しかもそれが、先ほど言ったように意思に基づいてやるんじゃないですから。  大臣、どうでしょうね。機関委任事務を見直す一番基本、根底になる数字ですから、いまのものは。いま一遍、機関委任事務について再検討あるいはそういう意味での緻密な調査をされる必要があるのではないか、私はこう思うのですが、いかがでしょうか。
  66. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 仰せのごとく別表に載っていないものもあるようでございますから、そうした点につきましては、自治省とよく相談をして洗い直してみまして、五百になるのか六百になるのか、私もいまはわかりません、これは実際のところ。三百九十八ということだけが言われておるのですから、そういう点は十分自治省と打ち合わせをしまして洗い直し、今後とも真剣に機関委任事務整理合理化については取り組んでいきたいと考えております。
  67. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そこで、恐らく機関委任事務は、先ほど自治大臣答弁からもありましたように、今後の行政改革推進審議会の問題になってくるんだろうと私は思うのです。  そこで、先ほど大臣は、審議会にお諮りをして、いわゆる委任事務の概念ですね、あるいは委任事務の基準、そういうものも含めて、あるいは参与制度を設けてもそういうものを検討してやりましょうという御答弁をいただきました。結構だと思うのです。しかし現実にいま、たくさん法律ができるたびに自治省の機関委任事務あるいは機関委任事務に近い形で地方自治体におろされて、地方自治体は自分のみずからの行政の中に繰り込みながらやっているわけですね。そこで、当面どういう歯どめを一体かけたらいいんだろうか。もちろん推進審議会から早急に結論を出していただいて、機関委任事務は、先ほど言いましたように二十七年から二倍あるいは二倍半になるなどというそんなばかげたことじゃなくて、だんだん削減して、臨調の趣旨にありますように、できる限り中央政府は、いわば国際的問題を含めて中央の、そして地方自治体に内政は任していく、そういう方向性をとるためにも、早く結論を出していただきたいと思うのです。  そこで、それでは当面そういう問題に対する歯どめをどういう形でかけるべきか、率直に言ってなかなか案がないのです。たとえばいま売春防止法の問題が出ましたけれども、私は、ほかの法律でも機関委任事務とされているのがあるんじゃないかと思うのですね。どうでしょう。最小限、法律ができた場合に、機関委任事務とする場合に準用とかなんとかの適用をせずに、三、四表の表に法律事項として記載をされるということが必要だろうと思うのです。  それからいま一つは、機関委任事務を行う場合に、これは地方自治体に機関委任事務としてよろしいかどうかということを審議をされるような場所ですね。たとえば何とか審議会とかあるいは推進会議でもいいですが、そういうところでこの審議をされるということ等が当面必要ではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  68. 山本幸雄

    山本国務大臣 先ほど来お話しのように、機関委任事務は確かにふえているという実態はあります。それはなぜふえてきたかということでございますが、それはやはり新しい社会経済状態のために新しい法律ができてきた。たとえば公害あるいは環境保全とかあるいは消費者保護関係とか、そういう新しい仕事が出てきたためにふえてきたということであります。それは、あくまでも従来の機関委任事務という概念の線でそういう事務がふえてきたと思うのですよ。  そこで、いまお話しのように、今度はだんだん整理をして減らすという考え方、その基本になる機関委任事務の概念、それをどういうふうな中央地方との関係において把握するかということをまずやるべきではないだろうか。そうすれば、その概念によって、今度は新しい法律ができましても、そこでやはりふえていくもののチェックができるのではないか。だから私は、どこまでもここでひとつ機関委任事務というものの法律的な性格といいますか、あり方といいますか、そういうものを、いま御提案ではいろいろな審議会をつくったらどうかというお話がございますが、何らかの形でそういうものをひとつここでしっかり詰めていきたい、政府全体としてひとつお考えを願いたい、こう私は思っているのでございます。
  69. 加藤万吉

    加藤(万)委員 ぜひこれは、私がいま提起しました地方自治法の別表にその法律を記載することを含めて御検討いただきたいと思うのです。あるいはその機関委任事務とする場合に、その是非についてぜひたとえば地方制度調査会、まあちょっと審議の場所が違うかもしれませんが、あるいは今度できる行革推進審議会ですか、そこ等で御検討いただきたいと思うのです。  私はなぜそれを心配するかといいますと、実は中央のそういう意思がないこと、それは結果的に中央集権化をずっとするという、何といいましょうか、上下の関係が地方自治団体と国との間につくられてくるというそういう危険性の側面と、いま一つの側面は、地方団体が関与できないんですね。たとえば地方議会で審議できないでしょう。機関委任事務に対して、これが是か非かということの関与は地方議会はできません。そうしますと、機関委任事務地方行政の中で七割から八割を占めるようになると、議会の機能というのはあとの三割から四割、独自の機能のところでしか生きないのですね。いわゆる民主主義の一番根底にかかわる問題に実はなってくるわけです。  そういう意味で、私は、機関委任事務というものをひとつ考えてほしい。でないと、日本の民主主義という課題に踏み込んでもきわめて重要な要素を持ってくる、こう思っておるわけです。ぜひいま言ったような角度で、もっと細かいことを質問する予定でいましたが、時間の関係でできませんから言いませんけれども、結局機関委任事務についての今度の行革の方針、方向性というものは、どういう性格政府の意思があるのか。それは新憲法下の地方自治法というものを、あるいは憲法に基づく地方自治というものを根幹に置きながら、出先機関、許認可の問題あるいはこの機関委任事務の問題を含めて、ぜひそこに基礎を置いて御検討いただきたい、こう思うわけであります。  次に、許認可制度について少し御質問します。  今回の法改正、それからこれは前から許認可の問題を含めて若干の廃止、委譲等が行われたわけですが、この許認可の廃止、委譲をする場合に、今度の臨調答申の中で、これは臨調答申全般を通してもそういうことなんですけれども、民間活力の活用ということが非常に各所に出てくるわけですね。したがって、許認可をする場合の民間活力を制限するような許可認可、あるいはそういうことによって起きる民間活力の圧縮といいましょうか、エネルギーの抑えといいましょうか、そういうことはできる限り避ける、こう言っているのですね。私は、それは一つの理屈だと思うのです。  ただ、それではたとえば環境条件だとか公害だとか、食品添加物の問題もそうですけれども、いわば国民が生活する場面で起きる許可認可、これも民間活力の云々だからということで許可や認可をカットするということになると、これは大変なんですね。たとえば、いま建築基準法関係が建設省で見直しをされているというふうに私聞いております。この場合に、見直しの一番の問題は、一つは日照権の問題がありますね。あるいは、狭い国土の中でたくさんの家が建っているものですから、それに伴う宅地公害というのはおかしいですが、建物公害といいましょうか、こういうものを見直さなければならぬのではないか。今度は消防法の方から見ると、たとえば建築基準法でカットされたところが、仮に火災が起きたときに、そこがあればもっと消火が早かったんだということがしばしばあるのですね。たとえば出窓の位置だとかいろいろあるのです。  いわば国民生活から見ては許可認可をカットしてほしくないということと、民間活力を最大限生かすために障害になる許可認可はこの際排除し合理化すべきだ、整理すべきだという意見と、私は対立していると思うのですね。しかも、言っては失礼かもしれませんけれども、土光会長さんは財界ですからどうしてもやはり気持ちとしては財界寄り、いわば国民のそういう視点を失いがちな面を、臨調答申としてもあるいはこれからの推進の面でも持たれるのではないかという心配を実はするわけですよ。  どうでしょう、大臣、いまの許可認可のそこの境界というのは非常に重要だと私は思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
  70. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、一般的に申し上げますと、たとえばいろんな資格、検定試験とかいろいろな問題ありますね。検査・検定、ああいう問題についてはできるだけ民間活力で、民間でやれるものはやっていただくという方向がいいと私は思っているのです、これは筋として。たとえば特殊法人でも、特殊法人をつくって検査・検定をやらにゃならぬというものかどうか疑問のある点はあります。ですから一般的に言うて、そういう資格の検定とかいったようなものはできるだけ民間に委譲するというやり方が私は適当じゃないかと思います。  しかしながら、現地住民の生命あるいは健康、そういう方面に関係の深い事項については、いきなりそれはやめてしまうというわけにはいかぬのじゃないか。あくまでも私どもは、国民の健康を守るということは重要な問題でございますから、そういう点については許可認可をやめるというわけには一般的な話としては言えない、こういうふうに考えております。
  71. 加藤万吉

    加藤(万)委員 現在の許可認可制度で民間活力を生かすという面では、僕は、まだほかの視点からとらえる面があると思うのですね。たとえば、いまの士業とかなんとかと師匠の師という字を書いた何とか師、非常に多いですね。不必要なくらい士業が多いですよ。私は、自由競争と民間活力を生かす面では、それこそ大変障害になっているのではないかという気がしてならない。  実は私の知っている、すばらしいお菓子をつくる職人さんがいまして、残念ながら学力がないのですね、ずっと奉公していましたから。この人が、お菓子をつくるための何とか師というものがありますね、それの試験に行こうと思ったけれども、字が余りうまく書けないものですから、そういう面で受からないのですね。その資格を持っていなければお菓子をつくることはできないわけですから。あるいはある調理師、この人も大変な板前さんだったけれども、学力の問題を含めて、やはり取れない、まあそれなりの資格を取る道はあるようですけれども。しかし、資格要件が逆に民間活力を削減しているのじゃないか。資格要件がこの自由競争の社会を狭くしているのではないか。  したがって、許認可、いま大臣がおっしゃられた資格の問題を含めて、民間活力というのはそこからメスを入れる。何か民間活力というと、いま公害になっている問題をちょっと排除してくれれば生産活動がよくなるとか、住宅建設で日照権の問題で困っているから少し日照権を緩和するとか、そんなことに行っては大変だと私は思うのですね。ぜひこれはひとつ考えていただきたいと思うのです。  それから神奈川県と広島で、その地域における地方行政システムの改革という課題にいま取り組んでいます。広島の方は私はパンフレットでちょこっと見た程度ですが、神奈川県の場合でも、先ほどちょっと事例に出しましたけれども、やはり国の行革の中で、こことこことこことを緩和ないしは廃止あるいは委譲してくれれば、地方団体としては新しい行政として大変やりやすいのだという幾つかのことがあるのですね。  たとえば大臣、地方制度調査会に参りますと、各市長さんや町村会長の代表の方あるいは知事さんの代表の方が、こういうことをしばしば私どもに言われるのです。国会でひとっここを緩和してください。これは何も神奈川県で長洲さんがというだけではございませんが、おっしゃるのですね。地方団体がこういう行政システムの改革をやろうということに対する評価をどのようにお考えになりますか。同時にまた、そういう行政改革をやることから起きる、いま言った許可認可、あるいは先ほどの委任事務も含めてでありますけれども、これに対して大臣は前向きに取り組むお考えがありますか。それをお答えいただきます。
  72. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 自治体がそれぞれの自治体の中におけるもろもろの行政改革に真剣に取り組んでいただくということは、私は非常に望ましいことだと思います。  そこで、実は先ほどは申し上げませんでしたが、行政改革推進審議会で参与制を設けて機関委任事務あり方等を含めて真剣に考えていただくということを申し上げましたが、その審議の過程において、私は、やはり地方団体意見をその場でいろいろ聞いていただくという機会はぜひつくっていただきたいというふうに考えておりますので、その参与制ができた暁には、国会でいろいろ議論のありました点も十分お伝えいたしますし、それから地方公共団体意見も十分聞きながら審議をしていただくという場をつくっていただくように話をしたいと考えております。
  73. 加藤万吉

    加藤(万)委員 それは非常にいいことだと思うのですね。ぜひ臨時行政改革推進審議会ですか、その場に地方団体が何らかの形で意見表明ができるということを、いま一遍くどいようですが、大臣、お約束していただけませんですか。
  74. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 機関委任事務は、そういう意見を聞きながら進めるということはやはり非常に大事なことですから、地方公共団体、知事会もありましょうし、あるいは市長会もありましょうし、あるいは町村会もあるかもしれません。十分地方公共団体意見も聞きながら具体的な問題の検討をやっていただくということは必要であろう、かように考えております。
  75. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いまの委任事務の優先の問題だとか、あるいは地方団体自身が合理化整理統合、そして身軽にしようということで動いていくことに対してぜひ評価をしていただきたい。同時に、私は、各市町村から出たもの、それから知事会から出たもの、同じようなもので、しかも優先度でどのくらいどういうものがあるだろうかということを調査してみました。それなりに項目を書き上げましたけれども、時間がありませんから言いませんが、いまここに出ているのは、私はそういう意味で第一歩に受けとめますから、今度の行革推進審議会で出てくる課題は、少なくとも私が言ったような一つの意思を持った、しかも憲法の精神に沿って地方自治というものを基本に置いて出ていくという、基礎に置くという、そういう意思を持った提起がされることをぜひひとつ大臣に要望しておきたいと思うのです。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕  最後に、行政組織法の改正の中で第八条の二項ですね。これは第八条ですが、ここには「試験所、研究所、文教施設、医療施設その他の機関を置くことができる。」というふうになっているのです。さらに二項として「前項に規定する機関地方に置かれる場合においては、地方自治法」――法律第六十七号ですが、「第百五十六条の規定の適用があるものとする。」こうなっているのですが、今度これを削除されまして落としました。  そこで、どうなんでしょう。出先機関が、試験所やそういうものがっくられる場合に、この地方自治法百五十六条の適用があるのでしょうか。
  76. 門田英郎

    ○門田政府委員 ただいまお尋ね国家行政組織法第八条改正問題でございます。  すでに御案内かと存じますが、現行の組織法では、審議会等であるとかあるいは研究所、学校、こういった施設でございますとか、こういったものをすべて八条で規定していたということでございますが、これは臨調答申に基づきまして、第八条、いろいろ雑多な機関があるものを整理し、明確に区分するという御答申がございまして、それに基づきまして、御案内のとおり第八条、審議会等、第八条の二、施設等機関、第八条の三、特別の機関、こういうふうに区分整理させていただいたわけでございます。  そこで、お尋ねの点でございますけれども、第八条の二で、今回、試験所、研究所、文教施設、医療施設、こういったたぐいのいわゆる施設等機関、これを区分した際に、その設置形式につきましては、直接に実体法上その国民の権利を制限するあるいは義務を課するというふうな性格にたぐいするものにつきましては、従来どおり法律事項とし、その他のものにつきましては政令にこれをゆだねていただきたいという御提案を申し上げておるわけでございます。  こういうことにしておるわけでございますが、現行の第八条の第二項に規定をしております地方自治法第百五十六条との関連、これにつきましては、この規定がそもそも念のため規定とでも申しますか、いわば確認的な規定であるという見地から、今回の第八条改正に伴いまして削除することとさせていただいたわけでございまして、御質問の今度どうなるのかという点でございますが、現在のやり方、システムというものについていささかも変更を加えるものではない、こういうふうに御理解をいただきたいと存じます。
  77. 加藤万吉

    加藤(万)委員 八条二項が念のため規定でありますから、したがって、地方自治法の百五十六条に基づきまして、研究機関あるいはここで定めている文教施設、試験所等は現状といささかも変更はございません、結果的には地方自治法百五十六条のところで書いてある、国会における審議、同時に承認を受ける、こういうことになるわけですね。
  78. 門田英郎

    ○門田政府委員 従来、このたぐいのものにつきまして、たとえば検査・検定機関でございますとか、こういった問題につきまして国会の御承認を仰いだことが何度もございますが、そういう点については従来と変わるものではないということでございます。
  79. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いまの局長答弁でいいんですが、問題は、この第八条の二項というのが削除をされるのは念のため規定だったから、実体は百五十六条にありますから、念のため規定は削除しましたという御答弁ですが、実はこれは違うんじゃないですか。  地方自治法というのが先にできたのですよ。そして、国家行政組織法というのは後からできてきて、結局、国の試験所や研究機関がつくられる。そのために、ときには誘致もありましょうし、ときには国からぜひともという形がありましょう。そのたびごとに地方団体が財政的な負担あるいは寄附行為、そういうものがあるがゆえに、あるいはそれが地方行政にそういう財政的なことも含めて影響を与えますがゆえに、第八条の二項はわざわざ設定をしたんじゃないですか。いわゆる念のため規定ではなくして、第八条の二項は、そういうことを排除をするという意味では、やはり国会の承認を得るという第二項を、いわゆる地方自治法を援用して第二項を決めた、設置をしたというのが本当ではないですか。  とすると、私は、第二項を削除する必要がない、実体的にもそういうことをこれからやるのですということになれば、第二項を削除する必要はない、こう思うのですが、いかがですか。
  80. 門田英郎

    ○門田政府委員 ただいまお尋ねがあったわけでございますが、同じことを申し上げるわけでございます。  もともと、これは念のため規定であったということでございまして、今回国家行政組織法改正を御提案するに際しまして、単に削除させていただくということにすぎませんので、先ほどから再三御答弁申し上げているとおり、地方自治法百五十六条との関係での従来の取り扱いと全く変わったことではない、かように考えておりますし、かつ、この件については自治省の方でも同じようにお考えであると承知しております。
  81. 加藤万吉

    加藤(万)委員 恐らく自治省の事務当局とお話をした結果、これからのそういう問題についてはこの百五十六条の適用によって処理しますということになったんだろうと思うのです。  しかし、これは少しうがった見方をいたしますけれども行政組織法の中で各局の位置づけの問題、所掌事項の問題等が別の法律で出ているわけですね。私は、うがった見方ということを前提に置きますけれども、事によったら、国の試験所あるいは研究機関を含めて、この際国会の承認事項は要らない、国会の承認を求める事項とはする必要がないというお考えを持っていたのではないのでしょうか。  ただ、いま時代が少し変わりましたから、前のように、寄附行為や地方団体に対する財政の負担の面で実は八条二項を挿入したということと同時に、いま一つは、最近の、たとえばエネルギー政策を一つ見ましても、ソフトエネルギーからハードエネルギーの問題等が出てくるわけですね。そうしますと、いやがおうでもそれから来る地方の住民への問題、課題というものは、たとえば原子力エネルギーは東海でやっていますけれども、仮にそういう試験研究機関ができた場合に、地方団体としてはこれを排除するあるいは受け入れられない、それを国会で論議をしてほしいという、そういう面も率直に言って出てくる可能性があると思うのですね。これからはどういう研究機関や試験機関ができるかわかりませんけれども、したがって、私は、そういう意味では、やはり仮に百歩譲って八条二項が念のため規定というならば、念のため規定も置いておいてもよろしいのではないか、現実にこの百五十六条が実体法として変わらないならば、そういうことをしてもよろしいのではないか、何もわざわざここで排除する必要はないのではないか、こう思います。  これはどこまで行っても意見の平行でございましょうから、これ以上やめます。  最後に、大臣、私はずっと通してきょう御質問さしていただきましたその根底は、申し上げるまでもありませんが、やはり新たな憲法いわゆる新憲法に基づく地方自治というものをどう守っていくのか、あるいは地方自治とそこに存在する民主主義というものをもし政治家が軽視をするならば、まさにそれは大変なファシズム的な、ファッショ的な国家になってしまうということが実は念頭にあるわけです。  先ほどもお話ししましたように、もしも国の委任事務がどんどん拡大をして、しかもその委任事務に対しては国の背景的な指導と支配というものがある、あるいは上下関係になってくる、あるいは地方の議会は形骸化してしまって、事実上は、地方独自の仕事と言いながら、全部行政機能は国が関与する機能あるいは委任事務との関係の中に埋没してしまう、このことを実は恐れるわけですよ。  そういう風潮がいまの国会あるいは政府側の姿勢全体にあるものですから、特に中曽根内閣になりましてから、そういう何となしに国民がおびえるような、そういう風潮といいましょうか、議会の軽視の問題も含めて、私どもの矢山有作議員の問題もまだ解明されてないようですけれども、例の人工衛星の問題ですか、例の問題ですね、これも解明されてないようでありますが、こういうことを含めて、議会軽視の方向に行く。国がそうなってくれば地方もそれに準じてしまう。しかも、地方にしてみれば、厄介な議会なんというのがなくてやれば、首長はいいでしょうけれども、国民の方から見ると大変なことになるわけですね。  私は、そういう視点をぜひ忘れずに、これからの推進審議会あるいは次に提起をされるべき課題について、大臣の信念を含めた御答弁をいただきたいと思う。  これは、自治大臣も同様の立場で、地方自治をあずかる立場から見て、これから閣議なりあるいはこの審議会に対して、信念としてどういう基本的な態度で臨むかお聞きしておきたい、こう思うのです。
  82. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 中央の行政地方自治、これは国の行政全般を通ずる車の両輪でございますから、相互に緊密な連絡をとっていくということが最も必要であろうと考えております。特に、きょうは非常に御熱心に御鞭撻をいただきました機関委任事務の問題等につきましては、先ほど申し上げましたような趣旨に立って全力を尽くして前向きに努力をいたしたいと考えております。
  83. 山本幸雄

    山本国務大臣 大体私は、政府部内でいろいろお話をしても、地方自治の理念というのは一応わかる、わかるけれども、さて具体的な問題になるとなかなか進まないというのが、いまの実情だと思うのです。そこで、具体的にもやはり進むように今後ともやっていかなければならない。  これは、いまの縦割りになっておると言われておる、まあいろんな行政がありますから、その中で、地方分権ということを本当に具体的に、理念だけじゃなくてやっていくというのには、たくさんのむずかしい問題があると思います。しかし、私どもは、ぜひひとつ、理念は理念、よくわかっておる、それで具体的な各論でひとつ地方自治の、地方分権の推進の上に役に立つような方向へやっていきたいと思っております。
  84. 加藤万吉

    加藤(万)委員 終わります。
  85. 三塚博

    ○三塚委員長代理 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時二十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ────◇─────     午後一時二十一分開議
  86. 三塚博

    ○三塚委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木下敬之助君。
  87. 木下敬之助

    ○木下委員 まだ大蔵大臣がお見えじゃないようですが、それでは、ちょっと順序がいろいろになりますけれども通産大臣が何かお時間の都合があるそうで、関連のを一番先にやらせてもらいます。  法定耐用年数の短縮という問題についてお伺いいたしたいと思いますが、現在、技術革新による設備の経済的陳腐化の速度はきわめて早いものでありまして、また、現行の減価償却制度のもとでの投下資本の回収額はインフレの進行等で著しく目減りいたしております。企業の維持すべき資本の食いつぶしが進む状況にあると思われます。鉄鋼業を例にとると、昭和六十年代には合理化投資に加え本格的な設備更新のための投資を行う必要に迫られ、巨額の資金負担が見込まれていますが、通産省の設備投資問題研究会報告が指摘するように、投資コストの増大、企業収益の悪化等により、その円滑な実施が危ぶまれています。  そういうことで、お伺いをいたしますが、将来の円滑な設備投資に対処するため、鉄鋼業を初め機械設備の法定耐用年数を短縮すべきだと考えますが、大臣はどうお考えになりますか。
  88. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 通産省といたしましては、設備に関しましては投資減税ということも一つ方法だろうというので、いまやかましくそれを言っておりますし、また、耐用年数の短縮ということも必要ではないか、こういうお問いでございますが、確かにそういう面も検討に値する問題であるかもしれません。ただ、われわれといたしましては、やはり財政等々をにらみ、また現在の景気回復をもにらみ、あるいは投資が将来における種をまくことであるというふうに考えてまいりますと、あらゆる観点から、どれに重点を置くべきかということを選択しなければならない問題ではないかと思うのであります。  同時にまた、いま鉄鋼という一つの例がございましたが、鉄鋼のみならず他の部面におきましても、耐用年数ということを考えますと、たとえば現在何が必要か、あるいは将来どういう産業が必要か、そういう選択によりまして重点的に考えることも必要じゃないだろうか、こういうふうに思いますので、非常に貴重な御意見をちょうだいいたしましたから、そうしたことも含めまして考えたいと思いますが、現在のところは、一般的な耐用年数ということに関しましては、もう少しく選択の余地があるのではなかろうか、こういうふうに私は考えております。
  89. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、大蔵省の方にこの問題についてお伺いいたしたいのですが、仮に鉄鋼業などの機械設備について耐用年数を一年短縮したとすると、どのくらいの財源が必要と見込まれるか。財源というのは、つまり一年短縮を実施したらどのくらい税収減となってはね返ると見込まれますか、お伺いいたしたいと思います。
  90. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答えを申し上げます。  減収額計算の基礎となります減価償却資産の取得価額に関する正確なデータを持ち合わせておりませんものですから、推計がかなり入るわけでございますが、オーダーといたしましては数百億円のオーダーになるかと存じます。
  91. 木下敬之助

    ○木下委員 この問題に対して、通産省、大蔵省も、政府の考えは耐用年数の短縮に関して消極的な姿勢に過ぎるのではないか、こう思います。外国との比較で考えてみましても、鉄鋼の熱間圧延設備で耐用年数を比較してみまして、アメリカは五年、フランスは八年、カナダは二年、イギリスは一年です。これに比べて日本は十五年と、耐用年数の差は大変大きく離れております。欧米各国が投資回収期間を短縮して技術革新に円滑に対応した設備投資の促進策をとっている現在、わが国も財政的制約を乗り越えて耐用年数の思い切った短縮に踏み切るべきではないかと考えますが、大臣、いま一度御答弁願います。
  92. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私といたしましても、現在、いろいろの場面を想定いたしますと、確かにいまのお説は一つのお説だと先ほど申し上げたとおりでございます。現に、リース業なんかがはやっておりますと、リースという面の耐用年数とそうでない面の耐用年数の間の差もあることは事実なんです。  私といたしましては、あれも考え、これも考えたいとは思いますが、何と申し上げましても御承知のとおり財政再建期間中であります。したがいまして、そういう拘束のもとに何が最も有効であるかということを考えなければならないのも、やはり政府の一員といたしましては当然のことではなかろうかと思っておりますから、また財政がゆったりいたしましたら考えたい問題でございますが、とりあえずのところ、あれもやりましょう、これもやりましょうということははなはだむずかしいので、十二分に選択をさせていただきたいと思います。通産省といたしましては、とにかく設備投資とそれに対するところの減税措置、これはお願いしますよというのがいま申し上げられる第一番目の政策ではないか、かように考えておる次第であります。
  93. 木下敬之助

    ○木下委員 いろいろな選択があると言われますけれども、これを優先してすることが必要であり、これは景気回復にも重要な影響のある問題だと思いますので、どうぞ今後とも御検討お願いいたしたいと思います。  もう一問お聞きいたしたいのですが、仮に耐用年数の思い切った短縮がいますぐ無理であったとしても、当面投資減税制度の拡充強化を図るべきだと考えますが、この点はどうお考えでしょう。
  94. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 これは、過般来の予算委員会におきましても、私といたしましてはぜひとも推進したい政策である、こういうふうに考えております。
  95. 木下敬之助

    ○木下委員 どうぞよろしく御検討お願いいたします。  大蔵大臣お見えですから、お伺いいたしたいと思います。  臨調答申では、「財政再建の具体的な手順と方策についての考え方を明らかにして、国民の理解や合意を得るよう努力する。」こういったことを政府に求めておられます。これを尊重して、財政再建の具体的な手順と方策、これをはっきりと示さなければ、国民はなかなか先行き不安であろう、こう思うのでありますが、要調整額等も一体どういうふうな形でこれを埋めていくのか、まだ具体的なものが示されておりませんので、この機会にぜひお示しを願いたいと思います。
  96. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政再建の手順を示せ、かねて予算審議等の際におきましても、これが御指摘があっておりました。新たなる事象といたしましては、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものが出たわけであります。したがって、当然のこととして、それを下敷きにいたしますと何らかの展望を示さなきゃいかぬ。それは五十九年度予算を御審議いただく手がかりとして何らかのものは示さなきゃならぬと思っております。  きわめて抽象的に言いますと、臨調で申されておりますように、まずは「増税なき財政再建」ということを理念として堅持することによって、糧道を断ちながら歳出削減に厳しい姿で臨め、こういうことが第一点であろうと思っております。その上で、国民の皆さん方の選択に結局は帰するところでございますが、現行の制度、施策をそのまま維持しなければならぬかどうか、それらも国民との問答の中に見定めて、そこで、されば負担するのも国民であり、受益者もまた国民でありますので、負担増というような議論は初めてその際に出てくるべきものであって、まずは歳出削減に糧道を断って臨まなければならぬ。そういう姿勢を貫きつつ、そこに「経済社会の展望と指針」に示されておりますごとく、六十五年度を一つの努力目標として赤字国債からの脱却を図る努力をするとともに、終局的には公債依存体質を徐々に改めていくという段取りになるのではなかろうかというふうに考えます。
  97. 木下敬之助

    ○木下委員 展望にしてもそういう具体的なものが示されなくて、ただこういう調子でやれば何とかなるだろうと言われたのでは、先行きの不安感というのはどうしても払拭できないと思います。  そういう中で、五十九年度予算審議までには明らかにしていかなければならないものがたくさんあると思うのですが、この要調整額を具体的にどうするかというのは、これからどういう形で明らかにしていくつもりですか。いつごろまでに明らかにしていけるという考えでございましょうか。
  98. 竹下登

    ○竹下国務大臣 五十八年度の予算審議の手がかりとして御提出いたしましたケースA、B、Cとございます。それによりまして試算したいわゆる要調整額、こういうものがあるわけであります。しかし、その要調整額というのは、言ってみれば、もろもろの基準をある一定のものに置きまして、それに積み上げてできたものであります。したがって、五十九年度に予測される要調整額というものも、概算要求等からいたしましても、それよりはかなり減っていくだろうというふうに思われるわけであります。したがって、要調整額というようなものは何によって埋めるか、それは最終的には私はこの三つになろうかと思います。すなわち、歳出削減かあるいは国民の負担増かあるいは借りかえ用も含む公債の発行か、こういうことになろうかと思いますが、それそのものをいつの時点でどういうふうにするということを定量的にお示しするのは非常に困難な問題でございます。  しかし、いまちょうど「経済社会の展望と指針」が出されましたので、私どもといたしましては、財政制度審議会にこの間私も出かけまして、小委員会もつくっていただいて、そこでその進め方について検討してやろう。いかなる内容になるかということにつきますと、これは財政審も税制調査会と同じように今後の財政運営のあり方というふうな大変大きな諮問をしておりますが、その議論の中では一つ方向がかなり示されていくのではなかろうか。そうなると、それを踏まえながらどの程度のものが出せるかということになると、これはやはり国会との議論を通じたり、あるいはわれわれが準備できる可能なものはこの辺ですというあらかじめの話し合いを行ったりしながら、何らかのものは提出をしなければならぬ。その中身が、たとえばどれは固定的な数字が出せるかとかというところまでいくいかぬの問題については、今後の協議の中で、そしてわれわれの可能な範囲内のもので、これを審議の手がかりとして御提出しなければならぬというふうに考えております。
  99. 木下敬之助

    ○木下委員 こういった審議が、いつも大体同じようなところで、本来ならば出てこないことには審議が進められないような内容のものも出されないまま、ずるずると審議しておるような感じもありますが、どうか大蔵大臣、本当に慎重に、十分に研究なさって納得のいくものを出していただきたいと思います。今後のそういった前向きな姿勢を期待いたします。  次に、石油の問題について、通産大臣お急ぎのようですからお伺いをいたします。  この春以来大変な安売り合戦が続いておりましたガソリン価格は、九月から一斉に値上げされたわけでございますが、それまでの安売り競争は相当ひどいもので、乱売による赤字経営が続いては、安定供給という面から見ても安全面から見ても問題であった、こういう状況であったわけですが、九月のガソリン値上げに関連して、通産省としては何か行政指導を行ったという事実はあるのでしょうか。
  100. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 そういう事実はございません。
  101. 木下敬之助

    ○木下委員 これまでの通産省であったなら、かつての通産省でありましたら、今回のような業界の存亡にかかわりかねない乱売を是正するために、たしか過去二回ほど行ったような標準価格の設定に踏み切った、こういうようにも考えられるわけですが、そうした統制的な手段を用いなかったというのはどういう理由からでございましょう。
  102. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 九月までのガソリンスタンドと元売りとの石油価格の仕切り方策が実は最初から決められずに、それでガソリンスタンドで売ったその価格によって払った、こういう関係でございました。だから、過当競争いたしまして安く売りましても、結論は、元売りに、これだけ安く売ったからおまえさんのところは安く仕入れなければならぬ、こういうふうなことで、言うならば非常に混乱を来しました。したがいまして、今回の措置は、元売り自身がそういうことがあってはいけない、こういうふうな判断で自主的にやったわけでございまして、われわれといたしましては、石油状況は今日は非常に需給緩和されておりまして、いろいろとむずかしい問題もございますが、あくまでも石油の価格は市場メカニズムによって確立されるものである、こういう考えでございますので、介入しなかったということであります。
  103. 木下敬之助

    ○木下委員 私の方で調べ、聞いて回った範囲ですが、今回のこういった乱売というのは、高いじゃないかとかちょっとでも安くというふうなユーザーの側から起こったことだけではなくて、こういった問題を生み出す原因は石油業界の体質である、こういう見方があると考えるのですが、この点は政府はどういうふうにお考えになりますか。
  104. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いろいろむずかしい問題がございますから、私が言い切ってしまってもいかがかと思いますので、事務当局から答弁をさせます。
  105. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 先生御指摘になりましたようなガソリンの値段が逐次値下がりを来すようなことになりました背景には、需要がなかなか伸びない、弱含みであるというような状況のもとで、石油業界の過当競争体質が基本的な理由になって、安値競争的な性格を生み出したのではないかというふうに考えておりまして、そういう意味で構造的な問題が露呈したものと考えております。
  106. 木下敬之助

    ○木下委員 先月公表されました欧米石油産業調査団の報告によれば、欧米の政府や石油業界は、石油需要の減退、設備過剰に対処するため、精製設備の処理、製油所の閉鎖など、石油産業が生き残るための戦略を全力を挙げて展開している、こういう様子でございますが、政府はこの欧米調査団の報告をどのように受けとめておられますか、大臣の率直な御所見を伺いたいと思います。
  107. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いま仰せのとおり、調査団も欧米における厳しい環境整備ということを現実に調査してまいりました。したがいまして、わが国といたしましても、特に資源小国でございますから、石油業界みずからが厳しい環境というものを十二分に認識して、欧米同様の措置をすることも必要ではないか、私はこういうふうに思いますが、やはりそうしたことが一口に申し上げますれば構造改善というものにつながると存じまして、ただいま審議会におきましてもそれぞれ検討いたしてもらっております。しかし、私は現状のままでいいとは少しも考えておりません。やはり相当厳しく認識をされて、たとえば元売りの集約化なども考えていかなければならない問題ではないかというふうに考えております。
  108. 木下敬之助

    ○木下委員 この二年間の通産省の石油行政を見てみますと、シーリングプライスの撤廃、ナフサの自由化、C重油の一部輸入、生産調整の緩和、このように石油業界に対する規制緩和の方向が色濃くなっているというふうに見えるのですが、こうした一連の石油行政はいかなる基本方針のもとに進めておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  109. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 石油行政の基本的な方向につきましては、かねて石油審議会におきまして方向づけが行われておりますけれども、現在は、五十六年の十二月の石油部会の小委員会におきます報告によりまして、その基本的方向として、「極力誘導的な措置にとどまることを目指し個別の介入については漸進的に縮小・緩和していくべきである。」というような指摘を受けております。  かような方向づけを踏まえまして、私どもとしても、先ほど先生の御指摘にございましたような行政措置を講じてきておるところでございますが、他方、石油は先生いま御指摘のように経済社会の大変基礎的な物資でございまして、その安定供給は何としても確保していかなければならないと存じますし、また、国際石油情勢の影響等も受けやすい石油本来の性質もございます。これらに対する行政対応も怠るわけにはまいらないと存じますので、これらの状況を踏まえまして、先ほどの調査団の報告書なども参酌しつつ、今後の石油政策の中長期的な方向づけにつきまして現在審議会で御審議を賜っているところでございまして、その審議の結果を踏まえて私ども行政的に対応していきたいと存じております。
  110. 木下敬之助

    ○木下委員 いま言われました石油審議会審議過程を踏まえて石油業法の見直しに本格的に取り組むことと思いますが、その中心的な課題であります消費地精製主義の見直し、そして元売りの集約化については先ほど大臣は進めるような方向で言われておりましたが、この二点について、どういう観点から対処するか、お答えをいただきたいと思います。
  111. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 消費地精製方式につきましては、国内におきます各種の石油製品の需給の安定を確保するという意味から、今後ともこれを基本としつつも、中長期的には、必要な条件の整備を図りながら、漸進的に極力国際化方向を目指すという方向づけが審議会で行われておりまして、私どもも、そのような方向を踏まえて今後さらに具体的な検討審議会お願いしたいというふうに存じております。  それから元売りの集約化につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、石油産業みずからが置かれた環境の厳しさを十分に認識して、自己経営責任によって自主的に対応していただくことが基本だとは存じますが、行政面からもどのような方向づけ、環境づくりができるか、石油審議会においてこれから御審議を賜ることになっているところでございます。
  112. 木下敬之助

    ○木下委員 石油業法の見直しに当たりましては、十分御承知と思いますが、石油産業が国家の基幹産業であることを踏まえて、石油産業が生き残れるよう確たる方針を打ち出されますよう要望いたしたいと思います。特に、末端流通業者はそのほとんどが中小零細企業でありますから、これに重大な影響が出ると大変な社会問題でもございますので、こういった点も十分考慮に入れて方針を出されますよう希望いたします。  続きまして、タンカー備蓄についてお聞きいたしたいと思いますが、このタンカー備蓄の継続については、昭和五十三年から石油のタンカー備蓄が開始され、今日まで関係者の努力により一件の事故もなく続いております。通産大臣は、参議院予算委員会において、タンカー備蓄を一部陸揚げし、民間のタンクに移していく方針を明らかにされたようですが、財政事情が悪化したからといって、採算面からだけで石油備蓄という国の安全保障にかかわる政策を転換する、そういった政府の姿勢に私は失望しておるわけでございます。  大臣に確認いたしたいと思いますが、タンカーによる石油備蓄には、陸上の場合に比べて幾つかの利点があると思います。たとえば、タンカー備蓄は地震、台風などの天災を回避できるだけでなく、機を逸せずして緊急輸送に対処できることは関係者周知のとおりであります。通産大臣はこのようなタンカー備蓄の利点を認めているとは思いますが、見解をお伺いいたしたいと思います。
  113. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 タンカー備蓄に関しましては、いまおっしゃったような利点があることは確かでございます。同時に、今日の備蓄自体を考えますと、私は、決して備蓄は減らすべきじゃなく、着実に国家のセキュリティーとして進めていかなければならない、こういうふうに考えております。ただ、原油価格値下がりとかあるいはまた消費量の減量とかいうことから、おのずからそれに課せられております税を一つの歳入といたしました特別会計におきましては、歳入が縮小されることも事実でございます。私はいつも申し上げるのですが、歳出があるから歳入の穴埋めをせよという考えではないし、また、歳出自体も本当に今後何が重点的になさるべきかという合理化あるいは効率化を図らなければならない、こう考えております。だから、そういう両面にバランスをとりながら今後備蓄という問題を考えていく。  特に、備蓄の中には、陸上備蓄で民間のタンクがあいておるじゃないかという説もございますから、一部そうした面におきまして海上備蓄を陸上に移すということは考えております。しかし、今後備蓄がどうなるかということは大切な問題でございまして、特にイラク・イランが事なければよいと思いますが、まだもやもやしたようなことでございますし、あるいはまた、円高が続いておりますが、為替相場が今後どういう変動を来すかということ等も考え合わせますと、備蓄一つを考えましてもまだまだこれでよろしいという決断を出す段階でもないだろう。そこら辺を総合的に考えていきますので、決してタンカー備蓄を軽視しておるというものではございません。
  114. 木下敬之助

    ○木下委員 もう一点、この備蓄についての私の考えを申し上げますが、もし仮に報道されているように昭和六十年度をもってタンカー備蓄を打ち切るとすると、千人近い日本人船員の職場が奪われて、深刻な不況に陥っている海運業界が大量の係船を抱える最悪の事態になる、このように考えます。行革というのは行政機構の簡素効率化を進めるものであって、決して行革の名のもとに福祉を切り捨てたり雇用の場を奪うものであってはならないと思います。原油の国家備蓄について陸上、海上の二本立てを今後とも継続すべきであると考えますが、政府はどうお考えになりますか。
  115. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 陸上に関しましても、実は今後のエネルギーの需給見通しの上に立ちまして、非常にむずかしい立地条件があったのでございますが、それぞれの地域にお願いを申し上げまして、そして順次基地を設定していったという経緯がございます。だから、現在備蓄が減りますと、それらの地域からも早くふやしてくれという声がしばしば私の耳に届いてまいりますから、それらのことも考えなくてはなりません。  また、海上備蓄に関しましても、いま申されましたとおりの経緯がございますから、それらも十分政府といたしましては考えておかなければならない、かように存じております。
  116. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、次に電電公社の臨時国庫納付金という問題についてお伺いいたしたいと思います。  電電公社の五十七年度決算が、当初の収支差額見通しは一千七十六億円ぐらいだったと思いますが、三千七百億円に達して、五十二年度以来黒字基調が定着しているため、財政当局は五十八年度で打ち切られた臨時国庫納付金の徴収を復活させるのじゃないか、こういうことを考えているのではないかということもお聞きするのですが、どういうお考えでしょう。
  117. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは木下委員指摘のとおり、五十六年度のいわゆる財確法に基づく臨時国庫納付金四千八百億円の納付は、五十八年度をもってまさに完了いたします。今後納付金を強化しないことは、国の財政状況、公社の財務状況も明確でございませんきょうの段階では――が、そういう傾向が定着しておるとおっしゃったことは事実でございます。したがって、確言することは困難でございますけれども、たびたびこの問題をお願いする際にもお答えしておりましたように、この種の納付金をイージーに考えるべきではない。が、よだれがたれるような気持ちも皆無ではない、こういう素直な表現をさせていただきます。
  118. 木下敬之助

    ○木下委員 お気持ちが大変よくあらわれておりますけれども、これが前に案が出てきたときにも、私ちょうど逓信委員会におりまして大変反対したのです。  何よりも反対の理由に、電電公社の電話に関しましては遠近格差を是正しなければならぬという大きな問題が残っておると思うのです。この遠近格差の是正というものは、そこに財源があるときに一応不当であると考えられる遠距離の方を安くするのに充てるのは簡単ですが、是正するために、では近距離を上げてどうこうというのは非常にむずかしい。だから、財源のあるときにやってないと、理屈の上では是正する必要があっても非常にむずかしいから、この際、国庫に納付することなくそれに充てるのが何よりであるという話をしてきたのです。その考えは私いまも信念を持って正しいと思っております。  そういった意味でも、この国庫納付金を徴収するという方向は、幾らよだれが出るほどあったとしても、身近に電電自体が直さなければならない、正さなければならないものを抱えておるわけですから、そういう点も考慮して、大蔵サイドだけで考えられたんじゃ困る、こういうふうに思います。郵政大臣、どうお考えになりますか。
  119. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 御指摘のように、五十二年以来電電公社の財務は健全な財務を保持してきておるわけであります。  私、郵政大臣としては、財務に余裕がある限り、それは電話の利用者に還元するのが筋であると思っておるわけであります。たまたま五十六年度の予算編成に当たりまして、国の財政が異常な厳しい環境にあり、財政再建が喫緊の課題であるということで、五十六年以後五十九年までの間に四千八百億円の納付金をするということに賛同いたしたわけでございます。そうして、五十八年度に五十九年度分千二百億円を繰り上げまして二千四百億円の納付を終えたわけでございます。この臨時特例的な課題は忠実に果たし終えたと思っておるわけでありまして、私としては、今後重ねて国庫納付金を継続していくということにつきましては賛同できる心境にはございません。
  120. 木下敬之助

    ○木下委員 もう一つ、大蔵大臣にお伺いいたします。  電話利用税というのも考えておるのではないかというように聞くのですが、これもやはりよだれが出ますか、大幅黒字を背景に考えると。
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 よだれを出してばかりおってもいけませんので。  この電話利用税というのがクローズアップされましたのは、昨年の衆議院大蔵委員会の減税問題に関する小委員会において、所得税減税財源に関連して検討課題として取り上げられたという経緯でございまして、がちっと議題になったというものではもとよりございません。  したがって、この問題につきましては、木下委員に対してこの場でこれはアウトとかいうことを言える環境にないということは、すなわち、もうあと一週間程度でございましょうか、税調が企画部会等で御審議いただいて、いわば今後の税制のあり方という大諮問をしておるわけですが、その中で今次国会において話し合いのありました減税問題を含め御検討いただいておるさなかだものでございますから、これの結末と申しますか明確な返事は、ほんの――ほんのわずかといっても、鋭意毎日審議いただいておるものでございますから、予見を挟むわけにはまいらぬという立場を御理解をちょうだいしたいと思います。
  122. 木下敬之助

    ○木下委員 電話料金の遠近格差という問題について、郵政大臣のお考えをお聞きいたしたいのです。  先ほども申しましたように、この遠近格差というのはやはり大変な問題なんですよ。実は私、もう二十何年前、学生のころに九州の田舎から東京に来ていて、家に電話する電話料金が高いものですから、電話をかけて、おふくろにかけ直してくれと言ってがちゃんと切って待っていると、田舎からかけてくる。そうすればこちらの小遣いは痛まない。これは簡単に言いますけれども、本当にちょっとでもまともな話をしていると、その当時としては小遣いがみんな吹っ飛ぶような金額だった。いまでも、その当時に比べれば一番遠いところが一対四十ですか、ずいぶんよくなっていますけれども、それでも諸外国に比べてもまだまだ高いです。私は、これが当初の電話料金を決めたときのように、交換手がいまして何カ所もつなぎ出す、そうすると遠距離はそれだけ原価がかかっているという状況なら、これは仕方なかったかもしれません。いまはもうそんなことはないのですよ。だから、いま現在のコストで遠距離がそんな高くなければならないという必然性が私はないと思う。  その必然性がないところに、特に経済の中心が日本列島の真ん中辺にあるとしたら、そうじゃなくてもいろいろな意味での地域の格差の多いところがそれだけ余分な負担をさせられている。各県の東京事務所にしたって、日ごろの日常の電話連絡は大変なものですよ。これからいろいろな情報通信のものが発達してきても、そんなのも回線を利用すれば同じような体系でお金を取られていく。これはなぜその料金でなければならないのかという説明ができないのなら、やはり諸外国に並べるか納得のいく範囲にしなければならないと思います。この問題について今後どのように考えておられるか、郵政大臣のお考えをお伺いいたしたいと思うのです。
  123. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 御指摘がございましたように、わが国の電話料金は遠近格差が大き過ぎるという意見がもう長く論ぜられてきたところでございまして、郵政省、電電公社としても、できる限り遠近格差を縮小していくという方途をとってきたわけでございます。  もう御案内と思いますが、五十五年十一月、五十六年八月、それぞれ遠距離電話料の引き下げを図ってきたわけでありますが、本年の七月二十一日から三百二十キロ以上はすべて四百円ということで、御指摘どおり近距離と遠距離の最高の格差が一対四十ということになったわけであります。ただ、日本の近距離電話料金というのは世界一安いわけでありまして、アメリカあたりに比べますと、大体日本の近距離電話料いわゆる市内電話料というのは二分の一ということでございますので、遠近格差ということでありますと、アメリカと日本とは大体同じになったわけでございます。  まあ世界の電話料金にいろいろなスタイルがあるわけでございますが、おおむね電話料金というのは時間と距離との相乗で徴収するのが一般であります。その考え方は、遠距離につきましては遠距離なりの通信網の敷設の投資が要るわけであります。ただ、これからの遠距離通話につきましては、新しいメディアの開発が行われておるわけでありまして、これはおのずから従来とは違った様相になることは当然想像されるところでございます。  でございますので、いろいろな観点から申し上げまして、私は、将来の日本の電話料金の体系は、近距離、中距離、遠距離を含めて料金体系の合理化を図る、その中で遠近格差というものを縮小していく方向で考えていかなければならぬというふうに思っております。
  124. 木下敬之助

    ○木下委員 遠距離との一対七十五、それが一対四十になったとか、こういったことが問題になるばかりに一番遠いところばかりを安くして、中距離は従来のままで残ったようなかっこうになっている。合理的じゃないんですね。納得のいく合理的な料金体系に変える必要がある、このように思います。どうぞ格差是正のために今後とも取り組んでいただきたいと思う。  重ねて申し上げますが、そういった意味で、近距離は安いからといって、ではこれを上げて財源に充ててどうこうというより、まず、安い料金の中でも現在ちゃんと黒字が出ているわけですから、とりあえずその黒字は全部高く取っている部分を安くして返して、その上で考えていただきたいと思います。どうぞそういう方向で今後とも進んでいただきたいと思います。  話があちこち飛びますけれども、次に、外資系損保の問題ということで二、三質問をいたしたいと思います。  これは臨調第五次答申において、「外国企業の我が国保険市場への参入意欲も高く、このような情勢に的確に対応することが求められている。」こういった指摘がありました。しかしながら、外国企業のわが国市場への参入に際しましては、外国企業にもしかるべきマナーを守ってていただく中で共存共栄を図ることが必要である、こう考えます。本年二月に発行されました「インシュアランス」という業界紙ですが、これに「外資損保の一面」という問題提起の一文が掲載されておりました。その後また、「選択」という一般情報誌ですが、これにも相当詳しい内容で、外資系損保のある会社の異常に高い出再率、一度受けた保険料をまたほかの会社に再保険として出すわけですが、この出再率が非常に高いという点を取り上げて、これは非課税の利益送金ではないか、こういった疑いを述べております。そういう観点から質問をいたしたいと思います。  私も保険年鑑その他によって調べたのですが、国内損保会社の中で最も新しく営業免許を得た会社の出再率が一八%であります。これに対して、その約十一倍もの元受け保険料があるX社の出再率は八二%という高率であります。損害保険の代表的なラインである火災保険を例にとってみますと、このX社の収入約七十億円の九六%が出再、外に出されており、自社が保有する額はたったの四%という数字になっております。しかも、その出再のほとんどが海外再保ということであります。保険業の常識から見て、これは異常ではないかと思うのですが、大蔵当局はどう考えられますか。
  125. 竹下登

    ○竹下国務大臣 出再率の問題、詳しくはいま政府委員からお答えをいたしますが、御案内のように、金融サービスの自由化問題でございますね、それについて基本的に私どもが感じますのは、日本の金融行政というのは、銀行にしろ保険にしろあるいは証券にしろ、預金者保護、投資家保護、被保険者保護、これは今日非常に徹底的に貫かれてきていると思います。諸外国はどちらかと言えば自己責任主義。そういうところから、いろいろな議論をしながらも全部いわば垣根は取ったという状態にあるのです。したがって、基本的には出再率の問題は、私も保険について昔勉強しましたが、大分古い話になりますけれども、企業自身の問題に基づくものであると思いますが、具体的な事項でございますので、政府委員からお答えすることをお許しいただきたいと思います。
  126. 加茂文治

    ○加茂説明員 損害保険会社の再保険取引は、自社の引き受け能力を勘案しながら、危険を分散させ定的な損害保険事業の経営を維持するために広く行われておるのでございます。  再保険取引につきましては、一般大衆あるいは一般企業を一方の当事者とする元受け契約とは異なりまして、専門家であります損害保険会社間の取引であるために、消費者保護の見地から規制する必要性が少ないこと、また、危険の地域的分散を図るため昔から国際間で行われている取引でございまして、先進諸国においてもほとんど規制を行っていないこと、こういう理由から、再保険の取引内容、取引額あるいは取引先等については特段の規制はなく、先ほど大臣が申されましたように、損害保険会社の経営上の判断にゆだねておるわけでございます。  御指摘の雑誌に掲載されている問題でございますが、一般論といたしまして、ある損保会社の海外出再の比率が他社に比して高いということがあるといたしましても、どれだけ海外出再をするかということはその会社の経営方針あるいは経営判断の問題によるものでございまして、そのことは直ちに契約者保護の見地から問題があるとは考えていないわけでございます。
  127. 木下敬之助

    ○木下委員 私、この問題を取り上げた視点は、契約者の保護、これは当然必要なことですが、そこからながめて問題があると言っているわけではないのです。一応そこのある社は非常に出再率が高い、そういう状況の中で、一般に再保険というのは交換を前提として大体等量等質のものを原則としていると思うのです。これは財団法人損害保険事業所発行の講義録にもそういったことを書いております。だから、大体他の損保会社はこういった線で再保険取引を相互にやっているということだと思います。  この問題となっている会社の場合は、昭和五十六会計年度の出再六百二十九億に対して、受再、よその再保険を受けている部分はその十五分の一、この程度しかしていない。結局見返りのない片道取引で出しておるわけです。商業常識からは、それを単なる保険責任の移転と考えるには著しい無理があるのではないかと思います。むしろこれは、出再に対して課税がなされない点を利用した利益送金だ、こういうふうに判断した方がわかりやすいと思うのですが、このことは、この会社におきましてその再保険先が自社グループの保険会社であると見られることで裏づけされているのじゃないかと思います。こういった点に関して当局は、この会社の最終再保険先がどこになっているかということを調査したことがございますか。
  128. 加茂文治

    ○加茂説明員 先ほど申し上げましたように、再保険については特段の規制を行っていないわけでございます。再保険先の選択についても各社の経営上の判断にゆだねておりまして、各社が自己責任において信頼できる再保険先を選び再保険を出しておる状況でございます。したがいまして、その損害保険会社の再保険先につきましては、実地に相手先の保険会社を調査するとかあるいは直接資料を徴求するというような調査をしたことはございません。  また、わが国で営業を行っております損害保険会社の最終の再保険先は全世界に及んでおるわけでございまして、これらをすべて調査するということは事実上困難であり、そこまで調査する必要性には乏しいのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。しかしながら、わが国で営業を行っている損保会社が直接取引をしている再保険先については、必要に応じて当該損保会社を通じて資料を徴求するというようなことをしておるということでございます。
  129. 木下敬之助

    ○木下委員 こうしてこの異常な数字に対していろいろな指摘があるわけですから、その点も考慮して取り組んでいただきたいと思います。  アメリカにはユニタリー課税という考え方もあるようですが、わが国に進出している外国損保の一部が、再保険を利用して意図的に利益を隠し、タックスヘーブンを利用して、本国、進出国のいずれからも税金を逃れるやり方が行われているとすると、これはやはり許されないことだと思います。こういったことを放置すれば、他社もみんな同じような形にすれば、相当の税の減収になると思いますし、ここから取ることができれば相当の収入にもなると思いますが、国税庁はこの問題をどういうふうに考えられますか。
  130. 冨尾一郎

    ○冨尾政府委員 お答えをいたします。  外国保険会社の日本支店につきましては、これが契約をいたします関係で生じます所得につきましては、国内源泉所得ということで課税対象になりますので、私どもとしては、内国法人と同様な課税処理に努めているところでございます。  なお、先ほど保険部長答弁いたしましたように、再保険という取引は危険分散という機能を持っておりますので、保険会社相互間で再保険を行っております場合、これが再保険としての実体があるものにつきましては、税務上その再保険料は損金として認めざるを得ないという扱いにいたしております。
  131. 木下敬之助

    ○木下委員 先ほど申しましたように、これは一社特別異常な状態をいろいろな角度から指摘されて起こっていることですから、それがほかの社に及んだりなんかしたときにどうなるかといった面も含めて、従来の考えにこだわらないで何か考えていかれたらいいのじゃないかと思います。時間がありませんので、この問題はきょうはこのくらいにしておきたいと思います。  国鉄の問題もたくさん用意したのですが、時間がないようで簡単に申し上げますが、実はわが党では国鉄問題調査団を編成しまして、七月の二十八、二十九と二日間、鹿児島管理局及び門司管理局に行き、職場実態調査を行いました。私もその一員として参加いたしました。  いろいろと質問をつくったのですが、時間がありませんで私の考えを申し上げますと、いま国鉄当局も国鉄の皆さんも、みんな一緒になって再建に取り組んでいるわけですが、少し動揺がある。その動揺の一つは、分割・民営化という声も出ている中で、どうやれば分割・民営化されずにちゃんとやれるのか、一体何をやれば、それをどこまでやればちゃんと再建できていくのか、こういう展望がまだはっきりしていない、この点に問題があるように感じました。  そういった意味で、せっかくですから、国鉄、運輸大臣、そして監理委員会の方、この点から、国鉄再建と言いますが、再建された状態というのは一体どういう状態のことを言うのか、それぞれの考えをちょっとお聞きいたしたいと思います。
  132. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 お答えいたします。  私どもは、現在経営改善計画を推進しておりますが、この目的とするところは、昭和六十年度において健全経営の基盤を確立するということでございます。この中でまた特に重要な内容は、幹線において収支均衡を達成するということにいたしております。ただ、これは国鉄としての自助努力の問題でございますけれども、そのほかに行財政上の措置ということで、両々相まって健全経営が図られる。六十年度ではその基盤を確立するのだということを大きな目標として現在進めておるわけでございます。
  133. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 国鉄の再建というのはどういう状態になったら達成されたかということにつきましては、現在、国鉄の再建についての基本問題については監理委員会の方にいろいろ御審議をいただいておりますので、監理委員会の方からも聞いていただくのが適切ではないかと思いますけれども、運輸省といたしましては、達成されるということは、一つには、適切な国鉄の事業経営ができるというような経営形態というものが確立される。そういう経営形態のもとで能率ある適正な経営が行われる。たとえて言えば、生産性の高い能率的な経営が行われるというような状態が実現すること。  さらに、国鉄からも話がございましたように、以上のようなことにあわせて、国鉄が抱えております長期債務という問題について、それが行財政的に改善できるという環境が整備されるというようなことが達成された状態、そのような状態ではないかというふうに考えております。
  134. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 御答弁申し上げます。  先般の国会で成立をいたしました国鉄再建の推進に関する臨時措置法でございますが、この法律にこれからの国鉄再建の筋道というものが規定してあるわけでございまして、それによりますと、一つは、効率的な経営形態が確立されること。この経営形態がどういうものであるかというのは、これから監理委員会で十分検討するわけでございますが、それが一つでございます。それからさらに、これとあわせまして、長期債務等の膨大な財政上の問題が適切に解決されること。この二つがいわば仕組みでございまして、こういう仕組みというものが基盤となって、その基盤の上に立ちまして、事業範囲の適正化でありますとか、あるいは生産性の向上でありますとか、あるいは管理体制あるいは労使関係というもののいわば改善でありますとか、そういうふうな諸般の運営面の改善が推進されまして、それで結果として採算の面も含めて将来にわたって健全な経営が維持していけるような状態になる、こういう状態が再建がされた状態というふうに認識しております。
  135. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 ことしも二兆円の赤字が出た、いままで十八兆円ある、こういうことですから、これは国会、それぞれの方々がいろいろな立場から、これは大変なことだというところに国鉄再建が生まれているわけです。  その方法としてどうするか、これはなかなか大変なことでございますから、国鉄再建監理委員会というものをつくって、その方々にひとつ提言してもらう。その提言は私たちは政府としても実行いたします、こういうようなことからスタートを始めているのが今日ですが、日本人というのはなかなか適応性が私はあると思っているのです。毎日国鉄が赤字だ、働かない、けしからぬじゃないか、こう袋だたきになって、一体組合員の諸君はどうなんだ。やはり働いている諸君もいるわけです。というときに、最近職務規律というのは多少よくなったでしょう。それと同時に、ぜい肉は切るという形でいま進んでおりますから、いまの推移を見ながら、ひとつそれぞれ監理委員会なり国会も御議論していただきたい、こう思っております。
  136. 木下敬之助

    ○木下委員 いま三つのところへお聞きしたら、微妙に違ったりいろいろな考えも入っております。当然国鉄の再建というのはそこで働いているみんなの一生懸命の努力がなければできない。この努力をさせていく上にも、その長期債務等についても明確に出さなければなりません。こんな自分たちの努力と別のところで、どうなるかわからないような不安や動揺というのは与えてはならない。どうか、これだけやれば必ず再建できてやっていけるんだというものを明確にして士気を鼓舞していただきたいと思います。  時間が大分来ましたが、最後にもう一、二問質問させていただきたいと思います。農水大臣、ひとつお答えをいただきたいと思います。  もう時間がありませんので簡単に申し上げますが、食糧自給率の強化という国会決議がありまして、非常に下がってきておりますわが国の自給率について、国民みんな心配していると思います。そんな中で、レーガン大統領の来日までに、農産物輸入自由化枠拡大問題に政治決着をつける動きがあるのではないか、こういうふうにもお聞きするのです。この点について、自由化枠拡大には断固として反対すべきだと考えますが、大臣の決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  137. 金子岩三

    金子国務大臣 自給率の問題は、これは当然、食糧の安全保障の立場からも自給率を高めようとして農政は全力を挙げて取り組んでおりますが、ただ、畜産が盛んになりまして穀物の輸入が非常にふえておりますので、自給率は低下しております。内容は非常に充実しておる、こういうことでございます。  それから農産物の市場開放の問題につきましては、私は就任以来、自由化はもちろん、枠の拡大もいまのところは必要ないということを今日まで言い続けてまいっております。したがって、需給動向を見てもし必要な場合が起これば、これは当然枠を拡大する場合も将来あるかもしれませんけれども、いまのところは必要はない、こういうことを考えております。
  138. 木下敬之助

    ○木下委員 大事な時期でございますので、信念を貫かれることを期待申し上げます。  最後に国土庁関係、それから国土庁、沖縄開発庁、北海道開発庁、三庁統合問題等少し用意しましたが、時間も来ましたので、こういったところは、先日の三宅島の噴火で大変な被害があり、住民の方々には心からお見舞いを申し上げる次第でございますが、こういった点も踏まえて、ぜひ防災体制がしっかりしますよう御検討お願いいたしたいと思います。  もう一つ、最後に追加で大変悪いのですが、大蔵省設置法附則第五項の「福岡財務支局は、昭和六十年三月三十一日までに廃止するものとする。」というこの規定に関して、五十五年の本法改正の際に附帯決議がされておりますので、今回の改正においてもこの附帯決議は生かされているものと考えますが、この点最後にお答えいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  139. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大蔵省設置法改正の際の衆参両院における附帯決議については、今後とも尊重してまいります。
  140. 三塚博

    ○三塚委員長代理 これにて木下君の質疑は終了いたしました。  次に、浦井洋君。
  141. 浦井洋

    浦井委員 私は、最初にちょっと委員長に申し上げたいのですが、各委員にお配りした質問要旨を見ていただいてもわかるように、「増税なき財政再建」についてということで、政府の意図を酌んでいまいろいろと増税の具体策を練っておる税調の会長の小倉さんに理事会を通じて参考人をお願いしておったわけでありますが、これが非常に残念ながら出席できないということになった。いろいろな理由があるのでしょうけれども、やはりこれは政府・自民党の増税隠しというようなことが有形無形に響いておるのではないかという感じがして仕方がないわけであります。そういう点で、まず冒頭に委員長に強く抗議をしておきたいと思うわけであります。  そこで、そういうことでせっかく質問も用意したのでありますけれども、これができないということになりましたので、まず冒頭に労働大臣にお尋ねをしたいのであります。  いま本委員会で審議をされております国家行政組織法改正施行に伴う関係法律整理法案というこの法案の中に労働省設置法の一部改正があります。これを見ますと、旧法の九条の一項の「婦人及び年少労働者に特殊な労働条件の向上及び保護を図ること。」この項が削除をされておるのであります。これは労働大臣よく御承知のように、この項というのは、昭和二十二年九月に労働省が新設をされ婦少局が創設されて以来ということで、まさにこれは原点的な規定であって、これが婦人、年少労働者保護行政の法的根拠になっておる。     〔三塚委員長代理退席、江藤委員長代理着席〕 これが削除されるということで多くの婦人労働者は、これは下手をすると将来婦少局が解体されるその第一歩ではないかというふうに危惧しておるわけであります。これを役人に質問をいたしますと、すでに中路議員がやりましたように、立法技術の問題であるとか整合性を図ったとか、あるいは新法の四条の三十号にまとめたとか、いろいろ弁解があるようでありますが、やはり私は、こういう原点的規定は大臣の責任でもう一度何らかの措置で復活をさせるべきではないかと思うのですが、ひとつ労働大臣の御意見を聞きたいと思います。
  142. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 先に私の方からお答えをいたします。  今回の設置法の改正は、いわゆる従来の局ごとに分掌事務を書いてあったのを一括する方式をとったために、できるだけ重複を避けるという観点でまとめたということでございますが、かえってそれを個別に書き分けると、たとえば婦人、年少者の保護というものと労働時間、産業安全云々というものとの関係はどうなるか、いろいろ複雑な反対解釈等を生むものですから、そういうことで整理をしたものでございまして、決して他意はございません。
  143. 浦井洋

    浦井委員 他意があると私は思うから質問をしておるのです。労働大臣どうですか、何かこのことについて。
  144. 大野明

    ○大野国務大臣 ただいま官房長からお答えしましたとおり、本当に他意もございませんし、これから婦人労働者の社会進出というのは非常に大きい問題ですから、むしろより一層努力しようと思っております。
  145. 浦井洋

    浦井委員 そこで少し角度を変えまして、これは大臣に御答弁をいただく予定になっておるそうでありますが、男女雇用平等法について。  いま非常にME化、OA化が進んでおる。それから、その中で過密あるいは長時間労働が横行しておる。母性保護はむしろ以前よりも非常に重大視されなければならない、こういう時期に来ておる。私は、技術革新の中でそうなっておると思うのです。ところが現在、現状を見てみますと、賃金格差はむしろ男女広がっておる、ひどくなっている。あるいは、よくテレビに出ますように、四年制の大卒女子の採用もまだまだ一流企業では行われがたいというような中で、やはり母性保護規定を前提にした男女雇用平等法が急いでつくられる必要があると私は思うわけであります。現に三年前、一九八〇年にコペンハーゲンでの中間年婦人世界会議で当時の総理がこれに署名をして、そして六十年には婦人差別撤廃条約の批准の時期も迫ってきておるわけなんです。そのためにもやはり国内法を整備しなければならぬ。その中の最大の問題は男女雇用平等法である。そうなると、大体国会にその法案の提出タイムリミットは来年の通常国会、労働大臣としてはそのころおられるか知りませんけれども、やはり労働大臣としては一生懸命努力をしていただかなければならぬ、このように私は思うのですが、一言大臣の予定と決意を聞いておきたい。
  146. 大野明

    ○大野国務大臣 現在条約の批准に向かって国内法の整備をいたさなければならぬということは、国内の行動計画の後半期の重点課題でございますから、これを進めることは当然でございますし、労働省としては、雇用の分野における法的整備に向かっていま婦人少年問題審議会において慎重にやっていただいておるところでございます。この男女の雇用の機会の均等あるいは待遇の平等と同時に、育児休業制度の普及等についても含めてやっておるという段階でございまして、この答申、いただけるのは年内ということでお願いしてございますから、それを受けてできるだけ早く対処する所存であります。
  147. 浦井洋

    浦井委員 大臣は上手に言葉を抜かされたわけでありますが、言葉を選んで発言をされたわけでありますが、今度制定されるべき男女雇用平等法という中にはやはり母性保護抜きであってはならぬ、そうでなければ真の平等法だとは言えないと私は確信をいたしております。  ところが、あす十月の七日に日経連は男女雇用平等法に反対の声明を出すそうであります。その内容を見てみると、これは重大ですが、むしろ母性保護規定を廃止することが先決だということまで言っておるわけであります。しかも、これは財界団体としていま始まったことではなしに、いまから十三年前、一九七〇年の東京商工会議所の意見書からこういう意見が初めて出てまいりまして、そして財界は、事あるごとにこの立場から労働省に圧力をかけ続けてきておる、これは労働省のお役人はよく御承知だと思う。  そこで、けしからぬのは、私の知り得たところでは、いま大臣は審議会にかけておるというお話でありますが、すでに労働省の内部では十二種類もの男女平等法の要綱案がつくられて、しかもその十二種類のものは、いずれもが附則で労基法第六章に当たるところの保護規定を実質的に抜いたようなしろものになっておるというふうに聞いておるわけであります。これがもし事実であるとするならば、これではまさに日経連の方向に沿うものではないか。労働省自身が率先して財界の意向をくみ上げようとしておるというふうにしか私は思えぬわけであります。  そこで、私は最初の質問に返りますけれども、この九条一項の一号を抜かしたのは他意はないと言われたわけでありますけれども、こういうような男女雇用平等法の保護抜き平等法、これに道を開くために今回の設置法、旧法で言えば九条一項一号、これを抜かしたのではないか、こういうふうに、非常にひねくれた考えだと皆さん方言われるかもわからぬけれども、私はそういうふうに思わざるを得ぬわけでありますが、大臣どうですか。
  148. 赤松良子

    ○赤松政府委員 御指摘の点で、十二種類の要綱とおっしゃいましたか案とおっしゃいましたか、全くそのような事実はないわけでございます。大臣もお答え申し上げましたように、まだ審議会審議をしていただいている段階でございまして、労働省の案というものは全くできていないのが実情でございます。したがいまして、先ほどの御指摘の点はない。  それから日経連の明日のということは、新聞報道で確かにそのように伝えられておりますが、それもまだ検討段階というふうにも伝えられておりますし、決して紙をいただいているわけでもございませんので、内容はつまびらかにいたしておりません。そして、設置法の改正の問題とこれとは全く別でございまして、設置法の改正については先ほど官房長からお話し申し上げたような形式的な整理でございまして、内容的にはますます重要になる、婦人労働の問題はこれから重要性が高まるという認識は大臣ともどもいたしておりますわけでございますので……(浦井委員「保護を前提にした平等法をつくりますか」と呼ぶ)母性保護の問題につきましては、母性の保護ということは非常に重要なことだと考えております。
  149. 浦井洋

    浦井委員 ここでいろいろやりとりしても仕方がないのですが、最後に労働大臣に、次の国会に先ほど私言いましたように母性保護を前提にした真の男女雇用平等法を出すということをひとつお約束をしていただきたい。
  150. 大野明

    ○大野国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたが、現在審議会で、公労使すべての方々お入りになって、あらゆる角度から審議をしている最中でございます。ただ、お願いとしては年内に出してほしいということを申し上げてはおりますけれども、それが必ず年内にできるかできないかわからないいまの時点で、来国会に出すとか出さないとかと言うことはちょっと時期が早いのではないかと思っております。
  151. 浦井洋

    浦井委員 大臣に要望して、この項は終わりたいと思います。労働大臣、結構です。  そこで厚生大臣、健保法が、これは行革との関連でいきますと、今度出された五十九年度厚生省概算要求の中に盛られた健保大改革、大改悪構想、これはもうすでに臨調答申の第一次答申それから基本答申に盛られておるし、そういう点で行革特で論議をするのが最も適当だと私は思うわけですが、それで昭和二年に健保法が施行された、そういうとき以来健康保険の被保険者本人で十割給付が崩されたのは、一部負担と違いますよ、十割給付でなくなった時期はいつかありますか。
  152. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答えを申し上げます。  健康保険におきましては、そういうことはございませんでしたが、職員健康保険法というのがございまして、それは二割の自己負担ということで……(浦井委員「戦前やね」と呼ぶ)戦前でございます。
  153. 浦井洋

    浦井委員 だから、そういう事実なのですね。あえて譲歩をして言うならば、少なくとも戦後では給付十割が確保されてきた。それが、今回八割という案を出されたわけですね。これは数字を含めてでありますけれども、本人八割にすることによって、政府の計算でも五千三百億、われわれの計算では五千八百億の被保険者負担がふえる。これは厚生大臣もよく御承知のように、受診抑制がもう横行するであろうし、そのことによって病気の早期発見、早期治療がおくれる、下手をすれば、物によっては死期を早めるというようなことで、私は、まさに憲法二十五条を基盤にした社会保障制度の大改悪、この本人給付八割だけをとってみても、そういうふうに思うわけです。これを見たら、中曽根内閣、あなたもその構成員の一人でありますけれども、これは国民の命と健康を守ることを、そういう任務を放棄したのではないかというふうに言っても決して言い過ぎではないと私は思う。  とにかく、いままでは十割給付に近づけるということで努力をされてきたわけであるが、ここに至ってもう突然、強引に八割に引き下げるということは私は全く許されぬと思うわけです。ですから、なぜこんなことをするのかということを、大臣からひとつ簡単にお答え願いたい。
  154. 林義郎

    ○林国務大臣 簡単にお答えしろ、こういうふうなお話でございますから申し上げますが、当委員会におきましてもたびたび申し上げておりますように、毎年一兆円ずつ医療費がふえてきておる。これは、米が大体三兆円でしょう、その三分の一ずつ毎年毎年ふえてきているということは大変なことなんですよ。これをどうしてやるかということをいま考えていかなければ将来にわたっての、日本が持っているところのこのいい医療保険制度を崩壊に導きかねない。  そこで、私はいろいろと考えてきました。先生も社会労働委員会におられますから知っておられると思いますが、私はかつて社会労働委員会で最初に冒頭所信表明演説をしました。そのときに、先進工業国もすべてそういうことになっている、それについて虚心に考えていかなければならないではないかということを申し上げ、皆さん方から御意見があれば十分にお話を聞いてやるということを申し上げたのです。  そういった中で、私たちがいろいろと考えてみますと、これだけの大きな問題を解決するためにはやはり一つのルールというものが必要であろう。それは、社会的な公正という原則であるし、もう一つは効率という原則だろうと思うのです。したがいまして、大きな病気、たとえば入院をするような病気、末期がん患者などというような病気については全部見ますが、軽い病気につきましては、軽い病気と言ってはあれなんですけれども、マキシマム五万円以下の負担になるようなところにつきましては、やはり一部負担を入れることの方が効率の原則に合っていいのではないか、私は、こういうふうな社会システムを構築していかなければならないと思って、実は御提案をしておるところでございます。
  155. 浦井洋

    浦井委員 その点は後で、大臣の出された「今後の医療政策―視点方向」というところで、できたら時間をとってやりたいと思っているわけです。  だから、これはひとつ論戦をやりたいと思うのですが、一点だけ反論をしておきたいと思うのですが、これは金の話ですね。大臣がいま言われた一兆円ずつふえていくというような話で、五十八年二月九日に当院の予算委員会で、公述人として出席をされた社会保障研究所の所長の福武さん、この人がこの場所で「現在における国民所得対比一三%という数字は、国際的比較から見まして、私は、決して大きな数字ではないと思います。社会保障先進国では、六十五歳以上の老年人口が一〇%に達した段階で、国民所得対比二〇%前後になっております。したがって、老年人口が現在九%という日本におきましては、もう少し大きくなっておりましても不思議ではなく、格別大き過ぎる数字ではないというふうに、私は思うわけでございます。」こういうふうに言われておるので、金目の話はだめですよ。  そこで、私はちょっと各論的にお聞きしたいのでありますが、これは吉村保険局長でありましょうが、健保組合、共済組合、国保組合、それから市町村国保、こういうものの付加給付をどうされようとしておるのか。新聞報道によると、これは禁止ということになるそうでありますが、そうなると大問題であります。
  156. 林義郎

    ○林国務大臣 付加給付の取り扱いでございますが、健保組合等における付加給付のうち医療にかかわる付加給付は認めないというのは、これは健康保険というものは医療をするための健康保険ですから、それ以外のものを皆やるということになったらおかしなことになりますから、社会保障制度としての公的医療費については、やはり社会的公平という観点から各制度を通じて同一の考え方をするというのが正しいのではないか、こう思います。  ただ、先生も御承知のように、またわれわれの方も考えていますように、健康保持とか疾病予防というのはやはり自分で責任を持ってもらわなければならない、これはそうだと思うのですね。自分でいろいろ金を出す、そのときに、会社におられるとかいろいろなところで費用が出されるということまで――それは各人が保険をつくるとか互助会をつくるとか頼母子をつくるとかいろいろあるでしょう。そういったことでやるものまでもいかぬという話じゃないわけでございまして、いわゆる公的な制度としての健康保険制度では、やはりそこは一律にしておいたらどうかというのが私の方の考え方でございます。
  157. 浦井洋

    浦井委員 簡単に答えられたわけですが、互助会とか共済会、頼母子、これはやって構わないのだという、いかにもそれで済みだというようなお話でありますが、そうなると、これは社会保険の事業とは別になりますから、そうなればやはりその費用はどこかから拠出をしなければならぬ。そうなれば、被保険者の側が負担をするということになれば、第二保険料みたいなかっこうになって負担増になるわけであります。  だから、そういう点で、国保の場合で言いましてもこれによって給付が切り下げられる、あるいは健保の場合でそういうことになれば保険料が実質的にアップする、あるいは、いまの健保組合でもえてして労務管理に使われておるわけでありますけれども、もしも事業主がその頼母子、互助会、共済会みたいなもので全額を負担する、こういうことになると、ますます労務管理の色彩が健康保険組合のその近所でひどくなるということを指摘をしておきたいと思います。これは返事は要りません。  それから、その次の問題でありますけれども、これも退職者医療制度と関係があるのですけれども、この間のわが党の中路議員の質問に答えて、今度の健保改悪構想で国民の負担増は約七千五百億円だというふうに言われたわけでありますが、これには、少し専門的になりますけれども、標準報酬上限改定分であるとか高額所得者の国庫補助の削除であるとかあるいは国保の保険料の引き上げというようなものが含まれておらぬ。だから、こういうものを加えると国民の負担増は大体どれくらいになりますか。
  158. 吉村仁

    ○吉村政府委員 この間、七千五百億、満年度で申し上げましたが、そのほかに標準報酬上限の改定、四百十一億でございます。それから高額療養費の限度引き上げに伴う分が四十億でございます。ただし、退職者医療の拠出をやりましても、保険料全体としては引き下げに相なります。
  159. 浦井洋

    浦井委員 この金目の問答をやると切りがないので、私たちで計算をしたところでは一兆円ちょっと出るぐらいなんです。このことによりて、今回のあなた方が意図している構想がもし実現したとすれば、国民の負担増は一兆円ちょっと上回るぐらい。そして、あなた方が言われておるように、国の負担減は五十九年度で約六千二百億、満年度に直すと八千五百億、事業主負担はほぼ現状どおりということになるわけであります。  そういう中で退職者医療制度というものをつくられるわけでありますが、いま吉村保険局長が言われたように、一兆円近い国民の負担増によって確かに被用者保険の保険料の大幅な引き下げが可能になります。そして、三千六百億の拠出金を出してもまだ保険料が引き下げられることになる。しかし、退職者医療制度をつくることによって国の負担は二千二百億減るし、被用者保険の保険料は据え置きか引き下げになる。そうなれば、被保険者の方は八割給付あるいはビタミン剤あるいは高額は保険から外れなさいということになって、これはずっと負担になる。そうすると、事業主の負担の増加はゼロということになる。だから、まさに退職者医療制度というのは、現役の労働者の自己負担増だけでつくられようというわけです。退職者医療制度というものをつくること、このアイデアは私もよいとは思うのですけれども、このつくられ方、多くの方が国であるとか事業主がもっと負担してつくってくれというふうに言っているのにこれは逆行するものであるし、また、負担の公平という観点から見ても私はおかしいと思うわけであります。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つの問題、この制度改悪の問題で国保の問題があるのです。国保の補助率が四五%から三八・五%に引き下げが行われる。これによって臨調ですね、こういうものが廃止される。これについてもやはり同じことが言える。退職者医療制度で四百万人抜けるにしても国保の保険料の増は避けられないわけでしょう。これはどうなんですか。
  160. 林義郎

    ○林国務大臣 浦井さんにお答えしますが、退職者医療制度というのは――現在の組合保険は現役の諸君が保険制度をやっていますね。これは、企業主の方も出すし従業員の方も出すという形でやっておるわけです。退職した後もそれと同じようなシステムで健康を保険できるようなシステムをつくりたい、こういうのが私たちのねらいでありまして、そこには当然に企業主負担というものが入ってこなくちゃいかぬわけです。そこは同じに入りてくるのです。その率をどうせいとかこうせいとかいう議論はあるでしょう。ありますが、そこは同じように入れていこう。それと同時に、現役の諸君がこうやるというのですから、退職者も自分の健康を保険を払わないで人に見てもらおうというのはおかしいのですから、退職者の方ももちろん負担をします、現役の人も負担してやります、こういうことです。  それから国保の方は、実は、いままで現役で働いておられた方がやめると国民健康保険に行くわけですが、お年寄りになれば大体において若い方よりは疾病率は高いわけです。そうしますと、そこでの給付費が上がります。それを今度別建てにするわけですから、その給付費分が抜けます。それでもう一つは、それらの人々をカバーしているような保険料部分というものがあるわけですから、その部分がまた抜けますので、それを計算しまして、それだけでは若干保険料率が上がるのです。あと何ぼかは、適正診療であるとかお医者の不正、不当の診療を是正するとか診療報酬の適正化だとか、そういったいろいろな形によりましていまの保険料率は上げないようにやるというのが今回の考え方でございます。
  161. 浦井洋

    浦井委員 いや、これは保険局長どうです。国保の保険料は、大臣は上げないと言うているのだけれども、私は上がると思うのですが、どうですか。
  162. 吉村仁

    ○吉村政府委員 退職者医療を実施することによって、国保の保険料は一千億減ります。負担がそれだけ減るわけであります。それから、国庫補助率を引き下げることによりまして五百億の保険料の引き上げになります。その分は私どもは、収納率を向上するとかあるいは医療費の適正化をするとかいうことによりまして、引き上げをしなくても十分吸収できる金額だというように解釈しております。したがって、いま大臣がお答え申し上げましたように、国保の保険料は引き上げる必要はない、こういう結論に相なるわけでございます。
  163. 浦井洋

    浦井委員 いろいろなことをやって、とにもかくにも上げないように努力はしたいということだろうと思うのですが、現実にはやはり上がるんですよ。たとえば、努力によってということで局長は言われたのですけれども、収納率なんかも五十二年と五十六年と比べると年ごとに下がってきておるわけですよ。いまでも保険料率が高い、そこへさらにひょっとしたらふえるかもわからぬというようなことで、徴収しに行ってもなかなか払ってくれぬというような人がふえてきておるわけなんです。そういうようなことで、果たしてつじつまが合うのかということを私は指摘をしておきたいわけであります。  そこで、これは自治大臣に関係のある話でありますけれども、三八・五%の国庫補助のうち定率部分が、もう時間がないから私言いますけれども、大体三〇から二八ぐらいになるわけですね。定率部分がぐっと減るわけです。このことは、市町村国保なんかの場合で言いますと、財政的安定性がいまよりもより不安定になるのではないかというふうになるわけです。その差し引かれる八ないし一〇%というのは、財政調整補助金みたいなかっこうになるわけでありますから、そこで、これはひとつ国の裁量で分けるのだというようなことで、自治体の方で、たとえば老人保健法の場合に見られたように、患者負担を自治体で肩がわりしているところにはこの交付金をやらないというような圧力をかけた実績を厚生省は持っておるわけでありますから、非常に自治権を侵すような圧力がかけやすくなるのではないかというように私は思うわけであります。  ひとつ山本自治大臣お尋ねしたいのですが、こういうような国保の事業にとって非常に大きな変革であり改革であります。これについて厚生大臣から事前に十分な相談を受けて御納得をされたのかということと、それから先ほど私が申し上げたように、地方自治権を侵すようなこういう補助金の仕組みの変更、改悪、こういうものについてどう思われるか。私は決して好ましくないと思うわけで、自治体が住民の意向を聞いていろいろと社会保障、社会福祉の面で単独事業をやられるのはよいわけなんですが、こういうものがどうしても抑制されるのではないかと思うのですが、ひとつ自治大臣にお答えを願いたいと思います。
  164. 山本幸雄

    山本国務大臣 国民健康保険というのは財政が余りよくありませんから、医療費がだんだん増高していく中で大変苦しんでいるのであります。  そこで、今回の措置は、国庫補助は確かに減るということになっております。しかし一方において、先ほど来厚生省からもお話しのように医療の内容についていろいろ改正が行われる、たとえば医療費の合理化を図るとかあるいはいまお話がございました退職者医療制度といったものもやるということをいろいろ考えあわせてみますと、これが非常に大きな地方への費用の転嫁になるかということになってきますと、必ずしもそれほど大きな転嫁であるとも言えない、こういう計算も成り立つのでありまして、ただ、この医療制度の改正がどういうふうに進んでいくかということで、私どもも、決してその転嫁が起こらないように見守っていきたい、こう思っているところでございます。
  165. 浦井洋

    浦井委員 山本自治大臣、事前に十分な相談は受けたわけですか。
  166. 山本幸雄

    山本国務大臣 概算要求の段階におきまして、事務的にはそれは連絡がありました。
  167. 浦井洋

    浦井委員 国保についてもう一つ聞きたいのですけれども、先日の当委員会で厚生大臣は、健保の本人給付八割というようなことをやりながら、一方では現在七割である国保の給付率を八割に上げたいというようなことを言われたということが新聞で報道されておるわけでありますが、やるととしたら、いつからやられるわけですか。  それから、もう一つついでに聞きますけれども、大蔵大臣、果たしてそういうことをやるとしたら財源の手当てはどうされるのですか。
  168. 林義郎

    ○林国務大臣 お答え申し上げます。  先般申し上げましたのは、現在はできないけれども、給付の公平化ということからするならば全国民一律が望ましい、そのためにはやはりできるだけ早い期間に八割にした方が望ましいということを私は申し上げたわけであります。  できるだけ早い期間にというのは、もう一つ申し上げますならば、要するにバランスがとれなければ上げようといったって上げることができない、こういうことでありまして、医療の方のいろいろなむだを排除するというようなことをやり、いろいろな訂正をやっていけるならば、機が熟してくればそういったことがやれるのではないか、私はこう思っておるところでございます。基本的な考え方を私は申し上げたところでございます。したがって、財源的にこれをどうするかこうするかというのは、ことしの予算の話じゃない、来年、その次ぐらいのところで考えていく話でございましょうから、プリンシプルを私は申し上げたわけでございまして、財源的にどうかという話ではないと思っております。
  169. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの厳しい財政状況のもとにおいては、医療保険制度のみならず、あらゆる制度について根底から見直しを行う必要がある、これは基本ですね。そうしてまた医療保険制度については、高齢化社会の到来に備えて、制度を安定的に維持して国民に必要な医療を確保していくために、中長期の観点に立って給付と負担の見直しを図る必要がある、原則的にそう考えまして、とにもかくにも厚生省で一生懸命将来構想についても御検討なすっておるのでありますから、予算ずばりということになれば、その都度の財政状況等を勘案しながら対応するというのが大蔵省としてのたてまえでありましょう。
  170. 浦井洋

    浦井委員 増税のない財政再建だということ、そういう時期でありますから、いみじくも両大臣の御意見では、国保の八割への給付の改善というのはなかなか遠いという感じがするわけです。事実このことを私は指摘したいのですが、ことしの八月七日の日経新聞で、「医療保険の国庫補助 60年代半ばに全廃」ということで、大蔵省は厚生省に意見表明をやったというようなことさえ行われておるわけでありますから、国保の給付改善というのは、いまの政府の姿勢ではとてもできないというふうに私は思うのですが、それはさておきまして、この事実はあったわけですか。これは大蔵大臣、厚生大臣どちらでも結構ですが、どちらも言ってください。
  171. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、こちらからやります。  医療保険につきましては、諸外国においては、そもそも原則として国庫負担は行わない、こういうことになっております。厳しい財政状況から見た場合に、医療保険制度というものに限定するというのみでなく、あらゆる制度について根底から見直しを行う必要がある、こういうことをこれは申しておるわけであります。したがって、いまの具体的な指摘をなすったような申し入れを行う、それほどおこがましくありません。
  172. 林義郎

    ○林国務大臣 お答え申し上げますが、先ほど来申し上げておりますように、私は、昨年から基本的に考え直さなければいかぬということを申し上げておるわけでありまして、医療制度につきましても根底から見直す必要があるという先ほどの大蔵大臣と考え方は同じなんです。しかし、そうしたことが、新聞に書いてあるようなことが文書で来たというふうな話は、私は聞いておりません。基本的に考え直すという中で私たちはいまいろいろとやっているところでございます。
  173. 浦井洋

    浦井委員 そうすると、私が聞くところによりますと、厚生省担当の小村武主計官がメモを持って、メモというのはそのときの、その日の新聞に出ておるものだろうと思うのですが、メモを持って保険局に出向いて伝えたというふうに私は聞いておるわけで、それはあなた方は否定されるかもわかりませんが。  要するに、私が竹下大蔵大臣に尋ねたいのは、そうしたら六十年代半ばに医療保険の国庫補助の全廃をやるわけですか。
  174. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国庫負担を原則として行っていないという事実はありますが、そのような問題につきましては、一般論としては、医療保険に限らず根底から見直す時期でありますが、医療保険そのものについて今後の将来構想というのは、これは私がいま予見的に申し上げるべき筋のものではない、こういうふうに思っております。
  175. 浦井洋

    浦井委員 予見的に申し上げる筋合いではないということでありますが、そういうことをやれば、日本の公的医療保険制度というのは全く崩壊してなくなってしまうということを指摘しておきたいと思う。  それからもう一つ、これも大蔵大臣でありますけれども大蔵省は、いま五万円である医療費控除の足切り限度額を十万円に引き上げる方針だというふうに伝えられておる。これをもしやられますと、病気になると本当にこれはもう出費が多うなってしまって、踏んだりけったりだという声が強いわけでありますけれども、こういうことをやられるおつもりなのかということをお聞きしておきたいのであります。
  176. 竹下登

    ○竹下国務大臣 重ねて申し上げますように、いま中長期にわたる税制全般のあり方、こういうことについては、これは税制調査会であらゆる予見を持たないで御審議をいただいておる。なかんずく、今日、本院におきまして各党の話し合いに基づく議長見解等これあり、それに基づいて精力的に税制調査会の審議が部会等で行われておる今日、いまおっしゃった問題は、一つの個別の問題を指摘した問題でございますから、いましばらくお答えをする環境にはない、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  177. 浦井洋

    浦井委員 五万円に据え置くということを重ねて主張をしておきたいと思います。  それから次は、日雇い健保の廃止の問題でありますが、もういろいろと言うのは省きますけれども一つは、日雇い健保の保険料をかなり上げてもなかなか収支に欠損が出るということで、厚生大臣、大蔵大臣にお聞きしたいのですが、厚生省は現在の三五%の補助率をそのまま続けたいという意向のようだと聞いておるのですが、せめて国保並みに四五%ぐらい出したらよいのではないか、こういう問題と、それからもう一つは、六千五百億円だと言われておる累積赤字というものをやはり棚上げすべきではないか、この二点について厚生、大蔵両大臣にお聞きをしておきたい。
  178. 林義郎

    ○林国務大臣 お答え申し上げます。  日雇い労働者の健康保険制度のあり方につきましては、いろいろと問題があるところは先生の御指摘のとおりでございまして、累積赤字の処理の問題を含めまして、現在、社会保険審議会において御審議をいただいているところでありまして、審議会検討状況を踏まえて対処してまいりたいと考えておるところでございます。  いま棚上げ等というようなお話が出ました。また補助率をどうしろというようなお話も出ましたが、そういったこともやはりこの審議会での御審議を通じていろいろと御議論があるところだろう、こう思いますので、そういった御審議の結果を待って、これから対処していくべきものではないかということで基本的には対処していきたい、こういうふうに思っております。
  179. 竹下登

    ○竹下国務大臣 日雇い健保というのも、実際問題として本院でもたびたび改正がなされたり議論がございました。  これの問題につきましては、従来からのいろいろな経緯があって今日の制度になっておるわけでございますが、この問題は、いま厚生大臣からお答え申し上げましたように、いわゆる社会保険審議会に諮問が出されておるという段階でございますから、その答申を受けて厚生省でそれに慎重に対処しながら、そして協議に応ずるという筋道になりますので、私からは厚生大臣のおっしゃる以上の答弁はできません。
  180. 浦井洋

    浦井委員 審議会をつい立てにして、国会でなかなか答弁をされないわけです。自治大臣と大蔵大臣、結構です。  それで、厚生大臣にお尋ねをしたいのですが、いよいよ「今後の医療政策―視点方向」であります。簡単にいきますけれども、これは臨調答申といいますか臨調答申の方針をさらに一歩進めて、医療なり医療保険の面で、医療供給体制などの面で具体化したものだというふうに理解していいわけですか。
  181. 林義郎

    ○林国務大臣 「今後の医療政策―視点方向」と申し上げますのは、今後の医療改革をするに当たりましていろいろな点を考えていかなければならない、その考え方を御説明するためのメモとしてつくったものでございます。
  182. 浦井洋

    浦井委員 これを出される前に厚生大臣は、齋藤さんも含めてですか、厚生大臣OBと懇談をされた。これはきわめて異例のことでありますけれども、このときに厚生大臣の考え方をまとめてメモとして出された。こういうことですね。なぜこういう異例の懇談会を持たれたのか。どういう経緯で持たれたのか。この「視点方向」というのは、そうなれば林個人なのかそれとも政府あるいは厚生省を代表したものなのか。この点いかがですか。
  183. 林義郎

    ○林国務大臣 相当大きな物の考え方の変革をするわけでございますから、長年にわたって厚生行政に大臣としていろいろと御参画された方々の御意見を拝聴しながら物を進めていくというのも一つの礼儀であろう、こういうことで、これは別に正式の機関というものでも何でもありません。全く厚生大臣林義郎個人として、歴代の厚生大臣を個人の資格でお招きを申し上げ、御懇談申し上げ、いろいろな御意見をなごやかなうちに話を聞いてやっていこう、こういうことでございまして、特別にかちっとしたような企画でやったということではないということは御理解を賜りたいと思います。(浦井委員「この文書は」と呼ぶ)だから、そのときの私がしゃべったメモとして、先生だってしゃべるときにメモをいろいろ持っておられるでしょう。そのメモとして使ったということでお考えいただければありがたいと思います。
  184. 浦井洋

    浦井委員 そうすると、これは必ずしも厚生省の全体を代表したものではないのだ、必ずしもそういうものではないのだと理解したらいいわけですね。林厚生大臣個人の考えだと。
  185. 林義郎

    ○林国務大臣 厚生大臣個人のとかなんとかといいますと、また昔のようなことになりますから申し上げませんが、メモとして私は考えているわけでございます。物の考え方、国会でもいろいろ御議論ありますから、何か書いておいた方がいいだろう、参考になるだろうという程度で御理解いただければありがたいと思います。
  186. 浦井洋

    浦井委員 それで、この「視点方向」の「方向」の方でありますけれども、これの大きな二番目の「医療標準の概念の導入」というところであります。  これは、厚生省のお役人に聞きますと、大臣の造語だ、つくられた言葉だという言い方をしておるようであります。「医療標準の概念の導入」とはどういうことかということをここにあなたは書かれておるわけでありますが、たとえば、ことしの十月一日からアメリカで老人用につくられているメディケアの制度、DRGと言って、日本語で言いますと、診断名別標準報酬制とかあるいは病名別固定支払い方式とかいろいろな言い方があるそうでありますけれども、こういうものを頭に浮かべられておるのかどうか、これが第一点。  それから、ここに書いてありますように、「医療標準の概念の導入」の(2)の一番最後「医療標準の設定については、医療に関する専門団体の意見をふまえて行われる必要がある。」専門団体というのは、あなたはどういうものを想定されておられるのか。学会であるとかあるいは日本医師会というようなものあるいは日歯というようなものを考えておられるのでしょうけれども、そこの意見を聞くだけなのか。それとも、そういうところの意見を聞いて、政府なら政府あるいは政府関係のどこか、それを決定するのは一体どこなのか、その辺のことを考えておられますか。
  187. 林義郎

    ○林国務大臣 医療標準という言葉は日本語としてまだ熟している言葉とは私も思っておりませんが、先生方御存じだと思いますが、新しい経済学の中ではシビルミニマムという言葉があります。シビルミニマムというのは社会において最低果たしていくところのものだ、こういう概念がございますね。そういった概念というものは、やはり医療とかいろいろな経済を考えるときに必要だろう。これは、医療については、ミニマムであってはならないのです、そうでしょう。  だから、適正な医療というか、私がもしも英語で言うならオプティマムスタンダードだろうと思うのです。そういうことを何か考えてやった方がいろいろと医療の発展のためにも必要ではないだろうか、こう思っておるのです。それをつくってやると、同じ病気でめちゃくちゃに薬を使うとかいうことが医者の仲間の中で避けられるのではないか、こういうふうに考えておりまして、そういったガイドライン的なものをお医者の中でつくるということを考えてもらったらどうだろうかな、こういうことでございまして、実は、この九月一日に日本医師会で「救急蘇生法の指針」というのを出されておるのです。人が倒れたらどうするというときに、どうしたらよろしいかというガイドラインみたいなものをつくっておられるのがあるのです。そういったようなものを一つ一つの医療につくれるものをつくってみたらどうか。そうすると、ああこういったものがあれば、それでやってもらったのだということで患者さんの方も信頼するし、適正な診療が受けられるということになるのじゃないか、こういうことでございまして、別に厚生省がつくろうとか厚生省の認可だとか、そんなけちなことを私は考えておるものじゃないのです。  それから、いまお話が出ましたアメリカの例がどうだ、こういうふうなお話がありましたが、アメリカの例が私が言っておるところのオプティマムスタンダードに当たるかどうかちょっと私もわかりませんので、これは答弁を控えさせていただきたいと思うのです。  もう一つ申し上げますならば、これからの医療技術というのは進歩してもらわなければ困ると思うのです。医療の技術というのは、特に心臓とか脳疾患、そういったもののときには、そういったオプティマムなものの積み重ねによりまして新しいものが発展していくということが必要であろう。  こう思いますのは、かつて機械工業なども発展をするときに一つの基盤になりましたのは、工業標準化規格というものをつくって規格を統一したからできたのですよ。私は、機械と人間を比較するつもりはありませんが、物の考え方としては、そういう考え方をひとつ取り入れていってみたらどうだろうか、こういうことで議論を出しておるわけでございます。だから先ほどメモだ、こういうふうに申し上げた。私は、これにつきましても、お医者さんなりいろいろな方々から議論があるだろう、こう思っておるところでありますが、御理解を賜ればありがたいと思います。
  188. 浦井洋

    浦井委員 私は批判的に最後に申し上げますと、こういうものを権威づけて、まあ権威づけなくてもよいんだと言われるかもわからぬですけれども、出されると、いまいみじくも大臣が言われたように、大体ミニマムになってしまう。それは日本でオプティマムみたいなことになったためしがないのですよ。だから、そういうことをやれば、これは時間がないからきょうはできませんけれども、たとえば給付の八割であるとか給食材料費の六百円の負担であるとか、それからまた室料差額を今度は奨励するような方向に転じようとしておることとか、下手をしたら、そういうようなことを厚生官僚が自信を持って進めていくバックボーンになってしまわぬか、それをオーソライズするようなしろものになってしまわぬだろうかというふうに私は非常に危惧をしておるわけであります。このことによって、病気になってもよい医療を受けられる人とそうでない人とが出てくる。  私があえてアメリカの医療の話を出したのは、現在私の知り得ているアメリカの医療というのは、私保険が花盛りであって、そして医療に格差は出てくるわ、しかも総医療費は高くなるわ、医療費の伸び率はどんどん上がるわということで、収拾がつかぬようになっているというふうに聞いておるわけで、こういうものを医療標準とかなんとかきれいな言葉を、ミニマムとかオプティマムとかいうようなことを言われながら大臣がやられると、このことが最終的には非常に害を及ぼすのではないかというふうに思えて仕方がないわけであります。だから、こういうような医療標準というような考え方はやめておくことが必要であるというふうに私は思います。  それから最後に、今度は「視点方向」の「方向」の(1)、ここがやはり一番最終的には問題で、(1)のところを読みますと、「社会保障は、個人の自助を前提としつつ、国民の連帯による相互扶助を組織化して社会の安定を図るものであり、」云々、こういうふうに書いてある。やはり社会保障というのは、大臣もよく御存じだろうと思うのですけれども、憲法二十五条に言われておるように、国民の権利と国の責務ということから戦後の日本は出発をしておるわけですね。その社会保障の概念というものを大臣は強引にねじ曲げようとされておる。やや極端に言えば、憲法二十五条の空洞化を図っておられる、このように思えて仕方がないわけであります。だから、こういう点で、大臣個人のメモだというようなことでごまかされるのではなしに、潔くこういう「視点方向」というようなものは大臣の責任で撤回をする。  それから、最後に強調しておきますけれども、厚生省が今度出した五十九年度概算要求に伴う健保改悪の構想というものは、まさに国の存在を危うくするものである。国民の活力というのは、一定以上の社会保障の充実がなければ、逆に活力がなくなるわけであります。そういう点で、これも潔く全面的に撤回をすることを要求をして、私の質問を終わりたいと思います。  以上であります。
  189. 林義郎

    ○林国務大臣 お話でございますが、私は私の哲学で物を申し上げておるわけでございまして、先生の属しておられる党とは私の方の党の哲学は基本的に違うわけでございますから、私の方としては、いまの私の案を撤回する意図は毛頭ございませんことを申し上げておきます。
  190. 金丸信

    金丸委員長 これにて浦井君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  191. 金丸信

    金丸委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として石油公団理事勝谷保君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  193. 金丸信

  194. 井上一成

    井上(一)委員 むだのない行政、国民のための効果ある行政を推し進めていく、これはまさに行政改革中心的課題であるわけであります。経済不況の長引く中で国家財政が逼迫する。そういう中で、歳入欠陥さらには歳入捻出の一つの議論として、石油税の引き上げ問題がいま持ち上がっているわけであります。  私は、まず石油税引き上げにかかわる政府の見解を最初に聞かしていただきたい。国家財政を確保するという観点からの御見解をまず聞いておきたいと思います。
  195. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 原油価格の引き下げということは、当然それに課税される税収の減ということでございまして、石特会計におきましては歳入の減も来すであろう、こういうふうになっております。だから、歳入減を来すからすぐにその補てんで増税だ、そういうふうに短絡的に私は考えたくない。このことは先般のいろいろな委員会におきましても申し上げてまいったわけでございます。そこに歳出があるからすぐに歳入をそれだげ埋めようというのじゃなくして、まず歳出の面におきましても、やはり歳出そのものが時代に合っているものであるかどうか、今後の見通しを満たすものであるかどうか、そうした点におきまして十二分に検討して合理化、効率化を図っていきたい、そしてそのバランスの上に立って最終的な判断を下したい、私はこう思っておりますが、まだ先生がおっしゃるようにすぐに増税というふうな考えは持っておりません。
  196. 井上一成

    井上(一)委員 わが国のエネルギー資源の長期安定供給を確保していくということは、まさにいま大きな課題であります。そういう意味で、石油探鉱開発等も含めて、いまいろいろなプロジェクトが各地に繰り広げられているわけでありますけれども、ここで基本的な問題として、石特会計はどういうふうに使われているのか、この点についても最初に聞いておきたいと思います。
  197. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 ただいまの石油特別会計でございますが、五十八年度で申しますと、石油税の収入を主たる財源といたしまして、それを一般会計から繰り入れて歳入に充てておるほか、原重油関税を同じく特別会計に繰り入れる歳入構造のもとに、石油対策といたしまして石油の開発、備蓄、技術開発等の石油対策部分、それから代替エネルギー対策部分、大きく分けて以上の二口から成り立っております。
  198. 井上一成

    井上(一)委員 冒頭に申し上げたように、むだのない行政、国民に効率ある行政、これは行政改革の本質であります。私は、石特会計の歳出構造に大きなからくりがあるのではないか、そういうことを踏まえて、非常に理解に苦しむ面がたくさんありますので、ひとつ具体的な事例としてお聞きをいたしてまいります。  カナダの北極圏、ボーフォート海域の鉱区を所有するドーム社、これはカルガリーに本社を置くわけでありますけれども、当初このドーム・ペトロリアム社からわが国に対する鉱区援助のアプローチはどのような形で、どんな話で持ち込まれたのか、まずそれから聞きましょう。
  199. 勝谷保

    ○勝谷参考人 ドーム北極海プロジェクトに参加した経緯について御報告申し上げます。  五十三年の三月ごろでございますが、先生御指摘のドーム・ペトロリアム社から経団連に対しまして、北極海における同社が保有しております鉱区での探鉱開発に対しまして、日本側で参加したらどうかというプロポーザルが出されました。その後経団連からのお話もございまして、私ども公団も参画いたしまして、二年間にわたる交渉を経たわけでございます。五十五年八月に石油公団とドーム・ペトロリアム、さらに参画いたしますドーム・カナダ等々を含めまして、資金供与方式によりますこの北極、ボーフォート海域での参加につきまして基本的な合意に達しました。五十六年の二月に石油公団と民間の四十四社の出資によります北極石油というものを設立をいたしました。この民間四十四社は石油開発会社、精製会社、さらには船会社、さらには商社、この四十四社が入りまして北極石油というものをつくりました。二月十六日にこの北極石油とドーム・ペトロリアム社、さらにその子会社でございますドーム・カナダ社、三社の間で正式な契約調印がなされたわけでございます。
  200. 井上一成

    井上(一)委員 いまお答えがあったように、五十三年の三月に経団連を通しての協力要請があったわけです。最初はファームアウト方式での経済協力だったのです。ところが、二年後の五十五年三月資金供与方式にこれは変わったわけです。その理由は何なのか、そして資金供与方式とファームアウトのデメリット、どちらにどのようなデメリットがあるのか。
  201. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先生御指摘のとおり、この北極石油とドーム社との契約は資金供与方式でございます。この中身は、北極石油が探鉱に必要な資金を貸し付ける、そしてその結果出てきます油についての権利を得るわけでございますが、先生御指摘のように、実は最初はファームインという形、従来の探鉱会社が通常やっております鉱区の一部を権益としてとるという方法でアプローチがあったようでございますが、当時、ちょうど五十五、六年ごろでございますので、カナダにおいてエネルギー開発に対する国としても相当強力な政策が推進されておりますし、当時のそのチャンピオンでありますドームは、その鉱区の中で油が当たるというような事実等もございましたものですから、非常に強気の態度に出てまいりました。  一方日本側は、当時としては、ぜひ近き将来、有望な鉱区でございます北極圏での油を当てる、そしてその油を日本に持ってくるということに非常な希望を持っておりましたので、当時としましては、必ず油はなくなる、そして油は当たるという前提であったものでございますから、油が当たるのならばカナダ側が強く要請しております資金供与方式でやったらどうであろうかということでこの方式を採用をいたしました。ファームインをいたしましても、もし油が当たって予定どおりどんどん油価が上がるという状態でありますれば同じことになったわけでございましたので、当時、この四十四社初め、役所の御指導もいただいた上でこの方法を決定したということでございます。
  202. 井上一成

    井上(一)委員 私は日の丸原油をどうしても長期安定確保したいというわが国の焦りあるいは強烈なカナダ側の売り込みというのでしょうか、アプローチ、そのことはそれなりに理解をするわけですけれども、なぜ資金供与方式にしたのか、十分な担保がそこに確保されていたのかどうか、そういうことにも大きな疑問を持たざるを得ないわけであります。  それから、二月十六日ですか、その要請にこたえるために北極石油を石油公団が中心となって民間企業も含めて設立をして、資金手当てをしていくわけです。このときにドーム・ペトロリアムとドーム・カナダとに正式に契約をされたのかどうか、あるいは資金総額は一体幾ら供与されて、いつ支払われたのか、この点も聞いておきたいと思います。
  203. 勝谷保

    ○勝谷参考人 まず契約でございますが、先ほど申し上げました、つくりました北極石油とドーム・ペトロリアム社、そしてその子会社でございますドーム・カナダ、この三社の間の三社契約が契約方式でございます。(井上(一)委員「二月十六日ですか」と呼ぶ)締結日は五十六年二月十六日で、発効日が五十六年三月三日ということになっております。そして、金額は四億カナダ・ドルでございます。
  204. 井上一成

    井上(一)委員 さっきドーム・ペトロリアムはカナダで一番優秀な大きな石油会社だというお答えがあったように思うのです。一九七九年資金援助の話し合いがあったとき、そのカナダにおける石油開発会社の一日当たりの生産高、いわゆる産油量の一番大きな規模の会社であったのかどうか、あるいはドーム・ペトロリアム社はどれくらいの位置に、いまお答えがあったように優秀な位置づけにあったのかどうか、その点について重ねて聞いておきましょう。
  205. 松尾邦彦

    ○松尾(邦)政府委員 ドーム・ペトロリアムの数字、手元にございますのは八〇年度の数字でございますけれども、石油、それから天然ガス等ございまして、原油換算いたしますと、生産量では第七位でございますけれども、確認埋蔵量では第三位、鉱区保有面積では第一位ということでございました。
  206. 井上一成

    井上(一)委員 私の調べでは、七九年話し合いがあった当時第十九位、決して大きい企業だとは位置づけられないわけです。そのような順位の、いわばどちらかといえば低いランクの企業なんです。そこに援助協力の話し合いが成立した。  それじゃ、ドーム・カナダ社はいっ設立をされたのでしょうか。
  207. 勝谷保

    ○勝谷参考人 ドーム・カナダ社の概要を申し上げます。  一九五八年にアルバータ州の会社法に基づきまして、ラルタ・ペトロリアムとして設立をされました。その後は、同アルバータ州で小規模な石油ガス事業を運営していた会社の由でございますが、一九七九年に至りまして、ドーム・ペトロリアムの子会社でございますプロボ・ガス社が一〇〇%出しまして、このラルタ・ペトロリアムを子会社にいたしました。ドーム・ペトロリアム社の孫会社でございます。さらに、これが一九八〇年の十二月に至りまして、ドーム・カナダ社に社名を変更いたしております。そして、翌年の一九八一年の三月にドーム・カナダ社は株主公募によりまして、先ほどのプロボ・ガス社から離れまして、ドーム・ペトロリアムが四八%を所有、そして残りの五二%を一般の株主が持つという形に変わっております。
  208. 井上一成

    井上(一)委員 ドーム・カナダ社はいま言う一九五八年のラルタの系列というのか、そういう会社を――冬眠会社であったのかどうか、そこも私は指摘をしたいのですよ。その会社がどういう流れの中で生まれてきたか、私が調べた範囲というよりも、むしろ一九八一年のアメリカのSECを通したドーム・ペトロリアムの年次報告の中には、一九八一年の三月にドーム・カナダ社を設立したということが書かれているわけなんです。そして、この年、八一年は、ドーム石油にとっても非常に活気のある一年であった。さらには、その系列会社の中でドーム・カナダは、カナダ資本の企業を対象とする国家エネルギー計画が始まったのに対応して、カナダ政府が民族資本、カナダのエネルギー資源確保のための一つの方針、方策として高率の補助をやっていこうという中で、その対応を受けてこのドーム・カナダは設立された企業だ。  いわば、私から指摘をしたいのは、わが国が二月十六日、ドーム石油とドーム・カナダと三社契約をしたと言うけれども、そのときはまだドーム・カナダは実質的に設立はされておらずに、何らかの形での、いろいろな会社を経由した流れの中で存在をしていたかもしれない。しかし、ドーム・カナダとしては三月である。それが、実質的に効力の発効が三月三日だといまお答えがあった。契約は二月十六日。いわば存在をしない会社あるいはドーム・ペトロリアム社とかかわりのない会社との関係で、三社契約が結ばれている。そういうことを私はこの資料で知ることができるわけです。  これはアメリカがちゃんと年次報告として出された原文でありますが、これが間違いなのか、あるいは政府、石油公団に正しい、納得のいける資料があるならぜひ御提示をいただきたい、こう思います。
  209. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先生の御指摘のような事実は時系列的には存在すると思いますが、ちょっと御説明をさせていただきたいと思いますのは、実は、このカナダ・ペトロリアムが持っております北極海の鉱区、さらにはカナダ・ペトロリアムが持っております全カナダの鉱区、これについて実際の穴を掘って探鉱活動をするオペレーティングカンパニーとしてこのドーム・カナダを設立したわけでございまして、ドーム・カナダは従来の仕事を全部やめまして探鉱に専念をするということでございます。  さらに、当時カナダ連邦の国家エネルギー計画がございまして、先生御存じと思いますが、これでは一九九〇年までに石油の自給を一〇〇%まで達成いたしまして、その際カナダ資本で五〇%を占めるという政策を遂行中でございました。そして、このために適格な要件を備えます会社に対しましては、最高八〇%までの政府補助をするという政策を推進中でございます。したがいまして、その政策との対応のためにも、このドーム・カナダをつくりまして、そこでやるということは既定の方針でございました。  そして、実はドーム・ペトロリアムが持っております鉱区とさらにドーム・カナダが持っております鉱区がそれぞれございまして、その鉱区が錯綜して北極のボーフォート海に存在したわけでございます。したがいまして、私どもはこの二社の関係を考えまして、北極海の契約は三社契約にするのが最もいいのではないかという感じを感じ取りまして、そういう契約を進めたという事実がございますことを御報告申し上げます。
  210. 井上一成

    井上(一)委員 私は三社契約の是非を問題にしているのではない。三社契約をした時点とドーム・カナダ社が設立をされた時点。いまおっしゃるように、これにも、一九八一年三月に設立をされた、このドーム社はボーフォート海の鉱区で探鉱業務を引き受けてやる企業である、ドーム石油は三年間の協定をドーム・カナダと結んで一定の利益を得る権利をお互いに供与していく、こういうことをちゃんと書かれているのです。  あなた方はこういうことがきっちりと説明できるのかどうか、できないわけでしょう。二月に契約して、三月にこれは設立されている、だから効力が三月にといういまのお答えが出てきたのではないだろうか。これに対してあなた方の方から、石油公団から、これをお持ちでしょう、私の指摘をしていることにどう弁解をなさるのですか。
  211. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先生の御指摘はまさにそのとおりでございます。私ども、それを否定もいたしておりません。ただ、先ほどからるる申し上げますように、この前身である会社がございまして、この会社を子会社にして、名前を変えて、そして将来はこれに全面的に探鉱さすことになっておるので、三社の協定を結ばせていただいたということでございます。
  212. 井上一成

    井上(一)委員 それでは現在のドーム・カナダ社の経常状況はどうなんでしょうか。
  213. 勝谷保

    ○勝谷参考人 実は、わが方と契約を結びましてからしばらく後でございますけれども、このドーム・カナダがカナダの非常に大きな石油ガス会社の購入に踏み切りました。これは当時、油価が上がるであろうという前提、さらにカナダ化政策はどんどん進むであろうという前提のもとに、借金政策でその会社を吸収いたしたわけでございます。ところが、その後の油価の情勢、需給関係は御承知のとおりでございまして、この思惑がみごとに外れたわけでございます。その結果、大変な借金を背負うということになってまいりました。そこで、このドーム社の救済策ということをカナダ連邦政府とカナダの四大銀行が進めているわけでございます。この中身は、それぞれカナダの連邦政府とカナダの四大銀行が五億カナダ・ドルを出してドーム社の転換社債を買うとか、四つばかりの大綱がございます。この大綱の推進を目下図っているところでございますが、なかなかその話がつかないということで、その話をつけるのが次次に延びていって、いまのところ来年の一月まで延びているというのが実情でございます。  一方でそういう状況がございますので、決していい状況ではございませんが、一九八二年が最悪の年で、五千五百万カナダ・ドルの赤字を計上いたしました。一九八三年になりましては、微々たるものではございますが、まあまあ黒字ということで推移をしているのが実情でございますが、背景には先ほど申しましたような大変な借金があるということで、楽観が許されない会社の実情でございます。
  214. 井上一成

    井上(一)委員 いまお答えがあったように、この経営状況はまさに赤字経営で、自転車操業という言葉がありますが、支払いを延期し延期し、まさにこの会社は破産寸前の状況である。カナダ政府としてもつぶすにつぶせないから、何とかこれはどこかへ、カナダ石油にでも吸収合併でもして、何とかかっこうをつけていきたいというような思惑もあるのではないだろうか。一応、全般、ドーム・カナダの資金供与をした経緯と現在のドーム・カナダの実情を私は大まかに確認をしたわけです。  じゃ、一体、四億カナダ・ドル、わが国の七百七十億円ですよ。この投資は生かされたのかどうか。人勧凍結八百億。あなた方政府は、この金をちゅうちょして、今日まで頑として拒否し続けているわけです。片側で、頼りない会社に七百七十億の金をつぎ込んだわけです。効果ある投資なのか資金援助なのか、財政再建、行政改革、まさにこの点が私は問題だと思う。どうなんですか。この七百七十億円の効果、このことについて、私はそれぞれの見解を聞いておきます。
  215. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先ほど御説明申し上げましたが、私どもの四億カナダ・ドルは探鉱資金でございますが、この四億カナダ・ドルを含めまして、カナダサイドでは十億ドルの探鉱投資を進めております。その結果、現在まで、一九八三年九月末でございますが、十八構造、油がありそうな構造十八構造の中に三十の試掘を行いました。そして、目的深度まで、これは夏しか掘れない条件のところでございますが、目的深度まで完掘をいたして、テストを終了したものが十六坑でございます。そのうち、十三坑につきましては五油田、一油田はガスと油でございますが、二つはガス田でございます。これを八構造掘りまして、当たっております。しかしながら、三坑道については、掘削の結果、油兆、ガス兆がなく、廃坑にされております。いま、一九八四年以降に持ち込んで作業を中断中のものが六坑ございます。さらには、掘削が障害がございまして目的深度まで行かないというものが八坑あります。ここらを見ますと、従来の探鉱活動で行われる程度のところは大体やったという感じがいたすわけでございます。  先生御存じと思いますが、残されておりますこの地球上の膨大な地域としては、この北極が残されております。油価が上がったときのことでございますが、将来油価が上がって需給がタイトになりましたときは、この北極の油田というのはわれわれの将来における重要な油田でございます。技術の開発を待ちまして進めなくてはいかぬ分野ではございますけれども、その意味で、着々と言ったらあれでございますが、まあそれなりの探鉱活動を進めているということは申せるのではないかと思っております。
  216. 井上一成

    井上(一)委員 七百七十億円のこの資金はどのような分野で何に使われていったのか、石油公団として御承知だと思うのです。たとえば何キロのパイプラインをプッシュしたとか、いわゆる探鉱の必要な経費として七百七十億円の資金使途。
  217. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先ほども触れさせていただきましたけれども、カナダサイドの金と一緒にしまして、先ほど申しました北極海、ボーフォートの試掘探鉱に使わせていただいております。この金の使い方につきましては、実は毎年二回の委員会がございまして、さらにその下にサブコミッティーがございまして、それぞれのところでこういう坑道にこういうふうな掘り方をする、これに金を幾ら使うという提案がございまして、それを一々チェックの上、実は進めているということでございます。
  218. 井上一成

    井上(一)委員 探鉱試掘の資金に使うというのは、四億ドルは当然そのために供与したのですからね。その中でどういうところに七百七十億円が消化されていったのか。具体的な資金使途の明細を私はお聞きしているんです。
  219. 勝谷保

    ○勝谷参考人 繰り返して恐縮でございますが、先ほど申しましたようにドームの鉱区、北極海のボーフォート海でございますが、その鉱区に対して、十八構造に対しまして三十の試掘をいたしました。その金に対して一部をその四億ドルで充当したということでございます。くどいようでございますが、先ほどの委員会といたしまして、さらに私どもとしては、こういう重要な金でございますので、ちゃんとした公認会計士といいますか、そういうもののチェックを経たサーティフィケーションをつけて本件を認めるという形を実はとったわけでございます。
  220. 井上一成

    井上(一)委員 もちろん公認会計士が法的に必要であって会社の貸借対照表というものはつくられていくわけなんですね。やはり、資金を供与したわが国が具体的な資金使途について承知をしているのか承知をしていないのか、承知をしているとすればここで報告をいただきたい。十八カ所に試掘をした、ほとんどがだめであった。では、個個の試掘をした具体例に対して、ここは何億、ここは何億と言えるのですか。あなた方はそこまでの十分な配慮というか注意というか、そこまでのきっちりとした確認はしてないのじゃないですか。この金は貸しつ放し、行きっ放しだと。
  221. 金丸信

    金丸委員長 もう少しきちんとした返事をしてください。
  222. 勝谷保

    ○勝谷参考人 いま先生のおっしゃいましたように、この北極海、ボーフォート海の探鉱に使ったことはそのとおりであるとおっしゃっていただきましたが、まさにそのとおりに使ったわけでございまして、それでは、現地のカナダサイドが支出をして、この金はここというような細部のところまで逐一全部おまえたちは把握しているかということになりますと、これは、先ほども申しました年二回の委員会とさらにはサブコミッティーでそれぞれのこれをアグリゲートした一つの資料が出るわけでございます。これをわが方としてはオーソライズしているということでございますので、先生がおっしゃるような逐一全部やっているかということになれば、これはおっしゃるとおりでございまして、残念ながらそこまでやるほどの体制をとっておりません。
  223. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、石油公団は、主体的に取り組んでいる北極石油ですね、現状において北極石油のこのプロジェクトに対する対応はどう考えているのか。どのように対応していこうとしているのか。
  224. 勝谷保

    ○勝谷参考人 先ほど来申し上げておりますが、私どもとしては出発の時点で関係者と十分相談をいたしまして、技術評価、経済評価をいたして進めたわけでございます。当時は最善の努力をいたしましたけれども、その後先ほど申しましたハドソンベイ・オイル・アンド・ガス会社という巨大なガス会社の買収のために超積極的な経営路線を遂行いたしましたので、それが時勢に対応できませんでした。その結果、現在の時点でこれを見ます限りは、必ずしも満足すべき状況ではないという残念な状況でございます。  私どもとしてはこれらの実態によく対応するために、会社も当時はどんどん試掘を進め、油田の開発を進めて、少々高い油でも売れるという前提でございましたが、そういうことがとれませんので、しばらくの間は会社をスリムな体制にいたしまして、少数精鋭で天下の大勢が好転する時期を待つという状態をとるべきではないかという考えを持っております。その体制をどうするかということは目下検討中でございます。
  225. 井上一成

    井上(一)委員 技術評価の見通しの甘さ、そういうことも含めて体制をスリムにしたい、これは当然だと思うのです。行革の中でこれこそまさにスリムにし、全部まる裸にすべきじゃないか。さらにはこのことについての責任問題も私は生まれてこようかと思うのです。八七年には原油が手当てできるという契約でしょう、時期を待ちたいなんて言って、ここ三年や五年でそんな見通しをいまあなた持てるのですか。これはきょう一日の議論じゃありませんよ。国家財政を再建していかなければいけない、行政改革をやらなければいけないという、これは中曽根さんの一つの大きな政治公約ですよ。国民に小さなことを押しつけてむちゃくちゃなことをやっている反面、こんなところで七百七十億の金が死んでいるのです。僕はここを反省をしてもらいたい。こういうことがいまの石特会計、大蔵大臣もいらっしゃるけれども、私は歳出構造の理解に苦しむ不可解な一つの象徴的な具体例として持ち上げたわけです。  率直に言ってこれは失敗だ、このプロジェクトは失敗でありました、そういうことをここできっちりと公団は国民にわびる気持ちでお答えをいただく、そのことがあしたからの前進というか取り組みにつながると私は思うのです。私はその点をここできっちりと聞いておきたい。きょう一日限られた時間で議論するわけですが、この問題こそ行政改革の中で何としても改めてもらいたいという私の気持ち、熱意がこの質問になったわけです。どうぞ素直な見解を重ねて聞かせていただきたい、こう私は思います。
  226. 勝谷保

    ○勝谷参考人 ただいま先生御指摘の点を肝に銘じまして、スリムな体制をとるべく行政官庁の御指導もいただきながら、相手はまた株式会社でございますので、それに対する的確な対応をとらせていただきたいと思っております。
  227. 井上一成

    井上(一)委員 まあ勝谷理事も立場があって非常に答弁が苦しいだろうと思います。しかし、少なくとも失敗でしたよという私のこの指摘、そのとおりにまじめに受けとめますか。もう一度重ねて、大変失敬だけれども、失敗でしたと……。
  228. 勝谷保

    ○勝谷参考人 現時点に立ちます限り、残念ではございますけれども、非常に問題のある対応をしたということは言えるのではないかと思っております。
  229. 井上一成

    井上(一)委員 勝谷理事は、公団として答弁のできる限界ぎりぎりいっぱいでいま答えられたわけです。私はまさにこのことがむだ遣いの親方日の丸の最大公約数だ、こう思っているわけです。地方自治体の問題等もいろいろなことが指摘されますよ。  今度は国家財政のふところを預かる大蔵大臣、こんな事実、こんなことはやはり改めなければいけないし、再点検をしていかなければいけないし、こんなことがまさに行政改革中心に置かれなければいけないと思うのですよ。いかがですか。大蔵大臣のいまの。プロジェクトに対する私の質疑を通してお感じになったこと、さらにこれからどう取り組んでいくかという決意も含めて聞いておきたいと思います。
  230. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私もいまの問答を聞きながら、探鉱事業というものは大変にむずかしいものだということは素人ながらわからないものでもございません。しかしながら、財政改革の進め方の基本として、特会などというものは歴史的経過、そのときの必要性に応じてできたものであると思っております。しかし、そういうものもその制度、施策の根源にさかのぼって洗い直せというのが今日の財政改革に当たっての基本方針でございますので、この個別問題に対する見解は別といたしまして、そのような姿勢で対応していかなければならない私の立場であると深く認識をいたしております。
  231. 井上一成

    井上(一)委員 余り時間がありませんので、私はここで検査院にお尋ねをしておきたいと思います。  いまの質疑を聞いていただいて、会計検査院としてこのドーム・カナダ、ドーム石油に対する資金供与の事実関係を承知し、あるいは具体的な調査に入られたのかどうか。もし入られてないとするならその調査にぜひ入ってほしい、調査をしてほしいと私は思うのです。このことを調査せずして国の財源確保なんて考えられませんよ。そういう意味で会計検査院の取り組みを私はここで聞いておきたい、こう思います。
  232. 磯田晋

    ○磯田会計検査院説明員 ただいま伺いました北極石油株式会社の件につきましては、私ども本年も石油公団担当者からいろいろな話は伺っておりますが、まだ所見をまとめる段階に至っておりません。伺いますと、非常に真剣に取り組まなければならない問題である、そういうふうに承知いたしますので、その点を念頭に置きまして今後の検査を進めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  233. 井上一成

    井上(一)委員 いまのお答えは調査に着手して事実関係を明らかにしていく、こういうことで理解してよろしいでしょうか。
  234. 磯田晋

    ○磯田会計検査院説明員 はい、そのように理解していただいて結構でございます。
  235. 井上一成

    井上(一)委員 ここで、いままでの質疑の中で、このプロジェクトに対する通産大臣の所見を聞いておきたいと思います。
  236. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 事の経緯並びに現状はいま公団側から説明したとおりで、問答の内容も私、静聴させていただいておりましたが、公団側も遺憾の意を表したと思っております。今後の問題に関しましては、私自身も極力仰せのとおりのような趣旨を踏まえて、成果あるように対処していきたいと考えております。
  237. 井上一成

    井上(一)委員 一応この問題は、不明朗な歳出と言うのがいいのか、あるいは甘い歳出、そういうことでの再点検ということと、具体的な私の指摘したこの問題について、今後調査を待ってさらに私はお尋ねを続けたい、こういうふうに思います。  余りあと時間がありませんので、もう一点、厚木基地の問題、このこともいかに歳出を抑えて歳入を効率よく運用していくかという行革の精神ですね、そういうことからとらえて私は聞いておきたい、こういうことであります。  防衛庁長官は八月のたしか十九日か二十日、アメリカを訪問されて、ワインバーガー国防長官との話し合いの中で、いろいろ厚木基地の問題が話題になったわけでありますけれども、その代替基地として硫黄島が云々されているわけです。それで、硫黄島ではいろいろな問題があるから、さらにどんどん本土に近づいてきて、八丈島あたりとかいうことになるのか、そんなことは決してよろしくないのだけれども。あるいは浮体工法等も議論の対象になっているわけでありますけれども、この厚木基地の代替基地を防衛庁ではどのように受けとめているのか、あるいは必要なのか、そしてそのことにおけるわが国の国家財政の歳出はどれぐらいに予定をしていらっしゃるのか、この点について聞いておきたいと思います。
  238. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 厚木飛行場におきまする米軍艦載機の夜間発着訓練に伴ういろいろな問題を解決しようと、目下懸命に努力をいたしておるわけでございます。  一つには、この発生いたします騒音緩和を図るために他にも訓練の実施ができる施設を見出す、あるいはその方策を調査検討するために、現在関東地方及びその周辺を対象といたしまして、既存の飛行場について所要の発着訓練ができるかどうかの調査、あるいは陸上飛行場の新設について適地があるかどうかの検討をするための調査、あるいはもう一つ、特にこの厚木周辺の地元からの提案もございましたのですが、海上に浮体飛行場を浮かばせて、技術的、経済的、社会的な見地から実現性があり得るかというような検討をするための資料の収集などにつきまして、五十八年度予算で調査費を計上いたしまして、目下鋭意検討中でもございますが、実はまだ、ただいまこの時点におきまして、しからば具体的に何らかの成案が得られておるかと申しますと、実は目下各般の調査を続行中というところでございまして、その点につきまして、最後にお尋ねのありましたような、あとどのくらい国費をつぎ込むのかというような意味の、実はまだそのずっと手前の調査をいまやっているさなか、こういうことでございます。
  239. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、一部報道されている硫黄島を視察した、代替基地としての対象にですね、このことは調査の段階として事実なんですか。
  240. 塩田章

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  この厚木の問題が発生しましたのが、そもそも現在米軍が三沢と岩国と厚木を使ってやっている、それが三沢と岩国では遠過ぎるということからこの問題が発生しまして、米側は関東、その周辺でないか、こういうことでございまして、そもそも硫黄島では三沢の倍以上ございまして、距離的に大変困難でございます。そういう意味で、私ども、米側と正式に硫黄島でどうだという検討をしたことはございません。ただ、米側としまして、一応見ておこうということで行ったことは事実でございます。
  241. 井上一成

    井上(一)委員 私は、いま厚木の基地周辺に住まいをされる方々の実情ということも十分踏まえた中で、むしろ基地反対の立場でありますから、新規事業として多額の資金を必要とするそのような事業への歳出というものは大いに見合わすべきであって、むしろそういう点についてはここで強く再考を要望しておきます。とりわけ、役所が先に物事を決めて、国民はその後にやむを得ずしょうことなしに引っ張られていくという、こういう物のやり方についてはどうも理解ができないので、その点もあわせて、防衛庁が独断、独走しないように、そういうことを警鐘を鳴らしておきます。  最後に、歳出の問題で、非常にこまいことかもわかりませんが、一つずつ見直しをしていくのだ、そういう時点に立つと、私が前々から指摘をしてきた一つは、国有財産の貸し付けの問題でありまして、適当な賃料を、使用料を徴収していく。そのことが積もって国家財政が安定して財源が確保できる。  きょうは具体的に会計検査院に、羽田空港の土地使用料について聞いておきたいと思うのです。  羽田空港の土地使用料については何点かの疑点を私も決算委員会で再三申し上げてきたわけです。当時の運輸大臣は、答弁に立って、直接関係者を呼んで調査をしたい。私は、調査をなされたとは思うのですけれども、今日までまだその使用料に対する取り組みの修正がなされていません。  まず、会計検査院に、羽田空港の土地使用料に対しての検査院としての考え方を聞きたいと思います。
  242. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 お答えいたします。  空港の土地使用料は、相続税課税標準価格に一定の率を乗じて算出する、そういうことにされておりますが、東京航空局で東京国際空港の土地の使用料の算出に際しまして、所轄の蒲田税務署より空港内の路線価図の提出を受けておりまして、この路線価を集計いたしまして、路線数で割りまして、算術平均値を求めまして、これを相続税課税標準価格として、平米当たり一律の使用料で土地使用料を算出しております。しかし、路線価にも相当の高低のばらつきがありますので、このような方法で計算いたしますと、個別的には必ずしも適切な価格が算出されていないという考え方もありまして、これに対しまして、現在当局の意見を徴するなどいたしまして検討を進めている段階でございます。
  243. 井上一成

    井上(一)委員 いま検査院としては、いわゆる運輸省案の算術平均した使用料では少し考え方として問題があるのではないだろうか。運輸省が年間約二十五億円ぐらいの使用料収入があるわけですけれども、もし見直しをすることによってこれが三億――会計検査院の積算なのか大蔵の積算なのかちょっと私はわかりませんけれども、年間三億円前後の増収が図られる。運輸大臣、やはり適正な使用料、私は高い使用料と言うのじゃありません、適正な使用料を徴収していくべきではないだろうか、こういうふうに思うのです。いかがでしょうか。
  244. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 あなたが羽田の使用料について御発言されている記録は全部拝見しております。おっしゃるとおりでありまして、その中身がどうこうということは私もよくわかりませんが、それは後で事務当局から説明させますけれども、ちょうど五十九年度は改定期ですから、そういうときに一斉に作業するように指示してあります。
  245. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、そのことによってまたテナントが使用料、いわゆる賃貸料としてはね上がるようなことのないように、たとえばいま原価百六十円なら百六十円のビール小瓶を三百八十円で売っているわけですね。ところが、そうだからといって四百五十円にも五百円にも売られたら、利用客が負担増になるわけです。私の言いたいのは、やはりきっちりとすべきだ、正しい評価価額で使用料は取るべきであると思う。さらに、そこで商売をする、たとえば同じものでも空港ビルディングの系列会社が売っているものは、テナントとして入っている系列外のそういう業者が売っているものよりも高い、具体的にこういうこともあるわけなんです。私は、すべて全般にわたって見直していって、とりわけ羽田空港における疑問点が余りにも目につくので、これはきっちりとそういうところにまで気を配った、そのことが国民に対する効果ある行政であり、そのことが本当の行政改革なんですよ。  臨調における答申に、あなた方は心やすくすぐに金が必要だと思ったら国民から取ろう、こういう考え方に、発想に立つことは、私は反対であります。そういうことに立つことは、私は頑として受け入れられないから、そういう意味で、むしろ政府側で見直していくべき数々の問題点を再度再点検をしていく、そういう姿勢に立って行政を効率よく、効果ある行政を推し進めていただきたい、こういうふうに思います。  最後に、行政管理庁長官から、私の質問すべてをお聞きをいただいて、所感を承って、私の質問を終えます。
  246. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 個別的な問題について私、余り詳細を承知しておりませんから何も申し上げることございませんが、やはり官庁であろうが公団であろうが、それぞれの携わっておる業務については常日ごろ見直す、点検をする、そして反省すべきものは反省をするということが一番大事であるということを痛感いたしました。
  247. 金丸信

    金丸委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、伊賀定盛君。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕
  248. 伊賀定盛

    伊賀委員 文教行政について伺いたいのであります。  最初に、臨調最終答申における文教関係が、省庁内部部局、附属機関等の整理合理化特殊法人整理合理化、補助金等の整理合理化、公務員制、以上四つに大別されておるのですが、まず、特に今回の審議の対象になっております内部部局の問題についてのメリット、デメリットについて伺います。
  249. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生のお話しの臨調答申の具体化としての本省内部部局の整理の問題でございますが、まず第一点といたしましては、従来初等中等教育局は十課編成でございまして、教育内容及び教員組織、いろいろと指導問題、それから諸条件の整備とあわせて仕事をしておったわけでございます。この点につきまして指導内容中心とした初等中等局以外に教育助成局というものを設けまして、教育助成局において教育諸条件の整備を一体的に遂行しようという点についての改正案が第一点でございます。  それから第二点は、高等教育の一体的な遂行をやっていきたいというふうなことで、従来大学局でやっておりましたものと管理局でやっておりましたものを統合いたしまして、高等教育局というものを設ける、高等教育に関する行政の一体的な遂行を図りたいというのが第二点でございます。  これらの大きな改編に伴いまして、従来ございました管理局を廃止するというふうなところが今回の内部部局の改編の大きなところでございます。  以上でございます。
  250. 伊賀定盛

    伊賀委員 いま伺いますと、確かに運用上の妙はあるかもしれませんけれども、人、金等々から見る限りのメリットというものは何にもないですね。
  251. 西崎清久

    ○西崎政府委員 まず定員の問題でございますが、定員につきましては第六次の定員の削減計画というのが進行中でございます。この第六次の定員の削減計画に基づきます五十九年度の定員削減については四十三名でございましたが、内部部局、所轄機関を含めてやることにいたしております。  ただいま申し上げました組織の改編に伴います定員の異動につきましては、振りかえ等を主といたしまして、改編に伴う定員の増減はない次第でございます。
  252. 伊賀定盛

    伊賀委員 そうしますと、従来は法律事項であったものが政令に変わるだけですから、言いかえますと国会にかけなくてもいい、こういうことになるわけです。そうすると、ごく結論から言いますと、今後どうぜ予算を伴うものが出てきますから、予算を伴うものは国会で審議します。そうしますと、予算だけは決めなさい、中身は文部省に任しておきなさい、こういうことです。そうすると目隠しをしてついてこい、こういうことになるわけで、知らしむべからず寄らしむべし、こういうことに結論としてはなりますね。これは大臣に。
  253. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 今度の局等の設置について改正案を出しておりますのは、これは単に文部省だけのことでないわけでございまして、基本的な事項法律でお決め願っておって、その中の運用について局等をいかにした方が時勢の推移に対応するか、こういうことを考えてやるということになるわけでございます。だからといって、勝手気ままに、でたらめに実情に合わないようなことをするとは私どもは考えておらないわけでございます。
  254. 伊賀定盛

    伊賀委員 したがって、私どもは今度の法案に反対する理由はここら辺にもあるわけですけれどもね。  その次に伺いたいのは、補助金等の整理合理化が幾つか出ておりますが、これは全部お答え願いますと時間がかかりますから、まず一つは、学級規模の四十人学級の問題、それから義務教育費、いわゆる教科書の無償制の問題をこれからどう扱うか、それから教職員の定数と給与について、民間と同様の業務を行うものの民間委託を、今後何をどう民間委託に持っていこうとするのか、それから授業料、これは国公立学校、特に高等学校は大変大きな影響があると思いますが、それから私立学校、それから奨学金の有利子制、返還免除制の廃止、社会教育の民営化、民間委託等が臨調指摘されておるわけでありまして、それを文部省は五十八年、五十九年の予算の中でどう対応していこうとするのか、お答えを願いたい。
  255. 高石邦男

    ○高石政府委員 まず第一は四十人学級の問題でございますが、四十人学級につきましては、五十六年に行政改革関連特別法におきまして、五十七年度から五十九年度までの第五次五カ年計画については国の財政状況を勘案して対処する、これを踏まえまして五十七年度から五十九年度までの間の教職員の改善増を抑制しているわけでございます。具体的には、四十人学級につきましては五十五年、五十六年と実施してまいりましたけれども、その後の増要員につきましては三年間抑制をするということで、現在四十人学級に必要な定員につきましては学年進行の部分について予算を計上していくということで、五十九年度もそういうような考え方に立っているわけでございます。  それから、一般の教職員の配置率の改善でございますが、これも全体的に抑制をするということで、必要最小限の研修等の定員であるとか、特殊教育関係に従事する先生方の内容につきましては必要な改善をお願いしているわけでございます。しかし、これは五十五年から六十六年までの十二カ年間で全体計画をセットしておりますので、その全体計画は動かさないということで、財政の厳しい期間内においてそういう対応措置をとる、こういう形で基本的に考えているところでございます。  それから、教職員の給与につきましては、国庫負担金の精算に当たりまして国並みの給与水準を限度とするように極力抑制するという趣旨の指摘がなされているわけでございます。これにつきましては、現在の義務教育国庫負担法のいわゆる限度政令によりまして、国の給与水準の例に準じて教職員の給与の抑制を図っていく、こういうような対応をとっているところでございます。  また、教科書の無償給与につきましては、約四百六十億今年度ございますが、来年度もこれを引き続き継続していくということで、大体四百六十億前後の金を予算要求しているという状況でございます。
  256. 伊賀定盛

    伊賀委員 教科書を、五十九年度はそうですが、六十年度は有償にするんでしょう。
  257. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 教科書の無償制度の問題につきましては、御承知のとおりに臨調答申は教科書無償制度の廃止等を含めて検討しろ、こういうふうな趣旨になっております。  これにもいろいろな意見があるわけでございますが、私どもとしては、これは初中教育の、基礎的教育の根本の方針である、憲法の二十六条を持ち出すまでもなくこれは無償であるべきであるという立場をとっておりますが、まだいろいろな意見がありますから、もう少し検討しようということになっております。最終決定はまだできませんので、先ほど申し上げたように、五十九年度は無償の方式で概算要求をしている。私どもとしては無償制度をとるべきであると考えております。
  258. 伊賀定盛

    伊賀委員 後ほどこれは触れたいと思いますが、結論として、五十七年度の予算に比べて、新聞は、福祉、教育切り捨て、防衛費突出と報じておりますね。去年に比べて五十八年度は教育費が五百十億減っていますね。これをお認めになりますね。
  259. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 御承知のように、国家財政は国民の負担でございます。それが全般的に非常に窮屈でありますから、むだということはないと思いますけれども、むだと思われるものはできるだけ整理をする、あるいは多少がまんのできるところはがまんしてもらう、こういうことで抑制をやっておることは事実でございます。
  260. 伊賀定盛

    伊賀委員 次に、少年非行の問題と絡みまして、五十七年の警察白書がこう指摘しておるんですね。「少年非行は、昭和二十六、三十九年に続いて、現在は、戦後第三のピーク形成期にある。五十五年には、刑法犯少年が戦後最高を記録したが、五十六年は、これを更に上回り、また、全刑法犯検挙(補導)人員に占める少年の割合も五割を超えるなど、戦後最悪の状況となっている。」と指摘しておるわけでありまして、この警察庁の指摘、第一のピークが二十六年で、第二のピークは三十九年、第三が五十七年、これを文部省の戦後制定された法律を順次考えながら考えてみますと、確かに少年非行の時代的な背景が出てくるのです。  まず時代的に見ますと、昭和二十二年に教育基本法と学校教育法の二つが制定された。二十三年に教育委員会法が制定された。二十四年に教育公務員特例法、義務教育費国庫負担法施行令、文部省設置法、教育職員免許法が公布になった。敗戦から二十四年までを文部行政、文教行政から見る限りいわば基本法、実体法の成立過程であった。したがって、戦前の天皇制中心の縦の道徳から、新しい教育基本法ができて横の道徳ということになってきたわけですね。大臣、これはお認めになりますね。
  261. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 歴史的にはさような経過をたどっております。
  262. 伊賀定盛

    伊賀委員 そこで、第一のピーク二十六年が出てくるわけでありますが、その前の年、二十五年の六月二十五日に朝鮮戦争が始まりますね。二十六年の二月七日に天野文部大臣が衆議院で静かな愛国心を説いた。静かな愛国心、朝鮮動乱、こういうものを背景にして、二十七年の四月二十八日に平和条約が発効しておる。そして、同じく二十七年の六月六日にいわゆる中教審、中央教育審議会が設置される。二十八年の七月八日に教育の中立性維持の通達が文部省から現場に流される。     〔津島委員長代理退席、江藤委員長代理着席〕 そして、二十九年の三月三日に衆議院の文教委員会で「偏向教育の事例」の資料等を提出して、日教組との対決が強まっていく。六月十三日に教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法が施行される。三十年の六月二十四日に教科書政策が強化されてきて、従来の教科書からだんだんと国家統制の方向に強まっていくわけですね。  昭和三十一年の六月三十日に地方教育行政の組織及び運営に関する法律が公布されて、いわゆる教育委の公選制が廃止になって、あわせて任命制に切りかわっていく。三十三年三月十五日に教育課程審議会から答申がありまして、いわゆる道徳教育の特設を盛り込まれていく。三十三年の九月六日に道徳教育講習会が始められましたが、日教組が激しくこれを拒否して十分な効果が出なかった。三十五年の一月十九日に日米新安保条約が調印され、御承知の六〇年安保というものが出てくるわけであります。  そして、三十五年の七月十九日に池田内閣が成立いたしまして、いわゆる所得倍増論、高度経済成長に入るわけです。三十六年に例の全国一斉学力テストが実施される。三十八年に経済審議会から「経済発展における人的能力開発の課題と対策」の答申がありまして、三十八年の十一月十六日に第一回の能研テストが実施される。そして、この能研テストは四十三年で中止になる。  文部省の制定された法律をいま申し上げてきたわけであります。だから、第二のピークの昭和三十九年というのは、教科書の国家統制、それから中教審のもろもろの提言、所得倍増、能研テスト、道徳教育の特設等々が背景になって第二のピークが生まれているわけであります。道徳とか日米平和条約というようなものの上に財政至上主義が重なって出てきた、こう解釈していいですね。
  263. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 青少年の非行問題は、歴史的には先ほど御指摘になりましたような経過をたどっておりますが、いま伊賀さんが御指摘されましたような諸制度の改革が直ちに青少年非行の直接原因であると私ども考えておりません。  これは戦後の混乱の中で、お互いにあの当時のことを言いますると、それは大変な社会経済の混乱の時代でありましたから、そういうことも影響しておるでしょうし、その後経済発展に伴って、残念ながら人間の欲望が高じて物質万能主義的になってきた。したがって、人間社会のマナーといいますか道徳といいますか、そういうものを忘れがちになってきた。そして、経済の発展に伴って家庭が昔のような状況ではない、子供をよく見るいとまがないというような家族関係ができてきた。そういういろいろな状況が重なって一つの波をなしておると思いますが、先ほど御指摘のことが直接直ちに原因になっておるとは考えておりません。
  264. 伊賀定盛

    伊賀委員 そうしますと、大臣は現在の少年非行の背景、何が原因だとお考えですか。
  265. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 私はいろいろ原因があると思います。  まず、本人の、青少年といいますか、素質にも原因がある。同じ環境の中で全部同じ非行をするというわけじゃございませんから、やはり素質にも関係がある。あるいは家庭の教育能力の低下といいますか、そういう状況も関係がある。あるいは客観的な社会経済の発展に伴って、まだそれほど、こう言っては失礼でありますけれども、常識が必ずしも発達していない段階で、いろいろな社会的な誘惑が、人間は欲望の動物でありますから、どうしてもそういう点がある。一面また、学校においての教育の指導力が足らない。こういう点が折り重なってきておる。でありますから、そういう点をいろいろ分析をして、簡単ではありませんけれども、対策を立てていかなければならない。  道徳と言うとすぐ妙に言われますけれども、やはり人間共同社会におけるルールといいますか、そういうものもなおざりにされてきた一面がある。問題は、子供の自制心が非常に不足するようになった、自立心が不足するようになった、物の豊かさに応じてしんぼう強さがなくなった。いろいろな原因が私はあると思いますから、そういう問題を分析して対応を進めていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  266. 伊賀定盛

    伊賀委員 それで、第三のピークの五十七年、いま私は三十八年までの点を申し上げたのですが、続いて、四十一年に中央教育審議会から「期待される人間像」、「後期中等教育の拡充整備について」が答申、四十六年六月十一日に中教審から「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」が答申、四十九年二月に教員人材確保法が公布、そして六月一日に教頭法制化法が公布、五十年の十二月二十六日に主任制が公布、五十一年十二月十八日に教育課程審議会がゆとりと充実の教育課程基準の改善について答申、五十三年の十二月に四十人学級が、当時の日教組の委員長槙枝さんと大臣のトップ会談で約束をされた、こういう経過がずっとあるわけです。五十四年の一月十三日に国公立大学の第一回共通一次試験、そして五十七年に第三の少年非行のピークが出てくるわけですね。  ですから、第三のピークというのは、先ほどもちょっと触れましたけれども、高度経済成長で物は豊かになりましたが、逆に心、精神面の貧困といいますか、そういうものが出てきたのと、学校の管理体制の強化、それから受験体制――当初の青少年の非行、暴力というのは高等学校に出ましたね。最近は中学で、だんだんと低年齢化しておるわけですが、その背景というのはやはり受験体制にあるわけで、いま偏差値教育、高等学校はそれぞれ普通高校、職業高校ありますけれども、もうすでに中学校当時の偏差値によって、おまえは偏差値がこれだけだからここの普通高校に行きなさい、おまえは偏差値がこれだから農業高校に行きなさいということで輪切りにされて配分されるわけです。したがって、高等学校に行った生徒というのは一種のあきらめといいますか、わしはもうこの学校しか行けないのだということで配分されておりますから、まああきらめでしょう。したがって、高等学校の非行問題が最近は出てこなくなった。いまは中学生というのはこれが混在していますから、しかも、偏差値の高い者はよくできるということは中学生も知っておりますから、そういう偏差値教育、輪切り教育が今日の非行、暴力の背景だ、こう考えますが、大臣、どうでしょう。
  267. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いわゆる偏差値は、専門家が統計的にその人間の能力を大体見きわめよう、こういうことでできた制度のように承っておりますが、それによって、こういうところに適性がある、こういうところに適格である、こういういわゆる進路指導ということに使われておるように思います。私は、いま偏差値の問題、それから入学試験の問題、こういう問題がやはり青少年の精神状態に相当な影響を与えておる、結局、これが全部じゃありませんけれども、青少年の非行にかかわりがある、こう思いますので、こういう問題も含めてもっと再検討をしなければならない、こういうことをいま検討しておるわけでございます。
  268. 伊賀定盛

    伊賀委員 そうすると大臣、この間、六・三・三制の見直しの論議がありましたですね。いま大臣のおっしゃることは、その六・三・三制の学制の改革も含めて考えておる、こういう御趣旨ですか。
  269. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 先ほど来お答えしておりますように、教育開題は、いろいろな欠陥といいますか問題があるわけでございますから、それはただ一、二の原因ではない、いろいろな原因が錯綜しておるという観点から、簡単ではございませんけれども、全部を洗い直してみる必要がある。受験制度も教科の内容も、あるいはいまおっしゃったような学校の制度そのものにも欠陥があるという指摘もありますから、そういうことを洗い直してみよう、こういうことで、御承知のように中央教育審議会でも検討願っておりますし、また、文部省内ではそれらの問題についてのチームをつくって、いま現在検討を進めておる。どういう結論が出るかは、これからもう少し時間をかけなければ最終的な結論は簡単ではございません。
  270. 伊賀定盛

    伊賀委員 そこで、もう一度返りますけれども、主任制の問題です。  主任制が五十八年度の予算に、対象人員十六万人、予算三十九億円。これは二分の一ですから、地方団体がちょうど三十九億円あずかっているわけですね。七十八億。これは大臣もう御承知のとおり、学校の先生方は主任手当は要りませんと言っておられるわけですね。財政再建で国に金のない時代ですから、この際ひとつ――もらう方が要らぬ言うておるのに、要らぬ者に文部省は、いや、どうしても取れ、こう言っておるわけですね。主任制の実施状況はどうなっていますか。
  271. 高石邦男

    ○高石政府委員 まず、主任制度は四十七都道府県で制度として全部確立されております。それから、主任手当の支給につきましては五十二年以来行われて、県によってその手当の措置ができた遅い、早いがあるわけでございますが、現在の時点では主任手当について全部支給されているという状況でございます。  ただ、その支給されている手当につきまして、給与と一緒に主任手当も支給するわけでございますが、受領した後に、主任の中では、その一部を組合の運動方針に従って返上闘争というかプール闘争をやっているわけでございます。そういう形で、これは正確な数字はわかりませんけれども、全体の二割程度の金額がそういう形でプールされている、こういうふうに了解しているわけでございます。
  272. 伊賀定盛

    伊賀委員 実施状況はわかりました。  大臣、いま言いますように七十八億、これは五十九年度予算では廃止する御意思ありませんか。
  273. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 廃止する考えはございません。
  274. 伊賀定盛

    伊賀委員 大臣の言うことはよくわかる。いま言いますように、これは行き違いになりますけれども、まず教科書から申し上げますと、「戦前の教育は教科書中心だったが、新しい教育では教科書が絶対的権威を持つものでなく、学習の興味を起こさせ、問題解決のための資料を提供する参考書的性格の強いものとなった。教育で大切なことは、各学校が児童や生徒の実態、地域社会の実情に応じた指導計画をつくり、これに従って教科書を使いこなしていくと考えられるようになった。それにしても、しばらくは教科書の超国家主義、軍国主義的な記述を濃く消した黒塗り教科書」云々、これはあるところの文書でありますけれども、これが戦後の平和教育の出発点であったわけですね。それが、いま教科書の改ざん問題等がありましたけれども、国家統制がだんだんと厳しくなって、さっき言いましたように教頭の法制化、主任制の強化等々で学校の管理体制が厳しくなりますね。  そうすると、現場の先生は生徒の方の顔を見るのじゃなしに、やはり主任さんや教頭さんや校長さんや、そして公選制の教育委員会、教育委員制度が廃止になって任命制の教育委員、これは県の教育委員も市町村の教育委員も、県の教育委員なら、さあこの次に知事さんに任命してもらえるかどうかということで、生徒の方を向くよりもむしろ知事の考え方、上を見て仕事をなさる、市町村の教育委員も、学校の先生方、現場の先生に関心があるのではなしに上を向いて仕事をなさるというような管理体制ですね。むしろ、先ほど申し上げましたように第一のピーク、第二のピーク、第三のピークとこう発展してきておるわけですから。しかも、幸いなことに学校の先生方は要らぬと言うのですから、これは国費のむだ遣いになる、これは押しつけですね。私はそう思いますが、どうでしょうか。
  275. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 教育は、小さな子供からある程度の標準的な常識を与え、そして判断能力がつきました以上は、それ以上はみずからの判断でいろいろ経験をし、勉強も進めるわけでありますが、白紙の状態からの児童生徒について、たとえば義務教育あたりはやはり標準的な教育をすることが当人のためにも社会のためにもなる、自由気ままな教育では社会のいい姿はできない、私はかように考えますから、やはりある程度の、いわゆる現在の検定制度その他のことは必要だろうと思います。従来のような国定教科書というようなものは、これは選ぶべきでないと思いますが、その間に選択の余地のある、ある程度バラエティーのある、しかも標準的な教科書、こういうのは必要であろうと思います。  それから主任制度、先ほど実施状況は局長から御説明申し上げたとおりでありまして、それに反対する人もおられるようでありますが、義務教育というのは国民の子供を国民の考え方で教育してもらうわけでございますから、それについて不都合があるといいますか、足らざるところがあればやはり制度をつくって、しかもそれについてはそれ相応の処遇をする、こういうことでありますから、先ほど申し上げたように廃止する考えはない、こういうことでございます。
  276. 伊賀定盛

    伊賀委員 これは考え方の違いがありますから仕方がないですね。  この間日教組の委員長がかわりまして、田中新委員長さんと大臣がトップ会談をおやりになった。いかがでしたか。
  277. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 トップ会談というのでしょうか何でしょうか、教育問題について陳情があるということでお目にかかりました。
  278. 伊賀定盛

    伊賀委員 従来、瀬戸山文部大臣はタカ派だと私ども新聞で――本当は大臣はどうお考えか知りませんが、新聞なんかにはタカ派と書いてありますね。そのお方が、日教組は戦う日教組なんて――この間私も岡山の日教組大会へ行きましたが、大変だったですよ。あれを一遍大臣に見てもらったらよかったと思いますけれども、一遍何かテレビにも出ていましたね。ビデオか何かで見てもらいたいと思うのですね。とにかく右翼はまず日教組をたたけ、つぶせということでしょう。その戦う日教組の委員長とタカ派の――私はタカ派だと認定したわけじゃないですよ。憲法改正をしたいなどというお考えだとも言われてきたわけですが、その大臣が何かなごやかだったとも言われておりますが、どういうお話をされましたか。
  279. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 私は不肖でございますけれども、日本の文教行政の責任を負わされております。しかも、先ほど来お話しのように、いまや教育問題は非常に国民的な心配事になっておる。でありますから、これをいかに立て直すかというと大げさでございますが、心配要らない将来の、教育はわが国の基礎的な条件でございますから、そのためにはいろいろな方の意見を聞いてできるだけ間違いのない道を選ばなければならない、こういう態度でおるわけでございまして、世間がタカ派と言われておるかどうかは知りませんけれども、私はそういう言葉に惑わされる男じゃないのです。  でありますから、今度の日教組の新委員長になられた田中さんが見えましたけれども、それはそのほかの教育団体もあるわけであります。あるいは教員じゃなくても教育関係の団体がたくさんありますから、概算要求の前には毎年そうでございますが、いろいろな希望なり陳情なり意見を聞くことになっておるそうです。ところが日教組関係は、御承知のように大会を開くとかどうだこうだということでなかなか日程が合わなかった。でありますから、概算要求の八月末までじゃなくて、日教組大会が済みましてから九月十二日に面会することになった、こういうことでございます。  私は日教組大会を細かには見ておりませんけれども、今度の日教組大会はやや趣を異にしておる。従来のいろいろな問題が含まれておりますけれども、いまの教育の荒廃といいますか、青少年の非行、校内暴力等についていろいろ心配される方々があっていろいろな意見を言われている。であるから、ここで教師は一致結束をしてこの問題の解決に乗り出さなければならない。しかも、父兄や地域住民と相提携して教育の正常化といいましょうか、そういう言葉は使われておりませんけれども、この心配事に対応しなければならない、こういう反省といいますか意見が非常に出ております。また日教組大会でもそういうことが確認された、こういうことを私は伝え聞いておりまして、率直に言ってこれは非常にありがたいことだ。  そこで、田中委員長ばかりではありません、ほか副委員長さんあるいは書記長、書記次長、五、六人でしたか見えましたが、そのときのお話は、きょうは文部大臣にお願いに来た、こういうことでございます。どういうことであったかとおっしゃるから言うのですけれども、教育予算をどうかよく確保してもらいたい、これが第一。第二は、人事院勧告をどうかひとつ完全実施に努力してもらいたい。第三は、いま申し上げましたように今度の大会でも非常に議論があり、意見があったのだけれども、教育の荒廃を何とか力を合わせて改めるようにしたいのだ、こういうお話であります。  そのとき言われたのは、大会ではいろいろ反省がありましたが、教職員の教育能力が非常に低下しておる。これは私が言うのじゃなしに日教組の委員長が言われておる。そして教師の団結した協力一致がない、それと地域社会との連絡が足らなかった、こういう反省をしてこれから努力したいと思いますから、文部省もいろいろ話し合いをするようにしてもらいたい。大いに結構です、部署によっていろいろな問題を話し合って、これはだれの教育でもない、国民の教育ですから、国民の子供をどう育てるかの問題ですから、ひとつよく意見を交換して、間違いのない教育を進めようではありませんか、こういうお話をした。  それには私は一つあなた方に注文がある。そこまで心配してくださるのならば教員の教育的使命、これを感じてもらいたい。何か近く公務員共闘でまたストライキをするということを決めておられると伝わっておる。これほど心配されておる子供のために、それどころじゃないのだ、われわれ教師はストライキなんかしている暇はないのだということでぜひストライキをやめてもらいたい、これをお願いしたい。そうしたら、率直に申し上げますけれども、田中委員長は、私個人としてはストライキは反対なんです、こういう話でした。しかし、それは大会のあれじゃないのだ、大会ではストを組んでおられますから。そういうことでございました。
  280. 伊賀定盛

    伊賀委員 もう時間がだんだん少なくなってきましたので、この際、大臣にお願いしたいと思うのです。  いま青少年の非行、暴力、その他問題がありますが、文部省が教育行政を進めるに当たりましていろいろな審議会とか諮問機関というのがあるわけです。こうした諮問機関とか審議会なんかに――やはり実際に教育を担当しているのは現場の先生なんでして、文部大臣は教育を担当していない。初中局長も大学局長も教員の資格、免状、現場の経験は何にもないのです、大臣を初め文部省のいわゆる日本の教育を管理していく人たちは。現場の経験のない人たちがろくなと言ってはおかしいのだけれども、十分な教育行政ができるはずはないと思うのです。だからせめてそういうものを補うために、今後審議会とか諮問機関等に、働く人たちの代表、先生の代表を委員の中にひとつ入れてほしいと思う。そして現場の先生方と一緒に話をしてほしい、こう思うのですが、どうですか。
  281. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 一々どの委員会にどういう方が入っておられるかということは私ここでつまびらかにしておりませんが、それぞれ現場の経験を積んで現場におられる人を相当審議会に入れていることは事実でございます。私は、いま皆素人だとおっしゃったけれども、またよけいなことでございますが、田中委員長と会ったときに、私は全くの素人で文部大臣をしておるのだからいろいろな意見を聞かなければならぬのだ、こういうことを言いましたら、田中さんも、私も何年か教師しただけで全然現場を離れておるのです、こういうお話でした。(伊賀委員「そんな言い逃れはあかぬ」と呼ぶ)いや、言い逃れじゃないです。そういうお話がありました。でありますから、私は、学校の先生といいますか、日教組の話を聞きたいというとき、この問題はこれじゃいかぬというようなときには、電話をかけてちょっと相談してみようかというぐらいの考えを持っているのです。
  282. 伊賀定盛

    伊賀委員 これから五年も十年も大臣が大臣をしてくれておるのなら大変ありがたいのだけれども、大臣は去年の十一月に大臣になられまして、何か解散が十二月にでもあるとかなんとか言い出して、そうしたらあと一カ月ぐらいしか大臣の任期はない。  そこで、もう時間が迫っておりますので、自己採点は何点ぐらいか。それから、いま言います六・三制の見直しの問題から、私学のいろいろな汚職の問題から、国士館の教授の選び方の問題から、それから受験体制、非行、暴力、共通一次、いろいろある。とにかく大臣は、さっきも申すように気骨のある大臣だと思っておりますので、あと一カ月の間に、体を張ってでも私はこれを大臣の在任中にやるのだというのが何かありませんか。
  283. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 なかなか自己採点というのはむずかしいものでございます。入学試験でも、自分が合格するだろうと思っていたけれども、実際はそうでなかった。いま私が自己採点すると、百点とは言いません、九十九点ぐらいあると思っております。しかし、あと一カ月で何もかもやれと言ったってなかなかこれは、教育の問題はじっくり、しかも思いつきじゃいかないという考え方でやっておるということだけを申し上げておきます。
  284. 伊賀定盛

    伊賀委員 これはもう申し上げるまでもないですけれども、確かに教育というのは物をつくるのとわけが違いまして、物が悪かったらほってもよろしいし、つくりかえがききますけれども、人間のつくりかえというのはききませんからね。だから大臣のおっしゃることはよくわかりますが、しかし、少なくとも大臣の任期中にやはり後世の歴史に残るような、しかも大臣になる前からの長い国会の経験をお持ちで、教育行政についてもいろいろと想を練らして大臣におなりになったと思うので、いよいよその職についたのだから、やはりきちっと歴史に残るようなことをやってほしいと思います。  それで、あと一つ、二つ。  東京医科歯科大学の汚職問題が新聞にようけ出ております。もちろん大学の自主性、学問の自由というものは保障すべきでありましょうけれども、このままではいかぬように思うのです。教授を選ぶのに何か考えるべきだと思いますが、文部省は何も考えておらない、全く大学に任せるだけですか。
  285. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 東京医科歯科大学の忌まわしい事件はまことに遺憾至極に思っております。いまお話しのように、大学の自治というものは非常に尊重されなければならない、これが学問の基本であると私どもも思うし、そう言われておるわけでございますが、その根幹をなす教授を選考するのについて金銭が出入りをしておる。しかも、そのほかに医療機械の取引、購入についてこれまた金銭が動いておる。率直に言ってまことに言語道断という感じであります。でありますから、これはまだ残念ながら司直の手でいま詳細を調査中でありますから、結論を申し上げる段階ではございませんけれども、そういうことのないような組織をいろいろ考えていかなければならない、こういうことでございます。
  286. 伊賀定盛

    伊賀委員 最後に、私は共通一次については何回か文教委員会でも御質問しておりますが、全国には共通一次にいろいろと御熱心な先生方もいらっしゃいます、高等学校の先生から大学の先生から。それに文部省が何か特定の大学に圧力をかけておるようなことを聞くのだが、今後そういうことのないようにひとつ大臣明確にしてください。
  287. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 共通一次試験に関してある大学に文部省が圧力をかけておるということは、私は不敏にして全然知らないわけでございます。そういうことはないと思いますが、共通一次試験についてはこれは一面、今日までもう五年経過しておりまして、ある程度の効果はあったという評価が出ておりますけれども、またこれについてはいろいろな意見が出ておる。たとえば実施時期を繰り下げたらどうか、あるいは教科、科目をもう少し減らしたらどうか、いろいろありますけれども、文部省だけの意見ではいけませんので、いま大学あるいは高等学校、そういう各方面と協議をして早く結論を出したい、かように考えておるわけでございます。
  288. 伊賀定盛

    伊賀委員 ことしの共通一次ですが、大臣は九月二十一日参議院で、共通一次は文部省が決めることじゃなくて、大学側あるいは高等学校側が協議しなければならないと答弁しています。ところが、いまおっしゃる入試改善会議というのがその後開かれてないというのですが、どうなんですか。
  289. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 共通一次の問題については、かねて先生からも御質疑いただいているところでございますが、現在国立大学協会及び大学入試センターにおきまして、具体的な検討課題についてそれぞれ協議をいたしているわけでございます。具体的な点で申し上げますと、一つは、共通一次の実施時期の繰り下げの問題等についても具体的に検討お願いをしております。各大学にもアンケート調査をするなどいたしまして、それらの改善については具体的な取り組みが現在行われているわけでございます。したがって、それらの点を踏まえた上で私どもはまた入試改善会議で御相談をいたしたい、かように考えているところでございます。
  290. 伊賀定盛

    伊賀委員 その次に、この間朝日と読売に昭和六十年度から試験期日を二週間程度繰り下げると報道になって、あわせて平均点発表も取りやめる計画ということで報道になりました。いまの二つのうち試験実施日は評価するとしても、平均点公表せずというのは問題があります。従来から入試センターによる操作された平均点としてしばしば問題となってきたものであり、新聞報道によると、試験期日の繰り下げで作業が物理的に間に合わない、結果として受験生は受験産業の情報に依存せざるを得ない、デメリットが予想されると新聞は報じておるわけです。そもそも平均点公表は自己採点方式の根幹であって、軽々しく廃止されるべきものではない。高校長会もこの点同意をしており、自己採点方式による志望変更が可能な範囲で期日を繰り下げるべきだと希望しておるわけでありまして、高校側の意見を聴取してほしい、こういうことであります。
  291. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の点は、新聞報道になされました点については、具体的に国大協で検討段階における一つ意見というぐあいに承知をしておりまして、そのとおりで固まったというぐあいには承知をいたしておりません。関係者の意見を十分伺った上で、今後とも検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  292. 江藤隆美

    江藤委員長代理 これにて伊賀君の質疑は終了いたしました。  次に、平石磨作太郎君。
  293. 平石磨作太郎

    ○平石委員 だんだんと審議も大詰めを迎えたようでして、私がしんがりになりましたが、一応いままでの審議とダブるかもわかりませんが、ひとつお許しをいただきたいと思います。  まず、行管長官にお伺いをいたしますが、臨調あるいは行革大綱によりますと、年金の統合一元化ということが述べられておるわけでございまして、その所管大臣として行管庁長官がおられるわけでして、この年金の統合ということのいわゆる将来展望から眺めたときに、公平な、しかも整合性のある年金統合をしていかなければ、新しい二十一世紀を迎えるということについては特にその点は重要な点だと思うわけでして、そういう意味から眺めてみますと、公務員の共済の統合、地公の統合はすでに議決になって終わりましたので色あせた感もありますけれども、これを見てみましても整合性に欠ける点がある。これはやはり長官として、整合性のあるものの行革推進という立場からこれについてどのようにお考えになっておるか、お聞かせを賜りたいと思うわけです。
  294. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のように、急速に高齢化社会というものの出現が進んでおるわけでございますから、二十一世紀を展望して、こうした社会の急激な変化に対応して年金制度を確立する、これは非常に重要な大問題だと私は思います。この年金制度の改革は、もう私が申し上げるまでもなく長期安定的なものでなければならぬ。五年や十年先じゃだめなので、二十年、三十年、四十年先、本当に安定的な年金が動いていくということが大事であるわけですから、これは内閣挙げての大問題、こういうわけでございますね。  そういう考え方から、私が申し上げるのもどうかと思いますが、厚生大臣が年金担当大臣ということで総理が御指名になっていただきまして、担当大臣のところで、もろもろのいろいろな内容が違っておりますね、それを整合性のある一元的な年金制度をつくっていくようにしていただきたいということで、厚生大臣が年金担当大臣としてその調整を図っていくということに相なっておることは御承知のとおりでございます。
  295. 平石磨作太郎

    ○平石委員 年金担当大臣としての厚生大臣の調整機能というものが十分に働いてない、私はこのように理解をしておるわけです。したがって、これはたびたび厚生大臣にも御指摘を申し上げたはずでございますけれども、あの閣僚懇なるもの、恐らく私の理解としては調整機能を果たすのがあの閣僚懇だと思うわけですけれども、そういう中でどんな使命を持っておるのかはわかりませんが、座長としての年金担当大臣の機能が十分発揮できない、ここにはやはり権限付与がなされてないということも一因ではなかろうかという気がして、たびたび御指摘も申し上げたわけでございます。したがって、公務員共済についてはすでに仕上がりましたので、これから先のことをおもんぱかって一言触れさせていただいておるわけです。  今年の当初議会において、予算委員会で御指摘申し上げたように、それぞれのエリアでそれぞれのお考えのもとに法案が出されてくる。これをできれば最終的には整合性のあるものに仕上げていかねばならぬわけですが、この仕上げていく過程の中で、そういったそれぞれのエリアの中で整合性に欠けることが法案として改正されていく。これを提案権を持つそれぞれの所管大臣はやはり年金担当大臣と合い議して、年金担当大臣とともに判を押して提案していくというように、そこのところだけでも担当大臣に権限があればああいう矛盾は出ないのではないか、私はこういう気がするわけです。  したがって、この前のそれぞれの委員会において、いわゆる大蔵委員会において私、指摘はしてありますからきょうはそれに触れませんけれども、担当大臣として、その機能をこれから先の統合に果たすためにはどのように考えられるか、そして公務員の共済がいま言ったようにある程度整合性に欠けるということについて、反省と言ったらおかしいがどう認識しておられるのか、ひとつお答えいただきたい。
  296. 林義郎

    ○林国務大臣 平石先生からたびたびの御指摘を賜っているところでありますし、御指摘のありますように平石先生が考えられているほど整合性があった形にはなってないということにつきましては、私自身の力不足である、こう思いまして、私自身は反省しているところでございます。  ただ、これはいままで非常に分かれておったものを将来的に七十年に向かって統一していこう、こういう話でございまして、それぞれのところに既得権があり、資産があり、負債があり、期待権があり、それぞれの思惑がありますし、各省がそれぞれ担当しておられるそれぞれの利害があるわけでございますから、それを一片の法律、一片の権限をもって調整をするという話ではない。やはり説得をし納得をいただいた上で話し合いを進めていくことが一番いい方向だと思いますし、いま出しておりますところの法案、ちょうど衆議院では議決されましたが、それとこの前議決されました地方公務員の法案、少なくとも年金統合の、一元化の方向へ向かって、曲がった方向に行っているとは私は思っておりません。少なくとも方向としてはそちらの方向に行っている。ただ、行き方が少し遅いとか少し速いとか、真っすぐ行くのが百八十度の中で三度くらい曲がったとかということはあるかもしれないと思います。そういったことはあるかもしれませんが、私は方向としては間違った方向へ行っているものとは考えてないところでございまして、大きく飛行路線を外れることがないように、これは私も鋭意努めていくということでやっていきたいと思っています。  お話がありましたように、法律権限を与えたらどうかということもありますが、そういった法律権限の問題を越えて閣僚として話し合いをつけていった方がむしろ現実問題としてやりやすいんじゃないだろうかな、法律権限があると非常にぎくしゃくした話になってかえって困るような問題もあるんじゃないだろうかな、こう私は思っているところでございます。
  297. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これ以上もうこの問題には触れません。  そこで、厚生大臣にお伺いをいたしますが、これから二十一世紀を目指す年金統合に当たって、出発点として考えてそろえていかねばならぬことは、各制度の中でいわゆる支給開始年齢、これがいわばばらばらになっておるわけですが、こういったことからこれを整合性あるものにしていかねばならぬと思うのですが、これは大体どういうような方向でやられるのか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  298. 林義郎

    ○林国務大臣 御指摘のように、年金の支給開始年齢は六十歳ということになっていますが、御議論としては六十五歳にというような御議論もあります。しかし、長い間六十歳ということになっておりますし、また、御婦人の方はそれよりも若いということでございますから、その辺は理屈としてやはり統一をしていかなければならないのではないかなという御議論の方が私はいまのところは強いのではないかと思っています。  そういったことを踏まえ、とにかく老後の生活保障、こういうことでございますし、一方では高齢化社会になってきた。平均、男七十五歳、女八十歳、こういうことになってきたときに、一般的には非常に元気になってきたということもありますから、そういったときに、六十歳から年金をもらって何にもしないでというのもどうかな、そこは働くようなチャンスをどうつくっていくかという問題もありまして、そういったものを総合的に考えてこの問題は議論すべきだろう、こう思っています。社会保険審議会の厚生年金部会でもいろいろ御議論が出ましたから、そういった議論をたたき台にいたしまして、現在鋭意政府部内で検討中でございますので、いま確定的にどうしようということの御答弁は差し控えさせていただきたいと思っております。
  299. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ここをお聞きしたことは、公務員、それから厚生年金、国民年金、それぞれいま支給開始年齢が違うわけでございますが、これを将来一つの統一したものにするとするならば、まずそこから調整をしないと――どういうことを大臣は考えておられるかわかりませんが、私どもが昭和五十一年に提案をいたしましたいわゆる二階建て年金、それから五十二年十二月に社会保障制度審議会が総理に対する建議の中で二階建て年金が出てまいりました。それから社会保険審議会でこの間これも二階建て年金が出てきたわけです。したがって、この二階建て年金というのが将来の二十一世紀における年金のあり方だといった、統一、一元化という一つの国民的コンセンサスが得られてき出した。そのように大体国民世論も形成されつつある。その上に乗っかって厚生大臣に将来の年金のあり方というものをお考えいただくとするならば、公務員の開始年齢とばらばらであるものをある程度のところで調整を図っていかねばおかしなことになってくる、私はこう思って、どこに設定をいたしますか、こういう質問を申し上げたわけです。  これはいま大臣の御答弁にもありましたように、年齢が非常に延びてまいりました。したがって、高齢者が多くなると同時に、個々の平均寿命が延びてきたということがございますので、当然、開始年齢というものの設定に当たっては、そういった寿命その他等をも勘案の上で決めていかねばならぬ時代が来つつあるのではないか、こういうように理解をするわけでございまして、その際に、お互いに健康である、そして一方では医療の問題も出ておりますが、やはり健康で働いていただく、こういうことをもあわせ、私は、年金制度とそして働くという観点とをリンクしていかなければいかぬというようにも考えるわけでございまして、この点、労働大臣はいま定年延長について御努力をいただいておるわけですが、その状況等もひとつお聞かせをいただいて、そして、それがどのように年金社会に連動していくような方向を持っているのか、そこらあたりの所見と見通しをお伺いいたしたいと思うわけです。
  300. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 年金問題との連係に入ります前に、大臣が後でその辺は御答弁申しますが、それに先立ちまして、定年延長の現状につきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。  これまでいろいろ関係労使の御努力、あるいはまた、行政も六十歳までの定年延長ということを目指しまして指導、援助に努めてまいりまして、現在、定年延長は着々と進んでおるわけでございます。ことしの一月現在の労働省の調査によりますと、一律定年制を持っております企業のうち、六十歳以上の定年制をすでに実施しております企業は四九・四%、約半数になっております。近く改定をするというものを含めますと五三・七%、こういうことになっておりまして、一ころ過半数を占めておりました五十五歳定年制というものは、いまは三一・六%というふうなことで減ってきておるわけでございまして、そういう意味におきましては六十歳定年制が主流になりつつある、こんな現状にあるわけでございます。  さらにまた、今後定年を六十歳以上に引き上げることを予定をしておる、こういう企業もいろいろ出てきておりまして、こういったものを含めますと、近い将来に六十歳以上の定年制にするというものは六二・三%、こういうようなことで見込まれておるわけでございます。特にまた、大企業でこの辺が非常に進んでおりまして、五千人以上の規模になりますと、近く改定予定というのを含めますと、約九〇%が六十歳定年というものをやっておる、あるいは目指しておるというような現状になってきております。
  301. 大野明

    ○大野国務大臣 今後急速に訪れるわが国の高齢化社会において、やはりわが国の経済社会というものを維持し、また発展さしていくためには、高齢者の方々の能力というものを大いに活用しなければならぬということで、いま高齢者の雇用対策に労働省は全力を挙げております。御承知かと思いますが、六十年六十歳定年制一般化ということで鋭意努力をいたしておるところでございまして、この指導、援助に努めておるところでございます。  また同時に、何といっても六十歳以上の方々、特に六十歳前半層と申しておりますが、こういう方々をもっと企業の中で何とか、定年制も含めて雇用延長してほしいということで、これもいま推進いたしております。また同時に、やはり六十歳以上の方々になりますと、健康的、肉体的な問題もございますから、短期的というか補助的というか、こういうような仕事をしていただくために、シルバー人材センター等をつくりまして、これの援助強化に努めておるところでございます。  そして年金との問題でございますけれども、いずれにしても現在そういうような過程にございますので、高齢者の方々の雇用の延長であるとか、また定年制の問題、こういうものをよく実態を調べた上で、厚生省と今日までもいろいろ協議いたしておりますが、今後より一層緊密に協議をしてやっていきたいと思っております。
  302. 林義郎

    ○林国務大臣 平石さんの先ほどの御質問をちょっと取り違えておりましたが、私は厚生年金の中での年齢の問題を申し上げましたけれども、今度出しますときには、私の方の閣議決定で考えておりますのは、国民年金と厚生年金の統合法案を出しますということと、と同時に、五十九年から六十一年までにおきまして関係のところとの調整を図る、こういうことになっています。しかし、法案を出しますときに、その方はその方だ、こっちはこっちだなどということではいけませんので、やはりその辺は十分に考えながら出さなければならないものだ、こう思っております。そういったことを含めまして現在検討しているところでございます。  それから公務員との調整は、単に年金開始年齢云々というだけじゃありません。いま労働大臣からお話がありましたように、一般の問題として定年後の職業をどうするかというような問題もありますし、諸問題を検討した上でお願いをしなければならないものだというふうに私は考えておるところでございます。
  303. 平石磨作太郎

    ○平石委員 どの時点に設定をするかということは、大変大事な問題であります。したがって、これについては相当検討はされておると思うのでありますが、前の、前といいましてもおととしでしたでしょうか、厚生大臣から厚生年金の支給開始年齢を六十五に引き上げるということが出されて、労働省との間では大変な問題が行き来したわけでして、結局これはつぶれてしまったわけですけれども、そういういわゆる定年とのリンクといったことが未調整のまま支給開始年齢を設定する、こういうことがありましては非常に不利益を受けるわけでございまして、そこらあたりを十分検討の上、リンクをするのかしないのか、ここらをひとつお聞かせをいただきたい。
  304. 林義郎

    ○林国務大臣 この問題は、先生御指摘のように大変重要な問題でございまして、厚生、労働両省の事務方で密接な連絡をとってやっておりますし、ただいま労働大臣からも、いままでもやっているが、さらに密接な連携をとってやるというお話がございました。私もやはりこの問題をやるときには両省緊密な連絡をしてやらなければならない、こういうふうに考えておりますので、御趣旨に沿って努力をいたしたい、こういうふうに思います。
  305. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これは本会議におけるわが党の代表質問でも申し上げてあるわけでございまして、特に強く要請をしてこの点は終わらせていただきたいと思うのです。  そこで、これからの年金の設計といいますか、そういう中でやはり一番問題点になってくるのは、負担と給付の関係、それへのいわゆる国のかかわり合い、すなわち国庫補助、国庫負担の問題、この三つがどう組み合わされるのかというのが、将来の年金の一つの姿になってこようかと思うわけです。したがって、将来の年金の姿を描く場合に、いわゆる活力のある福祉社会の建設ということが私どもの党としてもこの政策の一番最初に掲げた一つの政策でございます。そして、あちこちの関係審議会等の答申等を見ましても、活力ある福祉社会の建設、こういうことが言われているわけでございます。年金を設定して活力が落ちてしまったということがあっては、これはどうにもなりません。したがって、活力を維持しながら、そして負担と給付のバランスをとりながら一つの設計をしなければならぬ、大まかに図柄を考えればそうなってくる。  そういうところで大蔵大臣にお伺いをするわけですが、この公的年金というのはどういうことなのか、ひとつ大臣のお考えをおきかせいただきたいと思う。
  306. 林義郎

    ○林国務大臣 大蔵大臣を御指名ですが、私から便宜お答え申し上げます。  公的年金というのは公の持っている年金、こういうことだと思うのです。公の年金というものと対比されるのは私的な年金、こういうことでございまして、公的な年金ということで現在われわれが考えておりますのは、現役の勤労世代と老齢世代との社会連帯に基づくところの社会的扶養の仕組みではないか、こう考えておるところであります。したがって、物価変動とかなんとかありましても、それはそのときの若い人がお年寄りを扶養する、こういうことですから、それはカバーがされる、そういった問題でトラブルが起こらないようにできる、こう思います。  私的な年金というのは、いわゆる企業年金とか貯蓄とか、貯蓄は年金にはならぬでしょうけれども、貯蓄と同じようなことでありまして、それぞれの方がプライベートな立場において積み立てをして老後に備える、こういうことでございますから、資金の積み立て、こういうことになります。そういうようなことになってくると、これはやはり非常なインフレになってくる。かつての四十八年ぐらいのインフレがありましたり、戦後の時代にあったインフレなんということになりますと、これはなかなかむずかしいことになってくるのだろう、こう思いますし、それが私は公的と私的との違いだろうと思います。  では、年金というのは何か、こういうことになると、これも非常にむずかしいお話でございますが、われわれ考えておりますのは老後の所得保障だ、それを金を積んで賄うんだ、こういうふうに漠然と考えておるわけでございまして、学問的な定義というのはいろいろたくさんありますが、それは省略させていただきます。
  307. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私の質問が適切でなかったので大変御迷惑をかけましたが、相違を聞いたらよかったのですが、私の理解ということでちょっと申し上げてみますと、この公的年金はやはり憲法二十五条の社会保障の一環だ、こう規定づけられるのではないか。それから公的年金はやはり強制加入である。これはどなたも日本国民であれば入らないといけない。それから、やはり世代間の扶養であるということ。そして、やはりいわゆる公的にかかわり合いがないといけない。公費負担がなければならない。これは憲法二十五条からくるのではないか。そうすると、国庫負担ないし国庫補助、これは公的年金に当然つきものである、こういう気がするわけです。それから私的な年金につきましては、これはやはり任意加入が原則でして、気に入った者が入ったらいいわけです。そしてまず企業性の上に立った貯蓄的なものである。そして、みずからの老後はみずから保障する、いわば自分で老後を保障していくといういわゆる貯蓄的なものである、こういうように規定づけられるのではなかろうか。  そういたしますと、私は公的年金としてこれから新しく描いていく場合に、国庫負担というものが当然ここに従来の経緯からも考えられる。あるいは従来、日本の公的年金が発足して以来国庫補助というものがずっと出されておるわけですが、当然政府もかかわり合いを持たなければならぬ、責任を持たねばならぬ、このように理解をするのですが、大蔵大臣の御所見を承りたい。
  308. 竹下登

    ○竹下国務大臣 平石委員の定義は、私はそれなりに成り立つ定義だな、ただ、そこで一つだけ議論をするとすれば、言ってみれば国の信用と責任において成り立っておる制度、公的という頭文字がつくゆえんはそこにあると思います。  したがって、ただ一つだけ問題になるのは、さればいわゆる国庫負担というものがそこに必然性があるかどうか、こういう問題になります。それは国民負担とは、租税も国民負担であるし、保険料も国民負担であるという意味において、そこのところの兼ね合いということになると、いままでの各公的年金、各制度を見ましてもアンバランスがございますが、それは歴史的な経緯の中で発生したものだと思います。いずれにしても、年金給付の財源ということになると、租税か保険料かということになります。これは国民負担である。そうしてそこで憲法二十五条の社会保障の一環として法律ができた限りにおいては、私もその範疇に入る政策だと思います。  そうなると、そこのところを税金で賄うべきか保険料で賄うべきかという問題は、各方面で種々の議論なり提言がなされておりますが、いまのところこれの基礎となるものは何かと言えば、やはり昭和三十七年の社会保障制度審の答申によります、一、社会保険を中心として、保険料を主な財源とすべき、二、社会保険の国庫負担は、社会保障制度全般にわたって、緊要度に応じて決めるべきということが、一応基準として財政当局としては考えておくべきことではないかな、私はこういう認識を持っております。
  309. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これはいま大臣がおっしゃるように、結局保険料で負担をするか税で負担をするかの相違にすぎません。すぎませんが、やはり保険料だけで負担をするということになりますと、これは保険の原理といいますか、そういうことから言いますと、これはまあ負担だけでいいということも成り立たぬこともないのですが、国としてのかかわり合い、国としての責任、こういう面から考えたときに、私はやはり国もこれに対して補助を与える、出す、こういうことが必要だと思うわけです。これはいろいろと論議を進めますとまた果てしない論議になりますので、ここで打ち切ります。打ち切りますが、そういうことを申し上げておきたいと思うわけです。  そこで、これからの負担の問題ですが、過日、この行革委員会において瀬島参考人の発言、答弁の中に、国民負担は国民所得に対して、これは税と保険料を合わせて四〇から四五ぐらいのところが妥当ではなかろうか、適切ではなかろうかという臨調内における議論がありました、こういう答弁がなされたということを新聞で見ております。これを大蔵大臣どうお考えでしょうか。
  310. 竹下登

    ○竹下国務大臣 御案内のとおり、今後高齢化社会の進展等によって長期的には租税負担と社会保障負担と合わせて全体としての国民負担率は現状よりは上昇することとならざるを得ないが云々として、現在のヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低位にとどめることが必要である、こういうことに対する質問に対して、瀬島参考人の答弁を私は読んでみました。それからその後じゃございませんが、事前に聞いてみました。それについて瀬島さんがおっしゃっているのは、国民負担率の具体的水準としては、臨調審議の中では大体四〇ないし四五の意見が多かった。すなわちあの臨調の方方が御議論なされた経過を親切に説明されたのではないか。したがって、四〇、四五というものもここで固定的に考えるべき問題ではないではなかろうか。臨調の偉い先生方のいろんな角度からの見識として、議論の過程でそういう話があった。  臨調答申の中で、私ども財政当局に直接関係のあるところで幾らか解釈に困ることが二つございます。それは、租税負担率という問題、国民負担率という問題と、もう一つは直間比率という言葉をお使いになっている。いずれにしても結果として出てくる数字であるものですから、したがって財政当局でそれを整理するときには、言葉の上でも実際は困るわけでございます。  しかし、その問題について私は瀬島委員に私的にも質問をしたり意見交換をしてみたわけでありますが、だから私は自分が接触したときとこの間の答弁とを聞きながら、言ってみれば議論の過程を丁寧に説明なすったことではなかろうか。もちろん一つの見識として受けとめなければなりませんが、そのこと自体も、私は固定的に考えることについては、やはり経済情勢の推移に応じて、大変変化の多いものでございますから、固定的に考える数値ではなくして、やはり議論の過程においてあったことを親切にお聞かせいただいた考え方としてインプットしておいた方がいいのではないかな、こういう印象を率直に持っております。
  311. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大変上手な答弁をいただいて、わかりませんけれども、ここは大事なところですので、また宿題にもさせていただきます。  それから次に、時間もありませんのでちょっと急がしていただきますが、一つは給付の水準をどうセットするかということが、これまた大事なところだと思うわけです。だから給付の水準を決めて、これに対して負担をどうするかというようなことも、いま大臣の答弁の中では、固定的に考えずにという御答弁にはそこが含まれておるのではないかというように理解をするわけです。  そこで、私どもが最初唱えた二階建てといったようなことを頭の中に大臣は置いて、これを将来出すんだということであるかもわかりませんが、一応厚生省が「二十一世紀の年金を考える」というものを出しておるわけです。これから一応考えますことは、一体給付の基準を勤労者と自営業者と、こう分けて考えたときに、勤労者の給付の下限といいますか、これはまあどう設定するかはなかなかむずかしい問題ですけれども、一応私はガイドラインは必要だと思うのです。だから生活のできない、いまよく経過年金とかあるいは老齢福祉年金で世上あめ玉年金と言われておる。これが将来二十一世紀になってただのあめ玉年金になったのでは、これは話にならぬ。そういたしますと、私は最低ラインの一つのラインは持っておらなければいかぬじゃないかという気がするわけです。どこへセットするかは別とします。そのときに大臣は何を根拠に考えておられるか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  312. 林義郎

    ○林国務大臣 給付のミニマムと申しますか、それをどうするかという御質問でございますが、私はいろいろな考え方はおありだろうと思います。  それで、私の方では、社会保険審議会厚生年金保険部会の意見書の中で示されておりますのは、現役被保険者の平均標準報酬の六〇%程度を基準とするという考え方がございますし、またILO百二号条約に示されている水準は、従前所得の四〇%というような考え方等いろいろございます。そういったいろいろな考え方を考えて、やはり老後における生活保障、所得保障でございますから、それにふさわしいような水準というものは当然考えていかなければならないものだと思いまして考えておるところでございますが、まだ確定的にどうしようということは目下検討中なので、この場で申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  313. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私も確定的なことは求めません。考え方として整理をしておるわけですので、私もそういった厚生大臣がお考えの根拠は何だろうかという、セットする場合の一つの考え方のことを一応お聞きしておるわけです。  そこで、一つの参考になるのは、参考というよりも、政府が批准しておるのですが、ILOの百二号条約、この条約は御案内のとおり昭和二十七年、もう昔の話ですが、このときに条約としてできたわけです。そこで条約を結んだわけですが、日本政府がこれを批准したのが昭和五十一年です。これは、第二位という経済大国がこのILOの百二号を三十年もかかって批准をしなければならない。その間にもうすでにILOは百二十八号条約を出しておるわけです、これは日本政府もまだ批准をしておりません。四十二年に条約を結んだわけですが、批准はない。これらは、私は国際的に約束をした一つのラインになるのではないかと思う。  これは、ここにしなさいと私は言うのではないのですが、やはり一つの考え方の根拠にはなってくる。それでその際に、あめ玉年金にならないように、私は百二十八号条約を根拠に置くべきではないかというような気がしておるわけです。したがって、これを一つの考え方として見ますと、ILO百二号条約では、いわゆるボーナスを入れた平均賃金の大体四〇%、こういうことに言われております。それから百二十八号は、平均賃金プラスボーナスの平均年収の四五%、これがいわゆる基準になっておるわけです。したがって、これを日本の標準報酬にかえてみますと大体六〇%、日本の場合は本俸だけですから、そうしますと六〇%になる。百二十八号の方は七〇%ぐらいになるはずです。私は、ここらあたりはセッティングする場合の一つの根拠、いわゆる考え方の最低ライン、責任エリアだ、こう思うわけです。私は、これから以上に決めていかなければならぬと思う。大臣、聞こえませんか。以上に決めなければならぬ、これが最低のガイドラインですというような気がするわけです。  それからもう一つ、自営業者。これは勤労者に対するものですから、自営業者についてはどのようにお考えになるのか。時間がございませんので早く言いますが、生活保護基準、これがもう最低、これを割るようなことなら何も年金を掛ける必要がない、負担をする必要がない。もう私は先で保護をもらいます、こうなりますので、私はこれは最低のものは生活保護基準でガイドラインを引かなければいかぬ、こう思うわけです。  それはどうかといいますと、いま厚生省の考えておるこのA、B案、これは考えておるのか、素材ですが、この自家営業者の世帯についての厚生省が示しておるおよその数字は生活保護基準より下です。したがって、これが五十七年ですが、生活保護の老人夫婦の世帯の生活保護基準より下ですので、この点は強く指摘をしておきたいと思うわけです。したがって、そういったことを、一つの基準の考え方の整理をしていただいて、次に発表せられるそういった設計については鋭意御検討を賜りたい、こう私は思うわけです。これは要求として言うておきます。ちょっと答えてくれますか、自家営業だけ。
  314. 林義郎

    ○林国務大臣 先生のお話は非常によくわかります。要求というお話でございますから非常によくわかるのですが、私は非常にむちゃな話ではないと思っているのです。ただ、若干申し上げますならば、百二十八号条約と百二号条約とやはり違うところがありますし、それから条約の中で従前所得と書いてある。従前所得では日本では標準報酬でもってよろしい、こういうふうな話もありますから、その解釈云々、こうありますが、やはり先生大体さっきお話がありましたようなことは、当然にめどにして私は考えていかなければならないと思います。  それから、自営業者の場合は、生活保護とお比べになりまして、それはミニマムだ。確かにそのお考えもわかるのですが、年金というのはとにかくもらうわけですね。これは資産なり何があってももらうわけですが、生活保護というのは、収入、資産をすべて利用してもなおかつ生活保護を満たすに足りない方々に対して最低生活を保障するというシステムでございまして、年金というのはそんな資産があろうと何があろうととにかく出す、こういうふうな話ですから、これを全く同列に取り扱うということは避けなければならないだろう。ただ、いまの基準がありますから、その基準は当然に国民年金を受けておられるような方々についての一つのメルクマールというか、一つの物の尺度にはなる話ではないだろうかと私は考えているところであります。
  315. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣おっしゃった、生活保護は資産その他、こういうお話がありました。だが、これは憲法の二十五条に、健康にして文化的な、これが最低の基準でございますよ。しかも、これは健康にして文化的な基準なんだということが、もう忘れましたが、昔最高裁から出ておったはずです。したがって、そういった年金を考える場合に、資産云々ということを頭の中に入れた年金設定ということはいけないことでございまして、その点は生活保護基準よりも下の、いわゆるそのラインを割った一つの案でございますので、これは強く指摘をしておきたいと私は思うわけです。  大体、年金につきましては、まだまだ論じたいのですが、時間もございませんので、ここらでおかしていただいて、次は医療費のことですが、厚生省は今度医療保険を抜本改革するということで、いわゆる二割の本体をおろす、八割にする、過日のシーリングで大蔵への予算要求の中でそういうことを明らかにしたわけですが、これは余りにもショッキングな、余りにも急激にそういったことをやられるということについては大変大臣らしゅうない、私はこう思ったわけですが、やはりあのことを考えてみますと、もう医療よりもむしろ財政対策だというように考えられるわけです。  言葉は汚いかもわかりませんが、健康保険制度というものは、政府を含めて努力で今日までやってきました。それが形骸化されてしまうということが考えられる。それからもう一つは、やはり保険制度が昔のような制限診療に入ってしまう、こういうような形になってしまうのではないかというように危惧をするわけです。したがって、いま医療費の増高とかあるいは国民所得を上回った医療費の伸び、こういう所得の伸びと医療費の伸びが逆になっておるというような現象はございますけれども、余りにも急激なそういう変化を国民に求めるということは、ちょっと考え直してもらわなければいかぬのじゃないかというような気がするわけです。したがって、それまでにやるべきことがたくさんある。  この間、私は党の部会として大臣に申し入れに行きました。その際に、大臣御不在でございましたので、事務次官にお会いをしたんでしたが、私はそのときに、ABCのUだ、こういう話をしたわけです。だから、本体をぐっとおろすとこちらへ、保険外負担の方へぼっと出てくる。だから、こちらを二割をぐっと落として本体をつつくと結局保険外負担へ出てきますよ。わかりますか。聞こえますね。大臣、こうやるから聞こえてないのかと思って心配なんですけれども、聞こえていますか。――この間のこの新聞を見ると、差額ベッドを拡大する、保険外負担、こういうふうにある。これは新聞記事ですから本当かどうかわかりませんが、ちょうど私が申し上げたことをぱっちり逆にとられた。私はそこを心配して申し上げたんですが、逆にこれはいいことを聞いた、それじゃもう差額ベッドの方へ、そのまま保険外の方へ回そう、ここはもう自由診療に任そう、そして診療をするエリア、範囲を狭めよう、こういうことを厚生省は考えたというように理解をするわけですが、そうですが、どうですか、お答えをいただきたい。
  316. 林義郎

    ○林国務大臣 平石さんは社会労働委員会にずっとおられますし、私は厚生大臣になりまして最初に社会労働委員会で所信を申し上げましたときに、西欧諸国でもいまや大変皆悩んでおる、こういう状況であります、日本も先進工業国の一員としてやっぱり同じような苦悩を考えていかなければならないということを申し上げました。以来、私はずっとこの問題をどうしてやるか、私なりにいろいろと考えてきたところであります。  今回の制度は、もう長年というか、私になりましてからいろいろと考えてきたことを率直に申し上げて、概算要求の段階で私の責任で大蔵省の方に出したわけでありまして、広くいろいろと御議論をいただきたい、こう思っておるのです。ただ、考えておりますのは、毎年一兆円ずつ医療費が伸びておる。毎年一兆円というのは大変なことでありまして、米が大体三兆円、その三分の一ずつ医療費がふえている、こういうことというのは、もう三年たったら日本の米より以上に医療に使われる、こういうことですから、これは考えてみたらやっぱり大変なことではないか、こう思うのです。しかも、その中で国庫負担が大体三分の一を占めている、そういったようなことも考えながらやっていかなければならない。  特に、医療というものを現存社会保険制度によって賄っている。この社会保険制度によって賄っておるということは、私は非常にすぐれた制度だと思うのです。そういった制度をやっぱり維持して、国民の健康を将来にわたって安定的に維持するということがどうしても必要ではないか、こう考えたわけでございまして、お話しのように、昔から十割だったのに何でというお話ですが、やはりいろいろ御議論がありまして、経済学者なんかでも一部のものを入れたらどうだという御議論はずいぶん前からあるわけです。また国会でも、つぶれましたけれども、一部負担というものの考え方が出たことがあります。決して今回唐突に出た話ではないと私は思っているのです。  そうした意味で、なぜ一部負担を入れるかといいますと、社会保険でありますからやっぱり保険機健というものを考えていかなければならない。保険というのは大事故があったときにそれをカバーするものである。火災保険でしたら、火災があって家が全焼したときのためにあります。しかし、ちょっとカーペットに灰を落として焼けたくらいのところでは保険事故にならないだろうと思うのです。したがって、そういったいわば軽微なものの医療については少し自己負担をしていただくことが必要ではないか。と同時に、そういったことを入れましたところで、受診抑制だなんということになりましたらこれは大変なことでありますから、その辺はいろいろと調べてみました。  調べてみましたら、お医者にかかるところの受診率は変わりがない、しかし残念ながら一遍かかったところの後は、十割の方と七割の方との間は薬代がばっと二割も三割も上がっている。一般のお医者さんはそんなことないと思うのです。ないということは、逆に言いますと、五割も高い薬代を取っておられるところがあるのじゃないかなという私は一応の推論がつくわけでございまして、そういったことをやっていこう。しかも、普通の方は五万四千円、それから低所得者の方は三万円を限度にして医療を受けられる。だれでも病気になる可能性があります。その可能性のあるときに大変金がかかってしようがない、大変だということに対しては十分保険機能を果たしていくということが必要であるし、同時に、ちょっとした病気で、ちょっとかぜを引いたときに医者へ行って薬をもらってくるか、先生どうしておられるか知りませんが、私などはそんなことで医者に行きませんよ、そういった形で治します。そのときに全部それをやるかといったら、私はそうでない。そういった実態に合わせるのと、やはり本人と家族との間、あるいは組合保険、政府管掌保険と一番貧しいところの国民健康保険の給付の、負担の不公平というのはあるわけですから、それは一本にしていくというのが望ましいのではないかと思っているのです。  それから制限診療なんというのは、先生からお話がありましたが、制限診療というものは私は全然考えておるわけではない。むしろいろいろな形でやっていかなければなりませんが、先ほどのお話にもありましたが、スタンダードというようなものをつくりまして、できるだけ適切な医療をやってもらうということを考えなければならないと思います。  おたくの党からいろいろ御指摘がありまして、薬の問題は大変だというお話がございました。薬の問題を解決すれば一遍で解決するじゃないか、こういうお話もありましたよ。ありましたが、それは私の方も、薬の問題は大いにやらなければならない、全部取り上げてこの問題は取り組もうと思っています。それから、医者の不正診療というものについても取り上げていかなければならない。さらに、そういったものを全部一つにまとめて私はこの医療の改革というのをやっていくことが必要ではないか、それが本当に国民の信頼されるところの医療になるのではないか、こう思ってやっているところでございます。
  317. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大臣からるるお聞きをしましたが、どうも私は十分理解ができません。したがって、この問題はさらにそれぞれの委員会でやらせてもらいます。  ただ、一つお聞きしたいことは、私、田舎の方へ帰りますと、これが本当にできるのかということを聞かれるわけです。それは自民党さんの田中政調会長がこれは案だと、こうおっしゃっておるから、そうなるかどうかわかりませんよ、こう私言うておるのですが、新聞報道を見ると、自民党さんの中でもこれについてはもろ手を挙げてないということ、これは新聞報道ですよ。だから、そういうようなこともありますから、大臣はもっとひとつ慎重に考えてほしい、こういうことです。  それから、あの中にあります国民健康保険に対する助成が四五%が三八・七に落ちる。これはいろいろ組み合わせがあろうと思うのですが、これも大変なことだと地方団体の方の国保の事業体は言っております。これもお考えをいただきたいと思うわけです。全体については申し上げてさらに詰めていきたいと思うのですが、いまの国保の点はどうなのか、ひとつお答えをいただきたい。
  318. 林義郎

    ○林国務大臣 お答え申し上げます。  現在、退職者ですね、これは退職するまでは組合保険ないし政府管掌健康保険の方に入っておられまして、退職すると年をとってから国民健康保険に入る、こういうことである。それで給付の割合というのも違うわけですね。だから、前からここは何かしたらどうだ、会社におられたときにいろいろ原因もあって病気になるということもあるわけですから、やはりそこは生涯としてめんどうを見たらどうだという御意見がありまして、それで退職者の医療というものを別建てにいたしまして、そこには会社及び現役の労働者職員、それと本人、これでカバーしよう、こういうことで実は国民健康保険からその分だけを除くことにする。そうしますと、そこの部分は要らなくなる。  それからもう一つは、退職者というのは大体お年寄りですから、その部分を若い、国民健康保険でやっている人が負担をしている部分があるわけです。その部分は除きますから、当然に保険料の政府補助も少なくなる。本当は私は保険料率をそういったことによって下げることができたらと思うのですが、なかなかそこまでいかない。いろんなことをやりまして、少なくとも現在の国民健康保険料率は上げない、少なくともいまの、バランスをとっていくという形のものを実は考えてやっているところでございまして、そのような点も、あなたの、市町村は大変だなどということの御心配がないように私はしているのです。  全体として私が考えていますのは、やっぱり社会的な不公平、特に市町村とか弱いところをいじめるようなことになってはいけませんから、こちらからそういった形で金を持ってきて埋めるということでやらないと社会的な公平、連帯感というものはできないだろう、こう思って努力をしているので、ぜひ御理解をいただきたい、こう思います。
  319. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これで終わらしていただきますが、大変大事な時期を迎えております。二十一世紀がそういった形で迎えられるかどうなのかという、年金、医療の問題はいま非常に厳しい、そして大切な時期を迎えておりますので、われわれ野党の言うこともよく聞いていただいて、間違いのない、誤りのないセットをしていただきたい。強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  320. 江藤隆美

    江藤委員長代理 これにて平石君の質疑は終了いたしました。  次回は、明七日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十七分散会