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1983-10-03 第100回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十月三日(月曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 江藤 隆美君 理事 海部 俊樹君    理事 津島 雄二君 理事 三塚  博君    理事 細谷 治嘉君 理事 矢山 有作君    理事 正木 良明君 理事 吉田 之久君       足立 篤郎君    愛野興一郎君      稻村佐近四郎君    今井  勇君       大村 襄治君    片岡 清一君       亀井 善之君    田中 龍夫君       谷  洋一君    中村  靖君       西岡 武夫君    橋本龍太郎君       保利 耕輔君    中村  茂君       森井 忠良君    安井 吉典君       湯山  勇君    草川 昭三君       鈴切 康雄君    岡田 正勝君       中路 雅弘君    三浦  久君       小杉  隆君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君  出席政府委員         内閣審議官   手塚 康夫君         内閣審議官   百崎  英君         内閣総理大臣官         房総務審議官  橋本  豊君         臨時行政改革推         進審議会事務局         次長      佐々木晴夫君         行政管理政務次         官       菊池福治郎君         行政管理庁長官         官房総務審議官 竹村  晟君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君  委員外出席者         参  考  人         (元臨時行政調         査会会長)         (臨時行政改革         推進審議会会         長)      土光 敏夫君         参  考  人         (元臨時行政調         査会委員)         (臨時行政改革         推進審議会委         員)      瀬島 龍三君         行政改革に関す         る特別委員会調         査室長     大澤 利貞君     ───────────── 委員の異動 十月三日  辞任         補欠選任   渡部 行雄君     中村  茂君 同日  辞任         補欠選任   中村  茂君     渡部 行雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出、第九十八回国会閣法第三九号)  国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案内閣提出第一号)  総務庁設置法案内閣提出第二号)  総理府設置法の一部を改正する等の法律案内閣提出第三号)  総務庁設置法等の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案内閣提出第五号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国家行政組織法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案総務庁設置法案総理府設置法の一部を改正する等の法律案総務庁設置法等の一部を改正する法律案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、参考人として、元臨時行政調査会会長、現臨時行政改革推進審議会会長土光敏夫君及び元臨時行政調査会委員、現臨時行政改革推進審議会委員瀬島龍三君に御出席を願っております。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本日は、各法案につきまして忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、初めに土光参考人に御意見をお述べいただき、その後、瀬島参考人の御意見委員からの質疑お答え願う形で承ることといたしたいと存じます。  それでは、土光参考人にお願いいたします。土光参考人
  3. 土光敏夫

    土光参考人 私は、臨時行政調査会会長をいたしまして、現在は臨時行政改革推進審議会会長を務めております土光でございます。  本日は、行政改革特別委員会出席いたしましてごあいさつを申し上げ、行政改革につきまして所信を申し述べる機会を与えていただきまして、まことにありがたく、お礼を申し上げます。委員各位におかれましては、臨調答申により提案された行革関連法案を初め、行政改革の諸問題につきまして、大所高所のお立場から、連日大変御熱心な御審議をいただいておりまして、われわれは深く敬意を表する次第でございます。  今日、行政改革は、わが国にとりまして非常に大きな課題となっております。わが国は、これまで、すべての国民の一致したたゆまぬ努力によりまして、社会的、経済的に目覚ましい発展を遂げまして、世界のGNPの約一割を占める経済を持つに至っております。しかし、近年における内外の諸情勢の大きな変化、とりわけ、わが国高度成長から安定成長への移行に対する対応がおくれまして、行政肥大化が進み、巨額の財政赤字が発生いたしておるのであります。国民経済における政府の総支出の規模は、ほぼこの十年間におおよそ二〇%から三五%へと一気に増大してまいっております。  このまま放置いたしますれば、行政肥大化国民負担を増大させ、わが国は、先進国病に陥り、社会経済活力が失われると思うのであります。行政改革によりまして、このような事態が到来するのを防止しようということが、累次の答申におきまして第一に申し上げたかったことでございます。  わが国は、今後、人口構成高齢化、資源の制約などの多くの困難を克服しつつ、活力のある福祉社会を建設していく必要があると思います。また、国際的役割りの増大に対応しまして、国際社会に対して積極的な貢献を果たしていかなければなりません。  このような新たな時代対応した国民的、国家的課題行政が機動的、弾力的に対応できるようにするために、臨調は、まず「増税なき財政再建」を基本方針といたしまして、行政役割り制度、政策を抜本的に見直し、肥大化した行政の徹底した合理化を行うように提言いたしました。  さらに中長期的にも、大きな政府になることは避けなければなりません。二十一世紀に向かって、人口高齢化することにより社会保障関係の費用は増大してまいりますが、それでも国民負担率は、現在のヨーロッパ水準よりかなり抑えたものとする必要があると思うのであります。  臨調は、以上の考え根本理念といたしまして、国、地方を通ずる行政改革基本方向具体的改革方策を提起いたしました。累次にわたる答申において、行政施策改革基本方向をお示しするとともに、省庁の組織や三公社改革、許認可、補助金等整理合理化、その他行政制度運営の各般の改革措置を講じていただくようにお願いしております。  これらの行政改革案は、委員だけでなく、専門委員や参与などとして、各界各方面方々に御参加をいただきまして、二年間にわたり、文字どおり昼夜兼行作業をいたした結果つくり上げたものでございます。また、その過程におきましては、中央地方での多くの機会を通じて、広く国民皆様方から御意見を伺いました。  時間的制約もあり、広範な行政改革の要請を考えますと、不十分な点があることは免れませんが、その意味におきましても、提起した改革案は今後の行政改革において必要最低限のものでございます。私どもは、この行政改革案実行することが、二十一世紀に向けて活力のあるわが国社会を形成していく確実な第一歩となることを信じております。この早急かつ完全な実現を念願しておるのであります。  政府は、第一次答申以来、臨調答申最大限に尊重しつつ、行政改革を推進する決意を表明されております。いわゆる行政改革大綱を二次にわたり定められ、答申実現に向けて努力されていることは、われわれはこれを高く評価するものであります。しかし、改革課題の多くは今後具体化すべき問題として残されているのでありまして、答申を提出いたしました私ども国民期待からいたしますと、政府にはさらに一層の御努力をお願いしたいと存ずるのであります。  今国会に上程されております七件の行革関連法案は、答申事項の一部を実行に移していただくものでありますが、本格的な行政改革に向けた第一段階としての意義は大きいと考えております。国会におかれましては、国権の最高機関たる立場から十分御審議をいただくとともに、これら法案に盛られました措置ができるだけ速やかに実施に移されるよう、さらに一段の御尽力をお願いする次第であります。  百兆円を超える公債残高を抱え、行財政をめぐる情勢がますます厳しさを迎える中で、昭和五十九年度の予算編成は、行政改革推進上重要な節目になると思うのであります。一時しのぎのやりくりや工夫に終わることなく、制度基本にまでさかのぼった改革に着手しなければ、財政再建の目途は立ちません。  このため、昭和五十九年度の予算編成において、政府は、「増税なき財政再建」の基本方針を堅持し、これをゆるがせにするような措置をとることなく、制度施策の全般にわたる根本的な改革を推進することに、最大限の御努力を払っていただきたいと思うのであります。  また、次期通常国会には、電電公社専売公社改革など重要な措置が予定されておりますが、これらは今後の行政改革をリードするものであり、ぜひとも実現していただきたいと考えております。そうして初めて、新しい時代を目指す行政改革が軌道に乗り、国鉄の本格的な改革や各種の制度的改革が進展すると思うのであります。  行政改革は、直接的には政府及び国会が担当されるべきものであり、その御努力をお願いしてやまないのであります。しかし同時に、国民といたしましても、政府対応状況に強い関心を持つとともに、自立自助の精神に立脚して積極的な協力をしていかなければ、十分な成果は上がりません。そのためにも、国民的な運動として行政改革を推進することが、新しい時代にふさわしい行政実現する道であります。  そのため、私は、臨調が解散して以来、各方面、各地方の多くの方々と、行政改革実現について話し合いをいたしてまいりました。いまや、行政改革を推進する国民活動は、全国的に非常に拡大しつつあります。特に地方において目覚ましい成果を上げ、地方行革推進活動をされている方々からは、むしろ中央行革に対する関心が薄れたのではないかという疑念さえも聞こえてまいるのであります。  私は、このような国民皆様方の声を聞き、また中曽根総理行政改革にかける決意をも確認して、老骨ではありますが、今度、行革審会長をお引き受けしたのであります。当審議会役割りは、政府行政改革実施状況を注視し、その充実強化のために政府意見を申し上げることであります。  政府は、中曽根総理みずからが先頭に立って、現下の最重要課題として行政改革実行に邁進するということを表明されております。  私ども行革審といたしましては、政府施策がさらによいものとなるように調査審議に最善を尽くしてまいりたいと存じております。また、中央地方における国民皆様方行革推進活動と連携をとって、行政改革が真に二十一世紀に向けた国民的事業になるよう、全力を投入してまいりたいと存じております。  本委員会委員各位におかれましても、何とぞ御支援、御協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げる次第であります。  これで私のごあいさつは一応終わらせていただきますが、本日は、臨調委員であり今回の行革審委員でもある瀬島委員出席しております。臨調答申考え方行革審運営等につきまして御質問をいただきますならば、瀬島委員からお答え申し上げることにいたしております。どうぞ皆さんよろしくお願いいたします。(拍手)
  4. 金丸信

    金丸委員長 以上で土光参考人からの意見の開陳は終わりました。  土光参考人には、御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。御退席いただいて結構でございます。     ─────────────
  5. 金丸信

    金丸委員長 それでは、瀬島参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  6. 安井吉典

    安井委員 ただいま、土光参考人からの意見の陳述というか、ごあいさつがあったわけでありますが、瀬島参考人も御同様ですけれども、二カ年にわたる臨調作業、さらにまた今度は行革審委員としての御活動、特に土光さんは大変な高齢にもかかわらず本当に御苦労さまだと思います。  私ども臨調がお出しになった答申に対して全く同意見のところもございますし、かなり意見の違いも現にあるわけでありますけれども、大変な御努力をいただいたことには敬意を表したいと思います。  きょうは、いまのお話の中にもありました「増税なき財政再建」と、それからいま当面減税の問題が大きな課題になっています。それらの関連の問題をまず私からお尋ねをしてまいりたいと思うのでありますが、その前に、もう十月の三日でありますが、十二日には田中元首相に対する判決が出ます。したがって、国民はその問題に対して非常に大きな関心を持っているのは御承知のとおりであります。行革はもちろん大事な問題であり、私どもも、ぜひ国民的な立場から進めていかなければならぬと思いますが、やはり行政国民の深い信頼のもとに進んでいくというものでなければならぬと思います。  したがって、私どもは、政治腐敗をなくすために、政治家高級公務員の資産の公開だとかあるいはまた国会倫理委員会を設けろとか、そういうような制度的な対応もぜひやるべきであるという主張を今日までも続けてきているわけです。しかし、なかなか政府・自民党の方で同調してくれませんから、そのままになっているわけでありますが、そういう政治腐敗をなくすということがまず先決なのではないか。そして、特に十二日を前にしている段階において、この前人事院が勧告を出そうとするその前日に行革審緊急提言をなさいましたが、その十二日の直前に、ひとつ政治腐敗をなくしていくということについて緊急提言でもしていただくというようなことがどうかと思うのですが、この政治腐敗の問題についてのお考えをこの際お聞きいたしたいと思います。
  7. 瀬島龍三

    瀬島参考人 ただいまの政治腐敗または政治倫理に関する問題でございますが、行革審としてはあくまで行政改革実行を推進するという立場でございまして、当面の政治諸問題について行革審が特に十二日の前日にそういう意見を発表するということは、ただいまのところ行革審としては考えておりません。
  8. 安井吉典

    安井委員 それは、私は人勧との関係で比喩的に申し上げたのですが、政治倫理の問題をいままでもこの答申の中にも余りお取り上げになっていませんけれども行革という上においてかなり大事な問題だ、私どもは非常に大事だと思いますけれども、その辺のお考えを伺っておきます。
  9. 瀬島龍三

    瀬島参考人 臨調は、昨年の第三次答申というので、その最後のところで触れておりますが、行政改革を推進していく上におきましては、単に行政府だけでなくて、政治一体となって進めていかなければならぬ、同時にまた、われわれ国民も意識の改革をやって、政治行政国民一体になって進むべきであるという趣旨のことを第三次答申最後に、これは答申に書いたわけでございます。そういうような観点でただいまの問題にお答えする以外に、臨調、現在の行革審としてはほかに意見を申し上げることはできない、こう思います。
  10. 安井吉典

    安井委員 まあ結構です。本当なら、これは土光会長さんに伺えばよかったのかもしれませんけれども、すぐお帰りになりまして、その点残念です。  「増税なき財政再建」ということを先ほどの御説明の中にも強く打ち出されているわけであります。ただ、政府が新行革大綱をお出しになりましたけれども、その中にその言葉がないし、その言葉をどうしても貫かなければならないという姿勢が見られなかったのは残念だということを、この間も私は指摘しているわけであります。あくまでも臨調さらにまた新しい審議会の方もこの考え方をぜひとも貫かなければいけないということは、やはり政府の具体的な対応の中にも明確にされていかなければならないと思います。  そして、いま減税の問題が出ているのは御承知のとおりです。最近における国民の最大の関心事であり、与野党が合意をしまして、十月には法案を提案するというところまでの約束があるわけであります。五十二年以来六年間、所得税住民税課税最低限を据え置いて、六年間で収入の方は三八・八%ふえています。しかし、税額の方は何と一六〇%になっている。ですから、まさに「増税なき」じゃなしに「減税なき」財政運営が今日までやられてきたということであります。そういう状況についても、臨調行革審の方も減税の問題については余りお触れになっていなかったように思うのです。そして、この「増税なき財政再建」と減税の問題とは矛盾するようにお考えなのでしょうか。どういうふうに受けとめておられますか。
  11. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えを申し上げます。  ただいまの先生お尋ね要点二つあるというふうに私は思いました。第一点は「増税なき財政再建」に関する政府姿勢に関する問題と、それからもう一つ減税関連する問題、この二つお尋ね要点かと思います。  第一点の問題につきまして、私ども臨調、引き続いて行革審の全般的な見方としては、次のように考えております。  臨調が主張しております「増税なき財政再建」につきましては、御承知のとおり、これは臨調発足のときに行革のバックボーンであるというまず基本的なとらえ方をしたわけでございます。これのその後の実行を私ども見ますと、これは単に政府だけでありませず、国会先生方も非常に積極的に「増税なき財政再建」という基本線に沿った行革実行しておられるように私どもは見ております。その一番具体的なものとしましては、数年前まで一般会計における一般歳出が対前年比二けたで伸びておりましたのが、五十七年度の予算、五十八年度の予算を見ますと、これは非常に急ブレーキがかかって、ことに五十八年度予算におきましては、一般歳出は対前年比伸び率ゼロまで抑えられてきた。これは大変なことであると思いまして、私どもとしては、政府のみならず国会もこの「増税なき財政再建」ということに本当に積極的に取り組んでいただいておる、このように考えております。  問題は、御承知のとおり、行政改革の本格的な段階にこれから入るわけでございまして、本臨時国会もあるいは次の通常国会あるいは五十九年度予算、これらはいよいよ行革の本格的な段階に入っていくわけでございますので、「増税なき財政再建」という趣旨をぜひ御貫徹を願いたい、このように私ども政府にも国会にも御期待をいたしておる次第でございます。  お尋ねの第二の「増税なき財政再建」と減税との絡みの問題につきまして、臨調並びに現在の行革審考え方を申し上げさせていただきます。  臨調は、五十七年の答申におきまして、減税の問題に実は触れておるわけでございます。その触れ方は、こういう触れ方をいたしております。その一つは、いま安井先生指摘のとおり、すでに給与所得者課税最低限が五年間据え置かれておるという問題。二番目は、直間比率における直接税が七二%になっておるという問題、世界先進国で最も高い直接税率になっております。第三点は、給与所得者が税の捕捉の差から不公平感を持っておる。  この三点を臨調指摘をいたしまして、税制全体の構造を見直して、この問題も減税の問題も検討すべきであるというふうに答申では実は触れたわけでございます。私ども臨調としまして、また行革審としまして、この減税の問題はそういう姿勢で取り上げていただきたい、このように考えます。  以上、二点お答えいたしました。
  12. 安井吉典

    安井委員 減税をするためには財源が必要になってまいります。景気回復にも役立つぐらいな大幅な減税でなければいかぬというのも大体共通の考え方になっているように思います。ということになりますと、その財源はかなりの額になるわけです。これに対して、たとえば経済同友会なども来年度の税制改正に関する意見書というのを出されているようでありますが、受益者負担適正化を第一として、所得減税では中堅所得層負担軽減を優先させること、財源は徹底した歳出削減で、あとは間接税等の手直しでというような言い方をされているわけですね。ただ、エネルギー課税を増額するとか退職給与引当率引き下げ等は企業の体質の弱体化をもたらすので反対、その他いろいろなことを言われているようであります。  したがって、その財源の問題について、いま三点を五十七年のあの答申の中で申されていることについてお話がありましたが、いま現実の課題になってきている際に特別なお考えがありましたら、ひとつお聞かせください。
  13. 瀬島龍三

    瀬島参考人 ただいまの先生お尋ねは、当面の減税問題とその財源に絡む問題に対するお尋ねかと思います。この問題について、私ども臨調行革審の御意見を申し上げるまず前提になる問題が実は一つございます。それは、先生も御承知のとおり「増税なき財政再建」の「増税なき」とは何であるかという問題、これが私どものただいまのお話に対するお答え基本的な前提になるわけでございまして、この問題についてまず触れさしていただきます。  「増税なき財政再建」の増税なしとは何ぞやという問題は、実は臨調の内部で最も議論を尽くした問題でございます。実際問題としてわが国国家財政の今後も考えますと、非常にこの問題の内容の定義の仕方が問題でございました。いろいろ審議を尽くしまして臨調として政府答申するに当たりまして、「増税なき財政再建」の増税なしとは何かということを最後臨調としての正式の考え方を決めましたその内容要点は二点ございます。  その第一点は、社会活力を維持してヨーロッパのような先進国病にならない。国民負担率あるいは租税負担率がどんどん上がっていきますと、ヨーロッパのような活力のない先進国病社会になるから、この社会活力を維持するという観点から所得に対する租税負担率をできるだけ抑制していく、この観点一つございます。もう一つ観点は、国の財政再建という観点でございまして、この財政再建をなし遂げるためにはまず歳出を徹底的に削減する。しかも、それは上辺的な歳出削減ではなくて、歳出構造まで切り込んでこの歳出削減をやるべきである、「増税なき財政再建」はそのためのてこである、この考え方。  ただいま申し上げました社会活力を維持して先進国病にならないために租税負担率をできるだけ抑制をするという観点と、もう一つは、財政再建観点から歳出構造的に削減する、この二点が私どもの「増税なき財政再建」の増税なしという趣旨でございます。すべてに関する問題は、そういう前提臨調答申をいたしたわけでございます。  したがいまして、ただいま先生からお尋ね財源問題でございますが、私どもとしては、この二つ増税なしという内容基本的趣旨、この範囲におきまして、たとえば税の公平確保あるいは直間比率の是正、こういう観点において税制全体について御検討いただきまして、その結果一部の税目において増税または増収等が出ましても、それは基本的に私どもの「増税なき財政再建」に大きな矛盾はない、こういうふうに考えております。
  14. 安井吉典

    安井委員 その基本的な考え方は抽象的にはわかるのですけれども、それが具体的になった場合、私どもは、たとえば不公平税制の是正、そのための企業優遇税制を改めなさい、全部やめられるものがあるかもしれませんし、やめられないものもあるかもしれませんけれども、とにかく改めなさい、そういうことでも財源が得られてくるわけであります。いま退職給与引当金の優遇措置の見直し等が言われています。損金の繰入率四〇%あるわけですけれども、これを三五%に引き下げろとか、そういうようなものがあるわけです。私どもの方から見れば、これらは企業に対する一種の補助金なわけですから、補助金の削減臨調一つの大きな原則ではなかったかと思います。  そういう側面からいっても、さらにまた不公平税制の是正という面からいっても、これが大切ではないかと思うのですが、しかし、どうも臨調委員の御発言などを聞いていますと、こういうのはだめだ、いまお話しになりましたような活力ですか、企業の活力を失うことになるからこれはだめだ、そういうところにそんな原則が出てきてしまっているわけでありますが、私は、そのことによって、たとえばいまのような企業優遇税制をやめることによって、そこの部分だけはあるいは増税というかっこうがあらわれてくるかもしれませんけれども、これは増税というのではなしに不公平是正という観点でとらえるべきだ。この間もここで大蔵大臣とやったのですが、大蔵大臣も大体同じような考え方を示されましたが、その点はどうですか。
  15. 瀬島龍三

    瀬島参考人 結論的にお答え申し上げますと、臨調行革審考え方といたしましては、単なる増税、言いかえますと、財源を求めるために単に増税に持っていく、これは臨調としては絶対に反対でございます。  ただ、先ほど申し上げました歳出構造的な削減を徹底的にやる、もう一つは現実の問題として税の公平を確保していく、こういうような観点におきましてそのような、ただいま先生が申されましたようなことになっても、これは否定するものではない、こういうふうに結論的にお答え申し上げ得ると思います。そういうことで御了承願いたい、こう思います。
  16. 安井吉典

    安井委員 そうしますと、これは新聞の記事に、大槻さん、いまの推進審議会会長代理ですかのお話ということで、退職給与引当金の損金算入率の引き下げだとか印紙税率の引き上げなどは法人に負担がかかるから絶対反対、ただ、酒の税金などは上げてもいいじゃないか、酒が上がったって飲まなければいいじゃないか、ある程度の増税はやむを得ない、こういうようなことを言われたというのですが、これについて、あなたは論評するお立場かどうかわかりませんけれども、いまの原則を当てはめれば、不公平税制の是正というたてまえではやむを得ないということ、それから直間比率の是正という側面もある、こういうことをおっしゃられれば、この御発言の前半部分はちょっとおかしいように思いますが、どうですか。
  17. 瀬島龍三

    瀬島参考人 いま御指摘の大槻さんの発言、これは個人の発言でございまして、私のきょうの立場臨調を代表し行革審を代表しておる立場でございますので、個人の発言に対して何ともお答えすることはできないのでございますが、要するに、不公平税制の是正あるいは税の直間比率を今後中期的、長期的に是正していく、これは国家として必要だと私どもも思っております。  ただ、これの実行においては、いまお取り上げになりました例が不公平であるのかないのかという、個々の観点の認識がまず決まらなければなりませんし、同時に、それが社会経済情勢全体にどう影響するのか、そういうようなことも御検討いただかなければならぬと思います。これらにつきましては、ぜひ政府国会において御検討願いたい、このように思います。
  18. 安井吉典

    安井委員 ここで、瀬島さんと一緒にことしの税制をどうするかということを御相談して決める場でもありませんから、臨調並びにいまの推進審議会のお考えを伺っているわけであります。  ただ、原則はわかるのですけれども、その不公平なのかどうかについての見方、それから社会経済情勢のあり方についてというようなことになると、原則はあってもどうでも解釈できるのですね。非常にフレキシブルなあれになってしまうような気がして、「増税なき財政再建」というのがどうも単なる一つの目標だけであって、現実には余り役に立たないようなことになってしまうのじゃないか。その前提条件がいろいろあるものですからね。そういうふうな気がしてなりません。ただ、いずれにいたしましても、あくまでも不公平の是正ということも大事だというお考えがあるということだけ、きょうは受けとめておきたいと思います。  そこで、いま租税負担率のこともおっしゃいましたけれども、ここで、この間からやりとりをしている中で、政府の方は租税負担率はなるべく下げたいということで努力をするが、どれだけを目標にするのかということを言われてもそれは困ります、それは後で決まることです、そういうような言い方をされるのですが、そんなような態度でありますと、これはいつまでたっても、どこまでが小さな政府かわからないわけですから、それがずるずる上がってしまうような気がするわけです。租税負担率の問題について、具体的にリミットはどこまでということをお考えでしょうか。
  19. 瀬島龍三

    瀬島参考人 臨調でただいま御指摘の問題を審議をいたしましたとき、すなわち、これに関しては五十七年の答申でございますが、主として、先ほど申し上げました社会活力を維持してヨーロッパのように先進国病にならない、そのためには国民負担率並びにその中の租税負担率をできるだけ抑制していくべきであるという基本的な考え方に立ちまして、当時の五十七年におけるわが国所得に対する国民負担率は、先生承知のように約三五%でございました。臨調で討議をいたしておりましたときは、三五%のうちの二四%は租税負担でありますし、二%は社会保障負担でございました。  そこで、まずこの合計三五という数字、これはヨーロッパのように五〇%以上まで持っていってしまいますと、わが国社会が大変なことになりますので、答申におきましては、ヨーロッパの水準よりもかなり低くとどめるべきであるという表現になっております。御承知のとおりでございます。このかなり低くという言葉一体具体的数字でどの程度かということでございますが、そのときの臨調委員の皆それぞれの見解がございましたが、大体四〇%ぐらいという意見もございました。それからマキシマム四五%だという意見もございました。大体四〇から四五%の間の意見が多うございました。そういうことで、ここの文書で答申する表現は、ヨーロッパの水準よりもかなり低くすべきであるという表現に実はなっておるわけでございます。  それから、この三五の中の一一と二四の関係の問題でございます。これは臨調答申で触れておりますが、二四と一一でございますが、どうしてもこの三五をふやしていかなきゃならぬ、こういうときはまず一一の方をふやすべきである。言いかえますれば、受益者負担でございますから、こちらが先行すべきである。そして、租税負担率二四はできるだけ抑えていくべきであるというのが臨調における審議の過程でございました。そのようにお答えしたいと思います。
  20. 安井吉典

    安井委員 審議の過程はわかりました。問題は政府対応ということになってくると思いますし、私どもは私どもとしての考え方がありますが、四五%などというようなことになると、やはり高過ぎるのじゃないかと思いますし、これはまたさらに政府との間で詰めてまいりたいと思います。  総務庁の設置が今度の法律案の中で出てきているわけでありますが、一部は総理府に残る。推進審議会のお出しになった提言などを見ましても、かなり評価をされたように書かれているわけであります。しかし、歳出がこれによって抑制され合理化される政策というふうな評価が当たるのかどうか。現実には余り財政的な減り方はなくて、大臣が一人減ってもこれは別なところでやっていただくのだそうですね。あるいは、役所が違えば書類から判この果てまで、看板まで、みんな変えなきゃいかぬですから、そういう支出の方がむしろふえるかもしれません。  それと、人事の一元化とか総合管理とかというものはお題目に終わって、あの案が成立するまでには官僚の激しい抵抗、国民にとっては何が何だかわからないのですけれども、そういう大きな抵抗のもとでの機構いじりに終わっているような感じがしてならないわけです、私どもの目から見れば。審議会としては大変大きな評価を置いておられるようでありますが、その辺、どうも私どもの見方と違うのですが、どうでしょう。
  21. 瀬島龍三

    瀬島参考人 もともと臨調では、政府全体の総合調整機能が不十分であるというふうに考えました。余りに物事が全部縦割りになってしまっておりまして、いわゆる総合性と、それと関連した効率性がきわめて少ない、こういうのがまず臨調政府の機構に対する基本的な認識でございました。  そこで、その観点に立ちまして、政府という大変大きな組織でございますので、この組織運営の基礎になりますのは、企業の場合でも同じでございますが、人事管理、定員の管理、またそれと関連した労務管理、またこれらの管理状況の監察、こういうものを一元化すべきである、こういう発想から、臨調答申では総合管理庁という、これは当時の仮定の名前でございますが、これが今回は総務庁と変わったわけでございますが、この総合管理庁の設置を意見として提出をしたわけでございます。  今回でき上がって国会に提出してあります総務庁については、まず一つは、臨調が総合管理庁という名前において実行すべきであるという、この点は実現されておると私どもは見ております。それともう一つは、臨調答申では触れておりませんでしたが、総理府というものが内容的に整とんをされたということも一つであります。同時に、大臣一人、次官二人がここから減った、行革審としてはこういうような見方をしておりまして、臨調答申よりも半歩か一歩前へ出ておる、実はこういう評価をいたしました。  ただ、ただいま安井先生指摘の、これによって経費の節減あるいは人間が減っていない、こういう御指摘でございますが、臨調で、総合管理庁設置につきましても、何とか人間を減らせないか、この一種の合併によって人間を減らせないかという問題も、実は答申までの過程において研究をいたしました。しかし、総理府と行政管理庁、この中だけで人員を減らすということは、いろいろ研究してみましても、現実の問題として非常にむずかしい問題でありまして、研究はいたしましたが、臨調答申の中ではその問題には触れておりません。  私どもは、今後の問題として、国会で総務庁設置をお認めいただいて、これが実行に入れば、この総務庁が中心になって行政府全体の人員の効率化、こういう問題をやってもらえる、そのように期待をいたしております。
  22. 安井吉典

    安井委員 私どもと大分見方が違うように思いますけれども、これは深く詰める時間がありませんのでやめますが、もう一つ地方事務官の制度の問題です。  昭和三十九年の臨時行政調査会答申には、地方事務官制はすべて廃止して身分上の権限は都道府県に移すほか、国と地方公共団体の人事交流の推進、こういうことになっているわけです。都道府県に身分を移せということが第一次臨調答申の中で明確にされています。そして、職安だとかその他の機構についても同じ趣旨によって書かれています。そして昭和四十一年七月に、当時の行政監理委員会が「地方事務官制度改革に関する意見」を出していますが、これも読んでみますと、職安を初め陸運、社会保険、すべてについて、すべて知事に対する機関委任事務としなさい、所属の事務官は全部地方公務員にしなさい、こう書いてあるわけです。  初めの方は二回ずっと書いていて、今度の第二次臨調になってから第三次答申、それから最後の最終答申、原則は国家公務員にしなさい、そしていま地方の役所まで国の役所にしてしまいなさい。そうなると、もう行革よりも国家行政の拡大になってしまうのではないか、そういうふうな気さえするわけです。とりわけ重要なのは、第一次臨調それから行政監理委員会、こうずっと続いていて、何で急に第二次臨調になって国家公務員などというふうに切りかわったのか、その理由が少しわからないのですが、どうでしょう。
  23. 瀬島龍三

    瀬島参考人 御承知のように、地方事務官制度というのは、終戦直後の昭和二十二年に暫定的に設けられた制度でありますが、その後三十何年間国会でもたびたび取り上げられておりますし、政府でもたびたび取り上げておりましたが、結論を得ずして今日まで三十数年間この制度が継続してきたわけでございますが、いずれにいたしましても、地方事務官というのは、非常に俗な表現で申し上げますれば、国家公務員と地方公務員とのあいのこのような立場におりますし、当然その人たちがやる仕事も、国の仕事なのか地方の仕事なのか、責任の所在もあいまいな点が少なくないわけでございます。  その点は御承知のとおりでありまして、臨調はこの問題を課題として取り上げまして、いろいろ慎重な検討をいたしました。臨調の中でも、この問題は結論の出し方については本当にむずかしい問題でございました。臨調は、これにつきましては地方事務官の身分の帰属の問題よりも、まずやっておる仕事の問題はいかにあるべきか、こういう検討から入りました。そうしますと、御承知のとおり、大部分のこの人たちのやっておる仕事は社会保険業務でございまして、これらについては、やはりその全体的な効率性から見て国の仕事としてやった方がよろしいという結論を得たのでございます。  また、その可能性の問題でございますが、第一次臨調あるいはその後の行政監理委員会出しました時期と、現在は御承知のとおり技術のオンライン化が非常に進歩しておりまして、全国一元的に迅速に効率よくこれらが国の仕事として実行できる可能性がありましたので、臨調はそのような結論を出したのでございます。  第一次臨調等における検討の問題もいろいろ調べてみましたが、身分をどうするかということが中心でいきましたのに対して、今回の臨調は、仕事はいかにあるべきか、これから入りまして、あのような結論になったわけでございます。
  24. 安井吉典

    安井委員 あと、質問を湯山委員に譲りますが、私ども国会の中では、いま国会のこともお触れになりましたけれども国会の決議としては、地方に譲りなさいという第一次臨調のあれを引き取った国会決議があるわけです。それはどうされましたか。国会決議のことはお考えにならなかったのですか。
  25. 瀬島龍三

    瀬島参考人 私、はっきり記憶しておりませんが、この問題に関する三十五年間の政府のいろいろこの問題を取り上げた経緯、国会でいろいろお取り上げいただいた経緯、全部これは私どもは勉強を実はいたしました。それから、都道府県知事さんの御意見その他も皆これは伺った結果、あのような結論を出しました。
  26. 安井吉典

    安井委員 湯山君に譲ります。
  27. 金丸信

    金丸委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。  次に、湯山勇君。
  28. 湯山勇

    ○湯山委員 時間が短うございますから、要点だけお尋ねいたしたいと思います。  さきの八月の五日に人事院勧告がなされました。ちょうどその前日、八月の四日に「当面の行政改革に関する意見」が政府に提出された。このことにつきまして、人事院勧告とこの行革審意見、これが絡みまして、いろいろマスコミ等も取り上げますし、また、当事者大槻委員あるいは槇枝委員等が論争等もあったいきさつがございまして、この人事院勧告と、それからただいま申し上げました意見、「当面の行政改革に関する意見」と何か関連があるように受け取られ、公務員の間には、これに対して相当不安といいますか批判もあるわけでございます。  つきましては、この行革審意見というのは、人事院勧告が出るということを意図して前日に出されたものかどうか、これが一つ。それから第二は、事務当局初め、各所の情報を総合いたしますと、事務局の原案では、人事院勧告について、総人件費抑制の観点から適切な抑制措置を講ずべきだという意味の原案があった、これが行革審審議の結果、抑制ということが削られたということ、これは情報というよりも、むしろ確実な点ではないかというように判断しておりますが、なぜそうなったか、この二点について、簡単に言って失礼ですけれども、時間の関係もございますので、お述べいただきたいと思います。
  29. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答え申し上げます。  第一点の問題でございますが、人勧が出る前日に行革審人勧を意識して出したのではないかということに関するお尋ねかと思いますが、実はそのようなことはございませんで、もともと行革審は七月の初めに発足いたしまして、どのように今後行革審行革審自体を運営していくか、あるいは、いよいよ本格的な段階に入るこの行革実行について行革審意見を述べなければならぬ。また、国民の皆様から行革審に対して大変激励、鞭撻あるいはアドバイスをいただきました。そういうようなことで、八月に入ったら行革審として、一つは今後の行革のあり方、一つ行革審のあり方、これらを政府に提出をし、同時に国民に発表すべきであると実は考えておりました。それがたまたま日取りがそういうことになったのでございまして、そのように御了承願いたい、こう思います。  それから第二点のお尋ねでございますが、行革審会議人勧に関して抑制すべきであるという事務局案が提出された、これは先生指摘のとおり事実でございます。また、それをめぐる審議におきまして、ある委員は完全実施を主張されますし、ある委員は厳しく抑制の意見も出ました。審議会の内部においてそういうことがありましたことも事実でございますが、いろいろ討議いたしました結果として、行革審としては、さらに厳しくなってきた財政事情、社会経済情勢等を考慮して政府国会は適切に判断をして責任を持って決定すべきである、こういう文章に最後なったわけでございます。
  30. 湯山勇

    ○湯山委員 抑制というのを削った理由というのは、端的に言えばどういう理由でございますか。
  31. 瀬島龍三

    瀬島参考人 臨調基本答申におきまして、これは臨調のときからの思想が流れておるわけでございますが、臨調におけるこの人勧に関する基本的な考え方は、御承知のとおり三点ございます。第一点は人勧制度の維持尊重、第二点は給与は民間給与に準拠する、それから第三点はできるだけ総人件費を抑制すべきである、これが臨調基本答申における人勧関連したポイントの三点でございます。  この流れから今回の行革審意見が出ておるわけでございまして、あの臨調答申の時期よりも国の財政事情がさらに厳しくなっておるという文言が入っております。そういうことを考慮して政府国会で適切に判断をして決定をさるべきである、こういうことで、文章の全体をごらんいただいていまの点は御判断願いたい、このように思います。
  32. 湯山勇

    ○湯山委員 これからが私の意見が入りますから。  実は、いまたまたま御指摘になりましたように、臨調答申ではいまおっしゃったような点はございました。特に人事院勧告については、答申では人事院勧告は尊重されるべきものであることというふうに明確に示されております。もちろん総人件費の抑制というのはあります。  そこで、いま土光会長のごあいさつにも、臨調答申については中曽根総理も尊重するという言葉を使ってお約束された。検討するとかあるいはできるだけ実施するとかいろいろありますけれども、尊重というのは、私は最大限のそのことについての約束だと受け取って差し支えないというように感じます。したがって、臨調答申で人事院勧告については尊重すべきものであるということは、これはもう非常に大きいウエートがかかっている、このように判断をいたします。  それから、では同じ臨調答申で人件費総額の抑制ということ、これも非常に重要な課題である。そのことにつきましてただいま参考人は、歳出については構造的に削減措置をとるべきだということを強調されまして、私もその点十分理解もできますし、その点では同感でございます。そういたしますと、その間矛盾がございます。人事院勧告の実施について抑制措置をとるということと尊重するということとは矛盾がある。どちらをどう優先するかという課題がありますけれども、これは、私が基本答申を何度も読み返してみますと、非常に頭のいい方がおつくりになったと見えまして、解決の方法を示しておるのです。  それはどういうことかといいますと、総人件費抑制が求められている、その方法については、いまのように目先だけで応急措置をとるのでなくて、この答申によれば、人件費総額の膨張については厳しい定員管理、このお言葉はいまもお使いになりましたが、厳しい定員管理を行うこと等により抑制するとありまして、臨調答申の間には人件費総額の抑制と人事院勧告の尊重ということに矛盾がないようにこういう方法でやれということが示されております。つまり、定員が半分になれば完全に実施しても人件費総額は半分で済むわけですから。この臨調答申は矛盾なくやる方法を示している。  ところが、ともすれば、ただ上げる率を抑えるとか実施の時期をおくらせるとか、そういった一向基本的な示された方針じゃなくて、尊重すると言って、しない方法でこれをやろうとしておるところに私は問題があると思います。したがって臨調答申から、あるいは今度の場合も、いまお述べになりましたけれども、いま人事院の制度、これは堅持する、民間給与の問題、おっしゃったとおりこれに準拠していく、そして勧告は尊重する、これは基本として動かない、ただ厳しい財政事情にあるからそれに対応するということ、これはよくわかります。しかし同時に、社会的な経済的な事情というものの中には、これは公務員だけじゃなくてこの春の賃上げの場合に、たくさんの民間の労働者たちは、昨年人事院勧告を抑えたことがはね返ってきた、だからやはり人事院勧告は実施してもらいたいというのは、マスコミには載らないにしてもほとんどの労働者の声でございます。それがありますのと、もちろん退職金が多いなんか、これはいけませんが、そうじゃなくて、この点はそうであるし、それからいま減税お話が出ました。減税にいたしましても、景気浮揚に役立つという、これは経済界の大きな課題でございます。  したがって、お示しになった条件の中には、国の財政が非常に厳しいこと、これもありますけれども、検討要素の中にはそういう引き上げなければならないという要素もございます。したがって、おっしゃったように歳出構造的な削減というのをやらなければこの答申に合わないわけですから、目の前でことしだけ時期をずらすとか率を抑えるということは本道ではない。本来の臨調の精神は、むしろ一人一人の給与を抑えてではなくて給与総額を抑えよという意味はそこにある、こう私は読んでみまして感心もいたしますし、さすがに臨調だなということも感じましたが、そのように理解してよろしいものでしょうか、いかがでしょうか。
  33. 瀬島龍三

    瀬島参考人 ただいまの先生お尋ねお答えを申し上げます。  御指摘のとおり、国家公務員の給与という問題につきまして、臨調は問題を構造的に考えるべきだというのが基本的な考え方でございます。したがいまして、人勧を維持、尊重する、給与は民間に準拠、それから総人件費抑制という観点、こういうような構造的な問題の解決をすべきであるという制度の問題を臨調出したわけであります。  それからもう一つ、そこに当面的な問題が一方あるわけでございます。これは当面的な問題としての観点でございますが、国家公務員の給与を最終的に決定されるのは政府国会でございます。この政府国会が御決定になる上においては、あそこの文章に出ておりますように、国政全般の観点国家財政の事情、社会情勢、これらをよく考えて適切に判断さるべきであるということ。  構造的な問題と、もう一つは当面の決定の問題、こういうふうにわれわれは考えてあの答申となっておるわけでございます。そのように御了解願いたいと思います。
  34. 湯山勇

    ○湯山委員 あと一言。  そういうことでございますれば、国会政府でいまのような点を考慮して出せば、昨年、米価のときに土光会長はずいぶん腹をお立てになりましたが、どう政府国会で決めましても、いまのような点を配慮してやれば別に腹を立てるというようなことはございませんですね。
  35. 瀬島龍三

    瀬島参考人 あくまで御決定になりますのは政府国会でございまして、私ども趣旨を申し上げて、その趣旨でお決めいただけば、別に私どもがそれに対してとやかく申し上げる筋ではございません。
  36. 湯山勇

    ○湯山委員 では、終わります。
  37. 金丸信

    金丸委員長 これにて湯山君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴切康雄君。
  38. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公明党・国民会議の鈴切康雄でございます。  本日は、土光会長及び瀬島委員に御出席をいただきましてありがとうございます。私どもは、土光会長を初め臨調委員皆様方の二年間にわたる御努力に対し、深く敬意を表したいと存じます。私ども公明党は、行政改革を今日推進せずして後世に悔いを残してはならないという観点から、国民のための真の行政改革を大いに推進しなければならない、こういう立場から取り組んでおります。そういう立場から瀬島委員に幾つかお尋ねいたしますが、時間の都合もございまして、要点だけお伺いすることになろうかと思います。  土光会長のごあいさつにもありましたように、肥大化した行政を立て直し活力ある社会をつくるために、いまほど行政改革が必要なときはありません。臨調において、そうした趣旨から行政改革の広範な課題について五次にわたり答申を出されました。いまやその本格的な実行段階を迎えているのでありますが、政府対応は、臨調答申最大限尊重するとは言いながらも、重要な問題を先送りし、安易な問題をつまみ食いしているとの感を禁じ得ません。臨調答申をまとめられ、いまその実施を見守る立場から、政府行政改革に対する姿勢についてどのように評価されておるのでしょうか、初めにお伺いいたします。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕
  39. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えをいたします。  先ほどもちょっと触れましたが、臨調答申実行という観点で私ども見ますと、御承知のとおり、臨調は五回にわたる答申出しました。二年間に第一次ないし第五次答申というのをしたわけでありますが、答申との関連でこれの実行を見ますと、第一次答申、第二次答申、第四次答申、第四次答申というのは行革審設置に関する意見でございますが、この三つの答申政府国会におかれてあらましすでに実行されたというふうに私どもは思っております。ことに五十七年度予算、五十八年度予算において増税なく予算が組まれたということは、臨調答申との観点で見ますと政府国会も非常に努力なされた、こういうふうに私どもは見ております。ただ、そのすでに実行されておるものを見ますと、ややつじつま合わせ的なものは見受けます。  これからが第三次答申と第五次答申すなわち基本答申と最終答申実行段階に入りまして、そのスタートがこの臨時国会でございます。これから年末までに五十九年度予算が組まれ、さらに年明けから通常国会と、こうなっていくわけでございますが、私どもは、そういう観点で、この臨時国会を契機にして行革実行の本格的なスタートの段階に入った、このように実は見ております。  そこで、これから先第三次、第五次答申実行に当たりましては、つじつま合わせあるいはただ財政の収支のバランスをとるというような観点でなくて、行政構造、財政の構造、こういうところまで踏み込んで国の中長期の行政改革が促進するように、これは政府に対してもまた国会に対してもぜひお願いをしたい、こういう私どもの気持ちでございます。
  40. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府対応がどうもはっきりしないのは、財政再建の展望を明確にできないことから来ているように私は思います。六十五年度までに特例公債依存体質から脱却すると言いながら、その具体的方法は明らかにされておりませんし、租税負担率を引き上げていくのではないかとのおそれがあります。このような論議が今国会でもしばしば見受けられたところであります。このままでは、「増税なき財政再建」を初め国民負担をできる限り抑えて、活力ある福祉社会をつくるという臨調の理念がなし崩しになるのではないかと私は大変心配をいたしております。  そこで、この際、臨調としてお考えになられた行財政改革の原理原則を提示しておいていただくことが適当だと私は思うのでありますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  41. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えをいたします。  先生のおっしゃる御趣旨、よく理解できます。ただ、行財政改革に対する原理原則をもっと明確にせいという御意見で、ごもっともでございますが、実は私ども、五回にわたる答申において明確に原理原則は申し上げたつもりでおります。  きわめて要約して申し上げますと、まず第一は、行財政改革を進める上において日本国家の方向をどうとるのかという問題から入っております。国家の方向は、一つ活力ある福祉社会をつくるのだ、もう一つ国際社会に対して積極的貢献をするのだ、これがわが国の今後の国家の方向であるということを申しておりまして、それができる行政の体質をつくるのだ。その体質をつくるためには、行政の現状から見て特に二つの点が大切だ。その一つは、簡素効率化、総合化という観点における行政制度組織、機構、運営、すべてをそういうふうに改革をすべきである。それからもう一つの問題は、時代の変化に対応していける行政体質でなければならないというような二つの点を特に強く指摘しておるわけでありまして、これらを今後現実に実行していく上においては、これは実行上のてことして「増税なき財政再建」である、こういうのが要約して申し上げました、いま先生から御指摘の私ども考えました原理原則でございます。  そういうことで、政府国会におかれましても、これからいよいよ本格的な段階に入りますので、今後ともぜひよろしくお願いしたい、こう思います。
  42. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、総論的なことは以上といたしまして、次に、今国会に提出されました法案関連して御質問をしたいと思います。  これらの行革関連法案を見ますと、機構や制度の根本的な改革につながるものがなく、全体として非常に小粒であり、私は、行政改革の名に値しないものばかりではないか、そのように思われます。  たとえば臨調答申の総合管理庁構想では、総理府人事局と行政管理庁を統合し、人事管理、組織・定員管理、行政監察の諸機能を一体として運用することにより総合管理機能を強化することをうたっております。国家公務員はもちろんのこと、たとえば特殊法人、認可法人の職員、また人件費総抑制ということを答申でも盛られている以上、いわゆる非常勤職員を各省で野放しに採用し、政府として総合的に人事管理、組織・定員管理、行政監察がとられないということは、私は大変問題があろうかと思います。臨調の総合管理庁構想はまさしくその点が強調されていますし、それなりに私は使命があると思います。ですから、総合管理庁構想というものは、言うならば大変大きな仕事をしなければならないわけであります。ところが、今回の総務庁構想では総合管理機能は一応確保された。その点は評価するものでありますけれども、たとえば恩給局とかそれから統計局とか新たに加わってしまって、いわゆる性格がぼけてしまった。これは私は大変に問題があると思いますし、また妥協の産物だと言われるのもそこにあろうかと思います。  そこで、第一にお伺いすることは、臨調において総合管理庁構想をまとめられた基本的な考え方は何であったのか、また、その観点から見て、今回の総務庁設置法案答申趣旨に即しているものであると考えられておるのか。先ほどはそれの一歩とか、お世辞を言わなくてもよろしいと私は思います。はっきり言っていただけば結構です。  第二にお伺いすることは、簡素化、効率化という点から見ると機構、定員の縮減につながらず、単なる看板のかけかえにすぎないという意見があります。臨調が言っているところの簡素化、効率化ということは、やはり少なくとも機構の抜本的な改革をすることによって縮減、削減をしていかなければならない。それによって定員もあるいは予算も減らなければ、言うならば臨調の言う四つのポイント、制度改革するに四つ申されているその中の簡素効率が全く何らなされていないというふうに私は思います。こういうふうなことで、実は、まとめられた政府の総務庁構想に対して、行革審委員の中にも大変に不満だというようなことを漏らされておる方も現実におられるのですよ。ですから、そういうことから言いますと、行革審としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  43. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えをいたします。  行革審の中のそれぞれの方々がいろいろ個々の意見がありますことは、いま先生指摘のとおりでありますが、行革審としてのまとまった意見について申し上げておきたいと思います。  まず第一点は、御指摘の中の第一点で、行政府というこの大きな組織の中において人事管理あるいは定員管理あるいは労務管理あるいはそれらの監察、これらを一元的に総合的にやっていくという観点がもともと総合管理機能強化という行革審意見でございまして、その点は、私は十分だとは申し上げかねますけれども、入っておる、このように理解しております。  それから、恩給局、統計局が入ってきて全体の性格がぼけたのではないかという御指摘でございますが、確かにそういう面もございます。しかし、また反面、総理府本府の内容が御承知のような複雑な内容になっておる、これはやはり整とんさるべきであるというふうに私ども考えておりまして、その関連において恩給局なり統計局の帰属が決められたのだろう、このように理解をしております。  それからもう一つお尋ねの第三点で、総合管理庁構想を臨調出しましたときに特殊法人に関することも含めるべきだということを書きました。これは私どもとしては、臨調答申出しましたときには、ぜひ必要である。どちらかというと、この辺がいろいろ人事管理においてあいまいになっております。その点が今度の総務庁構想の中で外れておりまして、これについて政府側に私ども聞きましたのですが、これの具体的な検討がまだ済まなかったから今度は入れてありませんが、将来この問題は検討をしますというふうに政府側から行革審は聞いております。そういうような点でございます。
  44. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 余り時間がないものですから、次に国家行政組織法改正の問題であります。  質問の第一は、国家行政組織法を改正し、国会のチェック機能を弱め行政府に自由裁量権を与えることは、いろいろと国会でも論議のあるところでございます。行政組織の規制を弾力化することは、逆にこれより行政組織が膨張していくのではないかとの疑念があります。これは一例でございますけれども、部の設置については野放しの状態になってしまいます。果たしてこれによって行政組織整理再編が進んでいくのか、行政組織規制の弾力化を提言した臨調の御認識はどうであったのかということを、まず第一点としてお伺いいたします。  第二点としては、政府国家行政組織法改正は、臨調答申を一部手直しして国会への報告さえなくしてしまっております。これでは、国会が民主的統制を行うどころか、その状況を把握することさえ困難になっております。現在、中道四党が中心となってこの点を含めて修正の検討をいたしておりますが、この二点についてはどうお考えでしょうか。
  45. 瀬島龍三

    瀬島参考人 国家行政組織法の弾力化の問題でございますが、臨調は、行政全般に関する物の考え方としまして、それぞれの役所がそれぞれ自立自助、自己革新という精神がなければならない、まずこういう基本的な見方に立っております。そういう意味におきまして、官房、局以下の設置は時代の変化に対応できるように政令によって処理さるべきでないか、こういうふうにまず考えました。  しかし、それは反面において、ますます行政の膨張を来すのではないかということも私どもも非常に恐れて、これに対する研究をいたしまして、一つの歯どめをかけるべきだということで、臨調が歯どめについて出しましたのは三点でございます。第一点は、官房、局の数のマキシマムを決めるということ。今回は百二十八と伺っております。それから二番目は、政府は定期的にこれを見直しする仕組みをつくるべきである、野放しにいかないように、政府全体としてこれを定期的に見直しする仕組みをつくるべきであるということが歯どめの二点でございます。それから第三点としては、国会に報告すべきである。この三つが臨調答申で、この弾力化をやる上における歯どめとして臨調答申をしたわけでございます。  第一点につきましてそういうことでありますが、二番目のお尋ねの報告問題でございますが、臨調はそのように歯どめの一つとしてそれを出しておりますが、報告は、あくまで弾力的に機動的に政府自身が改革をしていくという趣旨において報告の問題を扱っていただきたい、このように思います。  以上であります。
  46. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もう一問、次に、この機会行革審運営についてお伺いいたします。  臨調の第四次答申に基づきまして行革審が設置されたのでありますが、行革実行監視機関として国民期待が大きいにもかかわらず余り御意見を言われないことについては、国民は歯がゆいような思いでおります。たとえば臨調答申趣旨から大きく外れた総務庁設置についても、政府行革審にお伺いを立てたら、まことに結構な案だと言っております。これでは何のための行革審かわからなくなってしまうのではないかと私は思います。  先ほど、この総務庁の問題については御答弁がありましたので、それ以上のことは申し上げません。国民は、行革実現のため行革審政府に対してもっと厳しい注文をつけてもらいたいと実は思っているのであります。行革審では、これまでどのような審議が行われてきたのか、また、どのような考え方でこれから運営に当たっていこうとされているのか、その点についてお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。
  47. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えを申し上げます。  第一点は行革審のあり方でございますが、国会でお決めになった法律によって行革審が設置されたわけでございますが、私どもは、あの趣旨のとおり、臨調答申趣旨に基づきまして政府のこの実行を注視して、必要に応じて行革審意見出していく、こういう考え方を持っております。  問題は、多少これが運営上の問題になりますが、一つ一つについて、かつての臨調当時のように、臨調は一種の実務機関でございましたので、毎日毎日意見出していくのがいいのか、あるいは大きな節目でまとめて意見出していくがいいか、この点は行革審運営の問題でございますが、私ども、現在は、ただいま申しました二つの後者のつもりでおります。八月四日に意見を提出しましたのもその一つでございまして、今後、かなめかなめのときに行革審意見政府出し国民の皆様にも知っていただく、こういうつもりでおります。  お尋ねのとおり、行革審に対しては、全国ことに地方から、もっとしっかりやれ、もっと怒れというような声が非常に来ております。そういう現状でございまして、今後とも行革審はそういうことでやっていくつもりでおります。
  48. 三塚博

    ○三塚委員長代理 これにて鈴切君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田正勝君。
  49. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 瀬島参考人におかれましては大変貴重な御意見をいただきますが、私ども民社党は、行政改革を推進しなければもはや日本も国民も救われない大変な事態が来るのではないかという危機感を非常に持っておりまして、私どもは、党を挙げて行政改革を推進すべきであるという立場をとっております。また、瀬島さん個人につきまして評論するのは大変失礼だと思いますが、瀬島さん御自身のことにつきましても、わが党は、大東亜戦争のあの終戦の当時から今日に至りますまでの間、非常に烈々とした国を愛する心持ち、そして国民の将来を憂うるその気持ちに対しまして、私どもは実際党を挙げて尊敬を申し上げておるのであります。  さて、そういう立場臨調の中におかれまして二年間にわたる役割りを果たし、さらに行革審にも籍を置かれてこれから政府を監視していくわけでありますけれども、いま安井委員が質問をされまして答弁されたことで、国民が非常に心配しておることが一つあるのです。それは何かといいますと、行政改革を進めることによって国民負担が莫大にふえるのではないかというおそれを実は国民が持っておるのであります。  そこで、租税負担率の問題それから社会保険の負担率の問題、合わせて国民負担率と総称しておりますが、この問題について、実は中曽根総理大臣は、私どもの質問に対しまして、租税負担率については現状維持を全うするように全力を挙げます、こういうふうにはっきりとみずから手錠をかけられました。これは、私は評価していいことだと思うのであります。  ただ問題は、現状三五%程度になっております国民負担率ですね、それが臨調答申におきましてもこういう述べ方をしております。第三次答申におきまして「租税負担社会保障負担とを合わせた全体としての国民負担率は、現状(三五%程度)よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により現在のヨーロッパ諸国の水準(五〇%前後)よりはかなり低位にとどめることが必要である。」こういう述べ方をしていらっしゃるわけです。安井委員のこのことに対する質問に対しまして、いま瀬島先生お答えになりましたのは、まあ四〇か四五ぐらいでしょうかなというようなことであったわけです。  そこで、私どもがちょっと心配をいたしますのは、私ども日本人の受ける語感いわゆる感じとしましては、臨調答申ではかなり低目にとどめることが必要であるとおっしゃっておる。それが、お答えが四〇ないし四五となりますと、まあヨーロッパが大体五〇%としますと五、六%低いというような程度では、これはかなり低いとは日本人は考えないですね。わずかに低い、こういう感じ方しかないわけです。かなり低い、こうなると、やはり一〇%程度もしくはそれ以上の開きがございませんと、かなり低いとはだれも言わないと思うのであります。  非常に不安を感じますので、それでなくても、いまの政府の五十九年度予算編成の準備の作業を見ておりますと、国民負担をふやすことを相当手荒くやっておる節がありますので、国民は非常に心配しているのです。そういう点で、どういうふうに考えていらっしゃるか。大体私どもの受け取り方では、四〇%程度というふうに臨調ではお考えになったのではないかと思って、私どもはその線で実は進んでおるのでありますが、どういうふうにお考えになっておるか、再度御答弁いただきたいと思うのであります。
  50. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えを申し上げます。  国民負担率租税負担率の問題でございますが、「増税なき財政再建」を主張しております臨調としては、いずれもできるだけこれを抑制していくということは当然でございます。ことに、当面の問題として租税負担率を上げないということは当然であるかと思います。  ただ、中長期的に問題をとらえますと、臨調がここで国民負担率を三七だとか八だとか九だとか、こういうことを具体的な数字で出すことを実は差し控えたわけでございますが、と申しますのは、これから先の情勢におきまして、たとえば老齢化社会、こういうような情勢になってまいりまして、行政サービスをどうしていくかというような問題と非常にこの問題はかかわりのある問題でございますし、同時にまた、現在政府国会が推進なされておる行政改革がどこまで行けるかということもこの数字に非常な関連がある問題でございまして、そういうことから臨調は、本来これは厳しく抑制すべきでありましたけれども、具体的な数字を表現しないで、ヨーロッパよりもかなり低位というような表現になっておるわけでございます。臨調の真意は、先生指摘のとおり、厳しくこれを抑えていくというのが真意でございます。
  51. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  今度はちょっと観点を変えるのでありますが、いま行政組織としては、国、都道府県、市町村、いろいろの段階がございますね。これで、たとえば一つの問題を調査しようあるいは論議しようといたしましても、あらゆるところで垣根がありまして、なかなか問題が進展をしないあるいは調査が進められない。いろいろなところで垣根がある、あるいは、言葉が悪いかわかりませんが、そういうことはいま答弁できませんとかいうような調子で、そこでひっかかってしまうということが余りにも多過ぎるのですね。  そこで、これは私の一つの提案でありますが、行革審は、ただ単に政府出してこられる案を検討し意見を申し述べ、その実行を監視するというだけではなくて、いま一つ日本全体の市町村から国に至るまでの行政機構、組織、そういうものの見直しをされまして、まあこれは略称でありますけれども行政関係の総点検、行政総点検国民運動というようなものを行革審が音頭をおとりになりまして国民運動として見直しを徹底的にやっていく、その中でむだがあればそのむだを排除していくという作業をもし本当にやったら、私は、総経費の一割ぐらいは国民への負担とかそういうしわ寄せをすることなくして節約ができるのではないかというふうに考えておるのであります。  具体的には、もう先生は十分研究されましたからよく御存じでありますが、たとえば出先機関の問題とか、あるいは補助金の問題とか、あるいは機関委任事務の問題だとか、あるいは許認可権限の問題とか、ずいぶん膨大なものがありますね。そういうものを国民運動として取り上げてひとつ総点検運動をやったらどうだろうか、こういうことを思っておるのです。いま臨調の皆さんが、土光会長さんを先頭にされまして、あちらこちらで行革の思想について国民運動的にいろいろ御講演をなさっていらっしゃいますが、いま一つ、もう一歩突っ込んでこれが実のある国民運動になり得るように総点検運動に発展さしたらどうだろうかと思っておるのでありますが、いかがでございましょうか。
  52. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えをします。  先生の御提案、私も大変必要なふうに感じます。ただ、御承知のとおり現在の行革審は、法律に基づきましてああいう役割りとああいうような構成になっております。したがいまして、私どもは、まず当面政府行革実行をチェックをして、そしてそれについて意見出し国民にこれを発表していく、こういうことで、正直に申し上げて実はそれだけで手いっぱいでございます。機関委任事務に関する検討も近く始めるつもりでおりますし、あるいはまた臨調が積み残しておる問題があります。これらの問題もありますし、そういうのが現実でございまして、いま先生の御提案のようなことは国として必要だと思います。これにつきましては国会政府で一度具体的な方法について御相談を願いたい、こう思います。私は国民の一人として必要だと思います。
  53. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 率直な御意見をありがとうございました。私も、これをぜひやっていただきたいと思って提案をしておるのは、実は一つ心配があるのであります。  それは、臨調答申を受けられましてこれから政府が懸命に実行してもらわなければいかぬわけでありますが、その実行するに当たりましても、今度の行革国会に対してもっともっと具体的な、もっと前進したそのものが出てくるものと実は私たちも国民期待をしておったのですよ。正直に申し上げまして、時間がないと言い抜けされればそれまでですけれども、これが果たして日本の行政改革の一里塚と言えるのかというような、実はちょっとさびしい気持ちがしておるのであります。単なる機構いじりではないかというような気持ちがいたしまして、ちょっとがっかりしておるのでありますが、そういうことなんかも国民の目に映っていく場合には臨調を解散をされまして行革審がいまできておりますね。その行革審土光さんだ、瀬島さんだというこういうりっぱな方がおられるわけでありますが、国民の目から見ると、政府出してくるものは行革審を通して出ている、だから、これは臨調がそれを承認したというような形で出てきておるものだという受け取り方をします。  そうすると、私が冒頭申し上げましたように、何だ、一里塚がこれだけのものかというような感じが、結局は行革審を悪い言葉で言えば政府は隠れみのにしてしまいまして、隠れみのに使ってゆっくりゆっくり余り大して抵抗のないことからやっていこうかという、政府がスローモーションに仕事をしていく、あるいは行政改革は実際にはこの二年の間にうやむやになってしまうのじゃないかという、そんな感じすら私は持ってくるのでありまして、だから、行革審があることは私どももぜひなければいかぬ、これはもうそう信じ込んでおるのでありますが、その行革審を隠れみのに使われるような行政改革の進行の仕方になってしまっては大変困ったことになるという心配があるのです。     〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕 だから、法律の定めるところでは国民運動なんかを起こす立場にございませんけれども先生も、いまそれは確かに必要なことであるとおっしゃっていただきましたから、それだけでも私ども非常に意を強くしておるのでありますが、何か工夫をいたしまして、行政改革総点検国民運動というものが盛り上がるように私どもも進めたいと思いますので、ぜひひとつ先生の方も御協力を内部からしていただきたいと思っておる次第でございます。よろしくお願いします。  それから次に、先ほど来の論議の中で、総人件費の抑制ということがよく言われておりますね。私ども民社党がこれまで言ってきましたのは、肥大化した旧態依然のままの機構と組織と人員いわゆる定員でそのままやっていったのでは、これは実際には行政改革にはならない。だから、行政改革の非常に重要な一つのポイントというのは、総人件費の抑制にあるんではないか。その総人件費の抑制ということにつきまして、一つの具体的な内容臨調は第一次の答申におかれまして、一般の職員については一〇%、特別の配慮を要する職員を含めて全体で五%の定員削減をお打ち出しになっております。  これは、われわれが唱えてきましたいわゆる総人件費の抑制、パーセントはわれわれはもっときついのでありますけれども趣旨は全く同じだと思うのであります。何といっても総人件費の抑制が達成できぬようでは行政改革の一角は大きく崩れ去ってしまうというふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。
  54. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えを申し上げます。  総人件費を抑制する、しかも、これは目先的でなくて、結局中長期にわたった構造改革をやらなければいかぬという観点において、総人件費抑制というものは、御指摘のとおり行政改革実行上の非常に大きな問題でありますことはもう申すまでもございません。  そういう観点で、総人件費抑制の中のいろいろな問題があるわけでありますが、それはいま御指摘の定員の削減問題もありますし、いろいろの事務事業のやり方も変えなければなりません。たとえば、民間委託でできるようなものはできるだけ民間委託に渡すとかというようなことでありますとか、あるいは三現業なんかも定員をいろいろ合理化していかなければなりませんし、これは総人件費抑制に関連したいろいろな問題がございますが、これらにつきましては、御指摘のとおり、今後ぜひこれは推進していかなければならぬ問題と思っております。
  55. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 残念ながら時間が来ましたので、これをもってやめますが、行革審に対する国民期待は大変大きゅうございますので、ぜひともひとつ今後しっかりがんばり抜いていただきたい。私は、政府との変な妥協だけは絶対にしないでいただきたいというふうに思っております。本当に直言する行革審というものであってほしいということを願いまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  56. 金丸信

    金丸委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、中路雅弘君。
  57. 中路雅弘

    ○中路委員 共産党の中路雅弘でございます。臨調委員の皆さんとは、基本答申、最終答申等が出されたときに懇談をさせていただき、意見交換もしましたけれども、たまたまその際瀬島さんとはお会いする機会がなかったものですから、瀬島さんがおっしゃっているあるいは書かれたものにも触れながら、若干御質問したいと思います。  臨調が一連の答申の中で、行政改革の最大の眼目は、国全体の歩みをより望ましい方向に変えていこうとする点にある、あるいは新しい国づくりを目指すものだと、第一次答申でもおっしゃっているわけですが、瀬島さんは、またこれを国家改造戦略とあるところでは書いておられます。第三次答申行政分野を三つに分けまして、社会保障や文教などは行政の果たすべき役割り、責任領域の見直しが必要だ、防衛や海外協力などは本来的に行政の責任領域であり、科学技術、エネルギー対策などは新しい行政需要、これを基本として進めるということを言われているわけですけれども臨調の目指す、また瀬島さんがおっしゃっている国家改造の基本的な方向というのは、ここで述べられている社会保障や文教など財政硬直化の要因になっている分野にメスを入れる、防衛や経済協力などの分野における政策能力は強化し、民業を圧迫している官業の見直しや、科学技術、エネルギー対策などの分野の制度、運用などの改善をして民間活力を一層発揮させる、ここで言われている点はこういうことだと思いますが、このお考えに間違いないか、最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  58. 瀬島龍三

    瀬島参考人 私個人の問題をお答えすることは遠慮させていただきます。国家改造戦略というような言葉をどこかで述べた記憶はございません。  臨調として、日本の国の将来方向をどうとるべきかというのは、先ほども申し上げましたとおり、活力ある福祉社会をつくり上げる、もう一つ国際社会に積極的な貢献をする、こういうことができる体質の国家でなければいかぬというのが臨調一つの将来に対する国家観でございまして、こういう基本臨調はずっといろいろな作業をしてきたわけでございます。  ただ、臨調は、行政改革という観点行政のすべてにまたがって検討いたしましたが、その中で、国の防衛政策と国の外交政策、この二つにつきましては、その政策そのものにつきましては、臨調は実はそれを検討することが必ずしも適当でないし、また臨調にそれを検討するだけの機関を持っておりませんでした。これは政策そのものでございます。しかし、たとえば防衛行政の効率化とか国防会議をもっと闊達にやるべきだとか、こういうようなことは全部触れておるわけでございます。外交につきましても、外務省の機構はもちろん、海外経済協力のやり方等については指摘をしたわけでこざいます。よろしゅうございますでしょうか。
  59. 中路雅弘

    ○中路委員 いま、防衛とか外交は、大きく言いましていわば臨調の対象外といいますか、そういうお話もありましたけれども、実際、臨調答申に基づいて編成された八二年度の予算、八三年度の予算を見ますと、やはり国民の側から見れば、福祉や教育などが大幅に切り詰められる。一方で、軍事費やいまおっしゃいました海外経済協力、こうした費用が言われているように異常突出ということになっているわけです。先日、わずかな米価の値上げについては大変厳しい注文をつけてこられたわけですけれども臨調の皆さんは、こうした問題についてはほとんど注文をつけておられない。臨調答申の中では、たとえば「防衛計画の大綱」の着実な前進ですか、そういったことも事実上触れられているわけですね。  そういう点で、もう一度お尋ねしますけれども臨調を進めていかれる中で、こうした防衛や外交政策上の具体的な問題は、臨調のいわゆる行革の許容する範囲のものなのかあるいは臨調の対象外のものになっているのか、いずれですか。
  60. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えします。  臨調において防衛政策、外交政策はどういうふうに扱ったかというお尋ねかと思いますが、防衛行政、外交的な行政、これは行政全体の中で臨調は検討いたしました。しかし、日本の防衛政策はこれではだめだ、こうあるべきだとか、わが国の外交政策はこれではだめで、こうあるべきだとか、これは臨調は触れませんでした。また、それに触れるだけの機関を臨調は持っておりませんでした。したがいまして、防衛行政を検討し、外交に関連する行政を検討する上におきましては、現在の政府がとっておられる政策を基準にして検討いたしました。これが臨調の防衛、外交に関する取り扱い方でございました。
  61. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点、これは先ほども御質問がありましたが、臨調のいわゆる「増税なき財政再建」ということですが、臨調委員の加藤さんがある雑誌に、この「増税なき」というのは目標でなくて戦術だと言っておられるところがあります。あるいは国民の間に行革の空気、流れをつくるためのインパクトのあるスローガンだ。瀬島さんは、これは相互銀行協会でのトップセミナーの発言の中にありますけれども、税の直間比率の手直しによる間接税、これは「増税なき」という考えとは矛盾しないということを語っておられるわけです。先ほども御質問がありましたが、税の直間比率の手直しによるこうした間接税の導入、そういった点は、臨調の進めておられる「増税なき」との関係はどういう点にあるのか、先ほどお答えもありましたけれども、もう一度確かめておきたいと思います。
  62. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答え申し上げます。  「増税なき財政再建」という問題と、間接税、直間比率是正あるいは不公平税制是正、こういう問題との関連の問題がいろいろ問題になるわけでございますが、整理してお答えさせていただきますと、「増税なき」という意味は、あくまで、先ほども申し上げました歳出構造的にできるだけ削るのだということが一つの柱でありますし、もう一つは、租税負担率を原則としてできるだけ上げない、この二つが「増税なき財政再建」の「増税なき」の二つ趣旨でございます。したがいまして、ただ単に財源を求めるためにやりやすいところで増税するとかいうようなことは、私どもの言う増税なしとは完全に矛盾をいたします。  ただ、先ほども申し上げましたとおり、直間比率の是正、将来これはやはり国としてやらなければならぬと思っておりますし、あるいは不公平税制の是正、これもやらなければならない問題でありますことはもう申すまでもないわけでありますから、そういう観点におきまして、税制全体あるいは税収構造をいろいろ御検討になりまして、その結果、一部の税目で増税的なものが出てきても、それは臨調の言うておる増税なしとは矛盾をしない、こういうのがただいまの先生お尋ねに対する、整理して申し上げればそういうことになります。
  63. 中路雅弘

    ○中路委員 いま「増税なき」のところで相互銀行の五十七年トップセミナーというところの講演を少し引用しましたけれども、同じ五十七年度トップセミナーで、ちょっと引用させていただきますが、瀬島さんがこういうふうに語っておられるのです。  「今回の臨調答申政府が仮に一〇〇%実行されたとしても、これだけ大きな所帯の国家の体質は、一挙には変わっていくものではない」「私は、ここで、もう一回くらい今回のような改革が行なわれなければ、日本は二一世紀に入っていけないのではないかという感じを持っております。それには今回のような「行政改革」だけでなく、「政治改革」と「国民意識の改革」という三本立てを総合して改革すべきであろうと思いますし、その中では、やはり国権の最高機関である「政治改革」が先行すべきだと思います。」というふうに述べておられるのですが、この二十一世紀に入るために必要な三本立てのここで言われておる総合的な改革とは、どのような改革を指しておられるのか、また、最も重視されている政治改革とは何を意味しているのか、こういった点について、簡潔でいいのですが、お考えをお聞きしたいと思いますし、また、これからの行革審議会意見答申にこの考えを盛り込みたいと考えておられるのかどうか、あわせてお聞きしたいと思います。
  64. 瀬島龍三

    瀬島参考人 ただいま御指摘の点は私個人の問題でございますので、それに対してとやかくこの席でお答えすることは御遠慮させていただきますが、臨調としてあるいは現在の行革審として申し上げますれば、くどいようでございますが、日本の国は先ほど申しました二つの方向に行かなければだめだという考えは非常に強く持っておるわけであります。そのためのプロセスとして行政改革をやっていくという考え方に立っております。  ただ、行政改革という分野に私どもこの三年近くタッチさしていただきまして感じますことは、行政改革は単に行政府が一生懸命やっていけばできるというふうには私どもは思っておりません。現に、行政改革の重要なものは全部法律として国会に上がっていかなければなりませんし、国会の支持と協力と承認なしに一歩も進まないわけでございますから、政治との関連、同時にまた、国民全体がこれを理解して支持をしていかなければできませんので、そういう意味で、行政改革を今後総合的にもっと強力に進めるためには、行政府だけでなくて国会国民も一緒になってやっていかなければならないという趣旨答申を、第三次答申最後のところに特に強調して書いてあるわけでございます。そのように御了承願いたいと思います。
  65. 中路雅弘

    ○中路委員 最後に、一問だけ法案関連してお聞きしておきますが、中曽根総理は、総務庁設置法案について、行革審からもこれは臨調の総合管理庁構想を大がかりに前進させたものと評価されているという答弁もされていますが、行革審ではどういう点でこれを高く評価されているのか。総務庁構想ですね、総務庁の案です。  総務庁が、総合管理機能の強化と行革推進の機能を一層発揮するという総合管理庁構想のねらいを含めながら、同時に総合調整機能もあわせて持つ、そういう点で設置をされようとしている、そういう意味から評価されているのではないかと私は思いますけれども、その点について、最後瀬島さんのお考えもお聞きをして、質問を終わりたいと思います。
  66. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えをいたします。  先ほども御質問がありましてお答えいたしましたとおり、行革審としては、総務庁構想を高く評価しておるといまおっしゃいましたけれども、まあ一歩前進したという程度の、率直に申し上げましてそういう評価でございます。  なぜそういう評価をしておるかと申しますと、一つは、臨調が総合管理機能強化の一環として出しました総合管理庁構想、これの内容が一応入っておるということでございます。具体的には、総理府人事局と行政管理庁の二局、この三つの局が中心になる人事管理、定員管理、監察等が入っておるということが一つでございます。それからもう一つは、臨調では検討をいたしましたが、これは答申にまでいかなかったのでありますが、総理府本府が非常に種々雑多の役所になってしまっておる、これを整序すべきであるという考えを持っておりましたので、今回の総務庁構想と関連して総理府本府の整序が入ったわけでありますから、こういう意味で私どもは一歩前進という評価を実はしておるようなわけでございます。
  67. 金丸信

    金丸委員長 これにて中路君の質疑は終了いたしました。  次に、小杉隆君。
  68. 小杉隆

    ○小杉委員 私の持ち時間はわずか六分でありますし、すでに各党から種々の側面からの質問がありましたから、私は、これからの行革審に対する期待を込めて、これからのあり方について一点だけ伺いたいと思うのです。  瀬島さんは臨調もやっておられたわけですから、行革審とのスタッフなり委員などの相違というのはよく御存じだと思うのですが、私は、いまの体制で果たして行革審が目的を十分に達することができるのかどうか、一抹の危惧を持つわけです。事務局からいただいた資料によりますと、たとえば委員などを比較してみますと、臨調では九名おりましたけれども行革審では委員が七名ということになっております。それから専門委員臨調の場合は二十一人であったのが今回の行革審にはゼロ、参与は臨調が五十六人であったものがこれもゼロ、それから顧問は臨調の五人に対して十人ということですから、こういう点で委員などを比較してみますと、臨調の場合は九十一名おられたわけですが、今度は十七名ということでございますし、特に事務局の面を見ますと、今度はかなり手薄になっている。かつて臨調の場合には事務局が百四人おりましたのが、今度の行革審ではわずか十一人ということで一割という程度でございますね。  これから行革審が四次答申で「委員会の任務」としてうたっている基本理念の推進であるとかあるいは答申で提起された問題点の具体化であるとか、あるいは臨調答申の具体的な指摘事項の実施状況についての調査というようなことを果たしてこれで行えるのかどうか。そして先日行革審から出されました「当面の行政改革に関する意見」ということの中にも、これからの行革審のあり方として、大局的見地からの意見の提出とかあるいは具体的な検討、機関委任事務などの改革方策について調査をしていくんだ、こういう大変盛りだくさんな任務を与えられているわけですが、果たしてこれだけでその任務を遂行していけるのだろうかという率直な疑問を持つわけです。  私は、もちろんこれからチェックをしていくのは、国会の仕事も重要だと思いますけれども、しかし、やはり具体的な行政の内部にわたる調査検討というのは、相当調査スタッフが必要だと思うのですね。そういう面で私は、率直に政府に対して、本当に自分たちの任務を遂行していくためにはもう少しスタッフを充実してくれというふうな要求をしていくべきじゃないか、そうでないと、さっき岡田委員指摘されたように、単に行革審があるということだけで何か隠れみのにされかねないという危惧をわれわれも持つわけです。  いままでは、わりと政府もあるいは国会も、マスコミも含めてですが、いわば臨調フィーバーというような雰囲気がありましたけれども、これから時間がたつに従って、このフィーバーがだんだんあせていくということも考えられますし、そうならないようにわれわれは努力しますけれども、しかし、やはり体制がしっかりしてないとそういう危惧もぬぐい去れないわけなんで、その点についての瀬島さんの率直な御見解を伺っておきたいと思います。
  69. 瀬島龍三

    瀬島参考人 お答えをいたします。  先生のおっしゃる御趣旨はよく理解できます。ただ、行革審につきまして臨調意見出しましたときの考え方がまず基本になっていまの行革審ができておるわけでございますが、膨大な機関を持ってやっていくことは必ずしも適切じゃなくて、要するにおもしでなきゃならない。それが大事だ。たとえば、恐らく政府に対する行革審のいま一番のおもしは、「増税なき財政再建」を行革審は堅持しております、こういう状態で五十九年度予算政府が組んでいかれるというのは、これは大変な政府に対するおもしであるんじゃないか、私ども行革審としてそのように思っております。したがって、あんまり大きな機関を持っていろいろやっていくことは必ずしも適切でないんじゃないか、こういうのが第四次答申政府にフォロー機関をつくるべきだという意見を申し上げたときの私ども臨調自身の考え方でございました。  その後、行革審ができまして、国民の皆様からもいろいろの各方面から、もっと政府をしかれ、どんどん言えと、こういう意見が実は最近非常に多いのでございます。そうなりますと、いま先生指摘のように、特に事務局をどんどんふやさなければならぬというようなことにもなりますし、ただいまその問題の処理につきましてはいろいろ検討をして、また必要なら政府と相談しなきゃならぬのでございますが、ただ、ことしの五月二十四日の政府の新行政改革大綱で、機関委任事務をめぐる国と地方のあり方の問題、これは行革審で検討するように政府の方で決めておられます。これは近く行革審に小委員会的なものを、しかるべき人も政府の各省からもらいまして発足するつもりでおります。全体の問題は今後どのようにするか、もっと考えていきたい、こう思います。これが現状でございます。
  70. 小杉隆

    ○小杉委員 もう時間が来ましたからやめます。ありがとうございました。
  71. 金丸信

    金丸委員長 これにて小杉君の質疑は終了いたしました。  瀬島参考人には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  次回は、明四日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十四分散会