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1983-09-30 第100回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年九月三十日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 江藤 隆美君 理事 海部 俊樹君    理事 津島 雄二君 理事 三塚  博君    理事 細谷 治嘉君 理事 矢山 有作君    理事 正木 良明君 理事 吉田 之久君      稻村佐近四郎君    今井  勇君       植竹 繁雄君    小里 貞利君       小澤  潔君    大村 襄治君       片岡 清一君    亀井 善之君       澁谷 直藏君    田中 龍夫君       谷  洋一君    玉沢徳一郎君       中村  靖君    西岡 武夫君       橋本龍太郎君    原田昇左右君       保利 耕輔君    宮崎 茂一君       後藤  茂君    沢田  広君       森井 忠良君    安井 吉典君       湯山  勇君    渡部 行雄君       草川 昭三君    鈴切 康雄君       中路 雅弘君    三浦  久君       小杉  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         厚 生 大 臣 林  義郎君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君  出席政府委員         内閣審議官   手塚 康夫君         内閣審議官   百崎  英君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣総理大臣官         房総務審議官  橋本  豊君         行政管理政務次         官       菊池福治郎君         行政管理庁長官         官房審議官   古橋源六郎君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁原子         力局長     高岡 敬展君         国土庁土地局長 永田 良雄君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省理財局長 西垣  昭君         大蔵省理財局次         長       吉居 時哉君         国税庁直税部長 渡辺 幸則君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君         通商産業大臣官         房審議官    山田 勝久君         通商産業省機械         情報産業局次長 児玉 幸治君         建設省計画局長 台   健君         建設省道路局長 沓掛 哲男君         自治大臣官房審         議官      金子  清君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         行政改革に関す         る特別委員会調         査室長     大澤 利貞君     ───────────── 委員の異動 九月三十日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     小澤  潔君   愛野興一郎君     植竹 繁雄君   村田敬次郎君     玉沢徳一郎君 同日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     愛野興一郎君   小澤  潔君     足立 篤郎君   玉沢徳一郎君     村田敬次郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出、第九十八回国会閣法第三九号)  国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案内閣提出第一号)  総務庁設置法案内閣提出第二号)  総理府設置法の一部を改正する等の法律案内閣提出第三号)  総務庁設置法等の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案内閣提出第五号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国家行政組織法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案総務庁設置法案総理府設置法の一部を改正する等の法律案総務庁設置法等の一部を改正する法律案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤茂君。
  3. 後藤茂

    後藤委員 まず最初に、行政管理庁長官から総理としての重責を担っておられる総理に対しまして、行政改革に関する基本的な考え方につきましてはそれぞれの委員質問をいたしておりますけれども、まず冒頭、改めて総理行政改革に対する基本的な考え方に対しまして御質問を申し上げ、逐次御質問してまいりたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行政改革につきましては、臨時行政調査会答申最大限に尊重して、その基本的考え方及び具体的施策につきまして、これを実行しようと思って鋭意努力しておるところでございます。  その目標は、簡素にして効率的な政府をつくること、それから次の時代に対応できる弾力性機動力を持った政府機構というものを用意すること、あるいは特に高齢化社会、あるいは熟成してきた今日の日本の社会、あるいは科学技術、あるいは国際関係等をにらんだ行政システムを着実につくっていく、そういうことを基本にいたしまして諸般の改革を忠実に実行していこうと思っておるところでございます。
  5. 後藤茂

    後藤委員 私は、第二次臨調ができましてから今日まで、その臨調作業状況、それから五次にわたります答申、さらにその間における政府閣議決定を伴いました諸方針、そしてそれが法律なりあるいは予算に反映されてまいりました諸事項等について、これまでも不十分ではありますけれどもフォローしてまいりました。しかし、最初土光臨調が発足をいたしましたときの行革フィーバーと言われるようなそういう動きから、だんだんと中身が薄くなり始めてきているのではないか。実は私は、こうした言葉とはうらはらに、大変中身が薄くなるだけではなくて、本来、先ほど総理が御答弁になりましたような、二十一世紀に向かっての国のあり方というものを行政改革を通じて準備をしていきたいということになっていっていないのではないかという心配をするわけであります。ほとんどのものが中途半端になっておる。第一次臨調も非常に貴重な提言をされた。しかし、不幸にして、その後高度成長過程に入ってほとんどが雲散霧消してしまって、今度の第二臨調答申にいたしましても、最初意気込みから比べますと、だんだん中身が薄くなってきているように思えてならないわけであります。  それに対して、本委員会におきましてもそうでありますけれども総理の今国会に臨むに当たりましての所信表明演説の中で、将来に向って国民に希望と生きがいを保障するための一里塚である、こういう所信表明がございました。さらにまた、九月六日に内外情勢調査会で、臨時国会ではさまざまなことが予想されるが、政府行革法案を成立させたい、死んでも成立させねばならない、こういう言葉が述べられているわけであります。そしてまた、総括質問冒頭で、わが党の安井委員質問に対しまして、石にかじりついても、地をはってもこの法案を成立させていきたい。それほどの意気込みをお持ちになっておる行政改革、そしてそれが具体化された、本委員会にも提案されております法律案中身、どうもその意気込みと、あるいは死んでも成立させていきたいとか、石にかじりついても、地をはってもとかという言葉表現が、少し何といいますか、大変肩ひじを張り過ぎているような気がしてならない。内容にそぐわないのではないかということを、これから逐次中身についても御質問申し上げたいと思いますけれども、そういう感じがしてならない。単なる言葉のあやというものを超えて、行政改革に取り組もうとする姿勢を私は疑うわけじゃないわけですけれども、どうもその表現が少しオーバー過ぎはしないだろうかという気がいたしてならないわけでありますが、総理、いかがでしょうか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、今回の法案を成立させるための不動の決意、不抜の信念をそのような表現で申し上げたのでございまして、石にかじりついても、地をはってもこの七法案を成立させたい、させねばならぬという考えは、私の本当に心の底から出ておる信念でございます。したがって、国会運営もそういう信念に従いまして、慎重に、かつ着実に推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  7. 後藤茂

    後藤委員 その信念を別に疑うわけじゃないのです。ただ、その信念で出されております法律案中身というものが、私が先ほど申し上げておりますように、どうも大変中身の薄いものになってきている。少なくとも当初、総理が気負って考えておられた行政改革というものと、具体的に法律になってきているものとの中身というものに大きな乖離がありはしないか、こういうことを実は申し上げて、その法律案に対する取り組みの姿勢というものの表現が少し鬼面人を驚かせると言ったら語弊がありますけれども、私どもにはもう一つ理解しがたいような表現になっているように思えてならないということを御指摘申し上げたわけであります。  五月二十四日に「臨時行政調査会最終答申後における行政改革具体化方策について」、まあ新行革大綱というものが出されております。この中におきましても、「臨時行政調査会行政改革に関する答申最大限に尊重しつつ、」以下云々の中身が出ているわけであります。ただ、これをずっと通読してみましても、今度の臨時国会に出されております法律案とこれまた大分乖離が出てきている。  それからもう一つ言葉じりをつかまえて大変恐縮でありますけれども、幾つか意味をどうとっていいのかなという表現が実はあるわけであります。たとえば、答申趣旨に沿いとか、あるいは答申を踏まえとか、あるいは答申指摘に即してとかというような、それぞれの項目に対してそれぞれの使い分けがされているわけです。私どもは、議員になりましてからも、官庁言葉というものの表現は似たような表現になっておりましても、それの考えております解釈というものは非常に大きく違うのだというように教えられております。今度の新行革大綱におきましても、そういう言葉が随所に使い分けされているように思うわけであります。  こうした答申指摘に即してとか、あるいは趣旨を踏まえてとか、あるいは答申趣旨に沿ってとかいうような言葉は、これは総理よりもむしろ行管庁長官になるかと思いますけれども、どういうように解釈しておけばいいのか。つまり私は、それぞれの表現の中に、いま総理指摘をされたような、強い姿勢で臨んでいるのだということと、この表現から読み取れる言葉というものは、どうもへっぴり腰で少し腰が引けている表現になっているのではないかというふうに考えるわけですが、行管庁長官、いかがですか。
  8. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私どもは、総理の御指導のもとに答申最大限に尊重する。すなわち、尊重するということは実施するということでありますし、最大限にということは、都合のいいことだけやるとかつまみ食いするとか、そういう意味じゃなくて、答申にあることは、まあ全部と言ってはどういうことになるかわかりませんが、全部ひとつ実行に移すという決意で臨んでおるわけでございます。  そこで、新行革大綱の中には踏まえとか趣旨に沿うてとかいう文字の多少の使い分けがございますが、答申そのものの中に非常に具体的に書いてあることは、もう当然踏まえてでしょう。それから余り具体的でなくとも大方の方向というものを示されているところは、その趣旨に沿うてとかいうふうに使い分けが多少あると思いますが、基本的にあくまでも答申の線に沿って――線に沿うてと言うとまた違った使い分けみたいにお考えになるかもしれませんが、そういう意味において答申の気持ち、趣旨、線、そういうものをあくまでも貫いていくという決意でございます。まあ役所文字でございますからそれは多少の使い分けはあると思いますが、答申自体において非常に具体的に書いてあることはもうそのとおり踏まえてやる。それから余り具体的でないところはその趣旨に沿うてやるとか、そこは役所の用字については先生も十分御承知でしょうから、これ以上のことはもう申し上げません。
  9. 後藤茂

    後藤委員 先ほどの御答弁の中でも、趣旨に沿ってというところが、たとえば補助金等というようなのは、今度の新行革大綱においてはやはり趣旨に沿ってという形、あるいは特殊法人の問題とか行政情報の公開なんかというのは趣旨を踏まえてというような表現になっているわけです。それは先ほどの大臣の御答弁だと、非常に具体的なものとそれからおおよその方向というものによって使い分けされていると理解していいわけでしょうか。  たとえば補助金、これは大蔵大臣がいまいらっしゃらないので、何か十一時ぐらいにお見えになるというので、また大蔵大臣にもお聞きしたいと思っているのですけれども補助金は十四兆何千億、約十五兆円ばかりあったわけですね。これは「補助金政権党」という本だったでしょうか、こういう本がベストセラーになるくらいあの第二臨調が設立された前後から非常に国民の関心の高いのが補助金であった。もちろんこの補助金というものは、すべてを悪としてとらえるということはむずかしいでしょう。しかし、これが政官財の癒着であるとか、あるいは政府・与党の政権党集票マシンになっているとかいろいろなことが言われているわけですし、また、第二臨調もこの補助金につきましては大なたをふるっていく、大胆に切り込んでいこうという姿勢を見せておったわけであります。  ところが、今日までこの補助金に対して、十分な国民の納得と理解ができるような切り込みが私はなかったように思うわけであります。当時十五兆円ございました補助金がこの三年間に、そしてまた今度の概算要求の中で一体どの程度切り込まれてきているのか、どういうものが節約なり合理化なり整理なりされてきているのか、行管庁いかがでしょうか。
  10. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 趣旨に沿うてという一つの例として補助金等の問題についてお触れになられたわけでございますが、その補助金等につきましては、具体的に五十九年度の予算編成過程において決まっていくわけでございます。  それで、臨調答申趣旨に沿うてということは、一言で申しますと、臨調答申の中には補助金等取り扱い方についていろいろな個所で指摘されておるわけでございますが、総枠を抑えるようにしなければならぬとか不要不急のものは廃止しなくちゃならぬとか、仮に補助金をやるにしても零細その他のものについてはメニュー化を図っていかなければならぬ、総合化して補助金というものを交付するようにしなくちゃならぬとか、いろいろな指摘がなされておるわけでございますから、具体的な補助金項目について廃止するものは廃止する、総枠を抑制するものは抑制する、あるいはメニュー化を図るものは図る、具体的な項目について臨調全体を貫いておる精神に沿うて努力しなさい、こういう意味でございますから、この閣議決定におきましても答申趣旨に沿うてと書いておるわけでございます。
  11. 後藤茂

    後藤委員 その趣旨はわかります。だから私が先ほど御質問申し上げたのは、臨調が発足して第一次答申がなされて以降今日まで、それぞれ強弱はありますけれども補助金についても指摘があったわけであります。また今度の新行革大綱におきましても、その点につきましては見直して徹底した整理合理化を推進するということも指摘されているわけです。その補助金がこれまで、今度の概算要求で四回目になりますか、予算がつくられてきたわけでありますけれども、一体どの程度、つまり十五兆円と言われておりました補助金がどの程度大胆に整理、カットされているのかということをお聞きしている。これは政府委員の方でも結構でございます。
  12. 平澤貞昭

    平澤政府委員 いまお話がございました補助金でございますが、約十五兆円ございます。この補助金のうち大宗を占めますのがたとえば公共事業関係でございます。それから文教あるいは福祉関係補助金で、こういうもので約八割を占めているわけでございます。その他の二割が、その他いろいろもろもろの補助金ということでございます。  この補助金につきましては、先ほど委員お話しのように、このところずっと整理合理化を進めてきておるわけでございますけれども、金額的にはやはり若干の増ということでございまして、減までには至っておらないわけでございます。
  13. 後藤茂

    後藤委員 ですから、当初私たちがあるいは国民期待をしておったところは、つまり行政のむだをなくしていく、あるいは効率ある行政を進めていく、このことが表看板であったけれども、実態は必ずしもそういう方向に進んでいないという、期待を裏切られた感じを私も強く持っているわけであります。壮大なドラマが展開されまして、そして一体行革とは何であったのだろうかということを国民は戸惑いの目で最近見始めているんじゃないか、非常にクールに見ているのではないだろうかという気がいたしてなりません。ですから、私、最初総理が石にかじりついても、地をはってもというように幾ら言われたといたしましても、今度の行革法案に対しましても非常に冷静にクールに見ているだろう、一体これで行政のむだがどうなくなっていくのか、効率ある行政がどう進められていくのかということに対しての期待感が薄れていはしないだろうかという気がいたします。  これまで第二臨調がずっとやってきたことというのは、恐らく財政再建ということが至上命題、そしてまた行政改革の名をかりて一定の政治選択臨調という一つの超立法府的なところでつくらして行ってきた。そして結果的に何が出てきたかというと、いわゆる防衛費の突出である、あるいは公共事業の横ばいである、あるいは文教福祉の切り捨てであるとかいうことが、世論誘導をしながら、しかも民間にすべての活力があって公共的な部門というものは全くこれはどうにもならぬ状況になってしまっているんだと言わんばかりの認識世論に与えていった。そして行政不信なり自治体不信というものをつくり上げてしまった。  これは第二臨調が、さらに政府がこれに対応する姿勢の中で、これから長くこうした国民に与えた世論誘導がもたらす悪い影響というものが残っていきはしないだろうか。私は、もっと行政のむだをなくし、効率ある行政を進めていくということが一つの大義名分であるとするならば、もっと地方自治体に対しましても、あるいは地方の行政に対しましても不信感を取り除いていくような、そういう行政改革というものでなければならぬと思うわけでありますけれども、いま国民の中には行政に対する不信、あるいは地方自治体は何をやっているかわからぬということだけが非常にクローズアップされた形で出てきているのではないだろうか、私はこのことを心配をいたしているわけであります。そして臨調がしたこと、それを受けた政府がしたことは大蔵省予算査定ですね、あるいは行管庁機構定員査定と同じようなことだけをやってきた、こういうような声すら最近聞かれ始めてきているわけであります。行革国会に臨む中曽根総理としては、私がいま申し上げたような状況国民は受けとめ始めてきているのではないかということに対して、どういう認識をお持ちでございましょう。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回御提案申し上げている法律案等は、たとえば国家行政組織法の改正にいたしましても、これは従来の惰性を一掃するための官庁機構の変更に関する大きな試みでございます。あるいは年金の統合にいたしましても、国鉄問題を解決するための背後の非常に大事な問題にいま手をつけつつあるわけでございます。あるいは総務庁設置にいたしましても、ほとんど三十年間手をつけなかった中央省庁の統廃合という大きな仕事に一歩踏み出しておるわけでございます。そのほか許認可の問題にいたしましても、あるいは委任事務の問題にいたしましても、それぞれ臨調答申を受けまして相次いで努力しておる問題等でございまして、これらを完成をして、法案を成立さして、そして今度次の通常国会に向けて、前からお話し申し上げております電電公社改革とかあるいは専売公社改革とか、そのほかの大型の改革に向かって進んでいく。  そういう意味で、特別に臨時国会をお願いいたしまして、いまのような法律案を成立させ、そして次に向かっていく軌道を順調に進めていく。そういう意味で、石にかじりついても、地に伏しても成立させたい、こういうふうに申し上げておるのでございまして、一つ一つの問題をそのときに適切に解決しつつ、次へ前進していくという考え方を持っておるわけでございます。もちろん、一〇〇%国民の皆さんやあるいは野党の皆様方のお気に召すような内容ではないという点ありと私たちも反省いたしておりますが、しかし、これは臨調答申というものを受けまして、われわれの許せる範囲内において最大限の努力をしつついままでやってきておる問題なのでございまして、その点につきましては、ぜひ御理解をいただきたいと思っておる次第なのであります。
  15. 後藤茂

    後藤委員 臨調が、私が先ほど指摘しましたように、どうも公共哲学といいますか、公共部門というものを一体どういうふうに考えていくかということに対して非常に粗っぽい否定的考えが出てきておる。つまり公共部門の衰退といいますか縮小というものに非常に拍車をかけていこうとしていって、そして民間活力振興ということにえらい大きなウエートをかけていってしまっている。そして、これは後ほどまた企画庁長官にも御質問してみたいと思うわけですけれども、古典的な市場原理への回帰ということのみが行われている。これを次に私は御質問をしてみたいと思うわけであります。  先ほど総理は、今度の行革国会と言われ、そして目玉として総務庁構想を出されているわけでありますけれども、その順調に進めていこうとする総務庁構想自身にいたしましても、私は、総理は恐らく当初考えておられた総合管理機構という考え方からはどうも後退したなという、内心じくじたるものがあるのではないかという気がするわけです。こういうような総務庁構想一つにいたしましても、はや当初から後退をしてしまっておる。かっこうだけをつけておる。つまり行政機構について手をつけたというかっこうだけをつけているということになっていはしないかという気がしてならないわけです。  行管庁長官にこの総務庁構想について、当初臨調が提起をした、そしてそれが途中では与党内におきまして橋本行革委員長ですかの試案等が出てくる、そして最後に、今度の法律案になる過程というものを見ておりますと、私は非常に奇異に感ずるわけであります。こういうことが当初から行われていきますと、総理がこのことを一つの出発点にして、行革という大きな課題に取り組んでいきたいという方向にはならぬだろうという気が私はしてなりません。今度の総務庁構想に対しまして、行管庁長官、どういうふうにお考えでございましょうか。
  16. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 総務庁設置構想というのは臨調答申趣旨からいうて後退じゃないか、こういうお尋ねでございますが、結論的に見ますと、後退じゃなくてさらに一歩前進であったと私は思います。  と申しますのは、臨調答申は御承知のように、これは何遍も申し上げていることでございますが、人事管理、定員管理、組織管理、そういうものを一元的に所掌する役所をつくったらどうだ、こういうことでございます。しかし、こういう仕事はもともと、これは理論的に申しますと、御承知のように総理大臣の総合調整権能の一部なんですね。それは総理府の外局ですから、総理大臣が主任の大臣ですから。だから総理大臣のそういう総合調整機能を一元的にその部分だけやれ、やったらどうか、こういうのが総合管理庁構想でございます。  政府全体として、この際総理府と行政管理庁を一体的に見直そう、一体的、総合的に見直すというような総合調整機能のさらに進んだ強化という観点から、総理府で現在所掌しておりますところの総理大臣の総合調整機能のうち、特定施策についてすでに組織のできているものもこれは総務庁に移したらどうだ、こういうことになったわけでございまして、総合管理庁よりもさらに幅広い総合調整機能を持つところの総務庁をつくったらどうか、こういうふうに政府部内において慎重に検討して行ったものでございまして、臨調答申が言っているような総合管理というその一部門プラスさらに総合調整機能をふくらまそう、そして総理府と行政管理庁を一体的に統合しよう、こういうわけでございます。しかも、そういう総合調整機能の範囲の拡大、それと同時に、二つの役所一つにするという簡素化、これはまさしく臨調答申趣旨に沿うておるものでございます。  御承知のように、戦後中央官庁というものはふえる一方でございまして、減らすという努力はいままでなかったわけでございます。これは私は高く評価していただけると思うのです、いままでなかったのですから。どんどん省がふえていく。昔の内務省を考えてみれば、いまはもう七つも八つもの省になっている。そういう情勢の中にあって、戦後三十八年の中で初めて省を一つ減らすというのはおかしいのですが、統合するということですから、私はこれは思い切った決断であったと思います。総合調整機能の拡大、それから行政の簡素化、そういう臨調答申趣旨からいって、私は沿わないどころじゃなくて、土光さん自身がおれが考えた案より進んでいるよという評価までしていただいておるわけでございますから、その点は後退などとおっしゃらぬようにしていただきたいと思います。
  17. 後藤茂

    後藤委員 私は土光さんのその言葉を直接聞いているわけじゃないですから、本当に高く評価をしたのか、あるいは皮肉でそう言ったのかということはどうもにわかに判断できないのです。総理はこのことを土光さんも大変高く評価したということを答弁の中でしばしば指摘されておりますけれども、大体、第一臨調の場合でも、内閣の補佐機関として内閣府というものを提起された。あるいは内閣補佐官を置いて予算編成における内閣の主導権を確立していくべきではないか、さらに総務庁というものを置いて、そして総合調整部門行管庁を総合整備したらどうか、こういうような提案もあった。だから、いまに始まったことじゃなしに、常に行政改革の場で議論をされてくるのは、一つは総合調整機能、一つは総合企画機能、一つ予算による総合調整、この三つだろうと思うのです。  その三つの中で、いま大臣が御指摘になったいわゆる総合調整機能として、従来の総理府と行管庁を一本にして、そして、少なくとも省と庁と言われておったものを一つ減らした。大臣言葉をかりれば、そのことによって一人の大臣が、宇宙遊泳じゃないですけれども、浮くということ。それは臨調指摘をいたしておりますように、これは今度は無任所といいますか、国務大臣として適宜機動的に使える大臣にしていきたい、こういうことでありますけれども、そうすると、それじゃ総合調整機能というのは、いま提起されているような総務庁というもので本当にすっきりしてできるのだろうか。いろいろな論評等を見ておりまして、あるいはOBの方が言っているから正しいということを私は申し上げるわけじゃないのですけれども、むしろ臨調の出しておった方がよかったのではないか、あるいは橋本試案の方がよかったのではないか、いま出されておるのは一番よろしくない、これはボタンのかけ違いだから、もう一度もっとそれぞれの合意を求めていきながら――実施は来年の七月一日でしょう。この臨時国会でどうしてもこれを見切り発車をするということではなかったと思うのです。  本当に第一次臨調の時代から今日まで、内閣に責任を負われた方々が、また立法府におきましても、総合調整あるいは総合企画、あるいは予算による総合的な調整、こういうものは常に行革の政治課題であった。これこそは、総理がタブーに挑戦をするという、そのタブーの中身ではないかというように私は考えるわけですけれども、そうした長い歴史的な討議経過を踏まえての今度の総務庁構想から見ますと、相当後退しているということではなしに、むしろ総合調整がやりにくくなっていくのではないか。長官はいま意気込んで言われておりますけれども、これが具体的になってまいりますと、非常にやりにくくなっていく。もともと各省庁にまたがるいろいろなものを総理府は抱え込んできておったわけでありますから、それをまた今度の総務庁も抱え込んでいくということになりますと、いまのようにはいかないと思いますよ。どうでしょうか。
  18. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題につきましては、人によっていろいろな言い方をなさることがあると私は思います。いろいろなことを言っている人もあります。ある意味から申しますと、自民党の橋本行財政調査会長が一つの案として提案されたことは、総合管理庁というずばりそのものだけを提案された案でございますから、これも一つの見識ある案だと私は思います。しかしながら、この際総理府と行管庁というものを一体にして、簡素な総理大臣の調整機能を果たすような役所をつくるということは、やはり臨調答申にありますような全般を貫くところの簡素化という趣旨にも沿い、さらにまた調整機能の範囲の拡大ということでございますから、どうもその点になりますと、先生は後退だというようなことをおっしゃいますけれども、私どもはむしろ前進である、こういうふうに考えております。
  19. 後藤茂

    後藤委員 これはまだ実施されてないわけですから、私は、こういう機構では、単に局の分離統合だけをしたということでは、本来の総合調整が大変できにくくなっていくのではないかという指摘をいたしました。いまここで、そのとおりだとか、いやそのとおりでないということは、まだでき上がってないわけですから、これはこれから実施されてくればおのずからその問題が出てくるだろうし、また、一度決めたことはもう未来永劫変えないというわけじゃないのですから、また手直しも起こるだろうと思いますが、その最初の出発のところでボタンのかけ違いをしていはしないかということに対して、この委員会で問題点の御指摘だけを申し上げておいたわけであります。  そこで、後の議論に入っていく前に、もう一度総理基本的な考え方をお聞きしたいわけでありますけれども、施政方針演説の中で、諸制度を見直していきながらタブーに挑戦をするという言葉がございました。これは恐らく総理の書き加えられた言葉であったと思うのですけれども総理がそのときに描いておりましたいわゆるタブーというのは、どういう問題であったのか、お聞かせをいただきたい。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 戦後三十八年たちまして、また新しい大きな変革の時代を迎えつつありまして、いままでのあり方等々につきましてもここで思い切った見直しを行って、既定観念、固定観念にとらわれることなく、清新なそしてエネルギーに満ちた新しい時代へ前進する体系をつくっていこう、そういう意味で、固定観念、既定観念にとらわれることなく、あらゆる分野に向かってわれわれは検討のメスを入れ、改革をすべきものは改革しよう、そういう意味で申し上げたのであります。
  21. 後藤茂

    後藤委員 そうすると、タブーというのは抽象的な概念としてとらえておる、具体的にこれとこれとこれをひとつ総理の時代に取り組んでいってみたいということはなかったわけでしょうか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治を行う基本的な姿勢、心構えとして、そういう気持ちでやるという意味でございます。
  23. 後藤茂

    後藤委員 そういう哲学であった。私はもう少し具体的な、幾つかのタブーに挑戦するというわけですから、そのタブーの中身というものを一応想定をされておったのではないか、こう思ったものですから御質問を申し上げたわけであります。  いま大蔵大臣がいらっしゃらないので、また大蔵大臣にも聞かなければならぬかと思うのですけれども、いわゆる「増税なき財政再建」ということを言われながら、今度の政府考え方の中にどうもそれが、またこれ後退という言葉を使っては恐縮でありますけれども、「増税なき財政再建」という言葉がなくなり始めてきている。その中で、この委員会の論議でも、いわゆる国民の租税負担に対しての問題点が指摘をされておりまして、一体どういうようにしていくのか。今度の「八〇年代経済社会の展望と指針」の中におきましても、「将来の租税負担と社会保障負担とを合わせた全体としての国民の負担率は、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめる」ということがこの中にも出されておった。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕  これまでの総括質問の論議の過程で、総理はたしか、租税負担率は現行の水準を維持する、水準を保つ、こういうように答弁をなさったと思うのですが、昨日、少しまたそれよりも上がっていくような、つまりかなりの低位の水準というところに、また非常に幅が出てきたように思うわけでありますけれども、一昨日でしたか、総理答弁なさったことと昨日答弁なさったことに、若干のニュアンスの違いが出てきておると思うわけです。どうも迷走し始めたのではないかという気がするわけでありますけれども総理、いかがでございましょうか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申を守ると言っておるわけでございまして、「増税なき財政再建」という理念を尊重して実行していこう、こういう考え方をそういう表現で申し上げたわけでございます。
  25. 後藤茂

    後藤委員 どうもいまの答弁で、私が御質問した点に答えておられないように思います。いま租税の負担、社会保険等を合わせた全体としての国民の負担率というものは三四%、こういうふうに言われている。この三四%の水準を守っていきたいということ、たしか一昨日は総理はそういう御答弁をなさっておったと思うわけです。ところが、昨日の論議を聞いておりますと、それがどうもはっきりしていないような答弁になっておる。朝令暮改ではございませんけれども、まだわずかな審議日程の中でどうもその辺が揺れ動いているように思うわけです。一体租税負担率というのは、この三四%の水準というものをどうお考えになっているのか、重ねてもう一度お伺いしたい。明確にひとつお願いします。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまの三四%というのは、租税負担率だけではなくして社会保険等も入っておるわけでございます。臨調答申の言われておられるところは、スウェーデンやヨーロッパの国々は五〇%を超しておる、それと日本との将来展望というものを考えてみると、とてもスウェーデンやあのような国のように上げてはいかぬ、かなり開きがあるという水準に置くように努力をするように、そういうふうに臨時行政調査会答申はお示しになっていると思うので、そういう線を守っていくように一生懸命努力いたします、そういうことを申し上げた次第なのでございます。
  27. 後藤茂

    後藤委員 そうすると、先日の答弁で、私たち理解としては、現行の三四%、この水準を何としてもひとつ政府としては守っていく努力をしていきたいという明確な答弁になっておったと思うわけでありますけれども、これに相当幅が出てきた。そしてヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準、そのかなりということとは何ぞやということも大蔵大臣が自問自答いたしておりましたけれども、このかなりの水準というものは、三四%の線というものとの間にかなりの開きがあるということになるのでしょうか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、数字は一切言いませんと申し上げてきまして、定量的な表現はしないで定性的な表現をいたしております、そういうふうに申し上げております。これは「一九八〇年代経済社会の展望と指針」をつくるときから一貫している基本的立場でございます。したがいまして、「増税なき財政再建」ということは臨調でも言われておりますから、その線をできるだけわれわれは守ってまいります。  「増税なき財政再建」というその線は何を意味するかといいますと、臨調答申の中に書かれておることは、国民所得に対する租税の負担率というものを原則的にそう大幅に変えないで、そしてある程度の現状を基礎とする調整はよろしい、しかし新しい税目を起こすとか、そういうような形によらずして、税につきましてはできるだけこれをふやさないで、そして現状を原則としつつ努力していきなさい、そういう趣旨であると私は考えておりまして、それはわれわれとしては大いに努力して守っていきたい、そのように申し上げておるわけなんでございます。  それで、社会保険関係は外国水準は非常に高いわけであります。しかし、われわれとしてもできるだけ国民の負担を、国民負担である点においては変わりません、しかし社会保険の場合には、ある程度健康であるとかその他について、病気になればただで見てくれるとか、大部分が国や会社が、あるいは保険が見てくれるとか、そういう形になっておるのですから、そういう点はできるだけわれわれとしては努力してまいります。  福祉国家というのもわれわれの大切な理想ではあります。もちろん、福祉国家という考え方社会党や自民党、各党によって多少概念は違うかもしれませんが、われわれは、たくましさというものを中心にして自主自律、連帯あるいはお互いの愛情、そういうものを中心とした考え方福祉というものを考えておりますが、そういう基礎にも立ちつつ、できるだけ国民負担を軽減しつつ、うまい組み合わせを考えてやっていきたい。これについては変わらないのであります。そういう国民負担をできるだけふやさないという方針で今後も努力してまいりたい、そういう私たちの念願を申し上げておるのであります。
  29. 後藤茂

    後藤委員 総理はどうも計数を明らかにしていくということに大変こだわりを持っている。つまり明らかにすることはどうもよろしくないという考え方をずっと終始お持ちになっているように思うわけであります。  いまの点と関連いたしまして、これは主として総理企画庁長官にお聞きしていってみたいわけでありますけれども、ことしの八月に「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものが出されました。私はこれを拝見いたしまして、これまで、たしか昭和三十年だったと思うのですけれども、経済自立五カ年計画というものが出されてから九回、いろいろな名称をつけながら、五カ年になったり、最後には新社会経済七カ年計画、七カ年というふうになったり、いずれにいたしましても年次計画的に、あるべき国の姿、それへの行政の努力、政策的選択、こういうようなものが国民の前に明らかになってきておったと思うわけであります。ところが、今度の「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものは、これまでのアプローチといいますか、その手法とは非常に違った形で出されてきておる。これは総理、これまでは一応経済計画ということで、サブタイトルが幾つかついていたこともあるかと思いますけれども、経済計画として国民の前に明らかになってきておった。今度はこういう「展望と指針」という形になっている。これは総理どうなんでしょうか。経済計画なんでしょうか。それともそうじゃなしの、いわゆるここに書いてある「展望と指針」というような文書、これはもちろん行政のよりどころになっていくわけでありますから、そういう文書として理解していいでしょうか。どうでしょう。総理にまずちょっと。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 企画庁の設置法によれば、長期計画を策定する云々という言葉があったように思います。したがいまして、設置法のお考えに基づきまして、ある程度の計画性というものを持ったものであると思います。ただし、その計画というものは必ずしも数字を出したものが計画であるとは思いません。定性的ないろいろな仕組みやらソフトの面をいろいろ考えたものも一つの計画なのでありまして、数字のみが計画であるというのは大きな錯誤であります。  そういう観点に基づきまして、私はできるだけ数字を出さぬ方がよろしい、そういう考えをもって作成していただきましたが、タイトルとしては、これはいままでのような考え方の惰性がありまして、その惰性をある程度断つために「展望と指針」というきわめて弾力性と、それからこれを見直して、いわゆるリボルビングシステムを取り入れた機動的な考え方にタイトルは変えたということであります。
  31. 後藤茂

    後藤委員 そうすると、これは計画なんですか、それとも計画ではないんですか、この点をもう一度明確に。
  32. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 多分に法律的な問題でもございます。先ほども中曽根総理が申されましたように、企画庁設置法の三条の第一号に企画庁の任務といたしまして「長期経済計画の策定」という法律的な表現がございます。私は、今度の「展望と指針」もこの法律上の「長期経済計画」と同じものだと考えているのでございます。言うまでもなく、私ども法律に忠実でなければなりませんし、そして、この長期経済計画の策定は企画庁の大きな任務でございます。  そのような観点から経済審議会に諮問いたしまして、今回「経済計画」という法律的な用語に該当いたしますところのものを「展望と指針」という名前で表現したわけでございます。それは、先ほど後藤委員指摘のように、昭和三十年から十ばかりの経済計画が出されましたけれども、いずれもその時代、そのときの政策の重点にふさわしい名前がついているのでございます。たとえば鳩山内閣のときには経済自立という名称がかぶっておりますし、池田内閣のときには国民所得倍増という、その時代、そのときの政策の重点をあらわすような表現がついている。私は、それを今回「展望と指針」であらわした、こういうふうに考えているわけでございまして、法律的な概念といたしましての経済計画というものは変わっていない。  そしてその中身も、総理がたびたび言っておられますように、定性的に表現している点はこれまでの経済計画と変わらないものだと私は考えているのでございます。たとえば大平内閣のもとでつくられました「新経済社会七カ年計画」の中では、「経済運営の基本方向」として「経済各部門の不均衡の是正」「産業構造の転換とエネルギー制約の克服」「新しい日本型福祉社会の実現」と三つの柱が立てられておりますが、これに該当するものといたしまして、「経済運営の基本方向」は、「展望と指針」の中で、行財政の改革、第二は産業構造の高度化のもとでの新しい成長、第三は民間活力の重視、第四は国際協力の推進、こういった最近の時代に応じますところの新しい政策を定性的に前と変わらない方向表現し、世の中に提出していることは全く同じだと私は思うのでございます。問題は、どこまでこれを定量的に表現するか、その点が先ほど総理が申されましたように異なっている、ここだけだと思います。
  33. 後藤茂

    後藤委員 長官、時間がないので、ひとつ質問のところだけに答えていただくようにしてほしいと思うわけであります。  総理、鈴木内閣の時代に経済審議会に対して、「活力ある経済社会と充実した国民生活を実現するための長期経済計画いかん。」という諮問をされているわけであります。中曽根総理になりまして、この諮問を変えて、いや長期の展望と指針を出してもらいたいのだという変更の諮問手続はなさっていないのではないかと思うわけでありますが、この点いかがでしょうか。
  34. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この点につきましては、文書では出しておりませんけれども、鈴木内閣の諮問されましたその内容については、諮問という言葉は同じでございますが、中曽根内閣になりましてからは、経済審議会の開かれた場所におきまして、総理大臣が、より長期的、より弾力的な答申をいただきたいということをお願いしたところでございます。
  35. 後藤茂

    後藤委員 名は体をあらわすということでありまして、「長期経済計画いかん。」という諮問をされているわけです。これに対しての中身の変更がなされていない。しかも、経済企画庁というのはどういうところで何をやるのだろうかということで、経済企画庁設置法を改めて私は見てみました。そうしたら、先ほど長官も御答弁になりましたように、第三条第一号に「長期経済計画の策定及び推進」という言葉がある。さらに十四条で、「本庁の附属機関として置かれるもの」に経済審議会と国民生活審議会がある。この経済審議会も、「内閣総理大臣の諮問に応じ、経済に関する重要な政策、計画等につき調査審議すること。」こういうようになっているわけであります。  私は、今度の「展望と指針」というものをずっと読ましていただいて、総理、いままでの五カ年計画なり七カ年計画というものは、それなりにポイント、ポイントに一つの計数なり数字が、目標的に論議されていた素材の計算があるわけでありますから、当然出てくる。ところが、今度ずっと読んでみますと、数字のない文章を読むと頭に入らないのですね。数字があると数字のところでひっかかって、その前後の脈絡なり政策的な中身というものがわかるわけでありますけれども、さあっとこれを読みますと、何が書いてあったのかなというようにいくわけです。これはどうも立体的な計画的体をなしていないんではないだろうかという気がするわけです。  たとえば「七カ年計画」では一つの目安というものが参考資料として出されているのですよ、「昭和六十年度における我が国経済の輪郭」というもの。たとえば、先ほど総理にも御質問申し上げた租税負担等におきましては、二六・五%程度というものを予測値として出すというようなこともやっている。そうすると国民は、なるほど租税負担というものをいまの政府は経済計画の中で、六十年ぐらいにはこういうところに一つの目標を置いてやっているんだなということがわかるわけであります。ところが、これでは何もない。つまり内閣の選択の幅が大き過ぎるということ。  確かに、新経済社会七カ年計画は、私も質問をしたことがあるわけですけれども、満身創痍と言ったらおかしいですが、現実と非常に大きく乖離したために、これが相当質問の矢面に立っておったことは事実であります。しかし、それは当然なんです。経済計画というものは、計画経済ではないわけでありますから、現実と乖離していくということはあり得るわけであります。その現実と乖離したのが、最初の積算に間違いがあったのか、あるいは政策運営に間違いがあったのか、あるいはその他外的要因で間違いがあったのかということを立法府においても大いに議論をしていきながら、よりよき姿を求めて、また新たなる見直しをしていって経済計画をつくっていく、これが国民に最も親切な方法だろうと思う。  ところが、諮問のことを変えていかないで「展望と指針」というふうになってしまっているということは、本来の企画庁の任務というものを遂行していないんではないか、あるいは経済審議会が求められておるものを行政の場が少し制約しているんではないだろうかという気が私はするわけであります。  そこで、「展望と指針」というものを読んでおりまして、経済審議会の長期展望委員会が昨年六月に、ちょうど一年ばかり前に、「二〇〇〇年の日本―国際化、高齢化、成熟化に備えて―」という膨大な文書を出されているわけであります。私は、これを読んだ方がよりわかりいいし、それから今度の「経済社会の展望と指針」というものは、この中からそのまま取り入れられている部分が相当ある、あるいは各省庁の所管大臣所信表明演説の中で触れている程度のことが切り張りでこの中に入ってきているように思うわけです。眼光紙背に徹しろとかと言われても、この「展望と指針」の中からは、これから六十五年度に私たちはどういう社会、どういう経済を描いていくかということは出てこないのです。  数字というものは現実からどんどん乖離していく、逆に言えば経済計画の数字によってむしろ行政の幅が狭められる、それがひとり歩きするということを総理はお考えではないだろうかと思うのですが、緊張した与野党の間で議論をしていく、あるいは政府が経済計画にのっとって政治を進めていく、こういうことが、私は、これまで長い間の蓄積の中で試行錯誤を繰り返していきながら進めてきた経済計画のメリットであったと思うのです。それが大きくこれからは変わっていって、一つの作文、文章を出しておけばいいということになってまいりますと、この「展望と指針」の中でも明確に出されてきておりますのは、年金については「昭和七〇年を目途に制度全体の一元化を完了させるという方向に沿って検討を進める。」これがあるだけなんです。あとの数字は、経済成長率が四%、物価上昇が三%、失業率が二%、そして卸売物価が一%。これもなかなかうまくできておりまして、四、三、二、一、これを足したら十で、十進法の国だから十というのが出てきたのかなというような感じで私はいる。この数字だけなんですよ。  これでは幾ら「展望と指針」を出されても、国民はこの日本の国はどう行くのだろうか、幾ら数字の嫌いな総理にいたしましても、それから的確に六十五年のわが国の経済の輪郭というものは私は読み取れないだろうと思うのです。もう一度返って、これはこれとして、積み重ねがあるわけでありますから、経済計画というものに戻るということを、設置法の精神に照らして、あるいは各種審議会がありますけれども、経済審議会というものは非常に重みを持った審議会だろうと私は思うのです。その審議会の任務遂行に誤りのないようにするためにも、経済計画という形に戻していく必要があるだろう。  なお、これにはこの計数の根拠になった数字の参考資料が全くないわけです。どうしてこの数字といいますかそういう積算の基礎が参考資料としてつけられなかったのか。長官、いかがでしょう。――それでは総理から。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、「展望と指針」も一種の長期計画、広義の長期計画であると思っております。ただ、計画というと数字がすぐ随伴しておるのですけれども、数字がそんなに出てこない計画も計画であります。定性的計画あり、定量的計画あり、計画はいろいろあるわけです。むしろ定性的な方向を示す方が重大なものなのであります。そういう意味におきまして、これは一種の計画であると考えて差し支えない。定性的な性格を非常に重視した一つの計画である、つまり、それが指針である。そういうふうな意味で「展望と指針」というタイトルをつけておるのでございます。  いままで一種の癖がありまして、そういう図表、数字がだあっと盛られた、つまりモデルを駆使して、そしてあらゆる面について数字で飾られたものが計画であるというふうに誤認がありました。これは間違いであります。しかし、数字が全然ないというのも、これはまた計画と言えるか。その辺は、しかし急所だけは押さえておこう。しかし、これだけ経済変動が多い時代に入りまして、しかも財政的にも国債を膨大に抱えており、そしてその後石油の問題とか、特に日本のような場合には、貿易に依存している国でございますから、対外要因に非常に変動が多い。為替のレートでもすぐくるくるっと猫の目のように変わる。そういう変動要因の多い激動のこの時代にありまして、数字に対する信仰というものはいままでよりはもっと希薄にならなければいけない、そう思っております。後藤さんと私の差がそこにあるわけであります。数字に対する信仰といいますか信頼度といいますか、その希薄度が非常に違うのです。私は、むしろ定量的なものよりも定性的なものを現代は重視すべきである、そういうふうに思います。  ただし、年々予算というものをつくり、あるいは経済政策をつくってまいりまして、目標値はつくって努力してまいります。そしてその年々の積み上げの上に、結果的に見たらこの定性的なものがどういうふうに動いていったかということは当然トレースされるわけであります。そういう新しい型の一種の長期経済計画というものがこれであり、その名前は「展望と指針」というものである、そういうふうに御了解願いたいと思うのです。
  37. 後藤茂

    後藤委員 私は、別に数字を信仰しているわけでも何でもないのです。ただ、どうも頭が悪いのか、そういう文章の中で、総理、やはりなるほどこういう数字になっていくのだな。いま大蔵大臣がお見えになりましたけれども国民の税と社会保険等の負担率、これについても確かにおっしゃるように外的要因によって、あるいは仮に大きな災害が起こるとか、いろいろなことで確かに数字というのは乖離してくることはあるわけであります。たとえば仮に成長率四%というものは一〇%にもなっていく、あるいはマイナスになっていく、こういうことは政策的な影響が相当あるでしょう。〇・五前後が変わるというようなことはしょっちゅうあるわけであります。しかし、これは八カ年でしょう。  総理にお聞きしたいのですけれども長官、当初は五カ年計画の作業が進んでおったわけですね、昨年の暮れに。そして昨年その中間報告が出されたわけですね、この「二〇〇〇年の日本」の後。鈴木総理の諮問があって、作業に入って、そして中間報告がなされたわけでしょう。その間にもその積算の基礎を持ちながら一応総理に中間報告された。その作業が御破算になって、そして今度は「展望と指針」というものに入り、その根底には、やはりもう数字なんかというのはすぐに現実と乖離していくし、国会ではその数字にひっかけて質問するのがいるものだから、もうめんどうくさくてかなわぬから作文にしている。もし作文にするのなら、「二〇〇〇年の日本」というのがあるわけですから、これで事足りるではないか。同じことをまたこういうことでやって、しかもこれを計画だというように言いくるめていこうとすることに無理がありはしないかということを申し上げるわけであります。  たとえばこれは日本経済新聞であったでしょうか、九月二十三日に「「展望と指針」三つのシナリオ」というのが数字で出てきているわけであります。この「三つのシナリオ」の中身を見てみますと、ケースAからケースB、ケースCというものを出しまして、そして相当細かく計数整理をしているわけですね。「計量委員会は六十五年度までの日本経済の姿を予測するために、六つのシナリオを用意した。そのうち基本的なものは今後、世界経済が①順調に回復する(ケースA)②停滞する(ケースB)③AとBの中間的姿で推移する(ケースC)――の三つ」を出しているわけです。そして、それらに共通する前提は、「現行の税制、社会保障制度を維持する。その結果、年平均の社会保障移転の伸び率は八%、」とか、ずっと全部計数が根拠になっているのです、総理。  それならば国民にこの作文が、この「展望と指針」が出される数量的根拠はこういうことなんだ――台風でもそうじゃないですか、どういうふうに迷走するかというコースを三つも四つも出していくじゃないですか。全部当たらぬということもあるわけです。私はこの前の行革委員会でも、当時の河本経済企画庁長官だったと思うのですけれども、確かにいまのように混迷しておる内外情勢の中においてはむずかしかろう、したがってケース一、ケース二、ケース三というような形で出して、政府はこのケースを選択していきたい、国民の協力を求めるという形でやっていくというようなことがなされていくことが大切ではないかと思うのです。  しかも、この「「展望と指針」三つのシナリオ」の中におきましては、租税負担率がケースAのときでも二七・五、それからケースBが二七・二、ケースCが二七・三というような形でちゃんと明示されているわけです、これは昭和六十五年度まで。こういうことが積算の基礎としてあるのに、なぜ出されていかないのか。このケースA、ケースB、ケースCというのは、論議の過程といいますか作業の過程においては提起されたわけでしょう。長官、どうですか。
  38. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 在来の手法で定量的な租税負担率あるいは国際収支等についての研究は当然いままでなされておったことは言うまでもございません。私は、相談はございませんでしたけれども、恐らくいままでの手法で、いま御指摘の六つのシナリオとかいう以上のシナリオがたくさん書かれてきて、研究されてきたと思うのでございます。  しかしながら私は、中曽根総理ではありませんけれども、大変混迷の時代で一本にこのような数値を固定していくというようなことは大変危険性がある。御案内のように、過去十本の経済計画が耐用年数が三年しかもたなかった。そして租税負担率が二六・五という数値を目標にして一九・九からそこへ近づけるのだ、しかもその手段は一般消費税だという、まだコンセンサスを得ないような方向での方向が打ち出されてきた。私は、一九・九がほとんど増税なくして現在二四・二になっていることは、やはり大きな変化が国民所得そしてまた弾性値にあった、こんなことを考えますと、容易にいま一つの目標値を出すということはできない。このことはむしろ大きな危険性を伴う、そのことが国民を本当に誤らしめる、こういうようないま状態ではないか、こういうように判断いたしまして、中曽根総理の言われる定性的な点に重点を置く、そして基本的な数値でこれを示して、それに基づいて、いま申されましたようにリボルビングという形で現実性を帯びた財政政策が決まるようなときにこの姿を出していく方が、新しい経済計画にふさわしい姿だと私は思うわけでございます。これも八年間のいろいろの御批判をいただいて、またひとつ試行錯誤的に進歩させる方法が出てくるかもしれません。  こういった観点から私は、租税負担率あるいは経常収支等についての数値は、この際は「展望と指針」の中には表現しなかった、今後適切なる機会を通じて経済審議会にお願いいたしまして、リボルビングの形で、あるいはフォローアップの形で経済数値を追っていきたいと考えておるところでございます。
  39. 後藤茂

    後藤委員 いまリボルビングなんて舌をかむような言葉が出てくる、あるいはローリングだとかフォローアップだとか、やたらに横文字が出てくるわけですけれども、これも経済審議会の総合部会員である佐伯喜一さんが、どうも「展望と指針」は計画というものを禁句にしている、一体これは計画なのか、計画なら「どうして計画という言葉をいやがるのか?ローリング・プランとかリボルビング・プランという横文字を使っているのに、どうして計画という日本語は使えないのか?」という指摘もしているわけです。  それから、いままでの総理の発言の中で二、三議事録を見てみましても、総理はどうも経済計画というものを計画経済的な認識でとらえていはしないだろうかという気がするわけです。たとえば大蔵委員会の四月二十六日に堀委員質問の中でずっと答弁しているところにこういう言葉があるわけですね。「ある長期計画というものができますと、それに、やれ空港五カ年計画だ、やれ港湾五カ年計画だ、やれ道路五カ年計画だと風鈴のようにくっついて、それが幾ら、二百四十兆と、これを動かせないような形になる。そうなるというと、やはり成長率を高目に見ないと財政上つじつまが合わぬ、」云々で、どうもこういう経済計画とか基本計画ができると、やたらにいろいろな五カ年計画だとか道路だとか港湾何とかができてしまう、そして政策選択の幅を狭めてしまう、だからこんなもの取ってしまえということで、もともと計画というものでない、しかし設置法第三条で一応の任務が書かれている、あるいは経済審議会の任務はこういうことだということで、これはしかしちょっと無理があるけれども長官、計画という言葉にしておこうではないかということで逃げているのじゃないかと思えるわけです。  総理、こうした認識、いま大蔵委員会での答弁あるいはことしの三月の参議院の予算委員会で矢田部質問に対して「私は日本のような場合に、いわゆる計画経済的色彩を持ったものが適当であるかどうか、疑問に思っておったわけであります。」という答弁のくだりがあるわけです。いまもそういうようにお考えでしょうか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いままでの計画というものに対する批判としてそういう考えを持っております。たとえばこの前の場合でも、公共事業費二百四十兆といたしまして、それにぶら下がって空港とか港湾とかみんな諸計画、五カ年計画等ができておって、そしてそれが景気の激変によってとてもつじつまが合わなくなったというので百九十兆にこれを減らす、そういうようなことが行われました。しかし、二百四十兆という頭はなかなかそう切りかわりができない。そうすると、ほかの諸計画についてもなかなかこれを動かすことはむずかしくなってくる、そういうことがありまして、結局数字がひとり歩きしてしまう、そういう弊害が顕著にあるわけであります。  そういう点からもこれは反省すべきときに来ているなと私は思いまして、年来から計画というものは定性的なものが計画である、そして政治にとっては定性的計画の方が重要なんだ、定量という面になると、専門家、技術家がモデルを回してぐるぐるやっていろいろなケースをつくってやる、これは一つの参考資料にはなると思いますが、正式に出てくるものというものは、政治にとっては定性的なものである。(「自由経済」と呼ぶ者あり)つまり方向を指示するというのが政治の仕事でありますから、そういう意味におきまして定性性というものを非常に重要視した考えを表明したものであります。
  41. 後藤茂

    後藤委員 若干かみ合わないところがあるわけです。  総理理解というのはちょっと違うのじゃないかと思うのです。いまちょっと自由主義経済のもとでというようなやじが飛んでいる。私もそうだと思う。別にこれは計画経済だということはちっとも考えていない。たとえば、これは「エコノミスト」のことしの六月に出た「どこへ行く これからの日本」という中で「戦後経済政策思想の変遷」で高橋毅夫さんが、これは経済企画庁の審議官をやられた方ですけれども、いま新潟大学の教授をやっておりますが、日本の経済計画というのは装飾的計画にすぎないのだ、いままでずっとやってきているのは。日本の経済計画は、強いて言えばフランス型とアメリカ型の折衷タイプになっていたのではないか、フランス型というのは指示的な計画である、それからアメリカ型というのは、ニューエコノミックスとして言われる、いわゆる経済分析と経済予測に数量的手法を持ち込んだ新しい世代の努力などの融合された制度学派の政策システムだ、こういうように指摘しているわけです。  だから、総理理解されているような計画経済的といいますか、それがひとり歩きしてどうにもならぬということではなしに、装飾的計画というのがどういうことを意味するのか、その言わんとすることはわかるわけです。これはもともと大体見直しをされていくべき性格のものでありまして、そのことは「新経済社会七カ年計画」の中におきましても触れているわけなんです。常に五カ年計画が二、三年でだめになったからいけないということを言っているのじゃない。私がここで申し上げているように、なぜこれが現実と乖離したのか、それは計量の積み重ねに誤りがあったのか、それとも政策よろしきを得なかったのか、それとも外的要因であったのかということを常に検証していきながら、目標に向かって軌道修正程度で済むのか、あるいはフォローアップしていって済むのか、全く出直しをしてくるのかというようなことを常に論議をしていく素材がなくて、政策選択の幅がむちゃくちゃに大きくて、どこによりどころを持ってこれからの日本丸というものを持っていかれるのですか。  「増税なき財政再建」の問題にしてもしかりです。これまで委員会でいろいろな論議をしている。その論議の中で、全くどういうところに着地点を置くのかということが、政府の方からの答弁では明確にされていかない。大蔵大臣お見えになりましたけれども、きのうあるいはおととい、さきおとといの論議の中で、国民の負担率というものを一体どうするのかということに対して大蔵大臣は、ヨーロッパ水準よりかなり低位に置くという、かなりとはということは大変むずかしいということを言われている中で、総理は現状の三四%水準というものを何とか守っていきたいと言っておったところが、昨日どうも財政当局の方からの圧力があったのではないかと思いますけれども、またこれが抽象的言葉に変わってきているわけです。  大蔵大臣、こういった一つの目標、国民の負担はどういうふうにしていくのか、高齢化社会、国際社会、成熟社会に対応して、政府はどういう着地点を求めていきながら行政運営、経済運営なり政策選択をしていこうとするのかということが、こういう文章の中では抽象的になって全くわからない。しかも、いまおっしゃったようなリボルビングあるいはローリングとかといって見直していく、作文を見直したってどうにもならぬじゃないですか。そこに積算されております、その作文に来るまでの過程のところを見直すことによって初めて国民にガイドラインが明確になっていくのじゃないでしょうか。いまの国民の負担率の問題につきまして、私は総理答弁がまた後退し始めているのではないかということを危惧いたしますし、今度の「展望と指針」等も、そういう努力目標、こういうことを全く抜きにして、数字的に明らかにしないでおいているのはこれからの増税への伏線あるいは負担率の上昇というものの伏線を考えているからではないかというように考えているものですから、大蔵大臣、この点についていかがでございましょうか。
  42. 竹下登

    ○竹下国務大臣 総理の定性的と定量的というのは、私は今度の「展望と指針」の底に貫かれておる一つのフィロソフィーではないかというふうに考えております。確かに、後藤さんの御議論を聞いて私なりに参考になりましたのは、言ってみれば、定量的なものがそこに示されたとしても、それは外的要因、内的要因あるいは政策遂行の失敗とか、いろいろな角度から変化していくことは国民全体もある程度許容する問題ではないかというふうな御認識がそこにあるのかなと思って、それは私は一つの見識だと思って承っておりました。  確かに、今度の「展望と指針」を見ますと、七、六、五抜きの四、三、二、一と私は覚えておりますが、六、七%が名目成長率で、五が抜けて、七、六、五抜きの四、三、二、一でちゃんと数字が出ておりますが、これもいわゆる程度という表現を使われておる。これはやはりいろいろ議論してみても、この七、六、五抜きの四、三、二、一というのは、これは私も必要だなと思っておるわけです。  それで、実際の体験から見まして、七カ年計画を立てますと、当時私はそれの調整役に介入をさせられたことがありまして、二六カ二分の一というのにも、いま塩崎さんもおっしゃいましたように、消費税というようなことが下敷きの中にあってそうなっていくではないかというようなことがあって、いま二三・六が五十六年、二三・七が五十七年ですか、それで五十八年が一応二三・七のめど、こういうことになっているわけですね。それから一方、二百四十兆というのがあって、途中でそれこそ見直しをやりまして百九十兆、その中において今度はそれぞれの公共事業のシェアの問題が一つ一つ議論されて、それの調整をとって、最終的に調整財源として調整費というようなものを残して一応固めた、かつて調整役をやらされた経験がございます。  それの後から推移を見ますと、二百四十の百九十でも、これは外的要因、いわゆる国際経済不況とかいうようなものがあったにしても、相当な落ち込みでございます。そのときに私なりに個人的に感じたのは、これはやはり余りにも定量的なものが先行した場合、ある種の政治不信みたいなものも起こりはしないか。これは私自身がそのときかかわっておったから、そんな印象を受けたかもしれません。そういう反省をしてみた。  そうすると、やはり今度の場合、租税負担率というものは、厳密に言えば租税負担率というのも、考えようによれば定義があってないようなものでございますが、国民負担というものは一応の目標として置くべきではないかということで、ヨーロッパよりもかなり低い、こういう表現になっております。  総理のおっしゃっております、現行に近い努力というものはやはり続けていかなければならぬ。ところが、現在の制度、諸施策をそのまま固定して考えた場合には、単純に見ると分子、分母の変動があったにしても、それに固定することはなかなかむずかしい。だから、かなり低いという表現にとどまったと思うのです。私もどっちかというと数字にとらわれがちな方であるものですから、かなりとは何%かというようなことを自問自答もしてみましたが、結局、これだけ流動する場合には、やはりかなりはかなりだなという感じがします。  したがって、そうなると今度は、財政の展望、指針、試算というのを、やはり単年度主義における予算編成の際あるいはそれを審議する際はお示しするのがまた当然だ。そうすると、そのときにどういう数字というものを出していくか、それは結局いまのような議論を聞きながら、何か出さなければいかぬことは事実でございますから、もう少し検討さしてもらわなければならぬ。しかし、私もいまの議論を聞きながら、定量的なものが間間絶対値として受け入れられがちであるが、受ける国民の側は、定量的な数字が示されても、それに対しては、外的要因、内的要因は別にして柔軟に対応できるではないかというような印象を後藤さんの質問を通じて受けましたので、それらも今度お示しする数値の中で大いに参考にさせてもらう意見だな、素直にそう感じたことを申し上げておきます。
  43. 後藤茂

    後藤委員 大蔵大臣、一番国民心配しておりますのは、これからの国際社会とか高齢化社会とか高学歴とか成熟社会とかという言葉で言われているが、どうもやはり国民の負担というものが高まっていくのではないかという心配をしているわけです。もちろんヨーロッパの社会保障なりあるいは社会資本なりの成熟度と日本の場合は違うわけですから、ヨーロッパが五〇%水準にあるから、そのかなりの幅を上の方に持っていくのか下の方に持っていくのかということについて国民はじっと見ているわけなんです。そして、いまでもやはり重税感といいますか重負担感というものを持っているわけです。それに対して、もし仮に上がるとするならば、その社会資本なりあるいは生活環境というものに対して一体国はどういう責任を持っていくのか。自立自助ということばかりを言っていき、そして限りなく福祉だとか教育というものを切り下げていく、この上さらに、そのかなりというところに幅を持たして、国民への負担転嫁というものを持ってこられるのではやり切れぬぞということで、耳を澄ましてじっと聞いているわけでありましょう。  ですから、先ほど大蔵大臣がお見えになる前に私ちょっと言ったのですが、まさか七、六、五抜きというのは知らなかったのですが、四、三、二、一というのは、一、二、三、四と足していくと十になるから、十進法の国はやはり十ということで、これは一番覚えやすい数でやったのか。七、六、五抜きというのはどういう意味なのかよくわかりませんが、いずれにしても「展望と指針」というものはその数字だけなんです。四、三、二、一の数字だけなんです。そして、あと一番心配しておる、つまり国民総生産なり、国民所得なり、国民の負担なり、こういうようなもの、常に国民が関心を持っております、消費者物価、失業率、成長率とともに常に政治が中心に置いてやっていかなければ問題のところがぼかされていることに、やはりこれは総選挙の後には、あるいは来年度の予算編成過程には増税なりあるいは負担を求めていく、社会保険にいたしましても税にいたしましてもこの伏線を持っているのではないかという不安を持っているわけです。  ですから、いま率直な大蔵大臣の御見解は聞かしていただいたのですが、なおそこのところは政策選択の幅を残して、数字の面が、せっかく総理も現状の水準に近い――近いということは、現状もしくは一%あるかないかというような状況としての認識がまた何か少し高くなっていくのではないかというように受け取れますので、大蔵大臣、一言で結構でございますから、一昨日の答弁に返ってこの点は明確にひとつお考えをいただきたい。そしてそれを、今度の「展望と指針」は八カ年計画になっているわけですから、八カ年計画の、政府が政策を運営していく上における一つの努力目標というものはこういうところに何としても置いていくんだという一つ決意というものを明示していただきたいと思うわけですが、いかがでしょう。
  44. 竹下登

    ○竹下国務大臣 最初弁解しますと、七、六、五抜きの四、三、二、一というふうに言いましたのは、七、六というのは六ないし七%の名目成長でございます。四は成長率で、三は消費者物価で、二が失業率で、一が卸売物価という意味で申し上げたわけであります。  重ねて申し上げますが、総理の見識の中に、定量的よりも定性的、これは一つの哲学だと私は思っておるわけであります。その考え方に基づいて私どもは、いま柔軟な御意見を交えての御質問がありましたように、ある種の幅というものがあるということは、世界で一番賢明な、賢明だから今日の経済の発展をもたらした日本国民が最終的には選択する問題でございますので、それにはある種の幅がなくてはいかぬ。しかし、総理から定性的な哲学の上に立って言われておりますのは、ヨーロッパにいたしましても、これがかなりの水準に達したために、ある意味において別の意味における先進国病とかイギリス病とかというような弊害も出てきておる。したがって、やはり従来の基準というものを絶えず念頭に置いて、それに近いことを基礎に守りながら、国民の対話の中に国民の選択の方向をわれわれが見定めていくべきことであるということではないかな、こういうふうに認識をいたしております。
  45. 後藤茂

    後藤委員 この委員会のやりとりの中で、ぼやっとする方向ではなくて、後でまた安井委員の方から総括の中でもう一度締めくくりでこの点は明確にしていただきたいと思いますけれども国民が何をいまこの委員会にあるいは政府の見解の中に求めていくかということについて、ひとつ真剣に負担率の問題については考えておいていただきたいということを申し上げておきたい。  それから、総理の方はどうも経済計画というものに大変こだわっているわけですが、私は、これまで申し上げておりましたように、たとえばアメリカの経済の失敗におきまして、ニューエコノミストはどうも短期的な手法に少し目を奪われてきておったのではないか、もう少し長期的視野に立って短期の経済変動に対応するという手法をとるべきではなかったかという見解が最近出始めてきておるようであります。フランスにおいてもそうである。つまり、日本がいま経済計画が二、三年の短期寿命で終わったということを何か大変申しわけなかったみたいなことを言っておりますけれども、議論は論議されておっても、私は、日本の経済計画というものは、少なくとも今日の日本をつくり上げていく非常に大きな役割りを果たしてきておったと思うのです。  その点は自信を持って、これまで積み重ねてきた経済計画というものに対して御破算にしてしまわないで、経済計画をことしというか来年というか、いずれにしても単なる「展望と指針」みたいな、こういう作文ではないものにもう一度戻って、ひとつ総理考えておられるようなことは十分取り入れれば結構だと思うのです。もう一度、今度中曽根総理の諮問として経済審議会に諮問をさるべきだ。しかも、少なくともその積算の基礎等あるいは到達すべき目標の概略がわかるような、概観できるような数字を置いて、出すということをぜひひとつ企画庁長官御確答いただきたいのです。  そうでないと、総理府と行管庁が一本になる、私はこれに対しては、先ほど行管庁長官には、これからの運営が総合調整の面でどうもやりにくくなるのじゃないかということを申し上げたが、私は、今度の「展望と指針」ということで経済企画庁の店じまいの前兆じゃないかと思うのです。そして単なるエコノミストの学者集団的な人々が少数そこにいて、そして計数をいじっているという官庁になりはしないかということを心配する。それがそれならそれでよろしい、つまり総合企画的な行政機構というものはもうこれで終わり、なくてよろしいというなら別ですよ。そうじゃなしに、現業を持っていない、そして常に調整企画の中心になってきておる経済企画庁をどういうように企画の中心に置いていくかということになってまいりますと、そのシンボルとしての経済計画なり経済白書――経済白書だけをつくる官庁なんというのは、それこそ総理行革の対象にしていくべきものだ、私はこう考えております。これは一言で結構でございますから、ぜひひとつその点は再検討していただきたい。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 後藤委員指摘のように、アメリカでは最近日本のような経済の長期展望がぜひとも欲しいというような声が上がっておることは私も十分知っております。ただ私は、やはり今回の「展望と指針」のスタイルを基礎にして、そしてこれまでの経済計画のスタイルの反省の上に立って、アウフヘーベンというのでしょうか、止揚という形ですか、ひとつ大きく進歩さして、国民皆様方が目標となるような経済政策に関する一つの見通しをつくっていきたい、こういうふうに考えております。
  47. 後藤茂

    後藤委員 先ほど経済白書の問題、この経済白書でもそうなんです。今度は少しページ数が少なくなったということでありますけれども、この経済白書の一つの特徴は第三章の「景気調整策の有効性」というところだ。これをずっと読んでみました。しかし、これも何が書かれているのかということの理解に大変苦労するような表現になっているわけです。つまり非常に指導性のない、各省庁に遠慮した、しかも今日の混迷した財政、内外の経済情勢というものに判断停止してしまった白書になっているのじゃないかと思うのです。ただ、企画庁の方のレクチュアがよかったのか、あるいは新聞記者の鋭い分析がよかったのか、たとえば八月二十日の日経の「経済白書うらおもて」の中で、ここの第三章に書いてあることは実はこういうことではないかというように書かれているわけです。  これを読んでみますと、「今回の白書の目玉、第三章はこんな論理展開になっている。財政再建は安定成長実現のため絶対に必要だ。しかし、財政の景気調整機能を維持することも必要だ。財政再建過程といえど、不況や対外収支の不均衡など調整策を必要とする事態は起こりうるからだ。しかし、財政政策の景気浮揚効果は昔より少なくなっている。財政赤字を抱えている中で財政支出を増やすと政府に対する不信が増し、景気刺激効果は一層削減される可能性がある――。」こういうことを言っているのだそうです。私はこれをいま読み上げてみて、結局景気浮揚のためには財政の景気調整機能を維持することが必要だ、しかしこれを今度やっていくとどうもよろしくない事態が起こってくる、だからそれは考えあぐねるということが白書の中に――もちろん白書はこれまでの経済報告でありますから、これからの政策の方向をきちっと明示をしていくということではないでしょうが、少なくともこの中からこれからの政策の方向というのはとられていいと思うのですね。  いまいろいろな意見があります。大蔵大臣の方は、つまり財政当局の方は景気浮揚のために財政がにわかに出動してはならぬという立場に立っているでしょう。しかし、こんなことをしておりますと――いまヨーロッパなりアメリカの方に景気の浮揚が少し見えているので、それに触発されて日本の輸出が相当伸びていることは確かであります。しかし、そのことが非常に大きなアメリカの貿易赤字を来している。これはまた必ず貿易摩擦を再燃させていくことは明らかであります。再燃ではない、現在でもそうでありますけれども。そして、内需が完全に冷えている。つまり国内市場が相当大きくてその上に輸出が出ているというのならよろしいけれども、ただ輸出依存が行われているということになってまいりますと、この際やはり私は思い切った景気対策というものに手法を戻していかなければならぬのじゃないかという気がするわけであります。  減税の問題についてもまだ明確な見解が明らかになっていない。景気対策、景気浮揚のための相当規模の減税を秋口には実施すると言っておった与野党書記長・幹事長会談の約束事すらまだ実現されていない。そして、いま景気対策に対して中心であります経済企画庁の判断も停止している。大蔵省の方はこれに対して財政をひとつ出動していくべきかどうか、こんなことは赤字財政の中においてはこんりんざいできないということを言っている。そういうことを言って判断停止しているうちに、日本経済は悪い方向に行きはしないかという心配、もう縮小再生産の方向へ行って、租税収入だってさらにまた来年は予定よりも減ってきやしないだろうかということが考えられるわけであります。  ここで言わんとして全く判断停止してしまっておったのか、それともやはりこの際内需拡大策というものを考えていかなければならない段階に来ているのかどうか、その手法は一体どういうように持っていくのか。これは大蔵大臣経済企画庁長官からお答えいただきたい。
  48. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 御指摘のように、財政の役割りといたしまして景気調整機能は民間部門公共部門とへの資金の分配、そしてまた国民の所得分配の機能と並んで重要な役割りだと私は考えております。  日本の経済は設備投資と輸出で成長いたしましたが、景気調整は財政金融政策で諸外国に見ないほどの成功をおさめてきたと私は信ずるものでございます。したがいまして、量的にはいろいろ問題はございましょうけれども、今後において内需振興を含めての景気対策はやはり財政に期待するところが大変大きい、こういうふうに考えておるところでございます。
  49. 竹下登

    ○竹下国務大臣 景気対策に財政が出動する余裕は今日ない、こういう財政当局の物の考え方ではないか、こういうことであります。  ただ、確かに御案内のように、今日まで公債政策というものの歴史を振り返ってみましても、やはりオリンピックの翌年の戦後最大の不況というのを救ったのは公債政策ではなかったか。その後がドルショック、そして第一次石油ショック、その際建設国債という名においてこれが大量に財政の出動の役割りを果たしてきた、あるいは第二次石油ショック、それに対しても、赤字国債も特例債も含めて、公債政策というものが財政の出動による。今日世界の中では一番早く第一次石油ショック、第二次石油ショックも脱却したそれなりの効果はあったという認識をまず基本的には持っております。そして、今日その財政というものが公債政策に依存して出動する限界に来ておるではないかという認識も、私はそれなりに持っております。  たとえば具体的に私どもの方に経済対策について範囲があるといたしますならば、公共事業の追加あるいはまた金融の弾力的運用、こういうことでございましょう。そうなった場合に、総理から私どもに対して、とにかく内需振興を図るための施策として金がなければ知恵を出せ、こういう御指示のもとに目下検討を続けておるという状態であります。  財政というものがどういう形で出動していくかということに対しては、恐らく後藤委員もそれなりのお考えもあるでありましょう。私どももいわゆる公債政策というものに頼って、なおこれが市中金融を圧迫いたしまして景気の足を引っ張る方向に持っていくべきではないという考え方の上に立ちながらも、私どもなりにいろいろ知恵をこれからしぼってまいらなければいかぬ課題であるというふうに考えております。  ただ、いま一つ、いささか私見になりますが、いわゆる外需主導型というのが内需にはね返ってくるのには、私は従来の経緯からして二四半期かかるのじゃないかということから、いまが〇・四と〇・五というものであってもそれが持続的傾向を示すものでは必ずしもない、内需の方へ転移していくであろうという一つ期待感は持っております。
  50. 後藤茂

    後藤委員 大蔵大臣、二四半期ぐらいかかって内需へ影響を与えてくるということは恐らくそうだと思いますけれども、しかしどうも貿易構造が少し変わってきておりまして、そのはね返ってきて潤していくといいますか活力を持つ部分というものと、依然として素材産業なりあるいは地域産業というものはその恩典を受けないままに終わるものとの跛行性を持っているのですよ。だから、そこへの安易な依存というものは、私は政策を運営していく上において十分に判断しておいてほしいと思う。  そこで、これはもう一言で結構で、時間がだんだんなくなってまいりましたので、お答えいただきたいのですが、大蔵省の方は、これは内部部局の研究会だと思いますけれども、経済の構造変化と政策の研究会で六月に「ソフトノミックスの提唱」というものを出され、ここで大蔵省、財政当局はなるべく財政の出動を規制をしていこうという理論武装のあれだと思うのですね。それに対して通産省の方はこれまたマクロ経済研究会ですか、こういうものをいま発足させて、これは、今度かつてのような財政の役割りを大きくしろということは言わぬが、しかし内需拡大に対してひとつ真剣に努力しろという理論武装をこれからしようとしているのだと思うのです。それから、総理の要請でことしの七月ですか、対外経済政策を早くつくれということを要請をしているわけでしょう。この中でも、対外経済政策ではなくて、対外を取って内需拡大政策、景気対策にしろというように、いま政府各省の中におきましても、いい意味では競争的に日本の経済の活性化をどうするのかという研究がなされているのだと思うのです。  しかし同時に、悪く言うと、各省庁の自己保身といいますか何とか自分の方のところに影響がないような形でこの問題に取り組もうというような方向に総合ではなく分散になる面がありはしないかという心配をいたしております。この点はもう私時間がございませんのでひとつ問題の指摘で、なるべく調整をしていきながら、自分の行政の都合のいい方向にだけ問題をとらえるということでないようにぜひしていただきたいということであります。  また、今度のこのジャーナルを見ておりますと、河本前経済企画庁長官が、社会党の所得税で一兆円減税、地方税で四千億円、そんななまっちょろいことで一体どうなるんだ、三兆円ぐらいの減税が必要だ、大蔵大臣、こういう論文を出しております。財源がなければ減税ができないというのなら、そんなものは三歳の童子だってわかっていることだというように指摘をしているわけでありますけれども、いずれにいたしましても内需拡大の一つの大きな原動力に、大胆にしかも大幅に減税というものをいまとっていくということがなければ、私は、それこそ内外同時不況の中で縮小再生産に陥っていって、より財政の硬直化を来していきはしないか、危機を拡大していきはしないかというように思っておりますので、これは要望にしておきたいと思います。  最後に大蔵大臣、一言で結構でございます。建設大臣もいらっしゃるのに申しわけないのですが、道路特定財源の問題が臨調でも一応指摘をされておりました。これは道路整備をするということの目的で徴税されておりますから、これをにわかに財政当局が一般財源に全部持ってこいなんということは大変むずかしかろうと私は思うのです。ただしかし、いままでの道路特定で道路だけの整備ということにいっておるのを何とかもう少し道路にかかわる公共交通なりあるいはその周辺整備なりに使えるようにしていくべきではないかと私は考えるわけでありますけれども、その際、一つの今日の税率をふやしていってその分をそちらに振り向けるということはとるべきではない。ただ、いまの税率の中で、付加税という言葉が当たるのか、五%なのか一〇%なのかよくわかりませんけれども、そういう部分はひとり道路整備によって――「自動車の社会的費用」という東大教授宇沢弘文さんの論文もありますけれども、非常に大きな社会的費用をつくり上げているわけですから、その交通にかかわる部分に対してこういったものを特定財源で全部そこに抱え込むのではなくて、それこそ総理のタブーに挑戦という中でもう考えていっていい時期ではないか。臨調指摘もあるわけです。これは大蔵大臣、一言で結構でございますが……。
  51. 竹下登

    ○竹下国務大臣 なかなか一言で申し上げられませんが、臨調のおっしゃる特定財源というものは、税制全体の中でいわば色のつかない税をそのときの社会的ニーズに応じて富の再配分をするのが本来の税制のあるべき姿であって、特定財源とする目的税等については別の意味を持つ、したがってこれは一般的にすべきだ、底辺にはそういう考えがあると思うのでありますが、今日の道路整備というものはやはり特定財源に負うところが非常に多かったと私は思います。  しかしながら、その都度の経済情勢の推移の中で一般会計分、非常に下世話な言葉を使えば特定財源と一般会計の中で貸し借りというような調整を今日まで行ってきておりますので、私は、今後もそうした調整というようなものは話し合いの中で、場合によってそういうことも必要があるではないかというふうに考えております。そうして自動車の持つ社会的役割りというものから自動車中心に考えて、それが他に転用された場合、すなわちその適用範囲を広げろとかいうことについては、結果としてまた自動車交通にプラスの面を与える面という議論もたびたび行われております。しかし、付加税的なものでそれをということになりますと、これまた大いに議論のあるところでございます。しかし、税の一つのあり方に対する御指摘でございますから、十分税調に報告することはもとより、われわれとしても勉強はさせていただきたい。ただ、にわかにその案に乗っかるというようなお答えをいまする用意はございません。
  52. 後藤茂

    後藤委員 もう時間がございませんので、最後に原子力船「むつ」の問題について御質問をしたいと思うのです。  この間、自民党の参議院議員の中山太郎さんから「技術立国日本の危機」というものを私のところに、これは恐らく国会議員の皆さん方のところには送られたのだと思うのですが、大変興味深く読ませていただいたわけであります。この中で、「原子力船むつの矛盾」ということで、大変なむだな投資がなされてきているという御指摘で、約二ページにわたりまして「むつ」はこの際廃船にしていくべきではないかという指摘がある。私は本当に勇気ある提言だと思うわけであります。科学技術庁長官あるいは政府の方は、これを将来の海洋国としてどうしてもやっていかなければならぬということで取り組まれたのであろうと思いますけれども、しかし、ああいう放射能漏れを起こし、現在係留されるべき港もつくり得ないという、そしてこれからどんどん投資をしていくということになりますと、これまでも約六百億ばかりの費用を食っているわけですし、五十八年度も百八億、五十九年度の概算要求では百二十八億という形、そしてまだこれからどれだけふえていくかわからない。この際、これもボタンのかけ違いでありますけれども、私は中山さんのこの提起というものに非常に大きな敬意を表するわけです。  恐らく総理は御記憶はないと思いますけれども総理が原子力行政に情熱を傾けておったときに、私も松前重義先生にくっついて原子力基本法の制定のためのすり合わせの作業をやってきた一人であります。原子力の平和利用というものは進めていくべきだと思う。ただ、あのときの状況と全く違ってきているし、中山さんも御指摘になっておりますように、いまや原子力砕氷船がソビエトで就航しているだけであって、アメリカにおいても西ドイツにおいてももうすでに廃船になってきている。そしてあの原子力船の「むつ」をつくる過程でどれだけ漁民の心を傷つけたか。つまり、補償によりてすべてを解決していこうとすることが、これからその後の公益事業なり公共事業施設をつくる過程で補償費の額を大変上げているわけですね。こういう二つの大きなむだをしてきていると思うのです。公益的な施設をつくる場合、公共的な施設をつくる場合、だれもがこの補償の問題で頭を痛めている。そして、たとえば電力事業のように総合原価主義でコストに転嫁できるところはいいですよ。そうでないところは全くここでお手上げになっている。そうしますと、政策選択の幅がこれまた狭くなるわけであります。  この中山さん等を中心に百十何名の自民党の方方が原子力船を考えるという会を持たれて、十月の下旬には提言をされるというようにも聞いております。私は、この点について科学技術庁長官と総理にぜひお伺いしたいわけでありますけれども、これからさらにどのくらい金を使っていくかわからない、しかもそれが日本のこれからの科学技術の発展にどういうような大きなメリットになるかということにも、国際的にも非常に大きな疑問を持ち始めてきている。その政治責任というものももちろんあるでしょう。しかしいままで六百億もかけている、そしていま交渉している、だからこれからの問題としても、どうもいまやめるわけにはいかないということではなくて、ひとつ大胆な、この問題についてはピリオドを打って、そして研究はもう一つということはそれなりに考えていただくということをぜひ検討していただきたいということを申し上げたい。
  53. 安田隆明

    ○安田国務大臣 後藤先生、いま自民党の中にそういう考え方があるじゃないか、こういうお話でございました。これは後藤先生の社会党も同じでございますが、特に自由民主党、これは多数の政策集団でございますから、考える会あるいは勉強会のあることは、これはもうあってしかるべきこと、そしてわれわれは、広く理解、協力を求めるためにはその提言に耳を傾けること、これも当然であろう、こういうふうに考えております。  そして、この舶用炉の研究開発についていかに対応するか、こうなりますれば、去る十二日の本院の本会議でもって、社会党の上坂先生から御質問がございまして総理から御答弁がございました、世界の中で日本の置かれている立場はいまの先進国の置かれている立場と違いますよと。それは原子力委員会が長期展望に立って、いわゆる安全保障の面あるいは今後の海運、造船、そういう面でもって舶用炉の研究開発という知見の集積はどうしても日本はやらざるを得ないという政策目標を持っているわけであります。  世界の先進国はすでにもう手中に蓄積してしまっておるものを、特別に置かれているわが国の立場からこれを放棄しなさい、中止しなさいということは、これは大変な、政策選択の大きな、最高の判断の問題でございます。われわれは、これは軌道の修正は、廃止は考えてはいけない、ただし、総理おっしゃいましたように、こういうときでございますから、この財政の厳しい中でございますから、われわれは本当に効率的な財政の運用、厳しい財政の執行ということには十分配慮していかなければならぬ、こういうことでございます。  いささか私見にわたりますけれども、私はやはり科学技術の責任者としていま国際的に非常に肩幅の狭い思いをいたしておるのが二つございます。その一つは、戦後翼をなくしました。われわれ日本には、自国の航空機というものを持ちません。初めて来年の六月、いわゆるジェットエンジンのSTOLが離陸するわけでございます。これが世界の国際的ないわゆる航空工業界でどれだけ大きな発言力を持つことになったろうか……(「長官、もう時間だよ」と呼ぶ者あり)これで終わりますけれども、私たちはそういう意味でこの原子舶用炉の研究開発は、これは既定方針どおりやらしていただきたい、こういう考えでおるわけであります。
  54. 後藤茂

    後藤委員 時間が来ていますが、総理から。
  55. 金丸信

    金丸委員長 総理、時間が来ておりますから簡単に。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 科学技術庁長官と同じでございます。
  57. 後藤茂

    後藤委員 終わります。
  58. 金丸信

    金丸委員長 これにて後藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  59. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  去る二十六日の森井忠良君の質疑に関し、厚生大臣から発言を求められております。林厚生大臣
  60. 林義郎

    ○林国務大臣 去る二十六日の森井委員の御発言に関し、大蔵大臣と厚生大臣と同意の上、次のように申し上げます。  一、第九十五回臨時国会における政府答弁を踏まえ、行革関連特例法による年金国庫負担金の減額分については、積立金運用収入の減額分を含め、将来にわたる年金財政の安定が損なわれることのないよう、特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り速やかに繰り入れに着手するとの考えに変更はない。  二、行革関連特例法は、特例適用期間中の特例措置を定めるものであり、その特例適用期間経過後は、本則に戻る。  以上でございます。
  61. 金丸信

    金丸委員長 森井さん、それでいいですか。
  62. 森井忠良

    ○森井委員 不満ではありますけれども、了承いたします。     ─────────────
  63. 金丸信

    金丸委員長 質疑を続行いたします。細谷治嘉君。
  64. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最初に行管長官、けさ、ずいぶん厚い資料をいただきました。その資料によりますと、八条機関の法律事項と政令事項で、審議会等の数は二百十三あるわけでありますが、そのほかに三つばかり第二臨調答申されておりますね。そうしますと合わせて二百十六程度になると考えられますが、そのとおりですか。
  65. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 政府委員をして答弁させます。
  66. 門田英郎

    ○門田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま審議会等の数は資料で御提出申し上げたとおり二百十三でございます。委員指摘の第二臨調答申されておる三つというお話があったやにただいま伺いましたが、第二臨調の第四次答申におきまする臨時行政改革推進審議会、この設置は、前々国会において成立してすでに発足しておりますが、これは二百十三の数の中に入っております。
  67. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ずいぶん数が多いな、こう思います。  そこで、総理にお尋ねしたいわけですが、そういう二百十五ばかりある審議会等からいろいろな多方面の答申が出てまいるわけであります。その各種の答申臨調答申とには取り扱いに差がありますか、あるいは同じなのか。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 審議会の性格にもよりますが、法律に基づき、また法律に基づく政令等によってできている審議会、それから出てくるいろいろな答申、これはみんなおのおの独立してそれ相当の権威を持っているものでございまして、臨調答申もそういう意味における一つの審議会の答申であり、それ相応の独立した権威を持っておる。それで、建議やらあるいは報告の内容がぶつかった場合はどうするか、こういう場合は政府政府の責任において取捨選択して判断をして執行すべきものである、そのように考えます。
  69. 細谷治嘉

    ○細谷委員 総理、頭の回転が早いから私の質問を先に答えていただいたわけですが、大体において各種の審議会あるいは調査会等から出るものについては同じに扱う、こういうことで、言ってみますと最優先に考えている行革、それに関する答申というのがすべてに優先する、こういうことではない。そこで、臨調答申と各種審議会等の答申に差があった場合には政府において対応する、こういうお答えでありますが、現実に拝見しますと、たとえば地方制度調査会と臨調答申にはかなりの差がある点がございます。あるいは読んでみますと、郵政審議会における同じ土光さんの名前での答申と土光さんが会長である臨調答申との間にも差がある、違いがある、こういうふうに例がございますが、これはやはり政府の方で調整するということですか。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 審議会設置法によっていろいろ規定があり得ると思います。また、現にあります。たとえば答申に対して政府は尊重すべしと書いてあるのもあれば書いてないのもあります。あるいはその表現及び構成法の内容について政府がより強く尊重しなければならぬ性格を持っているやに感ずるものもありますし、そうでないものもあります。したがいまして、その設置法、おのおのよく検討をして、しかし、大体同じような表現及び政府に対する拘束性を持っていると考えられるものについては、法律を尊重するという趣旨からいたしましても政府は同等に尊重すべきものである。ただ、内容がぶつかったという場合は、これは政府の責任において取捨選択して、その責任は政府がとる、そういうことが正しいと思います。
  71. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ここではいろいろな調査会なりあるいは審議会と臨調との答申の違いについて一々議論をする時間もございませんから、それはやめますけれども、かなり基本的な問題において違いがあることも明らかであります。  そこで、中曽根総理行革最優先、言ってみますと憲法的存在としてこの答申を扱う姿勢があるのではないか、こう思うのですが、そうではないようでありますけれども、もう一度ひとつお答えいただきたいと思います。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、内閣及び政府はそれぞれの政策を持っておりますから、鈴木内閣以来中曽根内閣に至るまで、行政改革というものを最重要政治課題の一つとしてとらえて実行いたしますと国民の皆様にもお約束し、施政方針演説においても述べているわけでありますから、したがって、中曽根内閣におきましては行革の遂行ということが非常に大きなウエートを占めている、このように申し上げて差し支えないと思います。
  73. 細谷治嘉

    ○細谷委員 臨調答申というのが中曽根内閣では非常な大きなウエートを持っておる、こういうことであります。  そこで、ひとつ端的にお尋ねしたいのです。いろいろな報道なりあるいは論文等を拝見いたしますと、五十六年三月に発足いたしました第二臨調、二カ年の日子を費やして第五次の最終答申まで出たわけでありますが、私の印象では、そういう雑誌等の論文なりあるいは新聞の論調等を拝見いたしますと、最初の一年間は臨調の動きについてはかなり好評があったようでありますけれども、最後の一年間についてはどうも評価ががた落ちしたのではないか、こう見ております。総理はどう見ておりますか。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はそのように見ておりません。一貫して国民臨調の経過、業績につきましては非常に高い評価と支持を与えており、今日におきましてもますますそれは高まっている、政府はそのように考えております。
  75. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、一般的なことを申し上げたわけでありますけれども、たとえば第一臨調と比べて第二臨調は哲学がない、こういうことを強く主張をする人がございます。それから、第二臨調は「増税なき財政再建」、こういう旗印を掲げたために、どうも大蔵大臣の諮問機関である財政審的なものになってしまったのではないか、言ってみますと行政改革の本質に到達しなかったのじゃないか、こういう批判がございます。三つ目は、どうもこれは財界というのが背景にあってそれが推進役になったために、経済的な効率性、こういうものに基調が置かれておった、こういう批判があります。第四番目に、強いて言いますと、地方の分権ということを言葉で言っておりますけれども、その地方自治や地方分権についてのメリットについての認識を欠いておったのではないか。  こういうように批判が多いわけでありますけれども、この批判は全く当たらないとお考えですか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く当たらないとは申しませんが、大部分は誤解か偏見に基づく批判ではないか。私は、臨調は、現在の国家の情勢、政府や財政のあり方、国民世論、そういうものを全部踏まえまして、哲学的にも、政策的にも、非常に普遍性のある妥当な提言をしておられると考えております。
  77. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いま私が挙げた点は予断なり偏見があるのではないか、こういう総理のお答えであります。私は、そういう問題で、特に国と地方との関係、地方分権、そういう問題に視点を置いてこれから質問をしてみたいと思っております。  そこで、お尋ねするわけでありますけれども、言ってみますと、国と地方との関係というのは機関委任事務という一つの大きな鎖でつながっております。その機関委任事務というのは現在幾つぐらいあって、整理対象になっているのはどのくらいなのか、まずお尋ねしておきたいと思います。
  78. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 機関委任事務整理合理化ということは国と地方との関係の改革に関する重要な課題である、かように私は理解をいたしております。  そこで、機関委任事務は、数字からまず正確に申し上げてみたいと思いますが、地方自治法の中で記載されておりますのが三百六十五件ございます。そのほかに、機関委任事務ではありますけれどもその地方自治法の別表に記載されてないものとか等々合わせまして全部で三百九十八件ございます。  そこで、その三百九十八件につきまして、臨調答申は、二年間に一割整理合理化を図れ、こういうことでございまして、今回の法律におきましては、そのうちの四十五法律を改正をしようということで提案をいたしておるわけでございます。そこで、二年間に一割と申しまして、四十五法律でございますから、まだ積み残しがあるわけでございます。それはもとより逐次実行をいたしてまいります。しかしながら、私としては、この機関委任事務整理合理化について二年間に一割で十分なのかという問題があるわけでございます。そこで、私は、これはできるだけ臨調答申の二年間に一割という答申にこだわらず、逐次もっとふやして整理合理化を図るべきではないだろうか、こう考えておるものでございます。  そこで、御承知かとも思いますが、臨調答申のフォロー機関としてできました臨時行政改革審議会に近く参与制を設けまして、数人の専門委員と申しますか、そういう方々に機関委任事務のあり方――これが一番根本だと思うのです。そういう問題については、臨調答申、詳しく掘り下げておりませんでしたから、機関委任事務のあり方、そういうものを十分御検討いただき、そしてその御検討の上で具体的にこういう項目、こういう項目はさらに整理合理化をすべきではないかというふうな案もちょうだいいたしまして、これからそういう方向に従って逐次整理方向に努力をしていく、そのことがやはり国と地方の関係の改革に大きくつながるものではないか、私はこういうふうに基本的に考えておる次第でございます。
  79. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大体において整理合理化の対象法律、五百五十程度機関委任事務がある、そのうち法律は四百三十件、純計三百九十八、こう言われて、いまお答えがあったとおりであります。この機関委任事務は、昭和二十七年ごろを見ますと、大体別表三で百六十、別表四で九十六、それがいまや別表三の方が三百六十五、別表四が百五十七、これは昭和四十九年の話ですね。年々ふえていっているわけですよ。  その年々ふえていっている機関委任事務というのは、地方自治の大きな原則からいきますと、機関委任事務というのは抜本的に整理していく、もともとこういうことが基本でなければならぬと思うのですけれども、経過を見てみますと、いまの憲法あるいは地方自治法、こういうものができてから、法律の中の、たとえば地方自治法の二条の、別表なんというのは別にしまして、本文だけでもこれは物すごく条文が多くなっている。これは、言ってみますと国の支配介入というのが機関委任事務を通じて非常に大きくなっていると言えると思うのですよ。そのうちのたった一割を二年間というのは、どうも総理が評価するほどりっぱな答申とは言えない。言葉どおり地方分権を進めるんだというそれは全く看板にすぎない、こう言わざるを得ないのでありますけれども、いかがですか。
  80. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 臨調答申は、機関委任事務につきましては二年間に一割ということを答申しておるわけでございます。ですから、先ほど申し上げておりまするように、これだけで私どもは満足していないということを申し上げたわけです。機関委任事務については、今後ともあり方を基本的に見直す必要があると思うのです。これは臨調答申にも、今後機関委任事務のあり方等については審議会等において十分検討をしなさいという答申も出ておるわけでございますから、その精神に従って、今度の臨時行革審において機関委任事務のあり方をやはり根本的に見直す必要があると私も思っているのです。  ですから、今回は答申にありました二年間に一割という線でまずやります。しかし、本当にそれだけで十分とは思っておりません。そこで、臨時行政改革審議会において基本的にあり方を検討していただく、そしてそれに基づいて具体的な項目を拾い上げていただこうと思っているのです。拾い上げていただく、そして、これは逐次実行に移していく、こういうやり方に努力をいたしたいと考えております。
  81. 細谷治嘉

    ○細谷委員 行管長官は、今度は第一歩であって、これからもっと積極的に、抜本的にやるんだ。その姿勢、お言葉は私も評価いたします。ただ、現状を見ますと、そして今度はその一割程度、こう言われておりますけれども、ちょっと例を挙げますと、その四十四というのは、確かに二年間に一割、こういう目標の数であることはもう間違いありません。ところが、その四十四を見てみますと、その各省が持っておる機関委任事務について、非常に成績のいいところは二割あるいは三割近く消化しようとしていますけれども、中には、たった二%ぐらいという省もございます。したがって、各省全くばらばらで歩調すら合っていない。そういうことになりますと、行管長官言葉が各省にきちんと行き届いておらないのじゃないか、あるいは各省によって熱意に差があるのじゃないか、こう指摘せざるを得ないのでありますけれども、いかがですか。
  82. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今回法律案として御提案申し上げておりますのは、臨調答申指摘された事項を中心にして書いたわけでございます。ですから、その意味において、二年間の一割という数字は、それに近づいたものは実行いたしております。しかし、先ほども申し上げたように、私どもはこれで十分だとは考えておりません。各省庁にはいろいろの御意見もありましょうが、自治省と十分相談をしながら、その行革審の専門家の方々の御意見を拝聴しながらやっていきたいと考えております。しかしながら、この問題は各省庁も固執している面が相当あるわけでございますから、今後はなかなか容易じゃないと私は思います。しかしながら、臨時行政改革審議会でそういう機関委任事務のあり方を十分に検討していただいて、それに基づいて合理的な改革を進めていただきたいと考えております。
  83. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私も個々について全部チェックしてみたわけではございませんけれども、この機関委任事務というのはただ単に国の事務を地方公共団体に委任した。地方団体はこれを受けておりますと組織なり人員、こういうものが必要でありますから、財政的にも地方の負担になる。とりわけ、機関委任については地方の議会というのはくちばしを入れることができないわけであります。これもまた不合理ですね。地方団体の予算を使いながらこの機関委任事務については監査の対象にならない。地方の議会はくちばしを入れることはできない。こういう点もきちんとやることが行政改革じゃないでしょうか。どうですか。
  84. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 機関委任事務は、さようなわけでございまして県議会も容喙はできません。そこで、機関委任事務整理合理化に当たりましては、廃止するものもあると思います。それから府県なり市町村の団体委任ということになりますと、これは当然県会なり町村会が関与できる、こういうことになるわけでございます。ですから、今後の整理の後のやり方等いろいろ問題があると思います。そういう点について十分機関委任事務のあり方を基本的に検討していただいて、そして具体的な項目をそこで調べ上げていく、こういうやり方になろうかと考えております。
  85. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これで長く議論するつもりはありませんけれども、言ってみますと、問題は、この機関委任が年々歳々ふえている傾向をとめて、減少さしていかなければならない。同時に、いまのお言葉にありましたように、機関委任ではなくて団体委任という形をとらなければならぬ、これは大臣おっしゃるとおりであります。その線で積極的に進めていただいて、そしてこの問題についての姿勢が各省においてやはり少し違っておる。特に各省の数字を挙げませんけれども、よけい持っているところが不熱心だ、こういう感なきにしもあらずでありますから、そういう点についてはひとつきちんと各省がそういう点で協力するように努力をしていただきたい、こう思います。いかがですか。
  86. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 機関委任事務整理合理化につきましては、先生お述べになりましたとおりでございますから、そうしたことを十分頭に入れて積極的に努力を続けてまいります。
  87. 細谷治嘉

    ○細谷委員 機関委任のことはそのくらいにいたしまして、次に、これもまた重要な問題の許認可であります。  この問題については、行管長官はすでにこの委員会の席上で、今回の指摘事項は二百二十二だ、そのうち政令事項が百五十で法律事項が七十二件だ、そして今回の措置件数は法律で二十四だ。これもおおよそ半分ですね。これもいまお答えしたようなことで、許認可についての抜本的な整理に取り組んでいく決意で今後処理しようとしているのかどうか、お答えいただきたい。
  88. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 臨調答申指摘いたしておりますのは二百二十二、それから政令が百五十、七十二、こういうわけでございます。それでこの政令事項につきましては百五十残っておるわけですから、これは年度内にできるだけ、百五十全部いけるかどうかは別といたしまして、百以上は必ず政令事項も廃止していく。こういうやり方にしたいと考えておりますから、御提案申し上げております法律による整理とあわせて、百五十の政令事項についても努力をしていきたいと思います。  私、行管庁に来まして見ていますと、本当に情けない話ですが、なくなったと思うとまたふえていくのですね。私がそんなことを言うのはどうかと思いますが、本当に困ったものだと思います。やはりこれは思い切って、許可とか認可の数はふやさぬというくらいのことを法制局あたりが最終の段階でチェックしていただくとか、これは各省挙げてその気持ちで努力することが一番大事じゃないか、私はかように考えます。法律事項になりますと、法制局が最終的に国会に出す前にチェックするわけですから、法制局とも十分連絡をとり合いながら、許認可事項をふやすことは民間活力をふやすゆえんではありませんので、臨調答申指摘があろうがなかろうが今後とももっと積極的に前向きに行くのが本当だと思いますから、私としてもその職にある限り全力を尽くしてまいりたいと思います。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕
  89. 細谷治嘉

    ○細谷委員 職にある限りということでありますけれども、これはひとつ積極的にやっていただかなければいけない。法律事項が四十一本あるわけで、今回の措置は二十四本でありますから、自慢はしていませんけれども、半分以上は消化したよということであります。ところが、四十一本の中で残りは差し引き十七本あるわけですね。その十七本を洗ってみますと、どうしてこういうことが国から都道府県知事に移せないのか、こういう気がするものもたくさんあります。十七本のうち半分近くが間違いなく地方公共団体、府県に移すものです。その中で具体の問題を洗ってみますと、どうして移せぬのか、こういうのを移せないのはどうも各省の縄張り、つかんだものを放さぬぞ、こういう根性があるのではないかと思われて仕方がないのでありますが、長官、そう思いませんか。
  90. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 どうもあまりはっきりは言いにくい話でございますが、各省庁ともそういう権限はあくまでも留保したいという気持ちは一般的にはあると思いますが、そんなことを言っておったのでは行革は進みません。そういうわけで、各省庁とも十分説得しながら、個別的に整理の方針を貫いていくというふうにいたしたいと考えております。
  91. 細谷治嘉

    ○細谷委員 もう一つ許認可に関連してお尋ねしたいわけでありますけれども基本答申、第三次答申ですね、それから同じように地方制度調査会の第十七次の答申、こういうもので、言ってみますと、行政の住民との一番密接なつながりを持っているのは市町村だから、市町村に重点的に移しなさいという精神、これはシャウプ以来の精神でありますね。現実には都道府県から市町村に許認可が移されておりますけれども、その都道府県の委譲の状況を見ますと残念ながら大変な凹凸があります。齋藤長官いろいろ苦労されておると思います。総理のとにかく最大の課題として行革に取り組んでいるのだから苦労していると思いますけれども、都道府県によって大変な差です。あるところでは一件もやってないのですよ。こういう事実を御存じですか。
  92. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  各省庁と地方公共団体への委譲のことにつきましては従来ともやっておりまして、いままでの実績で百四十四事項、私どもで確認したものがございます。ただいま御指摘のように、やってない省庁もあるということでございますが、もう一度再点検をいたしますとともに、今後とも推進してまいりたいと思っております。
  93. 細谷治嘉

    ○細谷委員 都道府県でやってない県が十ばかりありますね。多い少ないは別として、やっている県は幾つありますか、お答えいただきたい。
  94. 中庄二

    ○中政府委員 質問を取り違えておったかと思いますが、各省庁から都道府県への権限委譲の実績を先ほど申し上げたわけでございまして、各都道府県は相当数の機関委任事務を持っております。その数も私ども研究的には大体つかんでおります。
  95. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私が調べたところでは三十八都道府県、きわめて少ないものがありますし、積極的なところもありますけれども、三十八都道府県だけですよ。全くやっていないところもあります、例は名誉のために挙げませんけれども。  そういうことでございまして、これからの時代はそういう市町村、そして多様化に対応していくという点で、国から積極的に都道府県や市町村に、都道府県が握っておる許認可事務は市町村へ、こういう流れを大きくつくらなければならぬ、こう私は思うわけでありますけれども、これは長官、いかがですか。
  96. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御趣旨はそのとおりだと理解いたします。
  97. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いま長官はあるいは御存じないかもしれませんが、先ほど来各種の審議会等の答申で、委譲されないでほったらかしのままのもの、あるいは見直しすべきだと指摘されている事項がずいぶんあります。御存じですか。数字を挙げますと、各種の答申で委譲されないままのものが八十八件あります。そうしますと、二百五十もある審議会というのが、何を書いても評価しないというのですから意味がないのじゃないですか。数はふえるけれども中身は文章だけで実績がない、こういうことになりかねないと思うのですが、いかがですか。
  98. 門田英郎

    ○門田政府委員 地方制度調査会などにおきます御指摘あるいは地方六団体等での御指摘、いろいろあったことは承知しておりますけれども、その具体的内容について私ども把握しておりませんので、大変申しわけございませんが、御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  99. 細谷治嘉

    ○細谷委員 どうも専門のところが知らぬわけですけれども、それなら、直接指導しておる自治省あたりはそういう数字をつかんでおりませんか。
  100. 大林勝臣

    ○大林政府委員 長年の間、地方制度調査会あるいは第一次臨調、それから地方六団体あたりから相当数の委譲要望というものが出てまいっておりまして、今日までなかなか実現できておりませんのは残念でございますが、私自身の記憶によりましても、その都度御要望が出てまいるのが数十項目に及んでおると記憶しております。正確な資料は持ち合わせておりません。
  101. 細谷治嘉

    ○細谷委員 長官、ひとつ指導して、私がいま御質問申し上げた点について全く資料等が整備されておらぬようでありますから、整備をしてこの委員会に早急に出していただきたいと思いますが、いかがですか。
  102. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 承知いたしました。
  103. 細谷治嘉

    ○細谷委員 もう一つ、この国と地方との関係で忘れてならないものは、行政機関等の設置の義務づけという問題があるわけですよ。そのオーソリティーというのは厚生省なり農林水産省なりあるいは文部省なんですよ。ここにも、各種の審議会の答申で廃止すべきだとされた行政機関があまたございます。これは御存じですか。
  104. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  私の記憶でございますと、行政機関、審議会、それから各種の職合わせまして百八十一であったかと思います。いわゆる必置規制と言われるものでございますが、これらにつきまして行政監察をいたしまして、約三十の事項を指摘いたしました。現在までのところ、ちょっと古いあれかと思いますが、十の事項につきましてすでに法律改正がなされたというふうに思っておりますが、今後とも努力してまいりたいと思っております。
  105. 細谷治嘉

    ○細谷委員 御指摘のように百八十一あるのですね。この仕事をやるために八十一人の地方の職員が配置されているのです。八十一人、大変な金額ですよ。こういう点も大臣、これは昔は必要だったけれどもいまはもう必要性がない。しかし必置制になっているものですから手がつけられないでいる、硬直化しているわけですよ。その硬直化しておる例として、私の手元にある例をちょっと申し上げます。  自治大臣に関係があるものですが、危険物取扱者の試験委託は消防法ですね。これもその一つだが、実際には毎年毎年かなり高い受験料とか講習料とか取られるのですよ。合格しますと免許をもらうための金を取られる。民間委任、民間委託が一番いいように書いてありますけれども、この場合では、民間委託やるために、年々歳々合格までに莫大な受験手数料と免状をもらうための負担が大変だ、こういう泣き言が私どものところに陳情に来ておりますが、大臣、御存じですか。
  106. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 私もそういう機関のあることは存じておりますけれども、具体的にどういう内容の業務の運びになっているかというところまではつまびらかにはしておりません。しかし、この問題は地方行政をめぐる問題としても大変重要な問題だ、こう思っております。
  107. 細谷治嘉

    ○細谷委員 たとえば消防法で指定機関、こうありまして、消防設備の講習料二万円、燃焼器具の整備士は三万円、事前講習料、受験料ともずいぶん高くなっております。これは一度で合格するわけじゃありません。何回も受けるということになりますと大変な負担になっておる、こういうことで悲鳴を上げているところがある。その上に、そういう機関が一つの天下りの場所になっているのですよ。これでは行政改革も頭隠してしり隠さず、こういう状態ではないかと思いますので、行管長官、ひとつ頭にとめていただいて、この辺も積極的に改善をしていただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  108. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の危険物取扱者それから消防設備士、消防関係の方でございますが、今回の法案に提出してございまして、法案成立の暁には指定機関にこれを実施させる。まだ団体は出ておりませんし、法案も通っておりませんので、いまそういう段階にございます。確かに受験者数に比べますと合格者の率は三分の一ぐらいでございますし、御指摘のとおりでございますが、相当の事務量になっております。それから、試験の問題作成も各都道府県にとりましては相当の事務量になっておりますので、専門的な統一的な技術力のある団体に今後行わせて、試験を効率的に行わせると同時に、全国統一的な試験ができるようにというふうなことを今回の法案考えているところでございます。
  109. 細谷治嘉

    ○細谷委員 長官、これは全体の国と地方のいろいろな鎖があるわけですよ。これを抜本的に整理していかなきゃならぬ、こういう意味で私はやや時間を費やしてお聞きしているのです。総理と言いたいのですけれども総理はちょっと時間ですから、長官政府の代表としての御意見を聞きたい。
  110. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来いろいろ御熱心に御指摘いただきました問題は、国と地方の関係改善、改革に関する重要な問題を含んでおりますから、御趣旨のような線に沿うて今後とも積極的に努力をいたしてまいりたいと思います。
  111. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私の質問の予定では、地方事務官問題についてもある程度行革というサイドから質問してみたいと思っていたのですが、中央から地方へ、こういう流れからいきますと、どうも第二臨調答申というのは逆行していると言う以外にないと思いますけれども、この議論はきょうはいたしません。  その次に、私がきわめて常識的な考えで不思議に思っているのは、国家行政組織法では、省庁の局を変えることについては政令事項に法律から移していく、こういうことを考えている。ところが地方の機構、都道府県や市町村の機構というのは自治法に明記されております。言ってみますと、これくらいの規模の県はこういう部を置きなさい、ただしその地方のあれによって増減はできるけれども、それは条例で決めなきゃならぬ。地方にとって条例というのは法律なんですよ。国のスタイルと地方のスタイルと一致しなきゃいかぬわけでありますから、国の機関だけは局については法律から政令事項、都道府県や市町村についての部の設置については条例で、言ってみますと、法律でというのは均衡を失しておるのではないか。ちょっとうがった推定をやりますと、地方についてはがんじがらめの強硬な法律で遠隔操作できるようにしておいて、自分の足元だけは自由に操作できるようにしようという悪意があったのではないか、こういうふうに推察するのですが、そんな考えはないでしょうね。
  112. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 その問題についてはさような考えはございませんが、その詳細につきましては自治大臣からお答えしていただいた方が賢明じゃないかと思います。
  113. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 確かにおっしゃるように、今回は国家行政組織法の改正をお願いして政令事項にするということであります。地方の場合は、これは相当細かく部局の名前を挙げて規定をしているわけでございますが、それ以上にこしらえるときは自治大臣に協議をしてほしい、こういうことになっております。  これは一つは、地方でいろいろお考えもございましょうけれども、おおむね人口に応じて仕事の内容あるいは分量も決まってくるであろう、ほぼ基準的な、標準的な部局を羅列して書いてある、こういうことでございます。一方、地方からも何部を設けた方がいいではないかといういろいろのお誘いがある場合もある。その場合は、部局をふやしていくということについては、機構をふやすということは行政改革あるいは地方の機構の簡素化ということと逆行するわけでございますから、そういう意味でこれが置いてあるのでありまして、いまの御議論は理論的にはそういうことが言えるかもしれませんが、実態を見れば、むしろそういういまの地方自治法の規定というものは行政改革の重要な課題となってきた今後も有効に機能をするであろう、私はこう思っております。
  114. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治大臣、私が言っているのは、国の方では行政府が弾力的に自由にできるような、言ってみますと総理みずからが二十年代には、もっと自治を確立するために、民主政治を確立するためにという形で、政令事項にしようとしたのを先頭を切って法律事項にしたわけですね。これは二十年代です。それから状況が変わったということで、十年刻みぐらいで局のあれを政令事項という形で今度もまた出てきている。これはいまここで議論されております。地方の方は触れていないのですよ。二十二年にできた自治法そのとおりです。そして、それは条例でやれというのですから。私は条例でやるということが本筋だと言っているのですよ。国の方へ右へならえしちゃえなんてことを言っているのではないのですよ。県の人事権というものは知事が持っている。その裏づけになる人員、配置等は組織ですよ。組織の受け入れの問題は部でありますから、その部についてはやはり県民の代表である、市町村民の代表である機関が、議会が条例で決めるというのが筋なのでありますから、そういう点では国家行政組織法の改正というのはどうも政府の都合だけを考えた、総理の言う高邁な理想をにらみながらやっているとはどうも思えない。特に、最近、自治大臣はいろいろな面において少しくちばしが権力的になりつつあると私は思っているのですよ。ですから言ってみますと、この自治法の改正というのは権力的じゃなくて民主的ですよ。こういう形で足並みがそろっていないじゃないか、こういう感じがするのですよ。もう一遍お答えいただきましょう。
  115. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いまお話しのように、私がいま申し上げたのは、つまり理論的といいますか理屈の上では、片や法律から政令ということではないか。しかしこの場合、政令にするということは、やはり行政にそういう行政改革を早くやるというふうにお任せをいただこうという趣旨だろうと思うのですよ。そして行政改革を進めていこう、こういう趣旨なんです。  一方、地方自治法に書いてありますのは、部局の最高限度を一応示しておる、そしてこれ以上おつくりになるなら御相談ください、こういう形になっておるわけです。それ以内で小さくおつくりになるなら、条例はそれはもうそれぞれの地方公共団体の御随意であります、条例の制定権という自主自律権をお持ちでございますからそれでやっていただいて、なるべく簡素な行政組織でやっていただこう、こういうことでございますから、両方とも実態としては簡素な行政機構でやろうという趣旨に違いはない、私はこう思っているところであります。
  116. 細谷治嘉

    ○細谷委員 国は法律で地方公共団体は条例で、国の問題は国会で、法律国会で、そして地方においては条例で、そういう部の設置については規則でいいなんということを言っていないのですよ。知事限りでやれる、市町村限りでやれる姿になっていないのですよ。問題がある。  総理、その辺どうなんでしょうか。あなたの言葉には重大な、取り消してもらわなければいかぬことがある。簡単にできる、早くできるからそれがいいのだ、こういうことじゃ困るわけですよ。民主政治は時としては時間が要るのですよ。そのためにああなったのでしょう。早く簡単にできるからという言葉は取り消していただきたい。総理にお答えいただきたい。
  117. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いま行われようとしていることは、行政改革をしっかりやろう、こういう趣旨法律案をいまお願いしているのであろうと私は思うのです。その趣旨は、私は間違いないと思うのです。したがって、それと、いまのお話は一つの法形式のお話でございますが、私の方は、実態としては行政改革機構、組織の簡素合理化という方向はいずれも、地方自治法もそれを目指しております、国も今回はそれを目指していま法律案を御審議願っているものだ、こう理解しておるわけであります。
  118. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いずれにしても自分勝手で簡単にできるぞ、思うとおりになるぞ、こういうことで国家行政組織法が出たということでは、これは許せないと思うのです。大臣、その辺は、国はそれでいいのだけれども地方はいままでどおりでいいのだ、こういうお考えですか。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 類推で申し上げるとちょっと見当が違う要素もありますけれども、知事さんは総理大臣みたいなもので民生部長とかなんとかいうのは厚生大臣、厚生省、そういうものに当たるので、省はやはり法律、あるいは条例、そういう関係であって、部の内部の細かいところというのはやはり任せられてやっておるのじゃないかと私、想像いたします。だから、そういうパラレルに考えてみても大体似たようなものじゃないかと思うのです。
  120. 細谷治嘉

    ○細谷委員 委員長、いまのは答弁にならないのであって、この問題は大変重要な問題ですね。法のバランス論からいって問題がありますから、この点はひとつきょうは留保しておきます。(「専門家、ちょっと答えて」と呼ぶ者あり)
  121. 大林勝臣

    ○大林政府委員 私、国家行政組織法の問題についてお答えする立場にはございませんが、地方自治法について申し上げますと、百五十八条で都道府県の部を条例で設置すると書いてあります趣旨は、いみじくも先生がおっしゃいましたように、県の最高の組織である、基本的な組織である、こういう趣旨でございます。しかも、なおかつそういった部の設置につきましては、今後増減をする場合にも百五十八条の第二項で、国の行政組織、他の地方団体の行政組織との権衡を考慮して定めろ、こう書いてあります。その権衡という場合の「国の行政組織」と書いてありますのは、国の基本的な最高機関、つまり各省、これが頭にあるものと存じております。
  122. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治法のことについては行政局長が答えたとおりでしょう。さっきの総理答弁でこんがらがってしまったのですよ。総理答弁は、各省のところ、各省というのはなんですけれども、その各省の大臣のところに局がある、その局を政令事項にしようというのでしょう。ですから、言ってみますと、知事なんていうのは各省の部長ぐらいで、あとは各省の課長ぐらいが勝手にできるんだ、こういうようなことを思い出させるものですから。いずれにしてもこの問題については私は納得できない。かえってこんがらがってしまったから、留保しておきます。
  123. 三塚博

    ○三塚委員長代理 それはまた後ほど協議することにして、どうぞお進めください。
  124. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、建設大臣、都合もあるようでありますからちょっと質問いたしておきます。  最近地方団体が、主たる原因というのは財政上の原因だと思うのですが、要綱をつくって宅地開発を推進をしております。その宅地開発について建設省が、これでは宅地開発は進まぬということで自治省を引っ張り出して、そして宅地開発の要綱の内容はひど過ぎる、こういう名において強力な行政指導を始めております。そのとおりですか。     〔三塚委員長代理退席、海部委員長代理着席〕
  125. 内海英男

    ○内海国務大臣 指導要綱につきましては、従来各市町村の独自の立場で宅地開発指導要綱というのをつくっておるわけでございますが、その効果というものも、良好な都市環境をつくるという意味においては相当な効果があったと私は思っております。しかしながら、国民の住宅、宅地に対するニーズに対応するためには、最近では多少各市町村の指導要綱の行き過ぎというものが相当問題になってきておりますので、その行き過ぎた点を是正して国民の住宅、宅地に対するニーズにこたえよう、こういう趣旨から行き過ぎの是正をお願いをしておる、こういうことでございます。
  126. 細谷治嘉

    ○細谷委員 建設大臣、あなたのところで出ておる「国土建設の現況」、いわゆる建設白書、この五十一年の建設白書を拝見いたしますと、実はこの要綱行政というのを礼賛しているような書き方をしているのですよ。その百十ページをちょっと読んでみます。  「居住環境の良好な住宅地であるためには、道路、公園等の公共施設、学校、保育所等の公益施設、市町村の事務所等の行政施設、集会所等のコミュニティ施設が整備されていることが必要である。これらの施設のうち、本来地方公共団体が整備すべきとされている公共施設や学校等について、地方公共団体の財政負担が一時的に集中するため、開発の進捗に合わせた整備が困難となりつつある。特に三十年代後半からは、大規模な団地が既成市街地から離れた地域において建設される例が多くなり、この傾向が強くなった。」推進しよう、こう言っているのです。  ところが、五十一年の建設白書にそう書きながら、急に五十六年か五十七年ごろになってその要綱行政を抑えにかかって、そしてレベルダウンしたこれが適当だ、都市施設としてはこれが適当だとはなはだしくレベルダウンしたものを、もちろん私はその要綱の中に余りにもぜいたく過ぎるという内容があったことは否定いたしません。けれどもそうでなくて、平均的に考えられる、シビルミニマムと考えられるよりもはるかに下の、ずばり言いますと、建設業者の希望どおりの内容を織り込んだそういう指導を建設省が始めておる、こう私は思うのですが、いかがですか。
  127. 内海英男

    ○内海国務大臣 そういう誤解を招かないように、私どもの方では各市町村の方に行き過ぎを是正するという趣旨でお願いを申し上げておるわけでございまして、行き過ぎといいますと、たとえば従来、通常ですと六メートルの道路でいいということになっておるのが、場所によりますと八メートルから十二メートルぐらいな道路をつくらなければいけないとか、あるいは一人当たりの公園の面積が三平米というのが……(細谷委員「後で聞くからそれはいいよ」と呼ぶ)そういうようなところの行き過ぎを直していただきたいということでございまして、誤解がないように私どもも指導してまいる、こういう方針でございます。
  128. 細谷治嘉

    ○細谷委員 どうも行き過ぎがあった、建設省のやっているのは妥当なんだと言っていますけれども、私の手元にいろいろ新聞の社説があります。  ちょっと紹介いたしますと、毎日新聞の社説には「建設省の規制緩和は疑問」、とういう見出しでずっと述べております。朝日新聞の九月十四日の社説では「自治体の経験を軽視するな」、いわゆる要綱行政を軽視するな、こう言っております。私の住んでおる九州の西日本新聞社では「開発規制緩和は納得できない」、こういう見出しで社説を掲げております。  問題があるのですよ。それを権力的にやっているものですから、最近の新聞でも、いま各地で、千葉県あたりでは軒並みで、私の住んでおる福岡県でも、福岡周辺では軒並みにその要綱行政をやめてしまっておる、そういう動きが出てきております。まことに新聞社説で指摘するとおりだと思うのです。これでもプラスだと思っているのですか。
  129. 内海英男

    ○内海国務大臣 国民の皆さん方の宅地供給に対するニーズと宅地造成のコストの上昇ということから考えまして、宅地開発指導要綱の行き過ぎについて何とか見直していただきたいということをお願いをしておる、誤りのないように指導してまいりたい、こう考えております。
  130. 細谷治嘉

    ○細谷委員 九月二十八日のある新聞では「宅地開発指導要綱なぜいま緩和」、こういう見出しで書いてあります。この要綱行政をつぶしにかかっておるということも含めてどういうことが書いてあるかというと、新聞の記事をちょっと御紹介いたします。  「不動産協会は「要綱」の緩和を大きな目標に掲げ、自民党の土地問題委員会、住宅対策特別委員会、建設省に対し熱心な陳情を始めた。そして今年、業界は、強い味方を得た。中曽根首相である。四月五日に決まった政府の「今後の経済対策について」では、「規制」緩和による民間投資の促進がうたわれた。」こう書いてあります。  ちょうど新聞に総理の名前が出ましたから、総理、この要綱行政をつぶしていく、とにかく行き過ぎなんだからひとつ抑えつけろ、こういう指導をなさったのですか。
  131. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣の政策の一つに、四月五日の経済対策の中におきまして、民間活力の充実、これを取り上げておるわけです。その民間活力をさらに活発に充実させて景気回復にも資するという面から見ると、いままでの規制解除という面が出てまいりまして、余りきつ過ぎる規制があるために民間がよう活発に動けない、必要以上のきつい規制をし過ぎている面もある。そういうところもありまして、一般的に規制解除をやろう、そういうことで、たとえば東京なら七環以内の一種専住というものをやめていくとか、大阪並みに改革するとかあるいはいまの土地開発、住宅建設等につきましても余り重い負担をかけ過ぎるという面があって、国でも、たしか千億円ぐらい公共関係の費用を負担して補助をしているはずですね。  だから、適当な、そういう過重負担をかけないで住宅建設を促進するようにすることが民間活力をふやして景気を回復する趣旨にもなるという意味で、常識の範囲を絶するような、そういう重いものや行き過ぎのものは直そうということで一般的な方針を決めて、各省がそれぞれその指示に従って行い始めているということで、私は妥当な政策であると思っております。特に、最近住宅建設が非常に鈍ってきておりますですね。そういうものの中には、一面には、そういう公共負担が重過ぎる、そのために住宅単価が非常に高くなって、一戸建てに何万円ぶっかけるとか、何十万円ぶっかけなければ家ができないというような形になってきているという現象もありまして、その辺は行き過ぎを是正するのが正しいと考えてもおるわけであります。
  132. 細谷治嘉

    ○細谷委員 どうも総理のお言葉を聞きますと、住宅建設、特に宅地開発が進まないのは要綱に責任がある、それがすべてである。本当のところ、住宅政策が進まないのは、現実に予算もなかなか消化できないのは、もっとほかのところにあるのではないですか。まあその辺の議論はきょうはおいておきますけれども……。  これは、千百ぐらいの市町村が宅地開発要綱で余分なものを何でもかんでも取っちゃう、そんなむちゃくちゃなことはしていませんよ、行き過ぎは若干あったかもしれませんけれども。五十一年度建設白書でそれを評価しているわけですよ。現に、ある新聞には「自治体の宅地規制緩和」、総会屋とか右翼から緩和しろ、緩和しろという動きが現実に出てきている。私はその新聞を持っていますよ。八月二十九日の新聞です。こういうことです。言ってみますと、どうも建設省がバックになって、そして業者と総会屋と右翼を同盟軍にして自治体いじめにかかっておる。こういうことでは宅地開発は進みませんよ。どうですか。
  133. 内海英男

    ○内海国務大臣 宅地開発指導要綱を決めておる市と町の数は全国で千七つございますが、その中で行き過ぎがあるというものについて直してもらいたいということでございまして、行き過ぎのないところへ、こうと言う気持ちはございません。また、先生の御指摘のような問題がありましたら、そういう誤解のないように今後ともよく指導してまいりたい、こう考えております。
  134. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はこの新聞記事をコピーして持ってきておるのですから、そこにあったことは間違いないでしょう。私のところでも、福岡県の福岡の周辺ではやはりそういうものが出てきておるわけですよ。そういうことでは困るわけですね。  そこで、その問題について少し議論をしてみたいと思います。  大臣、おたくの方に建設省の総務審議官吉田さんという人がおる。吉田さんが日本経済新聞八月二十七日付に「規制緩和をてこに円滑な都市づくり」という題名の論文を書いております。その論文のうち私が注目しておる点は、こう書いてある。「自治体負担増の懸念はない」、いわゆる建設省がやっておる行政指導によって自治体の負担は多くならぬ。いままでは余分なものを取っておって、いかにも猫ばばを決めておったように言っておるのですな。そんなばかなことはないでしょう。そして、どういうふうに書いてあるかと言うと、「今回の宅地開発促進のための方策の中心は、宅地開発指導要綱の行き過ぎ是正の措置方針を決めたことである。宅地開発指導要綱については、大きくいって次の二つの側面について問題が指摘されている。一つは「公共公益施設の整備水準」であり、もう一つは「公共公益施設の整備に当たっての負担区分」である。今回の措置方針では、「負担区分」については地方財政上の問題として、なお詰めるべきところが多いので、触れないことにし、「公共公益施設の整備水準」を主なテーマとした。」地方の負担については触れないこととし、まだこれは詰めましょう――これは後で自治省に質問します。今度のものは公共公益施設の整備水準だといったように、要綱よりもはるかに水準の低いところで、業者の要求と全く同じところに水準を合わして言っておるわけでありますけれども、自治体の負担増はない、そうしてこの方策が完璧なものなんだということを主張なさっております。  この論文をお読みになったか。あるいは、大臣でありますから、それと全く同感か、支持する、こういうことなんですか、お聞きしたい。
  135. 内海英男

    ○内海国務大臣 不明にしてまだ読んでおりませんので、また審議官からも話は聞いておりませんので、後でよく聞いておきます。
  136. 細谷治嘉

    ○細谷委員 審議官とはゆっくり討論いたしますが、大臣、やはり新聞にこれだけのスペースで書いておるんですよ。ですけれども大臣は知悉しない。(「勉強不足だよ」と呼ぶ者あり)勉強不足だとは申しません。下の人が書いたら、こういうことを書きました、大臣ちょっと頭に置いてくれというぐらいのコンートロールはやはり必要じゃないでしょうか。  そこで、自治大臣、お尋ねいたしますが、この二の負担区分、言ってみますと、開発業者と自治体がどういう負担区分をするのかということについては詰めておらぬけれどもということであります。うまくいくかどうかは、あなたの方に責任が来ているのですよ。これについてどういう対応をしているのですか。あなたの方は、言ってみますと、建設省と同じように行政指導を始めておりますね。さすがにという言葉はいかぬのか、あるいは不敏にしてという言葉が適切か知りませんけれども、建設省と同じペースで権力的には進んでおらぬようでありますけれども、世間では、建設、自治両省がやっている、こう言わざるを得ないような姿勢なんですよ。そうだとするならば、負担区分の問題は解決済み、こういうことなんですか。いかがですか。
  137. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いままでこの開発指導要綱で進んできたわけですけれども、その間にやはり一部非常に過大な公共公益施設を要求されるという面もある、こういうことであり、これはいろいろな調査、建設省の調査もございます。結局、全体の宅地開発の中でそういう公益公共施設の占める面積が余りに大きくなってきますと地価にはね返る、宅地の値段にはね返ります。ですから、適切な公共公益施設を整備するということが必要であろう。そこで建設省は今回、その施設をする上についての基準をお示しになった。しかし、これは地域によりまして、また周囲の環境によりましていろいろ違うと私は思うのです。あくまでもこれは一つの基準としてお示しになったものであろう、こう思っております。しかし、何らかの基準を示して、その基準にのっとった公共公益施設を整備してもらうということは妥当な線だ、私はこう思っております。  そこで、今度は地方財政の負担ということになるわけでございますが、宅地開発という問題は、これは国民経済上非常に重要な問題で、やはりそういう方向は国の政策としても進めていかなければならない。一方、地方財政の負担というものがやたらとかかってくるということになれば地方はそういう開発を歓迎しない、こういうことになってきますと、宅地開発は進まないということになる。そこのところの両方を考えながら、接点を求めながら宅地開発を地方公共団体も進めていく体制をやはりこしらえていくということでなければならないと思います。  そこで、地方財政の負担ということでございますが、これは私どもの方もまだいま省内にこれの検討委員会をつくって、これはいろいろなケースがございますから、いろいろな場合がありますから、それらについていま地方財政のあり方を検討中ではございます。しかし、市町村としてはやはり乱開発になってはいけませんし、また同時に、市町村の負担がやたらとふえるということだけは、これは地方財政の立場から負担し切れないという面も確かにありますので、そういう問題も含めていまなお検討をしておる、こういうことでございます。
  138. 細谷治嘉

    ○細谷委員 あなたの方は、去年の十月二十七日に建設省の計画局長と自治大臣官房長と連名でこの「宅地開発指導要綱等の運用について」ということであって、建設省のレベルダウンに従えとは書いてありませんけれども、隣接市町村との均衡においてその水準を考えながら適正な負担を求めていきなさい、結果は同じなんですよ。文書がある、美辞麗句を並べただけなんですよ。私が聞いているのは、そうなった通達を出した以上、あなたの方では財政的な責任というのは負えるような体制になっているんでしょう。ならなければおかしいですよ。ただ文書で書いたんじゃ責任持てませんよ。どうですか。     〔海部委員長代理退席、江藤委員長代理着席〕
  139. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 それぞれの市町村の中にそういう宅地開発ができて、そして、やはり学校その他の公益施設は当然に住民が来れば必要である、あるいは水道は引かなければならないとか、そういういろいろな公益公共施設は、どうしてもやはり住民がそこにふえれば地方公共団体としてはやらなければならないということだと思います。その場合の負担は、私はやはり地方財政としてはある程度はしのぐ線もあるだろうと思う。しかし、大規模の団地ができてそれが非常に大きな負担を地方財政に負わせるということにならないように、それは考えていかなければならない、こういうことでございます。去年の十月の両省の通牒は、今回建設省が出した基準というところまでは、そういうことをまだ申しておりません。だけれども方向としましてはそういう宅地開発が全体として進むような方向、あるいは地方公共団体でそういう経理あるいは財政という立場から見て適切な措置をとっていきなさい、こういうことを両省の通牒で去年十月に言ったと、私はこう思っておるわけであります。
  140. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治大臣、私の質問に答えてないのですよ。財政的な対応がありますかと、これについて一つも答えてない。  私は教えてあげましょうか。あなたの方では、地方税法という法律の七百三条の三に宅地開発税という税金があるでしょう。目的税ですよ。これを生かしておらないのですよ。四十四年ですか、法律はつくったまま、一銭も税金が入ってないのですよ。言ってみますと、財政的な手当ては、法律ではそういう税目ができておるにかかわらず収入を確保しようとしないで、建設省に追随して宅地開発しろ、宅地開発しろ、こういうことを言っている。  総理大臣、こういう法律が四十四年にできているのですよ。そうして政令なり要綱もできておるのですけれども、どういうわけか知りませんけれども進まないのですね。聞くところによりますと、建設省が余りこの税金に賛成せぬものだから余り進まないのだ、取れないのだ、こういう説もあるのですが、その真偽のほどは私は別に問うているのじゃない。この税金の主管省はあなたのところですから、あなたのところが十年以上も、税金をつくって全く育てようとしない、捨て子をやっている、これはどういうわけですか。
  141. 関根則之

    ○関根政府委員 御指摘をいただきましたように、昭和四十四年の地方税法の改正にまりまして、市町村は目的税といたしまして「宅地開発税を課することができる。」こういう法律ができたわけでございます。ただ問題は、この宅地開発税を課することができる場合と申しますのは、市街化区域におきまして宅地でないものから宅地を造成する、こういうときに限定をされておる。したがって、市街化調整区域等におきます開発等をやる場合には適用されないというような問題もございます。  また、使用目的もわりかし厳しく限定されておりまして、直接必要となる公共施設だけということでございますから、たとえば道路とか排水路だとか、そういったものに限定される。関連いたしまして必要になる学校でありますとか保育所でありますとか、そういった一般の公共施設の財源に充当することができない、こういった制約等がございまして、実際問題として人口急増市町村等においてはなかなかそれだけでは十分でないというような問題がございまして、宅地開発指導要綱というやり方でその地域地域の実情に応じた対策をとっているものと、したがって、そういう実情がございますので、私どもといたしましては、できるだけ条件の合う市町村につきましては、この税法、せっかくあるのですから、大いに活用すべきであるという指導もしてきているところでございますが、残念ながら、御指摘いただきましたように、まだ一つも取っているところがないという現状にあるわけでございます。
  142. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この四十四年にできました宅地開発税に関して政令、省令、こういうものが出ておるのですよ。それを読みますと、建設大臣、この公共施設については「幅員十二メートル未満の道路」、こうなっている。これは四十四年ごろこの法律ができるときに、建設省も了承を得て十二メーター、それ以下というのが基準になっているのです。あなたの方は今度は六メーター、ですからものすごいレベルダウンだ。六メーターと十二メーターの道路というのは、大変なレベルダウンだ。税務局長、あなたそのころ局長じゃなかったけれども、このとき、税率として「一平方メートル当たり五百円を超えないようにすることを目途とするものである。」当時の金額で、四十三年ぐらいの金額で一平方メーター五百円の開発税をもらっても間尺に合わぬというのが自治体の状況であった。当時の私の記憶では、言ってみますと、人口が急増している市町村では、人口がふえたことによって、ふえた人たちが納めてくれるであろう税金収入とふえたことによる財政需要というのはおおよそ一対三か一対四だ。言ってみますと、人口がふえたために入ってくる税金の三倍か四倍ぐらいの財政需要がかかるというのが当時あったのです。それで五百円ということをどうも建設省と自治省で合意したらしいが、そんなことで開発税を設けて五百円をもらうよりも、要綱で業者と協議をしてやった方が対応できるというのがどうも開発要綱行政ができた原因の一つだ、こう言われているわけですよ。大臣、そう思いませんか。その辺の状況は言えないということじゃないでしょう、歴史に基づいて行政は進んでいるのですから。
  143. 関根則之

    ○関根政府委員 確かに宅地造成等が積極的に行われております市町村の対応というのは非常にピンからキリまであるわけでございます。比較的財政需要を伴わないで開発が行われ得るようなところもあるでしょうし、また、小さな町に非常に大きな団地などが出てくるということになりますと、それは大変な財政需要を要するということになる。いろいろな状況があると思います。  そういう中で宅地開発税という一つの税として権力的に一定の財源を徴収するというやり方になりますと、余り弾力的に運営できるような税を仕組むということは税そのものの性質上非常にむずかしい面もあるわけでございます。やはり一定水準で全国的な統一のある線を出していかざるを得ないというようなことから、税率等につきましても、御指摘をいただきましたように、一応一平米五百円を標準とするというような指導もしているわけでございます。したがって、団体の中には、そういった程度の財政負担によりましても何とかこなせる、そういう条件に適合するような町村があると私ども考えているわけでございます。しかし、だからといいまして、すべての宅地開発が行われる市町村がこの五百円で一律に間に合うということにはならないだろう。その辺のところを地域の実情に応じまして、税だけではどうにもならぬという団体が宅地開発要綱に移っていったといいますか、それを採用する方向へ動いていったということは確かにあったというふうに考えております。
  144. 細谷治嘉

    ○細谷委員 先ほど税務局長は、この法律は課税することができるというのですからしなくてもいいんだ、大体こんな法律国会が議決して税をつくったのがおかしいんだ、こんな言い分です。これは政府提案ですよ。あなたの方で提案しておいて、議員立法じゃないですよ、それにもかかわらず、今日まで十何年間もほっておいて、いまだにまだめどもつけない。そして、これは課税することができるということでありますから地方団体が悪いんです、国会政府も悪いんじゃないんだ、こういう言い分は通りませんよ。  そこで自治大臣、どうするのですか。建設省から突きつけられておるのですよ。負担区分は自治省との問題である、こう言っているのですから。どうするのですか。
  145. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いままでわりあい宅地開発の行われているところは、地方の比較的財政力の弱い市町村で行われる。しかも、そこで大規模開発が行われるということになればそれ相当の公益公共施設はつくらなければならない。その場合に、いまいろいろお話がありました、確かに開発税というものが一つございますけれども、税となりますとおのずと限度もある。そこで、少し言葉は悪いかもしれませんが、緊急避難的に指導開発要綱というものができてきたのではなかったか。そういうことによって、先ほどもお話しのとおり、入ってきた人たちからいただく税金は比較的少なく、また公共施設をしなければならぬ経費は莫大にかかる、そういう場合の応急的な市町村の知恵であった、こう私は思うのです。  しかし、今日はそれがやや行き過ぎのものもあった。それで建設省も今度基準を示されて、妥当な基準で公共施設もつくっていくということになってきまして、私は、全体として国民経済的に宅地開発が進むような方向で自治省としても考えていかなければならない、こう思っておるわけであります。
  146. 細谷治嘉

    ○細谷委員 考えていかなければならぬ、だけれども具体性がない。古い話でありますけれども、四十四年にせっかく税をつくったわけですから、国会がつくったものも政府考えたことも産んだらおれは知らぬよというのは、これは総理が言う霊長動物のやることじゃありませんよ。ひとつ早急に、建設省からもげたを預けられているのですから、財政的にどうするのか、これは、大蔵大臣ここへ来ておりますし、総理大臣もよく聞いているわけですから、ひとつ検討して、手ぶらで建設大臣のしりをつついたっていかぬですよ。いいですか。お答えください。
  147. 関根則之

    ○関根政府委員 宅地開発税を含めまして、宅地開発に関連いたしました問題につきまして広く検討をし、必要な対策について手を打っていこうという趣旨から宅地問題検討委員会というものを自治省の中に設けまして、いろいろな角度からの検討を始めているところでございます。もちろん、その中には、宅地開発税の具体的な適用の問題、あるいはそれが実行されない原因と申しますか、隘路がどこにあるのだ、それを打開するためにはどういった改正といいますか、手直しが必要であるとすればどんなところを直すべきなのか、そういった問題も含めまして現在検討いたしております。その会には、地方団体の代表の方々にも入っていただいております。全国知事会でありますとか、町村会でありますとか、市長会にも入っていただいておると思いますが、そういった団体の意見も聞きながら、私どもとしては具体的に検討をいま進めておるところでございます。そういう中で宅地開発税の活用の方策等につきましても考えていきたいというふうに考えております。
  148. 細谷治嘉

    ○細谷委員 持ち時間があと少なくなりましたから、これはこの辺にいたしまして、総理が推進しております公務員住宅の改築による超高層住宅の構想とかあるいは国鉄の土地の有効利用とか、これは結構なことでありますけれども、ちょうど総理がおりまして、これは週刊誌の記事でちょっと恐縮でございますけれども民間に国公有地を活用させる場合に、新利権ということをめぐって過去にいろいろと問題が起こったことがございます。そういう点を心配してこの週刊誌の記事になっております。こういう点について十分気をつけなければならぬ、配慮しなければならぬと思うのですけれども総理、いかがでしょうか。
  149. 内海英男

    ○内海国務大臣 国公有地の利用による民間活力導入といったような問題につきましては、建設省におきましては、事務次富を長といたしまして民間活力導入の検討委員会というものを設けまして、慎重に対処するようにいま鋭意検討いたしておるところでございます。
  150. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私の予定では、けさ減税問題について記事が出ておりましたので、その辺もちょっと質問したいのでありますけれども、一言、これは自治大臣に、けさの新聞によりますと、大蔵省構想として、所得税で七千億、住民税で三千億、合わせて一兆円、その一兆円が六対四なのか七対三なのかは決まっておらぬけれども、大体七対三ぐらい、こういうことで、よしあしは別といたしまして、財源問題で記事が書いてあるのですよ。ところが、三千億か四千億減税するという、一番問題は住民税が一般の人には過酷なのですが、それについては一言も書いてないのですよ。大体、減税問題については、住民税もやると言って、あなたも三千億だ、三千億だといろいろ言っているのですけれども、実際の中身については、新聞によりますと、あなたはつんぼ桟敷じゃないですか。具体的に検討しているのですか。あなたが検討しているのは、今年度にやってもらっちゃ困る、やるなら来年にしてくれと言っているだけじゃないですか。あと中身はないじゃないですか。その辺について答えてください。
  151. 関根則之

    ○関根政府委員 住民税の減税問題につきましては、所得税とあわせまして、現在政府の税制調査会におきまして御議論をいただいているところでございます。新聞記事にはいろいろな財源なり規模なりの問題が出てくることがたびたびございますけれども、税制調査会におきましてはまだ規模なり財源なりそこの具体的な議論の詰めまでは入っていないというふうに私どもは承知しているところでございます。もちろん事務的に私どもに課せられた責任といたしましていろいろな内部的な検討はいたしておりますけれども、正規のそういう方針としての議論の詰めというものはまだなされていない段階でございます。
  152. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣、このけさの新聞については、全く煙にも値しない、こういうことなんですか。火のないところに煙は立たぬ、こう言っていますが、出ています。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私もけさ何かその種の記事を見ました。毎日何か出ております。私がここで答弁したことにつきましても、各紙とも大体それぞれが違ったように解釈して出ております。私に対して、記者会見のときに、言語は明瞭であるが意味が不明であるという批判も受けました。したがって、気をつけながら発言もしておりますが、原則的には、いま自治省の関根局長からもお答えがありましたように、いまお願いして鋭意審議していただいているところでございますので、規模、中身、時期等については審議の経過の中で私どもにサゼスチョンをいただいておるというようなものは全くございません。ただ、一回ここでもお答えいたしましたのは、事務当局としてはどんな事態があってもそれに対応する勉強だけは並行して進めておりなさいよ、これは申しておるところでございますけれども、いろいろのことがよく記事に書かれておりますが、仮に煙が立ったとすれば、それは砂ぼこりであって、火はなかったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  154. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これはこの委員会でもずいぶん時間をかけて議論されておりますから、きょうは時間がありませんからこれ以上言いません。  そこで、自治大臣、さっき税務局長答弁させてあなた一言もしゃべらない。今度の質問に対してはしゃべってください。  国税の租税特別措置あるいは地方税における非課税規定ということについては年々問題になっておりまして、そして、ここに大蔵大臣おりますから、褒めるわけじゃありませんけれども、自治大臣よりもいいということで評価いたします。それはどういうことかといいますと、ちょっと非課税規定と特別措置の整理合理化状況というのを年度別に追うてみますと、五十一年に大蔵省の方の特別措置では四百七十三億円の整理による増収があったのですよ。自治省の地方税においては二十四億円。言ってみますと、国民が納める税金というのは七対三ですが、七対三ぐらいの割合になっているかというと、そうじゃないのです。十分の一にも足らぬですよ。一番多く租税特別措置の整理をやったのは幾らかというと、千四十八億円というのが五十四年度ですよ。ところが、そのときは地方税では十六億円です。五十八年度ではどうかといいますと、租税特別措置は整理が行われて、その結果九十九億円の増収。地方税は二億円ですよ。これを見ますと、自治省は一体何をしておった、眠っておったのじゃないか、こう数字だけからは言われます。私は結果だけを議論しておるわけじゃありませんけれども、その結果から推定すると、七対三というのが原則的な比率でありますけれども、それとは全く合わない。ですから、大体自治省はかやの外に出されているのか、あるいは関心がないのか、どっちかです。いかがですか。
  155. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 非課税措置につきましては、地方税の方も、決して既得権にならないように、あるいは慢性化しないようにという見地で毎年見直しはそれぞれしてきておるつもりなんです。しかし、国税と地方税というのはそれぞれ性質が違いますから、ただ単純な比率だけでも必ずしも比較にはならないと私は思うのです。ただ、私どももそういう努力は常に継続をしてやっておる、いまなおそういう非課税措置についての検討は常にやっておるわけです。具体的には税務局長から御答弁させます。
  156. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は結果論ばかり言っているわけじゃありませんで、努力をしているだろうということは思っておりますけれども、毎年毎年いま申し上げた結果ですよ。五十一年から五十八年までの実績を私は持っているのです。努力したけれども効果が上がりませんでした、これを十年以上続けては、ちょっとやはり問題だと思うのですよ。それだけに、ひとつ大蔵大臣、自治省の方がかやの外に置かれているのならば、あるいは気がつかぬでおるならば、一生懸命逆立ちしているけれども力が届かぬというようなことがあるのなら、先ほどの建設大臣と同じに引っ張っていってくれませんか。どうですか。
  157. 竹下登

    ○竹下国務大臣 税制調査会は、大蔵省の諮問機関でもなく、これは内閣の諮問機関でございます。総理府で所管をされておって、国税部分は私どもが事務方を務め、地方税部分は自治省でお務めになっておるわけであります。いま細谷委員の御意見を交えての御質問でございますが、地方税と国税はその体系の上においてもさまざまな相違がございますので、そしてまた国を支える車の両輪という役割りを果たしておりますので、そこにリードするとかリードされるとかということはなく、お互い相互を調和して一生懸命務めておるということであります。
  158. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いま自治大臣についてはどうも失敬なことを言うなといっておしかりをいただくかもしらぬけれども、私はそこまでせっぱ詰まった気持ちで申し上げておるということを篤と頭の中に入れておいていただきたい、こう思います。  そこで、もう余り時間がございませんから、この委員会冒頭、私ども安井委員から、不公平税制の最たるものの一つである産業用電気についての非課税問題というものが出ました。私もよく申し上げている点でありますけれども、一言申し上げておきたいと思います。  電気税の非課税は、五十八年度で千百八十億が非課税で減税になっていると見積もられております。税率の特例、これは七十三億あります。合計いたしまして千二百五十三億円、電気税全体が四千四百三十六億円でありますから、その二八・二%が非課税なのですよ。自治省に聞いてみましたら、これは市町村税でありますから、全国で一番非課税規定で税金が取れないでおる市町村の非課税の率は幾らかと言ったら、七〇%だと言っています。五〇%以上のところもたくさんあるのですよ。一つの市町村税、独立税があって、その五〇%以上も電気の税金が取れないというのはおかしいのじゃないでしょうか。臨調答申によりますと、市町村税で基準税率が七五%というのが問題であり、交付税計算上これをもっと上げろ、標準行政をやればいいのだとなっている。臨調の方々は、交付税の基準税収というものと地方団体の標準行政というのを取り間違えていますよ。これはきょうは議論する時間がありませんから言いませんけれども。そのうちの二八%、ある市町村では七〇%も産業用電気で非課税で、使った電気の三〇%しか入ってこないということになりますと、これは問題ですよ。手直ししなければなりません。総理大臣、どうお考えですか。何といったって程度が過ぎるですわ。
  159. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 電気税の非課税問題というのは、だんだんに項目は減らしてきております。減ってくるにつれましてだんだんむずかしいものが残ってくるというのは当然のことです。これは生産費コストの中で電気料の占める比率が五%という一つの基準があります。それらの産業は日本の重要な基幹産業がほとんどであります。また、いま現在から見ますといわゆる構造不況産業と言われるものであります。一つは政治上考慮しなければならぬ問題点は、コストが上がってまいりますれば国民経済的にもやはり影響が出てくるであろう、そういう日本の基幹産業がほとんどでありますから、そういう問題も考えてみなければならない。しかし、確かに御指摘のように、いま地方税の中の非課税の中でこれが一番問題点だという認識は私は持っておる。だから、今後とも、経済の状況をよく考えながら、この非課税措置についての是正、あるいはその項目を減らしていくという方向でその努力をしていきたい。決して慢性化したり、既得権ではないよという考えでやっていきたいと思います。
  160. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣は、いや毎年毎年努力してきた、こうおっしゃいます。努力したことは認めます。電気税の例をとりますと、五十一年度では、非課税は八件整理しております。八件整理したけれども、税収は一億しかふえていないのです。五十二年度は七件整理しました。そして税金は二億しかふえていない。五十三年度は四件整理しました。たった一億円です。五十四年度は三件整理しました。億の単位で〇・何がし、何千万ということです。五十五年度も同断であります。五十八年度は一件整理しました。一億円です。件数は百二十件ばかりあって、現在八十件ぐらいで、確かに件数は減りました。件数は減りましたけれども、税収に関係のないいわば実のないところばかり削っているわけですよ。こんなことならだれだってできますよ。ですからあなたの言うことは実がない。これはひとつ、二八・二%というのは電気税の非課税分が占めているわけですから、せめて平均を超したものについては――大体地方税について国の産業政策を及ぼすということは間違いですよ。しかし、激変緩和という意味において平均を超したところには何らかやらなければ、地方が国税からの影響を遮断してくれと血の叫びをしているのはあたりまえだと思うのですよ。どうですか。
  161. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 非課税措置の中では、ただいま申し上げたように、一番問題点であるという問題意識は十分に持っていますから、今後ともいまお話しのような中身に触れてやっていく。しかし、その場合に、やはり全体の産業政策あるいは国民経済という観点も考えなければならない。それらの調和点を見出しながら今後の措置を考えていこう、こう思っております。
  162. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がありませんから、あと二点やりたかったわけですが、お医者さんの社会保険診療報酬の所得税における七二%というのは、説調の長い間の議論で手直しが行われた。不公平税制の手直し、完璧ということではありません。けれども手直しされました。そうだとするならば、都道府県の税である事業税というのは、七二%必要経費で落とすということはないのですよ。収入は全部非課税なのですよ、お医者さんは。産婆さんの事業については事業税がかかるわけです。お医者さんについては入ってきた金は全部非課税なのです。これは不公平ではないでしょうか。不公平税制の最たるものです。しかも七二%という社会保険診療報酬の所得については変えたのですから、都道府県の事業税については早急に手直しすること、これはいままでの七二%の所得より不公平の度合いにおいてははるかに悪いわけですから、これは手直しすべきだと私は思っております。これはぜひひとつあなたの政治生命をかけてやっていただきたいと思うのです。それは事業税についてはほかのものがありますよ。報道関係はどうなのだとかいろいろあります。けれども、お医者さんの所得税については手直しをしたという歴史がある。それならば府県税である事業税については手直ししろという意見が出るのはあたりまえだ。そういう主張は長年あります。これに取り組む意思があるかどうかお聞きして、一、二分残っておりますけれども、私の質問を終わります。
  163. 関根則之

    ○関根政府委員 事業税につきましては、御指摘をいただきましたように、社会保険診療報酬につきまして収入並びに経費として計上しない、したがって課税ができないというような形になっているわけでございます。もちろんのことではございますが、自由診療部分につきましては、当然事業税の課税対象になっておるということでございます。この問題につきましては、先生十分御承知のとおりでございますけれども、いろいろの経緯がございまして、昭和二十七年に国会におきます地方税法の修正という形でできた経緯もあるわけでございます。そういった経緯も踏まえながら、しかし私どもといたしましては非課税と特別措置の整理合理化の一環といたしまして十分検討していただかなければならないという考え方を持っておりますので、現在行われております税制調査会におきましても、私どもから説明を申し上げ、御検討をいただいているところでございます。
  164. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これは長い間の懸案でありますし、不公平という物差しで見ますとこれ以上のものはないわけですから、これはひとつぜひ来年度から手直しをしていただきたい。大臣に篤と申し上げておきたいと思います。  もう一つあるのです。これもまた、私は、税制上から問題があると思うのです。事業所税というのがあるのです。これは昭和五十年度に人口五十万以上、四十九万のところは取っちゃいかぬよという法律ができ上がりました。そうして、五十一年度に人口三十万以上のところから取れるようになりました。二十九万のところは取っちゃいかぬよと、人口で区別がつきました、人口だけですよ。都市の構造からくる需要とかなんとかというのは全く関心がない。しかし、つらつら考えるに、日本列島にある法人で人口の多いところにあるところは事業所税を納めて、人口の二十五万のところでは事業所税を納めないでいいというたてまえというのは、法のもとに平等という点からいって問題があると思うのですよ。これは手直したらいかがかと思う。  それで、私の手元にある資料では、仮に二十万から――五十万から三十万じゃありませんよ。二十万から三十万人の都市で、さらに県庁所在地、こういうところを見ますと、おおよそ対象から考えて三百億円程度の税になるのではないか。税を取るばかりが能だとは思っておりませんけれども、不公平は問題ですから直していただきたい。  この点について答えていただいて、私は五分まであるそうですから、経済企画庁長官のところで出したものも加えて財政問題を聞きたいと思いましたけれども、これは、いずれまた次の機会にやることにいたしまして、この二点だけお答えいただきたいと思います。
  165. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いまの事業所税の問題は、これはいつも税制調査会で毎年のように二十万にしたらどうかという意見もいろいろ出るわけでございまして、いろいろ議論の結果、まだそれは実現を見ていない。しかし、ことしの税制調査会でも、やはりこの問題も論議をしていただこう、こう思っております。
  166. 細谷治嘉

    ○細谷委員 終わります。
  167. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 これにて細谷君の質疑は終了いたしました。  次に、正木良明君。
  168. 正木良明

    ○正木委員 もうすでに、この委員会では、わが党から二名の委員が克明詳細にわたって御質問を申し上げました。  特に、鈴切委員は、三時間二十分をかけて御質問を申し上げておりますので、重複を避けて申し上げてみたいと思います。  一番大きな目玉になっている法律が二つあるわけですね。国家行政組織法の改正案とそれから総務庁設置法という非常に大きな法案がある。この国家行政組織法のわれわれが一番反対している理由は、やはり何といっても行政組織の中での局以下、その組織の問題について政令委任するということは国会の審議権を奪うことになるということが、これはずっと論議されてきた中では一番大きな焦点の問題だと私は思うのですね。  ところが、政府の側としては、これから機動的、弾力的な行政改革をやっていくためにはどうしてもそういう問題については、百二十八という上限を決めながらも、政府考え方に任していただきたいという主張がある。これは一面、社会の進展に伴ってある程度わからないわけはないわけです。しかし、どうしてもわれわれとしてはここで価値判断をしなければならぬので、そういう行政改革を進めていくために機動的、弾力的な権限というものを行政府に委任をしていくということがもたらすメリット、プラスと、国会が固有の審議権を手放してしまうということのデメリット、逆に言えば行政組織に対して国会の審議権、議決権というものを留保しておくことのメリット、これの比較考量の上においてどちらの方が国民のためになるのか、国家の将来のためにいいのかということを考えていかなければいかぬと思うのです。これは言い合ってみても恐らく平行線になるだろうと思う。  そこで、これは長官によく考えていただきたいのですが、私はこう思うのですよ。一回やらしてみよう。だから、局以下の行政組織の問題については、政府がどれだけ努力をして行政改革に取り組んで効果を上げていくかということについては一回任してみよう、しかし、一応その期間を一定期間、私は五年くらいと思っておりますが、五年くらい一回任してみて、そうしてその結果見直すという考え方に立ったらどうだろうかというふうに考えてみたわけです。  このことは、確かに審議権を奪われるのですが、同時に私はこういうことを心配するのです。たとえば政令委任をしてしまった後われわれが考えているほど行政改革が進まなかったときに、いままでなら国会の側から議員提案という形で行政改革の、要するに行政組織の削減ということを法律で要求することができる。ところが、政令委任をしてしまいますとそれすら奪われてしまうということになってしまうわけです。これは全く政府の恣意的な考え方に任せてしまうわけでありますから、まあ、一回おやりになってごらんなさい、あなた方が機動的、弾力的に行政改革を進めていくためには任せていただきたいと言うなら任せてあげましょう、しかし、それは一定期間を限って見直すということでそれを許してはどうだろうかという考え方があるわけです。特に臨調からも、可能な限りサンセット方式というものを導入すべきである、一定の年限を限って見直すということをしょっちゅう、特に補助金だとかそういう問題について言っているわけでありますが、それを援用してこの国家行政組織法の問題についてもそういう形はとれないものだろうか、こういうふうに考えたわけなんで、長官、どうですか。
  169. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私どもは、もうたびたびこの委員会において申し述べてまいりましたように、行政需要の変化に対応し、あくまでも弾力的、機動的に、大臣の補佐機関でございますから、局の設置廃合について政令でお任せいただきたい、こういうふうにお願いをしておるわけでございます。  そこで、五年後見直すというお尋ねでございますが、いままでのよその立法例等を見ますというと、具体的な政策についての適否、それを見直すという、再検討と申しますか、そういう条項を設けた規定は、私はよそにあると思います。しかしながら、法律で決めることを政令に御一任願いたい、その政令委任というそのこと自体を見直すということになりますと大変な、私はある意味からいうと混乱が起こるのではないか、かように考えておりますし、しかもまた、国家行政組織法のような国の行政組織の基本を定める基本法、基準法、こういうものについて、たとえば五年を限ってそれを見直すということは、基本法であり基準法である国家行政組織法ではなじまない、私はかように考えます。具体的な政策の適否について、たとえば補助金やその他の問題について、五年間は補助金を出しましょう、こういう具体的な政策について見直すということは私は可能だと思いますが、政令委任という事項を見直すということは、かえって大変な混乱を起こしますし、できないのではないか。そういう例もいままでございませんし、私はできない問題じゃないだろうか、かように考えております。
  170. 正木良明

    ○正木委員 しかし、政府はお任せいただきたい、お任せいただきたいということだけなのですよね、これは。そして、その結果についてはどういうふうな処置をとるかといえば、官報で公示するだけでしょう。したがって、私たちはもうこの問題については、一たん政令委任をしてしまった後は物を言うチャンスというのはほとんどないわけ。そうすると、国会のいままでのチェック機能というものがゼロに近いような状況になってしまう法律をいま審議して、これを通してもらいたいというふうにおっしゃっているわけです。私たちは、行政改革については基本的に賛成でございますから、これを推進していく方策なら何とでも手助けしたいという気持ちはありますよ。しかし、みずから国会のチェック機能を放棄するというような形でこの問題が推移していく。もし見直すというチャンスをこの法律の中でつくるということでなければ、もうあと野放しみたいになってしまうおそれを非常に危惧するわけです。その点、何かほかに救済方法ありますか。
  171. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私から申し上げるのもどうかと思いますが、国会行政あるいは行政機構に対するコントロールというのが十分あると私は考えておりまから、国会が持っておる国政調査権の範囲において御審議をいただく、これは私は自由に濶達にできると思います。  それからもう一つは、予算書におきましてはいつも、この省には幾つの局、八つの局、七つの局、こういうことをはっきり書いて予算審議をお願いいたしておるわけでございますから、国政調査権なりあるいは予算審議の過程において十分御審議をいただける。これによって、現在国会なり政党というものの行政行政機構に対するコントロールの機能というものは私は非常に強くなってきておると思います。戦後国家行政組織法ができたとき以上に強くコントロール機能をお持ちになっていただいていると私は思っておりますので、国政調査権なりあるいは予算審議の過程において御審議は十分いただける問題だと考えておる次第でございます。
  172. 正木良明

    ○正木委員 確かに、国政調査権の行使の問題であるとか予算の審議の上でこの問題をコントロールできるという可能性はあると思うのですね。しかし、コントロールできる手段というのはできるだけたくさん持っておる方がいいわけなのですね。だから、さらにそういうコントロールの手段というものを国会に残しておくということが必要だろうと思いますから、サンセット方式の問題については後で法制局長官に御意見をお伺いいたしますけれども、少なくともこの官報公示という問題を、国会へ具体的に報告するというような方策はとれませんか。
  173. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先般も公明党の鈴切委員からお尋ねございました。私の方は、国会をも含めて広く国民に知っていただくということがより適切であろうと思って官報公示という手続を規定しておるわけでございます。そこで私、政府側としては、この提案をいたしました以上はこれがやはり一番適当である、こう申し上げざるを得ないわけでございますが、国会報告義務を課したらどうだろうかというお尋ねが先般もございましたので、私の口からそれは結構です、修正には応じますということは申し上げることはできません、提案いたしました法律が適切であると思って提案しているわけでございますから、その点につきましては与野党で十分御審議をお願い申し上げたいのです、こう、鈴切委員でございましたか、お答えしたわけでございますから、そういうふうに御理解いただければありがたいと思います。政府が提案いたしましたこの際、私の口から、こうしてください、この方がいいでしょうとは言えませんね、これ。ひとつその点は御了承願いたいと思います。
  174. 正木良明

    ○正木委員 いや、相当明確におっしゃっておりますから了解をいたします。これはわれわれの政党間の折衝の問題で考えていきたいと思います。  先ほどの見直し問題について、法制局長官、法律の専門家の立場からどうでしょうか。
  175. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  先ほど齋藤長官の方から御答弁されました、ほとんどそのとおりでございますが、いわゆる再検討条項、見直し規定でございますね、これは、ある法律の規定によって実現しようとする具体的な政策内容を、その規定の施行後一定期間実施をしてみたところでその規定の是非について見直しをするというような規定を附則その他に置くという仕組み、これをいわゆる再検討条項と言っておりますけれども、これは先ほども齋藤長官言われておりましたように、たとえば補助金の交付の制度とか、あるいはまた石油の需給安定の関係でもそういう例もございますけれども、要するに具体的な政策の適否につきましてそのような再検討条項を設ける場合は間々ございます。ただ、政令委任規定そのものの適否を見直すとするような例は承知しておりません。  したがいまして、御質問のような見直し規定を設けることはきわめて異例な立法となるような感じがいたします。特に、国家行政組織法行政機関全体の組織のあり方の基準を定めた基準法でありますだけに、各省設置法にも影響するなどいろいろむずかしい問題があるように思われますが、いずれにしても結論的には国家行政組織法の所管である行政管理庁で御判断いただくべき問題である、かように考えております。
  176. 正木良明

    ○正木委員 要するに、いまの国会の権限が縮小されるということを国会自体が承認するか、それよりも行政府の権限を大きくした方が行政改革に役に立つかどうかということの接点がいまこの審議の中で争われているわけですね。私は法律の専門家でありませんから、その点は法律的にいろいろ反論はできませんけれども、少なくともこの国家行政組織法の改正案というものは、行政改革を進めやすいためにこうしてもらいたいということが政策的な主眼になる改正案だと私は思うのですね。  そうすると、それが一切われわれの手から奪われてしまうような形で委任されてしまう。その結果がどうもうまくいっていないようだ、それならば、国会が乗り出して法案を議員提出してこれをやらせようという手段に出ようとしても、もうそのときにはその手段が奪われてしまっているということになるから、したがって、やはり五年なら五年の見直しというような考え方がこの中に導入されているならば、それによって、政府もその結果というものについては今後毎年国会に報告してもらうことになるかもしれませんが、そのほかにやはり行政改革を責任を持って進めていくということについての努力目標が出てくるというふうに私は思うのですね。  そういう点で、私たちはこの問題については、先ほどの国会報告義務と同じように一回与野党でよく意見を詰めてみたいと思います。そのときはまたよろしくお願いいたします。  それでは次に、これは何回も御答弁を聞いておりますから、もう多くを聞きませんが、審議会ですね。これは審議会を法律設置のものと政令設置のものにそれぞれに分けたわけでありますけれども、これも確かにそのための幾つかの基準をおつくりになって、その基準に当てはまるもの、当てはまらないものでの振り分けをなさったのだろうと僕は思うのです。しかし、われわれの感じとして、どうしてもやはり法律設置のものが重くて、政令設置のものはそれよりもいささか軽いというような感じを持つわけだし、その内容は決してそういう軽重の存在するはずはないとお答えになるだろうと思いますが、国民の目から見ても、やはりそういうふうにどうしても、法律で設置をそのまま存続するものと政令に委任してしまうものとの違いというものについては軽重があるように判断されるのじゃないかというふうに思います。  たとえば、運輸省の運輸審議会というのは法律事項として残されるのですね。郵政省の郵政審議会というのは政令事項になってしまうわけです。両審議会の違いは、運輸審議会の委員国会の同意を必要とする点だろうというふうに思うわけですが、所掌する事務は両審議会ともきわめて重要な運輸行政とそれから郵政行政全般にわたっているわけであって、内容に関しては有用性から言えばほとんど差がないものだろうというふうに思っておるわけでありますけれども、そういうことも含めてこの二つの審議会が法律事項と政令事項に分かれたという理由を、長官どうでしょうか。
  177. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今回の審議会を法律と政令とにその設置根拠を分けました大体その内訳をまず申し上げてみたいと思いますが、総理府に置かれておりまする審議会の総数は二百十三、その二百十三のうち、なるべく審議会をよその省に、主たる事務を所掌する役所に移せるものは移そう、こういうふうに考えたわけでございますが、実体法に審議会を設けることについての法律の根拠を置いておりますものが百二十九でございます。その百二十九の実体法に根拠を置いているものの中には、もちろん国民的……(正木委員長官、それはもう何遍もお聞きしましてよくわかっております」と呼ぶ)いま簡単に申します。  それから二番目には、国会同意人事のものは法律で設置をしよう、その他の各省設置法等にあるものについてはひとつ政令に移そうということにしたわけでございますが、法律でつくるか政令でつくるか、審議会に軽重の差はないと私は考えておりますし、今回政令に移せるものにつきましても、従来総理府にあったわけでございますから当然総理大臣の任命とか、それから諮問に対する答申総理大臣が諮問をして総理大臣答申をする、こういうふうなことについては従来のとおりにいたしておるわけでございます。したがって、軽い重いということではなくして、国家行政組織法、今度の改正の、第八条の規定に従って大体そういうふうにふるい分けをしよう、こういうわけでございまして、軽重の差というものは全然ない。それからその運営についても従前と変更はしないという形になっておるわけでございます。
  178. 正木良明

    ○正木委員 新しく設置されるのは極力制限されていくだろうと思いますし、もうすでにあるものを法律事項と政令事項に分けているわけでありますから、現在存在するもので議論しなければいかぬだろうと思うのです。  そうすると、国会の同意なしに廃止することは、政令事項の場合は可能なんですね。たとえばいまの二つの審議会のほかにも税制調査会というのがありますね、政府に。法制審議会というのもありますね。それから米価審議会、これ皆政令事項に移されてしまうわけですが、これらはやはり、この性格とそれから審議会が持つ機能ということから考えますと非常に重要なものであって、政府が勝手につくったりつぶしたりできる性質のものとはおよそ違うような気がするのですがね。この点どうでしょうか。
  179. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いまお述べになりましたような米価審議会とかあるいは税制調査会とか、そういうものを政府がつぶそうなどということは絶対考えていないわけでございます。ただ審議会設置の国家行政組織法の基準に従ってそういうふうに分けたということにすぎない、こういうふうにお考えいただきまして、その間に軽重の差はないと思います。どの審議会でもそれぞれ専門事項についてはそれぞれの権威のある御審議を願うわけですから、どれが権威がない、どれが権威がある、そういう性質のものではない、かように私は考えております。
  180. 正木良明

    ○正木委員 私もそう思うのです。しかし、国家行政組織法で局以下の組織についての委任を求められている法律の改正案、これは行政改革を機動的、弾力的にやっていくために必要なんだという御説明ですよね。これは、肥大化を防いでいくということは、上限が決められているからこれ以上肥大化しないだろうと思いますけれども、ただ問題は、これをどんどん統合縮小してもらわなければいかぬのだけれども、これもやはり、これに伴って行われるところの審議会も当然これに対してメスが入れられて、そうして整理縮小されるという方向での行革をやりやすくするために政令委任ということになってくるのじゃないかと思うのですね、同じ精神が通っておるとするならば。そうすると、要するに国会がチェックしなくても、所管するところの各省であるとか総務庁であるとかが判断すれば廃止する方向になるのだと私は思うのですよね。これを廃止しなければ恐らく整理縮小とは言えないわけなんで、これは必要なものであるか、必要なものでないかということについて、それはごっちゃにして考えてはいかぬだろうと私は思いますけれども方向としてはそういうことになるのでしょう。やはり審議会も整理統合、縮小の方向整理なさるというお気持ちはあるのですか。
  181. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 一般的にはそういう考えもあるかもしれませんけれども、現在の段階では、現状のままで政令なり法律の事項に移すということにいたしたいと考えております。
  182. 正木良明

    ○正木委員 だって、整理縮小の機動的、弾力的運用のために政令委任するのですから、そういうことをする予定が全くないということになるなら政令委任する必要なんかないじゃないですか。
  183. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ですから、先ほども申しましたように、一般的に申しますれば、そういう考えはあると思います。しかし、現在の法律の提案のこのときに当たりましては、現状をそのままにして政令事項、法律事項というふうに書いたにすぎません、こう申し上げただけでございます。
  184. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、一般的に言って、整理縮小の方向を目指していくことは事実ですね、どれをなくすとか、これをなくすとかいうことは具体的に言えないにしても。どうでしょう。
  185. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 一般的に申しまして、審議会が全体を通じて二百十三というのは多過ぎるじゃないかということは一般的に言われている問題でございます。ですから、そういう方向というものは私はあると思いますが、現在の今回提案しておりまする法律につきましては、その設立区分を法律にするか政令にするかということの基準的な法律を提案したにすぎないということを申し上げているにすぎません。
  186. 正木良明

    ○正木委員 要するに、政令委任した意味をお伺いしているわけですよ。政令委任をするのは、機動的、弾力的な運用というものを行政の方に任されたならば行政改革が進みます、行政改革というのは、やはり整理縮小という一つの大きな方向で動いていかなければならぬ、その中には増減もあるでしょう、あるけれども、総体としては縮小されていくという方向でなければ行政改革の実は上がったとは言えないわけですから、その中の範疇に当然審議会は含まれるというふうに解釈してもいい、しかし、いまどれをやめるとかこれをやめるとかいうことは明言できない、そういうふうに受け取ってよろしいですか。
  187. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 そのとおり御理解いただきたいと思います。
  188. 正木良明

    ○正木委員 要するに、行政簡素合理化という問題に関しまして、税務行政の問題を、国と地方とある種の共通したものについては一元化できるような方向行政の簡素化ができないものだろうかというふうに考えるわけです。一つは、国税と地方税の税務調査、これは臨調も第三次答申で「国税、地方税の税務調査、資料提供等の協力連携を一層強化する等国、地方を通じ税務行政の効率化を図る。」ということを答申の中で言っています。また、「国税、地方税の徴収事務の総合化、効率化を検討する。」というふうにありますし、また、臨調の第二部会の報告、これは昨年の十二月に報告されておりますが、「省庁組織の整理・再編合理化について」という中で、「行政機構改革の課題」、省庁にまたがる行政課題への対応で、徴税機構大蔵省、自治省、それから国税、地方税の徴収事務のあり方を検討するというふうになっていますね。これは余り具体的に今回の問題としては提起されていないわけでございますけれども、この点についてはいろいろ検討なさっていると思いますが、どういうお考えでしょうか。
  189. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 徴税機構の一元化というのは、ずいぶん前から問題にされて、いろいろ検討も過去においてしたと思います。しかし、結論的に申せば、やはり国税と地方税というのはそれぞれ目的が違い、それぞれの体制でいまやっているわけでございますが、なかなか簡単には徴税機構の一元化ということにはいきそうにない、こういうのがいまの結論だということでございます。
  190. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。  国税と地方税の協力連携につきましては、かねがねから地方税当局と協議をいたしておりまして、地方税当局の格段な御協力をいただきまして、申告書の収受とかないしは資料の交換とかいろいろな面での協力を強化をいたしておるわけでございます。今後とも一層こういう点につきまして地方税御当局と協力を緊密にいたしまして努力をしてまいりたい、こういうことでございます。
  191. 正木良明

    ○正木委員 まあそれは何もかもというわけにはいかぬでしょう。それは非常に広範な課税調査の問題であるとか徴収事務がありますから、これは何もかも一緒にやるということにならぬだろうと思うけれども、先ほどちょっと私が申し上げました、できるだけ共通点のあるものについては一元化できるような方向を探ったらどうだという中に、土地の評価の問題があるわけですね。これは一つは国土庁がおやりになっている路線価格、要するに地価の公示制度の問題がある。それで大蔵では、要するに相続税関係で土地家屋の評価をなさる。そして自治省ではいわゆる固定資産税の評価というものをおやりになるわけです。こういうことで、国土庁は地価の公示というものをおやりになっているわけでありますけれども、これはどれぐらい人数がかかっていますか。職員数と土地の鑑定士、どれぐらいの予算
  192. 永田良雄

    ○永田政府委員 お答えいたします。  地価公示に携わっているスタッフの機構、人員はどうなっているかということでございますが、地価公示は、国土庁の附属機関である土地鑑定委員会が行うわけでございます。この委員の数は七名でございます。それからこの委員会を助けて実際地価公示法の施行事務をやっているスタッフは二十六名でございます。実際上全国各地の地点の地価の調査をし、公示をするスタッフは、約千九百名の不動産鑑定士及び不動産鑑定士補というのが担当いたしておるわけでございます。
  193. 正木良明

    ○正木委員 予算は……。
  194. 永田良雄

    ○永田政府委員 予算は約二十億でございます。
  195. 正木良明

    ○正木委員 じゃ、国税庁もう一度済みませんけれども、相続税の土地評価というのはどういう方式でやっておられますか。
  196. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 相続税の評価でございますが、これは相続税法二十二条にございますように、相続財産取得のときにおける時価ということで評価をいたすことになっております。具体的には、公示価格、売買実例価格、また精通者意見、そういうものを参考にいたしまして、適正な価格を算出しているということでございます。
  197. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、この相続税の方は、国土庁の公示価格と、片方で自治体のやっている固定資産税の評価というのは参考になるわけですか。
  198. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 ただいまの御質問でございますが、公示価格が作成されております地点につきましては、これは相続税の評価に当たりましても、全部基準地点として取り込んでおるわけでございます。また、そこにおきます公示価格を基礎として、私どもの相続税評価額を算定いたしておるわけでございます。ただ、相続税の評価は全国的にいたさなければいけないわけでございますが、地価公示の評価地点というのは、おのずから数が限られておりますので、私どもではそういう地点のないところにつきましても、相続税の評価をいたさなければいけないわけでございます。そのような場合におきましては、できるだけ多くの固定資産税の評価の地点を基準といたしまして評価をしておる、こういうことでございます。
  199. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、そのままストレートに国土庁のやっている地価公示方式の価格というものを導入したり、固定資産税にある種の倍率を掛けたりするということで、独特の相続税としての土地評価を独自に別個にやるという必要はないわけですか。
  200. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 ただいまお答え申し上げましたとおり、地価公示の価格の作成されております地点には限定がございますので、それ以外の地点につきましては、できるだけ、可能な限り、固定資産税の評価額を基準として評価を作成しておるわけでございますが、それでもなお国税、相続税独自の評価をしておる部分がございます。こういう部分につきましては、主として路線価を中心にして評価をいたしておるわけでございます。これは相続税の独自の評価方法でございます。
  201. 正木良明

    ○正木委員 そこで、もっと単純にそのまま導入して、これを調査したり何かをする人員を浮かすという方策はないわけですか。
  202. 渡辺幸則

    ○渡辺(幸)政府委員 委員よく御承知のとおり、地価公示価格につきましては、昭和四十四年に地価公示法制定の際、附帯決議を賜りまして、私どもは地価公示価格と均衡を失することのないような相続税の評価額を決めることになっております。そういうことでございますので、一方におきましては地価公示の価格を尊重いたしながら、それとバランスをとるようなかっこうでつくっておるわけでございます。ただ、そういうことのない地点につきましては、これは地価公示価格とのバランスもございますので、私どもで独自の評価をしておるということでございます。
  203. 正木良明

    ○正木委員 それでは、この問題は改めて大蔵委員会でやりましょう。  もう一つお尋ねしておきたいことがあるのですが、通産来ていますね。要するに、今度の事務の簡素化法案、あの中で計量士の登録というのを簡素化しようというのですが、この中で見ると、住所だけ抜く、こうなっているのだな。要するに、計量士の登録に当たって登録される者の住所だけが簡略化されるということになって、基本的な大きな行政簡素化とは思えないようなことが書かれているわけです。  それで、ここで主として計量士の問題は、はかりの検定を行うわけなんですが、はかりの検定期間というのは毎年一回行われているわけですね。これが非常にめんどうなんですよ。これを何とか検定の期間を延ばしてもらいたいという声が充満しているわけです。これは八百屋さんや肉屋さんのはかりから微妙な量をはかる薬剤師さんのはかりに至るまで、ありとあらゆるものがこの検定の対象になるのですけれども、これを年に一回がたがた車に積んで検定所へ持っていかなければいかぬわけですよ。検定へ持っていったために狂ったというものがたくさんあるわけだ。  ですから、たとえば中曽根総理行政管理庁長官をおやりになって、車検の延長という画期的なことをおやりになりましたね。要するに、二年の検査というのを新車に限っては三年に延ばすということになった。これはオーナードライバーから非常に喜ばれているわけなんですけれども、はかりもそういうふうなわけにいかぬものですかね。たとえば三年なら三年、五年なら五年、要するに新調されたものについては、それだけは三年に一遍の検査でいいです、五年に一遍の検査でいいです、その後は二年にしたり一年にしたりして精度を確かめていくということ。これはやはりはかりの問題は消費者と直接関係が生じてまいりますから、相当高い精度を要求されるだろうと思う。そうそうこの問題について野放しにはできないだろうとは思うのですがね。  通産省にお聞きしますが、これをやってどうですか。検定の結果、どれくらい不良品というか、出てまいりますか。
  204. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 はかりの定期検査の状況についてのお尋ねでございますが、最近数年間におきまして不合格率の状況を見ますと、年によりまして大きな変動はございませんでして、大体二%少しというところでございます。
  205. 正木良明

    ○正木委員 それはどうなんですか。要するに、新品を使い出して何年ぐらいたったものですか、二%の不良品が出るというのは。
  206. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 はかりの定期検査は、先ほど正木先生からお話がございましたように、一定の期間ごとに行っているわけでございますけれども、これは市部と郡部とで、はかりの使用頻度等を考えまして、期間に差が設けてございます。市部の場合は一年ごと、それから郡部の場合は三年ごとでございまして、ただいま申し上げましたような数字につきましては、したがって、何年たったものがどうというふうな数字じゃないのでございまして、一定の期間ごとに検査したもの全体についての統計でございます。
  207. 正木良明

    ○正木委員 その統計がなければしようがありませんけれども、大体メーカーの話だと、五年くらいは狂わないそうだな。ですから、やっぱりそれを延長するというふうな検討をしていくということが行政簡素化については非常に重要なことだと思うのだけれども、通産省はそういう方向で検討してみる気はありますか。
  208. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 はかりと申しますのは、先ほど正木先生もおっしゃいましたように、やはり消費者の日常生活には大変密着をした大事なものでございます。そういう立場から、計量の安全の確保あるいは消費者保護ということを考えました場合に、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたような不合格率の現状でございますので、ただいまの時点でこの定期検査の周期を制度としていじるということについてはどうかなというふうに考えておるのでございます。ただ、一方で受検者の負担があるというのもこれまた事実でございまして、そういう点につきましては、現在も、たとえば計量士によります代検査だとかあるいは指定使用事業場制度がございまして、そこで検査が行われましたはかりにつきましては、この定期検査が免除されるという仕組みがございます。こういうふうなものを私どもは活用してまいりたいと思っております。
  209. 正木良明

    ○正木委員 実際的な行政簡素化というふうなものに努力をしていただきたいと思います。  さて、行政改革財政再建というのは非常に密接な関係がございまして、当然財政再建のために行政改革をやっているということではないでありましょうが、やはり財政再建というものは、行政改革によって容易ならしめるということについては重要な関係があるというふうに私は考えます。  そこで、こうしてずっとこの法案をこの委員会で審議してまいりましたけれども、今度の法案財政再建に対してどれだけ、特に財政効果が上がるかというとほとんど期待できないというような感じがするわけです。いま大蔵委員会で審議いたしております共済年金の統合問題も、一時的な財源のやりくりというものが目立つだけで、本当に行革を中心として、そして将来の年金のあり方というものについての改革にはどう連動するかということが正確に説明されてないというような実情がございます。したがって、行政改革というのは、将来大型増税ということと密接な関係が出てくるのじゃないだろうか。要するに、行政改革によって生まれてくる余裕財源というのは、もうほとんど期待できないのじゃないか。現在の膨大な赤字を解消していくためには、大型増税しかないのじゃないかというふうな感じが非常にあるわけでございます。  そこで伺いたいわけでありますが、この財政再建の方途と手順ということについてはどういうふうなお考え大蔵大臣はお持ちになっていますか。
  210. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政再建そして最近財政改革、こういう言葉を使わしていただいております。その二つの言葉は、いわゆるぜい肉をそぐにとどまらず骨まで切り込んで構造的に改革をすべしというところであります。  そこで、手順はいかにするかということになりますと、臨調答申等々にも理念としてわれわれに明示されております「増税なき財政再建」ということをまず理念としてこれを持って、糧道を断つことによって歳出削減に渾身の努力を払え、こういうことであります。まずそれをした後において、国民の皆さん方との問答の中で、現行水準を維持し続けていくべきか否か、維持するならば負担するもまた国民、受益者もまた国民という段階において、いわゆる新たなる負担増とかいうようなものはその時点において考えるべきである。そうしてそれらの考え方を通じて、少なくとも手順といたしましては、六十五年度までに赤字国債からの脱却、これを努力目標として行え、そしていわゆる建設国債といわず赤字国債といわず、総体としての公債依存度というものを下げていく、この手順で進めということが臨調の精神であり、そして今日財政改革に当たっての基本的な考え方として対応をしておるということになろうかと思います。
  211. 正木良明

    ○正木委員 私の聞き方が悪かったのかもわかりませんが、もっとずばりお尋ねするとすると、財政再建計画というのはお出しになるのですか。
  212. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる財政再建計画、これは古くて新しい問題と申しますか、予算委員会のたびごとに、まず最初は矢野書記長からの御提案があり、それに基づいて政府部内で種々協議をいたしまして、過去数度にわたっていわゆる試算、中期展望等々を御提出してきたわけであります。  したがって、私どもはこの中期展望に従いまして、経済全体の中で財政の果たす分野というものは、それは限られておりますものの、その中に果たす分野というものを財政改革方向で見定めていかなければならぬ。そういうことになりますと、五十九年度予算を審議いただきますまでには、その手がかりとなるもろもろの数値というものを協議しながらお示ししなければならぬではなかろうか。したがって、これまた定量的にいわゆるかねて貴党で主張しておられます財政再建計画というものとはいささかこの性格を異にする点があろうかと思いますが、中期展望、そしてそれに伴う試算というようなものは、やはり提示すべきではないかというふうに考えております。
  213. 正木良明

    ○正木委員 「八〇年代経済社会の展望と指針」というのが出てきましたね。まあしかしずいぶん長い文章の「展望と指針」なんですが、それはそれなりにあれはよくできています。しかし、全然手は縛っていませんね、毎年毎年見直しをしていこうという考え方ですから。しかし、やはりどう考えても一つの計量的な数字というものが入っていないというものについては、きわめて抽象的な表現にしかすぎませんから、国民財政再建というものがどういう方向で行われていくのかということは余りはっきりとしないわけですね。したがって大蔵大臣、「展望と指針」みたいなあんな抽象的なものを中期計画で財政再建として出そうというわけですか、数字の入らないものを。
  214. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに一部門であるにいたしましても、私どもといたしましては、「展望と指針」を踏まえて、これらと整合性のある検討を行っていかなければならぬ。したがって、財政制度審議会にこの間私も出かけまして、小委員会の設置がなされましたので、中期的な財政運営の諸問題の検討にここでまず着手をしていただこうというところであります。したがって、今度はその検討結果、経緯等も参考にしながら五十九年度予算編成後中期的な財政展望を作成いたしますとともに、今後の財政改革を進めていく上での基本的な考え方というものを明らかにするように努力していきたい。その中にどれだけの定量的な数値が入れられるかというようなことにつきましては、非常にむずかしい問題でございますだけに、私は、今後とも、国会の議論等を通じながら検討をしていく課題である。何も出さないで済むものじゃないというふうに考えております。
  215. 正木良明

    ○正木委員 経済社会の新経済計画を出そうと言っていたのが「展望と指針」に変わってしまいましたし、財政再建を財政改革と言いかえてみたり、ちょっとこの辺、最近とみに、総理も含めてだけれども政府の態度というものについては、この問題についてはできるだけぼかそう、ぼかそうというふうに考えているように見受けられるわけであります。やはり五十九年度の予算を審議するに当たっては、本当はこれは行革国会としているのだから、ここに出してもらわなければいかぬわけなのだけれども、ここに出てこないのだから、五十九年度の予算の審議に当たっては、財政再建という問題についての計画がなければとても審議に応じられないということを予告しておきますよ。これはやはりきちんと出してもらわなければ、国民も不安でしようがないだろうというふうに考えるわけです。その返事だけもらっておきましょうか。     〔江藤委員長代理退席、津島委員長代理着席〕
  216. 竹下登

    ○竹下国務大臣 かねて御主張なさっていらっしゃる財政再建計画なるものと、御主張なさっておる考え方に基づいた計画なるものと、私どもがこれから検討してお出しする中期展望、財政改革の進め方というようなものとがどこまでこれが調和をとれるかということは、今後の勉強課題であり、そして問答をしながら決めていかなければならぬ問題だと思っておりますが、そのようなものは、いずれにしても努力して提出すべきものであると思っております。それで、いままでもこれでは不十分だといって中断したことがございますが、誠心誠意事前にも協議しながら、中断することのないようなものをつくっていきたいと思っております。
  217. 正木良明

    ○正木委員 明確なお約束をいただいたものと受け取っておきます。  そこで、本来ならばここへ出してもらわなければいかぬのですけれども、これはとてもいま言ったって無理でしょう。したがって、次の国会に出してもらう、要するに通常国会に出してもらうという期待をしているこの財政計画で、いままでのいろいろの政府の資料を基礎にして何点か伺ってまいります。  まず第一に、私なりに政府財政再建の関係資料を整理してみますと、まず一番に、赤字国債からの脱却は「展望と指針」で六十五年度をめどにしているということですね。二番目には、財政審議会だとか臨調だとか税調などが描く財政再建の収支バランスというのは、歳出の八〇%を租税収入で占めるようにする。そうですね。それから三番目に、いわゆる名目経済成長率は「展望と指針」で上限が七%だ、いいですね、実質が四%程度ですからね。それから租税弾性値は「財政の中期試算」で見ますと、大体一・一倍、歳出の伸びは名目成長率の伸び以下に抑える、こういうことのように私は思います。  そこで、これらを基礎にして、特に歳出の伸びは名目成長の七%程度では、ちょっと現状では現実的ではありません。したがって、五十九年度の概算要求並みの三・八%として試算いたしますと、歳出の伸びですよ、六十五年度は歳出が六十五兆四千億、これに対して税収は五十四兆三千億円、こういうふうになって、約八三%を占めますから、臨調や税調などが言うところの収支バランス八〇%は一応達成するのです。しかし、六十五年度には赤字国債の償還が七兆三千億円もあるのです。したがって、これを加えると、歳出は七十二兆七千億円になります。そして税収の占める割合は七四・七%に下がります。そうして目標を下回るということになるわけですね。八〇%を下回るということになります。  逆に赤字国債の償還七兆三千億円を、歳出の六十五兆四千億円の中に含むということになると、五十九年度の概算要求のようにマイナス一〇%のシーリングで、赤字国債の償還が全くなくても三・八%の伸びを見ていることから考えますと、六十年度から赤字国債の償還が始まるのですけれども、五十九年度は赤字国債の償還はありませんから、それでも三・八%伸びているわけですから、まさに非現実的になってくるのです。三・八%の伸び率というのは、現実的ではなくなるわけです。  以上の問題から私が思うのは、仮に政府の予測どおり、経済や税収や歳出抑制が実行できたとしても、赤字国債の問題は、新期発行か、または償還か、借りかえかという形で依然として残る。すなわち、現実の問題としては、問題の先送りをするということにしかならないけれども、この点をどういうふうに認識して対処するつもりですか。これはやはり具体的に示してもらいたいと思うのです。
  218. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの正木さんの御検討なすった基礎的なものは、私も、いわゆる名目成長を大体六ないし七に置いて、そして四、三、二、一あるいはそれに租税弾性値というものを入れたものの考え方ではなかろうかなと思うわけであります。したがって、その数値自体は一つの前提として御計算なすったのは、決して私も否定するものではございませんが、ただ、税収の場合の、恐らく一・一の弾性値をお使いになったのじゃないかと思いますが、この問題については、まさにこの前お示しした中期試算もそれを使っているのですよ、機械的に過去十年間の統計をとって。しかし、これについては非常に不確定要素が多いと私は思います。が、ただ、不確定要素の多いことのみを一応これは指摘しておくにとどめます。いろいろ議論のあるところだと思います。したがって、今度は借りかえが六十年度からやってくる場合にどうするか、こういう議論でございます。  そこで、公債はやはりその期限が来たときには国民には現金をもってそれが手に渡る。それはどうしてつくるかと言えば、歳出削減か、負担増か、いまおっしゃった借りかえをも含めたさらに新規国債の発行によってこれを賄うか、こういうことになるわけです。したがって、最近、借換懇を理財局でやるのじゃないか、こういう議論もございますが、これは従来もう建設国債の借りかえの種類等々について議論をしたもので、いまは休眠状態になっておりますが、いわゆる赤字国債を借りかえを前提にして勉強するというものではございません、それは。しかし、先ほど申しました財政制度審議会の中に小委員会を設けて、そこで今後の財政改革の進め方を議論してもらう、まさにいま正木さんから御指摘のあったような問題も出てくるであろうと私は思います。  だから、その小委員会に任すという意味じゃなく、借りかえ問題を審議してくれと言って諮問しておるわけじゃございませんけれども、そういう議論はその場で出てきて、おのずからその問題についてもそこで御検討がなされる問題ではなかろうか。いずれにしても、その問題につきましては、六十年に、言ってみれば赤字公債の大量の償還が始まりますので、それまでに結論を出さなきゃいかぬ、これは財政当局を預かっている者としてはまさに重大な問題だというふうに認識をいたしております。
  219. 正木良明

    ○正木委員 ややこしい話を理解してもらってありがたいと思いますが、あとはいいですよ。  そこで、あなたがいろいろお挙げになった中で歳出の抑制というのがあります。先ほどもちょっと申し上げましたように、あれを五十九年度の三・八というふうに言いましたけれども、これを五十九年度予算並みの一・四%というのに抑え込んでいくということをやっていくと、六十五年の姿は赤字国債の償還七兆三千億円を含んでも歳出は六十二兆八千億円にとどまって税収は八六・四%になっている。財政の収支バランスはとれるんです。しかしこの場合、強力な歳出抑制が必要になってくる。今後七年間にわたって歳出の伸びを一・四%に抑え続けるような財政運営や行政改革案というものを本当にできるだろうか、こういうふうに考えているわけです。まあそのときには大蔵大臣おやりになっているかどうかわかりませんけれども、大体いまの見通しとしてどういうふうにお考えになっていますか。
  220. 竹下登

    ○竹下国務大臣 それはおっしゃるように、いまの五十九年のシーリングでもってその枠のごとく抑えていく、これは大変なことだと思うのです。いま一律というものがきく時代というものはぼちぼち限界に来たのではないかと私も感じております。これは予算編成に際してのシーリングの問題のみならず、たとえば節減をかけるというときにもよく一律というのはやりますよね。元来、一律の削減をかけられるものなら初めからそれだけカットしておけばいいじゃないか、こういう議論もあるわけですが、すべてのものを洗い直してみてもなかなか一律というものがかけにくいところまできておる、こういう感じすらいたしますので、率直に言ってなかなかむずかしい問題だな、国民が合意して、現在の施策、制度、水準を全部ダウンさせてもいいというコンセンサスに達すれば、それは別でございますが、選挙というものがあります限りにおいてはそういうこともあろうはずもないし、なかなかこれは大変なことだ。  だから、それこそ分野調整、これは個人企業の問題だ、これは地方でやる問題だ、これこそまさに国でやる問題だというような施策、制度の根源にまでさかのぼって対応していかなければいかぬ。まあ五十八年度のわずかながらの五億でございましても、マイナスシーリングだけでも容易じゃございませんでした。これは大変なことだな、本当にだんだん大蔵大臣の希望者は少なくなるんじゃないかな、こういう感じがしております。
  221. 正木良明

    ○正木委員 いや、これは常識で考えてもおっしゃるとおりだろうと思うのです。したがって、財政再建というものは、歳出削減ということだけで行おうとしても非常に無理な点が生まれてくるわけです。経企庁では、伝えられるところによると、よほどの大きな変革、改革が加えられない限り、六十五年度の赤字国債からの脱却は無理だというふうに言っておるわけで、そういう点ではいま大蔵大臣正直におっしゃったと私は思います。  そこで、これはちょっと後でやろうと思っておりましたが、この際やっておきますが、塩崎長官も税金の専門家だからよくおわかりになると思うのですが、租税弾性値というのは名目GNPと税収との関係ですね。名目GNPの伸びと税収の伸びの相関関係の中で租税弾性値というものが出てくるわけですね。租税負担率というのは国民所得と租税負担との関係で出てくるわけですが、これは国民所得の方が名目GNPの大体八〇%ぐらいと見ていいかもわかりません、いろいろ細かい数字を挙げれば切りがありませんけれども。  ここで考えてみると、行政改革をどんどん進めていっても、極端に歳出を切り詰めるということをやっていくということ、これはやらなければいかぬといま大蔵大臣は言った。一律はできぬけれども、やらなければいかぬと言ったのだから、この議論はあれですけれども、そんなに切れるものじゃないということですね。歳出はそんなにむちゃくちゃには切れぬ。そうすると、税収を大きくしていって、かつまた租税負担率をそんなに上げないで赤字の解消を図っていかなければいかぬということになるのですよ、だれが考えたって。そうすると、租税負担率と租税弾性値の関係というのがあるわけです。  私は素人考えだけれども、租税弾性値が大きくなりますと、租税負担率はそれに比例して上がっていきます。したがって、名目GNPを大きくしてそれに租税弾性値一・一なり一・二ぐらいの程度のもので税の増収を図っていかないと、名目GNPと、先ほど申し上げたように国民所得とはイコールではありませんけれども、やや八掛け程度になるのだろうと思うけれども、それでもそれが大きいから租税負担率というものはそんなに極端に上がってこないのです。この関係はどうですか、間違っていますか。
  222. 竹下登

    ○竹下国務大臣 非常に専門的な問題で、経済企画庁長官であり、かつかつての主税局長であった塩崎さんの方が私よりはるかに正確だろうと思っておりましたが、まず私からお答えいたします。  両者はそれぞれの角度から経済と税収との関係について言及しようとするときの概念であるということであります。従来の租税負担率についての議論はいろいろ行われてきておりますが、どちらかと言えば租税弾性値の角度からは本当のところ余り行われておりません。そこで、名目GNPに対する比率をあらわす概念がまさに弾性値でありますが、いまおっしゃいました議論からしてみますと、この名目GNPの伸び率と弾性値というのは必ずしもそれが一致していない。ことし五十八年度予算のときにお出ししましたのは、確かにある年度の十年間の平均値をとって出したわけですが、考えようによれば、平均値をたまたま出して、そして御提供したにすぎないと言えばそれまでのものでございます。  したがって、たとえば租税負担率が結果として二三・六から二三・七になった年度を見てみた場合にも、弾性値は必ずしもそうなっていない。だから対GNPの伸び率に対して租税負担率は上がっても弾性値はそれに比例して必ずしも上がってはいないということになると思います。したがって、これをいろいろ見てみますと、私も、この租税負担率の推移というものにつきましては大いに議論してみる必要のある問題でございますけれども、それが提供する資料の中で一番絶対のものであるという自信はございません。
  223. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  企画庁の仕事とも関係もございますけれども、いま正木委員のおっしゃったことは、数学的には、弾性値が上がっていくならば租税負担率は上昇した、こういうふうに言えると思うのです。しかし、その内容は、私は、これは増税でもなければ何でもない。ここでたびたび総理大臣、そしてまた大蔵大臣から、租税負担率は現状程度にとどめるというお言葉がございました。大変適当な言葉なんですけれども、とりようによっては現状とは何ぞや、いまの国民所得のもとにおけるところの、しかも一定の弾性値のもとにおけるところの負担率でこのままいくとなればこれは大変な間違いが出てくる、間違いと申しますか誤差が出てくる。つまり、増税も、何らの税制改正しなくても、景気がよくなりますれば自然に弾性値が上がってくる、そして税収は国民所得の伸び以上にふえていく。これは負担率が上がったということじゃなくて、税収が税制の累進効果に応じてふえてきた、そしてまた税制はそのことを期待しておるんだ、財政は国民所得の伸びよりもより累進的な税収をしていることに適合した、こういうふうに判断しておるわけでございます。  たとえば、七年計画の中に明瞭に書いておりますが、昭和四十八年、四十九年――四十九年には二兆円減税したのですけれども負担率は二二%に上がりました。しかし、景気は悪くなりましたから五十三年には一九・九%に落ちました、こんなような関係でございまして、弾性値で負担率を判断することは間違いが起こるもとである。やはり私は、現行税制のもとでどのような税収が生じ、そしてそれが国民所得に対してどのような関係になるかということを現行水準という意味考えるべきだ、こういうふうに思います。  したがって、この弾性値のとり方いかんによって、本当に国民所得に対する租税負担率をどう見るかということは大きく変わってくる。私は、この七年計画のこの負担率の数字をたびたび読んでみましたが、よくもまた大胆に二六・五%という数字を置いて、しかもそれを達成するために一般消費税を置いた。これは一つの目安ぐらいにしかすぎない。それを、具体的な政策まで決定する一つの物差しに使った負担率というものは大変な危険性があるし、現実にそれがいま追及されて私どもがこんなに苦しんで、たびたび正木委員の前に御説明しなければならぬような状態になっている、こんなふうに思っております。
  224. 正木良明

    ○正木委員 確かに税収の中には所得税、法人税、間接税という税の大宗が、大体種類が違うのが入っておりますからね。租税弾性値とそれから租税負担率の関係は直ちに短絡的にはいかないということは僕はよくわかります。掛けられる方が、租税弾性値が名目GNPであるし、租税負担率が国民所得であるというところに差があるわけで、直ちにとは言えないけれども、しかし、常識で考えれば大体そうなるんですよ。だから、名目GNPが大きくなって租税弾性値が余り高くならないということになると租税負担率はそんなに高くならないだろう。しかし、名目GNPがそんなに伸びないで税収を確保していくためには租税弾性値が上がってくる、租税弾性値が上がってくれば租税負担率が上がってくるだろう、これは常識的に脈絡の上からはそういうことが考えられるわけなのでありまして、ただ、この間からの議論が租税負担率の問題にしぼられていろいろと議論されているけれども、これはちょっと危険な議論でありまして、そのほかに名目GNPをどういう形に持っていくか、租税弾性値をどういう形に持っていくかということが議論されてこないと、この租税負担率の問題も底辺が非常に危ない形で議論されてくるんじゃないかというふうに思うわけです。  だからといって、これはインフレーションになって名目GNPがうんと大きくなったとしても、今度はこのことは歳出削減の方に大きく影響してきて、国民生活の圧迫という点からいっても歳出削減がいままでのようなわけにいきません。公共事業だって名目的にはうんと組まなければ事業量は確保できないということになってきますから、そういういろいろな相関関係がこの中にあるということであって、そういうことをいろいろな面で議論していくためには、この「経済社会の展望と指針」の中では非常に抽象的な言葉だけが多くて、何となくおぼろげながらビジョンめいたものはわれわれの頭の中にも浮かび上がってはくるけれども、しかし、もっと明確に浮かび上がってくるようなものが、それの財政の面だけを引き出した財政再建計画という中で出てこないと、政府の施策の上においても非常に困難性というものが増してくるんじゃないだろうか。ましてや国民は、将来どんな負担をしなければいけないのか、どんな形でこの赤字が消えていくのか、そういうことが明確につかめないという点で非常に問題があるだろうというふうに考えているわけでございますので、御参考にしていただきたいと思います。  そこで、塩崎長官に伺っておきたいのですが、これはこの前も議論いたしましたが、四―六月の国民所得統計に見られるように、内需が非常に低迷しているわけですね、〇・九のうち〇・四、外需が〇・五ですから。これはもうすでに何遍も言ったように、政府が減税を見送り、公共事業の実質的な減額をやり、人勧を凍結したり年金の物価スライドを行わなかったという福祉の後退などを行ってきたことによるものであると私は思います。私は、要するにこれは政府が景気の足を引っ張っておると極論しておるわけでございますけれども、本当に「展望と指針」の四%の実質成長というものを達成するのには、歳出規模が七年間、名目で五十八年の一%台、五十九年の三%台、そういうのみで大丈夫なんでしょうか、実質的にはマイナスの伸びということになるんだから。これで長期展望の中で四%台の実質経済成長を確保するというのはどういうふうにしてやっていくのですか。
  225. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  実質四%がどのように出たかということがお尋ねの趣旨にも合致するかと思いますので、私はその観点からお答え申し上げたいと思います。  確かに、私も見るところ、三%台の成長では日本の経済が持つところの経済力を完全に消化していないという考え方は、もう多分に言われておりますし、私は、その観点は尊重して「展望と指針」の成長率を経済審議会の方々が検討していただいて出た結果だと思います。しかし、現在までの、これまでの私どもの成長率、昭和五十五年からは四・五%に落ちましたが、それから二年間三%台の成長率でありますこと、それから第二には、世界経済がまあ回復しておるけれども、日本の成長率よりも低目であろうということがOECDその他の見通しから出てくること、三番目には、日本の経済を動かす社会的な基盤の貯蓄、さらにまた設備余力とかいったような問題、それから技術開発の状況、これらを勘案しますと、貯蓄はどうも貯蓄過剰の様相を示して、アメリカの方に流れて十分日本にも活用されていないし、また日本の民間設備の経済力から見るならばまだまだ完全に消化するに至るまい、こんなようなことを考え、第四番目、一番大きな要素は、財政がこのような状況でございますから、私は四%というものが一つの大きなかなめであろう、こんなふうに考えたわけでございます。  私は、そのような観点から、いま正木委員も御計算されて、財政再建の問題も、自然増収の面から見てもなかなかむずかしい面があると言われるのは、名目六、七%ではとうていできそうにもない、こういうことだろうと思います。鈴木内閣のときには四兆六千億から四兆九千億円の自然増収を見越して中期展望を立てて、五十九年度に赤字公債はなくなると申しました。いまそれが現実には一兆五千億から一兆八千億程度に落ちているわけでございますから、私どもの見通しとしてはやはり四兆六千億くらいの自然増収が生ずるような経済社会が来ればいいがなという願望を持って、そしてそのもとで歳出計画などを立てるような方向考える努力をこれからしていかなければ財政再建がなかなかむずかしいということを私は申し上げているのでございます。
  226. 正木良明

    ○正木委員 よくわかりますよ。そのとおりでしょう。  そこで、私はどう考えても、財政審が言っているように、そのためにはやはり名目経済成長並みの予算の伸びということを確保していかなければいけないのじゃないだろうかというような気がしますね。ところが、片方にこれだけの大きな赤字を抱えて、財政的にはなかなか思うようにいかないという実情があります。それはこの間お話しいたしましたように、ちょっと政府は赤字の問題をみそもくそも一緒にしているのじゃないか、何でもぶった切ればいいという考え方でやっていることが、結果的には悪循環のもとをつくって縮小均衡に入り、縮小再生産に入ってしまって、結果的には決算で赤字が出て、それを赤字国債で埋めなければいかぬというような実情が出てきたのじゃないか、それが五十九年度赤字国債脱却の破綻の理由だ、原因だと私は思うのですよ。  したがって、経済企画庁が経済白書で言っているように、完全雇用が達成された後においても約六割の構造的赤字が残る。これは完全雇用が達成されたときというのは景気が回復したときだということですね。そのときでも六割の赤字が残るということは、この六割の赤字については、いま中曽根総理が先頭に立っておやりになっている行政改革でばっさりばっさり削減はやっていかなければいかぬだろうと思うのです。ところが四〇%の、四割に位するところのいわゆる完全雇用を達成するための景気対策というか、循環的赤字と言われるようなものについて何らかの形で手を打っていかない限り、要するに赤字を消していくための自然増収の期待なんてできないわけです。だから、「経済社会の展望と指針」で言っているところの四%台の実質経済成長率に乗せていくということ自体が、そういう選別された政策選択によってやっていくよりほかに道がないのだろうかというような気がしているわけでございます。その点どうでしょうか。
  227. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 正木委員のようなお説は、もうOECDを初めたくさんの方々が御提言をしているように私は思います。日本の貯蓄率は高いじゃないか、その貯蓄が投資先が見つかっていないじゃないか、五年前までは三兆円まで借りて貿易収支の赤字を埋めておりました日本が、いまや六兆円ぐらいの貯蓄が国内での投資先が見つからない、したがって外国へ流れていくようなことを考えたならば、それは簡単にたとえば間接税のタックスベースでも広げて、公共投資でもやって景気をよくしたならば景気がよくなるのではないか、貿易摩擦もなくなるのではないかというのがOECDの考え方のようでございますが、これは「増税なき財政再建」と大変矛盾することでございますから、できる範囲において私どもは貯蓄を利用する、民間資金を活用する、中曽根総理が強調される意味はそういう意味だと私は考えておりまして、現在の貯蓄の状況のもとで増税をして赤字公債を減らすのは最も不況を促進すると思うのでございます。  貯蓄率の高い日本での貯蓄、外国へ逃避するような貯蓄を活用するようなやり方も、設備投資が停滞しておるといいますか、もう需要が少ない今日では、やはり公共投資が確実なる、しかもまた整備のおくれた分野でございますので、この面について、赤字公債とも関係のない部面でございますので、これはひとつ知恵を全部皆様方からいただいて考えなければならないというのが企画庁長官の持論でございますので、御理解を願いたいと思います。
  228. 正木良明

    ○正木委員 いや、確かにそういうことなんですよ。たとえば、それだけ貯蓄が余っておって投資先を探している、それがアメリカへ流れていくというのは、これはやはりそれだけの金が余っているのなら国債買ってくれればいいじゃないかということになるのだけれども、しかし利率が全然違うわけですね。したがって、アメリカのプライムレート一一%なんというようなものをもっと下げさせない限り、国内で資本消化というのは出てこないわけですよ。ですから、そういう国債とかなんとかという問題は、いま提起したって、アメリカの金利がああいう状況である限りは、それは金利の高いところを求めて流出していくわけでありますから、要するにいま総理がおっしゃったように、まさに民間活力というものを利用して、その資金を使って、そして少なくとも一一%以上の利潤が生まれるような仕事を探してやらなければ、民間資金というのはどう考えたってそこへ流れてこないのだ、道理は。  だから、その民間活力を利用して民間資金をそこへ入れていく、この貯蓄がアメリカへ行っている資本流出というのを食いとめていって、またこれが円安を防ぐことにもなるのなら、これはもう一挙両得ですから、私は決して反対ではないわけで、賛成なんだ。しかしこれは、ことしや来年にすぐできる話ではないわけなんだ。それは、あらゆる規制というものについてはある程度緩和していかなければ民間資金が活用できるような状況ができない場合もありましょうし、片方で税の問題もあるし、税の優遇策の問題も出てくるかもわかりません。そういうことで、基本的には総論としての民間活力による民間資金の活用ということについては私は賛成だし、それしか方法はないだろうというふうな気がしますね。その点については賛成なんです。ですから、それはまたいろいろと知恵を出し合ってがんばってやっていきましょう。  そこで、個別問題に移りますけれども、この間から租税負担率の問題がやかましく出ているわけなんです。そこで、率長に長官に聞いておきたいのですが、まず第一に「展望と指針」の裏データでは、租税負担率は六十五年度で二七%と言われているのです。聞いたことないですか。まあそうですとは言えぬかもわかりませんけれども、もし仮に五十八年度二三・七%を二七%ということになると、三・三%上がってくるわけですね。これでもう五十八年度の金額に直しましても七兆四千六百億円の増税になるのです。もしそうだとするならばですよ。この二七%というのはどうなんですか。一応数字として出して計算したことはあるのですか。
  229. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この問題もたびたび予算委員会からここでも御議論がございまして、先ほどもこの点の御指摘がございました。私はこの二七%という数字は新聞で見ただけで、企画庁では実は見たことがないわけでございますが、しかし、これは在来の手法で財政上のつじつまを合わすためには、一定の前提に立ったところの弾性値のもとでどれぐらいの負担率になるかという計算は、GNPの成長率が名目六、七だったら弾性値の置き方一つで出てくるわけでございます。いろいろと恐らく計算をした、まじめな本当に勉強家の企画庁の職員でございますから、大いに研究したのが何かの関係で外へ出たのかもしれませんが、私は、無限に計算ができて無限にまた迷って選択ができないような数字ではないか、かように思います。弾性値がどのようになったか私も聞いておりませんけれども、恐らく一・一で計算したに違いない。  しかし、いまの税制のもとで、しかもまたいまの景気のもとで果たして一・一がいいかどうか、一・二じゃないか、かつては一・四までいったじゃないか、これはいろいろと悩みが出てくるくらいの数字がございますので、私は、この二七%とかいう数字は、七年計画の二六・五%と同じように一応の目安として考えられても、とうてい現実の政策としていま採用できるものではない。やはりこれは私と大蔵大臣がたびたび申しておりますように、予算編成の際に果たして現実にことしの税制はどういうふうにすべきか財政はどうすべきかというようなことで立てた見通しから将来を推測していく、一定の仮定をもとに置いて推測していく見通しぐらいしか、現実性を帯びた、また政策の目標として利用できるものはないと思うのでございます。いまそのようなことを立てることは適当ではないということで、租税負担率の問題は非常に大ざっぱな、西欧諸国よりもかなり低い程度にとどまることが望ましいという臨調と同じような目標を示しただけでしかいまのところ立てることは適当ではない、私はこういうふうに思います。予算編成のときに立てても、おまえ何年先はどうかと言っても、いろいろの仮定で前提を置いて幾つかの案で計算していただかなければ、判断していただかなければ、また同じような間違いを繰り返すような気がしてならないのでございます。
  230. 正木良明

    ○正木委員 租税負担率の問題はこの間からさんざん議論されておりまして、それを私も拝聴しましてこれ以上言いたくありませんけれども、ちょっと租税負担率の問題だけで議論しては国民はわかりにくいかもわかりません。要するに、社会保障負担の問題もここに加えなければいかぬでしょう。  ヨーロッパ諸国の租税負担と社会保障負担、これより相当下回った、下回ったという答弁をなさっているわけですね。イギリスが五一%ですね、この合計が。西ドイツが六一・八%。伝えられているところによると、臨調あたりでは、これの引き上げによって大体四五%程度までという線を引いているようなことを仄聞しているのですけれども、四五%は総理、相当下というふうな御判断になりますか。
  231. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調のそういう数字を私、聞いたことはありません。臨調考え方というものは、五一%とか五五%という西欧の高い水準の国から見ればかなり落差のある水準にとどめるように努力すべきである。かなり落差があるという表現は、やはりかなり開きがないといかぬのじゃないかと思います。
  232. 正木良明

    ○正木委員 非常に抽象的な言い方でしかお答えになれないこともわかりますけれども、これはいますぐどうだということを答えろと言いませんけれども、これはそういうときになるまでそういう形でずっと言い続けられていくおつもりですか。
  233. 竹下登

    ○竹下国務大臣 それは本当に、そこは私も当然考えてみても、来年度予算を編成すれば、そこでいわゆる成長率を一応予測する。その成長率を予測した場合、今度は積み上げ方式で積み上げた税収というものを一応見込む。そうすると、およそことしの分、今年度の分はこの程度になりましょう、こういうことは言えると思いますね。それで、その将来展望をどうするか、いま塩崎さんからもお話があっておりましたあの七カ年計画を立てるときに二六カ二分の一、二六・五というものがあり、一方に二百四十兆というものがある。これは、いろいろな意味において、ある種の躍動を感ずるような数字であったと思うのです。しかし、現実の国際経済社会はもとよりですが、日本とて例外でない経済運営の中では、これは下方修正にしても租税負担率は残しておきましたものの、公共事業等は途中で百九十兆に下方修正した。  そういうことを考えてみた場合に、どのような形で示されていくべきものであろうか。これが実際これからの相談じゃないかなと思っておるのです。そうしないと、いま議論の中に出ましたように、租税負担率だけで議論するのには、確かに経済運営全体から言えばきわめてリスキーな議論の数値だと言われる人もございます。また一方、いわゆる弾性値で議論するのは、これまたリスキーな点があろうかと思う。そういうこともいろいろ工夫された結果、今度の「展望と指針」というものが出ておりますだけに、それとの整合性と国会での問答等の整合性がまたどこで見つかるかというと、かなり下回るというとかなり時間もかかるかという感じもしながら、これからそれこそ予算編成してそれを出すときまでのかなり頭の痛い問題ではないか、これは本当にまじめにそう思います。
  234. 正木良明

    ○正木委員 私は、無理なことで横車を押してどうしても数字を言えと言っているわけじゃないのです。しかし僕は、言わなければいかぬときが来るだろうと思うのですよ。それはなぜかといいますと、たとえば社会保障負担の問題にしたって、年金の問題とか医療保障の問題を提起したときに、林厚生大臣、一生懸命やっておりますけれども、悲壮なぐらいの決意でやっているのは、それはそれなりにあっぱれだと思っておるのですけれども、私は国民に選択を求めなければいかぬときが来るだろうと思うのです。もし現在の給付をそのまま温存し維持していこうとするならば、これだけの負担の強化になりますよ、もしこれだけの負担が大変だというならば給付の面でごしんぼういただかなければならないですよ、ということを国民の前に言わなければいかぬときが必ず来ると思います。そんなに先の問題じゃないと思います。そのときに、もし社会保障負担の方がふえても構わないというならこれぐらいのものになりますよということは言わなければならぬ。  だから、そういう政策選択の問題が今後に控えておりますから、いま機械的にこれが何%になりますとか、合計で何%になりますとかというふうには言えないということも私はわかるのです。しかし、これは検討しておいてもらわないと、われわれはもちろん検討しますけれども、検討してもらわないと、要するに国民に対して二者択一を提示しなければいかぬときが必ず来るだろう。給付の方はしんぼうしますから負担の方を軽くしてくださいということをおとりになるか、給付の方は確保してください、そのかわりに保険料の負担は若い人に気の毒だけれどもしてもらわなければなりませんということになるのかということになる。  そういうことを考えると、結果的にはこれをこうすればどれぐらいの負担になるのかということの目安というものはやはり計算はしておいてもらわなければいかぬだろうと思う。それはそんなに十年も二十年も先の話ではなくて、この五年もたたないうちにその選択をしてもらわなければならないということになるだろうと思うのですよ。いま四共済の年金統合をやっておりますけれども、あれだって、来年か再来年に国鉄の年金財政パンクしますというような差し迫った形で、十分説明もなしに何とかこれを通してくださいというような話がいっぱいあるわけです。これは別に国鉄だけではなくて、ほかの年金だって早晩そういう時期が必ず来る。     〔津島委員長代理退席、江藤委員長代理着席〕 相当早い目にそのことの選択というものを国民に求めなければならぬときが来るであろうと思いますがゆえに、私は無理にここで何としてもその数字を言えというようなことは言いません。言わない限り審議はできませんなんて言いませんけれども、よく考えておいていただかなければならぬ。いつまでも、結果的にはこれだけになってしまいましたというような言い方では済まないのがもう目の先に来ていますよということだけは、ひとつおわかりをいただいておきたいと思うのです。  そこで、また国債の問題に戻りますけれども、赤字国債は御存じのとおり六十年度から償還が始まりますね。これは先ほど申し上げたとおりです。そこで、この赤字国債の問題だけに限って言いますと、国債整理基金への繰り入れを停止していることから、表面上赤字国債の減額はできても、償還財源がないことになるのです。また、そのために借りかえも必要となりまして、問題の本質的な解決にはつながらないこともあり得るわけでありますから、現在の財政特例法では禁じられているけれども、本当に赤字国債の借りかえは行わないで済みますか。先ほど、その借りかえのことについては諮問をしてないけれども向こうで勝手に議論になるだろうとおっしゃっていましたけれども……。
  235. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そもそも特例債で借りかえを禁じておるというのは、やはり特例債というもの自体、借りかえをも前提にした場合において、言ってみれば財政運営がイージーに流れて、結果として後世代の負担にゆだねるような財政運営になりがちである。だから、これは借りかえはいたしませんということが法律に明記されておる。したがって、先ほどからの議論のようにいよいよ六十年度それの償還時期が来る。もちろん、国債というものの信用性というものは、これは現金で返すわけでありますし、そのために国債整理基金というものも存在しておる。が、これも底をつく、こういうことですね。そうなると、私は、借りかえを念頭に置いたら直ちにもって財政運営がイージーになるからこれはいたしませんという答弁を前の大蔵大臣のときから今日までずっと繰り返してきた。しかし、いま識者の中から、現実問題としてそれは不可能じゃないか、こういう意見も十分出ております。これは耳にも入ります。私どもも勉強した場合に、なかなかむずかしい問題だなという認識は十分にあります。  それで、私は財政制度審議会に小委員会をつくっていただいて、今後の財政運営のあり方をいわゆる御論議をいただく。財政制度審議会も、これも税制調査会と同じように一つの問題を固定して諮問する性格のものでないわけですから、まさに財政運営全体についてのあり方を諮問しておるが、なかんずく小委員会でもってその議論をしてみようという御決定をいただいたということは、言ってみれば、そういう諮問さえしておけば当然の帰結として借換債の問題まで議論してくれるだろうというような甘ったれた考えでなく、識者の考えはそれらのところへもおのずから行くであろうということは私も思っております。したがって、財政審の審議に当たりましては、われわれもあらゆる協力をして、あるいは資料とかいろいろな問題はもちろんでございますが、協力してこれに対応していかなければならぬ。私も、短い時間ではございましたが、先般も出かけてお願いをしておるところであります。
  236. 正木良明

    ○正木委員 ここで御注意申し上げておかなければいかぬことがあるのです。どうもちょっと節度がなくなってきているというような感じがするんですね。  まず第一に、財政法では赤字国債は出しちゃいかぬということになっているのです。それを特例法をつくって赤字国債を出すことにしたわけでしょう。建設国債と赤字国債との違いは、はっきり言って借りかえできるかできないかの違いだったわけでしょう、財政法上。だから、借りかえは赤字国債の場合は一切いたしません、こういう約束であの特例法を最初通したわけでしょう。そうして今度またそれを崩して借りかえするというわけでしょう。まだするかどうかはわからぬが、いまの大蔵大臣の話を聞いていたら、借りかえに大変な期待があるように私は感触として受けとめますよ。そうすると、そのたががどんどん外されてしまって、要するに財政運営の節度というものが失われてきていることがはっきりと言えるわけですね。さらに国債整理基金への繰り入れまでやめたということが加わるわけですから。そうすると、財政民主主義の立場からいったって、行政改革というものは節度のある行政というものにしていこうとするならば、これは物すごく背反する節度のなさだということが言えるわけですね。これについては相当な決意で臨んでもらわないと、このままだらだらいってしまうということについては国民の大きな不信感が生まれてくるおそれがあると思います。要するに金がないのだからしようがないじゃないかということで全部節度を外してきたわけですから。まあこっちも、ないんだからしようがないなということになったわけだけれども、これ以上続けていくということは私は非常にだらしがなさ過ぎるような気がします。これはどうするかこうするかということは聞きません、聞いたって答えられないでしょうから。借りかえしないで赤字国債なんてなくすわけにいかぬだろうからね。これはこれで御注意だけ申し上げておきますから、覚えておいてください。  それから国債の累積残高問題について伺っておきたいのですが、国債残高というのは百兆円を超えまして、その利払いの重みが非常に財政を圧迫しているわけです。五十九年度の概算要求を見ましても、利払いが七千五百億円ふえ八兆六千億円にもなると言われてきている。もはや構造的赤字の最大要因が国債費になっているわけです。本質的な解決方法というのは発行を抑えていくということなんですけれども、このまま放置していくこともできるかもしれません。これについて政府は何らかの対策というものを検討していかなきゃいかぬと思うのです。特に財源対策を含めて買い入れ消却などを考えて、国債の利払い費を縮小する対策というものを本格的に考えなきゃいかぬと思うのです。そんな時期ではないかというふうに思うのですけれども、どうでしょうか。
  237. 平澤貞昭

    平澤政府委員 いまお話しのように百兆円を超える国債残高になっておりまして、毎年の利払いも八兆円を超えるという状況でございます。したがいまして、この利払いを減らす意味で買い入れ消却してはどうかというお話だと思いますが、買い入れ消却をする場合には、その財源がまた要るわけでございます。その財源をどうするかということになりますと、現段階では大変厳しい状況なものですから、仮にそれをまた国債発行して財源を調達をするということになると、問題自身が解決されない、こういうふうになるのではないかと思っております。
  238. 正木良明

    ○正木委員 これはやはり別途にその財源は資産売却等の金を充てなければいかぬかもしれません。国債を買い入れ消却するのに国債発行して資金をつくるなんて、こんなばかげた話はないのでありまして、それは別途に資産売却等の金をそこへ充てていくということを考えていかなければいかぬのじゃないかというような気がします。  そろそろ時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように財政再建の道はきわめて厳しいわけです。だれも金のなる木を持っておる者はないわけでありまして、借金を返すためには新しい金を生んでいかなければならぬわけであります。そのために何が必要かと言えば、やはり一番健全なのは歳出の削減であり、同時に税の自然増収を期待できるような経済情勢をつくり上げていくということしかないだろうと私は思いますね。ところが、いまこの行革の特別委員会で審議されている法案を見ましても、行政改革をずいぶん推進しているように、旗を高々と掲げてはいらっしゃいますけれども、しかし、それじゃこの中でどれだけ予算が削れるのかというと、ほとんど期待できないというような状況であります。  たとえば、この間から齋藤長官のお話をずっと承っておりましても、公安調査局であるとか地方行政監察局であるとか財務部を全部事務所に変えて、そしてここでその人員を削減したりしているけれども、それは全部ブロックの方へ持っていってしまうというだけの話でありまして、そういう点では、行政改革というものが本当に大なたをふるっているとはとても思えないような状況というものがあるわけです。  確かに予算においてはマイナスシーリング、ゼロシーリング等が行われて予算を削減されている。その皆さん方の御苦労はよくわかるわけでありますけれども、やはり行政改革それ自体の中で予算を削減し、そしてむだを切り捨てていくということの努力というものが余り国民の目には明確に映っていないということを、私は非常に残念に思うわけでございますので、そういう点ではやはりよほどがんばって行政改革を進めていただいて、いわゆる構造的赤字の削減には私たちも協力をいたしますから、努力をしていただきたい。  ただ、みそもくそも一緒にするという形で循環的赤字まで削減してしまう、たとえば公共事業を五十九年度五%削るなんて、私にとっては経済のわかる人がいないのかしらと生意気に思うぐらい残念なことであるわけなのでございます。私は別に土建業者の代弁をしているわけでもありません。本当に景気をよくしていくということから考えていけば、やはりそういう政策選択というものを明確にしていくことが大事なのじゃないかという気がいたします。  いずれにいたしましても、さらにせっかく御努力をいただくようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  239. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十月三日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会