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1983-09-29 第100回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年九月二十九日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 江藤 隆美君 理事 海部 俊樹君    理事 津島 雄二君 理事 三塚  博君    理事 細谷 治嘉君 理事 矢山 有作君    理事 正木 良明君 理事 吉田 之久君       足立 篤郎君    愛野興一郎君      稻村佐近四郎君    今井  勇君       小里 貞利君    大村 襄治君       片岡 清一君    亀井 善之君       澁谷 直藏君    田中 龍夫君       谷  洋一君    中村  靖君       西岡 武夫君    橋本龍太郎君       原田昇左右君    保利 耕輔君       宮崎 茂一君    村田敬次郎君       後藤  茂君    沢田  広君       森井 忠良君    安井 吉典君       湯山  勇君    渡部 行雄君       草川 昭三君    鈴切 康雄君       岡田 正勝君    和田 一仁君       中路 雅弘君    三浦  久君       小杉  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  禿河 徹映君         内閣審議官   手塚 康夫君         内閣審議官   百崎  英君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         内閣総理大臣官         房総務審議官  橋本  豊君         総理府人事局次         長       吉田 忠明君         総理府統計局長 時田 政之君         行政管理政務次         官       菊池福治郎君         行政管理庁長官         官房審議官   古橋源六郎君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         科学技術庁計画         局長      赤羽 信久君         科学技術庁研究         調整局長    福島 公夫君         公安調査庁次長 岡村 泰孝君         外務大臣官房外         務参事官    山下新太郎君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      川崎 正道君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生大臣官房審         議官      下村  健君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省保険局長 吉村  仁君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電波監理         局長      鴨 光一郎君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         建設省都市局長 松原 青美君         自治大臣官房審         議官      津田  正君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君  委員外出席者         国立国会図書館         長       荒尾 正浩君         内閣官房内閣参         事官      中村  徹君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     橋元 雅司君         行政改革に関す         る特別委員会調         査室長     大澤 利貞君     ───────────── 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出、第九十八回国会閣法第三九号)  国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案内閣提出第一号)  総務庁設置法案内閣提出第二号)  総理府設置法の一部を改正する等の法律案内閣提出第三号)  総務庁設置法等の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案内閣提出第五号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国家行政組織法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理等に関する法律案総務庁設置法案総理府設置法の一部を改正する等の法律案総務庁設置法等の一部を改正する法律案及び行政事務簡素合理化及び整理に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、公聴会開会承認要求の件についてお諮りいたします。  各案につきまして、議長に対し、公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、公聴会は来る十月五日開会することとし、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと任じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  5. 金丸信

    金丸委員長 次に、参考人出頭要求に関する件につきましてお諮りいたします。  各案につきまして、来る十月三日、参考人出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、参考人人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  8. 金丸信

    金丸委員長 これより質疑を行います。  質疑の申し出があります。順次これを許します。矢山有作君。
  9. 矢山有作

    矢山委員 まず最初に、私はきょう、「一九八〇年代経済社会展望指針」というのが中曽根内閣の方で作成をされまして発表されましたので、それに関連して質疑をさせていただきたいと思います。  まず、これは今後の中曽根内閣政治運営方向づけをしたきわめて重要な文書だと思いますが、その点、間違いございませんね。そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中曽根内閣が今後経済政策運営をしていく上についての基本的な重要項目を、主として定性的に述べたものでございます。
  11. 矢山有作

    矢山委員 この「展望指針」が掲げておる重点は四つありますね。その第一が行政改革財政改革となっておるわけです。そして行政役割りを抜本的に見直し簡素合理化を図ることによってわが国の将来への明るい展望を開くとお述べになっておるわけです。国民の期待する方向での行財政改革が行われるのであれば、これは看板どおりになるわけでありますが、政府のねらう行革というのは、私は、これを読んだ限りにおいては、将来への明るい展望が開かれないのではないかというふうに強く感じたわけであります。将来への明るい展望どころか、暗く冷たい社会になっていくのではないか、そういう危険があるのではないか、こう思っておるのですが、いかがでしょうか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「展望指針」は、国内の行政上の改革、それから経済の力点、あるいは高齢化社会に対応するやり方、あるいは人間の充足感、あるいは国際環境に対する適応力等々、あるいはさらに主として高度情報化社会に対応するこれからの準備等々にも言及しておりまして、それらの用意をやっていこうというので、私はこれで二十一世紀に向かっての道がたんたんと開けてくると考えております。
  13. 矢山有作

    矢山委員 いまの御答弁なんですが、そこで私は、政府の「展望指針」を具体的に明らかにする中から、政府行政改革のねらいは何であるかということを証明していきたいと思います。  まず、そこへ入る前に、今回の「展望指針」の作成はどんな基本姿勢で行われたのか、特に「新経済社会七カ年計画」と対比をして御意見を承りたいと思います。
  14. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 お答え申し上げたいと思います。  「新経済社会七カ年計画」が、御案内のように、高度成長から低成長へ移りまして、成長率見通し等について大変なそごがございました。そんなような観点から、新しい角度の経済計画が求められたわけでございます。そして今回の「展望指針」は、このような新しい情勢のもとで、「七カ年計画」にございましたところのあの定量的な、つまり詳細な分野にまでの計数で示されましたところのいわば計画的な考え方を今回は転換いたしまして、より長期間にわたって、そしてまたより弾力的な、柔軟な態度の、ソフトと申しますか、そのような観点からのいわゆる経済計画、それを「展望指針」という形で経済の全般的な分野政策方向を示したのが、この「展望指針」の内容でございます。
  15. 矢山有作

    矢山委員 私も実は不勉強ながらこの両者を対比して読んでみたのです。その結果私が感じたことは、項目の立て方、それから具体的な施策、これらについてはほとんど変わっておらぬなという印象を受けました。前後の文章を入れかえたり、あるいは途中を削ったりといったような、まあ失礼な言い方でありますが、お粗末なやり方なんじゃないか。これが経済審議会の議を経たというのは、どうも私は不思議でならぬのでして、大平内閣のときのあの「新経済社会七カ年計画」の、言い過ぎだと言われるかもしれませんが、贋作じゃないかという感じがしたのですが……。
  16. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 この点につきましては、総理からもたびたびお答え申し上げておりますけれども一つの性格の変更があった。いままでのような定最的な考え方、しかもまたそれが金科玉条的にとられ、強制的な感触を与えた、このような考え方は避けまして、基本的な四つばかりの将来の見通し、それを定量的にしただけで、他の点につきましては、政策内容、これはまた前と私はそんなに変わらない、矢山委員の御指摘のとおりだと思いますが、そういった観点で、政策方向は明瞭にしてきている内容のものだと考えております。
  17. 矢山有作

    矢山委員 私が見ておる観点経済企画庁長官が見ておられる観点というのは、かなり食い違いがあると思うのです。私の見たところでは、やはり「新経済社会七カ年計画」の基本をかりながら、中曽根内閣にとって都合の悪いところは削り落とす、どうもこういうやり方でつくられたのじゃないか。そういう点から考えるなら、むしろ「新経済社会七カ年計画」の方がもっと整合性があったように感じます。  そこで私は、この際、この「展望指針」というものと大平内閣の「七カ年計画」の大きく違っておる点を、具体的に指摘しながら申し上げてみたいと思うのです。  まず一つは、政府責任を削除、後退させておるという点が一つあります。それからもう一つの点は、西側陣営一員ということを主張して、アメリカのレーガン政権やり方に追随しておるのじゃないかというふうな感じを強く抱いたわけです。そういう物の見方というのは、長官、間違っておるとおっしゃいますか。
  18. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 私どもは、少しそのような考え方とは違って考えております。  まず第一の、政府役割りの問題でございますが、最近の経済社会情勢から政府役割り見直していく、これは当然のことだと思うのでございます。これを後退というふうに単に考えることは適当ではない。とにかく自由経済社会の中で企業と政府個人家計、この三つの経済主体との間に、常に新しい情勢に応じて役割り分担見直していくことは当然のことだと思いますし、これを政府役割り後退、これは私は、財政上のいろいろ制約があるにいたしましても、後退と考えるべきではない、こういうふうに考えております。  それからまた第二は、西側陣営一員としてという表現から、レーガン政策に追従しているのではないかという御質問でございますが、レーガン政策に追従しているような表現は全くこの「展望指針」の中には使われておりませんし、その意味が私どもには十分理解できないところでございます。
  19. 矢山有作

    矢山委員 役割り分担見直しをやるというのはわかるのです。ある程度理解できる。見直しをやったところのその結果が国民生活に対してどういう影響が及んでいくのかというところが、一つは重要なところなんです。  それから、西側陣営一員ということはレーガン政権に追従しているわけじゃないとおっしゃったから、それらの点を踏まえながら、私は、しかしそうおっしゃるけれどもこういう点はどうもあなたのおっしゃるのは間違っているのじゃないかという点を、ある程度具体的に指摘してみたいと思うのです。  まず第一、社会保障分野について申し上げてみたいのですが、「七カ年計画」では「国民生活の安定と充実」というところで、「効率の良い政府が適正な公的福祉重点的に保障する」、これは「七カ年計画」にそうなっておるのですね。つまり、政府責任というものがきちっと明確に規定されていた。ところが、「展望指針」の方はどうなっておるかというと、「安心で豊かな国民生活の形成」というところで、「自立自助基本とし、」こうなっているのですね。これは明らかに重点が変わってきているわけです。  それからもう一つ指摘しますと、「七カ年計画」では「社会保障整備」の項、そこで「社会保障基本的任務は、公的に保障すべき所得又はサービスを適切に提供し、」ということが明確に言われているわけですね。ところが、「展望指針」の「社会保障整備改革」というところではどう言っているかというと、「不安なく生活設計を立て得るような」云々、こういう表現に変わっておるわけです。  それからもう一つは、同じ「社会保障整備」のところで、「七カ年計画」では、「現在までに達成した西欧諸国に遜色のない水準を維持しつつ、」と明確になっている。ところが「展望指針」の方では、これは全面的に出ておりません。  それから、社会保障の「具体的施策」、ここのところで、「七カ年計画」の方は「家庭、地域社会及び福祉施設の有機的な結合を基盤とした社会福祉サービスシステムづくり云々と、こうなっている。ところが、「展望指針」の方ではどうなっておるかというと、「在宅福祉基本とした地域福祉基盤づくりを進める。」と、こういう表現になっています。表現から受け取られる中身というのが、私は大分違ってきておると思う。  それからもう一つ指摘しますと、「七カ年計画」の「社会保障規模」というところで、「社会保障移転国民所得に対する比率は、昭和五十三年度の一二・三%から昭和六十年度に一四・五%程度に増加させる」、「また、社会保障移転規模の増大に伴い、社会保障負担国民所得に対する比率を、昭和五十三年度の九・〇%から昭和六十年度に一一%程度へ引き上げる」と、目標が明確に示されている。ところが「展望指針」の方では、この部分は全面的に削除されている。それは間違いありませんね。
  20. 大竹宏繁

    大竹政府委員 お答え申し上げます。  幾つかの御指摘がございました。まず、国民生活に関する基本的な考え方につきましての「七カ年計画」と「展望指針」のことが第一であったと思います。  御指摘の「七カ年計画」の自助努力地域社会の連帯を基盤として、効率のよい政府公的福祉を保障するという考え方は……
  21. 矢山有作

    矢山委員 中身説明はよろしい。私が指摘したところはそうなっていますかと聞いているから、それについて簡単に答えてください。中身説明は、私も読んでおるからよろしい。
  22. 大竹宏繁

    大竹政府委員 お読みになられた文章そのものはお読みになられたとおりでございますが、考え方といたしまして、「展望指針」の今回申し上げております重点は、「七カ年計画」の重点と質的に変わっていない。表現といたしまして、より高齢化社会というところに着目をいたしまして「「人生八〇年型」のライフスタイル」という言葉を使っておりますけれども、やはり基本的には自立自助あるいは相互扶助、あるいは公的部門が安定した国民生活基礎的条件整備するという点は変わっておらないわけでございます。  それから二番目でございますが……
  23. 矢山有作

    矢山委員 いいよ、中身に入っては。もう、大体表現がそうだというのなら、中身の理解は私にはわかるから、いいです。
  24. 大竹宏繁

    大竹政府委員 表現はお読みになったとおりでございますが、考え方といたしまして後退をしたわけではございません。表現につきましては、若干の構造的変化等を踏まえましたニュアンスの差はございます。
  25. 矢山有作

    矢山委員 表現について言うのなら、表現の流れの基本を言うたらいいんです、一々項目別に言わぬでも。時間がかかるから。
  26. 大竹宏繁

    大竹政府委員 重点といたしまして、やはり今回の計画といいますか「展望指針」では、構造的な変化を踏まえた二十一世紀へ向けての対応、そこを重点といたしております。したがって、定性的なところを重視をして、定量的な細かい点につきましては数字の目標というものを掲げなかったということは、総理の御説明のとおりでございます。
  27. 矢山有作

    矢山委員 いまのような答弁になるだろうと思っていた。  そこで、これまで指摘した社会保障部門に関する中曽根内閣の「展望指針」の方向づけというのは、いろいろおっしゃっておるけれども、言ってしまえば、明らかに政府責任を放棄しようとしておる。こうした基本政策に乗って行財政改革をやろうとするのは、国民の立場から見たらこれは完全な改悪だ、政策基本に誤りがある、私どもはそう思っておる。  そこで、こういうような「展望指針」を踏まえた結果どうなっておるか。恐らく五十九年度予算概算要求というのは、この「展望指針」を踏まえながらやられたのだろうと思う。その結果はどうなっておるかというと、たとえば一つの例を挙げると、健康保険本人給付を十割から八割へ引き下げる、あるいは入院時の食費代の一部を本人負担にする、あるいは社会福祉施設整備費保育対策費削減をやる、こういうことをやって約六千九百億円ですか、その程度の国の負担軽減を図る。その分だけはこれは国民にしわ寄せになる。これは明らかな事実です。もし行革に名をかりてこういうことをやるというなら、これは明らかに福祉後退だと言うのです。物の基本考え方がどうだこうだと言ってみたところで、現実に出てくるものがそうであるなら、われわれとしてはそこに注目せざるを得ないということです。
  28. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 これまでの経済計画と同じように、またこの「展望指針」も大きな政策方向を出しているのでございます。具体的に健康保険給付水準をどうするとかあるいは保険料をどうするかというようなことは、これはもう全く触れていないところでございまして、前回の「七カ年計画」は御案内のように六%程度成長率を考えていた。今度は実質四%程度に下がるような中での経済社会、そしてそのもとでの財政、その中で「七カ年計画」に立てましたような基本的な政策を生かしながら厳しい選択をしていく、こんなようなことが示されているだけでございまして、具体的にこれをどのように生かすかは、各省が予算の都度、またそれは概算要求だけではないかと思いますが、本予算決定までの間の、本予算決定の上においてのあらわれる政策とはまた別の問題、こういうふうに私どもは考えているところでございます。
  29. 矢山有作

    矢山委員 要するに、「新経済社会七カ年計画」の策定のときと比べるとGNP成長率も鈍っておる、そこで大きな方針を、そのことを踏まえながらこう出したんだ、その出した結果がいま言うたことになった。そうして一方では、GNPが低下しておるんだ低下しておるんだと言って、いま言ったような社会福祉関係に大きな削減をやりながら、一方では、比率においては軍事費だけは特別扱いで大幅に伸ばす、こういうことをやっているわけです。そういうところを私どもはとらえて、GNPの低下だとかあるいはそれを踏まえての基本方針を立てたのだとおっしゃるけれども、それをやる実際の中身というのは、いま私が言ったようなことじゃないか、これは福祉後退以外の何物でもないじゃありませんか、こう言っておるのです。わかりました、あなたの考え方は。  そこで次に、西側陣営一員で、レーガン政策の追従ではない、こうおっしゃったから、この問題について指摘をしてみたいと思うのです。  まず第一に、無資源国日本国際社会で生きていくためには、世界が平和であるということが不可欠ですね。したがって、そのために日本は努力すべきである、この点は基本的な考え方として間違いありませんね、総理。これは総理ですね。あなた、総理考え方はどうなんですか。
  30. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  日本経済運営基本は、もちろん言うまでもなく世界平和が保たれること、そしてまた自由貿易が維持されること、これはもう大事なことであることは、「展望指針」の中にるる書いてあるとおりでございます。
  31. 矢山有作

    矢山委員 内閣の責任者として、あなたもそうですね。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 企画庁長官が申し上げたとおりでございます。
  33. 矢山有作

    矢山委員 そこで、じゃ私の気のついた点を指摘しながら、私が言っておるのはそれ相応の根拠を持っているのだということを申し上げてみたいと思うのです。  どういう点かというと、一つは、「七カ年計画」の方では「世界貿易拡大への貢献」というところ、ここではっきりと、世界貿易の調和ある発展を図り、拡大に貢献するという意味の表現になっておる。ところが、「展望指針」の「貿易の拡大均衡と貿易構造の高度化等」というところでは、「東西貿易についても西側諸国との協調」に配慮する、こういう新たな文章が入っておりますね。これは私は、かなりの物の考え方の相違が出ておると思うのですよ、ここに。  それからもう一つ経済協力の問題に関して「七カ年計画」のところでは、国づくりは人づくりからだ、だから人づくりにまず協力をする、そうして援助条件の緩和についてグラントエレメントの国際目標達成を目指し云々、こういう表現になっているのですね。ところが「展望指針」のところは、その趣旨は、中身を読んでみると、効率的な援助を推進するということに私は集約されておると思います。  それから第二点、「国際機関等への協力」という、これが「七カ年計画」の中ではきちっと項目で入っていますね。そして「国際開発金融機関への出資・拠出、協調融資を拡大し、また、国連開発計画世界食糧計画等国連諸機関への資金協力を拡大するとともに、支出に相応の人的貢献を図る。」云々、こういうような項目がちゃんと一つ設けて書かれておる。ところが今度の「展望指針」の中には、この部分は全然ありません。これは抜けてしまっておる。  それからもう一つ指摘したいのは、援助の配分のところです。「七カ年計画」では、政府開発援助についてアジアの国を中心に供与されてきておる、今後ともこういう傾向を維持するとともに、アジア以外の地域への援助も増大していくこととする、こういう表現にとどまっているわけです。ところが、「展望指針」はそれがどういう表現になっているかというと、アジア諸国に対する援助を積極的に進めるとともに、「西側の一員としての立場に立ち、今後ともアジア以外の諸国に対する経済協力も積極的に推進する。」こういう指摘になっている。  これは、私が申し上げたことをこのとおり認められますね、こういうふうになっているということは。
  34. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 詳細に矢山委員、私以上にお読みになって指摘されておりますから、私はもう間違いない、表現は間違いないと思います。しかしながら、その考え方にあります基本は、言うまでもなく「七カ年計画」策定時の世界経済情勢、そしてまた当時のアメリカの経済情勢等を背景にいたしました「七カ年計画」、現在はまた様子も相当変わってまいっておりますところの経済情勢のもとで考えましたのが、いまの経済協力あるいは経済援助、そして日本分担範囲がさらにまた広がるような情勢を反映して、そのような表現をとったものでございます。
  35. 矢山有作

    矢山委員 私以上に読んでおると言うてえらい褒めてもらったのですが、私以上に読んでおるじゃ困るので、あなた責任者だからな。私以上に大いに読んでおいてくださいよ。お願いしておきます。  そこで、私はいま言うたようなことをまとめて考えてみたら、結局のところ、貿易もあるいは海外援助も西側陣営に属するところとやろうということで、特に国際機関に対する協力を全部削っておるというのは、これはわが国の国連中心主義、そういう立場を主張しているわけですが、そういう立場、また日本外交が、レーガン大統領の国連や国際機関を軽視し、二国間援助にしようとしておる、そういうことへの追随以外には私は考えられぬ、こう思うのですが、どうでしょう。なかなかそうだとはおっしゃらぬでしょうがね。
  36. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘経済援助等につきましては、書いてないからといってそのことが軽視されたとか、そういった趣旨ではございません。「展望指針」は「七カ年計画」に比べて大変ソフトに書いてございますので、しかもまた、大綱を相当しぼった点もございますから、私は「七カ年計画」にあらわれた政策全部がこの中に盛り込まれたとは思わないわけでございますし、それが特に変更されたというわけではありません。書かれましたものは、多分に最近の情勢から推して最も必要な政策を打ち出した、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  37. 矢山有作

    矢山委員 ソフトに書いておるという、これはなかなかうまい表現ですね。そういうことをおっしゃりながら、やはり国の責任というものをこういう「展望指針」の中では明確に打ち出すのと、そこのところをソフト、ソフトということで完全に除外してしまうのとは、私どもとしては受け取り方に違いがあるのですね。特に最近の予算を見ておると、社会福祉や文教費の抑制がやられる。一方では削減、抑制がやられる。一方では防衛費は特別扱いだ。これは比率として今後どんどん伸びていく。こういうことを見ておると、それと照らし合わせてこの「展望指針」を読んでおると、これは国内的には社会保障、文教など国民の生活の分野を切り捨てて、安上がり、これをねらっている。国際的には西側陣営責任分担するということで、そこに重点が行ってしまって、国民の立場から見たら、これは国民生活犠牲の行革だな、この方針で行かれるならそういう行革になりますな、こういう感じを強く抱くことになるのじゃないか。また事実そういう論調が多いですな、私どもの耳に入ってくるのには。あなたの耳に入らぬですか。
  38. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 「展望指針」は、これまでの経済計画と同じように、私ども経済の面で抱いておりますところのいわば夢と申しますか、将来の理想、目標を書いたものでございます。そういった意味で考えてみますと、その中にありますところのものは、そのような厳しいところまで表現をしたところはない。ただ、大変財政上の難点、厳しさがあるから、選択を厳重にやっていくというようなことが、「七カ年計画」に比べて「展望指針」の方が財政上の観点を考慮した点がある。これだけじゃないかと私は考えております。(発言する者あり)
  39. 矢山有作

    矢山委員 いまどなたかが、夢を描いておるのだと、こうおっしゃつたら、夢は覚めるぞと、こうおっしゃった。私もそう思いますな。夢は覚めますよ。夢は覚めたらちょっと困るので、つまり、夢が覚めないように政府が明確に責任を負わなければならぬところは表現をしない、後退させる、表現から削っていく、こうなっているのじゃないですか。私はそういう意味に受け取りますよ。  今後私どもは、この「展望指針」に基づいて行革がやられ、それに基づいて国家予算が編成をされ、それが実施に移されていくのでしょうから、その過税でまたいろいろと御意見を承ったり、われわれの意見も申し上げたりする機会があると思います。  そこで、きょうは次の質問に移りますが、先ほど言いましたように、一番大きく犠牲になっているのは福祉や文教関係。一方では、比率においては、だれが何と言ったって、防衛費だけは特別扱いでどんどんふえていっておる。それをますます進めようという行革だ。だから、行革とはわれわれは言わない。ああ、あれは行革ではない、中曽根行革というのは軍拡なんだ、私どもはそう言っている。  それはそれとして、次に行革下における防衛費の問題とも関係がありますから、ひとつ緊急にお尋ねしておきたいことがある。それは何かというと、今度実用通信衛星さくら二号を硫黄島と本土の通信連絡用として自衛隊に利用させるという方針を決めたということでありますね。そこで、いま硫黄島の現状、それから今後硫黄島をどういうふうに利用するのかということをまず先に聞いておきたいので、これは防衛庁の方からお聞かせください。
  40. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 現在硫黄島には、海上自衛隊の第四航空群の諸君が人数で百二十名程度、それから工事に携わっております民間人が百八十名程度、その他の方々少数、このぐらいの人数が現在硫黄島で生活中でございます。
  41. 矢山有作

    矢山委員 この硫黄島の将来の利用について、いろいろ情報として報道で流れているのですが、その硫黄島を将来どういうふうに使おうかという案が防衛庁にあれば、ちょっとこの際明らかにしておいた方が、ただマスコミを通じて耳に入るだけというのでは権威のない話ですから……。
  42. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 硫黄島の将来利用計画につきましては、国土庁を中心といたしまして、特に東京都その他が開発計画を目下策定中でございますが、それとは別途に、防衛庁といたしましては、現在のところもっぱらここへ訓練基地を建設中でございまして、当分の間、海上自衛隊を中心といたしました、遠隔区域の離島でございますが、訓練基地として使っていきたい、こう考えておる次第でございます。
  43. 矢山有作

    矢山委員 それはわかりましたが、どうもわれわれの耳にはよく、まずそういうふうな訓練基地、やがて千海里防衛の問題もあるので、その千海里防衛という軍事的な観点から考えたら、硫黄島がきわめて重要性を持っている。そこで防衛庁としては、将来F15やP3Cをここに配置をして、その千海里防衛の拠点にしようというような考え方があるんじゃないかと思うのですが、この点どうなんですか。
  44. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 いま直ちにF15とかP3Cとかいうものの配置を考えているわけでもございませんが、海上交通路の安全の確保というものは、私どもにとりまして非常に重要な問題と考えております。ただ、この場合に、海上交通路の安全を確保する場合に、特に有事の場合について申し上げますと、いま先生の御指摘は、もっぱら艦艇の、特に対空警戒体制のことについて触れられたと思いますけれども、私どもは第一義的には海上艦艇そのものが処理をしていく、こう考えております。もちろん航空機がこれをカバーをできれば、当然あらゆる種類の航空機が使われていく、こういうふうには考えてはおります。
  45. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、直ちにP3CやF15を配置することは考えておらぬけれども、いまの考え方でいくと、将来シーレーン防衛というようなことから、これは防空能力が必要だということですから、やがてそういうふうな方向を考えているんじゃないですか。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  46. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 特にF15についてお答え申し上げますが、これは要撃機でございまして、したがいまして、F15にはF15の任務がございます。したがって、F15をどういうふうに使うかというようなことは、いろいろな一定の出方とかあるいは動きとか、これによって変わってくると思いますけれども、F15そのものの性格は、あくまでこれは要撃機として使われるべきものであります。P3Cそのものは相当の行動距離、航続能力を持っておりまして、必ずしもP3Cをどこどこにどういうように置いておかなければならないかというような開題につきましても、これは組織的に考えるべき問題である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  47. 矢山有作

    矢山委員 いま直ちに計画がないということだから、それはその程度にしておきましょう。  そこで、いずれにしても、硫黄島というのは軍事的な観点から見るとかなりの重要性を持っているということは、いまのお話の中でもわかると思うのですが、その硫黄島と本土との通信連絡用に通信用実用衛星のさくら二号を利用させる。これはどうなんですか。これは私は何と考えても、宇宙事業団法の一条、時間がかかるから条文は読みませんが、「平和の目的に限り、」云々と、こうなっていますね。それから衆参両院において「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」というのが行われておりまして、ここでも「平和の目的に限り、」云々ということで明確に決議されておるのですが、これとのかかわりはどうなるのですか。
  48. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 まず最初に、私ども自衛隊側が公衆電気通信法に基づいて受けておりまする利益について申し上げますと、私どもは使用者の一員といたしまして、今日電電公社の役務によって全国にありまする各駐屯地、さらには、ときには国際電電も供与いたしておりますが、利益を受けておるわけでございまして、今回の硫黄島のCS2についての利用につきまして、実は硫黄島から二百キロばかり離れた父島までは回線が来ております。私どもといたしましては、あるいはそのあと二百キロを海底ケーブルでつないでいただいて回線を回していただいても結構なんでございますが、硫黄島に現在駐屯いたしておりまする自衛官の諸君の任務の遂行、さらには彼らの福祉厚生、あるいはそこで働いておりまする百何十人かの一般の民間の方々の本土との連絡その他について、何とかわが国のその他の地域の駐屯地で行われておると同じような公衆電気通信法に基づく役務の提供を電電からいただきたい、こう考えておる次第でございます。  たまたま通信衛星の打ち上げに成功いたしまして、これは科学技術庁が事業団をしてなさったことでございますが、いよいよこれが実用化するということでございますので、私どもは関係各省庁と話し合いをさせていただきまして、その結果、協議が成立をいたしたものですから、五十九年度概算要求で、実は硫黄島にこの役務の提供をいただく予算を計上いたした、こういうことでございます。
  49. 矢山有作

    矢山委員 御答弁の中で自衛隊の任務の遂行のためにも使う、こうなるのだから、自衛隊の任務遂行に使うといえば、これは軍事利用じゃないのですか。軍事利用ですね。そうすると、やっぱり国会決議なり宇宙事業団法の趣旨にはこれは反するのじゃないですか。しかも、宇宙開発事業団法第一条が修正をされたときに、これはこんなことで修正していますよ。「わが国における宇宙開発は、憲法の趣旨にのっとり、非核・非軍事を趣旨として平和の目的に限る」、こういうふうに、国会決議はきわめて明確になっている。それに基づいて宇宙開発事業団法第一条にその趣旨が盛り込まれて、平和利用、平和目的の利用に限る、こうなっている。自衛隊の任務遂行のためにこの通信衛星を使うということになると、これは明らかに宇宙開発事業団法の国会決議に抵触するじゃありませんか。あなたは自衛隊の任務に使うと言った。
  50. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 宇宙開発事業団法第一条の解釈あるいは国会決議の解釈につきましては、それぞれ関係の省庁から有権的な御答弁をいただけるかと存じますが、私どもが現在電電公社の役務を利用さしていただいております中にはいろいろなものがございます。  いま軍事利用というお言葉をお使いになられましたけれども、あるいは先生は軍事通信とかいう意味でこの通信回線の利用の問題について触れられたのかもしれませんが、もしそうだとしますと、軍事通信とは一体何かという概念がちょっとはっきりはいたしませんが、今日私どもが考えておりますといいますか、現在やらしていただいておりまする硫黄島から本土の部隊に対して行われております通信の中には、たとえば航空機の管制業務、これは当然自衛隊の任務としては行っております。自分自身の航空機の管制業務はやっておりますが、そのほかに航空救難とかあるいは俗にシーレスキューと申しますか、そういう海難の問題の情報だとかあるいは気象データの送受信、こういったものも含まれているわけでございます。  なお、日本の国内におきまする自衛隊の通信の中には、災害出動時の通信その他も実はいろいろございまして、軍事通信というものが何であるかというような概念が必ずしもはっきりはいたしておりませんが、少なくとも私どもが理解をいたしておりますことは、各省庁の協議が行われて、国会決議にもちろんこれは反することでもございませんし、それから宇宙事業団法の第一条の精神にももちろん反しない、こういうことで協議が成り立った、こう理解をいたしております。
  51. 矢山有作

    矢山委員 それはけしからぬですな。自衛隊が使うんでしょう。軍事利用の範囲がどこにあるのやらここにあるのやらわからぬなんというような、つまりあなたが軍事利用というのをどういう概念で言っておるのか知らぬが、自衛隊が使う以上は、そのあなたが心に描いておる軍事利用も含めて全体として自衛隊が使うんでしょう。通信をするときに、これは軍事利用でございます、これは軍事利用でございませんというのをどこで仕分けするんですか。そんな仕分けができるのですか、郵政省。これは軍事利用、これは軍事利用でないという仕分けができるのか。
  52. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本国の国内で現在電電公社と自衛術隊との間に成り立っておりまする契約そのものの形で実は硫黄島で通信衛星を使わしてもらいたい。それは私どもは回線をしているわけではございませんから、父島まで参りました回線をさらにケーブルで硫黄島まで二百キロ引っ張っていただいても、それは結構でございます。ただ、せっかく国民の税金を使われて、あれだけ大きなお金をかけて事業団が成功されて、それを各省庁との協議の間で、これはその回線と同じ形で使い得るのだということだったものですから、私どもとしては喜んでそれではそうさしていただきたいということで五十九年度概算要求で要求しよう、こういうことにしたわけでございます。
  53. 矢山有作

    矢山委員 担当省の意見を聞きたい。
  54. 安田隆明

    ○安田国務大臣 いまお話しございましたけれども、この前の、前国会の予算委員会で御質問がございまして、私の方は、団法並びに国会決議の平和利用のあの線上においてわれわれは宇宙開発を行っております、こういうふうにお答えいたしておったわけでございます。そのときにまた具体的な質問が出てまいりまして、総理がそれでは検討いたしましょう、こういうことで終わっておるわけであります。当時は防衛庁から具体的な話は聞いておりませんでした。その後、防衛庁の方から具体的な話が出てまいりましたので、われわれは検討いたしました。  検討いたしてみますると、すでに現存する一つ法律が、いまほどお話のございました公衆電気通信法、こういうものがございます。これは御存じのとおりであります。いわゆる有事の場合、一切の交通が途絶する、通信が途絶をする、あるいは硫黄島のような通信の役務の提供ができていないところもある。しからば、行政目的あるいは政策として、これを充足するいわゆる通信実用衛星を打ち上げる必要がありということで、宇宙開発委員会は長期計画の線上においてこのCS2というものを開発をして、これを打ち上げた。だからして、新しい役務が提供されました公衆電気通信法、これにこの星を提供することは、利用せしめることは、これは団法並びに国会決議の性格を変えるものではございません。あくまでも公衆電気通信のこの法律の線上の中においては、これは平和目的に反するものではない、こういうことをわれわれは合意を得て、間違いない、こういうことで防衛庁に提供した、こういうことでございます。
  55. 矢山有作

    矢山委員 それは答弁にならぬよ、答弁に。あなた、大体平和の目的の利用に限るということは、どういう経緯でこれが事業団法の第一条に入ったか知っていますか。それは、通信衛星を打ち上げることはあなたの仕事だよ。問題は、それを自衛隊に使わせるということが、平和目的の利用ということの枠をはめられたのに反しはせぬかと言っている。それで、その平和目的の利用という、それを許さぬという法の問題、さらに国会決議について有権的解釈とは何だ、有権的解釈は国会がやるんだよ。  大体、考えてごらんなさい、あなた。この間軍事技術の対米供与の問題についても、国会決議があるのにかかわらず、それを踏みにじって一方的にやったわけでしょう。今度また、この平和目的の利用に限るという法の第一条の趣旨が明らかになっており、国会決議もある。それをまた踏みにじって自衛隊に利用させる。自衛隊の利用は軍事利用も含まれておる。これは軍事利用でございます、これは軍事利用でありませんというような仕分けはできない。自衛隊が使えば軍事利用が当然入る。イロハのイの字だ。そういうような答弁では納得できない。きちっとした政府のまとまった答弁をせよ。
  56. 安田隆明

    ○安田国務大臣 矢山先生、CS2を公衆電気通信法に基づいてわれわれはこれを電電公社、郵政省に供与するということにつきましては、これは団法並びに国会決議には反しません。これはおわかりいただけるだろうと思います。これをどう利用するかということにつきましては、これはちょっと私の分野から離れますので、郵政省の方からひとつお答え願いたいと思います。
  57. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 CS2の利用の関係と、それから硫黄島における防衛庁の公衆電気通信法による役務提供の関係についての検討の経緯は、いま科学技術庁長官からの御答弁のとおりでございます。  私どもは、CS2を使いまして電電公社が公衆電気通信法による役務の提供を行うということで最初から計画をいたしたわけでありまして、その計画によって現在もうすでに役務の提供をいたしておるわけであります。このことは、私は、もちろん平和目的に反するものであるというものではない、また電電公社がいかなる人に役務を提供しようとも、電電公社としての公衆電気通信法の役務の提供という性格に変わりはないというふうに考えておるわけであります。  御案内のように、公衆電気通信法では第一条で、あまねく公平に役務を提供すること、また三条では、何人に対しても差別的待遇をしてはならないという規定があるわけでございます。私どもは、その電電公社の公衆電気通信法に基づく責任を果たしていきますために、防衛庁が役務の提供を受ける者という立場から役務提供の申し込みをいたしました場合には、これを拒否すべき何らの理由がないということでございます。その限りにおきましては、私ども法律の枠内で、法律の命ずるところによって役務を提供しようとしておるのでございますから、私ども基本的に平和目的に違反する役務提供であるとは考えていないわけでございます。それが今回の協議の結論であるわけでございます。  なお、先ほど通信の内容が分けられるかということでございますが、公衆電気通信法によりますれば、通信の秘密の保持及び検閲の禁止の規定から申し上げまして、役務の提供後どのような通信が行われるかということについては、介入すべき性質のものではないと心得ておるわけであります。
  58. 矢山有作

    矢山委員 電気通信設備を郵政省が業務としてやるというその事態はありますよ。その業務として利用させることが軍事利用につながってくるということが問題なんですよ。役務を提供する、役務の提供は公平でなければならぬ、差別しちゃいかぬ、それはそうなんです。ところが、公平じゃなければならぬ、差別しちゃならぬという法の趣旨で役務を提供したその提供が、自衛隊というものの軍事利用になっておる、そこが問題なんですよ。あなたの答弁じゃ納得できませんよ、そんな。納得できませんね。国会決議の無視もはなはだしい。
  59. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 どなたに答弁を求められますか。
  60. 矢山有作

    矢山委員 ちゃんとまとめて答弁しなさい、おれの納得のいくように。
  61. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 どなたから答弁を求めますか。
  62. 矢山有作

    矢山委員 答弁するかい性のある、自信を持ってできる人があれば……。
  63. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 ただいま申し上げましたように、私どもはもちろん事業団法第一条の規定も、また国会の御決議のありますことも十分承知をいたしておるわけでございますが、     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕 私ども郵政省の立場としては、公衆電気通信法の命ずるところによりまして、法律の枠内で役務の提供を行おうとするものでございますから、私はこれは何ら事業団法の一条や国会の決議に違反するものとは考えていないわけであります。
  64. 矢山有作

    矢山委員 郵政大臣、あなた、宇宙開発事業団法というのは昭和四十四年六月にできたのですよ。公衆電気通信法というのは二十八年六月にできた。二十八年六月にできた公衆電気通信法の存在、それに対する解釈、それを踏まえた上で新たに宇宙開発事業団では、通信衛星等の利用については平和目的に限るんだという規定を入れ、しかも国会決議まである。国会決議の有権解釈は政府がやるべき問題じゃない。政府が勝手に国会決議の有権解釈をやって、また国会決議を無視した。宇宙開発事業団法というものによってその解釈をねじ曲げた、これは許せぬですよ、絶対に。
  65. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 国会の御決議の解釈は国会において最終的に御見解を示されることが正しい、その点は私も異論はございません。当然のことであると思います。  しかし、私ども行政庁としましては、国会で御承認をいただきました法律に忠実に従ってやることが私どもの任務であるということで、私どもは、法律の規定に従う限り、私どもの解釈に間違いがないということを申し上げたいわけであります。
  66. 矢山有作

    矢山委員 答弁になってない。  総理、いま国会決議の解釈を政府でやって、これは平和目的の利用に限るという、この国会決議の趣旨には反しないのだ、それで利用を認めたんだ、こう言っている。しかし、総理は、あなた自身の口から、軍事技術の対米供与の議論になったときに国会決議の有権解釈は国会がやるんだとおっしゃった。記憶があると思うのです。いま郵政大臣も、国会決議についての最終の解釈は国会でやるんだとおっしゃったのですから、これは間違いないでしょう。
  67. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いままで御議論を拝聴しておりましたが、私は、各大臣の答弁のとおり、私もそのように思っております。公衆電気通信法によります役務の提供が行われるという場合に、防衛庁もその業務の遂行上必要と思うときにはその役務の提供を受ける、そういうことであると私は思っております。  それで、国会決議に関しましては国会で御解釈なさるということであると思いますが、自由民主党といたしましては、政府・与党一体になりましていまのような解釈で国会決議も解釈しておる、そういうことでございます。
  68. 矢山有作

    矢山委員 自民党の解釈が国会の解釈じゃありませんから、これは。混同してもらっては困ります。(発言する者あり)
  69. 金丸信

    金丸委員長 番外発言はやめてください。
  70. 矢山有作

    矢山委員 国会の解釈と自民党の解釈はイコールじゃないのですから、これは間違いです。答弁をきちっとしてください。(「休憩、休憩」「理事会を開け」と呼び、その他発言する者あり)
  71. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 重ねて御答弁を申し上げますが、先ほど申し上げましたとおり、私ども郵政省の見解といたしましては、公衆電気通信法に基づきまして公衆電気通信の役務の提供をいたしておるわけであります。この電気通信法の規定では、御案内のようにあまねく公平に役務を提供しなければならないということが明定をされております。また、役務の提供を受けたいという申し出者に対して差別的待遇をしてはならないということが法律上明定をされておるわけであります。  そこで、日本電信電話公社はCS2を用いまして公衆電気通信法による役務の提供をいたしておるわけでございますから、防衛庁が役務の提供を受ける者としてその申し出をいたしました限り、これを別異に取り扱うということは法律の精神に反することになるわけでありますから、私どものとろうとしておりますこの姿勢は、法律の規定に従った措置でございますので、その点は私どもは間違いのないことであるというふうに考えておるわけでございます。
  72. 矢山有作

    矢山委員 郵政大臣の答弁は、私に対する満足な答弁じゃないのです。なぜかというと、宇宙開発事業団法というものがあって、それを踏まえながら、通信衛星の利用というものが非軍事の利用なんだ、平和目的に限ってしか許されぬのだ、こういうふうに国会決議はきちっとなっておるのだから、いまのは答弁にならないのです。  それからもう一つは、谷川防衛庁長官は、政府の有権解釈としてこれは平和目的に限るという国会決議に矛盾しないと思ってやったと言う。総理は、国会決議の有権解釈は国会でやることだ、しかし政府・自民党の解釈は構わぬ、自衛隊に利用させることは構わない、平和目的に反しない、こういうことを言っている。こういう答弁で納得できますか。これはきちっとしてもらわなければ納得できない。
  73. 金丸信

    金丸委員長 郵政大臣。
  74. 矢山有作

    矢山委員 郵政大臣が幾ら言ってもだめだ。(「休憩、休憩」「理事会」と呼び、その他発言する者あり)
  75. 金丸信

    金丸委員長 静粛に願います。
  76. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 たびたびの答弁で恐縮でございますが、もう一度私も答弁をさせていただきたいと思います。  申し上げましたように、電電公社は、CS2を使って公衆電気通信法による役務の提供をやるということを認められたわけでありまして、それは平和目的に反するものではないということで認められたわけであります。その役務の提供をいたします限り、その役務を受ける方が一般民間人でありましょうとも、あるいは防衛庁でありましょうとも、それを利用して来る通信は、私は平和目的に反するものではないというふうに考えまして、電気通信法に基づく役務の提供をやろうとしておるわけであります。
  77. 矢山有作

    矢山委員 それは答弁にならない。(発言する者あり)
  78. 金丸信

    金丸委員長 矢山君の質問に対しまして、政府答弁が満足な答弁でないというような状況の中で、いま細谷君から、休憩して理事会をやれということですが、そちらの言うことがうまくかみ合わないから休憩、休憩ということでは委員会が前進しないということでありまして、この問題は、理事会に預かって、その預かった中で、政府とも十分話して、満足な答弁ができるようなことを考える、それでいかがでございましょうか。(「休憩」と呼び、その他発言する者あり)そういう悪例を残してはいけませんから、これは続けてやりたいと考えています。(発言する者あり)
  79. 矢山有作

    矢山委員 委員長、何遍答弁したってだめですよ。宇宙団法の解釈だけやっているんだから、国会決議というものを無視して言っているんだから。
  80. 金丸信

    金丸委員長 それでは矢山さん、大臣もさることですが、専門家の事務からひとつ説明を聞くわけでありますが、この問題につきましては、科学技術庁長官が郵政の方へ球を投げてしまっているんだが、平和目的ということで郵政省へ持ってきた、郵政省の方は、そういう関係の中ですから、私の方ではこれを受けたということで、問題は、科学技術庁の方がこの問題である程度答弁があってしかるべきだ、こういうことですから、科学技術庁の……
  81. 矢山有作

    矢山委員 科学技術庁の答弁はもうわかっているのですよ。うちの方は通信衛星の開発が仕事だからやったんです、仕事として開発したんです、こう言っている。それで、平和目的だというからというだけの話ですよ。だから、それはもう意味がない。科学技術庁には関係ない。
  82. 金丸信

    金丸委員長 そこで、科学技術庁の話も聞いたり郵政省の話も聞いたり、そうして、そこでなお話し合いがこげるようでは休憩もしましょう。そうします。  それでは、まず科学技術庁の福島研究調整局長。(「長官」と呼ぶ者あり)いや、大臣はもう聞いたから、局長の話を聞こうということですから。
  83. 福島公夫

    ○福島(公)政府委員 科学技術庁の研究調整局長でございます。  いままでの議論を拝聴しておりまして、われわれの説明がなかなか御理解いただけなかったこと、非常に残念に思っておりますが、私たち行政官は、立法府でつくられた法律を誠心誠意守ろうということでやっておりまして、いかなる法律もいかなる国会決議も、それを忠実に守ろうということでやっております。  そういう意味で、二十八年につくられました公衆電気通信法にも忠実であり、それから四十四年につくられました宇宙開発事業団法にも忠実であり、なおそのときの国会決議にも忠実であるという道を行政レベルで検討した結果、今回は二十八年につくられました公衆電気通信法の枠内において行われる業務ということで、先ほど来申し上げましたような結論に導いたわけでございます。  そういうことでございますので……(「勝手に枠内と決めちゃいけない」と呼び、その他発言する者あり)
  84. 金丸信

    金丸委員長 よく聞いてください。
  85. 福島公夫

    ○福島(公)政府委員 われわれとしましては、あくまでも法律というものを守ることでございます。そういう意味で、公衆電気通信法、これは郵政省の方からかなり御丁寧に御答弁いただいておりますけれども、その趣旨に基づきまして、われわれは宇宙開発事業団法及び国会決議にもとらないということで、CS2の利用というものに踏み切ったわけでございます。(矢山委員答弁になっていない」と呼び、その他発言する者あり)
  86. 金丸信

    金丸委員長 暫時休憩いたします。     午前十時二十三分休憩      ────◇─────     午後二時十二分開議
  87. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほどの矢山君の質疑に対します内閣総理大臣及び防衛庁長官答弁に関し、中曽根内閣総理大臣の発言を求めます。中曽根内閣総理大臣
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほどの私の発言に関しまして、正確を期するために、改めてもう一度申し上げます。  国会決議に関しましては、もとよりそれは国会でお決めなさることであると思います。
  89. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 谷川防衛庁長官
  90. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 先ほど私のいたしました、「宇宙開発事業団法第一条の解釈あるいは国会決議の解釈につきましては、それぞれ関係の省庁から有権的な御答弁をいただけるかと存じますが、」と、こう申しあげましたが、国会決議につきましては、この解釈については国会がお決めになることでございますので、私といたしましては、この答弁を、「宇宙開発事業団法第一条の解釈は、それぞれ関係の省庁から有権的な御答弁をいただけるかと存じますが、」と、こういうふうに訂正をさせていただきたいと存じます。
  91. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 矢山君。
  92. 矢山有作

    矢山委員 私の残余の質疑につきましては、今国会中において次の機会に譲らしていただきたいと存じます。
  93. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 矢山君の残余の質疑は、委員お申し出のとおり、後日行うことといたします。  次に、岡田正勝君。
  94. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 まず、冒頭に総理にお尋ねをしたいと思うのでありますが、今回提案をされました各種の行革法案は、これは行革の一里塚である、国民にいろいろな御意見がありまして、内容は余り大したものがないではないかというような御意見が多い中で、政府答弁としては、これはもうほんの一里塚である、これからが胸突き八丁に差しかかっていくんだというような御説明がありました。それはそれでわかるのでありますけれども、しかし、そういうことになるならば、行革のスケジュールは、タイムスケジュールと申しますか、そういうものは一体どうなるのだろうかという、いわゆる全容が国民にわかりません。これが非常に国民の聞きたがっておるところでございますので、その点に対しまして総理の御意見を伺いたいと思います。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行政改革につきましては、臨時行政調査会を設置いたしまして、五次にわたりまして答申をいただきました。政府はその都度、その実行につきまして、いわゆる工程管理表に類すべきものをつくりまして、閣議決定をもちまして公表もし、また、その線に従って進めておるところでございます。  まず、財政面から、小さな政府効率的な政府という要請に従いまして、歳出カットにつきまして全力を注ぎました。これによりまして、予算請求をゼロシーリングあるいはマイナス五%シーリング、あるいは今回はマイナス一〇%シーリングということを行い、さらに赤字国債発行額を減らしてきたところでございます。一兆円ずつ毎年減らして努力してまいりました。これが一つ財政面からの努力でありまして、これはやはり臨時行政調査会ができましたから、その大きな力によりまして政府はこれを遂行することができたと感謝しておる次第でございます。  次に、人員の問題がございます。人員の問題につきましては、いままで人員削減計画がございましたが、それを改定いたしまして第六次人員削減計画というふうにいたしまして、五年間に五%削減する、そして補充率をできるだけ少なくする、そういう線でこれは各省庁とも話し合いを妥結いたしまして、その線でいま進めておるところでございます。  それに基づきまして、昨年度は実員の出血減を約千四百名、本年五十八年度は約千六百九十数名に及ぶネットの減を実行したところで、来年度につきましては、定年の問題もございまして相当退職者も出るだろう、そういう意味で、さらにより多くのネットの縮減を実行したい、こう考えておるわけであります。  これが定員の方面における努力であり、その一面において、またこれは鈴切議員からも御批判をいただいているところですが、各省庁間の定員の流通、これをやろうと思っていましたが、これはなかなかうまくいきません。しかし、これも努力しなければならぬと思います。  それから、許認可の整理の問題でございます。この許認可の整理の問題も、法案を提出いたしまして、今回でたしか二回目であると思います。私が行管長官のときにおきましても第一次のかなりの整理をやり、今回もまた許認可の整理を実行しておる。  それと同時に、いわゆる自由化を促進しようというので、データ通信の自由化等についてかなり思い切った措置を講じた点でございます。  それから、これとの関係におきまして、行政の簡素化という意味で、認証制度の簡素化をやりました。これは国会の御協力をいただきまして、たしか本年の三月ごろ提出いたしまして、すでに八月一日からそれは施行して実施に入ったところでございます。  それから、機構の問題に入ってまいりまして、機構につきましては臨時行政調査会からも御示唆をいただいておりますので、それで今回は総務庁設置法案、それから府県単位の出先機関の整理等の法案を提出いたしました。その前から宇野行革時代からの仕事も引き継ぎまして、財務局や陸運局の整理も一部実行したところでございます。  今回は、臨調答申を受けたものといたしましては、総務庁による行管庁と総理府の統合を行い、あるいは地方支分部局といたしまして、府県単位の財務部あるいは行政監察局、公安調査庁の支分部局等の整理をいま実行しておる、そういうところであると思います。  それから、やはり官庁の自主自律による再編成を推進しようという意味で、国家行政組織法の改正をお願いをいたしまして提案しております。  それから、国鉄の改革、電電、いわゆる三公社の問題がございまして、これにつきましては、臨調から方向を指示されておりまして、それで国鉄については監理委員会設置法をつくりまして、監理委員会がいまその法律をつくる準備をいたし、また国鉄の勤勉性といいますか、綱紀の粛正について現に十一項目にわたる監督をやっていただいておるわけであります。それから、電電、専売につきましては、いま法案をつくる準備を党内でやっております。これは通常国会に提出するべく努力しておるところでございます。  今後年金の問題がございまして、今回公的年金の統合については法案を御審議願っておりますが、これは国鉄等を中心にして焦眉の急を要する問題でありますので、今国会に御提案申し上げ、さらに大きな全面的な年金問題の総合調整という問題は、次の国会にもし間に合えばそれを提出するように懸命の努力をいまやっていただいております。  大体以上の路線に従いまして行政改革を進めておるところでございます。
  96. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大体わかりました。  そこで、そういういま御説明のありましたようなもの、いままで実行されたことも御説明があったわけでありますが、これから先の実行計画といいますか、そういうようなものは、先般五月に出されました行革大綱、あれ以上のものは現在のところはないわけですね。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いままでやりましたことでまだ若干ありますものは、補助金の整理であります。これは議会からもずいぶん御請求をいただきまして、補助金の整理を一生懸命やっていますが、必ずしもまだ成果は十分上がったとは言えません。それから機関委任事務の問題、これも今回提出しておるわけでございます。それから、来年にかけまして地方事務官制度の問題等が出てまいります。  それで、最終答申を三月に土光臨調からいただきまして、それらを実行するための方策を五月の二十四日、閣議で決定いたしました。これが大体いままでの答申全体を総括するような意味で基礎をつくっておると思いますが、いままで五次にわたっていただいたものに対するその都度のわれわれの閣議決定プラスいまの五月二十四日の閣議決定、これ全体に大体今次行革にわれわれがやらなければならぬことが盛られておる、かように考えておる次第でございます。
  98. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 臨調から出されました答申を最大限に尊重する、こういうことをおっしゃっておるわけでありますが、この臨調の答申は最大限尊重というのは、日本語ではよくわかるのでありますが、確実にそれを実行しましょう、たとえば何年計画でこれを完了したいというようなことが、いま意思が表示できますか。
  99. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 最大限尊重するということは、本当に最大限でございますから、余りつまみ食いなどはいたさないで実行に移すという決意でございます。  それで、先ほど総理からお述べになりましたようないろいろな問題が次の通常国会等に出されるわけでございますが、たとえば年金などということになりますと、国家公務員の統合案、現在の国会に継続審議になっておりますが、さらにまた地方公務員の方は先般の通常国会で成立をしました。来年度の通常国会におきましては厚生年金と国民年金の統合、こういうことでございますが、年金などは、全部それが実りまするにはやはり十年かかると思いますね。そういう長期的なものもあります。  それから国鉄は、御承知のように監理委員会において基本構想が最初の二年間であれしまして、五年以内に実施する、こういうわけでございますから、一年や二年で全部済むということはございません。  それから、臨時行政改革推進審議会は三年の任期にいたしてございますから、まあ大体三年の間にはある程度のめどはつけたい、けれどもやはり相当長期にわたるものもある、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  100. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 総理は非常に歯切れのいいわかりやすいお話をされるので、大変評価を得ておると私も思っておるのでありますが、この行政改革というものは、もう国民的課題になっているわけですね。そこで、先般来繰り返しておっしゃっておる言葉の中には、石にかじりついてもあるいは地にはってでもというようなお言葉がしきりに出てくるわけでございますが、この行政改革をやるに当たりまして、これはちょっと私、嫌みになるかもわかりませんが、たとえば今回御提案になっておる総務庁の構想にいたしましても、臨調で言われておる総合調整機能を持ったいわゆる総合管理庁構想とは大分様子が変わっているのじゃないかということを国民は非常に心配をしております。それも、官僚の皆さんがおるわけでありますが、官僚の皆さんの抵抗があると、総理が幾ら御決意になってもなかなか思うように進まないぞという一つの証拠が出てきておるのじゃないか。最初の一里塚ということをおっしゃっていますが、最初の第一歩で何となく嫌な不吉な予感がしてならないのであります。  行革をやると言ったらやる、死んでもやる、石にかじりついてもやる、こういうふうにおっしゃっておるのでありますから、行革を進める上については私は一番抵抗がきついのは官僚であろうと思います。その官僚の抵抗に対して、場合によれば、大志を全うするためには局長や審議官の一人や二人、乱暴な言葉でありますが、責任をとらしてでも、とにかく断固としてやり抜く覚悟であるということが言えますか。
  101. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 鈴木内閣のころ、私、行管長官拝命してやっておりましたが、今度の行革を始めるに際しまして、閣議で発言もいたしまして、もしこの行革について筋の通らない反対をする官僚がいたらそれは許さぬ、各省大臣に連絡をして注意してもらうし、措置してもらう、そういう発言を私、行管長官のときいたしまして、多少摩擦を起こしましたけれども、そういう決意でやってきたつもりです。それで、いろいろな中身につきましては必ずしも御納得のいかない、期待どおりにいかないものも多々あると思いますが、われわれとしては精いっぱい努力してきておるつもりでおります。  それで、総務庁の問題にいたしましても、いま法案になったものをごらんになりますといろいろ御批判いただきますが、これをやろうと決心したときには、果たしてできるかなというぐらい強い抵抗があったわけであります。何しろ終戦以来ほとんど初めてと言っていいぐらい、昭和三十年以来ほとんど初めてですから、中央省庁二つを一つにするという仕事でございますから、そこに勤めている公務員の皆さんにはそれが生きがいであった、自分は将来こういうポストでこういう仕事をしたいと思って一生懸命汗を流してきた、それが変わってしまうということですから、生きがいにも関係するぐらいな気持ちであることはよく理解できるわけです。にもかかわらずやらなければならぬ、そういうことで勇を鼓してやっておるわけであります。  愚痴を申し上げるようですが、ここまで持ってくるにつきましては、党の行財政調査会長、それから行管長官、総務長官等におかれては非常な御苦心をしていただいたのであります。しかし、それでもできたものは、私はかなり力のある、統合力のあるものになってきておる、そのように思っております。     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕 従来行管庁の持っておった権限、それから総理府にあった権限等はほとんどここへ盛られておりますし、総合調整機能自体にいたしましても私は強化されてきておる、そういうふうに考えております。
  102. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 よくわかりました。  ともあれ、行管庁長官のときには、私がいま申し述べましたような大変ごりっぱな発言があったわけでありますが、総理大臣になられますとちょっと鋭鋒が鈍ったのではないかなという感じがいたしまして、ちょっと心配しているんですよ、正直な話が。これは私が心配しているんじゃなくて、国民のほとんどの人が心配しているんじゃないか。だから、中曽根さんのおやりになる行革というのは国民へのしわ寄せばかりが出てきちゃって、官僚の肝心かなめの水ぶくれというところにはメスが入らないままに終わるんではないかなという心配があるのであります。  再度お尋ねしておきますが、この行革を断行するということについて、官僚の抵抗について、行管庁長官のときの御発言と御意思は変わっておりませんか。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 変わっておりません。幸いに、私が行管長官を拝命しましたときと今日におきましては、国民の意識、それから公務員の諸君の覚悟も非常に変わってきまして、これはやはり土光さんを初めとする臨調の皆さんのお力や日本のジャーナリズムのお力の結果であり、また一部の野党の大変な御協力のたまものである、そう思っております。  たとえば、公務員の給与昇給を見合わせるというようなことは、これは行革と関連しているような関連してないようなことですけれども財政上もほかに方法がない、そういうところで涙をのんで政府はやったわけでございますが、これも考えようによっては大変なことであるわけです。しかし、それもあえてやり得たというようなことや、あるいはそのほか予算なんかにいたしましても、赤字公債をできるだけ出さない、減らす、そういう方針を持っていますから、金のないところは各庁の庁費、各省庁が持っているいろんなお金を全部供出させて補正予算の財源にしているわけです。これが毎年二千億ぐらいに上っているでしょうね。  そういうわけですから、各省はもう出張旅費もない。ですから、外国へいろいろ仕事があるという場合に、各省の公務員は日本航空のBクラスの座席も乗らないで、たとえばもっと安い飛行機を見つけて、そしてそっちへ乗っていく、そういうぐらいやっているわけです。できるだけその範囲内で効率的に金を使うというふうに公務員の諸君もなってきまして、私ら内部の話をちょっと聞いてみますと気の毒なくらい、外国へ出張に行くときは、エコノミークラスで日本航空なりルフトハンザぐらい乗せてやりたいところですけれども、しかしそれも金を節約するというので、わざわざ遠回りをして乗っている。もっと格安のツアーみたいなものまで利用している。そういう形で実は対応しているわけです。  こんなことはいままで終戦以来ないことです。これはもう一年、二年、三年にわたって庁費の節約を強行してきているために、各省庁は必死に協力してくれているわけでございます。もう限度に来つつある。私らも内部を見まして、そう思います。これ以上やると、また関係団体に金を出させたり何かするような悪いことが出る危険がなきにしもあらずだ、こういうような逆さにしても鼻血も出ないような状態になりつつあることは、われわれ行政を順当に運行するという面から見ても考えていかなきゃならぬ、そういう点も考えつつあるところでございます。
  104. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま総理の方から、無残なくらい庁費の節減をしているんだという涙ぐましいお話があったのでありますが、ちょうどいまここへ御出席の閣僚の皆さん全員の方にちょっとお尋ねをしたいと思います。いま各省庁におきまして使っていらっしゃるところの、いや鉛筆だ、ボールペンだ、いや紙だ、いろんなものがありますね。それから車がありますね。それから臨時雇いといいますか、臨時の雇用の者、そういうものがありますね。この臨時の雇用だけでも、昨日の鈴切委員の御質問に対しての御答弁を見ましても約十八万人ぐらい年間おるというようなことでございますから、まあこれだけだって人件費が五千億を下らぬだろうと思われるぐらいの膨大なものでございます。  こういうことを考えてみると、各省庁の大臣は、総理行革の精神にのっとりまして、庁内のそういうことについてはその状態をしっかり把握しておる、どのくらい紙だ、鉛筆だあるいは車だ、臨時雇いだというようなものを節減しておるか実態をよく把握しておるというふうに私は確信をしておるのでありますが、大臣の皆さん方はそれをちゃんとやっていらっしゃいますか。大変失礼でありますが、手だけ挙げてみていただけませんか、やってるとおっしゃる方は。やっていますか。  総理、大変失礼なことを私申し上げたのですが、いま御出席の大臣は総理を除きまして六人ですよ。六人のうち、いまお二方しか手が挙がらないのです。三人ですか。ということは半分ですよ。それは、大臣というのは忙しいから、そんなことまで気をつけておられるかいとおっしゃる方もあるかもしれませんが、いわゆる頭の方ががしっとしておれば、下の方は必然的に姿勢が直っていくわけでありまして、総理は鼻を高くして無残なぐらい庁費の節減をやった、一年に二千億ぐらいやった、こうおっしゃっておりますが、まだまだ私から言わしたら、国民から言わしたら足らないところがあるのではないかと思いますので、そのことも十分腹に含んで御指導をお願いしたいと思う次第であります。  さらに、時間がありませんので一つだけしぼりたいと思いますが、陳情政治ということをいましきりに言われております。この陳情に対しまして四十七都道府県、そして三千数百の市町村、こういうところが使っておるところの陳情費なんというものは、乱暴に計算したって一千億は優に超えるだろうと言われておるような今日でございます。  そこでわが党は、公共事業費は、地方の時代でございますから、地方の自主性に任して第二交付税としてこれを交付するというやり方をしたらどうかということをかねてから常々申し上げておるのでありますが、その点いかがでございますか。
  105. 竹下登

    ○竹下国務大臣 民社党のかねておっしゃっておるいわゆる第二交付税構想(仮称)でございましょうが、いわば地方自治の精神にのっとり、その地方の自主的判断によって最も効率的にもろもろの事業が行われるという点については十分理解を示すべき問題であり、検討を引き続いてやるべき課題であります。  ただ、いま例示なさいました公共事業等ということになりますと、河川は河川あるいは道路は道路、それぞれの総合的な角度から判断した長期計画というものが立てられて、その中で優先順位を選択しながら行っていく場合において、国自身がその総額を握っておって執行に移した方がより効率的だという面も、なかんずく公共事業等においてはあるわけでございます。したがって、それをさらにいわば道路一つとっても、俗に言う国道もあれば地方道もある、市町村道もあるというところにまで詳細な検討を加えて勉強してみろという御叱正もいただいておりますので、そのような検討は引き続き続けさせていただきたい、こういうことになっております。
  106. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ぜひその検討はまじめにやっていただきたいと思います。希望しておきます。  次に移らしていただきますが、先般、わが党の吉田理事の方から総理大臣に質問いたしました中で、租税負担率の問題ですね。これに対しまして、「増税なき財政再建」ということを言われておる今日、果たして増税をやらないのかどうかということで、租税負担率は現状維持でいくのかどうかということについて質問しましたら、総理大臣は非常に明快な答弁をしましたね。ですから、各新聞実に大きく取り上げているのですよ。私は、こういう点では、立場は違いますけれども、中曽根さんというのはりっぱだな、この行革の委員会で自分で租税負担率は上げませんとはっきり手錠をかけられた、これはすばらしいことだと言って、私、党内でも総理を褒めているのですよ。  ところが、一つだけ心配になりますことは、これはよく大蔵大臣の御答弁の中でちらりちらりとよろいのあれが出てくるのですが、租税は上げないとしても社会保障社会保険料の方が上がっていく可能性があるかもしれない。厚生大臣の方は健保の本人の給付を二割カットするというようなことなんかも五十九年度の予算ですでに提案をしているということを聞きます。こういう租税負担率は上がらないといたしましても、社会保障負担率、これが上がっていったのでは何にもならぬのでありまして、いわゆる国民への体裁のいい転嫁ということになるわけでありますから、増税をやりませんということにはならないようになってくると私は思うのです。  それで、租税負担率とそれからいまの社会保障負担率とを合わせました国民負担率は現状維持をされるのかどうかということについて、簡単に御返事をいただきたいと思います。
  107. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この前、民社党の御質問に対してお答えいたしましたのは、「増税なき財政再建」という理念を堅持していく、そういう考え方基本に申し上げたものなのであります。あのときの言葉もたしか、速記録を確認してみないとわかりませんが、私の記憶では、大幅な変化はないように、多少の調整は要するとも思いますが、原則としていまの負担率は変えないようにしたい、そういう点で努力をいたしたいと思います、そういう趣旨のことを私、言ったと思います。これは臨調答申の線に沿って言っておるので、臨調答申では、「増税なき財政再建」とは、国民所得に対する租税負担率を大幅に変えないで、そして新しい税目をそのために起こしたりしないようにしていく、しかし、いままでの課税、税目の中、措置の中で、いろいろ上がったり下がったりするものや調整することはもちろんあり得る、そういう前提のもとにあの「増税なき財政再建」という言葉を解釈していた、私の記憶にそういうものがあるわけです。それを意味してこの間お答え申し上げた次第なのでございます。  それから、では社会保障関係費を加えたものがどうであるか。スウェーデンやそのほかの国は大体五一%とか、五〇%を超えておる。日本は三四%程度である。臨調答申は何と書いてあるかと言えば、スウェーデンやそのほかのようなものと同じになってはいかぬ、かなり差がある、その現状をできるだけ守っていきなさい、かなり差がある情勢を努力して続けなさいという意味のことが書いてあったと思うのです。私は、その臨調答申の線を守るべく努力していきたいと思っておる次第です。
  108. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そうすると、ちょっとくどいようでありますが、非常に重大な問題でありますから再確認の意味で申し上げるのでありますが、臨調答申にありました「増税なき財政再建」という理念に基づいて租税負担率を現状維持していくことに全力を尽くすと前回申し上げたことにいささかの変わりもない、それから社会保険料を含めました国民負担率というものは、現状三四%でございますが、臨調の土光さんの答申にありますようにかなりの差がある、それをやはり維持していくように努力するべきだという意味のことが書いてある。これも総理は御確認に相なっております。そのとおり、いまのたとえての数字で言いますと国民負担率三四%、これは同じように現状維持に全力を挙げて努めますとおっしゃるのですか。それとも租税負担率は現状維持で全力を挙げて努めるが、国民負担率についてはちょっとそれは約束できぬ、こうおっしゃるのですか。ちょっと明快にお答え願いたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、数字を定量的に申し上げたことはないのです。それは意識して言わないわけであります。私が申し上げているのは、いまの租税負担率にいたしましても、多少のいろいろ調整はあるでしょう、また出入りもあるでしょう。しかし原則として、そういう多少の出入り等は考慮しつつも、できるだけ臨調の申しているような線を守るように努力していきたい、そういう努力目標として申し上げておるわけであります。  それから、社会保障関係費を入れた税との合算の比率の問題でございますが、これも臨調答申にありますように、スウェーデンやそのほか五〇%を超しているような国々と日本とのかなり大幅な落差のあるこういう状態をできるだけ守っていくように努力をしていく。しかし、現状で推移できるとは思いません。これはこの後のいろいろな日本がしょっておる公債の百八兆にも及ぶ膨大な金額とか、あるいは老人がふえているとか人口がふえているとか、そのほか諸般の情勢を見ていると、医療関係費だってずいぶんふえつつありますし、社会保障関係費だってふえざるを得ぬ情勢もございます。そういう面を見れば、現状で固定して済むとは思われないのです。そういうような面から、多少の変動が出てくるとは思うけれども、しかし、わが国がいままで持ってきているようなこういう基本的な考え方というものはできるだけ守って、そしてスウェーデンやそのほかとこれだけ開いている、かなりの落差があるという状態をできるだけ続けていきたい、そういう考えを持っておる次第なのでございます。
  110. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大蔵大臣、やはりそのときのお答えの中で、非常に慎重な言い回しをされまして、「増税なき財政再建」については理念としてそれは貫きたい、安易な増税はしたくない、こういうお答えの仕方ですよね。総理大臣のいわゆる租税負担率は守ります、全力を挙げて守ろうとするあの姿勢とはちょっと違うと思うのです。その点、大蔵大臣は、租税負担率については現状維持でがんばりたい、全力を挙げる、増税はしないということは、はっきりお約束ができますか。
  111. 竹下登

    ○竹下国務大臣 総理がかねがねおっしゃっておりますのは、いまのお答えにもございましたように、いわば数字というものは自分は出さない、いわば定量的に物を言わないで、定性的に絶えずおっしゃっております。したがって、私と、そして私を任命していただいた総理との間の考え方には差異はない。ただ、私がこの場でいつも申しますのは、租税負担率という問題については、まさにそれぞれの方が、不公平税制の是正というようなものは、これは増税ではなくしていわば是正ではないかというようないろいろな角度から、結果として国民所得を分母とし、そして国税、地方税を足したものを分子として租税負担率が出る限りにおいては、結果として出てくるものだからそれを定量的に固定することはできない問題であるということをかねて申し上げておるところであります。  そして、いま安易な増税という言葉を使いましたが、言ってみれば増税というようなことが一たび念頭にこびりついたら、直ちにもって歳出削限の気魄も腕も鈍ってしまう。だから、そういうことは念頭に置かないで、当面臨調の御指摘のとおり歳出削減にまさに糧道を断って立ち向かうべきであるということを披瀝いたしておるわけでありまして、総理の絶えずおっしゃっている定性的哲学、そのもとに任命された私の財政運営、筋としては全く一本筋であると思っております。
  112. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 経済企画庁長官、そちらでお出しになりました新経済社会計画ですね、あれの関係からいきまして、いま総理の御発言、大蔵大臣の御発言をごらんになりまして、私は、増税は絶対にやらぬようにしなければいかぬ、臨調の答申に沿っていかなければいかぬという決意を固めていらっしゃるな、これはりっぱだというふうに思っておるのでありますが、やはり最後に残りますのは社会保障費ですね。この負担が膨大にふくらみ上がっていくのではないか。これがふくらんでいったら、増税という税金の方はふえないにいたしましても、社会保険料の方で莫大な負担がかぶさっちゃって、どうにもならぬようなことになってくる。  国民からいったら、この国会が終わる、いわゆる解散より前のこの国会におきましては、増税はやらない、こう言って総理大臣以下皆さん力強くおっしゃっておるが、選挙が済んで新しい国会が始まったら、途端に増税案がばかんと出てくるというようなおそれを実は抱くんですよ。ですから、社会保障費を含みました国民負担率、この関係で、いまそれは西欧とのかなりの差があるけれども、できるだけそれを守り抜いていきたいというお気持ちだけはおっしゃったのですが、その線で果たしてやっていけるというふうに経済企画庁長官としてはお考えになりますか。
  113. 塩崎潤

    塩崎国務大臣 お尋ねの点につきましては、「一九八〇年代経済社会展望指針」の中で、やはり臨調答申と矛盾しないような方向で、私どもはできる限りヨーロッパの水準よりも国民負担率はかなり低位にとどまるように努力すべきであるというふうに明らかにいたしておりますので、むずかしい点はございましょう、この中にも、いろいろと高齢化に備えて負担が増加するおそれもあるけれども、徹底的な行政改革等によってその方向に進めていくべきだ、こういうふうに書いてありますので、そういうふうに努力すべきものだと考えております。
  114. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に、総務庁の構想であります。  先ほど総理は大変これを自慢をしておられました。非常に苦労してつくったものだということをおっしゃっておりますが、国民が知りたいのは、総理府と行管庁を一緒にして一つにしまして、一体何が節約できたのだろうか。最も知りたいのは、どれだけ人員が節約できたのですか、どれだけ予算が、いわゆるかかる金が節約できたのでしょうかということが知りたいんですね。これは行管長官の方からお答えいただきますか。
  115. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 先ほども総理からお答えいたしましたように、総務庁設置ということは、臨調答申に人事、定員、組織の管理、それから監察、そういうものを統合した総合管理庁という構想がありましたね。その総合管理庁プラスそのほかの政府全体を見ての総合調整機能を幅広く統合をして、政府全体としての行政の総合調整機能を強化、確立していこう、こういう案でございます。したがって、この構想は、人員の削減をするとか、予算を幾ら減らすとか、そういう直接的な目的ではありません。内閣のそうした機能を強化するということでございますから、直接的には目的としておりません。したがって、その機能の強化ということでございますから、私は長い目で見て御批判をいただければ結構だと思うのです。  ところで、さればといって人員なり組織なりを簡素化すべきであるという要請は一方にあるわけでございますから、五十九年度の予算編成の過程において、これも先ほど総理からお述べになりましたような人員削減計画に従って削減をいたしたいと思います。それと同時に、また課の組織等につきましても来年から五年間に一割整理をしようという方針が決まっておりますから、その整理に基づいて課の整理もいたしていきたい、こう考えておるわけでございます。この法案に直接的にはそれは出てきませんが、五十九年度予算過程において具体的に明らかになる、このようにお考えいただければ幸せだと思います。
  116. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 では行管長官、ちょっと私が確認をいたしますから、そうであるかないかをお答えいただきたいと思います。  せっかく総合調整機能を持たせるように実はこれは苦心惨たんしてつくったんだよ、こうおっしゃつておるわけでありますが、この案がたとえ通過いたしましても、予算編成権は大蔵省にありますね、大蔵大臣。これは取られるわけじゃないでしょう。予算編成権は大蔵省。それから公務員の任命権は各省の大臣でしょう。大臣から取っちゃいますか、取らないでしょう。そして等級別の定数の承認権というのは人事院でしょう。これも取りませんね。ということになってまいりますと、人事、組織による総合調整というのはまさに文字どおりばらばらでありますね。決して総合機能を発揮しておりません。ということになると、今度できた総務庁というものにおいて人事、組織によるところの総合機能――予算や人員が減るなんていまたちまちは出ません、しかし機能が高まるのです、こう自慢をしていらっしゃるのでありますが、その総合機能がどこが高まるのかな、何もないじゃないかという感じがいたします。まさに、まあ言うならば絵にかいたもちじゃないかというふうに思いますけれども、言葉が過ぎますか。
  117. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 言葉が過ぎているかどうか、そういう批判は私はいたしません。いたしませんが、総務庁というのは直接の人事をやるところじゃないのです。これは人事権は各省大臣にあります、具体的な人事というものは。予算はもちろんそれは大蔵省にあるわけで、私の方は人事管理、定員管理というものを一体的に見ていくというわけでございます。そういう機能を一本で一元的に発揮していこう、こういうわけですね。したがって、人事管理として具体的にどういうものがあるかと具体的な話になりますと、配置転換というふうな具体的な問題になりますと、これは人事管理と定員管理との調整の上に総合的にやっていけるということになりましょう。さらに、されば採用とかあるいは離職とか、そういうふうな人事管理の問題、これはそういう人事管理と定員管理が総合的に行われることによって円満に行われる、こういうわけでございまして、その具体的な人事権を総務庁長官が握る、そんなことはできるものじゃございません。そんなことじゃなくて、人事管理と定員管理、組織管理を総合的に一元的に握って総合的な機能を強化していこう、こういうことでございますから、その点はちょっと、絵にかいたもちなどとおっしゃらないで、その機能の強化の姿を今後見ていただければ結構だと思います。
  118. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんので、吉田委員が言われましたところと重複するところは避けまして、一番問題になっております統計センターですね。この統計センターを総務庁の、総務庁というのは今度の総理府の外局ですね、その外局の総務庁であるそこのまた附属機関、こうなるのですから、ずいぶん遠くへ離したものだな。それで統計局はまた内局の方にあるでしょう。何でこんなことをしなきやならぬのか。いままでこれが統計局で一つのものになっておりまして、それで十分効率を上げておりましたのに、何でこんな製表部門だけをばらばらにして、言うならば統計部門を二分割ですわな。行政改革というのはできるだけコンパクトにまとめていく作業をしなければならぬはずですね。それが、ばらばらにするなんてことは、まさに行政改革の逆行じゃないですか。いかがですか。
  119. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 外局とか内局とか言われますけれども、現在の行政管理庁もそれから総理府もすべて、本当を言いますと御承知のように総理大臣の総合調整機能の一環にあるわけですね、外局であろうが内局であろうが。外局になったから遠くなるというふうな性質のものではないということをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、統計局をなぜ総務庁に移したかと申しますと、行政管理庁が持っておりまする統計の所管は、各省庁たくさんの統計をやっておりますね、その各省庁の統計の総合調整機能を行管が持っておるわけです。それから、総理府の統計局は国勢の基幹的な非常に重要な統計をやっているのですね。国勢調査とか労働力の調査とかいろいろ重要な行政をやっておるわけです。そこでそういうふうな国勢全般に通ずる基幹的な統計をやっておるわけです。そういう基幹的な統計の企画事務と各省にまたがる総合調整機能を合わせて、国全体としての統計の中枢的な機能を確立しよう、こういう構想でできたわけでございます。  そこで、その中枢的な機能を強化しようということに当たりまして、統計局の中のいわゆる製表部門、これは御承知のように統計を実際やっていく場合の作業部門でございますから、これを政策部門、企画部門と一緒にするのはどうであろうかということで、一応附属機関ということにいたしたわけでございますが、その製表部門は国勢調査等の企画の事務と密接な関係があるわけでございますから、相互連携をとりながら今後やっていく、こういうことでございまして、それが統計局にあって統計局から作業部門が附属機関になったから、それで別々になった、ばらばらになったんだと。そうじゃなくて、そういう機関でありましても、作業部門を離しましても附属機関として総務庁に残るのですから、そういうことで作業部門と企画部門が連携し合ってやっていく、こういうことでございまして、その点は、作業部門だけを附属機関にした、しかし運営としては当然企画部門と緊密な連絡を図っていく、こういうことでございます。
  120. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 統計というのは、統計で出てきたいわゆる表とか図とかいうものにならなければ、これは完成品じゃありませんね。統計には当然調査、企画、そして製表というものが一体になっておらなければいかぬのでしょう。いまの大臣のような御説明になりますと、それでは調査は調査、企画は企画、製表は製表、それぞれみんな任務が別ですよね。任務は別ですけれども、たとえば一つの統計をやろうじゃないかということを決めまして、その作業に入るということになったら、その調査も企画も製表もみんなが一緒になって、どういうふうな形のものに仕上げていくかということをお互いに詰めていかなければ、ばらばらでできるものじゃありませんね。調査と企画の方だけでこういうものをつくるんだと言っておいて、おい、製表の方、これを印刷せいと。製表部門というのは印刷会社ですか。私は、そんな権威のないものだとは思っていませんよ。私も県会議員を長い間やってきましたが、各四十七都道府県に統計係がおりますが、そういう人たちとの結びつきというものは、いまの製表の関係の人ですね、これの関係の結びつきが非常に大きいのですよ。それを何で調査と企画は別個でありまして、製表は、これは別でございますと言ってわざわざ分けなければならぬ理由というのがわからぬのです。  それからいま一つは、附属機関へ切り離すといっても附属機関だからいいじゃないですかとおっしゃいますが、しかし大臣、考えてみてくださいよ。附属機関に行って職員の待遇が変わらないと断言できますか、あなた。身分が変わらないと断言できますか。言ってみてください、はっきりと。
  121. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 新統計局は、先ほどもお答え申し上げましたように、各省にまたがる統計の総合調整と国勢の基幹的な統計の企画事務を統合する、こういう新統計局をつくるわけです。そのときになってみますと、作業部門は一緒に新統計局の中に入れる、というのはおかしいですが、その中でやることがいいかあるいは独立した附属機関でやった方がいいかということになりますと、作業部門だけは附属機関として行うということが結構ではないか、こういうふうな判断に基づいておるものでございます。しかしながら、その製表部門、作業部門は、国勢調査等の企画、調査、分析、そういうものと緊密な連絡をとっていきますから、附属機関という名前でありましても、相互に緊密なる連絡をとり合いながらやるということで、目的を達成し得ると私は思います。  それから、第二のお尋ねでございますが、処遇が変わるではないかと。いままで総理府にありました統計局から総務庁の附属機関になるわけですから待遇が変わるじゃないか。これは私もそういう関係者の方々の意見も聞きました。しかし、処遇を低くする、そんなことは全然考えておりません。従来どおりの処遇でいくことが一番望ましいし、それは当然だ、そのために私は全力を尽くします、処遇の低下はいたしません、こうはっきり私もお答えをしておるわけでございまして、処遇を下げるために附属機関に、そんなことは考えておりません。否、むしろりっぱにその処遇を守っていく、これはもう当然だと思います。
  122. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 行管庁長官、あなた本当にそれが言えますか。いままでの例をひもときましても、身分上の問題で、国立公文書館というのがありますね。これはこの機構表にもありますよ、今度の新しい分にも。あれが附属機関になりましたな。附属機関になったからといって国家公務員でなくなるわけじゃありませんよ。国家公務員には間違いないのでありますが、そのときに行った課長というのは一等級の課長ですね。移りたときはそのまま。その方が定年でおやめになりまして、あるいは何かのことで配置転換になって、次の人が課長になるときには二等級で課長でございますよ。これは身分上の変わりはありませんか。これは字に書いたら一と二と違うのですがね。こんなことを大臣が御存じないはずはないのですよ。  それから、働く人というのにはやはりプライドというものがありますね。いままで何十年となく統計局の中におりまして、調査と企画マンと製表マンとが混然一体となりてりっぱな、世界にも誇るようなわが国の統計を出してきておるわけでしょう。統計がなかったら何にも仕事ができぬじゃないですか。これが一番もとでしょう。それだけのりっぱな仕事をやってくださっておるのに、それを今度の機構改革で、今度の第一弾の一里塚で、おまえさんちょっと外へどけと。いままでは内局であったものが、今度は外局の総務庁の附属機関になるのですからね。言うならば階段から三段落ちたことになるでしょう。これで誇りを持ってがんばりなさい、それで身分上の変わりはない、私は全力を挙げて皆さん方の身分が変わらないようにがんばるし、そうあることが望ましいなんて人ごとみたいなことを言っていますが、大臣は人事院の総裁でもないのでしょう。そんなことは約束できませんよ、大臣。私はそれはちょっと行き過ぎではないかと思う。  時間がありませんから私はこの程度にさしていただきますけれども、いずれにしても、この統計センターをつくってこれを附属機関にするということについては、私は反対です。私はこういう処遇の仕方というのはないというふうに考えております。  それで、最後に意見を申し上げて御返事を一つだけいただきたいと思いますのは、いまのこの組織表から、法律から見ますと、どこにも附属機関にするということは書いてありませんわな。これは政令事項ですわな。そこでお答えをいただきたいと思いますのは、政令でもって統計局を分割するという現在の方針、これは撤回してもらいたい。内部部局と一本化してもらいたい。まさにこんなことをやるのは行革の逆行であるというふうに私どもは考えておりますが、いかがでありますか。
  123. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 統計のその製表は作業部門の方でございますから、政令をもって定めるということにするわけでございまして、それを新統計局の中に入れるという考えは全然持っておりません。  それから、処遇の問題につきましては、なるほど、それは私は人事院総裁でもありません。しかしながら、この法律の立案に当たりまして、その人たちの処遇というものはあくまで守っていく、こういう強い決意でいくべきものであると私は考えておりますから、私は最後までそれは処遇を守るように全力を尽くして努力いたします。それはもちろん私は人事院総裁ではありませんから、それはできないかもしれませんが、ちゃんと、そういうふうな処遇をあくまでも低下させないように守るのが当然の務めだ、私はかように考えております。
  124. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私はいまのお答えでは納得ができません。とにかく人間というものはそんなに軽々しく扱うものではありません。私は、いわゆる製表部門を統計センターとして附属機関にしなければ能率が上がらない、効率が上がらないというなら話は別ですよ。そうではありません。いままで一緒になって、渾然一体となっておって、結構世界一を誇るような効率を上げてきているわけですね。それをわざわざいわゆる段落としにかけて、プライドも何も踏みにじってしまうようなやり方というのはない。私は、行政改革というものはそんなものじゃないというふうに信じております。これだけはもう強く提言をしておきたいと思う次第であります。時間がありませんから、これは終わらせていただきます。  次は、特殊法人の問題でありますが、この特殊法人の関係で、いままで五十四年の十二月二十八日、五十二年の十二月二十三日、いずれも閣議決定あるいは閣議了解をいたしまして、この特殊法人の役員の人事管理について出されております。  その中で、いろいろありますけれども、民間からの登用ということを推進しなさいということをお決めになっております。もうすでに四年から六年たっておるわけでありますが、今日現在どういう状態であるかといいますと、国家公務員の出身者、いわゆる天下りと称する人たちは三百九十三人いらっしゃいまして、全体の五五・六%でございます。これは、国からの天下りは半数以内にとどめるということを閣議了解しているのですよ。閣議で決定しているのですよ。それが、四年も六年もたって、なおかつこれが到達できないというのは一体どういうわけなんですか。  それからいま一つ、その中でも、十七の法人に至りましては、全員の役員が全部天下り国家公務員であります。一体これはどうなっておるのでありますか、お答えをいただきたいと思います。
  125. 中村徹

    中村説明員 ただいまの数字の点を御説明いたしますと、国家公務員の出身者は、閣議決定をいたしました翌五十三年当初に比べまして、当初六一%でございましたのが、先ほど御指摘のとおり五五%になっております。ただ、実数から申しますと、当時四百八十七人おりましたものが三百九十三人に減っております。一方民間の方は、当時三百十二人おりましたものが三百十四人になっております。やはり一方で削減というようなことをやりつつ、他方、全体の目標値であります半数以内にとどめるということを進めておるわけでございまして、現在努力の過程だというふうに御了解願いたいと思います。  それから、国家公務員出身者が全員を占める法人につきましては、五十三年の一月一日に二十七法人でございましたのが、先ほどの御指摘のとおり十七法人になっておりまして、これもやはり業務の性格上国家公務員出身者をもって役員の業務をするのがある法人もあるわけでございますが、なお努力を続けておるところでございます。
  126. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは総理、聞いておいてくださいね。閣議決定とか閣議了解がいかに守られていないか、行政改革の一端ですよ、これがいかに守られていないかということを私はいま例を挙げて説明をしておるのでありますから、総理はひとつ腹によくたたき込んでおいていただきたいと思います。  次に、たらい回し的な異動、これはやりませんということを言っておりましたが、さすがに二回以上たらい回しをしたというのはゼロになりました。ところが、一回たらい回しをしておりますというのは十九人もおりますね。これも昭和五十二年の閣議決定の違反でありますが、これは一体どうなっておるんですか。
  127. 中村徹

    中村説明員 ただいまの転任役員につきましては、一回転任しておりますのがおっしゃるとおり十九名でございますが、真にやむを得ない場合については転任はやむを得ないというのが当時の閣議了解でございまして、ただ、その場合でも一回を限度とするということにしておるわけでございます。したがいまして、私どもは二回以上のものはゼロにする、そうして一回のものにつきましても、できるだけ真にやむを得ないものに限るように努力しておる、こういうことでございます。
  128. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いまのように真にやむを得ないものはということでいくんだったら、もうどれでもいけますな。どれでもいける。全部例外、それでもいいわけでしょう。さっき言ったように、その法人の役員の数の半数以下にならなければならないとしてあるのに、半数になっていないのみならず、その全員が一〇〇%天下りで占めておるというのだけでも、先ほど申し上げましたように十七の法人がある。これも真にやむを得ない場合はいたし方がない、それで片づけるなら事は簡単ですね。もう行政改革なんてことは言わぬ方がいいんじゃないですか。例外、例外を設けるんだったらやる必要ないんじゃありませんか。こういうことを私は厳重に取り締まってもらわなければならぬと思っております。  次に、年齢の制限でありますが、これも守られておりませんね。原則といたしまして総裁とか副総裁は七十歳、その他の者は六十五歳ということになっておりますのに、今日現在、総裁の人たちで十五名、理事の人たちの中で四名、この方針に違反しておる人が現存しておりますが、一体どうしたのですか。
  129. 中村徹

    中村説明員 高齢役員につきましては、五十三年の一月一日に全部で五十人の人が基準を上回っておったわけでございますが、現在十九名に減少いたしております。そして、個々の事柄につきまして一件一件審査をいたしておるわけでございますが、たとえば民間会社で株主総会等で選任された方というような場合には、ある程度自主性というものも尊重しなければならないというようなこともございまして、一件一件について厳重に審査した結果やむを得ないというふうになりましたものが十九名でございます。
  130. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そういうふうにやむを得ない、やむを得ないでいけば、全部やむを得ぬですね。  それから次に、長期留任の問題でありますが、政府の御方針としては原則として六年、それ以上とどまるなということになっておりましたが、総裁、副総裁、これはただし八年間。二年だけ延長してあります。ところが、九人の総裁と十人の理事がこの方針に違反して残っておりますが、一体どういうわけですか。これもやむを得ぬですか。
  131. 中村徹

    中村説明員 長期留任の役員につきましては、五十三年七十七人おりましたものが、現在十九人に減って、やはり三%以下になっております。この場合、いずれにしても原則としてそういう基準を守れということでございますけれども、例外といたしましては、たとえば高齢役員の場合には民間出身の方がわりあいに多い。それから、長期留任の場合には部内から登用されて役員になり、それからだんだん上がっていったというような方がたとえば十九人のうち十二人を占めているわけでございます。したがいまして、やはり個々の事情につきまして審査をいたしまして厳重にやっている。高齢の場合で申しますと、民間からの出身者が十九名のうち十一名。部内から出身している人が四名というようなことになっておりまして、やはり個々の事情はしんしゃくしなければならないと考えております。
  132. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 役員の縮減、これは全体の縮減のことでありますが、五十四年の閣議了解におきまして、各省庁ごとの法人につきまして少なくとも一割の縮減、これは数字を挙げておりまして、百二十人プラスアルファということを決めております。昭和五十五年七百八十八人がことしの九月十五日には七百七人となりまして、八十一人減ったにすぎません。百二十名プラスアルファにははるかに及びません。一体いつまでにこれを達成しようとしておるのか、お答え願います。
  133. 中村徹

    中村説明員 現在約七百人の常勤役員がおるわけでございますが、五十五年当時八百人おりました。それの二割ということで百六十人を縮減するということでございまして、現在約百二十人近くの削減をいたしておるわけでございますが、五十九年度末までには予定どおり実施する計画でございます。
  134. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 齋藤長官、いまお聞きのとおりですが、閣議決定だ、閣議了解だということが、昭和五十二年、一番遅いのでも五十四年に決まりましたことが、短くて四年、長くて六年の歳月を経ながら、なおかつその目標に到達しておりません。いまお聞きのとおりであります。こういうことに対して、これは国民が聞いたら怒るのじゃないですか。何か言うて返事せいと言うたら、やむを得ないよんどころない事情、それでいくなら世の中苦労がありませんね。だから私は、行政改革国民に訴える限り、やはり上の方から姿勢を正してもらいませんとお話にならぬと思うのですが、長官の決意をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  135. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 私の所管でもございませんが、私は閣議決定というものは非常に重いものだと理解しております。したがいまして、この重い意味を持つ閣議決定の線に沿うて各省庁が全力を尽くして努力するということが非常に大事だと思います。各省庁なりにそれぞれ努力はしておると私は思いますが、まだ目標数に達していないということは遺憾でございますが、今後とも全力を尽くして閣議決定の線を守るように努力していただくようにいたしたい、かように考えます。
  136. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま大臣、ちょっと一番最初に気になる言葉を言われましたが、私が答えるのは適当ではないのですがとおっしゃいましたね。総理がということですか。どういう意味ですか。
  137. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 これは内閣ということでございまして、特殊法人の人数の査定というのは大蔵省でやるだけなんです、数は。特殊法人というものの人員、定員ですか、それからそういう予算、これは大蔵省がやるわけなんです。そういうことでございまして、しかし現実的なこういういろいろな削減計画は内閣全体としてしておるわけなんです。ですから、そこに閣議決定で各省大臣を縛っていこう、こういうわけですね。ですから、各省庁の大臣が役員についてそれぞれ責任を持って努力をしていくことは必要である。やはり閣議決定の重みというものを感じて努力すること、これは私は大事なことだと思います。
  138. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、いま御説明がありましたように、大蔵大臣は数の問題、それから予算の問題、これに対してタッチをしていらっしゃる。しかし、いま私がこれは閣議決定違反ではないか、こう言ったこの閣議決定というのは、まさに閣議の決定ですから、一番お偉い方は内閣総理大臣ということになりますから、総理から答えてもらうのが一番妥当ですね。総理答弁してください。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 閣議決定というのは、閣議の合意が成立してそれを実行いたします、正式の議題に提示をいたしまして議決をした、それを執行し監督していく最高責任者は内閣総理大臣でございますから、私の責任において実行いたしたいということであります。
  140. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま総理答弁のとおり、ひとつ不退転の決意を持って国民への約束、閣議決定はぜひとも実行してください。そうしなければ国民への示しがつきません。  次に、地方公務員の給与の乱れについて質問いたしたいと思いますが、資料がありますので、委員長、配ることをお許しいただきたいと思います。  いまお配り申し上げましたのは、わたり号俸、通し号俸という一番真っすぐにすうっと昇給が最短距離で上がっていく給料表のことを言うのであります。いまお手元に配りました中で一番見やすいのはどれかといいますと、ナンバー二の分です。これはもう本当に簡単ですね。俸給表が一本しかないのです。これを通し号俸と言うのですが、このくらい簡単な通し号俸、こういうのを決めておる市もなかなか珍しい存在であろうと思いますが、ほかの市におきましては、大体ナンバー三の一番長い分に刷ってある分ですね、この分をみんな活用いたしまして、職員組合との間の申し合わせによって最短距離を突っ走っていく。  いわゆる地方公務員法第二十四条に、その職務と責任とに対応して給与を決めなければならない、こういうふうになっておりまして、部長クラス、あるいは課長クラス、係長クラス、それからその次、それから一番最初に入ってきた人というふうに俸給表が分かれておるのでありますが、そんなことは一切お構いなしに、ごらんいただくとわかりますように、一番長い分でもずっと横線でだっだっとみんな渡っていくのであります。これがいわゆる典型的なわたり号俸というものでございます。隣の号へどんどん渡りますからわたりというのです。  それで、聞きなれぬ言葉でしょうが、とびというのもあるのですね。これがナンバー一、この半ぺらの分がございます。そこへ私の字で書いてありますけれども、算用数字に丸を書いてある分はわたりの姿です。①、②に行って③へ飛ぶ、そして④、⑤と行って⑥へ飛ぶ、こういうふうに渡っていくわけであります。ところが、丸印をつけていない五等級のところで1、2というのがあります。この1、2から今度は三等級の3へすぽっと飛んでおりますね、これがいわゆるとびです。  なかなか地方自治体においては一般の市民にはわかりにくい言葉がはやっておりまして、わたりにとびに三短、五短、六短、九短なんという、私は初めは花札かと思った。花札じゃないんですね。この俸給表にもありますように、こういう中で一年に一回しか、一つ上にしか上がれないことになっておりますけれども、それを一年を十二カ月とあるのを九カ月とするというのを、これは三カ月縮まりますから、三カ月短くなるので三短と、こう言う。そして十二カ月で上がるやつを六カ月で上がらすから、六カ月短くなるので六短と、こう言う。三短、五短、六短、九短なんて、ひどいところになると九短がある。(「青短は」と呼ぶ者あり)私は本当に、いまやじがありましたが、本当は花札の話かと思っておったくらいであります。これくらいまさに税金を納めておる市民をばかにした、国民をばかにしたやり方というのはないのでありまして、もう本当に義憤を感じざるを得ないのですよ。  国家公務員と地方公務員との間でラスパイレスが出ておりますね。いまそれを是正するために一生懸命努力中でございますけれども、まだ現在でも一〇六・何ぼくらい違いますね、平均で。これなんかはどうしてそれが出てきたのかと言ったら、いま言った三短だ六短だ九短だ、あるいはわたりにとびだというようなことをやって、どんどん自由勝手にやるものですから、だから国家公務員よりも高い給与になっていくのはあたりまえのことなんですよ。これは国家公務員の人なんか夢にも見ることのできないようなすばらしい制度なんです。  それを、これ見ろすばらしいではないかと、実は自治労のいわゆる教宣部から出ております一九八三年版というのだからことしですね、ことしのその本の中に、これはもう自画自賛しているのですよ。どういう自賛の仕方をしているかといいますと、まさにこれは法を無視した話、いわゆる論文でありますが、「労働組合は、この職務職階の賃金制度をこわして、どのように生活給を確保するか、真剣に追求しました。それが「ワタリ」です。」こう書いてある。このわたりをかち取ったということは、いわゆる職階の変更に関係なく上位の等級につっつっつっと渡っていくという仕組みでございます。これは組合員へ説明しているのですよ、本で。つっつっつっと渡っていくのであります。これは「組合員の英知を結集して生まれた政策です。」と、こうやってわれみずから褒めておるのでございますね。これはもう私どもから言いましたら本当に悪いこと。いいことと悪いことに区別したら悪いこと。その悪いことという意味は、国民の常識からかけ離れたことをやっているから悪い、私はそう言っておるのであります。  しかるに、自治労はこういうことを利用して組合員の拡大運動をやっております。私はもう本当に義憤にたえないのですよ。これが地方自治体の職員の諸君がわれみずから何か御商売をなさってするのなら、自治体の職員をやめにゃいけませんわ、兼務はできませんから。民間の人のように自分の力で働いてもうけた金を自分たちで配るなら構いませんよ、それは。たとえば月に一千万円取られたって結構です。だけれども、出てくる財源は何かと言ったら全部税金じゃありませんか。その税金をまさに分け取りをするようなやり方、そういうのが病高じてといいますか、だれもとめる者がおらぬと武蔵野のようなことになるのでありまして、平でも部長でも三十年勤めたら四千万、これは国家公務員の皆さんから見たってよだれが出るような話というようなことが平然と行われておるのであります。こういうことについて、こういう自治労の方針に対しまして自治大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  141. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 ただいま地方公務員の給与の実態についていろいろお話がございました。わたりなどというものは、いま御指摘のように地方公務員法二十四条に給与の基本原則は書いてございますが、給与は当然に職務と責任に基づかなければならない。職務というのはやはりその複雑性とか困難性ということでございます。それだけに、それぞれの地位に応じて給与は支払わなければならないという原則から見まして、これは二十四条に照らして適法でない、こう私どもも思っておるのであります。  そこで、いまいろいろ御指摘がございましたが、これらにつきましては、自治省としましても逐次改善の指導をいたしておりまして、たとえばラスパイレスもだんだんに下がってはきておる。いまお話しのようないろいろなわたりの是正あるいは昇給の延伸あるいは初任給の是正、そういったようなことをいろいろ手を尽くしていまやっておるところでありまして、過去において、特に高度成長時代などを通じまして、やはりそういういろんなことが行われた、しかし最近、給与というものにつきましては、いまおっしゃるように納税者、市民の税金でございますから、これは監視がやはり厳しい、ことに地方議会のそうした機能に大きく期待しなければならぬ、それが地方自治だ、こう私どもも思っておるわけでございます。  したがいまして、今後ともそうした地方公共団体の首長さん、市長あるいは地方議会、あるいは府県なり政令市には人事委員会がございますから、人事委員会の機能、そういうものを極力ひとつ発揮をしていただきたい。もちろん自治省としましても、さような適法でない給与が行われておる事態に対しましては厳しくひとつ対処をしていきたい、指導をしていきたい、こう思っておるところでございます。
  142. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣の御決意はよくわかりました。  そこで、こういう問題を野放しにしておってはいかぬのでありまして、全国的にいまあちらこちらで火の手が上がって、改革ののろしが上がっておりますけれども、なかなか働いておる市民というのはそうそう時間がとれないといううらみがありまして、その改革の実というのはなかなか上がらぬのです。それで、資料を求めましてもなかなか出しません。そういうことで大変みんなが困っておるわけでありますが、まず自治労のそういう姿勢に対して、これは明らかに地方公務員法の違反ですからね、こんなことは地方公務員法の二十四条の違反ですよ、だから、その二十四条の違反を堂々とやっておることに対しましては、それをしかも自画自賛しておるような自治労に対しましては、大臣が、文部大臣が日教組の幹部の人と会っていろいろと話をされますように、大臣も自治労の幹部の皆さんと会って、お互いに人間ですから、会って話をすればわかることじゃないか。勇気を出して、会って話し合ってみる気はございませんか。
  143. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 これはいろいろ役所のやり方が、それぞれいわば家風みたいなものもあるかもしれません。しかし、自治省という役所は、中央官庁の中ではありますけれども、やはり地方の立場に立って物を考えていかなければならないという役所でございます。したがいまして、地方で理事者なりあるいは議会がそれぞれ適切な機能を発揮していただくように私どもは味方となってやっていきたいということが一つございます。  それからもう一つは、やはり六団体というものがございまして、これは知事会なり市長会なり町村会というものがあります。またそれぞれの議会に対応したものがございまして、六団体ありまして、私ども六団体とは密接に連絡協調しながらやっているわけです。したがいまして、いま御指摘のような点につきましては当然に、われわれが乗り出すというよりは、よりはと申しますか、その前にやはり地方の自律機能というものが働かなければならぬ。それに対して私どももどうしてもという場合にはもちろん指導をしてまいるということのやり方でいまやっておるわけでございますが、御指摘の点、まことに私どもも同感でありますので、今後とも自治省としましても厳しくひとつ対処をしていこう、こういうつもりでございます。
  144. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 では、時間がありませんから結論的に申し上げますが、大臣、本来地方自治というのは独立したものでありますから、自治省がそれに干渉することはよくない、むしろわれわれは地方の立場に立って物を言わなければならぬ、これはわかるのですよ。だからこそ、地方の立場に立てばこそ、地方がどうあらねばならぬという意見は、どこの人よりも一番厳しく一番親切に発言するべきじゃないのですか。そこがちょっと私どうも何かさびしい気がするのです。そして、法律をつくって地方を縛るなんということは中央集権だからいけないよというようなこともいろいろと御意見があるようでありますが、地方を縛るような法律というのではなくて、私どもがいま立案をいたしておりますものはこういうものがあるのです。これは大臣にだけお渡ししておきます。  それで、いまお手元に渡しましたように、いま日本の中で国民が非常に悲憤慷慨しておるのは、率直に言いまして地方公務員の給与と退職金ですよ。その給与と退職金の是正のために私どもが立法措置をしたらどうかということをしきりに言っておりますが、総理や自治大臣はそのたびごとに、それは憲法上の地方自治の原則から見て問題なので、行政指導によって是正すべきなのですという趣旨の御発言がこれまで繰り返されてきました。そこで私どもは、行政指導をするということが中央集権なのではないかと逆に思っておるのであります。  そこで、国が地方はけしからぬ、けしからぬからこういう罰を与えるのだというようなことを立法化したというなら、これは地方自治の原則からして問題だと思います。だけれども、そんなのではなくて、私どものそこへ出しておりますその案というのは、地方自治体がみずから是正をしていく、悪いところを是正をしていく、その努力を助けてやるという内容のものなら一向に差し支えはないではないか。たとえば、地方住民が一番よく知りたがっておりますところのあの職員の給与あるいは退職金あるいは組合との間でひそかに取り交わされた協約、いわゆる市民不在の協約、そういうやみ協定をあからさまに市民に公表する、そういうことがあっていいのじゃないですか。  だって、そこのいわゆる自治体の主人公というのは市長や町長や村長じゃありませんよ。そこの主人公は住民であるはずですよ。その住民に対して、こういう約束をしましたのでお金が要るのでございますということは、それは当然公表してしかるべきではありませんか。あたりまえのことをやってくださいとお願いをしておるのです。そして、国家公務員を著しく上回っておるというようなラスパイレスの激しいそういうところなんかには、大臣は是正の勧告をしていらっしゃると思いますが、そういう勧告も厳しくたびたびにわたって公表をしていただきたい。そして、その勧告をしました結果について、自治体は、大臣からこういう勧告を受けましたがこう改善しましたということを市民に公表すべき義務があると思うのです。そういうことをやらしたらどうなのであろうかということを考えておるのでありますが、大臣はこの問題についてどう思われますか、私は地方自治の原則に触れないと思いますが。
  145. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いま拝見するわけでございますが、この中身はいままで自治省としまして相当指導をしてきた項目にわたっておりまして、それをやや法制化の中身に盛られたというような感じが私どもこれを拝見してするわけであります。私は、いまお話しのように乱雑なそういう給与をやっておれば地方財政は守り切れない、したがって地方自治も危殆に瀕する、こう思っておるのです。したがって私は、地方公共団体よ団結せよ、そして地方財政を守れ、地方自治を守れ、こう言っておるわけでございます。しかし、どこまでも私は地方というものの自律性というものは尊重していきたい。そして、私どもはそれのお手伝いをすることはお手伝いをしていこう、こういう立場はあるわけでございます。そこは国家公務員の場合と地方公務員の場合とは、私は何がしかニュアンスの相違はあるもの、こう思っておるのでございます。  そこで、いまたとえば公表をしなさいというお話でございます。いまラスパイレスの高いところにつきまして、たしか百五十三市につきまして個別指導をしております。それから、給与の公表をしないところにつきましてはどこが公表しないかということなども公表をしたりしておりまして、公表という手段によってお話のように市民の理解、同時に監視もしていただく、こういう方途は逐次講じつつあります。ここの法律内容にありまするような点につきましても、今後ともなお公表につきましてやらなければならぬ点もあるような気もします。それは詳細にひとつ今後とも検討をして御趣旨に沿うように努力をしていきたい、こう思っております。
  146. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣、最後に一口申し上げておきます。  いまのその私どもの提案、時間がありませんので後日よく読んでいただきまして、ひとつぜひ国民に喜んでもらえるような地方づくりということをやらなければいかぬ、それを助けることは国は遠慮せぬでいいと私は信じておりますので、ぜひひとつがんばっていただきたいと思う次第であります。  これは余談でありますけれども、広島県のある市におきまして市長選挙がつい二週間ほど前にありました。そこで現職の市長がお立ちになり、前市長がお立ちになって、全く新人の四十二歳の全然素人の人が立候補いたしました。ところが、現職と前の市長さんとがお二人がとられた札よりも、四十二歳の何の経験もない若者が当選をいたしました。  当選をしました理由というのは非常に簡単明瞭でありまして、告示があります一週間前に出馬を決意したのでございますから、何の準備もしておりません。ポスターがようやく間に合ったというだけであります。何で戦ってどうして投票数の四八%も獲得ができて断トツで勝ったかといいますと、これは地方の行革です。いまの膨大な退職金、べらぼうな給与、こういうものに対して市民の怒りが集中したのです。これは三十六万ぐらいの市でも、全然素人の人でも、一週間の準備しかなくたって勝てるほどの国民的な関心のある問題なんです。だから、こういう行政改革の遂行に対しましては、これはいま私が言ったのも行政改革の一環として申し上げたのですから、大臣、ぜひともひとつ真剣に御勘案をいただきたいと思う次第であります。よろしくお願いします。  それから続きまして、委員長、国会図書館長お越しになっておりますか。
  147. 金丸信

    金丸委員長 見えてます。どうぞ。
  148. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 御苦労さんでございます。  いま国会図書館の問題に対しまして議運の図書館小委員会におきましていろいろと御相談をなされるやに聞いておりますので、私はあえて用意しておりました内容についてはこの場で申し上げません。お互いに大人と大人であろうと思います。  そこで、そういう前提で一つだけ聞いておきますが、国会図書館の中で職場規律の乱れがあると聞いております。仄聞しております。館長は思い当たるものがありますか。
  149. 荒尾正浩

    ○荒尾国立国会図書館長 お答えいたします。  ただいまの件につきましては、私ども日ごろから職務を厳正にし、職場規律を厳格にするということで留意しておりますが、あるいはどういう点で御指摘かわかりませんが、若干御指摘を受けるようなこともあるかとも思いますが、(岡田(正)委員「素直に言わなかったら言うよ」と呼ぶ)若干そういう点では一、二仄聞しておるところはございます。
  150. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 どうも語尾不明瞭でよくわかりません。私もこれすぽっと言うたらよくわかるのでありますが、歯にきぬ着せたようなことを言うので、聞いておる人にはおわかりにならないと思いますけれども、しかし、お互いに国会の中の職員ですから、私もそれを考えていま言っておるのでありますが、もう一遍言いますよ、国会の衆議院の議院運営委員会の図書館小委員会において国会図書館の問題について御相談をなされるやに聞いておりますので、本日は内容について質問をすることは避けますが、職場規律の乱れがあるということを聞いて心配しているのですよ。そういうことについて、あなたは館長でしょう、最高責任者でしょう。あるのかないのかわからぬようなことを言うじゃないですか。そういうことがあると聞くが、思い当たることがあるのかないのか、それだけ聞いているんだ。あるならある。あるならあるで反省します、それだけでいいじゃないか。
  151. 金丸信

    金丸委員長 荒尾館長。イエスかノーだ。
  152. 荒尾正浩

    ○荒尾国立国会図書館長 どうも大変失礼いたしました。  御指摘のことにつきましては、確かにございます。しかし、今後私どもはそういうことに対しましては十分注意いたしまして、絶対にそういうことのないように努力してまいるつもりでございます。
  153. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 さすがに衆議院の前事務総長だけあって、非常に明快な返事であります。その返事がほごにならないようにひとつがんばってください。結構です。  次は、蚕糸事業につきまして質問を申し上げます。  蚕糸事業団と糖価事業団、外でやじって言う人からすると、着物屋さんと汁粉屋さんが一緒に合併したというので、お名前も蚕糸糖価事業団、一つもこれは省略されていないのですね。きちょうめんに二つ合わせてある。それが五十六年に合併いたしましたが、合併前のいわゆる人数と合併後の人数、これは従業員と役員、それからその予算、これは一体どう違ってきたか、それを説明してください。
  154. 小島和義

    ○小島政府委員 まず役員の方について申し上げますが、合併前の蚕糸事業団及び糖価安定事業団の常勤役員は十二名でございましたが、統合後の現在九名でございます。非常勤役員は合計五名でございましたが、現在三名にいたしております。  それから、職員でございますが、合併前は蚕糸事業団三十五人、糖価安定事業団九十二人でございました。合計いたしますと百二十七人になります。現在それが百二十四人ということになっております。  それから、予算の方でございますが、事業費の方は変動いたしておりますので、恐らくお尋ねは、統合によってどれだけの経費節減があったか、こういう趣旨だと存じます。役員の縮減によりまして年間約四千七百万円の経費節減でございます。それから、本部事務所二カ所ございましたのを統合いたしましたので、それによりまして年間約千八百万円の縮減でございます。それから、地方にございました事務所、これは十カ所ございましたものを二カ所統合いたしましたものですから、現在八カ所になっておりまして、それによって節減されました経費が約六百万円、かようになっております。
  155. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 生糸の一元輸入制度というのは昭和四十七年に法律ができまして、昭和四十九年から発動いたしまして以来早くも九年たちました。「当分の間」ということで九年たってきたわけですね。ここにも「当分の間」があるのでありますが、「当分の間」で九年、一昔ですね。これだけたったらもうその役割りは済んだのじゃないかというふうに常識的にも思うのであります。それからまた現状にも合わないのではないか、こういうふうに思っておるのでありますが、どう思われますか。
  156. 小島和義

    ○小島政府委員 御指摘のございました生糸の一元輸入制度、四十六年にできました制度は、政令で定める期間内に一元輸入できる、こういういわば暫定的な措置でございまして、その後この制度が不都合であるということによりまして、昭和五十一年、第七十七通常国会でございますが、衆議院農林水産委員長の御提案によりまして、衆参両院の御賛同を得まして、当分の間一元輸入というふうに制度が改められておるわけでございます。  そういう立法の経過からいたしますと、行政当局からこの制度を云々するというのは若干不適当かと存じますが、立法の背景といたしましては、当時一元輸入制度をとらなければ日本の蚕糸業が壊滅に瀕するというふうな認識のもとにこの立法が行われたものと承知いたしております。したがいまして、今日におきましてもその基本的な背景はいささかも変わってないというふうに理解をいたしております。  ただ、繭糸価格安定制度全体、その後の運用の過程におきまして、事業団の在庫の累増でございますとか、関係業界の窮迫とか、いろいろ問題も生じてきておりますので、臨時行政調査会の御指摘もございますし、その意味で、今後のこの制度のあり方につきまして、ただいま省の内部におきまして学識経験者の御参加も得まして検討を進めておる、こういう段階でございます。
  157. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで蚕糸事業団は、五十七年度の決算におきましては四十億円を超えるであろうという予想を先月かぐらいに出しておりましたが、その四十億円の欠損金が五十七年度出たのかどうか。  それから、これからも不景気が続いてまいりますから生糸は安値が続いていくというふうになりますので、買い支えをしなければならない。そういう関係からいって欠損金がますます大きくなっていくのではないかと思うのでありますが、この欠損金が大きくなることについて、先の見通しと、一体今後どうしようとしているのか、お答えいただきたいと思います。
  158. 小島和義

    ○小島政府委員 事業団の決算につきましては、財政当局と協議の後発表ということでございますが、御指摘ございますように、五十七年度約四十億円の欠損を初めて計上する赤字決算ということになるわけでございます。御承知のように、事業団の在庫は五十七年度末で十五万俵に達しておりまして、輸入糸、国産糸ともなかなか販売の機会がないというふうなことから、この事業団の買いは借入金をもって運用いたしておりますので、金利もかさみますし、また倉庫料もかさむというふうなことから、それまでの積立金を若干取り崩しましてなおかつ四十億円の赤字になるだろう、かように見ております。  本年度に入りましてから以降の事態でございますが、国内の糸の値段は依然として低迷をいたしておりまして、事業団の買い入れ量も若干増加をいたしておる状況でございます。それに対しまして、売り払いの量の方は、絹業者に対するいわゆる実需者売り渡しが月間千俵程度行われているにすぎませんものですから、その意味では五十八年度の年度末の決算というのは前年度よりは悪化するというふうなことが心配されている、こういう状況になっております。
  159. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私が聞いておりますのは、現時点においては恐らく十七万俵くらい、日本全体でできる生糸の八割に相当するぐらいのストック、いわゆる滞貨を倉庫に積み上げていると思うのですね。農林中金から千六百億円もお金を借りてそれを買い込んでいる。それで、それを倉庫に寝かしておるということでございますが、その金利、いわゆる借入金の金利と倉庫の倉敷料だけでも一年間に百五十億円ですね。これは事業団の決算とは別ですよ、別にそれだけの金が要る。これが五十八年度末においてはさらに悪化するであろうといういまの見通しでありますが、この事業団のいわゆる欠損金がだんだんふくらんでいく、それを一体今後どうするのかということと、いま一つは、このストックを一体どうするのか。一体こんなものを、生糸をためておいて品質は大丈夫なんですか。もし、買い取ってくれと言った場合に品質がこんなもの買えませんよと言われたら、だれが責任をとりますか。これはえらい問題になりますよ。はっきりした答えをしてください。
  160. 小島和義

    ○小島政府委員 事業団の現在の価格安定の仕組みは、いわゆる安定価格帯制度でございまして、値段が下がりました時期に買い入れをいたしまして、高くなれば放出をする、こういう仕組みでございますので、制度本来必ず赤字が出るというものではございません。過去におきましては、この運営によりまして若干ながら黒字計上という時期もあったわけでございます。  今回どうしてこのように赤字になってきているのかと申しますと、大体五十三年ぐらいまでは日本全体の絹の消費量は四十五万俵前後ございました。わずか数年を経ずして、それがことしの場合には三十万俵ぐらいと、大体三分の一ぐらい減っておるわけでございます。(岡田(正)委員「過去はいいんです。これからどうなさるか」と呼ぶ)そういう減っている過程におきましていわば輸入の、買い付けましたものが売れない、あるいは国産のものを買い入れるというふうなことから出ておるわけでございまして、ただいまの事態を改善するためには、何といっても需給改善を図るということが先決であろうと思います。したがいまして、需要に見合った供給をするということと、あわせて需要そのものを喚起していく、こういう両面から需給改善を図っていくというのが本旨であろうと思っております。  赤字の問題でございますが、事業団が正常に機能するということになりますれば、先ほど申し上げましたように必ず赤字が出るという制度ではないわけでございますから、短期的にはともかく、長期的にはそれをなし崩しに返済をしていくということも決して不可能ではないというふうに考えております。  それから、品質の問題でございますが、事業団もかなり長い期間の在庫のものを持っておりますので、ときどきはその中から抽出的に品質検査を実施をいたしております。売る場合にもできるだけ在庫期間の長いものをと心がけておりますが、品質管理もいたしておりまして、ただいまのところ、保有在庫糸で品質上の問題が出ておるというふうには考えておりません。今後ともその点は十分チェックをしながら運用いたしたいと思っております。
  161. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大蔵大臣、お答えになりませんので大臣に聞きたいと思うのですが、事業団で五十七年度はや四十億の赤字が出るのですよ。いまの生糸の借り入れとかそんなのと違うのですよ。事業団そのもので赤字が四十億出ている。それで、借入金は千六百億ある、金利と倉敷料だけでも一年間に百五十億払わなければいかぬというような状態で、生糸が高値になったら放出をし、安値になったら買い支えするという制度でありまするから、先行き不景気になって安値になっていけば、またまた買わなければならぬのですね。そうすると、ストックばかりたまっちゃうわけですね。こんなことをしておったら、どえらいことになると思うのですよ。だから、足らぬものは政府がめんどうを見てくれる、竹下大蔵大臣が銭こを出してくれる、こういうことになっておるのですが、お出しになりますか。
  162. 小島和義

    ○小島政府委員 制度の解説だけ申し上げますと、ただいまの事業団の中間安定勘定の事業につきましては、その事業経費を借り入れによって賄うという仕組みになっておりまして、その損失につきまして国庫から当然補てんをもらえるという仕組みにはなっておらぬわけでございます。
  163. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 どこからもらうのですか。
  164. 小島和義

    ○小島政府委員 現行制度におきましては、したがって損失補てんを受けられないという状況の中でこの事業を運営いたしておるわけでございます。
  165. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 どこからも借りられない、借りるところがない。
  166. 小島和義

    ○小島政府委員 借り入れば現在、農林中央金庫からいたしております。
  167. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 さて、この問題についても臨調から五十八年の三月十四日答申が出ているのでありますが、この答申を受けられまして一体これからどうするのか、そのことを簡単に答えてください。
  168. 小島和義

    ○小島政府委員 先ほど申し上げましたように、このように長期にわたりまして需要が低迷するということは、中間安定制度の仕組みからいたしますと大変むずかしい状況になってきておるわけでございます。御承知のように、需要が伸びたり縮んだりということを前提として安定価格帯制度をとっているわけでございますが、その意味におきまして、臨調の御指摘も受けておることでございますし、この制度を今後どのように改善をしていったらいいのか、私どもにもただいま手持ちの知恵があるわけではございません。その意味におきまして、学識経験者のお知恵も借りながらこの制度の改定についてただいま検討いたしておるところでございます。
  169. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんので、健康保険国民負担の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思います。  質問点を要約をさせていただきますが、五十九年度の予算要求に当たりまして、林厚生大臣は、健保の十割給付を八割給付にしたい、そうしなければもう金がもたぬ、こういうお考え、あるいは食費を一日に六百円取る、あるいは国庫補助金を減らす、いろいろ盛りだくさんなことをお出しになったのでありますが、政管健保を含めまして、いまの健康保険に加入しておるような人、組合員がどのくらい貯金を、貯蓄じゃないですよ、貯金を持っているか。本人でも一世帯当たりでも結構です、厚生大臣、おわかりだったらお答えください。
  170. 林義郎

    ○林国務大臣 いろいろなことを出しておりますが、いま手持ちの資料を持っておりません。組合保険、健康組合ですね、これは大企業のところですから相当高い貯蓄率だと思います。それから政府管掌保険のところは、中小企業ですからそれよりは少ない。もう一つ申し上げますならば、国民健康保険はもっと少ない、こういうことだろうと思います。  正確な数字はちょっと持っておりませんから、後でお答えいたします。
  171. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それじゃ厚生大臣、申し上げますが、私は大臣のようにいろいろなデータを手に入れられる立場にありません。新聞によって調べたことでございますが、いま全国の四千百二十万のサラリーマンの諸君は、一世帯当たり昨年の十二月末におきまして、貯金、いわゆる定期預金と称するものが二百八十二万円、そして普通預金が四十八万円、合わせて三百三十万円の貯金をお持ちになっておるそうであります。ところが、御多分に漏れず車のローンとか住宅のローン、こういう借金がありまして、それが一世帯当たり百七十四万円あるそうであります。したがって、差し引き計算をいたしますと、まあ、人の前で大きなことを言うんなら借りたものを払って文句を言いやがれ、こういうことをよく言いますね。それならというので借金を払ったとしますと、残った金額は幾らかといったら、百五十六万円しか残らぬのです。これが全国の四千百二十万のサラリーマンの諸君の一世帯当たりの貯金額なんです。百五十六万しかないのです。  こういう人たちに対して、現在の健康保険において、これは十分なことはできませんけれども、しかし、健康保険に入っておる人でも、本人が病気になったときはただで診てもらえるから安心よというような安心感はだれも持っていない。なぜ持っていないかといったら、もし本当に入院しなさいということになったらどえらいことでありまして、付添看護料だけでも平均が大体一日一万円要りますね。そして差額ベッド料だけでも、所によって違いますが、三千円から五千円要りますね。ということになりますと、保険の給付外の金、いわゆる付添看護料と差額ベッド料だけで一月間に四十五万用意しなければ、病院に入っておることができないのですよ。十日置きに勘定でございますから、十日目、十日目の勘定のときに払う銭がなかったら、その病院を出なければならぬのですよ。だから、病気の治療はただです、十割給付です、だがしかし、その病院へ入院するとなったらえらいことになってくる、そういうものがいわゆる根本的な問題が一向に解決されぬ。  私、何のためにいまサラリーマンの貯金のことをわざわざ言ったかといいますと、百五十六万平均しか一世帯で持っていないサラリーマンが、もし三カ月か三カ月半でも一人入院したら、もうその貯金はきれいに飛んでしまいますよ。それほど不安定なひやひやした生活を送っておるのが、いまの健康保険に入っておる皆さんであります。政管健保に入っている者はなおさら苦しい立場にあるでありましょう。  そういう人たちを前にして、林さんは、いや勘定が合わないんだ、勘定が合わないんだと言って、いわゆる健保会計の金繰り、財政面のつじつまだけを合わそうとしていま予算の要求をなさっていらっしゃることが、私は非常に残念でならないのです。もっと医療費の基本問題、乱診乱療、いろいろありますね、そういう問題に大胆に大臣が触れてくれなくちゃ、ほかの者がだれが触れるのですか。ほかの国民が文句を言おうったって、そんな文句を言える立場じゃないですよ。だから、文句は言えないわ、金はないわ、保険料は上がるわ、それで今度は、いままでのいわゆる付添看護料、差額ベッド料以外にさらに病院の負担も二割ふやさなければならぬということになったら、踏んだりけったりというのはまさにこのことじゃないですか。大臣、考えてほしいですね。もっと根本的に考えてほしい。  大臣にとってはそんな百万なんて一日の単位かもわからぬが、勤労者のように百五十六万持って、これが私の財産なんて言って抱いてうろうろしているのとは違うから、あなたにはその苦労がわからぬかもわからぬが、ひとつこの健保財政をどうするのかということについて一口お話を願いたいと思います。
  172. 林義郎

    ○林国務大臣 岡田議員にお答え申し上げますが、一口でしゃべるというのはなかなかこれはむずかしい話でございますが、改革を図っていかなければならないのは、いま先生からお話がありましたように、差額ベッド、付き添いの問題等々あります。そういったものを含め、病院の実態に応じていろいろやっていかなければなりません。  それで、基準看護と申しまして、付き添いはできない、してはならない、これは厳重にやれという形でいろいろ進めておるところでございます。また、差額ベッド代の問題も、六人とかなんとか入るところは完全に基準でやれという形で、厳重にずっとやってきているわけであります。そこで、どうしてもといういろいろな問題は、まだ現実問題としてあると私は思うのです。あると思いますが、基本的にはやはり医者あるいは病院のあり方というものから見直していかなければならない。と同時に、言われているところの乱診乱療、それから不正な診察というようなことについて、私たちはやはりメスを入れていかなければならないと思います。薬の値段も、きょうの新聞に出ておって、私も一体これはどういうことになっているんだと思いますが、私も頭にきているわけです。だから、やはりその点も徹底的にやっていかなければならない。  と同時に、やはり国民それぞれが、先生、御本人のお話をされましたが、家族が入ったところでやはり同じような問題があるわけでありますね。御本人が入る場合と家族とは同じにしたらいいではないか。先ほどお話し申し上げましたように、組合健康保険政府管掌健康保険国民健康保険と、やはり言えば、どちらかというと大企業、中小企業、零細、こうなるのですね。そこで差があったのでは国民的にはやはり不公平ということは免れない。やはりそこも直していくことが必要ではないか。私は、将来的には給付は一本にすることが必要だと思うのですよ。それはだから将来的にはやっていきますけれども、そういったこと、いろいろな点を考えながら私はこの医療改革の問題に努力をしてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  173. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 文部大臣、お越しいただいておるのでありますが、私立大学の関係で、完全看護の推進の関係――ちょっと首をかしげましたね。それじゃ結構です。それじゃ要望だけ申し上げておきます。  いま申し上げましたように、全国のサラリーマンというのは、振ってみても平均百五十六万しか持っておらぬのでありますから、その上にさらに出せ出せと、ない者から余りしゃくり取るようなことは政策の上に出てこないように、十分御配慮願いたいという希望を申し上げておきます。  次に、科技庁の長官、お越しになっておりますね。すみません、お待たせしました。これを最後にさせていただきますが、委員長、お許し願います。
  174. 金丸信

    金丸委員長 どうぞ。
  175. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 一緒に質問させていただきますが、この行財政改革には聖域を設けるべきではないという政府方針はまことに結構であります。総理大臣は科学技術に非常に御理解がある、こう聞いておるのでありますが、この科学技術についても効率化には十分留意をして、そのための施策を強力に進めるべきであり、今日、各種先端技術に関する取り組みに各省庁は御熱心に取り組んでおられます。研究開発プロジェクトも大型化してまいりましたし、この問題でも、むだをなくし、重点化を指向して、適切な研究開発が推進されるよう、しっかりした対応策を講ずるべきであると思うのですが、これに対する御見解と、いま一点だけ。産学官の連携の方策でございます。  国の研究開発について、何でも国でという考え方は、これは排除される必要があります。民間や学界の研究能力を上手に活用していただきまして、これとの連携をうまく行って、国全体の研究開発を効率的に推進すべき時代ではないかというふうに考えておるのでありますが、以上二点についてお考えを聞かせてください。
  176. 安田隆明

    ○安田国務大臣 ただいま岡田先生お話しございましたが、全く同感でございまして、財政事情は異常なまでに苦しい、その反面、財政需要もまたやはり要求は大きい、こういう中においていかに対応するか、こういうことになりますれば、いつも総理おっしゃいますように、この際こそやはり予算効率的、厳正な執行をやらなければならない、こういうことでございます。  だから、むだな研究、むだな重複、これは排すべし、こういう御提言、御趣旨でございますが、そこで私たちの政策は、やり方、手法は、総理が議長でございます科学技術会議、これが基本方策を決めまして、そして重複、いわゆるクロスしない、こういう軌道修正をまずやっているわけであります。それから次には、どうしてもやはりそういうことがいろいろ出てまいります。まいりました場合は、そういうチームを一つにまとめてしまう、それでそこでもって、いわゆる総合的なチームでもってこれに対応していく。さらに、大型プロジェクトというものが出てまいりまして、宇宙開発、原子力開発、これは非常に大きなものでございます。これは宇宙開発委員会、あるいは原子力委員会、ここでもう一遍再チェックする、こういうことで、調整機能を持った当庁としては十分これに配慮していく。だからして、これで私たちはいいと思っておりません。だから、御忠告のとおり、本当にこれは効率的に、しかも執行については厳正に今後とも対応していく、こういうことで御了解願いたいと思います。  それから次に、やはり民間との協調体制の問題でございますが、きのうも私は御答弁申しました。本当にこれは、五十六年五兆三千六百億、その中で一兆四千億がいわゆるわれわれ政府支出、こういうことでございます。やはりこれは臨調も示しておりますし、総理もおっしゃいますとおりに、民間の活力をこの際誘導する、こういうことでわれわれは民間資金の誘導をもって、そうして産学官一体、こういう形で、そのためにわれわれは例の調整豊の制度、あるいはもう最先端を行くものにつきましては創造的な新科学振興制度、これはもう産学官一体でやる、こういうことでいっておるわけであります。  たまたま、先般来海外からよく海外技術の最高トップが参りますけれども、質問がよくございまして、日本はどのようにしてこういうふうに科学がすばらしい発展をしたのか、こう聞くから、私の方は、あなたの方からどう見ているのですか、こう聞きまするというと、ひとしく、産学官一体の中に今月の実りがある、こういうことでございますから、そういう理解を海外から受けていること、しかし、これで私たちは満足していません、今後とも努力いたします。
  177. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 がんばってください。  ありがとうございました。これをもって終わらせていただきます。
  178. 金丸信

    金丸委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦久君。
  179. 三浦久

    ○三浦(久)委員 私は、まず最初に、行政事務簡素合理化法案についてお尋ねをいたしたいと思います。  この法案の許認可の整理等につきましては、当然の改正と思われるものがたくさん含まれておりまして、わが党も賛成できるものがかなりございます。だが同時に、これらとあわせまして、国民の健康や安全にかかわる改悪項目がまた若干散見をいたしております。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕  たとえば、消費生活用製品安全法による特定製造設備の定期検査の廃止、これはオロナミンCの瓶破裂事故等に見られますように、業者の自主的な検査にゆだねるということには安全確保上問題があるのではないかというふうに考えています。  また、高圧ガス取締法によるフロン系冷却設備のうち小型のものの許可、届け出の廃止、これも事故が少ないとはいえ、野放しにするのは問題であろうというふうに考えております。  また、関係者の合意なしに行おうとしている各種の資格試験の民間委譲、これもまた問題だと思います。特に消防法による危険物取扱者のように、万一水準が低下した場合、国民の安全に悪影響を及ぼすおそれ、これもはらんでおるというふうに考えます。これらはもっともっと慎重な検討が必要だというふうに考えておりますけれども、これらを削除する、ないしは撤回をする、そういう御意志がおありでございましょうか。
  180. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 許認可等の整理合理化につきましては、国民の生命身体の安全確保について十分配慮しなければならないことは当然でございまして、そういう観点からいまお述べになりましたような整理合理化を行っておるわけでございまして、私どもはこれを撤回するつもりはございません。しかし、もし必要がございましたら、具体的なことは政府委員から答弁させます。
  181. 三浦久

    ○三浦(久)委員 次に、法案の機関委任事務の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  機関委任事務を基本的に廃止して大部分を地方自治体の権限に委譲する、こういうことは長年の自治体の念願でもありますし、また中曽根総理も、また歴代の自治大臣もこの機関委任事務の問題につきましては改善を約束をいたしております。しかし、今日まで何ら手をつけられてこなかったわけでありますけれども、今回、この機関委任事務の簡素合理化法案が提出をされております。しかし、これを私ども検討いたしますと、数からいいましても内容からいいましても、地方自治体の念願とはほど遠いものになっているというふうに考えざるを得ないわけであります。  法案を見てみますと、事務を廃止し、または縮小するものが十九法律、団体事務化するものが十一法律、委譲するものが四法律、合計三十四の法律の改正を行っているわけであります。この数は、行管庁の資料によりますと、機関委任事務の関係法律が全体で三百九十八本あるわけでありますが、そのうちの一割に相当するわけですね。それで、この一割という数は、結局二年間に全体として機関委任事務の一割程度整理合理化をするという臨調答申、それを受けたことしの五月二十四日の閣議決定、これに基づいたものだと思いますけれども、そうでしょうか。
  182. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 臨調答申によりますと、機関委任事務につきましては二年間に一割を整理する、こういうことでございます。この件数につきましては、臨調の大体の考え方は、大ざっぱに言いまして法律数を基本としておると私は承っております。そこで、その法律は三百九十八でございまして、それを二年間に一割整理合理化をしていこう、こういうわけでございます。  しかし、これだけで私は十分でないと思っているのです。二年間に一割、一応こうなっておりますけれども、これだけではいけないと思うのです、やはり将来の地方分権ということの方向を目指して、もっと機関委任事務の整理をやっていく、こういうことが必要でございますので、先般設けました臨時行政改革推進審議会ですね、土光さんにまたなっていただいておりますが、あの審議会において機関委任事務のあり方等を中心とした本格的な検討をもっとやっていきたいと思っているのです。それの検討に基づいて、二年に一割、こうなっておりますけれども、さらにもっと整理合理化をしていきたい、こういう方針で今後とも努力していきたい、こう考えております。
  183. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それにしても、私は、今度の法案の中身というのはきわめてお粗末だと思うんですね。たとえば法律の本数で一割というふうに数えるのであれば、その一つ法律に機関委任事務が全部なくなったという場合にのみやはり一本整理した、こういうふうに数えるべきだと思うんですよね。ところが、一つ法律にたくさんの機関委任事務がありますね。そのうちの、まあどうでもいいようなものを一つちょっといじくったら、それで一本整理した、こういうように数えているわけですね。そういう意味では私は、きわめて水増しだというふうに言わざるを得ないと思うのです。  たとえば一つの例をとってみますと、都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律というのがあります。今度の整理対象ですね。これを見てみますと、この法律内容は、御承知のとおり都市計画区域内の市町村が、その自治体が保存が必要と判断した樹木について指定し、保存することができる、こういうことを決めた法律でございますね。この中に機関委任事務としてどういうものがあるかといいますと、第二条に保存樹等の指定とか、第三条が指定の解除、第四条は標識の設置、第六条が所有者の変更届の受理、第七条が台帳の整理、第八条が報告の徴取、第九条が市町村長の助言義務、第十条が国への報告義務、こういう八項目があるわけなんですよ。ところが、今度の整理の対象になったのは、この一連の手続の中で標識の設置が機関委任事務から外されて団体委譲されたということだけ、あとは十条の報告義務がなくなったということだけでありまして、全体としてはこの機関委任事務は基本的には残っておるわけですね。こういうものを一本というふうにお考えになるというのはどういうことなんでございましょうか。
  184. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 確かに、お述べになりました都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律、この中には、事項としてはそういうふうにあることは私も承知しております。しかし、一応臨調としては、事項別よりも法律の件数ということが中心で規定されておりますから――いろいろ御意見はあると思いますよ、しかしこれをもって終わりとするわけじゃございませんから、法律並びにその中の事項、そういうことも十分考えながら今後とも努力していきたいと思っております。  しかし、さしあたりの問題としては、臨調としては法律の件数を言っておりますから、三百九十八のうちの一割ということをまずやる。これをもって終わりとするわけじゃありませんから、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  185. 三浦久

    ○三浦(久)委員 終わりとするということじゃないことはわかりますけれども、しかし、基本的にはこの機関委任事務というのは残っておるわけでしょう。ただ標識の設置と国に対する報告義務だけをなくしておいて、あとは機関委任事務として残っているものを、いやこれは整理したのですというものの一本に挙げるということは、実体のない数合わせだというふうに言わざるを得ないと私は思います。これは長官もお認めになっておられますから、もうこれ以上追及しません。しかし、こんなものこそまさに地方団体に委譲すべきものだと私は思うのです、全体といたしまして。  たとえば、皆さん方が今度の整理の判断の基準にした二つがございますね。市町村の事務に同化、定着したものということと、もう一つは市町村の事務として好ましいものというのがございますね。そうすると、この法律こそまさに好ましいのですね。定着もしていますよ。一々一本一本そのケヤキを保存しようというようなことを全国的、統一的に考えるなんということはないわけですから、まさにこれは地方公共団体の固有の事務と言っても過言ではないのですよ。それで、そういう一本一本の樹木の保存の指定というのは、もう現実には地方自治体がやっているわけですね。建設省がやっているわけじゃないのです。ですから、これこそまさに地方自治体の事務として定着していると私は思うのです。それからまた好ましいものでもあると思うのですね。これをなぜ今回の改正で全部団体委譲しなかったのかということに非常に疑念を持っているのですが、建設省、どういうふうにお考えですか。
  186. 松原青美

    ○松原政府委員 お答え申し上げます。  都市緑化の推進につきまして、かねてから私ども努力を続けてまいりましたが、現在の考え方は、住民の参加を得て国を挙げて取り組むという姿勢で進めております。  御承知と思いますが、この法律は議員立法で提案されまして、たしか全会一致で制定された法律でございます。樹木を保存する、緑を保存するという法律としては最初の法制でございまして、非常に意義があるものでございます。現実に、現在におきましても樹木単体の保存ということにつきましては、この法律は非常に重要な役割りを果たしておる唯一の法律だろうと思っております。  ところで、都市の緑化の推進に対する認識が高まりまして、おかげさまで最近は樹木保存の指定をする市町村がふえてまいりました。しかしながら、全体としましてはこの樹木保存法による事務を行っている市町村というのは非常にわずかでございますので、市町村の事務として同化、定着しているとは言いがたい状況にあるのではないかと思っております。このため、本法を活用して今後さらに都市の緑化、緑の保存を進めていくためには、現行体制の維持ということがぜひ必要であり、われわれもこういう法制も活用しまして都市の緑化を進めてまいりたいと考えておりますので、ひとつ御了解をお願いしたいと思います。
  187. 三浦久

    ○三浦(久)委員 やっていない市町村が多いからということを言いますけれども、そういうものはただ指導すればいいんであって、あなたたちがそれについての権限をいつまでも握っておるという理由には全くなりませんね。そしてまた、どの木を保存するかなんということを建設省自身が決めるわけではないのです。みんな地方自治体が決めるわけですね。ですから私は、これこそまさに典型的な整理していい問題だと思っておるのですよ。  特に、中曽根総理自身はこう言っていますね。これは行管庁長官時代にですが、「中央官庁においてはそれで」、「それで」というのは権限を委譲したことによってですね、「権限が縮小するとかなんとかという問題が出てくると思いますが、これはこの際やはり歴史の進歩の前に改革すべきものは改革する、中央官庁はやはり政策官庁として国家的な全体の立場に立った政策を推進するという方向に移行していくべきである、」こうおっしゃっているのですね。そういたしますと、まさにこんな問題こそ自治体の固有事務にしたら私はいいのじゃないかと思うのですけれども、建設省はまだだめだと言っている。これは権限が縮小されるからそう言っているのでしょう。これは国の方針にも反した問題じゃないかと思うのですが、行管庁長官、どういうふうにお思いですか。
  188. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 基本的には、現地で処理することはできるだけ現地に任せるということが私は適当なことだと考えております。したがって、総理が行管庁長官時代に申し述べたこと、私はそのとおりだと思います。
  189. 三浦久

    ○三浦(久)委員 自治大臣にお尋ねしますけれども、これは本会議でもお尋ねして御答弁がありましたけれども、本当に今度の機関委任事務の問題については、もうお粗末という一言に尽きるんじゃないかと思いますね。自治大臣も、これはいろいろむずかしい問題があるんだということを随所で言われておりますけれども、そういう困難さを避けた、本当にずさんな、余り深い検討のされていない機関委任事務の取り扱いだというふうに思うのですよ。今後どういう立場でこの機関委任事務の問題を改善していくのか、ちょっと所信を承りたいというふうに思います。
  190. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 今回行われましたのは、臨調の答申を受けまして、二年間に一割という原則といいますか、そういう考え方があるわけであります。そこへ、いまもお話しになりましたが、一つは地方公共団体の事務に同化、定着しているもの、あるいは社会経済状態の進展に伴って縮小あるいは廃止すべきもの、そういう一つの基準といいますか、そういうもので選んだのが今回の四十四法律である、こういうふうに私は実は思っているわけなんです。  機関委任事務の問題は、これは地方自治にとりまして、知事あるいは市町村長については大変な仕事でございますだけに、ぜひ私どもも地方自治という観点から地方にひとつ任していただきたい、こういうつもりでおるわけなんであります。しかし今回の改正は、まあまあそういう一つの枠の中では一応の評価を政府としてはすべきであろう、こう私は思います。  しかし、いろいろやってみまして、私は、機関委任事務というものの性格といいますか、法律的な性格論といったものを少し議論を詰めていかないと前進しないのではないかという気もします。だからもう少し、根本論と言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、機関委任事務の法律的な性格、中央と地方との仕事の割り振りという観点から考えまして、そういう問題を少し詰めてみないと越えられない溝があるのではないか、こう思っておりますので、そういう点について今後も努力をしていきたい、こう思っておるところであります。
  191. 三浦久

    ○三浦(久)委員 ぜひ実のある改善策を早急に樹立をしていただきたいというふうに思います。  次に、国鉄問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  中曽根総理は、国鉄問題は行政改革の二百三高地だ、こういうことを言われまして、分割・民営化という臨調の答申を受け、そしてまた国鉄の再建監理委員会のもとでいま着々と民営・分割の地ならしが行われているわけですが、私は、この分割・民営化というのは国鉄を再建するということとは全く無縁だ、むしろ国鉄を解体処分するものだ、その国鉄の解体処分というのは、具体的に言えば国鉄を財界に切り売りすることになるじゃないか。そしてその結果、国民には耐えがたい犠牲を強要することになっているのではないか、こういうように考えているわけです。ですから私は、何で国鉄や運輸省がこういう方針にもっと体を張ってでも抵抗しないのだろうか、そういう義憤すら感じているほどであります。  それで私は、いま国鉄や政府によって、一般に五九・二ダイヤ改正と言われておりますが、五十九年二月のダイヤ改正に伴って貨物の大削減計画計画されておりますけれども、この問題を例にとりながら質問をさせていただきたいと思うのです。  国鉄は、まず来年の二月、貨物輸送についての大変質的な変化を行おうとしているのですね。これは、車扱い貨物についてはヤード系の輸送を一掃する、やめてしまう、そして拠点間の直行輸送に切りかえる、こういう方針を決めております。そしてまた貨物駅も、現在八百五十一、これは昭和二十五年には四千近くあったわけですけれども現在では八百五十一になっておりますが、これを約半分、四百五十七駅にする、そしてそのうちでまた拠点駅を八十七選定する、それで八十七の拠点駅の間だけ直行輸送をやる、こういうことなんですね。  そこでお尋ねしたいのですけれども、このことによって、車扱い貨物、一般の貨物ですね、一般の貨物輸送の全国ネットワーク、いわゆる全方位の輸送体系、一つの駅からどこの駅にでも貨物を送れる、そういう体系が崩れるのじゃないか、そういうふうに思います。いままでですと、たとえば、いま八百五十一ありますが、一つの駅から八百五十の全国の駅に貨物を送ることができたわけですね。ところが、では今度は八十七の拠点駅があるから、一つの駅から八十六の他の拠点駅に貨物を送れるのかというと、送れないわけであります。結局は国鉄がダイヤ改正でもって設定をしたある駅とある駅との間しか貨物輸送が行われないということになるわけですね。そのとおり間違いないでしょう。
  192. 高木文雄

    ○高木説明員 拠点駅のほかに一般駅というものも残すわけでございますし、それからコンテナ輸送をいろいろ強化いたしますので、コンテナの御利用を考えていただければ、いまおっしゃったほどに大きな影響は来さないというふうに考えておりますけれども、しかし、基本的な考え方としては、全国どこからでもどこへでも送れるという形はやめさしていただくということでございます。
  193. 三浦久

    ○三浦(久)委員 余り影響がないというお話ですけれども、私はまだ影響の問題については何も質問をしていないわけです。  それでは、現在どのぐらいの列車本数が運行されているのか、それで、今度のダイヤ改正によってどの程度拠点間の直行列車が走るのか、それをちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  194. 高木文雄

    ○高木説明員 列車本数で申しますと、現在三千二百本毎日動いておりますものが約千五百本に減りますので、半分以下になるということでございます。ただ、それは本数でございますけれども、実際は、現在の長い距離を走っておりますものは大部分残る、短い距離のものがなくなるということでございますから、全体の運行の列車キロで申しますと大体二割強減るかどうかということでございまして、そういう形で、本数は減るけれども距離はそれほど減らぬということで、能率を上げられるというふうに考えております。
  195. 三浦久

    ○三浦(久)委員 これは私は、大変大きな問題があると思うのは、まず貨物駅が廃止になった、そのために国鉄を貨物輸送に利用できない、そういうのが一つ出てきますね。それから、貨物駅があっても、行き先がもう決まってしまっているわけですね。決まったところしか行かないわけですから、そのために結局国鉄を貨物輸送に利用できなくなってしまって、貨物駅があっても輸送できない、こういう問題が出てくるのですね。この二つの面から、私は車扱いの貨物輸送はぐんと減ると思うのですけれども、どの程度車扱いの貨物輸送は減るのでしょうか。
  196. 橋元雅司

    ○橋元説明員 お答えいたします。  五十七年度、昨年度でございますが、約九千八百万トンでございまして……(三浦(久)委員「それは全体でしょう」と呼ぶ)全体でございます。それに対しまして、五十九年度、五九・二以降の年間のトン数は約七千七百万トンと想定いたしております。
  197. 三浦久

    ○三浦(久)委員 時間が余りないので、こっちの質問に答えてくれた方がいいのです。いま車扱い貨物について聞いたわけです。――もういいです、わかりますから。  車扱い貨物は、昭和五十七年で四千四百万トンなんですね。それが千七百万トンに減ってしまうのです。ですから、もう半分以下です。二千七百万トンも減ってしまうのです。四千四百万トンが千七百万トンに減ってしまうということですからね。だから大変な激減。これも、やってみて徐々に減っていくというのではなくて、五十九年の二月からもうこれだけの数字が一遍に減るということなんですよ。これは大変なことです。  また後で質問しますが、これについても、対策をどういうふうにとるのかということは大きな政治問題でもあり、社会問題でもあるというふうに私は思っておりますけれども、今度のヤード系輸送の廃止によって、北海道から本土には一本も車扱いの貨物列車は走らなくなるのじゃないですか、どうですか。
  198. 橋元雅司

    ○橋元説明員 青函の輸送トン数は、ピークは四十六年でございまして、八百五十万トンばかりあったわけでございますが、十年後の五十七年には四百五十万トンに落ち込んでおります。一方、先生もう御承知のように、青函トンネルの開通を控えまして、船舶の耐用年数の問題であるとか、あるいは海技職員、専門職の職員がございますが、そういった職員の需給問題などもございまして、非常にむずかしい局面にございます。  仰せのように、北海道と本州の間の列車設定は、現在、五十七年十一月以降は二十一本の列車を渡しておりますが、これが十七本の列車になるわけでございます。その内訳は、まずコンテナ列車が十三本、これは現行と同じでございます。車扱いの高速直行列車は二本、これも同様でございます。あと専用貨物列車が一本、これも同様でございます。問題の一般車扱いは五本ございますけれども、それが大体一本になるということでございます。(三浦(久)委員「一本残るの」と呼ぶ)はい。ただ、それは荷物列車とコンテナ列車ということでございます。  実は北海道と本州の間は、コンテナ輸送が非常に定着をいたしておりまして、半分はコンテナ輸送でございます。そこで私どもは、コンテナ化をぜひ慫慂いたしたいということでいまいろいろと荷主さんとお話し合いをいたしておるわけでございます。  また、北海道輸送の特徴は、やはりタマネギであるとかバレイショであるというような季節貨物が非常に問題でございますので、これにつきましては、別途、臨時の貨物列車を設定することを検討いたしております。  以上でございます。
  199. 三浦久

    ○三浦(久)委員 北海道はローカル線の切り捨て、その上に貨物の大削減ということで、国鉄によって痛めつけられているというような状況だと思うのです。  奈良県などは貨物駅が一つもなくなってしまうでしょう。資料をいただきましたけれども、現在国鉄を利用して運んでいる貨物というのは十七、八万トンあるわけでしょう。貨物駅がいま四つありますけれども、これが一つもなくなってしまう。それで、わざわざ奈良駅にあるコンテナ基地まで廃止してしまおうというわけでしょう。コンテナを利用してもらうなどと言いながら、コンテナ基地だって奈良県ではなくなってしまうのですよ。こんなでたらめな話はないと私は思うのです。  ですから、いままでは奈良とか掖上とかいろいろな駅で扱っておりましたけれども、今度は大阪市内の百済駅というところまで、荷物が着いたら取りにいかなければならない。出すときにはそこまで持っていかなければならない。その通運料金が物すごくかかるでしょう。ですから、お米でも一トン当たり二千円値上がりすると言われているわけです。こういう問題について運輸省はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  200. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 基本的には国鉄の赤字、毎年の最大のものは貨物でございます。そういうことからして、とにかく荷物そのものが少なくなっている時代ですから、合理化によって赤字をなくそうというところに基本を立てて、奈良県の場合もいろいろありますけれども、それはコンテナ化によってそういう救済なり話し合いをしてもらうようにお願いしておるところであります。
  201. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大臣、荷物と貨物は違いますので、その辺の区別をはっきりさせて御答弁いただきたいと思います。  ですから、コンテナを利用してもらうと言いながら、じゃ何でコンテナ基地をなくすのですか。おかしな話ですね。いまコンテナ基地があるのですよ。それをなくしてしまうのですよ。それが御答弁と実際やることとは違うのではないかと私は思うのですよ。将来またつぶしたコンテナ基地をつくりましょうという話なのかどうかわかりませんけれども、それならなぜいまあるコンテナ基地をつぶしてしまうのかという疑問が出てくるのではないでしょうか。  これがまた地域の経済にも非常に大きな影響を及ぼしているのですね。たとえば足尾町。おととい、足尾町の貨物駅は廃止をやめる、存続させる、こういうように態度が変わったみたいですね。それは大変いいことだと私は思います。この足尾町でももういま人口が五千七百人。十年前は四、五万人おったわけですね。足尾銅山が閉山になって五千七百人ぐらいの人口になってしまって、大変過疎地域になってしまった。それで、足尾の銅の製錬所がございますけれども、これがやっているわけですね。これは銅鉱石というのを海外から輸入してやっています。これは浜川崎からずっと送っているわけです。ですから、この貨物駅が廃止なんということになると、製錬所は大体十二億円ぐらいよけい経費がかかってとてもやっていけない、だから閉鎖ということも考えざるを得ないというふうに言っているほどです。ですから、中曽根総理大臣にも足尾の町民から何とかしてくれというような要請のはがきがたくさん行ったと思うのですね。高木総裁にも行っておると思います。亀井さんにも行っていたと思います。長谷川大臣にも行っておると思いますけれども、いろいろな方に行っている。これはそういう要請にこたえて廃止をやめたわけですけれども、その理由について運輸省のお考えをちょっとお尋ねしたいと思います。
  202. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 それは、まだ第二次交通線に対しての回答がありません。そういうことからして、そのおくれを見ながら、一方また、貨物の問題があるから一応ここで貨物の方だけやりながら、しかし、いまの第二次交通線の問題は原則として残っている。その場合には、また期間が来た場合にはお考え願わなければならぬ、こういうふうに思います。
  203. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、言い方は比喩ですけれども、絞首刑の執行をちょっと延ばしたというだけですか。いま確かに足尾線が第二次の廃止対象路線になっておりますね。そして、大臣の方にも国鉄から特定交通線の選定についての承認申請がいっておると思うのですけれども、そうすると、それの結果待ちだということですか。  そうしますと、これは住民の要求に基本的にはこたえたことにはならないと私は思うのですね。貨物駅の廃止でもそれだけ大きな影響があるわけですから、もしか線それ自身が廃止されるということになりますと、もうまさにあそこはゴーストタウンですよ。ある町民の人はこう言っていますね、もうここは第二次閉山。第二次閉山なんという言葉を使っていますが、もしか製錬所がなくなってしまえば、古河鉱業に関連して働いている人々が二千人おるそうです。約半分近くおるわけですね。ですから、そういうことでほかに何の産業もないからもう首つり問題だ、こういうようなことまで言っておられるのです。  こういう住民の不安にこたえて、やはり足尾線を存続させて、そして製錬所もそこでもって営業ができるようにしてやるというのが政府やまた政治家の務めではないかというふうに私は思うのですけれども、大臣、どういうふうにお考えですか。
  204. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 最後はあなたと同じような結論でございますが、しかし途中は、いまの四千人以上ないというふうな第二次交通線に入った、そのことを踏まえながら、今度、貨物の問題が一応延びている間に将来の問題について御協議願いながらひとつ合理化に進めてまいりたい、こう思っております。
  205. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、結局は、大臣が特定地方交通線の承認をすれば、二年でもって協議期間が終了して廃止になってしまうということでしょう。そうすると、来年の二月には廃止にならぬけれども、あと二年ぐらい後には廃止になってしまう、そういうことなんですね。  私は、それでは国鉄の使命を果たすことにはならないと思う。一日四千人未満といいますけれども、四千人未満というのは乗車密度ですから、どの一キロをとってみても一日に四千人乗っているということですから、これは大変に利用されているということなんですよ。それを、乗車密度が四千人未満というものはもう廃止してしまうのだ、だからしようがないのだ、これでは血も涙もないやり方ではないでしょうか。それによって五千七百人の人々で構成する足尾町はゴーストタウン化してしまうということなんです。こういうことが政治の名においてやられていいのかどうか、私はちょっと中曽根総理大臣の御見解を承りたいというふうに思います。
  206. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 そこで、従来やってきたことは、第三セクター論です。第三セクターでそういう線を自分たちで経営してやっている、そして線路を維持して産業を興している、こういう知恵もあるということもひとつお考えいただきたい、こう思います。
  207. 三浦久

    ○三浦(久)委員 しかし、第三セクターでやっているのは、いままでほんの一、二でしょう。自治省は、そういうものは困る、金は出せませんよと言っているのです。国鉄という専門家がやりながら赤字になるところを、第三セクターでやって黒字になるなんということは、ほとんど考えられないことですね。ですから、一つの逃げ道としては確かに第三セクターというのがあるけれども、実際には第三セクターでやっているところはないじゃないですか。いま二つぐらいしかないですよ。(「三つだ」と呼ぶ者あり)三つか……。  ですから、それじゃ足尾線が第三セクターで残るかというと、そういう保証はないというふうに私は思わざるを得ないですね。何としてでもこの足尾線を残して地域住民の期待にこたえてやってほしいというふうに私は思いますが、中曽根総理、どうでしょう。
  208. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 足尾線の状況は、足尾銅山の製錬関係との関係で乗客あるいは貨物が非常に減ってきた、そういう面でいま地元でも非常に苦労しておるのは私もよく知っております。  いま、乗車係数がどういうふうになるであろうかというので、地元なんかでもみんな乗るように運動したり、努力しておる。そういうような係数がどういうふうに変動するか、そういうのを見守っておるという状況であると思っております。
  209. 三浦久

    ○三浦(久)委員 しかし、これは十七、八万トンぐらい送っているのです。これは貨物量が少ないから廃止になるのではなくて、ヤード系輸送が中止になりますから、ですから、ここでつくった製品とかいろいろな副産物がありますが、それを全国に輸送しておったわけですが、ヤード系輸送がなくなるために、結局は全国に送れないから国鉄を利用できない、そういうことなんですよ。  私はほんの一例を挙げましたけれども、そのほかにもいろいろな問題があるのです。たとえば関西では京都市場、それから大阪市場、神戸市場、こういうところの貨物駅が廃止をされます。そういたしますと五十七年度で十万トン、これは鮮魚ですけれども、年々減ってはきておるのですが、いまだに十万トンの魚が国鉄の貨車を利用して市場に運ばれているわけなんです。ですから、これも廃止になるということになりますと、九州の新しいお魚が関西の人々の食卓には上らない、そういうような結果にもならざるを得ない問題なんですね。  そのほかにも、たとえば代替輸送をトラックでやるとかタンク車でやるとかというようなことになりますと、これは大変な交通公害の問題、交通渋滞の問題、交通事故の問題、こういうものが出てきますね。それからまた、国鉄が採算が合わないといってほっぽり出すところですから、そういうところでトラックでやるということになると、また割り高になるとかいろいろなことがあって、結局物価の高騰にもはね返ってくるとか、国民生活に影響するところきわめて甚大だというふうに私は思っておるのです。  ところが、一方で国民にこういう大きな犠牲を強要しながら、財界はこの貨物の大削減計画によってまたぼろもうけをたくらんでいるということです。このことは私は絶対に許せないというふうに思うのです。たとえば、ヤード系の輸送を廃止いたしますと、全国にたくさんあるヤードが要らなくなるわけです。遊休地になるわけです。これを財界がねらっているわけです。監理委員会の緊急提言がこの前出されておりますけれども、それを見ましても、貨物の合理化によって新たに遊休地になった土地を処分せよということがはっきり書かれている。ですから、この貨物の大削減計画というのは一体どこにねらいがあるのかということが、それを見ただけでもわかると私は思うのです。  国鉄の赤字は確かにあります。赤字の原因についてはまた時間があれば私は大臣にもお話しいたしますけれども、この赤字の原因について全くメスを入れないで、そして土地をどんどん切り売りしていく、こういうことを幾らやっても、たとえば四千五百億円だけ来年度は土地を売るんだなんて言っていますけれども、そんなことを幾らやっても、泉のように次から次へ、十八兆円の借金を抱えているわけですからどんどん利息が出てくるでしょう、五十七年度だって一兆一千四百億円も利息を払っているわけですから。こういう問題を解決しないで土地をどんどん売り飛ばしても、それは国鉄の財政再建という観点からいってナンセンスだと思うのですよ。この点、ちょっと大臣の所見を伺いたいと思います。
  210. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 毎年国鉄は土地を売っているわけです。しかし、ことしはそういう意味ではたくさん売ろうという話が出ているわけです。そしてまた、売った後の土地については、財界がもうかるとかなんとかじゃなくて、まず売ることによって国鉄の赤字の穴埋めをする、そしてその跡地については、民間活力を活用して、それによって大きなプロジェクトをつくって、いままでないところのエネルギーでそれをつくっていこうじゃないか、こういうことでして、何も財界にもうけさせるために私たちがやるわけじゃございません。
  211. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大臣、あなたはそれでは貨物輸送について、全方位の輸送体系は好ましくないと考えているのですか。これは国鉄のこれからのあり方の問題だから私は聞きますけれども、あなたはそういうように、全国ネットワークといいますか、いわゆる全方位の貨物輸送体系、こういうものはいまの国鉄の財政上からいって好ましくないと思っているのですか。将来もそういうものはやる意思はない、そういうふうにお考えなんですか。
  212. 高木文雄

    ○高木説明員 今回の貨物の改善の問題というのは私どもが原案を考えたものでございますので、私から答えさせていただきますが、かねがねヤード系の輸送はコストがかかって能率が悪いと言われておりました。もう十年以上前から言われ続けてきたわけでございますが、いろいろ影響があるということもございまして、私どもは、実は一方においておしかりを受けながら存続を続けてまいったわけでございますが、その後の傾向を見ておりますと、ますます道路が整備される、ますますお客様が自動車を御利用になるという傾向になってまいりまして、非常にお客さんが減ってきているということでございますので、これは将来に向かって回復できない実態ということを前提に考えなければいけないということで、新しく道路等が整備されました現状に応じまして思い切った措置をとった次第でございまして、その後財産が余ってきた場合にそれをどうするかという問題とは全く関係なく、まず輸送方としてそういうふうに変えるということにいたしたわけでございまして、そのよって浮いてまいりますところの土地をどうするかというのも、またこれ別途大問題でございますので取り組んでまいりたいと思いますが、いまお示しのようなことではないということだけは申し上げておきたいと思います。
  213. 三浦久

    ○三浦(久)委員 しかし、結果的には財界がねらっているじゃありませんか。また後で詳しく言いますけれども。  いま高木総裁は、ヤード系の輸送が十年前からコストがかかってしようがないと思っておる、こう言いましたね。それなら何で十年前にこんなものをたくさんつくったのですか。資料をいただいておりますが、あなたたちは、あの武蔵野のヤードでも三百億円かけてつくったのですよ。それを今度は集配機能だけで、ほとんど機能しないようにしてしまおうとしているでしょう。吹田の操車場にしても新鶴見の操車場にしても、この吹田と新鶴見の操車場というのは、全国ネットワークの貨物輸送をやる場合には絶対になくしてはならないものじゃありませんか。あなたたち、そういうことはわかっているわけでしょう。それでも、これは新聞報道を見てみると、吹田、大宮、新鶴見、それから新宿、錦糸町、いろいろありますね。しかし、大きい大宮とか新鶴見とか吹田とか、もうあなたたち鉄道マンとしては放しちゃならないものですよ、そういうものまで都市再開発の対象にして、そこに広大なビルを建てるとか、そんなことをやろうとしているわけでしょう。  では、そんなにヤード系の輸送が金がかかると言うのなら、何でそういうヤードにいままで十年ぐらい前からかけてきたのですか。武蔵野のあれだって、できたのが十年前でしょう。その後だって、資料がございますけれども、いろいろ金をかけているじゃありませんか。いま七つ、八つのヤードの総計でも七、八百億円の建設費がかけられている。そして、この十年間に新たに四百数十億円の金がヤードに投資されているわけですよ。ヤード系の輸送が悪だ、赤字の原因だと言うのなら、何でこんなに設備投資をむだにやってきたのですか。
  214. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま申しましたように、かねがねヤード系輸送は金がかかる。なぜかというと、車両を連結したり解放したりする人手がかかる。その人手が戦後日本の人件費が上がるとともに大変高くなったということから、ヤード系輸送は金がかかるようになりました。そこで、これを何とかしなければいかぬということで、一方でもうやめろという議論もあったのですけれども、何とか経費を減らせないかということで、かなり多くのヤードにおいて自動化をいたしました。その自動化の典型的な事例として行いましたのが、いまの武蔵野ヤードでございます。したがって、そのためには相当思い切った投資をやって努力をしてまいりました。  それによってコストを下げることはできたわけでございますが、今度はお客さんの方が減ってしまったものですから、機械化をどんどん進めましても固定経費の方がかかるということで、結果的には大変むだな投資をしたことになりまして、私どもとして大変申しわけないことだと思っておりますが、それは、要は貨物の扱い量が減ったからでございますので、これをこの際いつまでもかかずらっておりますと、ますます毎年の経費がかかりますし、人は減ってきましたが、今度は機械の維持費、運転費等がかかりますので、思い切ってヤード系をやめるという決断をいたしたわけでございまして、結果的には大変おまえらは目先が見えなかったなと言ってしかられることと思いますけれども、しかし、これまで何とかならないかということでやってきた次第をお酌み取りいただきたいと存じます。
  215. 三浦久

    ○三浦(久)委員 貨物が減った、そういうことを何かいばって言われますけれども、これは国鉄総裁の責任じゃないのですよね。大体昭和四十年ごろに政府が、どんどんこれから貨物輸送がふえるだろうという見通しを立てて、そして国鉄にやらせてきたことなんです。その政府・自民党の見通しが狂ったということなんです。     〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕 昭和四十年ごろというと、たとえば新全総でしょう。その後は、時間がありませんから余り詳しく言いませんが、経済社会基本計画、十カ年計画、こういうものに基づいてやらせてきたのです。ですから、あなたたちは、第一次十カ年計画とか第二次十カ年計画とか立てていろいろやってきたのです。そのときには広大な、これからもっともっとたくさん貨物がふえるだろうと予測した。そしてやらせてきたんですよ。だから、高木総裁が自分の不明だなんと言うことはないのです。政府・自民党がやらせてきたのだ。その責任は重大だと私は思うのです。  それで、私は総理にお尋ねをいたしたいと思いますけれども総理は、景気浮揚対策の一環として国鉄用地の活用を参議院選挙の前に指示しておられますね。その真意を伺いたいと思います。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調の答申の中にも国公有地の活用という部分がございます。国公有地の中には、行政財産もあればあるいは国鉄等が持っておる土地もございます。あるいは電電等の持っておる土地もございます。そういうすべてのものを点検して、そして、とりあえず急いで必要がない、あるいは大きな時代の激変に対応してもっと新しい方向に国鉄や電電の施設等を改善、改革していく、そういうところから出てくる場所等々を余すところなく点検をして、そして一面において国鉄等の財政負担を助ける。同時にまた、一面において、住宅に悩む都市住民、公園に悩む都市住民等々のために適切な施設をそこへつくって、一石二鳥の政策をやろう。それがまた景気回復に非常に役立つ。そういう意味で、いまの情勢を見ると、財政が出動して景気を回復させるということはなかなかむずかしい時代ですから、そういう意味でいまのような土地を活用して、民間の生命保険や損害保険や、そのほか民間の持っておるお金をこちらへ投じて、そして景気浮揚にも役立つようにやらせよう、そういうことで、いま一生懸命努力しておるところであります。
  217. 三浦久

    ○三浦(久)委員 国鉄に遊休地がある。それはありますね。しかし、今度やろうとしておるのはそうじゃないのです。この全国的なネットワークをやめちゃう、国鉄をずたずたにしてしまう。いわゆるヤード系輸送をやめてしまう。そのことによって、吹田とか新鶴見とか大宮とか、そういう操車場を無理やり遊休地に仕立て上げて、そしてこれを利用しようとしているんですね。だから、ここが違うと私は思うのです。  だから、国鉄に対して政府はどう考えているのだろうか。もしかこういうところに都市再開発でもって大きなビルをつくったり、住宅をつくったり、コンクリートで埋めてしまえば、たとえば新鶴見とか吹田というのは八万平方メートルあるんですよ。それから大宮は四十万平方メートルあるんですよ。こういう膨大な土地をコンクリートで固めてしまったら、さあ今度、時代が流れていくでしょう。さあ、この鉄道というものを物流の中心的なものに据えていこうというように考えた場合、そしてまた全国ネットワークをもう一回やろうと考えた場合に、吹田とか新鶴見にかわるような操車場をつくろうと思ったって、もうつくる場所がないのです。そうしますと、中曽根内閣政策によりまして、国鉄というのは、今後ずっと全方位の全国ネットワークの貨物輸送はできなくなるということになってしまうんですね。ですから、中曽根総理もよく国家百年の大計ということを言われるわけでしょう。私もそういう観点で国鉄を見詰めてほしいと思うんですね。  というのは、この国鉄というのは、やはり自動車輸送に比べて大変いろいろな有利さがあるのです。たとえばエネルギー効率もいいでしょう。また土地の利用効率も非常にいいのです。それからまた公害という問題についても、非常に無公害の鉄道です、トラックに比べてみれば。それからまた交通事故という点からいっても非常に少ない。ですから、これからどんどんどんどん社会が発展をしていけば、物流はもっとふえると思うんですね。そういうときに、いまのようなモータリゼーション、いわゆる自動車中心の輸送というのは必ず行き詰まりが来るのです。それはなぜかと言えば、公害がふえますし、交通事故がふえるし、エネルギーをうんと消費していくわけですから。ですから、こういういわゆる自動車中心、内航海運中心だけじゃなくて、やはりこの鉄道というものに総合交通体系の中心的な役割りを果たさせるという時代が必ず来ると私は思うのです。また、そういうふうに政策誘導していかなければならない問題だと思います。  そのときに、いまのように土地をみんな売り飛ばしてしまった、コンクリートが建っておったというときでは、それはもうやろうと思ってもできないわけであります。ですからそういう意味で、新鶴見とか吹田という全国ネットワークの貨物輸送にどうしても欠くことのできないそういうヤードは、私はぜひ残しておいてほしいというふうに思うのですけれども、中曽根総理の御見解を承りたいと思います。
  218. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は政策選択の問題でありまして、いま国鉄が膨大な赤字を背負い、年間約二兆円もまだ赤字が出てくる。赤字の額も、累積赤字がもう十八兆を超しておる。一日にともかく利払いだけでも相当な金が要る。もうにっちもさっちも動きがとれなくなってほぼ破産的な状態にあるのが国鉄の状態です。国民の皆さんもみんな心配して、国鉄が自前で何とかいけるようにやれないか、われわれの税金を出して国鉄を救うのもいいけれども、国鉄がもっと自分でやれるところまでやりなさい、そういう国民側の非常に鋭い指摘がある。  その一つの原因に、国鉄を監査したりいろいろやってみたけれども、やはり貨物輸送の非能率性、時代に適合しなくなったという面が非常に強く出てきた。何しろトラックに負けてしまって、それに先手を打っていろいろ改革するということをやれなかった。そういう意味で、もう完全にトラックに負けてしまった。黒猫一匹に暴れられてしまって、小さな手荷物でも動かなくなってしまった。そういうのが現状なんですよね。そういうわけで、国鉄はある意味においておくれをとった。  そういう状態から、やはりモータリゼーションの時代に沿うような国鉄改革をやらなければ、長期的に見て再建の道を講ずることができない。そういう意味で、頓服的なことをやったってだめだ。それには思い切って貨物輸送から撤退した方がよろしい。そういう空隙は何で埋めるか。たとえば食糧とかあるいは石油とか、そういう大量の定型輸送に使うものは、これは国鉄でもいいだろう。しかし、貨物のようにトラックでやれるようなものは、もうトラックでやる時代に入ったのじゃないか。つまり、玄関から玄関ヘトラックが持っていってくれる。国鉄の方はそうじゃない。駅へ持っていって、積みかえて、また駅へ行って、また積みおろして、またトラックに載せていくという、こういう時代ではもうなくなってしまった。そういうような大きな時代の変動に対応して国鉄改革をやれというのが臨調のやり方で、私は一つのりっぱな見識であると思っている。  あなた、ヤード、ヤードと言われるけれども、あのヤードぐらい非能率な使い方はないのですよ。あれだけの八万平方メートルもあるようなあんな高いところを、鉄道があるだけであって、あの空間はもったいないじゃないですか。あれ一坪何万円しますか。そういうような金利計算まで入れたら、それは土地の活用から見たら実にもったいない使い方だ。もし専門家がいれば、あんなものは地下に入れちゃうでしょうね。そして、上の方はもっと活用するでしょうね。そんなものはすでにペンシルバニアの駅でもやっているところがある。それは一つの着想として申し上げるのですけれども、そういう意味から、汐留にしても新宿にしても、もはや時代おくれの存在になってきておる。  そこで臨調の答申が出まして、そうして、長距離のそういう定型的なバルキーな荷物は国鉄がやるべきだけれども、黒猫に負けるような、玄関から玄関へ行くような、そういうようなものは民間でやった方がいい。お容さんだって便利に思っている。そういうような時代になったわけですよ。そういう勧告はなかなか合理的な勧告であって、国鉄がそれに従ってやろうというのは、高木さんもなかなか勇気があって、珍しくよくやっていると私は大いに応援をしているわけです。その方がいいと思うのです。  ですから、たとえば錦糸町を御指摘になったけれども、錦糸町はもうほとんど使っていないのです。そういう使っていないところが各地に出てきつつある。いま言った大きなモータリゼーションの時代に合うように国鉄自体が自己改革をやっておるのであって、じゃその赤字は共産党は一体どうするのです。国民の税金で、また税金を取って埋めるのですか、共産党さんは。そういう建設的な具体案を出さないで、そして一方的に言ったって、世の中通じませんよ。
  219. 三浦久

    ○三浦(久)委員 中曽根さん、あなたは運輸問題は素人なんですよ。いま最後にこういうことを言ったけれども、黒猫ヤマトの宅急便というのは荷物なんですよ。荷物と貨物というのは違うんですよ。わかりますか。  それから、共産党がただ批判だけしていると言っていますけれども、われわれは十年前に国鉄再建の方針を出しているじゃありませんか。いいですか、あなたはモータリゼーション、トラックに負けたと言うけれども、それはそういうように政策を、どんどん道路をつくる、車が走る、車が走るとまた道路財源が出てくる、それでどんどんつくっていって、結局は貨物がトラックと競争できないようにしてしまった。われわれは、じゃ国鉄も、新しい路線をつくるのであれば、政府が口を出してつくらせるんだから、それは道路と同じように国が全部金を出したらいいじゃないかと言うのです。たとえば上越新幹線にしても、借料を鉄建公団に毎年一千億円払うんでしょう。収入は五百億円ですよ。ランニングコスト五百億円かかりますから、これはとんとんです。そうすると、結局は借料だけが赤字になっていくというのがいまの状況じゃありませんか。ですから私は、政府が口を出してちゃんと鉄道をつくらせているんだから、国鉄は金がないのはわかっているんだから、それであれば政府が金を出してつくらしたらいいじゃないですか。そうすればランニングコストで運賃収入はとんとんなんです。何も赤字になることはないんですよ。  それで私たちは、費用負担の原則、国がどの程度費用負担するか、国鉄がどの程度費用負担するか、そういう費用負担の原則をはっきりさせなさいと十年前から言ってきているのに、もう借金に次ぐ借金でどんどん設備投資をやらしていく。設備投資がどのくらい行われていますか。この十年間、最近はちょっと減っていますよ、しかし、設備投資が運賃収入の六〇%に及んでいるんですよ。こんな会社はありませんよ。電力だって設備投資は四〇%、その四〇%だって、借金と自己資本の比率をよく考えながら設備投資している。ところが、国鉄の場合には運賃収入の六〇%以上、ひどいときには七八%、四十八年度は運賃収入の七八%も設備投資させているんですよ。こういう状況。それも全部借金でやる。こういうことをやらして、いま利息を一兆一千四百億円も払わなければならないような国鉄になったのだ。  それに、さりき言ったように、政策の誤りによってむだな投資をどんどんしてきているじゃありませんか。地方交通線の問題でも、AB線、CD線でもいまたくさん工事がストップしておる。もうちょっとやればつながるというのに、いままで何百億かけてきたお金をもうふいにしているわけですよ。  そういうところに国鉄の赤字の根本的な原因があるのであって、そこに全然メスを入れないで、土地をただ切り売りしているというようなことで国鉄の再建ができるほどなまやさしい問題ではない、私はそのことを強く総理指摘して、私の質問を終わりたいと思います。――失礼しました。中路議員が関連で質問したいと言いますのでよろしく。
  220. 金丸信

    金丸委員長 この際、中路君より関連質疑の申し出があります。三浦君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中路雅弘君。
  221. 中路雅弘

    ○中路委員 私はあとの時間で、今度出されました六本の法案そのものについて、私たちの主張も述べながら、提出された政府の方のねらいをお聞きして、きょうの皆さんの答弁で、この法案についての私たちの最終的な態度、対応を決めたいと思いますので、率直にひとつ御答弁願いたいと思います。  行政事務簡素合理化法案については、三浦委員から先ほどお尋ねしました。私、聞いておりまして、一、二点だけ追加して御質問したいと思います。  一つは、機関委任事務の簡素合理化に関する部分で、米軍、自衛隊にかかわる損害補償の経由事務を市町村長に押しつけようという点ですけれども、これは明白に国の責任の問題ですから、この事務を市町村長に実質的に押しつけるというのは問題があると思うのですが、この部分は削るべきではないかという意見であります。  もう一つ、最後にお尋ねしますけれども、機関委任事務の抜本的な整理についてでありますけれども、私たちはかねてから、地方自治拡充の見地から、機関委任事務を原則として廃止するよう主張してきたところですが、政府全体としてこの問題にこれからどういう取り組みをされるのか、総理あるいは行管庁長官の決意をお伺いしたい。
  222. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 前段の御質問に対しましては政府委員から答弁いたさせます。  後段の問題につきまして私からお答えいたしますと、機関委任事務につきましては、臨調は、二年以内に一割ということになっております。そこで、その方向に向かって今後とも努力を続けていきたいと思いますが、私は、今回提案申し上げておる法律内容だけで終わるものではない、今後とも続けていきたいという方針でございます。  それと同時に、機関委任事務のあり方、これはやはりもう少し本格的に勉強する必要がある、かように考えておるわけでございますので、臨時行政改革推進審議会の中にそれぞれの専門の方々数人を参与として入っていただきまして、機関委任事務のあり方はどうあるべきものか、それは将来の地方分権という方向を目指してどうあるべきかということを根本的にひとつ勉強をして、その方針に基づきましてどういうふうな事項を、さらに機関委任事務の合理化をやっていくかというふうなことも今後続けていきたい、かように考えております。
  223. 門田英郎

    ○門田政府委員 お答え申し上げます。  前段の問題で、防衛施設庁絡みの特損法関係、これについての御質問でございます。  最近、特損法第一条、それから環境整備法第十三条に規定されております損失補償の事案というものが、数市町村の行政区域に係るものが少なくなっております。おおむね一、二市町村の範囲内、こういうものにとどまってきているというふうな状況になってきておるわけでございます。こういう理由で、必ずしも、都道府県単位で損失補償申請書を取りまとめて資料を収集するという必要性が少なくなってきておるということが一点であります。かたがた、損失補償申請書を受理し、これに添付するための意見書を作成するという際に必要な資料が、市町村の機関に整っていることが非常に多くなってきております。また、損失補償申請の事実上の取りまとめ、これを市町村長が行っている例が相当ある。こういう二点の理由によりまして、今回御提案申し上げましたような措置をとらしていただく、かようなことを考えているわけでございます。
  224. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの問題は、答弁だけにしておきます。  今度出されました法案の中で最も重要なのは、やはり国家行政組織法関係の二法案だと思います。総理はこの委員会でも、お聞きしてましたら、答弁の中で、この提出理由の一つとして、民主主義が発達した諸外国では、局や部などの設置規制は法律事項にしないで、国会のコントロールのもとには置いてないという例も挙げておられました。確かに他の資本主義国では、わが国の国家行政組織法のような行政組織編成の基準を定めた法制が非常に少ないわけですね。局、部などの各省庁の内部組織の設置、改廃等を法律事項としている国は少ないと思います。しかし私は、こういう外国の例を調べるということも重要ですけれども、やはりそれぞれの国の行政組織の規制方式というのは、その国の憲法制度やあるいは立法府と行政府との関係、政治制度の歴史の違いなどに依存しているわけですから、その違いを度外視して、単純に形式だけを比較するわけにもいかないだろうと思うのです。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕  御存じのように、わが国には固有の政治制度の歴史があり、憲法制度に照応した行政組織の規制の方式があってしかるべきでありますし、特に現行方式は、戦前のあの深刻な教訓から導かれた憲法の国民主権あるいは国会中心主義などと結んだ行政機関法定主義の原則と、これを具体化した国会の立法政策によってもたらされたものでありますし、国民にとって、やはりこの方式をさらに一層充実していく必要こそあっても、これが不都合があるという理由にはならないのではないか。現行の行政組織規制をそのままにしておいた場合にどのような大変な不都合が起きるのか、総理にまずお聞きしたい。
  225. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中路さんのいまのお話はわりあいに筋の通った話で、私もかねがね言っているようなことをあなたに言っていただいたので、非常に欣快に思います。ただ、結論は違います。やはり政治制度というのはみんなその国それぞれの伝統もあり、社会的な因縁もあり、また民主主義の発達度合いという面もありますから、外国がどうだからといってすぐそのままやるべきものではないと思います。  日本の場合も、戦前は官制大権のもとに、こういう公務員の問題や行政機構の問題は政府が独断で勅令をもってできた。しかし、その場合でも枢密院でこれを審査するという手続はありました。しかし、政府の力が非常にこの面で強大だったことは事実です。そこで、戦争に負けまして、そして戦前をよくわれわれが分析検討した結果、昭和二十二、三年のころですからまだ議会も弱いし、そこでいまのような法律にしまして、議会がこれをコントロールするシステムにしておいたわけであります。しかし、その後三十数年たちまして、議会は強大な議会に充実してまいりました。  ところがまた一方、公務員の側はどうであるかといいますと、公務員の側はどうも改革に対して積極的でなくなってくる。つまり、法律を出して議会でいろいろやるのはもうめんどうくさくて、それじゃ改革しないでこのままの方がいいやという安易な気持ちにどうしてもなってきつつあるのです。それではいかぬ。  そこで、いまの調和点を求めまして、議会のコントロールというものは、百二十八の局あるいは官房というもの、これは議会の承認と議決を経なければ変えることはできない、ここでかんぬきを入れておきまして、その範囲内ならばスクラップ・アンド・ビルドで政府がやれるようにする。これが、これだけ民主主義が強大になってきて、議員の皆さんも各省の内部のことを知悉され、人的配置までもよく知悉される段階にもなってきた今日、その調和点としていいのではないか。  昭和二十二、三年のころというのは、まるっきり日本がどうなるかわからぬ、そういう意味において、議会がしっかり把握しておくという配慮をわれわれはそのときやったのであります。今日はもうこれだけ成熟してきたという面から見まして、数はしっかり押さえておくが、その範囲内においては政府に任せたらどうか。外国においては、ほとんど、アメリカもイギリスもフランスもドイツも、みんな行政に関することは大体政府に任しておるわけで、イギリスあたりは省まで政府がいろいろ改編できるというふうにしていると記憶しております。そういう面から見まして、日本のこの改革はいまの時代から見たらまあまあ調和点ではないか、そういうふうに考えているわけです。
  226. 中路雅弘

    ○中路委員 戦後の第一回、第二回国会の問題については、総理自身も体験されていますからよく御存じなわけですけれども、この局、部などの設置規制を政令事項にしていた当時の労働省設置法あるいは建設省設置法、国家行政組織法案を修正した際に、衆参両院の決算委員長は、本会議の報告でこう述べているわけですね。   この部局というものは、これは明白に法律によって決めねばならんものであります。   これを政令でやるというような考え方は、戦時中に法律で定むべき事項をやたらに勅令に委任したと同じ考え方でありまして、これは勿論新憲法の精神に違反するのであります。   修正は、現われた文字から見ますると誠に簡単のようでありますが、その含むところの内容は真に重大なものがあります。それは、従来の旧憲法の官制大権のごとき思想をさらりと捨てまして、すべては国民の代表たる国会におきましてこれを決定すべしとする国会至上主義、新憲法の精神に則る国会至上主義の実現であります。我々憲法を最も合理的に運用せんとする考えを持つものにとりまして、これは重大原則の確立であります。 本会議で報告をされています。総理もこの修正に賛成されたばかりか、議事録を読んでみますと、建設省設置法案に対しては、この修正案の趣旨説明を当時の中曽根議員が行われているわけです。そして、いま読みましたような趣旨を述べておられます。  私は、この問題は、戦後の民主化の一つの大きな原点ではなかったかと思うのです。そういう点で、今度、戦後政治の総決算と総理は言っておられますが、やはりこうした戦後の民主主義の原点であり、そして定着、確立した問題を崩すということは、私たちは絶対に賛成するわけにいかないわけです。いまの規定ですね、これが民主主義が定着してきたから、あるいは国会のコントロールができるようになったからというふうにおっしゃっていますけれども、このことは、国会のコントロールを弱めるような法案をあえて提出する必要は、私はこの理由ではどこにもないのではないか。  決算委員長が重大原則の確立だと言っていますけれども、この三十年間定着した問題ですが、かつて佐藤内閣、田中内閣の時代に前後三回にわたって提案され、何の実質的な審議もなくて廃案になりました今回の法案と基本的に同じ内容の法案でありますけれども、これについて、元内閣法制局参事官の佐藤さんは、たしかいま上智大学の教授ですけれども、こう述べています。当時ですね。   改正案の立場からは、現行の国家行政組織法行政組織を硬直化させ、その弾力的な再編成を困難にしていると主張されるのであるが、この法律そのものにその原因があるのではなく、省・庁の内部部局の弾力的な再編成はこの法律の下においてもいうまでもなく可能なのである。端的にいって、行政機構改革の実現の成否はその改革そのものの必要性が立法部によって支持されるかどうかに依存するのであり、この法律の定めている行政組織編成の方式そのものに依存するのではない。 と指摘していますが、私もそのとおりだと思うのですね。  この法律があるから弾力性が出ないのだということではなくて、まさにその時代の発展に応じて当然行政機構の改編ということは必要になってきます。それはやはり国会のコントロール、国会がどういうふうにこの問題を判断していくかというところにかかっているわけであると思うわけです。そういう面では、硬直化しているからとか弾力性がなくなるということを理由にして外すというのは本末転倒ではないかというふうに考えますが、もう一度総理のお考えをお聞きしたい。
  227. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中路さんがいまお読みになりました決算委員長の発言というものは、まさに私がいまお答えしたときに申し上げたことを申し上げておるのでありまして、あれが当時われわれの考えであったわけです。つまり、戦前の官制大権あるいは政府権力の強大さに対して議会の力を強めておかなければならぬ、そういう戦争に負けた直後の、民主主義を充実させていかなければだめだという信念に基づいてそういうような措置をとったわけなのであります。  しかし、いま、この三十数年の経験を経まして議会も非常に充実してまいりまして、議会によるコントロールあるいは国政調査権というものは非常に充実して、活動できる状態にも実はなっておるわけであります。また、諸官庁に対する監督もかなり行き渡ってきつつあるという状態であります。そして、いままでいろいろ経験をし、やってきた最近の情勢を見ますと、やはり公務員にせよあるいは行政府にある者が、何しろ国会には法案がずいぶん出るものですから、そういう内部改革の法案を出すという場合でもなかなか通らない。通らないには通らない理由も一つあるでしょうけれども、やはり自然に怯懦になりまして改革を怠るという形にいまなってきておるのであります。  内閣委員会一つ見ても、内閣委員会にはいろいろな法案が殺到いたしまして、非常に厳重な審査をしていただいておる。審査をしていただいておることは結構なことで、国会のロントロールが及んでいるということでありますが、しかし、それで結局、公務員や官僚というものはもう怯懦になりまして改革を怠るという形にも実はなってきておるわけです。  そして、いまこれだけ大きく高度情報化社会が参り、また非常に高齢者社会で、しかも非常に円熟した日本社会が出現しつつある。こういう大きな変化が行われつつある折から、やはり各省庁におきましても、それに合うように機動的、弾力的に行政機構をみずから改革できるという方便を講じておいてやるということが大事だ。しかし、その場合、国会の権限を無視してはいけない。やはり国会のコントロールというものは及ぼしておく必要がある。そこで、国家公務員の総定員法をつくりましたと同じように、ちゃんと枠を決めて、それをかんぬきにして、その範囲内は政府行政権の裁量である、行政をどういうふうにやっていくかということは、その大臣なり内閣に任して、それがまずかったら糾弾をする、あるいは不信任案を出してやめさせる、それが三権分立の行政と立法の関係でございますから、余り行政の中に立ち入り過ぎると、三権が混淆する。また、国会の権限が及ばないようになってしまえば、また民主主義でもなくなる。そういう調和点として、ちょうど国家公務員の総定員法におけるがごとく、局に対する総定員法という発想のもとに弾力性のある措置をとらしていただこう、そういう趣旨なのでございます。
  228. 中路雅弘

    ○中路委員 いま、局の総数をかんぬきにしてというお話がありました。  別の角度からお尋ねしますけれども、この今度の構想も、臨調が一連の答申の中で提起した行政機構の再編構想、それに沿った実行を目指したものだと思いますけれども、臨調の一連の行政機構の再編成の構想は、第三次答申ですが、こう述べていますね。  行政を三つの区分に分けています。農業、社会保障、文教などの国民生活に密着した行政部門は、行政の果たすべき役割り責任領域の見直しが必要だ。こういう社会保障や農業やあるいは文教の部門、このところは行政責任領域を見直さなければいけない。ある場合には切り捨て等も出てくる。総合安保の関連部門、防衛や外交あるいは経済協力、これは本来的に行政責任領域に属するところだ。もう一点は、国土やエネルギー、科学技術などの大企業の活力、活性化に役立つ部門は新しい行政の需要という、この三つに行政区域を分けている。社会保障の問題も憲法で定められた重要な行政責任のある分野だと私は思うのですけれども、三つにこう勝手に分けて、そしてスクラップ・アンド・ビルドの方針をここで出しておるわけです。  こうした臨調の方針を具体化していく、そういう中で今度の機構の再編が国会にかけられないで、時の政府の一方的な判断、権限で行われるということになれば、局の総数はいま押さえているにしても、その定数の中であるいは生活関連の部門が圧縮をされる、縮小をされる、そういう不安、心配というのは当然起きるだろうと私は思うのですね。  行政機構の再編成が、国会は関与するなということになれば、こうした臨調の行政区分によった再編成が行われることも当然あるわけですし、また、いま戦前の経験もおっしゃいました。戦後、御存じのように有事法制研究の原型とされましたあの三矢作戦計画、何よりもあの計画の中では、行政機関の臨戦のためとして、今回の法案と同趣旨の立法構想を掲げています。憲法原則と議会制民主主義をこうして崩していくということは――総理も戦後言っていますように、あの戦前の苦い経験から新しい憲法が確立した重大原則、この原則をやはりあくまで守って、そして、国会のコントロールの中で国民の代表である国会が行政機構をどのようにしていくか。もちろん、国会の審議のやり方、あり方、これももっと改善していかなければいけない点もあるでしょう。しかし、この根本原則は絶対崩してはならない。これが今日まで定着してきた行政機構の検討のあり方ではないかと私は思うのです。重ねて総理にお尋ねしたいと思います。
  229. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 今回の国家行政組織法の改正は、総理がるる御説明申し上げましたように、変化に即応した機動性の発揮ということで出発をしておるわけでございまして、こうした法律が通りましても、国会のコントロールは非常に力強く残ると私は思います。  御承知のように、国会におきます国政調査というものは非常に厳しく行われておりますし、さらにまた、予算審議の過程におきましても、これはもう御承知だと思いますが、その省庁の局の数というものは予算書の中にちゃんと明記して出しておるわけであります。そういうわけで、国政調査なり予算の審議の過程において十分御審議をいただき、国会のコントロールというものは強く及ぶことは間違いないと私は考えております。やはり行政需要の変化というものに対応して機動的に、これは省庁の補助機関でございますから、その補助機関につきましては、総理が申し述べましたように総数の制限というものも設けておるわけでございますから、この程度のことは政令に御委任願うということは適当ではないか、私はさように考えております。  もともと憲法の中で、憲法論議がありましたときに、御承知のように金森さんは、省庁の設置等は、これはもう当然法律でいかなければならぬけれども、大臣のもとにおける補助機関というものは法律を要しないで政令でもいいではないかというふうにはっきりと言うておるわけでございますが、昭和二十三年、あの法律ができた当時は、いま総理が言われたように民主化の要請が非常に強いためにそういうことであったと思いますが、しかし、その後三十数年も経過いたしまして、経済社会も大分変化をしてまいりましたし、行政需要も変わってきた。これはやはり、法定でいきますと、総理が先ほど来申し述べましたように、役所の行政機構というものは非常に硬直化してまいりましたし、役所の中でも非常に消極的な態度が出ております。臨調答申の基本は、行政機関が恒常的に自己革新をやる、それなくして将来の発展はないんだということでございまして、恒常的な自己革新、そのためにはどうしてもこういう機動的な改革ができるように政令に御一任願うようにお願いをしたい、こういうことで提案をいたした次第でございます。
  230. 中路雅弘

    ○中路委員 御答弁を聞きましても、私は、この国会のコントロールという問題は、やはり戦後の民主化、新しい憲法に基づいた最も重要な原点の一つだと思います。この法案については絶対に賛成するわけにいかない。  関連して一問だけ、時間がありませんのでこちらから話しながらお聞きしますけれども、労働婦人の保護の問題です。  いま婦人労働者は全体で千三百九十万、全労働者の三分の一を超えています。内容をお聞きしようと思いましたが、時間もあれなのでお話ししますけれども、大体平均賃金を見ますと、男子に比べていま約五割強ぐらいではないかと思うのですね。パートが多いということもありますけれども、しかし差は去年より若干広がってきておる。そういう点では、この婦人労働者が安心して働けるように、母性保護を企業にきちっと守らせるとか、あるいは憲法も労働基準法もはっきりうたっている男女の平等だとか雇用平等を名実ともに重視し、実現していく、そのために努力していくとがいま大変重要な時期だと思います。  ところが、私、今度出されました各省の設置法をもう一度見てみましたら、国家行政組織法に関連して出されました労働省設置法、いまの労働省設置法に書いてある所掌事務の中で「婦人及び年少労働者に特殊な労働条件の向上及び保護を図ること。」というこの規定は、ばっさり削られて姿を消しています。なぜこの婦人労働の保護の問題のところだけ削ったのか。今回の国家行政組織法の改正の趣旨から見て、どうしてもこれと連動して削除しなければならなかった理由があるのかどうか、あるいはこうした問題に行管庁から何か働きかけ、指示があったのかどうか、まずお尋ねしたい。
  231. 大野明

    ○大野国務大臣 お尋ねの設置法の改正問題でございますが、これは決して先生御指摘のようなことでなくて、今回の整理法案によりますと、各省とも当然一緒ではございますが、この所掌事務については省が一括して行うという規定になっておりまして、これに伴って、労働省におきましてもこの設置法の改正について、従来婦人少年局の所掌事務であった婦人あるいはまた年少労働者の保護規定につきましては、労働者の保護というところに包含されております。ですから、これが改正されたとしても、従来どおり婦人少年局の所掌事務に何の支障も来しませんし、また同時に、これを軽視しておるというようなことでもございませんので、どうかその点、御認識いただきたいと思います。
  232. 中路雅弘

    ○中路委員 婦人労働者、少年労働者の保護の問題というのは、日本だけではなくて、世界的に見ても労働者保護の原点なんですね。日本の戦前のあの過酷な労働、桎梏、こういう中で労働者保護の問題を取り上げていくきっかけになったのが、やはり婦人、年少労働の問題なのです。だから、戦後、この労働省設置法ができたときに、あるいは労働基準法ができたときにも、まずこの婦人、少年労働者の保護という問題がそれとともにきちっと位置づけられ、この設置法の中にも明記された問題、いわゆる労働者保護の問題に欠くことができない、いわば労働者保護の原点的な規定なんです、出発なんです、実際の運動からいっても。それが今度のこの設置法の改正の中でここだけが削られている。たとえばほかの項目もありますね。基準法に入っているからという意見もありますけれども、基準法を見ますと、たとえば賃金、労働時間、休息に関する問題、あるいはその他労働安全の問題、衛生の問題、これはいまの条文にも規定されてある、今度のものにも出ています。基準法にも出ています。なぜ婦人労働の問題だけ削除するのか。整理をするなら全体的な整理をやればいい、しかしこの項目だけがどうして削除されるのか、私はこの点はやはり大変重要な問題だと思うのです。  御存じのように、戦後何回も中央省庁の局や部の改廃の問題の中で婦人少年局の廃止の問題が提起されたことがあります。そして、かつてはこの問題について審議会から、これを廃止すべきじゃないという建議書も出されているのも御存じだと思うのですね。今度のこの国家行政組織法の改正で、政令で局や部が政府の思うようになる、しかもその設置法の所掌事務の規定の中では、一般的に労働者保護の中に入っているといっても、戦後いままでずっと明記されてきた婦人労働の保護の問題が外れていくことになれば、それはやはり局の改廃につながるのではないかという心配が出るのは当然なんじゃないかと思うのです。現に、たとえば財界の意見、一九七〇年の商工会議所の意見書に始まりまして、この女子保護の規定の撤廃ということは、そうした中から強く出されている要求なんですね。  いま大臣は、婦人少年局を今後廃止しようということのお考えは全くないですか。
  233. 大野明

    ○大野国務大臣 婦人少年局を廃止するということは考えておりませんし、むしろ現在、労働省内の組織の改編ということを考える中で、今度は婦人局ということで、非常に婦人が社会進出してきておる現況にかんがみまして、婦人局にしようということで、いまいろいろと内部的な調整をしておるというようなところでございます。
  234. 中路雅弘

    ○中路委員 今度この問題だけが削除されたというのは、どう見ても説明がつかない問題ですね。これはもう一度設置法の条文を整理される際に、この点は復活させるというお考えはありますか。
  235. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 条文規定上の技術的な問題点もございますので、私からお答えをしたいと思います。  先ほど大臣もお答えいたしましたように、労働省としての所掌事務を一括規定する方式をとりましたわけですが、その際にできるだけ規定の重複を避けるという意味で、単に包括的な所掌事務の規定の仕方がある場合、それに包含されるものはこれを整理したということでございまして、内容的に変えるものでないことは大臣もお答えしたとおりですが、ちなみに改正案の九条に、都道府県婦人少年室の所掌事務の規定も書いてございます。その中では、たとえば都道府県労働基準局との所掌事務の違いを明確にするために、こちらの方は婦人及び年少労働者の保護なり労働条件のことも明記してあるわけでございまして、そういう意味で内容的に変えるものではないということで、仄上の整理をしたということでございます。
  236. 中路雅弘

    ○中路委員 この規定は、基準法の第六章だけに限定されるものではないのですね。もっと広く、定年制の男女差別の解消など、いわゆる労基法に基づかない行政全般の活動の根拠にもなっているわけですから、いまの説明だけではとうてい私は納得できないのですが、一問だけ、当事者の局長もお見えですから。  婦人少年局の問題について、戦後何度かこの局の廃止の問題については論議がありました。いまますます重要な時期ですから、ぜひひとつその項目は今後何かの形で復活させて、婦人労働の保護の問題について努力していく決意をお願いしたい。
  237. 赤松良子

    ○赤松政府委員 婦人少年局の業務につきましてますます重要性を増しているということは、先生の御指摘のとおりというふうに認識をいたしております。この問題につきましては、形式的な整理というふうに私は理解いたしておりますので、いままでの業務の態様の変更などということは決してないということを確認いたしておりますので、そういう認識の上に立ってますます必要な女性あるいは年少労働者の保護につきましては行政を推進してまいりたい、このように考えております。
  238. 中路雅弘

    ○中路委員 形式的な整理というならば、なぜこれだけ外したかという説明には全くならないのですね。この点は私は強く指摘しておきたい。先ほど言いましたように、財界がこれまでもいろいろ具体的な提起で出しているのは、この婦人少年局の廃止の問題、あるいは環境庁の関連する公害関係の問題、あるいは経済企画庁の物価局の廃止の問題、あるいはカルテルの取り締まりの本山であります公正取引委員会の権限の縮小、こうしたことが提起をされている。たとえば公正取引委員会というのは、ある意味では一つ独立した側面も持った機関ですね。今度の国家行政組織法の改正案が通れば、こうしたことも政府の自由になって、公正取引委員会の部局も時の政府のあれによって自由にされる。こういう点から見ても、私はこの法案について絶対に認めるわけにいかない。(「もう時間じゃないか」と呼ぶ者あり)あと二十分ぐらいありますから、駆け足であとの法案についてお聞きしたいと思うのですが……(「委員長、六時までじゃないか」と呼ぶ者あり)理事が時間を間違えては困るよ。  総務庁設置の関係の二法案ですけれども、今回の総理府と行政管理庁の統合再編成について、マスコミなどは、これは人も金も減らさないのだ、縄張り争いの役人とかあるいは政治家の目玉づくりなどと報じていますけれども、私は法案をよく見ますと、今回の統合再編案は、そもそも行政簡素化の観点から出されたものではなくて、臨調の総合管理機能の強化、総合調整機能の強化という答申に基づくものではないか、行政簡素化につながらないのはある意味で当然ではないかというふうに思うわけですが、この二つの法案はどういう観点から提出されたものであるのか、簡潔にお考えをお聞きしたい。
  239. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 総務庁設置は、臨調答申の基本的な線に沿いまして、人事管理、定員・組織管理、行政監察、こういったような事務を一元的に所掌しようという総合管理庁構想というものを軸といたしまして、さらにまた、総理府と行政管理庁を統合することによる中央省庁の簡素化ということをも含めて、内閣総理大臣の持っておりまする総合調整権能というものを大幅に総務庁に移す、こういう二面の要請を兼ね備えた形において提案をいたしておるわけでございまして、総合調整機能の強化、さらにまた簡素化、両面の要請にこたえているものだ、かように考えております。
  240. 中路雅弘

    ○中路委員 臨調は、総合管理庁の構想の所掌事務として五つ挙げていますね。現行の行政管理庁の事務、それから現在の総理府人事局の事務、さらにあと三つ、人事院の事務のうち内閣総理大臣が所掌することが適当と考えられる事務、四番目に、人事院の承認事項の整理・基準化の推進により各省庁が実施する事務について統一保持上必要な総合調整に関する事務、五番目に、特殊法人職員の人事管理に関する政府としての統一保持上必要な総合調整に関する事務の五つを臨調は挙げていますが、この五項目に掲げた中で、今度の法案では、総務庁の所掌事務から後の三つ、三、四、五は落ちています。この所掌事務は今後どうするのか。人事院や各特殊法人との調整がつけば総務庁の所掌事務として加えるのですか、どうされるのですか。
  241. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 その述べられている五項目のうちの人事院との関係の事項については、今回は取り上げないことにいたしました。それと同時に、特殊法人の定員管理の問題があるわけでございますが、これにつきましては、それぞれの所管大臣の権限行使との問題とかいろいろありますので、もう少しこれは検討の余地があるということで、今回は検討事項ということで見送ったわけでございます。
  242. 中路雅弘

    ○中路委員 臨調の総合管理庁の設置構想、その答申が明記していますように、人事管理、組織・定員管理及び行政監察機能の一体的、総合的運用によって事務・事業及び組織・定員管理の適正化を図ること、二番目に、政府全体としての人事・労務管理機能を一層有効に発揮する、三番目に、行革推進機関としての機能を一層発揮するという政府全体としての総合管理機能の強化を図って、あわせて行革の推進のための行政体制の整備を図るということが、これを見ますと最大の眼目になっています。  今回の総務庁設置は、内閣全体の総合管理機能の強化のための体制整備とともに、この臨調の答申で言っている臨調のいわば路線ですね、これを推進するための拠点といいますか、足場といいますか、そういう臨調の総合管理庁構想の基本を踏まえたものと考えますが、いかがですか。
  243. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 臨調が指摘しておりまするもろもろの行政改革を推進する一環として、その基盤づくりというふうなことを申し上げていいのかとも考えております。そうした総合管理という一元的な総合管理機能のほかに、総理大臣の持っておられる行政の総合調整機能というものを幅広くこれに移しまして総合調整機能を強化しよう、こういうことでございます。
  244. 中路雅弘

    ○中路委員 臨調の答申では、総合管理庁に統計局や恩給局などの事務を所管させようということは言ってないわけですね。だが法案は、これらの事務を総務庁に所掌させることにしています。これは、総理府をスリムにして内閣官房長官に担当させて閣僚ポストを浮かす、他に充てるということになっておりますが、総理はこういうことを答弁されています。政府の臨時行政改革推進審議会の土光敏夫会長からは、総務庁構想は臨調答申をさらに大がかりにし前進させたとの評価を受けた、引き続き中央省庁の統廃合を進めていく、統合によって閣僚ポストを一つ浮かす、これを無任所大臣として機動的に活用していくことを考えているということを述べておられますが、この臨調答申をさらに大がかりにして前進させたというのは、具体的に何を指しておられるわけですか。
  245. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 臨調の答申は、御承知のように総合管理庁構想というものだけでございますから、人事、定員・組織の管理を一元的に所掌する役所をつくりなさい。ところが、さらに内閣として全体的に考えてみて、総合調整機能、総理の持っておる総合調整機能をそれにプラスしていく、そして総理府と行政管理庁を統合する、こういうことでございますから、まさしくこれは一歩前進であったと私は思います。そういう意味において土光さんも、一歩前進の案であるということを言われておるわけでございます。
  246. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点この問題で、この法案でお聞きしておきます。確かめたい点ですが、さっき言いましたね、恩給局等は総務庁へ移管されました。今回の統合再編構想で、地域改善対策室、あるいは内閣総理大臣が長である総理府に残しておくべき機構や恩給局や老人対策室など、国民へのまあ言えばサービス、奉仕の向上という見地から見て、先ほど御答弁にもありました臨調の答申ですね、これを推進していく中核的な機関だと位置づけられた総務庁へ移管することが適当であるかどうかという問題ですが、いま挙げました問題は総理府の機構として残しておくべきではないかというふうに私は考えるわけです。特に統計局の総務庁への分割再編成というのは、統計行政の総合的な効率的な推進を図る上でも問題がありますし、将来、統計事務センターの民間委託にも道を開くおそれをはらんでいるのではないかということも考えられます。統計局の分割再編についても根本的に再検討すべきではないかと私は考えますが、いかがでしょうか。
  247. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 恩給局を総務庁に移すということは、恩給局の所掌事務というのはある意味から申しますと公務員線上の業務でございます。そういう考え方でございます。  それから、新統計局というものを総務庁に設置いたしましたのは、これはたびたび申し上げておりますように、各省庁における統計事務の総合調整、それと国勢調査や労働力調査等の国勢全般における基幹的な統計でございますから、その基幹的な統計の企画事務と各省庁間における統計の総合調整というものをあわせまして、日本における統計業務の中核的な、中枢的な役割りというものを強化しようという考え方で移したわけでございます。  それから、老人対策とか青少年対策本部等々のお話がございましたが、これは総理大臣がお持ちになっておられる総合調整機能の中で、特定のそういう業務についてもうすでに総合調整の機能の組織ができておりますから、それも総務庁に移しまして、内閣全体としての各般にわたる総合調整機能の幅を広げる、こういうことにいたしたわけでございます。  そういうふうなことを考えてみますと、総理大臣の総合調整機能として残りますのは、一般的な総合調整機能は総務庁に残るわけで、個別的なそういう政策についてはすでに総合調整の組織ができておりますから、それをこちらに移すということによって総合管理機能とそういう幅の広い総合調整というものを一緒に所管させよう、こういうことでございます。
  248. 中路雅弘

    ○中路委員 御答弁について若干議論したい気持ちはいっぱいなんですが、きょうは法案全般について私たちの考えとともに、ひとつ確かめておきたい問題もありますので、あと十分しかありませんから、もう一本のいわゆる府県単位機関の整理法案、この問題についてお尋ねします。  私たちは、国家公務員の定員の約五割が配置されています地方出先機関、これにいわば抜本的なメスを入れて、国民へのサービス向上を前提にしまして、地方自治体への権限の委譲や、あるいは交通通信手段の発達に見合った管理機能の一元化などで、むだな事務・事業あるいは機構を大幅に整理をして、簡素でより効率的なものにすべきであるという、出先機関については一貫した主張を持っています。問題は、そのメスがどういう方向に向けられているかということだと思うのです。その点で、今度三つ提案されていますので、簡潔に中身をお尋ねしていきたいと思います。  これまでの政府行政改革における機構改革では、行政機関の名称を簡素にすることによって事務・事業や定員の簡素化を図るという手法がとられてきました。今回の法案もこれにならったもの、行政機関の名称の簡素化をてこにしまして事務事業、定員簡素化を図ることをねらいとしたものである、いわゆる看板を書きかえただけではない、こういうふうに私は理解するわけですが、行管庁長官、見解はいかがですか。
  249. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 県単位の行政機関の整理に関する法律案は、もうすでに御承知のように、大蔵省の財務部、行政管理庁の地方監察局、法務省関係の三つの機関でございます。これらの機関は、御承知のようにブロック機関もありますし、最近における交通通信手段の発達ということもありますので、こういうふうなブロック機関を持ちながらなおかつ県単位の機関を持つことは適当ではないだろうということで、この三機関につきましては、その行っております事務を大幅にブロック機関に集中的に移すというやり方にしたいと考えております。  しかしながら、出先におけるいろいろな民衆へのサービス機関ということの特性もございますので、そういうことも十分考えていかなければならぬ。そこで現地処理機関というものを三つともつくっていきましょうということでございますが、その三つの機関からブロック機関に移しますのは、業務を大幅に移す関係がございますので、三機関につきましては要員規模を相当移すということでございまして、私の庁で申しますれば、地方行政監察局からは二〇%程度の職員をブロック機関に移す。それから現地処理機関としては、地元に対するサービスということもありますので、苦情処理機能とかあるいは行政監察、行政監視、こういうふうな機能を持たすようにして地元へのサービスに遺憾のないように努めていきたい、かように考えております。
  250. 中路雅弘

    ○中路委員 内容についても行政監察局については若干述べていただきましたけれども、地方行政監察局の業務は、一つ国民の苦情処理と行政相談ですね。それから行政運営に対する監視、行政改善に関する行政監察が主要なものです。行政監察局についてはもう一度まとめてお尋ねしますが、今回こうした中でどの業務を簡素化するのか、あるいはこれに伴って事務所がどうなるのか。もう一点は、他省庁の府県単位機関が多数存置しているわけですから、地方行政監察局を事務所に格下げすると行政監視や監察業務がやりにくくなるのではないかという心配も私はしているわけです。業務簡素化で行政監視や監察機能の低下をもたらさないようにしなければなりませんし、あるいはサービスの低下につながってもまずいわけです。地方へよく視察に行きますと、現地的な、地域的な行政監視、監察で非常にいい仕事をやっておられるところがありますね。こういった点で、地方行政監察の本数などを減らさないということも必要だと思いますが、その点はどうお考えですか。
  251. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 行政監察の方は、主としてブロック機関を中心として行っていくというふうなやり方に進めてまいりたいと思います。  それから、出先の方の現地処理機関の方は、先ほども申し述べましたが、行政相談と申しますか、行政苦情処理とかあるいは行政の監視、そういう方面に重点を置いていきたいと考えております。  そこで、監察局の職員は、先ほども申し上げましたように、監察中心のブロック局の方に大体二〇%程度は移していきたいと考えております。現地処理機関の方はそういう意味において少数になると思いますが、少数精鋭で民衆のいろいろな苦情処理に当たっていく、あるいは監視に当たっていく、こんなふうに考えておるわけでございます。
  252. 中路雅弘

    ○中路委員 大蔵省の財務部の問題でございますけれども、財務部は税金以外の大蔵省の業務を所掌しているわけですが、その主なものが信用金庫、証券会社の指導監督、金融、証券の苦情処理という問題、それから三番目に連鎖倒産の防止対策、地方公共団体への資金運用部資金融資業務、国有財産の管理、処分の事務、五つぐらいあると思いますが、今回の財務部の整理によってどの分野の業務が簡素化されるのか。現地処理事務所に残す業務はどれなのか。これに伴って定員はどの程度削減されるのか。また、地方自治体の起債にかかわる業務は財務局に引き上げるのか、それとも現地事務所に残すのか。まずこの点をお伺いしたいと思います。
  253. 川崎正道

    ○川崎(正)政府委員 お答えいたします。  臨調答申におきましても、現地の事務処理機関というものは必要最小限のものとするように、こういう御指摘もございますので、できるだけ簡素なものにしたい、このように考えております。  現地に今度新しく設けます財務事務所、ここで処理する事務といたしましては、信用金庫の監督の事務、あるいは地方公共団体に対する融資の事務、あるいは国有財産の管理、処分、こういった非常に現地性の強い事務だけを残すように、そういう事務を中心として処理する、こういうふうな方向で事務所を構成していきたい、このように考えております。
  254. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一度お尋ねしますけれども、いま金融、証券の苦情処理というのはもう大変な業務で、多くなっておりますね。お聞きしましたら、年間五千件くらいに上っておる。年々増加する傾向にありますし、また、ことし十一月からはサラ金関係の苦情処理などの業務も新たに加わる予定でありますから、私は、財務部が行っておる苦情処理などのサービス業務は絶対縮小してはならない、この部門は充実さすべきではないかと思いますが、財務部の整理後もこうしたサービス、特に国民に向けた業務、これは縮小しないということは明言できますか。
  255. 川崎正道

    ○川崎(正)政府委員 ただいまもお答えいたしましたように、信用金庫の監督の事務、こういったことは現地で処理していかなければいけない事務であろうかと思っておりますので、それに関連いたしまして出てくる苦情処理も現地でおおむね処理していく、こういうことになろうかと考えております。
  256. 中路雅弘

    ○中路委員 最後に公安調査局の問題ですけれども、先ほど行管庁長官が三つの機関についておっしゃいましたけれども、公安調査局の問題は、ブロックと都道府県単位がほかのところの関係と少し違いますね。調べてみましたら、公安調査庁のブロック機関と府県単位機関の機能というのは、他の省庁の出先と違って並列みたいになっているのですね。ブロックの方は会計などの共通管理事務を一元的に処理しているにすぎないわけです。したがって、府県単位機関の名称を簡素化しても、事務、定員の簡素化には直結しないのではないかと思うわけです。お尋ねしたいのは、今回の名称簡素化をてこにして、ここも業務、定員を大幅に削減するのかどうかということであります。
  257. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 いわゆるブロック機関でございます公安調査局が、地方公安調査局と同じような調査事務を行いますとともに、指導監督という面も行っておるわけでございます。そこで私どもは、このブロック局であります公安調査局に地方公安調査局の管理事務を移すということで、これはすでに着々と実施いたしておるところでございます。今回はさらに、各府県にございます地方公安調査局の行います調査関連事務の中でも、ブロック局に移せるものにつきましてはこれを移すことによりまして事務の簡素合理化を図りたい、かように考えておるわけでございます。
  258. 中路雅弘

    ○中路委員 政府の内部にも、公安調査庁の業務を警察などに引き継ぐことを前提に、同庁を廃止すべきという声もありますけれども、今回の名称簡素化は、この公安調査庁の業務を警察などの他の機関に引き継ぐことなく、将来廃止することを前提にしたものか、それとも存続させることを前提にしたものか、もう一度確かめておきたいと思います。
  259. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 私どもは、各府県単位にございます地方公安調査局は、私どもの業務を適正かつ効率的に遂行する上におきましてはぜひとも必要なものである、かように考えておりますので、これを廃止するという考えはございません。
  260. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一間だけですが、いまの問題です。  この公安調査庁というのはいわば戦争中の遺物でありますから、私たちはかねてから主張していますが、公安調査庁については廃止すべきだという主張をこの席でも強く述べておきたいと思います。  最後に一点ですが、臨調は、ブロック機関のもとに置かれた府県単位の機関を廃止してブロック機関へ集約するとの地方出先機関再編の構想を掲げておられます。この構想について亀井前臨調第三部会長は、道州制の条件の整備を目指す地方出先機関の地方庁への一元化を展望したものであるということを説明されていますが、今回の法案は臨調のこうした長期的な展望に沿ったものか、それともこうした構想と無関係に提出されたものかどうか。この法案と臨調のこうした答申との関係について最後にお尋ねをして、質問を終わりたいと思います。
  261. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 道州制については、各方面いろいろ言われている問題もございますが、ただいまのところ政治日程にはのせておりません。
  262. 中路雅弘

    ○中路委員 では、終わります。
  263. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて三浦君、中路君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三十日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十三分散会