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1983-10-06 第100回国会 衆議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年十月六日(木曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 古屋  亨君    理事 近藤 元次君 理事 東家 嘉幸君    理事 中川 秀直君 理事 中村 弘海君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 春田 重昭君 理事 神田  厚君       伊東 正義君    植竹 繁雄君       小坂徳三郎君    桜井  新君       近岡理一郎君    森下 元晴君       島田 琢郎君    栗田  翠君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君         国土庁大都市圏         整備局長    杉岡  浩君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房審         議官      下村  健君         厚生省公衆衛生         局長      大池 眞澄君         厚生省環境衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省薬務局長 正木  馨君         水産庁長官   渡邉 文雄君         郵政省電波監理         局長      鴨 光一郎君         建設省計画局長 台   健君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省道路局長 沓掛 哲男君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部少年課長  山田 晋作君         防衛庁防衛局運         用第一課長   江間 清二君         防衛庁防衛局調         査第一課長   松村 龍二君         法務省刑事局刑         事課長     飛田 清弘君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   小林 康彦君         通商産業省機械         情報産業局電気         機器課長    野口 昌吾君         労働省労働基準         局安全衛生都労         働衛生課長   福渡  靖君         会計検査院長  鎌田 英夫君         会計検査院事務         総局第二課長  竹尾  勉君         参  考  人         (住宅都市整         備公団理事)  久保田誠三君         参  考  人         (住宅都市整         備公団理事)  吉岡 昭雄君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員異動 十月四日  辞任       補欠選任   三浦  久君   榊  利夫君 同月六日  辞任       補欠選任   榊  利夫君   栗田  翠君 同日  辞任       補欠選任   栗田  翠君   三浦  久君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書  (全所管)  昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十五年度政府関係機関決算書  昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十五年度国有財産無償貸付状況総計算書  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書  (文部省所管)  (全所管)      ――――◇―――――
  2. 古屋亨

    古屋委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十六年度政府関係機関決算書並び昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書の各件を一括して議題といたします。  大蔵大臣から各件について概要説明を求めます。竹下大蔵大臣
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書会計検査院検査報告とともに国会に提出し、また、昭和五十六年度の国の債権の現在額並びに物品増減及び現在額につきましても国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十六年度予算は、昭和五十六年四月二日に成立いたしました。  この予算は、歳出面では限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、質的内客の充実に配意しつつ、その規模を極力圧縮するとともに、歳入面においても徹底した見直しを行うことによって、公債発行額を大幅に縮減することを基本方針として編成されたものであります。  さらに、災害復旧費等について所要の措置を講ずるとともに、租税及び印紙収入減額を見込むことに伴い、公債を増発することとし、補正予算が編成され、昭和五十七年二月十七日その成立を見ました。  この補正によりまして、昭和五十六年度一般会計予算は、歳入歳出とも四十七兆千二百五十三億六千四百九万九千円となりました。  以下、昭和五十六年度決算につきまして、その内容を御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして、歳入決算額は四十七兆四千四百三十三億三千七百五十一万円余でありますが、この歳入決算額には、決算調整資金に関する法律第七条第一項の規定により、昭和五十六年度において予見しがたい租税収入減少等により生ずることとなった一般会計歳入歳出決算上の不足額二兆四千九百四十八億九百九十五万円余を補てんするため、同額の決算調整資金からの組み入れ額が含まれております。  なお、この決算調整資金から一般会計歳入への組み入れにつきましては、別途国会に提出いたしました昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書によって御了承願いたいと存じます。  また、歳出決算額は四十六兆九千二百十一億五千四百三万円余でありまして、差し引き五千二百二十一億八千三百四十七万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、昭和五十七年度へ繰り越しました歳出予算財源等に充てるものでありまして、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計昭和五十七年度歳入繰り入れ済みであります。  なお、昭和五十六年度における財政法第六条の純剰余金は、生じておりません。  以上の決算額予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額四十七兆千二百五十三億六千四百九万円余に比べて三千百七十九億七手三百四十一万円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れ予算額に比べて増加した額五千八百四億五百十五万円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、昭和五十六年度歳入の純減少額は二千六百二十四億三千百七十四万円余となるのであります。その内訳租税及び印紙収入における減少額二兆八千七百九十四億七千三百二十七万円余、専売納付金における増加額八十六億二千四百十万円余、官業益金及び官業収入における減少額六千六百九十二万円余、政府資産整理収入における増加額五十二億九万円余、雑収入における増加額千八十五億八千八百八十万円余、公債金における減少額一億千四百四十九万円余、決算調整資金受け入れにおける増加額二兆四千九百四十八億九百九十五万円余となっております。  一方、歳出につきましては、予算額四十七兆千二百五十三億六千四百九万円余に、昭和五十五年度からの繰越額五千三百九十一億五千五百五万円余を加えました歳出予算現額四十七兆六千六百四十五億千九百十五万円余に対しまして、支出済み歳出額は四十六兆九千二百十一億五千四百三万円余でありまして、その差額七千四百三十二億六千五百十一万円余のうち、昭和五十七年度に繰り越しました額は四千七百九十二億二千八百六十三万円余となっており、不用となりました額は二千六百四十一億三千六百四十七万円余となっております。  次に、予備費でありますが、昭和五十六年度一般会計における予備費予算額は千六百四十二億円であります。その使用額は千四百十九億二千百七十六万円余でありまして、その使用内容につきましては、別途国会に提出いたしました予備費使用調書等によって御了承願いたいと存じます。  次に、一般会計国庫債務負担行為につきまして申し上げます。  財政法第十五条第一項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は一兆六千三百五十一億八千百五十四万円余でありますが、契約等による本年度債務負担額は一兆五千九百七十八億四千四百四十五万円余でありますので、これに既征年度からの繰越債務額二兆二千四十一億二千二十七万円余を加え、昭和五十六年度中の支出等による本年度債務減額一兆四千五百三十八億五十万円余を差し引いた額二兆三千四百八十一億六千四百二十二万円余が翌年度以降への繰越債務額となります。  財政法第十五条第二項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は一千億円でありますが、契約等による本年度債務負担額は百五十八億三千七百三万円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額百四十三億二千三百四十五万円余を加え、昭和五十六年度中の支出等による本年度債務消滅額百四十六億二千三百四十五万円余を差し引いた額百五十五億三千七百二万円余が翌年度以降への繰越債務額となります。  次に、昭和五十六年度特別会計決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  次に、昭和五十六年度における国税収納金整理資金受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は二十九兆六千百三十三億五千四十五万円余でありまして、この資金からの一般会計等歳入への組み入れ額等は二十九兆五千八百三十五億三千九百二十二万円余でありますので、差し引き二百九十八億千百二十三万円余が昭和五十六年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、昭和五十六年度政府関係機関決算め内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  次に、国の債権の現在額でありますが、昭和五十六年度末における国の債権総額は九十二兆二千十九億四千五百五十七万円余でありまして、前年度末現在額八十一兆四千九百五十五億百五万円余に比べて十兆七千六十四億四千四百五十一万円余の増加となります。  その内容の詳細につきましては、昭和五十六年度国の債権の現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  次に、物品増減及び現在額でありますが、昭和五十六年度中における純増加額は五千六十七億九千六百三十七万円余でありますので、これに前年度末現在額二兆五千四百九億千七百十二万円余を加えますと、昭和五十六年度末における物品総額は三兆四百七十七億千三百五十万円余となります。その内訳の詳細につきましては、昭和五十六年度物品増減及び現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  以上が、昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書等概要であります。  なお、昭和五十六年度予算執行につきましては、予算の効率的な使用経理の適正な運営に極力意を用いてまいったところでありますが、なお会計検査院から、百八十四件の不当事項等について指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  予算執行につきましては、今後一層配慮をいたし、その適正な処理に努めてまいる所存であります。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。  次に、昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書を、会計検査院検査報告とともに第九十八回国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書概要について御説明いたします。  昭和五十六年度中に増加しました国有財産は、行政財産一兆三千二百六十九億五千九百四十八万円余、普通財産一兆四千八百三十五億八千六十六万円余、総額二兆八千百五億四千十五万円余であり、また、同年度中に減少しました国有財産は、行政財産三千七百九十八億四千二万円余、普通財産五千三十六億千八百五十八万円余、総額八千八百二十四億五千八百六十一万円余でありまして、差し引き一兆九千二百七十億八千百五十三万円余の純増加となっております。これを昭和五十五年度末現在額三十三兆六千八百二十六億四千二百六十一万円余に加算いたしますと三十五兆六千九十七億二千四百十四万円余となり、これが昭和五十六年度末現在における国有財産総額であります。  この総額内訳分類別に申し上げますと、行政財産二十一兆二千三百一億千二百五十四万円余、普通財産十四兆三千七百九十六億千百六十万円余となっております。  なお、行政財産内訳種類別に申し上げますと、公用財産十三兆五千四十四億七千七百四十八万円余、公共用財産三千七百二億五千六十八万円余、皇室用財産五千四百六十二億七千七百十二万円余、企業用財産六兆八千九十一億七百二十四万円余となっております。  また、国有財産総額内訳区分別に申し上げますと、土地十兆五千七百六十五億二千四百二十一万円余、立木竹四兆七百十億八千五百六十万円余、建物四兆五千八百十五億五千二百八十六万円余、工作物三兆七千九百十億八千二百七十二万円余、機械器具八億八千百六十七万円余、船舶七千二百七十四億七千九百五万円余、航空機五千二百二十億八千四百六万円余、地上権等十四億八千五百三十八万円余、特許権等三十九億六千六百四十四万円余、政府出資等十一兆三千三百二十五億八千二百万円余となっております。  次に、国有財産増減内容について、その概要を申し上げます。  まず、昭和五十六年度中における増加額を申し上げますと、前述のとおりその総額は二兆八千百五億四千十五万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって増加しました財産は二兆三千六百九十五億三千五百二十三万円余、第二に、国の内部における異動によって増加しました財産は四千四百十億四百九十二万円余であります。  次に、減少額について申し上げますと、その総額は八千八百三十四億五千八百六十一万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって減少しました財産は四千三十九億六千七十七万円余、第二に、国の内部における異動によって減少しました財産は四千七百九十四億九千七百八十三万円余であります。  以上が昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書概要であります。  次に、昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書概要について御説明いたします。  昭和五十六年度中に増加しました無償貸付財産総額は八百八十六億四千八十六万円余であり、また、同年度中に減少しました無償貸付財産総額は七百七十八億二千二百五十三万円余でありまして、差し引き百八億千八百三十二万円余の純増加となっております。これを昭和五十五年度末現在額五千九百五十六億八千九百十万円余に加算いたしますと六千六十五億七百四十三万円余となり、これが昭和五十六年度末現在において無償貸し付けをしている国有財産総額であります。  以上が昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書概要であります。  なお、これらの国有財産の各総計算書には、それぞれ説明書が添付してありますので、それによって細部を御了承願いたいと思います。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 古屋亨

    古屋委員長 次に、会計検査院当局から各件の検査報告に関する概要説明を求めます。鎌田会計検査院長
  5. 鎌田英夫

    鎌田会計検査院長 昭和五十六年度決算検査報告につきまして、その概要説明いたします。  会計検査院は、五十七年十月十二日内閣から昭和五十六年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十六年度決算検査報告とともに五十七年十二月十三日内閣に回付いたしました。  昭和五十六年度一般会計決算額は、歳入四十七兆四千四百三十三億三千七百五十一万余円、歳出四十六兆九千二百十一億五千四百三万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において三兆四千二十六億七千二十七万余円、歳出において三兆五千百六十一億二千八百四十四万余円の増加になっており、各特別会計決算額合計額は、歳入百五兆九千五百九十五億九千四百五十二万余円、歳出九十二兆三千二百九億八千百二十二万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において九兆六百九十九億七千七百五十六万余円、歳出において八兆三千七百四十五億二千百八十二万余円の増加になっております。  また、国税収納金整理資金は、収納済み額二十九兆六千百二十三億五千四十五万余円、歳入組み入れ額二十八兆六千七百六十一億五千六百九十二万余円であります。  政府関係機関昭和五十六年度決算額総計は、収入二十二兆八百八十七億二千九十四万余円、支出二十二兆千七百十五億百九十七万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において一兆千三百五億四千二十八万余円、支出において一兆四千百七十九億五千八百十八万余円の増加になっております。  昭和五十六年度歳入歳出等に関し、会計検査院が、国、政府関係機関、国の出資団体等検査対象機関について検査した実績を申し上げますと、書面検査は、計算書二十三万八千余冊及び証拠書類六千八百九十八万余枚について行い、また、実地検査は、検査対象機関の官署、事務所等四万千七百余カ所のうち、その七・九%に当たる三千三百余カ所について実施いたしました。そして、検査の進行に伴い、関係者に対して千三百余事項質問を発しております。  このようにして検査いたしました結果、検査報告に掲記した不当事項等について、その概要説明いたします。  まず、不当事項について申し上げます。  不当事項として検査報告に掲記いたしましたものは、合計百八十四件であります。  このうち、収入に関するものは、九件、二十二億三千七百八万余円でありまして、その内訳は、租税徴収額過不足があったものなどが二件、十二億五千三十三万余円、保険料徴収額過不足があったものが三件、八億五千九百三十七万余円、職員不正行為による損害を生じたものが四件、二千七百三十七万余円。  また、支出に関するものは、百四十三件、十八億二千五百六十六万余円でありまして、その内訳は、予算経理に関するものとして、架空の名目による旅費を別途に経理していたものなどが二件、九百十万余円、工事に関するものとして、設計が適切でなかったため不経済になったもの、予定価格積算が適切でなかったため契約額割り高になったものが六件、二億三千九百四十万余円、物件に関するものとして、物品購入計画が適切でなかったため不経済になったものが一件、六千百七十万余円、保険に関するものとして、医療給付費支払いが適切でなかったもの、保険給付金の支給が適正でなかったものが三件、四億八千五百九十二万余円、補助金に関するものとして、補助事業実施及び経理が適切でなかったものが百二十六件、七億四百二十一万余円、貸付金に関するものとして、共同利用施設として貸し付け対象施設が、貸し付け目的外使用されていたものなどが四件、一億二千六百四十九万余円、その他、地方交付税交付金について、事実と相違した資料に基づいて交付額を算定したため過大となっていたもの一件、一億九千八百八十一万余円であります。  以上の収入支出に関するもののほか、国有地について、国以外の者に対し不正に所有権移転登記が行われ占有使用されていたのにこれを放置していたものが一件、四千三百一万余円、郵便貯金預入金簡易生命保険保険料等について職員不正行為による損害を生じたものが三十一件、一億四千五百十六万余円ありまして、これらの合計は、百八十四件、四十二億五千九十三万余円となっております。これを前年度の百八十件、六十九億三千九百五十万余円と比べますと、件数において四件の増加金額において二十六億八千八百五十七万余円の減少となっております。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  五十七年中におきまして、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善処置を要求いたしましたものは八件でありまして、その内訳は、農林水産省の輸入麦の売り渡しに関するもの、沿岸漁業構造改善事業等実施に関するもの、郵政省郵政事業特別会計機械器具に係る経理に関するもの、建設省下水道終末処理場機械設備整備に関するもの、自治省の地方交付税交付金に関するもの、日本道路公団潜函工事用コンプレッサー運転電気料積算に関するもの、住宅都市整備公団民営賃貸用特定分譲住宅に関する業務運営に関するもの、雇用促進事業団総合高等職業訓練校転換計画及びその実施に関するものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について説明いたします。  これは、検査の過程で会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求すべく質問を発遣するなど検討しておりましたところ、当局において、本院の指摘を契機として直ちに改善処置をとったものでありまして、検査報告に掲記しましたものは十九件であります。その内訳は、大蔵省電子計算機出力用紙のレイアウトに関するもの、厚生省国立病院等における受託研究に係る経理に関するもの、通商産業省中小企業設備近代化資金貸付事業経理に関するもの、運輸省の航空保安施設等における自家発電設備工事の据えつけ費の積算に関するもの、建設省下水道工事におけるマンホール用型枠費積算に関するもの、日本国有鉄道軌道整備工事における脱線防止ガードの撤去、復旧工事費積算に関するもの、トンネル工事における労務費積算に関するもの、新幹線用トンネル巡回車の仕様に関するもの、駅設備営業用クレーン等の稼働及び収支に関するもの、業務委託駅の営業体制に関するもの、機関車の運用表における燃料補給時期の指定等に関するもの、日本電信電話公社の街頭用ボックス型公衆電話の料金箱の取集に関するもの、日本道路公団トンネル工事における労務費積算に関するもの、阪神高速道路公団の道路標識柱の製作費の積算に関するもの、本州四国連絡橋公団の鋼板の一次素地調整費の積算に関するもの、住宅都市整備公団住宅建築工事における現場打ち鉄筋コンクリートぐい施工費等の積算に関するもの、石炭鉱害事業団の業務上の余裕金の運用に関するもの、日本中央競馬会の開催制服の貸し付けに関するもの、日本原子力研究所の業務上の余裕金の運用に関するものであります。保  最後に、特に掲記を要すると認めた事項について説明いたします。  この事項は、事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図るために掲記しているものでありまして、昭和五十六年度決算検査報告には、次の三件を掲げてございます。  すなわち農林水産省の団体営草地開発整備事業によって開発した草地に関するもの、日本国有鉄道の荷物営業に関するもの、日本鉄道建設公団の上越新幹線建設に伴い取得した併設道路用地の費用の回収に関するものであります。  以上をもって概要説明を終わります。  会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して、適正な会計経理執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう、望んでいる次第であります。  昭和五十六年度国有財産検査報告につきまして、その概要説明いたします。  会計検査院は、五十七年十月十五日、内閣から昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十六年度国有財産検査報告とともに五十七年十二月十三日内閣に回付いたしました。  五十五年度末の国有財産現在額は、三十二兆六千八百二十六億四千二百六十一万余円でありましたが、五十六年度中の増が二兆八千百五億四千十五万余円、同年度中の減が八千八百二十四億五千八百六十一万余円ありましたので、差し引き五十六年度末の現在額は三十五兆六千九十七億二千四百十四万余円になり、前年度に比べますと一兆九千二百七十億八千百五十三万余円の増加になっております。  また、国有財産の無償貸付状況につきましては、五十五年度末には、五千九百五十六億八千九百十万余円でありましたが、五十六年度中の増が八百八十六億四千八十六万余円、同年度中の減が七百七十八億二千二百五十三万余円ありましたので、差し引き百八億千八百三十二万余円の増加を見まして、五十六年度末の無償貸付財産総額は六千六十五億七百四十三万余円になっております。  検査の結果、昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和五十六年度国有財産無償貸付状況総計算書に掲載されている国有財産の管理及び処分に関しまして、昭和五十六年度決算検査報告不当事項として掲記いたしましたものは、文部省の、国有地について、国以外の者に対し不正に所有権移転登記が行われ占有使用されていたのにこれを放置していて、国有財産の管理が著しく適切を欠いていたものの一件でございます。  以上をもって概要説明を終わります。
  6. 古屋亨

    古屋委員長 これにて昭和五十六年度決算外二件の概要説明聴取を終わります。     ―――――――――――――
  7. 古屋亨

    古屋委員長 この際、資料要求の件についてお諮りいたします。  例年、大蔵省当局に対して提出を求めております決算検査報告に掲記された会計検査院指摘事項に対する関係責任者の処分状況調べについて、昭和五十六年度決算につきましてもその提出を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 古屋亨

    古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  9. 古屋亨

    古屋委員長 次に、昭和五十五年度決算外二件及び昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、文部省所管について審査を行います。  まず、文部大臣から概要説明を求めます。瀬戸山文部大臣。
  10. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 昭和五十五年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額十六億一千五百五万円余に対しまして、収納済み歳入額は二十億九千百九十七万円余であり、差し引き四億七千六百九十二万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額四兆三千五百六十四億七千四百五十二万円余、前年度からの繰越額三百四十九億二千百三十五万円余、予備費使用額五十六億二千二十二万円余を合わせた歳出予算現額四兆三千九百七十億一千六百十万円余に対しまして、支出済み歳出額は四兆三千六百五十億百五十四万円余であり、その差額は三百二十億一千四百五十六万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は二百四十億九千六百二十四万円余で、不用額は七十九億一千八百三十一万円余であります。  支出済み歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金、国立学校特別会計へ繰り入れ、科学技術振興費、文教施設費、教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金の支出済み歳出額は二兆二百九十二億三千六百六十六万円余であり、これは、公立の義務教育諸学校の教職員の給与費等及び教材費の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰り入れの支出済み歳出額は九千八百七億九千八百七十六万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費の支出済み歳出額は四百三十三億七千八百七十五万円余であり、これは、科学研究費補助金、日本学術振興会補助金、文部本省所轄研究所及び文化庁附属研究所の運営等のために要した経費であります。  第四に、文教施設費の支出済み歳出額は六千五十二億二千七百八十二万円余であり、これは、公立の小学校、中学校、特殊教育諸学校、高等学校及び幼稚園の校舎等の整備並びに公立の学校施設の災害復旧に必要な経費の一部を国が負担または補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費の支出済み歳出額は五千六百二十億四千二百五十一万円余であり、これは、養護学校教育費国庫負担金、義務教育教科書費、学校教育振興費、社会教育助成費、体育振興費、体育施設整備費及び私立学校助成費に要した経費であります。  第六に、育英事業費の支出済み歳出額は八百二億六千九百七十五万円であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸し付け及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額二百四十億九千六百二十四万円余についてでありますが、その主なるものは、文教施設費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額七十九億一千八百三十一万円余についてでありますが、その主なるものは、教育振興助成費で、私立学校助成費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省におきまして、一般会計予備費として使用いたしました五十六億二千二十二万円余についてでありますが、その主なるものは、義務教育費国庫負担金に要した経費等であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計の収納済み歳入額は一兆三千七百五十五億四千三十五万円余、支出済み歳出額は一兆三千八十五億七千五百六十万円余であり、差し引き六百六十九億六千四百七十四万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により二百三十七億四千十万円余を積立金として積み立て、残額四百三十二億二千四百六十四万円余を翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額一兆三千百七十九億八千三百十万円余に対しまして、収納済み歳入額は一兆三千七百五十五億四千三十五万円余であり、差し引き五百七十五億五千七百二十四万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額一兆三千百七十九億八千三百十万円余、前年度からの繰越額二百二十九億八千百二十六万円余を合わせた歳出予算現額一兆三千四百九億六千四百三十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は、一兆三千八十五億七千五百六十万円余であり、その差額は三百二十三億八千八百七十六万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は二百八十六億三千二百七万円余で、不用額は三十七億五千六百六十九万円余であります。  支出済み歳出額のうち主な事項は、国立学校、大学附属病院、研究所、施設整備費及び実習船建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校の支出済み歳出額は七千二百四十七億二百三十四万円余であり、これは、国立学校の管理運営、研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院の支出済み歳出額は二千八百十六億五千百二十九万円余であり、これは、大学附属病院の管理運営、研究教育、診療等に要した経費であります。  第三に、研究所の支出済み歳出額は八百七十五億九千四百二十七万円余であり、これは、研究所の管理運営、学術研究保等に要した経費であります。  第四に、施設整備費の支出済み歳出額は一千九百三十億七千六百四十九万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の施設の整備に要した経費であります。  第五に、実習船建造費の支出済み歳出額は十六億三千四百四十一万円余であり、これは、国立学校における実習船の建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額二百八十六億三千二百七万円余についてでありますが、これは、施設整備費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。-次に、不用額三十七億五千六百六十九万円余についてでありますが、その主なるものは、国立学校で、退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  なお、昭和五十五年度予算執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項三件の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  指摘を受けました事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図る所存であります。  次に、昭和五十六年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額四十六億六千八百十九万円余に対しまして、収納済み歳入額は五十二億七千六百九十七万円余であり、差し引き六億八百七十八万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額四兆五千六百三十億二千七百二十一万円、前年度からの繰越額二百四十億九千六百二十四万円余、予備費使用額九億七千九百二万円余を合わせた歳出予算現額四兆五千八百八十一億二百四十八万円余に対しまして、支出済み歳出額は四兆五千六百四十九億三千百七十二万円余であり、その差額は二百三十一億七千七十五万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百七十一億五千百四十六万円余で、不用額は六十億一千九百二十九万円余であります。  支出済み歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金、国立学校特別会計へ繰り入れ、科学技術振興費、文教施設費、教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金の支出済み歳出額は二兆一千六百八十四億二千三百七十八万円余であり、これは、公立の義務教育諸学校の教職員の給与費等及び教材費の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰り入れの支出済み歳出額は一兆百四十三億二千三百五十万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費の支出済み歳出額は四百六十四億四千八百二十万円余であり、これは、科学研究費補助金、日本学術振興会補助金、文部本省所轄研究所及び文化庁附属研究所の運営等のために要した経費であります。  第四に、文教施設費の支出済み歳出額は五千九百二億一千八百三十八万円余であり、これは、公立の小学校、中学校、特殊教育諸学校、高等学校及び幼稚園の校舎等の整備並びに公立の学校施設の災害復旧に必要な経費の一部を国が負担または補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費の支出済み歳出額は五千九百二億七千九十八万円余であり、これは、養護学校教育費国庫負担金、義務教育教科書費、学校教育振興費、社会教育助成費、体育振興費、体育施設整備費及び私立学校助成費に要した経費であります。  第六に、育英事業費の支出済み歳出額は九百五億六万円であり、これは、日本育英会に対する奨学資金の原資の貸し付け及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百七十一億五千百四十六万円余についてでありますが、その主なるものは、文教施設費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額六十億一千九百二十九万円余についてでありますが、その主なるものは、教育振興助成費で、学校教育振興費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省におきまして、一般会計予備費として使用いたしました九億七千九百二万円余についてでありますが、これは、公立文教施設災害復旧費に要した経費であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計の収納済み歳入額は一兆四千六百十七億一千百十四万円余、支出済み歳出額は一兆四千七十六億三千九百八十一万円余であり、差し引き五百四十億七千百三十三万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により百八十三億六千二百二十二万円余を積立金として積み立て、残額三百五十七億九百十一万円余を翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額一兆三千九百九十六億六百二万円余に対しまして、収納済み歳入額は一兆四千六百十七億一千百十四万円余であり、差し引き六百二十一億五百十一万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額一兆三千九百九十六億六百二万円余、前年度からの繰越額二百八十六億三千二百七万円余を合わせた歳出予算現額一兆四千二百八十二億三千八百十万円余に対しまして、支出済み歳出額は一兆四千七十六億三千九百八十一万円余であり、その差額は二百五億九千八百二十九万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百八十四億八千二百五十二万円余で、不用額は二十一億一千五百七十六万円余であります。  支出済み歳出額のうち主な事項は、国立学校、大学附属病院、研究所、施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校の支出済み歳出額は七千七百三十九億四百六十万円余であり、これは、国立学校の管理運営、研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院の支出済み歳出額は三千百二十六億二千百八十八万円余であり、これは、大学附属病院の管理運営、研究教育、診療等に要した経費であります。  第三に、研究所の支出済み歳出額は九百二十三億一千五百二十六万円余であり、これは、研究所の管理運営、学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費の支出済み歳出額は二千十三億九千八十七万円余であり、これは、国立学校、大学附属病院及び研究所の施設の整備に要した経費であります。  第五に、船舶建造費の支出済み歳出額は二十億五十二万円余であり、これは、国立学校における実習船及び大学附置研究所における研究船の建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百八十四億八千二百五十二万円余についてでありますが、これは、施設整備費で、事業の実施に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額二十一億一千五百七十六万円余についてでありますが、その主なるものは、国立学校で、職員諸手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  なお、昭和五十六年度予算執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項八件の御指摘を受けましたことはまことに遺憾に存じます。  指摘を受けました事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図る所存であります。  以上、昭和五十五年度及び昭和五十六年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  11. 古屋亨

    古屋委員長 次に、会計検査院当局から検査概要説明を求めます。竹尾会計検査院第二局長
  12. 竹尾勉

    ○竹尾会計検査院説明員 昭和五十五年度文部省の決算につきまして検査いたしました結果を説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、不当事項について説明いたします。  検査報告番号五号から七号までの三件は、補助事業実施及び経理が不当と認められるもので、公立文教施設整備事業において、いずれも補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項。について説明いたします。  これは、京都大学における下水道使用料等の支払いに関するものであります。  同大学構内の水洗施設には節水装置を設けていないものがあり、そのため使用しない時間帯においても水が流出していて、不経済となっていると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、文部省では、節水装置取りつけ工事実施させて下水道使用料等の経費節減を図るよう処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、昭和五十二年度決算検査報告に掲記しましたように、東京大学医学部附属病院精神神経科の管理運営について処置を要求しましたが、これに対する文部省の処置状況についても掲記いたしました。  次に、昭和五十六年度文部省の決算につきまして、検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項八件であります。  検査報告番号四号は、架空の名目により旅費の支出を受け、これを別途に経理するなどしていたものであります。  文部省管理局教育施設部の一部において、架空の名目による出張命令何等の関係書類を作成し、出張の事実がないのに出張したこととして不正に旅費の支出を受け、これを別途に経理して、職員の飲食代等に使用していたものや、日額旅費の支給を受けて出張する職員の一部に対して、出張日数をつけ増しした旅費が支給されていたものであります。  また、検査報告番号五号及び六号は、国有財産の管理等が適切でなかったものであります。  琉球大学において、同大学の職員が、昭和四十八年七月以降三回にわたり、大学用地を不正に売り払った上所有権移転登記を行い、買い受け人等が占有使用していたのに、これを放置していて、国有財産の管理についての事務等が適切を欠いていたものであります。また、不正売り払いの事実が判明した後、同職員が無断で長期欠勤し、他に転職しているのを同大学は承知していたにもかかわらず、これに対して適切な処置をとることなく、漫然と給与等を支払うとともに、国家公務員共済組合負担金を負担していたものであります。  また、検査報告番号七号から十一号までの五件は、いずれも補助事業実施及び経理が不当と認められるもので、公立文教施設整備事業等において補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたり、補助事業の適用を誤って事業を実施していたものであります。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  13. 古屋亨

    古屋委員長 これにて説明の聴取を終わります。
  14. 古屋亨

    古屋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  15. 井上一成

    井上(一)委員 秋たけなわ、文化を叫ぶきょうこのごろです。文化の日が近づくにつれて文化論が台頭してくるわけですけれども、私は、まず最初に、国際理解を深める、そういう意味では国際文化交流のさらなる一層の努力がいま必要ではないだろうか、こういうふうに思うわけです。文部省としての取り組みあるいは具体的な対応等について伺っておきたいと思います。
  16. 加戸守行

    ○加戸政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、いまの国際化時代の中にありまして、お互いの国際理解を深めることはもとより、わが国の文化自身にとりましても、文化の国際交流を通じまして、また日本文化の振興に結びつけていくという観点から各種の施策を進めているところでございまして、現在までに行いました施策を引き継ぐことはもとより、今後とも力を入れたいというのが、基本的な文部省、文化庁の考え方でございます。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 たまたま好ましくない事態を思い起こすわけではありませんけれども、去年のいまごろは文化庁での不祥事があったわけであります。そういう当時の佐野長官、現事務次官は、もちろん職員の意識変革も大事であるし、さらには、行革の精神というのですか、真の行革といいますか、そういう精神をくみながら、計画立案あるいは国際交流を担当する企画調整課に庶務課を解消して衣がえをしていきたいという提案をされたと聞いているわけです。それは結構なことで、それがどのように衣がえをして具体的に取り組んできたのか。二十一世紀を目指した体制づくりを考えていくとき、文部省の緊急課題は、現代文化の育成であり、さらには国際交流の促進、こういうことはもちろん文化庁御自身も認めていらっしゃることであります。  そこで、先ほども申し上げたように、国際交流促進の具体的な施策を用意していらっしゃるのか、文部省として一定の国際交流のビジョンを持っていらっしゃるのか、そういうことを重ねて聞いておきたいと思います。
  18. 加戸守行

    ○加戸政府委員 冒頭に御指摘ございました昨年の文化庁の不祥事につきましては、深く反省しておるところでございまして、今後とも体制を立て直してりっぱな文化行政を進めていきたいと考えでおるわけでございます。  先生御指摘ございました機構改革の問題でございますが、臨時行政調査会等の御指摘もございまして、現在、昭和五十九年度の機構、定員要求の中に、文化庁といたしましては、現在の庶務課を改組いたしまして文化政策課という形で、伝統文化の継承、保存と芸術、文化の振興、そういった文化行政全体の総合的な推進とともに、文化の国際的交流の基本的な施策を文化政策課において総合的にまとめて進めたい、そういう考え方の要求をしている段階でございます。  現在、文化の国際交流につきましては、芸術家の海外派遣であるとか海外の芸術家の日本への受け入れ、あるいは芸術文化活動の国際的な交流、あるいは海外におきます日本美術の展覧会、あるいは海外作品の日本における展覧会の開催等、各種の国際交流事業を行っているわけでございますけれども、乏しい財政状況の中にありましても、文化庁の取り組みといたしましては、このレベルを下げることなく、なお一層それを広げていくという観点からの方針を堅持しておるところでございます。
  19. 井上一成

    井上(一)委員 私は、やはり文部省が一定のビジョンを掲げていくべきである、こういうふうに思います。外務省は「広報文化活動の進め方について」という一定の方針というか方向だけはちゃんときっちりしているわけなんです。どうして文部省はそういうことを打ち出されていないのか。さらには、こういう国際文化交流のための広報文化活動で外務省との協力体制を文部省はどのようにとっていらっしゃるのか、この点についても聞いておきましょう。
  20. 大崎仁

    ○大崎政府委員 広い意味での文化と申しますと、教育、学術面も含むわけでございますが、その全般にわたりまして、先生御指摘のように、教育、学術、文化の振興を図る上でも、また国際友好、国際理解の増進を図る上でも、国際交流の重要性というのは非常に増しておるというふうに私ども考えておるわけでございます。そのような観点から、私どもとしては、全般にわたりましての理念というのを最近改めて再検討したということはございませんけれども、過去におきまして中央教育審議会等に御諮問を申し上げまして御答申をいただき、それらも踏まえまして、最近では文部大臣から有識者にお願いをいたしまして、二十一世紀への留学生政策というような御提言もちょうだいをいたし、各分野につきましてできるだけ組織的な施策の推進を図るように努力をいたしているわけでございます。また、その過程で、外務省の情報文化局はもとよりでございますが、関係各局との緊密な連携、協力ということには努めておりまして、先生御指摘のただいまの外務省の協議会でお出しいただいたものも十分参考にさせていただいておるというのが現状でございます。
  21. 井上一成

    井上(一)委員 では、具体的に外務省と連携プレーをして、こういうことを実現したとか、こういうことに取り組んでいるという一例を何か挙げてください。
  22. 大崎仁

    ○大崎政府委員 現在進行中のものを一例として申し上げますと、国際交流の推進の基盤をなすものはやはり日本語教育の普及ということがあるわけでございます。日本語教育の問題につきましては、海外における普及は外務省及びその所管でございます国際交流基金がかねてから努力をしておるわけでございますし、文部省といたしましては、文化庁及び文部省におきまして国内体制の整備ということで努力をしておるわけでございますが、日本語教育をさらに普及することが留学生政策等の推進の上でも基本的に重要ではないかということで、現在協議会等も開いて検討しておるわけでございます。その過程で、たとえば日本語の外国人に対する検定試験をどう両省で協力してやるかというような話でございますとか、あるいは教員養成のあり方でございますとかということにつきましては、現在密接に協議を重ねておるというのが状況でございます。
  23. 井上一成

    井上(一)委員 ありきたりな答弁では、日本語の普及、そんなことでは困るわけです。  では、去年フランスのミッテラン大統領が日本に来られて、鈴木総理との文化交流の約束の中で具体的な事例を話されたわけですが、そのことは御存じでしょう。そして、文部省はそのことについてどういう取り組みをされましたか。
  24. 大崎仁

    ○大崎政府委員 ミッテラン大統領と鈴木総理とのお話につきましては、私不勉強でいま存じておりませんが、各国との間の文化混合委員会あるいは各種の文化関係の協議につきましては、外務省がその開催についての段取りをつけてくださるわけでございますけれども、私どももその一員として協議に加わりまして、その進め方につきまして外務、文部両省一致した見解で進めておるのは、これは従前からもそうでございますし、今後ともそのようにやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  25. 井上一成

    井上(一)委員 一国の総理、一国の大統領が話し合った中で、日仏文化会館の建設が決まっているのですよ。これは外務省の所管だという狭い認識で国際文化交流なんて推進できませんよ。御存じないというからあえて私の方から……。  外務省がどのようにこのプランをいま進めているのか、あるいは文部省が連携プレーがあるとするなら、文部省はこのことにどのように取り組もうとしているのか。これは、外務省でも広報文化活動を非常に熱心に外務省なりに努力はしていただいているということは私も一定の理解をしていますが、まだまだわが国の広報文化センターというのは少ないわけです。西ドイツだとかイギリスに比べれば、そういう拠点というのは、わが国を正しく理解し、十分な理解の中での相互交流を深めていくためにも、当然拠点になるべきそういう文化センターですか、そういうものの不足が、先進国の中ではとりわけ日本は目立って少ないわけです。そういう点も含めて、外務省にこれは聞いておきたい。さらに、文部省にも連携プレーの中でどう協力をしていくのか、聞いておきたいと思います。
  26. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  まず第一の、文部省と外務省との連携プレーでございますが、具体的な例を二、三申し上げたいと思いますが、たとえば、わが国は各国との文化協議、これは現在十五カ国とやっております。あるいは日本に来る場合、こちらから出かける場合、その場合に、たとえば私と大崎局長がともに参加して常に連携プレーをとりながら具体的にそれを進めているというのが一例。それから、最近の例でいきますと、たとえばカルコンという日米の教育文化委員会というものがありまして、日米の文化協力を民間を含めてどう進めるか。その中に大崎局長と私の両方がパネルの委員に入っておりまして、これは政府サイドから進めております。その他、いろいろな行事に関しまして事前に打ち合わせる。当然留学生問題につきましては、選考は大使館で第一義的にやりながら、実際の受け入れは文部省がやる、しかしながら、同時にわれわれとしてもこれに協力をするというようなことで、毎日のように実は大崎局長その他と連携プレーをやりながら物事を進めております。第一義的には、文化交流、人物交流は、国際的な交流は外務省でございますが、同時に文部省は学術、文化の国内における振興を旨としておりまして、両者はいわば車の両輪をなしておりますので、これは非常に連携プレー、協力関係を毎日相談しながら進めている保というのが実際の状況でございます。  それから、先ほどちょっとお触れになりました広報文化センターでございますが、確かに現在二十八カ所でございます。各国と比較しますと、数も少ない、それから中身に至りましては十分でないということもございまして、われわれとしましては、何とかこれを充実していきたいということで、特に来年度予算におきまして、いろいろと苦しい予算の中でやりくりして充実していきたいということで、現在部内で検討している段階でございます。
  27. 大崎仁

    ○大崎政府委員 先生御指摘のように、国外において日本の理解が深まるということが教育、学術、文化面での国際交流の基盤ともなるわけでございますので、私どもといたしましても、今後とも広報活動の充実に御協力をいたしてまいりたい。具体的には、たとえば明年度の概算要求等の中で、日本の大学の状況を紹介する資料等もつくって在外公館等にお配りをしたいということも考えておる状況でございます。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 日仏会館は。
  29. 三宅和助

    ○三宅政府委員 日仏文化会館は、先生御指摘のとおり、ミッテラン大統領が来ましたときに、大統領と総理の間でやろうということにつきまして原則的な合意を見たわけでございます。  実際問題といたしまして、まずフランスの日本における用地の確保の問題、現在のところまだフランス側から具体的な話が参っておりません。したがいまして、フランス側からの具体的な要請を待ちまして、どのような形でわれわれが協力できるかということが第一点。  それから第二点は、今度パリにおける日本の文化会館の建設問題、これにつきましては、予算その他種々の制約がございますが、われわれとしては、まず今年度予算に調査費がついております。したがいまして、いかなる文化会館、その可能性につきましてまず調査した上で今後の段取りを進めていきたい、こう考えておりまして、現在その準備中の段階であるということでございます。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 わが国における外国の文化活動センターの建設、さらには外国におけるわが国の文化活動センターの建設、これは両者相まっていかなければいけないわけですけれども、少なくとも一国の総理、一国の大統領が約束をしたことは予算云々の問題ではない。そういうことが国際交流の大きな礎になっていくわけで、いつも質問をすれば、予算がどうだとか所管がどうだとか、そんなことを言っているから、問題を後送りして解決を遠のかしている。  さらに、私は幾つかの問題点を指摘したいのですけれども、どうも国自身の取り組みがなまぬるい。そういう中から、地方自治体なら地方自治体がその取り組みを先がけてやっている。神奈川県が湘南に国際経済文化交流センターをつくるプランが着々と進行している。地方自治体が逆に音頭を取ってこういうような事業計画をどんどん進めていく。それでは、文部省としてはどういう支援をしていくのかあるいはどう取り組みを評価していくのか、こういう点についても文部省としての見解を聞いておきましょう。
  31. 大崎仁

    ○大崎政府委員 各地方あるいは地域社会におきましても国際交流がだんだん活発になってきておると承知いたしておるわけでございますが、私どもといたしましても、その重要性を考えまして、まず実態の把握をいたしたいということで、実は本年度各都道府県に調査をお願いいたしまして、現在その結果をいただいておるところでございます。  これまでは、主として教員の交流でございますとか青少年の交流というような面で、地方公共団体の関係の仕事に私どもとしても援助をし、あるいはユネスコ活動を担当しておる部局との連携を密接にいたしまして、ユネスコ活動の発展を図るというようなことをいたしてきたわけでございますけれども、さらに、そういうような調査の結果も踏まえまして考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、アルゼンチンの日本人会が建設を進めている文化会館。アルゼンチンの経済情勢が超インフレで資金不足に陥っている、こういう報道がなされたわけです。これは大変なことだとは思いますし、現状がどうで、この文化会館建設に対する支援の取り組みがどうなっているのか、いわば善意の民間資金、民間の人たちの努力で建設がなされていくそういう文化会館、片側では役所の遅い取り組みの中で建てていく文化会館、そういう両者の関係も含めて、これはどういう関係にどういう位置づけに置かれるのか、運営の問題、資金援助の問題、そういうことも含めて、アルゼンチンの日本文化会館がピンチに陥っている、このことについての文部省さらには外務省の見解を聞いておきます。
  33. 大崎仁

    ○大崎政府委員 国外におけるこの種の事業につきましては、私ども外務省からの御要請がある場合にはもちろん御協力をするわけでございますけれども、第一義的には外務省が御対応になる問題でございますので、外務省からお答えをいただいた方がよろしいかと思います。
  34. 三宅和助

    ○三宅政府委員 アルゼンチンの文化会館そのものにつきましてはただいまちょっと私知らないわけでございますので、一般論の形で答えさせていただきます。  民間の文化会館につきましては、建設そのものは民間が進められておりまして、それぞれの大使館が現地における日本人会その他と協力しながら進めて、建設そのものに対しては政府資金が出ない。したがいまして、その後の運用につきまして外務省としてはできる範囲内において協力する。片や政府の文化会館なり、あるいは開発途上国の場合に相手国政府に対する文化の一つの無償援助としてやる場合がございます。その場合につきましては政府が前面に出てやるということでございますが、民間の場合につきましても、たとえばできた後の資機材、あるいは先生の派遣とか専門家の派遣、あるいは向こうから専門家を日本に受け入れるという形で、外務省及び交流基金のできる範囲内でできるだけの協力をしていくということでございます。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、アルゼンチンの文化会館について後で少し当を得た答弁をしてください。  これは私は常々、すべては人間の行動によってつくり出されるものでございますから、文化交流ももちろん人間が主軸になってやっていかなければならないし、そうあるべきだ。そういう中ではどうしても、冷たいというのでしょうか何か他人事のような感覚で取り組んでいくと、これはどうしても真の文化交流はできない。やはりそこに血の通った、心が通じ合う、そういうところから文化交流というものが始まっていこう、こういうふうに思うのです。いまの文部省の答弁を聞いても、外務省の管轄だとかあるいは何か遠い、本当に文部省がその中に入り込んで、どないしても文部省がやらないかぬねん、そういう情がない、私はそう思うわけです。何かやはり、国会でこういう質疑があるからこの場でのつくろいに終えていきたいというような受けとめ方しかできないわけです。  たとえば、私はさきの委員会でも申し上げたのだけれども、障害を持つ子供たち、ねむの木学園のそういう小さな芸術家、小さな子供たちの芸術を海外に展示をする機会があるという場合に、外務省はやはり私の指摘によってきっちりとフォローしてくれた。文部省はそういうことに対しては、外のことだから、外国のことだから、外国での催しだからとか企画だから、そういうことでなく、やはりそういう問題も含めて、これは一例ですけれども、もうちょっときっちりとした対応を私はしてほしい。  これは重ねて、外務省の国際交流、文化交流での取り組み、そして文部省の取り組み、いままでは大して私は評価するに足らない、しかし、今後どう取り組んでいくのか、その点についてもひとつ聞いておきたいと思います。
  36. 大崎仁

    ○大崎政府委員 私どもといたしましても、事柄の重要性あるいはさらに重要性が増大しておるという状況を考えますと、現状で決してこれでいいと思っているわけではございませんので、大いに努力をしなければいけないと感じておるわけでございます」。  ただ、現時点におきましても、非常に教育、学術、文化全般にわたって広範な各種の事業があるものでございますので、なかなか行き届かず、御要望にこたえ得ないケースが多いということも非常に残念だと思っておるわけでございますけれども、決して情熱を持って取り組んでいないということではございませんので、今後ともよろしく御指導いただきながら努力してまいりたいと思っております。
  37. 三宅和助

    ○三宅政府委員 外務省全般の基本的な考え方を二一日補足説明させていただきたいと思います。  実は、文化広報、これは経済協力その他の施策と比べて確かに立ちおくれている。ある意味におきましては、海外に対する協力あるいは国内での広報につきましても国民外交という見地から理解をしてもらわなくてはいかぬ。いままで必ずしも十分であったとは言えないということでございまして、実は、来年度概算要求につきましても、非常にきついシーリングの中で、ほかのいかなる分野よりも広報文化の予算を伸び率の面では多く要求しているという段階でございます。  また、もう一つの問題は、やはり先生御指摘のとおり、文部省なり外務省なりあるいは総理府ということで、所管が物によってはかなりまたがっております。したがいまして、これらの連携プレーというもので一つの有機的な協力関係を進めるということで、各種のいろいろな場を設けましてさらに調整を進めるということを努めております。  それから第三の点では、民間はかなり民間なりの協力をやっているわけでございます。また政府は政府でやっているということでございまして、もうちょっと民間の意見をわれわれとして文化広報の中に反映させていきたいということで、実は、最近外務省の中に、広報文化各分野の有識者を集めまして、外務次官に対する懇談会を設けましてその人たちの意見を聞くと同時に、実は民間の活力をもうちょっとわれわれとしても活用させていただきたいということで、各種の業界と接触しているという状況でございます。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 文部省は私の質問に対してそれだけしか答えられませんか。
  39. 加戸守行

    ○加戸政府委員 ほど一例としてお挙げになりましたねむの木学園の場合でございますが、国内におきまして八月に展覧会がございまして、文部省としても御支援申し上げた経緯があるわけでございまして、十一月に海外でというようなことでございますし、文部省、文化庁の立場といたしましても、御協力できることについての協力をしたいと考えているわけでございます。  一般的に文化と申しましても、広い芸術文化、専門家のもののみならず、一般国民の文化という観点から見れば、当然に私どもの考え方も支援の対象として考えていくという考え方でございます。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 ここで、大臣に私は尋ねたいと思います。  いま、それぞれの外務、文部の事務担当の人が、私の質問に対して答えてくれました。要。はやはり、心が通じる、そういう社会をつくるために、そしてそういう社会から生まれる文化を大事にしていかなければいかぬ、こういうことなんです。だから、具体的に一つ一つ事例を抽象論では困るから私は挙げたわけです。国と国との問題としては日仏会館の問題、さらには、民間の努力をしていることについては、神奈川県なりあるいはアルゼンチンの日本人会の取り組み、そしてねむの木学園の問題も、非常に力いっぱい一生懸命取り組んでいる一つの事例として申し上げたわけです。すべて含めて、私は、やはり文部省は大きな力で支えていかなければいけない、協力をしていかなければいけないという認識に立っている。大臣、いかがでしょうか。
  41. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いままで井上さんから国際文化交流というようなものを指摘されたが、お気持ちはよくわかります。これは私の浅い認識でございますが、率直に申し上げて、そういう意味においてはわが国は国際的に非常におくれておる。  といいますのは、余談になりますけれども、歴史を振り返りますと、いわゆる島国であった、国際交流といいますか、国際関係が非常に浅かった。最近になりまして、国力の問題、いろいろな文化の問題等もあったわけですけれども、ようやく国際交流がだんだん盛んになってきた。これはいわゆる広い意味での学術、文化が最近は非常に交流が深まってきた。また、人的交流、学者の交流であるとかあるいは留学生の交流あるいは民間の往来は、おっしゃるように、指摘されますとまだ不満足でありますけれども、これからが日本の大いに活躍する時代になってきた。学術などを見ましてもそういう感じがいたします。  ただ、そうはいいましても、一見どうだというとなかなかこれはまた、それを言うと怒られるかもしれませんけれども、何かやりますと、それぞれの役所は予算が伴わぬものですからそう簡単にいかないということは、先ほど来事務当局からそれぞれ申し上げているとおりであります。特に国際関係となりますと、これは外務省が窓口でございますから、これとよく連携をとりながら、中身を多くは文部省が担当している、こういう関係にありますので、今後そういう面も含めて十分注意していきたい。  私は、率直に申し上げて、日本が平和国家として将来国際社会に生きていくために、あるいはまた世界人類のためになるには、人的交流、文化交流が一番重要である、かような認識を持っていることだけ申し上げておきます。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、それでもちろん予算の伴うものが大半なわけです。しかし、予算を伴わずして日本が世界各国との文化交流を深めていく、そういう意味では外務省の「我が国の広報文化活動の進め方について」にも指摘がされており、牛尾さんが提起している名誉文化大使、これは文部省が直接お決めになる所管の問題ではないんだけれども、いろいろとお手伝いをしていただけるそういう人たちに対してのお願いをしていくということも私は一つの方法だと思う。そういう構想をどういうふうにお考えになっているのか。外務省に先に聞き、そして文部大臣に聞いていきたい。  さらには、私は、いろいろと文化交流を踏まえた中で、わが国に対する貢献をしていただいた人たちに対する一つの政府としての、国としての位置づけというのでしょうか、表彰問題、叙勲の問題。カーターさんを筆頭に何人かのわが国にとってはかえがたい、わが国との交流に貢献をしていただいたたくさんの人たちの叙勲問題も私は前にも指摘したわけです。そういうことも含めて、別に金が、予算がないからすべてできない、そういうことではないと思うのです。やる気があるかないか、がんばる気があるかないか、そのことがやはり評価につながっていくと私は思うのです。
  43. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず、海外におきましてその国と日本との文化交流その他につきまして、非常に貢献のある方、この方につきましては、通年、大使館から、従来では文化交流に功績ある方を特に向こうの方から推薦してまいりまして、叙勲の対象にしてかなりの数やっております。また、日本国内におきまして文化交流その他に非常に功労のある人は、実はことし外務省の記念日ということで外務大臣から、これは外務大臣でございますが、功労賞というものを差し上げまして、実はことしから始めたわけでございますが、日本国内におきましてこの種の活動をやっておる方にそういうお礼の志としてそういう賞を上げることにしたわけでございます。これは今後とも毎年やっていきたい。  それから、それ以外につきましても、実はいろいろな形で文化交流その他に貢献された方で、かついろんな外国に行ってもらった場合に有益な方につきましては、優先的にわれわれも御協力願うということで、現在やっております。
  44. 大崎仁

    ○大崎政府委員 外国の方で非常に国際交流について御功績のあった方につきましては、私どもといたしましても、関係の研究者あるいはその他の方々からの御要請も受けまして、賞勲局等にお願いをするというようなケースも従来からいたしておりますが、そういうような努力を引き続き行ってまいりたいと存じております。  それからなお、名誉文化大使等につきましては、ちょっと私どもの立場でお答えしにくいところがございますので、御遠慮させていただければありがたいと思います。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 文部大臣、それじゃ重ねてお聞きしましょう。  さっき私と事務担当の人たちとの質疑の中での国際文化交流についての大臣の認識をお尋ねいたしました。そして、歴史的な流れの中でのわが国の立ちおくれというのでしょうか、そういうことについても御認識を持っていただいております。しかし、だからといって、一定の予算の中でなされる可能な範囲というものも限りがある。さらには、外務省所管の問題にもかかわるんだ、私は、それもたくさんあるでしょう、大方のことは予算が伴うでしょう、理解します。しかし、予算を必要とせずにより一層文化交流を促進させる方法、手段はないのでしょうか、そんなことを文部省としてはないとお考えなのか。いや、文部省としてはいろいろなことを考えているんだけれども、その考えがまだ実施の段階に来ていないということなのか。私は、牛尾さんの文化交流、いわゆる日本を正しく理解をしていただく、そういう一つの提言として名誉文化大使、そういう提言について、文部省、とりわけ大臣としてはどういう御見解をお持ちでしょうか。そして一つは、いろいろ御苦労いただいて貢献をしていただいた方々に対する一つのお礼の形としての叙勲、表彰の制度、文部省はいま大いにそれを活用しているというお答えですけれども、まだまだ不十分だと思うのです。だから、この二つについて、文部大臣としてのお考えをひとつ聞かしていただきたい、こういうふうに思います。
  46. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いま私が直ちに具体的にこうしたい、ああしたいと言うだけの知恵を持っておりませんが、予算にとらわれなくても、私は、文化交流といいますか、海外との理解を深める手段はいろいろあるのじゃないかと思います。これは今後お互いに関係省ともわれわれ文部省としても検討いたします。  それから、国際的に外国の皆さんでわが国の文化その他について非常に御尽力していただいた方々については、先ほども外務省からも文部省からも申し上げましたように、表彰といいますか、感謝の意を表する、こういうことはやっておることでございまして、できるだけこういうことを進めなければならない。私は文部大臣になりましてから日が浅いですけれども、そういう経験がしばしばあるわけでございます。よく趣旨を生かしていきたい、かように考えます。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 余り時間がないので、私は、事務当局というか事務レベルでの質疑は昼からひとつ大いにやっていきたい。午後大臣がいらっしゃらなくてもそれは続けたい。  大臣に、最後に一つ聞いておきたいと思うのです。いま世の中は、金があり物があり経済的に恵まれている。そういう中で何か一つぽつんと欠けたものがないだろうか。そのことがやはり社会全体にどう影響を及ぼしているだろうか。大人も子供も含めて、私は、やはり何か欠けているものがあるんじゃないか、その欠けているものを埋めることによって、やはり生きがいというものが、あるいはお互いの協力、連帯というものが生まれてくるんじゃないだろうか、そういうふうにも思うわけです。  これはサンケイ新聞の中学生を対象にした意識調査の中で、現在の社会ではやはり物を言うのは成績だ、こういうことが意識調査の中で出てきているわけです。自分たちの日常の生活を支配していくものも成績なんだ、結果なんだ。私は本当に一生懸命に取り組んだ、全力で取り組んだけれども、結果はそれほど十分に満足のできる結果は出なかったという場合だってあるわけなんです。むしろ、成績によってそういう学校生活あるいは日常の社会生活の中に充足感が遠のいていく、あるいは充足感の違いが出てくる、こういうことはやはり正していかないといけないんではないだろうかというふうに思うのです。一生懸命がんばった、がんばったことに対する評価、それを教育の物差しにしていきたいと僕は思っているわけです。  だから、青少年の非行の問題も含めて、あるいは社会のいろいろな問題も含めて、そういう価値観というものを大事にしていく、そういう風潮をいままさに文部省は世論に訴えて植えつけていくべきではないだろうか。もちろんそこには晴というものが生まれてくるし、情、心ですね、情が通じることによって、心が通じることによって信頼というものも生まれてくる。そういうことを考えると、いま欠けているものは情ではないか。だから、もっともっと自分のこと、自分の問題としての取り組み、そして正しい人間としての評価を私はしてもらいたい、そのことが非行防止というのですか、青少年の問題を解決する一つの大きな要因になるんじゃないだろうか。  これは、もうだれが悪いとかだれがいいとか、こうしたらいいんだとか、そんなことで論議をする問題じゃない、文部大臣。いままさに心が通じ合う、そしてお互いに信頼関係が生まれるような社会、教育現場、そういうことが大事だと思うのです。親が悪い、先生が悪い、いや学校が悪いといろいろなことを言われますが、基本になる、根本になるものはそういうものではないかと思うのです。  そういうことについて大臣のお考えをここで聞かしていただきたい、こういうふうに思います。
  48. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 結論から申し上げると、井上さんの見解と同じでございます。さればと言って、一刀両断に解決するという簡単なものではございませんが、いまおっしゃるように、全部の子供たちがそうだと思いませんけれども、いま試験あるいは成績、これだけで非常に子供たち、子供たちばかりじゃなくて相当青年に至るまで悩みが多い場合が多いと思います。私は、人生についてどう考えるか、これは人によって違うと思いますけれども、生きがいというのは何だ。よけいなことを申しますけれども、一体人間は何のためにこの社会、世界、宇宙に生きておるのだ、そこを子供に考えろといったってなかなか簡単なものじゃありませんけれども、そういう立場で子供の育成をする、あるいは社会の生活の指導をする、こういうことでないと、まあ世の中たくさんありますけれども、人が多いときですから、テストをし試験をするのも、これも一つの手段、方法ではありますけれども、それだけで事が決まる、あるいは最近のように物で価値が決まるとか、そういう社会では本当に心豊かな社会にはならない。ですから、それをいかに改めていくか、いかに正していくかということが一番問題でありまして、われわれは、いまの試験制度等についてもどう改めたらいいか、いませっかく研究しておるところであります。ただ一度の試験によって人生が決まるというのは私は間違いだと思います。こういうふうな観点をもって、独断ではまいりませんので、いろいろな知恵を拝借して改善を進めていこう、かように考えておるわけでございます。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 時間がないので、教育論あるいは人間に対する一つの評価、人間性、いろいろなことで文部大臣と議論はしたいのですが、私の考えていることも理解していただけた。それで、もう一点だけ……。  成績が物を言う、そういうことが受験戦争を引き起こしてくると思うのですよ。一回だけの試験で、テストで人生を決めていく、そういうものではかっていくというのは間違いだ。そういうことでは、いまの高校の入試制度も見直していかなければいけないというか、大きな問題になっているわけで、入試制度抜本改革が論議の対象になってきたわけですが、この高校入試制度について、先ほどのお考えの流れで想像はいたしますが、改めてここで大臣の見解を聞いて、午前中の私の質問を終えたいと思います。
  50. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 高校の入試制度といいますと、いわゆる学制の制度の問題にもかかわりがありますから、大学の入試制度も同じでございます。簡単にいい結論があるかというと、いますぐ答えはできませんけれども、そういうものを含めていまや全部考え直してみるときである、こういうことで、いま検討を進めておるということでございます。
  51. 古屋亨

    古屋委員長 新村勝雄君。
  52. 新村勝雄

    ○新村委員 いま、公私立の大学、さらに広くは教育機関において多くの問題が指摘をされておるわけです。それは特に私立大学の運営の面について、特に財政的な運営の面について多くの遺憾な事態が指摘をされておるわけでありまして、これはまさに枚挙にいとまがないというほどマスコミをにぎわしておるわけでございます。  そこで、まずお伺いをしたいのですけれども、過去五年間で、公私立を通じていわゆる大学の不祥事件がどのくらいあったのか、それを伺いたいと思います。
  53. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えをいたします。  国公私立というお話がございましたが、ただいま手元に私学の資料を持っておりますので、これで申し上げさせていただきますと、最近の五年ほどの間で、重立ったもので九件ほど、私学関係での経理面での不適正とか管理運営面での不適正といったようなことから問題となったケースがございます。
  54. 新村勝雄

    ○新村委員 それはどことどこですか。
  55. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 学校法人名で申し上げますと、昭和五十二年以来、国士館、それから昭和五十四年東日本学園大学、昭和五十五年に新潟技術学園、五十六年に北里学園、同じく五十六年に松雲学園、これは北陸大学という大学を設置しているものでございます。五十七年に入りまして、久留米工業大学、それから福原学園、福原学園は九州共立大学等を設置している学園でございます。それから同じく五十七年に中村産業学園、九州産業大学でございます。それから五十八年に入りまして、三室戸学園、東邦音楽大学でございますが、こういったところが大きな事件でございます。
  56. 新村勝雄

    ○新村委員 いまお挙げになったほかに、公私立てまだまだ相当の事件があるようです。名古屋大学医学部、国立大教官らの問題、いわゆる日本癌学会総会で製薬会社に宿泊費を負担させだというような問題ですね。それから私立の東京家政大学、私立相模工業大学、埼玉工業大学、松本歯科大学、東京工業大学、九州産業大学、日大生産工学部、岐阜薬科大学、東大医学部、こういうところでやはり大なり小なり不祥事件が起こっております。こういう一連の不祥事件について、文部省はどうお考えですか。
  57. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  最近、国公私立を通じまして、いろいろな大学で種々の事件が起こっておりますということを大変遺憾に思っておるわけでございます。問題を起こしました大学に対しましては、個別に、具体的にその問題の解決、改善につきましてそれぞれ対応が違うわけでございますので、その対応に応じて厳しい指導あるいは助言等を行い、是正措置を講じさせるということはやっておるわけでございますが、そのほかあわせまして、関係と申しますか、同種の、たとえば私学で事件がございました場合には私立大学、あるいは国立大学の医学部で問題がありました場合には全国立の医学系の大学といったようなものに対しましても、会議、通知、その他諸般の手段を通じまして指導を行っているというようなことでございます。
  58. 新村勝雄

    ○新村委員 これはきわめて、何といいますか、その現象に対して対応するということであって、基本的な問題をどう把握しているのか、また、こういったことが続発をするその事態に対してどう基本的に対応していくかということについてはっきりしないわけでありますけれども、こういう事件が続発をするということはどういうところから来るのか、また、それに対してどう対処していかなければいけないかということについて、大臣はどうお考えですか。
  59. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 個々の事案の内容がいろいろバラエティーがあるのだと思いますが、どこに原因があるかといいますと、全く教育機関としての心がけが間違っておる、ここにあるのじゃないかと私は思います。  それをどう改善していくかということは、先ほど御説明申し上げましたように、文部省は指導、助言の程度しかできませんので、一々直接介入していくということも、教育の中立性といいますか自主性といいますか、なかなかむずかしいところがありまして、歯がゆい答弁になるかもしれませんけれども、問題はやはり学校関係者の良識が基本である、かように考えております。
  60. 新村勝雄

    ○新村委員 大臣もいま言われた自主性ということでありますけれども、これは、学問の自由あるいはそれに基づく学校の運営ということについては、自主性と創意工夫あるいは私学の特色、これを十分発揮をしてもらわなければならないし、おっしゃるとおりであろうと思うのでありますけれども、いま問題になっておるのはそういうことじゃないのですね。学問の自由が侵されているとかなんとかということじゃなくて、学校経営者が主として財政的な金にまつわる問題について問題を起こしておるということですから、これは学問本来の次元の問題ではないわけでございまして、学校経営を基本から間違っているのではないか、そういうような気がするわけです。  明治の初年以来、日本の教育に貢献をしたりっぱな先覚者がおります。そういう方々がすぐれた私学を建設をされて、そして、日本の文化あるいは教育の向上に努力をされた、この歴史があるわけですけれども、そういう方々が私学を興し、そうして運営をされてきた、その純粋な教育愛の精神がいまの私学の経営者にはないのではないか。いまの私学の経営者は、もっぱら教育を営利の対象、営利の場にしているのではないかという節があるわけですけれども、そういう点について大臣はどうお考えですか。
  61. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 新村さんが私にどこに原因があるかとおっしゃったから、心がけという非常に抽象的な言葉で申し上げて恐縮でございますが、いまおっしゃったとおりでございます。  教育というのは何ぞやということから考えて、明治の先覚者ばかりでなくても、最近でも、教育に情熱を傾けよう、そのための投資をし学校経営をしようという方もいらっしゃるわけです。ところが、最近見ておりますと、何か学校を一つの営利企業的な考え方でやっておるのではないかと疑われるような学校経営がある。それを私は、問題の根本はその人の精神といいますか心がけといいますか、そういう表現で申し上げたわけでありますが、そういうものについては、事態によってはそれ相応の処置をとる、これは当然でございます。
  62. 新村勝雄

    ○新村委員 そこで、さらにお伺いしたいのですが、大臣はいま教育機関、大学が企業化している。企業化しているということは金もうけどまりになっているということですね。文部省はこの実態にこれからどう対処されていくのかということです。これが非常に重要な問題だと思います。そして、これらの不祥事件の続発に対して、文部省は私学の助成についてその基準あるいは方針等も根本的に見直していかなければいけないというようなことも言っておられるようでありますが、これについてはどうお考えですか。助成の見直しあるいは基準の見直しというようなことが言われておりますけれども、それについてできるだけ具体的にお伺いしたいと思います。
  63. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 私学に関する諸種の事件が起こっておりまして、まことに遺憾に存じておるところでございますが、先般、私学関係団体の代表者の方々にお集まりをいただきまして、文部大臣から直接、このような事態に対して、私学団体としても自主的にこういう問題に対応することを考えてほしいというようなことをお願いを申し上げると同時に、七月二十九日でございますけれども、同日付をもちまして、事務次官名で全学校法人に対しまして、その管理運営面あるいは経理処理の面等について種々問題点を掲げまして、これらについて間違った点がないかどうかそれぞれの学校法人が自主的に再点検をしてほしいというような要請等も行ったわけでございまして、こういったことを通じて、その各学校法人自体の中で、問題が発生する前にみずから体制を正していくという努力を指導しておるところでございます。  また、一方、補助金の関係におきましても、こういった不祥事に絡みまして、先般、九月十六日付でございますけれども、今後、こういった不祥事を起こした私学に対しましては、原則として五年間経常費の補助をしないということを方針として定めました。もちろん、著しい改善が行われれば、それは解除するわけでございますけれども、そういう基準を定めまして、同日、早速、当面最も問題となっております中村産業学園、それから国士館、この二学校法人に対しまして、それの適用のいわば第一号として通知をしたというようなことも行っておるわけでございます。  こういった各般の措置を通じまして、私学におけるこういった各種の不祥事が今後根絶できるように、最大限の努力を重ねていきたいと思っておるわけでございます。  もちろん、個々の問題を起こしました学校法人に対しましては、それぞれ具体に、補助金の返還を命ずるとか、あるいは理事体制等の刷新を厳しく指導するといったような措置等を講じて、この事態の解決を図っておるわけでございます。  それから、私学助成についてのお尋ねでございましたけれども、私学助成の問題につきましては、こういった不祥事の有無にかかわらず、発足以来すでに十年余を経過をしてまいりまして、相当の巨額にも達してきたということもございますので、この機会に今後のあり方等について十分考えてみたいということで種々検討いたしておるわけでございます。これは臨調の答申等でも指摘されておることでございますけれども、一つは、私学の経常費助成につきまして、従来、一般補助と申しますか、大学の規模等に応じて補助をするというものと、特別補助ということで特別の事業あるいはプロジェクト等について補助をするという。部分とがあったわけでございますけれども、従来は一般補助がほとんどで、特別補助のウエートは非常に少なかったわけでございますが、逐次その特別補助の方に回す分を拡充をしていこうというようなことを一つの方向として持っておるわけでございます。  それからまた、大部分を占めます一般補助の配分につきましても、従来から、これは漫然と規模に応じて配っておったわけではございませんで、それぞれの学校の教育研究条件、経営状況、いろいろ勘案をいたしまして、点数で申しますれば、普通が百点といたしますと、五十点から百二十点という点数をつけまして、同じ規模のものであってもいろいろ諸条件が悪いところについては半分しか補助金がいかないというぐらいの厳しい、いわゆる傾斜配分と称しておりますが、そういう措置等も講じておったわけでございますが、そういった面についてさらに見直しあるいは改善等を加えていきたいということで、たとえば、経営面で相当余力があると見られる大学であるとか、あるいは教育効果が十分上がっていないと見られる大学といったようなものについては、補助金減額するというような措置を五十七年度から加えたわけでございますけれども、五十八年度以降につきましても、なおそういった諸般の状況を考えながら逐次改善は図っていきたいということでございます。  要すれば、国民の血税から出る補助金でございますので、これが有効に使われるようにということで、補助金の効率化ということを一つの旗印にして、改善の検討を続けていきたいと思っておる次第でございます。
  64. 新村勝雄

    ○新村委員 ここにひとつただしておきたいのですが、それは、憲法八十九条には、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは團體の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に屬しない慈善、教育若しくは博愛の事業に封じ、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」こういう規定がありますけれども、この規定との関係はどういうふうに解釈をなさっているわけですか。
  65. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 憲法八十九条と私学助成の関係でございますが、御指摘のように八十九条では、「公の支配に屈しない」という限定をつけて、そういう事業に公金を支出をしてはならないということでございます。私立学校に関しましては、学校教育法による国の監督、それから私立学校法あるいは私立学校振興助成法による国の監督措置が法律上いろいろ多岐にわたって定められておりますので、私どもといたしましては公の支配に属しているという解釈をしておるわけでございまして、憲法八十九条違反という問題はないというのが私どもの解釈でございます。
  66. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、これは私学助成と離れた一般論として、法律でそういう権限を与えるあるいはオーソライズすれば憲法上の疑義はそこで免れる、こういう解釈ですか。
  67. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 純粋な法律論でございますので、一般論として私からお答えするのが適当かどうかという問題がございますが、私どもの解釈といたしましては、この条項は公の支配に属しているかいないかということが問題であるということでございますので、法令、制度上、公の支配に属しているという事業の場合には関係がないというふうに解釈しておるわけでございます。  私学について申しますれば、「公の支配」という関係では、たとえば、学校教育法上、私学の設立の段階から国の認可を受けなければ設立てきないという仕組みになっておりますし、問題がある学校につきましては、閉鎖命令といったような強権手段も最終的には法律上は用意されているというようなこともございます。あるいはまた、私学振興助成法等におきましても、各種の命令等を発するようなことができるような仕組みができ上がっておりますので、そういう意味で、法令、制度上、私立学校は公の支配に属しているという解釈をしておるわけでございます。
  68. 新村勝雄

    ○新村委員 私立大学といえども公の支配に属しておる、こういう解釈のもとに助成金が出ているのですね。そういたしますと、これを受けた大学、あるいは大学一般というふうに考えるべきだと思いますけれども、私立大学一般はその財政あるいは経理はこれは当然公開をしなければいけない責任がそこから生ずると思いますが、それはどうなんでしょうか。
  69. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 私立学校に関しましては、その全体の考え方といたしまして、自主的な運営ということを基本的に考えておるわけでございます。  そういう考え方から、まず学内に監事あるいは評議員といった内部監査機構が設置されておりまして、その監事等によりまして内部的な監査が行われるということがまず第一段階としてあるわけでございます。さらにそれに加えまして、経常費の補助金の交付を受けております学校法人に関しましては、その経理の適正を担保するという意味から公認会計士による監査を義務づけておるわけでございまして、これは通常の場合、年間数回にわたりそれぞれ数日間、しかも数名の公認会計士が監査をするということが続けられておるわけでございます。さらに、これに加えまして、私学振興財団の監査もございますし、会計検査院による検査もあるわけでございますので、これらによりまして、私立大学の経理面での運営の適正を図るための措置というのは基本的には担保されているというふうに考えておるわけでございます。  文部省といたしましては、こういった監事、評議員等の内部監査機関やあるいは公認会計士の監査等が従来以上さらに適切に行われるようにという見地から各種の研修会等を催し、あるいは公認会計士協会等を通じまして全国の公認会計士の指導をしていただくというような措置をあわせ講じまして、この経理の適正化のための努力をしておるところでございます。
  70. 新村勝雄

    ○新村委員 いまおっしゃったような手続をとるということでありますが、国民の税金を助成金として支給しているわけですから、当然これは国民に対して財政、経理の公開をすべきではないか、当然そういう責任をそこから生ずると思いますけれども、そういう点では現在の手続だけでは大変不十分だと思いますけれども、いかがですか。
  71. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  国の税金を使用しておるという面から申しますと、たとえば国立の学校等もすべて同じ立場にあるわけでございますが、会計検査院等の検査、こういう公の仕組みの中でその経理の適正が保障されるという制度になっておるわけでございまして、そういうこととのバランス等ももちろんあるわけでございますが、さらにつけ加えて申し上げますならば、学校法人の場合には、財産目録、貸借対照表、そういった財務諸表を常時大学に備えつけておくということが義務づけられておるわけでございまして、もちろん、どういう関係者にこれを閲覧させるかというのは大学が自主的に判断をするわけでございますけれども。文部省といたしましては、制度としてそういう仕組みになっておるわけでございますけれども、従来から、学校の経営に関しまして父兄等の関係者の協力を得るいろいろな必要もあろうかと思いますので、そういう必要性に応じて、各学園が自主的に経理の状況、財務状況等を関係者に明示をする、たとえば学内広報というようなかっこうで明示をしておるケースがしばしばございますが、そういうことが望ましいことであると考えております。そのような趣旨で通達等で各学校に指導しておるところでございます。
  72. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、それを一般的に国民に公開するという形ではないわけですね、そうでしょう。一般には公開しないわけですね。国立大学については、これは国の機関ですから当然国の決算で公開されます。ところが、私学についてはそういう手続がないわけですから、その点、両者の均衡上問題があるのじゃないですか。
  73. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 決算につきましては、先ほど申し上げましたように、会計検査院検査を受けるわけでございますし、それから、決算報告書が文部省に提出されるということで、国民の代表と申しますか、国民のかわりに文部省が国の機関としてその決算報告書を見ているという関係になっておりますので、その分の適正のための制度的な体制としては担保されているというふうに考えておるわけでございます。
  74. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、もちろん要求すればそれは国会に対しても全部公開される、こういうことですね。
  75. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 文部省に提出されました決算書に関しましては、これは補助金の交付の要件として課しておるものでございます。したがいまして、補助金の交付関係あるいは学校の運営上の問題等がある場合に文部省としてこれを使うということは当然あり得るわけでございますけれども、その他の用途に使うことにつきましては、大学関係者との関係という問題もございますので、文部省としてこれを一般に公開をするということは考えておらないわけでございます。ただ、国会でいろいろ御指摘等がありましたケースについては、もちろんその都度内容については御報告するにやぶさかではないわけでございます。
  76. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、原則としては全容を公開しないということですね。必要があればその部分だけは求めによっては出すけれども、全容を一般的に公開するということはないわけですね、国会に対しても。ということは、国民に対して公開しないということですよ。文部省は行政機関ですから、行政機関は守秘義務もあるし、一般的な公開の場ではないわけです。ですから、現在の制度からすれば、私大の経理については公開しない、秘密だということでしょう。それでいいのか。
  77. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 繰り返しお答えすることになりますけれども、私学の場合には、これは公の支配のもとにございますけれども、基本的には私的な機関でもございますので、そういう意味で、補助金等に関する部分についての厳しい国の監査等の仕組みがあるわけでございますが、一般的な経営のプライバシー等にかかわる部分も含んでいるものについて公開を義務づけるということについては問題があろうかと思っておるわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、むしろ私学の側から自主的に学内広報等で一般に知らせるということは望ましいことだというふうに考えておりますので、そういう面での指導を行っているわけでございます。あくまでも、私学の自主性を尊重しつつ、しかも私学の財政についての一般の理解を得る手段としてそういう方法が適切ではなかろうか、かように考えているところでございます。
  78. 新村勝雄

    ○新村委員 学問の自由とは別に、国民の税金が支給されておる、助成されておるということからすれば、当然この経理についても公開をする責任を負わせなければならないと思います。この問題については、父兄の間からも、大学の経理を公開すべきだという強い要望があるわけです。先ほどから問題になっておる私学についても、裏口入学であるとか膨大な寄附金を強要するというようなことを通じて、大学が営利の追求の場になっておるということがいま言われておるわけです。こういったことからも、やはり大学の経理を公開させる。そのかわり必要な場合には助成する、こういうことでなければいけないと思うのですけれども、大臣はその点についてはどうお考えですか。
  79. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 各私学についてどの程度の助成をしておるかということ、これは国会にも報告し、公開といいますか明らかになっておるわけでございます。ただ、その内容をどういうふうにしておるかということを一般に、たとえば十億円あるいは二十億円それぞれの私学に助成をいたしました場合に、その内容をどうするこうする明らかにするということは、先ほど局長が申し上げましたような取り扱いをするのが適当である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  80. 新村勝雄

    ○新村委員 時間がございませんので、次の問題ですけれども、これは前の委員会でもお伺いしましたが、やはりそういう問題で世間の指弾を受けておる東日本学園大学というのがございます。この大学の経営者が、背任、業務上横領の疑いがあるということで、北海道警に告発がなされまして、捜査の上で五月に警察から札幌地検に送付されておる、送検されておる、こういう事件があります。その捜査の状況については、その状況を見守る、こういうふうに前回答弁をされておりますけれども、その後の状況はどうなっておりますか。地検の捜査の状況、結論が出ていればその結論をお伺いしたいと思います。
  81. 飛田清弘

    ○飛田説明員 ただいまの御質問にございましたように、本年の五月二日に札幌地検は、北海道警察本部からお尋ねの事件についての送致を受けて、現在まだ捜査中でございます。まだ結論は出ておりません。
  82. 新村勝雄

    ○新村委員 これはいつごろ結論が出る見込みですか。
  83. 飛田清弘

    ○飛田説明員 捜査のことでございますから、どのような捜査を現在やっているかということはちょっと差し控えさせていただきたいわけですが、それとの絡みで結論が出るわけでございまして、いまこの段階でいつごろまでに結論が出るということは、ちょっと申し上げかねるところでございます。
  84. 新村勝雄

    ○新村委員 前回の委員会で、法務省の前田刑事局長の、一般論としてはそういう場合には業務上横領が成立するという答弁があったわけです。こういう問題、これは他のたくさんの問題の中の一つですけれども、この問題について文部省はどういうお考えですか。
  85. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 刑事罰の適用の問題につきましては、司法当局の担当するところでございますので、文部省としてとかくの意見を言うことは差し控えさせていただきたいと存じます。
  86. 新村勝雄

    ○新村委員 とにかく、学校法人がこういう大失態を起こしていることは事実です。この事実に対して、文部省はさきに、理事長及び役員の責任を明らかにせよ、こういう指導をしておりますが、どういう責任をとったのか、明らかにしたのか、これを伺います。
  87. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 文部省といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、基本的に私学の自主性を尊重するという立場をとっておるわけでございますので、その自発的な改革を期待したいということから、責任の問題については、文部省としても、もちろん直接学園側に指導しておるわけでございますけれども、個々の人々が具体にどう責任をとるかということについて言及することは慎重にしたい、こう思っておるわけでございます。  この大学の場合には、理事長等が、学校法人の運営に関しまして、具体にいろいろな経理面でのやり方を誤ったというところに問題があるわけでございますので、それを回復するということが何よりも大事であると考えておるわけでございまして、そういう意味では、大学の理事長等は、深くこれまでの措置についての反省を述べると同時に、資金の回収等につきまして、全力を挙げて努力をしているという状況でございますので、現在、その状況を見守り、そしてまた、しばしば督促等を行っておるということでございます。
  88. 新村勝雄

    ○新村委員 自主性ということをよく言いますけれども、一方では、憲法解釈をある程度拡大してまで助成金を出している。このことについてのいい悪いは別としても、一方ではそういう努力をされておる。この努力についての可否は別としても、それならば、それに対する社会的な責任なり国民に対する責任なりを当然果たさなければいけない私学が、一方では、国民の税金を多額にちょうだいをして行政的な保護を受けておる、これに対する責任の方はほとんど免れている。決算書も出さなくていい。こういう大失態を起こしても言を左右にしてじんぜん日を送っている。何ら責任を明らかにしていない。こういうことでは大変遺憾だと思うのです。私学の自主性とはそういうものではないのです。私学の自主性というのは学問の自由ということでしょう。経理をでたらめにして、それを自主性に任じていいということはないでしょう。それはどうなんですか。
  89. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 この大学に関しましては、お言葉にございましたけれども、昭和五十四年に問題が発覚いたしました。これは、私立大学審議会が設置の認可を行うわけでございますけれども、その審議会が認可をした後、アフターケアということで、その後の状況を視察をし、運営について指導助言をするという立場から、五十四年にアフターケアを行った。その際に、こういうことが発見されたわけでございまして、そういう経緯からこの問題は出てきておるわけでございます。  それで、そういう関係から、補助金の関係につきましては、五十三年度に交付をした補助金につきましては、加算金を付して全額返還をさせておりますし、五十四年度以降については、この学園については全く国としての助成はしておらないわけでございまして、そういう中で、国としてはそういう措置をとると同時に、事態の解決のための努力を促しておるところでございます。本年度に入りましてからも、私立大学審議会の委員を煩わせまして、再度、再三再四にわたると思いますけれども、実地調査をいたしまして、その後の状況等の事情の報告を受け、さらに厳しく今後の改善についての指導を重ねていただいたというようなことになっております。
  90. 新村勝雄

    ○新村委員 文部省の御努力は認めないわけではないのですけれども、一方では、大学の認可あるいはこれを取り消すという基本的な権限を持っているわけですよね。しかし、その中間ですべて私学の自主性に任せる、国は容喙しないのだ。これは学問の自由についてはそれでいいのですよ。だけど、そうじゃなくて、経理上の不正なりあるいはその他の運営上の不正については、厳しく監督をしてもらわなければいけないと思いますよ。そういう致命的な運営上の欠陥があった場合には認可を取り消すくらいの決意がなければ、口で自主性を唱えたって何にもならない。いま問題になっている大学だって、一向に運営改善されていないでしょう。改善されていないし、責任をとると言ったって、責任をとっていないじゃないですか。  こういう問題について、大臣いかがですか。もう少ししっかりして指導していただきたいのです。
  91. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 東日本学園大学ですか、これについては、先ほど来、御議論がありますし、また御説明を申し上げておりますように、経理上の問題で非常におかしな点がある、こういうことで、文部省といたしましても、大学審議会等の御協力を得てその改善に努力している。ある程度の改善はできましたけれども、まだ十分というわけにはまいらない。  ただ、私学の場合に、全部立ち入ってこちらがやるということも、なかなかそう簡単でございませんので、向こうの努力を待ちながら、いわゆる教育の機関として体面を汚さないようにするように指導をしていかなければならない、こういう強い気持ちで今後対応していきたい、かように考えます。
  92. 新村勝雄

    ○新村委員 終わります。
  93. 古屋亨

    古屋委員長 春田重昭君。
  94. 春田重昭

    ○春田委員 私は、本日は時間が非常に限られておりますので、教育の基本的な問題のみをお尋ねしていきたいと思います。  まず、教育の荒廃という現実の中から、さまざまな教育改革が論じられているわけであります。そうした状況の中で、文部省は、児童生徒の急増、急減対策等に関する連絡会議を設置し、その中で特に主題として、学制改革の問題でいろいろ御論議いただいているとお伺いしているわけでございますが、この点について文部省のお考えをお伺いしたいと思います。
  95. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生からのお話がございましたように、現在、教育界における課題というのは大変多いわけでございますが、全体的な児童生徒の増減の傾向というものが今後ございます。高等学校の生徒が六十四年にピークになりますし、それから、大学生、高等教育の十八歳人口が六十七年にピークになる、片や幼稚園、小中学生は減ってまいります。この児童生徒のあるいは学生を含めての急増、急減に教育的にどういうふうに対処するかということは、一つの大きな課題でございます。それにあわせまして、児童生徒の急減対策のみならず、現下に起きておりますいろいろな教育上の諸課題について、教育内容の面がまず一つあろうかと思います。それから、現行制度における弾力的な運用というものでどう対処するかという問題が第二にございます。第三点としては、内容なり制度の弾力的運用以外に、学校教育制度の問題としてとらえるべきもので何か改善策はないか、いわゆる学制改革という面での検討課題はないか、それらをもろもろ含めまして、次官をキャップといたします急増、急減対策等の連絡会議を開き、そして幹事会等も設けまして、文部省も事務的に対処をしたいというのが現在の姿でございます。ただ、私どもといたしましては、中央教育審議会を初め各種審議会でいろいろ御議論を願っておるものですから、各種審議会の進行状況を見つつ、事務的にも遺憾なき対処を図りたい、こういう趣旨でやってまいりたいというのが現状でございます。
  96. 春田重昭

    ○春田委員 この学制改革六・三・三制の問題につきましては、昭和四十六年中央教育審議会が答申されまして、その後今日まで厳しく言えば棚ざらしになっているわけでございます。そこへもってきて、最近急にこの問題が大きく日教組の中でも論議されてきているということは、いま局長御答弁になったように、人口動態といいますか児童動態の急減、急増という問題がその背景にあろうと私は思うわけでございますけれども、文部省は、この六二二・三・四制、これについては基本的にはどうお考えになっているのですか。
  97. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生のお話がございました六・三・三制の評価と申しますか考え方でございますが、戦後の学制改革が、六・三・三制が走り出しまして、教育の量的な普及という面で大変制度的にも意味があり実効が上がって、現在は高等学校の生徒についても九四%以上の進学率になっておる。そして、高等教育につきましても三五%というふうな量的な拡大、機会均等の実現という面で、大変な意味があるというふうに私どもは思っておるわけでございます。しかも、その六・三制の問題として、いろいろな内容面についての改善を逐年加えてきておりますし、教育水準の向上という面においても、世界的な比較においてわが国は遜色はないという現状にあるということで、六・三・三制の制度的な問題としての意味合いは大変大きかったのではないかあるいは大きいというふうに考えられるわけでございます。しかし、やはり制度の問題として、いろいろ社会情勢が変転してまいります。情報化社会にもなる。テレビその他で子供たちへ流入するいろいろな情報は多くなってまいりますから、制度の問題とそれから児童生徒が置かれている社会情勢というものについて両々考えながら、学校教育制度について常に考えていかなければならないという点はあろうかと思います。そういう意味におきまして、内容なり弾力的な運用なり制度自体についての検討は、われわれの文教行政を預かる立場としては常に検討していかなければならない。こんな考え方で、六・三制についても考えてまいる必要があろうかというふうに考えております。
  98. 春田重昭

    ○春田委員 特に、このプロジェクトの中でいま論議されて検討されているわけでございますけれども、巷間言われる中で、小学校就学前の児童、特に幼稚園や保育園というのが非常に盛んになってきているわけですけれども、こういった面からも、いわゆる六歳児就学じゃなくして、それ以前の就学といいますか、その問題をどう扱うか。それから、いわゆる中学校と高等学校を一貫教育していくという問題が、特に六・三制の中では大きな課題ではないかと思うわけでございますjわが党としても、先導的な試みとして、小学校にゼロ学年を設けたらどうかとか、小学校と中学校を公的機関でやっていく一貫教育としてはどうかとか、こういう先導的な試みをやって、そして、国民全体のコンセンサスも得て、この学制改革といいますか、教育改革はやるべきではないかという提言もしておるわけですけれども、現行の学校教育ができました明治時代、それから終戦後に比べれば、時代の流れも相当変わってきておりますし、いろいろな問題も現行出ておるのは御案内のとおりでございます。  ただ、百万人の教職員、二千万人の児童を抱えておる今日、一挙に改革をやるというのは非常にむずかしい問題もあろうし、混乱も出てくるだろうと思うのです。そういった面では、先導的な試みにおいて国民的なコンセンサスを得て打ち出すべきであろうと私は思いますけれども、いわゆる小学校にゼロ学年、いわゆる中高の一貫教育についてはいま論議されておると思いますけれども、基本的にどうお考えになっておりますか。
  99. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生おっしゃいますように、いろいろな制度の問題で区切り方についての御意見があることは承知しておりますし、先生の方の御意見も私ども承っておるわけでございますが、幼児につきましては、幼稚園の該当年齢層は三歳、四歳、五歳、これはこれから大変減るわけでございます。幼稚園はいま六五%くらいの就園率でございますが、ほかに二十数%保育所がございますし、全体幼児の学校教育の体系でどう対応するかというのが確かに問題でございます。  それから、お話しのゼロ学年という問題につきましては、やはり小学校六年という教育体系は日本においては明治以来かなり定着しておるという評価も片やございます。昭和四十六年の中教審答申では、幼児学校というものを設けて、そして、幼稚園該当年齢層と、小学校の一年、二年、三年でございますが、下の方をくっつけた幼児学校という先導的試行の提案もあったわけでございますが、やはり国民的コンセンサスにおいて、ゼロ学年云々を含めた幼児学校についての試行はまだ時期尚早ではないかというふうな当時一般的な御議論であったかと思いますし、そういう意味で文部省としても慎重な構えでまいっておるわけでございますが、現段階で、私どもとしては、まず、幼心の教育内容の関連をどういうふうに考えていくか、それから、小中の教育内容の連携、あるいは中高の教育内容の問題がどうかという点について、研究開発学校というものを設けまして、そこら辺で、発達段階に応じての学校教育のそれぞれの学年段階のあるべき姿、つながりの関係の検討が進められておるわけでございます。したがいまして、区切りの段階について文部省として意見を固めるというところにまだ立ち至っていないわけでございますが、今後、連絡会議その他、あるいは中教審でも制度の問題でこれからも御議論が詰められるわけでございますので、先生御提案のようなことも含めた御議論が今後もあり得ると思いますし、私ども事務的にはいろいろな観点から検討する必要があるというふうに考えております。
  100. 春田重昭

    ○春田委員 この問題につきまして大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  101. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 六・三・三制等の学制制度の改革等については、いま事務当局からも御説明申し上げましたが、戦後新制度がしかれまして三十五年以上経過いたしまして、功罪半ばしておると言っていいのじゃないか。いろいろな意見が出ておりますのでありますから、社会情勢も非常に変わりましたし、また、子供といいますか、児童生徒の成長状態もその当時とずっと違ってきておる。でありますから、そういうのを含め、制度ばかりじゃありませんけれども、教科内容その他、試験の制度、あらゆる問題をこの際洗い直しをしてみる必要がある。簡単なことではございませんけれども、将来を展望しながら、そういう時期に来ておるということで、先般来、中央教育審議会にも専門的な御検討をお願いしておりますし、そればかりでなくて、先ほど来申し上げておりますように、文部省の中でもそれぞれチームをつくって検討を進める、これが現状でございます。  この制度を変えますということは、先ほどもお話がありましたが、これは国民全体に重大な関係があるわけでございます。しかも、金のことを言っては恐縮でありますけれども、財政にも大きなかかわりがあることでございます。それこそ、国民のコンセンサスといいますか、高度の理解がなければ、こういう問題は順調に進まない、こういう慎重な前提を置いていま検討をしておるわけでございまして、私が期待するところでは、どういうものが出ますかはいまわかりませんけれども、この十一月中には中教審のこの問題についての中間的な報告がいただけるような状況でございます。こういうものを中心にして、また、国民の各方面の意見も出ると思いますが、そういうものを総合して、将来に向かって、これは絶対誤りのないということは人間社会では無理ですけれども、見通しの限りにおいては誤りのない制度を国民全体の協力によってつくらなければならない、こういう時期に来ておるという判断で進めておることを申し上げておきます。
  102. 春田重昭

    ○春田委員 このプロジェクトチームの大体の結論といいますか方向が出るのは、時期的にはいつごろとお見通しなんですか。
  103. 西崎清久

    ○西崎政府委員 プロジェクトチームにつきまして私どもが検討課題として考えておりますのは、学校教育に関する諸制度のあり方、施設設備、入試制度、大学教育、私学助成、専修学校その他教育上の諸問題というものを網羅的に総合的にとらえていきたいというふうに考えております。  そこで、先ほど申し上げましたそれらを総合的に検討するにつきまして、それぞれの関係部門に関する審議会等の進捗状況もございます。大学入試制度は大学局で審議会で検討が行われておりますし、ただいま大臣からお答えいたしました中教審もなお検討が進む。そこで、私どもは、それぞれの諸課題につきまして、少なくとも一年ごとの区切りで、その一年ごとの区切りの間に検討が進められたものについての取りまとめをしてまいりたい。その取りまとめが、中間的なものである場合もありますし、ある場合には最終的な場合もありますけれども、一年ごとの取りまとめについて努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
  104. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、学制改革というものは、いろいろな現状の教育の荒廃の中で、やはり生き生きした教育といいますか、それを確立するためにも、慎重の上にも意欲を持って取り組んでいただきたいと要望しておきます。  次に、現在自民党の部会の中で検討されているとお伺いしておりますが、教科書法の制定の動きがあるわけでございますが、文部省としてはどう対応なさっておりますか。
  105. 高石邦男

    ○高石政府委員 さきに中央教育審議会から教科書のあり方についての答申をいただいたわけでございます。その答申の内容につきまして、たとえば著者、編集、検定、採択、研究、評価など制度全般にわだって御提言をいただいているわけでございます。したがいまして、その提言の趣旨を尊重して、この内容の実現を図っていきたいと基本的に思っているわけでございます。ただ、具体的にどういう形の内容にするかということは目下検討中でございまして、法律の形にまでは現在作業は進んでいない一わけでございます。
  106. 春田重昭

    ○春田委員 教科書法というのは、扱い方いかんによっては、検定や採択それから発行という面につきまして国が一段と介入していくということで、国家的な統制の強い心配があるということも意見が出ているわけでございます。そういった面で、決して一部の偏向教育であってはならないし、そういった心配がないように十分慎重に対応していただきたい、こう要望しておきます。  教科書の無償制度の問題でございますが、これはたびたび国会で論議されておりますし、私もかってお伺いしたことがあるわけでございますが、再度この時期に来てお伺いしたいと思います。  現在、教科書は無償供与となっております。財政的には、昭和五十七年度で約四百五十三億、五十八年度で約四百六十億円、対象児童数としては、五十七年度一千七百五十九万三千七百五十三人、五十八年度が一千七百五十一万二千六百九十七人となっているわけでございます。ところが、近年、国の財政硬直化の中で義務教育の教科書無償制度が有償化や貸与制という論議がいろいろ出てきているわけでございますけれども、文部省のこの基本的な御見解をお伺いしたいと思います。
  107. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 その前に、先ほど教科書法のお話がありました。御注意ごもっともでございまして、先ほど初中局長から御説明申し上げましたように、審議会から教科書のあり方について答申があります。その問題についていま事務的に検討を進めております。  私は、いわゆる国定教科書であってはならない、こう考えます。さればといって、いまの学校教育法等に検定の問題があります。その進め方等については規則でやる、こういうふうな状況になっております。申し上げるまでもなく、教科書は国民全体に重大な関係があるものでございますから、もう少し国民の関与された教科書であるべきであるという意味においては、内容、検定その他について法律で決める必要があるのじゃないかという感覚を持っておりますが、いかなる内容にすべきかということは目下検討中であるということを申し上げておきます。  それから、教科書無償制度の問題でございますが、これは私どもは憲法二十六条を持ち出すまでもなく、教科書は、いまの進んだ国では、子供の教育でありますから国民としての親が教育すべきである、その教育の重要な材料である教科書は、したがって無償といいますか国から供与すべきである、こういう考え方で一貫しておりますが、これについてもほかの理由でいろいろ御意見があるわけでございます。特に、例の臨調等では、廃止を含めて見直ししてみる必要がある、こういう指摘もありますので、まだ最終結論に行っておりませんけれども、もう少し検討して最終決定をしたい。ただし、五十九年度予算編成でも無償の方式で概算要求をしておる、これが現状でございます。
  108. 春田重昭

    ○春田委員 大蔵省の財政制度審議会、また臨調答申、また自民党の文教部会、文教制度調査会等では、無償制度そのものを時期的にこの際見直すべきではなかろうかという意見が出ているわけでございます。しかし、いま大臣がおっしゃったように、五十九年度概算要求では無償制度は継続という形になっておるわけでございまして、五十九年度は認めるけれどもということが私たち非常に心配なわけでございまして、そしたら六十年度以降どうなるかという問題でございますが、これは来年また検討したらいいという当局のお考えだと思いますけれども、五十九年度無償にしたのは、どうも選挙がある、そういった面で有償化したり貸与制にしたらまずいということで、五十九年度は一応継続するけれども、六十年からは案に相違してそうじゃないぞという危惧もあるわけでございます。そういう印象も受けるわけでございます。  文部省のお考えは、憲法二十六条また教育基本法からいって当然これは守っていくべきである、昭和三十八年から無償になったこの制度は断じて守っていくのだという強い御決意は変わらないと思いますけれども、そうした環境的に非常にむずかしい状況になってきているわけでございます。  そういった面で、私は、この教科書無償制度というものは、何回も言うように、戦後の荒廃の中で非常に日本が発展してきた、成長してきたのは、義務教育という制度が非常に国民全体に浸透していったそのおかげであろう、こう思うわけでございます。そういった面で、教育の充実といいますか、これは本当にわが国においては即社会の充実につながっていくわけでございますので、その根幹をなします義務教育の教科書無償供与というのは断じて堅持すべきである、財政的な問題だけで論ずるものではないと私は何回も主張しているわけでございます。そういった面で、これからもいろいろな障害があろうかと思いますけれども、文部省としてはこの制度そのものにつきましても六十年以降は断じて守っていくのだという強い決意を持っていただきたい、こう思うわけでございます。再度文部省の御決意をいただきたいと思います。
  109. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 先ほど申し上げましたように、これについてはいろいろな意見もあることは承知いたしておりますが、先ほどお話しのように、昭和三十八年、法律を審議いたしましたのは三十七年でございますが、その審議の状況を見ましても、これはまさに教育立国と言われておる日本の教育の非常な一大進歩であると私は思っている。その進歩を後退さしてはならない、こういう決意で臨んでおるのが文部省の態度でございます。
  110. 春田重昭

    ○春田委員 それでは、持ち時間があと若干ございますけれども、以上でもって終わりたいと思います。
  111. 古屋亨

    古屋委員長 神田原君。
  112. 神田厚

    ○神田委員 まず最初に、大臣にお伺いをいたしますが、昨今大学をめぐる不祥事件が非常に頻発をしております。その中で、私学の不祥事件等につきましては、助成金等の交付を中止するというような形で一応いろいろ処置がされているようでありますが、たとえば東京医科歯科大学の教授選考をめぐる不祥事件等につきましては、現在もなお司直の手をかりてその疑惑の解明が行われているわけでありますが、文部省といたしましてこのような問題についてどういうふうな指導をするつもりでありますか。
  113. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 私学等の不祥事件についてはまことに遺憾至極と言うほかはないわけでございますが、そういう意味で、私学の助成のあり方についてはやや惰性に流れておったような印象を私は持っておりますので、財団の私学に対する助成の審査の仕方、いろいろな改革を指示して今日進めております。目に余るものについては、教育機関にあるまじき状態のところには私学の助成を当分禁止するという措置もとっておるわけでございますが、いま東京医科歯科大学の問題、これは重ねて申し上げますが、まことに遺憾至極の状態であります。それこそ学問の自由といいますか、大学の自治の根幹に触れる問題でございますが、教授の選考について金銭が動いておる、それはもってのほかでございまして、そのほかに、一部医療機械等の購買について贈収賄が行われたという事件まで現在捜査して起訴されておる、こういう状況でございます。これについては、文部省といたしましては、医学部長等を招致いたしまして、その実態を明らかにするように、そして明らかになった上で適当な措置をとるようにしばしば指示、指導をいたしておるわけでございますが、なかなか大学だけの自治能力では真相を明らかにすることが必ずしも十分でない。そういうことから、残念ながら司直の手によっていま明らかにしてもらいつつあるといいますか、なりつつある。この結論が出ませんと最終の処置はまだできない、こういう状況であることを申し上げておきます。
  114. 神田厚

    ○神田委員 これはまだ全容解明までにはかなりの時日を要するかもしれませんが、少なくとも、すでに現段階におきましても、文部省におきましてはどういう方向で適切な処置をとられるのか、その方向性につきましては、もうすでに現段階で、現時点における事件の経過の中でその判断を持ってしかるべきだというふうに考えているのですが、その点はいかがでありますか。
  115. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど大臣が御答弁申し上げたとおりでございますが、医科歯科大学内部におきましても、それぞれ教授会におきまして、今後こういう事態の再発を防ぐためのいわば監査機構と申しますか、具体的には教授会の中にそれぞれ審査委員会等を設置するということが議論をされて、そういう方向でチェック機構を整備するという形で検討が進められているというぐあいに私ども大学から聞いているわけでございます。大学の教育研究そのものについては、私どもとしては支障のないような対応で臨まなければならないわけでございますけれども、たとえば五十九年度の概算要求等に当たりましても、医科歯科大学のこの問題が起こりまして以後、通常の大学に対する姿勢よりきわめて厳しい対応で私どもとしては対応しているところでございます。
  116. 神田厚

    ○神田委員 なお、この医学部系統のこういう教授の選任をめぐりまして金銭が動いているというようなうわさがかなりあるということにもかんがみて、文部省が近く国立大学医学部の綱紀粛正に関する問題について何か発令をするとかということが一部報道をされておりますが、そういうことは考えておりますか。
  117. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 本件が起こりまして以後、それぞれ関係大学の担当者、事務局長なり病院事務部長を集めましての注意喚起についてはすでに行っているところでございますが、さらに、国立大学の医学部長会議が十月上旬早々開かれることになっておりまして、その席でもこのことについては十分注意を喚起し、さらに、関係者みずからが医学部全体の教育内容の今後のあり方というようなことについても議論をしていただこうということで対応することにいたしております。
  118. 神田厚

    ○神田委員 それでは次に、育英奨学金の問題についてお伺いをいたします。  育英奨学制度が来年度から新しくなるということでありますが、その内容について御説明をいただきたいのであります。
  119. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 育英奨学事業でございますが、基本的には、御案内のとおり、教育の機会均等の確保と国家社会に有用な人材の育成ということから見まして、大変私どもとしては重要な施策であるというぐあいに心得ておりまして、逐年充実に努めてきているわけでございます。  なお、この育英奨学事業につきましては、第二次臨時行政調査会答申の提言もございまして、いわばそれを受けまして私どもとしては、文部省として五十六年十二月以来、育英奨学事業に関する調査研究会を設けまして、今後の育英奨学事業のあり方について慎重な調査研究を行ってきたところでございます。そして、本年六月に取りまとめられました調査会の報告では、第一に、無利子貸与制度を日本育英会による育英奨学事業の根幹として存続をさせるということ。そしてさらに、その中で、一般貸与を特別貸与に吸収して貸与月額の増額を図るというような、既存の無利子貸与制度についても整備充実を図るということと、第二に、育英奨学事業の量的な拡充を図るためには、財政投融資資金の導入によりまして長期低利の有利子貸与制度を創設するということ。それから第三に、教育研究職の免除につきましては、制度としては存続をするけれども、教育職については教員養成学部の特別枠を廃止するというようなことで返還免除額の縮減を図るというようなことが報告でなされているわけでございます。私どもとしては、この報告の趣旨を踏まえまして、今後、育英奨学制度の改善に努めたい、かように考えております。
  120. 神田厚

    ○神田委員 これは後で御質問申し上げますが、五十九年度予算大蔵省関係とも関連して、ちょっと育英奨学金の問題があるわけでありますが、まず、一部有利子化を導入することになっておりますけれども、これは、従来の無利子の部分に手をつけないでさらに対象を拡大する、こういうふうな形になるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  121. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども申し上げましたように、制度全体の拡充のためには長期低利の有利子の制度も導入するということで要求をいたしておるわけでございます。具体的に五十九年度の概算要求の金額でございますけれども、五十八年度事業費全体では千百十七億余りでございますが、明年度の概算要求といたしましては千百二十九億ということで、総額では増額要求をいたしておるところでございます。  もちろん、先ほども申し上げましたように、既存の無利子貸与制度についても、貸与月額の増額を図るとか、そういうような具体的な改善策も図っているわけでございまして、制度全体の充実という観点から私ども対応をいたしておるということでございます。そして、その中で、先ほども申しましたように、たとえば返還免除額の縮減の問題について申せば、教育学部の特別枠という考え方はこの際廃止をするというようなことで、そういう意味で総合的には改善をすべき点あるいは改めるべき点は改めるということで対応しているわけでございまして、御指摘の無利子分に手をつけないでということで申せば、その点は全体的な整備充実という観点で考えておりますが、基本的には制度全体を充実をしていくという考え方で取り組んでいるところでございます。
  122. 神田厚

    ○神田委員 この無利子と有利子の選考基準はどういうふうにいたしますか。
  123. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 新たな制度を設けるわけでございまして、今後なお財政当局ともいろいろ折衝があるわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、奨学生の選考基準としては、学業成績と家計収入の基準によって選考する仕組みになっております。  今回、無利子貸与のほかに有利子貸与制度を設けることになったわけでございますけれども、基本的な考え方といたしましては、先ほども申しました学業成績及び家計収入の基準によるわけでございますけれども、有利子貸与の場合について申せば、無利子貸与に比べて学業成績、家計収入ともいずれも低い基準と申しますか、より緩やかな基準で範囲を広げてまいりたい、かように考えております。
  124. 神田厚

    ○神田委員 今後、大蔵省との間で予算の具体的な折衝が行われるわけでありますが、無利子についての貸与基準を現行より厳しくしないでほしいという要請が来ているわけでありますが、この点はどうでございますか。
  125. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 選考基準の問題でございますが、先ほど申しましたように、有利子制度、無利子制度についてそれぞれ適切な基準で考えるわけでございます。具体的には選考基準は育英会が定めることになるわけでございますけれども、ただ、無利子制度について申しますと、現行の一般貸与と特別貸与という二つに分けてございましたが、今回いずれも特別貸与一本に吸収をするという考え方、したがって貸与月額は大幅に引き上げられることになるわけでございます。それらの点については、私どもとしては、現在の育英会の奨学生の採用の状況から見ますれば、それを一本化いたしましても、実際に採用されている学力水準その他から見まして、現行よりも採用される場合にその基準が厳しくなるということはないものと、かように考えております。
  126. 神田厚

    ○神田委員 次に、大蔵省は五十九年度予算歳出抑制ということを大変精力的にやっておりますが、特に文教部門におきまして大なたをふるうというようなことで、いろいろ問題も出てきているようであります。  その一つに、国立大学の授業料の値上げ等の問題、あるいはこれに関連しまして国立短大あるいは高校、高等専門学校の授業料の値上げ等々の問題が上っているわけでおりますが、この点につきましては、文部省としてはどういうふうな考え方で臨んでおりますか。
  127. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国立大学の授業料についてでございますけれども、そのときそのときの社会経済情勢全体を総合的に勘案をいたしまして、従来、授業料の引き上げについては、過去五年間ほどの間に相当国立大学の授業料も引き上げられてまいりまして、私立大学との関係で申せば、ほぼ私学に対して半分くらいの程度というところにまいっておるかと思います。臨時行政調査会の答申等におきましても、適正な水準でということが言われているわけでございまして、これは今後の予算折衝の過程で協議をしていくべきものと、かように考えております。
  128. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、文部省としましては、いわゆる大蔵省が巷間言われておりますところの二〇%値上げというようなこういう問題については、なお値上げ問題のその基本的な考え方も含めて、いわゆる据え置きの考え方で通すというふうな方向なんでしょうか。それとも、多少の値上げはやむを得ないというふうな態度で臨まれるのでしょうか。
  129. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 一部新聞に報道されたことは私どもも承知しておりますが、現在まだ具体的な事柄について大蔵省と詰める段階には参っていないわけでございます。これからどのように文教予算全体をまとめていくかという過程で十分協議をしていくべきものと考えておりますし、私どもとしては、基本的には国民負担の全体の状況その他十分慎重に考えてまいりたい、かように考えております。
  130. 神田厚

    ○神田委員 同時に、私立の大学助成の問題で先ほどほかの委員から御質問もあったようでありますが、これについてもかなり大幅な削減を要求されるようだということであります。この点につきましては文部省としての考え方はどうでありますか。
  131. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生お話しの私学助成についての来年度概算要求の考え方でございますが、基本的には、先生御案内のとおり、概算要求の原則といたしまして、補助金等にかかわります割合としては一〇%削減、それから投資的経費については五%削減というシーリング枠がかぶっているわけでございます。私学助成についての重要性とその果たす役割りは文部省重々従来から承知しておるわけでございますが、全体の財政事情との勘案におきまして、来年度の概算要求につきましてはシーリングどおりの一〇%減という形での要求をいたしておるわけでございます。
  132. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、次の主任手当の問題について御質問申し上げます。  日教組が主任手当の返上運動を行っているわけでありますが、どういう形でこれが行われ、またどういう形で使われているのか、文部省としてはその実態をどの程度把握しているのか、ちょっと御答弁をお願いしたい。
  133. 高石邦男

    ○高石政府委員 主任手当は給与の支給の際に一括して本人に全部支払うわけでございます。したがいまして、一たん本人が受領した後に組合の方針に従って手当の一部分を出すという形での主任手当の返上闘争という形になっているわけでございます。したがいまして、公の立場でその金額であるとか方式を正確につかむことがまず非常にむずかしいという実態でございます。しかしながら、いろいろなデータによって推計いたしますと、大体全体の二〇%程度が主任手当返上闘争の方向に拠出されているというふうに推測されるわけでございます。昭和五十二年度までの累計で見ますと約百億余りの金額になるのではないかと思われます。この金額は県によっていろいろな使い方がされておりまして、各県単位でプールをするないしは郡市単位でプールをする等いろいろな方式がございまして、中央にその資金が全部集まるという形ではないわけでございます。その集められた拠出金によって、たとえば学生に対する奨学金の給付であるとか、福祉施設に対する物品の寄附、音楽会の開催というようないろいろな方法でその金が使われておると承知しております。
  134. 神田厚

    ○神田委員 五十二年度までじゃなくて、五十二年度から現在までに約百五億円というふうに言われておりますが、法律の趣旨によって支出をされいるものがその趣旨に沿わずして使用されているというところに非常に問題があると私は思うのであります。  たとえば、新潟日報の五十八年五月十八日の記事によりますと、「〝主任手当奨学生〟千人の大台を突破へ 高教組奨学金協会」「県高教組が組織する県高校希望奨学金協会は十七日、本年度の事業計画を発表した。 それによると、本年度の主任手当拠出金は三千三百七十三万円で、新しく百八十人の奨学生を採用する。この結果、五十三年度から始めた主任手当拠出金総額は本年度分を加えると一億九千九百九十万円となり、奨学生総数も千百一人と初めて千人を超す。 このほか主な事業としては、十九日に朝鮮学校へ奨学金三十万円を寄贈するほか、今秋に同協会設立五周年記念として新潟、長岡、上越の三市で文化映画上映と。講演会を開く。」こういうふうな形で主任手当が、あるいはこういう形の奨学金に利用され、さらには朝鮮学校への寄附という形で使用されている。  こういうところに、この主任手当の支給の実態について問題があるし、こういう支給実態とさらに返上運動についての文部省の指導がなぜもう少しきちんとされないのかという問題について、これは大臣の感想、考え方も含めまして、ひとつお答えをいただきたいのであります。
  135. 高石邦男

    ○高石政府委員 先ほど金額を五十二年度と申し上げましたが、五十二年度以来五十七年度までの累計が約百億余りということでございます。先生御指摘のように、主任手当が目的とするような形で正当に使われていないということについては、まことに遺憾であると思っているわけでございます。  そこで、文部省としては、こういう拠出闘争が現行の主任制度自体をある意味においては無力化させるという運動の一環として行われているところに一つの問題があります。したがいまして、まず、現場に主任制度自体を完全な形で定着させていくという努力を一方においてしなければならない、それと並行いたしまして、手当につきましても、そういう正しい主任制度の理解を得て、それぞれの主任がその手当を正当に受領するという形の指導を徹底していかなければならないということを思っておりまして、各都道府県に対しましてそういうことについての徹底した指導ということで通知を出したり、ないしは通知だけではいけませんので、各個別の校長に対してそういう指導の徹底を一層図っていくということで力を入れてまいりたいと思っております。
  136. 神田厚

    ○神田委員 東京都の高等学校教職員組合が出しております一九八三年四月二十七日、朝日新聞に載った意見広告だと思うのですが、ここに「マジメな先生とスナオな生徒をつくり出す主任制度!?」、ひやかし半分に書いてありまして、その二番目の項目のところで、「主任手当は税金のムダ使い」、こういうふうに言っております。  「私たちの給料は、都民のみなさんの税金が財源。正当に働いて支給されるものであれば、何も不都合はないはず。でも、主任手当には受けとる明確な理由がありません。年間約十億円。これを税金のムダ使いと言わずして、何と言えばいいのでしょう。」こんなことが書いてあります。  こういう世界に冠たる大新聞の意見広告に「ムダ使い」とまで書かれているような主任手当の現行の支給の実態のあり方に、文部省はいまの局長の答弁のようななまぬるい指導ではなくて、もう少しきちんとした実態の把握と、さらに支給の、つまり正当にそれが使われるべきであるような形での指導を本腰を入れてすべきだ。こういうふざけた形で、せっかくの国民の大事な税金が正当に法律に基づいて使われないということについてはやはり問題があると思うのですが、大臣のお考えをお聞かせいただきます。
  137. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 主任手当の概要については年ほど初中局長から申し上げたとおりでございますが、遺憾ながら、いま神田さん御指摘のように、これが必ずしも、主任制度と申しますか、それぞれの部署にそれぞれの責任を果たして教育の充実を図るために国民の税金から待遇をよくしてやっている、こういうことでございますから、その趣旨が生かされないでほかの部面に回っておるということは、非常に遺憾至極でございます。  ただ、これはその人に支給された後に、自分の判断で他に寄附するとかいうことでありますれば、そのために自分の職責を全うするということであれば、これは個人の自由でありますからやむを得ませんが、それを、主任というものを何のために置いておるか、何のために国民の税金を追加して待遇を改善するかということに自覚がないところに、非常に遺憾な点があると思います。そういう意味で、遺憾ながらまだまだそういう点が続いている。これは私の見るところでは、よく言われますように、国民の教育を日教組の手に取ろうという魂胆がある、それがもとだと思いますから、断じてそういうものには負けてはならない、今後とも努力をいたしたい、かように考えております。
  138. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  139. 古屋亨

    古屋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十分開議
  140. 近藤元次

    ○近藤(元)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。栗田翠君。
  141. 栗田翠

    栗田委員 私は、きょうは、七月以来問題になっています小中学校、高等学校の児童生徒の名簿や顔写真が警察へ提供されていた問題について質問をさせていただきたいと思います。私の持ち時間は大変短いものですから、お願い申し上げますが、簡潔に要領を得た御答弁をいただけますようにお願いいたします。  まず最初に、この問題は、児童生徒また父兄のプライバシーの侵害ということで大きな問題になりましたけれども、同時に、非行や校内暴力に対処するについての教育のあり方、その根幹にかかわることとして大変深い関心が持たれております。私は、そういう立場できょうは伺わせていただきたいと思います。  まず、文部省に伺いますけれども、この問題が表面化しましてから文部省は調査をなさったと思います。全国的にどこどこの県で名簿、写真の提供が行われているか、また特に、顔写真提供まで行ったのはどこかということをまず御返事いただき。たいと思います。
  142. 高石邦男

    ○高石政府委員 新聞等で報道されました県の十四県について調査いたしました結果、十二県で名簿を提出しているということがわかったわけであります。その中で、小学校二百七十一、中学校二百九十七、高等学校四百二ということでございます。(栗田委員「顔写真は」と呼ぶ)顔写真につきましては、秋田県及び富山県下の一部の学校で提供していたということでございます。
  143. 栗田翠

    栗田委員 その十二の県の県名をおっしゃっていただきたいのですが。
  144. 高石邦男

    ○高石政府委員 青森県、富山県、山形県、秋田県、福島県、神奈川県、長野県、静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、島根県、鳥取県、佐賀県でございます。
  145. 栗田翠

    栗田委員 それでは、警察庁に伺いますけれども、警察庁としては同様の内容で実態をどうおつかみになっていらっしゃいますか。
  146. 山田晋作

    ○山田説明員 ただいまお尋ねの問題につきましては、私ども別段調査をいたしておりませんので、データも持ち合わせておりません。
  147. 栗田翠

    栗田委員 私は、いまの文部省のお答え、大変不満なんですが、新聞で報道された十四県で、やられていたのは十二県ということですけれども、新聞で報道されていたものの中には、共同通信などの調査でも二十県から二十二県ぐらい詳しく挙がっておりますね。今度のこの問題を余り重要にお考えになっていらっしゃらないのか、新聞社としてかなりそこまで調査ができるのに、文部省としてはたった十二県しか発見なさっていないということ自体どういうことですか。
  148. 高石邦男

    ○高石政府委員 全体の傾向をつかむということで調査をしているわけでございまして、したがいまして、全県下を対象にしてやらなかったわけでございます。基本的には、この名簿提出については、いろいろの地域の実態というものがありましてやっているわけでございまして、そのこと自体が直ちにまずいというふうには思っていないわけでございます。
  149. 栗田翠

    栗田委員 それでは続けて伺いますが、その提出の方法などですね、形態、方法、どんなふうになっているのか、お調べになりましたか。
  150. 高石邦男

    ○高石政府委員 一般的には、青少年補導センターというのがそれぞれの地域につくられているわけであります。これは青少年の健全育成を図るという観点で、学校の代表であるとか、PTAの代表、警察の代表、そういう人たちによって構成されておりまして、まさに青少年健全育成のために地域ぐるみでどう取り組んでいくかということの観点でつくられたセンターであります。したがいまして、そのセンターが的確な情報をできるだけ持って、そして青少年の健全育成のための対応をしていくということを基本的に考えることは当然かと思うわけであります。そこで、具体的な名簿につきましては、学校長にお願いをいたしまして、学校長が納得をした上でそういう補導センター等の機関に提出をされているというのが大部分であると承知しております。
  151. 栗田翠

    栗田委員 これだけ問題になっているのに、まず全国的に調査をしていらっしゃらないということは、調査漏れがまだあって、実際には提供しているところもあるかもしれないけれども、抽出調査といいますか、部分的な調査をなさったというふうに解釈していいんですか。
  152. 高石邦男

    ○高石政府委員 先ほども申し上げておりますように、基本的に青少年の健全育成の観点でどういうような対応を考えるかということで、名簿であるとかそういうものをそういうセンターで掌握していく、その場合に、学校側の納得、同意を得てその資料が提出されているということ自体は、特に問題にすべきではなくして、それがあくまでそういう趣旨で使われるという限りにおいては特に問題ない。したがって、そういう地域の実態についてすべてことごとく文部省で調査をしなければならない筋合いのものではないというふうに考えているわけでございます。
  153. 栗田翠

    栗田委員 私、時間がないのですが、冒頭からそういうお答えでは大変問題だと思います。ことごとく調査をなさらないでおいて、問題がないという前提で考えていらっしゃる。全部の実態を把握なさった上で問題があるかないかということを判断なさるのが妥当ではありませんか。実態を知らずにいて、問題がないという先入観でそういう調査をしていらっしゃるということは、調査の仕方として問題だと思いますが、大臣、いかがですか。やっぱり実態の把握というのが先じゃないですか。
  154. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 最近、御承知のとおりに、児童生徒その他青少年の非行、暴力等が世間で非常に重要な事項として考えられるようになりました。それで、時によっては警察の力をかりなければ適当な補導ができない、こういう事態もあるわけでございまして、そこら辺は、教育委員会なりあるいは学校当局あるいは警察等が、どうすれば適切な補導ができるか、間違いを起こさせないようにするかということをいろいろ協議してやることは、これは私は適切な方法であると思います。まだまだ世間に対する、人生に対する配慮がうまくいかない児童生徒を補導するについては、どういう人々がその学校に所属しておるか、それを知っておく必要があるという意味でこういうことをされておると思いますから、もちろんその場合には、おっしゃるように、個人のプライバシー、特に少年に対してはその人格をよく尊重する立場でやらなければならない、これは当然のことだと思っております。
  155. 栗田翠

    栗田委員 お答えが何となくずれておりますけれども、詰めている時間がないので先へ進みますが、私の調査では少なくとも二十二県提出しているということ、それから、顔写真が提供されているのは秋田、茨城、風山、富山、静岡、それから提供の方法、手段なども非常にいろんなものがありまして、生活指導協議会とか、指導部連盟とか、それから学警連、学校警察連絡協議会とか、そういうところへ選択の余地なく一括して出している例というのはかなりございます。いまのお答えですと、校長の納得の上で云々ということですけれども、納得するしないの余地のないような提供のさせ方、こういうことをしているところもあるのです。  その例を申し上げます。これは静岡市教委の例でございますけれども、私が全国にも例がないのではないかと思っておりますのは、その市教委そのものが市の管轄の市立の高等学校、中学校、小学校、これに対して「児童・生徒名簿」または「(PTA会員名簿)及び生徒写真の寄贈について」という文書を教育長名義で出しております。この中身を見ますと、名簿は三部出しなさい、それから、生徒写真は小学校を除いて高中で一枚ずつ出しなさい、この名簿の提供先は青少年補導センター、静岡中央署防犯少年課、同じく南署の防犯少年課、生徒写真については青少年補導センターにそれぞれ出すのであるということでその文書が出ているわけでございます。さらに、この静岡市教委は、御丁寧にも自分の所轄の学校ではないいわゆる私立の小中学校だとか国立の学校だとか、それから県立の高等学校に対してまで同様の文書を出しております。その結果提供された名簿などは、市内の百十四校中九十一校。これは市立関係は全部応じています。応じていないのは、いわば所管でないところで中に応じなかったというのがあるわけなんです。こういう例があるわけですね。  こうなりますと、一律的、まさに強制的な提供のさせ方であって、市教委が管轄の市立の各学校にそういう文書を出したのでは、校長の御判断などという余地はないのじゃありませんか。こういう出し方はいかがですか。
  156. 高石邦男

    ○高石政府委員 静岡市の例で申し上げますと、青少年の非行問題が非常に多発して、地域全体で積極的に取り組んでいきたい、そのためには関係諸機関の密接な連携のもとに的確な対応をしていきたい、こういう動機から、いろいろな会議が重ねられて、そして教育委員会としては、そういう諸般の情勢を最終的に判断して、やはりここまでの体制づくりをしていこうということで各学校に指導したと思うわけでございます。したがいまして、教育委員会はそれなりの教育的な判断をした上でそういう資料提出をお願いしたというふうにお伺いしているわけでございます。
  157. 栗田翠

    栗田委員 国がそういう判断をしていらっしゃるとなれば、これは全国的にこういう問題が広がるのは当然なことですね。いま世論は非常に批判的な立場に立っております。  しかも、文部省自身が昨年モニターに対してアンケート調査をなさったと思いますけれども、六月二十一日校内暴力対策についてのアンケートです。これは新聞にも発表されておりますが、この結果を見ても、教師が使命感と熱意を持って校長の指導のもとに一致協力して生徒指導に当たるのがきわめて大切だという方が六七%、その中で最重要対策の第一にこの項を挙げた方が四一%もいらっしゃいますし、それ以外に、教師と生徒との好ましい人間関係をつくるべきだ、わかる授業をすべきだというのが圧倒的に多い回答でした。ところが、警察などの関係機関と緊密な連携をとるという項目については、きわめて大切と言ったのは四・八%、それで肯定的なものを全部ひっくるめても四一・六%、無回答は除いた否定的な回答が五七・六%、過半数は、こういうやり方はよくない、教師が本当に使命感と熱意を持ってまず教育者という立場で一致協力することが大切なのだという回答になっているわけでございます。  私は、このことをいま問題にしているのは、後で触れさせていただきますけれども、生徒全部名簿を提供させ、写真を提供させ、そのことによって言ってみれば問題がある子供の、事例によっては警察が介入しなければならないこともときにはあると思います。それは全面的に否定するわけではございません。けれども、一括して全部こういうものを出して警察がチェックをしていくというやり方は、言ってみれば子供たちを犯罪予備軍として見るような見方なのではないでしょうか。しかもプライバシーの問題があります。学校を信頼して子供の教育のためにということで、父母が自分の職業や中には出身校まで書いて学校に預けたものを、本人たちの了承がないままに外に出され、特に警察などに出されて子供の取り締まりのために使われるということになれば、これは問題があるのではないでしょうか。そういうことをいま起こしているからこそこの名簿、写真提供が問題になっているのですが、文部省としてそれは構わないのだというお考えでしょうか。
  158. 高石邦男

    ○高石政府委員 前段の御指摘のとおりに、学校の教職員がまず第一義的に責任を持って体制づくりをして青少年の健全育成に当たる、これがきわめて重要な基礎的なことであるということは御指摘のとおりでございます。しかしながら、一方において、子供たちの現在の非行の傾向というのはそれだけではとうてい対応できないという状態が地域によって惹起しているわけでございます。したがいまして、そういう地域の事情に応じましてどういう体制をとるかというのが、それぞれの地域ごとの判断というものが当然あってしかるべきでございます。先ほどの調査でそういう資料を出させている十二県について申し上げましたけれども、具体的には、その県下でも、小学校のうち四、五%、中学校も同じような傾向でございます。全県下一斉にやっているわけではない。あくまでそれぞれの市町村単位ないしは学校単位ごとに、そういう実態にある地域の事情を考慮してそこまでの協力を求めるという形の動機から、いろいろなデータがそういう補導センター等で保管されているという傾向であると思うわけでございます。したがいまして、その目的は、あくまでも青少年の健全育成、非行防止、そしてそれに対する事前の予防措置というようなことを含めての対応でありまして、個人のプライバシー問題、人権問題というものに乱用されるということは厳に戒めなければならない、また、そういうことがあってはならないというふうに考えておりますので、特にその名簿が一律的に出されることが形式的にけしからぬとか非常にいけないということは論じられないというふうに判断しております。したがって、文部省といたしましても、この判断につきましてはその地域地域の判断にゆだねた、しかも前向きの対応で考えてもらうということが妥当な措置であろう、こういうふうに考えて、統一的な指導をしていないわけであります。
  159. 栗田翠

    栗田委員 静岡市の教育委員会が強制的に各管轄下の学校から出させていますけれども、静岡市が全国で一番非行の度合いが高いかというとそんなことありません。そういう中で、全国でもまれに見るやり方もしているわけです。いまのような御答弁ですと、それに対応してそれぞれ考えているのだとおっしゃるけれども、それではプライバシーを侵される父母が納得しているのかどうか。今度のこの問題が公表されてから、新聞の投書欄などでも、知らなかった、非常に驚いたという声がありますし、現にその父母に対して納得をさせながらそういうものを出しているのではない状況が圧倒的に多いのではありませんか。もし、自分の名簿、出身、職業などを学校には託したけれども警察に出すつもりはなかったといったくさんの父母がいる場合、それに納得を得ないでそういうものを学校が自動的に警察に回すということは、それでも認められますか。
  160. 高石邦男

    ○高石政府委員 私の方の承知しておりますところでは、PTAの名簿というものが一般的につくられる。それは全PTA会員に配付されるというような資料でございます。したがいまして、そういう資料を補導センター等へ提出するというような形であるわけでございます。したがいまして、PTA会員の名簿がつくられて全会員に配付されること自体について、いま御指摘のような議論をすれば、そういうことも議論の対象になろうかと思うのです。しかしながら、そういう名簿を便宜、補導センター等の資料として保存をして、青少年健全育成という観点で活用していくことは、いろいろな問題を、人権問題、プライバシーの侵害問題、そういうものを十分に防止しながら善用していくということはあっていいのではないかと思っております。
  161. 栗田翠

    栗田委員 それでは、顔写真なんかはどうなのでしょうか。私、一々お答えを聞いている時間はなくなりました。一つの例を挙げますと、これは静岡市内のある中学校ですけれども、三十数学級のマンモス校でございます。一人について顔写真三枚学校がつくりまして、学校、警察、市の青少年課、これに提供しております。この金額だけで、千数百人の生徒なものですから何と二十万円を超えるそうです。こういう写真代というのは一体どこから出るべきですか。時間がありませんので、  一言でお答えください。
  162. 高石邦男

    ○高石政府委員 写真代がどこの負担でどういうふうになるかということは、具体的な事例で判断しなければならない問題で、ちょっとここで私はお答えできないわけでございます。
  163. 栗田翠

    栗田委員 何と、父母は全く知らないのに、父母の拠出金である学年費、これは父兄が出しておるのですけれども、そこから全額出していますね。こういうことなどもやって、本人たちは知らないのに、警察などへも写真を提供して、その金額が全部かけられている。PTAに御理解いただいていると言いますけれども、実際にはこういう形で、ごく上層部の何人かはあるいは知っているかもしれません。しかし、本人たちは全く知らない中で名簿、写真の提供、写真代の負担までもされている、こういう実態になっているわけです。  私、残念ながら、もう余りお話ができませんので、こういうやり方がどういう影響を及ぼしているかということについて申し上げて、あと大臣の御感想、お考えを伺いたいと思うのですけれども、いま、警察が非行対策という形でこういうふうに全面的に関与してきている中で、いろいろな行き過ぎが起きております。  たとえば、静岡県の雄踏町というところで、先日子供が、雄踏中学校の生徒三、四人が電器店に入って窃盗を働いたそうです。そこで被害届が出されたのです。ここまではわかります。ところが、この捜査の仕方が、警察が学校へ来て、授業中に、これぞと思われる子供たちを何十人も次々に――授業中にですよ、学校のある部屋へ呼び出して取り調べたそうです。しかも、その取り調べというのが、同じ事件に関係した子供を二手に分けて、矛盾したところは両側から追及していくというやり方で取り調べをした結果、被害届の出ていた電器店の事件ばかりでなく、いろいろな問題、たとえば以前万引きをやったとか、どこかで置いてあった自転車に乗ったとか、いろいろなことがあるのですけれども、そういうことを手づるのようにずっと、自白させたり友達の例を出させたりして、何と二十数名、それを、調査した一月後の八月未に父母同伴で警察へ全部連れてこさせて調書をとった、こういうやり方が起きております。  それから、たとえばここに静岡市の大里中学で起きた校内暴力事件とその結末についての記事がございますけれども、ある中学三年生が校内暴力事件を起こしました。その子供は事件の三日後に逮捕されました。警察側は少年院へ送れと言ったのですけれども、家裁で、これは結局、試験観察ということになりまして学校へ戻りました。学校に戻ったときに、校長が何と言っているか。この大里中校長は、「少年は、ふだんからそう悪い子ではなかった。常時乱暴する子でもないし……。」「彼を非行生と呼ぶには、疑問がある。この一カ月間、少年は罰金を払い過ぎた。払い過ぎた分を、自信を取り戻すという形で、今後、プラスになるよう指導していきたい」、結局、そんなに非行生ですらなかったのだ。しかし、この逮捕のときの警察の言明といいますのは、もはやこの子は教育では矯正しがたいと判断したという警察側のコメントが当時新聞に載ったものでございます。  同じころ、三島の南中学校で、二人の生徒がやはり校内暴力で逮捕されましたが、これについて校長が言っているのは、「事件は校内解決できるとみていた。杉本武校長は「私たちで指導解決したかった。AもBも以前に比べると、態度も良くなり期待をかけていたのに残念だ」と語っている。」つまり、子供というのは未完成ですから、発達の途上にありますから、ときには間違えることもあるでしょう。しかし、教育ということで本人を自覚させ正していくことがその過程に必要であって、だからこそ教育の意味があると思います。学校側で校内解決したかったと言っていたものが、警察が入ってどんどん逮捕していくとか、授業中に子供をまさに取調室に引き出すようなやり方で調べて、被害届が出ているもの以外までずるずると大ぜい手づるのように連れていくというやり方、これはまさに行き過ぎだというふうに私は思います。むしろ、こういうことは教育のあり方という立場から考えて、非常に問題だと思うのですけれども、いま一括して名簿また写真などが警察にわたっていくという事態の中で、そういう発想が出てきているのではないかと思いまして、非常に懸念しているわけでございます。  大臣、この問題についてお考えを伺わせていただきたいということと、一括した名簿の提出、写真の提出はやめるべきだと私は思いますが、最後に、そのことについても大臣のお答えをいただきたいと思います。
  164. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 栗田さんのお話、結論から申し上げると、全面的に賛成するわけにいかない。ただし、これは少年、子供でなくても、他人の身上あるいは写真等は、人権あるいはプライバシーを守るために慎重に扱わなければならないということは同感であります。  先ほど教育の問題でお話がありました。局長もお答えいたしましたが、そういう問題は教師の教育的使命によって解決すべきである、まさにそうだと思います。それから、教師と児童との信頼関係が教育の原点である、これもそうだと思います。そこで、望むらくは、そういう子供の名簿なりあるいは写真を教育委員会等を通じて警察へ出すという事態がない教育界、社会、これが私どもは最良の社会であり、最良の教育である、これが望ましいわけでありますが、残念ながら、いまの状態は、全部ではありませんけれども、いろいろ御指摘がありましたように、そこまでしなければ相済まないような状態が醸されておるところに、今日の教育の問題が深刻であるというわけであります。  そこで、申し上げておきますが、この前の岡山県下における今年度の日教組大会でも、そのことが――そのことと言いますと、教師の教育力の低下、また教師の教育に対する団結に不足がある、こういうことが大会で反省をされておるのであります。私もそう思います。そこで、新しい委員長その他がその大会後、私に面会を求められまして、お目にかかりました。その際に、委員長いわく、教育力の低下である、あるいは学校教師の団結に不足がある、あるいは父兄との連絡が不足である、地域社会との話し合いが不足であったという反省に基づいて、この重大問題になっておる児童生徒の非行、校内暴力等を何とか全力を挙げて対応しなければならないという考え方でおりますと、こういうお話があって、私はそれに深い敬意を表しました。  現実はそうでございますから、栗田さん、いろいろ御心配してくださることはわかるのですけれども、警察の行き過ぎがあったかどうか、私はわかりませんが、そういう状態でありますから、地域社会とあるいは父兄と社会全体が、こういう少年の補導、育成に間違いのないようにするといういまの状態は理解してもらいたい。問題は最初に申し上げましたように、それを悪用されたりあるいは行き過ぎたりするということは、これはもちろん厳に慎まなければならない、さような感想を持っておるわけでございます。
  165. 栗田翠

    栗田委員 提出問題はどうでしょうか。名簿提出をやめるべきではないでしょうか。
  166. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 そういうことの必要のない状態を希望いたしますが、なかなかそう現在いっておらない。これは先ほど申し上げましたように、PTAなりあるいは学校の判断なりまた非行を心配しておる警察等の理解において進めなければならない、かように考えております。      ――――◇―――――
  167. 近藤元次

    ○近藤(元)委員長代理 昭和五十五年度決算外二件及び昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として住宅都市整備公団理事久保田誠三君、理事吉岡昭雄君、以上両君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 近藤元次

    ○近藤(元)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  169. 近藤元次

    ○近藤(元)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  170. 井上一成

    井上(一)委員 私は、午前中に引き続いて文部省にお尋ねをしていきたいと思います。  過大規模校の分離の促進については、文部省も鋭意御努力をいただいて、その改善策に取り組んでいただいていることについて、私は評価をしたいと思いますし、なおまた今日の時点ですべてが過大規模枝分離に向けて解消したという実情ではありません。教育活動なり学校管理上からきわめて問題点が指摘されている過大規模の小中学校、とりわけ人口急増都市地域に過大規模校が存在する、こういう状況であります。  こういう状況に立って、文部省の過大規模枝分離に対する今後の取り組みをまず伺っておきたいと思います。
  171. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  過大規模校の問題でございますけれども、ただいま先生からもお話がございましたように、教育指導上あるいは学校運営上種々問題があるということが各方面からも指摘されておるわけでございまして、文部省といたしましても、できるだけこれを適正な規模のものに持っていきたいということで、かねてから過大規模校の分離ということで、都道府県を通じまして関係の市町村等に対して繰り返し指導を行ってまいったわけでございます。  具体には、文教施設整備費の補助金の申請を採択いたします際に、過大規模校の分離については最優先で取り上げるというような措置も講じてまいりましたし、特に昭和五十五年度からは、それまでは、分離をいたします場合には、その既設校の方に余裕分があれば、その分は必要面積として認めないというような厳しい仕組みがあったわけでございますけれども、それもいわば撤廃をいたしまして、五十五年度以降は新設校として必要な面積はすべて補助対象にするというような措置も講じたということで、かなり年々二百校程度の分離等が行われてまいったわけでございます。  しかしながら、急増も一段落しかかったというこの時点におきまして、本年の四月に再度全国の実態調査をいたしまして、その結果、急増指定地域であるものは別といたしまして、急増地域外でなお過大規模校として分離が必要であり、市町村等におきましてもその計画を持っておるというものが約三百校程度というような結論が得られたわけでございまして、現在、急増地域内のものについては特別の助成制度がございますが、急増地域をはずれましたもの、特に急増の指定が期限切れになったというケースにつきまして、国の補助制度上若干足らざる点があるということも考えまして、五十九年度、来年度からこれらの学校を対象にいたしまして、できれば五年間で解消を図りたいというようなことで、新たな補助の仕組み、つまり急増地域と同じような補助をするというようなことを念頭に置きまして現在検討し、財政当局との相談等も行っておるというのが現状でございます。
  172. 井上一成

    井上(一)委員 小中学校義務教育における過大規模校の解消策、今後も鋭意御努力をいただいて、その解消に努めていただきたいと思うわけです。  私は、さらに高等学校における過大規模校も相当数あるわけなんです。高等学校における過大規模校の現状、そういうものについては文部省は十二分に把握なさっていらっしゃるのか、この点について聞いておきたいと思います。
  173. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 高等学校に関しましては、その三分の一が私学が占めているというような事情もございますし、それからまた、高校についてはこれまでそれぞれ設置者の判断によって規模を決めていただくという仕組みでまいりましたので、どういうものをもって過大規模と言うかというあたりのところから実は基本的な問題があるように思うわけでございます。そういう点もございまして、現在のところ、非常に十分な、先ほど小学校、中学校について申し上げましたような形での実態の把握というのはできておらないわけであります。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  174. 井上一成

    井上(一)委員 具体的な例を挙げて少し認識をいただきたいと思うのですけれども、大阪の高槻市、ここは人口急増都市指定自治体であったわけでありますが、大阪府下では随一の生徒急増地域であります。五十八年の春の中学卒業者数に比べ、六十三年のピーク時には在籍者数で千五百九人がふえる。そういうことになりますと、今後増設がなければ、この中学卒業生が、もう準義務化されているような状況の高等学校入学者になる。こういう実態に合わすべく、受け皿を何らかの方法で整備をしていく必要があるのではなかろうか。もちろん、公立高校だけで賄える問題ではありませんし、私立高等学校の協力がなければいけないと思います。公私立高等学校の新増設建物整備補助金交付要綱というものがあるわけでありますけれども、この補助は、高等学校の生徒が急増している都道府県に対する高等学校側の建物増設、特別の助成を行って、いわゆる高等学校の教育目的を円滑な状況に置こう、こういうことなんですが、この交付要綱の精神を生かして、公立、私立を問わずに過大規模校の解消策を具体的に取り上げて取り組んでいかな付れば、小中学校での過大規模校解消策は非常に努力をしている、しかし、それは連続して高等学校の方にも必要になるのではないか、そういう面についての文部省の認識と取り組み、心構え、決意、そういうものをここで聞かしていただきたいと思います。
  175. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 高等学校の新増設等につきましては、ただいま先生からお話がございましたように、生徒の急増に対応するためのものにつきましては、公立、私立ともに国庫補助の仕組みを昭和五十……ちょっと年次を忘れましたけれども、から実施をしておるわけでございまして、その精神に基づきましてこれまでも対応してまいっております。  これまでの状況で申しますれば、公立の高等学校の新設、それから私立の高等学校の新設、いずれも要請がありましたものについては全校補助対象として採択をするということができておるわけでございますけれども、今後ともその方向に沿って各都道府県の計画等十分聞きながら対応してまいりたい、かように考えております。
  176. 井上一成

    井上(一)委員 本来、教育を受ける機会の均等というものが広く叫ばれているわけでありますし、私は午前中も申し上げたように、成績が物を言うそういう社会というのですか、そういう評価ではなく、やはりがんばる子供たち、一生懸命に努力をする子供たち、そういう子供たちの希望をくじかすことのないように大いに気を配っていただきたい。そういうことが、広い意味では社会問題を引き起こすことのない一つの大きな要因になるわけですから、高等学校の過大規模校の解消策というものについて、小中学校と同じように努力をしていただきたい。もちろん、私学を含めての経済的な援助、補助ですね、そういうことも必要だ、私はこういうふうに思います。  重ねて、恐縮ですけれども、より一生懸命御努力をいただける御決意を、お考えをもう一度ここで確かめておきたいと思います。
  177. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 けさほどの先生からのお話につきましては、大臣からも基本的に賛成であるというお答えも申し上げたわけでございまして、私どもも大臣の意を体して個々の仕事に対応してまいりたいと思っております。  特に、高校急増の関係につきましては、大学、高校、それから幼稚園と、これから児童生徒あるいは学生数の急激な増減等が見込まれているという関係等もございまして、文部省の中にも、この急増、急減対策の省内連絡会を設けるということですでにスタートをしているということもございます。また、そういった中でも、先生御指摘の点等も含めまして十分検討してまいりたい、かように考えております。
  178. 井上一成

    井上(一)委員 続いて、私は、医療保険制度の改革に向かっての厚生省の取り組みの過ちを指摘しながら、質疑をいたしたいと思います。  厚生省は、医療保険における給付の見直し、御承知のように、医療保険本人の給付割合の改定――改悪です。一定の厚生省なりの、まだ案として提起をされたわけでありますけれども、これは本来、生きる権利というのでしょうか、人間の尊厳というのでしょうか、健康な社会人というのですか、健康な状態、さらには、すべての国民が健康で生きていくという大目標の中で、本人十割給付が組み立てられてきたと思うのです。これは長い歴史の中で、いろいろなかかわる人たちの努力でその枠組みがつくり出されてきたと思うのです。今回、財政再建、行革、いろいろな名目的観点というのですか、そんな中で、まさにこの枠組みを根底から崩そうとしているわけです。予算のバランスをクリアーするために、つじつまを合わすために厚生省はこういうことを提起されたのか、あるいはいろいろな問題を、個々の問題に対してその問題の根本的な解決に手を加えずに、全部ひっくるめて枠組みをつぶして、八割給付なんという新しい枠組みをつくり出そう。これは非常にむちゃな考え方で、全く発想としてよろしくない。そんな考え方で物事を進められると、これはまことに、これからの政治というのでしょうか、行政の仕組みは、生きている国民大衆の立場というものを無視して厚生省は物事を考えていく、そういうような感を受けるわけです。これは大きな間違いだ、こういう考えは深く、非は非として、厚生省は原点に戻ってこういう提案を撤回すべきである、こういうふうに思うのです。ここで厚生省の見解を問うておきます。
  179. 下村健

    ○下村政府委員 医療保険制度の改革につきましては、井上先生お話しのように、もちろん五十九年度予算をどういうふうに組むかというところが一つの問題意識ということではあるわけでございますが、これから先の医療費はどうなっていくかというふうな、ある程度中長期の展望という点も考え合わせて、今回八割給付というふうな、確かに従来の考え方からしますとかなり思い切った提案ということになろうかと思いますが、提案いたしたわけで中ございます。  長期的に考えてみますと、医療費、現在でも実績としては経済成長を上回って増加を続けているわけでございますが、一方、国民から、財政の負担能力という点から考えますと、このような状態が長く続いていくということになりますと、医療保険制度が崩壊するというふうなことも実は心配いたしておるわけでございます。したがって、制度を安定的に維持していくためには、医療費の伸びと負担能力との間のギャップにどう対応していくかというところが、私どものこれからの最大の課題であろう。しかも、その場合に、負担能力につきましては、臨時行政調査会の方で言っておられるような、西ヨーロッパ諸国よりもかなり低目に租税と社会保障負担を合わせたものをとどめるべきだというふうな御意見もあります。それらをあわせ考えまして、保険料の方は余り上げていかない、絶対にこれからも上げないでやっていけるかどうかということについては、まだいろいろ不確定な要素もございますが、そういう中長期の視点に立ちまして、医療費と負担能力の動向に対応して医療保険制度全体の改革を図っていきたいということで、今回のような案を考えたわけでございます。概算要求でございますから、いろいろ御意見を承りまして、医療保険制度としての持つべき機能は失わないように今後の運営を考えていきたいというふうに考えている次第でございます。
  180. 井上一成

    井上(一)委員 中長期展望の中で経済成長を上回る医療費の増、私は、そういう数字的な視点で医療行政をとらえてはいけないということを特に申し上げたいわけです。それは、景気の問題が左右して、そのことによって患者負担が増大していく、不況になれば不況になるほどさらに患者負担は増大していくのだというような論理と同じだと思うのです。いまお答えの中で、これは概算要求の中での一つの案としての問題提起だと。それは私もそうであろうといまのところは受けとめています。しかし、さっきも言ったように、そういうことで本来の医療保険の機能というものをなくしていってはいけない。むしろ、いまのお答えであった医療保険の機能を失わないという、医療とはどのような状態の中でどのように進めていくのか、まあ、病気にかからないように保健行政にもっともっと力を入れていかなければいけない面もあるでしょうし、あるいは、ひょっとして物の考え方に誤った考え方を持った人がごくごく一部いらっしゃったとしたら、その人の意識を変えていく、そういうことも、じみで時間がかかるのだと言われても、やはりそのことが大事である。だから、私は、大変御苦労が多いかもわかりませんけれども、そういうものを一つずつじみちに解決しながら本来の医療保険の機能を持続していくべきだと思う。これだけで厚生省は私の意というものも御理解をいただけたと思います。  どうしても今回のこの医療制度改悪、八割給付の改悪案、これは考え直すべきである。そして、広くいろいろな立場の方々の意見も十分に拝聴されて、もちろん国会でもこれは大きな議論になっているわけでありますし、速やかに厚生省の本来の医療とはかくあるべきだというその精神に戻ってほしいと、私は強く要望したいと思うのです。予算編成で大変苦労をなさっていらっしゃる、そのことも理解をしております。だからといって、こういう乱暴な、十割給付を八割給付にしてしまう、こんな乱暴なことをしちゃいけませんよ。このことが通れば、すべてこのような物差し、このような価値観で社会が仕組まれていくと大変なことになる。それこそ希望の持てる未来なんというものは実現しませんよ、この問題についてはどれだけ時間をかけても言い尽くせないわけで、基本的には、間違いだ、こんなことをしちゃいけないと強く戒め、かつ、厚生省のお考えを再度改めてもらう、このことを要望したいと思いますので、できれば重ねて厚生省のお考えをいただければありがたいと思います。
  181. 下村健

    ○下村政府委員 井上先生にもただいま御理解をいただいたように思ったわけでございますけれども、確かに、私どもの置かれている条件は大変厳しいわけでございます。その厳しい条件の中で、厚生省としてはいろいろ工夫をこらして今回の案を考えたつもりでございます。ただ、御指摘のように、医療保険制度の根幹にある意味では関係するような非常に重大な問題であるという点も、これもまた御指摘のとおりでございまして、それをなるべく短期間で国民あるいは国会の御議論含め合わせて決めていただかなければならぬというふうな、厳しいところに置かれていると私ども思っているわけでございます。したがいまして、厚生省としては、そういうことで私どもとしては考えられる限りの選択をしてみたつもりでございますが、非常に重要な問題でございますし、できる限り広く国民の皆様方の御意見を伺って、最終的にいい結論を得たいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  182. 井上一成

    井上(一)委員 厚生省はこれで結構です、  それでは続いて、私は、筑波研究学園都市の問題についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  この学園都市構想は、鳴り物入りというのですか、ロマンを含めて非常に大きな構想を打ち立てられたわけです。大体、町づくりというものは、どうして町をつくっていくか、一定の形態があるわけですね。この研究学園都市についてはどうも不自然なことがある。  その一点として、町をつくる場合には、人間の体で言えば目が必要であり、手足があり、そしてへそ、中心部がどこだというような、そういうことを考えると、この町づくりというものは、まさにその中心部を形骸化、空洞化さした、そういう中から町づくりがなされている感がするわけです。私は、作為的だとかそういうふうには理解したくないのですけれども、なぜそういう町づくりをやらなければいけなかったのか。どうしてそんな状態になったのか。その中心部がきっちりされないから、そこに住む人たちは不便でしょうし、あるいはいろいろな社会生活の中での必要な施設ということも完備されていかないわけですから、いろいろ個々の問題は指摘はいたしませんけれども、どうしてこういう町づくりになったのか、ちょっとその点についてまず聞いておきたいと思います。
  183. 杉岡浩

    ○杉岡政府委員 お答えいたします。  筑波研究学園都市に移転あるいは新設される国の試験研究機関あるいは教育機関等につきましては、現在ほぼ概成いたしまして、業務を開始いたしておる段階でございます。  それから、一部先行的に投資しなければならない道路、河川あるいは下水道、こういったものにつきましても、公共公益施設等につきましてもほぼ概成し、また、新しい施設でありますたとえばCATVのような新都市施設につきましても、いま現在一部稼働に入っておるわけでございます。  しかしながら、現在、ただいま井上先生の御指摘のございますように、この筑波研究学園都市はまだ建設の途上にあるわけでございまして、今後、そういった都心部の諸施設の整備あるいは都市諸機能の整備、あるいは民間の研究機関とかあるいは産業施設、そういったもののこれからの配置を待ちまして、さらにその都市を築成してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  184. 井上一成

    井上(一)委員 ことしの六月にある程度の施設が完備をされたということですね。やはり町づくりの常識的なあり方というものについての一つの考え方、取り組み方、中心部が草むらのままの状態であったとか、そういうことはちょっとおかしい。やはり中心部から町は外に広がっていくわけですから、なぜ中心部だけがそうであったのか、そういうことにしたのか、そういう点がもう少し答弁では明確でないと思います。それは、郵便局や警察、電電公社、そういうのももう完成をして、いまは一定の……。それでよくよく考えてみれば、その中心部に大きなビルが二つくられた。それなら最初からそういうビルが建設されるということであったのかどうか、あるいはそういうビルが建設されてからほかの住宅が建ち都市づくりが本来はなされるわけですけれども、その二つの建物といえば、一つは住宅都市整備公団ですね。公団のいわゆる全体の開発を進めていくための一つの現地拠点、これが一つです。もう一つが筑波新都市開発株式会社、この二つのビルがあるのです。特に、筑波新都市開発株式会社がどういう会社でどういうことをやっていこうとしているの」か、あるいは運営の実態はどうなのか、そこらについて、私から先に指摘しましょう。  一つは、これは筑波研究学園都市の管理運営を目的としてつくられた会社だ。天下りという表現が悪ければ、役人がその役員になって、公団なり県なり周辺の自治体が出資をしてつくった第三セクターである。中身は自治体から安い土地を、安い土地というか安い賃料で土地を借りて、そこにビルをつくって、そのビル貸す場合にはべらぼうな値段で貸している。いわば一つの中抜きみたいな形で、高い家賃で、高い保証金でそこに入った商業者は、おのずから、商売を成り立たせていこうと思えば、商品が必ずしも高いという意味じやないけれども、一定の利潤がそこにかぶさってくるし、極端を言い方をすれば、労せずしてみんなそこの都市における市民の生活の中から上前をはねて、ごっついビルの中でのうのうとやっているじゃないか、それが筑波新都市開発株式会社ではないだろうか。あげくの果てには、ホテル業務なんかも含めて利潤が予想されるであろうというところは会社の運営管理下に置いて、余り金が入ってこぬ音楽堂だとか文化ホールなんかは自治体に。まあそれは建設費はこちらが持って向こうに供与している。しかし、運営費だってはかにならないし、やっていることがどうも不自然である。だから、その新都市開発がどれほどの地代で借りて、そこへどれほどの額で物を建てて、坪幾らで貸しているんだ、保証金はどれだけ取ったのか、年間どれだけの家賃が収入として計上されるのか、そういうことについてひとつ教えていただきたいと思います。
  185. 久保田誠三

    ○久保田参考人 お答えいたします。  先生の御質問に直接お答えになっているかどうかちょっとわかりかねますけれども、たとえば今度できました、六月開業しました筑波センタービルの一つの広場の地下のところを利用しています、いわばインナープラザということを例にして御説明させていただきますと、そのいわゆるインナープラザ部分、いわば店舗、モールがあるところでございますが、この部分につきましては、筑波新都市開発株式会社が、桜村から筑波センター広場の一部につきましてセンター広場条例に基づきまして占用の許可を受けて、間仕切りや設備等の工事を行いまして、それで商業施設として整備いたしまして、テナントに賃貸いたしているわけでございます。  そこで、新都市開発株式会社から聞きましたところでは、この間、間仕切り、設備等の工事費や、それからさらにテナント募集などのために投下した資金が約二億二千万円ほどかかっていると聞いております。また、桜村からのこの広場占用の会社の払うべき占用料は年間二百七十五万円でございますが、今後この施設の賃貸しを継続していくためには、人件費や事務費や維持修繕費、運営費等が必要でございまして、これに、先ほど申しましたようにすでに投下いたしました資金に対応いたします設備などの減価償却費とか、それからさらに店舗の空き家が生じた場合の空き家引当金などを換算いたしますと、費用などの合計はざっと六千万円弱になるというような話を聞いております。  また、一方収入は、いろいろと当初計画いたしましたけれども、実際その賃貸料、敷金等の運用益を含めまして六千万円を若干上回る程度ということに聞いておりまして、その間大きな利益は出る見込みではないというようなことでございます。  なお、賃貸料等につきましては、一般にこのインナープラザ部分だけではなくて、サブショッピングセンターとかいろいろございますが、そういう面も、周辺のいろいろな事例がございまして、そういうものと比較いたしましても、大体相場が相似通っているということで聞いておりまして、相応のものではないかというように私ども考えているわけでございます。
  186. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、私が承知していることを少し申し上げておきましょう。  いろいろ問題はあるわけですが、学園センタービルの総工費はどれくらいで、その建設資金はどういうところから資金手当てをされたのか。それから、地元自治体との、音楽ホールの問題がいま出ましたけれども、建物の建設に絡んで、地元自治体に債務負担を負わしていないかどうか。さらに、資金手当てをするために店舗を――私の調査では、千四百三十二平米の店舗は一たん桜村に、自治体に引き渡して、これは立てかえ施工で、十年据え置きの債務負担行為で建設ができるわけなんですけれども、それの事実関係はそちらの方で明らかにしてほしいと思うのですが、この店舗ビルについての第三セクター、いわゆる新都市開発は、一平米を百六十円で地元自治体から二十年契約で借りている。平米百六十円、これは駐車場に貸すぐらいの地代だと僕は理解するわけですが、千四百三十二平米というと、これは年間約二十三万ぐらいになるのじゃないですか。これは二十年契約で二十三万ぐらいで借りているわけです。  これまた私の承知している範囲では、第三セクターですね、この新都市開発は、この店舗を、証金が坪百三十万円、家賃が坪一万円以上でいろいろな企業に貸しているということです。保証金で吸い上げたと言ったらおかしいけれども、預かった金は、一説には五、六億を上回るのではないか。年間の家賃収入も、いまも六千万云々で、これは五千万を下らないわけです。保証金の金村等も含めると、九千万円以上、一億に近い金が労せずしてこの第三セクターに転がり込んでくるわけですね。私は、そういうあぶく銭というのですか、ぼろい金を集金する、そういう一つの拠点に中心部がなってしまった、これは非常に不可解であります。  私は、きょうは問題を提起して、これについていまお答えがいただけるならば結構でございますし、時間的な猶予が必要であるなら、そちらの方でこういう点について具体的に資料を提出してもらって、その上に立ってさらに質問を続けたい、こういうふうに思います。
  187. 久保田誠三

    ○久保田参考人 最後の、先生いまの桜村の広場についての占用料の平米当たり百六十円の点につきまして、先ほど私申しましたのはそれに関連して申したわけでございますが、その占用料は、いまの面積に対しまして、結局全体で年間二百七十五万円になるわけでございます。しかしながら、その施設を商店、店舗等として経営していくためには、やはりそのままではなくて、地下部分ですから、間仕切りや設備等の、店舗等としての必要な設備工事等をしなければなりません。そういうものとか、テナント募集等の行為とか、諸経費がいろいろとかかるわけでございます。そういうことをいろいろ計算しますと、私、先ほど申しましたように、なるほど占用料は比較的お安く借りているのではないか、比較的というか、相応に借りていると思いますが、そういう経費が六千万円弱になりますので、したがいまして、片方の賃貸料、敷金等の運用益を含めてこれを計算をいたしますと、会社から聞きましたところ、いまの六千万円を若干上回る程度というように聞いておりまして、そうなりますと、その間大きな幅はなくて、利益がありましても相応の程度にとどまるのではないかというような報告を受けているわけでございまして、その点重ねてでございますが、答弁させていただきたいと思います。
  188. 井上一成

    井上(一)委員 いま私は、月二十三万を年間と言ったわけですね。これは月二十三万、年間二百七十五万、どっちにしても微々たる金で借りて、あなたが言われるように、じゃ、どれだけ資本が投下されて、そしてその資金手当てはどういう資金が手当てをされたのか。そして、どれだけの費用がそこに投じられて、あなたがおっしゃるように間仕切りも含めて、そしてそれが、いま貸している値段が妥当な適正な価格だとあなた方はお考えになるのか。私は疑問がある。きょうは余り時間がないので、私は疑問があるから1月の二十三万が年間にしたら二百七十五万、それは確かに二百七十五万になるわけですね。安いのですよ。そういうような年間二百七十五万で五千万も六千万も利益が上がってくる、そういうことがいいのかどうか。それはだれにしわ寄せをしているのだ。そんな第三セクターが必要なのかということ。本来は、第三セクターというのは、そういう利潤なんというものは考えずに、もっとそれは店をやられる、商売をしていらっしゃる方、あるいはそのことによって消費者に還元をしていくべきであって、中心部を独占して――私はきょうはこれは委員長にお願いをして、いま指摘をしたそういう問題をできるだけ早い時期に私の方に資料で報告をしていただきたい。
  189. 久保田誠三

    ○久保田参考人 先生のおっしゃいましたことにつきまして十分調査いたしまして、また、先生のおっしゃった御趣旨に沿った指導等も会社に対していたしたいと思いますが、先生のお申し越しの点につきまして調査しまして、御報告にまた参りたいと思います。
  190. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、住宅都市整備公団さん、結構でございます。ありがとうございました。  続いて、私は前回の当委員会で質問が留保された、いや、むしろお答えがいただけなかったので、きょう引き続いて質問を続けます。  水産庁、お見えでしょうか。――せんだって、私は、アメリカの二百海里経済水域の宣言について質問をいたしました、これは大変なことなんですよと。そのことについての認識が農水省では不十分であったわけです。アメリカに続いて必ず追随をする国が出てきますよ。先月二十九日の当委員会ですね。インドネシアの問題も指摘をしました。三十日にインドネシアは、侵犯に重罰を科す、こういうことが現実に起こったわけですね。私は前日にこの見通しを指摘したら、全くもって農水省はそんな見通しの認識を否定されました。このこともあわせて、ここで二百海里経済水域宣言のアメリカの身勝手な今回の対応についての農水省の見解を改めて問います。
  191. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 お答え申し上げます。  先般も私から漁業問題だけに限って御答弁いたしましたところ、先生から、それは認識が不十分である、もっともっと問題は深刻であり広範であるという趣旨の御指摘をいただいたわけであります。それから、ただいま御指摘ございましたように、御質問の直後にインドネシアにおきまして二百海里の宣言に基づきます国内法制ができたということが報じられたわけでございます。  先般、水産だけについてお答えしておしかりをいただいたわけでありますが、前回も申しましたように、二百海里法制自体につきましては、今回のアメリカの一方的な宣言につきましては確かに各種の問題があるいはあるかもしれませんが、水産につきましては、経済水域という形で設定した国が、あるいは漁業水域という形で設定した国がすでに数十カ国になっております。それに基づきましてそれなりの対応をし、漁業協定を結び、あるいは漁獲量の割り当て交渉等を通じまして、従来日本の権益が守られるように努力をしてきたつもりでございますが、先生の御指摘をさらに踏まえまして、また、アメリカがそういった二百海里の経済水域を一方的に宣言したということが、今後ほかの国にもあるいはさらに波及する可能性が強いとも思われますので、そういった動きにも十分配慮を払いながら、御指摘の線に沿ってさらに一層の努力をしてまいりたいと思っております。
  192. 井上一成

    井上(一)委員 水産庁長官、ちょっと念のためにお尋ねしますが、やはりどうも認識をしっかりとお互いにしなければいけないので、経済水域と漁業水域との基本的な違いというのはどうとらえていらっしゃいますか。
  193. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 私、御答弁で経済水域と申しているときには、おおむねどこの国も大体二百海里でやってきているわけでありますが、その二百海里の指定された水域の中におきます海底あるいは海底の上の生物資源を含めました天然資源について、設定した沿岸国が排他的な権利を持つというのが経済水域だというふうに認識をしておるわけであります。その排他的な権利を主張するものが漁業だけに限られた宣言といいますかそういったことの場合に、これを漁業水域というふうに私ども認識をしておるわけでございます。
  194. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカのエコノミックゾーンの設定は、どういう理由でどんな思惑でアメリカは設定をしたか宣言をしたか、水産庁はどういうふうに受けとめていますか。
  195. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 十何年間かかりまして、いわゆる海洋法会議というものが、アメリカも入った形で、一方のプロモーターとして長年月海洋法条約草案の会議が開かれておりました。昨年多くの国の賛成のもとに一応草案ができ上がったわけでありますが、アメリカはある意味ではそのプロモーターであったにもかかわらず、その中のたしか鉱物-私、直接の担当ではなくてそのときの状況を詳しく存じておるわけではありませんが、聞くところによりますと、その条約草案の中の海底資源の開発に関する条項について、沿岸主権国の主権が侵されるということを理由にしてその署名を拒否し、さらに、その草案によりますと、ちょっと詳しく存じないのでありますが、一定期間のうちに署名をしないと、鉱物資源の開発につきまして主権国としての権利の発動ができないような条文が鉱物資源のところにあるということで、署名をしなかったわけでありますから、それに先んじて一方的に宣言をしてしまったというふうに、いきさつとしましては私理解しているわけでございます。
  196. 井上一成

    井上(一)委員 何かわかったようなわからぬような非常にややこしいことですね。  では、領海というのはどういう位置づけをされますか。
  197. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 私どもの認識では、当該国ごとに宣言をされた水域において、無害通航権というものが別途ございますが、すべてのことにつきましての当該国の主権が及ぶ範囲内、それが領海であるというふうに理解をしております。
  198. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、漁業水域は。
  199. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 漁業水域といいますのは、これも大部分の国が二百海里と設定しておりますが、設定された区域の中におきます漁業資源につきましての排他的な権利を当該沿岸国が持つ。したがいまして、現象的には、ほかの国がそこの水域に入って魚をとらせてもらう場合には、当該宣言した国の許可といいますか、そういったものが要るというふうに理解しております。
  200. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、経済水域は。
  201. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 漁業のみならず、海底の資源までを含めました天然資源全体につきまして、設定した沿岸国の排他的な権利を沿岸国が行使する。したがいまして、私も鉱物の方は専門ではございませんが、宣言をしている他国の二百海里の中で、海底の鉱物資源等について工事をする、あるいは採掘をするというような場合には、当該国の許可あるいは料金といいますか、そういったものを支払わせるということになるのではないかと思います。
  202. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、漁業水域と経済水域との権利関係の違いは。
  203. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 設定した国の主張の範囲というものは、権利を主張する範囲が、片方は漁業資源だけでありますし、片方はそれも含めて鉱物資源等を含めた経済資源全体ではなかろうかと思います。
  204. 井上一成

    井上(一)委員 こんなことで時間をとろうとは思っていなかったのですが、確かに領海は領土並みなんですね。主権の及ぶ範囲なんですよ。それは経済の面だけではなく、犯罪も含めてすべての主権がそこに及ぶわけです。漁業水域というのは管轄権なんですよ。漁業資源に対する管轄権、それは国内法で入漁料を取ることも可能であり、いろんなことがあるわけなんですね。そこには主権というものはおのずからないわけなんです。管轄権と主権とは違うわけなんです。ここはしっかりとね、この管轄権の中には主権という権利は生まれてこないわけですから。  ところが、経済水域というのは、資源も含めた中で、地下資源、海底資源も含めた中で、一つは資源領海、実質的には領海と変わらないというふうに思う。経済水域という観念においての権利が生まれるわけで、主権的権利とでも言えると思うのです。僕はここが大きな違いだと思うのです。こういうことが許されるのかということになるわけで、排他的経済水域だとかいろんな言葉を使われますけれども、これを日本はずっと反対をしてきているのですよ。海洋法には成文化されているわけですけれども、第三国では反対もありまた賛成もあり、いろいろ世界それぞれの国の立場、国益を考えた対応をなさっているわけですけれども、日本は少なくとも反対をしてきている。アメリカは、その海洋法の批准もせぬと、それを一定の手続を乗り越えて経済水域宣言をしたわけで、わがままきわまりないと、私はそういうことなんです。  たとえば、穀物協定で言ったように、アメリカとソ連、いわゆる東西の二大超大国で、世界の経済市場あるいはあらゆる問題の国際的な秩序が二大国で利害を調整しながらつくり上げられていくということに非常に問題があると私は言った。それを、やはりれっきとした主権国家日本はアメリカに物申さなければいかぬ。こんなことを言わなければ、農水省の役割りって、仕事って何ですか。穀物のときにも申し上げました。いままた私は魚の問題で指摘をしたわけです。  ソ連は一体どうなんでしょうか。経済水域を宣言した、そういう情報を私は得ているわけなんです。ソ連は経済水域を設定したと聞いているが、農水の皆さんの認識、そしていま指摘をしたアメリカの今回の身勝手な対応、それに対する政府の見解、これはぜひしっかりと聞いておきたい、こう思います。
  205. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 まず、第一の、ソビエトが経済水域を設定したかということでございますが、私どもはそのような情報をまだ得ておりません。したがいまして、水産庁は、設定しておるとは現時点では思っておりません。  それから、アメリカがこの二百海里をことしの春先にやりましたときに、外務省から聞いた話でございますが、事前に、こういうことについて何かコメントがないかという通知があって、外務省の方からも、海洋法条約の全体の趣旨に沿うようなものでなければ困るという趣旨のコメントをしたというふうに外務省から伺っております。
  206. 井上一成

    井上(一)委員 私は、後で行革の委員会で質疑があるので、残余については留保して、次回の委員会でぜひ質問を続けます。  それじゃ、いまエコノミックゾーンが国際社会において海洋秩序として定着しているとあなた方は考えられるのか、定着していないと考えられるのか、これはどうですか。
  207. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 定着という言葉はいろいろ見方があるわけでありますが、私の率直な感じを申させていただきますが、五十二年前後から次第にそういう国がふえてきたということの事実からいたしますと、世の中の流れが次第にそういう方向に向かっているのではないかというふうに実感としては受けとめているわけです。
  208. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、わが国はどうするんだ。世の中がそういう定着の動きであるなら、わが国はそれに対してどう対応していくのか。
  209. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいまの先生の御指摘につきましては、現在、これをわが国としてどうするかということで、外務省から各省にいろいろな検討のための呼びかけがあるのが現時点の状態でございまして、私の立場でこれをどうするかということを言うあれはなかなかないわけでございます。ただ、水産庁の立場として申し上げますれば、そういった形で外国から次第に締め出しがきつくなるという形の面では決して好ましいことではない、しかし、それが一方的な権利として宣言されるということであれば、むしろそれを前提にしていかにして従来の漁業に関する権益を守るための努力をするかというのが、私どもの務めではないかと思っておるわけでございます。
  210. 井上一成

    井上(一)委員 大国意識まる出しのそういう国際秩序をつくり出していこうというアメリカの取り組みは、私は頑として納得が得られないと思うし、農水省が時の流れだなんということでこのままに乗せられていくということなら、農水の仕事なんてそれなら要らぬですよ。だから、穀物にしても魚にしても、もっと真剣にわが国の国益、わが国の食糧をいかに安定供給をさしていくか、いろいろな意味でもう少し考えを深く持ってほしい。  何か、午前中私の質問でほかの委員会に水産庁長官は出席ができないというようなことを聞いたんだけれども、僕は午前中あなたの出席を要求していない。だから、あなたで答弁ができないというなら、これは大臣に出てもらう。前回、この問題を含めて、穀物の問題も含めてあなたが答弁できないからということでこれは留保したんですよ。きょうまたあなたの限界、確かにそうだと私は思うのです。水産庁長官の立場ですべては回答できないと思います。  これは委員長、特にお諮りをいただいて、前回もそうであったし、きょうもまたそういうことですから、私はいつの日ということは決めません。だから、十二分に農水の方でいまの状況を踏まえた中での対応、きっちりと統一された答えがいただけるようにお願いをして、私はこれで終えます。
  211. 古屋亨

    古屋委員長 春田重昭君。
  212. 春田重昭

    ○春田委員 私は、都市の一般、ごみの廃棄物処理対策などについてお伺いいたします。御答弁いただく方は、時間が、ございませんので、ひとつ簡潔によろしくお願いしたいと思います。  まず、環境庁にお伺いいたしますけれども、ごみの処理施設における大気、水質の有害ガス、物質の規制をしているわけでございます。有害ガスや物質は多くの種類があるわけでございますけれども、本日は特に、近年塩ビ系の製品から出てくる塩化水素の問題、それから、水銀を使っている乾電池、テープレコーダー、カメラ等から出てくる水銀の問題、これにしぼって御質問を展開したいと思います。  まず、許容限度についてお述べをいただきたいと思います。
  213. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 お答えいたします。  一般廃棄物の焼却施設は、水濁法上の特定施設として排水規制が行われているわけでございます。お尋ねの水銀につきましての国で定める排水基準でございますが、水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物では〇・〇〇五ミリグラム・パー・リットル、それから特に毒性の強いアルキル水銀化合物につきましては検出されないこと、かように定められているわけでございます。
  214. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えをいたします。  大気汚染防止法のもとにおきましては、火格子面積二平米以上または焼却能力が二百キログラム・パー・アワー以上の廃棄物焼却炉がはい煙発生施設に指定をされているわけでございまして、排出基準値は七百ミリグラム・パー・立米でございます。
  215. 春田重昭

    ○春田委員 塩化水素は、大気に排出される許容限度が七百ミリグラムというのは四三〇ppmでございます。水銀は排水の出口で〇・〇〇五ppmとなっております。  それで、まず、塩化水素の問題についてお伺いいたしますけれども、塩化水素は、諸外国、特に西ドイツは五〇ppmと聞いております。台湾では八〇ppm以下である。このように国で一元化されております。わが国では、大都市の周辺の衛星都市ではほとんどが五〇ppm以下ないし東京のある区におきましては、新しい焼却炉につきましては二五ppm以下、こういう状況になっているわけでございます。昭和五十二年大気汚染防止法の改正によりまして、四三〇ppmになったとはいえ、諸外国、そして大都市、衛星都市の基準から比べれば非常に緩やかな規制となっております。  私は、こうしたいわゆる日本全体が四三〇ppmという形でいま規制されておりますけれども、こうした衛星都市、大都市ではそうした厳しい規制をしている。諸外国の例をとってみても、もっと厳しい規制をすべきじゃないかと思いますけれども、局長の御答弁をいただきたいと思います。
  216. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  確かに、先生御指摘のように、排出規制というのはできるだけ厳しいということが望ましいという御主張もわかるわけでございますけれども、廃棄物焼却炉の塩化水素の排出問題につきましては、大気環境に与える影響等を慎重に専門家に御検討いただきまして、五十二年の六月に現在の基準を設定したものでございます。御案内のように、廃棄物焼却炉の煙突から出て着地する段階においてどのぐらいの濃度になるかといったような要素も踏まえて、専門家によって御判断をいただいたものでございまして、そういうような状況で大気環境中の塩化水素濃度がどういう状況にあるかということについては、一般環境について私どもデータによって判断をいたしているわけでございますが、現在の段階では、今後とも一般環境中の濃度の監視をするというようなことを通じて、大気汚染の防止に努めてまいりたいというように考えているところでございます。
  217. 春田重昭

    ○春田委員 したがって、現在の体制でいけば、たとえば、隣接市町村で厳しい公害規制をする市町村はそれなりの対応がありますし、いわゆる緩やかな規制をすればそれなりの対応で、当然住民間のトラブルが境界線で起こってくるわけですね。そういった面で、私は、いわゆる全国一律に一元化することがむずかしかったならば、たとえば、公害発生源が非常に多い企業や工場地帯においてはこれだけのppm、そういう工場、企業等がないところはいわゆるこれだけの規制であるといったように、やはり現実に沿った規制をすべきじゃないか、こう思うわけでございます。  現在、地方自治体はそういう形で上乗せ規制をしているわけでございまして、これは住民との間で協定しているわけでございますけれども、こういった事実を環境庁としてはどう認識なさっているわけですか。
  218. 林部弘

    ○林部政府委員 いま先生の御指摘の問題につきましては、自治体の廃棄物の処理施設から出てまいります塩化水素の濃度というものは、もう先生御案内のように、ごみの中に含まれます原因物質の混入率というものは必ずしも定常状態ではないというような問題もございますし、また、それぞれの施設がどのようなところに立地されているかというようなこともございまして、したがって、全国一律の排出基準を私どもは定めているわけでございますけれども、地域的な問題につきましては、それぞれの地域の自然条件あるいは社会的な条件というものを判断いたしまして、都道府県がそれぞれの立場で上乗せ規制のようなことをやっているという状況であるというように理解をいたしております。
  219. 春田重昭

    ○春田委員 要するに、環境庁の存在というのは、国民の立場から考えれば、公害防止をしていくということが環境庁の最大の役目なんですね。目的なんです。その環境庁が、要するに地方自治体が上乗せしているからそれに任せればいいというような考えでいけば、私は余りにも身勝手過ぎるのじゃなかろうかと思うわけでございます。人口過密地帯が多く、公害発生源が多いわが国としては、やはり環境庁がもう少し厳しい姿勢を打ち出してもいいのじゃないか。五十二年当時から考えて、相当生活文化も変わってきておりますし、社会、産業等も相当変化しているわけでございます。そういった面では、この塩化水素の基準の見直しというものは、私は早急になさるべきじゃなかろうかと思っておるわけでこざいまして、その対応を私は要求するわけでございます。  次に、水銀の問題でございます。水銀を使う乾電池の量が非常に多くなってきておりますけれども、過去に比較してこの生産、販売の実績はどうなのか、これは通産の方からお伺いしたいと思います。
  220. 野口昌吾

    ○野口説明員 御説明申し上げます。  乾電池でございますけれども、五十七年私どもの機械統計によりますと、約二十六億個生産をされております。これを十年前、五年前と比較いたしますと、四十八年、十年前で十四億個、伸び率にいたしまして七八%伸びております。五年前では十九億個になっておりまして、三四%増でございます。  ただ、アルカリ電池につきましては非常に伸びが、需要も多うございましてふえておりまして、二十六億個のうち、五十七年ではまだ三億七千万個でございますけれども、十年前に比較いたしましてすでに十倍以上の伸びになっております。
  221. 春田重昭

    ○春田委員 ただいまの御説明があったように、水銀を使用する乾電池、全体で二十六億個ですか、したがって、水銀の約四〇%を占めると言われております。しかも、水銀が一番多いアルカリ電池は十年前に比べて十倍にふえている、こういう報告です。  こうした乾電池は、家庭用ごみとして焼却場に送られて、一般的には他のごみと一緒に混合焼却されているわけです。したがって、ここでさまざまな問題が発生してきているわけです。  この問題解決のためには、まず乾電池をいわゆる混合焼却しないで、事前に回収する方法が考えられるわけでございます。その方法として、これだけ乾電池の個数が多くなってきたので、企業側に回収させるべきじゃないかという意見、また地方自治体が分別収集すべきであるという意見、また混合収集して焼却場で分別する、こういうような区別の仕方があるわけでございますけれども、これについて厚生省並びに通産省の御見解をお伺いしたいと思います。
  222. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 お答えを申し上げます。  いまお話しの乾電池でございますが、大変ふえてまいっておるということでございます。ただ、私ども現段階におきましては、一般のごみと一緒に処理をするということで、現時点でとらまえる限りにおきましては、さして問題はないのではなかろうかと考えております。ただ、今後もこういう勢いでどんどんふえてまいりますということになりますと、恐らく将来相当の問題になるのではなかろうか。そういうことで、私どもも鋭意検討を始めておりますし、来年度予算ではそれに関連した調査費も要求をしておるという段階でございます。
  223. 野口昌吾

    ○野口説明員 御説明申し上げますが、水銀の使用量につきましてちょっと補足をさせていただきたいと思います。  実は、最近のはやりでございますけれども、軽薄短小ということが乾電池についてもございまして、単三、単四とか非常に小さいおもちゃとかテープレコーダー、それからヘッドホンのウォークマンとかそういうところに使われているわけでございますけれども、水銀の量は統計上、現在の時点では総量で約百十トン程度の使用量に全体でなっております。このうち約五十数%が実は輸出に回ってしまっております。同時に、私どもは、業界に対しましては、水銀というものの特性にかんがみまして、できるだけ水銀の使用量を減らすようにということで、業界もその辺につきましては、経済的な価値も含めまして少量化の努力をいまいたしておるところでございます。  それで、廃棄物の処理の仕方でございますけれども、現在は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等によりまして一般廃棄物として扱われておるものですから、地方自治体が処理しているのが実情でございます。
  224. 春田重昭

    ○春田委員 厚生省にお伺いしますけれども、現在問題が起こってないということでございますが、現在問題が起こっているんです。私は非常に認識が甘いんじゃないかと思うのですけれども、これが厚生省としては、今後ふえてくれば問題になるかもしれないけれども、現在はそう問題ではないということでございますが、これは要するに、分別収集する必要もない、いわゆる混合焼却でも十分いまの焼却炉ないし排ガス、排水処理で対応できるというお考えですか。
  225. 小林康彦

    ○小林説明員 お答えいたします。  ごみの焼却炉から出ます排水につきましては、先ほどお話ございました水質汚濁防止法で規制を受けております。現在の焼却炉から出ております排水につきましては、この基準を十分満足しておりまして、現在の技術で基準に対応できておるというふうに考えております。
  226. 春田重昭

    ○春田委員 基準値〇・〇〇五ppmはいいんです。いわゆるその基準値を守らんがためにその処理の過程の中でいろんな問題があろうと私は思っておるわけでございます。その問題はこれから指摘したいと思います。  環境庁にお伺いいたしますけれども、水銀は水質汚濁防止法では先ほどおっしゃったように排水のいわゆる出口で〇・〇〇五ppmということで規制されているわけでございます。ところが、水銀は有害ガスでもどんどん煙突から出てくるわけですね。ところが、現在の大気汚染防止法では四つのガスが規制されておりますけれども、水銀を初め有害物質等は全然、たとえば重金属等の亜鉛とかクロムとかいうものは一切規制されてないわけでございます。  私は、特にここで、水銀が最近そういう形で非常に多くなってきている観点から考えてみても、水質だけの規制ではなくして、いわゆる煙、排ガスの方でも規制すべきでないか、時代の変化とともにやはり見直すべきじゃないか、こう思っておりますけれども、局長とう思いますか。
  227. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  確かに、御指摘のように、現在大気汚染防止法のもとでは排出ガス中の水銀の規制は行っておりません。ただ、一般環境大気中の水銀の濃度につきまして、現在までの測定の事例から判断いたしますと、世界保健機構、WHOが一つの判定条件、十五マイクログラム・パー立米というものを示しているわけでございますが、そこと比べて非常に低いレベルという状況が続いておりますので、現在のところはただちに規制措置を講ずる段階にはまだ至っていないのではないか、そういう理解でございます。
  228. 春田重昭

    ○春田委員 私は、この問題につきましては、将来問題を含めて十分検討する必要があるのではなかろうかと要望しておきます。  次に、若干技術的な問題も含めまして、有害ガスと有害物質等を除去する処理施設、排水、排ガス規制でございますけれども、この問題についてお伺いしたいと思います。  先ほどから私から言っているように、大都市及びその周辺の地区では、住民の健康管理また住民との協定等で塩化水素が相当厳しく規制されているわけでございます。並びに重金属等の有害物質等も厳しい規制をしております。そのため、煙を洗ういわゆる洗浄法として、乾式と湿式という二通りあるわけでございますけれども、乾式では塩化水素がある程度除去できる。国の四三〇ppmであれば十分除去できるわけでございますが、特に地方自治体が厳しくやっている五〇ppm以下というような地域では乾式では間に合わないし、また乾式では重金属の除去はできないわけですね。したがって、重金属等の有害物質等はいま煙となって野放しとなっている、こういう現況になっているわけでございます。  したがって、この塩化水素の厳しい地方自治体では、洗浄法としてはほとんどがいわゆる湿式の洗浄方式が使われているわけでございますけれども、こうした地方自治体がどれくらい全国的にあるのか、厚生省は把握なさっておりますか。
  229. 小林康彦

    ○小林説明員 お答えいたします。  ごみの焼却処理設備につきましては、炉の種類、処理能力等の把握は行っておりますけれども、構造の細部にわたりましての実態調査を行っておりませんで、お尋ねの湿式方式を採用しています数については正確には把握をしておりません。
  230. 春田重昭

    ○春田委員 今後把握する、そういう必要性を感じませんか。
  231. 小林康彦

    ○小林説明員 今後構造基準の見直し等の時期には実態を把握をして、基準等に反映さしていきたいというふうに考えております。
  232. 春田重昭

    ○春田委員 私は、この問題につきましては早急に実態の調査をしていただきたい。私の調査の段階では、全国で、大阪府、これは条例がございますからほとんど湿式でございます。東京でも武蔵野、三鷹、杉並と、それからこの辺の神奈川等でも川崎や横浜、それから九州は福岡、そして広島、それから兵庫県等でも相当やっております。それから北にいきますと群馬県、千葉県等でもやっております。全国で二十四カ所程度こういう湿式を使っているということで、私は資料を持っておるわけでございますけれども、どうか厚生省でも早急に調べていただきたいと思うのです。  ところで、専門家の間では、少なくとも大都市のいわゆる焼却炉、すなわち日量五十トン以上の焼却炉におきましては、先ほど言ったような理由からいわゆる乾式では非常にむずかしいので湿式を採用して、そして有害ガスや有害物質を完全に除去すべきであるという意見があるわけでございます。  そこで、湿式の洗浄方式を見ると、これは煙だけじゃなくして廃液が出てくるわけですね。この廃液が昭和五十年の水質汚濁防止法で有害物質の規制がなされたことになります。先ほどの水銀が〇・〇〇五ppmというのがこの中に含まれるわけでございまして、その他重金属等のいわゆる有害物質等もそれぞれ規制されているわけでございます。ところが、近年、この水銀が非常に使用量が高くなってきた、いわゆる焼却炉で処理する水銀の量が非常に多くなってきたということで、この除去が大きな問題となっております。  少なくとも、先ほどお話あったように、現在は混合収集して混合焼却しているという実態でございます。したがって、水銀の量が非常にふえてくるということで、いわゆる排水処理の入り口では、水銀の量が、見方にもよろうかと思いますけれども、専門家から言えば五ないし三〇ppmあると言われているのです。したがって、その入り口の段階で五ないし三〇ppmの水銀を処理して〇・〇〇五ppmに抑えるということは至難のわざであり、大変な問題です。  そこで、この水銀除去の処理方式としては、従来、キレートの樹脂によってやる方法、また、硫酸響土による凝集沈でん方式、さらに、この硫化ソーダを追加してキレート樹脂でろ過する方式、それからフェライト方式、こういう方式が現在は利用されているわけでございます。  ところで、私が指摘したい問題は、この非常に多くなってきた水銀の量、それを除去するためには、単なるキレート樹脂方法、またいわゆる硫酸響土だけの凝沈方式では完全に除去できない、すなわち〇・〇〇五ppmを、排水を出すことができないということで、最近は硫化ソーダを使っている、しかも大量に使っているという焼却場が多くなってきているわけでございます。  そこで、この硫化ソーダでございますけれども、これは御案内のとおり、硫化水素ガスを発生いたします。この硫化水素ガスというのは、いわゆる労働安全衛生上、有害物質ということに指定されております。この硫化水素というものは、七〇〇ppm以上で即死の状態、一〇〇ppmで意識が不明になるというくらい、いわゆる猛毒性を発する硫化水素でございます。  そこで、労働省としては、その取り扱い等、十分なる指導をなさっておりますけれども、非常に事故等が近年多くなってきております。そこで、五十五年から五十七年の間に、硫化水素による事故等が報告されておりますけれども、その被災状況を簡単にお述べいただきたいと思います。
  233. 福渡靖

    ○福渡説明員 お答えをいたします。  昭和五十五年から五十七年まで三年間で、ごみ処理場における硫化水素中毒というのは二件発生しております。それから、屎尿処理場においては六件の硫化水素中毒が発生しておりますが、これらの災害の発生原因というのは、硫化水素が原因ではございますけれども、いずれも有機物の腐敗によって発生をしたものであるというように把握をしております。
  234. 春田重昭

    ○春田委員 いま労働省から発表があったのは、有機ガス、有機物の腐敗によって硫化水素が発生した、その事故である、こういうことでございますが、いずれにいたしましても、この清掃工場以外でも、硫化ソーダを扱うことによって硫化水素が出てくるということで、企業等でも死亡者が出ている実例はあるわけでございます。したがって、有機物の腐敗による硫化水素ガスの発生もあるでしょうけれども、この硫化ソーダの取り扱いいかんによっては、硫化ソーダが酸性の水溶液と化合したら大量の硫化水素ガスを発生するわけですね。現に、あるところでは、すでに第一沈でん槽の中では七〇〇から八〇〇ppmの硫化水素ガスが発生しているという焼却場があると言われているのです。したがって、硫化水素ガスは、労働省としてもその辺を非常に重要視して、かなりその取り扱い等につきましては法改正されておりますけれども、この硫化水素ガスがタンク内や管等でたまっている、そして点検のとき、一歩扱いを間違えれば、あの彦根市のような事故となるわけです。  そういった硫化水素の出る非常に危険きわまりないこの硫化ソーダにつきまして、現在、焼却場として使っているところが非常に多いわけでございますけれども、厚生省は、こうした事実をどうとらえておられますか。
  235. 小林康彦

    ○小林説明員 お答えいたします。  お話しのような硫化ナトリウムを使いました処理を使っております焼却工場が現在存在しておるということは承知をしております。ただ、この方式を採用いたします場合には、その処理過程において発生いたしますガス対策も含めて措置がなされているわけでございまして、現在特別の問題が生じているというふうには考えておりません。
  236. 春田重昭

    ○春田委員 現在は事故が起きてないからそれでいいというような考え方は私は誤りだと思うのです。現実、この硫化ナトリウムを使いソーダを使って、非常に危険度が高い、においも非常にきついということで、焼却炉がとまっているところもあるのですよ。知っていますか。
  237. 小林康彦

    ○小林説明員 お話しのように薬品を使ったためにガスが発生し工場がとまっているという事実は、私、承知しておりません。
  238. 春田重昭

    ○春田委員 そうじゃなくして、そういう危険度が高い、においがきついということで、硫化ソーダを使ってない清掃工場があるという、ちょっと私も言い間違えましたけれども、そういう工場もあるのです。  また、要するにこの水銀を除去するためには、非常に、一定量だけではちょっと足らないということで、大量の予定以上の硫化ソーダを使っているところもあるのです。こういう事実を私は厚生省としては把握していただきたい。要するに、国の基準の四三〇ppm、排水出口で〇・〇〇五ppm保ったら、環境庁としては厚生省としてはいいんです、あとは自治体の勝手でしょうと、こんな無責任な考え方をすれば私は大問題だと思うのです。  また、この硫化ソーダというものは、沈でん物として硫化水銀となって汚泥の中に含まれるのです。その含有量は一万から三万ppmと言われているのです、水銀の。したがって、処分地でこれを投棄いたします。ところが、酸性土壌や雨水と反応していけばこれがメチル水銀となるのですね。メチル水銀は、御存じのとおり水俣病の原因となるわけです。熊本大学や新潟大学でちゃんと出ているわけですよ。おたくは、最終処分地はちゃんと遮水工をして、そういう地下水や河川等に流れないようにしておりますと言うけれども、それは五十一年からであって、五十一年以前のものはやってないのですよ。また、これをやろうと思ったら物すごいいわゆる予算がつくわけですよ。お金がかかってしまう。したがって、厚生省ではそういう遮水工をしなさいと言っているけれども、現実自治体ではやってない、こういう実態があるのです。  だから、要するに、専門家の間では現実も将来も非常に不安の多いこの硫化ソーダにつきましては、この使用につきましては、換気装置や取り扱いを強化するというだけでなくして、十分この対応を考えてほしい。  硫化ソーダを使わないでもいける方法等があるのですよね。そういった面で、いまそういう専門家の間では警鐘が鳴らされているわけでございます。こういった点、御存じですか。
  239. 小林康彦

    ○小林説明員 廃棄物処理にとりましても労働安全衛生というのは非常に重要な問題でございますので、私どもも施設の管理の上で十分な配慮を払っていきたいというふうに考えております。
  240. 春田重昭

    ○春田委員 きょうは、持ち時間がございませんので、大まかにしか質問ができませんし、細かい点まで質問できませんけれども、私は、この問題につきましては機会があればまた次からやっていきたいと思いますけれども、いずれにしましてもこういう問題があるということを認識していただいて、環境庁、労働省、厚生省一体となってこの問題については対処していただきたい、こう思うわけでございます。  最後に、厚生省局長の方の御答弁もいただきまして、とりあえず本日の質問は終わりたいと思うのです。
  241. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほどから環境整備課長がお答えいたしましたように、私どもといたしましては、現段階において特に問題となる点はないのじゃないかと思っておりますが、事柄が事柄でございますので、先生御指摘の点も含めまして、大阪府なり東京都の事情を十分確かめてみたいと思っております。
  242. 春田重昭

    ○春田委員 東京や大阪だけではないですよ。全国あちこちやっていますから、その点ひとつよろしくお願いしたいと思います。  それでは終わります。
  243. 古屋亨

    古屋委員長 神田原君。
  244. 神田厚

    ○神田委員 私は、現在大変大きな問題となり、また事件の発展を見ております、国立予防衛生研究所の抗生物質医薬品の不正検定事件にかかわりますところの製薬業界のスパイ事件、さらには、国立衛生試験所の薬品部長の収賄事件にまで発展しているこの一連の問題につきまして、御質問を申し上げたいと思っています。  まず最初に、この事件の経緯と捜査の現時点におきますところの概要につきまして、法務省刑事局の方から御説明をいただきたいと思います。
  245. 飛田清弘

    ○飛田説明員 御説明申し上げます。  事件が広がっておりますので、若干長くなるかもしれませんが、御了解いただきます。  順に御説明いたしますと、まず、お尋ねの事件につきまして東京地検は、最初に、抗生物質検定成績通知書に内容虚偽の合格の記載をして行使したという有印公文書作成、同行使の容疑で、国立予防衛生研究所厚生技官の鈴木清という人を本年九月七日に逮捕した後、所要の捜査を遂げまして九月二十七日に公判請求しておりますが、そのほかに、続きまして、山之内製薬株式会社が製造承認申請していた新抗生物質に関する薬理作用等の資料ファイルを右の鈴木と共謀の上窃取したという容疑で、藤沢薬品工業東京支社業務部課長藤代昭三という人を九月十三日に逮捕して、所要の捜査を遂げて十月三日に公判請求し、また、同藤沢薬品の東京支社の開発部長布施正之という人及び同部員の小倉謹二という人の両名を九月十六日に逮捕しております。  また、塩野義製薬株式会社が製造承認申請していた新抗生物質に関する薬理作用等の資料ファイルを右鈴木らと共謀の上窃取したという容疑で、藤沢薬品工業東京支社副支社長佐々木直彦という人を九月十七日に逮捕しております。  また、右藤代らの窃盗事件の証憑を隠滅したという容疑で、藤沢薬品工業の東京支社研究開発企画本部員の植田寛という人を九月十七日に逮捕しております。  さらに、鈴木らと共謀の上、右二件の窃取、窃盗を犯した容疑並びに右植田の証憑隠滅を教唆したという容疑で、藤沢薬品工業株式会社の常務取締役鯵坂六弥という人を九月二十七日に逮捕しております。  それから、日本医師会が、厚生大臣の諮問を受けて新薬の薬価基準収載の可否について審議するその資料として厚生省から交付され、業務上預かり保管中の新医薬品についての資料ファイル十数冊を藤沢薬品工業の用途に充てるため横領したという容疑で、日本医師会事務局保険課長の森田史郎という人を九月二十八日に逮捕しております。  さらに、武田薬品工業株式会社などが製造承認申請していた新抗生物質に関する薬理作用等の資料ファイルを右藤代らと共謀の上窃取したという容疑で、先ほど申しました鈴木清という人を九月二十七日に再逮捕しております。      〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕  続きまして、明治製菓株式会社が輸入承認申請していた抗生物質に関する薬理作用等の資料ファイルを鈴木と共謀の上窃取したという容疑で、帝王製薬株式会社学術開発部長中川輝彦という人を九月十二日に逮捕し、同社の社長堀内宗一郎という人を九月十六日に逮捕しております。  それから、新薬承認データを帝王製薬株式会社に横流しした対価として百七十万円の賄賂を収受したという枉法収賄の容疑で、中央薬事審議委員である国立衛生試験所薬品部長江島昭という人を九月二十二日に逮捕しております。そして、その収賄に対する反対の贈賄容疑で、帝王製薬株式会社社長のすでに申し上げました堀内、それから同社の部長の中川、その両名を九月二十二日に再逮捕しております。  さらに、武田薬品工業株式会社が製造承認申請していた新抗生物質の薬理作用等の資料ファイルを鈴木と共謀の上窃取したという容疑で、藤沢薬品工業東京支社の社員藤代昭三を十月三日に再逮捕しております。  そのほか、藤沢薬品工業株式会社が輸入承認申請していた抗生物質の薬理作用等の資料ファイルを鈴木と共謀の上窃取したという容疑で、富山化学工業株式会社第二開発部長の山田清臣という人を十月四日に逮捕しておりまして、これらの事件につきまして、すでに起訴した分もございますが、残りの部分につきましては現在鋭意捜査中でございます。
  246. 神田厚

    ○神田委員 ただいまこの事件の概要について御説明をいただきましたが、申すまでもなく国立予防衛生研究所並びに国立衛生試験所というような国立の機関を含めまして、製薬業界の数社に及び、さらに逮捕人数は十数名に及んでいる、こういう大事件に発展をしているわけでありますが、今後の捜査の方針につきまして御説明をいただきたいと思います。
  247. 飛田清弘

    ○飛田説明員 現在これらの事件について一生懸命捜査しておるわけでございますが、捜査の具体的内容、状況につきましては、現在捜査中のことでございますので、答弁することを差し控えさせていただきたいと思います。
  248. 神田厚

    ○神田委員 捜査中でありますから、御説明につきましてなかなかお話が伺えないのはわかっておりますが、この問題につきまして、事件が特徴といたしまして非常に多方面に広がってきている、こういう状況の中から、捜査当局が押収しました資料は膨大な資料があるというふうに報道されておりますね。でありますから、この資料の解析、さらには、そこからまたいろいろな捜査が、捜査といいますか疑惑が発展をする可能性があると考えておるのでありますが、特徴的なのは、やはり中央薬事審議会の委員でありますところの国立衛生試験所の薬品部長等が逮捕されているというところから、この新薬のいわゆる薬価等の問題、薬価基準を決めたり薬価を決めたりするような、そういう関係で問題の発展がしそうだということも言われておりますが、現在、以上名前が挙がったほかに、捜査当局としてはさらに何名かの具体的な、いわゆる疑わしい人物について捜査に及んでおりますか。
  249. 飛田清弘

    ○飛田説明員 まことにお答え申しにくいことをお尋ねなので、ちょっとお答えのしようもなくて困っているのですが、検察当局といたしましては、押収した資料につきましては、極力早急に資料の内容を検討し、容疑のある者から逐次捜査を進めてきておりまして、それで今日まで至っているというところで、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  250. 神田厚

    ○神田委員 刑事課長の御答弁からしますと、なお事件が広がるような印象を持ちましたが、それ以上につきましてちょっと御答弁がないようでありますので、また関連しまして後ほど御質問申し上げたいと思っております。  それでは、厚生省は、こういう事件にまで発展したことに対しまして、行政監督の不行き届きという問題は免れないと思うのでありますが、厚生省といたしまして、これらの事件の発生から現在に至るまでどういうふうな形でこの問題について処理をしてきたのか、その点について御説明をいただきたいと思います。時間がないのでひとつ簡単にお願いします。
  251. 正木馨

    ○正木政府委員 今回の不祥事につきましては、現在、法務省の方から御答弁があったわけでございますが、国立予防衛生研究所の技官のいわゆる検定問題から端を発しまして、非常に大きな問題に発展し、私ども非常に深刻に受けとめております。特に、先生の御指摘の中にもありましたが、国立衛生試験所の薬品部長江島某が中央薬事審議会の委員でもあるということで、薬事審議会と申しますと、医薬品行政についての権威と信頼の象徴であるわけでございます。そういった重責にある者がこのような事件を起こしたということについて、私どもとしては非常に重大な問題として考えておるわけでございます。  そこで、この問題が起きました根底には、やはり公務員としての規律というものについての認識の不足、さらにはこういった資料の管理の面での不徹底等々いろいろな問題があると思います。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕そこで、厚生省といたしましては、先月の九月三十日に中央薬事審議会の会長、部会長に急遽お集まりいただきまして、審議委員としての職責の重要性と審議の公正の確保についていろいろお話し合いをいたしまして、近く各委員さんに周知の徹底を図る、資料の管理についてもきちっとした方向へ持っていきたい、二度とこういった事件が繰り返されないようにということで全力を傾けたいというふうに思っております。
  252. 神田厚

    ○神田委員 厳正にしてしかも公正に医薬品の検査がされなければならないわけでありますが、現実には検査もしないでそれがなされているというような実態があったわけで、国民としては非常に不安でもあるわけでありまして、私は、こういう意味で社会的に大きな不安を与えたということに対しまして、厚生省は、その薬事審議やその他の問題はもちろんでありますが、厚生省といたしましてその責任につきましてこれをきちんと自覚をしていただかなければいけないと思っておりますが、その点はどうでありますか。
  253. 正木馨

    ○正木政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘のとおりでございまして、この事件の当事者はもちろん、いろいろな監督の面につきましても現在捜査中でございますので、その全容が明らかになり次第きちっとした形をとるということを大臣は強く申されております。
  254. 神田厚

    ○神田委員 特に国立予防衛生研究所の問題で、細かい問題になるかもしれませんが、二、三御質問申し上げますけれども、それが無検定で許可をされてしまったという問題がありますが、この無検定の実態というのは一体どういうことであるのか。つまり、報道によりますと、ヒスタミンの検査が無検定だったということでありますが、ビスタミンだけがそうであるのか、あるいは六項目ほどありますけれども、発熱のものについての無検定はなかったのかどうか。検定ノートの保管状況等の問題についてはどういうふうになっているのか、これについてお答えをいただきたいと思います。
  255. 大池眞澄

    ○大池政府委員 お答え申し上げます前に、国の附属機関でございます国立予防衛生研究所におきまして御指摘のような不正検定事件を起こしまして、薬の安全性、有効性を確保すべき行政に対する国民の信頼を損ねましたことを、大変申しわけなく思っておる次第でございます。  厚生省におきましては、事件発生以来、国立予防衛生研究所にみずから点検を厳重に行わせることはもとよりでございますが、国立予防衛生研究所に対しまして、いわば異例の立ち入りを行いまして、業務全般についての調査を行ったところでございます。また、これに対応する対策といたしまして、すでに予研におきまして副所長を委員長といたしまして検定業務改善委員会を設けまして、業務の改善、見直しに鋭意取り組んでおりますし、また、改善すべき点につきましては検討成果を次々と実行に移しておりまして、二度とかかる不祥事が起こらないよう万全の対策を講じておるところでございます。  ただいま御設問の、いわゆる未検定の抗生物質の件でございますけれども、私どもの調査で判明しております限りで申し上げますと、一千十二件ほどが、六項目ございますうちのヒスタミンの検査がまだ判定結果が出ないうちに合格書を出したということが最初の調査で判明しておるわけでございます。その後逐次判明したことでございますけれども、ヒスタミンの検査実施をしてないのではないか、したという形跡がないというものが若干追加されまして、そのものにつきましても、これまで判明し次第追試を行っております。未検定のものは、これまでに判明したものは追試の結果ではすべて安全性が確認されておるところでございます。
  256. 神田厚

    ○神田委員 発熱の方の問題はどうなのか。さらに、検定ノートの保管状況はどういうふうになっているのか。
  257. 大池眞澄

    ○大池政府委員 一部のものについて、発熱試験についても調査を現在引き続き行っているところでございます。  なお、検定済みのサンプルのことについての御質問かと思いますけれども、これは使用済みで残ったものがございますれば、これを念のため保管している。それからまた、これは保管するのがルーチンとしてあるわけではございませんで、逐次廃棄をしている、こういうような状況と理解しております。
  258. 正木馨

    ○正木政府委員 いまの保管の点につきまして、ちょっと補足させていただきますが、予防衛生研究所の方では、検定が終わりましたものを処分したものもあるわけでございますが、一方、GMPと申しまして、医薬品の製造管理及び品質管理規則というのがございまして、要検定医薬品につきましてはロットごとに三年間各工場で保管するようにと保管義務を課しておりますので、私どもそちらの方で、必要があれば追試をするという形をとっております。
  259. 神田厚

    ○神田委員 いま公衆衛生局長の答弁ですと、発熱の方の試験についても実施されてないのがあるということをお認めになったようでありますが、こういうことになりますと、相当数無検定で、つまり非常にでたらめな形で処理されてきたということですね。これは内部の調査でもう少し時間をかければ明らかになるわけでありますから、その調査を待ちたいと思いますけれども、言われているように、ヒスタミンだけではないということで、これはまた一つ問題だと思っております。  聞くところによりますと、メーカーからの研究員がこの国立予防衛生研究所のいわゆるスタッフとしてかなりの人数が派遣されているというふうに聞いておりますが、どの程度の人数が派遣されており、さらに、どこのメーカーから派遣されてどういう仕事をしていたのか、明らかにしてほしい。
  260. 大池眞澄

    ○大池政府委員 いま手元の資料でお答え申し上げますが、予研におきましては、昭和二十七年以来、研究生、実習生の受け入れ規定を設けておりまして、現断面におきましては九十九名ほどの研究生、実習生の受け入れを行っているというふうに承知しております。そのうち大学が一番多いわけでございますが、いま御設問の、メーカーとおっしゃいましたが、メーカーに関しましては十八社二十二名というふうに承知しております。
  261. 神田厚

    ○神田委員 今回のこの不祥事が製薬業界との癒着問題から端を発している問題でありますから、この十八社二十二名の社の構成と、それからそれぞれがどういう仕事をしていたのか、この職務について答弁してもらいます。
  262. 大池眞澄

    ○大池政府委員 ただいま申し上げましたそれぞれのメーカーの個別の資料をちょっと持っておりませんけれども、職務というのはございませんで、あくまでも研究生あるいは実習生という立場で入っておるわけでございます。
  263. 神田厚

    ○神田委員 このメーカーの名前は出せませんか。
  264. 大池眞澄

    ○大池政府委員 後ほど提出をいたしたいと思います。
  265. 神田厚

    ○神田委員 どういうメーカーの人間がどういう仕事をしていたのか、研究員というのはどういう立場でどういうことに携わっていたのか、あわせてそれを出していただきたいと思いますが、よろしゅう、ございますか。
  266. 大池眞澄

    ○大池政府委員 それぞれの研究テーマなり、私どもの掌握しております資料を提出いたします。
  267. 神田厚

    ○神田委員 その名簿が出た段階で、仕事の内容がわかった段階でまたお聞きをしたいというふうに思っておりますから、早急に提出をしていただきたい、こういうように要求をいたします。  それから、この製薬メーカーのいわゆる産業スパイ事件のような形で問題が進展をしておりますが、これにつきましては、厚生省としては、こういう商道義的にも大変問題のある、あるいは薬という大変、言ってみますれば人間の命に関与する崇高なものを取り扱っている業界が、こんなふうな形で非常に犯罪の上で競争を繰り広げている、こういう実態についてはまことに遺憾であると思うのでありますが、これらの問題を起こしました製薬メーカーに対しまして、厚生省はどういうふうな指導をなさるのですか。
  268. 正木馨

    ○正木政府委員 現在、製薬メーカーというのは非常に数が多いわけでございまして、先生おっしゃいますように、非常に厳しい競争のもとにあることも事実でございます。しかし、薬といった問題は、先生おっしゃいますように、非常に崇高な人間の命にかかわるものであって、そういった薬を扱う企業というものは一般の企業以上のモラルというものが強く要請されると思います。それだけに、今回のような不祥事が起きたということはまことに遺憾至極に思うわけでございます。製薬関係につきましては日薬連等の関係団体がございまして、従来からその関係団体に対して強く薬業界の姿勢を正すということについて指導しておるわけでございますが、今後ともそういった団体に対して強く薬業界全体の姿勢を正すように指導したいと思っております。また、事件の全貌が明らかになった段階におきまして、個別企業につきましても強く指導を徹底してまいりたいというふうに思っております。
  269. 神田厚

    ○神田委員 時間が非常に限られて、もうありませんので、これ以上いろいろ御質問できませんが、また機会を得て質問したいと思っております。  そして、捜査のめどといいますか、これにつきまして、最後に刑事課長さんの方から、いわゆる時期的な問題等を含めまして捜査のめどをお聞きしたいと思うのですが、いかがでありますか。
  270. 飛田清弘

    ○飛田説明員 捜査でございますから、捜査をやっている過程でまた新たな問題が出てきたらそちらの方ということがあるかもしれませんものですから、この段階でめどといってもちょっと申し上げにくいことではございますが、東京地検といたしましては、全力を挙げてこの事件と取り組んで、早急に問題を解明し、犯罪が認められるような証拠があるというものについては厳正に対処していくことになろうと思います。早急にやって早急に結論を出そうということでやっているところでございます。
  271. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  272. 古屋亨

    古屋委員長 栗田翠君。
  273. 栗田翠

    栗田委員 私は、初めに有料道路の料金の問題について質問いたします。  ことし六月に道路審議会が答申を出されまして、その出された答申の中で、「環境対策等の見地から既設の一般有料道路施設の有効利用を促進する施策」という項目があったと思います。この項目の内容に関してだけで結構でございますので、まず、簡単にこの内容の趣旨を御説明ください。
  274. 沓掛哲男

    ○沓掛政府委員 お答えいたします。  一般有料道路の中には、夜間、現道からの大型車の転換が進まない結果、現道沿線住民の生活環境の改善が進まないものがあり、このような有料道路の有効利用を促進するとともに、現道沿線住民の生活環境の改善を図るための施策について、総合的な検討を行う必要があり、このため、五十七年八月五日に道路審議会に対し、一般有料道路の今後の整備の方向と採算性の確保について諮問を行い、この中で、「環境対策等の見地から既設の一般有料道路施設の有効利用を促進する施策」について検討をお願いしたところであります。  五十八年六月二十四日の答申の要旨は次のとおりでございます。  まず、現道における環境対策のため、有料道路の通行料金の割引等により、現道から有料道路に大型トラック等の転換を図ることにつきましては、現行有料道路制度の立場からは、第一に、特定の車種、特定の区間、特定の時間のみの料金割引等は、負担の公平を欠くおそれがあること、第二に、料金割引等により減収が生じる場合の負担のあり方について、あらかじめ解決しておく必要があることなどの基本的な問題があり、また実施面におきましては、料金割引等が原因となって生ずる交通流の変化に対し、地域利害の調整、交通対策等が必要となります。  このような現状を勘案すれば、高速自動車国道を含む有料道路全般について、環境対策のために料金割引等の施策を実施する条件は、未だ整っていないものと考える。  しかしながら、建設途上の大規模幹線バイパスの全線が供用されていないため、所期の機能を十分に果たし得ない一般有料道路の有効利用を図ることが現道沿線の環境の改善に資するものであることにかんがみ、このような特定の有料バイパスについては、料金割引等の施策を一定期間試行することを検討すべきである。この場合、上述の諸問題に十分配慮するとともに、料金割引等の施策の効果を十分に発揮させるためには、在来の現道において地域の生活道路としての機能を増進させるような環境対策及び交通対策があわせて実施される必要がある。  以上が答申の要旨でございます。
  275. 栗田翠

    栗田委員 この答申をお受けになって、すでにいまの要件に当てはまるところを具体的に検討を始めていらっしゃるというふうに伺っておりますが、どことどこがその対象として挙がっておりますでしょうか。
  276. 沓掛哲男

    ○沓掛政府委員 具体的な対象道路についてでございますが、現在のところ、藤枝バイパス及び浜名バイパスにつきまして地元から料金割引の要望が出されておりますが、この両バイパスは大規模幹線バイパスの一部区間であるため、それだけの利用では現道からの交通転換が十分でなく、現道における環境改善が余り進んでおらず、答申の趣旨に沿うものと考えられますので検討対象といたしております。
  277. 栗田翠

    栗田委員 それで、具体的にどんなぐあいな割引をなさるのか。また、この答申で言いますと一定期間というふうになっておりますが、一定期間というのはどのくらいなのか、いつそれが決定される運びになるのか、そういう点について伺いたいと思います。
  278. 沓掛哲男

    ○沓掛政府委員 試行の具体的な内容につきましては、現在関係機関であります日本道路公団建設省の地方建設局、それから県、県警等で協議していただいておるところでございまして、割引率を幾らにするとか、あるいは割引時間帯をどうするとか、あるいは何年するかというようなことも含めて、ここでいろいろ検討していただいておる-ところでございます。
  279. 栗田翠

    栗田委員 しかし、答申の目的に沿って、環境が守られるような方向でそれが実現するように割引を考えていらっしゃるということですね。つまり、割り引くことによって効果あらしめるという立場で当然検討していらっしゃるというわけでございますね。
  280. 沓掛哲男

    ○沓掛政府委員 料金を割り引くについてはいろいろな問題が派生的に起こってまいります。  たとえば、有料道路と申しますのは、道路ができた場合、それを利用する方の料金を償還財源として建設資金を借り入れ、それで建設したものでございますので、料金徴収が減りますと、そういうものをどういうふうにして補てんしていくのかというような問題も基本的な問題として出てまいります。そういう問題。それから一方、一部区間しか供用しておりませんので、思うように現道から大型――特に大型車でございますが、大型車の転換が進まない、そういうことによって現道の環境改善が進んでいないというようないろいろな複合した問題がございますので、そういうようなものを総合的に判断しながら、沿道の環境の改善に資するよう努力していきたいというように考えております。
  281. 栗田翠

    栗田委員 いま具体的にお挙げになった浜名、藤枝バイパスのうちの一つの例を挙げてちょっと伺いたいと思います。  藤枝バイパスの交通量と最初の計画交通量を比べてみますと、これは建設省の方からいただきました資料で、私の方が読ませていただきますけれども、これが開通し始めた五十六年、五十七年そして五十八年、この三年間を見ますと、それぞれ計画交通量は九千百六十、九千五百四、九千八百四十八、九千台から一万台になっておりますのに、実際に通っている車の台数は三千二十六、三千二百九十、三千五百五十二、計画の約三分の一という実態でございますね。これは非常に少ないということになると思います。それから、それでは大型車などが国道一号線を通るのが減ったかといいますと、これまた余り減っていない状態で、これはやはり建設省、そちらからいただいた資料でございますが、開通する前の五十五年四月の調査、五十六、五十七、五十八年と、それぞれ同じ火曜日に調査したものをいただきましたけれども、大型車の通行量の率、混入率が、開通前の五十五年が二七%、五十八年七月が二五%、ほとんど減っていない状態だというふうに思います。  この原因はなぜかということなのですけれども、いまお答えになった内容からいいますと、幹線道路が全部完成していないために、一部だけだから通行量が少ないという原因をお挙げになっていらっしゃいますが、もう一つ、私が地元で実際に使っていて思いますことは、通行料金が非常に高いということですね。普通車五百円、それから大型車八百円、特大型車千八百円なのです。そして距離は十一キロちょっと、大変短い距離で、しかも、途中から有料のところを避けて国道一号線に乗り入れるのにかなり便利な状態です。ですから、私なんか急ぐときにもったいないと思いながら料金を払ってバイパスを走りますと、前後左右ほとんど車がないという、まことに何十年前かの道路のような状態で、走りよくはございますが、これではなかなか思うような収益が上がらないだろうなと思う状態でございます。  そういうことから非常に車の通行量が少ないと私どもは考えていますが、料金が高いということも原因の一つだというふうにはお考えですね。
  282. 沓掛哲男

    ○沓掛政府委員 計画ほど実際の交通量が乗らない原因についてでございますが、この藤枝バイパスは、静清バイパスの起点である清水から掛川に至るまでの大幹線道路の一部として計画されたものでございまして、現在まだ静清バイパスそれから日坂バイパスというようなものができておりませんので、全線が開通すれば、全体としての時間便益も大きいので、相当部分が転換してもらえるのではなかろうかというふうに思っておりますし、もちろん、先生いまおっしゃいましたように、料金抵抗というのは必ずございますので、料金があれば転換率が減るし、その料金高が高ければ高いほど転換率は減っていくものでございます。
  283. 栗田翠

    栗田委員 全線が開通しても果たしてどうだろうかと私などは思っております。それは、国一へ乗り入れやすいのです。ですから、全線開通して、バイパスを通ってきて、その有料道路のところへ来たら国道一号線に入ってしまうということは簡単にできます。それから、時間の節約の状態なのですが、実際に夜間走ってみました。この有料道路を走った場合とそれから国道一号線におりた場合と、夜間の場合で違いは七分間でございます。ですから、大して違いません。こうなってまいりますと、大型車八百円、特大型車千八百円を払うのはまことにもったいないとドライバーは考えるのではないだろうか、こう思います。これはかなり安くしませんと通行量が上がらないし、高い料金を保っている限り、結局は所期の目的を達することができない。むしろ安くすることによって車の通行量をふやすことで、利用者も喜ぶ、しかも薄利多売とでも申しますか、たくさん通ることでその料金をたくさん上げていく、こういう形に転換する方がどちらもよいのではないかというふうに思うのです。  漏れ聞くところによりますと、夜間だけ半額にするという案も御検討だというふうに聞いております。しかし、夜間の半額ですと、さっき申しましたように、夜間国一はすいておりますので、半額ぐらいでは余りメリットがありませんね。もっと安くしないといけない。特大、半額で九百円になりますから、九百円払って十一キロ走ろう、七分間を節約しようとは思わないと思いますし、大型でも半額で四百円ですから、これはそういう意味では非常に高い道路でございます。  それからもう一つ、この地域でいま環境問題で大きな問題になっているのは、夜だけでなくて昼間も問題になっております。特に、島田にある旗指インターチェンジ、それから野田インター、この二つは有料道路に入る手前なのですけれども、全部ここを通りましてどんどんと国道一号線に車がおりできますので、ここの住宅地、近くに市立病院もありますが、大変な状態になっておりまして、昼間の問題もかなり問題になっています。こういう実情をいま申し上げたいと思います。  それで、ぜひとも割り引きの措置というのは実際に効果の上がる措置を考えていただきたい。ほんの部分的に割り引くのでなく、効果の上がる措置を考えていただきたいし、また、やってみて効果が少ないとお思いになったら、さらにそれを再検討して、効果が上がるように検討していただきたいと思うのでございますが、いかがでこざいましょうか。
  284. 沓掛哲男

    ○沓掛政府委員 交通を現道からバイパスヘ転換させるための施策としては、いま先生おっしゃったように、料金の問題も一つでございますが、さらに、先ほど私が申しましたように、全線を早く開通させていくということも一つであり、さらに現道の環境対策を進めること、さらに現道の交通対策を検討していくこと、こういうようなものを総合的に検討して進めていくことが必要ではないかというふうに考えておりまして、そのために今回試験的に実施するための諸準備と申しますか、関係機関との協議をいま進めているところでございます。  ただ、先ほど先生走って七分ということでございましたが、確かに、短いバイパスでわずかの時間しか短縮になりませんと、総合的に見て、家に帰ったのが五分早かった、十分早かったというだけでは、一般の方は使ってくれません。荷物を運んだ場合でいままで二回だったものが三回運べるようになるという相当まとまった時間の短縮がありませんと、この場合有料道路というものは使っていただけないものでございますので、何としても全線の開通を少しでも早くやるように最大の努力をしていきたいと考えております。
  285. 栗田翠

    栗田委員 それでは、そういうことも含めながら実効あるよう御検討いただくということをお願いいたしまして、次の問題に移らせていただきます。  私は、特定河川の改修の問題で引き続いて質問をさせていただきたいと思います。  いま、毎年さまざまな災害が起きております。最近でいいますと、三宅島の噴火の問題、それからこの間は台風十号による大きな災害。ところが、防災予算というものは、このごろ財政難が問題になっている中で、ゼロシーリング、マイナスシーリングという状態にいまなっております。昨年、一昨年の状態などでも伸び率ゼロですけれども、こういう中で、実際に起きている災害の復旧費というものは非常に多くなっているように思います。五十六年度二千六百二十三億円、五十七年度五千二百二十一億円というふうになっております。私どもはいつもこの問題を取り上げるときに、災害復旧にかける予算をむしろ後追い的に投入するのではなくあらかじめ防災に投入すること、こうした方がはるかに実効があるのではないだろうかというふうに思うわけでございますけれども、この災害復旧に係る支出はことしはどのくらいが見込まれているのかということ。もう一つは、河川の直轄でどのくらいがことし見込まれているのか、まだ年度半ばでございますけれども、その壕ちょっとお答えいただきたいと思います。
  286. 井上章平

    井上政府委員 本年度発生の建設省所管公共土木施設の被害報告額でございますが、これは河川だけではございませんですべてを含みますが、今日までで直轄で千百三十四億円、補助で六千七十億円、合計七千二百四億円でございます。このうち、河川、ダム、砂防、海岸、河川局が所管する事業だけ取り出してみますと、直轄につきましては千七十七億円、補助につきましては四千二百七十三億円程度、合計いたしますと五千三百五十億円程度でございます。
  287. 栗田翠

    栗田委員 非常に多額の災害復旧予算がかかるわけでございますが、その反面、防災予算がだんだんに減っているという状態です。こういう中で、特に水害常襲地などを持っている河川の流域を何とか救っていくためにということで、いま総合治水対策特定河川事業というのが発足していると思いますが、これはどういう事業なのか、時間がほとんどございませんので、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  288. 井上章平

    井上政府委員 総合治水対策特定河川事業といいますのは、五十四年度から発足した事業の制度でございますが、これは一口に申し上げますと、いわゆる都市地域で流域において急激な都市化による流出量の増大あるいは治水安全度の低下というような状況の著しい河川につきまして指定いたしまして、当面の目標である時間雨量五十ミリに対しまして、治水の安全度を早急に確保しようということでございます。私どものもくろみといたしましては、大体十カ年でこの目標に到達するように努力してまいりたいと思っておるところでございますが、一面、今度は流域内のいろんな災害防止上の対応もいろいろとお願いするわけでございまして、これにつきましては、地方公共団体の合意によりまして流域整備計画というのをつくりまして、その中で、流域が持っております保水、遊水機能を保全していこうというような制度と両々相まって、この地域の治水対策を進めていこうという制度でございます。
  289. 栗田翠

    栗田委員 この特定河川に指定されている中で、静岡市の巴川というのがございます。これは前から上流の開発で災害をたびたび起こして大きな問題になっておりますが、四十九年の七月七日、いわゆる七夕豪雨のときには、何と二万六千百二十四棟が浸水するという大水害を起こしました。この直後に激特事業の対象になったのですけれども、しかしまだ改修が十分でなくて、先日の台風十号などでもまたまた大きく被害を周辺の常襲地で受けるという、こういうことになっておりまして、静岡市、清水市から陳情書なども出されているというふうに思います。  この巴川にことしつきました予算は、いままでの中でかなり大きいわけでございますが、八億二千五百万円でございます。全改修予算残り約二百億ということですので、この調子でついていきますと二十五年、約四半世紀かかりますが、さっきの特定河川という目標から申しますと約十年ということですね。そういう方向で十年で改修できるようにいま努力なさっていらっしゃるのでしょうか。ぜひ御努力をいただきたい。  それからもう一点、続けて伺いますけれども、特に先ほどお話のあった流域貯留事業など、周辺部の努力の問題ですけれども、こういうことは確かに必要だというふうに思います。ところが、この巴川の流域、いま遊水地になっているところに続々といろいろなものが建って、国立束病院、これは前からあったのですが、県立のこども病院、総合病院、養護学校、それから市立の観山中学、流通センターなど、公共の施設がたくさん建っております。ところが、この施設の中にはいわゆる雨水貯留地などがございません。いま建設省としては、一流域貯留事業では十分の四補助をなさって、そういう意味では促進のために補助もつけておられると思いますけれども、さらに行政指導などで促進できるようにしていっていただくべきではないだろうか。また、できれば補助率も上げていただくべきではないか、こういうことで、やはり流域の努力を促進するようにしていただきたいと思います。この十年で巴川の改修をぜひしていただきたいということと、それからいまの事業の促進方についてのお考えをお述べいただきたいと思います。
  290. 井上章平

    井上政府委員 巴川につきましては、昭和五十四年度から総合治水対策特定河川に指定されたわけでございます。その後、五十七年には、先ほど申し上げました流域整備計画が策定されたわけでございます。いま鋭意事業の進捗に努めておるわけでございますが、巴川につきましては、特に大谷川放水路がこの事業の中心の施設でございまして、これにつきまして長い間用地問題が難航しておったという事情がございますが、昨年に至りましてようやく解決の運びとなりましたので、そういうことから、この事業の進捗については若干おくれておることは否めない事実でございます。しかし、全体事業費といたしましては三百三十億ぐらいかかる事業でございますが、五十八年までに五十五億が投じられております。これは一六・七%になるわけでございます。財政事情の大変厳しい時期に差しかかっておりますが、この計画の達成については最大限の努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。  なお、遊水地域の確保でございますが、巴川の上流域は低地でございまして、ここの遊水地域が削減されますことは、その下流域全体の治水安全度を非常に低下させるという問題がございます。このために、この流域整備計画におきましても、遊水地域を指定いたしまして、できるだけその遊水量の確保に努めておるわけでございますが、一面におきまして多目的遊水地事業をこの地域に導入いたしまして、その事業もあわせてただいま進めておるところでございます。
  291. 栗田翠

    栗田委員 時間がありませんので……。
  292. 古屋亨

  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、大韓航空機撃墜事件に関していろいろ不明な点がありますから、以下それを時間の許す限りただしてみたいと思うのであります。  第一番目は、陸上自衛隊、五十年段階では二別と言っておりましたが、現在では調別と言っております。稚内の東千歳通信所分遣隊、この調別がやっております傍受の問題について、過去、この問題は私が昭和五十年予算委員会で最初に取り上げたと思うのですけれども、覆面部隊であったわけですが、今度の事件でその中身がやや明らかになってきたようであります。  その当時の国会のやりとりでは、この調別のやっておる傍受活動、つまりコミント、コミュニケーションインテリジェンス、通信情報活動、これと電波法の五十九条との関係が国会で当時厳しく論議をされました。電波法の五十九条というのは「何人も法律に別段の定がある場合を除く外、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。」これに触れるのではないか。つまり例外規定の中に自衛隊は入っていないということが明確であります。この五十九条との関係が厳しく問われた際に、当時の政府の答弁は、政府部内限りにおいてそれをやることはこの五十九条違反にはならない、それを第三者に漏らしたりしてはならない。だから、政府機関内でとめておくことはこの五十九条違反にはならないという明確な答弁があるわけであります。今度の場合は、傍受された内容をアメリカに知らせ、後藤田官房長官自身記者会見で発表されました。  私は、ここで誤解のないようにしておきたいのは、今度の場合は緊急事態だからやむを得なかった、こう思うのです。ソ連が真相究明に協力しなかったからやむを得なかったと私は思っておるのです。しかし、一応これは法律的には整理をしておかないといけないという立場からきちんとしたいわけです。  この点について当時は、この解釈は郵政省が有権解釈をするんだという答弁もありました。郵政省のお考えを聞いておきたいと思います。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕
  294. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 郵政省の電波監理局長でございます。一先生ただいまお話ございましたように、電波法の五十九条では、「何人も法律に別段の定がある場合を除く外、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内客を漏らし、又はこれを窃用してはならない。」とされているわけでございますけれども、今回の防衛庁のとりました行動でございますが、これは、ソ連の空軍機によります民間航空機の撃墜というきわめて異常な事態に対しまして、真相の解明ということがきわめて重要であり、また、それを国際世論が強く望んでいるということ、また、あわせて、国連の緊急安全保障理事会におきまして、本件の真相解明及び同種事件の再発防止について討議されるということから、この真相解明に不可欠と考えられる資料、これを公開をしたというふうに理解をいたしておりまして、したがって、先ほど申し上げました電波法五十九条に違反するものではないというふう保に考えております。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、法律的にはそれは非常にあいまいだと思うのですね。法律違反だけれども、こういう緊急事態だから、いまおっしゃったようなさまざまのことがあるから、違法性が阻却されるという解釈であれば私はわかるのです。全然法律違反ではないとおっしゃると困るんですね。法制局の方はどういう御見解でしょうか。
  296. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 今回の事件の交信記録の公表の理由なり経緯につきましては、ただいま郵政省からお答えがございましたとおりで、その中にも一部電波法五十九条との関係について触れられておりますけれども、要するに、電波法の五十九条が、傍受いたしました無線通信の存在または内容を秘匿するにつきまして、格別の利益が認められませず、秘匿しましたような場合にはかえってきわめて不当な結果が生ずることになると認められるようなときに、相当な方法でその存在なり内容を開披することまで禁止した規定とは解されない。したがいまして、今回の公表は正当な事由に基づくものでございますので、電波法五十九条に違反するものではないと考えております。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 五十年当時のやりとりでは、そんな例外的なことは一切おっしゃらなかったのです。そのときは大韓航空機墜落事件がなかったからとおっしゃっても、一般的にそういう場合はやはり解釈上きちんとされておかないと、今度の事件が起こったから法律違反ではないというのはおかしいのですよ。法律違反ということになっている、あのときの答弁はね。政府部内だけでとどめておく分はいいんだ。だけれども、先ほど言っているように、私はいけないと言っているんじゃないのです。法律的に整理をしておかなくちゃいけない。私はやはり、つまり法律の概念の一つにあります緊急権、そういう概念に基づいて、緊急事態であったから違法性が阻却されるという法律的な解釈でなくては整理ができない、このように思うわけです。私のこの見解はどうですか、法制局。
  298. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 委員の御意見はごもっともと存じます。
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり、郵政省としてはこう言わなくちゃならぬ立場はよくわかりますけれども、法律的な整理をすれば、私はそういうことだと思うのです。本来ならば違反ではあるけれども、違法性が阻却されるんだ。この場合に限っては違法性が阻却される。したがって、こういう場合は私は、後藤田さんもちょくちょく出していますよね、これはやはり配慮があるからだと思うのです。傍受能力をさらけ出すのがいけないということもありましょうけれども、そのほかに、やはりこういう場合の違法性を阻却するという、そういう場合は特別の事態である、したがって、それも必要最小限度に限られるのだ、そういうことですね。そういう条件が加味されないと、無条件にどんどん発表されるということはこの法律の趣旨に反する。この必要最小限度に限られるのだ、ただしこういう事態でも、というふうに私は思うのですけれども、どうでしょうか。
  300. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 正当な事由がある場合に限られると考えますので、委員のおっしゃるとおりだと考えます。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やはりこれは特例ですから、そういう条件がなくちゃいけない。事態に即応した必要最小限度に限るというふうにやはり条件をつけておかないといけないと思うのです。  次に移りますが、稚内のSSレーダーサイト、十八警戒群、これは佐渡の四十六警戒群、SSのレーダーと同じ種類のレーダーでございますか。
  302. 江間清二

    ○江間説明員 お答え申し上げます。  航空自衛隊におきましては、全国二十八カ所に各種のレーダーを配備しておりまして、逐次近代化を図ってきておるところでございますけれども、個々のサイトに所在しますレーダーの配備状況等につきましては、自衛隊の能力を具体的に示すことになることから、発言を控えさせていただきたいと思います。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、質問を変えましょうか。  四十六警戒群のレーダーよりも、稚内の十八警戒群のレーダーは能力的には劣らない、そう考えていいんですか。
  304. 江間清二

    ○江間説明員 現在のところ、佐渡のレーダーの方が近代化が進んでおります。
  305. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりました。私がなぜこの佐渡の四十六警戒群のレーダーと対比したか。これはもういまから約十年前、正確には十年にならない、八、九年でしょう。例の反戦自衛官の小西三智の小西裁判で、当時の石川空幕長がこの佐渡のレーダーサイ十、つまり二つある。測高レーダーとそれから捜索レーダーと二つある。それの性能を証言しているのです。それは知っていますか。
  306. 江間清二

    ○江間説明員 お答え申し上げます。  私は承知いたしておりません。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、これは外には出せないのだとおっしゃっているけれども、裁判で出ているのです。あなたは知らないとおっしゃるからしょうがないけれども、まずそれだけ認識しておってください。出ているのです。どういうふうに出ているかというと、これは裁判における空幕長の証言です。いいですか。  四十六警戒群の二つのレーダー、つまりこれは捜索レーダーの方はFPS3A、それから測高レーダーの方はFPS6Aということが明らかになっている。これの性能は、捜索レーダーの方の最大出力は九百キロワット、有効距離つまりレーダーの覆域は五百キロメートル、それから測高レーダーの方は最大出力は五百キロワット、有効距離、覆域は三百五十キロ、こうなっているのです。稚内も重要なレーダーサイトですからそう変わらないと思うのです。これは十年前のあれです。あなたはだんだん強化されていると言うから、それよりも強化されている。  じゃ、この時点のあれでしても、覆域は五百キロですね。宗谷海峡は何キロあると思いますか。
  308. 江間清二

    ○江間説明員 お答え申し上げます。  たしか私の記憶では、稚内は四十キロ程度だったかというふうに記憶をいたしております。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、五百キロという覆域があるとするならば、カムチャツカ半島を考えて、カムチャツカ半島の先端のところまで何キロありますか。
  310. 江間清二

    ○江間説明員 私、記憶で大変恐縮でございますけれども、四十キロ程度というふうにただいま申し上げましたのは、北海道の北端から樺太の一番南端をとらえた数字で申し上げたつもりでございます。  それから、レーダーの覆域でございますけれども、これはもう先生御承知のことと思いますが、地形あるいは目標の高度、そういうようなものによってこれがどの程度だというふうには、おのずからそのときの条件によって変わってまいりますので、一概には言えないというふうに思います。
  311. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなことはわかっているのですよ。しかし、あそこは海ですよ、あなた。妨害するものはそうないのですよ。だから、カムチャツカ半島までは稚内からどのくらい距離がありますかと聞いているのです。わからぬならわからぬでいいです。
  312. 江間清二

    ○江間説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、北海道の北端がら樺太の一番南端のところまでの間の距離は、先ほどからたびたび申し上げておりますように、大体四十キロ程度……
  313. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最初はサハリンの南から稚内までを聞いているのです。
  314. 江間清二

    ○江間説明員 失礼いたしました。カムチャツカ半島ですか。
  315. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に聞いているのは、カムチャツカ半島の先までどのくらいあるかと聞いているのです。
  316. 江間清二

    ○江間説明員 具体的な数値をただいま手元に持っておりませんので、詳細わかりませんので失礼いたします。
  317. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まあ常識で考えても、宗谷海峡の幅が四十キロとおっしゃるならば、私は六十キロぐらいじゃなかろうかと思うんだけれども、まあいいです、四十キロとおっしゃるなら。カムチャツカ半島の近所まで五百キロというのは及ぶんじゃないかと思うのですよ、私、正確にはかっておりませんけれども。つまり、私が言いたいのは、これだけのレーダーサイトの能力があれば、覆域のレーダーの能力があれば、測高はもう三百五十キロですから、それは一万フィートなら問題になりませんよね。把握できる。つまり、相当以前からこの大韓航空機の航跡について把握をされておったに違いない。サボっておれば別ですよ。それを私は確かめたかったのです。どの時点から把握しておったか言えますか。
  318. 江間清二

    ○江間説明員 お答え申し上げます。  稚内のレーダーサイトがとらえております大韓航空機のものと思われます航跡につきましては、三時十二分から二十九分までの間で、それのみでございます。
  319. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はそういうことを信用されないのですよ、能力から考えて。そんな能力ではないでしょう。さっき言ったとおり、五百キロ覆域がある、十年前のあのレーダーでも。だんだん強化されておるから、それより少なくなることはない、多くなっても。これは秘密に属するとおっしゃるならわかるのですよ。しかし、私は、三時過ぎた時点からしかつかまえられなかったというのは、相当サボっておったに違いない、そう言わざるを得ないのですね。これはマル秘事項だとおっしゃるならわかる。  もう一つ、時間がありませんから一緒に聞いておきますが、RC135が途中までつけましたね、大韓航空機。それで引き返した。私は当然RC135はそのKALを確認していると常識で思うわけですよね。それで、そのRC135は市ヶ谷でも束千歳でも日米共同作戦で一緒にやっておりますね。だから、当然、RC135が引き返したときには、まだ稚内のレーダー覆域に入っておりませんから、防衛庁へはRC135からの連絡はあったんじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  320. 江間清二

    ○江間説明員 お答え申し上げます。  まず、レーダー航跡の問題でございますけれども、三時十二分にとらえた地点と申しますのは、稚内のレーダーサイトから見ますと、大体百六、七十マイルのところでございます。  先ほど申し上げましたように、レーダーの覆域につきましては、いろいろな条件によって変わってまいりますし、また、個々の基地のレーダーの覆域につきましては、わが方の能力を明らかにすることになりますので、具体的な数値は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に申しますと、高高度の場合には大体二百マイル程度というふうに御理解をいただきたいと思います。したがいまして、そうしますと、百六、七十マイルのところでとらえると、もうちょっと前からとらえられるのではないかという先生の御指摘ではないかというふうに思いますけれども、これは一般的な覆域は二百マイル程度でございますけれども、現実には、そのときの天候あるいはクラッターとかの影響あるいは目標の航空機の動き等によって、必ずしも目いっぱいとれるというものではございませんので、私どもの方としては、それで別にサボっておったとか、あるいはとれなかったことに対して大変不可思議だというふうには認識をいたしておりません。  それから、RC135問題につきましては、私どもはその動き等については具体的に知る何らのものも持っておりません。
  321. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それも私は素直にそうですかとは言えないのです。決して私の不明な点はそれでは解明されない。  時間がないから一番最後に申し上げますけれども、これも過去の国会で質疑で明らかになった。つまり、調別は傍受した内容を上に上げますね。そのときに上げる要領があって、情報記録用紙というのがあって、それへ記入して報告するような決まりになっておる。これもはっきりしているのです。その中を見ますと、いろいろある中で、今度の場合関係のあるところを拾ってみると、相手の呼び名というのがあるのです。これは記入しなくちゃいけない。つまり対象機、今度で言えばKALのことでしょう。その記録用紙の上では、これは不明ということになっておったのかどうか。それから、性格、つまり民間機か戦闘機がということじゃないかと思うのですけれども、性格という項目もあります。これはやはり不明になっておったのかどうか、それだけです、稚内の調別からあれするときに。それはレーダーサイトでも結構ですよ。  私がなぜこういうことを明らかにしなければいけないかというと、今度の事件は、もうこれはソ連側の責任は論外ですね。もう国会決議をしたとおりです。次の責任は、これは客観的に見て、大韓航空機が外れなかったらこういう事故が起こらなかったであろう、大韓航空機がなぜ外れたかというこの問題がいわゆる責任と絡んでまいります。三番目に、これは言われておることですから、私は誤解なり間違いであれば、それをきちっと整理する、解く必要があるという観点でこういうことを言っているのです。というのは、やはり日米はわかりながら見殺しにしたのではないかというような声が一部にありますから、そういうものに対しては、きちんと皆さんが納得いくような説明をする必要があろうと思うからですよ。それでこういうことをお伺いしている。本当に三時過ぎの時点からしか把握できなかったのかということについては、私は、レーダーの能力からいってそれはあり得ない、もっと前からだと思わざるを得ない。  それで、最後の、情報記録用紙に記入するポイントの中の私が挙げた点だけは、どんなふうになっておったか御答弁をいただきたい。
  322. 松村龍二

    ○松村説明員 お答えいたします。  私ども、今回のソ連パイロットの交信記録につきましてどの部隊が採集したかということにつきましては、この種防衛情報の収集作業の秘匿を図るという意味で、どの部隊が収集したということを申し上げておらないわけでございます。  また、いま先生の御質問ありました、上に上げる要領ということでございますが、御指摘のような様式が現在あるというふうには私は承知いたしておりません。
  323. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 承知いたしておりませんというのは困るのですよ。知らないということでしょう。時間が短いからもうこれでやめますけれども、私がわからない点は全然明らかにならないわけですね、御存じない点もあるし。不明は解明されないということだけ申し上げて、終わりたいと思います。
  324. 近藤元次

    ○近藤(元)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十二分散会