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1983-09-29 第100回国会 衆議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十八年九月八日)(木曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 古屋  亨君    理事 近藤 元次君 理事 東家 嘉幸君    理事 中川 秀直君 理事 中村 弘海君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 春田 重昭君 理事 神田  厚君       伊東 正義君    植竹 繁雄君       小坂徳三郎君    河本 敏夫君       桜井  新君    白濱 仁吉君       近岡理一郎君    森下 元晴君       島田 琢郎君    高田 富之君       田中 昭二君    宮田 早苗君       三浦  久君    楢崎弥之助君     ————————————— 昭和五十八年九月二十九日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 古屋  亨君    理事 近藤 元次君 理事 東家 嘉幸君    理事 中川 秀直君 理事 中村 弘海君    理事 井上 一成君 理事 春田 重昭君    理事 神田  厚君       伊東 正義君    植竹 繁雄君       近岡理一郎君    森下 元晴君       藤田 スミ君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         外務大臣官房外         務参事官    山下新太郎君         農林水産政務次         官       楢橋  進君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房審議官    中野 賢一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産省食品         流通局長    小野 重和君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   渡邉 文雄君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    河村  穣君         環境庁自然保護         局保護管理課長 味蓼 導哉君         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 津田  隆君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         国税庁調査査察         部調査課長   木下 信親君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 佐藤ギン子君         会計検査院事務         総局第四五局長 磯田  晋君         会計検査院事務         総局第五局長  中村  清君         農林漁業金融公         庫総裁     中野 和仁君         参  考  人         (日本中央競馬         会理事長)   内村 良英君         参  考  人         (日本中央競馬         会常務理事)  関根 秋男君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ————————————— 委員の異動 九月二十九日  辞任         補欠選任   三浦  久君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   藤田 スミ君     三浦  久君     ————————————— 九月八日  会計検査院法の一部を改正する法律案新村勝  雄君外四名提出、第九十三回国会衆法第一二号  )  昭和五十六年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十六年度特別会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十六年度特別会計予算総則書(その2)  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (承諾を求めるの件)(第九十八回国会内閣  提出)(その2)  昭和五十七年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その1)  昭和五十七年度特別会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その1)  昭和五十七年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (その1)  (承諾を求めるの件)(第九十八回国会内閣  提出)  昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れ  に関する調書承諾を求めるの件)(第九十八  回国会内閣提出)  昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十五年度政府関係機関決算書  昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十六年度一般会計国庫債務負担行為総調  書(その2) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十五年度政府関係機関決算書  昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (農林水産省所管農林漁業金融公庫      ————◇—————
  2. 古屋亨

    古屋委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、決算の適正を期するため、本会期中において  一、歳入歳出の実況に関する事項  二、国有財産増減及び現況に関する事項  三、政府関係機関経理に関する事項  四、国が資本金を出資している法人の会計に関する事項  五、国又は公社が直接又は間接に補助金奨励金助成金等交付し又は貸付金損失補償等財政援助を与えているものの会計に関する事項 以上の各事項につきまして、関係各方面からの説明聴取、小委員会の設置及び資料要求等の方法によりまして国政に関する調査を行うため、議長の承認を求めることにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 古屋亨

    古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 古屋亨

    古屋委員長 次に、昭和五十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本中央競馬会理事長内村良英君、日本中央競馬会常務理事関根秋男君、以上両君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 古屋亨

    古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 古屋亨

    古屋委員長 それでは、まず、農林水産大臣から概要説明を求めます。金子農林水産大臣
  7. 金子岩三

    金子国務大臣 昭和五十五年度農林水産省決算につきまして、大要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入につきましては、収納済み歳入額は一千九百八十五億二千六十六万冊余でありまして、その主なものは日本中央競馬会法に基づく納付金であります。  次に、一般会計歳出につきましては、支出済み歳出額は三兆八千二百一億六千九百五十七万円余でありまして、この経費の主なものは、地域の創意を生かした農政総合的推進といたしまして七千四百七十三億四千百六十四万円余、需要動向に応じた農業生産振興といたしまして一千四百四十一億三千四百四十万円余、農業生産力向上のための農業生産基盤整備といたしまして九千百三十億六千四百二十七万円余、住みよい農山漁村建設農業者の福祉の向上といたしまして一千百二十八億八千三百八十万円余、農産物価格の安定と農業所得の確保といたしまして七千七百十八億四千六百三万円余、流通加工近代化と食生活の向上といたしまして五百二億七千百七十五万円余、農業技術開発と普及といたしまして九百五十二億八千六十二万円余、農林漁業金融の拡充といたしまして一千六十七億三千五百十九万円余、農業団体整備といたしまして三百七億八千七百三十三万円余、森林林業施策の充実といたしまして三千四百四十五億一千三百二十七万円余、水産業振興といたしまして二千六百八十二億六千九百六十八万円余、省エネルギー・省資源推進代替エネルギー開発といたしまして二億九百五万円余、その他災害対策等重要施策といたしまして四千六百九億八千三百八十二万円余の諸施策実施支出したものであります。  続いて、各特別会計につきまして申し上げます。  まず、歳入につきましては、収納済み歳入額は、食糧管理特別会計勘定合計において十兆二千四百九十二億七千七百四十二万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において五千八百五十二億五千二百九十一万円余、農業共済保険特別会計勘定合計において二千七百七十億五千八百六十四万円余、漁船保険及漁業共済保険特別会計勘定合計森林保険特別会計自作農創設特別措置特別会計及び特定土地改良工事特別会計の総合計において二千三百四十九億三千七百三十八万円余であります。  次に、歳出につきましては、支出済み歳出額は、食糧管理特別会計勘定合計において十兆二千二百六十億五千九百六十七万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において五千七百八十二億一千九百九十九万円余、農業共済保険特別会計勘定合計において二千六百二十七億九千七百四十二万円余、漁船保険及漁業共済保険特別会計勘定合計森林保険特別会計自作農創設特別措置特別会計及び特定土地改良工事特別会計の総合計において一千八百三十七億九千七百九万円余であります。  これらの事業概要につきましては、お手元にお配りいたしました昭和五十五年度農林水産省決算概要説明によって御承知を願いたいと存じます。  これらの事業の執行に当たりましては、いやしくも不当な支出や非難されるべきことのないよう、常に経理等の適正な運用について、鋭意努力をしてまいりましたが、昭和五十五年度決算検査報告におきまして、不当事項等として指摘を受けたものがありましたことは、まことに遺憾に存じております。指摘を受けた事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後とも指導監督を一層徹底いたしまして、事業実施適正化に努める所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  8. 古屋亨

  9. 磯田晋

    磯田会計検査院説明員 昭和五十五年度農林水産省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二十件、意見を表示しまたは処置を要求した事項三件、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項三件及び特に掲記を要すると認めた事項二件であります。  まず、不当事項について説明いたします。  検査報告番号五七号から七六号までの二十件は、補助事業実施及び経理が不当と認められるものであります。  これらは、事業実施するに当たりまして、補助目的を達していなかったり、事業費を過大に精算していたり、補助対象とは認められないものを事業費に含めていたりなどしていたものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  その一は、自然休養整備事業等に関するものであります。  農林水産省では、農山漁村自然環境保全、活用し、観光農林漁業推進することにより農林漁業従事者就業機会の増大と農林漁家経済安定向上を図ることなどを目的として、観光またはレクリエーション資源一体的有機的関連のもとに農業構造改善推進することとし、都道府県知事が指定しだ地区に、農用地を造成したり、農業用施設機械導入したり、これらの拠点となる管理運営施設整備するなどの事業自然休養整備事業により実施しております。そして、この事業は、昭和四十七年度以降、事業実施地区(おおむね旧市町村区域)ごとの平均補助対象事業費を三億円、事業実施期間を原則として四年間とし、この事業実施する市町村等事業主体に対して都道府県補助金交付する場合に、その補助に要する費用のおおむね二分の一相当額補助金交付しております。この補助金交付対象となった事業のうち、北海道ほか二十四県において実施された百六地区自然休養整備事業により設置された施設利用管理運営状況等その事業効果について調査したところその事業効果が十分発現されてい保ないと認められるものが多数あり、このうち特に適切を欠いていると認められるものが次のとおり見受けられました。  すなわち、地理的条件及び観光農業に対する農業者意向等に関する調査検討を十分行わないまま事業計画を策定したため、中途で事業計画を大幅に縮小し、農用地造成農業用施設機械導入に片寄って事業実施していて、自然休養村としての実体をなしていないものが五事業あり、また、観光客の動態、施設管理運営等に関する調査検討を十分行わないまま策定された事業計画に基づいて事業実施したなどのため、経営困難となり、施設等を無断で処分していたり、その利用を中止していたり、施設運営には専門的技術導入が必要であるのにその配慮を欠いたまま施設を設置したため、ほとんど利用されていなかったりなどしているものが三十一事業あり、このような不適切な事業について特別指導を行わせるなどして早急に効率的な利用を図るとともに、今後同種事業としての自然活用型の農村地域構造改善事業実施に当たっては、市町村等が適切な事業計画を策定するよう都道府県指導を徹底させるとともに、その審査を十分に行わせるなどして補助事業効果を上げる要があると認められるものであります。  その二は、飼料用小麦売り渡し予定価格積算に関するものであります。  食糧庁では、飼料需給及び価格の安定を推進し、もって畜産経営の安定に資することを目的としてふすまの増産を図るため、毎年度飼料用外国小麦製粉工場売り渡し、ふすまを生産させることとしております。そして、この場合の外国小麦売り渡し予定価格は、原麦一トンからふすま五百五十キログラム、小麦粉四百五十キログラムが生産されるものとして、製粉工場におけるこれら製品販売額から加工経費等の諸経費を差し引いて一トン当たり予定価格を算出しております。  しかるに、製粉工場が買い受けた飼料用小麦加工状況について調査しましたところ、原麦の買い受け時における含有水分は九%ないし一二%程度ですが、このような原麦水分のままでは加工が困難なため、各工場とも加工最適水分である一五%ないし一六%程度となるよう加水を行っております。その結果、原麦一トンから生産される製品の量は、ふすまは五百五十キログラムですが、小麦粉予定価格の算定に用いた四百五十キログラムを上回ることとなっているのに、このような加工実態を十分調査しないで売り渡し予定価格積算したのは適切でないと認められました。  したがいまして、飼料用小麦は今後も引き続き大量に売り渡しを行うものであるから、その売り渡しに当たっては、加工実態売り渡し予定価格に反映させて、売り渡し価格の適正を図る要があると認められるものであります。  その三は、林道事業実施に関するものであります。  林野庁では、林業構造改善事業の一環として市町村等実施する林道開設事業都道府県補助する場合に、それに要する費用について補助金交付しております。そして、林道開設しようとする市町村は、都道府県知事が指定しました林業構造改善事業計画地域につきまして森林面積、蓄積及び齢級別等森林資源構成等調査し、林道開設後五カ年の間に当該林道利用して実施する素材生産及び造林等利用計画立て都道府県審査を受けた上、林野庁承認を得て林道開設事業実施することとしております。  そして、岩手県ほか十六県において開設した林道開設後五年以上経過し、かつ林道の終点が林地となっていて林産物の搬出等よりほかには利用されることのない、行きどまりとなっている林道百九十二路線について素材生産及び造林計画実施状況調査しましたところ、その過半数の路線計画に対して五〇%以下の実績となっている状況で、その中には、素材生産及び造林のいずれもが三〇%以下となっておりまして、せっかく素材生産及び造林目的として開設した林道効果が発揮されていない不適切な事態となっているものが、岩手県ほか九県で四十一路線見受けられ、実績が一〇%未満となっているような著しく不適切なものも見受けられる状況でありました。  このような事態を生じましたのは、事業主体において林道開設事業実施にあたって利用計画を作成する際、利用区域内の大部分の立木が伐採に適しない若齢級立木や低質な雑木林であるのに、それを伐採することとして計画していたり、適正伐期齢立木でも森林所有者林業経営に対する意欲が低いのにその実情を十分把握検討を行わないまま利用計画を作成していたこと、また、県や林野庁において林道利用される区域森林資源構成林地保有形態などの資料を徴して適切な審査を行う必要があるのにこれを十分に行っていなかったことによるものでございます。  したがいまして、利用実績の低い指摘した路線について、各県に利用計画の見直しを行わせることはもとより、事業の採択に当たっては事業主体に適切な利用計画立てさせ、適切な資料を徴して、その内容を十分審査するなどして補助事業効果的な実施を図る要があると認められるものでございます。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について説明いたします。  その一は、農業用構造物基礎工費等積算に関するものであります。  農林水産省では、農用地改良開発等を国の直轄事業、または、地方公共団体等が行う国庫補助事業として多数実施していますが、このうち東北農政局ほか大農政局昭和五十五年度に施行した九十二工事及び岩手県ほか十六府県が五十四、五十五両年度に施行した二百九十二工事について調査しましたところ、これらの工事ぐり石等を用いまして、各種構造物基礎等施工した基礎工及び裏込め工の労務費積算については、四十四年及び四十六年に農林水産省が制定しました「積算要綱等」及びこれをもとにして各府県が定めた積算基準等の労務歩掛かりにより行われておりました。  しかし、この労務歩掛かりは、基礎工にあっては、径十五センチメーター内外くり石人力によりこば立てて敷き並べ、目つぶし砂利を入れて仕上げる、いわゆる「敷並べ」工法により、また、裏込め工にあっては、人力により径十五センチメーター内外くり石構造物の裏側に積み上げた後盛り土したり、切り土面に積み上げて裏型枠がわりにする、いわゆる「築き立て工法によりそれぞれ施工することを前提として定められたものであって、近年、「敷並べ」または「築き立て工法に適する径十五センチメーター内外くり石の入手が困難になったことなどから、実際には、基礎工では、径五センチメーターないし十五センチメーターぐり石または切り込み砕石等を使用した「敷きならし」工法により、また、裏込め工では、基礎工の場合と同様ぐり石または切り込み砕石等を使用した「かき込み」工法により、施工するのが通例となっており、本件工事においてもこれらの工法により施工している状況でありました。  そして、本件工事同種工事を多数施工している他機関が制定しました建設工事積算資料等や、農林水産、運輸、建設三省の協議により定めました「災害査定用積算参考資料」においては、近年の施工実態に適合した歩掛かりを定めておりまして、これに比べて農林水産省及び各府県の歩掛かりは、相当高いものと認められました。これについて当局見解をただしましたところ、農林水産省では、実態調査の結果、五十六年十月に「積算要綱等」を改正して基礎工及び裏込め工の歩掛かりを施工実態に適合したものとし、同年十一月以降積算する工事から適用するよう処置を講じたものであります。  その二は、土地区画整理事業施行地区内で造成盛り土された水田等に係る水田利用再編奨励補助金交付に関するものであります。  農林水産省では、過剰基調にある米の需給を均衡させるとともに、長期的な視点に立って農産物需要動向に即した総合的な自給力向上を図るため、昭和五十二年度以降おおむね十年間の事業として水田利用再編対策実施しており、米の生産調整に協力して水稲から水稲以外の作物への転作等実施した農業者に対して、水田利用再編対策実施要綱及び水田利用再編対策実施要領に基づき、水田利用再編奨励補助金交付していますが、宮城県ほか十一府県管内三十二市町の九十九土地区画整理事業施行地区内の水田等七百九十四万余平方メートルに係る奨励補助金について調査しましたところ、これらの要綱要領が適切でなかったため、土地形状等から見て、もはや水稲作付が不可能となった土地に対してまで奨励補助金交付されている不適切な事態がありました。  すなわち、土地区画整理事業施行地区内の水田等工事が完了したものの中には、道路高以上に盛り土、整地された上、側溝、縁石が設けられていたり、道路に上・下水道管ガス管が埋設されていたりなどしておりまして、容易に住宅地等に転用される状態になっているものが延べ三百七十九万余平方メートルあり、これに対しても奨励補助金交付されていたものであります。  しかし、上記土地区画整理事業は宅地の利用増進等市街地開発を図るための建設省所管国庫補助事業等として実施したもので、同事業工事が完了し土地区画形質上記のように変更を来し水田作付が不可能となった水田等は、転作等実施されているとしても、住宅地等として転用されるまでの間における暫定的なものであると認められ、このような土地に対して奨励補助金交付するのは水稲から他作物への転作の促進とその定着性向上を図ることとした水田利用再編対策の本旨に沿わない不合理なものと認められるばかりでなく、市街地開発施策との整合性を欠くことにもなり適切でないと認められました。これについて当局見解をただしましたところ、農林水産省では、水田利用再編対策実施要領を改め、五十六年度以降、水稲作付期前に土地区画整理事業工事が完了した土地で、水稲作付が不可能なものに対しては奨励補助金交付しないこととする処置を講じたものであります。  その三は、外国小麦政府サイロから売り渡しまたは移送する際の搬出経費の徴収に関するものであります。  食糧庁では、横浜、名古屋の二港にサイロを所有しておりますが、ここに保管している外国小麦売り渡しまたは移送する際には、搬出経費として、五十五年度中には一トン当たり二百円を買い受け者から徴収しております。この単価は、民間サイロ搬出料金をかなり下回るものでありますが、これは、食糧庁がその単価を決定するに当たり政府サイロの回転率の向上や、搬出する際間サイロの構造上生ずる買い受け者の別途の経費負担を考慮して民間料金の約七〇%程度の額としていたためであります。  しかしながら、輸入された小麦は、全量同庁の管理下にあるという現行の売り渡し制度や、本件サイロの恵まれた立地条件から見て、需要の大きい銘柄の搬入努力などで回転率の向上は十分可能であると考えられます。  したがいまして、本件搬出経費については民間サイロ搬出料金より低額としなければならない理由はなく、引き上げる要があると認められましたので、当局見解をただしましたところ、食糧庁では、搬出経費の徴収を民間料金から前記買い受け者の別途負担分を控除した額とすることに改め、五十六年十一月以降の売り渡し分から適用するよう処置を講じたものであります。  次に、特に掲記を要すると認めた事項について説明いたします。」  その一は、国営干拓事業に関するものであります。  農林水産省昭和二十一年度以降実施した国営干拓事業の五十五年度末現在における実績は全国で百八十三地区ありまして、その面積は五万二千五百二十八ヘクタール、事業費は二千五百八十七億余円に上っております。そしてこの百八十三地区は(一)事業が完了した地区百六十一地区、四万五千九百四十七ヘクタール、千五百二十九億余円(二)工事の途中で事業を廃止した地区十一地区、三十八億余円(三)事業を継続している地区十一地区、六五百八十一ヘクタール、千十九億余円となっております。この百八十二地区の国営干拓事業すべてを対象して造成された土地利用状況等について検査一行いましたところ、(一) 事業が完了した地区百六十一地区の中には干拓地を造成した後または造成中においてこれを工場、住宅の用地等に供することとして全面的に転用しているものが愛知県鍋田地区はか十七地区、二千六百八十九ヘクタール、事業費相当額七十六億余円あり、また、干拓地が農家に配分された後、工場、住宅の用地等に供することとして全面的に転用されているものが千葉県長浦地区はか十三地区、七百八十五ヘクタール、事業費相当額十九億余円あります。そして、これらの中には、その後の社会経済事情の変化により工場誘致等が難航し、その大部分が現在遊休したままとなっているものが十一地区において二十一億余円ある状況であります。また、(二) 事業を廃止した地区は、終戦直後、食糧増産のため急遽着工したため干拓堤防等の地盤が予測以上に軟弱で施工が困難であるとして工事の初期に事業を廃止したり、また、漁業補償等について地元関係者との意見の調整がつかず廃止せざるを得なくなったりしたものであります。(三) 事業を継続している地区十一地区の中には、工事は完了したが、造成した干拓地の配分が済んでいないためその効果を発揮するに至っていないものが山口県阿知須地区、王喜一埴生)地区はか三地区、千四十九ヘクタール、事業費、百二十九億余円あり、工事の途中で事業を休止しているものが熊本県羊角湾地区、佐賀県佐賀地区の二地区支出済み事業費十六億余円となっております。  また、現在工事実施しているものは、石川県河北潟地区、愛知県及び三重県木曽岬地区、鳥取県及び島根県中海地区、岡山県笠岡湾地区の計四地区で、その計画している地区面積は、  五千五亘二十二ヘクタール、支出済み事業費は八百七十二億余円となっており、総事業費千三百七十三億円に対する進捗率は六三・五%であります。  そして、これらの工事実施している地区においては四十五年開田抑制通達が発せられて以降、水田から畑等に計画を変更して造成することとなり、従前の水田農業と異なり、大規模畑作経営や畜産経営によって営農する者に農地を配分することとしているため、応募者の確保、営農の定着は容易でないものとなっております。  国営干拓事業については以上のような事態があり、これらは、社会経済事情の変化や地元との関係から、関係当事者の努力にもかかわらず生じたものでありますが、この事業が相当年月の工期をかけ多額の国費を投入して農地を目的とする国土を造成するため実施されるものであることにかんがみ、現在事業実施中の地区はもとより、未配分地区などにつきましても既往の事態を十分認識するとともに、流動する社会経済情勢に対処して、地元関係者との調整や干拓事業をめぐる周辺の自然及び社会環境との調和を図りながら適切に事業実施していくことが肝要でありますので、特に掲記したものであります。  その二は、水田利用再編対策事業における管理転作奨励補助金交付に関するものであります。  水田利用再編対策事業につきましては、改善処置済み事項説明の際に触れましたが、農林水産省では、米の生産調整に協力して水稲から水稲以外の作物への転作、農業協同組合等への水田の預託等を実施した農業者に対して、水田利用再編奨励補助金交付しております。このうち、管理転作奨励補助金は、みずから転作することが困難な農業者の申し込みに応じて農協等が預託を受け管理することとなった水田を早期に第三者による転作に結びつけることにより食糧自給力向上を図るとともに、あわせて中核的農家の規模拡大にも資することを目的とし、管理転作のためその水田を農協等に預託した農業者に対し、十アール当たり平均基本額四万円を交付するもので、五十二年度から五十五年度までの交付対象水田面積及び交付額は計十一万余ヘクタール、四百三十一億余円の多額に上っております。  そして、農業者から水田の預託を受けた農協等ではその水田を希望者に使用貸借させるなどして、転作に結びつけることにしておりまして、希望者がいない場合には農協等で耕起、除草などして常に耕作可能な状態で保全管理を行うこととなっております。  しかし、本院が青森県ほか三十四府県における青森市ほか二百六十一市町村に所在する預託水田に係る五十三年度から五十五年度までの管理転作奨励補助金計三万四千三百四十六ヘクタール分百三十六億五千二百三万余円について調査しましたところ、これら預託水田のうち保全管理されているものが延べ三万四千二百十六ヘクタール、転作奨励補助金は百三十五億八千七百七万余円に上っていて、管理転作奨励補助金のほとんどを占めている状況でありました。  このような状況となったのは、預託水田が湿田であったり、一枚当たりの面積が小さく分散したりしていて機械による生産性の高い転作営農が困難であるため転作に適さないとしているものが全体面積の六六%を占めており、農業労働者の他産業への流出や高齢化などにより労働力が不足しているためとしているものが全体面積の二九%となっておりまして、預託された水田を第三者による転作に結びつけ、食糧自給力向上や中核的農家の規模拡大に十分寄与するものとはなっていない状況でありました。  管理転作事業の円滑な推進を図るには、圃場条件の整備を進めるとともに転作志向を高めるため、長期的、計画的取り組み体制の強化を図り、総合的な指導を行うなど全般的に検討する必要があるものの、圃場条件の早急な改善を図ることは容易でなく、農業労働者の他産業への流出等により労働力が不足しているなどの事態の打開は困難な状況となっております。しかし、今後このような事態のまま推移すると、多額の国費を投じて実施されている本事業効果が発現しない状態が依然として継続することになりますので、特に掲記したものであります。  なお、以上のほか、昭和五十三年度及び五十四年度決算検査報告に掲記しましたように、農業構造改善事業等により設置した農機具格納庫の規模及び補助事業実施及び経理適正化並びに農村地域の生活環境施設の設置について、それぞれ処置を要求しましたが、これらに対する農林水産省処置状況について掲記いたしました。  以上が昭和五十五年度農林水産省決算につきまして検査をいたしました結果の概要であります。  次に、昭和五十五年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果を説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項六件であります。  検査報告番号一五九号から一六四号までの六件は、漁業経営再建整備資金等の貸し付けが不当と認められるもので、これらは、貸付対象事業の全部または一部が実施されていなかったり、値引きなどにより貸付対象事業費よりも低額で事業実施されていたりなどしていたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  10. 古屋亨

    古屋委員長 次に、農林漁業金融公庫当局から、資金計画、業務計画等について説明を求めます。中野農林漁業金融公庫総裁。
  11. 中野和仁

    中野説明員 昭和五十五年度における農林漁業金融公庫の業務の概況について御説明申し上げます。  国においては、需要動向に即応した食糧の供給体制の整備農林水産業の健全な発展を図ることを基本として、長期的視点に立ち、総合的な施策が展開されました。  こうした国の施策に即応して、当公庫は、業務の運営当たりまして、関係機関との密接な連携のもとに、農林水産業の生産基盤の整備及び経営構造の改善のための融資を推進するとともに、多様化する資金需要に対応して、融資条件の改善も含め、融資の円滑化に配慮してまいりました。  昭和五十五年度における貸付計画について申し上げますと、貸付計画額は、七千六百九十億円を予定いたしました。  これに対する貸付決定額は六千六百二億七千二百四十四万円余となり、前年度実績と比較して八百十億七千六百三十八万円余の増加となりました。  この貸付決定額を農業、林業、水産業に大別して申し上げますと、一、農業部門四千六百七十八億九千九百四十二万円余、二、林業部門七百七億四千七百四十六万円余、三、水産業部門一千百十四億四千五百六十三万円余、四、その他部門百一億七千九百九十二万円となりまして、農業部門が全体の七〇・九%を占めております。  次に、昭和五十五年度の貸付資金の交付額は六千四百十四億八千五百万円余となりまして、これに要した資金は、資金運用部からの借入金五千五百四十億円、簡易生命保険及び郵便年金の積立金からの借入金二百二十億円、並びに貸付回収金等六百五十四億八千五百万円余をもって充当いたしました。  この結果、昭和五十五年度末における貸付金残高は三兆八千八百十億八千五百四十五万円余となりまして、前年度残高に比べて四千百五十九億四千九十二万円余、一二・〇%の増加となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、昭和五十五年度末におきまして、弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は八十九億八千四百六十二万円余となりまして、このうち一年以上延滞のものは七十一億四千三百九十四万円余となっております。  次に、昭和五十五年度における収入支出決算状況について御説明申し上げますと、収入済み額は、収入予算額二千五百六十六億二千七百四十三万円余に対し二千五百六十三億八千八百八十四万円余となりました。また、支出済み額は支出予算額二千六百八十七億一千九百六十八万円余に対し二千六百七十六億三千二十九万円余となり、支出に対し収入が百十二億四千百四十五万円余の不足となりました。  最後に、昭和五十五年度における当公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は三千四百六十六億四千六十一万円余、借入金利息等の総損失は三千四百六十六億四千六十一万円余となり、利益と損失が同額となりましたため、利益金はなく国庫納付はありませんでした。  これらの業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、昭和五十五年度決算検査報告におきまして、漁業経営再建整備資金等の貸し付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後はこのようなことの再び起こることのないよう業務運営適正化に一層努める所存であります。  以上が、昭和五十五年度における農林漁業金融公庫の業務の概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  12. 古屋亨

    古屋委員長 これにて説明の聴取を終わります。
  13. 古屋亨

    古屋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 まず、私は、昨年の七月七日の当委員会で、外国産の種牡馬の購買に関する具体的な疑惑について指摘をしました。その指摘をした問題、さらには、競馬会に対して私が指摘をした購入馬以外に対する疑惑解明の努力をするように、農水大臣もしかと真相、事実関係を明らかにすると約束をされたわけであります。一年余りたったわけでありますが、競馬会の方でお調べになった調査の結果をここで御報告をいただきたい、このように思います。
  15. 内村良英

    内村参考人 お答え申し上げます。  ただいま井上先生から御指摘がございましたように、当委員会審議を踏まえ、中央競馬会は五十年以降輸入いたしました種牡馬についての取引実態調査したわけでございます。その結果について御報告申し上げます。  まず、調査方法でございますが、五十年以降に。購買いたしました外国産種牡馬の取引実態調査につきましては、中央競馬会みずからの調査をしたわけでございますが、そのほか、五十七年八月初旬、アメリカ、イギリス及びフランスのそれぞれの現地の専門調査機関、具体的にはアメリカはワシントンのインターナル調査事務所、イギリスはロンドンのウォーターハウス法律事務所、フランスはパリのクリフォード・ターナー法律事務所に依頼するとともに、この調査結果を踏まえまして、藤井治商事株式会社及び株式会社野沢組両社の責任者からも事情の聴取をいたしました。  調査の内容でございます。  まず最初に、五十年以降でございますので、五十年購買に係るオランテ、これは馬の名前でございますが、買いました場所はフランス、日本側の取扱商社は野沢組、外国側の取扱商社はフライング・フォックス社でございました。オランテ及びリンデントリー、これも馬の名前でございます。買いました国はフランス、日本側の取扱商社は藤井治商事、外国側の取扱商社はゴドルフィン・ダーレー社でございますが、この二頭については、現地調査機関の報告によりますと、関係者等に鋭意接触を図り、購買事情の解明に努力しましたが、外国側取扱商社の協力が得られず、残念ながら事態は不明でございます。  なお、フランスにおける調査につきましては、非常に多くの機関に接触して調べたわけでございますが、残念ながら不明に終わりました。  また、これらの馬について、野沢組は外国側取扱商社から全員を受領した記録がないとしてその受領を否定しております。藤井治商事は外国側取扱商社から全員を受領していないと述べております。  次に、五十二年購買のハンザダンサーでございます。これは購買地アメリカ、日本側商社藤井治商事、外国側商社ファジクニァィフトン社でございます。これにつきましては、本会の調査によりますと、藤井治商事とファジクニァィフトン社の間にフランスの商社ゴドルフィン・ダーレー社のアメリカの会社であるワールド・ホース・エージェンシーが介在いたしまして、同エージェンシーが本会支払い代金百二十五万ドルのうち三十二万五千ドルを取得いたしまして、残額九十二万五千ドルをファシグ・ティプトン社に支払い、ファシグ・ティフトン社はこのうち取扱手数料として二万五千ドルを取得いたしまして、残額九十万ドルを馬主に支払っております。ワールド・ホース・エージェンシーの取得分につきましては、五十七年七月末、本会に対しまして、ゴドルフイン・ダーレーから藤井治商事を通じましてその全員三十二万五千ドルを、また、藤井治商事からもこの金額に対応する手数料相当額をともに返還したいと申し入れがございまして、本会は五十七年八月二日これらを受領いたしております。  次に、五十三年は買っておりませんので、五十四年の購買に係るロイヤルスキー、購買地はアメリカでございまして、日本側の取扱商社は野沢組、外国側の取扱商社はマーティー・ブラザーズ・エージェンシーでございますが、これにつきましては、現地調査機関の報告によりますと、本会支払代金二百二十万ドルのうちマーティー・ブラザーズ・エージェンシーが取扱手数料として十二万ドルを取得し、残金二百八万ドルは売り手側の馬主に支払われていることが判明いたしました。  次に、同じ年に買いましたラインゴールドという馬でございますが、ラインゴールドは買った場所がアイルランド、日本側の取扱商社は藤井治商事、外国側の取扱商社はキース・フリーマンでございます。これにつきましては、現地調査機関の報告によりますと、本会支払い代金八十四万ポンドのうち馬代金としまして七十六万ポンドが馬主に支払われ、残額八万ポンドが取扱手数料として日本側商社と外国商社と折半し、ヨーロッパの仲介商社であるブリティッシュ・ブラッドストック・エージェンシー、同じ会社のアイルランドの支店、キース・フリーマン社及びゴドルフィン・ダーレー社の四社に四万ポンドが、藤井治商事分として四万ポンドが配分されたと外国取扱商社の会計帳簿に記載されております。藤井治商事は上記全員は受領していないと述べております。  次に、五十五年に買いましたジャッジャー、これも馬の名前でございますが、ジャッジャーにつきましては、買い入れ地がアメリカ、日本側の取扱商社は野沢組、外団側の取扱業者はユージノ・コロンボでございますが、これにつきましては、本会の調査によりますと、本会支払い代金二百三十五万ドルのうちコロンボは馬代金二百万ドルを馬主に支払いまして、残額三十五万ドルのうちコロンボが十万ドルを取得し、野沢組に対し二十五万ドルを支払った証拠が得られました。この全員については、野沢組はコロンボからの好意的礼金として受領したものとしております。  次に、五十五年購買に係るアンズ・プリテンダー、これは買い入れ地がフランス、日本側の取扱商社は藤井治商事、外国の取扱商社はゴドルフィン・ダーレー社でございますが、この馬につきましては、現地調査機関の報告によりますと、関係者等に鋭意接触を図り、購買事情の解明に努力しましたが、外国側商社の協力が得られず不明ております。また、藤井治商事は外国側商社から全員を受領していないと述べております。  次に、五十六年の購買に係りますウォローでございます。これは購買地がイギリス、日本側の取扱商社は野沢組、外国側の取扱商社はブリティッシュ。ブラッドストック・エージェンシーでございます。及びノノアルコ、サンティークリーク、この年には三頭馬を購入しておりまして、後のノノアルコ及びサンティークリークは購買地がいずれもアイルランドで、日本側の取扱商社は藤井治商事、外国側の取扱商社はキース・フリーマンでございますが、この三頭につきましては、現地調査機関の報告によりますと次のとおりであります。ウォローに対する本会支払い代金百万ポンド並びにノノアルコ及びサンティークリークの二頭に対する本会支払い代金二百三十五万ポンド、合計三百三十五万ポンドのうちウオローの馬主に八十二万ポンドノノアルコの馬主に百二十五万ポンド、サンティークリークの馬主に八十万ポンドの計二百八十七万ポンドが支払われ、残額の四十八万ポンドが取扱手数料として日本側商社と外国側商社と折半されまして、ヨーロッパの仲介商社であるブリティッシュ・ブラッドマドック・エージェンシー、同アイルランド支社、フライング・フォックス社、キース・フリーマン社及びゴドルフィン・ダーレー社の五社に二十四万ポンド、日本側取扱商社二社に二十四万ポンドが配分され、この日本側商社分二十四万ポンドのうち十八万二千五百ポンドが藤井治商事分、五万七千五百ポンドが野沢組分として配分されたと外国側取扱商社の会計帳簿に記載されております。野沢組に係る全員の配分につきまして、野沢組は、売り主側の負担で上記全員が支払われる旨は承知しているが、現時点ではこれを受領していないと述べております。それから、藤井治商事に係る全員の配分については、藤井治商事は、上記配分は承知していないし、全員の受領もしていないと述べております。  以上が調査の結果でございます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 いま御報告がありました。事実、私が指摘したようにハンザダンサー以外にも、とりわけ五十六年度の三頭についてもそれぞれ相当額の金額を仲介業者が取得している。このことは契約にももちろん反するわけでありますし、その調査事実にそれぞれの商社は否定をしている、こういうことでありますが、いま調査報告があったその金額、ざっと換算をしてみますと約二億六千万くらいになるのではないか、藤井治商事と野沢組が取得したのは。これはまことにもってけしからぬ話であります。  事実が明白になり、そして競馬会としてこの事実に基づいてどのような対応をされようとしているのか、その点について聞いておきたいと思います。
  17. 内村良英

    内村参考人 お答え申し上げます。  中央競馬会といたしましては、次のような措置をとろうと考えております。  まず、野沢組の野沢真一郎社長は、外国側商社から五十五年の購入馬ジャッジャー号について二十五万ドル、及び五十六年の購入馬ウォローについて五万七千五百ポンドの全員の受領または配分を認め、これらの全員は外国商社からの好意的礼金だというふうに説明しております。しかしながら、競馬会といたしましては、この額を見る限り礼金としては著しく多額でありまして、競馬会と野沢組との外国産種牡馬の購入あっせん契約の趣旨からして債務不履行であると考えております。  また、藤井治商事藤井一雄社長は同社の外国側商社からの全員受領を一切否定しておりますけれども、調査によりますと、外国側商社の会計帳簿に藤井治商事への配分が記載されております。このことは外国の公認会計士が確認しております。したがいまして、藤井治商事についても、五十四年の購入馬ラインゴールド号について四万ポンド、五十六年の購入馬ノノアルコ号、サンティークリーク号の二頭について十八万二千五百ポンドをそれぞれ藤井治商事が受領したものと判断せざるを得ないわけでございます。このような事実にかんがみまして、藤井治商事は競馬会のために外国産種牡馬購入あっせんの事務を誠実に履行すべき義務に反しておりますので、競馬会といたしましては、仲介商社として、受任者として債務不履行だと考えまして、これについても返還を求めるつもりでございます。両社、野沢組及び藤井治商事の相当する金額について返還請求を行う方針でございます。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 競馬会は返還請求をする。しかし、藤井治商事については否定をしているわけであります。当初から、ハンザダンサーのときから否定しながら返還した経緯があるわけですけれども、競馬会自身は債務不履行で返還請求をする、そのことは強い対応を意味すると思いますが、法的措置をも含めての対応措置だ、そのように理解していいですか。
  19. 内村良英

    内村参考人 極力速やかに返還請求の手続をとりまして、その間、こういう民事的なことでございますので、藤井治商事及び野沢組とも話し合いをしながら返還を求めるわけでございます。なお、両社が競馬会の返還請求に応じない場合には、当然法的措置もとらざるを得ないと思っております。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、今回の調査に要した費用の負担の問題、さらには手数料として、総額で支払っていますから中間搾取したものも競馬会は手数料として支払っているわけなんですね。そのことも含めて返還請求の対象に入るのだという理解をしてよろしいでしょうか。
  21. 内村良英

    内村参考人 手数料につきましては当然請求いたします。  なお、調査に要した経費、約六百万ぐらいでございますけれども、それについては関係の弁護士等とも相談いたしまして、請求すべきであれば当然請求しなければならぬと思っています。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 大蔵省、国税関係はお見えですか。——それじゃ、国税関係は後にします。  さらに、私は、このようなずさんな購入の方法については強く指摘をし、これにかわるべき購入方法を一日も早く検討すべきである、そのことについては競馬会としてはどのような結論に達したのか、お聞きをしておきます。
  23. 内村良英

    内村参考人 ただいま先生からお話がございましたように、先生の御指摘を受けまして、競馬会といたしましても種牡馬の購入を今後どうするかということについて検討委員会を設けましていろいろ検討したわけでございます。検討委員会は、日本軽種馬登録協会の理事長である清井正氏を座長にいたしまして、委員七名で五十七年八月二十日に設置し、五十八年六月一日にその報告書が競馬会理事長提出されたわけでございます。  その報告内容を御報告申し上げます。  まず最初に、「種牡馬輸入の必要性」として、「わが国競走馬の資質を向上させ国際水準にまで高めるためには、海外の競馬先進国から優れた種牡馬を輸入して供用し、優良な産駒を生産することが必要かつ効果的な方法である。」  「競馬会が購入する意義」として、「種牡馬の輸入等の事業は、生産界における自由競争の活力を推進するためにも、本来、民間主導によることが好ましいが、輸入種牡馬の特定系統への集中、種付料の高騰が懸念されるので、競馬会が民間の種牡馬事業との調整をはかりつつその事業を補完する措置を講ずることが望ましい。その措置としては、競馬会の役割と意図を明確にするため、競馬会が購入した種牡馬を軽種馬生産者の全国組織である日本軽種馬協会へ寄贈する形をとることが望ましい。」  次に、「競馬会による輸入」でございますが、「競馬会は、昭和五十年以降、購入馬の選定を日本軽種馬協会に委託してきたが、競馬会が負うべき責任の所在が明確でなかったことも一因となって外国産種牡馬輸入問題が発生したことにかんがみ、今後は競馬会の責任においてみずからの手で購入に当たることが最も適切な方法である。」  具体的な「購入方法」といたしましては、「競馬会は、従来、種牡馬の購入に当たって、買主側、売主側各々の商社を通じての取引というわが国で広く行われてきた外国産種牡馬購入の商慣習に従ってきたが、競馬会の調査の結果、欧米の一部馬主、生産者から直接取引が可能であるとの回答を得たことから、今後は、種牡馬所有者との間の直接の取引契約によって購入することが、最も好ましい形である。しかし、種牡馬所有者との直接取引。については情報の収集等で困難が予想されるので、その場合には外国の商社に仲介を依頼することが必要である。その取引に当っては、直接売主と売買契約を締結するか、仲介を依頼した外国商社と馬代金、諸経費、手数料等を明記した文書による契約を締結する必要がある。なお、購入馬の輸送業務は、商社に委託するのが当面適当な方法である。」  外国産種牡馬輸入問題検討委員会の報告は、以上のとおりでございます。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、この報告を受けて競馬会はどのように対応をしていくのか、このことも聞いておきたいと思います。
  25. 内村良英

    内村参考人 この報告を受けまして、中央競馬会といたしましては、まず、従来日本軽種馬協会に購入馬の選定を委託しておりましたのを改めまして、競馬会みずから購入に当たることにいたします。  外国産種牡馬の購入あっせんを国内商社に委託してきたのを改めまして、競馬会が直接外国の所有馬主と売買契約を締結するか、外国商社と購入あっせん契約を締結するかのいずれかにしたいと思っておりますけれども、この検討会の指摘もございましたように、いろいろ取引に関する情報等の収集が必要でございますので、現実的な問題として、現在のところ外国商社と購入あっせん契約を締結しょうと考えております。  なお、外国商社と購入あっせん委託契約をする場合におきましては、馬代金、諸経費、手数料等を明記した文書による契約をとりたい。この馬の取引の世界ではどうも文書による契約がないというような慣行になっているようでございますが、競馬会の購入につきましては、その点も外国商社との間で明確な契約をつくりまして、今後このような問題が起こらないように努力したいというふうに考えておるところでございます。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 この問題が指摘されてから、実質的には種牡馬の購入については予算が凍結されているわけであります。そのことは、よろしくない商社の取り組みが生産者に対して多大の迷惑をかけた、こういうことなんです。私は、やはり真相、事実関係を明らかにすると同時に、そのことは今回いまの報告で大半がわかったわけてありますが、それは法的措置も含めての厳しい対応をしていく、その取り組みも私は予としたいと思うわけであります。ということになりますと、凍結された予算を解除して執行に移していかなければいけない、そのことが生産者の皆さんに対する適切な指導だと思うのです。五十八年度はもう時間的な問題もあろうかと思いますが、五十八年度の購入に対しては競馬会としてどのように取り組もうとされているのか、そのこともここで聞いておきたいと思います。
  27. 内村良英

    内村参考人 ただいま先生から御指摘がございましたように、わが国の零細な生産者にとって、中央競馬会が種牡馬を購入するということは非常に大切なことでございます。したがいまして、私どもできるだけ早く、五十八年は実は予算に計上してございませんので、予備費がございます。予備費の解除を役所に求めまして、なるべく早く解除していただいて、そのお金で年内にできるだけ購入するように努力したいというふうに考えております。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 きょうの時点を一つの時点ととらえて、年内購入、年度内購入は可能でありますか。
  29. 内村良英

    内村参考人 時期としてはぎりぎりの段階でございまして、早速いろいろな措置をとって、買えるように一生懸命努力したいと思っております。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 疑惑は疑惑、その解明をされたのだ。購入については、やはり生産者が待ち望んでいるという実情は十分深く認識されて、ぜひ間に合うように購入に踏み切るべきだ、再度重ねて競馬会の姿勢を問うておきたいと思います。
  31. 内村良英

    内村参考人 御指摘のようにやりたいと思っております。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 国税庁は入りましたか。−さっき競馬会から報告があったのです。要約をすると、藤井治商事、野沢組で外国産種牡馬の購入に絡んで不当な中間搾取が行われておったという事実関係が明らかになり、総額でハンザダンサーを含めて二億五千七百八十九万、すでにハンザダンサーの分については八千万何がしの金が返還をされているわけでありますから、残る一億七千万余りの競馬会の調査で明らかになったこの金額、私はこれは当然両社のそれぞれの年度における所得に含まれてくると思うのです。そういう点も国税庁としては、まあ十分連絡は受けているとは思いますけれども、そのような含みの中でこれをとらえられるのかどうか、あるいは十分な連絡を競馬会から受けたのかどうか、聞いておきたいと思います。
  33. 木下信親

    ○木下説明員 ただいまの御質問でございますが、個別にわたる事項につきましては御答弁をいままでどおり差し控えさせていただきたいと思っております。  ただ、一般的に申し上げますと、国会のこういう議論とかあるいはマスコミの報道とかそういうものを含めまして、私どもに提出されました納税者である法人の申告書、さらに私どもが蓄積しておりますいろいろな資料、こういうものと突合いたしまして、必要があれば調査をするなりして適正な処理をしておるところでございます。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 守秘義務、私は非常に適切な答弁だとは思います。しかし、いま競馬会から報告があったように、一億七千万余りの多額な金額が両社に配分されているというこの調査報告は、ひとつ国税庁としては強く受けとめて十分な対応をしてもらわなければいけない、このように思います。  そこで、今回この外国産種牡馬の購入に絡む数々の疑惑を私を含めて指摘をしてきたわけです。きょうもまた明らかになったわけです。こういう一連の不明朗きわまりない疑惑について、会計検査院はもうすでに十二分に調査に入られて、部分的な問題については御承知かもわかりませんが、むしろ会計検査院がどうだこうだというのじゃなくして、予算が正当に執行されているかどうかを点検することに会計検査院の役割りがあるわけでありますけれども、一年有余にわたって議論、質疑をしてまいりましたこの問題についての会計検査院としての所見を私はここで承っておきたいと思うのです。
  35. 中村清

    中村会計検査説明員 本件種牡馬の問題につきましては、昨年七月先生の御指摘もございまして、その後重大な関心を持って検査を進めてまいりましたところですが、何分にも、会計検査院が直接検査実態の究明に当たるとかあるいは疑惑の解明に当たるということが非常に困難な情勢にございましたので、中央競馬会の調査結果をもとに検討する、こういうことにしてきたわけでございます。もっとも、検査の過程におきましては、種牡馬の取引行為を立証する契約書あるいは領収証などの基礎的な書類を欠いているのは適切でないではないかということ、あるいは種牡馬の選定から購入あるいは寄贈に至るまでの諸手続きが購買者である中央競馬会の責任のもとに行われていないのは妥当ではないではないか、こういう点の意思表示をしながら検査を進めてまいったわけでございます。  いま御審議がありましたように、中央競馬会は今回の調査結果に基づいて所要の措置をとるということでございますし、また検討委員会の報告の趣旨に沿って種牡馬の輸入手続について改善措置をとる、こういうことでございますので、私どもとしては、今後ともこの問題について大きな関心を持って見守ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、今度は農水大臣にこの問題について締めくくって質問をしておきます。  いまお聞きのように、これは前田澤農水大臣のときに私が指摘をしたわけです。そして大臣は、調査をさせるという約束をされたわけです。そして、それを競馬会が調査をしたわけです。そしていま報告があったわけです。さらには、購入に関する検討委員会も持って検討されて、その報告を受けて、いまお話があったように、本年鋭意努力して種牡馬の購入に踏み切る、まあそれは大臣の許可を得た上になろうと思いますけれども、予算の執行もありますから。そういうことで、数々の疑惑を持たれてきた競馬会、それなりの強い警鐘を鳴らし、その姿勢を正当、真っ当なものに修正でき得たと私は思うのです。これからの取り組みも大変だと思います。大変だと思いますけれども、今後の努力にまたざるを得ないわけでございます。もちろん公正かつ厳正に今後は対処されていくというふうに私も思いますが、農林水産大臣として、指導監督さらにはこの一連の問題に対するお考え、今後の決意、この点について聞いておきたいと思います。
  37. 金子岩三

    金子国務大臣 競馬会の種馬輸入につきまして大変問題を生じ、いろいろお騒がせしたことは、まことに遺憾でございます。優秀な外国産種馬の計画的な輸入によって強い馬づくりを目指すとともに、競馬馬生産農家の経営安定を図ることはきわめて重要であります。今後このような事件が発生しないように厳重に指導をしていきたいと思います。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 どうも大臣、大まかにそうお答えをされたわけですけれども、競馬会の取り組み、措置を含めて強い決意でやる、僕はそれはそれなりに結構だと思うんですよ。さらに、本年度内の種牡馬の購入に踏み切る、このことについて大臣の見解、そのとおりだあるいはそれに努力するのだと大臣がお約束をいただけるのかどうか、そのことを重ねて聞いておきます。
  39. 金子岩三

    金子国務大臣 先ほど内村理事長がいろいろとこれからの予定を申し上げております。私は、内村さんのお話を聞いておって、大体年内いっぱいには片づくのじゃないか、そうして軌道に乗せることができる、このように考えております。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 競馬会の種牡馬購入については、年内に種牡馬がちゃんと購入できるように農水省も大臣も私は格段の協力をお願いしておきたいと思います。競馬会については一応これできょうは質問を終えます。  続いて、外務省は出席をいただいていますね。実は、わが国が参議院選挙のさなかに、南太平洋の小さな島で非常に重大な要因を含んだ国民投票がなされておったわけです。そのことに、私どもも含めて、わが日本の外務省を含めて、どれだけの関心と注目を持ったであろうか。残念ながらそれは全く関心も注目も持たなかったのではないだろうか、そういうふうに私は思うわけです。  そこで、とりわけ、わが国が一九一四年から三十年間、南洋群島という名で統治をしてきた、そして今日は国連の信託を受けたアメリカが統治をしている、そういう島々の現状というものについて、外務省はどう認識をし、どのような位置づけをなさっているのか。特にミクロネシア連邦、この島々の実情というものについて政府はどう実情認識をされているか、まず、それから聞いていきたいと思います。
  41. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 お答え申し上げます。  旧日本が行っておりました委任統治領でございますが、これはその後、第二次大戦後でございますが、アメリカの信託統治に移っているわけでございます。これが現実には、現在のところ四つの行政区画と申しますか、そういう形に分かれておりまして、先生御承知のとおり、一つがパラオ、それからその次が先ほどおっしゃいましたミクロネシア連邦、三番目にマーシャル諸島、さらにまた北マリアナ諸島、この四つに分かれておりまして、それじゃアメリカはこれらの地域につきましてどういうふうに考えているかということでございますが、現在、いわゆるコンパクトと称されております規約について、これらの国と交渉をやっているという状況だと理解しております。このコンパクトというのにつきまして、パラオ、ミクロネシア、マーシャルがアメリカとの間で個別に交渉しておりまして、それに関しまして合意ができれば、相互に了解し合った時期にアメリカとの間で一定の関係に入る。他方、四番目に申しました北マリアナ諸島の方は、今後ともアメリカの、言うなればプエルトリコと同じようなコモンウェルス関係に入っていきたい、そんな態度をとっている、こう聞いている次第でございます、
  42. 井上一成

    井上(一)委員 ポナペの現状についてはどういう認識に立っていますか。
  43. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 ポナペは、ミクロネシア連邦、先ほど申しましたFSMと言っておりますミクロネシア連邦でございますが、この連邦は実は四つの州がございまして、そのうちの一つがポナペ島を中心とするポナペ州ということになっていると理解いたしております。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 ポナペの島民の生活、いわゆる民情についてはどのような認識に立っていますか。
  45. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 ポナペにつきましては、先ほど申し上げましたように、ミクロネシア連邦の一部ということでございますが、先ほどちょっと御紹介いたしました自由連合盟約、すなわちコンパクトと称するものでございますが、これにつきましていわゆる住民投票、これを行う。その住民投票に絡まりまして、私どもが出先の総領事館を通じてでございますが聞いたところによりますと、一般的には否定的な見解をとっているというふうに理解いたしております。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 山下参事官も現地からの十分連絡が、情報が得られないわけですよ。外務省自身はまさにこれはそこに目を向けてない、こういうことだと私は思います。  私の方から、これは引用さしていただくわけじゃありませんが、毎日新聞の社会部の大野記者が「ミクロネシアの完全独立」という「記者の目」というところで指摘をしているんです。これは七月二十日付ですね。ポナペの島での思い出を書かれています。  三カ月も四カ月も現地で生活をしていく、真の友情がそこに生まれるわけですけれども、ふっとその話り伝えられた日本の軍事下における行為、そういうことを耳にした若者は、やはり日本に対して、日本人はラフなんだ、こういうことを指摘しているわけです。戦時中の痛みというものがやはりいまの若者にも受け継がれていくし、そしてその痛みをやわらいでもらうためにわが国がどのように対応してきたか、やはり島民の納得のいく対応をせずして、私たちが本当に親善を深める、仲よしになるということは、私はあり得ないと思うのです。ただ単に、たしか六九年ですか、アメリカとわが国の政府との間でミクロネシア協定を結んで、福祉費として五百万ドルずつを拠出しているわけなんです。これも島民に十分な納得と合意を得ずしての頭越しの援助なんです。そういうことについて、私は、やはりもっとミクロネシア連邦、とりわけポナペの島民の意思というものに十分な関心を持たなければいけない。さっきお話がありましたけれども、アメリカとのいわゆる自由連合協定ですね、この協定が住民投票がどんどん行われていく。とりわけ、私の承知している範囲では、ポナペではこれを七五%の否定、反対があった、こういうふうに聞いているんですよ。ほかの島を含めてそれが賛成多数である。聞くところによると八〇%以上だ。そうすると、ほかの三つの島はもう九九%ぐらいにならなければ、ポナペが七五%反対ですからね、平均値出てこないのですよ。やはりポナペの島民の意思というものをわが国は十分に把握していかなければいけない。このことがまず第一。そういう中から両国の、ポナペとわが国との十分な親善を図っていかなければいけない。  私はここでひとつ事実関係を明らかにしていきたいと思います。  ポナペでわが国に対して非常に好意的な、これはもうその先祖からずっとわが国に対して好意的な一つの事実関係を積み上げてきた人たちがいらっしゃるわけであります。そして、これはマキシ・イリアルテさん、この方はもう亡くなられて、その息子さんめサルバドル・イリアルテさんが今日ポナペの島民の若いリーダーとしてがんばっているわけなんですけれども、ナット村の副酋長をなさっていらっしゃる。もちろん島民の信任厚いわけでありますが、さらにはナット村以外の人たちの支持ももちろん厚いわけであります。この方がある疑いで裁判にかかっているわけです。その事実関係というものは私自身が確かめたわけではありませんが、九月六日に裁判があって、さらに九月二十日の裁判が予定されておったのが延期をされた。どういう裁判なのか。いわば自由な島民の意思に対する抑圧あるいはそれに対する一定の政治的な圧力、そういうにおいが強いわけです。私は非常に重大な関心を持たざるを得ないわけです。とりわけ、いま言うサルバドル・イリアルテさんの受けている今日の状況というもの、これは私は前もって外務省に調査依頼をしました。私の方には、九月二十日、ランプ法務長官、タケシ・ミクロネシア連邦外務次官、これらの人が私の調査依頼をしたサルバドル・イリアルテさんのそのような嫌疑を含めての事実関係を承知してないということをわが国のアガナ総領事館に話されたという報告を受けているわけです。  私は、経済援助はもとより取り組んでいかなければいけないわけですけれども、いま指摘をした、本当の島民の意思が抑圧されるのではなく自由な形で島民の意思が尊重されていく、そういうことが必要であり、そのような外交方針、外交対処、外交を繰り返していくことが正しい日本の平和外交だ、こういうふうに思うわけです。人権尊重、平和外交、国際間の緊張が深まる中で、それを緩和さす一つの大きな外交の手だてだと私は思っているのです。特にこのサルバドル・イリアルテざんが置かれている今日の状況を、外務省はその後、二十日以後に調査をされたのか、あるいはそういう事実関係をどうとらえているのか、このことについて聞いておきたいと思います。
  47. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 ただいま先生御指摘のサルバトール・イリアテさんでございますが、その後、私どもが現時点で知っている点をちょっと御報告さしていただきたいと思います。  これも同じくわが方の在アガナ総領事館が、二十三日でございますが、ミクロネシア連邦の最高裁の事務局長に電話で聞いて判明したところでございますが、それによりますと、このイリアテさんはことしの三月十八日でございますが、凶器を使ってある人に暴行を加えようと試みた、その容疑で起訴されまして、当初は、先生御指摘のとおり今月六日に裁判をやる予定であったようでございますが、これが延期されておりまして、来月、十月二十七日に行われるということのようでございます。  なお、現時点におきましてイリアテさんは身体の拘禁等は受けていないというふうに私ども聞いている次第でございます。
  48. 井上一成

    井上(一)委員 実はこのような実情をつぶさに見てこられた人たちもいらっしゃるわけでありまして、植民地の中で苦しめられてきた島民、さらにはいまも補助金型植民地運営方針というのですか、補助金で何とか補助金を出す側のサイドに立った島民の意識構成をしていこうという、そういう形では真の親善友好なんて生まれてこない、こういうことなんです。そういう中で今回のサルバドル・イリアルテさんの難状に出くわして、ポナペとの友好と親善をますます深める、そういうことを通してサルバドル・イリアルテさんの手助けをしたい、いわば民間外交による救済活動が始まったと私は聞いているのですよ。非常に喜ばしいことであり、私は非常に評価をするわけです。本当は外務省がそういうことについてもっともっと接触をして、事実関係を明らかにしながら、正しい対処、対応をしていかなければいけないのに、民間のそのような力でこの問題が解決の糸口に近づこうとしつつある、こういうことの認識に立っているわけなんです。  そういう意味で、さっきも申し上げたように、本当にわが国が強く取り組める中の人権外交は一つですね。核廃絶が一つ、人権外交が一つ、大きな柱なんです。そして、国連中心主義だという外交指針、外交方針、そういうことも踏まえた中で、この問題はわが国が積極的に乗り出して私は内政干渉をしなさいという意味で言っているのじゃないのですよ。さっきから言うように、島民の意識、意思を十分尊重しなさい、そういうことがいま大事である。これはあえてきよう申し上げたのは、戦時中は食糧増産、わが国の富国強兵のために彼らの耕していた土地も含めてどんどんとわが国のいわゆる植民地政策が進んでいったわけです。そういう過去における誤った取り組みに対しての償いも含めて、ひとつこの問題、きょうすべて終わるわけではありませんし、外務大臣もアメリカに行っていらっしゃるから、山下参事官は恐らくいまの立場は、北米局にいらっしゃるから、担当だからこれをやられていると思うのです。あなたは私がこれだけ指摘申し上げるほど承知してないはずですね、私がいま言ったほど。むしろ担当の人も含めて承知してない。私から指摘を受けてやっとグアムのアガナ総領事館に連絡をし、そこから足を運ぶ。だから、まだまだ日にちはかかろうと思いますが、九月二十日が十月二十七日に延期をされた。そして、それは、この問題に対する世論あるいはもっともっと強い声が上がったら、ひょっとしたらなくなってしまうかもわからない。九月六日の裁判も、凶器をもって云々と言われているけれども、ごくわずかな、罰金五ドルか十ドルくらいで事を処しているのですよ。本当は殺人未遂の嫌疑でこれは裁判にかかる、そういうことなんです。世論を大事にするアメリカの外交ですよ。日本も世論を大切にする。日本の国会でこの問題が取り上げられた。その事実関係は明らかにしてわが国の誤ることのない対応を私は特にお願いをしておきたいと思うのです。  山下参事官にえらい重い荷物を背負わせるようで、本当を言えば、これは外務大臣が来てここで答弁をしなければいけない。いま臨時代理は後藤田房長官。これは安倍さんが帰ってくるまでのかっこうだけの大臣だから、きょうは出席ができない。私があなたにこれだけ強く訴えるのは、一人の優秀な指導者、島民の信頼厚い、いわば七五%の人たちに支えられる、あるいは一〇〇%の人たちかもわからない、二五%は一時的な判断で投票したかもわからないし。ともあれ、優秀な指導者であるサルバドル・イリアルテさんに強い関心とその事実を明らかにしながら、ポナペに住む人々の気持ちを酌んだ人権外交を推し進めていくということをお約束していただけるものかどうか、このことを聞いておきます。
  49. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 先生御指摘のとおり、旧委任統治領でございましたこれらの地域と日本との間に、かっていろいろな問題があり、それなりの感情が依然として存在するということは、十分理解し得るところと思うのでございます。申すまでもなく、わが国といたしましても、憲法にも定められておりますように、個人の自由ないしは基本的人権は尊重さるべきだという基本的な価値観を持っているわけでございまして、その意味で人権問題には深い関心を政府として持つのが当然だと思うのでございます。かつまた、そのような観点から、世界のいずれの国におきましても基本的人権は尊重さるべきだという考え方は私どもも当然持っているわけでございます。  しかしながら、特定の国におきましての人権の問題、そういう問題につきまして日本政府がどう対応するかということは、実はその国との友好関係の維持といった外交上の考慮も当然ございまして、慎重に考えていかなければならないのじゃないか、こう考えている次第でございます。
  50. 井上一成

    井上(一)委員 何を言いたいのか、あなたは。何を言いたいのかわからぬわけよ。人権外交は推し進めなければいけない、そのことなんです。ところが、個人云々とかあるいは特定の国云々。私は内政干渉というようなことは決してあなたに話をしていない。むしろ内政干渉はしてはいけないと言っているわけです。日本であろうと、アメリカであろうと、私は内政干渉してはいけないと言っている。何を言っているのですか。だから、内政干渉してはいけない。島民の意思を尊重するということ、そして、もし事実関係——私も現地へ行ったことがないのでまだ確認していないから、機会があれば私は行きますが、もしそこで政治的な背景の中で人権が抑圧されているという事実があったとしたら、わが国としてもきっちりと一言国連の中で物を申さなければいけませんよと言っているわけです。そういうことがあれば、人権外交を推進する日本外交が知らんぷりをできませんよ、とりわけ、過去における経緯が、三十年の統治してきた経緯があるではないですか、こういうことを申し上げているわけです。理解できませんか。どうなんですか。理解ができなければ、これは臨時代理をここへ来てもらってください。そして、これはきっちりしておかなければいけない。アメリカであっても、もちろんわが国も含めて、島民の意思を尊重することが第一ですよ、私はこういうことを言っておる。そして、個人の人権というものも守っていかなければいけませんよということを言っている。それ以外に私は指摘をしていない。そういう取り組みをやりますか。外務省はやるかと言って。おるわけです。やれないなら、やれない、やるなら、やる。やるというお答えがあると僕は思ったのだけれども、何かちょっと聞き取りにくかった面もあるし、何度言われたのかわからぬのです。どうなんですか。
  51. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 先生御指摘のとおり、実は、私どもも現在本件関係の情報を収集中でございまして、まず事実関係を調べるということが最初に行われなければならぬのじゃないかと思うのでございます。それで、その辺がはっきりいたしますのがもう旬日を要するのではないかと思うのでございます。その辺を踏まえまして、わが国としていかなる対応をとり得るか。御指摘のとおり、人権ということは重視すべきことは先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、それを踏まえながら、いかに対処するかを検討さしていただきたい、こう存じます。
  52. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、このことについてはまた次回の委員会に後の報告を求めて、きょうはその問題は一応これで終えておきます。実情がはっきりすれば、その時点でまた報告をいただいて、それに対する外務省の対応を聞いていきたい、こういうふうに思います。  それでは、農水大臣に逐次聞いていきたいと思います。  まず、先般締結された米ソの長期穀物協定の内容はどのようなものなのか、さらに、この種の協定に価格が記されていない理由、それは何なのか、これから聞いていきましょう。
  53. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先般締結されました米ソ間の穀物協定は、有効期間五年、それで、その間におきます毎年のソ連の最低の義務的輸入数量、それから米国政府と協議なしに買い付けられる上限の数量を定めております。ソ連側にとっての義務的な最低輸入数量が九百万トン、それから米国政府と協議なしに買い付けられる上限の数量が千二百万トンでございます。それで、これはその前にございました旧協定と比較いたしますと、旧協定の場合には、下限が六百万トン、上限が八百万トンということでございます。  それで、先生お尋ねの価格が定められていないのはどういうことかということでございますが、これは直接穀物の売買を行いますのは、ソ連側の公団とアメリカ側の商社との間で行われるわけでございまして、ソ連の買い付けがアメリカの穀物の需給事情に対して過大な衝撃を与えることを回避するために、変動幅の上下限を定めている、そういう性質のものでございますから、現実の売り買いではないという意味で価格は決められていないわけでございます。
  54. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、実はこの協定を結ばれて、アメリカのブロック農務長官が、きょうは米国農業と市民にとってハッピーな日だ、そういう表現で喜んでいるわけなんですよ。穀物協定を仲立ちにして、いわば胃袋を仲立ちにして東西の共存だ、こういうふうに思うわけです。この協定を農林大臣はどのように評価していらっしゃるのか。アメリカとソ連、相対立する両大国、アメリカの農業と市民にとってハッピーだと喜んでいるわけです。
  55. 金子岩三

    金子国務大臣 このような条件のもとで、新協定は現行協定に引き続きソ連の米国からの買い付け量に一定の枠を設定することから、中長期的には穀物貿易、穀物価格の安定に寄与し、わが国の穀物輸入の安定に資するものと考える。これでいいですかな。
  56. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっと大臣、お粗末だよね。局長、あなた書いたやっとかそんなものを渡すから大臣がまごつくわけよ。きょうは大臣、やはり本当の政治家として思っていることを——僕の質問の趣旨わかりますか。(金子国務大臣「余りよく聞こえていない」と呼ぶ)それじゃ、もう一度繰り返しましょう。  アメリカとソ連が五年間の長期穀物協定を締結した。そのことでブロック農務長官が、きょうは非常にハッピーだ。何がハッピーかというと、アメリカの農業と市民にとってこの穀物協定、一定の生産者の見通し、供給の見通しとか生産の見通しも含めてでしょうし、あるいは価格安定、いわゆる長期間の、五年間の安定政策、そういう協定だ、ハッピーだ、こういうようなことを言っているわけです。  それで、私は、大臣はこの協定をどのように評価されるのか。まあ、東西両陣営が共存共栄、穀物協定によって食べ物を通して、胃袋を通して共存共栄だというようにも私は思うのですよ。そういうふうにも思うわけです。いがみ合って非常に相対立している両大国がハッピーだというんだから、何やといったら、そういう胃袋を通して。それで、大臣はどう思われますかと聞いているわけだ。ハッピーだと思われるのか、いやこんなのハッピーじゃおまへん。で、こう思われるのか、どっちですかといって聞いているわけですよ。
  57. 金子岩三

    金子国務大臣 私は、いまの穀物だけの問題じゃなくして、アメリカとソ連との取引とか協定とか、こういうものの谷間に日本が挾まれておって、利害関係が生じるわけでございます。したがって、一概にこの協定がわが国にプラスかマイナスかとかというような批判をすることは容易ではない。計算ができないわけですよね。この大国のやっていることはわからないわけですから、原則的に。以上の心境です。
  58. 井上一成

    井上(一)委員 いや、それは非常に素直でよろしいですよ。大国のやっていることはわからぬ、何をやっておるのやらわからぬ、ほんまにそうだと思うのです。ひょっとしてアメリカもソ連も身勝手かもわからぬ。その谷間にわが国が落ち込んでしまっているというか、押しつぶされているかもわからない。だから、私は、外務大臣であれば、東西両陣営が共存共栄して非常に結構なことですと言うかもわからぬ。しかし、さすが農水大臣、やはりりっぱなものですよ。それはそのとおりだ。いや、私はそのとおりだと同調するとかいうことじゃなく、そういう心境を素直に大臣におっしゃっていただいたそのお答えについて、私はわかりました。局長、余りつまらぬ資料を渡して大臣がもがつくようなことをやるのはみっともない。大臣もわけがわからぬと答弁しておったら、後で考えたら中身はこんなのか、こうなるから、いまのお答えはそれなりに、わからぬということが大臣の心境で、そのとおりかもわかりません。  大臣、アメリカにとってはうちは穀物の最大輸出国、わが国にとっては最大の輸入国ですね。このことについて日本側に何らかの連絡があったのかどうか。わからぬと言うその答弁で、そんなものはある道理がないと私は思いますけれども、あったのかどうか、大臣にちょっと聞いておきたいと思います。
  59. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お許しを得て、お答えをいたします。  米ソ穀物協定の締結の過程は、在米大使館もフォローいたしておりましたが、一番最後のどん詰まりで、いま申し上げました最低の数量、上限の数量というのは、やはり決まった直後に通報を受けたということでございます。
  60. 井上一成

    井上(一)委員 では、事後報告ですね。そうでしょう。
  61. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 さようでございます。
  62. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、そうなんですよ、アメリカという国は身勝手なんですよ、うなずいていらしゃって、本当に大臣素直に——僕は大国アメリカの身勝手なものだと思う。ある論評に、アメリカの農民に対する深刻な内政問題に対処するため、いわゆる対ソ対決路線だけではどうしても律し切れないものがあって今回の新協定の合意へと進んでいった。アメリカの生産者とソ連の消費者が、売りましょう買いましょう、そして、そのことによって両国の国民生活が向上していく、それならいいじゃないかという意見の人もあるでしょう。それはそうかもわかりません。防衛費を増強せよということよりもましかもわからない。しかし、こういうアメリカの身勝手な対応措置について農水大臣はどう思っていらっしゃいますか。言葉は別としてけしからぬな——やはり同盟国でしょう。そしてその中で日本の穀物というものも非常に影響を受けるわけだから、そういうことでもうちょっと事前の話があってもしかるべきじゃないか。いろいろな受けとめ方があるわけですけれども、大臣としてはどういうふうに思っていらっしゃるのか、素直な御意見を聞かせてほしいと思います。
  63. 金子岩三

    金子国務大臣 井上さんが私の考え方を知りたいというのは、農産物の市場開放の問題等々、すべてを含めての私の考え方をお聞きしたいということであれば、これから少し長く申し上げますが、どうでしょうか。
  64. 井上一成

    井上(一)委員 今回の米ソ長期穀物協定、アメリカは、あなたのいわゆる頭越しで事後承認、何の事前の連絡もない。大国のそういう協定に踏み切った身勝手な行動、そういうことに対してなんです。
  65. 金子岩三

    金子国務大臣 それはいま御質問になっている穀物協定についての私の考え方は、先ほど申し上げたとおり、両大国がやっていることは私はわからない、余り理解ができない点ばかりであります。
  66. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、大臣、中近東の諸国は石油を武器として使った、そういうときがあります。それと同じように、アメリカも、ソ連がアフガンに侵攻した、それによって経済制裁を与えた、あるいはポーランドの問題によって経済制裁を与えた。七五年、八〇年、八一年、八二年は一年間の協定しか結ばない。穀物を一つの武器として使ったわけです。今回は長期の五年のということなんですが、八一年、八二年、いわゆるアフガン、ポーランドのそういうような問題を含めて経済措置に穀物を武器に使った、そういうことに対しての制裁効果はあったかどうか、大臣はどういうふうに受けとめられるのか、効果があったのか失敗だったのか、この点について聞いておきたいと思うのです。局長、私は局長に答弁をしてもらうときにはちゃんと指名しますから、大臣にお答えをいただく。きょうは傍聴も余りおりませんし、そんなあしたの新聞にはっと載るわけではないから、私はあなたの素直な意見を聞かせてほしい。局長にはまたお答えをいただく場合があるから、どうぞ大臣。
  67. 金子岩三

    金子国務大臣 私ぐらい素直に率直に物を言う政治家は余りいないのですが、いまの井上さんがわれわれの考え方を聞こうとしておるそのポイントが、どこの方を聞こうとしておるのか、私の心の持ち方、考え方は、先ほど率直に申し上げておるわけですから、後は具体的に何か専門家にお尋ねがあれば、ここに専門家がおりますから、ひとつ説明させていきたいと思います。
  68. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私が聞きたいのは、穀物を武器にして経済制裁をした、それは効果があったと思うのか、失敗だったと思うのか、こういうふうに聞いているわけです。  ちょっと理解を深めてもらうために少し言うと、効果があったと思うのと失敗だったという両面があると思う。二つに意見が分かれるわけで、一つは、経済制裁を加えることによってアメリカの国内生産は何らかの形で圧迫をされていく。輸出ができないのですから、在庫がどんどんふえて国内在庫いわゆる過剰在庫になる。それと、たとえばアルゼンチンだとかブラジルだとかが新たな輸出国になる。ソ連はそこから輸入するわけですけれども、アメリカ以外の国々に対する食糧増産ですね、輸出せんならぬから、自給率以上の生産をせなければいかぬから。そういう意味での自国以外の食糧輸出国の増産を促進してしまうという一面があるわけです。  もう一つは、いわゆるそのような経済制裁によって、それじゃ、ソ連が被害を受けなかったといったら、そうじゃないわけですね。ソ連はそれなりに被害を受けている。どんな被害か、たとえば経済的だけの問題をとらえたら、アメリカから輸入ができなくなったら、ソ連はアルゼンチンだとかブラジルに買い付けにいかなければいけない。そうなると、アルゼンチンの増産いわゆる生産をふやすために、何らかの形で価格にそれがはね返るわけです。いわゆる国際価格が、安定していた国際価格以上に金を支払わなければならない。いわゆる国際収支、そのことによってソ連の国際収支が悪化していく。それと、飼料穀物なんかになりましたら、畜産が制限されていきますね、輸入が厳しくなると。価格が上昇して、そういうことになると消費を抑制するか物価が上がっていくか、どちらかになりますね。  だから、ちょっと具体的に、僕は両面があった、効果があった面と、失敗というか、よくなかった面と二つあるんだ、そういうことで、ちょっと理解をいただけたかわからぬけれども、やはり大臣もそう思いますかということですね。やはり効果のある部分と効果のなかった部分の二面性を持っている、こういうふうに僕はいま思うのですけれども、いかがですか。
  69. 金子岩三

    金子国務大臣 効果があったと見る側もあれば、余り効果がなかったと見る側もある。いわゆる二面的な判断が出るわけですね。いろいろ食糧による戦略ですか、それは、資源による戦略は、やはり御承知のとおり一ころ油によって大変な外交が展開されておりました。そういうことで、外国間で、特に大国の外交というのはテクニックがわれわれのような小国では判断できないようなテクニックを使いますので、ここで批判がましいことを言うだけの見識は私にはない、こういうことでございます。
  70. 井上一成

    井上(一)委員 私は、他国を飢えさせる、いわゆる食糧で締めていくというそういうことはよくないことだ、基本的には。そういうことによって政治的に従わせようとすることは、さらに道義的な面からとらえてやるべきではない。もっと端的なことを言えば、食糧を兵器として使うべきではない、僕はこう思っているのです。  だから、そういう意味では、大臣、どうですか。大臣も食糧を兵器に使うなんというのは、そんな考えはないと思うのですけれども、念のために私はここで聞いておきたいと思います。
  71. 金子岩三

    金子国務大臣 食糧を兵器として使うべきではないという御意見なんでございますけれども、私はよく戦国時代のことを言うのですが、戦争を続けておるうちにやがて最終的には兵糧攻めによって勝負をうけておったように、わが国が総合安全保障の見地から食糧の自給力を高めていわゆる国の安全を守る、こういう考え方で農政推進を図っておるわけでございますので、いずれ食糧によるいろいろな外交上の駆け引きも展開されるでしょうし、いざ何か有事の場合は当然食糧は大きな戦略物資になる、私はこのように考えております。
  72. 井上一成

    井上(一)委員 いまよく読まれているカッパ・ブックスという本があるのです。その中で「十年後」という本、僕はちょっと抜粋してきたのだけれども、この中で「孤立化する日本の危機」というところで、「日本を屈服させるもう一つの手段は「食糧」である。アメリカは、食糧の値上げか輸出制限をするだけですむ。食糧は今やもっとも重要な戦略物資である。」こういうふうに書かれているわけなんですね。「ところが愚かにも日本は、国際分業論、つまり日本は工業生産専一に励んで、食糧は輸入すればよいという誤った理論を信じこんで、」後で指摘をしますけれども、「穀物自給率三五パーセントを割りこんでしまった。」「日本農業は、今や安楽死させられる寸前にある。」こういうことが書かれておるわけなんですね。  さらにもう一つ、これは元次官だった松本作衛さんが官房企画室長のころの話が新聞に載っているのです。これはひそかに屠殺計画をやったことなんですが、「追い打ちをかけるように七三年秋の石油ショック。この年十二月農林省の一部の官僚たちは青くなった。石油不足で船が米国やカナダの穀物積み出し港で止まり、エサの輸入がストップしたからだ。トウモロコシなど家畜のエサはほぼ全量が輸入。どう甘く計算しても六カ月後にはフタ。もニワトリもエサ不足で全部死ぬ。「外部に知られるとパニックになる。ひそかにと殺計画をつくった。省内でも」」農林省ですね。農林省でも「「知っていたのは五、六人だった」」当時の官房企画室長の松本作衛さん、食糧庁長官もなさった。これは幸いに屠殺計画を各県に割り当てる直前に産油国の原油供給の制限が解けたというわけですね。石油の制限が解けた、計画は日の目を見なかった、こういうことが当時語られているわけなんです。  日本は、食糧や飼料が入ってこなかったらこれはまさにお手上げです。自給率が三三%のわが国、食糧が武器になることを意味するその農相の意見、聞かしてください。
  73. 角道謙一

    角道政府委員 委員長の御指名でございますので、大臣の御答弁の前に私から実情をちょっと御説明させていただきます。  いま御指摘のありました穀物自給率三三%といいますのは、実は穀物の中には食糧のものと飼料がございます……(井上(一)委員「そのことについては後で質問するからと言うんだ、そんなこと聞いておらぬよ」と呼ぶ)
  74. 金子岩三

    金子国務大臣 井上さんのお話を聞いておりますと、いまの御質問は、大体農林省の中で何名かだけしか知らなかったことがあるということでいろいろ御説明されておりましたので、その何名かだけなら官房長が知っておるはずだから私は官房長を立たしたのですが、私は、いまお尋ねになった内容のことについては全く承知いたしておりません。新聞も見ておりませんので、もし見ておればそのときにいろいろ内容を承知したかもしれませんけれども、だれかそのお尋ねの内容のわかった政府委員がおりましたら答えさせたいと思います。
  75. 井上一成

    井上(一)委員 私は、その中身について大臣に聞いているのじゃなくて、当時としてはオイルショックで、輸入に頼っている日本の現在の食糧事情の中で、安定というものは長期には保障されてないと思うのです。大臣は、食糧は武器になる、あるいは戦略物資だとカッパ・ブックスにも書いてあるわけです。さすれば、食糧安保という言葉はなんでしょうけれども、大臣はどう考えておられるのか。自給率三三%だ。これは後でまた言いますが、数字のテクニックで、自給率についてはもっと高いんだと言いたいと思うのだけれども、そんなものを先に言って——自給率はどんどん落ちてきているわけです、武器だというのにどんどんと。私は、防衛予算をここで引き合いには出したくはないのだけれども、大臣、自給率を高めていくことも、大臣からこういう私の質問に対しては当然そういう答弁がはね返ってくるのではないか、私はそう思っていたのです。古い話じゃなく、石油ショックのときのそういう事情をあなたに聞こうと思ってないわけです。そういうことで、何かの一つの要因で、輸入にすべてを頼っているわが国の食糧事情がそんなことでいいのかどうか、大臣、そういうことなんですよ。食糧は武器だ、武器にかわるんだ、あるいは戦略物資だ、いろいろ言う。それじゃ、どんな手だてをしてどんなことをやろうと思っていますか、こうなるでしょう。これは最後はずっといくわけですけれども、一つずつ具体的な事実関係を積み上げていかないと答弁がしにくいだろうと思って、むしろ配慮しながら質問をしているのです。大臣は思っていらっしゃることを素直にお答えをされる本当に数少ない正直な大臣だと私は思っているから、そんな局長やほかの人が書いたものを読んだって答弁にならぬ。だから思っていらっしゃることを、いかがですか。  そういう意味で、自給率三三%なんていう現在のわが国の食糧事情、状況はこんなことでいいのだろうか。輸入に頼り過ぎる。そのことが石油制裁のときにどうなっていくんだ、考えるだけでぞっとするのじゃないだろうか。とんでもないことをやらかすソ連は五年間アメリカとの協定で安全なんですよ。わが国はどうなんですか。大臣、答えなさいよ。そういうことがいまの質問の要点になるわけですよ。
  76. 金子岩三

    金子国務大臣 井上さんの開かんとすることがようやくわかりました。  かつてオイルショックのときにこういうことがあったということを先ほどお話ししておりましたが、結論的に自給率をいかにして高めていくかということをお尋ねになっておりますので……。  日本は御承知のとおり狭い国で、狭い耕地しかないのでございますから、穀物などは三三%で、輸入に頼っておる。これがすべて日本の畜産のえさになっておるようなもので、畜産では七一、二%、自給率を高めてきたというけれども、えさは皆輸入でありますので、もし有事の場合のことをいろいろ考えますと、わが国の食糧の自給率は一体何十%が確実なのか、計算の仕方でいろいろ出ております。カロリーの場合幾ら、金額では幾ら、穀物は幾ら、鶏と卵は九九%、米は数十%、いろいろ出ておりますけれども、総じて有事の場合のわが国の食糧の自給率は安定していないということでございます。  それがために、やはり基盤を整備して生産性を高めるというためには農林省は相当の予算をかけております。いかにしてコストをダウンさせるか、そのためにもいろいろなことをやっております。ここ四、五年のうちには農産物のコストはEC並。みに均衡をとることができるだろう。アメリカ、オーストラリアみたいなああいう国と比較することはとうてい不可能でございますけれども、ヨーロッパ並みにはなる、こういう一つの目標を持って鋭意技術的にも大変な力を入れてやっておりますので、五年、十年たちますと、水もいまの五〇%増し、一ヘクタール八俵のものは十二俵とれるというような試算ができつつあります。このようになってくると、米は過剰ぎみで、米の生産が上がったからといって喜ぶ人はいないかもしれませんけれども、それにかわる穀物がそれだけ生産が上がる、私はこのように考えておりますので、農林省は一朝有事の場合のことを考えて、食糧の自給率を高めようとして今後も鋭意努力をいたしてまいりたいと思います。
  77. 井上一成

    井上(一)委員 そこで、大臣、七三年六月に、これはニクソン政権時代ですが、アメリカはインフレ対策と称して大豆等の輸出を停止したのですよ、御承知だと思いますが。同盟国とも言われております友好国であるわが国に対して、まさかこんなことはすまいと思っていたわけですが、やったわけです。御承知でしょう。大豆や穀物の大半をわが国はアメリカに依存しているわけです。だから、そういうことをまさかと思っているアメリカがやったとすれば、その後はアメリカの一挙手一投足に非常に気を使わなければいかぬ、目を離されぬ、こういうのが実情であったわけです。このときはまさにニクソン政権の戦略部門となったかっこうですね。それで、結局売り手市場で、高いものを買わされた。アメリカの都合で、アメリカの戦略の中で、高いものをわが国は買わされる羽目になった。さっきも頭越しの米ソ穀物協定。一体わが国の食糧安定というものをアメリカは考えておるのか、そんなことをわが国の農水省は強くアメリカに働きかけたのか。私は何もここであえて十年前のことを引き合いに出したくないのですけれども、事実だから……。そういうことを考えたら、高いものを買わされた、それは消費者、国民にはね返って負担していくわけでしょう。こんなことが許されるのだろうか、そういうことで、農相のお考えを聞きたいわけです。  さらに続いて、五十五年十月、農政審議会の「八〇年代の農政の基本方向」の中の十七ページ「食料の安全保障の必要性」という中で、「最近の経験からすれば、——確かにこの五十三年のそういう経験からすれば、それも含めていろいろな経験からすれば、「食料が外交上の手段として用いられる可能性もある。」こういうことがちゃんと述べられているわけです。私は、十年前のそういうこと、あるいはこういう農政審議会の「八〇年代の農政の基本方向」の中に書かれていることを踏まえた中で、どのような政策をとっていらっしゃるのか、ひとつ教えてほしいということなんですよ。まずこれは大臣から、どういう方向の政策を指示したか、その後局長から具体的に骨子だけ私は聞かしてほしい、こういうことです。
  78. 金子岩三

    金子国務大臣 農政審議会の報告は、井上先生もごらんになっておわかりと思いますが、やはりこれからの日本の農政はどうあるべきか、それは結局、生産性を高めて自給率を高める、そして農家経済の安定を図るということに尽きるわけでございまして、その方向に向かって具体的な施策、政策をいろいろときめ細かく打ち立てておるのでございます。私どもは、その農政審議会の報告は一九八〇年代から九〇年代に向かって当然わが国の農業で力を入れなければならない内容である、このように承知をいたしております。
  79. 角道謙一

    角道政府委員 大臣の御答弁を補足させていただきます。  いま井上先生御指摘のように、食糧の安定供給の確保というのは国政の基本というような重要な課題でございますので、これに基づきましてまず国土の有効利用を図っていく。またそのためには、ただ物が高いというだけでは困りますので、生産性の向上を図るということも考えながら、国内で生産可能なものはできるだけ国内生産で賄う。また、この国内生産の転換を通じまして、農地の確保、整備を図りながら食糧の総合的な自給力の強化を図るということがまず基本でございます。  また、先ほど御指摘がございましたように、飼料作物等あるいは大豆等につきましても、日本の土地事情、生産事情から申しまして、なかなか国内で一挙に有効な生産を確保するということは非常に困難でございますので、こういうものにつきましては、国内でも生産転換を図りながら、外国に対しましてもできるだけ安定的な輸入の確保を図っていくということをやっておるわけでございます。  先ほど御指摘ございました大豆の禁輸、これによりまして、四十八年当時国民生活に非常な混乱が起きたということも事実でございまして、その後、五十年だったかと思いますが、当時の安倍農林大臣が米国のバッツ農務長官と協定をいたしまして、安定的な穀物の供給をするという。協定があったわけでございますし、また、その後は毎年定期的に国際的保な穀物の需給事情につきましても、またアメリカの生産事情等につきましても意見交換を行いながら、私どもとしても供給確保に努力をいたしております。特に大豆の禁輸問題は私ども非常に手痛い経験でございましたので、これは毎年のようにアメリカにもその問題についていろいろ意見を聞いておりますし、今回の米ソ穀物協定に関連をいたしまして、また、最近アメリカにおきましても、熱波等によりまして大豆、トウモロコシの減産があるという事情を踏まえまして、先般、十六日に日本とアメリカの間で穀物の定期協議をやったわけでございますが、その際におきましても、アメリカ側の安定供給ということについて私どもの方から強く要望いたしております。  現段階におきましては、アメリカにおきましても相当量の在庫があるという事情がございますので、価格面におきましては短期的に上昇するといたしましても、物量の面におきましては十分安定供給をする、また、先般のような大豆の禁輸ということは二度とやらない、これは米国としても非常な失敗だったというようなことを言っておるわけでございます。また、短期的な不足の場合には、まだ量としては完全でございませんけれども、私どもといたしましては、国内に小麦あるいは飼料穀物、大豆等の備蓄を行うということをやっているわけでございます。  なお、特に日本人の食生活の面からいたしますと、やはり米など日本の風土に適した基本食糧によりまして国民生活を維持することが大変必要なことでございますので、長期的には、米を中心にいたしまして畜産物であるとか魚であるとか、野菜、果実とかを取りまぜた日本型の食生活といいますか、こういうものをできるだけ普及していきたいという方向で考えておるわけでございます。
  80. 井上一成

    井上(一)委員 私は、軍備を増強してわが国の安全保障に備える考え方、このことには反対だ。それよりもむしろ食糧の安全保障確保に重点を置かなければならない。このことが非常におろそかになっているのではないか、取り組みが非常におくれているのではないか。  有名な言葉の引用として、フランスのドゴールは、他国に食糧を仰ぐようなことでは真の独立国とは言えないと言われたのですよ。他国に食糧を支配されていくというか、食糧の首根っこ、胃袋の首根っこを抑えられる。私もそう思うのです。私も同感です。いま一挙に自給率が上がるということは非常に困難でしょうけれども、大臣としては、やはりこのドゴールの言われた言葉の意味をかみしめていかなければいけない。  それでは、わが国の穀物自給率はどのくらいで、先進国中どの位置にあるのか、一回聞かせてください。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕
  81. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  概算値でございますが、五十六年の自給率を申し上げますと、米は九二%、これは五十六年はたまたま冷害がございまして不作年で、その関係で若干落ちております。また、小麦につきましては一〇%、大豆につきましては五%という現状でございます。  外国を見ました場合には、少し年次として古くなりますけれども、フランスが穀物全体といたしましては一七〇%、西ドイツが九〇%、イギリスが七七%、アメリカが一六二%というような状況でございまして、穀物全体をとりますと日本は非常に低いものでございます。
  82. 井上一成

    井上(一)委員 この「八〇年代の農政の基本方向」の中で、需要と生産の比較、穀物の自給率は五十三年度三四%なんですよ。大豆は五%。先進国ではわが国は最低の自給率。最下位ですよ。さらに、昭和六十五年度には自給率を三〇%に下げる。ここに書いているのです、六十五年度三〇%。わが国の食糧の安全保障はこんなことで確保ができると思っているのかどうか。たしか国会の決議では、自給率を上げなければいけないということになっている。だから、大臣、さっきから言うように、こんなことで本当にいいのでしょうか、こういうことなんです。いかがですか。これは農政審議会の資料ですからね。
  83. 金子岩三

    金子国務大臣 目下立てておる数字は穀物三三%と聞いておるのですが、六十五年は三〇%に下げておると言いますから、そういうことがあるのかなと私も疑問に思っておるわけでございますので、その内容の説明角道房長にさせます。
  84. 角道謙一

    角道政府委員 いまの六十五年度の見通しにつきましては、井上先生御指摘のとおりでございますが、ただ、これには、食用農産物全体として見ました場合には五十三年基準年次とほぼ同じの七三%でございます。いま御指摘のございましたのは穀物の自給率でございまして、この中には先ほど申し上げましたように食糧用の穀物とえさ用の穀物の自給率がございまして、えさは今後畜産がまだまだ進展、発展するということで、穀物自給率としては落ちてまいりますが、えさの自給率としましては現状の二九%が大体三五%、また食用の穀物自給率としましては大体現状どおり七三%というのが私どもの見通してございます。
  85. 井上一成

    井上(一)委員 いや、私は個々の問題——確かに大豆は五%から六十五年度では八%だと、飼料の自給率を二九から三五に上げようと、しかし、食用プラ又飼料用を含めた穀物自給率というのは三四から三〇に下がるわけだ。だから、私の言っておるのは、三四から三〇に下げて、それで食糧の安定確保ができるのか。こんなことが大臣、許されるんですか。あなた、それで、いや一生懸命日本の農業を、日本の食糧を考えているんですと……。あるいはときには戦略物資になるんです。  ちょうど昼の時間に入って、委員会運営に協力をしてほしいということですが、これは大臣は知らないでしょう、五十三年が三四で、六十五年には三〇%に下がるんやというこんな数字は、いま僕から指摘されて初めて聞いたんでしょう。とんでもないことだと僕は言っているのですよ。本当にとんでもないことだ、これはよく調べて一回私も勉強する、こんなことがあったらいかぬということなのか、ちょっと答えてください。
  86. 金子岩三

    金子国務大臣 いま角道房長説明した内容を聞いておりまして、いまの三三%は飼料も入っておるわけですね。六十五年の時点では、食糧と飼料と振り分けて穀物の数字を出しておるようですから、これはまた午後再開してから内容をよく説明して、資料をつくってごらんに入れるようにいたしますから、これで休ませてください。
  87. 近藤元次

    近藤(元)委員長代理 この際、午後一時まで休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  88. 近藤元次

    近藤(元)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上一成君。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 午前中に私は自給率の問題について指摘をし、そのことについては一私の質問の趣旨は十分理解できたと思います。  食糧供給に不測の事態が生ずる場合には種々の要因があるわけです。国内的な要因、国際的な要風、農林省として国際的な要因にどのようなことを考えているのか、このことについて聞いておきます。
  90. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  国際的な食糧需給に不安定を生じます要因といたしましては、短期的なものあるいは長期的なものがあろうかと存じます。よく起こりますのは、外国におきまして、生産国におきまして不作があるあるいは消費国におきまして不作がある、その結果需給が一時的に混乱する場合があろうかと思います。また、生産国から日本は相当のものを輸入しておりますが、これは港湾のストであるとか、あるいは特にアメリカなんかの場合には河川の凍結であるとかいうようなことによりまして、一時的に輸入が途絶する場合というのがあろうかと存じます。また、けさほど井上先生からも御指摘がございましたように、日本には特にはございませんが、政策的に、たとえば一時的に禁輸をするとかあるいは輸出制限をするというような場合もあろうかと存じます。また、これは一時あるいは事態によりましては長期に及ぶかもわかりませんけれども、戦乱等によりまして不測の事態を生ずることがあるというような例がいろいろあろうかと存じております。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 いま言われた、さらには輸出国の港湾における交通途絶だとか国際紛争、輸出国の不作、不況、そういうものが考えられるという。それでは、わが国の食糧の安全保障について、そういうことも踏まえた中で平素からどのような備えをしておかなければならないか。これはもう残された時間が余りありませんので、この「八〇年代の農政の基本方向」の中に、十五ページ、平素からの食糧の安全保障、農業生産の担い手の育成、優良農地、水資源の確保、農業技術向上、総合的な自給力の維持強化を図っていく必要がある、こういうことに対してどういう対応をなさっていらっしゃるのか。確かに、日ごろから取り組まなければいけない問題が書かれているわけですが、このことについてどういうような取り組みをなさっていらっしゃるのか。
  92. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、平素から国内におきまして食糧が安定的に生産できる一番の基盤は、やはり農地の基盤整備でございまして、私ども、一応、農業生産の基盤整備に対しましては、公共事業関係といたしまして相当額事業費を投じて、これを確保しておるわけてございます、また同時に、水資源の確保ということにつきましても、土地改良事業を通じまして、貯水池であるとか用排水路の整備であるとか、いま申し上げました基本的な構造改善事業というものを重点にやっております。また、技術向上につきましては、試験研究機関におきまして基礎的な技術を開発をする。また、その試験を実地に農業に応用できるための技術も開発してまいるわけでございまして、また、これをさらに農家に伝達するために、普及員というものを通じましてこれらの技術を農家に伝達をし、また、一般的な生産力水準を上げていくというようなことをいろいろやっているわけでございます。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 いろいろ取り組みはしているということですが、農業生産の担い手の育成ということもここで指摘されているわけなんですね。  それじゃ、農業就業人口が十年前と現在とではどう変わってきたか、変わっているのか、このことについて聞いておきます。
  94. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  農業の就業人口は、十年前、四十七年におきましては六百八十三万人、現在では四百八十三万人というように減少してきております。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 農家の子弟で新規学卒の農業就業者、昭和四十年から五十七年の推移、これはどうなっておりますか。
  96. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  新規の学卒農業就業者数は、四十年六万八千人、五十五年におきましては大体七千人程度に減ってきているわけでございます。
  97. 井上一成

    井上(一)委員 ここ十年で農業に対する生産の担い手が非常に数少なくなっておる、こういうことです。いまの数字からいけば、百人のうちで三人くらいになるんではないかと思うのですね。それはひとつそういう事実だから……。  もう一点、優良農地の問題についても、いまはどんどんと宅地化されていく。結局、平素から備えなければならないことを農林省が何もやってへんのと違うやろか、取り組んではいるといういまのお話ですけれども、十分な対応策が施されてないのではないだろうか。若い人たちに未来があるような農政、そういうものを提示してないのではないだろうか。だから、若い人たちに農業に、生産に従事する意欲を持ってもらえないのではないか、夢を持つ気持ちが起きないのではないだろうか、こういうことを指摘したいのです。大臣、いかがですか。若い人たちに対する、やはり農政に未来があるんだ、そういう強い印象を与える政策、そういうものが欠けているように思うわけです。それはさっきお答えがあった十年間の数字一つをとらえても判断ができよう、こういうふうに思うのですが。
  98. 角道謙一

    角道政府委員 ただいま井上先生御指摘のありましたように、農業の生産につきましては、農業の将来につきまして、若い方々に夢といいますか、これがなかったということも事実でございまして、私ども農政に携わっている者、非常にその点につきましてはまだまだ努力が足りないと思っておるわけでございます。  そこで、そういうこともございまして、今後の農政の方向ということを今後どう持っていくか、また、農家としてどういうものが現実に描かれていくか、農業の未来がどうなるかということを私ども研究いたしまして、また、農政審議会にお願いしたのは、先ほどから先生御引用なさっております農政審議会の「八〇年代の農政の基本方向」でございます。ただ、この「八〇年代の農政の基本方向」につきましても、将来展望が抽象的にしか書かれてないというような問題がございましたので、さらに農政審議会にお願いをいたしまして、昨年の夏「八〇年代の農政の基本方向」の推進についで」ということで、さらに全体の農家の展望というものを試みまして、六十五年におきましていわゆる優良農家というものが主な作物別にどうなるかというようなことを具体的なものとしてお示ししたわけでございます。またさらに、農業の場合には地域地域におきまして非常に事情が異なってまいりますので、各農政局別にこれを展開した場合、各農政局単位ではどういうような姿になるか、また、それはさらに各県別にはどのようになっていくかということにつきましても、現在私ども検討いたしておるところでございまして、将来展望として農家はこうなる、農業はこうなるということを具体的に示して、やはり意欲のある農家というものをこれから育てていきたいというように考えておるわけでございます。
  99. 井上一成

    井上(一)委員 私は、日本の国情から考えて、食糧を輸入することはやむを得ない。決して、輸入をしてはいけない、そういうことは言えないと思うのです。しかし、安定的な輸入の確保を図る必要がある、こういうことなんです。現在の供給は一口に言ってあちら任せの感がするのではないか、これは大臣も同じ感だと思います。  アメリカが十二日に発表した収穫予想で、大豆、トウモロコシは熱波による凶作だということがはっきりしてきたわけです。価格は、大豆では五〇%以上、トウモロコシでは三〇から四〇%急上昇するであろうという見通し、そういう凶作予想。私は、またも十年前の出来事が起こるのではないだろうか、本当に安定的供給があるのかどうか心配をするわけであります。  これに対して、あなた方は恐らく、日米農産物定期協議をやって、アメリカが対日供給を保証すると言っているんだ、だから大丈夫なんだ。じゃ、十年前はどうだったんだと逆に私は問い返したいわけだし、そんなことで安定なんだというのは、まさに考え方によれば説得力というものがそこにはないと私は思うし、あるいは冷静な客観的供給安定の一つの裏づけにはならない。  お互いに風と国との外交関係なんというものは、みずからの国、自国の国益を中心に考えるものであります。これはさっき午前中に指摘をした十年前の出来事がよい例でありますし、幾らアメリカが二度といたしませんと言ったって、いま言うように説得力がない。アメリカを信じています、アメリカのそういう定期協議の中で行われる約束事を信じていますと言うのは。むしろ私は外務省の役人だと思うのですよ、大臣。外務省の役人はそう言うであろう。通産省であったらこれはどう言うか。口では信じているようなことを言っても腹では一つも信じておらぬ。僕はそれぞれの省庁の役人のスタイル、タイプを分析しているわけですが、手っ取り早く言えば、農水省も、外務省なんかに任じておいてはあかんぜということですわ、私の言いたいのは。外務省のタイプを農水に持ってきたらこれはとんでもないことですよ。むしろ農水省の幹部大臣はもちろんのこと幹部の諸君には、絶対に供給は大丈夫だという確約をしかと私はとっておくべきだ、こういうことなんです。さっきも、朝の答弁ですね、日米農産物定期協議をやって、こうこうこうですと、外務省が言っているような答弁でここを切り抜けようとすれば、それは農水省の幹部としては不適格だ、僕はこう思うのです。もっと突っ込んで、わが国の食糧安定を図るために農水省としてはアメリカに対する強い対応を持っているのかどうか、そういう決意をひとつ聞かしてほしい。そのことでわが国の絶対供給が大丈夫だという裏づけに私はしたいと思うわけです。
  100. 金子岩三

    金子国務大臣 井上さんの熱烈なる食糧の安全保障について御意見を拝聴いたしました。  有事の際の食糧の問題を考えると決して安心はできません。これはもうはっきりしておるわけですね。畜産だけを考えてみても、大体二%しかえさの穀物の生産がないのでございますから、これはもう全面的に有事の際は畜産が崩壊する。したがって、動物たん白の補給は、いま水産で約五〇%魚で維持しているのですから、この面を拡大していく以外に手はないと思いますけれども、これとてやはり国際漁場における水揚げが大変比重を占めておりますので、そういうことをかれこれ考えますと、有事の際のわが国の食糧の安全保障は、いまの現状では至難な問題である。したがって、それだけにやはり、領土が小さくて立地条件が悪いけれども、科学技術を高度に利用して生産性を高める、それからやはり国民が農業に本当に興味を持って若い人が意欲を持つ、そして農村で生活することが日本国の一般の鉱工業生産業に従事しておる方々の所得水準に匹敵するような所得水準まで農家所得を引き上げていくということも大事な条件でございます。やはり収入の少ないところは全部過疎地帯になるわけでございますから、これを引き上げていくためには、いろいろやはり、財界等から批判もありますけれども、農業政策には相当思い切った財政投入をしなければ、日本の農業を有事の際にまず食糧の安全を保障するだけの成果は得られない、このように考えておりますので、この問題は挙げて農林省の責任でございますので、いま大変御心配になっていただいております点について今後は全力を挙げて取り組んでまいる、私はこのように考えております。
  101. 井上一成

    井上(一)委員 いま日本は、大豆、トウモロコシ、ほとんどアメリカから輸入しているわけです。九九%以上輸入をしているわけです。いまも指摘したように、熱波等の理由で、アメリカ側に依存する大豆の値上がりは逆にわが国の消費者にはね返ってくるわけです。大豆油だとか、納豆だとか、豆腐だとか、みそ、しょうゆ、すべてその原料であるアメリカ産大豆の高価格がはね返ってくる。そういうことが結果として起こり得る。供給は皆さんの努力で今後アメリカとの交渉の中で保証されてきたとしても、高い穀物を買わされることになってはいけない。価格が上がって供給保証が万全だと言われても、それは消費者にとってははなはだ迷惑であり、大変なことであると思う。さっき言ったように、豆腐、しょうゆに至るまで消費者にはね返ってくるのですよ。価格が上がって供給安定だなんということを言われてしまうと、農水省の仕事は何なのですか。外務省が言うのなら、まだ少しぐらいは外務省の立場はそうか。しかし、農林水産省としては、やはり価格が引き上がっていくということは阻止しなければいかぬし、そういうことが日本の食糧の事情にどうはね返ってくるかということを考えれば、非常に重要な大切な仕事、それが農水省の役割り、私はそういうことを思うわけです。  こういうことも踏まえて、再度ここで大臣の決意、供給安定に努力してもらう、同時に価格の上昇ということには万全の手だてをして阻止していかなければならない、そういうことの取り組みの決意を聞かしていただきたいと思います。
  102. 金子岩三

    金子国務大臣 御説は御指摘のとおりでございまして、私は、農林省はやはり農産物の生産からいわゆる国民の末端の消費まで責任がある、したがってそれを含めて政策を取り入れていく、こういうことを就任の弁で言っております。いろいろ生産者団体が出てきて、末端のいわゆる消費の面まで政策として取り組むというような発言をした農林大臣はかってないというようなことを言ってとがめられましたけれども、私は本当にしんからそういう考え方をしておりまして、就任早々消費者米価の問題が出ましたから、これも抑え込んで上げませんでした。また、この七月に生産者米価を上げたときも、消費者米価に連動するのじゃないかという御質問が委員会でも多々出ましたけれども、連動しない、やはり消費者の立場は絶えず守っていく。生産性を高めるということは、結局生産の能率を上げてコストをダウンさせて価格も下げるという意味でございまして、いま肉から一般の、卵とか鶏、こういうものはどちらかというと低価格で推移しておるのですが、すべての農産物の末端価格はもう大体ヨーロッパ並みになりつつある、このようにお考えになっていただいて差し支えないと思います。それはやはり政策がどんどん行き届いてその生産性を高めていっておる、コストダウンもできておるというように御理解をいただきたいと思います。今後も一層そういう面で末端消費者の立場も十分配慮に入れながらコストダウンを図っていく、このように考えております。
  103. 井上一成

    井上(一)委員 御努力をなさっていらっしゃるということについては、私もそれなりの理解はしますけれども、輸入に頼るわが国の食糧事情、とりわけアメリカのそのような高騰する傾向、そういうものをきっちりと踏まえた中で善処していくべきである、そういうことを強く私は申し上げておきたいと思う。  そこで、余り時間がありませんが、今回、当初に申し上げたように、ソ連とアメリカは長期にわたる安定供給をお互いに契約したわけですね。その協定でソ連は長期に安定供給を受けることができるわけです。日本にはそのような協定がないわけなんですね。長期に及ぶ日米穀物協定なんというものはないわけなんです。対立する米ソにあってそのようなものがきっちりと保障された。友好国でありそして同盟国だと言われている日本との間に穀物協定がないのはなぜなのか。おかしいじゃないか。こういう質問をすると、担当の局長なり幹部の方は、日米農産物定期協議がありますんや、そこでちゃんと約束してそこでちゃんとする。これは長期安定供給ではないのですよ。私の指摘をしたいのは、だから、そういう答弁が返ってくると、それはもう認識が全く——言い逃れ的な答弁になるわけです。ないことは事実なんです。私は、米ソの長期穀物協定を批判しておるわけでも何でもないのですよ。さっき大臣が言われたように、アメリカの、大国の身勝手な、アメリカの農業と生産者の立場をアメリカの国内問題としてとらえたわけで、これはアメリカのなさることだから私はとやかく言いません。しかし、わが国とアメリカとのそういう長期にわたる供給協定がないというのはおかしいじゃないか、そういうことなんです。  なぜそういうものがないのか、理由があればおっしゃってください。あるいは、おかしいと思うならこれから前向きに取り組んでいかなければいけをい。大臣、いかがですか。
  104. 金子岩三

    金子国務大臣 米ソ大国が協定を結んでおる、わが国は大変な友好国である、そこに協定がないとはどういうわけか、こういうようなお尋ねのようですが、私は、協定、契約、そういうものを超越した、いわゆる信頼し切った自由取引でやっておる、このように考えています。アメリカもいろいろな問題で、まあ日本を小さい国と思っていろいろ勝手なことを言っておるようでございますけれども、やはり日本を大事にしなければ世界の平和は維持できないということは百も承知しておるわけでございます。厳しい国だからソ連とは契約で結んでおかぬと当てにならぬ国だが、日本はそんなことせぬでも、とにかくもう友好国の中の最も友好国で、言いなりになるぐらいに考えていまのように無協定でやっておる。そこに甘えがあって、余った物はどんどん日本に押し売りしようと思って勝手なことを言っておるというのが現状であると思いますので、別に協定のあるなしにかかわらず、いわゆる食糧の安全については協定以上のアメリカの協力が得られる、このように確信いたしております。
  105. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、朝からの質疑で具体的な問題を提起してきたけれども、あなたはお人がいいというか、アメリカに信頼をそれは私だってそうしたい。そういう気持ちを持ちたい、友好国であるのだから。それはそうありたい、こう思いますよ。しかし、さっきも言った七三年の六月アメリカは日本に対して大豆の輸出を禁止したという事実があるのですよ。あなたは何を信頼して——アメリカはやはりアメリカの国民とアメリカの国益を考えますよ。私はあなたに、日本の国益、日本の国情、日本の農業、日本の食糧をどうとらえて、どう考えて、アメリカに正々堂々と、やはり対等で信頼があり友好が結ばれているからなおより強くきっちりとしなさい、こういうことなんですよ。大臣、もうすぐにおやめになるから、もうわしがかわったらまた次だ、そんなこと農水省としては、やはり政治家として食糧の安定供給というものはもっときっちりと遠い将来まで向けて安定を図るべき努力をすべきだ。気持ちの上で友好国だから信頼云々と言われて、ひどい目に遭っているんですよ。おわかりでしょう。アメリカはもう再びそんなことはしませんと言うでしょう。だから、それならなおさら協定を結んだって私は何ら支障ないじゃないか。ただここで、アメリカの十年後の状況は一体どうなるのか、こういうことなんです。  やはり食糧なんというものは、一国に、アメリカだけに依存してわが国の安定を図るというのは本来はよろしくない。しかし、現状においてはアメリカにかわるべき国がないわけなんですからやむを得ない。そこも私は現実的な認識に立っているわけです。ソ連や中国が、その広い国土を生かして輸出国になったとしましょう。わが国が中国から輸入する、ソ連から輸入する、そういうことになれば、それは国際情勢は変わりますよ。しかし、いまそういうことを言ったって現実性のない話だから、やはりアメリカに依存せざるを得ない。そういうことになると、やはりアメリカときっちりした話をしておかなければいけない。問題は、アメリカの農業がこれから先ずっと安泰なのか、こういうことなんです。そういう認識をやはり私は聞きたい。  さっきも申し上げた、参考に読ませてもらいましたけれども、カッパ・ブックスの「十年後」というので、「食糧戦争の時代がくる」という中で、アメリカの農業のやり方が将来大変なことになってしまう。もう多くを申し上げませんけれども、いまの農業の仕組みからいけば、スプリンクラーで水をくみ上げて、樹木のない一面の平野で穀物を生産しているわけですが、乾燥と表土の流失が続いて、あと十年もたてば、アメリカ農業は凋落の一途をたどり始めると予測されている。オーストラリアでも、かつての麦畑がいまは砂漠となってしまったところがある。今後十年もたつと、そういう状況の中で小麦や大豆が値上がりして、日本自身は莫大な輸入代金をアメリカに支払わなくてはならないような、そういう状態が起こり得るであろう。どんなに高くついても、国内における生産が十分でないとなれば、輸入に頼らざるを得ないということなんです。  農水省は、いや、十年先そんなことはありません、いやいやいまよりも安くむしろ価格安定して輸入ができるんですなんということが言い切れるのかどうか。あるいは、こういう指摘していることは現実問題ではないんだ、現実的なとらえ方ではないんだと言い切れるのかどうか。これは私はひとつここできっちりと大臣の考え——私はいま警鐘を鳴らしたわけです。きょうの問題ではないでしょう。しかし、五年先、十年先にきょうのこの議論が、どう正しくとらえ、どう正しい方向を向けての質疑であったかということがわかると私は思うのです。アメリカに対して、甘えだけで生きられるものではなし、やはり正確な情報、正確な判断、その中でわが国の国益、わが国の食糧安定を図る政策をとらなければいけない、こういうことなんです。  最後に、この点について私は大臣からお考えを聞かしていただきたいと思います。
  106. 金子岩三

    金子国務大臣 井上先生は、どんな友好国といえども、十年前のことを考えればどういう事態が起こるかわからないから、食糧は契約をすべきじゃないかというようなお考え方に立っての御意見と思います。大いにこれからひとつ、先生の御意見も見方によっては当然なことだと考えますので、検討をいたしたいと思います。  それから、もうすぐやめるから云々とさっきお話しになったが、私はやめませんから、ひとつやめない大臣と思って信頼して、何でも御遠慮なく御忠告あるいは御質問を続けてもらいたいと思います。
  107. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、十年前の話で、わが国の大豆の輸入をアメリカがとめたという事実を朝から討議してきたわけなんですね。いま、ものの半日もたたない間に、いや友好国だから信頼している、そんなことは無責任な答弁だと私は思いますよ。過去にこういうことがある、だから心配する面もわかる、その面の手だてもすべきである、そういう答弁があれが、私は大臣の責任ある答弁だと思うのですよ。だから、失敬かもわからぬけれども、あなたはもう何や改造があってしまいになるから、うまいこと逃げてしもうたのと違うかと私は言ったわけで、失礼な言い方かもわかりませんけれども、むしろ、朝からの質疑を踏まえたら、大臣の方がもっとしっかりとした答弁を私に返してもらわなければいけない、そういうことなんです。  それじゃ、穀物ばかりが食糧ではありませんから、もう余り時間がありませんが、今度は水産関係にいきましょう。穀物と米と魚、これはもう……。  私は、穀物でアメリカに何か起これはそれがもろにわが国が影響を受ける、こういうことを具体的に大豆の価格をとっていま申し上げましたね。農業問題と同じように、漁業問題をとらえてもそういう現状にあると思うのです。アメリカの水産物の輸出の半分以上は日本向けではないだろうか。水産物輸入の対米依存度はわが国全体からとらえると一〇%ぐらいにしかならぬと私は承知しているのです。アメリカは輸出する半分が日本だ。という。そういうことをここで議論をする時間がありませんけれども、逆にアメリカの漁業問題、輸出問題は日本がむしろ半分以上かばってあげているということになれば、日本の協力なくして米国の漁業振興なんというものは逆に成り立たぬ、そういうふうに思うわけです。そういうことをアメリカ側に十分、しかとそういう意識を植えつけているのかどうか、そういうことについてひとつ尋ねておきましょう。
  108. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のように、現在わが国の魚の総供給量のうち約一割前後のものが輸入になっております。そのうちの相当部分がアメリカであるという御指摘でございますが、魚種の中身を見てみますと、サケ・マスあるいはかずのこ等特定のものに限られておるという特色も一方においてあるわけであります。  それはそれといたしまして、先生御指摘のように、日本が買わなければアメリカの漁業は成り立たないではないかという点は確かにそういう見方も成り立つわけでありますが、反面、日本にとらせなければアメリカのものを買わざるを得ないだろうという発想を向こうの方がするということも現実としてはあるわけでございまして、それはそれといたしまして、毎年のことではございますが、遠洋漁業のうちの大半をアメリカ水域からとらせてもらっておりますわが国といたしまして、毎年アメリカに対しましては従来どおりの漁獲割り当てを獲得するように努力をし、強く要請をしておるところであります。
  109. 井上一成

    井上(一)委員 漁獲割り当ての問題については少し後で尋ねます。  具体的な問題に入りますが、ことし三月十日に米国の方は二百海里経済水域を宣言しましたね。これまたまことに身勝手な措置だ。海洋法条約の趣旨に一見沿ったもののように見られますが、アメリカ自身は条約本体の署名を拒否しているわけです。それでいて、一方的に経済水域宣言だけして新しい海洋秩序を確立しようとしてきた。第三世界の国々は強くこれに反発をしたわけですわ。  日本は六月の日米漁業協議などの場でどういう主張をなされたのか、この点について聞いておきます。
  110. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 対米の漁業関係では、経済水域と申しますよりも、むしろ漁業水域という形で五十二年前後にアメリカから一方的な宣言がございまして、それ以降、アメリカの二百海里水域の中で漁獲を続けるに際しましては、アメリカから割り当てられたものしか漁獲ができないという仕組みが五十二年からでき上がっております。したがいまして、五十二年以降、毎年時期が来ますと対米交渉をやっておるわけでありますが、そのときの交渉の趣旨は、そもそも漁業資源というものにつきましては、特に二百海里の思想がそうでございますが、自国の沿岸水域で年間にとれる魚のうち、自国の漁獲量を差し引いたものを従来の伝統的な漁獲国に割り当てるというのが大体の国の考え方でございますので、その趣旨に従いまして、従来のわが国の実績の漁獲量を得るように五十二年以降毎年交渉をし、ほぼそのような効果を上げてきているというふうに考えております。
  111. 井上一成

    井上(一)委員 この排他的な経済水域宣言、これはいろいろ問題があろうと思うのですよ。報じられるところによれば、この経済水域宣言に伴って、米国水域における外国によるすべての漁業活動を八七年までに禁止するというスチーブンスの法案が議会に提出されたと報じられているわけです。この法案の成立の見通しをわが国はどのように見通しているのか、あるいはこの法案実現阻止のためにどういう努力をしてきたのか、この点について大臣いかがですか。
  112. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 アメリカの現実的な動きの事務的な話でございますので、私から御答弁をお許しいただきたいと思います。  御指摘のように、スチーブンス修正法案というものが現在提出されているようでございます。その中身は、御指摘のように、八三年を初年度といたしましておおむね五カ年ぐらいで米国の漁業の振興のために各国からの入漁を締め出す、八五%、七〇、四五、二〇、五年後にはゼロにするというような形での法案だというふうに私どもも承知をしておりますが、この法案につきましては、米国の中でも法案の従来にないきつさといいますか、激しさということにつきまして、議員さんの中にもいろいろ御議論があるやに聞いておりますし、私どもも、交渉の都度あるいは外交ルートを通じまして、そのような法案はよろしくないといいますか、まずいということを強くアピールをしておるわけであります。また、具体的に法案審議の過程に入ったというふうにはまだ承知しておらないわけでありますが、注意を怠らずに、そのようなことがないようにできるだけの努力をいたしたいというふうに考えております。
  113. 井上一成

    井上(一)委員 このことについては十分外務省と連絡をして、その法案が通過し実現するようなことのないような手だてはしていらっしゃいますね。
  114. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のように努力しているつもりでございますが、ただいまさらに御指摘をいただきましたので、さらに注意をいたしたいと思います。
  115. 井上一成

    井上(一)委員 努力するつもりなのか、すでに外務省との交渉にそういうパイプは通したのか、その点です。
  116. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 交渉といいましても、まだその法案自体についての交渉という場面はないわけでございます。将来ともまずないと思います。むしろ、漁業の別途漁獲割り当ての交渉の都度、そのような法案が絶対米国内において成立しないように強く申し入れる、それから、私どもの方も別途、アメリカの議員の中で、日本の漁獲をアメリカ水域でやってもらった方がアメリカの水産加工業を振興するという意味でよいと思っておられる国会議員も数多くおられるわけでありまして、そういった先生方、議員の方にも働きかけるというようなことをやりながら、所期の目的を達成したいというふうに考えておるわけであります。
  117. 井上一成

    井上(一)委員 法案の審議云々じゃないのですよ。時間の関係上、私の聞いているのに的確に答えてほしいと思うのですよ。この問題で農水省は外務省とのコンタクトはとっていますかと聞いているのです。
  118. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 わが国の外務省とは十分連絡をとっております。
  119. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカのこのような措置に追随して、インドネシアは二百海里水域内で操業する外国漁船から入漁料を徴収しようという報道があったわけですね。日本漁船への影響あるいは対応措置はどうなされたのか、どういう影響があったのか、これについて聞いておきます。
  120. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 インドネシアのみならず、東南アジアにおきましても、すでにたくさんの国が二百海里を宣言しております。あるいは豪州、ニュージーランドも五十二年から五十三年にかけてやっておるわけでございまして、二百海里は、そういう意味では世界の大勢になっておるわけであります。二百海里のうちで、たとえばアメリカの場合も、五十二年以降漁獲割り当てをもらい、それに基づいて入漁し、それに応ずる入漁料をすでに支払っているわけであります。ほかの国につきましても、多かれ少なかれ同じような状態になっております。  インドネシアにつきましては多少趣を異にいたしまして、通常の二百海里のほかに、あそこは群島、島が非常に多いものですから、どこまでを二百海里とするかというような意味でのいろいろな議論があるわけでありまして、その点がほかの国の二百海里と若干違うというふうに御理解いただきたいと思います。
  121. 井上一成

    井上(一)委員 やはりインドネシアは今回アメリカのとった経済水域の設定に追随したのではないだろうか。経済水域を侵犯するすべての外国船舶に厳罰を科すという法案が提出されたというふうにも私は聞いているわけなんですよ。そういう審議状況あるいはそれに対する対応、あるいはさらに、インドネシアだけでなく、さっきおっしゃっている二百海里水域の設定と私がいま指摘している経済水域の設定、アメリカの取り組んだ設定の趣旨は若干違うわけですから、米国の今回の措置に追随する国が今後とも出てくるのではないか、そういうことは十分考えられると思うのです。インドネシア以外にもこのような動きがある、そういう動きのある国がおわかりであれば話してほしいし、また、日本としてそのような動きに対してどう対抗策をとられたのか、このことについて聞きたいと思います。
  122. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど私の答弁が言葉足らずであったかと思いますが、同じ二百海里といいましても、漁業水域というのは漁業についてだけの専管的な管轄権を持つということでございますし、先生御指摘の、ことしの初めにアメリカが云々したというのは経済水域で、むしろ鉱物資源、地下資源なんかもねらった形のものではないかと思います。     〔近藤(元)委員長代理退席、東家委員長代理着席〕  それで、私どもの方、水産の世界では、むしろどちらかといいますと、経済水域の中で漁業も含む場合には漁業水域とその面においては全く同じことになるわけでありますが、二百海里水域といたしましては、五十二年から五十三年にかけて世界の沿岸国の相当部分がわが国を含めて設定をしておるわけでございまして、そういう意味におきましては、南方につきましても、先ほど申しました幾つかの国を含め、たとえばインドネシアとかPNG、パプア・ニューギニア等はまだ国内の法制等がございましてきちんとしたものにはなっておりませんが、ほぼ漁業におきます二百海里規制と同じような形での交渉を余儀なくされておるわけでございます。入漁料等につきましてもそれなりの支払いをすでに行わせておるわけであります。
  123. 井上一成

    井上(一)委員 どうもきっちりした答弁が返ってこないわけなんです、大臣。  アメリカの今回の経済水域宣言というのは、明らかにいわゆる魚以外に鉱物資源まで独占をする、そういうことを当初から言っているわけです。あなたも理解しておるわけです。従前の二百海里水域の問題とは一緒くたにしてないわけなんだ。今後アメリカのとったこういう措置について追随する国が出てくるかもしれない、そういうことに対して日本はどういう対応をするんだ、こういうことを聞いているわけなんです。やはり、当を得た答弁をしないと、私の持ち時間というのは決められているんだし、私もそれに協力をして質問しているのですよ。私の質問の趣旨がわかっておって、そういう答弁がありますか。
  124. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 鉱物資源等を含めた意味での、広い意味での二百海里ということになりますと、私の所管をかなり幅広く越えてしまうものでございますから、私は水産関係に限っての御答弁を申し上げたつもりでございます。言葉の足らなかった点は御了承いただきます。
  125. 井上一成

    井上(一)委員 私の質問に対して、私は大臣にと言ったのですけれども、ほかが出てくるから……。答えられる者が出席するまで、私は質問を留保します。
  126. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 海洋法の条約案が昨年各国間の長年の協議で一応まとまりました。それはその中に水産も相当部分含んでおりますので、私たちも十分な関心を持っておるわけでありますが、条約案が昨年できましてから、現在各国でそれにつきましてのそれぞれの批准の国内手続等を進めているというふうに私理解をいたしております。そういう動きの中で、米国といたしましては、一方的といいますか、二百海里のいわゆる経済水域を本年当初に宣言をしたということでございまして、私ども農林省といたしましては、その中の農林水産業に関する部分につきましては重大な関心を持ち、外務省とも打ち合わせをしながら事態の処理に誤りがないようにいたしたいと思っております。(井上(一)委員「あかん、答えられへんやないか」と呼ぶ)
  127. 金子岩三

    金子国務大臣 井上さんの御質問の内容にいまの政府委員のお答えがお答えになってないというように井上さんおっしゃっているようでございますけれども、政府委員はああ言わざるを得ないのじゃないでしょうか。あそこまでしか言えないというようにひとつ御理解をいただいて、質問を続けて、得心のいくまでお尋ねを願いたいと思います。
  128. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、質問はずっと続けたいわけなんです。私は、答えは別に間違ってないと思うのですよ、立場でね。  アメリカが今度経済水域宣言したのは鉱物資源も含めての一定の水域宣言なんです。そのことについては——泳いでいる魚については、漁獲の問題については答弁がなされているわけ。さっきの二百海里経済水域宣言の問題をぽんと打ち出しても、わが国も含めて経済水域二百海里宣言、二百海里設定、その中でのこと、鉱物資源のことについては担当外だと言っている、答えられないわけです。こういうことについて大臣がお答えになるならいきましょう。  だから、私は大臣に、アメリカがそういう身勝手なことをやった、それについてこれはもう大きな批判があるわけなんです。わが国は特に農水省としては、そんなことに対してどんな対応をしたのだ。やはりそういうことについて追随をする国が出てくるかもわからない。そういうことには対抗していかなければいけないし、そういうことになってしまうと大変なことになる。わが国は遠洋漁業で、遠く漁場を求めて操業をするわが国の漁民あるいはそれを食糧にする国民の食糧供給の安定政策、そんなことを考えたら大変な問題なんだよ。それにアメリカに勝手なことをやられて、アメリカは自分自身は海洋法会議、そういう新しい法案に署名もせぬでこういうようなことをやっておる。なんぼ友好国、信頼がありますなんて言ったって、そんなことであなた大臣として黙っていられますかと言うのですよ。そんなことで日本の漁民を守っていけることになるのですか、日本の国民の食糧の安定供給を図ったことになるのですかと言って僕は聞いているわけなんだな。ところが、やはりその答弁は、私の質問に対しては何も的確に答えていらっしゃらない。答えられる範囲内でしか答えていない。答えられないから、それじゃ答えられる人、大臣が答えてくれればいいです。それなら質問を続けます。大臣、答えてください。
  129. 金子岩三

    金子国務大臣 井上先生が御質問になっている内容について、政府委員では、政治家じゃないのですから答えにくいということでありまして、私が率直に申し上げますならば、井上先生が御心配なさっておるように、二百海里が一番最初にしかれたのがソ連であって、その次がアメリカ、やはり両大国が日本の漁業に圧力をかけておるわけでございます。     〔東家委員長代理退席、委員長着席〕この点は、今朝来いろいろ質疑を交わしておる中で、やはり大国意識の強い米ソの谷間に挾まれておるわが国はいろいろな面で圧力を受けておる。わが国はこれをはね返す力は実際ないのですよ。そういうことで、話し合いの上で、どうして日本の国内事情をよく理解してもらい政治的に配慮をしてもらって、アメリカとの話し合いの上で少しでも条件をよくして、ひとつ漁場を友好に利用させてもらうように、いわゆる割り当てをよくしてもらうとかいろいろなことがあるわけですから、二百海里は二百海里と認めて、かつての、昔の私どもの国の実績などはもう全部消えておるわけですから、新しい二百海里制度の中で、今後話し合いの上で、交渉の上で日本の漁獲の能率を上げていきたいというように、その方にひとつ全力を上げていきたいというように思います。
  130. 井上一成

    井上(一)委員 大臣の認識も、私の指摘している水産庁の渡邉長官とまだ同じ域なんです。  いま官房長から私の方に申し入れがありました。この問題については次回の委員会で、きょうは答弁ができないということだから——それはそうでしょう、答弁ができない、大臣だって決して、いまのも答弁として適当かといったら、認識がまだないのだから。アメリカが二百海里経済水域を宣言した今回のそのもの自体の認識も十分あなたは御承知ないのですよ。十分なレクチュアを受けて、六日に改めて、一応来月の六日を予定していますから、このことについては私は次回の委員会で的確に答弁がいただけるように、いわゆる水産物の自給はどうやっていくべきなのかということをやはり具体的に問うていきたいと思ってこの質問を、ここから、アメリカの身勝手なそういう経済水域二百海里の宣言を一つの具体的事例として私は取り上げて質疑に入ったのですけれども、魚の問題については次回に延ばさざるを得ない、こういうことになりました。  委員長、この問題はいまそういうことの依頼が私の方にありましたし、申し出がありましたから、かえって委員会運営に迷惑をかけてはいけませんので、各党の理事さんのそれぞれの御了解を得て、よろしければ次回に私はこの質問をしたいと思います。
  131. 古屋亨

    古屋委員長 いまの問題は、後刻理事と相談いたしまして善処。いたします。
  132. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、私の残余の質問は、とりわけこの水産関係の食糧供給安定政策については、次回に譲ります。  それで、きょうの質問は一応これで終えます。
  133. 古屋亨

  134. 春田重昭

    春田委員 最初に、日米農産物交渉の問題についてお伺いしたいと思いますが、去る九月十四、十五日の両日にわたりまして日米の農産物交渉が行われたわけでございますけれども、農水省として、この交渉をどう評価しておられるのかお伺いしたいと思います。
  135. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  九月十四日、十五日の両日に行われました協議におきまして、米側は従来からの輸入制限撤廃という要求を維持しつつ、しかしながら、交渉の前進を図るという考え方で、ある種の提案を行いました。その提案の内容は先方のたっての要請でございますので御説明いたしかねるのでございますが、先方がともかく一歩踏み込んだアプローチをしてきたということは、これはこれとして評価をしたいというふうに私は思っております。しかしながら、先方の基本的な立場は相変わらず維持されたままでございますので、双方の隔たりというのは相変わらず非常に大きく、前途は容易ならざるものであるというふうに思っております。
  136. 春田重昭

    春田委員 ただいまの答弁は抽象的で中身がさっぱりわからないわけでございますけれども、交渉の中身につきましては先方の意向により公表できないということでございますけれども、アウトラインだけでも御説明できないのですか。
  137. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先方は、提案を行ったという事実以外は一切困るということでございまして、私どももそれを承知の上で先方の話を聴取いたしましたので、信義の問題でございますので、御容赦賜りたいと存じます。
  138. 春田重昭

    春田委員 政府側が公表できないとなれば、新聞でいろんな角度から報道されておりますので、この点で確認をしていきたいと思います。  まず第一点、穀物肥育牛肉を一定期間毎年六〇から七〇%輸入枠を拡大する、オレンジの場合も同様に三〇%ないし四〇%輸入枠を拡大する、さらに畜産振興事業団による牛肉の一元輸入の是正等が今回の交渉の骨子ではなかろうかと報道されているわけでございますけれども、この点確認をしていきたいと思います。
  139. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、先方の要請で、どのようなものであったかということは申し上げられないということになっております。したがいまして、それをめぐって行われました新聞報道が当たっているかどうかということについてお答えをしてまいりますと、おのずと結果的に先方との約束に反するような事態になりますので、その点も大変申しわけないのでございますが、お許しをいただきたいと存じます。
  140. 春田重昭

    春田委員 これまでの日米農産物交渉の米側の要求は、昭和五十年十月ハワイ交渉、また本年四月のワシントン交渉、いずれも完全自由化の要求だったわけでございます。今回の交渉におきましては、ほとんどの報道等でされておりますので間違いないと思いますけれども、完全自由化のかたいガードから一転して輸入枠の拡大を前面に出してきた、このように報道されておりますけれども、この点もお答えできませんか。
  141. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 恐らく、先方との約束にたがえずにお答えをするといたしますと、先方は、輸入制限の撤廃という原則的立場を維持しつつ、しかも、日本側が輸入制限撤廃の問題について応じがたいという事態であって、その日米間の見解の対立が議論が前進することの妨げとならないようにある種の工夫をしたというふうにでも申し上げるのが限度ではあるまいかというふうに存じます。
  142. 春田重昭

    春田委員 大臣にお伺いしますけれども、今月三日、東京新聞の記者とのインタビューに応じられましたかどうか、そういう事実があったかどうか、お伺いします。
  143. 金子岩三

    金子国務大臣 私も新聞で拝見したわけで、いま答えておる佐野経済局長が責任者で交渉をやっておるのでございますけれども、そこだけの話ということであったので一切言えないというようなことを言われておりますので、やはりこれを追及して聞かない方がいいのじゃないかなと私も思いまして、ただ、新聞が事実がなと、それじゃその新聞はどこからあの記事になったのかということで私もいろいろ疑問を持ちましたが、日本側からやはり大ぜい出ておりますから、外務省も出ておるし、通産も出ておりますし、そういうことで、農林省は、当面の責任省でありますので、口がたく相手国との約束を守っておるというのが実情でございます。あとは御推察でひとつ……。
  144. 春田重昭

    春田委員 私の質問にお答えになってないのです。いまの大臣のお話の中で、農産物交渉の中身については大臣は御報告を受けてないのですか。
  145. 金子岩三

    金子国務大臣 その具体的な、新聞に書いておるような数字は承っておりませんけれども、自由化を取り下げだということも言わない、いわば自由化をわきにおいておって途方もない枠を言ったという程度のことは聞いておるわけですよ。数字は具体的に私も聞こうとせず、事務当局も言わない方がいいなということで言わない。
  146. 春田重昭

    春田委員 どうも解せないわけでございますけれども、大臣は農水省の最高の責任者でありますし、聞かない方がいいというのはどうも私ははっきりわからないわけでございますけれども、やはり農産物の交渉についていわゆる中身を聞く、さらに報道されるその報道が真実かどうか、そこまで突っ込んで事務当局と詰めていくのが大臣の責任ではないかと思うのですけれども、どうもその辺があいまいですけれども、どうなんですか。
  147. 金子岩三

    金子国務大臣 皆さんにしてみれば非常に不可解で、果たしてそれで責任担当大臣がいいのかなというようにいろいろ御疑問もあろうかと思いますが、それは当然だと思います。ただ、私の考え方は、私がふだん閣議の後の定例記者会見で言ったことでも皆推測でいろいろ書きまして、生産者が騒いだりいろいろしておるものですから、やはり事アメリカとの正式の折衝、交渉で取り決めたことについて、内容を知らない方が私は動きやすいという考え方で、具体的な数字は聞いていないのですよ。ただしかし、とんでもないことを言われておるなということは認識してこの問題には対応しておるのでございます。
  148. 春田重昭

    春田委員 交渉というものは相手があるわけでございますから、筋書きどおりいかないと思います。最終的には政治的な決断というものも必要かと思いますけれども、やはりその政治的決断というのは、ある程度全体がわかった上でないと決断というのはできないと思うのですね。どうも大臣のお話を聞けば、全体の総量というのは知らないでいった方がいいのではないかというお考えはどうもおかしいのではないかと思います。先ほどお聞きしましたことは、大臣、この三日の日に東京新聞の記者とのインタビューがありましたかということなんですよ。まずその点をお聞きします。
  149. 金子岩三

    金子国務大臣 いつでしょうか。
  150. 春田重昭

    春田委員 今月の三日です。
  151. 金子岩三

    金子国務大臣 あったでしょう。何か単独記者会見とかなんとか書いておった記事でしょう。ありました。しかし、あの内容は私の言ったこととは違います。
  152. 春田重昭

    春田委員 そこで、質問いたしますけれども、大臣は、あの記事は正確ではないという御答弁でございますけれども、確認します。新聞では、単独インタビューに応じられまして、大臣は、自由化の明示はむずかしいけれども、牛肉、オレンジの対米輸出枠を八四年度から最低三年間程度にわたって拡大する協定が必要でないかということが報道されているわけでございますけれども、この点どうですか。
  153. 金子岩三

    金子国務大臣 そういう具体的なことは申しておりません。
  154. 春田重昭

    春田委員 そうしたら、具体的なことは言ってないけれども、完全自由化は反対だけれども、輸入枠の拡大についてはある程度必要じゃないかというお考えなんですか。
  155. 金子岩三

    金子国務大臣 私が申し上げておるのは、その新聞記者会見だけでなくして、私は農林大臣に就任して以来、自由化はもちろんのこと、枠の拡大もいまのところ必要ないのではないか、不足するものは輸入しなければならないけれども、余るものを輸入して冷蔵庫へ入れて保管するようなばかなことはやらないということを言い続けておるのでございます。したがって、記者会見の折には必ず枠の問題を聞きますから、枠も必要があればそれはふやさなければいかぬでしょう、それは需給動向を見、いわゆる日本の供給力、現在の輸入量で足りるのか足りないのか、国民の需要がどの程度伸びておるのか、生産もあわせて伸びておる、いろいろそういう検討をして、足りないものは買います、こういうことを言っておるわけですよ。それが尾ひれがついて、記事になったときは枠をふやすとかいうことになっておるわけです。
  156. 春田重昭

    春田委員 ところで、大臣は中曽根内閣の閣僚の一人でございます。総理は、日米間の懸案事項はレーガン大統領の訪日前に解決するように全力を挙げたいとおっしゃっております。そういう意向だと思います。したがって、高度な政治判断によってレーガン大統領の訪日前に決着を図りたいという、従来総理とレーガン大統領の関係ですね、ロンとかヤスとか呼んでお互い仲がいいわけでございますから、そういったいわゆるリップサービスがかなり総理の方にあるのではないかと私は思うわけでございますけれども、大臣としては、長崎の農民を多く抱えて、また全国の農民の本当に死活を握る大臣として、この自由化の問題につきまして、また枠の拡大につきましても、あなた自身の率直な御意見をお伺いしたいと思うのです。
  157. 金子岩三

    金子国務大臣 私は、レーガン大統領が訪日を決定した日の閣議の後で、記者会見で、レーガンさんが訪日するように決まった、したがって、中曽根総理が一月に訪米したときにこの問題が俎上に上りまして、これはひとつ専門家レベルで検討してもらう、自由化はもちろんできない、その他のことはひとつ専門家レベルで検討していく、こういう約束をしておるのでありますから、一月から十一月というともう十カ月経過した後ですから、その相手のレーガンさんが日本に見えるというなら、この問題もやはり日本は積極的に、総理の約束だから検討することが国際儀礼じゃないか、こういうことを言っておるわけでございます。検討してその枠を幾ら広げるとかそういうことは私は言ってないわけですから、検討する、真剣に検討して国際儀礼上まとまるだけのことはひとつまとめてみたい、こういうことをかねて言っておるわけです。それはいまも変わりはないのであって、目下もいろいろあの手この手で検討は続けておるわけでございます。  ただしかし、十月いっぱいに目鼻がつかない、その場合どうなるかというと、それはつかなければつかないで、来年三月までいまの東京ラウンドがあるわけですから、そう無理して日本の農業に影響を及ぼすようなことまでする考えは毛頭私はないわけですよ。基本的には、日本の農業を守るという基本的な精神はいささかも変わってないわけでございますから。ただ、レーガンさんが見えるなら、それまでにやれるだけのことをやってひとつ詰めてみよう、こういうことをやっておるわけでありまして、まとまらなければまとまらないで、また、あと半年近くありますから、レーガンさんが帰ってからゆっくり検討を続ければいい、こういう考え方でおるわけですよ。
  158. 春田重昭

    春田委員 大体大臣の御意向はわかりました。  いずれにいたしましても、近々農民の一万人集会もあるやに聞いているわけでございます。そうした本当に農民の方たちが真剣なさなかに、そうしたいわゆる裏取引といいますか、政治的決断で、安易な形で解決されることは農民を裏切ることになるわけでございますから、そういった面で、農林大臣のかたい、そうした農民の意向を受けての決意でひとつやっていただきたいと要望しておきます。  さて、きょうは牛乳問題につきましていろいろな角度から御質問申し上げたいと私は思います。  最近の生乳の生産動向及び乳製品需給価格動向について簡単に御説明いただきたいと思います。
  159. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に乳製品動向から申し上げますと、これは御承知のように過去におきまして大変過剰な在庫がございまして、事業団が大変な物量を保管するということがございましたけれども、昨年以来、大変生産が調整されますと同時に需要が伸びてまいりまして、実は本年に入りましてからも、事業団が持っております脱粉なりバターも若干放出をいたしまして、価格も大変安定的に推移をいたしております。北海道等の冷害等もございまして、供給不足も若干心配いたしましたけれども、その後の天候回復もございますし、北海道の生産も安定的に伸びておるようでございますので、ことしの年末にかけても、乳製品につきましては安定的に推移するものと見ております。  もう一点の生乳の方でございますが、これも、御承知のように、五十年代の中ごろから特に生産過剰となってまいりまして、その時点で需要の伸びというのは御承知のように大体三%前後でございましたけれども、生産の伸びがこれを上回っておりましたし、先ほど申しましたように、乳製品自身が過剰でございましたものですから、どうしても生乳に販路を求めたということもございまして、御承知のような大変な流通の混乱と申しますか売り値が下がってくる、そういうような状態を惹起しておりました。昨年の秋ごろがどうも一番ひどい状態じゃなかろうかと思いますが、その時点では、よく言われております一リットルものの牛乳の価格も、実は二百円の水準を割っているものがほぼ九割近いというような実情もございました。ただ、これは販売店によって異なっておりまして、御承知のように、専売店ではそれほど安くはないのでございますが、大量販売をいたしておりますスーパー等では、そういうものの安売りの比重が大変高かったわけでございます。  これにつきましては、まず生産者団体が、安定供給をいたしますために、数量を極力調整していくという一種の生産の計画化の努力をいたしました。それに次ぎまして、販売業の方におきましても、これを極力安定的に販売するというような行動を特に本年以来起こしておりまして、その効果が徐々にあらわれてまいっておりまして、最近の私どもの手元にある数字で申し上げましても、かつて百八十円というのはなかなか——それ以下の特売の比重が高かったわけでございますが、最近時点では、その百八十円を下回りますようなものの割合が実は十数%まで下がってきている。特に、夏場におきまして、比較的暑い夏でございまして、消費が順調に伸びておりますし、この九月に入りまして、学校給食がまた回復をしてまいっておりますので、現在、生産者あるいはメーカー、販売店の方々の努力の中で、極端な安売りは若干ずつでございますが、量が減ってまいっておりまして、いわば乳製品の面でも好転をしましたように、市乳の世界でも若干の明るさが出てきた。これをいかに安定させるかが現時点での急務だと思っております。
  160. 春田重昭

    春田委員 御説明のあったように、生乳の生産は、五十一年から五十二年度におきましては、対前年度七%から九%の大きな伸びとなったわけでございまして、過剰生産となったわけですね。このため五十四年から計画生産となりまして、その伸びも大きく鈍化しております。しかし、昨年から生乳の伸びがまた大きくなってきているわけでございまして、この伸びが需要に合ったものかどうか、はたまた五十一年から五十三年度みたいな過剰生産となる心配がないのかどうか、この点どうお考えになっておりますか。
  161. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども、乳製品につきましては、毎月毎月価格動向等を見ながら判断をいたしておりますし、出荷動向等を見ておりますが、まず一般的に言えますことは、御承知のような、脱粉なりバターを使いました新しい製品、ヨーグルト関係製品等の伸びは大変多うございまして、私どもが、ことしの三月の価格決定の際に、いわゆる加工原料乳に回します限度数量を二十二万トンふやしましたのも、需給の規模がかなり大きくなっていることを前提にやったわけでございますが、二十二万トンの加工限度数量の増加にもかかわらず、価格が堅調に推移しているということを見ますと、乳製品の規模といたしましては、私どもが現在考えておりますような規模にほぼ達したのではなかろうかと思っております。  ただ、先生の御指摘がございましたように、市乳の分野につきましては、これはどうしても天候その他によってかなり振れる性質がございます。伸び自身は、先ほども申しましたように、二%とか三%の伸び程度、これ以上のものを期待することは無理だと考えておりますので、現在、生産者団体におきましても、市乳の部分につきましては、計画生産を考えておりまして、伸びが余り上回ります場合は、これを余乳といたしまして特別に措置をする、これはみずからの力で措置するということも考えておりますので、生乳全体と申しますと、加工向けにつきましては若干強気に考えておりますが、市乳分野については、現在の二%か三%程度を着実に伸ばしていけるような体制にいたしませんと、御指摘がありましたような、過去の過剰事態に返るという心配がございますので、これは生産者とも十分話し合いまして、毎年度計画生産を遂行していくつもりでございます。
  162. 春田重昭

    春田委員 次に、飲用牛乳についてお伺いしますけれども、飲用牛乳の流通が混乱しで、その結果、価格の低下が続いていることは御承知のとおりでございます。農水省は、加工原料乳につきましては、保証価格を設定し、行政がコントロールしているわけですね。しかし、飲用牛乳につきましては、生産者、乳業者、販売店を中心とした自由取引のもとで価格が決められているわけでございまして、行政が介入していない。しかし、不当廉売で飲用牛乳の流通が混乱している現在、農水省としていつまでも野放しにしておくということは、行政の怠慢のそしりを免れないと私は思うわけです。農水省としてはいかなる対応をお考えになっているのか、まずお伺いしたいと思うのです。
  163. 石川弘

    石川(弘)政府委員 先生からも御指摘がございましたように、牛乳に関します制度といたしましては、不足払い制度を設けまして、これを支えることによって、間接的に市乳についての生産者の所得も保障できるという前提でいままでやってきたわけでございます。特に、四十年代の初めまではどちらかというと、専売店による販売の比重が非常に高こうございましたので、生産者の価格あるいはメーカーの卸価格、それから専売店における販売価格を行政指導いたしまして、いわばモデル的な価格でやってきたわけでございますが、その後、大量の量販店等の出現等もございますし、御承知のように、独禁法との関係もございまして、未端価格指導が、むしろ消費拡大とかそういう面でも問題があるという御指摘もございまして、どちらかというと、市乳の価格には余り手を触れぬということでやってきたわけでございます。しかしながら、その後の推移を見ますと、過剰な生産の中で価格が大変大きく乱れている。これは単に低いということだけではございませんで、同じ商品の価格の幅が極端に開いているとか、そういう望ましくないような状態もございますし、何しろ酪農民の立場からいたしましても、三分の二の牛乳は市乳でございますので、ここの値乱れによる酪農所得の減退といいますものは、酪農再生産にも大変支障があると考えまして、実は、一年間いろいろと生産者の方々なりメーカーあるいは販売店の方々あるいは消費者の方々等ともお話し合いをしながら、本月の九日の日に、農林水産省といたしまして、「飲用牛乳の流通に関する取扱指針」というものを定めまして、一定の行政指導を始めることとしたわけでございます。もちろん、これは独占禁止法等との関係がございますので、あくまで価格の形成は生産者、メーカーあるいは販売店、消費者という関係の中での自由な取り決めではございますが、そういうものを決めます際のよりどころとして、いままでございましたような流通の混乱の要因と考えられます、一つは生乳需給の緩和の問題、それからもう一つは産地間の市乳化競争の問題、それからプラントの過剰、過当競争の問題、量販店のいわば不当競争の問題、それから専売店等の経営問題、これらの点につきましてわれわれの考えるところをまとめまして、現在指導を開始しているところでございます。
  164. 春田重昭

    春田委員 遅まきながら、九月九日の局長名における知事あてに対する「飲用牛乳の流通に関する取扱指針」ですか、出されたわけでございまして、私は評価したいと思うのですが、この中身について若干何点かについてお伺いします。  この中で、「指定生乳生産者団体の機能の再整備」という形でうたわれております。流通混乱の原因の一つにこの団体のコントロール不足を挙げておられますけれども、果たしてこの通達で、この団体が単協やまたアウトサイダーや生産者、乳業メーカーに対しまして、どこまで強い統制力を発揮できるかというのが私は疑問になるわけでございますけれども、通り一遍といいますか、この新通達でこの団体の強化というものが図られるかどうか、局長のお答えをいただきたいと思うのです。
  165. 石川弘

    石川(弘)政府委員 不足払いの法律でこういう非常に強力な指定団体の組織を認められているわけでございますが、現実の姿といたしましては、たとえば、北海道の連合会とかあるいは岩手の連合会といったように、大変力を持ちまして県内の一元集荷を実現している組合もございますし、先生いま御指摘がありましたように、依然として系列会社との結びつきが強くて、いわば一元集荷というせっかくの機能を生かしてないというものもあるわけでございます。したがいまして、今回この問題を考えます場合に、どうしても、牛乳の流通が単なる地域から県を越えますようなかなり大きな流通になってまいっておりますので、そのもとをなします県内の牛乳の集荷販売機能がばらばらでございますと、もう地域を越えると申しましても、県内さえもまとまりがつかぬということでございますので、この強化にひとつ乗り出そうというのが今度の考え方でございます。  そのためには、やはり指定生乳生産者団体を強化することに妨害になっておりました要素と申しますか、どちらかといいますと、乳業メーカーにとりましては、売り手が強くなるということはそれなりに強力な交渉相手になるということで、言葉はちょっと過ぎるかもしれませんが、団結を弱めるように働いている要素もあるわけでございます。しかし、一方、メーカーの立場から考えますと、強力になりました指定生乳生産者団体が身勝手な配乳をして、たとえば農協系とか商系とかいろいろ系統がございますが、自分たちの系統だけに有利なようなことをやるということになりますと、今度はまた妨害に回るということでございますので、今度の通達の中では、指定生乳生産者団体の強化を期することにつきましてメーカーも協力してもらう。そのうらはらということではございませんが、そういう強力になった指定生乳生産者団体は、各メーカーについて公正な配乳をするという、両面から指導をしていきたいと思っております。  現実に強めます手段としましては、やはり営農のための指導能力を指定団体が持つこと、輸送手段を指定団体が集中的に持つようにすること、それから、指定団体といまおっしゃいましたようなアウトサイダー等もございますので、その間を行政も中に入りましていろいろと調整をするといった具体的なことを考えておりまして、現在、私どももこの指定生乳生産者団体につきましては、いろいろな事務的な関係経費等も援助をいたしておりますが、そういうこともてこにしながら、不足払いの法律ができたときの初心に返りまして、もう一度この団体の強化ということをやるつもりでございます。  御指摘のような御心配もあろうかと思いますが、私ども、県も一緒になりまして、この実が上がるように努力するつもりでございます。
  166. 春田重昭

    春田委員 指定団体等には補助金が行っているわけでございますから、もう少し強い姿勢で臨まなくてはいけないと思うのです。いま局長も御答弁ありましたように、やはり配乳等の問題で公正な配乳がされてない。いわゆる農協系や自分のところにはどんどん出すけれども、商系には出さない、こういった面が乳業者、メーカーの不信になっているわけですから、まず指定団体そのものがみずから襟を正していかなかったならば、何はコントロール強化しようと思ってもできないわけですから、そういう面で国または都道府県のいわゆる強い指導というものを願うわけです。  それで、飲用牛乳プラントの過剰の解消の中で、新増設の抑制また既存プラントの統廃合の問題が出ておりますけれども、千社ぐらいあると言われておりますけれども、業界の方たちはどういう反応をしているのですか。
  167. 石川弘

    石川(弘)政府委員 非常に大ざっぱな言い方をいたしますと、生産者の方は、三十数万戸ありました酪農家がすでに九万数千戸台まで合理化をしておるわけでございます。それに対しまして、乳業メーカーの工場数あるいは企業体数というのは、いわば生産者が合理化したスピードよりもむしろ遅いというわけでございます。したがいまして、過剰な設備があって稼働率が低くて、稼働率を上げようとすると過当競争するという悪循環に入っております。御承知のように、メーカーは、商系が比較的大規模な大手と称するものと中小に分かれますし、それから農協系も非常に大型の農協と単協単位の小さなメーカーという形で、いろいろメーカーの性質も違っておりましたので、いわばメーカー間競争というのが他の業界以上に激しかったと思いますけれども、現時点で考えてみますと、今後の酪農の発展、特に生産者が合理化をどんどん進めていく中で中間段階のメーカーが合理化がおくれるということでは、酪農、乳業全体の発展からは大きく取り残されると考えておりますので、私ども、今度の通達の中でも、地域、特に県の単位で、何年後というところまではっきり言っておりませんが、将来展望、まず絵を描いてみて、その中でどうしても立地が必要なところを残しながら、あるいは合理化工場をつくりながら、他の中小はこれに統合していくとか、あるいは同じ中小は組合でまとまっていただくとか、こういうものを描いていっていただくことを考えております。これは強制的に何か縮減をさせるということは適当ではない仕事でございますけれども、まず、地元からの発意に基づきまして、これが着実にできるような体制づくりをことしあたりから始めていってみたい。現実に、御承知のように、中小等も比較的資産等お持ちの方が多うございますから、経営的には大変ではございますが、なかなか簡単に企業合同というところまで踏み切れないという場合もございます。そういう場合は組合間における施設の共同利用とかいろいろな手もあろうかと思いますが、ことし、今度の通達を出しました以降の非常に重点事項の一つとしてこの問題に取り組むつもりでございますし、五十九年度予算につきましても、中小メーカーのこういう統合方向につきまして若干の援助措置等も考えているわけでございます。
  168. 春田重昭

    春田委員 次に、飲用牛乳の価格の問題でございます。  先ほどまくらにおいて局長からお話がございましたけれども、スーパーでの牛乳の小売価格実態をどうつかんでおられるのか、ちょっと時間がなくなってきましたので、ひとつ簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  169. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ことしの一月でございますが、畜産振興事業団が購入先別で価格を調べましたのによりますと、専売店におきましては二百円以下の牛乳のシェアというのは大体三六%ちょっとでございますが、量販店ではその二百円以下のシェアが九割ぐらいということで、スーパーの価格が専売店よりかなり安いというのは事実でございます。ただ、その後の推移を見ておりますと、先ほどちょっと申し上げましたように、二百円以下の比重はかなり下がってまいっておりまして、これは突っ込みの数字でございますが、ことしの八月にとりましたのでは、二百円以下の割合は六〇%台まで落ち込んでおります。したがいまして、いわば廉売物はだんだん比重が下がってきたというのが現状でございます。
  170. 春田重昭

    春田委員 公取の方においでいただいておりますのでお伺いしますけれども、苦情、要望等の申告件数が近年どれくらいになっているのか、その処置はどういう方法をとられているのか。また、スーパー等の納入業者に対する大幅な値引き、協賛金の提供等、こういった問題も出ているわけでございますが、こうした問題に対してどう対処しているのか、お答えいただきたいと思うのです。
  171. 河村穣

    ○河村説明員 御説明いたします。  牛乳の不当廉売に関する申告の件数でございますが、五十四年度五百六十七件、五十五年度十万七千四百十三件、五十六年度八千三百九十八件、五十七年度四千九百十一件、そういった推移でございます。  処理の状況でございますが、申告を受け付けました後、内容を検討いたしまして、所要の調査をする。それで、独禁法上問題がある、そういうふうなおそれのあるケースにつきまして、警告あるいは注意喚起、そういうことで是正方の指導を行っております。  なお、去年の五月には、牛乳を非常に原価を大幅に割って販売しておりましたスーパー二社に対しまして、独禁法違反ということで審決を出しておる、そういう状況でございます。  それから、協賛金等の強要の問題でございますが、この問題につきましては、最近の対応状況といたしまして、五十六年春ごろから、百貨店なりスーパーが納入業者に対して商品を押しつけるあるいは協賛金を強要するとか、そういった点について苦情がふえてまいりましたので、納入業者を対象にいたしまして実態についてアンケート調査を行いました。それで、それに基づきまして、独禁法違反の疑いがある、そういうふうに認められました百貨店、大型スーパー二十五社に対しまして、個別に是正方の指導を行っております。それから、そういった百貨店なり量販店の方の主たる団体でございます日本百貨店協会、それと日本チェーンストア協会に対しまして、こういった問題については数年前から自主規制基準を作成させまして、この団体を通じて傘下の会員がこういった違反案件を起こさないようにということで自粛をさせておるわけでございまして、去年におきましてもその自主規制基準の内容を強化するように指導いたしまして、自主規制基準も従来よりも厳しい基準に改めさせる、そういうふうなことで指導しておるところでございます。
  172. 春田重昭

    春田委員 時間がございませんので、公取の方にはもう質問いたしませんけれども、警告、忠告だけで終わるのじゃなくして、その後再び不当廉売をやっていないかどうか、そうした追跡調査もして、厳しい監視の目を光らせていただきたいと要望しておきます。  農水省にお伺いしますけれども、メーカーから販売店に渡る牛乳の仕入れ価格、いろいろな要素があると思うのですけれども、稼働率や運送費等の要件でも変わると思いますけれども、平均的に見て一リットル当たりでどれくらいが適正な価格といいますか妥当な額といいますか、農水省としてはどうお考えになっておりますか。
  173. 石川弘

    石川(弘)政府委員 役所が幾らがいいとは大変申しにくいことでございますが、ごく普通に、いま生産者との間でやっております原乳価格を使いまして、それにいわば加工賃、これは箱代とかいろいろなものを含めまして、ある種の輸送費を加えて最低のマージンが入った場合に、これはあくまで私どもの頭の中の計算でございますから商売を超えての話でございますが、百八十円台ぐらいのものがなければどこかに大変なしわが寄っているのではなかろうかと思いますが、これはあくまで私どもの架空計算でございます。
  174. 春田重昭

    春田委員 私は大阪でございますけれども、先般も大手系列の販売店の方です、牛乳専売店の方でございますけれども、この方にお伺いしたところ、現在百八十六円三十六銭で入っている、したがって、これに諸経費や利益等を加えれば二百四十円で売らなければならないけれども、現行では過当競争があるので二百十円ないし二百二十円でしか宅配できない、したがって牛乳ではほとんど利益がない、いわゆる他の製品でカバーしている現状でございます、こういうお話があったわけでございます。  私の手元に大阪のスーパー等の量販店の牛乳価格、これは九月十四日に出された業界誌でございますけれども、手元にあるわけでございます。この資料によりますと、安いので百六十八円が一店、百七十五円が六店、百七十八円が九店、こういうことで、まさしく仕切りといいますか仕入れ価格を下回っているわけですね。したがって、これらは当然公取の不当廉売の対象になるのじゃないかと私は思うわけでございますけれども、現実こういう形で販売されている。先ほどの局長の答弁では、二百円以下はだんだん下がってきたと言うけれども、現実こういう形ではるかに原価を割っているような形のいわゆる不当廉売がされているわけです。  こういったことで、本当にス−パーに対しては、やはり公取のさらに厳しい監視が必要でございますけれども、またこういうことも言われているわけですね。スーパーは原価を割って安売りなんかはしない、少なくとも一六%のマージン、利益がなかったら売らないというスーパー側の意見もあるのですよ。とすれば、この生産者か、いわゆるメーカーが裏でやみ取引をやっているか、また余乳という安い価格のものがスーパー等に流れているという懸念もあるわけですね。こういった面でも、農水省のやはり厳しい、公取と組んで対処が必要ではないかと私は思うわけでございます。  こうした事態を解決する手段として、私は思うわけでございますけれども、農水省として小売価格についてある程度国が目安価格を定めて、そして一つのガイドラインといいますか、それに決めてもいいんじゃないかという考え方もあるわけでございますけれども、どうですか。
  175. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のようないわば一つの指導価格というようなことを決めることの是非につきましては、御承知のように、先ほどちょっと申しましたが、四十二年三月に国民生活審議会の消費者保護部会で、当時ありましたような三段階価格と申しますか、生産者幾ら、メーカー幾ら、小売幾らというこの方式が適切ではないという御指摘がありましてから私どもはそういう手法をとってないわけでございますが、私の頭にありますものは、先ほども申しました二百数十円も牛乳、百五十円も牛乳、極端なのはただというのもあったようでございますが、そういうことでは国民の基本的食糧として本当に消費者にも安心して買ってもらえる商品にならないということで、もちろん御承知のようにスーパーのように持ち帰りと、宅配のように、宅配はそれだけ便利なわけでございますから、それとの価格差があるのは当然でございますけれども、合理的な範囲で説明できるような価格の幅でなければいかぬ。非常に省力化し、なにし、努力して、もうぎりぎりの、たとえば生産者は再生産は必ず確保できる、メーカーにとっては少なくとも白い牛乳をつくっていてマイナスになっているというような状態では困る、スーパーあるいは販売店にも同様な事情がございますので、そういうものの価格の幅は一体どの辺なのだろうかということで、現在関係者といろいろ詰めているところでございます。−したがいまして、私どもは、今回のいろいろな指導におきましても、いわば一本価格を目指すのではございませんで、価格帯の中で非常に異常だと思われるものをなるべくなくしていく。これは形の上では大半が実は特売という形式をとっておりまして、一定の価格に特別の割引を要求されているわけでございますが、そういうものをだんだんなくしていく。いまから一年ぐらい前は極端な場合は全部が特売のようなものもあったわけでございますが、現在はそういう特売回数を減らすとか、あるいは特売の場合の値引きというようなことも応じないとかいうような姿で、通常考えられる売買の物の数をふやすことが結果的には底上げをしてきているというのが現状でございます。御指摘のような指導価格的なものはとり得ないわけではございますが、いま申しましたような牛乳の価格の幅が妥当なところに落ちつくようにということで、指導してまいりたいと思っております。
  176. 春田重昭

    春田委員 こういった実態の中で、牛乳専売店、小売店の方たちの苦労はもう大変なものでございます。統計にも昭和五十一年に二万一千軒あった商店数が、昭和五十七年には一万七千八百軒に減っている。三年に一回の更新でございますし、保健所に届けない方もあろうし、もう廃業に近い方たちの数字もこの中に入っているわけでございまして、実態的には、極端かもしれませんけれども四軒に一軒は非常に苦しい状態に陥っているという販売店の皆さん方の心情を聞いたときに、本当に、この販売店の方たちは先代から続いてずっとやっている、また牛乳全体の一五%のシェアを占めている、こういった安定的な供給、お年寄りや体の悪い方にも宅配してあげるということを考えたときに、この宅配の自然目減りというのはもう容認できないわけでございます。  そういった面で、農水省として、この宅配、小売専売業者のそうした手厚い保護等も今後十分考えていっていただきたいと思うわけでございますけれども、農水省としてはこの販売店について今後いかなる対応を考えているのか。  さらに、要望として、牛乳販売店における併売の意向が出されているわけでございますけれども、その実施の可能性につきましてはどうお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  177. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、専売店はそのシェアは下がってまいりましたけれども、やはり専売店の持つ特徴と申しますか、先生も御指摘のような非常に安定的な売り手でございますし、しかも、たとえば助成順位もつけておりますけれども、老人とか妊婦に対しても確実に手元へ届くというそういう大事なメリットもございますので、私どもかねがねこの問題につきましては、かなり歴史のあることではございますけれども、一つは経営の多角化の方法、低温の商品につきましてはいままでも経験があるわけでございますから、そういう多角化の方法とか、あるいは専売店としてシェアを、まあ配達の領域を広げるためには配達経費の節減のための隔日配達だとか販売量拡大とか、いろいろなことも含めました指導をしてまいっているわけでございますし、非常に微々たるものではございますが、予算措置の助成もいたしているわけでございます。そのほか、事業団助成等も使いまして、専売店の経営の健全化というのは今後とも大いに努力をしていくつもりでございます。今回の局長通達の中でもこの販売店の問題を取り上げているわけでございます。  もう一つ御指摘のありました併売問題でございますが、要するに、いままでの専売店というのは特定のメーカーの系列のもとに動いていたわけでございますから、系列外の商品を扱うというのは、いわば異端の仕事ということで非常に御苦労なさっているわけでございますが、最近におきましては、そういう併売の可能性も考えておりまして、こういう場合には、やはりどちらかといいますと、個々のお店の方が併売を言われるというのはなかなか事実問題としてやりにくうございます。したがいまして、一定の牛乳の方々が、共同してその他のメーカーからも仕入れられるという共同仕入れみたいなことを開発する必要があろうと思っておりまして、そういうような指導もいたしておりますし、それから、現にメーカーにおきましても、必ずしも併売をかつてのようにも嫌いするということもなくて、必要であれば協調をする、要するに商品の多角化と申しますか、こういう専売店の系列の品物もあるし別の品物もあるという意味で、少しその辺がかつての事態よりも弾力化しているように思いますので、われわれも必要に応じてそういうことが可能になるような指導をしていきたいと思っております。
  178. 春田重昭

    春田委員 この後、LL牛乳の問題、学校給食の問題等御質問したかったわけでございますけれども、あと三分になりましたので、このLL牛乳の問題につきまして何点か簡単にお伺いしますので、お答えいただきたいと思います。  LL牛乳につきましては、この春、厚生省の国立予防衛生研究所で品質検査をした結果、常温流通でも十分いけるという結果が出たみたいでございます。こうした食品衛生上の一つの結論が出ましたけれども、食品衛生上の問題が解決したからといって、LL牛乳をさらに簡単に「要冷蔵」を外すとかじゃんじゃんつくっていくという問題には、いろいろな流通問題も絡んでむずかしい問題であろうと思います。  そこで、農水省のお世話でいまそうした協議会が開かれておるやに聞いておるわけでございますけれども、まず第一点は、昭和五十二年四月に生産者とメーカーで合意されましたいわゆるLL牛乳三原則がございますね。この第二点の中で、海外からの輸入は行わない、この方針を今後どう堅持されていくのかどうか。  さらに、三点目の「要冷蔵」の規定の問題、これについてはどうお考えになっておるのか。  さらに、この協議会には現在、生産者とメーカーだけが入って協議されているみたいでございます。当然LL牛乳につきましては、生産者、乳業者、販売店、さらに消費者団体、真っ向から意見が対立しているのは御案内のとおりでござ、います。そういったことを考えれば、この協議会の中には販売店の方や消費者の方も入れて論議しなかったならば、一つの結論といいますか、方向は出ないのじゃないか、こういう考え方も持っております。  そういった点で、この三点、どうお考えになっているのかお伺いしたいと思います。
  179. 石川弘

    石川(弘)政府委員 LL三原則と言われますものの中で、まず第一にはフレッシュを原則とする、このことは、私は日本の場合、将来も変わらぬと思います。大変幸いなことに、こういう首都圏の間近でも新鮮な牛乳がつくれるわけでございますので、フレッシュ大原則というのは今後も変わらないだろう。  それから輸入はしない、これは現在、LL牛乳、滅菌牛乳というのはIQ品目でございます。要するに、割り当てがなければ入れられないわけでございますが、飲用牛乳は過剰の問題があるくらいでございます。決して国内で不足するものではございませんから、割り当てする気持ちはさらさらございません。  その次の「要冷蔵」要件を外すかどうかが、実は厚生省の今度の試験の結果いま検討になっているわけでございますが、この問題につきましては、御承知のように、そういういわば衛生上の取り扱い条件の問題のほかに、やはり飲用牛乳の混乱の現況の中で、この混乱をいわば増幅するような効果に使われるのではないかというのが、生産、流通、消費、いろいろな方々の御心配の一つでございます。したがいまして、私ども、まずその生産者とメーカーがこのLL牛乳というものを、本当にメリットは生かす、しかし混乱要因は起こさないというような形で運用できるような体制ができるかどうか。これができませんと、いわばよかれと思ってやったことがかえってあだになるわけでございますので、それをまずやるのが今度やっております協議の場でございます。  御承知のように、LLは要冷蔵が要りません場合はそれだけの流通メリットもあることは事実でございまして、万人が異議がないのは、たとえば自動販売機に入れます場合に、LLにしておきますと、取り扱いも簡単で——いま牛乳が自動販売機の中では他の飲料から駆逐されているのは、この要冷蔵要件がついているからでございますが、こういうことは問題がないのですが、たとえばリッター物になりまして乱売しますと問題になるということで、そこは現在、生産者とメーカーの間で混乱が起きないような手法はどこにあるかというのを協議をいたしているわけでございます。しかし、これはあくまで生産者とメーカーの話でございまして、これから先さらにこれをどうやるかということを決めます場合には、先生の御指摘のように、これを販売します方々、それから消費者につきましてもLLにつきまして賛成の方々と大変反対なさっている方々もございますので、そういう御意見も聞きながら妥当な線を見出していきたいと考えております。  御承知のように、LLはそもそも容器その他でどうしても本当はコストが高くできるものでございますから、なるべく安定的に新鮮なものを供給しますためには、フレッシュ大原則ということは私ども崩すつもりはございません。しかし、やはり牛乳の消費拡大の面でプラスになる面があれば、これを合理的に考えられる範囲内で拡大をしようという考え方でございますので、先生の御指摘なども踏まえまして、これから問題をさらに詰めていくつもりでございます。
  180. 春田重昭

    春田委員 一点だけ。合意された中で、販売量というのは五万キロリットル以内を当面の目標とする、これは守っていくのですか。
  181. 石川弘

    石川(弘)政府委員 五十七年までの集計では四万六千から七千でございますので、あの五万キロ以内に守っておるわけでございます。
  182. 春田重昭

    春田委員 最後に、大臣、この牛乳の問題につきましては、国民の健康を守る上で、また児童の育成の上において非常に大事な問題でございます。その大事な牛乳が特に飲用について大きな混乱を来しているわけでございますから、速やかにリーダーシップを大臣初め農水省がとって正常化していただきたいと要望しておきます。大臣の御決意を聞いて、終わります。
  183. 金子岩三

    金子国務大臣 御指摘の点、よく理解いたしました。局長を督励して、ひとつ御要望のとおりやらせます。
  184. 春田重昭

    春田委員 終わります。
  185. 古屋亨

    古屋委員長 神田原君。
  186. 神田厚

    神田委員 まず最初に、本日も何人かの委員の方から御質問がありましたが、農林水産物の自由化の問題につきまして大臣に御質問を申し上げたいと思っております。  私は、四月二十七日にも農林水産委員会におきまして自由化問題について質疑を行いました。その際、大臣は、「足らないものを輸入するという考え方に立って基本的な姿勢を貫く」、また、自由化、枠拡大は行わないというふうに受け取ってよろしいかという質問に対しまして、「そのとおりであります。」というふうに答えているのであります。九月十四日、十五日の日米農産物交渉の際にもその姿勢を貫かれておりまして、まことに敬意を表する次第であります。  去る九月二十日の予算委員会で、農林水産大臣の答弁を聞いておりますと、農林水産大臣内閣の一員であり、貿易立国を考慮しなくてはならない、こういう微妙な発言をなさっております。  さきの日米交渉の後、農林水産大臣の基本姿勢が変化があったのかどうか、この際、農林水産物の自由化、枠拡大問題に対する大臣の基本的な考えを改めてお聞きをしたい、こういうふうに思っております。
  187. 金子岩三

    金子国務大臣 私の日米農産物市場開放の問題についての基本的な姿勢は、いささかも変わっていません。ただ、レーガンさんが訪日するということが決まりましたので、だとすれば、中曽根さんが一月にこの問題は専門家で検討させようということを決めていらっしゃるのですから、やはりお見えになるまでにはひとつできるだけ誠心誠意で努力をしてこの問題に取り組んでみる、取り組んでみてどのような状態になるのか、その誠意をもって取り組む姿勢を示すことが国際儀礼上必要である、こういう考え方で、そのとおり取り組んでまいっております。それまでは私のところから専門家的、いわゆる局長など数回差し向けましたけれども、全然話にならない状態であったのが、私の発言によってかどうかわかりませんけれども、あの去る十四、十五日の会議というのは米国の方から申し入れがあって行われたわけでありまして、向こうもこちらが努力しようと呼びかければやはりそれにこたえて話に乗ってきた。私は、この問題は前進した、このように考えておるのです。ただしかし、先ほどからも春田さんの御質問でありましたとおり、ただ、言っていることが途方もないことを申されていますので、てんで問題にならないように私は考えております。その後もいろいろと話を続けて非公式にやっておりますけれども、アメリカは非常に強い姿勢で、それは変わりはないようでございます。  したがって、レーガンさんが見えるというのは十一月九日ですから、大体十月いっぱいぐらいにめどが立つならばそれはよし、また、それまでにいささかでも前進があればそれもよし、何もなければやむを得ないこと、やはり来年三月までに何とか目鼻をつけることにして長期戦に入る、こういう考え方でおります。いろいろ新聞で書かれておりますけれども、私のいわゆる考え方、農林水産委員会で昨年決議されたこと、また十二月にも強い申し入れがあっておる、そういうものを踏まえて、日本の農業に影響があるようなことはいたしません、こういう考え方で取り組んでまいっております。ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  188. 神田厚

    神田委員 大臣が枠拡大も行わないということを農林水産委員会等で明確にしているわけでありますが、たとえばミカンと牛肉の問題にいたしましても、ミカン農家は昭和五十四年度から五十八年度までの間に全栽培面積の二割に相当する三万ヘクタールの減反を実施しております。五十九年度からはさらに三年間で一万ヘクタールの減反を計画をしている、こういう状況であります。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕また、肉用牛の経営が、経営規模が進んでいるとは言いながら、海外諸国に比べましてまだまだ零細でありまして、このようなときに自由化、枠拡大が行われると壊滅的な打撃を受けるおそれがあります。こういうことでありますから、現在のわが国の農業の実情の中では、自由化の問題はもちろん、牛肉、オレンジでありますけれども、枠の拡大もできないのではないか、こういうふうに考えておりますが、大臣のお考えはいかがでありますか。
  189. 金子岩三

    金子国務大臣 温州ミカンが二〇%減反をして、その上ことしなどは大変な豊作で、先月から盛んに摘果をやっておるようでした。そういう状態の中で、それと競合する柑橘類の枠を広げるということは大変不可能な事態であると考えています。
  190. 神田厚

    神田委員 ミカンについては御答弁がありましたが、牛肉自体も、現在のこういう情勢、日本の畜産農家の現状から、アメリカの要求、枠拡大にこたえていくということになりますと、これは非常に問題があると思っていますが、その点はいかがでありますか。
  191. 金子岩三

    金子国務大臣 私が柑橘類と申しておるのは、いわゆる一切の加工品も含めてのことを言っておるのでございまして、いろいろ言われておりますけれども、ただ、貿易立国を私が予算委員会でお話をしたり、中曽根内閣の一員である、農林水産大臣であると同時に内閣の一員である、したがって、内閣で何か農林省と、私の考え方と変わった方針が出た場合はまた話が別になってくるおそれもある、こういう含みのことを私は申し上げておりますけれども、私の力の限りは、日本の農業を守るために全力を注いで、枠の拡大についても筋の通らないことはやらないという考え方でおります。
  192. 神田厚

    神田委員 大変意味深長な御答弁でございますが、あくまで農林大臣が日本の農政の問題についての責任を持つわけでありますから、内閣がそのことにおいて大臣の考え方と異なった方針を決定する、そういう立場に置かれましたときには、農林大臣はみずからの信念に沿って日本の農政を守るためにその決断と行動をすべきだと私は思っておりますが、いかがでありますか。
  193. 金子岩三

    金子国務大臣 そのとおり決意をいたしてやっていきます。
  194. 神田厚

    神田委員 さて、九月の十四、十五日の日米農産物交渉では、アメリカ側が自由化一本やりから枠拡大の要求へと現実的な対応をしたと言われております。これは新聞の報道でありますけれども、オレンジについては毎年の輸入枠を三〇から四〇%拡大すること、牛肉については毎年六〇から七〇%拡大して、畜産振興事業団の一元輸入は廃止すること、こういうふうなことを主張して、わが国は、譲歩できるぎりぎりの範囲は、牛肉が年間一二%から一四%の増加、オレンジが六%から七%の増大であると主張したと言われております。結局残る交渉は物別れに終わったと報道されておりますが、この点は事実でありますか、いかがでありますか。
  195. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 この点は、大変申しわけないのでございますが、先方との約束で、米側の提案が出てきたということを除いては協議について一切公表しないことになっておりますので、いまのお尋ねについて率直にお答えすることを妨げられておるわけでございますが、米御提案がわれわれにとって受諾し得ないものであったことは事実でございます。
  196. 神田厚

    神田委員 アメリカの提案、主張に対しまして、日本側も具体的に数字を挙げて答えたといいますか、話し合いに応じたということでありますか。
  197. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 これは、双方の応酬を含めて一切言わないという約束になっておりますので、しかるべく反論をしておいたということにとどめさせていただきたいと思います。
  198. 神田厚

    神田委員 そうしますと、新聞が書いております牛肉年間一二%から一四%の増加、オレンジが六%から七%の増大、こういうことで日本側が主張したということではないのですね。
  199. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 繰り返し申し上げておりますように、協議の内容については一切お答えできないことになっておりますので、御容赦をいただきたいと存じます。
  200. 神田厚

    神田委員 局長答弁のように、交渉の内容については両国とも公表しない約束だ、こういうことであります。ところが、新聞各紙の報道等にも同じような数字が流れている、こういう事実があるわけであります。昨年七月にブロック書簡問題というのがありました。これは、そのときは通産省が画策をしたのではないかというような言われ方をしたのでありますけれども、今度の場合も、米国側の厳しさを公表して早期に政治決着を図ろうとする向きがある一こういうふうな言われ方もしておりますが、私はやはり、外交交渉の秘密事項がこういうふうに漏れてしまうということでは、相手に対しましてつけ入られることでありますと同時に、政府の部内での意思の統一といいますか考え方の一致といいますか、そういうものが図られていないのではないか、こういうふうなことを感ずるわけでありますが、農林大臣も閣議等におきまして、政府部内でもう少し現実の話し合いをして、農業の現実、食糧問題の重要性等の問題について閣内の統一を図っていく必要があると考えますが、その点はいかがでありますか。
  201. 金子岩三

    金子国務大臣 内閣にはいろいろそれぞれ立場がありまして、仮に通産省の立場を考えますと、こちらはやはり鉱工業製品の輸出を主体として責任を持って仕事をしておる立場でありますし、また外務省は外務省で、やはりいかにして対外関係を友好を増大していくか、保っていくかということでその責任を遂行しておる立場の人なんですから、そこに問題を提起しても容易ではない、かえってマイナスの面が起こる、こういうような感じがしますので、そういう公式の場で問題を提起するようなことは私は得策じゃないと考えております。
  202. 神田厚

    神田委員 大変御苦労なさっているお姿よくわかりますが、こういうふうに農林省は一生懸命やっているけれども、あるいはどこかの政府関係がそれをぶち壊すような行動をしているということでは、本当の国益を守る交渉にはならないわけでありますから、ひとつ大臣も機会をとらえて、日本の農業の問題につきまして、少なくとも日本国の閣僚でありますから、閣僚の人たちに対しまして統一的な見解というものをある程度まとめていく御努力をお願いしたいと思っております。  さて、ただいま話がありましたが、十一月のレーガン大統領の訪日の前に政治決着をしなければならないのではないか、こういうようなことが心配をされておりました。先ほどの委員の質問に対しましても、そういう意味で日にちを切った形で政治決着という無理なことをしないというように大臣の方から御答弁があったかと思うのでありますが、ひとつ再度、事務的な積み重ねをして積み上げていって、やはり日本の国民も農民も納得ができるような形での解決をしていただきたい、こういうことを考えておりますので、レーガン訪日を機会とした政治決着問題について、ひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  203. 金子岩三

    金子国務大臣 先ほど春田さんに申しあげたとおりでございまして、私は別に、レーガンさんが訪日するのでその前に国際儀礼で何が何でも政治的に無理やりこれを片づけようという考え方はないのでありまして、いつの時点か、三月末までには決着をつけることになりますが、そのときもやはり日本の農家の方々の理解を得る、納得できる線でなければこの問題は決着はつかない、このような考え方で取り組んでまいります。
  204. 神田厚

    神田委員 関連しまして、政府は欧米との貿易摩擦解消のために、これまで三回にわたりまして関税引き下げなどの市場開放対策を講じてまいりました。市場開放対策第二弾がベルサイユサミットの前、第三弾が日米首脳会談の前、いわゆるおみやげ的なものであったわけであります。こういうことから考えまして、関税の引き下げは世界各国で相互主義に基づいて行うのが基本でありまして、わが国だけが一方的に引き下げるというのは、非常に厳しい国際環境の中で生きる方策としては賢明でない、こういうふうに思っておりますが、レーガン大統領訪日に向けてまた市場開放対策第四弾というおみやげを用意しているのではないかというような心配をしている向きもありますが、この点につきましてはどうでありますか。
  205. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 関税問題のとり扱いにつきましては、私どもも神田先生と全く同じ考え方をいたしておりまして、たとえば総理のASEAN歴訪の際、先方から提起されました若干の品目で考えなければならないかなというふうに思っておるものがございますが、レーガン大統領のおみやげ用ということは全く考えておりません。
  206. 神田厚

    神田委員 佐野局長は御専門でありますからちょっとお聞きしたいのでありますが、アメリカが日本に対しまして自由化を要求してきたその背景は、日米の農業がお互いに共存共栄を図れる、そういう将来的な展望を持った形で従来自由化を求めてきたわけでありますね。ですから、性急な枠拡大という問題についてはアメリカは必ずしも積極的ではなかったというふうに思っております。日本の方がむしろ、アメリカのそういう要求を枠拡大という形でそらしてきたといいますか、受けとめてきたといいますか、そういう感じだったと思うのでありますが、アメリカの方針が変わったのかどうか、その辺のところはどんなふうに考えておりますか。
  207. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 変わったか変わらないかというのは、いつを起算点にするかということがございますが、一応たとえば東京ラウンドのときの経験を座標軸として考えますと、東京ラウンドのときには、牛肉につきましても柑橘につきましても、輸入制限の撤廃という問題なしに日米が合意することができたわけであります。なぜそういう合意がその当時可能であったかということについていろいろな考え方があり得ると思いますが、ただいまの先生の御指摘も一つの有力な解釈の仕方であろうというふうに思われます。  それに引きかえますと、昨年の十月来、今度の新しい牛肉、柑橘問題で米側と協議をしてまいりますと、その場合の米側の態度というのは、どうもやたらとガットの条文を盾にとってしゃくし定規の議論をしたがるという傾向が非常に強い。もちろん、東京ラウンドのときにもそういう議論が全くなかったわけではありませんけれども、しかしながら、東京ラウンドのときには曲がりなりにもああいう合意ができたということに比べますと、これは著しいさま変わりであるというふうに感ぜられます。  そういう態度が変わってきたということのよって来るゆえんでありますが、これはいろいろなことが挙げられるだろうと思いますけれども、私が特に強く感じておりますのは、日本とアメリカとの間の経済関係が総体として緊張の度合いが高まっているという中でこの問題が議論をされておりますために、必ずしも牛肉、柑橘の実利実益ということばかりでは議論が処理できないという国内事情が米側に発生しつつあるということがあるように思っております。
  208. 神田厚

    神田委員 それでは、次に、奥鬼怒スーパー林道道問題につきまして御質問申し上げます。  奥鬼怒スーパー林道は、栃木県の日光市光徳から群馬県利根郡の片品村大清水に至る四十七キロメートルの路線として計画され、現在までに栃木県栗山村八丁ノ湯まで三十一キロメートルが完成しております。残り十六キロメートルが未開設となっておるわけであります。この未開設路線の一部が国立公園内を通過することから、開設に当たっております森林開発公団は環境庁と協議が必要であり、この協議に対する同意が先般出されましたために、本年秋以降に着工が予定をされている、こういうふうに聞いております。  このスーパー林道開設につきまして、まず、林道開設が予定されております奥鬼怒地域は、わが国の最高層の湿原である鬼怒沼を中心にシラベ、オオシラビソ、ブナ等の亜高山帯樹林としてすぐれた原生林に恵まれ、貴重な野生動植物の生息する自然の宝庫でありますことから、環境及び自然保全の見地から、道路が開通すれば観光客が入り込み、自然破壊につながるとして、林道開設に反対している団体等もございます。このような強い反対がある状況の中で、この林道開設しなければならない必要性というのは一体どういうところにあるのか御答弁をいただきます。
  209. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  奥鬼怒林道につきましては、ただいま先生お話がありましたとおり、四十六年から実施いたしまして、現在まで三十一キロ完成しておりますが、いまお話しがございましたとおり八丁ノ湯以降につきましてはまだ未着工の段階でございます。  この奥鬼怒林道と申しますと、森林資源の非常に多い地域でございまして、まず、その森林開発というふうな直接的な目的もございますが、同時に、行きどまりの解消による地域の皆さんの生活環境の整備、さらには、山村地帯で生産されますところの特用林産物その他の生産販売などに寄与できますので、地域からまた地方公共団体の方々からも、できるだけ早く完成してほしいという要請が出ております。  先ほど申しあげましたとおり、すでに三十一キロメートルができ上がっておりますが、林道全体の開発効果を高めるためには、八丁ノ湯から先の延長部分につきましてもできるだけ早く着工し完成をしたい、かように考えているところであります。
  210. 神田厚

    神田委員 今後開発を予定しております八丁ノ湯—大清水間の林道建設につきまして、昭和五十六年九月に当時の鯨岡環境庁長官が現地を視察して、観光を主な目的とする建設は認めない等の方針を出しまして、この方針に基づいて林野庁、環境庁、森林開発公団が検討を行ってきたというふうに聞いておりますが、その検討の経過及び検討結果はどのようになっているのでありましょうか。
  211. 秋山智英

    ○秋山政府委員 五十六年の十一月に環境庁、林野庁並びに森林開発公団が、地元の要望と自然保護の要請に配慮しながら、工事の内容につきまして調整いたしまして、その結果を踏まえまして、環境庁から五十八年の七月に本林道の八丁ノ湯から大清水までの間の林道開設につきまして同意をいただいているところであります。
  212. 神田厚

    神田委員 この区間の路線の一部が日光国立公園の特別地域内を通過することから、自然公園法に基づきまして森林開発公団は環境庁に協議をすることになっておりますが、本年七月四日に環境庁の同意が出された、こういうふうに聞いております。同意の内容はどういうふうなことでありましょうか。
  213. 味蓼導哉

    味蓼説明員 お答えいたします。  ことしの四月に森林開発公団から、自然公園法に基づき当庁に協議書が提出されたわけであります。協議書の中身は、当該計画区間のうち特別地域に係る三・五キロについてでございますが、三・五キロのうちトンネルが一・三キロ、車道幅員三メートル、路肩〇・二五から〇・五メートル、路面については砂利敷というようなものが協議の内容でございます。  当庁といたしましては、これに加えて、事前に行われましたアセスメトの結果も含め、協議の内容を慎重に検討いたしました結果、自然環境保全の必要性を踏まえた十分な保全対策が講じられていると判断し、さらに今後自然環境保全に万遺漏なきを期するために、工事実施当たりましては、詳細な設計図書により当庁に協議をしていただく、また八丁ノ湯—大清水間における観光利用の車両の通行についてはその規制を講ずること、さらに、自然環境保全上問題のないよう万全を期するためのきめ細かな留意事項を付しまして、本年の七月四日に同意をいたしたところでございます。  以上でございます。
  214. 神田厚

    神田委員 その同意の中で、さらに環境調査等の条件を付与しておりますか。
  215. 味蓼導哉

    味蓼説明員 本林道につきましては、鯨岡長官が現地調査をいたしまして、それを踏まえての基本方針並びに事務当局に指示をいたしました事項がございます。それには、事前に十分なるアセスメントを行うこと、それから、奥鬼怒への影響を及ぼさないよう配慮すること、それから、マイカー規制等を行い、いわゆる観光を排除すること、さらには、林道の規模というものを最小限にすること、これらを踏まえまして環境アセスメントを実施させたわけであります。  今後、具体的な実施、設計に当たりましては、私どもの方に協議をさせますが、これらについても、先ほど申し上げましたように、自然環境保全上問題のないように具体的な保全対策を講じせしめて、慎重に審査の上、処理をしていきたいというふうに考えております。
  216. 神田厚

    神田委員 そうしますと、環境庁によりまして条件的に付与されました問題については、現時点においては、それは経過といいますか、環境庁としてはその後の調査等についてまだ結論を出していないわけでありますね。
  217. 味蓼導哉

    味蓼説明員 アセスメントにつきましては、路線選定を踏まえまして、最終的に決められました路線について現況評価及び環境の影響評価、さらに保全対策を講じでございます。そういうようなものを十分審査した上で今回の協議に同意したわけでありまして、基本的に環境アセスメントは一応終了している。今後、実際の設計に当たりましては、これを踏まえて十分な保全対策が講じられる、これを十分チェックしまして処理をしていきたい、こういうふうに考えております。
  218. 神田厚

    神田委員 この問題は、開発か自然保護かというふうな論議の中で、国民の皆さん方も大変関心を持っている問題でもあります。この奥鬼怒スーパー林道と同じように着工前から大変反対の声も強かった南アルプススーパー林道、これは開通して二年目にして、昭和五十七年の台風被害で大規模な土砂崩れに見舞われて、いまなお巨額な金額を投じて復旧事業を行っている、こういうふうに言われております。奥鬼怒スーパー林道開設後におきまして、南アルプススーパー林道の二の舞を踏むようなことでは大変だというような心配の声もあるわけであります。  なお、地元におきましても、この問題について非常に慎重に取り扱ってくれというような強い要望があるわけでありますが、この点につきましてはどういうふうに考えておりますか。
  219. 秋山智英

    ○秋山政府委員 あの地域は、自然環境保全上きわめて重要な地域でございます。したがいまして、今後、実施当たりましては、環境庁と話をした結果を踏まえまして、環境アセスメントに示されたことを十分留意しながら、林道の規格につきましても、一級から二級に落とすとか、あるいは片桟道工法導入であるとか、いろいろの環境保全上の細心の注意を払いながらこれから進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  220. 神田厚

    神田委員 昭和五十六年に環境庁長官が示しました、観光を主目的としたスーパー林道建設は自然破壊を招くので認められないという方針を受けまして、観光目的の車両の通行を規制すること、こういうふうになっております用地元では観光道路として期待をする向きもあるのでありますが、こういう状況の中で、林道開設の後の観光目的の車両の通行規制というのは一体どういうふうな形でできるのか、その点につきましてはどうでございますか。
  221. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども、具体的な規制方法につきましては、これから環境庁と十分詰めてまいるつもりでございますが、基本的考え方につきましては一致しておりますので、そういう方向で最後の詰め方をこれから進めてまいりたいと考えております。
  222. 神田厚

    神田委員 このスーパー林道開設に関しまして、先ほど申しましたように、自然保護あるいは環境保全、こういう観点から、環境庁の林道開設の同意後も自然破壊の面で疑問点が多いというような指摘も出ております。また、一方、地元町村等では開設推進者が林業振興、災害防止、地域住民の生活上の必要性から開設促進を要請している、この両面があるわけであります。こういう中で予算も現在計上されているというふうに聞いておりますが、不十分なままでこの開設に、延長工事に踏み切るということになりますれば、これは南アルプスのスーパー林道の問題にもありますように、やはり大きな問題を迎え入れてしまうのではないか、私はこういうふうに考えますし、林野庁といたしましては、この計画についての取り扱いを今後どういうふうにしていくのか。強引にこのまま開設に突っ走るのか、それともなお諸方面との協議を続けて計画を練っていくのか、その辺のところを、年内の工事開始等の考え方もあるのかどうかを含めて、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  223. 秋山智英

    ○秋山政府委員 奥鬼怒林道につきましては、これまでも自然環境保全という面に配意をしながら事業を実行してまいってきております。これから進める所につきましては、国立公園の特別地域等の間がございますので、先ほど申し上げましたような点に十分配意をしながら進めてまいるつもりでございます。  なお、実施につきましては、今後保安林の解除等の手続がございますので、それらの手続を経ましたならばできるだけ早く進めてまいりたい、その辺につきましては十分話し合いをしながら進めてまいるつもりでございます。
  224. 神田厚

    神田委員 私は、ただいま十分話し合いを重ねて進めていく、こういうようなことでありますから、ひとつこの問題につきましては、余り性急に無理をなさってこれをやるということではなくて、慎重な調査と綿密な話し合いを重ねて進めていくように要望したいのでありますが、いかがでありますか。
  225. 秋山智英

    ○秋山政府委員 五十六年以来、私どもも、折に触れまた場所を選びながら、絶えず相当の期間を置いていままでやってまいってきておることも御理解いただけると思いますし、また、地域も非常に早くやってほしいという要望も一方にあるわけでございますので、その辺も十分踏まえて進めてまいりたい、私はかように考えております。
  226. 神田厚

    神田委員 本日は大変短い時間でありますので、この問題について詳しく論議をすることができませんで残念でありますが、私はやはり慎重な開設を要望したい、こういうふうに思っております。  続きまして、日韓の漁業問題につきまして御質問を保申し上げます。  昭和五十五年に日韓両国間で北海道、済州島における自主規制措置が合意をされまして、ことしの十月でその合意期間が切れることになっております。この協定の延長については、去る八月二十九日の日韓閣僚会議で、十月中旬までに合意するという意見の一致を見ておりました。両国の事務レベルで精力的に交渉が重ねられておりますが、十月中旬までに合意に達し得るのかどうか、交渉の経緯、問題について御報告をいただきたいと思います。
  227. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 先生ただいま御指摘のように、二月ほど前から本格的な交渉に入っておるわけであります。今日ただいまの時点も、私どもの担当部長でございます振頭部長が、本日もソウルで第四回目の実質的な話し合いに入っているところでございます。交渉事で相手のあることでございますので、ここで確たることを申し上げることははばかられるわけでありますが、先生ただいま御指摘のように、先般の日韓の定期閣僚会議におきましてそのようなお話し合いがあったことを踏まえまして、最大限の努力をいたしたいと思っております。
  228. 神田厚

    神田委員 そうすると、これは十月中、期限切れということなく合意が達成できそうでありますか。
  229. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 交渉事でございますので、その中身につきましての細部は差し控えさせていただきたいと思いますが、北海道につきましては、御案内のように、日本海側のいわゆる武蔵堆におきます韓国の漁獲がタラ、ホッケ等の資源を大いに損なったというのが地元漁民の強いアピールでございますし、さらに、ことしに入りましてから、襟裳地区におきます韓国船の操業に際しまして、一部自主規制の取り決めが破られる行為があったというようなこともございまして、北海道の関係漁民からは、端的に言いますれば、韓国船の操業を大幅に規制するようにというのが強い要望でございます。一方、韓国側の要求は、その取り決めを結ぶ前に比べまして、取り決めを結んでからこの三年間に韓国側の漁獲量が激減したということを踏まえまして、むしろ現在の取り決めの中にあります韓国船の操業できる区域をより広げるべきではないかという主張でございます。そういった意味におきましては、日韓の双方の主張は著しく対立しているわけでございまして、先ほども申しましたように確たることは申し上げかねますが、私どもとしては、何とか十月中旬を目標にというので努力をする所存でございます。ただ、交渉事でございますので、そのようになるかどうかを確答することにつきましては、お許しをいただきたいと思います。  それから、もう一つつけ加えさせていただきますと、たび重なる交渉の結果、韓国側におきましても北海道沖の資源問題につきましての理解はそれなりに深まったとは思いますが、一方、韓国の漁業経営の方の苦しさというのもございます。それから別途、前回もそうであったわけでありますが、資源問題ということになりますと、済州島周辺におきます日本漁船の底びき漁業につきましての規制強化というものを韓国側が最近になって言い出してきております。そういった意味で、いまのところ交渉は来月中旬と確約できないというのが率直なところでございます。
  230. 神田厚

    神田委員 ただいま水産庁長官の方からも話がありましたけれども、北海道周辺海域での韓国底びき漁船の連日の操業で漁場が大変荒れて、関係漁民の水揚げが減少を続けている、また韓国漁船の方も水揚げが減っているという現状であります。こういう状況が続けば、周辺漁場の資源は枯渇をして、漁場としての価値のないものになってしまうわけでありまして、この際、武蔵堆などの資源の減少が著しい海域については、韓国大型底びき漁船の操業を縮減させる、こういうようなことを考える必要があるのではないか。さらには、日韓両国にとりまして資源を安定的に長期的に使うという意味からも、やはりこの韓国漁船の武蔵堆等の海域におけるところの問題は、ひとつこれを厳しく抑制する方向で指導するあるいは考えていくべきじゃないか、こういうように思っておりますが、いかがでありますか。
  231. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 交渉の経過におきます私どもの韓国に対する主張は、まさに先生御指摘のとおりであるわけであります。それに対しまして韓国側の反論は、北海道沖におきます韓国側の漁獲量の相当部分が武蔵堆で現在も行われている、そこから出されるといいますか、そこから引き揚げるということは、現在操業しております十数隻の大型の韓国漁船の経営を危殆に瀕させるということにつながるわけでありますから、資源問題につきましての議論は激しく交換をされておりますが、直ちに向こうからオーケーが出るということにはなかなかならないというのが、いままでの交渉の経過でございます。  一方、先ほどもちょっと触れましたように、西の方の日本の底びき船に対する韓国側の要望、申し出というものもあるわけでありまして、率直に申しまして、これからの交渉の結果につきましてはなかなか楽観できないのではないかというのが私どもの実感でございます。
  232. 神田厚

    神田委員 また、もう一点でありますが、少なくともわが国漁民が守っております底びき禁止ラインなどの国内規制は、韓国側にもこれを一応守らせるべきだ。さらに、現在の合意では、日本の底びき漁業者に対して漁業を禁止している海域までも韓国船に開放している、こういう現状であります。このことは関係漁業者の納得を得られない措置でありまして、新たな合意に当たっては、この点に関しまして改善を申し入れるべきではないか、こういうふうに考えておりますが、どうでありますか。
  233. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 五十五年の十一月に両国の取り決めができるまでに約一年間を費やしたわけでございます。私、たまたまその当時水産庁に籍を置いておりましたものですから、その交渉の経過につきましても記憶が新しいところでございますが、韓国側は、日本の漁船とほぼ相前後しまして、ソ連ないしは米国が二百海里の水域を設定した前後に、当該水域に入っておりました船が引き揚げざるを得なくなりまして、日本海、特に北海道周辺に新しい漁場を求めまして操業を始めだというのが五十二、三年ごろからでございまして、国際法上は、日韓両国の漁業関係におきましては、日本の領海のぎりぎりの線までは韓国の操業は自由なわけであります。ということで、資源保護上日本漁船には禁止しておりますオッタートロールの禁止ラインの中にまで韓国船が入りまして、一年あるいは二年近くそういったかなりむちゃな操業が行われまして、現地におきまして両国の漁業者の間にかなり激しい争いもあった。そういうことを踏まえまして、当時一年有余にわたりまして交渉を重ねました。結論的には、相当程度韓国船に北海道沖の操業から退いてもらったわけでありますが、これも一つの交渉事でございますし、妥協的な要素がなかったとは言い切れないわけでありまして、一部ではございますが、日本漁船が操業できない武蔵堆の地域で韓国船の操業を認めるという形で妥協せざるを得なかったわけであります。ごく一部ではありますが、襟裳につきましても同様な事象があったわけでございます。国内の関係漁民、北海道漁民の声、日本漁船資源保護上そういった規制を受けておりますから、韓国船も同様であるべきだという主張はまことにもっともでございまして、私どもも現在その線を基本に据えた交渉を鋭意やっておるわけでございます。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  234. 神田厚

    神田委員 日韓漁業協定の合意議事録の第八項に、日韓両国政府が設定している底びき漁業及びまき網漁業の禁止区域について相互に自国の漁船が従事しないようにするための必要な措置をとる、こういうことが約束されておりますが、この合意議事録すなわち日韓漁業協定の適用範囲は、西日本だけではなく北海道沖まで及ぶと考えているのかどうか、その点はいかがでありますか。また、韓国政府はそのことについてどういうふうに考えておりますか、あわせてお伺いしたいのであります。
  235. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘の日韓漁業協定につきましては、合意議事録にそのような規定があるわけでございます。三年前にそういった交渉の過程で、御指摘のような日韓の漁業協定が北海道に及ぶか及ばないかという議論もかなり行われたわけでありますが、両国の主張に隔たりがありまして、そして時間が経過する過程で北海道で投石事件その他の事件もございました。事は急を要するということで、その議論を一部棚上げした形で、自主的にそれぞれの水産庁が自国の漁船指導するという形での相手国に対する一方的な約束という形での妥協をいたしたのが現在の姿でございます。考え方としましては、相手国が守っているルールを当該国の漁業者が守るというりは、漁業に携わる者としての基本的な常識ではないかということを踏まえて交渉をしておるわけであります。
  236. 神田厚

    神田委員 西日本海域では、この合意議事録も守られずに、底びき禁止ライン内で韓国船による漁業被害が出ておりますが、韓国政府に対してどのような抗議を行っているのか、また、今後この合意事項遵守のためどのような措置をとろうとしているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  237. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 日韓漁業協定によりまして、山陰沖あるいは九州沖に現に設定されております日本の底びき禁止ラインあるいは底びきの禁止期間につきましては、韓国漁船もこれを守るということになっておるわけでありますが、守らせるための指導、取り締まりは、旗国主義と申しましてそれぞれの国が行う、韓国漁船の違法行為につきましては韓国の取り締まり船がこれを取り締まるということになっております。ここ数年間に、年によりまして多い年、少ない年がございますが、ひどいものにつきましては、領海侵犯というような形でまでの韓国船の違法操業があることは事実でございまして、本年夏に行われました日韓定期閣僚会議におきましても、この点につきましては私どもの農林水産大臣から韓国の農林水産部長に強く申し入れておるところでございますし、それのみならず、協定に基づきます定期的な日韓漁業の委員会がございますが、その席におきましても、さらに、現在韓国との交渉を行っておりますが、この交渉の席におきましても、西日本海域におきます韓国船の違法操業につきまして、韓国側で厳重に取り締まるようにたび重ねて申し入れをしておるところでございます。ごく最近は二、三カ月前に比べますとかなり減っているという報告を得ております。
  238. 神田厚

    神田委員 八月二十九日には韓国漁船対策全国漁業者集会が開かれております。ここでは、決議事項の一つとして、漁業被害の救済措置を講ずることが決議をされておりますが、昭和五十四年七月二十一日から本年二月二十四日までの漁具被害四百三十件、請求額で約二億二千万円の処理が進まないでおりますけれども、どうしてこの処理が進まないのか。また、二月二十五日以降の被害については請求をしているのかどうか。そして、漁具被害だけではなく漁獲量の激減など関係漁業の経営の悪化は非常に著しいものがあるわけでありますから、これらの漁業者に対しまして政府として何らかの救済措置を考えているのかどうか、この点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  239. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 漁具の被害につきましては、民事事件といいますか、民間のことでございますので、民間同士の話し合いによってこれを解決するというルールになっておりまして、西の方と北の場合とそれぞれ担当の団体は違うわけでございますが、たとえば北であれば大水と向こうの遠洋漁業協会というのが話し合って決着をつけるということになっております。たとえば西について言いますれば、日本側も韓国側の漁具に対して被害を与えているわけでございますので、その問題についても両者定期的に話し合いまして、納得ずくでそれぞれ賠償金の支払いをするということで今日までやってきておるわけであります。  北につきましては、そういう形での支払いが二年ほど前までは行われておったわけでありますが、ここ一年ばかり具体的な民間同士の話し合いが中断しているのが現状でございまして、現在行われております日韓の漁業実務者交渉の席におきましても、それぞれの国の該当団体を指導することによって、現在懸案になっております漁具被害額につきまして早急に話をつけて支払いをするようにしようということを、日韓両国の政府間でも話し合っておるところであります。  別途、被害の救済問題でございますが、これは、かって三年ほど前でございますが、北海道にそのための基金もつくりまして、要望がある場合にはそこから無利子の融資が事実上行われるような仕組みができております。数年前に比べますと利用者は非常に減ってはおりますが、漁具被害が減ったということでございまして、現在もこの制度を利用しようとする場合には利用できるような仕組み。にはなっております。
  240. 神田厚

    神田委員 中曽根総理の訪韓以降、韓国は日本との関係で日韓新時代、韓日新時代ということでいろいろな意味で非常に友好親善を深めようという努力をしております。こういう中でいわゆる漁業問題でトラブルが絶えないということは、外交問題からしましてもきわめて問題の多いところでありますから、そういう意味におきましても、漁業秩序を守って漁業者同士がお互いに問題を起こさないというような形でこれを進めさせていくことが非常に大切な問題だと私は思っておりますのでありますから、今回の協定の再締結に当たりましては、その辺のところを十二分に考えて、少なくとも国際親善、日韓両国の親善にマイナスになるような形で中途半端な締結をしないで、きちんと話し合いを深めて締結をしてほしいということを要望しておきたいと思っております。
  241. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいまの御指摘を十分踏まえまして、さらに努力をいたしたいと思います。
  242. 神田厚

    神田委員 第三期対策その他、ちょっと残しましたけれども、これで終わります。
  243. 古屋亨

  244. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 大臣は十五分にいらっしゃるということですので、先に農薬問題からお尋ねをしていきたいと思います。  農薬というのは、環境汚染の問題も含めましてその安全性についてはもちろん農薬取締法によって規制されていることになっているわけなんですが、最近、CNPと総称される除草剤の中からダイオキシンが検出されたということが判明しました。消費者団体の皆さんはいまその問題を大きく取り上げております。  ダイオキシンといいましてもいろいろ種類があるそうなんですが、このダイオキシンこそが、アメリカがベトナムの戦争で使った枯れ葉作戦、それにまいたオレンジ剤、この中にたくさんこのダイオキシンが含まれておりまして、いまなおベトナムにおいて悲惨な奇形児が生み出されていくそういう元凶になっているものであります。ベトナムで生まれましたシャム双生児、これはテレビでも何度となく取り上げられておりましたのでごらんになったかもしれませんが、このようにダイオキシンというのは大変危険な、また大変恐ろしい化学物質であるわけで、たとえどんなにわずかであっても環境中に拡散されるということは絶対にあってはならないと思うわけです。  ところが、このダイオキシンをCNPの除草剤の中から検出しましたのは東京都の衛生研究所で、これはもうすでに農水省も御承知のことだと思いますが、この東京都衛生研究所のデータについて検討されたのかどうか、また、どういう御見解を持っておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  245. 中野賢一

    中野政府委員 お答えいたします。  東京都の衛生研の山岸さんが、イギリスの雑誌でございますが「ケモスフィア」に、除草剤のCNPの中にダイオキシンが含まれているという論文を発表しております。CNP中のダイオキシンは一・三・六・八ダイオキシンが含まれておるわけでございまして、これが論文に指摘されておるわけでございます。  CNPの安全性につきましては、その原料でございます原体を対象にいたしまして、慢性毒性試験、これはマウス、ラットを二年間使いまして行う試験でございますが、こういう慢性毒性試験、それから土壌の残留性、それから魚毒性、そういった試験をいたしまして厳重な検査実施いたしておりますので、全く問題はないと考えております。  それから、CNPの河川の水の中や魚の体内の残留の問題でございますが、これにつきましては、これまでの研究の結果では、その残留性は非常に一過性のものでございまして、一たん検出されましてもその後急激に減少いたしておりまして、特段に問題はないと考えております。
  246. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 大変楽観的な御答弁なんですが、それはもちろん都衛研の検出したのは、ベトナムで問題になった猛毒の二・三・七・八ですか、あのダイオキシンとは異なった一・三・六・八というダイオキシンであったことは承知しています。しかし、一・三・六・八ダイオキシンの毒性については、確かに二・三・七・八のような猛毒ではない、催奇性についてはマイナスだという結果は出ているでしょうけれども、絶対大丈夫だ、絶対毒性はないんだということになるとそうではないという資料はあちこちで出ておりますね。  しかも、私が問題にしたいのは、それだけじゃないわけです。今度の都の衛生研究所で出したデータなんですが、この都衛研が検出したのは一・三・六・八のダイオキシンのほかに、五塩化物だとか六塩化物のダイオキシンも検出されているわけです。この毒性は、五塩化物については一部で一・三・六一八よりははるかに毒性の強いものがあるのだというふうに言われていますし、六塩化物については二・三・七・八ほどではないけれども、催奇性、ここでは発がん性というものについてはプラスだというデータも出ておりますよ。この点についてはどう考えられるのですか。
  247. 中野賢一

    中野政府委員 確かに、山岸博士の論文を見てまいりますと、四塩化ダイオキシンとか五塩化ダイオキシンが検出されておりますが、いま御指摘ありましたように毒性が強い二・三・七・八ダイオキシンというのは検出されておらないわけであります。  いま催奇性の問題が出ておるわけでございますが、CNPもそうでございますが、農薬につきましてはその本体もそうでございますが、不純物も含めまして農薬全体総体として安全性を確認しておるわけであります。したがいまして、私どもの試験結果では、現在のCNPについては安全上問題はないというふうに結論を得ております。
  248. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 おっしゃったように、農薬の成分だけではなく、その中には不純物も含まれている。そして、そのあらゆる農薬のあらゆる不純物というものについて、その安全性を確認していくというのは大変むずかしいことかもしれませんけれども、こういうふうにCNPに含まれているのは非常に危険な不純物なんだということがデータで出ているわけですから、その不純物、ダイオキシン、それについての安全性、それについての研究は農水省されたのですか。されてそういうことをおっしゃっているのですか。
  249. 中野賢一

    中野政府委員 ダイオキシンにつきましては、御指摘のようにいろいろな種類があるわけでございますが、CNP中については、二・三・七・八ダイオキシンという毒性の強いものについては検出されておらないわけでございます。先ほども申し上げましたように、農薬の本体だけではなく、全体として不純物も含めましてテストを行っているわけでございます。そのテストの結果、安全性について問題はないという場合に使用を認めておるわけでございます。
  250. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ちょっとおかしいのですが、はっきりしてください。  それじゃ、お伺いしますが、このCNPの中に含まれているダイオキシンについて具体的に分析されたのですか、どうなんですか。
  251. 中野賢一

    中野政府委員 一・三・六・八ダイオキシンについては、私どもの方でも分析をいたしております。先ほど申し上げましたように、農薬の本体も含めまして全体として安全性が確認されておるわけでございまして、一・三・六・八そのものについて改めて安全性を確認する試験をいたしましても、毒性上は問題はないというふうに考えております。
  252. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 繰り返しになりますが、一・三・六・八ダイオキシンの毒性については、確かにベトナムて使われたオレンジ剤の中に検出される二・三・七・八のダイオキシンとは性質が違う、そして催奇性についてもマイナスということだと。ただし、それでは毒性については全く心配がないのかというと、これはアメリカの環境保護庁が委託研究した中でも、二千五百分の一だというような数値が示されて、その毒性、致死毒性と呼んでいますが、そういうものについても認められているわけですね。  私が言っているのは、一・三・六・八はともかくとしても、しかし、この都衛研の検査では、そのほかに五塩化物だとか六塩化物のダイオキシンも検出されているというじゃないか。それじゃ、その問題については、そちらの方は分析をしたのか、そこまで含めて農水省の方は大丈夫だということを言っているのかということをお聞きしているわけです。
  253. 中野賢一

    中野政府委員 先ほど来申し上げておりますように、農薬につきましては、本体だけではなくていろいろな派生物が含まれておるわけでございますけれども、そういうものを一切合財含めまして、先ほど申し上げましたような残留性の問題だとか、それから土壌に対する残留性、そういったものを全部調べまして安全性を確かめておるわけでございます。したがいまして、個々に一つ一つの分析は結果としては必要ないのではないかと考えているわけでございます。
  254. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それはえらいごまかしの話ですよ。農水省がやっているのは、その農薬本体によ係る毒性試験なんでしょう。それで試験をして、そこには全部含まれているはずだから、だから大丈夫だ、こういうことでしょう。山岸さんの論文を見ましても、わが国で初めてだという言葉がついていますよ、ちゃんと。この論文の中に、自分たちが初めてこういうダイオキシン、五塩化物だとか六塩化物のダイオキシンも検出したのだ、こういうことを言っているわけですから、おっしゃることはずいぶんごまかしたと思うのです。本体の毒性試験をやるのはあたりまえのことなんです。  問題は、しかしながら、その中から不純物としてのダイオキシンの問題が提起されてきている。そういう中で、一つ一つのダイオキシンについて、いわゆる一般の言われているダイオキシン全体というのは、これはもう物すごい数になるそうですから、それはそうはいかないだろうけれども、ここで問題になった五塩化物、六塩化物のダイオキシンについては、少なくとも催奇性、発がん性でプラスというデータもあるわけですから、そういうものに基づいてそれではもう一度農水省が責任を持って分析をしたのかと言って、それはしていると言ったら、それはごまかしになりますようそを言ってはいけませんよ。
  255. 中野賢一

    中野政府委員 先ほど申し上げましたように、農薬をテストする場合に、本体だけを取り出してテストするわけではございませんで、農薬全体としてのテストをいたすわけでございます。そういたしますと、そのテストの結果といたしましては、農薬の中に入っております、本体はもちろんでございますけれども、そのほかのいろいろな物質の結果につきましても、その安全性の結果が全体として出てくるわけでございます。私どもは、そういうテスト結果を検討いたしましてその安全性について判断をいたしておる、そういうことでございます。
  256. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 かみ合っていないのですね。五塩化物、六塩化物というのはちゃんとプラスで出ていますよ。催奇性でもあるいは発がん性でもプラスという結果が出ていますよ。そうしたら、プラスだけれども大丈夫だ、こういうことになったのですか。
  257. 中野賢一

    中野政府委員 先ほど申し上げましたように、そういう五塩化物とか丁三・六・八の四塩化ダイオキシンが入っているということは先ほど申し上げたとおりでございますが、そういったものも全体を含めましてテストをしておるわけでございます。
  258. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私が申し上げているのは、全体を含めたテストじゃあかんということを言っているのです。その中で特に問題になっている不純物であるダイオキシンの、特にその中でも五塩化物、六塩化物のダイオキシンについて、こういうものについて本当に安全性が確かめられるまで、片っ方ではデータが出ているのですから、それに対して省としても責任を持ってそういう分析をやるべきではないかということを申し上げているわけなんです。それを本体で分析をして大丈夫だからということは、これは、私の言っていることにまともに答えようとしない、そういう言い方なんですよ。そういうものも含めてというのは、それは本体で毒性試験をしたら含まぬのはあたりまえなんです。ただ、問題は、その中で言われている、その中から検出されてきた五塩化物、六塩化物というダイオキシンは、これまでの毒性試験の中では十分検出されなかったものがそこに含まれていたから大変だと山岸さんは論文を出されたのですね。だから、私は、農水省もこの問題について——私はいま直ちにこれが毒だなんて言っていませんよ。ベトナムのオレンジ剤の中のダイオキシンとも異種のものだ、だから非常に幸いであったけれども、しかしながら、やはり指摘をされていることは事実なんですから、その問題については安全性を確かめるべきではないか、もっと分析をしていくべきではないか、そういうことを申し上げているわけなんですがね。違いますか。
  259. 中野賢一

    中野政府委員 お答えいたします。  本体という言葉がちょっと誤解を招いているかと思うのですが、CNPという農薬の除草の効果を発揮する物質があるわけでございますが、それを本体と言っているわけでございますが、そういったCNPという農薬、除草剤の中には、除草の効果を果たす物質と、そのほかに、いまいろいろ御指摘になっておりますダイオキシンとかそういったものが含まれているわけですね。  私どものテストは、CNP全体についてのテストをいたしておるわけでございます。ですから、私どもも、先生の御指摘になりました一・三・六・八であるとかそういった物質が入っておるということは確認いたしております。確認いたした結果、先ほどの、CNPについてそういうものも一切合財含めた全体についての安全テストを行いまして、それでその結論を出しておるわけでございます。
  260. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それじゃ、聞きますが、残留性ですね、CNPの残留性ではなく、ダイオキシンの残留性についてのデータというのはありますか。
  261. 中野賢一

    中野政府委員 お答えいたします・  一・三・六・八ダイオキシンの残留性について分析をいたしておりますが、たとえば五十七年の成績でございますが、四月に採取をいたしまして五、六と採取をいたしておりますが、最初は検出されておりません。これは田植えがまだ進んでいないということだと思うのですが、田植えが行われまして当然除草剤がまかれるわけでございます。その結果ふえまして、六月になりますともうほとんど消えておる、そういう結果が出ております。
  262. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そうなりますと、これは蓄積性の問題あるいは生物濃縮というような問題についても十分調査を進めていかなければいけないというふうに思うわけなんです。この点についてはどうなんですか。
  263. 中野賢一

    中野政府委員 一番蓄積される危険性といいますか、蓄積される機会が大きい生物といたしましては魚介類でございます。その魚介類のCNPにつきまして分析いたしておりますが、最初、もちろん取りこみの時期がございますので一時的に高くなりますが、その後急激に減少いたしておりまして、魚介類中の蓄積はほとんど心配ないという試験結果になっております。
  264. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、いたずらに不安をかき立てようと思ってこんなことを言っているのと違うのです。しかし、これは除草剤が使われてからもまだ余り年数がたっていませんね。これがいまこの時点、この瞬間においてそんなに大したことじゃないというようなことが仮にあったとしても、ここで使われた除草剤というのは、やがて私たちの環境の中にまた返ってくるのですよ。残留もするでしょうし、残留性というのは二十年だと言われておりますね。しかも、その残留する分量なんかでもこれはずいぶん多いというふうに指摘されていますよね。普通DDTや何かと比べても残留性は非常に高いというふうに言われています。しかも、その中で問題になっているダイオキシン、これはいまの時代はともかくとしても、後の世にずっと蓄積していくものですからね。そんなふうに簡単に何もかも大丈夫だということでこの問題を農水省が見過ごしていったら、これは子孫に大変な問題を残してくるんじゃないか。いままでだってそうでしょう。DDTなんて絶対だれもそんなものは危険なものだと思ってなかったですよ。一夜にしてあれは危険だったということで、それはもう使われなくなったと言われれば、何にも知らないで使っていたあのころの問題はどうなるのだろうというような不安が残ってくるでしょう。そういう点では、いま学者たちがしきりにダイオキシンの問題を取り上げ出した。そのことについても農水省はやはりきっちり答えていくべきじゃないかというふうに考えるわけなんです。どうなんでしょう。
  265. 中野賢一

    中野政府委員 御指摘の点でございますけれども、先ほど申し上げましたように、私ども、いままでのテストでございますと、CNPなり、まあダイオキシンでございますが、非常に分解が速いといいますか、わりと急激に濃度が減少するということは確認されておるわけでございます。ただいま御指摘ございましたように、水田等で河川水中にダイオキシンが入っているというような指摘もございますので、今後その散布されたCNPが土壌とかそういった生物相、環境の中でどういった動態をするのか、どういった動きをするのか追跡をしたいというふうに考えておりまして、五十九年度そういった予算も要求させていただいております。
  266. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 きょうは環境庁にもおいで願っていると思うのですが、いらっしゃいますね。  ちょっと議論が十分かみ合っていませんでしたからあれなんですが、御理解いただいたと思うのですね。私はあらゆる農薬の不純物を調べよ、試験せよと言っているわけじゃないのです。しかし、CNPの除草剤については非常に危険な物質であるダイオキシンを不純物として含んでいるんだ、実際そういうものが都衛研のデータで報告されている。そうである以上、ダイオキシンがきわめて危険であるということでは間違いがないのだから、一方でそういうデータがあるのだから、農水省としても、その本体でこの分析をしたから大丈夫だとCNP本体に解消してしまわないで、ちゃんとそのダイオキシンの問題についても分析を行うべきだということを申し上げているわけです。特に、何遍も言いますが、六塩化物なんというダイオキシンは非常に危険性が指摘されているわけですから、それ自体の毒性を十分調べるべきじゃないか、このことを申し上げているわけです。  その点について一点と、もう一つの点は、農水省の方は農薬の動態調査を行うということを言われましたので、それは大いに結構なことでやってもらいたいと思いますけれども、環境庁としても、この問題についてどう考え、どう取り組まれるのか、最後にお伺いをしておきたいわけです。
  267. 津田隆

    ○津田説明員 農薬の毒性評価につきましては、すべての不純物を含有しております原体で行っておりますので、CNPにつきましては一・三・六・八—四塩化ダイオキシン以外のダイオキシンなどの不純物につきましても、すべてを含めまして安全性が確保されている、このように考えておるわけでございます。  しかしながら、農薬に含まれます不純物の対策につきましては、環境汚染の防止の観点から重要な課題と考えております。したがいまして、知見の集積に努め専門家の意見も聞きたい、このように考えております。  もう一つのお尋ねでございますが、いまのことに関連いたしまして、五十九年度の予算といたしまして要求いたしておりますものの中に、農薬不純物の安全性確認試験法の確立調査というものがございます。不純物対策の重要性からこの対策に取り組みたい、このように考えております。
  268. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 それじゃ、今後のその予算の実現のために、ひとつ大臣も力を入れてください、落とさぬように。先ほどの追跡調査並びに環境庁の調査についても、ぜひ、この農薬というのはいま日本の農業でなくてはならない存在になってしまっている行けなんですが、しかし、それだけにまた大きな不安が一方で広がってきておりますので、そういうところはやはり政府が責任を持って対応していくべきだと思いますので、ひとつ今後力を入れていっていただきたいというふうに思うわけなんです。  続きまして、農産物交渉の問題についてお伺いをしていきたいと思うのです。先ほどからいろいろ御答弁を聞かせていただいておりますので、できるだけ重ねは外していきたいとは思うのですが、しかしそれにしても、やはり大臣に最初お伺いしておきたいのです。  昨年の十二月二十三日の衆議院の農水委員会においても、農畜水産物の輸入自由化反対の決議に対して再確認を求める要望に対し、大臣は、「輸入の拡大あるいは自由化へ移行する方針とかあるいは枠の拡大等についてはこれまで以上に強い姿勢で反対を押し切っていく、このように決意をいたしております」、そういうふうに決意を述べておられるわけです。これは三月三十日、ことしに変わりましてからも、やはり繰り返し「現時点では枠の拡大の必要はないこということを言っておられるわけですが、いまも枠の拡大をしないということをはっきり言っていただけますか。
  269. 金子岩三

    金子国務大臣 私のこの問題についての基本的な考え方は変わっていません。
  270. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 この枠の拡大の問題でいま問題になっているのは、オレンジの輸入の問題ですので、国内の柑橘、果物の関係で聞いていきますが、需要関係で聞きますが、一人当たりの年間の消費量は昭和五十年と比べてどういうふうになっているのか、果物全体とミカン、ナツミカン、その他柑橘類含めてどうなっているのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  271. 小島和義

    ○小島政府委員 柑橘全体の一人当たりの消費量、これは実は総理府の家計調査からのものでございますが、果実全体で、五十年が四十九・七キロ、五十七年が三十九・五キロ、七九%ぐらいに減少いたしております。それから、柑橘系で申しますと、この数値が二十四・八キロから十六・五キロ、大体六七%ぐらいの比率に相なっております。
  272. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 確実にというのでしょうか、完全に減少傾向にあることは大臣もお聞きいただいたと思うのですね。消費者としては、別に果物がまずくなったから食べぬようになったということではなしに、むしろ家計の事情からなかなか思うように消費ができないということの方が私は当たっていると思うのです。  続けて聞きますが、生産面ではどうなんでしょうか。生産面では過剰ぎみなんですよね。そして、コストの面では四十七年以降コスト割れがずっと続いているというふうに理解しておりますが、この点ではどうなんでしょうか。
  273. 小島和義

    ○小島政府委員 昨年の温州ミカンの生産量が二百八十六万トンだったと承知をしておりますが、値段の方は、その前年またその前々年に比べましても低い水準でございました。本年の場合は、八月の予想収穫量では三百十六万トンぐらいになるという数値が得られておりまして、これに対して、昨年の経験から見まして、手がたく消費量の方を積み上げますと二百七十万トンぐらいではないかというのが関係業界の大体一致した見方になっております。したがいまして、生産の面から見れば、特に温州ミカンの過剰という状態は、ことしの作柄もございますけれども依然として続いております。  また、御指摘のように、そういう需給事情を反映いたしまして、販売価格と生産費と対比をいたしますと、若干の例外年はございますが、おおむね毎年生産費の方が若干上回っておる、こういう状況が続いております。
  274. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そういうふうな中で、農水省としては、ことしは六月、七月に三十万トンの摘果をやられて、そしてさらに九月に入って三億円の助成をつけて十万トンの摘果をやっておられる。そして、来年度から三年間に一万ヘクタールの減反をしようということで、来年度で実に十六億六千五百万円という要求を出しておられる。こういうふうに減反までして生産調整をしていかなければならない状況、そういうふうに見ますと、需要も減少ぎみだし、それから生産農家の経営も苦しい状況にあり、そしてミカンは依然として過剰ぎみだ、こういうふうに言えると思うのですが、こういう状態は回復する見通しというのはあるのでしょうか。
  275. 小島和義

    ○小島政府委員 御指摘のございましたように、ミカンの消費の減退が家計上の理由に基づくものであるといたしますれば、将来家計支出が上向きに転ずるという場合にミカンの消費もまた上向くということが期待できるわけでございます。ただ、私ども心配をいたしておりますのは、昨今の果物の消費減退というのは、どちらかというと比較的値段の安い、したがってまた大量に消費されておりますミカンでございますとか、あるいはバナナでございますとか、そういうものにより顕著にあらわれておりまして、値段の安くない果物類については必ずしも消費減退が目に見えるほどはないということからいきますと、必ずしも家計の苦しさということだけが消費減退の理由なのであろうかどうかということについては、若干の疑問を持っておるわけでございます。したがいまして、もちろん、消費支出の増大というのは大変歓迎するところでございますが、生産の面におきましても、消費の動向に即応いたしました生産の転換なりあるいは品質の向上ということを心がけなければなりませんし、また、需要の総体に見合ったように供給の面でも絶対量を考えていく、こういう努力を続けなければならぬと思うわけでございます。いつまでもいまのような経営不振状況を続けていくというわけにはまいらぬ、かように考えております。
  276. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そういうことになりますと、いよいよもって枠拡大などというのはとても考えられない状況だ、常識的に言えば、わが国のミカンに対しても一万ヘクタールこれから減らそうか、十六億六千五百万円ものお金をかけて減らそうかという話の最中に、枠の拡大どころか枠を縮小するというのがむしろ常識の話になってくると思うわけなんですが、この点ではどうなんでしょうか。
  277. 小島和義

    ○小島政府委員 まず、現在行われておりますオレンジの輸入でございますが、五十七暦年の場合大体八万トンくらいでございます。そのうち六割ぐらいのものは六月、七月、八月と、いわゆる国産の柑橘類のほとんど出回りがない時期に輸入をされております。したがいまして、残りの九カ月で残りの四割ということでございますし、特にミカンの出回り期ということで輸入数量をながめてみますと、その量たるやきわめて微々たるものであると考えております。したがいまして、現在の輸入オレンジが国産の柑橘に大変な圧迫になっておるというふうには私ども考えてはおらないわけでございますが、おっしゃいますように、心情的には、国内のミカンの生産者がこんなに苦しい事態でございますから、輸入をふやす方を選ぶか減らす方を選ぶか、こういう御質問でございますれば、私どももちゅうちょなく減らす方を選ぶというふうにお答え申し上げるわけでございます。  しかしながら、現実の選択はそのようになまやさしいものではございませんで、先ほど来佐野局長からもお話がございますように、アメリカ側の基本的な主張はやはり自由化であるということは明々白々でございまして、輸入の自由化なり枠拡大の問題について、あくまで火の玉になって突っ張って玉砕をしてしまうという選択をするのか、それとも何か現実的な解決策を探るのか、こういう選択でございますれば、後者の選択ということも十分あり得るわけでございます。過去において東京ラウンドの合意に達しましたのも、そういう大変苦しい中での選択であったと御理解いただければ幸いでございます。
  278. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そこで、大臣にお伺いしたいのですが、先ほどからずっといろいろ御発言がありました。佐野局長は、先方との約束があるので、アメリカ側の提案で出てきた内容については公表できないということでございましたね。大臣は、アメリカの提案が受諾し得ないものであったことは事実だ、途方もないことを言っているのでお話にならない、アメリカは非常に強い姿勢であった、しかしながら、来年の三月までには何とか決着をつけていこうと思っている、こういうことを御発言されていたと思うのですが、来年の三月までに決着というその決着ですね。先ほどから聞いていただいていて、具体的に御理解をいただきたいと思ってお尋ねをしていたのですが、とっても余裕がないという状態の中で、一体、私はどんな目鼻をつけられるのかなというふうに考えるわけです。  もう一つは、全中の会長の要請ですね。これに対して大臣は、日米交渉の促進は日本のためになる、しかし、対米譲歩案の具体的内容は党——自民党のことだと思いますが、党と農業団体に相談をする、こういうふうにあるわけですが、私は、農業団体が一番納得する線はこれ以上枠を拡大しないことだと思いますが、一体どういう相談をされようとしているのか。私は、もう一歩も譲れないなというふうに思えるわけです。ところが、大臣は、やはり来年の三月までに決着つけて目鼻をつける、どんな目鼻をつけられるのか、こういうふうに思っておりますので、その点お尋ねしたいわけです。
  279. 金子岩三

    金子国務大臣 基本的な私の考え方は、やはり枠拡大も一歩も譲らないという考え方で、レーガンさんが見える前にひとつ目鼻をつけたい、こういうことで発足しましたけれども、いまの模様ではつきそうもない。だとすれば、東京ラウンドの日限が切れる三月いっぱいまでには結論が出るでしょう。その結論はどういうふうに目鼻をつけるのかと申しますと、やはり日本の柑橘生産の状況、畜産農家の状況等をアメリカに理解してもらって、無理を言わないように、日本の農業に悪影響を及ぼさないようにその時点まで理解を求めることを決着の時点、このようにお考えいただきたいと思います。
  280. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 アメリカに理解をしてもらって、日本の農業に悪影響を及ぼさないそういう決着をつけるということは、私は重ねて申しますが、それは結局、もうこれ以上枠を拡大しないということ以外に道はなかろうな、だとすればどうして、何か思わせぶりなことを言って、検討するとか、専門家の間で十分検討してもらうんだとか、この問題に誠意をもって取り組むんだとかという繰り返しの言葉を言われないで、いま日本の現状からしてはどうにもならないんですよ、これ以上どうにもならないんですということで、はっきり言われないのだろうか、こういうふうに思わざるを得ないわけですね。私は農林水産大臣だと言われながら、一方では中曽根内閣の一員でもあるんだ、こういうふうになれば、中曽根内閣の一員である外務大臣だとかあるいは通産大臣だとかは全く反対の意見があって、そういう中で非常に苦慮しておられるということで、最後の決着はやはり政治決着ということで、中曽根さんのそういう政治決着にゆだねるということになるのかなという点では、大臣の「枠拡大はしない」、そのことそれ自身は私は大変結構なことだと思うのですが、そういう発言をされながら、一方でそういうふうな状態があるわけですから、やはりここらあたりではもう毅然としたことを言う方が、相手もすっきりしていいんじゃないですか。何か余り思わせぶりなことを言わないで、すっきりした方が私はいいと思うのですが。
  281. 金子岩三

    金子国務大臣 藤田さんのような立場でこの問題で発言をする場合は一本調子でいいと思いますけれども、昔から座を見て法を説け、ごうよく言っておりますから、やはりその場その場でひとつ皆さんを説得するためにはいろいろな言葉のあやが必要じゃないでしょうか。ただ、私の基本的な考え方は微動だもしていないということをひとつ御信頼いただきたいと思います。
  282. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間がだんだんなくなってきましたので、自由化の問題に関連して、いま大豆の問題が大変なことになろうとしているわけです。日本の農業がいかにこの自由化によって破壊されてきたかということを示しているのが大豆だというふうに私は思うわけです。しかも、大豆というのはいまアメリカからの輸入にほとんど頼っているというような状態の中で、ことしはアメリカの熱波の被害で平年よりも三三%減収だという状態が出てまいりました。これで大豆の供給は心配ないのか。九月十六日の第五回日米農産物会合は、アメリカ側は安定供給を確約したと報道されておりますが、これだけで供給面の心配はないのか、判断をどういうふうにされておられるのか、まずそこからお聞きしたいのです。
  283. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 御案内のように、一九八三年産の米国産大豆が前年産に比べまして三三%の減産ということでございますが、前年産の大豆の在庫が過去最高の水準にあるということもございまして、先般の日米農産物会合におきまして、アメリカ側は、供給には不安はないということ、さらに、かつて十年前にやったような輸出規制、これはしないということを確約いたしております。  また、特に食用大豆につきましては中国産が大事でございまして、これにつきましては、ことしは去年に比べまして約三倍の輸入が見込まれます。輸入なり輸入成約も順調に進んでおりますので、私どもは供給には不安はない、かように考えております。
  284. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 そういうふうに不安はないと言い切られることだけで、そうですかと言うわけには必ずしもいかないのですが、時間がもう残されておりませんから、その供給面の心配はないといっても価格の面でどうなんでしょうか。この間、農水省から資料をいただきましたけれども、その資料を見ましても、五、六、七月までは大体横ばいなんですね。ところが、八月になったら七・六%ばっと上がりまして、九月には二五%さらに上がっております。こういうふうに大豆値はもうすでに上昇していっているわけなんです。需給バランスから考えても今後さらに上昇していくだろうということは、これはアメリカ側の価格動向に対する判断を聞いても、年間ベースで大体五〇%から七〇%くらい農家の手取りはふえるだろう、渡される大豆値はふえるだろうというふうに言われております。  もうすでに私のところでも、豆腐屋さんから訴えがあって、いろいろ調査してみましたが、大阪では一俵六十キログラムで七月ごろまでは大体五千円だった。それが中旬に入りましたら、入荷のたびに二百円、三百円と上がっていきまして、九月の二十日ごろで六千七百円。きのうは七千百円に上がっているというんですね。どんどんどんどん上昇しているんです。大豆油も一斗缶でいま四千円ですから、これは普通のときの価格に比べたらずいぶん上がっていると思うのです。  さらに問題なのは、売り惜しみとは、そんなに強く言いませんけれども、じゃなかろうかというような傾向が出てまいりました。注文をしましても、いままでの三分の一くらいしか持ってきてくれないというような状況が出てまいりました。こういうのを聞くと、十年前の四十八年当時のあのころのことを思い出さずにはいられなくなるわけです。そういう点では、私はいま農水省は本当に強力な指導に取り組んでいくべきだというふうに思いますが、この点ではどうされておりますか。
  285. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 価格につきまして、アメリカの相場、シカゴ相場に応じまして日本の価格が上がるということはやむを得ないと考えます。ただしこの場合に、いまおっしゃいましたような便乗値上げあるいは売り惜しみというようなことは万々あってはいけないと考えております。売り惜しみという点につきましてはなかなか判定がむずかしい場合がありまして、問屋さんといたしましては、一定の価格で仕入れる、それに一定のマージンで売るということになるわけでございますが、そういう大豆の量以上にもっと豆腐屋さんがくれ、こう言われたときに、いや、それはちょっといまありませんというような場合は売り惜しみとは言えないのかもしれませんが、そういう一定価格の量の物があるのに、いや、嫌です、売りませんというのは、これは売り惜しみというのかつり上げというのかよくわかりませんが、その辺の判定はむずかしいわけでありますけれども、いわゆる売り惜しみあるいは便乗値上げがいやしくもないように、今後関係業界を指導してまいりたいと存じております。
  286. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 大豆の問題一つ見ましても、昭和二十年代の後半は四十三万ヘクタールで大豆がつくられていたんです、大臣。それがいまでは十五ヘクタールに減ってしまっているわけですね。このようになったのは、もちろん自由化によってどんどん自給率が低下していってこういうことになって、そして、隣のアメリカの方でこういう熱波という問題が起こったらもうすぐ不安が広がる、こういうふうな状態が私は自由化の——そしていまこの時点で、それじゃ大豆を自給率を高めて早くそういう心配がないようにしようかといったって、現実問題としてはどうにもならないわけですからね。もちろん今後は、やはりこういうふうな問題が起こったときに大きく不安が広がることのないように、自給率をどんどん高めていく努力をしなければいかぬというのが、今回のこの大豆の問題で非常に教えられていると私は思うのです。この点について……。  それから、先ほどから御答弁ありましたが、ゆめゆめ売り惜しみだとかあるいは値のつり上げたとかのないように、農水省としても本腰を据えて取り組んでいくというその御決意のほどをお伺いして終わりたいと思うのです。  済みません、時間がなくなりましたので、労働省の方、せっかくおいでをいただきましたのに、恐縮です。  それでは大臣、お願いいたします。
  287. 金子岩三

    金子国務大臣 藤田さんのおっしゃることよく。わかります。大豆のシカゴで値上がりしておるのがまだ入ってきてないからそのままですけれども、その荷物が、高くなったものが入ってくれば多少値上がりするでしょうが、まあ大豆の値上がりで豆腐一丁に対して大体何%、納豆に何%影響があるか、こういういろいろ試算を見ると、そう大した日常の食生活への影響はないようで、あんまり御心配なさらぬ方がいいのじゃないか、それほどの影響はないように考えます。  それから、大豆の自給率の問題ですが、どうも大豆をつくりたがらないのですね。いわゆる六十万ヘクタールの転作作物の中にやはり大豆を盛んに奨励しておるけれども、なかなか伸びない。この間、佐賀に選挙のときに行きましたが、ここは非常に大豆の生産が伸びておるわけですね。やっぱりたんぽを畑作にするというのが大変困難なところで大豆の伸びが悪いのじゃないかな、こう思うのですが、私どもはやはり足りないものを何とかしてひとつ自給率を高めようとしておるのですから、転作作物の六十万ヘクタールを、もう小麦は三〇%、四〇%といったのが、大体ごとしは百十五万トンぐらい出ますから、相当小麦は生産が伸びます。大豆は遅々として伸びがおくれているということですから、今後ひとつ、その足りないものを全力を挙げて転作に定着させるように強い指導をいたしたい。(藤由(ス)委員価格問題」と呼ぶ)  便乗値上げですか。流通局長にちゃんと強い指導をするように指示しておきますから。
  288. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間が参りましたので、終わります。
  289. 古屋亨

    古屋委員長 次回は、来る十月六日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十五分散会