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1983-08-09 第99回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年八月九日(火曜日)    午前十時四分開会     ─────────────    委員異動  七月二十七日     辞任         補欠選任      内藤  功君     小笠原貞子君  七月三十日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     内藤  功君  八月八日     辞任         補欠選任      柄谷 道一君     伊藤 郁男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 小野  明君                 野坂 昭如君     委 員                 岡田  広君                 源田  実君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 穐山  篤君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君    説明員        内閣法制局長官  茂串  俊君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        任用局審議官   加藤 和夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総理府人事局長  藤井 良二君        警察庁警備局審        議官       大高 時男君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛施設庁長官  塩田  章君        文化庁文化部宗        務課長      大家 重夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査  (一般職職員給与についての報告及びその改定についての勧告に関する件)  (内閣総理大臣及び国務大臣の靖国神社参拝問題に関する件)  (金大中氏事件に関する件)  (日米防衛首脳協議に関する件)  (F16の三沢基地配備に関する件)  (自衛官の停年制延長問題に関する件等)     ─────────────
  2. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会開会いたします。  議事に先立ち、本日は長崎の原爆被災の日に当たりますので、被爆犠牲者に対し慎んで御冥福をお祈り申し上げ、黙祷をささげたいと思います。  御起立をお願いします。黙祷。    〔総員起立黙祷
  3. 高平公友

    委員長高平公友君) 黙祷を終わります。御着席ください。     ─────────────
  4. 高平公友

    委員長高平公友君) 委員異動について御報告いたします。  昨八日、柄谷道一君が委員辞任され、その補欠として伊藤郁男君が選任されました。     ─────────────
  5. 高平公友

    委員長高平公友君) 国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査を議題といたします。  まず、一般職職員給与についての報告及びその改定についての勧告に関し、人事院から説明を聴取いたします。藤井人事院総裁
  6. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 去る五日に、本年度国家公務員給与に関する勧告国会及び内閣に対して提出をいたしました。本日の当委員会で、早速その内容について御聴取いただく機会をお与えくださいましたことに、心から感謝を申し上げる次第でございます。  お手元に御配付を申し上げておる一件資料の中で、「給与勧告骨子」という一枚の印刷物がございます。これに給与勧告内容の概要を記載いたしておりますので、これが一番わかりやすいことだと思いますので、私からこれに沿いまして概略の御説明を申し上げさしていただきたいと思います。  まず、本年の官民較差でございますが、これは金額にいたしまして一万五千二百三十円で、パーセントにして六・四七ということに相なったわけでございます。  ちなみに、較差の内訳を申しますと、いわゆる本較差、すなわち本院の職員調査に参りました時点においてすでに春闘についての妥結が行われて、四月分の給与からベースアップ分が加味されて支払われておるというところでございますが、これの分が六・一二%でございます。それから遡及改定分というものがございまして、これが〇・三五。これは御承知でございますように、調査に参りました職員調査をいたしましたところ、四月分にさかのぼって給与改定するということは決まってはおるけれども、まだ現実給与支給をやっていないというところの事業所でございます。その分もこれは無視できないということで、従来から一定の方式に従って算定をいたしました結果をこの較差に入れております。これが〇・三五でございまして、合わせて六・四七ということになるわけであります。  ちなみに、昨年勧告をいたしました率は四・五八%でございましたので、ただ単に算術的にこの差額を出しますと一・八九ということに相なるわけでございます。いわば実質的にはこれが今年の春闘分を反映したものということに相なるわけでございます。  これの配分をどうしたかということでございますが、当然、幅も狭いことでございますので、俸給表改定とそれから生活給的な諸手当ということに重点を置いて配分をいたしました。その結果、俸給表改定では五・四九%、諸手当では〇 ・六七%。それからはね返り分というものがございます。これは俸給が上がれば当然それを基礎にして改定をされてくる手当調整額その他がございますので、このはね返り分が〇・三一ということになりまして、配分をいたしたような次第でございます。  なお、そこに括弧書きで書いてございますように、行政職(一)について見ますと、昨年の給与が額にいたしまして二十三万三千七百三十八円でございましたのが、本年の場合は二十三万五千二百九十七円ということで大差はございません。これは去年の勧告が見送られた結果、若干の昇給その他が加味されてこの程度の差となってあらわれておる、ほとんど現状と変わりがないという結果が出ております。平均年齢も四十一・二歳で、これは去年とことしと全然変わっておりません。私たちが一ころ心配をいたしておりましたのと違って、各省庁ともそれなり努力をしている結果だと思いますが、新陳代謝がかなり順調に推移している結果ではないかというふうに見ております。  改定内容について簡略に御説明申しますと、第一は俸給表でございます。俸給表は、初任給高校卒が五千七百円アップ大学卒が六千七百円アップということにいたしております。一ころ初任給が大変高くなった時代がございましたが、ここ数年は余りに初任給が高過ぎるというような傾向で抑えぎみに推移をしてまいりましたことは御承知のとおりでありますが、ここ一、二年の傾向を見ますと、またごくわずかですが若干上がりぎみということに相なっておりまして、ことしの場合、高校大学卒ともに六・六%という比率の上昇に相なっております。  俸給表全般配分傾向でございますが、ことしの場合も、民間をよく調べてまいりましたところ、幅が非常に狭いこともございまして、ほとんど上下相違がない、ほとんど均等配分的な傾向が強く出ております。その中であえて見れば、やはりどうしても世帯形成層あるいは中堅層というものに若干の重点を置いておるという傾向が認められます。公務員の場合も当然そうでございまして、なかんずく世帯形成層中堅層というものについては、従来からわれわれも努力をしてまいりましたが、やややはりひずみを受けておるというような点がございますので、その点漸次改善をしてまいってきておるのでありますが、ことしの場合も枠がございますので十分なことはできませんけれども、それでも最高六・八%というような率を出すことによってここに重点を置く傾向をとったわけでございます。  その他の各俸給表平均引き上げ率は大体六・四%程度でございます。  それからもう一つの点は、指定職俸給表、いわゆる各省の局長さん等に適用される俸給表でございますが、これは民間との対比におきましては大変差が広がってまいりまして、ことしの場合で言えばその差は三〇%を超えるというようなことまでになっております。ただ、この点につきましてはわれわれも大変苦慮はいたしておるわけでございますが、全体としてこういう幅の時期でもございますので、上の方だけをここで急に上げるというわけにもまいりません。そういうことで、やはり六・四%ということで行政職給与改善率と同じことにしたいと考えております。この結果、一番指定職で高い俸給を受けますのが東京大学と京都大学の学長でありますが、これが現行九十二万円が六万円アップの九十八万円、それから次官が現在九十万円でありますものを五万八千円上げて九十五万八千円ということにいたしたいということでございます。  それから手当については、扶養手当通勤手当住居手当等について若干の配慮をいたしております。  なかんずく扶養手当というのは、これは生活給的なものの一番中心でございますから、重点的な改善を図ることにいたしました。配偶者については一万二千円から千円アップの一万三千円、それからそのほかの扶養者、その中心子供さんですが、子供さんについては、二人までは三千五百円を一千円上げて四千五百円ということを中心改正をいたしております。  通勤手当につきましても、先般の改正以来運賃の引き上げ等のことがございますので、それは対応する措置を講ずることにいたしております。  なお、医師初任給調整手当というものは(4)に書いてございますが、これはお医者さんについては従来非常に採用難でございまして、なかんずく離島あるいは僻地等の病院とか診療所等につきましては大変医師を確保することが困難な事態が続いております。その後、厚生省その他の対策でお医者さんの数は毎年相当程度ふえておりまして、そういう事情は漸次改善されつつあるとは思いますけれども、なお急にはそのことは実現はむずかしいことでございまして、ことしの調査の結果でもやはり民間のお医者さんの給与というものは相当高目に出ております。そういうことに対応いたしまして、公務員の場合は医師初任給調整手当ということでカバーをしておるわけでございます。これは公務部内においては一定のそれぞれの職種との間の均衡がございます。そういうことで、俸給表一本でこの措置をするということはとうていできません。それと、俸給表で上げますと、そのこと自体が直ちに退職手当なり退職年金にはね返るというようなことでございますので、そこに限界がございます。したがって、本俸本俸としてある程度考慮はいたしますけれども、それと並行して初任給調整手当でもってカバーをしておるというのが現状でございますが、ことしもやはりそれに照応いたしまして、最高離島等については一万五千円のアップをいたすことにお願いをしておるわけでございます。  それから特別給、賞与でございますが、これは民間の実態を調査いたしましたところ、ちょうど公務四・九カ月分に相応する四・九〇でございましたので、これは据え置きということでございます。ただし、支給日については公務員の方が民間と比べてやや早いということがございまして、この点が従来も問題になっておったこともございますので、この際支給日について夏の分は十五日繰り下げて六月十五日を六月三十日、冬の十二月五日を十二月十日ということにそれぞれ改定をいたしたいと思っておりますが、これは急にやるわけにもまいりません。それぞれ準備期間が要りますので、五十九年度から変更をいたしたいと思っております。  これらを内容といたしまする勧告は、当然本年の四月一日にさかのぼって実施をしていただきたいということでございます。  なお、勧告実施について昨年凍結というような事態がございましたので、人事院といたしましてはこの際やはり強く勧告実施を御要請申し上げるということについて強調をいたしておるわけでありますが、その骨子は、要するに見送りによって職員士気の問題なりあるいは現実生活等への影響というものをこれは無視することはできない、さらに仲裁裁定の対象になりまする四現業については昨年についても実施をされておるというような事態があって、それとの均衡を図ってまいらなけりゃならぬ、それを無視することはとうてい許されないということがございます。それと、何よりもわれわれが一番心配をいたしておりますのは、国会その他の大変な御努力で長年不完全実施であった勧告完全実施をされるということになりまして十年を経過するというような事態がありまして、これを踏まえて公務員労使関係というものはまずはきわめて安定した良好な関係を保って推移してまいっておるというふうに考えております。ところが、このような去年からの事態、あるいはその前二、三年続いておりますが、抑制あるいは凍結というような事態が続くようなことになりますと、せっかくのそういう安定した労使関係というものに大変な影響を与えてくることを心配いたしております。そういうようなことから、ぜひ本年度の場合は勧告の速やかな実施をしていただきたいということを強く要請いたしておるのであります。  それから最後に、人事行政改善の諸施策という ものでございまして、これは三年前からこの勧告の場合に報告として打ち出しております。と申しますのは、現在の公務員制度制度としては大変すぐれた制度でありまして、戦後三十年にわたって定着をし、それなり運営をされて良好な成績を上げてきておると思います。ただ、その後の社会経済の変化というものはきわめて顕著なものがございまして、なかんずく高年齢化現象あるいは高学歴化現象というものについてはこれは放置しがたい状況がございます。これに対応する公務員制度全般の見直しを図っていく必要があるのではないかということで鋭意検討を進めてまいっておりました。  大体、任用給与、研修、その他公務員制度各般にわたって具体的な施策についての改善施策の方向がまとまってまいりましたので、本年の場合は従来よりもさらに一歩前進した形で提案をいたしまして、今後もこの提案に基づいて関係各方面ともさらに案を練り、国民意見等も十分に参酌をいたしまして、結論が出れば漸次勧告なりあるいは意見の申し出なりという措置を講じていきたいというふうに考えております。  私といたしましては、ちょうど昭和六十年に定年制実施されますので、その時期にでき得るならばスタートラインを並べてというふうに実は考えておるわけであります。ただ、物事によってはそう簡単にいくものでもございませんし、必ずしも全部が全部そのときにスタートラインにつかせなければならぬというものでもございませんので、その点は慎重に順序、手段等を勘案しながら漸次改善措置施策を打ち出してまいりたい、かように考えておるところでございます。  以上、ごく簡単でございますが、本年度勧告内容について御説明を申し上げました。
  7. 高平公友

    委員長高平公友君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 野田哲

    野田哲君 ただいま藤井人事院総裁から今回の勧告についての内容説明人事院としての考え方報告があったわけですが、重ねて私は今回の勧告を行うに当たっての人事院総裁としての所見を伺いたいと思います。  といいますのは、昨年の人事院勧告見送りになっている。それだけに、いま報告のあった今回の勧告取り扱いのいかんによっては、人事院勧告制度公務員制度の根幹をも揺るがしかねないというような重要な意味を持っているのではないかというふうに考えられるわけであります。さらにまた、昨年政府人事院勧告見送りという異例の措置をとった。そのことについて、公務員関係組合側からの提訴によって、ILOの場でも国際的にこの問題が取り上げられている。このILOの指摘に対しても、本年は日本政府として具体的な事実をもってこたえなければならない、こういうことが迫られていると思うわけであります。それだけにまた、勧告をめぐっての国民の関心も非常に強いわけであります。  そこで、今回の勧告を行うに当たって、問題は、この勧告政府国会でどう取り扱われるか、これは非常に重要な課題になっていると思うわけであります。そういう意味で、人事院総裁あるいは人事院関係者は、例年の勧告以上に、異なったといいますか、非常に強い所信を持って臨まれたのではないかというふうに思うわけであります。勧告総理に手渡されたときの総裁記者会見も、断片的ではありますが、私もテレビを通じて拝見をいたしましたけれども原則ということを非常に強調されていたわけであります。この原則ということを非常に強調されている藤井人事院総裁のまず基本的な所信を伺いたいと思います。
  9. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 皆さんお詳しい方ばかりですのでくどくどしいことは申し上げませんが、いま所信ということでございますので、端的に私の考え方を申し上げさしていただきたいと思います。  申すまでもないことでありますが、公務員というのは、行政執行あるいは予算の執行を行うということをその主たる使命といたしております。したがいまして、その執行というものは、あくまで客観的で公正で能率的でなければならぬということを要請されるわけであります。したがって、公務員というものは、その職責上、厳正な服務というものが法律上も要請されております。なかんずく基本的な労働基本権というものについても、公務員の特質からいって制限されざるを得ないというたてまえに立っておるわけであります。  しかし、公務員といえどもこれは勤労者にほかなりません。生活をしなければならぬ。もっとさらに言えば、公務員であればこそ、本当に職務に専念して意欲を持って働くという高い士気がなければならぬと考えております。それだけに公務員についてはその利益を保護してあげなければならない。労働基本権が制約されて、ございませんから、その代償措置としてこれの利益を保護するという立場をとるところがどこかになきゃならぬというところから、公務員制度自体の中で最も基本的な中心機関として人事院が設けられたというふうに考えておるわけであります。  したがって、人事院はそういう立場に立って、公正そして能率的な運営を図るということが終局の目的ではございますが、それだけに職員についてやはり人並みの勤務条件を確保して、安んじて公務員生活できる、士気を高揚して国政の運営に当たる、そういう保障を講じなければならぬ、これが人事院の私は第一義的な使命であると思っております。  その勤務条件保障の中で何といっても一番大事なのは、現在のところ、また従来もそうでございましたが、給与でございます。給与については、これは民間についても春闘ということが、いいか悪いかはこれは別として、長い間一つの定着した慣行となって今日まで来ておるわけであります。それによって民間給与が変動するということになれば、その変動に応じた措置公務員についても考えていくというのはこれは当然でございますが、そのことを国家公務員法上では情勢適応原則と大きな一つの指標を掲げてこれをうたっておるところでございます。その原則に従いまして人事院といたしましては、給与についていままで毎年一回調査をし、民間との均衡を図って、そこに較差があればその較差は埋めていただきたいということで御勧告を申し上げて今日まで来ておるわけであります。  ところが、財政状況の大変厳しいという現実は、私といえども無論よく承知はいたしております。おりますが、しかしそれだからといって公務員勤務条件について放置をすることはできない。そういうことであれば、これは制度的に労働基本権の制約その他の根拠を失うわけであります。そういう意味から、私は去年のたとえば見送り凍結の問題は大変遺憾であるということを、国会等においてもそれぞれ先生方の御質問に対して繰り返し繰り返し申し上げてきたところでございます。  そういう見地から、ことしについても当然のことながら官民較差というものが出てまいりましたので、ぜひこれは勧告どおり実施をしていただきたいということを強く要請するという態度をとっておるわけでありまして、これからいろいろむずかしい局面もあると思いますけれども、私といたしましては、やはり原則論に立って強く完全実施を御要請してまいるという態度を貫きたいと思っております。
  10. 野田哲

    野田哲君 官房長官に御出席をいただきました。いろいろ時間の御都合もあるようですから、問題は前後いたしますけれども官房長官に幾つか問題を集中的に伺いたいと思うんです。  ただいま人事院総裁から、去る八月五日に政府国会に対して行われた人事院勧告内容説明人事院総裁としてのこれについての所信を伺ったところでありますが、これからこの問題を議論してまいるということになりますと、国会がいつごろどういう形で開会をされるのか、それからそれへ向けて政府はどういう手順でこの人事院勧告取り扱い協議され決定されていくのか、こ このところが、昨年の経緯もありますので、非常に重要になってくるわけであります。  まず、国会の問題でありますが、私も参議院の議院運営委員会の理事を務めているんですが、その方にはまだ具体的な話はありませんが、新聞報道等を見ると、九月八日に召集されるやの報道もされておりますし、どういう形で今度の秋の臨時国会運営されていくか、こういう点についてもまだ私ども協議はしておりませんが、どうも総理は、最近この問題については少し情緒不安定なような発言が大分あるようです。  それは、十一月に外国から、アメリカ、中国、西ドイツという日本にとっては非常にかかわりの深いこれらの国々の元首がお見えになる。これらの元首に対して国会で演説をしていただくのだというようなことが総理の口から報道されたり、あるいはそのことと国会の解散とはこれは関係はないのだと、こういう発言がまた総理の方からされたり、いろいろ国会協議をされて決まっていく事柄について、どうも最近は総理がどんどん発言をされる。  こういうことで、私どもも一体これはどういうことなのかと思っているんですが、官房長官に伺いたいのは、いつごろどういう形で国会召集を考えておられるのか、まず、その点を第一に伺いたいと思います。
  11. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 秋口国会召集さしていただきたいという気持ちは持っておるわけでございます。  と言いますのは、御案内のように、この内閣行政改革という重大な仕事があるわけでございまして、ポスト臨調組織である行革審からも行政改革を迅速に進めろ、こういう御提言もあり、いまその準備作業に鋭意政府としては取り組んでいるわけでございます。  そういったことを考えまして、でき得るならば、国会召集政府がとり行うわけでございますから、秋口には開かさしていただきたいと思っておるのですが、何せ、このことは国会等とも十分話し合いをさしていただかなければなりませんので、まだお話しのように九月の八日に国会召集するといったようなことは決めていないというのが実情でございますが、秋口に何とか開会さしていただきたいという気持ちは、いま言ったような行革という仕事がありますので考えておる、これが現在の事情でございます。
  12. 野田哲

    野田哲君 そこで、秋口と言えば大体九月前半ぐらいだろうと思うんですが、秋口国会召集されるということになりますと、当然、いま説明のありました人事院勧告について政府が昨年来の経緯を踏まえてどう取り扱うのか、私はもうこれは議論の余地はない、完全実施ということで臨時国会の冒頭に必要な予算措置と法案を出されるべきだ、こういうふうに思っているわけですが、昨年のとともこれあり、政府としてどういう手順でいつごろこの問題を最終的に決定をされるのか、まず、その腹づもりを伺っておきたいと思います。
  13. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 去る五日に、人事院総裁から五十八年度公務員給与についての勧告政府としてはちょうだいをしたわけでございます。即日、給与関係閣僚会議を開きまして、その内容説明をし、今後の対応等についていろいろ論議をいたしましたけれども、何せ、御案内のような人事院立場はこれはもう当然のことでございます。そしてまた、昨年の凍結というものが異例の措置であるということもしばしば国会でお答えしておるとおりでございますが、人事院のこの勧告制度を一方において政府としては尊重をする、これもまたはっきりしておるのでございますが、同時にまた、この勧告はやはり国政全般との関連の中で考えなきゃならぬ。こういったことで、第一回の関係閣僚会議では各大臣からいろいろ御意見が出ましたが、結論を得るに至らなかったというのが実情でございます。  私どもとしては、何回も関係閣僚会議を開きまして早く結論を出したいと、こう思っておりますが、今日の厳しい状況のもと、しかも行革審からは一方で国民世論の動向を踏まえて抑制すべしといったようなこともある。人事院からは、当然のことながら完全実施をすべしと、こういったような御議論も出ておる。こういうようなことで、なかなか閣僚の意見を一致させるのには相当な時間を必要とするのではなかろうか。しかし、私どもとしては鋭意関係閣僚会議を何回でも結論を得るまで開いて、そして何とか早く結論を出したい。  ただ、第一回の閣僚会議で、私から、いずれにせよ、閣僚いろいろ御意見はあろうけれども、しかし少なくとも、ことしの国会でお答えをしてあるように、二年連続の凍結はあり得ないということだけは御確認を願って、そして今後早急に詰めていこう、こういうことで散会をしたということでございます。できるだけ早くやりたいと、かように考えております。
  14. 野田哲

    野田哲君 そこで、その手順をできるだけ早く決めていきたい、二年続けての凍結はあり得ない、ここまでいまお話があったわけですが、昨年の経過を振り返ってみますと、これは官房長官と総務長官それぞれ見解を聞かしていただきたいのですが、ILO日本政府を相手とする苦情の申し立てを関係の組合が行っているわけです。  これに対するILOに提出された日本政府の見解を見ると、昨年の閣議決定が九月二十四日に行われた、その前の九月二十日に給与関係閣僚会議が開かれて、そこで実質的に見送りという決定が行われているわけですが、政府はこういうふうに言っています。「この閣議決定に至るまでに関係大臣等は、関係労働団体と度々会見し、未曾有の危機的な財政事情について説明する一方、関係労働団体の意見を聞いている。」、こういうふうに述べておられるわけです。そして、「さらに、内閣総理大臣は、」「十月四日、自ら関係労働団体と会見し、今回の措置について理解と協力を求めた。」、こう述べておられるわけです。ILOへの報告では、関係の大臣が公務員関係の労働組合に対してたびたび会って政府考え方説明して協力を求めた、こういうふうに述べているんですが、これは前の鈴木内閣の当時のことですが、これは私はちょっと事実と違うと思うんです。  それはなぜかと言えば、関係大臣と公務員関係の労働組合の人たちと会うときには私がそれをセットしていたわけですから、この間のいきさつはよく知っているんです。どういう実情であったかといいますと、確かに前の総務長官の田邉さん、それから労働大臣であった初村さんはたびたび会っています。ところが、この田邉総務長官や初村労働大臣というのは、これは公務員の労働組合に対して完全実施すべきだということで閣内では強力に自分は意見を述べると、こういう立場を主張されて、見送り論、凍結論なんというのは全然総務長官や労働大臣は答えておられないんです。そして閣内では見送り論の中心になったのは官房長官であり、大蔵大臣であり、いまの総理がそのときの行政管理庁長官であったわけです。凍結論を主張する閣僚は全然会っていないんです。実施論を主張する人たちだけが会って期待を持たせているわけでありますから、その会い方というのは、これは悪徳不動産業者の誇大宣伝のようなものであって、期待だけ持たせて実際はほかのことを決めているんです。こういう会い方は僕は誠意を持った会い方とは言えないと思うんです。  だから、そういう昨年の経緯から見て、官房長官、総務長官がやはり直接の当事者でありますから、総務長官が公務員の問題についての担当大臣であり、官房長官給与関係閣僚会議の座長といいますか取りまとめ役をされているわけでありますから、私は、政府の決定をする責任のある方針についてやはり関係公務員の組合とよく話し合う、こういうことでなければ誠意を持って対応したとは言えないと思うんです。そういう考え方でこれから関係の労働団体と対応されるお考えがあるかどうか、官房長官と総務長官から考え方を聞かしていただきたいと思うんです。
  15. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 鈴木内閣当時のお話で、去年の会い方は少しおかしいではないか、こういう御質問でございますが、給与担当の公務員関係はこれは総務長官でございますから、私が承知しておるのは、総務長官がお会いをし、その前に、それぞれの局長もおりますから、しばしばお会いをしておったということは承知をしております。ただ、その方々は実施すべしということであったにかかわらず、ああいう決定になって、そのときには官房長官は会うておらぬではないか、こういうことでございますが、前内閣のときは前内閣として私はそれぞれの手続を踏んでお会いしておったと、こう思います。  といいますのは、官房長官というのは、御案内のように内閣のこれは調整役なんです。別段、官房長官が決定するわけでもない。ところが、こういった給与問題は御案内のように大変厄介な問題にいまはなっておりますから、そうすると当然閣内でいろんな意見が出る。そうすれば、それを官房長官は調整役として取りまとめに回るというだけで、直接の掌ではありません。  しかし、私は野田さんにだってよく会っているじゃないですか。これからだって会いますから、私はスケジュールの許す限りお会いをさしていただきます。もちろん、いわゆる団体交渉といったようなことであるならばこれはお断り、しかしながら、そうでなしに公務員組合の方の意見を十分聞けということであるならば私はお会いしますから、そのことをここで申し上げたいと、こう思います。
  16. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) ただいま官房長官からこの件についてお考えをお述べいただきましたが、またお約束もしていただきましたが、先ほど先生のお話を聞いて、ごあっせんいただいて、いろいろと組合の方との折衝と申しましょうか、話し合いはずいぶんやってきていただいたように記録は出ております。  しかし、内容的に十分話し合いが、いまお話を聞いてみると、できていなかったということでございますから、先ほど官房長官からもお答えがございましたように、私は給与を担当する大臣として、こんなによくなっておりまするこの安定した労使関係の維持また確保のためには、先生の御指摘のありましたように、また官房長官の言われましたように、できるだけまた御発言いただいて、方々と話し合っていきたい、かように考えております。
  17. 野田哲

    野田哲君 官房長官の時間が限られておりますので、これまた全然別の問題で官房長官の見解を伺っておきたいと思います。  中曽根総理発言でありますが、総理は閣僚の靖国神社参拝について公式参拝合憲論を根拠づけるように二十日までに自由民主党に指示した、こういう報道があります。さらに、七月三十日に群馬県に帰郷された際の記者会見で、閣僚の靖国神社への参拝問題について内閣と自由民主党で相当の権威者を集めて憲法との関係を研究したい、こういうふうに述べておられる。そして、従来の政府見解を見直すように非常に積極的な意向を示されたことが報道されています。これに関連をして、政府首脳ということですから恐らく官房長官だろうと思うんですが、若干ニュアンスの違う報道をされているわけです。  そこで、二つの点で官房長官と法制局長官に伺いたいんですが、まず憲法二十条の判断でありますが、いままで総理大臣や閣僚の靖国神社参拝について、国会でこれは何回も議論をされている問題でありますし、何回もまた政府見解が示されているわけです。  代表的な政府見解として、福田内閣当時、安倍官房長官が本委員会でも出席をされて述べておられます。それは、   閣僚の地位にある者は、その地位の重さから、およそ公人と私人との立場の使い分けは困難であるとの主張があるが、神社、仏閣等への参拝は、宗教心の表れとして、すぐれて私的な性格を有するものであり、特に、政府の行事として参拝を実施することが決定されるとか、玉串料等の経費を公費で支出するなどの事情がない限り、それは、私人の立場での行動とみるべきものと考えられる。 こういう見解が福田内閣当時示されています。  さらに、鈴木内閣当時の政府見解として、内閣総理大臣その他国務大臣国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは「違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。」、こういうふうに宮澤官房長官が述べておられます。  こういうふうに、何回も国会で公式参拝と憲法との関係について議論をされている。そして、政府の統一見解が表明されているものを、与党であるといいながら、国会を構成している一政党の見解でこういういままでの政府見解が変更できると考えておられるのかどうか。まず、法制局長官からその点について伺いたいと思うんです。
  18. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) まず、政党が一般的に、必要に応じましていろいろな問題について検討されるということは、至極当然のことであると思います。  それから、これもまたごく一般論でございますけれども、政党内部で必要に応じまして、ある法令の解釈とかあるいはその他の問題につきまして検討が行われ、そして結論が出た場合に、それが自動的に政府の見解になるというわけではないわけでございまして、党側と政府側との意見の調整という手続が必要であるというふうに考えております。したがいまして、この調整の結果によって物事は進んでいく、こういうことになろうかと思います。
  19. 野田哲

    野田哲君 重ねて伺いますが、法律とか政策について政党がそれぞれの立場で検討を行うこと、これは私はいま長官が答えられたとおり当然であると思うんです。しかし、憲法判断にかかわる問題について、いままで政府国会で見解を表明していることとは違う立場に立った考え方で見解を変えていく、こういうことが政党だけでできるものですか。これは政府でも私はできないと思うんです。これは一般的な法律やあるいは政策とはちょっと次元が違う問題じゃないかと思うんですが、どうですか。
  20. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 御指摘のとおり、憲法解釈を含めまして法令の解釈というものは、これは法理論として適正であるかどうかといういわば法理の追求の問題でございます。それだけに、一般の政策のように、内閣の意向とかそういうもので、いわば政策的な判断で決まっていくというものではもとよりないわけでございます。ただ、先ほどいろいろ野田委員からも政府の統一見解をお述べになりましたように、いろいろの意見がこのいまの靖国公式参拝にはあり得るわけでございまして、それについて党が党のお考えで自主的に御検討をされるということについては、私どもがとやかく申し上げる問題ではなかろうかと思います。
  21. 野田哲

    野田哲君 だから、政党の見解はあくまでも政党の見解であって、いままで出した政府見解等について、それを覆すような閣僚としての靖国参拝合憲論というようなものを政党が結前を出せるはずはない、こういうふうに思うわけです。そういうことでしょう。  それから、官房長官に伺いたいんですが、群馬発言によりますと、内閣でも従来の政府見解を見直す、検討を行わせるということを総理発言をされているようでありますが、いままで政府が統一見解として法制局長官や官房長官国会の公式の場で表明をしてきたことが、内閣のどのような機関が決めればそれが変更できると考えておられるのか。私は、そんなことは憲法を変えない限りはできるはずはない、こういうふうに思っているんです。  きょうの新聞にも漫画が大きく出ております。中曽根さんによく似た顔をした人がモーニングを着て、「靖国参拝」と書いたところのベースへ滑り込んでおられるが、これはやっぱり後ろの審判はアウトと、こう手を挙げております。解説には、「憲法も そこのけそこのけ 政府が通る」と、こうなってるんです。しかし、それは審判はアウトと手を挙げております。  私は、憲法二十条の憲法判断というのはそんな簡単に変えられるはずはない、こう思っているん ですが、一体総理がどういう指示をされているのか、どういう場で検討されようとなさっているのか、伺いたいと思います。
  22. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 総理の前橋での御発言は私も新聞で拝見をしただけで、まだ総理から内閣としても勉強しろといったような御指示は受けておりません。御指示があればその段階で検討をいたしたい、こう考えておるわけでございます。  従来の政府の見解も、いわゆる公式参拝については、合憲であるとか違憲であるとかということは断定をいたしておりません。ただ、違憲の疑いを今日なお否定し得ないから、事柄の性質上、非常に重要な問題だから、閣僚の公式参拝は差し控えてもらいたい、これが政府の見解で、憲法解釈としてはこれは甲論乙駁があることは御案内のとおり、政府としてもまだ決定をしていないのだということは、ひとつ野田さんに御理解をしておいていただきたい。  なお、私は党の話は聞きました。これは御案内のように、自由民主党の中に靖国問題を長く勉強していらっしゃる多くの議員の方がおられます。その方々は合憲の立場に立っていらっしゃる。合憲ではないか、したがって閣僚は公式参拝をしてもらいたいと、こういうお申し入れがあったわけでございます。それに対して総理が、ならば、これはいろんな議論がある問題だから、君らの方でも君らの方なりに合憲についての勉強をしてもらいたいと、こういうことを言われたやに私は承知をいたしております。これまた、あたりまえのことでございます。  しかしながら、党が合憲であるという勉強の結果の結論が出たときに、一体、すぐにそれが合憲論としてまかり通るのかといえば、先ほど法制局長官が言いましたように、それはそうはまいらない。ただ、議院内閣制であるということだけでは御承知おき願いたいと思いますけれども、事が憲法解釈という重要な問題でございますから、そういった場合には政府としてはいろんな角度からさらに政府自身として検討して結論を出さなきゃならぬ、こう思います。  そこで、それがまた違憲であるといったようなことになれば――これはまだ公式参拝について、御案内のように最高裁判所としては最終判断はいたしておりません。今日まではいわゆる津の地方裁判所で争われた地鎮祭問題の政教分離についての一般的な判断が出ておるにすぎないので、公式参拝それ自身については出ていない。やはり争いが最後まで残るということになれば、これは私は最終は最高裁の判断ということにならざるを得ないのではないか、かように考えておるわけでございます。  したがって、ただいまの御質問の中に、政府の見解をそれで変えるのかと、こうおっしゃいますが、政府はまだ合憲とも違憲とも決めていないのだということは申し上げておきたい、かように思います。
  23. 野田哲

    野田哲君 この問題は、まだ私もいろいろいままでの政府見解を例に挙げてさらにただしたいわけですが、官房長官、約束しておりました時間が参りましたので、その問題はきょうはこれでおきます。  総裁と総務長官に、もう一回、もとに返って人事院勧告の問題について伺いたいわけですが、人事院総裁が非常に強調されていることの原則、具体的には公務員法に明記されている二十八条の情勢適応原則、こういうことだろうと思うんです。私は、昨年政府勧告を見送ったということでこの情勢適応原則はかなり崩れてきている、こういうふうに考えているわけでありますが、この情勢適応原則というのはどういうふうに理解をすればいいのか、人事院総裁とそれから政府の担当大臣である総務長官に、それぞれお答えをいただきたいと思うんです。
  24. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 公務員給与その他の勤務条件というものは、社会情勢が変わってまいるに従ってそれとの見合いで変わっていかなければならないというたてまえが、これが二十八条の情勢適応原則であろうかと思います。  したがいまして、これは野田先生も御承知のように、たとえば給与についてだけ申しますと、戦後の場合は民間給与というものが総体的には毎年少しずつでも上がってばかりきたということがございます。したがいまして、給与勧告といえば即ベースアップだというふうに受けとめておる向きも多かろうかと思います。これは法律のたてまえは、はっきり書いてありますように、そういうことではないのであって、情勢が変わって、たとえば民間給与がどんどん下がっていくということになった場合に、公務員についてもやはり俸給表改定を五%切り詰めなきゃならぬ、そういうような事態が起きた場合にはこれはやはり減額勧告をやるべしということも言っておるわけであります。  まさしく公務員については、いろんな制約を受けておるが、それなるがゆえに、やはり民間勤労者と少なくとも同程度の職務というものをやってもらわなきゃならぬ、それを鉄則にいたしておるわけでございます。そういうことから、下がれば下がるし、上がれば上がる、そういう非常にわかりやすい原理に基づいて運営をされてきておる。しかも、それは一つ制度として長い間の経過を経て定着をしてきておるということでございまして、やはり公務員であるからして、その勤務条件については、一たん決まればそれは固定化して一切変えないのだというようなことでは困るのであって、そこはやはり一般勤労者並みに取り扱っていくのが至当なることである、そういう原則を打ち出しているものと解釈をいたしております。
  25. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) ただいま人事院総裁からもお答えがございましたが、国公法の第二十八条の情勢適応原則は、いまお話がありましたように、公務員給与、勤務時間等の勤務条件に関する基礎事項は、国会により、社会一般の情勢に適応するよう随時変更するというものである、かように私どもは理解をいたしております。
  26. 野田哲

    野田哲君 これは、総務長官、情勢に応じて、いま藤井人事院総裁が述べられたように、民間準拠という原則によって民間が下がれば下げる勧告を行うこともあるんだと、こういう説明がありましたが、この国家公務員法二十八条の情勢適応原則というのは、そういうことで人事院勧告の基本をなしていると思うんです。だから、総務長官としては、勧告政府が誠実に実行していく立場に立たなければ公務員の人事問題を所管する大臣としては私は原則を踏まえたことにならないのじゃないか、こういうふうに思うので、そこのところが伺いたいんです。
  27. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先ほど先生から二十八条の原則的な考えはどう思っておるかというようにお尋ねくださったと、こうとりましたものですから原則を述べさしていただく、その考え方人事院総裁と同じような考えであるということを申し上げたのですが、今回出されました人事院勧告、これは先ほど先生からお話しくださいましたように、私ども最もいい労働慣行、これを守っていくためにはどうしてもこの人事院勧告をできる限り勧告どおりにやっていきたい、またやっていただけるように国政全般の中でひとつ考えてもらうように私は努力をさしていただくことが私の責任だと、こう考えております。
  28. 野田哲

    野田哲君 先ほど官房長官もちょっと触れられたわけですが、臨時行政改革推進審議会が八月四日に意見を出しているわけですが、私は八月四日にこの意見を出されたところに非常にこれも意図的な問題があると思うんです。臨時行政改革推進審議会の委員の方の中には、生産者米価やそれから公務員給与の抑制についてはことのほか御執心の方がいらっしゃるようでありまして、委員個人の意見をさも審議会としての意向であるかのように発言をされている向きが非常に強いのじゃないかと思うんです。  そして、八月四日に出された意見を見ても、これは昨年の七月に出された臨時行政調査会の基本答申の意見と全く同じなんですから、ことさらに 何も八月五日に人事院勧告がある前の日に大騒ぎをして公務員給与問題については出す必要は私はなかったのだろうと思うんです。去年の七月に出されたのと全く中身は同じことです。しかし、これは臨時行政改革推進審議会がおやりになることですから、それはそれでいいのでしょうが、あの内容を見ると、昨年と全く同じような形で公務員給与問題について触れられていて、まず公務員労働基本権制約の代償としての人事院勧告制度は尊重されるべきである、それから公務員給与は抑制を図れ、政府国会は責任を持って決めろ、こういうことになっているわけです。  人事院勧告制度は尊重されるべきである、しかし給与費についてはできるだけ抑制を図れということは、つまり私はあの意図というのは、昨年やられたような人事院勧告凍結してしまったり、あるいは十年前にやられたように人事院勧告実施時期をおくらせてやるとかいう形で個人に犠牲を強いる形での個人をそれぞれ値切るやり方ではなくて、いわゆる人件費総枠について膨張しないように抑制を図っていけ、こういう意図じゃないかと読み取れるわけです。個人個人に適用される金額を値切って抑制しろと、こういうことであれば、人事院勧告を尊重しろというような立場とは全く矛盾をすることになるわけなんです。そういう点で、あの八月四日の臨時行政改革推進審議会が出された意見について人事院総裁や総務長官は一体どういうふうに受けとめておられるのか、伺いたいと思います。
  29. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) この点については、ただいま野田先生がお述べになりましたことと基本的には私も同じ見解を持っております。と申しますのは、四日の一種の提言というのは、昨年の臨調の答申と無論基本的には同一でございます。また、同一であるべきことでございまして、変わっておればそれはおかしいということだろうと思います。  すなわち、昨年の臨調の答申は、公務員給与についてはお述べになりました四つの原則を示しております。一つは、人勧制度の尊重であります。第二は、人勧の基準というものはやはり官民均衡民間準拠ということが適切であるということであります。第三は、結局勧告は尊重すべきであるが、それを具体的に決定するのは内閣国会の責任であって、国会内閣はいろんな状況を勘案してその責任において決定するのだ。第四の点としては、総人件費の抑制ということでありまして、これはそれぞれ例示をいたしております。例示の中には、いまお話しになりましたように、個個の公務員の具体的な給与をカットしろなんということはこれは一言もありません。また、そういう不見識なことが主張されるわけはないのでありまして、あくまでいろいろ工夫をして総人件費の抑制は図りなさいよということは提言の中に申しております。  この四つの原則がうたわれておりまして、四日の提言もそれを踏まえてそのことを繰り返し言っておることであって、私はそれはそれとして、それだけのことであろうというふうに考えまして、それがゆえに人事院勧告というもののあり方についてとかくのことを申されるはずもなし、私としてもそのためにいろいろなことを原則を曲げて考えることはいたしません。
  30. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先日、行革審の方から出されました意見書でございますが、このものについてはただいま人事院総裁が詳しく述べられたと同じ考えを私ども持っております。  そこで、重ねて申し上げまするならば、昨年の臨調の基本答申の趣旨と同様のものである、また変えるべき筋合いのものではない。そして、昨年の臨調の基本答申では、いまも詳しくございましたように、四つの柱を立てて給与の基本的な考えが述べられておるのでございまして、そういう昨年の臨調の基本答申、これを私どもは少しも変えることもできないし、変えるものではない。そうした基本的な考えに立って、今回のいただきました意見はそういうものだ、こう考えております。
  31. 野田哲

    野田哲君 ですから、総務長官に要望しておきたいのは、八月五日に人事院勧告が行われるということで、それに先立つ八月四日に臨時行政改革推進審議会が意見書を出される。その意見書を見ると、具体的に人事院勧告の抑制とか、あるいは見送りとか、個々の公務員給与を犠牲にするようなところまで踏み込んではおられないんです、あの意見書は。ところが、それを政治的に、閣内の議論をいろいろ伺ってみると、去年もこれを口実にされているわけでしょう、政府の方は。臨調が抑制しろと言ったから凍結するんだ、見送るんだ、こういうふうに口実にされている。ことしの八月五日に開かれた給与関係閣僚会議でもそういう主張があったやに伺っているわけなんです。そういう点は、総務長官としては、あの意見はもうこれ以上個々の公務員に犠牲を求めるような内容のものではないのだ、こういうことでこれからぜひ対応してもらいたいと思うわけであります。  特に、総枠抑制ということについては、昭和五十四年の秋に政府人事院勧告の問題について閣議決定をする際に二つ条件がついているわけです。それは公務員定年制度の実施について具体的に検討し進めていくということが一つ、もう一つ退職手当の切り下げを行う、この二つのことが昭和五十四年当時条件になって、それによって総枠を抑制していくのだということで進められたわけです。  そして、私どもはいろいろ議論をしましたけれども、そういう決定に基づいた定年制の法律、それから退職手当の切り下げが行われたわけでしょう。だから、現にそういう意味では総枠抑制はすでに出発進行しているわけですから、そのことをやはり私はよく考えていかなきゃいけないのじゃないかと思うんです。これをやれば完全実施をするよと言って、それをやったら、今度はその次は見送りだとか抑制だとか、こういうことではこれは際限がないことになるんです。  そこで、これは人事局長に伺いたいんですが、すでに定年制の法案については成立をして六十年三月三十一日からこれが適用されることになっておりますし、それから退職手当についてはすでに進行中です、切り下げが。これによってどういうふうに人員が抑制されていき、給与費や退職手当が抑制をされていくことになっているのか、その見込みをちょっと説明してもらいたい。
  32. 藤井良二

    説明員藤井良二君) 正確な統計といたしましては、五十六年度における退職者数の統計がございます。この退職者数は総数で二万六千人でございます。そのうち勧奨、定年による者が一万三千人でございます。  昭和六十年三月三十一日、定年制の施行の時点で定年年齢に達している職員は当然退職することとなるわけでございますので、五十九年度の定年退職者数というのは一時的にふえることになりますけれども、その後の六十年以降の退職者数について正確に予測することはきわめて困難でございます。ただ、年齢構成の上からいって、要するに年齢別在職者、五十九年度以降六十歳に到達する退職者、定年によって退職する者だけを現在の年齢の構成のまま移行するというふうに見てみますと、五十九年度におきましては、すでに定年年齢に達している者がいますので、ちょっとふえまして三万五千人くらい、それから六十年で一万二千人、六十一年で一万四千人、それから六十二年で一万五千人、六十三年で一万六千人、六十四年が一万六千人、六十五年が一万六千人、先ほど置きましたような前提を置けば大体こういうような退職者が出てくるということでございます。  それで、六十年の定年による退職者が退職しなかった場合の給与総額という御質問でございますけれども、退職者数につきましては先ほどの数字を使ったとしても、これらの退職者の平均月額を推定することはきわめて困難でございますので、そこできわめて概算ということでお許しを願って、行政職俸給表で最も退職者の多い四等級の高位号俸で推定いたしますと、現在のベースで三十万円強でございますので、これを年収にいたしますと五百万程度となります。この五百万程度に先ほど申し上げましたような退職者数を掛けます と、六十年度以降大体各年度の総額は七百億ないし八百億になるのではないかと思われます。  ただ、これはあくまでも試算でございまして、現実を考えますと、定年制実施されていない現在におきましてもほぼ同数の退職者が出ているようですし、また医療関係の部局におきましては全く不補充というわけにはまいりませんので、その辺の出し入れもあるのじゃないかと思います。したがって、いま申し上げました数字がどれほど意味を持つのか、またどれほどの節約となるかという点についてははなはだ疑問な点がございます。  なおまた、先生御指摘のように、五十六年から退職手当の切り下げをやっているわけでございますけれども、この退職手当の一割カット前の計算額に比べてどれくらい低くなるかという問題がございますが、この点につきましては、五十九年度及び六十年度に退職する者の退職手当の総額は、退職者数が未定でございますのではっきりしたことは申しませんけれども、五十六年当時の改正ベースの試算で申し上げますと、一割削減前の五十六年度と一割削減後の五十九年度ベースでは、大まかな数字で国家公務員で約六百億、三公社で約四百億程度の減額になるのではないかというふうに考えております。
  33. 野田哲

    野田哲君 総務長官、いまお答えがあったような形で、すでに五十四年に政府が決定をしたこの総人件費を抑制する措置としての定年制退職手当の切り下げによって、退職手当については五十六年から、そして定年制については五十九年度末から実施段階に入っているわけでありますから、総枠抑制という点ではかなり具体化しているということをぜひひとつ考えてもらいたいと思うんです。  そして、昨年の政府見送りという決定を行ったことについて振り返ってみますと、政府は二つの理由を挙げています。一つは、この国民的課題である行財政改革を担う公務員が率先してこれに協力する姿勢を示す必要がある、これを一つ理由に挙げています。二つ目には、官民給与較差が百分の五未満である、つまり義務的な較差ではない、こういう二つを政府は挙げているわけですが、この二つの理由は私はこれはもう成り立たないのじゃないか、こういうふうに考えているんです。  昨年、第一の理由によって行財政改革に公務員は率先して協力しろということで、給与改定見送りによって一人当たり二十万円の被害を受けているんです。勧告実施されることと見送りとの差額は年額二十万円ぐらいに相当するわけなんです。私は、国の財政を改革をしていくのに公務員といえども個人が犠牲になることはないと思うんです。総枠抑制論については、先ほど話がありましたように、もうすでに進行をしているわけですから、私はやはり、それで総枠が抑制されるためには、定員も抑制され、あるいは退職金も切り下げられるということで、公務員はそれを通じて協力をしているわけですから。  二番目の百分の五未満という理由ですね。これは、私はこの春のこの場でも問題にしたんですが、国家公務員法二十八条に決めてある百分の五というのは、これは人事院勧告に対して規定されている数字だと思うんです。百分の五以上の較差になったときには必ず勧告しなさい、百分の五以下であれば任意に考えなさいというのは人事院が考えることであって、私は政府が勝手に百分の五以下であったからやらなくてもいいというそういう解釈は成り立たないし、そんなことはあの二十八条を読んでみてもどこにも書いてない。  そういう意味からいって、昨年政府見送りを決めたときの理由としては二つとも私は全く根拠になっていないと思うんです。まして、ことしは六・四七%なんですから、政府流の解釈からいっても当然これはやらなければいけない数字ということになるわけであります。この点は、総務長官、いかがですか。
  34. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生からも御指摘いただきましたように、総枠の抑制と申しますか、そちらの方はもうすでに実施されておるので、その上に個人個人の犠牲を強いるということはこれは無理ではないか、その必要ないじゃないか、許されることではないじゃないか、こういう御意見ですが、私は個人個人の犠牲というような表現よりは、やはり今回人事院からお出しくださったところの勧告そのものは、これは労働基本権制約の代償措置としての制度から申し上げましても、あるいは役所にお勤めくださるところの方々の生活という点から考えましても、できるだけ人事院勧告を尊重するようにしていかなくちゃならぬ。これは政府の従来とってきたたてまえでございますから、特に事を大げさに言う必要はございませんけれども、この人事院勧告はこれはあくまで尊重していく必要がある。しかし、昨年はああいう非常に異例な厳しい状況でございましたので、こういうことを二度と繰り返さないようにということを総理も言っておられますし、先ほど官房長官も言っていかれましたので、今年は昨年のような繰り返しはない、あっちゃならぬと、こう思っております。  しかし、やはり人事院勧告というものが出てきておりますので、私は給与担当大臣として、働いていただく方々の労働権とそして生きるための生活権ということから、できるだけ政府部内において各大臣、関係閣僚がよく理解して、国政全体の中で人事院勧告の精神が酌み取られるようにひとつ努力をさせていただくようにお願いしたいと、このように考えております。
  35. 野田哲

    野田哲君 時間がほぼ参りましたので、給与関係閣僚会議の事務を担当しておられる藤井人事局長にひとつ聞いておきたいと思うんですが、昨年から給与関係閣僚会議には、与党、自由民主党の幹事長なりあるいは総務会長なり政調会長が入っておられます。さらに、ことしのテレビで放映される写真を見ると、橋本龍太郎さんも入っている。恐らくこれは行財政調査会長という資格で入っておられると思うんですが、そういう形で自由民主党の首脳部の人が給与関係閣僚会議に参加をされている。昨年のILOへの報告を読んでみると、やはり給与関係閣僚会議というのは、官房長官、総務長官、ずっと大臣を列記されて、それと自由民主党の三役で構成したと、こういうふうに報告されているわけです。  そこで、自由民主党、与党は、昨年の秋以来、与野党の間で五十七年の人事院勧告取り扱いとあわせて、これに関連をして五十八年の人事院勧告の問題についてもやりとりをして、一定の約束をしているわけです。そしてさらに、与野党間でこの問題を協議するための幹事長、書記長を構成員とした各党代表者会議というのがあり、そしてその下に、私もその一員であったわけですが、各党実務者会議というのがあって、そこでいろいろずっと協議をしてきたわけです。この給与関係閣僚会議に自民党の三役あるいは担当の橋本さんなどが入って一緒に協議をしている。その自民党は今度私どもと約束事があり、各党代表者会議あるいは実務者会議というのがあって、これは私もメンバーなんですが、やめたとも打ち切ったとも明確になっていないんですが、給与関係閣僚会議にそういう形で自由民主党の首脳部が入っているということになると、今度はその自由民主党は野党との間で五十八年の扱いについても約束事があるということになると、その野党と自由民主党との間の話を抜きにしてまさか結論を出してしまうというようなことは私はあり得ないはずだと思っているんですが、事務方を担当される人事局長とそれから総務長官がそういう点についてどういうふうに考えておられるのか、その見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 藤井良二

    説明員藤井良二君) いまの点についてお答えいたします。  従来、給与関係閣僚会議には自民党の先生方は入っておられませんでした。お入りになったのはたしか五十六年のときからだろうと思います。五十六年のときから入っておられます。したがいまして、昨年もことしも入っているわけでございます。ただ、実はどういう事情でこういうような編成になったかというのは、実は私ちょっと存じて おりません。  それで、何か事務方を人事局が務めているのじゃないかということでございますけれども、実はこの給与関係閣僚会議というのは官房長官が座長となっての会議でございまして、先生方の招集その他はすべて審議室の方で行っております。したがいまして、私どもとしては先生方がお入りになったという事情はよくわかりませんけれども、最近は入っていることは確かでございます。  それで、恐らく自民党の先生方が入っておられますので、自民党の先生方としては野党の先生方といろいろお話しになることが多いのじゃないかと思います。したがいまして、そういうような野党側の先生の意見も当然給与関係閣僚会議の中では披露されてくるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  37. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 私は、先生たちの御質問に対して、私ながらに一生懸命と申しますか、誠意を持ってお答えさせていただいておるつもりでございますが、いまもお尋ねのございましたように、この給与関係の閣僚会議は私の方はお願いする立場でありまして、これは官房長官が座長になって開いておられて、私はそこで働いていただく方々の、先ほど先生からも御指摘があり、私も申し上げましたような立場でこれは一生懸命になって頼んでおるということでございますが、そこへ来ていらっしゃる党の方々の顔も知っております。いま御指摘のありましたように、党から出てきて見えることも承知しておりますが、そういう方々が今後野党との話し合いをどういうふうになさるかどうか、そういう気持ちで会議に加わっておってくださるかどうかということは、私としては、こう想像できるとか想像できぬとかということは、誠意を持って答えさせていただいているつもりでございますけれども野田先生、これ以上わからぬですから、御勘弁をちょうだいいたしたいと思います。
  38. 矢田部理

    ○矢田部理君 給与担当の野田議員からいろんな角度で質問がありましたので、私は人事院勧告問題については二、三の点にしぼってお尋ねをしたいと思います。  最初に、総務長官、給与担当の閣僚として給与関係閣僚会議などでは、あなた自身は人事院勧告を完全に実施するよう主張し、努力はされるんでしょうか。
  39. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 給与関係閣僚会議においていろいろ、ここに官房長官おいでになりますけれども発言を許していただいて要請をしておりますが、いま先生からおっしゃっていただきましたように、完全実施というような表現は使っておりません、正直申し上げて。それ以上に私は人事院勧告というこの大事な制度、これを維持していきたい、これが日本のいい労働慣行になっておるのだからこれは何としても守り続けていただきたい、そのためにはという、人事院勧告をできるだけ達成できるようにしていただきたいという、誠心誠意と申しまするか、もう命かけの気持ちで頼んでおるので、表現は私は完全実施という言葉を使っておりませんが、気持ちの上においては一生懸命にやらせていただいております。
  40. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも歯切れが悪いですな。給与担当の大臣というのは初めてですよ、あなたみたいな歯切れの悪いのは。結論としてはいつでも大蔵省に押し切られたり、官房長官に差配されたりしてうまくいかなかったけれども、少なくとも担当大臣としてはできるだけとかという表現ではなくて、完全実施を主張し、そのために努力をされてきたというふうに見ているんですが、いかがですか。
  41. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) いままで聞いたことのない歯切れの悪い総務長官とおっしゃいましても、そうかもしれませんけれども、私はやはり先ほど来言っておりまするように、何としてもこの人事院勧告制度というものは守っていきたい、国のために働いていただく方のためにもどうしてもこの制度は守っていきたいという気持ちでございますから、そういうところから、人事院勧告が出されたものは、これを守っていくためにも政府自身はできるだけ実施に努めたいという気持ちでございますから、完全実施という言い方はしておりませんが、この気持ちをひとつ御理解いただきますれば、私は誠実に心を込めてこれがやってもらえるようにという努力をしておりますから、ただ完全実施完全実施と言うだけなら私もここで言わしていただきますけれども、それよりももっともっと考えて、一生懸命に政府部内で国政全体の中でひとつ考えてもらいたいという努力をしておりますから、ここらでお許しをいただきたいと思います。
  42. 矢田部理

    ○矢田部理君 一問ぐらいでやめようかと思ったんですが、なかなか許すわけにはまいらぬですね。  心を込めてとか、できるだけとかいう形容詞の問題じゃないんですよ。去年から問題になってきましたのは、尊重し実施するとか、できるだけ実施するとは言うんですが、完全実施すると決して言わない。ここで問題になってきたんでしょう。少なくとも前の総務長官は完全実施論で来たんですよ。力足らずでできませんでした。あなたはそこまでも言い切れない。言わないということになると、これは大幅な後退じゃないでしょうか。これじゃもう先が思いやられるんですよ。どうなんでしょうか。
  43. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生も、国のために仕事をしていただく公務員の方々のことをしんから考えていただき、御理解いただいての御意見であり、お尋ねでございますし、私も先生と同じような気持ちに立っておるのでございますから、それは完全実施という言葉を使えばそれですっきりするかもしれませんけれども、私はいまここで完全実施というような言葉は正直言って使いたくても言い切れないという、それ以上に私は人事院勧告制度を守っていきたいし、今回の人事院勧告を尊重していきたい、誠心誠意心を込めてやっていくということで勘弁願えぬでしょうか。
  44. 矢田部理

    ○矢田部理君 押し問答を繰り返すつもりはありませんが、いまの表現では私は納得できないんです。また、すべきものでもないんです。  これは内閣にだけ勧告がなされているのじゃなくて、国会自身の立場としても考えなきゃならぬわけですが、藤井総裁に伺っておきたいのは、先ほど人事院勧告をぜひ実施してほしいと非常に強い言葉で言われたわけでありますが、その理由として幾つかの問題点を挙げられてきましたが、そのうち、やっぱり人事院勧告実施されるようになってから労使関係の安定に非常にいい傾向が出てきたというのが第一点。それから、もし実施されないようになれば制度の根幹が問われるという受けとめ方をしておられるわけでありますが、これは私も、去年でしたか、法制局長官とかなり全農林の最高裁判決の中身をめぐって論議をしてきたんですが、もともと労働基本権代償措置として人事院勧告制度があり、かつ機能をしてきた、それが機能をしている限りにおいては憲法上の問題は生じないけれども、機能しない、特に抑制とか凍結が何年か続くということになればそれは憲法上の問題を生ずるというのが法制局長官の答弁でもあったかというふうに私は受けとめているんですが、人事院総裁としてどうでしょうか。  おととし抑制された、去年は凍結。ことしは、どうも総務長官がこんな調子では先行ききわめて不安だと言わざるを得ないわけでありますが、凍結や抑制がずっと続く。したがって、代償措置が機能しないということになると、これは生活の課題であり、制度の根幹に触れる問題であり、同時に、やっぱり憲法問題だというふうに私は受けとめるんですが、いかがでしょうか。
  45. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 人事院給与勧告制度というのは、公務員について労働基本権が制約をされておるということの代償措置として位置づけられておりますきわめて重要な制度であります。それは一種の憲法的要請から出ているものという見方も私は十分成り立ち得るというふうに考えております。  それはそれとして、この給与勧告制度というものが機能しなくなるというような事態が出てまい りますれば、これは私は直ちに公務員制度あるいは人事院制度自体の根幹に触れる重要な事態になりかねないということをはっきり申し上げておいてよかろうかと思います。
  46. 矢田部理

    ○矢田部理君 官房長官に、最後に人事院勧告問題について伺っておきたいんですが、先ほど野田議員の質問に答えて、結論を得るまでに相当の時間を必要とする、内容的には二年連続凍結はあり得ないという立場でまとめていきたいというふうにおっしゃられているわけでありますが、今後の時期的な見通しでありますが、秋口には臨時国会を開くことを考えているということになりますれば、この臨時国会中には、給与問題について決着をつけるという日程的な考え方に立っておられるんでしょうか。
  47. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) まだ時期的なめどをつけるという段階には至っておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、大変厳しい状況の中での論議が交わされておりますから、やはり結論を得るまでには相当の時間がかかるのではないかというふうに思っておりますが、政府としては事柄の性質上、できる限り何とかひとつ早く決着をつけるように努力はいたしたい、かように考えております。
  48. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは強い要望として申し上げておきたいと思いますが、一年間凍結をしてきた、その前の年も抑制だった、今度も一つ歯切れが悪いわけでありますが、内容的には少なくともやっぱり二年目は完全実施ということで御努力をいただきたいということが一つと、しかも時間がかかるということでずるずると引き延ばすのではなくて、できるだけ早く決着をつけるという方向で関係大臣の御努力をいただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  そこで、次のテーマであります金大中事件についてお尋ねをしていきたいと思います。  すでに、金大中事件につきましては十周年を迎えました。もともとの要求であった真相解明と原状回復いまだ果たされずという状況に立ち至っているわけでありますが、そういう中でこの八月一日の日に捜査本部が解散をされた。政治決着と捜査は別だと言ってきたわけでありますが、捜査の面でも完全にふたを閉める、事実上幕引きを行うというようなことになっているわけでありますが、これはいかなる事情によるものでしょうか。
  49. 大高時男

    説明員(大高時男君) 金大中事件につきましては、御案内のとおり、警視庁におきまして特別捜査本部を設置いたしまして、長期にわたってじみちな捜査を行ってきたところでございますけれども、被害者を含めまして重要関係者がいずれも国内にいないといったような、捜査を進める上で当面直ちに対応し得ないような特殊な状況でございますとか、あるいは現情勢下におきまして新しい捜査資料の収集がきわめて少なくなってきておるわけでございます。こういったような情勢を踏まえまして、警視庁におきまして純捜査的な立場から検討いたしました結果、先ほど先生お話しのように八月一日をもちまして特別捜査本部を解散したものでございます。  今後につきましては、五名の専従捜査員をもちまして、FBI方式と申しますか、いわゆる少数精鋭をもちまして長期にわたって継続捜査を行うという方式でございますが、これによって捜査を継続する、こういうふうに考えております。
  50. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうもこの時期に捜査本部まで解散をしてしまうというのは、この一月早々に中曽根総理が訪韓をいたしました。これをきっかけにして日韓新時代だというふうにうたい上げることになった。そこで、この新時代の中身は、少なくとも一つには日韓関係に刺さったとげと言われる金大中事件を永久に完全に幕を引いてしまう、そういう中身になっていたのではないか。別な言い方をすれば、捜査独自の立場からの幕引きではなくて、そういう政治的な背景なり働きが先行して賭引きになったのではないかというふうに強い疑いを持っているんですが、いかがでしょうか。
  51. 大高時男

    説明員(大高時男君) ただいま申し上げましたように、警視庁におきましては長年捜査を行ってきた、時間も経過した、かなり既存資料の再検討等いろいろ行ってきたけれども、客観情勢上次第次第に材料も少なくなってくる。少なくなりましたそういった捜査対象あるいは資料に合わせまして、言うなれば合理的な再検討と申しますか、そういった客観情勢に応じた体制というものをつくったわけでございまして、決してこれでもって捜査が終わり、こういうことではないわけでございます。
  52. 矢田部理

    ○矢田部理君 これまでの十年間の捜査、期間的には十年でありますが、延べ二万人を動員して捜査をしたというふうにも言われているわけでありますが、この捜査でどういう部分が解明ができ、どういう点まで到達をし、いかなる点が未解明部分として残っているのか、それを整理して説明していただけませんでしょうか。
  53. 大高時男

    説明員(大高時男君) この事件につきましては現在もなお捜査継続中でございますが、これまでの捜査で明らかになりました点を申し上げますと、次のようになるかと思います。  まず、犯行の行われましたホテル・グランドパレス、この中におきます目撃者等の証言でございますが、これと、それから犯行現場に遺留されました指紋、これから当時の在日本の大韓民国大使館の金東雲一等書記官、これが容疑者であるということの割り出しができたわけでございます。しかしながら、金大中氏をホテルから強制的に連行いたしました犯人グループその他でございますが、これにつきましては、金東雲以外は現在のところ特定するに至っていない。また、拉致に使用されました車両でございますけれども、これにつきましてはホテル・グランドパレスの地下駐車場、これにございました車両等を綿密な捜査を行いました結果、やはり当時でございますけれども、横浜の大韓民国領事館の劉永福副領事所有の車、すなわち車両ナンバー品川五五も二〇七七、この車両が犯行に使用されたという容疑が非常に濃厚になったわけでございます。  以上が捜査の結果はっきりした点でございまして、その他の点につきましては、現在なお捜査を続けておりますけれども、解明に至っていない。いわゆる連行のルートでございますとか、あるいはどういう形で船に乗ったかとか、そういった点については現在のところなお捜査継続中といったところでございます。
  54. 矢田部理

    ○矢田部理君 この点ももう少し詰めたいわけでありますが、先へ進ましていただきますと、そこで捜査にとって一番大事なのは、これは私から改めて申し上げるまでもないんですが、何といったってやっぱり被害者から事情を聞く、これはむしろ真っ先にやらなきゃならぬこと、あるいは捜査の基本だというふうに私は思うんですが、どうしてこの金大中氏から事情を聞くという努力をここで打ち切ってしまったんでしょうか。これは後藤田官房長官にも少しく責任があるというか、政治的役割りがあったかのように受けとめているわけでありますが、まず、そちらからお伺いしたいと思います。
  55. 大高時男

    説明員(大高時男君) 先生御指摘のように、捜査の基本といたしまして、まず被害者から事情を聴取する、これはもう第一歩でございまして、私どもも本件解決のためにこういった形をとりたいということで長年努力をいたしてきたというところでございます。  今回、金大中氏に事情聴取を申し入れるという形になったわけでございますが、結果的には実現しなかったわけでございますけれども、その経緯を申し上げますと、昨年の暮れに警察庁の方から外務省に対して米国へのアプローチを申し入れたわけでございます。これを受けまして、外務省の方では一月の中旬に米国の政府と接触され、三月の中旬になりまして米国の政府金大中氏の意向確認、これを開始したわけでございます。四月の中旬になりまして、米国の政府は文書で金大中氏に申し入れたという状況になったわけでございます。この結果、五月中旬になりまして、金大小氏から文書で回答が参ったということでございます。  ところが、この文書におきまして金大中氏は三点項目を挙げております。まず第一に、拉致事件は日本政府が安全保護を怠ったために生じた。第二点といたしまして、日本政府は真相解明を公約しながら政治決着をつけて自分の人権を無視した。第三点といたしまして、一九八〇年に自分が死刑判決を受けたのは政治決着違反である、それにもかかわらず日本政府は韓国政府に対してこれを取り上げようとしなかった。こういった三点を挙げまして、これについての日本政府の考えを聞くまでは日本の捜査当局の事情聴取に応ずるかどうかの確定的な回答はできない、こういうふうに言われておるわけでございます。  これは、言葉をかえて言いますと、事情聴取に協力するための言うなれば前提であるというふうに私どもとしては理解せざるを得ない。しかも、この三点という事柄を見ますと、総じて政治的な事柄でございまして、捜査機関が処理あるいは判断する事柄ではないというふうに判断されたわけでございます。したがいまして、捜査当局としては、事情聴取は言うなれば断られたも同然というふうに解せざるを得なかったわけでございます。  そういったわけでございまして、私どもの方では何とか事情を聴取したいというふうに努力をいたしたわけでございますが、こういう形になっておるという状況でございます。
  56. 矢田部理

    ○矢田部理君 事情聴取を打ち切るに当たって、官房長官記者会見で談話を発表されておりますが、どうもアメリカ筋からの回答が外務省を通じて寄せられてから後、日本の対応は捜査当局よりも官房長官の方が早かった。官房長官が先に、もう事情聴取はやらぬ、相手の態度は拒否と見るということで記者会見に臨んだというふうに伝えられているんですが、いかがでしょうか。
  57. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) どうもこういう捜査になると私がいつも何か言われるのですけれども、そういうことはございません。  警視庁が捜査本部を打ち切るという連絡は、警視庁が発表をなさる三十分前の連絡でございます。そういうようなことで、私は記者会見の席で、もうすぐに警視庁で発表するであろうがこういう事情である、こう申し上げたわけでございまして、捜査本部の解散、そしてFBI方式への切りかえということはもっぱら純粋の捜査上の観点でなされたものと、私はさように理解をいたしております。  したがって、御質問の中にあった、何か政治的考慮が働いておるのじゃないか、こういう御質問でございますが、今回の警視庁の措置は何ら政治的な考慮とは別の問題である、かようにお答えをいたしておきたいと思います。
  58. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、いま警察庁の方から説明がありました三点について、もう少し突っ込んで論議をしてみたいと思うのでありますが、官房長官、第一点に金大中氏が挙げた、日本に滞在中の金大中氏に対する日本政府が安全保護を怠ったために発生した、つまり身辺の保護その他がどうも日本の警察等々が不十分だったのではないかという気持ちを、あれだけの大事件ですね、白昼公然とホテルから連行されて強制的に拉致されるというような事件が起きたわけでありますから、これはやっぱり警察の対応が不十分だった、もう少し日本の警察も考えてくれたらよかったのじゃないかというふうに被害者として受けとめるのは決して無理からぬ気持ちだと思いますが、いかがでしょうか
  59. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 警察は犯罪を防止するというこれは責任がございますから、あえて金大中事件に限らず、殺人事件その他のいろんな事件が起きますが、被害者の立場に立てばもう少し守ってくれてもいいではないか、こう思うのはこれはあたりまえのことだろうと思います。あえて金大中事件には限らないと思います。  ただ、当時の事情は大高君から説明すると思いますけれども、私の記憶では、警視庁がそれほど身辺をボデーガードでもつけてやらなきゃならないような方ではなかった、私はさように理解しておりますが、後で警察当局から答弁をお聞き取りいただきたいと思います。
  60. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、当時の事実関係がどういう状況だったではなくて、これだけ大事件の被害者で生死の間をさまようというような人の立場から見れば、もう少し日本の警察は守ってくれてもよかったのじゃないかというぐらいの気持ちを表明することは、あえてこれを異とするに当たらないのじゃないかということを私は申し上げたかったんです。  それから、あと政治決着の問題につきましても、これは捜査当局の問題ではないかもしらぬけれども、この事件の真相解明なり原状回復をうやむやにして政治決着を図る、これに対して別の立場からすれば一定の批判があるのもこれまた当然の話なんでありますし、特に政治決着の中身としては身体の自由ですね、外国へ行くとか何かを含めた身体の自由と、それからもう一点としましては、外国における言動の責任を問わないということが少なくとも重要な中身になっておったはずなんであります。  ところが、先般の金大中氏に対する韓国大法院の判決は、日本における韓民統との関係をやっぱり問うて死刑判決にした。それを問わずして死刑判決にはならぬわけであります、死刑の罪名がないんですから他の罪名では。そこまでやられた当事者としてみれば、これに対して一定意見を持つのもこれまた当然過ぎるほど当然の話なのでありまして、それを捜査に対して条件をつけたというふうに受けとめて、もう金大中氏から事情を聞くことはしない、条件をつけるのはけしからぬ、こういう対応をするのは、何か金大中氏が物を言うのを待っておったような印象を強くせざるを得ないのでありますが、どうでしょうか。  同時に、金大中氏自身が、これは私は昨日も確認をしたのでありますが、別に事情聴取のための交換条件を出したわけではないと、こう言っているんです。これは繰り返し言っているわけです。外務省にも後で確認をしたいと思いますが、そこまで言っているのに、条件をつけた、条件をつけた以上もう事情聴取はやめた、こちらから事情聴取を求めるつもりはない、こういう言い方は、いかにも、待っていました、これで打ちどめです、終わりですという口実を探しておったというふうにとられてもいたし方ないと思うのでありますが、その点も含めて答弁をいただきたいと思います。
  61. 大高時男

    説明員(大高時男君) 最初に、金大中氏の安全保護の問題でございますけれども、確かに金大中事件は発生したわけでございますが、これが発生しましたからといって、直ちに同氏の安全確保を怠ったという批判は当たらないのではないかというふうに考えております。  当時の状況を若干申し上げてみますと、警視庁は、金大中氏が昭和四十八年の七月十日、来日をして銀座の第一ホテルに宿泊した、これを実は知りましたのは数日後でございまして、何しろこの方は韓国大統領選の候補に出た人物でございますので、東京滞在の事実を確認しておくという意味でホテルを訪ねたわけでございますけれども、行先不明の状態であったわけです。しかも、当時、金大中氏の身辺に危険が迫っておるというような状況は全く警察としては把握しておりませんし、また金大中氏がお世話になっておった方々、あるいは金大中氏御自身からも身辺保護の要請とか、あるいは危険な状況、不安があるというような話は全く伝わってきておりません。警察としても、こういった危険性は察知することができなかったわけでございます。  しかも、後日、捜査をいたしました結果、金大中氏は御自身も本名を名のっていない、またホテルも転々と変わっていたわけでございまして、警察でも把握できるような、あるいは手を打てるような状況ではなかった。私どもからしますれば、むしろ日本の警察に御連絡をいただいて、何らかの形で情報を賜ればあのような事件は未然に防げたのではないかというふうに考えておるわけでございまして、そういった意味では残念であるというふうに思うわけでございます。
  62. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと発言中ですが、私は当時の事情を聞いているのじゃないんですよ。今度、警察が事情聴取をやるに当たって、金大中氏がとった態度が大変けしからぬ、捜査に対して条件をつけたから断ったんだという言い方について、被害者側としてみれば、あるいはここまで政治決着で揺さぶられた、生死の間をさまよった側としてみればこの程度のことを言うのはそう無理からぬことではないか、それを条件をつけたという受けとめ方はおかしいのではないか。金大中氏自身も、何度も最近繰り返し自分は捜査に条件をつけたつもりはない、交換条件を出したつもりではない、むしろ日本政府の誠意を期待したのだということまで言っているわけですから、それを拒否だ、もうやらないというふうにしたのはおかしいじゃないかと言っているのでありまして、その点を聞きたい。
  63. 大高時男

    説明員(大高時男君) その点は、第二点としていま御説明する途中でございましたので、ただいま先生御指摘でございますが、私どもの方では、純捜査的な立場におきましてぜひ事情を聴取したいということをお話ししましたところ、こういった三点について日本政府の意向というものがはっきり表明されなければ確実な回答をすることができないと、すなわち私どもとしては純粋に被害者の立場からいろいろお話をいただくというつもりでやったわけでございますが、これについていろいろといま申し上げたような話がついてきた。これについては、私どものとにかく判断の外と言わざるを得ない。  しかしながら、私どもの方としては、事情聴取をするというのは、先ほど来申し上げておりますように、捜査の当初から考えておるところでございまして、本当に被害者の立場においてお話しいただくということであれば、私どもの方は別にこれについて困るとか、そういうことは一切ないわけでございます。要するに、いろいろ捜査というものはそういう条件がついては困るということを申し上げたわけでございまして、私どもの方も決して断念をしておるわけではない、少なくとも断られたと同じ状態であるというふうに申し上げておるわけでございます。
  64. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこは大事なところなので、もう少し聞きますが、そうしますと、金大中氏に対する事情聴取はもう断念をした、やらないということではないということは第一点として確認されますね。どうですか。
  65. 大高時男

    説明員(大高時男君) 私どもの方では、ついぞ断念という言葉は一度も使ったことはございません。要するに、断られたのと同様の状態と解さざるを得ないと、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  66. 矢田部理

    ○矢田部理君 断られたと同様の状態と解さざるを得ない。しかし、捜査というのは、われわれもずいぶん関係しているけれども、相手が嫌だからといって、それで捜査を終わりますという捜査はないんです。いろいろな努力をして捜査を続けるのが捜査でしょう。まして、この真相解明のキーポイントは被害者でしょう。この程度のことを言われたからといって、捜査断念あるいは拒否されたと同じような状態だというふうに受けとめて、もう事情聴取の要請はしませんというのは少しく性急過ぎませんか。
  67. 大高時男

    説明員(大高時男君) 再々申し上げておりますように、確かに捜査はいろんな形で粘り強くやらなければいかぬわけでございますが、事情を聞きたいということについての条件を付するということは、これはやはり問題の外であろうというふうに考えるわけでございます。そういったものなしで純粋に応じていただくということであれば格別という趣旨でございます。したがいまして、私どもの方では決して断念をいたしておるわけではないということを申し上げたいと思います。
  68. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、金大中氏日身が条件をつけたわけではない、交換条件として出したわけじゃない、こう言っているわけですから、その意向を確かめるつもりはありませんか。  それからもう一点。アメリカ政府を介してやるというのも一つの方法かもしれませんし、またアメリカにおられるわけですから、アメリカ政府の了解を抜きにしてやるというのはなかなかむずかしいでしょうけれども、しかしそのアメリカ政府の了解のもとで日本が直接やっぱり意向を確かめる、事情聴取に乗ってほしいのだというぐらいの努力はしてもしかるべきではないでしょうか。その点はいかがですか。
  69. 大高時男

    説明員(大高時男君) 確かに金大中氏が米国においていろんな機会にいろんなことをお話しになっておりますけれども、私ども関係の官庁を通じまして文書をもって御回答をお願いし、御回答を賜ったものに即して判断するのが筋だろう、かように考えておりますので、私どもは現在の判断が正しいと、こういうふうに思っております。  それから、さらにまた米国政府を再度あるいは直接といったようなお話でございますけれども、私どもの方では外務省とも十分協議し、しかも米国政府との間に外務省がいろいろ折衝されまして、しかもかなりの時間をかけて先方も慎重に返答をいただいたものと、かように解釈をいたしております。一たんそういったルートで確認しました以上、別のルートで再度ということは現在のところ考えておりません。
  70. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本の警察は、捜査に条件をつけた、それは拒否したと同様だと言うんでしょう。ところが、当の金大中氏自身は、条件をつけたわけじゃないと再三言っているわけです。そうすると、真意は一体どこだったのか、言わんとした意図は何だったのかということを尋ねるのはあたりまえの話じゃありませんか。本人が言っているんですから、どうしてこれを確かめようとしないんですか。
  71. 大高時男

    説明員(大高時男君) 再々御説明いたしておりますとおりに、金大中氏には今回の回答につきまして相当慎重に熟慮の上御返答をいただいた。その中身を私どもの方で検討いたしますと、いわゆる捜査当局の判断を超えるいわゆる総じて政治的なものが多い。したがいまして、私どもとしては事情聴取について断られたのと同様の状態であるというふうに考えざるを得ないということを先ほど来申し上げております。
  72. 矢田部理

    ○矢田部理君 捜査を超えるか超えないかじゃなくて、金大中氏の意図を他の人が別な解釈をしているというなら別として、金大中氏自身が自分は条件をつけたつもりではない、そういう趣旨で言ったのではないと言っているんですから、あなた方が判断しますといったって、判断の根拠になるのは金大中の意思そのもの、どういう希望、考え方で問題を出したかということそのものなんでありまして、それを彼の意思を超えて勝手に判断するというのはかえっておかしいのじゃありませんか。その意味では改めて金大中氏から事情を聞くという努力をすべきだと思うんですが、官房長官、いかがですか。
  73. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) お答えします。  もう一遍努力しろと、こういうことでございますけれども、この事件についてはすでに政治決着をいたしております。ただ、その政治決着の中で、事件の捜査の過程で新しい事態があればおのずから別の問題だと、こう申し上げておるわけです。  そこで、捜査当局は十年の長きにわたって一生懸命に捜査をして、そして最後に、あなたがおっしゃるように、犯罪捜査というのは本来現場から出発するわけですから、被害者から事情を聞くのが基本ですから、そこで捜査当局としては外務省を通じて本人の意思を確認した。ところが、三つでしたか、条件がついてきた。捜査当局としては、恐らくや純粋捜査の観点から被害者という立場で被害者の事情聴取に応じてもらいたいと、こういうことだったと思うのです。ところが、その三つの条件は、いまあなたのお話を聞けば、金大中さんは前提条件がないとおっしゃる。ならば、つけなきゃいいので、三つ条件があったことは事実なんですから、そこで捜査本部としては、これではこれ以上事情聴取を続けるというわけにはまいらぬと、こういう結論を私は下したのだろうと 思います。  だから、率直に言わせていただくならば、金大中さんがそうおっしゃるなら、初めからそういう条件をつけなきゃよかったなと思うのです。しかも、率直に私が思うことは、この三条件というものは、これは犯罪捜査の結果事実が解明せられた場合に問題になり得る事項ではないか。つまり結論としてこういう問題が浮かび上がってくるかなと、こう思うのです。ところが、それが前提条件であるということになると捜査当局はちょっと動きにくいな、ああいった結論にならざるを得ないなと、私はそう思います。  だから、あなたがおっしゃるように、本当に金大中さんが純粋に刑事事件についての被害者の供述に応じましょう、何らのあれはありません、しかし結果としてはこういうことを明らかにしてもらいたいと、こういうことであるなら話はわかるのですが、それを結果として明らかになるかどうかわからぬことを事前の前提で言われますとちょっと捜査としては動けないのではないか、かように私は考えております。
  74. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも繰り返しの話になるわけですが、金大中氏自身が、別に事前の前提条件として言ったわけではないと、こう釈明しているわけです。それならば受けようというのが真相解明をやろうという捜査の常識じゃありませんかと私は言っているんですよ。勝手に金大中氏の意図をそんたくして、捜査打ち切りの方向に都合のいいように解釈をしてやるのはいかがなものかという点が第一点。  もう一つ問題点としましては、金大中氏の意向にも示されているんですが、現場検証なども含めて日本に行ってやることはいかがかということも付言されているわけですが、私は捜査にとってはこれも非常に重要だと思うんです。その点で、本気に金大中事件の真相を解明するという立場に立つとするならば、いま現にアメリカに行っているわけでありますから、日本政府としては韓国などに交渉をして日本にやっぱり来てもらう、そこで現場検証なども含めて事情聴取をやるというのが真相解明に対する真摯な態度、捜査としての基本のありようだと思うんですが、いかがでしょうか。
  75. 大高時男

    説明員(大高時男君) 私どもの方では、関係者から事情を聴取するというのがこれはまず第一の捜査上必要なことでございます。  それから、いま先生御指摘の現場検証の問題でございますけれども、私どもの方では、事件発生当時、数回にわたりまして現場検証あるいは実況見分の形でやってきておる。しかし、金大中氏が現場においてさらにプラスするものをお持ちであればこれは捜査上有益であろうというふうに考えるわけでございますが、当面のところ、私どもとしてはまず金大中氏から直接事情を聴取するということに全力を傾けたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、先ほど来、先生、本人がそう言っておるのだからというお話でございますけれども、私どもの方としては本人から、しかも権威あるそれぞれの機関を通じましていただきましたやはり文書に即しまして考えました場合におきましては、三点について日本政府の意向が表明されない限り確定的な回答をするわけにはいかないと、こういうふうにおっしゃっておるわけでございまして、こういった前提条件のもとでは事情聴取ということは考えられない。もし金大中氏が純粋に捜査に協力していただけるということであれば、ということは、要するに無条件ということであればこれは私どもの方でも考えは違うと、こういうふうに申し上げたいと思います。
  76. 矢田部理

    ○矢田部理君 この辺でこの問題は終わりたいと思うんですが、やっぱり捜査は残したわけですから、解散をしたり、事情聴取を事実上拒否とみなしてあきらめたりということではなくて、今後とも本格的な捜査、真相解明の努力をしていくべきだ。政治決着問題はやっぱり依然として霧に包まれているわけですよ。いまだに金大中氏の判決だって入手をしていないわけでしょう。死刑判決は日本における言動を問わなければできないんでしょう。これに対して捜査とは別に、金大中氏が日本政府に対してあるいは日韓関係に対して意見があることも、これまたわれわれ政治のレベルで言えば受けとめなきゃならぬ問題なんであります。それは問題は出したけれども条件ではないと言っているんですから、ひとつ、もう一回再考を強く促して、この問題は終わりにしたいと思います。官房長官、警察庁、結構です。外務省、済みませんでした。  そこで、防衛庁の方に伺います。  防衛庁に伺いたいのは、近々、防衛庁長官が訪米をされてワインバーガーその他とお会いになる、日米防衛首脳定期協議が八月の二十二日からワシントンで行われるというふうに話を聞いておるんですが、この主要な議題、話題は何でしょうか。
  77. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 今般、私は、ワインバーガー米国防長官との定期協議を行うために、十九日に離日いたしまして、ただいま委員の御指摘にもございましたが、二十二日にワシントンにおいて協議をすべく訪米を予定いたしております。  私といたしましては、わが国の平和と安全の確保のために日米安全保障体制の信頼性の維持向上が欠くべからざるものだと、こういうふうに考えておるわけでございまして、その円滑な運用を図る上で常に日米防衛関係者は間断なき対話と協議を重ねていく必要があるというふうに判断をいたしております。  その結果、相互に理解を深めることが最も肝要であって、今回の訪米も実はこういうような観点から行おうといたしておりますが、当然のことでございますが、日米の安全保障上の諸問題につきましては、私といたしましては、わが国の憲法及び基本的な防衛政策にのっとりまして、米側と率直な意見の交換をして相互理解を深めてまいりたいと考えております。  なお、協議内容についてでございますが、現時点で特にこれこれというふうに定まっておるようなわけではございませんが、いずれにしましても、従来と同じように、考えられますことは、国際情勢あるいは日米の防衛努力あるいは日米間の防衛協議、協力といったような双方に特に関係のありまする、また関心のある問題について意見を交換するということになろうかと思っております。
  78. 矢田部理

    ○矢田部理君 日米双方で相互に関心のある問題が、とりわけ具体的な問題も含めて話題になろうかと思うのでありますが、長官などが行きますと、幾つか注文をつけられて宿題を持って帰ることが間々あるし、今度もまたその危険なしとしないのですが、そういうことに対してわれわれとしては非常に遺憾だと思っておるわけです。国民と相談をせずに、アメリカと相談してまた日本防衛政策を考えていく、予算その他を努力していくというやり方もいかがなものかと大変苦々しく思っているんですが、その姿勢としては、長官、どうですか。
  79. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 日米安保条約の一方の当事国たるアメリカが、わが国の防衛あるいはわが国の行っておりまする防衛努力、こういったものに対して関心を持つこと、これは当然過ぎるほど当然であろうかと思います。したがって、いろいろ率直に話し合いをする中で、アメリカ側としてはアメリカ側の関心を示すということもそれはあり得ることだと思いますが、私といたしましては、あくまでわが国の防衛努力はわが国が自主的に判断をいたしましてこれを行っているのでありまして、仮に日米安保条約の当事者、締結の片方の当事者であるアメリカであろうがその他の国々であろうが、そういった国々の希望は希望として聞き、意見意見として聞くにしても、あくまで自主的に判断をして、国の他の施策などとのバランスなどもこれを考慮し今日まで防衛努力というものは進められてきたと、こう考えておりまするし、私自身としてもその線で進めていくつもりでございます。
  80. 矢田部理

    ○矢田部理君 当然のことながら、来年度の予算 問題が幾つか多少議論になろうと思うのでありますが、ちょっと時間の関係もありますので、具体的な問題を二、三お尋ねしておきたいと思います。  この議題として、マスコミなどでいま幾つか推測記事が書かれているわけでありますが、その一つに、F16の三沢配備の問題、配備に伴う思いやり負担の問題が論議されているわけですが、これはいまどんなぐあいになっておるんでしょうか。
  81. 塩田章

    説明員(塩田章君) 三沢におきますF16の展開に関連しまして、必要な日本側の負担といいますか、日本側が経費を持つものにつきまして、在日米軍との間に折衝をしながら五十九年度の概算要求の編成に向かっていま努力をしておるという段階でございまして、現在五十九年度の予算でいかなるものを請求するかということについての最終的な詰めを行っておる段階でございます。
  82. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはいつごろどの程度の規模のものがどんな手順で入ってくるのか、概要はつかんでおるでしょうか。
  83. 塩田章

    説明員(塩田章君) いま申し上げましたように、五十九年度の概算要求でございますから、今月末までにはまとめて財政当局に提出しなければならないということでございます。
  84. 矢田部理

    ○矢田部理君 八五年以降四年間に四十機ないし五十機を三沢に配備するということになっておるわけでしょう。そうすると、初年度つまり八五年度ですかにはどのぐらいの規模のものが来るということをつかんだ上で施設その他をつくり始めると、こういうことでしょうか。
  85. 塩田章

    説明員(塩田章君) 私が承知いたしておりますのは、八五年度に第一次分といいますか、ワンスコードロンぐらいが展開するだろうというふうに聞いておりますが、五十九年度予算として米側と折衝しておりますのは、その当初に展開される部隊に必要なものということで現在協議中であります。
  86. 矢田部理

    ○矢田部理君 それが住宅二百五十戸、隊舎三ないし四ということになるわけでしょうか。その金額、またそれだけのものをつくった場合にこちらに来る人員ですね、兵がどのぐらいで家族がどのぐらいかということはおよその見当はついておるんでしょうか。
  87. 塩田章

    説明員(塩田章君) 現在、全部の展開が終わった時点で家族、兵員を含めまして約三千五百人の増になるということは承知いたしております。そのうち五十九年度分にどれだけの計上をするかということにつきましては、いまお話もございましたが、住宅につきましては約二百五十戸、隊舎につきまして三ないし四棟、その他の支援施設ということで現在協議中でございます。いま具体的に金額を申し上げられる段階にはまだ至っておりません。
  88. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはどうなんですか。F16を三沢基地に配備したいと伊藤防衛庁長官時代にアメリカから申し入れがあった。それを受けるときに、日本側としては一つは軍事的な観点がありますね。私どもは、後で問題にしますが、非常に危険だというふうに考えるわけです。  もう一つは、その受け入れのために日本側としては総体としてどのぐらいの負担をしなければならぬか、設備その他をつくって提供をしなければならぬというデッサンみたいなものはなかったんですか。あったとすれば、その財政負担の規模とかアメリカとの分担の割合とかということは明確にできませんか。
  89. 塩田章

    説明員(塩田章君) 三沢のF16配備の持つ軍事的意味につきましては私からお答えする限りでございませんけれども、いまお尋ねの経費の面でございますが、当時、伊藤長官から基本的に受け入れるという返事をいたしました際に、私どもとしましても、当然日本側に何らかの財政負担を期待されるということでございますが、私どもは、現在行っております提供施設の整備費、俗に言われております思いやり予算でございますが、提供施設の整備費の中でできる限りこれに協力をしていくということを基本的な方針として考えておるわけでございます。  したがいまして、米側からどういう要求が来るということではなくて、わが方として毎年の予算の中でどれだけの協力ができるかということについて十分判断をした上、米側の申し出につきまして個々に十分その緊要度、必要性等を判断した上でできる限りの協力をしていこう、こういう態度でございます。
  90. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも最初、基本的に受け入れるというときにも中身が決まっていない。最近になって第一次分だということで住宅二百五十戸などを含めて要求があった。これも第一次要求であって、全体像がどうなのか、アメリカとの分担がどうなるのかも定かでない。こういう受け入れ方というのはいかにもおかしいと考えるんですが、いかがですか。
  91. 塩田章

    説明員(塩田章君) 繰り返しになりますけれども、全体の人員で約三千五百人の増ということ、そうしますと、常識的に言えば三、四棟の兵舎と住宅で約一千戸ぐらいというようなめどはもちろんつくわけでございます。それにまた、いろんな支援施設等もございますので、具体的に全体でどれだけだということが示されておるわけではありませんけれども、私どもとしましては、いま申し上げましたように、毎年度の予算の中で一体この問題についてどれだけの協力ができるかということを十分勘案した上でこれにできる限り協力をしていきたいという方針で臨んでおるわけでございます。
  92. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカとしてはどのぐらい負担するんですか。たとえば最近アメリカの上下両院でこの三沢予算をめぐってゼロにされたり、復活したり、まとまらないまま両院協議会に持ち込まれたりという動きがあるわけですが、これとのかかわりではどうなるんですか。その辺を説明していただきたい。
  93. 塩田章

    説明員(塩田章君) アメリカの議会の中でいろいろやりとりがあるということは承知いたしておりますが、その際にも新聞報道等で全体の金額を幾らで、そのうち日本に幾ら期待するのだというようなことを言っておるというような報道もございますけれども、私どもが在日米軍と接触する限りにおきまして、現在の時点でアメリカが全体的に日本に幾ら期待するのだという金額を示してきておるわけではございません。したがいまして、いまアメリカの国会でいろいろあるようでございますけれども、私どもはその経緯はもちろん注目いたしておりますけれども、私ども態度といたしましては、先ほど申し上げましたように、毎年の予算の中でできる限りのことを協力していくという考え方でございます。
  94. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも防衛予算というのはつかみ金的であり、特にアメリカとの関係では計画も立たない。受け入れると最初から言っちゃっておって、どのぐらい負担するのかもわからぬということでは、これは予算を審議する国会としては大変けしからぬという話になるわけでありますが、特に問題なのは、思いやり予算というのが五十四年ごろからですか、妙な言葉でありますが、計上されるようになった。これが年々物すごいピッチで増額をされているんですね。防衛予算の伸び率も突出しているわけでありますが、中でもこれは二けたの突出というふうになっているんですが、その傾向状況について説明をいただきましょうか。
  95. 塩田章

    説明員(塩田章君) 俗に言われます思いやり予算は五十三年度から一部労務費の関係で始まりまして、いま話題になっております施設費につきましては五十四年度から始まったわけでございますが、五十四年度に歳出ベースで百四十億二千四百万円、それが五十五年度には二百二十六億九千九百万円ということで、これはこの年で限りて言いますと、伸び率は六一・九%でございます。その後、五十六年度は対前年度比二一・八%、五十七年度は対前年度比二七・三%、五十八年度は対前年度比二四・八%で、歳出ベースで四百三十九億という数字になっております。
  96. 矢田部理

    ○矢田部理君 伸び率から言いますと、五十五年度は六一・九%、五十六年度二一・八%、五十七 年度二七・三%、そして今年度は二四・八%、二割以上。最初のころは六割ぐらいの大幅な伸びを示している。来年はいよいよ五百億突破だ、こういうんですね。しかも、その内容たるや、アメリカから逐一聞いてみなきゃわからぬ、分担の割合も決まっていないということでは、余りにもこの対応はずさんではありませんか。そういうことを抜きにして、また軍事的観点から受け入れるというのもいかがなものなんでしょうかという点で問題点を出しておきます。  問題点のもう一つは軍事的な問題でありますが、これはいかなる理由でアメリカは三沢配備を決定したんでしょうか、あるいは日本はまた受け入れることになったんでしょうか。
  97. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) 昨年の六月ごろ、在日米軍司令部を通じまして、米側から三沢にF16を配備したいという趣旨の申し入れがあったわけでございますけれども、その際の米側からの説明によりますと、三沢にF16を配備する目的といたしましては、極東における軍事バランスの改善に努め、米国のコミットメントの意思を明確にすることによりまして、日米安保体制の抑止力の維持向上を図っていきたいということを目的としておるという趣旨の説明を受けておる次第でございます。  私どもも、そういった米軍の申し入れを受けまして、関係省庁間におきまして検討をしました結果、こういった米側の措置が日米安保条約の信頼性を高め、抑止力を強化いたしまして、わが国及び極東における平和と安全の維持に寄与するものであるという判断をいたしたわけでございまして、そういった判断に基づきまして基本的にこの計画に協力をするということを決めまして、昨年九月の防衛庁長官訪米に際しましてアメリカ側にそういった日本政府の方針を伝えたという経緯がございます。
  98. 矢田部理

    ○矢田部理君 軍事バランスの維持向上だとか極東の平和と安全とかという抽象的な話じゃなくて、もう少し具体的な目的、場合によっては運用構想と言ったらいいんでしょうか、こういうものがあってしかるべきじゃありませんか。この辺はどうなっているんですか。
  99. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) これはアメリカ側の全体としての世界的な戦略が背景になっての措置であると理解をしておるわけでございます。  御承知のように、ソ連の軍事力の増強と申しますのは、かねて欧州正面が中心であったわけでございますけれども、近年は極東方面におきましても大変顕著なものがあるわけでございまして、極東方面におきます軍事情勢はきわめて厳しい状況になっておるわけでございます。  レーガン政権といたしましては、こういったソ連のグローバルな軍事力の増強に対処しまして抑止力の信頼性を改善していきたいということが基本的な政策になっておるわけでございまして、核及び通常戦力の近代化でありますとか、あるいは軍事体制全般の向上を図るというような基本政策をとっているように承知をいたしておるわけでございます。  F16の三沢配備という問題も、このような努力の一環であるというふうに私どもは理解をしている次第でございます。
  100. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはいろんな見方、考え方があるわけですが、結局、海峡封鎖のための配備じゃないんですか、宗谷とか津軽の。それと違いますか。
  101. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) 基本的な考え方はただいま申し上げたとおりだと私どもは理解をいたしておりますが、御質問のポイントは恐らく三沢という場所の条件からの一つの御指摘かと存ずる次第でございます。  この点につきましては、御承知のとおり、三沢の施設区域におきましては、かつては米軍の戦術航空部隊、F4等でございますけれども、こういったものが配備をされていた経緯がございます。これが一九七一年に引き揚げられましてから空軍機がそこに配備されていないという状態が今日まで続いておるわけでございます。  今回の米軍の措置は、その三沢に戦術航空部隊を再配置するということによりまして、先ほど申し上げましたように、極東における軍事バランスの改善に努め、米国のコミットメントの意思を明確化いたしまして、日米安保体制の抑止力の維持向上を図るということをねらいとしているものと承知をしているわけでございます。  そういったようなことでございまして、特定の海峡の防備等に直接ねらいをつけてどうのこうのというふうな考え方があるとは承知をしていない次第でございます。
  102. 矢田部理

    ○矢田部理君 単なる抽象的なバランス論とか抑止力論でだけ配置をするのじゃないでしょう、場所の選定や位置から見ても。結局、海峡封鎖とか、オホーツクの制空を握るとか、あるいはバックファイアと対応させるとか、いろんな運用構想を持って配備をするわけでしょうから、そういう抽象的なものじゃないのじゃありませんか。  あわせて、ここの一番大きな問題点は、日本防衛というよりも、アリューシャンから三沢、そして韓国の群山、ここにもF16が配備されているわけですが、これをやっぱりつなぐことを通してアメリカの本土防衛に資する。これを現に議会の秘密聴聞会で参謀本部議長が証言をしているんですね。そういうアメリカの一連の戦略に沿った配備だというふうにも言われているんですが、いかがですか。
  103. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) このF16が三沢に配備されました際の具体的な米軍としての運用の計画等につきましては、私どもは具体的には知らされてはいないわけでございますけれども、一般的に申しまして、このF16という戦闘機は非常にすぐれた多目的戦闘機というふうに言われておりまして、対地攻撃能力、それから対空戦闘能力、両用の機能を持っておるというふうに聞いておりますので、そういったような機能を前提としたいろいろな運用構想はあり得るかと思いますが、現在の時点におきましては、私どもは先ほど申し上げましたような一般的な配備の目的ということから判断をいたしておる次第でございます。
  104. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなた方もそれは専門的にこれを扱うわけですから、単に一般論でバランスの維持向上、平和と安全というような抽象論で余り受けとめるべきじゃないのじゃありませんか。もうちょっとこれは具体的にあるいは実戦的に問題をやっぱり考えていく立場にあるのじゃありませんか。  そこで、もう一つの問題点は、これは核兵器の搭載が可能なんでしょう。現に韓国の群山という基地にあるF16は核装備をしているというのがこれは専門家筋の常識でありますけれども、核搭載が可能なんでしょう。
  105. 矢崎新二

    説明員(矢崎新二君) F16そのものは、すでに何回か御答弁していると思いますが、機能としては核搭載が可能ではあるというふうには聞いておりますが、現在、群山にあるF16がそういったような装備をしているかどうかは私ども承知をいたしておりません。  それからまた、この三沢に配備されるであろうF16に関連してのお尋ねでございますれば、そういった核装備をわが国に持ち込むということにつきましてはこれは事前協議の対象になる問題でございますし、そういった場合には日本政府としては必ずこれはノーと言うというのが従来からの一貫した方針でございまして、そういった意味でわが国といたしましては三沢のF16に核装備が導入されるということはあり得ないというふうに考えておる次第でございます。
  106. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほどから言っておりますように、韓国の基地、三沢、そして最近では西アリューシャンの基地をアメリカは非常な勢いで強化をしている。全体として対ソ包囲網をつくる。しかも、韓国の基地を含めて横田の第五空軍の指揮下にこれは入るわけでしょう。全体としてやっぱり一体として対応していくというような状況から見ますと、単に軍事バランスの維持向上というような抽象的なものではなくて、より具体的な運用構想も持った配備であるというふうに私は思うし、 その意味でこの東北アジアにおける緊張を一段と高めるものでもあり、われわれとしては負担の面からもきわめてあいまいであるという立場から、これはやっぱりやめさせるべきだ、そんな予算は組むべきでないというふうに考えているわけでありますが、とりわけこの飛行機の内容から見ると、核搭載、核持ち込みの危険性も否定し得ないというような状況にもありますので、その点厳重に警告をしておきたいというふうに思うんですが、長官に、最後にまとめて考え方を伺っておきます。
  107. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 前長官時代に相当の日数をかけて検討をした結果、わが国政府としてはこれを受け入れるという最終決断に到達をいたしたわけでございますが、現長官といたしまして、三沢におけるF16の配備はわが国の安全、それからこの地域の平和の確保、さらにはわが国の安全に直接関係のございまする日米安保条約の有効な運用の面におきまする信頼性の一層の進展のためにも、私といたしましてはこのF16三沢配備というものはきわめて効果のある事柄と、こういうふうに判断をいたしております。  なお、御指摘のございましたような核の持ち込みに準ずる問題につきましては、厳然としてわが国の施策があるわけでございまして、これはもしそういうようなことが仮にあるといたしましても、当然事前協議の対象になるわけでございまして、そのときには先ほど来答弁をいたしておりますような措置になろうかと、こう考えておる次第でございます。
  108. 矢田部理

    ○矢田部理君 了解するわけではありませんが、もう一点だけ議題になるであろうと思われる点について伺っておきたいと思いますのは、厚木の代替基地です。  ミッドウェーの寄港というのは私ども補修とか休養のためにやってくるんだと受けとめております。今度も近々来て三カ月ぐらいドック入りをするそうでありますが、ところが、やっぱり重要な役割りとして艦載機の訓練の問題が隠されている。最近これが浮上をしてきて、御承知のようにドネリー米軍司令官などから再三にわたって、厚木じゃ困るから関東周辺に基地を求めてほしい、見つけてほしいということで要請を受けているようでありますが、つい最近の新聞では、三沢と岩国で当分暫定使用でやる、それからすでに調査費が予算で計上されておりますから、近々関東周辺に基地を求めるという作業がすでに始まっておるということですが、ここら辺はどうなっておりますでしょうか。
  109. 塩田章

    説明員(塩田章君) まず最初に、ミッドウェーの入港に伴いまして訓練という目的があるのではないかということでございますが、これは訓練が目的ではなくて、あくまでもミッドウェーの補修なり補給なり休養なりということが目的でありまして、その間訓練をなおざりにするわけにはいきませんので陸上基地で訓練を行うというものでございます。  それから、この厚木の代替の問題につきましては、御承知のように五十八年度で所要の経費を計上いたしておりまして、現在調査をいたしておるところでございます。繰り返しになりますけれども、三つの点につきまして、第一は従来ある自衛隊の飛行場、関東及びその周辺の自衛隊の飛行場等で代替基地として使えるものはないかという問題、第二は新設飛行場がどこかにできないか、第三は海上に浮体飛行場的なものができないかというような三つの観点からの調査を現在いたしておるわけでございます。ただし、現状におきまして、どの案でいこうというような成案を得ている段階ではございません。  それから、三沢、岩国の分散ということが御指摘ございましたが、これは現在すでに三沢、岩国は行われておるところでございます。現状におきまして、厚木だけではなくて、三沢でも行われておりますし岩国でも行われておるものでございまして、特に新しく分散ということではございません。
  110. 矢田部理

    ○矢田部理君 最後に、関東のどの基地でも、どの地区でもそんな物騒なものを持ってきてもらっちゃ困るという強い反対があるわけです「御承知だと思いますが。もともとミッドウェーの寄港そのものにわれわれは反対なわけでありますが、訓練を重視するような寄港には断固として反対せざるを得ない。特に、この訓練は夜間の訓練が特徴なんでしょう。しかも、低空で離着陸をやるということですから、騒音だけではなくて大変な危険を伴う。私どもの地元にも百里基地がありますが、ここも候補地の一つに上っているようでありますけれども、真っ平御免だということを強く申し上げて、私の質問を終わります。
  111. 高平公友

    委員長高平公友君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後一時休憩      ─────・─────    午後二時二分開会
  112. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  113. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、初めに人勧の問題についてお伺いをしたいと思います。  総裁も、今回の勧告に当たりましては、昨年の問題がありますので、相当御苦労されたことと思います。もしことし、昨年と同じようなことがありましたら、これは本当に大変なことだと私は思います。総裁はやめるのじゃないかと言う人もいるんです。非常に厳しい情勢にあるわけでありますが、そういうような意味で、きょうは総裁勧告に至る決意とか、今回の勧告内容等についてはここにございますが、特に勧告の特色みたいなものを、簡単で結構ですが、あわせて御説明いただきたいと思います。
  114. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 昨年の人勧凍結という異例の事態がございました後の本年度勧告でございましたので、御指摘になりましたように、私自身といたしましても、大変苦労をしたと申しますか、非常にいろいろのことを突き詰めて考えながら作業を進めてまいったような次第でございます。  その結果、現在のやはり公務員制度あるいは人事院制度がある限りにおきましては、これは従来の方針どおり仕事を進めていかなければならないし、それ以外のことは考えられないという確固とした気持ちでもって勧告作業に取り組んでまいったつもりでございます。その結果、従来方式で民間の実態調査をやり、これと国家公務員の実態とを比較いたしました結果、その較差となって出てまいりましたのが御勧告申し上げた六・四七というパーセントのものが出たわけでございます。  先刻も申し上げましたように、率だけで言いますと、去年の四・五八というものと比較いたしますと、ことし結局積まれました分を率で言えば一・八九ということになるわけであります。全体として一ころのような大きな幅ではございませんので、措置内容といたしましてはおのずから限界がございます。とすれば、どうしてもやはり本体である俸給表改定とそれから手当の中で特に生活給的な色彩を強く持っておる手当重点を置いて配分をせざるを得なかったということでございまして、結果的には俸給表改定、それに手当改善ということに重点を置いたつもりでございます。  次に、この俸給表改定に当たりましては、民間配分傾向等も十分調査をいたしたわけでありますが、民間自体も大変幅が少ないものでございますので、余り操作の余地もないということで、上下、上の方、それから下の方、ほとんど差がなく均等配分のようなかっこうで俸給表改定が行われておるようであります。これを参考にしつつ、公務員の場合も、どちらかと言えば、従来世帯形成層あるいはちょうど中ほどの中堅層というものがわりと全体としての中では冷遇されておるというか、十分の処遇を受けていないという ような、そういううらみがございますし、この点については特に意識していままでも相当改善を図ってきたつもりでございますけれども、総合較差というところから出てまいります配分でございますので、おのずから限界があってまだ十分というわけにはまいりません。しかし、引き続きその方針はやはり堅持をしていきたいということで、世帯形成層中堅層には特に重点を置いて俸給表の作成を行っておるわけでございます。  全体として行政職関係は六・四%ということになりましたが、他の俸給表につきましてもそれぞれ作業をいたしました結果は、平均してほぼやはり六・四%どまりということに相成りました。特に指定職俸給表については、従来も申し上げてまいっておりますように、ここ数年間非常に意識的に抑制措置を講じてきたということもございまして、俸給表自体についても、非常に自粛と申しますか、上級の方々にはお気の毒ながらがまんをしていただくというような形で来ております。そういうことで、大分民間との較差が出てまいっておりまして、ことしの場合は三〇%を超すというような較差が出てきておるわけです。ただしかし、これは公務部内の関係もございます。上の大臣あたりも、ずっとここ当分いろんな事情もあって据え置きというようなこともございますので、指定職関係自体をそう大幅に急に改定をするというわけにはまいりません。そういうことで、引き続きやはり六・四%程度の引き上げということでごしんぼういただくことにいたした点が俸給表作成に当たっての配慮でございます。  その次は手当でございますが、これは詳しくは申し上げませんが、扶養手当、通勤、住居等についてそれぞれの改善を行いましたが、なかんずく扶養手当については配偶者あるいは子供さんというものを中心にして改善措置を講ずることにいたした次第でございます。  なお、この改定に当たりましては、去年のことしでございますので、ぜひともこれは完全に実施していただかなければ困る、そうでないとやはり人事院制度自体の根幹に触れるような大変なことになりかねないということから、私としては大変な決意のもとにこの作業を進め、また国会内閣に対しましてはぜひともことしはひとつ完全実施をしていただきたいということを強く要請することにいたしております。  その要請の仕方というのは、簡略に項目的に申しますと、一つは、やはり昨年ああいうことになったために、公務員の間に、それほどあからさまではございませんが、やっぱり心の中では民間が上がっておるのに自分たちだけが抑えられたという不満というものはどうしてもこれはくすぶらざるを得ない。事実、較差が出ておるし、また生活問題もございますので、こういう点はやっぱりどうしても配慮をしていただかなければ人事院勧告制度の持つ意義というものが没却されてしまうではないかという点。  それからその次には、四現業の職員については去年も実は実施をされておるわけであります。四現業の中には、先生もよく御承知のように、たとえば林業関係職員ということになりますと、同じ部屋で机を並べてやっておる職員の中で、仲裁裁定の対象になっておる者と人勧の対象になっておる職員があるわけなんです。それが一方、向かい側の職員実施されて、こちらは凍結だということで、これはやはり大変職場の秩序と申しますか、そういうところからいっても士気影響することはこれは多大なものがあるというふうに思いまして、その均衡はやっぱりぜひとも講じてもらわなきゃならぬということがその次であります。  それから、何よりも私が恐れておりますのは、労使関係の安定というものにひびが入るということになっては大変ですよということであります。これは国会でも大変御審議いただき、また御協力いただいた結果、だんだんと従来の勧告というものが完全実施の線に近づいて、しかも完全実施になってからもうすでに十年余を経過するわけなんです。それが財政事情いろいろというもののだんだん抑制措置が講じられて、去年はついに見送り凍結ということが出てきたわけなんで、これはやはり労使関係の安定という面から見まして、勧告完全実施がやはりそれぞれの安定に非常に寄与してきたことはこれは申すまでもございません。  私は、前、三十八年以来しばらくの間人事院の事務総長として御厄介になりました当時のことを考えますと、非常にやっぱり感慨新たなるものがございます。当時は、勧告作業自体が役所では行えなかった。方々に居所を変えてやらなければ仕事にならなかった、包囲を受けたりなんかしまして、それから交渉をいろいろ強要されたりというようなことで。そういう事態がございました。それがだんだんおかげさまで完全実施というものが定着するに従って、非常に他もうらやむような労使関係というものが私は出てきておったと思うのであります。それにやっぱりひびが入るようなことになったらこれは大変であります。あからさまではございませんですが、管理者の諸君の中には内々それで最近やっぱり大分苦労している、納得させるのに非常に気を使うというようなことを私の耳にも直接、間接に入るようなことになってきております。これは非常に私は大変なことではないかというふうに思っておりまして、ぜひとも今度の場合は完全実施の方向で早急にお決めいただきたい、かように考えている次第であります。
  115. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは給与担当大臣の総務長官にお伺いをしたいんですが、まだ政府はことしの人勧についてどういうふうにするということは決めていないわけでありますが、少なくとも給与担当大臣としては、これはやっぱり人勧の重要性から考えて完全実施というお考えでいなければいけないわけでありますが、総務長官のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  116. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 現在政府は、給与関係閣僚会議において本年度のいただきました人事院勧告取り扱いについて政府の方針を国政全般の立場に立って検討しておりますが、私としても、先生からいまおっしゃっていただきましたように、給与担当大臣であると同時に現内閣の閣僚として政府勧告実施に最大限の努力を尽くすべきことを主張しておるところでありまして、特にこの人事院勧告制度というものをどこまでも守っていきたいという考えで、けさほども言っておりますように、最大限の努力を尽くすべきことを主張しておるのでございまして、この点は私も精いっぱい、誠心、心を込めて閣僚として内閣の中でもがんばると申しまするか、人事院から出された勧告を十分ひとつ認めていただくようにしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  117. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうぞよろしくというよりこちらの方が、大臣が関係閣僚会議の中でしっかりがんばっていただいて、それで総務長官が完全実施していただきたいといってがんばらないと、ほかの方は何とか減らそうといってがんばっておるわけですから、その点はぜひこれはがんばっていただきたいと思います。  それで、これはわかり切ったことですけれども人事院総裁にちょっと一言だけ聞いておきたいんですが、この人勧というのは、これは総裁の談話のしょっぱなにもあるわけですが、これは国会及び内閣に対して勧告をしておるわけです。これは大体内閣が法案にして出すわけですけれども国会の役割りというものはそれなりに私はあると思うんですが、ここら辺のてんまつ、いきさつというのはどういうことだったんですか、初めは。御存じですか。
  118. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) これは、私の考え方では勧告制度自体のやっぱり制度的な重みというものから来ておるものではないかというふうに考えております。こういう制度はほかにございません。また、諸外国にもないというふうに私は承知いたしております。同時に勧告内容を、その実現を国会とそれから内閣とあわせて並行して要請をする、お願いをするという制度はほかにございません。このことは、やはり中立的な人事院というものが公務員制度の趣旨にのっとって労働基本権の ない代償措置として認めておるのだから、そういう意味で、重さが違うよという意味内閣のみならず国会にも同時に意思表示をし、お願いをするということになった特異な制度ではないかというふうに私は思っております。
  119. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、確かにこれは国会及び内閣に対して勧告しておるわけですから、総裁、もし内閣がこれを実施しなかったら、逆に言えば国会としてやればいいわけで、これは委員長にお願いして。臨時行政調査会の後の臨時行政改革推進審議会のこの間勧告がありましたですね。あの「当面の行政改革に関する意見」という中にこの人勧のことがちょっと書いておられるわけですが、それによりますと、「政府及び国会が責任を持って適切に決定すべきである。」と、こう書いてあるわけですよ。ですから、「政府及び国会が」ですから、政府がやらぬときは国会でもええと書いてあるわけです、逆に言うたら。  そういうような意味では、私たちこの内閣委員会でこの問題についてはいままでも何回も、相当長い間審議をしましたし、先ほど総裁もおっしゃいましたように、完全実施に至るまでの審議の経過ということもありますし、また当内閣委員会で長年この問題を審議してきたわけでありますけれども、もしこの問題について国会が何にもやらないと、たとえば今度の人勧の問題について委員長から政府に対して、今度九月に臨時国会は開かれるということを聞いておる、それでその臨時国会の冒頭にこの人事院勧告に関する法律を早急に取り扱って方針を決定してそれで法案を出してもらいたいというふうに要請をする、それでその要請に応じなかった場合は臨時国会内閣委員長の今度は委員長提案として完全実施のための法案を提出する、そういうこともしてええと。あかんとは書いてないわけですね、これは。そういうことをするぐらいのやっぱり腹構えでわれわれ内閣委員会としてはこの問題に取り組まないといけないということを少なくともこれは人事院からは要請をされておる、逆に言えば。総裁、そういうふうに受けとめてもええんですかな、これ。
  120. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 趣旨としてはそういうふうに受けとめていただいて結構であります。  特に、先刻申しましたように、国会内閣に対して要請をいたすわけでありますが、これは私が言うまでもなく、国会というものはこれは国権の最高機関でありますからして、法律では内閣及び国会でなくて国会及び内閣という順序になっております。したがいまして、この趣旨を尊重して、私がその勧告を持ってまいって説明をいたします際も、まずやはり国会に参ります。まず国会に来て、ことしはちょうど参議院の方は副議長さんがいらっしゃいまして、副議長さんにお会いして詳細に御説明を申し上げる機会がございました。それから官邸に行って総理大臣にお話をする。そういう順序になっておる点から見ても、この問題のやはり特異性と人勧制度の地位の重要さというものがあるというふうに私は確信しております。
  121. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そういうことだろうと私は思います。そういうような意味では、われわれとしては総裁のいわゆるこの人事院勧告というものを重要に受けとめて処理をしていかなければならないと思っております。  そこで、総務長官、総務長官は当然私は御存じだろうと思いますが、この人事院の役割りと使命という問題についてこれは御認識になっていらっしゃると思いますが、どういうふうにお考えですか。
  122. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 人事院勧告についてか、人事院全体の役割りと申しますか、先生のお尋ねどちらでお答えさしていただいたらよろしいでしょうか。
  123. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 細かいことは結構です。総論としておっしゃっていただいて結構ですが、要するに、これから人事院の役割り、使命というのは非常に重要になってまいります。そういうふうな意味で、総括的で結構です。総務長官はどういうふうにお考えか、お伺いしておきたいと思います。
  124. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 私どもは、公務員等の採用から、なおまた人事管理から、特に今回のような人事院勧告、すなわち公務員の方々の労働基本権関係するような問題等一切は人事院で取り扱っていただき、国会並びに政府の方にもいまのお話のありましたように御勧告等もいただけると、こういう機関だと考えております。
  125. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総務長官がおっしゃるように、そういうふうないろんな意味から考えてこの人事院の役割りと使命というのは非常に私重要だと思います。その非常に重要な人事院勧告を二年にわたって凍結するなんということは、とても私は無理だろう。それは使命と役割りという面や、その職務権限や、いろんなことから考えてみましても、それが無視されたのではいわゆるよって立つあれが全くなくなってしまう、そういうような意味で非常に重要だろうと私は思います。  そこで、これは総裁、臨調の第三次答申の中でも、この問題についていろいろ議論はあったそうですが、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度は維持され、尊重されるべきであると、こういうふうになっておりますし、政府自身も毎年給与改善費として、非常に少ないですけれども幾らかずつ計上しておる。そういうふうないろんな体制、そういうふうな体制にありながらいわゆるこの勧告凍結されるなんということになったのでは非常にまずいわけでありまして、総裁はしょっちゅう、昨年のいろんな問題に関しまして遺憾千万である、こうおっしゃっておりますが、そういうふうな意味から考えてみまして、この人事院使命というのは大変重いものがあると思います。  そこで、総裁として、今度は人事院側としてこの人事院使命というのはどういうようにお考えになっていらっしゃるかということと、それからやっぱり人事院そのものが長い年月を経てここまでやってまいりました。いろんな社会的な情勢等も考えて多少は考えざるを得ないという点も出てきているかもしれません。そういう点、あわせまして、これからのいわゆる人事院のあり方、使命というものについて総裁はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、この点もちょっとお伺いしておきたいと思います。
  126. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 人事院使命あるいは性格、その任務等について、諸先生方は大変御専門でいらっしゃいますから、この機会に私からその内容の詳細にわたって申し上げることは、繁雑でもございますし、省略をいたさせていただきますが、ただ問題は、公務というものを執行するに当たっては一つはやはり国民に対しては公正でなければならぬ、もう一つは能率的でなければならぬ、この二つの要請が公務執行については大きく要請される点であろうかというふうに思います。  しからば、それを制度的に公正にして能率的な公務運営というものをやるためにはどうしたらいいのかということから、いろいろ従来の人が研究もし、心配もした実際の体験から積み重ねて出てきたのがこの公務員制度であるというふうに思っております。特に、日本の戦後の公務員制度は占領行政の一環としてなされた点があったことはこれは事実であります。しかし、制度日体としては、私はやはり世界に誇ってもいいりっぱな内容制度であろうかというふうに思っております。  それから、やはりそういうところから、任用に当たっても、あるいは研修にいたしましても、職員利益の保護ということにしましても、また公務員の綱紀の粛正というような点からいたしましても種々の規定を設けてきておるわけでありまして、それの運用というものについては三十数年間いろいろやってきた結果、それなりに定着をして今日まで来ておるということがあろうと思っております。私は、この制度それなりにりっぱな制度であって、また大方の御理解を得て定着をしてそれなりの効果をりっぱに上げてきておるのではないかというふうに考えております。  ただ、こういう成果の上に安住しておってはこれはいけないわけでありまして、絶えずわれわれはやっぱり真摯に反省をして問題点というものを えぐり出してこれに対応する施策というものは果敢に講じていかなければならぬというふうに思っております。そういう角度から、先刻も御報告申し上げましたように、人事行政制度の見直しというものを現在やっております。やっておりまして、これは成案を得次第順次実行に移してまいりたいと思っておるわけでありまして、これを通じて今後相当長期間にわたってたえ得るような公務員制度というものを構築する努力を積極的に現在やっておるというような段階でございます。
  127. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総裁には、もう一点だけお伺いしておきたいと思います。  午前中の「給与勧告骨子」の説明のときに総裁もちょっとおっしゃいましたが、今年度勧告較差六・四七%ですね。昨年の分が四・五八、それで差し引き今年の分が一・八九、こういうふうに説明をされましたが、これは新聞論調の中のどこかにあったんですが、昨年は凍結だからそのまま、ことしの分だけというふうな記事もあるわけですが、そういうふうないわゆる分離なんというのはこれはできるわけなんですか、実際問題として。それで、しかもその扱い方、そういうふうな分離の仕方、扱いの仕方をされると非常に困るわけですけれども、そこら辺のところは、これは総裁の御答弁の中にもそういうふうな分離した話が多少出てまいりましたが、ただ数字の上で算術的にそうすればいいというものでもないような気もするんですけれども、ここら辺の考え方はどういうふうに考えるべきなんでしょうか。
  128. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 数字として申し上げただけでありまして、お説のように、これは分離は結論的に言ってできません。  できませんという意味は、去年の四月現在で調べた結果は四・五八であったわけですが、御承知のように、民間では春闘ではなくてその後のやはり賃上げというものが年間を通じて行われております。これが一つの要素。それから公務員側といたしましても、その後職員の構成というものに変化が生じております。それから子供さんが生まれたとかなんとかというようなことで、手当額その他についても変動を生じます。したがいまして、直接に四・五八がことしの何にそのまま率として入り込んでいるというわけにはまいりません。そういうまた調査は不可能であります。しかし、去年凍結をされたからそれに相当する分がことしの較差の中に溶け込んでくるであろうという意味で申し上げておる次第でございまして、結果的にことしの四月に調べたところが去年凍結という事実もあるので六・四七という数字が出てきたというだけのことでありまして、これを去年分のものとことしの分と分けて云々ということは、これは技術的に言っても、また制度的にも不可能であります。
  129. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 官房長官がお見えになりましたので、官房長官もいまお聞きいただいたと思います。勧告の中身、これは総務長官もお聞きいただいたと思いますが、新聞報道には、たとえば五十七年度勧告凍結されたんだから五十七年度の分四・五八は凍結して、いわゆることしの分は六・匹七%だから差し引き一・八九%を実施すればいい、そういうようなのが書いてありましたんですが、そういうふうな論調もあるかもわかりませんが、技術的に考えて、またこのいわゆる勧告の中身から考えてそういうふうなのは不可能であるという総裁の御意見がありましたので、頭の片隅に一遍とめておいていただきたいと思います。  そこで、官房長官、この人勧の問題ですね、これは官房長官よくいろいろな面で御存じのことばっかりでございまして、例の昨年の凍結する段階で議長見解もございましたし、その中にもこの人勧の問題がうたわれているわけでございますし、政府としてはこれは速やかに関係閣僚会議を開いていただいて、できるだけ早く完全実施をしていただくようにお願いをしたいわけでありますが、政府としての基本的な考え方、これからの方針等をお聞かせいただきたいと思います。
  130. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 人事院勧告制度、これは政府としては最大限に尊重をしていくという、この態度は変わりはございません。ただ、最近のような厳しい財政状況でございますから、やはり国政全般の立場に立って検討しなきゃならない。しかし、同時にまた、他方、公務員生活の問題、これは政府が雇用主としての責任があるわけですから、こういった点も一方考えなきゃならぬといったようなことで、先般の勧告をいただいた後、即日関係閣僚会議を開いて検討したわけでございますが、大変むずかしい問題でございますだけに、各閣僚それぞれの意見がございました。  ただ、事柄が事柄ですから、私どもとしてはできるだけ早く結論を得たい。それには、恐らくやことしは、従来の例から見ましても、何回となしに開かなければ最終の意見の一致は見にくいであろう、こう思いますけれども、精いっぱいの努力をして、そして人事院のお立場も考えながら、司時に職員生活保障という面も考える。しかし、他方、行政審の厳しい抑制の御主張もございます。行政審は、御案内のように、国民世論というものを背景にしてやっているのだ、こう言っておりますから、ここらも念頭に置きながら妥当な結論を出して、そして実施に踏み切りたい、かように考えておるような次第でございます。
  131. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 官房長官、まことに申しわけないんですが、行政審の意見というのはこれは八日四日に出ているわけでありますが、その中身によりますと、この人勧の問題につきましては「政府及び国会が責任を持って適切に決定すべきである。」、こういうふうにありまして、抑制せいとかどうのこうのというむずかしい話はありませんでして、ここのところはよくお考えになっていただきたいと思うんです。  それから、先ほど官房長官がお見えにならないときに人事院総裁から話がございましたが、人勧凍結することによりまして、いろんな問題がありますけれども、詳しく説明している暇はありませんが、これは民間賃金との較差、やっぱり公務員の不満というものが内面に蓄積されつつあるという問題が一つ。それからもう一つは、御存じのとおり、四現業の皆さんは昨年実施されました。そのために、机を同じように並べて仕事をしておっても、いわゆる上がった人と上がらない人の差がある、そういうような問題。あるいは戦後三十数年間のいわゆる労使関係にひびが入ってはいけないということを非常に心配しておるというお話がありました。この三点はやっぱり頭に入れてこの問題をぜひ取り扱っていただきたいと思います。  官房長官、時間がございませんので、この問題はちょっとペンディングにしておきまして、次に靖国の問題を官房長官にお伺いしておきたいと思います。  この問題は非常に重要な問題であろうと思います。それで、先般から中曽根総理大臣の発言を見ておりますと、やっぱりいろんな角度から考えてみてみましてこれは非常に危険な思想がずいぶんありますし、総理自身が靖国を公式参拝したい、そのためのいわゆる合理的な根拠づけをつくれと総理が指示したやに受け取れる記事が非常に多いわけです。  それで、この問題についてまず官房長官にお伺いしたいのは、現在の中曽根内閣としてはいわゆる靖国神社の公式参拝という問題についてどういうふうに考えていらっしゃるのか、現在の中曽根内閣はこういうふうに考えておりますというのを、ひとつ一遍教えていただきたいと思うんです。
  132. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私どもは、かねがね国会等でも明らかにいたしておりますとおり、いわゆる公式参拝ということについてはまだ合憲とも違憲とも判断をしておりません。しかしながら、違憲の疑いを否定し得ない現状にもある。そこで、事柄の性質上、きわめて重要なことでありますから、慎重に対処しなければならぬ。したがって、国務大臣が公の立場において参拝をするというようなことでなくて、いわゆる私人としての参拝をする、かように従来から政府は決めておりますが、この考え方は現在も持っておるというようにお答えをいたしておきたいと思います。
  133. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 さっき午前中にも、いま官房長官がおっしゃった御答弁と同じ御答弁をお伺いしました、閣僚の公式参拝は控えてもらいたいと。それは公式参拝は違憲の疑いを否定し得ないところである、したがって公式参拝は差し控えてもらいたいというのが現在の政府の公式の見解ですと、こういうふうにいまもお伺いしたわけでありますが、それにもかかわらず、参拝は私人で行くべきであるというのも明確に先ほどおっしゃいましたですね。  ところが、実際問題として、昨年、一昨年とずっと、最近はいわゆる中曽根総理大臣以下大多数の大臣がみんな参拝しておるわけです。公式の政府の見解とは裏腹に、実際問題としては靖国に参拝する人たちがどんどんふえておるというふうな問題は、事実関係は大分政府の公式見解とは違う方向にいっている、そういうふうに私は思うんですけれども、この点はどうなんでしょうか。
  134. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 国務大臣がそういう身分を持っておるわけですけれども、参拝はあくまでも私人としての立場で参拝をしておるわけでございます。やはりこの問題は、憲法論議ももちろん一方にありますが、遺族の心情というようなことに思いをいたし、そしてまた英霊に対してその霊を慰め、そしてまたこういった亡くなった方方に敬意を表するということは、国民立場においては私自身は当然のことではないか、私はさように考える。  ただ、これは憲法上確定はいたしておりませんが、いろんな議論があることも事実でございますし、したがって公人たる立場においてはやはりこの際慎重な行動をとろう、こういうことになっているわけでございまして、そこで従来から、たとえば内閣総理大臣何のだれがし、国務大臣何のだれがしというようなことで記帳することについてはいかがなものかといったような御議論もございましたけれども、これは御案内のように、例は悪いかもしれませんが、私どもしょっちゅう色紙を書かされる。そのときにも国務大臣後藤田正晴と書くことは幾らでもあるわけでございまして、そういう地位を持っておる個人という立場、これを離れてやっているわけではございません。  例はいささかおかしかったかもしれませんが、やはりそこへ行ってお参りするときに個人の名前だけしか書かない方もいらっしゃるでしょうし、あるいはまた自分が持っておる資格というものを書いてお参りに行くこともある。こういったようなことでございますから、いま閣僚がお参りをしておるのも別段私は公の行事あるいは公人としてお参りをしているというわけではない、個人としての立場でお参りをしておる。そのことは、国民としていろんな考え方が、人によって違うかもしれませんけれども、私はあたりまえのことをあたりまえとしてやっておる、かように考えておるわけでございます。
  135. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、官房長官がおっしゃるその戦没者追悼の意味あるいはその英霊に対する考え方、そこら辺のところは何ら変わるところはないわけです。われわれだって同じなんです。  しかし、これは官房長官にお考えいただきたいんですけれども、三木さんが総理大臣のときには四原則みたいなものを決めておられました。これは御存じのとおり、総理大臣というような肩書きは書くのをやめておこう、それが一つです。それから公用車は使わないようにしよう、あるいは職員は同行させないとか、玉ぐし料は自分で持つようにしようとか、原則を決めておりました。それが何でこういうようになったかというと、やっぱり公人、私人の区別が分けにくいし、非常にむずかしい問題がある。また、国民立場から見て、内閣総理大臣何の何がしなんて書くとやっぱり私人ではなくて公人というふうなことになりかねない。だから、そういう疑われるようなことはやめようということでこういうふうになったわけですね。  ところが、実際問題として、その後、今度は五十三年の十月になりますと、車は警護の都合上これはやむを得ぬというふうになってきて、そのときには玉ぐし料だけは私費で払う。だんだん、五十五年の十一月にはまたそういうふうに少しずつなし崩しにされているわけですね。しかも今度は、そのなし崩しにされたその問題が、今度の中曽根総理大臣になると、基本になっていたいわゆる憲法問題そのものも考え直せというのは、いわゆる憲法違反の疑いがある、否定し得ないという政府の見解このものも検討し直せというふうにわれわれとしては受け取れるわけですけれども、ここら辺のところは、実際、総理の真意というのはどういうところにあるんですか。
  136. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) この問題についての経緯は、いま峯山先生がおっしゃったように、三木さんのときから福田さん、鈴木さんといろいろ御意見が出ておりますが、三木さんのときには例の四原則とでもいいますか、あの方はあの方なりのお考えでそういうふうにおっしゃったと思いますが、これは別段内閣の方針としてやったわけではございません。したがって、あの四原則そのものが内閣の基本の方針であったということではない、これはひとつお答えをしておきたいと思います。  なお、中曽根総理の最近の御発言についていろいろ午前中も御質問ございましたが、これはそのときお答えしたように、自由民主党の中に靖国問題を非常に重要視せられてずっと研究をしていらっしゃる議員の方がたくさんいらっしゃる。その方が代表者として数名お越しになって、自分たちは憲法違反とは思わない、したがって総理大臣がひとつ公式参拝をするように、こういうお話があったようでございます。そこで、それに対して総理の方から、君たちがそういうように公式に参れということであるならば、内閣としてはこれは合憲、違憲は決めてはいないのだけれども疑いを否定し得ない、したがって公人としては参拝しないという方針が従来決めてあるから、そこで君たちがそう言うのならひとつ党で検討をしなさい、こういうことを言われたので、これまた私は、これは総裁として当然の申し入れに対するお答えではなかったかなと、こう思います。  それから、前橋の新聞記者会見の際に、党でも研究しろ、内閣でも勉強するというようなことが記事で出ておりましたが、これはまだ私は新聞記事で読んだだけで、総理から内閣にも勉強してもらいたいという御指示は受けておりません。したがって、もしこれから先そういう総理の御指示があれば私どもは勉強をするということを検討してみたい、こう思います。恐らく、これは私の推測でございますけれども総理はしばしば国会等で、国民的な、憲法問題についても議論があり、勉強するのはいいことではないか、また院内においても余りそういったタブーを設けないで勉強するということはいいのじゃないか、ただ中曽根内閣として憲法の問題を政治課題とはしない、こういう大前提のもとでお互い国の基本の法律なんだからいろんな議論がある以上はみんなが率直に勉強することはいいのじゃないか、こういうことをお答えしている。そういうお気持ちでこの問題も勉強したらどうかな、こう言われたのではないかと、こう私は推測をしておりますけれども、まだ私にはさような指示が来ておりませんので、指示が参りました上でよく勉強してみたい、こう思います。
  137. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 法制局長官にお伺いします。  靖国神社の公式参拝の問題について、法制局としては正式にはどういうふうなお考えでいらっしゃるのか、これをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  138. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 靖国神社の公式参拝につきましては、昭和五十三年の十月十七日と昭和五十五年の十一月十七日の二回にわたりまして政府統一見解が示されておるのでありますが、統一見解の基本的な考え方を申し上げますと、先ほど官房長官もお触れになりましたように、靖国神社の公式参拝は憲法第二十条第三項との関係で問題があり、「政府としては違憲とも合憲とも断定していないが、違憲ではないかとの疑いを否定できない」というものでございまして、これは政府の統 一見解でありますから、当然のことながら法制局の見解でもあるわけでございます。  私どもといたしましては、従来のこの統一見解は、憲法二十条の政教分離につきまして昭和五十二年の津地鎮祭の最高裁判決において示された一般的な判断基準に照らして考えました場合には妥当なものであるというふうに私どもとしては考えております。
  139. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 法制局がわけのわからぬことを言うておるから政府がわけのわからぬことを言うておるわけですな。本当に、これ、もっとわかりやすう言うてくれへんかな。とにかく問題がある、違憲との疑いがある、どういうことか、これは要するに。靖国神社に参拝するということについては、もう少し法制局というところは国民にわかりやすく言うてもらわなきゃ困りますね。  とにかく、われわれがどういうように考えているかというと、少なくとも内閣法制局は、憲法第二十条に定められた信教の自由と政教分離の原則に照らしてこの公式参拝というのはやっぱり違憲ではないか、または違憲の疑いがあると。疑いがあるというのもまたややこしいわけ、これ。少なくとも、違憲である、または違憲の疑いがある、そこら辺のところはやっぱりもう少し明確にわかりやすく説明をしてもらいたいと思うんですね。  それで、何でそういうように明確でないかという点を、これはもう少しきちっと詰めてもらいたいわけですよ。たとえば違憲の疑いがあると言うからには、どこら辺が違憲の疑いがあるのか。公人ということで、私人なら問題ないんでしょうから、公人で問題があるわけですから、公人というのはどこら辺からどこら辺までが公人でどうなるのか。内閣総理大臣中曽根康弘と書くと公人であって、内閣総理大臣たる、「たる」とこう入れると公人ではないとか、何かわけのわからないことを言っているのでしようがないので、もう少しわけのわかるような見解を法制局長官がきちっと言うてくれぬから政府側も困っておりまんねん。  これはやっぱり、あなたは法制局長官と違うたわけですけれども、あなたは部長さんで補佐しておったわけですから、それは現場の責任者ですわな、言うたら。ですから、そういうふうな意味で、もう少しここら辺のところをきちっと一遍、われわれにわかりやすく、総理大臣もうろうろせぬでもええように、官房長官がいろいろ弁解せぬでもええように、ちゃんと一遍言うてください。それで、法制局の見解はこうです、法制局長官はこうですと言うたものを官房長官はいややとは言えぬわけや、これは。どうせ後で裏で相談して決めるんやろうから一緒やろうけれども、一遍やってみてください。
  140. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 大変率直な御意見を承りましたけれども、先ほどお話のありました、中曽根総理が言われた「総理大臣たる中曽根康弘」という問題は、必ずしも、いまの公人、私人の区別ではございますけれども、この基本的な政府統一見解にかかわる問題ではないわけでございますが、いずれにしましても、このいわゆる基本的な統一見解につきまして一番のポイントは何かと申しますと、やはり公式参拝が合憲か違憲かというそのけじめは、憲法二十条三項に言うところの宗教的活動に当たるかどうかという点でございます。  そこで、この点につきましては、もちろんまだ憲法判断が裁判所で出されておりませんけれども昭和五十二年のいわゆる津地鎮祭についての最高裁判決におきまして、この憲法二十条三項の宗教的活動とはということで、その概念と申しますか、定義を詳しく述べております。ただ、この概念も、いわば個人の内心にわたることであるだけに非常に抽象的でございまして、これを公式参拝に当てはめてみましても、いわば合憲であるかあるいは違憲であるかということを判定するのが非常にむずかしい問題である。これはいわば、いま申し上げましたように、個人の内心の意思とかあるいはまた国民的な意識の問題にも絡む問題でございまして、一刀両断で法の論理だけで果たしてこの際割り切っていいものかどうかということが非常に問題でありまして、そういうことで、私どもといたしましても、先ほどもちょっと御批判がございましたけれども、必ずしも断定はできない。しかしながら、違憲であることの疑いはなお否定できないというような見解でおるわけでございます。  なお、先生の御示唆もございまして、なおせっかく勉強させていただきますが、いまのところはそういうようなことで私どもとしては見解を申し述べている次第でございます。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 何や知らぬけれども、これから勉強するのかいな、ほんまに。勉強しているから長官になったのと違うのか。  七月三十一日の新聞によりますと、「内閣法制局は①「内閣総理大臣たる」という表現は「中曽根康弘」の形容詞と考えられる②従来も記帳に当たり、その地位を示す肩書を付すことが、慣例としてしばしば行われており、肩書を付したから私人の立場を離れたとは考えられない――などの判断から、首相発言は「憲法の範囲内」との判断を示した。」と。そんなことあるんですか、これ。これは、何か知らぬみたいな顔しているけれども、「内閣法制局は」と書いてある。この問題もちょっとやっぱり「たる」ということを書くのと書かぬのとどれだけ違うのか、学問的に詳しく教えてもらいたいですな。  それから、あなた、さきの津の裁判の話をおっしゃいましたが、内心の問題というふうにあなたはおっしゃいましたが、確かに参拝する方は内心の問題でしょうけれども、参拝された方のことを津の裁判では言うているわけですよ。これは、ですから、こういうことですわ。「当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が」、その効果が、中曽根さんがそこへ行ったというその効果がその宗教にとって、「宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。」と、こういうふうにあるわけですから、靖国神社としては、中曽根さんが内心で参拝するとかどうのこうのと中曽根さん側から言うんじゃなくて、相手側から見た場合に、中曽根さんに来ていただいたということはわが靖国神社としては大変名誉なことであるというふうに受け取って宣伝やいろんな面に使うとすればそれは宗教行為になるわけでありまして、靖国神社が中曽根さんが来ようがだれが来ようが同じように扱ってやるんなら、これはそうならないわけですよ。そうでしょう。やっぱりわれわれもちょっと勉強してまんね。長官、ですから、それはやっぱりきちっと言うてもらわなあきまへんで、これ。  それから、この間の大阪での裁判あったでしょう。大阪のあれは箕面の裁判、これは大阪地裁の判決ですけれども、これはもっと明確でっせ、中身は。これは、長官、勉強しておられますか。こんなことはきょうのあれで勉強しておられると思いますけれども、これは中身はもっと明確に、「公務員が、宗教上の儀式に参加することは、それが如何なる目的で、如何なる必要から行われたものであっても、」「常に私人としての行為であると解するほかはないのであって、その行為が公の立場、すなわち公務となりうる余地は全くない、」と、そういうふうに明確に言っておるわけです。こういうふうにわかりやすう言うてほしいな、判決というのは。あなたの答弁、もうちょっとわかりやすう言うてほしいんです。  それで、それだけじゃないんですよ。そのほかのいろんな問題についても、たとえばこれは文部省の通達――きょう文部省来ていただいていますか。文部省の通達もこれは憲法に違反しておるとはっきり言うておるんやからね。それはわかっていますね、あなた方。この問題についてもお答えいただきますが、いずれにしても、この文部省の通達すら、いわゆる地鎮祭に参加することすらやっぱり問題があると明確にうたっているわけでありまして、こういういろんな観点から見て非常に重要な問題でありますし、こういう問題は法制局としてもこれから勉強するなんていうんじゃなくて、これは法制局としてのいままでの長年の法律の積み重ねがあるわけですから、そういうふうなうんちくのあるがっちりした固めたやつで、お隣 に相談せぬでも法制局としてぱちっとした見解を出せると、そういうふうになっていただきたいと私思うわけですけれども、再度ここらの点についてお伺いしておきたいと思います。
  142. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 先ほどお話のございました、中曽根康弘総理大臣が総理大臣たるということでいわば参拝をされた場合に、それが公式な参拝になるかどうかという点につきましては、すでにことしの五月十日の参議院の内閣委員会野田哲先生の御質問に対して当時の角田長官がお答えになっているところで御理解をいただきたいと思うのでございます。  それから、いまの宗教的な活動に当たるか当たらないかという点につきましては、われわれとしましてもずっと前からしさいに検討を重ねておるところでございまして、津の地鎮祭判決が始まるずっと前からこの点につきましては検討を重ねておる問題でございます。それで、たまたま津の地鎮祭判決がおりましたので、これによって果たしてそのいまの合憲か違憲かの見きわめがつくかどうかということにつきましても十分に検討をいたしたわけでございますけれども、なかなかその点が見きわめがつかないといいますか、先ほど先生のおっしゃった目的効果諭、この目的、宗教的な意義を持っているかどうかとか、あるいはまた宗教の援助、助長、圧迫、干渉等に当たるかどうかという点につきましてもいろいろな考え方もございまして、なおいま現在の段階では合憲とはなかなか言いがたいけれども、しかしながら違憲であるとの疑いはなお否定できないというところが大体妥当なところではないかなというような感じを率直なところ持っておる次第でございまして、それを統一見解で先般あらわしたのでございます。  大体、以上のような経過でございます。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう一回同じことを聞きますけれども、合憲とは言えない、これはもう明確なんです。違憲の疑いがある。ということは合憲ではないわけやから、これはもう明確なんですな。違憲の疑いが残るということはどういうことなの、これ。違憲ということとは違うわけやな。合憲ではないわけやから、これ。だから、違憲ですから、違憲の疑いがあるというのはどういうことか、もうちょっとわかりやすく、一遍説明してくれませんか。
  144. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) それは、先ほどから申し上げておりますように、合憲か違憲かは断定しないけれども、違憲ではないかとの疑いはなお否定できないと、そういう見解でございます。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 合憲か違憲かという断定はしないけれどもというのは、何で断定しないんですか。
  146. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 先ほど申し上げたようなことで断定しがたい、ただいまのところまだ断定しがたいということでございます。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしても、この問題は非常に大事な問題でありますし、われわれとしても戦没者を追悼するという意味においてはその仕方の問題だろうと私は思います。戦争犠牲者に対する最大の追悼の意義というのは、やっぱり人間が人間を殺戮するというような戦争を完全になくして、そして平和な思想を広げていく、そういうことではないかと私は思うわけですけれども、そういう点を含めて政府としてもこの問題については早急に国民にわかりやすい形で決着をつけていただきたいことを最後に官房長官にお願いしておきたいと思いますが、一言この問題について。
  148. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 御意見として承っておきたいと思います。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 官房長官、結構です。  この問題について文部省にもちょっと一言お伺いしておきたいんですが、これは法制局としては、この箕面市の慰霊祭の違憲訴訟事件というのは勉強されておられますか。
  150. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 大体のアウトラインは勉強さしていただいております。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 文部省は、この問題についてどういうふうにお考えですか。
  152. 大家重夫

    説明員(大家重夫君) 昭和二十六年九月十日、ちょうど講和条約の調印の年のことでございますが、文部次官・引揚援護庁次長通達で、「戦没者の葬祭などについて」という通達が出ております。この通達は、それまで公の関与が禁止されていた。昭和二十一年の通達で内務・文部次官から地方長官あてに、文民についての葬儀についての公の関与、葬儀への列席はいいのだが戦没者については禁止されておったわけですが、その戦没者の葬祭等について当時の状況にかんがみ、個人や民間団体が慰霊祭、葬儀等を行うに際し、知事等の公務員が列席することは差し支えないとする、そういう通達であります。  しかし、これらは犠牲者に対して哀悼の意を表し、不幸な遺族を慰める趣旨に沿って行われるべきものであり、信教の自由を尊重し、特定の宗教に公の支援を与えて政教分離の方針に反する結果とならないよう引き続き万全の注意を払うべきであるとされている。このように、この通達では、当時の状況にかんがみ、個人や民間団体が行う慰霊祭、葬儀等に知事等の公務員が列席することは、前述の趣旨に即して行われ、かつ政教分離に反しない限り差し支えないとした通達でございます。  この通達が箕面の判決に引用されておるわけですが、この通達は現在においても廃止されていない。文部省といたしましては、一審の判決でもあり、また推移を見守っていきたい、かように考えております。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 一審の判決だからどうのこうのというふうなことじゃなくて、やっぱりこれはいろいろ問題があるのは事実ですよ。あなたが前段で言う戦没者がどうのこうのとか、慰霊とか、そういうことに対する考え方というのはみんな同じであったにしても、そのやり方はみんな違うわけですよ。それはやっぱりやり方いっぱいあるわけでして、この判決の趣旨というのは、これは明確なんですな、これ言うたらね。だから、これは一遍読んでみればわかりますように――もうこれは読んでいただいたわけでしょう。だから、あなた方が引用されたのは、何で引用されたかていうたら、これは要するに弁護側がこれを言ったからですよ、取り上げたから。だから、それにまさに反論をしておるわけよね、これ。ですから、そういうふうな意味でこれはやっぱり慎重に取り扱ってもらいたいと思う。  たとえば、ちょっと読んでみますと、   本件各慰霊祭は、このように、宗教行事そのものであって、この点で、我が国では、慣習化した社会的儀礼の面の評価も受けているいわゆる神式の地鎮祭とか、更には、葬儀などとは、自らその性質を異にするといわなければならない。   本件各慰霊祭を目して、宗教性が稀薄化しているとか、一般に習俗化しているとかの主張は、当たらない。   ところが、国や地方公共団体が、公務員に対し、このような宗教儀式に参列し、玉串奉奠をしたり、焼香をしたりすることをその公務内容とすることは、当該公務員個人の信教の自由の観点から、如何なる場合でもできないのである。すなわち、   憲法二〇条二項は、「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」と規定している。そこで、公務員に宗教上の儀式に参加する職務があることになると、公務員に対し、これを強制できることになる。つまり、公務となりうるためには、その内容が職務命令の対象となるものでなければならない。しかし、職務命令によって宗教上の儀式に参加することを強制することは、まさに、右規定によって、禁止されているのである。   そうすると、公務員が、宗教上の儀式に参加することは、それが如何なる目的で、如何なる必要から行われたものであっても、憲法二〇条二項の解釈上、常に私人としての行為であると解するほかはないのであって、その行為が公の立場、すなわち公務となりうる余地は全くない、といわなければならない。   また、同被告が挙げる昭和二六年九月一〇日 付文部次官・引揚援護庁次長通達は、公務員が、宗教儀式に列席し、その際、敬弔の意を表し、又は弔詞を読むこと等はさしつかえない、としている。   しかし、その意味が、公務員が私人として、宗教儀式に列席等をしてよいというのであれば、当然のことをいったものであるし、これに列席等をすることが公務になるという意味であれば、憲法二〇条二項に違反する誤った解釈を示したことになる。  最後のところですけど、これはやっぱり明確でありまして、最高裁の判決がなければどうのこうのというのじゃなくて、これはいまこういうような問題は非常に大事な問題だし、文部省としてもそれなりの対応をしなきゃいけないと、私はそう思いますよ。もう一遍、この問題についての御見解をお伺いしておきたい。
  154. 大家重夫

    説明員(大家重夫君) この判決は、双方がいま控訴しております。行政府の者といたしましては、司法部の判断でもありますし、コメントは差し控えたいと思います。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、この問題はこの程度にしておきたいと思います。法制局等、結構です。  時間がなくなりましたので、防衛関係にちょっと一言お伺いしておきたいと思います。非常に時間が短くなってまいりましたので、午前中の質問と関連をいたしまして、二、三お伺いしておきたいと思います。  まず、施設庁長官、午前中の質問のときに、同僚議員から出てまいりました例の三沢の問題を含めまして、いわゆる思いやり予算、これはいろいろと問題もいっぱい多過ぎるわけでありますが、先ほど長官もおっしゃいましたように、五十四年度から五十五、五十六、五十七、五十八と、百四十億円から二百二十六億、二百七十六億、三百五十一億、四百三十九億と、こういうふうに本当に毎年非常な勢いでふえているわけですね。これは非常に私はいろんな問題があると思います。  そこで、これはこういう思いやり予算、何で思いやり予算なのかわかりませんが、当初はカーター政権の当時の緊縮予算に対しまして、それに配慮をしてわが国で米軍施設の整備を始めたということだろうとは思うんですけれども、これはこういうふうにふえる予算に対して何らかの歯どめというのはあるのかどうか。これはやっぱり何らかの形で歯どめなり、アメリカさんも大変ですけれども、わが国も予算がありませんのやと。長官よく御存じのとおり、米軍の日本の国内の基地へ行きますと、米軍の基地はホテルみたいに上等ばっかりですわな。日本の自衛隊の皆さんの宿舎、官舎へ行ってみなさい。本当にこじきみたいなところに入っている。一遍ちょっと日本の米軍の皆さんに日本軍の基地を見してもらいたい、全部。そういう点からいきますと、私はちょっとやっぱりひど過ぎる、もう少し歯どめをかけないかぬし、ちゃんとせないかぬのと違うか、そう思うんですけれども、そういう点を含めて、どういうふうにお考えか、一遍お伺いしておきたいと思います。
  156. 塩田章

    説明員(塩田章君) この予算は私ども提供施設整備費ということで呼んでおりまして、いわゆる思いやりと言われてきた。現在、私どもはそういう言葉を使わないで提供施設整備費というふうに呼んでおりますが、御指摘のとおり相当にふえてまいったわけであります。  歯どめはどうかということでありますけれども、これは一つには、私どもあくまでも米側の方の要請に対しまして個々に審査をしまして緊要性等十分検討した上で、各年度の予算編成に当たってわが国の財政力といったものを考えて可能な範囲で提供施設の整備に応ずるという考え方、それと同時にまた、当然のことでございますけれども、予算として出されたときに国会での御審議をいただくということで、私どもはいわゆる歯どめという点につきましては歯どめになっておるのじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは、長官、そんなのじゃ歯どめになりまへんで。やっぱりこれは提供施設整備費という名前でこの五年間で約三倍ぐらいになってきたわけですね。それで、確かにスタートはそういうことだったわけですけれども、実際問題として、私は歯どめとしてきちっとしていただきたいと思いますのは、やっぱり最近のいろんな様子を見ておりますと、初めは住宅だけ、そして住宅と兵舎だけ、それがだんだんエスカレートして今度は給油所も、給油所が終わると今度は整備工場も、整備工場が終わるとこれから先弾薬庫あるいは飛行場も、あるいは今度は岸壁もというふうにだんだんだんだんエスカレートしていけへんかと、そう思うんですよ。  そういうふうな意味では、もう少しこの歯どめのかけ方があるのじゃないかと私は思うんですけれども、そこら辺のところはここら辺までというふうな何かやっぱり歯どめをしないと、いまあなたがおっしゃった、いわゆる緊要性あるいは財政力あるいは可能な範囲なんというと、これは全部いけるということですわ。お金さえあれば全部いけるぞということでありまして、そういうふうな意味での、たとえば住宅と兵舎だけはこれはやむを得ない、最低限の問題だからここはいこう、しかしながら、たとえば弾薬庫とか、そういうようなものはもう自前でつくってもらおうとか、一遍、そこら辺のところの何らかの歯どめなりあるいは考え方というのを明確にしないといけないんじゃないか。  それは最近のアメリカのいろんな論調を見ておりますと、これはエスカレートしていまして、みんな日本でやってもらえ、何でもかんでも一から十までと、こうなるわけでありまして、そういうわけにはやっぱり現在の日本状況やいろんな情勢から見ていかないと私は思うわけでありまして、そこら辺のところをもう少しこの歯どめという問題について、あるいは認定の基準なり、あるいはそこら辺のところが明確でないと、アメリカと話をしていましても、ただお金がありませんからだけではこれはどうしようもないわけでありまして、やっぱり日本側が認める認定の基準なり何かを、明確にここまでとぴしっと相手側にも言えるというようなものを日本側として明確にする必要があるのじゃないかなというふうに思うんですけれども、そういうことを含めて一遍お伺いしておきたいと思います。
  158. 塩田章

    説明員(塩田章君) お尋ねの趣旨は、施設の種類といいますか、そういうものによって決めたらどうかという御趣旨のように承りましたが、それも確かに歯どめ論からいえば一つ考え方であろうとは思いますが、住宅、隊舎のみならず、いろんな種類のものに及んでいるではないかという点も御指摘のとおりでございますが、もともとこれは最初が思いやり予算というふうに言われておったように、必ずしも日本側としてどれだけを持つということじゃなくて、あくまでも日本側のそのときの財政力によって協力できるものを協力するのだということでございますので、たとえば種類を決めて、その種類のものは必ず持つということも必ずしも私どもお約束する立場ではございませんし、やはり現時点におきましては、その年の財政状況に応じて米側の緊要度を聞きながら判断をして決めていくというのが現実的であろうというふうに考えております。先ほども申し上げましたが、繰り返すまでもなく、私どものそういった判断あるいは財政上の制約のみならず、国会での御審議といったようなことをひっくるめまして歯どめにしていくということで、私どもは現在の時点で考えているわけであります。
  159. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これ以上言っても仕方ありませんから余り言いませんけれども日本側の都合によってふやしていくということは、結局日本側はこれだけ余力があるということだ。お金があるわけですな。お金がなくて、本当に人勧にしたって何にしたってひいひい言うているのに、日本が向こう側から要求されたものじゃなくて、日本側から勝手にこれはやりまっせと、そんなんじゃ、これは本当にどうも納得できない問題ですけれどもね。  これは大臣に、時間がありませんので、一言だ け最後にお伺いしておきたいんですが、五十九年度のこの概算要求の段階で、特に昨年からですか、防衛予算が概算要求の段階からクローズアップして、いつもだったら概算要求の段階では余り波風立たなくてやったんですけれども、最近は概算要求の段階から防衛予算が脚光を浴びてクローズアップされているわけでありますが、特にことしは、人勧の問題、いろんな問題がある中で、防衛予算が六・八八%というんですから、非常に突出した状態で編成されようとしているわけでありますが、こういうふうな情勢でずっといった場合に、防衛費の総額というのはいわゆるGNPの一%以内という枠があるわけでありますが、この一%の枠というのはこれは本年度の予算編成の中でことしも堅持されるとお考えなのかどうか。これからどこら辺でどういうふうになるのか。そういうこともあわせて、特にまた、この一%以内というこの一つの大きな歯どめがあるわけでありますが、これも閣議決定して、いろんな要望の中から出てきた歯どめなんですけれども、要するに、ことしは守れるのかどうか。これからどうする決意なのか。これは重ねて言いませんが、この歯どめがなくなったらその後はどうするのか。そういうことも含めて御答弁いただきたいと思います。
  160. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 五十九年度概算につきましては目下鋭意努力中でございまして、いまこの段階でどういう形の概算要求するということは申し述べられないことを御了解いただきたいと存じますと同時に、わが国の経済がどういうような状態になっていくか、これもまたこの段階では申し上げにくいわけでございます。したがって、この実態どうなるかというような問題につきましては、その事態において考えなければならぬ問題だと思っておりますが、五十一年秋の決定でございまするこの一%というものにつきましては、私はこの閣議決定の線は尊重し、これを持ち続けていきたいと考えております。  そして、それがどうかなったときにどうするのだというような御質問、あるいはその後歯どめ論はどう考えているのだとかいう問題につきましては、その時点で改めて考えるべきことであって、私としての現在の五十九年度予算編成といいますか、概算要求に当たっての基本的な姿勢といたしましてはこれを尊重していきたい、こう考えているわけでございます。
  161. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもありがとうございました。
  162. 内藤功

    内藤功君 人事院勧告の問題、それから公務員給与の問題について、最初に人事院総裁に基本的な姿勢をお伺いしたいと思うんです。  昨年の人事院勧告実施見送りによりまして、全国で数百万の規模に上ります公務員とその家族、それから恩給、共済、各種年金、各種手当への影響、こういうふうに人事院勧告の昨年の見送り影響を直接、間接受けた人たちは、私どもの方の計算によりますと、結論で言いますと、約二千五百七十万人、金額にして一兆二千七百七十億円に達する、こういう試算が出ております。非常に深刻であり、大きいのであります。  さらには、たとえば私学、私立学校の教職員の国庫補助あるいは民間の賃金、これはパートタイマーの方も含めた民間の賃金にもこれは影響を及ぼしておる。さらに、こういう勤労者の購買力の低下というのは、消費者の購買力の低下は消費不況を深刻化させて、中小企業や商店の売り上げにも影響を及ぼす。まさに国民的な規模でこれは考えなければならぬ問題だ、国民的な見地からもこの人事院勧告実施されるか否かは大きな問題だ、こういうふうに私は思うのであります。  特に、私はこの三年間、東京都内の各地で主に一線の現場におられる公務員の生の声を聞きまして、それから最近はいろいろ請願のお取り次ぎを私は人事院総裁や総務長官にもしております。たとえば東京都の都庁、それから郡の職場で働く人たちの十三万人の組合、東京都職労という大きな組合がありますが、この間聞いたら、二週間で十二万人の署名が集まったというんです。これはやはり相当重要な生活の侵害がいまある。  さっき総裁は、公務員の不満が心の中にうっせきしておるという表現を使われたが、これはずいぶん御遠慮なさった表現であって、実際はうっせきじゃなくて、やっぱりこれがいろんな請願の形をとり、いろんな行動の形をとって出ておるというふうに見なくちゃいけないと私は思うのであります。私は、同時にまた、この点についての人事院総裁の認識をしかと確かめたい。ただ、不満がうっせきしているというふうな状況じゃないと思いますね。  もう一つは、これが人事院勧告というものの持つ社会的、経済的な意味といいますか、これは経済企画庁じゃないから経済的な答弁を僕は求めようと思いませんが、あなた方のやっておられるお仕事から見て、これは一つには、公務員とその家族だけじゃなくて、恩給、年金、こういったものに影響を与える。もう一つは、パートの低賃金で働く方を含めた民間勤労者の方の賃金に影響を与える。もう一つは、ひいては消費者の購買力、景気の問題にも影響を与えるという点で私は非常に大きなこれは政治問題である、社会的な問題である、かように思うわけなんです。  最初の質問ですが、いま私の言ったような諸問題について、人事院総裁としてどういうふうにお考えになっているかという点を、ひとつ、簡潔でいいですから、お答えいただきたいと思うんです。
  163. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 人事院勧告見送りあるいは凍結、これがもたらす各般の影響ということについてお話がございました。  私たち人事院立場としては、いま御指摘になりましたようなことも頭の中にはいろいろ影響として考えておりますが、直接私たちが、人事院勧告を行うかどうか、またどの程度のものを行うかどうかという場合においては、そういうことを判断をして、それだからどうこうということはやっておりません。これはあくまで人事院公務員勤務条件改善ということを第一義的に考えておりますので、その点に立脚して事柄を処理しておるということはこれは大原則でございます。  ただ、この影響が各般の層に向かって及んでまいるという現実は、これは私も承知をいたしております。いま何百万とか何千万とかいうようなお話がございましたが、そういう資料は私たち用意をいたしておりませんので、これに対して具体的にお答えする用意はございませんですが、要するに大変影響が大きいということはこれは事実でございます。  人事院が第一義的に対象にいたしておりまする職員は、御承知のように一般職公務員でございまして、これは約五十万人というものがその対象になるわけでございます。しかし、これをきっかけにして、現実に各種の特別職、自衛官等もみんなそうですが、特別職が右へならえと申しますか、それとの均衡のもとに給与改定が行われてまいります。  それから、お述べになりました恩給あるいは共済年金というものは、法律上のたてまえからいっても公務員のベースと連動するというようなたてまえになっておりますので、これは直接に影響してまいるということがございましょう。そのほか、私たちの方に直接、間接に陳情その他の点で要請が出てまいりますものの中に、少し一般的にはそういうところからも要請が来るのかと思われるようなのもございます。たとえば中小企業その他についても、せめて国家公務員の方でやってもらわなきゃ困るというような要請もここ数年前から出ておるというような現実もございまして、事実上大変影響力が広範に及んでおるということは事実でありまして、そういう点も頭の隅には置きながら、しかし第一義的にはわれわれは五十万の一般職職員給与改善ということを第一義的な課題として取り組んでおるということでございます。
  164. 内藤功

    内藤功君 いまお話しのような、そういう社会的な影響のある人事院勧告の問題について、官房長官に伺いますが、政府としては、先ほどからの御答弁のように、二年続いての凍結はやらないと、これだけははっきりいま言っておる。しかし 完全実施、この完全という言葉がつくともう言わないという立場ですね。しかし、凍結はしないんだ、実施はするんだ、完全とは言わないんだ、しかし実施はするという立場だ、こういうことになりますと、私は当然給与法の改正案とこれに伴う補正予算というものをできるだけ速やかに用意する、一番近くの国会秋口臨時国会である、ここに提出しなきゃならぬ、これが当然の筋道であります。  ことしの二、三月ごろの予算委員会の議事録を私拝見しますと、八月ごろには人事院勧告が出るからそのときに対処すると二、三月ごろから言っておられるわけですから、そういう点からいって、私は再度お聞きしたいんですが、臨時国会を速やかに開き、その冒頭で給与法と補正予算を提出するということについては、なるべく速やかにやはりそういう御決意と段取りを官房長官としてはなされなきゃならぬと思う。そのお見通し、給与関係閣僚会議はいつ開くという予定なのか、その点伺いたい。
  165. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先ほど来お答えをいたしておりますように、なかなか議論が一致するとも思えないような厳しい状況のもとでの人事院勧告制度実施でございますから、何回でもひとつ閣僚会議を開いて、そしてできるだけ早く結論を出し、そしてそれに伴う所要の手続はとりたいと、こう考えておりますが、現時点でそれじゃいつごろに結論を出していつごろに手続をするかということについては、まだ今日の段階ではお答えをすることができない、この点は御理解をいただきたいと思います。  先般来、質疑応答の中で、野党の皆さん方の御意見、それに対する人事院総裁のお答え、これはやはり公務員給与の重大性、同時にまた公務員給与というものが大変幅広い影響を与える問題でございます。したがって、御質疑なさるお立場、お答えなさる人事院総裁のお立場、よく私には理解ができます。しかしながら、政府としては人事院勧告というものを最大限に尊重する、この最大限の尊重は前提になければ法律問題も起きてくるわけでございますから、そういう意味合いにおいての最大限の努力はいたしますが、ただいまの質疑応答の中にありますように、この人事院勧告公務員給与制、これは大変幅が広いだけに私どもはやはり今日のこの厳しい状況のもとにおいては国政全般との関連の中で妥当な解決を見出すということでないと、公務員給与だけで判断をするということは現在の客観情勢のもとでは大変むずかしいのだということを御理解をしていただきたい、かように思うわけでございます。
  166. 内藤功

    内藤功君 何回も会議を開かれるのも結構ですが、そのために、その時期といいますか、タイミングといいますか、こういうものを逸して、人事院勧告尊重という言葉が空文句にならぬように私はこの際注文をつけておきたいと思います。官房長官、結構でございます。  では、次にお伺いしたいのは、人事院総裁ですが、この勧告の前日の八月四日に臨時行政改革推進審議会が緊急提言なるものを出しました。この中で、政府及び国会が人物の取り扱いにつきましては責任を持って適切に決定すべきだ、こういう文言になっておりますが、この直後に記者会見をやりました大槻行革審会長代理さんですか、この方のお話によると、これは人勧抑制を意味する、人勧の内容である賃金の抑制を意味するんだと、こういうことを発言しておるんですね。この意見の提出を決めたのは、聞くところだと七月二十五日の第四回会合。緊急提言の案を決めたのは八月一日の第五回の行革審の会合だと言われている。  私が言いたいのは、わずか一日二、三時間程度でありましょう。その会合で、一諮問機関が国民生活に直接かかわる、予算や公務員給与にかかわる重大問題に、いかに行政改革の名をかりたとはいえ、人勧が出る前の日にかような注文をつけるというやり方は、人事院から見てこれはどういうものであろうか。公務員給与の決め方をずっといままで運用してきた、そういういままでの給与決定の過程の問題から見てどうであろうか。ずばり言って、人事院の存在が無視ないし軽視される、こういうことになりはしないか。私は重大な問題だというふうに理解をしておるわけであります。内容の点もありますが、こういう決め方の問題について総裁がどのように思われるか、率直なところをお聞かせいただきたい。
  167. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 推進審議会は、これはやはり法律に基づいた機関でございまして、それが自主的な判断に基づいて運営をされ、また何らかの意思表示をされるということでございますので、そのこと自体に対して私が私の立場からとやかくのことを申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。  ただ、あえて申しまするならば、あの提言の時期とかなんとかいうことは別として、その内容として触れておりますことは昨年七月の臨調答申そのままでございまして、それから何らかのはみ出しをやっているわけではございません。四つの原則を踏まえて、いま先生が御指摘になりましたように、適切な決定を行うのだということを言っておるわけでございまして、私はそれ自体去年の臨調のそのままの引き継ぎであるというふうに考えておりまして、人事院としては何らそれに対して特別の影響を受けるものではないという考え方を持っております。
  168. 内藤功

    内藤功君 こういうような前日に出されるというような動きがあっても、それに動ずることなく政府に対して勧告内容の完全な実施を迫られると、こういうお気持ちの表明と私は理解をいたしました。  そこで、総務長官にお伺いをしたいんですが、この人事院勧告提出の二日前ですが、新聞にこういうことが載っておったんです。総理府の首脳の話として、勧告率の引き下げと実施時期をおくらせる作業を人事局に指示したという、こういう報道であります。私は、もしこれが事実だとすれば、人事院勧告の提出の前に早くも値切りの作業を政府総理府サイドではやっていることになります。これでは人勧尊重という政府のたてまえさえ逸脱することになると思うんですね。この点の事実経過がどういうことなのか。私は、この新聞記事はかなりありそうなことだなというような気持ちを持って読んだんですが、しかしこれはあったら大変だという気持ちを持ってまた読んだのです。この点、総務長官にずばりお伺いしたい。
  169. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生のお尋ねにはっきりとお答えさしていただきますが、先ほど来申し上げておりまするように、本年度人事院勧告取り扱いについては、現在給与関係閣僚会議において慎重に検討しておる段階でございます。私としては、人事院御告制度を尊重するという基本姿勢に立って最善の努力をする考えであり、ただいまお話のありましたように、そういうことは常識としてあり得ないことだ、私月身もそれは全然知らないことであり、そんなようなことは常識としてあり得ないことだというように私は考えております。御指摘のような事実は全くありませんから、それは御承知を願いたいと思います。
  170. 内藤功

    内藤功君 私は、この記事の具体性からいって、またこの新聞が大新聞であることからいってあり得ることだと思いまして質問いたしましたが、総務長官は御否定なさった。これはちょっと肯定はできないでしょうね。しかし、これを御否定なさった。  そこで、いま長官は最善を尽くすという言葉を使われましたが、歴代の総理府総務長官たる者は、これは少なくとも人事院勧告取り扱いが決定されるまでは人事院勧告内容の完全な実施を求めて皆大変な努力をされてきたわけです。  私、ここに一つ古い議事録を持っていますが、昭和四十五年の三月二十六日、参議院内閣委員会でわが党の岩間正男参議院議員の質問に対して、当時の山中貞則総務長官が答えている答弁の中でこういうことがあるんですね。「人事院給与の宗全実施が困難であるような財源状態」になったと仮定しても完全実施の線を貫徹する、こういうことを答弁しているんです。  私は、やはりきょうの同僚議員の御質問に対す る総務長官のお答えはまだもう一つそこのところが、完全実施勧告内容をそのまま実施するという点において、その御決意の点をもう一つ私は決意の表明をお聞きしたい、こういうふうに思うんです。これは、それこそ体を張ってもやらなければならぬ憲法上の問題にもかかわる問題ですね。改めて、くどいようですが、長官、ここのところの決意を聞かしていただきたい。
  171. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) けさから、そのことについてのお尋ね並びにまた先生たちのお考えでございますが、私の言い方がよく御理解願えないのか、いまだかつておまえほど歯切れの悪い給与担当大臣はない、まことに歯切れの悪いことを言っておる、こうおっしゃいましたが、そのとおりかもしれません。しかし私は、歯切れは悪いかもしれませんけれども、やはり給与の担当大臣として、働いていただく方々のことを思い、りっぱな労働慣行、これを続けていく上からいっても、この人事院勧告制度というものはこれはどうしても守ってほしいし、守っていかなくちゃならない。また、守っていただくように、この制度が引き続いていかれるようにするためには今回の人事院勧告でも最善の努力をしなくちゃいかぬ、こういう考え方でございます。  だから、完全な実施ということをおまえここで言えとおっしゃる。そのこともわかりますけれども、私の気持ちは、やはり完全実施ということは、くどくどしくなりましたけれども、表現としては申し上げないにいたしましても、何度も言っておりまするように、この人事院勧告制度というものは大事だ、この制度をどこまでも守っていけるようにするために人事院勧告を最善の努力を払ってやっていきたい、かく関係閣僚会議でも私は言っておりますが、力の限り努力してまいりたい、こう考えております。  特に、もとの山中総務長官が御答弁せられました当時の国家の財政事情とは違っておりますが、私は、そこまで考えなくてもいいとおっしゃるかもしれませんけれども、やはり国政全体の中で、いま何度も言っておりまするように、この勧告制度というものをどうやっても守っていきたいというので最善の努力をひとつ尽くしていきたいと思いますので、どうぞ御理解を賜りますようにお願いをいたします。
  172. 内藤功

    内藤功君 これは言葉だけではなくて、今後の政府の動きを厳重に私どもも見守って、またしばしばこういうことを申し上げたいというふうに思っております。  そこで、法制局局官にお伺いしたいんですが、人事院勧告労働基本権の代償だという問題は、これも言葉の問題だけではなくて、深刻にやはり受けとめなければならぬ問題だと思うんです。私は、本来、労働者の団体交渉権あるいは団体行動権について正確な意味での代償ということがあり得るかどうかは疑問を持っておるわけです。やはりこれは団体交渉権というものを公務員の労働組合に名実ともに与えて、そして政府代表との間で団体交渉のルールをつくれば、戦後三十数年問一つのいろいろルールができていますから、これを法制化していくべきでないか、その上に公務員労働委員会のごとき仲裁的機能を持つ機関をもって仲裁をするのがよろしいであろう、こういう考え方を私は従来から持っているんですが、この論争をする時間が残念ながらないので、現行の最高裁判所の考えている考え方という枠において議論をせざるを得ない。そうすると、わが国の最高裁判所のこの点の判例は、昭和四十八年四月二十五日のいわゆるわれわれが全農林警職法事件と称しておる判例であります。ついでながら、私はこの事件の弁護人を務めた一人でありますが、その立場で私はひとつ法制局にお聞きしておきたい。  このいま問題になっている完全実施しない場合に憲法とのかかわりがどうなるかということは、この中の岸、天野両裁判官の追加補足意見というものが非常に重要な意味を持ってくると思うのであります。これには要旨、一つは、代償措置が十分にその保障機能を発揮し得るものでなければならないということと、もう一つは、「代償措置が迅速公平にその本来の機能をはたさず実際上画餅にひとしいとみられる事態が生じた場合には、公務員が」「争議行為にでたとしても、それは、憲法上保障された争議行為である」、こういう二つの大きな柱が判決の中で示されていると思うんですね。そして、その部分の帰結の結論部分で、「以上のことは、多数意見においてとくに言及されていないが、その立場からは当然の理論的帰結である」、こういうふうに結んでいるわけなんです。  私は、この意見が単に天野と岸という十五人の中の二人の意見というふうに法的にこれはとるべきものではなく、この最後の言葉からいって、少なくとも実質的には八人の多数意見の理論的な帰結というふうに見ていい、それだけの重みのあるものだ。二人だって重みがありますよ。けれども、八人というとなお重みがあるわけなんですね、読み方の点で。ここらあたりはどういうふうにあなたは見ておられるか。法制局長官のこの判決の読み方。この読み方いかんでは重みが違ってくるんです。それをどういうふうに見るかという点を念のため伺っておきたいんですが。
  173. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) 御指摘の昭和四十八年の全農林に関する最高裁判決のいわゆる二裁判官の追加補足意見の部分にいま御指摘のございました文言がございます。  (一)の最後でございますが、いまるるお話のあったような意見を述べられた後で、「以上のことは、多数意見においてとくに言及されていないが、その立場からは当然の理論的帰結であると考える。」という言葉がございます。「その立場からは」という「その立場」は、当然にこの表現から見まするとこれは八裁判官の多数意見を指すということは明らかでございます。そこは明らかでございますけれども、この多数意見の中には代償措置が実際上画餅に等しいと見られる事態が生じた場合については特段の言及がないわけでございまして、そこのところをこの二裁判官はこのような御意見を持っておられるようでございますが、それをわが方の立場としてそうだということをはっきりと申し上げるわけにはちょっとまいらないような気がいたしております。
  174. 内藤功

    内藤功君 これは裁判官の方の書き方ですから、あなたの立場でこれははっきり断定できないのはそのとおりだと思う。  ただ、もう一つ申し上げておきたいのは、この二裁判官の意見に対して、もし八人のその他の裁判官の中で、違う、おれはそういう意味で言ったのじゃないと言えばまた反論が書けるわけです。最高裁の制度では意見というのは書けるわけです。それがないんですね。ですから、二人の意見に対する反論がないんです。ですから私は、これはさっき言った事実上の八人の意見だと、こう見るべきだと思うんですね。どうですか。
  175. 茂串俊

    説明員(茂串俊君) いまおっしゃったような御意見もあろうかと思いますけれども、私どもとして、そこまで読めるかどうかという点につきましてはちょっと自信がないといいますか、はっきりとした断定はつきかねる。もしそうであれば、多数意見の方にそのような文言が挿入されてもよかったのではないかなという感じも実は率直に言っていたしておるわけでございまして、いまのような御意見も椎かにあると思いますけれども、私どもの方の立場でさようでございますというような見解を申し述べるわけにはまいらない、かように考えております。
  176. 内藤功

    内藤功君 私の解釈をはっきり否定はされなかったようですから、これはひとつあなたの方もこの考え方を勉強していただきたいということを御注文申し上げておきます。  そこで、時間の関係で次に進ましていただきますが、私は、いまのこの人事院勧告凍結が行われ、政府完全実施をいまだ口にしないという状態は、まさにこの最高裁判決の二人の補足意見が言うところの迅速公平に本来の機能を果たしていない、人事院勧告について政府が果たしていない、実際上画餅に等しい、この判決に書いてあるとおりの状態だと思うんです。ですから、このときに解釈論としてはストライキをやっても憲法上 の争議行為だと、こういう状態がいま私はあると思うんですね。ただ、それだからストライキというのは好ましいと私は思いません。けれども、そういうような法的な状態にいまある。これは相当な決意を持って政府各位はこの人事院勧告完全実施、ここに思いをいたして邁進してもらいたいということを注文申し上げておきたいと思う。  最後に私が質問したいのは、今回の人事院の賃金勧告とあわせて報告の「別記」として「人事行政改善の諸施策」というものが発表されました。いわゆる公務員制度の見直しが提起されました。私たちは、この制度見直しには基本的には反対であります。それは特権官僚制度を温存し、一般公務員労働者には能力主義の強化などによって差別と分断を持ち込もうとしているというのがわれわれの基本的な見解であります。  そこで聞きますが、臨調の公務員制度の見直しについての第二部会の報告と今回の人事院制度見直しの方向、両方の方向は同じだと理解してよろしいんですか。
  177. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 御承知のとおり、私たちの報告で人事行政施策改善策について検討を開始したいということを申したのは三年前でございます。時期的に申して後先を言うことはおかしいですが、人事院がまず問題意識な持ってこの改革について取り組むということを申し上げたのであります。人事院がこれは最初でございます。その後、臨調ができて、いろいろ精力的な御勉強をなさったようでありますが、結果的に出てまいりまする内容については、無論人事諸制度のことでありますからして、そう根本的なぎくしゃくした反対の方向が出るわけのものでもありませんでしょう。  ただ、立場といたしまして、臨調がこういうことに言及をいたしておりますのはあくまで行政改革の一環として公務員制度をとらえる、こういう立場がどうしても主であります。われわれの方の立場は、現在の公務員制度自体は大まかに言ってうまく運用はされておると思うけれども、戦後三十年の間に大変大きな社会経済状況の変遷があった。具体的に申せば高年齢化高学歴化というものが非常なスピードで進んでおる。こういうものに対応して公務員制度をさらに今後長きにわたって永続的なものたらしめるためには、そういうものにやっぱり合致した制度改革を考えていかなければならぬのではないか。  これは、時間もないようでございますので、一つだけ触れさせていただきますが、たとえばいま試験というものをうちでやっております。これは先生御承知のように、上級試験、それから中級試験、初級試験というものがありまして、それぞれ、上級の方は大学卒程度の学力、中級は短大、初級は高校という大体学力を対象にしてやっておるわけなんですが、現実の姿を見ますと、中級試験、短大の学力を目途としているものについていまやこれは大部分が大学卒の合格者が出てきております、ほとんど大部分。初級についても、高校卒なんですが、この高校卒の初級試験自体にも相当程度大学卒、四年制大学の人が受験をしている、そういう状況がございます。これは非常に変則です。というようなことから、こういう対応はこれはきちっとやっていきませんと、将来そういうことによって職場に入ってまいりますと、人事管理上もきわめて困難な問題が生起するという問題がございます。これは一つだけ事例を挙げたわけですが、こういうことに対してやはり対処するための改善方策を打ち出していかなけれればらぬというふうに考えてやっておるわけであります。  そこで、照らし合わせますと、臨調の方でそれこそわれわれの方向と全く違ったようなものが出るはずもありませんけれども、しかしちぐはぐが起きては困りますので、その間、事前に事務的には十分の意思疎通を図りながらやってまいっておりまするので、結果的には出てきておる提言としてはわれわれが考えておるものとそう根本的に乖離をしたようなものはございません。ただ、立脚点が違うところから相当のニュアンスの差異が出てきておるということはこれは事実でございます。  われわれといたしましては、今後、臨調の答申というものがせっかくございましたので、それも十分に参酌をしながら、われわれの方でいまだんだん成案を得つつありまするこの制度について十分関係方面の意見をさらに加味しつつ具体的な措置を打ち出してまいりたい、これがわれわれの現在の手順でございます。
  178. 内藤功

    内藤功君 最後にお聞きしたいのは、公務員制度の見直しについては、当然のことでありますが、当該の職員団体、労働組合との合意を前提とすべきだと思うんです。特に、給与制度あるいは研修制度、あるいは任命制度もそうだと思うんです、制度としては。こういうものは労働条件にかかわるものですから、当然これは労働組合との合意を前提とすべきであって、人事院が一方的に職員団体の反対を押し切ってそういう見直しの作業を強行しないように私は要望したい。この点についての総裁の御所見を伺いたい。  それからもう一つ、ついでに伺いますが、関連しますが、水当に最後の質問ですが、東京の在勤職員の調整手当の問題。これは現在では、私は東京をずっと回ってみましたが、区部もそれから三多摩も、物価にせよ民間給与にせよ、これはほとんど変わらないという実態があります。にもかかわらず、三多摩の中でまだ乙地と甲地と分かれておって、乙地の適用を受けているところがあるんですね。こういう不合理な点もありますので、早急にこれについての是正をやはり図っていただきたい。この点を最後に要望し、御所見を承りまして、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  179. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 第一点の人事諸制度の見直しの問題でございますが、これは御説のように当の公務員諸君自体について直接に関係のある事柄であることは申すまでもありません。また、これは人事院が全部が全部やるわけじゃなくて、人事管理の当局に当たるのは各省庁でございます。したがいまして、各省庁の意見あるいは影響を受ける公務員諸君の御意見というものを十分参酌し、十分取り入れて仕事を進めていかなきゃならぬことはこれは理の当然でございます。さらに、国民の声等も十分聞きながら、具体化するについては慎重に事を運びたいと思っておりまして、われわれの方で決めたからといって、しゃにむにどこに反対があろうとというようなかたくなな態度でやるべきこれは筋合いの問題ではございませんので、十分そういう点は率直に意見を聞きながら事を進めてまいりたいという所存でございます。  第二の点でございますが、いま申し上げました長期見直しの中の給与問題の検討の際には調整手当についてもどうあるべきかということを検討したいと思っております。ただ、この調整手当の問題は、従来の経緯その他は先生も御承知だろうと思いますが、地域給問題として大変論議の対象になりましたものが一種の凍結というようなことで現在調整手当ということになっておるわけでありまして、この際には従来の地域関係等については軽々な見直しはしないのだというような国会の御審議でもあったように承っております。それはそれといたしまして、その後経済社会状況が大変変貌を遂げてきておりまして、いま具体的にお述べになりましたような東京あたりもそれこそまんべんなく市街地関係がずっと周辺に広がっておるというような関係もございます。これは全国各地にもそれに類するような現象が出ておるわけでありまして、これにどういうふうにして対処していくか。そもそも、また現在の九%というような最高の調整手当の額がございますけれども、これでいいのかというような点もございます。これらの問題も含めまして、調整手当の問題は全般的な角度から検討をしてまいりたいと、かように考えております。
  180. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 今回の人事院勧告につきましては、民間の賃金実態を詳細に調査、比較したものでありまして、したがって私どもは、この六・四七%の引き上げ率、あるいはまたこの中だるみの是正、支給日の変更、こういうものなどを見まして、おおむねこの勧告は妥当なものである、こう いうように受け取っているわけであります。  そこで、最初にこの民間給与実態調査につきまして一、二点質問を申し上げておきたいと思います。  それは四万の事業所と五十二万人の調査をしているわけでございますけれども、これは例年見られることなんですが、大体三百事業所くらい、これはわずかな数ではありますけれども、これが調査不能になっている、こういうことが報告に明らかになっているわけですが、その調査不能というのは一体その中身はどんなものだろうか、調査を拒否しているのか、あるいは調査をされるとまずいのか、その辺の調査不能の事業所の中身というものはどういうものなのか、それがこの報告書では明らかになっておりませんので、この点についてまず第一にお伺いしたいと思います。
  181. 斧誠之助

    説明員(斧誠之助君) ただいま先生おっしゃいましたように、毎年調査不能等事業所が出ております。  ことしの場合で申し上げますと、約七千六百の事業所を調べまして調査不能等となりましたのが二百九十一社でございます。数は非常に少ないのですが、その内容のうち、調査拒否というものに当たりますものは九十九社、一・三%ということでございまして、残りのものは、調査に行ってみましたら企業規模が百人以下になっておりましたとかあるいは業種が変わっておりましたとかということでございまして、いわゆる適格事業所でありながら調査できなかったというのは、ただいま申し上げましたように一・三%程度でございます。
  182. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 百社近くが拒否しているということなんですが、これは抽出で毎年やるんですが、毎年百社くらいが拒否をしているのか、拒否の中身というのは一体どういうものなのか、全然受け付けないのか、その点はどうなんでしょうか。
  183. 斧誠之助

    説明員(斧誠之助君) 給与勧告調査については協力したくないというのがほんの若干ございますが、大部分は業務多忙中であるのでもっと後で調査に来てほしいというようなことで、その後調査可能日をお尋ねしつつやっている間に期限が切れてしまったというようなものが大部分でございます。本当に協力しないというものは、このうちの数社程度のごくわずかなものでございます。
  184. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それはわかりました。  それからもう一つ調査の対象事業所の問題ですけれども、各業界に分けながら調査をしているわけですが、最近の産業構造の変化ですね、特にその中でサービス業の急速な拡大というのがあるわけですが、依然としてこのサービス業に関する調査事業所数はそう多くない、むしろ少なくなっているということも見受けられるわけですが、私はやはりこれは大変むずかしい調査かもしれません、サービス業というのは非常に変わってきますから。しかし、いまや全産業の就業者数から見ますと、五千何百万の働いている者の中の二〇%がサービス業で働いている、ますますこの部分がふえていく、こういう見通しであるわけですから、このサービス業の実態というものをもう少し念入りに調査しないと民間の賃金実態というのが正確に把握できないのではないか。そういうことで、これからそういう部門についてもっと調査対象をふやしていくというような考えがないのかどうか。私はふやしていただきたい、こう思っているわけですが。
  185. 斧誠之助

    説明員(斧誠之助君) 私ども民間給与調査は、先生御存じのとおり職種別調査でございまして、民間事業所の平均給与調査してわが方の平均給与と比べるというやり方ではございませんで、職種別、年齢別、学歴別、職務段階別、それから地域別というようなことで細かくやっておるわけでございますが、そういう意味でやはり調査効率という点を考慮せざるを得ない。百人以上の企業の中から、公務に類似するそういう仕事をしている企業はどういう企業であろうかということでもって企業を選択するわけでございます。  選択されたのが四万社ということでございまして、その中から七千六百を抽出しておるわけでございますが、いまお尋ねのサービス業につきましては全部外しておるというわけではございませんで、たとえば旅館でありますとかクリーニング、理容、浴場、映画館、もっと言いますとパチンコ屋というようなものは除いてございます。しかし、放送業とか情報サービスあるいは調査、広告業、医療、教育、そういう公務に類似する職種が存在するであろうというサービス業は取り込んでおりまして、ただ先生がおっしゃいますように、これからの産業というのはいろんな形態のものが社会の変転に応じて発生してくると思いますので、そういう点はひとつよく留意しまして、漏れのないように今後もやっていきたい、そういうことでございます。
  186. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それはいまサービス産業に従事しているのが千二百万人くらいいるわけですから、これはもっとふえてくるでしょう。だから、そういうもの、しかもこのサービス業を営むものが多種多様でありますけれども、かなり規模が大きくなっていると思うのもあるわけです。そういうのはやっぱり実態をよく調査しないと、サービスということになると公務員も恐らくサービスの分野に入るでしょうから、そういう意味でもっとそういう産業構造の変化に適応した調査対象というものを選んでいただきたい、これを希望しておきます。  それから、私どもはこの人事院勧告をおおむね妥当と、こういうように見ているわけでございますけれども、問題は、これが実施されるかどうか、ここが問題なんですが、もう二年連続で抑制、凍結。先ほど来の議論を聞いておりますと、完全実施ということはただの一言も山てこない、政府筋から。まことに残念でありますが、私どもはこれはもう完全実施をしていただきたい、しなければならない、こういう立場にあるわけであります。  総務長官は、けさ来の御答弁を聞いておりますと、人勧制度をとにかく守らなければならない、公務員士気を低下さしてはならない、誠心誠意実施に向けて努力をしていきたい、こうおっしゃるんです。しかし、依然として私ども聞いておりまして、どうしても歯切れが悪いですね。最善の努力を払っていきたい、こう言うわけですが、給与担当大臣といたしまして、これから何回も関係閣僚会議が開かれていくでしょうが、その中でせめて今度の人勧については完全実施をしてほしい、しなければならない、完全実施というものを主張していく、このくらいは答弁として出していただきたいと思うんですが、その点はどうでしょう。どうしても完全実施という言葉、完全実施政府の部門において担当大臣として断固として主張していくんだ、このくらいのことは言ってもおかしくないと思うんですけれども、いかがでしょう。
  187. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) けさほどから、先生方から特に給与を担当しておる私に対して何回となく言い含めていただきましたが、いまの私の段階では完全実施という表現はここではよう使わしていただきませんけれども、先ほど先生からもおっしゃっていただきましたように、それ以上の気持ちを持って私は給与関係閣僚会議でがんばっていきたいと思っておるのです。  それで、話がせっかくの時間で長くなりますから申し上げませんけれども、実は先回、おまえ歯切れが悪いなとおっしゃいますけれども人事院の方から勧告が出ましてすぐ開かれましたが、これも私の方から早くこれは開いていただきたいということをお願いして、関係閣僚会議で私は非常に思い詰めたぐらいの考えで発言しておるのです。そのものを持っておりますが、時間の関係で申しませんが、いま先生からかんで含めるように言え言えとおっしゃっていただいておりまして、御注意いただいておりますけれども、そういう表現はようまだ使うに至っておりませんが、それ以上の気持ちを持って関係閣僚会議で私自身の発言はしておるということでお許しをいただきたい、こう思っております。
  188. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 閣内にはいろいろと、恐らく賛 成、反対、議論があるでしょう。その中で、せめてやっぱり総務長官が毅然とした態度で、完全実施以上の気持ちでやっておるんですと言っても、それはほかの閣僚に伝わっていかないと思うんですよ。やはり完全実施を今度やらなければどうにもならぬのではないか、それはやっぱり公務員の中にもさまざまなこれからハレーションが起こってくるぞ、これは今日までの良好な労使関係なんというものがこれによって一挙に崩れる可能性もある、そういうことを明確に主張しながらやっていただかないとだめだと思うんです。  私は、完全にこれは調査したわけじゃありませんが、公務員士気というものはかなり落ちております、これは抑制、凍結によりまして。そして、今年度の人勧も見通しがはっきりしないということでかなり士気が落ちている。しかし、公務員の中には本当に法律を守り、違法なサボタージュは一切やらないという民主主義路線に基づいて働いているまじめな公務員がたくさんいるわけです。そういう公務員の間にも、私が最近接しておりますと、いままでは上司や部下の顔色を見て仕事をしていればよかった、しかし最近は女房の顔色をうかがいながら暮らしていかなければならぬと、こう言うわけですね。やっぱり人勧の抑制、凍結によって財布のひもがかなり締まってきておるわけです。そして、その中から今後の人生計画も多少狂い始めてきておる。そういうことから家庭の中のことに多くの神経を使わなければならぬと、こう言う。  しかも、まじめな組合員で組織されている労働組合の中にも、最近はやっぱり下部の意見というものがなかなか抑え切れないという現象が起こっております。そろそろこの際われわれもと、これは言外に――意味はおわかりと思うんです。そういうような形で、総務長官は良好な労使関係をこれからも維持していきたい、こう言うんですが、もうそれは限界が来ている。そういうことも十分に配慮をしながらやらなければならない。特に、国の財政基盤を高めなきゃならぬということで真剣に旺盛に仕事をやっている部門もあるわけです、要員が非常に少なくなって制約されている中において。そういう国税庁の職員組合もあるわけです。そういう中にもそういうのが起こってきている。さまざまな影響が出てくるわけですから、そういうことを、十分にその背景を考慮に入れながら完全実施をおれらは主張するんだと。完全実施以上の気持ちでやっていると言うだけじゃだめなんです。やっぱり完全実施を堂々と主張していくんだと。それで、公務員労働者並びにその家族、それに関連するさまざまな、先ほど内藤議員からお話がありましたが、相当の影響力を持つわけですから、そういう意味でもう一度御答弁をいただきたい。
  189. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 完全実施という言葉をおまえ使わなければ何度しゃべったってだめだという御意見のようでございますけれども、私だってきょうの段階ではまだ、完全実施ということを必ず実現するようにやらしていただきますとか、そういう表現で努力さしていただくということはよう申し上げませんが、しかし、何度も言っておりまするように、それ以上の気持ちを持って、先生がおっしゃったような、ことに奥さんの顔色まで見なければ勤めにも出られないというところまでは言っておりません。私はそういう言葉では言っておりませんが、先生の御指摘のようなことをずいぶん私は関係閣僚会議でしゃべっておるんです。しゃべったというか、私は強く要請しておるんですから、そこらでひとつ御理解を願っておきたいと思っております、努力しますから。
  190. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 やはり私は、なおもこの辺、くどいようですけれども、総務長官の本音というものがわからないんですね。  先ほども内藤議員から御指摘がありましたが、八月三日の朝日新聞の朝刊ですけれども、そこに総理府首脳がこう語ったといって新聞報道があります。大体、政府首脳というと官房長官になりますね。総理府首脳ということは総務長官になるんですよ、新聞の常識として。だから、私は総務長官が発言したのではないかと、先ほど否定をされましたが、疑っているわけです。  たとえば、「二日夜、五十八年度人事院勧告取り扱いについて「完全実施は困難」」、こういうことを前提として、それでは完全実施は困難だから人勧についてどのような抑制をするか。一 つは、「給与引き上げ率を勧告の率より引き下げる」。二つは、「勧告実施時期を遅らせる、の二本立てで行うとの意向を明らかにした。」。そしてなお、「同首脳は「引き上げ率の変更は、俸給表の全面見直しなど」、これは大変細かい作業が必要になってくる。これはもう当然です。この「複雑な作業が必要だが、」「人事局に作業の準備を指示している」」と、こう八月の二日、人勧が出たのが五日ですからその三日前に、大体人勧が出ないのに、政府首脳と言われ、あるいは総理府首脳と言われる者が、たとえば総務長官がそれを言わないにしてもだれかが言ったに違いないですよ。総理府のだれかが、給与担当庁のだれかが、しかも上の方が新聞記者に対して、人勧がまだ出ていないのにもかかわらずこのような発言をするということはまさしく私は人勧制度をみずから否定している、こういうように思わざるを得ないわけです。本当にこういう発言をだれもしていないのかどうか、もう一度確認をしておきたい、こういうように思います。
  191. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先ほどお尋ねのときに、こうした発言は全然ないことであるということを私は申し上げておりますが、いまも同じことを申し上げておきたいと思います。    〔委員長退席、理事坂野重信君着席〕 やはり政治家としてこうした国会の場で事実と違ったことを申し上げたり、また言ったことを言わないようなことをつくってはこれは大変なことでございますから、はっきりと私は申し上げておきたいと思います。  そこで、あの記事が出ましたときに、私は役所へ参りまして、首脳と書いてあるが、だれがこういうことを話したのか、首脳とは一体だれだ、大臣とか総務副長官とか人事局長とかというのは首脳と考えられるであろうが、だれがこういうことを新聞記者に話したのだ、だれがその指示を受けたのだ、指示を受けた者はだれから受けたと言ってくれと私が申し上げたのも事実でございますから、私からさようなことは全然出ていないということを重ねて申し上げておきたいと思います。
  192. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 せめて人勧が正式に出た後なら別ですが、出もしない前にそういうことを大体言わせるような雰囲気がいかぬと思うんですよ。やはりそういうことは一切どこからも言わないような、そういう姿勢が欲しいですね。だから、こういうことが出るから疑わざるを得なくなる。いまの長官の答弁は一応了解をいたします。  そこで、次の問題ですけれども、五十六年度の抑制にしても、五十七年度の完全凍結にいたしましても、その理由は国の財政上の理由というものが挙げられているわけですが、人事院総裁人事院勧告制度の趣旨から見て、財政上の理由をもって勧告を抑制したりあるいは凍結したりすることが可能なのであるかどうか、この点、簡単にお答えをいただきたい。
  193. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 人事院勧告が最終に決定をされるのは内閣国会、さらに最終的には国会で法律案の段階で決まることでございます。したがいまして、それについてとやかくのことは申し上げず、われわれの立場としては勧告の趣旨からいって勧告完全実施していただかなければならないということを強く申し上げておるのでありまして、われわれの立場は、これは一種のやはり義務費である、義務費であるからして、これは財政状況云々ということではなくて、ぜひとも尊重して実施していただきたいというのが人事院立場であります。    〔理事坂野重信君退席、委員長着席〕
  194. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それで、別の角度からお伺いをしたいんですが、仮に財政が豊かになった場合に勧告を上回って公務員給与支給するということができるのかどうか。これも簡単に。
  195. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 過去の具体的な例だけを申し上げておきますが、給与改善費といたしまして五%が組まれた時代がございます。これは相当続きました。その五%の改善費が組まれておるにもかかわらず、人事院勧告を出しましたものが五%を下回って最低の場合は三・七という勧告を出したことがございます。そのときは、そのほかの一・三分はいわば余剰に至ったわけであります。  そういうことで、われわれといたしましては、官民較差を調べて民間追随ということを大原則にいたしておりますから、したがって国の財政が悪いからといってこれが抑制されることは不都合であるし、そうかといっていかに財政が豊かでありましても、民間との対比でもって余裕があってもそれ以上のことを勧告することはない、これが大原則でございます。
  196. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 官房長官がお見えになりましたので、その点についてお伺いをしておきますが、いま人事院総裁からお答えいただいたように、財政上の理由をもって勧告凍結したり抑制したりということはこれは人事院立場としてはできないのだ、これは当然だと思うんですね。勧告制度からいいましても、人事院のいまの制度からいいましても、私は当然だと思うんです。そういうことからいきますと、五十六年度からこの二年間続きました抑制、凍結政府みずからが公務員給与決定のルールを無視した、こういうように言わざるを得ないんですが、そのような誤りをお認めになるのか、今年度はそういうことはしないんだと、こういうように言われるのか、この点、官房長官からお答えをいただきたい。
  197. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先刻来申し上げておりますように、政府としては人事院勧告を最大限に尊重するという基本の立場でございます。五十七年度凍結をしましたのも、そういう観点に立ってまさにこれは異例の措置である、したがってこの異例の措置を五十八年度も続けて凍結するというようなことは考えていないと、こう申し上げておるわけでございますが、人事院勧告どおりやらなければそれは違法かと、こういう御疑問も含んでおったように思いますが、やはり人事院立場、これはいま藤井さんがおっしゃっておったとおりだと思います。しかしながら、政府はその中でも最大限の尊重義務があると私は思います。しかし、それだけの努力をしてもなおかつ政府としては、財政状況その他国民公務員給与に対する物の考え方、こういったような広い国政全般の立場でまた判断せざるを得ないというのも、これは私、政府の責任であろうと思います。  それで、過去の例でも、最近十年ぐらいは完全実施をやっておりますが、その前も完全実施はやっていなかった。これも当時の政府としては万やむを得ざる措置だったと私は思います。最近のここ一、二年の状況を見ましても、やはり私はそういう厳しい情勢があるなということを念頭に置きつつもできる限りの努力はいたしたいと、これが政府人事院からの勧告を受けての基本的な物の考え方でございます。
  198. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 中曽根総理も、この勧告は最大限に尊重すると言われていますね。それから、いま官房長官も最大限に尊重と、こう言われるんですが、しかし昨年は凍結されましたし、最大限に尊重すると言いながら最大限に尊重しなかったんですね、昨年は。そういうこともありますから、一体尊重という意味は具体的に何を指すのか。財政上からいって、財政上の許す限り最大限尊重するのか、あるいは人事院勧告そのものを最大限尊重するのか、その辺のところが、最大限尊重すると言われますが、さっぱり私どもにはわかりません。その点をもう一度御答弁をいただきたい。
  199. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) いまの御質疑の中に、最大限に尊重すると言いながら去年は最大限に尊重しなかったと。そうじゃないのです。最大限に尊重するという立場に立って最大限の努力をして、なおかつ凍結をせざるを得なかった、これはまさに異例の措置でありますけれども、だから努力義務はやったつもりでございます。  なぜかと言えば、昨年の予算の編成の際に国債の償還の積立金すら繰り入れてしまう、あるいはまたそれでもなおかつ十三兆数千億の国債を発行せざるを得ない、それから予算についても、ゼロベースシーリングで厳しい予算を組んで、そして事業費、既定経費すべてについての削減をした、こういったような努力をやりながらもなおかっこの人事院勧告というものを完全実施するという立場に立って努力はしたけれども、いかんせん完全実施ができなかった、こういうことでございますから、その点は最大限の努力は果たしたと、こうお考えをいただきたいと思います。そうでないと、これは法律違反になる疑いがあると私は思っているのでございます。  そこで、それじゃ最大限の尊重というのはどういうことだと、こういうことでございますが、これは政府としては、勧告制度というものは尊重せられるべきであるという基本的なたてまえに立って、その実施をめぐるいろんな問題について誠意を持って検討するなど、可能な限り努力をするということであろうと思います。ことしも同じような立場に立って政府としては十分ひとつ努力をしまして、その上で人事院勧告実施がどうなるかというようなことをにらみ合わせながら考えていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  200. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それは、官房長官、かなり重大な発言だと思うんです。最大限努力をする、しかし努力した結果どうしてもできないからまたひとつ御勘弁をいただくこともあり得ると、こういうように思うんですね。  しかし、それは昨年来の与野党の合意事項もあり、あるいは予算委員会における発言もあり、政府は二年間の実施見送りはしない、五十八年度実施するんだ、尊重し実施すると、こういうことは各党との約束として成り立っているわけです。この根幹を崩したら私は民主制度というのは成り立たないと思うんですよ、政党政治は。したがって、先ほどの発言のように、最大限尊重する、最大限努力をした結果これこれこういうことでだめだ、ことしも今度は最大限尊重し最大限努力したけれども、こういう理由でこうだったということがもし行われるようなことになりますと、国会における約束事がこれはもうみんなほごになってしまう、これは民主政治の根幹に触れるものである、こういうように私は思うんです。  先ほど来も官房長官は、本年度は二年連続してそういうことはやらないんだと、これはその前提としては私は先ほど来の議論を、これは約束事であるからそれを踏まえて発言をされている、こう思ったんですが、いまの発言を聞きますと、それもどうもあやしい。こういうことになると、私は民主政治そのものの根幹を揺るがすものである、こういうように思わざるを得ないんですが、もう一度御答弁をいただきたい。
  201. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) いや、峯山さん、そうじゃないのですよ。それはそうじゃない。民主政治の基本を踏まえておりますから、昨年の与野党の合意、それから議長見解、それを受けての私の予算委員会における政府を代表してのお答え等にありまするように、だからこそあの中には二年凍結はしないと、こういうことを申し合わせているのです。だから、八月五日に人事院総裁から勧告案を受け取ったときにいろんな御議論がございました、各閣僚から。しかしながら、内閣としては二年連続の凍結はしないというこの原則だけはとりあえず確立をしたのだ、その原則の上に立ってできる限り人事院勧告どおりやりたい、しかしながら先ほど言ったようないろんな国政全般の勧点からやむを得ざる理由で抑制せざるを得ない場合もあり得ますよ、しかし最大限の努力はいたしますと、こう申し上げておるのであって、私の先ほどの答弁は、したがって国会でのお約束等踏まえながらお答えいたし、またそういう立場で対処をしていきたい、こういうことでございますので御理解を賜りたいと、かように思います。
  202. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 なお十分に理解はできないんですよ。  官房長官、先ほども総務長官に私はすでに確認をしたわけですが、人勧が出ない前に政府筋からさまざまな意見が出てきている。場合によっては官房長官は閣僚会議を何回も続けてきて結論が出るまで一生懸命努力してと、こう言うんですが、臨時国会に間に合うように結論をつけたいというそこのところの答弁がいまだに聞かれないわけですね。しかも、政府部内には臨時国会までに結論が出なければ臨時国会をやり過ごして通常国会でもいいじゃないかというような議論も出ている、こういうような新聞報道もあるわけですね。私どもは許しがたいことだと思う。人勧がまだ出ない前にそういうさざ波が立っている、こういうことですからね。  そうじゃなくて、やはりこれは臨時国会までに結論を出すと、官房長官、ひとつ御答弁いただきたい。臨時国会までに閣僚会議を何回も続けてとにかく結論を出す、そして法案を臨時国会に提出する、そこで国会の議論を願う、ここまでやっぱり前進していかないと、公党間の約束事だから二年間凍結はしない、こういう前提で閣僚会議はお開きになりましたと言いましても、その辺のところが明確になりませんとどうしても私どもは納得できません。  私どもは、この今回の人勧の率にしてもおおむね妥当であるという考え方に立っております。凍結はもちろんけしからぬ、完全実施を絶対やるべきだ、こういう主張に立っているわけですが、そういうことと、もう一つは、従来からこの人勧とか仲裁というものが政争の具に供される、そして何かの法案との取引でこれがいつも宙ぶらりんになっていっているという、そういうことがしばしば見受けられているわけですね。私どもは、そういうことについて、この人勧というものを制度上から見ましても政争の具に供すべきじゃない、四月一日実施ですから、勧告は八月五日ですから、速やかにこれを実施すべきである、こういう立場に立って従来からも主張してきているわけですが、臨時国会を展望しますと、十月十二日の件もあり、さらに行革法案もさまざまあり、その絡みからまたこの人勧問題が政争の具に供される可能性が私は非常にあると危惧しているわけですが、そういうことは絶対しないんだと、こういう御答弁を私はいただきたいと思います。
  203. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 御質問の中に、政府筋といいますか、あるいは各省筋といいますか、いろんな議論が出ておるではないかということでございますが、これは私どもの関知せざるところで、それは余りにも不謹慎なことだろうと思います。  先ほど来申し上げておりますように、政府としてはこの人勧をどり取り扱うか、大変厳しい状況の中で関係閣僚からもいろんな意見が出ておるので、内閣としてはできるだけ議論を早く詰めて結論を出したいと、こう申し上げておるわけで、この点はひとつ理解をしておいていただきたい。  なおまた、政治取引云々ということでございますが、過去においてこの給与改正の法律案等と他の関連法案との関係があって、関連法案が通って初めて云々、それで取り下げたとかなんとかというような例があったやに私も聞いておりますけれども、そもそも公務員給与の問題をなるほど国政全般の関連でわれわれは考えなきゃなりませんけれども、この人事院勧告の扱いを国会内における政治の取引、これは国会内のことですから私が物を言うたらまたしかられますけれども政府としてはそんなことはいささかも考えていない、かように御理解をしておいていただきたいと思います。
  204. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 時間がもうなくなりました。さまざまもっと質問をすべきことを用意しておったんですが、なくなりましたので、最後に要望しておきたいわけですが、公務員というのは職務上さまざまな制約がありまして、これは民間と違うわけであります。先ほど私も総務長官にお伺いをしたんですが、公務員士気というものにかなりさまざまな影響を与えている、この人勧の凍結によりまして多くの影響が出てきている、したがって長く続きました良好な労使関係もどうなるかわかりませんよということを私は警告しておるわけで、したがって今回の場合は、やはりまだ私は官房長官から明確な御答弁をいただけないんですが、臨時国会までにとにかくこのことについての結論を出して、臨時国会においてはこの給与の法案の改正問題を国会の場で議論をすると、こういうスケジュールにしっかりとのせていただきたい。このことはきわめて重要な問題ですから、そういう立場からやっていただきたい。このことを要望いたしまして、残念ながら時間が参りましたので終わります。
  205. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) ただいまの御意見は十分に承らしていただくつもりでおります。  なお、先ほど私の答弁の中で、まことに申しわけなかったのは、峯山先生と伊藤先生を間違えまして、峯山先生云々と申したのは間違いでございますから、これはおわびを申し上げたいと思います。失礼いたしました。
  206. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 参議院の会の野坂昭如と申します。  何分に新米でそちら側の政府委員の方のお名前も存じ上げませんので、私の質問に対しては、われと思わん方がどうぞ御自由にお答えください。  去年の九月十六日に、鈴木善幸前首相が人事院勧告凍結に当たって財政の非常事態宣言というのをおやりになったわけですが、その非常事態宣言という事態そのものはいまどうなっているんでしょうか。
  207. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) これは財政上の問題でありますので、私がお答えする限りではございません。(「意見だけ言って」と呼ぶ者あり)
  208. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 別に意見だけ言うんじゃなくて、ちゃんとお答えを聞きたかったんですが、こちらの方の多分手続が不十分だったんでしょうから後でもって申し上げますけれども、たとえば非常事態宣言というようなものの一番大きな根底になっているのは、百兆円の国債を発行している、つまりこれの利子を払うためには財政が非常に硬直化してしまう、そのために小さな政府というふうなことをいろいろやっていらっしゃるのだろうと思うんです。その小さな政府一つが、たとえば水の一滴を大事にしましょうとか、エレベーターを一遍上へ上げると十円かかるからこれはなるべく節約しましょうとか、まさにいまから三十八年前の、やがて八月十五日が来ますが、その八月十五日までに至るような何かみみっちいことばっかり言っているわけで、一番大きな問題ではないかもわからないけれども、たとえば人事院勧告ということを何も受け付ける必要はないだろうと思うんです。どうして公務員だけがそうやって人事院勧告なるものに従って給料を上げなきゃならないか、そこのまず根底がよくわからない。これならばお答えいただけるでしょう。
  209. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) これは公務員だけが給与を上げているわけではございません。民間に準拠をして、民間が上がって公務員との間に較差があればその較差を埋めていただきたいというのがこれが人事院勧告の趣旨でございます。したがって、民間春闘その他が行われずに民間の方でベースアップがないという事態があれば、私たちも人事院給与勧告は出しません。
  210. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 いま民間春闘とおっしゃいましたけれども、その春闘絡みの、つまり総評傘下ではなくて未組織労働者というのもいるわけですね。それから、たとえばベースアップの対象になっている百人以上の事業所というふうに言いますけれども、もっと零細企業の人たちもいるわけで、そこのところはお調べになって、しかもなおかつ公務員のベースアップにいろいろ参考になさっているわけですか。
  211. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) これも先生お初めてですから若干申し上げておきたいと思いますが、そもそも公務員給与をどういう原則で決めたらよかろうかというのはこれは大変むずかしい問題ですし、世界各間でも大変悩んでおる問題で試行錯誤を繰り返しております。  ただ、ようやくいま大体先進諸国で定着をして おりますのは、公務員給与というものはやっぱり民間と対比して、民間の準拠でもって均衡を保たしめてやることが一番よろしいのだということに大体固まってきております。アメリカでは匹敵性の原則と言っておりますし、またヨーロッパ等では公正比較の原則というようなことで、これはいま日本でやっておりまする官民均衡ということ、これと同じ原則に立つものでございます。と申すのは、公務員については公務の重要性ということもございますし、これは誤った処置が行われるということでは国民が困ります。  そういうことで、やはり世の中の一番優秀な人を全部公務員の場に集めるなどというそういう大それたことを考える必要はございませんが、しかし少なくとも公務の場というものが民間の職場と比べて全く魅力のない職場であってはこれは困るのです。ほかならぬ国民が困るのです。そういうところから給与についても大体民間均衡のとれた民間並みのものは確保するということが、国民一般にも、また公務員諸君にも大体納得のいけるところということに考えております。  と申すのは、ある原則を立てて、民間との均衡なんということを考えなくて公務の重要性を言えば、もっと公務員給与はよくしていいのじゃないかという主張もありましょう。また、国民の側から見れば、そういうことはおかしいじゃないか、税金でもって要するに賄っている公務員給与なんだからして、そういう角度から民間並みよりももっといいなんということはそれはとうてい了承できないと、そういう意見もこれは出てくることは当然の事柄であろうと思います。そういうことからいろいろ考えまして、いまの制度、すなわち企業規模百人、事業所規模五十人というのは、いろいろの試行錯誤がございました上ですでにこれは定着して、三十九年ですから約二十年同じ方式で来ておるわけでございます。  その間に、実は組合側の方からは、この国家公務員組織なんというのは民間でもない大組織なんだから、少なくともやっぱり企業規模は千人以上のものに限定すべきなんだという主張が一方においてございます。また他方において、いま先生御指摘になりましたような小さいところもあるのだよ、そういう小さい零細なところの給与なんかも無視しておったのじゃ片手落ちというものじゃないかと、そういう両極端の議論があるわけです。ところが、いろいろ煮詰めました結果、いまこの制度に移行いたしましてから長年たっておりまして、これは一種の労働慣行的なものになってきておりますが、これでもって大体民間企業の従事者の六割以上はカバーしております。六割以上を調査対象にしてその結論を出しておるということでございます。したがって、まずまず私はいまのところでは妥当な規模ではないかというふうに考えております。  ただ、御指摘になりましたように、さらに小規模のものにもやはり目をつけて、それらの点についても参考にすべきじゃないかという議論もあることはございまして、そういう御指摘は重々私も承知いたしております。そういうことから、ことしの場合もそういう小規模と言われる事業所についても調査をいたしかけました。まだその較差を直ちに取り入れるというところには至っておりませんが、いま調査をいたしました結果を分析検討をいたしております。近く結論が出れば何らかの機会に先生方にもごらんをいただきたいというふうに思っておりますが、それもしかし手法その他で取り入れて一時にやっていくということはなかなかむずかしい面もあると思いますけれども、しかし国民的な関心のあるところでもございますので、われわれとしても積極的にその方面の調査もやっていきたいということで体制を組んで進んでおるというのが現状でございます。
  212. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 スムーズな労使関係とか、その士気影響するというふうにおっしゃっていましたけれども、それは主に給料だけのことですか。
  213. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) いま問題にいたしておりますのは給与勧告でございます。給与勧告がここ数年来だんだん抑制の方向に進んでまいりまして、昨年はこれが見送りということになった。これは給与に関する勧告でございます。これが見送りになったことによって士気が低下するとか、あるいはその他の影響が出てくるという心配がありますよということは、私たちの想像ではなくていろいろの職場から寄せられていることも参考にして申し上げておるわけであります。
  214. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 国家公務員及び国家公務員に準拠する地方公務員の応募者ですね、それは何倍ぐらいになっていますか。
  215. 加藤和夫

    説明員(加藤和夫君) 今年度で申し上げますと、五十三年の公務員試験受験者からたとえば上級試験、中級試験、初級試験というものを合わせてみますと、五十三年度は三十三万四千九百二十五名ございましたが、今年度集計した限りにおきましては二十五万五千八百七十六、この主要な三試験を合わせましてまとめてみますと大体二四%減ということになっております。  最近五年間でこうなっておりますが、この中でいろいろたとえば上級、中級ですと試験区分というのがございまして、行政、法律、経済とか、あるいは電気、機械とか、そういうのがございますが、一部の理工系区分等についてはややまた減少幅が大きいというようなおそれも若干見られないではないということでございますが、全体としてはかなりの競争率を維持しております。漸減傾向にあるということは明らかでございます。
  216. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 いまの若者というのは大変に計算が高くて、先のことをよく考えて、局いま公務員になれば大変有利であるということがよくわかっているからこそ、そこに就職しようとするわけですね。ただ、一般民間企業とのいろんな格差的なものもずいぶんあるわけで、たとえば年金における官民格差というようなものは嫌になるほど言われておるし、それからあるいは公務員住宅であるとか、あるいはよく言われる、たとえば一番偉くなってしまった官僚が天下りをするとか、特に税務関係の人たちは大変いろんな中小企業の税務担当として移っていくことができる。そこまで見きわめた上で、あるいは生涯賃金をそこまで延ばした上でもって若者たちはいま一生懸命公務員たろうとしているわけです。そのときに、やはり公務員というのは一般の世間の感じから考えてとても恵まれた立場にいるということは、僕は否定できないことだと思う。  しかも、なおかつ、いま日本という国は、だれが責任だか、まあどなたもいらっしゃらないから答弁なさらないけれども、僕自身が貧乏性なのかわからないけれども、百兆円を超えるというと一人当たりほぼ百万円と言ってもいいわけです。僕は四人家族だから四百万円の借金を背負っていることになっているので、この国債についての考え方はいろいろあるでしょうけれども、それだけの国債を背負っているのはもう事実なわけです。その責任は多分歴代の政府及び国会、まあこの場合僕は入っていませんから僕には責任はありませんが、及びその下にいた公務員の責任であると言ったって構わないと思うんです。そしたら、その責任をはっきりさせる上でもって、やはり公務員の給料というようなものをただ民間給与に準拠して上げるということが、そのままたとえばその士気をふるい起こすことにつながるということだけでもって上げることには僕はどうも納得がいかないわけです。現実の問題として、世間はたとえば非常に役人というようなものは恵まれているというふうに考えています。  そこで、お役人がいらっしゃいますから、どなたでも結構ですけれども、まことに常識的なことを聞きますけれども、お役所仕事、官僚的という言い方がありますね。それから親方日の丸という言繋がある。それから「役人の子はにぎにぎをよく覚え」ということがある。もっとも、この一番最後の川柳についてはお答えいただかなくて結構ですけれども、お役所仕事、官僚的、親方日の丸というのを皆様はどういうふうにお受け取りになりますか。
  217. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 私ばかり答えることがいいのかどうかちょっと疑問と思いますけれども、 ほかにいらっしゃらないようですから私が代弁してお答えをいたします。適切を欠く点があればお許しをいただきたいと思います。  いま先生お述べになりましたことの第一番目で、公務員に対する志望者の問題ですね。これは若い衆というのは大変現実的で利口ですから、いろんな面を検討して、これはいいぞということを選んで就職試験を受ける、あるいは任用試験を受けるという傾向にあることは事実だと思います。  ただ、私たちの方で採用いたしました者について、一部の上級公務員を最初に一堂に会して研修をやります、合宿研修を。この場合に、いろいろ世論調査といいますか意識調査等をやってみますと、やはり圧倒的に多いのは、給与その他の条件がいいからというのでなくて公共の福祉のために役立て得るのだ、やり方によってはやっぱり国家のためになり得るのだ、そういうことに生きがいを感じて生涯の職場にしたいのだというふうに述べておるのがパーセントとしては一番多いということは例年言えることだというふうに思っております。  もう一点は、実は国家公務員の志望者はいまのところはそう心配のない程度確保いたしておりますが、一ころから比べれば大分減ってきている。これは学生あるいは若い人は、世の中が経済的に活況を呈するということになりますと、当然公務員の場には入ってくる者が少なくなります。それは一つの厳然たる事実でございますので、先生が御指摘になりましたような点も私は一面の真理を持っておるものだと思いますが、それだけでもって全体を律するわけにもまいらないというふうに考えております。  もう一点のお尋ねの点でありますが、公務というのは、これは世界一般に通用する原則でございますが、法律を執行する、それから予算の執行に当たる、実はこういう基本的な使命を持っておるわけでございます。そういうところから、どうしても一面においては非常にかたくなであって弾力性に乏しい。アメリカでいわゆるレッドテープというようなことが起こってまいります。しかし、それを当然のことだと思ってはいけないのであって、そういう一つの枠がありながら、やっぱりそこに弾力性なり機動性なり現実適応性なりというものを適応、応用していくという心構えをしていかなきゃならぬことはこれは事実でございますが、そういう一つの枠組みからいって、宿命とも言うべきものが一つあるのだということはこれは御了解を賜らなければならぬものがあるだろうと思います。  予算の執行ですから金をそうやたらに使うわけにもまいりませんし、法律がございますから北海道ではこうだが鹿児島ではこう変えるのだと、そういうわけにもいかないものもございます。そういう点については国民各位にも御了承を賜らなければならぬと思いますが、しかし公務員についてはそういう批判があるということも事実ですから、それに対してはやはり謙虚に耳を傾けて、十分弾力性もあり現実即応性もある、そういう温かいと申しますか、申すと言葉が悪いですが、そういう非常に世の中の変遷に適応した姿勢をもって対処することの必要性は私も痛感をいたしているところでございます。
  218. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 まさにいまのお返事が官僚的とはどういうことかということの如実な返答になっていたので、まことに僕は感心しましたけれども、大体いま日本という国が財政的に大変困難になっている。このときにさまざまなことをやっているわけです、小さな政府をつくろうというふうなかっこうで。  そこで、やはり国家公務員というものが、別に僕は国家公務員に聖職意識を要求しませんし、それからそれなりの人間的な営みというようなものをちゃんと続けていく上における経済的な支えというものは僕は必要であると思いますけれども、たとえば民間とただ比較してそれで上げなきゃならないという根拠がまずわからないわけです。  国家公務員というようなものはとにかく恵まれていますよ。それは、たとえば本当に住宅の問題をとってみたって、非常に近いところにあったり、それからいろいろと個人の住宅を見ていくと、大体〇八五九なんという、そういうややこしいところがないんですね。みんな大体東京で言えば〇三から始まっているところが多いわけですよ。そういうようなところを全部引っ比べてみれば、いま公務員というのは恵まれているんだからもう一年ぐらいがまんして、仮に国家財政がちゃんとうまくいったときに、そこのところでもってどっとボーナスというかっこうでもって渡せばいいじゃないですか。  民間の企業だったら、いまとてもじゃないけれども給料を上げることはできない。給料が上がるということ自体、戦後のインフレのいわば余勢でもって上がっているみたいなところがあって、給料が上がらなきゃならないと思っていること甘体が僕はおかしいと思いますけれども、そのもっと先に、国家公務員の方が、いまこれだけ国家財政が逼迫しているときに、自分たちは幾らかそれは女房の顔色を見なきゃならないかもわからないけれども、女房の顔色を見るのは亭主の義務みたいなところがあって、しようがないんですよ。だから、いまのままもう一年間凍結して、それでもって少なくともわれわれはこれだけやっている、そういう形でもってほかのところの方も抑えるような、そういうぐらいの意気を持たなければ僕はしようがないだろうと思うんです。  そこで、僕はちょっと伺いたいんですけれども、自衛隊の中の将補とそれから佐官級というのは、いまたとえば退職金を出すそれだけの財源がないものだから、経理的に言えば、その面でもって一年間あるいは停年を延長する。人事面で考えると、一般の民間企業は大体が五十五歳から六十歳に向けて定年延長しているときに、佐官級で五十三歳で停年になってしまうならば、まだ子供も小さいから、大学生ぐらいでしょうからこれは気の毒だというので、人事面側の配慮と、それから財源がいまないというその考え方から、たとえば将補とそれから佐官級の停年延長が考えられていますけれども、これなんかも僕は全くおかしな話だと思うんです。  もしも一遍停年を先に延ばしてしまえば、その停年はそのまま定着するでしょうし、一応、戦闘集団としての自衛隊の中における停年問題を、たとえばそういう財源がいまないからというかっこうで先に延ばして、いわば新聞の表現によれば緊急避難とかいう言葉が出ていましたけれども、ここら辺は、たとえば自衛隊が国の安全とか、国家の尊厳とか、われわれの生命財産を守るというようなたてまえでもって行われているならば、この考え方はそれに相反するだろうと思うんです。  その点について、自衛隊のことについてだけお答えいただければ結構ですから、どなたかお答えください。
  219. 上野隆史

    説明員(上野隆史君) 自衛官の停年は、その任務の特殊性からいたしまして、他の公務員に比較して比較的に低い年齢に定められております。そこで、昭和五十四年度から六年間の計画をもちまして停年の延長を図っておるところは先生御承知のとおりでございます。  従来、いまの計画が発足いたします前は停年退職者の約九〇%が五十歳で退職しておりました。しかしながら、停年に達する年齢層の労働能力、これは近年、隊務を遂行し得るレベルに向上しております。一般に平均余命も延びておるという状況もございます。また、近代化、高度化された装備品の運用、整備には長年の経験に基づきます幅広い知識や高度の技術が不可欠になってきております。これらの専門的な知識、技術を長年自衛隊で修得してきた隊員を、これらを比較的若年で退職させるということは人材の有効活用という面から見て好ましいことではないと思います。  他方、自衛官のライフサイクルから見まして、停年退職の時期は子弟の教育費等出費の多い時期にも当たるということもございましょう。また、退職後の隊員の不安を少しでも緩和する、そして勤務意欲を向上させる、そして生涯の職業としての自衛官の魅力化を図るという必要もございま す。これらの諸要素を総合的に勘案いたしまして、五十四年度から五十九年度までの六年間で最高三年間停年延長するという措置を逐年実施しておるところでございます。  ところで、五十九年度の計画分につきましては、この計画の最終年度でもございます。また、この経過期間中におきまして、一般職国家公務員の定年も六十歳と法律で決められるというような状況もございます。そこらを総合勘案いたしまして、昭和五十九年度におきましては階級間の停年格差などについても現在検討をしております。これをどうするかということにつきましては現在検討中でございまして、まだ成案を得ている段階ではございませんが、そういう検討中にあるという状況にございまして、ただいま先生御指摘のような、ただ単に財政難だから、退職金を払えないから、だから緊急避難として行うといったようなものではございません。
  220. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 自衛隊の階級別年齢構成を教えてください。
  221. 上野隆史

    説明員(上野隆史君) 自衛官の階級別の年構成につきましては、これは自衛隊の精強性に関します重要な指標の一つでございます。そういうことから、従来この国会におきましていろいろ御要求がございましたけれども、長年にわたりましてそういう各階級ごとの年齢構成というものにつきましては御答弁を差し控えさしていただくということで御了承をいただいておるところでございます。ずっと昔からと申しましたけれども、私の記憶が正しければ、私の記憶する限りにおきましては、昭和四十三年にそういう御要求がありまして、当時、私、担当の課長補佐でございましたけれども、そのときにもいまと同じような理由でもって、従来からこの自衛隊の精強性に関する指標である、戦う力の要素の一つである、したがいまして国会という公開の場でもって御答弁することは差し控えさせていただきたいということで、その当時におきましてもすでにそういう御答弁で御了解をいただいておるところでございますので、繰り返しになりますが、階級別の個々の年齢構成については御容赦をお願いしたいと存じます。
  222. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 四十三年にはそういうふうなことがあったのかもわかりませんけれども、自衛隊の問題というのはアメリカとの関係においていまやもう全く無視のできない一つの軍隊として存在しているわけです。しかも、その軍隊は明らかに日本の普通の人たちの税金によって支えられている。精強性とおっしゃるけれども、その精強性なるものがどういうものであるかということをこちらの方で承るのは当然のことじゃないですか。  しかも、あなたは、いま年をとっていてもそれにふさわしいポジションがあるし、熟練度というふうなかっこうで言うんならば何も若いだけが能ではないと言っているわけだから、そうすると年齢というようなことぐらい大っぴらにしたところで、それぞれの年齢にふさわしい自衛隊を精強たらしめる能力があるわけだから、単なる物理的あるいは生理的年齢を言ったっていささかも差し支えないと思いますけれども
  223. 上野隆史

    説明員(上野隆史君) 一般的に申しますれば、こういう戦う組織というものは、若くて体力のある者が多い方がいいということはこれは世界共通のことだろうと存じます。ただ、先ほど申し上げましたような事情によりまして停年延長をやっておる状況でございます。  そこで、全く従来こういう問題につきまして御答弁申し上げていないかというとそうでもございませんで、大きなくくりでは申し上げております。階級別に申し上げるということは御容赦願いたいのでありますが、自衛官の全体の平均年齢で申し上げますれば、これは現在約三十二歳でございます。
  224. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 つまり若い人間が多いという方がいいと。この場合は、もちろん陸上自衛隊なんかはやっぱり幾ら機械化されていたって体力が問題でしょうから。それから幕僚の方になってくれば今度はお年を召した方がいろいろと判断力もふさわしいということになるんでしょうけれども、たとえば若い連中でもって非常に陸上自衛隊としては大変結構な能力を持っていたけれども、年をとってしまえばいかんともしがたく、その方にとってみれば非常に老いぼれてしまって、それで戦闘集団としての能力がなくなってしまう人間も含めたまま停年延長してしまうということは、たとえば自衛隊というふうなものを戦闘集団として考えた場合、これは非常に脆弱化することになりませんか。だから僕は、税金の使い道としての自衛隊というふうなものをいま聞きたいから、それで聞いているわけです。だから、平均年齢を聞いたところでよくわからないですよ。  そうじゃなくて、階級別のたとえば一番下の方の人間、本当に体力が問題である人間は一体何%ぐらいいるのか、しかもそこのところに老人がいるのかいないのか、そういうことをちゃんと聞かなければ、たとえばこちらが税金を払って、しかもなおかつ皆さんがおっしゃるように、われわれのたとえば独立国としての面目を保つとか、やれ国家の尊厳を守るとか、いろんなことをおっしゃっているけれども、その内容については一切わからない。ただ、ハードな装備について言うならば、F15とか16だとか、七四式戦車とか、そんなことがいろいろ出てきますけれども、肝心かなめの人間はどうなっているかということについての情報がさっぱり出てこないわけです。  そこで、僕はここで申し上げたいんですけれども、さっきから伺っていると、たとえば僕自身が質問したところで、僕の方の質問の仕方が悪かったんでしょうけれども、お答えになる方がいらっしゃらない、あるいはお答えになる方がたとえば管轄外であるという形で、常にこの参議院のこういう内閣委員会においては質問するというかっこうでのみ物事が進んでいくらしいんです。だけれども、僕の知っているというか理解している限りにおいて言うならば、まずたとえば人事院勧告なら人事院勧告について、それぞれが人事問題あるいは人事院勧告問題について、代表者がこの内閣委員にいるわけだから、ここでもってちゃんと前もって相談して、あるいは議論をして、その議論の結果をそちらの方に僕は言うべきではないかと思うんです。  国政調査権という言葉があって、何かまるで水戸黄門の葵の御紋みたいな感じで言われていますけれども、ほとんどこれが発動されたことがない。これは国会に与えられていると言うけれども国会の一番具体的な機能を発揮しているのはこれは委員会であるから、結局は委員会にあるだろうと思うんです。僕はこの問題こそ、別に政府側の方に言っているんじゃなくて、ここにいらっしゃる委員の方に申し上げたい。  ここでもって、たとえば防衛問題、さっきちょっと一%という問題が出てきましたけれども、たとえば防衛問題で一%というようなものを枠として考えるのは全くこれはナンセンスなわけです。本当に国を軍備でもって守るならば一%じゃとても無理でしょう。だけれども、本土をとても守れもしない軍備によって何とかある妄想を描いて、その中でたとえば一%という二兆七千億ぐらいのものをもしもそれにつぎ込むならばこれは完全な無駄なわけです。  われわれの内閣委員会というようなものは、そういうことをまず議員同士でもって超党派的に話をして、その上でもって政府にちゃんと言うべきじゃないかと思うんです。それぞれの立場というのが僕はあることはよくわかります。それはイデオロギーに縛られる政党もあれば宗教に縛られる政党もある、あるいは組織に縛られる政党もある、お金に縛られている政党もあるでしょう。だけれども、そういうふうなものを超越したところに参議院議員というようなものがあればこそ、たとえば衆議院のカーボンコピーじゃないと言われる、あるいはそんなことを言わせないだけの機能を僕たちは持つんじゃないかと思う。年がら年じゅうこうやってこっち側の方から何かわけのわからない、僕は朝からずっと聞いていましたけれども、まさにわけのわからない討論をしているわけです。こんなことをやっている以上、僕たちはや っぱり、自分が予測していた以上に何か議員というようなものは経済的に恵まれない立場ということはよくわかったけれども、それでもなおかつ、やはりよけいな分のお金を取っているような気がします。  僕は委員長に申し上げたいんですけれども、そういうたとえばあるテーマがあったら、それについて議員同士がそれぞれの自分の立場でもって、個人に戻って、つまり政党に縛られないで、そうやってしゃべり合うという機会はつくれませんか。
  225. 高平公友

    委員長高平公友君) 私がここで答弁するのはどうかと思うのですが、私からひとつお話し申し上げたいと思います。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  226. 高平公友

    委員長高平公友君) 速記を起こして。
  227. 野坂昭如

    ○野坂昭如君 どうもありがとうございました。  ここに源田さんもいらっしゃるし、ただ源田さんと僕と、ただ防衛費が一%であるということについて言うならば、源田さんは多分非常に反発をなすっているんだろうと思うんです。そういうことをたとえばこういうところできちんとしゃべって、ただ一%というわけのわからない一つの何というか枠で言っている以上、たとえばせっかく内閣委員会防衛をしゃべるといってもこれは羊頭狗肉にすぎない。そうであれば国民はただ単に税金ばかり取られて髀肉の嘆をかこつしかない。だからここで参議院のたとえば機能をよみがえらせると僕が一人でしゃかりきになる必要は何もないので、ただこれからの日本のあり方を考えていく上においては、やはりこの内閣委員会なら内閣委員会の中の議員同士のしゃべり合いというようなものがもしもちゃんと実らなかったら僕は本当に存在理由がないだろうと思うんです。  僕は、皆さん、いまもうみんな帰っちゃったからあれですけれども、自民党の方も含めて、野党の方も含めて、どうかそういう論議を大いに起こして、その上でたとえば政府側に自分たちの意見をしゃべっていく。そうでなかったら、いつまでたっても、たとえば重複した質問をしてしまったり、あるいは何かあげくの果ての揚げ足取りに終始したり、本来の論議というふうなものと全くかけ離れたところでもって、結局、野党側の立場で言うならば、数に押されてそれで後はおしまいになってしまうか、あるいはどなたかがおっしゃっていたけれども一つの法案についてのやみ取引が行われてしまうような、世間一般の漠然たる邪推かもしれませんけれども、そういう枠から一歩もはみ出ないだろうと思います。  じゃ、これで終わります。
  228. 高平公友

    委員長高平公友君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二十四分散会