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1983-08-18 第99回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年七月二十三日(土曜日)委員長の指 名で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した 。  恩給等に関する小委員       愛野興一郎君    狩野 明男君       佐藤 信二君    田名部匡省君       吹田  愰君    堀之内久男君       宮崎 茂一君    矢山 有作君       渡部 行雄君    鈴切 康雄君       和田 一仁君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  恩給等に関する小委員長    堀之内久男君 ────────────────────── 昭和五十八年八月十八日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 堀之内久男君    理事 矢山 有作君 理事 渡部 行雄君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    上草 義輝君       始関 伊平君    吹田  愰君       堀内 光雄君    山花 貞夫君       木下敬之助君    中路 雅弘君  出席国務大臣         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      丹羽 兵助君  委員外出席者         内閣法制局長官 茂串  俊君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    服部 健三君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         人事院事務総局         職員局長    叶野 七郎君         総理府人事局長 藤井 良二君         総理府恩給局長 和田 善一君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         経済企画庁調整         局審議官    丸茂 明則君         大蔵大臣官房会         計課長     渡邊 敬之君         大蔵省主計局給         与課長     西村 吉正君         大蔵省主税局総         務課長     滝島 義光君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ───────────── 七月二十二日  一、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第九十八回国会閣法第二〇号)  二、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案内閣提出、第九十八回国会閣法第二一号)  三、国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出、第九十八回国会閣法第三九号)  四、行政機関公文書公開に関する法律案中路雅弘君外一名提出、第九十四回国会衆法第三五号)  五、国の行政機関職員等に対する営利企業への就職の制限等に関する法律案中路雅弘君外一名提出、第九十四回国会衆法第三六号)  六、情報公開法案横山利秋君外六名提出、第九十四回国会衆法第三七号)  七、公文書公開法案鈴切康雄君外七名提出、第九十四回国会衆法第四五号)  八、沖縄県における駐留軍用地等の返還及び駐留軍用地跡地等の利用の促進に関する特別措置法案上原康助君外八名提出、第九十六回国会衆法第一五号)  九、国家公務員法の一部を改正する法律案岩垂寿喜男君外二名提出、第九十六回国会衆法第一八号)  一〇、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案矢山有作君外五名提出、第九十八回国会衆法第三号)  一一、国家公務員法の一部を改正する法律案和田一仁君外二名提出、第九十八回国会衆法第一七号)  一二、行政機構並びにその運営に関する件  一三、恩給及び法制一般に関する件  一四、公務員制度及び給与に関する件  一五、栄典に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  公務員制度及び給与に関する件(人事院勧告)      ────◇─────
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  公務員制度及び給与に関する件について調査を進めます。  まず、去る五日の一般職職員給与改定に関する勧告につきまして、人事院から説明を聴取いたします。藤井人事院総裁
  3. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 去る五日に人事院は、本年度公務員給与に関する勧告国会内閣に対して提出をいたしました。本日、機会を与えていただきましたので、本年度給与勧告概要につきまして、簡略に内容の御説明を申し上げたいと思います。  お手元に資料を配付いたしておると思いますが、その中で、一枚紙の「給与勧告の骨子」というのがございます。これに概要を列記をいたしておりますので、これに基づきまして概要の御説明を申し上げます。  本年の官民較差、例年のとおりの方法で調査実施いたしました結果は、金額にいたしまして一万五千二百三十円、率にいたしまして六・四七%ということに相なったわけでございます。昨年は、御承知のように四・五八%の勧告をやったわけでございますが、いろいろ本委員会でも御討議をいただき、また御苦労をおかけしたわけでありましたけれども、遺憾ながらああいうような事情で見送り凍結ということに相なりました。そういうことで去年分が実施をされておりませんので、それに相当する分が当然本年の較差の中に入ってまいるということに相なりました。その結果が六・四七%ということになるわけであります。  去年との差額をただ単に算術的に出しますと一・八九%、差額ですから一・八九ということになるわけであります。ただしかし、本年の春闘分の相場というのは大体どのくらいだろうかということの参考に供する意味で申し上げたのでありまして、正確に去年の四・五八がことしに置き直せばどのくらいになるかということは算定ができません。と申しますのは、ことしの四月現在でもって調査をいたしておりますので、去年からそれぞれ公務員実態についてもある程度変化がございます。手当の額が変わるとか、あるいは定期昇給分が反映しておる、入ってきておるとか、あるいは職員構成自体新陳代謝というようなこともございましょう。そういうもろもろの状況が変わってまいっておりますので、その分を含めた分が結局去年のパーセントの上積みということになりまして、六・四七%という数字が出たというふうに御理解をいただきたいと思います。  これの配分でございますが、何分率自体がそう高くない率でございます。特に本年の民間春闘分について詳細に調べましたところ、その配分傾向というものもほとんど上下較差がないというような配分をやっております。そういうこともございまして、公務員の場合にも当然重点俸給表改定ということに置きたいということで、俸給改定分の比率といたしましては五・四九%、それからその他の生活関連の中の重要な諸手当というものについて〇・六七%、それからはね返り、本俸が上がれば当然それに基づいて上がってまいるものもございますので、そのはね返り分に充てるものが〇・三一%ということの配分にいたした次第でございます。  なお、そこに書いておきましたように行政職(一)表・(二)表についてだけ申しますと、昨年の給与は二十三万三千七百三十八円でございましたが、ことしは二十三万五千二百九十七円ということで、額はそれほど変わっておりません。これは、去年の分が見送られたという結果が端的に反映されておるわけでございます。平均年齢は去年とことしは全然変わりませんで、四十一・二歳ということでございますが、これは各省庁とも新陳代謝ということにはかなり気を使って運営をしてまいっておるということの結果ではないかというふうに理解をいたしております。  改定内容でございますが、まず俸給表につきましては、初任給について言えば、高校卒が五千七百円アップ大学卒が六千七百円アップということで、率といたしましてはいずれも六・六%ということに相なっております。  配分傾向は、上下ほとんど変わりはございませんが、なかんずく従来からもやや冷遇されてきておったというふうに見受けられます階層、すなわち世帯形成層中堅層、これには重点を置くように努めました。最高六・八%というようなことに努力をいたしたわけでありますが、平均をいたしますと六・四%ということに相なります。  その他の各俸給表について見ますと、平均引き上げ率は行(一)とほとんど同じでございまして、六・四%程度ということに相なりました。  指定職俸給表、これはここ数年来抑制措置ということで抑えぎみに来ております。民間との対比で申せば、こちらが対応させております民間重役連中等との差でもって見ますると、本年あたりはだんだん差が開きまして三二%程度になっております。なっておりますのですが、こういう、幅が非常に狭い、またこういう情勢のときですから、指定職についてそう重点的に思い切った改善をするということができないということでございますので、これについても、指定職適用者についてははなはだ申しわけないと申しますか、お気の毒という感じはしないわけではありませんが、一般並みの六・四%という改善率にとどめることにいたしております。  次は、手当でございますが、これは細かい点もございますので、詳細は省略させていただきますが、なかんずく重点を置きましたのは扶養手当でございまして、これは配偶者について一千円アップの一万三千円、それからその他の扶養者、子供さんが主ですが、これらについては二人までは同じく一千円アップの四千五百円ということにいたしたいと考えております。  その他、通勤手当住居手当等についても、民間実態考慮いたしまして多少の手直しはいたすことに配慮いたしております。  医師初任給調整手当でございますが、医師につきましては厚生、文部両省において着々努力を重ねられました結果、大分医師の数がふえてまいりました。そのうち五年ぐらい経過すればかなり需給状況にもさま変わりの様相が出てくるのではないかというふうに思いますが、まだことしあたりは、やはり実態を調べましたところ民間の方がかなり高い。特に公務の場におきましても、離島とか僻地等につきましてはなお医師手当てすることは大変むずかしいという状況が続いております。そういうことを配慮いたしまして、医療職については従来から初任給調整手当という手当でもって措置をすることにいたしております。これは公務の部内でございますので、俸給表手当てをするのは限界がございます。相互の均衡の問題がございます。それに俸給表ということになれば、直ちにこれは退職手当なり退職年金影響を及ぼすことでございますので、俸給表措置するのは限界がある。それでもやはり優秀な医師を確保することはむずかしいという現実の姿がこざいますので、それをカバーする意味初任給調整手当を出して今日まで来ております。ことしの場合も、一番入手難であります離島僻地等につきましては最高現在二十万五千円ということでございますが、一万五千円アップの二十二万円とする等の措置を講じたいと考えております。  特別給、賞与でございますが、これは民間を調べましたところ四・九カ月分で、現在の公務の四・九カ月分に匹敵をいたします。したがって、これは据え置きということでございます。支給日につきましては、去年の勧告でも申し上げましたように、夏の六月十五日の支給日を十五日繰り下げて六月三十日、冬の支給日十二月五日を五日繰り下げて十二月十日ということにいたしまして、民間の大多数のところと大体歩調が合うようにいたすという特別の考慮をいたしました。ただし、これは急激な変更をいたすことはなかなかむずかしい面もございますので、五十九年度から変更をすることにいたしたいと思っております。  以上がその内容でございますが、本年の場合、特に去年ああいうことで凍結されたというような姿がございまして、それを踏まえての勧告でございますので、特に強く人事院勧告制度の意義を理解をしていただいて、早急にひとつ完全実施をしていただきたいということを要請をいたしました。特にその理由として、凍結というようなことが行われたためにやはり職員士気等に、それほど表立って集団的にどうこうというようなことはいまのところございませんけれども、しかし、職員士気というものを考えていかなければなりませんよ、現実に去年民間春闘が行われたのにこちらは、公務員の場合においてはそれが見送りということがございますので、現実生活等への影響が出ておることは事実であって、これを無視するわけにはまいりません。特に四現業については仲裁裁定が去年も実施をされておるわけであります。そういうことで、やはり均衡の問題が起きておるということについても、これは重要な関心事でなければならない。なかんずく、御承知のようなことで人事院勧告も過去すでに十年余にわたって完全実施という慣行が確立をしておったわけであります。このことがやはり何といっても公務における安定した労使関係ということに寄与してまいったことはこれは現実の姿でございまして、これにひびが入るようなことになりましては国政の運営からいっても大変憂慮すべき事態ではないか。そういうような点を配慮していただいて、ぜひともひとつ本年度においては完全実施をしていただきたいということを強く要請する姿をとっております。  それから最後に、人事行政改善の諸施策でこざいますが、これは三年前から実は毎年の夏の勧告の際に報告の形で提言を行ってまいりました。すなわち、公務員制度については、現行の制度というものは大変よく定着をしている面があると思います。十分有効に作用してきていると思いますけれども、何せ三十余年を経過をいたしております。その間、社会経済情勢というものの変化には大変著しいものがございまして、なかんずく高年齢化あるいは高学歴化というような現象が大変急速に進んでまいっております。これに対応する方策を講じませんと、ここ数年たてばやはりぎくしゃくした面がたくさん出てくるというような憂慮がございますので、そのようなことのないように、基本的に公務員制度諸般の分野にわたって改善策を検討してまいった次第であります。大体の成案がまとまってまいりましたので、ことしの場合は従来よりもさらに少し具体性を持たせて問題点を指摘することにいたしました。  しかし、この問題については、各省の人事管理基本的な問題でございますし、また公務員諸君にも大変な影響がございます。また、国民一般も深甚の関心を持って見ておるところでもございますので、これについてはなお関係方面の意向を十分に参酌しつつ、具体的な結論が得られますれば、物によっては法律改正についての意見の申し出、あるいは勤務条件等については勧告という形になると思いますが、具体案がそろい次第、全体の姿を眺めながら逐次そういう所要措置を講じて、国会でまたいろいろ御審議を賜りたいというふうに考えておるところでございまして、その点について言及をいたしておる点が最後の点でございます。  以上、ごく簡略でございますけれども、本年度給与勧告内容についてその概要を御説明申し上げました。ありがとうございました。     ─────────────
  4. 橋口隆

    橋口委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。愛野興一郎君。
  5. 愛野興一郎

    愛野委員 まず、ただいま人事院総裁から本年の給与勧告について説明がありましたが、昨年は、御承知のようないきさつで人事院勧告凍結という異例の見送り措置が決定されたわけであります。人事院制度からして、財政上の問題やあるいはまたいろいろな諸問題があるといえども、人事院総裁としては、この人事院勧告という制度をどうしても守っていかなければならぬという立場から、非常な御苦心やあるいはまたある意味の忍従と申しますか、そういったまさに苦難の昨年の人事院勧告であったというふうに思うわけであります。しかしながら依然として厳しい財政状況であるわけでありますから、ただいま総裁から説明がありましたけれども、人事院総裁が昨年のあの厳しい環境の中で人事院の筋を通してこられたその心境をもう一度御披瀝いただいて、そしてさらに、本年の勧告の最大のわかっていただきたいという特色をもう一回明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  6. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 申し上げますまでもなく、給与に関する人事院勧告制度というのは、公務員特殊性からいって労働基本権が制約をされておるということに対する代償措置として認められておるものである、これが給与に関する人事院勧告制度基本的なたてまえであることは申すまでもございません。そういうことでございますので、現在の制度がそのまま存続をしていく、そのたてまえが存続をする限りにおきましては、これはどうしても人事院勧告というものは実施をしていただかなければ困るわけであります。この点は、過去にさかのぼって詳細に申し上げることは控えますけれども、いろいろな御論議がございましたが、皆様方の大変な御配慮がございましてここ十年以上は完全実施という姿が出まして、それが踏襲されてきたわけであります。これは当然と言えば当然のことでございますけれども、やはり人事院勧告制度に対する深い御理解のたまものであろうというふうに考えております。事実、これが実施をせられましたあたりから目立って公務員における労使関係というものが安定をいたしてまいりまして、大変良好な姿でもって推移してきておったのであります。これは勧告制度のみがその唯一の理由であるとは思いませんけれども、これが何といっても一番重要な要素であるということは申すまでもないところであります。  ところが、最近、財政状況というものが非常に厳しいということになってまいっております。国債が約百兆を超すというような姿も出てきております。われわれもそういうことに対して、財政のことはそんなことはどうでもいいよというような態度をとっておるわけではないのでありまして、われわれも公務員の一員ですからそういう状況等十分考慮はし、また勉強もしておるつもりであります。ただ、やはり物事の、制度というものの組み立て方というもの、それは大変大事な仕組みでございまして、それが外れますと制度自体が崩壊をするというようなことにもなりかねないと思います。この点は御承知のように臨調においてもいろいろむずかしい御議論がございました結果、公務員給与についてはわれわれとしてもまあまあというような方向が打ち出されております。  これは四つの原則でございまして、その中には、人勧制度というものは維持、尊重されるべきだ、それの根拠となる、勧告の基礎になる方式官民比較だ、これが一番妥当なんだということを言っております。それから最後に、やはり勧告が出た場合にそれをどういうふうにするか、実施をするか。尊重ということが第一項目にありますから、その基本を踏まえつつということでございましょうが、具体的にどういうふうにするかということは、時の世論、財政状況等もにらみ合わせて内閣国会において決定をするのだというような点が臨調でも大きな方針として打ち出されておるのでありまして、それはそれとして私は筋違いと思いません。しかし、そういう大筋の制度仕組みは是認をされたというふうに考えております。したがいまして、人事院といたしましては、官民較差がある限りはやはりその差は埋めてもらわなければならぬ、これは代償機能として当然のことであるというような立場から、いろいろな批判はありましても、人事院人事院としての立場から、やはり較差があればその較差を埋めていただくということはやっていただかないと困るという立場を堅持してまいりました。この点は去年からことしにかけての国会先生方にもいろいろ御奔走をいただき御迷惑をおかけいたしましたが、機会のあるごとに私たちは私たち立場を明確に申し上げて、去年の凍結見送りはやはり大変遺憾であるということを申し上げてきた次第でございます。この基本線は変わりません。ことしといえどもむろん変わりませんし、今後ともやはり制度仕組みが続く限りは私としてはこのたてまえを変えるつもりはございません。堅持をしてまいりたい、かように考えております。  したがいまして、ことしの場合は、去年凍結という事態がございますので、方式としてはやはり従来どおりの方針を踏襲して四月現在で調査をいたしました。調査をいたしました結果は、当然のことながら、去年の分が凍結をされておりますのでそれに相当する分がことしの分として入ってくるという結果に相なりました。ただ、ことしの場合は春闘大変幅が小さかったというようなこともございまして、大体まずまずというような数字が出てきたのではあるまいかと考えておるのであります。  したがって、これの配分については、先刻御説明を申し上げましたように、俸給表改定に主眼を置きつつ、あとは生活関連の諸手当について重点を置いて措置することにいたしました。幅がそれほどございませんので、大体上下同じような同率的なことでございますけれども、特に生活の苦しい世帯形成層とか中堅層というようなものには重点を置きつつ措置することにいたしたのでございまして、これが本年の勧告内容の大きな特色ではなかろうかというふうに考えております。
  7. 愛野興一郎

    愛野委員 大蔵省にお尋ねいたしますが、今回の人事院勧告を完全に実施するとすればどのくらいの財源を必要とするか、お伺いいたします。
  8. 西村吉正

    西村説明員 今年度人事院勧告実施するための所要額でこざいますが、一般会計で四千五百十億円、特別会計を含めますと四千七百三十億円でございます。なお、給与改善費として一%相当分を計上しておりますので、追加所要額という意味でこれを差し引きますと、一般会計で三千八百四十億円、特別会計を含めまして四千三十億円ということでございます。(「もっと大きい声ではっきり言いなさい」と呼ぶ者あり)  一般会計実施所要額が四千五百十億円、給与改善費一%相当分を引きますと三千八百四十億円でございます。特別会計を含めますと所要額が四千七百三十億円、給与改善費を差し引きますと四千三十億円でございます。
  9. 愛野興一郎

    愛野委員 ただいま大蔵省財源説明がありましたが、人事院総裁は、その財源を踏まえて先ほどの敢然としてやっていただきたいというその決意にお変わりないか、お伺いいたします。
  10. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 その点は繰り返し申し上げておりますように、人事院人事院立場、たてまえ、役割りというものがございます。そういう点から見まして、私自身はいろいろ国財政やその他についても無視はできませんから勉強もし、やっておりますけれども、それとこれとは別問題なんであって、人件費というものはこれは一種の義務費であって、いろいろな総人件費抑制というようなことはやり方によってはなお措置しなければならない面あるいは措置ができる面があるかもしれません。そういう努力は全然やる必要はないというようなことを私は申し上げているわけではないのであります。現在の制度がある限りは、勧告というものが出ればこれはやはり実施していただかなければならぬし、総じてそういう意味人件費というものはこれは義務費的なものだと考えておりまして、その決意には変わりございません。
  11. 愛野興一郎

    愛野委員 次に、人事院勧告を受けられた政府担当大臣である総務長官にお伺いをいたします。  先ほどからお話があっておりますこの人事院勧告制度定着は、人事院官民較差是正のためにできるだけ正確な勧告をなすと同時に、政府部内において総務長官労働大臣のバックアップを受けながらその完全実施のために非常な御努力をされたことが大きいと思うわけであります。特にまた本年も厳しい状況下にあるわけでありますが、総務長官のお立場として、担当大臣として国家公務員給与をできるだけよくしていくために非常な御努力、御苦労があると思うわけでありますけれども、長官の現在の率直な御心境をお伺いしたいと思います。
  12. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 ただいま先生からお尋ねのことについてここで答弁をさせていただきたいと思いますが、特に今年度人事院勧告の取り扱いについては、昨年あのように給与改定が残念にも見送られたという事実をちゃんと踏まえまして、まず第一に、人事院勧告制度が先ほど来人事院総裁のおっしゃっておりまするように労働基本権制約の代償措置である、また、これまで維持されてきた良好な労使関係を守っていく必要がある、こういうことを十分念頭に置き配慮して、現在の状況は御承知のように大変厳しい状況にありまするが、勧告実施に向かっては最大限の努力を払っていきたい、尽くすべきである、こういう考えでおります。
  13. 愛野興一郎

    愛野委員 現下の財改事情がきわめて厳しいということは、これはもう私どもも十分認識をいたしておるところであります。しかし、国家公務員民間の勤労者と同様に勤労者でありますから、昨年のような状況があるということは、先ほどもお話がありましたようにきわめて職員士気を阻喪し、行政面に非常な支障を生ずるのではないかという心配があるわけであります。また、給与改定によって個人消費を刺激をするということも側面としてはあるわけでありましょう。あるいはまた、いわゆる官民較差があるといえども、民の方は相対的には若干といえども毎年上がっておるわけでありますから、以上の点を考えますと、本年度人事院勧告給与担当大臣としては完全実施をすべきであると、労働大臣とともに総務長官給与関係閣僚会議で主張をされたと聞いておるわけでありますが、そのように受けとめてよろしいものかどうか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  14. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 まずお答えをさせていただきますが、八月五日に開かれました給与関係閣僚会議でありますが、そのときはちょうど、きょう御説明のございました人事院の方から給与改定、いわゆる人事院勧告国会政府にお出しになったその日でこざいますけれども、早速給与関係閣僚会議を開いていただいたのであります。私はそのときに、いま先生の御指摘のような気持ちで、本年度人事院勧告の取り扱いに当たっては次の点を踏まえて慎重に検討する必要があるということを相当誠意を持って閣僚会議で発言したつもりであります。  そこで、どのような内容について申し上げたかということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、第一に、政府は従来から一貫して、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度はあくまで尊重さるべきであるという基本立場に立って人事院勧告実施努力してきた、その結果良好な労使関係が維持され、これがひいてはわが国全体の労使関係の安定、社会、経済の発展に寄与したのである。第二に、昨年は異例の措置とはいえ、給与改定見送り職員に行政改革、財政再建に率先して協力いただいた、この間、民間においては五十七年、五十八年と二度の賃金改定があったのであります。また第三に、職員にとって給与は、先生もいま御指摘のございましたように、生活の糧であり、日夜公務に精励しておる職員生活を保護することに政府としても十分な配慮をしなければならないことは言うまでもありませんが、そうした配慮をすることが職員士気を高揚し、行政能率の増進を図っていくことにつながるのである。現在、財政事情が厳しいことは承知しておりまするが、ただいま私の申し上げましたような以上の諸点を十分考慮いただき、本年度人事院勧告については実施に向けて最大限の努力を尽くしていくものと思う、何とぞ関係閣僚の格別の御配慮をいただくようお願いしたい、さらに、現下の情勢が厳しいことは私も十分知っておるつもりであるが、前にも述べた点を考慮して格段の配慮をいただけるよう重ねてお願いしますという、いま人事院総裁もおっしゃいましたように、人事院はそのように勧告はしておられますけれども、国政全般から考えての意見もやはり出さなければなりませんので完全実施という表現はしておりませんが、ただいま申し上げましたように、人事院勧告には最善の努力をしていくという意味の発言を繰り返して述べておる次第であります。
  15. 愛野興一郎

    愛野委員 新聞の報道を見ますと、かなり厳しい関係閣僚会議の御議論であったようでありまして、そういう中で給与担当大臣としての総務長官労働大臣が御苦労いただくことは目に見えるような気がいたすわけであります。しかしながら、何と申しましても政府側の担当としては総務長官であり、バックアップとしての労働大臣であるわけでありますから、今後とも給与関係担当大臣としての気魄を持って、そしてまた、丹羽総務長官はきわめて弱い者をいままで一生懸命に引き上げてくる努力をされた政治家としての御経歴を私は知っておりますだけに、給与関係閣僚会議において一生懸命にやっていただけるもの、こういうふうに思うわけでありますが、長官の御決意をお伺いしたいと思います。
  16. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  働いていただく職員の方々の生活も十分考えていかなければなりませんし、給与改定されないことによったり十分なことができないために士気が落ちるようなことも国のために惜しむべきことになりますので、政府においても財政がなかなか厳しい中でございますけれども、人事院勧告実施が行われますように、先生の御意見のように、私は関係閣僚会議におきましても政府部内におきましても力いっぱい最善の努力をさせていただくことをここでお誓い申し上げておきたい。お教えのとおりに、お役人の方々にしっかり働いていただけるように、しかも世界にもないようないい労働慣行が維持されていくようにしなければなりませんので、そういう点も基本的に腹に置いて努力させていただくことをお誓い申し上げておきたいと思います。
  17. 愛野興一郎

    愛野委員 この問題は、その性格上できるだけ早く政府の態度を決めるべきであると思うわけでありますが、お差し支えなければ見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
  18. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  人事院勧告は、一日も早く国会の方においても、特に政府側においても決着をつけなくてはならないことで、考えをまとめなくてはならないところではございますが、やはり国政全般からいろいろな点とにらみ合わせて考えていかなくてはなりませんので、現在のところ関係閣僚会議で御審議願うことになっておりますが、特にただいま御注意のありましたように、給与担当大臣であり働く方々の気持ちを訴える立場の私でございますから、こうした問題の性格上できるだけ早く詰めていただくように私としては努力させていただきたい、かように考えております。しかし、いまのところいろいろ関係がありますのでいつごろまでにとは申し上げにくいのですけれども、私は、この性格上全力を挙げてできるだけ早くやっていただくようにお願いする努力をしていきたい、かように思っております。
  19. 愛野興一郎

    愛野委員 御承知のように、人事院勧告影響恩給、年金、それから地方公務員等にも及ぶわけであります。したがいまして、ただ単に逼迫した財政事情のもとで人勧は厳に抑制すべきであるというだけでは恩給や年金受給者の給付に切実な、深刻な影響を与えるわけでありまして、現に昨年の人勧凍結影響を受けて恩給の引き上げも見送られたわけでありますから、恩給生活をしておる人たちは気の毒な状況になっておるわけであります。  そこで、こういう恩給、年金、地方公務員影響のある人事院勧告について、人事院総裁の御見解と同時に、給与恩給双方の担当大臣である総務長官の御見解をお伺いしたいと思います。
  20. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  先生のお尋ねは、人事院勧告の扱い、いわゆる公務員給与改定は、恩給の扱いに大きな影響を与える関係で恩給との関係もある、だからどう考えておるかというようなお尋ねのように思いますが、恩給のベースアップは従来から公務員給与改善を基礎として行っておりまして、御承知のようにこの方式昭和四十八年以来定着しておるのでありますから、恩給の所管大臣としてもこのたびの人事院勧告の取り扱いについては重大な関心を持っており、五十八年度人事院勧告の取り扱いを検討する際にこれとのバランスを考慮して恩給のベースアップの取り扱いについても誠意を持って検討してまいりたい、かように考えております。
  21. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 私たちは、一般職の国家公務員について所管をいたしておるわけでございまして、その他は直接には所管いたしておりません。しかし現実に、給与に関する問題だけを取り上げてみましても、この人事院勧告というものが非常に広範な影響というか大変強い波及性を持っておるということは重々承知をいたしております。事実、これがてこになって特別職についてもみんな給与改定が行われます。自衛官等を中心にして、その他の特別職についても右へならえというようなことで均衡をとって給与改定が行われてきておるのが現実の姿であります。地方公務員についても、いま先生おっしゃったように、なるほど各県には人事委員会というものがございますけれども、その人事委員会自身がやはり国家公務員との対応、均衡というようなことを主眼にいたしまして勧告を出すものですから、どうしても人勧というものに右へならえということで現実にこれが大変影響を持ってくるということに相なります。その他の市町村の職員についてもそのとおりでございます。  そのほか、現在においては、これは先生も御承知かと思いますけれども、民間の各種諸団体についても人勧を非常に参考にして給与改定その他の措置を講じているところがだんだんさらにふえつつあるという事実を私たち承知をいたしております。というのは、一ころそんなにも目立ちませんでしたが、最近では民間の各種団体等につきましても、やはり公務員給与改定は世間並みにやっていただかなければ困りますよ、それをやってもらえば自分たち給与改善についても言いやすい、税金で賄われておる公務員についてもこうだからということで言いやすいという面があるから、ぜひやはりやってもらわなければならぬというような陳情書、要望書というものがとみにふえてきておるということで、影響力がますます広がりつつあるということについて大変に感銘を受けると申しますか、大変なことだなという感じを持っておるわけでございます。  すなわち、制度は別ですけれども、現実にはやはり人事院勧告が出てこれが実施されるか実施されないかということが周辺に影響を持ってくる範囲がどんどんふえて、これは直接にそれらの職員の、それらの人々の生活につながるわけですから、そういうような面から見ても人事院勧告制度というものの持っておる意味というものが大変深刻で重要なものだなということを肝に銘じて考えておる昨今でございます。
  22. 愛野興一郎

    愛野委員 次に人事院にお伺いします。  先ほど大蔵省からの財源説明がありましたように、膨大な財源を要するものでありますから、極力その人件費を生み出すための経費抑制努力をしなければならぬと思うのであります。そこで、人事院で御調査になっておるとお伺いをいたしております、民間においてどのような経費削減を行っておるのか、あるいはまた民間人件費増に対応してどんな手が打たれておるのか。調査しておられると聞くわけでありますが、その結果はどうか、お伺いをしたいと思います。
  23. 斧誠之助

    ○斧説明員 公務につきましても、実はここ数年、諸経費の節減あるいは定員の計画的な削減、あるいは人事院関係で申し上げますと高齢職員の昇給停止、それから総理府関係で申し上げますと退職手当の削減、こういうようなことでいろいろ人件費を含めます経費の節減については努力をしております。しかし、民間におきましては最近のこういう経済情勢を受けましていろいろ合理化のための努力がなされているということが伝えられておりますので、具体的にはどういう点かということを実は昨年に引き続きまして本年、人件費増に対する対応策、それから雇用調整等の状況、これを調査したわけでございます。  調査結果は、実は勧告の際の「参考資料」にもお示ししておるわけでございますが、概略を申し上げますと、諸経費の節減、能率アップ内容といたします売上高の増大策、それから機械化の促進、こういう項目につきましては大部分の企業で努力をいたしております。それから三〇%程度の企業でございますが、部門の整理あるいは業務の外部委託、こういうこともやっておりますし、残業の規制、こういうことをやっております。それから一六%程度でありますが、採用の停止というようなことをやっておる企業もございます。それからごく少数ではございますが、ベースアップの中止、定期昇給の中止あるいは賃金カット、こういう厳しい措置をとっておる企業もございます。そういうことで、実は本年の報告の中にもこういう状況を報告いたしまして、そして、それぞれ関係機関でこういう民間状況をよく認識してくださいということを御報告申し上げておるわけでございます。
  24. 愛野興一郎

    愛野委員 人事院総裁にお伺いしますが、多くの国家公務員がまじめに国家、民族のために努力をしておるにもかかわらず、最近、地方公務員退職手当の問題やあるいは地方公務員給与の問題等で論議が盛んでありまして、また新聞等もいろいろとキャンペーンを張られておるわけであります。この問題については人事院総裁はいかに考えておられるのか、所感を承っておきたいと思います。
  25. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 最近、地方公務員等のたとえば退職手当であるとかその他の処遇関係等について、新聞でいろいろ論議をされておることは十分承知をいたしております。人事院としては、直接の所管ではございませんので、正式にいろいろの見解を述べることはこれはやはり差し出がましいところであろうと思いますが、感想的なものというお話もございましたので、あえて私の考えておりますことを申し上げさせていただくならば、第一は、やはりこういう公務員給与その他の勤務条件というものは、国家公務員であろうと地方公務員であろうと、まず原則的にはほぼ均衡をとってやっていくというのがたてまえではないかと思っております。そういう点を受けて地方公務員法におきましても、いろいろな要素を挙げておりますけれども、生計費とかその他民間給与状況等も挙げておりますが、それと並べて国家公務員との均衡ということもやはり一つのポイントとして挙げておるのでありまして、これは公務員に従事するという面から申して当然のたてまえではなかろうかという感じを持っております。  ただ、地方公共団体の運営いわゆる地方自治というものは、憲法上の原則もあって、地方自治の本旨ということがございます。したがいまして、これに干渉したりとかくのことを言うような措置を講ずることはおのずからなる限界がございましょう。地方自治というものはたてまえとして尊重していかなければならぬということがございますから、そう細かいことについてとやかく言うことは自主性から申して適当ではございますまい。ただ基本的なたてまえとしては、国家公務員仕組みなり高さなりというものはほぼ均衡をとってやっていくということが国民全体の立場からいって納得を得られるいい線ではないかというふうに考えておるわけでありまして、そういう意味から、私は現実に地方団体の姿を直の目で見たわけではございませんですから、それは新聞その他で報ぜられておるところを基礎にしてそれが正しいということを根拠にして感想を申し上げるわけですが、一部に伝えられるようなそういうことは、やはり行き過ぎの面がかなりあるのじゃないかという感じがいたします。特に、私がその点について遺憾の念を禁じ得ないのは、国民の目から見まするとどうも制度全般をみんなのみ込んで批判をするというようなことにはなりませんから、結局どこかの市、どこかの県で何か少し出過ぎたような、突出をしたような措置が講ぜられるということになりますと、これは何か公務員全体がそういうことをやっているんだというような印象を受けるのであります。これは率直に申して、ああいう記事が出ますとわれわれの方の窓口にも、一体人事院は何をしておるんだ、けしからぬじゃないかというようなおしかりの電話やら投書やらがいっぱい参ります。ついでに申せば、特殊法人なんかで渡り鳥とかなんとかというのがありますが、ああいうことが報道されますと、これも決まってその翌日から一週間ぐらいは、人事院、何をしておるんだというおしかりのことで、実はそれは所管ではございませんということで係の方は汗だくで応対をするわけですが、それはそれとして、国民の目から見ますと、やはり一部にでもそういうところがあると公務員全体を律するというようなそういうことになりまして、そのことが結局回り回って、人事院勧告抑制してもそれは当然じゃないだろうか、日ごろやり過ぎているんだろうからというようなところにつながりやすい、つながりかねないということで、私は非常に残念に思っております。  そういう意味から、やはりどこへ出しても恥ずかしくないような、公務員並みなら公務員並みというのが一つの基本原則ですから、地方自治の本旨を踏まえながら基本的にはそういう点の枠をはみ出さないような、そういうような適正な運営ということは人事院立場としてもお願いをする方がよいのではないかという感じを持っております。
  26. 愛野興一郎

    愛野委員 総務長官にお伺いしますが、できるだけ人事院勧告実施するためには、やはり総人件費抑制をしていくということを考えていただかなければならぬと思うわけでありますが、そういうことで対処するということであるのかどうか。  それから、財政事情が急速によくなるとは、これはちょっと残念ながら考えられないわけでありますから、国家公務員給与恩給、年金等、見通しのないままにこの措置がずっと繰り返されていくということでは、対象者はきわめて不安感を持つのではなかろうか。これは民間企業だって、そういう状況が続きますと不安感を持つわけであります。そういうわけでありますから、人事院勧告という基本的な原則は守りながら、何かここ二、三年の財政状況が好転するまでの新たなルールというようなものはないものかどうか、この点、ちょっとお伺いをしてみたいと思います。
  27. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさしていただきますが、先ほど先生から御意見のございました人事院勧告実施に伴う総人件費の膨張を抑制することは、基本的な考え方として私どもやらねばならない大切なことと考えております。ですから、政府としても前々から無理のない定員の削減、業務の民間委託あるいは事務、業務の見直し等についても努力をしておるのでございますが、せっかくの御注意であり御指摘でございますので、今後も続けてまいりたいと考えております。基本的には先生と政府の考えは全く同じであるということを申し上げておきたいと思います。  それから、次のお尋ねでございますが、人事院勧告の取り扱いについて、将来を含めて何かルールを明確にしたらどうだ、何か新しいルールをひとつ考えてみよ、それはあくまで人事院勧告制度と申しますか、いわゆる労働基本権代償措置としての人事院勧告制度を守らなくちゃならない、これはもうきちんと腹に置いて何か新しいルールを考えたらどうだ、こういう御意見でございますが、これはきわめていいことだと思うのです。けれども先生、これをやるということをここで、よろしゅうございます、進めますなんということは、ちょっと言っても、なかなかこれはむずかしいですから、やはり大いに検討はしてみたいと思います。検討はしてみたいと思いますが、その検討するについては、先ほど御指摘のありましたように、人事院勧告制度というものをあくまで尊重した、そういう考えに立って何かひとつルールを考えてみたい。検討はしますけれども、なかなかむずかしいですから相当時間をいただきたい、こう思っております。
  28. 愛野興一郎

    愛野委員 最後に、新聞報道によりますと、本年の六・四七%から昨年の四・五八%を差し引いた一・八九%のみを実施してはどうかという意見があるやに聞くわけでありますが、人事院総裁にお伺いいたしますが、一・八九%というのは、昨年の消費者物価が二・七%でありますから、それすらカバーできないものであります。実際に本年分と昨年の分を分けることができるのかどうか、総裁、端的にお答えをいただきたいと思います。
  29. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 先刻、冒頭に御説明を申し上げましたように、去年凍結をされたということの結果、去年分がことしの較差の中に溶け込んであらわれてきておるということの説明を申し上げました。その結果がことしの較差が六・四七ということになったわけでありまして、勧告の際は、去年分が幾ら、ことし分が幾らという、こういう勧告は、これは技術的にも困難でございます。できません。ですから、そういうことはやっておりません。合わせたものとして、一本の較差として六・四七が出たから配分はこういうことでということで、しさいにそれぞれの俸給表について何等の何号ということで、詳細な具体的な俸給表勧告を出しておるわけであります。したがいまして、去年分をその分から取り出してということは、これは技術的にも不可能であります。私はそれはできないというふうに考えております。
  30. 愛野興一郎

    愛野委員 これで私の質問を終わりますが、給与担当大臣総務長官に、国家公務員給与並びに恩給、年金の受給者のためにも、この完全実施のために積極的に御努力をされることを心から期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  31. 橋口隆

    橋口委員長 午後零時十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十分休憩      ────◇─────     午後零時十八分開議
  32. 橋口隆

    橋口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢山有作君。
  33. 矢山有作

    矢山委員 官房長官がおいでにならぬと、恐らく官房長官でなければお答えのしにくいであろう問題があるわけですけれども、ではその問題だけを残して質問に入ります。しかし、これはきわめてやりにくいことになるので、これから要求したらやはりきちっと出てきていただくように、委員長の方でもひとつ御努力をいただくようにお願いしておきたいと思います。  先ほど来の論議を聞いておりましたが、私は丹羽総務長官の御答弁を聞いておりまして、人勧の実施について、完全実施を求めるという表現はしていらっしゃらないのでありますけれども、先ほど来人事院総裁もおっしゃっておったように、やはり人事院勧告が出たら、その問題については財政問題とは切り離して、これは人事院総裁も指摘されており、人件費はまさに義務経費なのですから、従来の総務長官がはっきりと完全実施ということを要求して正面から努力をされておったということを考えるなら、私は丹羽総務長官の姿勢というのはきわめて不満に思うのです。あなたが財政事情云々に気を向ける必要はないので、義務経費としての人件費についての人事院勧告があったわけですから、やはり完全実施をあくまでも要求していくというのが給与担当大臣としての任務じゃないですか。
  34. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 矢山先生のお尋ねにお答えさしていただきますが、先生のおっしゃることは、気持ちの上においては全くそのとおりであり、そういう言葉を使っても別段悪いようには思いませんが、表現の仕方でございますけれども、私は、先ほど来お答えを申し上げておりまするように、人事院勧告制度は非常にいい制度であって、そのことによってりっぱな労働慣行が維持されていくのだ、だから人事院勧告はどこまでも守っていかなければならない、だから、人事院からこのような勧告が出た以上は、給与担当大臣として完全実施のために全力を挙げますという表現の仕方もあろうと思いますし、そう言うべきかとも思いますけれども、私は、いま申し上げたように、あくまで人事院勧告を最大限尊重していかなければいかぬ、こういう気持ちでございますので、先ほど帰り際に先生からも、おまえどうも歯切れの悪い男だなといっておしかりを受けましたが、それは先生の方から考えていただいたら、まことに歯切れの悪い勇気のない男だな、こんな男に給与の交渉をさしていいかと御心配くださるのもやむを得ぬと思いますけれども、私はいま言ったように、基本的にこれはどうやっても守らなければいかぬ、そういう考えで人事院勧告を最大限に尊重していくというところで、表現の仕方は悪いかもしれませんが、ひとつ私の気持ちを先生に御理解賜っておきたいと思います。一生懸命やらしていただきますから、どうぞお許しを願いたいと思います。
  35. 矢山有作

    矢山委員 いろいろおっしゃるのですが、最大限尊重するのなら、まさに最大限なんだからイコール完全実施でしょう。なぜ完全実施のために全力を挙げると言えないのですか。そこのところが、先ほど愛野議員が指摘しておったように、まさに気魄に欠けるのですよ。いまのように財界から抑制論が出る、自民党の中にも抑制論がある、それから閣僚の中にも抑制論が出ておるときに、相当な気魄を持ってがんばらぬと、そんなへっぴり腰では押し切られてしまいますよ。かつて総務長官をやっておった人が完全実施をぜひ実現するんだと言って大変な気魄を持ってがんばったけれども、凍結されたわけでしょう。そういう事例に徴して考えたら、あなた、最大限尊重だからイコール完全実施、それに全力を挙げる、こういってはっきり物を言いなさい。物をはっきりさしておかぬと、後で問題になったときに、いやあのときは最大限と言ったんだ、最大限の尊重ということと完全実施とはちょっと意味が違うんだなんて、あなた方はすぐ言い抜けするんだ。だから、言い抜けができぬように私はこの際きちっとしておきたいと思う。最大限尊重ならイコール完全実施、それをはっきりおっしゃっていただきたい。
  36. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 どう言ってお答えすると私のこの気持ちが先生に御理解願えるのですかね。(矢山委員「やはり完全実施一言だ」と呼ぶ)ただ、表現の仕方でございますが、それは先生のおっしゃるとおり、わかりやすく言えば最大限じゃなくて完全実施と言っちゃった方がはっきりするわけなんです。(矢山委員「それをはっきりさしてください」と呼ぶ)しかし私の言うのは、あくまでも人事院勧告という制度を守っていきたい、そのためには出された人事院勧告はもう最大限尊重していくということですから、それは割引するとか、差っ引いて交渉するとか、そんな考えは全然持っておりません。私は最大限の尊重という中には、先生から言われましたように、ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、完全実施ということも含まれておる。最大限の中には、割引でもなければ、抑制でもなければ、いわゆる完全実施でもなければ――とにかく完全実施も含まれておる、あらゆる点において最大限の努力をさしていただく、これで私はわかってもらいたい、御理解をちょうだいいたしたいと思います。  まあ私も農林の方は先生御承知のようにずっと長くやってまいりましたから言い方も大分わかるのですけれども、ここの内閣委員会の方では、いまは内閣におりますけれども、どっちにしても仲間の先生ばかりですが、どう言うと仲間の皆さん方がわかってもらえるかなと思っておりますが、私はいま申し上げたように、最大限の尊重ということでは弱い、あるいはまたある程度云々ということで考えておるのじゃないかということですが、そんな考えもない、あくまでそこの中には完全実施ということも含めて最大限の努力をさしていただく、こういうことで御理解を賜っておきたいと思います。
  37. 矢山有作

    矢山委員 まあ最大限尊重、完全実施も含めてということでありますから、その辺で私もこれ以上言いませんが、私の理解としては、完全実施ということをおっしゃったというふうに理解をしておきます。恐らく皆さんお聞きになっておって、そういうふうに御理解だろうと思うのです。  そこで、私は、あなたがそういうようなへっぴり腰の気持ちになっていただかぬようにするために、一つ、二つ申し上げておきたいのです。  これは四十五年十二月三日、人勧の完全実施の始まったときですが、そのときに当時の内閣総理大臣佐藤榮作さんは、「人事院勧告は、これを尊重するというのが、公務員法の趣旨から申しましても当然のことであり、今回、ようやくにして実現を見た完全実施のたてまえを、今後とも実施してまいりたい、かように考えております。」はっきり言っておる。これを受けて同じ本会議で当時の給与担当大臣山中総務長官は、「人事院勧告完全実施等につきましては、総理大臣からお話がございましたとおりでございます。ルールの確立したものと、私も担当大臣として認識いたしておるわけでございます。」こう言っている。  さらに山中総務長官は、四十五年十二月九日の内閣委員会ではここまで言っておるのですよ。「私たちは、ことしの人事院給与に関する勧告については、完全実施をすることを国民に対しても、国会に対してもお約束をいたしたつもりでおりますから、これは今後のルールが確立したとお考えいただいていいと思います。」引き続いて、「財政事情その他によって今後特殊な措置はとらないというルールを、私たちは国民の前に明らかにしたものと考えております。」ここまで言っているわけです。  そうすれば、これは本会議場なり内閣委員会の席での総理大臣、給与担当大臣の公式の発言なんですから、国会において一たん公式に発言したものが途中でぐらぐら変わるというような不都合なことはないはずなんだ。もしそんなことになるのなら、一体国会は何のために審議しているのかということになるわけです。ですから、いま申し上げましたようなことをお考えになったら、あなたは勇気百倍して完全実施を体を張ってでも貫くという決意でぜひ努力をしてもらわなければいけないと思います。いま申し上げたこと、どうお感じですか。
  38. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきますが、先ほど、当時の佐藤総理並びに山中総務長官国会その他公の席で申し上げられましたことは、私もいま後で世話になっております者として十分理解しております。だから、その精神といいますか、そのことについてはいまの政府だって少しも考えておるところではこざいません。  ただ、昨年あのような措置がとられたということは、いままでになく財政が厳しかった、異例な措置として公務員皆様方にもごしんぼう願ったが、二度とこういうようなことを繰り返さないようにしたいということは、総理も先ほど先生から御指摘のような答弁があり、そういう方針で来ておるというたてまえで総理も国会で言っておられますし、私自身も、へっぴり腰だとか奥歯に物の挟まったようだとかというおしかりをちょうだいいたしておりますが、この人事院勧告に最大限の努力をするというところには、やはりこの精神、そしてまた完全実施をも含めた最善の努力をさせていただくということを言っておるのでありますから、へっぴり腰にならぬように関係閣僚会議等でもしっかり要請をし、努力させていただきたいと考えております。
  39. 矢山有作

    矢山委員 人勧の完全実施抑制を加えるために、にしきの御旗のように活用していらっしゃるのが、八月四日、つまり人勧が提出される一日前に出された臨時行政改革推進審議会の意見書だと思うのです。  この意見書によりますと、「国・地方を通ずる総人件費抑制」というところで、公務員に係る総人件費抑制を図るということははっきり指摘しております。ところが、人事院勧告に対する対応というものについては、「人事院勧告制度の維持・尊重の必要性、給与改定に関する従来の経過等を踏まえつつ、更に厳しさを増した財政事情その他社会経済情勢等を十分勘案して、政府及び国会が責任を持って適切に決定すべきである。」と言っているわけです。  ここで、人勧についてストレートに抑制ということは言ってないわけだと私は思うのです。それで、しかも総人件費抑制ということについては、先ほど来の質疑で述べられておったように、皆さん努力なさっているわけですね。だから、人勧の問題についてはその問題とは切り離して、人勧制度の持っておる意味からしてやはりこれは完全実施という方向に結論を出すべきではないかというふうに思います。この点での御所見を承りたい。これは総務長官人事院両方からお答えをいただきたいと思います。
  40. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 臨時行政改革推進審議会では、去る四日にいまお述べになりましたような提言をやっておるわけでございます。  これにつきましては、私も、矢山先生おっしゃったように、基本的な姿勢というものは、基本答申が去年出ておるわけでして、それを踏まえての提言でございますから、したがって骨子については何ら変更を加えたものではない。すなわち、人勧制度の維持、尊重ということなりあるいは較差を是正するという基本原則は、官民給与の比較だというような点を含めて、これはそのとおりのことを受けて提言をしておるというふうに理解いたしております。
  41. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 いまのお尋ねでございますが、臨時行政改革推進審議会の意見書では、総人件費抑制の観点から、公務員給与改定についても国会及び内閣が適切に決定すべきことを述べておられまして、これは昨年の臨調基本答申の趣旨と同様のものと私どもは考えております。今日の人事院勧告抑制するというふうにはとっておりません。  そこで、いま申し上げましたように、これは昨年の臨調基本答申の趣旨と同様のものと思っておりますが、臨調基本答申では、給与基本的考えとしては、先ほど来先生のおっしゃっていらっしゃるような考え方を臨調は述べておりますので、さよう理解をしております。
  42. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、結局、いまの御答弁を聞いておると、「人事院勧告制度の維持・尊重の必要性」ということはもう御異論はないわけですよね。これは労働基本権に制約を加えた代償措置としてとられておる制度ですから、これは絶対やらなければいかぬ。この点については異論はないだろうと私は思うのです。  それからもう一つ、「社会経済情勢等を十分勘案して」云々、この点についても、私は社会情勢を十分勘案して人勧は出されておるのだと思うのですが、これは人事院総裁、そうですよね、情勢適応の原則ということを踏まえて勧告をなされておるのだろうから。私はそう認識しておりますが、その認識でよろしいね。これは総務長官にも見解を承っておきます。
  43. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 給与その他の勤務条件につきましては、御指摘のございましたように国家公務員法二十八条の情勢適応の原則、これが基本でございまして、これに応じて国会において変更をしていかなければならぬ。その場合に、必要があれば人事院勧告しなければならぬのだ。なかんずく俸給表について改正しなければならない。具体的に言えば五%以上マイナスかプラスか、その場合には一つの勧告の義務的な限界を示しておるわけでございまして、まさしく人事院といたしましても、社会情勢変更というものがあるので、それについて毎年一回は四月時点で給与その他の面について徹底的な詳細な調査をしておる。  その調査というのは、われわれの考え方では、民間給与というものはいろいろな要素が溶け込んでいて、それの具体的な表現なんだ。生計費も物価も、あるいはその会社の財政状況も、世間一般の賃上げの動向なりというものも全部溶け込んで、それが団交になって結論が出るのだ。したがって、これは大変重大な意味を持っておるので、その結果というものを踏まえてやることが一番納得性があるということから、調査をして勧告をしておるわけでございますので、情勢について変更があるということを前提に、それとの適応でもって勧告はしておるという態度でございます。
  44. 矢山有作

    矢山委員 総務長官の認識は。
  45. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 先ほど先生にお答えしましたように、私の方としては、「人事院勧告制度の維持・尊重の必要性、給与改定に関する従来の経過等を踏まえつつ、更に厳しさを増した財政事情その他社会経済情勢等を十分勘案して、政府及び国会が責任を持って適切に決定」していかなければいかぬ、こういうことですから、人事院の方の表現と申しますか言い方と、私のいま申し上げるのと少々ニュアンスが違うかもしれませんけれども、そういうように人事院勧告を受けた政府及び国会が、国政全般との関連において、財政事情を考慮し責任を持って決定するべきだ、こういうように考えて、しかも何度も言っておりますように、私の立場では人事院勧告をどこまでも尊重していくというたてまえでいく、がんばる、こういうことで御理解をちょうだいいたしたいと思います。
  46. 矢山有作

    矢山委員 それはちょっと混乱しているのですよ、あなたの言うのは。私は、この意見書の中にある問題で、「人事院勧告制度の維持・尊重の必要性」、これについては異存はないでしょう、いままでの答弁を聞いておって、異存はないでしょう、こう言ったのです。  それからもう一つは、「その他社会経済情勢等を十分勘案して」云々と言っているのだが、人事院勧告というものは情勢適応の原則に基づいて勧告が出されておるわけだから、これは十分に社会情勢等を勘案したものとして勧告が出ておる。したがって、この点についても異論はないでしょう、こう言っているわけです。その二つについてお答えいただけばいいんです。情勢適応の原則を外れたような勧告だと思っておられるのか、思っておられぬのか。情勢適応の原則に従った勧告だと思っておられるのなら、そのとおりにそうだと言っていただけばいいのです。余分なことをつけ加えると混乱します。あなた自身が混乱するんだから。――いや、あんたが答えぬでもいいんだよ。私の言っている趣旨はわかっているでしょう。だからそのことを、総務長官は頭をひねっているから、私の言っている趣旨がもし理解できないのならあなたの方から総務長官に言ったらどうです。いや、あなたに答弁しろと言っているんじゃないんだ。総務長官にちょっと言ってあげたらどうなの。
  47. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 人事院の出されました勧告は、財政事情というものを全く勘案せずに人事院勧告してみえるというような考え方を政府はしておるわけです。そこで私どもは、決定のときにはやはり財政事情というものも頭に置いていくんだという考え方を持っておるのであります。
  48. 矢山有作

    矢山委員 私はそんなことを聞いているんじゃないんですよ。人勧が出た、それの扱いについてあなたは財政事情と絡めて物を言いよるわけです。それを私は聞いているのじゃないのだ。この審議会の意見書の中に、「その他社会経済情勢等を十分勘案して」となっておるから、だから人勧というものは十分社会情勢を勘案して出ているのでしょう、そう言っているわけです。人事院総裁の方は、人事院勧告情勢適応の原則、法律にちゃんと書いてありますね、それに従って社会情勢等を十分勘案して出しておりますと、こう言っておるのですよ。総務長官、認識が一緒じゃないんですか。認識が違うということになると、おかしなことになってしまう。
  49. 藤井良二

    藤井(良)説明員 お答えいたします。  臨調の答申によりますれば、「公務員給与は、人事院勧告等を受けた政府及び国会が、国政全般との関連において、財政事情を考慮し、責任をもって決定すべきものである。」それで、推進審議会の方でも、「更に厳しさを増した財政事情その他社会経済情勢等を十分勘案して、政府及び国会が責任を持って適切に決定すべきである。」というふうに言っておるわけでございます。したがいまして、いま総裁が言われましたのは、「その他」以下の社会情勢というものが入っておるということを言われたのだろうと思います。
  50. 矢山有作

    矢山委員 何を言っておるんだ。そんなでたらめな解釈をするんじゃない。人の質問を何と思って聞いているんだ。何もほかのことをこっちはしゃべってはいないじゃないか。私は君の答えたようなことは一つもしゃべっておらぬよ。今度出された人事院勧告情勢適応の原則に従って出されているのか出されておらぬのか、君は出されてないと思っているのかどうか、その一点だけを聞いているんだよ。もし出されておるとするなら、その他社会情勢等を十分勘案したことになっているのじゃないか、こう言っているのですよ。くだらぬ時間をとるようなことを答弁するんじゃないよ。まともに物を言っておればちゃらちゃらごまかして……。
  51. 藤井良二

    藤井(良)説明員 先ほど総裁が答弁されましたように、人事院情勢適応の原則の中には、当然ここで言っている社会情勢等を十分勘案してという要素は入っていると思います。
  52. 矢山有作

    矢山委員 まああなたを相手にしておっても切りがないけれども、要素が入っているんじゃない、勘案してちゃんとやっているんだろう。情勢適応の原則に基づいて勧告をやっている、人事院総裁はそう言っているじゃないですか。情勢適応、それを勘案して、そんなことになっていないよ。社会情勢を勘案してじゃないんだ、情勢適応の原則で、社会情勢というものを踏まえて人勧が出されているのだよ。そんなおかしな解釈をしてはいかぬよ。  そうすると問題になるのはどういうことかというと、従来の給与改定に対する経過の問題、それから財政事情の問題、議論するとするならこういうことが問題として残ってくるわけです。  そこで次の議論に進みたい。  従来の給与改定の経過を振り返ってみますと、五十六年度人事院勧告の扱いについてどうなっておるかということは、御承知のとおり一部抑制されましたね。指定職の適用者、二〇%以上の管理職手当受給者については一年間凍結特別給については五十五年度俸給等を基礎にして算出する、こういう形でなされたわけです。ところが、この五十六年度の人勧の抑制をやったときに鈴木総理はどう言っておるかというと、五十六年十一月二十六日の参議院の行財政改革に関する特別委員会内閣委員会、地方行政委員会、大蔵委員会の連合審査会でこう言っているわけです。「人事院制度公務員労働基本権制約の代償の措置として設けられておりますから、私どもはこの人事院制度というものをあくまで尊重をいたしてまいりたい、こう考えております。そして」云々とあって「申し上げますが、今回のことは」、つまり人勧を先ほど言ったように抑制した「今回のことは本当に異例の措置でございます。今後は私は、人事院勧告というものを最大限に尊重するというその精神で今後の取り扱いはやっていかなければいけないものと、このように考えます。」次にこう言っている。「毎年毎年ことしのような異例の措置が繰り返されるようであれば、これはまさに人事院制度の根幹に触れるような結果に相なると思います。」こういった趣旨のことを言っているわけです。  それから、五十七年の人勧の扱いについては、御承知のように五十七年九月二十日に給与関係閣僚会議が開かれて人勧を凍結した。それに基づいて九月二十四日の閣議決定で、これもこの凍結措置を決定をしたわけですね。その凍結措置を決定するときにも「異例の措置を講ずる」、こういうふうに同じように言っているわけです。そして二十四日に閣議決定をしたその後で、鈴木総理が談話を出しております。その談話の中でも「もとより今回の措置は極めて異例なものであり、このような措置が繰り返されることのないよう最善の努力をいたします。また、この決定が人事院勧告の持つ意義、その役割や制度の否定を意味するものでないことは言うまでもありません。」こういうふうにおっしゃっているわけです。そしてさらに、先ほど私が申し上げましたように、四十五年十二月三日、衆議院の本会議での佐藤総理の発言もあるし、あるいは山中総務長官の発言もあるし、さらに四十五年十二月九日には内閣委員会での山中総務長官の発言もある。  こういうことを考えてみると、財政難を理由にして、一昨年の人勧の抑制、昨年の勧告実施凍結、続いてことしもまた早くも勧告抑制論が財界や政府や自民党から出されておるけれども、本年もまた凍結または抑制措置がとられるとするならば、これまでの政府国会答弁に反することはもちろんでありますけれども、異例の措置の通例化ということになります。これは人勧制度の否定にほかならないわけであります。そうだとするならば、この人勧制度代償機能というものは失われてしまう。そうなるとこれは当然憲法問題に発展しかねない、こういうことになる。しかねないじゃない、憲法問題に発展していく、こうなるのですが、これに対して、法制局からもお見えでしょうから、法制局長官なり人事院総裁なりの御見解を承りたい。また、官房長官にも聞きたいのですが、この問題は、官房長官は見えておりませんから総務長官にお伺いいたします。
  53. 茂串俊

    ○茂串説明員 ただいまお話がございましたように、最近の人事院勧告の取り扱いにつきましていろいろ御批判があるわけでございますけれども、私は立場上、法律的な見地からお答えを申し上げたいと思います。  先ほど先生もお触れになりましたように、全農林の最高裁判決におきましては、人事院給与勧告制度公務員労働基本権制約の代償措置の一つとしての位置づけがなされております。したがいまして、その勧告を受けた国会あるいは内閣としましては、この制度が実効を上げるように最大限の努力をしなければならないということは、もう当然の要請であると思います。他方、この最高裁判決は、公務員給与その他の勤務条件が政治的、財政的、社会的その他の諸般の合理的な配慮によりまして決定されるべきであるということも述べておりますし、また、その決定は最終的には国会においてなさるべきであるということも述べておるわけでこざいまして、人事院勧告制度がこのような原則を前提とするものであるということは明らかでございます。  したがいまして、この給与勧告制度が実効を上げるように最大限の努力が尽くされたけれども、それでも勧告が完全に実施されないという結果となったという場合でございますれば、この制度が本来の機能を果たしていないということにはならないのではないかと、かように考えておる次第でございます。これは一般論として申し上げた次第でございます。
  54. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 私から細かく申し上げる必要性はございませんが、公務員といえどもこれは憲法に申しております「勤勞者」でございます。勤労者であることに間違いがございません。勤労者には労働基本権というものが保障されているわけでございます。ところが公務員には、その公務特殊性というものがありますために、公共の見地から何がしかの制約というものを加えられることは、これは全体的な立場からやむを得ない場合もあり得る。しかし、そういうようなことでありますために、仮に労働基本権を制約するとすれば、やはり有効な代償措置というものが講ぜられなければ片手落ちであり、それ自体直ちに憲法上の問題が出てくるものと私は考えております。そういう点から、いつも申し上げておりますように、私は、制度的に見た場合に、人事院制度、あるいはいま限定的に給与に関する人事院勧告制度というものを取り上げてみますると、そういう意味勧告制度というものはきわめて重要な意味を持っておるものであるというふうに思っております。  それと、釈迦に説法でございますけれども、公務員の場合においては、財政当局というものが一面にあり、それから国家の政策を取り扱う政治という面がある。そういう面とわれわれがやらなければならない勧告制度の取り扱いというものは、それぞれやはり分担、分担があるわけでありまして、民間のように、民間の社長が会社の財政も知り尽くしておる、別の角度から、自分の従業員というものについてはやはり安んじて生活ができるような保障はしなければならぬ、世間並みの配慮もしなければなるまい、そういうことを全部一人でやれる、自分の責任においてやれる立場にあって、それだからこそ団交というものがあって、そこにおのずから決定が出てくるということでございます。ところが、政府の機構はそう単純にはまいりませんので、いまのようにつかさ、つかさが分かれておる。それだけに、先刻も御議論がありましたように、人事院というものが国家の財政状況というものを勘案して物事を処理するということになりますと、これは私はやはりいまの制度から言えば邪道だと思います。  そういうことをやっておりますと結局どういうことになるかと言えば、財政がどういう場合には較差はこのくらい出たけれどもこのくらいに抑制するとかいうような、そういう配慮を人事院がやり出したら、代償機能としての役割りを果たせません。その点の取り扱いはやはり最終的に国会内閣がおやりになるということまで私はとやかくは申しませんが、ただ、やはり勧告制度の持つ意味からいって、完全に実施していただかなければ困りますよということを繰り返し申し上げておるところでございまして、それが機能が果たせなくなる、それは、どういうかっこうで何年凍結されたらそういうことになるかということは、私の立場からは申し上げるべきことじゃなくて、ぜひとも本年度の場合は勧告完全実施してもらいたいということをこれからも繰り返しお願いをしてまいるつもりでございますが、それが機能的に作用しないというような現実が明確に出てくるという事態が起きましたら、これはやはりおのずから何らかの形の憲法問題に発展するということは十分あり得るというふうに解釈いたしております。
  55. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさしていただきます。  先ほど法制局からも、また人事院総裁からもお話がございましたし、私からも申し上げましたように、政府としては、この結構な人事院勧告制度はどこまでも維持されなくてはならないし、尊重をされるべきものだと考えており、そういう立場に立って本年度人事院勧告の取り扱いは現在検討しておるのでございまして、これが守られないようなことになればまたほかの問題が出てくる。それは今日のようなりっぱな労働慣行があることから考えて不幸なことになるのでございますから、そういうことにならないようにいわゆる人事院勧告制度はどこまでも堅持していきたい、そしてこれは尊重されるべきものだ、こういう考えに立って、今年度人事院勧告の取り扱いも、もちろん国政全般から見ることではございましょうが、こういういい慣行を守っていけるようにこの制度を堅持していきたいという考えで今年度勧告を検討していきたい、こういうように考えております。
  56. 矢山有作

    矢山委員 法制局の長官はいままでにも同じような御答弁をなさっておりますから、法律技術的な解釈としてはそういう解釈も成り立つのだろうというふうに思いますけれども、問題はどこにあるかというと、どんなに努力をしてもどうしてもできないんだということがいまの状況の中で成り立つのかということが一つ問題だと思うのです。  それから問題は、先ほど言いましたいままでの人勧の取り扱いの経過ですね。一昨年は抑制でしょう。去年は凍結でしょう。今度また抑制論が盛んに出ておる。そしてもし凍結抑制というようなことになるなら、三年続いて人勧はネグられるということです。しかも、今後この人勧の完全実施の見通しが立っておるのか、どこからもそれは示されておりません。こうなってくると明らかに憲法違反という問題が起こるのじゃないか、憲法に抵触する問題が出てくるのじゃないか、私はそう思うのですよ。その点はきわめて重要な問題だと私は思いますので、総務長官、はっきりしていただきたいのです。  もう一遍言いますよ。一昨年が抑制、昨年が凍結、ことしまた抑制されたり凍結されるということになれば、これは異常な措置だ、異例な措置だと言ってきたことが三年連続して行われるということになるわけで、通例になってしまうわけです。抑制するか凍結するかということが通例になってしまう。つまり人事院勧告をネグるということが通例になってしまう。しかも、今後人事院勧告の扱いがどうなるのか、そういった見通しは何ら明らかにされていない。そういう状況の中では当然違憲問題というのが起こってくるのじゃありませんか、人事院労働基本権の制約に対する代償機能を発揮しないのですから。そうすると、労働基本権の制約というのは憲法違反になるというこの問題が正面から出てきますよ。総務長官政府の責任者の一人としてどうお考えですか。
  57. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お尋ねのことについてお答えさせていただきますが、いま先生からもお話がありましたように、五十六年は一部抑制、昨年は完全な凍結、そしてまた今年も、口で人事院勧告制度は結構な制度だ、これはどこまでも堅持していきたいと言いつつも、これに似通ったような措置が続けられるとするならば、それは憲法の違反になる、あるいはまた、いまありますところの労働基本権の制約の代償措置としての人事院勧告制度を考えなくてはならぬということになる、おまえどう思うか、こういうことでございますが、国会でも総理自身が言っておられますように、それは五十六年は一部ああして抑制をし、昨年はお気の毒でしたが全部凍結してしまった、ことしは二度と再びそういうことを繰り返さないようにしていきたい、こう総理も言っておられますし、私もそのように先生方にお答えしたこともございます。  とにかく私としては、いま先生から御指摘のあった憲法違反になるとか、人事院勧告制度、こういういい制度を、考え直さなくてはならないというようなことにならないように、あくまで人事院勧告を最大限尊重してそういう声が起きないように、そういう問題が起きないように最大限の努力をして人事院勧告制度を堅持していくようにしたい、こういうように考えております。
  58. 矢山有作

    矢山委員 どうもあなたと議論していると何かわけのわからぬことになってしまうのですが、一昨年が抑制、去年が凍結、ことしが抑制になろうが凍結になろうが、三年連続して人事院勧告が尊重されない、完全実施されないという事態が起こるわけですよ。そうすると、これは去年も一昨年も異例の措置だ、異例の措置だと言ってきたのだけれども、異例な措置じゃなくなってしまう。通例化されたことになる。そうなると、当然人事院の代償機関としての基礎がぐらついてくるわけです。代償機能を果たしていると言えなくなってしまうわけだ。そうすると、労働基本権の制約をしているということが憲法上おかしいじゃないか、こうなってしまう。そのことを私は言っているのですよ。  なぜそれを言うかというと、御存じでしょうが、政府の人勧に対する無責任な姿勢から公務員共闘会議が大きな反発をしておりますね。それで、聞くところによると、九月の上旬にはストを含む強い戦術を検討して組織を挙げて闘う、こう言っているわけですよ。もしそういう事態現実に起こったとしても、処罰ということで臨めますか。公務員法違反だから処罰だといって臨めますか。三年連続して代償機能を果たすことができなくなってしまっているのでしょう。そういう事態の中で完全実施を求めて公務員が争議行為に入った、それを処罰することができますか。できなくなるでしょう。それを防ごうと思ったら、ことしは完全実施をやる以外にないのですよ。そうお考えになりませんか。
  59. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  五十六年に一部は抑制して、昨年は完全凍結した。またことしは、私が先生にお答えしておるように、人事院勧告制度というものはこんなにいいことはないんだから、これをやっていけるように最善の努力をする。最善の努力の中にはイコール人事院勧告完全実施ということも含めて、そういうことも含めて最善の努力をすると言って、皆さん方、先生方に申し上げておるのでございます。また、政府内でも働こうということを申し上げておるのですが、そういうときに、いまここで先生からお話がありましたように、九月に、これは当然行われぬであろうということを前提にしてストライキをなさる。大事なお仕事を放棄していかれるという。仕事を放棄するということになれば、私としては、そんなことをやっていただいたら処罰を受けますよという勧告のような書類を出さざるを得ない、こういうことです。だから、いま一生懸命になって政府内で努力しておる、そしてこのいい制度を守っていこうとするための努力をしておるときでございますから、それはだめだぞという前提に立ってストライキをなさる、そのときには、おまえはそういう勧告を出す、ストライキをやめろなんという勧告を出す資格はないじゃないかとおっしゃるけれども、私はいま努力の過程でございますから、そう言わずに、なるたけお互いがりっぱな労働慣行が堅持もでき、そしてまたこの人事院勧告制度も、ほかに方法があるかもしれませんけれども、私としては一番いい制度だ、こう思っておりますから、この制度が守られるようにしていきたい、続けて維持できるようにしたいと思っておりますから、そういうことで御理解をちょうだいいたしたいと思います。
  60. 矢山有作

    矢山委員 人勧は八月の五日に出たのですから、いつまでもだらだらと、何をやっているか知らぬけれども、引きずっていって実施をしないということでは困るのです。これは勧告の中にも言っているでしょう、早期に実施してもらいたいというのは。早くやらなければいかぬのですよ。  それが一つと、もう一つは、完全実施をされなければ、先ほど来言っておるように、人勧の役割りというのは果たすことができなくなっておるわけですから、そういう点で、この完全実施を求めてストをやったからといって、大だんぴらを振りかざして処罰だ、処罰だということは言えなくなってしまいますよ。これは私ははっきり申し上げておきたいと思うのです。  それから、特にもう一つつけ加えておきたいと思うのは、これから、ことしはどうなるのかまだわからぬ。ことし凍結するか抑制するかしても、後のこともさっぱり見当がつかないわけでしょう。こういう情勢であるならば、これは必ず労働基本権に対する制約が違憲であるという論議が出てきますよ。そんなことになるなら、長官、どうですか、人勧の役割りが十分果たせないという事実がいまも続いておるわけですから、いっそのこと公務員労働者に労働基本権を保障したらどうですか。そして堂々と団交の場で決着をつけるのですよ。そうしなければ、代償機能としての役にも立たぬものを置いておいて、そしてそれに隠れてやるべきことを政府がやらないというのは、これは罪悪ですよ。そんなごまかしをするのではなしに、いっそのこと労働基本権公務員に与えて、正面から政府は、あなた、職員団体を相手にやりなさい。その方がいいのではないですか。
  61. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  先生のようなお考えも一つの方法だと思いまするし、政府は、去年もことしも来年もというように、引き続いてこういうようにいわゆる人事院勧告制度は尊重する、最善の措置をすると言いつつも、それも行われないようなことならば、これはいま先生が御指摘になったように、労働基本権というものを組合側に、お役人さんに与えて、こういう制度はやめた方がいいではないかという御意見も一つの考え方として私はあるとは思うのです。  あるとは思いますが、しかし私の立場で申し上げますると、国民全体に奉仕していただくと申しまするか、行政の仕事をしていただく、大事なお仕事をしておっていただく方でございますから、いまの制度でごしんぼういただくことが、政府側にとっても、お仕事してくださるお役人さんにとっても一番いい方法だ。一番いい方法であるからして守っていきたいが、守れないようなことになるといまの先生のような意見が出てまいりまするから、そういう意見が台頭しないように、出てこないように、なるほどこの人事院勧告制度というものはお互いがやっていった方がいいな、こう理解していただいて、この制度を維持していただけるような努力をひとつ私はやっていきたい、こういうように考えております。
  62. 矢山有作

    矢山委員 違憲問題を起こさないで人勧制度を維持していくためには、断じてことしは完全実施をやらなければだめですよ、完全実施をやらなければ。私がいまずっと言った理屈からそうでしょう。それをやらないでおいて、三年連続で人勧の完全実施をネグっておいて、そして労働争議が、ストライキが起こった、これは処罰だ、処罰だ、そんな無責任なやり方はありませんよ。  それから、次に移りますが、官房長官見えたからいまの問題で後でちょっとお伺いします。  先ほど来言っておるように、一昨年の抑制、昨年の完全凍結の上にまたことしも完全実施がされないということになると、鈴木総理の言う、毎年繰り返されてはならぬ異例の措置が繰り返されるということです。ですから、それは人勧制度の否定でありますし、人事院制度の存在価値を薄めることになる。これが一つ。  それからもう一つ、三月の最終答申で盛り込まれなかったのでありますが、五十八年一月に臨調第二部会が「仮に今後、人事院勧告制度が継続的に機能し得ないこととなれば、公務員給与の在り方についての抜本的な検討にまで及ばざるを得ない。」という報告を調査会に提出したと聞いております。また、日経連の労働問題研究委員会報告によりますと、時間がないから全文は抜きにします。「国家公務員、三公社四現業の従業員の賃金と民間企業従業員の賃金とを比較計算するだけの機能しか果たさないのであれば、人事院、公労委といった膨大な国の機関を国民の税金負担によって設置しておく要はない。既存の統計局で十分に間に合うのでなかろうか。」こういう提言も出ております。  こういうような状況の中で、私は人事院制度の根幹がまさに大揺すぶりに揺すぶられると思うのですよ。人事院としてはどう対処されますか。
  63. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 お述べになりましたように、五十六年度から人事院勧告の取り扱いというものに対して抑制措置が講ぜられてまいりまして、去年の取り扱いについてはついに凍結という措置がなされたわけでありまして、この点については、繰り返し申し上げておりますように、人事院制度のたてまえからいってはなはだしく遺憾であるということを繰り返し繰り返し申し上げてきたところであります。  そういう基本的なたてまえから、去年凍結という事態を踏まえて、今年度勧告の取り扱いについては例年以上のいろいろの配慮と苦労をいたしましたが、その結果は五日にお出しいたしましたような内容勧告になったわけでございます。従来の経緯にもかんがみ、御指摘になりましたような点の深い憂慮は私といたしましても同様でございます。したがいまして、この勧告内閣及び国会に対してなされるものでございますので、あらゆる機会を通じまして、この勧告の取り扱いについて完全実施を強く要請してまいるという態度を堅持したい、かように考えております。
  64. 矢山有作

    矢山委員 そこで、官房長官お見えになりましたので、どうも話があれこれして、あなたがいらっしゃらないとうまく進まぬのです。二重に時間をとるので私の方では大きな迷惑をしておるのですが、一つだけ大事な点だからちょっとお聞きしておきたいのです。  これまでの人事院勧告による給与改定の取り扱い、これはもう御承知のように、五十六年度人事院勧告では指定職適用者等について一年間凍結されるし、特別給については旧俸給等を基礎にして算出するということで、完全実施抑制をされたわけですね。ところが、その際に鈴木総理は、こうした措置についてはまさに異例の措置だ、こういうことをはっきり言っておるわけですね。毎年毎年このような異例の措置が繰り返されるようなら、これはまさに人事院制度の根幹に触れるような結果になると思う、こう鈴木総理は発言しておる。  それからさらに、昨年の人勧の取り扱いは、これは、御承知のように完全凍結になったわけですね。しかし、完全凍結をしたときの給与関係閣僚会議でもあるいは閣議の決定の中でも、これも異例の措置だということを強調しておられますね。そして、さらに閣議決定をなさった後に鈴木内閣総理大臣が談話を発表しておるのですが、「もとより今回の措置は極めて異例なものであり、このような措置が繰り返されることのないよう最善の努力をいたします。」こういうふうに言明をされておる。こういう経過があり、さらにつけ加えて言うなら、四十五年から、人勧が完全実施されたときですが、四十五年の十二月三日、衆議院の本会議佐藤総理なり、それから当時の山中総理府総務長官がこの完全実施の問題について発言をしておられるわけです。それはもう時間がないから繰り返しませんが、これでこの人勧完全実施のルールが確立した、これは将来財政事情等によって動かされることはない、こういうふうな意味の発言をしておられるわけですね。  そういう経過を踏まえて考えてみると、一昨年の抑制、昨年の凍結、そしてことしもまた完全実施についていろんな異論が、政府にも自民党の中にも財界の中にもかまびすしい。恐らく抑制措置がとられるのではないか、こういう状況なんですね。こうなってくると、異例の措置だ、異例の措置だと言いながら、異例の措置が通例の措置になってしまうわけですね。これでは人勧制度というものは機能せぬことになるわけですよ。そうなれば、これは憲法に触れてくる問題に発展するんじゃないかというふうに私は思うわけですね。その点のお考えを聞いておきたいのです。だから、憲法問題に発展することを防ぐためには、そして人勧制度を守っていこうとするなら、ことしは人勧を完全実施する以外にはないですよ、こういう意味なんです。どうなんですか。
  65. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御質疑の要点は、政府として最大限の努力をしたかどうかということにかかるように私は思います。申し上げるまでもなく、労働基本権制約の代償措置としての人事院があり、人事院勧告制度があるわけですから、政府としてはこの人事院勧告を尊重して実施する、これはもうあたりまえのことであろうと思います。  ただ、何せ厳しい財政状況、これが数年にわたって続いておるわけでございます。その厳しい財政状況だけで人事院勧告を直ちに簡単に抑制するということであってはならぬ。やはり厳しい財政状況の中でも、政府としては勧告実施のために本当に最大限の努力をしたのかどうか、この点が努力をしておるんだということであるならば違法といったような問題は起きないのではなかろうか。  人事院勧告制度、長い歴史の過程でようやく四十五年から完全実施をせられた、それまでの間もやはり政府としては最大限の努力をしたが、残念ながら抑制措置をとらざるを得なかった、それで四十五年以来はああいった高度成長の中でもあるし、勧告制度完全実施せられましたが、五十六年度以来、御案内のような厳しい財政状況、そこで政府としては国政全般との関連の中で最大限の努力を払いながらも、いかんせん異例の措置として抑制措置をとらざるを得なかった、こういうことで。こざいますから、私は、御質疑の中にあった、大変御心配になっていらっしゃる点もごもっともだと思いますが、政府としては、先行きも人事院勧告制度ということはきちんとそのまま尊重してやっていきたい。しかし、何分にも最近の状況でございますから、全般との関連の中でさらに慎重に五十八年度の問題についても対応いたしたい、かように考えておるわけでございます。(「防衛費は義務費か」と呼ぶ者あり)
  66. 矢山有作

    矢山委員 給与がどういう性格のものかということはもう御存じですね。これは義務費ですわね。だからこれが財政困難だからといって給与が削減されたり、あるいは勧告実施されなかったりということはあるべき問題ではないと私は思うんですよ。それはそれとして、最大限の努力、最大限の努力とおっしゃるのですが、この最大限の努力というのは全く抽象的な言葉でしてね。一体どういうことをやったら最大限の努力なのかということが私にはわからないんですよね。一昨年抑制したとき、昨年凍結したとき、果たして財政実態はどうなんだ、そういったことを明らかにしながら、この人勧の問題について将来どうなるのだということを十分確信を持ってその計画を示して、そして公務員の諸君と十分話し合いをしたという経過すらないのでしょう。財政実態はこうだ、ここでは抑制しておるのだが、将来こうなるのだというようなことすら、われわれ国会審議を通じて示された覚えがありませんよ、記憶が。そういうこともやっていない。そういうことをもとにして積極的に公務員の諸君と話をするということすら何にもやっていない。一体最大限の努力というのは何なのかいなと思うんですね。  この問題については、公務員の諸君にとっては自分の生活にかかわる問題ですから大変な問題ですわ。政府にとっては、公務員制度基本にかかわる問題ですから、これは大変な問題ですわ。そうしたら、やはり国家公務員法に定められておる交渉権というのは職員団体に保障されておるんですからね。積極的に話し合いをして了解を得る努力というようなものもなければいかぬのじゃないか。そんなこと何にもやらずにおいて、特にあなたは、この間の参議院の委員会の答弁を見ていると、何か交渉権否定のような考え方を持っておいでになるようなんだね。そんなことで、最大限の努力をしましたら憲法違反の問題はできませんのじゃと言えるんですかね。最大限の努力とは一体何を言うのですか。ここのところをはっきりせぬと、口先でごまかされちゃって、この議論は中身は何にも後へ残らぬですよ。
  67. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 話し合いをしたかしないかといったような点についても参議院でも御質問がありましたが、これは総務長官からお答えをなさったはずでございます。  問題は、最大限の努力とは何か、こういうことでございますが、やはり政府は雇い主としての立場、したがって公務員生活、これは守らなければならぬ責任があると思います。そういう立場において、ほかの経費も、たとえ厳しくともやはりできる限りは公務員給与財源というのは確保しなければならぬという立場もあるわけでございますが、御案内のように五十七年度の予算編成は、ゼロシーリングという厳しい予算の中で編成せざるを得ない。しかも一方には、危機的財政状況を何とか打開をする、したがって累積するこの赤字国債の発行をやはり漸減をさせなければこれは国が破滅の状況に立ち至る、一方にこういう厳しい状況がある。しかしながら、何とかして財源をひねり出そうということで、一例を挙げますれば、そういった財政再建という至上課題があるにもかかわらず、やはり国債の整理基金への繰り入れ、こういった経費も取りやめるといったあらゆる努力をして、何とかひとつ公務員給与という問題にも政府としては最大限の努力をしたが、遺憾ながら五十七年度凍結をせざるを得ない、しかしこれはあくまでも異例の措置であるということはしばしばお答えをしておるとおりでございます。  五十八年度のこの問題についても、われわれとしては人事院から八月五日に勧告をちょうだいしておりますが、できればこれはもう人事院勧告どおり実施したいという気持ちはいささかも変わっておりません。しかしながら、何といってもことしの財政実態を見ましても大変厳しい。しかも、来年度を望んで検討いたしますれば、なおさらこの予算編成ということが本当に厳しい状況に立ち至っておる。一般経費も一〇%削減をする、公共事業も五%削減をする、そしてあらゆる経費について聖域を設けずして予算の切り込み、財政の再建への道を進みたい、こういう状況にあるわけです。しかも一方、民間の方々の給与との較差は、なるほど人事院勧告のとおり六・四七%ですかの差はあるとは思いまするけれども、最近の新聞等に出ておりますように、それぞれ民間民間なりにあらゆる合理化努力をなさっておる。こういう背景を受けて、国民的な世論とでも申しますか、それを背景にした行革審からの厳しい抑制の御意見もある。こういったあらゆる方面に目配りをしながら政府としては対応せざるを得ないんだ、ここらの厳しい状況をぜひ御理解を賜りたいな、しかしあくまでも政府は、雇い主としての責任は何とかできる限りの努力をして果たしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  68. 矢山有作

    矢山委員 あなたの懇切丁寧なお話を承っておりますと、やはりことしも完全実施はないな、こういう感じを受けざるを得ないのです。そうすると、一昨年の抑制、去年の凍結、ことしも完全実施にいかないで抑制ということになれば、人事院の機能、いわゆる労働基本権制約に対する代償機能というものは十分に機能してないということになります。しかも、あなたは異例の措置、異例の措置と言われるけれども、三年異例の措置が続くということになればこれは通例になってしまうので、そうなるとこれは当然違憲問題が起きてきますよ。これでもしそういうことが確定して、公務員がそれはだめだ、完全実施を迫るということでストライキへ入った場合に、政府として人勧の扱いを無責任な扱いをしておいて、ストやったからけしからぬとだけ言って処罰権を発動するなんということは、ちょっと理不尽だということになってくるのじゃありませんか。私は、そういうことになるのならもういっそのことどうですかといって先ほど申し上げたのです。もう人勧が機能しないのなら、いっそのこと憲法の原則に従って公務員労働基本権を与える、そして政府職員団体との間で堂々と団体交渉をやって決めていった方がすっきりするんじゃないですか。どう思います。
  69. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 三年続けばそれは異例じゃなくて通常になるじゃないか――それはそうじゃないのです。そうじゃなくて、これはやはり人事院の長い歴史を矢山さん百も御承知のはずなんです。ずいぶん長い間完全実施じゃないのです。ようやく四十五年になって完全実施になった。だから、政府もできればそれは完全実施をやりたいのです。しかしながら、最近の厳しい財政状況を考えていただければ、私はその点は矢山さんも御理解いただけるのじゃないか、かように考えるわけでございますが、五十八年度どうするかといった問題については、先般も給与関係閣僚会議を開きましたけれども、やはり各閣僚それぞれの御意見がございます。いろいろな御意見があって、それはお気持ちの中では矢山さんのような腹構えの方がいらっしゃるかもわからない。しかし、そうでない方もいらっしゃるというようなことで、この問題はもう少し検討させていただいて、何とか適切な処置をとりたい、こう考えておるのですが、いずれにしても、三年続けばこれはもはや異例じゃなくて通常になっちゃう、ならば、もうこの際、労使関係だけで、人事院なんというものはなくして、労使交渉でやってしまえ、ストライキ権も与えろというのは少し短絡しているのじゃなかろうかな。私は、もう少ししんぼうしていただいて、今日のこの厳しい状況を相ともに乗り切っていくようにしたい、こう考えているわけでございます。
  70. 矢山有作

    矢山委員 私は、ストライキ権を付与しろというのは短絡の意見じゃないと思いますよ。最近の人事院勧告実施状況を見ておって、日経連あたりも積極的に、人事院が機能しなくなっているようだから、もういっそのことスト権を与えてしまえということを言い、さらに、そのスト権を与えて団体交渉でもやらぬから国の財政について公務員理解しないのだ、こういうのぼせ上がったことを言っているのです。そういう議論まであるのですから、私は一つも短絡していないと思う。いつまでも政府は人勧を軽視して勧告どおりにやらぬというのなら、いっそのこともとへ戻して、労働者に、公務員といえども勤労者ですから労働基本権を与える、これは私は筋だと思います。  一つところで議論しておってもしようがないので次に入っていきたいのですが、大蔵省来ていますね。  五十八年度の所得税、法人税等の税収見積もりを出していますね。これは何を基礎にして出すのですか。
  71. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答えいたします。  御承知のように税収は経済活動の所産と申しますか経済活動の子供でございますので、税収を見積もるときには、あくまでもその前提となる経済をどう想定するかということが一番大事な作業になります。これにつきましては、毎年予算編成期に経済企画庁の方から翌年度の経済見通しが発表されますので、それをもとにいたしまして税収の見積もりを行います。  お尋ねの所得税につきましては、一人当たりの雇用者所得の伸び率でございますとか雇用者数の伸び率といったものが発表されておりますので、私どもといたしましては、それをもとに計算しております。法人税につきましては、鉱工業生産の伸び率でございますとか、税収というものはあくまでも実質ではなくて名目値、名目の法人所得にかかるものでございますから、物価水準がどうなるのか、そういった点についての見通し、これらを総合的に勘案いたしまして計算をいたしております。
  72. 矢山有作

    矢山委員 そこでお聞きしたいのですが、経済企画庁見えておると思いますが、五十八年度の経済見通しで雇用者所得を六・六%と見ていますね。それから、民間最終消費支出を七・四%と見ているが、これの見方について、これは私どもの参議院の山田議員が、この見積もりが過大ではないかということを自分の独自の試算を示して御質疑を申し上げた記録を私は読んでおるのです。そのときの経済企画庁長官のお話では、これは十分検討して自分たちの考え方を述べるということになったままになっておるようですが、この山田君が示した試算、春闘賃上げ率、雇用者所得、民間最終消費支出、これらに対して検討をされた結果、どういう見解を持っておられるか、御説明いただきたいのです。
  73. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 お答えいたします。  いま御指摘ございました三月に山田先生からお示しいただきました試算の数字につきましては、その後私どもも十分検討をさせていただきました。ここで余り細かい数字を申し上げるのはなにかと思いますが、私どもで検討させていただいた結果を申し上げますと、山田先生は民間最終消費支出の推計をやっていらっしゃるわけでありますが、これは主としてといいますか雇用者所得の伸び率で消費支出を計算され、そのまた雇用者所得の伸び率の前提を左右する条件として春闘賃上げ率を使って計算をされているわけでございます。  こういう計算のやり方は、技術的に細かいことを申し上げても余り意味がないかと思いますが、確かに雇用者所得というものが個人消費支出に対して大きな影響を与えているということはそのとおりでございますし、また雇用者所得の伸びに対して春闘の賃上げ率も影響を与えている、これはもちろん事実でございます。ただ、雇用者所得の中で、特に春闘の対象になりますものは雇用者所得全体のおよそ半分であるということが一つございます。それから個人消費のもとになります個人所得の中には、雇用者のほかに個人企業主の所得であるとか、そのほかかなりのものが入っております。したがいまして、雇用者所得の伸びだけから消費支出を推計するというのは、一つの方法ではございますが、かなりばらつきの大きな推計結果が出るというふうに考えられます。  また、春闘賃上げ率から雇用者所得を推定していらっしゃいますけれども、これももちろん関係はございますけれども、先ほど申しましたように、春闘の対象になりますものは雇用者所得全体のおよそ半分でございます。また実際の賃金の動きは必ずしも春闘の賃上げ率だけで決まるものではございませんで、たとえば昨年度なども春闘賃上げ率は七%でございましたが、全産業の賃金の伸びはこれをかなり下回ったというようなこともございます。逆にある程度上回るというような状況もございますので、先生の御努力には感服いたしますけれども、先生のお示しいただきました数字そのものから、あるいは算式そのものから、政府として見通しております五十八年度の個人消費支出が過大であるというふうに言い切ることはできないのではなかろうかと考えております。
  74. 矢山有作

    矢山委員 この試算の中身に入っていろいろ議論をする時間を持ち合わせませんので、それはやめておきます。ただ、いまおっしゃった説明で、大ざっぱに言うなら春闘の賃上げ率、雇用者所得、民間最終消費支出、これは全然無関係じゃない、何がしかの関係はあるということはお認めになったわけですね。その前提で物を言わせていただきたいと思うのです。  そうなってくると、この山田君の試算というのは四十一年から五十七年に至る春闘賃上げ率、雇用者所得、民間最終消費支出というものをそれぞれの政府統計に基づいて挙げて、そして最小自乗法による推計方式でこれに修正を加えながら出したという経緯になっていますね、これは御承知のように。それでその結果が、たとえば五十八年度民間最終消費支出を予測するのに、春闘の賃上げ率が三であったら雇用者所得は二・九二になる、民間最終消費支出は五・〇四になるということから始まって、三、四、五、六、七の春闘賃上げ率を想定して試算をしているわけです。そしてその試算の中から、経済企画庁が出しておる民間最終消費支出七・四を達成するためには雇用者所得は六・六一になっています。あなたの方でも五十八年度の雇用者所得は六・六%程度と出されているようですが、六・六一%、それのための春闘賃上げ率は七・四%なければこういうことになりませんよ、こういうことで示しているわけですね。そうすると、ことしの春闘の賃上げ率というのは御承知のように加重平均で見て四・四%くらいですか、そうなると私どもは、雇用者所得にしても民間最終消費支出にしても少し見積もりが過大なのではないかというふうに考えておるわけです。そこで、そういう危惧を裏づけるような形がこの六月末の税収の面であらわれてきたのじゃないですか、大蔵省。あらわれてきておると思うのですよ。  それで、言い落としましたからその前にちょっと補足して言うておきますが、大蔵省は先ほど御説明があったようなことで所得税なり法人税の伸び率を計算しておられます。その結果が五十八年度は八・五八%、まあ八・六%所得税は伸びるという試算をやっておられるわけですね。それから法人税の方では四・八六%くらい伸びるという試算を大蔵省ではやっておられる。これは予算説明資料で私が計算した数字だから恐らく違うと思いますが、ところが先ほど言いました六月末の税収には、経済企画庁が経済見通しをやったのに基づいて大蔵省が税収見込みをはじき出した。それよりも大きく下回るという現象が出てきておると思います。だから大蔵省の方でこの六月末の税収の状況はどうだったのか、ちょっと説明してもらえば私ははっきりすると思います。
  75. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答えいたします。  五十八年度の税収につきましては、ただいまのところ六月末までの分が判明いたしておるわけでございますが、これによりますと、予算額三十二兆三千百五十億円に対しまして六月末までの累計で三兆二百三十六億円、予算総額に対する進捗割合は九・四%ということになっております。昨年の六月末の累計を見ますと、これが一〇・〇%、ちょうど一割入っておりますので、昨年のスピードに比べると出足がやや遅いかなという感じでございます。  ただ、今後の動向につきましては、まだ全体の進捗割合一割前後でございますので、直ちに今後の帰趨をいまの段階で予見するということはむずかしいわけでございます。いずれにせよ、こういう出足の鈍さということを踏まえて今後の動きを慎重に見ていかなければいけないというふうに考えております。
  76. 矢山有作

    矢山委員 これは時間の関係で、そちらからおっしゃらなんだから私の方から言いますが、要するに六月末の税収全体の実績は、前年同期に比べると大体一・三%くらい落ち込んでおる。その中で大きく落ち込んだのが法人税、これが二三・六%落ち込んだ。それから源泉徴収による所得税が前年同期比で三・九%の増、低い伸び率であった。こういうふうなことを新聞には発表されておられますが、大体そういうことなんですか。要するに法人税が二三・六%くらい昨年の同期に比べて落ちた、それから所得税の方は三・九%くらいにしか増収にならなかった。これは新聞発表のとおりに考えていいですか。
  77. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答えいたします。  先ほど私がお答えいたしましたのは、六月末までの税収の累計についてでございました。いま先生が御指摘になりました数字は、恐らく六月分だけの数字だと思います。これを見ますと、委員御指摘のとおり、法人税が昨年の水準に対しまして七六・四でございますから、逆に申しますと二三・六ほど下回っているということが言えます。これが一番大きな要因でございますが、この原因はまだはっきりしたことはわかりませんが、一応の推定をいたしますと、法人の延納割合というものが去年に比べましてがくんと減りました。つまり、三月決算の法人税は五月末に納めていただくわけですが、五月末にことし納めていただいた税金、これは税額を一〇〇といたしますと九七、八と申しましょうか、もうほとんど全額を即時に納めてくだすったわけです。延納分がなくなった。ところが、去年の三月期決算の分を見ますとかなり延納がございまして、それがずれ込んできていたわけです。したがって、去年の六月の税収とことしの六月の税収とを比べますと、そういった特殊要因が非常に大きく響きまして、この七六・四という異常に低い数字になっているわけでございます。こういう傾向は、このままでは今後は続かないと思います。特殊要因というものはだんだん消えてまいります。ただ、その基礎となる確定申告額自体もそれほどよくはないので、やはりこれまた所得税と同じように慎重に見ていかなければいけないという気がいたしております。  それから所得税につきましても、六月分の数字は去年の水準に対して三・七%――先生は三・九とおっしゃいましたが、六月分は三・七になっております。かなり低い水準でございます。この原因がまだよくわからないのでございますが、一つにはベースアップ、これの実施がなおおくれているということもあるのかなというふうに見ております。それから、源泉徴収分の中には利子についての源泉徴収税額がかなりあるわけですが、これが預金金利が一年半ぐらい前からだんだん下がってまいりまして、その下がった金利の満期が到来したということで、その源泉徴収税額が下がっているということもかなり響いていると考えております。
  78. 矢山有作

    矢山委員 いずれにいたしましても、私は最初経済企画庁等に言ったように、春闘の賃上げ率、それから雇用者所得、民間最終消費支出、それが関連を持っておるということを言われた、それで、そこから見ると七・四%の民間最終消費支出、雇用者所得六・六%、これを達成するのには今度のこの春闘四・四%ではとても達成はむずかしいんじゃないか、こう言ったわけですね。それを証明するように、六月末の税収は法人税において先ほど言ったように落ち込みの傾向が見られるし、所得税も予定したように入ってない、こういう実態が出ておる。  そうするとその原因が、所得税なり法人税の積算というものは先ほど御説明があったとおりですから、いま言ったような要素を高く見過ぎるとどうしても税収を多く見積もることになる、その結果がこういう状況になって税収が思うように伸びない、見込みより低下をする、こういう状況が起きたんじゃなかろうか。そうなると、私が言いたいのは、景気の回復をさせる、そのために何が必要かということになれば、やはり雇用者所得を上げて、民間最終需要を喚起するということしかないんじゃないか。そうすれば景気が回復する。それによって法人税も恐らくふえていくでしょう、企業収益が上がりますから。それから、雇用者所得の方がふえてくれば当然所得税収入もふえてくるでしょう。だからそういう意味で、私はやはり人勧を抑え込んだということが、財界からも言いましたね、去年は人勧凍結公務員は賃金がアップしてないんだから、民間企業も低いところで低いところでということで抑え込んじゃったわけで、それで春闘のベアが非常に低いところになった。こんなことをやっていたら見積もりどおりの雇用者所得は出てこないし、民間最終需要も出てこない、それはまた財政収入に響いてくる、悪循環になってしまうんじゃないか。  だから、これをどこかで断ち切らなければいかぬわけです。そのためにはやはり人勧の完全実施ということが必要なんではないか。人勧の完全実施民間給与の問題とは、これは無関係ではないのですから。午前中に人事院からもいろいろ御説明があったのですが、無関係ではなく非常に密接な関係があるのです。だから私は、人勧を完全実施して、そして全体の賃金ベースを上げていく中で雇用者所得を拡大して民間最終需要をふやす、財政収入がふえる、ここのところに持っていかなければいかぬと思うのですが、官房長官どうですか。あなたうなずいて聞いておったのだから、多分賛成だろうと思う。
  79. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 景気をよくするのにはやはりいろんな政策があると思いますが、その中の一つとして消費支出をもう少しふやさなければならぬ、それがためには給与所得をもう少し上げたらどうだといったような、いま矢山さんがお述べになった有力な御意見があることは、私も十分承知をいたしております。それは私どもとしても、今後政策を決める場合に十分参考にはいたしたいと思いますが、ただ、そうではないよという議論も一方にあるわけであります。それは給与所得をふやしても、日本人は二〇%以上の貯蓄性向の高い国民性がありますから、同時にまた最近のような社会情勢、経済情勢を頭に置きながら、国民はその場合にやはり貯蓄に向かって消費には向かわぬのじゃないか、したがって必ずしも言うような御議論のとおりにはならぬという有力な御意見もあります。ここらあれこれ考えまして、ただいまの御意見は十分尊重させていただきたい、こう思います。
  80. 矢山有作

    矢山委員 貯蓄性向が強いからベースアップすると貯蓄に回るだろうと言うのだが、それはちょっと認識が違うのですね。最近は貯金を取り崩して生活をやっていっているという実態が出ているでしょう。そうすると、こういうときにベースアップをやったところで貯蓄に回るなんということはまず考えられません。だから私はやはりこの際、いまの景気の問題からしてもきわめて重要な問題でしょう、特に内需を喚起するということが対外的にも非常に重要な課題になっているわけですから、そういう経済財政的な立場から見ても人勧の完全実施をやられるのが至当ではないか、こういうふうに思いますので、ぜひこれは考えて対処をしていただきたいというふうに思うわけです。  以上申しましたことで私が最終的に言いたいのは、行革審の意見書が指摘していますね。その意見書の課題について、全部一応触れてみたわけです。触れてみたら、結局条件が四つでしたか、それが全部私の言うとおりになるのではないか。だから、これはもう当然上げていかなければいかぬ。  つまり、行革審はこういうことを言っているわけです。「人事院勧告制度の維持・尊重の必要性」を言っている。これはあたりまえの話。「給与改定に関する従来の経過」、これは先ほど私が言ったとおり、これをいいかげんなことをしよると違憲問題が出てきますよということです。それから今度は「財政事情」については、いま言ったとおり人勧の完全実施をやった方がいい。それから最後の「その他社会経済情勢等を十分勘案して、」というのは、これは情勢適応の原則からして、人事院勧告は十分社会情勢を勘案して出されているものですから、全部こうなる。そうすると、私の言いよるように、とにかく人勧は完全実施せねばいかぬぞ、こういうことになるのですが、どうでしょう。
  81. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいまの矢山さんの行革審の意見書の解釈、そういう御解釈もできるのかもしれませんね。しかしながら、私どもは必ずしもそうも理解できない。なぜかならば、その御意見書を持ってこられた土光さんと大槻さん、その意見書をちょうだいしたときにいろいろな意見交換がございましたが、逆でございまして、こういった民間の厳しい合理化努力のさなか、公務員努力がまだ足らぬ、もう少しひとつ政府としてはしっかりした態度で抑制をしてもらいたいというような御意見でございました。したがって、行革審の御意見には政府国会ともに適切に処理しろ、最後こう締めくくってあると思いますが、その適切に処理しろというところが行革審の御意見と矢山さんの解釈による御意見とは必ずしも一致をしておりません。しかし、私どもは、行革審の御意見を御意見としても尊重しますが、同時に、先ほど来言っておりますように公務員給与はきわめて重要な問題でございます。したがって、矢山さんのいまおっしゃったような御意見も踏まえて、広い立場で真剣に検討させていただいて結論を出させていただきたい、かように考えているわけでございます。
  82. 矢山有作

    矢山委員 いまお名前を出された人たちの意見を余り尊重、尊重と言わない方がいいですよ、あの人たちはきわめていいかげんなんで、昨年の人勧を凍結しておいて、公務員の賃金も全然上げなかったのだからことしは民間もがまんしろと言って抑え込んだわけでしょう。今度は逆に、民間のベースを低ベースに抑えておるのだから、公務員なんかそんなに上げてはいかぬ、こう言っているのです。あの人たちはその出たところ出たところで自分の都合のいいことだけをしゃべっておるのですから、こんな人の意見を取り上げて余り重視すべきではないと私は思うのです。この四つ挙げてある意見書について一々いろいろ私は申し上げてきたわけですから、それを私の考え方で処理するのが一番適切な処理だと私は思うのです。ぜひそれはそういう方向でやっていただかなければいかぬと思います。  それで、人勧を完全実施するかせぬかというのは、問題は政策の重点の置きどころでしょう。どこへ重点を置くかですよ。あなたは先ほど聖域扱いは何もしないのだと言っている。聖域扱いしないどころじゃないじゃないですか。一昨年も昨年もことしも防衛費を含めて聖域扱いしているじゃないですか。全く別扱いだ。財源がない、財源がない、経常経費一〇%削減だ、公共事業を初めとする投資的経費五%削減だ。私はこのよしあしは論議しませんよ。そういうことを言っておりながら、防衛費だけは六・八八%の特別枠をこしらえてしまった。そのほかにもありますね。特別扱いしているのですよ。だから、防衛費で特別扱いをするというのは、いわゆる政策上、あなた方が政策の立場からやっているのでしょう。そうすると、その政策の優先順位の選択を誤りさえしなければやれるのですよ。だから、人事院勧告というもののこの重要な制度意味を考えたら、政策の優先順位として第一順位に挙げさえすればこれはできる話です。  まあいろいろ何だかんだ言って財政の苦しいことを言っておられますが、この財政上の問題は、その選択によってまず人勧完全実施をやるのだ、こう決めていけば、あなた方は上手なんですから財源をすぐひねり出してやれますよ。苦しい苦しいと言いながら、どこからか財源を引っ張り出してきていままでやってきたのですから、政策の優先順位の問題ですよ。そうなれば、最優先に扱わなければならぬのは公務員生活にかかわる問題、これはまさに義務経費、義務費ですね。これで公務員は生きておるのですから、生活しておるのですから、これが一番何にも増して重要なんですよ。そこに政策の視点を合わせて、これは完全実施できるはずです。どう思われますか。
  83. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 矢山さんのような御意見も頭に置きながら、政府としては国政全般の観点で、その中において合理的な適切な対応をしていきたい、かように考えます。
  84. 矢山有作

    矢山委員 何遍やってもあなたは全然答弁に進歩がないですね。あなた、少しは進歩した答弁をしなければ……。  あなた方は自分の都合のいい政策選択をやって、金をひねり出すときにはいろいろひねり出しているわけでしょう。たとえば外国為替資金特別会計から何ぼひねり出したのですか。五十七年度の決算剰余金から五十八年度一般会計に四千六百億も繰り入れをしておるでしょう。それから補助貨幣回収準備金、これは一兆一千億から五十八年度一般会計に繰り入れをしているでしょう。あの手この手を使って金をひねり出して、自分たちのやりたいことはやっているわけですよ。われわれが、これが一番重要な問題ですよ、公務員制度の根幹にかかわりますよ、人事院制度の根幹にかかわりますよ、憲法問題ですよと言っておるこれほど重要な人勧について、どうして金をひねり出せないのですか。私は金は出てくると思いますよ。  たとえば不用、既定経費の節減なんかを見ましても、相当な節減額が出てきますね。何か五十七年度では三千二百五十億くらい出るのじゃないですか。それからその前年五十六年度が六百億、五十五年度では七百四十六億、五十三年度には二千二百九十億くらい出ていますね。それから予備費だって、大体三千五百億くらい計上しているのですね。ところがそれに対して五十七年度は千二百億、五十六年度は百八十五億か、これはちょっと少ないけれども、それから五十四年度には二千億、こう出ている。だから、経費の節減等でもかなりの財源が出ておるわけですよ。しかもあなた方がない、ないと言っておって、土壇場になって手品を使っていろいろなところから引っ張り出してくる。あの手品を使いさえすれば、財源は何ぼでも出てくる。絶対これはやらなければいかぬですよ。財源に困るはずはない。官房長官、大蔵大臣に相談してごらんなさい。あなたが人勧完全実施は断じてやるのだ、大蔵大臣、ひねり出せと言ったら、大蔵大臣は財源をひねり出しますよ。きょう大蔵大臣を呼んできて、そのひねり出し方を話しようと思ったのだが、おらぬから言いませんけれども、どうですか。
  85. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私どもも労使関係の安定、あるいは公務員士気の維持、こういう点を考えれば、先ほど来申しますように人事院勧告というものはやはり最大限尊重していきたいという気持ち、これはいささかも変わっておりません。ただ、おっしゃるように財源をひねり出せ、こうおっしゃいますが、いままでにひねれるものはできる限りひねり出して、そしてどうにもならない。ことしの六・四七を仮に完全実施した場合にどの程度のお金が要るかということは、矢山さんの方が私どもよりもよく御承知なはずでございます。そう簡単にひねり出すことができるような金額ではないはずでございますが、政府としてはできる限り努力はいたしたい、こう思います。
  86. 矢山有作

    矢山委員 しかし、そんなことをおっしゃっていると五十九年度予算の編成のときに、あなたは食言をしたことになりますよ。たとえば五十七年度の電電公社の決算でも当初見込みから言えば三倍、三千億以上黒字を出しているのですよ。これを五十九年度に召し上げようという算段を、もう大蔵省はしているじゃないですか。そういうようないろいろなところから金をひねり出してきてやるのなら、人勧完全実施をやりなさいと言うのです。それをやらない、たとえば電電公社のその三千億以上からの五十九年度の召し上げもしません、また外為特別会計から一般会計に五十九年度繰り入れるようなことは絶対にしません、そう言うなら話はわかるのですよ。しかし、そういうようなことをいつも手品のようにやりながら人勧はやれないのだ、防衛費は別だからやるのだ、これが私どもは納得できないのです。もうそういう手品はやめますね。外為会計から引っ張り出さない、補助貨幣回収準備金からも引っ張り出さない、いまねらっておる電電公社の黒字から引っ張り出すこともしない、そんなことはもう一切やらぬと言えますか。それをやるのなら人勧の完全実施をやってください。どうですか。
  87. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御質問のようなあらゆる努力をして五十七年度の予算の編成、五十八年度の予算の編成をやったわけです。それでもなおかつ公務員給与完全実施するというだけの財源のゆとりが政府にない。先ほど言った、最大限の努力をしておってもなおかつどうにもならぬのだ、ここが違法になるかならぬかという境目の議論になるわけでございます。政府としては、いまおっしゃったようなあらゆる努力をいたします。しても、なおかつ完全実施ができるかどうかというようなことは、この段階ではなかなか明言ができません。やはりいろいろな議論を踏まえながら、適切な結論を出したい、こう申し上げる以外ないわけでございます。
  88. 矢山有作

    矢山委員 時間がなくなって予定の質問ができなくなったのですが、もう一つ、二つはっきりお聞きしておきたいことがあるんです。  臨時国会はいつ召集されますか、何か新聞報道では大体九月の八日というようなことが出ていましたが。
  89. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私どもの内閣は、御案内のように行政改革が大きな公約の政策でございますので、行政改革の関連法案の御審議を臨時国会を開かさしていただいてお願いをいたしたい、かように考えておりますが、いつから開くかといったようなことについては、さらに国会等とも十分御連絡を申し上げた上で決定さしていただきたい。あえて申し上げるならば、九月の上旬ごろにお願いをいたしたい、かように考えておりますが、まだ決定をいたしておりません。
  90. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、九月の上旬に臨時国会が召集されるといたしまして、人勧の取り扱いについてはいつごろ結論を出されますか。
  91. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 人事院勧告を八月五日にちょうだいをいたしまして即日給与関係閣僚会議を開きましたが、甲論乙駁、いろいろな御意見があって結論を得ておりません。問題が重要な問題でございますから、さらに何回でも関係大臣に十分意見を吐いていただいて、結論をできる限り早く得たい、かように考えておりますが、現時点でいつごろに結論を得るかということは明言をいたしかねておるのが現状でございます。
  92. 矢山有作

    矢山委員 しかし、給与閣僚会議を開いてどんな議論をしていらっしゃるのか知らぬけれども、何遍開いても意見が合わぬからまた引き延ばし、開いても意見が合わぬからまた引き延ばしということで、だらだら引きずつちゃって、それでいつまでたっても取り扱いが決まらぬというようなことになったのでは困るんです。早期実施ということが人勧の制度の一つの重要なたてまえでもありますから、早期実施ということで私どもとしてはぜひ臨時国会までに結論を出して、冒頭に関連する法案、つまり給与法案等を提案すべきだ、こういうふうに考えますが、そういうふうに運ぶわけにいかないのですか。
  93. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 厳しい状況のもとでの関係閣僚の意見でございますから、いつまでもまとまらぬ、そのままというわけにはいきません。それは当然ですけれども、さればといって生煮えのままであっては閣議でとても通りません。そういうことでございますので、何回でも意見が一致するまで議論を尽くさしていただいて、できる限り早く結論を得たい、かように考えております。
  94. 矢山有作

    矢山委員 早急に結論を出すように最大限の努力をしていただきたいと思います。そして、総務長官完全実施を目指して全力を挙げる、こう言っておるわけです。その場合、最大限の努力をする最大限とはどういうことだと言ったら、それは完全実施を含んだ最大限の努力だ、こういうことであります。給与担当大臣としての総務長官完全実施を目指して最大限努力されますから、あなたはその調整役として、しかも内閣の大番頭として給与担当の総務長官を助けて、ぜひ完全実施の方向に事柄の性質上持っていっていただく、そして違憲問題だとか、その他もろもろの問題が起きることを避けて、いまの人勧制度というものをきちっと守っていくようにしていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。  それから、もうちょっと時間があるようですから、経済企画庁、この前の山田君の質疑の中で七・四%の民間最終消費支出、それから六・六%の雇用者所得、これらの経企庁としての算出はどういう方向でやったのかということの質問も出ておるようですから、ひとつぜひ経企庁としては、どういう計算方式でどうやったのか、これを明らかにしていただきたい。これは要求をしておきます。  それからもう二、三分あるから、この間読売新聞を見ていたら「大蔵省の守衛四人が、民間のビル管理会社に雇われ、宿直明けの日にビル清掃のアルバイトをしていた」という記事が出ておりましたね。大蔵省では、国家公務員の兼職禁止規定に触れるということで事実関係を調査している、こういうふうに報道しておりますけれども、これは事実関係を、個人にかかわる問題ですからそこのところを十分配慮しながら、わかったらお教え願いたいと思います。その当該者の給与だとかあるいは家族構成がどうなっておるんだとか、またどうしてそういうようなアルバイトをやるようになったのか、そういった点御説明いただけますか。
  95. 渡邊敬之

    ○渡邊説明員 お答え申し上げます。  いまの御質問の守衛四人でございますけれども、それにつきましてはいま鋭意調査中でございまして、まだ結論は出ないわけでございますけれども、大体新聞に報ぜられましたのに近いようなことだと思っております。  それで、この四人の守衛の給与総額、それから家族構成ということにつきまして申し上げたいと思いますが、適宜A、B、C、Dという名前で言わせていただきます。  Aでございますが、Aは五十八年の八月の給与総額でございますが、これが二十五万九千五百四十五円でございます。家族構成は五人でございます。それからBでございますが、Bは二十五万一千六十八円でございまして、四人家族でございます。それからCは二十一万七百五十一円でございまして、二人家族でございます。それからDでございますが、Dは二十一万八千四十五円で、四人家族でございます。  大体以上のとおりでございます。
  96. 矢山有作

    矢山委員 私はこの記事を読んで、いま御説明のあった家族構成なり給与の水準を見ておって、この生活というのは人勧凍結という状況の中では大変なんじゃないですか。だから、こういう人勧凍結、人勧抑制というようなことがいつまでもやられておると、こういう問題は今後続出してくるんじゃなかろうか、私はそういう心配すらするわけです。「高級官僚の天下りから守衛のアルバイトまで、公務員の〃気楽な稼業〃ぶりが、また顔を見せた。」という批評もありますけれども、これは高級官僚の天下りとは比較になりません。ですから、そういう点でも、こういう深刻な事態まで生まれておる。私はこの四人だけにとどまるかとどまらぬかも疑問だと思いますよ。そういうことを考えたら、やはり公務員士気を高め、それで仕事により一層精励をするということのためにも人事院勧告がなされておる。その人事院勧告情勢適応の原則に従ってなされておるわけです。だからそれを十分心得て、完全実施という方向でぜひとも御努力をいただかなければならぬ一つの事例だというふうに私はきわめて深刻に受けとめておるわけです。官房長官、こういう事態が生まれておるということをどう思われますか。
  97. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 職員個々の事情を私つまびらかにいたしておりませんけれども、いま矢山さん御指摘のような事案が公務員給与そのものに原因があるということであるならば、これはやはり政府としても深刻に受けとめなければならぬ、かように考えます。
  98. 矢山有作

    矢山委員 それでは時間が参りましたから、あと質問が残りましたけれども、これで終わります。
  99. 橋口隆

    橋口委員長 市川雄一君。
  100. 市川雄一

    ○市川委員 最初に人事院総裁にお伺いしますが、公務員労働基本権の制約の代償措置としての人事院勧告、この勧告に当たって、そのときの財政事情というものを考慮しなければならないという趣旨なのかどうか、この制度がそういう財政事情を考慮しなければならないということなのかどうなのかということが、まず第一点。  第二点は、先ほどもお話しされておられましたようですが、今回の、ことしの勧告に当たって財政事情を考慮されたというお話ですが、その点を確認の意味でお伺いしたいと思います。
  101. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 公務員給与に関する人事院勧告制度のたてまえから申しまして、勧告自体をいたしまする際には、国の財政状況その他は考慮いたしません。それがやはり制度仕組みからいって私は当然のことではないかと思っております。  ただ、私も公務員の端くれでございますので、いろんな点は勉強をいたしております。そういう意味から、国の財政状況その他についてもそれほどつまびらかであるというわけにはまいりませんが、大体のことは知っておるわけでありまして、そういうものは、念頭には、頭のどこかには必ず置きつつ仕事をしておる。ただ、制度のたてまえからいって、民間の社長がそこの組合と団体交渉をやるのとはわけが違いますので、国の場合にはそれぞれ、先刻申し上げたように、つかさ、つかさがあって専門部局がある、そういうものの調整の上に内閣があり、国会があるわけでございますので、最終決定はそこでいろいろな角度からなさる。人事院は、やはりあくまで官民較差ということで、較差があればこれを埋めていただく、それが従来の労働慣行からいっても、また制度のたてまえからいっても、一番納得のできるものとして従来から安定した制度になってきているのではないかというふうに思っております。  したがいまして、第二点でございますが、私自身は勉強はしておりますけれども、この勧告をする際に、国の財政状況がこうだからこうだ、こういう時点だから本当は較差は六・四七%だけれども六にがまんしてください、それはやはり人事院役割りとしてやるべきことではないということでございます。
  102. 市川雄一

    ○市川委員 人事院勧告制度のたてまえから考えまして、まあ全農林の判決もございました。いろいろ考えますのに、私は完全実施というのが制度のたえまえだろうというふうに思います。  そういう意味で、人事院総裁と法制局長官にまず制度のたてまえについてお伺いいたしますが、人事院勧告というのは公務員労働基本権制約の代償でございますから、これは絶えず、常に制度としては完全実施、これが私はたてまえではないかというふうに思いますが、どういうふうにお考えですか。
  103. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 公務員も憲法にいわゆる「勤勞者」でございます。したがいまして、特別の措置がなければ労働基本権というものは当然保障されるべき筋合いのものでございます。ところが、公務の性格、公務員特殊性というものから見まして、ある程度の制約はやむを得ないということで、いろんな服務規定が適用されることに相なっておりますが、その一環として大変重要な意味を持ちますのが、とりもなおさず労働基本権の制約ということでございます。これは全体の奉仕者たる公務員の性格から申してやむを得ないということで、こういう法的な仕組みができ上がったものであるというふうに承知をいたしております。  それだけに、憲法で保障しておる労働基本権を制約することを合理化するためにはそれなりの措置を講じなければ片手落ちでございます。当然そこに憲法上の問題が起きてまいります。そういう配慮から、代償機能を果たすべきものとして人事院制度ができ、人事院公務員に関する給与勧告制度ができたものと承知をいたしておりまして、それだけに、これは制度的には大変な重い意味を持っておるものであるというふうに理解をいたしております。  この制度的な重みというものが理解されましたことの結果、御承知でありますように、それまでいろいろいきさつがございましたが、昭和四十五年以降は完全実施ということで、三年ほど前まではずっと来ておったわけでありまして、これがきわめて良好な安定した労使関係を形づくるに大いに力があったということはそのとおりであるというふうに思っております。  したがいまして、人事院勧告制度は、憲法上の要請、たてまえから申しまして、勧告自体がやはり完全実施していただくべき筋合いのものであるというふうに考えております。
  104. 茂串俊

    ○茂串説明員 お答え申し上げます。  御指摘の全農林事件に関する最高裁判決におきましては、人事院給与勧告制度公務員労働基本権制約の代償措置の一つとして位置づけられておりますので、その勧告を受けました国会並びに内閣といたしましては、この制度が実効を上げるように最大限の努力をしなければならないということは当然の要請であると思うのでございます。  ただ、ぎりぎりの憲法論といたしまして、人事院勧告を完全に実施しなければ直ちに違憲の問題が生ずるかどうかという点につきましては、これは必ずしもそうではないというのが全農林の判決の態度であろうと思います。
  105. 市川雄一

    ○市川委員 全農林の判決、解説も含めてよく勉強させていただきました。まあ、不完全実施でも必ずしも直ちに違憲ではない、こう言っておりますが、それはまた後で関連で御質問します。  もう一つ人事院総裁にお伺いしたいのですが、財政事情が厳しければ人事院勧告凍結したり抑制してもいいということが言えるのかどうか、この制度のたてまえから。その点、どういうふうにお考えですか。
  106. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 勧告は、それ自体大変重要な意味を持つ要請でございます。特に、一行政機関であります人事院が、国会とそれから内閣に対して、両方に同時に勧告をするという制度はほかにはございません。それだけ大変な意味合いがあるものであるというふうに私は解釈をいたしておるのであります。  そういう意味から申して、これは勧告を出した上からは完全に実施をしていただくということが筋道でございますので、したがって、そういう意味から、勧告は完全に実施していただきたいということは、昨年の勧告以後、機会のあるごとに繰り返し繰り返し申し述べさせていただいているわけでございまして、抑制なり凍結というような措置人事院立場としては大変遺憾であるというふうに申さざるを得ません。
  107. 市川雄一

    ○市川委員 官房長官にお伺いいたしますが、先ほどからの御答弁、ずっと聞いておりました。給与閣僚会議の座長をお務めになっていらっしゃるわけですが、官房長官としては完全実施でいきたい、こういう御意思でいらっしゃるのかどうか、その点はどうですか。
  108. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先ほど来お答えいたしておりますように、私は、人事院勧告制度というものは、これは最大限に尊重すべきものである、この基本の考え方は持っております。  ただ、内閣としては、やはり人事院立場もよくわかるし、この制度の重要さもよくわかりますけれども、やはり今日の危機的な財政状況、さらには社会情勢、一般国民世論、こういったようなことを幅広く目配りをしながら、国政全般との関連の上で適切な結論を得たい、私は座長でございますから私の意見を最初に述べるということは差し控えながら、関係閣僚の意見の煮詰まるのを待って私自身としての結論を得たい、かように考えております。
  109. 市川雄一

    ○市川委員 勧告政府の取り扱いは大体大別して三つの方向になると思うのですね。一つは完全実施、もう一つは不完全実施、この不完全実施も大幅か小幅かという種類は分かれますが、三つ目は凍結、大体この三つの方向性に分かれると思うわけです。凍結は今年度はない、こう断言していいですね。官房長官、どうですか。
  110. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 その点については前の国会においても私はそういう御答弁をさしていただいておりますし、八月五日の第一回の給与関係閣僚会議の席上でも私から発言をいたしまして、二年連続の凍結はしないというこの基本方針は確認をいたしております。
  111. 市川雄一

    ○市川委員 そうなりますと、完全実施かどうかということが焦点になるわけですが、私たちは第二臨調方針に必ずしも全面的に賛成ではありませんが、行政改革というものについては大枠で賛成している立場です。そういう立場で今回の人事院勧告というものを考えてみますと、行革と人勧の完全実施は矛盾しないのじゃないのか、こういうふうに私は思います。行革というのは、政府がもっと大きい立場で行政の簡素化とかあるいは総人件費の節約とか、そういうことをやるのが行革であって、公務員生活費を切り詰めるということは行革ではないのではないのか、狭義の意味では入るかもしれませんが。そういう努力政府はもっとやるべきではないのか、こう思います。  もう一つは、先ほどから官房長官は財政事情を理由にして完全実施という言質を避けておられますが、もしそうであれば、矢山委員も御指摘でありましたけれども、その財政事情のめどが立つまでは毎年毎年ずっと人事院勧告というものが、それなりの重みを持ちながら、なおかつ政府からは何かあいまいにそのときそのときになってみなければ扱いがわからないということが続いていくということを意味すると思うのですね。では、その財政のめどがつくのはいつなのか、人勧を完全実施できる財政のめどがつくのはいつですよ、いつまではがまんしてもらいたいとか、やはり完全実施のめどというか、こういうものをはっきりさせる責任があると思うのです。  それが何か毎年毎年労働基本権の制約の代償というきわめて重い意味を持った人勧の扱いがなかなか決まらない。しかも、結果として抑制凍結、またことしもちょっといまの官房長官の雰囲気では何となく抑制という方向に流れておる。これはこの人勧の制度を実質的に形骸化するものだと私は思うのです。そういう意味で、財政事情を理由にされるなら、人勧完全実施財政事情のめどはいつですよということをはっきり示す決意はありますか、どうですか。
  112. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 毎年のように八月になれば人事院から御勧告があるわけでございますが、それを受けて、そして基本人事院勧告を最大限に尊重する、これは大きな柱だろうと私は思います。その柱のもとで、政府としては国政全般の関連の中で毎年適切な結論を得ていくというようなことになろうか、かように考えております。
  113. 市川雄一

    ○市川委員 財政事情を理由に不完全実施をなさるなら、いつまでに財政事情をしっかりさせて人事院勧告を何年度からは完全実施します、こういうことをはっきりさせる責務が政府にあると私は思うのです。そういう責任をお感じになっていらっしゃいますか、どうですか。
  114. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 矢山さんの御質問のときにお答えしましたように、ただ財政が少し厳しいからことしは人勧の実施は見送る、こういったことは絶対やるべきでない。そういうことでなしに、国民世論の動向あるいは国の財政の現状あるいは先行きへの見通し、こういった幅広い観点で、人事院勧告を尊重しながらも適切な結論を出していく、かように私は考えているわけでございます。
  115. 市川雄一

    ○市川委員 先ほど官房長官は、憲法問題が生まれてくるという御指摘に対して、いわゆる政府は最大限努力したのだ、最大限努力した結果として一部抑制あるいは凍結という結果が生まれたのであって、したがって憲法問題は最大限努力していれば生じないというふうに受け取れる御発言をなさったわけですが、この制度のたてまえは違うのじゃありませんか。そういう政府の精神的な努力を言っているのじゃないと思うのです。全農林の判決もそうだと思うのです。いわゆる労働基本権の制約の代償措置という制度があればいいというのじゃないのです。制度が機能しているかどうかということが非常に重要な問題なわけです。最大限努力しても、機能してなければこれは問題だと思うのです。その辺はどうですか。
  116. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 最大限の努力というのは口だけではもちろんだめなんでして、具体的に政府としてはどのような努力をしたのか、その努力をしたにもかかわらずなおかつ抑制せざるを得ないということであるならば法律上の問題は起きない、私はさように考えております。
  117. 市川雄一

    ○市川委員 全農林の判決で多数意見の側に回って、そのうちの二人の裁判官が追加補足意見を述べていますね。その中で「もし仮りにその代償措置が迅速公平にその本来の機能をはたさず実際上画餅にひとしいとみられる事態が生じた場合には、公務員がこの制度の正常な運用を要求して相当と認められる範囲を逸脱しない手段態様で争議行為にでたとしても、」憲法上これは許されるという趣旨のことを言っているわけです。ですから、この判決の趣旨から考えてみまして、政府が幾ら最大限努力しても画餅に等しい事態、これはやはり認められないのです。この制度が有効に働くように公務員が争議行為を起こしても憲法上認められるということを多数意見の方の裁判官が言っているわけです。ですから、官房長官がおっしゃるように、ただ最大限努力していさえすれば、政府の恣意的な一方的な判断で人勧が尊重されなくても憲法問題にならないのだというのは、私は全農林の判決要旨と違うと思うのです。その点、法制局長官はどういうようにお考えですか。
  118. 茂串俊

    ○茂串説明員 ただいま全農林最高裁判決の中での多数意見に属する二裁判官の追加補足意見についての御質疑がございました。確かにただいま市川委員が読まれましたような見解が述べられております。ただ、その後半をごらんいただきますと、同じ二裁判官の意見でございますけれども、この代償措置についての機能が十分に発揮されているかどうかという点につきまして意見が表明されておりまして、「当局側が誠実に法律上および事実上可能なかぎりのことをつくしたと認められるときは、要求されたところのものをそのままうけ容れなかつたとしても、この制度が本来の機能をはたしていないと速断すべきでないことはいうまでもない。」という見解も述べられているわけでございます。したがいまして、この二裁判官の意見に限って申しましても、双方の意見を総合した上で結論を出すべきである、かように考えております。
  119. 市川雄一

    ○市川委員 その理解もちょっと一方的だと思うのですね。ここに書いてあることは「そのままうけ容れなかつたとしても」ということです。「そのまま」ですよ。「そのまま」ということは少なくとも抑制ということですよ、人勧の一部的な抑制凍結というのは全くそのまま受け入れないのですから、この意見には該当しませんよ。どうですか。
  120. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほどの矢山委員の御質問にもお答えしたわけでございますけれども、この最高裁の判決には、公務員給与その他の勤務条件は政治的、財政的、社会的その他の合理的な配慮によって決定されるべきであること、そしてその決定は最終的には国会においてなされるべきであることを述べておるわけでございまして、人事院給与勧告制度がこのような給与決定の原則を前提とするものであることは明白でございます。したがいまして、この給与勧告制度が実効を上げるように最大限の努力が尽くされたが、それでも勧告が完全に実施されない、あるいは凍結されるというような結果となったという場合には、この制度が本来の機能を果たしていないとは言えないのではないかと考えておりまして、これは従来から答弁しているところでございます。
  121. 市川雄一

    ○市川委員 けれども、二つ意味があるのですよ。最大限努力したけれどもそのまま受け入れられなかった、それは直ちに違憲と速断はしない。もう一つの意見として、実際上画餅に等しいと見られる事態、この場合はもう代替措置が機能してないわけですから、この代償機能が有効に働くように公務員が争議行為を起こしてもいいということも言っておるわけです。  それではお伺いしますが、人事院勧告政府が最大限努力したが受け入れられなかった、これは限界なく許されるのですか。これは限界なくということを言っていますか。限界があるはずです。政府の裁量で無際限にやっていいということではないと思うのです。これはやはりある限界までは違憲と速断できない、ある限界を超えれば違憲という問題が生じてくるということを言っておると思うのです。どういう御理解ですか。
  122. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほど官房長官もお触れになりましたが、最大限の努力というのはそのときどきにおける諸事情に合理的な配慮を加えまして判断をするところでございまして、その限界はまさにそのときにおけるいろいろな条件をいかに合理的に勘案するかという点であろうかと思います。
  123. 市川雄一

    ○市川委員 それでは労働基本権を制約した代償にならないじゃないですか。政府が最大限努力さえすれば幾らでも制約できるということになります。そうすると、裏返しの論理として、要するに、この労働基本権を制約したというその違憲性が希釈できなくなりますよ。だから、そこにはおのずと限界があるはずだというのです。政府が最大限努力したけれどもだめだったということにも限界があるはずですよ。法律もこの判決もそういう趣旨だと私は思うのです。あなたといまここで論争する気はありませんが、どうですか、全く無際限に、政府が最大限努力さえすれば公務員労働基本権の制約の代償措置である人事院勧告を本当に完全実施しなくてもいいのですか。ずっといいのですか。無際限ですか。違うでしょう。どうですか。
  124. 茂串俊

    ○茂串説明員 人事院勧告は、先ほどから申しておりますように、最大限の尊重をすべきである、また、実現に向かって最大限の努力をすべきである、誠意を持ってそのような検討を加えるべきであるということは無論当然のことであると思います。  ただ、その場合に、先ほどからいろいろ大臣の方からお話がありますような諸事情が前提としてあるわけでございますから、その前提の上で、いわば合理的な判断が下るということでございまして、たとえば、極端でございますけれども、人事院勧告が出てもこれは知らぬ存ぜぬとか全く無視するとかいうことがございましたら、これは確かに問題があるかと思いますけれども、先ほどるる政府側から申し上げておりますようなそういったいろいろな諸条件を前提にした上での判断を合理的に下すということであります限りにおいては、これはそういったむずかしい問題は出てこないんではないかと思います。
  125. 市川雄一

    ○市川委員 そこに問題があると思うのですね。この全農林の判決で五人の裁判官は要するにこういうことを言っているわけです。いわゆる代償措置があったとしても労働基本権を制約できないという説を五人の方はとっているわけですね。そういう説さえあるわけです。たとえ人事院勧告という代償措置を講じたとしても、公務員労働基本権は制約できない、憲法で保障された権利であるという趣旨のことを言っているわけですよ。  では、考えてみましょう。もし代償措置がない場合、公務員に争議権があり、団体交渉権がある。この団体交渉権と争議権は制約されませんよ。何にも制約されませんよ。何にも制約されない基本権の代償措置なんですから、それに制約が多少加わることはやむを得ないとしても、これが全く政府のそのときそのときの最大限努力しましたということだけで一方的に制約されていくのかということだ。そこにはおのずと限界があるのじゃないのか、また、限界を持つべきじゃないのか、私はこう思うのです、この制度の趣旨から考えても、全農林の判決要旨から考えても。人事院総裁はどうお考えですか。全く政府の一方的な裁量で、限界がないというお考えですか、どうですか。
  126. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 私の立場はあくまで勧告制度の趣旨にのっとって完全実施をお願いをするという立場でございますので、その立場はこれからもずっと貫いてまいりたいと思いますが、いまお尋ねの点で、微妙なことでございますので、法制局長官がお答えをされたところに私自身としていろいろのことを申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。  しかし、限界が全くないということでは、制度の趣旨は没却されるということではないかと私は思います。その限界をどこに置くかということの具体的な問題になれば、これはいろいろ御論議がございましょう。私がここで、何年間は何だ、そういうことは申し上げるつもりはございません。ございませんが、限界なしということになれば、これはやはり制度の本来のあり方自体についての疑義が生ずると思います。
  127. 市川雄一

    ○市川委員 法制局長官、どうですか、限界がなくなったら、これは制度の根本的否定ですよ。
  128. 茂串俊

    ○茂串説明員 ただいま人事院総裁が言われました限界の問題でございますけれども、これは私が申し上げている言葉の中では合理性と申しております。合理的な範囲において諸事情を勘案してということを申しておるわけでございまして、この合理性が何かということは、これはまさに各立場立場で違い得ると思いますけれども、政府としましては、先ほどからるる申し上げておりますように、いままでの処置につきましても、合理的な範囲内において判断をしておる、こういうことだと思います。
  129. 市川雄一

    ○市川委員 結局、争議権を奪われ、団体交渉権を奪われているわけですから、立場は弱いわけです。そのときそのときのいろいろ理屈をつけられてしまうと政府に制約されるわけですね。これに限界がないわけはないのです。限界がなかったら制度意味がなくなってしまう。本来なら、この限界を法制局も政府もきちんと持たなければいけないと思うのです。そうしないと、こういう事態が続いてくるとこの制度は全く意味がなくなってしまう、それを私は言いたかったのです。  では、何か合理性の基準がありますか。あなたの言う合理性というのはどういう客観性、普遍性を持ったもので判断されるのですか。答えられますか、それを言ってください。官房長官にも法制局長官にもそれがありますか、あったら答えてください。
  130. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 法律上の点は法制局長官の御答弁にお任せいたしたいと思いますが、労働基本権は勤労者の基本的な権利である、これは言うまでもありませんが、同時に、公務員は全体の奉仕者として公共の福祉という観点から一定の制約がある、したがってこういう制度があるのだ、こう考えます。  そこで、人事院勧告があった場合に、おっしゃるように政府が全く恣意的に人事院勧告に左右せられないで一方的に処置をする、その結果、本来の人事院の機能がなくなるということであるならばこれは許されないと私は思います。しかし、そこはやはり政府が広い国政全般の立場から合理的と思われる範囲内で一定の結論を出すということは別段法律上違法にはならぬ、私はさように考えております。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕  そこで、それじゃ限界はどうなのだ、こういう御質問のようでございますが、これは国会で最終御判断を願うということになりますが、その国会の御判断といえども、これは最終は司法の判断になってくると思いますが、いずれにいたしましても、その限界というものはしょせんはその当時の社会的な通念というものによって合理性ありや否やという判断にならざるを得ないのではなかろうか、私はこう思いますが、あとは法制局長官に任せたいと思います。
  131. 茂串俊

    ○茂串説明員 大体官房長官がお話しになりましたので、私補足するすべもないのでございますけれども、これは全農林の最高裁の判決におきましても、この点につきましては先ほどもちょっと触れましたけれども、公務員給与その他の勤務条件が政治的、財政的、社会的その他の合理的な配慮により決定されるべきである、そしてそれは最終的には国会で決定されるべきであるということを述べておるわけでございまして、抽象的でございますけれども、判決の面ではそのような配慮をした上で合理的に決定する、こういうことになろうかと思います。
  132. 市川雄一

    ○市川委員 合理的というのは、人数の数ほど意見があると思うのです。百人で会議すればその百人分みんなの意見が合理的なはずなのです。自分の意見が一番合理的だ、みんなそう思っておる。だから、合理的というものを基準にする以上は、みんなが納得する客観的な何らかの基準、ルールを示さなければいけないと思う。そうでしょう。それが労働基本権を制約する代償と言えるのじゃないかというふうに私は思うのです。そういうものを持たないで、財政事情がこうだから、何がこうだからというので抑制されたり完全実施されなかったりするのはきわめて不当なやり方であるというふうに言わざるを得ないと私は思うのです。  それではお伺いしますが、昨年勧告凍結という事態がありましたけれども、これはまさに判決が、多数意見の中の二人の方がおっしゃっている「代償措置が迅速公平にその本来の機能をはたさず実際上画餅にひとしいとみられる事態が生じた場合」に当たるのじゃないですか、凍結というのは。凍結というのはベアを積まないわけですから。どうですか。代替措置が全く機能してない、絵にかいたもちと同じである、こういうふうに思いますが、どうですか法制局長官、凍結ということだけに限って言えば。
  133. 茂串俊

    ○茂串説明員 先ほども触れましたけれども、いろいろ合理的な配慮によりまして、総合的に最終的には国会で御判断になるわけでございますけれども、給与勧告制度が実効を上げるようにもちろん最大限尊重し、最大限の努力をすることは当然の前提でございますけれども、それでもなお勧告実施されないという結果になったという場合であれば、最大限の努力は尽くされたという以上は、この制度が本来の機能を果たしていないということにはならないと思うのでございます。
  134. 市川雄一

    ○市川委員 せっかく官房長官御出席いただきまして、どうか人事院勧告完全実施の方向でぜひ努力をしていただきたいということを御要望して、この問題での質問は終わりたいと思います。  ちょっとテーマから外れて大変恐縮ですが、他に機会がありませんものですから、防衛庁にお伺いいたします。  昨日ときょうの新聞の情報によりますと、防衛庁は、日米共同訓練中の洋上の米艦に対し、一、日本の自衛艦が燃料補給することは現行法制内で可能、二、その場合は、米軍への一時貸与の形をとり、二%程度の手数料つきで速やかに現物の形で返還を義務づけるとの新方針を固めた、こういう報道がありますが、これは、そういう方針をお固めになったのですか、どうですか。
  135. 木下博生

    木下説明員 従来から海上自衛隊と米海軍とが共同訓練します場合に、海上自衛隊の船が米軍から補給を受けることがあったわけでございまして、それと同じような形で、日本近海において共同訓練をする際、米海軍に対し自衛隊の補給艦から油の補給ができないかということを要望を受けておったわけでございます。  それについて、数年前からの要望でございますが、検討を続けてきました結果、物品管理法に基づいて貸与するという形であるならばできるかもしれないなという形で、現在政府部内で検討をいたしておりまして、そのような貸与という形でやる場合に、米国側もそういう形でならば受けられるかどうかという点について現在調整を行っている段階でございまして、まだ最終的な結論を得たわけではございません。
  136. 市川雄一

    ○市川委員 法制局長官に伺いますが、従来自衛隊法、国内法では、これは法的取り決めがないのでできないというふうに政府はお述べになってこられたと思うのです。いまの防衛庁のお話を伺いますと、何かそれがいま調整中ということは、やることも含めて調整中だというふうに理解したわけですが、いままでは国内法、自衛隊法で取り決めがないからできない、それが何でできるようになるのか、その辺をちょっと説明していただきたいと思います。
  137. 木下博生

    木下説明員 法制局長官への御質問でございますが、従来そのような問題について御質問ございましたときに、政府側から、共同訓練の場合の給油についてできないという結論を出しているということは、一度も申し上げたことはございません。
  138. 市川雄一

    ○市川委員 それでは、何の法律でおやりになるのですか。
  139. 木下博生

    木下説明員 現在考えておりまして関係省庁と相談しておりますのは、物品管理法に基づく規定に基づいて一時貸与するという形でいけないかということでございまして、物品管理法の二十九条でございます。
  140. 市川雄一

    ○市川委員 これはやはりやる方向で検討されているわけでしょう。  その場合、私たちがちょっと危惧しますのは、これは日米共同訓練中だけに限るというように非常に厳格なものなのか、これが極東有事とかそういう場合との兼ね合いはどうなるのかということを非常に危惧しているわけですが、その点はどうですか。
  141. 木下博生

    木下説明員 物品管理法等の考え方でやれるものであれば、日米防衛協力を進めるという見地からこの問題と取り組んでいきたいと考えておりますが、現在考えておりますのは、平時における日米共同訓練に際しまして米艦に対して洋上給油を行うという局面に限りまして、現行法上できるかどうかという検討を行っているわけでございまして、有事の場合等については現在検討の対象にしておりません。
  142. 市川雄一

    ○市川委員 これはいつごろ――防衛庁長官が訪米されるに当たって何かそれをまとめてお持ちになるやにも伺っているのですが、もっと先の話ですか、どうですか。
  143. 木下博生

    木下説明員 本件に関しましては数年来の検討事項ということになっていたわけでございまして、現在検討は進んでおりますが、まだ関係省庁あるいは米軍側との調整中でございますので、結論がいつ出るかはまだはっきり決まっておりません。
  144. 市川雄一

    ○市川委員 以上で、時間が参りましたので、私の質問を終わります。
  145. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 和田一仁君。
  146. 和田一仁

    和田(一)委員 去る八月五日に人事院国会内閣に対して、国家公務員給与を四月にさかのぼって平均六・四七%、一般職で一万五千二百三十円引き上げるような勧告を出されました。  冒頭、藤井総裁からこの勧告の骨子の説明がございまして、朝から同僚議員を中心にいたしましてこの議論をしてまいったわけでございます。その勧告を受けての議論の中心というものは、政府は一体この勧告を受けて完全実施をするのかしないのか、こういうところに焦点がしぼられてきておる、こう思うわけでございます。  そこで私は、同じ議論を余り繰り返すようなことは避けたい、こう思いながら、一つ一つコンファームをしてまいりたいと思うわけでございます。  先ほどの市川議員のお話の中でも、凍結の問題がございました。見送りという表現ですが、この凍結については、二度と、二年凍結を繰り返すというようなことはない、こういうはっきりした官房長官の言明がございましたので、これは凍結はないもの、そう了解いたしますが、よろしゅうございますか。――よろしいようですので、結構です。  それでは、そういうことはないということを確認した上で、これから少し御質問をしていきたいと思います。  私どもはこの勧告の率を拝見いたしまして、六・四七%というこの改定率につきましてはおおむね妥当なものである、こういうふうに見ておる一人でございまして、これはぜひ、先ほど来の議論の中心にありますように、公務員基本的な労働権の制約の代償措置としての大変重要な勧告である、こう受けとめまして、この完全実施を早期に実現していくという立場で御質問していきたい、こう思うわけでございます。  そこで、この六・四七%という勧告が出されました、この率でございます。凍結というのは、これはもう全然ゼロでございますから率の問題は関係なくなります。しかし、いまの議論では、完全実施か、あるいは制約、抑制があるのか、こういうことになってまいりますと、私は、六・四七というこの数字そのものが大変大きな意味合いを持っている、こう思うわけでございまして、この勧告率について、給与担当の大臣を初めとして、官房長官、どのような見解をお持ちかをまずお聞きしたいと思います。
  147. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  お尋ねのことでございますが、人事院勧告のいわゆる改善率については、人事院が本年の四月時点における官民給与の比較をした結果出たものであり、この取り扱いについては給与関係閣僚会議において、先ほど来官房長官のおっしゃっておりますように、国政全般との関連において私どもは慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  148. 和田一仁

    和田(一)委員 検討というのは、この勧告率そのものを検討されるということですか。
  149. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  朝から申し上げておりまするように、私どもは人事院勧告を全面的にと申しますか、最も尊重していきたい、またいかねばならない、こういう考えを持っておりまするので、そういう気持ちで、これが認められるように私どもとしては努力をしてまいりたいと考えております。
  150. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 人事院の六・四七%は、人事院として四月段階での官民給与較差をお調べになっての御勧告でございますから、政府としてはそれなりの受けとめ方をいたしております。  問題は、したがって、それを今日の国政全般との関連の中でどのような形で実施をするかということについて、給与関係閣僚会議で第一回の会合を開きましたが、その場合にもいろいろな御意見がございまして、まだ結論を得ておりません。私どもとしては、何回でも議論を詰めて、適切な政府としての結論をできるだけ早く得たい、かように考えております。
  151. 和田一仁

    和田(一)委員 総務長官は朝からの御答弁の中で、最大限の尊重をして努力をする、こういう御答弁がございました。その中には、割引はしない、そして完全実施も含まれている、こういう意味合いを込めた最大限の尊重だ、こういう御答弁がございました。そしてそれを、閣内にあって実施の方向で全面的に努力する、こういう御決意が披瀝されたと思うわけです。  そうしますと、話は少し戻りますけれども、昨年はこれは実際には見送りになりました。先ほど来の議論を聞いておりますと、昨年は、最大限の努力を払ったが、しかし見送らざるを得なかった、こういうふうに私は聞いておるのですけれども、最大限の努力をなさったんでしょうか。見送り凍結という結果を招来しましたけれども、昨年は最大限の努力をなさったかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  152. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えします。  朝からずっと申し上げておりまするように、人事院勧告は最大限の尊重をする、そしてこの人事院勧告制度を守っていくような努力をしなくてはならぬ。それが労働慣行からいい、また働いていただく方々の立場から考えても、国の立場から考えても最もいい制度であるから、これが守られるように、維持できまするように私としても最大限の努力をすると申し上げた。完全実施だと言えという先生方からの強い要請がございましたが、私は最初から値切るとか小切るとかというような考え方ではなくして、最大限の努力とは、そこの中には、もちろん完全実施という表現はできませんが、最初から値引きをするとか安く下げるとかというのではなくして、完全実施ということも含めて最善の努力をするという中にそういう言葉も含まれておる、私はこういう言い方をしておりました。  昨年はそれと同じような気持ちで、前長官もまた関係閣僚会議におきましても努力しておられるようであります。私はそれらの記録だけで見たのでございますから、その場に立ち会ったわけではございませんが、記録から見ますると、前長官は私のいま申し上げたような気持ちでずいぶんがんばられたということがわかっておりまするので、前長官と同じ気持ちで、また私の申し上げたことで努力をさせていただきたいと考えております。
  153. 和田一仁

    和田(一)委員 官房長官はいかがお受けとめになっておられますか。やはり最大限努力しているんだ、こういうふうにお思いでしょうか。
  154. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 これは前内閣の御決定でございますが、当然鈴木内閣においても最大限の努力をした結果、万やむを得ずという異例の措置をなさったもの。その実態的な最大限の努力の中身は何だ、こういうことでしょうが、それは、昨年の予算編成の過程、それからでき上がった予算等をごらんになれば御理解が願えるのではないか。同時にまた、国民世論を受けて第二臨調等からの強い抑制の御意見もあった。各般の状況をしんしゃくしながら、苦渋の結果の結論であったのではなかろうか、私はこう思います。  たとえば予算等の編成を見ましても、先ほどお答えしましたように、本来国債の償還に充てるべき剰余財源等もこれは予算の中に繰り入れて、そして予算の均衡をとる、あるいはまた公企体等からも従来なかった納付金をひとつ最大限納めてもらいたいといったようなあらゆる歳入努力もし、そして同時に片方、歳出についても思い切った削減措置をする、こういった厳しい財政状況、そして国民世論、こういうような点から国政全般の観点で最大の努力をしたもの、私はかように理解をいたしております。
  155. 和田一仁

    和田(一)委員 予算を見れば最大限の努力をしていることがわかるだろうという御答弁ですけれども、昨年は給与改善費として一%の計上をなさっている。これは人事院勧告制度定着してまいりましてから政府の具体的な尊重の手段として、昭和四十四年から給与改善費として五%の計上をしておりますね。昨年五十七年も一%計上があったと思うのです。これ、ございましたね。予算を見ればわかる、最大限の努力をしているということはわかるとおっしゃるけれども、一%給与改善費の予算計上しておきながら全然見送りというのはどういうことなんですか。
  156. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御説のように、従来から何年間かは五%の給与改善費を組んだと思います。これは当時の財政状況がそれを許した、こう思いますが、その後パーセンテージがだんだん減りまして、最近では一%程度給与改善費というものを予算に組んでおりましたが、五十七年の厳しい財政状況を受けて、六百七十億でございましたですか、それも他の経費に回さざるを得ないような異常な財政危機に見舞われておるんだ、こういう客観的な情勢のもとにおいての政府としての判断であった、かように御理解をしていただきたいと思います。
  157. 和田一仁

    和田(一)委員 いま申し上げましたように、四十四年以来五十三年までは五%の給与改善費が計上されておる。ところが、昨年度勧告見送りされました。したがって、ことしの勧告は、冒頭藤井総裁の方からお話がありましたように、昨年の見送りになった分も当然含まれてことしは四月一日での民間との官民較差が出てくる、これは当然でございます。そうですね。昨年の答申を踏まえて、勧告凍結されたものですからその較差は残されたまま、ことし四月一日に新しく官民の比較をすればそれは当然含まれてくるわけなんで、さらにいまの経済情勢、社会情勢から言えば、昨年より上回る勧告が出るということは十分予想された、私はそう思うのです。ところが、そうであるにもかかわらず、今度の分もこの給与改善のための計上は一%しかない、こういう実態でございますね。私は、そういった姿勢そのもの、この人勧制度を最大限に尊重するという姿勢に一体これで国民がうなずけるかどうか、これは大変いいかげんな感じじゃないか、こう思うのですね。  去年の人勧を見送ったのはあらゆる面を考慮して苦渋に満ちた結果だった、こう官房長官おっしゃったけれども、苦渋に満ちているにもかかわらずその苦さをもう忘れたような新しい人勧に対する対応の姿勢、これでまたことしも最大限努力をするけれども完全実施はできないというようなことになったら、これは大変人勧制度そのものを軽視している姿勢ではないか、私はこう思うのですが、いかがでしょうか。
  158. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 一%が適切かどうかといったような予算の組み方についての御批判はあろうかと思いまするけれども、政府としては、人事院勧告をあらかじめ想定をして、そしてそれの全額を予算に組むといったようなことはおのずから別の問題だということで予算の立て方をやっておるわけでございます。したがって、そのときどきの財政状況を見ながら五%組んでみたり、三%、二%組んでみたり、あるいは一%と、こういうやり方をやって、人事院勧告が出た段階でその後の財政処置をどうするかということを従来からやっておる。私は、そういういままでの慣例的な処置に従っての予算の計上の仕方であろう、かように考えております。
  159. 和田一仁

    和田(一)委員 確かに二・五%の計上であっても実施をされたことがございます。そういう意味合いで、一%であってもこれは完全実施の可能性は十分あるのだ、私はこういうふうに理解をいたします。  そういたしまして、財政上の措置だけが理由でこの勧告抑制するということはないと、先ほどそういう御答弁がありましたけれども、この点をもう一遍確認してみたいと思います。そのとおりでよろしいですか。
  160. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 もちろん財政の危機的な状況、これは私は当然判断の重要なファクターになると思います。しかしながら、単に予算が少々厳しいからこの際はひとつ給与の方は抑制してもらおうなんというそういう単純な財政論だけで公務員給与は扱うべき筋合いのものではない、これはやはりもう少し幅の広い、目配りの広い視野から総合判断をすべきものである、かように考えているわけでございます。
  161. 和田一仁

    和田(一)委員 五十七年九月二十四日の閣議決定、要するに昨年の人勧に対する政府の態度がここで決まったわけですが、その中には、「労働基本権の制約、良好な労使関係の維持等に配慮しつつ検討を進めてきたが、未曽有の危機的な財政事情の下において、国民的課題である行財政改革を担う公務員が率先してこれに協力する姿勢を示す必要があることにかんがみ、また、官民給与較差が一〇〇分の五未満であること等を総合的に勘案して、その改定を見送るものとする。」こういう決定がございます。  私は、まず、「一〇〇分の五未満であること等を総合的に勘案して、その改定を見送る」これが見送った理由の一つになると思います。それから、これだけではもちろんございません。まず、行革を担う公務員ががまんしろ、こういう一つの理由があった。この理由については余り変わってないかもしれません。しかし、この「一〇〇分の五未満であること等を」というのは、これは明らかに数字の上では変わってまいりましたね、今度は。  そういう意味において人事院総裁にお尋ねしたい一つは、勧告が、これは勧告の対象になるのは公務員の中でも特に一般職公務員、非現業公務員五十万七千人、そういう人たちに対して人事院勧告がなされているわけですが、しかし、それだけではなくて、この人事院勧告に従って非常に大きな波及効果がある、私はこういうふうに考えております。人事院勧告が持っている意味合いというもの、もちろん当事者である公務員、それから、それを受けてやる特別職、そのほかにも非常に大きな影響力があると思いますが、総裁はどのような御見解がおありでしょうか。
  162. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 人事院勧告の対象は、お話しになりましたように一般職の国家公務員でございまして、総数は大体五十万以上ということに相なっておるわけでございます。  直接の対象はこれらの職員でございますが、これの波及ないし影響は大変大きなものがあるということは十分認識をいたしております。いまお挙げになりました特別職というのがまずございます。そのほかに、今度は地方公務員というものにこれは直接間接に影響をしてまいります。それからさらに、現在は一般の民間の方々でございますけれども、すなわち公務員をやめた方々でございますけれども、年金の生活者あるいは恩給生活者というものにも、これはたてまえとしてそういうふうになっておりますので、当然影響がいくということでございます。  さらに、午前中にも申し上げましたが、最近はこの人勧というものを参考にして給与を決定する民間の分野が想像以上にふえております。いわば大企業的なものが春闘ということで四月中心に集中をいたしますけれども、そのほかの分野におきましても、人勧を参考にしてというところが民間でも大変多くなってきておるのでありまして、その数はわれわれ、しかと把握しておるわけではございませんけれども、その波及性、影響するところというものはわれわれの想像以上に大きいものがあるのではないかというふうに考えております。
  163. 和田一仁

    和田(一)委員 いま御答弁がありましたように、国家公務員百二十万、地方公務員三百三十一万、こういったところに、国家公務員はもちろんですが、地方公務員にも波及効果がある。この中央地方を合わせて四百万を超える公務員のみならず、民間給与所得者、こういった勤労階層の上にも非常に大きな波及、影響力がある。その人勧が、さっきも読み上げました五十七年九月二十四日の閣議決定の姿勢ですが、まず今回は「官民給与較差が一〇〇分の五未満である」というこの条項はもう適用できない。  そうしますと、国民的課題である行革を担う公務員ががまんしなさいという理由ですが、私は、行革を推進していくためにも、国民の全般に大きな影響を与えていく、言いかえれば国民経済にとって活性化がもたらされるかどうかという視点から言っても、これは大変大事な点だと思うわけです。  私は、先ほども議論が少し出ておりましたけれども、まず、この勧告実施されることによって経済の活性化の一つの引き金になって、そして行革の大きな目的である経済の活力を高めていくんだ、民間の活力と同じように、やはり行革そのものの中にもそういった活性化がなければならぬ、こういう相まった相乗効果をあわせても今回はぜひ完全実施をしていかなければならない、行革を推進していく上からもどうしても必要なんだ、これによってふえてくる人件費の膨張は総人件費という枠の中で考えていく、これが行革の基本的な姿勢ではないか、こう思うのですが、官房長官はいかがでしょう。
  164. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 おっしゃるように、人事院勧告というのは、百二十万ですか、その国家公務員給与だけにとどまる問題ではなくて、特別職の人であるとか、あるいは公企体にも影響があるし、あるいは地方公務員三百数十万おりますが、これにも影響がある。のみならず、民間にもだんだんこの影響が出つつある。もちろん、民間公務員給与とはどっちがどっちへ影響しているのか、これはおのずから見方が二つあると思います。  いずれにいたしましても、大変広範な影響を与える、恩給、年金生活者等にも響いてくるといったような問題であるだけに、一方ではこれは非常に慎重な判断をしないといけないという面が出てくるのではないか。他面、いまおっしゃったように、これは議論の分かれるところではございますけれども、内需振興といいますか景気の回復というような観点から、消費需要を刺激する、それがためには給与は引き上げるべきではないのか、こういった議論があるし、いやそれはそうではないよという議論もあるし、こういった広範な影響を与える問題である。したがって、私は先ほどから、何も政府公務員給与はこの際短絡的に抑制してしまえというようなことを申し上げているのではないのです。いま言ったような幅広い観点から真剣にこの際関係閣僚が議論を尽くして、合理的な適切な結論を出すのが本来の扱いの仕方ではないのか、このことを申し上げているわけでございます。
  165. 和田一仁

    和田(一)委員 藤井総裁にお尋ねいたしますけれども、人事院勧告は、百分の五を超えればこれは義務としてなされなければなりませんが、昨年は五%を超えなかった較差数字でございましたけれども、にもかかわらず勧告されたというところはどういうところにございましたか、御説明いただきたいと思います。
  166. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 公務員法の二十八条は、情勢適応の原則と、その具体的な一つの一番中心課題である給与勧告の問題、これについて触れておる基本的な条項でございますが、この二十八条の二項にございます俸給表の五%の増減ということでございますが、これは、お述べになりましたように、いわゆる人事院の義務勧告限界というものを示しておるのでありまして、人事院が判断をして勧告ができるかできないかという問題とはおのずから別でございます。そういうことで、昨年は四・五八でございましたが、実は四・五八というふうに五%を切ったのは去年が初めてではございません。その以前にも、たしか三回か四回にわたって、五%を切ったときにも勧告をいたしておるわけでございます。  これをやりましたのは、実は基本給と申しますか、全体の公務員給与の現在額というものが、累年の春闘を反映した官民較差を埋めていくという方針でほとんど例年改善が行われてまいったという積み重ねの結果、かなり民間と匹敵した改善措置が講ぜられてまいったことは御承知のとおりであります。その結果、平均給与というものが実は二十万を超しております。そうなりますと、一%といえども、簡単に言ってこれは二千円でありまして、物価の上昇その他から考えますと、これはやはり無視はできない額ではないだろうか。三%になれば六千円でございますから、さらにもっと基礎は上がって二十何万ということになっていますから、そうすると、これはとうてい無視はできない数字ではないだろうかというふうに考えることが一点。  それから次の点は、三公五現の関係がございまして、これは従来の沿革もずっとございますけれども、人勧と比べて、仲裁裁定ということと人勧は本質的には同じものだと私は思っておりますが、従来の取り扱い方から見てどうも仲裁裁定の方が完全実施される部面が多いということが事実でございまして、そういう取り扱いがなされてきております。それとの均衡の問題がございますので、これを五%を切ったからといって放置するわけにはまいらないどいうことが第二点でございます。  そういう点等を考えますると、とうていこれは無視できないのではないかということから、やってはならぬと禁止しているわけでもございませんのであえて勧告をお出しをしたということで、先刻申し上げましたように、従来もすでに五%以下についても完全実施をしていただいております。そういうルールの上に乗っかって、去年も較差を出しましたところが四・五八でございましたが、これはやはり放置しがたいということでお願いをいたしたいという勧告をお出ししたわけでございます。
  167. 和田一仁

    和田(一)委員 いま御答弁をいただきましたように、従来五%以下でも勧告に従って実施をされている、こういう実績がございます。いま総裁の御答弁の中にありましたように、一%といえどもそれは実質的に非常に大きな較差になっているのだ。こういうこととあわせて仲裁裁定、四現業との均衡の問題、そういうことを考えればやはり放置はできない、こういう観点からあえて勧告をされ、過去もそういう意味合いにおいて五%以下であったにもかかわらず実施をされている、そういうことで昨年は出されました。  ところが昨年は、先ほど申し上げましたように、公務員はがまんしろという精神と百分の五以下であるから、こういうことを理由に見送られた、こういうことであります。百分の五以下であるというその理由は、いま人事院総裁が言われたような四現業、仲裁裁定との均衡の問題、官民の較差が五%以下であっても大変な実質的な相違になってきているこの実態と照らし合わせて、本当にこういう決定が最大限の努力の上になされた決定かどうか、もう一回私はお聞きしたいと思います、官房長官。
  168. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御質問の点は前内閣のときのお話だと思いますが、人事院が御勧告なさったのは従来からの例もある、それに従って給与改善措置もとられた、あるいはまた、三公四現との均衡の問題もあるし、一%でも金額にすれば相当なものではないか、こういうような人事院人事院としてのお立場でやられたことだと私どもは理解をいたしておりますが、政府凍結といった処置をとった際の理由づけの中にある五%以下の官民較差ではないのかという点については、政府としてこういう判断を下すときには大きなファクターになり得る、私はさように考えます。それで、三公四現との関連においても、御案内のように、政府としては公務員給与をそのようにごしんぼう願いましたので、いわゆる赤字企業についてはボーナスにおいて調整をする、これはやむを得ざる処置であるといったようなこともやったということでございます。  したがって、私は、義務的な勧告制度としからざる場合の勧告制度には、人事院のお立場はよくわかりますけれども、政府としての受けとめ方にはおのずからなる差異は出てきてもやむを得ないのではないかな、かように思います。それも、財政状況もこれを許し、そしてまた一方に行政の改革、財政の再建、こういうようなことについての厳しい世論というものが余り出てないというときであるならば考えられますけれども、そういう厳しい世論を背景としての臨調の意見、こういうものが出ておる際にはやはりそれなりの政府としての対応もやらなきゃならない、かように私自身は考えておるわけでございます。
  169. 和田一仁

    和田(一)委員 義務的な勧告とそうでない勧告との差はおのずからある、こういう御答弁でございまして、そうなりますと、今年度勧告は、これはまさに義務的にどうしてもやってもらわなければならぬというさらに重みのある勧告だ、そう受けとめておられるわけでございますね。それはよろしゅうございますね。私はそういう立場でぜひ早期に完全実施をしていただかないといかぬと思うのです。  いま、さらに厳しい世論があるから、こういうお話がございました。総務長官、私は、昨年凍結された大きな背景の中には官民較差、こういうことですが、官と民との比較の中でいわゆる公務員が民に比べて働き度が少ないのではないかとか、退職金が民よりはるかに多いとか、そういうような世論があったと思うのです。しかし私は、国家公務員は、少なくも問題になった地方公務員のような働き度では絶対ない、民間と比べて少しの遜色もない、むしろそれ以上の働き度をしている人々が大部分だ、こういう理解をしております。そういうことを考えますと、給与担当の大臣としてそういう世論を余り気にせずに、世論を気にせずというよりもむしろ世論を、一部行き過ぎている、地方のそういう特殊な問題が大きく喧伝されるために中央の公務員、そしてそれがさっきのお話のように、非常に波及効果の大きい人々に対して、行革絡みでもってまず役人ががまんしろというような世論背景が出てこぬようなやはり給与担当大臣としての努力もしていただかなきゃならぬと思いますけれども、その点はいかがなんでしょうか。そういう意味では少し誤解をされているのではないかという気もするわけですけれども。
  170. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  大ぜいの公務員と申しますかお役人さんでございますから、中には心得違いの人が少しはあるかもしれませんけれども、いま先生のおっしゃいましたように、世間で言われておるほどのものではないし、それは全く違った現実でございますから、私は、この方々が大いに士気を燃やして国のために国民に奉仕してくれるようにひとつ宣伝とかよく理解を求めるような努力をし、私自身がそうした方々と直接関係のある担当をいたしておる立場でございますから、そういう点をよく理解いたしまして、今度の人事院勧告給与改定等についても、朝から申し上げておるような気持ちでこの方々の立場をよく理解して努力させていただきたいと考えております。
  171. 和田一仁

    和田(一)委員 時間が参りましたので終わらせていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、せっかく定着してまいりましたこの人事院勧告制度が崩壊につながるようなことにならないように御努力を願いたいと思うわけでございます。そして、抑制であるとか凍結であるとかまた抑制であるとか、こういうことが続いていくことによって官民の較差が広がって、いつかはどこかでそれはまた調整しなければならぬときが必ず来るわけでございます。そうでなければ公務員士気はますます低下して、それこそ行革を幾らやっても国民の期待するような行革にはならない、こういう相互関係があるわけでございまして、ぜひこの制度の崩壊になるような抑制は避けていただきたい、こういうことをお願いいたします。  同時に、私は、これが決して国会におけるいわゆる政治取引の具にされるということがあってはならない。これは純然たる給与の問題として、人勧のこの制度を尊重する意味からもそういう取引の具にするようなことなく、早期に実施する努力を引き続きお願いを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  172. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 中路雅弘君。
  173. 中路雅弘

    中路委員 官房長官の後の日程があるということなので、最初に二、三問官房長官にお尋ねをしたいと思います。  ILOがことしの三月に、政府の人勧凍結方針の撤回を求める職員団体の提訴を受けまして、御存じのように、八三年度以降の人勧について、今後の人事院勧告が完全かつ迅速に実施されるようにという勧告をされました。完全かつ迅速に実施されるという勧告でありますけれども、人勧の扱いについて、秋口、九月上旬に臨時国会を開きたいというお話ですけれども、先ほども給与関係の閣僚会議は何回でも開いてというお話ですが、八月五日に出されてから一度やられて、後全く開かれていないですね。少なくともこの臨時国会前には結論を出して、臨時国会にはそのための給与の改正法案や、六百七十億ですか、ベースアップの経費は一%しか組まれていませんから当然補正予算も必要になりますが、これを提出すべきだと思いますが、いつごろ結論を出されるのか、手続をどうされるのか、最初にお尋ねしたいと思います。
  174. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先ほど来お答えいたしておりますように、大変幅広い検討を必要といたしますし、問題が問題だけに閣僚の意見もまちまちでございます。したがって、できる限り関係閣僚会議を開いて早急に適切な結論を得たい、かように考えておりますが、いつまでに結論を出し、その後どういう手続をとるのかといったような段階までお答えすることは、いまの段階としてはいたしかねるというのが実情でございまするので、御理解を賜りたい、かように思います。
  175. 中路雅弘

    中路委員 少なくとも臨時国会には提出されるという見通しで作業をやっておられるのですか。
  176. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 できるだけ早く結論を得たいということで、精いっぱいの努力をするつもりでございます。
  177. 中路雅弘

    中路委員 臨時国会にこの問題が出されるという保証はまだ述べられていないわけですが、先ほどの答弁の中でいまの厳しい財政事情ということもおっしゃっています。その中には累積する赤字国債とか、危機的財政とか、行革審の厳しい抑制の意見もあるというお話が出ていますけれども、私は簡単にここでお話ししておきたいのですが、いまの行革審の会長、臨調の会長をやられておられます土光さんが、かつてどんなお話をされていたのか、全部調べてみたのですね。土光語録といいますか、時間があれば全部披露してもいいのですけれども、一、二だけ御紹介します。  土光さんが経団連会長に就任してからのを二、三紹介しますと、たとえば七五年に、これは赤字国債発行で不況を打開せよということで赤字国債の大増発を迫っておられます。あるいは七六年の十月ですが、赤字国債の公債依存からの脱却を急ぐなということでいろいろ述べておられます。七七年の七月に、国債依存度の三〇%にこだわるなということも要求されている。あるいは七八年には、財政再建を早急に進めるならば経済そのものが行き詰まって財政健全化に逆行するような結果をもたらすというようなことですね。語録を調べますと、土光さんのは一貫して政府に赤字国債の大増発を要求されてきた。  いま政府は、先ほども累積する赤字国債が大変だとか危機的な財政とおっしゃっていますけれども、今日のこの財政危機をつくり出した大きな責任といいますか最大の原因は、政府とともに、この土光さんのやっておられる財界の要求に従ったということにあると私は思うのですね。そして、その土光さんを政府臨調、行革審の会長に任命された。そして、今度はそのツケを全部公務員のこうした人勧の凍結や値切りに持ってくる、これは全くけしからぬことだと思うのですね。しかも、政府がその行革審の意見に従って、抑制を尊重しなければいけないというような、これは本当に全くけしからぬことだと私は思うのです。結論はいいのですけれども、一言官房長官の感想的意見をここで聞いておかなければならない。  そして、公務員のこの給与の問題は、言われておるように憲法問題にかかわる問題ですし、労働基本権代償措置としての重要な問題です。こうした行革審の意見にとらわれないで、断固としてこの勧告実施するということをひとつ約束していただきたい。
  178. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 土光さんの過去の言行録に対する批判は私は差し控えさせていただきたい、こう思います。したがって、それとは別に一般論としてお答えをさせていただきたい。  やはり石油危機を受けての先進諸国の対応の仕方にはいろいろなやり方があったと思います。わが国は御案内のように増税ということで処理をしないで、国債発行ということで私は処理をしてきたと思う。それなりに成果は大きく上げることができた、日本の政策選択は必ずしも間違いではなかった、比較をすれば、よかったとすら私は思っておりますが、ただ、率直に言ってそのとがめが今日来ていることも事実でございます。したがって、そのとがめを過去のやり方云々ということで放置するわけにはまいらない。やはりそれなりの財政再建、行政改革の対応策を講じなければならないのではないか、かように私自身は理解をし、公務員の諸君は本当に気の毒だと思います。昨年の処置等はまさに異例の処置であったと思うのです。したがって、厳しい危機的な財政状況、そして同時に国民世論――土光臨調は財界の意見だという御意見ございましたが、私はさような受け取り方はいたしておりません。私の方は皆さん方と同じようにそれぞれの選挙区なり全国各地に散ってひざを交えて国民の意見というものは耳にいたしております。今日の公務員の諸君は、先ほどの和田さんの御質問の中にもありましたが、これはまさに一部の人ではあっても、やはり国民の中にはもう少し効率的な政府というものをつくるべきではないのか、もう少し公務員の組織、そういう点についてもメスを入れたらどうだ、あるいはまた、ことに地方の財政状況から見て、なるほど東京周辺、大阪周辺の一部の都市だと思いまするけれども、そうは言いながらもラスパイレスの指数は一〇七ではないか、そういうむずかしい言葉は使いませんよ、使わないけれども、地方団体の職員給与はわれわれの立場から見ればよ過ぎるではないかとか、いろいろな意見がございます。そういったような率直な意見が背景になってのあの第二臨調の御答申であろう、私はこういう受けとめ方もいたしております。  いずれにいたしましても、あれこれ考えて、先ほど来何回も言うように、人事院勧告を最大限に尊重するという基本の柱のもとで、国政全般の立場から広い目配りをして合理的な結論を得たい、かように考えております。
  179. 中路雅弘

    中路委員 いま土光さんのは財界の意見のあれじゃないというお話ですが、先ほど私が挙げたのは土光さんの語録であるとともに、たとえば七六年のは経団連の「経済政策運営に関する緊急意見」の中ですし、七七年のは経団連の「当面の政策運営に関する新内閣への要望」という中で述べられているわけです。これはまた財界の強い要望であったことは事実だと思うのです。  論議をする時間が限られておりますので、官房長官あと一問だけお聞きをしておきたいのです。いまの問題とちょっと離れるのですけれども、お見えになった機会に聞いておきたいのですが、靖国神社の参拝の問題です。  総理が、いままでの政府の見解である公式参拝の問題は違憲の疑いを否定できないというのを見直しをするということで、政府と党に検討を指示したということが新聞等で報道されていますが、政府に対して総理からこうした見直しの指示があったのかどうかという問題です。その場合にどうされるのかということが一点です。  あわせて、もう一点だけお聞きしておきますが、英霊にこたえる議員協議会というのが自民党さんの中にありますけれども、七月二十一日に二階堂幹事長と安倍外務大臣に申し入れをされています。その中で、総理の公式参拝とともに国賓の靖国神社の参拝の問題について申し入れをされまして、後の新聞報道ですと板垣事務局長が、参議院議員ですが、外務大臣はレーガン大統領の訪日の際の参拝について理解を示されたという談話を出している報道があります。政府は、レーガン大統領の訪日の際にそうしたことを検討されているのかどうか。靖国神社にはA級戦犯である東条英機も合祀をされています。この前の戦争の最高責任者です。アメリカの大統領にそういった要請を検討されているのかどうか。二点あわせてお尋ねをしておきたい。
  180. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 靖国神社の公式参拝の問題ですが、これは政府は合憲とも違憲とも判断をいたしておりません。ただ、違憲の疑いもなお否定し得ないということで、靖国参拝というきわめて重要な事柄でございますから、そういった段階では閣僚は私人としての参拝をするという従来からの政府見解は変わっておりませんが、自由民主党の中にはたくさんの議員の方が、総理は靖国神社に公式参拝すべし、憲法違反ではない、こういう御議論が強いわけでございますが、そういうお立場から総理に対して公式参拝をしてもらいたいという申し入れがあったようでございます。その際に、総理としては、それならばいろいろな意見があるから、党としても憲法解釈等について勉強したらどうだということは言われたということを承知をいたしております。なお、その後の前橋での記者会見の際に、政府においても勉強をしたい、そういう指示をするとかといったような記事を私は見ましたが、少なくとも今日まで私に、政府でもひとつ勉強しろといったような御指示は一切ございません。御指示があれば、その段階で勉強するか、そこらの点は検討をいたしたい、かように考えております。  なお、レーガン大統領の訪日の際に靖国神社に参拝という話は、もう全く私は聞いておりません。
  181. 中路雅弘

    中路委員 この靖国神社問題は、また改めて別の機会に御質問することにしまして、官房長官、どうも時間を超過して……。  それでは、もとへ戻りまして勧告の問題ですが、先ほど総務長官矢山先生の御質問で完全実施を含む最大限の努力というお話をされましたが、まだ非常に歯切れが悪いのですね。従来の総務長官は皆完全実施の方向で給与担当大臣として努力をするということを繰り返し述べておられました。完全実施を含む最大限努力というと、その中には完全実施も入るけれども、結局勧告率の引き下げだとか実施の時期を考えるとか、抑制も含めて考えられているというようにどうしても考えられるのですね。  私の方からもう一度提案しますけれども、こう言って答えていただければどうでしょうか。完全実施の方向で最大限努力する、完全実施を含む最大限じゃなくて、完全実施のために最大限努力する、これぐらいは答えられませんか。いかがですか。
  182. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  いま先生に教えていただきましたが、言葉遣いというのはそうむずかしいものでしょうかな。私の申し上げていることも先生から教えていただいたことも、要は私の気持ちがわかっていただければ御理解願えると思うのですが、私は先生から教えていただいたから強いてここでそういう言葉に変えるなんというような気持ちもございませんし、朝から先生方に申し上げていることで御理解いただきたい、こう思っております。
  183. 中路雅弘

    中路委員 もう一度お尋ねしておきますが、それでは給与担当の大臣として、総務長官として、この人事院勧告については、先ほど完全実施ということもおっしゃいましたから、それを含めて総務長官として最大限の努力をする、これは確認でいいですか。
  184. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 お答えさせていただきます。  いわゆる人事院勧告制度というものは労働基本権の代償的な措置でございますから、この制度は何としても守っていきたいという気持ち、守っていただきたい、それが守られるようにしなければならぬという意味から私は人事院勧告を最大限尊重していく、最初から財政が云々、あれが云々と弱いことを言っておってはとても交渉もできないし、お願いはできませんので、そこの中にはいわゆる完全実施ということもちゃんと含まれておる、こういうような言い方をさせていただいておるのでございますから、先生のおっしゃっていたことと私の申し上げておる心の内とは完全に一致している、こう思っております。
  185. 中路雅弘

    中路委員 完全に一致しているとおっしゃっているからもうこれ以上この問題はお尋ねしませんが、そこで人事院にお尋ねしたいのですが、総裁にお尋ねする前に、勧告それ自体が問題で一問だけお尋ねしておきたいのですが、従来の追加較差の算出方法の問題です。  人事院は、これまで追加較差では、四月の遡及改定事業所の引き上げ率から定数三%を引いたものに四月遡及の改定事業所の割合を乗じて出されているわけですが、勧告に占める追加較差の割合を、時間がありませんから私の方からお話ししますと、この十年間を見ますと大変大きな変動があるのですね。たとえば四十九年は勧告に占める追加較差の割合が三三%ですね。特にことしになりますと、五十八年は五・四%と大きく変動して、安定していないわけです。ことしの落ち込みは特に激しいわけですね。この変数をさわることによって勧告幅を操作できるという問題があるわけです。その点で、こうした変動が大きく、安定していないのはどうして起きるのかという問題、特に私はこの定数三%に合理的な科学的な根拠がないと思うのですね。これは高度成長の時代の遺物じゃないかと思うのですけれども、たとえば四月遡及改定事業所の引き上げ率がいまの状況でもし三%を下回った場合は追加較差がマイナスになるというおかしい算出方法になってしまうわけですから、これから低率勧告の時期を迎えて、こうした現行の算定方式を見直すべきではないか、中でもこの定数三%という数値については手直しを考えなければならない時期に来ているのではないかと思うのですが、いかがですか。
  186. 斧誠之助

    ○斧説明員 お答えを申し上げます。  いま先生のおっしゃいました、本年度の遡及改定分が勧告率から見て五・四%にすぎない、これは従来から見るとひどく低率ではないかという点にまずお答えをいたしますが、ことしの六・四七%と申しますのは、午前中から議論がありますように、二年分ということでございます。この積み残し分と申しますのは、ことし一年分の積み残し分でございます。したがいまして、もしこれを勧告率という関係で見るといたしますと、一・八九という数字がまあ問題な数字なんですが、仮にことし分はそうだ、こういうことにいたしますと、これは一八%を超す率になるわけでして、決して他の年と比べて低いという率ではございません。ここ四、五年を見てみますというと、お手元に資料があると思いますが、大体二〇%前後の事業所が遡及改定を行った事業所として把握されておるわけです。これは春闘のおくれでありますとか、それから中小企業の景気動向でなかなか決まらないというような景気状況でありますとか、そういうことで若干の変動はいたしますが、ここ数年で見ますとそんなに変動しておるものではないというふうに考えております。  それから、三%を引く話ですが、この積み残し分の算定というのは、実は四十二年以来やっております。これはわれわれが調査に行きました際、相当数の事業所が四月に払うんだということも決め、率も決め、改定の中身も決めておるけれども、まだ支払ってないということが発見されまして、しかもそれが二〇%を超す事業所に及んでおるということになりますと、これはどうも見逃すわけにはいかないということで、四十二年以来繰り込んでおるわけですが、この三という数字はそれ以来使っておる数字でして、これはあくまでも概算でございます。これで官民の給与比較が完全にできるという数字では当然ございません。したがいまして、翌年の民間給与調査の際改めて精算されるという仕組みで今日まで来ておるわけです。そうして今日まで参った過程を見ますというと、結果的に見ればそんなに大きなぶれが生じておるというふうには見れないわけでして、いわば一種の定数として用いてそんなに誤りのない数字であるということが経験的にわかってきておりますので、現在までこれを用いておるわけです。  将来どうするかという点につきましては、実は民間の定昇分というのはなかなかわかりにくい話でして、民間の定昇分を幾らと算定したから幾ら引くんだという計算は恐らくできないんじゃないかというふうに考えます。したがって、当分の間はこのマイナス三%ということを用いていくことによって、経験的に言いますと誤りのない結果が出るのではないか、そういうふうに考えております。
  187. 中路雅弘

    中路委員 いまお話もありましたけれども、いわゆる経験的という話で、合理的な科学的な根拠が必ずしもこの数字にあるわけじゃない。しかも、前の高度成長の時代と違って時期が変わってきているわけですから、私はこうした定数についても検討をし直すべきじゃないかという主張なんです。これは意見としてきょう述べておきたいと思います。  人事院総裁に、これはどの委員の皆さんもお聞きしておられますが、やはり確かめておきたいのですが、いま財政事情を理由にして値切りや凍結ですね、こういうことがもしやられるならば、少なくとも昭和六十年度以降第二の財政危機とも言われているわけですから、少なくともこれから十年前後は人勧の完全実施を望めないわけですね、こういうことを理由凍結抑制ということになれば。そうすれば、この勧告制度ということは文字どおり有名無実になるわけですし、人事院代償機能が重大な危機にさらされるということは疑いありません。アメリカでも、いま大統領が御存じのように給与代理人勧告を七九年以降値切り実施されていることから、勧告民間の賃上げ率との乖離がますます大きくなって、勧告制度が重要な危機に直面しているということも言われています。  そうした点で、まさにいま人事院代償機能が問われているときだと思いますが、こうした重要な岐路に立って、人事院は重大な決意で今度の勧告については臨まなければならないと考えるのですが、先ほども述べておられますけれども、私からも人事院総裁としての抱負、決意をもう一度確かめておきたいと思います。
  188. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 人事院の姿勢なりというものにつきましては、累次申し上げておるとおりでございます。また、いま中路先生がお述べになりましたような基本姿勢は、私はそのとおりだというふうに理解をいたしております。  一昨年以来、漸次この人事院勧告制度というものについて、その内容について抑制的な方向が出てまいりまして、昨年度はついに見送り凍結というような異例の事態が出てきたわけでございます。これは人勧制度というものの目指しておりまする大きな目的、また公務員制度上における大変重要な地位というものから見まして、人勧制度が何らかの抑制措置を講ぜられる、あるいはそれが高じて凍結等のことが行われるということは、これはやはり人勧制度自体の本質に触れる重大な措置であると思いまして、私は大変大きな危惧の念を抱いております。この点につきましては、国会その他機会のあるごとに、私の考えとして、人勧制度の本来の性質からいってこれは絶対に尊重していただかなければ困る、これについて抑制その他の凍結等の措置を講ずることははなはだ遺憾千万で残念にたえないということを繰り返し申し上げておるところであります。  私は、ことしの場合、去年のことがございますので、去年よりもさらに決意を新たにいたしまして、人勧の完全実施ということについて何としてでも貫徹をしていただきたいという強い姿勢で臨んでまいっております。このことは今後とも同じ姿勢で取り組んでまいるつもりでございます。  その理由については、もうとやかくここで繰り返し申し上げませんが、私といたしましては、これは代償機能であるという大変重い意味、これが無視されるというようなことになりましては、労使関係というような面から申しましても、公務員制度の現在のあり方自身ということの仕組みにもかかわる重大な結果を及ぼすというふうな大変思い詰めた感じを持っておるわけでありまして、その感じから、これからも機会のあるごとに政府筋あるいは国会の諸先生方にもお願いをして、ぜひともひとつ勧告完全実施ということを貫徹するために強い決心でもって今後とも取り組んでまいりたい、かように考えております。
  189. 中路雅弘

    中路委員 総裁にもう一問だけお聞きしておきたいのですが、いまおっしゃったように、いま人事院は非常に大きな岐路に立っておるわけですね。重大な決意で臨む必要があるわけですが、きょうはあえて具体的にお話をしません。しかし最近、一般のマスコミやあるいは国会でも、人事院にかかわる一連の乱脈問題といいますか、これがマスコミ等でも報道されています。いま人事院代償機能としての役割りをしっかり果たしていかなければならない。そして、特に人事院公務員の規律を保持していくためのかなめの組織であります。ここでこうした問題が起きるのは大変ゆゆしい問題だと思うのですが、この問題の解明は別の機会に譲ることにしまして、人事院総裁としてこうした問題に速やかに厳正に対処すべきだと私は考えますが、一言総裁からも決意をお伺いしておきたい。
  190. 藤井貞夫

    藤井(貞)説明員 具体的な名前等は事柄の性質上申し上げませんが、最近一連の報道で人事院に関するいろんなことが報道せられたということは事実でございまして、私は大変心痛をいたしております。こういう報道がなされること自体が、私は、大変恥ずかしいことであり、遺憾千万なことであるというふうに言わざるを得ないという気持ちでいっぱいでございます。具体的に申し上げませんが、中には事実無根で全く誤解に基づくようなこともございます。ただ事柄が小さいといって済まされないことでは、資格のない者を公務員研修センターに席を与えておるとか、そういったようなことで、これはやはり正させなきゃならぬ、きちっとしなきゃならぬということは、それはとりあえずきちっとするように措置をいたしております。  それはそれといたしまして、いま御指摘になりましたように、私は、人事院というものは、やはり綱紀粛正というか服務というか、そういうものの元締めでございますので、口を開けば私は、職員の各位には、人事院だけというわけではないが、特に人事院職員は、人事院おまえもかというふうに言われることのないようにひとつ気をつけてくれよ、これは口を酸っぱくして申しておるところでございます。それはやはりこちらから指導監督をするという、そういう非常に厳粛な立場にある役所でございますので、事柄は小でも、やはり世間から何か後ろ指を指されるようなことが一件でもあればこれは申しわけないことでございます。そういう態度で厳正に措置をしてまいりまするとともに、そういう事実関係についてはさらに深く掘り下げて検討いたしまして、どこから見ても公明正大で清潔な人事院であるという姿はあくまでも打ち出していかなければこれは申しわけないことであります。それは私が重大決意を持って、そういうことのないように対処をしてまいりたいというふうに強く決心をいたしております。
  191. 中路雅弘

    中路委員 あと二、三問で終わりますけれども、防衛庁長官があすから訪米されるのでお見えになっていないので、かわりに御答弁願いたいのですが、いまの人事院勧告の問題とGNP比の問題ですけれども、ことしの二月の十四日の衆議院予算委員会で、内容は省略しますけれども、わが党の正森委員が詳細な試算をして質疑を行いました。結論を言いますと、人勧が六・二三%以上になれば五十九年で防衛費の対GNP比が一%を突破するという試算を示して論議をしたことがあります。谷川防衛庁長官も一%突破の可能性も認められたわけですけれども、今度の勧告が六・四七%です。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕 これが完全実施されるということになれば、五十九年にもGNP比一%を突破するという可能性がこの論議でもあるわけですが、五十九年は総理も防衛庁長官も、閣議決定の一%は守っていくという方針だということを述べておられますけれども、人勧が実施をされて一%を突破するということになれば、あくまで一%を守るということになると他の新規装備等の一部中止だとかやりくりが必要になります。そういう方向を考えられるのか、あるいは一%突破ということになれば改めてその問題について検討をされるのか、簡潔にお答え願いたい。
  192. 矢崎新二

    ○矢崎説明員 お答え申し上げます。  五十九年度の防衛関係費のGNPに対する比率がどうなるかという問題につきましては、ここで明確に試算ができるという状態ではないと思います。  と申しますのは、五十九年度の防衛費がどうなるかということにつきましては、先刻来御議論がございます人事院勧告政府の取り扱い方針がどうなるかということが未定であるということが一つございますし、さらには、全体として五十九年度の防衛関係費をどういう規模で設定をするかということ自体が、現在はまだ防衛庁の概算要求を調整中という段階でございまして、最終的には十二月の予算編成の段階で決定されるということでございますから、いまから防衛関係費の総額をまず推定することが困難であるということが一つございます。  もう一つは、GNPの見通しそのものも、五十九年度がどうなるかということについて、これは現時点では全くわかりません。したがいまして、GNPに対する防衛関係費の割合が幾つになるかということについても、いまこの時点で申し上げることは困難であるという事情は御理解をいただけると思います。  ただ、政府といたしましては、毎々お答え申し上げておりますように、五十一年の閣議決定、つまり防衛力整備に当たりましては、毎年度の防衛関係費の総額をGNPの一%相当額を超えないことをめどとしてこれを行うというこの閣議決定の趣旨はできる限り尊重していきたいということでございまして、現在のところそういった意味でのぎりぎりの努力はしているところでございますから、現時点でこの閣議決定を変えるというふうなことを考えているわけではございません。  それからまた、先ほどちょっと御言及になりました二月の谷川長官の答弁におきましても、一つの仮定の問題についての御説明を申し上げた経緯はあるかと思いますけれども、谷川長官御自身も、閣議決定の趣旨はできる限り尊重していくのだということと、それから、一%を超えることを前提とした検討はしているわけではございませんということをはっきり申し上げているわけでございますので、念のためにつけ加えさせていただきたいと思います。
  193. 中路雅弘

    中路委員 時間がありませんので、改めてこの問題は論議したいと思います。  最後に、施設庁長官がお見えになっておりますので、まとめて二点だけ御質問しますので、お答え願って、終わりたいと思います。  谷川長官の二十二日の日米首脳協議との関連の問題ですが、一点は、いま問題になっています厚木の夜間訓練ですね、首都圏周辺の基地への分散の問題ですけれども、この問題が今度の日米首脳協議のテーマになるのか、また、アメリカ側から要請があった場合にどういう回答をされるのかという点ですけれども、地元では、もう百ホンをはるかに超える。ミッドウエーがまた十三日から入港しています。大問題になっているわけですし、首都圏周辺の対象の自治体、住民、挙げて反対の声がいま上がっている問題です。この問題をどのようにいまされるのかということが一点です。  もう一点は、やはり同じこれもテーマになるかもしれませんが、横須賀の住宅地区の不足と関連して、池子弾薬庫の跡に一千戸の米軍の住宅建設、七月二十日に県と関係の市に通告をされましたけれども、私も質問主意書も出していますので、一問だけお尋ねしたいのですが、千三百戸の不足ということを従来言われていますけれども、米軍が民間の住宅を借り上げて不足しているんだとか、古くなっているんだとか、あるいは単身赴任者で家族の同居ができないんだとかいうことを言っておられますが、根拠が全く示されていないですね。千三百戸不足というのは何で千三百戸不足なのかということを示さなければ、これだけ重要な問題、関係者も全く納得しないわけです。特に、中曽根総理が先日横須賀の電電研究所へ来られたときに、記者会見で、質問に答えて、これは横須賀の基地の機能強化問題と関連があるんじゃないかという答えをされていますね。従来施設庁は、そうではなくて、いままでの不足分だ、不足分だということを繰り返しておられるわけです。新聞の報道ですけれども、私は、総理の方が正直に本音を言っておられるのじゃないかと思いますけれども、いままでの不足分だというならば、千三百戸の不足の内訳はどうなのかということ。この二点だけお伺いして、終わりたいと思います。
  194. 塩田章

    ○塩田説明員 お尋ねの厚木の訓練の問題、それから池子の住宅建設の問題、いずれも、今度谷川長官が訪米されるに当たっての議題として取り上げられてはいないというふうに承知しております。  なお、話が出た場合にどう答えるかというお尋ねでございますけれども、まず厚木の問題につきましては、現在私ども、五十八年度予算をいただきまして調査検討をいたしておるところでございまして、まだ結論を得る段階に至っておりません。したがいまして、話が出ましてもその実情をそのままお答えするということになろうかと思います。  それから、池子の住宅の問題につきまして、約千三百戸不足と言っているが、その不足の内訳は何だ、総理のお話の中に基地の強化につながるような発言があったではないか、こういうお尋ねでございますが、約千三百戸につきまして、いま御指摘もありましたように、民間住宅を借りておって、それが手狭であるとかあるいはもう古くなっているとか、あるいは家族を連れてきたくても住宅事情から家族を連れてこれない人がおるというような事情で、約千三百戸ということを申し上げておりますが、そのそれぞれの理由によってそれが何戸である、合計千三百戸であるというふうな内容につきましては、私どもも承知いたしておりません。  それから、この約千三百戸不足しておりますということは、現状において約千三百戸不足しておるという状況でございまして、今後における基地の強化なりあるいは第七艦隊の強化といったような問題とは別に、現状において約千三百戸不足しておる、こういう事情でございます。
  195. 中路雅弘

    中路委員 ちょっと不満なんですけれども、時間が超過していますので、改めてこの問題は防衛の問題の論議のときにやりたいと思います。
  196. 橋口隆

    橋口委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十二分散会