○勝又武一君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十八年度
予算三案に対し反対の討論を行うものであります。
とげを隠した美辞麗句、理念のみの先走り、危機感の不必要なあおり立て、かてて加えて、具体性がない中曽根
内閣の空疎な政治体質は、今日までの
予算審議を通じ、一層その正体が明らかになってまいりました。しかも、中曽根
内閣によって
日本経済はますます
政策不況の様相を濃くしており、
景気は一段と深刻な事態に陥っております。
しかるに、中曽根
内閣は所得税減税を明らかにせず、人事院勧告を不当にも拒否し続け、中小
企業の
経営悪化と勤労国民の生活を最悪状態に追い詰めているばかりか、最近の原油値下げについても無為に喜んでいるだけで、国民への利益還元は放置されたままであります。
さらに、中曽根
内閣は、財界主導による行政改革を断行するため、大型間接税を初めとする各般の負担増をねらっているほか、財政再建も目標のないままに、政府・自民党の失政による巨額の赤字のツケを国民に押しつけて帳じり合わせを行っており、遺憾千万と言わざるを得ません。
しかも、政府が武器輸出に関する国会決議を無視して、対米武器技術供与を決めたことは、まさに国会の権威を軽視し、わが国が武器輸出国、死の商人となる道を開こうとするものであります。
さらに、シーレーン防衛と外国船籍の船舶防衛に関する政府見解は明らかに個別的自衛権を逸脱しており、まさに容認できず、政府は直ちに撤回すべきであります。
また、自衛隊の年度防衛計画が合法政党を警備の対象とするなどということは、憲法上断じて許されるべきものではなく、政府の責任を厳しく追求するものであります。
以下、本
予算案の反対の理由を申し述べます。
反対理由の第一は、マイナスシーリング下の
予算で、文教、社会福祉費の圧縮、防衛費の異常突出となっていることであります。
五十八年度
予算では、文教
関係費が〇・一%減、社会保障
関係費が〇・六%増にとどまっている一方で、防衛
関係費は六・五%増の突出となっており、海峡封鎖、シーレーン防衛等の米国の要請に呼応して、聖域なしと言って進めてきた
予算編成を完全にほごにしているのであります。いまや対GNP比一%の歯どめ突破は必至であり、後年度負担も五十八年度二兆円近くに達するというきわめて危険な
状況であります。
文教
関係費は、四十人学級の編制を初め、各種の文化、教育
関係事業
予算が圧縮されており、いま国民が学校教育荒廃を修復してほしいと願っている中で、中曽根
内閣は逆に次代を担う子供の教育切り捨ての
政策を強行しているのであります。
社会福祉、社会保障費等の圧縮も、高齢化社会の到来が避けられないのに無計画に抑制し、みずからなし得ない
弱者に対し、自助努力のむちをふるう
政策をとっており、これもまた断じて許せないのであります。
反対の第二は、所得税減税及び五十七年度人事院勧告の実施を組み込んだ
予算となっていないことであります。
国内
投資の不振、世界不況の中で、
景気を回復させる手段は、最終消費
需要を高めることによって内需の振興を図ることこそ緊急不可欠の
政策選択であることは論をまたないところであります。しかるに、中曽根
内閣は、不要不急の歳出削減すらなし得ないまま、そのしりを所得税減税の拒絶と公務員給与改善の人事院勧告凍結に押しつけたばかりか、さらに人事院勧告に連動する全勤労国民の賃金や年金の不当な圧縮を行っているのであります。
政府は、与野党で減税実施が合意されたことを尊重するというものの、具体的実施は何
一つ示さないのであります。人事院勧告の実施についても、人事院勧告
制度の趣旨に基づき、速やかな凍結損失分の回復と今後の完全実施を確約すべきであります。
政府は、労働基本権制約の代償機能を果たしていないことを認めておりながら、勧告を実施しないことはまさに違法であり、かつ政府の義務違反であり、この暴挙は断じて許せません。
反対の第三は、財政再建の方途、目標を失い、かつ
経済の進路を全く示さない
予算となっていることであります。
五十九年度赤字
国債脱却という目標の財政再建が破綻し、新たに出された中期試算はABC三乗のどれで財政再建を進めるかを示さず、国民を全く愚弄した
内容と言わざるを得ません。しかも、毎年四兆円から十一兆円もの巨額の要調整額の処理に関する具体的な私の追及に対しても政府は何
一つ明らかにできなかったではありませんか。
結論として、大型間接税という大増税だけを一気に推し進めることを示唆する発言は断じて見逃すわけにはまいりません。しかも、
総理は、重要な
経済計画について、有害で、かつ社会主義的なものだと放言し、その計画責任さえ放棄しているのであります。このような
経済や財政のかじ取りに国民は
先行き不安をいやが上にもつのらせ、強い不信と不安を抱いており、これもまた重ねて容認できないのであります。
反対の第四は、財政収支の帳じり合わせと財政の
サラ金状態を無為に放置していることであります。
五十八年度
予算では、五十六年度の作為的過大税収見込みの誤りによる大幅税収不足の穴埋め策と政府の失政による
景気停滞による税収の落ち込み等から特別会計等の積立金の召し上げ等税外収入を四兆七千億円も見込むほか、歳出では
国債費定率繰り入れの停止や国民年金特別会計への一般会計からの繰り入れを削減し、ようやく
予算を編成する事態に追い込まれているのであります。
これは歴代政府・自民党が例外措置を繰り返し、正常な財政運営を軽視してきた、まさに行き着いた崩壊の姿と言って過言ではありません。そのツケは税金という国民への負担で穴埋めをせざるを得ないのであります。
すでに端的な例として
国債残高百十兆円に達し、その利払い費は主要経費の一位を争うほどに膨張し、その額は一般歳出の約二割を占めようとし、財政はまさに
サラ金状態そのものであり、十年後、二十年後の国の財政破綻を私は心から深く憂えるものであります。
このほか、国の財政優先による地方財政へのしわ寄せ等々、中曽根
内閣の五十八年度
予算に対する批判は枚挙にいとまがありません。
不況と失業に悩み、賃金抑制と増税にあえぐ国民の生活実態を無視したかかる国民不在の本
予算案は断じて容認できないことを最後に重ねて強く主張し、私の反対討論を終わります。(拍手)