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1983-04-01 第98回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月一日(金曜日)    午前十時十一分開会     ─────────────    委員の異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     上田耕一郎君      美濃部亮吉君     秦   豊君  四月一日     辞任         補欠選任      木村 睦男君     福田 宏一君      田渕 哲也君     柄谷 道一君      野末 陳平君     宇都宮徳馬君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 大島 友治君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 亀長 友義君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 福田 宏一君                 藤井 孝男君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 吉田 正雄君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 渋谷 邦彦君                 中野 鉄造君                 三木 忠雄君                 上田耕一郎君                 柄谷 道一君                 秦   豊君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        通商産業大臣   山中 貞則君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁次長  森山  武君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        防衛施設庁労務        部長       木梨 一雄君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        通商産業大臣官        房審議官     池田 徳三君        通商産業省貿易        局長       福川 伸次君        通商産業省基礎        産業局長     植田 守昭君        通商産業省機械        情報産業局長   志賀  学君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        運輸省海運局長  石月 昭二君        運輸省船員局長  小野 維之君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、お手元の質疑通告表のとおり、外交・防衛に関する集中審議を行います。     ─────────────
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 谷川防衛庁長官から発言を求められております。これを許します。谷川防衛庁長官
  4. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 三月十日の本予算委員会において黒柳議員が御指摘になられました年防にかかわる件につきまして調査いたしました結果、御指摘のような該当事実は昭和五十七年度年防には見られませんでした。  年防は毎年度作成されており、新年度年防が作成されれば前年度年防破棄されることになっておりますので、すでに破棄された昭和五十六年度以前のものにつきましては確認ができなかったのであります。  自衛隊法により与えられました任務を遂行する際の自衛隊行動準拠となるのが年防でありますので、そのような年防において合法的政治活動を行っている政党を、その行動対象として敵視するというようなことはあり得ないものだと、こう考えておるわけでございます。     ─────────────
  5. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
  6. 矢田部理

    矢田部理君 ただいま防衛庁長官から黒柳議員質疑に関連して報告がなされました。これによりますと、五十七年度年防を調べたところ、ないということでありました。ないということの意味は、年防の中に治安出動にかかわる記載が全くないのか。黒柳議員指摘は、複数の野党が他の政治団体と並んで記入されている、全体の団体の数は二けたにも及ぶというような趣旨の発言が、当委員会とそれからまた新聞記事などをずっと総合して考えると出ておるわけでありますが、そういう部分も含めてないということなのか、その点はあるということなのか、明確にしていただきたいと思います。
  7. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私は当委員会におきまして、黒柳議員のお持ちになりました資料を見せていただきましたが、そのときの見せていただきました事柄、それから黒柳先生の御発言を頼りにいたしまして、全国の部隊及び機関で作成をいたしました年防についての調査を指示いたしたわけでございます。その結果、先ほど冒頭に御報告さしていただきましたように、黒柳先生の御指摘のような事実が、この五十七年度、現在現存しております年防には見当たらなかったと、こういうのが実は調査の結果でございます。
  8. 矢田部理

    矢田部理君 必ずしも私の問いに答えているわけではありませんが、いま長官たまたま言われました、黒柳議員がここで資料を持参して、長官がここに出向いて、これは複数政党が書いてあるでしょうということで、長官ものぞいておられたわけでありますが、その長官の見られた複数政党というのは一体どこだったのでしょうか。
  9. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 黒柳議員の御指摘は、自衛隊警備対象として複数政党を挙げているのではないかと言われて資料を提示されたわけでございますが、先ほど答弁さしていただきましたように、私は黒柳議員資料を当委員会拝見をさしていただきましたが、しかしながら五十七年度年防の中には、先ほど御報告させていただきましたように、御指摘のような該当事実は見当たらなかったわけでございまして、そのようなわけでございますので、黒柳先生の御提示の資料がどういうものであったか、あるいは資料の中にどのような政党名があったかというような問題につきましては、防衛庁長官としてはここで申し上げるのは差し控えさせていただきたい、こう考えております。と同時に、五十七年度現存いたしまする年防該当事項はございませんでしたが、防衛庁長官といたしましては、五十六年度以前の問題につきましても、万々そういうことはなかったんだろうとは確信をいたしておるところではございます。
  10. 矢田部理

    矢田部理君 端的に答えていただきたいんです。長官がここで黒柳議員資料を見られた。それでその資料には複数政党が載っているということを確認されたわけですが、その確認された複数政党の名前はどこだったのかと聞いているんです。
  11. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 答弁を繰り返すようで恐縮でございますが、調査いたしました結果、五十七年度年防にそういう該当する該当事実はございませんでしたので、それ以外の答弁につきましては、特にいま御指摘のような問題につきましては、防衛庁長官としてこの席で申し上げることは差し控えさしていただきたいと、こういうことでございます。
  12. 矢田部理

    矢田部理君 これはマスコミ等にもすでに鎮圧対象にされているのは複数政党だと、その複数政党は社会党、共産党であるとほぼ断定的にと言っていいぐらいの報道がなされているわけです。少なくともその議会制民主主義を構成する政党が、自衛隊鎮圧対象にされているというようなゆゆしき事態を私たちは断じて容認するわけにはいかないんです。調べた結果ありませんでした、そうですかと簡単に下がるわけにもいかないのであります。資料を示し、少なくとも防衛庁長官はごらんになった。その資料によれば複数政党対象記載をされているということをあの場で確認をされた。その後、後藤田官房長官も、あの資料は本当のようだと、わざわざ記者にまで語っておられる。議会制民主主義根幹にもかかわるような問題でありますだけに、差し控えさせていただきます、五十七年度調べたがありませんでした、そうでしたかと、結構でしたということで済ますわけにはいかない。再度答弁を求めます。
  13. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 自衛隊警備対象として複数政党を挙げておるのではないかと黒柳先生が御指摘になられましたのでございますが、その後私ども先ほど申し上げましたような調査をいたしまして、当該事実は五十七年度年防に見当たらなかったわけでございますが、もともと自衛隊自衛隊法によって「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当る」こととされておるのでございまして、その任務を遂行する際の行動準拠となるのが年防でございますが、そのような性格年防において、少なくとも先ほど私答弁さしていただきましたように、合法的政治活動を行っている政党を、その行動対象として敵視するようなことは、これはあり得ないものだと私は確信をいたしておるところでございます。重ねて答弁さしていただきますが、該当事実は昭和五十七年度年防には見当たらなかったのでございます。
  14. 矢田部理

    矢田部理君 常識的には考えられないこと、長官の言われるようにあり得ないことが具体的事実、あるいは資料を示して、ここの席で問題にされたから私は大変な問題意識をより深めているわけでありまして、あり得ないことだからあり得ないんだという説明では、問いをもって答えを出すがごとき答弁でありまして、もう少しこれは明確にしてくれませんか。
  15. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) たびたび同じ答弁を繰り返すようで恐縮でございますが、御指摘いただきましたような該当するように事実は、実は五十七年度年防には見られなかったのでございます。したがって、あとその他の問題につきまして私がここで答弁さしていただきましたのは、防衛庁長官といたしましては先ほどのような性格年防政党を敵視するようなことが書かれている、それを対象としておるというようなことはあり得ないことだろうと、こう確信をいたしておるところでございます。
  16. 矢田部理

    矢田部理君 黒柳議員資料を見たときに出ておった政党名はどこですか。
  17. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) これも同じ答弁を繰り返すようで恐縮でございますが、現在の五十七年度年防にそのような該当事実がございませんでしたので、それ以外の答弁は私としてはこの席では御容赦をいただきたいと、こう考えておる次第でございます。
  18. 矢田部理

    矢田部理君 いや、私聞いているんですよ。
  19. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 該当する事実がなかったということが五十七年度年防、現在現存する年防の中で判明をいたしておりますので、それ以外の答弁につきましては、まことに恐縮でございますが、私としては御容赦をいただきたいと、こういうことでございます。
  20. 矢田部理

    矢田部理君 五十七年度年防を調べた結果なかったという話はもう何回も聞いていますから、了解はしませんが防衛庁説明はわかりますよ。ただ、私が聞いているのは、黒柳議員資料を見た結果、そこにはどんな政党名が載っておりましたかと、簡単なことを聞いている。
  21. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 実は年防性格から申しまして、五十七年度年防しか存在をいたしませんものですから、その五十七年度年防調査の結果、該当事実がないという限りにおきまして、それ以上の答弁は、まことに恐縮でございますが私としては御容赦をいただきたい、こういうことでございます。
  22. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 矢田部君。
  23. 矢田部理

    矢田部理君 同じ質問だからね。
  24. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 論議を尽くしてください。  速記とめてください。    〔速記中止
  25. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こしてください。
  26. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 五十七年度年防について先ほど来答弁さしていただいておりまするように鋭意調査をいたしましたが、その調査の結果、五十七年度年防該当事実はありません。  なお、しからば五十七年度以前はどうかということになろうかと存じますが、年防性格から申しまして、五十六年度以前の年防は実は存在いたしておりませんで、現在存在しているのは五十七年度年防でございますが、五十六年以前の年防については、これは御指摘のような当該事実はないと確信をいたしております。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 私の質問に全く答えてないんですよ。そんなことを聞いているんじゃない。質問は次に行っているんです。
  28. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私の当委員会において拝見をさしていただきました資料の中に複数政党名があったかなかったか、これはあのときに特に御質問者から重ねて御質問ございましたものですから、拝見をさせていただきました資料の中には政党名はございましたということを答弁をさしていただきました。しかもその政党名については幾つあったかという御質問もございました。その数については申し上げませんでしたが、複数政党名かと、こういうお話もございまして、複数政党名拝見さしていただきました。こういう答弁もさしていただきました。  しかしながら、その複数政党名がそれならばいかなる政党を指す複数政党名かという問題につきましては、まことに恐縮でございますが、先刻来答弁をさしていただいておりますように、五十七年度年防、これしか存在をいたさないんでございますが、それを調査いたしました結果該当する事実がございません。したがって、私としてはそれ以外の答弁は御容赦をいただきたいと、こう考えておる次第でございます。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 そこを容赦しないということでさっきから議論しているわけです。  ちょっと意味だけ正確にしておきますと、五十七年度年防にあったかないかということを聞いているんじゃないんです。黒柳議員指摘した資料長官は見ておられるということであり、見た結果をいま政党名記載されてあった、それは複数であったということまで言っておられるわけですから、その政党はどこだったのですかと、こう聞いているわけです。それだけの話なんです。そうあなたむずかしく考えられるから、状況が大変、何というか、とまったり、理事会やっていただくほどのことじゃないんですよ、単純なことなんです。いずれにしても、いまの答弁で私も簡単に納得というわけにもいきませんので、これちょっと委員長、後扱い理事会で考えておいてください。  ということで、とりあえず先に進みますが……
  30. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) じゃ、理事会で。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、黒柳議員は、これは私確認しておりませんが、新聞報道などによりますと、黒柳議員指摘した年防は五十七年度のものだ、しかも中央レベルのものだという報道がなされているのですが、そうなってきますと、いまの防衛庁報告と対立する指摘になるんですね。だから防衛庁の言い分、ああそうですかとこれまた聞くわけにはいかないんですが、どうでしょうか。
  32. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 最初にちょっと年防の手続についてだけ一点触れさしていただきますが、防衛庁設置法に基づきまして、防衛庁長官の訓令に従って毎年度作成されるのでございますが、その名称にも年度というのが入っておりますが、その名称からも明らかでございますように、各年度ごとのものでございまして、実はきょうは四月一日でございますが、年度というのは三月三十一日にしてございます。それでその三月三十一日以降は新しい年度年防とかわりますと、過去の年防は速やかに破棄されることとなっておるわけでございまして、その意味で五十七年度年防しか存在をいたさないんでございますが、その五十七年度年防について精査をいたしました結果、先ほど答弁をさしていただきましたように、その五十七年度現存する年防には該当事実はありませんでした。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 黒柳議員のその報道が正しいとすれば、防衛庁間違っているということに実はなるわけですね。五十七年度の、しかも中央レベルのものが黒柳議員指摘したものだというふうに報道がなされているわけでありまして、その報道が正しいとすれば、あなた方はやっぱり隠しているのではないかという疑惑が依然として解明されていない。その点が第一点であります。  それから二番目には、五十六年度以前のものは消却してしまってないと。年防というのはまあ三百八十六ぐらいあるんだそうでありますが、自衛隊のきわめて重要な方針になるわけですね。ともかく年間方針になるわけですね。それが新しくできてしまったら前年度は全部消されちゃう、そんなことあるんでしょうか。秘密文書だから管理保存には注意をしなきゃならぬことはわかりますけれども、全部消してしまう、これはちょっと納得できませんね。重要な文書であればあるだけに管理には気をつけなきゃならぬにしても、何年か保存をする、これがまあ常識じゃありませんか。
  34. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 防衛庁文書保存規則として、一年あるいは三年、五年とか、あるいは永久保存とかいうふうな、文書性格によりましていろいろ保存期間が定められております。一方、秘密文書につきましては、その文書性格等によってその保存期間が定められるわけですが、この年防につきましては、新しい年度防衛計画が作成された後速やかに破棄処分にするように定められておりますので、いまいろいろ御指摘がありましたが、年度防衛計画破棄処分というのはそういうふうに決められておりまして、そのとおりに実施されております。
  35. 矢田部理

    矢田部理君 防衛庁あるいは自衛隊の非常に重要な年間方針ですね。これが新しいのができたらすぐに消されてしまう。十年前はどんな方針でやっていたんだろうか。六〇年安保のころ、自衛隊出動が取りざたされたわけでありますが、あの時代はどうだったのか。歴史そのものだって全くわからなくなってしまうじゃありませんか。まあ保存期間という議論もありますけれども、せめて三年か五年とか、重要部分についてはやっぱり残していくというのが常識なんじゃないでしょうか、どんな官庁だって。秘密を守るために前年度のやつは消してしまう、これはいかにも少しつくり過ぎていやしないかという疑念が私は解消できないでいるわけですが。
  36. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま年防の問題に限って議論が進行中でございますので、多くの先生方の頭の中に年防の問題が独立してあるいは存在しておられるかもしれませんが、私どもといたしましてはむしろその逆でございまして、自衛隊自衛隊法に基づきまして任務を遂行する際の行動の基準となるのが年防であるわけでございます。したがって、年防というのは、三百六十五日、一日も国の防衛をおろそかにできない自衛隊性格といたしまして、常に三月三十一日の年度が四月一日に変わりましても継続していかなきゃならぬ意味で、前の年の年防を次の年の新しい年防と差しかえていくという行為が行われているものですから、その時点において二つの年防存在する、三つの年防存在するというようなことでございませんで、一つの年防がずっと存在をしていくという意味破棄をされることと明定されておるわけでございます。
  37. 矢田部理

    矢田部理君 いずれにしましても、きょうの報告は私は率直に言って納得いたしかねます。  特に防衛庁は、こういう指摘が事実だということが内外に明らかになれば、当然のことながらこれは責任の所在も明確にしなければならぬ。政治的にもやっぱり大きな問題に発展をする。そのことを心配する余り事実を隠蔽しようとしているのではないかという感じすらしないわけではありません。その点で私は特に政党鎮圧対象にされる、政党が敵視されると、これではシビリアンコントロールも何も機能しないことになってしまうわけでありますから、大変な事態なわけであります。そんなことはあったら大変なことだということも全体のやっぱり認識になっていると思うのでありますが、中曽根長官、この問題をどんなふうに受けとめておられますか。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政党は、憲法下民主主義を支える非常に重要な機能を持っておる団体でございまして、特に、合法政党におきましては民主主義根幹をなすものでございます。このような重要な政党につきまして、これをいやしくも敵視するがごときことは年防計画にあってはならないことであると考えております。  谷川防衛庁長官の調べによりますと、そういう事実は五十七年度においてはないと、それ以前のことは廃棄処分にして確認できないと、そういう答弁でございますので、政府といたしましてもそういうことはないと確心をいたしますし、今後におきましてもそういう点は厳重に監督してまいりたいと思っております。
  39. 矢田部理

    矢田部理君 この件に関する最後の質問をしたいと思いますが、五十六年度以前のものは確認できないと言っておりますね。中央レベルのものについては少なくとも関係者に事情を聞くとか——文書がないというのも私はまだ信用しておりませんが、文書が仮に消却されておったとしても、文書がないからしたがって調査できないという性質のものではないはずであります。その点も含めて、私としてはちょっときょうの防衛庁報告には納得いたしかねますので、今後取り扱いその他含めて、理事会としてもひとつ御協議をいただきたいというふうに思いますが、委員長いかがでしょうか。
  40. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 理事会で協議さしていただきます。
  41. 矢田部理

    矢田部理君 次の質問に移ります。  中曽根総理に伺います。行き詰まり状態にあった米ソ間の中距離核戦力、INFですね、この削減交渉が米側の新しい提案でいろんな波紋、問題を呼んできているわけでありますが、この点どんなふうに受けとめられておられるかという点でありますが、どうもこの内容は、従来のゼロオプション、これが行き詰まったから出されたと言っているわけでありますが、日本政府の態度は、ゼロオプションは支持するという従来一貫した態度をとってきたわけですね。ところが、今度レーガンが別な提案をすると、それも支持する。その位置づけがちょっといま一つ私としてはしかとしないような感じがしているわけでありますし、特に今度の提案は、ビルドアップ・ビルドダウン方式というのでしょうか、米側の積み上げ、ソ連側の積み下げという中身の提案になっているわけですね。その結果、ゼロではなくて、ヨーロッパに中距離ミサイルパーシーグII等の少なくとも配備が前提になっておる。このことで、ヨーロッパの反核運動の人たちにはやっぱり一つの大変な問題だということでこれまた波紋を投げかけているし、ソビエトも簡単にこれに応ずるという気配にはなっていないわけであります。この辺も含めて、どんなふうに受けとめておられるか、御所見をいただきたいと思います。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 結論を申し上げますれば、レーガン大統領の新しい提案をわれわれは妥当と思い、支持するものであります。しかし、最終目標はあくまでゼロオプションにあるべきでありまして、核兵器そのものを廃絶していく、全世界から廃絶していく、その一段階として米ソ間において廃絶していく。その一段階として、ある程度の妥協を盛りまして、段階的な措置も講ずることが現実的な方法であるだろうと、そういう意味におきまして、レーガン大統領がこのような提案をしたことを私は高く評価しておるものであります。しかし、目標はあくまでもこれはゼロにしていく、そういう目標を捨てないで、その一歩としてわれわれはこれを考えたいと思っております。  しかも、この核兵器、特に欧州における中距離弾道弾問題というものは、いまや欧州諸国とソ連、あるいはアメリカとソ連という関係のみにとどまるものではないのでありまして、全世界的規模を持った影響力を持つ問題になってきておりまして、そういう点において、アジアにおける日本としても重大な関心を持っておる次第であります。
  43. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、核問題に入っていきたいと思うのでありますが、中曽根長官は、日本の非核三原則——失礼、どうも大変失礼しました。中曽根総理は日本の非核三原則の重み、意味等についてどういうふうに受けとめておられますか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 矢田部さんは長い間内閣委員会でいつも中曽根長官中曽根長官と言われましたので、よくあることでありまして、やっぱり昔の言葉をよく使いたがるものであります。  私は、非核三原則はあくまで堅持してまいるつもりでおります。
  45. 矢田部理

    矢田部理君 総理、非核三原則のうち、核持ち込みについて総理はかつて別な意見を持ったことはございませんか。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままで政府答弁している以外の考えを持ったことはございません。
  47. 矢田部理

    矢田部理君 核持ち込みの中で、寄港とか通過についてはどういう考え方でしょうか。
  48. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これも、先般安倍外務大臣が御答弁したとおりの考えであります。
  49. 矢田部理

    矢田部理君 でしたら安倍外務大臣に伺いますが、マンスフィールド大使と三月の十七日に会談をされたようでありますが、このときに非核三原則を確認をしたという趣旨の報道があるわけでありますが、どんな会談だったのでしょうか。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 三月十七日にマンスフィールド米大使を招致いたしまして、F16の三沢配備、エンタープライズの寄港ということをも含めて、アジアのこの地域における今後の米軍の種々の活動との関連で、日本に核兵器が持ち込まれるかもしれないとのわが国における最近の懸念を伝えたと。私は、政府としては、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずとの三原則を引き続き堅持する旨述べ、政府が、国会における答弁を含め多くの場において、米国政府が安保条約のもとにおける事前協議の枠組みの中で、核兵器の持ち込みにつき許可を求めてきた場合には、政府としては非核三原則に従って対処する旨を明確にしてきた旨述べたわけであります。  これに対しましてマンスフィールド大使は、米国政府は核兵器に反対する日本国民の特別の感情を十分理解している旨答えました。また、大使は、一九八一年五月二十日のマンスフィールド大使と園田大臣との会談の際に明らかにされた米国政府の見解に言及しつつ、米国政府の立場には何らの変更もない旨述べました。さらに、大使は、私に対しまして、核の存否につきましては肯定も否定もしないというのが米国の一貫した政策であることを指摘しながら、米国政府としては、安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対するその義務を誠実に履行してきており、今後とも引き続き履行する旨保障をいたしました。  以上が概要であります。
  51. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、先ほどの問題に戻るわけでありますが、外務大臣として、核搭載艦船の寄港問題、これは当然のことながら事前協議の対象になるわけでありますが、寄港も事前協議の対象だ、核持ち込みについては。もちろん、F16の配備などもそうだろうと思いますが、それについても当然事前協議をなさいますねということは具体的に確かめなかったのでしょうか。
  52. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、政府がしばしばこの国会においてもはっきり答弁いたしておりますように、寄港あるいはまた領海通過は、核を持ち込んだ場合は事前協議の対象であるということは政府としては明確にしておるわけでありますし、これについてはアメリカ政府としても十分承知しておると思うのであります。    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕
  53. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカ政府も承知しているというのは、何かそのかかわる取り決めがあるのでしょうか。  先ほど園田・マンスフィールド会談の中身にも触れられましたが、そのときにも問題になったのでありますが、米国は安保条約と関連取り決めを誠実に遵守していると言っておる。その取り決めが何であるのかが実は絶えず問題になっているわけですね。いつ、だれとだれがどんな取り決めをしたのか、それが明らかにされないまま、あいまいなまま取り決め取り決めと言っていることがまさに問題になっているわけでありますが、その辺の確かめは今度もできなかったのでしょうか。
  54. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 該当する取り決めは、従来から政府が御説明申し上げているとおりに、委員よく御承知のいわゆる岸・ハーター交換公文でございます。
  55. 矢田部理

    矢田部理君 そこに寄港、通過について事前協議を必要とするというような内容になっています
  56. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これも従来から御説明申し上げているところでございますけれども、岸・ハーター交換公文には、合衆国軍隊の装備における重要な変更というものは、事前協議の主題とするということが明確に書かれているわけでございます。  そこで、合衆国軍隊の装備における重要な変更とは何かということにつきましては、これは藤山・マッカーサー口頭了解で、核兵器の持ち込みがここで言うところの合衆国軍隊の装備における重要な変更に該当するものであるということが日米間で了解されておる。これは従来から御調明申し上げているとおりでございます。  そこで、合衆国軍隊というのが日本の港、あるいは飛行場に出入りをする軍隊、あるいは領海を通過する軍隊というものがそこに入っていないのではないかという観点から、従来からたびたび御質問があるわけでございますけれども、文理上ここで明確になっておりますように、ここに言っております合衆国軍隊というのは、およそ安保条約の適用を受けるすべての合衆国軍隊である。したがいまして、陸上に配置されておる軍隊ばかりではなくて、港に一時的に出入りする軍隊、あるいは領海を通過する軍隊というものも、すべてこれ当然安保条約の適用を受ける合衆国軍隊であるわけでございますから、そういう意味におきまして、港に寄港するアメリカの軍艦、あるいは領海を通過するアメリカの軍艦というものも、ここで言うところの合衆国軍隊に該当するということは、これは岸・ハーター交換公文からいって明確であるということは、従来から御説明申し上げているとおりでございます。
  57. 矢田部理

    矢田部理君 日本外務省は、日本国民向けについて明確であると説明しているだけであって、その部分についてアメリカとの確認は全くなしていないわけです。だからこそ問題になる。それだけに、アメリカ筋から聞こえてくる意見というのは、核の持ち込みとは、陸揚げとか貯蔵を意味するものである、寄港とか、通過は入っていないという声がしばしば聞こえてくる。そのことが、まさに今度のエンプラの寄港に当たっても、F16の配備に当たっても大変問題にされるわけでありまして、少なくとも安倍外務大臣がマンスフィールドに会って、この問題について話し合いをされるということであるならば、その疑問を解消することからやらなきゃならぬ。一般的、原則的確認はもうかねてからされておるところであります。  具体的な寄港、通過問題の確認がないことに、日本国民は大きな不安を抱いているわけであります。その点、どうして確認されなかったのか。私は、会談をした意味がないと言ってもいいぐらいの問題ではないかというふうに考えているのですが、いかがでしょうか。
  58. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私、マンスフィールド大使との会談におきまして、最近のF16の三沢配備の問題とか、あるいはまたエンタープライズの寄港ということも挙げまして、さらに国会の論議がそれに関連していろいろとある、核持ち込みについての国民の疑問があるということも率直に指摘をいたしまして、その上で、日本は三原則を持っているのだ、この国是を今後とも堅持していくということを伝えたわけであります。  これに対してマンスフィールド大使は、安保条約、その関連取り決めは、アメリカとしては誠実に遵守をするということであります。いま関連取り決めは、いまの御案内のような岸・ハーター交換公文とか、あるいはまた藤山・マッカーサー口頭了解等がこれに含まれるわけでございますから、これでもって私は明快である、こういうふうに確信をいたしております。
  59. 矢田部理

    矢田部理君 絶えずこの岸・ハーター交換公文とか、藤山・マッカーサー口頭了解が出てくるわけでありますが、核持ち込みは事前協議の対象だということにはこの両文書によってなるでありましょう。その持ち込みの中に寄港や通過が入るかどうかということになると、日米双方間で受けとめ方が違う、解釈上必ずしも一致するものとはなっていない。その中身に突っ込んだ議論は日米間でなされていない。ましてメモも取り決めもないというのが現状なのでありまして、だからしばしば持ち出される藤山・マッカーサー口頭了解や交換公文を言われても、どう読んだって、表から見ても裏から見ても、そのいまの説明にはなっていないわけでありまして、だからこそ疑惑、不安がつのるばかりなのでありますが、今度のエンプラはどういうコースで日本に、あるいは佐世保に来たのでしょう。
  60. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 先生御承知のように、エンタープライズは三年以上にわたりまして大規模なオーバーホールをアメリカでやって、その後西太平洋の方に展開をいたしまして、インド洋その他に行って、フィリピンを経て、そうして日本海におけるチームスピリットに参加をいたして、そうして乗組員の休養とレクリエーションのために去る二十一日から二十五日まで佐世保に寄港したわけでございます。
  61. 矢田部理

    矢田部理君 第七艦隊は核を持っておるということは外務省として認められますか。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、核についてはアメリカ政府はしばしば内外に対して明言をしておるわけですが、核の有無については肯定も否定もしないというのがアメリカの態度でございますから、それ以上のことはわれわれとしては判断できないわけです。
  63. 矢田部理

    矢田部理君 その第七艦隊のどの船が核を搭載しているかいないかは、あるいはわからないかもしれませんが、総体として第七艦隊が核を持っているということは軍事常識だと思いますが、いかがでしょう。
  64. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあこれは推測としてはその可能性があるとも言えますし、あるいは可能性がないとも言えるわけでありますが、しかしアメリカ政府として正式に否定も肯定もしないと言いますから、政府はアメリカ政府のその見解で判断する以外にはないのではないか、こういうふうに思います。
  65. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカの核抑止力に依拠して云々ということがありますが、そうするとその抑止力の存在は全くわからないまま依拠するわけでしょうか。
  66. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはアメリカとして核を持っているということはもう明らかでありますし、これは戦略核にしても、あるいは戦術核にしても、あるいはまた軍艦が積んでおる核等にいたしましても、核を持っているということははっきりしておるわけでございますから、その核全体がわれわれは抑止力である、こういうふうに考えておるわけです。
  67. 矢田部理

    矢田部理君 そのアメリカの持っている核、戦略核、戦域核、戦術核、いろいろありますが、世界最大の威力を持つ第七艦隊が持っていなければまさに威力がないわけなのでありまして、常識的に見て、やっぱり搭載しているというのが、これは公式にはなかなか認められないのかもしれませんが、あたりまえの話なんじゃないでしょうか。
  68. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは全くの推測ですが、搭載している場合もありましょうし、搭載してない場合もあるのじゃないだろうかと思います。
  69. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、日本に来るときは少なくとも搭載してないというのですね。
  70. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本に入るときは搭載をすれば事前協議の対象になるわけですから、搭載はしてないということでございます。
  71. 矢田部理

    矢田部理君 その議論は今度はフィリピンでも行われているわけですね。核持ち込みの疑惑がフィリピン内で高まっていて、いろんな議論があるわけでありますが、マルコス大統領は日本政府と同じような態度をとっているわけですね。フィリピン政府に事前協議の申し込みが一度もないから持ち込みはない。いいですか。佐世保に来る前に恐らくフィリピンのスビックに寄港して日本に向かってきた、北上してきたと思われるわけでありますが、フィリピンに入港したときにも核を持っていない、佐世保に入るときにも事前協議の申し入れがないから核を持っていない。第七艦隊の主力艦の一つが核抜きで常時走っているなどということはこれまた常識で考えられない。どこかへいつもおろしているのでしょうか。
  72. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはいつでも核は持てる状況には私はあると思いますけれども、少なくとも日本に入ってくるときには、これは条約の規定に従って核は持ち込んでないということであります。
  73. 矢田部理

    矢田部理君 第七艦隊の主力艦が核を持っていない、持たないでうろうろしているということでは、あなた方が考えている抑止力にもならなくなってしまうのじゃありませんか。核の抑止力として期待をしているその期待にこたえないことになるのじゃありませんか。その辺はいかがですか。
  74. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、アメリカとしてはいまの第七艦隊でもいつでも核を搭載できる力は持って、能力というものはもちろんあるわけでございますし、確かに一朝有事の際には核が持ち込まれるとも思いますし、また核の搭載能力があるということが、また抑止力の一端でもあることは、これは私は当然考えられるのじゃないかと、こういうふうに思います。
  75. 矢田部理

    矢田部理君 少しくどいようでありますが、その第七艦隊というのは世界に誇る最大の艦隊です。太平洋からインド洋を含めて展開をしている。その主力艦の一つがフィリピンに行ったときにも核を持っていない、搭載能力はあるが、それからずっと北上して、遊よくして日本に来る、佐世保に寄る、日本海を通ってずっとまた太平洋に出る。フィリピン政府や日本政府説明によれば、この間ずっと核を持たずに走っていることになる。これでは核抑止力は機能しないということになりませんか。ただ搭載能力を持っている、搭載能力はあるが、フィリピン政府や日本政府の公式説明では、核は持っていないはずだと言う。それがしかも長期間に及ぶわけでありますから、これでは核抑止力は、私どもは期待しませんけれども、あなた方の期待にこたえていることにはならないのじゃありませんか。
  76. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 少なくとも第七艦隊が核搭載能力を持っておるということは、これはもうはっきりしておるわけでございますが、そしてまたアメリカが第七艦隊も含めて核を保持しておるということは、やはり核抑止力であると思うわけでございますが、しかし、少なくとも日本とアメリカとの関係においては、日本に寄港あるいは領海通過、そういう場合においては事前協議の対象になるわけでございますから、アメリカはこの関連規定を遵守するということを明言いたしておりますので、核を持ち込んでおるということは考えられないわけであります。
  77. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカは核の存在を明らかにしない。日本に持ち込むときには事前協議をすることになっている。事前協議をすれば日本はノーと言う仕組みになっているわけですね。しかも事前協議がないから持ち込まれていないと、三つか四つの説明になっているわけです。本来、核の存在を明らかにしないアメリカが、日本に事前協議を申し入れるときには核の存在を明らかにして、ノーと言われるのを承知で事前協議の申し込みをするでしょうか。その事前協議の申し込みがないから日本には持ち込まれていないという論理が通用するというのは、私はどうも不思議でならない。こんなばかばかしい組み立ては、だれが見たっておかしい議論なんじゃありませんか。
  78. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカは確かに核の有無についてはこれは明らかにしない、世界全土に対してはっきり言っているわけでありますが、しかし同時にまた、一方においては日本との関係では核を持ち込む場合においては事前協議の対象になるわけでありますし、その場合、日本がノーと言うこともアメリカは十分承知をいたしております。その上に立って、安保条約あるいはまた関連取り決めは遵守いたしますということも、これは条約を結んで条約を遵守しなきゃ条約の存立意義がないわけですから、その条約は誠実に遵守するということを言っておるわけでございますから、日本政府としては日米の信頼関係、そのもとにある安保条約、この条約を遵守するというアメリカ政府の見解を支持するわけでありますし、これを信頼いたしておるわけであります。
  79. 矢田部理

    矢田部理君 外務大臣ね、もう一点だけくどいようですが、確認しますが、ノーと言われるのがはっきりしておって事前協議の申し込みをする人はいますか。どんな場合に事前協議の申し込みするんでしょうか。相手はもう返事わかっているんですよ。本来事前協議というのはケース・バイ・ケースで、ノーと言う場合もあるし、ノーと言う場合が多いけれども、場合によってはイエスと言う場合があり得るということが本来の協議の制度の意味内容でしょう。これは法制局長官の方がいいかもしれませんね。最初から全部ノーなんだと、そんな事前協議制度はありますか。
  80. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) それは、制度のたてまえの問題と現実の政策運用の問題との間には、そういう形式的な面では違いが出てくるということはよく世の中にあることだと思います。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕
  81. 矢田部理

    矢田部理君 そんなよく世の中にあることじゃないでしょう。一番、日米間の中で事前協議制度というのは非常に大事な問題なんですよ。大事な問題なんだ。だれが考えたって制度をつくるときには、勝手に持ち込まれてもらっちゃ困る、知らぬうちに持ち込まれてもらっちゃ困るということで、チェックする機能として事前協議制度を置いたと思うんですね。その制度本来の趣旨から言えば、イエスもノーもあり得るというのが事前協議制度でしょう。ところが最初から徹頭徹尾ノーしかないと、こう言う、これはもう事前協議制度の体をなしていない、これはあたりまえの話ですよね。それなら事前禁止制度なんであって協議制度じゃないんですよ。事前禁止にしなかったところに実は寄港や通過についてのあいまいさを残してしまった。幾ら交換公文で抽象的な話し合いをしても、そこの詰めができないでいるところにこの問題のやっぱり根っこがあるというふうに思うのですが、もう一回だけ答弁を求めます。
  82. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに事前協議制度はイエスもありノーもあるわけでございますが、しかし運用の面において、日本政府としての核に対する政策というものは、非核三原則ということがはっきりいたしておるわけでございますから、したがって核の持ち込みに関しての事前協議については、これはすべてノーだという日本政府の姿勢が明快でございます。したがって、事前協議制度全体の中で核持ち込みの部分についてはすべてノーであるということについては、わが日本政府としてもしばしば言明しておりますし、アメリカ政府も、この点については少なくとも日本政府の立場というものを、事前協議のたてまえ、制度から見て、すべて日本がノーであるということについてはアメリカとしてもこれを認めておると。また、事前協議ということから言えばノーということがはっきり言えるわけでございますし、すべてノーだということについてアメリカもこれは十分認識しておるということは、これまでのアメリカ政府のしばしばの言明から明らかであろうと思います。
  83. 矢田部理

    矢田部理君 最後に提案でありますが、安倍外務大臣、いろいろ議論してきましたし、もう長いことこの種の議論は繰り返されている向きもあるわけでありますが、どうでしょうか、外務大臣として、これから後も少し聞きますが、アメリカの海軍の主力艦がニュージャージーを含めて相次いで日本にやってまいりますね。そのたびごとに核持ち込みじゃないかという疑惑が後を絶たないと思うんですよ。この日本国民の疑惑なり不安なりを解消するためにも、しかるべき機会を選んで、寄港も通過も日本は困るんだということをアメリカとの関係できちっと詰める、覚書でもいいです、両者の声明でもいいだろうと思いますが、そこを明確にするやっぱり交渉、日米双方の何らかの合意をきちっと取りつけることがその種疑惑を解消する一番いい手だてではないかと思うんですが、それをやるおつもりはありませんか。
  84. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもう先ほどから答弁いたしますように、安保条約、その関連取り決め、特に岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解、さらにその後の外務大臣がしばしばアメリカ政府との間で交わしましたいわば口頭の了解といいますか、それから見まして明らかでございますし、私も今回マンスフィールド大使との間で、先ほど申し上げましたような内容でアメリカ政府の意思を再確認をいたしたわけでございますから、きわめて明快であると思いますし、今後そういう疑問が起こる余地はないと私は確信をいたしております。
  85. 矢田部理

    矢田部理君 明快じゃないから言っているわけでありまして、ニュージャージーがこの夏にも日本に寄港するという話がありますが、これはお認めになるわけですね。その場合に、このニュージャージーという戦艦はどんな役割り、機能を持った戦艦だと受けとめているでしょうか。
  86. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ニュージャージーが日本に寄港するというまだ何らの感触も得ておりませんし、あるいは正式なあるいはまた内報的なものもないわけでございます。ニュージャージーは、第二次大戦中の戦艦、これを改造してトマホークなんかを積んで近代化をした戦艦につくり変えたものである、こういうふうに聞いております。
  87. 矢田部理

    矢田部理君 これはアメリカの海軍力増強の中で目玉の一つになる戦艦だと思うのでありますが、このニュージャージーの場合にはトマホークを積むということにもう一つの特徴、特色があるわけですが、トマホークは御承知のように核、非核両用のものでありますが、特にソビエトのSS20に対抗して戦域核を搭載して動くということにまたニュージャージーの役割りがあるというふうにも言われておるし、ニュージャージーを中心とする世界最強の水上打撃力をチームとしてつくっていくということに構想があるようだと思うのでありますが、そういう理解でよろしいでしょうか。
  88. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大体いまおっしゃるような戦艦であろうと思うわけでありまして、核、非核両用のトマホークを積んでおる、こういうふうに聞いております。
  89. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、これは単に核能力があるだけではなしに、現実にそれを持って最強の水上打撃力を日本近海で展開をするという可能性が強い。そういう戦艦の寄港を許すということになりますと、ここでも特に戦域核の配備等の問題に絡んでやっぱり議論が沸騰するだろうと思うんですが、それでもなおかつ外務大臣としては認める予定でしょうか、そういう話があれば。
  90. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはトマホークを積んでおると、これが核、非核両用のトマホークであります。もしこれが核を搭載しておると、こういうことになりますればもちろん事前協議の対象になりますし、その場合は日本の立場はノーということでございますからこれは明らかでございますが、核を積んでない場合の入港につきましては、まだ何らの通報とか連絡もないわけでございますから、いまこの段階において申し上げるということは全くの架空の議論になるわけでございますが、私は、核を積んでない場合の寄港等につきましては、日本政府としてはこれを拒否する理由はないと、こういうふうに思います。
  91. 矢田部理

    矢田部理君 さらにカール・ビンソンなどというのも日本寄港がうわさをされているわけでありますが、これらの一連の寄港を見てみますと、とりわけ佐世保を対ソ戦略の前進拠点にしようと、そのためにアメリカの主力艦が、特に第七艦隊の中心部分が今後日本に反復寄港をしてくる。とりわけ佐世保に出向いてくるという可能性が高まっていると思うのですが、外務大臣としての受けとめ方はいかがでしょうか。
  92. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 佐世保には御存じのようにエンタープライズが入港いたしましたが、これは兵員の休養のためだということでありますし、今後あるいはまた入港ということもあり得るかもしれないと思うわけでございますが、いまおっしゃるような、いわゆる根拠地として佐世保に入港するということは全く考えられないことでございます。そういうことはアメリカとしても考えてはいないというふうに私は考えております。
  93. 矢田部理

    矢田部理君 これは防衛庁に聞いた方がいいのかもしれませんが、あるいは施設庁かもしれませんが、そういう受け皿をつくるために佐世保基地の関連施設を最近強化している、こういう傾向はありませんか。
  94. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 私ども、現在佐世保の米海軍施設で特に何らかの施設の強化というようなことは承知いたしておりません。
  95. 矢田部理

    矢田部理君 艦艇が寄港すると電力消費量が大変ふえるというようなこともあって、九州電力との間に従来の二千五百キロワットから六千五百キロワットと電力供給を約三倍にする計画が進んでいると言われておりますが、いかがでしょうか。
  96. 伊藤参午

    政府委員伊藤参午君) ただいまの先生のお尋ねの件ですが、私自身細部は承知しておりませんが、名切谷にあります米軍の受電施設みたいなものを佐世保の米軍基地内に統合するという、いわゆるリロケーション計画で、いま佐世保の基地内の受電能力を高めることによって、佐世保の基地とちょっと離れている部分を将来返還するというようなことはやっておりますが、佐世保基地全体のそういった機能増加というようなものではないと承知しております。
  97. 矢田部理

    矢田部理君 たとえば、佐世保港内の国鉄の引き込み線を撤去して跡地を米軍の専用使用にする、ここの地下に米軍は電力線や圧縮空気、電話線などを埋設する計画だと。これは古いタンクでありますが、貯油タンク五基を改めて改築をしたというようなことを含めて、全体として佐世保の受け皿をつくる機能を強化する作業が現実にあるいは具体的に進んでいるんじゃありませんか。
  98. 伊藤参午

    政府委員伊藤参午君) 佐世保基地のための側線としまして、通称ジョスコ線と言っておりますが、そういう線を従来米軍が使って物資輸送等を行っていたわけですが、こと十年といいますか、かなり長い期間ほとんど使用しない状態でございますが、それを道路として利用しようということで地元から返還要望等もございますので、そういったことを現在米軍の方と調整はやっておりますが、私どもそれが、いま先生御指摘のような佐世保基地強化というような方向ではなくて、むしろ佐世保基地の整理といったような方向で動いておるものと承知しております。
  99. 矢田部理

    矢田部理君 そういう説明にもかかわらず、佐世保を対ソ攻撃の前進拠点にするという計画があり、とりわけ、佐世保をとりあえずの前進拠点からやがては母港にという考え方もアメリカ筋にあると言われているわけですね。  たとえば、ホルコムという第七艦隊司令官は、ランクづけすれば日本が一番母港としてはいい、最初だというようなことを米海軍の軍事委員会で述べておりますし、あるいは在日米軍筋も、佐世保基地は将来の母港の候補地の一つだと、こう言っておりますね。空母の場合には搭載している艦載機の練習場といいますか、飛行場が近くにないのでなかなかうまくいかぬけれども、ニュージャージーの場合にはそれが可能だと。とりわけ飛行機の練習ということが中心ではありませんというようなことも盛んに取りざたされているわけであります。これらの人が母港化を求めて、あるいは長期滞在といいますか休養などを求めて、たとえば隊員の宿舎の建設なんということが俎上に上ってくる可能性があるのでありますが、そんなことが起きてきた場合に外務大臣はどうされますか。
  100. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 母港という意味ですが、これが法律用語ではなくて、一般的に家族居住地、活動上の根拠地等いろいろな意味合いに用いられておるというふうに考えておりますが、米国は、エンタープライズについてはカリフォルニア州のアラメダがこの活動上の根拠地としての母港であるとしておりますし、またミッドウェーにつきましては、御承知のように横須賀をいわゆる家族居住地としての意味における母港ということもあり得るわけでございまして、したがって母港という意味をどういうふうにとるかということですが、少なくとも横須賀において、あるいは家族居住地というものを横須賀において考えるということはあり得ないことで、私はないと思うわけですが、しかし少なくとも、いわゆる活動上の根拠地と、そのエンタープライズのようにアラメダというふうな根拠地ということに佐世保がなるということは、私はあり得ないことだと、こういうふうに判断しております。
  101. 矢田部理

    矢田部理君 したがって、そういうことを目指してアメリカがさまざまな要請をしてくる場合に、断るということになりますか。
  102. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 根拠地と、活動上のいわゆる根拠地というエンタープライズのアラメダというふうな形の佐世保ということはわれわれは考えておりませんし、アメリカとしてもそういうことを考えておるわけではないというふうに存じております。
  103. 矢田部理

    矢田部理君 ですから、そういう動き、要請があった場合には断るということを明確にしていいですか。
  104. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いわゆるこのエンタープライズのアラメダというふうな根拠地という意味での佐世保ということは、われわれとしてもこれは容易に認めることはできないと、こういうふうに判断しております。
  105. 矢田部理

    矢田部理君 エンプラもそうですが、ニュージャージーもそう考えてよろしいですか。
  106. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 家族居住地とかそういう面については、これは将来において考えられないことはないと思いますが、ニュージャージーが、しかし佐世保に入港するのか、横須賀に入港するのか、そういうこともわかりませんし、また、入港といういわゆる全くのいま何らの連絡も受けていない段階でございますから、われわれはこれに対して、何もいまここで申し上げる段階にはないと思いますが、少なくとも、やはり佐世保をいわゆる母港と、私の言う母港というのは、いまのアラメダというふうな意味の母港というふうなことに今後とも考えることは、これは佐世保についてはあり得ないというふうに私は思うわけです。
  107. 矢田部理

    矢田部理君 もう一つ、F16の三沢基地配備問題を二、三点ただしておきたいと思うのですが、F16を三沢基地に配備する目的、F16の運用構想というのはどんなふうになっておりますか、防衛庁
  108. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 運用その他につきましては政府委員から答弁をいたさせますが、三沢へのF16の配備の目的は、少なくとも私どもが承知いたしておりまする米側からの発言内容に徴しましても、極東における軍事バランスの改善に努めることが第一。もう一つは、米国のコミットメントの意思を明確にすること、これが第二。それから、これはわが方の期待にも合致するわけでございますが、日米安保体制の抑止力の維持、向上を図ることであると、こういうふうに承知をいたしております。  なお、運用、それから今後の問題その他につきましては、政府委員から答弁をいたさせます。
  109. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) F16の三沢配備につきましては、一九八五年以降四年間にわたって、四十ないし五十機が配備されるということでございまして、まだ先の話でございますが、必ずしも米軍の運用構想というのは明確ではございませんが、この飛行機は、御承知のとおり、空対空のミッションとともに空対地の機能も相当すぐれたものを持っております。そういった多目的戦闘機でございますので、そうした航空機の特性を生かした運用構想になるであろうということは言えると思います。
  110. 矢田部理

    矢田部理君 バックファイアなどのソ連空軍に対抗するための三沢配備であると。ねらいとしては沿海州攻撃、宗谷、対馬の封鎖、オホーツクの制空などが一般的に指摘をされているのですが、そう防衛庁も見ておられるのでしょうか。
  111. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) この飛行機がそのバックファイアに対するものかどうかという具体的なことは必ずしも申し上げるのは適当でないと思いますが、いずれにせよ、最近の極東における米ソの軍事バランスの改善ということにねらいがあるわけでございます。またこの飛行機の機能、性能から申して、行動半径その他から見てそういう能力を有しているということは事実でございます。
  112. 矢田部理

    矢田部理君 もちろん核搭載可能ですね。
  113. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 核搭載の詳細については必ずしもつまびらかにいたしませんが、各種資料によれば、たとえばジェーンの兵器年鑑によればB43という核爆弾を二発、あるいはミリタリー・バランスによれば種類は不明であるが核爆弾が一発積めるというふうなことは承知しております。
  114. 矢田部理

    矢田部理君 この配置はどうなるのでしょうか、たとえば朝鮮といいますか、韓国の群山のF16との関係は。
  115. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 今回三沢に配備されますF16もいま群山に配置されておりますF16もともに第五空軍の隷下の航空団スコードロンとして編成されているというふうに聞いております。
  116. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、総理にもこれはまとめてお伺いをしたいのでありますが、従来アメリカはどちらかといえば、アジアから少し下がって、日本などに肩がわりを求めてきた、今日もその基本線は変わっていないと思うのでありますが、同時にアメリカがかなりの勢いで、先ほど佐世保を中心とする第七艦隊の各種の寄港問題を取り上げましたが、三沢のF16配備も含めて前進をしてきていると、前に出張ってきておるという特徴的な傾向が最近出ているのでありますが、やがて巡航ミサイルトマホークなどの配備も考えますと、その結果極東における緊張がより一層高まる危険を感じないわけにはいきません。特にミッドウェーを初めとして日本海あたりにしきりに出ていって合同演習をやる。ソビエトの極東におけるさまざまな軍事配備が防衛庁筋からも指摘をされているわけでありますが、こういうことで総体として軍事的な配備なり展開が強化をされるということは、日本とアジアの平和にとって好ましいことでしょうか。こういう事態をやっぱり日本として許すことがいいことでしょうか。とりわけそれに日本の、これは後ほど議論をしますが、シーレーンだとか海上封鎖だとかという議論がかみ合ってきますと、どうもやっぱりアジアの緊張が緩和の方向ではなくて高まる方向、軍縮の方向ではなくて軍拡の方向に動くことを懸念するのは私一人だけではないと思うのでありますが、その辺について防衛庁なり外務省なり、最終的には総理の理解、考え方を伺っておきたいと思います。
  117. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 総理の御答弁なさいます前に、一点私どもの現在感じているままをお伝えさせていただきたいと思いますが、西欧、西側の平和戦略は、あくまでこれは抑止の戦略でござ いますが、抑止力というものはあくまでも信頼性が確立していないと戦略として成り立ちませんが、そのためには、先ほど来政府委員答弁をいたしましたが、軍事バランスというものは抑止力の信頼性を確保するためには必要でございますが、これは一つだけの事例でございますけれども昭和四十五年度において航空機だけの例で申しますと、極東における米ソの力関係を見ますと、アメリカが二千三百機ございまして、ソビエトロシアが千八百七十機でございましたが、それが年々アメリカの航空機がずっと減ってまいりまして、現在ではほぼこの近辺には米側の航空機は八百機程度、それに対して極東におけるソ連軍の強化というのは、航空機に関して申しますと二千百三十機を超えておる、こういう実情でございます。ここ数年来西側の防衛努力というのは比較的低位にあったことは事実でございますが、その間にソビエトロシアの軍事的な拡張といいますか、増強といいますか、これは相当際立っておることは事実でございまして、その意味で今日特に極東において先ほど来議論がありますような問題が出ておる、こういうふうに判断をいたしております。なお、グローバルな見方としては、やはりそういうような抑止力の信頼性が回復された後に初めて恐らく西側、東側の軍縮並びに軍備管理の話し合いが実効を上げるであろうと、こういうふうな理解が西欧共通の理解となりつつあるのではなかろうかと判断をいたしております。
  118. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) われわれはもちろん極東における緊張の緩和といいますか、そのためには軍縮が進むことをこいねがっておるわけでございますが、残念ながら、いま防衛庁長官の申し述べましたように、いまのソ連の軍事力がやはり増大をする一方でありまして、北方四島等におきましても御案内のようにミグ21が配備をされるということでありますし、その他空軍力、海軍力あるいは陸軍力等の増強が続いておる。非常に残念なことでありまして、これに対しまして、やはりいまの軍事バランスというたてまえからアメリカがこのプレゼンスを高めるために、また抑止力を高めるために軍事力を維持していくということは、これはやはり戦争を抑止するためにはやむを得ない措置であると判断をいたしておるわけでございます。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁長官及び外務大臣が答弁いたしましたとおりでございますが、世界的規模において緊張緩和を行い軍縮を促進することはきわめて望ましいと思いますし、日本もその線に向かって努力をいたしたいと思っています。  アメリカは、ソ連がアフガニスタンに侵入いたしました当座以来、戦力的に劣勢であるという自覚のもとに、特に中近東地帯の同盟国に対して安心を与えようと、こういう意味もあったりしてRDFというような、前進展開部隊というような思想で当面の対策を講じてきていると思います。これはアフガニスタン侵入という異例の事態に遭遇してアメリカが抑止力を維持しなければいかぬという考えに立ったのではないかと思います。しかし、最近の模様を見ておりますと、やはり長期的に見て軍縮を達成しようという熱意はアメリカ側においても非常に強く、レーガン大統領の今度の提案にもなっておりますが、ソ連側がこれに応じて軍縮の努力について世界を安心させる方向に協力することを私たちは望んでやみません。そして、アメリカ、ソ連ともにある程度世界が安心できるような検証可能な方法で具体的、現実的に軍縮の実を上げていくことをわれわれは熱心に支持していきたいと思っております。
  120. 矢田部理

    矢田部理君 総理に再度お聞きをしたいと思うのでありますが、抑止力論とか均衡論とかという議論があります。この論理を追求する限り双方が抑止力を高めなければ安心できないということで結局は軍拡の論理になってしまうんですね。ですから、どうやって相手よりも上回った軍事力を持って抑止するかという議論になる。これをどうやって低めていくかがむしろ政治家の役割りだと私は思っているわけです。  なるほど東北アジアあるいは西太平洋における状況は、ヨーロッパのようにNATO対ワルシャワ機構というような単一の関係にはありません。もちろんこれはNATOの関係にもいろいろ内部的には状況がありますけれども、アジアには朝鮮問題も含めてやっぱり複雑な要素、問題を持っていることは事実でありますけれども、日本の総理として、この東北アジアあるいは西太平洋における緊張を幾らかでも緩めるために、徹頭徹尾抑止力論や均衡論に立つのじゃなくて、全体としてのやっぱり兵力量を減らすための努力、具体的な提案、具体的な行動というようなことを何かお考えになっていることはないんでしょうか。  とりわけ、最近の総理の街頭演説は、漏れ承るところによると、もう米ソ戦争なんというのはありませんよと。恐らく日ソ戦争だって考えておられるわけじゃないと思うんですね。にもかかわらず、東北アジアを中心とする軍事力が増強されている。先ほど防衛庁長官が量的比較をされました。軍事力をただ量的に昔流にやっぱり計算する比較は私は必ずしも正確じゃないと思っているんです。軍艦のトン数を幾ら比較してみても、やっぱりその力とか質とかということが問題にされるわけでありますから、その軍事力比較論には私は異議があるわけであります。またこれは改めて議論しなければならぬと思うわけでありますが、そういうことに関心を持つよりも、やっぱり政治なんでありますから、どうやってこの東北アジアに平和をつくるのか、幾らかでもそういう負担を軽減していくのかという方向での総理のやっぱり積極的な役割りを実は期待もしているわけでありますが、いかがでしょうか。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、この席でも申し上げた記憶がありますが、第三次世界大戦はない、米ソ戦争もない、自分はそう思う。それほど人類はばかでない。もしそういうものがあったら地球は壊れてしまう、そういうようなことはわれわれ全力をふるって防止しなきゃならぬし、アメリカの首脳部もソ連の首脳部もそういう問題を抱えて苦悩しておるのが現状である、そしてお互いが相均衡して兵力を削減していく模索をやっておるんだと、そういうことを申し上げました。それをやっていくためには、ある程度国際政治情勢でございますからポーカーゲームみたいな要素もあると私は思うんです。それはみんな自分の国益を考え、世界全体の平和を考えるという意味において政治の中にはそういう要素も入っている。そういうこともよく考えながら、現実的着実に緊張を緩和し、また特に核兵器を中心にする力をお互いが減殺して地球上に安心を与えていくという努力をすべきであると思いますし、われわれもすべきであると思います。  しかし、遺憾ながら現実の事態はやはり抑止力ということによって平和が維持されていることは否定できない現実であります。それは第二次世界大戦以来の世界の歴史を見ましても、真空地帯とか、あるいは手薄なところがねらわれたり、あるいはそういう事変を起こしたりしているという現実はわれわれは見ておるところでございますから、そういうような考えが無意味であるとは思いませんし、現実に平和を維持しておるのはそういう現実の血のにじむような努力で維持されておる、そういうふうに考えておりまして、そういう考えもわれわれは基礎的に持っておるわけであります。しかし、やはり世界の世論であるとか、あるいは人間の良心であるとか、そういうものもわれわれは忘れてはならないのでありまして、そういう点についても努力してまいりたいと思っておる次第であります。
  122. 矢田部理

    矢田部理君 これはかねてから議論されていることでありますが、世界の軍事費が年々拡大をする一方で、また核兵器等の運搬手段も含めた軍備が強化される中で、全体として福祉が圧迫をされる、財政が厳しくなる、こんなばかなことをやっぱり繰り返さないために具体的にどうするのか。アジアにおいて、きのう外務大臣とこれはあれしましたから言いませんけれども、朝鮮統一のための国際的な環境づくりを一体どうやっていくのかなどもその一つでありましょう。  ソビエトとの関係についてももう少しやっぱり積極的に対ソ外交を進めることが考えられないのでしょうか。北方領土の問題はあるにしましても、たとえばヨーロッパそのものは軍備の問題もさることながら、直接やっぱりクレムリンに出向いていって、あそこに非核地帯をつくろうじゃないかという提案をしたり、議論を詰めたりも、たとえば西ドイツのシュミットなどはしているわけであります。ソビエトが軍事力を増強してきているからこっちも増強しなきゃいかぬといういわばソビエトの軍事力に対する過大見積もり、過剰反応をもとにしてアジアにおける軍事力をやっぱり増強するという対応では、どうも私はよろしくないと。一方で総理も、言うならば人間の知恵とか良心とか平和に対する熱意とかということをやっぱり評価しておられるわけでありますから、抑止力論をすぐ消せといっても恐らく無理でしょうから、できるだけ抑えた形で平和の方向を外務大臣を中心に地ならしをしながら進めていくことをやっぱりひとつ積極的に考えていただきたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、その動き、そういう国際緊張緩和の流れに私は率直に言って逆行するのではないかと思われるものに、シーレーン防衛とか海峡封鎖とか不沈空母だとかいう系列がもう一つあることを私は大変残念に思うわけでありますが、きょうは先般私の質問に関連いたしまして、シーレーン防衛、外国船の防衛について政府の見解が過日出されましたので、それを中心に少し話をしてみたいと考えております。  その前提的な議論でありますが、これは外務省がいいのでしょうか、集団自衛権という概念をどういうふうにとらえているでしょうか。
  123. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 従来からの答弁書等におきまして、概念として御説明しておりますが、集団的自衛権というのは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止するととが正当化される権利である、こういうふうに御説明しております。
  124. 矢田部理

    矢田部理君 その概念の問題でありますが、自国に対する武力攻撃がないにもかかわらずというのは、より正確に言えば、自国に対する攻撃があるなしにかかわらず、攻撃の有無にかかわらずというふうに受けとめ理解してよろしいでしょうか。
  125. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いまの委員の表現は必ずしも正確ではないであろうと思います。私が申し上げましたように、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止すると、こういうことを申し上げたわけでありまして、自国に対する攻撃の有無にかかわらずということではございません。
  126. 矢田部理

    矢田部理君 問題の端々をとらえてもらっちゃ困るのですがね。自国に対する攻撃がないにもかかわらずという部分をとらえて言っているわけです。いいですか、つまり自国が攻撃をされているとき、武力攻撃をされているときは集団自衛権の概念はもう入ってくる余地がないのだという理解なのかどうかということを、逆に言えばお尋ねをしているわけであります。
  127. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 委員の御質問のポイントは私理解してお答えしたつもりでこざいますが、まさに重要な点が、自国が直接攻撃されていないにもかかわらずということでございまして、もちろんみずからも攻撃をされておると、それから自国と密接な関係にある国も攻撃をされておると、両方が攻撃をされておるという事態があり得ると思います。その場合に、一方の国が他国のために、他国を防衛するために、自国の防衛と直接無関係に、他国の防衛のために実力を行使するということが、それは集団的自衛権という観念に入るであろうということが、恐らく委員の御質問の御念頭にあるのだろうと思いますけれども、それはそういう場合があると思います。しかし、ここで申し上げているその本質的な点は、自国が攻撃されていないにもかかわらず、すなわち自国の防衛と無関係に自国と密接な関係にある外国に対する攻撃を排除すると、実力をもって排除すると、これを集団的自衛権というと、こういうことでございます。
  128. 矢田部理

    矢田部理君 外務省の説明に少しひっかかるのですよ。というのは、これは暴論だと思うのでありますが、自国に対する攻撃がなされていないにもかかわらず、密接な関係にある他国が武力攻撃を受けた場合に自国に対する攻撃とみなして反撃する、実力で阻止する権利だと、こういうふうに言うわけですね。したがって逆に言えば、自国に対する攻撃があった場合には集団自衛権の概念はなくなってしまうのだというこの議論が一部に聞こえてくるのです。そういう議論を外務省はとりませんね、少なくとも。
  129. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 委員御承知のとおりに、集団的自衛権という概念は、本来国際法上国連憲章のもとにおきまして原則として武力の行使が禁止されると、そういう原則のもとにおきまして、いわゆる個別自衛権という名前で呼ばれております自国に対する武力攻撃を排除するための自衛権というものは、これは当然認められなくてはならないと。同時に、そういう自国と密接な関係にある国が攻撃された場合に、そういう個別自衛権では説明ができない武力行使というものも国際法あるいは国連憲章のもとで適法化される場合があると、そういうことで集団的自衛権という概念が出てきたわけでございますので、したがいましてあくまでも本質は先ほど私が申し上げましたように、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、その自分の国と密接な関係のある国の防衛のために武力を行使すると、それは国連憲章のもとで正当な行為として認められると、それが集団的自衛権であるというふうに御説明しておるわけでございます。
  130. 矢田部理

    矢田部理君 その説明はさっきから聞いて私も知っておるわけです。そうでなくて、私が言ったような立場、考え方には少なくとも立ちませんねと言っているから、イエスかノーかで答えてください。
  131. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私が申し上げておりますことは……
  132. 矢田部理

    矢田部理君 いや、イエスかノーかでいいんだよ。
  133. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 自分が攻撃されている場合に、自分が行う実力行使というものがすべて個別自衛権で説明し切れない場合があるだろうという点が御質問のポイントであれば、それはそうだというふうに申し上げます。
  134. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと法制局長官に、同じ質問でありますが。
  135. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 国際法上の議論としては条約局長が言われたとおりだと思います。ただ、矢田部委員の恐らく先ほど御紹介になった説というのは、端的に申し上げますが、自国が武力攻撃を受けた後は個別的自衛権の行使としてその攻撃を排除すると、途端に集団的自衛権の観念がどこかへすっ飛んでしまって何か自由にそのときには集団的自衛権の行使ができるのだというような説を肯定するかどうかと、こういうことだろうと思うのです。それは違うので、わが国が集団的自衛権の行使ができないというのは、これは憲法九条の制約であるわけです。その憲法九条の制約というのは何かと言えば、わが国の自衛のために必要最小限度の武力行使しかできないというわけであります。したがって、個別的自衛権の場合でもその自衛の枠を超えるものは無論できないわけであります。いわんやその集団的自衛権、なぜできないかというのは、いま申し上げたような自衛の枠を超えるからできないわけですから、一たん武力攻撃を受けた後でも、そういう集団的自衛権が自由に行使できるというようなことはあり得ないと思います。
  136. 矢田部理

    矢田部理君 したがって、自国に対する攻撃がされていないにもかかわらずという場合はもとより、集団的自衛権の行使が、されている場合でも、自国と密接な関係にある他の国が武力攻撃をなされた場合にそれを自国に対する攻撃とみなして反撃する権利、これが集団的自衛権だというふうに理解していいわけでしょう。
  137. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 先ほど申し上げましたように、わが国が武力攻撃を受けて、それに対する実力行使というのはあくまで自衛のために必要最小限度の枠内に入らなければいけないわけです。その枠を超えるようなものは武力攻撃を受けた後でも一切できないわけであります。恐らく、矢田部委員がおっしゃっているような意味は、わが国の防衛と全く関係なく、わが国が武力攻撃を受けた後の実力行使の一態様として、どこか外国の、仮に言えば非常に遠いところへ行って外国の船舶を守るとか、そういうようなものは要するに自衛の枠を超えるわけでありますから、それを集団的自衛権の行使としてとらえるというよりも、むしろ私は自衛の枠を超えるというふうに考えるべきだと。しかし、集団的自衛権の行使ができるかと言われれば、そういうことは武力攻撃を受けた後でもできない、こういうことになると思います。
  138. 矢田部理

    矢田部理君 少し先読みして答弁をしているんですがね。  もう一つの件、そこを確認しておきますが、旗国主義という立場をとっておりますね。つまり、先般の政府見解を見ましても、「国際法上、公海において船舶が攻撃を受けた場合、個別的自衛権の行使として、その攻撃を排除し得る立場にあるのは、」「当該船舶の旗国である。」と、旗国王義の立場をとっているわけでありますが、それにかかわった議論として、公海において船舶が攻撃を受けた場合には、個別的自衛権が行使できるのは当該船舶の旗国だけでありますね。それは国際法上確定された議論として考えていいでしょうか。
  139. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 国際法上の原則の問題として言えば、船の安全を確保する立場にあるのは原則としてその船の旗国でありますから、その船が攻撃をされた場合に、その攻撃を排除する立場にまず立つ国はその船の旗国である、こういう考え方に基づいて従来から御答弁申し上げておるわけでございます。
  140. 矢田部理

    矢田部理君 その意味は同時に、公海において船舶が攻撃を受けた、場合によっては臨検、拿捕をされたという場合に個別的自衛権を旗国が行使するかどうか、行使せずに抗議などを含めて平和的手段で解決するかどうか、それを決定するのは旗国の主権の問題、旗国自身の問題だということも当然のことながらお認めになりますね。
  141. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど申し上げましたことの一環といたしまして、いま委員の御質問の点はあくまでも一般論でございますが、一般論としてはそのとおりだろうと思います。
  142. 矢田部理

    矢田部理君 したがって第三問でありますが、日本が第三国の排他的な管轄権下にある船舶に対して積み荷確保などを理由にして勝手に自衛権を行使するのは、当該旗国の主権的な権利の侵害、排他的管轄権の侵害になりはしませんか。
  143. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど来私が申し上げておりますように、まず、ある船舶につきまして、その船舶の安全を確保する立場にある国は、当然原則としてその船舶が属する旗国であるということでございますが、その船舶に対しまして現実に攻撃が行われまして、先般「有事における海上交通の安全確保と外国船舶について」ということで政府の見解として申し上げておりますことは、そういう……
  144. 矢田部理

    矢田部理君 政府の見解じゃない、私のいまの見解に答えてください。
  145. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 申し上げておりますが、そういう船舶に積載されております物資等がわが国の生存のために必要不可欠なものであるという場合に、その船舶に対する攻撃を排除するということを個別的自衛権の一環として認められる場合があるであろうということを申し上げておるわけでございますが、いま申し上げましたような意味でのわが国の個別的自衛権の限度内での実力の行使、その第三国の船舶に対します実力の行使、武力攻撃というものを排除するという実力の行使が、当該船舶の旗国の主権の侵害というふうな性格のものになるということはないと思います。
  146. 矢田部理

    矢田部理君 ある外国船が攻撃を受けた、場合によっては臨検、拿捕をされた。その外国が自衛手段を講ずるかどうか、自衛権の発動をするかどうか。場合によっては臨検、拿捕に抗議をして損害賠償を求める、あるいは話し合いで平和的な解決を求める、いずれの道をとるかはその国の政策、戦争にどうかかわるかどうかという考え方によって決めるべきである、その原則はもう当然の話でしょう。したがって、日本向けの積み荷を載せた船だからといって、日本の食糧の確保に必要不可欠だからといって外国の船に手を出すこと、これはその当該旗国の主権的権利といいますか、排他的管轄権に手を触れることになりはしませんか。旗国の外交的選択権を奪うことになりはしませんか。ここに実はこの政府見解の一番大きな問題点がひそんでいる、こういうふうに思うんですよ。いいですか、もしこの政府見解のような論理が許されるということになりますと、日本は外国の領域内の日本の経済的権益、これが武力攻撃を受けた場合に、国民の生存を確保する必要不可欠な物資であるという理由で、そこにまで自衛のために必要であれば自衛権の行使ができるというようなことになりかねない、論理を発展をさせれば。そういう危険な議論を今度の政府見解は出してしまった。日本の自衛権の立場から、自衛力の行使の立場から問題を見て、相手方の主権の立場、旗国の立場を否定した議論が今度の政府見解なんですね。こんな見解、私たちは認めるわけにはまいりません。  しかも、その内容は集団的自衛権すら超えているわけです。日本の国は憲法上の制約から集団自衛権は認められないということになっております。しかし、集団自衛権の行使についても国連憲章で枠がはめられている。先ほどから説明がありますように、自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃ということになっているわけですね。この密接な関係にある国というのは、言うならば安保条約とかという、相互援助防衛条約という連帯関係がなければならぬわけでしょう。ところが、入ってくる外国船というのはそんな連帯関係ありませんよ、後で運輸省からいろいろ出してもらいますけれども。そこの船まで日本が防衛という名で、自衛権の発動という名で手を突っ込むことになる。これが政府見解の論理なんですね。こんなことが許されますか。こんなばかな議論が許されたら、これは大変なことになる。この辺で、一度見解を求めましょう。
  147. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 政府見解の最後のところに明記してございますように、「事態の様相は千差万別であるので、我が国の自衛権行使の態様については、その時々の情勢に応じ、個別的に判断せざるを得ないものと考える。」ということが書いてございますが、まさにいま委員指摘のようないろんな事態が考えられます。  外国船舶がどういう船舶であるか、わが国と共同対処をしておる米国の船舶ということもありましょうし、そうではない全くいわゆる中立的な立場にある国の船舶であるという場合もございましょう。それから、その船舶が日本に向かって航行しておるのに対して、それをどういう形で阻止するかという阻止の仕方についてもいろんな対応があろうかと思います。もちろん委員指摘のように、どこか公海上でその船を停船させて臨検するというような場合もございましょうし、あるいはより無差別、無警告でその船を撃沈してしまうというような事態もございましょう。  そういういろんな事態が考えられますので、いかなる場合も含めまして、一般論として、どんな場合でもわが国がその船に積んである物資が日本のために必要不可欠であるからといって、自由に個別的自衛権の名のもとに実力の行使ができるのだということを政府見解で申し上げておるわけではないわけでございまして、いずれにいたしましても、そういう臨検、拿捕というようなことを超えまして、この統一見解にも書いてございます が、攻撃を受けてどんどん撃沈されるというような場合におきまして、観念的、法律的に申し上げれば、そういう船舶の旗国の自衛権というものと、わが国の個別自衛権というものが併存し得る事態というものがそれは考えられるであろう、そういう場合のわが国の個別自衛権の行使というものが、その船舶の旗国がわが国ではないということによって排除されることはないということだけを、この統一見解で法律的に申し上げれば御説明しておるだけのことでございます。
  148. 矢田部理

    矢田部理君 長々と説明されたんですが、何を言っているのかちょっとわからない。この政府見解の一番最後の五番目の、「いずれにせよ、事態の様相は千差万別で」、結局どうしていいかわからぬ、個別的に判断するしかないというのが結論であります。その前段に出てくる生存確保のためとか、継戦能力確保のために外国船に手を下すことができるんだという議論は破綻していると認めたらどうですか。いまの説明はすでに破綻しているのじゃありませんか。私の先ほどからの指摘に対して答えられないんじゃありませんか。それはとてもじゃないが、無理な話なんですよ。まさに自国と密接な関係にある国の船であれば集団自衛権の行使そのものなんであります。  運輸省からいま説明してもらいますが、そうでない国の船であるならば、国連憲章が容認している集団自衛権の行使ですらない。それをもはるかに超えるものになってしまう。こんな暴論が許されていいはずはない。こういうふうに思うわけでありますが、運輸省来ておられますか。——いま外国からの輸入物資を運んでくる船の、どのぐらいの量を、どんな国の船が年間運んでくるかというデータを出してくれませんか。
  149. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) お答え申し上げます。  昭和五十六年のわが国の輸出貨物の日本船の積み取り比率は二一・五%、輸入貨物の積み取り比率は三六・六%でございます。輸出入合計で、日本船は三四・八%、外国船は六五・二%でございました。  また、同年の外国貿易に従事する船舶の入港隻数は三万八千四百六十四隻でございまして、そのうち、日本船は一万三十五隻、二六・一%、外国船は二万八千四百二十九隻、七三・九%でございました。
  150. 矢田部理

    矢田部理君 外国貿易船の入港隻数というのはわかりますか。
  151. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) ただいま申し上げました三万八千四百六十四隻でございます。
  152. 矢田部理

    矢田部理君 内訳は。
  153. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 内訳でございますか。どういう意味での内訳か、国籍別とかそういう意味でございますか。——ちょっとお待ちください。  国籍別に申し上げますと、一番外国船で入港隻数の多いものは大韓民国九千百五隻でございます。二番目がパナマでございまして五千八百三十七隻、三番目がリベリアでございまして三千九百五十八隻、四番目がソビエト連邦でございまして二千十四隻、その他細かいものがたくさんございまして、ただいま申し上げましたような三万八千三百十八隻ということになるわけでございます。
  154. 矢田部理

    矢田部理君 日本の船はどのぐらいになりますか。
  155. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 日本の船は一万三十五隻でございます。
  156. 矢田部理

    矢田部理君 それは三万のうちですか。三万とは別ですか。
  157. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 三万の内側でございます。内数でございます。
  158. 矢田部理

    矢田部理君 これはちょっときのう私がいただいた数字と少しく違うので率が出し切れないんですが、日本に入ってくる船、あるいは入ってくる物資を積んでくる状況から見ますと、日本の船というのは割合から言うとえらく少ないんですよ。貨物量から言うと四割ぐらいになるのかもしれませんが、船の隻数から言うと二割五分前後じゃないでしょうか。大部分が外国船なんですね。しかも、外国用船が相当多い。便宜置籍船がある。こういう船によって日本の経済というか、貿易が担われているというのが現状ですね。仮に戦争になった場合に、この船がどういう動きをするであろうかということは、これはなかなか想定はむずかしいことになるでありましょうけれども、アメリカの船なんていうのはほとんどないんですよ。日本の船も非常に少ない。しかも、日本の船の関係者は、こぞってと言っていいかどうかは知りませんが、海員組合はもちろんのこと、船主側でもシーレーン防衛なんていうのはとんでもない話だということに実はなってきているわけであります。再び船を戦争の先端で犠牲にされてはかなわぬ、用船だ、徴用だということで調達されてはかなわぬという声も含めて、非常にこのシーレーン防衛に対する危惧の念を抱く声が強いのでありますが、その点、運輸省、たとえば海員組合その他の意見を運輸省で把握しているところがあれば、ひとつ説明をいただきたいと思います。
  159. 小野維之

    政府委員(小野維之君) 全日本海員組合の中にシーレーン防衛構想に対して批判的な考え方が強いということは、新聞に対する寄稿その他で承知してございますけれども、現在特にどうしてくれという申し入れとか要望とか、そういうこともございませんので、まだ海員組合とそういう点について話し合いをしたということはございません。
  160. 矢田部理

    矢田部理君 海員組合は運動方針として反対を明らかにしているんです。この間、ある船主の方々の意見も私なりに聞いてみました。これは非常に不安と心配が多い。こんな肝心な当事者が非常に批判的な中で、とりわけ外国用船が圧倒的に多い状況のもとで、余りにも一方的にシーレーン防衛が進み過ぎているんじゃないか。  その背景は何かということを考えてみますと、第二次大戦の時代ではもうないんですね。核戦争の時代なんだ。いまさら補給路を確保して長期戦に耐えるとか、継戦能力をつけるとかという戦争には恐らくならないだろうと私は思う。にもかかわらず、シーレーン防衛だとか海峡封鎖だとか言うのは少しく時代錯誤なんじゃないでしょうか、中曽根総理。どちらかというと、アメリカの全体的な対ソ戦略、核戦略に位置づけられた中で、言うならば防衛分担的な役割り強化を持たされておる。このことが日本の考えを超えて進み過ぎているのじゃなかろうかということを私は懸念しているわけであります。日本のためじゃない、とてもそんな海上輸送路などというのは守れるしろものでもない。これをいよいよシーレーン防衛だという構想の中で海空の軍をやっぱり強化する。アメリカの全体の世界戦略に協力をする。こういう意図を隠すために、実際は海上交通路を保護するんだ、輸出入国だからその海上の交通の保護をやらなければ大変だ。問題をすりかえているからこんなことになっているんじゃないでしょうか。当事者間でほとんど話し合われたこともないし、現に批判が非常に強いのも事実だし、そこら辺で軍事力強化路線というのが少し頭でっかちに走り過ぎている。軍拡だけが先行している。シーレーン防衛議論だけが先走っている。そう、防衛庁長官、お感じになりませんか。
  161. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) まず、申し上げさせていただきますが、シーレーンという言葉が最近国際的にも定着しつつあるものですから、私どももシーレーン防衛という表現を便宜的に使わさせていただいておりますが、実は、わが国の海上交通安全確保の政策は、これは昭和四十年代の前半、すなわち第四次防の当時からすでに計画の中にはございまして、今日にわかにここで浮上してきたものではございません。これが第一点。  それから第二点。シーレーン防衛はやっても意味がないじゃないかという御指摘がございましたが、しかしながら、今日の非常な科学技術、特に軍事的な意味の技術の進歩というものは目覚ましいものがございまして、われわれとしてはそういう意味でシーレーン防衛というものは、わが国として必ずやらなければならない非常に重大な政策である、こう考えております。  さらに、アメリカの肩がわりという問題の御指摘もございましたけれども、むしろ今日のアメリカは、日米安保条約の運用の効果を高める努力をみずから表明をいたしておるわけでございまして、その意味では太平洋、特に西太平洋におきまするプレゼンスにおきましても、今日言われておるごとく、日本に肩がわりさして、アメリカがこの太平洋地域から出ていくというようなことはあり得ない、こう考えております。したがって、もし海上におきまする武力攻撃が行われましたときには、日米共同して対処するという、日米安保条約に基づくアメリカに対する信頼は今日ますます強固になりつつある、私はそういうふうに判断をいたしておるわけでございます。
  162. 矢田部理

    矢田部理君 総理、お疲れのようでありますが、いまいろんな議論をしてみまして、どうもやっぱりシーレーン防衛というのは、もう一回、いま長官が言われたようなたてまえ論ではなくて、実態に即して果たしてどういう意味を持つのか、どういう問題があるのか、この際本格的に洗い直してみるべきではないかと私は考えているんです。その点で、総理も通峡阻止だとか、三海峡封鎖とは言わなかったそうでありますが、という議論は少し言葉に走り過ぎているのではないかと言う感じもいたします。国際法的に見ても、外国船の防衛などというのができる、自国の自衛権の発動としてできるということはなかなかむずかしい議論です。まして海峡封鎖ということになれば、公海の封鎖の問題があり、沿岸国の領海の問題が存在し、含めていろんな問題があるわけでありますから、もう一回全面的に見直し、鈴木内閣の対米公約がこんなに大きなツケで回ってくることは、私どもも事の重大性に驚いているわけです。同時にまた、総理が余り強気な発言をアメリカに行ってするものだから、世の中予想以上にこの問題に対する反発も強い、不安も高まっているわけでありますから、少しく考え直してみたらいかがかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シーレーンの防衛の問題は、憲法のもとに専守防衛という方針を堅持して、しかも、個別的自衛権の限界内で何ができるかと御質問がありましたから、私及び政府委員はその御質問にお答えしたわけであります。御質問がなければお答えするということはないわけなんで、お答えしなきゃならぬ義務があるわけであります。それは、やはり個別自衛権及び憲法及び専守防衛という枠内でどの程度可能であるかと、そういう御質問に対してお答えをしたという点で、個別自衛権の範囲内ではここまでやれるのだとわれわれ側の見解、あるいは政府側の見解を明らかにしたということで、もとよりいままで歴代内閣が考えてきた防衛の基本原則に立っての範囲内の発言であるのであります。  ただ、新聞に大きく報道されたりしたものですから、東南アジアやそのほかの国におきまして誤解やら危惧が出てくるといけませんので、そういう点はあくまで注意してやっていきたいと、そう思っております。
  164. 矢田部理

    矢田部理君 私は、いま総理が十分聞いておられたかどうか知りませんが、外国船の防衛というのは日本の自衛権の範囲がどこまで及ぶかという議論だけでは賄えないのですね。外国の主権がそこにかかわっているわけでありますから、国際法的に見ても適用しないのでありまして、先ほどの外務省の答弁でも明らかになったように、完全に政府の見解は破綻していると見なきゃならぬ。外国船の防衛などはできませんと、一義的だとか原則としてはなどと言うから私は少しつっついたわけでありますけれども、これは明確にすべきだと私は思っております。  そこで、最終の時間に入ってきましたので、もう一点ただしておきたいと思いますのは、GNP一%論といいますか、防衛費の額の問題であります。  これは経済企画庁おいでになりませんので防衛庁でいいと思うんですが、五十八年度のGNPの一%というのは幾らになるか、数字が出ますか。
  165. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 五十八年度のGNP、政府の見通しによれば二百八十一兆七千億円、したがって、その一%ということであれば二兆八千百七十億と、こういうことでございます。
  166. 矢田部理

    矢田部理君 言う中で、防衛費が二兆七千五百四十二億でありますから、このGNP比は何%になるでしょう。
  167. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 〇・九八%でございます。
  168. 矢田部理

    矢田部理君 二兆七千五百四十二億のうち給与改善費というのは一%ぐらい今度の予算で組まれていると思いますが、幾らになるでしょうか。
  169. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。約百十億円でございます。
  170. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、防衛庁の今年度予算のうち、いま述べられた百十億円を引いた残りの防衛費というのは幾らになりますか。これは簡単に引けばいいわけですが。
  171. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五十八年度の予算総額が二兆七千五百四十二億円でございますから、そこから百十億円を引きますと約二兆七千四百三十億円という数字だと思います。
  172. 矢田部理

    矢田部理君 給与改善費を除いた今年度防衛費と、今年度のGNP一 %の数値との差は幾らになりますか。
  173. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五十八年度のGNPが二百八十一兆七千億円でございまして、一%相当額が二兆八千百七十億円になるわけでございますから、いまの御指摘のように、防衛関係費から百十億円を引きました二兆七千四百三十億円との差額を見ますと、約七百四十億円ぐらいかと思います。
  174. 矢田部理

    矢田部理君 数字を行ったり来たりするとわかりにくいと思いますが、いまの防衛費、今年度予算のうち給与予定の一%百十億を除いた防衛費とGNP一%の比較をしてみますと、もうすき間はお話があったように七百四十億円しかない。この七百四十億という金額は、自衛隊関係者の給与のパーセンテージにすると、どのぐらいの割合になるでしょうか。
  175. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいまのような試算をいたしておりませんが、御参考に申し上げますと、五十七年度の人事院勧告のベア、これが約四・六%でございますけれども、その場合の所要額が幾らかというのを概算で推計いたしますと、約五百五十億円ということで見積もっていたわけでございます。
  176. 矢田部理

    矢田部理君 私はパーセンテージで計算してきたのですが、防衛庁の数字でもわかりやすいと思うんですね。一%まで七百四十億しかない。五十七年度の人事院勧告を実施すれば、七年ですからきのうまでの分五百五十億かかるというんでしょう。そうすると、あと残は百九十億しかない。五十八年度の人事院勧告があって上がるということになりますと百九十億分しかないということになる。例年どおり人事院勧告が出れば、ことしのうちに実は総理、防衛費は一%を優に突破することになるのですが、いかがいたしますか。
  177. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま論議がずっと続いてまいりました防衛費と国民総生産の中に占める比率の関係につきましては、確かに御指摘のとおり、五十七年度につくり上げました五十八年度予算の概算要求におきましても〇・九八という数値になっておりまして、これから後一%という問題につきましては、われわれとしましてはなかなか条件がむずかしいというか、かたいといいますか、ところへ来つつあることはそれは存じております。  しかしながら、経済というものはこれまた大変大きな変動も遂げるものでございまするし、先ほど政府委員から答弁をいたしましたGNP二百八十一兆七千億円というのは、実は実質成長三・四%で計算がなされた政府の見込みでもございます。しかしながら、これから後の経済の変動、それから五十九年、ただいま五十八年度の予算を審議いただいているさなかでございまして、まだ五十九年につきまして私どもが物を申すべきではございませんが、五十九年の予算の概算要求をいたす時期におきまして、どういう形の防衛庁予算を財政当局に概算要求をしていくかということは今後これから詰める問題でもございます。  したがいまして、現在この時点では、先行き経済の見通しにおきましても、またわれわれが五十九年度防衛庁費として概算要求する姿におきましても、確たることを申し上げることのできないところであるということは御了解をいただきたいと、こう考えておるわけでございます。
  178. 矢田部理

    矢田部理君 五十九年度の話をしているんじゃないんです。五十八年度のこれは政府のGNPの見込み数値を基礎にし、一つ一つ整理しながら計算していきますと、五十七年度の人事院勧告、いずれこれは実施することになるでしょう、政府の従来の経過から言えば、五十八年度には。そうしますと、五十七年度実施しただけであと残りは百九十億ですよ、一%との差はですね。給与改善費の一%というのは百十億でしょう。五十八年度分の給与はもう二%上がらないんですね。一%で百十億、百九十億しか残らないわけですから、一・何%か上げればもうGNP一%にことしはなってしまう。五十九年度の話じゃなくて、もうことし現実に五十八年度中にもう一%突破確実になる必至の情勢だということになるんですが、これでいいんでしょうか。  少なくとも一%という閣議決定はいまだ崩れていないわけです、いろんなニュアンスの物の言い方はありますけれども。われわれはかつてから五六中業の財政試算といいますか、財政負担がどのぐらいかかるかということをいろいろ問題にしてきましたけれども、あの数字にさわるまでもなくても、ことしはGNP一%を突破してしまう。給与ということを考えていけば閣議決定違反の本年度予算と、それが提案されていると言っても過言ではないわけであります。さあこの辺どうしますか。
  179. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五十八年度年度の途中におきまして人事院勧告が出まして、それを何らかの形で仮に実施するとした場合に一体どうなるであろうかと、こういう御質問だと思いますが、私ども、いまの時点で必ずそれがGNPの一%相当額を超えるというふうには断定できないだろうと思っておるわけでございます。と申しますのは、これはまあ例年同じでございますけれども、補正予算を組む段階になりますと、予算のそれまでの実績、執行状況等を見直しまして、いろいろと洗い直しをいたします。そうして例年若干の節約を講じるということもございます。そういったような意味で歳出面においての変動要因がなお残されているだろうということはあると思いますし、それからまたGNP自体も、先ほど大臣から申し上げましたように、これが実績として一体どういうふうになっていくかということはこれまたわからない話でございますから、補正予算を編成する時点におきましてその辺は慎重に検討をされて結論が出されていく問題ではないかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  180. 矢田部理

    矢田部理君 大変な発言だと思いますよ。まだ予算が成立していないうちから歳出面についても十分まだ変動要因がある。節約できるような予算を組んでいるんですか。  いずれにしても、GNP比一%というのは何で比較するかと言えば、結果としてことしのGNPが幾らになったから、一%以内におさまったとかおさまらないとかという計算式じゃないんです、もともと三木内閣が決めたのは。その年の政府見込みのGNPを基礎にした、その数値の一%以内でおさめるというのがこの三木内閣の閣議決定じゃありませんか。これから経済がどうなるかわからぬからなんという説明では済むものじゃない。それは歳出面もある程度切り込めるかもしらぬから、一%突破するとは限らぬなどというのを予算成立前から言われたのでは、われわれ予算何のために審議していることになるんですか。切り込みがあるんならそれは修正して予算を提出しなさい。
  181. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま申し上げました趣旨は、御質問が補正の時点でGNP比の一%を超えることがあるかという御質問でございましたので、おっしゃいますように現在の閣議決定の趣旨は、当初予算の編成の時点におきまして、防衛関係費の編成の考え方といたしまして、GNP比の一%相当額を超えないことをめどとして編成をするということで決められたものであることはもう御指摘のとおりでございます。  ただ、御質問がそれとは別に、一応事実の問題として補正の時点でそういうことになることがあり得るかという御質問であると私は理解をいたしましたので、その時点になればその時点での補正予算の編成方針というものがまたあり得るであろうと、その辺のことを申し上げたつもりでございまして、いまここで当初予算の編成されました防衛関係費の中で変動要因があり得ると、いまこの時点で申し上げているわけではございません。  これは理論的な可能性の問題といたしまして、そういった補正予算の編成の時点における政府全体としての補正予算の編成方針の問題、それからまたGNPのその時点における実績というものがもし変動があれば、そういう要因は事実としてはあり得るわけでありますから、御質問の趣旨が、その補正の時点での比率がどうなるであろうかと、こういう御質問と理解をいたしまして、技術的な御説明を申し上げたというふうに御理解をいただければありがたいと思う次第でございます。
  182. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと私が申し上げているのとは問題をすりかえているわけですが、補正の時点になろうとなるまいと、去年も人事院勧告凍結して新年度になってしまったわけですね。その去年の分は当然人事院の説明によればげたを履かせてことしは勧告しますと言っている。だから、しかも政府も完全実施とはまだしぶとく言ってないけれども、尊重し、実施するとは言っているわけですね。したがって、ことしの人事院勧告は、去年の人事院勧告四・五八%に相当額上積みされる。その上積みの幅は常識的に見て二%以下であることはない、ことしの春闘の賃上げ状況その他を想定して考えれば。それがこの人事院勧告にはね返って勧告が出てくる。それを実施することになれば、完全実施をしなくても常識的にもう一%を超える、ことしは。来年度予算の問題ではない。そういう予算を、閣議決定があるにもかかわらず十分見通せる一%を超える予算を組んだのは閣議決定違反ではないか、おかしいではないかと私は言っているわけであります。補正になって、そのとき改めて計算して云々の議論ではない。その点で防衛庁長官、どうでしょうか。
  183. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五十八年度の当初予算の編成の時点におきましては、先ほど来他の政府委員からも申し上げましたように、防衛関係費のGNPに対する比率は〇・九八%ということで編成がされておるわけでございまして、その意味で、五十一年の閣議決定の範囲内でこれが編成されたということは御理解をいただけるわけでございます。  御指摘の人事院勧告の処理の問題につきましては、これは五十八年の恐らく夏ごろだと思いますけれども、そこで勧告が出た場合に、それをどういうふうに政府として取り扱うかということは、その時点で改めて決定がされる性質のものでございますので、事実関係といたしましては、五十八年度予算におきましては二兆七千五百四十二億円という防衛関係費、これが予算として政府案になっておりますし、これを国会で御審議をいただいておるわけでございますから、その点で五十一年の閣議決定の線を踏み外したものであるとは私どもは考えていない次第でございます。
  184. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと違いますよ。三木内閣のときの方針というのは、当初予算で一%を超えなけりゃいいという閣議決定じゃないんですよ、あれは。年間を通じて一%を超えちゃならぬということになっている。超えないことをめどとして予算化することになっているわけですね。それは補正も含むわけですよ、当然。それが、確かに当初予算では一%いまだ超えておりません。字面からいえばあと七百四十億ぐらいのすき間があるわけですね、一%との間に。しかし、去年のこれは人事院勧告が実施されないからすき間がそれなりにできたんであって、このすき間を埋めて残りが百九十億、ことし人事院勧告があって、常識的な人事院勧告の枠内で考えてみても優にこれは突破してしまう。こういうことが確実な予算を年度当初に組むというのは問題がありはせぬのかと。一%突破の可能性の強い予算を最初から組む、しかも閣議決定はそのまま残していると、閣議決定違反の当初予算と、これはやっぱり防衛庁としていかがなものですか。政府としてもこれじゃ少しおさまりというか、けじめがつかぬじゃありませんか。いままでどうもやっぱり五十九年度問題で論じてきましたけれども、これは五十八年度の問題だと私は指摘しておきたいんです。
  185. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) そういう事態が生じた場合には、その事態が生じた時点で考えねばならない問題ということになろうかと思うのでございますが、政府がつくりあげます政府原案、それの原案をつくるときの防衛庁が財政当局にいたしまする概算要求、その中で指摘される問題では、ただいま先生の御指摘のとおりでございますが、そのときの政府の経済見通し、その時点でこれは名目で出てくる数字でございますが、に従って議論されるのは当然でございまして、その概算要求がなされて政府原案ができた後でも、経済というのは非常に変動が激しゅうございますから、政府の経済見通しが下方ないしは上方に修正されることは十分あり得ることでございます。しかしながら、そういうことではなくて、少なくとも先ほど来御指摘のあるような形で概算要求がなされた時点、あるいは政府原案がつくり上げられる時点、これでそのときの政府の経済見通しによって私どもは判断をいたしております。そして、そのことで国会で御審議をいただきました予算が成立の過程、執行するに当たって、それから後にまた違った事態が生じた場合にはその違った事態で、その年度内における考え方というのはそれは違った事態が起こってきた場合には当然でございますが、その事態が生じたときに判断をするということであろうかと存じております。
  186. 矢田部理

    矢田部理君 もうすでに明確になっているんですよ。そうそのときどきで判断されたら困るし、本年度のGNPが幾らになるかなんというのは、もう来年の大分過ぎてからしかわかりゃせぬのですよ。だから、すでに政府見通しをもとにして二兆八千億を基礎にしてやっぱり一%論というのは今日まで論じられてきたわけですから、いまの長官議論はだめですよ。もし長官議論をどうしてもクリアさせるとすれば、ことしは人事院勧告が幾らになろうと自衛隊の給与は上げませんと。このすき間はあと百九十億しかないんですから、去年の分はともかくとして、ことしは百九十億を限度にしか上げませんという約束のもとに一%を厳守するというなら、また話は別です。そういう約束になりますか、どうでしょうか。
  187. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私といたしましては、五十一年の閣議決定でございますが、この閣議決定はできる限り尊重していきたいと、こう考えておるところでございます。  なお、どういう事態がどういう時期に生ずるかわかりませんが、もしこの閣議決定につきまして私どもが何らかの判断を必要とする場合には、その事態が生じたときに判断をさせていただきたいと、こう考えております。
  188. 矢田部理

    矢田部理君 そんな無責任な態度はいけませんですよ。予算でしょう。その予算において一%論を政府みずからが出してきたわけですからね、そのときどきの状況によって、困ったらまた相談するというのじゃなくて、困ることが見通せるときには少なくとも予算審議の段階でやっぱりしかとすべきなんです。その点で私は防衛庁長官のいまの説明は納得できません。  あわせてもう最後の時間になりますから中曽根総理に伺っておきたいのでありますが、どうも中曽根内閣になってから、われわれは賛成しませんでしたけれども政府みずからがとってきた伝統的な防衛政策の基本、これが次々に崩れていく気配、破っていく動きが感じられてならないわけであります。専守防衛の問題、武器輸出原則の問題、非核三原則の動き、GNP一%、一つ一つ危殆に瀕しているではありませんか。すでに武器はつぶしてしまったじゃありませんか。このことに対して中曽根内閣に対する懸念、心配が非常に高まっている。そこにきちっとした歯どめをかけなければ、内政重視だからといって、内政のお話ししたからといって総理の人気が上がることはないと思うんです。不沈空母を幾ら形容詞だと説明しても、総理の人気が回復することはないと思うのであります。その点で日本の保守本流がとってきた伝統的な防衛政策の基本があったはずです。総理はしばしばこれに対しては異議を述べてきた時代もあるようでありますが、その基本的な防衛政策をも中曽根内閣はぶち被って、レーガンなどと組んで大変危険な軍拡に走るのではないかという危惧が、あるいは不安が国民の中に高まっておるし、総理も先ほどお触れになりましたように、東南アジアからも心配の声が上がり始めているわけであります。その点で最後に総理の考えておられる今後の防衛政策の基本、軍拡の時代をどうしてもやめさせるための総理としての具体的な施策、いかがお考えかをまとめてお話しをいただいて、私の質問を終わりにしたいと思います。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は施政方針演説でも明らかに申し上げましたように、憲法の範囲内において車守防衛の原則を守って、また非核三原則を守って、わが国の防衛政策を行ってまいりますと言ってまいりましたが、そのとおり実行してまいる所存でございます。私の考えで少し明らかに新聞等で報ぜられたのは、いわゆる抑止論というものが明らかになってきているんだろうと思います。つまり、いわゆる巻き込まれ論というのがありまして、抑止をやると戦争に巻き込まれるんではないかという誤解が一部起こったことはあると思います。しかし、巻き込まれないためにこそ抑止が必要なんだというのが私が考えておる基本であります。つまり、現在の世界平和というものは、手をこまねいて世界平和は維持されるのではなくして、各国がみんな血のにじむような努力をして、戦争を起こさせないような努力をし合っておるわけでございます。その中には、もちろん世論、あるいは政治家の良心等に訴える大事な問題もあり、軍縮への雄たけびを強くするということもございますけれども、やはり国際政治の基本に流れている平和維持の一つの大きな力というものは抑止にあると、相手に手をかけさせない、相手にボタンをお互いが押させない、そういう懸命な努力の上に平和が維持されていることは無視できないと思うのであります。日本の防衛政策も、これは吉田内閣が安保条約を結びまして以来、特にそういう抑止力というものを考えまして、そして日米安保条約によって足らざる抑止力を補っていくという形で日本の防衛は成立しており、歴代の自民党内閣はそれを踏襲してきて、そのときそのときに合うような政策をやってきたと思うのであります。私は、その延長線上におきまして、いまの時代に相応するような抑止力の理論に基づいて、いまの自衛隊というものを中心に防衛を考えてきておるのでございまして、それをはみ出ようとも思っておりません。いままでの歴代内閣が守ってまいりました憲法の範囲内に専守防衛の原則を守り、非核三原則を守って、そして軍事大国にはならない、そういう基本原則を守って、あくまでも日本の防衛政策を節度あるものにしていきたい、また一面において、外交的努力によりまして国際緊張を緩和する、あるいは軍縮の声を世界的に広げて緊張をさらに減らしていく、そういうことにおきましても人に負けないように努力してまいりたいと思っておる次第であります。
  190. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で矢田部理君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午前の質疑はこれまでとし、午後三時三十分まで休憩をいたします。    午後一時二分休憩      ─────・─────    午後三時三十一分開会
  191. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。大川清幸君。
  192. 大川清幸

    ○大川清幸君 まず初めに、わが党の黒柳委員が去る三月十日の本委員会におきまして、自衛隊が作成するいわゆる年防、この中に警備対象として政党名を挙げているではないかとただしたのに対し、この問題について本委員会の冒頭で、本日その結果についての調査報告がありました。その報告の中身でございますが、確認をいたしますが、防衛庁調査の結果によりますと、五十七年度年防には見当たらない、それから過去、すなわち五十六年度以前のものは破棄をしているので確認のしようがないという意味の御答弁だったように伺いますが、そのような理解で間違いないですね。
  193. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 黒柳議員が三月十日の当予算委員会におきまして、自衛隊が作成する年度防衛及び警備等に関する計画、いわゆる年防の中に、自衛隊警備対象として複数政党を挙げているのではないかとして資料を提示された件に関しまして、私どもといたしましては年防を作成をいたしております統合幕僚会議、各幕僚監部を初め、三百八十余に上る全国の自衛隊の部隊及び機関調査いたしたんでありますが、黒柳議員が御指摘のような該当事実は昭和五十七年度年防にはなかったわけでございます。そしてそれ以前の年防ではそれではどうかということでございますが、年防そのものが防衛庁設置法に基づきまして、防衛庁長官の訓令に従って毎年度作成されるものでございまして、その名称からも明らかなように、各年度ごとのものでございまして、有効期限たる年度末の三月三十一日以降速やかに破棄されることとなっております。したがいまして、現在は昭和五十七年度のものしかございませんで、すでに破棄された昭和五十六年度以前のものにつきましては確認ができなかった、こういうことでございます。
  194. 大川清幸

    ○大川清幸君 そういたしますと、五十六年度以前の破棄されたものについては確かめようがないという意味だと思うのですが、そういたしますと、黒柳委員が三月十日に本委員会防衛庁長官に提示をいたしました資料、これはどういう性質の資料かも確認するすべはないと、こういうことですか。
  195. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) ただいま大臣から御答弁がございましたように、五十七年度のものには該当するものが見当たらなかったわけでございますが、五十六年度以前のものにつきましては破棄されておりまして、確かめようもないというのが実情でございます。ただ私どもいまいろいろ調べた結果では、幕僚監部なり、地方に上がっているようなものには、そういうようなものはなかったということを確信している次第です。その他三百八十幾つつくっているわけでございますが、これのすべてについて過去のものは全部確認できるような状況にないことは御理解いただけると思います。
  196. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは昭和五十六年度以前の年防、これが破棄されているので確認ができないということですが、破棄についてはこれは先ほどもちょっと長官説明もあったんですが、どのような制度になっているのか、念のため御説明を願いたいと思うのです。公文書については三年間保存という制度になっているはずでございますが、その点はどうでしょう。
  197. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 防衛庁文書保存規則というか、管理規則というのがございまして、この規定によりますと、文書は一年、三年、五年もしくは永久保存という、それぞれの文書の内容、性格に応じた保存期間が定められております。秘密文書におきましても、この秘密文書の中身に応じまして、いろいろな指定の仕方がございますが、この年防につきましては、先ほど来御答弁申し上げたように、新しい年度防衛計画が作成されたら速やかに破棄するということで、必ずしも何日というふうに決まっておりません。部隊の性格、あるいは位置等によって若干の変動はございますが、おおむね二、三カ月以内にすべて破棄されるような仕組みになっております。
  198. 大川清幸

    ○大川清幸君 先ほど矢田部委員の論議でもちょっと問題になったようですが、ただいまの説明ですと、管理規則によって新しい年防ができたら直ちに破棄すると、そうなりますと、年防自体は毎年度のものだという意味ですが、重要な年防についての過去の資料はまるっきり、これ何と言うんでしょうかな、立案の段階で参考にするのであって、あとは本当にとっておかないと、こういう意味ですか。
  199. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) この年度防衛計画というのは当該年度、たとえば五十七年度年度防衛計画について言えば、五十七年度に有効なものということでございまして、この作成は前年の秋ごろから統幕が作成する年防の作成に入りまして、最終的に部隊の末端の年防ができ上がるときには年度末ぎりぎりというふうな形になるわけでございます。その過程におきましては、五十七年度年防というものを参考にしながら、五十八年度年防の作成に当たるということで、十分前の年との連続性というものを考えながら、しかも、新しい年に新しい防衛力を基盤としてどう対処するかということを検討し、作成するのが常でございます。
  200. 大川清幸

    ○大川清幸君 この論議は余り繰り返しても同じ論議になりそうですから、黒柳委員質問に対して、あれは三月十日ですから、御報告いただいたのはきょうですから、要するにかなり調査についても時間がかかったことは事実だろう、こういうふうに思います。そうしますと、これは年防というものは大変重要な性格を持つ文書、計画書であることは間違いないと思うのですが、そうした重要なものについて、問題が起こってから報告までに時間がかかったということですので、中央においてこれ十分把握していなかった感じが私はするわけです。したがいまして、そういう点から考えますと、これは防衛庁長官、シビリアンコントロールという立場から考えますと、もう少ししっかり掌握しておいていただかなければ、シビリアンコントロールが大丈夫ですというようには受け取れないんですが、その点はどうですか。
  201. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 御指摘のごとくでございまして、確かに御指摘をいただきましたのが三月十日でございます。御報告申し上げましたのが本日でございまして、その間御指摘のように時間を要したわけでございますが、これには実は三月十日の御指摘をいただきました後、直ちに年防を作成いたしておりまする全国の部隊及び機関約三百八十に対して直ちに調査を指示いたしたんでございますが、いずれにしましても調査そのものは、実を申しますと、私が拝見をいたしましたときの記憶と、それから黒柳議員の御発言のみを頼りにして調査の指示をいたしましたが、調査そのものは各部隊ごとに年防のそれぞれのページにわたって、ページごとに御指摘のような事実があったか、事項があったかどうかを精査いたしまして、その結果を順次上級部隊へ報告するという方式で調査を実施いたしたものですから、ただいま御指摘のような時間がいささかかかったことはこれはおわびを申し上げなきゃならぬと思っております。  なお、年防に関するシビリアンコントロールといいますか、調査に時間がかかったので、その点がおかしいというような御懸念であるとすれば、いま申し上げましたように、精査をするのにそういう上級機関への報告という形をとったものですから、時間を大分経過をいたしましたことはこれはもう心からおわびを申し上げます。
  202. 大川清幸

    ○大川清幸君 最後にこれ確認をいたしておきますが、今後の年防においても政党名を挙げてそれを自衛隊行動対象にするというようなことは、いままでの御答弁でも常識としてあり得ないという、確信をするという御答弁があったんですが、大事なことですから、今後も絶対にそのようなことはないとお約束はできますね。  それから、前段の先ほどのシビリアンコントロールのことでもこれ改善の余地はあると思うんですよ。その点についてももしお考えがあれば聞かしてください。
  203. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) まず最初の点でございますが、前々から何回か答弁をさしていただく機会をいただきましたが、防衛庁自衛隊が合法的な政治活動を行っている政党を敵視するようなことがあってはならず、今後もその点につきましては十分徹底を図ってまいりたいと、こう考えております。  それからシビリアンコントロールに関してでございますが、黒柳議員の御指摘もございましたんで、この際私といたしましては、今後作成される年防においては、従来各幕僚長に報告されておった年防のうち、主要なものは長官にまで報告させ、方面総監等に報告されておりました年防のうち主要なものは各幕僚長にまで報告させるような年防のチェック及び管理に遺漏なきを期したいと思っておりますし、これをさらに、具体的に申し上げますと、これは今回の御指摘があったことにもかんがみまして、今後作成される年防においては、従来の原則——一段階上級の指揮官への報告を、主要なものについてはもう一つ上の二段階上級指揮官まで報告させるようにするほか、全部隊及び機関において作成される年防の一覧表を毎年度長官にまで報告を上げさせると、こういう制度をつくることによって年防のチェック及び管理に遺漏なきを期して、そしてシビリアンコントロールの機能を十分果たすよう努めることによって防衛庁長官としての、このたびの御指摘をいただきましたので、責任を全ういたしてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。くどいようでございますが、政党を敵視するというようなことはもう当然あってはならず、また今後ともその点につきましては十分監視をいたしていくつもりでございます。
  204. 大川清幸

    ○大川清幸君 総理、これシビリアンコントロールの点でいま改善をなさる御決意のようですが、この点は総理も同じお考えだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  205. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シビリアンコントロールの基本は政治が軍事を監督するというところで、政治の中心は国会でございますし、国会を構成しているのは政党でございます。そういう意味において、合法政党に対して伝えられるようなことがもしあったら、これは不心得もはなはだしいことでございまして、十分注意いたしたいと思います。
  206. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まず最初に総理にお伺いをさしていただきたいと思います。  申すまでもなく、今日世界が直面しております最大の課題は何かと言えば、一つは核軍縮を含めた包括軍縮であろうと思います。第二点は沈滞した世界経済から脱却するという問題、この二つがあろうかと思います。この点については識者がひとしく認めているところでありまして、これは総理御自身もすでに御承知をいただいておると存じますが、いまから三年前になりますか、いわゆるブラント委員会が国連事務総長に対して報告をした中でも、軍縮という問題と南北問題の解消ということを提起されているわけであります。また有名なスウェーデンのノーベル受賞者であるミュルダール女史、この方も老齢をひっ提げて、平和確立への道は南北問題の解消である。そしてまたつい先ごろニューデリーで行われました非同盟諸国の首脳会議で採択されましたいわゆるニューデリー・メッセージ、これにも軍縮ということと、それから開発というこの二点を強く世界に訴えていくことで合意が得られた。いままさしくそうした問題で世界の共通した考えは、言うまでもなく人類の悲願であるまず軍縮へ向けて大きな歩みをこれから進めていかなければならない、当然であろうかと私は思うんです。午前中の質疑を伺っておりましても、その点少しく総理もお触れになったようでありますが、こうしたいま世界で深刻に受けとめているこの問題について、恐らく総理御自身も認識を一にするものであろうと思いますし、またさらに今後の抱負としてどういう考え方を持っているか、これは基本的なことだけで結構でございますので、お答えをいただければありがたいと思います。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 世界全体にとりまして現下の大きな問題は核軍縮の問題、それから核拡散防止の問題が一つあると思います。それと同時に、やはり南北間の調和的共存ということが非常に重要ではないかと思います。核軍縮の問題につきましては、私は前からここで申し上げておりますように、核兵器は業の兵器になってしまったと。広島で爆発して以来、片一方が持てば片一方は開発すると。それで増殖作用をこの兵器は伴ってきている。その結果、意に反して持たざるを得ぬと。あるいは相手が拡大するという危険性を感じて片一方もまた拡大するという、そういう業の兵器になってきておる。この業の因縁を何とか取り払って、そして逐次正常な世界へ、日本を、世界を持っていくということは人類共通の願いであるだろうと思います。しかし、人間にはどういうものでございますか、業が宿っていると申しますか、ともかく相手に対する猜疑心というのはなかなかとれないし、国家というものを形成しておりますと、それだけに国家を擁護する国益という問題から普通の個人の気持ちと違った国家倫理というようなものがやはり支配しておるんでございましょうか、なかなかこの業が取れないというところはあると思います。こいねがわくは世界の世論及び政治家の良心というものによって、ソ連もアメリカもあるいは中国も、フランスも、すべての国がそういう面に目覚めてこれを自粛していく、そうして最終的にはゼロに持っていく、そういうところへ持っていくべきであると思っておるんです。しかし、現実の政治を担当している政府の立場からいたしますと、やはりいまのように戦争が防止されている一つの大きな理由は均衡にあります。抑止にあります。この抑止というものを否定できないというのが現状でございます。そういう意味におきまして、できるだけ早目にみんなが目覚めて、そして抑止の量を、お互いがレベルダウンをさせながら、最終的にはゼロに持っていくという英知を働かしていくべきだと、私もそういう点については大いに努力をしていきたい、そう思っておる次第でございます。
  208. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま伺っておりますと、一つの総理の抱負としてはそのとおりかと思います。ただここで問題になりますのは、総理御自身が核兵器というものは絶対悪だという立場に立って、これから軍縮の方向へお取り組みになるのか。それともう一つは、平和維持のためには、いわゆる力のバランスというものをどうしても現実的には承認しなければならない。したがって、必要悪と認めつつ現状対応の仕方がない、こういうふうに受け取ったらいいのか、その辺は恐らく総理御自身もいま述べられたお気持ちの中で明確であろうと思いますけれども、この辺やはりはっきりさしておいた方が国民にも大変安心感を与える原点ではなかろうか、こう思います。    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕
  209. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 絶対悪という表現が宗教家、あるいは学者の世界においては成立すると思いますけれども、政治の世界において絶対という言葉が果たして適当であるかどうか。私は業の兵器だ、そういうふうに申し上げておって、この業から脱却することが二十世紀人類の最大の課題の一つである、そういうふうに申し上げておるんです。なぜ業かといいますと、片っ方が持つと片っ方が持たざるを得ない。それで双方の、悪く言えば恐怖心によって戦争が防止されているというのが現実ではないかと思います。非常に悲しいことでありますが、現実はそうであります。片っ方にSS20が出てきた。そこでほっておけば、そのままSS20は消えない。減らない。そこでパーシングIIというものを片っ方が配置すると。口だけで言ってたんでは変化はない。現実にこれがドイツやオランダに展開されるという、その現実が出てくると、そこで両方でテーブルに着くというのがいまの国家間の現状でありまして、こういう現実を無視してまた政治はないわけでございます。できるだけそのような、たとえば核兵器のレベルダウンを促進していこうということを考えてみますと、口で言っているだけではだめなのであっ て、何らかそういう実証性のある具体的行為によって減らしていくということを、目に見えるところで行わしていかなければできないというのが、いまの悲しき現実であります。しかし、悲しいけれどもそれを行って、そして現に減らしていくという、実効性を上げていかなきゃならぬというのも現実の姿でございます。そういう考えを持ちまして、ともかく必死になって、良心の限りを尽くして核兵器を地上から廃絶していく、そういう方向に全力を注いでいくべきであると考えております。
  210. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま総理は核兵器を業の兵器と、大変適切な表現であろうかとも思います。ただ、いまずっと伺っておりますと、一体どの点で信頼感というものが本当に醸成されて、お互い話し合いの窓口が開けるのかな、これはいま悲しい現実であるという、そういう表現の中にお気持ちが盛られているであろうと私も思うんです。なかなかかみ合わない、今回のいわゆる中距離核兵器の削減交渉の問題、あるいはSTARTの問題、ジュネーブの軍縮委員会でも、今日まで相当論議が交わされてきた。しかし、それはあくまで米ソという密室の中で行われているわけでありますから、われわれの関知し得ないところかもしれません。こういったところでそれがかみ合わないままに、恐らくこの問題が表面化して以来長い月日をかけて、あるいは忍耐強くと言った方がいいのかもしれません。あるいは時にはその戦略的な発想のもとにいろんな駆け引きというものもあたっかと思います。しかし、現実少なくとも見る限り、そういう世界世論の高まりのある中でも、米ソというのはなかなかかみ合わないということをわれわれとしても非常に心配するわけであります。ただし、こうした問題をわれわれが放置しておくわけにもまいりません。日本として果たさなければならない役割りというものも当然、こうした環境の中に必ずやあるはずであろう。  昨年、第二回の軍縮特別総会において、鈴木前総理が国連で演説をされました。いわゆる軍縮にかかわる三原則を表明された。私はこの点は評価しております、確かにそのとおりであろうと。ただ、そういったことをただ言いっ放しになって、それがいまおっしゃったように、具体的な行動の上においてどう一体示していくのかということが、果たしてこの一年間、どういう一体政府自身がお取り組みになってきたのかということをやはり振り返ってみますと、ことにまだ問題が横たわっていやしまいかという心配が出てまいります。果たして、それはいろんな個所において、外務省を中心としておやりになっていることも存じております。ただ、それがなかなか実らない。実らないから、じゃ現状でいいのか、その繰り返しがずっと今日まで来ている。どこかでやはりその突破口を開く必要があるんではないだろうかというようなことで、この問題もうすでに一年経過しようとしているわけでありますが、せっかく名演説をされましても、それが具体性を帯びないということになりますと、果たして日本としてこれからどう一体取り組んでいったらいいのかという疑問がまた新しくそこに生まれるということは不幸なことではなかろうか。恐らく前内閣を継承された総理御自身が、当然のことながらそうしたような理想を踏まえつつ、現実にどう対応するかという、そういう問題もすでにお考えがおありになるんではないだろうか。あれもこれもという総花的にはとてもいきません、米ソですらいかない問題があるわけでございますから。ただ、日本として何とか果たせる役割りというものがあり得はしないかということ、私は常々こう考えるわけです。後で私提言を交えて申し上げたいこともございますけれども、まずその前に、総理御自身からその辺のお取り組みになる考え方について、具体的にまたお考えがあれば、お聞かせをいただければ大変ありがたいと思います。
  211. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 米ソの問題もさることながら、わりあいにわれわれがいま関心が薄れていて大事な問題は、米ソ以外の第三国、あるいは発展途上国に対する核拡散の問題があるだろうと思います。あるいは中国でもフランスでも英国でも核は依然として開発されて、精度は向上するとか、能力は上昇しているという現象は続いておる。特に注意を要するのは発展途上国の場合でございまして、米ソの場合にはわりあいに制御装置が国際的な仕組みの中や監視の中で行われておる。ところが発展途上国の場合には、そういう制御装置というのは余り効いているようには思えませんし、非常にエモーショナルな動機で物が動くという危険性があると思うんです。そういう意味において、発展途上国に対する核拡散の問題もわれわれは大きく関心を持たなければならぬ。かつてイスラエルの空軍機がイラクの原子炉を爆破いたしましたけれども、あれがいいか悪いかは別として、ともかくああいうようなことが起きているという事実をわれわれ自体は見逃すことはできない、そう思っております。  そこで、米ソの問題になりますと、これはジュネーブでSTARTをやっており、あるいはINF交渉をやっておりますから、その中身をよく情報をつかんでみないと、われわれはうかつに発言できないものがあります。非常に高度の専門的な内容がこの問題には含まれておると思うからであります。そういう意味において、まず両方の事情、あるいは主張、あるいは兵器の性能、こういうものをまずよくわれわれみずからが確かめて、しっかりした判断力を持つということは現実問題として大事なんじゃないでしょうか。単に抽象的に、お説教じみた演説だけをしておるだけでは、これは前進しないのでありまして、われわれとしてはそういう意味における情報の公開といいますか、内部の兵器の秘密なんかはなかなか発表できないでしょうけれども、でき得る限りのそういう現状に対する情報を世界の関係国に対して明らかにしてもらいたいという要望が私にはございます。アメリカの場合は民主主義国家ですからわりあいに大っぴらな点があるように思いますが、ソ連の場合はこれは雲の中に包まれ、霧の中に包まれて、全然状況はわかりません。そういう意味において、核兵器の問題に対処するについてはソ連側の情報、状況というものも公平に世界に明らかにする、その上に世界が正確な資料に基づいて判断を下す、そういうことが必要ではないか、このことを特に私は強調いたしたいと思うのであります。
  212. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにそれも一理あるであろうと率直に認めます。ただ、特に先月末、レーガン大統領が相次いで出した政策を見ておりますと、その政策決定に至るまでのいろんな過程というのは普通あるわけでございますけれども、少なくとも新聞報道による限りは、ときにはレーガン大統領独断専行でもって、今度はこうやるぞ、その研究をせいという、こういう行き方がどうも目に強く映るわけであります。そうしたことを踏まえた上で、やはり日本としても、そういう危険な発想というものについては十分要望を込めたレーガン大統領に対する注意、勧告、そしてそれを織りまぜた米ソ両国首脳の会談へ何とか総理御自身がレーガン大統領との話し合いの上で、できるだけ早い機会にやはり両国首脳会わして、忌憚のない率直な意見交換というものをやらせない限りは、それはやってもその結論が果たして出るかどうかということは、それはむずかしいかもしれない。しかし、会って話をするということだけで、そこで一つの新しいきっかけができて、解決への糸口がつくられるかもしれない。そういうことを願っているのは決して私一人ではないし、恐らく総理御自身もそういうことを時折、あるいはお考えになってこられたのじゃないだろうか。だから、具体的に行動を起こす場合にはそういう一つの側面もあるのではないだろうか。ただ、米ソが、それは確かにすぐれたいろんなもの、機器について開発が進んでいる。それもある程度予備知識の中に入れつつ、その成り行きを見詰めつつ、そして助言を与え、あるいは反対をするということも結構ではあろうかと思いますが、そういう方向へ行かない前に求めるということも一つの方法ではなかろうか。したがって、これは米ソ首脳会談ということはもう大分前から提唱されております。けれども、いまだに実を結ばない。そこにはやはり相互不信というものが底流に根差しているがゆえに、一向にその道が開けないんではないだろうか。少なくとも同盟国として胸を張って、米国とのかかわり合いを持つ日本として考えれば、その点はストレートに総理を通じてレーガン大統領に申し入れるということぐらいあってもいいのではないかということも一つの方法である。こういった点について、まだほかにもあると思うんですが、たとえばそういう問題についてはどういうお考えを持っていらっしゃるか。
  213. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は一月にアメリカへ参りまして、レーガン大統領に会いまして、それからこの国会で御報告をしまして、御答弁を申し上げたときにも、レーガンさんは意外に軍縮と平和の問題に熱心なんですよ。そして、米ソ首脳部会談について私からも話をした。レーガンさんはそれをやりたい希望を持っている。それにはジュネーブにおけるSTARTの交渉を見て、どの程度ソ連が実証性のある、誠意のある回答を持ってくるか、あるいはINFにおけるソ連の反応等も見て、それを見た上で外務大臣同士の会議をやらして、その上に立ってトップ会談を考えていい、そういうことを彼が私に言ったということをここで御答弁申し上げました。やはりそういうコースで物は動いているように思います。  INFの交渉にいたしましても、ゼロオプションから、最近の提案を見ますと何とか妥協点を見出そうという努力があります。われわれはこれに対して、アジアが犠牲になってはいかぬという警告を発しており、全世界的規模においてこれは解決すべきであり、終局的にはゼロオプションを捨ててはならぬ、そういうことを私たちは言っておるわけであります。  そういう点からしますと、アメリカ側におきましては何とかその実証的な確かめを持った上でやりたいという気持ちがあるんだろうと私は思っております。やはりパーシングII自体がヨーロッパに展開されるという現実が出ない間は、このINFの交渉も実らない、ソ連の方はテーブルに着かない、口だけではだめだ、そういう点でNATOは一致してパーシングIIの展開を認めた。これを最初に言い出したのは、シュミットさんですからね、西ドイツの。そういう形でヨーロッパの人たちはかなり実証的な、具体的な頭の思考傾向も持ち、また経験もそういう形でやってきておるわけであります。ですから、レーガンさんの軍拡にいたしましても、私はそういう性格があると思うんです。ソ連をテーブルに着かせるための一つのゲームであるかもしれぬ、政治的ゲームであるかもしれぬ、そういう面もなきにしもあらずだと見ておるわけです。したがいまして、国際政治の現在の複雑微妙なやり方というものは一面的に批判できるものではないのであって、構造的によく深く深部をとらえて物を考えていかなければならぬと、そう考えておる次第であります。
  214. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最近の米国首脳といいますか、特に大統領初め、あるいは国防総省の主要人物、最近だけでも二つ三つ出ているんですね。たとえばミサイルの迎撃新防衛システムの研究開発をせい、あるいはまた限定核戦争の効用などを説いている。一方においては、いま総理がおっしゃられたように、レーガン大統領自身が大変軍縮に熱意を持っている、結構だと思うんです。その半面には、そういったやりとりがゲームだということになりますと、これは大変な深刻なことになりますんで、われわれとしてはやはり放置できない問題であろう。その辺の判断というものが迷いますね、確かに。僕は総理の言ったことを御信頼申し上げますよ。レーガンさんにそのとおりやってもらいたい、軍縮の方向へ。ところが一方においては、そういういま申し上げたような仕組みをこれからつくろうではないか、そしてその一環として日本もその戦略的な立場に組み入れよう、こういったところに対米武器技術供与の問題も恐らくゆえなくして出た問題ではなかったろう。いろんなそういう絡みの中で、むしろ日本側としては、何か軍拡の方へ道を開く方向へ手をかしているのじゃあるまいかという疑問がまだ全体的にぬぐい切れないという、そういう現状ではなかろうかというふうに思うんですよ。  総理御自身は、いろんな伝えられるところ、あるいは外務省から直接いろんな情報が入ってくる場合、報告が入ってくる場合、いろいろございましょう。しかし、いま申し上げたようなことは、これは全然全くないことを私がいま申し上げているわけじゃございません、少なくともこの二つの問題に限って申し上げても。そうこうしているうちに、またぞろ日本に対して、同盟国の責任分担を果たすためにというようなことで防衛力の強化を押しつけてくるというのは、今日までずっとその経過を考えてみると、後退するというか、逆戻りするような方向で、少しも努力が払われていないんではないか。軍拡をすることによってバランスをとる、これじゃもうどこまでいっても際限がないということにやっぱり恐れを抱かない者は私は一人もないだろうと思うんです。繰り返しになりまして大変恐縮でありますが、一方においてはいまおっしゃったように軍縮を、大変またそれが評価されている。片っ方においては、いま言ったように迎撃ミサイルという一つの防衛システムをつくろうではないか。ハリネズミみたいなものですわな。撃ち込まれる前に撃ち落とすというような方法ですから、それはアメリカ国内においても大変異論がある、批判があるということが伝えられております。お金もかかるし、技術的には非常にむずかしいだろう。けれどもそれをあえてやらせようという、研究開発をせいと、こういう指示を与えたということが伝えられているわけです。これじゃまるで軍縮と逆行する考え方になりはしないか。そういう点について、総理は何らのいままで疑問もなくアメリカの言うとおりお認めになってきたのか。やはりそういう心配があるというふうにお感じになって、そういう問題が出たならば出たような対応の仕方というものを十分考えておかなければならぬなあというふうにお考えになっているのか、いかがなものでしょうか。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり内閣あるいは政治を担当する者といたしましては、日本の運命を考え、日本の国益を考えて日夜やらなきゃなりませんので、非常に重層的構造で世界をとらえ、あるいは各国の動きについても表と裏をよく考え、そういうような政治の現実の上に立って、そして日本の安全と独立、繁栄を確保し、平和を世界的にも維持していくことを考えなければならぬと思うんです。非常に耳ざわりのいい美しいことを言うということは簡単なことであり、それは国民の皆さんもすぐ喜ぶことで、われわれも言いたいところでありますが、政治の現実自体を考えてみると、いやなことやきついことで平和が維持されているという現実を無視できない。そういうところまで隠して、国民に真実も知らせないできれいなことだけ言っているということは、私は責任ある政治家ではない、政治というものは、少なくともそういう苦しいことやつらいことも耐えた上で行われるのが現実の政治である、そう考えておるからであります。
  216. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それと、もう少し話題を転換さしていただきますが、やはりわれわれとしては、核軍縮というものに最大の重点を置いてこれからも強力に推進しなきゃならぬ、これは国民的な願望ですから、むしろ世界的な要望でしょう。そのためにはいろんな連携というものはあると思うんですね。昨年の軍縮特別総会は、草の根運動から始まって大変国際世論が沸き立ちました。それも一つの大きな歯どめをかけるための運動であったでしょう。その火を絶やさないようにするために、また政治は政治の次元でもって取り組んでいかなければならぬいろんな問題があろうかと私は思うんですよ。  たとえば、先ほどちょっと触れましたけれども、非同盟諸国との間の連帯感というものを、これからどういうふうに具体的にとりながらその輪を広げていくのかということも一つの考え方でございましょう。あるいは国連において——残念ながら日本の場合は国連における上級幹部の職員はたった一人なんですね、分担金がたくさん多くても。これじゃ機能しない、はっきり申し上げて。言うことも言えない。それはまあ仕方がない、いままでそうなってきちゃったんですから。せめてやはり国連の機能強化の上に、日本の有能な人材配置ということも当然起こるでしょう。そしてまた、平和維持機能の強化のためには一体何を果たさなければならぬのかという問題、具体的に日本がやれそうな問題あるわけなんです、はっきり申し上げて。いままで時間かかってきてできないことは、いますぐにと言ってもなかなかむずかしいかもしれない。しかし、これから三年先、あるいは五年先、短期、中期の展望に立って見た場合、一つ一つやっぱりつぶしていくような、表現は悪いかもしれませんけれども、解決していくような方向へ具体的にやっぱり道を開くということが必要じゃないでしょうか。それがせめてもの、国際世論を喚起させる方向へ役立つでしょうし、また米ソもそのことに耳を傾けなければならないという、そういうことになれば、あるいはこの機会に一遍話し合って、とにかく核軍縮の方向へ足並みをそろえようかと。非常にむずかしいことかもしれません、簡単にいかないかもしれませんけれども、やはりそういう環境をつくることも私は必要ではないだろうかと。やっぱりあると思うんですよ、それに具体的に日本が果たす役割りというのは。だから日本は、広島に、あるいは長崎に、ということを、いつも手を挙げて意気込んでみたって、それはむしろ意気込むんじゃなくて、先頭に立ってその具体的な行動を起こすということの方がむしろ必要である。さっき総理もそのことをおっしゃった。それは理想論は結構だ。けれどもやっぱり実際の行為というものが必要だということをおっしゃった。いま私はそれが必要な時期ではあるまいか。だから、私はもっと総理御自身がやっぱり、相当いままで長い御経験の中で、いろんなことの発想の中で、日本の運命と世界の平和というものを考えてみた場合に、一番最大の問題は何かということは言わずもがなです。そのためにはいま何をしなければならぬのか。いま申し上げたような問題についても十分僕は可能性のある問題ではないかと。この点なんかはいかがでございましょう。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまお話しになられましたところは、非常に大事なお話をしていただいたと思います。われわれも具体的な対策につきましてそれを慎重に検討してまいりたいと思っております。  私は、きょうは米ソの問題だけでなくして、第三国に対する核拡散というものは案外忘れられているということを申しましたが、こういう点につきましてもわれわれはひとついろいろな具体的な考え方を持ってまいりたいと思います。これはやはり原子炉、あるいはウラニウム、あるいは技術、そういう具体的な専門家にかかわるような問題もすぐ絡まってくる問題でこざいまして、やればやれる問題でもあります。米ソの問題につきましては、やはりわれわれは第三国として精細な情報を要求すると、アメリカに対してもソ連に対しても要求すると、そういう権利があると私たちは思っております。
  218. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私はいろんな角度からいま少々意気込んで申し上げた理由は、核兵器というものは、まあコンピューター操作によって完璧を期されているんだろうと思うんですけれども、事故ということを忘れていはしまいかということを考えるわけなんです。それで、いままで、まあどういうところから出てきた資料かわかりませんけれども、私のいま手元にある資料によりますと、航空機の事故については一九五〇年以降現在に至るまで四十件に上るんです。核搭載しているんですよ。原子力潜水艦、これが約四十件、それから、核兵器の基地と思われるようなところの、そういう場所で十三回、今日までそういう事故が発生している。これはソビエトの方はわかりません。アメリカ側において起こった事故の件数です。人も死んでます。汚染もされてます。それは小規模で済んだからよかったのかもしれません、不幸中の幸いであったのかもしれません。これがどっかで、まあコンピューターですから、機械ですからね、全く完全だっていう保証は何にもないと僕は思うんですよ。特にいま中米あたり、ニカラグアだとかエルサルバドルで紛争が起こっている。まだそれはおさまってない。その近辺あたりでもし何かの拍子でアメリカの航空機でも、あるいは原子力潜水艦、あるいはその他、もし何かの事故で、バーンと一発事故によって起こった場合、それが連動してソビエトがやったんじゃないかということの可能性というのは十分あり得る。そういう心配もあるから、とにかくいまむずかしいんだと言って、これはもう二十一世紀から先の問題と言って捨てておけない。こういう問題であるがゆえに、いまは特にその点を強調して申し上げたわけです。  これは、核兵器の事故の発生状況についてはどっかで掌握しておりますかね。これは外務省の方がわかるかな、防衛庁の方がわかるかな。わかっているなら概略を教えてください。
  219. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 従来の核兵器にかかわる事故については、先ほど先生御発言資料と私どもが持っているのはさほど大差ございません。ただ、一般的に言いますと、アメリカにつきましては、おっしゃるとおり五〇年のころからB29、B52の事故、あるいは核基地の火災等、大体約三十件、それから英仏については数件という報告がなされております。他方、中ソについては全くわからない、そういう状況でございます。ただ、最近は非常に事故が減っていると、これは当然のことながら安全管理がきわめて進んでいるということを示すものではないかと、そういうふうに認識しております。  以上でございます。
  220. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そのことを、いま新井さんが答弁されたことをいま総理もお聞き及びいただいたと思いますが、この日本列島の周辺、申すまでもなく米ソの原潜がとにかく相当数と言った方がいいんでしょう、相当というのは多い場合もあるし、少ない場合もあるけれども。これが恐らく遊よくしていることは間違いない。もし仮にそこで、どこかでやられた場合に、日本が被害国となり得るという可能性は、私はなきにしもあらずである。それでなくても、エンプラが来た、ミッドウェーが来たということになると、大騒ぎになる。何も形に見えるものだけが問題じゃないですね。海の底、しかも深海を走っているわけですから。そういうことを心配すると、もう際限がない。やはり核の脅威というものは現実的に、しかもわれわれが実感として、それがもう目の前にある。したがって、もう何としてでも軍縮の方向へ日本がやっぱりやらざるを得ないということは、これは恐らく総理も実感であろうと思うんです。実際あるんですから。しかも、この中でひどいのがあるんですよ。墜落したB29かなんかの搭乗者を調べてみたら麻薬中毒者だった、そういう場合だってあり得るんです、アメリカの場合ですから。どういう人間が操作しているかわかりません、これは。そういう危機感をこの機会に、せっかくの機会でありますから、これは私のみならず大いにそれを認識を深めて、この問題の一日も早く解消されんことを全力を挙げて、やっぱり国民の総意としてこれに取り組んでいかなきゃならぬであろう、こう思うわけであります。  それから、まだあるんですよ。ジュネーブの軍縮委員会、これは外務省の大使の皆さん方、いわゆる出られている方、大変苦労しているんです。四十カ国集まっているけれども。米ソは別です、密室でやるんですから。せめて同じテーブルについて科学兵器の禁止であるとか、先ほどもおっしゃられた核拡散防止法、地下実験の禁止、こういった問題もうたくさん残っているわけですね、未解決のままに。その話がかみ合わない。軍縮委員会に加盟している四十カ国自体の議論がかみ合わない。かみ合わない問題点があるようです。これは幾つかあるんですよ、ここに。一つは、特に非同盟、それは名指しで言うことはいかがなものかと思いますけれども、軍縮をやるだけの政治意識が欠乏しているとか、いろいろ参加されている特に発展途上国の中には利害が相反するという、その利害関係の対立によってなかなか話がかみ合わないとか、あるいは議事規則自身の不備というものもあるのではないかというような、こういう指摘があるわけです。こういった問題なんかは実質的に政府が強力にバックアップして、それでもちろん出先の方を督励されるもよし、各国とやはり話し合いの機会を絶えず持ちながら、まずジュネーブの軍縮委員会自体からの改革ということも、軍縮を進める一つの手段ではなかろうか、こういう考え方があるわけです。  それから、こればかりやっているとほかの質問に入れませんから。もう一つは、私はこの機会に、総理なら総理の提唱で結構ですよ、専門家によるところの核防会議なんというものをこの際おつくりになったらいかがか。つまり、科学者であるとか、あるいは哲学者を含めてもいいでしょう、それから政治家、あるいは軍人、あらゆる面にわたって経験のある、豊富な知識を持っているそういった方々、あるいはその非核保有国のメンバーだけでも最初いい場合があるかもしれない。あるいは、できれば核保有国のメンバーも全部入ってもらって、そこで真剣に討議をして、あたかも、例としては適切でないかもしれませんけれども、先ほど申し上げた、ドイツでいまつくっております国際開発独立問題委員会であるとか、あるいはストックホルムの国際平和問題研究所であるとか、それよりももっと強力な、オーソライズされた、そういう機関をつくって、それを軸にして、そして世界の深刻な世論喚起のための行動を起こす一つのグループとしてつくることも一つの考え方ではなかろうか。これは一つの提言でございますけれども、これを踏まえて総理御自身はどんなようにお受けとめいただけますでしょうか。
  221. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在のそういう人類の深刻な問題につきまして、日本及び世界の専門家が集まって真剣に討議して、われわれ政治家の向かうべき方向を指示していただくということは非常にありがたいことでありますので、よく考えてみたいと思います。
  222. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにいたしましても、この問題はもっとやはり精力的に取り組むことが必要であろう。  軍縮についての最後の締めくくりとして申し上げたいことは、通常兵器なんです。これはもう総理もよく御承知のとおり、世界の兵器生産の八〇%は通常兵器だと言われております。いま世界で六千億ドル使われておりますね。まあ一ドル二百五十円とすれば百五十兆、日本の政府予算の三倍です。もう一秒で約四百五十万円そのために使われていくというんですから、えらいことですね。むだなことです。安倍さんはこの間、そんな愚かなことはやめるべきであるということを外務委員会答弁された。同感です、全く。ですから、この通常兵器の問題を決して軽視できない。これはもうここで再確認なんです、どちらかと言えば。核軍縮を進めると同時に、通常兵器も同時並行でもってこれをやはり進めなければならぬであろう。そうでなければ、特に発展途上国、紛争国というものは、国連創設以来もう百回以上に上ると言われております。それは全部通常兵器であります、ベトナム戦争初め。膨大なそのためには資源が使われている。これまた愚かなことだと思うんです。愚かだとわかりつつも、そこにお互いの相互不信感というものが根差すためにそういうような紛争が起きてしまうということは、それは常識でございましょう。したがいまして、これから国連を中心として、また総理御自身が国連総会に御出席になる場合もあろうかと私思うんです。やはりその場合に一つの提言として、それは前総理の提言もございましょう。もっとそれを煮詰めた上で、具体的に通常兵器についてはこうすべきだと、少なくとも非同盟諸国を初めとして、発展途上国あたりの同意を得ながら、通常兵器の生産を縮小していくという方向へ向けることが、あるいは核軍縮のきっかけをつくる一つの足がかりになるかもしれない。そういう点についてもあわせて総理の抱負をひとつお聞かせをいただきたい。
  223. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核兵器、通常兵器を問わず、軍縮は必要であると思います。通常兵器につきましても、いろいろ第三国に対して通常兵器が多く売られているとか、あるいは通常兵器自体についてはわりあいに野方図にそれが見逃されているとか、そういう点はわれわれも御指摘のとおり考えなければならぬところでございまして、軍縮という限りにおきまして、通常兵器、核兵器ともにわれわれはこれを削減していくように今後とも努力していかなければならぬと思っております。
  224. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ことでひとつもう一遍問題にしたいなと思っていたんですけれども、やはりこの対米武器技術供与の問題、これは一応政府統一見解が出された。しかし、それでも果たしてそうなのかなという疑問がぬぐい切れない。いまこれに頭を突っ込むためにはちょっと時間がなさ過ぎる。こうした問題も、やはりいま申し上げたような総理のお気持ちとうらはらに、違った方向へ行っているんじゃないかという心配が出てくるんですね。これはもうとにかくそういうことの将来ともにわたって、第三国移転を含めて、絶対ないように、これは政府としても今後重大な決意を持って取り組んでいただきたいなというふうに思うわけでございます。いま別に答弁要りません。  そこで、この問題に関連して、せっかく山中さんきょうお出かけをいただいておりますので、確認をさしていただきたいわけです。  それは前々回の予算委員会でも申し上げたと私は思うんですが、何かすっきりしたような、すっきりしないような話で終わってしまった。通産省の資料拝見いたしましても、日本から相当量のライフル銃が輸出されておりますね。これは猟銃という使用目的を明確にして、通産大臣の承認を得て、そしてそれぞれの要求のある国々へ輸出されている。確かに猟銃というその限定についてはそれなりの理解の仕方も実はあろうかと思います。ただ、ここで問題になりますのは、この資料拝見いたしましても、年々歳々膨大にふえているんですね、この数量が、日本から輸出されているライフルが。五十五年度のものしかありませんけれども、これで年間十二万七千九百九十四丁というようなものが出されているようであります。  ここで申し上げて、明確なひとつお答えをいただきたいと思っておりますのは、ライフルが改造されないかという問題です。もちろん輸出する方も、輸入する方も、その国にとっても相当信頼度の高い、これがまあ前提になることは当然であろうかと私は思うんです。しかし、行った先から第三国へまた行かないという保証は何にもないわけですね。もしそこで弾倉であるとか、撃鉄が改造されて、いわゆる連発銃に改造された場合には、これは十分武器として通用できる危険性があるのではないかという心配。これはどうかわかりませんが、これは確認しているわけでもありませんから、こういうことがあるんです。二年前のことなんですね。アメリカのフロリダ州の中部にあるクリスタル川付近の牧場と、こう書いてありますね。ジャングル戦の猛訓練を受けていた二十代から三十代の男、それがFBIにつかまったわけです。それで、よく調べてみたら、その十三人のうち十一人は米国籍、それからあとは中南米国籍。皆顔に墨を塗って、迷彩服を着て、まさしくゲリラ活動のための訓練を受けている。その中にあった銃の中に、米国製、イスラエル製、ソ連製の武器のほか、日本製の銃もあったというんです。あり得ないことではないと思いますよ。しばらく前にどこかの、インドでしたか、ハイジャッカーが持っていた武器も——これは日本人のハイジャッカーじゃなくて、日本製の銃であった。  いま、いろんなところでまだ紛争が終えんしておりません、御承知のとおり。いま一番彼らがのどから手の出るほど欲しいのは銃器だと思うんです。いま持っているやつ、アフガンなんかの抵抗軍が持っているあれを見ても、ずいぶん古ぼけたような銃を持っている。それでもちゃんと持って戦おう、先ほど来から申し上げているニカラグア、エルサルバドル、こういったところ、中近東あたりは最近ようやくおさまったとはいうものがいつまた火を噴くかわからない。しかも種々雑多ですね、持っているものは。つい最近発見されたものの中でも、出てはならないはずの銃弾、NATOという印のついた、それがちゃんと革命軍かなんか、ゲリラかなんかの手に渡っている。  そういうことを考えますと、これは老婆心であればいいんですけれども、果たして使用目的どおり使われているのかな、それが軍事転用されているというおそれはないのかな、これはチェックの仕方といっても、これはチェックなかなかできないと私は思うんですね。どうすればそういうことの心配のないようにしたらいいのかな。これは総合的にいろいろなことのあった問題を集約していま申し上げているわけです。この点について、むしろ専門家である山中さんから伺っておいた方がよろしいでしょう。
  225. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは日本製の猟銃といいましても、そういう転用の可能性というものはライフルだと思いますね、ショットガンじゃないでしょう。ゲリラとか、いろんな非合法武闘集団といいますか、そういうのの武器には手に入るあらゆるものを、たとえば石ころでも戦いの道具としては使っているわけですから、その中に日本の輸出したライフルであろうと思いますが、それが入っていたことはあり得ると思うんです。しかし、通産大臣の手元で輸出承認を受けて出るものには明らかに猟銃のみに限られております。したがって、余談ですが、先般、ベルギーはまた有名な武器の製造国ですから、会議に行きましたときに聞きましたら、日本製の猟銃というのは非常に優秀であるということを聞きました。ですから、海外では意外と評価高いんだなと思ったんですけれども、現在の制度による輸出承認は、明らかに軍隊によって人を殺傷するために使われる武器になる可能性があるとか、武器であるとかという、そういうチェックを輸出承認でやるわけでありますから、どう見たって日本を出るときには猟銃以外に考えられない形のものを、持っていった先でどう使うのかという、そこのところはよく判明しがたいんです。いつかも話したことがありますが、日本では汎用品どころか、日常のレジャーとして売られている例のアクアラング用のそういうものとか、普通の人が持っている通信用の無線のマイクですか、そういうようなもの等が北朝鮮の方にも当然汎用品ですから出ていきますが、しかし韓国側にとってみれば、海から上がられたら——それはまたときどき上がってくるらしいんですが、日本製のそういうトランシーバー持って、日本のアクアラングをつけて海から上がってくる。何とかとめる方法はないかという、これは韓国にとっては当然のそういう、事実あったことですから、御意見があるのはあたりまえでしょうが、ちょっとしかし全国の港でほとんど買えるものまでわれわれは、それを武器になるからといってとめることはできませんということを申し上げているわけですが、どのように注意しているかと申しますと、たとえばこの間、青函連絡船の売却が民間に行われました。それを買った東京の方が北朝鮮に出すとこういうことに、まあ運輸大臣の申請は受けておりますが、輸出承認の際に私の判断に係るわけでありますから、それが北朝鮮の方に行った場合に、やはり大きな船でありますので、兵員輸送に使われた場合に、韓国側から見たらどういう目で映るだろうかということで、防衛庁の意見なども徴しながら、それはいわゆる国際的に禁止されているようなココムの中の物資に含まれる船舶のスピード、とても規制以下のスピードしか出ませんし、日本を離れるときもそういう改造をしておりませんし、それから上陸用舟艇として大量の、一個中隊以上の者が、場合によっては詰めれば一個大隊近く人間は積める。それを海岸に突っ込んで上陸することができるかというと、後ろの方にプロペラが、推進機がついておりますから、とてもそういうことも無理であるというようなことで、最終的には輸出の承認をいたしました。  このように細心の注意を払っておりますが、一応、法律上も、省政令でも、これは猟銃であるということは決められておるもの、それはやっぱり出さざるを得ない。それを輸出を禁止するには現在の法令の構成の、軍隊が持ってそして殺傷の用に供するために買うものであるという認定がきわめてむずかしい。ですから、使われ方がいろいろありましょうが、本来は猟銃として皆さんが外国で手に入れておられるものである、現在のところはそう考えておりますが、渋谷先生のおっしゃったような、そういうことが起こり得るだろうということは考えられますけれども、まあそれが国際的に日本が非難の的になるというようなことがあれば、これは改めて国会の皆さんにも相談し、政府の中でも相談し、これはわれわれのつくった法律、政令でありますから、直せばよろしいと思っております。
  226. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最近は刑務所の中でも改造ガンがつくられるくらいの世の中でございますので、もうでき上がっちゃったものはいとも簡単に改造できるぐらいのことは、今日ではもう常識になっているであろうと。銃把を見るとあれ、よくわかるんだそうですね、桜を使っているそうですから、これはもう日本製だということが。いまおっしゃったように、確かに日本のライフルというのは非常に世界でも優秀なんだそうだ、だから引く手あまただ、その引く手あまたの背景の中にはそういう危険性がひそんでいなければなあということを心配するわけです。ですから、場合によってはある程度数量的に制限するのはいかがなものかということも、あるいはそういう事故を未然に防ぐ上から必要なことでもないだろうかということも考える。これはもう、こうしたことは問題が起こってからでは間に合いませんので、やはり、次善の策として、厳重にその点のチェックはおやりになっているとは言うものの、そういった点についてもあるいは場合によっては配慮してもよろしいんではないだろうかというふうに感じられます。  せっかくですからもう一点お願いします。  そうしたような問題を通じまして、いまずっと軍縮から武器、こういうふうに来たわけです。この使われている資源は何かということになるんですね。これはもう何もここで力んで申し上げる必要はございません。その中で、非常に軍事用として使われるものの中には、われわれが民生用として使われるものとやはり共通するものがたくさんあるわけですね。銅であるとか、鉛であるとか、コバルトであるとか、ニッケルであるとか、マンガンであるとか、そういったものが軍事用にいま大変使われている。むしろ、先ごろはオイルショックということで、資源の乏しい国としては大変われわれとしては悲しい思いにさらされる危険性があるわけでございますけれども、いまむしろ油よりもそういった非鉄金属類を中心としたものというものがもう一遍見直されなければならないんではないだろうか。もうこれは枯渇することは目に見えていると思うんですね。もう掘り尽くされればそれでおしまい。しかも、それが軍拡のために次から次へととにかく投入されていくということになった場合に、一体将来どうなっていくのかなという、しかも日本ではそうした非鉄金属類というものは皆無に等しいくらいであります。ほとんどアフリカであるとか、オーストラリアであるとか、カナダ等々のそういう産出国に依存をしなければならない。そういう面を考えましても、戦争は絶対あってはならないし、われわれの過去における苦い太平洋戦争なんというものは、途中でもって船が沈めるれ、    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 入るべき油も入らない、ゴムも入らない、何も入らない、最後はお手上げだと、こんなことはわかり切っている話ですから。ですから、この意味におきましても、どうしても軍縮を進めなければならぬということが一つと、それからもう一つは、日本としても絶えず万が一ということを考えつつ、備蓄というものを頭に置かれて計画を立てられ、民生安定のために混乱が起きない、そういう対応はきちんとされているであろうと。いまたしか、私の記憶では銅とアルミが備蓄の量が一番多いと思うんですね、一カ月ぐらいですか。あとはほとんど一週間以下ですね。だから、こういったことが、もし万が一のことがあって、それが輸入がとまったということになりますと、日本の企業はもう完全にギブアップであります。これはドイツの例があるんですね。シュミットがまだ首相のころにひそかに——いまはもう公開されていますから、その当時はひそかに、ショックが大きいことを考えて、それで五種類かなんかの非鉄金属、もし一週間輸入がとまったときに、ドイツ経済界に及ぼす影響ということをひそかに調べさしたらしい。約一千万以上の失業者が出ることがデータでぱっと出たわけです。大変なことですよ。日本はドイツと大体共通したそういう環境であろうと。そういう点ではもういろんな考えを持っていらっしゃる山中さんのことですから、十分御配慮の上、十分対応できる、将来こういうことがあっても絶対大丈夫だという、その点をお伺いしておきたいと思うんです。
  227. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) アメリカを中心とする中では、軍需用の国家備蓄をやっている国もあります。たとえばアメリカなどはチタンについて不足していますから、これは軍需用備蓄を国家がやっておるわけですけれども、日本の場合は御指摘のとおりに民需要であって、私たちの周辺のなべかまから、ラジオからテレビからという、そういう私たちの生活を近代的に豊かにしてくれている周辺のものが全部必要として、レアメタルその他の物資について、今国会に新しく国家備蓄ができるような改正をいたしまして、いままでは民間備蓄一本やりできていたわけでありますが、民間は大体三カ月から六カ月のものを一応確保しているようでありますが、民間というのは、やはり自分たちの企業の採算の上からやりますから、本当に国民の生活の安全保障という立場を考えていないとは言いませんけれども、自分の企業の論理で備蓄を国家がさせた。それに一応は三カ月か六カ月ぐらいの備蓄はありますけれども、今回大蔵省に、石油でいいじゃないかと、もう石油の国家備蓄以上は要らぬじゃないかという話でしたけれども、しかし国民生活が、いまおっしゃったようにハチの巣を突っついたような生活になって、もうそれでもがまんすると、しかしそれは私たちは千九百三十数年代の生活に逆戻りしてもいいかということを問いかけることにもなりますから、やっと大蔵も国家備蓄、それから官民の折半による備蓄、そして民間の備蓄と、三種願に分けて、国家安全保障の立場から予算で認めてもらいましたので、法律を御審議していただいて決定をしてもらったところでございます。そういう御指摘は私どもが手おくれになってはならないことであって、事前に国家がどこまで責任を持っておかなければならないかという問題にこたえなければならないんでありますが、日本の場合はあくまでも大前提は軍需備蓄ではないということ、そして民間のための備蓄であるということにはっきりと線を引いてやっていくつもりでございます。
  228. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、国際経済協力の問題、わずかな時間ですが、この問題に触れさしていただきたいと思います。  年々歳々、国際経済協力についてもその実を挙げつつあるようでありますけれども、これは当然のことながら先ほど来触れてまいりましたように、南北問題解消の上でも大きな役割りを果たすでありましょう。同時に、これから効果的な援助をするためにはどうしたらいいのか、いま恐らくちょっと曲がり角に来ているんではないかという感じが実はしないではございません。総理御自身がいままで平和外交というものを基調にして、これからもそういう方向に向かって、政府の基本方針としていかれる以上は、いま申し述べたこの問題は避けて通れない、むしろこれを積極的に取り組んでいただかなければならない問題。ただ現状としては大きな曲がり角に差しかかっているんではないか、場合によっては量より質への転換を図ることも必要でありましょう。あるいはいわゆる無償供与という問題の幅を広げていく必要もあるのではないだろうか等々、私がいままで頭の中にあるだけこうずっと考えましても、そういったことが実はございます。その点についてまず総理御自身の、今後の国際経済協力にわが国が果たす役割りとしてはこう考えているということをひとつお教えをいただきたい。
  229. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国際経済の安定は非常に重要な課題になってきたと思っております。最近はOPEC諸国も乱れがちでありまして、石油が安くなってくるという問題があり、またそのほかの国におきましてもインフレが収束いたしまして、金利も低下傾向にあります。ただアメリカの金利だけはまだ少し高いとか、ドルが強いという点がございますが、これもある程度時間の問題で平準化していく傾向にございます。  これらの状況を踏まえまして、石油を初めとする資源をいかに長期安定に持って南北の対話、交流を、流通をうまくやっていくかということと、先進国同士におきまして為替を相対的に安定して乱高下を避けながら世界貿易をさらに促進していくこと、それがいまの課題であり、恐らくサミットでもそういう論議は交わせるだろうと思いまして、われわれもその立場に立って努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  230. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 特にこの援助のあり方について、その中身を申し上げますと、政府開発援助、これがいわゆるDAC諸国の中でも決して言われる状況ではないのではなかろうか。いろんな資料を中心にいたしまして見ましてもこういう印象、こういうところから、日本は経済大国でありながら云々という、せっかく一生懸命やっているわりにいい評価を受けない、こういう状況が今日まで繰り返されてきたのではあるまいかというふうに思うんですけれども、その点どんなふうにお感じになっていらっしゃいますか、総理は。
  231. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ODAの増加につきましては、倍増計画をもちましていま努力しておるところでございます。最近、しかし日本の海外経済協力に対してこれを評価する声は逐次持ち上がってまいりまして、われわれがこの努力を真剣に継続している限り、日本に対する評価は非常に上がってくるのではないかと思います。
  232. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大変希望的な観測で結構だと思うんですが、いま倍増するというふうにおっしゃった。今回は一般会計に占める割合というものは八・九%に落ちましたね、これは竹下さんがいらっしゃるからよくおわかりだと思いますが。当初の目標一一・七でずうっと六〇年までこれが続いていきますと、大体その目標値に達するんです。ところが、五十六年はうまくいきまして、その目標をわずか一%上回った、一二・七%。昨年度は一一・四%、五十八年度予算については八・九と、こうなっちゃったわけですよ。これでいきますと、五十九年、六十年度というのは一三・六%に引き上げていただかないことには、いま総理がおっしゃったようなことと合致しないわけです。その辺はどんなふうにお考えになっていますか。合致するような方向でいきますか。
  233. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くおっしゃるとおりでありまして、倍増計画を達成しようと思えば、五十九年、六十年はやっぱり一三・六%程度予算を伸ばしていただかないとこれはできないわけでありまして、財政的に非常に厳しい状況ですが、国際的にもやはり日本も倍増計画をやるということを表明しているだけに非常に注目をされておりますので、われわれとしてはぜひともこのODA予算の倍増は最終的には達成をしたい、今後とも最大のひとつ努力を重ねてまいりたいと考えております。
  234. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 総理を初めいま外務大臣がお述べになりましたように、世界の評価を高からしめるということだけではなくして、やはり、発展途上国に対して恩恵を与えるという言い方もいかがかと思いますけれども、それ自体が平和に結びついていく、長い目で見ますと。そういうかかわりがあるわけでございます。財政が硬直していることはよくわきまえております。しかしそういう中でも、しかもDAC諸国の中でも依然として低いなんていうことは、これは褒められた状況ではないんではないか。とりわけ援助条件というものを、言うなれば緩和されていく方向へぜひ向けていただきたいなと思うんです。だから、贈与の分を本当はふやしていただきたい。実はそれが少な過ぎる。そういったところで恐らく、日本の国内経済情勢というものを知らない、あるいは日本の財政事情といるものを知らないDAC諸国から見れば、そういう当たらない批判が出てくるかもしれない。しかし、それはそれとしてやっぱりありがたく受けながら、こちらはこちらとしてその方向へ向かって取り組んでいくというのが当然必要じゃないか。  資料によりましても、これは外務省がおつくりになった資料ですよ、その中にもあるんです。しかも、DAC七カ国中贈与の占める比率は七五%だ。十六位ですよ。下から勘定した方が早いんです。これじゃ褒められた状況ではない。その点を強く申し上げておきたい。  そういうことから、今度新中期目標というものを策定されて、何とか新しいそういう方向を見出していこうという努力もいま外務省としては当然おやりになっているようであります。この点、ことで、援助条件の緩和と申し上げた方がいいんでしょうか、贈与の分が少な過ぎるので、それを一〇〇%に、でき得るならば一〇〇%に持っていくような方向で来年度あるいは六十年度にはぜひその目標に向かってお取り組みがいただけるかどうか。総理のこれは決断以外に僕はないと思うんですね。
  235. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この中期倍増計画は、これはわれわれとしても日本がこれだけの経済大国でありますし、世界的にも一つの責任を持っておるわけでございます。また、南北関係という面から見ましても、開発途上国が非常に経済的にいま行き詰まっておる、こういう情勢でございますから、日本としても中期目標だけは何とかひとつ達成をしたいということで、これからも大いにがんばって、財政の問題はありますが、大蔵大臣もいらっしゃいますが、ぜひともこれは、いわば国際的な公約とまではいきませんが日本として表明しておる計画でございますから、何とか実現をしていきたい。やっとそれによって先進国並みの経済協力体制というものができるわけでございます。  そういう中にあって、無償供与等が一番やっぱりLLDCといいますか、最貧国等には非常に喜ばれるわけでございますし、こういう面もふやしていきたいと思います。その他の援助条件については、国際水準というものがありますから、それはそれなりに考えていかなきゃならぬと思いますが、また同時に、援助する場合も、相手の国の需要といいますかニーズといいますか、そういうものを酌み取って、本当に喜んでもらえるような案件に対して援助を進めていく。そうした援助のやり方というものもいろいろとこれからも検討してまいりたい、こういうふうに考えます。
  236. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 竹下さんには通告してなかったんですが、いまの問題に関連しまして、ひとつ大蔵省の御意見も伺っておきましょう。
  237. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 基本的にいま安倍外務大臣からお答えしたとおりでございます。  確かに大変厳しい財政事情にございますけれども、考えてみればGNPで言えばまさに西側諸国、アメリカの次でありますし、そうしてアジア全体の人口からすれば、たとえば二十五億おったとしまして、一億一千八百万の日本国のGNPがオールアジアよりまだ高い。私ども、日米通商摩擦とかあるいは日欧経済摩擦とかいうことが起こるたびことに、アジアというものに購買力というものが期待できたらなあと、こういう気持ちも率直に思います。しかし、それはわが方のサイドの考え方でございますが、やはりいま外務大臣からお答えがありましたように、相手国の開発に役立つ、そのニーズに適応したもので対応していかなければならぬ。そしてまた、国際取り決めというわけのものではございませんにしても、一応国際社会の中にわが方が中期目標として宣言したものでありますだけに、十分そのことを念頭に置いて予算的にも対応しなければならない課題であるというふうに考えております。
  238. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 あと二分しかありませんので最後の締めくくりになるでしょう。谷川さん済みません、そっちまでいきそうもないんですわ。たくさん整えてきたんですけれども、申しわけありません。  経済協力のいわゆる援助の内容について効果的なことを考えるべきである、それは当然でしょう。それはお金の面もあるが、必ずしもお金の面だけで果たしていいのか。いま飢餓状態に置かれているのが世界の人口の約一割、数億と言われておりますね。まず水の問題、保健衛生の問題、食糧の問題、エネルギーの問題、もうすぐぱっと出てくる問題はそういったものがあるわけです。ですから、そういう具体的に目に映るようなもの、なるほどこちらが御協力申し上げたということに対して、その国々の人の日本に対しての認識、評価というものに連動してそういう反応が及ぶという、そういうこともやはり今後お互いの認識と理解を深める上においては非常に必要なことではないか。お金で必要な場合がありますよ。物、米なら米、あるいは小麦なら小麦でもって直接送るなきゃならぬ場合もありましょう。しかし、いま大蔵大臣が言われたように、現実的に向こうのニーズに沿ったそういうものにむしろこちらが手を差し伸べて、むしろ物の面でつくって差し上げるというようなこと、総合的にそういうものの何といいますか、プロジェクトをおつくりになるもよし、そうしてこれから強力に効果ある経済協力を進めていくということが必要である。  これを最後にお伺いしておしまいにしたいと思います。
  239. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くおっしゃるとおりであろうと思います。開発途上国でたくさんの日本に対する案件が出てくるわけでございますが、そういう中で本当に途上国の開発あるいはまた民生にどういう案件が役立つかということは十分調査をして、本当に相手の国で喜んでいただける案件にしぼってこれは協力すべきだと思います。  私も先般ビルマに参りまして、ラングーンにある生物医学のセンターを日本が無償供与でつくっておりますが、この医学センターで、あるいはマラリアであるとかデング熱であるとか小児下痢の問題であるとか、ビルマの国が一番困っている問題について日本の援助によって研究が進められておって、それが成果が上がっておるということで、大変ビルマの人は喜んでおりました。ああいうことをやれば、日本としても援助をしたかいがあったということを全く痛切に感ずるわけでございますが、やはり国民あるいは国の喜んでいただける効果的なものでなきゃならない、こういう点は今後とも十分ひとつ留意をしてこれからの協力を進めてまいりたい、こういうふうに思います。
  240. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で渋谷邦彦君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  241. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田君。
  242. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず最初に、午前中から議論になっておりました年次防衛計画の問題ですが、先ほど谷川さんの回答も聞きました。五十七年度にはなかったということで、五十六年度以前には確かめるすべがないと、廃棄されていたというようなことで。  私、実はこの予算委員会で、七年ぐらいもう前になりますが、昭和五十一年ごろ、自衛隊の内部に秘密な二部別班というグループがあるということを、事実を挙げて追及したことがあります。あのとき、内島一佐というのがキャップで、二十四名の氏名も私は明らかにしましたが、これは米軍とつながりながら、国内班、国外班があって、国内では共産党など野党についてのスパイ調査、そういうことまでやっている非常な危険なグループだったのですね。陸自の調査学校にはその卒業生で青桐グループというのがあって、私はその百三十五名のリストも委員会に提出したことがあります。調査学校の副校長で陸将補だった山本舜勝氏が、その後の私ども調査によると、三島由起夫の楯の会、これのクーデターの訓練までやっていたと、三島由起夫のあの事件にまでつながりがあったということが明らかになった。その全貌はこの「赤旗」特捜班の「影の軍隊」に書いてありますが、ああいうことを見ましても、自衛隊秘密組織が当時あって、対外情報だけではなくてわれわれの野党の調査までやっていた事実があったんですね。そういう事実が明白になった以上、やはり表向きの年防計画などにもそういうことがあり得るというふうに思うんですね。  防衛庁長官にお伺いしますが、私が七年前に追及したようなああいう秘密組織、現在もうないのかどうか、一切そういうもので不当な、反憲法的なやり方で野党の動向調査などはやっていないのかどうか、今後も一切やるつもりはないか、これをひとつまずお伺いしておきます。
  243. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 防衛庁並びに自衛隊は法律に基づいて設置されておりまする行政機関でもございます。いま先生秘密組織というお言葉をお使いになられましたが、どういう意味秘密組織というのをお使いになられましたか私ちょっとよくわかりませんでしたけれども、今日に至るまで御質疑年防に関して御指摘がございましたので、本日は午後からその関係で御答弁を申し上げてまいりましたけれども、いずれにいたしましても合法的な政治活動を行っておる政党自衛隊行動対象として敵視するようなことはあり得ないと、こういうふうに答弁をさせていただきたいと思います。
  244. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私この問題では資料の提出を要求しておりましたが、資料提出もない。この問題はやっぱり公党を敵視したやり方で、もし事実とすれば非常に重大な憲法問題にもかかわる問題だと思います。  私は、改めて理事会で協議をして、その協議を踏まえてさらに糾明をしたいと思いますが、委員長、この点ひとつお願いいたします、理事会での協議を。
  245. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 年防のですね。
  246. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ええ、年防の。いいですね。
  247. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 理事会で協議いたします。
  248. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 じゃ協議をしていただくことを委員長が言われましたので、次の問題に移ります。  次は、新しい原子力空母のカール・ビンソン、それから戦艦ニュージャージーの日本寄港問題です。  東京新聞の三月三十一日付のトップで「政府筋が三十日明らかにしたところによると、米国政府はこのほど、外務省に対し非公式に同国の最新鋭原子力空母「カール・ビンソン」(基準排水量八一、六〇〇トン)を「六月下旬から七月上旬に、横須賀に寄港させたい」旨を通告してきた。」、「政府はこの事実を極秘にしている。」とありますが、外務大臣、この事実はありますか。
  249. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くありません。
  250. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 以前にこのカール・ビンソンあるいはニュージャージーなどの寄港要請があった場合断る理由はないとあなたは言われましたけれども、もしあればやはり受け入れるつもりですか。
  251. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはまだ何もないわけですからお答えのしようがないわけですが、しかし、核を積んで来るということになれば、これはもう事前協議の対象になりますからもちろんお断りする以外にはないわけでございますが、その他の場合においては、安保条約とかその関連取り決めがありますから、それによって対処していくということでございます。
  252. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう一つ、サンケイの三月三十日付には、この日本寄港が予想されている巡航ミサイル積載の復役戦艦ニュージャージー、四万五千トンについて、これが六月から九月の間、第七艦隊に配属になると米軍高官が述べたと、佐世保港への寄港がきわめて強いことを示唆したという報道があります。戦艦ニュージャージー、これの日本寄港の要請があった場合、横須賀あるいは佐世保、これについてはどういう態度をとりますか。
  253. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これももちろん現在のところは何ら通報はないわけでございますが、先ほど申し上げましたように安保条約、その関連取り決めによってこれは対処していくということでございます。
  254. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 取り決めによって対処するというと、きわめて危険な状況にあると思うんです。戦艦ニュージャージーというのは、核、非核両用の巡航ミサイルトマホークが三十二基装備されています。それで、米軍の発表によると、八四年の六月に核弾頭つきのトマホークが第七艦隊に実戦配備されるということになっておりますけれども、もしニュージャージーがことしの夏、佐世保あるいは横須賀に寄港をしてきて、反復寄港ということがもし起きますと、八四年の夏、三十二基の核弾頭つきトマホークが日本国民や日本政府も案外知らないうちに装備されてくるという事態が起こりかねない。そういう事態については、当然、事前協議を政府としてはアメリカ政府に対して提起すべきだと思いますが、外務大臣、いかがでしょう。
  255. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ニュージャージーには確かにトマホークが装備されておると聞いておりますが、これは非核、核両用のものである、こういうふうに聞いております。したがって、もし核弾頭を積んだニュージャージーが日本に入るということになれば、これはもう安保条約とかその関連取り決めにおいて事前協議の対象になるわけですから、当然これ核を装備すれば対象になるわけでございますし、その場合において日本の態度というのは、これはもうノーだということがはっきりしておるわけでございます。
  256. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題きょう時間がありませんから余り追及しませんけれども、これまでの国会論争で非常に明らかになったんですが、とにかくアメリカ政府は核兵器のあるなしは言わないということになっていますね。日本政府はアメリカ政府を信頼して確かめないということで、だから私は、非核三原則を守らず、アメリカは核のあるなしを言わず、日本政府は確かめず——守らず、言わず、確かめずの核隠し三原則というふうに言っているんですけれども、本当に許すことのできないフィクションがまかり通っているということです。エンタープライズは百個の核兵器を持っているということは、ラロック元提督も証言しています。それからエンタープライズに追随している巡洋艦、駆逐艦などにも百個の核兵器、合わせて二百個の核兵器がこの間二十一日から二十五日まで佐世保にあったということになります。カール・ビンソンのもし寄港があり、ニュージャージーのまた寄港があるということになりますと、これは、政府がそういう核隠し三原則を振り回している間に日本は文字どおり、中曽根首相、不沈空母じゃなくて核空母に日本列島がなるんだと思うんですが、あなたは絶対日本を不沈の核空母、核攻撃空母などにしないと、その決意をお持ちなのか、それを防ぐためにあらゆる努力をする御覚悟なのか、改めて答弁を求めたいと思います。
  257. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 毛頭そんなものにする考えはございません。
  258. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それよく承っておきたいと思います。  さて、午前中、矢田部議員の質問に対して安倍外務大臣は、エンタープライズ、ニュージャージーの佐世保の寄港問題について、ミッドウェーの場合の横須賀のような家族居住地としては、将来において考えられないことではないとも答弁されたですね。私一つ問題にしたいのは、たとえばニュージャージー、これは古い戦艦を新たに改造したもので重いわけです、非常に。それから燃料消費量も非常に大きいんです。東京タイムズの三月二十四日付によりますと、「十二ノットだと最大五十日間、無給油で航海できるといわれるが、米本国から展開するには作戦、経済面で戦艦の維持は困難。米海軍としてはできるだけソ連に近い前進基地に置きたい意向だ。」、そう報道してます。八一年三月、米下院軍事委員会で、「ホルコム第七艦隊司令官は海軍作戦本部の計画企画部長当時、ニュージャージーの母港問題に触れ「ランクづけすると日本が一番最初」」と、そう証言してますね。また、「在日米軍筋は二十三日までに「佐世保基地は将来のニュージャージー母港の候補地の一つ」と語り」、だから、「仮に母港化に至らなくとも、佐世保が同戦艦の活動拠点となる可能性が強いことを示唆した。」という報道があるんですね。やはり、そう重い戦艦をトマホークを積んで太平洋に配備する、米本国拠点じゃなくて日本を拠点にしたい、恐らく佐世保だろう、と言われてますが、横須賀になる可能性も排除できません。  それで、私ども重視しておりますのは、神奈川の逗子にある米軍池子弾薬庫の跡地ですね、ここに千三百戸、新たに米軍住宅を建てるという計画がありまして、今年度の、五十八年度予算に二億五千百万円計上されている。これは敷地、道路など造成のための設計計画のためだということを施設庁は言っているわけですけれども、逗子の池子弾薬庫の跡地に千三百戸米軍から住宅建設の計画があるのか、この中身について答弁を求めます。
  259. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現在、厚木、上瀬谷を含めましたいわゆる横須賀地区で米軍は約千三百戸住宅の不足ということで、この対策をいま考えておるようでございます。したがいまして、その一環として、いま御指摘のような池子弾薬庫の地区に住宅を建てたらどうかという、一つの候補地として現在私ども調査しておりますが、千三百戸をそこに建てるということではなくて、横須賀地区全体で千三百戸不足をしておる、その対策として、その一環としていまの池子地区を調査しておる、こういうことでございます。
  260. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 佐世保につきまして午前中矢田部委員質問に答えまして言いました、確かに、将来においては家族の居住地としては考えられると。これは私はあり得るんじゃないかと思います。  それからもう一つ、これは午前中の矢田部委員に対する私の発言で、新聞で一部誤報されておりますから、ちょっとこの席をかりまして訂正さしていただきたいんですが、第七艦隊——有事の際に第七艦隊に核が持ち込まれることは、それはあるだろう、こう言ったわけですが、それを新聞の方で、有事の際日本に持ち込まれることがあるんじゃないかというふうな報道がなされておりましたので、これは、核の持ち込みというのは、第七艦隊に対する核の持ち込みを言ったんで、日本に対する核の持ち込みを言ったんじゃございませんので、これはちょっと訂正さしていただきます。
  261. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 訂正するんなら、有事のときじゃなくて、平事においても核兵器をやっぱり持ち込むことがあるんだ、そういうふうに訂正した方が事実に近いと思いますね。  それで、千三百戸を池子につくるんじゃないというんだけれども、私は、ミッドウェーのときにも千戸でしょう、住宅が。千三百戸アメリカ軍が足りないというの大体おかしいと思うんですよ。千三百戸の内容について資料要求をしたいと思います。
  262. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 千三百戸の内容というのは地区別の内容のことでございましょうか。
  263. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 地区別でも——一体どういう米軍が住むのか。
  264. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いわゆる横須賀地区として、先ほど申し上げました厚木、上瀬谷を含めまして、横須賀地区として千三百戸不足しておる、こういうことでございまして、御要望の資料がどういう内容かによりまして、できる限り提出さしていただきますが、私ども承知しておるのはそれだけでございます。
  265. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この千三百戸の中身についてわれわれ疑惑を持っているのは、ニュージャージーとかそれからカール・ビンソンだとか、そういう、新しい事実上の母港化、安倍外務大臣の先ほど住宅問題もありましたので、そういう問題はないかという疑惑を持っておりますので、そうでないというならないというので、中身の資料の提出をしてほしいと思います。
  266. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現在、先ほど言いました横須賀地区で米軍は約二千戸の住宅を持っておりますが、それにさらに千三百戸現状において不足しておるということでございまして、将来のいろいろなことをいま御指摘がございましたが、そういうことじゃなくて、現状において横須賀地区で千三百戸不足しておる、こういうことでございます。
  267. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 資料提出をひとつ理事会でも協議してほしいと思います。
  268. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 理事会で協議いたします。
  269. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、その米軍のための住宅予算ですね、まだ決定もされていないのに二億数千万円も今年度の予算に入っている、非常におかしいと思いますので、削除を要求したいと思います。  さて次に、私は、いま非常に大きな問題になっております三海峡封鎖だとか、あるいはシーレーン問題に関連する日本の対潜哨戒、対潜探知システムの問題をひとつ追及したいと思います。  まずお伺いしますが、これまで津軽海峡と対馬海峡については海底ケーブルを利用した固定ソナー、これを津軽海峡には昭和四十三年以来二基敷設してある、対馬海峡には一基敷設してあるという答弁がありました。これはLQO3というタイプのものだったというんですが、その後LQO4に変わっているのかどうか。あるいはこの津軽、対馬の二基、一基以外に新たに海底ケーブルを利用した固定ソナーが敷設されているのかどうか、答弁を願いたい。
  270. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) どの海域にどういう水中固定機器が敷設してあるかということを申し上げるのは必ずしも適切でないので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  271. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうもそういうことを言われるので調べてきたんですが、津軽海峡に二基敷設してあるというのは、昭和四十六年十二月十七日参議院決算委員会でわが党の渡辺議員の質問に対して当時の黒部装備局長が答えている。それから対馬海峡に一基敷設してあるというのは、昭和四十八年六月二十六日衆議院の内閣委員会でわが党の東中議員の質問に対して久保防衛局長が答えています。
  272. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) かつてそういう御答弁を申し上げたことも承知しておりますが、やはりそういうことをお答えするのは適切でないというふうに判断しております。
  273. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 かつて国会で明らかにしたことをいまになるともう言わないと、これは前任者に対する非常に不当な批判、中傷にもなると思うんですね。大体、議事録に全部残っているんだから。私はきょう全部議事録をそろえてきた。そういうふうに答弁しないというところにその後の自民党内閣の非常な反動化が示されている、防衛局長も次々に反動化していると私は判定いたします。  それでは、長距離固定ソナーの問題、これを追及したい。  これも夏目さんお調べになっていると思いますけれども昭和四十六年以来十二年間にわたってわが党が追及してきた問題です。それで、渡辺議員が三回質問し、東中議員が一回質問しているんですが、御存じない方もいらっしゃるし、谷川さんも新米と言うと悪いけれどもなったばっかりでいらっしゃるので、ちょっと概要を説明しますと、敷設艦「つがる」というのがありまして、それが新進に等しい特別改造工事をやって、九百五十トンから二千百五十トン、二倍以上に大きくした。九億四千七百万円の予算をかけて海底ケーブルを敷設できる船にした。いいですか、これが一つです。  それから大洋海底電線株式会社というところから、昭和四十五年から四十六年にかけて二十七億三千三百三十六万円の予算でアメリカ海軍が設計した同軸ケーブルを買い入れた。これはアメリカのTAT1方式による対潜水艦のソナー用のケーブル。これは工作機械もアメリカ製です。仕様書もアメリカ海軍の委託によるソナーを開発しているところの仕様書がついているわけです。四千二百トン。長さどのぐらいかと幾ら追及してもなかなか言わなかった。わが党は当時資料を手に入れました。長さ何と総延長二千キロであります。二千キロに及ぶ同軸ケーブルだったのですね。それでソナー用のケーブルというのは間に中継器、増幅するリピーターというのを入れるんです。このリピーターは全部米軍から無償提供だという当時の国会で答弁がありました。ただでもらった。全体で四つありました。四条。一つは予備で百三十海里の長さ。一つは百十海里。二本目は百八十海里。一番長いものは六百二十海里、キロに直して千二百キロであります。千二百キロの同軸ケーブルを対潜水艦用のソナーとして買い入れて、この敷設艦「つがる」がひそかにずっと敷設をしたんですね。その一部の模様は青森県の竜飛岬のところで敷設している事実もわれわれつかんで東中議員が質問もしました。ところが、当時政府はなかなか事実をやっぱり答えなかった。江崎防衛庁長官は、当時、水温や塩分や潮流の調査をするんだと、何も秘密はなくて海洋博に展示したいぐらいのものだという江崎さんらしい答弁をされておられますが、これは全く違うと思う。  防衛庁にお聞きしますけれども、この総延長二千キロに及ぶケーブル、用途は何ですか。
  274. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) いま先生の突然のお尋ねでございまして、何を意味するかは必ずしもはっきりいたしませんが、そうした海中ソナーに類するものの設置等については、これは各国においても最も高度の秘密に属することでございまして、これがどこにあるかということがわかれば潜水艦はそこを避けるわけでございます。全く意味のないことになってしまいますので、御勘弁をいただきたいと思います。
  275. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 夏目さん、突然の御質問と言われるけれども、三月四日に衆議院の予算委員会第一分科会であなた答えていましたね。私はきのう東京にいなかったので、私の秘書がこの問題について質問するということをレクチュアをきちんとしてあります。何もお答えにならない。  しかし、当時、四十六年に黒部装備局長はこういうふうに答えている。ケーブルの先には各種の測定機ないしは水中における音波の伝搬性、こういうものを調べる、そういうものがついているというんですね。単なるソナーよりはもっと機能の大きいセンサーというものが先についているんだということを答えています。ですから、江崎さんの水温だとか塩分だとか、そんなものを調べるんじゃなくて、水中における音波の信頼性、ソナーよりももっと機能の大きいセンサーがついているんだというふうにきちんと答えている。このソナーよりも機能の大きいセンサーはやっぱり米軍提供のものですか。
  276. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) この水中固定機器というのはあくまでも潜水艦の音を探知する機械でございます。そういう意味で、いまおっしゃったようなものがわれわれの水中固定機器として必要なところへ敷設させていただく、こういうことでございます。
  277. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 その先につけたものは米海軍提供のものですか。
  278. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 国産で開発したものもございます。
  279. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 国産で開発したものもあると。  米海軍のものもありますか。
  280. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 個々の機器がどういうふうなものから成っているかということは、先ほど来申し上げたように、突然の御質問でございますのでいま手元に資料の持ち合わせがございませんが、LQOの云々というようなものは国産したものでございます。
  281. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 LQO3、LQO4を聞いているんじゃなくて、長距離の海底ケーブル、ソナー、これを私は聞いている。ああいう短いものじゃない。二千キロですからね、全部合わすと。一体どこに敷いてあるかということが大問題になる。これは先日瀬長さんも聞きました、質問しましたが、四十六年十二月に江崎防衛庁長官は、現在のところ公海には出ていないと。いまから十二年前ですよ。将来は公海にも延ばすこともあり得ると、そういう答弁をした。それで、郵政大臣の許可がその際は要るという答弁をしました。それから装備局長も、今後計画しているものに公海にわたるものもないわけではないと。大体二千キロに及ぶものを領海内にごしょごしょごしょごしょやれるわけがないんです。それで瀬長議員が先日この問題をお聞きした。ところが、やっぱりお答えにならない。それで改めて私が聞きたい。いま公海にまでこのケーブルを延長して敷いているのかどうか、それから郵政大臣にその際許可を得ているのかどうか、明確にお答えいただきたいと思います。
  282. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) どうも先生はいろいろな問題を一緒にしての御質問だと思いますが、先般の衆議院の予算委員会の分科会における瀬長委員の御質問は、今回沖縄のホワイト・ビーチに設置した海洋観測所、これは明らかに、先ほど江崎長官発言を引用されましたが、海流であるとか、潮であるとか、音の伝搬状況であるとか、そういったいわゆる基礎的なデータを集収し、分析し、それを蓄積しておこうと、こういうものでございまして、そのものといわゆる先ほど来言っている潜水艦の音波をとらえるものとは全く異質のものでございます。
  283. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは、これ関係あるんですけれども、異質のものという答弁がありましたので、まあ異質のものとして、この異質の方の、「つがる」ですね、「つがる」が敷設したケーブル、これは十二年前に公海にわたることがあり得るという答弁があったんですが、十二年後の今日公海に延びていますか。それから延びる場合、郵政大臣の許可を得ていますか。
  284. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 公海に敷設する場合には、当然のことながら、法定の手続によりまして郵政大臣の許可を得るようにしております。
  285. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だから、すでに公海まで延ばしているんですか、すでに郵政大臣から許可を得てやっているんですか。
  286. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 許可を得てやっているものもあると思います。
  287. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やっているものもあるということは、やっぱりすでに一番長いもので千二百キロ——六百二十海里の潜水艦用の長距離の固定ソナーを公海にまで延ばしているという事実が間接的に夏目防衛局長の言葉によって示されたと思います。  八一年五月二十二日の赤旗で、この問題の竜飛岬——松前ですね、このケーブル敷設が海中に三本おりている場所ですけれども、これは私ども写真も撮り、確認もし、当時国会でも質問しています。ここに海上自衛隊松前警備所がありまして、これはソナー基地なんですね。この松前警備所に十人の米軍要員がひそかに勤務している。二人一組の三直交代、午前七時から午後二時に分かれて出勤し、毎朝七時過ぎ徹夜勤務を終えて基地のゲートを出ていると。いまでもこの米軍はいるわけですけれども、この米軍はどういう仕事をしているんですか。
  288. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 私の承知しているところでは技術者が技術援助のために来ておるというふうに聞いております。
  289. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 われわれの知り得たところによると、三階建ての建物の中で一室持っておりまして、コンピューター作業をやっぱりやっているということなんですね。それで、先ほど申しましたように、このケーブルは米軍製のもので対潜用のものです。中継器もアメリカから無償で供与されている。この先についている非常な高性能のセンサー——ソナーの機能も含むと思いますけれども、非常に大型のもので非常に高性能で、これも当然米軍のものです。つまりすべて米軍の仕様で、設計で、米軍が開発した対潜用のソナー・ケーブルをこの松前基地からひそかに公海にまでずっと延ばしていると、そういう事実がほぼ浮かび上がってきつつあります。ある話によりますと、その米軍はウラジオの情報まで入ってくるということを言っているとか言っていないとかいう話もありますが、私もまだ確認しておりません。大体長さは千二百キロ、六百二十海里ですからね、直江津—ナホトカ間というのは日本海海底ケーブルが引かれていますが、四百八十海里ですね、だから使えばウラジオまですっと行くだけの距離が当然ある。あるいは先ほどLQO3、O4について津軽並びに対馬海峡には設置してあるという事実が国会で明らかになったんですが、宗谷についてはまだ何も言われてないですぬ。三海峡封鎖問題がありますから、北海道からこのケーブルが宗谷海峡に行っている疑いがある。あるいは長さはかれば、まっすぐ行けばオホーツク海まで行くという危険さえ私はあると思いますが、ウラジオだとかオホーツク海だとか宗谷海峡にひそかにこういう米軍製の長距離固定海底ケーブル、対潜ソナーですね、これを引いていないということを国会で明言できますか。
  290. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 再三まことに恐縮でございますが、どこに敷設してあるかということについては御容赦いただきたいと思います。
  291. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ますますすべてを秘密にする。私はここに七九年一月三日のアメリカの議会図書館議会調査局国際・国防部、そのレポートの一部を持ってきています。これは米下院国際関係委員会国際安全保障・科学技術小委員会のために準備されたものなんです。ここにはこういうことが書いてある。SOSUSというものがあります。SOSUSというのは七四年以来アメリカが地球上二十二カ所の大洋に配置した潜水艦用の固定した音響探知システムなんですがぬ。「SOSUSは、固定された、海底に積み上げられたパッシブ音響アレーズで構成されている。SOSUSとそれに関係する長距離固定ソナー(いくつかは同盟国のもの)」と書いてある。米国両沿岸に沿ってあちこちずうっと行っているということがこれに述べられている。SOSUSの配置図はいろんなところにありますが、ここにも私持っておりますけれども、この報告書で興味あるのは日本についてこう書いてある。「アリューシャン列島および千島流水にそって日本。」と、これはもうすでに周知のことで、SOSUSに関係するすべての資料にはこのアリューシャン列島に沿って北海道の近くまでSOSUSが敷かれているという図がどこにでも載っております。その後が問題なんです。「日本と韓国の間」という言葉がこの議会報告にあるんですね。「日本と韓国の間」というと日本海、この「SOSUSとそれに関係する長距離固定ソナー(いくつかは同盟国のもの)」というんですね。SOSUSは日本海にはないはずです。日本と韓国の間の日本海にはない。そうするとこれに「関係する長距離固定ソナー(いくつかは同盟国のもの)」、私はアメリカの同盟国としての日本がこのアメリカのSOSUSに関連のある長距離固定ソナーをひそかに引いていたという疑いがきわめて強いと思うんですね。もうこれお聞きしても何もあなた方言わないでしょうね、言わないだろうと思いますけれども、きわめて重大問題なんです。  もう時間がありませんけれども、こういうソ連の攻撃型原潜に対する平時からの探知して音をとって、それが実はアメリカの対潜哨戒システムの一環になっている。実はアメリカの肩がわりでアメリカからもらってアメリカの対潜哨戒システムの一部を、日本の予算で日本政府防衛庁がひそかに日本海に、あるいはオホーツク海まで延ばしているかもしれません、ウラジオまで行っているかもしれぬ、ひそかに敷いているという大変な事実がここで浮かび上がってきていると私は思うんですね。それで、実はひそかにやっているために予算も隠してあると、ケーブルを買う金だとか、それから「つがる」の特別改造費だとか、敷設費用もいろんなところに隠してあって、膨大な予算を使った実はアメリカの一環としてのこういう奇妙な長距離固定システムをやっているんじゃないかと思うんですね。  これについてそういう事実があるのかないのか、私は調査を要求したいと思います。調査を徹底的にやっぱりやりたいと思いますが、委員長理事会で協議をお願いいたします。
  292. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 理事会で。
  293. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 最後に総理——私はいまゼロになりましたので終わります。(拍手)
  294. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ありがとうございました。  以上で上田耕一郎君の質疑は終了いたしました。    ─────────────
  295. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、柄谷道一君の質疑を行います。柄谷君。
  296. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理は一月の訪米中に、いままで多く論ぜられましたように、ワシントン・ポスト紙の首脳との単独会談で、例の日本列島不沈空母論、海峡封鎖発言等を行われまして、わが国の積極的な防衛努力を表明されました。これに対してアメリカ大統領、国防長官は、総理の建設的な考え方とこれまでとった措置で示したリーダーシップを歓迎する、防衛努力の第一歩として評価する。その傍ら、海、空の防衛力はまだ十分でないと指摘されまして、    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕 日本がみずからの防衛計画を達成するよう、一層速やかに前進するように希望すると、こう述べられた。これに対して総理は、今後の努力を見てもらいたいと言い切ったと報道されております。しかし、これらの総理の発言には、具体的な裏づけや計画というものがない。政治家としての原則的発言、哲学、心構えや決意を述べたにすぎない。そのことが二月八日の衆議院予算委員会におけるわが党大内議員の追及によって明らかになったと思います。  そこでお伺いいたしますが、総理が国際的に公約されました内容を実現するために、どのような防衛計画を今後つくっていこうとしておられるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は日本の防衛に関する私の考えを述べ、また、防衛計画の大綱の水準にできるだけ近づけるように努力します、そういう考えを言ったものであります。
  298. 柄谷道一

    柄谷道一君 確認をいたしますが、少なくとも五六中業だけは期間内に責任を持って必ず完全達成する、その考え方は崩さない。これが総理の決意の内容かどうかお伺いします。
  299. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五六中業という言葉も出しませんし、五六中業には言及いたしません。私が言ったのは、一般的に防衛計画の大綱の水準に達するように努力をします、こう言ってきただけです。
  300. 柄谷道一

    柄谷道一君 アメリカでどう言ったということではなくて、現在の総理の心境は、期間中に五六中業を達成したい、それが決意であると、こういうことでございますか。
  301. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 五六中業の性格をまず申し述べさしていただきますが、総理がただいま御答弁いただきましたように、われわれとしてはわが国の防衛力の整備の基本といたしまして防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く到達いたしたい。そして五六中業というのは、実はこれは予算をつくるに当たりまして当然でございまするが、防衛費というものは、防衛庁の総費というものは、そのときどきの財政だとか、国の他の政策とのバランスを考えながら逐年つくられていくものでございますけれども、それをいたすのに防衛庁内部のいわば一つのめどといたしましてわれわれ持っているものでございます。たまたまその五六中業そのものが五十八年度を初年度とする、実は五十六年度に計画をつくりまして一年間かかってつくり上げて、それで五十八年度に概算要求をしておると、こういう形でございまするが、これにつきましては累次答弁さしていただいておりますように、われわれといたしまして五十八年の初年度では思いもかけない非常な厳しい財政事情になってはおりますけれども、今後この五六中業でわれわれが考えておりますことは、防衛大綱の水準に近づけるために、一つのめどとして非常に重大なものだと、鋭意今後努力をしてこの完成に近づけたい、こういうことでございます。
  302. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいまの防衛庁長官の御発言でございますと、財政状況によっては目標年次が先に延びることもあり得るということですか。
  303. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私どもといたしましては、今後の経済、財政の状態によって、五十八年度の財政の状態におきましては非常に厳しかったものですから、初年度においては必ずしもわれわれの満足いくようなすべてではございませんでしたけれども、あと残された期間の間に五六中業の目標が達成できるように、目標が達成といいますか、五六中業といたしましてわれわれが検討いたしました水準まで行きますと、防衛計画の大綱の早期達成に、少しでも足がかりに近づいていく、こう判断をいたしておりますので、今後財政の状態によって、われわれの考えておりまするこの五六中業が達成できますように努力をいたしていきたいと、こう考えておるわけでございます。
  304. 柄谷道一

    柄谷道一君 この問題はまた後にも触れたいと思います。  そこで、防衛庁長官にお伺いいたしますが、総理はワシントン・ポストとの会見で、わが国の防衛目標として三点を挙げたと外電で報ぜられております。その一つは、ソ連のバックファイア爆撃機の進入を阻止する防空能力を整備する。第二は、日本列島の四海峡、これは後ほど三海峡と修正されましたが、それを完全かつ十分に管理し、これによってソ連の潜水艦や海上艦艇を通過させない。第三点として、シーレーンを確立し、海上交通路の安全確保と維持を図る。この三点であったと思うんですね。  防衛庁は、五六中業が達成されたとして、その防衛力をもってこの防衛目標を、三点を満たすことが可能であるとお考えでございますか。
  305. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私どもは、総理が御発言になられましたたとえば不沈空母の御発言につきましては、まず総理も再々御答弁いただいておりますが、日本に自分の国は自分で守るという確固たる決意がなければ、いざというときに日米安保条約が有効に生きないおそれがあるとの御認識のもとに、わが国としては、特に防空能力の強化を含めわが国防衛のための必要最小限の自衛力整備を図る必要があるとの決意を比喩的に述べられたものだと理解いたしております。  それからまた、海峡防備に関する御発言は、わが国として現在進めておるわが国防衛のための必要最小限の自衛力の整備の一環として有効な海峡防備能力、これの整備を図る必要があるとの御趣旨を述べられたものと理解をいたしておるのでございます。  したがいまして、いま御質問のございました五六中業との関連でございますが、五六中業の達成時におきましては、後ほど政府委員から具体的な数値についてはあるいは内容につきましては報告いたさせますが、防空能力の向上あるいはまた海峡能力の向上につきましても、相当程度この能力が向上するというふうに判断をいたしております。  その内容につきましては、必要あれば政府委員から答弁をいたさせます。
  306. 柄谷道一

    柄谷道一君 じゃ具体的にお伺いいたしますが、五十五年版防衛白書で機雷敷設能力について次のように述べております。  「機雷敷設を実施するには、平時から所要の種類と数の機雷を即応態勢におく機雷備蓄の問題と、実際に所望の海域に所要の機雷を急速に敷設する機雷敷設手段の問題がある。海上自衛隊における機雷の即応態勢はいまだ不十分であり、」「また、機雷を敷設できる専用の艦艇は機雷敷設艦及び掃海母艦各一隻のみであって、対潜哨戒機で敷設するにしてもその機雷とう載可能数は少ない。」これ、防衛白書ですね。  そこで、もちろん通峡阻止の作戦としては有事の場合、監視所、水中聴音機等による情報の収集、航空機による哨戒と攻撃、護衛艦、潜水艦による哨戒と攻撃、対潜へリによる攻撃、戦闘機による攻撃等があると思うんですが、やはりその決め手となるべき重要なウエートを持つのは機雷敷設能力だと、こう思うんですね。  ところが、この白書にも述べておりますように、機雷敷設専用艦は五十七年度末で掃海母艦「はやせ」、機雷敷設艦「そうや」の二隻のみでございます。五六中業でその整備予定は全く組み込まれておりません。また、有事において一般の護衛艦による敷設ということが考えられるわけですが、これは鑑の改造をしなければできません。その予算は組み込まれておりません。C130による敷設も現在アメリカでその実用化が検討されている段階であって、これを実戦に使えるようにするにはなお相当の時間がかかるといわれております。これいずれも防衛庁の見解ですね。そういう現実の中で私は、相当程度能力は向上する、と言われたんですけれども、海峡を完全かつ十分にコントロールする。この発言は事実不可能ではないかと、こう思うんですが、防衛庁長官はどう評価しておられますか。
  307. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) いま御指摘のとおり、いわゆる海峡防備能力と申しますか、通峡阻止能力というのは、水上艦艇による阻止あるいは潜水艦あるいは航空機等による阻止を初めとして各種の手段が考えられます。その中の一つとして、いわゆる機雷敷設による通峡阻止ということがあるわけで、これも先生御指摘のとおり、機雷の備蓄量あるいは即応態勢に維持管理ができているかどうか、そしてその機雷を有効、適時適切に敷設するいわゆる能力があるかどうか、こういう点にしぼられると思います。現在の能力は必ずしも十分とは申しませんが、五六中業によってそういったもろもろの通峡阻止能力の向上ということが図られることによって私どもとしては相当効果的な能力が向上できるんではないか。  ただし、それで一〇〇%の潜水艦の通峡阻止ができるかということであれば、これは総理からも再三御答弁申し上げたとおり、一〇〇%というのは本来あり得ないことでございまして、過去の戦史等によりましても、たとえば第一次世界大戦あるいは第二次世界大戦におけるイギリスのドーバー海峡における封鎖、あるいはスコットランドとアイスランドの間の機雷封鎖、あるいはわが国の対馬、津軽における海峡封鎖という、いろいろな戦訓から見ると、大体三〇%から四〇%程度の潜水艦を阻止し得るような態勢を持っておれば、相手はその通峡を断念したりあるいは失敗に帰するであろうというふうな戦史の教訓がありますので、そういったものを目標として五六中業でも逐次その努力をしているというのが現状でございます。
  308. 柄谷道一

    柄谷道一君 機雷敷設艦二鑑しかないんですね。五六中業が達成されても二鑑のままです。海峡は三つです。どうしてこれをもって機雷の敷設が相当程度向上すると言われるのか、私には理解できません。  しかし、こればかり言っておってもしようがありませんから、防空能力の点に移します。  防衛庁はいままでの質疑におきまして、ソ連の極東に配備されている航空兵力は、バックファイア約七十機、その他ベア二百機、バジャー約八百機のうち約三分の一と、戦闘機千五百五十機と、こう発表しているわけです。いま日本でバックファイアに対応し得る戦闘機はF15しかないと思います。有事の場合、このF15とE2C早期警戒機との組み合わせで対抗するということになると思うのでございますが、五十八年三月三十一日、昨日現在でF15は二十三機、E2Cは二機、五六中業が完成したときも調達機数百五十五機から減耗分を差し引きますと百三十八機、E2C九機ということになるわけでございます。しかも、バックファイアが搭載しております対地ミサイルAS 4、これの射程距離は三百キロないし八百キロ、これは多少誇張があるとしても国際的にも二百キロ以上の射程距離を持つということは、これは常識でございます。ベアのASMカンガルー、バジャーのAS2キッパーも射程距離は二百キロ近いと承知いたしております。これに対して、F15が搭載している改良型のAAMスパロー、これの射程距離は四十四キロでございます。地対空ミサイルの最長距離は約百四十キロでございます。バックファイアが二百キロ先からミサイルを発射すれば、その母機に対してわが方のミサイルで要撃することは不可能である、これは防衛局長が述べられた答弁でも明らかでございます。  そこで防衛庁長官、総理が防衛目標としておりますバックファイアを寄せつけず、その侵入を阻止する、これは五六中業の達成で本当にできるんですか。
  309. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 五六中業が達成された際のわが方の防空能力の一部については、先生いま御指摘のとおり、E2Cは二機から九機、F15は八機から百三十数機に向上するわけでございます。  そのほかバッジシステムの近代化、あるいは現在航空自衛隊が持っておりますところのナイキミサイル、あるいは陸上自衛隊が持っておりますところのホークミサイルも新しいミサイルに改造することを予定しております。そういった総合的な能力をもってすれば、バックファイアに対しても必ずしもこれらの兵器の性能というものが対処し得ないというものではございません。またバックファイアから打ち出されるであろうAS4というミサイルについても、これはその形状、寸法から見て、ある一種の小型、高速の航空機にも当たろうかと、該当するようなものでございまして、これについては先ほど御引用になりましたAIMの7Eですか、スパローであるとかあるいは新しいミサイル、そういったもので対処も必ずしも不可能ではございません。E2Cとの共同運用といいますか、統合運用によってCAP等を行っておれば、母機に対しても対処が可能でございますし、またミサイルに対してもいま申し上げたようなわが方のミサイルは対処が可能でございます。また、ちなみに申し上げれば、現在海上自衛隊の艦艇に装備しつつあるターターであるとか、あるいは短SAMあるいはCIWSというような装備につきましても、AS4について全く対処不可能というものではございませんので、そういったものが整備が進みます五六中業完成時においては、相当能力が向上するということは言えるんではないかというふうに思っています。
  310. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はこれは防衛庁長官にお伺いしますがね。総理の訪米中の一連の発言によりまして、アメリカが日本の防衛努力に対して過大な期待を持っておるということは多くの外電が報じておるところでございます。五十六年六月の日米安保事務レベル協議でも、アメリカは五六中業や防衛水準を大幅に上回るように期待を示しました。本年六月に開かれると伝えられております日米防衛首脳定期協議、いわゆる谷川・ワインバーガー会談では、私は中曽根・レーガン会談を受けて五六中業の水準を超える強い期待が述べられることは容易に察せられると思うわけでございます。  そこで長官にお伺いしますが、この定期協議はいつごろどこで開催されるのか、また、防衛庁長官はこの協議に対してどのような姿勢で臨まれるのか、端的にお答えをいただきたい。
  311. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 日米防衛責任者協議のことに触れます前に、総理は常に御答弁の中で繰り返しておいでになられますが、わが国はわが国みずからを守るための、自衛のための防衛力整備を続けてきておるのだと言っておいでになられまして、そして、当然のことでございますが、わが国ができることをわが国で判断してやるということでもございます。それから、日米安保条約の当事国の一国でございまする米側が、わが国の、つまり日本の防衛力整備について関心を持つことはこれ当然のことでございまして、機会あるごとに米側は米側としての期待を込めた発言が出てくることはこれは考えられると思います。  それから、いま谷川・ワインバーガー会談が六月に開かれるというお話でございますが、私は、今日この時点で六月に開くということをほかの場所あるいはいずれのところでも言ったことはございませんし、現在、何月に米国防長官と会談ができるか、政治日程もいろいろございまして鋭意その問題につきましては心を砕いておるところでございますが、いついかなるところ、また、いついかなる時期においても、日米防衛首脳が互いに胸襟を開いて話し合いをするということは非常に重大なこと、大事なことと考えております。しかし、六月に訪米するというようなことは、いま今日この時点では私は別にそういう考えを持っているわけでもございません。
  312. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、六月というのはマスコミの全くの誤報であると、これしか言いようがないですね。まあこれはいいでしょう。  そこで、総理にお伺いいたしますけれども、総理は、訪米で日米関係を修復して運命共同体としての同盟関係を確立したと、このようにみずから評価されているわけでございます。私は、積極的防衛努力をアメリカで強調する、しかもその内容が、かつてアメリカが日本に要望しておった防空能力の強化、海峡封鎖能力の強化という内容であるとすれば、私は、アメリカがこれを評価し、喝采を送ることは、これは当然だと思うんです。  そこで、日本が仮に今後アメリカのそうした要請というものが財政事情でできないとして、来年度防衛費の伸びをことしの伸び、いわゆる六・五三%から下回るというような事態が仮に生ずるとすれば、これは総理の言行不一致としてアメリカの対日不信というものをかき立てる結果になるおそれがあると、こう私は認識をいたします。  そこで総理は、一時的には改善に成功したけれども、総理の発言というものが中長期的に見てアメリカの対日不信という種をまいたという認識は全くお持ちでございませんか。
  313. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 持っておりません。
  314. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは総理は、五十九年度防衛費の伸びは、少なくとも五十八年度並みないしはそれ以上確保するというお考えがあるんですか。
  315. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれの目標は、防衛計画の大綱水準にできるだけ早く近づけるという一般的目標を持って努力しておりまして、年次年次の予算における割合というものは、そのときの財政事情あるいはほかの経費とのバランス、国民世論、そういういろいろな面を考えてみずから決めるものでありまして、いま幾らとかどの程度とかということは申す段階でございません。
  316. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、さきに防衛庁長官は、五六中業の早期達成に努力したいと言われた。いま総理は、財政事情、他の政策とのバランス等も配慮しなければならないと、こう言われた。そこで、三月十八日の本院予算委員会におきまして、同僚の伊藤議員の方から質問いたしましたところ、防衛局長は、五六中業を完全に達成しようとすれば、今後四年間で防衛費の対前年度の伸び率を実質七・三ないし、九・八%確保する必要がある。これに物価上昇を加味した名目値とするならば、実に一〇ないし一二%の伸びを確保しなければ五六中業は達成できないということに結びついていくわけですね。私は、いまの総理の答弁からいたしますと、五六中業の完全達成は現段階で危ぶまれると思いますが、防衛庁長官どうですか。
  317. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 先般、この委員会伊藤委員にお答えした趣旨というのは、仮に五六中業で見積もっておるところの十五兆六千ないし十六兆四千という五六中業期間中の防衛総経費というものを、五十八年度の予算が二兆七千五百四十二億円で決まったわけですが、これを五六中業作成時の五十七年度価格に直すと、改正しますと、二兆七千億ぐらいになるであろう。そうしてその残りの分を、仮に四年間で達成するとすれば、七・三ないし九・八になるだろうということを、全くの仮の試算として申し上げたわけでございまして、そういうふうに必ずなるということを申し上げたわけではございません。申し上げるまでもなく、五六中業というのは概算要求の参考資料であり、この十五兆六千ないし十六兆四千というのは、比較的精緻に積み上げた正面以外の人件・糧食費であるとか、後方経費というものをラフに計算したものを申し上げている、そういう前提での数字であるということを御理解いただきたいと思います。
  318. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵大臣にお伺いしますが、大蔵省は七年先までの、まあ一定の仮定は置いておりますけれども、財政中期試算をしておられますね。今後要調整額といいますか、財政事情は年を追うに従って厳しくなる。数字は申し上げませんけれども、これが中期展望の示す内容でございます。そこで、いままで大蔵省は、国防会議等の場において、五六中業はあくまでも毎年度防衛費概算要求作成のための目安である、したがって、予算編成時に財政状況や他の政策とのバランスを見て概算要求を削減できるんだ、こういう態度を持しておられたわけでございます。  そこで、私は率直にお伺いしたいんですけれども、名目年率一〇%を超える対前年度の伸びというものを確保する、確保しなければ五六中業は達成できないんですね、確保する財政余力というものがあると、こういう確信がおありですか。
  319. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、予算というものは先ほど総画から正確にお述べになりましたように、そのときどきにおける経済、財政事情を勘案して国の他の諸施策との調和を図っていくものでございますので、したがって、総予算に対する対応力、そして、いまお切りになりました防衛費の中の、いわゆる五六中業そのものの意義については防衛局長からお答えがございましたが、    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 それをとって、それに対応する財政力があるかないかという議論は、やはり今日することは困難な議論と言わざるを得ないと思います。
  320. 柄谷道一

    柄谷道一君 対総理に質問しようと思ったんですが、おられませんので、ちょっと待って……。
  321. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめて。    〔速記中止
  322. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  323. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は総理にお伺いいたしますが、ただいままでの一連の質問によって、確かに中曽根総理は積極的防衛努力をアメリカで強調された。そのことによって日米信頼関係を回復された。しかし、現実五六中業というものの完全達成も、財政事情その他からいろいろの問題がある。またこれを仮に完全達成しても、総理がアメリカで述べられた三つの防衛目標というものを完全に満たすことはできない。これはいままでの質疑で明らかになったわけですね。  そこで私は、以上のような経過から、いま総理は重大な選択を迫られているんではないかと思うんです。一つの道は、日米関係の相互信頼を高めることを重視して、財政状態というものにある程度目をつぶっても、対前年度比伸びを高めて五六中業を予定どおり実現するという道を選択するか、それとも財政状況等を考慮して、日米間の信頼というものをある程度損なうということがあっても、五六中業そのものを下方修正するか。まあ平重盛ではありませんけれども、忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず、そのような状況の中での総理の最高責任者としての選択を迫られていると、こう思うのでございます。この際、総理のその決断を明らかに示していただくことこそが、私は国民合意を形成する出発点ではないか、また総理がかねて言っておられるわかりやすい政治というものを具体化する道ではないかと、こう思うんです。所信を明確にお示しをいただきたい。
  324. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がアメリカでいろいろ言動いたしましたが、一番大事にして、また意識的に発言しましたことは、日本の総理大臣及び日本の国民が、自分の国は自分で守るという決意を凛然と言い、アメリカ国民に認識させたということであり、この決意は不変であります。これが第一です。  いままでややもすれば、日本は安保条約のパートナーとして本当にやるのかどうか、そういう意思があるのかどうかというようなあいまいな疑問が向こうに多少あったと思います。それが上院の決議が満場一致で通るというような形にもあらわれてきた。言いかえれば、対日不信というものがくすぶっていたと言えます。その点を解消する一番の大事な点は、日本は安保条約のパートナーとして、言ったことは守るし、また誠意を持って努力をする、まず自分で自分の国を守るという決意を明らかにするということが第一であったと思います。  それから第二は、これは今度は技術的な問題になりますけれども、予算や財政事情の苦しい中でも誠意を尽くしてできるだけ努力をする、そういうことでありまして、与えられた五六中業とかなんとかという数字をそのとおり全部実行するとかなんとかという具体的な話は、私は一切しておりません。いまのような考えに立って、予算編成も防衛政策も進めていきたい。  やはり国には国の事情があります。したがいまして、国民の感情やら、あるいはほかの経費とのバランスやら、あるいは財政事情やら、あるいは対外要求、外国からの要請、そういうものにすべて目を注ぎながら、その時点においてベストのことをやるというのが、政治家の責任であると私は考えておりまして、私たちがそういう努力をする限り、対日不信というものはない。相手方も政治家であり、相手方もやはり自分の国と同じようにほかの国も考え得る余地のある民主主義国家である。そういうことで、要は誠意があるかないか、やる意思があるかないかということであって、財政事情やその他の問題は話せばわかってくれることであると思っております。
  325. 柄谷道一

    柄谷道一君 誠意を示せば、アメリカの対日不信は起きないということなんですけれども、私は少なくともアメリカは五六中業の達成だけはやってくれるものと信じておりますよ。そのとおりいくかどうか非常に危ぶむわけでございますが、時間がございませんので、最後の質問に移ります。  私は試算してみたんですが、今後の経済成長率を実質平均三・五%とした場合、政府防衛費上限の目安としておりますGNPの一%相当額は、五十九年度二兆八千五百六十九億円、六十年度二兆九千五百六十九億円になります。五六中業を等比で伸ばした場合の年割り額は、五十七年価格で五十九年度二兆九千三百億ないし三兆二百億、六十年度三兆一千百億ないし三兆二千六百億。これに加えて、五十八年度年度の概算要求が削減されておりますので、五十九年度以降四年間の年割り額はさらに上積みされることになります。したがって、こういうGNP、いわゆる実質経済成長の展望と五六中業というものを対比すれば、五十九年度GNP一%以内という歯どめが崩れるということは容易に言えると思うんですね。  そこで、お伺いしたいんですけれども、総理は今後どのような新しい歯どめをつくって国民合意を形成しようとしておられるのか。私は常識的に考えれば、新しい歯どめをつくるチャンスは三つあると思うんですね。一つはシーリングをつくるときです。第二は概算要求をするときです。第三は予算の政府案を決定するときです。しかし、国民合意を形成するとすれば、当然私は、選挙前に今後の防衛費分担というものに対して明確な方針を打ち出し、この方針に基づいて……
  326. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 柄谷君、時間が参りました。
  327. 柄谷道一

    柄谷道一君 国民の選択を求めるというのがゆえんではないかと思います。この点に対する総理の答弁をお伺いしまして、私の質問を終わります。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は、三木内閣当時つくられましたGNPに対する防衛費の比率一%以内というのをできるだけ守っていこうと、そういう努力を今後も継続していくつもりでございます。シーリングとか、あるいは次の歯どめとかということは、いま一%以内を達成すべく一生懸命努力しようとしておるところでありまして、いま言及する限りではございません。
  329. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で柄谷道一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  330. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、秦豊君の質疑を行います。秦君。
  331. 秦豊

    ○秦豊君 中曽根総理、総理の基本的な認識の中では、防衛計画の大綱というのは不磨の大典のごときものか、あるいは非核三原則のような国是にも当たる重い恒久的な重要な方針の一つと、このようにお考えですか。
  332. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛計画の大綱は政府が決めた一つの指針であります。たしか、これは閣議決定か閣議了解はしていると思います。がしかし、ほかのいまお挙げになったような非核三原則とか、そういうものは国会も関与しておる問題でありまして、おのずから重さは違うと思っております。
  333. 秦豊

    ○秦豊君 かなり微妙なニュアンスがにじみ出しております。  では総理、さらに聞きますが、防衛計画大綱の水準というのは、わが国が備えるべき戦力の上限とお考えか、それともとりあえず何としても到達をしたい最低限、つまり下限とお考えですか。
  334. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 現在政府として、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準の達成を目標として防衛力の着実な整備に努力しておるわけでございます。したがいまして、ただいま答弁さしていただきましたように、上限とか下限とかを考えておるんじゃございませんで、できるだけ早くそれを達成いたしたいと、こう考えておるわけでございます。
  335. 秦豊

    ○秦豊君 総理、これは総理にお答えいただきたい理由があります。昨年八月四日、参議院安保特、当時の宮澤官房長官、秦に対する答弁の中で、大綱水準の戦力は、これはわが国が備えるべき上限と思考すると明確に答弁をされています。総理はいかがです。
  336. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは当面の上限という意味でしょうね、努力目標ですから。ですから、目標という意味においてはそれを達成しようとする努力をしていると。ですから、その当時の当面の上限と、そういうふうに考えていいんじゃないでしょうか。
  337. 秦豊

    ○秦豊君 いまは五六中業で大綱水準を目指している。この次に来るのは今年度末に策定されるであろう五九中業です。総理がいまおっしゃったことを私なりに受けとめると、非核三原則よりはどうも重さが軽いと、閣議の裏づけはあっても。ならば、五六中業の段階では大綱水準を無限に追求するが、次の五九中業では大綱水準の戦力を突き破ることがあり得ても何ら異とするには足りない、あり得る、自然の流れである、こういうふうな認識ともつながりますか。
  338. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は目下防衛計画の大綱の水準に達することを一生懸命努力しておるのでありまして、それが達成された後で次の段階を考えると、こういうことにしたいと思っています。
  339. 秦豊

    ○秦豊君 総理、新しい歯どめはそれが必要になったときにということを私の質問主意書に対してもお答えになった。一つ提案があるから、これもあなたにお答えいただきたい。  新しい歯どめとしまして、専門家の間には、兵力量の上限を策定してそれを新たな歯どめにするという有力な考えがあるんです。いかがです。
  340. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 兵力量の上限という意味がどういう意味だかよくわかりませんが、お教え願いたいと思います。
  341. 秦豊

    ○秦豊君 たとえばですよ、大綱水準の戦力を上限とし国民合意に訴える、こういう考えです。いかがです。
  342. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは国防会議等にもかけて慎重に考えなきゃならぬところでありまして、いま私がにわかに質問されてお答えする余裕はないと、そういう点はよく考えさしていただく問題であると思っております。
  343. 秦豊

    ○秦豊君 あなたは一部安保臨調の構想もお持ちであるかに伝えられているが、じゃ、これは国防会議どまりでそういうことを検討の対象にされるお考えか、広く有識の声の中でそれを策定していくお考えか、そこだけを伺っておきたい。
  344. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保臨調ということを言ったことはありません。それが何を意味するか知りません。しかし、私はやはり防衛問題というものは、広く国民的コンセンサスを得る必要があり、国民の広場に持ち出して、そして国民の皆さんの御理解あるいは批判あるいは御認識、そういうものを得て行うことが一番望ましいと。それは防衛庁長官を拝命したときもそういうことを言いまして、自衛隊を診断する会というのをつくっていろいろ批判をいただきました。その考えはいまでも変わっておりません。
  345. 秦豊

    ○秦豊君 最近のあなたのお顔をこう近くで拝見していると、だんだんやはり同時選挙の顔に見えて仕方がないんだけれども、あなたは行革を大きな争点ということも常におっしゃっているんだが、今国会以後、つまり国政レベルの争点にもしたいと。私は中曽根さんの政治手法からすれば、安全保障、防衛の問題についてこそ大きな争点の一つとして広く国民の声に問うと、中曽根路線の審判を受けるという決意が必要であろうと思うが、次の国政レベルはあなたの胸にある。いつでもいいですよ、野党は受けて立つんだからいつであってもいいが、次の国政レベルの選挙では防衛問題を大きな争点として中曽根流に訴える、位置づける、こういうお考えはいかがか。
  346. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 秦さんの御忠告として承っておきたいと思います。
  347. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁、ずばり聞いておくけれども、現在行っているF4ファントムの試改修では空中給油装置を復活したのではありませんか。
  348. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 空中給油装置の復活については現在考えておりません。
  349. 秦豊

    ○秦豊君 検討する方向はありますか、防衛局長
  350. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) ただいま具体的な計画はないと申し上げましたが、最近における航空機の技術の向上というようなことから考えまして、いわゆる空中警戒待機、CAP運用というようなことを考えると、空中給油装置があることは望ましいとは思っております。また、将来そういったものが必要になるということも予想はされますが、いまのところまだ具体的な計画はございません。
  351. 秦豊

    ○秦豊君 いま幕の間では、試改修のファントムにそれを試験的につける——F15イーグルはすでにありますからね、そのテストをぜひしてみたい、アメリカのKC135あるいはKC10などとの共同訓練も考えてみたい、縦深性はないが南北に長い列島上空の防空作戦、あるいはシーレーンの洋上防空等を考えればぜひ欲しい方向だという声が強まっているやに聞くが、防衛局長としては、だからファントムの試改修の中に織り込むという構想については異論がおありか。
  352. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 一般的な軍事常識としてそういうことを望む声があっても私は不思議ではないと思います。ただし、この空中給油装置は、もしこれを実施するとすれば、大げさなものでなくて、現に外したものがわが補給処に保管してございますので、一機当たり大体二、三人でかかって二、三日程度あればすぐ装着できるようなものでございます。いまそういう計画はございませんが、このファントムの試改修に関連さしてそういうことをしようという計画はございません。
  353. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、空中給油一般について聞いておきたいが、イーグルはそれを持っている、しかし空中給油機はない。ならば、日本の持っているイーグルと、KC135、KC10等との空中給油訓練などを、たとえば硫黄島などをかっこうの訓練地として実施をする、こういう構想は別に妨げはないですな。
  354. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) いま妨げというようなお言葉がございましたが、いまのところそういう計画はございません。
  355. 秦豊

    ○秦豊君 それから、一般的には空中給油体制は望ましいというあなたの答弁であったんだけれども、法制局長官、ちょっとあなたに立っていただいて伺いたいことは、わが国の法制上、空中給油機を持つということには、いかなる制約あるいは障害、難点、抵抗がありましょうか。つまり、専守防衛という原則からどのようにはみ出すかを、あなたの長官の中で思量してください。
  356. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) これはたびたび申し上げておりますが、自衛隊の保有する兵器と憲法との関係については、その兵器を保有することにより、全体としてのわが国の実力が、憲法九条の制約、つまり自衛のため必要最小限度を超えるかどうかということによって決定されるべきものだと思います。ただ、個々の兵器については、明らかにそういう意味で、その性能からいって自衛の枠を超えるものもありましょうし、それからまた、その性能からいって明らかに自衛の枠を超えないものもあると思います。ただ、多くの兵器はその中間的なものだろうと思います。それについては、これは自衛の枠を超えるような用途に使用するというようなことが許されないことはもとよりでありますけれども、それから、事実仮にそれを採用するような場合には、現実に外国に対して侵略的あるいは攻撃的脅威を与えないように十分な配慮は必要だとは思いますが、それが直ちに憲法違反になるというようなことはないと思います。
  357. 秦豊

    ○秦豊君 もうちょっと、再確認。持ち得る機種の一つと解釈してもよろしいですか。
  358. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 私は武器についての知識を持っておりませんから断定はいたしかねますが、ただいままでのお話を聞いている限り、また防衛局長答弁を聞いている限り、持ち得るものの可能性は十分あると思います。
  359. 秦豊

    ○秦豊君 SAM—Xの検討はどこまで進んでいるのか。大方はペイトリオットの方向で煮詰まっているのではないかと考えるが、いかに。
  360. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 御指摘のとおり、ナイキ、ホークの後継ミサイルとしての新しい機種を検討しております。候補機種としては、ナイキについては、ペイトリオットとナイキフェニックス、ホークについては、同じくペイトリオットとホークの改良型というふうなものが考えられますが、現在まだ検討作業を続行中でございまして、いまペイトリオットに傾いたとかいうふうなところまではまだいっておりません。まだ白紙の状況——最終的な調査段階であるというふうに理解しております。
  361. 秦豊

    ○秦豊君 まだ固まってはいないが、濃厚である、有力な候補に次第になりつつある、こういう言い方はできるでしょう。
  362. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まだどちらに重心が傾いているかというふうなことを申し上げる段階にございません。
  363. 秦豊

    ○秦豊君 外務省だと思いますけれども、極東有事研究というのはどこまで進んでいるのか。  それからもう一つ、研究の範囲の中に、有事の際に西日本、九州等の民間空港、港湾、自衛隊基地は当然、米軍基地も当然、等へのリエントリーの問題が当然含まれると思うけれども、いかがですか。
  364. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 御指摘の六条事態、極東有事の研究は、昨年の一月二十一日に第一回をやりまして、それから日米間でいろんなレベルでこの研究の作業の進展を図るために接触はしておりますけれども、二回目の会合を持っただけで、いまだに余りはかどった進展を見ておりません。
  365. 秦豊

    ○秦豊君 リエントリーはどうです。
  366. 北村汎

    政府委員(北村汎君) リエントリーの問題についても、そういうことをまだ全然検討しておることではございません。
  367. 秦豊

    ○秦豊君 これは総理、チームスピリット83がもう明らかにリエントリーの問題をシナリオの一つにインクルードしています。これは米軍が明らかにしています。だから、いまの問題が含まれないはずはないんです。これを全部秘密秘密のベールをかぶせるんじゃなくて、極東有事研究が一定の研究段階に達した場合には、国会にぜひ中間報告をするようにしていただきたい。総理として、三軍の長としてお約束していただきたいんですが。
  368. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 北村北米局長
  369. 秦豊

    ○秦豊君 北村さんならば答弁なおさら簡単ですよ。総理に聞いているんだ。
  370. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 指名したんだから、胸を張って答弁してください。
  371. 北村汎

    政府委員(北村汎君) この研究の内容というのは米軍の行動に非常に関係のあることでございます。非常に機微の点がありますし、またそういうことからいって日米安保体制の効果的な運用にも支障を来すことがありますので、いま日米間ではこの内容は公表しないという合意ができております。ただ、この研究が非常に進みまして一つの段階に達したときには、このときはもちろん日米協議をした上で日米安保協議委員会にも報告をしますし、総理にも御報告をすることになろうと思います。そういう段階が来れば国会の御審議にこたえて御答弁をするというときもあろうかと思います。
  372. 秦豊

    ○秦豊君 安倍外務大臣、あなたにぜひ伺いたかったんですが、韓国の国会で李範錫外相が対馬西水道、つまり向こうでは大海海峡と言っている、この封鎖問題についていろいろと報道があるが、その概念をつかめないのであって、日本側とまず話し合って概念をつかみとりたいと韓国議会で答弁をしております。これは日本としても少なくとも協議あるいは話し合いの場を持つべきではないかと私は考えるが、外務大臣いかがです。
  373. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまはそういう必要はないんじゃないかと思いますが、しかし通峡阻止というような事態が起これば、やはり韓国と日本の関係でありますから、韓国との間で話し合いをするということは必要になってくると思います。
  374. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、なるべく近い日韓の定期協議あるいは非定期協議、随時協議の外相会談等でこれを議題に上せることもあり得る、妨げない、こういうことですか。
  375. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういう必要はないと思います。
  376. 秦豊

    ○秦豊君 明確で結構。いつまでそう言い続けるかは疑問ですけれどもね。  アメリカの北朝鮮政策が、明らかに、また微妙にかなりなテンポで変化していると私は思います。たとえば、アメリカ国務省が北朝鮮の外交官との日常的接触を許した。アメリカがやったからではなくして、日本の主体の問題として、特に安倍さんの外相任期中に少なくとも前に踏み出すような姿勢を北朝鮮外交との中でとれないのか。たとえば外交官個人の資格でもいいから訪問をするというぐらいの姿勢を見せてはいかがか。幸い意欲的な橋本局長もいらっしゃることだし、どうですかな。
  377. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカとちょっと日本は違うと思うのですが、日本の場合は北朝鮮との間ではいろいろの角度で民間交流、議員もそうですし、経済的にもそうです。あるいはその他文化面等においても交流がありますから、また同時に外交官の場合も出先におきまする儀礼的な交流等も行っておるわけでございますし、私は、いま国交のない状況においては日本と北朝鮮との間の交流はそれなりに進んでおると、こういうふうに思っています。
  378. 秦豊

    ○秦豊君 最後の質問になるでしょう。四月五日、ムバラク大統領が訪日をされますけれども、その際にエジプトに対して何らかの新たな経済援助を約束するという用意があるのかないのか、その点はいかがですか。
  379. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、ムバラク大統領がお見えになってから総理との間でもいろいろと会談が行われると思いますが、日本とエジプトとの間では、これまでも経済協力を行っておりますし、そういう状況の中で年度年度の協力については話し合う用意はございます。具体的な案件はまだ出てないという状況であります。
  380. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) これをもちまして、外交・防衛に関する集中質疑は終了いたしました。  明日は午前九時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十九分散会