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1983-03-19 第98回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十九日(土曜日)    午前十時十二分開会     ─────────────    委員の異動  三月十八日     辞任         補欠選任      井上 吉夫君     森山 眞弓君      桑名 義治君     三木 忠雄君      前島英三郎君     美濃部亮吉君  三月十九日     辞任         補欠選任      大坪健一郎君     伊江 朝雄君      田代由紀男君     増岡 康治君      太田 淳夫君     原田  立君      神谷信之助君     下田 京子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君     委 員                 伊江 朝雄君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 大島 友治君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田沢 智治君                 田中 正巳君                 林  寛子君                 増岡 康治君                 森山 眞弓君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 吉田 正雄君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 中野 鉄造君                 原田  立君                 三木 忠雄君                 下田 京子君                 田渕 哲也君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        科学技術庁計画        局長       下邨 昭三君        科学技術庁研究        調整局長     加藤 泰丸君        科学技術庁原子        力局長      高岡 敬展君        科学技術庁原子        力安全局長    赤羽 信久君        環境庁長官官房        長        加藤 陸美君        環境庁企画調整        局長       正田 泰央君        環境庁企画調整        局環境保健部長  大池 眞澄君        環境庁自然保護        局長       山崎  圭君        環境庁大気保全        局長       吉崎 正義君        環境庁水質保全        局長       小野 重和君        外務政務次官   石川 要三君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省経済局長  村田 良平君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        大蔵大臣官房審        議官       岡崎  洋君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省医務局長  大谷 藤郎君        厚生省薬務局長  持永 和見君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産技術会        議事務局長    岸  國平君        林野庁長官    秋山 智英君        水産庁長官    松浦  昭君        通商産業大臣官        房審議官     池田 徳三君        通商産業省通商        政策局長     中澤 忠義君        通商産業省基礎        産業局長     植田 守昭君        通商産業省機械        情報産業局長   志賀  学君        工業技術院長   石坂 誠一君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        松田  泰君        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君        資源エネルギー        庁公益事業部長  小川 邦夫君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        郵政省貯金局長  鴨 光一郎君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治大臣官房審        議官       田中  暁君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        会計検査院事務        総局第三局長   坂上 剛之君        日本専売公社総        裁        長岡  實君        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君    参考人        日本鉄道建設公        団総裁      仁杉  巖君        住宅都市整備        公団総裁     志村 清一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) まず、一般質疑についての理事会における協議決定事項について御報告をいたします。  審査日数は五日間分とすること、質疑時間総計は六百九十九分とし、各会派への割り当ては、自由民主党・自由国民会議及び日本社会党それぞれ二百十七分、公明党・国民会議百二十一分、日本共産党及び民社党・国民連合それぞれ四十八分、無党派クラブ及び新政クラブそれぞれ二十四分とすること、質疑順位等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     ─────────────
  5. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十八年度総予算審査のため、本日の委員会に、住宅都市整備公団総裁志村清一君、日本鉄道建設公団総裁仁杉巖君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     ─────────────
  8. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、これより吉田正雄君の一般質疑を行います。吉田君。
  9. 吉田正雄

    吉田正雄君 先日の予算委員会におきまして、私は長期エネルギー需給見通しについて政府見解をお尋ねしたんです。その際、私が申し上げましたのは、第一次の答申以来、中間報告等含めて六次にわたって答申が出されているわけですけれども、常に下方修正を余儀なくされてきたということで、その原因についてもいろいろお尋ねしたんですが、一言にして言うならば、とにかく供給確保というものを最大の目的にして、そのために需要見積もりというものをきわめて過大にしたということが最大原因だと思うんです。そこにまたエネルギー浪費構造というものができ上がってきたというふうに私は思っております。  現状を見ますというと、たとえば八二年度の電力需要は一%程度という低い伸び率で、八二年つまり昨年八月における設備容量一億二千五百七十万キロワット、これは揚水発電を除いておりますが、これに対して最大需要電力が九千三百二十万キロワットで、その余剰電力が三千二百五十万キロワット、余剰率が実に三四・九%ということでありまして、全原子力発電所設備容量千七百十七万キロワットをはるかに上回っておるんですね。  そういうことで、今回この長期エネルギー需給見通しについて見直しに入っているということを、昨日の本会議でも通産大臣は申されておりますけれども、いつごろまでにこの改定作業といいますか、見直しを完了される予定なのか、最初にお聞きいたします。
  10. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 一応私から命じてあるのは、六カ月ぐらい、半年ぐらいの時間をかけて今度は少しゆっくり見通しを立てろ、また、石油の五ドル下げもありましたし、そういうようなことで少しじっくりやってみろということを言ってございます。
  11. 吉田正雄

    吉田正雄君 見直しを必要とされた理由は何でしょうか。
  12. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) それは、いま御指摘になりました電力もありますし、また世界的な影響のもとに日本も例外ではない、石油省エネ、代エネを中心とする需要供給見通しが狂ってきたということにもあると思います。
  13. 吉田正雄

    吉田正雄君 現実としては、確かに需要供給のギャップが出てきたということなんですけれども、それを見誤った最大原因というのは何なんだろうかというふうに思いますが、その辺はどういうふうにお考えになっておられますか。
  14. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはちょっと役人は答弁することができない問題だと思う。ということは、通産大臣が過去の通産行政を批判するんじゃなくて、反省するという意味で申し上げますと、要するに、石油の輸入は自由であって、それから、今度は精製設備その他は許可であると、しかも、審議会まで設けてきちっとどの社がどれだけのキャパシティーということを決めていって、その下の元売から今度は卸、それから小売、これはもう届け出というような法体系があって、そこのところの、国が唯一認可許可をする設備の量、これが私は問題があった。したがって、設備の量の、たとえば民族系を優先したいという、そのころは正しかったんでしょうし、いまも正しくないということは言えませんが、そういうことにこだわり過ぎたんじゃないかという面、すなわち手足がないのに設備だけ大きなものを許してしまった。したがって、ここまで来ますと、石油業全体が、まず自分たちはこれでいいのかということを、通産省自体とともに過去の反省を込めて問い直さなければ、そこの流れをそのままにしておいて、能力は大きくして、稼働率が小さくなるのは嫌がって、そこで総論賛成各論反対ということになるということで、そこのところをいま、私がやったことでもありませんし、いまの担当者がやったことではありませんが、少なくとも通産行政の中の過去に反省すべき点というものがあればそこだと、そこをひとつどういうふうに解決できるか、率直に審議会先生たちにも聞いてみろと、こういうことを言っているわけです。
  15. 吉田正雄

    吉田正雄君 率直に需要見積もりが過大であったということもお認めになっておるわけですけれども、そこで経企庁にお尋ねしますけれども、経済成長率過去十年間の名目とそれから実質見通し、それと実績がどうであったのか、ちょっとお聞かせ願います。
  16. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 過去十年間の実質及び名目GNP見通し実績の対比でございますが、まず実質GNPで見ますと、四十年代の前半、四十四年度までは実績見通しを上回るという状態が続いております。たとえば四十一年度は当初見通し七・五%でございますが、実績は一一・四%、四十四年度が当初見通し九・八%でございますが、実績が一二・一%でございます。しかし、四十五年度以降になりますと、むしろ実績見通しを下回るという状態が続いております。特に四十八年、四十九年、第一次石油危機影響がございまして実績が当初見通しをかなり下回っております。また五十年代に入りますと、五十三年度、円高影響もありまして、たとえば当初見通し七%が五・一%という状態にございますし、特に第二次石油危機影響を大きく受けました五十六年度、また当年度は世界同時不況等影響もございまして、当初見通し実績がかなり下回る予想でございます。  一方、名目の働きを見ますと、おおむね実質とほぼ同様の動きでございまして、四十年代の前半昭和四十年度から四十四年度までは実績が当初見通しを上回っておりますが、それ以降はおおむね実績が当初見通しを下回るという状態が続いております。何分にも最初申し上げましたように、実質成長率見通しを下回っていることもございますし、また物価が比較的落ちついたという影響もございまして、名目が当初見通し実績がこれを下回るという状態になっております。
  17. 吉田正雄

    吉田正雄君 通産省見通し、いま言った経済成長率のほかにもいろいろな要因があって見積もられたと思うのですが、主として何を重点に見積もられたのですか。
  18. 豊島格

    政府委員豊島格君) 電力及びエネルギー需給につきましては、一つは先ほどのGNP伸びということでございますが、そのほかにGNP伸びに対するエネルギー弾性値、あるいは電力弾性値という、そういう弾性値を使ってやっております。去年つくりましたのは、弾性値で申しますと〇・六四でございますか、弾性値〇・六四という数字を使っております。
  19. 吉田正雄

    吉田正雄君 それは現状とどうだったのですか、現実とは。
  20. 豊島格

    政府委員豊島格君) 過去におきましては、大体特殊な年、たとえば第一次オイルショックの起こった翌年とか、特殊な年を除きましては、大体GNP伸びと、それからその弾性値においてはそれほどの大きな乖離は――傾向的には若干ございますが、余り乖離はなかったと、こう考えられますが、五十五年、六年におきましては成長率、これは政府予想よりは若干下回ったのですが、ある程度の伸びを示しておる。しかし、エネルギー伸びマイナスになっておるということでございまして、弾性値マイナスといいますか、弾性値と言えないと思いますが、そういう結果になっております。
  21. 吉田正雄

    吉田正雄君 特に電力伸び率が低かった理由というのは、どういうふうにお考えになっておりますか。
  22. 豊島格

    政府委員豊島格君) 過去五十五年、五十六年、五十七年と非常に低迷いたしておりますが、その中には景気の低迷とか、それから天候要因、たとえば夏は冷夏といいますか、そういうようなこともあって非常に停滞したわけですが、特に大きく伸びが落ちておりますのは大口電力でございまして、これがかなりの、三%前後の減少を示しておるということでございますが、その大口電力の半分といいますか、いわゆる電力消費産業と言われるアルミとか、その他の基礎素材産業ということでございまして、これが未曾有の不況に陥ったということが一つの大きな原因であろうかと思います。
  23. 吉田正雄

    吉田正雄君 冷夏理由とされておるようですけれども、私は率の上では大した影響力はないと思っているのですよね。やはり、産業構造の転換に伴うものが最大ではないかというふうに思っておるのですが、これも不況という理由は当たらないだろうと。産業構造そのものが、エネルギーをもう使わなくてもいい方向にきているのじゃないかということで、即不況と結びつけてエネルギー消費が落ちたという説明は、これはやっぱり当たっていないのじゃないかというふうに思うわけです。時間がありませんから、また委員会等で詳細お聞きいたします、その点は。  そこで、代替エネルギーの開発ということをどういうふうにとらえておいでになるのかということなのですね。省エネというふうにとらえるのか、あるいは熱効率の向上という点で、効率化という点でとらえるのかということで非常に違ってくるわけなのですよね。そういう点でこの省エネというものと効率化というものをどのように把握をされているのか、それを今日までのエネルギー行政の中にどういうふうに生かされてきたのか、ちょっとお尋ねします。
  24. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私たち日本人が、これから後、固体エネルギーから流体エネルギーへかわって、その有限の物資をどのようにわれわれが創造したエネルギーにかえていくかという問題と取り組むわけでありますから、きのうも高度の政治判断を要する問題だということをちょっと言ったほどでありますが、やはり基本的には、日本人英知の結集によって石油依存度を減らしていきながら、それにかわる新しいエネルギーというものをつくり出していくのだと、あるいは代替エネルギーを使って、等量の生産効果なり何なりを上げるのだということでありますから、二つ理由をお挙げになりましたが、それのどちら寄りになりましょうか。いずれにしても私たちが人間の手でつくり出せる、英知を結集した新しいエネルギーということで私は考えておりますので、したがって、これは民間の奮闘もありますが、そこらのところは配慮しながら、努力を促しながら、日本はいまこういう環境であればこそそういう努力というものを怠ってはならないし、緩めてはならないというふうに思っております。  どうも答えがぴったり合ってないと思いますから、もしあれでしたら事務当局からお答えいたします。
  25. 吉田正雄

    吉田正雄君 原子力というものは経済上の理由、あるいは不況対策として重点があったのか、エネルギー対策重点が置かれたのか、どっちなんですかね。
  26. 豊島格

    政府委員豊島格君) 石油は有限でございまして、将来に備えましてエネルギー供給安定化という点から、石油にかわる代替エネルギーの中で最も多くを期待するものとして、原子力発電を進めておるわけでございますが、同時に原子力発電発電コストは、石油はもとよりその他のエネルギー代替エネルギーに比べましても低廉でございまして、そういう意味エネルギーコスト低減化にも資すると、そういう意味でわれわれとしては推進しておるわけでございます。
  27. 吉田正雄

    吉田正雄君 非常に見解が違うといいますか、厳密に検討しなきゃならぬと思うのです。これは大蔵大臣もよく聞いておいていただきたいと思うのですけれども。私が先ほどエネルギー効率という点と、代替エネルギーというものとはちょっと違うのじゃないかと、省エネ効率化というのは違うのじゃないかということを申し上げたのですけれども、私は、原発ほどエネルギー対策上むしろ浪費構造になっているのじゃないかというふうに思うのですね。これが一番私は政策の中で誤ってきた最大のものだというふうに思っておるのです。特に、原発がクリーンであるとか、あるいは安いと、いまもおっしゃったのですが、安いとか、あるいはエネルギー危機の救世主だというふうなことで、盛んにキャンペーンを行ってこられたのですけれども、これは非常に違っておると思うのです。そこで、原発エネルギー収支経済性というものをどのように考えおいでになるか、これをお聞きしたいと思うのですね。きょうは時間がありませんから、基本的な点だけお聞きしますが、エネ庁高橋審議官が、エネルギーフォーラムの八二年五月号に発表された「原子力発電経済性総合的評価」という論文があるんですね。これは通産省の正式な見解といいますか、内容としては変わりがないというふうに理解をしてよろしいのかどうか。
  28. 豊島格

    政府委員豊島格君) 当時審議官であった高橋さんが書いたわけでございますが、そこに利用されておる資料は、必ずしも通産省資料だけでなくて、一般にいろいろな研究所その他の分析結果も踏まえて、総合的にある論文を書いておるわけでございます。ただ、中身としましては、われわれが考えておる、通産省として考えておるものとそれほど変化のあるといいますか、差異のあるものではないと思いますが、正式な見解というよりは、そういうものだと御理解いただきたいと思います。
  29. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、キロワット当たり原子力の場合大体十一円から十二円だというふうにいまもお考えになっておりますか。
  30. 豊島格

    政府委員豊島格君) 昭和五十七年度運開のベースで精算いたしますと、大体十二円程度というのが私どもの試算でも出ております。
  31. 吉田正雄

    吉田正雄君 これもあと委員会で詳しくお聞きをしますけれども、この算定要素を見ますと非常に政治的なんですね。もともと原子力というのは建設間もないわけですから、詳細なコスト計算というのはできないわけですね。イギリスでも、アメリカでも、日本でも、もともと原子力発電のコストというのは政治的に決定をされてきたものである。たとえば核燃料費を一円程度と見ておるんですけれども、たとえば加工中等の費用が一兆五千億円もあるわけです。この利息というものを考えますというと、耐用年数等を考慮すると、すでにこれが十円になっちゃう。それから建設費についても大体八円から九円というふうに言われておるんですけれども、建設コストはこの論文によっても、大体六万円上がるというと三円程度コストが上がるということが言われているわけです。  具体例を申しますと、柏崎の第一号炉では、当初の建設費が三千七百五十億円であった。現在は四千七百三十億円、まだ七〇%程度の建設なんですね。こうやってみますというと、三千七百五十億円で建設単価が二十四万から二十五万、四千七百三十億円になりますというと、四十三万から四十四万円の単価になってきますね。そういたしますと、ここだけでもってすでに九円のアップになるということで、建設費だけ考えても、この原子力発電コストというのは二十円から二十一円になるわけです。しかも、リードタイムというものが非常に長いわけですから、そこにさらに利息を入れますというとこれまた大変な数字になりまして、燃料費と建設分だけで三十円から三十二円についてくるわけですね。さらにこれに再処理費用等を入れますというと、この中にはもうとても計算できない莫大な高レベル廃棄物の保管費等が入ってくるわけですね。こういう未知の分というものがほとんどここには積算されてないということでありますから、そういうものを考えますというと、現在の電気料金というものは大体四十円から五十円くらいにつくんじゃないか。そういうものが全部カットされているわけですね。  そういう点で私は原子力というものは決して安いものではない、しかも、エネルギー収支の面から見てもそういうことは言えないだろう。アメリカで現在原発建設がキャンセルをされている、建設中のものですらどんどんいま建設中止になっておる最大理由というのは、安全性もありますけれども、電力会社としてはコスト高ということで採算に合わぬというのが主要な原因になっているわけですね。これは改めてお尋ねをいたしますけれども、これを大蔵大臣通産大臣から十分認識をしていただきたいというふうに思っておるわけです。  さらに、それだけでなくて、原発の場合には環境汚染というものも出てまいるわけです。そこで、エネルギー消費の増大に伴って一体環境がどういうふうに汚染をされてきておるのかという点について、環境庁の方にお尋ねをいたします。
  32. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) いまお話しのエネルギーの消費に伴いまして、汚染状況どうかということでございますが、必ずしもエネルギーの消費量に応じてどうこうということでなくて、もちろんそれも影響いたしますが、やはり使用燃料の種類とか、あるいは大気の汚染防止をどうやってきたか、こういうことも影響いたしますし、それから気象状況、こういうようなことも大きく影響をするわけでございます。そういうことで、一概にエネルギーの消費が大気汚染に直接影響する、こういうふうに私は申し上げることはできないんじゃないか、かように考えるわけでございます。  そこで、たとえばいま一番問題になっております代表的な二酸化硫黄の濃度、この推移を調べてみましても、消費量の増減に関係せず種々の対策やりましたので、これによって大変改善されておりますし、それからまた、これからいまもお話ございましたとおり、石油から石炭にかわる、こうなりますと、石炭は石油に比べまして窒素酸化物、NOxですね、NOxの方が発生量が多い、あるいはばいじんが多い、こういうことでございますので、こういう方は今後ともまた規制をしていかなきゃならぬ、かように考えるわけでございます。そういうことで、エネルギーの消費と大気汚染とが直接かかわっておると一概には申し上げられないと、かように思います。
  33. 吉田正雄

    吉田正雄君 数字的にははっきりしているんですけれども、六〇年と七〇年の対比でGNP、それからエネルギー消費と、いま言ったS02ですね、あるいはN02等がどういう割合でふえてきているか、ちょっとおっしゃってください。
  34. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 六〇年ですと、いま手持ちにありますので申し上げますと、これは昭和で書いてありますが、よろしゅうございますか。昭和四十年の第一次エネルギー供給量でございます。これは資源エネルギー庁の統計でございますけれども、千六百五十六兆キロカロリーでございます。そこで五十六年度はそれが三千八百三十九兆キロカロリーというふうに増加をいたしております。
  35. 吉田正雄

    吉田正雄君 約何倍になりますか。
  36. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 約二倍でございますね、三千八百三十九でございますから。  一方、継続十五測定局における二酸化窒素の年平均、単純平均値の推移でございますが、昭和四十五年には〇・〇二二でございました――失礼いたしました。これは間違いました。昭和四十年には〇・〇五七でございましたが、昭和五十六年度には〇・〇一四と低下をしておるところでございます。
  37. 吉田正雄

    吉田正雄君 対応年度が違っておったんじゃ、それ比較にならぬでしょう。片や四十年と五十年の比較で、片や四十五年と五十六年の比較では全然それは対比にならぬでしょう。
  38. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) いや、失礼いたしました。四十年と五十六年度でございます。最初にちょっと申し上げました方が間違いまして、後から申し上げましたやつが合っています。
  39. 吉田正雄

    吉田正雄君 もうちょっと、わかるように数字を述べてもらわぬと困るんですよ。私の方で全部言っていると持ち時間全部なくなっちゃうんですよ。非常に巧妙なというか、そういう答弁が大体よくないんですよ。予算委員会の総理と大蔵大臣の答弁、私もずっと聞かしてもらったんですけれども、具体的な内容は何もない。非常にきれいな言葉だけが並んでいるんですよ。それで、今度は具体的に聞くと、数字というものは余りはっきりおっしゃらぬし、あるものについては年度が違ってみたり、対応の仕方のないような。これは私の方で調べたのでは、六〇年と七〇年度ではGNPが二・八倍、それからエネルギー消費が三・三倍、それからS02、二酸化硫黄、これが三・五倍、それからN02、二酸化窒素、これが二・九倍、水質のCOD負荷、これが三倍、こういうことで、産業廃棄物も三・六倍ということで比例をしているんですよね。だから必ずしも比例しないという先ほどの答弁は、これは全然当たっていないですから、環境庁長官、もうちょっと勉強してもらわぬとこれは困るんですよ。どうですか、それ。
  40. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) いや、私が申し上げましたのは、いまおっしゃるように、それは何もしなければエネルギーの消費がふえれば汚染度ふえていく、これはもう当然でございますが、対策をずっと講じておりますから、必ずしも現在の状態ではエネルギーの消費に応じて、いまお話のSOxなんかはもしろ減ってきて相当改善されてきておる、NOxはなるほどまだ横ばい、こういう状態でございますから、そのことを申し上げておるので、一概に比例的にこうならないと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  41. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまおっしゃったS02が若干減少しているけれども、N02は横ばいであるということなんですが、その他いろんな全体の状況というのは決して減少してないんですよ。公害防止技術というのは、単に廃棄物をふやすという技術にしかなってないということをまだ十分理解されておらないようです。  そこで、私は、アメリカ政府が発表した「西暦二〇〇〇年の地球」という報告書がございます。これも十分読んでいただきたいと思いますし、それから、これは核に関することなんですが、「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」という広瀬さんの書いた本がありますから、これもひとつ各大臣読んでおいていただきたいと思うんですよね。それから、がんと核との関係では「核文明の恐怖」というのが、コルディコットというお医者さんですが、この人の書いた本がありますから、これ岩波の現代選書から出ておりますから、こういうものも少しごらんいただいてから環境問題、あるいは安全性の問題での論議をしていただきたいと思うんですよね。いまことで一々中身に触れている時間がありませんから、いずれひとつ皆さんからお読みいただくことを前提にして、次回のまた委員会で詳細お聞きしたいというふうに思っておるわけです。まだいろいろ資料はたくさんございますけれども。  そこで、時間がありませんので、見直しの基本的視点は何かということをお尋ねしたいと思ったんですが、詳しくはやめまして、基本的な視点と、具体的には一体どこに重点を置いて改定をされてるのか、その点だけまずお聞きをしておきます。
  42. 豊島格

    政府委員豊島格君) 見直しの基本的視点ということでございますが、最近のエネルギー情勢を踏まえてやるわけでございますが、一つ石油依存度を一層低減をするということがございますが、もう一つ重要な問題としましては、最近エネルギーコストの上昇ということがわが国産業にいろいろの影響といいますか及ぼしておるということでございまして、いわゆるセキュリティーの問題だけでなくて、経済性等をも総合的に勘案して、そういう感じのバランスのとれたエネルギー糟鰐ということも考えていきたい、こういうことでございます。もちろん最近の石油価格の低下傾向、そういうことも一つ要因になろうかと思います。
  43. 吉田正雄

    吉田正雄君 今後の見通し需要との関係がありますが、防衛庁長官にお聞きしますけれども、防衛庁の年間使用エネルギー消費の量、まあ石油でいいんですが、それと燃費が一体どうなっているのか。これからどういうふうにふえていくというふうにお考えになっておりますか。  それから、農林水産大臣、同じく現在の日本の農業というのは石油づけ農業と言われておりますし、機械化が必要以上に進んでいるんじゃないか、こういうこともエネルギー浪費構造に手をかしておる私は大きな原因だろうと思うんですが、一体石油の農産物価格に占める割合がどんなものになっておるのか、そして将来一体日本農業の構造改善といいますか、そういう点でエネルギー問題をどのように把握をされているのか、お尋ねいたします。
  44. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 防衛庁で使っております燃料の量と、それから金額を申し上げますと、五十七年度は七百四十六億円で、一応予算ベースでは九十二万キロリットルでございます。それから五十八年度、現在御審議をお願いしております予算案では、八百七十六億円で九十九万キロリットルということでございまして、量は日本全体の消費量の約〇・四%ぐらいでございます。
  45. 吉田正雄

    吉田正雄君 ランニングストックはどれくらいありますか。
  46. 木下博生

    政府委員(木下博生君) ランニングストックと申しますのは、年度当初の調達をやりますのに時間がかかりますために、年度末に購入をしておく量でございますが、現在ほぼ二カ月程度を考えております。
  47. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 農業関係につきましての石油の消費の状況につきましてお答えを申し上げます。  農業におきます石油製品の消費量、これはいろいろ用途がございまして、たとえば乾燥用であるとか、動力用であるとか、あるいは加温用、乾燥用と分かれておりますが、大体三百七十六万キロリットルぐらいでございます。これは昭和五十三年の三百九十二万、あるいは五十四年の三百九十七万キロリットル、これをピークにいたしまして、私ども省エネ等の指導をいたしております関係もございまして、また燃費が高いということもございまして、最近では五十六年におきましては三百十二万キロリットル、先ほど申し上げました三百七十六万は五十五年の数字でございますが、五十六年度におきましては三百十二万キロリットルに減っておるということでございます。  それから、生産費の中でどの程度のウエートを占めておるかということでございますが、これはそれぞれの作物につきまして非常に大きな幅がございますが、農業経営調査、農家経済調査等から見ますと、生産費の中の約四・八%程度、これが石油の価格だと考えております。  それから、現在の農業、確かに石油づけというような御批判もございますが、私ども現在の石油事情、あるいは将来の石油事情の動向等を見てまいりますと、やはり省エネ、あるいは代替エネルギー資源の開発ということが必要でございますし、また特に石油資源の代替利用等、あるいは開発等に関しましては、自然の生態系と調和のとれたこと、また農村におきましていろいろ考えられます天然の資源エネルギー、風力であるとか、地下水であるとか、水力、そういうものも今後大いに取り入れていく必要があると考えております。  機械化の現状につきましては、機械の種類によって相当開きがございますが、現在では五十七年度をとりますと、トラクターあるいは田植え機、バインダー、自脱型コンバイン等いろいろございますが、歩行型のトラクターでは百戸当たり大体六十一台、六一%程度、自脱型コンバインでは二一・三%というように、相当程度の普及をしております。  今後につきましては、私ども先ほどの省エネの問題等をひっくるめまして、農業につきましても将来の需給動向を見ながらも、できるだけ省エネの方向に指導してまいりたいというふうに考えております。
  48. 吉田正雄

    吉田正雄君 電力施設設備計画の中で旧火力発電というものを廃棄するという動きが出ておるようですけれども、どういう状況ですか。
  49. 豊島格

    政府委員豊島格君) 火力発電所の中で非常に耐用年数、寿命が来ておりまして、しかも熱効率が非常に悪いというものにつきまして、五十七年度にたしか九基廃棄する、こういう計画であったかと思います。
  50. 吉田正雄

    吉田正雄君 もうちょっと詳しく言ってくれませんか。
  51. 豊島格

    政府委員豊島格君) 五十七年度におきまして砂川とか――これは北海道です、八戸、それから名港という発電所を九基廃止するわけでございますが、その耐用年数といいますか、使用年数を見ますと、長いのは四十三年とかということでございまして、一番短いのでも二十四年を超えておりますが、その熱効率は大体二九ということで、最近の火力発電所ですと四〇に近い熱効率を示しておりまして、したがって、こういう火力発電所を使いますと三割ぐらいエネルギーがよけい要るということでございまして、したがいまして、これは廃棄した方が経営上有利であるといいますか、経済、採算性からいっていいということで廃止するものでございます。
  52. 吉田正雄

    吉田正雄君 三十年代建設のものは含まれていないんですか。
  53. 豊島格

    政府委員豊島格君) 昭和三十年代ですか、若干ございます。含まれております。
  54. 吉田正雄

    吉田正雄君 どことどこです。
  55. 豊島格

    政府委員豊島格君) 砂川――北海道の砂川とか、八戸等はそうじゃなかったかと思います。それから名港に一つ、三十年というのが一つございます。
  56. 吉田正雄

    吉田正雄君 通産大臣大蔵大臣、聞いてもらいたいんですが、まだ十分使える三十年代に建設されたものまで約四百万キロワットくらいあるんですけれども、これを電気が余っておるということでどんどん廃業をしよう、そして先ほど言った原発をどんどんつくろうという、こういう計画というのは、電気料金の性格から考えても、これはもう国民に負担を押しつけるものであって、廃棄について通産当局として十分慎重な配慮と指導がなされるべきだと私は思うんですが、その点いかがですか。
  57. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いまの廃棄したものについて、なぜしたのかということについても聞いてみましたが、私の聞いた範囲では、大体、非常に低い稼働率といいますか、効率の悪い発電所になったので、そこのところは廃止するんだという説明でございました。しかし、いまの耐用年数はまだ十分あって、発電、送電に耐え得るものであったということが含まれているなら、もう一遍点検してこれからの指針にしたいと思います。
  58. 吉田正雄

    吉田正雄君 大蔵大臣、いかがですか。
  59. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 専門的でありませんが、いま通産大臣がお答えなすったとおりでございます。
  60. 吉田正雄

    吉田正雄君 それじゃもう一点、環境問題でお尋ねをしておきますけれども、とにかく環境汚染、破壊というものが進んでいることは間違いないわけです、巨大開発等。  そこで、環境アセスメント法案の対象から電源開発が除かれたというのは一体どういう理由なのか。それから公害病患者の発生状況、推移がどうなっておるのか。それから厚生省としては、がん愚者が非常にふえてきておるわけですが、その原因というものは何なのか、あるいはがん患者の対策といいますか、診療体制等についてはどういうふうな対策をお持ちなのか、その辺お聞きをいたします。詳しいことはまた委員会でお聞きをいたします。
  61. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) ただいま衆議院の方で御審議いただいておりますアセスメント法案でございますが、電源関係を対象事業から除きましたのは、過去の発電所関係の立地に至りますプロセスが非常に多様、複雑、長期にわたっておりまして、アセスメント法案につきまして全国的な統一した、スタンダードの法案を作成する過程においてもう少し時期を見たい、こういう関係で除いておりますので、御了解いただきたいと思います。
  62. 吉田正雄

    吉田正雄君 通産大臣、通産とか産業界の圧力が非常に強くて後退したんではないかと言われているんですが、そういうことがあってはならぬと思うんですよ。  私は、やっぱり健全な国家、あるいは民族、あるいは国家の繁栄というものは、そういう産業優先とか、公害たれ流しという上に立ってはならぬというふうに思っておりますので、その見解をお聞かせ願いたいと思います。
  63. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、私に限って言えば、私が協議に参加してつくった法案ではありません。すでに国会にも前から出ておるわけですね。その経過について聞きました。  その経過では、確かに発電所というものは除く、逆に言うと、その範囲は公共事業の範囲にとどめてもらいたいということだったようです。何も通産省がいわゆる電力業界の影響、陳情を受けてそういうことをやったとだけは思われない節があります。したがって、これから政令追加という道も残っておりますから、それについてはまたさらに――もちろん私の就任前でありますが、環境庁との間で覚書が交換されておる、すなわち発電所は指定しないということになっておるんです、いま。しかし、環境庁長官にこの間、法案は成立することが望ましいから、私の方に協力する点があったら言ってくれ、協力はするよと言っておきました。
  64. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) がんにつきましては、先生御指摘のように、ふえておりますが、その中身につきましては、たとえば胃がん、子宮がん等は減少をしておる、あるいは肺がんその他のがんがふえているというふうな状況がございまして、これも一概にその原因について申し上げるような状況ではございませんが、いずれにいたしましても環境等あらゆる面からの予防に対する研究が必要であるというふうに考えております。  また、それにつきまして治療の体制でございますが、国立がんセンターを中心にいたしまして、全国にブロック別、あるいは都道府県その他の診癖機関を系統的に整備するということで対策を進めているところでございます。
  65. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 大気汚染等との関係におきます公害病について、どのようなものがあり、患者の推移がどのようになっているかということについてお答えしたいと思います。  公害による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図るために、昭和四十九年、公害健康被害補償制度が創設されまして、慢性気管支炎、気管支ぜんそく等大気汚染系の四疾病が指定されております。そのほか、水俣病、イタイイタイ病、慢性砒素中毒症もこの制度で対象としております。  ただいま申し上げました大気汚染系の疾病に係る被認定者数は、制度発足直後の昭和四十九年度末には約一万九千三百人でございましたが、その後数次にわたります地域指定の追加が行われまして、現在約八万五千人となっているところでございます。
  66. 吉田正雄

    吉田正雄君 最後に、環境問題で基本的な考え環境庁長官にお聞きしますけれども、電源がいまのアセスメント法案から除かれておる。そのほかに、原子力発電所から出る大量の低、高レベル廃棄物の処分については、まだ最終的に決まっていないわけですね。しかし、ここの部分について、現在の法体系では完全に欠落をしているわけですね。これについて、すでにそろそろ影響も出始めておるわけですから、そういう点で今後どのように対応をされようとしておるのか、ついでに科学技術庁長官にもお尋ねをいたします。
  67. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 低レベルの廃棄物に焦点をしぼりましてお答え申し上げますが、現在原子力発電所などで比較的レベルの低い放射性廃棄物がかなり大量に出ております。これにつきましては、吉田先生十分御存じでございますが、セメント固化というような方法で、ドラム缶に詰めて敷地内に貯蔵をいたしておるわけでございます。もちろん安全上の配慮を十分いたしまして、安全に貯蔵ができております。かなり大量のものがたまっておりますけれども、そういう事情にありますので、将来的にはこれを最終的な処分を図る必要があるということは当然でございまして、これにつきましては最終処分といたしまして海洋に処分をするということと、陸地で処分をするということと両面で対策を考えておるわけでございます。それで、海洋の処分につきましては、まず試験投棄といいますか、投棄という言葉が適当でないかもしれませんが、試験的な処分をまず十分やるということで考えております。そのための調査研究でありますとか、あるいは法令の整備でありますとか、あるいは具体的な環境の安全評価ということ、あるいは国際条約に加盟をするというような諸準備をすでに完了しておるわけでございますが、せんだってのロンドン条約の締約国の協議がございましたけれども、そのときの議論にもございますように、国際的な同意といいますか、理解というのがなかなか得られないという状況にございます。こういう状況にございますけれども、ロンドン協議の結果、科学的に十分安全性その他の評価をするということになっておりますが、これにつきましても積極的に私ども参加をいたしまして、理解を求め、実行に移すように努力をしたいというふうに考えております。  それから陸地処分につきましては、これにつきましても試験研究その他安全評価につきましてもいろいろな研究をやっておりますし、検討を進めております。でございますが、現実の問題といたしまして、日本の自然環境その他考えまして、陸地において最終処分をするということにつきましては、比較的近い将来にこういうことが実現するというのはなかなかむずかしい点がございます。でございますから、一方では先ほど申し上げましたように、発電所の敷地内での貯蔵能力にも限度がございますので、まあこと四、五年ということでは問題ございませんけれども、長期的には問題が生じてまいりますので、まあ施設外貯蔵とわれわれ言っておりますけれども、発電所外で低レベルの廃棄物をかなり長期、たとえば二十年でありますとか、三十年でありますとかにわたりまして、集中的に貯蔵するということを検討したいということで、それを実現するための安全規制の内容でありますとか、あるいはそういったサイトについて理解を求めるための具体策、そういったものの検討をやっておる次第でございます。  大体以上のような考え方でこの問題に対処をいたしております。
  68. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) いま科学技術庁の方からお話しございましたとおり、放射性物質の汚染、これは原子力法で科学技術庁で一元的に取り扱うと、このようになりまして、私どもの方の公害対策基本法でも、第八条で、大気汚染だとかいろいろなことがありますがね、放射性物質は除かれておるわけでございます。そういうことで科学技術庁、あるいは関係のところで一元的に実施されまして、それから原子力安全委員会がダブルチェックをすると、こういうことになっておるわけでございます。まあしかし私ども環境庁としまして、直接所管じゃございませんが、放射性物質で汚染されたらこれはもう大変なことでございますから、そんなことはないように厳重にやっていただきたいと、かようには考えております。
  69. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの答弁ではさっぱり中身もないし、何をやられようとするのかも明らかでないのです。  時間がありませんから次に移ります。  石油備蓄についてお尋をいたします。現在の国家備蓄状況はどうなっておりますか、そのまた方式別内訳はどうなっておりますか。
  70. 豊島格

    政府委員豊島格君) 国家備蓄につきましては、民間の九十日備蓄に加えまして、六十三年を目指して三千万キロリットルを目標とする実施をしておりまして、大体五十七年度末で千二百五十万キロリッターが備蓄されております。  なお、その備蓄の方法につきましては、国家備蓄基地というものは当初ございませんでしたので、タンカー等による備蓄、あるいは民間の備蓄基地といいますか、タンクを借りまして備蓄をしているという状況でございますが、六十三年を目指して三千万キロリッターを確保すべき国家備蓄基地を現在建設中でございまして、一番早いのは来年度末にできることになっております。
  71. 吉田正雄

    吉田正雄君 石油情勢が売り手市場から買い手市場に変わったという中で、相変わらず三千万キロリットルの国家備蓄の必要性があるのかどうか、その方針は変わりがないのかどうなのか。
  72. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これについては先ほど申しましたように、高度の政治判断というものが伴うと思うのです。  しかし、基本的にはOPECの情勢その他が仮に一時的に変わったにしても、彼ら自身の戦略も有限の物資であることに基づいた戦略を行使しているわけでありますから、ましてや九九・八%の輸入依存度のわが国としては、国家備蓄を含めて民間備蓄も、やはりこれは停滞さしてはならないし、一時的な取り崩し等は仮にあるでしょう、あるために備蓄をするわけですから、私としてはむしろ民間備蓄、国家備蓄を含めてもっと日本よりか多い国もあるわけでありますから、それは増加する方向にいかなければならぬ。たとえば、国家備蓄三千万キロリットルについても五千万キロリットルにしたらどうだという――これはうちの与党の方の意見もありますが、そこのところを通産省が慎重にいたしておりますのは、その必要性というものは変わりはないし、やっていかなければならないが、それを絶えず満杯にしておかなければならないかどうかについては現在の需給というものを考えて慎重な姿勢をとっておるものと見ておりますが、基本的にはやはり既定の計画に基づいて、日本こそ国家備蓄をしなければならない、あるいは国家の援助による民間備蓄をしなければならない最も必要な国ではないかと判断しております。
  73. 吉田正雄

    吉田正雄君 三千万キロリットルの目標設定の理由というのはどこから出てきておるのですか。
  74. 豊島格

    政府委員豊島格君) 昨年の総合エネルギー調査会の答申がございますが、いずれにいたしましても、日本の備蓄は現在民間備蓄九十日、実際需要が減っておりますので、もう少し多くなっておりますが、いずれにいたしましても、世界のIEA諸国の備蓄の平均を見ましても、大体百六十日ぐらいございまして、日本のように中東依存度が一番高いと、最もエネルギー供給構造といいますか、石油供給構造が脆弱な国においてそういう低い水準ではいけないということで、三千万キロリットルの備蓄目標を国家備蓄として掲げたわけでございます。
  75. 吉田正雄

    吉田正雄君 根拠になったその答申文書があるでしょう、それは。
  76. 豊島格

    政府委員豊島格君) 文書を申し上げますと、今後のわが国の石油備蓄政策はわが国のエネルギー供給の脆弱性を踏まえ、これは先ほど申し上げました、それから諸外国の備蓄の状況と、これは先ほど申しました百六十日以上ということです。それから内外の石油需給、それからタンク建設のためのリードタイム等を十分勘案しつつ進めていく必要があるということですが、この際、備蓄を長期的には三千万キロリットルを目標として今後の備蓄のあり方を規定する諸条件の変化を照応しながら対処していくということでございまして、三千万キロリットルというのは先ほど申しました欧米の備蓄の状況あるいはこれに民間の負担の能力の限界ということを考えまして、国家備蓄として三千万キロリットルと、こういうふうにしたわけでございます。
  77. 吉田正雄

    吉田正雄君 その長期的というのは何年くらいを意味しているのですか。
  78. 豊島格

    政府委員豊島格君) 当面の目標は六十五年というのが一つエネルギー計画としてございますが、われわれの国家備蓄の目標は、一応その二年前でございますが、六十三年度を目標に進めております。
  79. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまのエネルギー調査会の石油部会の答申というのか、文書の中をいま読み上げられたのですけれども、今後のあり方を規定する諸条件の変化に対応しながら対処していくということで、条件が大きく変わっているのですよね。したがって、三千万キロリットルというのは検討すべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  80. 豊島格

    政府委員豊島格君) 石油の現在の需給状況ということにつきましては、確かにこの二、三年むしろ減少ぎみということでございまして、条件は変わっておりますが、中長期的に見ましてどうかということが一つ問題でございます。さらに、いわゆるこの備蓄の目的ということが緊急時に対応するものであるということで、単なる短期といいますか、平常時の需給とは関係が必ずしもないということでございます。したがって、いろいろと検討すべきことはあろうかと思いますが、先ほど大臣の答弁にもありましたように、日本の現在置かれている地位及び諸外国の対応等を見ますると、三千万キロリットルということ自身も必ずしも十分でない。五千万という声もあるわけでございまして、そういうことを総合的に考えますと、三千万キロリットルの現在の数値を見直すといいますか、低目にするという必要性はない、むしろさらにどこまでふやしていくかということをも含めて考えていくわけでございまして、現在その三千万を見直す、そういうものを新しく見直すということにはならないかと思います。
  81. 吉田正雄

    吉田正雄君 先ほど国際的とかあるいはIEAの水準というふうなことをおっしゃったのですが、IEAではどうなっていますか。
  82. 豊島格

    政府委員豊島格君) IEAの諸国の平均の備蓄量は百六十五日、たしか去年の九月かそこらの数字だったと思います、七月かの数字でございますが、そういうのが数字でございます。
  83. 吉田正雄

    吉田正雄君 そのIEAの備蓄日数というのは、内容はどういうことを意味していますか。
  84. 豊島格

    政府委員豊島格君) 計算の仕方として、若干タンクに入っているものを全部勘案しないとかそういうこともございますが、原則、輸入量に対する備蓄日数ということでございます。
  85. 吉田正雄

    吉田正雄君 全然意味がわからないですね。備蓄日数というのは、備蓄量を一日当たりの純輸入量で割って算出した数字なんですよね。そうすると、イギリス、カナダ、アメリカはどうなりますか。
  86. 豊島格

    政府委員豊島格君) カナダは二百五十四日ということでございます。それから、イギリスについてはこれはちょっと手元にございませんが、これは輸出国になっておりますから、現在若干の輸出国ではないかと思いますので、数字が出ないのじゃないかと思います。それからもう一カ国はどこでございましたでしたか。
  87. 吉田正雄

    吉田正雄君 アメリカ。
  88. 豊島格

    政府委員豊島格君) アメリカは二百五十四日です。
  89. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは通産大臣、それから大蔵大臣に聞いてもらいたいのですけれども、いまイギリスのは、輸入国でないからちょっと数字がないと言うのですがね。日数というのはいま言ったように備蓄量を一日当たりの純輸入量で割るのですよ。したがって、輸出国については無限大になっちゃうのです、この数字は。それからカナダの場合には、原油を輸入すると同時に精製して輸出をしているわけですからね、備蓄日数というのは千日近くになっちゃうのです。だから計算のやり方というのは全然違うのですから、IEA並みという言い方というのは、これは全然経済安全度をはかる数字にはならないのですよ。日本はアメリカに次いで世界第二位なんですよ、いいですか。それからアメリカの場合の二百五十日という備蓄量は、まさに戦略物資、軍事用が中心なのです。こういうものと比較してIEA並みの百五十日とか六十日というのは、全然数字としては根拠を持たぬ、これははっきり言って。したがって、私は根拠をもし少なくとも与えるということになるならば、デーズFCでなければいけないと思うのですが、デーズFCというのをどういうふうに理解されておりますか。
  90. 豊島格

    政府委員豊島格君) いま伺ったことをちょっと聞き取れなかったのですが、先生おっしゃいました、確かに輸入量と消費量との関係でございますが、この備蓄がIEAでなぜ問題になったか、IEA自身がなぜできたかということは、御承知のように第一次石油ショック以来、石油がいわゆる政治の道具に使われるということで非常な大混乱を巻き起こしたということで、いわゆる中東産油国に対するそういう石油の途絶ということを目的としてそういうことに対応するということでございまして、国内にある石油資源につきましては、まあ国内で……
  91. 吉田正雄

    吉田正雄君 そんなこと聞いてないですよ、正確に答えてください。
  92. 豊島格

    政府委員豊島格君) あるかもわかりませんが、そういうことでございますので、数字を根拠として輸入を使うということは決しておかしいことではないと私は考えます。
  93. 吉田正雄

    吉田正雄君 数字がおかしいと言っているのでなくて、言っている意味がおかしいでしょうと言うのですよ。皆さんが言う経済安保とか緊急事態というのは、輸入がとだえた場合に何日もつかということでなきゃいかぬわけでしょう。それを端的に示すのがいま言ったデーズFCなんですよ。正確に言うと、デーズ・フォワード・コンサンプションだ、これでもって決めなきゃだめでしょう。そうやったならばIEAの中で一体日本はどうなっているか、むしろ最高ですよ、最高に近い。
  94. 豊島格

    政府委員豊島格君) いまおっしゃいました消費量に対する云々ということでございますが、日本は輸入がほとんど九九%以上を占めておりますので、いずれにしましても同じでございますが、この備蓄の目的はその消費に対してやるということではないわけでございまして、あくまでも輸入の途絶に対して備えるということでございますので、それを前提としなければいけないかと思います。
  95. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから輸入の途絶に対してIEA並みでないかと言っているんですよ。よく聞いて答えてくださいよ。ただIEA並みの百五十日だ百六十日だと言ったって、輸入しない国というのは、イギリスなんというのは輸出ばっかりでしょう。これだったらもう日数というのは無限大になっちゃうのですよ、輸入がゼロなんだから。そんな数字で比較していること自体全然問題になってないじゃないの。だから備蓄の目的は何かと聞いているのですよ。
  96. 豊島格

    政府委員豊島格君) 備蓄の目的は、輸入が途絶した場合どういう影響があるかということを前提としてやっておるわけですが、日本の場合は消費と輸入とが同じでございますので、先生のおっしゃるところは特にどういうことか……
  97. 吉田正雄

    吉田正雄君 何言っているのですか、備蓄の日数聞いているのですよ、いま。消費と輸入が同じだ何だじゃなくて、備蓄のことを言っているのですよ。だから、備蓄が何日あればいいかということなのでしょう。だからIEA並みというのはどういう内容ですかとさっきから聞いているのですよ。
  98. 豊島格

    政府委員豊島格君) だから、輸入に対してIEA並みということでございますから、百六十五日です。
  99. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、IEA並みと言ったら、日本は少なくないじゃないですか。
  100. 豊島格

    政府委員豊島格君) 消費に対してはIEAの国とそう違わないかもわからないということは言えますが、消費を前提に備蓄制度があるわけじゃございませんで、緊急的な事態が起きた、輸入が途絶するということを前提としてやっておるわけですから、いま先生のおっしゃったように、IEA並みをどこで見るかというと輸入で見るということでよろしいかと思います。
  101. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、いま言った備蓄の内容というのは何かと聞いているわけでしょう。それを比較するにはいま言ったようにデーズFCで比較をするのが最も妥当だと言っているのですよ、それは。それをただ百五十日、百六十日と言っているから、アメリカに次いで日本最大の備蓄国だと言うのですよ。三千万キロリットルの根拠が明白でないということを言っているのですよ。全然答弁になってないじゃないですか。わからなかったらわからぬでいいのですよ。
  102. 豊島格

    政府委員豊島格君) 先生の御指摘の点、私十分理解してなければ申しわけないと思いますが、たとえば英国が無限大になるだろう、輸出国だから、そういうことはその国としてわかりますが、それがIEA全体の数字にどれだけ影響しているかということになりますと、英国の保有する備蓄量というのは非常に小さいわけでございまして、五%程度でございますので、いま申し上げました比較において百六十五日あると、その中には英国のようなところも入っておるのでおかしいのじゃないか、こういう御趣旨であれば、その数字は若干変わるかもわかりませんけれども、大勢に影響はないと私は思います。
  103. 吉田正雄

    吉田正雄君 大勢に影響がないじゃないでしょうが。だから、私はさっき三つ言ったでしょう、イギリス、カナダ、アメリカと。カナダの場合だって、これも特殊でしょう。そういうものの影響を全部やったら、一体百五十日や六十日出てくるわけないじゃないですかと言っているのですよ。
  104. 豊島格

    政府委員豊島格君) 私、ここで細かい数字をいたしておりませんが、カナダについては先ほど六百日とか、何か非常に多いことは事実ですが、これは消費量は非常に少ないわけですから。それから、アメリカについては確かにございます、そういう数字が影響あろうかと思いますが、しかし、考え方としてほかの国を申しましても、かなり日本と比べて高いところがあるわけでございまして、たとえば……
  105. 吉田正雄

    吉田正雄君 平均したら幾らになります、平均したら、それで。そういう特殊なものを除いて平均したら幾らになりますか。百五十、六十、出てこないでしょう。
  106. 豊島格

    政府委員豊島格君) 手元にはちょっとその資料はございませんが、それほど大きな違いはないかと思います。
  107. 吉田正雄

    吉田正雄君 手元に資料がないと言って、私はきょうは石油備蓄のことを聞きますよと言っているのですよ。この間から公明党の委員の皆さんも質問されたけれども、全然答弁になっていなかった。数字にも間違いがあったのですよ。民間備蓄の余裕量なんかずいぶん間違っている。
  108. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 確かに、IEAの数字の根拠があって日本も数字をはじき出したような答弁では御納得なさらないでしょう。しかし、後でそのことは説明いたさせますが、私は最初から高度の政治判断の問題だと言いました。きのう言いましたので、いらっしゃいましたから繰り返さないつもりでいましたが、第一次石油ショックを受けたときの各国の反応の中で、私は際立って記憶に鮮烈なのは、西ドイツで、シュミット首相がその措置が発表されたときに直ちに国家備蓄一千万トンというものを実行いたしました、即日です。それから、アメリカにおいてはアラスカの北極の方に海軍の鉱区があるということを埋蔵量までわかっていても、アラスカの貴重な雪原、湿原、微生物、そういうものに対する環境保護の議論が、単に団体ばかりでなくて議会にも非常に強かったために、それをパイプラインを引っ張って西海岸に持って来るという議論は長いことあったけれども、決断はされないままきていたものか――まあ聞いてくださいよ。きのう言いましたからあれかもしれませんが、そのときにやっぱりその上院が二日間で複数の北海石油をアラスカからパイプラインとして引っ張ってよろしいという決断をしたと。私は、やっぱりそれだけ一方的な供給国の方から戦略物資として使われた場合に対応は実に素早かったと。私はそのとき防衛庁長官で閣内にいたのですが、残念ながらわが日本の対応は非常におくれた。ですから、民間ではいろいろな買い占め騒動まで起こしてしまったという苦い反省を持っております。ですから、わが国においては純粋に消費に対応して、それに対する何日分というのを国が設定をしてその目的を達成する。アメリカが確かに第二次中東戦争の――あれ第四次の前ですか、四次の前に急遽三つの大きな岩塩の層を掘ってそこに備蓄を始めましたですね。これはふだんのアメリカの産業用、民生用にも要らないものを入れた。これは明らかに戦時備蓄、場合によってはアメリカは中東に介入するつもりではないかと私はそのとき思ったぐらいの備蓄をしました。それもしかもずっと持っております。このことはやはりアメリカは戦略的に持っておるとおっしゃったことは正しい。そしてまた、輸入して輸出をしようとする国があることも、シンガポールなどを見てもそういう国でしょう。しかし、わが国はやはりみんなが民生用を含めて七転八倒するようなことのないように備えておくという国家の政治戦略はあっていいのではないか。その根拠については確かにいろいろと――まだ御気分に沿わないようですが、基本戦略は私はそうそれは日本としては消費に対する備蓄ということでやって間違いはないと思います。
  109. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 豊島長官、申し上げますが、発言者の趣旨をよく理解して、そして胸を張って堂々と答弁を願います。
  110. 吉田正雄

    吉田正雄君 もういいですよ、事務当局はいいです。  私は、いまのまた通産大臣の答弁はきわめて問題だと思いますのは、高度の政治的判断によって三千万キロリットルの国家備蓄を決めたということにはなっていないわけですよ。これは五十三年十月のいま言った総合エネルギー調査会の石油部会で決められた数字なんですよ。政治的判断じゃないのですよ、それは。これは全然違っているのですよ。さっき事務当局が言ったとおりの内容で、一応そういうことが出てきた。しかし、それはその中の内容からすると、三千万キロリットルというのは今後当分の間というか、六十五年までにやればいいのでしょうと、五十七年度までには二千万キロリットルということでほぼ想定されてきた。したがって、残りの一千万キロリットルについては石油事情その他諸条件を考慮してこれから検討をするということになっているのですよ。これは政治的判断で三千万キロリットルなんかが当初から決まったのじゃないのですよ。これは大臣もうちょっとよく読んでくださいよ。これは違ってますよ。
  111. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 経過はおっしゃるとおりかしれませんが……
  112. 吉田正雄

    吉田正雄君 いや、経過はって、そういう決定なんだもの、そのとおりだよ。
  113. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いや、経過はそのとおりかもしれませんがと、否定はしてないわけです。していません。経過はそのとおりかもしれませんが、しかしこのような決定は、それを維持するか、減らすか、ふやすかについてはやはり高度の政治判断を伴うべき政府には責任がある、そう思っております。経過の問題についてはおっしゃるとおりかもしれませんね。
  114. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、私が聞いているのは、まさに条件が大きく変わった今日、三千万キロリットルの備蓄が一体必要なのかどうなのか再検討すべき時期なんであって、政策的に閣議でもってそういうふうにばちんと決めて、将来さらに五千万だなんという、そんなまだ判断が出てくる状況じゃないと思うのですよ。しかも、いま見直し中なのでしょう。そういうことで政策が決まったなんて、そんなこと聞いたことないです。いま初めて聞くのですよ、そういう大臣の答弁で。これはおかしいのじゃないのですか。
  115. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ちっともおかしくないですよ。それはやっぱり政府たるものは国民の民生あるいは産業用、そういうものに対して心配を抱かせないように、あれだけの大騒ぎをもう二度としないようにという配慮はすべきであって、したがって一時的に環境が違ったから備蓄日数は減らしていいとかなんとかという、そういう短時限のぶれを持つべきじゃない。むしろ、どっしりと安定したものを持っていて供給市場に対しても買いに出るというのが私は政治であって、私が政治判断するのが高度の政治判断でないとすれば、それは私は総理に言って閣議決定でもしてもらいますよ。それぐらいの政略というものを政治は持つべきである、国民のために持つべきである、そう思うのです。
  116. 吉田正雄

    吉田正雄君 大臣がそこまで言うんなら、一次ショック、二次ショックでかつて世界じゅう石油足りなかったことありますか。ないですよ。これ正確に調べてください。いいですか。一次ショックも実質的には価格の危機だったんです。加えて政府の危機宣言というものが国民の間にしみ渡ったものですから、パニック状況による買いだめというものが国内で一時的に供給不安に陥れたんであって、一次、二次を通じて一回も世界じゅうで石油が不足したことはない。第一次石油ショックのときだって日本の消費量の六百五十万バレル相当分が余っておったんですよ。それから今回どうですか。イラン・イラク戦争があってもなおかつ石油は過剰状況なんです。価格を下げてもなおかつ過剰供給という状況が続いていっているんですよね。したがって、一時的なそういう状況でない。相当この傾向が続くであろう。  それから、資源論的にも皆さん方は資源有限、資源有限とおっしゃるんです。なるほど地球全部を石油にしたっていずれは全部使っちゃえば全部なくなるんですよ。しかし埋蔵量についても確認埋蔵量とそれから究極可採埋蔵量、かつては二兆バレルと言われたんですけれども、あれもきわめて宣伝であったということが今日はっきりしているわけですよね。つまりメジャーの価格つり上げのための、さらにはOPECに対する価格引き下げのための大きな政治戦略によってああいう状況というのが出てきたんであって、今日石油学者に聞いても三十年や五十年や百年で石油はなくなるなんて言っている人は一人もいないですよ。  そういう点で、危機というものの内容についての認識が全然違うし、皆さんのおっしゃっている事実は全然違っている。したがって、私は九十日の備蓄を百五十日にふやすなんというこんな――どこまでふやしたらいいのか。だから政策的な決定とおっしゃる政策を決める基準というものがちっとも明確になっていないんですよ。いままで言われてきた内容でいくならば、三千万キロリットルだって必要ないじゃないかという意見が非常に強いわけです。したがって、これは時間がありませんから、もうちょっとそれでは具体的に聞いていきますよ。いまのところは全然根拠が明らかになっていない。  そういう点で、次に民間タンクの余裕備蓄量が現在どれくらいありますか。
  117. 豊島格

    政府委員豊島格君) 非常に流動的でございますが、大体一千万キロリットルぐらいあろうかと思います。
  118. 吉田正雄

    吉田正雄君 全然違っているんじゃないですか。民間タンクの余裕備蓄量というのは二千四百万キロリットルぐらいありますよ。皆さんから出た数字だってそうじゃないですか。
  119. 豊島格

    政府委員豊島格君) 計算の方法もいろいろございまして、たとえば定修をやるとか油種別に蓄えるとかいろいろございまして、必ずしもいまおっしゃった目いっぱいの能力で備蓄ができるということでございませんので、先生の数字はよく存じませんけれども、われわれが把握しているところでは、そういう実態を踏まえて考えれば大体一千万キロリッターぐらいだと、このように考えています。
  120. 吉田正雄

    吉田正雄君 そんなことないでしょう。五十八年度の民間備蓄の基準準備量と融資指示数量は幾らになっていますか。
  121. 豊島格

    政府委員豊島格君) 五十七年の実績は五千百三十四万五千キロリッターです。それから五十八年度の備蓄量、九十日といたしますと四千七百七十五万キロリッターぐらいかと思います。
  122. 吉田正雄

    吉田正雄君 融資指示数量。
  123. 豊島格

    政府委員豊島格君) 五十七年度の指示量は五千六百七万キロリッター、それから五十八年度については目下計算中でございます。
  124. 吉田正雄

    吉田正雄君 計算中といったって、もうすでに予算も組むし、そんな数字わからぬでどうするんです。
  125. 豊島格

    政府委員豊島格君) 計算中でございますが、大体五千百万キロリッターぐらいになろうかと思います。
  126. 吉田正雄

    吉田正雄君 若干違っておりますが、まあいいでしょう。  そうしたら、民間備蓄でいままで最大のものは幾らでしたか。
  127. 豊島格

    政府委員豊島格君) 五十五年度だったかと思いますが、五千八百三十四万六千キロリッターでございます。
  128. 吉田正雄

    吉田正雄君 それも違っておる。五十五年の記録は七千二百二十八万キロリットルですよ。全然違っているでしょう。
  129. 豊島格

    政府委員豊島格君) 先ほど申しました五千八百三十四万キロリッターは指示量でございまして、実績値は七千万キロリッターかと思います。
  130. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうでしょう。そうしたら民間備蓄の余裕量というのは二千四百万キロリットルになるじゃないですか。何が千万キロリットルです。
  131. 豊島格

    政府委員豊島格君) いまおっしゃいました、最高はそこまでやったわけですが、空きタンクとそれから余裕量ということは区別して考えるべきだと思いますが、たとえば季節変動によりまして相当会社の実際備蓄するものは違います。それからたとえば最近では相当買い控えをしておるということでございますし、それから数字としましては大体四百五十万キロリッターでございますか、ある程度のものを民間タンクを政府も借り上げておるということでございまして、余裕量がどれだけあるかというのは先ほど申しました大体一千万キロリッターになる、こういうことでございます。
  132. 吉田正雄

    吉田正雄君 これから民間のものとか国家備蓄基地の――これは大蔵大臣よく聞いてくださいよ。国家備蓄基地の収容能力ですね。こういうものを考えていくと、国家備蓄基地の建設というのはもう過大も過大ですね。現在建設中のあるいは予定中の六国家備蓄基地についてもこれは過大なんですよね。民間の方ではタンク余っているんですよ。にもかかわらずさらに将来幾つか基地を設けようということになっている。  税収ですね。石油税の税収は一体どれだけになります、これから。
  133. 豊島格

    政府委員豊島格君) 五十八年度の計画では大体四千五百九十億円、こういうふうに理解しております。
  134. 土屋義彦

  135. 豊島格

    政府委員豊島格君) 四千二百九十億円でございます。
  136. 吉田正雄

    吉田正雄君 とにかく大蔵大臣ね、石油価格かきのうの論議でもあったように大体六百億円から六百五十億円くらい減っていくということになるんです。ところが民間はタンクが余っている。しかも借り上げ料が安いんです、国家備蓄基地よりも。いいですか。いま国家備蓄基地の場合ですと一キロリットル当たり大体六千円から六千二百円くらいかかっちゃうんですね。いろんな意味で建設費やいろんなことを考えて。民間の借り上げだったら、まあいろんなものを含めても四千七百円から四千九百円です。もうみすみす一キロリットル当たり千何百円という投資がよけいなんですよ、それだけ。一体そんなに何で国家備蓄基地をつくらなきゃならぬのか。数字の面でいろいろ詰めていきたい点はまだ山ほどあるんですよ。いかにずさんだかということなんですよ。とにかくつくれつくれと、これは総理大臣きょうおらないのでまことに残念なんですけれども、私はこういう公共事業とか国策に基づく事業の遂行に当たって一番留意をしなきゃならぬのは、環境問題もそうですけれども、そういうところでいろんなうわさが流れては困るということなんですよね。  そこで、いま一体余っているのに何で国備基地の建設を強行しようとするのかということでありますけれども、いろんなうわさが流れておるんですよね。たとえば福岡の白島地区における建設をめぐっては、これはうわさですけれども、漁業補償交渉等をめぐって田中政調会長とどうであったとか、そういうふうなうわさが流れたり、それから二階堂幹事長と、それから当の通産大臣ですね、同じ鹿児島であるというふうなことで志布志湾の建設、こういうものは私はいま時間がないから数字詰めませんけれども、詰めていったら絶対必要ない。まさに政治的にこういうものが行われようとしているというところに非常に問題があるし、返済が全然めど立ってないんですよ。きょうもう言いませんから、今度の委員会でやりますけれども、大蔵大臣、これはもうちょっと今度調べておいてください。私はもうちょっと詳細にこれ数字を挙げて説明しますからね。  こういうことで、私はいま言った政治的に三千万キロリットルとか五千万キロリットルにふやすなんていうのは、まさに国家財政の今日のこの危急のときに税金のむだ遣いもはなはだしいということなんです。いずれ詰めます。これは大蔵大臣も十分検討していてもらいたいということを申し上げて質問を終わります。
  137. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ちょうど時間となりました。
  138. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私の名前を出されましたが、何かそういう、何と言われましたかな、いろんなうわさが流れているという、どういう意味かわかりませんが、これは私の政治家の名誉に関することです。二階堂さんと私は確かに同じ選挙区の選挙では政敵であります。しかし、かっといって二人並べて何か志布志港の備蓄に私自身が何か変なうわさが流れているというなら、ここで明確にしてください。  白島基地の場合は、確かに田中政調会長が当時の通産大臣だったんですか、みずから言っていますからね。二千万円持ってきて、何かわからぬから返そうと思ったら、贈った覚えはないと言ったんで供託したということを言っておりますから、これは何かあったんでしょう。しかしそれは本人ははっきり言っておられますから、それと同列にして、二階堂さんと私とを並べて名前を出すということは、よほどあなたは政治家としてはっきりした根拠があるんでしょう、何か。そのことを私の方からお尋ねいたします。
  139. 吉田正雄

    吉田正雄君 私は、こういう国策とか、そういうものの遂行に当たっては、政治というものは非常に気をつけなきゃいかぬわけですよね。そういうことで、白島地区については田中政調会長の名前も漁業交渉等に絡んで出ておる、そういう話が出ておるわけですよね。ところで、志布志につきましても、必要ないのに強行建設ということが盛んに現地で言われているわけですから、そういうことで、二階堂幹事長もたしか鹿児島出身ですね。それから通産大臣も鹿児島出身というふうに私は聞いているんですけれども……
  140. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 同じ選挙区です。
  141. 吉田正雄

    吉田正雄君 そういうことで、この建設に当たっては、そういう何か政治的なものがあるんではないかといううわさが流れておりますがということを言っている。だから、そういうことであってはいかぬわけですからね。
  142. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 政治的なものというのは何ですか。不正ですか。
  143. 吉田正雄

    吉田正雄君 いやいや、不正があったと言っているんじゃないんですよ。私は不正なんということは一言も言ってないですよ。そうでなくて、政治的にそういうことが進められているんではないかという……(「冗談じゃない」と呼ぶ者あり)いやいや、あったと言っているんじゃないんですよ。そういうことがあっては困るということを言っているんですよ。だから私は国家備蓄について一体必要性があるのかどうかということまで詰めてきて言っているんですよ。だから、そうあってはいかぬわけでしょう。だから私はあなたがいま不正があったとか、やったなんて、そんなことは一言も言っていませんよ。人の口には扉は閉じられませんから、話というものがうわさとして現地であったとかなんとかという、このことまで否定はできないだろうと私は思うんですけれどもね。だから私は今後の国家石油備蓄の建設をめぐってはそういう疑惑を招くようなことがあってはならぬし、私は山中通産大臣がそんなことをやられるとは思っておりませんよ。思っておらない。あったら大変な話ですから、思っておらないんですが、念のため、そういうことになってはいかぬということで申し上げているわけです。
  144. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で吉田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  145. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、後藤正夫君の一般質疑を行います。後藤君。
  146. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 ただいま昭和五十八年度の予算審議が行われておりますが、間もなく昭和五十九年度の予算の編成についての各省庁の作業も始められるわけでございます。そういうことを念願に置きまして、各省にまたがる問題、その中で国際協力、科学技術の振興の問題、それから教育の問題等につきまして質問をいたしたいと思います。  来年度の予算の編成に当たりまして、厳しいゼロシーリングの予算の編成の中で、特に国際協力の予算が突出したもので、一番突出しているということは国際協力についての政府の大きな配慮があるものと思われまして、この点につきましても私は政府努力に敬意を表したいと思います。  しかしながら、現在の日本の国力に対する国際的な評価ということを見ました場合には、まだまだこの協力についての予算というのは今後ふやす必要があるのではないかということが考えられます。もちろん諸外国の人たち日本が特例公債などによって非常に苦しい財政、苦しい予算編成をやっているということについて十分な理解を持ってもらうことはむずかしいと思いますけれども、    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕 しかしながら、諸外国から見た場合には、日本経済協力はもっと多くあるべきだということが考えられるのではないかと、そのように思います。そういうことを前提といたしまして、次の質問に入ることにいたしたいと思います。  まず最初に、自動車の輸出の問題、これは通産省通産大臣に御意見を伺いたいと思いますが、自動車の輸出につきまして事実上アメリカから輸出のカルテルを強制されてきているという感じが強いわけでございます。一九八〇年から三年間にわたって自主規制を行ってきました自動車につきましては、さらに三カ年の自主規制の延長をしなければならないということになっているようでございます。日本が自主規制をしている間にアメリカの自動車産業は一体どれぐらい活力を取り戻したのだろうか、日本に対抗できるところまでアメリカの自動車産業がその力を一体取り戻してきているのだろうか、そういう点につきまして通産大臣のお考えを伺いたいと思います。
  147. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず、その前にアメリカに対して輸出規制をやらなければならなかったのは、アメリカ側の懇請によって、石油価格、自動車の場合はガソリンでしょうが、それが高騰して大型車が売れなくなって、そして日本製を含む中型車、向こうでは小型車と言っているようですが、小型車を非常にアメリカの国民がどんどん省エネのために買い始めた、燃費効率ですね、そういうことなどから。したがって、どんどん急激に売れるんで、アメリカの小型自動車の生産が軌道に乗るまで、大体二、三年と思うが、日本の輸出をある程度自粛してくれないかと頼まれて、日本側が初年度、二年度についての自粛を発表したものです。  先般、ブロック代表が交渉に参りまして、三年目はその継続の可否につき議論をするとなっておる。したがって、その継続についてはアメリカの、これは御質問にダイレクトに答えることになりますが、小型車がどうもうまくやはり、つくってみたけれども好まれないとか、欠陥車が出たとか、うまくいってないので三年目も継続をしてくれぬかと。その可否については、私はそれを可である、三年目もやってあげましょう。しかし、伝えられる大統領選挙をめぐる年であるからどうのこうのという理由できるに四年目もということがあるのならば、それは四年目はいかなる情勢の変化があってもやらないということが書いてあるんですね。三年目の三月三十一日までと書いてあるんですから、四年目は日本はしてあげませんよと、一方的に通告ですから、通告しましたら、それできわめて感謝するという意味の言葉で終わっております。  そこで、最近のアメリカのそれによる生産の回復が進んだかといいますと、私はやっぱりアメリカの自動車産業は、大型車については専門分野で比較的うまくいっているんでしょうが、小型車についてはどうもその累積効果が、累積の蓄積がないということでうまくつくれぬようですね。つくって出してもアメリカ人がまず余り買わないということで、その意味では余り成功していないのではないか。  そこで、いまはどうかと言えば、先ほどの議論の続きになるような、原油値下がりを見越して、ガソリンは昨今のダブつきぎみで価格も低落しておりますから、そういうことで、大型車の生産がぐぐっという感じの強い力で成長し始めたですね。これは、一月は若干落ちておりますが、このバネというものは物すごいバネを持っておるんですね。やっぱり大型、安全、スピード、そういうものがアメリカの車社会、車哲学とまで言われるハイウエー社会には、できれば、燃料さえ自分の財布と相談してうまくいくのなら、それと金利の問題も、やや購入する方のローンですから、これも下がったんでチャンスだというので、これは伸びていくだろうと思うんですね。ですから、日本が一方的に、対前年の台数をもって三年目も協力しようと言いましたが、この期間中にアメリカの自動車産業は私は相当に息を吹き返す、そして、やっぱり大型車ならアメリカだという時代を取り戻していくであろう。日本の自動車はセカンドカーといいますか、そういう地位のところでアメリカ社会に定着して、これもやや明るい方へ台数としてはふえていくだろう、そういう観測をしております。少し答弁が長かったようですが。
  148. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 いまの通産大臣の御答弁、そういうことは確かに私もそういうことだというふうに思います。  しかし、考えてみますと、アメリカの自動車工業が自分で新しいものを開発するための積極的な努力を怠ったことによる産業界のいわば沈没といいますか、沈没のツケがどうも日本に回されてきているという感じがいたすわけであります。日本の産業界は、特に自動車工業界も、第一次石油ショック以来、労使ともに非常に苦しい合理化の道を歩んで今日に至っておりますけれども、アメリカを初め欧米の諸国は、その石油ショックから立ち直らないでもたもたしている間に沈没をしかかってしまった、そのツケがどうも日本に回されてきているという感じを強くいたすわけであります。  したがって、これに対して、その影響が、たとえばそのツケが自動車工業やあるいは機械工業等ばかりでなく、日本のオレンジであるとか牛肉であるとか、そういうものの輸出の規制にまで回ってきているということは非常に残念なことだというふうに思いますので、今後のアメリカとの交渉においてそういう点を念頭に置かれて、私の選挙区、特にミカンの生産地でもありますので、そういうツケをそういう方面にまで及ぼさないような努力を続けていただきたいということをお願いいたしたいと思います。
  149. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 確かに、他面から見れば、アメリカの自動車産業、あるいは鉄鋼もそうでありますが、時代の流れに陳腐化していくのを気がつかなかった。たとえば、ロボット化等についてもその象徴的なものでありますが、したがってGMと堅実な運営を、資本収支その他で慎重な運営をすると言った方がいいでしょうか、トヨタとが合意して向こうで共同生産をするというのも、向こうは日本の進んだ自動車産業の技術を習得したいというところが確かにあるだろうと思うんです。しかし、それが短絡的に日本の鉄によって、日本の自動車によって、日本はアメリカに失業を輸出しているという国民感情につながるような言い方をしきりにする。したがって、新聞その他の報道も、最近は向こうでインタビューしたテレビの番組なんかも、途中であわてて切ろうとするんですが、切り損ねてジャップという言葉が間こえてきますですね。そこまで感情がいっている。そのようなアメリカの国民感情にリメンバー・パールハーバーの原点に返すようなことをしては、日米友好というものは、これは経済の間でも、安保のみならず、安保条約の中にも書いてあるとおり、相互依存のきわめて強い国でありますから、そういう誤解を解くために全力を尽くさなければならぬ。  ましてや、アメリカにも輸出能力が、日本の消費全体をカバーするだけの能力はない牛肉。オレンジについては季節関税でちゃんとめんどうは見てある。そういうものについてまで完全自由化、この旗はおろさないと言っているようでありますが、その点、中曽根総理はアメリカに行って言ったことが悪いということばかりいま言われておるようでありますが、私は言ったことがいいこともあったと思うんですね。ノーはノーと言う。ノーと言うにはノーの理由説明をするということで、牛肉とオレンジについてはノーであるということをホワイトハウスで総理は堂々と言って帰られました。このことは、初めていま御質問に出たわけでありますが、国会の論戦で、中曽根総理、国会の決議その他を踏まえてよく主張すべきは主張したという、称賛でなくても、それは認めてやるぐらいの言葉ぐらいはかけてほしかったと思います。それをアメリカに行って言うのは、総理にとっては大変つらい自己克服の時間が要ったんです。それを言ってきたわけでありますから、私たちは向こうの短絡した感情を静めたり、議員同士の交流をやったり、また私も必要ならば乗り込んで、そのオレンジ、牛肉という問題と自動車とかというものを、象徴的にした問題とをごっちゃにして議論をしないアメリカの国民世論の形成にあらゆる面で努力してみたいと考えます。  ただいまの御指摘はごもっともでございます。
  150. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 ただいまの通産大臣の御答弁、私もよくわかります。  また、昨日も中曽根総理は、この委員会におきまして、当面のきわめて厳しくなっていた、緊迫していた経済摩擦、貿易摩擦の問題はとにかく一応鎮静することに成功したという御発言がございまして、その点につきましては、私も総理の御努力に対しましては心から敬意を表したいと思います。  いまのオレンジの自由化の問題、これは今後特に御努力をいただかなければならない問題でありますけれども、日本はミカンについては自主規制をやっている、アメリカは自主規制をやっていない。そういう点からも何か非常に不公平なことを私は感じますので、今後一層の御努力をお願いいたしたいと思います。  先般、二月二十三日に国際経済摩擦に関する連合審査が行われましたが、商工、農林水産、外務、科学技術各委員会の連合審査にアメリカのスノーデン在日商工会議所の会頭も出席をされました。その際、スノーデン会頭に対して、日本側の質問で、アメリカは日本の自動車に対する市場調査が足りないのではないか、そのために、日本にアメリカから入ってくる車を日本の基準に合わせるため、あるいは日本の好みに合わせるためにいろいろ手直しをするために大変コストが高くつくという点についてスノーデン会頭の意見を求めました際に、    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 アメリカは日本の市場調査をするというようなことは恐らくやらないだろうということを言われました。それはいろいろな配慮のもとに発言されたことであったと思いますが、日本の自動車産業、鉄鋼業あるいは自動車産業での競争は、もうアメリカとしては一応断念といいますか、断念して、他の産業部門、自動車工業、鉄鋼業以外の他の産業の分野で日本との差をなるべく広く離していこうというような考えをアメリカは持っているのではないかというふうに思われるわけでございます。  臨調の最終答申の総論の第一ページに、「明治以来の目標であった「追い付き型近代化」もほぼ達成された」ということが述べられておりますけれども、追いつけ追い越せという日本努力をしてきたことを考えますときに、ようやく追い越し型の段階に入ろうとしたときに、欧米は日本に待ったをかけてきているというような印象を強くいたします。しかし、先ほどの通産大臣の御答弁を伺っておりましても、向こうの国のいろんな事情も日本は考慮してやらなきゃならない。それは相互に、お互いに理解し合うことが必要だということも私はよく理解されるわけでございますが、しかし、心配なのは、このままでいきますと日本の企業の活力を失うことになりはしないだろうか。現在、活力を失わないために企業も労働者も非常な努力をしているということはよくわかりますけれども、この活力を失わないようにするためのいろいろな方策ということについて政府としてもどういうお考えをお持ちになっているか、そういう点についての御意見を伺いたいと思います。
  151. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 日本にとって一番恐ろしいのは、縮小均衡に陥っていくということだろうと思うのです。原材料のない国が、しかも武力を背景にちらつかせないで原材料を平和実に売ってもらって、そしてそれに高い付加価値と新技術をつけて世界のどこにも負けないものをつくっていく、この道は日本のただ一つ選び得る自転車操業にも等しい、途中でやめられない、やめたら倒れるという道だと私は思うのです。ただ、そのことが、たとえば先端産業が進み過ぎれば、日本の過去の育成した国家助成等について、日本の産業政策を忘れてはならぬぞと、日本の産業政策が今日まで国家、官民ぐるみでやった結果がいまこのレベルになったんだということをいまアメリカで議論しているようでありますが、今度の基礎素材産業法案まで取り上げてやっているようです。ですけれども、これは私は内政干渉だとはっきり言えると思うのですね。日本は世界の他の国の及ばないどんなすぐれたものをつくり出すかに、これからもおめず憶せず努力を傾けてもらいたい。たとえばヨーロッパの方でディジタル・オーディオ・ディスクという、こんなコンパクトな、ベートーベンの交響曲が片面で聞けるというような、しかもすばらしい音質ですよ、聞いてみて。カラヤンが聞いて、この音は初めて聞いた音だと言ったというのです。それほど純粋な音を、ベートーベンを生み、あるいはビートルズを生んだヨーロッパの人々が、それをフィリップス社がソニーと一緒に研究開発したんだから、フィリップスが全欧州に売るまでの間は日本に対して関税を、音響機器のいままでの関税の二倍の一九%にするというような措置を言うのですよね。だから、日本をその間入らせないというのです。しかし私どもは、それはおかしいじゃないか、一緒にやったのに開発がおくれた、供給がおくれたというと、われわれの議論は、そういうことをやっていたらヨーロッパの国民の声という、ニーズというものを無視した議論になる。だから日本の業界も相談させる、そういう関税を二倍に上げるとかなんとかいうばかなことをやめろということでいまやっておりますが、そういうものは政治の力で次々とわれわれは障壁を取り払ってやって、そして日本のすばらしいものは世界の人々にすばらしいものとして受け入れられていく。すなわち、自由主義貿易に、ガットの原点に戻るということを絶えず念頭において置いてやっていくつもりでございます。
  152. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 そういう御努力をぜひお願いしたいと思います。
  153. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時まで休憩をいたします。    午後零時六分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  154. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十八年度総予算三案を一括して議題とし、午前に引き続き、後藤正夫君の質疑を行います。後藤君。
  155. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 先ほど通産大臣の御答弁いただきましたときに、貿易摩擦の鎮静化についての御努力について、もっとお礼を申し上げなきゃいけなかったんじゃないかと、その点、私も大変感謝をいたしております。  しかし、きのう、たしか江田委員の御発言の際にも、江田委員が座られる前に、貿易摩擦は鎮静化してはいるだろうけれども、まだ解消してはいないという意味のことをちょっと言われたように私聞いておりましたけれども、私も、貿易摩擦は、当面の問題についての貿易摩擦はこれで解消して、おさまってほしいということを念願いたしますけれども、    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕 しかし、貿易摩擦が本当になくなってしまうような事態に今後なった場合には、日本の産業がずっと今度はおくれてしまうというような事態になる。といいますのは、私は、アメリカが日本に対する非関税障壁の一番最たるものは品質格差だと私は思うんです。したがって、今後やはり日本は自動車――当面のいろいろな問題については解決しても、また新たな貿易摩擦の原因にもなるようなものが次々と開発されていかなければ、日本の将来の発展ということのために非常に心配だという気がいたします。  その点について通産大臣のお考えを伺いたいと思います。
  156. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 確かに先ほど、ECの問題も全部片づけたのが、またすぐ関税引き上げというようなことで、これは目下交渉中でありまして、見通しは悪くないと思っておりますが、鉄鋼問題等についても、アメリカの方でさらに今度は根拠を違えて、日本側の不公正な企業に対する圧力といいますか、援助の結果、アメリカの鉄鋼業界はこうなったんだというような、別な理由でまた訴えているようであります。私は、大変このことは不幸なことであって、アメリカは確かに一国だけで生産から消費まで、世界一高い国民所得を持った国でありますからね、成り立ち得るんですね、理論的に。だから、そうそうたる大会社の社長でもFOBとは何だと知らなかった社長がおるというぐらいで、そういうことを考えてみると、日本と正反対の国がアメリカだと。そのアメリカが日本に対して大変エクセントリックといいますか、何かそういう感情を持つに至ったと。しかしこれは私たち日本の方も、余り日本だけがやられている、アメリカの言うように、ブラフをかけられ続けているというふうに受けとめるべきじゃないんで、じゃ、アメリカとECとの間はどんなトラブルがあるんだというのを拾って見たら、大変な物すごい大げんかをしていますよね。たとえばエジプトにはアメリカが国庫補助をつけて小麦を売ったというのはいい例でありますが、ほかのものについてもCE、各国の中でもそうですが、ことにEC対アメリカというのは日本以上に激しい経済摩擦をやっているわけです。  それで、日本人の頭を私は切りかえたいと思うんです。日本というのは、向こうの言うおどせばおどすほど下がるという、日本を屈服させるにはおどし続けなければならないという国じゃなくて、日本日本の主張すべき道がある、そして日本はすぐれている点はすぐれている、あるいは穀物輸入は最大のアメリカに依存している点は感謝もし、向こうもそれは評価してもらわなけりゃならぬ、そういう態度で、これからは国際社会で日本だけが被害者であるような妄想を抱かないこと、私は逆転の発想を持てということを事務局に言ってるんですが、それはたとえばアメリカでローカルコンテンツ法案が全会一致通ったと、今度もまた上程されたと、非常に騒ぐわけですね。じゃ、ローカルコンテンツ法案が通過して大統領がサインをしたときにそれは日本が大変困る。しかし、アメリカの国民は困らないのかというのを計算してみろといったら、計算してみたら失業率への貢献から始まって、自動車の部品その他も含めてみても、アメリカの経済が、国民自身もローカルコンテンツ法案は、高い物を買わされることになるとかいろいろあって、これは結局はマイナスじゃないかという、私どもはそういう作業をしたんだと。だから、幾ばくならずして、アメリカの中でもUSTRの方が議会に対して、そんなことをやったらアメリカの国民、アメリカの国家経済自体がマイナスになるんだと、こう言っているんですね。ですから、ローカルコンテンツ法案をやりたいならやりたまえというような姿勢もときには私はとった方がいいんじゃないか。  したがって、日本のこれからの経済外交というものは、面を上げて一歩も引かない、言うべきことは言う、そして向こうの誤りは指摘するということの方が、やってみてその結果は意外と率直に渡り合ったことによって、急転直下解決ということがあるように思います。したがって、いまおっしゃるような方向で、今後も日本経済摩擦で外国から取り上げられる場合は、日本がそれだけ優秀なんだと。その優秀な点で、たとえばアメリカの失業率千二百万は大変だろうな、ヨーロッパも千二百万と言っているが大変だろうな、日本に当てはめてみたら六百万じゃないかと、そういう配慮は心の中で持ちながら、しかし、それは日本の責任ではない。アメリカ自身がそれに対して、ヨーロッパ自身がそれに対して日本に対応できる活力を付与する努力をすべきである。その努力のために日本の進んだものが協力してほしいというなら、われわれは幾らでも現地に企業が行っても加勢しましょうと、そういう態度で交渉してみたいと思います。みんなは、そんなことを言っているとけがするぞという人もおりますが、発想の転換ということを一遍やってみないと、受け身、受け身ではいかぬ、そのように考えます。
  157. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 日本だけでなく、日本を見習って東南アジアの、韓国あるいはシンガポール、台湾も入りますか、あるいは香港等いわゆるニュージャパンと言われている地域の製品がヨーロッパにもどんどん入り込んでいくと。その品質については恐らく日本の方がすぐれていると思いますので、これらの日本に追いつこうとしている国々にも、今後いろんな影響が出てくるんじゃないかということが心配されます。したがって、日本としてはそういう点をも配慮して今後政策を進めていかなきゃならないという点を私は強く感じております。  それからもう一つは、日本が、たとえば自動車工業がアメリカ、あるいはイギリス等に進出して、向こうの製品の品質が非常によくなってくるということが考えられるわけでありますけれども、たとえば、アメリカ国内において、日本のアメリカに進出した企業、つまりたとえばナショナルであるとか、あるいはシャープであるとかいうような日本ブランドのカラーテレビと、それからアメリカがアメリカ国外でつくった、メキシコだとか、あるいは韓国でつくったアメリカ・ブランドのRCAとか、シャープとかいうような製品とが、いましのぎを削って争っているというような事情にもあるということ、そういうことをも念頭に置いて、日本の今後の工業の育成ということをどういうふうにするかということについて、政府もいろいろな角度から今後考えていただきたいということをお願いいたしたいと思います。  次に、国際的な経済協力の問題について伺いたいと思います。  国際協力が積極的に進められているということは、きょう冒頭、特に突出している予算は国際協力であるということから、その御努力に対しては私もこれを認め、敬意を表したいと思います。  今度総理もASEAN諸国を訪問されます。私は、ASEAN諸国に対しては、これまでもかなりな日本経済協力等をしているという事実は、向こうに行きまして実際に見たり聞いたりいたしております。しかしながら、私が最近特に懸念いたしておりますのは、最近次々と独立しつつあります太平洋の島嶼国、島国ですね、島国に対する協力がきわめて貧弱であるという点でありますが、この点につきまして外務省はどうお考えになりますか。
  158. 石川要三

    政府委員(石川要三君) お答えいたします。  先生御指摘のように、わが国の海外援助というものが、きわめてこの数年大変努力を重ねていることにつきましては御承知のとおりであります。しかし、その中におきまして、いま御指摘の太平洋島嶼国に対する援助というものの内容につきましては、必ずしも額的には多いわけではございません。それにはそれなりの理由があろうかと思いますが、御承知のとおり、何といってもこれらの国々というものは独立して非常にまだ日も浅いわけであります。そういうことが一つの大きな理由かと思いますし、それからさらには、これ援助というものは、もうこれも御高承のとおり慈善ではないわけでありまして、その受け入れ体制といいますか、そのそれぞれの国のプロジェクトに対していろいろと援助しているわけでありますので、そういう点につきましてはまだ受け入れ体制が十分でないというところがあろうかと思います。しかし、いずれにしましても、こういった国々が歴史的、伝統的には大変わが国との関係も深い、しかも漁業上、また地政学上にも重要性を帯びているということは十二分に承知しておりますので、私どもはさらにこれからも人づくり、医療、水産、エネルギー各分野におきまして、最大努力を傾注していきたいと、かように考えているわけであります。
  159. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 太平洋の島嶼国の中には、かつての日本の委任統治領であった地域、ミクロネシア共和国、マーシャル諸島共和国、北マリアナ共和国、それからパラオ共和国と、これから独立することになっている新しい国々、それらの国々はいままではいろいろ経済的な援助や教育上の援助は受けましたけれども、産業面での援助や指導はほとんど受けておりませんので、いまでも日本の委任統治領時代の農業、あるいは水産業等のやり方をそのまま続けているという状況で、日本に一番近い地域であるということから、特に日本の援助を強く求めております。たとえばミクロネシア共和国におきましても、大統領の中山トシオさんであるとか、あるいはトラック島の大酋長の相沢ススムさんとかというような人たちは、特に日本とは深いかかわり合いのある人たちで、これらの人たち日本の協力を特に強く要請していると、そういう点をも配慮されまして、その他の太平洋の地域、その中にはツバル、ソロモン、フィジー・ナウル、パプア・ニューギニア、バヌアツ、キリバス、いろいろあると思いますけれども、そういう地域に対して、日本が積極的に協力をする必要があると思いますので、そういう御努力をお願いいたしたいと思います。  それから次に、太平洋のいまの島嶼国に対する経済協力の問題とも関連するのでありますけれども、在外公館というのが非常に手薄である、貧弱であるという点を痛感いたします。フィジーには大使館がありますし、それからアメリカ領のグアムのアガナには総領事館もありますけれども、その他の地域には在外公館がありません。したがって、現在あります在外公館も非常な忙しい、人手の足りない状態が続いているように思われます。また、昨年私はフランス領のニューカレドニアに参りましたが、フランス領のニューカレドニアは、日本から年間一万五千人の観光客が訪れておりますけれども、大使館も、もちろん総領事館も領事館もない、名誉領事もいないというような状態で、パスポートの問題、その他トラブルが起きますと、商社の人たちがかわりにシドニーまで飛行機で三時間かかって飛んでいって、そしていろいろ手続などをしてくるといったような手薄な状態になっております。外務省としては領事館、総領事館をつくるならば、まだ上位の順番があるんだと、上位で待っているのがあるんだということを言われますけれども、各地域の特殊性ということを考えられまして、やはりいろいろトラブルの多い地域には優先的に今後そういう在外公館をつくること、あるいは名誉領事、総領事等の配置等について御配慮をしていただく必要があるのではないかと、これはお願いをいたすことでございます。  それからもう一つ、太平洋諸島の在外公館の所管の問題ですね、この点についていろいろ問題があると思いますけれども、これは政府委員の方からお答えいただけませんでしょうか。
  160. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 太平洋島嶼地域の所管は、本省におきましては欧亜局が主管しております。なぜ欧亜局で大洋州地域を見ておるのかという御趣旨の御質問かと思いますが、これは歴史的に西欧諸国の植民地であったと、こういう経緯もございますし、ただいま先生が御指摘になりましたニューカレドニア、これは現在まだフランスの植民地でございまして、ニューカレドニアとのいろいろな交渉あるいは邦人保護、そういう問題につきましてもフランス本国政府を通じて取り計らわなければならないと、こういう事情もございますために、欧亜局で所管しているわけでございます。もちろん西ヨーロッパ、東ヨーロッパとはかなり性格の違ったところでございますので、もし将来人員とか機構の面で余裕ができれば、それなりの対応は考えていかなければならないと思いますが、こういう厳しい世の中でございますので、持てるスタッフ、持てる機構というものの中で、最善をつくして大洋州、あるいは太平洋島嶼諸国の問題を処理している次第でございます。
  161. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 ただいま御説明がありましたその事情は私もよくわかります。また現在増員、定員増ということが非常にむずかしい事態の中にあるということもよくわかりますけれども、なるべく早い将来に外務省におかれては、そういう太平洋地域の在外公館の充実、あるいはその所管の問題もいろいろ歴史的な事情があることはわかりますけれども、しかし、太平洋にあるニューカレドニアが欧亜局の所管であり、あるいは日本の旧委任統治領の新しい共和国がいずれも北米局の北米一課の所管である、それから大洋州課の所管に属しているところもあると。そういう点について今後検討をしていただく必要があるのではないかと思います。  次に、国際交流の問題に関連いたしまして文部省の意見を伺いたいと思います。  文部省が国費留学生を日本に呼ぶことにつきまして年々非常な御努力をされまして、その員数、あるいはその給費額等につきまして、大変改善されているということをよく承知はいたしておりますけれども、この十年間ぐらいに国費留学生の総数、あるいは留学生の給費額、それらがどのように変わってきているか、また諸外国と比べてどういうような状況にあるかということについて説明をお聞きしたいと思います。
  162. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) お答えを申し上げます。  留学生、国費留学生、私費留学生を含めまして、最近十年間の数、推移をまず御報告申し上げますと、昭和四十八年には五千二百四十一人、このうち国費留学生が七百七十四人でございましたが、昭和五十七年には八千百十六人、そのうち国費留学生が千七百七十七人という状況になっておりまして、総数で十年間に約一・五倍、それから国費につきましては約二・三倍の増加を示しております。  それから奨学金につきましては、昭和四十八年度、これは留学生の種目によりまして若干額が変わりますが、研究留学生について申しますと、昭和五十七年度が十六万六千円でございまして、四十八年度の七万九千五百円に比べまして約二・一倍という状況にございます。欧米諸国と比較いたしますと、奨学金の額という点では、これは生活条件その他いろいろ変わった点がございますので、単純な比較はできませんが、まず遜色のない額になっておるのではないかというふうに存じております。ただ、留学生の数という点から見ますと、たとえばフランス、西ドイツ等と比べましてまだなお及ばないかという状況でございます。
  163. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 続いて文部省に伺いたいと思いますけれども、留学生の数もふえ、それからその給費の額についても、欧米に絶対に劣らない額のところまできていると。この点は非常にいいことである、その御努力を認めなければならないというふうに思います。そして、それに伴って質の向上も恐らく以前に比べますとずっとよくなってきているだろうというふうに思いますが、先ほどの太平洋島嶼国の問題と関連いたしますけれども、太平洋の島嶼国から日本に来ている留学生の現況、現状はどうであろうか。島嶼国の方からは日本にもっともっと多くの留学生を出したいという希望を私はしばしば聞いておりますので、その点について伺いたいと思います。
  164. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いまお話しの太平洋島嶼地域からは従来、正確な数字は事務当局からもし必要があれば申し上げるが、十数人来ております。ただ、従来わが国の国費で留学を認めておりますのは、パプア・ニューギニアだけでございまして、しかし五十八年度からその他の諸国からも入れるということで、八人を国費留学を許すと、こういうことにやっておるわけでございます。
  165. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 数字等について補足して御説明を申し上げます。  昭和五十七年度で太平洋地域の島嶼国から受け入れております留学生は十三名でございますが、このうち国費はパプア・ニューギニアから受け入れております三名でございまして、その他の諸国からの受け入れはございません。  ただ、これは従来の大学に受け入れているものにつきましてでございまして、本年度から新しく専修学校への受け入れというのを開始をいたしておりまして、この専修学校の受け入れに当たりましては、特にこれらの国からの受け入れというものを重視いたしまして六人、具体的に申しますと、パプア・ニューギニア、フィジー、パラオの諸国から計六人の留学生を専修学校に受け入れておる次第でございます。
  166. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 太平洋の島嶼国の人たち日本に非常に近いということもありますし、日本に対する期待も非常に大きい。したがって、これからもさらに積極的に島嶼国の人たち日本に留学生として受け入れるような御努力を文部省にもお願いをいたしたいと思います。  次に、科学技術の関係の問題について伺いたいと思います。  まず、科学技術庁長官に伺いたいと思いますが、先ほど来日本の工業製品の品質格差という問題、これを今後も私は維持していかなければならないということを考えますときに、先端技術を育成するということはやっぱり非常に重要なことであると思います。そのためにはまた、先端技術を生み出すための基礎研究の基盤を強化するということも非常に重要なことであると思いますけれども、科学技術庁としては現在この分野についてどういう努力をされているか伺いたいと思います。
  167. 安田隆明

    国務大臣(安田隆明君) 山中大臣も時折お話ししておられますけれども、今日まですばらしい、たゆみない歩みの中で科学技術の振興を図ってまいりました。しかし、いま後藤先生御指摘のとおりに、今後われわれが選択すべき科学技術の政策は何だろうかと、こういうことでこの前、林先生の御質問もございましたが、たまたまノーベル賞をいただかれました江崎先生にわれわれがお会いしたときに非常に的確な御指摘をいただきました。それは、先生御指摘のとおりに、とにかく基礎的な先端的なそして創造的な分野に手をつけなさい、日本はそれに欠けております、水道で言うならば貯水池をつくりなさいと、こういうことでございまして、われわれは御存じのとおりにもう科学技術振興の調整制度という一つの柱を持っております。もう一つは創造的科学技術の推進制度、こういう一つの柱を持っているわけであります。そういう中でいま申されました分野に手をつけたい、こういうことで一生懸命にがんばっておるわけであります。  しからばその分野の中で何が、こうなりまするというと、いつも後藤先生御心配になっております、ライフサイエンスの分野においてはやはりこれは日本はいまだしと、こういうことでございますし、素材材料の問題も、新材料の研究もそうでございますし、それからこの委員会でも御指摘がございました、ブラックボックスというものがまだ残っているじゃないか、こういう御指摘もございました。いろいろわれわれはそういう分野に今後手をつけて、創造的な分野に一生懸命に今後とも力をいたしていきたい、こういう考え方でございます。
  168. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 同じ問題については、基礎研究、これは文部省が所管されております研究が多いのでありますが、基礎研究について文部省としてはどういうようなお考えをお持ちでありましょうか。
  169. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いま科学技術庁長官からお話しのように、文部省といたしましても、わが国で一番大切なことは基礎研究、しかも国際協力をもって国際的にも裨益するような基礎研究をする、こういうことが大事なことであると考えておりまして、御承知のとおり、各大学を中心に、あるいは文部省所管の研究所を中心にそれを進めておる、こういうことでございます。
  170. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 同じ問題につきまして通産省、あるいは工業技術院ですね、工業技術院もひとつそういうふうに努力していただきたいと思いますが、そのお考えを伺いたいと思います。
  171. 石坂誠一

    政府委員(石坂誠一君) ただいま両大臣からお話ございましたように、私どもも非常にその考え方に同感をしているわけでございまして、従来は技術ということを中心に、これの開発に全力を投球してきたわけでございますが、これからはやはり自主的な、あるいは創造的な技術ということを特に取り上げてこれに立ち向かっていきたい、こういうふうに考えております。特にわが国は欧米に比べましてやや基礎寄りの仕事が弱いという点もございますので、そこを考えて基礎的な研究開発の充実ということが当面非常に重要なことであるというように認識しております。  そういう意味におきまして、昭和五十六年度から私ども工業技術院の中に次世代産業基盤技術研究開発制度というものをつくりまして、その方向でいま進めておるところでございます。
  172. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 そのほかの各省の研究もいずれも関係のあるところであると思いますが、科学技術の研究というのは、先ほど来申し上げておりますように、今後私は新たな貿易摩擦の、あるいはもとになるぐらいの力を持った新しい技術を関発するということについて、関係各省の一層の御努力をお願いしたいと思いますし、それから具体的な研究のテーマを決めておりましても、実際は研究をやりますとそのテーマ以外の、期待して、予期していなかった成果を副産物として生んでくるということもきわめて例は多いわけでございます。適切な例であるかどうかわかりませんが、私どもが日常使っている、たとえばたばこのフィルター、あれはイーストマンコダックの研究所で写真の材料を研究している副産物として出てきたものが、いま世界じゅうに普及している、そういう研究の成果も生まれてくるわけでありますから、なるべく幅広く研究を進めるような御努力をお願いいたしたいと思います。  それから外国に比べて日本の科学技術が特におくれている分野、この分野については、先ほど科技庁の長官のお答えの中にも含まれていたと思います。  昨年の十二月に発表されました技術予測調査、これについて伺いたいと思います。  技術予測調査は、いわゆるデルファィ法によって行われた調査の結果でありまして、さきに昭和四十六年に第一回目の調査が行われ、第二回目は昭和五十一年に発表をされております。それらと昨年発表されましたものと比較いたしますと、まず最初に、特に目立っているのは、四十六年、五十一年の調査の違いでありまして、ちょうどその間に第一次の石油ショックが挟まっておりました関係から、四十六生の調査のときにはエネルギー・資源に関するのは第五番目になっていたと思いますが、五十一年になりますとそれがトップに上がってきている。そして昨年発表されましたものもエネルギーと資源がトップになっているということをちょっと見てすぐ気がつきました。これらの技術予測の結果から、将来の科学技術に対してどういう展望を持たなければならないか、いままでの考え方にあるいは変更を加えていかなければならないか、問題があるかどうか、そういう点につきまして科学技術庁の御意見を伺いたいと思います。
  173. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 私ども昨年の末に第三回目の技術予測調査につきまして発表をいたしました。二千人の有識者を対象といたしまして、デルファイ法というアンケート調査を行ったわけでございますが、十五の重要な分野につきまして八百課題について予測をいたしました。  全分野の課題を通じまして、重要度が大きいというふうに指摘されましたのが保健・医療とか、ライフサイエンスの分野でございまして、がん等の各種の疾病の治療とか、予防等に関します課題、生命とか、健康に直接関します課題が目立ったものでございました。それから、エネルギー関係の課題がその次でございまして、それから災害の予知、防止等に関する課題が重要度は大というふうに指摘されたものでございます。  これらの課題の中で前回の調査と同一、あるいは類似のものがたくさんございますが、それを比較してみますと、重要度大の比率が大幅に増加したものは通信・情報・エレクトロニクス分野でございまして、近年この方面の技術が非常に進展しているということを反映しているのではないかと思います。また、ライフサイエンスの分野、それから宇宙の分野等、未来を担います科学技術におきまして重要度大という比率が増加してきております。未来社会におきます科学技術の果たします役割りに対しまして期待が高まっているものと考えております。  私どもといたしましては、それぞれの研究開発分野とか課題につきまして、有識者の予測をも踏まえまして、これからの研究開発を強力に推進していきたいと思っております。  特にこの三月の十四日の日に科学技術会議に対しまして、新たな科学技術政策の長期ビジョンの作成が諮問されております。この答申案の作成に際しまして、今回の技術予測の成果を十分活用してまいりたいと考えておるところでございます。
  174. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 次に農林省に伺いたいと思います。  農林省におかれましてもいろいろ先端技術の問題については深い関心を持って、その開発に努力をされていると思いますが、通産省はさきにテクノポリスの構想を出しましてこれを推進する。来年度はそれに対するいろいろな行政上の措置も講じられているようでありますけれども、しかし農業につきましても、やはりテクノポリスに対応するような農業の先端地域、ここに先端技術をどんどん導入して一つの先導的な役割りを果たすことのできるような地域を指定するというようなお考えはありませんでしょうか。
  175. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) いま御質問のテクノポリスといいますか、そのお答えを申し上げますが、農林省は従来農村地域というのは国土の九七%、人口で比べましても四割を占めている重要な地域ということで、私もたとえば農村に工業導入促進法、そういうようなものによりまして、農村におきます工業導入、あるいは農産加工というものを進めてきているわけでございますし、また今回御審議いただいております五十八年度予算におきましても、地域産業の振興と、農村におきまして特に地域内での生産と加工、あるいは消費を結びつけるという観点から、新しい農産物の利用高度化のための計画を進めているところでございます。  ただ、いま御指摘の農業におきます先端技術、これは核融合とか細胞、遺伝子組みかえ、その他いろいろの方法がございますが、農林関係におきましてはこの研究が緒についたものが非常に多いというところでございまして、まだ実用化には相当時間がかかるという点もございますので、いま御指摘の問題につきましては、今後の農村の地域振興、あるいは農産物の生産から消費に至る流通を広げるという観点から、よく慎重にまた考えさしていただきたいと思っております。
  176. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 農林省の方もテクノポリス法案を近く提出いたしますが、それについて積極的に自分たちもその一分野を担えないだろうかというような意向があるそうでございまして、農林行政の上から新しい未来へ向けてそういうものに取り組む、単独で取り組むことはいま言ったような答弁で大変むずかしい検討課題でしょうが、通産省のやろうと考えているテクノポリス法案に、自分たちもぜひ参加したいという意欲を聞きましたので、近く私が事務当局から、農林省の事務当局の陳情ということだそうですから、一遍聞いてみて、農林省の力もこの際一緒にできるものならばという点があればそういうことで協力を願いたいと思いますが、ちょうどいい機会でございますから、ちょっとテクノポリス法案について私がいままで答弁してきましたことでこれはいかぬなと思ったことがありますので、与党質問の際にお許しを願って、方針を私、根本から変えたいというふうに思っております。  というのは、衆議院の段階だったと思いますが、候補地、手を挙げているところは何カ所か、十九カ所である、それは何カ所指定するのかというやりとりのときに、せっかくの御希望だから、最終的には十九カ所全部のつもりでおりますがというような答弁をしたら、途端にもう、これは地方から地方の活力として盛り上がってくるもの、中央に県知事なり県議会なりという地方がぶら下がって甘えの構図であってはならないもの、これが全部指定されるんだということが私の口から出ましたら、途端に自助努力自分たちが指定をされるための事前の努力から、指定をされたならばどのようにその自治体は努力していくかについて途端に意欲がうせたという、私はどうもそういう感触がしてなりませんので、この際改めて、十九カ所手を挙げておりますが、これについては最終的には十九カ所全部ということはもうあり得ない、そして厳しい選択を加える、優先順位についても。そういうふうに与党質問の際に答弁いたしておきます。
  177. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 いま、通産大臣からの御答弁を伺いまして、確かにそういう問題はあるというふうに思います。むしろ私も、消極的な態度で通産省におんぶするというようなことではなく、むしろどんどん実績をもう先につくっていくというぐらいの努力を、テクノポリスを目指す県においてはするべきだというように思いますし、私の出身県もいまそういう努力をしていると思います。また、大分県においては、マリノポリスですね、海洋についての先導的な地域を指定いたしまして、その開発についても努力しておりますので、関係谷省におかれては、積極的な御協力をいただくように、この際お願いをいたしたいと思います。  次に、石油たん白のこと、これは通産省、まあ農林省、食糧庁にも関連してくると思いますが、日本の今後の食糧の自給体制を強化するということとも関連し、長い目で見た人類全体の食糧問題の解決ということを考えますときに、石油たん白の研究ということをやはり今後も進めていく必要があるのではないかと思います。  日本石油たん白の研究はある時期までは世界で一番進んでいたと思いますけれども、日本ではいろいろの事情でそれがストップいたしまして、外国でむしろ工業化が行われていて、イタリアあるいはルーマニア、イギリスもやったと思いますが、家畜の飼料としての生産が行われたというように聞いております。日本でこれが行われなかった理由は、毒性がないという証明がないというのが理由であったと記憶をいたしておりますが、私はこれをすぐつくれと言うわけではありませんけれども、しかし石油資源というのは、将来これは燃やしてしまうのには全くもったいない資源である、人類が長く豊かに生き長らえていくためには、やはり石油資源も将来食糧に適するようなものにつくっていくための努力、研究をいまからやはり進めておく必要があると思いますので、ストップをしたというままでなく、毒性のない、食糧に適した石油たん白の製造ということについて今後も政府努力を期待いたしたいと思いますので、その点について通産省、あるいは政府委員からでも結構でございますが、お答えをいただきたいと思います。
  178. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 石油たん白につきましては、ただいま御指摘のように、四十年代の初めに民間企業を中心に飼料用として研究の開発が始められたわけでございますが、その安全性につきまして    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 いろいろ問題が出されまして、四十八年に民間企業が実質的に研究開発を中止している、こういう状況にあるわけでございます。その後、安全性の問題もございまして、民間企業におきましては研究は行われていないというふうに私ども聞いておりますが、この問題はただいま申されましたようないろいろな問題を含みつつも重要な問題でございます。ただ、この安全問題という問題が経緯論も含めましてございますので、今後は関係省庁とも相談しながらこれに対処していきたいというふうに考えております。
  179. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 ぜひそのようにお願いをいたしたいと思います。いま民間企業はそういう事情で開発をストップしているということであるならば、それはやはり民間でやれない部分については政府の研究機関が、これは将来の人類全体の福祉のためといいますか、食糧問題を解決するための研究の一つとして研究を続けていただくように私はお願いをいたしたいと思います。  石油たん白の問題は、数年前に科学技術の進歩と人権の会議がウィーンで行われました際にも、いまお話しのありました毒性があるかどうか、有害であるかどうかというような問題について、かなり激しい論争が行われたと聞いております。南極のオキアミの問題、石油たん白の問題、これが大いに議論をされたと聞いておりますけれども、余りこのことについては報道されておりませんでした。当時のこともひとつお調べいただいて、政府において研究のための努力を続けていただくということをお願いいたしたいと思います。  次に、環境関係の問題について伺いたいと思います。  日本は水資源に非常に恵まれておりました。そういうことから水を非常に浪費するようなシステムになってきております。これを一度に改めるということはとうていむずかしいことであると思いますけれども、水資源を大切にする、そして森林資源の育成に努めるということは、これは地球全体のいわゆるトータルエコロジーという観点から見ましても、非常に大事な問題であると思います。したがって、環境庁がいま湖沼法の制定について検討をされているようでありますけれども、この法案の成立をなるべく早くしていただいて、きれいな水を確保するという努力をしていただきたいと思います。その点について環境庁の御意見を伺いたいと思います。
  180. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) 後藤委員仰せのとおり、水は大変大事でございます。それで、最近特にいまお話しのように、湖沼の水質汚濁が非常に進んでおる、大変深刻になってまいりまして、これは私ども深刻に受けとめまして、昨年暮れに富栄養化に対する窒素、燐の環境基準、これを決めまして、それからことしになりましてから排出基準の御審議をいま中公審でいただいておるわけでございます。  そういうことで、富栄養化に対する窒素、燐に対しては大分対策を講じておるところでございますが、いまお話しの湖沼法、これは長い間懸案でございまして、いろいろ政府部内で調整を進めておるわけでございますが、私としましては何とかこの国会中に成案を得たい、政府内で調整を進めましてこの国会中に成案を得て提案いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  181. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 もう時間がなくなりましたので、文部大臣に一つだけ、これはまあお願いをいたしたいと思います。  文部大臣は、衆知を集めて非行少年対策にいま御努力をなさっているということを伺っておりますけれども……
  182. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 後藤君、時間が参りました。
  183. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 私は、昔からありましたいわゆる信賞必罰、そういう言葉も最近は余り聞かれなくなりましたが、これをしっかりひとつ考えていただきたいということをお願いしたいと思います。  モスクワのある大きな大学に参りましたときに、一つの学期の試験、三科目試験がありますけれども、それに合格した、三科目に満点を取った学生の写真を学校の入口にずっと掲示しまして、それについては日本の円にして二万円に相当する給与の上に上積みをするというような措置までとってやっている、そういうのを目の当たりにいたしましたし、また国家のために功労があった学生、先輩の写真を掲げて学生の奨励をやっている、そういうのを目の当たりにしましたので、これは文部省においてもそういう一つ考え方を教育の中に取り入れるような方法について、いろんな角度から御検討をお願いいたしたいと思います。
  184. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 人間の社会は共同社会でございますから、それぞれみずからを正し、世の中をよくするということが、これが人間の立場であろうと思います。しかし、なかなかそうはいかないという問題がありますから、いわゆる信賞必罰というのがあって、それを正していかなきゃならない。これは学校教育でも同じだと思います。ただ、いま問題になっておる小中学校などというのは、御承知のとおりに非常に未熟な、まだこれから人間社会に生きるすべを教えてもらう、あるいはみずから体得する、こういう時期でございますから、信賞必罰についてもよほどよく考えてやりませんと、かえってとんでもない逆効果に終わる。  御承知のとおりに学校教育法でも懲戒という点もありますけれども、体罰はいけないとかいろいろ書いてありますが、しかし、のんべんだらりというわけにはまいりませんので、いろんな功罪をよく研究いたしまして考えてみたいと思います。
  185. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で後藤正夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  186. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、中野鉄造君の一般質疑を行います。中野君。
  187. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私は、初めに国有林野事業について質問いたします。  まず、近年の国有林野業の損益の推移と累積赤字はどういうふうになっているか、お尋ねいたします。
  188. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) お答えします。  国有林野事業におきましては、昭和五十三年以来国有林野事業改善特別措置法に基づきまして経営改善に努力しておるところでございますが、財政状況を申し上げますと、森林の持っておりますところの公益的機能に配慮した施業方法、あるいは最近の国有林野の資源の内容は、非常に若い人工林が多い関係がございまして、そういう資源的な側面から伐採量が低下をしてまいっております。さらにこれに加えまして、五十五年の秋ごろから木材価格の低落がございまして、売り上げがダウンしておることが最近の財政事情を悪くしておるところでございます。  一方におきまして、支出の方におきましては、こういう中で経営上の諸経費、特に最近は労賃、物価等も値上がっておりますので、そういうものをしながら、同時に造林、林道等の基盤整備にも投資をしていかなきゃならぬということがございまして、大変厳しい内容になっております。  そこで、最近の傾向を申し上げますと、五十六年の決算におきましては、損益計算上千四百七十二億円の損失を生じまして、累積におきまして五十六年度末に三千四百億円強の赤字となっております。
  189. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、昭和五十三年に国有林野事業改善特別措置法というのが施行されましたけれども、果たしてこの改善期間後の昭和六十三年以降は、財政的なこうした特別措置法がなくなっても自立できるのかどうか。それといま一つは、七十二年度にはこの措置法の目的の一つであります収支の均衡を回復させられる見通しがあるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  190. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) お答えします。  収入の大宗をなします収穫量でございますが、先ほど申し上げましたような資源事情がございまして、昭和六十年ごろまでは残念ながら減少せざるを得ません。六十年代も横ばいでまいりますが、後半になりますと、戦後植えました造林地がこれが伐採対象、収穫の対象に相なるわけでございますので、それから以降は収入も大幅に増加してくると思います。  事業面におきましては、先ほど触れましたとおり、五十三年以来、特に事業運営の能率向上の問題、それから要員を適正化するために縮減をしておりますし、また組織につきましても簡素合理化をすると同時に、販売につきまして鋭意販売努力をすると同時に、この土地の活用につきましても積極的に取り組んで現在まできておるところでございます。  しかしながら、さっき触れましたように、大変木材事情が、この需要状況が悪うございますし、市況も低下している経緯もございますので、私どもは今後臨調答申もいただいたところでございますので、この趣旨を踏まえまして積極的に改善努力してまいりたいと思いますが、森林・林業経営と申しますのはやはり対象が森林でございますので、そう簡単に回復というわけにはいきませんので、やはり極力生産力の向上に努めながら、若干時間はかかりますが、この昭和七十二年度までには目標を達成すべくこれからも鋭意努力してまいりたいと、かように考えております。
  191. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、私はこの政府の対応いかんによっては、この既定方針どおり予定期間内にその目的を達成できるという確信を持っておりますけれども、そういう見地から、以下具体的に私の改革意見を提示いたしまして、要約して質問をしてみたいと思います。  それは、まずこの木材の流通、販売のあり方に関することでございますが、このことについては、わが党ではすでに昭和五十四年の党大会で提示いたしております。すなわち流通のあり方については、生産地において市場情報が的確に把握でき、需要に即応した造材・加工を機動的に行えるよう流通の高度化を推進すべきである、こういうようなことを提示しておりますけれども、以来今日までこれを主張し続けてきたところでございます。  ところが、私ども最近非常にいいことをやっているなあと思っていることですが、昨年から実はこの国有林から切り出された東北の青森ヒバだとか、あるいは秋田の人工杉を試験的にわが党と同じような発想で消費者のニーズに合わせて造材したり、あるいは製材して販売してみたところ、これらはいずれも同じ樹種でありながら、従来の方式よりもほぼ確実に二倍の価格で売れるようになったと、こういう結果が報告されております。また、これもごく最近、岩手県のある地域で立証されたことですが、これまで地元ではもうパルプの原料のチップとしてしか使い道がないと、そういうように思われていたトチだとか、ナラだとか、クリ、こういう樹種を新しい製材、加工、販売方法に変えただけで、従来より何と数十倍、数百倍の値段で取引できるようになっているという、本当にもうまさに漫画的とも言えるような現象が事実起こっております。  そこで、仮に国有林に存在する青森ヒバや秋田の人工杉だけでもこうした新しい流通、販売体制に乗っけることになれば、私のきわめてラフな試算によっても、年間で確実に数百億の増収が可能となる。また、この方式は東京、前橋の各営林局並びに北海道の函館支局管内の杉、ヒノキ、ヒバはもとより、その他膨大な資源量を有するところの多くの広葉樹種についても応用できる方式であると、このように確信いたしておるわけでございます。したがって、林野庁としては、いたずらに木材価格が低落しているというこの現状を、さっきもおっしゃっておりましたけれども、嘆くんじゃなくて、こうした国有林材の販売に当たっても、需要の動向を広域にわたって把握して、いま少し、いかに営業とは言え企業的センスを織り込んだ、積極的な戦略を展開していくべきではないかと、このように思いますが、いかがでしょうか。
  192. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 御指摘のとおり、国有林野事業の収入を確保するためには、いまお話がありましたが、需要者側のニーズを的確に把握しまして、それに合った生産、販売を行うということが重要でございまして、これまでも私どもそういう形でこのマーケティングの活動やら、あるいはそれに関連しました情報交換ということで、需要動向を的確に把握しながら、需要に見合った採材方式とか、あるいは新鮮材を供給するということでやってまいったわけでございます。  一例を申し上げますと、従来のヒバ材と申しますと、東北からせいぜい東京周辺までが需要の範囲でございましたが、今回九州の方までも広げながらやってまいりますと、ヒバ材と申しますのはシロアリにも強いというふうなこともありまして、わりに需要をこれから拡大していくいい一つの例になっておりますので、私どもはそういうことを進めると同時に、数年前から国産材によるモデル住宅、あるいはそれのPR等も進めておりますが、また今度は国有林材のそういう意味での需要開拓をしながら、ニーズに合った、またニーズを開発しながら、それに合った国有林材の供給にさらに一層努力してまいりたいということで現在努力している最中でございます。
  193. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 先ほども御答弁がありましたけれども、第二臨調の最終答申によりますと、しょせんは立木販売を原則とすると、こういうことが答申されておりますが、しかし、先ほど私が意見を申しましたような、こういうことでも明らかなように、天然林材であろうと人工林材であろうと、青森ヒバや秋田の人工杉のように高齢級のりっぱな高品質材、そういったようなものは高品質材とみなして、そして素材販売できるようにすると同時に、流通、販売の高度化を図っていけるようにすべきじゃないか、このように思います。そうすることが地域林業の振興にも寄与するし、また国としてもかつてない新たな財源を見出すことになるのではなかろうかと思いますが、しかしそうじゃなくて、この臨調で言われているような立木販売を原則とするという、まことに単純な発想というか、そういうことになれば、地域林業を疲弊させるとともに、財政的にも国の大きな損失となり、また貴重な森林資源のむだ遣いになりはしないかと思いますが、重ねて御質問いたします。
  194. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) お答えします。  臨調答申で申しておりますところの立木販売原則という趣旨でございますが、これは本来国が責任を負うべき分野を必要最小限に限定して、できるだけ簡素効率的に事業運営をすべきであるという考え方であると理解しております。この臨調の答申におきましても、国有林の所在する地域の比較的零細な林産業の方々には、丸太で国有林材を供給してほしいという要請もございますし、また、これには当然、地元の製材業に対する私どもの役割りでございますが、進めてまいることも必要でございますし、また、秋田杉とか、あるいは木曽ヒノキというふうな高品質材におきましては、これはむしろ丸太に生産しまして付加価値を高めて公平に売り払うということが、これはやはり私ども非常に必要なことだと思います。  そこで、私ども、これからの国有林材を供給する場合には、そういう必要性も十分踏まえながら、かつまた、請負生産によりまして丸太生産をする場合におきましても、トータル的に見まして収入がより高まる、付加価値がより高いという場合には、これは素材販売でもよろしいというふうに答申もいただいております。私どもこれは十分踏まえて対応していかなければならぬと思っております。  なお、これから経営改善を進めるに当たりましては、要員も一挙に縮減はできません。やはり適正な方向に持ってくる過程におきましては収入も確保しなければなりませんし、付加価値を高めた収入活動もしなきゃなりませんので、そういうことも十分踏まえて現実的に対応してまいりたい、かように考えております。
  195. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 先がありますから林業関係についてはこれで終わりますが、最後に一点だけお尋ねいたします。  いまおっしゃったような国有林材の販売に当たっては、これが官業でありますところから、それなりのやはり制約は伴うと思います。しかし、他の国有財産の処理販売といったようなものと異なって、木材という商品特性を十分考慮して、政府としても、もっと販売手続を簡素化するとか、あるいは財産管理的な法令体系を事業経営的な法令体系に変える方向で現行の販売制度を見直すべきじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  196. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) いろいろ御提言がありましたが、大変示唆に富んだ御提言で、御提言を踏まえまして、これから林野事業に大いにひとつ改善を加えていきたいと思います。
  197. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) お答えします。  ただいま大臣から答弁もございましたが、若干補足して申し上げますと、御指摘ございましたが、国有林材の販売につきましては、現在国有林野事業特別会計法令等の関係法規に基づいて、適正かつ効率的に進めてまいっておるところでございますが、特に私ども、やはり地域林業の振興に寄与するということが非常に重要でございますので、そういうことを十分踏まえながら、また、やはり国有林の経営上は安定的販路を確保するということがきわめて重要でございますので、そういう配慮の上におきまして、これまでも販売につきましての方法につきまして改善をしているところでございますが、さらに手続の簡素化の問題とか、あるいは民間の市場に委託販売をするとかいうふうな、そういう方法も含めまして合理的な有利販売に今後とも積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  198. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では、次に長崎県の南部総合開発事業について大臣にお尋ねをいたします。  私は、国営事業でありますこの長崎南部総合開発、これにつきまして、この事業が是であるとか非であったとか、そういうことは論じません。その是非よりも、突如として昨年の暮れに打ち切られたことによって起こっている波紋と、この打ち切りをめぐる真意と経緯についてお尋ねするわけですが、御承知のように、長崎県が農林水産省と一体となって一歩一歩困難を乗り越えながら推進してこられた、そして、ここ二十年来かつてなかった湾内漁業者九六%という方々の漁業権放棄という同意書を取りつけるまでに至っていたものを、昨年暮れ短い予算の期間に、しかも推進する立場の最終責任者たる大臣が打ち切った、こういうことで、一様に驚きの目で見ておったわけです。その真意は何であったでしょうか。大臣お願いします。
  199. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私から議論の経過を御報告さしていただきます。  御指摘のように、諫早湾内の漁業者の合意を取りつけることには成功したわけでございますが、県内の島原半島の漁業者の合意、さらに隣接の佐賀県の関係漁業者の合意を取りつけられない。そういう状況のもとでは、やはり工事に着手できないと見ざるを得ない、いわば広い意味での着工条件の整備ができていないわけでございます。こういうことでは防災上の観点から考えてもやはり問題があるのではないか。特に昨年長崎の台風の被害は顕著でございまして、諫早湾の高潮と競合した場合はどうなるかという議論も大いにあったわけでございます。そこで、締め切り防潮堤防の位置を後退させるという方向で方針の転換を図ったわけでございます。しかし、基本的にはやはり複式干拓工法でございまして、規模の面を除きますと、特に工事の内容としては新しいものではございません。また、先ほど申し上げました佐賀県とか、あるいは島原地域の関係漁業者の合意が得られないために、従来の計画のままでは事業の着手はむずかしいということは一般に認識されていたことも事実だろうと思っております。  なお、この方針の修正につきましては、その後も関係県、関係者に説明を重ねてきておりまして、逐次動揺もおさまってきているものと思っております。
  200. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私は必ずしもそうじゃないと思います。まだまだいろいろなごたごたが地元で起こっておる、そのように理解しますが、私は再度大臣にお尋ねしますが、この南総事業が、これは高度成長期の遺物であった、あるいは投資効果の期待できない無定見な計画であったと、このように大臣申されておりますが、お願いいたします。
  201. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) この問題はいろいろ経過を申し上げると大変時間がかかりますので、結論を申し上げます。  私が県会におるころ、昭和二十七年から長崎県は非常に水田が少なくて、隣県、佐賀県まで私はイリコを持って米を買いに行ったような経験があるんでございますが、そのころ発想した干拓でございます。それ以来今日まで三十年になりまして、いろんないわゆる日本経済社会、農業は特に大きな変化が起こっております。私は毎年予算時期に、これは考え方を変えなければ大変なことになって、地元の関係の漁民に補償金を幾らやる幾らやる幾らやると、毎年補償価格を上げて引きずっていきよるが、大変迷惑をかけておる、これは早くやめなさいということを県にも毎年予算時期に申しておったんです。農林省にもやはりそれを言い続けておったのでございます。これは百年河清を待ってもどうにもならないことでございまして、まず県内のいわゆる湾の口にある島原市の漁協、大きい漁協、ここが反対していわゆる漁業資源が枯渇する、これはもう日本で有名な湾内のいわゆる産卵場、繁殖場、定評のある漁場を締め切るわけでございますから、佐賀県はもちろんのこと福岡、熊本県、有明海沿岸は全部反対です。したがって、三十年かかっても同意がとれない、将来もとれないと、私はこういう考え方で早く発想を転換しなさいということを言い続けてきたわけでございますから、私がその他位についたので、これはこの際やはり非常に国家財政が大変な窮屈な時代に投資効果も何も考えたものではないと、これを続けることは、いままで私が無定見だということを言い続けておったのですから、私の手によって処理すべきであるという責任を感じて、この問題の処理に当たったわけでございます。ようやく私の発想に佐賀県も非公式ではありますけれども同意をしつつあります。島原の方も大体話はわかってくれそうです。これを早くやらなければ、諫早にはかつて昭和二年、あるいは三十二年と大水害が起こりました。昭和三十二年には九百二十名の人が亡くなりました。こういうかつての水害がまた繰り返しはしないかという心配が私はもう絶えず先に立っておるわけです。できもしないことをやるやるやると言ってほったらかして、――本明川という有名な大きな河川の河口よりも沖の方が浅くなって干潟ができておるわけです。いつ洪水が起こるかわからない。したがって、まず問題は干拓をしてその見返り、いろいろ投資効果等を考えるのじゃなくして、いわゆる防災事業としてやるべきだという発想で、今度の五十八年度の予算編成時期に防災を主にして謙卑干拓という名前に変更して、名実ともにそのような取り組み方をして進めておるわけでございます。
  202. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこでお尋ねしますが、これはことしの一月十九日に、大臣は長崎県庁において四十分間にわたって記者会見をなさった。その記者会見のときにこういうことをおっしゃったということが新聞記事に載っております。一節読みますが、「記者会見は四十分間、農相の独演であったといってもよい。農産物自由化に対する姿勢をぶったあと、当然、話は南総へ向かった。」そして大臣はこう言った。「県内の漁民の反対も鎮められないじゃないか。百年たっても事業の着工もできない。南総、南総というのは愚の骨頂だ。(昨年)知事選の保守一本化も南総中止が条件だったのだ」「裏話まで交えて県政批判がポンポン飛び出した。」「最後に「この責任はすべて無理に漁民を引っ張ってきた県にある」と断言した。」「そのそばで、高田知事は口をへの字に曲げて、”金子節”を聞かされていた。」と、こういうことが書いてありますけれども、こういう保守一本化も南総中止が条件だと、これはどういうことですか。
  203. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) それは県の重要ないわゆる長年の懸案である政策の問題ですから、その政策に新しく誕生しようとする知事がどう取り組むかというその候補者を決める場合に、その知事のいわゆる意向も聞かなきゃならないし、われわれもやはり考え方を言わなきゃならぬ、そういう問題でございます。それで、その新聞の記事は全部がそのままじゃありませんけれども、やや私の発言に似た記事だと思います。
  204. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それで、やや似ているということですからそうだと思いますけれども、いまおっしゃるように、この事業は隣県、三県にこれは影響を及ぼす地域的な大事業なんですね。過去二十年間、その是非はおくとして、それこそ明けても暮れてもこの仕事に心血を注いできたたくさんの職員の方々もいらっしゃるわけです。また、毎年莫大な調査費というものが国からつぎ込まれている。また漁民は漁民で、この事業の実現を大前提として、それぞれがささやかな将来の計画というものを立てていた。それを単に一政治家が一首長の選挙戦の戦略上の政争の具としてこれを利用してもいいのかどうか。ここに私は非常に疑問を感じたのですが、いかがですか。
  205. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 政争の具にはなっていません。何も別にこんなものを政争の具にして長崎県は政治をやらなきゃならぬような県ではないんですよ、ただマスコミがそういうふうに皆書きたがるのであって。私は大変県民から喜ばれ、佐賀、福岡の関係県からも大変称賛を受けております、大英断であったと。私はいいことをしたと思っておるので、別に政争の具にこれを使ったとも思わないし、将来の長崎県に再び三たび起こりはしないかという大洪水をこれで防止することができると、漁民には漁民なりにそれぞれやはりいろいろ御迷惑をかけたことに対しては償いをやろうということで目下話をしておるわけでございますから、私は決して悪いことをしたつもりはないんでございますから、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  206. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 確かに大臣は長崎県のために悪いことはしていないと、こう胸を張られる。そうかもしれません。しかし、ただ大臣としてのその言葉に非常に私は不適当なところがあったんじゃないかと、新聞記事を読む限りにおいてはそう思います。と出しますのは、私は長崎県出身の大臣だと、政治家だと、したがって、長崎県のためにならないようなことは絶対にしないと、確かにそれは本音だと思います。しかし、いまはあなたは大臣なんですから、そういう立場から言えば今後の新事業にしたって何にしたって、お隣の佐賀県だとか、福岡県だとか、熊本だとか、そういうところにいろいろ交渉をしていかなくちゃいけない立場にあるんです、長崎県は。そういうときに大臣が長崎県のためにならないことはおれはやらないと、そういうことを言えば、裏返せば、聞きようによっては、じゃ長崎以外のところはどうでもいいのかと、こういうふうにさえも聞こえるのですよ。そういう意味で、非常に中曽根内閣の中でもたてまえ論が横行する中で、大臣は本音をおっしゃるのですから貴重な存在だと思います。だけれどもちょっと不適当じゃないかと、そういう調子で夏の日米農産物交渉をやられたのじゃかなわないと思いますが、いかがですか。
  207. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 御質問の趣旨が余りよく私はわからないのでございますが、ただ、私はいまの南総問題についてはそれぞれ手順を踏んで処理をしたと、まず関係の諫早市長初め関係六カ村の町長、議長、こういう方々も出てきましてよく説明をし、それから湾内の、これいままで長年漁業補償を約束して、もらえるものとして期待しておった漁民の十二漁協の代表、長崎県の商工会の代表、こういう方々も皆上京していただきまして、この内容は説明いたしました。当然、長崎県出身の国会議員も与野党を問わず全部お集まり願って、そしてこういう扱い方をするということを御理解を求めて、最終的にああいう取り扱いをしたわけで、決して私はマスコミが書いておるようなそんな乱暴な男じゃないのですよ。どうぞ御理解いただきたいと思います。
  208. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 まあ、言ったとか言わないとか、そういうことをいつまでやっていてもしようがないですから先にいきますが、じゃ、この要するに南総を打ち切った、そして新しく新事業を打ち上げられたわけですが、今度の新しい事業というのは継続事業ですか、それとも完全に南総とは切り離した新規の事業ですか。
  209. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) お答え申し上げます。  予算折衝の経過にも触れる問題でございますが、名称は変更しておりまして、その意味では形式的には新規という側面もございます。しかし、実質的には、事業内容の面につきましては従来と同様の複式干拓でございまして、従来の計画と同じ機能をねらったものであること、それからまた、同じ地点においてそれを圧縮した規模で実施したものであるという点から申しますと、いわば従来の事業と連続性を持った事業でございます。したがって、予算的には継続した事業として取り扱って差し支えないものだろうと考えております。いずれにしましても、実質的には連続性を持ったという点を御理解賜りたいと思います。
  210. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 どうもよくわからないんですが、そうすると、内容的には継続だと、継続と同じみたいな性格を持っていると、そして実際は新規というような、何か離婚をして、今度は名前を変えて、装いを変えてまた一緒になったと、こういうような気がするんですが、いかがですか。
  211. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 具体的な事業地区の予算の問題でございますから、その意味で御理解を賜りたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、複式干拓として同一の工法であり、同一の機能をねらったものであり、また地区としても完全に重複しているわけで、それはいわば圧縮されたものとして計上されているわけでございます。それから、従来実施しております設計の経費の成果とか、あるいは調査の成果というものも今回の事業に生かされるわけでございまして、そういう意味においては、継続した内容を持った事業というふうに本質を御理解賜りたいということを申し上げているわけでございます。
  212. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 予算上では継続した事業と、こうなっておりますが、そうしますと、湾内漁業者が県と約束したあの三百二十二億八千万円の補償金というのは、これはどういうことになるんですか。
  213. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 事業としては内容の圧縮ということが問題になるわけでございます。したがって、締め切り堤防の位置が後退することになります。したがって、従来いわゆる漁業権が消滅した漁場の中が今後も消滅するところと、それからもう一つは、消滅しないで漁場として残って漁業が営めるところというところに結果として振り分けられるわけでございます。  補償問題というのは、工事の実態に応じて、着手の段階において具体的な損害の態様、被害の態様によって支払うものでございますから、そういう意味においては、いわゆる、どちらかと申しますと外側の部分については従来の消滅補償がなくなると。しかし、当然工事に伴う影響補償という問題はあり得ると思っております。これは具体的に堤防の地位や工法が決まった段階で、折衝等を通じて決めてまいりたいと思っております。
  214. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうすると、重ねてお聞きしますが、いままでの事業が縮小されたものであると、このように理解していいんですか。
  215. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 具体的な地区事業の問題でございますから、私が申し上げましたのは、実質的に従来の規模が圧縮された形で同一の工法の事業が実施されるということを申し上げているわけでございます。
  216. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうすると、どうも私、いまの御説明じゃすっきりしませんけれども、内容は一緒だと、そしてただ名前が今度は変わったと、しかし、その事業の面積というものがいささか縮小されたと、ただそれだけのことですね。
  217. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) お答え申し上げます。  いわゆる価格政策の予算とか、あるいは一般の補助体系の予算とは違いまして、具体的な地区の事業費の問題でございます。したがって、そういう公共事業の予算の内容といたしまして、私は事業としての連続性があると、同じ場所で縮小された規模でやると、また工法は同一であるということを申し上げているわけでございます。  ただ、若干縮小するというのではなくて、やはりかなりの縮小になるのではないだろうかというふうに見ておりますが、これは今後決めていかなければならないと思っております。
  218. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうすると、明確に新規事業ではないと、こういうことですか。
  219. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 予算といたしましては新規という形では継続しておりません。しかし、名称は変更いたしまして諫早湾干拓事業として計上しております。
  220. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 だから、そこがおかしいんだな。そうしますと、農水大臣にお尋ねいたしますが、昨年の暮れ、この三百二十二億の補償問題でごたごたといろいろな話があったときに、大臣は、いままでのいろいろな経緯もある、そういうところで迷惑料として百億の金を出すと、こういうことをおっしゃいましたね。それはどういうわけですか。
  221. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 百億と言ったのは、いま取り決めているのが三百二十数億ですから、大体この干拓を縮小して、まず投資効果、あるいは土地を造成していろいろいわゆるはね返りを予定するとかいう、そういうことじゃなくして、大体防災事業として最初これは変更すべきだということを言っておったんですから、その防災事業が、いわゆる工法として測量してからの設計を見なければわからぬのですが、いまの三分の一ぐらいまで縮小すれば大体防災は完全にできるだろうと。それから、湾外の佐賀県初め福岡、有明の漁業者が反対しておる唯一の産卵場である、繁殖場であるというその海面も三分の一に縮小するならば、当然漁業者に御迷惑はかけないだけの面積が残るので、大体話はつくだろうという考え方で、その三分の一がいわゆる補償金の三百億の三分の一になってしまったわけですね。それはいつの日にかそういうふうになってしまっておるわけです。私は迷惑をかけたということは絶えず関係の漁業者に申し上げておりますけれども、事業面積が三分の一になりますと当然漁業権を喪失するのは三分の一になるわけでございますから、おのずから三分の一の人がいわゆる漁業権喪失の代償を受ける、こういう考え方で、いまの三分の一にはなるでしょうと。いわゆる面積も三分の一、当然そういう漁業者等の補償契約に関する金額も三分の一になるだろうと、こういうふうになってしまっておるわけでございまして、別に百億どうこうということは私は申し上げてないのですよ。
  222. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 百億の迷惑料を支払うということを大臣はおっしゃったと聞いていますが、百億の迷惑料を払うということは一切言ってないと、このようにおっしゃいますか。
  223. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 私の言葉が、非常に端的な物を言うものですから、どう受け取られましたか、新聞にもそういうことを書いた新聞もあれば、書かなかった新聞もあるわけでございまして、決して私は迷惑料として百億を出すのじゃなくして、いわゆる三百億の三分の一は百億だというような考え方で絶えずお話をしておったわけですから。
  224. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 その名称が迷惑料ということではなかったにしても、いずれにしてもその三分の一は百億だと、だから、百億はその名目はどういう名目でかわかりませんけれども、出すというようなことをおっしゃったんですね。
  225. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 漁業権の放棄滅失が三分の一に縮小されますので、いまの計画の三百億の三分の一は百億になると、こういう考え方で絶えず私は話をしておったわけです。
  226. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、漁民の人は大臣のその発言を非常に期待というか、やっぱりあれはまさか無責任放言ではないはずだと、何らかのさたがあるものとしていまでも待ってるんじゃないかと思いますが、どうなんですか、そこは。
  227. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 私はちょいちょい長崎に帰りますけれども、私にじかにそういうことは直接何もないです。また帰っても何も別にそんないわゆる農業団体などでも余り話もお聞きしません。ただ、迷惑料と言ったということにあるいは多少関係の湾内の漁民の方々はいろいろ考え方が違うかもしれませんけれども、迷惑料ということは漁業権を喪失する人に対する漁業補償の迷惑料と、こういう意味のことを言ってきておるわけですから、中野先生が御心配するほどのことは県内ではないんじゃないかと私は思います。
  228. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この三百二十二億の補償金を出すと、こういうことを県と漁業者がちゃんと契約を取り交わした。そしてまたその三百二十二億の金が支払われるまでのつなぎ融資として県は八億のお金を漁民に融資をしている。漁民はそのお金を借りたわけです。そしてその補償金が出た暁にはそれでもって返すと、こういうことで借りているんですけれども、それがいまやその三百二十二億の補償というものが全く白紙に返るかもしれないというような事態になって、漁民はそんな騒いでも何してもいないと、そんなことはありませんよ。私も十二漁協のあそこの現地に行っていろいろな人たちとお会いしてきました。そして先ほどの迷惑料か何かしりませんけれども、いずれにしてもその三分の一に見合う程度の百億の金を何とか、どういう形になるかわからぬけれども、大臣が出すというようなことを去年の暮れにおっしゃっている。これは事実ですね、くどいようですけれども。
  229. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 諫早湾内十二漁協に三百三十億の約束があったと。したがって、その金額は事業面積が三分の一に縮小されて、漁業権の放棄が三分の一になれば約百億になると、こういうことを言っておるわけでして、いままでの関係漁業者が当然海が残って漁業ができる者に金が行くわけもないし、それは常識によって受けとめてもらわなければ、私はそこまでは別に説明はしてないわけですよ。私が百億を申し上げたのはそういう考え方に立って申し上げておるのです。
  230. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうすると、ここでもうはっきりお尋ねしますけれども、そうすると、今後海は残っているんだから、そして新しい事業をやるということになったと、前の事業は打ち切りを宣言したと、したがって、百億であろうが、三百億であろうが、一切そういったようなたぐいの金は出さないと、こういうわけですか。
  231. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今後の事業における具体的な補償の問題でございます。そこで補償の内容につきましては、漁業権の消滅補償と影響補償と二つに分かれてくるものと思います。  消滅補償につきましては、これは従来の考えでは謙卑湾内を全部消滅をして消滅補償をするということでございましたので、三百二十二億八千万という補償協定が県と漁協長の間で締結されたことは報告を受けておりましたが、しかし、今回は、規模が圧縮されるわけでございまして、漁業権の消滅される部分は、先ほど大臣からもお話ございましたように、陸地化する部分がおおむね三分の一、それを基準として防潮堤の位置を決めて、その防潮堤の内側が消滅するということになるわけでございますから、三分の一プラスアルファ程度になるとは思いますが、まだ決めておりませんが、その部分は従来と大体同じ考え方で漁業権の消滅補償が行われるものと考えるのが常識的であろうと思っております。ただ、その外側につきましても、やはり工事の影響が出てくる、その影響補償をどう考えるかということは、従来は消滅するはずであったが、今回は消滅しなくなった、漁業は残ると、やれると、しかし影響を受けるのをどう考えるかという問題は、これからの問題として残るだろうということを申し上げたいと思います。
  232. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 じゃ、次に行きますが、この新しい事業の締め切り堤防の位置を三分の一ぐらいのところが適切ではないかと、こういうことを言われておりますが、それについて時間がありませんからかいつまんで四点まとめてお尋ねいたします。  この三分の一ぐらいの線では、単に現在の干潟の部分を干し上げるにすぎないのであって、大臣の言うところの防災を全うするには、洪水を調整する遊水地もこれは必要になってきますけれども、これはもう相当部分がそういう遊水地の設置等が必要になってくるのじゃないかと思いますが、いかがですか。  それと三分の一ぐらいのところに堤防線を設けたならば、これはもう非常にあそこの水深というのは、ヘドロが三十メーターあるんです、そういう面からきて、技術的にも工事の費用というものは莫大なものになってくる、そういう懸念があるんですが、いかがですか。  もう一つ、この干拓事業にそれだけの金をつぎ込んでの投資効果というものがあるかどうか、これが第三点。  それと第四点目は、三分の一の線で堤防を築いたのでは、湾内漁業者は仮に納得したとしても、その外側の漁業者がなかなかこれはすんなりとは納得しないのじゃないか。そういうことになると、早期着工と言ってもなかなか思うに任せないのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  233. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 四点お問い合わせございましたのでお答えいたします。  まず第一に、三分の一ぐらいの規模という議論でございます。すでに潟化している部分については、これを陸地化せざるを得ない。その外側に防潮堤をつくるということになりますと、ごく常識的に申しますと、三分の一プラスアルファというものが締め切り面積になってくる。しかし、潟化している部分の締め切りについては、当然漁業者も納得しやすいと思いますけれども、水の部分、水面の部分の締め切りについてはかなり、諫早湾内はともかく、島原半島とか、佐賀等の反対もあるわけでございます。できるだけこれを圧縮して、どの程度の線で引くかということはこれからの話し合い、それから地質調査の研究、これはいま調査をまとめておりますが、それからもう一つは、工法と材質とを頭に置いて決めてまいっていきたいと思っております。  それから、二番目に技術的問題でございます。確かに技術的に申しますと、潟部の厚さというのは大体十ないし十五メートルぐらいございます。そういう意味においてはいわゆる砂質土壌の上に堤防をつくるのと違って、工事はかなりむずかしい工事になることは否定できません。砂質土と置きかえるとか、あるいはサンド・コンパクション・パイル工法というふうな新しい工法を使っていくか、さらに堤防の傾斜を緩やかにするかとか、そういったいろいろな問題がありまして、いま技術的に最終の詰めをやっているところでございます。これについては多少単価としては割り高になってくる、全体が圧縮されますから、全体の事業費は圧縮される面がありますが、堤防自体の単価としては割り高になってくるということは事実だろうと思います。これは問題はいつまでたってもいままでの考え方では合意を得て事業が推進できないというところに、転換の動機があったわけでございますので、このことはやむを得ないものと思っております。  三番目は、投資効果でございます。この複式干拓事業は当然かなり広範な土地の造成と、それから結果として遊水地における水源の造成が行われるわけでございますが、同時に、潟化が進行し、排水不良に悩み、また大雨や高潮の際に水害の危険におびえている地域に対する国土保全の重要な効果を持っているわけでございます。しかし、方式としてはあくまでも複式干拓でございますし、結果として土地と水を大幅に造成するわけでございますから、干拓事業として実施するわけでございますが、従来と同じような考え方で地元負担の分を土地を取得する農家に全部かぶせるわけには私もいかないだろうと思います。そういう意味においては受益者負担の問題をどう考えていくかという問題を考えてまいりたい。裏返して申し上げると、投資効果の中に、やはり干拓事業でありますが、国土保全効果というものを相当織り込んだ事業計画として、御指摘のようにこれから詰めてまいりたいと思っております。  それから他の漁業者の対応でございます。私、これはなかなかむずかしい問題がありますが、たとえば最後までこの諫早湾内でも反対が行われたのは外側の漁協でございます。つまり、漁業実態が非常に濃厚で、漁業をやりたい地域は締め切りは困るということで反対があったわけでございます。そういう意味で、かなり補償金がかさんだ形になりましたが、補償金を積んで問題の解決に当たったという先生も御案内の経過があるわけでございます。そこで、やはり漁業実態の大きい地域、つまり潟化の進んでいない地域については、従来どおり漁業が行えるわけでございますから、したがって、影響の問題をどう扱うかという問題の解決に誠意を示すならば、私は段階的に合意は得られるものと思っております。何といっても漁業実態の強いところが一番最後まで反対した経過があります。  なお、島原半島、佐賀県の問題につきましては、従来の長い歴史の経過を申し上げますと、やはり潟化したところの干拓化はやむを得ないが、それ以上は困ると、たとえば先ほど大臣から御答弁ございましたように、産卵地帯をスポイルするんじゃないかというふうな議論があったわけでございますが、そういった問題は大幅に解消するわけでございまして、それによって問題の解決が図れるだろうということが、今回の転換の理由でございますので、いろいろまだこれから苦労し、またいろいろおしかりも受け、また御指示も仰がなければならぬ点もあると思いますけれども、全体としては努力を続けることによって問題が解決しやすい状況になってきたというふうに理解をしております。
  234. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 最後に大臣にひとつお尋ねいたしますが、早期着工ということについていま局長からもいろいろな説明がありましたけれども、いろいろな漁業、今度の新しい事業についても大なり小なりかなり漁業にやっぱり影響はあると思います。そういったようなこと等もこれあり、やっぱり早期着工といっても、なかなかこれは厳しいんじゃないかと思いますが、早期着工というのはいつごろまでを指されるのか、それと、もしそれがいけなかった場合に、今度の南総と同じようにまたもやこれ打ち切りと、また計画変更だとか、そういうことだってあり得るんですか。これは大臣に聞いているんです。
  235. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 大変御心配いただいてありがとうございます。この新しい計画について同意を得るか得ないかということがまずこの事業の目安なんでございます。先ほどちょっと触れましたが、県内の島原市の組合員の多い漁協がいままでずっと漁業資源の問題で反対を続けておったわけですから、ここの漁業組合も大体三分の一の地点まで引っ込めてもらったら、被害はあるけれども、自分たちの漁業を守るためにそう大きな犠牲にならぬでも済みそうだということを言っておるようでございます。それから、佐賀県にも絶えず私も接触をしておりますが、福岡、熊本もやはり湾内の漁業者も、あの諫早湾で産卵繁殖した魚が有明海一円に回遊している沿岸漁業でございますから、こういう関係を配慮に入れて、ただ問題はどの程度残してその漁業資源のいわゆる保護を図るかということになるわけでございまして、私は、いつごろ着工ができるかは、相手があって御相談をせんならぬ事柄ですからはっきり言いかねますけれども、長崎県もこの間、議長、副議長、知事を皆呼びまして、とにかく早く実行に移そうじゃないかということで、県のひとつ努力もお願いしまして、それぞれまず県内の調整は全部県で責任を持つ、佐賀県から福岡、熊本については農水省の農政局を中心にして、県も一緒になってひとつ御協力を得る、こういう段取りをしておるわけでございますから、できましたら、この予算が七億数千万ついていますので、ひとつ執行できるように努力しろと、こういうことでせっかく皆さんもひとつ動いてくれているわけです。
  236. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 だから、これもしうまくいかなかったらまた打ち切りになりますか。
  237. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) うまくいかなかったら、やっぱりいままでの南総の繰り返しをやることもなきにしもあらずと私は考えますね。
  238. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これは、有明海全体のことについて最後にお尋ねいたしますが、もう有明海には御承知のように七十八本の河川が流れ込んでいるわけですが、この流域の人口が三百二十万、年間の生活排水が四億三千万トン、流される合成洗剤が年間一万九千トン、水田の農薬が二十万トン、こういうようなことで、年々汚染がひどくなっていっておりますし、しかも、こういう閉鎖水域であるという特異性もあるわけですが、そこへ持ってきてこの沿岸の各県が思い思いの開発プロジェクトを組んでやっているわけです。佐賀は空港、福岡の三池新港、あるいは熊本港、そしてまたこの長崎の諫早と、こういうようなことで各県ばらばらのこういう開発事業が進んでいく、結局困るのは、汚れていくのは海だけと、こういうことになっていくわけですが、そこで国土庁だとか、建設省、あるいは運輸省、農水省、そして沿岸のこの各県が一緒になった何と言いましょうか、有明海環境保全特別措置法、こういったようなものをつくって、やっぱり海の保全というものを期していくべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  239. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) 有明海の水質は、汚濁防止法に基づきまして大分排水規制をやっておりますので、各種施策等を大分実施してまいった、そういうことでだんだんよくなっておると思います。ただ、有機汚濁の代表的指標でございます化学的酸素要求量、CODと言っておるやつでございますが、これを見ると、五十六年度におきましては基準の達成率は九四%、海域全体これは八二%、こういうことでございますから、わりあい有明海は高い達成状況になっておるわけでございます。瀬戸内海におきまして特別措置法、これを荊定しましたのは水質汚濁が大変著しくなりまして、赤潮の発生、これによりまして大量の漁業被害が御存じのとおり出たわけでございます。こういうことで、瀬戸内海では特別措置法をつくったわけでございますが、有明海につきましては、先ほど申し上げましたように、わりあいに改善に向かっておると、こういうことでございますので、いまの段階では特別措置法の立法措置を講ずる考えは私どもいまのところ持っていない、こういうことでございます。
  240. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それは水質の面からだけ考えればそういうことも言えるかもしれませんけれど、私が申し上げているのは、いまのような野放しと申しましょうか、各県がばらばらのそういう開発計画がなされて、このままいけば有明海というものが、水質はとにかくとしていろいろの資源の、あるいは野鳥のそういったような面からも懸念されるわけですから、そこをお尋ねしているんです。
  241. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) 先ほど来お話しの、大きな事業をやりましたら、これは当然環境アセスをやっていただかなければなりませんし、問題は、やはりこの生活雑排水、こういうものが大きな問題になろうかと思うのです。だから、今後下水道だとかそういう面の普及を図っていただく、こういうことが大事だと思うんですけれども、いずれにいたしましても、いま衆議院で継続審議を願っております環境アセス、これ通していただきましたら大分いろいろ問題が少なくなるので、できるだけ早く御審議いただいて成立を図っていきたいと、かように考えておりますので、どうぞよろしくひとつお願いを申し上げます。
  242. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では、次に住宅都市整備公団に質問いたします。  まず最初に、公共事業の前倒しが言われておりますが、八〇%前後の前倒しとなれば当然また補正予算が考えられるわけですが、その中に財投の資金が必要になってきます。しかし、財投の資金となる郵貯あるいは厚生年金、この伸び率が非常に停滞しておりますが、加えて資金運用部資金の余裕金の激減が指摘されているだけに、その財投の財源の見通しについてお尋ねします。
  243. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 前の方の景気対策云々の問題は私どもまだ承知しておりません。純粋財源見通しでございますが、五十八年度の財源見通しは、御承知のように郵貯が前年七兆九千でございますが、五十八年も七兆九千、簡保年金が四兆で減になっておりますが、回収金その他で大体全部で六千億増を見ております。そのうち二千を国債引き受けの増に充てておりまして、財投四十八機関に対して四千百四十一億というふうな増加配分をいたしております。年度当初でございますから、今後どうなるかわかりませんけれども、郵貯等につきましては五十七年度がもうじき終わりますが、大体五十七年度分は達成できます。そこいらから見まして、大体予定どおり見込み得るのではないかと思っております。
  244. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次に、住宅都市整備公団の事業の現況についてお尋ねいたしますが、今日現在の未入居住宅、それが幾らあるか、長期空き家がどのくらいあるか、保守管理住宅がどのくらいあるのか、また、長期保有土地は全国何個所にどのくらいの面積があるのか。
  245. 志村清一

    参考人志村清一君) お答えいたします。  五十六年度末におきます未入居住宅、保守管理住宅、長期空き家の戸数でございますが、未入居住宅は六千五百余戸でございます。また、保守管理住宅は一万二千五百余戸でございまして、合計いたしますと一万九千一百余戸になります。また、長期空き家は約七千戸でございます。また、長期保有土地でございますが、五十五年度の会計検査院の報告において掲記されました長期の未利用地は二十一地区、千三百二十九ヘクタールでございます。これらにつきましては、私どもといたしましても早期にその解消を図るべくただいま努力をしているところでございます。
  246. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 原田立君の関連質疑を許します。原田君。
  247. 原田立

    原田立君 中野委員の質問に関連して質問いたしますが、会計検査院、来ていますか。――用地の利用及び住宅の供用の状況について、昭和五十年、五十一年二回、その具体的特記事項として指摘されておるんですが、さらに五十五年度に三回目の特記事項として会計検査院で報告がなされておりますけれども、こういうのは一見、住宅都市整備公団ちょっとだらしがないからこんな結果になって三回も指摘を受けているんじゃないかと、こんなふうに私は思うんですけれども、こういうふうな指摘をなさった理由
  248. 坂上剛之

    説明員(坂上剛之君) お答え申し上げます。  先ほど先生が申されましたとおり、五十年度、五十一年度両年度に特に掲記を要する事項といたしまして、私ども決算検査報告に掲記をいたしました。それからちょうど五年経過したということ、それから、公団当局においてもいろいろ御努力されているということ、加えて、五十六年度に住宅都市整備公団として新発足される、そういうことでここらで切りでもう一回前回の状況をトレースしようと、こういうことで五十五年度の決算報告において再び私ども検査をいたし、その結果をここに報告申し上げた次第でございます。
  249. 原田立

    原田立君 その変わっただけではなくて、実際問題、五十一年のときには三万二千五十五戸、これが五十五年度であなた方が指摘したときには三万四千八百四十九戸、二千七百九十四戸――約二千八百余ふえているんですね、こういう内容が。だから、こういうふうな報告がなされたんじゃないですか。
  250. 坂上剛之

    説明員(坂上剛之君) 空き家について申し上げますと、先生御指摘のとおり、五十一年度においては三万二千五十五戸、それから五十五年度においては三万四千八百四十九戸というふうにグロスではふえております。それで、その内容を見ますと、五十一年度で新築空き家それから保守管理住宅で指摘いたしましたほかに、五十五年度には一年以上継続して空き家となっているもの――これが長期空き家と私ども申しておりますけれどもそういうもの、それから、これは再保守管理住宅と申しまして、一たんその募集をいたしましたけれどももう入ってこないということで、もう一度保守管理に戻したというものがございました。そういういうものを加えてここに掲記した次第でございます。
  251. 原田立

    原田立君 要するに、五十五年度は三万四千八百四十九戸、先ほど総裁は、去年の三月末の数字を言われたと思う。それによると、二万六千百二十四戸で八千七百二十五減っております。これは大変努力したと、こう私は評価したい。だけれども、まだ二万六千もあるんですよ。公費を使ってつくって、そして新築空き家、保守管理住宅、長期空き家、再保守管理住宅、こういうようなものがあること自体、これはもっともっと責任を感じなければいけないんじゃないですか。総裁並びに建設大臣、御答弁いただきたい。
  252. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 先生御指摘のような問題も住宅公団にはずいぶんあると思います。したがいまして、建設省といたしましては昭和五十六年の三月に公団住宅等事業促進対策委員会というものを設置いたしまして、鋭意この問題解決に公団と一緒に努力をし指導してきたわけでございます。したがいまして、先ほど公団の総裁からも御答弁があったと思いますが、現在、未入居住宅は一万九千戸になってきている。その他、未利用地――長期保有土地というものにつきましても大分処分とかその他いろいろな手だてをやってきておる。この努力は多少評価していただけるのではないか。今後とも公団を強く指導いたしまして、こういうものの解決に鋭意努力をさしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  253. 志村清一

    参考人志村清一君) 先生御指摘のとおり、相当の空き家があることは事実でございまして、私どもとしては懸命にこの解消に努めたいと思っております。  五十二年では未入居、保守管理で四万戸を超えておりました。その後努力をいたしまして、先ほど先生御指摘のように、五十五年では未入居、保守管理で約二万五千戸、五十六年度末では一万九千戸というふうに相当の成果は上げつつございます。そのほか、五十五年度の検査で新たに御指摘を受けました長期空き家が五十五年度末では九千戸ございましたが、五十六年度末、五十七年三月ではこれを七千戸程度にいたしております。これらにつきましても私はまだ十分な努力が足らぬと自戒いたしまして、ただいまもキャンペーン等を展開いたしまして、これを大いに減らしていこうと・ランニングストック程度を残してあとは解消すると、こういうふうな目標に向かって努力をしておる最中でございます。
  254. 原田立

    原田立君 総裁並びに建設大臣、両方とも一万九千戸云々と言っているけれども、二万六千戸ですよ。数をごまかしちゃいけませんよ。当初は三万二千幾らで、これは五十一年。これが今度は五十五年で三万四千八百四十九。先ほど公団の方に聞いたときには二万六千なんです。一万九千じゃないんですよ。その数を取り違えて説明されては困ります。  私はここで質問を終わりますけれども、せっかく御努力願いたい。
  255. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、いま関連の質疑原田委員からありましたけれども、事ほどさように非常に公団の経営というものがずさんではないかという気がいたします。そこへもってきて、昨日、住宅都市整備公団では家賃の値上げを建設大臣に申請をなされているわけですが、建設大臣はこれをどういうように受けとめられますか。
  256. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 昨日の夕方、家賃の値上げの申請がございました。私、ちょうどこの委員会がございましたので、私直接受け取ったわけではございませんけれども、昨日建設省に提出をされました。したがいまして、十分検討をいたしまして、また、前回の値上げの際の委員会等の審議経過等もございますので、委員の方々ともよく論議を経た上で適正な対応をいたしたいと、こう考えておるわけでございます。
  257. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 だから、私が先ほどから申しておりますように、もっと、もう少し経営の合理化というか、そういうようなことを図って努力していけばこういうことはしなくてもいいと思うんですが、結局、家賃を払うのはいま住んでいる人たちなんですから、その住んでいる人たちが、何というか、泥をかぶるというようなことになるんじゃないですか。
  258. 志村清一

    参考人志村清一君) お答えいたします。  私どもの家賃はどういうふうに定められているかと申しますと、中堅階層の方々の賃貸住宅としての役割りを果たしているわけでございますので、賃貸住宅の方々の所得のおおむね一五、六%程度の家賃になるようにいろいろ努力をいたします。国からも相当の利子補給をいただいたり、われわれ自身内部努力をいたしまして、傾斜家賃等をつくったりいたしておりますが、三十年代あるいは四十年代の前半につくられました住宅の家賃というのは、当時の中堅階層の所得に対しまして一五、六%でございましたので、一部改定はいたしましたが、現在の段階で見ますと、現在の中堅階層の所得に対して三%とか五%とかいうふうな家賃になっておるところが相当ございます。端的に申し上げますと、一万円台の家賃が二十二万戸程度ございます。われわれ公的な住宅でございますから、安ければ安いほどいいわけでございますが、それにいたしましても公的のいろいろな利子補給等も受けておりますし、バランス問題があるんじゃないか。新しい住宅につきましては、相当の利子補給を受けましても五万円ないし六万円というふうな家賃になりますので、そういったバランスも考えてまいりたい、バランスを見直したいと、かような趣旨でございます。
  259. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 仮に民間であれば、アパート経営をする、マンション経営をする、こういうところにアパートを建てたらば、マンションを建てたならばどのぐらいの入居者があるかというようなことを慎重に計画する。また、事と次第によってはもう建設する前に入居者の予約をとるというくらいな手を打つわけなんですね。だけれども、何かしらこれだけたくさんの未入居住宅がある、長期空き家がある、保守管理住宅があると、こういうことはやっぱりずさんとしか言いようがないんじゃないですか。いかがですか。
  260. 志村清一

    参考人志村清一君) 相当の空き家のあることは事実でございまして、この点については私ども十分反省をせにゃならぬと思っております。  昭和四十年代の後半から五十年代にかけまして非常に社会・経済情勢が激変いたしまして、国民の住宅に対するニーズ等も大分変わってまいりました。それにすぐ即応してわれわれとしても考えるべきでございましたが、その対応が必ずしも十分でなかったということは御指摘のとおりかと存じます。  それらのことも勘案いたしまして、たとえば私どもの住宅は狭いというふうなことが問題になっておりますので、二戸を一戸に改造するとか、あるいは増築をするとか、あるいは場合によっては二戸貸しをするとか、あるいは交通問題等々につきましても不十分ではないかということにつきましては、交通問題を配慮するとか、あるいは関連公共施設の整備がおくれているという面については、それを公共団体等とも相談して促進するとか、いろいろな努力を重ねまして、先ほど申し上げましたようにある程度の成果を上げておりますが、今後はさらに努力を重ねたいと、かように考えております。
  261. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 十二日の当予算委員会で中曽根総理は、規制や統制をできるだけ排除するとか、また、たとえば市街化調整区域を見直すとか、あるいは建築基準法を改正すると、こういうことを言われておりますけれども、これに対して建設省はどう具体的に取り組んでいきますか。
  262. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) ただいまの御指摘の件につきましては、省内で現在種々の面につきまして検討中でございます。  御指摘のとおり、地域、地区の指定の状況によりましては、それが厳し過ぎるというような面もございます。したがいまして、たとえば一種住竜の地域、地区の指定の問題でありますとか、あるいは特に空地等を十分活用するような場合につきましては、例外的に高さ制限を緩和する、その制度の問題でありますとか、そういった全般につきまして現在検討を進めているところでございます。
  263. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では次に、わが国でシロアリ防除剤の主役であるクロルデンについてお尋ねいたします。  有機塩素系の殺虫剤でありますDDTやディルドリン等が使用禁止になってはや十年になりますけれども、その中で人畜に対して比較的低毒性で残効性が強いクロルデンが現在シロアリ防除の主役として使われておりますが、まず初めに、わが国におけるシロアリ駆除業者の数と、クロルデンの年間使用量をお尋ねいたします。
  264. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 志村参考人、御退席いただいて結構でございます。
  265. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) クロルデンにつきましては、輸入量が約千六百トン程度ございまして、それを原体といたしまして、三十社程度で製造しております。
  266. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 クロルデンは有機塩素系の化学物質でもありまして、シロアリ防除の処理方法にはこれは細心の注意を払っていくべきと思いますが、現在クロルデンを使う場合の行政指導はどういうふうになっていますか。労働省。
  267. 松井達郎

    政府委員(松井達郎君) お答えいたします。  このシロアリの駆除作業でクロルデンを使うということにつきまして、それによって労働者に健康の障害が出たというケースは、実は私どもまだ把握していないわけでございます。それで、私どもとしましては、このクロルデンの有害性と申しますか、健康障害に関する情報の収集というのをまずやっております。それからまた、機会をつかまえまして、シロアリ駆除の業者につきましては、たとえばその溶液を必要以上に濃度を高めないとか、あるいはその作業に従事する人々に保護具、たとえばゴム手袋とか、こういうものをつけるような行政指導を行うとか、こういうようなことをやっておるところでございます。
  268. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 このクロルデンは一つの問題がありまして、これ、早く言えば野放し状態なんですね。法律体系でいわば死角に入っている。ところが、三月一日の新聞にも大々的に発表されましたように、このクロルデンの環境汚染が広域に及んで、愛媛大学の立川教授の調査によれば、南極のアザラシにまで及んでいるということが言われておりますが、日本におけるクロルデンの汚染状況を環境庁で調査されていると思いますが、その報告とその原因をお願いいたします。
  269. 小野重和

    政府委員(小野重和君) クロルデンによる環境汚染の実態につきまして、私ども昭和五十五年度に東京湾と伊勢湾、五十六年度には霞ケ浦と手賀沼、印旛沼、諏訪湖、琵琶湖の五湖沼におきまして、水質と底質、ヘドロでございますが、その調査を実施したわけであります。  調査の結果は、水質につきましては、東京湾と手賀沼におきまして検出されております。それから底質、ヘドロでございますが、これは海、湖沼とも全調査地域において検出されております。いずれもシロアリ駆除に使われましたものがいろいろな経路で湖なり海に流れ込んできたものというふうに考えられるわけでございます。
  270. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私はここに、愛媛大学で調査されたシロアリ防除従事者の血液中のクロルデンの蓄積量とその関連化合物の含有量、あるいはシロアリ駆除をした家に住んでいる人の血液内の濃度あるいは一般の人たちの濃度、それを比較対照した分析資料をここに持っていますけれども、このように非常に汚染はいま広がっているわけですが、拡大しているわけですけれども、こういうことについて、いまだれがこれに歯どめをするかということが一つの大きな問題ではないかと思います。クロルデンによる貧血症だとかそういうようなこともよく私は聞きます。私、九州ですので、何人ものシロアリ駆除業者の人たちと会ってお話ししますと、ああいう新聞に発表されたこと以外に、一生懸命働いているシロアリ駆除の業者であれば、必ず一年間に二件や三件のそういう顧客とのトラブルはありますと、こういうことも言われております。  もう一つ、クロルデンの法的規制が、薬事法の範囲で家庭用の殺虫剤としてはこれは使用禁止になっているわけですね。その背景と理由は何ですか。
  271. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 先生御指摘のとおりに、クロルデンを含みますこれは有機塩素系の殺虫剤でございますが、この有機塩素系の殺虫剤につきましては、昭和四十六年に薬事法による医薬品としての製造、輸入を中止いたしています。  この理由といたしましては、一つにはBHCとかDDTとかディルドリンとか、そういった有機塩素系の投虫剤について、母乳の汚染の問題が生じたのが一点でございます。  それから、当時すでに、より安全なたとえば除虫菊の有効成分を使いましたアースとかフマキラーとか、そういった種類のより安全な殺虫剤が開発されておりましたので、そういう背景もあって、このクロルデンを含みます有機塩素系の殺虫剤については製造の中止、輸入の中止をしたという背景でございます。
  272. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 クロルデンが薬事法で使用禁止になった。ところが、毒劇物や化審法の中にも入っていないとなると、薬事法で禁止した毒性、危険性の根拠がこれは非常に薄弱になってくるんじゃないかと思いますね。それで今後、仮にクロルデンの使用の適正化を図るということがなされるとしても、やはりそこには法的根拠、規制がこれは必要じゃないかと思いますが、いかがですか。
  273. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 御指摘のように、クロルデンにつきましては、薬事法による医薬品としての輸入、製造は中止いたしたわけでございますが、これが御指摘で、さてしからばどういう規制をするかという問題になるかと思いますけれども、毒物及び劇物取締法に基づく毒物または劇物としての問題でございますが、従来の私どもの得ている知見によりますと、非常に物性の毒性が総合的に判断してそれほど高くないというようなことで、従来劇物の指定の判定基準、そういったものから見て従来の知見では対象にならないだろうというようなことでございましたけれども、先生御指摘のように、最近非常にこの問題について社会的にも問題が起きてまいりましたし、また、新しい急性毒性についての知見なども報告されておりますので、そういったデータを私ども十分調査をいたしまして、毒劇物の指定というようなことにつきまして前向きにひとつ検討をさしていただきたいというふうに考えております。
  274. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 このシロアリの被害状況は近年、九州、四国の南西地域から関東、東北に及んできておりますが、それにかんがみまして、一方では建築基準法や住宅金融公庫による木造建築物の融資の条件として、その住宅建築基準ではシロアリ駆除の処理というものが義務づけられておりますが、これは今後も続けていかれますか。建設省。
  275. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) 先生の御指摘のように、建築物、財産の保護を図るため、住宅の耐用年数を長くするために建築基準法あるいは住宅金融公庫の融資の建設基準におきましてそういった基準を設けておるわけでございます。シロアリの被害は年々甚大になってきておりますので、かつ、比較的毒性の薄いものとしてこのクロルデンが使用をされております。したがいまして、そういった観点から、本薬剤を使用しながら財産の保護を図るため、その使用方法につきまして十分検討を重ねまして、より環境が汚染されないようなことを検討し、それに基づきまして関係団体あるいは地方公共団体を通じて指導をしていきたいと考えております。
  276. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 シロアリ駆除業というのは、全くどこの規制も認可も必要としない、だれでもいまから始めようと思えば始められるというような、低資本でできる、そういう業態であるだけに、こうしたいろいろな事故も起こりやすいんじゃないかと思います。しかも、その質の多寡はあれ、いずれにしても、多少なりとも毒性のある薬品を使うわけですから、これを規制していくということはどういう形で今後なされますか。
  277. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 厚生省でございますが、お話しのように、この問題は労働省、建設省、それから先生御指摘の、恐らく宮崎県なんかでずいぶん問題になっているんですね、いま。そういったことを考えますと、これはやっぱり環境汚染ということで環境庁ということだろうと思うんです。まあいろいろなところがありますし、それから通産省の方で化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律があるし、私の方に毒物及び劇物取締法があるし、薬事法があるし、建設省の建築基準法はありますし、まあいろいろ法律があって、どこでどういうふうにやったらいいかということは少し各省で相談をしてみたらどうかと思っているんです。私も全然野放しにしておいていいとは思っておりません。これは恐らく各大臣ともみんな同じ感じを持っておられると思いますが、どういった形でやったならば一番効果的な方法が得られるか、余り各省みんなそれぞれやってもおかしな話ですから、できるだけ効果の上がる方法で最小限の行政的な手続で効果的なことを考える、これが私は基本的な考え方だろう、こういうふうに思っております。各省で相談させていただきます。
  278. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 最後に、宮崎の延岡で起こった事故についてお聞かせいただきたいと思います。
  279. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 昨年の九月、宮崎県の延岡市におきまして、クロルデン溶液が地下浸透をいたしまして、一部の民家の井戸水が汚染されたという事例がございます。幸いこのときには井戸水に異臭が生じましたので、直ちに井戸水の使用を停止をいたしまして、住民が汚染された水を飲用するという事態には至らなかったということでございます。
  280. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 中野委員、別に中野委員が断定的に申されたわけではございませんが、例の公共事業の前倒しでございますね、あれ、一応公共事業施行に関する私が議長ということになっております。したがって、五十八年度予算、いまやっと本院で総括質疑を終えて一般質疑に入ったばかりでございますので、まだ検討はしておりません。決めたわけじゃございませんので、念のために申し上げさせていただきます。
  281. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 終わります。(拍手)
  282. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で中野鉄造者の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  283. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、瀬谷英行君の一般質疑を行います。瀬谷君。
  284. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、いままでの総括質疑をずっと聞いておりまして、政府側の答弁の中に少なからずごまかしがあったり、うそがあったりしたということを痛感をしているわけです。それは限られた時間の中ではとても指摘し切れないほどいっぱいあるわけです。  そこできょうは、その中から幾つかを取り上げて担当大臣の考え方を明らかにしてもらいたいと思います。  最初に、「増税なき財政再建」、こういう言葉が臨調の答申の中にもありました。また政府も、臨調の答申を尊重すると、こういうふうに言っております。しかし、いままでの論議を聞いておりますと、大蔵大臣から大変に持って回ったような言い回しがたくさんございましたけれども、結論的にこれは実行不可能ではないかというふうに感ぜられるわけなんです。わかりやすい政治と、こういうふうに言われておりますけれども、わかりやすく言うと、結局はできないんじゃないかなということになってしまうので、その点を大蔵大臣に改めてお伺いしたいと思うのです。
  285. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはやっぱり、今度の最終答申をちょうだいいたしましても、「そのような行政改革を推進するテコとして当調査会が掲げた方針が、「増税なき財政再建」にほかならない。すなわち、予算編成において、いわば糧道を断ちつつ、歳出の削減によって財政再建を図る限り、おのずから既存の制度や政策見直しが不可避となり、そのことが本格的な行政改革の推進につながっていくと期待されるからである。」と、やっぱりきちんとこう書かれております。したがって、いわゆる「増税なき財政再建」というものはこれはまさにてことして堅持すべき精神であるというふうに理解しております。
  286. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 政府の税調という機関があるわけですけれども、その税調の中で、もし増税なき財政再建という言葉をいろいろと読んでみると、言葉のひとり歩きのおそれが往々ある。そうなると税調は論議しなくてもいい、こういうことも書いてあります。しかし、増税なしに財政再建ができるんだというふうには承っていないというふうに解釈をしておる。政府の税調で、臨調の答申と別の答えが出るということもあり得るのではないかという気がいたしますが、その点はどうでしょう。
  287. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは法律に基づくどちらもそれは確かに権威ある会でございますので、答申は尊重すべきである。臨調でおっしゃっておりますことも税調でおっしゃっておりますことも、基本的には私は大きな違いはないと思っております。ただ、私が思いますのに「「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」という考え方が述べられておりますので、この考え方をやはり絶えず念頭に置くべきものである。しかし、これ議論してまいりますと、さればその租税負担率とは何ぞや、言ってみれば、専門的な議論から言えば、結果として出るものが租税負担率ではないか。そしてまた、私どもがいわゆる幅広く着目したいろいろな税制というようなことを、幅広くとはどこか、あるいはある程度の規模と言えばどこかという議論になりますと、やはり私はこの根幹にこの考え方を置きながら、税調その他におかれましては、その辺を、その税調という立場においてまた御議論のあるところではなかろうか。全体の流れを見てみますと、何はさておいて、いわゆる歳出削減ということを基本に置いて答申をいただいておりますので、言ってみれば税制面にお触れになりましたのはこの二つと、最後にいわゆる公平感の問題と所得税の課税最低限、税率構造、そして直間比率ということに対する検討、それだけがこの最終答申の中には税の立場から見れば盛られておりますので、言ってみればそういう基本的な考え方を堅持して事に当たるべきだという御趣旨だというふうに理解をいたしておるところであります。
  288. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 尊重はするけれども、実行ができないというようなことはないのかどうか、その点どうですか。
  289. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは厳密に言いますと、恐らく税調で御心配になっておりますのは、「増税なき財政再建」、それを一人一人が受け取った場合に、現行の税制で増というものが全くあり得ないという考え方が個々の人がとった場合には非常に困るという考え方をお持ちでございましょうが、私は、これを根幹としてそれぞれ税調においては御検討いただくものであろう、だからできないという断定する課題ではないというふうに理解しております。
  290. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それを総理流のわかりやすくといえば余り自信がないということなんですよね、正直に言うと。そういうことじゃないですか。
  291. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 税調様のことを私が自信がないとかあるとか言うべきものではないでしょうが、わかりやすいということは、私の表現が下手でございますやら聞きようが悪いのでございますやら、確かに私自身も非常にわかりやすい言葉を使う政治家だなあとは実は思っておりません。
  292. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 何とかごまかそうと思うとわかりにくくなっちゃうんですよ、結局。  それで、第一、じゃ尊重はするけれども実施しないという具体的な例に人事院勧告の問題がありますわね。人事院勧告は尊重する、尊重はするけれども実施しないと、こういう一つの例がここに出ておりますわ。これはどうですか。
  293. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 必ずしも人事院勧告担当大臣ではございませんが、やはり従来ともこの制度ができましてから鋭意努力をいたしまして、昭和四十五年でございますか、いわゆる完全実施をいたしました。したがって、今日もなお昭和四十五年以来の物の考え方と法律のよってもってきた今日に至ることと、その両方を踏まえながらさらにぎりぎりの努力をいたしまして今年度は残念ながら見送らざるを得なかった、こういうことでございまして、尊重して一生懸命やって、そして努力して結論が見送りと、こういうことになりましたので、尊重して努力したということだけはこれは事実に受けとめていただきたい。必ずしも担当大臣でない者が申し上げるのは非礼かとも思いますが、財政国庫大臣という意味で財政の立場から私にも資格があるとしてお答えをしたわけであります。
  294. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いや、担当大臣でなくたって、財布を預かっている人が一番大事なんですよね。ないそでは振れないというふうに言われてしまうと、担当大臣が幾ら約束したってどうにもならぬわけです。だから、むしろこの問題は大蔵大臣の方から答えてもらう方が一番早いと、こういうふうに考えるわけです。  そこで、総理の発言にも、しきりに臨調の答申を尊重するとか行革三昧であるとかいう言葉が出てきたのでありますけれども、総理の発言にもやはり非常に大きなうそがあるわけですね。その典型的なうそは、この間私が寺田委員の質問に関連してちょっと聞いたのでありますけれども、憲法に書いてある「陸海空軍その他の戦力」ということはどういうことか、陸海空軍と現在の日本の自衛隊、陸海空自衛隊とは同じなのか違うのかと言ったら、違うと、こういうふうに言いましたね。これは、言ってみれば見え透いたうそということになると思うんです。この点について、こういう見え透いたうその後始末は内閣の大番頭である官房長官の役目じゃないかという気がするんですが、官房長官、この総理のうそをどうやって一般の人に納得してもらうつもりでしょうか。官房長官自身は、この自衛隊と陸海空軍とは違うんだというふうに腹の中から思いますか。
  295. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) やっぱり私、番頭でございますから、総理が違うと言った以上はやっぱり違うのじゃないか、私はそう思うんですね。というのは、自衛権、これは憲法別段否定しておりませんから、その自衛権を発動する最小限度の武装部隊といいますか、これは持たざるを得ない、それが現在の自衛隊である、こういうことじゃないかなと、こう考えております。
  296. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、世界で八番目と言われる力を持っている日本の自衛隊というのは一体何なのか。軍隊じゃないんだと。じゃ、一体何なのか。ボーイスカウトというわけにはいかないでしょう。対外的には一体どういうことになっていますか。
  297. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 自衛権の範囲内で持てる武装部隊ということでございますから、やはりちょうどいま防衛政策の専守防御ということですね。つまり他国を積極的に攻撃するといったようなものは、これ軍隊なら持てるのだろうと私思いますけれども、日本としてはそれは持たない。ここらが典型的に違うのじゃないかなと、こう思います。
  298. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 しかし、戦車を持っている陸軍、これは戦車というのは陸軍に属するというのが普通の常識ですわね。それから潜水艦というのは海軍、これも常識ですわね。それを、陸上自衛隊といえば陸軍じゃないんだというふうに世界的に通用しますか。あるいは海上自衛隊だからあれは海軍じゃないんだということは対外的に通用しますか。
  299. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 戦車なんていうのは、これは実際は攻撃用というかもしらぬが、まあまあこれは防衛のうちの装備じゃないでしょうかね。現在の科学の発達した時代において基本的に違うのはどこかと言えば、私は、何というのですか、核兵器、これは典型的なものだと思いますね。あるいはまた航空機等でも敵の首都をたたくといったような長距離の爆撃機、こういうふうなものになるとこれはちょっと私はいまの自衛隊ではいささか無理であろうなと、こう思いますね。いまお話しのような程度のものはいいのじゃないですかね。私はそう思います。
  300. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 とんでもない話ですよね。名前が違うだけで軍隊じゃないんだなんという理屈は通りませんよ。これは人の名前だって二通りぐらいお持ちの方あるんですね。たとえば林寛子さんなんていう人は、もう一つ有名なお名前をお持ちなんですね。しかし、扇千景さんは林寛子さんじゃないんだということにはならぬですわな、これは。自衛隊は山陵じゃないんだということは、扇さんと林さんを別人だというのと同じなんですよ。こういうごまかしをやっているから問題が起こると思うんですよ。総理は、憲法の改正の問題について私どもが質問したことに対してまともにお答えになりませんでした。いいところはいいんだと。しかし、きのうの答弁でも、評価するべき点は評価をするけれども悪いところ、あるいは悪いところと言って言い直しして欠陥のあるところはと、これは直さなければいけない、見直さなければいかぬと。どこを見直すんだ、何を検討するんだと言ったら、それは答えないのですね。ああいうことではやはり国民に不信を抱かせますよ。私は非常によくないと思うんです。わかりやすい政治というのは、悪いところはこういうところだと言わなきゃ悪いところにならないですよ。そうでしょう。その点は、総理の言い方はこれは間違っておると思いませんか。
  301. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) これも瀬谷さん、私、番頭なんですよね。それ、総理の発言おまえ間違っておると言わぬかと、こう言われたって、それは間違っておるとは言えませんよ。それはぜひ理解していただかぬとね。  憲法の論議も、総理が言っているのは私はもっともだと思うんですよ。いろいろ議論があるから、それはりっぱな国際協調とか、平和主義とか、民主主義とか、基本的人権とか、いろいろありますね。これを基礎に今日のこの繁栄を来したわけですから、こういったところは国民の中に広く定着しておるじゃないか。しかし、そうでないいろんな面について議論があることも事実だから、そこは余りタブーを設けないでどんどんひとつ議論して一向差し支えないではないか。しかし、内閣総理大臣としては、この憲法を遵守して政権を担当してやっている。そこで、個々の条文等についてどこが悪い、ここが悪いというわけにはまいらない。この内閣としては政治の日程には上げない。こういうことを明言しているわけですから、瀬谷さんがお聞きになっても私はああいう御答弁をなさるのだろうと思うんですね。これはやっぱり正しいやり方だと私自身は考えておるんです。だから、主権者は国民なんですから、その国民の間で議論があるのなら自由にひとつ議論をしていいではないか、こう言っておるので、政府としてはこうだと、こういうことですから、そこらはいいのじゃないでしょうか。私はさように考えます。
  302. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 もし親切に正直に国民に呼びかけるならば、実は自衛隊というのは軍隊と同じである。しかし、自衛隊というのは、憲法でもって陸海空その他の戦力は禁止されているというふうに書いてあるから、世を忍ぶ仮の名前である。しかし、これじゃ士気が上がらない。だから、憲法を改正して陸軍も海軍も空軍も持てるようにして日陰の身ではないようにしてやった方がいいのじゃないかと私は思うんだと言う方が総理として親切だと思うんですよ。それが言えないでごまかして、もう大事なことは言えませんというのじゃ、これは困ったものですよね。そこで、そういう点で私は、総理はわかりやすい政治と言いながらちっともわかりやすくない。だから、そのしりぬぐいは官房長官にしてもらわなきゃいかぬという意味で質問したわけです。  それで、しかし総理不在のところでこれ以上論議しても始まりませんが、では、総理がしゃべったシーレーンの防衛とか、海峡封鎖とか、きのうはコントロールという言い方をしておりましたけれども、あるいは日米運命共同体とか、こういう発言は、あれは比喩であるとかなんとかいうふうに言って軽く済ますわけにいかないんですね。外国へ行ってしゃべってくれば、向こうの政府に対して日本政府として約束をしたというふうに見られても仕方がないと思うのでありますが、その点どうでしょう。
  303. 北村汎

    政府委員(北村汎君) ただいま先生御指摘の運命共同体とか、あるいはシーレーンとか、あるいは海峡防備という言葉につきましては、総理がたびたびこの国会でも御説明しておられるところでございます。すなわち、運命共同体というのは、日米両国が自由とそれから民主主義をお互いに共有してその価値を分かち合う国柄である、そうしてその自由世界の国としてかたいきずなで結ばれておる、そういう相互依存関係というものをあらわしたというふうに御説明しておられますし、またシーレーンというものについても、あるいは海峡防備というものにつきましても、これはあくまでもわが国みずからの防衛のために必要最小限度の自衛力を着実に整備していくんだ、こういう趣旨でアメリカでも発言をしておられます。したがいまして、先ほど御指摘のように、これがアメリカに対する約束であるかのごとくとられておるのではないかということでございますけれども、アメリカの方に対する約束という、そういう性格のものではなく、あくまでもわが国の政策というものを説明されたものでございます。また、アメリカ側もこれを約束というふうに受け取っておるような事実はございません。
  304. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それもまた持って回ったようなうそなんですな。見え透いたうそはやめた方がいいと思うんですよ。シーレーンの防衛、三海峡の封鎖とか、そういうことは全部アメリカ側から言っていることなんですね。だから、それをいまさら約束事じゃないなどと言って、これは約束をしたのじゃないと勝手に防衛庁の役人が言ってごらんなさい。向こうの大統領は怒りますよ。そんな不見識なことがあるかというふうに言われますよ。ここだけの話ならいいけれども、そうはいかないんですからね。大げさに言えば国際問題になりますよ。  そこで、シーレーンの防衛などということは実際にできるのかできないのか。これは海峡封鎖と関連をしてくるわけです。一千海里といえば、ざっと二千キロ近くになりますわね。この広大な海をどうやって守るのかということは至難のわざではないかという気がいたしますし、防衛庁長官としては、その点について一体現在の海上自衛隊の力でもって可能だというふうに思っているのか、そのためにはもっともっとたくさんの予算が要りますという含みを持っておられるのか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  305. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) ただいまの最後の御質問に入る前に、日米のシーレーン防衛の協議のたてまえにつきまして御報告申し上げさしていただきますが、あくまでわが国はわが国としてみずからの国を守っていかなきゃならぬという意味で、日本側に対する武力攻撃がございましたときには、国土の防衛、これはもちろん当然でございます。と同時に、わが国は四面を海に囲まれた国でございまして、海上交通路の安全の確保というものはこれはもう絶対に必要なことでございます。したがって、そういうような事態が起こったときには日米共同して対処する。そういう意味でシーレーン防衛という言葉を象徴的に使わしていただいておるわけでございまして、実はその研究も日米でついせんだって開始をしておるようなところでございまして、これにつきましてはいろいろの協議の枠を取り決めてすでにスタートをいたしておるところでございまして、アメリカから要請があって始めるとか、アメリカの、何といいますか、戦略の中に日本が巻き込まれているとか、そういったたぐいではないことをまず最初に申し上げさしておいていただきます。  それから、シーレーン防衛の具体的な防衛能力についてでございますが、これはどういう態様で、どういうものに対して何を守らなきゃならないかといういろんな事柄を考えなきゃなりませんので、にわかに断ずることはできませんが、ただいま御審議をいただいておりますこの五十八年度予算を初年度といたします五六中業が達成されました暁には相当程度能力は向上しておるであろう、私どもはそう考えておるわけでございます。
  306. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国防会議事務局長をやっていた海原治という人が書いているんですが、実際問題としてこのシーレーン防衛問題を考えるとこれは不可能であると、こう書いております。そして、防衛庁がかつてヘリコプター六機を塔載した八千トンのヘリコプター空母が数隻の護衛艦を伴って出動すると、このいわゆるシーレーンと言われる地域の敵潜水艦はことごとく制圧をされるというふうに説明したことがある、こういうことも書いてあります。これは海原さんが言っていることだからまんざらうそじゃないと思うのでありますが。そうすると、防衛庁自体としては、シーレーン抗衛をアメリカと一緒に協議をするということになると、これは具体的には現在の戦力じゃとても間に合わない、航空母艦も必要だ、護衛艦も必要だ、こういう結論が出てくるのじゃないかという心配をわれわれは持たざるを得ないのでありますが、その点はどうでしょう。
  307. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) もともとこのシーレーン防衛というのは、一〇〇%船舶の保護が可能かということを目的とするものでもございませんし、また全く能力がないかという極端なことも議論するのは必ずしも適当ではないのじゃないかというふうに思います。要は、わが方がどれだけのいろいろな各種の作戦の累積効果によってそういう相手の潜水艦なら潜水艦というものを漸減できるかということ、相手がまたそうした被害に対してどの程度がまんできるかというふうな、いろいろな広範囲な面から論ぜられるべき問題であろうというふうにまず思います。われわれとしては、海上防衛力という有効なものを持ち、かつアメリカと共同対処することによって抑止効果を持つということがきわめて重要な意義のあることであるというふうに認識しております。  どの程度の実力を持ったらそれが可能なのかということでございますが、私ども一〇〇%の能力を持つということを必ずしも考えておりませんが、先ほど来大臣が申し上げたように、五六中業というものが達成し、あるいは大綱の水準に達成すれば、そういった日米の安全保障体制、共同対処の力と相まって、相当な力になるであろう、こういうふうに思っております。
  308. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 抽象的な言葉でもって切り抜けることをいままでやってまいりましたけれども、防衛庁はですよ。しかし、たとえば海原さんの場合は結論的に言うと、一々言うと長くなるから、「シーレーンの安全の確保は、平時においては不必要なことであり、戦時においては、実行不可能なことである」というふうに結論づけています。それから、イギリスの海軍の意見を聞いたら、「ドーバー海峡のような狭い海域でなら実行できる。しかし、広大な海洋においては、それは不可能である」、こういうふうに英国海軍でも答えておる、こういうことでございます。  私どもこれを読んで、なるほどもっともだなというふうに思いました。ところが、そのもっともだなという思いとはうらはらに、しゃにむに何とかできるかのようなことを強弁をするというのは、まことにこれはまた無責任なことだろうという気がいたします。  それで、今後の問題として、そのために必要な五六中業の問題もありますし、これから先の問題もあります。一体歯どめをなくして、どこまで伸びていくのかという心配があるんですよ。それはどこでどうやって抑えていくつもりなのかということが気になるんですが、その点防衛庁長官としてどのようにお考えですか。
  309. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 私どもが整備をいたしておりまする防衛力というものは、まず最初に紛争あるいは侵攻、こういったものを未然に防ぎたいという一つの抑止力として整備しようとしているのが一つでございます。それからさらに、侵略を受けましたときには直ちにこれ対して的確に反応する、そして侵略に対してそれ以上侵略を起こさせない、拡大させない、そういうことで実は「防衛計画の大綱」というものをつくり上げてきておるわけでございます。そして、それ以上大きなものになりますと、つまり限定的な小規模の侵略以上の大きなものになれば、これも本委員会で答弁さしていただきましたが、安保条約第五条の発動を待って米軍と共同対処する、米軍の抑止力を期待する、こういうような手順になっております。  さて、現在私どもの考えておりまする防衛力の整備というものは、もちろん防衛力というものは相手のあることでございますから、どこまでと言うわけにいかないかもしれませんが、私どもといたしましてはわが国を、わが国みずからの判断として必要最小限度の、ただいま前段に申し上げましたごときものが達成できるところまでが判断の一つの定めにいたしておるわけでございます。具体的には、そのときどきのわが国の経済あるいは財政の状況だとか、国の他の施策とのバランスを考えながら、その年々の防衛力整備については財政当局と話し合っておりますが、大筋の枠というのはただいまここでいま私が御報告したような枠の中で整備を考えておるわけでございます。
  310. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 必要最小限度のというぐらいごまかしの多い言葉ないんですよ、これは。どのぐらいだかわからないですからね、具体的には。
  311. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) さしあたって本年度、五十八年度を初年度――本年度と申し上げましたのは五十八年度という意味でございますが、五十八年度を初年度といたしまする五六中業の達成を考えておりますが、その五六中業の達成につきまして、達成の暁にはこれだけのものになろうかと存じますという別表というものをつくってございます。それにつきましては政府委員から少々詳しくなりますが、御報告さしていただきたいと思います。
  312. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ただいま五十八年度を初年度といたします五六中業をお決めいただいて、このための整備を進めようとしている段階でございますが、この五六中業というのは、御承知だと思いますが、これはあくまでも「防衛計画の大綱」、昭和五十一年度に決められました「防衛計画の大綱」の水準を達成することを基本的なめどとしております。  ただいまお尋ねのシーレーン防衛に関連して言えば、簡単に例示を申し上げますと、まず水上艦艇については、現在大体五十三隻でございますが、これが五六中業を達成すれば六十隻になる。しかもこのうちのミサイル装備をした艦艇というのは、現在十隻のものが四十隻になって、自衛艦隊所属の護衛艦はすべて近代化が完了するというふうなことが言えようかと思います。さらに潜水艦について言えば、十四隻が十五隻にふえる。しかもそのうちの大半は二千二百トン型のいわゆる潜航深度、水中持続力の優秀な新しい潜水艦にかわるであろう。それから、いわゆる対潜哨戒機につきまして申し上げれば、P3Cが現在八機でございますがこれが七十二機、回転翼の対潜機も、HSS2というヘリコプターでございますが、これが現在約七十機前後持っておりますものが百機以上になる。これらがいわゆるわが国のシーレーン防衛にとって能力が相当向上するであろうということの具体的な中身でございます。
  313. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 土曜日の午後だというのに余り長い答弁をされるとほかの方にも迷惑だから、これ以上は言いませんけれども、必要最小限度というのはこれはわからないんですよね。腹減ったから飯食わしてくれと言ったって、じゃ、どれだけ食いたいんだ、必要最小限度だ、これはどんぶり一杯だか茶わん一杯だかわかんないでしょう。こういういいかげんなことは国民には通用しないんです。  もう一つ私は気になることは、いままでのこの質疑の中でも、日本が海峡封鎖をしない場合でも、国籍不明の潜水艦から攻撃を受けたような場合には海峡封鎖をするということもあり得るというふうに答弁をされておりますし、統一見解にもその意味のことが書いてありますけれども、その国籍不明の船がどこの国の船であるかということをどうやって確かめるのか。潜水艦というのはもぐっているんですからね。浮かび上がっているわけじゃないんですから。それをどうやってその被害者である商船なり漁船が認定をすることができるんでしょうか。その点大変むずかしいと思うんですが、どうでしょう。
  314. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) おっしゃるとおり、海にもぐった潜水艦を発見し、捜索し、位置局限をしてそれを攻撃するというのはきわめてむずかしい問題でございます。したがって、そのために私どもとしては、海上における音波のいわゆる伝わる状況というものを平時から把握しておく。そういう中におきましていろいろなデータを集めまして、この潜水艦はこの種の潜水艦であるというふうな、いわゆる音紋と言いますが、この音紋というのは、一人一人の指紋が違いますように、潜水艦によってそれぞれ違うわけでございます。そういったデータの分析を重ねておれば、P3Cという飛行機を飛ばして潜水艦の音を見つけた場合には、そういった型式あるいは国籍というものも判断できる場合が多くなる、こういうことでございます。
  315. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 やられる方がそんな気のきいた船ばっかりとは限らないでしょう、これは。その辺、だから無責任だと言うんですよ。  さらに私はその点について言いたいけれども、もしアメリカが謀略でもって国籍不明の潜水艦に見せかけてアメリカの潜水艦が日本の船を攻撃をするという場合、あるいは間違ってやっちまったような場合、この前日昇という船が沈められたことがありますがね。そういう場合でも、これはソビエトの船にやられたというふうに認定して海峡封鎖にとりかかる、あるいは海峡封鎖を認めるというようなことになるんですか。
  316. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) わが国の自衛隊の出動の場に限ってただいまの御質問に対して御答弁さしていただきますが、わが国の自衛隊が出動して海峡を、まあ封鎖というお言葉を使われましたが、海峡の通峡阻止という作戦を行うためには、自衛隊法の七十六条という条文がございまして、これで防衛出動が下令をされておらないとそういう状態になりません。自衛権の発動はございません。そういう実力行使はいたしません。その七十六条の場合には二つございますけれども、その中のうちのいま御指摘のあるような状態では、仮に七十六条の防衛出動が下令されましても、直ちにそれをもって第三国あるいは沿岸国に影響あるような意味の海峡の通峡阻止というような作戦はいたしません。またそういうふうな形になっておらないことだけ御答弁をさしておいていただきたいと存じます。
  317. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大変に物騒な話でありますので、これは仮定の問題でいろいろ論議していても切りがございませんから、これはくれぐれも自戒をしなきゃならぬ問題であるということを強調したいと思います。  それから臨調の答申のことについて質問したいと思うんでありますけれども、臨調の最終的な答申が出ましたけれども、さて一体後に何が残るのかと、こういう問題なんです。推進委員会が残るといったようなこともございますけれども、この臨調の答申が一体尊重されるためには、中身がやっぱりちゃんとしたものがなきゃいけないんですね。ところが、どうも一番肝心な補助金の問題等については竜頭蛇尾である、こういうふうに解説をされておりますし、われわれもそう思うんですがね。その点大蔵大臣どうでしょうか。いやそうじゃないと言えますか。
  318. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先般最終答申が出たわけでございまして、きのうの閣議におきましては、この臨調の答申最大限尊重しようと、そして逐次実行に移していこうという閣議決定をしたわけでございます。ですから、そういう基本方針に基づきましてこれから具体的な案の策定に入ると、こういう段階になるわけでございます。  したがって、あの臨調答申の中にありまする組織の再編成の問題とか、出先機関の整理の問題とかいうものがありますと同時に、補助金についてもあるわけでございまして、補助金につきましては、あの答申で三十何項目を一応例示しているわけです。それについては廃止をしろというのもあるし、節減しろというのもあるし、抑制をしろというのもあるし、しかし、総枠で抑制をしなくちゃならぬと、こういうふうに書いてあるわけでございますので、それぞれの補助金等について、これから、大蔵省が中心になると思いますが、具体的にどうするかという方針を決めて、そして徐々に実行に移すと。結局五十九年度の予算編成に入るものもありましょうし、それからいろんな組織の問題になりますと、法律を将来――今度の国会にはもう間に合いませんが、将来の国会に提案すると、こういう手順になっていくわけです。きのうは基本的な方針、最高限尊重しましょうと、そして逐次実行に移していきましょうという基本方針を決めたわけでございますから、その基本方針に基づいてこれから具体的な案を策定していくと、こういう手順になろうかと考えております。
  319. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いま長官が三十三項目と言われましたけれども、三十四項目のうち三十三項目なら、なるほどこれは大したものだということになるけれども、二千八百項目の中でたったの三十三項目ということになっておるわけでしょう。  ある新聞の社説にも、補助金が自民党の集票手段になっていることは隠れもない事実だ、補助金をみやげに国会議員に立候補して当選した例もこれまで多いと、補助金という名の税金が公平かつ公正に使われていないというような指摘があるわけですね。そうすると、補助金などの問題はこれはやはり臨調の答申の中でも重要な柱でなきゃならない。ところが、その重要な柱が事実上ほとんど小指の先のつめを切る程度しか行われていないということで、中身のないものをどうやって尊重するかというんですよね。
  320. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 補助金の整理合理化等についてはこれは行管の仕事ではございませんが、いまお話のようにたくさんありまする補助の中で、例示されているものが三十数項目というわけでございます。しかし、そのほかの補助金については免罪符をもらったというわけにはまいりませんから、これは将来大蔵当局が歳出削減という大きな方針のもとに善処されることを私は期待をいたしておるわけでございます。
  321. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そんな先のことなら、臨調の答申で長々と述べてもらわなくたっていいわけなんですよね。竜頭蛇尾という言葉がありますけれども。竜頭蛇尾の蛇尾は蛇のしっぽなんだけれども、これは蛇のしっぽじゃなくてトカゲのしっぽみたいなものだ。竜頭蛇尾にもならぬわけですよ。だから、私はここに臨調答申の問題があると思うんです。それで、こういう言葉多くして内容のない答申を出しながらこれを推進をすると言ったって、どうやって推進するのか、まことに困ったことじゃないかと思うんであります。  そこで、一つ一つ指摘をしていきますと時間がかかりますから、具体的にちょっと意見を聞いてみたいと思いますが、郵便貯金の見直しといったようなことがありますけれども、これは一体財政再建にどういうふうにプラスになるのか、これからの国の財政にとって足しになるのかどうか、これは郵政大臣にお伺いしたいと思います。
  322. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 郵便貯金は申し上げるまでもなく広く国民の貯蓄手段として百年の歴史を持った長い制度として続いてきたわけでございますが、郵便貯金は現在のところ資金はすべて資金運用部に回されるわけでありまして、資金運用部でそれが財政投融資財源として活用されておるということでございますから、郵便貯金の見直しということの中身は必ずしもはっきりしないわけでございますが、私の理解するところでは、国の財政改革、あるいは国民の利益を増進し、国民の負担を軽減するということとは直接どうも関係があるようには受け取れないように私は思うわけでございますが、財政当局にも御見解ございましょうから、国家財政との関係は財政当局からお答えをいただいた方が正確であろうと思います。
  323. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まあこれは臨調答申でございますから、先ほど齋藤行管長官からお話がございましたように、閣議でも最大限尊重すると、こういうことで、具体的にはこれからやっていくわけでございます。いま私どもも一生懸命読んでおります。熟読検討を要するということにおいて一生懸命読んでおりますが、まあ細かいことを申し上げる状態では必ずしもなかろうかと思いますけれども、言ってみれば、官業は民業を補完しつつ適切な役割りを果たしていくことを基本とするという前提の上で提言がなされておるものであるというふうに考えております。
  324. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 一体電電公社とか専売公社の経営形態の変更というのは、そうしなければどうにもならないという事情があるのかどうか、これはそれぞれの考え方をお述べをいただきたいと思います。
  325. 長岡實

    説明員(長岡實君) 臨調の答申では、最終的には完全民営になるべきである、そこへ至る経過的な措置として特殊会社に移行すべきであるという答申を私どもちょうだいいたしておるわけでございますけれども、臨調の答申に盛られております問題につきまして現実的な判断をいたしますと個別問題でなかなか直ちに解決しがたいような問題が幾つか含まれておりますけれども、私どもを取り巻いております環境が現在大変厳しいものになっておりますことを考えますと、従来は何とか財政専売の実を上げ得てまいりましたけれども、今後のことを考えますと、何らかの意味で経営形態を変更すべきである、現在の公共企業体としての公社の機能と申しますか、あり方と申しますか、そういったようなものだけで果たして将来にも十分に私どもが生き抜いていけるかという点については、やはり臨調の答申の指摘しておられる点について私どもは謙虚に耳を傾けなければならないというふうに考えております。
  326. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) お答えします。  私どもは、昨年の七月三十日の私どものことに関する臨調の答申と、それを受けまして九月二十四日の行革大綱に従って、今日郵政当局といろいろ御指導いただきながら行革大綱の線について勉強をしておる状態でございますが、いまの御質問に対して私どもの置かれております社会的な環境というものを御説明しておいた方がいいと思いますので、簡単に説明させていただきます。  御存じのように、最近、電気通信事業に対する技術革新というものは、世界的にとどまるところを知らない非常に長足な進歩をしております。幸い、わが国の技術革新能力もいまは一応世界のトップレベルで動いているわけでございますが、これがどう影響するかといいますと、長距離の通信、いま日本で市外料金が非常に高いのでございますが、この長距離の通信コストをけた違いに下げ得る技術が実用の域に入ってきております。  それと、一つの通信線の中を通せる信号の量が従来の技術に比べまして何万倍というけた違いの増加をいたしますので、電話しか通れなかった通信網が、あらゆる電気通信が個人個人の加入者まで自由自在に通せるということがもう現実に始まっております。したがいまして、現在すでに電力会社とか鉄道会社とか、あるいは御存じの有線テレビというふうなものが自家用として、この間、去年の十月に施行になりました公衆電気通信法の範囲内で自家用ベース、あるいはあの法律で許されておる範囲内において、私どもの線を使うよりもいろんな方法で、ずっと安い方法で長距離の通信ができることをいま具体的に計画をあっちこっちで進めております。数年足らずしてこれは実現されると思います。  われわれが現在の組織のままでこれに対応しようといたしますと、この長距離料金というものをそういうふうに急激に下げることは絶対にできないことだけはこれは明らかでございまして、同じ目的を達する通信でありながら値段がけた違いに違うという状態になりますと、私どもの組織というものは根本的に成り立たなくなってまいります。これを現在の状態でどういうふうに組みかえて、私どももそういう新しい技術を使って新しくおやりになる方々と競争できるようにして、日本の通信網というものが極端に乱れないようにするのにはどうするかというのが私どもの勉強のポイントだというふうに心得て、そういう線でいろいろ考えておるわけでございますが、いろいろ考えました末に、いま郵政当局と御指導を得ながら結論を出そうとしておりますが、まだここで申し上げるほどのところまではっきり勉強は進んでおらないというのが実態でございます。余りにも、考えれば考えるほど変化が急速に大きく根本的に出てくる。電話というものはそのごく一部分でございまして、これから五、六年たちますと想像もつかない姿になるのに、いまのような組織では絶対に対応できない。しからばどういう組織かということにはまだ結論は出ていないというのが現状でございます。
  327. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国家の財政再建のために電電公社なり専売公社を民営にしなければならないという理由はどうにも納得できないわけです、現在十分にやっていけるわけなんですから。ところが、郵便貯金にしても、これはやはり銀行の方の便宜を図って郵便貯金の方を抑えようと、こういう意図があるとしか考えられませんね、これは。そうすると、この臨調の答申のねらいというのは、うまいこと言っちゃいるけれども国有財産の合法的なつまみ食いに道を開いているのではないか、こういう疑いを持たれるわけなんです。もし、そういうことになりますと、きわめて華々しく、国家国民のためを思っているかのように、神様のお告げのようにスタートしたけれども実体はそんなものじゃないということになってくるわけです。  さらに、たとえば総額十四兆七千六百五十八億というのは五十七年度の補助金だそうでありますけれども、ほとんどこちらの方にも手がつけられなかったということになると何のための答申なんだということになってしまうのじゃないでしょうか。一体、答申を参考にしてどれだけその補助金の総額を厳しく抑制できるのか、これは具体的に大蔵大臣にお伺いしてみたいと思います。
  328. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する一つの問題は、民間金融機関の問題も一つ御指摘がございましたが、民間金融機関のあり方について、その努力不足、今後の商品性の改善、そういう厳しい指摘がなされております。これもやはり拳拳服膺しなければならないことだと思っております。  それから補助金の問題でございます。補助金の問題につきましては、とにもかくにも、いままで御答申をいただきましたものにつきましては、五十八年度予算編成を通じまして、ただいま御審議をいただいている予算でございますが、指摘されたもののほとんどそれなりに手をつけるか、あるいは将来の検討の手順、そういうものを大体行ったつもりでございます。したがって、今度の本答申、いま御指摘のように項目が指摘されたわけでございますが、臨調の答申は、臨調の性格上当然のことながらいわゆる改革の方策を中長期的な視点においてこれを提言されたものであるというふうにこれを受けとめまして、今後の予算編成に当たっては、現実の施策としてそしてとらえるべきもの、もう一つは数量的にとらえるべきもの等々を、かなり勉強はしてきておりますものの、これからまさに真剣に対応しなければならない問題であるというふうに考えております。
  329. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 たとえば国鉄の問題についても、青函トンネルとかあるいは本四架橋等については相当膨大な借金が残るわけですね、率直に言って。  この青函トンネルを建設をしている鉄建公団の総裁にちょっとお伺いしたいと思うんですが、これは当初この鉄建公団ができる際には、私は質問した記憶があるのでありますけれども、大分前になりますが、綾部健太郎運輸大臣で、田中角榮大蔵大臣だったです。そして、鉄建公団をつくるのは国鉄にこれ以上の赤字線の負担をかけないためだというお話でした、私が記憶しているのは。綾部大臣よりも田中大蔵大臣の方がもっぱら答弁をしたことだけは記憶しているんです。ところが、実際にはそんなことにはなってないんですね。鉄建公団でつくる新線はどしどし国鉄の赤字線としての負担になっていっているわけなんですが、これは最初の話と違っているなという気がいたします。しかも、この鉄建公団がもし青函トンネルを完成した後は、目ぼしい仕事が終わってしまえばどういうことになるのか。その後鉄建公団としては何か新しい仕事を見つけるのか、解体をされるのか、一体どういうことになるのか、その辺の見通し公団総裁自体の考え方をこの際お聞きしたいと思います。
  330. 仁杉巖

    参考人仁杉巖君) 先生の御質問の中に二点ございましたと思いますが、最初、青函トンネルができたときの赤字が大きくなる、これは前の話と違うではないかという御指摘でございますが、実はその当時の当公団におきます資料によりますと、四十二年度当時の客並びに貨物、これの増加予想が大体五ないし六倍、当時の六倍ということでございました。しかし、その後オイルショックあるいは航空機あるいは内航海運というようなものの発展によりまして、この数字は実はその四十二年当時の六割程度ということになっておりますので、数量的に申しまして十分の一ぐらいの輸送量になってきているという現実がございます。このために、実はいろいろな計算をいたしますと、八百億程度の年間赤字が出るという結果になっているわけでございます。しかし、この青函トンネルをやるということにつきましては国民の御意思もございまして、私どもに予算の配賦もございますので、鋭意技術的には努力を重ねながら、先日先進導坑が貫通をした。そして、本坑も昭和六十年ごろには完成をするというような状態になっているわけでございます。  それで、いま御指摘がございましたように、鉄道理設公団は昭和五十四年の暮れの閣議決定におきまして、上越新幹線及び青函トンネルの本体工事が完了した時点において他との統合等を図るという閣議決定がされていることは御承知のとおりでございます。しかし、上越新幹線につきましてはすでに昨年の十一月に開業さしておりますが、青函トンネルにつきましては、実は海底の最後の部分がかなり軟弱な地盤がございましたものですから、工程がおくれておりまして、先ほど申しましたように、六十年度ぐらいにはこれが完成するということになりまして、統合等の問題につきましてはその時点において具体的な検討がなされるということと思っております。  総裁自身としての立場で申し上げますと、御承知のように当公団は、上越新幹線あるいは青函トンネルあるいは京葉線の海岸線の非常に軟弱地盤がございますが、この地盤に対するトンネル工法というような各種の工法におきまして、まあ大きく言えば世界に誇り得るような施工実績を持っているわけでございます。これらの技術は、約二千九百人おりますが、この職員の個々の技術レベルを高く保持するということとともに、公団全体といたしましての、大きなプロジェクトに取り組むシステムの能力を持つということが非常に大きな要素であると考えております。したがいまして、私個人といたしましては、他との統合等を図る場合、当公団を、だんだんスリムにしていくということはございますけれども、分散することなく、一つの技術集団として各種のプロジェクトに参加できるように願っているわけでございます。  具体的に申しますと、国鉄のみでなく私鉄の工事も現在行っておりますけれども、さらにその他、国内における各種のプロジェクトに参加できるということを強く希望しているわけでございますが、これらの点につきましては国会並びに行政御当局の御理解と御指導を得て解決してまいりたいと思っているわけでございます。
  331. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 こういう重要な問題を臨調自身が立法府の頭越しにどんどん決めていくということは、いささかその分をわきまえない臨調自身の越権ではないかというふうに思われる節が多分にある。だから、われわれとすれば、これらの答申を作成をするに当たって、答申作成者に対していろいろと質問をするなり、あるいは国会に出てきて答弁をしてもらうなりという機会がなければならないというふうに考えておりましたけれども、そのような機会はなしに解散をしてしまったわけですね。そうすると、どうやってこの臨調の答申に対してわれわれが質問をしたり意見を述べたりすることができるのかということになるのでありますが、推進委員会というのは、後に残ってこの臨調の問題について責任を持つことになるのかどうか、その辺はどうなんでしょう。
  332. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 臨調の最終答申が出たわけでございますが、この答申につきましては、もとより実行の責任は政府にあるわけでございます。この答申は総理大臣に対して出されており、その答申については総理大臣は尊重しなければならない、こういう法律になっているわけですから、もとよりその実行は政府の方にボールが投げられるわけでございますが、この臨調答申をいよいよ実施するという、行革というものをやっていきますためには、やはり将来、法律でありますれば国会に出さなければなりませんし、予算でありますと将来の予算編成に際してそれを予算に組み込んで国会で御審議をいただくということになるわけでございますが、政府がその案を最終的に固める前に、やっぱり国民の幅広い御意見も一応聞いて最終決定をするということが望ましいだろうということで、幅広く見識の高い人々の御意見を聞きながら政府の最終案を固めていくという手順がいいのではないだろうかというわけで、推進委員会というものを最終的につくりまして、これは総理大臣直轄として推進委員会をつくりまして、その推進委員会に、幅広い見識の高い人に御意見を聞きまして、答申に基づく実行案についてこれでいいだろうかという御意見を聞いて、そして法律事項でありますれば当然国会に法律を出さにゃなりませんし、予算でございますと次の年度の予算編成に組み込まれる、こういうことで最終的にはもちろんそれは国会で最終的にお決めいただく、こういうことになるわけでございます。  昔の第一次行政改革というのをやったことがありますね、以前に。あのときにも監理委員会というもので最終的に締めくくって、そこで御意見を聞きながらまとめ上げたという経験がございますので、今度も臨調答申を実行に移すに当たっては、政府が決める前にその監理委員会とよく相談をしながら最終案を決めていくと、こういう手順にしたいというわけで、監理委員会の設置をお願いしたい、こんなふうにいま考えておるわけでございます。
  333. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この青函トンネルにしても、本四架橋にしても、技術的には大変なものだと思いますよ。世界に誇るべきものかもしれません。しかし、だれが後始末をするのか、だれが金を払うかという問題について、臨調の答申だってわかり切っていることだから、結論を出すべきだと私は思うんですね。たとえば青函トンネル、これは全部――トンネルだけじゃありませんが、トンネルも橋もこれ全部できなきゃ使えないわけですからね。しかもそれが兆の金になってしまう、上越新幹線でも、東北新幹線でもそうですわね。こういう莫大な投資が続けば国鉄の累積赤字が十六兆ぐらいになるのは簡単なことですよ。こういう膨大な累積赤字をどうやって処理をするのかということをはっきりと決めないで、監理委員会に任せるなどというのはもう無責任もいいところじゃないかという気がするんですね。その点は一体運輸大臣どうお考えですか。
  334. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 上越新幹線、東北新幹線、それはみんな二兆円以上の金がかかっております。しかし、またどんなときでも、借金しても事業を伸ばさなきゃならぬ。個人でも国でも同じでして、それがしかも国鉄のいま総裁等々から聞きますというと、上越、東北いずれもお客さんが非常に乗っておりまして、三十年と思ったやつがそれより前にペイするじゃなかろうかと、こういうふうになっております。  一方、いまの累積赤字、そういうものはたくさんあることは瀬谷さん御案内のとおりですが、いままでの国鉄の経営では、労使ともどもこんなふうではどうだろうかということが行政改革として、私は天の声だと思うのです。だから、個別的な問題について御意見はさることながら、やっぱり行政改革そのものは私たちは認めながら、それをどう実行していくかということが大変な問題だと――まあ国鉄の問題は本当に皆さんに御心配をかけますが、私は組合でも健全な組合、これをこいねがっておりますが、こういうときに、けさ新聞を見、テレビを見ますというと、何か警察が入ったなんていう話を聞かれますというと、本当に赤字を何とか再建したいときに、そんなことで一体どうなるのだろうかという感じ方を持っておりまして、今度の国鉄再建監理委員会法案がぜひ通過をした暁には、いまの長期債務の問題はどうする、あるいは青函トンネルの問題はどうする、あるいは鉄建公団のああいう技術集団はどういうふうに日本のために活用するというふうなことも御議論を願って結論を出して、そしていままでの歴史のある国鉄というものを何とかすばらしいものにして残してまいりたい、こう同様に考えておるわけであります。
  335. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 答申はちゃんとした結論を出してないわけですよね。やたらと何でもつまみ食いをして、そして無責任な答申だけをたれ流しにしているのです。これ野放しの豚みたいなものです。こういうことでは、これは尊重すると言ったって尊重のしようがないだろうという気がするんです。  だから、そこで私は、ただ文句ばかり言っても始まらないから、じゃ答申の、たとえば国鉄問題に対する臨調の答申の骨格になっている分割民営という問題がありますね。この分割民営ということができるならば、たとえば北海道と四国などというのは、これは線路がつながっておりませんから、この北海道と四国を分割をして、ここでもってじゃ独立採算制で補助金をもらわないで、運賃を上げないでやれるかどうか、やらしてみるということを考えてみたらどうでしょうか。もしそれができないようだったら、この答申の内容そのものができないことを答申として出したんですから、これは落第だということになる。その点やはり抽象的なことではなくて、具体的にまず手初めに北海道と四国というものを取り上げてやってみるということはどうですか。
  336. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 従来の経営では大変なことでなかろうか。時にはまた親方日の丸、こんなことからいまのように臨調では分割民営、こういうふうな話が出ておるわけでありまして、また国鉄の総裁等々もちょっと遅過ぎますけれども、私鉄の経営者からだんだん話を聞き、いかにして公共と、さらにまた採算性というものをとり、こんなことの中に勉強している話も聞いております。ですから、臨調の答申は分割民営であります。それをまた今度の監理委員会等々でよくよく御吟味いただきまして、私たちの方はそれを最大限に尊重いたしますから、具体的ないまあなたのおっしゃったようなものが可能であるかどうか、こういうことなどについての御研究があって、その結論を総理大臣がこれを意見を尊重して実行する、その間が約四、五年ありますから、いまのような等々の議論をよくおやりいただくならば幸せだと、こう思っています。
  337. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そんなに長いことかかって考えなくたって、海底トンネルなんかの場合もうじきできるんですからね。できるものをどうするかということが当面の問題としてありますよ。これだけの兆の単位に手が届くような投資をして、それをじゃ北海道の鉄道でもって引き受けなさいということを言って黒字になるかどうか、だれが考えたってわかるんですね、これ。人里離れた山の中にデパートこさえて大いに稼げと言ったってこれはむずかしいですよね、どなたが引き受けたとしても。あえてそういうむずかしいことをこの臨調の答申は野放しにして、そのままにして、あとのことは監理委員会任せというようなことになっているんですが、これで一体やっていけるんですか。
  338. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 青函トンネルの問題は、先ほど仁杉総裁が申し上げたように、経済構造が非常に変わったものですから、当初の見込みと大分違ったということが赤字がよけい出る、借りた場合に赤字がよけい出るということでございます。何さま一年間正式に借料を払えば八百億円という話でございますから、これは大変なことです。そしてこれは当時新幹線ということを考えていなかったから在来線を通す、これはもう在来線を通すことになります。しかしながら、それだけでは一体、何か知恵を出してもう少し活用方法がなかろうか、これはもう役所だけでもまずうございますから、私の私的諮問機関として知恵のある方と申しますか、そういう方々にお集まりいただきながら、活用方法を考える。それをまたみんなにお諮りして実行して、いかにして赤字を少なくして日本の財産としてこれを持っていきたいと、こう思っているわけであります。
  339. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 答申の内容が実行不可能なような場合であれば、この答申作成者の責任を追及しなきゃならぬと私は思うんですよ。その責任を追及しようにも解散してしまったんではしようがないでしょう、これは。  それで、管理庁長官にお伺いするんですけれども、この臨調答申の内容についてつまびらかにしようとすればどうしたらいいのか、さらに監理委員会というものを設置をするといいましても、非常に今度答申の内容には、まあ反社会的なといいますか、国有事業を目のかたきにしているような点が多々あるんですよね。だから、その財界のこの内容に携わった人にもしやらせるということになると、これは大変危いことになると思うんです。泥棒に留守番頼むようなことになりかねない。そういうふうにならないようにしなければならぬと思うんでありますが、その点管理庁長官、どのようにお考えになりますか。
  340. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 臨調は解散したわけでございますが、臨調の精神はその答申を読めば十分私ども理解できると思って考えております。しかしながら、政府だけで一方的に理解したってこれはどうにもなりませんので、そこで先ほど来申し上げておりまする、政府が最終的な具体案を決める前に国民各階層にわたって幅の広い、深い見識をお持ちの方々に推進委員になっていただいて、その御意見も承りながら最終的な案を決めていくと、こんなふうな手順にすることが一番適当ではないか、こう考えておるわけでございます。
  341. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で瀬谷英行君の質疑は終了いたしました。  来る二十二日は午前十時に公聴会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十分散会