運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-03-18 第98回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十八日(金曜日)    午後一時三十八分開会     ─────────────    委員の異動  三月十七日     辞任         補欠選任      梶原  清君     源田  実君      神谷信之助君     佐藤 昭夫君  三月十八日     辞任         補欠選任      源田  実君     梶原  清君      佐藤 昭夫君     神谷信之助君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 大島 友治君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田沢 智治君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 吉田 正雄君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 塩出 啓典君                 中野 鉄造君                 神谷信之助君                 田渕 哲也君                 前島英三郎君                 江田 五月君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        総理府統計局長  永山 貞則君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        宮内庁次長    山本  悟君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        経済企画庁物価        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        国土庁長官官房        会計課長     金湖 恒隆君        国土庁土地局長  小笠原正男君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省保護局長  吉田 淳一君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        国税庁調査査察        部長       大山 綱明君        文部大臣官房長  高石 邦男君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        文部省社会教育        局長       宮野 禮一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生省公衆衛生        局老人保健部長  吉原 健二君        厚生省医務局長  大谷 藤郎君        厚生省社会局長  金田 一郎君        厚生省児童家庭        局長       正木  馨君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        通商産業大臣官        房審議官     斎藤 成雄君        通商産業省立地        公害局長     福原 元一君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        運輸省自動車局        長        角田 達郎君        郵政省郵務局長  永岡 茂治君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        労働省職業訓練        局長       北村 孝生君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  永田 良雄君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     坂  弘二君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十八年度予算案審査のため、本日の委員会税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     ─────────────
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 大山国税庁調査査察部長から発言を求められておりますので、これを許します。大山国税庁調査査察部長
  7. 大山綱明

    政府委員大山綱明君) 去る三月十一日の当委員会におきます市川委員長鉄工業株式会社に関するお尋ねに対しまして、一部誤った答弁をいたしましたので、訂正させていただきたいと存じます。  長鉄工業株式会社昭和五十六年十一月期分申告所得金額につきまして、市川委員が一億七百万円である等の御指摘をなされましたのに対しまして、数字を混同いたしまして、御指摘金額は「かなり違っております。」と答弁いたしましたが、公示されております同法人申告所得金額は一億九百万円でございまして、御指摘金額とほとんど差がないものでございます。ここに慎んで訂正を申し上げます。御迷惑をおかけいたしました。  なお、前回もお答えいたしましたとおり、私どもといたしましては、法人から申告書が提出されました場合、国会で御論議されました事柄をも十分に念頭に置いて検討し、調査を行うなどにより、適正な課税処理を行うことといたしております。お尋ね法人につきましても、そのような方針に従い、市川委員の御指摘をも念頭に置きまして適正に処理する所存でございます。     ─────────────
  8. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、これより神谷信之助君の総括質疑を行います。神谷君。
  9. 神谷信之助

    神谷信之助君 私はまず減税問題について、総理初め関係大臣に質問いたしたいと思います。  減税問題はいまや国民の最大の要求になってきています。昭和五十三年以来課税最低限の据え置きによる実質的な増税が膨大な額となってきています。そこで大蔵省お尋ねいたしますが、物価スライドした場合の減収想定額大蔵省の方で試算をなされていますが、その内容について御説明いただきたいと思います。
  10. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 御指摘の点につきましてはすでに予算委員会に提出申し上げているところでございますが、「所得税課税最低限消費者物価上昇率だけ引き上げるとした場合の減収額試算」ということでございまして、五十八年度消費者物価政府上昇見込み率三・三%で計算をいたしております。人的控除を三・三%引き上げました場合の減収額が一千六百億円、それから課税最低限自体を三・三%引き上げました場合の減収額が一千八百億円の減収になるという資料を提出いたしております。
  11. 神谷信之助

    神谷信之助君 なお「参考」として、その資料の中には五十三年以来の減収額というものが出されておりますが、これは五十三年以来の、言うなれば減収額というものの総計を出そうとすれば、単純に各年度のここに出ている減収額を足せばよいということじゃなしに、累積額といいますか、五十三年ですと、それを六倍するというように足していくということになると思うんですが、もちろん所得税累進税率の差がありますから正確には言えないにしても、そういう計算でいけば、合計すると約四兆八千四百億円前後になるということが言えると思いますが、いかがですか。
  12. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) いま委員がおっしゃいました計算方法は、毎年度五十三年度以降出しておるわけでございますが、その減収額累積というかっこうで年数をお掛けになりましてお出しになったという計算だと思うんですが、実は毎年予算委員会に出しております計数と申しますのは、当初予算におきます税収見込み額基礎といたしまして、その年度の当初の政府消費者物価上昇率でもって試算をしたものでございますから、これを全部実績に置きかえるという手法をとりませんと、累積減収額というのは出てまいらないわけでございますが、その実績の見方というのは、一応の推定と申しますか、税率区分ごとの分布というのは、実績に必ずしも厳格に出てまいりませんので、実績数字でそういうことをお示しすることはできないわけでございます。ただ、いまおっしゃいましたような方法計算なさいますと、たとえば御案内のとおり五十六年度、それから五十七年度につきましても、当初の見積額 に対しましてかなりの減収額が生じておりますので、いまの手法計算なさいますと、必ずしも正確な数字が出ないということでございます。
  13. 神谷信之助

    神谷信之助君 正確な資料を出せと言ってもあなたは出さない。私もこれを正確とは言ってないんです。大体これぐらいの額に少なくともなるんではないかと言っているんですが、いかがですか。
  14. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま申し上げましたとおり、その手法でやりますと正確な数字とは言いがたいわけでございまして、機械計算いたしますと四兆八千億でございますか、その数字でございますとはちょっとお答えしにくいということでございます。
  15. 神谷信之助

    神谷信之助君 いやいや、それが多いのか少ないのか、どうなのか。だめだ、答弁、だれも正確な数字とは言ってない。答弁なってないじゃないですか。
  16. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) お立ちになって。
  17. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 先ほども申しましたように、物価上昇率も違いますし、それから当初の税収見積額基礎としてはじいた試算でございますので、累積減収額というものが四兆八千億より上回るか下回るかという議論はなかなかしにくいということでございます。
  18. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ、具体的に幾らぐらいの減収になるとあなたが考えているんですか。
  19. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 累積減収額というものは計算いたしておりません。
  20. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、ほぼ幾らぐらいですかと言っているんですよ。
  21. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 計算していないので数字を申し上げるわけにはいかないということでございます。
  22. 神谷信之助

    神谷信之助君 推定もしてないわけですか。
  23. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 累積減収額というのが租税政策を策定いたします場合に必ずしも必要な資料といいますか、要素ではございませんので、従来からそういう作業はしていないということでございます。
  24. 神谷信之助

    神谷信之助君 政治家は必要なんです。国民がどれだけ減収を受けているか、それに対してどうするか、政治を行う者は必要なんです。政治家要求してもあなた出さない。一体どうなんですか。役人が必要があるからやるとかやらぬという問題じゃない。要求したら出せばいい。
  25. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ちょっと議論が混乱するので恐縮でございますが、たとえば四十九年度でございますか、二兆円の大減税があるわけでございますが、そういったものの累積減収額をどういうふうにカウントするのか、そういたしませんと、その辺のことをきちっといたしませんと、単純な累積減収額というのは、いまおっしゃいましたように、それだけ国民被害をこうむっているというような観点から議論をなさいますと若干議論が混乱してまいりますので、その辺を整理してどういった計数をお示しできるのか、しばらく時間をいただきまして検討させていただきたいと思います。
  26. 神谷信之助

    神谷信之助君 総理総理も衆参通じてこの国会減税が六年間にわたってできていない、実質増税になっているという問題について遺憾の意を披露されて、やれるならいますぐにでもやりたいんだという趣旨も申されております。この減収国民が一体どれだけ大きな被害を受けているか、どういう状況になっているかというのは、そういう方向を減税方針を貫徹をしていく、実際にやっていく上で必要な資料じゃないんですか。その点総理はどのぐらい国民被害を受けておるというようにお考えなんですか。
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ここ数年来課税最低限度を上げておりませんので、そういう経緯からはある程度実質的に増税という形が現出しているということも考えられます。しかし、また一面におきましては物価が非常に低落して安定している、そういう面から実質賃金は黒字に転じておる、そういう面もございまして、そういうすべてを計算してみないと実質的な生活の実感というものは出てこないと思っております。具体的にそういう計数的なことは私はまだ掌握しておりませんが、政府委員から答弁さしても結構であります。
  28. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま総理からも御答弁があったところでございますけれども、先ほど私申し上げましたように、いま委員が御指摘になるような角度での計数を出せということでございますれば、いま総理がおっしゃいましたいろんな要素も含めまして、どういう整理ができるのか、しばらく時間をいただきまして検討させていただきたいと思います。
  29. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ、計算をしてできるだけ早く出してもらいたい、この予算委員会一般質問の間に。  そこで、いずれにしろ大蔵省が出してきたこの資料に基づいて、一応の概算ですから正確ではありません、われわれはそういう資料を持っていないんだから。それでいきますと約四兆八千億、五兆円前後の実質増税国民は強いられているという状況なんで、この点について総理も、申しわけないし、減税をやりたいというお気持ちだと思うんですが、減税を実際に五十八年度実施をするという点についていかがですか。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 与野党の申し合わせを誠実に守りたいと思っております。
  31. 神谷信之助

    神谷信之助君 与野党合意を見守りたいということですが、国民は本当にやってもらえるのかどうかということに非常に大きな疑問を感じているわけでございます。  官房長官発言中身を見ますと、二階堂幹事長与野党代表者会議所得税及び住民税減税のための法律案を五十八年中に提出することを確約したと、それに対して政府の方は、確約するとおっしゃらないで尊重すると、こうなっていますね。尊重と確約では大変な違いなんで、政府として約束するのかどうか、実施をすることを。この点については総理、お気持ちの辺はどうなんですか。与野党合意を見守るにしても、減税はやりますということなのかどうなのか。総理
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず神谷さん、いま私どもが最善と理解して提出しておる予算を御審議いただいておるわけですね。それを、中身が変更になるとか、あるいは補正を伴うとか、そういうものを提案して、御審議いただいている時点において、これを言えるという性質のものではないんですね、まず。したがって、ちゃんと官房長官のお答えにございますように、これは十分承知しておりますということがやはり政府として申し上げる限度いっぱいのことじゃないかと。だから、もとより各党の代表の方がお話しになったことでございますから、これを十分尊重するということでもって御理解をいただきたいと思います。
  33. 神谷信之助

    神谷信之助君 予算審議中だからということですね。予算が成立をすれば当然実施をする、額とか時期とかは別にして。実施をするということは言えるということですか。
  34. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまた、予算が成立した後に、手続としては政府税調とか、そういうもろもろの手続きがございます。したがって、少なくとも私どもとしては、この予算が成立したら言い方をどうしますと言うべき問題ではなく、あくまでもこの与野党合意というものを尊重しますということで御理解をいただける問題ではないかというふうに考えます。
  35. 神谷信之助

    神谷信之助君 ただ、大蔵大臣新聞報道によりますと、大蔵省首脳が九日の夜に、政府見解について——後藤田発言ですね、ここにはいつから減税するか何の約束もないと、だから減税約束が一切されていないかのような意見が報道されているんですが、そういうことはあるんですか。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、大蔵省首脳と言えばどなたでしょうか。竹下登首脳の一人ではございますが、私そのような応答ぶりをしたこともございません。やはり現在、それじゃ時期、額等が明示できる段階ではもちろんございませんけれども、とにかくこの与野党合意というものを尊重して政府としては対応いたしますと、こういうことを申し上げておるわけであります。
  37. 神谷信之助

    神谷信之助君 この自民党幹事長の話の中では、景気浮揚に役立つ相当規模減税ということを確約したというんですが、昨日の商工会議所の総会ですか、これで、報道によりますと二階堂さんは、千億とか二千億というようなみみっちいものではない、大幅の減税をやるんだということを言われたようにも報道されています。この点、与党幹事長がそうおっしゃっているんですから、その自民党の総裁である総理、これは幹事長が勝手なことを言っているはずはない。  それから、法案をみずから提出することを約束されているということは、これは法案提出政府の仕事ですから、それを与党幹事長がそう言っておられるんで、この点について、時期とか額は別にしても、五十八年度にやるということは、総理、はっきり言えませんか。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく与野党代表が集まって申し合わせした、そのことは私は誠実に守りたいと申し上げる次第です。
  39. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは、私はこれから質問する中で、非常にうまいごまかしがあるというように思うんですけれども、それを明らかにしていきたいと思うんです。ごまかしがなければ幸いだと思うんです。  そこで大蔵大臣、もし減税をするとすれば、その財源というのはどういうことになってきますか。
  40. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これもまた与野党合意、さすがにこれはりっぱな文章でございますよね、実際。ちゃんと「景気浮揚に役立つ相当規模減税実施するための財源を確保し、所得税及び住民税減税についての法律案を、」云々と書いてあるわけです。この財源問題につきましては、これは昨年からの経過からいたしまして、衆議院の大蔵委員会の小委員会でずいぶん御苦労いただいたんです。したがって私どもとして、まずこれを直ちに私ども念頭に、じゃ赤字国債でやるかと、こういうことがあったらば、それこそそれが金融市場に波及する影響があって、むしろ景気の足を引っ張るということにもなりかねないというようなことを考えれば、安易にそういうことを念頭に置いてはいかぬと。そうなると、いよいよその財源ということになりますと、それこそかつてあの小委員会で専門家の方々がいろんな議論をしながら積み上げてこられた、そういうものもフォローしながら、国会議論等を踏まえて、税制調査会の意見を聞きながらこれから検討しなきゃならぬ課題である、何が念頭にあるという状態ではないということをお答えいたします。
  41. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ小倉参考人にお伺いしたいと思います。どうもありがとうございました。  そこで、昨日の衆議院の大蔵委員会小倉参考人出席をされまして、増税なき財政再建がひとり歩きするということは、政府税調としても迷惑だというような趣旨のお言葉があったような報道があります。その意味についてお話しいただきたいと思うんです。
  42. 小倉武一

    参考人小倉武一君) ただいまお尋ねの、臨調の最終的な取りまとめについて意見を昨日衆議院の大蔵委員会で求められましたことに関連してのお尋ねだと思いますが、なかなか御苦労をなさった答申でございまするので、私どもも陰ながら大変敬意を表しておる次第でございますが、あの中にうたわれておる増税なき財政再建という言葉は、なかなかこれ意味がいろいろとれる言葉でございます。したがいまして、あの言葉でなくて中身をよく読んだ上で理解されれば間違いがないと思いますけれども、えてして中身は余りお読みにならないで、あるいは——先生方は別ですけれども国民大衆は必ずしもお読みにならないで、そして増税なき財政再建というその「増税なき」だけがひとり歩きするおそれが往々にしてございます。これは税金の問題だけではなくて、えてしてそういうことがございますので、そういうことになりますと、私ども税制調査会に関係している者としては非常にありがたいような気もするわけです。増税を論じなくてよろしい、国民にも喜ばれるというので非常に結構なようにも思うんでありますが、どうも先行きまでずっと増税なしに財政再建ができるんだというふうにまだ承っておりませんし、また税制調査会でもそういうことでやれというような御意見もまだなかった次第でございまするので、余り、当面、考え方として、あるいは行政改革を推進する上での心構えとしては非常にりっぱなお考えだと思いますけれども、財政再建ができるまで増税はなし、あらゆる意味で増税はないんだというふうにお考えになっていただくと、これはなかなかむずかしいことになるという趣旨で、スローガンだけがひとり歩きしたのでは困るじゃないかというような趣旨で申し上げたわけであります。
  43. 神谷信之助

    神谷信之助君 小倉参考人、昨年の四月ごろですか、増税なき財政再建というのは実際にはやれないのではないかという、看板をおろすべきだというような趣旨をおっしゃったこともありますが、結局財政再建をやるという場合に、いろんなことを仮にやってみても、最後はやっぱり増税をやらざるを得ぬではないかという趣旨に理解していいんですか。
  44. 小倉武一

    参考人小倉武一君) そこまで私ども見通しをすることはできないと思います。私個人としてもできませんけれども、税制調査会でもそういう見通しでやれるというふうな御意見はございませんで、したがいまして、少しそこはある程度弾力的に物を考えておく必要があるというふうに考えます。ここで、大幅な増税をしなきゃならぬとか、あるいはそれがなくて済ませるとかいうようなことを論ずるのは、税制調査会の関係者としては、会長としては少し早まった結論になるのではないかというふうに思います。
  45. 神谷信之助

    神谷信之助君 臨調の十四日の答申で見ますと、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらないということになっていますね。ですから「増税なき」の基準は、言うなれば一種の租税負担率という、こういうものを提起をしている。それを超えたらいかぬぞというようにとれるんです。その場合、現実の負担率をとるべきか、この負担率のとり方ですけれども、あるいは新経済社会計画の出ているあの負担率ですね、これでいくべきか、この辺についてはどういうお考えでしょうか。
  46. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 国民所得に対する税の負担率と申しますのは、これは私の個人的な考えですけれども、考えといいますか認識ですけれども、事後的に出てくるものであると、事後的に。あらかじめこの程度の負担率がいいから税制はそれに合わすというようなことは、これは考えられ得るでしょうけれども、実際問題としては、国民所得というものは年々御承知のとおりもう非常に動く、順調に計画どおりに何%ずつGNPがふえていくとか、国民所得がふえていくという前提でそれは計算はできないことはないでしょうけれども、現実の経済というのはやっぱりアップ・アンド・ダウンがあって、思うような経済成長が遂げられないという場合もございますので、この負担率というものをあらかじめ想定して、それでやっていくんだというふうになりますと、これは税制としては大変なことになるというふうに思います。したがいまして、それは事後的に国民の経済に対して負担がどの程度になっているかということを検証する分には非常にいい指標だと思いますが、あらかじめそれを目標に置いて、そこまでは増税をしてもいいんだとか、そこに達すれば減税しなきゃならぬとか、そういう指標としては果たしてどうかなと。  したがいまして、せっかく臨調でうたっておられるんですから、これがどうこうという御批判は申し上げないですけれども、考え方としては、国民所得に対してのこの負担率が、いまのお話のような経済長期計画の、あれは二六・五%でございましたか、あるいは最近で言えば二三%前後でございましょうか、そういうことを頭に置いて、それが余り飛び出るようなことになるというのは困 るとかいう傍証ですね、税制のあり方についての、には役立つと思います。だけれども、これを真正面に掲げて、それによって税制をどうこうするということはなかなかむずかしいというふうに思われます。
  47. 神谷信之助

    神谷信之助君 所得税減税財源の問題ですが、参考人は恒久的な財源でやるべきだという、そういう御意見も述べておられますが、この恒久的な財源としての税、これはどんなものが考えられるか。この中には大型間接税も入るのかどうか、あるいはある新聞のインタビューで、最近のなにで、小型間接税でトリミングをやって、それから大型の本番をという話も述べられておりますが、その辺についてのお考えをお伺いいたします。
  48. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 所得税減税をいたしますということを前提にした場合の財源お尋ねでございますが、国会での与野党合意といいますか、お約束ですか、また官房長官がそれを尊重するという御趣旨の中に、やはり財源を確保してというお言葉がございますが、私ども税制調査会をまだ開いておりませんけれども、これは税制調査会にとっては新しい事態でございまするので、税制調査会でそういった新しい事態を踏まえて所得税減税をやるとして、税源はどうするんだということは、これは税制だけの問題でもございませんが、税制調査会としても検討しなきゃならぬことと思います。  そこで、この減税の恐らく御趣旨は、本年度、あるいは本年限りの臨時の減税ということではないというふうに承知しておりますが、そうだとすれば、まあ恒久的といいますか、臨時的というよりは恒久的な財源を求めざるを得ない。そういたしますというと、釈迦に説法でございますけれども、いま税制の中で大きなウエートを占めるのはやはり直接税、中でも所得税法人税ということになります。間接税というのは、日本では御承知のとおり非常に低いウエートしかございませんが、しかし、その間接税も無視できないのは、やっぱり国税としては三割近くなっておるわけでございますので、直接税と間接税を合わせましてどういう財源措置が講ぜられるかということになるかと思います。  その際、いろいろ御意見がございますように、アメリカを除いては日本は他の先進国と比べて間接税のウエートが低過ぎる、また間接税は必ずしも所得の増なり、あるいは国民経済の向上によって当然に所得税、あるいは法人税みたいに増収となるという性質のものでもない場合もございます。他方、しかし余り景気に変動されないで、安定的な税を確保できるという長所もないことはない、間接税の仕組み方にもよると思いますが。  そこで、もう少し国家財政の収入源としては間接税にウエートを置いた方がいいんではないかという説がこれはかねてからあるわけです。これと必ずしも所得税減税とは結びつくわけでもございませんけれども、たまたまといいますか、所得税減税の必要性が迫られてくれば、やはり間接税というものにも着目すると。特に、いまの減税問題は所得税でございまするから、その他の税とすれば、あるいは法人税、あるいは間接税というものがこの主なものになりますから、どうしても間接税について税源を求めるという勉強は避け得られないんではないかというふうに考えます。  その場合、どういう間接税がいいかということは、これは一般消費税ということでかねて税調で研究したものは、国会の御決議の次第もあり、それによるというわけにもまいらぬだろうと、ほかにどういうかわるべきものがあるかということはこれからの研究問題だと、こう存じております。
  49. 神谷信之助

    神谷信之助君 小倉参考人にはお引き取りください。ありがとうございました。
  50. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 小倉参考人には御多用の中を御出席いただきましてありがとうございました。御退席いただきまして結構でございます。
  51. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこでいまのお話、参考人の御意見も踏まえましてさらに大蔵大臣に聞きますが、具体的に財源については与野党合意を待ってというのですけれども大蔵大臣の方の見通しといいますか、財源について、赤字公債は財源にするわけにいかぬだろう、この辺ははっきりしていますか。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) せっかくいま御審議いただいている予算でもって、補正後とは言え一兆円の減額ということで御審議をいただいておる、    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕 したがって、なかんずくこの金融市場に金利高とか、そういうことに影響する赤字公債というようなものを念頭に置いてはならぬと思っております。
  53. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、もう一つの財源として予想される五十七年度の税収の見込みですね。これでどれだけの自然増収が、あるいは逆に減収になるのか、この辺の見通しはいかがでしょうか。
  54. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在まで、一月末までの税収が判明いたしておりますが、前年の同期と比較いたしまして、六%という伸び率でございます。御案内のとおり、五十七年度の補正予算で相当額の税収見積もり額の減額をいたしまして、その結果、補正後予算の見積もりでは、年度を通じて前年度の決算に対して五・三%伸びれば補正後の税収見積もり額が達成されるということでございますので、現時点で見る限りまだ余裕はあるわけでございますが、ただ、今後五月に入ってまいります三月期決算の法人税収、これがかなり大きなかたまりでございますので、現時点で計数的にどういうことになるのかということをはっきり申し上げる段階ではもちろんございませんけれども、先般発表になりました日銀の短観等を見ましても、三月までに関する限りやや業種によりまして、電力等は別でございますが、製造業、非製造業を通じまして、去年の秋よりも若干収益見通しが下方修正になっておるというような気配もございますので、予断は許さないとは存じますけれども、ほぼ達成できるということを期待しておるわけでございます。
  55. 神谷信之助

    神谷信之助君 いずれにしても大幅な増収になるということじゃなさそうです。そうすると、あとその次は歳出カットということを盛んにおっしゃるのですが、五十八年度の人事院勧告、これはやるということになっておるわけでしょう。
  56. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) お答えさしていただきます。  五十八年度のことにつきましては、人事院勧告は出されてからそれを見、国政全体を眺めて配慮していきたい、ただし、私としては五十七年度のようなことがこの五十八年度においては行われないように最善の努力をさしていただきたいと、かように考えております。
  57. 神谷信之助

    神谷信之助君 ちょっと長官、完全実施やるのですね。
  58. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生のお尋ねでございますが、私のいまお答えしたのは、人事院勧告を大いに尊重しまして、これは大事な基本権の代償措置でございますから、十分これは配慮して、出たものについては配慮していきたい。しかし、完全にというようなことを、まだせっかく先生の前でございますけれども、国全体の財政を眺めて考えなくちゃならぬことでございますから申し上げられませんが、給与を担当さしていただいておる大臣としては、できる限りの努力をさしていただきたい、かように申し上げておきたいと思います。
  59. 神谷信之助

    神谷信之助君 給与担当の大臣が完全実施をやると言わなきゃだれか言うのですか。総理が言うのですか。総理どうですか。
  60. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大蔵大臣、財政当局の意見も聞き、また全体を総合して、与党とも相談をして、また国会の申し合わせも尊重して総合的に考えるということでございます。
  61. 神谷信之助

    神谷信之助君 中曽根総理は率直に言って歴代の総理よりも指導力を発揮される方でしょう。いろいろな意見は聞かなきゃならぬだろうけれども総理自身としては完全実施をするという、そういう政策の選択をやるという決意には立ってお られないのかどうか、この点いかがです。
  62. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 与野党の申し合わせを尊重する、そういうことであります。
  63. 神谷信之助

    神谷信之助君 他人任せ、無責任な私は回答だと思うのですよ。それで大蔵大臣、そうしますと、歳出カットと言うけれども、完全実施はまだはっきりしないけれども実施をするということでしょう。そうすると、大蔵省の財政の中期試算を見ますと、要調整額は五兆四千五百億から四兆一千六百億円というように計算されている。人勧をやると言えばいずれにしても財源は必要になってくる。それから税収はそうぼこっとふえるような要素もない、赤字公債の発行はしない、こうなると減税をやる財源というのはどこからひねり出すのですか。どうするつもりですか。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それがいまの五十七年度の決算の見込みについてお答え申し上げました、それについて神谷委員は、したがって五十七年度のいわゆる増収も期待できないじゃないかと、そうなれば五十八年度もそう大きな増収が期待できるわけはないではないかと、そうなればやっぱり歳出カットとか、あるいは新たなる財源を求めるとか、それしかないじゃないか、こういう詰めた御質問でございますね。したがって、いま見通しを申し上げたわけでございますが、したがって、やはり五十七年度決算が確定して、そしていろいろな経済情勢の変化というのは今日あっております。そういうものをも踏まえて、それからさてと、こういうことで減税問題に取り組んでいくと、したがって、いま予見を持って何々を財源として求めますと言うべき時期ではないというふうにこれは御理解をいただきたいと思います。
  65. 神谷信之助

    神谷信之助君 いずれにしても政府が責任を持って財源をつくらなきゃならぬ、そういうことでしょう。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいずれの場合でも、やる場合には政府の責任でやらなきゃならぬわけです。ただ、ああして昨年から減税委員会等で勉強していただいた、それは専門家の方が大変な時間をかけて、大変な高度な勉強をしていただいたのですから、それらの意見も踏まえて、たとえそういう受け皿ができなくても、個々にでも意見を聞きながら対応していかなきゃならぬ問題だというふうに考えております。
  67. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで総理、お伺いしますが、小倉参考人も先ほどおっしゃったわけですが、減税をやるとすればとりあえず財政再建の問題もある、そうすれば増税の問題も考えざるを得ないというお話ですが、増税との抱き合わせの減税というのは国民はたまったものじゃないですね。だから一方、総理増税なき財政再建を完遂する、堅持するというようにおっしゃっていますが、先ほどの小倉参考人なんかの御意見をお聞きになって、その方針は変わらないということですか。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 変わりません。
  69. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ結局、最後とどのつまり、一方で減税し、一方で増税するということになったら、これは増税なきということに反するわけじゃないのですか、どうですか。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 小倉参考人のきのう以来の御発言をずっと読んでみますと、増税なき財政再建、これはてこである。そしていま一つ、私も読んでみても、いわゆるまさに退路を断ってやれという歳出に対する基本的な私は心構えをお示しになったと。したがって、小倉参考人が申されておりますのを読んでみますと、増税なき財政再建、これは堅持すべきだ、しかし増税なき財政再建といえば、いわゆるよく言われる不公平税制、あるいは租税特別措置、そういうものまでも既得権になってしまって、いわゆる増税の範疇に入らないということになるとイージーになりやすいから、それは戒めるべきだと、こういう趣旨でおっしゃっておると私どもは思っております。したがって、やはり私はてことして守るべきものであるという基本線は貫かなければならないと思っております。
  71. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、増税なきの基準というのは、現行の租税負担率の範囲内ならいいという意味に受け取っていいわけですか、いまのお話は。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これもいま参考人の御意見にもありましたように、やっぱり租税負担率というものはアプリオリにこれを決定してやるのはいかがかと、こういう御意見でありました。確かに租税負担率というものはやっぱり大きく変動するようなことは考えてはいけないよと、これは結果として出るものですから、そういう意味の御指摘であるというふうに思っております。だから、短絡的にこれを減税するためにこれを増税するということではなく、いま参考人もおっしゃっておるのは、増税なき財政再建、人それぞれが自分の現状に置かれておる問題について特別措置等々をすべて既得権化して物を考える習癖につながってはならぬと、こういう意味でおっしゃっているわけだと私は思っております。
  73. 神谷信之助

    神谷信之助君 ということは、いわゆる大型間接税の導入、これは範疇に入らないということですか。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大型間接税というものを検討したこともなければ、検討しておる事実もございませんし、また指示を受けたことも指示したこともない。ただ、範疇に入るか入らぬかという問題になりますと、今度はまた大型とは何ぞや、中型とは、小型とはと、これまた一つの基準論争になりまして、だから私はやっぱり臨調できちんとおっしゃっている中にも、読んでみますと直間比率の見直しの検討もおうたいになっている。したがって、その辺はあくまでも歳出の見直しというものをてことしての哲学をお述べになって、そういう一つ一つの基準にまでは触れていらっしゃらない、そのきちんとした基準ということになりますと。それはやはり私どもが玩味熟読して、けさの閣議でもこれを最大限尊重してすべての施策の遂行についての、しっかりやれという総理の御指示もあった。だからこれを拳々服膺して、私どもが判断すべきものも中には含まれるなと、こういうふうに思っております。
  75. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、もう一つ聞きますが、いまの直間比率の見直しならば、それは増税なき財政再建というそういう概念に入るということですか。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 直間比率の検討ということも書かれてありますが、しかし、増税なき財政再建と直間比率の見直しと、そのまま並列して議論すべきものであるかどうか。直間比率というものも、それは神谷委員御承知のように、これまた結果として出てくるものであって、あらかじめアプリオリにこれも決めてかかるべき性格のものではない、ある意味においては税体系そのものの見直しという表現の方が適切かなというふうにも思っております。
  77. 神谷信之助

    神谷信之助君 いずれにしても、いろいろおっしゃいますけれども、結局財源が歳出削減までやってもどうにもならなければ、あるいは五十八年度の景気の回復の状況のいかんによっては増税を考えなきゃならぬ、こういうことになっていくんですよ。その増税は別にここまで抑えるんだということもおっしゃらない。ということになりますと、これはもう増税自由ほうだい、やりたいほうだいということにもなる。それを政府自民党だけで責任を持つのは困るから与野党合意でと、野党もそこのところを踏み込んで、うんと言うてくれれば減税を大幅にやってもいいんだという、そういう余地を残していまおっしゃっているようにどうしても受け取れる。いかがですか。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは最終的には政府の責任でやらなければならぬことですよね。それはいま自由民主党内閣、中曽根内閣で私大蔵大臣、で、別の場合神谷さんがまた大蔵大臣になられることもあり得るだろう。そういう場合にはやっぱり国会というのは国権の最高機関と称され、国民各界各層の代表で構成しておりますから、それらの合意を得る努力、あるいは合意が得られないまでもそれらの意見を吸い上げていく努力、これは議会制民主主義、あるいは政党内閣のあるべき姿ではないかと、こういうふうにも思っておりま す。
  79. 神谷信之助

    神谷信之助君 減税をやる、増税はしないと方針をぴしっと立ててやるならわかります、いろいろそういうふうに。どっちでも増税うんと言うてから減税やってもいいですというような形で合意を得ようとするのは、それはまさにごまかしです。政府の責任を私は回避するものだ、逆に言えば、減税をやれば相当の増税をやってもそれで納得してもらえると言わんばかりの話だと私は思うんですが、いかがですか。
  80. 竹下登

    国務大臣竹下登君) しかし、皆さん方の組み替え案を見ましても、別に増税とかということも、ちゃんと新税とか、増税とかというようなこともいろいろそれなりに考えていらっしゃる。ですから、それはそういう意見ももちろん存在しておるわけですから、それをいまとる考えあるわけではございませんけれども、したがって、検討する段階においてあらかじめみずからが垣根をつくっておくべきものではないというふうに思っておりますが、あくまでも財政再建というものの哲学としては、増税なき財政再建をやれと、今度の言葉で糧道を断ってと、こう書いてあるわけですから、それにはやっぱり哲学として踏まえていなきゃならぬという基本姿勢には変わりありません。
  81. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう時間がありませんから、なんですが、昨年の衆議院の大蔵の小委員会、ここでは財源について増税なり、あるいは公債なり、一部には公債もという意見も出ています。同時にわが党が軍事費なり大企業に対する優遇の仕組み、これにメスを入れろと、そういうやり方もある。この点がいま問われているわけです。私はその点を指摘をして、減税はするけれども片一方で増税をやる、これはまさにペテンですから、そういうことに絶対に反対だということをあらかじめ申し上げておきます。  次の問題に移りますが、次は原油価格の下落に伴う問題で、OPECで基準価格が一バレル当たり二十九ドル、五ドル下がりました。一部には実際には二十五ドル前後まで下がるという話も出たりしておりますが、いずれにしても日本経済に大きな影響を与えると思いますが、企画庁長官に、世界経済モデルに基づいて調査をされていますが、あれは一〇%原油価格が下がった場合ということで、GNP、物価それぞれどうなるか御報告願いたいと思います。
  82. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 一〇%の引き下げの場合のモデル計算の例は示しましたが、最近五ドルというふうに大体確定いたしましたので、五ドルで計算いたしまして、実質GNPへの影響は一年目は〇・三五%、二年目は〇・九三%の増加が推測される、このような数字を発表いたしておりまして、新聞紙等にも掲載されているところでございます。
  83. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまGNPだけでしょう。物価は。
  84. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 卸売物価につきましては二・一%程度、消費者物価につきましては一・一%程度、このような推測をいたしております。
  85. 神谷信之助

    神谷信之助君 通産省の方も同じように五ドル下がった場合の状況を報告されているようですが、物価及びGNPについて報告してもらいたいと思います。
  86. 斎藤成雄

    政府委員(斎藤成雄君) 物価上昇率への影響でございますけれども、八三年度は卸売物価では一・四%から一・六%ぐらいダウンするであろう、八四年度はこの八三年度に対しまして〇・二ないし〇・六%のアップとなるであろう、それから消費者物価上昇率は、八三年度は〇・五ないし〇・六%のダウン、八四年度は八三年度に対しまして〇・二%のダウンないし〇・一%のアップというふうに見ております。それから実質GNP成長率への影響は、八三年度は〇・二ないし〇・三%のアップ、八四年度は八三年度に対しまして〇・二ないし〇・五%のアップというふうに見ております。
  87. 神谷信之助

    神谷信之助君 企画庁長官にお伺いしますが、そのほかいろいろな要素が見られて、結論として国内物価の低下と金利の低下から内需主導の回復となるというように結論づけておられますが、今日の不況のもとで、この原油価格の下落のメリットを最大限に国民生活に還元をする、そして民間需要に生かしていくという必要があると思いますが、いかがですか。
  88. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、私どもはここ十年間石油ショックで苦しんでまいりました。物価が二・三倍になり、歳出は歳入が三倍であるにかかわらず四倍になり、国債の累積残高が十五倍にもなった、失業率が一・四から二・四%に上がったというようなことを考えてみますと、この原油の五ドルの引き下げのメリットは何としても国民経済の中にいい影響を与えるように動かさなければならない、こんなふうに考えているところでございます。  その方向といたしまして、私は日本の経済は自由経済社会であり、きわめて競争の激しい社会でございますから、大部分は市場原理によって、恐らくこの引き下げは商品価格あるいはサービス価格の中に、国民経済全般の中に反映されるもの、そしてそれが国民経済にいい影響を与えるものと、こういうふうに考えております。
  89. 神谷信之助

    神谷信之助君 山中通産大臣、具体的にどういう指導、施策をお考えですか。
  90. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 経企庁長官がいま申し上げましたような立場の上に立って、そして日本経済というものが非常に暗雲たれ込めるという感じの前途がなかなか開けてこない状態の中で、各国に比べればそれでもいいとしても、日本国民の生活、そして日本国家経済の前進という意味では、何としてもいま一つ踏み切りと申しますか、引き金がなかった。そのときに、たびたび申しております天の恵みというようなことによって、結果、日本において五ドル値下げ、イランは価格を余り言わなかったようですが、一部二十七ドルに下げるのではないかという意見もあります。これは恐らくイラクとの戦争の関係で、カーグ島に立ち寄る場合の油送船の戦争保険というものを少し油代金で見なければ売れないんじゃないかという背景があると思いますが、いずれにしても大体の値下げ幅と方向がわかった、しかし北海原油の関係ではまだ不分明な点がある、そういうことを考えますと、値下がりをどこまでするかはわかりませんが、値下がりした分が最終的に国民生活の向上というものにつながっていくように、そして日本の産業の活性化に資するように具体的な手段を詰めるべく、いま私の役所の中で作業をいたしておるところでございます。
  91. 神谷信之助

    神谷信之助君 現行電力料金、五十五年に決定されたもの、これが一バレル当たり三十二ドル強、これが今度五ドル下がりましたから二十七ドルですね。それから五十七年度の輸入量を基準にして、為替レート二百三十五円ということで電力九社全体でどれだけコスト減になるか。これはもちろん人件費その他いろんな要因があります。そういうのを一応捨象した分がお手元に配付した資料になっております。電力九社で約五千二百六十億、それから三大ガス会社で四百六十六億余り、石油製品の方で一兆四千六百八億、そのほかにもいろいろな要素がありますから正確とは言えませんが、一応の試算はこれでやってみました。  そこで、これらこういったものが出てきているわけですから、これは国民に還元すべきだ、とりわけ電力料金についてはそうすべきだというように思いますが、この点いかがですか。
  92. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 機械的な計算といいますか、それでいくと大体こういうところだろうと思うんですね。しかし御質問の中にもありましたように、やはり人件費やいままで設備投資の見送りとか、そういうようなもの等もありましょうから、これをそのままそっくりということは大変むずかしい。それに為替レートの問題がいま一つありますし、どうしてもきのうの日銀総裁も為替レートについては見通し難であるようでございました。そういうことから公定歩合というものがなかなか表に浮かんでこない。こういうことも結果的には出るわけでありますが、そういうのが要素の中にありますし、これ一遍はOPEC諸国の国際 石油価格カルテルは崩壊したと見たんですが、しかし曲がりなりにもまた組み立てたということは言えると思うんですね。そうすると、これでまた需要をうんと各国がふやした場合に、当面はどの国も景気の浮揚に役に立つと思うんです、国際収支改善から物価に至るまで。しかしそれをやりますとまた石油の需要増というものになりますから、そうしたときには再び値上げの力を持ったカルテルの力の発揮というものがあるかもしれません。  したがって、これを、昨年は電気料金は値上げ申請寸前という理由のある状態でございました。しかし、これを先行きどれぐらい続くのか、それもある程度見ませんと、また油の安いものが仮に入る場合でもタイムラグが実際にはございますし、したがって、いまここで電力、ガスその他について幾らということはなかなか言いにくいわけでありますが、前提に申し上げましたように、すべての料金体系、価格、製品、そういうものに至るまで国民全体の生活に還元されることを目的として、途中で横へ、たとえば石油税で持っていっちゃうとか、あるいは極端な人はむしろ現在の石油価格を維持して、下がった分の三分の二は国内で税金にしろ、三分の一は産油国に買ってそのまま地下に日本分として置いておいてもらえという、非常に奇抜ですけれども、後段の構想は日本の将来を考えてあり得るかもしれないのかなという興味深く読んだ文章等も世に問われておりますが、まあいずれにしても結論はこれをもう少しじっくり見きわめて、そして国民生活にどのように好影響をもたらすための還元をやるかということに、目下のところは計算はしなければなりませんが、目下のところは検討しつつ静観しておるということであります。
  93. 神谷信之助

    神谷信之助君 政府委員でいいですが、電気事業法の二十三条、これはどうなっていますか。
  94. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 二十三条においては、現在の料金といいますか供給規程の中身が著しく不適当になったときにおいては、値下げといいますかその変更を命令することができる、それから、それが出ない場合においては一方的に決めるといいますか措置することができる、こういう規定になっております。
  95. 神谷信之助

    神谷信之助君 去年は電力料金の値上げをせざるを得ぬような動きもあったというふうにおっしゃいますが、すでに最近の円高で東京電力の下期は経常利益が予想の数百億を上回って千数百億円に達する、そういう報道もあります。そうしていまの二十三条の規定からいきますと、先ほども言いましたように原油価格が当時三十二ドル強、基準価格では三十四ドルの時期ですね。それがいま二十九ドルになったんですから、五ドル下がったという、単純に言えばそうなんです。レートも当時は二百四十二円ですが、現在二百三十五円、これはそういう不安はあるとおっしゃいますが、大体その方向にいくでしょう。それから、原発の稼働力は五四・五%だったのが七三・六%、これはコストダウンになっているはずですね。だから、コストダウンになっている要因というのもずっとふえてきている。  こうなりますと、供給条件が変動しているわけですから、二十三条に言うように供給規程は著しく不適当になってきている。だから命令をするそういう条件というのはあるわけで、私は命ずるべきだというように思いますが、いかがですか。
  96. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 本来公共性の高い料金でございますから、そのような命令を待つまでもなく、たとえば昔四国電力だったかと思いますが、石炭火力時代、値下げの申請をした例もあります。そういうふうにしてもらうような状態であれば望ましいことでありますが、決して統制経済的な考えを持ち込むという意味ではなくて、私どもが客観的、冷静に、長期的に判断をして、こういう価格の改定をすべきだと思うというようなことを勧告などをいたしまして、もし従わない場合は、それは当然政治の名において政府の責任で命令をすることもあり得べしということでございます。
  97. 神谷信之助

    神谷信之助君 十九条で値上げ申請のやつがあるんですね、十九条に。十九条で値下げの申請をやったというのは、いまおっしゃるように、あれは大分昔の話です、四国電力。ないですよね、最近はずっと。それで差益還元のときは二十一条でやった。二十三条というのは発動したことないんですよ。言うならば、これは逆に言うと自分から値下げというのはまあない。だから国民のために値下げをやるという場合は二十三条発動する以外にないんです。それはいまの不況なり、いろいろな国民生活が苦しい状況の中で、そこにもありますように、それだけの国民生活への還元になりますから、    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 この点は私は様子を見て、そうして次また上げんならぬことないようにというたら、これは高値安定をやるということになりますからね、また上げんならぬということは。だから下がることやったら早う下げて、少しでも不況に生かし、国民生活に生かしていくということをやらないと、これはどうもいまの政府はやっぱり大企業の顔色ばっかり見とる、こういうことになる。いかがですか。
  98. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 顔色ばかり見てない証拠に、予算委員会の場で各電力会社の社長が一斉に顔写真入りで絶対下げないんだというようなことをみんな言ったときに、私は大変苦々しく思うという答弁したんですね。そうしたら、それで電力会社はぴしゃっと発言をしなくなりました。  それで最近は、いまおっしゃったようなそういう強権を発動するとまでは言いませんが、経済の原則から見て、私の考えである国民全体に利益の均てんをさすべきであるということについて、要するに私たちがかち得たものじゃないんです。いただいたものですから、安くなったということは向こうが安くしていただいたわけですから、私たちはこれを産業の活性化に資すると同時に、国民に返さなければならない、その恩典を。その場合に電力料金はそのファクターの一つであるということを申しました。恐らくきのうあたりの電力会社あたりの、直接は聞いていませんが発言はそろそろニュアンスが変わってきているのではないか。やはり自分たちも真剣にこれは検討しなくちゃいかぬなということに変わってきていると思います。とにかく向こうでいま決まった値段がそうであって、こっちに着いてからということでありますから、そう大急ぎで決めなけりゃならぬ問題じゃありませんから、クールに、しかもきちんと計算を立てて、国民の皆さんが納得される方法、しかもやっぱり展望は、過去かつて円高のときに下げて国民に還元をして、一年後には五〇%また上げちゃったというようなことにならないように、やはり長期的な展望も持たなければならぬということでございます。
  99. 神谷信之助

    神谷信之助君 十九条の値上げの場合の基準というのは四項目ちゃんとあるんですね、こういう場合は値上げ許可してもいいと。値下げの基準というのはありますか。
  100. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 電気料金を決める基準につきましては原価をもととしてやっておりますので、値上げの場合と値下げの場合と原則は同じでございます。
  101. 神谷信之助

    神谷信之助君 いずれにしても電力料金はこれは電気事業法で政府が監督しているわけですから、国民生活に還元をするという点をやっぱり早くやるということを要求しておきたいと思うんです。  それから、石油製品価格、これは市場メカニズムに任す、こうおっしゃるのだけれども、なかなかこれ大した企業ですからね。一獲千金いまこそというてがんばった時期もあるので、だから、そういう点について単に一般的に流すのではなしに、その点での国民生活への還元あるいは不況を早く転換をするという意味からもこの辺は強力にやっぱり行政指導すべきだと思いますが、いかがですか。
  102. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) この問題はまさに石油産業の体質あるいは設備のあり方等について、これはかつて通産省自身が許可した設備であります けれども、それが消費の減退によっていまや遊休化しておるもの等の設備をどうするかという、まあ自主的にやってごらんなさいということでやってみたら百万バレルぐらいをカットしたらどうだというのに、返ってきた答えは七十万バレルという、要するに私がここで言いました総論賛成わが社は反対という、そういう業界でございまして、そのくせ末端ではどうなっているかというと、またガソリンの乱売合戦で、スタンド業界から見れば、もうまさにこれ以上下げたら自分たちは倒れちゃうという状態の安値をみんなが安値ならえをするわけですから、ここらのところはもう石油会社、元売会社の手にも負えなくなっている。そうすると、これはしかし一般の自動車を運転する人たちから見れば、安売りをしてくれることがありがたいことですよね、粗悪ガソリン、まあ国から言うと脱税ガソリンでない限りは。そこらのところは大変むずかしい。さらに今回石油の値段が下がったということになると、そこらは一体私たちが持っている業法、そういうものも含めて一体どう対処するかは、石油会社は必ずしもこれによって私はプラス要因だけではなくて混乱を増幅させる、このときに混乱に乗じてまた生き延びようとするようなことのないように、やはりきちんとわが国にふさわしい石油精製会社の数なり元売の数というものにこれをむしろ好機にして立て直すべきじゃないかなと思っております。
  103. 神谷信之助

    神谷信之助君 時間がありませんから次の問題に移ります。  次は海上輸送の問題、いわゆるシーレーン防衛問題です。三月十四日の政府見解の趣旨からいたしますと、簡単に言うと、在日米軍向け物資を輸送する船舶に対する武力攻撃の排除、これも個別的自衛権の範囲内にあるということになるわけですか。
  104. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) わが国に対する武力攻撃が発生をいたしまして、わが国が自衛権を行使し、その一環として海上交通の安全確保に当たっている場合に、外国船舶がわが国向けの物資の輸送にかかっておるときに、どの程度従事しているか、その点不明の場合も多々あるわけでございますが、しかしながら、このことは見解の中に申し述べさしていただきましたがごとく、この攻撃を排除することはわが国を防衛するため必要最小限度のものである以上、個別的自衛権の行使の範囲に含まれると、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  105. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 立木君の関連質疑を許します。立木君。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 いまの政府見解についてですが、これは第五条発動時に自衛隊が米軍と共同対処しているということが想定されているわけですが、この場合わが国に対する武力攻撃を排除するため、また国民の生活を維持するために必要不可欠の物資の日本向け輸送は共同で戦闘に当たっているアメリカの艦船が最も多いというふうに想定されるが、それはどうかという問題が一つ。  それから、ここに述べられておる有事の際における継戦能力の保持、この継戦能力の保持ということは、日本とともに戦闘状態に入っている米軍の継戦能力の保持ということも含まれるのかどうなのか、この点明確にしていただきたい。
  107. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) お尋ねの二点ございましたが、後の方の継戦能力の問題からお答えしたいと思いますが、先般の見解にも述べてありますように、海上交通の安全を確保するということはわが国の国民の生存維持に必要であり、また継戦能力の維持に必要であるという点を一般的に申し上げておるわけでございまして、これはあくまでも日本の継戦能力、わが国の継戦能力を意味している。ここは海上交通の安全確保ということがきわめてわが国にとって重要であるということを申し述べた次第でございます。  それから第二点のわが国向けの物資の中に、自衛隊というよりはむしろ米軍向けの物資が大半ではないかという御質問であったように思いますが、これはまあそのときの状況によって千差万別であろうと思いますが、とりあえず私どもとしてはわが国のために、わが国防衛のために、わが国に対する武力攻撃を排除するために必要な物資、その中には弾薬その他の戦略物資が入っていると思いますが、あくまでもわが国の防衛のために必要なものであるというふうな物でございます。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 いま一般的にということで、米軍の継戦能力を含むということには明確にお答えにならなかった。しかし、あなた方のいままで主張されてきておることで言うならば、第五条の発動時で米軍とともに戦闘状態に自衛隊が入っている。この場合に米軍が継戦能力を失うという事態になることは、あなた方の主張によれば、日本のいわゆる防衛にとって重大な事態だということはこれは明白だと思うのですよ、あなた方の主張によれば。しかも、ここに述べられておるこの見解の中では、わが国に対する武力攻撃を排除するためということが一項目上げられていますが、この場合もだれによって排除するのか。これは日本の自衛隊によってということが明確に述べられていないわけです。まさに共同作戦態勢に入っている状態に米軍と同時に自衛隊があるわけですから。こういう点から見てもいまの答弁は私は納得するわけにはいかない。日米が共同で作戦態勢に入っている状況のもとで、その戦闘しておる相手国がアメリカの継戦能力に打撃を与える、アメリカ軍を攻撃するということは、これは当然あり得るわけです。この文章の中でも地域的にその問題は限定もしてない。そうすると、日本向けの米軍の輸送船をいわゆる防衛のためということでいかなる限定をつけてみても、実際には集団自衛権の発動にならざるを得ないのじゃないか。この点はどうですか。
  109. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 御指摘のとおり、わが国に対する武力攻撃があった場合には日米安保条約の五条が適用されまして、共同対処をすることになっております。したがって、わが国と米軍が共同対処することはこれまた先生の御指摘のとおりでございますが、いま政府見解でお示ししたのは、あくまでもわが国がそういった共同対処をする過程において、わが国の自衛隊がそういった第三国の船に対する武力攻撃排除の措置が講じ得るかどうかという点についての回答でございまして、それはあくまでも自衛隊がやることを念頭に置いて書いた文章でございます。
  110. 立木洋

    ○立木洋君 だから、自衛隊が行う行動について書いた文章であるから、この場合はどうなるのかということを私は聞いている。もう時間がないからこれ以上お尋ねするわけにいきませんが、最後に総理に一言お尋ねしたいのですが、総理は武器輸出三原則の問題についてもアメリカへの武器技術の供与の道を開かれた。またGNP一%以下という軍備の拡張の枠についても実質的に取り払うという態度を示唆されておる。今日のこの政府見解も、個別的な自衛権の枠だということを言いつつ、実質的には集団自衛権に踏み込むものだというふうに言わざるを得ないと私は思います。ですから、こうした外国船、いわゆる米艦船を防衛するということを集団自衛権ではないとする見解を総理の責任でお出しになった、その所見をお聞きしておきたいと思います。この残余の質問については、きょうは時間がありませんから、後日に譲りたいと思いますが、その点だけお尋ねしておきたい。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、憲法を守り、専守防衛に徹し、非核三原則のもとに行うという従来の方針を、私流に言ったのであります。
  112. 神谷信之助

    神谷信之助君 アメリカの統合参謀本部のビグリー第五部長はシーレーン防衛について、中東、韓国など西側の重要な戦略地域に紛争が発生した際、米本土からの大規模な軍事力投入とその長い補給路確保のための不可欠の要素だと述べています。アメリカの在日米軍向け物資輸送、これが自衛隊が護衛するということが明らかになったとしますと、日本有事で極東有事の際に韓国向けの物資輸送船、これは自衛隊による護衛ができるのかできないのか、どうですか。
  113. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ただいま先生、日本有事と言い、あるいは極東有事というふうに両方言 われましたので、どういうことを指すのかわかりませんが、いずれにせよ、わが国の自衛隊はわが国に対する武力攻撃が行われた場合にその相手国に対して行動する、そのためにシーレーン防衛の行動も行う、こういうことでございます。
  114. 神谷信之助

    神谷信之助君 在日米軍向けの物資を輸送する船舶に対して護衛ができると、自衛権の範囲内だ、個別的自衛権の範囲内だと、こうおっしゃる。そして今度は、その在日米軍の必要によって韓国向けの物資を送ると、その場合は一体どうなるのか、それは護衛できないのかどうか。
  115. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) いずれにせよ、今回の見解というのは、あくまでもわが国向けの物資、日本有事の際におけるわが国向けの物資について、わが国がその攻撃を排除することができるということを申し述べたわけでございます。
  116. 神谷信之助

    神谷信之助君 わが国を除く極東への物資輸送、これは全く関係はないということですね。  そこで、日本向けの物資輸送の船舶について日本有事の際に相手国がそれを阻止するための攻撃を加えるという事態が発生をした場合、理論上はそれは自衛隊が防衛することは、攻撃を排除することは個別的自衛権の範囲内だというようにおっしゃるが、そうすると、それはたとえばホルムズ海峡まで自衛隊がその排除のため出かけるということも可能になるということですか。
  117. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) わが国が個別的自衛権の範囲内で行動し得る範囲というのは、必ずしも領海に限らず、公海、公空に及ぶことは従来たびたび御答弁申し上げておりますが、一方、わが国の自衛隊は周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイルということをめどとしまして、防衛力の整備をいたしております。そういうことから見て、おのずからわが国の自衛隊の行動の範囲には限界があろう、こういうふうに考えております。
  118. 神谷信之助

    神谷信之助君 数百海里並びに航路帯一千海里を防衛できる、そういう能力を持ちたい。しかし、その能力ができれば、それ以上のさらに能力を持つということはあり得ないということですか。
  119. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ただいま大綱の水準を達成したいということで、そういう五六中業を作成し、そういう能力を持ちたいということで努力をいたしまして、この能力を確保するためにも相当長期間かかるわけでございまして、それ以上のことを現在この時点で考えておりません。
  120. 神谷信之助

    神谷信之助君 今度の見解は従来から見ると大変な変更になってます。五十年の十月二十九日の衆議院予算委員会の宮澤外務大臣は、「自衛隊自身がそれを主たる目的として行動するということは、自衛隊のいわゆる海外派遣等々の問題があるのではないか」という答弁をしてますし、夏目さん自身も五十八年の二月二十二日の衆議院の予算委員会で、米艦艇の防衛を主目的として、もっぱらそれを目的として行動するということはない、それは日本向けの物資の輸送について攻撃されるという事態が発生した場合に日本の自衛隊が防衛するんだと、したがって日本向けの物資を米艦船がやれば同じようにそれを防衛すると。そういう任務を持って自衛隊が行動することは、従来は、それは海外派兵等の問題があるんだと、それはできないんだというようにおっしゃっていたんですが、これは大きな変更です。したがってこの点、見解を撤回してもらいたい。
  121. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ちょっと話が混乱していると思いますが、私が申し上げた趣旨は、先般の衆議院の予算委員会で米艦護衛の問題が議論された際に、わが国はあくまでも個別的自衛権の範囲内で行動することが第一点。それから第二点は、日米が共同対処をしておってアメリカの艦艇がわが国を防衛するために行動しているということが第二点。第三点は、もっぱらアメリカの艦艇を守ることを目的として行動するわけではない、あくまでもわが国を防衛するため、個別的自衛権の範囲内で行動するということを申し上げたわけでございます。
  122. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、あなたのそういう見解と今度出た見解と違うじゃないかと言っているんですよ。
  123. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 今回の見解というのは、日本向けの物資を運んでおるところの第三国の船舶をわが国に対して武力攻撃を加えている国が攻撃をした場合にどう対処するかということを申し上げているわけでございまして、先般の答弁というのはわが国と共同対処をしている米艦艇との関係を一般的に述べたもの、今度の見解はわが国向けの物資を積んでいる第三国の船に対する対応というものを述べたと、こういうことでございます。
  124. 神谷信之助

    神谷信之助君 じゃ、先日、市川質問に対して佐々官房長は、米艦船が日本向けの物資を積んでいる、軍需物資、民需物資、それを護衛するんだと、それは個別的自衛権の範囲内、そういう能力を持ちたいんだと、こう言っているじゃありませんか。
  125. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 先般の官房長発言の趣旨は、私からも御答弁申し上げたとおり、わが国の防衛力、海上防衛力というのは必ずしも現在十分でない。周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイル程度のものはぜひとも守りたい、そういった防衛能力を早く持ちたいという点にねらいがあったと思います。  なお、いわゆる物資を輸送している米艦舶の護衛ということについては、今回の答弁の中に含まれるであろうというふうに理解しております。
  126. 神谷信之助

    神谷信之助君 今回の答弁に含まれるわけでしょう。第三国の船舶、それに含まれるということは、日本向け物資を輸送する米艦船ということになるわけですか、いまのは。
  127. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 米艦船の一般的な問題としては先般の衆議院における答弁で明らかであると思いますが、今回は物資を輸送している米艦船に着目する、そういう意味合いでは今回の答弁の中に含まれるということでございます。
  128. 神谷信之助

    神谷信之助君 ですから、そうなりますと、宮澤外相の当時の答弁は、米艦船で物資を含んでいるとか含んでいないとかいう問題、共同対処の中には物資輸送も含まれるわけでしょう、海上輸送は生命線とおっしゃるんですから。そういう点で私は大きく踏み込んでいるというように思います。  最後にもう一つ聞きますが、硫黄島の現状はどうなっていますか。
  129. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 現在、硫黄島には海上自衛隊の硫黄島基地隊というものがございまして、約九十人おります。それは、同島には飛行場がございますので、その飛行場を維持管理することが第一。第二は、あの区域のいわゆる航空救難というものを担当する部隊がおります。第三には、訓練その他であの島に飛来する飛行機に対する各種の支援、これを任務といたしております。さらに、現在本土における特に空の訓練環境というのは必ずしも十分なものがございませんので、あの島の特性を生かしながら訓練基地として整備をするということで、五十五年度以来整備を逐次進めておる状況でございます。
  130. 神谷信之助

    神谷信之助君 F15などあるいはP3Cの訓練基地ということですか。
  131. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 当然F15、P3Cの訓練の基地としても使用したいというふうに考えております。
  132. 神谷信之助

    神谷信之助君 この点については東京都知事の了解は得ておられるんですか、あるいは少なくとも連絡はしておられるんだろうと思いますが、いかがですか。
  133. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) もちろん、こういった施設整備を進めるに当たっての御連絡は申し上げておりますが、あくまでも今回の整備というのは、現在すでに自衛隊に使用が認められている区域内での工事でございます。
  134. 神谷信之助

    神谷信之助君 有事の際にはこの訓練基地はどうなりますか。
  135. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 有事の際の事態というのはどういうことになるかわかりませんが、少なくも現在は訓練基地として整備を進めている、こ ういうことでございます。
  136. 神谷信之助

    神谷信之助君 在日米軍の司令官のドネリー中将は、バックファイアはグアム島まで飛来するし、水平線の向こうまで攻撃できる能力を持っている、日本は空母の建造、保有をすることが望ましいが、それに制約があれば南へ伸びる離島の防衛力を検討すべきだ、たとえば硫黄島の近代化装備が望ましい、同島は有事の際の非常に重要な拠点となるはずだと述べておりますが、そこで、有事の際の硫黄島の運用方法というのはきわめて重要な問題になる。これは有事の際の拠点に使わないということは言えないと思いますが、どうですか。訓練基地のままだということにならないだろうと思います。F15、P3Cの訓練基地。したがって、シーレーン防衛あるいはグアム、第七艦隊を守るということではないかと思うのですが、いかがですか。
  137. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ただいま硫黄島はわが方の訓練基地、特に海上自衛隊と航空自衛隊の訓練基地としての整備をしておりますが、有事の際における同島の位置から見て、きわめてわが国のシーレーン防衛にとっても重要な位置にあるというふうに認識しております。
  138. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは、昨日もデモがありましたが、硫黄島の島民の帰島の願いを踏みにじる重要な問題であります。  次に外務大臣、きのうアメリカ大使とお会いになりましたが、その点の報告をお願いします。
  139. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 昨日マンスフィールド大使と会いまして、これまで国会でいろいろと指摘をされましたいわゆる核問題につきまして私から日本の立場を説明をいたしました。F16の三沢基地配置であるとか、あるいはエンタープライズの寄港といったようなものを含めて、わが国に核持ち込みが行われるんじゃないか、こういう疑惑が国民の中に持たれておるのだけれども、わが国としては御承知のように非核三原則を持っておる。したがって、事前協議においても非核三原則の基本原則についてこれに対処していくということをはっきりと申したわけでありまして、マンスフィールド大使も、安保条約並びに関連取り決め、さらに事前協議におけるわが国の立場というものを十分承知をしておるし、それに対しては、わが国の考え方を尊重し、そして条約並びに関連取り決めあるいは事前協議の条項を誠実に遵守していくというアメリカの立場を明らかにしたわけであります。
  140. 神谷信之助

    神谷信之助君 核兵器搭載の艦船や航空機の領海、領空の通過及び寄港、着陸による一時立ち寄り、この問題は具体的にお話しになったのですか。
  141. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもうわが国としては、国会等にも政府としての立場をしばしば言明いたしておるように、核の三原則、その中における核の持ち込みについては、事前協議があった場合はすべてノーだと。そして、寄港あるいは領海通過につきましても、これはその核持ち込みに含まれるというわが国の立場はこれまでもしばしば鮮明にいたしておりますから、これはもうわれわれは自明の理である。安保条約を守る、事前協議条項を守ると言っている以上は、それでもって十分であると、こういうふうに考えております。
  142. 神谷信之助

    神谷信之助君 昨日具体的におっしゃったのですか、おっしゃってないのですか。
  143. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほど申したように、これはアメリカが安保条約を守ると、事前協議条項を遵守すると言っている以上は、具体的にそういうところまで申す必要はない、これはもう言わずもがなの自明の理であると、こういうふうに考えております。
  144. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこが問題なのですよ。いま国民が一番問題にしているのはそこのところです。国会で問題にしているのはそこのところです。
  145. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 神谷君、時間が参りました。
  146. 神谷信之助

    神谷信之助君 はい。だから、言うなれば国民が疑惑を持っているところを聞かない。それを聞けば日米間の信頼が破れるからでしょう。事実はそこが問題なんだ。聞けば日米間の信頼が破れる。だから聞けない。そういうことでしょう。これは重大な問題ですよ。
  147. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、ちっとも問題じゃないと思いますよ。わが国とアメリカとの間で安保条約を結んでいるのだし、そして事前協議というのがあるのだし、アメリカはそれをちゃんと守っているというのですから……
  148. 神谷信之助

    神谷信之助君 なぜ聞かないのですか。なぜ言わない。これだけ問題になっていることをなぜ言わない。
  149. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 答弁中ですから、静かにしてください。
  150. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それはもう言わずもがなの明らかなことであります。
  151. 神谷信之助

    神谷信之助君 では、終わります。(拍手)
  152. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で神谷信之助君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  153. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、伊藤郁男君の総括質疑を行います。伊藤君。
  154. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私は、まず大蔵大臣にお伺いをしたいと思うのですが、これは当委員会で井上議員並びに本日の本会議場で柄谷議員も質問をした問題でございますが、どうしても納得できない問題がありますので、ここから順序を変えて質問をしていきたいと思います。  例の自賠責特会の運用益を一般会計へ繰り入れる問題でございますが、なぜこのような措置をとろうとしているのですか、大蔵大臣にお伺いします。
  155. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 五十八年度予算編成に当たりましては、五十六年度の決算上の不足額の処理に充てました二兆二千五百億円を返還する、法律の規定に従いまして、という課題があったわけでございますが、これは一回限りの支出でございます。翌年度以降響かない支出でございますので、この返還に当たりましては利子のつかない金をできるだけ集めようと。利子のつく赤字公債を発行して返却するという安易な道を選ばないということで、貨幣回収準備資金の取り崩しを初め、各特別会計その他から利子のつかない金を集めたわけでございまして、自賠責の特別会計からもそういう趣旨で協力をお願いしたわけでございます。
  156. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 これは一回限りであろうと、こういうような一般会計の赤字を埋めるため自賠責加入者の負担でこれを埋める、何としてもこれ納得できるものではありません。  それでは運輸省にお伺いをいたしますけれども、この保険の目的は何ですか。
  157. 角田達郎

    政府委員角田達郎君) 自賠責保険というのは、自動車の事故に遭いましたときに、被害者の救済、それから事故を起こした者、こういった者が賠償能力がない場合がございますので、そういうような事態を救済するために強制的にやっております保険でございます。
  158. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 二千五百六十億円も繰り入れられるほどこの再保険特会というものは一体余裕があるのか、お伺いします。
  159. 角田達郎

    政府委員角田達郎君) 再保険特別会計の運用益は五十七年度末で、保険勘定で私どものいまの推定によりますと約五千億、それから保障勘定で約百二十億の運用益を出しております。
  160. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 この特会、保険の会計ですね、五十三年度からもうずっと赤字ではないですか、運用益と別で。運用益じゃないですよ。
  161. 角田達郎

    政府委員角田達郎君) 自賠責保険全体の収支でございますけれども、これは五十三年度から、私ども純収支と申し上げておりますが、その単年度の保険料の収入、それから保険金の支払い、こういうもので見ますと、純収支で見ますと五十三年度から赤字でございますが、運用益等を勘案いたしました総合収支では五十三年度以降黒字でございまして、私ども推定によりましても五十八年度はまだ若干の黒字が出る、こういうことにな っております。
  162. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 この赤字はこれからも予想されるのじゃないですか。そして、赤字額がさらに拡大されることも予想されるのじゃないですか。
  163. 角田達郎

    政府委員角田達郎君) これは自動車の事故に関連した保険の収支でございますので、自動車事故が今後急激に伸びるというようなことであれば、あるいは現在程度の伸びであれば、純収支では赤字が想定されると思いますが、運用益を含めた全体でいつから赤字になるか、その辺はまだ私ども詳細な計算をしておりません。
  164. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 だから、これからも単年度では赤字が予想されるわけですよ。こういう現状から見ますれば、運用益の半分を取り崩して、しかも十年間無利子で貸し付ける、こんな余裕などは全くない、私はそのように思うのですが、これ、運輸大臣にお伺いします。
  165. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) お答えいたします。  五十八年度予算編成に当たっては、この席上を通じて大蔵大臣が何遍もお話し申し上げておるとおり、非常に財源が厳しい、そういうことでありましたから、運輸大臣としては、私もいろいろ考えましたが、これはもう国家財政全体のことでございますから、事務当局のいまのような説明などもありまして、将来ともに支障を来たさないような形をとりつつ御協力申し上げたことであります。
  166. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 どうしても納得できませんね。本来ならば、この運用益というのは保険収支の改善に役立たせるべきものではないですか。それがこの本来の目的なのですよ。そうではないですか、運輸大臣もう一回……。
  167. 角田達郎

    政府委員角田達郎君) この自賠責の運用益は、確かに保険料の収入、これが一定期間滞留することによりまして運用益が生ずるわけでございます。したがいまして、この特会の運用益につきましても、これは基本的には私ども保険契約者の利益のために還元すべきものというふうに考えております。  今回、財政当局の御要請によりまして、その運用益の半分を一般会計に繰り入れて後日これを繰り戻していただく、こういうことにしたわけでございますが、これは確実に返還されることを予定して、一般会計に繰り入れているものでございまして、私どもとしては残っております約二千五百億の運用益、それから一般会計にお貸ししました二千五百億、これも含めていま保険契約者に対してどういうような還元方法をしたらいいか鋭意検討中でございます。
  168. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 大蔵大臣、お聞きのとおりでしょう。加入者に利益は還元すべきものなのですよ。当然ですよ。したがって、財政が苦しいからといってこのようなつじつま合わせの、場当たり的なやり方は絶対反対ですね。政府は、この四千万のユーザーの反対にもかかわらずこの措置を強行されるのか、撤回を要求します、御答弁を。
  169. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど来、運輸大臣からもお話がございましたように、まず一般会計がきわめて厳しい事情にあること、そうして一般会計から毎年自動車事故防止のために支出が行われておりまして、結果的には自賠責特会の収支改善に、ある意味においてはつながっておる。そこで、自賠責特会の余裕資金を当面一般会計のために活用することをお願いしようと、こういう考え方に立ったわけでございます。  したがって、これは率直に申しまして、私から長谷川運輸大臣にお願いをいたしました。その上で、種々事務当局で検討した結果、このような措置をとったわけでございます。当面直ちにその全額を必要とするという状態にもございませんし、そしていわゆる自賠責特会の運用益の問題につきましては、いま運輸省においてその具体的な方策が検討中であるということで、私どもといたしましてお願いをして、これをいわゆる税外収入の大きな分野を担当していただいたと、こういうことでございます。
  170. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 要するに、運輸省は財政の理由から大蔵省の理不尽な要求に屈したと、こういうふうに思わざるを得ないですね。  そこで、この問題、最後にお伺いしますけれども、もし保険料の引き上げがどうしても避けられないと、こういう事態になったら、この運用益から流用したものを直ちに返還すべきだと思いますけれども大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。——大蔵大臣
  171. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) まだこの特別会計に積立金があるわけでございます。そういう点も勘案いたしまして、一般会計、この特別会計の事業の仕方、それぞれ総合勘案して対処すべき問題であろうかと思います。
  172. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 まだ納得できませんが、次に、時間の関係で前へ進みます。  初めに総理にお伺いしますけれども、あなたは衆議院議員に当選されて以来、風見鶏と言われながらも全力投球をいたしましてようやく総理・総裁の地位につかれたわけでありますが、あなたは弁舌も非常にさわやかでありますし、文人の側面もあられる。俳句も私は一級品だと思っておるわけでありますが、総理はよく俳句というのは十七文字というわずかなこの文字の中に、自分の思いのたけを凝縮して表現するのだと、こう言われておりますが、私もそうだと思うのです。  そこで、総理就任以来、さまざま問題になりましたいろいろな発言がございますが、これは総理の年来の思いのたけを短い言葉の中で凝縮して発言されたのではないかと私は思うのですが、どうですか。
  173. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 俳句と人と話し合うときの話とはまた別ですね。俳句は文学ですけれども、そっちの方は文学じゃないと思います。
  174. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 いままでの不沈空母あるいは四海峡封鎖、運命共同体あるいは憲法改正に対する長期プログラム、これはアメリカで発言されたようですけれども、これは総理の本音ではございませんか。
  175. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一括してそれらのことを一言で言うことはむずかしいと思いますが、大部分は比喩というものが多いと思います。
  176. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 いま総理がおっしゃったように、比喩であらうと修飾語であろうと、短い言葉で表現することはなかなか政治的な発言としてはむずかしいのだと、こういうことですね。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 言った時がまた違うのもございますし、また言う場合が違うのもございますから、一言では表現できにくいと思いますけれども、私がいままで言ってきたその精神に立っていることは間違いない。言いかえれば、憲法のもとに、日本は専守防衛に立って、非核三原則を守って、軍事大国にならずに日本の防衛を全うしていくと、そういう基本的な立場に立って、その上で比喩として用いたと、そういうことであります。
  178. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 総理発言は、これは反省していただきたいのですが、短い言葉で表現をして誤解を受ける。そして今度はこれ、長々としゃべればまたいいというものではありませんですね。長々としゃべっている間に巧妙に前言を訂正されているというような印象を受けるわけですよね。そういうことに対する反省というものはお持ちでしょうか。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どういう場合のことをおっしゃっているか、私いま想像つきませんが、私はいろいろ不徳のいたすところが多いと思っております。
  180. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 総理は、自民党の一年生議員だか二年生議員の集まりの中で、いままではどうもいろいろ誤解を受けてきたと、今度は安全運転で若葉マークの精神でいきたいのだと、こうおっしゃっておられているのですが、それは反省ではなかったのですか。
  181. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはわれわれの同志の間の話で、まあしゃにむに一生懸命初めはやってみたと、しかし腕前は実は若葉のまだ未熟運転のマークをつけているのがスピードを出しているものだからみんなはらはらしたのだろうと思いますというような趣旨のことを言ったと思いま す。
  182. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 総理はまた、茶の間に語りかける政治と、こう言われている。事実、本会議やこの本予算委員会の討論を活用しというか、これに藉口して、テレビなどを通じて意識的に茶の間にあなたの考えることを一方的に流してきた、そのように私は思っているのですけれども、一方的にあなたの発言が茶の間に押しつけられていくと、こういうことになりませんか、その点をお伺いします。
  183. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 必ずしもそうとは思いません。私は、できるだけ国民の皆さんにわかりやすいように自分の考えを申し上げているわけでございますが、いままで余りそういうようなことがなかったらしいので、そういうような意味でわかりやすい話を申し上げると必ず手紙が多く参っております。それを読んでみまして、自分なりに、支持を受けたりあるいは批判を受けたりしていることはありまして、反省もし、または勇気を持つということが多いので、これがやはり国会と茶の間を直結させる政治で、民主政治としては非常に好ましい方向へ転回してきていると思っておる次第であります。
  184. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 茶の間では、一方的に総理の見解を押しつけられるのは本当は迷惑がっているのですよ、ときどきテレビを通じて閣僚の居眠りまで届けているわけですからね。これは私は、本当の民主主義というのは、むしろ茶の間に一方的に自分の見解を押しつけるのじゃなくて、茶の間の声を聞いて政治に反映する、そういうことでなければ——政府というのは相当の情報量を持っているわけですから。したがって、それをテレビを通じて一方的な発言を流すということは、逆に世論操作にもつながってそれはファッショへの道にもつながる、そういう危険性があると、こういうようにお思いになりませんか。
  185. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、やはり政府というものはできるだけ国民の皆さんに自分の考えを申し述べて、国民の御批判をいただき、あるいは賛成、反対の論を巻き起こすというのが民主政治の上から好ましいと思っておるんです。私は、そういうこともある程度意識もあって、できるだけわかりやすいように皆さんに語りかけるつもりでここで御答弁もしておりますが、テレビを聞いていらっしゃる皆さん方は、わりあいに世論調査等を見ましても賛成、反対がはっきりしてきておる。賛成の人は賛成、反対の人は反対、何だかわからないというのは非常に減っておるわけです。これは私は非常に民主政治の前進のためにいいことだと、そういうふうに考えております。
  186. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは別の観点から総理発言に関連してお伺いしますけれども総理は、自分の国は自分で守る、これはもう当然でありまして、そのための防衛力を積極的に整えるんだ、こういうことですが、早期に防衛大綱の水準を達成したいと、そのために五六中業達成に全力を挙げるんだと、その考えにお変わりはございませんか。
  187. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) できるだけ早く防衛計画の大綱の水準に達したいと、その前提として五六中業を充実さしていきたい、そういうふうに考えております。
  188. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 防衛庁長官、いまの問題でどう考えますか。
  189. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) わが国の防衛力の整備につきましては、総理からたびたび御答弁ございましたように、防衛計画の大綱の水準をできるだけ早く達成いたしたいと、こう考えておるわけでございます。  なお五六中業に関しましては、五十六年、五十七年、二年かかりまして作成をいたしまして、五十八年——ただいま御審議いただいておりまする予算を初年度といたしまして、これを防衛計画の大綱を達成するための業務の見積もりとして国会へ提出さしていただいて、ただいま御審議をいただいている、こういうことでございます。
  190. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 防衛庁にお伺いしますけれども、五十八年度の防衛予算いわゆる二兆七千五百四十二億円、対前年度六・五%の伸び、これは五十七年度価格に戻したときに一体幾らになって、実質伸び率は対前年度幾らになるのか、お伺いします。
  191. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 五十八年度の防衛関係費二兆七千五百四十二億円を五十七年度価格に直す、すなわちGNPのデフレーター一・〇二一というものを採用すれば、大体二兆七千億円程度というふうに考えております。伸び率は四・三ということでございます。
  192. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私の計算によると、五十八年度予算は、五十七年度価格に引き戻して考えると二兆六千九百七十六億円、まあ大体合っています。実質伸び率も四・三%、そのとおりでありますが、防衛庁が五六中業作成時に行った試算によりますと、中業達成に必要な費用は低い見積もりで十五兆六千億、高い見積もりで十六兆四千億円、五十七年度価格でそういうようになっていますね。
  193. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 御承知のように、五六中業の中身というのは、私どもが正面経費、正面装備というものを中心に積み上げてございまして、ただいま御指摘の十五兆六千ないし十六兆四千という数字は、その他後方関係費であるとか、人件・糧食費を含めてありますが、これは私ども非常に大まかに一つの試算をしたことでございまして、これが正確な、非常に精緻に積み上げた数字でないという前提に立てば、いま先生がおっしゃったとおりでございます。
  194. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そこで、この十五兆六千億、十六兆四千億から、五十八年度の防衛費を五十七年度価格で計算したさっきの分、これを引いた残りの分を四年間で達成するとすれば、各年度の低い見積もりと高い見積もりの額はそれぞれどのぐらいになりますか。
  195. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 先ほども申し上げましたように、五十八年度予算を五十七年度予算に換算いたしまして、その分を引いた残りを五十九年度以降四年間で、たとえば仮に等比で伸ばすというふうな計算をいたしますと、十五兆六千億円の場合には、五十九年度が二兆九千億円、六十年度は三兆一千億円、六十一年度は三兆三千億円、六十二年度は三兆六千億円。それから十六兆四千億円の場合には、五十九年度が約三兆円、六十年度が三兆三千億円、六十一年度は三兆六千億円、六十二年度は三兆九千億円ということでございます。
  196. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 大体、端数を省いておりますので、私の計算と同じであります。  その場合の低い見積もりと高い見積もりの平均の伸び率は、実質でそれぞれどうなりますか。
  197. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 低い方が平均伸び率が七・三、高い方で九・八%と、こういうことでございます。
  198. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 これも私の計算と同じであります。仮にこの五六中業期間中の物価上昇率を、経済審議会が一月十三日に提出した経過報告において示している名目経済成長率と実質経済成長率の中間値から求められるGNPデフレーターを二・四%の伸びとした場合は、低い見積もりと高い見積もりの名目の平均伸び率はそれぞれどういうようになるとお考えでしょうか。
  199. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) これも、これからの経済の伸びというのは、先般の一月十三日に出された一つの報告がございまして、これによれば実質三%ないし四%、名目にして五ないし七%と、こういうことでございますが、私どもこういった計算をしてみますと、GNPが、これはどうなるかわかりませんけれども、いま先生の御指摘のような数字が必ずしもあるわけでございませんが、たとえばGNPが実質四%伸びたというふうなことを推定すれば、いまの、先ほど申し上げた五六中業の試算額をそのまま単純に当てはめれば、一%を超すというような状況になっております。
  200. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 低い見積もりの名目伸び率は結局九・七%になりませんか。
  201. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ちょっといま質問を聞き逃しましたが、先生の御指摘は、防衛費の伸び がどのくらいの伸びで年率伸びるかと、こういう御質問であれば、先ほども答弁申し上げたように、平均で七・三、高い方は九・八、こういうことでございます。
  202. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 名目でいきますと、それが低い見積もりの場合は九・七、高い見積もりでいけば一二・二%、このようになるわけですね。  そこで、大蔵省にお伺いしますけれども、現在の財政のもとで、いまお聞きのとおり、毎年これだけの伸び率で防衛予算を伸ばしていく、確保できると、こういう自信ございますか。
  203. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 年々の防衛力の整備は、御案内のように、そのときどきにおける経済、財政事情等を勘案して、国の他の諸施策とのバランスを図りながら行っていくものでございますので、したがって、今日の時点において五十九年度以降の防衛予算というものに対しての伸び率の見通しを述べるということは、これは非常に困難なことであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  204. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 困難だという意味は、私が先ほど言いました九・七ないし一二・二%の伸びを確保していくということが困難だと、こういう意味ですか。
  205. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは予算の単年度主義とかそういうことから言って、いわゆる伸び率等についての見通しを述べること自体が困難な問題だと、こういうことであります。
  206. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そういう言い方はおかしい。いままで私が議論をしてきましたですね、伸び率は大体そうならざるを得ない、それだけ伸ばしていかなければ五六中業は達成できないんだと、こういうことを言っているんですよ。したがって、今年度予算を引いた残りの四年度の間に確保しなければならない額が、きちっとこれは決まったわけじゃないんですけれども、一応試算として計算されている。これを確保していかなければ達成できないんですよ。だから、私は言っているんで、それでは大蔵大臣、五十八年度の防衛予算の伸び率、名目六・五三、実質四・三%ですが、いまの財政状況からいって、この程度はまあまあ確保できるかもしれないと。どうですか、その辺は。
  207. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これもやっぱり来年度予算に対するあらかじめの予見をもって、この程度はまあまあ確保できるかもしれないということを申し上げるということも、私は困難な事情の一つに入るというふうに考えます。
  208. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それは確保できないととっていいですか。わからないんだからできないだろうと。
  209. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは御案内のとおりでございまして、私どもも毎年予算編成に対しましては、それはその都度の経済、財政情勢というようなものを勘案して、ほかの施策とのバランスをとりながら総合的に調整をして、内閣一体の責任で御提案申し上げるわけでございますから、あらかじめ予算をもってそういうことが可能であるとか、可能でないとか、伸び率の見通しを述べるということ自体が私は困難な問題ではないか。事実今日までの防衛費の伸びを見ましても、予算総額が四十倍、あるいは社会保障八十倍、防衛費も二十倍というような形で、この二十五年間見ても伸びてきております。しかし、それもその都度の財政事情によって変化等もありながら今日に至っておるということでございますので、あらかじめ長期を予見したことでその数字の上で否定するとか、あるいはまた肯定するとかいうべき性格のものではないじゃないかというふうに考えます。
  210. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 長期じゃないですよ。これはたった四年か五年の間の話じゃないですか。そんなことが予見できなくて、大事な防衛力をつけようと総理も積極的にそういう発言をされてきている。それがわけがわからないと、財政的にどのように確保できるのかわからぬと、こんな無責任なことありますか。
  211. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 大蔵大臣が御答弁なさいます前に、ちょっと私から。  私ども防衛庁といたしまして、財政当局に対する予算概算の要求のたてまえ、立て方についてちょっと御報告、御説明をさせていただきたいと存じます。  まず最初に、五六中業の完成についてのお話につきまして、先ほど来政府委員が御答弁申し上げている問題の中に、こういうことが一点ございますので、それは重ねて私がいまここで申し上げさせていただきますが、それは私どもといたしましては、五六中業をつくり上げていくまでに、正面装備については相当精緻に積み上げてございます。しかし、先ほど政府委員から答弁させていただきましたように、防衛庁総予算というのは必ずしもその金額だけではございません。その他金額も当然予算時には財政当局と折衝しながら予算をつくっていかなきゃならないということが一点ございます。  それから、先ほど出てまいりました数字は、五十七年度物価政府の決めてありますデフレーターを掛けて、その他の経費は精緻に積み上げていないけれども、こういう傾向であればこうなるかもしれぬという形で計算を出して、そして先ほどの答弁になっております。  なお、私は防衛力の整備につきましては、これを財政当局へ提出する責任者でもございますが、先ほど委員が現在のような形でいったらこの程度の数字でいかなければならないはずだが、それが獲得できなければもう五六中業はギブアップだろうかというような意味の、これは達成できないんじゃないかという趣旨の御発言がございましたが、実は私はそうは考えておりません。これからわが国の経済の状態を見なきゃいけませんし、先ほど大蔵大臣の御答弁にございましたように、単年度でございますから、各年度ごとにどういうような予算要求を対大蔵に対していたすかはまだ決めておりませんが、その都度努力をいたしてまいりまして、いろいろと財政当局と知恵を出し合ってまいりまして、私は五六中業は、大変むずかしいいま財政の状態になっておりますので、なかなか大変なところではございますが、これをもってもう五六中業は達成不可能という判断には立っておらないわけでございます。  以上、ちょっと私どもが財政当局に対しまする概算要求の姿勢について申し上げさしておいていただきたいと思います。
  212. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 経済情勢がこの四、五年の間に急激に、あるいは財政情勢がよくなる、後でこの問題について触れていきますけれども、そんな情勢じゃないですね。とすれば、私が先ほど言いましたように、九・七%から一二・二%という、こういう高い防衛費の伸びを確保するなんということはとても不可能。  そこで、総理にお伺いいたしますけれども総理、私が前段に申し上げましたけれども、不沈空母発言を初めといたしまして、わが国の防衛努力を強調されてきたわけですね。そういうことを強調されていますけれども、五六中業の達成も実はあいまいもことしてできない、可能性が薄い、こういうことになれば、総理発言というのは全く実のない発言になってしまうのではないか、こういうように思いますが、いかがでしょう。
  213. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛計画大綱の水準にできるだけ早く近づけたいということを私は言っておりまして、その一過程として、五六中業の問題も考えられるのであります。この方針には変わりはございません。
  214. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そうなりますと、私が言いましたような計算に基づいて、不確定の要素がありますが、あと四年間の防衛費の伸びについて九・七から一二・二%ぐらいは何としても確保してあげたいんだなと、こういうお気持ちがあるんですか。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 具体的な数字のことは私はまだよくわかりません。一般論として、政策として申し上げておるのであります。
  216. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 一般論として、政策論と言っても、私のいま提出しました——提出というか述べました資料によりますと、五六中業は予定したとおり絶対に実行できないんだと、こういうことでございますから、その点は総理も頭に入れながら今後の運営をやっていかなければならぬのではな いか、こういうように思います。  次に、財政再建について、これは大蔵大臣にお伺いしますけれども大蔵大臣はあらゆる場合に、いままで政府は財政再建という言葉を使ってきたはずですね。そして、大蔵大臣自身も十二月三日の財政演説、臨時国会の場におきまして、今日ほど財政再建が国民の支持を得ているときはない、こういうように述べてきましたですね。この考えは変わりはございませんか。
  217. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本認識は変わりません。
  218. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それで、重ねてお伺いしますが、わずか一カ月足らずのうちに、今度は一月二十四日の財政演説において、それ以降財政再建という言葉は全く姿を消してきたのは何ゆえですか。    〔委員長退席、理事長谷川信君着席〕
  219. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、昨年の十一月の暮れに大蔵大臣を拝命いたします際に、総理から行財政改革、この二つの問題についての就任に当たっての約束が取りつけられたわけであります。そのとき総理から、特に財政改革という言葉をお使いになりました。私も直ちに就任の記者会見に財政改革という言葉を使ってみました。幾らか翌日の新聞にどのような形で出ていくかということに関心を持っておったわけでありますが、基本的には財政再建も財政改革も私は財政の対応力を回復するという意味においては一致すると思うんであります。ただ、従来の財政再建という物の考え方がいわば既存の制度、施策を前提の上に置いて赤字国債からの脱却というところに財政再建というものの、どちらかと言えばこのウェートが一般的にもしみ込んできた、したがって、やっぱりこれからは歳出構造そのものにメスを入れなきゃならぬという意味において、財政改革という言葉を使うことにいたしたわけであります。それに基づいて財政改革に当たっての基本的な考え方というものも当予算委員会へ提出さしていただいて、今日審議の手がかりにお使いをいただいておると、こういうことであります。
  220. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 いまのこの理由はさっぱりわかりませんですね。その赤字国債依存からの脱却時期に重点が置かれているイメージがあると、だからこのイメージを払拭するために用語を変えたと、こういうことはとうてい納得ができませんですね。五十九年赤字国債依存からの脱却に異常に固執してきたのは大蔵省自身ではなかったですか。そして、収支じりを合わせるだけの財政再建を行ってきたのが大蔵省自身ではなかったんですか。どうですか。
  221. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは昭和五十四年でございましたか、大平内閣の際に五十九年赤字国債脱却というめどが立てられて、それに固執し、精いっぱいの努力をしてきたことは事実であります。
  222. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 いまこそ財政再建が国民の支持を得ているときはないと、こういうように大みえを切っていながら、みずから侵した論理を棚上げし、みずからが終始取り続けてきた諭理と全く反対の論理を理由として、しかも国民にいささかもわびることなく手前勝手に用語を変更することは国民をばかにしているんじゃないですか。陳謝と反省を求めます。いかがです。
  223. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 陳謝して済むことであり、反省して済むことならそれは一向に構わぬことでございますが、そういう別にぎりぎりした物の考え方でなく、まさにこの新しい心構えでもって歳入歳出両面にわたる構造というものにメスを入れるというために、私は財政再建の物の考え方をさらに一歩進めたものであるという認識の上に立っております。
  224. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 きょうの本会議総理答弁されておりましたが、五年ないし十年の間にやるんだと、こういうわけですが、その間に財政再建が本当にできるとお思いですか。
  225. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはやらなきゃならぬ課題であると思っております。
  226. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 その問題で関連してお伺いをしておきますけれども、「財政の中期試算」、A、B、C案出ましたですね。どの案をとって見ても大変な要調整がある。これだけの穴埋めはできますか、この間に。
  227. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは穴埋めはできるかと、こうおっしゃれば、もとよりこの中期試算そのものについて、仮定計算に基づくものでございますにいたしましても、そのための努力は当然のこととしてやらなきゃならぬ課題であると思っております。
  228. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 現在の財政の苦しさを、これを何とかしていかなきゃならぬという場合には、歳出の見直しか、借金か、増税か、三つのうちしかないんですが、この穴埋めですね、歳出カットだけでできるとお考えですか。
  229. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはやはり私は、臨調の答申にも言われておりますように、まず糧道を断つという考え方でもって、いわゆるこの歳出の構造にまでメスを入れろということにまず取りかからなければならない課題であるというふうに考えております。
  230. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それは糧道を断つんじゃなくて、糧道を断ちたいというだけだと思うんだね。  そこで、大蔵大臣は二月十四日の衆議院予算委員会で、五十六年度予算編成時に参考資料として示した五十八年度の歳出規模が五十八兆三千億だと、それを五十兆三千七百九十六億円にした、したがって、約八兆円の歳出が何らかの形で抑制されたんだと答弁されていますが、事実ですか。
  231. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が申しましたのは、いわゆる、その当時は中期試算でなく中期展望でございました。これだけの乖離のあるものであるということは、まさにそれをつくられる前提そのものが仮定の前提の上に立っておるものであると。しかし、たとえばこれを素直に見てもそれだけの乖離が生じておると。これはもちろん中には当然のこととして、いわゆる地方交付税でございますとか、そういうものの、意識してメスを入れたというものでないものもございますので、しかし、中にはそれぞれ見てみますとそれなりの三角が、減額された一般歳出もあるということでごらんいただければ幸いであると思います。
  232. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 八兆何がしという歳出が何らかの形で抑えられたというのは、これは大蔵省自身の積極的な歳出カットの努力で行われたものだと思いますか。
  233. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 必ずしもそうだとは思っておりません。
  234. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 まさにそのとおりでありまして、八兆円のうち八割というのは、これは言うならば自然減のようなものですね。地方交付税の減が三兆四千四百億、公共事業の減額一兆一千七百億、予備枠分一兆七千五百億円、こういうものは要するに積極的に歳出構造は切り込んだ結果減ったものではない、抑制ではなくて自然減と言うべきものですね。こういう状況で、要調整額が大変出ているという段階において、これからこのようなやり方で歳出カットなんというのはとても不可能だと思いますが、いかがでしょう。
  235. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる五十六年度の中期展望の主要経費別のものを当時お出ししておったわけでございますが、それに伴って社会保障、文教、それから公共事業にいたしましても、さらにその他の事項経費等々、それぞれ減額になって、俗に言う予備枠というようなものから減額はされておると。ただ、私はこの点については、いわゆるこの中期展望の際出した主要経費別の数字そのものに対してたとえばの話であって、これが大変な一つの予算のめどというものであったとは言えないという気持ちは持っております。
  236. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 よくわかりませんが、それではお伺いしますけれども、臨調はかねてからこの緊急避難措置をやめて、徹底的な歳出構造の見直しをせよと、こういうように指摘されておるわけですが、五十七年度に後年度に繰り延べ措置をとったものは何と何であって、その総額は幾らになりますか。
  237. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) この委員会でも何遍も申し上げておりますが、財政運営を円滑に進める に当たりましては、負担の平準化措置を行っていく必要もあるわけでございます。そういう意味でお答え申し上げますが、五十七年度におきましては、まず、厚生年金等の国庫負担金の繰り入れの特例をやりました。これは臨調答申に基づく行革関連特例法によるものでございます。それから、住宅公庫法に基づきまして、同公庫に対する補給金の一部繰り延べを行いました。この理由も昨日当委員会で申し上げたとおりでございます。それから、細かい点でございますが、外航船舶利子補給の一部の繰り延べを行っております。
  238. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 総額幾らですか。
  239. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) この厚生年金が約二千億、それから住宅公庫が約五百億、外航船舶の利子補給が約三十億でございます。
  240. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 答えになってない。総額幾らと聞いているんです。
  241. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) いまのを合計いたしますと二千五百三十億でございます。
  242. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それは詭弁ですな。経済企画庁が「昭和五十七年経済の回顧と課題」という中で、一月十九日に出した資料によりますと、「五十七年度については、約八千億円の後年度負担が発生しており、」と、こう書いてあります。うそですか、これは。いいかげんなことを言うな。進められぬぞ、これじゃ。経企庁の調査に出てるじゃないですか。一月十九日「昭和五十七年経済の回顧と課題」の中に書いてある。
  243. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 突然の御質問でございますので、五十七年度の回顧に記載してあるかどうかいま調べているところでございます。
  244. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 こんなもの、何もごまかして言うことないのよね。
  245. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 確かに、先生御指摘のとおり、「昭和五十七年経済の回顧と課題」の中で、「五十七年度については、約八千億円の後年度負担(厚生年金等に対する国庫負担を一時的に減額し、財政負担を後年度に繰り延べる措置等)」となっておりまして、ただいまの主計局長の御答弁と内容が一致しているかどうか、私ども現状では必ずしもはっきりいたしておりません。
  246. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 何言ったかわからないね。主計局長答えてください。
  247. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) この企画庁のお答えの八千億円というのは何を根拠に言っておられるのか、私も存じませんが、ここに書いてございます「(厚生年金等に対する国庫負担を一時的に減額し、財政負担を後年度に繰り延べる措置等)」というのは、先ほど私が申し上げました行革特例法に基づいて行った分でございまして、この後年度へのはね返りの効果は約二千億と、こういうふうに申し上げたとおりでございます。
  248. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 わかりませんな。そのようなごまかしを常にやってきている。しかもこの八千億円と、項目がありますから——これは時間がないから言わないだけですよ。そして八千億円ですよ。これは、例の定率繰り入れの停止の額は一兆二千億、入っていないんですよ。合計すればやっぱり二兆円以上の後年度負担が生じているんじゃないですか。
  249. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 当委員会に提出いたしました資料にも、先ほど私が申し上げましたように、厚生年金等の分が二千七十二億、端数をつけて申し上げますが。それから住宅公庫補給金が五百十七億、外航船舶利子補給の分が三十四億、これは五十七年度分でございます。五十八年度分についても、その資料には載っておりますが、御質問があればお答えいたしたいと思います。
  250. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 五十八年度、答えてください。
  251. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 五十八年度分でございますが、厚生年金等の国庫負担繰り入れ等の減額、これは先ほど申し上げました法律に基づく分、これが二千四百二十一億。それから住宅金融公庫補給金の一部繰り延べ七百七十八億、それから外航船舶建造融資利子補給金の一部繰り延べ五十三億。それから、今年度は新たに国民年金特別会計への国庫負担金の繰り入れの平準化、これは三千百八十億。これは今国会法律案を提案して御審議をいただいている最中でございます。
  252. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 さっきの私が言いました自賠責のやつはどうなっているんですか。
  253. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) これは歳入の問題でございますので、負担の平準化という問題ではなかろうと思います。
  254. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 これらも後年度負担を繰り延べたことなんですよ。したがって、国債への定率繰り入れの停止一兆三千九百七十三億円といまあなたが言われましたもろもろのものを入れて、主要なものですね、少なくとも主要なものなんですが、計二兆二千九百十二億円を後年度負担に回しているんです。これは実質的な赤字国債じゃないですか。
  255. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 五十八年度の例で申し上げますと、この委員会に提出いたしました負担の平準化措置、これは、もう何回も申し上げましたように、財政運営に当たっていろんな意味での負担の平準化ということは心がけなければならない、それをやっているということを申し上げております。  それから、定率繰り入れの停止を今年度はまたお願いしているわけでございますが、この赤字公債発行下で定率繰り入れを継続いたすといたしますと、結局は、ことしのような財政状況でございますと、赤字公債を発行して定率繰り入れをするということになるわけでございまして、確かに定率繰り入れの負担がなくなったということにはなりますが、逆に赤字公債の負担が残るということになるということなんでございまして、ただいまのような赤字公債発行下ではございますけれども、それを停止したことが、直ちに後にツケを回したということにはならないと思います。
  256. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それも詭弁なんですね、いまの。赤字国債を増発しなければならないと、こう反論されますけれども、たとえば五十八年度にそれを停止しても、これは後年度に負担を先送りしたことになるんじゃないですか。後年度になったらまたそれを、その財源を探さなきゃいかぬわけでしょう。いま探すか、後で探すかの、後年度送りじゃないですか。そんな詭弁は通じないよ。いずれどこかで財源を探さなきゃいかぬ。
  257. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ただいま御指摘の点の半分は確かにそうなんでございまして、後年度の財政負担がふえるというのは御指摘のとおりなんでございますが、しかし、いまのような財政状況で仮に定率繰り入れを実施するとすれば、結局その分だけ赤字公債を増発せざるを得なかったであろうと、こう思うわけでございまして、これに伴う利払い、償還のための後年度負担が同様に増大するということになるわけでございます。
  258. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 だから一緒なんですよ。  配付した資料、これを見ていただきますが、定率繰り入れを停止した場合の後年度の支払い額、予算への繰入額、それから停止しない場合のものを書いてあるわけですが、これは一枚目も二枚目も六十三年以降は同じ額なんですよ、繰入額は。しかし、いまのように後年度に延ばして、繰り入れを停止した場合は、一枚目の紙にありますように、六十一年度、六十二年度は繰入額はこれだけ膨大になる、こういうことですね。これだけのものを一体財源をつくれるのかどうか、その辺のところ、大蔵大臣、お伺いします。
  259. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 資料をただいまいただきまして拝見いたしましたので、大体この資料は、私ども提出いたしました「国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算」と前提をほぼ同じくされての計算であろうかと存じます。ただ私どもは、五十八年度は現実の予算、それから五十九年度以降は中期試算、これも別途お出しいたしました中期試算に基づいて、前提を置いてやっているわけでございますが、この定率繰り入れを五十八年度においても仮に行うという——二枚目の表でございますね。ということになりますと、これの償還というのがやっぱり将来の問題として出てくるわけでございまして、恐らくその点がこの表では欠けているんじゃないかなあと思います。逆に、第一表の方でございますと、五十九年は私 どもは定率繰り入れをするという前提で中期試算をお出ししておりますが、これはしないという前提に立っておりますので、その点も変わってくるんじゃないかと思います。
  260. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 大蔵大臣、五十九年度以降は定率繰り入れ停止はやめると、こういうことですね。
  261. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十七年及び五十八年度におきましては、国債整理基金への、資金繰り上げ公債の償還に支障のないということから、定率繰り入れを停止することとしました。そして、五十九年度以降の取り扱いにつきましては、今後の財政事情、国債整理基金の状況等を勘案して、中・長期的にこれは決めたいと、こういうことになっております。
  262. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そうすると、いまの違いますね。
  263. 竹下登

    国務大臣竹下登君) だから恐らく仮定計算は、わが方がお出ししたものは五十九年度以降は定率繰り入れをしたものでお出ししていると思います。ちょっとお待ちくださいませ。——そのとおりであります。
  264. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それ以後は今度は定率繰り入れの停止はやめますということですか。
  265. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的に私どもはそういう仮定計算でお出ししておるわけです。どうするかと、こういうことになりますと、基本的には——これはいろいろ議論しました、実際問題。    〔理事長谷川信君退席、委員長着席〕 それだけ赤字国債の増発そのものにつながるんじゃないかと、結果として。そうして、諸外国の例も余りないじゃないかとか、いろんな議論をいたしましたが、やはりそういう姿勢を保つことが安易に陥らないだろうということから、一年一年この国会でも提出して御審議をいただくと。したがって、五十九年度以降も中・長期的に改めて検討しようと。お出しした資料は定率繰り入れの停止はしないという前提のものをお出ししておると、こういうことであります。
  266. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 資料は出してあるけれども、やるかやらぬかはわからぬと、こういうことですね。
  267. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、いわゆるここで二年間、一年一年の刻みでお出ししたと。したがって、今度は中・長期的に検討してみようと、こう思っておりますが、いまの議論の過程においては、やはりそうした一つの歯どめがイージーに陥らないものではなかろうかと、こういうふうな考え方には立っておりますが、いずれにしても、これは中・長期的に検討してみようという課題であります。
  268. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは、景気対策についてお伺いをします。  茶の間の国民がいま政治に対して、総理、切実に求めているものは何だとお思いになりますか。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 減税、景気、物価、校内暴力の排除等であります。
  270. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 したがって、いまそのように求めている国民の声なき声というか、茶の間の声、どのようにしてそれを実現をしていこうと考えておりますか。
  271. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それらをよく見張っておりまして、校内暴力につきましては、内閣、自民党一体になっていま対策に乗り出しておるわけです。特に卒業式を控えまして、教育委員会ともよく連絡をとるように指示しておるところであります。それから減税については、先般、与野党合意が形成されました。それから物価は、石油の低落をてこにしてひとつ安定にますます心がけたいと思っております。それから景気の問題につきましても、予算が成立をいたしましたら、この石油の低落をてこにして、財政資金を余り使わないで知恵を使った、言いかえれば規制解除という方面等に力を入れて、民間の活力を大いに引き出す形で景気の問題にも取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  272. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そこで、景気の現状認識についてお伺いをしたいんですが、大蔵大臣、経企庁長官、これからの景気の動向並びに今日の景気の現状認識についてどのように考えられておりますか、大蔵大臣と経企庁長官にお伺いします。
  273. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 景気の現状認識でございますが、ここでもたびたび申し上げましたように、現在世界経済の回復過程に応じながら、日本でも在庫調整が進み、だんだんと回復過程に向かうと思っておるところでございますが、なお消費あるいは設備投資その他の点におきましては大変厳しい面がある。輸出は、世界経済の影響を受けましてずっと低下の傾向であるところでございますが、しかし一方、原油の値下がり、さらにまたアメリカの金利の低下傾向、そしてまた円高の傾向、さらにまたドイツの公定歩合の引き下げ、このような新しい明るい事情もあることはもう御案内のとおりであります。
  274. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 政府としての統一した考え方は、いま経済企画庁長官からお答えしたとおりでございますが、確かに私は、まあ物価、確かにこれは数字で見る限りにおいて世界でずば抜けてこれは落ちついております。それにさらに原油の問題、また円高基調とでも申しますか、円安基調から円高基調へ推移したというような表現の方が適切かと思いますが、そういうことからして、私は個人消費に支えられた内需中心の成長に移行するというふうな見方をしておるわけでございます。輸出の問題については経済企画庁の長官と認識を等しくいたしております。  これからの問題につきましては金融の問題があるでありましょう。西ドイツの公定歩合の引き下げでございますとか、それも〇・五とか、われわれが予測しておったものが一%とか、そういう問題もございますが、アメリカの方も一応期待感ほどには進んでおりませんものの、かつての金利の乖離は縮まっておるというようなことから、これはやっぱり高度経済成長になれた私自身の感覚の問題は別として、なだらかながら回復基調の方向に行っておるという現状認識ではないかなというふうに考えております。
  275. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私は、しばしば大蔵省と経企庁との間に景気の現状認識について微妙な食い違いが生じておる。ここに二月二日と三日、たった一日違いの資料ではございますが、いまの現況とは違いますけれども、その当時の現況を経済企画庁調査局が出している「地域経済の現況」、それから、二月二日には全国財務局長会議大蔵省が出した情勢報告、これについてどのような報告をされておるのか、特に景況について双方から御答弁をいただきたい。
  276. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) ただいま御指摘の地域経済調査の概況報告につきましては、私どもの担当官が全国各地に派遣して調査結果をまとめたものでございますが、私がいま申し上げましたような経済の概況を地域的に、若干深刻なようなところもあるようでございますが、厳しいような情勢を報告したものではございます。
  277. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 財務局長会議報告というのは、これは私も出かけましたが、全国の財務局長が地元経済界からのヒヤリングや財務局による調査を踏まえてこの報告をまとめて、そして経済情勢を判断する有力な材料とすると、こういうものでございます。したがって、私も聞いておりましたが、財務局というもののヒヤリングをする対象というものは、なるほど大蔵省らしい対象を選ぶものだなと、こういう感じはしました。したがって、ヒヤリング先の違いということはあろうかと思えますけれども、両報告を指摘を受けまして比べてみますと、景況判断等はよく似ておって、そう大きな違いがあるという認識には私は立っておりません。
  278. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それがおかしいのです。経済企画庁の分析は各地区の経済は総じて停滞ぎみであり明るさがない、大蔵省は全体として落ちついた推移をたどっている、こうなっている。停滞ぎみと落ちついた推移というのは変わりがありませんか。
  279. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 停滞ぎみであり、そしてわが方はたしか総合的には回復は足踏み状態が続いておるというような総合評価をしておったと思います。  ただ、私が先ほど申しましたように、ヒヤリン グ先の相違というのがあるなという感じがしますのは、わが方はやはりどちらかというと、いわゆる金融サイドのヒヤリングというものにウエートがかかるものだなと、これは私が素人なりにそういう直感がしたということを申し上げておきます。
  280. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私も両者対比をしましてよく読んでみましたが、基本的な認識において大差はないと見ておるところでございます。ただ、表現の仕方がいろいろ違っておる、ニュアンスの差が違っておるためにそのような印象を受ける、あるいは竹下大蔵大臣が言われましたように、金融サイドの見方が少し反映を強くしているんではないかというような点から差があろうかと思うんでございますが、それは多分にニュアンスの差であって、基本的な認識はそんなに差がない、こんなふうに私は見ております。
  281. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それはちょっとまたうそを言っておるようなもんで、その大蔵省が出した資料に対して、経企庁はそのとき、大蔵省はいいところばかり摘出して、甘く見ているんだと、こういうことを発言しているんじゃありませんか。
  282. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) よく論文等には、大蔵省と企画庁の見方が違うとか、通産省とまた企画庁の見方が違うとか、大変おもしろくおかしく書いてあるようなこともございまするけれども、私は、基本的な認識にそんなに差がない、多分にいま申しました見方が、金融界から見た見方が少し多いんじゃなかろうかというぐらいの差でございますし、私は大蔵省出身でございますから、事私に関しては基本的な認識は差異はないと考えております。
  283. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それは違うんですよ。したがって、現況認識が違えば対策が違ってくるんですよ。そういうことがありますので私は聞いておりますが、総理は、このようにしばしば違いがあると思うんですよ。雇用情勢だとかさまざまな問題をこれから質問しようと思ったが、もう時間ありませんが、そういうものをどう調整されてやっていくのか。それでなきゃ対策が立たぬじゃないですか。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 終局的には内閣という名前において統一するようにいたしたいと思いますが、政策立案の過程ではいろいろな意見もあると思います。しかし、行政の統一は最終的には内閣において行うべきであると思います。
  285. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 最後に公共事業の問題でございますけれども、前倒しはどのような景気浮揚効果がございますか、経企庁長官
  286. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) この点につきましては、昨日発表いたしました昨年の十月—十二月の国民所得速報にはありますように、五十七年度の公共事業の前倒しの効果が四月—六月、あるいは七月—九月にあらわれておりますように、前倒しの効果は現実にあらわれ、しかし十月—十二月にはその下半期の空白部分の影響があらわれてあのような速報になったことからおわかりのとおりでございます。  なお、公共投資一兆円追加したならば幾らの乗数効果があり、さらにまたGNPに対してどのような影響があるかにつきましては、私どもの担当官から説明させていただきたいと思います。
  287. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 公共投資と所得税減税のGNPへの浮揚効果でございますが、先生よく御存じのとおり、その公共投資、所得減税をいたします際の経済的な条件と財政的対応によって異なりますけれども、私どもの世界経済モデルで試算いたしましたところでは、五十八年度におきまして一兆円の公共投資を追加を行いました場合に約〇・五%、同じく一兆円の所得減税を行いました場合に約〇・二%、それぞれ名目成長率を押し上げるのではないかというふうに試算しております。
  288. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 前倒しは確かに前にいいんですが、後で息切れしちゃう、こういう状況ですね。
  289. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  昨日発表いたしました国民所得速報では、そのような傾向が数値としてあらわれているように見受けられます。
  290. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 総理は、予算の成立をまって景気対策をやりたいと、こう言うんですが、いまの出ております確実な数字によると、公共事業の前倒しをやって、前は確かに効果がありますが、後半に息切れするために、もう効果が減殺されてしまう、こういう状況ですね。したがって、いまからやっぱり息切れしないような対策を立てていかなければどうにもならぬと思うんですね。その点のお考えをお伺いしておきます。
  291. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 伊藤君、時間が参りました。
  292. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、公共事業執行に関する会議は私が議長でございますので、私から申し上げますが、過去の——過去と申しますか、現状の五十七年のこの分析からすれば、いま経済企画庁から申されたとおりでございます。何分これからどうするかということにつきましては、まだ本院で予算が審議されて、そうしてしかもこれが総括質問中であるというときに、執行の問題を云々する段階では必ずしもなかろうと思いますが、一般論として申されたわけでございますので。  今日、私どもが気をつけておりますのは、昨年暮れに御審議いただいて議了していただいた補正予算、これがいまからその効果が出てくるんじゃないか、そうすると、場合によっては四、五月の、俗に言う、過去言われておった端境期というものはそれがなだらかに埋めていくんじゃないか、こういう見方も一方にあるわけであります。そうして、いままた一方、財政事情から見まして、下期に仮に公共事業の追加を行うというような形をとることは、これは無理であるという状態の中で、どのように絶えずなだらかな契約執行状態が続くための配慮をするかということについては、それこそ予算が成立いたしましたら真剣に検討しなきゃいかぬ課題であるという認識の上に立っております。  ただ、いま御審議中の予算を、いつごろ通るであろうとかいうようなことを前提にした議論ではなく、一般論として受けとめていただきたいと思います。
  293. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは、時間がありませんので、終わります。
  294. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で伊藤郁男君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  295. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、前島英三郎君の総括質疑を行います。前島君。
  296. 前島英三郎

    前島英三郎君 防衛、外交、あるいは憲法、政治倫理、いろんな角度から討論されてまいりましたけれども、私は無党派クラブを代表いたしまして、特に障害者福祉につきましてただしてまいりたいと思います。  まず、総理の障害者福祉観、大変世評バターより大砲という中曽根さんというイメージが強いわけでありますけれども、一九七〇年代から八〇年代にかけまして、世界の障害者福祉観というのは一大転換を遂げたと私は思っております。これが国際障害者年、それがもう象徴しているだろうというふうにも思うんですけれども、わが国の障害者政策もその流れに沿ってそのあり方を切りかえてきているというふうに思うんです。  その内容面における最大のポイントは、障害者を社会に合わせるのではなく、障害者が他の市民と同様に生きていけるように社会と環境を改善することであるということでございます。これが新しい障害者政策の軸となる考え方であると思うんですけれども、こういう思想について、総理の障害者福祉観を含めまして、冒頭御答弁いただきたいと思うんですが。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、障害者に対する施策が、欧米先進国に比べてわが国はおくれていたと思います。それは、政治及び国民の障害者に対する認識が不十分であった。そういう意味において、欧米先進国に学ばなけりゃならぬ点がかなりあったと思います。欧米先進国において学ぶ 点といえば、いま前島委員がおっしゃったように、社会環境を整備する、また、障害者に対する意識というものを普通の人間が改めていく、そういう点であると思います。  そういう点につきまして、国際身体障害者年というものは非常に効果があった、貢献した、そういうふうに思います。わが国も急速にそれ以来施策を進めてまいりまして、認識も改まり、また施策も社会的にある程度進んできてまいっておりますが、必ずしもその認識の点、施策の点において、まだ十分であるとは言えないと思っております。われわれはその点についてさらに一層精力的に努力していかなければいけないと思っております。
  298. 前島英三郎

    前島英三郎君 お言葉ではその施策に努力をする、こういうことでありますが、総理の所信表明演説を私聞いておりまして、障害者の問題にも言及されておりました。しかし、所信表明演説の論理構成を、国民一人一人の積極性を引き出すことの重要性を強調しながら、障害者等の社会的に弱い立場にある人々はその仲間ではなくって、単にその対象者としての位置に置かれているという表現に感ずるんですね。これは、配慮は確かに必要なんですけれども、しかし、それはともに積極性を発揮して、ともに地域の中で、ともに生きていけるようにあるべきではないかとも私は思うんですけれども総理はどう思われますか。
  299. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本的には人間というものはみんな生きる意志があり、また能力を一〇〇%発揮しようという本能を持っております。それを一〇〇%開花させるようにしてあげることが教育の中心であり、また社会施策の中心でなければならぬと思うんです。私が、「たくましい文化と福祉の国」ということを申しましたのは、やっぱり自主自立、それから連帯、隣人愛、こういうものをわれわれが一括して考えていく人間になろう。やはり子供の教育にいたしましても、自主、自立精神を養う、あるいは障害者の方にいたしましても、皆さん懸命に努力をしておられる、その努力、その自主、自立でいかんとする気持ちは非常に尊いものであり、そういう環境をつくってあげることがまた非常に大事である、そういうふうに私は思っております。  そういう精神で基本的には持っていくと同時に、それが本当の愛情だと私は思うんです。と同時に、本当に困っている方々については、体の丈夫な人間やお金を持っている人間がそれ相応の協力をするというのが社会のあり得べき姿でございますから、そういう点についてはわれわれも万全を期するように努力もしていこう、こういう意味でございます。
  300. 前島英三郎

    前島英三郎君 いまお言葉に家庭や自立自助をしきりに強調されておりましたけれども、この施策の全体を見ますと、総理のお言葉を聞いたりいたしますと、社会保障政策に関する国の責任をなるべく軽くしていこう、軽くしていこうというためにそういう表現をしてるんじゃないかという感がぬぐえないんですね。憲法二十五条は、国民の生存権を明示した上で、その第二項では、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」、とはっきり述べているわけなんですが、ところが、総理の演説を聞いた後の私の率直な感想は、国の責任というよりも、個人をはぐくんだ基盤としての国、いわば国の恩義を強調しているような気がしてならなかったわけです。これは何となく逆コースのような気がするんですけれども、私の考えは間違っているでしょうか。
  301. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、国の恩義がましいことを考えていることは毛頭ございません。  ともかく、最初に申し上げましたように、一番の基本は、自主、自立という人間が本来持っているその力を引き出してあげる、あるいは一〇〇%発揮できるようにしてあげる、それが一番中心である、そういうふうに思っております。しかし、それでもできない、困難な環境にある方に対しては、われわれもできるだけの協力を差し伸べるというのがあたりまえのことでありまして、そういう基本的考えと、それから政府、あるいは社会として行うべき施策というものと、精神的な面と、それからいま言ったような政策の面と、両方立てでいこうと、そういう考えでおるわけです。  具体的には昨年策定いたしました長期計画を、これを着実に遂行していくと、こういうことが当面のわれわれの施策であると思っております。
  302. 前島英三郎

    前島英三郎君 長期計画につきましては後ほど触れてみたいと思うんですが、いずれにいたしましても、私は、本当の先進国というのは、その国にすべての人がどれだけあしたに希望が持てるかという、そういう社会だろうと思うんですね。それと同時に、いま障害を持っている人も、決して自分が好んで障害者になったわけじゃありませんし、薬害、公害、交通災害、いろんな社会背景を見ますと、すべての人が障害者予備軍であるというとらえ方を私は基本に持っているわけなんですが、その中でも特に国の力が、あるいはいろんな意味での援助が必要という部分、本当に重度の人たちの問題というのは、私たちは、やっぱりしっかりと支えなければならない国の責務だというふうに思うんです。  そこで、重症心身障害児の問題につきましてちょっと触れてみたいと思うんですけれども、まず初めに、重症心身障害児とはどのような子供のことなのか、厚生省としての定義をまず伺っておきたいと思います。
  303. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お答え申し上げます。  重症心身障害児施設というのが、先生御案内のように、児童福祉法に規定がございますが、重症心身障害児というのは、重度の精神薄弱と重度の肢体不自由が重複している児童を言っております。ちなみに、重度の精神薄弱と申しますのは、知能指数がおおむね三五以下、日常生活に介助を必要とする。重度の肢体不自由というのは、身体障害者福祉法の等級で言いますと、一級ないし二級というふうに考えております。
  304. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は身体の面では一級ということになっているわけですが、精神発達の面での重い障害と、それから身体機能の面での重い障害をあわせ持つということであれば、これは重度心身障害児ということになるはずでございますけれども、重度ではなく重症という字句が入っているところが、常時医療の管理下に置く必要がある子供という意味であるというふうに私は聞いているんですけれども、そう解釈してよろしいでしょうか。
  305. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 昭和四十二年に児童福祉法が改正をされまして、重症心身障害児施設というのが定められたわけでございますが、この施設におきましては、重度の精神薄弱と重度の肢体不自由を持っている児童を入所させまして、治療及び日常生活の指導訓練を行うということでございます。
  306. 前島英三郎

    前島英三郎君 では、重症心身障害児施設の設置理念と目的はどのようなものであるのか、あるいはあったのか伺いたいと思います。いま、全国で国立が八十、それからそのほかが四十八というふうに伺っておりますけれども
  307. 正木馨

    政府委員(正木馨君) この施設が児童福祉法に定められましたのは、やはり重症の心身障害児につきましては、それまでの施設とは違った医学的なケア、それから指導が必要であるということで定められたわけでございます。  それから、この施設につきましては、先生御案内のように、重症心身障害児の場合には、それは大部分が先天的、あるいは出産時にこういう障害を持っている方が多いわけでございます。それから、医学的なケア、指導を行いましてもなかなか社会復帰が困難なケースが多いということで、重症心身障害児施設につきましては、子供から大人まで、児者一貫した処遇ができるというような施設になっております。  それから現在の施設数は、先生おっしゃいましたように、児童福祉法による重症心身障害児施設は全国で五十一カ所でございますが、そのほかに、これも児童福祉法に規定がございますが、国 立療養所に委託して治療、訓練を行うことができるということで、これが現在八十カ所ございます。
  308. 前島英三郎

    前島英三郎君 要するに、「収容保護し、常時医療の管理下に個々に適応した医療を行い、」そこで終身そこに入っているということではなくって、「その残存能力を回復させるとともに、生活指導および情緒面の指導により、人としての人格の形成を助長し、できる限り社会復帰または家庭へ復帰させることを目的として、総合的な療育」を行う、これは「国民の福祉の動向」という中の引用なんですけれども、こういう精神になりましょうか、どうですか。
  309. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お答えいたします。  先生のおっしゃるとおりでございまして、身体障害者の、あるいは重症心身障害児も含めまして、福祉を考えます場合には、最終的な社会復帰というものを理想にしていくということでございます。そういう観点に立って医学的なケア、指導が行われるわけでございますが、ただ重症心身障害児の場合には、症状が大変重いために、なかなかそういう社会に参加するということがむずかしいケースが多いということもまた事実でございます。
  310. 前島英三郎

    前島英三郎君 ところが、現状におきましては、重症心身障害児施設は実に大変な問題を抱え込まされております。  一つには、入所児童の恐らく半数以上が厚生省の定義に当てはまらない子供たちであるということ。二つには、そのことがわかっていながら厚生省は有効な対策を講じないために、園児の年長化という大きな問題が深刻になってきているということ。この二つの問題が重なり合いまして、現在各施設とも大変苦しんでおられる様子であります。苦しんで耐えているところはいいんですけれども、耐え切れずに、結果として入園している子供たちに、その入園者にしわ寄せがいってしまうというケースも出てきているというふうに私は思うんです。  実は私は、あるきっかけで島田療育園という重症心身障害児施設にかかわりを持つことになりました。この施設に入っている三十二歳のある女性が施設を出たいと言っているんだけれども、二十年以上この施設にいた女性なんですが、ところが、会ってみますと、大変しっかりしていて、重症児とはとても思えない。自分から外へ出たいという意思を持っている成人が重症心身障害児としての扱いを受けていざるを得ない。  この出会いをきっかけに調査を進めているうちに、さまざまな問題点が出てきたんですけれども、この島田療育園はどんな施設なのか、それから、理事長さん、管理の皆さんはどういう方々なのか伺いたい。
  311. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お尋ねのございました島田療育園でございますが、これは社会福祉法人の日本心身障害児協会というのがございまして、そこの経営する重症心身障害児施設でございます。この島田療育園は東京都の多摩市に所在をしております。  この施設の沿革を若干申させていただきますと、昭和三十六年に重症の心身障害児を収容し、指導、訓練を行うということで発足いたしまして、その後、先ほど申しましたように、昭和四十二年に児童福祉法が改正されまして、重症心身障害児施設が児童福祉施設になりましたが、そこに切りかわったわけでございます。  この島田療育園は、入所定員が二百二十二人ということで、現在百五十人入所者がおります。職員は百八十七人ということで、非常にケアが介護、介功を必要とするケースが多いものでございますので、職員数がかなり多いわけでございますが百八十七人。園長さんはお医者さんで、藤永一江さんという先生がなさっております。  なお、経営主体でございます心身障害児福祉協会は、会長が大宰博邦氏、理事長が渥美節夫氏、その他七、八名の理事さんがおられます。
  312. 前島英三郎

    前島英三郎君 島田療育園が全国の先駆けとして果たした歴史的な役割りは、私も高く評価しております。しかし、入所している児童や成人を正しく人間として処遇しない面があるとすれば、それは正しておかなければならないと思います。その理事長さんは、元児童家庭局長さんだったということですから、大変その道のベテランというふうに思うわけでありますけれども、どうも中身は余り関知されていないように見受けられます。  島田療育園の入園の条件ですね、まず入園するにはどういう条件が必要なのか、ちょっと聞きたいと思います。
  313. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お答えいたします。  島田療育園は、児童福祉施設、重症心身障害児施設でございます。したがって、先生も御案内のように、児童相談所でいろいろな判定を行いまして知事が措置をする、知事の措置によりまして入園が行われるわけでございます。実際に入りますに当たりましては、先生の御指摘もありまして私ども調べてみたわけでございますが、健康保険証を提出してもらうと同時に、保証書をとっておるようでございます。
  314. 前島英三郎

    前島英三郎君 保証書というのは、どういう保証書ですか。
  315. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お答えいたします。  入園に当たりまして、診療、手術等一切をお任せする、それから主治医等の指示によく従うように、それから経済的に御迷惑はかけないと、こういったような趣旨の保証書をどうもとっておるようでございます。
  316. 前島英三郎

    前島英三郎君 島田療育園は、入園者の保護者から解剖承諾書をまず入園に際してとっていたという事実を厚生省は御存じですか。
  317. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お答えいたします。  これも、先生の御指摘がありまして、私ども調査をいたしたわけでございますが、かつて昭和三十六年からこの施設は始まっておったわけでございますが、施設の入園に際しまして、子供さんが亡くなったときには医学研究のために解剖をお願いしたいということで、御父兄の方から、承諾書といいますか、それをとっておったようでございます。しかし、この承諾書につきましては、昭和五十四年の三月以降だったと思いますが、それ以後やめまして、現在はそういうものはとっておりません。
  318. 前島英三郎

    前島英三郎君 それは、「右の者万一死亡の場合医学研究に貢献のため死体解剖に付せられても何等異議ありません。」、こういうことですね。この文面で間違いないですね。どうですか。
  319. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 申しわけないんですが、現在ありませんので、その当時のは私存じませんが、趣旨はそういったことだというふうに理解をしております。
  320. 前島英三郎

    前島英三郎君 先ほどの誓約書というのがありますけれども、ここにその原本がありますが、「診療や手術について一切お任せ致します。 入園中主治医の命に従わないときは退園を命ぜられても異議ありません。」という、この誓約書ですね、これで間違いないですね。いかがですか。
  321. 正木馨

    政府委員(正木馨君) さようでございます。
  322. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は、その医学研究のための死体解剖そのものを否定するものではございません。というよりも、残された重症児のために役立ててほしいと願う御遺族の心は大変美しいものだと思うんです。しかし、入園時に入園の条件として承諾書をとるということは、どう考えても私は間違っていると思うんです。つまり、施設設立の理念、先ほど伺いました。その施設設立の理念と完全にこれは矛盾していると思うんです。何とかして社会復帰、家庭復帰をと願うというのであるとするならば、あらかじめ死亡することを前提とするような承諾書をとるはずがない、私はこう思うんです。厚生省は私の指摘によって知ったようなことを答弁されますけれども、厚生省はこの辺はどう指導してきたのか、私は伺いたい。
  323. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お答えいたします。  先生おっしゃいますように、亡くなった重症心身障害児の解剖によって、それが医学研究を促進し、重症心身障害児のその後の治療なり、対策なりに大いに貢献したということは事実だろうと思 います。しかし、先生おっしゃいますように、入園に当たりまして、この施設に入って一日でも早くよくなってもらうようにといった気持ちで入園する際に、どういう気持ちであれ、亡くなったときには解剖に応じてくれというのはやっぱり心遣いに欠ける面があると思います。私ども、そういう事実を承知しておらなかったわけでございますが、幸いにして現在はそういうことをやっておりませんけれども、そういった心遣いというものは各施設においても徹底していかなければならないというふうに思っております。
  324. 前島英三郎

    前島英三郎君 島田療育園において、残念ながら何人か亡くなっておられます。トータルでは百四人。解剖の実態はどうなっておりますか。
  325. 正木馨

    政府委員(正木馨君) お答えいたします。  昭和三十六年から、私の調べましたのは五十六年まででございますが、その間に死亡事例が百二件。先生百四件と言われましたのは、五十七年はどうも二件のようでございますが、五十六年までの百二件のうち、解剖に応じていただいたケースというのは九十八件というふうに聞いております。
  326. 前島英三郎

    前島英三郎君 実際には百一件解剖されているということです。私は、その解剖がやはり園児の療育のためにその結果が十分生かされているということが大変重要だと思うんです。しかし現実には、どうもそういうふうなものがその療育園の中で生かされているということは、何となく、どうも見当たらない。大変残念に思います。  そこで、入園するときの承諾書というのは、解剖承諾書ですね、こういうものは法律的に見て有効なんですか。どうなんですか。
  327. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 過去のことでございますが、これもいろいろ調べてみたわけでございますが、入園の際にそういう承諾書をとっておった、しかし、現実にお亡くなりになって解剖するに当たりまして、改めて保護者等とよく御相談をし、御承諾をいただいた上で解剖をしておったというふうに聞いております。それで、その承諾書それ自体は私は法律的な拘束力といいますか、意味合いを持つものではないのではないかというふうに思っております。
  328. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうすると、誓約書も法律的には無効であるということになりましょうか。
  329. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 先ほどの、診療、手術等一切お任せいたします、包括的にお任せすると、こういっておるわけですが、これも法律的な効果という面では意味合いを持つものではないというふうに思っております。
  330. 前島英三郎

    前島英三郎君 しかし、その誓約書があるがゆえに、そこの入園生は脳手術をされたという、こういう事実もあるようであります。どういうほかに手術がなされたかはわかりませんけれども、その脳手術ということの事実は厚生省は御存じですか。
  331. 正木馨

    政府委員(正木馨君) これも御指摘で調べたわけでございますが、たしか昭和三十九年の八月だったと思いますが、一例、定位脳手術を行ったケースがあるというふうに聞いております。
  332. 前島英三郎

    前島英三郎君 定位視床破壊術という手術ですね、これはどういう手術なんですか。
  333. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) 脳の視床を破壊いたしまして、いわゆるふるえでありますとか、筋肉の緊張でございますね、これを緩解させる、こういう手術でございます。  それで、かつて薬がございません当時はこの方法が唯一の手術、唯一の治療の方法でございましたんですが、Lドーパというふうな薬が開発されましてから、この薬に非常に期待がかけられたんでございますけれども、現在ではこういった薬物療法とこの手術を両方併用するというのが、こういったパーキンソン的なそういった症状に対する唯一の療法ということになっております。
  334. 前島英三郎

    前島英三郎君 脳手術はいろんな危険を伴うものだと思うんですけれども、現在の医学界では、いまのお答えでは何となく薬と両用というふうなことですけれども、それは評価されておるんでしょうか。
  335. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) 現在こういった症状に対します決定的な治療法というのはございませんで、そういったいろんな療法を組み合わせて行う、たとえばLドーパ等も使用いたしておりますとだんだん効かなくなってくるばかりか、ほかの副作用があらわれてくる、こういうふうなことでございまして、そういった手術療法と併用するということでございます。  なお、脳の手術は単に定位脳手術だけではありませんで、脳腫瘍の場合には腫瘍を取るとか、あるいは欠損、閉鎖、癒合がある場合にはこれを開放するとかいろんな手術がございまして、ここで行われております手術は定位脳手術でございます。
  336. 前島英三郎

    前島英三郎君 定位脳手術とその定位視床破壊術というのは違うんですか。
  337. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) 定位脳手術といいますのは、脳の局部を目指してこれを破壊する手術でございます。そのうち特に一番多いのは視床という部分でございますが、その視床を破壊するというのが一番多いので、正確に申しますと定位視床破壊術と言う場合が非常に多いわけでございます。
  338. 前島英三郎

    前島英三郎君 しかし、それもいずれにいたしましても脳であるという部分では大変危険が伴うと思うんです。一例ということを先ほど家庭局長の方から伺ったわけですけれども、その後、手術後の経過、それからフォローアップみたいなものはきちんとやっておられたかどうか、その辺はどうでしょう。
  339. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 島田療育園は重症心身障害児施設でございまして、この施設は医療施設でございます。したがって、すべての入所者に対しまして医学的観察を行っておるわけで、この脳手術を行った場合にももちろん医療施設としまして術後のフォローアップは十分やったというふうに考えております。
  340. 前島英三郎

    前島英三郎君 しかし、こうした問題のみならず、島田療育園では一昨年、これも一例ですけれども、園児が事故で死亡した事例がございます。私はいささか不審の念を持たざるを得ないんで、目下調査中なんですけれども、ちょっとここでお伺いしたいことは、たとえば事故死であるという部分が医師の判断によって、その死因を改ざんして災害死というようなもし名前で、つまりその死因を同一医師が改ざんするようなケースの場合には法的にはどういうことになりますでしょうか。
  341. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 死因の改ざんということでございますが、改ざんをどういう場合にどういうところでしたかということによりましてまた違ってくると思いますが、一般論でございますから、その前提の事実関係もはっきりいたしませんと明確なお答えができませんが、たとえば診断書とかいうことであろうかと思います。その場合に公に用いられる診断書ということになりますと、事案によってでございますけれども、虚偽診断書の作成という犯罪ということも問題としては考えられると思います。
  342. 前島英三郎

    前島英三郎君 島田療育園の問題点はいろいろあると思うんですけれども、今後十分厚生省で調査をしていただきたいと思います。  私はこれらの個別的な問題は氷山の一角であると思っておりますし、ほかにはこういう例がないことを祈らずにはいられません。前にも述べたように、二つの大きな矛盾が重なり合っているところに基本的な問題があると思うんです。  そこで、成人になった人が現実には過半数を占めている。しかも十年、二十年とずっと施設内で生きていく人が大変重症心身障害児施設の場合には多いわけですね。施設の本来の理念が有効に機能していないことは私は明らかだと思うんです。生き急ぎをしていると同時に死に急ぎもしなければならないというような言葉も聞かれるわけでありますけれども昭和四十二年の児童福祉法改正で、重症心身障害児についての現在の定義が定められたわけでありますが、しかし、それ以前に入園した人につきましては、当時の状況の中で定義どおりでない人も引き続き在園してよろしいとい う処置がとられた経過があるわけです。当時としてはそれは適切であったに違いないと思うんですけれども、しかし、それからもう十六年間もそのままで来てしまったところに私は問題があるんじゃないだろうか、こういう気がするんですが、どう厚生大臣お考えになりますか。
  343. 正木馨

    政府委員(正木馨君) この重症心身障害児施設が児童福祉法に入ります、制度化されましたときに、すでにいわゆる重症心身障害児といいますか、重複障害でない方でも引き続きその施設でケアできるようにという附帯決議が衆参両院でございまして、そういう措置がとられてきたということは先生御指摘のとおりでございます。  その後十六年たっておるわけでございますが、これも先生おっしゃいますように、かつては重症心身障害児というのは非常に短命だと、こう言われておりました。これが非常に幸いなことに長生きをするようになってきたということで、このことが重症心身障害児の年長化という現象を来しております。そういうことで重症心身障害児につきまして年長化対策ということを私どもとしても行政的にいろいろとってきたわけでございます。  もう一つ、十六年前と今日とで違うので、施設のあり方を考えるべきではないかというお話のようでございますが、重症心身障害児、重複障害でなくてもやはり医学的なケア、そして日常生活の指導訓練を重症心身障害児と同じように行っていかなければならないケースはたくさんあるわけでございます。要するに、私どもとしては今日の時代に即して、重症心身障害児施設の運営をどうしていくのかということを不断に考えていかなければならないというふうに思っております。
  344. 前島英三郎

    前島英三郎君 いま局長さんそういう御答弁ありましたけれども、実は昭和五十年に出された報告、これは心身障害研究ということで「重症心身障害児施設の在り方に関する研究」を行ったことがあるようです。  これを見ますと、十年も前に定員外の入園者の問題、あるいは入園者の年長化の問題を明確に指摘しているわけですね。この研究が正直なところ生かされていなかったという点があるだろうと思うんですが、これをどのように活用されておりましたか。これは厚生省の心身障害研究という、これですね、きのういただきました。
  345. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 先生のお手元にございますのは、厚生省が研究委託いたしまして、重症心身障害児施設のあり方について御研究を願ったものでございます。先生おっしゃいますように、この研究は昭和四十八年度、四十九年度にわたりまして、当時国立小児病院長でございました尾村偉久先生をキャップにしまして研究を願ったわけでございます。  この研究の中身を拝見いたしますと、やはり重症心身障害児に対する処遇というのは、全人生における適時適切な処遇が必要である、それからまた症状によって、その症状に応じた措置の変更といったことを考えるべきではないか、また在宅障害児のニードというものに対応したいろいろな施策を講じていかなければならない、大まかに申しますとそんなことがいろいろ書かれてございます。  これが四十九年度で、五十年に報告を受けたわけでございますが、こういう研究成果も参考とし、踏まえまして、私どもの方といたしましては、たとえば在宅重度心身障害児の緊急保護事業の実施であるとか、あるいは重障児の指導費の、措置費の増であるとか、あるいはまた年長化というものが行われておりますので、施設整備の基準面積の増加を図るとか、あるいは在宅ケアを充実するということで、家庭奉仕員の派遣等の対策を強化するとか、そういった面でこういう研究成果を踏まえましてその後の対策をいろいろと講じてきておるわけでございます。
  346. 前島英三郎

    前島英三郎君 その基本問題に有効な手を打たれない部分もありましたし、それがゆえに各施設も大変苦労をしておられるというような経過もあるわけであります。島田のようなケースもおのずと出てくると私は思うんです。  ですから、年長化対策、多様な障害の状況に対する対策、それから社会復帰、または他のよりふさわしい施設へ移れるようにする対策ですね、こういうことをいまこそ総合的に強力に進める時期がきていると私は思うんです。  国際障害者年の長期行動計画の中にもそうした問題は多く論じられております。大臣のお考えを伺いたいと思うんです。
  347. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申し上げます。  いま前島先生のお話を聞いておりまして、先生が大変に熱心にいろいろとやっていただいていることに私も心から感謝を申し上げる次第でございます。  御指摘のありましたように、重度心身障害者というものがいろんな経過をたどってきているということも先生よく御理解のところでありますし、私もやっぱり福祉行政というものは、その年に応じてずっと展開をしてきている、発展をしてきているものだろうと思います。やはりこれからの方向といたしましては、生活環境を整備していく、また各種の福祉サービスの充実をいろんな形で図っていくということをやらなければなりませんが、とりわけ自立のための所得保障政策というものは私は重要なことではないかというふうに認識をしておるわけでございます。  厚生省といたしましても、障害者年にかんがみまして、障害者生活保障問題の専門家会議を持ちまして、長期展望をつくったところでありますし、この長期展望に基づきましてこれからの施策を十分に進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  348. 前島英三郎

    前島英三郎君 所得保障政策の問題はまた後ほどちょっと伺いますけれども、私は島田療育園の例の中で思いましたのは、いま島田療育園も実は増築計画をしているということでございます。総工費が何億というようなこともうかがっておりますが、このような施設の巨大化は大変問題があると思いますし、また一人一人にふさわしい処遇をするためには増築の前に、あるいは改築の前にやるべきことがあると思うんですけれども、児童家庭局長、あるいは厚生大臣、どちらでもいいですが、いかがでしょう。
  349. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) いまお話がございました増改築の資金が要るという形でやっているということでありますが、実はあの療養所も大変古くなってきているということでございまして、老朽の建物を建てかえていこう、こういうことでございまして、これはやっぱり余り古くなると困るということもございますでしょうから、やっていかなければならないものではないか、こう思っておるところでございます。  数字その他につきましては政府委員から御答弁をさせますが、やっていかなければならないものがあるんじゃないかと先生おっしゃいましたが、実は私この前、大分の別府市に行きまして太陽の家というのを見てみました。あれこそ本当にやっていかなければならないような施策ではないか。身体障害者の方が、工場の中でみんな全部車いすに乗っておられる。いろんな点で不自由な方がたくさんおられる。たとえば目の見えない方もおられます。目の見えない方が音響の測定をやっているとか、不自由な方は不自由な方なりに、それぞれの能力を十分に発揮して一生懸命仕事をしておられる。後で皆さんお集まりいただきましたけれども、本当に町の工場の労働者の方よりもはるかに生き生きとした顔を皆しておられるわけでありまして、身体に障害を持っておられる方々がやっぱりやっていかなければならないのは、そういったところへわれわれは目標を置いていかなければならないのではないか、こんな感じで取り組んでいるところであります。まだまだ私は全国がそこまでいくとは思いません。しかし、一つでもそういった方向へ近づける努力をすることが私に与えられた役割りではないか、こういうふうに考えているものでございます。
  350. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 島田療育園の施設整備計画でございますが、大臣からお話がございましたように、この島田療育園もかなり老朽化した施設 がございます。それで逐年整備を図っておるわけでございますが、五十七年度で申しますと、病棟の改修、浴室の増築ということで約八千万円で整備をいたしました。  それから五十八年度につきましては、第二、第三、第五病棟の改築ということを施設では予定しておるようでございます。  いずれにしましても、施設の老朽化を建てかえますことによりまして、入所者の処遇改善を図るということを主眼にしておることは言うまでもないところでございます。
  351. 前島英三郎

    前島英三郎君 いずれにいたしましても、そこに働いておられる方は大変熱心に障害児たちの問題に取り組んでおります。しかし、現実にはなかなか政府の施策のおくれなどもありますし、予算的な問題もありますし、あるいは医師の不足の問題もありましょうし、重度化していくがゆえのいろいろな困難な問題もございましょうし、いろいろ問題点がそこに生じてくるようになるんですが、最終的にはどうもしわ寄せはそこに入っている入所者へ向けられていってしまう、とても残念に思えるわけでございます。  そういう点でも総理、ぜひ、こういう本当に自立をしていく障害者もいっぱいおりますけれども、それすら道も閉ざされているというような、こういう重障児たちをしっかりと守ってあげるのが私は温かい政治だと思うんですけれども、いかがでございますか。
  352. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全く同感でございます。私も静岡県の西部にある天龍福祉会とか、あそこへ参りまして、ある工場が——たしか矢崎総業か何かでありましたけれども、そこで一斉に障害者の皆さんが勤労しておられるそのお姿を見て、非常に感銘をしたことがございます。やはりみずから働きたいという、そういうとうといお気持ちを持っておる方々に対しまして、一〇〇%その能力を発揮させるように協力することがわれわれの使命であり、また障害治療やらリハビリやらいろいろなことをやっている方々に対しましても、その人が一番望んでいることをやってやるということが正しい態度であると思います。  いま島田療育園の話をお聞きいたしまして、恐らく園長さんや職員の方々も一生懸命努力されているんだろうと思いますが、しかし、やはり障害者の身になってみれば、いろいろな問題点もあるし、また月日の経過とともに成長していくという問題もいまお聞きいたしまして、大問題が出てきているなと思ったわけでございます。そういう点につきましては、厚生省を中心にしまして遺憾ない対策を講じていくようにいたしたいと思っております。
  353. 前島英三郎

    前島英三郎君 そこで、先ほど冒頭触れましたが、障害者対策に関する長期行動計画につきまして伺いたいと思うんですが、昨年三月に策定されました政府の「障害者対策に関する長期計画」はその基本理念において、さきに述べた障害者福祉観の一大転換を反映したものだと思うんですけれども、特にその眼目を具体的に述べると、障害者が地域で自立して生活できるようもろもろの条件を整えることである。つまり、その部分がどうしても大切になっちゃうんですね。ですから施設の中で生きていかなければならない、こういう部分になっていくだろうと思うんです。そして、そこの部分でさらに拡大して雇用の問題を考える、あるいは教育の問題も考えていく、そういう点でもこの長期行動計画の役割りというのは大変重要だと思うんですけれども、長期行動計画の基本理念、その目標についてぜひとも政府の見解を伺っておきたいと思います。
  354. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 障害者対策に関する長期計画というのがございまして、先生もよく御承知のことだと思いますが、私から申し上げますならば、項目といたしましては、障害者がこの問題について広く国民に啓発、広報活動をしていくことである。同じ人間である、決してハンディキャップのある人間ではない、必ずこれはお互い一緒になってやれる人間であるという話をしていかなければならないという話であります。保健医療のいろんな技術的な開発、医療技術の開発等もやっていかなければならない、こういうふうなことでありますし、先ほど先生お話がありました、島田療育園のようなところでやっておられるところから、総理からも、また私から申し上げました、働いているところの方々までの問題、そういったところにつきましてのやっぱり保健医療という問題はあるだろうと思いますから、そういったことをやっていかなければならないと思います。と同時に、障害者に対するところの教育の問題がございますから、この教育をどうしていくか、さらに教育者をどういうふうに育てていくかということも問題だろうと思います。さらには、身体障害者の方々の雇用状況、就職状況というものもいろいろ考えていくということがその次に必要になってくるだろうと思いますし、さらには、やっぱり同じ生活をしていくということですから、あの人は身体障害者であるからどうだということでないような、差別と偏見のないような私は社会づくりというものを本当にやっていくということが必要なことではないだろうか、こういうふうに考えているところでございます。
  355. 前島英三郎

    前島英三郎君 その長期行動計画が昨年三月打ち出されたんですけれども、どうも五十八年度予算案を見まして、障害者自身のみならず、ほとんどの人は率直に言って失望していると思うんです。向こう十年、長期行動計画にはさまざまな問題が提起されているんですけれども、果たしてこの取り組みでいいんだろうか、ひょっとしたら絵にかいたもちで終わってしまうんじゃないか、そういう心配をする声も強いんですけれども、五十八年度予算案の編成の中で、長期行動計画に関してどのような配慮がなされたでしょうか。
  356. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 五十七年三月に策定されました障害者対策に関する長期計画は、障害者が他の一般市民と同様に、社会の一員として種々の分野で活動し生活できるようにすることを基本理念とし、障害者対策の基本的方向と目標を示しているところでございまして、厚生省としましてもその趣旨を踏まえて、障害者が家庭や地域で自立して生活することができるよう年金、諸手当等の生活保障対策、在宅福祉サービスを中心としてその充実に努めておるところでございます。  ちなみに、五十八年度予算におきましては総額一兆三百五十四億円の障害者対策予算を計上しておりまして、対前年度比で三・四%の増加ということにいたしております。
  357. 前島英三郎

    前島英三郎君 三・四%という数字はさておきましても、大変私は低い数字だと思うんです。どうもパーセンテージというのは、一兆円の三・四%と、何億円かの三・四%のパーセンテージの基本的な額の違いがありますので、どうもパーセンテージでその伸び率を言われましても、私どもはどうも中身が伴っていない、そんな感をするんですけれども、行財政改革という大きな問題の中で、結果として福祉と教育が圧迫を受けるということになりますと、これは大変だと思います。長期計画と行財政改革の関係は、単に現時点で行財政的な余裕があるかないかの関係で見ることは、私は正しくないと思うんです。  この間も行管庁長官と話し合ったんですけれども、やはり五枚着ているところもあるかもしれない。しかし、もともと一枚のところもあるわけでありますから、画一的にみんな一枚脱げになりますと、やはり一枚しか着ていないところはかぜを引かざるを得ない。かぜを引けば薬代もかかる、お医者さん代もかかるということになっていきますと、何のための行政改革かわからなくなるというような気がするんです。長期計画を正しく着実に実行していくということが、ひいては私は行財政改革につながっていくはずであり、またそのように進められていかねばならないとさえ思っております。継ぎはぎだらけだった施策に整合性と体系性を持たせる。さらに自立のための施策を推進する。こういうことによって保護的施策に要する財政需要を大幅に軽減していくということも私は可能だと思うんです。これこそまさに真の行財政改革のような気がするんですけれども総理はい かがでございますか。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その前に、五十八年度予算の編成に際しても、本当に困っておる方々については特別にめんどうを見ようと厚生大臣とも打ち合わせしまして、そういう意味の予算の配分は若干努力したつもりでございます。  それから、障害者に対する対策にやっぱり哲学が要ると思いますが、前島さんがおっしゃったような基本的な考え、あるいは長期計画に決められている基本的心構えというものをやっぱり堅持していくことがまず大事でございます。  それから、いろいろこれから施策をするにつきましても、とりあえずはいま長期計画に決められていることを具体的に一つ一つ実践していく、一つ一つ丹念に片づけていく、そういうことがわれわれにとっては大事ではないかと考えております。
  359. 前島英三郎

    前島英三郎君 そこで、先ほど厚生大臣もちらっと触れていただきました障害者の所得保障対策という問題になってまいりますけれども、可能な障害者がすべて地域で自立して生活するという目標を実現していくに当たりましては、職業につきましては、経済的にも自立できることが望ましいのはもちろんなんですけれども、現状ではまだ働きたくとも働けない、こういう人たちも多いわけでありますし、障害の状況によっては働けないか、あるいはまた働いてもわずかな収入しか得られないという場合もあるだろうと思うんです。そこで、生活の下支えをする所得保障対策というのがきわめて重要なものとなってくるわけですけれども、二年前の当委員会におきましても論議したことでございまして、そのときの厚生大臣はたしか園田さんだったと思いますが、障害者の所得保障対策に対する今後の厚生大臣の認識を伺っておきたいと思うんですが。
  360. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 先生御承知のとおり、専門家会議をいまやっておりまして、五十七年五月ですから、昨年の五月から今日まで八回にわたりまして審議を重ねてきております。この間、障害者団体からのヒヤリングや現行制度の問題点の検討、厚生省の国際障害者年推進本部の検討委員会等が出した五十七年四月の報告書の分析等を行いまして、いまフリートーキングをやっておるところでございまして、まだ結論を得るには至っておりませんが、本年の七月を目途にしまして、望ましい障害者生活保障制度についての試案を取りまとめてみたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  361. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうしますと、結論は七月ごろには出るということですけれども、よろしいでしょうか。
  362. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 七月ごろには結論を出したいと、こういうふうに考えているところでございます。
  363. 前島英三郎

    前島英三郎君 それに対する決意はどうですか。
  364. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) これは、先ほど来お話をしておりますように、私は身体障害者、特に非常に大きな問題でもございますから、これが出ましたならば、ぜひその趣旨に沿ってがんばってみたい、こういうふうに考えております。
  365. 前島英三郎

    前島英三郎君 やはり憲法二十五条の一つの生活の面での保障という部分があって、そしてさらにそこから自立ということを考えていく。これがやはり今後障害を持った人たちの自立という部分には大変重要だと思いますので、ぜひとも所得保障制度の実現を心から期待したいと思いますので、厚生大臣、がんばっていただきたいと思います。  法改正から六年たちましたのは、障害者の雇用対策という問題になってまいりますけれども、徐徐にではありますけれども雇用が進んでいるということのようでございます。ただ、雇用全般の雲行きが危ぶまれる中で、どうも、障害者の雇用が後退することのないように十分な取り組みが必要であることを私はお願いしたいと思います。また、現時点できわめて重要なことは、重度障害者の雇用促進対策であるというふうにも思います。これらにつきまして、障害者の雇用対策、大野労働大臣はどのように対策をお考えか、認識を伺いたいと思います。
  366. 大野明

    国務大臣(大野明君) ただいまお尋ねの点でございますが、障害者の方々の雇用に関しましては、障害者対策に関する長期計画と同時に、身障者雇用審議会の答申を十分に尊重して推進してまいっておるところでございます。また同時に、御指摘の重度身障者の方々、特に重点を置いておりまして、その方々の障害の種類、あるいはまた適性、こういうものを勘案して、そうしていま対策を進めておりますが、その一、二を申し上げますと、サリドマイド禍で両上肢がないという気の毒な方々でございますけれども、そういう方々の就職の援助等を行うと同時に、一般的な雇用ではなかなかむずかしいと言われておる重度身障者の方方に対して、これは地方公共団体も出資してもらって、いわゆる第三セクター方式で雇用の機会の場を設けるような、雇用の場を確保するために、そういう企業の育成もいたしております。また同時に、身障者の方々の総合的なリハビリテーション施設を設置して、そしてきめ細かく、また積極的に推進しておるところでございます。
  367. 前島英三郎

    前島英三郎君 重度障害者の雇用の積極的な対策を大臣が取り組むということでございますけれども、そういうものはなるべく次の大臣にもしっかりと引き継いでもらいませんと、もう非常に短いところで目まぐるしく大臣の皆さんがかわっておられますので、また振り出しに戻らなければならないというふうな、とてもいらいらするのが現状でございます。特に生活面でのいわゆる重度の人、労働面での重度の人という部分があると思うんですけれども、特に脳性麻痺の人々は、こういう点では生活面とまた労働面とのハンディキャップの違いというものは大変だろうと思うんですけれども、これらの点は身体障害者雇用審議会が指摘したことでもございますけれども、労働省でも積極的に検討されていると思うんですけれども、脳性麻痺の人たちの具体的な対応策というのはどのように進んでおられましょうか。
  368. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいま御指摘のございました重度障害者の範囲の問題につきましては、先生御案内のとおり、身体障害者雇用促進法におきます重度障害者の範囲が、身体障害者福祉法の障害の程度の一、二級という方々がその範囲に入るということになっておりますけれども、身体障害者福祉法の障害の評価につきましては、生理的とか、あるいは肉体的な状況で評価が決まるというようなことでございますので、いまお話のございましたように、雇用対策面で職業能力の低下とどのようにマッチしているかというような問題がございまして、障害者対策に関する長期計画、あるいは身体障害者の審議会の意見書にも、この見直しを指摘されておるところでございます。  この見直しに当たりましては、障害の程度と職業能力の低下の関係を正確に関連づける基準をつくる必要がございます。そのために実態的なデータの積み重ねもしなければなりませんし、そういう観点から専門家によります研究会を設けて、現在検討をしていただいておるところでございます。  特に、この全面的な見直しになりますと、いま申し上げましたようなデータ、かなり膨大にもなりますし時間もかかりますので、当面脳性麻痺の方々の範囲をどうするかという問題につきましては、できるだけ早く調査検討を終えまして、所要の措置を講ずる必要があるということで、その点につきましては、いま申し上げたような考え方で調査研究を急いでおるところでございます。
  369. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうすると、脳性麻痺の人たちの一つの労働面におけるハンディキャップの問題が近い日にいい方向で答えが出るということでしょうか。  脳性麻痺以外の人についてはどのように考えておられますか。
  370. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいまお答えいたしましたように、重度障害者の範囲全体につきまし ての全面的な見直しになりますと、かなり時間もかかります。そういう観点から脳性麻痺の方々については当面早急に検討を進めようということで進めておりますけれども、その他の方々の障害につきましての範囲の検討につきましては、並行して進めますけれども、もう少しやや長期的な期間をかしていただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  371. 前島英三郎

    前島英三郎君 重度障害者の雇用促進を図るに当たりまして、今後のいろんな問題点の中にどうも雇用形態といいますか就労形態といいますか、労働基準という部分で何か壁があるような気がするんですね。人間は八時間働かなければだめだとか、一週間は最低四日は働かなければだめなんだとかというような部分で、その辺の定義なんですけれども、基準局の方にひとつ見解を伺いたいと思うんですけれども
  372. 松井達郎

    政府委員(松井達郎君) お答えいたします。  労働者の定義につきましては、これは使用者の指揮監督のもとに労務を提供する、そしてその対価としまして賃金を得るということであれば、労働基準法上は労働者として扱われているわけでございまして、これは身体障害者の場合も全く同様でございます。
  373. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうすると在宅雇用といいますか、週一回ないし二回の出勤ぐらいでも雇用という部分での基準には入りますか。
  374. 松井達郎

    政府委員(松井達郎君) 働きます場所と申しますれば、これは実は労働者の定義と直接本質的には関係がないわけでございますから、いま先生のおっしゃいましたように、一週間のうちいわばフルタイマーではなくて、二、三日しか働かないとか、あるいは自分のうちで働くとか、こういう場合でも、先ほど申し上げましたとおり使用者の指揮監督のもとに働くということでありますれば、これは基準法上は、解釈といたしましてはこれは労働者でございます。
  375. 前島英三郎

    前島英三郎君 その辺が実は壁だと思っていましたけれども、意外に緩やかな部分を伺って安心したんですけれども、つまり情報システムが高度に発達している現在ですから、職種によりましては自宅で仕事をすることが可能なというケースも出てくるような気がするんですね。また障害の状況によっては、健康管理上等の面からも、勤務時間によっては就労の形態に縛られないことが必要なケース等も考えられるわけです。ですから、いまのお答えを聞きまして大変うれしく思ったといいますか、評価できると思うんですけれども、余り緩やかにすることはマイナス面もあるかもしれませんけれども、障害者とか、さらにこれから高齢化社会を迎えていくわけですから、こういう部分は弾力的な運用をしながら実質的な雇用をする、そして障害を持った人もしっかりと自立をしていく、そういう部分ではぜひともこれからもしっかりとその辺を育てていただきたいと思うんですけれども、労働大臣いかがでございますか。
  376. 松井達郎

    政府委員(松井達郎君) いま先生の御指摘の点につきましては、先ほど申し上げましたとおり労働基準法上の解釈は可能でございます。ただ、いまお引きになりました身体障害者の方々とか、あるいは高齢の方々とか、こういう方たちが、たとえば在宅勤務をどんどん適切な配慮もなしに進めるということになりますと、逆に労働者保護の観点から見ますとやはり適切じゃないというようなことも出てくるかと思います。  それで、この労働基準法上の労働時間の問題につきましては、実はこのほかにもパートタイマーの問題とかいろいろございますので、この労働時間の問題につきまして実は労働基準法の研究会を設けまして検討しているところでございますが、在宅勤務につきましてもその一つのテーマでございまして、現在検討している最中でございます。
  377. 前島英三郎

    前島英三郎君 何か突然一分ぐらいの間に後退したみたいな感じもとられるんですけれども、大臣いかがですか。
  378. 大野明

    国務大臣(大野明君) 局長答弁が後退したとは思いませんけれども、しかしいずれにいたしましても労基法研究会等においていま研究もしていただいておる。しかしながら、私は積極的に先生の御趣旨を理解して進めていく所存でございますから。
  379. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう点でも、障害を持っている人がやはりいろんな面でみずから残された能力を発揮していく、そのためにも大変学ぶことは大切だというふうに思います。  その学ぶという部分にはやはり教育という問題になっていくわけでありますけれども、東京足立区の金井康治君が普通中学校への入学が決まりまして、この例のほかにサリドマイド被害者、あるいはまた相当数の障害児が普通学校で学んで好ましい結果を生んでいる例がございます。また、そうした教室には校内暴力というようなものが、思いやりの、お互いに助け合う心の中からそういうものもないというようなことも伺っております。こうした例は学校教育のあり方全般を考える上でもきわめて貴重な学ぶべき事例だと思うんですけれども、この金井康治君が六年間の悲願が実って普通学校の中学校へ学ぶということ、総理はどのようにお考えになりますか。
  380. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 金井君がりっぱに普通の学校へ、中学校へ入れましたことを心からお喜び申し上げたいと思います。大いに金井君がんばれと声援したいと思っております。
  381. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう点でも、ぜひともできる限り障害を持った子供も地域の学校で学べるように今後もひとつ文教行政の中でがんばっていただきたいと思いますが、文部大臣にも伺いたいところでありますが、近日また文教委員会が開かれますので、ゆっくりと文部大臣の所見は伺いたいと思っておりますのできょうは結構でございます。  現在の施設体系というのは障害種別によりまして縦割りになっておりますけれども、地域に小規模なものを分散的に配置していく。今度は学んだ後の地域の問題ですけれども、こうした者が普通の企業に働く、また働けないという重度の人たちが非常に地域の中で共同作業所的なものをつくっていくわけでありますけれども、どうも一つの規模的な部分で、大きな施設というものが法的な部分に締めつけられている部分がありますので、なかなか小規模になっていくのにはブレーキがかかっているようでございます。たとえば身体障害者の通所授産施設は最低二十人以上必要だと、あるいは精薄者の授産施設の場合には三十人以上となっておりますけれども、双方を供設するとなりますと合計五十人規模の施設をつくらなければならないということになっていきますと、たとえば土地の問題、あるいはその施設費の問題、あるいは地域から離れて大変山の中腹につくらなければならないというような、一つの地域から逸脱した問題、いろいろ出てくるんですけれども、厚生省内のこのような壁を取り除くべきだと私は思うんですけれども、その辺はいかがでございましょうか。もっと非常に小さく枠をつくっていく、小規模にしていく。
  382. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 先ほどお話を申し上げました「障害者対策に関する長期計画」の中でもいま先生がお話がありましたような点が指摘してございます。  やはり障害者の身近なところに施設がある、家から通う、あるいは施設からもいろんな工場に行く、その他のことができるようなやはり便利さを持っていなければならないと、こう考えるんです。これは基本だろうと思いますね。ですからそういったことで、いまの三十人と二十人一緒にしたら五十人だと、こういうようなことは私はやっぱり考え直していかなければならない問題だろうと思いますし、厚生省の中におきましても御趣旨のような方向で少し検討してみたい、こういうふうに考えております。
  383. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう点では、日本の福祉もいろいろな形で育ちつつありますし、またそれが後退するようなことがあってはならないと思いますので、ぜひハートのあるひとつ中曽根総理のリーダーシップを期待したいと思うのでございますけれども、そういう点では、また日本のそうした 非常に動いていく福祉政策に対して海外からも関心が寄せられております。  国際障害者年は、自国の障害者の状況のみならず、国際的連帯によって、特に発展途上国の障害者の状況を改善していくことの必要性を明らかにしております。  いま地球上には四億五千万人の障害者がいて、その七割が発展途上国である。障害者にならない前に障害児として一生を送るなんという非常に医療の不備の部分があったりする国もあるわけでありますが、わが国としては、アジアの一員としまして、アジア各国に対する協力を強めて深めていく必要が私はあるような気がいたします。  伺ったところによりますと、北京の日中友好病院の建設、大変すばらしいと思いますし、タイにおける職業リハビリテーションセンターの構想など大変好ましいこととして見守っているわけでありますが、これらを含めて各国のニーズを把握して、さらに日本の一つの福祉外交という部分を推進すべきだと思うんですけれども、外務大臣いかがでございますか。
  384. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、わが国の障害者対策を積極的に進めると同時に、わが国が自由世界第二位の経済大国でありますし、積極的に開発途上国の福祉対策といいますか、障害者問題について重要な関心を払って経済協力といった面についてこれを推進していくということは大事であろうと思いますし、また、わが国としてもそういう観点に立っていまお話しのような日中友好病院であるとか、あるいはまたタイのリハビリテーションの設立であるとか、その他開発途上国各地におきましてニーズを吸い上げてこれに対する無償供与であるとか、経済協力によるところの疾病対策であるとか、あるいは障害者に対する施設等についての協力をいま行っておりますし、今後ともそうした国々のまたお話も聞きながら、御要請も聞きながらこれに対して積極的に取り組んでいきたい、協力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  385. 前島英三郎

    前島英三郎君 病院とかセンター、いろんなもの、ハードのものも必要でございますけれども、その後、それをただつくりっぱなしではなくて、人的交流を深めて、また、日本の現状が満足かどうかは別としましても、そうした技術協力、人的交流はこれから大変ソフト面で大切だというふうに思います。現状では研修者の日本に対する希望が大変あるんですけれども、受け入れがどうも不備であるという部分を指摘を受けているわけなんですけれども、外務省は窓口として十分配慮してもらいたいと思うと同時に、厚生省、労働省としてもそうした職業リハビリテーション、あるいはあらゆる面での受け入れ体制を強めることが大変必要じゃないかと思うんですけれども、厚生省並びに労働大臣、各大臣の御意見を伺いたいと思います。
  386. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 特に発展途上国からの研修生の受け入れということは私は大変重要なことだというふうに考えておりますし、関係機関とも協力しましてできるだけたくさんのことができるようにこれからも努力をしてまいりたい、こう考えております。現在でも東南アジア義肢装具製作技術者研修会というのを行いましたり、精神薄弱集団訓練コースというのをやったりして、いろいろとやっておりますから、これから発展途上国その他の国の御要望にこたえて一生懸命やりたい、こういうふうに考えております。
  387. 大野明

    国務大臣(大野明君) 現在発展途上国等から将来その国の職業指導員になるというような方々をわが国の職業訓練大学で研修をいたしております。しかしながら先生御指摘のような方々は、まだそれらの国々からの要請がございませんけれども、いま厚生大臣がちょっと触れておりましたけれども、そのようなことを含めまして、今後関係省庁と連絡をとって推進していこう、こう考えておるところでございます。
  388. 前島英三郎

    前島英三郎君 外務大臣。
  389. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま御指摘の技術交流あるいは人的交流、これは非常に必要でありますし、現在もやっておりますが、いま厚生大臣やあるいは労働大臣からお答えをいたしましたように、関係の各省庁とも十分連絡をとりながら、わが国としての研修生等についての受け入れ体制は今後とも整備をしていかなければならない、こういうように考えております。
  390. 前島英三郎

    前島英三郎君 近々総理はASEAN訪問ですね、いつごろになりますか。
  391. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四月末から五月の初めにかけて訪問したいと心がけております。
  392. 前島英三郎

    前島英三郎君 四月のちょうど中旬にDPIというアジアの障害者の会議がございまして、実はすでにASEAN訪問をみんな手ぐすね引いて待っております。タイのバンコクでその会議が開かれまして、ぜひ日本の中曽根総理にアジアの障害者が陳情をしたい、こういう申し入れがありますが、その申し入れは受け入れていただけますでしょうか。
  393. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) できるだけお会いもいたしたいし、また、お話も承りたいと思います。
  394. 前島英三郎

    前島英三郎君 以上、障害者問題について触れてまいりましたけれども、最後に選挙制度に関しまして伺いたいと思います。  総理は参議院の役割りはどこにあると思われますか。
  395. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまの議会制度は、日本においては衆議院と参議院と両方からできておりまして、参議院はいわゆるチェック・アンド・バランス、衆議院はどちらかといえば第一線で活躍する方、参議院は後詰めに控えていて、そして衆議院よりもはるかによく考え、より高い知性を持ってそして衆議院の行き過ぎを直したり、足りないところを改めたりする、そういう大事な機能があるところであると思っております。
  396. 前島英三郎

    前島英三郎君 そして総理は参議院に何を期待しますか。
  397. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま申し上げましたようなチェック・アンド・バランス、その機能を十分に発揮していただくように、また、いろいろな審議やその他につきましても、衆議院の足りないところを注意を与えていただいたり、われわれの方から見ますと、大いに審議促進もしていただきたい、こういう熱望も持っておるわけであります。
  398. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味での参議院の役割りは多くの人が期待しているんですが、現実はなかなか参議院無用論とか、カーボンコピーとか言われておりまして、私たちも、その中の一議席を占める者としてはじくじたるものがあるわけですけれども、それにさらにはずみをかけるような今度拘束名簿式比例代表制という参議院本来のあり方を否定するような制度が強引に通過されてしまいまして、私は大変わかりにくい選挙制度だというように思うんですけれども総理はどのように思っておられますか。
  399. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の全国区制度の改正に伴う改選につきましては、いろんな面からの御議論がございまして、紆余曲折を経て今日に到達したと思っております。  簡単にこう考えますと、議会政治というのは一応政党政治ということでありますが、参議院の場合はわりあいに、さっき申し上げたチェック・アンド・バランスという機能がございますから、必ずしも政党的になることは果たしていいかどうかという疑問もあると思います。しかし、議会政治となると、やっぱり、政党政治ということで世界じゅうが動いている、そういうふうに思います。しかし、参議院全国区の今度の制度によりましても、やはりそういう何と申しますか、参議院にふさわしい方々が集まって、そうして国民にお訴えすれば国民の皆さんはそれなりに参議院の機能をお考えになって行動するのではないか、そういうように私は考えております。
  400. 前島英三郎

    前島英三郎君 自民党の全国比例の名簿を見ますと、大体九人のうち八人は官僚の皆さんということになりますと、出たい人及び出したい人、その両方ともつぶされまして、やがては参議院比例 は全部役人さんでなければだめになるんじゃないかというような危惧を抱くと同時に、本来の参議院のあり方というものには、このわかりにくい制度であるがゆえに大変疑問だと思います。そういう点では大変混乱が予想されるんですけれども……
  401. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 前島君、残念ですが時間が参りました。
  402. 前島英三郎

    前島英三郎君 自治省とすれば自信を持ってこの選挙制度の中で対応ができるかどうか、最後に伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  403. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 新しい制度の参議院としての意義は、いま総理から触れられました。いよいよこの制度は七月の任期満了に向けて実施をしていかなければならない段階を迎えておりまして、この実施につきましてそれぞれ政令、規則もほぼそろい、これから各方面に趣旨の徹底、あるいは国民に具体的な投票の方法、そういうことを、あるいは選挙管理委員会、あるいは選挙啓発の諸団体がございます。こういう諸団体あるいは報道機関などに協力を求めまして、この制度の円滑な実施を目指してやっていきたいと、こう思っております。
  404. 前島英三郎

    前島英三郎君 どうもありがとうございました。
  405. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で前島英三郎君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  406. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、江田五月君の総括質疑を行います。江田君。
  407. 江田五月

    ○江田五月君 私は、新政クラブを代表しまして、総理並びに関係の閣僚の皆さんに質問いたします。長丁場になりましてどうも大変ですが、総括質問第一巡目の最後ですので、どうぞよろしくお願いします。  最初に、総理政治姿勢といいますか政治手法についていろいろお伺いをしたいんですが、総理は、まだ総理になられる前、総裁になられました後の記者会見で、中曽根政治の特色を、まあわかりやすい政治国民に語りかける政治とかお茶の間直結と言われているようですが——ということをおっしゃいましたですね。このことをもう少し敷衍して説明をしていただけますか。
  408. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は昔、首相公選論というのを唱えたことがございます。それで、そのときにスローガンとして、恋人と首相は自分で選ぶと、そういうようなスローガンを言ったことがあります。まあそれはやはり直接民主制に近い発想を持っておりまして、総理大臣のようなものはやはり国民が自分で選ぶ方がより安定的になるんじゃないか、また民心がそれで導通するんではないか、そういうように考えて言った。まあそういう基本的な考えは私にいまでもあるわけです。特にいまのようなこういうむずかしい、外国との関係が非常にむずかしくなってきた、あるいは国内におきましてもいろんな問題が出てきた、こういうときには国民の皆さんのお力をおかりしなければ、こういう重大な時局はとても乗り切れるものじゃありません。国民の皆さんのお力をおかりするにはどうしたらいいかといえば、国民の皆さんにわかっていただいて、そうして強力に支持していただく以外にない。  そういう観点から、まずわかりやすい政治ということで国民の皆さんにわかっていただこうと。そうして、よく理解した上で判断をしていただいて、そうして応援していただこうと、そういう考えに立ちまして「わかりやすい政治」ということを申し上げ、まあそういう考えに立って努力しているという次第でございます。
  409. 江田五月

    ○江田五月君 大変結構だと思うんですけれども、そこで、各閣僚のテレビの、国の施策のPRなどにもひとつ今度は総理が御自身でどんどんお出になってお茶の間に入っていって、お得意の語り口でお茶の間の皆さんと直結しようという、そういうことになられるわけですか。
  410. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はそういう考えを持っておるんです。できるだけ国のトップリーダーはテレビやそういうところへ出て、ラジオにも出ていって、できるだけ国民の皆さんの声を直接聞いたり、また、自分の考えを聞いていただく機会を設けたい。もとより国会は大事であります。代議政治でありますから、議会、国会というものは非常に大事なところであると思いますが、また一面において、その国会を生み出している基礎である、主権者である国民の皆様というものと、この政治のリーダーというものが直結して話し合う、あるいは意見を聞くということもまた非常に重要である。両方重要視してそのように申し上げておる次第であります。
  411. 江田五月

    ○江田五月君 しかし、どうもそこまでの話は結構なんですが、総理からお茶の間へというこの通行はどんどんやっていかれると。だけれども、一方で、お茶の間から総理へという方は一体どうなるのか。お茶の間直結ということになると、総理からお茶の間へもどんどん行くかもしれないけれども、お茶の間から総理というのもなければいけないし、特にいまおっしゃったいろいろな問題がある、自分の考えをわかってほしいと言われるならば、国民の方だっていろんな問題をいま抱えておるわけですから、国民がいま抱えておる問題を総理が一生懸命に聞くという態度も必要だと思いますが、そちらの方が欠けているんじゃないかという気がしますが、いかがですか。
  412. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 江田さんも大臣や総理大臣はおなりになってやってみるとおわかりだと思いますが、やっぱりテレビやなにか、あるいはテレビの座談会等で言った言葉は非常に全国の皆さんよく聞いておられるようです。それで非常に手紙が参りますし、あるいは電話をかけてくる方々も多いんです。恐らく閣僚の皆さんもテレビやなにかへ出た場合には非常に反応のある手紙や電話が多いと思います。それぐらい国民の皆さんはいま知識程度は高くなっておりますし、これだけ情報化した社会で、日本ぐらい情報が国民の茶の間のところへ多量に入っている社会はないと思います。それぐらい高度の成熟した社会になっておりますから、私らがここで申し上げたことは、すぐびりびりっと全国に響いて、われわれが考える以上に反応が強い、それがやはり一種の対話をつくっておると私考えております。  世論調査を見ましても、中曽根の場合は賛成か反対かが非常に明確に出てきて、真ん中のよくわからないというのは減ってますね。これはやっぱりそういう直結してきている影響じゃないかと思っております。
  413. 江田五月

    ○江田五月君 大分直結してきているようで、国民の反対の声が強くて、中曽根さんの政治もかなり変わっておられる、変わってこられたというように理解したいんですが、本当に国民の声が届いているかどうか、いろいろこれから聞いていきたいと思うんですね。  いま非常に残念なことに、きのう、きょう、あすあたり卒業式のシーズン。本来なら卒業式というのは非常にうれしい、華やいだ、まあある意味では悲しい別れでもありますけれども、儀式なんですが、最近ずいぶん違いますね。中学校、特に暴力、この学校内暴力の現状というのを総理はどう認識されておりますか。
  414. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非常に残念なことでございまして、学校の、特に中学校の状況を見ますと、悲しみにたえないというのが私の心情であります。  しかし、どうしてこういうふうになったかということを考えますと、これは学校だけの責任でもないし、先生だけの責任でもないし、また、いわんや子供の責任でもない。やはり時代の流れあるいは戦後三十数年にわたる間のいろんなものの蓄積の上に今日のこういう問題はできている。そういう意味において非常に根は深いぞと、この深い根をどういうふうに改革していくかという非常に謙虚な姿勢でこの問題に取り組んでいかなければならぬ、そう考えております。  しかし、目前に迫っておる卒業式に対する暴力やなにかが起こることは、これは予防しなけりゃなりませんから、全国の教育委員会におきまし て、いま必要なそれぞれの措置を講ずるように、この間文部省は連絡迎給したところでもございます。
  415. 江田五月

    ○江田五月君 私ども、どうもこの総括質疑というのは初めて立つものですから、多少緊張しまして、けさ、ずいぶんまだ暗いうちから目が覚めまして、中学生なんですが娘がおりまして、お父さん「積木くずし」という本読みなさい、こう言われて、朝早く起きて読んだのですが、総理はこの「積木くずし」という本を御存じですか。
  416. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その本の名前は最近聞さました。おまえも読めと言われておる本であります。
  417. 江田五月

    ○江田五月君 これは、どのくらい国民にいま売れているか御存じですか。
  418. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その辺までは、まだ調査が行き届いておりません。
  419. 江田五月

    ○江田五月君 二百五十万部というんですね、けさ、私、本屋に電話して聞いてみたんですが。つまり、国民の中に大変にいま非行の問題について関心が深い。本当に皆悩んでおる。一体どうしてこういう非行が起きてくるのか。みんな自分の——私も子供がおる、総理はお孫さんですか、いらっしゃると思いますが、本当にしつけと言われますけれども、どうやってしつけていいかわからないというのがいま親の本当の悩みになっているんだと思うんですね。  忠生中学の事件というのは、一体総理はどうごらんになりますか。
  420. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 忠生中学だけでなしに、残念ながら最近特に、以前は高校の問題がありましたけれども、中学、低学年に移っておるということでございまして、これは先ほど総理もお話がありましたし、世間でもいろいろ言われておりますように、原因が非常に複雑になっておる。個別に言いますと、やはり全部の子供がそうであるわけじゃないんですから、本人の資質といいましょうか、にもよる。それから家庭の問題、家庭のしつけといいますか、家庭教育という面に欠ける家庭環境が、経済発展の裏に残念ながら御指摘のように核家族その他の問題がある。それから学校の教師の面にも、学校教育の面に欠けるところがある。社会全般も戦後の経済発展の裏で、それからもう一つ、自山といいますか、権利といいますか、自我意識だけ大きく発展して、他人に対する思いやりがない風潮がだんだん広がってきておる。こういう問題が錯綜しておりますから、忠生中学だけの問題じゃありませんが、そういうことが学校でみんなが、使命感を持って子供を教育するところが足らなかったというところも指摘されておりますが、こういう問題を細かく分析して、一挙にというわけにはいきませんけれども、逐次、これはもう学校あるいは家庭ということでなしに、全国民がこの状態について反省すべきは反省し、力を合わせて進まなければ将来非常に心配がされる、かように考えておるわけでございます。
  421. 江田五月

    ○江田五月君 学校が荒れていると、これは結果ですね。子供が学校の中でいろいろ暴力をふるう、それが学校が荒れる原因になっているかもしれませんが、子供が学校の中で暴れることもこれまた結果なんですね。子供が悪いとかなんとか言ってみたって、子供に責任をなすりつけるわけにいかない。現に起こっていることに対して厳しく対応するとか、これはもう幾らでもありますし、私自身も前に少年事件を裁いておったときに本当に厳しい——ちょっとしたことで少年院に送るようなことをやったこともありますが、厳しくやることは幾ら厳しくやっても、しかし子供がけしからぬと言ってみても実は始まらない。それも一つの結果で、子供は親のかがみですから。そこで、いろいろな原因が積み重なってここにきているんですが、ひとつ学校の規模ですね、学校がどのくらい大きいかということと、学校がどれほど荒れているかということの間に関係がありはしないかなという気がするんですが、学校の規模別の、学校内暴力がどのくらい起こっているかというようなこと、これは明らかにできませんか。
  422. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 規模別の統計等はもし調査があれば事務当局からお答えいたしますが、学校の規模が大きいということは必ずしも適当でないと思っておるんです。ただし、学校の規模が大きいから、これが全部そうなるというわけにもまいらない。たとえばいま問題になっております忠生中学校、これは千二百名ぐらいの生徒ということだそうでございますが、私はたまたまほかの用で先般広島県に行きまして、府中町でございますが、府中中学校の状況を聞きました。これは千四百名、少し大き過ぎるなという話をしたんです。あそこは東洋工業という大きな、御承知の工業があるところです。やはり学校というのは私はせいぜい七、八百人、小中学校ともそのくらいなのが一番理想じゃないかと思いますが、残念ながら人口集中地帯等では分散して学校をつくる場所がない。どうしても土地の問題その他で、集まる生徒を収容する施設をしなきゃならない。よし悪しの問題でなしに、そういう日本における特別の制約がある。しかし、それは一つの現象でありまして、できるだけ学校は適当規模、企業にも適正規模というのがありますが、そういうことに努めていく必要があると、かように考えておるわけです。
  423. 江田五月

    ○江田五月君 忠生中学の場合はどのくらいの規模ですか。
  424. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) 忠生中学校は学級数が三十四学級、教員の数が六十四名、生徒数が千四百四十九名でございます。
  425. 江田五月

    ○江田五月君 学級の基準というものは、これは行政上どのくらいの基準になっているんですか。
  426. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) お答えいたします。  学校の適正規模につきましては、学校教育法施行規則の規定がございまして、小中学校の場合「十二学級以上十八学級以下を標準とする。」ということになっております。
  427. 江田五月

    ○江田五月君 そんな基準が守られておりますか。
  428. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 標準でございますので、これが望ましいという姿であろうかと思います。これがかなり大きくなってまいりますと、分離をするように文部省としても指導をしておるわけでございます。
  429. 江田五月

    ○江田五月君 法令上は、一体どの程度の学級数になったら分離ということになるんですか。
  430. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 法令の規定は格別ないわけでございますけれども、一般的には三十学級を超えるところで分けるというのが実態として多いと思っております。
  431. 江田五月

    ○江田五月君 三十学級程度で分離していますか。
  432. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 実態といたしましては、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、いろいろ土地の確保の問題あるいは位置をどうするか、学区をどうするかといったようなことで、地域住民との関係等いろいろ問題がございますので、必ずしも円滑に進んでいない面があるかと思っております。
  433. 江田五月

    ○江田五月君 三十七学級を超えるぐらいになって初めて分離だとかいうような話になっていると聞いているんですが、そんなことはありませんか。
  434. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 文部省といたしましては、各市町村からの計画を尊重いたしまして、分離に係る校舎の整備につきましては優先的に一〇〇%補助採択をいたしておるわけでございまして、そういう方向で努力をしておるわけでございます。
  435. 江田五月

    ○江田五月君 それは何学級以上ですか。
  436. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) これにつきましては何学級以上ということを決めておりませんので、標準規模を超える学校が標準規模に近づけるように改善をしたいというものについては全部対応したいと考えております。
  437. 江田五月

    ○江田五月君 いずれにしても、先生一人が把握できる生徒の数というのは、これはそんなに多くはないんですね。考え方によると、恐らく教師一人に全校生徒三百人から四百人ぐらいが限度じゃないか、学校というのはそんなに大きかったらい けないんだと。それは、先生一人一人が皆、この子はこういう子供で、この子の家庭はこうで、地域はこうなっていてと、そういうことがわかって初めてその子とのいろいろなつながりができてくるわけです。それがわからないと、とんでもないことでとんでもないことを言って子供を傷つけるというようなことがごろごろあるんですね。私は何も、子供を甘やかすという意味で言っているわけじゃないけれども、子供は選挙権も被選挙権もないですから、どうもこういうようになりますと、子供の意見というものはまるっきり入れられないので、やはり若い政治家として子供の意見も言わなきゃならぬと思いますが、大変な大きさになってしまった学校を分離するのに大体どのくらいお金がかかるんでしょうね。
  438. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 中学校のケースで申し上げますと、標準規模の中学校十八学級といたしまして、それをつくる場合の、これは試算でございますけれども、経費といたしましては、校舎の建設に約六億円でございますが、その校舎本体のほかに、屋体でございますとかあるいは柔剣道場、プール等も逐次つくっていくというのが通常でございます。さらには用地費、用地を新たに取得する必要がある場合には用地費の手当てが必要ということになりますので、校舎のほかに用地費まで含めた総額といたしましては中学校一校で十七億から十八億ぐらいの金額が必要であろうと、こう考えております。
  439. 江田五月

    ○江田五月君 やはりそう安い額ではないんで、なかなか大変であることは確かなんですが、しかし、総理、この総括の中で防衛の問題もずいぶん議論になりましたけれども、私も防衛の問題を決して軽んずるつもりはありませんが、しかし子供たちがこんな状態で、これで一体日本という国はどうなるんだということを考えなきゃならぬ。私は、総理はどうも大蔵省がせっかくつくった原案をいろいろと鉄砲、大砲のところだけはふやして教育の方は削るというようなことをやられたわけですが、やっぱりP3C一機百三十億円七機要求、ちょっと教育の方が切られ過ぎているんじゃないかという気がしますが、いかがですか。
  440. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会委員会におきまして福祉や教育の問題が真剣に論ぜられることは大変結構なことであると、私も歓迎する次第でございます。防衛費の問題と福祉や教育の費用の問題というのは、要するに国政上の選択の問題でありバランスの問題であります。日本がいままで三十数年たどってきたいろいろな政策の中で、国際的に見ましても防衛面が非常におくれておる。そういう意味において日本はEC、ヨーロッパからもあるいはアメリカからも孤立しかねまじき危ない情勢にきておったのであります。そこで、ある程度防衛面にも力を入れて自由世界における国際的孤立を防ぐ、そういう面もございましてある程度力を入れたということは事実でありますが、これによって日本の国際的孤立が防がれて、ある程度小康状態を呈して、そしていま世界的に自由世界からそう非難の声がなくなってきたということは、これは皆さんもお認めいただけるだろうと思います。そういう考えでやったということを御承知願いたいと思います。
  441. 江田五月

    ○江田五月君 総理はアメリカへ行かれていろいろと言われたので大変だったとは思いますが、しかし、お茶の間直結と言われるなら、お茶の間ではいま子供を持った親が父親も母親も、子供自身も悲鳴を上げているんです。その声をどうぞ忘れないでいただきたい。  次に、総理のもう一つの政治手法といいますか、リーダーシップということをずいぶん強調されるといいますか、これは総裁選で勝利をおさめたときの記者会見でリーダーシップということを発言され、アメリカへ行かれたときの、私もちょっと読ませていただいたんですが、ワシントン・ポストの記事の中では、なかなか、リーダーシップを持ってこれからやっていくんだ、いままでと違うんだというような、ある意味で気負いのようなものが見られるんですが、このリーダーシップの政治ということについてどういうお考えをお持ちですか。
  442. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民主政治というものは、リーダーシップなくしては私は円満に、うまくいかないと思っております。つまり、リーダーシップを生む方法をみんなでやるというのが民主政治におけるやり方なのでありまして、万人が万人の敵であるとか、あるいはカオスの状態で民主政治はうまくいくはずがない、秩序整然としてそういう指導力を生んでいくというやり方だと思います。これはイギリスにおいてもサッチャーさん、あるいはアメリカにおいてもレーガンさん、つまり民主主義国家においては、やはり行政の上に立つ方々はそれなりの見識やら、あるいは指導力を持っておる、しかしそれはその党内あるいは国民というものの関係における理解と協力の上にそれができている、これが独裁と違うところであります。民主的意味におけるリーダーシップはやはり必要なんだと私は思っております。
  443. 江田五月

    ○江田五月君 レーガンさんとサッチャーさんしか例が挙がってこないので、その辺も問題だという気はするんですが、しかしいずれにしてもいまの日本の政治の中で、これまでの政治の中でリーダーシップということがちょっと欠けていたという点は確かにあると思うんですね。  ただ、それじゃ総理のとられるリーダーシップというのはどっちの方向なのかということについて、国民はリーダーシップを望んでいない、総理がリーダーシップをどんどん発揮されるから総理の人気がどんどん下がっちゃった、そうじゃないと思うんですね。何かのリーダーシップは国民は望んでいるんだ、だけれども総理のリーダーシップを持って引っ張っていく方向は嫌だよというのが最近の世論調査の傾向じゃないかという気がしますが、いかがですか。
  444. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ある程度むずかしい問題を解決するときには、毀誉褒貶にとらわれないで、そして虚心坦懐にやるということも必要だと思うんです。余り毀誉褒貶ばかり考えていると正義が実現されないということもあり得る。もちろん民主政治でありますから、国民世論の動向、国民の皆さんは何を欲しているか、そういう点はよく考えてやらなきゃならぬ、これはもうイロハのイの字に当たる問題ですね。そうであると思いますよ。  しかし、非常に問題が山積してむずかしいという、そういうときにはある程度政治家が決断をして、そしてそれを国民の皆さんによくわかっていただいて、御協力をいただきながら政治家が先頭に立って進むということが必要ではないかと思うんです。  私のやり方がそれに値するかどうかは、これはまだわかりませんが、ある程度毀誉褒貶を超越して、そして自分が正しいと思ったことをやるということは、やはりこういう危機的様相を呈するとか、非常に混乱が激しいというときにはある程度必要ではないかと思っております。
  445. 江田五月

    ○江田五月君 それにしては何か発言中身がずいぶんお変わりになったんではないかという気がするんですが、たとえば憲法、総理の憲法観というものは何かいろいろ変わったような気がしますが、いま最近の憲法観というのはどういうことになっているんですか。
  446. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の憲法観は一貫して変わっておりません。
  447. 江田五月

    ○江田五月君 変わっていないというのは、この予算委員会、参議院の予算委員会総括質問の二番手でしたか、嶋崎先生の質問でお答えになったああいう憲法観ですか。
  448. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりです。それは昭和三十七、八年ごろ憲法調査会の委員として私が発言した総括の部分を読んでいただけばああいうことが言われておるんで、私は一貫してそういう考えを持っておる。ただ、新聞やテレビはいわゆる私のタカ派の部分しか報道しない。本当の中曽根を報道してませんよ。本当の中曽根を見ていただけば、この間申し上げたようなことが根底にあるのである。そういうことをよく御認識願いたい、江田さんもよく読んでいただきたいと思 います。
  449. 江田五月

    ○江田五月君 私は、中曽根さんは、いまの憲法は貴重であると、すばらしいと、しかし完全無欠の法令というのはないのだから憲法改正のことを一生懸命勉強するのはいいのだと、これが中曽根さんの考え方だと理解しておったんですが、違いますか。
  450. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは私は私なりにいいところと悪いところは、悪いと言っておるとちょっと弊害がありますが、欠陥のあるところはちゃんとよく知っております。それはいま内閣総理大臣であるから、しかも中曽根内閣は憲法改正問題を政治日程にのせないと言っておるんですから、それに誤解を与えるようなことは慎んでおるので、私は申しません。しかし、私なりに個人としてはいろんな考えも持っておる。しかし、その中でいままで誤解を与えているような印象が報道に流れている、それは直しておかなきゃいかぬと、自分の真実の声はこういうことなんだと、こういう憲法調査会の私の総括発言にもちゃんと載っておると、その点をこの間は申し上げて、そういう間違った印象を直そうと、そういうことで申し上げたのであります。いいところもあればまた考えるべき点はあるというのは、人間の制度一般としてどこにもあることであります。
  451. 江田五月

    ○江田五月君 総理は、いま日本国憲法が考えているような姿が日本の現実の中に実現されていると思われますか、なかなかそうもなっていない、まだまだ大変だと思われますか。  たとえば憲法二十五条ですね、先ほども前島さんの質問なんかいろいろありましたが、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、権利義務ということで考えるのはいやだという方もいらっしゃるかもしれませんが、これはプログラム規定ということで、日本国というのはそういう国になっていくようにみんなで努力をしていくんだという、そういう意味の規定ですね。それがいま現実に実現をしておるのか、まだまだがんばらなければならぬということなのか、どうでしょうか。
  452. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はいまの憲法を非常に評価しているということは前から申し上げておる。戦争前の日本と戦争後の日本が非常にはっきりと変わったと、それはどこで変わったかと言えば、やはり憲法の力が大きいと、基本的人権の尊重とか、平和主義とか、あるいは自由主義、民主主義、それから国際協調主義、それから福祉国家の理念、こういうことをいつも私は挙げて申し上げておる。福祉国家の理念にいまの点は当たる点でしょう。これは非常にりっぱなものであると、私は前から申し上げておるわけであります。
  453. 江田五月

    ○江田五月君 私が聞いたのは、その理念はいまの日本に完全に実現しているんでしょうか、まだまだやらなければならぬことがたくさんあるんでしょうか、どちらでしょうかということ。
  454. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだまだやらなければならぬことがたくさんあると思っています。
  455. 江田五月

    ○江田五月君 私どももいかなる法令も完全無欠というようなものは、それはないのだと、いまの憲法もそれは完全無欠、もう未来永劫絶対変わらないという、そういうものかと言われると、それはそうじゃないでしょうと。しかしいまの憲法の貴重な点、すばらしい点がたくさんあって、この憲法の理想を日本の現実につくるために政治家というのはがんばらなければならぬのだと。たとえば老人の問題を見ても、病気の問題を見ても、障害者の問題を見ても、教育の問題を見ても、何を見てももっともっと憲法の理想を日本に実現するために、いまこの時代に生きている政治家はがんばらなければならぬのだと、憲法改正のことなんて考えている暇はない、これがいまの政治家の役割りだと思いますが、いかがですか。
  456. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 江田さんの御見識として承っておきます。
  457. 江田五月

    ○江田五月君 総理はそういう見識はお持ちくださいませんか、私と共有されませんか。
  458. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はさっき申し上げましたように、この憲法の非常な長所についてはっきりした認識を持っておるんです。したがって、そういう長所についてはあくまでこれを実現するように努力すべきであるし、またこれは維持すべきである、発展さすべきである、そういうふうに考えておるのであります。したがいまして、いまあなたがおっしゃったようなそういう長所に国を近づけていく、さらに努力していくということは正しいことであると思っております。
  459. 江田五月

    ○江田五月君 中曽根内閣は憲法改正を考えない、これはおっしゃいましたですね。
  460. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 正式に申し上げると、憲法問題を政治日程にのせることはいたしませんということですが、簡単に言えばあなたのおっしゃるようなことです。
  461. 江田五月

    ○江田五月君 そうしますと、いま私が申しましたような憲法改正など考える暇はないんだ、一生懸命政治家がんばらなきゃならぬ、仕事が山ほどあるんだ、こういうことは御理解くださっているんだと思うんですが、それならば閣僚の皆さん方の中で憲法改正というようなことを言うのはもう許さないぞというような、そういう決意を示していただきたいと思うんですがね。
  462. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 閣僚である間は私が申し上げたような線に沿って発言してほしい、そういうことは申し上げてあります。
  463. 江田五月

    ○江田五月君 リーダーシップが、誤解か正解かわかりませんが、国民にこのリーダーシップはちょっと変な方向だぞというように受け取られて、総理も御自身のお考えになっていることをさらに正確にということで御努力されているんだと思います。  次に政治倫理についてのリーダーシップ、これをちょっと伺いたいんですが、いまたとえば私どもに対しても、あなた方も政治家を商売でやっているんだろう、余りきれいごとばかり言わずに少しはだれかさんのまねでもしたらどうか、こういうようなことをいろいろ言われる人がおるんですね。総理、これ、そういうことを言われてどうお感じになりますか。
  464. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何を意味しているかよくわかりませんが、正しいことをやれ、悪いことはやるな、正々堂々として政治家の道を歩め、もしそういう意味であるならば、私はそれはりっぱな言葉であると思います。
  465. 江田五月

    ○江田五月君 政治家というのもどうせ——まあ普通に人がいろいろと生活を立てるために仕事をしますね。商売やる人は商売します、お勤めの人は勤めてそこで働きます。政治家というのも自分の生活を維持するために政治家の仕事をやっているんだから、せいぜい余りきれいごと言わずにもうけたらどうですかということを言う人がたくさんおるんですよ、いま。
  466. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 江田さんも名裁判官であった由ですが、誘導尋問はどうも困りますね。
  467. 江田五月

    ○江田五月君 誘導尋問ではなくて、——敵性証人には誘導尋問が許されるんですよ。いや摘性というのはちょっと言い過ぎですが、ちょっと言いたいことは理解してほしいんですね。  いま政治家に対する国民の信頼というのはずいぶん下がっているという現実を一体どう認識されていますか。そういうことはないとお思いですか。
  468. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いつ、いかなるときにおきましても民主政治国民の信頼の上に成り立つものでありますから、信用をいやが上にも増すように努力しなければならぬと思っております。
  469. 江田五月

    ○江田五月君 私は、いま本当に国民の中に政治家に対する不信というものが非常に強い。このことはもう日本にとって大変な問題だと思うんですね。日本というのは、これはもう私が何も言う必要もないんで、貿易によって立っている国、ちょっと何かがあればこの日本の経済だってどうなるかわからない。何か起こったときに国民の皆さんに自制を説き、倹約を説き、がまんしてくださいということを言うのはやはり政治家でしょう。そういうときに政治家が何か言えば、どうせあいつ らは自分らでもうけているんだから、どうせ彼らの都合で言っているんだからということになってごらんなさい、これは国がむちゃくちゃになるわけですね。そういう意味で、政治家に対する国民の信頼、信用、これはもう日本にとっては最も重要な課題だと思いますが、いかがですか。
  470. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのようにも思います。また、その信用の上に政治家が適切な政策を行う、そうして国利民福を図っていくと、そういう点について研さんすることもまた政治家としては期待されているところだと思います。
  471. 江田五月

    ○江田五月君 どうもこの点になりますと総理、タブーはないんだと言いながらなかなかタブーのようになってしまう感じがあるんですがね。  田中総理に対する辞職勧告決議がいま衆議院でこれから議論になっていくということですが、これはどういうふうに取り組まれますか。自民党総裁としてお答えください。
  472. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は衆議院の議院運営委員会のもうすでに議題に上っておりまして、各党が所見をみんな発表して、そして政治的なアイテムになっておるわけです。政治日程に上っておる案件になっておるわけです。自由民主党といたしましては、自由民主党の代表が先般議院運営委員会においてその所見を申し上げたとおりであります。私は自由民主党の総裁でありまして、その自由民主党員の考え方を支持しておると。いま各党間のそういう案件に登場しておる段階でございますから、各党の間でこの問題がどういうふうに取り扱われていくか注目して見ておるところであります。
  473. 江田五月

    ○江田五月君 政治倫理の問題は、第一に、第一義的に政治家個人の課題であるということをおっしゃいましたね。それはちょっと誘導尋問ですがどうですか。
  474. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは発生原因はそうですから、また政治家個人の倫理性というものは議会を支えていく基礎でもありますから、そういう意味においてはそうですけれども国会の議院運営委員会という委員会政治的案件として登場したというこういう段階になりますと、これは政党間のいろいろな交渉あるいは取り扱いというものによってこれは動かされていくものでありまして、それを注目しておるということであります。
  475. 江田五月

    ○江田五月君 政治倫理の問題がまず第一に一義的に政治家その一人一人の個人の問題であると。  それならばですね、その各党間の交渉とかなんとかということでなくて、この政治倫理の問題、田中総理の辞職勧告決議の問題については、党議の拘束を解いて、つまり政党でこう決めたからその構成員はこういうふうに行動しなさいということをやめて、一人一人の議員の自由な判断に任せるということにしてはいかがでしょうか。
  476. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 各政党はおのおのの因縁があってできておりまして、おのおのの政策を持っていらっしゃる。自由民主党は自由民主党としての歴史を持ち、また政策を持っておるわけであります。そういう意味におきましてこれは自由民主党の主権の範囲内のことであるというふうにお考え願いたい。
  477. 江田五月

    ○江田五月君 どうも主権を侵害しまして。  しかしですね、しかし、これほど政治家国民から信頼をされていない事態というのは、私はこれは自民党だ、社会党だ、何党だ、保守だ、革新だというような問題を超えた問題だと思うんですね。そういう小さなことでなくて、もっと大きな目で考えなきゃいけないんじゃないか。いま、とにかく(「おれなんか信頼されてるぞ」と呼ぶ者あり)田中総理のこの事件で本当に国民政治家に対する信頼は——あるいは信頼されてる人もいるでしょうけども、全体としては落ちてますよ。それは、政治家というのは、国会議員というのは、国会の中で予算を決めて、国民の皆さんにこれだけ税金払ってくれと言うわけですね。法律を決めて、こういう法律を守れと言うわけですね。裁判官が妙なことをやって、女性と一緒にどっかへ行って起訴されて、自分の事件はまだ裁判が済んでないからといってそのまま裁判をやってごらんなさい、だれがその裁判に従うか。警察官が賄賂を取って起訴されて、自分の裁判はまだ解決ついてないからといってそのまま取り調べをやってごらんなさい、だれがその取り調べに従うか。国会議員が、いやしくも国会議員の——まああの場合は総理ですかね、地位を利用して賄賂を取ったということで起訴されて最高刑の求刑を受けている。その後も国会の中にいて法律を決める、予算を決める、国民に税金を払えと言う、法律を守れと言う。こういうことだから、税金なんというのはなるべくごまかした方がよろしい、法律なんというのはなるべくくぐった方がよろしい、見つかればもともとという、そういう風潮になっているんじゃありませんか。
  478. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 議員が一人一人自粛自戒して国民の皆さんの信頼を高めなければならぬということはもとより基本的な命題であると思います。しかし、私はいまの国会議員の皆さんが全般的にそう信用を失墜しているばかりとは考えておりません。りっぱな議員で一生懸命国家的な政策を研さんして、また議会で発表している方もおりますし、また選挙区におきまして営々と選挙区のために奉仕している、そういう政治家もございますし、それはみんな政治家おのおのが長所を持っておるわけでございますから、その上に議会、議会政治というものは成り立っておるわけであります。だから、そう卑下されていま政治の信用ががた落ちでゼロだというふうに私は絶望的には考えていないんです。われわれが努力して、よりよきものへいつも努力していくと、そういう考えに立っております。しかし、われわれとしてはやはり何といっても国民の信頼、そういうものが民主政治基礎にあるということは寝ても覚めても考えてやっていかなければならぬと、そういうことであると思っております。
  479. 江田五月

    ○江田五月君 田中総理には政治的、道義的責任はあるんですかないんですか。
  480. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その問題がいま議院運営委員会を中心にして問われていることでございますので、私は個人的意見は差し控えたいと思っております。
  481. 江田五月

    ○江田五月君 昭和五十一年十一月二日ですね、衆議院のロッキード問題特別委員会で、田中総理も灰色高官というので名前を報告された。これは政治的、道義的責任があるからじゃなかったんでしょうか。
  482. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) すべていま申し上げましたように、議院運営委員会の案件に上っておるという状態でございますから、その問題については発言を差し控えさしていただきます。
  483. 江田五月

    ○江田五月君 どうもやはりタブーになられるようで困ったものだと思うのですが、こういうふうにさっぱり煮え切らない、タブーになってしまう、はっきりしたことが出てこない。これが私はこのままでいけば、それこそ一〇〇%さっき総理がおっしゃったように国民政治家に対する信頼というのはなくなってしまうんじゃないかと思う、心配をしますが、国民の中から政治倫理をもうこうなったら自分たちの手でひとつ確立をしていかなきゃならないというような動きがいろんなところで起こってまいりましたね。堺市の倫理条例、これは御存じかどうかだけ総理に伺っておきます。
  484. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新聞で見ております。
  485. 江田五月

    ○江田五月君 この倫理条例、自治大臣、これは条例の範囲を逸脱しているとかなんとかいうことでこれに干渉されるようなことはないでしょうね。
  486. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) この条例はいろいろ紆余曲折を経た末に制定にこぎつけたという条例でありまして、その実施に当たってはまだまだ私は問題点もあるのかなと、こう思うのでありまして、今後これを見守っていきたいと、こう思っております。
  487. 江田五月

    ○江田五月君 総理はこういう地方住民の条例制定の直接請求、署名がたくさん集まったと、そし て地方議会がそれを無視できなくてということで条例ができてくる、こういう動きについては基本的にどうお考えになりますか。
  488. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさにそれは自治の行為であると思います。
  489. 江田五月

    ○江田五月君 こういう住民からの政治参加によっていわば自由と民主主義というのは活性化していくわけで、自由民主党だけが自由と民主主義を守るわけではない、国民みんなの努力だということだと思いますが、そのことはひとつ認識をしておいていただきたいと思うんですが。  さて、政治倫理に関連して政治家の資産公開という——総理大臣の資産公開、これを前に何人かの総理大臣がなさっておりますが、中曽根総理はどういうお考えですか。
  490. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も総理大臣に任命されましたときに、新聞記者の前で資産公開をいたしまして、たしか一部新聞に報道されたと思います。
  491. 江田五月

    ○江田五月君 長島さんのお宅をお借りしているとかというような記事ですね。もうちょっと——あの限度ですか。もっと公開できませんか。
  492. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一切合財はたいて、あの程度でございます。
  493. 江田五月

    ○江田五月君 そうですか。まあいろんな方がいろいろおたたきになるんだろうと思いますが、制度として政治家の、国会議員の資産の公開というようなことをつくることはどうお考えになりますか。韓国などはこれ始めたわけですね、ことしから。いかがですか。
  494. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国によってみんな社会制度や社会思想というのは違いますから、一概にほかの国のことが全部いいとは言えません。その国その国の自由があって、自主的におやりになることであると思います。しかし、一般的に見て公職にある、しかも高度の地位にある人が資産公開をするということは、私個人としては好ましいことであると思います。  しかし、これは議会制度の中に行われていることで、各党各派でそういうような考えがどういうふうに調整されるか、そういう問題もあると思って、ひとりよがりはいけない、そういうふうに思います。
  495. 江田五月

    ○江田五月君 アメリカでも例のウォーターゲート事件の後、政府倫理法というので資産公開といいますか、あの場合はフローにむしろ重点を置いた公開の制度をつくりましたね。どうも日本はロッキード事件の教訓を十分生かしていないじゃないかということもずいぶん言われるんですがね。ひとりよがりとおっしゃいますが、それぞれの国にいろいろそれぞれの事情があるにしても、あることは当然なんですが、日本もそういうものにもっと積極的な姿勢を持っていく必要があるんじゃありませんか。
  496. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は個人的意見はここでは差し控えますけれども、アメリカなんかに比べると日本の議員の財産というのは余りないんじゃないでしょうかね。特に野党の皆さんはそうじゃないかと、自民党もそんなあるわけじゃありませんけれども、比較的に見たらそういうことじゃないかと思います。
  497. 江田五月

    ○江田五月君 さあ、どうも野党がなめられたと言うべきなのか、よく認識していただいていると言うべきなのか、よくわかりませんが。  さて、田中総理が一体どうなるのかというのはわりにこれ国民皆関心を持っておりまして、まあミーハー的関心もあるのかもしれませんが、その中で、皇室典範を改めて、皇位の継承を天皇の生前退位によってもできるようにして、そして恩赦を適用して何とか救おうというようなことがいろいろ世上取りざたされておりますが、まず皇室典範、これは国会で改正することができるものであるのかどうかということを、これは法制局になりますか、伺います。
  498. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま皇室典範を改正して云々という言葉がありましたが、私はそういうデマに政治家がだまかされてはいかぬと思います。それは非常に不謹慎なデマだと思うのです。事皇室、日本の象徴である皇室に関することについて、いまのようなことを結びつけるということは私は非常に心外であります。そのことだけをまず申し上げて法制局長官から答弁させます。
  499. 江田五月

    ○江田五月君 いいです。デマであるということをはっきりさせていただければそれで結構です。  さて、中曽根総理の外交についての姿勢ですね。これはどうも、一体どういうビジョンを持って外交をやろうとされるのか、日本が一体どういう方向にこの国際関係の中で進んでいくのかということがなかなかこうよくわからないんですが、簡単に言いますとどういうことになるのか教えてくださいますか。
  500. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本的には平和を維持して、そして日本の国益を守り、日本を国際的に名誉ある地位を占めるような国にしていく、それが基本です。  平和を守るということは、わが国の外交の基本の中の基本であると思っています。それは憲法の命ずるところでもございますし、歴代自民党内閣がやってきたところでもあります。  つまり、いかにして戦争を予防して、戦争を起こさせないかと、特に米ソ二大陣営というものが言われていますが、米ソ間において戦争を起こさせない、いわゆる第三次世界大戦がごときものは絶対起こさせない、日本を戦場にしない、日本を戦争の中へ介入させない、もし起きた場合に。それがやはりわれわれの外交の一番の生命線であると思います。その上に立って、国際的にも貢献をして、世界でも名誉ある地位を占める国にしていくというのが外交の基本であると思っています。  その平和を維持していくというやり方について、野党の皆さんとわれわれのやり方は違うわけであります。われわれのやり方は、やはり戦争を起こさせないというためには、まことに残念だけれども、戦後の歴史を見ても真空地帯には力が侵入する、朝鮮半島の例でもあるいはカンボジアの例でも、アフガニスタンの例でももう枚挙にいとまがない。そういうような情勢から真空地帯をつくらない、いわゆる抑止力によって手をかけることを防ぐ、欲望を起こさせないようにしておく、そういう抑止力の理論、均衡の理論、そういう形によって人類の平和は遺憾ながら保たれている、そういうふうに考えておりまして、その抑止力の中にはアメリカの核兵器の力も含まれておる、そう考えています。そういう意味において、日米安保条約を結んでその抑止力をつくって、そうして戦争を起こさせない力をわれわれは培養している、そういう基本的な考えに立っているわけです。  それと同時に、実際いま世界の現実を見ますと、遺憾ながら東西の対立というものは現実的には否定できない。そこで、自由民主主義を奉ずるわれわれといたしましては、自由民主主義社会と手をつないで、そしてその連帯の中にわれわれのそういう力もある意味においてはつくりながら戦争を起こさせない力をつくっていこうと、そういう考えに立っています。  ただし、わが国は個別的自衛権のみを考えておって、そして集団的自衛権は憲法で禁止している、そういうたてまえに立って自由世界と緊密な連携を保ちながら戦争を防止していく、そうしてお互いに繁栄していく、そういう考え方を持っておるわけです。  それと同時に、発展途上国に対するわれわれの貢献ということも日本の大きな使命として取り上げていくべきである。日本が世界に対する貢献というものは軍事力によるにあらずして、発展途上国に対する経済的、文化的貢献によって、われわれは日本の大きな世界的役割りを果たしていく、そういうことをはっきり考えておるわけであります。
  501. 江田五月

    ○江田五月君 この戦争を起こさせない力——戦争を起こさせない力というのは、戦争をする力ですか。
  502. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる軍事力あるいは防衛力というものが一つでありましょう。しかし、そのほかに外交とかあるいは国際世論を醸 成して戦争を起こさせない心をつくっていくということも大事であります。そういう総合的な、いわゆる総合的安全保障という立場に立ってあらゆる手段を使って戦争を起こさせないということを考うべきであると思っています。
  503. 江田五月

    ○江田五月君 そこは、総理のやり方を見ますと、戦争を起こさせない力のうち、戦争をする力の方にずいぶん力点がかかっておって、そのほかの、戦争をしないような気持ちにみんなをさせていこうというようなことがどうも乏しいんではないかという印象、どうも印象の批判で申しわけないんですが、そういうように国民は受け取っておるんですがね、いま。
  504. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が内閣総理大臣を拝命しましたときの状況は、日本は自由世界の中において孤立しようとしておったわけです。安保条約を結んでいる相手方のアメリカ自体が日本に対する不信感を持っていたのではないか。だから、アメリカの上院において防衛問題に関する決議が満場一致で通るというような情勢であり、また、ヨーロッパの国々も日本に対して防衛努力を強く要請しておったという状態でありまして、日本は非常に国際的に孤立する危険性にあったわけであります。  また、経済問題でも、経済摩擦でアメリカ及びヨーロッパとの間では一触即発ぐらいな情勢にあったことは江田さんも御存じのとおりです。こういうものを放置しておけば、日本は貿易的にも挫折して、その結果は日本に大不景気が来る。いま程度の失業どころじゃない。アメリカとの関係がうまくいかなくて、仮にいま百八十六万台自動車をアメリカに売っていますが、これ十万台、二十万台減らされたらどうなるか。太平洋に捨てるわけにはいかないです。結局、日本の鉄鋼業も自動車産業も衰微して何十万という失業が出てくるわけです。そういうことも考えてみれば、そういうことを起こさせないようにするために速やかに手を打つ必要があった。  貿易摩擦にいたしましても、ヨーロッパでも同じでありました。ポワチェというところで、フランス人は、日本のビデオテープレコーダーの輸入を阻止するというねらいから、彼らは税関を移動して、田舎町に持っていって、そして日本のビデオテープレコーダーの輸入を阻止すると言われておった。そういうことすら起きている現状は国民の皆さんよく御存じだったと思います。  そういう意味において、対外関係の摩擦や不安定な情勢を解消しようというのはあの当時の政治では喫緊の課題であったと思うんです。そのためにアメリカにも行き、またヨーロッパ共同体の担当者を日本にも呼んで、カナダ及びアメリカのブロックさんも来てもらって、四極で通商摩擦解消の話もしたりして、そして大体アメリカ、ヨーロッパの関係は落ちついた状態にひとまずなりました。まだくすぶっているものはあります。が、しかし、安全保障面においても、あるいは経済摩擦の面におきましても、ひとまずまず抑えたという感じでおります。それは非常に大事なことであったんではないかと思うのであります。あれ何にもしないでいまでもくすぶっている状態があったならば、これはもっとひどい危険な状態が出てきたんではないかと思うんです。そういう意味において、私は私なりに一生懸命そういう国際関係を調節して、日本の国益を守るために一生懸命やったと考えておるのであります。
  505. 江田五月

    ○江田五月君 しかし、恐らくこの経済摩擦というのは、これはまだまだ、とにかく一遍こう静まったかに見えているだけで、まだまだこれから出てくることではないのかなという気がするし、一方で軍事的な問題というのは、何だかやけに重い荷物だけを背負ってしまったと。アメリカだってこれはいろんな意見があるわけですね、アメリカの中に。日本と軍事的な関係について非常に緊張関係をつくり出す意見もあるけれども、そうではないんだ、日本のやり方に対して一つの敬意を払い、日本のやり方を大切に、これまでのやり方をですよ、大切にしていかなきゃなりませんよという意見もある。レーガン・アドミニステレーションの中だっていろんな意見があって、ときどき人がやめたりしているわけですから、どうもレーガンの行政のある一部をそのまま受け入れてしまったんではないか。まあ後で中曽根さんは軍縮の問題についてもレーガンと話をされたということをおっしゃいましたが、あの軍縮問題についてレーガンと話をして、意外にレーガンが軍縮に熱心であったということを以前おっしゃって、ついこの間は意外ではなくてまさにもう意気投合したんだということをおっしゃったようですが、これはどちらが本当なんですか。
  506. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本に対する防衛上の問題について、アメリカはもう全員一致という状況でありました。現に、アメリカの外交は上院が監督してやっていますが、アメリカの上院が満場一致で、民主党も共和党もみんな満場一致であの決議を通したという事実。それに、ホワイトハウスは大体議会によって動かされていると言われておる。そういう状況を見れば、アメリカはほとんどもう全アメリカを挙げて日本に対して一致して要望していったということは、烱眼なる江田さんならおわかりいただけると思うんです。それから、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストやあるいはロサンゼルス・タイムズやあるいはへラルド・トリビューンとか、あらゆる論説を見ましても、日本に対して上院と同じような傾向の論説を書いておったわけです。いまでもこの点については与野党一致しておるはずであります。これが崩れているという情報、われわれのところに入ってきておりません。ヨーロッパにおきましても一応はいま静まっておるけれども状況によってはまた何が燃え出すかわからぬと、そういう情勢であるのであります。  レーガンさんについては、いわゆるタカ派タカ派と言われておりまして、私は、しかしレーガンさんはある戦略であれをやっていると思っておりました。いまでも思っております。つまり、米ソの間の妥協をつくるためにはアメリカ側が落ちた力を回復しなければだめだと。落ちた力を回復するという姿勢を示して、これをどんどん進めることによってソ連側が妥協の線に出てくる可能性が生まれてくる、そういうことを承知の上でやっているんだろうと私は思っておった。いまでも思っています。そういう意味において、ある適当なときが来たらレーガンさんとアンドロポフさんが会談をして、くだらぬ軍拡競争をお互いにやめる方が一番いいと、そう思っておりました。そういう意味で、レーガンさんにそういう趣旨の考えを持って話をしたわけです。アンドロポフさん困っているのだし、実際困っていると思いますよ。アメリカの方だって相当な赤字があるわけですから、財政赤字が。そういう点を考えればチャンスを見つけてやったらどうですかと、アンドロポフ・レーガン会談を。そういう話をしましたら、レーガンさんはまずソ連側が本当に応じてくるかという実証性を見たい、それでジュネーブにおける戦略兵器制限交渉の成り行きを見て、ソ連が本当に誠実にやるかどうかを証拠を見たい、それからINFの問題、そういうものでわれわれが確信を持ったら、外務大臣相互の会談をやらしたい、その準備をした上で自分はアンドロポフさんに会っていいと、そういうことを私に言いました。私それを聞きまして、やっぱり考えているんだなと、そういう気がいたしまして、両方ともそういうチャンスを模索し合っていることを実は祈っておる次第であります。
  507. 江田五月

    ○江田五月君 大分、二カ月ほどたってからそういうお話が総理の口から出てくるわけで、国民は戸惑うんだと思うんですがね。確かにどういう戦略かそれは別として、レーガンさんも恐らく軍拡一本やりじゃないんだろうと。いろんな悩みがあるし、いろいろやってるのだろうと。アンドロポフさんも新しい任務につかれて非常に悩んでおるときではないか。アメリカだってソ連だってこれ困っているわけですからね、いま。困っているときに日本が、その困っている両巨頭の肩を怒らして意地を張っている方を、がんばれがんばれと言うんじゃだめなんで、やっぱり困っているとき に、お困りでしょうと、日本がひとつ両方の心の中をそんたくして軍縮の方向を、日本が何かのお役に立って軍縮の方向を世界に実現していこうじゃないですかということをやらなきゃならぬ、これが日本の名誉ある地位ということじゃないかと思うわけですが、中曽根さん、レーガンさんとそういう話をされてこられたということですから、それは結構なことなんですがね。もっと現実の外交の中でそういう軍縮のことを進められてはいかがですか。何かどうも弱いんじゃないかと思いますがね。
  508. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうチャンスをできるだけ見つけ合ってお互いが友好国として相談し合い、あるいは助言し合うということは好ましいことであると思っています。しかし、お互いがお互いの立場をある程度推測してのみ込んだ場合には、お互いが何をしているかということを知っていて、そしてそれが実るように協力するということも大事だと思うのです。ポーカーゲームをやっているときにしゃしゃり出たらゲームが崩れるということもありますね。これが本当の玄人の外交官の考え方だと思いますよ。一般論から言えば、それはしゃしゃり出ていろいろやるというのはいかにも平和外交をやっているようで見場はきれいですけれども、しかし、物を成就させようというようなことを考えたらお互いは恐らく軍縮をやり、あるいはSALTをやっておる、STARTの戦略兵器削減交渉をやっている第一線の人たちは夜も寝ないで命がけで交渉していると思いますよ。現にアレクシス・ジョンソンさんがその代表でやっていたときの話を私に聞かしてくれましたが、非常に感銘した。われわれが酒飲んで酔っぱらって寝ているときに、あの人たちは人類の運命をかけて真剣にやっているんだということがわかったんです。それはソ連もそれぐらい真剣にやっておったんですから。そういう話を聞いてみると、並み大抵なことではないんだなと、人の苦労もよく知ってやる必要があると、そう思った次第なんであります。
  509. 江田五月

    ○江田五月君 私も何も中曽根さんを批判するためにここにおるわけじゃないんで、中曽根さんの苦労も理解していきたいと思います。それは本当にそう思います。ただ、やはり私どもの心配もひとつ聞いていただきたい、危惧も聞いてもらいたいと思っているわけです。  それにしても不沈空母とか、海峡封鎖とかずいぶんおっしゃったものだという気はするんですが、この点はこれどういうことになるわけですか、いまのお話と。
  510. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは年のせいもありまして、何しろ戦前派ですからボキャブラリーが、そういう戦前のボキャブラリーしかないので、そういう形容詞や比喩が必ずしも適切でなかったと思っております。
  511. 江田五月

    ○江田五月君 しかし、海峡封鎖というのは、何かこの間、海峡のコントロールなんだと、そしてここを通航する対象となる艦船の三〇%程度に打撃を与えることができればそれでいいんだとおっしゃったという、そういうふうに理解してよろしいですか。
  512. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 海峡封鎖という言葉は私は使わなかったんだと。いまでも余り使っていません。海峡のコントロールということを言ってきました。確かに英語でコントロールと言ってきたんですから。ですからコントロールという言葉で理解していただきたい。  それからどの程度で有効なのかという御質問がございました。私が昔専門家に聞いたときの話では、海峡をコントロールするというような場合には、百隻来るものを百隻沈めなくてもいいんだと、大体三〇%ぐらいがもう行ったらやられるということ、確率が出てくればもうあきらめる、それは三隻に一隻やられるということが確実だというところまで水準が上っていけばこれは人命を守りますし、危険性がそれだけ伴うわけですから、それであきらめさせることができると、それが大体三〇%だと、そういう話を私聞いたことがあるんです。何なら防衛庁の専門家、政府委員に説明させますから、どうぞお聞きくださいませ。
  513. 江田五月

    ○江田五月君 コントロールという言葉を英語で言われたと。その前のフル・アンド・コンプリートというのも、これも英語で言われたんですか。
  514. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 英語でそれは言いません。それは恐らくだれかがそういう言葉をつくったんじゃないでしょうか。
  515. 江田五月

    ○江田五月君 しかし、ワシントン・ポストにはコンプリート・アンド・フル・コントロールと、こう書いてあるんですがね。これはおっしゃらないんですか。そこの部分はどういう日本語の訳になるんですか。
  516. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのところは、十分にコントロールする力を持つ、そういうことを言ったんです。十分にという言葉を使ったんです。それがフル・アンド・コンプリートというのは、向こうの人はそういうふうに書いたんじゃないでしょうかね。
  517. 江田五月

    ○江田五月君 いまのコンプリート・アンド・フル・コントロール、そこはなし。十分にコントロールですか、十分なコントロールという、それが三〇%程度の打撃力と。しかし、総理は、防衛庁長官をなさっておった当時、ずいぶん前のことにはなりますが、昭和四十五年九月の九日から二十日まで防衛庁長官としてアメリカをお訪ねになって、レアード国防長官とお話をされた際に、レーク・オブ・ジャパン、つまりシー・オブ・ジャパンをレーク・オブ・ジャパンにしたいんだ、日本海を日本湖にしたいんだと。三〇%どころじゃない、湖ですからね、というようなことをおっしゃっておりませんか。
  518. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はよく記憶しておりませんが、そのころ私の頭にあったのは、最近は日本海はソ連海みたいになったと、やはり、われわれが昔子供で教えられたとおり日本海にしてみたいもんだと、そういう意味のことが頭にあったと私は思います。
  519. 江田五月

    ○江田五月君 その訪米のときの報告書を提出してくださいということを防衛庁にお願いしてありますが、いかがですか。
  520. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 共産党の方がよくそのことを言うんですけれども、そういう報告書はないんです。何か、中曽根康弘の名前で報告書があったという文書らしきものを私見せていただきましたが、私はそんな文書を書いたことはなし、私の名前でそんなものを出したということは、私全然知りません。恐らく、長官として行ったんですから、秘書官あるいは随行がメモで、こういう話ししたとかああだということは、それはあるでしょう。しかし、それは私が目を通してみた中曽根報告書というようなものではない。一緒に同行した者がそのときのメモとして個々的に書いたものがあったと、そういうことはあり得ると思っております。
  521. 江田五月

    ○江田五月君 こういう外交の行動のときに報告書みたいなものは何も記録に残らないんですか。
  522. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の場合は、そういう文書による報告書というものは残してありません。私自体がそういうことは見たことがないんですから。
  523. 江田五月

    ○江田五月君 これ、自民党政治がずっと続くならいいんですが、野党が政権をとることも、これ、私などは政権をとりたいと思っているわけでして、そういうときに、前の人がアメリカへ行って何話してきたかなんていう記録も何もないというのでは非常に困りますね。これはいいんですかね、こういう政治システムで。
  524. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どうぞ早くおとりになるようにお願いいたします。  そういう報告書はございません。
  525. 江田五月

    ○江田五月君 これは写しですが、ここにあるんですが、防衛庁長官中曽根康弘と書いてあるんです。タイプですから、署名じゃないからこれはわからないと言えばわからないですが、宍戸元防衛庁防衛局長、松金久知さん、桃井さん、池田さんなどが御一緒されて、ずっといろいろ書いてあるんですけれども、これは違いますか。どういうものですか。
  526. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がそういう報告書をつくったことはありません。また、そういう報告書に目を通したこともありません。
  527. 江田五月

    ○江田五月君 そうすると、これはまるっきりの、何といいますか、関係ないものだということになるのか。それとも、防衛庁長官である中曽根さんが御存じはない、あるいは目を通したことはない、自分でお書きになったことはないけれども、しかし随行の方のだれかが後々の記録のためにつくったということになるんでしょうか。
  528. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一緒に行った者はメモで自分たちの記憶やらあるいは聞いたことを書くということはあり得るでしょう。しかし、私の名前で、中曽根康弘の名前で報告書をつくったり、出したということはないのであります。私もその話を共産党の人に聞いて見せられまして、そんなものは初めて見ましたから驚いたのであります。
  529. 江田五月

    ○江田五月君 ないと言われても、それはないことの証明というのはなかなかむずかしいわけですけれども、現にここにあるわけですから。これは、総理は知らぬとおっしゃるかもしれませんけれども、そういうものはないということはおっしゃれないんじゃないですか。
  530. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中曽根康弘がその名前においてつくった報告書というものは公式にも私的にもないのであって、それは権威のないものである、私が責任を負うべきものではないと思っています。
  531. 江田五月

    ○江田五月君 それならこれだれがつくったかということはこれはっきりさしてもらわないと、中になかなか重要なことがこう書いてあるんですがね。これ後ほど理事会ででも協議をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  532. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その文書は共産党の方がときどき出して、私もそういう場所ではるかに見ておっておるんで、何回も同じようなことを聞かれ、同じような答弁をしておるので、ないものは実際ないんですから、その点は御信用願いたいと思うんです。
  533. 江田五月

    ○江田五月君 どうも、私ども小会派ですから、もうこれ以上何ともできませんが、もう時間もほとんどありませんが、財政について、この要調整額、これ、一体どうするんだということですね。結局、増税もしない、赤字国債も出さないで歳出削減が一体どこまでできるのかということになると、大幅な制度改革ということしかない。行政改革も、もっともっと徹底した行政改革しかない。補助金の単なる切り込みとかなんとかは問題を困難にするだけで、もっと、たとえば補助金にしてもその他にしても、大きな制度改革しかないと思いますが、いかがですか。
  534. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 江田君、残念ですが時間になりました。
  535. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お答えいたします。  いまおっしゃった議論は、ある意味においては私どもの申しております財政改革、なかんずく歳出構造の見直し、すなわち現行施策、制度が始まったその淵源にさかのぼって、そして法律の改正、すべてをも含めて抜本的な対応をしなきゃならぬ、そういう意味において江田さんのこの発言を受けとめるならば、まさに財政改革の基本をついていらっしゃるというふうに理解をいたします。
  536. 江田五月

    ○江田五月君 どうもありがとうございました。(拍手)
  537. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で江田五月君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  538. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、昨日保留されました赤桐操君の質疑を行います。赤桐君。
  539. 赤桐操

    赤桐操君 それではまず、自治大臣にお伺いいたしたいと思いますが、昨日の私の指摘に対しまして、調査をして報告をするという御答弁をいただいております。早速御報告を願いたいと思います。
  540. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) きのうのことでございますが、御案内のとおり、ただいま選挙告示にもう入っております。北海道道警につきまして調査をいたしましたところ、道警はいま選挙取り締まり本部を置いて取り締まりをしておるわけでございますが、選挙期間に入っておりまする関係もあって、ただいまのところは取り締まり上の資料の収集に当たっていると、こういうことでございまして、昨日お示しの内容につきましては、そういう取り締まり上の資料としてひとつ受けとめさしていただきたいと、こういうことでございます。
  541. 赤桐操

    赤桐操君 それでは重ねて伺いますが、どういう調査をお求めになられたんですか。そしてまた、その結果について当然判明をさせなきゃならぬと思いますが、どんな条件を示されましたか。
  542. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) ただいま申し上げたとおりでございまして、これは昨日のお示しの内容を取り締まり上の資料としていただいておきたいと、こういうことでございます。
  543. 赤桐操

    赤桐操君 私が昨日申し上げた内容は、北海道庁の高級官僚がその地位を利用して知事選に積極的に参加をし、責任的な役割りを担って票集めをしているという、いわゆる道庁の集票マシンについて申し上げたわけです。したがって、これらの動きについては、これは公選法百三十六条の二で禁じられているわけでありまして、その禁じられている「公務員等の地位利用による選挙運動」の疑いが濃いと思うのですが、いかがですか。
  544. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 選挙の場合の事態の内容というのは、いろいろ、中身がなかなか種々でありまして、そういうことから考えますと、昨日からきょう仰せられたその内容だけで直ちに判断をここで私がするというのは適当でないと、こう思っております。
  545. 赤桐操

    赤桐操君 いま直ちにここで御判断が願えないとするならば、少なくとも公選法違反の疑いがあるということぐらいのことは考えなきゃならぬと思うのですね。したがって、単なる調査ではなくて、直ちに捜査を開始する。迅速かつ厳正な段取りをもって、態度をもってこのことに当たるべきであると、こう私は思うのですが、いかがですか。
  546. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 警察の選挙違反に関する捜査というのは、なかなか選挙期間中というのはそう簡単にはやれないということもございます。そういう警察の取り締まり上のやり方にのっとってこのいまお示しの資料はいただいておくと、そういうことでひとつ御理解を願いたいと、こういうことであります。
  547. 赤桐操

    赤桐操君 重ねての御答弁をいただきましたが、私には納得できません。直ちにこれは厳正かつ迅速な調査に入るべきだ、捜査に入るべきだ、こういうことをひとつ重ねて要求をいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  政府は、五十八年度の経済運営を内需中心に進め、実質三・四%の成長を図る、こういうことをおっしゃっておられます。五十七年度の経済運営におきましても、同じような内需振興を公約をされております。したがって、五十八年度、五十七年度この両年度に対しては、いずれも内需振興の経済運営、こういうことを言ってきておるわけでありますが、大きく違っていることが一つあります。それは、住宅建設の面で、昨年は百三十万戸建設を景気回復の大きなてことしたいと、こういうことで政府は言ってまいりました。ことしはほとんどこれを言わなくなってしまっておる。同じ内需振興ということでもって昨年もことしも主張をされているわけでありまするけれども、これは一体政府の政策の変更であるのかどうなのか、その点をひとつ伺いたいと思うわけであります。総理経済企画庁長官、建設各大臣の御意見を伺いたいと思います。
  548. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 景気振興の柱といたしまして、内需振興、しかもまたその中で住宅政策は依然として重点を置いている項目の一つであることは間違いございません。ただし、五十七年度のように、百三十万戸はその実績におきまして百十四万戸になったことからの経緯から見て、今回は実現可能な見込みを立てようということで、百十 四万戸、前年と同様な建設戸数を目標に置きまして、それに対して御案内のように住宅金融公庫、公的資金の貸付条件の緩和あるいは住宅取得控除の五万円から十五万円への引き上げ、さらにまた土地税制の安定に伴いますところの土地の供給の増加、このような方向をねらいまして現在進めておるところでございます。幸いに、貸付条件の点からもございましたが、十月以降、十一年目以降の利子が上がるということで、駆け込みがあるとは言われておりますけれども、昨今の住宅の建設状況は大変好調を示しているところでございます。
  549. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 住宅建設の低迷の原因を申し上げますと、その根本的な基本的な原因といたしましては、住宅価格と国民の住宅取得能力の乖離ということと、土地取得がなかなか困難になっておるというような事情から、当初百三十万戸という目標で進めてまいりましたけれども、現在のところ昨年度並みの百十五万戸ぐらいになるのではないかというふうに予測いたしております。
  550. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、住宅は不足というよりも不満だろうと思うんです。ともかく最近の情勢を見ますと、相当な空き家はあるわけでして、むしろ部屋が狭いとか、あるいは設備が悪いとか、あるいは雨漏りがするとか、あるいは土地がなかなか獲得が困難だとか、金利が高いとか、特に住宅の居住の広さに対する不満が非常に多いと思うんです。  そういう意味におきまして、中古住宅の改造とか、いま持っておる住宅をまた改造するとか、そういう面で需要を喚起し、不満を解消する、あるいは集合住宅をつくっていくとか、そういうような、いままでの単に数をよけいふやして景気を振興するという考え方から質的な方面へ住宅政策は転換すべきである。そういう考えに立って、百三十万戸とか、数を余り言わないように私はしておる。むしろ、それよりもいまの質的発展という面に重点を入れて景気回復のよすがにもしたいと考えておるところです。
  551. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろと総理の御答弁や皆さんの御答弁を伺いましたけれども、しかし問題は、政府の五十六年度に策定した第四期の住宅建設の五カ年計画が現在あります。少なくともこれを継承しながら現在政府は住宅建設の遂行をしていると私は考えます。  五十八年度はちょうどその三年目であります。真ん中に入っておるわけでありますが、そこで私は伺いたいと思うんですが、その進捗の状況についてここでひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  552. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) お答え申し上げます。  第四期の住宅建設五カ年計画は、昭和五十六年度以後五カ年間で七百七十万戸を建設するということを目標にいたしております。そのうち、公的資金による住宅建設が三百五十五万戸ということでございますが、五十六年度実績だけが現在出ておりますが、それは総戸数が百十八万戸、公的資金による住宅が六十九万戸ということでございます。  そこで、昭和五十七年度につきましては、実績の見通しでございますが、それと五十八年度につきましては、民間住宅につきましては見通しと、それから公的住宅につきましては計画戸数でございますが、これらを合わせますと、それぞれが全体では、計画戸数の場合には着工戸数と若干違いまして漏れ率の修正がありますので、単年度では百二十一万戸前後と見込まれますし、また公的資金による住宅が、五十七年度が七十八万戸、五十八年度が七十万戸を計画しております。  そういう関係で、五十八年度までの三年間の進捗率で申し上げますと、総戸数で四六・八%、公約資金による住宅で六二・〇%となるものと想定されております。
  553. 赤桐操

    赤桐操君 公的関係の御報告はいただいてあるのでありますが、私は、この全体を見まするというと、民間の自力建設が非常に落ちているのではないかと思うんですね。これは、需要がなくて落ちているのではなくて、実際には相当の需要がある。そういう意味合いから見ると、少なくともこの七百七十万戸の目標の中で、目標全体の五五%を占めている民間の自力建設が、これが前進をしないということになっては、これは私はこうした目標を達成することはできないだろうと思うし、四期五計の達成ということは考えられなくなってくると思うのであります。こういう点については、民間関係の実績、今後の見通し等についてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  554. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) 民間自力建設住宅につきましては、先生の御指摘のように、住宅取得能力と住宅価格との乖離がございまして、現在まで確かに伸び悩んでいるのは事実でございます。  その見通しでございますが、五十七年度四十三万戸程度である。それから、五十八年度が五十万戸程度ではないかというように見通しをしております。
  555. 赤桐操

    赤桐操君 この状態で五十六年、五十七年、五十八年と終わりまするというと、四百二十万戸の達成目標から見ると、どのくらいの状態になりそうですか。
  556. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) ただいま申し上げました五十八年度の見通しまでを含めまして一応推定をいたしますと、三年間で三四%程度になります。  それで、今後の見通しでございますが、さきに経済企画庁の長官からお話がございましたように、住宅取得控除の拡充等の種々の政策を準備することによりまして、民間住宅の建設を促進して、何とか計画を達成していきたいと考えております。
  557. 赤桐操

    赤桐操君 建設大臣がおっしゃっておられましたけれども、需要はあるけれども、問題は、住宅の価格と所得の乖離が大き過ぎるために思うようにいかないと、これが大きな原因だと言っておられました。したがって、私は、この解決のためには、所得をふやしてやるか、住宅の価格を引き下げるか、どちらかをとらなければこれは政策にはならぬのではないだろうかと、こう考えます。あるいは、この両者の組み合わせということも必要だと思いますが、そういうもう一歩突っ込んだ政府自体としての政策というものはないんですか。
  558. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 住宅の価格を下げるということは、現状においては無理だと思いますので、政府といたしましては、貸付限度額を引き上げるとか、取得控除を引き上げるとか等、税制面とそういう資金の面と両面から政策をとるべき以外にないと思います。それからまた、増改築を推進して、現在も無抽せん体制でございますけれども、抽せんをしないで申し込みの方たちにお貸しをするというようなことで促進をいたしておるわけでございます。
  559. 赤桐操

    赤桐操君 私は、昨年の十二月二十一日のこの委員会における質問の中でこのことに若干触れました。少なくともこれからの住宅問題の解決は、建設省の段階程度で考えてもそれは無理じゃないのか、内閣を挙げての大きな力がなければ、これからの住宅建設の推進は不可能だということを私は申し上げたはずであります。総理はこれに対して御答弁をなされたはずであります。  私はきょうは、本来なれば、所得を増加させるかあるいは価格を引き下げるか、こういう問題になるのでありますが、所得の増加もいまの内閣では図ることができないし減税もできない、そして価格の引き下げもできないということであっては、いかに国民がどれほどニーズを持っておっても、その実現はできないことになる。きょうは、所得を引き上げる方向、減税の問題は、時間がありませんので遠慮いたしますが、したがいまして、価格の引き下げの問題について少しく申し上げてみたいと思うのであります。  この問題はいま始まったことではないのでありますが、まず第一点として私は申し上げたい。一つは、すでに今日までいろいろと問題になっておりまするのは、関連公共事業費の負担の問題であると思います。これをまず第一番に伺いたいと思 います。  河川、道路、公園、さらにはまた中には学校の施設もまるまる要求をする、こういう形の中で施設提供が強いられている。このことが私は宅地の価格の上昇の大きな原因だと思っております。宅地開発の中には六〇%公共負担分を求められている、そういう実例もございます。あるいはまた、一方におきましては、区画整理事業等におきましては三〇%程度でもって済んでいる。これほどの差があるんですね。私はここに大きな原因があると思うんですよ。  少なくとも区画整理事業程度のところに、まあ三〇%程度のところへ、私は全額と言いたいけれども、この程度に公共負担分を抑えることはできないのか、こういうことを私はひとつ伺いたいと思うんですがね。
  560. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 宅地開発につきましては、各地方公共団体におきましてそれぞれ宅地開発指導要綱というものをつくっております。したがいまして、それが、地方のその市町村市町村によりまして、先生がおっしゃるような相当過重な負担がかかっていく。したがいまして、民間デベロッパーなんかも、せっかく造成をいたしましても、そういう過重な宅地開発指導要綱によって非常に単価が高くなるということによりまして、せっかく造成をいたしましても、それが思うようにさばけない。したがいまして、そういう事業をやる者がだんだん手控えてくるということが、宅地開発がおくれておるという現状にもつながろうかと思いまして、できるだけ宅地開発指導要綱を緩和するような方向で、コストを下げていくというような方向で指導してまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  561. 赤桐操

    赤桐操君 指導要綱の点についても、これはひとつ考えてやらなければなりませんが、この関連公共施設については、本来は私は個人に受益者負担としてかけるべきものではないと考えています。ヨーロッパのフランスへ行っても、ドイツへ行っても、社会住宅の建設が行われていますが、そういうところで関連公共の施設を受益者負担としてかけているところはどこにもないんです、こういうところは。私はそれぞれ、西ドイツにおいては建設次官に会ってこのことをただした、フランスにおいても建設局長に会ってこのことをただした。いずれもそういうことははっきりと否定しておるんです。それは税金を払っているではないかと、簡単にこの一言で片づけられているんですね。総理はこれは御認識がないとは思いませんが、この点について私は改めて申し上げておきたいと思うんです。  わが国においても、五十三年度からは、関連公共施設費の整備費として、これは建設省予算に計上されてきているんです。これは時の長谷川四郎建設大臣のときに計画がなされ、翌年度予算の中で盛られたはずであります。この経過についてひとつ、毎年度の積み上げられてきた経過を説明いただきたいと思います。
  562. 永田良雄

    政府委員(永田良雄君) お答えいたします。  御指摘のように、昭和五十三年度から特別枠として関連公共施設整備費が計上されました。いま手元に正確な数字は持っておりませんが、当初はほぼ五百億ぐらいだったかと思いますが、現在は国費で一千億を計上さしていただいております。おかげさまで、これによって宅地造成に関する一般民間の宅造業者の負担が大変軽減されておるというふうに私どもは思っております。
  563. 赤桐操

    赤桐操君 重ねて伺いたいと思いますが、私はこの三百億が計上されたときに一つ零が足らなかったんじゃないかと、こういうように私、大臣にお話ししたことがございます。ところが、そのときに事務当局からの説明では、新しい項目が三百億もつけられるということは、これは大変なことですと、こう私言われて、そういうものかなと思ったんですが、まことにさびしい感じがいたしました、率直な話が。しかも、今日一千億でとまってしまっておる。毎年三百億ずつ積んできているならば、いま時分恐らく二千億近くなったんじゃないだろうかと、こう私は、総理、思うんですがね。こういう経費こそ私は積み上げらるべきものだと思うんですよ。これは率直に申し上げて、国の努力にまつ以外にないもので、この国の努力不足が結果的に受益者負担として重なってきているんですよ。こういうように思うんですが、総理いかがですか、このことについて。
  564. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 赤桐さんのおっしゃることは正論だと思います。恐らく苦肉の策でそういう負担をかけるような悪い癖がついて、地方公共団体等もそれに乗っていって、そういう形に自然自然にいってしまったのではないかと思いますが、途中で気がついてそれが是正されるということになったのは非常に欣快の至りであります。しかし、まだ必ずしも十分でないと思います。住宅宅地の造成をもっと促進しようと思えば、公共関係の費用は、それは公共関係において負担するというのが本筋だろうと思います。ただ、財政との関係がありますから、一挙にそこまではいけないにしても、努力してまいるべきであると思います。
  565. 赤桐操

    赤桐操君 財政の関係が出されましたから、重ねてそれでは私は暫定的な方法について提案いたしたいと思うんです。この関連公共費が一千億というのは問題にならないですよ、こんなものでは。これは総理ひとつ御検討願いたいと思うんです。  したがって、本当に必要な金がこれは何らかの形でもって満たされていかなければ、これからの住宅建設はできないと私は思う。それは率直に申し上げまして、いまこそ財投の資金が投ぜらるべきだと思うんですよ。なぜこうしたものに本格的に財投の資金が投下されないのか。財政投融資、資金運用部資金の運用の今日までの経過から考えてみたときには、少なくとも投融、特に景気に大きな影響を与えるものは投の方だと私は思う。なぜこの投の方に新しい仕事として住宅の関連公共負担分を持ち込まないのか。それは地方自治体を通じて貸し付けをしていく、十年ないし十五年たつと町ができ上がる、そのときにあとは税金で還元をされて納めていく、こういう方法だってあるじゃないですか。  民間のそれぞれの団体からはこういうことが真剣に実は陳情されていると思うんです、自由民主党の方にも、政府の方にも。私の党にも来ているんですから、当然だろうと思う。こういう一時的に少なくとも肩がわりをしていく、やがて将来払われるところの税金でもってこれは賄われていくという、こういうことが私は本来の正しいあり方ではないかと思うけれども大蔵大臣いかがですか。
  566. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに関連公共事業でございますね、私も建設大臣をしておったときからその問題が出てまいりまして、一つはその関連——その前にもう一つは、なかんずく人口集中地域が、住宅よ、さようなら、もう人口来てもらっては困ると、こういうような空気がありました。そういうことからこの関連公共というのをやっぱり別建てにすべきだと、こういうことでずっと伸び率としてはこれは最高の伸び率でございます、今日。額はいま先生おっしゃるとおり十分であるとは思いません。これに財投を活用していくという場合はいわゆる地方債という形になっていくんじゃないか、それそのものが。そして地方自治体がその関連公共を起債の形において対応していってという考え方も一つございます、確かに。それはいわゆる関連公共の中には入っておりませんが、学校建築等の場合においてはそれらのことも行われておる。その辺をどう組み合わせていくべきものであるか。  ただ、財投資金自体は、まさに住宅関係に一番よけい重点配分しておるという事実は、これは関連公共とは別にお認めはいただきたいものだというふうに考えております。
  567. 赤桐操

    赤桐操君 どうも時間がないので、いずれまた後で重ねて論争したいと思うんですけれども、私は、財投の資金が住宅の方に入っていることは承知しておりますよ。しかしそれは融資の方だ、率直に申し上げて。投ではない。私は投をやるべき だと思う。それは地方自治体を通ずるのが一番の一つのルートだろう。この投に本格的な力を入れなければ、関連公共の一千億程度ではこれは問題にならないから、これを踏み越えていくのには財投の資金をその方向に使って緩和していくべきものではないだろうか。こういう私の主張でありますから、これは大蔵大臣ひとつ御検討願いたいと思います。  次に、先ほどの建設省の方の御答弁の中でいろいろ開発指導要綱の問題が出ていますが、率直に申し上げまして、これは団地をつくるために開発の申請が出されまして、これができ上がっていくまでには八年ぐらいかかっておりますよ、総理、率直に申し上げますが。これが大変ややこしい手続がある。まず宅地開発を進める際の手順としましては事前協議というものを行う。これが五年ないし六年かかっている。さらに開発申請許可が半年ぐらいかかる。その後実際の開発に最低二年はかかるでしょう。一応の団地ができ上がるためには八年かかる。この間の金利から人件費などを計算したら大変なものになる。しかも公共関連負担が六〇%ということになったんでは、四〇%しか有効宅地面積のないところへ全部かかってくることになる。私はこんな行政はないと思うし、こんな政策はないと思う。諸外国でこんなばかな政策をやっているところはどこにも私はないと思うんです。この点総理、篤とひとつお考えをいただきたいと思うんです。  それから最後に、もう時間がありませんので重ねて申し上げますけれども、この金利の問題ですが、金利はこれは私は……
  568. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 赤桐君、時間が参りました。
  569. 赤桐操

    赤桐操君 そうですか。残念ですな。  私もルールに従いますから申し上げませんが、いずれまた不足の弁は後日に譲りたいと思いますけれども、以上申し上げたことは、現場第一線の真剣な声でありますから、また住民の皆さん方の本当の声でありますから、このことをひとつ政策化していただくようにお願いして質問を終わりたいと思います。  答弁ございましたら、ひとつお願いします。
  570. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 指導要綱を初めといたしまして、その許可の手続等につきましても簡略に運ぶように現在指導いたしております。先生の御趣旨に沿うようにやってまいります。
  571. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で赤桐君の質疑は終了いたしました。  以上をもって総括質疑はすべて終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十八分散会