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1983-03-17 第98回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十七日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員の異動  三月十六日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     神谷信之助君  三月十七日     辞任         補欠選任      大城 眞順君     岩動 道行君      三木 忠雄君     塩出 啓典君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 大島 友治君                 岡部 三郎君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田沢 智治君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 仲川 幸男君                 林  寛子君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 山田  譲君                 吉田 正雄君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 塩出 啓典君                 中野 鉄造君                 神谷信之助君                 田渕 哲也君                 前島英三郎君                 江田 五月君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        管理局長     加藤 圭朗君        人事院事務総局        職員局長     金井 八郎君        内閣総理大臣官        房会計課長        兼内閣参事官   渡辺  尚君        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府統計局長  永山 貞則君        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        公正取引委員会        事務局経済部長  佐藤徳太郎君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁長官        官房総務審議官  門田 英郎君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        経済企画庁物価        局長       赤羽 隆夫君        環境庁長官官房        長        加藤 陸美君        環境庁長官官房        会計課長     森   孝君        沖縄開発庁総務        局長       関  通彰君        国土庁長官官房        長        宮繁  護君        国土庁長官官房        会計課長     金湖 恒隆君        国土庁土地局長  小笠原正男君        国土庁大都市圏        整備局長     京須  実君        法務大臣官房長  根岸 重治君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       岡崎  洋君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省証券局長  水野  繁君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        文部大臣官房長  高石 邦男君        文部大臣官房会        計課長      國分 正明君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生大臣官房会        計課長      坂本 龍彦君        厚生省公衆衛生        局長       三浦 大助君        厚生省公衆衛生        局老人保健部長  吉原 健二君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省医務局長  大谷 藤郎君        厚生省薬務局長  持永 和見君        厚生省社会局長  金田 一郎君        厚生省児童家庭        局長       正木  馨君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省年金局長  山口新一郎君        社会保険庁医療        保険部長     小島 弘仲君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        農林水産省食品        流通局長     渡邉 文雄君        農林水産技術会        議事務局長    岸  國平君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        林野庁長官    秋山 智英君        通商産業大臣官        房審議官     斎藤 成雄君        通商産業省貿易        局長       福川 伸次君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        運輸大臣官房長  犬井 圭介君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省航空局長  松井 和治君        郵政大臣官房経        理部長      奥山 雄材君        郵政省貯金局長  鴨 光一郎君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        労働大臣官房長  加藤  孝君        労働大臣官房審        議官       平賀 俊行君        労働省労政局長  関  英夫君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房総        務審議官     吉田 公二君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  永田 良雄君        建設省道路局長  沓掛 哲男君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治大臣官房会        計課長      大塚 金久君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁長官    砂子田 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君    参考人        金属鉱業事業団        理事長      西家 正起君        日本銀行総裁   前川 春雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十八年度総予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君、金属鉱業事業団理事長西家正起君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     ─────────────
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 後藤田内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。後藤田内閣官房長官
  7. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 補助金等整理合理化に関する予算委員会要求資料につきましては、その整理報告が不十分であり、また大蔵省提出した資料と各省庁提出資料との間に整理上食い違った点があり、このため予算委員会審議が遅延したことはまことに遺憾であります。今後このようなことのないよう政府部内で統一するようにいたします。  なお、不足しております資料につきましては、各省庁より来週早々にも作成の上、提出をいたします。     ─────────────
  8. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、昨日に引き続き、和田静夫君の質疑を行います。和田君。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 総理、組閣以来中曽根内閣仕事をする内閣という形で標榜されてこられました。昨日、私に対する冒頭の答弁でも、仕事本位官房長官国土庁長官は選ばれた旨も述べられました。ところが、いまありましたように、国会提出資料すら満足に出せないという、私は大変困ったものだと思うのでありますが、資料は間に合いませんから補助金の基本的な論議は来週出てきたときに精査をして、一般質問で繰り返さなきゃなりませんが、総理一般質問にお出ましになりませんので、ここのところで見解を承っておきます。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御期待に沿う資料提出ができませんでしたことを大変残念に思い、遺憾に存ずる次第でございます。今後は各省庁を深く戒めまして十分御期待に沿うように努力いたしたいと思います。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと一言だけ補助金で聞いておきますが、補助金とは一体何かということでありますが、これは全大臣にお聞きをしたいんですけれども、時間の関係もありましょうから、明治を代表して丹羽大臣、いかがですか。
  12. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) 補助金とは一体どういうものだというお尋ねでございますけれども、どういうぐあいにお答え申し上げたら先生に御理解をいただけるかと思いますが、いわゆる率直に申しまして、政府考えておりますところの施策国民のためになろうとする施策を実行していくための事業についてでも国が幾らかの助成をする、あるいはまた行政的な助成をも考えていく、私どもそう考えております。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 私の聞き方の問題もありましたが、補助金の基準ですね。言ってみれば補助金はどういうふうに解釈をされているかという意味のことを聞いたわけであります。  どうです、大正を代表して、本当は総理と言うところでしょうけれども、新進気鋭なと言われる国土庁長官
  14. 加藤六月

    国務大臣加藤六月君) 補助金とは名前のごとく補い助けるお金であります。そしてそれは、あるものは法律に基づき、あるものは法律に基づかない補助金がある、それは特定の政策手段を実現するためにある金である、このように解釈しております。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 やっぱり昭和谷川さんですか。
  16. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 行政を行って国民行政需要にこたえなければならぬわけでございますが、その行政需要にこたえるこたえ方としての一つであろうと、こう考えております。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 念のために、一般質問補助金やりますから、この補助金便覧だけは大臣、それぞれ目を通しておいていただきたいと思うんです。いまの答弁全部不満であります。その程度の認識かという感じしか持ちません。  そこで農林水産大臣農水省が出されましたこの資料の四十八ページ以降をちょっと説明してください。これは大臣説明してもらいたい。私もわからぬものですから。役人はわかるはずですから。資料をお持ちでしょう、ここに農水省から提示されている資料——いや、これは大臣に求めているんだよ、大臣に。つくった人はわかっているに決まっている。
  18. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 四十八ページは新地域農業生産総合振興対策事業でございます。その内訳は、広域営農団地整備事業費補助金並びに地域農業生産総合振興事業費補助金、次は地域農業生産総合振興推進費補助金ということになっております。項のところで農蚕園芸振興費、これの目で地域農業生産総合振興事業費補助金、このようになっております。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 いや、その後です。予算額以下がわからないわけですね。
  20. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 詳細はひとつ政府委員説明させます。
  21. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) ただいま大臣から御説明申し上げましたが、これらの予算額につきまして統合メニュー化を図りますために、五十六年度におきまして左側にありました予算額を、五十七年度、たとえば農蚕園芸局地域農業生産総合振興事業費補助金というものに、左側にありますたとえば地域農業生産総合振興事業費補助金麦大豆等生産総合振興対策、あるいはその次の目の地域農業生産総合振興推進費補助金の中の麦大豆等生産総合振興対策、こういうものを大体類似の事業ということで、翌年五十七年度におきまして麦大豆等生産総合振興対策事業費統合したということでございます。  この統合をいたしますとともに、この事業の中に各費目につきましてメニュー化をしていくということで、それぞれの補助を受ける方々が、それぞれの地域実態に即しまして事業をおおむね実態に即した形でやれるようにということで考えたものでございます。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 これ親切だと思いますか、予算額説明のところ。何やら点線やら棒やら引っ張ってあるんだが。
  23. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) この内容につきましてもう少し個別の説明をつければ、あるいは先生方の御理解には役立ったかと思いますが、私どもとしましては紙幅その他の都合がございまして、前年の予算の目あるいは目細につきまして、こういう形で統合したということをやったものでございます。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 まあ一般でやりましょう。  外務大臣西ベルリン市民やあるいは在住日本人の間で、あの建物は何とかならないだろうか、いわゆる再生論議が非常に強い、要求が強い西ベルリン日本大使館、私も過日高齢化社会の勉強のためにずっと一人でヨーロッパを歩いてきたんですが、これを見てきましたが、どうされますか。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もあの旧わが国ベルリン大使館をかつて見たことがあるわけでございますが、それはその後放置されておりまして、これ何とかこの利用はできないものだろうか、こういうふうに当時も思ったわけでありますし、いまも思っております。政府も百万円ぐらい調査費をつけまして、これをどういうふうに利用するかということで、いま民間の有識者等に委託をしまして検討をいたしておるわけでございますが、いつまでも放置するわけにもいかないんじゃないかと思っておりますけれども、そうした検討の結果が出まして、それを踏まえて何らか対応をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 再生の意図はお持ちということですか。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまはそれぞれ西と東のドイツで大使館はあるわけでございますし、ベルリンは総領事館があるわけでございますが、あれを大使館にというわけにもいきませんけれども国有財産ですから、何とか両国のために役に立つような方向で考えなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 米空母エンタープライズがチームスピリットに参加して、二十一日に佐世保に入港するわけですが、これは当然通常航海演習参加の際には核兵器を搭載していると考えるべきだと思うんですが、防衛庁いかがですか。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん核の持ち込みにつきましてはこれは事前協議の対象でございますし、その場合においては、わが国としては核の持ち込みについてはノーである、すべてノーであるということはしばしば言明をいたしておりますし、アメリカ事前協議の条項は誠実にこれを遵守する、安保条約上のこれは義務でございますので、今回のエンタープライズの入港につきましては、そうした事前協議もないわけでございますし、したがって、核の持ち込みというものはあり得ないと、こういうふうに考えております。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 ワトキンズ海軍作戦部長がエンプラの佐世保寄港日本要請によるものであると述べたと言われるんですが、これはどうなんですか。
  31. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もそれをきのう聞きましてびっくりしたわけでありますが、ワトキンズ作戦部長ザ・ジャパニーズという言葉を使っておりますが、日本人要請によって佐世保に入港するんだということを言ったわけでございますが、これはわが国としては全く考えもしないことでございますし、そうした要請政府としてしたことは全くないわけでございますから、これは間違いである、したがって、その後、アメリカの国防総省もワトキンズ作戦部長のこの説明を否定する見解をはっきり述べておりますから、この限りにおいては間違いであろう、こういうふうに考えております。
  32. 和田静夫

    和田静夫君 どういう背景でこういう食い違いが起こるとお思いでしょう。
  33. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もこれは背景というのはわかりませんけれども、どういう意味ザ・ジャパニーズという言葉を使ったのか、それすら見当がつかないわけですが、政府としてはそうした要請を行ったことは一切ないわけでございますから、これはもし政府に関連があるというふうに、アメリカワトキンズ作戦部長が言ったとするならば、これはもう完全な間違いである、誤解である、こういうふうに思っております。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 横須賀というのはミッドウェーの単なる寄港地ですか、母港ですか。
  35. 北村汎

    政府委員北村汎君) ミッドウェー横須賀ミッドウェー乗組員家族居住地として使っております。母港という言葉はこれはいろいろな意味に使われますんで、私どもといたしましては、横須賀ミッドウェーの先ほど申し上げましたように乗組員家族居住地であるというふうに考えております。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 港は。
  37. 北村汎

    政府委員北村汎君) 港は、これは私ども安保条約に基づいて米軍に提供しております施設、区域でございます。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 佐世保市長が、昨日、条件さえ整えばエンタープライズ母港化もあり得ると記者会見をしているわけですが、これは政府としてはこの発言を追認しますか。
  39. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 佐世保市長のそうした話は私まだ聞いておりませんが、日本政府としてはそうした考えは持っておりません。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 ペンタゴンの当局者が、日本政府からの要請はなかったが、佐世保市民の意向があったことを示唆しているのが昨日であります、けさ読むと。そうすると、外務省、これは佐世保市長発言と符牒が合うわけなんですね。佐世保が第七艦隊関係者に要請した事実は一体ないのだろうか。それが事実であるとするならば、外交権との関係というのはどういうふうになるんだろうか。
  41. 北村汎

    政府委員北村汎君) 先ほど外務大臣から昨日のワトキンズの発言につきまして、これはザ・ジャパニーズということで言っておりまして、これは決してジャパニーズ・ガバメントとも、あるいはジャパニーズ・サイドとも、そういう言葉ではなくて、後で米国防総省の説明によりますと、このワトキソズ作戦部長というのは、昔太平洋艦隊の司令官をしておりました。当時佐世保において多くの個人としての市民からアメリカの艦船を歓迎するというような、そういう話は聞いておったんであろうということで、こういうことを発言になったのであろうというのが国防総省の説明でございました。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 関連。
  43. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 関連質疑を許します。寺田君。
  44. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 きのうのワトキンズ海軍作戦部長記者会見の詳細は、もう外務省は全文を入手しておられると思いますが、非常に重要ないろいろな要素を含んでおりますので、とても三分間ではこれは質問できないんですが、第一に、日本に対して米国は日本周辺千海里のシーレーンの防壁、防衛障壁を創設することを強く求めているという部分があります。私ども、やはりアメリカの世界戦略の一環として日本がとらえられている、したがって、シーレーの防衛というものは、もう日本の自衛、ディフェンスの領域を踏み出していると考えておるんですが、やはり、はしなくもこれはアメリカの強い要請によって引き受けたということを裏書きされていると思うんですが、これはいかがでしょうか。
  45. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) どういうワトキンズ作戦部長の配慮といいますか、考え、基本的な考えに基づいてああいうことを言われたのか、それは私も判断がつかないわけでありますが、しかし、日本自体がアメリカのいわゆる世界戦略の一環としての立場に立っておるわけではございませんで、日本日本なりの憲法に基づいたいわゆる自衛権の範囲内における千海里の航路帯を設けるとか、あるいは日本沿岸の数百マイルの防衛という立場をとっておるわけですから、日本日本なりの、日本の立場からこれを進めるわけで、アメリカの世界戦略とか、そういう立場で日本がやっておるわけでは決してないわけでございます。
  46. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 アメリカ要請に基づいて引き受けたという点はいかがでしょうか。
  47. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういうことは決してありません。
  48. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、将来佐世保に米海兵隊を配備するというような趣旨がありますね。それから、将来配備される米海兵隊を支援する最初の水陸両用貨物艦、LKAを配備するであろうという個所もあるんですが、これはそういうことを聞いておられるんですか。外務省並びに防衛庁。
  49. 北村汎

    政府委員北村汎君) ただいま御指摘の佐世保を米海兵隊の水陸両用の貨物船の母港にさせるというようなことにつきましては、全然私どもは米国からそういう要請を受けたことはございません。
  50. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 海兵隊は。
  51. 北村汎

    政府委員北村汎君) 海兵隊については、同じように、海兵隊は現在岩国と沖縄に駐留しておりまして、佐世保についての話は一切聞いたことはございません。
  52. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 日本の防衛というのは、アメリカの世界戦略のコースに従って次第に拡充されていっているという実態は、これは軍事専門家が皆指摘しているわけです。さっきザ・ジャパニーズというのがありましたが、これはアメリカの国防報告にも大変こういう言葉は使われていますね。さっき佐世保市長の問題も出ましたけれども、われわれの知らない間に、アメリカの制服と日本の制服との間にそういう話が隠密に運ばれているんじゃないだろうかという疑いが非常に濃い。それでなければ、こういう海軍作戦部長と言われる現職のアメリカの海軍をしょって立つ人間が、そういうことを言う道理がないと思うんですが、いかがでしょうか。
  53. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) そういう事実は一切ございません。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 エンタープライズは米機動部隊の主力艦隊である。そういう船が核兵器を搭載していないということになりますと、一体アメリカの核抑止力というのは何だろう、張り子のトラなんだろうか、こういうことになると思うんですが、どうなんですか。
  55. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、やはり抑止力というのは、侵略といいますか、攻撃を受けた場合に、攻撃をした国が重大なる報復を受ける。そういうことから、結局、そういうことが予想されますので、結論的には、そういう攻撃の事態というものを抑止できるという点が抑止力そのものであろうと、私はそういうふうに考えております。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 総理、どうも、非核三原則の「持ち込ませず」が厳格に運用されているのかどうか、私にはにわかに信じがたい。エンタープライズは核を積んでいないことを確認した日本人は一人もいない。佐世保に入港の際に積んでいないという外務大臣のお言葉が正しいとすれば、フィリピンのスービックでおろしたのか、それとも日本海へ捨ててくるのか、その辺はどういうふうに解釈されますか。
  57. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカは、しばしば、核の有無については一切これを明らかにしないということを言っておるわけでございます。しかし、同時にまた、日米安保条約はこれを守る、また事前協議の条項についてはこれを誠実に遵守するということを言っておりますし、日本はあくまでも、国会でもしばしば申し上げておりますとおり、非核三原則、そうして核は持ち込ませない、核の艦船の寄港についても、あるいは領海通過等につきましても、これは事前協議の対象であるということを言っておるわけでございますから、その限りにおいてアメリカがこの条約の義務条項に違反するということは決してあり得ない、日米関係においてはこれは疑いを差し挟む余地はないと、私はそういうふうに考えております。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 これはなかなか話は詰まらぬですけれども、またやります。  三海峡封鎖、四海峡でもあれですが、宗谷、津軽、対馬の三海峡、それぞれソ連のシーレーンであると私は思いますが、防衛庁長官外務大臣はいかがですか。
  59. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 三海峡のうちの宗谷についてのみ申し述べさしていただきますが、宗谷海峡と呼ばれる地域には、ソ連の領海部分、十海里に及びます領海部分が含まれております。  なお、海峡の通峡阻止についての作戦でございますが、たびたび答弁させていただいておりますように、わが国には、わが国の自衛のための通峡阻止の作戦をとる、そういう形の海峡防備の発想があるということを御答弁申し上げておるわけでございます。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 宗谷海峡というのは、冬になると沿海州とカムチャッカ半島を結ぶ唯一の交通路になるでしょう。
  61. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 宗谷海峡といいますのは、ソ連から見た場合に、いわゆる沿海州と、たとえばカムチャッカ半島とを結ぶような補給路としても重要な通路であるというふうに認識しております。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 時間の関係もありますから、早口でやります。  そうすると、三海峡封鎖と言われる宗谷海峡の通峡阻止というのは、ソ連領とソ連領を結ぶ唯一の交通路を遮断すると、こういうことですね。
  63. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) いま先生、遮断というふうなお話がありましたが、私どもは、海峡防備というのはきわめて重要である、その海峡防備の中に宗谷海峡も含まれる。しかも、この海峡防備というのは、あくまでもわが国に対して攻撃があった際に、わが国に対して攻撃をしている国の艦船の通峡を阻止したい、こういうことでございます。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 日本が仮に宗谷海峡封鎖、阻止するとするでしょう。そうすると、その場合に、ソ連側としては戦時国際法上どういうふうな自衛措置が認められますか、法制局長官。
  65. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) いまの御質問は、前提としてわが国に対する武力攻撃がない場合のようなお話ですが、そういうことはわが国として絶対にいたさないわけでございますから、その前提自体として、私どもが海峡の通峡阻止という場合は、あくまでわが国が武力攻撃を受けた後の問題でございますから、ちょっと前提が違うように思います。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 まあ、はぐらかされたままなのですが、この問題も詰まりませんから改めてやります。  最後に総理、ちょっとこういう一連のものをやっていまして、この間ある新聞の夕刊で、中曽根総理の中学三年のときの漢文の教師、荒井さんという三重大学の名誉教授が、中曽根君は退学だ、非常に優秀な生徒であったけれども退学だ、早く正気に戻れと警告をすると、こう言っていらっしゃいますが、どういうふうにお考えですか。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまおっしゃった言葉がよく、正気というのとその前の言葉はどういうお言葉ですか、タイ何と……。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 大変優秀な生徒であったけれども、おまえは退学だと。
  69. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) タイガク……。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 退学。
  71. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) タイガクってどういう意味ですか。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 学校をやめさせる。退学。自分の教え子としては退学に値する。
  73. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ああ、学校をやめさせると。  大変光栄ある御批判をいただきましてありがとうございます。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 行管庁、以前から鉱業法の運用がかなりルーズであるという話をしばしば耳にするわけです。  特殊法人を一つだけ挙げますが、昭和四十八年十月に四国管区行政監察局が提起した鉱業権の出願等に関する地方監察について、まず簡単に説明してください。
  75. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 四国の管区局長の方から、鉱業権の出願について適当でないという点があって勧告があったということは承知いたしておりますが、その内容、必要ございましたら監察局長から答弁さぜます。
  76. 中庄二

    政府委員(中庄二君) お答え申し上げます。  昭和四十八年に四国の地域の鉱業権の出願の問題につきまして種々の問題が起きましたので、私どもの方で調査をいたしまして、鉱業権の出願の許可の問題、それから試掘権の延長の、これも許可の問題等五点の勧告をいたしまして、回答をそれぞれ受け取っているところでございますが、同年中に改善が進められたと、そういうふうに承知しております。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、その後この種の鉱業権に関する監察はなされていますか。
  78. 中庄二

    政府委員(中庄二君) その後は通産省の改革案を待っておりまして、私どもの方は監察はやっておりません。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 金属事業団の調査対象地域と鉱業権の関係についてですが、鹿児島県伊佐郡に住友金属鉱山菱刈鉱山という金鉱がある。この鉱山の鉱業権は、鉱業原簿第六百三十八号の方は、四十八年に鯛生鉱業が採掘権を取得、五十六年に住友金属鉱山に所有権が譲渡される、こういうことになっている。  第一に疑問なのは、採掘権が設定されているにもかかわらず、なぜ金属鉱業事業団は広域調査の対象にしたんですか、理事長
  80. 西家正起

    参考人西家正起君) お答えいたします。  私ども金属鉱業事業団は国の委託を受けまして広域調査を実施いたしております。したがいまして、広域調査の対象地域の決定は国においてなされております。国においては、鉱業審議会の議を経た長期国内鉱山の探鉱計画というのがございまして、その中で急速に探鉱を促進すべき地域というのが五十三地域設定されてございまして、その中から、通産省におかれましては有識者の意見を聞きながら、また前年度の調査結果を踏まえて、予算の範囲内で地域を決定されるというふうに承知をいたしております。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 通産省、採掘権とは。
  82. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 鉱業法に基づき、鉱産物を生産といいますか採掘する権利でございます。
  83. 和田静夫

    和田静夫君 もうちょっと具体的に。
  84. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 鉱業法に基づきまして、採掘権というのは、登録を受けた鉱物及びこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を採掘し、これを取得する権利、これが鉱業権でございまして、この中で採掘、取得する権利でございます。
  85. 和田静夫

    和田静夫君 そうですか。
  86. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 和田君、お立ちになって御発言願います。
  87. 和田静夫

    和田静夫君 もう少しレクチャーうまくやってよ、そこ。
  88. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ただいま申し上げたとおりでございますが、鉱業権の中に試掘権と採掘権というふうに分かれておるわけでございまして、先生御承知のとおりでございますが、十二条で、鉱業権は物権とみなすということで、他の法律に別段の定めがない限りは不動産に関する規定が準用される。  それからさらに、その鉱業権の性格としましては、相続その他一般の承継、譲渡、滞納処分及び強制執行等の目的となるほかは権利の目的となることができないということでございます。ただし、採掘権については抵当権及び租鉱権の目的となることができる、こういうのが法律上の規定でございます。
  89. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと十分じゃないですがね。  鉱業権の客体である法定鉱物は経済的価値のある鉱物であるということになると、何もいまさら事業団が出ないときのリスクを背負って試掘する必要はないんじゃないかと思うんですがね。
  90. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ただいま、事業団の調査と鉱業権ないしは採掘権との関係についての御質問であろうかと存じますが、いわゆる日本の鉱産物というのは賦存状況から見まして非常に乏しいわけでござい皮すが、非常に広範囲にわたるということでございまして、企業の力のみによっては鉱産物の開発ということがなかなか進められない、ころいうことでございます。したがいまして、事業団といたしましては、そういう日本の鉱産物の賦存状況につきまして、非常に広域調査いろいろやっておりますが、いずれにしましても地質構造を調査するということでございまして、その地質構造を調査することによって、企業が鉱産物の開発を進める場合の指針を示すということでございまして、単に鉱業権が設定されておっても、それを企業みずからが行うことが困難な場合、これは非常にリスクと資金もかかりますから、そういうものに対して、地質構造を解明し、これに基づいて指針を出し、企業の探鉱活動といいますか、採掘活動を円滑にするといいますか、促進する、こういう目的を持ってやられておるわけでございまして、決して鉱業権が設定されているから不必要であろう、こういうことにはならないかと思っております。
  91. 和田静夫

    和田静夫君 採掘権というのは、採掘に適するとき成立する権利なんでしょう。そこのところをごまかしているからあなたみたいな答弁になるんだよ。法制局長官に答えてもらいましょうか。
  92. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 採掘権は採掘に適する鉱床を採掘する権利だと、これは先生おっしゃるように読んで字のとおりでございますが、ただ、採掘権を設定したからといって、直ちにこれを企業化するということについてはいろいろな準備活動等が要ります。一体どういう構造になっておるのか、地質構造になっておるのか、そういうことがございまして、そういうものに対しまして企業が仮に鉱業権を設定しても、直ちに採掘活動に入るということはなかなか困難な状態にあるというのが現状でございます。
  93. 和田静夫

    和田静夫君 いや、この我妻さんの解説書によると、鉱物の存在が明らかだ、したがって権利だと、こうなるわけだよ。明らかなんですよ、鉱物の存在は。
  94. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 我妻先生の本に……
  95. 和田静夫

    和田静夫君 採掘権を聞いているんだからね。
  96. 豊島格

    政府委員(豊島格君) はい、そのとおり書いてあるわけでございますが、採掘権を、それだからといって直ちに採掘活動に入れるということには、企業のたとえばいろいろなリスクがある。たとえば、仮に実質的に掘れるという鉱床があったとしても、実際問題として銅が非常に値段が下がっているとか、いろいろな条件がございますし、それから鉱量等についても自信がないということもございますので、概念的には我妻先生のおっしゃるとおりかと思いますが、現実の問題としては、いろいろとそこには幅があるということかと存じます。
  97. 和田静夫

    和田静夫君 鉱物の存在が明らかであるのに、なぜ金属鉱業事業団は三本のボーリングを入れたのか、この辺が私には疑問なんですよ。存在が明らかなんですから。
  98. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 金属鉱業事業団の広域調査につきましては、地質構造を調べるといいますか、確認するという、その調査が目的でございまして、再三繰り返しておりますが、いわゆる企業が採掘をするといいますか、その指針になるものでございまして、その一般的な物探その他をやりました地質構造の調査の結果、その物探上いろいろな異常値があらわれたということで、そこに三カ所その異常値があらわれたことがございまして、それをボーリングすることによって全体の地質構造を把握すると、こういう目的でございます。  細かく言いますと、五十六年度に二本掘ったわけでございまして、さらにもう一本掘ったのにつきましては、その両方掘ったところとの関連とか、まあ専門的にはいろいろ言われておりますが、そういうことでございまして、決して鉱床そのものを打ち当てるということが目的ではなくて、あくまでも広域調査に基づきます地質構造の解明が目的であったと、こういうことでございます。
  99. 和田静夫

    和田静夫君 ボーリングに幾らかかりましたか。
  100. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 全部で四千万円程度かかっております。
  101. 和田静夫

    和田静夫君 ええっ、一本三千万でしょう。
  102. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 一本が一千万ちょっとだと、三本で四千万だと私は聞いております。
  103. 和田静夫

    和田静夫君 間違いない。
  104. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 実際おやりになった金属鉱業事業団理事長がそうだと言っておられますので、これは間違いないと思います。
  105. 和田静夫

    和田静夫君 理事長ね、住友鉱区のすぐ隣には三井金属がボーリング調査なしているわけですね。これは自前の調査です。なぜ、他社が自前で調査しているにもかかわらず、住友鯛生鉱区に事業団の調査地点を設定したのか。
  106. 西家正起

    参考人西家正起君) 私ども、広域調査を実施いたしましたのは、五十五年の十二月に、先生先ほどおっしゃいましたように一本やったわけでございます。これが予想外によかったわけでございます。しかし、よかったといいましても、ごく数十センチの間に非常に品位のいいものがちょっとあったという程度でございまして、これが一本ではその辺の地質構造は解明できません。それで、これはもちろん学識経験者その他の皆さんの御意見によりまして、それからさらに離れたところに、五十六年八月二本目な打ったわけでございます。それと並行いたしまして、今度は五十五年に打った反対側の方にもう一本打ったわけでございますが、これはその二本と違いまして、うんと掘り方を——はっきり申しますと、最初の二本は四十度の角度で打ったわけでございます。最後の三本目は二十度に寝かしまして、全然先の方の地質構造を解明する、こういう意味で掘ったわけでございます。  その結果、二本の結果が非常によかったので、その辺の地質構造はおおむね解明されたんじゃなかろうかということで、その後はもう事業団の出る幕ではない、あとは企業の探鉱に入ったわけでございます。それが五十六年十月以降、住友が入ったわけでございますが、その地質構造の解明の結果、その構造の延長の方にひょっとしたらまだあるんじゃないかということで、三井金属が自分の金で今度は探鉱を始めたと、こういういきさつでございまして、順序から申しますとそういうことでございます。
  107. 和田静夫

    和田静夫君 菱刈鉱山の事業着手延期なんですが、住鉱の子会社である鯛生鉱業が所有していた昭和四十八年六月から五十六年十月までの間に四回延期申請が出ていますね。
  108. 豊島格

    政府委員(豊島格君) そのとおりでございます。
  109. 和田静夫

    和田静夫君 ところが、結局鯛生鉱業は一回も採掘を行わなかった、いわゆる睡眠であったと。
  110. 豊島格

    政府委員(豊島格君) その間、一度も採掘は行っておりません。
  111. 和田静夫

    和田静夫君 おりませんか。
  112. 豊島格

    政府委員(豊島格君) おりません。
  113. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、それは確認できたんですが、しかしなぜ四回も着手の延期が認可されましたか。
  114. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 鉱業法六十二条に基づきまして、事業者の着手義務が延期される場合というのはいろいろございまして、たとえば災害とかあるいは電気が来ないとか、あるいは市況が非常に悪くなりたとか等々いろいろございますが、本件について申しますと、鯛生鉱業はその六百三十八号という鉱区のほかに大口鉱山というのを持っておりまして、これとの一体的な開発ということを事業計画として持っておったわけでございまして、こういう場合には、事業の規模その他の要件で、そういう他の鉱区と一体的に開発をすることが非常に適当であると認められるときには、その着手の延期ができるということになっておりまして、そういう鯛生鉱業の、そういう活動の一環として先生御指摘の鉱区については事業の着手を待ってほしいと、こういう申請があって、それを許可した次第でございます。
  115. 和田静夫

    和田静夫君 どうも私は、六十二条の規定は、いたずらに権利の上に眠ることを許さないことを趣旨とする、こう思うのですかね。
  116. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 先生の御指摘のとおり、わが国の鉱業権の取得は先願主義になっておるということでございますが、だからといって権利の上に眠ることはできないということで、事業着手につきましては一定の手続を経て、特にその理由を述べて、そのやむを得ないときには事業着手の延期をすると、こういうことになっておりますが、その観点から言いまして、先ほど御説明したような事情でございましたのでこれを認めたということでございます。
  117. 和田静夫

    和田静夫君 くどいようですがね、事業着手の延期申請書に添えられた事由は、それぞれどんなものですか。
  118. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 本件申請の処理につきましては、福岡通商産業局においてやっておりまして、ただいま手元にございません。私ども、どういう理由で延ばしたのかということにつきましては、先ほど申し上げましたような事情で延ばしたと、このように聞いております。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 いや、私は一つの政治的な動きがあってこの延期があるというふうに見ていますから、一回、二回、三回、四回、分けて説明してください。
  120. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 四回ございますが、実は四回のうち最初の二回につきましては、いわゆる書類の保存期間ということもあるようでございまして、私ども調べたところわからないわけでございますが、もちろん法律に定めた法律の精神にのっとって適正な運用がされておると、こう確信いたしております。  なお、五十三年七月と五十五年七月の二回の事業着手につきましては、先ほど申しましたような理由によるということに確認できております。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 これ一般質問に引き継ぎますからね、いまの事由、後でくれますか。
  122. 豊島格

    政府委員(豊島格君) いま申し上げたことを紙に書いて出すと、こういうことでございましたら当然できます。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 昭和五十一年七月二十六日から五十一年十月二十五日までの間空白になっているのですね。しかも、十月二十六日から始まる延期期間が認可された日付は十一月四日ですよ。これは通産省、一体どういうことなんです。
  124. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ただいま御指摘の点は、認可日と認められる期限との関係に差があるのじゃないかと、こういうことかと存じますが、着手延期の認可申請がありました時点にさかのぼりまして認可の効力は発効するということでございますので、その点、行政上といいますか、権利上空白があるということにはならないと思います。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 さっき言った期間も、着手しなかったのか、着手していたのか。
  126. 豊島格

    政府委員(豊島格君) その期間着手いたしておりません。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 おりません……
  128. 豊島格

    政府委員(豊島格君) はい。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると法制局ね、いま、おりませんということになると、法五十五条一号によって、鉱業権は取り消されるべきであります。
  130. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 法律の規定によりますと、警告を発し、あるいは取り消すことができるということでございまして、その実態を見て認可してその効力を遡及さしたわけですから、必ずしも必然的に取り消すということになるものでは法律上もございませんし、実際上もそういうことでよろしいかと存じます。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 どういう警告をしたの。
  132. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 何でしょうか。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 どういう警告をしたの、それじゃ前段の場合。何にもやっていないじゃないの。
  134. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 内容について細かく申し上げる必要もないかと存じますが、鉱業法の規定によって、手続を厳守すべきことは当然であるけれども、貴社所有の下記鉱業権については、義務の履行が行われていないので、所定の手続をとるようにしろと。それから、そういうことのないよう——そういうことをしておれば鉱業権の取り消しを行うことになるので厳重に警告すると、こういうことを言っております。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 いつ付ですか。
  136. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ちょっと、コピーで字がはっきりわかりませんが、四十九年の五月十五日ではないかと思います。起案書によると、そういうことでございます。
  137. 和田静夫

    和田静夫君 その警告文書も後でください。  そこで、手続されましたか。
  138. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 警告文につきましては、その当事者に対して出すものでございまして、必ずしも公表することを目的としておるものではございませんが、よくその関係方面とこの文書の性格について相談をいたしまして、出せるものなら当然先生のおっしゃるように出したいと思いますが、その点については、この文書の性格もございますので、一応検討さしていただきたいと思います。
  139. 和田静夫

    和田静夫君 いや、答弁していないんだ、そこんところ。  警告に基づいて出てきたの。
  140. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 何分、福岡通産局でやっておりますので、正確なことはわかりませんが、ただいまの警告は手続を経ないことに対する警告でございまして、それに基づいて申請書が出てきているということで、警告に対する一応の対応といいますか、当然法律的な義務でございますので、一応というか、あたりまえの対応でございますが、それ以上何がしかの申し開きといいますか、説明があったかどうか、その点についてはいまのところわかりません。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 所定の手続をしろという行政行為をやったのでしょう。その見返りがなかったということですか。
  142. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 先ほどの警告は四十九年の五月十五日であったかと思いますが、それに対しまして、四十九年の八月の五日に申請書を出してきておるということでございまして、そういう手続をしたというのが警告に対する対応であったかと思います。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 それが鉱業法六十二条四項の事業開始の届け出を含んでいるんですか。
  144. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 着手延長でございまして、事業開始の問題については触れておりません。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 はっきりしてきました。  したがって、鯛生鉱業の鉱業権はこの時点で明確に取り消されるべきですよ。それが法律解釈じゃないですか。
  146. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 事業着手の時期の延期を申請し、それを認めたわけでございますから、その認められた期間において事業着手をすることであれば、それは法律違反にならないし、したがって鉱業権取り消しということの——もちろんこれは取り消すことはできるということでございますが、取り消しの対象にはならない、このように存じます。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 これはまあ、どこで調べられるかわかりませんがね、見解が非常に違います。法解釈も違います。したがって、このケースは鉱業法違反の疑いが非常に強い。  厳密に調査をして、一切の書類をつけて私のところへ提示してください。これは大臣いかがですか。
  148. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 先ほどからるる申し上げておりますように、鉱業法違反ではないと思いますが、先生の御指摘の点につきまして、必要なものにつきましては調査をした上でお答えいたしますが、いままで申し上げたこと以上のことは余りないのではないかと思います。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 これは一般に間に合うように連休明け。よろしいですね。
  150. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 連休明けという時期で努力したいと思います。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 菱刈地区の調査結果を公式に発表されたのはいつですか。
  152. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 金属鉱業事業団が菱刈地域においてボーリング調査等の結果に基づいてそれぞれプレスをやっておりますが、その内容につきましては、五十六年五月七日及び五十六年九月十八日にプレス発表ということでございます。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっともう一遍。
  154. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 五十六年五月七日、それから五十六年の九月十八日というふうに記憶いたしております。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 違う。違うでしょう、事務局。公式発表ですよ。
  156. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 金属鉱業事業団に確かめましたところ、そのとおりということでございます。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 ここのところは非常に重要ですからね。そう言っておきなさい、私が立証しますから。  大蔵省証券局、住友金属鉱山の株価が五十六年九月十八日から急速に上がり始めます。翌日付の日経株式欄によれば、住鉱の子会社が鹿児島に持つ金山が有望であることがわかりた、そういううわさが兜町に流れた、こういうことなんですが、御存じですか。
  158. 水野繁

    政府委員(水野繁君) お答え申し上げます。  五十六年四月ごろに二百六十円程度でございました。それが五十七年、一年たちました五十七年四月には千二百三十円ぐらいまで上昇いたしました。その後、一時下落をいたしまして、現在、大体千五百円程度ということで推移いたしております。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 通産省と資源エネルギー庁が昭和五十六年度の北薩・串木野地域の広域調査報告書を発表したのは五十七年三月ですね。
  160. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 報告書として取りまとめて発表したのは先生の言われた日にちでございます。しかし、その前に、すでに事業団において、内容につきましては二回にわたって先ほどの期日に発表しておるわけでございます。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 人事院総裁ですがね、金属鉱業事業団の職員にも国公法の守秘義務が準用されますね。
  162. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 事業団の職員に国公法自体が準用されるかどうか、それは主管庁の方から責任のある御答弁をいただいた方がいいんじゃないかと思いますが、私の理解では、国家公務員法百条の守秘義務は、一般の職員、一般職の職員を対象にしておるものであるという理解でございます。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、人事院総裁の要望ですから、法制局長官。
  164. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 事業団の職員は国家公務員法上の一般職じゃございませんから、国家公務員法の守秘義務の規定は適用がないと思います。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 準用もされない。
  166. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 失礼しました。準用もされません。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 鉱業原簿第七百三十九号の方ですが、五十六年十二月中に所有者がめまぐるしくかわっていくわけです。東山ヶ野鉱山ほか二名が採掘権を取得、登録したのが十二月十五日、その翌日には千葉県在住の吉岡武夫氏が譲渡契約、吉岡氏は十二月二十一日に取得した。そして二カ月半で今度は吉岡氏が住金鉱山に譲渡する。そうすると、鉱山権がまじめに探鉱される目的を持って設定されるのではなくて、投機の対象になっている。いわば土地転がしならぬ鉱業権転がしが行われた、そういう疑いが強いんですが。
  168. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ただいま、短期的に譲渡されるのは投機的な色彩が強いかと、こういうことでございますが、鉱業法の原則といたしましては自由な譲渡が認められているわけでございまして、これにつきましては、いろいろな問題点もあろうかと思いますが、いわゆる先願主義に基づいて発見者を保護し、国民の鉱業への平等な参加を認めるということをしながら、かつ適格者が鉱業に参加するということを目的としているわけでございまして、そういう意味で譲渡については自由にいたしておるわけでございますから、この点、特に問題はないかと思います。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 行管庁長官見解を承っておきます。
  170. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) ただいまの答弁どおりだと思います。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 いや、行管庁長官
  172. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 法制局長官が下された解釈のとおりだと思います。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 これも朝日新聞経済部編の「お金に踊る世界」という本の六十一ページ、「五十六年九月末から約半年間、下落相場の中で、鹿児島県下の金鉱開発がはやされて脚光を浴びた住友金属鉱山株。自民党幹事長二階堂進、越山会の女王佐藤昭ら」「(木曜クラブ)の名が何度か取りざたされた銘柄だ。」と、この二人のほかに、実は私のところへ内部告発として、間違いあるといけませんから、通産大臣、いまの通産大臣じゃありませんが、現職の大臣のお名前やあるいは元事務次官のお名前、この事務次官は比例代表制区の候補者であるようでありますが、そういう方が取りざたされてきています。私は固有名詞をきょうは挙げません。つまり私が得た情報によれば、事業団から情報がどうもリークをされて政治資金が調達をされたというようなことが感ぜられるんですが、この辺の調査はだれですかね。行管庁長官ですかね。どこです。
  174. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 調査の担当はどこか私存じませんが、そういう事実は私どもの耳には一切入っておりません。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 一般で明らかにします。  そこで、こういう疑惑を招くのも、事業団が官民の接点にあって天下り官僚がその間を取り持つという構造があることを指摘をしなきゃならぬと思うんです。西家理事長は、通産省鉱山保安局長を退官された後、住友金属鉱山の常務、専務を歴任、五十三年に現職、それから蓼沼さん、保阪さんのお二人の理事は通産からの天下り、さらには山根元仙台保安監督部長は五十三年に住鉱に天下る。国公法百三条は完全にしり抜けになっているんじゃないだろうか。人事院総裁、行管庁長官総理見解を承ります。
  176. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 天下り関係の規定は、適用の対象になりますのは御承知のように一般の民間の企業でございまして、事業団とは、これは特殊法人として政府においていろいろ監督をしておるということでございますので、人事院の管轄外でございます。
  177. 和田静夫

    和田静夫君 通産当局から資料いただきましてから論議は継続をこの問題はいたします。  さて、関連質問で二回ばかり税の問題で大蔵大臣にいろいろお尋ねをいたしました。そこで、大型間接税はいずれにせよ物価の上昇をもたらす、そして低所得者に不利な、つまり所得に対して逆進的な税制であることは明らかである。ところで、最近にわかにこの所得税の税率緩和が問題になってきているようでありますが、所得税の税率についてはどういう御見解をお持ちでしょうか。
  178. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 所得税の税率問題については国会の議論等々さまざまな御指摘があっておるところであります。したがって、私どもといたしましては今日予見を持っておるわけではございませんけれども、例示をいたしますならば、この臨調の最終答申でちょうだいいたしました答申の中にも「所得税制における課税最低限及び税率構造」等「検討する。」という指摘がございます。これと同じようなことが税制調査会におきましても指摘をされておりますので、検討の対象になるべきものである、私どもとしても勉強しなきゃならぬ課題であるという認識を持っておりますが、いまその予見を持っておるというわけではありません。
  179. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省、課税所得八千万円以上税率七五%以上の人は何人いらっしゃるかわかりますか。
  180. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 突然の御指摘でちょっと手元に資料がないわけでございますが、五十六年分の税務統計によりますと、所得階級二千万円以上の納税人員が十五万人でございます。したがいまして、八千万円以上ということになりますと、かなりこれより少ない数になると思います。
  181. 和田静夫

    和田静夫君 それは幾ら何でも答弁ひど過ぎるよ。
  182. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) まことに申しわけございませんが、現在手元に資料がございませんので、早急にわかる範囲内で御報告申し上げたいと思います。
  183. 和田静夫

    和田静夫君 わからないというところが本当のところなんでしょうけれども、大蔵なかなかわからないと言わぬのでしょうね。  大蔵省、課税所得一千万円以上の税率ごとのそれじゃ対象者。
  184. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 御案内のとおり、税率の構造、十九刻みがございまして、下の段階はいま二%刻みということで、税務統計上も税率区分ごとの、つまりブラケットごとの人員というもので集計はいたしておりません。したがって、御参考までに申し上げますと、所得階級の百万までのところが百五十六万人……
  185. 和田静夫

    和田静夫君 一千万以上、四二%、四六%、五〇%、五五%、税率ごとに。それはわかるでしょう、すぐに。
  186. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) その税率区分ごとの集計というのはやってないわけでございます。所得階級区分ごとでございますと、少し時間をいただければお出しできるかと思いますが。
  187. 和田静夫

    和田静夫君 論議を阻むものであるという感じがするな。これ、それじゃ局長教えてください、後で。  そこで、それ出してくれぬのなら、いま答弁できればこれいただきたいんですが、大蔵省、税率四二%から七五%までを適用される人たち、給与所得の場合に所得税の所得に対する負担率どのくらいになりますか。
  188. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 実効税率でございますと、いろいろあれがあるんでございますが、夫婦子二人、それから給与所得者で収入ベースということで申し上げますと——幾らから幾らでございますか。
  189. 和田静夫

    和田静夫君 四二%から七五%。
  190. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 国税で四二%から四六%という区分でございますと、収入ベースで年間千三百五十六万八千円からおよそ千八百八十三万一千円ぐらいのクラスでございます。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 所得税の所得に対する負担率よ。
  192. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) いま申しましたのは給与収入でございますので、これから給与所得控除をいたしまして所得というのが出ます。したがって、これも時間をかしていただければすぐ計算はできますが、理屈はそういうことでございます。
  193. 和田静夫

    和田静夫君 理屈はこっちもわかっているんだよ。衆議院の予算委通過してきた予算論議なんだけれどもな。  そうすると、いまの二つと最後の一つ、三つ、これ資料で全部いただくと。
  194. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 御指摘の点につきましてでき得る範囲内で資料を早急に整理いたしまして御提出申し上げます。
  195. 和田静夫

    和田静夫君 連休中に勉強できるようにしてくれますか。
  196. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 仰せのとおり努力いたします。
  197. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣ね、いまのところ出ませんからこの論議があれですが、よく所得一千万円以上の人々が税率が高くて勤労意欲がなくなるという意見がいろいろ出されるわけですが、私は松下幸之助さんや先日お亡くなりになった上原正吉先生がそういう意味で税金が高いから勤労意欲なくなったなんていうこと人から話を聞いたこともないんですが、それはそうでしょうね。
  198. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これもいま例示として故上原正吉先生とかあるいは松下幸之助先生とかお出しになりましたが、これも例示として申し上げますと、よく最近会合等でたとえば独身貴族に熟年こじきとか、あるいは若年天国、熟年地獄とか、そういうような言葉がよく使われます。それはある種の一般的な感覚を言っているのじゃないかなという感じはしないでもございません。これは単なる私の個人的感想でございます。
  199. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、この所得税率の最高税率を下げるというのは、これはまあ金持ち、いま言われるように八千万円以上何人いるか、これは統計も出てこない。一握りの金持ちを優遇する、高額所得者を優遇する、そういうことを免れることはできない、そう考えていていいですか。
  200. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆるシャウプ勧告以来、結果としてだんだん刻みが私は十九という刻みになっておると思うのであります。したがって、そのいわゆる刻みそのもののところにはある種の不公平感みたいなものが必ず結果として生じてくる。だから、そういうものを全体として検討の対象になるべきものではないかな、こう思っておりますので、いま特定の層を念頭において考えておるというものではございません。
  201. 和田静夫

    和田静夫君 国税庁、東京国税局が産婦人科病院を税務調査されたそうですが、これは手口が非常に巧妙になっておると報ぜられていますが、ちょっと報告してください。
  202. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 国税庁、私どもの所管でございますが、恐らくこの本日の質疑に対する出席要求政府委員という認識がなかったかと思いますので、いまの御指摘につきましては、今朝の新聞報道に基づくものでありますだけに早急に調査をいたしましてお手元に正確な御報告をするような措置をとらしていただきます。
  203. 和田静夫

    和田静夫君 ことしじゅうに景気浮揚を行い得るような規模の減税を行うということになったわけですが、景気浮揚に役立つような規模の減税というのはどの程度のものであろうか、そういうことは直ちに出てくるわけですが、大蔵大臣はまことに慎重でいらっしゃいまして、明快な答弁なさらないんですが。  そこで、こういう質問にかえてみます。全く一般論ですが、大蔵省の試算では個人消費支出を一ポイントあるいは〇・五ポイント上げるためには大体どの程度の所得税と住民税の減税が必要になってきますか。
  204. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) お答え申し上げます。  所得税の減税を行った場合に消費支出にどれぐらいの上昇の効果があるかということは、実はいろんなシミュレーションがございましていろんな計算があると思いますが、大蔵省といたしまして現時点で一義的にそういうシミュレーションをやりまして、いまは御指摘のような点について計数的な回答は持っておりません。
  205. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、経済企画庁。
  206. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) ただいま和田委員から御指名がございましたのでお答え申し上げるわけでございますが、私どもは税務官庁でございませんし大蔵省でもございませんので、どの程度所得税、住民税の減税のための引き上げになるか、よく具体的な技術的な手段でございますのでわかりませんけれども、ともかくも所得税減税を一兆円すれば、初年度において約〇・二GNPが上昇するということは、この委員会におきましても昨年来申し上げてきたところでございます。衆議院でもそのような御質問がございまして、お答えしたことがございます。
  207. 和田静夫

    和田静夫君 ここは通告してあるんですからね、大蔵省も答えてくださいよ。
  208. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) トータルとして消費支出がふえれば結果としていまのシステムでGNPが何%ふえるかという計算はあるいは出るかと思いますけれども、消費支出を幾ら上げるために減税を幾らやるべきかというのは、先ほども申しましたように、私どもは一義的な計数は持っておりません。いろんなシミュレーションはあるかと存じますけれども大蔵省として対外的にこうなりますという数字は持っておりません。
  209. 和田静夫

    和田静夫君 自治大臣、住民税に関してあなた計算されたことありますかね。
  210. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 大蔵省の場合と同様でございまして、具体的な減税を予定いたしましてそういったシミュレーションをやったことはございません。
  211. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、一遍やってみられませんか。
  212. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはいろんな計算の背景があると思います。したがって、私どもそういうものが将来の経済運営ということを前提にして考えられた場合、やはり経済企画庁を中心に検討すべき課題である、部内で公にできる性格のものであるかどうかは別として、個々の勉強をすることは、これはいといません。
  213. 和田静夫

    和田静夫君 経企庁長官ね、経済学の教科書に経済計画を策定する国は計画経済の国と書いてありますか。
  214. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 教科書のことはよく私もまだ研究はいたしておりませんけれども、これまで自由民主党内閣で十本ばかりの経済計画をつくってまいりましたが、いずれも経済計画という名称でやってまいりました。
  215. 和田静夫

    和田静夫君 先日、総理、大変失礼な、学識深い人に私そんなこと言えないんですが、どうも総理にしちゃとんちんかんな答弁じゃないかというふうなことを思ったもんだから聞いたんですが、揚げ足を取るつもりは全然ありません。経済計画の策定と資金の裏づけがないのとは、私はどうも一義的には何の関係もないことであろうというふうにあのとき感じたんです。財政資金がなければないように経済計画はつくれる、これは経済企画庁、そうでしょう。
  216. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 財政計画のもとで資金は一応の成長率に基づきまして想定されたものがあることはもう当然のことでございます。
  217. 和田静夫

    和田静夫君 総理はさらに、ちょっと答弁あれですけれども、高度成長時代はうまく当たりましたと、こう言ったんですが、あれは当たったというんですかね。
  218. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) この点につきましてもたびたび申し上げておりますが、十本の計画のうち九本まではまあ耐用年数が大体平均三年、これは実際の成長率と経済計画の想定が乖離したことによるものでございまして、これはもう高度成長のみならず低成長時代にもこのような乖離の現象が起こったことは大体変わりかないかと思うんでございますが、高度成長時代は喜びの何と申しますか成長率が実現した、そういう点で非常に喜ばれたことを私は存じております。
  219. 和田静夫

    和田静夫君 どうも総理の御説をあのまま受け取っていると、経済企画庁というのは要らなくなるという感じしませんか。
  220. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は総理の言われるのはもっともだと思うのでございます。このような乖離が来るようなことはもう十分注意しなければならないし、またでき上がりました経済計画の数字に振り回される。そしてまた、それを金科玉条、固定的、拘束的に考えることで、往々にいたしましていろいろの弊害をもたらしてきておることも事実でございます。このような点は、私は新しい観点から見直すことは一つの進歩の方向だと思っております。
  221. 和田静夫

    和田静夫君 いまあなたが述べられたことは、私は十年ばかり大蔵委員会や、あるいは決算委員会予算委員会でずっと述べてきたことなんです。そうすると私の説が正しかった。だれも当たらなかったと総理は言ったのですかね。マネタリストだとかなんとかいろいろ言われて、だれも当たらなかったと言った。私はあのときちょっとやじて、社会党の私たちの試算は当たったと、こう言った。いまそのことをお認めになったからもういい。  そこで総理、一番重要なのは、ガイドラインの方がいいと総理言われたのです。それはまあ見方でありますからね。どのくらいの幅を持たせたらいいわけでしょうか。
  222. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず五年から十年の間、それを十年に持っていくか五年に近づけるか、それは専門家がいろいろ御検討なさることでしょうが、私の感じとしては五年から十年の間、適当なときにお決めいただくのがいいのではないかという感触を持っております。
  223. 和田静夫

    和田静夫君 私は、経済計画がそもそも当たらないというのは、経済はそもそも生き物でありますから、しかも日本のような資本主義国では私企業が無政府的な競争をやっていますからでありますが、資金の裏づけだとかあるいは自給自足だとかの問題は私は二の次の問題だと実は思っております。一般論として言えるわけですけれども、問題はここ数年の経済見通しにおいて政府は恣意的に高目の成長率を設定をしてきた。ここが実は問題なんだということを私は考えてきたのですよ、ずっと。民間の研究機関が発表していることよりも高目にあれされて、竹下大蔵大臣ともあるいは渡辺大蔵大臣とも何遍もこのやりとりやってきましたけれども、この辺どう考えたらいいのですか。
  224. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は経済計画において成長率を意識的に高目に設けたと、こんなふうには考えておりません。そしてまた、民間との乖離ももちろんございます。しかし、おのおの手法も違い、政策、手段に対する評価も違い、また一つの努力をすれば達成できる目標、このような認識についての評価の差もございますためにこのような乖離があるということは事実でございます。
  225. 和田静夫

    和田静夫君 もう時間がなくなりましたからあれですが、私に言わせれば、それはまあ世界不況をきわめて楽観視していたこと、あるいは第二に財政再建のつじつまを合わせるために高目に設定した。私は、やっぱり経済計画は政策決定のためには必要だろうと考えていますよ。ガイドライン方式は、逆に策定に混乱をもたらすのじゃなかろうかと、そういうふうに思っているのですが、そこのところだけちょっとだれか答弁しておいていただけませんか。
  226. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) この点につきましては、総理もたびたび申されておりますように、一つのガイドライン、一つの目標、一つのビジョン、これはもう必要である。しかし、柔軟、弾力的、より長期ということで、私どもは必要なものとして経済審議会で御検討をしていただいているところでございます。
  227. 和田静夫

    和田静夫君 自治省、起債が一件認可方式から起債枠を決める方式に変わって、自治体側は手続が大変簡略されたと言っているのですが、補助金統合メニュー化をもっと大胆に進めて、そして補助枠制度のようなものをつくっていく。そういう方向を目指す。その方が私はいいと思っていますが、自治省はどういう——自治大臣
  228. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 補助金、負担金につきましては、それぞれの目的、背景というものがございますが、補助金合理化の一つの方向として、一定の金額を一定の政策目的の範囲で、これを受ける地方団体が自由に選択できる、幅を持って選択できる、こういった方向は合理化の方向として望ましいと、このように考えております。
  229. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、よろしいですか。いまの答弁、よろしいですね。
  230. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 局長答弁のとおりと考えております。
  231. 和田静夫

    和田静夫君 総理、これはもう補助金の総合化、すなわち一括して補助金を交付する総括的な補助方式を検討して導入を図る。臨調最終答申でもあります。総理、いまの答弁受けて、おやりになりますね。
  232. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 和田君、時間が参りました。
  233. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) かねがねこの点につきましては御指摘をいただいておるところでありまして、補助金の効率化等のためにも統合メニュー化ということは必要であり、努力してまいりたいと思います。
  234. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で和田静夫君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  235. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、寺田熊雄君の総括質疑を行います。寺田君。
  236. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総理にお尋ねしますが、総理は、議会制民主主義の基礎は国民の政治あるいは政治家に対する信頼にあると言われておるようでありますが、本当に政治倫理の確立に対して熱意をお持ちでしょうか。
  237. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民主主義の基礎は主権在民の上に立つものでございまして、国民の信頼感、政治あるいは政治家に対する信頼感というものはやはり基礎であると思っております。そういう意味におきまして、国民の信頼を継ぐに足るだけの倫理性というものが政治に要求され、政治家にも要求され、それを実現していくべく努力していきたいと思っております。
  238. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま東京地裁で審理中の田中総理の裁判につきましては、中曽根総理も当然重大な関心をお寄せのことと思うのですが、    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕 田中氏は丸紅を通じてのロ社からの五億円の受け取りを全面的に否認していますね。秘書の榎本敏夫も同様でありました。ところが、丸紅の大久保利春、伊藤宏の両専務は、五億円の授受を法廷で証言しておるわけですね。これらの人々はいずれも体制派の人であって、田中、榎本両名に対して恨みを持つような特段の事情がない限りは、ことさら田中、榎本を陥れるようなことをするとは考えられないわけです。果たせるかな、最近榎本は、法廷外において五億円を伊藤から受け取ったとある評論家に告白をいたしました。これは一流の雑誌にも掲載されたのであります。そうとしますと、田中被告はもちろん、榎本も裁判所及びこの裁判を注視してまいりました全国民を欺いてきたことになります。政治家としてはとうてい許し得ない、これは政治家として許し得ない罪であります。裁判所もこの事実を重く見まして、弁護人らを招致してこの事実に対する対応をただしたようであります。  この事件では、田中氏の私設運転手の笠原正則氏の自殺というような人命の損失も起きておりまして、事はすこぶる重大であります。  総理、この五億円の授受の有無、その法的性格を確定して田中の刑事責任を問うということは確かに裁判所の所管事項でありますけれども、しかし、この金を田中氏が総理在任中に受け取ったかどうか、それが事実かどうか、これ、事実を否認して満天下を欺いていたかどうかということは、政治家の政治的道義的責任を明らかにしてわが国の政治倫理を守る上できわめて重要であります。それで、国会はその国政調査権に基づいてこういう総理の政治的道義的責任を明らかにすべき事実を調査することが当然だと私は考えるのですが、総理、この点あなたどうお考えになりますか。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまのその授受あるいはその性格等が、裁判で原告、被告の間において争われている攻撃防御の重要点の一つになっていると思います。いまその攻撃防御の争いの行われている最中でございますから、これに介入したり、あるいは影響を与えるような印象を及ぼす言動は一切私は差し控えたいと思っております。
  240. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうではないでしょう。裁判に影響を与える趣旨を念頭に置いて私は申しておるのじゃないのです。裁判所は裁判所で事実を確定し、田中氏の刑事責任を明らかにすればよろしい。しかし、総理大臣の在任中にそのような金を受け取っておりながら受け取っていないと言う。それを秘匿して全国民を欺いておる。それは政治家として道義的責任を当然負わなきゃいかぬ許せない行為だと。だから、その点を国会は国会の調査権に基づいて事実を明らかにしたらいいじゃないかと、それは国会の責務じゃないかといってお伺いしておる。裁判に影響を与えることをあなたにお話ししておるのじゃないのです。
  241. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、ロッキード事件が起きましたときに、両院議長の裁定でありましたか、御見解の発表がございまして、与野党が一致した点の合意がたしかあったと思います。その中に、この事件の真相を明らかにするために調査をすると、そういう趣旨の言葉があったと思いますし、それから道義的政治的責任の有無を調査すると、そういう趣旨の取り決めがあったと思っております。そういう意味におきまして、国政調査権に基づいてそういう点を明らかにするということは、国会が合意をして行っておるところでございまして、それはまた妥当なことであると考えております。
  242. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 確かにいま総理のおっしゃったことは私は正当なことだと思います。国会は国会としてこの事件の真相を徹底的に究明しなきゃいかぬということも決議しておるわけですね。ところが、いまは裁判が行われておるからということでその任務を放棄しておるのであります。しかし、これはロッキード委員会なり、あるいは鈴木さんの言うような倫理委員会において、田中氏の政治的道義的責任を明らかにする国会は私は責任があると思う。裁判に藉口してその責任をないがしろにすることは許されないと私は考えておるのであります。  委員長、私は、この元総理大臣の地位にあった政治家、そして現在刑事被告人でありながら日本の政治に大きな影響力を持つ政治家、この田中氏が真実丸紅を通じてロ社から五億円という大金を受け取りながら、ことさらにこれを秘匿して国民を欺いているかどうか、この点をこの国政調査権に基づいて調査するのは、政治家の政治的道義的責任を明らかにして政治倫理を高めるため、国会として現在でも必要かつ有益なことであると私は考えております。  したがって、当予算委員会に榎本敏夫、伊藤宏、大久保利春の三人を証人として喚問することを提案いたしたいのであります。この三証人を尋問すれば以上の点は十分明らかになりますし、それには各党それぞれの代表者によってこの三人の証人に質問いたしましてもせいぜい二日、勉強すれは一日でこれは事が足りるわけであります。いままでのようはずるずると決定を引き延ばして延引するのではなくして、これを速やかに決定して、当予算委員会の開会中にこの証人喚問を取り計らっていただきたい。昭和五十一年に衆議院で荒舩清十郎予算委員長伊藤宏らの証人喚問を実現いたしました。いまこの委員会がこれを実現し得ない道理はないと思いますので、特にこれを申し入れる次第であります。
  243. 嶋崎均

    ○理事(嶋崎均君) ただいまの寺田君の御要求につきましては、理事会で協議をいたしたいと思います。
  244. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それではぜひ理事会で早急に結論をお出し願いたいと思います。  次に、田中辞職勧告決議案の問題でありますが、総理は、裁判事件でなお審理中だから被告人の人権は守る必要がある、除名は三分の二の多数決を要するのに単純多数で決定していいかどうかというような反対論をお述べになっておられます。しかし、われわれがいま問うているのは田中氏の政治的道義的責任であります。それは国会が、裁判所とは先ほど申し上げましたように別に調査して、別に確定し得ることは言うまでもありません。また、除名決議は議員の資格を喪失せしめる法律的効果を持つのでありますが、辞職勧告決議はかかる法的効果を持っておりません。本人の自由意思にゆだねられておりますので、これは二分の一で悪い道理がないのであります。法律的効果を持つものは三分の二以上の多数決であってもこれは妥当でありましょうけれども、これはそういう法的効果を持つものではないのであります。ちょうど裁判所で、判決と和解勧告のように両者は截然と法律的な性格が異なっております。これはお認めになりますか。
  245. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会の決議と法律というものはおのずから性格は違ってまいりますが、しかし、いま辞職勧告決議という案件は国会の議事日程に上っておりまして、議院運営委員会においていま論争されておるところでございます。各党各派の論争の結果がどういうふうになるか、政府としては見守ってまいりたいと思います。
  246. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、そうじゃないです。  総理はこの問題について非常に消極的な、むしろ否定的と言われるような御意見を述べておられるから、それはおかしいじゃないかと申し上げたわけです。
  247. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 辞職勧告決議に対する所見を求められましたから、私はこういう性格のものにつきまして行管長官時代以来国会において述べてまいりました自分の考え方を総理大臣になりましてからも陳述をいたしました。しかし、この問題はすでにそういう国会の案件としての事項に上っておる問題でございまして、各党各派がおのおの議院運営委員会におきまして所見を述べ、そして審議をしている最中のことでございます。われわれの考え方は、自由民主党の名前におきまして自由民主党の委員あるいは理事から述べておる次第でございます。これがいま各党各派の審議の対象になっておるわけでございますから、したがいまして、各党各派の審議がどういうふうに推移していくか見守っておるところでございます。
  248. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは法制局長官、除名決議と辞職勧告決議案と法的性格はまるっきり違うのですが、何かごちゃごちゃになっておる。それが法的性格がまるっきり違うということはあなたもお認めになるでしょう。
  249. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) この問題については確かに法律的な側面があると思いますが、事は議員の身分に関することでございますから、私からお答えするのは必ずしも適当でないと思います。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 ただ一般論として申し上げれば片一方は直接に法的効果があり、片一方は直接には法的効果がない、それだけの差はあるとは思います。
  250. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 午前はこの程度でいかがでしょうか。
  251. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時まで休憩をいたします。    午前十一時五十二分休憩      ─────・─────    午後一時七分開会
  252. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十八年度総予算三案を一括して議題とし、午前に引き続き、寺田熊雄君の質疑を行います。寺田君。
  253. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 中曽根総理にお尋ねをしますが、午前中ちょっと一問、政治倫理の問題で落としたところがありますので……。  総理は冒頭に政治倫理の確立についても熱意をお持ちのように御意見をお述べになりました。これは当然であると思います。総理は組閣以来、仕事をする内閣ということを一つのスローガンとしていらっしゃる。大変国政全般についての御熱意というものは、これは否定しがたいと思う、結構だと思いますが、それでは、仕事をする中に政治倫理の確立というのは入っておりましょうか。もし入っておるとすると、具体的に何をなさろうという御抱負をお持ちでしょうか。たとえば、三木さんは政治資金の問題について大変画期的なお仕事をなさいました。大平さんも大変おもしろい委員会をおつくりになりました。そういうふうに、それぞれこの問題についてはお仕事をしていらっしゃるんですが、総理はそれじゃ具体的に何をなさんとせられるのか、それを承ります。
  254. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民主政治は国民の信頼の上に成り立つものであり、民主政治は国会を主にして運営されるものでございます。したがいまして、国会の構成員である議員、あるいは地方議会におきましても同じように議員の職責というものは非常に重要であると思います。特に、議員おのおのが民主政治の重要な運び手でございますから、その信頼関係というものは民主政治の価値を問われる問題にもなりかねまじきものでございます。そういう意味におきまして、議員一人一人がまず自粛自戒して、国民から指弾されることがないような行動をとること、あるいは議会そのもの全体が機能を発揮して、国民から信頼される議会になっていくということ、そういうことが大事であると思っております。そういう点につきましてまず議員個々人が自粛自戒して、品位を高め、かつ信頼に足るだけの言動、挙動、行動をとるというようなことを努めることがまず第一義であると思います。  それから、今度は組織としての国会、あるいは政党というものはおのおのまた国民期待に沿うような改革、改善を志していくということが大事であると思っております。  いままでいろいろ国会で問題になりましたのは、政治資金の規制関係の問題であるとか、あるいは議員個人の倫理の問題であるとか、あるいは倫理委員会の問題であるとか、そういうようなことが問題になっておりました。また、田中議員のいまの辞職決議案というような問題も出てきたことでございます。このロッキード関係に関する問題につきましては、事態が裁判所に係属される前と係属された後とは、非常に様子が変わってきておると思うのであります。それで、国会決議あるいは両院議長の介入で合意ができましたときは、まだ事件がどういうふうになるかわからぬという状態で、暗中模索という状態であの決議がなされたと思います。その後逐次ロッキード委員会が国会としてはつくられて、調査権を発動して活動が行われ、また一方においては検察当局の捜査が進んで事件は一段と検察的には明確になると。それから裁判所に係属されまして、その後は裁判事件として扱われて、刑事事件としての扱いを受けてきております。  そういうふうになりますと、三権分立の関係もございまして、おのずから行政権や立法権の行動には限度が出てくる。これは事件が係属される前と後では非常に様相が変わってきているというふうにも考えられます。そういうような点につきまして、おのおの分限を守った行動をとることが望ましいとも考えておりまして、そういう限度を守るということを一方において、立法権に対して、あるいは司法権に対して、行政権の首長として慎みを持って考えていきたいと、そう思ってきておるところでございます。
  255. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 午前中は総理は、国会が政治的、道義的責任の問題をとらえて調査することは当然のことであるという御意見を述べられた。休憩時間中にそれが変説故諭されたんでしょうか。
  256. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 変わってはおりません。  ただ、事件が裁判所に係属されて以後というものは、そういう司法権側からの制約が入ってきたと、そう考えております。
  257. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは何か折衷論みたいに変わってきたように思います。裁判所はあくまでも田中個人の刑事責任を問うているわけですね。私が午前中からお話ししているのは、あくまでも議員としての田中角榮氏の政治的、道義的責任を重大な問題であるから調査すべきであるというんで、両者は違います。また、政治的、道義的責任に関する限りは国会が主導権をとってよろしいと、裁判所の決定と違ったって構いません。本来そういうものです。いかがでしょうか。
  258. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この政治的、道義的責任の問題が辞職勧告決議という形で最終的にいま出てきておると思うのであります。その案件につきましては政党間の扱いの問題に発展してまいりまして、議院運営委員会において各党はその所見を党を代表してお述べになっているという国会の手続の事項に上がってきておるわけでございます。そういう事態を踏まえて、われわれは自由民主党構成員として、また自由民主党を基礎にしてできている内閣の一員として、先ほど来申し上げているようなことを申しておるわけでございます。
  259. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後にそれじゃ端的にお答えください。  国会が政治的、道義的責任を追及するために調査するということは、いささかも裁判所の刑事責任の追及とかかわりは持たないという結論はお認めになるんでしょうかならぬのでしょうか。
  260. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会が国会法、あるいは憲法で与えられている調査権の範囲内に関することは国会の自由であると考えております。
  261. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総理は去る三月九日、嶋崎均氏の質問にお答えになったうちで、ある野党のうちに自分の国を自分で守らないという考え方を持っているものがあると述べた部分があるのですが、これは社会党のことを指していますか。
  262. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 社会党のみを意味したものではございません。
  263. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 社会党も入っておりますか。
  264. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非武装中立論というのを唱道なさっておりますから、私はそういう考えの中には入っておると思います。
  265. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは大変な何といいますか、事実をしいた御発言で、取り消していただく。陳謝もお願いしたいと思うんです。  これは中曽根総理も御存じのはずだと思うけれども、現行憲法が生まれてから現在まで論ぜられた問題ですね。つまり、戦争に訴えて国を守るべきかどうかと。憲法九条は、当初吉田さんも自衛のために正当防衛権というようなものを認めることが有害だとまで言い切られたのです。これはあなたも御存じでしょう。それから最高裁の判例も、憲法第九条二項がどういう意味を持つかという点について、同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであると。結局わが国自体の戦力を指すのである、外国の軍隊はこれに該当しないという判決の趣旨を述べておるわけですね。  それから、西村条約局長などは、結局国を守るというのは、現時点では警察権の行使しかないということを言っているわけです。それから外交交渉でやると。つまり国を守るには戦争で守るか、あるいは外交交渉やガンジーの言ったような不服従運動で守るか、いろいろあるわけですよ。社会党といえども自分の国を自分で守らないなんてことは言っておらないんです。ただそれが、憲法九条が軍隊を持つこと、戦争遂行権というものを否定しておりますね、交戦権を。だからその憲法の趣旨を忠実に守って、外交交渉なり、警察権なり、不服従運動なり、あるいは世界の世論に訴えるとか、そういうことで国を守るべきだと主張しておるので、自分の国を守らないなんてことを考えるわけがない。総理大臣は事実をしいちゃいけませんよ。しかも、事実をしいて、テレビを利用して他党を誹謗するがごときはもってのほかである。これは取り消してもらいたい。
  266. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法の解釈等につきましては、マッカーサー進駐下とその後におきましては、政府考え方、発言が若干変わってきていることは御指摘のとおりであります。吉田総理がマッカーサー占領下において、この憲法ができた当座だったと思いますが発言したことは、その後政府は変更しておるわけであります。  それから、自民党あるいはその後のいわゆる保守党内閣におきましては、憲法第九条の解釈におきまして、第二項のただし書きというものを注目して、それによって必要最小限の防衛力は持てるものであるという解釈を一貫して持ってまいっておるわけでございます。その解釈によりまして防衛庁及び自衛隊が法律として成立いたしまして、歴代内閣はこれを踏襲して、そして国民の大多数はこれを支持してきておると。自由民主党政権が一貫して存続してきていることや、各種の世論調査等を見ますと、自衛隊を支持している国民の層というのは大体七〇%以上になっております。これらの国民の世論の動向及び選挙の結果、あるいは自民党の内閣が国会で言明してきたことというものはもう二十数年間、二十年以上にわたりまして続けてきておることで、これは明らかな一つの大きな流れを示していると私は考え国民が支持しているものと考えておる次第であります。  裁判所の判決につきましては、自衛隊は違憲であるとは指摘しておりません。しかし、積極的に合憲というところまでいっているかどうかには疑問があります。ただ、これは、裁判になじまないと、そういうことを言っておるので、違憲ということは断定しておらないわけであります。  それから、一般的に国を守るという場合には、自衛力をもって国を守るというのが普通の概念、普通の考え方であると思うんです。ストライキだとか、あるいは集会であるとか、あるいは国際世論に訴えるということで国を守るというのは、一般的に守るという中は入れるかどうか。やはり、守るという場合には、ある意味における防衛力をもって抵抗して抑止し、阻止すると、武力攻撃に対してはある程度の防衛力で立ち向かって守ると、それがいわゆる守るという一般的概念であると思っています。そういう意味において私は申し上げている。つまり、憲法上の自衛力、必要最小限の自衛力を認めておるという立場に立って私は解釈をしておるのであります。
  267. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 とうてい納得できない。  いま憲法が、軍隊を持ち得ないということは、公法学者の七〇%が大体そういう意見です。いまお話しになった最高裁判所の判決といえども、あなたがおっしゃったように合憲とも違憲ともはっきり言い切っているわけではない、統治行為論で逃げているだけ。あなたも逃げているとおっしゃった、いつか。  あなたのおっしゃる、国を守るというのが、戦争行為だけだと言われるのか。外交交渉や不服従運動や世界の世論に訴えるという憲法前文の精神や、そういうものは御否定になるのか、いかがです。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民一般が、普通に考えている守るという言葉、あるいは国際的に守るという場合は、私は、やはり限定されたものではありましょうけれども、具体的な有効な抵抗力、それは一種の武装的な力であります。これをもって守る。これを言うのであって、ストライキとか、あるいはそのほかのおっしゃるようなやり方は、これは抵抗運動ではないかと、一般的に言われますのは。そういうふうに私考えておりまして、通常の概念に従って申し上げておるのであります。
  269. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 とうてい納得できません。これは答弁が全然あれしている。納得できない。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の内閣総理大臣としての御答弁を申し上げましたが、法制局長官に敷衍して御答弁をお願いすることにいたします。
  271. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 憲法九条の解釈について寺田委員が御主張になったような解釈が主張されていることは、これは私は事実として認めますが、政府の解釈としましては、これはもう従来からたびたび申し上げておりますように、憲法九条におきまして、いわゆる戦争放棄はいたしておりますけれども、自衛のため必要最小限度の武力行使をすることは九条の一項でも認めておりますし、それに見合う必要最小限度の実力を保持するということも、九条二項によって禁止されている戦力の保有には当たらないというふうに解釈しているわけでございます。  なお、先ほど最高裁の判決を引用してのお話がございました。確かに、砂川事件についての最高裁判決は、事件そのものが日米安保条約の合憲、違憲の問題でございましたから、直接自衛隊の合憲、違憲については触れていないことはそのとおりでございます。ただ、その判決の中にも、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないというようなことも言っておりますし、そういう意味から、私ども政府の解釈というものがその砂川判決によって否定されたとは私どもは思いません。ただ、繰り返して申し上げますが、自衛隊の合憲、違憲については、現在のところ、それを明確にした最高裁判決はございません。したがいまして、司法的には完全に解決は、結論は与えられていないということは御指摘のとおりだと思います。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 守るという言葉の定義、解釈の問題が論点になっているように思います。私が申し上げましたのは、国民一般が使っておる用語の例に従って私の解釈を申し上げたのであります。しかし、社会党のおっしゃることが、抵抗運動、つまりある程度の武装力を持って国を守るということだけ、それだけではなくして、さらに概念を広げて、そして一種の、われわれから見れば抵抗運動と言われるような、それまでも含めて守るというふうに御解釈になっておられますならば、私の考えは社会党の考えとは違いますので、社会党の自分でお考えになっている考え方について私の誤解があったと、遺憾でありますと申し上げる次第でございます。
  273. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 日本憲法の前文に、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」とあります。つまり、これは吉田さんも昭和二十五年に言っておられる。日本の安全は結局、国連その他の国際機関が、あるいは世界の世論が日本の安全を保障するだけの運動を起こす、こう私は確信いたしますということを言っておられる。ところが、朝鮮事変が起きて、占領軍が警察予備隊の設置を強制し、そして保安隊となり、自衛隊となったことは歴史的にも明らかなんですね。むしろそれは、憲法をひん曲げてアメリカの言うなりになっていま発展してきておる。国を守るというのは、憲法の前文から言っても、当然、世界の理性に訴える、国連その他の機関に訴える、外交交渉もある。あなたは何かストライキのようなことばかりおっしゃるが、ストライキばかりじゃない。いま言ったような外交交渉をあなた否認なさるのか。あらゆる方法があるでしょう。戦争だけ、武力だけが国を守るゆえんだというふうに狭く解釈なさる。あなたは、われわれが拡大解釈すると言うが、あなたが狭く解釈なさっておられる。それで他党を誹謗するというのは総理大臣としてとるべき態度じゃないですよ。反省をお願いしておる。
  274. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般的に、防衛論議をやるという場合に、防衛論議の場合の話の内容でございますから、そういう場合に、守ると言う場合はある程度の実力を行使して外敵の侵入を阻止すること、これを守ると防衛論議をやっているときの概念はできておると思うんです。  そうでなくて、外交交渉とか——これは伊達判決に書いてありましたね、不服従運動とか、あるいは抵抗運動とか、あるいは同盟罷業とか、そういういろんなものを駆使してやるんだというふうに伊達判決に書いてありました。私は、それを読んだときに、これで果たして守ると言うことができるだろうか。これは一種の抵抗運動だ、レジスタンスだ、そう思いました。そういう意味において、私は、防衛論議における守るということは、ある程度実力を行使して外敵の侵入を阻止する、これが守るという行為である、こういうふうに定義しておるものでございますから、一般の通念に従って私は申し上げたんです。しかし、社会党の皆さんがそのように非常に概念をお広げになって、そういう意味で守るという言葉を解釈されているとしますならば、私がまだ知らなかったことでありまして、遺憾の意を表する次第でございます。そういう解釈を持っているということを私は知らなかったので、遺憾の意を表する次第でございますと申し上げているんです。
  275. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 他党の理論を知らずして他党を批判するなんというのは、浅慮というか、軽率千万、もってのほかですよ。もう少し他党を非難なさる場合にはよく研究しておっしゃってください。いかがですか。
  276. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) しかし、やっぱり防衛論議をやっているときには、防衛論議における概念というのが通俗的にあると思うんです。私らは、そういう一般的、通俗的概念のもとでいろいろ論議をしておりますから、そういうふうに申し上げたんですが、そういう特殊的なお考えを持っておられるならば、これは私らにしてみれば勉強不足であったと思います。一般に、防衛論議をやっておるときの守るという概念は、これはやはり世界的に見ても、実力行使をもって外敵侵入を阻止する行為を守る、そういうことだろうと思うんです。外交交渉とか、あるいは国際会議とか、国際世論とか、そういうものは守る前のいろいろな一般的な、何と申しますか、周辺的なあるいは前提的な行為、予備的行為と言うとちょっと言葉は悪いんですが、前提的な行為じゃないか。しかし、一たんそういう武力侵入が起きるという場合に守るということはあるとわれわれは考えておったわけです。防衛という概念はそういう概念でできておる。ですから、防衛庁とか、自衛隊とか、守るという概念は、外国が日本に対して武力攻撃をした場合、これを阻止する、あるいは侵入を抑止する、そういう概念で守ると。防衛庁の防というのは、そういう意味で防が使われておる、そういうふうにわれわれは解釈しておるわけです。しかし、われわれの解釈がもし一般の解釈と間違っておるならば、これは研究を要しますが、私は間違っておるとは思わないのであります。しかし、社会党がそういうお考えでもし守るという言葉をお使いでしたら、私の勉強不足でありますから、それは遺憾の意を表します。
  277. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大変不満な答弁でありますけれども、他にまだ重要な問題がありますので、一応いまの点はこれでとどめておきます。  それから、五十八年の一月十八日、ワシントン・ポスト紙のエディター・アンド・ライターですか、編集長と記者との会見で、総理が、日本の防衛目的を三つの目標ですか、オブジェクティブという言葉を使っておりますが、を置いて、それを追求するという趣旨でおっしゃった。  一つは、日本の対ソ不沈空母化、二番目は、四海峡封鎖、あるいはコントロールという言葉を使っていらっしゃる。それから、シーレーン防衛、この三つを指摘したのですが、ワシントン・ポスト紙はたたみかけまして、それらは日本政府日本の防衛姿勢に対する使命として受け入れることを予想するかという質問をさらに総理にしたのでありますが、総理は、以前は日本行政当局者はその点をあいまいにしてきたが、私は全くはっきりしている、しかし、私はそれを宣言するつもりはないと答えた記事になっておりますが、そのとおりでしょうか。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、私の真意を伝えておりません。  私は、まず最初に申し上げたのは、日本の防衛というものは、日本の憲法を守り、そして専守防衛のもとに、そして非核三原則を守って行うものである、そういうことをはっきり言っておるわけです。  そしてその次に、いろいろ不沈空母とかなんとかという言葉も出ましたけれども、その言っておる文脈の主脈、主流というものは、まず防空をやる、それから海上防備を行う、それから本土に対する侵入を阻止する、そういう三つのカテゴリーのことを言ったんです。それで、その中で海峡のコントロールという言葉も使いました。その中の際立ったところを表へぱっぱっと出されたという印象を私は持っておるのであります。私は、やっぱり総合的に話をしまして、いま言った防空、それから海上防備、それから本土の防衛、そういうようなことで申し上げておるのであります。
  279. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 非核三原則を堅持するということはおっしゃったとしましても、その三つの目標ということをおっしゃったことは間違いないんでしょう。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三つの目標という意味は、防空と海上防備とそれから本土の侵入を阻止する、そういう三つのことを言っておるので、その中でバックファイアというのをワシントン・ポストのときにも言った、あるいは海峡コントロールという言葉が出た。だから、その中の一部の言葉としてそれが出て、主脈というものは、防空であり、海上防備であり、本土の侵入を阻止する、こういうことになっておるのであります。
  281. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 何か総理は非常に抽象的なことを言ってお逃げになるような気がするんですが、いまお話しした三つの目標に向かって今後の防衛力の整備が行われるということは間違いないんでしょうか。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、防空と海上防備と、それから本土に対する侵入阻止、こういう三つの目標に向かって防衛計画の大綱もできておると思っております。
  283. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 防衛力の整備大綱と総理がワシントン・ポストにおっしゃったこととは、大変違うわけですよね。防空といったって、バックファイアというものに対する、これを撃ち落とすとか、三海峡を実際問題として封鎖するとか、あなたのおっしゃったのは、すこぶる具体的な問題をおっしゃった。それは、防空には違いないけれども、それにしてもバックファイアというのはソ連の長距離爆撃機としていま現実にあるわけです。それから、三海峡封鎖、海峡の問題、シーレーンと言ったって、現実にいま大変な問題として目の前にあるわけです。アメリカはまた国防報告を見ましてもそれを強く日本に求めてきているわけです。そういう具体的な問題を抽象的に、防空とか、あるいは侵入阻止とかいうようなことで抽象化することは許されないわけです。総理のおっしゃったこういう使命というものを完成するためには、現在のペースでいくと二十一世紀に入らないと完成しないだろうというアメリカの防衛次官のフランシス・J・ウエストという人の言葉もあります。ワシントン・ポストのドン・オーベル・ドーファーという人の論評によりますと、今世紀いっぱいかかるという言葉がある。それから、たまたまきょうの質問に出ましたワトキンズ海軍作戦部長の談によりましても、シーレーンの目標を達成するため、日本は巨額の予算投入を求められるであろうということを言っております。総理は一体、そういう総理のバックファイア阻止とか、三海峡のコントロールとかいうことを整備するのは、いつごろまでにあなたは整備するというそういう構想を持っておっしゃったのでしょうか。また、どの程度のこれは経費がかかるというふうにお考えになっていらっしゃったのか。それとも、そんなことは全く考慮せずに、ただ強がりをおっしゃってアメリカの歓心を買ったというか、そういう趣旨でおっしゃったのか。その辺のところをはっきりとおっしゃっていただきたい。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本には力がないかというと、ないことはないと思うのです。バックファイアにいたしましても、侵入というその言葉を私使いましたが、侵入というのは英語で言った言葉はインフィルトレーションという言葉を言ったのです。そういう場合は領空を侵犯してくるときの話です。バックファイアが二百数十キロ前でロケットを撃つ場合は別です。しかし、インフィルトレーションで領空を侵犯して入ってくるというとさには、F15でも、ファントムでも、あるいはナイキでもやればやれるんです。ですから、できないということはない。しかし、大量に来るものについて、全部やれるかというと、まだそんな力はない。しかし、性能的に現在でもやればやれるんだということはここで申し上げたいのであります。あるいは海峡のコントロールにしても、機雷でやるという場合には機雷も用意されてはおります。しかし、完全にやれるというところまではまだいっていない。その点においては大いにまだ努力すべき点もある。あるいは潜水艦でやる場合もありますし、海上艦艇でやる場合もありますし、飛行機で、P3Cでやる場合もあります。だから、海峡のコントロールだって相当程度私はやれると思っておるんです。ただ、宗谷海峡のようなデリケートなところはまた多少ニュアンスも違うでしょう。そういうような関係で海峡コントロールができないと考えていることは間違いであります。そういうような防空、あるいは海上防備、あるいは領土の侵入を阻止する、そういうような能力を向上させていこうというので防衛計画の大綱ができておるわけで、これを着々と整備していこうというのがわれわれの方針であります。これが着々とある程度整備されていけばかなりの力がつくと私は思っております。  具体的には防衛庁から説明いたさせます。
  285. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま総理から御答弁がございました中に、防衛計画の大綱のできるだけ早期の達成ということがございました。このことに関しまして、総理から御指示をちょうだいをいたしておりまして、私どもは五十八年度予算政府原案の作成のときに、実は五六中業の初年度だということも含めまして努力をさせていただいた次第でございます。  ごく簡単に、これ、かいつまんで御報告させていただきますと、防空能力に対しましては、ただいま総理から御発言ございましたように、五六中業の達成期におきましては、F15あるいはその他の航空機、さらには侵入をいたしてまいりまするものに対する警戒といたしまして、新バッジシステムの新しい予算政府原案の中でつくり上げられておりまして、ただいま御審議をちょうだいいたしております。  なお、海峡防備につきましては、護衛艦、潜水艦その他これに必要な努力もそれぞれにこの予算でお願いをいたしておるわけでございます。  さらに、これも総理が御答弁いただきましたが、わが国に対する侵攻は、わが国は四面海に囲まれておりますので、着上陸阻止をまず第一の主眼といたしておりますが、これに対しましても、それぞれ詳しいことを申し上げませんが、五六中業完成時におきましては相当の能力を持ち得ると、こう考えております。  最後に、海峡防備につきましても同じようなことでございまして、結論から申し上げさしていただきますと、五六中業達成時におきましては、ただいま総理がおっしゃられました防衛計画の大綱の水準に相当程度、まだ必ずしもそれで十分と言い切れるかどうか別といたしまして、相当程度近づいてきて、わが国の防衛能力は強化される、いまよりも一段と強化されておるだろうと思います。ただし、あらゆる問題はすべて相互的な問題がございますから、侵攻の態様によって必ずしも満足いくかどうかは、それはまた別の問題だと、こう考えておる次第であります。
  286. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 海峡阻止もバックファイアもある程度できるというならば、もうこれ以上そんな無理な防衛力整備やる必要ないでしょう。総理は、この間の答弁では海峡阻止は専門家ほ聞くと三割程度しかないということを聞いておるということをおっしゃった。きょうはまた非常に強がりで、ある程度やれると豪語なさる。答弁がその日その日で非常に流動するというか変動するというか、もっと一貫したものを持っていただきたい。あなたは、それではいつごろまでにあなたの理想とするバックファイアの阻止とか、あるいはシーレーンの防衛とか、あるいは三海峡の封鎖というものをいつごろまでに完成できるというふうに見通しておっしゃったのか。また、それにはどの程度の経費がかかるというお見通しでおっしゃったのか。その点をお伺いしておるのです。
  287. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 海峡阻止につきまして三割程度という発言をしましたのは、これは大体いままでの国際的な戦略概念から言っておるので、海峡に侵入してくる敵潜水艦に対して三割ぐらいの打撃を与えれば、一応大体敵はもう入ることを断念してくる。それで通峡阻止の目的はある程度達せられる。三割できれば相当程度やれるので、一応の目的は達する水準に入る。そういうことを私は聞いておったのであります。ですから、そういう一応の海峡阻止の実力の程度というものについて大体専門家から聞いたことを申し上げた。百ぱい入ってくるのを百ぱいやる必要はないのだそうです。百ぱい入ってくるうち三十ぱいやれば、もう向こうは来なくなる。大体それがいままでの戦術でやっている上の常識だそうです。そういう意味でそれぐらいをやる力はどれぐらいでできるかということを私は私なりに考えてみたわけであります。  それから、どの程度いまの防衛計画の大綱をやったら目的が達せられるかということは、非常に技術的な話になりますので、これは防衛庁の政府委員から答弁させます。
  288. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 経費の点を伺ったんですよ。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 経費も同じように……
  290. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いやいや、経費の点お答えない。
  291. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ただいま防衛力の整備に関しては五六中業というものをお決めいただきまして、大綱の水準にできるだけ近づけようという努力を現在継続中でございます。そうした五六中業なり、あるいは大綱という水準が達成されれば、ただいま御議論がありましたような防空能力、シーレーン防衛能力を含めて相当現状に比して向上するであろうということをるる申し上げているわけですが、この経費ということになりますと、これは端的な例で申し上げますと五六中業で私どもが昨年の夏お決めいただいたときのめどという金額は、四兆四千から六千が現在の昭和五十八年から六十二年にかけての五年間の正面経費としていま言ったような能力向上のために必要であろうというような見積もりをいたしております。
  292. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、端的に言いますと、総理はあのワシントン・ポスト社にお述べになった御意見ですね、あれは結局五六中業を完成すればそれをもって足るというお気持ちでおっしゃったというんですか。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれの現在の努力目標は、防衛計画の大綱の水準に早く達するということであります。その一つの過程としていま五六中業というものがあるので、その第一段階である五六中業の達成に一生懸命努力している、こういうことでございます。
  294. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 時間だけたちますが、ワシントン・ポスト社であなたのお述べになったことは、防衛力の整備大綱を達成すれば足るという、そういうお気持ちでおっしゃったかどうかを伺っているんです。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛計画の大綱というものが頭にありました。それを達成すべくいまスタートを切った、これが達成されればかなりの力をつけることができる、そういうことが頭にあって申し上げたのです。
  296. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 瀬谷英行君の関連質疑を許します。瀬谷君。
  297. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いままでの御論議聞いておりますと、これはかなり強力な海軍力、空軍力を整備をしないと海峡封鎖とか、あるいはシーレーンの防衛とかいうことは不可能じゃないかというふうに常識的に思われるわけです。しかし、五六中業の大綱ということを言われましたが、一体そのためにはどれだけの海軍力を必要とするか、空軍力を必要とするかということになってくるんでありますけれども、いままでの総理答弁によると、対象は明らかにソビエトの極東海軍、あるいは空軍になるわけです。そうすると、極東海軍なり、あるいは空軍以上の力を持たないと三海峡封鎖などと言ってみてもできないことになってくると思うんでありますが、それだけの海上自衛隊、航空自衛隊というのを一体どれだけの金でもって持てるのか、金の点についてGNPの一%で済むのか済まないのか、向こうがふやしたら一体どうするのか、その点をお聞きしたいと思うんですが。
  298. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 最初に私どもが現在とっておりまする防衛の基本施策と申しますか、についてお答えをさしていただきたいと存じます。  私どもが現在とっておりますのは防衛計画の大綱に基づく発想でございまして、ことの中で明らかでございますように、わが方といたしましては小規模限定的な侵略に対して対処する、こういう発想で現在のわが国の国情、経済情勢、国の他の施策とのバランスなどを考えながら防衛力の整備を続けておるところでございます。それ以上の侵略が行われた場合にはどうするのかという御質問に対しましては、これは日米安保条約の作動を待つ、これが基本でございます。  なお、現在私といたしましては、五十一年に決定をいたしておりまする、これ閣議決定事項でございますが、国の国民総生産の一%、これをめどといたしておるわけでございますが、こういうGNP一%の問題については現在ただいまこの時点で、この一%の問題について結論を出さなきゃならぬということには考えておりません。したがって、もしこの問題につきまして、これから後のわが国の経済の成長、あるいは防衛力の整備というのはその年々の財政事情について概算要求いたすものでございますが、まだ五十九年予算なんかは考えてもおりません。現在五十八年の予算について御審議をいただいている時点でございます。何かそういうような事態が起こったときにどうするかという御質問であれば、それはその時点において改めて考えさしていただかなければなるまい、こう考えておる次第でございます。
  299. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 「有事における海上交通の安全確保と外国船舶について」という統一見解を出されましたけれども、この中に書いてあることを端的に言うと、わが国の生命線ともいえる海上交通の安全を確保する、そのためには外国船舶であっても重要な物資を輸入する場合にはそれを守らなきゃいかぬ、こういうことが書いてある。しかもその範囲はどうかというと、結局は太平洋からインド洋、あるいは中近東までまたがるわけですね。そうすると相当強力な海空軍を必要とするというふうに常識的に考えられますが、総理にその点をお伺いしたいと思うんです。
  300. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府委員から答弁させます。
  301. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) これも再三御答弁申し上げておりますが、シーレーン防衛に限らず、あらゆる作戦がそうでございますが、一〇〇%できるかということをわれわれ目標としているわけではございませんで、現在の大綱の水準というのは、そうした機能を欠落なく備えることによって、日米安保体制を踏まえて抑止しようということでございまして、私どもいまシーレーン防衛なり、海峡通峡阻止というものを、一隻も通さない、一隻の潜水艦も動かさないというふうなものをねらったわけじゃない、大綱の水準が達成されればそうした意味で抑止力のある効果的な防衛力ができ上がるであろうということで見積もっております。  なお、五六中業を達成いたしましても、海上自衛隊の作戦用航空機、あるいは航空自衛隊の作戦用航空機というものはまだ大綱の水準に達しておらない、そういう意味で先ほど来五六中業というのは大綱水準達成の一つの過程であるということを申し上げておりますが、当面この五年間で五六中業を滞りなく達成したいということでわれわれ努力をしている、こういうことでございます。
  302. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃ今度端的に総理にお伺いしますが、憲法第九条で持っちゃいけないということが書いてあります「陸海空軍その他の戦力」というのと、日本の自衛隊とは違うのか違わないのか、その点はどうですか。
  303. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法九条後段に示されておりまする「陸海空軍その他の」云々と書いてある陸海空軍というものと自衛隊はまるっきり違います。
  304. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 どこが違うんですか。
  305. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法の解釈論でございますから法制局長官に答弁させます。
  306. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) この問題はもう国会でたびたび論議されているところでございますが、先ほども申し上げましたように、憲法九条のもとにおいて自衛のため必要最小限度の実力を保持することを憲法が認めているかどうかという問題が基本的にあるわけでございます。この点については先ほど申し上げましたように、そういう実力を保持することは一切認めていないという解釈が主張されていることは事実でございますが、政府としては、もうかねて申し上げているとおり、憲法九条のもとにおいて、自衛のため必要最小限度の実力を保持することは禁止されていないという解釈をとっているわけであります。  そこで、現実の自衛隊についてでありますが、これは結局いま申し上げた自衛のため必要最小限度の実力に当たるかどうか、その問題に帰すると思います。そこで、自衛のため必要最小限度の実力というのが憲法上の限界でございますが、その限界いかんという問題にまた帰着すると思います。その点につきましても、結局そのときどきの国際情勢とか、科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面というものがあることは否定できませんけれども、その点については結局毎年度の予算とか、あるいは法律審議を通じて、最終的には国民の代表である国会において御判断になるほかはないというのが私ども見解であります。そして、現に自衛隊はそういう必要最小限度の実力として国会において御承認になっているものであるということになると思います。
  307. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 実力のないものが何で日米合同でもって演習するんですか。
  308. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) ちょっと、いまの御質問の趣旨がよくわかりませんでしたけれども、必要最小限度の実力を保持することは憲法において認められているというふうに先ほど申し上げたわけで、その実力の範囲内において必要なわが国防衛に当たる場合に、その実力の不足を補うために安保条約を通じて米国の力に頼るということは別に憲法九条においては矛盾していないと思います。
  309. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは衆議院でも強く論議されましたが、日本以外の有事で、日本に対する武力攻撃がいまだ行われざる段階でも、国籍不明の潜水艦によって日本船が攻撃される、緊迫しているというときには、米軍独自の海峡封鎖を認める場合もあるという政府見解はこれは総理自身も述べていらっしゃる。これは米軍日本の領海と公海部分のみならず、ソ連の領海をも封鎖することを容認するんでしょうね。そうでなければ軍事的に全く無意味だと思いますが、総理どうでしょう。——いや総理答弁だから。総理がおっしゃっていることを聞いているんだから、これはだめだ。御自身で答弁しておられるんだから、衆議院で。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは防衛局長
  311. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 私どもが海峡防備、通峡阻止ということを考える場合には、自衛隊が行う場合は、あくまでもわが国に対し武力攻撃があった際に、わが国に対して攻撃を加えている国の船舶の通峡を阻止するということでございまして、それ以外の場合にわが国がそういった実力行使をすることは全く考えておらない。ただいまお話しがありましたのに関連いたしまして、その場合に宗谷海峡のソ連領海というふうなお話がございましたが、私ども自衛隊としては、ソ連の領海についてそういった行動を行うことは一切考えておりません。
  312. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 自衛隊じゃない、米軍について聞いているんだ。それは全然そらしている。
  313. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先般、衆議院の方で三月八日にお出ししました政府見解は、海峡におきますアメリカの実力行使について日本が容認をするかどうかという御質問についてお答えしたものでございますが、ここで念頭に置いておりますのは、もちろん一般論といたしまして、海峡の公海部分におけるアメリカの実力行使の問題を念頭に置いての見解でございます。
  314. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これはまた不思議なことをおっしゃるものだね。アメリカが海峡封鎖する、それはしかし日本の領海と公海だけについて言うのであって、公海をちょっとソ連の方に近づいた、ソ連の領海については全然触れないんだと、こんな奇妙な軍事作戦があるだろうか。
  315. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御質問の政府見解の前提について、ちょっと御説明さしていただきたいと思いますが、この問題は、そもそも日本に隣接しておる国際海峡におきまして、アメリカがいわゆる通峡阻止という名前で呼ばれます実力行使を行う場合に、日本の了解——了解と申しますのは、同意とか容認とか、そういう意味の了解でございまして、テリトリアルシーの領海じゃございません。日本の了解なくしてできるかという御質問に端を発しまして、これに関連しての政府見解を申し述べたものでございまして、いわゆるアメリカの軍事作戦の範囲についてお答えしたものではございませんので、仮にアメリカの自衛権行使の一環としてのアメリカの実力行使というものが相手国の領海の中に及ぶかどうかということは、この統一見解では一切論じていないわけでございます。ここで申し上げておりますのは、要するに日本として重大な利益を持っております日本の領海に隣接しておる海峡、すなわち海峡の公海部分においてアメリカが実力を行使することに対して、日本としてどういうふうに考えるか、どういう態度をもって臨むかということについて申し述べたものでございまして、アメリカの軍事行動の範囲がどこまで広がるかということについて一切触れていない、そういうふうに御了解いただきたいと思います。
  316. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは総理自身が東中氏にも大出氏にも答えておられるので、これは日本有事でない、つまり日本への武力攻撃がないときに、たとえばヨーロッパでアメリカとソ連とがやっておる、そして日本アメリカの戦略に従って日本海を封鎖して、ソ連のウラジオに根拠地を持つ海軍が太平洋に出るエキシットをぴしゃっとやってしまうと、そういうことが許されるかどうかということを、イエスと言い得るかどうかをあなたがおっしゃったんじゃないんですか、どうですか。
  317. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前の御質問の場合は、いま条約局長が申されましたように、日本の隣接している海峡におきまして、アメリカ軍が海峡、公海の部分等に機雷を敷設したり、通峡阻止をやる行為について質問がありまして、それで私から、この間政府統一見解、あるいは条約局長答弁されましたようなことで申し述べました。それは、たとえば国籍不明の潜水艦によって日本の輸送船が被害甚大な撃沈を受けている等、日本に対する武力攻撃が緊迫していると思われるという、そういう場合に限って別に考えもあり得ると、そういう趣旨のことを申し述べたのです。したがって、わが国の防衛はあくまでも個別的自衛権、わが国の防衛のみに限定する、そして個別自衛権の範囲内でやるということでありまして、わが国の領土、領空、領海に対する保全、独立と平和の保持ということが武力によって侵害される緊迫性を持ってきている、そういう事態が前提になっておるわけです。そういう事態が前提にない中近東で起こったとか、あるいはNATOで起こったとかというようなことは、わが国の独立と平和を守るという——武力攻撃の緊迫性かないのでありますから、そういうことには該当しないと私は考えます。
  318. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それではちょっとはっきりお答え願いたいんですが、極東有事、あるいは中東有事、ヨーロッパ有事、この場合に、仮に日本船舶が国籍不明の潜水艦によって撃沈されたとしても、三海峡の公海部分において、アメリカの軍事行動に対してはイエスということはおっしゃらない、緊迫性かない、だからイエスとは言わないと、こうおっしゃるわけですな。——いやいや、総理に伺っている。
  319. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保条約の解釈の問題ですから。
  320. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いやいや、これはもう一条約局長の問題じゃない。
  321. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ちょっと、寺田委員の御質問の前提が必ずしも私ども理解に一致しないのではないかと思うんですけれども、御質問の一つは、わが国の安全と関係のない中東とか、ヨーロッパとかいう御例示がありましたが、そういう地域で戦争あるいは紛争が起こり、それにアメリカが対応しておる、そういうときに、アメリカ日本に隣接しておる海峡で何らかの軍事行動をとる、そういうことについて日本がそれを認めるか、容認するかという御質問については、政府の統一見解に述べておりますように、原則的には拒否する。すなわち、わが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合には判断の留保を必要とするけれども、それ以外の場合は原則的には拒否することとなるということは、政府の統一見解で明確に述べておりますところでございまして、いま総理のおっしゃられたのも、まさにそういう趣旨で御答弁になられたというふうに私も理解しております。  他方、そういうどこに紛争が起きているかということとは関係なく、統一見解の(二)の(2)に述べておりますように、「我が国に対する武力攻撃が非常に緊迫性をもっている場合」というのが、わが国としてアメリカのそういう行動を容認する場合の基本的な前提でございますので、そういう前提がなければ、当然日本としてはそういうアメリカの行動は容認しないと、こういうことになるわけでございます。
  322. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 少しも、私がお尋ねしたことはあなた方のお答えになったことと食い違っていないですよ。  それじゃ総理、その国籍不明の潜水艦で日本の船舶が撃沈されたというような緊迫した事態というのは、日本に対する武力攻撃があった場合と違うんですか、それとも一緒なんですか。どちらですか。
  323. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) わが国に対する武力攻撃が発生しました場合でありますれば、これは基本的にはわが国自身が個別自衛権を行使し得る事態でございますが、ここで述べております事態と申しますのは、そこに至らない事態である。すなわち、わが国に対する武力攻撃は発生していないけれども、しかしながら、現実の問題として、非常に極限の事態として、そういうわが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っておる場合ということでございますから、武力攻撃はまだ発生していない、しかしそういう武力攻撃が発生する可能性というものが非常に緊迫性を持っておる、そういう事態だというふうに御理解いただきたいと思います。
  324. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 はっきりしたのは、武力攻撃が発生した事態とは別な、武力攻撃発生の可能性のある事態というのがまた別にあるということが明らかになったわけですね、いまの答弁だと。それが可能性があるという段階で、三海峡をアメリカが封鎖をするということに対して、公海部分であれ、領海部分であれ、封鎖をするということに対して、ソ連がじっとそれを見て黙認しておるということは考えられないでしょう。総理、どうですか。
  325. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これはあくまでも統一見解に書いてございますように、「理論的な可能性の問題」——非常にケーススタディー的な御質問が衆議院の方でございまして、それに対して政府見解ということでお出ししましたものでございますから、具体的な国名を挙げて論ずることは必ずしも適当ではないと思いますが、いずれにいたしましても、基本的な前提は——これはアメリカが一方的に戦争をどこかで始めておるという前提での御質問かと思いますが、まあ私ども見解の基本的な前提と申しますのは、わが国以外におきまして侵略行為というものが発生をして、それに対してアメリカが自衛権を行使しておると、そういう事態であるということが基本的な前提でございます。そういうアメリカが自衛術権を行使する場合に、わが国として非常に利害といいますか、安全保障上その他海上交通の一般的な確保という面からわが国として非常に関心を有する、そういう特定の狭い水域でアメリカが軍事行動をとることを容認することがあるかどうかと、そういう御質問に対してのお答えでございますので、ひとつ、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  326. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いやいや、ソ連が黙視しているかどうかと聞いておるんです。そんなことは聞いていない。
  327. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ソ連とかなんとかいう具体的な国名を挙げて論ずることは、私は非常に適当でないと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、黙視するとかしないとかということではございませんで、そもそも一つの侵略ないし違法な武力攻撃というものがあって、それに対応してアメリカが軍事行動をとっておるということでございますから、そのアメリカが軍事行動をとっておる相手の国が黙視するとか黙視しないとかと、そういう立場にあるわけではないというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
  328. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、そんなことじゃない。答弁になっていない。  総理答弁を求めます。
  329. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはあくまで理論上の問題、仮定の問題なので、そういう御質問がありましたから、その理論上の解釈としてこう言われますということをまず申し上げているということを御理解いただきたいと思います。  それから、わが国は仮想敵国というものを持っておりません。したがいまして、どの国ということを名指ししてそういう非常事態の場合のことを申し上げることは適当ではないと思うんです。いまの御質問は、アメリカとソ連の関係についての御質問であったと思いますが、そのときにはアメリカが自衛権を発動して武力攻撃に対して自衛権発動として行為をしているときというふうに前提がなっております。そのアメリカの自衛権の発動に対してソ連がどういうふうに出てくるかということは、ソ連の国策が決めることでありまして、われわれがとやかく想像できる範囲のことではございません。
  330. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そんな常識に反することをこの国会で答弁したら無意味になりますよ。これは明らかに大出委員の質問も、日本の海峡防衛について、ソ連海軍力の太平洋進出を防ぐための米戦略の一環としてこれが細み込まれておるんだということで、それを前提にして、それで総理にお尋ねをしたんです。総理はそれに対して、国籍不明の潜水艦にやられている、ガソリンや灯油も不足して国民生活が逼迫するだろう、そういうときにはイエスと言う場合があるということをおっしゃっておるのでね、抽象的に言っているんじゃないんです。あくまでも三海峡封鎖に関連して言っている。だから、アメリカが三海峡封鎖のために軍事行動を起こしたら、ソ進が当然対応するだろうということは、常識でしょう。そういう常識を否定して答弁したんでは意味がないですよ、この国会答弁という。
  331. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府の統一見解答弁の中でも、「理論的な可能性の問題として」と断ってわざわざ言っているはずでございます。そういう意味であるというふうに御理解を願いたいと思うのであります。  いまの寺田さんの御質問は、いまのような該当する事案のもとに、要するに日本に対する武力攻撃が切迫している、そういう場合に、アメリカ能が通峡阻止等のために海峡で行動を起こす、そういう場合に、イエスと言うかノーと言うかと、そういう質問であるわけですよね。その場合には、いままでは原則としてノーであると。しかし、いまのような武力攻撃が緊迫しているという前提条件がある場合には、別の考慮もあり得る。ということは、イエスもあればノーもあり得るということになるんだろうと思います、そのときは。その場合に、ソ連がどういうふうに出てくるかということは、これはアメリカが自衛権の発動としてそれをやっているわけですから、もし万一われわれがそれを認めるという場合には、安保条約やら国連の精神に基づいてすべてわれわれは行動しなければならぬわけでございます。  そういう安保条約、あるいは憲法、あるいは国連憲章の精神に基づいてそれを行うという場合に、ソ連がどういうふうに反応するかという御質問でございますが、私らはソ連という言葉は使いたくありませんが、御質問がそういうふうになっておりますから、ソ連という言葉を使いますが、そういう場合に、どういうふうに反応するかということは、ソ連が国策で決めることです。アメリカの自衛権の発動に対してソ連がどういうふうに出てくるかというアメリカとソ連の関係であると考えておるわけです。
  332. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 納得いきません、ソ連がどう対応するかはソ連が考えることだなんて。当然それは予想しておっしゃらなきゃいかぬ。答弁になってない。
  333. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もう一遍質問をしてください。私が聞き間違えていればもう一遍やります。
  334. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 時間があれですが、もう一遍言いますがね。  アメリカがわが海峡で軍事行動を起こす、それをイエスと言う場合があると。その場合に、ソ連が当然それに対する対応をするということを考えずして、そういう重大なことをお決しになるのかと言っているんです。
  335. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん、日本が隣接している海峡につきましては、それはわれわれは日本の本土防衛、列島防衛というものが主でございますから、しかも、いま申し上げましたように、わが国を守るために、武力侵入の危険性が出てくる切迫した状態ということが前提になっておりますから、関係国がどういう行動に出るであろうかということは、もちろんよく考えて慎重にやらなければならぬことであると、そう思っております。
  336. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 端的に聞きましょう。  アメリカが通峡阻止をしたときには、当然それはソ連の艦隊を太平洋の方へ出さないためでしょう。ですから、それは当然ソ連の反撃をこうむるでしょうといって伺っているんですよ。
  337. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは一種のケーススタディーのような話でありまして、寺田さんがおっしゃるようなケースもあり得るでしょう。しかしそうでないケースもあり得ると思います、国際情勢は、大西洋から、ヨーロッパから、中国から全部関連しているわけでございますから。われわれが前に見た経験でも、キューバの封鎖のケースのような場合がございました。あわやというときもありたけれども自制したということもあります。そういうようなこともありますから、これはいまグローバルに物が動いているという点もなきにしもあらずですから、したがって、その点についてはいろいろな対応が考えられると申し上げられます。
  338. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 しかし、ソ連が手をつかねて——よその地域で米ソが戦っているというんでしょう。そのときにアメリカが三海峡で軍事行動をとったときに、ソ連がじっと手をつかねているということは考えられないでしょう。あなたは、ソ連の反攻がある場合もあるでしょうとおっしゃる。その場合には、当然ソ連の反攻があった場合には、日本の領海内の米軍に対するソ連の攻撃で米ソが戦うことになるでしょう。これを御否定にはならぬでしょう。
  339. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれは、憲法及びわが国の防衛の本旨にのっとって、専守防衛、個別的自衛権、そういうような考えに立って終始行動をいたす予定でございます。そういう点については、日本ができるだけ戦禍に巻き込まれないように日本を戦場にしないということが、われわれの防衛の主眼でございますから、そういう精神に基づいてわれわれは行動するつもりです。
  340. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう抽象論を伺っているんじゃないんです。  いまのアメリカがわが海峡封鎖のために軍事行動を起こした場合には、ソ連が対応すると。そうすれば当然、日本の領海内にいるアメリカの艦船に対するソ連の攻撃があり得るでしょうと言っているんです。
  341. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、そういう場合にはソ連が、クレムリンが何を考えるか。これはNATOの方もあるでしょうし、中近東の方面もあるでしょうし、中国の動静もあるでしょう。そういう意味において、クレムリンは全世界を見渡して判定をするのであって、これがどういうふうに動くかということは、いまは予断はできないと思っておるわけです。
  342. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 答弁になってない。あり得るかどうかと伺っているんです。  時間がどんどん過ぎていくんですからね。あり得るかどうかと伺っているんですから、あり得ないならあり得ない、あり得るならあり得るとおっしゃってください。
  343. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) お立ちになって発言してください。
  344. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 じゃ、あり得るかどうかについて返事をさせてください。
  345. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あり得るかどうかという御質問なんですが、それはさっき申し上げましたように、そういう場面にあるクレムリンの首脳部がどういうふうに判定するかということなのであって、それはいまわれわれが予断はできないわけであります。予断しろということは越権のさたであります。それはクレムリンが主体的に自国の利益やら世界的にお考えになることでありまして、われわれがここで想像たくましゅうして、ああだこうだと言ったって、それは無責任なことであります。やっぱりその国が自分のこととして御判断をなさる、選択をなさることであります。  しかし、日本の場合にはあくまで、申し上げましたように、日本に対する武力攻撃が切迫しているという状態のもとにどういう態度をとるか。われわれはわれわれの態度だけを真剣に考えておるべき問題で、それには日本を戦場にしないように、戦争に巻き込まれないようにという考慮を最大限に置いてわれわれとしては判定をすると、しかし、一方において、クレムリンがアメリカのそのような行動に対してどういうふうに出るかということは、クレムリン側の利益やら総合的判断に基づいて御判断なさるであろう。これ以上言うことはもう越権であるだろうと私は思うのであります。
  346. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなたは詭弁を言う名人だというふうに私は見ているんだけれども、あなた自身が武力攻撃が逼迫しているという前提に立っているじゃありませんか。逼迫しているときに、米軍がソ連に対する軍事行動をとったのに、ソ連がじっと見ているだろう、クレムリンの考えることだという、そんな非常識な考え日本の防衛政策はお立てになるんでしょうか。
  347. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は慎重を要する問題なのでございます。事、人の国に関する問題については軽々に発言してはならない。これは日本国憲法の平和精神からわれわれはそういうふうに統制を受けている、規律を受けていると、そう思っておるのであります。
  348. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 国家の大事を論ずるのに、あなたのような詭弁を弄して、ソ連の考えだから自分にはわからぬというようなことで、一体相手方がどういう行動をとるかということを想定してなければ、あなたのおっしゃる防衛政策も立たないでしょう。どうなるかわかりません、それはソ連のお考えですというようなことで、あなたは防衛政策をお立てになるのか、それとも相手がどう出るだろうということを予想してお立てになるのか、どちらですか。
  349. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは防衛庁当局がいろいろそういう点もその場合については考えているだろうと思います。私でもそれは考えることは考えます。どういう判定になるかということは、そのときの情勢でなければわかりません。しかし事、外国は関する場合については、私の発言というものは非常に慎重でなければならぬ、それが平和憲法を持っておる日本総理大臣のポジションであると、そういうふうに考えて申し上げているわけでございます。
  350. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もう何というか、論外の答弁としか考えられない。  じゃ、いいですか。あなたは、そういうイエスという場合は、大変重大な段階だから、国民の世論に聞くとか議会筋の意見を聞くとかいうようなことをおっしゃっている。  私はなぜこんなことを執拗にお尋ねするかというと、アメリカが軍事行動をとれば、ソ連がそれに対する反撃をすることはもう理の当然だと見ておる。じっと手をつかねてソ連がそれを傍観しているというようなことは常識上あり得ない。だから、それをアメリカがやれば、日本の領海内にいるアメリカの艦船にソ連が攻撃を加えるでしょう。だから、かつて塩田防衛局長でも、それは日本の運命を決するようなことだと。それは日本の自衛隊がやる場合ですよ。しかし、アメリカがやったって一緒じゃないですか。アメリカがもしも攻撃を受けたら、それはすぐ安保条約第五条の事態になるでしょう。これはお認めになるでしょう。どうですか。
  351. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 仮にも相手国がわが国を、ただいま委員御指摘のような理由を根拠としてわが国を攻撃するというととがあれば、それはほかならぬ侵略の拡大でございまして……
  352. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 わが国じゃない、領海内にいるアメリカの艦船についてですよ。
  353. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) アメリカの艦船でございましても、これは日本の領域内でございますから、当然のことながら、わが国に対する武力攻撃でありますし、これは安保条約第五条の事態ということでございます。
  354. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ですから、そういう事態になるということを一体イエスというのをだれが決定しますか。総理、あなたがお答えになったんだから。
  355. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはいま申し上げたわれわれの御答弁と申しますのは、日本に対する武力攻撃が緊迫しているという前提のもとに、海峡においてアメリカが自衛権を発動して、しかも公海の上において自衛権を発動して、そうして通峡阻止とかそういう行動をとった場合に関するわれわれのイエス・オア・ノーの質問に対して御答弁を申し上げているんであって、日本の領海におる日本の施設、区域、あるいは領海の中に入っておるアメリカの、同盟国の艦船に対して武力攻撃が及ぶという場合は、おのずから別個のケースでありまして、それはそのケースとして処理しなければならぬと、これは明白であります。
  356. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総理ね、あなたは詭弁を弄されるが、一体アメリカの艦船が海峡で公海上で通峡阻止の軍事行動をとる、それに対してソ連が黙って見ている、天下泰平だというんだったら、何も非常に重大だから議会筋の意見を聞くとか、国民の意見を聞くなんという必要もないじゃないですか、そんな平穏ならば。あなたの言うことはすべて矛盾しておる。
  357. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) このイエスとかノーという答弁をするというときには、やはり国民の世論の動向とか国情をよく考えて判定すべきです。また日本の行為が全世界的にどういう影響を及ぼすかという将来もよくおもんばかって判定すべきであります。政府が独断で何でも物を決めていいという問題ではございません。
  358. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 だから、それは非常に重大だからあなたはそういうことをおっしゃるんでしょう。ソ連が黙って見て天下泰平だというような状態じゃないんですよ、日本に本拠地を持っている米艦が通峡阻止をするんですからね。ソ連がそれに対して反撃をする大変危険な段階。そうすれば、いま条約局長が言ったようにすぐ安保条約の五条の事態になるんです。日本が戦争に巻き込まれるんです。だからあなたは重大だとおっしゃるんでしょう。どうなんですか。
  359. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままでのお話はケーススタディーの話として限定して話したわけです。ですから、日本有事というものが前提にありまして、有事という以前の緊迫した事態というものが前提にありまして、そうして公海におけるアメリカの自衛権の発動という場合が論ぜられておるわけであります。その場合にイエスかノーかという場合には、国民の世論の動向とか、あるいはさまざまなことを判断してやる。しかも、まず第一に、絶対アメリカ側は日本に対して同意を求めなければならぬということと、日本をできるだけ紛争に介入せしめないように、日本を戦争の中に巻き込まないようにするという努力を次に最大限考えなければならぬ。そういう判定の上に立って、しかも国民の世論の動向やらその他を考えて判定をすると、そういうことを申し上げておる。  今度は領海内に起きたという場合、これはまた別のケースになるので、その場合には、その場合としての憲法並びに自衛隊法やら安保条約の規定が発動して動いてくる、そういうことになるわけです。
  360. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 公海だけで行動するわけじゃありませんよ、アメリカの艦船は。またアメリカの航空機もたとえばF16は日本の三沢から出撃するんですよ。だから、公海にいる間だけ戦闘が起きて、領海に入ったら戦闘がぴたっとやまるというようなそんな非常識なものじゃない。総理はすべてそういう点を何か意図的にごまかされて答弁なさるけれども日本の領海において、あるいは日本の航空基地においてソ連の攻撃を受ける事態に至るそういう重大な段階だから、あなたは慎重にやろうとおっしゃるんでしょう。何で慎重にやるんですか。
  361. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 寺田さんは名裁判官として法を守ってこられたわれわれの大先輩でありますが、やはり法の解釈というものは厳格、厳正でなければならぬ。そういう意味において余りルーズな解釈はしてはならぬと私は心に銘じておるわけです。したがって、国際法を守るということ、それからいま言った日本の憲法以下の法体系を守るということ、そういう場合についてきちんきちんと仕分けをしてわれわれは判定していかなければならぬと肝に銘じておるところなんであります。
  362. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 われわれは、そういう事態というものは日本安保条約第五条の事態に追い込む、したがって、それは大変重大な事態だと考えるのであります。したがって、そういう場合には、必ず議会に、あなたがイエスと言う場合、それを諮らなければいけない。というのは、先ほどもお話ししたように、当然それはソ連の反攻を招く。したがって、安保条約五条の事態にそれは必ず波及する。だから私は、当然それは事前に議会に諮って決しなければいけないと。あなたは議会筋とおっしゃる、あるいは国民世論とおっしゃる。そんなあいまいなものではいかぬ。一体議会筋とは何のことか。議会のボスか。それじゃいけないんで、慎重な討議を議会でやって初めてイエスと言うべきだと私は思うんですが、あなたはどうですか。
  363. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはそのときの状況によると思います。自衛隊法におきましても、国会が開かれていない場合には緊急出動をやりまして、後から国会の承認を求める、そういう事後承認という制度もございます。非常に事態が緊迫しておるという、そういう状況でございます。そういう状況のもとにおいてできるだけ議会の御意向を尊重するということは政府として考えなきゃならぬことだと思います。  そういうようなそのときの状況によってやるべきであります。ですから国会開会中もありますし、閉会中もありますし、しかし、議会筋と私が言いましたのは、議会を構成している各政党の大体のお考えを聞いてみるなり、そんたくするなりして、国民を代表する方々の御意思を自分でよく判定してみる。あるいは日本のジャーナリズム、あるいは日本国民の全般の世論がどういうふうに動いているかということも見る必要があります。これは主権者でありますから、主権者の動向を把握するということは非常に重要でございます。ですから、そういう配慮を持って慎重にやるということを申し上げておるのでありまして、そのときの情勢によって最善を尽くしていくということであろうと思います。
  364. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは納得できません。  防衛出動のときは、総理も言われたように、議会の事前の了承が要ります。それから治安出動といえどもやはり一緒です。ただ、間に合わないときには事後に了承を得よというだけであって、先ほどの実際上イエスという場合、これは当然安保条約五条の事態が発生することは決まり切っておる。常識上ですよ。それを状況によるというようなことで、国民世論であるとか議会筋、各党の領袖に相談をするというんですか、それは私は賛成できない。どうしてもそれは国会——あなたは国民世論とおっしゃるが、やはり第一義的に国民から委託されておるのは国会なんですよ。国会の了承を得ずしてそんな天下国家の大事をあなただけでイエスと言うべきじゃないと私は思います。もう一遍軍ねて。
  365. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、できるだけ国会の御意向を尊重してやるというのは当然のことであると思うんです。しかし、議会が開かれてない休会中、閉会中のこともありますし、千差万別だろうと思うんです。ですから、そのときの事態に応じて最善を尽くしていく。そして議会筋ということを私申し上げましたのは、やはり閉会中のことも考え、またそのときの事態の緊迫性も考え、そして最大限に最善を尽くしていきたいと、そういう意味で持たしておるわけであります。
  366. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは、あなたの御答弁をさらに敷衍いたしますと、議会開会中ならば当然国会に諮るとおっしゃるんですか。
  367. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 閉会中よりも国会の御意向は聞きやすい状況にあると思います。しかし、その場合におきましても、本会議で採決を求めるのか、あるいは各党領袖にお集まりいただいて事態をお話しして御理解をいただくのか、あるいは議長さんにどういうふうにその中でお願いするのか、いろいろ事態はあり得ると思うんです。そういう意味におきまして、その場合におきましても、最大限国会側の意向を尊重するという立場は堅持してまいらなきゃならぬと思っております。
  368. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 閉会中といえども臨時国会を召集する道があるでしょう。
  369. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは間に合わぬ場合が多いんじゃないかと思います。やっぱり召集手続に時間がかかりますし、いろんな選挙やら構成もございますし、そういう武力攻撃が切迫しているという事態のもとに間に合わぬ場合もあるんではないかと思います。
  370. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 とんでもないことですよ。いま民主国家の憲法を見てごらんなさい。これは日本の憲法は、こういうことを予想してないから宣戦の布告なんというものを規定しておらないんですけれども、国家の運命を決するようなことは、宣戦の布告であれ、戦闘状態の確認であれ、すべて各国の憲法は国会にその権限をゆだねているわけですよね。アメリカしかり、それからドイツしかり、フランスしかり、そうです。だから私は、あなたのおっしゃるような、もうともかく国を守るのは軍事力だけだ、バックファイア阻止だ、シーレーンをやられるというふうなタカ派の方が、そういう国家の大事をあなた方だけの御意思で決定されては困るわけですよ。だから私は国会を開いてそれを決してくれと言っているんです。どうです。
  371. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会に関する限りは、最大限国会の御意向を考えてやらなきゃいかぬと思っております。ただ、国会が開かれてない閉会中の場合もございますし、そういう場合に緊急召集するのに、ある程度、少なくとも三日ぐらいは時間がかかるんじゃないでしょうか。いままで一番早く手続をとってやった場合でも、少なくともいままでは一週間ぐらいは普通とっておりましたですね。そういういろんな点を考えてみて、緊急措置としていろいろやるにしても、やっぱり三日ぐらいはかかります、議会の構成から全部やりますから。そういう意味におきまして、そういう緊迫性のもとにそれで間に合うかどうかということもございます。したがいまして、その点については、国会筋の御意向を最大限に尊重する手続をとって考えたいと、そう申し上げて、これは誠実に守っていきたいと思うところであります。
  372. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 自衛隊が防衛出動する場合は、御承知のように武力攻撃が発生したときなんでしょうね。いかがですか。
  373. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 自衛隊法第七十六条によりまして、防衛出動の下令というのは、わが国に対する武力攻撃があった場合、もしくはおそれのある場合を含めて防衛出動の下令ができるようになっております。
  374. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただ、その場合は国会の同意を得ることが必須条件になっていますね。それがいとまのない場合には事後に承認を得よと、でなきゃやめちゃえ、承認がなけりゃやめちゃえというその担保がある。しかし、あなたの言うイエスの場合は、戦争に突入してしまう結果が起きても、あなたの一存では、いま国会のできるだけ意見を聞くということをおっしゃるけれども、国会の意見を聞いてやりますというところまでおっしゃらない。それが私は危険だから、あくまでも国会の了承を得なさいと。事後においても了承を得れば、これは本当はいけないけれども、まだないよりはましだ。だから私は、国会の意思に従って行動してほしいということをお尋ねしておるんです。
  375. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その御要望はできるだけ尊重して実行いたしたいと思います。
  376. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 アメリカの世界戦略というのは、アメリカの国防報告、あるいは軍事情勢報告等を読みますと、これは集団的な防衛の中に自分を置いて、これは欧州有事ですか、ワルソー軍とNATOが対決する場合には、どうしてもその同盟国の援助がなければ戦略が行えないと。日本の場合は、日本の自衛隊の協力が不可欠の条件であるということを言っているわけです。そういう集団的な防衛体制をもってアメリカ日本にそれを迫り、そして武器の共通性といいますか、そういうものも考え、軍事演習も絶えず行っておる。そういう状態のときに、極東有事あるいは中東有事の場合に、日本が武力攻撃を受けない、あなたの言う緊迫性もない、その前段階もない場合に、本当に中立を守れますか。
  377. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん、わが国に対する武力攻撃の発生により、われわれが自衛権を発動して憲法並びに自衛隊法の命ずるところによって行動する、それ以外の行動はとれないと思います。
  378. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後になりましたが、武器技術供与の問題で、これは武器にまで及ぼさないという点は、山中通産大臣の大変平和に対する情熱といいますか、信念といいますか、それで……
  379. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 寺田君、時間が参りました。
  380. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 はい。外務当局の武器にまで及ぼそうというその意図をようやく食いとめたといいますか、私はそういう印象を持つんですが、アメリカの国防報告によりますと——これはことしのですよ。八四年以降の財政年度、フィスカルイヤーの国防報告の中に、「しっかりした兵器共同計画を日本との間に設けることを期待している。」と書いてありますが、これは何を意味するのか、またこういうアメリカの強い要求や外務省の解釈等を考えますと、将来にわたって武器の供与はしないという中曽根内閣の方針というのは、十分これを守り通せるでしょうか、どうでしょうか、この問題についてお答え願いたい。
  381. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般来国会で申し上げておりまするわが方の個別的自衛権ということを中心にして、そして憲法の範囲内で必要最小限の防衛力でわが国の防衛を全うする。そして安保条約を法的、効果的に発動していく。そういう基本方針はあくまで厳守いたしますし、厳守できると確信しております。
  382. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 この解釈の個題が残っておりますが、答弁が。国防報告の文言の解釈が。
  383. 北村汎

    政府委員北村汎君) 先生御指摘の米国防報告の中で武器技術の面について言及されておりますところで、私どもが読んでおります限り、これは技術の両面交通というものを今回可能にしたというところが非常に強調されておるわけでございまして、そうしてそれが今後日本との間で協力関係を持つというところで……
  384. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 「兵器共同計画」とある。
  385. 北村汎

    政府委員北村汎君) 共同計画といいましても、これはあれでございます。研究開発とか、そういうようなところは向こうの期待の中にあるかもしれません。しかし、これは向こうの国防報告の中でアメリカ側が一種の期待も含めて書いておるところでございまして、私どもといたしましては先ほどから総理が御答弁なさいましたように、安保条約の効果的な運用を図るために必要な限りにおいて、武器技術の対米供与というものを決定した次第でございます。
  386. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で寺田熊雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  387. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、太田淳夫君の総括質疑を行います。太田君。
  388. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは最初に総理にお尋ねしたいんですが、これは衆議院総選挙に関することでございますけれども、自民党の中でもいろんな論議があるようでございますし、昨日はまた元首相の福田さんともいろいろとお話をされたそうでございますが、福田さんは衆参ダブル選挙は反対である、こういう意思表明をされたようでございますが、総理はこの衆参ダブル選挙を念頭に置いていらっしゃるわけでございましょうか。
  389. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 解散のことは目下考えておりません。
  390. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは二点目ですが、せんだって二階堂特使が訪中をされまして、非常に中国首脳との間の密度の濃い会談をされてきたわけでございますけれども総理としまして今後の日中関係の構築をどのようにお考えでございましょうか。    〔委員長退席、理事長谷川信君着席〕
  391. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日中関係におきましては、友好協力それから互恵平等、長期安定、こういう三つの原則でさらに日中関係をより緊密化し、日中友好親善の実を上げていくように努力してまいりたいと考えております。
  392. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 特に、特使に対しまして趙首相から中曽根首相に対する訪中が要請があったというふうに聞いておりますが、総理はどのように受けとめてみえますか。
  393. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 二階堂特使を通じまして訪中の御要請がありまして感謝しておるところでございます。ただ、非常にいま政治に忙殺されておりまして、ごらんのような状態でございますので、いま中国へ伺うということはなかなかできない状態でございまして、折を見て外交日程を打ち合わせしまして参りたいと思っております。
  394. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 総理は今回のOPECの合意につきましてどのように受けとめておみえになりますか。
  395. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく一応まとまったことは結構だと思います。一バレル二十九ドル、千七百五十万バレルですか、そういうような形でともかくまとまりましたことは非常にOPECのためにも喜ばしいことであるし、世界経済のためにも安定化をもたらすことであると思っております。
  396. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ところで、六月にイランの使節団の来日が予定されているようですが、具体的な安件は何でしょうか、外務省から。
  397. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 新聞報道を私も見ましたが、正式にはまだ何も聞いておりません。
  398. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 総理はかねがね中近東には友人が多いということをおっしゃっておりますけれども、今回のこのイランの使節団が報道されておりますけれども、中近東のいろんな面の緊張という問題がいろいろございますけれども総理がイラン・イラク戦争を初めとしまして、日本がやはり先進国の一員としてこの際いろいろな緊張緩和を図るためのリーダーシップをとるべきじゃないかと、このように私思いますが、その点いかがお考えでしょうか。
  399. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれも世界平和には非常な重大関心を持っておりますし、中東和平の推進につきましてはわれわれもできるだけ貢献申し上げたいと思っています。特に現在の問題といたしましては、レバノンにおけるイスラエル軍の進駐の始末の問題、それからアラブ側が統一的な見解をまとめましたフェズ憲章とレーガン提案との調整の問題、こういう問題が世界の運命を支配するぐらいの重大な問題であります。さらに、イランとイラクとの戦争を一日も早く終結させて和平を回復するということ、これも世界平和と両国のために大事なことでございまして、これらにつきましても重大関心を持ちまして、もしわれわれでお役に立つことがあったら努力してまいりたいと思っております。
  400. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、エンタープライズの問題でございます。これは同僚委員からも質問がございましたけれども、この三月二十一日からいよいよ寄港するわけでございますけれども総理にお聞きいたしたいことは、なぜこの時期に佐世保に寄港するのかということですね。このエンタープライズは当然核装備をしているということは、もうこれはあらゆる面からも常識となっているわけでございますし、非核三原則のなし崩し、形骸化を図っているんじゃないかという国民の不安、不信というものがありますけれども総理はこの点についてどのようにお考えでしょうか。
  401. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカの空母エンタープライズは、米韓のチームスピリットの演習に参加をして、日本には佐世保で将兵の休養をとる、こういう目的で寄港をいたすわけであります。
  402. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それから、今回のこの寄港を契機にしまして、エンタープライズ日本への寄港、それが日常化してくるんじゃないか、こういう心配もあるんですが、その点はどうでしょうか。
  403. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ、これは将兵の休養といったことが中心で寄港ということはあり得るわけでありますが、いまおっしゃるように、頻繁といいますか、そういう形で寄港というふうなことは私は考えられないんじゃないか、そういうふうに思っております。
  404. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 しかし、米国防報告では、日本、韓国を対ソ第一線とする、そういう前進戦力としての配備構想を掲げているわけでございますし、横須賀ミッドウェー佐世保エンタープライズ、これを米国の対ソ戦略の重要拠点、根拠地にしよう、このようにしているんじゃないかと私ども思っておりますが、その点はどのように判断されておりますか。
  405. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、やはりエンタープライズの寄港は、そのやっぱり大きい意味は日米安保条約のいわゆる効果的な運用を図っていく、そういうことが一つの大きな背景であると思います。もちろん、エンタープライズも演習等に出動して、その間日本寄港地にしておりますので、われわれ安保条約の趣旨から見て、これを受け入れるということは当然であろうと思います。そういう形でわれわれは受け入れて、そして、目的としては主として将兵の保養というのがその目的になっておるわけであります。
  406. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、もしもエンタープライズ佐世保母港化という可能性がアメリカから求められてきたときには、政府はどう対応するんですか、これ認めざるを得なくなりますな。
  407. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは法律的には母港という意味がはっきりしないわけでありますが、われわれとしてはいわゆる安保条約の装備の重大な変更といったような形の母港というものは、アメリカとしてもいま求めておるわけではないし、そういう際には日本に対するもちろん事前協議の対象となるわけでございますから、現在そういう状況にはないと判断をしております。
  408. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうすると、アメリカが近く太平洋方面に配備を予定しておりますのは、巡航ミサイルトマホーク積載の戦艦ニュージャージー、あるいは最新鋭の原子力空母のカール・ビンソン、これが予定されているわけですけれども、これは日本への寄港の要請ということは当然考えられるわけでございますが、日本政府は当然これは拒否すべきだと私ども思いますが、その点いかがですか。
  409. 北村汎

    政府委員北村汎君) ただいま御指摘のカール・ビンソンであるとか、あるいはニュージャージーのわが国への寄港の可能性につきましては、いまのところ米国の政府から何らそういう通報はございません。仮に、これら艦船がわが国に実際に寄港するような場合につきましては、それは日米の安保条約、それからその関連取り決めというものを踏まえまして、政府としては対処する所存でございます。
  410. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 こういった米海軍の第一線の戦力がこれから日本にしばしば寄港をするということになりますと、F15の三沢配備決定などもございますし、日本がいよいよ対ソ戦略前進基地として位置づけられることは間違いない、こう思うわけです。総理は不沈空母というのは形容詞だということをおっしゃっておりましたけれども、そうなりますと、文字どおりこれは事実となってあらわれてくる、このように思うわけです。  総理は、このように日本列島が米軍の対ソ戦略の重要拠点になっていく、あるいは米ソ核戦略のこれは接点、そうなってくることをどのようにお考えになりますか。
  411. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あくまでわが国はわが憲法及び安保条約の範囲内におきまして、いかなる事態がありましてもこの範囲を逸脱することなく、個別的自衛権の範囲内で行動する考え方でおります。
  412. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ソ連の極東へのSS20の配備、あるいは北方領土へのミグ21の配備等が言われておりますけれども、これに対抗しての、これは米国のアジアにおける対ソ核戦略の強化のあらわれじゃないかと思うんです。最近、このように日本を中心として、いまアジアにおいて核軍拡競争が一段と激しくなっているんじゃないか、このように思うわけですが、この問題は日本にとって非常に大事な問題だと思います。いまアジアにおきまして、今日の米ソの核軍拡、この一つの争い、これについてどのようにお考えになりますか。
  413. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 軍拡競争をあくまで抑止、これを鎮静化せしめまして、そして世界の緊張を緩和していくということは非常に重要な問題であると思っています。われわれもその精神に沿いまして、今後とも努力してまいりたいと思っております。
  414. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そこで、こういった米ソ間のアジアにおける核軍拡競争、これに対しましてやっぱり総理として一つのアクションを私は起こす必要があるんじゃないかと思うんですね。サミット等もございますし、このアジアにおける米ソ間の核軍縮、あるいは兵力削減交渉、そういったものをやはり総理として提案されるお考えはございませんか。
  415. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、何といっても最近の関心事はソ連のSS20でございまして、INFのヨーロッパにおける交渉がどういうふうに推移するか重大な関心を持っておりますが、アメリカ側は、これは世界的規模において解決すべきで、アジアの犠牲において解決さるべきではない、その立場はあくまで堅持するという考え方をアメリカは持っておるようでございますが、これは当然の考え方でございまして、その考え方をあくまで堅持するようにわれわれはアメリカと連絡してやっていきたいと思いますし、さらにやはり、大きいところのSTART、戦略兵器削減交渉が一日も速やかに緒について実効性を上げるところまでいくように、われわれは間接的ではございますけれども、努力してまいらなきゃならぬと思っております。
  416. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 きょう、外務大臣とマンスフィールド米大使とが会談をされたようですけれども、その点の話題はどうなりましたか。
  417. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 本日の十二時過ぎから約一時間にわたりまして、アメリカのマンスフィールド大使を招致いたしまして、これまでしばしば国会で問題になりました、いわゆる核の持ち込みの問題についてアメリカ側に対して日本考え方を説明をいたしまして、アメリカとしてのこれに対する考え方を聞いたわけでございます。同時にまた、もう一つは、先ほど総理答弁をいたしましたが、INF交渉が始まっております。その中にあって、日本としてはこれまでのゼロオプションを支持すると。同時に、またこのINF交渉が解決するに当たっては、あくまでもグローバルな形で交渉が進めなければならないし、極東が犠牲になるということは、日本としてはとうてい受け入れるわけにはいかないという日本の立場も主張いたしまして、アメリカはこれを支持したわけでございますが、核の問題につきましては、マンスフィールド大使につきまして、最近のF16の三沢配備であるとか、あるいはエンタープライズの寄港ということも含めまして、この地域における今後の米軍の種々の活動との関連で、日本に核兵器が持ち込まれるかもしれないとのわが国における最近の懸念を率直に伝えまして、私は日本政府としては核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」の三原則を引き続いて堅持する旨述べました。また同時に、日本政府は、国会における答弁を含め多くの場において、米国政府安保条約のもとにおける事前協議の枠組みの中で核兵器の持ち込みにつき許可を求めてきた場合には、日本政府としては非核三原則に従って処理する旨明確にしてきた旨を述べたわけであります。  日本政府としてはさらに一部で持たれている懸念に対し、米国政府安保条約及びその関連取り決めに基づくその義務を誠実に履行しているというふうに判断していることを述べたわけでありますが、これに対しまして、マンスフィールド大使は、米国政府としては核兵器に反対する日本国民の特別の感情は十分に理解をしている旨答えました。  また、大使は同時に、一九八一年五月二十日のマンスフィールド大使と園田大臣との会談の際に明らかにされた米国政府見解に言及をしながら、米国政府の立場には何らの変更もない旨を述べたわけでございます。  大使はさらに私に対しまして、核の存否については肯定も否定もしないというのが米国政府の一貫した政策であるということを説明をしながら、しかし、米国政府としては安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対するその義務を誠実に履行してきており、今後とも引き続き履行する旨を保証いたした次第であります。
  418. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いろいろと伝えられるところによりますと、アメリカはINF交渉でゼロオプションではなかなかこれは合意に達することができないということで、暫定協定等の提案ということも伝えられておりますが、その点は何かございましたか。
  419. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) その点についていろいろと論議をいたしたわけでございます。確かにいまおっしゃいますような中間的な提案をアメリカが出すとか、あるいはまたヨーロッパ諸国がそれを要請しているというふうな報道等もあるわけでございますが、その点についてアメリカ政府考え方もただしたわけですが、アメリカ政府としては、まだそういう点についてはっきりしたことを言える段階にはないし、そういうことを提案するということもまだ聞いておる状況ではないと。しかし、いずれにしてもそうした中間案を出すというふうなことになれば、日本に対しては直ちにこれを連絡するということでございました。いずれにしても、理想的な形は両方の陣営がこの中距離核兵器を全廃すると、撤廃をするということが最も理想でありますから、私たちはゼロオプションというのが理想的な形である。しかし、中間的な場合においても、これはあくまでも全土的な立場で考えてもらわなければならぬし、同時にまた極東が犠牲になるようなことは困るということを申したわけでございまして、アメリカもその点は了承したということでございますが、中間案についてはまだまだうわさの段階でありまして、その辺については確たる情報は持ち合わせていないというのが現状でありますし、またアメリカ政府もそれについてははっきりした発言は控えておると、こういう状況にあると思います。
  420. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、やはり同僚委員からも質問がございました日米の共同研究ですけれども、これの研究に当たっての原則、合意事項または歯どめにつきましては、せんだっても質問ありましたが、この研究の結果というのはやはり政府の防衛予算、あるいは防衛構想に全く影響を及ぼさないのか。この点はどうでしょうか。
  421. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 日米共同研究ということでいま御質問がございましたが、最近始めましたシーレーン共同研究について御報告を申し上げます。  本研究の内容は、日米安保条約第五条に基づくわが国に対しての武力攻撃がなされた場合の自衛隊と米軍の共同作戦の内容にかかわるものでございますが、これにつきましては、すでに本委員会でも答弁をさせていただきましたように、始めるに当たりましてわが国の憲法上の諸制約、あるいは非核三原則、あるいは事前協議の問題、こういったものには触れない、こういうことが第一点。それから第二点は、いま委員から特にこの点について御質問がございましたが、研究協議の結論は両国政府の立法、あるいは予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない。これを確立いたしております。なお、さらに加えさせていただきますと、第三点として日米安保条約及びその関連取り決めの範囲内の協力に限ると。この三点は始めるに当たって日米両方の間で確認をし合って、共同研究がスタートをいたしております。
  422. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 しかし、一方においては、これは報道によりますと、夏目防衛局長が、研究の結果、防衛力の不備や改良すべき点については指摘されることもあり得るが、その取り扱いは両国政府が別途独自に判断すると、こういう見解を示して了承されたということでございますが、当然アメリカ側から見れば日本の防衛力の不備な点はいろいろ指摘があると思うのですね。そういった点で、これが今後の日本の防衛のあり方に対しましてやはり影響を及ぼしてくるんではないか、このように思うんですが、その点はどうでしょうか。
  423. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 今回のシーレーン防衛の研究につきましては、先般研究を開始したばかりでございまして、どういうふうな進展を見るかというのは必ずしも明らかでございませんけれども、先ほど大臣から御答弁がありましたように、今回の研究というのはあくまでも日米安保条約第五条に基づいて、わが国に対して武力攻撃が行われた際に、日米が整合のとれた作戦をいかに効果的に行うかという作戦計画、オペレーションプランでございまして、将来の防衛力整備を策定するための研究ではないわけでございます。ただ、研究の中身、今後どう進展するかわかりませんが、そういった問題がもし指摘されるようなことがあったとしても、それは今回の研究とは別の次元の問題であって、それはわが国なり米国なりが、独自に別途判断すべき問題であるということを念を押して、あくまでも防衛力整備を目標とした研究でないことを確認したということでございます。
  424. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この研究に際しましてはいろいろな前提条件、制約を設けておるようでございますけれども、やはり政府間同士でいろいろと研究をしたり、あるいは討議をして進めるということにつきましては、やはり大きな歯どめが必要じゃないかと思うのです。大体制服の皆さん方ですと、やはりいろんな点の環境変化等を自分たちの有利な方向に持っていきたいと、このようになるでしょうし、国民もその研究あるいは結果につきましては、大きな関心を持っているわけでございますので、これはシビリアンコントロールという点から見ましても、この結果というのは当然国会に報告されなければならないと、このように思いますが、総理はどのように判断されますか。
  425. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま政府委員から御答弁させていただきましたように、この研究はわが国に対しての武力攻撃がなされた場合の自衛隊と米軍の共同作戦、この内容にかかわる研究でございます。したがって、事柄の性質上これを公表することは御勘弁をいただきたい。これはわが国及び米国の国益に反することとなるわけでございますので、これを公表することは私ども考えておらないわけでございます。  なお、シビリアンコントロールについて重ねて御質問ございましたが、この研究自体が「日米防衛協力のための指針」に基づき行われるのでございまして、自衛隊と米軍との間で行うこの研究につきましては、私自身、つまり防衛庁長官が責任を持って当たることとされておるわけでございます。当然でございますが、研究結果は総理にも適宜御報告を申し上げます。こういった形から、私の責任において研究を進めていくということでございまして、この点で、シビリアンコントロールといいますか、十分ただいま先生の御指摘のような、ミリタリー・ツー・ミリタリーの研究ではございますが、私の責任において、常にこれについては十分意を用いていく覚悟でございます。
  426. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 総理、昨日からあれでございましたが、エンプラの寄港は日本要請ということでございますが、ここにザ・ジャパニーズという言葉が報道されているわけですけれども、これにつきましてはいろいろな意味が取りざたされておりますけれども、やはり総理が不沈空母という、形容詞だとおっしゃっておみえになりますけれども日本の国を代表してアメリカに赴かれた総理発言をされたことが、やはり一番大きな意味を持っているんじゃないかと思うんですね。不沈空母という言葉は大体どこから果たして出たかちょっとわかりませんけれども日本の海軍に昔からあった言葉だとも言われておりますね。総理は海軍におみえになったわけですから、昔はそういうような構想を持っておみえになったかもしれません。しかし、このワトキンズ海軍作戦部長がはっきりと日本からの要請と言ったことは、総理が不沈空母という発言をされた、それがもう日本を代表してアメリカに行ってレーガン大統領に会って、日本国民考えを代表して総理が言っているんだから、これは間違いないんだというこれは軍部の判断があったんじゃないかと思うんです。そういった意味で、佐世保市長とか、いろいろなことを言われておりますけれども、これは総理がやはりこういった発言をしたことが一番大きな原因ですので、その点、総理がしっかりと反省をしていただきたいと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  427. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 不沈空母とエンタープライズの寄港とは何ら関係ありません。
  428. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 しかし、向こう側もやはり総理がそういうことを言っていること自体が、安心をして発言できるんじゃないんですか。これからもますます、先ほども申し上げましたようないろいろな核装備をした艦船が、日本を目指してアジアに配備をされてくるわけですから、総理要請にこたえてということになりかねませんよ。その点どうですか。
  429. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) このエンタープライズの寄港と不沈空母というのは、私も全く関係ないと思います。  エンタープライズその他、これは今後とも来ることになるでありましょうし、日本もこれを受け入れるわけでございます。ワトキンズ作戦部長ザ・ジャパニーズと言ったのは、もちろん日本政府という意味で言っているわけじゃないと思います。先ほども政府委員答弁をいたしましたように、彼が日本に在勤しておったことがある、そういう際に佐世保なんかで歓迎するといったことを市民の中から聞いて、恐らくそういうことが頭に残って言ったんじゃないかということを後で国防総省から説明がありまして、明快にこれは日本要請でないということで、ワトキンズの発言の与える誤解を取り除く説明をいたしておりまして、否定をいたしておりますから、日本要請をしたものでないことは、これはもうアメリカ政府みずからが認めたわけでございまして、きょうもマンスフィールド大使もそれをはっきりと私は申した次第であります。
  430. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 まあ後からは何とでも言いわけがつくわけでございますし、先ほども同僚委員の質問の中でおっしゃっておりますように、そういった国際問題についての発言は慎重に今後もしていただきたいと思います。  では、次は景気対策についてお伺いしますけれども、せんだっても総理から、予算が上がって四月にいろいろ景気対策を講ずるというお話がありました。いま国民政府期待しておりますのは景気をよくしてほしいということでございますし、せんだってもわが党の桑名委員の方からもそういった意味での質問がございました。  いま中小零細企業の倒産というのが非常に多発をしております。この三月がいろいろな意味での決済の時期になりますので、その今月の末の状況というのは私たちは憂慮を持って見詰めております。あるいは失業者につきましても百六十二万人ということです。完全失業率が二・七二%、これは過去最高の最悪の状態にいまなっているわけでございますし、こういった現状を踏まえて、もう一度景気対策についての政府のお考えをお聞きしたいと思います。
  431. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ここで申し上げましたようは、予算が成立しましたら景気対策についてよく考えてみたいと思っております。  幸いに、為替が次第に強くなってまいっておりますし、また物価もきわめて安定しておりますし、その上に石油の値段が二十九ドルまで下がってきつつありますから、これをてこにいたしまして景気を回復する方向にいろいろ知恵をめぐらしてみたいと思う次第です。
  432. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、いままで政府は、世界的な同時不況や、あるいは国の財政も赤字財政でございましたから、そこでじっとがまんをして今日まで来ました。いままで景気対策につきましては財政の出番なしということで来たわけでございますけれども、この原油の値下がり、あるいは物価の安定などから見まして、積極的な景気対策に転ずる、このように方向転換をしたと、このように見てもよろしいわけですね。
  433. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そう大きな期待を持たれても困りますけれども、ともかくそういう客観情勢の変化に応じまして、財政を出動せしめないで民間の活力を回復する、財政というものはいまこういう枯渇の状態に来ておりますから余り出る余地はないわけでありますが、できるだけ民間の活力を回復する方法を考えまして景気を回復していく、そういうことを知恵をめぐらしてみたいと思っております。
  434. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 われわれとしても、この財政赤字の中でございますから、いろんな意味での政策手段というものは限定されると思いますけれども、やはりそういった中でのいろんな手段を数多く有効に活用して、ぜひとも景気浮揚に全力を尽くしていただきたい、こう思うわけです。  しかし、どうでしょうか、いままでのわが国の景気を引っ張ってきたのは輸出でございますけれども、輸出の現環境というのは非常に厳しい面がある。これは当委員会の地方公聴会におきましても、各公述人がやはり輸出の伸びが期待できないということを、いろいろと意見を開陳しておみえになりましたし、今後の対米、あるいは対ECの輸出の見通しにつきましてはどのようにお考えでしょうか。
  435. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、世界同時不況の影響を一昨年の秋以来受けまして、輸出はもう昨年の一月以来ずっと減少の傾向でございます。いまおっしゃられましたように、消費を節約し、あるいは輸入を抑えて輸出を奨励するような政策は全くとれないことは当然でございますし、貿易摩擦というような声を聞きますと、やはり内需の拡大に向かわざるを得ないと思うところでございます。  しかしながら、世界経済もインフレ対策の成功の方向に参りましたので若干回復の傾向で、いま聞きますところによりますれば、引き合いも少しずつでもふえておるようなことが言われるわけでございますが、私どもは輸出よりも内需振興、このような政策でいくべきであると考えております。
  436. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 内需拡大による景気回復ということでございますが、そこで経企庁としましてはどういう手段が一番有効であるとお考えですか。
  437. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先ほど総理からもお話がございました。私どもの、わが国の経済政策は御案内のように財政金融政策で有効需要の拡大、あるいは収縮という方向で成功してきた国だと私は思っておるところでございます。いま総理も言われましたように、財政赤字という制約はございます。また、円高傾向の維持という制約もございますが、やはり干渉度の少ない財政金融政策をフルに活用していきたい。できる限り活用し、特に金利の問題は今後の問題でございまするけれども、名目成長率よりも金利水準が高いといった不自然な姿もいま見られるようでございます。私どもは、したがって貯蓄と投資が合わない、高い貯蓄率が投資と見合っていないところが問題でございます。これをひとつ見合わすような方向の政策をとるべきだと考えております。
  438. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いま経企庁長官からお話がございましたけれども、金利政策につきましてどうでしょうか、前川総裁から。
  439. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 景気が停滞傾向にございます一方で、物価もいまお話しのように安定してきておる。国際収支の方にも余り問題がないということでございまするから、そういう際に可能な限り景気に配慮した政策をとるということは当然のことであろうというふうに思います。ただ、政策対応を図ってまいりますのにまた制約の多いことも事実でございまして、いまお話のありますように、財政面でもかなり制約がある、なかなか大きなことはできない。そういう意味から申しまして、財政金融政策をこれから遂行してまいります上におきまして、なかなか自由な選択ができない環境にあることもまた事実でございます。そういう意味でこれから政策対応をしてまいります上におきましても、どうしてもマイナスの影響も同時に考えていかなければいけない。その両方を比較考量して、少しでもプラスの効果が出るようにというふうに判断してまいらなければいけないというふうに思っております。  金融政策につきまして、金利の問題につきましては、いま私どもの政策遂行上の一番大きな障害は、やっぱり為替相場であろうというふうに思います。為替が円安になりますると、物価あるいは企業マインドに悪い影響があるということは、これはもう一般に認められたことでございますが、同時に海外からはいまの円相場は円安に過ぎる、下方評価——過小評価というふうに見られておるのが一般でございまして、それが貿易摩擦の原因にもなっておるわけでございます。そういう意味で円相場に悪影響が出ないように考えてまいらなければいけないわけでございます。この金利政策は海外の金利との関係がございまするので、なかなか国内だけの判断がしにくいわけでございますが、御承知のように海外の状況は非常に不安定でございまして、アメリカの金利もなかなか下がらないということから、その内外金利差がさらに広まるような措置をとります場合には、円相場に対する影響というものを十分に考えて対応しなければいけないというふうに思います。そういう意味におきまして、最近の円相場の状況、御承知のようは円高の方向に少しずつあれしてまいりましたけれども、昨年の秋以降若干円高の方向に変わってきてはおりまするけれども、まだ非常に不安定でございまするので、そういう意味におきまして、円高が定着するということを一つの大きな眼目にいたしまして、金融政策につきましても対応をしてまいる必要があるというふうに考えております。
  440. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 やっぱり円の為替相場の安定が重要な要素だと思うんですけれども、しかし、現状は昨年のような異常な円安じゃないと思うんですね。いま公定歩合の引き下げなどによる積極的なこれは金融政策の展開というのが、いま要望もされてくるときじゃないかと思いますし、この予算が上がった後でいろいろな景気対策を講ずるようでございますが、当然そのときにはその中に組み込まれてくるのじゃないかと思います。そういった意味で、いまが私たちとしましては公定歩合の引き下げのチャンスじゃないかと思うんですが、その点どうでしょうか。
  441. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私ども、金融政策というのは財政政策と違いまして、非常に機動的に運用できるということに非常に大きな特色がございます。そういう意味におきまして、いままでも金融政策の運営につきましては、極力機動的に対処してまいったつもりでおります。今後も機動的な運営を図っていくという姿勢には変わりはございません。先ほど申し上げましたように、環境が非常に変わりやすい、また幾多の制約もございまするので、なかなか自由な選択はできませんけれども、そういう制約の中で、できるだけ機動的に運営してまいりたいというのが私ども考え方でございます。
  442. 長谷川信

    ○理事(長谷川信君) 前川参考人よろしゅうございます。
  443. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 内需拡大ということで、先ほどもお話があったわけでございますが、個人の消費拡大ということが前々からも大きな論議になってまいりました。これには当然、これは個人が購入されます商品とか、サービスの価格が安いということが大きな要素になってくるわけですけれども、またもう一つには、可処分所得の増加ということが必要じゃないかと思うんです。この二つの点から見まして、原油価格の値下がりが電気料金、あるいは原油製品等の価格の低下までこれが影響を及ぼしてくるならば、これは消費拡大に役立ってくると思うんですが、その点はどうでしょうか。
  444. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 日本の景気の前途を産業界全体から考えて、なかなか展望が立てにくくて、ある意味ではどんよりとした大企業も含めて、たとえば粗鋼生産が一億トンを割ったとかというようなことも含めて、中小零細企業に至るまで前途に光明を見出す手段に四苦八苦していたわけであります。しかし、今回のこれは思いもよらざるいただき物といいましょうか、産油国の人たちが日本のためにじゃなくて、自分たちのために結局原油を二十九ドルということで一応一致してもらったということは、カルテルが崩壊をしてこんな状態になったときのことを考えますより、下げ幅は別にして、私は日本においてはやや長期的な展望が立てやすくなったなという気持ちがいたしております。この際、これを起爆剤にして最終的に国民経済、そして国民の一人一人のふところぐあいにどのように有利に浸透させていくかということについて、ただいま電気、ガス等にお話がございましたが、それらのことも、もちろん石油依存度その他もありますけれども、しかし、全体の検討の中に入れつつ、問題は最初提起されました中小企業も含め、国民の末端の消費経済力、それが小企業から大企業に至る経済の活性の転機ということを、私は本当に天与のこれはいただき物と言うにはまことにありがたいものであって、この機会を失してはならぬ。したがって、これを起爆薬とするための新しい日本経済の未来を設計をするためにいま懸命の努力をしておりますが、ただ、イギリスがこれからどう出るのやら、それに対してナイジェリアがどう出るのやら、あるいはサウジアラビアのあの枠を決めないで自由調節とするとか、あるいはイランは戦争のための保険を差し引いて売らなきゃならぬからとか、いろいろと裏があるようでございますので、もう少し最終判断としては、六ドル、五ドルの値下がりですか、二十九ドルも最終的なものとして診断するのにはもうちょっと時間を置いた方が賢明ではないかなと、そういうふうに見ております。
  445. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いま通産大臣からお話があったように、やはりこれは一つの大きな天恵かもしれません。そういったことで不況脱出への絶対のチャンス、一つのチャンスじゃないかということですが、やはりそれは国民生活安定へのこれは一つの大きな希望らしいものがあらわれてきたんじゃないかと思いますし、やはり利用者あるいは消費者への還元とかあるいは景気回復、生活安定、これを第一に考えていただきたいと思うわけです。  先ほどちょっと業界の話も出ましたのですが、やはり業界によってはそれぞれいろんな影響度が違う点があろうかと思いますけれども、通産省もいろいろと方針を決定されてお出しになってみえた。その間、たとえば電力料金にしましても多少大臣等の間のニュアンスの違いがあったり、あるいは業界のいろんな発言等もまちまちでありますし、国民の皆様方もどのようになっていくのかちょっと不安があるのじゃないかと思うんです。そういった点で、いま北海油田のこともちょっとお述べになりましたけれども、そういった状況等もございますが、大臣としてこれが決定版だというようなものがありましたら、ひとつ御発言願いたいと思うんです。
  446. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いずれにしても日本経済にとってプラスであると。その中で電気料金がいつも聞かれるわけですけれどもね、去年電気料金は実は値上げ申請直前の状態にありました。その後の為替がそう大きく持ち直したわけでもありません。あるいはまた、設備投資延期その他もしておりますし、したがって、電力業界としての中身をよく洗わなければなりませんが、あるいはまた、先ほども触れましたガスも、随伴ガス等においてはこれは生産量が減ればそれだけガスの量も減るわけでありますから、これは値上げをしてきていることは御承知のとおりでございます。ここらのところを勘案をしながらそれらのものも考えていきますけれども、全体はすべての国民にその利益が還元さるべきである。たとえば石油業界などが一番、石油の問題ですから最初に関係があるのですが、もうここの業界はいまや過剰設備などの現状でも、たとえばガソリンだけに例をとれば、末端のスタンドでは百四十円台の大乱売合戦で、もう鼻血を流しながらお互いにそれでもなおやっているというような状態のところに値下げでありますから、これはどのように、私は業界再編成も含めて重大な問題として受けとめなければならぬ。これもまた最終的に、消費者の方は乱売店があって結構と、安いほどありがたいやというそういうものもこれはまた消費者の利益でございますから、ここらのところが大変生きている産業をうまく殺さないで両立するのに一苦心を要するところかなと考えておりますが、ずばりそのものという表現は目下のところもう少し御容赦願いたいと思います。
  447. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 総理はせんだって私たちの同僚委員の質疑の中で御答弁されていましたが、政治的な規制や統制をできるだけ排除して民間の活力を回復させるやり方を考えたい、こうおっしゃって何点か例示されたわけでございますけれども、やはりこれはある面では非常に歓迎をもって迎えられた面がございます。こういった景気が沈滞している中で民間活力の向上を図っていこう、あるいは設備投資あるいは雇用の面で大きなこれは効果があろうかと、こういう評価もあるわけでございますが、やはり各省庁でいろいろなこういった面での政策を掲げながら検討されるわけですけれども、消費者が物を買いやすい条件づくり、これが一番の主眼であるかと思いますが、総理考え方はもっともっと幅の広い、もっと範囲の広いものがあるんじゃないかと思うのですが、その点どうでしょうか。
  448. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それらの問題につきましては、関係各省においてよく検討してもらいたいと思っております。
  449. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 可処分所得の伸びということで減税もその一つの方法なんですけれども、また賃金の適正な上昇ということもこれは必要だと思うのです。この春闘でのベースアップにつきましてどのような見通し持っておられますか。
  450. 大野明

    国務大臣(大野明君) 五十八年の賃上げ交渉、始まったばかりでございます。いずれにいたしましても今日までの経緯を申し上げますと、労働団体は労働者の実質所得を引き上げて、そうして景気回復に資すると同時に、また同時にそれによって雇用の安定を図るというようなことで大体七%ぐらいの要求をしておるところが多いように見受けます。  また一方、使用者側は、やはり従来どおりと申しますか、生産性原理に基づいた生産性上昇率ですね、すなわち、その範囲内における賃上げであると強調しておるというふうに見受けております。  しかしながら、この賃上げ交渉というものは、いずれにしても労使間の話し合いによって決めるべきことでございますから、今日のわが国の経済社会というものを十二分に双方が認識していただいて自主的な話し合いで解決していただきたいと私は望んでおるところでございます。
  451. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 五十八年度の予算の公共事業、これの前倒しが伝えられておるわけでございますけれども政府と与党との間の意見に、その前倒しの執行率についていろいろな開きがあるし、また政府部内でもいろいろな意見が分かれているようですが、この点の調整はどうでしょうか。
  452. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 公共事業前倒しの執行についての考え方でございますが、まず最初に申し上げなければいかぬのは、いま今年度予算がこうして本院の総括質疑の段階でございますので、予算審議間もない今日その執行についてのこの正確な方針とでも申しますか、これは必ずしも時宜を得ないかとも思います。  ただ、この公共事業の前倒しの問題につきましては、経済情勢を見てまいりますと、円安傾向あるいは長期金利の引き下げ、先ほど来御論議の石油価格の下落等々、この自律的な回復を確かなものにすると考えられる要素がそれなりにございます。そうして一方、また仮に前倒しをして下期に公共事業の追加をすると、こういうことになりますと、それこそいま御審議いただいておる予算案そのものは現状において最善のものと理解して御審議いただいておるわけでございますから、補正要因というようなことを申し上げるわけにはございません。  したがって、この与党の、いまもお話がございましたが、今朝も与党の関係者の皆さん方と私協議をいたしまして、やはり昨年御審議いただいて通していただきましたこの補正予算、これがいわゆる四、五月の公共事業等についての一つの下支えと同時に端境期をちょうど埋めた結果にもなっておると、もう少し推移を見ながら議論をした方がいいんじゃないかと、こういうような議論をしておりますところでございますので、昨年も四月九日の閣議に公共事業の執行についての決定がなされまして、それで現在私大蔵大臣が議長として公共事業等施行対策連絡会議というものが現存しておるわけでございますが、やはりこれらの問題は、それこそ今後の推移を見ながら的確に、しかも景気というのを絶えず念頭に置きながら、やはり予算審議の経過等も見ながら判断さしていただくべき問題じゃないかなということで大筋のお話し合いをしておるところでございます。
  453. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 原油の値下がりに伴いまして、五十八年度のわが国の貿易収支の黒字ですけれども政府は二百億ドルとの見通しを立てているわけですけれども、原油が一バレル五ドルの値下げになった。その影響で貿易収支の黒字というものがまた増加してくると、このように思うんですが、その点はどのようにお考えですか。
  454. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 太田委員御指摘のとおり五ドル、つまり三十四ドルが二十九ドルばかりに下がりますと一五%ぐらいの石油代金の節約が行われるわけでございます。仮にそれがそのまま輸入代金の減にはね返りますれば、約六十億ドルばかりの輸入代金の減が生ずるわけでございまするけれども、一方、産油国に対する輸出の減少、そのような影響も考えながら計算をする必要があろうと思って、私どもはいまそのようなはね返りまでの計算を検討中でございます。
  455. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 日本は原油の引き下げによりまして大きな恵みを受けると同時に、当然世界経済活性化への大きな責任が問われる立場になってくると思うんです。ですから、貿易収支の黒字が拡大をしてまいります事態になりますと、今後また日米貿易の問題が再燃をしたり、あるいは五月のサミットでわが国の市場開放あるいは内需拡大策というのがやはり大きな問題になろうかと思うんですが、その点どのようにお考えですか。
  456. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 昨今、サミット会議等についてのいろいろの方々が論文を書いておられますが、元国務長官のキッシンジャーさんあるいは西独のシュミットさん等が書いておられます。その中にいま太田委員御指摘のようなことが書いてございます。世界各国とも消費を抑え、輸入を抑え、そして輸出を奨励をするならば大変なことになるであろう。第一次世界恐慌みたいなことになりはしないか。やはり先進国がその点を十分認識して世界が協調してこの問題に対処していかなければならないというようなことを言っております。私はそういうような観点から、今後また新しい景気対策をいま総理が言われましたが、これらの問題を含めての政策を考えてサミット会議での御論議期待したいと思っております。
  457. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に移りますが、次は財政再建についてですが、私どもこう見ておりますと、政府の財政再建のいろいろな考え方、これは一般会計予算中心にいままで論議されているように思うわけです。現在の赤字国債七兆円あるいは国債費が八兆円、国債残高百十兆円という大きな数字になっているわけです。まさに天文学的数字というような表現さえ言われておりますけれども、その中で一般会計の苦しさというのはわかるわけでございますけれども、財政再建という論議になるともっと範囲が広いんじゃないかと思うんです。  そこでお尋ねしたいのですが、一般会計以外にも赤字で苦しんでいるところが特別会計とかあるいは政府関係機関であろうかと思いますが、その点どうでしょうか。
  458. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは今度の臨調最終答申もいただいたところでございますが、確かに一般会計赤字のみを対象にしたという御指摘でございますが、財政を立て直すということは、やはり財政全体を健全なものとしてその機動力あるいは対応力の回復を図ると、こういうことでございますので、一般会計のみを対象としておるべきものではありません。そこで、一般会計は重要な経費をほとんど網羅して一般的な租税がこれに充てられるという意味で国の予算の根幹をなすものだということは言えると思うんであります。したがって、影響するところ広く国民全体に及ぶと。もう一つは、一般会計と特別会計や政府関係機関との間には猛烈に密接な関係がございます。国全体の財政の状況が一般会計に、結論から言うと、集約的な形で反映されておると、こういうことが言えるんじゃないか。したがって、こう申したからといいましても、特別会計、政府関係機関を甘く考えるという考えは全くございませんので、一般会計に準じてやはり厳しい対応をしなきゃならぬ課題であるという意味においては認識は一緒であります。
  459. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ただいま国有林野事業特別会計の赤字というのは五十年度以来で累積赤字も七千億円になっております。あるいは厚生保険特別会計の日雇い勘定は三十年以来赤字で、累積赤字は五十七年度末で六千六百五十億円と、こういった特別会計の赤字というのはどのように再建する方針でしょうか。
  460. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは国有林会計あるいはいま御指摘の厚生保険特別会計、これは確かに本来所要の支出は固有の収入で賄うというべきものでございますが、それが困難になってまいりました。それは確かにそれぞれの事業を取り巻く環境の変化ということからでございましょう。しかし、これらの特別会計については、やはり所要の支出は固有の収入で賄うことが本来の姿であります。このため、国有林野事業につきましては、五十三年度以降経営改善計画を策定し、経営改善を図っております。そして五十八年度予算でも投資の効率化、要員の規模の縮減、収入の確保等に努めてまいりたいと、こういう方針で編成をいたしました。  それから厚生保険特別会計の健康勘定につきましては、五十五年の健保法の改正によりまして財政の健全化を図っております。なお、五十八年度予算でも医療費の適正化によって医療費支出の抑制を図っております。  それから、次の厚生保険特別会計の日雇い健保ということも絶えず議論になるところでございますが、昨年の十月以来社会保険審議会において制度のあり方について御審議をいただいておると、こういうふうに具体的にこれは所管庁からお答えになるべきことかとも思いますが、方策を講じながら、財政当局としてもそれらの特別会計について逐次改善が見られ、あるいは見込まれるというような方向で健全化が図られてきておりますが、    〔理事長谷川信君退席、委員長着席〕 今後とも財政改革を進めていく中で特別会計予算についてもそれぞれの実情、果たすべき役割り、これを踏まえまして歳入歳出それぞれの構造を見直さしていただきたいと考えております。
  461. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そのほか食糧管理特別会計でも毎年相当多額の金を一般会計から繰り入れて何とかつじつまを合わせている分もありますし、再建計画にしても非常に遅きに失しているのじゃないかという感じがします。  次に、政府関係機関の財政実情ですけれども、これは国鉄にしましても三十九年から大幅赤字です。そして棚上げ分を含めますと十六兆円の累積赤字だと、あるいは住宅金融公庫が五十六年から赤字で、これは累積赤字では五十八年度末で千五百億円になっているわけです。こういった政府関係機関というものの赤字解消策、これ当然考えていかなきゃならないのですが、その点はどうなっていますか。
  462. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 政府関係機関は民間が行うには必ずしも適さない公的事業を行うことを使命としております。だから、完全に民間企業と同様の基準で収支を論ずることは必ずしも適当ではなかろうかと思われます。しかしながら、政府関係機関の行う事業につきましても極力効率的に行っていくというのはこれは当然のことでございます。こういう意味からしても、一般会計に準じて厳しい合理化適正化を進めてきたところでございますが、今後ともそれぞれの実情、そうしてまた果たすべき役割り、それを十分踏まえまして収入支出ともどもに最も効率的に進めてまいる、こういう基本的な考え方で臨むつもりでございます。
  463. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この赤字解消策というのは具体的にどうなんですか。どのぐらいになったら解消されるんですか。
  464. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) どれぐらいで解消されるかとこう言われますと、確かに個々によってその再建計画等いろいろあるわけでございますので一概に申し上げるわけにはまいりませんが、いま財政改革という至上命題をいただいておりますときだけに、個々のそれぞれのいわゆる政府関係機関を一つ一つを対象にしながら鋭意これが解消に努めていきたいと基本的な考え方を述べるにとどまらしていただきます。
  465. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 さらに、公団とか事業団の財政事情を見ましても、これは資料としまして財政法第二十八条による報告書もございますけれども、これを見ますと、五十八年度末の繰越欠損というのが出ておりますけれども、鉄建公団、日本道路公団、年金福祉事業団、雇用促進事業団、労働福祉事業団、それぞれが巨額な繰越欠損を持っているわけですが、こういう機関の、なぜこういう赤字経営になっているのか、再建策はどうなっているのかその点お聞きしたいと思います。主管の大臣さんからちょっと言ってもらいましょうか。
  466. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 個別の問題じゃなくて全体として申し上げたいと思います。  鉄建公団、年金福祉事業団、雇用促進事業団、労働福祉事業団、これはただいまも申されました二十八条の書類の上で欠損金があるということが表示されておるわけでございますが、これは減価償却があると、それが赤字になっているということなんでございまして、たとえば出資をしてそれに見合う施設をつくる、この施設を運営しているわけでございますが、当然企業経営、経理に準じまして減価償却費を計上する、それが赤字として表現されるということでございまして、民間企業であれば片っ方で製品をつくってその減価償却費がコスト化されて回収されていくということになるわけですが、こういう政府関係のものでございますから、そういう商売するわけにいきませんので減価償却費が赤字として表現されている。したがって不健全な姿ではないというふうに御理解いただきたいと思います。  それから道路公団でございますが、道路公団は路線別の経理をしておりまして、高速道路と一般有料道路に分けますと高速道路は黒字なわけです。一般有料道路も相当部分は黒字なわけです。中に赤字のものがある、一般有料道路の中に。この一般道路の赤字分だけが表現されておる。と申しますのは、高速道路等の黒字の分は償却でいわばその黒字を消したかっこうにして経理しておりますものですから、赤字道路の分の欠損金だけが表現されるという経理の仕方をしているからでございます。全体として見れば道路公団は収支差はプラスであるとお考えいただいていいと思います。
  467. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私ども手元にはこの報告書は来ているわけですけれども、「予算参考書類」ということでございますが、どこにそういうことが書いてあるんですか。
  468. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 貸借対照表等だけごらんいただきましてもそういうことが書いてないわけでございますけれども、そういう趣旨で御理解いただきたいと思います。
  469. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは大蔵大臣、この財政法二十八条による書類で国会に報告されているわけですね。いまいろいろと種々弁明をされているようですけれども、われわれにはちっともわからぬわけですよ、それが。どこにもそんなことは書いてありませんからね。繰越欠損金というのははっきり出ていますよ、ここに。しかし、そういうような事情によって決して企業経営的には赤字じゃないんだとどこに書いてあるんですか。
  470. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) いや企業経営的には赤字なんです。だけれどもそれが不健全な赤字ではない。と申しますのが、先ほど来申し上げておりますように、減価償却費を片方で立てていくと、たとえばそれに対応する施設がありますね、施設についてだんだんと減価償却していくわけですね、引当金を立てる。そうするとそこだけを考えてみますと結局減価償却費だけが赤字になると、非常にシェーマティッシュに申して恐縮ですけれども、そういうことになるわけですね。普通の民間の企業でしたら、そういう減価償却というのはコスト化して収益を生むわけですね。ですから赤字が消えていくわけでございますけれども、こういう政府仕事でございますから、そういう収益を生むというわけじゃない、ただ施設を管理しているわけでございます。その施設の減価償却をしていく。ですから、一番極端な例で言えば、減価償却をして施設がなくなっちゃうとそれに見合う資本を減資すればつまりちゃらになると、それが仕事の終わりだとこう非常に単純に言えばそういうことになろうかと思うんです。
  471. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 非常にわかりにくい説明なんですが、そういうことであればきちんとそういう報告書をつくるべきじゃないですか。この点どうですか。
  472. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 私の御説明は非常に平たく申し上げた説明でございまして、つまり普通の企業会計原則のやり方でやりますといまお手元にあるような処理の仕方になるわけでございますけれども、その表現されたものを分析して御調明申し上げればそういうことなんで、これはそう心配するような赤字じゃないんだと、そういう種類の赤字じゃないんだということを申し上げているわけでございます。
  473. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 これ分析云々ということでございますがね。しかし財政法に決められた報告書を国会に提出をするわけですから、そういうことが一目見てわかるようにしてほしいということですな。  それで次へ移りますけれども、いろんな面でまだ、そういう公団、事業団、あるいは政府関係機関にしましてもいろんな意味での赤字経営というものを重ねている部分もあるわけですから、この一般会計以外の機関も合わせた国の財政の窮状ということもやはり国民にもっと知らせてこの財政再建の先頭に立っていかなきゃならないんじゃないかと思うんです。大体において今後もどういう方向になってくるかあれですけれども一般会計の面で改善されたとしましても、他の特別会計とか、あるいは政府機関やあるいは公団、事業団が赤字で首が回らなくなりますと国全体としての財政再建のしり抜けと、こういうことになりかねないと思いますので、その点は財政を一般会計に限らずに、これからも広い範囲で検討していっていただきたい、このように思うわけですが、どうでしょうか。
  474. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 政府関係機関、国有林野でございますとか、そういうのは典型的でございますが、その環境の変化によって一般会計からの支出が伴うとか、そういうことは確かにございますので、その本体自身にメスを入れて健全化を図っていく、こういうことは御趣旨に沿って私どもが対応すべきだと思っております。
  475. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、財投資金の問題で、その運用やその他につきまして質問したいと思うのですけれども、この一般会計以外の特別会計あるいは公団、事業団が赤字に陥っている、これらの機関にも財政投融資資金というのが相当投融資されているわけですが、これがこれらの機関の赤字穴埋めに使われる傾向があるわけですけれども、この資金の使い方としては問題はないでしょうか。
  476. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる財投資金によって一般会計が補てんすべきものに対する平準化のための措置、こういうことが行われておることもこれは事実でございます。が、一般論として申し上げますならば、収支改善の努力を行うまでの間のつなぎとしての融資を行う、こういう意味においてはやむを得ないものもございます。しかし、御指摘が効率的な資金運用を図れ、そして補給金の補てん措置の明確化が望まれるという趣旨であるとすれば、これはまさに国民から預かった資金から成る財投資金について効率的、弾力的資金運用を行うことが肝要でございますので、この処理方法を明確にしてきておりますが、これからこの運用機関が長期的に収支が相償うことが必要でございますので、そこの基本にさかのぼって対応すべきであるとは思っております。
  477. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 当然、これは財投資金の運用に当たりましては、政府は有利、確実な運用をすることが義務づけられているわけですけれども、金融の常識から言いましても、赤字を出している機関とかあるいはそういうところに対しましては、金を貸さないか、あるいは金利を高くするか、あるいは担保を取るかということが必要になってくるわけですけれども政府の場合には、こういった赤字発生機関に対しましても長期間にわたってこれは貸し込んでいる状態があるわけですが、これはやはり財投計画をつくるときには考慮していかなければならない点だと思いますが、いろんな面で今後は、国の機関とか特別会計だからといって最終的には国民の税金で負担するということはもう許されなくなってくると思うんです。そういった点で私たちは政策的な考慮というのを加える必要を頭から否定するつもりはありませんけれども、それにしても、いままでの財投の運用というのは投資あるいは融資の常識から外れている、このように思うわけです。それぞれの機関の収支均衡がまず財投資金融資の大前提だということでいまありますけれども、五十九年度の財投計画の策定の場合にはこれまでのやり方を是正した財投計画を組む、このようにできるでしょうか。
  478. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはやはり、委員も御指摘になりましたが、もちろん効率的な投資をすべきものでございますけれども、要は、個々の政府関係機関を見ますときに、まさに公共性、確実性、有利性に配慮をしつつも、この厚生保険特別会計のように収支改善努力を行うまでの間のつなぎの融資でございますとか、そういう問題もございますので、基本的には運用対象機関が長期的に収支が相償う、こういうことが必要でございますけれども、直ちに五十九年度からはいわゆるその種の財投は行わないということは、そういうふうにはまいらないと思います。基本的に収支相償うためのてことしてのものはまだ必要であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  479. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 五十八年度の財投計画の中でございますけれども政府から提出されました資料を見ますと、五十六年度に不用額を相当出しているところがございますが、これらの機関、どうしてこの機関が不用額を出したのか、ちょっと御答弁を願いたいと思いますが。環境衛生金融公庫あるいは農林漁業金融公庫あるいは住宅・都市整備公団、日本鉄建公団等がございます。その点どうでしょうか。
  480. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申し上げます。  環境衛生金融公庫でございますが、御指摘のように不用額が少し出ております。これは、環衛公庫というのは中小企業——環衛業というのが非常に中小零細のところが多いわけでございますし、景気の非常に影響を受けやすい、こういうことでございます。また、これが設備資金だけだ、こういうことになっておりますので、そういうことで不用額が立ったのだろうと、こう思います。五十八年度の財投計画におきましては、景気の低迷ということも考えまして、従来の貸付計画額を縮減して計画額の適正を期したところでございます。
  481. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 農林漁業金融公庫の場合には、やはり五十六年度に御指摘のとおりかなりの不用額が出たわけでございますが、これは実は前の五十五年度がちょうど冷害の年に当たりまして資金の足が早くて、元来、五十六年度に繰り越されるべきもののうち、かなりか五十五年度に資金交付が行われたという事情もあったということを申し上げたいと存じますが、しかし私どもとしては、やっぱりそういう経験に基づきまして反省をいたしまして、五十七年度におきましては五十六年度に対比いたしまして四百三十億少ない借入計画にいたしておりまして、五十八年度もさらに引き続き借入計画を圧縮した姿でお願いをしております。
  482. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 まだありますな、住宅・都市整備公団。
  483. 松谷蒼一郎

    政府委員松谷蒼一郎君) 住宅・都市整備公団についてお答え申し上げますが、住宅・都市整備公団の財投借入不用額につきましては、昭和五十六年度六百十四億円の不用額を生じております。これは住宅の建設をいたします場合に、非常に用地につきまして取得がむずかしくなってきている、あるいは周辺住民との調整が非常にむずかしいというようなことで事業が難航をしている場合が多いわけでございますが、そういったことで住宅の建設の戸数が当初計画を下回ったということによるものでございます。今後、住宅建設事業計画につきましては、的確に実施を図り、その予算執行の適正化に努めまして、不用額が生じないように公団を指導してまいりたいと考えております。
  484. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 鉄建公団につきましては、五十六年度におきまして政府保証債の発行計画は千億円でございましたが、七百三十八億円を発行しまして二百六十二億円を不用にいたしております。これは中山トンネルの地質不良等による上越新幹線の工事のおくれ、あるいは青函トンネルの海峡中央部の地質不良による工事のおくれなどで、こういう工事の進捗状況等勘案しながら政府保証債の発行権限の効率的、弾力的運用を図るという見地からこういう措置をとったものでございます。
  485. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 これらの融資機関につきましては資金需要が減っている、このようにしか思えない点もありますし、あるいは住宅あるいは鉄建公団にしましても仕事が減ってきている、そういうところに過大な資金配分するということは問題じゃないかと思います。また、いま答弁の中には、五十七年以降は減らしているというような答弁ありましたけれども、五十五年三月のこの委員会でも多額の不用を出していることが批判されているわけです。五十六年度でも改まらずに、また五十八年度でもまだ十分な見直しが行われているとは思えない点もありますので、その点やはり財政投融資のあり方としてはもっと抜本的な見直しが必要じゃないかと思うんですが、大蔵大臣、その点どうでしょうか。
  486. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは確かに、昭和五十三年度、御指摘いただいたときには予算規模に対する不用額の比率が八・五%ございました。五十六年度がようやっと〇・九%ということになったわけであります。個々の御事情は、見ますと、それなりに経済情勢の推移あるいは工事のおくれ、用地問題とか、いろんな問題ございます。そういうことでございますが、これについても御趣旨を体しまして、この資金配分にまさに重点的、効率的、こういう姿勢でやっていきたいと思います。
  487. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 財投原資が不足をしているというんですが、その現状はどうでしょうか。
  488. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに五十八年度の財投融資の原資につきましては、資金運用部資金が五十七年度計画に対して四千三百三十六億円減の十九兆一千三百五十三億円と見込まれておりまして、きわめて厳しい状況にございます。これは郵貯について、郵政省の増加目標によっておりますが、最近における伸び悩みから五十七年度同額の七兆九千億円を計上しておることと、それからいま一つは、たびたび御批判いただいております厚年、国年につきまして、国民年金事業に係る国庫負担金繰り入れの平準化措置の影響、これもございます。それから、他の特別会計の預託金、既往の運用の回収金につきましては、これは五十七年度計画額に比べて二千三百三十六億円減の七兆一千三百五十三億円を計上しております。五十八年度におきましては、一般会計における税外収入増収措置の影響から資金運用部預託金の大幅減を見ざるを得なかったわけでありますが、その他の預託金の増加、既往の運用の回収見込み等によりまして、全体では二千三百三十六億円の減となりました。  五十八年度財投計画は、このようなかつてない厳しい原資事情のもとで計画規模を対前年度二%増という低い伸びにとどめます一方、しかし住宅、道路、中小企業、資源・エネルギー、経済協力、これらの分野には重点的、効率的に資金配分を行ったところでございます。今後におきましても、郵貯、年金の伸び悩み等厳しい原資事情が予想されます中で、資源・エネルギー対策や中小企業対策等の根強い財政資金需要や国債引き受け等に対応する必要がございますので、財投対象事業や融資内容の見直しを行いまして、まさに重点的、効率的運用に努めていかなければならないと、このように考えております。
  489. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いま国債引き受けの話が出ましたんですが、やはり原資が窮屈になった理由の中には、この国債の引受額が本来財投原資になるものを先食いしているという状況があるのじゃないでしょうか。財投原資になるべきものが、五十四年度の一兆五千億円から五十八年度は三兆七千億円、これだけ国債引き受けの額の方に回っているわけですね。これを財投原資との比率で見ますと、五十四年から五十八年まで約二倍ぐらいになっているわけですが、これでは当然財源不足になるのじゃないでしょうか。
  490. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) お話しのような要素がございます。私どもといたしましては、国にどれだけ配分するか、それから二番目には地方財政関係にどうするか、三番目に投機関にどうするかというような観点で考えておりまして、国に対する配分を最優先に考えております。したがいまして、国債の発行量が大きくなりますと、そのときどきの金融情勢にもよりますが、相当のものを運用部から配分せざるを得ないと、そういうふうに考えております。
  491. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そのために政府保証債等による借り入れがここ数年増加していますが、その実情はどうですか。
  492. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 五十七年度は二兆二千二百億でございましたが、本年は二兆七千億、約六千億ぐらいふえておりますが、そういう要素もございます。それで、国債の市場と政保債、地方債等々の市場はそれぞれ特色がありますけれども、やはり同じ国民貯蓄に依存するというようなことになります。したがって、大変そこいらのやりくり算段は苦労を要するわけでございますが、一般会計の方がかなり厳しいというような情勢で、財投計画の方でできるだけのことをすべきではないかというような考え方も片っ方にあるわけでございます。その辺よく考えまして、御指摘のような効率的、重点的な配分に努めるというような考え方でやっておりますが、なお足らないところはいろいろございます。さらに努力をしなきゃいかぬと思っております。
  493. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 財投原資を賄うためということでこれだけ多額の、五十八年は二兆九千八十億円ですか、政府保証債を発行するわけですけれども、そしてそれによる借り入れを行ってきますと、当然これは資金コストが高くなってくる。ですから、財投原資の原則というのは、低利、長期安定ということでございますので、そういった点の原則が崩れてくる危険があるのじゃないかと思いますが、その点どうでしょうか。
  494. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 大体、運用部の預託金利が七分三厘でございますが、政保債の方が若干高い八%をちょっと切ったあたりでございます。御指摘のような点が徐々に出てまいりますが、一般会計からの支援を得るとか、あるいは料金等々を上げるとか、そういうような努力をしながら、できるだけそういう点がないような努力をすると、片方では。同時に、事業量等々におきましても、財投で見なくても済むようなものを追い出すというような両面の努力を続けていけば、そう目下のところは支障なくやっていけるのじゃないかというようなふうに見ております。
  495. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この財投原資の大半は、郵貯とかあるいは厚生年金等の大衆の積立金でございますし、これは資金運用部に預託を義務づけられているわけですが、この金利が七・三%で来ているわけです。ところが、最近の高金利とか世界的な金利選好の影響もありまして、郵貯あるいは厚生年金の担当省庁では自主運用の希望が多い、こういうことでございますが、その点、郵政省いかがですか。
  496. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申し上げます。  臨調答申で、年金問題につきましてもいろいろな御答申をいただいておりますし、厚生年金、国民年金の一元化とか、将来にわたりまして年金の一元化を図っていけというようなお話があります。同時に、いま御指摘のありました資金をどうするか、こういうふうな問題も答申の中に出ております。私たちの方といたしましては、これを踏まえてこれからやっていかなければならない、こう考えておりますが、厚生年金及び国民年金の統合を今度いたします場合には、まだどのぐらいということは言えませんけれども、常識的に考えまして、いまの年金の給付をいただく方はやはり下げていかざるを得ないということも考えられるし、それから保険料率というのは上げていく、こういうようなことが一般的に考えられる。そういったことになりますと、どうしても余っている金の運用をどんなにやっているんだという話は出てくるわけでございまして、この総体的な考え方を厚生省としてはことしの八月ぐらいにまとめましてお諮りをいたしたい、こういうふうに考えているところであります。  来年、この厚生年金法と国民年金法の改正は五十九年の国会でお願いをする、こういうことにいたしておりますが、国民全体に非常に関心のある問題でございますから、できるだけ前広に、広く国民の御理解をいただくような形でこの問題をやりたい、その中の一環として私の方も考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  497. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) お答えをいたします。  郵貯資金につきましても、収入面における企業会計の責任を明らかにするということ、それからより有利な運用によって郵貯特別会計の財政基盤を健全化したいということで、自主運用を年来求めてきたところでございます。ところで、今回の臨調の答申におきまして財政金融政策の整合性等の観点から統合運用を維持する必要がある、したがって郵貯に与信業務を与えることについては問題があるという指摘を受けておるところでございます。私ども自主運用を求めるにいたしましても、財政金融政策の整合性を図るべきであるという点については否定をするものではないわけでございます。当然、国の資金を預かる者として財投計画に協力をすべきものであると考えておりますので、それらの基本線に立ちながら政府部内で協議をしていきたいというふうに思っております。
  498. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 財政投融資計画に、やはり四十年代と五十年代、非常なこれ違いがいま見られると思うんです。第一点としましては、国債の大量発行に伴う財投計画へのしわ寄せ、あるいは二点目は、社会的あるいは経済的な変化、特に低成長経済へ移行するに伴いまして投資とかあるいは融資機関へのこれはニーズの変化等がございますし、あるいは三番目には、高齢化社会を迎えての厚年原資の有利運用、そういったいろんな主張等がいま行われてきているわけです。  五十年代の財政投融資計画というのは、私たち考えてみますと、一つの曲がり角に立っているのじゃないかと思うんですが、しかし、いままでの政府の財投計画の運用の実情というのは、ややもすると時代おくれで、その場限りの対応策に追われているような感じがするわけです。ですから、財投計画につきましても、これは財政改革の一環としまして、一つには使命を果たし終えた公団、事業団あるいは各種機関の整理統合を進めるなり、あるいは政府系金融機関にしましても、その再編成などが真剣にこれは考えられなきゃならない時代になっているのじゃないかと思いますが、総理、大蔵大臣見解をお聞きしたいと思います。
  499. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさに臨調の最終答申に、いま太田委員の御提示になりましたものがそれぞれ提言という形で盛られております。統合運用の維持、運用面における徹底的見直し、合理化、国、地方、財投機関三者に対する適正な資金配分、それから原資に余裕が生じた場合の国債引き受け、それから安易な政府資金依存の排除と民間資金の一層の活用、資金運用部資金の一層の有利運用にも配慮しろ。そうしたことから、さらにいまおっしゃったスクラップ・アンド・ビルドやサンセット方式を導入する。そして長期・低利、長期的に収支の改善が困難な機関への融資、こういうことで、民間に任しておる分野はもうこの辺できちんとそれこそ分野調整したらどうだ。そういうような提言に加えまして、情報を公開するために厚生保険特会の短期の運用の明示とか、財投計画に対する投融資残高の一覧表を表示するとか、各種資金の使われ方の明示とか、そういうふうなもろもろの提言をいただいております。いまの御趣旨とかなり重複した部分もあるわけでございますので、私どもとしましては一層効率的、合理的な運用というものに心がけてまいりたいと、このように考えます。
  500. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私は、財政投融資計画あるいは資金運用部資金に関しまして、やはりいま改革の原点というのはコスト意識じゃないかと思うわけです。コストを無視して投融資を行って、穴埋めを国民の税金でしていくような時代というのはもう過去のものになったのじゃないかと思うんです。財投というのは、先ほどからいろいろとありますように、やはりこれは有償の資金でございますから、最もこれはコスト意識を持たなきゃならない、それが持たずにある部分で来ている、そこにやはり問題があったのじゃないかと思うんです。その根本に返って、もう一度原則を確認されることが改革の出発点になろうかと思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
  501. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさに公共性、確実性、有利性、これの基本に立ちまして、効率的、弾力的な資金運用を図る、このことが、すなわち、いまおっしゃったいわゆるコスト面から見た御意見に対して沿うゆえんのものになりはしないか。臨調の提言等を十分尊重しながら対応していく所存であります。
  502. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ここに「財政投融資の問題点」と書かれたある本があるんですけれども、これを見てみますと、この財政投融資というのは第二の予算としての重要な意味があると。しかし、制度面から見ますと、この組織というのは官僚機構の拡大にほかならない。しかも、特殊法人の役員というのは政府によって任命され、それぞれ各省の縄張りがある。高級官僚の天下り、横すべりのポスト確保に利用されやすい。このような官僚の利害が特殊法人を新設する動機の一部になってきた。これが官僚組織がさらに肥大化する原因になった。もともとこの特殊法人の設立は、弾力的運用によって行政の効率を高めるという目標を持っていた。しかし、財政投融資による低利の長期資金の導入とその官僚的運営によって経営の合理化、能率化の努力は損なわれると書いてありますね。安易に政治的利害と結びつく傾向を生じてきた。これが一つの大きないま弊害となってきている。これは自治大学校の監修による一冊の本ですけれども、そういった面で、やはり総理、この改革を進めるのは相当なこれは努力が必要じゃないかと思うんですが、そういった点で一つの大きな改革にこれから取り組んでいただきたい、このように思いますが、いかがでしょう。
  503. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調答申にも指摘されているところでもあり、幅広く総合的に検討を加えてみたいと思います。
  504. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、政府関係の九公庫、二銀行について、ちょっと五十年度以降の決算書で流用の状況を調べてみたわけでございますけれども、この流用を調べてみましたら、人件費関係以外にいろんな面での流用が見られるわけです。これは給与改正によりまして給与の財源を捻出する。そのときに退職手当、旅費、超過勤務手当、役員手当など人件費関係だけでなくて、いろんな諸支出金とか業務諸費あるいは業務委託費、交際費からの流用、さらには税金、支払い利息までの流用が行われているわけですが、この点の流用というのはどのようにお考えでしょうか。
  505. 岡崎洋

    政府委員(岡崎洋君) お答えいたします。  給与改善等の経費につきましては、その原資といたしまして、改善が年度途中に行われる場合には、まず一般会計と同様に既定経費の削減、あるいは不用見込み額で対応していくというのがまず第一の基本でございます。それでもなおかつ足りない場合には、人件費系統のほかの科目から流用をしてそれに対応する、さらにそれでも不足する場合は予備費でこれに応ずる、それでも足りない場合には補正予算をお願いして御審議を受ける、こういう手続、手順になっておりまして、その年々の金額等、状況に応じまして所要の手順を踏んだ手当てをいたしておるところでございます。
  506. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほども申し上げましたように、決算書を見てみますと、人件費関係以外にも業務関係費とか支払い利息あるいは税金などの流用が見られるわけですけれども、この支払い利息というのは財投による資金運用部等からの借入金の利息じゃないかと思うんです。あるいは資金運用部の貸付金利が不動であったり、あるいは逆に金利が上昇しても支払い増になって支払い利息からの流用が行われている場合があるわけですけれども、非常にわかりにくくなっておりますけれども、こう見ますと、支払い利息というのは常に高目計上になって、給与改定のための財源になったり、あるいは税金も給与改定のための財源になっているようにわれわれに思えるわけですが、その点はどうでしょうか。
  507. 岡崎洋

    政府委員(岡崎洋君) 支払い利息につきましては、各機関の予算をつくりますときに、その予算編成時の状況、それから貸し付け規模のボリュームその他を厳密に検討いたしまして、予算の査定を受けてそれぞれの予算ができるわけでございますので、その時点におきましては適正な金額が計上されているわけでございます。ただ、御存じのとおり政策金融でございますので、年度の仕事自体はそのときどきの民間の金融情勢等によってかなり変わります。資金需要が落ちた場合、あるいはひどい場合には金利が安くなってまいりますと期限前償還というような形で、いろいろ年度途中に新たに生じてまいります事情によりまして、資金の金利、ボリューム等に変動が出てまいります。したがいまして、予算で計上しております支払い利息よりも少ない金額で実績として済むということはあるわけでございますので、そういう事情のときにはその支払い利息の項目から流用さしていただいておるということでございます。
  508. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ですから、その流用をいろいろしてはいけないということではないんですけれども、あるいは給与を改善してはならぬということではないんですけれども、いろんな面でみだりにそういうことが行われ過ぎているんじゃないかということです。こういったやはり人件費につきましても、ゆるい会計処理を行っていますと、人件費コストについての意識が失われて適正な経営というものが損なわれてくる面があるんじゃないかと思うのです。そういった面で、流用について明確な基準をつくって、補正予算に計上するなり、あるいは予算総則を改めるとか、そういった点の努力が必要じゃないかと思うのです。三公社につきましては、これは給与とか交際費について一段と厳しい予算総則がつけられておりますし、各公庫あるいは各銀行におきましても、これまでの予算総則を改めて、大臣と、あるいは大蔵大臣と協議承認とか、あるいは給与枠の設定とか、流用の範囲というのはやはり明定をして、せめて三公社並みの総則に改めることが必要じゃないか、それがまた行革の本旨に沿う基本的な条件じゃないかと思うのですが、その点どうでしょうか。
  509. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 輸開銀公庫の給与改善に充てるための流用の問題でございますが、まず給与の方は国家公務員並みということで厳正に処理していると伺っております。  それから流用につきましては諭開銀法、公庫につきましては公庫の予算決算等に関する法律によりまして大蔵大臣の承認事項になっておるわけでございます。すべてではございませんが、給与等に関係するものは大蔵大臣の承認事項になっているわけでございまして、大蔵大臣と申しますのは私ども主計局が事務を取り扱っておりまして、厳正にケース・バイ・ケースで処理しておると申し上げてよろしいかと思います。
  510. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ケース・バイ・ケースで厳正にやっておるということでございますが……
  511. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 残念ですが時間が参りました。
  512. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その点の、いま申し上げたことは三公社についての構想と同じような原則に改めることができないかということですが、その点どうでしょうか。
  513. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 法制としては同じなんでございますが、三公社の場合には給与の決定方式がいわゆる公共企業体のやり方でございます。公庫それから二銀行につきましては労働三法が適用になるということでございます。その違いがございまして、三公社につきましてはさらに給与総額制の制約があるという点が違っていると思います。
  514. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で太田淳夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  515. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、山田譲君の総括質疑を行います。山田君。
  516. 山田譲

    山田譲君 私は、最初まず政府がおつくりになった経済見通し、主要経済指標のうちの国民総生産にかかわる部分ですね、これをいろいろお伺いしたいと思うわけでございます。  まず最初に総理にお伺いしたいんですけれども、経済見通し、いろいろおつくりになっていますが、これについて、つまり余り長い期間は別としまして、少なくともことしはこうなるであろうというふうなお見通しにつきまして、それは経済の見通しでありますから、経済は生き物だということで変わることもあり得るというのは当然わかっておりますけれども、それはそれとして一応おつくりになっているわけですから、これについてことしどういうふうになるであろうということについてのまず総理の基本的な考え方をお伺いしたいと思うのです。
  517. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五十八年度予算編成の際に、本年度の経済見通しをいろいろ策定してもらいました。簡単に申し上げれば、GNPは大体三・四%程度であるというふうに考えておりますが、具体的な点は企画庁長官から御答弁申し上げます。
  518. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) ただいま中曽根総理からお答え申し上げましたように、私どもは五十八年度の成長率は三・四%と見ているのでございます。そしてまた、その内訳は内需中心の成長と考え、内需は二・八%、外需が〇・六%、このように見ておりますし、それは一つの経済の回復過程を前提といたしまして生産、雇用等について見積もったところでございまして、私どもはもう三・四%程度の成長はぜひとも達成しなければならないと思いますし、また達成可能と考えております。
  519. 山田譲

    山田譲君 これからいろいろ中身に入っていくわけでありますけれども、一応御注意願いたいのは、私は名目についてこれからいろいろ御議論願いたいと思うんです。とりわけ最近のように物価が一応落ちついているというような段階ですから、やはり名目でお話しした方が確実のお話ができると、こういうことでございますから、その点御留意いただきたいと思うんです。  最初に、まず民間住宅についてでありますけれども、民間住宅が政府の見通しによりますと四・三%というふうなことになっておりますけれども、これが果たして実現可能であるかということをお伺いしたい。それと同時に、何万戸を大体考えていらっしゃるか。去年あたりよく河本長官が百三十万戸というふうなことを言われましたけれども、それに見合うやっぱり同じような数を考えていらっしゃるのかどうか。それから五十七年度の実績が幾らになっているか。こういう点をお伺いしたいと思うんです。
  520. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) なお詳細な数字につきましては政府委員から答弁をさせていただきたいと思いまするけれども、民間住宅投資について私どもは大体五十七年度と同じぐらいの建築戸数、つまり百十四万戸ぐらいというふうに考えているところでございます。昨今、一月の建設状況は大変好調でございましたが、五十八年度につきましては百十四万戸ぐらいと見ております。それもどうも昨今調子がいいようでございますので、しかもまた政策的な裏づけがございますので、達成はできるのではないか、こんなふうに考えております。
  521. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 住宅着工でございますが、先生御存じのとおり五十六年度は百十四万三千戸でございましたが、今年度はただいま大臣から御説明申し上げましたとおり若干これを上回るんではないかというふうに見ておりますが、来年度につきましては着工戸数の面ではおおむね五十六年度並み、その前後はないかというふうに考えております。ただ、同時に最近の傾向といたしまして、いわゆる増改築が多うございますし、いわゆる質的向上という意味で面積がふえる、あるいは単価が少し上がるというような形で、先生の御指摘の民間住宅、名目での伸びはおおむね達成できるのではないかというふうに考えております。
  522. 山田譲

    山田譲君 この問題は私はこれ以上深くあれするつもりはありませんので、私としてはなかなかことし以上にふえるというふうなことはむずかしいんじゃないか、いろいろ要素を考えましてもね。それはまあ一応そこにおいて、先に進みたいと思います。  その次に民間の設備投資でありますけれども、これが三・九%というふうなことになっております。しかし、実際にいろいろなデータを見てみますと、あるいはまた日本開発銀行あたりもはっきり言っておりますけれども、かなり下回っている。たとえば最初は五・五%だったものが一・八%に下方修正せざるを得なくなった、こういうふうなことで、全産業の下方修正が五年ぶりと言われるくらい下がっている。そういうふうなことになりますと、果たして政府考えていらっしゃるように民間設備投資がこれだけ三・九%ふえるかどうか、これについてはいかがでしょうか。
  523. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、来年度の見通しの中で最も何と申しますかむずかしい要素を示しておりますのは民間企業設備投資でございます。五十七年度は大企業が比較的好調でございましたが、中小企業は大変悪かった。いまおっしゃったように五十八年度は下方修正のような計画が盛んに伝えられております。しかし、これも経済の回復過程をどのように見ていくか、さらにまた原油の価格の引き下げによるところの企業の収益をどのように評価するか、さらにまた御案内のように金利水準、いまのような高い水準ではなかなかむずかしいところでございますけれども、金利が下がることも私は期待はできるんではないか。こんなような要素を見まして、まあ不確定要素は多いわけでございます、むずかしいところでございますが、いまのところはこのような見通しを持ち、しかも中小企業については投資減税等を行って誘因措置を講じているところでございます。
  524. 山田譲

    山田譲君 このお話もこれをおつくりになったときの話をしていただきたいと思うんですね。その後もいろいろ経済変動はありましたけれども、それを言い始めるとこの数字のもとが狂ってくる。ですからこれをつくった時点でいろいろお話をしていただきたいというふうに思うんです。民間設備投資につきましてはいまお話のありましたようなことでかなり楽観的な考えでいらっしゃるんじゃないかというふうに思いますけれども、私はさらに先へ進みたいと思います。  その次に輸出の問題でありますけれども、確かに最近米国の国内のたとえば自動車販売台数というふうなものもふえておりますし、それから住宅投資の増加というふうな傾向も明らかに見られる。これは事実でございます。しかし、これが直ちに日本の輸出に結びつくかというと、必ずしもそうでないと思うわけです。つまり日本から輸出の大宗と言われていた自動車、それから鉄鋼というふうなものが、これがそう簡単にアメリカの方がよくなったからといって輸出が伸びるかということが非常に懸念されるわけであります。それで現に非常に鉄鋼の問題にしても下がっている。そしてまた、とりわけシームレスパイプというふうなものも、これは非常に鉄鋼としては重要な地位を占めていたと思うんですけれども、これがアメリカの方が需要が減ってきている、石油の問題に関連してだと思いますが。こういうことになりますと、自動車も恐らく頭打ちでしょうし、それから重要な鉄鋼もこれ以上ふえない、むしろ減る傾向にあるというふうなことになりますというと、果たして米国の経済がよくなったからといってそのままストレートに日本の輸出が伸びていくかどうか。それはほかのたとえば電機だとか家電みたいなもの、ああいうものはふえるかもしれない。しかし、何といってもすそ野の広がりの広いのは自動車あるいは鉄鋼というふうなものでしょうから、これがもし減るということになれば、あるいはふえないということになれば、これはそう簡単にアメリカが好景気になったからといって日本も好景気になるというふうには言えないと思うんですけれども、この辺はいかがでしょうか。
  525. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、私どもも輸出に対して大きな期待は持っていないところでございます。自動車の輸出規制は依然として自主的な形でございますけれども進んでおります。しかし、昨今アメリカ経済の回復に伴いましてぼつぼつと在庫の減を補てんする意味での引き合いがふえつつあるというようなことを、引き合いの形でふえつつあるようなことを聞くわけでございます。しかし、私どもは輸出に対しては過大な期待を置かないつもりでございます。内需中心の需要の拡大でまいりたいと思っているところでございます。
  526. 山田譲

    山田譲君 そこで、国民総生産に非常に大きな影響を及ぼすと見られている以上のようなもろもろの要素が、長官はかなり楽観的なお見通しを言っておられますけれども、私たちとしては必ずしもそうは考えられない。そこで、いま内需のお話が出ました。内需の方の国民最終消費支出について見ますと、政府の見通しは七・四%ということを言っておられます。それで、言うまでもありませんけれども国民総生産に占める民間最終消費支出というのは大体六割と言われておりますね。それですから、民間最終消費支出が非常に多くなれば当然国民総生産もふえていく。つまり、国民総生産に占める民間最終消費支出の役割りというのは非常に高いというふうに言わざるを得ないと思うんです。  そこで、従来の傾向を見ましても、確かにずっと十年くらい見ましても、国民総生産の伸びと民間最終消費支出の伸びというのはほとんど一致しております。二・二ポイント以上違っているところというのは非常に少ない。特別にオイルショックのあった年は別でありますけれども、その他ほとんど大体同じ状態でずっと推移してきております。ですから、先ほどお話ありましたように、民間最終消費支出の問題が国民総生産に非常に大きな影響を及ぼすということは事実であろうと思うんです。  それで、それじゃ民間最終消費支出が一体どういうふうにすれば伸びるか、どういうふうにすれば計算上出てくるかということでありますけれども、いまさきにお話ししましたとおり、たとえばいろいろ考えられる要素、住宅であるとか、それから海外景気というふうなものがなかなか思わしくない。そうなりますと、こういう条件の中で一体どういうふうに最終消費支出を伸ばすような方法が考えられるか、こういうことでありますけれども、その点についていかがでしょうか。
  527. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 山田委員も御案内のように、消費支出によって内需を拡大する根本的な原因は、私はまず第一に雇用者所得の増大だと思います。第二は消費者物価の安定、この二つの面が大きな要素だと思います。しかし、その雇用者所得の増大、これはやはり何といたしましても、経済が全般的に活発になること、特に企業収益が回復し好調になっていくことによって、私は雇用者所得の増大が見込まれると、こんなふうに考えております。
  528. 山田譲

    山田譲君 そこで、雇用者所得の伸びにつきましては、政府の方の試算といいますか、表によりますと、六・六%というふうなことになっております。一体これはどういうふうにして出された数字か、この点をお伺いしたいと思うんです。
  529. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 一人当たりの雇用者所得でございますが、六・六%の伸びが、一人当たりの雇用者所得が五・二%伸びまして、雇用者総数が一・三%伸びる、全体としまして六・六%伸びるということでございます。
  530. 山田譲

    山田譲君 それで春闘の問題でありますけれども長官は前のいろんな衆議院での質疑応答のときにも、雇用者所得というのはマクロ的に見ている、経企庁は。そうして春闘で対象となる雇用者所得はその半分ぐらいだというようなことでありますけれども、いずれにしても春闘のベースアップが幾らになるかということとは関係ないんだというふうなことを衆議院で言っておられますけれども、それは本当に関係ないというふうにお考えかどうかですね。
  531. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 全く関係がないと私は申したのではございません。春闘の対象となりますところの賃金と私どもの見ておりますところの雇用者所得においては、たとえば雇い主負担の社会保険料負担、これらについての違いがある。さらにまた、カバレージの範囲も違っておる。したがって、春闘そのものが直ちにこの雇用者所得の増減率等に影響するものでは——影響はいたしまするけれども、それによって支配されるようなことはないと、こんなつもりで申し上げたのでございます。
  532. 山田譲

    山田譲君 わが党の衆議院の佐藤委員の質問に答えて、「たびたびお答え申し上げましたように、この雇用者所得の見込みは、春闘のベースアップが幾らになるかという見通しとは関係はございません。」こう言っておられるわけですから、いまのお話とちょっと違うように思うんですけれども、その辺いかがでしょうか。
  533. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 少し舌足らずかと思います。直接の関係はございませんし、私どもの見通しは、春闘がどうなるかということを推測いたしまして立てた賃金の上昇率ではございません。マクロ的に見ました、しかもまた、鉱工業生産がこのようになればこの程度になるであろうという、かつてのモデルから出たようなマクロ的な見方である、こういうことを申したかったのでございますが、舌足らずであった点はあるかもしれません。
  534. 山田譲

    山田譲君 私は、やっぱり春闘のベースアップというのは、非常に雇用者所得の伸びや最終消費支出の伸びに対して影響があるというふうに思うわけです。ですから、そういうことで私は一つの試算をしてみたわけでありますけれども、その結果をちょっと見ていただきたいと思うんです。済みません、ちょっと資料をお願いします。    〔資料配付〕
  535. 山田譲

    山田譲君 これごらんになっていただきたいと思うんです。  まず、左の方がずっと過去十六年の春闘の賃上げ率、それから雇用者所得の伸び率、それから民間最終消費支出、こういう関係がずっとこれで一目瞭然でおわかりになると思います。これは事実をそのままここに書いてみたんです。  そこで、私はこの相関関係をひとつ調べてみようと。ですから、先ほど長官のお話じゃありませんが、やはり相関関係として民間の春闘の賃上げ率が相当最終消費支出に影響するということを、その相関関係を調べてみたわけであります。この基礎データに基づいて、右側にあります試算をやってみた。これは最小自乗法という統計の手法を用いまして、そして推計をしてみたわけであります。  そうしますと、ここの2のabとありますが、こういう関係が出てきた。つまり雇用者所得につきましては、aにありますように定数項——これ‐は最小自乗法によって出た数値であります。これとこの係数、これも同じでありますが、これに掛ける春闘の賃上げ率、これと足したものが雇用者所得になる、こういう式が出てきた。で、bの方は、これは最終消費支出の、cpというのは最終消費支出でありますが、これがこういう数式が出てくる。これがつまりこういう関係があるという関係を調べてみたわけであります。これだけでは多少正確でないところもあるものですから、これを3というふうな方法によって多少修正をいたしました。これも統計上の手法によってこういう修正をしてみたわけであります。  これで数値を置いてみる。そうすると、最終消費支出は、政府の場合は七・四%というこの見通しではなっているわけでありますから、これに当てはめて逆算をしていくわけですね。そうしますと、下の括弧に、升に書いてありますように、こういうふうな数値が出た。つまり、ことしの春闘の賃上げ率が三%であるとすれば雇用者所得が二・九二になる、そして民間最終消費支出は五・〇四と、こういうことであります。  以下、賃上げ率が四、五、六、七、(七・四)とありますが、こういうふうになるに従って雇用者所得はこうなり、それから最終消費支出の方はこういう数値になる、こういうことでございますね。ですから、いま仮に、一番下の括弧のところですが、政府の言っていらっしゃる七・四というのをここに当てはめます。逆算をすると、雇用者所得が六・六、これはたまたま政府のあれと全く一致したのでありますけれども、後が問題ですね。そうすると、どうしても春闘賃上げ率というのは七・四という数値になる。ですから、ことしの春闘は、逆に言いますと、七・四%であれば雇用者所得は六・六になるし、最終消費支出は、この政府の見通しのとおり七・四になりますと、こういうことなんです。長官、わかりますか。わかりますね。そうすると非常に、ことしの春闘が七・四%というふうなことにならなきゃ政府の言うような七・四という数値にならない。  そこで労働大臣にお伺いしますが、ことしの春闘の要求額というのはどのくらいになっていますか。
  536. 大野明

    国務大臣(大野明君) 労働団体の要求は七%前後、おおむね七%ということでございます。
  537. 山田譲

    山田譲君 大体要求はみんな七%台ですね、各団体とも。そうしますと、要求どおり満額出た場合にはこの七・四%という消費支出が出てくる、こういうことなんです。しかし、いままでの例からして要求額が満額出たというためしはないわけですが、それとも政府が七・四%にするために賃上げ率も七・四%にするように指導するとかという話なら別でありますけれども、そういうことはまさかなさらないと思うんですね。そうするとどうしても——どの辺で決まるかもちろんわかりませんけれども、いずれにしても満額七%というものがとられない限りは、消費支出七・四%というのはなり得ないということが私の計算で出てきた。  ここでお伺いしたいのは、これについてどうお考えになるか。あなた方が計算されたこの七・四%というのは一体これと違う計算から出されたのかどうか、そこをお伺いしたいと思うんです。
  538. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 大変貴重な計算をいただきまして、私どももこの計算をぜひとも参考にさして、研究さしていただきたいと思いますが、何分ただいまいただいたばかりで、まだ十分検討いたしておりません。1の「推計に使用したデータ」、それとこの右側の「五十八年度民間最終消費支出予測」、これらについてひとつ十分検討さしていただきまして、また御返事できればと思っておるところでございます。
  539. 山田譲

    山田譲君 これはいま突然お渡ししたものですから、たしか、これは今後いろいろ御検討いただきたいと思うんです。ただ、長官の方が七・四と出していらっしゃるわけだから、この根拠はどこから出てきたかということをお伺いしたいと思うんです。
  540. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) まず最初に、この先生の推計式について若干私どものコメントをさしていただきたいと思いますが、用いられているデータを拝見いたしましても、年によりまして春闘賃上げ率が雇用者所得より高い場合もございますし低い場合もございます。したがいまして、最小自乗法によって平均化したのではないかというふうに思いますが、雇用者所得と春闘賃上げ率はそのときの景気の情勢によって違ってくるという点が一つあろうかと思います。  それからもう一つは、先生の推計式では、雇用者所得は雇用者の総数が加わっておりますので、いわゆる一人当たりの雇用者所得よりも高く出ているということもございます。先ほど五十八年度では、六・六のうち一・三が雇用者総数の増加であるというふうに申し上げましたが、たとえば五十七年度は雇用者総数が一・四%ふえておりますので、一人当たりの雇用者所得としては四・八%の伸びにとどまっているということでございます。したがいまして、私どもとしては春闘賃上げ率と仮に雇用者所得の関係を見るとしても、一人当たりの雇用者所得と春闘賃上げ率を見るのがむしろ相関の関係としては適当ではないかという感じがいたします、とりあえずのコメントでございますが。  それから、七・四%の伸びの計算でございますが、先ほど申し上げましたように、雇用者総数は六・六%の伸びというふうに考えておりますが、他方、これを可処分所得に直しますと、これは国民経済計算ベースでございますが、六・八%程度の伸びということでございます。他方、平均消費性向がこのところ若干高まっておりますので、五十七年度としては平均消費性向約八二%、これは国民経済計算ベースでございますが、と見ておりますが、それは若干上回るというふうに見ておりまして、その結果、消費支出としましては五十七年度に近い七・四%程度になるんではないかというふうに想定しているわけでございます。
  541. 山田譲

    山田譲君 いまのお話について、私の方もこういう式を出したわけだから、この七・四%の根拠、なぜこういう数字が出たかという式を後で、私は一般質問のところでもこの辺御質問したいと思いますけれども、お示しをいただきたいと思うんですが、いいですね。
  542. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) ただいまも申し上げましたように、私どもの推計は関数式だけではございませんで、雇用者所得の伸び、それから消費性向といったところから消費の支出の総額を出しているわけでございまして、それがただいま申し上げましたような内容でございます。
  543. 山田譲

    山田譲君 だから、それをちゃんとした式にして出してくださいと言っているわけですよ。いいですか。
  544. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) ただいま申し上げましたような相互の関係については数字をお出ししたいと思います。
  545. 山田譲

    山田譲君 それでは経済見通しにつきましてはその程度でやめておきます。  それから、次に予算の方に入っていきたいと思うんですが、ちょっと済みません、資料を配っていただけませんか。    〔資料配付〕
  546. 山田譲

    山田譲君 こういうグラフを書いてみました。  これに入る前に、まず大蔵省のおつくりになった「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」というものが示されておりますけれども、これ読めばこのとおりだと思うんですが、もう一遍これについて大蔵大臣から基本的な考え方をお伺いしたいというふうに思います。
  547. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今後の財政改革に当たっての基本的な考え方と、こういうことにつきまして、前の臨時国会の際にお約束をいたしまして、まず五十八年度予算編成を第一歩としてこれをしるしたいと。したがって、まず最初に五十八年度予算編成に当たっての従来にも増した厳しい態度における歳出削減と、こういうことを申し上げておるわけであります。それを一歩として、そして特例公債からの脱却を図り、最終的にはやはり公債依存度自体を下げていくと、こういう方向に向かって進まなければならぬと、こういうふうに申し上げておるわけであります。  次に申し上げておりますのが、いわゆる今後の歳出構造の見直しの問題について申し上げております。すなわち、個人または企業の受け持つ分野、あるいは地方自治体の分野、あるいは国そのものの受け持つ分野、そのようないわば分野調整とでも申しましょうか、そういうことから、深くその政策、現行のこの制度、施策の根源にまでさかのぼって徹底的な歳出構造の見直しをしていきたいと、こういうことを申し述べております。それから次は、歳入面におきまして、いわば今後とも公平、合理的な税制そのものについて申し述べておるわけであります。  そういう方向でこれから進んでいくについて、最後にいわばそれがためには試算も提出申し上げておるわけでございますが、やはりある時期にこの赤字公債からの脱却ということをお示し申し上げなければならぬと、当面は数年と、こういうことで申し上げておるというのが財政改革に当たっての基本的な考え方のあらましでございます。
  548. 山田譲

    山田譲君 大体全体のお考えわかりましたけれども、(「山田先生、あんまりわかったわかったと言っちゃだめだよ」と呼ぶ者あり)わかりましたというのは、向こうの言うことはわかったという意味なんで、これからまたわからないところを質問するわけです。  最初にこの中に入りますが、「行財政の守備範囲の見直し」ということを言っておりますけれども、これは具体的にどういうことかお聞かせいただきたいと思います。
  549. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やっぱり御指摘を受けました問題、臨調等、あるいは本院の予算審議等について御指摘をいただきました点を一つ一つ洗ってまいったわけでございますが、今後はさらに、これは地方あるいは個人に帰すべき問題、あるいはこれはまさに自治体に属すべき問題、国自身に属すべき問題と、こういうことを一つ一つ検討していきたいと。そこでそれは何を対象にするかとおっしゃいますならば、財政制度審議会の御意見なり、そしてさらには今度三十二項目でございますかにわたって御指摘をいただいております臨調の最終答申の項目、これらが私どもが真剣に守備範囲を含めて取り組むべき課題であるというふうに考えております。
  550. 山田譲

    山田譲君 その次に「歳出・歳入構造の合理化・適正化」ということを言っておられますけれども、これはどういうことを考えていらっしゃるか。現状はどうであるかと。現状についてはいいとか悪いとか、あるいはそれをこういうふうに持っていきたいとかということが恐らく大蔵側にあると思うんですけれども、それはいかがですか。
  551. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさに歳入、歳出の適正化で、最終的には受益者も国民であればまたいわゆる負担する者も国民でございますので、それをきちんと踏まえた上で、歳入、歳出という両面から予算全体というものを一つ一つの項目について見直していこうと、こういう考え方であります。
  552. 山田譲

    山田譲君 それから、公債依存体質から脱却するというふうなことを言っていらっしゃいますけれども、前から聞いていますと、数年であると、数年とはセブラルイヤーズだというふうに言っておられます。  そこで、政府から出されたこの資料、これを見まするというと、「国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算」というやつで見ますと、これはもう五十八年から七十一年までに公債がどのくらいふえていき、あるいはまた特例公債がどのくらい、四条公債がどのくらいというやつがずっと表が出ておりますね。これで見ますると、これはもう明らかなように六十年代から膨大な借金を返していかなきゃならないと、こういうふうなことになっております。それで、こういう数字、多いときは百三十兆になっているけれども、これ一体どのように返していくのか、これをぜひお伺いしたいと思うんです。
  553. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘のとおりでございます。いわゆる要償還額というものがお示しいたしましたとおりに累年ふえてまいりまして、六十年からはまさに十兆を超すということになるわけでございます。  これにつきましてどうするかと、こういうことになりますと、それは非常に一般論で言えばまあ三つの方向があると思うのであります。すなわち、徹底した歳出削減というものをもってこれに充てなければならないということ。それはすなわち予算繰り入れにもつながることでありますが、また一方におきまして借換債という問題、あるいはまた負担増という問題と、この三つが考えられるわけでございますけれども、私どもといたしましてはこの問題についてはまさに中長期的な課題としてこれをとらえて、今後真剣に検討していかなければならないと。公債の持つ信用性の維持という点からいたしまして、もちろん国民の皆様方にお返しするのはこれは現ナマでお返しするわけでございますから、まあそれが償還方法につきましては今後の課題として真剣に考えていかなければならない課題であると。そして、三つと申しましたが、いわば負担増あるいはその借りかえというようなことに安易に念頭にこれを置くべきものではないという基本的な考え方は持っております。
  554. 山田譲

    山田譲君 それはやはりこの段階ではっきりして……  済みません、委員長、ちょっとぐあい悪くなったんで、休ましていただきます。
  555. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  556. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  557. 勝又武一

    ○勝又武一君 委員長
  558. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 勝又武一君の関連質疑を許します。勝又君。
  559. 勝又武一

    ○勝又武一君 質問者の同僚山田君の突然の事故でございまして、大変関連質問をやりにくいわけでありますが、二つ、三つお伺いしたいと思います。  大蔵大臣に伺いますが、直間比率の見直しということを再三言っていらっしゃいますが、その本当のねらいと中身は何でしょうか。
  560. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる直間比率の見直しという問題につきましては指示したこともございませんし、具体的に検討しておる事実もございません。ただ、私がたびたび申し上げておりますのは、この客観的事態の推移とでも申しましょうか、昭和五十四年当時は直間比率の見直しと言えば直ちにいわゆる一般消費税(仮称)の導入ととらえた。しかし、その後税制調査会の五十五年十一月の中期答申以後、あるいは五十六年、五十七年、そうしてまたこのたびの臨調の最終答申というようなところでも検討課題として上るようになったと。したがって、やはり私どもの立場からいたしますならば、そういう問題は環境がずいぶん違ってきたという意味において絶えず申し上げておるわけでございます。直ちにこれを具体的に検討しておるという事実はございません。
  561. 勝又武一

    ○勝又武一君 大臣のお考えになっているうちで、この臨調答申の中にあります租税負担率を押し上げないということと、それからこの直間のバランスの是正なのか、あるいは税収増ということを図りたいのか、あるいはほかの目的がおありなのか、その辺はどうなんでしょうか。
  562. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この臨調答申、御指摘のとおりでございます。私ども、いわばこの臨調答申においては歳出削減というような点につきましてはずいぶんそれそれ具体的な御指摘をいただいておるわけでございます。しかし、一方歳入の方におきましては、いまお述べになりましたように、租税負担率、当面租税負担率というもの、増税なき財政再建の意義として租税負担率というものがうたわれ、一方また所得税の課税最低限、そうして税制効率とともにいわゆる直間比率の検討というものがうたわれておるわけでございます。したがって、やはり私が考えますのには、臨調におかれましては、いわば財政、いわゆる行政改革のてことしての姿勢をこの二つの点において求められて、具体的な問題については従来からございます政府税調と、そういうところに具体的な問題は判断をゆだねられておる問題ではないかと、こういうふうに考えております。
  563. 勝又武一

    ○勝又武一君 先ほど夕刊を読みますと、きょうの午前中衆議院の大蔵委員会が開かれまして、いまお話のありました政府税調会長の小倉武一氏がこの点に関連して意見を言っておりますが、その中身はどういう中身であったでしょうか。
  564. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 本日、衆議院の大蔵委員会参考人意見で税制調査会長の小倉先生が御世席になったことは承知しております。いろんなやりとりがあったことは承知いたしておりますが、公式の記録を私ども入手しておりませんので、小倉会長のおっしゃったこと、ここでそれを土台に議論になりますと、正確を期する意味では、小倉会長が何をおっしゃったか、いまの時点では私どもきちんとした記録がないということでひとつ御理解を賜りたいと思います。
  565. 勝又武一

    ○勝又武一君 そんなことはありませんよ、委員長。衆議院の大蔵委員会でしょう。大蔵省のだれが出ていたんですか。責任ある方が出ているわけでしょう。おかしいじゃないですか、それは。新聞にはちゃんと出ていますよ、きょうの夕刊に。
  566. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 主税局の別の政府委員出席いたしておりますが、本人はいまここにおりません。私は予算委員会の方におりまして手分けして参っておるものでございますから。
  567. 勝又武一

    ○勝又武一君 重大問題が出ているのですよ、重大問題が。「大型増税」と出ているのだ。
  568. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) お立ちになってお願いします。
  569. 勝又武一

    ○勝又武一君 答えさしてくださいよ、大臣
  570. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やっぱりここでこのように御審議いただいておりますと、私もこの席をみずからの席としてちゃんと確保をいたしてお答えをいたしておりますし、新聞ももとより読む暇もございませんし、どういうことでございましたかわかりませんので、いますぐそれに対してのコメントを求められましてもいささかこれは無理な話じゃないかなと、こういうふうに思いますので、その問題については出席しておった、手分けしておった者が来たといたしましても、やはり国会の議論ともなれば、ただ一般論として申し上げるなら別でございますが、その内容を把握してからお答えするというのが本当でございましょうから、ことで私の勘でお答えするのはどうも不適当だと思いますので御容赦をお願いいたします。
  571. 勝又武一

    ○勝又武一君 なぜ関連に立ちましたかといいますとね、私は十五日の日にこの問題でずいぶんくどくお聞きをいたしました。増税なき財政再建について、増税はしないかどうか、増税しかないんじゃないか、大型間接税しかないんじゃないかということをお聞きをしたら御否定をなさった、皆さん。ところが、これには税調会長が大型間接税を、大型増税を示唆するということを午前中の衆議院大蔵委員会で言っているわけですよ。大臣はいかがですか。
  572. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私はたびたび申し上げておりますように、お示しいたしておる中期試算等を見てもその要調整額というものをどのようにして見出すかということはそれこそこの国会の貴重な問答などを通じながら、財政審あるいは歳入面においては税調等の意見を承って、今後決めるべき問題である、こういうふうに申し上げておるわけであります。  ただ、内容を聞いておりませんので、よく示唆したと書かれますのは、私がいまと同じことを言った場合にも間接税増税示唆と書かれたこともございますので、示唆という言葉はまたきわめて微妙な言葉であるというふうにも考えられるわけであります。
  573. 勝又武一

    ○勝又武一君 出席局長が来ませんので、この新聞を読むしかありませんが、行政サービスを低下させず、歳入増を国債依存で賄わないとするならば、消費税、資産税、法人税で増税をやるしかないということを言っているわけです。  そこで、お聞きをしたいのは、間接税の大増税をやる場合に、これは従来の物品税とか酒税とかという個別消費税以外になるというふうに私は思いますが、これはいかがですか。
  574. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは何になるかということはにわかに断定できませんが、いま新聞をお読みになった限りにおきましては、現行の制度、施策をそのままに置いた前提においてということでの議論ではなかったかなあと、こういう感じがいたします。私どもは、いまさて、いわゆる直間比率といろいろ言われておりますが、どういうものを対象にして間接税を検討するかということはいまだ検討もいたしておりません。
  575. 勝又武一

    ○勝又武一君 十五日の議論を繰り返すつもりはありませんが、国債に依存をせずに歳出の行政サービスを低下させない、つまり私がよくお聞きした一般歳出の削減をしないということと同じですから、とてもこれは一兆以下ではない、相当、三兆とか五兆という大幅な大型の間接税になる、こういうふうに私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  576. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) どうも仮定の事実で議論をするようでございますが、いわゆる現行の施策、制度すべてそのままでという前提の御議論ではないかなあと思っておりますので、それについて何になるか、こうおっしゃっても、ここでお答えするのはかえって非礼に当たるんじゃないだろうか、委員に対して非礼ではないかと思います。
  577. 勝又武一

    ○勝又武一君 トーゴーサンとかクロヨンとかシチゴサンというのがありますが、特にこの給与所得者に対する納税の公平の原則から言いまして、給与所得者の必要経費とか源泉徴収とか申告制度とか、そういうことに対する検討の用意はございますか。
  578. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 現在、税制調査会におきまして特別部会が設けられております。申告納税制度について基本的な検討を加えられておりますが、それは主として給与所得者との関連において世上、事業所得者の所得の捕捉についていろいろ議論があるものでございますから、その辺をいかが検討するかということで現在検討作業が進められております。  いま委員が御指摘になりましたのは、給与所得者の現在の所得税制についてどうかという御議論でございますが、これは再々大蔵大臣がお述べになっておりますように、五十八年度の税調の答申におぎましても、課税最低限、それから税率構造について税制調査会でも五十九年度以降、基本的な見直しをなるべく早くやりたいというふうな問題意識を持っておられるわけでございます。その過程におきましては、課税最低限を構成いたしますものは人的控除でございますし、給与所得控除でございます。税率構造の問題もございます。この点についてもちろん抜本的な検討が行われるわけでございますけれども、しかし、いま当面、それでは給与所得控除が直ちに下げられる方向で議論されるかどうかという具体的な予断は私どもは一切持っていないわけでございます。
  579. 勝又武一

    ○勝又武一君 必要経費のことだけ、一つだけ、特に必要経費。
  580. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 給与所得控除につきましては、従来これは給与所得者に固有の経費の概算控除であるとともに、他の所得と比べました場合の給与所得者の担税力と申しますか、そういう観点からの負担の調整ということも加味して、いまの額が設定されておるということでございます。ただ、いろいろ御異論はあるわけでございますけれども、諸外国の給与所得者に認められております必要経費の諸制度等見ました場合に、わが国の現在の経与所得者の概算控除の制度は、決して経費の控除性という水準から見れば遜色のない制度であるということは一般に言われておるわけでございます。ただし、現在の概算控除の制度が今後どういうふうになるかということはもちろんわが国の社会の実態の中での給与所得者の地位等わが国の判断として議論すればいいわけでございますけれども、国際的に見てわが国の現在の給与所得制度というのは遜色のない制度であるという評価は受けておるわけでございます。
  581. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 山田君の残余の質疑は後日に譲ります。     ─────────────
  582. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、赤桐操君の総括質疑を行います。赤桐君。
  583. 赤桐操

    赤桐操君 私は総括質問に入りまする前に、まず一つお尋ねをいたしたいことがございます。  それは、総理並びに国家公安委員長に伺いたいと思いますが、現在、御承知のとおり、北海道におきましては知事選の真っただ中でございます。いま、この知事選の中で道庁マシンという大変注目されている組織がフル回転をしているわけでございますが、この道庁マシンというのは北海道庁の幹部が中心になって全道の選挙対策を事実上取り仕切っているわけでありますが、この悪名高い道庁マシン、これについてお伺いをいたしたいと思います。  こうした選挙の対策を目的といたしまして道庁の幹部が組織化され、道庁マシンとまで言われるそういう大変な活動をしておるわけでありますが、もしこれが事実であるとするならば、これは大変、公職選挙法違反であるばかりではなく、高級公務員のこうした行動に対しましては重大な問題であると思うのでございます。  そこで、自治大臣に伺いたいと思いますが、具体的な事実を挙げて責任者の大臣にお尋ねをしたいと思いますが、明確なひとつ態度をもってお示しをいただきたいと思います。  いろいろの資料がございますが、その一つをいまお配りしてありますが、このお手元に差し上げてある表は北海道の札幌市域における道庁マシンの組織図の一端でございます。これからその内容を説明いたしたいと思いますが、北海道庁の道庁マシンというのは、札幌対策本部がございまして、ここに大変大きな機構が存在いたしております。本部長は中川副知事と言われております。なお、副本部長吉田労働部長、これが副本部長と事務局長を兼ねておるようであります。札幌市域内におきましては七つの区がございますが、中央区、豊平区、南区、北区、東区、西区、白石区、この七つの区にそれぞれの責任者が配置されております。中央区には植村開発調整部長、豊平区には北野生活環境部長、南区には大久保商工観光部長、北区には辻審議室長、東区には新谷知事室長、西区には湯佐水産部長、白石区には佐竹公営企業管理者、以下この下にはそれぞれ数班の班が設けられており、それぞれの活動家が所属をいたしておるわけであります。中央区の場合には五班に分かれ三百二十三名、豊平区におきましては四班に分かれて百九十四名、南区におきましては四班の二百二十六名、北区におきましては五班で二百十九名、東区においては七班の百四十八名、西区においては六班の四百六十六名、白石区におきましては九班の二百二十九名と、こういう大変なりっぱな組織に相なっておるわけであります。  その中の一つの例で申し上げまするならば、白石区の場合においてはこの中でそれぞれ九班が組織されておりまして、ここにはそれぞれの責任者等が配置されておる、こういう大変注目すべき組織体でございます。  これは札幌市域の組織でありまして、全道のそれぞれの地域にこういったものが配置されている、こういうように言われておるわけであります。  以上の北海道庁マシン、これはその一端でありますが、このことにつきましてまずひとつ自治大臣の御見解を伺いたいと思います。
  584. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) いまいろいろ承りましたが、何せ承って、実情は私どもの方も何もいまわからないところでございます。  地方公務員というのはやはり公務員としての身分の上からそういう自粛自戒をしていかなければならぬという立場にあることは間違いないところだと思います。ただいま承っただけでございますので、私からいまここでどうするこうすると言うわけにもまいらぬかと思います。
  585. 赤桐操

    赤桐操君 こうした事実はもう北海道では有名なことでございまして、公安委員長、全然初耳とは私は考えておりません。  総理、お聞きになっておられますか。
  586. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま初めてお聞きいたしましたが、そういう膨大な人を動かしてそんな組織があるとは信じられませんが、ともかく実相を調査してみる必要があると思います。
  587. 赤桐操

    赤桐操君 いずれにいたしましても、こういうこれが事実であるとするならば、まさにこれは大変な問題でございまして、これに対する対策を私は伺わなきゃならぬのでありますが、事実の場合にはどのように処理をされますか。
  588. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 先ほども申しましたように、ただいま承って初めていまのお話を伺ったようなことでございますので、事実でないことを私どもも願いたいと、こう思うのであります。
  589. 赤桐操

    赤桐操君 そういうことでありますれば、一応御調査を願わなきゃならぬと思いますが、したがって、いま直ちにその結論を得るわけにいかないでありましょうから、私の質問は一応留保をいたしまして、御調査をいただいた上で報告を願い、再度質問に入りたいと思います。
  590. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめてください。    〔午後六時一分速記中止〕    〔午後六時二十分速記開始〕
  591. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  592. 赤桐操

    赤桐操君 大変重大な問題であると考えます。したがって、緊急に調査をして報告をいただきたいと思いますが、公安委員長、いかがですか。
  593. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 調査をいたします。
  594. 赤桐操

    赤桐操君 このままの状態では審議を進めることはできませんので、一応その御報告を待って再度ただしてまいりたいと思いますので、以上これをもって私の質問を留保したいと思います。
  595. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 赤桐君の残余の時間は後日に譲ります。明日は午後一時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十三分散会