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1983-03-12 第98回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十二日(土曜日)    午前十時二十六分開会     ─────────────    委員異動  三月十一日     辞任         補欠選任      井上  計君     田渕 哲也君  三月十二日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     田沢 智治君      塩出 啓典君     三木 忠雄君      市川 正一君     小笠原貞子君      沓脱タケ子君     立木  洋君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 板垣  正君                 大島 友治君                 大坪健一郎君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 亀長 友義君                 木村 睦男君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田沢 智治君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 山田  譲君                 吉田 正雄君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 中野 鉄造君                 三木 忠雄君                 小笠原貞子君                 田渕 哲也君                 前島英三郎君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後篠田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        内閣総理大臣官        房広報室長        兼内閣官房内閣        広報室長     小野佐千夫君        内閣総理大臣官        房総務審議官   手塚 康夫君        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府統計局長  永山 貞則君        青少年対策本部        次長       瀧澤 博三君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      大堀太千男君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛施設庁次長  森山  武君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        経済企画庁物価        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        科学技術庁長官        官房長      安田 佳三君        科学技術庁研究        調整局長     加藤 泰丸君        科学技術庁原子        力局長      高岡 敬展君        科学技術庁原子        力安全局長    赤羽 信久君        環境庁長官官房        長        加藤 陸美君        環境庁企画調整        局長       正田 泰央君        国土庁長官官房        会計課長     金湖 恒隆君        法務省民事局長  中島 一郎君        法務省入国管理        局長       田中 常雄君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        文部大臣官房審        議官       齋藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生省公衆衛生        局長       三浦 大助君        厚生省児童家庭        局長       正木  馨君        社会保険庁長官        官房審議官    入江  慧君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産技術会        議事務局長    岸  國平君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        通商産業大臣官        房審議官     斎藤 成雄君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君        資源エネルギー        庁公益事業部長  小川 邦夫君        郵政省簡易保険        局長       魚津 茂晴君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        自治大臣官房審        議官       田中  暁君        自治省行政局公        務員部長     坂  弘二君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        会計検査院事務        総局第二局長   竹尾  勉君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事        長        瀬川 正男君        日本銀行総裁   前川 春雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りをいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員になっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事立木洋君を指名いたします。     ─────────────
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  5. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十八年度総予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君、動力炉・核燃料開発事業団理事長瀬川正男君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、これより粕谷照美君の総括質疑を行います。粕谷君。
  9. 粕谷照美

    粕谷照美君 きのうの予算委員会で、井上委員質問に対しまして文部大臣答弁をされました。その御答弁関連をいたしまして、最初に教科書問題について質問いたします。  私、手に入れました資料でこういうものがあるんですが、民主党政務調査会で発表されました中曽根代議士教科書制度改革試案なるもの、大分古いものであります、民主党時代でありますから。これを拝見いたしますと、民主党の案は民編国管であるけれども、これを民編統一にした方がいいのではないかなどという、わりとソフトな感じで受けとめているわけですが、精神は無償ということも含まれているのではないかというような感じも含めまして、総理教科書に並み並みならぬ深い関心を寄せていらっしゃることを思いまして、昨年の教科書問題関連をいたしまして、検定の問題についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民主党時代ですから、昭和三十年前後ですね、それは。自民党の合同、自由党と民主党合同昭和三十年ですから、民主党というと、そのちょっと前、鳩山内閣ができる前ですね。そのころ、教科書問題偏向が著しく論ぜられまして、いまよりもっとひどかったんです。  それで、あのころ日教組を飛び出した石井一朝さんという方が、その教科書偏向ぶりを世の中に問う出版物をいたしまして、私もそれを拝見し、非常に驚いて、それで石井さんにも会いまして、教科書を全部自分も集めてみて読んでみました。すると、あのころの教科書はいまより非常にひどい左翼偏向ぶり教科書でありました。そこで、あのころ三木武吉先生民主党のリーダーの一人でありましたが、三木さんとも話をして、これは直さなければいけないというので、「うれうべき教科書の問題」というパンフレットを出したり、民主党の党内に教科書対策特別委員会というのをつくりまして、それでキャンペーンをやりました。それが動機になりまして教科書を見直そうということになって、そのころからいろんな検定教科書制度に関する論議が巻き起こったのでございます。  そのころいろいろ検討しました中に、私もいろいろ勉強しまして、こういう議論もあったんです。いまのようなばらばらで、各地域で、小区域で採択しているというと、たとえば公務員が転勤する、あるいは農協の職員が転勤した場合に、隣の村へ行ったらもう教科書が使えない、また新しい教科書を全部買わなけりゃいけない、とてもこれでは経済負担にたえられないし、もったいない、だから昔のようにお兄らゃんの本を弟が使える、そういうふうにしてくれないかという要望もかなりありました。そこで、広域採択という問題が出てまいりましたし、ある場合にはそれは全国一本にしたらどうか、しかし全国一本にするについては編集が問題だから、それは民主的な編集委員会をつくって、そしてそれをある場合には議会がチェックできるような形にもして、そして編集委員会をつくって民主的な教科書をつくって全国一本にしたらどうか、またある人の中には、昔のような国営みたいな固定教科書にしたらどうか、しかしそうでないのがいい、アメリカそのほかの国みたいに自由につくらして採択するというやり方の方がいいじゃないかと、さまざまな議論が出ました。その中の一環として、たしか民編ということを私は当時言ったことがあると覚えております。  その後、いろいろそれが端緒になりまして、教科書制度をどうするかという問題が起こりて検定制度というふうになり、そしていまのような教科書制度に発展してきたと、こう思っております。
  11. 粕谷照美

    粕谷照美君 歴史はわかったんですけれども、そういう経過の中からこの検定制度というものに対して、どのようなお考えを持っていらっしゃるかということを伺いたかったわけですが、時間の関係もありますので、昨日の問題に返りたいと思います。  それで、文部大臣の御答弁を速記を取り寄せようと思いましたけれども、取り寄せる時間的なゆとりがありませんでした。正確に御回答を、御答弁を私が認識するというわけにはまいりませんので、昨日の御答弁文部大臣自身から改めて言っていただきたいと思います。
  12. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 昨日の井上委員検定に関する御質問の答え、私も言葉そのものはよく記憶していないのでございまして、あるいは言葉遣いが違ってくるかもしれませんけれども、私の所信と言いましょうか、考え方は、きのうもきょうも変わらないという立場でお答えをしたいと思います。  といいますのは、昨日、いまもお話がありましたように、いわゆる北方領土四島をソ連が現在占領といいましょうか、占有といいましょうか、しておる状態歴史的いきさつを、経過井上さんが外務省に聞きまして、外務省から歴史的な事実をるる経過を述べられており、それに関連していまの小、中、高、義務教育教科書における北方四島の記述が、なぜソ連が現在占領しておって日本が四島返還を求めておるか、こういういきさつ記述が明瞭でないじゃないか、こういうお尋ねがあったわけでございます。  私も全部教科書見ておるわけではありませんけれども、教科書にも御承知のとおりいま種類が多うございますから、同じ部類についての記述も種種に分かれておるようでございます。二、三の記述を見てみますると、小、中、高と、いろいろ内容の記述の濃度といいましょうか、詳しい、簡単であるという程度の差がもちろんございますが、北方四島をソ連占領しておって、占領といいますか、ソ連が占有しておって、それに対してわが国は四島の返還を求めておるという趣旨記述はほぼあります。ありますが、そこに至るなぜそれじゃソ連北方四島を占有して、日本がそれを返せ返せと言っているんだという、そのいわれと申しましょうか、歴史的な経過というものが必ずしも明瞭に書いてないのがある。それではおかしいじゃないか、国民はなぜ返せと言っておるか、あるいは日本の領土であるということの認識がよくわからないんじゃないかというお話がありましたが、そういう点がありますから、できることであれば、これは歴史的事実でありますから、そこまでわかるように教科書なら書いた方がよかろうと、これは私の考えでございます。  ただ、しかし御承知のとおり、教科書は昔と違いまして、国定教科書文部省がつくるわけじゃありません。教科書会社、あるいは教科書をつくる学者その他の人が書かれたものを検定制度によってつくっておるわけでありますから、そうかといって文部省がこうこう書くとか、あるいは直せという簡単なものではない。でありますから、検定制度でいきますと、ここは明らかにだれが見てもというぐらいに、客観的に間違っておるとか、おかしいというところは何か訂正ということになる——修正ですか、修正意見をつける、修正意見をつけると、それを修正してこなければ検定は通らないということになっておるそうでございます。  もう一つは、そこまではないが、せっかくのことならばこういう表示がいいんじゃないか、その表示が間違いというわけじゃないけれども、もう少しならこの表示がいいんじゃないか、こういう場合があるそうでございます、審議会の検討の結果。その際には改善したらどうか、改善意見をつけるというもう一つの道があるそうでございます。でありますから、それ故善意見をつけて、なるほど教科書をつくる人たちがそう言われれば、その方がいいなと思えばそのように改善をして原本を直す、こういうやり方もあるそうであります。  私は、きのうの場合はいま書いてあることそれ自体が間違いということじゃなしに、ややいわれを書いておらないところが足らないような気がいたしますから、そういう改善といいますか、改善の方策があるのかどうか、検定の場合に検討さしてみたい、かようなことを申し上げたのがきのうのいきさつでございます。
  13. 粕谷照美

    粕谷照美君 改善にするのか修正にするのかということよりも、非常に文部大臣の御答弁検定強化していかなければならない、私もそういうふうに受け取って、これは問題だというふうに考えたわけであります。  それで、文部大臣にお伺いしますけれども、去年のあの教科書問題文部省ではもう決着がつかなかった、そして最終的には八月二十六日の宮澤官房長官の談話で政府見解が発表されて、ようやく外交的な決着を見たわけであります。その経過から考えてみますと、検定強化していく、しかもきのうは北方領土の問題に関連しての御答弁でありますから、北方領土のその部分に関してだけ検定強化していくというようなことになれば、今度は韓国や中国ではないものを相手にして同じ状態が戻ってくる、教科書問題が。そういうふうな御心配はお考えになりませんでしょうか。
  14. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そういうふうにお耳に入りましたとすれば、私の真意とやや違いますから、言葉遣いが悪かったかもしれません。強化という考えは私は持っておりません。改善強化ということになるかならないかは、これは受け取り方でございますけれども、さっき申し上げましたように、経過がわかった方が、かえってなぜ返還を求めるのかということが国民に理解が、返還を求めるということは私の見方では国民こぞっての、各党こぞっての御意見のようにも思いますが、そのことのなぜそういうことをするのかといういわれを、せっかく教科書に書くならばその方がベターではないか、こういう改善ができるものであればその方が、手続上そういうことができるかどうかはこれから検討させますけれども、そういうことを申し上げたので、強化という趣旨が私自身もわからないんですけれども、そういうことでございます。
  15. 粕谷照美

    粕谷照美君 質問北方領土に限っておりましたから、私はその点についての心配を表明したわけでありまして、その他の部分についても、それでは全部全会派こういうことでいいから、それではこういうことをあれしなさいというふうに改善意見を出すということになれば大変なことになるのではないかというふうに考えているところでございます。  それで、文部大臣修正意見改善意見、この点について御自身改善のように思っているとおっしゃるけれども、議事録に本当にそうなっているのかどうかを改めて私も点検いたしまして答弁を求めたい、つまりこの問題についてはあとは保留をしていきたいというふうに考えております。  次に、きのうの総理日教組批判であります。私も日教組のまだ組合費を納めている組合員でありますので、はね上がりなどという言葉を聞きますと、とても容認できないというような気持ちでいっぱいなわけであります。  文部大臣文部省が一九四六年に新教育指針を発表しているわけであります。そして、全国教職員に、平和教育民主教育の徹底と教員組合の結成を呼びかけているわけです。前の方の平和教育部分については触れませんけれども、教員組合につきますと、教育が政党や外部の不当な圧力によってゆがめられようとしたり、教職員身分や生活が不安定になろうとするときは、教員組合は団結の力をもってこれと闘い、あくまでも民主教育を守り、教職員身分の安定を図らねばならないと、こういうふうになっているわけでありますね。いまの日教組の運動方針がけしからぬからなどというようなことは私はとんでもない話だと思います。まして、人事院勧告を踏みにじっておいて、そしてまた臨調方針の中で教育費がどんどん削減をされてくる、四十人学級を約束したにもかかわらずそれを実施しない。こういうことがあるときに、それを批判するというのは当然のことだというふうに思うわけであります。  まして、憲法についてさえ自由に、政治にタブーはないんだ、自由にお話しをしなさいと、文部大臣も九条についての論議を国会の中でやっていらっしゃるときに、教職員の団体が政治についての批判を許すことができない、法律違反ではないかなどというようなことは大変おどしにも似たような感じがしてならないわけであります。政府の政策に無批判に従うような組合ならよろしいということであったならば、その一九四六年の文部省の方針というものは全く何のために出されたのかということを私は指摘せざるを得ません。この点については、総理はきのう何かお示しいただいた森本真章氏の本などを読んでいらっしゃるようでありますから、答弁を求めないで意見だけにしておきます。  さて、質問をいたします。総理予算委員会の質疑を通じまして改憲論者中曽根、政治にタブーなし、こういうことをおっしゃっておられました。そして、内閣としては政治日程に改憲の問題を上げていかない、こういうタカ派ぶりを示されると同時に、予算委員会の冒頭に嶋崎委員質問に対して非常にソフトなムードの御答弁をなさっているわけであります。憲法はもう若者に定着をしたとか、いまの憲法に認められた自由や人権や福祉や国家の理念をこんりんざい放したくないという気持ちは婦人の層に非常に多い、こういうことを言っていらっしゃるわけです。これから国民の合意が必要だというようなことも言っていらっしゃるのを私は伺いながら、どちらが総理の本当の心なんだろうという気持ちがいたしました。よく読んでみますと、自由とか人権とか福祉とかいう言葉をおっしゃっていますけれども、平和とか、こういう言葉が入っていないんですね。そうすると、総理のお気持ちはあの憲法の中で平和の問題は一体どのように理解をしていらっしゃるのかということの疑問が出てまいります。そのことについての総理のお考えをお伺いしたいし、また文部大臣にお伺いしますのは、この憲法も教育基本法も非常に評価をされている、議事録を見ますと。それは当然のことだというふうに思いますけれども、その一方で少年非行が出てくる、校内暴力が出てくるのはということについての御説明の中に、教育勅語などを出してこられているわけですね。教育勅語を出してこられるその文部大臣の真意というものは、一体どういうことかということについてお伺いしたい。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほどの私の答弁の中にいまよりもという言葉がございましたが、これは私の主観が入っている言葉でございますから訂正させていただきます。  それから日教組批判について、いままず御発言がございましたが、私は教職員団体というものは中立を守って、そして憲法と教育基本法のその精神そのままに教育に専心されることを心から熱望しておるものであり、大多数の学校の先生方はそういうお気持ちで一生懸命やっていただいていると確信しております。ただ、日教組のいろんな言動やらスローガンを見ますと、きのうも井上さんが御指摘になりましたけれども、私の言っていることはうそじゃないと思うんです。と申しますのは、たとえば昨年一九八二年の大会スローガンを見ますと「日米安保条約廃棄・非武装中立・非核三原則を堅持し、反核・軍縮・平和のたたかいをいっそう強め、」云々と書いてある。日米安保条約廃棄とか、非武装中立とはというのは、これは政治的な条項でございますね。教職員団体がこういうところまで踏み出すということはどうだろうか。闘いを強めなんという、闘争という言葉を使うから、やっぱり子供が暴力的になる傾向が出るんではないだろうか、何かそういう感じがするんですね、感じといたしまして。なぜ闘争とか闘いという言葉を先生がお使いになる必要があるんだろうか。そういうこともありますし、その運動方針を見ますと、やっぱり「日米安保条約の廃棄」、そうして「職場、地域から反核・反戦・軍縮の運動を強め」と、こう書いてある。職場ということになるとこれは学校ですわね、あるいは教員室ですわね。学校というものからこういう運動を強めということになると、これはどうだろうか。学校というものは教育基本法に基づいて子供たちを育て勉強させるところですから、その場所からこういうことをやられたら、これはPTAも困るんじゃないだろうかと思います。  あるいはさらに「また、反基地、反自衛隊、核兵器廃絶などの署名活動などの多様な運動と啓蒙宣伝活動を強化します。」と、こう言っておられます。反基地、反自衛隊というのは、これちゃんと法律で決められている自衛隊とか、あるいは安保条約で決められている施設、区域とか、こういうものに対するそういう行動をやろうとおっしゃっておる。これは明らかに政治的な行為ではないんだろうか、そういう疑問を持つわけです。臨調路線粉砕、行革臨調粉砕とか、あるいは中教審の反動化、反動中教審対決とか、そういうことも言っていらっしゃるようでございますけれども、こういうところを見ると、やっぱり問題があるんじゃないだろうかと、そういう気がいたすのであります。  日教組の組織の中でも、昨年の大会では日教組は政治闘争を強化するため○○党を支持して闘いますと、こう書いてある。政治闘争を強化するためということになると、これは地方公務員法との関係でどうだろうか、○○政党を支持しますということになると、これはいま言ったように、政党の弾圧とか、政党の介入という問題いまおっしゃったばかりですけれども、特定政党支持というのじゃなくて、あらゆる政党の中から自由に選択して、あるときにはこの政党がいいというときにはこの政党を支持する、あるときこの政党がいいというときにはこの政党を支持する、そういう自由というものがあってほしいのではないのだろうかという気もしますね。そういうようないろんな面から見まして、私自体は疑問を持っておるものなのであります。  それから、憲法の問題につきまして、私は平和国家の理想とか、あるいは平和憲法、あるいは第九条に盛られている平和主義の精神ということは強調しているのでございまして、決して忘れているわけではございません。それから、いまおっしゃいました人権とか、あるいは民主主義、あるいは自由主義、あるいは福祉国家の理念、あるいは国際協調主義、そういう問題は確かにいい原理であり、戦前の日本と戦後の日本を経験している私にとりましては、戦後はすばらしい時代になっておると思うのであります。日本歴史の中でも戦後の三十数年というものは特筆すべきすばらしい時代であると恐らく後世の史家から書かれる時代ではないかと思っております。それに果たしたいまの憲法の役割りというものも決して私らは無視するものではないのであります。  しかし、どんなものでも光があれば影があります。そういう意味において、いまの憲法についても学習し、あるいは検討する、この日教組のあれの中にも憲法学習という言葉がありますね。私あの言葉はいい言葉だろうと思うんです。そういう意味において自由にフランクな立場で物を考えていきたい、しかし、いまの憲法の果たした役割りや評価というものは、私は私としてやはり厳然と持っているということを申し上げたいのです。
  17. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私が国会答弁の中で教育勅語に触れたかどうか記憶はありませんが、これは後で触れたとおっしゃいますからちょっと触れますが、私はこういうふうに考えております。  いまの教育は、まあ粕谷さん専門家であられますけれども、憲法が昭和二十二年に施行されると同時に、昭和二十二年に教育基本法が制定、施行されておりますが、憲法の精神に従って、憲法の精神を据えて平和な民主的な福祉国家をつくるように教育をする、こういうふうな趣旨が書いてあると思うんです。私は率直に言ってこれは非常にすばらしいことだと思っておるんです。といいますのは、これは憲法のこと、いま総理からいろいろお話になりましたが、重複して恐縮でございますけれども、いまの憲法は、これはいつの憲法でもそうなんですけれども、曲解されたり誤用されたりして間違ってくるんですけれども、そういう過去の長い歴史経過、苦い経験等を踏まえてこういう憲法になっておるわけですが、大きく人類とまでは言いません。日本国民全体が私は平和を望む、人間というものはそういうものなんです。平和を望みながら争いをするという不思議なところがあるんですけれども、とにかく日本国民は、私は全部が平和な社会でありたい、平和な国でありたいということを望んでおると思います。  でありますから、この日本国憲法が、こんりんざい将来みずから進んで戦争をするようなことをしてはならない、こういうことを決めて、いわゆる平和主義という憲法になっておると思います。これはすばらしいことであると同時に、そのためには、よく言われますように、個人の人権の尊重をするとか、それはそのもとになるのは自由である、したがって、国民が構成しておる国でありますから、国民が相談して国の進め方をするという、主権在民と言われておりますが、こういういわゆる平和であるとか、自由主義であるとか、あるいは民主主義であるとか、基本的人権を尊重する、世界の中の日本としてもう一つつけ加えますと、国際協調の精神で国をつくる、この憲法の精神というものはすばらしいことだ、また、こうでなくちゃならない。それを教育によって、子供は何も知りませんから、そういうことをよく教え、納得させて、将来そういう国をつくり得る国民にしなければならない。これは私は教育の基本法に書いてあるねらい、書いてあってもなくてもそれが正しい道だと思っておるんです。  ただ、私がこういうことを言うと、またここから議論になるかもしれませんけれども、そういうふうに教育が進んでおるのかどうかということについては私は疑問を持っておるということでございます。もう憲法施行以来三十五年余り過ぎましたが、そこまでもし一生懸命になって教育の使命に徹して三十五年もこの教育を進めておったらば、率直に言いまして私ども過去には余り経験がなかったんですけれども、白昼堂々と自動車で乗りつけて、時によって連日銀行強盗や金融機関の強盗が横行するという時代、そして子供を捨てたり親を殺したりする時代、それがいま言われておりますように小・中学校あるいは高校から、小学校までいっておりませんけれども、中学校の子供が校内暴力から校外暴力、あるいは学校の先生をたたくとか、学校の先生が刺すとか、私に言わせると非常にすさまじい社会である、あらゆる面で倫理が荒廃しておる、こういう状況にはならないんじゃなかろうか。私は、憲法第三章、人権の規定が、国民の資格から四十条まで書いてありますけれども、あれを本当に教えていただいておりますれば、私はこういうふうにならないと思っておるんです。  ところが、これはまあ反動だと思います。戦前の、これまた別な意味ですさまじい社会でございましたから、その反動だと思いますが、個人の尊厳、平等、これは結構でありますけれども、そのために相互の尊重という憲法のすばらしいまた根本原則、この点が欠けて、教え方といいますか指導の仕方が欠けており、国民の自覚が欠けておったんじゃないか。  教育基本法の基本を申し上げて恐縮でありますけれども、自発精神を養成する、自他の敬愛と協力を養成するのが教育の目的であると書いてある。自他の敬愛ということが徹底的に指導されておったらば、横浜市の山下公園に行って第三者を殺したりけ飛ばしたりするようなことはないし、学校をたたき壊すということもないし、あるいは町田の忠生中学校で先生をなぐったり先生が刺したりするということは、これはまあ世の中ですからいつの時代でもたまにはいろんなのがおりますけれども、このごろのように国を挙げて心配するような社会にはならないんじゃないかと思うんです。  こういう点を、これは私は学校の先生方だけの責任だとは言いません。いろんな原因がありますけれども、いまや国民全体が本当に憲法の精神を大事にするのならば、真剣にこれから先のことを考えて、全部が考えて、改善といいましょうか、そういうことのない社会、すばらしい社会をつくるために前進すべき時期じゃないかという率直な考えを持っておるわけで、そこで教育勅語に触れられましたから、私、前もどこかでどういうことを言ったか余り記憶しておりませんけれど、教育勅語に触れますと、これまた古い人間の昔に帰るのだとすぐおっしゃいますけれども、私はそういうばかなことは考えておりませんが、教育勅語の中に、父や母を大切にしなさいと、きょうだいは仲よくしなさい、夫婦は本当にそれこそ仲よくしなさい、友達は相信じて仲よくしなさい、みずからを持して余り妙なことをしなさんな、「恭儉己レヲ持シ」というのはそういうことだと思う。博愛衆に及ぼしなさいと、学を修め業を習い、知脳を啓発しなさいと、徳器を、道徳的人間になりなさいと、社会、公共福祉を考えなさい、公益を重んじなさいと、そういういわゆる国の法律、憲法を重んじなさいと書いてあるのですが、これはどこが悪いのだろうかというのが私の考えでございます。
  18. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 関連
  19. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 寺田熊雄君の関連質疑を許します。寺田君。
  20. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 中曽根内閣も小・中学校の学校内の暴力問題をこれ国家的な問題として取り上げるということでありますが、この対策をあなた方がお立てになるとしましても、一体その子供たちの学校の中の暴力がどういう原因で起こるかという原因を、まずあなた方が確められませんと有効な対策というのは立てられませんね。これはもう当然の原理ですが、私は文部大臣がこの問題の原因の一つに、占領軍の政策があるというようなことをおっしゃったことを新聞で読んだのですが、占領軍の政策、御承知のように憲法、それから教育基本法、六・三制等を考えても、なぜ占領軍の政策がこの問題の原因なのかとうてい理解できないので、その点ちょっと説明していただけませんか。
  21. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いま心配されております子供の非行、校内暴力その他について、しばしば衆議院でもここの委員会でもその原因について申し上げましたが、いろいろあるわけでございます。もし言えとおっしゃれば言いますけれども、いろいろあるということだけにしておきます。  その中でいわゆる占領政策的も関係があると、私はそれを信じて疑わないわけです。全部が占領政策のもとだなんということは考えておりませんけれども、占領政策にも原因がある。その占領政策をいいとか悪いとかということを言っておるのじゃないのです。あの当時とすれば、私は率直に言って、これはまた異論がある方もあるかもしれませんけれども、当然だったと思う。なぜかというと、あれほどの大戦争をしまして、アメリカとの関係も四年余り大戦争をいたしまして、日本の国に対する理解が非常に足らなかった、日本の国内のいろいろな問題について。それの理解が足らなかったのはあたりまえであります。日本も諸外国に対する理解が非常に不足しておりました。その関係で、日本全体がこういうふうに非常に好戦的な、いろいろな部面で、教育から社会から組織からそういうふうになっておるのだというような誤解をしてもこれは不思議でないわけです。そういう意味で、御承知のとおり占領政策はあらゆる日本歴史、風土といいましょうか、歴史から習慣、社会制度教育、あらゆるものをこれを全部撤廃させるといいますか、取り外す、破壊するといいましょうか、白紙の状態にしなければならない。そして新しい諸制度をアメリカが連合国を指導してつくった。これはあの当時としては、私率直に言ってやむを得ない、その当時の状態から言いますとやむを得ないことであったと。そこに抑圧されておる人権があるとか、自由が抑圧されておるとか、いろいろな考えがありますから、いわゆる自由と人権、平等の思想が徹底的に普及されておる、これも私は当然であるというふうに思います。  ただ、その受け取り方が残念ながらわが国に、わが国にといいましょうか、国民に十分でなかったと私は考えておるのです。御存じのとおり、学校教育等においても、歴史、地理、道徳、一切そういうことは、過去の歴史など教えてはならないということになったわけであります。道徳教育は、道徳という科目といいますか、教育が学校教育に復活しましたのは昭和三十三年からでありますが、これも背のように修身とか道徳という特別のものじゃなくて、社会科その他で人間の道を教えるようになっておるわけでございますが、そういうことで、個人の尊厳を主張する余り、人権を主張する余り、人のことを——占領軍の指令には、アメリカ流の国につくれということが書いてある。アメリカ民主主義を唱道して、私に言わせるとアメリカ好みの国にしなさいというふうに占領指令はなっておる。反動からそう来ておると私は思うのでございます。  そこで、憲法にはそういうことは書いてないのです。私が憲法はすばらしいと言うことは、あの憲法に書いてある自由あるいは基本的人権、これはどういうことが書いてあるかと言うと、まあ寺田さんは専門家であられるから細かいことは申し上げませんが、私に一口に言わせると、人間は生きなければならない、これが第一義であります。生きるために自由がある、生きるためにいろいろな作用、働きといいましょうか作用が、これは憲法が与えたのでも何でもありません、生命には必ずそれが備わっておる。でありますから、生きる道を抑えたり、断ったり、制限したりしちゃいけないということが憲法の自由の規定であるし、あるいはいわゆる人権規定である。でありますから、それはどういう意味だと言うと、自分が生きるということは人を生かすことだ、生命の発展のために書いてありますから。私は非常に残念なのは、いまの教育で、私は教育現場知りませんからわかりませんが、生きることを教える場合には、人を生かすことを教えなければ平和な社会、平和な世界ができないと思う。憲法第三章の規定は、全部私に言わせるとわが身をつねって人の痛さを知れと、自分が嫌なことを人に強制するなと、三十何条書いてありますけれども、中身はそれだけのことだと私は思いますが、そういうふうに教えておるだろうか、どうだろうか。自分の権利は主張する、自分の自由は主張するけれども、人の自由は余り考えない、人の権利は考えない。社会連帯精神が非常に薄れておる。これがいまの社会の非常に妙なかっこうになっておる原因ではないか。占領政策がそうさしたと私は言っていないのですけれども、占領政策にも原因があるというのはそういう意味であるということをぜひ御理解願いたいと思います。
  22. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 正直に申しまして、あなたの言い方だということはよくわかりますけれども、ちょっと占領政策が日本の固有の道徳なり、文化を破壊したようなことなんでしょうか。どうもあなたのおっしゃることではそういうふうに思われないのです。修身教育をやめさしたということだけが教育関係しておっしゃったように思うのですが、親に孝行をしろとか、お父さんお母さんを大事にしろとかいうようなことは、笹川何がしなる者がしょっちゅうテレビで言っておりますが、ああいうことを言ったからといって親に孝行になるものでもないので、修身教育を廃止したからどうこうという問題じゃないと思うのですね。それよりも私はむしろ一般社会の、やはり学園も縮図だと思うのですね。一般学園が、大人に対する子供たちが信頼感というものを持っておれば、ああいう問題は起きないと思うのですが、政治に対する信頼感というのは子供たちの大人に対する信頼感のやはり象徴的なものだろうと思うわけです。ところが、一国の総理大臣が収賄という、聖徳太子以来公務員として最も忌むべきものとせられておるような行為をする、それを責任を追及しようとしても、中曽根総理以下自民党の皆さんが必死にそれを守るというような、およそ世間の常識とかけ離れたような行動、それをおとりになってはとうてい子供たちの大人に対する信頼感なんてのはわかないでしょう。そういう政治倫理が地に落ちた社会、それをずっと持って、維持していらっしゃる以上は、その縮図である学校の中に子供たちの倫理などというものが生きる道理がないのですよ。どうでしょう、この点、総理文部大臣のお答えを伺って私の関連質問を終わりますから。
  23. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほどえらい長く申し上げて恐縮でありましたが、私はそれだから学校教育だけがだめだと言うのじゃないのです。あらゆる社会がそういうふうになっておる、それの縮図であります、まさに。でありますから、政治家といえども最も身を持さなければならないというのが私の立場でございます。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こういうような事件が起きたことははなはだ遺憾な事態でございます。御本人もはなはだ遺憾であるという意思表示はしていると思います。しかし、裁判が係属状態のもとにおかれまして、三権分立のもとに日本の統治権が行使されている、こういう状況のもとにおいては、やはり被告には被告の権利もあり、人権の保障は憲法でもなされ、刑事訴訟法そのほかにおきましてもしかるべく保障はなされておるわけでございます。そういう意味はおいて、国会は立法者でありますが、法の運用や適用というものについてまた人一倍関心を持っていなければならぬと思っております。また、一面において政治責任、あるいは道義的責任という問題も国会においてはまた追及さるべき要素もございますが、その間の判定をどういうふうにするかということが問題になっておりまして、そういう点から見てもこれはかなり克明に、そしてまた厳正に法を解釈していかなければならぬ、後世にも響く民主主義上の基本的な問題にも絡む面もあると思っておるのであります。そういう意味からも、私たちは私たちの考えを自由民主党の名前において議院運営委員会その他において述べておるのでございまして、そういう基本的認識というものをぜひ御理解いただきたいと思う次第であります。
  25. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私の後の質問のときにまたさらに……。
  26. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部大臣、私はいろいろなお話をする時間がありませんが、NHKが先日伊那谷小学校の授業の実際を録画して放送しておりました。あれを見まして私も本当に心から感動したわけですけれども、大ぜいの人たちからそういう言葉が出てまいりました。徳目を入れて、たとえば私のように、修身で、博愛でナイチンゲールが犬の手当てをしたということを習うよりは、あの伊那谷小学校の授業を見て、あるいはそれを習った子供たちの方がもっともっとすばらしいものを体得しただろうということをつけ加えまして、以後の分については文教委員会に譲りたいと思います。  それで、総理も拓大の総長、理事長などというのをやられまして、私学には大変関係の深いことがあるわけでございますけれども、ことしの私学経常費助成のマイナスは六十五億円でありますね。官民格差をなくしていこうという場合に、私学の助成金を少なくしていく。そして格差をなくするためにはどうするかと言えば、国立あるいは公立の授業料を上げていく、入学金を上げていく、こういうことになるわけですけれども、大変問題は逆転をしているのではないかという気持ちでいっぱいです。私学助成については、私どもも経常経費の二分の一を補助をするというところまでいかなければならないという考え方を持っているわけですが、そういう中で、九州産業大学の事件が新聞で発表になりました。そしてそのことが臨調の中で問題になったということでありますが、九産大事件というのは一体どういうことかということについて御説明をいただきたいと同時に、私学に対する総理のお考えを承りたいと思います。
  27. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 九産大学のいきさつということでございますから、やや細かくなりますので、事務当局から説明させることにいたします。
  28. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) お答えをいたします。  九州産業大学は学校法人中村産業学園が設置をしている大学でございますけれども、昨年の十一月以来補助金の不正受給があるのではないかというような点を含めまして、管理運営面で種々問題のあるということが新聞等によって報道をされたわけでございます。文部省、それから補助金の交付に当たっております私学振興財団両者協力をいたしまして、以来本件についてその実態の把握に努めてまいりました。その結果、教員数の虚偽報告によりまして、補助金の不正受領があったということを初めといたしまして、幾つかの点で運営上の問題点が発見されたわけでございます。  このうち、補助金の不正受領につきましては、五十二年度から五十六年度までの五年間につきまして、事務職員を教員として偽る等のことによりまして、毎年二十名程度の教員について不実申告をしていたというようなことで、五年間累計いたしますと一億六千万円余りを過大に受領していたものでございます。私学振興財団におきましては、このような事実に基づきまして、去る二月三日、学校法人に対しまして過去五年間に交付いたしました補助金の過大交付分のみならず、相当部分を含めまして約二十六億円の返還を命じ、また、文部省といたしましても、同日、理事長及び学長代理の来省を求めまして、理事体制の刷新等を含めまして行政指導を行ったわけでございます。  その後、同学園からは補助金の返還が行われまして、さらに、文部省の指導に対します検討の結果につきまして、去る二月の二十六日に理事長から回答がございました。  回答の内容は、基本的には文部省の指導に従うというものでございますけれども、理事体制の刷新等にかかわる部分につきましては、文部省の指導の趣旨に十分沿ったものとは認められないということで、再度検討を指示いたしておるところでございます。  以上でございます。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私学が日本教育界に果たしておる役割りは非常に大きいと思います。私学はみんな創立者を持ち、あるいは伝統的精神、校風というものを持っておりまして、ユニークな人材を日本の社会に送ってまいりまして、政治社会にも経済社会にも、文化社会にも医学におきましても、あらゆる面において日本を支えておる有力な人材を供給してきたところでございます。  従来、ややもすれば官学偏重の嫌いがありましたが、私学振興財団等もできましてそのバランスが回復しつつあることは私は適当なことであると思って、できるだけその面についても今後努力していくべきであると思っております。  ただ、私学に対する補助金交付が行われましてから、だんだんまた安易になってまいりまして、そしていまのような不正受給、補助金を受けるというような問題も起こってきましたし、また、ほかの大学におきましても、当然もらえるものだというような形で、ある場合にはいろんな仕組みまで変えたりしてやっている面がないとも言えません。そういう点はいろいろ監察を強化して、りっぱに一生懸命やっているところはますます助長していきたい、悪いところは直さしたい。しかし、制度全体としてはいい制度でございますから、財政の許す限りわれわれもこの面について積極的思考を持つべきであると思っております。しかし、一般に今度の予算編成についてマイナス五%シーリングというものを設定してやりましたために、私学の皆さんにも多少御迷惑をおかけしていることははなはだ遺憾でございますが、財政事情が許せばできるだけ努力してまいりたいと思っております。
  30. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部大臣、問題は、この不正受給が五年間全然わからなかった、新聞発表でようやくわかった、会計検査院が五十二年、五十六年、検査をしている、なぜわからなかったんですか。私学振興財団、ここになぜわからなかったか。現場の教師になぜそれがわからなかったのか、ここのところについてお伺いしたいと思います。
  31. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) なぜわからなかったかという理由は私もわかっていないんですけれども、私は、率直に申し上げまして、いま総理からもお話がありましたが、私学はわが国の教育の非常に大部分を占めておる。しかも国民教育ですから、非常に重要な任務を果たしておるわけでありますから、窮屈なところでも何とか教育の問題だということで助成等をしておるわけでありますが、その中に教育機関であるそういう学校が——ここだけではありません、ほかにもあったんですけれども、こういう不適当なことをやっておる、非常に私は遺憾に思っておる。でありますから、いまおっしゃったように、なぜこんなものがわからないんだと、こういうことを私は事務当局に強く言ってあります。  私学振興財団、こういうものの今後の運営、こういう調査、ただ書類だけの調査ではだめだということを言っておる。何十人も教授でない者が載っておる。どういう者が教授であるかどうかということを一遍調べてみてやるべきではないかということを指示をしておりますから、今後十分注意さしていきたいと思います。
  32. 粕谷照美

    粕谷照美君 会計検査院。
  33. 竹尾勉

    説明員(竹尾勉君) 先生の御質問にお答え申し上げます前提といたしまして、私立大学等経常費補助金の会計実地検査の状況につきまして恐れ入りますが御説明させていただきたい、このように存じます。  昭和五十六年度の私立大学等経常費補助金の交付先は、学校法人数にいたしまして五百三十九、学校数にいたしますると、大学が三百四、短期大学が四百五、高等専門学校が四、合計七百十三校に上っておりますが、この中で私どもが実地検査いたしましたのは、法人数で百二、学校数では大学六十八、短期大学七十九、合計百四十七校でございます。ここ数年間は年間百学校法人程度を検査しております。したがいまして、全学校法人五百三十九を全部実地検査いたしまするには約五年を要する、こういう計算に相なります。  私ども努力を重ねておりますが、過去五年間で不当事項といたしまして検査報告に掲記いたしましたのは、十六件二十五億三千余万円でございます。  お尋ねの九州産業大学につきましては、実地検査を過去二回、五十二年の五月と五十六年五月に実施いたしておりますが、不正の事実がわからなかったのは御指摘のとおりでございます。  その理由につきまして申し述べさせていただきますると、そもそもこのような事態の発生原因としましては、五十一年度に大学院の設置等に当たりまして教員不足となりましたので、これを糊塗するため、偽るため、教員となり得ない者を身分詐称をして教員とするなどしていたことでございます。そうして、この糊塗したことを裏づけるため、発令簿、時間割表、学生便覧等、一連の書類を巧妙に改ざんいたしまして、糊塗したことと符合するようにしてございました。そのため、実地検査時はこれらの書類からは矛盾をつき得なかったものでございますので、不正の事態を残念ながら発見できなかったのでございます。
  34. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部省に伺いますけれども、私学振興財団の責任者が病気で来られないというので、なぜ私学振興財団もそのような実態が把握できなかったのかということを。
  35. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 補助金の交付は私学振興財団が行っておるわけでございますけれども、私学振興財団の交付の作業といたしましては、各大学から、たとえば今回のケースであれば教員の名簿を提出させまして、その名簿には教員に対する給料、担当授業時間数あるいは担当科目等々が記載されておるわけでございます。それをチェックをいたし、不審な点がある場合には、学校関係者を呼びましてさらに事情を問いただした上でその補助金額を決定するという作業を行っておるわけでございます。  そしてまた、今回のケースにつきましては、ただいま会計検査院からお話がございましたように、学生便覧あるいは授業時間割表といったようなたぐいの基礎的な資料を一切改ざんをしておるというようなことで、チェックをしてもわからないというような状況にあったわけでございまして、結果的に見抜けなかったということはまことに遺憾に存じておるところでございます。
  36. 粕谷照美

    粕谷照美君 会計検査院の日まで欺くことができるようなことを私学がやるということは大変なことだというふうに思うんですね。  福岡の方では県警が入ったということでありますが、犯罪行為があったからこれは入ったんだというふうに思いますので、警察庁の御報告をいただきたい。
  37. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えをいたします。  御質問の件につきましては、福岡県警察で、時効になりました分を除きまして、五十三年度から五十六年度分まで、学校職員を専任教員と偽って補助金を受けたという、総額で五千万以上でございます。それを一月と二月に分けまして理事長外二名、補助金の適正化法の不正受給ということで検察庁の方に送致をいたしております。
  38. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、その後はもう法務省の方に移ると、こういうことになりますか。
  39. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 警察といたしましては事件を送っておりますので、後の処置は検察庁の方でやると思います。  また、警察の方といたしましても、事件全部について終結をしたわけではございません、ほぼ終結をしたというふうにも申し上げておきたいと思います。
  40. 粕谷照美

    粕谷照美君 これに関して文部省の指導なんですけれども、大変弱腰ではないだろうか、何か弱みがあるんではないだろうか、こういう感じがしてなりません。  文部大臣にお伺いをいたしますけれども、文部省としてはどこまでこの点についての指導をやられるつもりでありますか。
  41. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 細かい指導の内容については事務当局から申し上げますが、厳重な指導をいたしまして、理事長あるいは学長はいまいなくなっておりますから学長代理等を呼びまして厳重な指導をしておるわけでございますが、ただ問題は、学校の理事者等が責任を明らかにするかどうかということがまだ明確になっておりません。最後まで厳重に指導をしたい。ただ、先生御存じのとおりに文部省が私学の理事者等の任免権があるわけじゃありませんから、直ちにこれを罷免するとか、そういうやり方はできないわけであります。そういうことだけは御理解いただきたい。  細かいことは当局から御説明いたさせます。
  42. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 九州産業大学に対します文部省等の措置でございますけれども、先ほど御説明を申し上げましたように、過大に交付した補助金にとどまらず、過去に交付いたしました補助金の相当部分に該当いたします二十六億円弱の返還を求め、これについてはすでに返還をされておるわけでございます。そのほか、行政指導といたしましては去る二月三日に理事長と、それから学長代理、経営側と教学側の両方の代表者に御来省をいただきまして、五項目にわたる指導を行ったわけでございます。  かいつまんで申し上げますと、第一点は、長期間にわたってこのような不正受領等の問題があったことにかんがみまして、関係者の責任を明確にし、社会に信頼を得ることができるように理事体制を含む学内運営体制についての刷新確立を図るべきであるという点。そしてまた今後の運営の適正を図るべきだという点が第一点でございます。  それから第二点といたしましては、入学者選抜方法につきまして問題があると認められるので、教学側が責任を持てる体制のもとで公正、妥当な方法で選抜を行うようにということでございます。  第三点は教員組織でございますけれども、大学設置基準に照らして不足をしている教員について、早急にこれを埋めるということを指導いたしております。  第四点は、経理の適正な処理を図るべきであるということ。  第五点といたしまして、監事あるいは評議員会といった学内監査機構が十分働いてないおそれがあるので、十分これが活動できるように体制を整えるべきであるといったような点について指導をいたしたわけでございます。  このうち二番目以降の点につきましては、ほとんどこちらの指導の趣旨に沿った回答が参っておりますが、一番の運営体制の刷新等につきまして、まだ十分な回答がなされていないと、こう判断をいたしまして重ねて指導をしておるところでございます。
  43. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまの説明で内容についてはわかりましたけれども、二、三、四、五の点についてはほとんどできたと、こういうあれでありますけれども、完全にできたということとは全然違うわけです。教学のきちんとした確立という体制が、本当にできたのかどうなのか。ここのところは両方の側からちゃんと意見を聞いてもらいたいと、こういうふうに思うわけであります。  それで、一番の問題ですけれども、運営体制の刷新について鶴岡さんの方からどういうふうな答えがあったのですか。
  44. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) お答えいたします。  去る二日二十六日に回答があった内容でございますが、理事体制の刷新に関する部分に限って申し上げますと、まず第一点として、理事長は両三年の間に当面の学園の混乱の収拾、再建を行った後で退陣をすることにしたい。第二点といたしまして、副理事長それから常任理事——一名でございますけれども、につきましては平の理事に降格をさせるということ。それから第三点といたしまして、理事の定数を増加をし、教学側などからその増加した定数を埋めることにしたいということ。それから第四点といたしまして、文部省あるいは私学振興財団から人材の推薦を求めたいというような点でございます。  以上の四点が主たる内容でございます。
  45. 粕谷照美

    粕谷照美君 その内容についてどこが足りないと、こう判断をされているのですか、突き返したということは。
  46. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 文部省が指導いたしましたのは、社会の信頼を得ることができるよう運営体制の刷新確立を図るべきだということを申し上げたわけでございまして、こういった趣旨からかんがみまして、社会の信頼を得ることができるような刷新にはこれでは達していないと、こういう判断をしたわけでございます。
  47. 粕谷照美

    粕谷照美君 社会の信頼を得る刷新というのは具体的にどういうことかお伺いします。
  48. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 私どもといたしましては、私学のことでもございますので、自主性を尊重するという立場から具体にどうするかという点については大学みずからが考えてほしいということで、個々具体の人事等について発言することは差し控えておるわけでございますけれども、運営体制の刷新ということから当然理解ができる内容であることを期待しておるわけでございます。
  49. 粕谷照美

    粕谷照美君 私も九州産業大学に行きまして、その鶴岡理事長ともお会いをいたしましたが、そのようなムードに包まれたような言葉で了解ができるような方ではないというふうに判断をしているわけでありまして、文部省に来ていたださまして説明を求めた点では、これは理事の総入れかえだと、こういうことも含まれていますという話がありましたが、どうですか。
  50. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 刷新という言葉の中には理事の全部あるいは一部の入れかえということは当然考えられるべきことであろうと思っております。
  51. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部大臣も先ほど理事をやめさせることはできないと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、強い態度で臨まれると、こういうことでありますが、強い態度というのは、その理事の体制が刷新できない間はどうなさると、どういう決意なのでございましょうか。
  52. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 現在の段階では私ども大学側に再検討を求め、大学側で現に検討が行われているところでございますので、この結果がどうなるかということを待たずして、その次にこういう手段をということを申し上げることは差し控えさしていただきたいと思うわけでございます。
  53. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部省に対して鶴岡理事長が、当面の学園混乱を収拾し、再建をほぼ終えた時点でといる、これはもういまのままで残って自分が再建をしますよと、このことではだめなんだということですか。
  54. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 大学側の回答の内容では、私どもの指導の趣旨に沿っていないと判断をしているわけでございます。
  55. 粕谷照美

    粕谷照美君 今度の三月二十五日が卒業式です。四月にはもう入学式であります。そういうことで地元では一体どうなるのか、こう心配しているわけでありますが、文部大臣としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  56. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 粕谷先生のおっしゃるとおりの、何か雰囲気みたいな、ふんわりしたことじゃだめだと、私もそういう感じを持っておるのですが、残念ながら最初に申し上げましたように、任免権という制度がありません。率直に申し上げて、事教育に関する機関の、私学でありましても国が多額の助成をして学問の振興を期待しておる機関でありますから、その最高責任者等が、こういう先ほど来お話がありますように、ちょっと常識では考えられないような不正なといいますか、不当なことをやっておる。私は強い自責の念を示してもらいたいというのが偽らざる文部省としての立場でございます。自主性に待つわけでございますけれども、私は率直に言って世間の皆さんがそうかという理解をされるような態度を速やかにとってもらいたいと、これは期待でございます。でありますから、三月末までにどうするかということを明言はできませんけれども、できるだけ早く、三年とかなんとか言わないで、これほどの責任といいますか、ぶざまなことをやられたことを自責の念をあらわしてもらいたい、これが偽らざる私の期待でございます。
  57. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、今回私学助成金が五十六億円も減らされたと、あそこの学校に行きまして先生方からお話を伺いますと、この理事長の年間収入約六千万、その他何か含めまして八千七百万円の収入があると、こういうことであります。収入が多い少ないは、そのことは価値判断は別でありますけれども、そういう中で私学助成金が減らされて、そして特に育英奨学金の人数が減らされていく。先生方は、ぜひ奨学金を受けたいと生徒に言われても切らざるを得ない。そういう実態が続いているときにこういう学校経営者がいるということをやっぱり許せないというふうに思うわけであります。以後こんな問題をなくするために、どうしてもこの経理というものは公開をされて、そして国民の前に、学生の前に、その学生の父母の前に明らかにしていくという方策をとらなければならないのではないか、こう思いますけれども、文部大臣のお考えはいかがでしょうか。
  58. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 個人の財産を公開せよということもできませんが、私学といえども——これは一種の私学でございますから、全部それを公開せよということは無理であろうと思います。しかし、国からの助成金がどうなっておるかということぐらいは明らかにしてもらいたい、かように考えます。
  59. 粕谷照美

    粕谷照美君 大臣、そういうことだけではどうにもならないわけです。このことは私は解消できないというふうに思っております。この私学助成法ができましたときに、わが社会党は反対をいたしました。その反対の内容は、二分の一という数字が入っていないからでありますけれども、やっぱり経理をきちんと公開をする、経理公開になっているんですけれども、その公開の内容そのものがやっぱり問題だというふうに思うのであります。  ここに「教育は死なず」といいまして、篠ノ井旭高校長といいまして、長野県の、特に暴力事件を起こしたような大変な子供たちを生徒の数の一割は入れようと、社会に出たってそんな無菌のようなところで子供たちは育つわけじゃないというので、そういう子供たちを入れている高校の校長先生が言っておられましたけれども、いろいろ、いろいろ問題があって先生方に大変苦労をかけていると、しかし月謝を五年間も上げないのは経営側にとっても大変だから上げてもらいたいということを校長としても理事長としても組合に言うわけであります。組合は、校長の言うことならまあしようがないだろうと、五年間がんばってきたんだから。しかし条件がある、その条件は経理の公開だというのです。教職員自身が経理がどうなっているのか全然わからないなどというような実態を許しておくから私はこういう問題になってくるのではないか。経営陣の方がうんと力が強くなって、本当の教学がつくられていかないのではないかということを考えます。補助金のみに限定をせず、経理の公開についての見直しをしたいと、こういうふうに約束をしていただけませんでしょうか。
  60. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いまの事例のように、学校当局が率先して経理を明らかにして世間の理解を求め、そして協力を得るということであれば別でございますけれども、文部省や政府がそれの公開を迫るというわけにはまいらないと思います。
  61. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部省に伺いますけれども、経理公開しなければならないということになっていませんか。
  62. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 私立学校の運営につきましては、その自主性を最大限尊重するという原則に立ちながら、みずから適正、妥当な運営が行われることを確保するための制度といたしまして、監事、評議員会等の内部監査機構を置くということは御承知のとおりでございますが、さらにこれに加えまして、経常費補助金の交付を受けております学校法人につきましては、その経理の適正を確保するために公認会計士による監査ということを義務づけておるわけでございます。そういったようなことで、一般的にはこういった公正な運営ということが確保されていると考えておるわけでございますが、今回のようなケースは大変残念に思っておるわけでございます。  なお、ただいまお話にございました経理公開の問題につきましては、私立学校法四十七条によりまして、学校法人は財産目録、貸借対照表等の財務諸表を常時備えつけておくということが義務づけられておるわけでございまして、それによりまして、必要な場合には関係者が閲覧できるようにしておるわけでございますけれども、どの範囲の者にどの程度見せるかというようなことにつきましては、それぞれの学校法人の当局者の判断にゆだねられておるところでございます。文部省といたしましては、このことに関しましては事の性格上、基本的には各学校法人の自主性にゆだねられておるわけでございますけれども、従来から、学校経営等に関しましていろいろ関係者の協力を求める必要があるといったような必要性に応じて財務状況を明らかにしていくことが望ましいという指導をしておるところでございます。
  63. 粕谷照美

    粕谷照美君 この私大の経理の公開の中で非常に問題になるのは、裏口入学といいますか特別入学といいますか、こういうものに対する教学のチェックかきかないということだと思います。総理も先ほど、私立にはいろいろな自主性がある、特色があると、こういうお話をされておりますけれども、昭和四十五年の参議院の決算委員会で、当時の国務大臣でありました中曽根総理がいろいろなお話をなさっている中で、推薦入学について、官立と違って私立にはそういう特色があると、それで理事会の推薦というのを総長推薦という名前にしている、各理事がいろいろ頼まれたり、あるいは適当であると思うもの、あるいは支部推薦で漏れた人たちをどう救うか、そして各県支部の中でこれだけやってくれと先輩から頼まれたようなもの、そういうものを救う場として理事会で認定してやっている制度になっているわけですと、こういうふうになっているわけですね。推薦入学の制度があるということは構わないんですけれども、その推薦入学をめぐって裏でいろいろなお金の問題が出てきている、もっとも公明正大ではないというところが問題なのだというふうに思いますけれども、この辺について文部大臣はいかがお考えですか。
  64. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私学は、申し上げるまでもなく、個人が学校教育というものをやろうということで組み立てるわけでございますから、それには資金が要る。大きな財産を持っている人が一人でやる場合もあるでしょうけれども、やはりそれをみんなで出し合って私学を経営するということも考えられるわけであります。でありますから、入学者からある程度の私学が成り立つような経費を出してもらうということ、これはやむを得ないことだと思いますよ。問題は、その使途あるいはその程度、こういう点だと思います。全部これを軽視すると私学は経営がむずかしくなるんではないかと私は考えております。
  65. 粕谷照美

    粕谷照美君 大臣、こういうことなんです。お金を入れますから入学を許可しますよという、入学と引きかえで金の額が決まったりすることについてどうお考えですか、それでは。
  66. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) お答えいたします。  私学の入学者選抜でございますけれども、これにつきましては、もちろん建学の精神とか、あるいは独自の校風を生かしながら教育をしていく必要があるということから、それにふさわしい入試選抜方法というのが検討されるべきであるということはもちろんのことでございますが、御指摘がございましたように、そういう選抜方法は公正かつ妥当な方法でなければいけないと考えておるわけでございまして、一般の正規の徴収金のほかに寄付金等によって、それを出すか出さないかによって入学者選抜を行うということは適切でないと考えております。
  67. 粕谷照美

    粕谷照美君 先ほど寺田委員の方から非行防止についての話が関連としてありましたので、私はちょっと問題を変えてやりたいと思うんですが、先日、文部省教育委員会の方々を集めまして五十一項目にわたるこのチェックポイントを指導されたということでありますけれども、あの辺はいままでやったことないんですか、ああいう指導というのは。特別新しいのでしょうか、どうでしょう。
  68. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) この問題の起こりました学校につきましていろいろな事例を調べましたところ、やはり学校の運営組織と申しますか、生徒指導を中心とした体制と申しますか、あるいは校長のリーダーシップ、あるいは教員の個々に対する指導、あるいは校外との連絡の組織、連絡のあり方等いろいろ問題が出ているわけでございまして、私どもがこの具体的なケースにつきまして都道府県等を通じまして事情を聴取いたす場合にも、各部道府県におきましてはある部分につきましては具体的に承知をしておりますけれども、全体の状況の把握については必ずしも十分でないというふうな経験がございまして、そこで、そういうようなことをいろいろと研究いたしまして、問題行動に関する懇談会等におきましてもそのような御指摘をいただきましたので、改めて四十九項目にわたる点検項目をサンプルとして、これは参考例でございますが、それをつくりまして、去る三月十日の都道府県の教育長会議におきまして、このような参考例を使いまして具体的に問題の起こりました学校についてひとつ総点検をしてもらいたいということをお願いをしたわけでございまして、各都道府県におきましてはいろんな観点からの調査なり対応は立っているとは思いますけれども、このようにやはり全般的にわたりまして点検をするというようなことは必ずしも十分行われていなかったということで、私どもとしてはこれを機会にそのような点検項目を示し、それによって具体的な学校の状況を知ることによって今後の対応の手だてにしたいということでございます。
  69. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、いままでの学校要覧なんかで十分間に合うような項目がこの中に入っている、また学校の先生はこの統計を出すために大変な苦労をなさるんだろうなと、こういうふうに思うわけですが、しかし、このごろの各省庁の少年あるいは校内暴力に対する対策を見ますと、管理一辺倒という感じがしてならないわけであります。  そういう意味で、文部省がいままでにやられた以外のことを少しやってもらったらいいのではないかという一つの面に、教員の健康状態がどうだろうか——あの町田の忠生中学の八木教諭は原爆病であったということもありますけれども、学校に行くのがこわいという、こういうことが記事に載っておりました。教師の登校拒否あるいは心身症というものが非常にふえているのであります。それは何も日本だけではありませんで、ILOがすでにもう二年も前の一九八一年に、世界の教師たちのストレスはもう戦場並みだと、戦争恐怖症とも言えるような状況だということを報告をしているのでありまして、文部省としては一体そういう点についての御調査があるかどうか、お伺いをしたいと思うんですね。
  70. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) 公立学校教員の病気、休職等につきましては、これは文部省が分限処分という形で求めております調査の中に入っておりまして、昭和五十六年度におきましては四千二百七十五人になっております。そのうち精神性疾患に該当する者が八百二十一人となっております。なお、これはただいま申し上げましたように、分限処分によりまして休職とされた者の数でございますので、それ以外の実態はつまびらかにはしていないわけでございます。
  71. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部省はそういう教師の健康管理などということに非常に冷淡であるということがよくわかったわけでありますが、先ほど御紹介しました若林さんのお話、私はもう伺いまして非常に感動したんですけれども、本当に校長が先頭に立って、生徒はその校長のことをトレパン校長とこう言うくらい、きのう服装の乱れなどというのもありましたけれども、がんばっているわけです。そして、一緒になってやっていますけれども、それはそれはもう大変な中でノイローゼになったり、あるいは精神疾患で通院をしていらっしゃる先生、入院をしていらっしゃる先生、毎年大変な数になっているわけです。  そして、こういう中で一クラスの人数を決めるときに、ことしは大物が入ったからおまえのクラスは二十五人だ、ことしはおまえのところは余り大したことのない生徒たちだから三十人だ、しかし最高は三十五人だよと、こういうふうにやっているのであります。だから、一クラスの人数を少なくして、ちゃんと生徒が見えるように、これは文部省の四十人学級をね、文部大臣、確実にまず実現をさしていくということでこの非行問題にもひとつ対処しなきゃならないんじゃないかと思いますが、こういう金のかかることについては一体どういう感じをお持ちですか。  そして、この校長は先頭に立って自分自身が授業をやっていらっしゃるんです。授業をやらなかったら子供が見えない、子供が見えるから指導ができると、こういう姿勢なんですね。校長は管理職ではない、一緒になって教育をやる人だという、こういう姿勢を貫いていらっしゃいます。こういう点などについて、非行問題に対するもう一つのお考えをお伺いしたいと思います。
  72. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私は、正直なところ、まだ期間も短いものですから、学校の現場をよく見せていただくいとまがありません。もちろん、学校の先生方がきわめて健康で明朗な姿で教育をされるということは非常に望ましい。なぜかというと、先生の姿を見て生徒はそれからいろんな生き方を覚えるということが私は非常に大事な教育だと思います。でありますから、そういう学校の先生方の健康なりということはきわめて平素から重視しなければならない。そういう点は、文部省はそういう点を放任しておるわけじゃありませんけれども、御承知のとおり、直接の担当といいましょうか管理といいましょうか、それは都道府県の教育委員会、市町村の教育委員会があるんですから、そしてまた校長先生もおられるんですし、やはりこれは非常に大事だと思いますが、そういう点も今後気をつけていきたいと思います。  それから、私は正直に言って、いまのこの学校教育が普及しておりますから、小中学校の先生、しかも非常に経済が豊かになり生活が高くなりましたため、体も大きくなった子供たちを、まだ社会的には未熟でありますから、これをうまく指導し教育して育てていくということは並み大抵じゃないと思います、率直に言って。御苦労があると思います。その御苦労を乗り越えて使命感にのっとってひとつやっていただこうというのは、まあよけいな欲望と言われるかもしれませんけれども、そうあってほしいというのがなんですけれども、さればといって先生方の健康その他を無関心でおるわけにいかない。でありますから、まあ千七百万ぐらいあると言われておる小中学校の生徒でございますから、一挙にはまいりません。御承知のとおり、四十五人を四十人学級にしようというふうにいま努力しております。いまちょっと経済問題でややストップしておりますけれども、これ何とか予定のとおりに期限までには四十人学級を実現したい。財政事情が許せば私は三十五人ぐらいでもいいんじゃないかという、これは私個人の希望でございますけれども、そのくらいのゆとりのある子供の教育をすることが真にいい子供を育てるゆえんだと私は思っております。
  73. 粕谷照美

    粕谷照美君 この四十人学級につきましては、実施から三年後には見直しをするということが自民党と社、公、民三党との間で話し合われているわけです。これを見直すというお考えは当然お持ちだと思いますけれども、いかがですか。  それと同時に、あの町田の例で見ましても、マンモス校で、先生だか何だかわからない、どこのおじさんがいるんだかわからない、やっぱりこういう状況のマンモス校を解消するための文部省の方策をひとつ考えていかなければならないと思います。その点についてはいかがでしょう。
  74. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私は教育の専門家ではありませんけれども、小中学校は七百人か八百人ぐらいが標準じゃないかと思っておるんですよ。千人も千二百人もおったんじゃ、本当にこれは大変だという感じを持っておりますから。ただしかし、これは国民の負担に関係あることでございます。国民と相談しながら大事な子供の教育に努力をしたい、かように考えております。
  75. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時まで休憩をいたします。    午後零時一分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  76. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十八年度総予算三案を議題とし、午前に引き続き粕谷照美君の質疑を行います。粕谷君。
  77. 粕谷照美

    粕谷照美君 総理にお伺いをいたしますけれども、国連婦人十年の最終年が二年後に迫っております。婦人問題企画推進本部長日本における婦人問題の最高責任者として、この婦人差別撤廃条約批准に向けてのお考えはいかがなものでございましょうか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 婦人差別撤廃条約の批准につきましては、政府は積極的な熱意を持っております。さまざまな職場や環境におきまして男性と平等の待遇を得られるように——もちろん婦人には婦人の特性がございますけれども、平等の待遇を極力得られるように政府は今後とも努力いたしたいと思いますが、同条約の問題につきましてもできるだけ早く批准を行えるような環境整備に努力してまいりたいと思っております。
  79. 粕谷照美

    粕谷照美君 各省庁のそれに向けての準備、進捗状況、これについてお伺いいたしたいと思います。
  80. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生のお尋ねにお答えさしていただきますが、ただいま総理も言われましたように、本条約批准というのはこれは急がねばならないことでございますから、本条約批准のため特に国内法制定、諸条件の整備に努めることは、国連婦人の十年、国内行動計画後半期の重点課題となっておりまして、政府としては本条約批准に向けて、ただいま総理からお話のございますように、各省連絡をとりまして鋭意準備中でございますが、特に先生から先日お聞かせいただいておりまする、そのための女子の公務員の採用、登用等、行政への婦人の参画の拡大については、御指摘のありましたように、五十二年に婦人の政策決定参加を促進する特別活動推進要綱を定めまして積極的に推進しておるのでありますが、徐々ではありまするが改善が見られております。今後とも行政への婦人の参加を助長する祉会的機運の醸成を図って、一刻も早く批准に持っていきたい、環境づくりに努力いたしております。
  81. 大野明

    国務大臣(大野明君) 労働省といたしましては、現在条約批准に向かいましてその条件整備に努めておるところでございます。また現在、この条約の解釈上の問題を解明しつつ、婦人少年問題審議会において、雇用における男女の機会の均等、あるいはまた待遇の平等等につきまして諸方策を検討中でございます。それにつきまして、また法的整備についても論議が行われると思っておりまするが、まあいずれにしても現況は審議会において検討中でございますから、その結果を待って前向きに私どもも考えていくということでございます。
  82. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 法務省民事局の関係では国籍法が問題になろうかと思いますけれども、国箱法の関係につきましては、本年の二月一日に法務省民事局の第五課の名前で、それまでの法制審議会の審議の結果を踏まえました国籍法改正に関する中間試案というのを公表した段階でございます。現在この中間試案に基づいて各界の御意見を伺っておりまして、御意見が出そろいましたところで、これを参酌して審議会の審議が再開されるものというふうに期待をしておりまして、私どもといたしましては、一日も早く審議会の答申をいただきまして、来年の春には法案を準備したいと考えております。
  83. 鈴木勲

    政府委員(鈴木勲君) 文部省関係でございますが、これは高等学校におきます女子に家庭科一般四単位を必修としている点でございますけれども、このような取り扱いが男女に同一の教育課程を確立するよう規定いたしました条約の第十条(b)項との関連で問題がないかどうかということにつきましては、かねがね議論があったところでございます。私どもといたしましては、諸外国の状況、あるいは本条約批准署名後の対応ぶり等も検討いたしまして、外務省と協議をいたしまして対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  84. 粕谷照美

    粕谷照美君 総務長官にお伺いしますけれども、具体的に作業が進んだというのは法務省の国籍法だけのようにいま拝聞しているわけでございます。法律を直さなければこの条約は批准をしないということになれば、この二年後の条約批准というのはちょっと困難ではないかと思いますが、その辺の分析はいかがでございますか。
  85. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先回も婦人議員の先生方のお集まりのときに御指摘をいただいたのですが、いまも法務省から話をしておりまするように、国籍法大変厄介なことで、男を中心にして見るか、女性を中心にして見るかということで、ごてごてしておるようでございますけれども、私の方は調整する機関でございまするので、先回、先生に申し上げましたように、できるだけ早く調整をとって批准がなされるような環境をつくっていこうと努力しております。
  86. 粕谷照美

    粕谷照美君 総務長官、いま見えたのは、国籍法は目に見えましたと、しかしまだ、男女雇用の平等法という仮称になりますか、あるいは育児休業法、その他文部省の問題なんかもありまして前進してない部分があるのです。それが終わらなければ批准ができませんと、こういうことなのかどうかということです。
  87. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) 先生のおっしゃるように、全体が調整がとれなければ批准にまで持っていかれないということではありましょう、基本的に考えますると。そうではございますが、そのためにこの批准がおくれるようなことがあってはなりませんので、そういうことにならないように各省の努力をしていただくことに私どもの役所としては誠心誠意と申しますか、精進をしておるのでございますから、どうぞ御了承をいただきたいと思います。
  88. 粕谷照美

    粕谷照美君 その条約の中にも関係をしているわけですけれども、優生保護法に関してお伺いいたします。  いま問題になっておりますが、総理は、今度の国会にこの優生保護法が出るか出ないかということで、国民が非常な関心を持っていることは十分御承知と思いますけれども、これに関する総理のお考えをお伺いいたします。
  89. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 粕谷議員にお答え申し上げます。  優生保護法は私の方の担当でございますから、私から便宜お答え申し上げますが、婦人差別撤廃条約十六条の(e)項に問題があるのではないかという御指摘だろうと、こう思います。この条約の解釈問題は、現在、政府部内で外務省を中心にして検討してもらっているところでございますが、厚生省関係には、私の方は抵触しないのではないか、こういうふうに見ているところでございます。  条約の解釈は、私も英文を読んでみました。読んでみたら、なかなかこの条約の解釈というのは、そう簡単に、国内法解釈と違って非常にむずかしい解釈でございますから、むしろ専門家の方方の御判断にまって私はやらなければならないものだろうというふうに考えているところでございます。
  90. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、担当大臣としての厚生大臣にお伺いしますけれども、いま反対運動をしていらっしゃる方々がどういう理由でもって運動していらっしゃるというふうにお考えになっていらっしゃるか。  それから、きのうも沓脱委員からの質問がありましたけれども、このコンセンサスというものは一体何なのかということについてお答えいただきたい。
  91. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 粕谷議員のお話の中で、反対運動どんなことでやっているかと、こういうふうなお話でございますが、いろいろな方の反対運動がございます。印刷されたものもたくさん持ってこられる方もありますし、私のところにははがきで来るのもございますし、それから、長々と自筆で手紙を書いてお越しになる方もございます。同時に、賛成、何かやらなくちゃいかぬと、こういうふうなお話もございますが、反対運動ということをしておられる方々は別に——お話私もいろいろしました、決して中絶を何でもかんでもやってよろしいなどということで考えておられるわけではないということははっきりしております。ただ、非常な厳しい形になると、かえってやみの中絶というのがふえるではないか、それから、婦人の母体に対する影響が非常に出てくるではないか、あるいは住宅対策なり、家族計画なり、そういったものの推進とも相まってやらなければならないのではないかと、いろいろな御意見がございまして、だれしも人工妊娠中絶というものを好ましいと考えておられる方はないというふうに私は受けとめているところでございます。
  92. 粕谷照美

    粕谷照美君 コンセンサスについては……
  93. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) コンセンサスと申しますのは、この問題につきましては、衆議院の予算委員会におきましても各方面から御議論がございました。申し上げますと、いつから生命というのは始まるのか、この辺の御議論がございます。いつから胎児となるのか。一体、堕胎罪というものの存在はどうであろうか。四番目に、人工妊娠中絶制度の存在理由は一体どういうふうに考えたらよろしいだろうか。それから、胎児の権利というものはどういうふうに考えるべきか。  同時に、いまお話がございました婦人の差別撤廃条約に関連いたしますけれども、世界人権宣言というのがございます。その世界人権宣言等に関する婦人の権利というのがうたわれておりますから、この辺との関係をどうするのがよろしいの  それから、婦人の地位が非常に向上してきている。社会的にも平等であるし、職場にも大いに出ておられる。こういった方々が出産をしたくないと、こういった婦人の社会的な進出を契機にいたしまして、婦人の地位が非常に向上してきていることに伴うところの出産というものをどう考えるべきか。  それから、性教育というものをもう少し徹底してやらなければならないか。その問題に関連しまして、やはり性の問題に関する倫理というものをどう考えていくべきか。これははるかに、もうひとつさかのぼりますと宗教心の問題も出てくるのではないかということがございます。  それから、先ほど来先生からお話のございました少年非行の問題もやっぱり私は、婦人、特に年若い婦人の方、少女と申しますか、そういった方の非行の問題もある。それから、婦人の労働対策の問題もありますし、家族計画の普及、それから避妊の技術の開発普及を図るべきではないか、あるいは母子の福祉対策をもっと充実する、たとえば住宅の問題をどうするかとか、産めるような状況にないような住宅事情ではどうだというような問題がたくさん出ております。  私はそういったものについて、やはり国民的な御理解をいただいたような形でやっていかなければならない。先ほど申しましたように、だれも好きこのんで堕胎をされるということではないだろうと思うのです。したがって、やっぱり何らかのそれぞれの事由がある。そういったものを踏まえながら、しかもこの性の問題というのは非常に厳粛な話である。人間の一つの基本の話でございますから、そういったものを踏まえた上でこれから考えていかなければならない。そういった意味でのコンセンサスというものをつくっていくことが必要ではないだろうかと、私はこういうふうに考えているところでございます。
  94. 粕谷照美

    粕谷照美君 そのコンセンサスを得る機関というものがあると思いますけれども、その機関について一体女性はどのように参加させられているか、お答えください。
  95. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) これは女性だけの話ではないと思います。国民ひとしく関心を持ってもらわなければならない話でございますし、全国の市町村でもいろんな形で御審議があるようでございます。きのうもちょっとお答え申し上げましたが、優生保護法改正をやるべしというところが九十九市町村あります、それから、反対である、するなというところが五十市町村あります。それから、生命尊重議員連盟というところに約七百万枚の署名が来ているという話も聞いておりますし、また厚生省には五十万枚以上の署名が、実はこれは反対であるというのが来ておりますから、私は、そういったものを踏まえていろいろやっていかなければならない、こう考えております。  いま実は、私の方の公衆衛生審議会というところで優生保護部会というのを設けまして、この問題につきましていろいろと御議論をいただいておるところでありますが、私は率直に申しまして、優生保護部会という形で議論をしていくということになりますと、どうしても医学的な見地、母体の保健の見地というものが中心になるだろうと思いますから、やはりそういったところで先ほど申しましたような話をどうだこうだ言ったところで、議論をできる話でもないだろうと思いますし、私はいまお話がありましたことを謙虚に受けとめまして、特に国会でいろいろのこれだけ議論があるところでありますし、まだまだ問題点は出てくるかもしれません。そういったものを、出てくる上でやはり国民的なコンセンサスを得られるような形をやっていくということが必要でありますし、最終的には国会でいろいろと御議論をいただく——きょうも大変御質問をいただいておりますが、こういった形でコンセンサスを得る道が出てくるのではないだろうか、私はこういうふうに考えているところでございます。
  96. 粕谷照美

    粕谷照美君 女性の参加の数。
  97. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 女性の参加というのは、いまもお話し申し上げましたが、女性の方々からの投書やその他の方々も非常に多いし、それから先生からもお話がございました超党派の議員の方方からもいろいろなお話がございましたから、そういった形で御意見を求めていくということが私は必要なことではないかというふうに考えているところでございまして、特に制度的にこれをどうとか、こうとかするというような話ではないのだろうと思うのです。政府の一部局での話という形でまとめる話ではないのではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  98. 粕谷照美

    粕谷照美君 その審議会に婦人の代表が一名しか入ってないということをなぜおっしゃりたくないのだろうかという気持ちがするわけでありますけれども、国民的なコンセンサスを得るように、それだけのいろいろなことに対してやらなければならない、国民に理解を求めなければならないという条件があるということがはっきりしたわけでありますから、今度の国会では提案ができない、こう判断してよろしゅうございますか。
  99. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) これだけの大問題でありますし、私は、生命という問題につきましては、やっぱり政治家はひとしくこれは考えていかなければならない問題だろう、こう考えております。  今国会につきましては、政府の方では検討すべき法案という形で、優生保護法と母子保健法の問題につきましてかけておりますから、私の方は依然として検討を続けてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  100. 粕谷照美

    粕谷照美君 検討をしているということと、出せる条件にあるかどうかということの判断をお伺いしているわけであります。
  101. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 検討しておるというのは、何らかの形で話をまとめてみたい、法案も出してみたい、こういうことで検討をしておるわけでありまして、出さないということで検討するのでは、提出予定法案の中に入れる意味はないんではないか。何らかの形でこの話はまとめていかなければならない話だろうというふうに私は考えておるところであります。
  102. 粕谷照美

    粕谷照美君 きのうも、神奈川県議会議長のお名前で、これに反対をするという意見書が出されているわけであります。今度は市町村じゃなくて、一県入りましたですね。  それで、たとえばマザー・テレサさんのお話もありますけれども、あの方は、中絶についての害悪、罪悪を説くと同時に、未婚の母の人たちのための家などをつくってやっていらっしゃるわけですね。口で言うこととおやりになるということとはやっぱり違っているわけで——違っているという意味はおわかりになるでしょうか。やっぱり、実践的に人の命を助けなければいけないという仕事をしながら、中絶について反対をしていらっしゃる、こういう問題があるというふうに思います。  私は、いま厚生大臣がなかなか言いづらい状況にあるということはわかりましたけれども、とてもいまの中ではまとまるような条件ではないと思いますので、今国会では提案をしないようにお願いをしたいと思います。  さて、この差別撤廃条約と絡まりまして、労働大臣にお伺いいたしますけれども、女性採用に当たっての非常に差別的な現状があるということですね。チビ、ブス、カッペなんというのは採用したくないという、あの紀伊国屋書店の問題について、土井たか子議員の質問に対して、対処する、こう衆議院の予算委員会ではお答えになっていらっしゃるようですが、その報告をお伺いしたいと思います。
  103. 大野明

    国務大臣(大野明君) ただいまお尋ねの紀伊国屋書店におけるチビ、ブス、カッペというような採用基準についての御質問が先週の土曜日、衆議院の予算委員会の分科会で土井たか子議員より御発言ございまして、そのときに私は、近日中に責任者を呼んで、そうして事情をただすということを申し上げました。今週の火曜日の日に実は先方の責任者が参りましたが、私はこの当予算委員会で出られませんでしたので、婦人少年局長かかわって事情聴取いたしましたところ、現在は採用に対してそのようなことは絶対に行っておらぬということを向こうから報告がありましたが、今後ともそういうことがないようにと、はっきりと指導をいたしたところでございます。
  104. 粕谷照美

    粕谷照美君 チビ、ブス、カッペだけではなくて、もっともっと重大な問題を含んでいるこの基準、マル秘文書というものを私どもは手にしておりますので、こういうような状況が出てくるというのも、やはり雇用における男女の平等というものが確保されていないというところから出てくるわけでありますから、労働省におきましては、至急その問題に取り組んでいただきますように心から要望いたしておきます。  最後に、総理大臣、ナザレ園のことなんですけれども、総理がおいでになって、ナザレ園に金一封を贈られたということもあるんですけれども、実はあの前に、私はちょっと資料をいただきまして、要望を受けたわけですけれども……
  105. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 粕谷君、時間が参りました。
  106. 粕谷照美

    粕谷照美君 はい。  大変民間の人たちが苦労をしていらっしゃる。政府の出すお金よりも民間の方がいっぱいなんですよね。この辺についての御指導といいますか、お考えをお伺いしたいと思うんです。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ナザレ園のめんどうを見てくださいます韓国の皆様方については、非常に感謝と尊敬の念を持っております。  日本人でありました御婦人方が、年をとりましてさびしい、わびしい境涯にあるところを、韓国の皆さんが非常に同情を寄せられまして、老後が安定するように物心両面にわたってめんどうを見てくださっております。この間、私、園長さんにお会いいたしまして、心からお礼もまた申し上げたところでございます。  われわれといたしましても、及ばずながら、もちろんこれは韓国の領域内における主権の問題で、内政干渉がましいことはいたしませんけれども、できるだけ努力してみたいと思う次第でございます。
  108. 粕谷照美

    粕谷照美君 終わります。(拍手)
  109. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で粕谷照美君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  110. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、大坪健一郎君の総括質疑を行います。大坪君。
  111. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 昨年、中曽根内閣が成立いたしまして以来、中曽根総理大変な御努力で国内の諸政策をおまとめになっておられますし、また外国にも足を伸ばされて大変な御活躍でございます。私ども大いに敬意を払っておるところでありますが、特に総理の関心と申しますか、気持ちの中には、わが国の国家としての安全保障をどうやって保っていくか。それから、国民生活の安寧、平和をいかにして維持していくかということがあるのではなかろうかと存じます。  きょうは私時間もございませんし、せっかくの土曜日の午後をつぶしていただいておりますから、総合安全保障に限って質問をいたしたいと思います。  最初に問題点を申し上げておきますが、一つは、いま総合安全保障で一番心配になります点は、国際的な環境が悪化して国際間にいろいろな争いが起こる、そういう可能性のある問題をなるたけ早目に芽を摘んでおかなければいかぬのじゃなかろうか。そういう意味で、一番問題になっております国際的な金融不安の問題を最初にお聞きしたいと思います。  それから、安全保障の一番ハードな核となります防衛問題についてその次に御質問したい。  それから、次いで資源関係の問題と食糧関係の問題について御質問したいと思います。  まず最初に、総理に、その総合安全保障の観点の幾つかの柱があると思いますけれども、総理のお考えをちょっと聞かせていただきたいと思います。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安全保障はもとより総合的に行わるべきものでございまして、いわゆる軍事力、あるいは防衛力というようなものはその一部にすぎないと思っております。  防衛力の面から見ますと、われわれの安全保障は、まず第一に自分で自分の国を守るという自衛措置、それから日米安保条約を有効に機能させるという外国との連帯努力、それから平和を維持して、戦争を誘発させないような環境をつくっていくという点、これは外交努力、あるいはそのほか諸般の政策がございますし、また万一の際にも、いかなる場合にも対応できるような体制をつくる。これは食糧や燃料のストックの問題、あるいは重要な資源をある程度備蓄して持っているという問題、あるいは経済協力その他を通じて友好国をふやしていくという問題、あるいは一般論として科学技術を振興していくという問題、さらに軍縮に力を入れて国際世論の上からも戦争を起こさせない力を国際的にも増していくという問題、こういうさまざまなことが総合されて安全保障はできていくものだろうと思っております。その中で、やはりいざというときの最後の保障というものは防衛力に依存するものでございますから、この点もゆめゆめ怠ってはならぬと思っております。しかし、ふだんやはり大事なことは、軍縮あるいは資源の備蓄、あるいは友好国に対する経済協力等々の平和的手段による環境の造成ということも非常に重要な面ではないかと思って、それらをバランスを得て推進していくように努力したいと思っております。
  113. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 そういう御配慮で政治を取り仕切っていただくのは大変ありがたいことだと思いますが、日本の努力にもかかわらず、全世界的に非常にむずかしい問題が起こっておるという状況下では、この問題について、十分な私どもの観察と申しますか、判断と申しますか、というものを持たなくてはならないと思います。  お忙しいところ日銀の総裁にも出てきていただいておりますのでお伺いしたいのですけれども、最近国際金融不安が盛んに喧伝をされております。非常に多額のお金が先進国から開発途上国に貸し出されておる。その貸し出されたお金の返済のめどがつかない国がずいぶんできておるんではないかという心配をあちこちでなさっておるようでございますが、先進国の中央銀行の総裁がお集まりになって、その点についていろいろ御相談をなさったというお話も伺っておりますので、日銀の総裁に、最近行われましたそういう会合での、中身はもちろんおっしゃれないでしょうけれども、問題点等がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  114. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 債務累積問題は昨年ぐらいから大変深刻になってきているわけでございます。いろいろな背景があるわけでございまするけれども、やはり主として中進国が工業化、あるいは経済成長を図っていくという上において、海外からの借金が累積したということでございます。経済事情の変化に対応できないで、なかなか利息の支払いも滞るという現状になっておるわけでございます。市中銀行からの資金がたやすく貸し出されたという非難もございますけれども、しかし一方、石油危機、原油価格があれだけ大幅に上がりまして、産油国にたまりました金をどうやってそれ以外の国に回していくか、いわゆるリサイクルということの問題が非常に数年来問題になっておりまして、それが市中銀行を通じて非常に円滑に行われたということの結果、一部はその結果そういうふうな債務累積になっているわけでございます。これを是正してまいりますには、何よりもやはり債務国自体が自国の経済体制を立て直していかないといけない。その自助努力以外にはこれを是正する方法はないわけでございます。その点につきましては、IMFから資金を貸し出すに当たりまして、是正策が十分であるかどうかということについての審査が行われたわけでございます。同時に、いま申し上げましたIMF、世銀等の資金を充実いたしまして、そういう国に対して資金を貸し出す余力をつくろうということで、IMFの増資、あるいはいわゆるGABというようなこと、でIMFの資金の補充を図りました。同時に、この債務累積問題がまかり間違えますと世界的な金融不安につながりかねないという認識がございまするので、各国政府、中央銀行、それから市中銀行も同時にその協力を仰ぎまして、その金融をつけていく。その間に債務国の、いま申し上げました経済の立て直し政策が功を奏していく。そういうことでこの事態を乗り切るよりしようがないというのが共通の認識でございます。  将来の問題に対しましてはいろいろな問題があるわけでございますが、当面はこの燃え上がっておる火を何とかしてうまく消して、世界的な金融不安につながらないようにしようというのが共通の認識で、そういう線で各国、世銀当局の間で話し合いが行われておるわけであります。
  115. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 中央銀行の総裁の御認識ですから、私どもやっぱりその認識が非常にシリアスな問題ではないかと思っております。  それで大蔵大臣にお伺いしたいんですが、現在開発途上国の持っております対外債務の残高が世界的にどういう状況になっておるか。そして、特に対外援助政策というものが国際的に非常に強く要請されておって、各国政府は公的な援助をいたしておりますけれども、その公的な援助との兼ね合いで民間銀行がこれと別に開発途上国にいろいろな形の信用供与をいたしておる。そういうことの結果、開発途上国の対外債務の累積が非常に大きくなっておるような感じかいたしておりますけれども、これをちょっとお示しいただければお示しいただきたい。
  116. 大場智満

    政府委員(大場智満君) まず、対外債務の総額でございますが、OECDの統計によりますと、昨年末におきまする開発途上国全体の債務残高でございますが、約六千二百六十億ドルとなっております。それから、御指摘の公的債務でございますが、このうちの約二〇%が公的債務になっております。ですから、千三百十億ドルくらい。残りが民間の債務でございまして、したがいまして、四千九百五十億ドルという姿になっております。
  117. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 特定の先進国が特定の開発途上国に対して多額の債権を持っておるということを聞いております。こういう状況は、特にその特定の開発途上国の債務返済が非常な困難に陥りますと、国際金融不安につながっていくのではないか。先ほどの日銀総裁のお話にも関連いたします。したがいまして、こういう場でございますから、特定の国の名前を挙げるのがむずかしいと思いますけれども、もうすでに相当明白になっておる幾つかの例があると思います。その債務の額と、これに対応してとられた国際的な措置というものがあれば、ちょっと御説明いただきたい。
  118. 大場智満

    政府委員(大場智満君) 最近このような対外債務の問題が出ました国で、通常新聞等で指摘されておりますのは、メキシコ、ブラジル、あるいはポーランド等でございますが、これらの国の債務残高でございますけれども、これはBISの統計によりますと、BISは御承知のとおりでございますけれども、国際決済銀行でございますが、メキシコは昨年九月末で六百億ドル、ブラジルは五百五十億ドルという債務の残高になっております。このうち、特定国で非常に貸している国はないかというお尋ねでございましたが、米国の銀行がかなり大きな貸し付けを持っておりまして、メキシコに対しては約二百五十億ドルぐらいという数字だと承知しております。  いま申し上げましたメキシコ六百億ドル、ブラジル五百五十億ドルというのはBISの数字、したがいまして、BISに加盟しておりますといいますか、BISが報告をとっております十五カ国の銀行の数字でございますので、現実の債務残高はこれの五割増しぐらいというふうに私どもは了解しております。  なお、これらの国に対しましては、先ほど日銀総裁からもお答えがございましたように、IMFが十分これらの国を見ておりますし、またわれわれは民間銀行を指導しまして、ファイナンスが円滑にいくように心がけております。なお、民間銀行もバードンシェアリングといいますか、各国間の負担の公平ということを考えながら対応しているところでございます。
  119. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 通産大臣にお伺いしたいんですけれども、原油が値下がりをする空気が出てまいりまして、OPECでもこの間集まっておりますけれども、まだどうも結論が出てないようですが、OPECの趨勢を判断して、通産大臣としては今後の原油の値下がりをどのようにお考えになっておられるか。それから、まあ一説によると、五ドルとか七ドル、バーレル当たり下がると言われておりますけれども、そういう下がり方をした場合には、わが国は大体昨年は四百三十億ドルぐらい石油を輸入していたと思いますけれども、一体どのぐらい節約になるのかをちょっとお聞かせいただきたい。
  120. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 産油国、非産油国、OPEC加盟国、非OPEC加盟国ですね、いまロンドンで集まって、これ毎日やっているようで、きょうはまた日本時間八時といいますから午前十一時から始めるんでしょうか、そういうことで今週いっぱいかかるかもしれませんよと言っていたのが週は超すのではないかということで、ちょっとじれったい思いをしているわけでありますが、しかしながら、それほどOPECにとっては大変重大な危機の中の議論をやっているんだろうと想像せざるを得ませんが、どうもきのうあたりから少し変わってきたのは、メキシコあたりはその会議というものを、もう自分たちはさっさとこんな会議につき合っちゃおれぬから帰ろうというような空気が出てきたとか、あるいは三十ドルで食いとめようとする湾岸諸国の努力がどうも二十九ドルぐらいでないとまとまらぬのではないか、あるいはイランは依然として値下げそのものに強硬に反対をしているが、一説によると割り当て数量いかんによっては若干つき合ってもいいというような空気も出始めたとか、すべて憶測ばかりでございまして、打つ手のない日本としては、もし下がった場合にどうするかという広範な産業政策を通じて、国民のともすれば沈みがちな環境の、輸出入の実績のしぼみから始まって、国内の産業の停滞というものにこれによってはずみをつける絶好のチャンスとして間違いなく問題点をとらえて、間違いのない政策の展開をしたいということで、事務当局とともに私もいま汗みずくになっているところでありますが、数字の問題その他については事務当局から説明させます。
  121. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ただいまお尋ねの石油価格一ドル下がったらどのくらいの支払いが節約できるか、大体一ドルで三千億、四ドルであれば一兆二千億ぐらい、このようにお考えいただきたいと思います。
  122. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 円ですか。
  123. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 円でございます。
  124. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 一ドルで三千億円のプラスに日本国では働くわけでございますから、四ドルなり五ドル値下がりすれば大分国内にはプラス要素になるでしょう。石油産業をどうするかというのは通産大臣の今後の御方針でしょうが、蓄積を十分確保した上で値下げ対応策を講ずべきだろうと思います。  私が特にお聞きしたいのは、たとえば五ドル下がって四、五十億ドル節約になったとしましても、その分は産油国にはマイナスに働くわけでございますから、いままでそれを当て込んでいた産油国は一体それを今度はどこから調達してくるのか。日本のように行政改革でもやって財政緊縮でもやれるのか、まあそれは冗談ですけれども、日銀総裁にお伺いしたいんですけれども、五ドルなり七ドル値下がりがもし起こった場合に、それに対して、その減収分に対して、いままでBISに加盟しておる諸国の銀行なり、ユーロ市場にお金を出しておりました産油国がそれを取り込み出すということになりますと、さっきからお話がございましたように、すでに支払いができなくて困っておるような国がたくさんあって、その国に金を貸した銀行はみんな困っておるわけです。その銀行にまた今度は往復ビンタで反対側からもビンタが加わるということになると思われますけれども、国際的にそういう問題について対応策はとれるんでしょうか。
  125. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 油の値段が下がりますのに対しまして、いまの債務累積国の中に産油国が幾つかございます。    〔姿貝長退席、理事嶋崎均君着席〕 メキシコもその一つでございますが、そういうところはいまの経済再建計画に若干の影響が出るということは十分想像できるところでございます。ただ、メキシコの大蔵大臣、先月でございますか日本に来られましたときも言っておられましたけれども、一方で金利が下がってくるということがあれば、借入金の金利負担はそれだけ減ってくるということもありまするので、そういう面もプラスの方には働くということで、その差し引きの結果がどういうふうになるか、これは油の値段がどのくらい下がるかによって変わってまいりまするので、一概には判断できないところであろうかと思います。また、産油国全体として所得がそれだけ減るということは当然でございまするが、一方、油の輸入国にとってみれば、日本なんかその例でございまするけれども、それだけ所得の移転、対外への支払いが少なくて済むわけでございまするので、全般的にそれを全体総合いたしまして、世界経済にどういうふうな影響があるかということは、これまた油の値段がどのくらい下がるかによって変わってまいりまするけれども、いま言われているような額であれば、全体としてはそれほど大きな変化、あるいは影響というものはないのではないかと思います。また産油国は、いままでユーロダラー等にその所得、収入を出して投資しておりたわけで、それが減る。あるいは引き揚げが起こるかもしれないということがまた一つの悪影響としては考えられます。ただ、全体のユーロダラーその他の市場の規模というのは非常に大きいものでございまするので、いま言われているぐらいの影響でございますると、それほど大きな影響はないと思います。ただ、これももちろん、先ほど来申し上げておりまするように、油の値段の下がり方いかんでございまするので、そういう点については今後の推移に対して十分注意してまいらなければいけないと思います。
  126. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 いま日銀総裁は金利が下がる傾向もあるからとおっしゃいましたけれども、アメリカの金利はどうもなかなか下がりそうもないように思えますけれどもね。問題は非常に深刻だと思うんです。私、日本の国会の論議を伺っておりましても、この非常に深刻な事態の受けとめ方が少し甘いように思うんです。国際金融市場におけるこの焦げつきというもの、特に累積債務国の支払い不能の状態というものがどこか一カ所に起こった場合に、それに大量の金を提供しております先進国の銀行に響いてきて、先進国の銀行が取りつけ騒ぎを起こす、それが隣に波及する。今度はその関係が隣の債務累積国に波及するということが起こり得ないものなのかどうなのか、そこの政策判断を私どもは皆様にお聞きしておる。もしその状況が緊急ならばやはり手を打つべき国際的な責務が日本にもあるんではないか、こう思うんですが、そこはいかがでございますか。
  127. 大場智満

    政府委員(大場智満君) お答え申し上げます。  御指摘のいわゆる国際金融不安でございますけれども、私は国際金融不安というものは借り続けられるかという不安と、貸し続けられるかという不安と、この二つの合成かと思っております。  まず借り続けられるかという不安、これは当然開発途上国、債務累積国の不安だと思いますし、貸し続けられるかという不安は民間銀行の不安だろうと思います。  まず前者でございますけれども、たとえばメキシコについて例を挙げますと、ことしのメキシコの資金所要額は約八十億ドルになっております。これは経常収支の赤字が四十億ドルぐらいございますし、短期で借り入れております金が二十五億ドルぐらい、それから外貨準備が相当減っておりますので十五億ドルくらいふやさなきゃいけないということもあるかと思います。そうしますと八十億ドルの資金を調達しなければいけない。これをことし一年間で見てみますと、IMFが十三億ドル金を貸しますし、それから先進諸国全体として輸出信用機関がやはり二十億ドルぐらい追加の金を貸すことになっております。その差額が不足するわけでございますが、これが五十億ドルでございますが、これを一週間ほど前に民間銀行でシンジケートローンを組んで御用立てしたわけでございます。そういうことでこの一年間はメキシコのファイナンスの問題は円滑は推移するのではないかと。もちろん御指摘の石油価格下落の影響はございますけれども、この点につきましては先ほど日銀総裁がお答えになりましたように、金利の低下ということとあわせて考えますと、それほど深刻な問題になることはないんではないかという状況でございます。  それから、貸し続けられるかという問題でございますが、国際金融市場、これは国際金融市場の問題でございますけれども、現在ユーロ市場に資産を持っておりますのは、これは産油国のうち湾岸諸国だけでございます。いわゆるロー・アブソ ーバー諸国といっておるわけでございますけれども、それだけが資産を持っておりまして、それ以外の産油国はもうすでに昨年末で見て資産がほぼゼロになっております。したがいまして、こういった国はいま想定されておりますような石油価格の下落でございますと、ほとんどその資産を減らさなくて済むんではないか。しかし他方、もうすでに資産のなくなった国々はこれから借り入れをふやしていかなきゃいけないという問題は御指摘のとおりでございます。ただ、全体としまして、ユーロ市場は現在規模七千億ドルでございまして、そのうち一四%だけが産油国からの預金になっております。したがいまして、この一四%の産油国の預金が若干減りましても、それほどの影響はないというふうに私は考えております。  それから、またもう一つ、昨年九月までの一年間の状況を見てみますと、産油国からユーロ市場への預金がすでに百七十億ドルぐらい一年間に減っておりますが、同時期にアメリカからユーロ市場への預金が約三百五十億ドルふえております。そういうことでユューロ市場は十分に余裕を持った市場ではないか、このように見ているわけでございます。
  128. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 さっき特定国の話をいたしましたのですけれども、たとえばポーランドの債務不履行が一時議論になりましたときに、ドイツのコメルツバンクが動きがとれなくなりまして、破算状態になって政府は緊急融資をした。コメルツバンクがそういう状態になったのは必ずしもポーランドの責任だけではないという説明もあるようですけれども、しかしいずれにしてもポーランドは引き金になったことは間違いない。それに類似したようなことが起こるかどうかということが私どもの心配なんです。  実は、この二、三日前の新聞に出ておりましたが、三月十日ですね、これは日経新聞、朝日新聞、ほかの新聞にも全部出ておりましたけど、海外債権損失引当金という制度を大蔵省が通達をしたということが出ております。ちょっとあわてて海外融資質倒引当金制度をつくれと言ったように思います。それの額もどうも余り多くないようですし、しかも有税である。対外債権というのは、国の政策に協力してやっていることが多いんでしょうから、果たして有税でいいのかどうか、これは国際金融局長答弁以外に主税局長にもお答えいただきたいんですけれども、その辺のこともちょっと説明していただきたい。
  129. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 現在、銀行の貸付金につきましては、貸倒引当金という制度がございまして、法定で現在、普通の金融機関でございますと、期末の貸付残高につきまして、千分の三の法定繰り入れ率が定められておるわけでございます。いま論議の対象になっております海外の特定の債権について、特別の税制上の観点からの引当金を認めるかどうかという問題でございます。これはあくまで税制上の所得計算の議論としてお聞き願いたいわけでございますが、いま言いましたように、現在貸倒引当金という制度がございますので、その制度の中で、いま問題になっておるような問題が処理できるのかできないのかという問題が一つございます。それから、あくまで特定の海外の債権であるとすれば、そういう概算的な法定繰り入れ率でもって対処する話なのか、あるいは個別債権の償却として物を考えるのかといういろんな問題がございまして、少なくとも税制上の観点からいまそういったものについて無税扱いの引当金を考えるというようなことを具体的に私どもは考えておりませんが、今後の事態の推移を見ながら、一応今後の勉強をしていかなければならない問題であるのかなという問題意識は持っております。
  130. 大場智満

    政府委員(大場智満君) 引当金に関連する問題でございますが、ドイツの例をお引きになりましたんですが、ドイツの場合ですと、どうも各国について支払い能力に問題のある国と流動性に問題のある国と、二つに分けて考えているような感じがいたします。あるいは御指摘の国は、あるいはドイツでは支払い能力に問題のある国と見られているのかもしれません。通常の対応は、支払い能力に問題のある場合には、これは償却で対応する、流動性に問題がある場合には引当金で対応するということが、まあヨーロッパの考え方かなと思っておりますが、しかし、相手が国でございますので、会社とか個人でございますれば、支払い能力に問題があるということは言いやすいわけでございますが、相手はソブリンでございますので、なかなか支払い能力に問題があるということが指摘できない。そこで私どもは、やはり流動性に問題がある。したがって、引当金として考える方が現実的ではないかなという感じを持っております。
  131. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 大蔵大臣、四月に入ると先進七カ国の大蔵大臣が集まって通貨安定の会議をどうも開きそうだと。通貨安定に関する大蔵大臣の会議とか、日銀総裁と申しますか、主要国の中央銀行の総裁の会議というものは秘密扱いであって、大体報道のペースに乗らないようでありますけれども、しかし、いま現前されております国際通貨不安の問題というのは、下手をすると一部の学者は世界恐慌に突っ込むきっかけになるかもしらぬと言っているような深刻な問題であります。蔵相のお考えをちょっと聞かせていただきたい。
  132. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 先般私が参りましたIMFの会議、また国会開会中のためは行けませんでしたが、財務官が参りましたIMFの会議、また私、十カ岡蔵相会議等々におきまして、特にその場合、いわゆる国際金融不安というものを特に浮き彫りにして議論をするということになりますと、ある意味における心理的不安というものを助長する場合もあり得る、したがって、それは非常に慎重な立場から検討をされるべきものであり、私どもも個別会談、あるいは全体会議の中でいろんな議論はいたしておりますが、とりあえずはIMFの改組等によりまして、現状においてはそれらには十分対応できるではないか、こういう認識には立っておるわけであります。したがって、四月また行われます、それはIMF・世銀の開発委員会でございますが、その際七カ国とか五カ国とかが集まるじゃないか、こういう報道がなされておりますが、これは国会との関係におきまして、私もいま必ずしも出席を決定しておるという立場ではございませんが、個別会談あるいは暫定委員会等々で、いろいろな議論をなされる際に、そういうお話が出るということは考えられますが、当面、私どもそれぞれ先進国が協調して、そしてIMFとか、世銀とか、そういう国際機関が下支えの役目を果たすという立場においてこれに対応していけば、大きな混乱が起こるというふうには考えておりません。しかしながら、十分意を体して、絶えず神経をとがらせながら対応すべき重大な問題であるという問題意識だけは十分持っておるつもりであります。
  133. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 メキシコに対する場合とアルゼンチンに対する場合とブラジルに対する場合は、国際協調がうまくいったというふうにいわれておりますが、その実態をちょっと御説明いただきたいと思います。これは日銀の総裁か、あるいは大蔵大臣どちらでも結構です。
  134. 大場智満

    政府委員(大場智満君) 御指摘のとおりでございまして、メキシコ、ブラジル等に対しましての融資を組成する際には非常に私はいま考えてみてうまくいったと思っております。それは先ほど申し上げました、この問題についての主役はやはり債務累積国自身でございますし、もう一つ一方の主役は先進諸国の民間銀行だと思います。この両者に対してIMFは債務累積国の指導をする。IMFの一番大事な役割りと申しますのは、金は小さな金しか出しませんけれども非常に大きな声を出すところにあると思います。御承知のようなコンディショナリティーといいますか、貸付条件を厳しくすることによってその国をよくしていく、そこにIMFの役割りがあると思っておりますが、そうしますと、民間銀行というのはその国がよくなるという判断のもとに貸し付けるということになろうかと思います。そういう意味で、私は、IMF及び先進諸国の政府、中央銀行、それから当事者である債務累積国、民間銀行、この関係が非常に円滑にいったのではないか。それから、非常に短期の金がとりあえずは必要でございますから、その短期の金につきましては、中央銀行がBISを通じて御用立てをする。そしてIMFが審査に時間がかかっている間、これらの国のファイナンスをつないでいく、そういうことでございまして、各当事者がそれぞれの機能分担をして、しかもまとめ上げていくということでうまくいったというふうに考えております。
  135. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 いまのお話でございますけれども、実はきのうニュージーランドの外務大臣がやってきまして、総理にお会いになったようであります。総理に対してはマルドーン構想というので理解を求めたと。中身は要するに、かつてのブレトンウッズ会議のようなものをもう一遍開けという趣旨のようで、やはり国際金融不安の対応策として、先進七カ国だけではなくて、われわれも入れた全体の意思統一機関を早急につくれという趣旨ではないかと思いますし、きのうの新聞報道によりますと、いまインドで開かれております非同盟会議の決議の中にも、早急に国際金融不安を解決するために国際会議を開けというようなことがあるようでございます。幸い六月にサミットが行われるわけでございます。五月の末から六月にかけてのサミットに臨まれる総理として、この国際金融不安の問題については関係国の協調と、迅速な手段の提供ということが不可欠である。俗に言うスケジュールのような問題についても迅速な対応がないと引き金になって、地崩れが起こってパニックになるという心配があるわけですから、これは世界じゅうがいま心配して深刻に考えておる問題ですが、総理がサミットに行かれて、この点についてぜひひとつ、日本の立場だけではなくて、国際経済の安定のためにお力をいただきたいと思うのですが、御所見を賜りたい。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、当面、世界経済を繁栄させるもとは三つだということを言っております。それは、為替の安定、それから石油を中心にする資源エネルギーの安定、それからいまの国際機関等によるいろいろな新しい秩序づくり、そういうようなことから安心感と見通しを与えるということが当面必要ではないかと、こう考えております。  そこで、マルドーン首相から親書をもらいまして、外務大臣ともいろいろ話をいたしましたが、マルドーン首相の考え方は、現在の世界金融体制——ブレドンウッズ体制がやや崩壊している、これを建て直す必要がある。しかし、余り急進的な案ではかえって不安定になる。現在ある機構をいかに補修し、建て直しをやって、さらに強力な安定したものに誘導していくかという具体的な考え方をお持ちのようであります。私は方向としては確かに正しい方向だと思うと。せっかくマルドーン首相のパンフレットをお持ちでございますから、よく読んでサミットに参考になれば大いに参考にしていただきますと、そう返事をいたしました。いま申し上げたような考え方に立って世界経済が安定する基礎づくりを着々といたしていく必要はあると考えております。
  137. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 それでは次へ移りたいと思います。  実は、そういった国際金融情勢ですから、しかもフローティングが、ある国の問題を他国とバランスをとって、うまく全体が均衡するというふうに働いておりませんから、世界のいまの不況の表現された形としての失業が、各国とも相当深刻になってきておって、その失業に対して総需要喚起政策としての金利の引き下げがなかなかむずかしい状態になってきておるのではないかと思うのです。日銀総裁お忙しいようですから、これだけひとつ御意見を聞かせていただいて、御退席くだすって結構です。
  138. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 国際的な金融上の混乱に、先ほど来のお話の債務累積問題、その問題と、もう一つ国際通貨情勢——為替の不安定、この二つがございます。  債務累積問題は、先ほど来申し上げておりまするように、これが処理を誤りますと世界的な金融恐慌的なことにつながりかねない。それは関係各国が共通の認識でございまして、先ほど来申し上げておるようないろいろな施策が講ぜられておるわけでございます。将来の問題についてどうするかということももちろんあるわけでございますが、現在のところは、ああいうふうな不安な状態になってきておりまするので、金を貸すのも慎重になっておるというようなこともございますので、さしあたりこれが、どんどん同じようなことが発展するという状態ではございません。しかし、将来またこういうことが起こらないようにどういうふうにしていくかという問題は、当然われわれの方としても、全部関係当局がみんな考えていかなければならないことであろうかというふうに思います。  為替の方の問題につきましては、非常に為替が不安定のために世界貿易、あるいは世界の経済全体に悪い影響があったということは一般に認識されておることでございます。ただ、昨年の不安定な状態の裏には非常に各国の金利の間に不均衡があったということがございます。そういう意味で、そのそれぞれの国のインフレがおさまってきますのに応じて、金利がだんだん平準化することが期待されておるわけでございます。なかなか金利が下がらないというのは、いま御指摘のとおりでございまして、私ども、インフレ率かこういうふうに下がってまいりまするのに応じて、金利はもう少し下がるべきだと思いますし、それが若干思ったとおりにいかないということに対しては失望と不満の感じを持っております。  ただ、これがいろいろな原因がございます。一つは、財政の赤字が先進国の間に非常に大きいために、どうしても国債の発行額が大きい、そういうことで、長期金利がなかなか下がりにくい。短期の方の金利が下がれば長期金利も当然下がるべき筋合いではございまするけれども、長期資金の需給のバランスが崩れておるために長期資金がなかなか下がりにくいという環境にございます。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 しかし、そうは申しますけれども、やはりそういう環境の中で、やはりインフレ率が下がってくれば金利も当然下がるべき筋合いにあるわけでございますので、この問題についても、やはり先進国同士の間の共通の認識でございまして、もう少し金利を下げるように努力しようじゃないかということが考えられておるわけでございます。  いま申し上げましたようないろいろ構造上の問題もございまするので、なかなか思ったようにはまいりませんけれども、ぜひ金利水準全体を下げていくようにしなければいけない、また、それは十分期待できることではないかというふうに思っております。
  139. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 日銀の総裁どうもありがとうございました。どうぞお引き取りください。  労働大臣に伺いますけれども、失業が各国とも非常に厳しくなってきております。特に、最近少しアメリカの景気がよくなったなどと新聞では報道されましたけれども、失業情勢は一向よくなっておりません。各国の失業状態を見ますると、同じ先進国で日本だけがどうしてこう失業がひどくないのかと思うぐらいであります。それをどうお考えになっておられるのか。  最近の統計では、日本の失業も多少ふえてきたように出ておりますけれども、日本の失業はほかの国と違って御婦人の求職活動が多いとかいうような説明もあるようですが、そこのところあたりを各国と比較してちょっと御説明いただければ。
  140. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) わが国の失業率は、第一次石油危機の以前の高度成長期におきましては一・一%から一・三%ぐらいで推移いたしておりましたが、その後の不況の中で失業率も上がってまいりまして、最近時点では、昭和五十七年の平均の失業率が二・四%ということでございます。しかし、この二・四%の失業率も、いま御指摘ございましたように、諸外国と比べますと、アメリカとかイギリスとか、ドイツでも二けた台の失業率ということでございます。  そこで、この失業率の国際比較につきましては、外国の先進諸国に比べましてわが国の失業率が非常に低いわけでございますが、この点は、一つは、わが国が比較的高い成長を続けることができたということと、それから、特に日本的な特徴といたしまして、安定した労使関係のもとで企業の労使が不況の中におきましても、できるだけ失業とか離職者を出さないような努力をされると。たとえば景気後退期におきましても、雇用調整を余儀なくされた場合に残業の抑制をするとか、あるいは新規採用、中途採用の入職の抑制で対応するとか、また、関連会社への出向を行うとか、そういう労使でできるだけ失業とか離職者を出さないような対応をされておるということ。  それから、雇用対策の面におきましても、かつては失業者が出ました場合に生活の安定を図るという事後的な措置でございましたけれども、最近はそういう事後的な措置だけでなくて、失業の予防というような事前の措置にも力を置いておるわけでございまして、そういうようないろんな要素がありまして、諸外国の失業率に比べてかなり低い状況にあろうかと思います。  しかし、わが国の雇用、失業をどう判断するかということにつきましては、時系列見まして、先ほど申し上げましたように、成長の著しかった時期に比べますと、かなり悪い、厳しい状況で続いておるということでございます。
  141. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 失業の情勢は必ずしも日本でもよくなくなるんではないかという心配がございます。したがって、雇用政策と申しますか、総需要を喚起したり、企業の投資意欲を増進したりする政策が行われていかなきゃならない。しかし、財政的に非常に厳しい状態でなかなか前向きに取り組めないというジレンマがあるわけでございます。  経済企画庁の長官にお伺いしたいんですけれども、ことしの日本の設備投資の状況の予測を見ますると、特に製造業関係で非常に設備投資意欲が落ちておるようです。二割ぐらい落ちておるところがたくさんあるようです。  それから、昨日か何かの新聞の情報によると、ヨーロッパでもことしの景気の見通しを下方修正しておる。失業率も一〇・二から一〇・六に落としておる、全体で千二百万人の失業になるという見通しを出しております。経済企画庁長官は閣内では積極派だと私は存じておりますが、先行き景気の見通しと景気対策のお考えについてお話しをいただきたい。
  142. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、最近の民間設備投資需要も大変低調であることはもう御案内のとおりでございます。これはもう言うまでもなく世界経済の影響でございます。昨年の一月から十四カ月続いて信用状が毎月低下しておるような状況でございます。いまお話がありましたように、この問題はやはり国際的に先進国が協調して、そうして踏み出さなければなかなか解決し得ないような大きな深刻な経済問題だと私は考えているところでございます。  先ほど来お話が出ましたように、今度のウィリアムズバーグにおいては、各国が消費を抑え、輸入を抑え、輸出を奨励していたのでは本当に壊滅的な破壊的な状態になるであろう。そして民主主義的な制度に対する政治的な信頼も失うんではないかというようなことを、キッシンジャーさんも、さらにまたシュミットさんも提言しているところでございます。そしてまた、アメリカを初め、どこの国も有効需要拡大政策はまだとっていない。これまではインフレ対策でマネタリズムという形で厳しい金融政策をとってきた、それが西側にはね返ってきた。そして日本が貯蓄率が高いのに利子率を下げないという大変ジレンマに陥って困っているのが現状ではないかと思います。シュミットさんに言わしめますれば、もうアメリカのリーダーシップは認めてでも、実質的な金利は下げてもらえというようなことまで言っておる昨今でございます。私は、だんだんと日本の経済は自律的な回復力で立ち直るところがありましょうけれども、これらの問題も含めて国際的な、特にアメリカの金利の動向によるものだと、こんなふうに考えているところでございます。
  143. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 大体御議論の中心が集約されてきたと思いますけれども、私も一国限りのスペンディングポリシーのようなことではとてもこれは無理だと。やるのなら世界主要国が一斉にやらなくてはならない。その主要国の気持ちをそろえるのがサミットでございます。総理のよほどの御覚悟と各国に対する説得力が要求されるのではないかと。実は総理をやめられた方がいろいろなところでいろいろ言っておられますが、大体協調してやるべしだということを言っておられるのですが、現職の総理はなかなか立場もおありでしょうけれども、ひとつその御覚悟をお聞かせいただきたい。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大坪さんがいままでお述べになったお考えは私も正しいと思います。それをいかに現実的なポリシーにしていくかという点で皆さん苦労しておるのではないかと思います。特に国際的な問題になって現役が発言をしますとなれば、言った以上は実行しなきゃなりませんから、そういう意味でみんな慎重にいま検討しておるところであると思います。最近キッシンジャーさんが論文を書いて、それが日本の新聞に載りましたけれども、あれを読んでみますと、キッシンジャーさんでもああいう考えを持っているかと。つまり世界協調ということによる景気の一斉回復を志す段階に入ってきたと。そういう意味において、また為替の総体的安定を各国協調して考えなければならぬということも言っております。為替の安定のためには金利の平準化ということが必要でございますが、じゃ金利の平準化をやるためには何が必要であるかという問題になると、ある者は軍縮と言い、ある者は国内政治経済政策と言い、いろいろ論議が出るわけでございます。それらはみんな政治が絡まってくる問題でございます。東西貿易の問題にしてもそうです。要するに、世界政治全体の見通し、それに基づく確信というようなものが固まって、そうして、そういう経済的総合政策も出てくる段階になってきておると思うんです。そういう総合戦略の上に立って、私も考えをまとめてウイリアムズバーグへ参りましてサミットでいろいろわれわれの考えを述べたいと思っております。
  145. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 大変結構な御決意です。ひとつ御健闘をお祈りいたします。  次の安全保障の問題に移りたいと思います。  それは防衛問題ですけれども、一番最初に外務大臣にお聞きしたいんですけれども、海洋法というのが昨年各国の署名によって一応成立をいたしました、原案が成立をいたしました。これで六十カ国の批准が集まりますと海洋法は正式に発足をすることになる。この海洋法の中には、従来非常にあいまいであった国際海洋上のいろいろな問題が出ております。たとえば、領海は十二海里、経済水域は二百海里、それから海峡通航権、遡河性の魚の問題、あるいは大陸棚の問題、これ全部はっきりしてくる。それから深海底開発、これは公海の中の問題だけれども、これについても一つの明確な方式が出てくる。ただ、アメリカはこの深海底開発に反対して海洋法全体に反対するというたてまえをとっておって、日本はどうもアメリカに少し引きずられる傾向が最近出ておる。しかし、日本は海洋国でありまして、大陸国のアメリカや中国とは違うわけでありますから、またおのずからこの海洋法に対する対応も違わなきゃならない。で、安全保障上の問題も非常にこれに絡むと。海洋法を早期に批准するおつもりはないのかどうか、外務大臣ちょっとお伺いいたしたい。
  146. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 海洋法につきましては、わが国としてもいまおっしゃいましたような海洋法の持ついろいろな立場というものを総合的に勘案をいたしまして、またわが国が海洋国家であるという基本的な点にも立脚をいたしまして署名をいたしたわけでございますが、この批准につきましては、これからこれを進めるわけでございますけれども、やはりいまお話しのように、アメリカ、イギリス等が、西ドイツもそうでありますが、署名にいまちゅうちょいたしておりますし、反対もしておると。ですから、先進国では日本その他の数カ国と、あと開発途上国、あるいは共産圏というのが署名をしているわけでございますが、批准に当たりましては、やはりこの海洋法を有効に具体的にこれを進めて行く上においては、やっぱりそうした主要国の署名、批准ということが大事でございますので、そうした諸外国の状況等も踏まえながらこれを見守っておるわけでございます。全体的にやっぱりこの海洋法が世界的な規模で署名をされ、あるいは批准をされる、そして推進されるということが必要であろうと思うわけであります。  そういうことでございますから、われわれとしては前向きにこれを推進する、批准を行うということについてはこれを進めておるわけですが、全体的なそうした世界環境というものも踏まえながら、世界の環境が熟するようにそれなりの努力をしつつ、いま先ほど申し上げましたような方針に基づいて努力を続けていきたいと、こういうふうに思っております。
  147. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 海洋法は全文で四百数十条という大変厚いものでございまして、ちょっと国会に出してぱっと批准するというようなものじゃないんです。だから、私は少し早目にちゃんとした日本の正文をつくって——これは法制局で詰めるだけでも一年ぐらいかかると思いますよ、準備を始めていただきたい。そして少し早目に国会に出して、何遍国会を通ってもいいからしっかり議論をして、批准するならするというふうにしてもらいたい。ところが、従来のやり方を見ていると、お役人だけでごそごそやっていまして、結論の出そうなところであわてて出してぱたっとやるということでは——実は率直に申し上げて、御列席の大臣の皆さんは海洋法の中身をほとんど御存じないんじゃないかと思うんです。そういうことでは私は困ると思うんですね。ですから、方針を決めて、少し早目に手を打っていただきたいということをお願いしておきます。  それで次は、実は衆議院の予算委員会議事録などを拝見しておりますと、安全保障の問題については野党の先生方の攻撃がなかなか厳しゅうございまして、私ども率直な感想を言わせていただくと、片一方では北海のシロクマは全く自由に振る舞っておる。ところが、この小さな島のハリネズミは中で寄ってたかって片足を縛られたり、片手縛られたり、頭たたかれたり、針をもがれたりしておるような感じで、きわめてバランスの悪い議論が行われているように思います。  そこで、ひとつ問題を提起する意味で御質問させていただきたいんですが、最近の情報によりますと、アメリカの新鋭の原子力空母であるカールビンソン、あるいはもうお蔵に入っておりました第二次世界戦争で使われた戦艦ニュージャージー、これを改造してトマホークという巡航ミサイルを積めるようにして極東に回航するというような議論が出ておりますが、防衛庁にお伺いしたいんですが、これらの船の持つ戦略的な意味、たとえばシベリアにおけるソ連の最近の兵器の充実状態との比較で御説明いただけるとありがたいと思います。
  148. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 兵器の比較に入ります前に、私から戦略的なポイントだけまず御報告をさせておいていただきたいと思います。  西側の持ちます現在の防衛力というのは、抑止のために働かせるという原則、抑止戦略に基づいております。したがいまして、抑止力の信頼性の確保というのは常に非常に重大な問題でございますが、極東ソ連軍が通常戦力の大幅増強に加えて、ただいまもお話ございましたような戦域核戦力でありまするバックファイアだとか、SS20の配備などもいたしておりまして、きわめて顕著に増強されてきております。したがいまして、特にアメリカを中心としての話で抑止力のことを問題といたしますと、抑止力の有効的な効率化というのはやっぱりプレゼンス、平時においてもプレゼンスが必要だと、こういうことであろうかと思います。したがって、エンタープライズだとか、ミッドウェーだとか、あるいはニュージャージーだとか、こういった配備計画も、実は西太平洋方面におけるこのプレゼンスの強化ということで、アメリカはこの方面の戦略を整備しておると。  なお、核に対しての問題でございますが、私どもといいますか、日本はすべてアメリカの核に依存をしておる、核の抑止力はアメリカの核に依存をしておると。しかも、アメリカの核の依存は必ず日本に対して有効に働くと。これは昭和五十年の八月に日本に来られた当時のシュレジンジャー国防長官が、米軍は全世界に配備されておって、日本以外にも展開する米軍によって核の分野においても十分対応がなされると。対応ができないような場所や任務はいずれのところにも存在をしないと。これは日本においても言明をいたしておりまして、このことは今日でもそのとおりであろうと思っております。  あと現実的な問題として、極東に配備されておりまするソビエトの軍事的な配備と対比しての説明は政府委員からいたさせます。
  149. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) お答えいたします。  ただいま先生から具体的にニュージャージー、エンタープライズ等の極東地域における展開に関連しての具体的な御質問でございますので、まず米国の意図を若干いま防衛庁長官が触れられましたことにつけ加えまして御説明いたします。  御承知のとおり、ソ連の海軍力、特に海軍力は世界的な展開を見せている。そこで西側としては、世界各地でその海上交通路を有事の場合に阻止される、そういう一つの危険性というものを持ってきている。そういうことから、先般来アメリカの方で、要するに従来の海軍力を、片方においては海軍力の全般的な強化と同時に、他方において世界的な規模でより頻繁な海軍力の展開を図るということによって、全世界的な規模でその抑止力の信頼性というものを改めて改善する、その一環として極東地域ということが出てくるわけでございます。  特に、極東地域におきましては、御承知のとおり、特に一九七九年のアフガニスタン等あるいはイランの人質等から、第七艦隊の一部がインド洋にプレゼンスをより高めなければならないということで、比較的勢力を向こうに割いていた。それが、中東情勢が特にいいというわけではございませんけれども、情勢が硬直化したというような背景もございまして、平均、従来インド洋に展開している一・五を今後一にして、そしてその分いままで手薄になっていた西太平洋、あるいは北西太平洋等にも比較的今後頻繁に兵力を展開する。そういうことで、この措置は、したがいまして、個個の、特にSS20、あるいはバックファイアという、もちろんこれはソ連の全般的な兵力の中の重要な要素を占めますけれども、特定の個々の兵器体系に対応するというよりは、ソ連軍全般の、いま海軍だけに焦点をしぼりましたけれども、もちろん空、陸も入ります。そういったものを踏まえまして、結局総合戦力としてアメリカのコミットメント、あるいはそれを通じての抑止力の強化を図る。そういう思想に端を発すると、そういうふうに理解をしております。
  150. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 ニュージャージーとか、トマホークを積んだ場合、それから新しい航空母艦、あるいはエンタープライズ、これは抑止力として機能しているわけですね。
  151. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) くどいようでございますけれども、基本的には、アメリカが持つ核、非核両様の分野における総合的な戦力を背景にして、このような新しい具体的な措置も、同様ソ連に対してその抑止力を発揮すると、プラスになるということはまず間違いないというふうに判断をしております。
  152. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 常識的に考えて、抑止力になっていると思います。抑止力になっているということは、これは相当強力な兵器があるということであります。  そこで問題ですけれども、この間、衆議院の予算委員会で非核三原則が国是かどうかという議論が盛んに行われました。非核三原則は国是であるというふうな御答弁があったようです。私は国是だと思います。ところが、つくらず、持たず、持ち込ませずと言っておるんですけれども、はなはだ話があいまいであって、国是であるのにかかわらず非常に重要な問題でしり抜けになっておる。特に持ち込ませずという問題は、これはライシャワー教授がいみじくも指摘したように、船に載っけて通過するやつまで一々中を検査することはできないんだから、持ち込んだかどうかわからないじゃないかというような問題もあって、はっきり持ち込むのはイントロダクションだ、しかし通って行っちゃうやつはトランジットであって、これはわからぬじゃないかと、こういう議論になっておるわけです。  私は、非核三原則は明確にしてこれを日本は守る。しかしそれは、トランジットのような、中身の検査もできない、ソ連の原子力潜水艦が領海に入ってきたって、これもトランジットだと。港に来た船を一々検査できない、そういうものまで議論の中に入れて非核三原則を議論するなんというのは、ちょっと私はトリビアリズムもいいとこだという感じがするんですが、その辺はどうですか。
  153. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大坪委員のおっしゃることも一つの理屈であろうと思うのですが、日本としては非核三原則というのは明確にしておるわけでありますし、持ち込ませずという中に、国会でもしばしば政府として言明をいたしておりますように、寄港それから領海通過、これも入るんだと、こういうふうに政府として明快に答弁をいたしておるわけですが、御承知のように、アメリカは核の有無というのは世界に明らかにしてないということでございます。しかし、アメリカと日本との関係には日米安保条約というものがありまして、アメリカもしばしば事前協議に対する日本の見解、それは十分承知しておる、遵守するということをはっきり言っておりますから、その限りにおいてはわれわれとしては日米安保条約の信頼のもとに非核三原則は現在も貫いておる、貫かれておると、こういうふうに考えております。
  154. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 これは余り議論してもしようがないですから、私の見解だけ申し上げておきますけれども、実は安全保障の問題で重要なのは、急迫不正の侵略、あるいは侵害が日本に行われたときに日本の自衛隊はどうするかという問題であります。  自衛隊法の七十六条によりますと、防衛出動することになっておるんですけれども、これは下命があってから動き出す。ところが実際に、猛烈に早くやってきて、たとえば択捉島からあそこの美幌基地まで二、三分しかかからない。そんなに早いうちに防衛発動は出ないと思います。その間どうするかということが有事対応策、あるいは奇襲対応策であろうかと思うんですが、その必要性を防衛庁は感じておられるのかどうか、そこをひとつ。
  155. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) まず第一に、現在私どもの努力いたしております事柄につきまして御報告を申し上げたいと存じます。  現在、われわれは防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く近づけたいと、こういう覚悟で、実は五六中業も本年度を初年度としてスタートをさせるということを昨年四月の国防会議で御了承賜りたわけでございます。ただいまその予算について御審議をちょうだいいたしておるということでございますが、その中にはいま先生の御指摘の、特に領空侵犯に対する対処能力、五六中業が達成された暁には、海、陸のこともございますが、とりあえず防空能力の強化ということで申し上げますと、対処する能力を持ちまする航空機並びに新しいバッジシステムその他から、相当に強化されることはこれはもう事実間違いございません。  それからなお、防衛計画の大綱にございまするが、私どもが対処として最初に持っております考え方は、小規模限定的な侵攻に対してこれを独力で排除するということをまず基本といたしております。なぜこういう考え方があるかといいますると、後は日米安保条約が作動するということでございますが、それだけに、ただいま先生の御指摘のように、相手側にもし何かの意図がありますと、大規模な侵攻をするということで、近くに集団を集めればたちまちにそれは露見をするわけでありまして、ごく小規模の大変早い侵攻、これで侵攻を図るかもしれないというのが限定小規模侵攻でございまして、これに対しては着上陸阻止の作戦を準備いたしておるわけでございまして、これも五六中業を達成できますると相当程度整備されると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  156. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 いまの自衛隊法、それから関連の防衛関係の諸法律だけでは、部隊がうまく動かせないんではないか。たとえば、有事の際に統幕会議というのは全会一致でないと動けないことになっておるようですけれども、そういうことでごたごたやっている国は世界で日本だけだそうですね。統幕議長の裁定権というのがないんだそうですけれども、こういうことも含めて有事に関する法律は、たとえば西ドイツの場合ですと、いまから十五年も前にもうすでにつくって準備して、ただしこれは引き出しに入れてかぎをかけてある——シュープラーデンゲゼッツと、こう言っているわけですね。そのぐらいの準備をしておくのが一国のあたりまえの形だと思うんだけれども、防衛庁はそれをどうお考えですか。
  157. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) すでに五十六年の四月に第一分類として区分いたしておりまする防衛庁所管の法令についての問題点を中心にいたしまして、中間御報告を国会にさせていただいたわけでございます。しかしながら、これは防衛庁所管の第一分類としての法令についての問題点を洗い上げたわけでございまするが、さらに防衛庁所管外の法令につきましては、実は関係する法令がまことに数多くございまして、現在あと二分類、三分類の二つを分けて目下作業中でございます。なお、その作業の状態につきましては、ただいま申し上げましたような形で関係する法律その他が非常に多いものでございますから、しばし時間がもうちょっとかかるような感じがいたしておるわけでございます。
  158. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 いろいろお伺いしたいんですけれども、ちょっと時間がありませんので、最後に、どうも最近いろいろごたごた問題が起こっておりましてね、レフチェンコのアメリカにおける証言でありますとか、あるいは自衛隊のクーデター計画があったとかないとか、あるいは本年度の防衛計画の中の警備計画の中に政党が入っていたとか入ってないとか、いろんなことがごたごた出てくる。大体一国の安全保障をつかさどる一番中心的な問題をそうしょっちゅうがたがたと——がたがたというと大変不謹慎な言い方ですけれども、一般の論議の対象になるというのはちょっとおかしいような気もするんですけれども、一体いまの自衛隊、安全保障をつかさどる自衛隊の秘密保護、意図的に入ってくる、たとえば北海道にはソ連のKGBの大物がいるんだなんといううわさも聞きますけど、そういうことに対応する秘密保護の対策というものは日本政府はまるっきりないように思います。アメリカとの関係一つ秘保護法持っておりますけれど、自国のものについては持ってない。一般的に秘密保護はむずかしくても、せめて防衛に関する、自衛隊に関する重要な問題だけはしっかり秘密が守れるような、そういう仕組みをつくる必要はないんでしょうかね。
  159. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 防衛庁に関係する面だけ答弁をいたさしていただきます。  現在、防衛庁には二つの秘密保持のための法律がございます。一つは日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法という法律が一つでございます。もう一つは、われわれは庁秘と呼んでおりますものが自衛隊法の中にございます。自衛隊法五十九条に準拠いたしまする百十八条という条文がございますが、いま御指摘のございました秘密保護法の必要性の問題については、防衛上の機密の保護のための立法措置の問題となるわけでございますけれども、これにつきましては、実は守るべき秘密の範囲だとか、あるいは一般国民との関係、あるいは自衛隊員と他の国家公務員とのバランスなど、大変多くの問題点がいろいろございまして、防衛庁としては国会を初め各界の御論議及び世論の動向などを踏まえてなお慎重に対処をしていく問題であると、こう考えておるわけでございます。
  160. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 安全保障の問題は非常に重要な問題ですからまた機会を見てやりたいと思います。  最後に、本当は一番重要な問題として残りましたんですけれども、資源の問題と食糧の問題が残っておるんです。総合安全保障では食糧の確保、資源の確保ということは欠くことができない問題でございます。残り時間四分ですから農業に限ってひとつ御質問をさせていただきたいと思います。  日本の場合は、農地が狭くて農産物の生産量も単位当たり限界がありますから、そして米の値段はここ四年とめられておるということで、農家所得が非常に落ちておる。だから農民の若い人と話をしますと、みんな一体われわれの将来はどうなるのかという不安を持っておる。農業政策の基本的方向として生産力を増加させていくために何を考えるべきかということが、いま農民の若手の一番中心的な問題であります。その方向は何かという場合に、彼らは一体、規模の利益を得るために農地を集めてそして集団的に運営するのがいいのか。しかし、これはうまくいったためしがほとんどない。もう一つは、株式会社のような形で出資を求めてもらって、本当に農業の好きなやつが中心的にやったらいいのか、それも国の政策はっきりしない。それからもう一つは、田畑転換という形で水稲とほかの作物を交互にやった方がいいのか、それとも水稲を専門につくって、減反なんかしないで、むしろ飼料用の米をつくってそれをもう少し食管でうまく処理して扱ってもらう方がいいのではないかというような問題が、農民の若手の一番中心的な問題なんですね。この問題についていろいろむずかしい事情がございましょうけれども、農林省として特にお米を中心として、どういうふうに考えるのかひとつ御説明いただきたい。
  161. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) お答えいたします。  いま御指摘になりました問題、よく私どもも承知いたしておることです。農林省で、いまのようにお米は生産性が年々高くなっていく、消費は落ちていくということで、どうしてもやはり生産調整をしなけりゃならないやむを得ない事情があります。したがって、米作地帯の農家にとっては大変いわゆる不安を抱いておる、このように心配いたしておるわけでございます。それかといって、転作させまして、日本で足りないいわゆる月給率の非常に低い大豆とか小麦にこれを転換させようとしても、なかなか農業の収益面からいってそう簡単に転換ができないようで、遅々としてその政策も進まないようでございます。  いろいろ問題ありますが、日本のいわゆる安全保障を考えますと、まず食糧の自給度をいかにして高めて確保するかということなんでございます。いろいろ価格の面では七十数%の自給率をこう統計的には出していますけれども、穀物は三十数%しかいわゆる日給率はない。カロリーでいくと五二%しかない。いわゆるアメリカ、フランスすべて百数十%の自給率を持っておりますし、西ドイツでも五、六%が六、七%に、あるいはイギリスでもそのように年々自給率が高まっております。日本だけが自給率が高まっていないような統計になっております。  このように考えますと、やはりどのようにして日本の農業を守る若い後継者が魅力を持つようになるのか、いろいろ農村の生活環境もその政策の一つに入りましょう。  そこで、昨年の八月に農政審議会が大変詳細な貴重な答申の報告をされております。この農政審議会の報告を踏まえて、ただいま農林省では政策を大いにひとつ充実していこうと、大きな展開を見ようとして努力をしておるさなかでございます。
  162. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 日本の農業は経済性でほかの土地の広い国と比較して勝てるわけかないから、当然わが国の先祖伝来の方法に従って、いざというときに国民の食糧を提供してもらう農業としてしっかり残るべきだろう。そうすればこれに対するいろいろな補助とか援助というのは当然のことだと、安全保障的観点から言えば食糧政策に金が出るのは私は当然だと思うのです。しかしその場合に、日本の農民が一番昔から本気になって取り組み、一番なれ、かつ地力の保持についても、農業生産力の維持についても、一番いいのはお米だと思う。単に普通の食べるお米だけではなくて、外国から輸入している麦やその他のものにかわるような他用途米と申しますか、えさ米と申しますか、そういった種類のものの開発状況とか、それをどういうふうに農業の中へ取り組んでいくつもりなのか、食糧庁長官にひとつ御説明いただきたい。
  163. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) お答えいたします。  食糧の問題は大変重要な問題でございます。特に水田を保存しながら対応するというときに、いま御指摘のような他用途米という構想が昨年の農政審議会の報告からも指摘されております。ただ、この問題は御承知のように主食用のものと価格関係が非常に異なっております。それなりに極端な場合には、これを輸入に依存すべきだというような御意見も一部あることは事実でございますが、やはり国内政策として水田の維持、保存からこうしたものを考えていかなければならないと、私どもいま一生懸命この問題も考えますが、同時にこの問題を考えてまいりますと、やはり生産農家の方にも相当の工夫、努力を要する点があろうかと思います。本年の秋には水田利用再編対策の第三期対策というスケジュールになっております。そうした際にこの問題をどう取り組んでいくか、米の需給の動向なり今後の見通しを考えて十分対応いたしたい。  なお別途御指摘のえさ米につきましては、多収穫品種の問題というような観点から現在技術会議におきまして研究いたしております。多少このためには、多収穫なものが安定的に生産されるには相当開発研究に時間は要するかと思いますが、できるだけ早くそうしたものも結論を出すように目下努力しておる段階でございます。
  164. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 総理、六十万ヘクタールを減反しているわけです。しかし、本当言えばその減反したところは水を張らないから土地の養分が流亡してしまう。一番いいのは水田として活用することなんです。これにしかし普通の食う米はつくれない、そしたらいま言ったように他用途米と申しますか、えさ米と申しますか、そういうものをつくらせて、それをうまく需給に乗せるような政策こそが本当の意味の農業政策じゃなかろうか。それを、農民に減反を強要し、いわば産業の操短と同じですが、そして生活を苦しくし、農民に将来の希望を失わせるようなことが本当の意味の農業政策になっているのかどうか、私は非常に疑問だと思うんです。
  165. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 大坪君、時間が参りました。
  166. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 そこのところをお考えいただいて、ひとつ将来の農業政策の方針にしていただきたいという希望を表明して、総理のお答えがいただけるならば……。
  167. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっぱり米屋は米、米の専門家は米というのが一番手っ取り早い能率的なものであると思います。私も大坪さんと似たような考えを実は持っておりまして、水田についてほかの作物をつくるのもいいけれども、まあ麦はかなり伸びてきました。しかし、麦以外についてはかなり無理があるなという気が実はしておるんです。そういう面から見ると、飼料作物、米の中でそういうものをうまくできないものかなと、安上がりで大量で、しかも飼料として適格性を持っているものをつくれないものかなという気がしておりますが、農林省の方においてもその試作をかなりやっておるようです。でき得べくんばこれが成功して、米屋は米ということで収入も減らない、それで酪農も振興する、そういうふうに持っていくのが理想的だろうと思いまして、そういう方向にひとつ、できるかできないかわかりませんが、全力を尽くしてみる値打ちがあるだろう。といって麦やその他を軽べつするとか、あるいは軽視するという意味ではございませんが、どうも筋から言ったらそっちの方がいいような気がしておるわけです。
  168. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 終わります。(拍手)
  169. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で大坪健一郎君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  170. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、桑名義治君の総括質疑を行います。桑名君。
  171. 桑名義治

    ○桑名義治君 参議院の予算委員会が始まりましていろいろな論議が尽くされたわけでございますけれども、その論議の中心は、外交、防衛が重立ったものではなかったか、こういうふうに思うわけでございます。また、中曽根内閣ができまして、スローガンとして働く内閣ということで、総理は韓国へ、あるいはアメリカへと、大変精力的にその詰めを、外交の詰め、あるいは防衛の詰めをなさったわけでございます。このいわゆる正否は別にしまして、外交問題あるいは防衛問題については、国民の間に総理は何を考えているのか、何をなさろうとしているのかということが大体浸透してきたのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  しかしながら、内政問題、とりわけ財政あるいは経済問題については、どういうふうに国を運営なさろうとしているのか、あるいは内閣としてはどのようにお考えなのか、この点が一向にわからない、こういうふうな国民の声があるわけでございますが、この点についての総理の御所見をまず伺っておきたいと思います。
  172. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) なかなか経済の問題というのはむずかしいと思うんです。正直に言って、これでいけると確信持ってやれる人はそう世界にもいないんではないか。アメリカのようなあれだけの経済学者を擁するところでも、レーガノミックスというものは成功したとか成功しないとか、いろいろ議論が言われております。サプライサイダーあるいはマネタリスト、そういう者かかつてのケインジアンタイプの人にかわって出てまいりましたけれども、じゃそれが成功しているかというと、これまたいろいろ批判が出てきております。したがって、いままでの過去の経済理論、あるいは経済政策というようなものが行き詰まってきまして、どういうものがいま一番適合しているのかという盛り合わせでいく、その盛り合わせの内容をどういうふうにするかということで世界じゅうがいま検討している最中であると思うんです。  ところが、昔なら一国の国民経済の処理で物が済んだのでございますが、最近はみんな世界経済の影響を受けるようになりました。昔ならば、ある国が繁栄していればある国が不況である、その国がまた好景気になるとほかの国が不況になる、そういうふうにいろいろ散り散りばらばらであったのが、いまやもう世界経済自体が全般的連関を持ちまして、世界同時不況という形になってまいりました。そういう相互関係を持っているものでございますから、一国だけで経済政策を運営しようと思っても、その影響力というものはもう五〇%、あるいはそれ以下ではないか。世界経済と一緒にどういうふうに動いていくかというやり方考えないとうまくいかない、こういう状態であるだろうと思うんです。  ですから、中曽根内閣の経済政策がようわからぬとおっしゃるのも無理もないのでありまして、ある意味におきましていま模索している最中であるということが言えます。ただし、自民党がいままで考えてきて言ってきた経済政策の延長線上に立っている、それだけは言えると思いますね。  しかし、最近私は、経済展望をつくってください、そういうことを経済企画庁にお願いし、経済審議会にお願いしております。この考え方は、自由主義的性格をさらに強く出そう、言いかえれば経済原則というものをよりわれわれは尊重しよう、こういうことでございます。余り規則とか計画とかというものを厳格に、リジッドにやらないで、ふんわりとしたものにして、そしてガイドラインという形にして、しかもできるだけ規制、統制から外していく、いわゆるディレギュレーションと言っております。そういう規制、統制から外していきながら、民間の活力を培養して活力を回復していくというやり方をとりたい。これはいままでの自民党内閣がとってきたところでありますが、顕著に私がそこへまた前進しようと思っておるところなんであります。  なぜならば、財政がこのような状態になりまして、財政が出動することが非常にむずかしくなりました。しかし、いま世の中は——昔ならば、鉄であるとか、石炭であるとか、セメントであるとか、ああいう大量のかたい、いわゆるバルキーなものに経済が頼って、いわゆるGNPというものが伸びてきた時代です。GNPというものと、それからバルキーな、大量のかたいものというものが主力であったわけです。ところが最近の時代になると、GNPというものをそれほど信仰していいのかどうか。たとえば、近ごろは軽・薄・短・小と言うんですね。エレクトロニクスの作品見ましても、コンピューターや、あるいはわれわれの周りにあるステレオなんか見ましても、軽くて薄くて、そうして短くて小さいものがいいと。それで、昔は新日鐵とか、鉄が国家であるというぐらいに言っておりましたけれども、鉄の膨大な生産をもってしても利潤率というのは非常に薄いんです。それで、なるほど大きなものが、がらがら動くけれども、国民経済全般を見ると、付加価値というのはそんなに多くないです。むしろそれよりも小さいもので、たとえばビデオテープみたいなものですね、あるいは近く出てくる衛星通信であるとか、そういうようなソフトの知識集約の、そして付加価値のきわめて高いものというものが利潤率も多いし、資源の消費率も少なくなってきている。  そうして、たとえば万博というものを一つ考えてみます。私は堺屋太一さんに教えられたんですけれども、ああいう万博ということを一つ考える、そういうアイデアによってあそこへ政府が幾らお金を、補助金を出したか、たしか二、三百億ぐらいじゃないでしょうかね。ところが、来る人が二千万人以上も人が寄ってくる。その鉄道の上がりだけでも四百億以上運賃が上がっているそうです。地元に落ちる金、またそれを見ることによって、国民や若い人たちが見る知識の増加量、国際親善の力、そういうものを見ると、そういう知恵を出すことによって、そしていまわりあいに国民の皆さんは金は持っていると思うんです、個人は。そのお金を引き出させながら大いに活躍させると。鉄を一億トンつくるということよりも、万博を一回やって成功さぜる方がはるかに国民経済的に大きな力を持つ。あるいはあそこのポートアイランドもそうですね。だから、そういう意味において堺屋さんはエベント・オリエンテッドと、そういう言葉を言っております。何と訳したらいいんでしょうか、ともかく仕組みをつくると申しますか、仕事をつくると申しますか、そういうような新しい時代になってきた。  私は、まさに日本が行く道はそういう方向に変わりつつあると思うんです。そういうふうな変換を目指しながら、どういるふうにこの国民経済というものを移行させていくかということが大事です。  外食産業やあるいはそのほかのいろいろな流通体系がまた変わってきております。いままでのスーパーが保険にまで手を出すという形になる、あるいはサラ金みたいな仕事までもやるという形になってきて、ともかく変わってきておるわけですね。この大きな変動というものは、頭の、知恵の変化でできてきておる。それをよくつかみながら、そういう方向に日本の産業をさらに付加価値の高いものに変えていく。それにはある意味においては統制、規制を解除しなければだめだと。それがディレギュレーションです。  たとえば一つの例を申し上げれば、調整区域の見直しの問題というものがあります。これで固定化しておるから物が動かない。しかし、調整区域でも適地で住宅つくらしてもいいというものがあるかもしれませんね。あるいは都市の建築にしても、建築基準法を相当改正して、もっと自由に高いものをつくらしたらどうだろうか。いままでいわゆる容積制限という形で、ボリュームできております。そういうような意味の変革をわれわれが意識しながら、どういうふうにこれを組み立てて景気回復に役立てていこうかということを実は考えておるので、いまそういう検討しておる最中である。ただし、自民党がいままでやってきた経済政策の延長線であると。しかし、ディレギュレーション——規制解除とか、いま言ったような知識集約型に移行させていこうという意欲でやっておるということは御承知願いたいと思うんです。
  173. 桑名義治

    ○桑名義治君 大変に長々と御親切に講義をしていただいたわけでございますが、これは総理としての答弁ではなくて、私は大学教授としての講義のような気がしたわけでございます。いわゆる日本の経済も世界の経済も一国では成り立ってはいかない、世界の経済の動向の中に仕組まれているんだと。それと同時に、経済の構造というものが大変な急激な変化をもたらしているのだと。そういうところで、いま私は模索をしていると。それでいまから先は計画的な、経済計画というものではなくて経済展望というものを出したいと。その経済展望の中身についてはいま模索をしていると。これでは何が何だかさっぱりわからない。少なくとも政治の場というのは具体的にこういう方向に進んでいくという指針を示すのが、国民の前に指針を示すのが私は少なくともこれは政府の重大なる使命だろうと、こういうふうに思うわけでございますが、それはどういうふうにお考えですか。
  174. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党の経済政策をもってその延長線でいまやっておりますと、そういうことを申し上げましたので、自民党の経済政策、あるいは現在やっていることについては企画庁長官から御答弁申し上げます。
  175. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 今後の経済の方向に関しますところのいわゆる経済計画の問題についてお尋ねがあったように思うわけでございます。  いま総理が言われましたように、今後の経済は世界経済との関連をひとつ考えながら、しかし大変な変化の多い時代でございますので、より長期に、より弾力的に、固定的な、あるいは拘束的な、あるいは強制的なところがあったと思われるような点を修正しながら、これまでに見られますところの経済計画の中にありますような経済のビジョン、目標、さらにまたその手段、方法、誘導的な手法、これらについて今後つくっていきたいと、こんなふうに考えているところでございます。
  176. 桑名義治

    ○桑名義治君 結局、いまの話では具体的な計画は何もないということになりますよ。そうならざるを得ないじゃないですか。抽象的な話ばかりしているのですよ。少なくとも「昭和五十八年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」、こういうのが全部出ていますね。いろいろ出ていますよ。しかし、これはほとんど否定されるんでしょう、総理のような考え方になれば否定されちゃうわけですよ。否定されるならば、いまから先どういう方向に進んでいくかということがある程度具体的に明確にならなきゃ国民は混乱しますよ。
  177. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 私は、いま総理がこれまでの自由民主党の政策の延長路線にあると言われたことから見ておわかりのとおり、これを否定するものではないと考えております。いま申しましたように、より長期に、より弾力的に、そういった考え方でございます。  そしてその内容は、たとえば経過報告に示していますように、成長率も一応示しているところでございます。さらにまた、大きな課題といたしまして国際経済社会の中にどうして溶け込むか、これは大変な今後の問題でございましょう。それから第二は、いま申しておられました知識集約的な大きな経済構造の変化に伴っての日本の産業構造、あるいは経済構造をどのようにしていくかという問題も今後考えるべきでございますし、さらに第三番目といたしましては、そのような中でなお日本の経済を効率的にするための行政改革、財政改革をどのように持っていくかということも、今後の課題としてその展望、あるいは指針の中に盛り込むことはもう当然でございます。
  178. 桑名義治

    ○桑名義治君 先日の黒柳質問のときにやはりこの問題がちょっと出たわけです。それで総理質問しました。そのときに、総理は、ただいまの御答弁の中にも少しありましたけれども、いままでの経済計画、五カ年計画、いろいろな五カ年計画というものはほとんど達成されたためしかない、これは資金的裏づけがないからなんだと。しかし、私は次は経済展望というものは資金的裏づけのある経済展望を立てたい、これはガイドラインとして立てたいと、こういう意味のお話をなさったわけですが、いままでの五カ年計画というものはいわゆる財政的裏づけがなかったんですか。財政的裏づけのある経済展望というのはいかなる経済展望なんですか。概略で結構でございますから御答弁——これは総理お話しになったのですから総理にお伺いします。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が申し上げましたのは、資金的裏づけが絶無という意味ではないんです。軽視されていたと、そういう意味なんです。そのお話のときにも、たとえば公共投資二百四十兆、それを景気が悪くなったので百九十兆に縮小した。百九十兆とか二百四十兆という数字も、そのときたしかお示しした次第です。それはちゃんとそういう裏づけは一応はやっておるんです。やっておるけれども、それほど適確にやっているものとは思えない、そう申し上げた。むしろ物の方にとらわれ過ぎていたという感がある。それから経済の成長という面に非常に注意を払っておった、そういう傾向が強かったということを申し上げたわけです。  もちろん経済企画庁においては専門家が相当高度の知識と権威を持ってやっていらっしゃるのでありまして、経済の分析におきましても、あるいは国際経済の見通しにおきましても、あるいは経済政策の立案につきましても、それぞれりっぱな専門家が、最近の一番新しい資料を駆使して、世界に負けないぐらいの優秀な力でおやりになっておるということは私もよく存じております。しかし、私は政治家として見ておりまして、これからの方向をどっちへ行くかということを展望した場合に、先ほど申し上げましたような、かつ先ほど塩崎さんが申し上げましたような方向で、より機動的、より弾力的、より自由に、そしてより長期的に展望していこう、そういう姿勢を基本的に持っておるということを申し上げたのでございます。  これからの問題につきましても、なぜ私がいま模索しているかと申しますと、四全総をつくろうとしておるわけです。それで、どっちかと言うと、経済企画庁がおやりになる計画というものは上の方から来るわけです。大体こういうふうに世界はなるだろう、それから日本の社会はこういうふうになる方がいい、それでこうなるだろうと。そういうわけで、上からいろんな諸条件、与件が来て、だんだん下の方へ行って体系が固まってくるという性格が強いと思います。ところが、国土庁を中心にする四全総の場合は、今度は地域計画、水とか土とか、そういういろんなものからの積み上げで下から来るわけです。だから、どっちかと言えば即物的であり、かつわりあいに現実性を持っておる。それで、いま四全総というものをおつくりになろうとして懸命の努力をしておる、これは下からの積み上げ的性格が強い。それから経済展望を今度はおつくりになろうとしておる、これは大体そういう俯瞰的な、全体的な見通しのもとにつくってくるので、これをうまく調和させると非常に的確なものができるだろう。そこへ、世界経済全般を見直し、インフレ率とか利子率のぐあいまで長期的に見通しながら資金計画というものを入れていく。そういう新しい野心的な仕組みに取りかかっていただきたいと申し上げて、いま取りかかっておるところなんです。これには若干時間がかかります。しかし、ある段階に行けば中間的な見通しも出てくるし、あるいは国会においてお答えすることができるような段階ができるかもしれません。ですから、そういう基本的なものについてはいまのような姿勢でやっているということを申し上げたいと思います。  短期的な問題につきましては、ことしの経済政策、ことしの経済見通しについては、予算編成のときに資料をお出しした、この間も国会で御提出申し上げた、あるいは施政方針演説で私や経済企画庁長官がお話し申し上げたことがことしに関するわれわれの見解でございます。その上に立って、いまのような長期的な考え方を持ってやっておるということを申し上げたい。  なお、ことしの景気の政策につきましては、先般も公共事業費の前倒し等の御発言がございました。予算が成立したころ、経済政策をどういうふうに運営していくべきか、予算成立の基礎の上に立って経済政策の短期的運営の問題についても、いろいろ検討を加えてまいりたいと思っておる次第であります。
  180. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、その経済展望というのが大体いつごろをめどに作成されるのか。  それからもう一点は、短期的には現在の自民党の政策を踏襲するという、こういうお話があったわけでございますが、そうしますと、大体一月の十三日付のいわゆる経済審議会の審議経過報告書がございますが、この中で盛られている、大体五十八年から六十二年までの五年間、これは計画期間ですが、それから経済成長率が平均の名目の五%から七%、それから、昭和六十二年度の完全失業率が二%程度、消費者物価平均が三・五%から四%、こういう姿勢は変わりはないわけですか。
  181. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  まず第一点は、いまの展望にしても指針にしても、いつできるかという問題でございますが、経済審議会委員の任期が四月末でございます。私どもは四月末を目標に鋭意努力をしていただいて答申を出していただきたいということを申し上げておりますが、いま総理も言われましたように、大きな作業をまたお願いしたわけでございますので、おくれるかどうか、一生懸命やっていただくことをお願いしているところでございます。  それから第二点は、いま申されました経済審議会の審議経過の報告でございます。これは昨年の七月鈴木内閣で再諮問をいたしまして、七年計画を五年計画にしてフォローアップをしてくれということでございます。六カ月にわたりまして真剣な議論がございましたが、いま総理が言われましたように、このような考え方をより長期、より弾力的、より柔軟にということで直していただくわけでございます。したがいまして、この考え方が私は、これまでの委員のメンバーは同じでございますので、そう変わるとは思いません。しかし、成長率等につきまして、いろいろ外国の事情、外国の経済の回復など見ますと、私はこれこそ、いま総理が言われましたように、弾力的にまた考え直す点がなければむしろおかしいような気がするところがあることだけを申し上げておきたいと思います。
  182. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうすると、総理の言われる経済展望というのは、大体いつごろをめどに作成をしろというふうに指示を受けておるわけですか。
  183. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  経済審議会という法律上の諮問機関に諮問して、このような答申はでき上がることになっております。したがいまして、経済審議会の任期がまず一応の目標になる。そこで、ひとつ急いでこれをお願いしてくれということで、総理みずから一月十三日に審議会に出てお願いしていただいたところでございます。
  184. 桑名義治

    ○桑名義治君 だから、めどはいつをめどにと、こういうふうに私はお聞きしているんです。
  185. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  めどは、ですから一応のめどは任期が一つのめどであるということはもう当然考えられているところでございます。
  186. 桑名義治

    ○桑名義治君 次に移りたいと思いますが、まず景気の動向と経済見通しについてお伺いをいたします。  最近の景気はもう全く芳しくないというのが事実ではないかと思います。工業生産の活動も、あるいは在庫の調整も進んでいるものの、いわゆる前年比で見た生活水準は低下して、出荷も落ち込みが激しい。河本前企画庁長官は昨年の七月の八日の日に二番底宣言をしたわけでございます。それ以降現在までの状況を見ますと、急激な変化こそございませんけれども、景気は底割れの方向に進んでいるというふうに見られるわけでございますが、この認識をどういうふうになさっておられますか。
  187. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お尋ねのように、現在の経済状況は厳しい状況にあることはもう私どもも同じような認識でございます。一進一退の状況が鉱工業生産に続いておりますし、民間設備投資もそのような影響を受けていることは言うまでもございません。しかし、一方また円高の傾向が見られる、さらにまた原油の引き下げの傾向が予定されるというようなこと、さらにまた住宅投資が一月は思いのほかよかったというような、いろいろの要素が絡み合っておるところでございますが、私どもは、五十七年度は三・一%、五十八年度は三・四%の成長率は、これは何としても達成しなければならない、また達成できると私どもは見ておるところでございます。
  188. 桑名義治

    ○桑名義治君 確かに、昨年度、五十七年度は、当初は五・二%、ところがこれがたんだんと下方修正をされまして三・四%になった、それからさらに下方修正されて三・一%というふうに、非常にいわゆる弱気の数字を立てたわけですね。そうやって考えてみますと、年度末あるいは年度の終わりごろになりますと、皆さん方の御答弁は必ず後半には、年度末には上昇してまいりますという答えが返ってきているんです。ところが、五十五年、五十六年、この二年間の状況をグラフにしてみたんです。そうしますと、必ずのように年度末になったら落っこちているんですね。それで今回の場合も落っこちたままで次の年度に入り込もう、底で入ろうと、こうしているわけです。そうすると、途中まで上がっても必ず景気というものがまた息切れして、年度末にはある程度のところまでいってまたこう下方に修正をしなきゃならないような状況に陥るのじゃないか、こういう懸念が十二分にあるわけです。確かに住宅事情は昨年の十月あたりは非常に伸びました。これは利子の問題で駆け込みが物すごく多かったということもあるわけですね。それから、石油の値段が確かに多少落ちそうになってまいりました。それから、円か少し上がってきたことも事実です。しかし、これらの要素はアメリカでさえもまだ完全ないわゆる回復傾向というふうには考えておりません。そういうことを考えるとまだ不安定要素は十二分にあるわけです。そういうことを勘案をして考えてみる、あるいは中小企業あたりはタイムラグが物すごくあるわけですから、これはもう半年ぐらい見なきゃならぬでしょう、恐らく。そういうことをいろいろさまざままた考えてみたときに、三・四%の達成は可能かなと、こういうふうに心配するわけでございますが、この点どういうふうなお考えですか。
  189. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 桑名委員心配していただきますように、私も大変厳しく受けとめているところでございます。しかし、アメリカでも楽観的な見通しが慎重なもとでだんだんと定着しかかったということ、それ以上に政府当局は強気の見通しをしているような状況でございます。私もアメリカの経済の回復が直ちに日本につながるとは思いません。しかし、円高の傾向、金利の低下傾向、これらを通じて私はだんだんと下期に至ってよくなる、いま御指摘の五十五年度から五十六年、五十七年、これはまさしく世界各国がむしろ悪化の方向に向かっておった時期と思いますし、アメリカは利子率を逆に反騰せしめたようなこともあって、日本が五十六年の秋から大変苦しんできたわけでございまして、そしてそのような関係から政府当局の説明がいま御指摘のようにそごを来した点があるかと思うのでございます。しかし、今度はいまの出ておりますところの指標から見て、去年の暮れ——おととしの暮れですか、にあったような指標と違ったいまの指標、去年の暮れからことしにかけての指標は違った状態と見ますので、ぜひともこれをひとつ期待したいし、もう委員御指摘のように三・四%というような成長率、これでも皆さん満足している方はだれもいない。財政再建もできないような私はそのような成長率だと思いますので、ひとつこれは経済行動というものはもう心理的な問題であります。ひとつ大いに激励していただいて、三・四%ぐらいぜひとも達成するように御鞭撻を賜りたいと思います。
  190. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 閣僚の皆さん方にお願いでございますが、答弁はポイントをわかりやすく簡潔にお願いをいたします。
  191. 桑名義治

    ○桑名義治君 いま企画庁長官は今回の場合は従来の五十六年、五十五年と状況が違うんだと、こういうふうなお話でございます。そこで、経済企画庁の政府委員からで結構でございますので、個人消費、設備投資、それから住宅建設、輸出の各項目について十二月以降、一月、二月の月例報告で書いた、数字ではなくて状況とその評価を簡単に説明していただきたいと思います。
  192. 廣江運弘

    政府委員廣江運弘君) 消費につきましては昨年の一月以来伸びてはおるけれども、このところ伸びが鈍化をしておるという評価をいたしております。住宅につきましては昨年の秋以来かなり堅調であるというような評価をいたしております。多少つけ加えますと、公的資金住宅が押し上げているという要素はあるけれども、民間住宅につきましても動意が見られるという評価をいたしております。  それから設備投資でございますが、設備投資につきましては、大企業につきましてはなおレベルはかなり高い水準で底がたいものがあるけれども、中小企業につきましては製造業を中心に停滞が続いておると、こういうふうに言っております。生産出荷は一進一退であるけれども、在庫はかなり調整が進んでおるという評価を示しております。以上でございます。
  193. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、大体それも全部要約してみたのです、私の方で。そうしますと、個人消費の場合は一月の分から少し弱気になっているのですね。大分弱気になっているわけです。それから設備投資の場合も、これは二月から弱気になっている。いままでは当面、底かたさを維持というのが、今度は少し文字が入って弱気になっています。住宅建設はいまあなたは強気のようなお話しましたが、二月では、このところ増加しているが伸び悩みと、こういうふうになっている。それから輸出は弱含み推移、こういうふうに一月から二月に対しまして経済企画庁はだんだんだんだん弱い見通しを立てているのです、現実は。そして要約しておたくのいわゆる総括は、国内需要の回復力は在庫調整の進展が見られるものの、総じて盛り上がりを欠き、輸出は弱含みと結論しているわけでございます。先行きの警戒感を強めている。明らかに十二月、一月のときとは景気に対する政府の認識が変わってきたと、こういうふうに私は思うわけですが、三月に入って多少先ほどから長官が言われているような個々の問題がちらほら見え始めた。そういうことで、あなたはいま強気の発言をなさったと思うんですけれども、経済というものはやっぱり全体の動きというものがありますから、急激の上昇というものはあり得ない。そういうことで私は非常に悪いけれども、まだ悲側的な見方しかできない、こういうふうに思うんですが、どうでしょうか。
  194. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、大変厳しい面もありますが、いろいろの要素を勘案して、私どもは三・一%は達成可能と見ておるところでございます。
  195. 桑名義治

    ○桑名義治君 いままで私が申し上げたように、おたくの報告書の中では強含みというのが一言も出てこない、全部弱気です。そして国会の答弁になったら一変してそう変わっても、どうも私は信用しがたいのですかね。先ほどの当委員会のときに通産大臣も、そういう意味のことをおっしゃいました。不況感、そういうものがどうしても打ち破れないのだという意味のことを言われた。だからこそ昨日は通産省としてはこういう景気対策というものを打ち出すということを検討を命じたと、こういうふうに打ち出されたわけじゃないんですか。そういうことから考えると、やっぱり経済というものは的確に認識をしてそこから出発を始めていかなければまた失敗するのじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、その点どうですか。
  196. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、中小企業を初め一般の方々は大変不況感を持っているようでございます。ことにまた通産省は比較的不況感の方が強いというふうな傾向があるというふうによく言われ、大蔵省は少しよく見るという傾向があり、企画庁がやっぱり真ん中ぐらいではなかろうかという話もあるぐらいでございまして、私は冷静に見ておるつもりでございます。
  197. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、総体的に考えるとまだ政府は行く先はそんなに私は楽観していないと思うんですよ、不安感がまだ充満していると思うんです。そういうことから、いまから先は政策の追加あるいは変更があっても私は当然だろうと思うんです。そういう意味で月例報告の中に「機動的な政策運営」と、こう必ず載っているのですね。この機動的な政策の運営とは大体何ですか。今回の場合はどういう対策をとろうとなさいますか。それをお答え願いたいと思います。
  198. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、月例報告には常に機動的政策運営ということが……
  199. 桑名義治

    ○桑名義治君 必ず載っている。
  200. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 必ず載っているので、私もいつもこれを企画庁の諸君と議論しているところでございます。いろいろとこれまでの経過から御案内のとおり、予算において機動的な運営をしたりあるいは予算関係のない金利政策あるいは金融政策において機動的な運営をした実績は御案内のとおりだと思います。
  201. 桑名義治

    ○桑名義治君 いままでのパターンをそのまま述べたってだれも納得はしやしませんよ、そうして失敗してきているのですから、結果が余り出てないのですから。  この点について昨日通産大臣は、通産省に景気対策についていろいろな事柄を検討するように命ぜられたと、八項目にわたって載っかって新聞に報道されていたわけでございますが、この点についてのお話を願いたいと想います。
  202. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 昨年、予算編成を終わって、それからいまの景気動向の報告等を毎月聞きながら、どうも国民全体が数字の上でも輸出輸入ともしぼんでいくとか、大企業、小企業の軒並みに投資意欲が薄れていくとか、いろんなことでどうもしょぼんとなったような感じが続くものですから、そこで通産省としては、いま塩崎長官は中間的が経企庁と言われたんですが、それはおのおの見ようでして、この際積極的にやはり国民経済というものに明るさを見出していくための起動力、牽引車は通産省でなければならぬ、そのように考えて、対石油対策以外に、景気対策について緊急に八つの点を指摘して、省略いたしますが、それによって緊急に政策を、国民がそれによしやろうという気になるような具体的なものを打ち出していこうではないかということで御指摘のことをやったわけでございます。
  203. 桑名義治

    ○桑名義治君 それから、きょうの新聞によりますと、経企庁長官も公共事業の前倒しがぜひ必要だと、こういうふうに発言をされている記事が載っかっているわけでございますが、こういうふうにお考えですか。
  204. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) この問題は先般もお答え申し上げましたが、いま予算の御審議をお願いしているところでございます。しかし、企画庁という役所はもう御案内のように、はしが転んでも経済問題なら何でも勉強しなければならないところでございます。そして、かつて五十二年度、五十三年度、五十六年度、五十七年度、毎年のように前倒しをしまして、経済のいわゆる、いま委員御指摘の機動的運営をしたところでございます。そのような状態が現状において過去の前倒しをしたときとどの程度の違いがあるか、こんな研究をしておりますが、この点は大蔵省が指摘をしておりますように、七—九月の速報も近く出るようでございます。これらもあわせてまたこの点の検討をいたしまして、政府において慎重に検討していただきたいと思っておるところでございます。
  205. 桑名義治

    ○桑名義治君 新聞の記事では、長官がもう前倒し率は五十七年度並みの七七%程度が望ましいとの見解も示したと、こういうふうに載っかっておるわけですね、現実に。そうなんですか。
  206. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  私は、もう数字などは全く述べておりません。そのような去年の実績があったことでそういうふうに書かれたのだと思いますが、私は、これまでの実績の状態を研究しておると、こういうことを申し上げたが、やはりそのような観測記事になったものだと思います。  なお、いま申しましたが、速報は十—十二の速報の間違いでございます。七—九月はもう出ておりますから十—十二月でございます。
  207. 桑名義治

    ○桑名義治君 景気対策の一環としてはいろいろな方策が考えられるわけでございますが、いずれにしても、公共事業、公共投資というものはやはり大きな要素を含んでいることはこれは事実でございます。いままでの年度でこれが前倒しをされたりしながらも途中で息切れをすると、これはやっぱり対策のおくれだろうと思うんですね。だからやっぱりこの月例報告にもありますように機動的にというんですから、早急にこれをおくれないように、通産省のこの検討みたいにおくれないようにやってもらいたいと思うんです。  通産省も、このせっかく八項目にわたって検討事項が出ているわけですが、これ検討ばっかりやっておって実施がおくれたんじゃまたこれだめになってしまうおそれが十二分にある。この中身を見てみますと、通産省だけじゃどうしてもできない問題があるわけですが、これを総合的にもう一度景気対策というものを国内の需要を喚起するという意味で、通産省はこういうふうな計画を出したわけでございますが、検討を出したわけでございますが、これをまとめるためには、各省各省がやはり協議をしなければ、そして結論に達しなければなかなか実施がむずかしいように私は思われてならないわけでございますが、この点について総理はどういうふうにお考えになりますか。
  208. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 必要な時期に各省各庁で総合的な現実的対策をお考え願うように処置していきたいと思います。
  209. 桑名義治

    ○桑名義治君 それは総理としてもっともな御答弁だと思います。  ただ、いまが大変な不況の底でございます。したがって、これをどう脱却していくか、いい材料が目の前にちらほらし出した、これをどう生かしていくかということが一番問題です。したがって、通産省としては八項目のいわゆる柱を立てて検討議題にしたわけですから、そしてまた経企庁長官もやっぱり前倒しの問題もある程度検討しなければならぬと、恐らく検討に入っていると思います、必要だという方向で検討に入っていると思います。そういう状況がこう醸し出しているわけですから、いま早急にこれを総理としてはまとめ上げていく必要があるのじゃないかと。このことに対して総理はどのようにお考えなのかということを御質問申し上げているわけです。
  210. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、予算か成立しましたらそういう総合的な勉強をぜひしてみたいと。そのころそういう案ができるかどうか、いまからもいろいろ準備してもらうということになりましょう。予算が成立するまではしかし予算成立に全力を注がなければいかぬと、そう思っております。
  211. 桑名義治

    ○桑名義治君 それで、公共事業の伸び率を考えてみますと、いわゆるずっと抑えられてきたわけでございます。そのために政府の固定資産形成というものは前年度に比べまして一・六%減だと。これが一つは経済の足を引っ張っているんじゃないかと、こういうふうに私はいままでの国の経済の運営の立場から言って言えるのではなかろうかと、こういうふうに思いますが、資本形成の一六%減もこれ過小見込みじゃないかなというような気がするわけでございます。    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕  その資本形成の実額が二十四・一兆円、この中の国と地方の内訳はどういうふうに想定しておられますか。
  212. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 二十四兆日の政府投資の内訳でございますけれども、おおむね三割が中央でございまして、残りが地方ということでございます。
  213. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、三割が国で、あと残りの七割が地方だと、こういうふうに言われているわけでございますが、しかし、五十八年度の地方財政というものは、これは五十七年度と比較をするとずいぶんダウンしているんですね。現実に五十七年度に比べると、もう〇・三%の減を立てていることが現実でございますし、起債を認めるから地方の単独建設事業を進めろと言われても、あるいはまた地方債も借金ですから、地方債を発行してそれから公共投資やれと、こう言ってもちょっと無理じゃないかと思うんですが、自治大臣、どういうふうにお考えですか。
  214. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 地方財政というのは、御存じのように大変単位が小さいわけで、何せ三千三百という小さい単位であります。国の場合とそういう点は相当違うと思います。  そこで、国からくる公共投資、これの消化についてはなるべく内需の喚起のできるような方向で効率的にひとつやる。たとえば用地とか、あるいは補償費というものをなるべく避けて、実際に物を使うといる物の消費に回るような使い方をするということになります。  それから、地方単独事業につきましては、これ実はいまはお説のように非常に地方財政が厳しい時期でございましたので、地方財政計画の上では横ばいということになっておりますが、できるだけ財源を捻出をして、いまお説のような地域の振興につながるようなものを、あるいは地方民の福祉につながるようなものを中心として、景気対策といる打ち出し方をしていくという時期になれば、また私どももそういうように地方に要請をして指導をしてまいりたい、こう考えております。
  215. 桑名義治

    ○桑名義治君 しかし、どう考えましても、五十七年の四月から五十八年の一月までの公共工事着工を、地方関係を見ましても、総額が七兆九千六百十三億円ですが、昨年と比較をして〇・三%落ち込んでいるんですね。このままの状態で、実際に地方の財源というものが困難な状態の中で、先ほどから七、三ということで地方に大きな期待を寄せているようでございますが、果たしてこれが実際に達成できるというふうに自治大臣はお考えになりますか。
  216. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) まあこれは、財源の問題が一つあるわけでございます。また、地方財政計画というのは、地方公共団体が予算を組むときの一つのガイドラインといったようなものでございまして、そのとおり必ずしもいかない場合もある。そこで、景気対策として、私ども、ぜひ地方にもお願いしたいということであるならば、そのときはひとつ財源的にも地方でいろいろ工夫をこらしていただいて、そういう対策を実施をしていただこうと、こういう心組みでおります。
  217. 桑名義治

    ○桑名義治君 次に、増税なしの財政再建ということでお尋ねをしておきたいと思いますが、総理は、この国会の場におきまして、再三再四増税なき財政再建ということをお話しになっていらっしゃるわけです。その中の中心が何になっているかというと、税の自然増収と歳出の削減ということに物すごく重点を置かれておるわけでございますが、この財政再建を図ることで、歳出削減ということで財政再建ができると、こういうふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか、その決意をもう一度伺っておきたいと思います。
  218. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 増税なき財政再建の理念は堅持して、その努力を全面的にやってみたいと思っております。
  219. 桑名義治

    ○桑名義治君 実際に今回の予算書を見てみますと、歳出のいわゆる徹底的な削減あるいは見直しに重点を置かれましていろいろと苦心をされて組まれていることはよくわかるわけでございます。前年度は当初よりも五億円少ないゼロ%、全体で一・六%の伸びに抑制をされているわけでございますが、しかしその中身を見てみますと、後年度への送り、それから資金運用部資金へのツケ回し、こういうことで歳出が一時的に抑えられていると、こういうふうに見えてならないわけでございますが、そういう性格の予算ではないかと、こういうふうに私は思うんですが、大蔵大臣、どうでしょうか。
  220. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは先ほど来総理からお述べになりましたように、私ども、増税なき財政再建というものを何としてもてこにしてやる、そうなれば、まずはこのいわゆる歳出の削減から、これを先頭に立てて事を運ぶべきである、それが五十八年度予算の基本的な編成方針になりました。そこで、もろもろの工夫の中で、私は、桑名委員が御指摘されたものももとより皆無ではないと、素直にこれは認めるべきであると思っております。
  221. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、予算委員会に出していただいた資料がございます。これ、おたくの方から出していただいた資料がございますが、この中身について少し御説明を願いたいと思います。
  222. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) この資料に書いてありますことは、いわば負担の平準化を図るという趣旨から一部後年度に負担を送った事項の一覧表であろうかと思います。財政運営を行うに当たりましては、負担の平準化を図る、ある年度に負担が偏っているのを平準化するということは当然工夫されてよいことでなかろうかと思うわけでございまして、その一番大きな手段は公債なわけです。公債というのは後年度に負担を送るわけでございますから、一番大きな手段はそれでございますが、それだけに限らない。逆に積立金をするという意味での負担の平準化という場合もございます。従来やってまいりました国債整理基金の積み立てなんというのはそういうことなんでございます。それから個々のアイテム——項目につきましてもそういうことは行われている。たとえば過剰米の処理によって食管の赤字が一時にどっと出る、それを七カ年にならして負担するというやり方を、これはもう昭和四十四、五年ごろからやっております。そういうことの一つでございまして、たとえばここにございます「国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化」と申しますのは、ここのところしばらくの間は国民年金の国庫負担金は非常にふえるわけでございますが、将来は福祉年金をもらう人がどんどん減ってまいりますので、ずうっと減っていく、そのカーブを平準化するということを考えておるわけでございます。それで、ここに挙がっております項目すべて、これは法律をもって国会の御審議をいただきまして——もっともいま申しました国民年金の特別会計の分は今国会にお出ししておりますが、法律をもって国会の御審議をいただぎまして、そういう平準化措置を講じようと、こういう趣旨のものでございます。
  223. 桑名義治

    ○桑名義治君 その説明は全部私もわかっているわけでございますが、その中で、将来国に返却しなきゃならないのは、金額は幾らですか。
  224. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ここに挙がっておりますそれぞれの項目、各年度において金額が挙がっておりますが、それは将来は返さなきゃいかぬ、簡単に申しますと返きなきゃいかぬ、こういう経費でございます。負担の平準化でございますからそういうことになるわけです。
  225. 桑名義治

    ○桑名義治君 いま御説明がございましたように、大部分が国の将来の債務になるわけでございます。それに加えまして、今回は、いわゆる国債の大量償還のための定率繰り入れ、これが一兆三千九百七十三億円、これを停止しているわけでございます。そうなってきますと、確かにいわゆる歳出を削減したとは言いながらもこれは削減じゃないですね。後に送っただけですよ。そうすると、どうも総理の言われている事柄とちょっと逆行しているような、粉飾予算みたいな気がしてしょうがないんですがね、どうですか。
  226. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) いま例に挙げられました国債の定率償還の繰り延べ、これは総理が特に私どもに御指示いただきました、一般歳出を前年度より減らすように工夫してくれ、ゼロ以下にしてくれと、こういう御指示でございましたが、その一般歳出の話ではないんです、国債費の話。一般歳出というのは国債費と交付税を除いた分でございますから。その国債費の話でございますが、これはかねてより議論がありまして、今度も財政制度審議会議論していただきました。つまり、いますぐこの償還費が要るというわけじゃないんです。先ほど申しました負担の平準化でございますから、何年か先の償還費のために積み立てておく。その積み立てるのは財政の健全化のために望ましいことなんでございますが、つまり、いまは赤字公債を発行して積み立てているということになるわけなんで、それでは何のことやらわからぬじゃないか。つまり、公債を発行していまの国民が受益するのなら、その応分の負担を払っておきなさいよというのがそのそもそもの思想でございます。そうじゃなくて、その負担をするのも借金で後代へ送っちゃうということではどういうことだかわからないじゃないかという議論も一方ございました。片っ方で、この国債整理基金の資金繰りというものもよく考えにゃいかぬというこの運営の問題もございまして、両方相互勘案いたしましたが、ことしは国債整理基金の運営には差し支えないということでございまして停止したものでございます。十分理由のある話だと思います。
  227. 桑名義治

    ○桑名義治君 いろいろ説明がございましたが、一口で言いますと、各省のシーリングの枠から外れたと、はみ出したと、こういうふうに言わなきゃ私はならないと思います。そういう意味からはいわゆる歳出削減のルール違反だと、こういうふうに私は言いたいと思います。  それと同時に、歳出削減ももうこの辺が限度だというふうにこれ見なければならないのではないかと思います。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 と申しますと、見方を変えますと、五十五年度以降の一般歳出の査定減額は五十五年度が一兆二千百八十九億円、五十六年度が一兆五十七百三十八億円、五十七年度が三千百四十四億円、五十八年度が四千二百九十八億円とだんだんだんだんと減少しているんですね。削る場所がなくなったんじゃないですか。そういうふうに今後ゼロシーリングの後の一兆円台の大幅の査定の減額というものが非常にむずかしくなっていくのではないかと、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、財政の中期試算に示されております公債発行を含めた歳入と歳出の差の要調整額、これをA、B、Cの三方針を打ち出しているわけですね。これはどういうふうに削減していくのか、あるいは政府の見通しかこれに対してあるのか、これを伺っておきたいと思います。
  228. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これも総理からお話しがありましたように、従来までの自由民主党のいわゆる継続性のある基本政策と言えば、とにかくまずは赤字公債を脱却し、そして総体的には公債依存度を下げていく、それの方法として歳入歳出両面において合理的な施策をとっていくと、こういう方針であります。したがって、このお示しいたしましたのが——いろいろ工夫を重ねました。率直に申しまして、前回私が大蔵大臣しておりますときには財政収支試算、その後二年間は中期展望、そして今度は財政の中期試算、こうしてお示ししておるわけであります。そこで、それにはいわば後年度負担推計のために等率等差の数値を前提に置きまして、要調整額というものがはじかれておるわけであります。さてそれでは、いまのところその要調整額が今後の努力によってこれが絶対変化しない数値ではもとよりございません。したがって私どもとしては、表現は適切でないかもしれませんが、いまよくぞぜい肉を切った、が、やはりこれからは本当に制度、仕組みの淵源にさかのぼって、いわば歳出構造の見直しというものをまずはやっていかなきゃいかぬ。これを徹底的にやって、そしてこういう国会の問答を通じながらやっぱり現行施策、制度でこれこれは残すべきものであるということになれば、その段階で負担をするのも国民、益を受けるのも国民でありますので、総合的に判断して対応しなければならない問題である。基本的には、まずはこの歳出構造の見直し、これこそ財政改革、その使われました言葉の意義でもあるというふうに考えて進めたいと思っております。
  229. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこでもう一点だけ伺っておきたいんですが、中期試算のうちの試算C、これは七年度で赤字国債をなくすという形でございますけれども、仮に投資部門と同様に経常部門もいわゆる前年度と同額で推移さしたとします。そのときの要調整額というものが五十九年度では二兆四千七百九十五億円、六十年度で二兆八千八百九十五億円、六十一年度で三兆四百九十五億円、仮にこれに定率繰り入れをさらに停止をしたとします。そうすると五十九年度は八千三百九十五億円、六十年度には一兆二百九十五億円、六十一年度では九千八日九十五億円の要調整額が残らざるを得ないわけです。こういうふうにしていままでいろいろと身を切ってだんだん細めてきたさまざまな努力、それにも加えて、そういう立場をとりながら、さらにこういうふうに投資部門同様に経常部門も前年度と同額に抑える、さらにそれに加えて、これからもいわゆる国債の定率繰り入れ、これも停止する、こうやっても要調整額はいま申し上げたような数字で出てくるわけです。  そうなってくると、中曽根総理の言われている、歳出削減による財政再建を強調されておりますけれども、しかし実際に実行性があるのかどうか。あるいは実行に責任が持てるのかどうか。この点を明確にしていただきたいと、こういうように思います。
  230. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまの数値は、委員それぞれ前提を置いてはじかれた数値は、正確であると思います。これは一つの例示でございますが、たとえば来年度の五十八年度予算、これも五十五年度予算編成のときを見てまいりますと、いわば歳出の計は五十九兆になるであろう、一応の収支試算でそのように申し上げた。しかし御協力いただいて今日五十兆ということになっておるわけです。さらに五十七年度のいわゆる財政の中期展望ではじいた予算にいたしましても五十五兆四千、それが五十兆四千ということになっておる。そこにいろいろな努力があったのでございます。だから、よしあしは別として、そこまではそれなりの評価をいただいたといたしまして、それをさらに削り込んでいくことに対する困難性の御指摘、これは私どもも身にしみて感じております。しかし、そこのところをいま一度、これはやはり個人の責任あるいは企業の責任に帰すべき問題ではないか、これは自治体の分野ではないか、これはまさに国固有の分野ではないかという、いわば分野調整をも含めて、制度、施策の根源にさかのぼってまずは努力していかなきゃならぬ。そうしなければやはり国民の信頼を得ることも継続することもできない。必死のつもりでやるつもりでございますので、何とぞ御協力のほどをお願いをいたします。
  231. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほどからるる私は私なりに申し上げたわけでございますが、総理としては、これ責任を持てると、こういうふうにお考えでございますか。
  232. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全力をふるってその実現に努めたいと思います。
  233. 桑名義治

    ○桑名義治君 それで、どういうふうに試算しましても、いま大蔵大臣が申されましたように非常な困難性が横たわっているということはだれも否定することのできない事実だと思います、これは数字はもう正直でございますから。そうしますと、これは後をカバーするのは何か。これは租税負担率を変えるかどうかという問題、あるいは経済のパイをどういうふうに大きくしていくかという問題、これしかないと思うんですね。  そこで、いわゆる景気対策という問題がまた生まれてくるわけでございますが、それと同時に、租税負担率を大体どの程度までが限界だというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  234. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、増税なき財政再建ということにつきまして、当面、これにつきましての議論の中に、この租税負担率ということがうたわれておるわけであります。率直に申しまして、この租税負担率というものはまさに経済情勢等の推移によって変動するものでありますので、そもそも経済動向の見きわめが困難だというようなときにあらかじめ具体的な数値を目標として設定するということは、非常に私は困難な問題であると思います。したがって、臨調等でお述べになり、われわれが拳々服膺いたしておりますのも、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらないという御意思であるというふうにこれを認識をいたしまして、そしてやはり現行税制の中で精いっぱいのまずは努力をしていくということではなかろうか。これもまさにあらかじめアプリオリに設定しておくべきものではない。  ただ、一方、臨調の答申を見ましても、社会保険負担全体を見た場合にはまだ低いから、ヨーロッパの五〇%にまではいかなくてもそれ以下で努力すべきだとも書かれてありますので、まさにこういう問答を通じながら今後その方途を見出していくべきものであろう。あらかじめ設定するという性格のものでは必ずしもないじゃないかと、こういう感じかいたしております。
  235. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、あと残されたのは、いわゆる直間比率の見直しということがまたここで浮かんでくるわけでございますが、これはどういうようにお考えになっておりますか。
  236. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これも、直間比率という問題につきましていささか客観的な事態の推移を振り返ってみますと、五十四年当時は、何か直間比率と言えば、すぐいわゆる一般消費税(仮称)と、こう言われたわけであります。しかし、その後税制答申を見ますと、課税ベースの広い間接税等々、何回か、三回にわたってそれぞれ言われております。そうして、これもまた臨調の答申でもそういうことが指摘されておるわけでございますけれども、具体的にこれこそまさに初めからアプリオリに決めるべきものでなく、結果としてそうなるものであるという性格から言えば、本当の言い方は、税体系の見直しという言葉を使った方が正確だなと。税調も最近の二回は言葉をそういうふうにお使いいただいておりますので、やはりあらかじめ設定すべき性格のものではないではないかなと思っております。
  237. 桑名義治

    ○桑名義治君 まだ景気対策あるいは財政再建の問題について論議を深めたいわけでございますが、時間がもう十四分になりましたので、次に進みたいと思います。  次は、石油の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  北海原油あるいはナイジェリア原油、これが値下げに端を発しまして、いまOPECでさんざんもめているのが実情でございますが、大体いまのところ、予想として、一バレル当たり二十九ドルぐらいになるのではないかと、こう言われております。そうなってまいりますと、果たして日本のいわゆるエネルギー対策というもの、政策というものがどういうように変化していくのか、あるいはまた日本の経済がどういうふうに変化していくとお考えになっていらっしゃるのか、この点について伺っておきたいと思います。
  238. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは結果を追っていることで、結果そうなっちゃったわけですが、先週、先々週、通産省で緊急石油対策会議を開きましても、向こうの下げるのがおっしゃったようにどんどんずれていくものですから、具体的なものは大臣談話まで準備しているのですけれども、どうも一向にそれが決まらない。それについては先ほど答弁いたしましたから繰り返しませんが、これが一定期間続いてくれるものであって、それが値下がりが六ドル前後と言われておりますから、そこらのあたりでいくものであるとすれば、長期的に見て日本の経済には非常にプラスになるだろう。これは国際収支から始まって物価に至るまで、あらゆる面において、日本経済のともすればめいりそうな気持ちに大きな光明を点ずる灯にしなければならない、こういうふうに思っております。  したがって、日本経済をいま私たちが、先ほど総理も言われましたように、先端技術その他でどんどん新分野を開拓していけば、すぐにECとかあるいはアメリカとかカナダとか、壁をするとか政策誘導がけしからぬと言ったとか言わないとか、大変むずかしい時代になっておりまして、私たちは頭脳で勝負するしかもうないなと思っておっても、その頭脳で勝負していた製品というものがすぐに阻まれる。どうしても保護貿易措置を断固排除しなければ、われわれは自由貿易とガットの精神以外に日本の未来はないと、そう思っております。  そのときに偶然ながら、OPECの方は苦しいわけでしょうね、その結果、私たちに天与の恩恵を受ける機会が来たのでありますから、これをもって日本経済の再活性化というものの一大転機にしたいと、かたい決意を持ってやっておるところであります。
  239. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、エネルギー政策についての変更はあり得るということでございますか。
  240. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) エネルギー政策もいろいろありますが、たとえばエネルギー供給計画みたいなものは、需要の動向、価格等がこういうふうになってまいりますと、これは慎重に検討し、前提を幾つか置かなければなりませんけれども、改定を必要とされるのではないかというふうに思いますし、一方においては、また新エネルギー、代替エネルギーその他一生懸命官民挙げてやっておりましたものが、官の方は、これは油断することなく、中断することなく、これは怠けたためにまた次にショックを受けるようなばかなことをやっちゃいけませんので、二度とやけどをしないというつもりでいかなければなりませんが、心配なのは、民間がやっております分についての資金的なあるいは意欲的なものが、代替エネルギーから新エネルギーに至るまで、少し意欲をそがれるのではないだろうか。  この点は、どうしても私どもが命令してやらせるわけにいきませんけれども、しかし国民全体も、節約ということも一つの国家に貢献し、自分たちの未来を切り開く道であるということに目覚めてもらっておりますから、産業界も赤字を出しながらやれとも言いませんが、長期的な政策だから一休みするというようなことはしないようにお願いをしていきたいと考えております。
  241. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、ここで一つの問題が上がってくるわけですが、石油備蓄をどういう方向に持っていくか、これは一つの大きな問題になると思います。現実にいまは、昭和五十三年から備蓄政策の一環としてタンカー備蓄が行われているわけですが、ところが、このタンカー備蓄の費用というものが非常に高いわけですね、これはほかの備蓄に比較しますと。そこで、五十三年から単年度に、どの程度の予算がかかっているのか、あるいはまた一キロリットル当たり備蓄経費は、タンカーと民間タンクを借り上げた場合と比較するとどういうふうになるのか、数字を示していただきたいと思います。
  242. 豊島格

    政府委員(豊島格君) タンカー備蓄につきましては、五十三年度には二十隻で五百二十四万キロリッターをやっておりまして、その後五十五年度には二十七隻に増加いたしまして七百五十四万キロリッター、それから五十六年度には三十五隻、九百九十万キロリッターでございましたが、五十七年度は、これを七百八十五万キロリッターに減らしまして、二十七隻に減らしております。  それから御質問のタンカー備蓄と民間陸上の備蓄との差は、大体申しますと二千円ぐらいでございまして、民間タンクを借り上げている場合はキロリッター当たり四千九百円、これに並びまして、タンカー側備蓄は六千九百円ということでございます。
  243. 桑名義治

    ○桑名義治君 総額だったら幾らですか。
  244. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 金額でございますか——。お答え申し上げます。  五十七年度見込みで備蓄経費、タンカー備蓄は五百八十九億円でございます。
  245. 桑名義治

    ○桑名義治君 いま御説明がありましたけれども、民間タンクの備蓄の費用は、いろいろございましょうけれども、私たちの試算ではそんなに高くならないですな。大体キロリッター当たり二千六日円から二千七百円ぐらいじゃないか、こういう計算になるわけです。おたくの方からの出された資料に基づいて単純計算ではございますがね。中にはいろいろなまた要素が入るかもしれませんが、その要素もそう大した要素じゃないんじゃないかと、こういうふうに思う。そうすると、大体キロリッター当たり本来ならば、タンカーならば七千五百円、それから民間タンクならば高く見積ってもキロリッター当たり二千七百円と、こういうふうになりますと、これは大変な差が出てくるわけです。  実際にその年間経費を比較してみますと、いわゆる民間タンクを使用するならば、向こう四年間タンカー備蓄を行うとして、タンカー備蓄の分を民間タンクで使うならば、一千五百二十億円の国費が節約できると、こういうふうになるわけでございますが、大臣の御所見をここでまず伺っておきたいと思います。
  246. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) このタンカー備蓄という、油を積んでくらげなす大洋を漂うなんという、こういうのは世界で日本だけだと思うんですよね。私はいま通産大臣ですから、そういうことを言っちゃおかしいのかもしれませんが、その政策を政府が決定するときには、何ということをするんだろうなあ、何か海運業の救済にでもするつもりかなあというぐらいのきわめて冷酷な見方をしておりました。したがって、通産省の責任者になりまして、いま御指摘されるまでもなく、台風が来たらあちこち逃げ惑うような、そういうような備蓄なんというのは、幾ら石油無資源国の日本であっても、余り手段として私は賛成しておりませんので、逐次それは隻数を減らし、そしてできれば陸上固定基地——いまは研究がほぼ終了した地下備蓄ですね。こういうふうに公害を伴わないで、そして日本のような資源小国では石油に対する不断の対策というものを怠らないようにしようと、そういうふうに考えております。  通産大臣として私がいま言ったことは、大変不穏当かもしれませんが、しかし現実にはいまおっしゃるような価格差が歴然としており、そのようなことを備蓄と称してやるのもおかしいし、やはりきちんとして、コストなども考えながらですけれども、備蓄の基地をつくってそこにやるべきが正道であろうと考えて、いまその方向に進めております。
  247. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで伺いますが、民間タンクの使用状況は現在どのようになっていますか。
  248. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 御質問が民間タンクを利用した国家備蓄ということでございますと、現在五十七年度で四十五基、四百六十五万キロリッターを民間基地を借りて国家備蓄をいたしております。
  249. 桑名義治

    ○桑名義治君 どのぐらいあいているんですか、余裕。
  250. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 備蓄自身は、最近の需要が非常に減退しておりまして、五十五年、五十六年、五十七年と一〇%、七%というふうに下がってきておりまして、民間の備蓄自身も現在は相当落ちてきているということで、正確な余裕ということはなかなか計算できませんが、現在のところ一時的には相当余裕があるということははっきり言えると思います。
  251. 桑名義治

    ○桑名義治君 そんな数字隠さなくたりて、私はあなた、全部回ってきて調べていますからわかっています、業界回っていますから。約一千万キロリットルのタンクが余っています、現実に。だから言っているわけです、一つは。  そういう費用のかかる、台風が来れば逃げるような備蓄をやめちゃって、民間の余っているこういうタンクに一応入れたらどうですかと、こう言っておるわけです。これは安全でもございますし、費用も安いし、これは行革の一環として大いに役立つと思います。  それから沖縄では三月から九月にかけて、二百十六万キロリットルの容量を持つ民間の備蓄タンク二十一基ができ上がります。それから北海道の苫小牧では本年九月に、百八十万キロリットルの容量を持つ十六基のタンクがまたでき上がります。  ただ問題は、いろいろと現地に行って調査してみますと、あと入れる油がないと、こう言っているわけです。油がない、民間では。だからといって、いわゆる国の備蓄用の油は入れない、私のところは知りませんよという冷たい態度をとられているわけです。ことに私は一番大きな問題があるんではないかと思うんですが、この点はどういうようにお考えになりますか。
  252. 豊島格

    政府委員(豊島格君) すでに国家備蓄として、先ほど申し上げましたように、民間の備蓄基地があいているということは事実でございまして、したがいまして、たとえば沖縄につきましては、現在沖縄基地から十二基を借り上げまして百十六万キロリッターを備蓄している、こういうことが現実でございます。さらに北海道の苫小牧東部につきましては、現在十二基やはり借り上げまして百三十五万キロリッターを備蓄していると、こういうことでございます。  それで、次からまたできてくるやつに対してどうするかということでございますが、われわれとしては、先ほど大臣申しましたタンカー備蓄も、それから民間の備蓄基地のタンクの借り上げも、いずれもそのときに国家備蓄の基地ができておらないということでそういうのを借り上げてやったわけですが、これは国家備蓄基地ができるに従ってそういうところへ一般的にはタンカー備蓄は切りかえていくということでございましょう。  ただし、その国家備蓄基地の建設と、それから今後三千万キロリッターまで現在の千二百五十から毎年積み増していくわけです、六十三年目指して。その中で全体として国家備蓄基地それから民間備蓄基地の使用ということは総合的に考えていきたい、このように考えております。
  253. 桑名義治

    ○桑名義治君 じゃ北海道の石油共同備蓄株式会社、それから沖縄石油基地株式会社、この概要を御説明を願いたいと思いますが、公団並びに公庫の融資金額、それから出資金、利子補給の有無、さらには基地の建設進行状況をまず御説明願いたいと思います。
  254. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 北海道石油共同備蓄基地についてまず申し上げますと、資本金が二百四十八億円ということで、公団が五〇%出資をいたしております。  それから事業規模でございますが、タンクの能力にいたしまして大体五百八万キロリッターということでございまして、建設費は千三百三十億円ぐらいということでございます。  それから第一期工事というのは十五基で、百六十九万キロリッターが五十七年八日に完成いたしておりまして、第二期工事十六基、これは約百八十万キロリッターでございますが、ことしの九月完成予定でございます。それから第三期工事というものにつきましては十四基、これはまだ完成のめどが立っておりません。いずれにしても来年以降になると思います。  それからこの備蓄基地への公団からの投融資について申し上げますと、先ほど申し上げましたように五〇%で、五十四年から五十七年にかけまして大体百五十億強の出資がございます。それから融資につきましては、建設費の八〇%ということでございまして、累計五十七年度までに六百三十七億円の融資をいたしておりますが、これはさらに今後も建設に従って続いていくと、こういうことでございます。
  255. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御説明にもありましたように、民間石油基地とは言いながらも、国庫、公団、こういうお金が融資対象として出てきているわけでございますし、あるいはまた民間から借りているお金もいわゆる利子補給を行っているわけでございます。そうなってくれば、沖縄の場合は公庫から七百億、北海道は約五百億、これが石油公団から出ているわけでございますから、したがってその上に利子補給まで入れると千二百億、これだけのお金がかかっているわけでございます。そうなってくれば、いまから先また九月に苫小牧では十六基、沖縄では二十一基、これだけの石油基地が、タンクができ上がるわけでございます。ただ民間であるからということでこれを放置するだけではなくて、先ほどから申し上げておりますように、国の備蓄量もこれに借り上げをして入れるべきではないのか。この費用が大変に民間としては大きな負担になっていることは事実なんです、回ってみますと。そういうことで救済もできるんではないかというような気もするし、国庫もこれだけのお金を負担しておるわけですから、有効に使う必要がある、こういうふうに思うわけでございますが、大臣、どうでしょうか。
  256. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 御趣旨はまさにそのとおりでございますが、しかし、民間石油会社も心からそういうことを言っているかどうか疑問な点があります。たとえば日本において、〇・〇二%か、自国産石油がない国であって、それで精製会社が二十九社もあって、元売が十三社もあって、そして過剰設備を抱えている。そういう態勢の中、体質を持ちながら、何とかせにゃこれはいかぬと言いながら、総論賛成各論反対、わが社はと言う、そういう業界だと私は見ているんですよ。ですから、そういうような国家資金も相当入っている民備、民間備蓄というものを、長官あたりのところには相談をして崩しているのか、取り崩しているのかもしれませんが、しかし業界がそれぞれの胸算用によって、ドルレート等を見ながら、タンカーをゆっくり走らせてみたり、時には民間備蓄のものを取り崩して当座使ってみたり、それが過剰になったりして足を引っ張り合ったり、どうも余りお行儀のいい社会じゃないなと私は見ています。これは根本的に法律を輸入から小売段階まで考え直すことが必要であると、私かねがね思っておりますが、今国会に出すほどまだ準備は進んでおりませんけれども、少しこの業界も河川改修が必要である、そのように考えております。
  257. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、これでき上がってしまいますと、これ空っぽなんですよね。
  258. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 安くなるとまた入れるんですよ。
  259. 桑名義治

    ○桑名義治君 そして、まあそういうことで、ただでさえもいまあいているわけですから、先ほど申し上げましたように、一千キロリッターのいわゆる空があるわけですから、それにさらにこれだけのいわゆる沖縄と苫小牧にまたでき上がる、そういうことを考えると、これやっぱり国家備蓄量もこの中に借り上げをして入れることの方がベターではないかと。タンカーよりも安いということでございます。  次に、国家備蓄の問題を申し上げますと、現在国家備蓄基地が六カ所建設予定がございます。その後まだ五カ所、こういう建設予定地があるようでございますが、この最初の六つの分と後の五つの分、これのいわゆる資金あるいは完成期日について御説明願いたいと思います。
  260. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 最初の六つの基地について申し上げますと、それぞれ個別にございますが、トータルいたしますと三千百四十万キロリッターを、全部で備蓄容量になっております。それで、これに必要な金は大体九千億程度ということでございます。それから、完成の時期でございますが、これはむつ小川原につきましては、第一期といいますか、一番最初にできるのはことしの九月から十一月にかけまして大体できるわけでございまして、三百万キロリッター以上のものが続いてでき上がります。それからさらに、来年の九月あたりに二百三十万キロリッターぐらいできるということでございます。それから、苫小牧東部につきましては、来年の三月、今年度の終わりに大体、これ予定でございますが、百八十万キロリッターぐらいと、それから夏以降に百三十六万キロリッターぐらいということでございますが、それ以外につきましては、現在準備中で、はっきりしためどは立っておらないということでございます。  それから残りの五基地という御指摘がございまして、これにつきましては実はいろいろな考え方があるわけでございますが、現在地元との調整をしておる、あるいはフィージブリティースタディーをしているという段階でございまして、正式には決まっておらないわけでございます。  ただ、全体として五つの基地が入るのかどうかと、こういうところで申し上げることはいかがかと思いますが、全体三千万キロリッターの備蓄をするということになりましても、実際は消防法の検査をするとかあるいは油種がいろいろあるとかいろいろございまして、三千万ということじゃなくて、いろいろそれよりは大きな数字になるわけですが、余力がどのくらいあるかと言いますと、どうも私どもの現在の計算ではあと一千万キロリッターはいかないんじゃないかと、これはいまからまだ計算を基地の特色によってやらなくちゃいけませんが。そうなりますと、五つが全部入ると、こういう状況ではないことは大体考えられるんじゃないかと思います。
  261. 桑名義治

    ○桑名義治君 最初の六カ所の問題、これはむつ小川原と苫小牧の東部という、これは大体期日がわかったわけですが、それから白島に、福井、上五島、秋田、これも予定としては大体六十三年度にでき上がる予定じゃないんですか、予定としては。
  262. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 私どもの備蓄の目標は三千万キロリットル、六十三年度を目標としておりますので、一応六十三年までにはできるというふうに言えると思います。
  263. 桑名義治

    ○桑名義治君 あとの五つの分も、いろいろな資料を集めてみますと、これも大体六十三年度末ということになっているんですよ。これどうなんですか。
  264. 豊島格

    政府委員(豊島格君) あと五つになるかどうかわかりませんが、六つ以外の地点につきましてもできるだけそのようにしたいと、こう考えておりますが、いろいろと準備がおくれておる等もございますので、努力目標として六十三年度というふうに申し上げたいと思います。
  265. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうすると、あとの五つの分の大体、概算どのぐらいのお金がかかる予定ですか。
  266. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 五つ全部やりますと、これはまだ計算はしておりませんが、大体あと千万キロリットル足らずと……
  267. 桑名義治

    ○桑名義治君 五千六百六十億じゃないんですか。
  268. 豊島格

    政府委員(豊島格君) いや、足らずとすると大体四千億ぐらいになろうかと思います。
  269. 桑名義治

    ○桑名義治君 その費用は大体どこから出るんですか、説明してください。
  270. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 土地代につきましては大体公団が持つということでございまして、それから設備に——資本金、これはまあ大体三十五億です、これは七割は国が持つと、公団が持つということでございまして、それから残りは公団が市中から借り入れてこれを貸し付けるということになります。
  271. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、先ほど申し上げた六つのいわゆる石油基地ですね、これの金額、予定地、これは民間の借入金が九千八百六十三億円、その後も基地の維持管理費も、これも借り入れしていかなきゃならぬわけですが、金利は幾らぐらいで借りるか、あるいは金利の支払いの財源はどこに求めるのか、御説明願いたいと思います。
  272. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 借り入れにつきましては、御承知のように、先ほど申しましたが、市中借り入れをして、それを無利子で貸し付けるわけでございますが、その利子につきましては特別会計から公団への補給金として出ます。それからさらに、その基地を借り上げる費用につきましては、これは公団に対して特別会計から交付金という形で出ます。年間の大体の金利とそういう借り上げ料——借り上げといいますか、維持費を含めまして三千億ぐらいに年間なると、このように考えています。
  273. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間が来ましたので、あと六分しかございませんので、あと私の方からいろいろと申し上げてみたいと思うんですが、石特会計から一千四百八十九億円、これをまあ持ち出すわけですが、さらに民間金融機関から九千六百七十五億円借り入れる。その上に、十年間の返済ですから、単年度計算にすると利子が八百二十二億、この金利を最低でも払っていくことになるわけです。そうすると、通産省の言う十年間で返済するとして、八千二百二十億円の金利と総工費一兆一千百六十億円、計一兆九千三百八十億円、約二兆円をかけるような、かけなければならないと、そうしなければ六カ所の国家備蓄基地はできない、こういうふうになるわけでございますが、大蔵大臣このような実情をどういうふうにお考えになられますか。
  274. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この問題でございますが、やはりこの問題につきましては、国家備蓄基地は長期にわたって多額の経費を伴うことは予想されます。通産省とも相談しつつ中長期的な財源事業を勘案しながら、極力備蓄コストの低下が図られますように対応してまいりたいと考えております。
  275. 桑名義治

    ○桑名義治君 それと同時に、先ほどから申し上げておりますように、六カ所の基地もそれだけの二兆円という莫大な費用がかかるわけでございます。それと何時に、まだ予定は云々というお話でございましたけれども、あと志布志、菊間、串木野、久慈、これ馬毛島ですか、鹿児島県ですが、この五つがまた予定地として上がり、あるいは調査をされているわけでございます。進捗状況も地元の調整中ということもございますし、あるいはスタディーのところもございますし、あるいは保管調整中というところもございます。いずれにしても計画として上がっているわけです。それでこれは民間からもらってきたんですけれども、実際に所要金額というものは、これは約で出ていますけれども、五千六百六十億円というような金額が上がっているわけでございます。そういうふうに考えてまいりますと、当初に申し上げましたように、いまから先の石油備蓄をどういう方向に持っていくかということと関連が出てくるわけでございます。それと莫大な費用がかかるものですから、行革との関連をどういうふうにいま見るのか、これは当然政策的な一つの大きな選択にもなると、こういうふうにも私は思うわけでございますけれども、いずれにしましても大変ないわゆる金額になるわけでございます。そこで私といたしましても、いろいろと調査をしてみたわけでございますけれども、わが国のエネルギー対策予算は主として原油関税並びに石油税によっていることは事実でございます。一般会計から特別会計に繰り入れられている比率というものは年々上昇しまして、五十八年度は実に九九%に達していると、こういうような状況になっていますが、現在は石油の輸入量というものが大幅に減少しております。それと同時に輸入価格が引き下げられる、こうなってくると、いわゆる財源というものが大いにしぼんでくる、そしてこういうような大きなプロジェクトを考えてまいりますと、この財源不足というものは、これは火を見るよりも明らかであるわけでございます。こういうことを考えますと、果たしてこのままの状態で、石油備蓄は確かに大切でございます、大切ではございますけれども、緊急課題として現在の日本の財政事情なり、あるいはこういったいわゆる財源が、特別な財源がしぼんでいくという、こういういろいろなことを勘案をしたときに、どういう対策をとるべきか、あるいは先ほどからたびたび申し上げておりますように、民間の基地を大いに利用する方向でいくのかどうかという、政策のいわゆる選択になるわけでございます。  そこでお尋ねをしておきたいと思いますのは、国家備蓄の基地建設のために全部六カ所、五カ所の分をプラスをしますと、経費が総額で約八兆四千億ぐらいの財源が必要になってくるわけでございます。当初予定というものは、この十一カ所についてはすべてが六十三年度末という予定でいままで出発をしてきたわけでございます。そうなってくると、これはまた大変な問題が起こってくるわけでございますが、こういうことを考えまして、総理としてはいまこの備蓄基地建設計画というものをもう一遍見直さなければならない時期に来ているんではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この点どういうふうにお考えになりますか。
  276. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは石油国家備蓄というのは、すぐれて高度の政治判断の問題だと思うのです。したがって、採算とかなんとかというものはちょっとわきに置いて考えなければならない問題だと思います。たとえばよその国の例をとりますと、第一次石油ショックが起こった直後にシュミット首相は国家備蓄一千万キロリッターを即日議会に提案いたしましたですね。これは一つの決断。アメリカ政府は三つの大きな地下岩塩層を掘って、そこに備蓄をしております。そして貴重な天然北限微生物保護という意味で長い間議論されていてできなかったアラスカ・パイプライン、これも上下院がわずか二日で、しかも一本でなくて複数建設することを即日認めたというふうに、やはり一遍ショックが訪れたときに、それがパニック状態になるということはその国の経済、国民の生存権にも、ここまで石油製品が各家庭に浸透しておりますと、国がいかに対処するかは採算を若干離れてでもわが国の対処方針というものがまず基本にあって、そしていまおっしゃったような財源問題等はそれに随伴しながら検討していくべき問題と考えております。総理への御質問でございましたが、私はそういうことでなければならないと考えておりますので、政治判断というものがまず優先すべきものではないかと考えて、わが国はまさにその政治判断をきちっと守って、いかなる場合でもうろたえることのない立場だけはとっておきたい、それが私の基本的な考え方であります。
  277. 桑名義治

    ○桑名義治君 総理はどのようにお考えになりますか。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 通産大臣と同じであります。ただ、財政事情を勘案しながらその進行度合いというものはよく調節していかなければならない。行革ということもまた一面において考え時代に入ってきていると思います。
  279. 桑名義治

    ○桑名義治君 もう時間が一分しかございませんので、一問だけになるかとも思いますが、一月の中旬の訪米の際に、中曽根・レーガン会談の中でエネルギー貿易検討委員会というものが設置されたと、それが合意に達したというふうに言われているわけでございますが、この中身はどういうことでございますか。
  280. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日米首脳会談の際に、レーガン大統領からエネルギー問題について日米間で検討を進めたい、いわゆるワーキング・グループ、そういったものをつくりたいというふうな提案があったということを総理からお聞きをいたしまして、私はシュルツ国務長官とこの点について具体的にどういう問題かと、こういうことでお尋ねしたんですが、シュルツ国務長官は、これはアラスカ石油の問題であるとか、あるいは天然ガスの問題であるとか、あるいはまた石炭の問題であるとか、そういう問題について日米間で今後のエネルギー問題、エネルギーの将来というものを考えながら日米間で話し合う機関をつくりたいと、こういうことだということでございまして、わが国としてもいまこの日米間でワーキング・グループをどういうふうな形でつくるかという点につきまして、いま外交チャンネルを通じまして調整をしている段階であります。
  281. 桑名義治

    ○桑名義治君 表で、中身が非常に外から見にくいもんですから、したがっていろいろな経済雑誌等で書かれているとと、言われていること、これは今回の米国の開発計画はいわゆる開発資金についてわが国に依存する内容が盛られていると、こういうふうに言われているわけですね。したがって、民間ベースだけではなくて、莫大な国家資金を投入する必要があるのではないか、これをまた総理とレーガン大統領の間である程度そこのところも合意に達しているのではないか、もしこの約束が果たされなければこれは国際的な問題として米国からまた大きな非難を受けるんじゃないか、こういうふうなことが記事になっておるわけでございますが……
  282. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 桑名君、時間が参りました。
  283. 桑名義治

    ○桑名義治君 この点はどうなんですか。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうことは全くございません。
  285. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間が来ましたのでやめます。(拍手)
  286. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で桑名義治君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  287. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、吉田正雄料の総括質疑を行います。吉田君。
  288. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 エネルギー政策についてお伺いいたします。  先般の参議院における質疑の中で、山中通産大臣は私の問題提起に対して、今後慎重に検討したい、誠意をもってやりたいというふうにおっしゃっております。私は、本日エネルギー問題を中心に政府の見解をお尋ねをいたします。  政府は、エネルギー政策の基礎となるエネル情勢について供給不安を予測し、早ければ一九八〇年代、遅くとも一九九〇年代に石油が逼迫するという認識に立ち、短期的施策として九十日間の石油備蓄、石油供給源の多角化、産油国との経済協力等を推進してまいりました。また、中長期的には代替エネルギーの開発、とりわけ原子力を中心として、石炭、LNG、水力発電、地熱発電、太陽熱などの開発利用のため多額の財政投資を伴う施策をとってまいりました。特に原子力発電の大規模開発計画は、ウラン濃縮、使用済み核燃料の再処理、高速増殖炉の建設、稼働を目的としたいわゆる核燃料サイクルの確立というものを原子力政策の基本目標として、八二年度までに二兆円もの膨大な政府資金を投入するとともに、行政的にも種々の便益を供与してきたわけです。今後さらに原子力開発利用長期計画に基づき、二〇〇〇年までに政府資金五兆四千億円、民間資金十四兆円を投入しようとしているわけです。しかし、政府の需要見通しが大幅に見誤ったものであり、そこから出発したエネルギー政策も結果的には供給構造面でもエネルギー浪費構造を逆につくり上げ、今日の財政危機をもたらす大きな原因になっていることは否定できません。  そこでお尋ねいたします。現在電力は、政府の予測に反し、かつて例を見ないほどの過剰状況にありますが、電力の状況はどうなっておりますか。特にここ五年間の最大需要電力に対する予備率、平均設備利用率をお聞かせください。
  289. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 五年間の供給予備率について申し上げますと、五十三年度一二・二、五十四年度一六・一、それから五十五年度二四・九、それから五十六年度一九・五、五十七年一九・二でございます。ただ、これは自家発その他もございますので、九電力だけで申しますと、一一・八、一六・一、二五・五、一八・九、一八・二ということでございます。  総合設備利用率については、たまたま現在資料を手持ちしておりませんので、調べてお答えいたします。
  290. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 長官、大きな声でお願いします。
  291. 豊島格

    政府委員(豊島格君) はい、わかりました。——たまたまいま資料ございませんので、調べて御返事申し上げます。
  292. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 言ってある。こんなのに時間をとったんじゃいけないですよ。最初から聞いているんだ。
  293. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 年度末の設価というものの能力とそれから年間の発生電力量、これを単純に割って出しますと大体六〇%弱になっておると思います。
  294. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 総理それから通産大臣、このように電気は約四割も余っているんですよね。このことをまず念頭に置いてもらいたいと思うんです。逼迫すると宣伝し続けてきた石油需給が逆にオイルショックと言われるほどの供給過剰状況にありますけれども、実態はどうなっておりますか。石油の輸入量の五年間の状況、それから同じく石油消費壁の五年間の状況。
  295. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 五十三年度から申しますと、五十三年度の石油輸入量は二億七千方キロリッター、五十四年度二億七千七百万キロリッター、五十五年度ですが、二億四千九百万キロリッター、それから五十六年度二億三千万キロリッター、それから五十七年は、これは年間でございますが、二億一千四百方キロリッターと、こういうふうになっております。  それから需要でございますが、石油製品の需要について申しますと、五十五年度は五十四年度に比べまして大体一〇%減、それから五十六年度は五十五年度に比べまして七%減、五十七年は大体七、八%、これは年間しか出ておりません。七、八%の減、これが大体の傾向でございます。
  296. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 いまお聞きのように世界的な石油過剰というものが石油価格の上昇、石油多消費産業の構造変化等がもたらしたエネルギー需要構造に起因していると思うんですね。不況による一時的な現象ではない。つまり世界経済が長期的な低成長時代に入ったと言われるのと同様、エネルギー消費もまた減退もしくは停滞の時代に入ったという認識が妥当ではないかと思うんですが、この点については大臣いかがですか。
  297. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 当時想像もできなかったほどのあらゆる原因が、いろいろ個人の節約まで含めて需要が減った。したがって輸入量も当然減っていった。いわば私どもは石油ショックというふうに言っております第一次の値上げのとき以前の、約四年前でしょうか、昭和四十五年ぐらいの需要量に戻っておる。この点はやはり私どもに一つの教訓を示していると思います。したがって、そのような傾向が今後続くのか、あるいは今回の不測の状態として結果もたらされる原油の値下がりによって再び需要がどの程度戻るものなのか、そこらの点はこれからの慎重な検討を待つ必要があると思います。
  298. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 ところで、エネルギー需要というものが非常に余ってきておると。ところが現在まで進められてまいりました原子力開発というものについて見ますというと、一見日本経済あるいは不況対策の面で大きく貢献をしているように見えますけれども、内容というものをしさいに検討してみますと、実は産業政策あるいは地域開発の面、そういう点での位置づけがきわめて不十分でありますし、経済性の面からも電力供給の中核をなしていくには余りにもリスクが大きいということが次第に判明してきたと思うんです。  そこで、次の点幾つかお尋ねをいたしますけれども、最初に東海再処理工場の問題でありますけれども、去る二月十九日、二つ目の溶解槽に穴があいてついに操業というものを全面的に停止をしたわけです。本格操業開始からわずか二年一カ月後のことなんですね。このことに端的にあらわされておりますように、再処理というものは技術的にも経済的にも前途の展望というものを全く欠いていると思うんです。再処理工場の現状はどうなっておりますか。——勤燃理事長参っておりますか。
  299. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) お答え申し上げます。 東海村で動燃事業団が、年間使用済み燃料の処理能力といたしまして二百十トンという規模で操業いたしておりますのは吉田先生御存じのとおりでございますが、溶解槽のうち、二基あるわけでございますが、一基が去年の四日にトラブルを起こしまして中断しております。いわゆる、それ以降片肺運転をやっておったわけですが、御指摘のように、最近残りの溶解槽も故障を起こしまして、現在運転を休止いたしております。
  300. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 今度のR10ですね、損害はどれくらいになっておりますか。
  301. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) ただいま御質問の溶解槽R10につきましては、やはり溶解槽の中の溶接個所が不十分であったというふうに現在推定をしておりますが、まだ詳細な原因につきましては目下さらに調査中でございますが……
  302. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 質問に答えてない。損害を聞いているんです。
  303. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 溶解槽の損害と申しますと、どう申し上げたらいいか……。たとえば、新しく溶解槽を新設いたしますとすると、その溶解槽の発注費は五億円はかかるかと思いますが、そのほかに工事費が、やはり三十億円ぐらいは新しく土木工事費等がかかるかと思いますが、一例としてそういうお答えいたします。
  304. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 それに伴う収入減というのはどれくらいになりますか。
  305. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 大体、現在までに使用済み燃料を再処理しますと、一トンにつき大体一億三千五百万円という料金収入になっておりますが、一年間大体五十トソ計画でまいりますと、やはり年間収入としては六、七十億円は収入減になるという勘定にはなります。
  306. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 二つとも全面停止をして、いずれも原因がわかってないという中で、新しい溶解槽を年度中に発注をするということは一体どういうことなのか、一体その金額は幾らなのか。
  307. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 第一溶解槽、第二溶解槽が従来常用運転になっておったわけでございますが、大体東海再処理工場が試運転に入りまして以来ほぼ八年たっておるわけでございますが、試運転といえども実際の操業と同じで硝酸を使って運転するわけでございまして、したがって現在の溶解槽はすでに八年の経過年数がある。おおむね海外の専門家等ともいろいろいままで検討してきましたが、溶解槽の寿命は恐らく十年ぐらいじゃないかというふうに考えられておりますので、やはり私は新しい第三溶解槽、つまり予備基を置かなければ恒常運転は十分なことが期待できないんじゃないかというふうな意味で第三溶解槽を急いだ方がいいというふうに申し上げました。  なお、第一、第二溶解槽の故障個所はやはり溶接の欠陥という点であると思いますので、現在遠隔補修設備を発注いたしまして、それによって内側から溶接をするという技術によって秋までには故障個所を直したいというスケジュールでおります。
  308. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 金額。
  309. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 第一、第二溶解槽の故障個所はほぼ現在わかっておるつもりでございますので、先ほど申し上げましたように、溶解槽内部の溶接個所が問題であるという意味でございまして、そのために溶接部対策というのが修理の目的になるし、また新しい第三溶解槽の発注は溶接が健全性が保たれるような素材に切りかえる方がいいんではないかというような考え方でおります。
  310. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 それが幾らですか、新しい溶解槽の値段は幾らですかと言っているんです。
  311. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 第三溶解槽でございますか。——溶解槽それ自体の機械代としては一台五億円ぐらいかと思いますが、それに伴う工事費はまた別途にあるわけでございます。
  312. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 それは幾らになるかというのです。建設費ですよ。
  313. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 機械代以外の工事費としてはやはり三十億円近くになるというふうに考えております。
  314. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 大変な金額なんですね。しかも原因がよくわかっていない。私どもずいぶん現地調査もやっていろんな点で原因も聞いてきたんですが、不明確なんです。不明確な中でまた新しい第三溶解槽を発注するというのはきわめて不見識なんですね。  そこで、いままでの動燃事業団にかかってきた経費ですね、いままでの建設経費の総額、それから運転経費、それから事故や故障に伴う修繕費等の総額が今日まで幾らになっておるか。
  315. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 東海再処理工場の建設費並びに修繕費は、昭和五十六年度までにほぼ七百億円に達しております。
  316. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 これが全くむだになって事故の原因もつかめない、再処理の展望も見出していないということでは、私は財政的なきわめて大きな負担、税金のむだ遣いだというふうに思っているわけです。R11については施設変更許可願いを出されたのですけれども、実質的にはこれは廃棄じゃないですか。
  317. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 溶解槽の修理のための変更申請でございまして、あくまで第一、第二溶解糟は修理するんだ、つまり修理技術を国内に確立するということも私どもの東海プラントの最も大きな任務かと思っておりまして、やはり必要なことであると思いますけれども。
  318. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 従来も同じような事故を繰り返してきて、設備変更許可願というのは出したことありますか。
  319. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 溶解槽の故障は去年とことしが初めてでございますが、それまでの故障というのは溶解槽には六年間なくて、主とした故障は酸回収蒸発缶の故障が二回あったということでございまして、溶解槽はそう簡単にいままで故障を繰り返したというわけではないと思います。
  320. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 修理の内容というのはどういうことを考えておられるんです、それでは。
  321. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 溶解槽につきましても、やはり現在の設備がフランスからの設計並びに加工全部輸入品でございますので、今度新設するとなれば、今回の経験にかんがみて溶接部の健全性をあくまでねらわなければならないという意味において、輸入品と違った素材を現在メーカーさんと共同研究で大体ほぼ見通しかついております。
  322. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 総理、それから通産大臣、科技庁長官、この建設開始以来十数年たっているわけですが、ところが前途は全然お先真っ暗ということなんで、今後のことを考えますと、その他のいろんな経費を入れますと、もう今日まで約一千億円近い巨費を投じているわけですよね。これは大蔵大臣、よく聞いてもらいたいと思うが、どういうふうにお考えになりますか、これ。増税なき財政再建、それからむだはなくするということを盛んに言われていたんですが、そういう点でこれほどの税金のむだ遣いはないんですよ。責任問題が全然明らかにされてないということで一体責任の所在がどうなるのか、これを明らかにしてもらいたいと思うんですよね。法律で定めた人勧ですら凍結をするという、そういう厳しいことをやっておきながら、こういうむだについては全然責任すら明らかにされてない、今後の展望も全くない、これから一体どれだけ金を食うのかわからぬ、こんなことで増税なき財政再建できますか、これは。
  323. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 吉田先生は非常に原子力の知見の高い先生でございますことはよく承知いたしております。私も再処理工場を見てまいりました。基本的な問題がございまして、ちょっと吉田先生と立場が違います。私の方は、長期的展望に立ってどうしても原子力政策というものを緩めたらいけないという、そういう前提に立っておるわけであります。その理由は、これは山中大臣からもお話ございました。われわれは、もう油はこれは有限でしょう。戦略物資に使われるでしょう。であるならば、やはり長中期的には経済性の問題と安定的供給の中からは絶対私たちは原子力というものを手から放すことはできない。その中で、先ほど吉田先生おっしゃいましたいわゆる核燃料のサイクルだけは、これは絶対私たちは自己開発の山でやらしてもらわなきゃなりませんし、やらなければならないという宿命を背負っておるわけであります。事故が起きた、トラブルが起きた、このトラブルは原因は何かということは、いま柳川理事長おっしゃいましたが、大体見当はついているわけなんですな。ただ、遠隔操作でもってこれに入らなければならないという非常に至難ないわゆる研究分野、これを持っておるわけなんですよ。だから、ひとつ、いろいろとお考え方もあるでしょうけれども、私たちは絶対私たちのいわゆる研究開発の頭脳をもってすればこれは克服できる、こういう私たちは自信を持っていまやっておりますから、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  324. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 これは立場の違いじゃなくて、純然たる科学的な立場なんですよね。  ラアーグとそれからウィンズケールの状況、どうなっていますか。
  325. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) ラアーグと比較いたしまして、やはり何分にも向こうが最初から私どもの先生であったわけでございますが、しかしラアーグに比較して特に東海プラントが故障が多いというようなふうには考えておりませんが、先ほどの酸回収蒸発缶は、ラアーグはもはや三台目のものを据えつけておりまして、われわれはいま二台目のものが故障を起こしたというふうに、各国ともほぼ同じ経験を目下積み重ねつつある。つまり再処理工場は工業的な技術としては私は安全であると思いますが、商業プラントとして各国ともさらに磨きをかけつつあるという段階でございまして、現段階だけで再処理の経済性はないというようなことは毛頭私は考えておらないつもりです。
  326. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 修理にいつまでかかって、いつころになったら再処理技術がそれでは確立されるというふうに思っておいでになるんですか。
  327. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) むずかしい御質問でございますが、もともと東海プラントは民間のこの次の第二再処理工場のための運転技術の開発、経験、それから保修技術の開発、これが私どもの最大の任務でございまして、特にそれによって素材の国産化を図る。それによって第二再処理工場の相当な程度の国産化を目がける。その時期と申しますのは、やはり第二再処理工場の設計が始まる来年あたりからいろいろとそういう商業化が取り入れられていくと思いますが、しかし第二再処理工場といいましても、やはり完成までにはいまから十年近くはあると思いますので、その間に私は再処理技術というものは各国とも相当な進歩があるというふうに期待しております。
  328. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 各国は大体見直しとか停滞の状況に入っているんじゃないんですか。
  329. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) フランス、ドイツにつきましては、私どもと同様に一生懸命修理技術に取り組んでおるということで、フランス、西独は私は後退しているというふうには思っておりませんです。
  330. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 ウィンズケールでは、もうこの軽水炉の再処理はやめようという方針を打ち出したというふうに聞いているんですが、その点はどうですか。
  331. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) 最近の新聞を見ましても、ウィンズケールで軽水炉用の再処理工場のタイミングをどうしようかという議論はイギリス国内に起きているように見受けられますが、しかしその背景は、従来イギリスが軽水炉をやっていなかった。今度新しくイギリスは従来の国産のガス炉のほかに新たに軽水炉PWRをやろうということになっておりますので、このPWRの原子力発電所がいつできるかはまだイギリス国内では決定されていないわけでして、したがって軽水炉用再処理工場を特に急ぐという必要はイギリスにはないんじゃないかというのがイギリスの現状かと思います。
  332. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 総理、大蔵大臣、いつになったらその技術が確立するかということは、第二再処理工場の建設までに今後十年間ぐらいかかるだろうからその間に何とかなるんじゃないかという、そういう答弁なんですね。第二再処理工場というのは巨額な金がかかるわけですよ。こんなことでよろしいんですか。
  333. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これ、やはりエネルギー問題というのはまさに長期の対策という観点から打ち立てられるものであろうと私も思っております。したがって、財政事情に応じて予算編成の際それそれ協議いたしますものの、基本的には長期の観点からなされるべきものであるというふうな共通の認識に立っております。
  334. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 総理は原子力には大分御見識をお持ちというふうに聞いているんですが、再処理の展望をどういうふうにお考えになっているんですか。
  335. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 再処理技術を完成することは原子力のサイクルを決める上で非常に致命的な大事な問題であります。各国ともこの開発に努力してまいりまして、フランスあたりがかなり進んでおりまして、日本もフランスと技術提携等もやったりしていままで開拓してきたところでございますが、こういう新しい分野を開くときには必ず故障が起きたり問題が起こるんです。それにもあきらめずに不屈不撓でやり抜いて初めて完成するのであります。火力発電において石炭ボイラーでも同じようなケースがずっと続いていたのを今日の技術に完成したと同じ跡をやはり原子力についても追っておるのでございまして、途中でくじけてはいけないと思っております。
  336. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 当初はいつぐらいまでにその技術を完成させる予定だったんです。
  337. 瀬川正男

    参考人瀬川正男君) いつまでに技術を完成させるかということを確定的にタイムリミットを考えていたわけでございませんが、いずれにしましても、第二再処理工場の建設までには私どもは国内技術を、とにかく基盤を確立しようというのが私どもの最大の念願でございます。  なお、つけ加えて申しますと、私は再処理工場の経済性といるものは、単に再処理工場の操業によってウランとプルトニウムが回収されるというだけで再処理工場の経済性は云々さるべきじゃないと思いますので、つまり軽水炉発電所の使用済み燃料を発電所にためないということも非常に大きな目的でありますので、再処理工場の経済性というのはやはり広い意味でお考えいただきたいと思っておるわけであります。
  338. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 核燃料サイクルの計画が大幅に狂ってきておることはもう間違いないわけなんですね。時間がありませんから、これだけでやっておるわけにはまいりません。  そういう点で、次もう一点、原子力船の問題についてお伺いいたしますけれども、原子力船「むつ」建設の目的は何だったんでしょうか。
  339. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) お答え申し上げます。  原子力船「むつ」は実験船でございまして、将来の商船の原子力化に備えまして、原子力によって商船、船舶の推進が技術的に可能であるということを実証するのが原子力船「むつ」の建造の目的でございます。
  340. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 放射線漏れ事故を起こした原因と責任はどこにあるというふうにお考えになっていますか。
  341. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 「むつ」が昭和四十九年に例の放射線漏れを起こしたわけでございますが、この実態の認識はいろいろお立場によってあれがあると思いますけれども、周辺の人であるとか環境でありますとか、あるいは従事者、運転員に対して……
  342. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 瀬川参考人、御退席いただいて結構でございます。
  343. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 損傷を与えたとかあるいは被害を与えたという性質のものではございません。でございますけれども、実験のきわめて初期の段階でこういう事故を起こしまして社会的に非常に不安を与えたということでは非常に大きな責任を痛感しておるわけでございます。これは「むつ」の建造、運航を進めております原子力船事業団の責任であると同時に、私ども行政に携わる者も強く責任を感じておるところでございます。
  344. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 その政府の責任というものはどういうふうに処理をされたんですか。
  345. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) この「むつ」の事件の後で、いろいろなこの経験にかんがみまして、反省に基づきましていろいろな改善が図られております。  一つには、原子力行政の中核として原子力委員会というもので進めてまいったわけでございますけれども、それだけでは必ずしも十分でない、原子力委員会から原子力安全委員会という機能を分離して進めるのが適当であるというようなことでありますとか、そのほか、各般にわたってこの苦い経験に基づきまして改善が図られておるというわけでございます。
  346. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 今日までの建造費、それから改修費、これは幾らになっておりますか。
  347. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 昭和三十八年から五十六年までに「むつ」の建造、運航にかかりました総経費が四百十四億円でございます。そのうち、「むつ」の建造費そのものが七十三億円、大湊港の建設費が二十六億円等が含まれております。
  348. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 大湊だとか長崎等、地元の漁協とかに払った漁業補償金あるいは協力金あるいは融資等の額はどれくらいになっておりますか。
  349. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 昭和四十九年の例の事故を起こしました直後でございますが、青森県側に例の四者協定というものに基づきまして地元対策費として支出をいたしましたのが合計で十三・八億円でございます。  それから、長崎県で、佐世保港で改修をいたしましたけれども、この時点で地元対策費として措置をいたしましたのが、魚価安定対策費二十億円を含めまして二十五億円でございます。  それから、昨年の秋に「むつ」が大湊港に再入港をしたわけでございますが、その時点で地元側との約束に基づきまして魚価安定基金の造成ということで十七億円の融資という措置を講じております。年間にいたしまして一億四千万円程度の利子負担というものが出てまいりますけれども、これにつきましては事業団で負担をするということが措置されております。  そのほか、昨年の入港に際しましての地元の御要望につきましては、この魚価安定基金以外にもいろいろございますけれども、各省庁の施策の中で、現行の制度の枠内で推進を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  350. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 新定係港の建設が行われる予定になっておるのですけれども、何年間、どれだけの予算を想定されておりますか。
  351. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 新定係港の建設につきましては現在いろんな準備を進めておりますが、順調に進みますればことしの秋には着工したいという予定にいたしております。いろんな事情がございますけれども、科学技術庁といたしましては六十一年度の秋ごろには使用できる、「むつ」の回航ができる状態にまで持っていきたいというスケジュールを念頭に置いて計画を進めております。  経費でございますが、現在の段階でまだ非常に的確な数字を申し上げる段階でございませんけれども、大体五百億円ないし六百億円程度の金がかかるんではないかというふうに考えております。
  352. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 政府がこの原船事業団に出した補助金、出資金等の合計はいままで幾らになっておりますか。
  353. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) お答え申し上げます。  昭和五十六年度決算までの累計で申し上げますと、政府が支出いたしました金が三百五十億円程度でございます。
  354. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 補助金は。
  355. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 補助金と……
  356. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 補助金、出資金というのがあるでしょう、出資金だけでなくて。
  357. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) その区別はいまちょっと手元に数字持っておりませんので、調べまして後ほど御報告させていただきます。
  358. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 「むつ」の実証試験はこれから何年くらいの予定ですか。
  359. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) ただいま申し上げました三百五十億円は、出資金と補助金との総計でございます。内訳につきましては、また後ほど申し上げます。  「むつ」の試験でございますけれども、今後佐世保におきます改修の結果の確認、つまり機能試験と称しておりますが、そういうものでありますとか、あるいは出力上昇試験でありますとか、あるいは最終的には実験航海というものが必要でございます。この関係の試験は、機能試験あるいはその出力上昇試験を開始しましてから大体四年ないし五年を要すると考えております。
  360. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 その間の運営費はどれくらいかかると想定されていますか。
  361. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) その点につきましては、まだ十分な数字がつかめない状況でございますが、大体数十億と申しますか、二、三十億円程度だと思いますが、その程度の所要資金を想定いたしております。
  362. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 そんな少ない数字になるわけないんですよね。全然低く見積もった数字です。ここでやりとりやっても仕方がありませんけれども。ところが、この「むつ」は私は廃船にすべきだと思うのですけれども、まだ試験結果も出ないうちにまた新しい第二「むつ」建造の計画というものが出ておるということを聞いておりますが、一体その目的と建造経費はどういうふうに考えておいでになるんですか。
  363. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 「むつ」の現状にかんがみまして、第二船の計画というのが現在具体的にあるわけではございません。ただ、新聞紙上に紹介されておりますのは、原子力船事業団が将来の原子力商船の実現のための技術的な改善を目的にいたしまして、たとえば舶用炉の改良でありますとか、そういういろんな技術的課題を抱えておるわけでございますが、そういうことの計画立案のための基礎的な調査をやっておるという状況でございます。重ねて申し上げますけれども、第二船の建造計画というのは具体的にいま固まったものがございません。
  364. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 科技庁から出ておる年報によりますというと、いまおっしゃったように将来の高速船時代といいますか、とにかくそういうことを想定しての新舶用炉の研究開発という意味で盛られておるわけですね。  そうするとあれですか、第二原船については、つくるともつくらないとも全然予定がないわけなんですか。
  365. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 「むつ」は先ほど申し上げましたように実験船でございますから、将来におきます原子力商船の実現と、原子力委員会で専門家にお集まり願いまして検討されました結果では、二十一世紀に入るころと想定しておりますけれども、その時点までの中途の段階で第二船計画というのが必要であろうというふうには私どもも産業界もそういう認識を持っております。持っておりますけれども、その計画は具体化しておらないということでございます。  ただ、何と申しましても、現在非常に高い舶用炉のコストを格段に低減するということが主眼でございますから、そのための検討、準備ということが行われておるということでございます。
  366. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 なぜ原子力船が今後必要となるのか、その理由は何ですか。
  367. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 現在のところ石油の値下がりがいろいろ論議されているような状況でございますけれども、長期的には石油初めエネルギーコストの上昇というのは避け得ないものだというふうに考えます。特に、船の場合考えまして、燃料費と燃料費以外の船価といいますか船の建造費、あるいは原子力船の場合原子炉の値段というものの相対的な価格という点では燃料費のウエート・シェアというものが非常に拡大するであろうというふうに考えております。  先ほど申し上げました原子力委員会の専門部会の検討におきましても、いま申し上げました相対的な燃料費というものが一・三倍になれば、八万トン程度の商船で原子力船の方が有利である。三倍になれば三万トン程度以上の船で原子力が有利になると、こういう結論が出ております。まあ数字的にどの程度的確かというのはいろいろ御意見あろうかと思いますが、傾向としてはそういうことで、長期的には原子力の商船の経済性あるいは実用的な意義というものは非常に大きいというふうに考えておるわけでございます。
  368. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 世界の情勢に私逆行しているのではないかと思うんですけれどもね。将来のエネルギー需給見通し、そういうものを考えたり、それからいままでの「むつ」の金食い状況、まさに金食い虫と言ったらいいんですか、金食い船と言ったらいいんですか、もう廃船同様なんですから、そういう点で研究結果も実証試験の結論も出ないうちに、いま言った需給見通しも不確かな中で、いたずらに原子力船をつくればいいという、つくることが優先をしておるという、そういう私は考え方については絶対容認できないものなんです。これは日本経済にとって役立つどころか、まさに税金のむだ遣いだというふうに思うのです。全然いままでの事故についての反省というものが欠けておるし、さらにエネルギー需給見通しについてのいままでの政府の政策そのものが大きく誤って、常に下方修正をやらざるを得なかったというその反省が全然そこには入っていないということなんですね。したがって、現在の「むつ」は直ちに廃船にすべきだと、何ら役立たない。これは私は、個人的に会っているいままでの科技庁長官と話をしても、あれも役に立たないから個人的には廃船にした方がいいと思うという大臣が非常に多いんですよ、これは。そういう点で私は、こんなものは廃船にすべきだと、同時に第二原船の建設の計画というのは、これはいままでの経過からしてきわめてむだである、日本経済にとって決して利益にはならぬということで計画は取りやめるべきだというふうに思うのですね。そうでなけりゃ私は今日のこの財政赤字をどうするかという点についての反省というものがまたそこに全然ないんじゃないか、財政再建にも大きな私は穴をあける結果になるんじゃないかというふうに思っているわけです。そういう点で、担当大臣と大蔵大臣、総理の見解をお聞きしたいと私は思うんです。
  369. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 衆議院の方でもこの御質問ございました。よくよく考えてみるというと、長期展望に立った場合に果たしてこういう研究開発の日程を変更することがいいか悪いか、いろいろ考えれば考えるほど長期展望に立って政府は一貫して今日までこの「むつ」問題に取り組んできているわけであります。これは本当に日本はいま造船業界の方も長期展望に立った場合には、もうどうしてもやはりわが国は持たなければならない、舶用炉はもう自己開発によるものを。そして海運業界もしかりであると、こういうことでございますし、もう世界の先進国は手の中に入れてしまっているわけであります。だから私たちは本当に一貫してこの問題に取り組んでいきます。ただし、いま吉田先生御指摘のとおり、やはりトラブルを起こすと、こうなればこれはまじめに反省の上に立たなければならない。幸いに地元の御協力も今後得まして、もう新定係港に早く取りついちゃって、そして六十一年にはひとつ実験航海に出れるように何としてもこぎつけたいという、そういう考え方でおるわけでございますから御理解を願いたいと思います。
  370. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ただいま科学技術庁長官からお答えがございましたが、財政当局の立場で申しますならば、原子力船の研究開発のために必要最小限の経費を割くことは、大きく言って科学技術の振興上やむを得ないことであると考えております。
  371. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 科学技術庁長官及び大蔵大臣と同じであります。
  372. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 現在の「むつ」というのはもう役に立たないんですよ。炉は古い、あんなもので実験をやって何で第二原船開発の資料になりますか。全くのむだ遣いですよ。しかも一千億円ということが現に言われておるわけなんですね。そんなことで財政再建なんてできっこない。まさに税金のむだ遣いでして、私はそういう考え方には絶対納得できないんですよ、全然反省がないんですね、総理どうなんですか、財政再建のあなたの方針と違うんじゃないですか、それじゃ。
  373. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 科学技術の開発研究というものはそういう非常な苦心惨たんの上に立って初めて前進するものであると考えます。
  374. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 聖域はないとおっしゃっているんでしょう。その答弁じゃ何ら理由にならぬですよ。国民を納得させる理由にはならない。現在までの現実を直視をされたらどうですか。役に立たないんですよ、あの原船は。
  375. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 先ほど担当局長からもお話しございましたが、いまの試験炉はわれわれはそういう理解の上に立っていないんです。これだけはひとつ御理解願いたいと思います。
  376. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 これはきわめて重大でしてね、去る五十五年の十一月十二日の参議院の科学技術特別委員会における中川科学技術庁長官それから原船開発事業団の野村一彦理事長、これを呼んでこの問題を論議をしたわけです。基本設計、詳細設計にも欠陥があったと、それからこれを請け負った三菱原子力工業のこの建造過程についても問題があったということをはっきりと認めているわけですね。欠陥炉なんですよ、これははっきり言って。実験をやっても役に立たない船なんです。そういうことでは全然話にならぬですよ。認識が前の論議とは全然違っているわけですね。これは容認できませんよ。
  377. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) お答え申し上げます。  「むつ」で採用しております原子炉は加圧水型と申しまして、吉田委員十分御存じでございますけれども、これは海外でも商船として、一種の実験船でございますが採用しているものでございますので、基本的に「むつ」の加圧水型を使った技術というものは、今日でも十分意味のあるといいますか、将来性のあるものだというふうに認識を持っております。  四十九年に起こりました事故につきましては、いま御指摘のありましたように、設計の面あるいは施工の面で遺憾な点があったというふうに私どもも認識しておりますし、今後の「むつ」の計画の推進それから舶用炉の研究開発につきましては、そういう経験に基づきまして、厳しい反省に基づいた態度で着実に進めていこうということを考えておるわけでございます。
  378. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 大臣、あなたの認識、全然違っているんですよ。局長、ここへ来てこの議事録読んでください。時間取りますか。これ読んでください。そんな認識じゃ全然問題にならぬですよ。もう欠陥炉であることははっきりしているのですから。ここへ来てこれを読んでください。
  379. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 大体存じ上げておりますので、お答え申し上げますが、先ほどの繰り返しになりますけれども、特に問題の遮蔽の面で、設計につきましても施工につきましても欠陥があったということを認めておりまして、それに基づきまして今回の遮蔽の改修を行ったわけでございます。
  380. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 だから本質的な欠陥炉であって、上からふたをかぶせてもそんなものは欠陥炉は直らないですよ。そんな答弁納得できませんよ。
  381. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) いまの御指摘につきましては、私どもだけでなくて各界の専門家の検討も十分いただきまして改修を的確に行った上で、実験を行うことが十分技術的に意味がある、将来のために有意義であるという確認をいただきまして計画を進めておるわけでございます。
  382. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  383. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。  吉田君の残余の時間は明後日午前十時から引き続いて行うこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会