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1983-03-10 第98回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月十日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月九日     辞任         補欠選任      中野 鉄造君     黒柳  明君      近藤 忠孝君     沓脱タケ子君  三月十日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     宮澤  弘君      原 文兵衛君     木村 睦男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 大島 友治君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 亀長 友義君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 村上 正邦君                 宮澤  弘君                 八木 一郎君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 山田  譲君                 吉田 正雄君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 黒柳  明君                 桑名 義治君                 塩出 啓典君                 沓脱タケ子君                 田渕 哲也君                 前島英三郎君                 江田 五月君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        総理府人事局長  藤井 良二君        臨時行政調査会        事務局次長    佐々木晴夫君        警察庁刑事局保        安部長      大堀太千男君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        環境庁自然保護        局長       山崎  圭君        国土庁長官官房        会計課長     金湖 恒隆君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省条約局長  栗山 尚一君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        文部大臣官房長  高石 邦男君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        厚生省薬務局長  持永 和見君        通商産業省貿易        局長       福川 伸次君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        労働大臣官房長  加藤  孝君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省道路局長  沓掛 哲男君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        会計検査院事務        総局第三局長   坂上 剛之君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより黒柳明君の総括質疑を行います。黒柳君。
  3. 黒柳明

    黒柳明君 公明党・国民会議代表しまして質問いたします。  まず総理内閣誕生以来四カ月になるわけでございますが、これまで中曽根内閣に対して、なかんずく中曽根総理に対して国民皆さん方がどう評価しているか、総理はどうお考えでしょう。六十点の合格点はつけていただく、こう判断するか、あるいはどうも合格点無理だ、こう判断しているか。いかがでしょう。
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総理大臣という仕事はやり返しのきかない大事な仕事でありますので、私は私なりに一生懸命努力してきたつもりでございますけれども、国民皆様方の必ずしも御期待どおりいかないところもありまして、さらに一生懸命励まなければいけないと思っておる次第でございます。
  5. 黒柳明

    黒柳明君 必ずしも御期待どおりにいかないという自戒、反省はやっぱり合格点無理だと、こういうことでしょうか。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 点数試験官がつけてくれるものでございまして、生徒がつけるものではないと思っております。
  7. 黒柳明

    黒柳明君 先月、各社世論調査が出ておりまして、もう当然総理はこういうことについて人一倍気を使われる、まあこういう性格だと伺っておりますが、各社世論調査ですと、残念ながら合格点六十点どころか、まず再試験、留年あるいは退学処分というような三〇%前後の支持率。これは調べてみますと、福田内閣誕生、そして直後、三カ月たった後、ちょっと一%低かったですね。あと、それに続いて中曽根内閣が最低の支持率、さらにその支持する層というのは四五から五〇を上回っているところもありましたね。これ御存じかと思います。  こういう国民皆さん方の評価、点数つけました。どうこれ判断しますか。受けとめますか。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まあ検温器温度表がそういうふうに出ているので、検温器が故障しているとは思いません。大いに注意しなきゃいかぬと思います。
  9. 黒柳明

    黒柳明君 温度計といいますと、まあ外は春雨ですね。これからこの委員会の中豪雨が降りますからね。ひとつその点も自覚された方がいいと思うんですが、当然寒暖計は狂っておりません。どうしてそんなに支持率が悪いのか。やっぱり外交に対しての総理発言姿勢、これは野党国民皆さんだけじゃありませんですね。与党の中からも批判が出ております。これはもう読むまでもありません。中曽根総理外交防衛政策は、従来の平和路線から軍拡路線への変更であると、河本さん、それから三木さんは、中曽根外交軍事面が出過ぎて国民に不安を与えている、鈴木総理も同じように、あるいは自民党外交調査会正副会長会議でも同じような批判がありますね。ですから、野党の追及あるいは国民皆さん方落第点点数のみならず、与党中曽根内閣を守らなきゃならない人から、誕生わずか数カ月でこんな、やっぱり外交軍事に対する突出だと。これについてはよっぽど反省をしなければならないと思うんですが、していると思うんですが、いかがでございましょうか。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろ御批判をいただきまして痛みを感ずるというのは生きている証拠であると思いまして、大いに皆さんの御意見を拝聴していきたいと思っております。  ただ、私の真意を完全に理解していただけなかった点も多々あると思います。新聞テレビ報道されたところは、その一部が極端に強く表現されているようなところもありまして、私の言っていること全部を冷静にお聞きいただけばよく理解いただけるのではないかと思っております。きのうも嶋崎さんの御質問に対しまして私は私なりの考えを申し述べました。やっぱり人生は長いのでございまして、その長い人生体験の中に人間の政策やら信念というものは逐次累積して形成されていくものであります。昔こう考えておっても、だんだん熟年に達すれば考え方もまた熟成してくる、そういうこともあると思うのであります。そういう意味におきまして、昔のまだ未熟であったそういう時代のことをばっと大きく出されますと、いま熟年に達している考え方と多少離れていることが極端に言われているという面もあると思います。そういう全体を静かに見ていただければよく理解していただけるのではないか、そういうふうに思いまして、その全体像を静かにぜひ見ていただくように今後とも努力してまいりたいと思っておる次第であります。
  11. 黒柳明

    黒柳明君 まだ質問してから数分、数問です。いま総理の顔をずっと見てましても非常にいい顔なんですね、にこやかで柔和で。その総理のそういうお顔、姿、そのまま同じく柔和に、にこやかに国民が受けとめられるような政治、外交安全保障、これを打ち出してもらえると非常に私は結構だと思うんですが、まあこのにこやかさもあと数分しか続きません。そのときの総理心境がいま国民が受けとめる心境なんです。不安、深刻、恐怖、こういうことなんで、ひとつにこやかに柔和に——国民が受けとめるんですよ、総理がにこやか柔和じゃだめですよ。国民が安心して中曽根内閣内政、外政にもう任せよう、任せても大丈夫だという心境、それになれるようなひとつ姿勢を打ち出していただければ、側近から、内部からこんな批判が出るわけない。  そこで、衆議院以来これ続けられていることでありますけれども、どうしてもそうなると、あの目白の角の影、こういうことになるわけでありますけれども、まあいろんな質問がありますけれども、少なくとも国民疑惑を与えるような行動新聞の活字で批判されるようなことは慎むべきだ。その一つとして高級官僚の目白もうで、これはうわさの範疇を出ないと思いますよ。何か予算になると主計局が向こうに移動するとか、あるいは現に外務建設あたり高級官僚新聞批判を受けております。こういうことについて、やっぱり予算を執行する総責任者とは言わなくても、もう責任者ですから、その人たち疑惑を受けるような行動は、これはもう慎むべきだ。これは個人の自由といってもやっぱり許せない、行政の長として、総理大臣として。こう思うんですが、この点いかがでしょうか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公務員ともなりますれば、公私の別は明らかにしなけりゃならぬと思います。昔御指導を受けた先輩として、個人的にいらっしゃることは自由人権の世の中でございますからもとよりそれは自由であると思います。しかし、公の仕事についてはやはり担当大臣なり組 織というものがございますから、それでもちろんやっていると思っております。わが国公務員諸君はわりあいにそういう点についてはけじめをつける力を持っていると私は信じております。
  13. 黒柳明

    黒柳明君 私も一点の疑念も挟む必要がないのじゃなかろうかと思うんですが、世間の声はそうはいかないわけです。それじゃ、田中邸高級官僚田中さんであろう人と対話されるのが仕事のことだか私的なあいさつか、これはわかりませんでしょう、総理。そこがやっぱり常識的な問題として批判対象になること、これも賢明な総理ですから異議はないと思いますよ。ですから、そういう行動は厳にやっぱり慎むべきだと。じゃ、どうですか、総理報告させたら。どういうことで行きます、ごあいさつです、私的なことで厄介になりましたから、そこまで拘束しない、そうじゃないと疑惑を招くからひとつ慎みたまえ、このぐらいのことはやっぱり言った方がいいんじゃないでしょうか。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その程度のことになりますと、やはりこれは個人常識で判断すべきことで、公務員として勤めていらっしゃる皆様方はそういう常識は十分お持ちであると思いますし、いまそういう御質問を伺ったことも皆さん新聞テレビでお聞きになるでしょうから、ますますそういう点は注意していただけるのではないかと思います。
  15. 黒柳明

    黒柳明君 どうも田中問題になると一歩も前進しない。結構です。  それで、いま衆議院議運決議案がまだ審議されてないわけです。どうですか、これに反対だと総理大臣おっしゃったですね、決議案に。ただ、この決議案反対ということは、撤回を求めるという総理考えでしょうか。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がきのう申し上げましたのは、自由民主党代表議運所信を述べた、その所信自由民主党が了承して述べた内容でございますので、党総裁である私はもとよりその内容については知悉をしておる、私も了承を与えたものでありますと、そういう意味で申し上げた次第なのであります。
  17. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、撤回を求めるとか、決議案が違法であるとか、そういう見解ではない、こう確認してよろしゅうございますか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 議会というところは元来論議し、審議し、討論する場所でございますから、各党各派が自由に自分の御所信を述べ合い、その中に共通している部分を探し合い、また違っている部分はできるだけ合わせるように努力していく、そういうところであると思いますので、自由な論議一つとしてわれわれは虚心坦懐に各党のお言葉を聞くようにいたしたいと思っております。
  19. 黒柳明

    黒柳明君 ですから、撤回を求めるとか、違法という見解ではないですねと、この一点だけちょっと、再確認です。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 違法とか撤回とかというのは、議院運営委員会内部におきまして、自由党の皆さん議会運営全般考え、またその論旨内容から見て、考え行動をされておることでございまして、自分たち所信を述べておる、内容につきましては各党各党の御所信を持っておやりになっているのでございましょうから、それはそれとしてまた考えて尊重していかなきゃならぬ、しかし、われわれはこのように思うと、そういうわれわれの所信を述べておる、このように思っております。
  21. 黒柳明

    黒柳明君 そうじゃない。要するに、決議案に対しまして自民党総裁として了承しているということでそれはいいんですよ。ですから、その議院運営委員会に出したということは、もうそれは違法とか撤回を求める、こんなことはもう絶対ないのだと、これはもうないという答えしかないと思うんですけれども、それでよろしゅうございますね。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先般の議院運営委員会におきまする議事手続が正確にどういうふうに進行したか私よく知悉しておりません。撤回を求めるという発言をしたかどうか、正確に私調査もしておりませんし、報告も受けておりません。いずれしかし、それらのことごとは議院運営委員会内部におきまして、与野党の間でいろいろ審議が進められる過程としてあり得るものである、しかし、それがすでに行われているかどうか、この点はよくわかりません。承知しておりません。
  23. 黒柳明

    黒柳明君 法制局長官衆議院が正規な手続によって受けつけたわけですから、この決議案違法性があるなんということは、これは絶対ないでしょうね。いかがでございましょう。
  24. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 私がお答えすべき問題ではないと思いますが、恐らく違法でないというおつもりで受けつけられたのであろうと推察いたします。
  25. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、総理考えは、その違法性撤回云々ということはやっぱりこれからの衆議院議運の中の与野党の話し合いの中で出る可能性がある、あるいは出る場合も考えられる、いや、それはもうそこの場でどう出ようが任せるのだと、こういうお考えはお持ちですか。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会運営に関しますことは幹事長、あるいは総務会長政調会長等それぞれの自民党機関がございまして、その機関に大筋のところはお任せしてございます。したがいまして、そういう具体的な問題になりますと、もう少し私調べてみませんと確答はできない状況にあるのであります。恐らく党三役やら党の機関が相談をして、いろいろ今後野党のお考えに対して自民党考えをまとめ、行動していく、こういうことになると思います。
  27. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、その過程を見なきゃわからない、それから報告も正確に、まあ受けているのだと思いますけれども、受けなきゃわからない、だけれども、その過程において違法性があるとか撤回するとかという可能性も逆に言うと否定はできない、議運に任せる、こういうことで否定はできない、こういうことにも通ずるわけですね。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会法やら議事規則で許される範囲内の行動の自由は確保しておるだろうと思います。
  29. 黒柳明

    黒柳明君 その行動の自由の中には当然違法性の問題とか撤回ということも含めて議論になる可能性がある、こういう判断もあるんですか、総理考えとしては。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この間、自由民主党代表が述べた内容論旨というものは、自由民主党考えであり、私も了承した内容であるとただいま申し上げました。そういう諭旨を中心にして自由民主党の今度は国会対策等が出てくるだろうと思います。その中におきましては、国会法議事規則等許される範囲内の行動の自由は確保しつつ、そのどの部分をどういうふうに使っていくかということは戦術戦略の問題もございましょうし、今後の論議内容によりまして変化する可能性もあると思いますので、ここで使うとか使わないという御答弁は申し上げにくい状態でございます。
  31. 黒柳明

    黒柳明君 堂々めぐりになりますので、これはまた後日に譲ります。  エンタープライズ寄港、三月二十一日ごろ佐世保に来る、こういう報道政府も県も了承していると。ただし、けさ報道でも、また先般の衆議院外務委員会でも非核原則にのっとって、もう一回アメリカに対して核の一時通過、寄港は認めない、これを厳に言うと、けさ報道されておりました、きのうの質問に答えて。  それと、原子力空母ないしは巡洋艦、駆逐艦等を含めて艦隊がこの日本付近、なかんずく空母佐世保に入港する。これは非常に何か、私たちいままで核問題を取り上げ、国民皆さん方にとってはむなしい響きがするんですね。だって、作戦行動をしてきたエンタープライズ佐世保に入る、そこに核がないなんということはない。いや、事前協議の通告がないからないのだと終始一貫政府姿勢は変わらなかったわけであります。  さらに、防衛庁専門家に雑談的に聞きます と、われわれはそんな論議しないんだと言うんですよ。作戦行動中に核を持ってない空母なんかあり得ない。原子力航空母艦、第七艦隊なんというのはあり得ない、当然持っているんだと。だから、あるとかないとか、こんなものはもう論議範疇外であるという専門家、非常にやっぱりこれ的確だと思いますね。  そこで、中曽根総理、非常にこの外交問題で評判が悪い。内政に切りかえよう、がん対策緑化運動、これからやっていこう、こういう方針らしゅうございます。このエンタープライズ入港でいままでにない対米姿勢を三カ月取り続けてきたわけです、武器輸出についても。エンタープライズでもそのむなしい響きが聞こえるようなことじゃなくて、もうちょっと突っ込んだ行動を起こしませんか、国民に納得できるような。積んでない、一時寄港は厳然として許さない、こういう措置をしましたから大丈夫ですと、そういうつもりはないですか。
  32. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 御承知のように、わが国非核原則を持っております。核も持ち込みはさせない、そういうことでございますし、核の持ち込みにつきましては事前協議対象になるわけですから、この場合は一切ノーであるということはこれは政府はしばしば言明をしておりますし、アメリカ政府もこれをよく承知をいたしております。安保条約は遵守の義務が日米双方にあるわけでございますし、これは信頼感の上に成り立っておる条約でございますから、アメリカ日本に無断で持ち込むことはあり得ない。アメリカが申し入れた場合はこれは核の持ち込みについては常にノーであるということはもうはっきりいたしております。
  33. 黒柳明

    黒柳明君 総理どうですか。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非核原則は今後も堅持してまいる所存でございます。
  35. 黒柳明

    黒柳明君 武器輸出なんて相当思い切ってやったわけですから、何かロン、ヤスの関係ですからね、非常に親しい関係でしょう。タカ派だけのロン、ヤスじゃないと思うんです。よく呼吸が合っている。言うことも言うけれども、言うことも聞いてくれる、こういう間柄のロン、ヤスだと思うんですね。もうちょっと行動起こしたらどうですか、いまのむなしい答弁じゃなくて。それで寄港を許すじゃなくて。外務大臣、その先頭に、あるいはアメリカ局長でも先頭に、中へ入って確かめる、このぐらいのことはやったら、これは中曽根内閣支持率六〇%台に上がりますよ。何かやっぱり行動を起こしたらどうですか。ただ単に申し入れて、またノーという返事だけじゃなくて、考えませんか。ただ単に非核原則、事前通告ないからこれでないんだと。それで、また入ってくる。それじゃ終始一貫この点については中曽根内閣の特徴は出てませんな。どうです。
  36. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先般の国会におきまして、F16の三択配置につきましてやはり同じような御質問がございまして、日本としてもアメリカに対して核の持ち込みについて一切これを認めることはできない、ノーであるという立場をもう一度明確にしてアメリカの再確認を求めるべきである、こういう御意見が出ました。今回もエンタープライズの入港ということは大体決まっておるわけでございますので、私も近いうちにアメリカのマンスフィールド大使にお目にかかりまして、核の問題につきまして日本政府がしばしば言明しておる点につきまして篤と申し上げまして、アメリカ日本政府はすべての核の持ち込みに対してはノーである、この点についての再確認を求めるつもりでございます。
  37. 黒柳明

    黒柳明君 外交姿勢、訪韓、訪米、それから五月はASEAN、それからさらにECと日本で対話、中国特使派遣、非常に手の打ち方が早い。こういう手の打ち方、敏速性はこれは評価すべきものはする筋もあるでしょうね。  ところが、この中に一つやっぱり忘れた国があるんじゃないでしょうか。ソ連ですね。ソ連に対してはどうですか。もし時間があれば訪ソする、あるいは何らかの特使なり派遣して誤解を解く、こういうような姿勢というものをいま考えていますでしょうか。
  38. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私たち日本及び日本人はソ連を敵視しているわけでもございません。いずれの国とも友好関係を結んでいきたいというのがわれわれの基本的立場でございます。しかし、その中にありましても、われわれはアメリカとの関係を基軸にして自由世界との連帯関係というものを尊重しながら、その上に立ってソ連等の国とも友好関係を打開していきたい、そういう基本的立場を持っております。したがいまして、ソ連に対しても機会あるごとにそういうチャンスを見つけて、友好を打開する努力を継続していきたいと思っております。  ただ、ソ連との間におきましては、領土問題という大問題がございまして、この領土問題を回避するわけにはいかない民族感情が厳としてあります。したがいまして、政府といたしましてもこの民族感情というものを尊重して、その上に立ってまずこれを打開する。そして、そのほかにも経済協力の問題もございましょうし、文化や科学技術の協力関係、人的往来等の問題もございますが、自由世界連帯というその基調の上に立ちつつも、二国間の問題で打開すべきもの、あるいは解決に向かって進むべきもの等については、やはりわれわれは努力をしてまいるべきものであると考えております。
  39. 黒柳明

    黒柳明君 ですから、総理自身の時間があれば訪ソという考えはいま現在お持ち合わせですか。それから、いま当然客観的に見てぎくしゃくしている。これについて日中、日韓、日米の首脳会談の方向だと思いますな、いろいろなことを含めて。と同じようなものをソ連に対してさらに突っ込んだ対話の姿勢をとる、特使でも派遣して、そういう考えはありませんか。その他でいろんなところでパイプつないでやっている、これはもう当然です、正式に国交があるわけですからね。そうじゃなくて、総理自身、あるいは政府として考えがあるか。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日ソ間を打開したいという念願を持っておることは私はしばしばここで申し上げましたが、やはり物には順序もあり、あるいは相互性という問題が国際外交の上においては重要であります。日本からは総理大臣がたしか三遍ぐらいソ連に行っておりますし、外務大臣も五人ぐらいは行っているのではないかと思いますが、最近ソ連側からは外務大臣はいらっしゃらない。日ソ外相会議という定期的な考え方がありましたが、今度はソ連がいらっしゃる番であります。そういう意味においても、相互性というものを考えてみると、これはグロムイコさんにぜひ日本へ来てもらいたい。  それから、総理大臣が大使を謁見あるいはあいさつを受けます。私は総理大臣に就任以来、アメリカあるいはそのほか必要な国に対しては表敬を受けてきております。ソ連も比牧的早い時期に私はソ連大使の表敬を受けております。しかし、ソ連においてはわが高島大使がモスコーへ参りましても、まだ総理大臣正式に表敬を受ける機会が与えられていない。こういういろいろな点を考えてみますと、ぜひとも相互性を尊重していただきたい、日本には日本のメンツもありますし、日本国家としてのプライドがあります。そういう点についてもソ連側がこの際考えていただく必要があるのではないか。われわれは友好を求めるがゆえに、そういう考えをここで申し上げたいと思うのであります。
  41. 黒柳明

    黒柳明君 昨日、ワインバーガー的防長官が発表したソ連のいわゆる脅威と言った方がいいですかな、脅威ということそのものずばりじゃないが、あの報告を見て総理はどういう見解を改めてお持ちになりましたですか。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ある程度は新聞その他を通じましてわれわれは勉強したところでございますが、われわれが勉強していたところよりは局所局所においてはさらに強化されている面があるなと、これはアメリカ側の情報でございますから、それが真実であるかどうかはまだわれわれが 確認したところではございませんけれども、大体あれに近い線があるのではないかという想像はいたしました。
  43. 黒柳明

    黒柳明君 きのう外務大臣は脅威というような発言をしましたが、総理大臣はどうですか。やっぱり脅威の度は増したというお感じを受けてあれを聞きましたか、読みましたか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままで大体ソ連の軍事力の三分の一を極東に展開する、そういう立場をとっておられるように聞いておりましたが、あの報告を見てみますと大体その線をやっているのかなと、いままでわれわれが考えた以上に極東に対して軍事力強化については熱心だなと、そういう感想を持ちました。
  45. 黒柳明

    黒柳明君 それでは具体的な問題に入っていきたいと思うんですけれども、衆議院でも何か自衛隊に不穏な動きがあったとかなかったとか、こんなあれがありまして、私は真偽のほどは関知するところじゃありません。しかしながら、私はきょうは具体的な材料をもとにしまして、中曽根総理がよくおっしゃいます議会制民主主義、一議員であってもその議員の剥奪なんていうことはうかうかできるものじゃないんだと、こういうことを強調し続けてきた国会でございますけれども、ところが、その議会制民主主義が根底から危うくなっている、されている、こういう問題を取り上げたいと、こう思います。  その前に、総理軍事力、まあいま防衛力といいますか、それと政党との関係、これについてはどう思いますか。戦中は当然違います。戦前、戦後、形態は違いますから一つの線では結びつきませんけれども、戦前におきましてもやっぱり軍事が政治に介入してきて、軍国主義の台頭、そして日本の滅亡、こういうことがあったわけでありますが、議会制民主主義を当然守らなきゃならない今日、防衛力、軍事力と政党との関係、どうあるべきでしょうか。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦前におきましては統帥権が強大になりまして、政治を押しつぶしてああいう戦争の悲劇を生んだと思います。そういう面もあると思っております。  そこで、戦後におきましては、新しい憲法のもとに自衛隊、防衛庁に対するいわゆる文民優位という思想が徹底してきて、そのもとにいま運用が行われていると思います。いわゆる文民優位という考えは、これは政治が防衛に優先する、具体的に政治とは何ぞやと言えば、政党なり、国会なり、政府全体という意味になると思います。そういう意味におきまして、政治を構成している政党というものは非常に重要な機能を持っていると思っております。
  47. 黒柳明

    黒柳明君 議会政治の今日、たとえば自衛隊が政党を敵視して、そのための警備を計画しているとか、あるいはみずからの武力制圧下に置くとか、こんなことは間違ってもないと私は信じます。また、こんなことがあったらそれこそ大変である、と同時に、その責任は厳に問われなければならない、こう思うんですが、総理、いかがでしょう。
  48. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原則的にはそのとおりであると思います。ただ、暴力過激集団という問題とか、あるいは破壊活動防止法の対象であるとかというような類に類似するような、そういうようなものにつきましては、やはり自分たちを防衛していく、施設、区域あるいは機能を守っていくために必要最小限の処置は講ずる必要があると思います。  かつて三島君が防衛庁の東部部隊に乱入いたしましたが、あのとき非常に世の厳しい批判を受けましたのは、自衛隊がなぜ自分でああいうものを防止し得なかったかという議論でございました。あのときには、しかし一応警察を表に立てて、自衛隊は後詰めでそれを、さらに警察を守る、そういう形を一応とったのでございますけれども、その初動動作において自衛隊の動きが遅かったのではないか、そういう批判も受けました。  そういういろいろな点、あるいは基地闘争等々の例も見ますと、もしその施設や区域に乱入されるというようなことがあってはならないのでありまして、そういう点については警察とも協力して、そういうことを未然に防止するということも自衛隊、あるいは官庁としての存在を守っていくために必要なことではないか。ただし、その場合には必要最小限の行為でなければならないと思っております。
  49. 黒柳明

    黒柳明君 私は政党に限定して、それでその政党も複数、幾つかの政党と、それじゃこういう言い方にしましょう。そうすると、原則どころか、そんなことは絶対あっちゃいけない、こういうふうに思いますわ。どうでしょう。
  50. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 普通に運営され、また国民から支持されている政党に対して、これを敵視するような考えはいけないと思います。
  51. 黒柳明

    黒柳明君 防衛庁、年度の防衛及び警備に関する計画、これは年防と、こう略している、こう聞いておりますが、その年防作成の法的根拠。これは長官ですか、防衛局長ですか。
  52. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 年度の防衛、警備に関する計画、略して年防と称しておりますが、この年防といいますのは、この計画の対象とする年度におきまして直接侵略、あるいは間接侵略その他治安上重大な事態が発生した場合に、自衛隊がどう対処するかということを定めたものがこの年防というものでございまして、この年防の製作の根拠というのは、防衛庁設置法第二十六条によりまして、まず統合幕僚会議の所掌事務として、統合年度防衛計画というものを作成するということが決められております。また防衛庁設置法の第二十三条におきまして、各幕僚監部の所掌事務として各自衛隊の年度の防衛計画というものを作成するというふうに決められて、これは毎年作成されております。
  53. 黒柳明

    黒柳明君 いま若干触れましたけれども、その手続ないしはその製作者等について、もうちょっと具体的に御説明いただけますか。
  54. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) この年防というのは、いろいろなレベルでつくられますが、まず一番もとになるいわゆる統合年度防衛計画というのは、統合幕僚会議が作成いたしまして長官の承認を受ける、そうしてその長官の承認を受けたものが各幕僚長に示されます。その統合年度防衛計画を示された各幕僚長は、それぞれの自衛隊の年度防衛計画というものを作成する。そうしてその幕僚長が作成した年度防衛計画というものは、またこれも長官の承認を得まして、長官直轄部隊の主要なもの、たとえば陸で言えば各方面総監部、海上自衛隊で言えば自衛艦隊司令部、あるいは航空総隊司令部、その他主要の部隊、いわゆるメジャーコマンドに示されまして、それぞれがまたその管轄の年度防衛計画を作成する。そうしてそのメジャーコマンドでつくられた防衛計画というものはさらにまた下級の部隊に示されていく。そうしてそれぞれのレベルでつくられました年度の防衛計画はその直近上位の指揮関係にある上級部隊の承認あるいは報告をする、こういうたてまえになっております。
  55. 黒柳明

    黒柳明君 約して言うと、長官が当然オーソライズしたものである、これは集約して言えるかと思うんです。  その年防の中に、治安維持上対処すべき事態とか、区分とか、要綱とかということがあるんですが、これはどういう考えなんでしょうか。
  56. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) まず、対処すべき事態といいますのは、われわれがいざというときに対処すべき事態というのは非常に広範囲にわたります。大は直接侵略の武力侵攻の規模の大きいものから小さいものまで、あるいは間接侵略、外国の教唆扇動による内乱、騒擾的なもの、あるいはまた外国の教唆扇動がないにしても、それに匹敵するような大規模な治安上重大な事態というふうないろいろなレベルがございます。そうしたものをいわゆる対処すべき事態というふうに区分しております。  それからまた対処区分というのは、それぞれの事態に応じた自衛隊の出動のあり方というのはおのずから変わってまいりますので、それぞれのそ の対処すべき事態に応じた部隊の運用あるいは移動、展開、そうした細かなことの基本的なものを、これは部隊によっての、年防のレベルによって書いてある何といいますか、程度は違いますけれども、そういったものをいわゆるその対処区分というふうに称しております。
  57. 黒柳明

    黒柳明君 いまおっしゃったところで、対象が国内勢力と国外勢力に分かれている、私はこういうふうに認識しておりますが、それも間違いありませんですね。
  58. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) この防衛及び警備に関する計画の中には、いわゆる情勢に関するもの、それからそれぞれの情勢に応じて先ほど申し上げましたような事態に応じた自衛隊の対処の仕方、こうしたものが示されてありますので、その情勢の分野の中に、いわゆる国外、国内のそれぞれの勢力、たとえば国外で言えば、わが国周辺の国々の防衛力、軍事力がどうなっているか、あるいは米軍の展開はどうなっているかというふうなことを書いてありますし、国内勢力については、国内にいろいろな、いざというときにどういう勢力関係になっているかということをあらかじめ私ども分析する必要がありますので、そういったもののデータは載っております。
  59. 黒柳明

    黒柳明君 そこで、私は国外、外国からの侵略じゃなくて、国内勢力、いわゆる国内治安上の問題、ここの項目を取り上げたいと思いますけれども、その項目、自衛隊が対処する特に留意すべき行動の中に、基地施設に対するゲリラ攻撃及び部隊に対する謀略活動、こんなようなものについての諸団体、これに対処する、こういう項目がありますですね。
  60. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) これも先ほど申し上げたような各部隊における防衛警備計画によってその表現の仕方というのは必ずしも一致しておりませんが、いわゆる国内事態という場合に限定して申し上げれば、自衛隊の基地内、あるいは駐屯地に乱入する、あるいは武器を奪取するというふうな動きがあった場合に、どう対処するかということも当然対処すべき事態として記してあります。
  61. 黒柳明

    黒柳明君 ゲリラ、謀略、そしていまちょっと局長が触れましたが、武器、車両、弾薬等の奪取、あるいは隊員、家族に対する心理的圧迫、こういうものについて行動を起こす可能性がある団体、まあ団体であるのか分子であるのか、これはわかりません。それについて自衛隊が対処する、そういう計画ですね。これはどういうもの——さっき総理もちょっと触れましたけれども、どういうものを想定して、団体ですな、あるいは個人かわかりませんな、グループかわかりませんね、分子かわかりません、こういうものを書いているんですか。
  62. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) これはその起こり得べき事態というものを一般的に設想して書いてあるわけでございまして、どのグループがどういうことをやるということをあらかじめ決めたものでございませんので、一概にどういうグループが何をするということを決めてかかっているわけではございません。情勢の分析は分析、それから対処すべき事態は対処すべき事態というふうに、一応の区分した形で私どもの計画はつくっておるということでございます。
  63. 黒柳明

    黒柳明君 その対象に幾つかの複数の政党がなっているということは、これは考えられませんでしょうな、局長
  64. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) これも先ほど来申し上げておりますが、この年防には、中央レベルでつくっている年防と、それから末端の各基地、部隊における年防と、いろんなレベルのものがございますけれども、少なくも中央レベルでつくっている年防あるいは長官承認、幕僚長の承認に上がってくるような文書には、そういったものは私の知っている限りないはずでございます。
  65. 黒柳明

    黒柳明君 ところが、私の知っている限りなんですが、ここにその年防があるんです。この中に複数政党の名前が含まれている。だから私の知っている限り——それは防衛局長だって二、三年で任期がかわりますわな、だけれども、行政はいつの世にも連続性があると、長官だって同じ立場だと思いますね。知らない分野もそれはあるかわかりませんよ、一から百まで、千まで全部知っていなきゃならないことはないと、ただしやっぱりその長につけば、これは知らなきゃならない。ましてゲリラ活動、謀略活動、武器奪取、こんなものをやる可能性がある、その対象としてさっき破防法云々おっしゃったから、これはもう大体皆さんわかっているんでしょうから、ある政党と。そうじゃなくて複数政党がここで明記されている。こんなばかなことがあっていいんでしょうか。局長どうでしょう、そんなことはないと、局長の知っている限りは。済みません、もう一回。
  66. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 大体私の記憶している限り、この年防を作成する部隊の数というのは三百数十カ所という部隊がつくると、陸、海、空合わせまして。このうち中央レベルでもってわれわれがチェックし得る年防、そういったものには、少なくてもそういうものは絶対にございません。
  67. 黒柳明

    黒柳明君 ただ中央、地方ということは、これはさっき言った製作者、あるいは製作手続で、これは言えない問題であろうことは間違いありません。そこがいま焦点じゃありません。  それじゃひとつこの年防を出していただけませんか。私のはこれは入っているんです。入っているから言っているわけであって、ひとつ局長、年防を出していただければ、そこに入っているかどうかはっきりするわけでありまして、いかがでしょう。
  68. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 年度の防衛計画というのは、有事その他における自衛隊の対処の仕方を書いたいわば戦争計画といいますか、ウォープランの一種でございまして、われわれ自衛隊として最も秘匿度の高いといいますか、公表すべき性格でない機密度の高い文書でございます。また、こういうものを出すということは、いわば私どもの手のうちを見せるということにもなりかねませんので、御容赦をいただきたいと思います。
  69. 黒柳明

    黒柳明君 だから、きょうもマスコミで報道されていましたな、統幕議長がやめるときに捨てぜりふを残していった。またこれ物議を醸し出しますよ。おれたちは政治にはコントロールされるけれども、内局にはコントロールされている覚えはないと、こんな何かこれから尾を引くような発言をしております。出さないから、そこで政党に対する、総理が最も大切だというこの議員の集団に対して、おまえたちは基地を襲撃する、基地に対してゲリラ行動を起こす、自衛隊の基地に対して武器の奪取を図る、そういうものとして定義づけられる、そういう政党の名前が挙がっていたらこれはどんなことになりますか。守秘義務、これはロッキードのとき盛んに言われましたね。守秘義務と国政調査権の範囲ですよ、これこそ。あのときはケース・バイ・ケースということも考えられるという発言もあったんです、最終的には。そこで判断しなきゃならないと、個々に。どうですか、総理。聞くところによるといま出さないという最高機密のマル秘、極秘、機密、八万九千件ありますよ、八万九千件、防衛庁には。その八万九千分の一です、との防衛計画というのは。確かに極秘でしょう、私のところにもみんな極秘と押してありますから、天地に全部極秘、極秘と、極秘でしょう。八万九千分の一、この秘密をここで明らかにしてもらうことと、それが明らかにならなければ、政党が自衛隊の、事もあろうにゲリラ行動対象にされる、基地に乗り込んで武器奪取の対象にされる、謀略活動をやっている、こういう見方をされる。それが防衛計画警備大綱の中にあるんだ。こんなことは許されないんじゃないですか。どうですか、この国政調査権と守秘義務との関連について、いまのこの具体的な問題について、総理
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは国政調査権と、それから官公庁が秘密を守るというそちらとの法益と申しますか、どちらが国益につながるか、国政調査権を優先させて表に出す方が国益につながるか、あるいは官庁の機密を守っていく方が国家の利益につながるか、どちらが重いか、ど ちらがより重要であるかという判定の問題ではないかと思います。詳細は法制局長官から答弁いたさせます。
  71. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 先ほど御質問の中にもありましたように、昭和四十九年当時、国政調査権と守秘義務との関係についていろいろ御論議がございまして、御承知だと思いますが、三木総理から政府の統一見解を申し上げているわけであります。その最後のくだりとして「守秘義務によってまもられるべき公益と国政調査権の行使によって得られるべき公益とを個々の事案ごとに比較衡量することにより決定されるべきものと考える。」と、しからばその判断ということになるわけでございますが、その点につきましても「個々の事案について右の判断をする場合において、国会と政府との見解が異なる場合が時に生ずることは避け得ないところであろうが、政府としては、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考える。」ということになっております。さらにその点について御質問がありまして、続けて三木総理は、「政府の気持ちは、可能な限り最大限度に協力をするという態度をあらわしておるのですが、しかし、いま申したように、国政調査権と守秘義務との間にやはり衝突が起こる場合もあり得るわけです。そのときの判断というものは、当然に政府行政責任としてなければならぬので、これはやはり個々の事案について比較検討するよりほかにはないし、そのことは、国会の、またその判断に対して御批判もあろうし、世論もあるわけですから、そこを接点として、そうしてその問題について、いろいろな国会の論議や、あるいは世論の批判を受けることになるわけでありまして、あらかじめもうこちらが絶対だということは言えないと思うのでございます。」と、そういうふうに結んでおります。
  72. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。そのとおりです。  さあ総理、いまのこの具体的事案についてどう判断しますか。どっちを重きに置かなきゃならないですか。最大限協力すると言いながら、やっぱり行政の責任の立場もある。やっぱり個々の事案で検討するよりほかないというケースですね。さあ、政党がそういうゲリラ活動の対象として見られているという防衛計画が政府部内にある、防衛庁内に。それが秘密ということで隠していいのか。大変なことですよ、各政党とも。どこの政党なんだ、それじゃ。どこの政党が基地に入って自衛隊の武器を持ってくるのか。僕は武器を欲しくありませんからね、大変なことです、これ、その秘密というか。それともう一つ、それを国政調査権で明らかにしてはっきりさせるというこの重要性、いまのケースにどちらが大切ですか、総理
  73. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 具体的にその中身がよくわかりませんと、判断をする資料は不十分であると思います。しかし、まず申し上げたいのは、そういう下級の部隊等におきまして行き過ぎがもしあったとすれば、これは是正しなければならぬと思います。  それから第二番目に、この具体的問題に関する判断はどうであるかという点につきまして、いま初めて先生からお聞きしたわけでございますから、これはよく資料を調べてみませんと、にわかにここでは断定できないと思います。
  74. 黒柳明

    黒柳明君 資料はここにあるからお見せするんですけれども、要点は一つです、いま言いましたように。政党がゲリラ活動、武器奪取、謀略活動、自衛隊に対しての、そういう団体と見られているというものがある、それを極秘資料だから出せない、出せなければ私の持っているのは対照、突き合わせができない、どちらを優先しますかと、この一点です。調べてみるもみないもないんです。それだけです、結論は。どうですか。
  75. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 直接自衛隊を統括しておりまする防衛庁長官からまず答弁させます。
  76. 黒柳明

    黒柳明君 ちょっと待ってください——ちょっと待って。いい、またいま順にやっていきますから。  総理だって最高責任者ですよ、自衛隊のね。最高責任者ですよ、いいですか。  三矢研究、これはどういう事態だったですかね。昭和四十年政府が統一見解を出しましたね、三矢研究。
  77. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 突然のお尋ねでございますので三矢研究の詳しい内容は存じておりませんが、多分これは昭和三十八年度に統幕学校の学生が研究の中身として各種の事態を設想し、それに対する部隊の運用を研究したと。その中には若干超法規的なこと、あるいはいまの政策に逸脱したようなことが入っておった。しかし、これはあくまでも幕僚の研究のものであったというふうに理解しています。
  78. 黒柳明

    黒柳明君 そうですね。あくまでも自衛隊の中央からの指示じゃないです。統幕会議の事務局長を中心にして有志がやった、しかも図上の作戦であります。それがあの内部告発によって大問題になった。  これはそうじゃないですよ。長官がオーソライズされたものですから、その中にあるわけですから。実際の行動部隊がこれを受けとめているわけですから。図上作戦だって、ごく一部の有志の計画だってあれだけ問題になったわけですよ。今度のは全く本庁で指示した企画の中にあり、しかも実行部隊がそれを受けとめて、複数の政党を対象にしていると。これは全然生活は違いますよ。総理、どうですか、この点については。
  79. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいまの御質問に答弁さしていただく前に、私どもの持っております資料の公開ないしは提出の問題について一言申し上げさしていただきたいと存じます。  防衛庁といたしましては、国会での御審議に当たりまして、でき得る限り私どもといたしまして持っておりまする資料その他をお届けをさしていただき、またここの席で公開もさしていただいておるわけでございますが、しかしながら、防衛庁の職責上どうしてもこれを公にできないという資料も持ち合わせておるということは御理解をいただきたいと存じます。今後ともその意味におきまして、委員会審議についてはでき得る限りの努力を続けていくことをまずもって申し上げさしていただきたいと存じます。  それから、年防につきましてでございますが、年防につきましては、私の防衛庁長官としての責任において、先ほど政府委員から答弁いたさせましたように、防衛庁設置法に基づいて、これに根拠規定を持って行っておることでございまして、ただいまここで御論議があるような事柄にして、万々そういうことはまずまずないと私は確信をいたしております。しかし、どういう種類のものがどういう形になっておるか、これはもう少し審議を続けてみていただいた時点で、あるいは私が改めて御答弁さしていただくことになろうかと存じます。
  80. 黒柳明

    黒柳明君 私は、これだけの重大——資料がありますからいつでも見せますよ。だけれども、これだけの問題を提起して資料が出てこない。私、これ見せたってまた同じ答弁が返ってくるでしょう。調査します、そんな簡単なものじゃないですな。ともかく資料が出てくれば突き合わせできます。どうですか。資料を出さなかったらこれ以上審議は進みませんわ。
  81. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 年防に関しましては、これは極秘の文書でもございまして、どうしてもこれを資料としてここへ提出することは御勘弁願いたいと存じます。
  82. 黒柳明

    黒柳明君 だから何回も言うように、その極秘の資料の中に、総理が——総理だけじゃないですよ、もう議会制民主主義、政党政治を守る根幹である政党——一議員じゃないですよ、総理、一議員だってその議席を剥奪することはとんでもないと、こういうふうに盛んに言い続けてきているじゃないですか、田中総理の。その集団ですよ、政党というのは。何十人、何百人集まっているわけだ。それを事もあろうに国民予算で、税金で持っている武器を使って、それで鎮圧しよう、おまえたちはゲリラ行動を起こすだろう、武器を奪取するだろう、そういう可能性の相手として防衛 計画、整備計画に入れている。こんなとんでもない話があるんでしょう。これに対して資料が出てこなかったらどうしようもないじゃないですか。だめですよ。これ以上審議なんかできませんよ。そんな極秘なんてとんでもない話ですよ。
  83. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  84. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  85. 黒柳明

    黒柳明君 極秘……、これは非常にいまの守秘義務と国政調査権の関係、大問題だと思います、これだけ具体的事案を出したわけですから。ひとつどうですか、公開しなくても、ここに持ってきて長官にそれ確認させるということはできませんかな、防衛局長。それもやっぱりだめですかな、同じことでしょうか。
  86. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) まず最初に、中央レベルにおきます年防にはそういった表現はないと。それからもう一件、すぐ持ってきてとおっしゃいますが、これまた先ほど申し上げましたように、全国に三百数十件の年防があるわけでございまして、果たしてそのどれにそういうものがあるのか、いますぐ持ってこいと言われてもちょっと当惑をいたしますが。
  87. 黒柳明

    黒柳明君 長官、これちょっと見てください。見た方がいいということがあるからね、ちょっとこれ見てください。(資料を示す)私、この資料を長官にいま確認してもらいました。間違いなくこの中には複数の政党名が挙がっております。長官、いかがでしょう。
  88. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま委員からのお呼び出しをいただきまして、確かにこの場で資料としての写真版になっておりまするものの中に政党名のあることは拝見をいたしました。ただ問題は、私にとりましては、その資料が一体どういう形の資料であるかというのは、写真を拝見しただけでございまして、何ともこれは確認はできません。以上でございます。
  89. 黒柳明

    黒柳明君 複数政党でありますね。
  90. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 政党名は確認さしていただきました。
  91. 黒柳明

    黒柳明君 だから、複数ですねということ、複数ですねと念を押しているんですよ。
  92. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ちょっとの時間だけ拝見さしていただいたんでございまして、政党の数が幾つかとかそういうことに関しましては私はちょっといま直ちにはあれですが、御指摘のとおりでございまして、政党名があることは確認さしていただきました。
  93. 黒柳明

    黒柳明君 じゃ、ごゆっくりどうぞもう一回よく見てください。複数ですね。
  94. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 複数政党名を拝見をさしていただきました。
  95. 黒柳明

    黒柳明君 複数政党名が、総理、確認されていると、こういうことであります。いいですね。  そうすると、これどうでしょうか、責任問題はこれどうなるでしょうかね、責任問題は。
  96. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) この問題につきましては、一つは機密漏洩の問題にも絡むかもしれませんが、いま委員のお手元にございます文書が明らかに年防のどのところでつくられた年防かわかりませんが、年防であるということになれば、責任は当然そのような問題についての責任として存在いたすと、こう考えます。
  97. 黒柳明

    黒柳明君 どことかこことかじゃなくて、長官の指示でつくられたものだから冒頭これ言ったわけですよ。その責任というのはどこここじゃないですよ。年防の手順というのは、やっぱりすうっと防衛庁長官のこう系統でつくられるものですから、どこここという問題じゃないんじゃないでしょうかね、確認していただいたわけですから。その責任が当然これ出てくるわけです。どうですか、これは。
  98. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 防衛庁長官の持っております職責をそれぞれ部隊に分掌さしておりますが、そういう問題は幾つかございます。年防もまさにそういう形で、私が私の責任において防衛庁長官として中央の統幕中心につくります年防につきましては私が全部所管をいたしておりますが、さらに先ほど政府委員から答弁さしていただきましたように、各それぞれの部隊に参りますに当たって上級の責任者がそれぞれに存在する、こういうかっこうで年防というものをつくっておるわけでございます。
  99. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、下級の基地——下級という言葉をさっき使ったから、どこかの基地でやっていれば長官の責任じゃないという断定の答弁ですか。そんなことが許されますか。
  100. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) そうは答弁をいたしておりません。
  101. 黒柳明

    黒柳明君 それだから、そういう問題があれば長官の責任でしょうと念を押しているわけですよ。
  102. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) そういう事実がございまして、調査の結果によるとは思いますが、存在いたしますと私の責任でございます。
  103. 黒柳明

    黒柳明君 だから、調査するまでもなく、ここにあるのを、現物を見せたわけでしょう。この問題で論議しているのです。この真偽のほどをどうかといったら——現物なんですよ、あなた方は近代科学というのは信用しないんですか。写真に撮ったからこれだけのものがある。これは専門家じゃなければわからないでしょう。現物なんです、これ、全部。済みませんな、こっちじゃない、後ろに大臣はいなかった。現物ですよ。(「写真の現物だ」と呼ぶ者あり)そう、おっしゃるとおり、写真の現物、写したもの。写真というのは、これは修整もできるけれども、修整していません。どうですか、総理、当然責任問題が発生しますよ、それが事実だったら。事実なんです。
  104. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) まことに恐縮でございますが、その事実の有無を含めまして調査をさしていただきたいと存じます。
  105. 黒柳明

    黒柳明君 だって、いま複数政党が入っていますという確認をしたじゃないですか。だからそれを言っているんですよ。事実があるんですから、だから責任はどうなんですか。
  106. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私が確認をさしていただきましたのは、先生のお手元の資料について確認をさせていただいたわけでございます。
  107. 黒柳明

    黒柳明君 当然そうじゃないですか。お手元にある資料ですよ。お手元を離れてどこかに資料だけふわふわ浮いていやしません。表紙もある、その次も一ページ、二ページ、三ページ、四ページ、五ページとあると、いまこう説明したじゃないですか。ちゃんと具体的に説明したじゃないですか。これが複数政党入っているというから、責任は逃れられるわけのことじゃないじゃないですか。こんなことがあっちゃいけないと、こんなことはあり得ないというここまで来たんでしょう。そして確認したんでしょう、お手元の資料。あったと確認したんでしょう。あと責任問題がここにつかなきゃおかしいじゃないですか。
  108. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) いずれにいたしましても、年防の持っておりまする性格から申しまして、調査をいたしますことは決してそれほど時間を要するものではなく、またむずかしいものでもございません、困難でもございませんので、しばらく時間をちょうだいし、しばらくというのは何もこの場でしばらくというわけにはちょっといかぬかもしれませんが、時間をちょうだいいたしまして調査をさしていただきたいと、こう考えております。
  109. 黒柳明

    黒柳明君 何回も言いますように、現物ここにあるんです。これを否定するなんというわけにいきません。それを持って私は言っているわけです、きちっと。調査活動をしているわけです。調査させることはやぶさかじゃありません、私は。だけど、いまここに現物があるものについて確認をしてもらって、それで何も責任回避するようなことについては私はどうも納得できない。審議できませんよ、これじゃ、同じ答弁を繰り返したんじゃ。
  110. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 私といたしましては、同じ答弁を繰り返すようで恐縮でございますが、年防の持っておりまする性格から申しましても事柄きわめて重大なものも含んでおると思います。したがいまして、年防についてこれを調査をして 先生の御指摘のような事実があるかないか、これをいたさしていただきたいと、こう考えます。
  111. 黒柳明

    黒柳明君 確か、重要と言えば、核攻撃に対する対処の仕方なんて重要な問題が出ています。確か、これは重要だと思いますね。重要だからいまここで取り上げて、重要でなきゃ取り上げないですよ、私の立場から言うと。これは理論整然なのは私の方なんですね、どう考えたって。委員長、同じ答弁がこれ操り返しちゃいます。私は、時間をかして調査する、これはやぶさかじゃないんです。じゃ逆に言ったら、これがにせものだという証明できますか、いますぐ。できないじゃないですか。してください、これはにせものであるという証明を。当然できません、そんなことは。そうでしょう。だから時間かしてくださいでしょう。これだけのものをここに持ってきているのに、にせものということも断定できない。調査する、調査する——そこに複数政党があるという確認もした。あとそうすれば責任問題じゃないですか。もう理論整然としていますよ、私の発言は。どうしようもない、これ以上、同じ答弁じゃ審議は続かない。
  112. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  113. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  114. 黒柳明

    黒柳明君 これは本参議院予算委員会の悲しさでありまして、衆議院の場合には空転なんということがあって、これはもう野党じゃなくて与党政府予算の成立で非常に苦境に立たされるんですが、参議院の場合にはこれはもう三十日以内に自動成立でございますので、一分たてばたつほど予算の自動成立にこちらが手をかすことになりますので、これが参議院の予算委員会の宿命であります。からといいまして、私はこれを納得したわけでも何でもありません。これだけの大問題、積み重ねて完全にこれは責任問題まで来たわけであります、総理、いいですか。ですから質問も保留します。と同時に、この問題のいまこの場での結論は、ひとつ長官調査してください。ただし時間は予算委員会終了まで。それともう一つ条件をつけます。そのときには責任まではっきり明確にして調査の結果を発表してください、いいですか。当然責任が伴うんですからね。これは事実なんですから。もう間違いなく事実ですから、そのときには責任の所在まではっきりして発表してください。
  115. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 調査をいたしまして善処をいたします。
  116. 黒柳明

    黒柳明君 責任の所在まできちっとしますね、善処なんてしゃれた言葉を使わないでください。責任はきちっとさせますね。
  117. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 調査をさしてみていただきたいと、まずお答えをさせていただきたいと思います。
  118. 黒柳明

    黒柳明君 だから、それで責任の所在もきちっと調べなさい。責任の所在をはっきりしなければだめですよ、調査に伴って。いま責任問題ですから、だから責任を調査して事実であると私断定しますから、そのときは責任問題を含めて。
  119. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 調査をさしていただきまして、その結果を見て対処をいたしたいと思います。
  120. 黒柳明

    黒柳明君 責任問題も含めて。何か防衛庁長官、おれが首になっちゃ困るななんというような心境で、どうも責任問題についておっしゃいませんな。もうこれだけの人が証明であります、テレビを通じまして、全部とは言いません、相当の国民皆さん方が聞いていらっしゃるわけで、調査してこれが事実だと、そうなったときの善処する、対処するということは、長官辞任するということも含めてだと、私はこう判断しています。ひとつ、大至急調査しまして、本委員会が終わるまでやってください。この問題は保留します、委員長、終わりじゃありません。  その次は労働省なんですけれども、問題を変えます。  これもまたちょっと労働大臣には申しわけないんですが、がたがたした問題なんですけれども、労働省から労働福祉事業団、雇用促進事業団に出向しまして、さらに公務員退職法にのっとらない公益法人、認可法人じゃないところに出向して、私に言わせるとやみ退職金を詐取しているというような事実があるんですが、まずこの概括、私が言うと今度時間がなくなってしまいますから、ひとつ労働省の方から御説明いただけますか。
  121. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 労働省の方から特殊法人でございます雇用促進事業団及び労働福祉事業団に出向いたしました職員が、さらに認可法人でございます身体障害者雇用促進協会あるいは中央職業能力開発協会等へ出向しておる者が現在五十二名おります。
  122. 黒柳明

    黒柳明君 その手順、仕組み。
  123. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 労働省から労働福祉事業団あるいは雇用促進事業団に対しまして、出向しております職員のうちから、労働省の行政上特に必要な業務を行う、あるいはまた国の業務を代行するきわめてそういう性格の強い身体障害者雇用促進協会あるいは中央職業能力開発協会、こういった団体に対しまして再出向、こういうような形で出向をしているということでございます。
  124. 黒柳明

    黒柳明君 その特殊法人である労働福祉事業団それから雇用促進事業団まではいいけれども、その後の再出向、これはだめですね、法的に。
  125. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 出向させることは任命権者がその必要に基づいて行うことはできるわけでございます。
  126. 黒柳明

    黒柳明君 いや、退職手当法にのっとって、公務員の。
  127. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 退職手当法の関係についていきますと、この再出向いたしております団体について退職金が通算をされる、こういう場合には手当法の規定の中の指定団体ということが必要であるわけでございますが、そういった点について、そういう指定団体にそれが手続上労働省の手続ミスもございまして、それが行われていないというようなこともございまして、便宜上そういうような措置をとったというようなことでございます。
  128. 黒柳明

    黒柳明君 全然わからない、官房長、いまの答弁。労働大臣、おかしいぞ、いまの答弁は。国家公務員等退職手当法にのっとって、二つのいま言った事業団から認可されないそこの公益法人に行って、退職金を通算されることは違法ですね。
  129. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 任命権者がそういう出向を命ずることは、これは人事上可能なことでございますけれども、そういう通算の関係につきましては、便宜上そういう手段をとりましたことについては、十分そういう手続面での検討を怠っておったと、こういう面で遺憾に存じます。
  130. 黒柳明

    黒柳明君 違法ですね。
  131. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 退職手当法上、若干問題があったと、こう思っております。
  132. 黒柳明

    黒柳明君 若干ですか、完全に違法じゃないですか。
  133. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) これにつきましては、そういう手続を経ていなかったという点において問題はあったと、こう思っております。
  134. 黒柳明

    黒柳明君 何を言っているのですか。この公務員退職手当法の中に再出向したところは合法と書いてありますか、書いてないじゃないですか。違法じゃないですか。ことに認可されていない公益法人に行っているじゃないか、出向で。そんなことをやったら、この退職手当法は何のために法として生きる。違法じゃないですか、完全に。
  135. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) たとえばこの再出向をいたしております身体障害者雇用促進協会、こういったものは法律に基づいて設立されております団体であり、かつまた、他の退職手当法上の規定に載っておりますような認可法人等と比べて、全く同様な性格を私どもとしては持っておると、こういうようなふうに思っておるわけでございますが、手当法のそういう政令上の規定を認めていただくという手続をしていなかったという面において問題があったと、こういうふうに考えております。
  136. 黒柳明

    黒柳明君 全然とんちんかんな答弁なんです。 この法律にのっとっていいですか、違法じゃないですか。ここにのっとった公益法人、それじゃ何のために手当法の公益法人を指定しているんですか。答弁が悪いからだ。同じ答弁幾らやったって同じじゃないですか。そんなことはもう明瞭ですよ。違法ではっきりしているじゃないですか、そんなことは。何回質問したって時間のロスだけですよ。
  137. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 先ほどから申し上げておりますように、そういう手続をしないままにしておりたところには問題がある。
  138. 黒柳明

    黒柳明君 問題があるということは、違法だということでしょう、と言うんだ。大臣、はっきり答えてくださいよ。
  139. 大野明

    国務大臣(大野明君) ただいま御指摘の法人でございますが、いずれにしても国の業務を代行するということでございまして、これらの業務をやはり完遂させることが国家のためであり、また国民のためであるというようなことで、遺憾なことではございますが、便宜上今日までそういうような事態で進んでおったということでございます。
  140. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、各省がこの国家公務員退職手当法施行令で指示されない公益法人に全部天下って、それでまた本省に戻ってきて退職金をもらってもいいんですな、いま大臣の、便宜上やっても。便宜上やってもいいんですな、それじゃ各省庁が全部。それじゃ何のためにこの法律があるのか。
  141. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この点につきましては、私ども労働省としてそういう手続きをやっておったことについては、検討いたしましてやはり問題があるということで、この点については速やかに関係各省とも協議をいたしましてしかるべく措置をとる必要があると、こう考えております。
  142. 黒柳明

    黒柳明君 問題があるから違法じゃないですか。大臣、その出向任命権者は大臣ですね。八年も前からこれについて政府に陳情している。われわれの公益法人も入れてくれと、退職金手当法の中に。政府はこれ入れてくれない。違法を知りつついままでずっとやってきた。大臣が任命権者だよ、出向の。大臣の責任じゃないですか。どうします、この責任。
  143. 大野明

    国務大臣(大野明君) ただいま黒柳先生おっしゃったのは、きっと認可法人へ出向さしたと、事業団というようなものをワンクッション使って出向さしたと。そこから先は私が任命権者ではございません。
  144. 黒柳明

    黒柳明君 事業団の出向を任命して、そこから自動的に八年間もその不法行為やらしていた。それは大臣が判こを押していたんじゃないですか。それもずっと七年も八年も労働省は知っていてやっていたんですよ。
  145. 大野明

    国務大臣(大野明君) 事業団への出向につきましては私が任命権者でございますが、そこから先は先ほど申し上げましたように事業団の理事長が任命権者でございまして、それを八年間も前からやっておった、知っておるだろうと言われても、私もまだ大臣になって百日目ぐらいでございまして、そこから先の仕組みについてはちょっとわかりかねておりました。
  146. 黒柳明

    黒柳明君 これ見てください。ずっとこんなに多く、五十三年から代々代々こんなに多く出向している。
  147. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) こういう認可法人が設立をされました時期が五十一年あるいは五十二年、五十三年と、こんな時期でございまして、そういう設立の際のいろいろ設立の援助、指導、育成、そういった観点から、そういった問題について詳しい労働省の職員を手伝いさせる必要があると、こういうようなことで五十三年以降そういうような措置をとった者がおると、こういうことでございます。
  148. 黒柳明

    黒柳明君 そんなこと聞いているんじゃない。だから、違法をやっちゃいけない、そのとおりです、問題あります、違法ですといったのは、そんなのはもう前に終わっているのよ。一幕、幕はおりた。二幕目、大臣の出は二幕目です。  五十三年からこんなに多くやっているんじゃないですか。官房でやってきたんじゃないですか。行政は一貫している。大臣は出向命令者じゃないですか。その責任はどうなのかと言っているんですよ。違法を承知でいままで八年もやってきたんじゃないですか。
  149. 大野明

    国務大臣(大野明君) 大変遺憾なことでございますので、今後関係省庁と協議をいたしまして、公務員等の退職手当法につきましての取り扱い、善処さしていただきたいと思います。
  150. 黒柳明

    黒柳明君 そうなんですよ。私のストーリーには、この欄では大きい声を張り上げるなんて書いてないんです。いいですか。官房長が変なこと言っている。それは大臣を守ろうという気持ちはわかります。りっぱ。それだけは褒めておきますよ。ですけれども、この欄で私は大きい声でどなるなんてこと書いてない。スムーズにいくと書いてある。全面的に悪いじゃないですか、これは。それを認めれば、いまの大臣の答弁なんかそんなにかかる必要ないわけじゃないですか。官房長、もう一回ね、そうでございましたと言いなさいよ。
  151. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) しっかり答弁してください。
  152. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) そういう法律の面に照らして問題がございまして、この点について関係省庁ともよく協議をいたしまして処置をいたしたいと、こう思っております。
  153. 黒柳明

    黒柳明君 そうじゃないよ。法律に照らして悪うございましたでいいんじゃないですか。
  154. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) いろいろ問題がございました。
  155. 黒柳明

    黒柳明君 問題というのは、悪い、違法行為だ、こういうことです。もう大臣をこれ以上煩わせないで、忠臣の気持ちはわかります。だけれども、これは立法府じゃないですか。法律に照らして問題があるというのは悪いということです。それを冒頭に言えばそれでおしまいじゃないですか。悪いことを何も私それ以上突っ込むことはない。  そこで、会計検査院、この事実知っていますか。すぐ調査してください。
  156. 坂上剛之

    説明員(坂上剛之君) お答えいたします。  先ほど来お話のございました本件自体、これは一たん雇用促進事業団または労働福祉事業団に出向の上さらに補助団体である団体に出向しているという、この全貌については私ども今回初めて承知したような次第でございます。  本件自体につきましては、これは非常に会計検査の対象となるプロパーの問題と異なりまして、個々人のいわゆる退職金の額の算定、そういう問題がございまして、これは公務員の人事、給与、そういう面に通暁した人がこういうものの格づけをするということで非常に専門性の高い問題でございます。それで、私どももこの方面の勉強というのはまだ十分しておりません。  それから、加えて、この身分は民間人に一たんなられます。そこで、一般労働法規それから関係団体の諸規定、こういうものとのすり合わせというものも十分見る必要があるのではないかと、こういうふうに感ぜられます。  ただ、出向先の二つの事業団または団体は、政府出資団体あるいは補助金の交付を受けている先でございまして、私どもの検査をする対象でございますので、よく今後の検査を通じましてその合規性あるいは適合性について十分に検討いたしてみるつもりでございます。
  157. 黒柳明

    黒柳明君 法制局長官、違法な行政行為というのはこれは無効でしょう、当然。
  158. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 行政法学上は、違法だからといって当然に無効とは言えないと思います。瑕疵が非常に重大かつ明白であるという場合には無効になりますが、それ以外の場合には無効にはならないというのが一般の通説でございます。
  159. 黒柳明

    黒柳明君 いま完全に法的に違反して、それで退職金——確かに会計検査院が言うように、個人個人が行きたくて行ったんじゃないんですな、出向を命じられたんだから。民間に行っちゃった。 ところが、その退職金は通算される。給料もここに行くと一〇%ぐらいふえる。まあこれは大した問題じゃない。本来なら民間だから、国家公務員ではないんだから、退職金が通算されるわけないんですけど、通算される。これは大臣の責任なわけですね、当然ね。出向者個人の問題じゃない。だけど違法ならばやっぱり——そうなると、この前も文部省で不正経理がありましたな、五百六十万。あれは自分で使ったんじゃないけど、課長がこれは自分で弁償しましたな。これはどうですか。違法でわかったときには自分が、直接全部使ったんじゃない、課で使ったんだけど、自分が責任を負わされる。これは大変なことですよ。いまも、自分が行きたくて行ったんじゃない。だけど、そこで民間になったけど、国家公務員として退職金が通算されると、こういう問題ですね。ここではもう違法なんです、はっきり、退職金が通算されることは。だから、違法だからこれは通算いけないんだと思うけど、そうじゃないと言う。文部省の場合には自分で責任とったじゃないですか、自分の直接行為じゃないけれど。
  160. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 先ほどの答弁におきまして一番最初にお断りしたように、行政法学上はそういうことだと思います。この具体的な事件につきましては、私十分承知しておりませんけれども、退職手当の支給処分と申しますか、支給決定が行われたわけでございます。ところが、その支給決定が仮に通算すべきでない期間まで通算をしておれば、それは当然それについての返還の問題が起こるわけです。ところが、いま御指摘のように、御本人自体は何も、関係がないといいますか、責任はないというようなことになりますと、本人からそれを果たして取り得るかどうか。これは、先ほど会計検査院の方からいろいろ労働法上の問題があるというのも、恐らくそういうようなことを含めて言われたんじゃないかと思います。  ですから、仮に無効でないというだけでもって一切の問題が正当化されるというような意味で私申し上げたんじゃなくて、仮に違法であっても、それについての、金を取り返すとかいう問題になりますと、またいろいろ複雑な法律関係が生ずる、こういうことでございます。
  161. 黒柳明

    黒柳明君 文部省との関係どうですか、文部省との。
  162. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 文部省の事件は私十分承知しておりませんので、ここでお答えいたしかねます。
  163. 黒柳明

    黒柳明君 要するに、その課の予算がない。だから、飲み食いの予算も別の旅費で浮かして取って、それがわかっちゃった。それで、それを課で使ったんだけど、課長が責任持った、こういうことですよ。それだったって、やっぱり責任者は責任持つんですよ。自分で使ったんじゃない、課の人に、旅費で浮かしちゃって。あったじゃないですか。そんなことは国会でも問題になったじゃないですか。
  164. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) それは恐らく実際上の問題として、監督責任なりあるいは監督責任のある人たちが実際上の処理としてそういうことをやったので、法律的な処理ではないように私はいま伺いましたけれども。
  165. 黒柳明

    黒柳明君 すると労働大臣、まあいま全貌ははっきりしたとおりです。ただし大臣がここまで、出向任命者だったって、それが長い間——大臣はまだ三カ月だから知らない、まあ知らないということを是としましょう、そのとおりと認めましょう。ですけれども、仕組みの中においてはそれはやられてきたわけですから、だからやっぱりこの退職金が違法であるならば、この退職金問題もやっぱり問題になってくるわけです。それについても十分やっぱり会計検査院とよく相談して対処しませんと、この次は出向する人がいなくなっちゃいます、こんなものを、国会で取り上げられるような仕組みを労働省で七年も八年もやってれば。どうですかその点。
  166. 大野明

    国務大臣(大野明君) ただいま御指摘の点につきましては、すでに会計検査院からも先生聞き及んだわけでございますので、その他関係省庁とよく協議の上、この問題、善処いたすということを申し上げておきます。  また同時に、重ねて遺憾であったということも申し上げておきます。
  167. 黒柳明

    黒柳明君 在日米軍の基地の駐留費の分担金のことについて取り上げますが、施設庁長官、五十三年からの駐留費の経費の分担金の状況、最近は非常にふえているんですけれども、いわゆる思いやりですな、各年度の予算執行状況、またその運用状況、伸び率等について御説明いただけますか。
  168. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 五十三年度は労務費の一部負担だけでございましたので六十一億八千万、約六十二億でございます。それから五十四年度から提供施設の整備が加わりまして、これ、歳出ベースで申し上げますと百四十億二千四百万、先に提供施設の方の整備費の方につきましてずっと年度を追って申し上げますと、五十四年度、いま申し上げました百四十億二千四百万が、五十五年度二百二十六億九千九百万、前年度伸び比で言いますと六一・九%増、五十六年度二百七十六億四千万、対前年度比が二一・八%、五十七年度三百五十一億八千二百万、対前年度伸び比で言いますと二七・三、五十八年度は現在御審議いただいておるわけでございますが、四百三十九億一千二百万、伸び比で二四・八ということになっております。  なお労務費につきましては、先ほどの五十三年度が六十一億八千七百万、五十四年度が百三十九億六千四百万、これは伸び率で言いますと、倍数で二・三倍になっております。それから五十五年度が百四十七億二千九百万で、伸び率は五・五、五十六年度が百五十八億七千六百万で、伸び率七・八、五十七年度が百六十三億八千八百万で、伸び率三・二、五十八年度は御審議いただいておるわけですが、百六十八億九千五百万で、三・一%の伸びになっております。
  169. 黒柳明

    黒柳明君 いわゆるこの駐留費の分担金、五十四年から百億、それからいま五百億、一年ごとに大体百億ずつふえていますね。それで、五十三年までは新築がなかったのが五十四年から新築がふえ、五十六年から今度はオペレーション、作戦関係が出てきた。この思いやりといわゆる分担金についてどういう基本的な考えで臨まれているんでしょうか。
  170. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほど申し上げましたように、五十三年度から労務費、五十四年度からは施設もあわせまして負担をしてまいっておりますが、私どもは日米安保体制の効果的運用といった観点から、そのうちの一つの施策としまして、在日米軍の経費につきまして日本側もある程度負担をしていくということについて、これは日本側としても重要な政策であるというように考えております。そういう意味で毎年かなり、二〇%以上の伸びをこのところ数年にわたってお願いしてまいったわけでありますが、今後ともわが方の財政等あるいは社会情勢等、いろんな情勢をにらみながらできる限りの協力はしていくべきではないかというふうに考えております。
  171. 黒柳明

    黒柳明君 要するに、緊縮財政の中で、マイナス予算の中でこれだけが二〇%ですな、総理。まあこれから発展さしていきますけれども、この思いやり分担金というのは基本的にどういう考えでしょうか。異常な伸びなんです、これは。
  172. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) ただいま政府委員からも御答弁申し上げさしていただきましたように、私どもといたしましては日米安保体制の堅持を防衛の基本方針といたしておるわけでございます。したがって、在日米軍の駐留経費の負担については、地位協定の範囲内でできるだけの努力をいたしたいと、こう考えて今日に至っておるわけでございます。
  173. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、この思いやり分担金というのはいまの緊縮予算の中じゃ全く例外で、防衛費の突出のさらに上乗せした突出で、二〇%も今後いく可能性、ともかくつかみ取りで何でもやるんだと、こういう基本線ですか。
  174. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 米軍に対する施設、区 域の整備、提供に当たりましては、私どもといたしましてはその緊急度を勘案の上、個々の事例について判断をして、そしてその当該年次ごとの予算でこれを要求し、計上をしてきておるわけでございます。したがいまして、ただいまもその審議をいただいておるわけでございますけれども、私どものつくり上げました、ただいま答弁さしていただきましたような形で出さしていただいているものを、予算の形で国会で御審議を願って御承認をちょうだいした上で実施をすると、こういう形になっております。あくまでもそれぞれ個々の事例につきまして積み上げて、当該年次に要求をしていくと、こういう形をとらしていただいているわけでございます。
  175. 黒柳明

    黒柳明君 少なくとも総理福田内閣までは歯どめがあったわけです、大平外務大臣のころは。いわゆる代替——米軍基地の設備区域内においては代替の範囲を超えないと、AやA′ならいいけど、BもCも新築もつくっちゃいけないと、これで歯どめかけていたんですよ。ところがその歯どめなくなっちゃった。中曽根内閣からとは言いませんよ、五十四年から二〇%なんです、ずっと。これは必要に応じて、それじゃ何か必要なのか、緊急度に応じて、何が緊急なのか。ともかく基本的にはつかみ取りになっちゃった、歯どめが何にもなくていいのか、こういうことなんです。内閣として政府としてどういう基本的な姿勢を、これでいま打ち出して、もう歯どめは取っ払われた、こういう認識でいいんでしょうか。
  176. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は地位協定に基づく歯どめというものは、やはり厳然と存在しなけりゃいかぬと思っております。
  177. 黒柳明

    黒柳明君 だから、それはどういう歯どめかって言うんです、地位協定の歯どめというのは。地位協定はずっとあるわけですから、だから歯どめも何もなくなっちゃっているんですよ。どういう歯どめですか、地位協定に基づく歯どめというのは。
  178. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 地位協定の二十四条によって、提供施設の整備あるいは労務費の一部負担をしておるわけでございますが、まず根本的に地位協定による提供であり、あるいは労務費の一部負担であるということにおきまして、たとえば労務費につきましては現在負担しております項目以上の項目については負担できないという、これは地位協定上明白な歯どめになっております。  それから提供施設の整備の方につきましては、具体的なそういう意味での歯どめはございませんけれども、先ほど大臣からお答えいたしましたように、毎年慎重に米側との協議の上、個々に重要性を勘案し、わが方の財政事情、そのときの社会情勢等を勘案して決めていく、それを国会で御審議いただいて、全体の提供施設の整備を決めていただいておると、こういうことでございます。
  179. 黒柳明

    黒柳明君 だから、地位協定におけるというのは、これはやっぱり個々の施設であるとか区域、これはありますね。そうじゃなくて、私は予算、お金のことを言っているわけです。それについてはもう歯どめがあったのがなくなりましたねと、代替を超えちゃいけない、新築は、というようなことがあったんです、福田内閣までは。それが歯どめは取っ払われた。地位協定においてはありますよ、ある程度ですよ。額のことを言っているわけです、金額、分担金の。この歯どめがなくなったと言ってもう二〇%、二五%ふえる、こういう方針ですかといま言っているわけです。
  180. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。  黒柳委員御指摘のように、昭和四十八年に地位協定二十四条の解釈をめぐりましていろいろ御論議がありまして、代替関係の施設を新築改修を行う場合には、代替の範囲を超えることのないよう措置する所存でありますということで、政府見解が出ております。ただこれはその当時国会において御議論がありましたときにも、累次、当時大平大臣あるいは政府委員等から御答弁申し上げておりますし、またその後におきましても御答弁申し上げておりますが、この当時の大平大臣の答弁は、あくまでもいわゆる代替関係にある施設、区域の改修、改築という場合に代替の範囲を超えないように措置するということをお約束申し上げたわけでございまして、新規の施設、区域の提供でございますとか、既存の施設、区域内における別の目的のための新たな施設、区域の追加提供、こういうものにつきましてはあくまでも地位協定の解釈に従いまして行い得るということは政府が従来から申し上げているとおりでございまして、そういう意味におきまして歯どめがなくなったとか、あるいは歯どめが変わったとか、そういうことは毛頭ないというふうに考えております。
  181. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  182. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十八年度総予算三乗を議題とし、午前に引き続き黒柳明君の質疑を行います。黒柳君。
  183. 黒柳明

    黒柳明君 外交、防衛の問題でお尋ねしますが、衆議院予算委員会総理が同心円というような言葉をお使いになりまして、日米の防衛構想はその同心円上にあるもの、現実的な共通した部分も相当あると、日本列島防衛上同心円にある部分は協力するとか、この同心円という考え方はどんなことかお聞かせいただけますか。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) わが国の防衛は、憲法のもとに非核原則を護持いたしまして、専守防衛という考え方でやります。個別的自衛権という考えでやっておるわけでございますから、たとえば航空母艦とか、爆撃機とか、そういう他国に脅威を与えるような攻撃的兵器は持たないということになっております。そこで、日米安保条約を締結いたしましてわが国を防衛しているわけでございますが、日本原則として、日本列島の防衛、わが国の自国の防衛を中心に考えておりますから、これは盾であります。しかし、及ばざるところをアメリカに依存しております。これはやりの役目を果たすと。日本列島防衛を中心に考えてみますと、同心円の中の小さい方は日本の自衛隊の力になりますし、大きい方はアメリカ軍に依存すると。そういうことになりますので同心円と、そういうふうに申し上げた次第であります。
  185. 黒柳明

    黒柳明君 いまさらアメリカの世界戦略、戦術について私言う必要はないと思います、釈迦に説法かと思いますが。当然その考えは対ソ戦略でありますし、世界的には通常兵器を踏まえて核戦略構想でありますし、そうなると、円の中心というのはどうしても対ソ戦略構想、あるいは核を中心にした世界戦略構想、これはもう同心円の円の心棒になると、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) わが国は仮想敵国というものを持っておりませんし、ソ連が現に脅威であるとも考えてはおりません。脅威というのは、意思と能力が結びついたときに脅威が現実に発生いたしますが、いまはそういう状態ではまだないとわれわれは考えております。そういうような考えに立ちまして、ソ連というものを目当てにしてすべて物を考えているということではございません。しかし、現実問題として戦争を起こさせないために抑止力を必要と考えております。この抑止力による均衡、それによって戦争は回避されておると。この抑止力の中には核の力も含まれておるわけであります。アメリカの核の力に一般的は依存しておると、これも否定しているものではない。そういうような関係に立って、抑止力としての意味において、われわれはアメリカの核の傘に依存しているという点も否定しないということを申し上げる次第なのでございます。
  187. 黒柳明

    黒柳明君 アメリカの核の抑止力、日米安保による核の抑止力、これはどうでしょうか、評価は。最近は対ソ戦略を考えた場合に、抑止力がずうっと低下していると、これは客観的な評価ではないでしょうか。総理、いかがでしょう。
  188. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 核を含めまして、ある いは核と通常兵器と言ってよろしいかもしれませんが、確かに西側、アメリカを含めて西側諸国はここ数年、必ずしも防衛力整備につきましては、ソビエトロシアが行ったほど努力といいますか、進展はいたしておりませんでしたが、その間確かにソビエトロシアにおきまする——失礼しました、ソビエトの軍事力は量、質ともに相当なものがございまして、このままこれを放置すれば、あるいは西側を凌駕するかもしれないというのがいろいろな分野であらわれてきておると思います。したがって、抑止力の信頼性を取り戻す、回復するということが現在西側で行われておることでございまして、その中心にアメリカ軍事力があるということは事実だと、こう考えております。
  189. 黒柳明

    黒柳明君 先ほども質問しましたが、ワインバーガー国防長官が昨日発表いたしましたソ連の軍事勢力、その中で極東につきましてはそんなに、ミンスク、バックファイアを中心に極東の勢力がふえてると、SS20三百五十一のうち百ぐらいが向けられている、こんな程度だったんですが、防衛局長、できれば極東ソ連軍の最近の動向、特にSS20やバックファイアのいわゆる戦域核兵器の極東における数及び配備場所、それからもう一つは、海上及び航空戦力を中心とした通常戦力の増強状況、それからもう一点は、昨年末北方領土に飛来したミグ21の活動状況、これをどう評価するかと、この三点についてお話しできる範囲、御説明できますか。
  190. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 三点につきましてお答えいたします。  まず最初に先生が御提起なさいました戦域核、具体的にはSS20とバックファイアについて、われわれが承知しているところを述べますと、SS20につきましては全土の保有数の約三分の一近く、すなわち約百基極東地域に配備していると。場所はどこかという御質問でございますが、一つは、シベリアの中央部に重要な基地がございます。もう一つはバイカル湖の以東にございます。さらに最近、現在確認中でございますけれども、さらに新しい基地を建設中というふうに承知しております。そして、このSS20がほぼ等分にいま私が述べました二つの基地に配分されていると。それから次にバックファイアでございますが、これも約七十機でございます。このうち、一つは樺太の対岸にソビエツカヤガバニという港がございます、この近辺にございます。これは海軍でございます。もう一つはバイカル湖の以西、イルクーックの付近にございます。そこで、先生御承知かと思いますが、昨年の九月十四日、初めてソ連のバックファイア十一機が日本海に南下いたしまして、わが国の能登半島沖に接近いたしましたが、この十一機はまさにソビエツカヤガバニの近辺にある海軍基地に所属するものというふうにわれわれは判断しております。  それから、第二の通常戦力でございます。これにつきまして、陸上兵力、確かに漸増傾向を引き続き示しておりますが、格段大きな変化はない。それから航空兵力につきましても、これはトータルな数字ではそう大きな変化はないけれども、中身が非常に高度化しているということでございます。他方、海軍、具体的には太平洋艦隊でございますが、これは御承知のとおり四つの艦隊の中で最大の艦隊である。昨年一年を通じまして特にわれわれが注目しておりますのは、一つは新鋭の巡洋艦が配備されている、さらにクリバック級駆逐艦、それに加えまして、ロプチャ級と申しますけれども、揚陸艦二隻が新たに配備されております。そのかわりと言ってはちょっと必ずしも適当な表現かどうかわかりませんけれども、例のイワン・ロゴフ、一時日本を騒がせましたイワン・ロゴフ、これは実は一昨年の半ばごろ、津軽海峡を南下いたしまして、それ以後この極東地域には姿を見せておりません。現在北海方面で活躍中でございます。  最後に、問題の北方領土でございます。これにつきまして例のミグ21が昨年の十二月に飛来いたしました。数を申し上げますと、われわれが確認しているところでは全部で十一機でございます。第二のわれわれの注目点というのは、果たしてこれらの飛行機が飛んできたけれども、これが一時的な飛来なのか、あるいは常駐なのか、この点にわれわれの関心が集まっているわけでございますが、その後、約三カ月時間が経過しているということに加えまして、最近わが方の飛行機に対して数次にわたりこれらの、ミグ21でございますけれども、スクランブルをかけてきたと、そういう新しい事実がございます。そういうことから判断しますと、最終的な配備であるという断定はしないにしても、まずこれは新しく配備されたと、要するにミグ17にかわって配備されたというふうに結論づけてまず間違いないのではなかろうかと、そういうふうに判断しております。  以上でございます。
  191. 黒柳明

    黒柳明君 ちょっと最後の点お伺いしたいんですが、いわゆるこちらの自衛隊機に対して何か北方領土に常駐していると思われるミグ21がスクランブルをかけてきている。いわゆる向こうの領域ということを設定して、要するにバックファイヤーなんかにこちらがスクランブルをかけるのと同じスクランブルを向こうからかけてくる、こういうことでしょうか。
  192. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) そのとおりでございます。
  193. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、これはスクランブルをかけられる対象というのは、ただ、距離が近うございますね、あの北方領土と北海道とは。そうすると民間機についてはそういう危険性は絶対ないんでしょうか。それは向こうも自衛隊機と民間機の区別ははっきりしているだろうと思いますが、わずか十キロぐらいですか、その距離が。そうすると領空領海というのはもう本当にせっていますですね。漁船だってもう拿捕されてしまいますから。そうすると向こうがスクランブルをかける相手というのは、こちらの感覚としては自衛隊機か民間機というのは当然一〇〇%わかるはずですけれども、向こうのソ連のスクランブルというのは、まあ意図的と申しますか、そういうものを超越した行動だとすると、民間機についての危険性というのはいまのところどういうふうな判断ができるんでしょうか。
  194. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 北方領土周辺には民間機は飛んでおりません。
  195. 黒柳明

    黒柳明君 いや近くまで、稚内や釧路なんか行くでしょう、民間機は。北方領土なら行くわけないですよ「撃ち落とされるから。
  196. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 私が申し上げておりますのは、わが方の飛行機というのは自衛隊の航空機でございます。
  197. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。  それに当然関連するんですけれども、P3C、これ現在八機、これから七十五機。防衛局長ですかね、これは当然P2Jよりも機能がすぐれておる、これは間違いありません。優秀である。ただ、これはどうなんですか、潜水艦探索能力。これは聞くところによりますと、型式はわかるけれども国籍はわからないんだと、こういうふうに聞いているんですが、この点いかがでしょうか。
  198. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) われわれがいま整備を進めつつあるP3Cが、P2Jに比べていわゆる広域捜索能力、位置局限能力、あるいは相当大型の電子計算機を積んでおりますためのいわゆる総合処理能力、あるいは航空機自体のスピード、あるいは航続半径等から見た機動性というものがP2Jに比べて格段にすぐれているものでございます。いま先生の御指摘のような、相手の潜水艦の型式も状況によっては判別し得るというものでございます。
  199. 黒柳明

    黒柳明君 いや、国籍。
  200. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 国籍についても状況によってはわかる。ただし海中の状況等によって一概には申せませんが、状況によっては判別し得るものというふうに理解しております。(「状況によってはわからない」と呼ぶ者あり)
  201. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、逆に言うと状況によってわからないと、こういま発言が隣でありましたけど、そういうことは言えるわけですね。
  202. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 相手の潜水艦の捜索、識別に当たって一番重要なのは相手の潜水艦が発する水中航音でございます。その水中航音の伝播の状態というものは、そのときそのときの条件によって、あるいは季節によって、場所によって非常に異なるものですから、一概にいつでもというわけには申し上げられない、状況がよければわかると、こういうことでございます。
  203. 黒柳明

    黒柳明君 それから型式はわかりましても、通常型になりますと今度はソ連型のを使っている国、そうなると、その国籍は必ずしも判別できないんじゃないでしょうか。
  204. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) まあ平たく申し上げますと、潜水艦というのはその潜水艦ごとに音の性格というものは違うわけでございます。これをわれわれの言葉で言えば音紋と称しておりますが、この音紋というものの識別にはそれだけの集積されたデータというものの効果、影響というのが非常に大きゅうございます。そういうために、こういった音紋データというものをどれだけ余計持っているかということによって、その精度が変わってくるというものでございます。
  205. 黒柳明

    黒柳明君 その音紋、いわゆるソフトウエアについてはアメリカ側から教えてくれない部分があるんじゃないでしょうか。
  206. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 日米間においてはいろいろな情報の交換というものがありますが、具体的に何をどういう形で交換しているかということは各国とも共通の秘密条項でございますので御容赦をいただきたいと思います。
  207. 黒柳明

    黒柳明君 事前に教えてもらったところでは、「日・米の情報 日米合同委員会で情報交換は約束されているが米側よりソフトウエアーの核心部分(音紋等)は教えてくれない。(有事の際は教えてくれるだろう)」と、こう書いてあるんですけれどもね、これは判断間違いでございましょうか。
  208. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) そのときそのときの状況に応じて必要な情報の交換はあるだろうというふうに思っております。
  209. 黒柳明

    黒柳明君 ですから、有事のときには教えてくれる可能性はあるけれども、平時のときには教えてくれないという判断でいいわけですか。
  210. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 平時どういう情報を交換しているか、あるいは有事にはどういう情報を交換するかということを言わないというのが世界共通の考え方でございますので、御容赦をいただきたいということでございます。
  211. 黒柳明

    黒柳明君 それから、今度、P3Cが通常型原子力潜水艦を探索するわけですけれども、原子力潜水艦をつかまえたときの、そんなことはあり得ないでしょうけれども、攻撃ですな、これは抑止力の一部ですから。そうすると魚雷というのは、いま自衛隊が持っている魚雷、原子力潜水艦は五百から六百深海中に沈みますね、それには届くんですか。
  212. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 最近、潜水艦のいわゆる水中速力、あるいは潜航深度というのは逐年進歩しておりまして、相当深いところまでもぐれる。物によっては五、六百メートルということもありますが、わが方の魚雷もそういうものについて対処し得ないという状況ではありません。
  213. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、九百までもぐれるというのですな、原子力潜水艦。それも対処できる……
  214. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) これも先生十分御承知だと思いますが、わが方の魚雷がどこまでどういう能力を持っているかということを具体的に申し上げることは、まさに手のうちを見せるようなことでございますので、御勘弁をいただきたいと思います。
  215. 黒柳明

    黒柳明君 それも極秘ですな、そうなると。
  216. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) いま直ちに私、秘密区分の状況がどうかということは存じませんが、多分極秘に近いもの、あるいはそれ以上のものだと思っております。
  217. 黒柳明

    黒柳明君 ただ、常識的にはその原子力潜水艦に、五百から九百に届く魚雷はいま技術研究所で開発していると。これはもう秘密じゃありませんから。開発しているのに、いまこちらにあるのはどうかわからない、極秘というのは、これはとっても矛盾した話ですけれども、まあ極秘といっても、これもさっきみたいに「極秘」というふうに書いてありますからね、これは別に極秘なら極秘で結構ですけれども。  総理大臣ね、シーレーンについて参議院の本会議で、要するに基本的にシーレーンの考え方が違うんだと、日米間で。これはまあ読めばいいんですけれども、時間があれですから。こういうあれがあるんですけれども、その定義を明らかにすることがまず第一に大切ではないかと思います。シーレーンの定義、日米間で認識が違っているから、こういうことなんですが、どうでしょうか、この点。日米で定義違っておりますか、シーレーンの定義は。
  218. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が聞いたところによりますと、当初においてシーレーンと言う場合は、アメリカは輸送船やあるいは艦艇の通る場所、それがシーレーンに当たると。われわれの概念では、シーレーンというのは航路帯を意味しておると、それがわれわれの概念ではシーレーンという概念であったと。ところが、アメリカ側は必ずしも航路帯だけではないと。そういうような概念の差があったということを聞きまして、そう申し上げた次第です。
  219. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、いまでもその概念の差はあるという認識ですね。これは間違いないんですね。これは要するに総理の、これを見ますと、これは私たちが従来考えていたこちら側はルートで一本の線だと。向こう側は、アメリカ側が考えているレーンというのは海峡とか、港湾とか、周辺とか、そういうもの全体を含めた輸送全体の道を言うように考えておると、こういうことなんで、ちょっとそれどうなんですかね。それでいいんですかな、いまの認識は。
  220. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 先ほど総理より御答弁がありましたとおりでございまして、とかくシーレーンという言葉の持つ語感から、シーレーンイコール航路帯というふうに理解する向きが多かったわけでございますが、もともとシーレーン防衛というのは海上交通の安全を守ること、確保することであるという理解でございまして、その中には先般来御議論になっておりますような海峡防備、あるいは港湾防備、あるいは広域哨戒、必要によっては船団の護衛、こういったものの各種の作戦を組み合わした累積効果によって海上交通の安全確保を図る、これがいわゆるシーレーン防衛ということでございまして、この点については日米間に認識の相違というのはございません。
  221. 黒柳明

    黒柳明君 この時点においてはちょっと総理の認識が食い違っていたということですね。いまアメリカ側に寄ったというわけじゃないわけですね、そうなると。
  222. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はそのとき御答弁申し上げたのは、そういう話を聞いておりましたから、当初において概念が両方とも必ずしも一致していなかったと。しかし、それはいま局長が答弁いたしましたように、概念を一致させたと、そういう意味で申し上げたのであります。
  223. 黒柳明

    黒柳明君 海峡コントロール、この有事というのは、総理、いつから有事をスタートして、機雷の投下なり設置などをやるんですか。いつの時点をつかまえて、有事というのは。
  224. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 有事というのは、あくまでもわが国に対する武力攻撃があったとき、そして、それに対してわが方が自衛権の発動をする要件が整った場合、それを有事というふうに申し上げております。
  225. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、戦争が始まった、もっと平たい言葉で言うとね。要するに攻撃が始まったと、こういう時点を有事。その時点から海峡封鎖を始める、平たく言うと、そういう考えでいいわけですか。
  226. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) こういう表現を平たく言うと、また後いろいろ問題が起こるかと思いますが、まあ端的に言って同じ意味だと思います が、少なくもわが方に対する武力攻撃という事態がもう始まったと、そういうことでございます。
  227. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。  そうなりますと、海峡についてもいろんな問題論議されておりますけれども、宗谷でも津軽でも、もういまの時点においてミグ21はこちらにスクランブルかけてきているというんですから、そうすると有事のときになって、敷設艦が一隻であり、C130が機雷を投下するわけでしょうけれども、もうこちらは制海・制空権を確保しなかったら、機雷封鎖なんというのはナンセンスのことになるんじゃないんでしょうか。ひとつこれは総理いかがでしょう。また向こうですか。
  228. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 海峡防備という中にはいろいろな作戦があることは御承知の上での、海峡封鎖、機雷を敷設するということについて限定しての御疑問だろうと思いますが、そういった場合に敷設の手段といたしまして、潜水艦による場合、それから敷設艦による場合、あるいは航空機による場合等がございます。相手に航空優勢があるというような状況下では艦船による敷設というのはきわめて困難である、航空機あるいは潜水艦によるということになるんではないかというふうに思っております。
  229. 黒柳明

    黒柳明君 ですから、艦船は非常にむずかしいと、航空機、潜水艦。ということは、やっぱり制空・制海権を確保しておかないと、空にせよ潜水艦にせよ非常に敷設はむずかしい、こういうことになるんじゃないでしょうか。
  230. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) かつて使われた制空権であるとか制海権というのは、きわめて広範囲な、いわゆる無限定の状況というものを指すように思いますが、私どもが期待しているのは、そういう状況下での一時的なそういうわれわれの任務遂行が何とか支障なくできる程度のいわゆる海上のコントロールというものは必要であろう、あるいは航空優勢というものも、その時点において機雷敷設に支障ないような状況をつくり出すことは必要であろうというふうに思います。
  231. 黒柳明

    黒柳明君 いま持っている自衛隊の能力で海峡を封鎖した場合、三海峡、対馬の西側は別にしまして、どのぐらいかかっていまある能力の中で一〇〇%の敷設というのはできるんでしょうか、この期間。これも秘密ですか。
  232. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) まず機雷の敷設の問題としては二つ問題があると思います。一つは、まずわれわれが持っております機雷というものの量がどのくらいあるか、そしてその機雷がどういう状況で、すなわちいつでもまけるような状況での整備保管がなされているかという点が第一点。第二点は、そうした機雷をまくいわゆる航空機なり艦船がどの程度糖めて、どの程度時間かかるかということでございますが、これは機雷をまく場合の状況というのは千差万別でございまして一概には言えませんが、一朝一夕にまくというのもなかなかむずかしい問題である。ただ、これが何日でできるかというのは、そのときの状況によっても違いますし、またこれをとことん詰めていきますと、わが方の敷設能力の実態がわかってしまうということもあり、御勘弁をいただきたいと思います。
  233. 黒柳明

    黒柳明君 要するに、それも秘密の中に入ると。衆議院やいままでの答弁は——どうも午前中の質問が悪かったかな、何か硬化させちゃったですかね、防衛庁を。それも秘密で言えないというんですか。これ困っちゃったですね。  そうすると、対馬の西海岸、これこそ私もいろいろな状態が想定されると思います。韓国と協議するということですが、ただ実際に有事になって敷設するときに、日本だけでやってくれということもありますし、韓国がやるということもありますし、それじゃ日韓共同でやろうということ、これはわかりませんね。それこそそのときの状態が起こってみなければわかりませんですね。だから、日本だけでやる、これは向こうの領海ですから、それはもういいですわな。韓国がやる、これもいい。ただ問題は、韓国と話し合いして、それで日韓でやろうやとなったときは、これはどうしますかね。有事ですから、そのときはもう集団防衛も自衛権もそんなことはないんだと、有事だからともかく対処しなきゃならない、日韓共同作業というものは当然そこで想定されると、こういうことでしょうか。
  234. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 通峡阻止のために機雷を敷設するということは、沿岸国のみならず、第三国に対する影響というのは非常に大きいということから、慎重の上にも慎重ということは累次にわたってお答えをしているとおりでございますが、そういうふうな前提を踏まえた上で、対馬海峡に機雷を敷設する場合には、あくまでもわが方が有事の際に、わが方の自衛のために必要な限度で、わが方の領海と公海について敷設するということでございまして、その場合は、まあ海峡防備のあり方については自衛隊が主となってやり、米側は必要な支援をする、こういうことでございますが、韓国との間に共同で、あるいは相談をして共同作戦なり、そういったことというのは一切考えておりません。
  235. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると——日韓で相談するということについては答弁ありましたね。そうすると、そのときに、要するに日韓で共同でやろうといったことについてはやっぱりそれはもうできないと、有事のときでも拒否せざるを得ない。集団自衛権に抵触するからだ。こういう判断はもういまから固まっているわけですか。そのときになってみなきゃわからないというケース・バイ・ケースじゃないわけですか。いまの時点からどんなに有事であろうと、韓国側がそれじゃ日韓共同で西水道については敷設しよう、守ろうという意見があったとしても、有事を乗り越えて、超有事方式、超法規方式じゃなくして、集団自衛権に抵触するからそれはもうやらないんだ、そのときのケース・バイ・ケースなんて想定できないんだという判断をいまから断定されるわけですか。
  236. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 現在、韓国と共同作戦をするというようなことは全く考えておりません。
  237. 黒柳明

    黒柳明君 いまの第七艦隊ですね、日本を母港としている。これは機雷戦闘能力は持たない艦隊ですか。
  238. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 第七艦隊というのは、本来の任務は機動打撃力を中心とした艦隊でございますので、機雷敷設能力というものを、もしあったにしてもそう大きなものがあるとは思いません。
  239. 黒柳明

    黒柳明君 第七艦隊は機雷に対する戦闘勢力ではないと、こういうふうに聞いております。そうなると、有事のとき日本から第七艦隊が出動して機雷を敷設する、米軍が単独で。そんなことは想定の中にせよまず考えられる状態じゃないわけですね。
  240. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 現在の七艦隊がそうだということでございますが、有事の際にアメリカがどういう艦艇の運用、配備をするかということを、いま私ども直ちに材料を持ち合わせございませんので、お答えになるかどうかわかりませんが、有事の際というものを想定して、いまどうかこうかということを申し上げるのは適当でないのではないかというふうに思います。
  241. 黒柳明

    黒柳明君 時間がありませんもので、国内問題ちょっと触れたいんですが、総理、中国孤児の問題ですね。いま盛んに各マスコミが、あるいはボランティア団体が全面的な応援をしておりますね。ただ、予算の問題なんですよ、厚生省の援護局ですか。これ、予算どうでしょうか、この中国の残留孤児対策に対する予算の概況をちょっと説明していただけますか。
  242. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 黒柳議員の御質問にお答え申し上げます。  中国孤児は現在四十五人ほど来て、鋭意肉親捜しをやっておるところでございますし、残された日にちもわずかでございますが、鋭意努力を進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。  また、見つかりました方でこれから日本に永住をしたい、こういう方につきましては、中国孤児 のセンターをつくりまして、これによりまして日本語の習得であるとか、日本の習慣へなじむこと等の措置をやりたいと、こういう形でいま進めておるところでございます。  予算といたしましては、中国孤児センターが四億三千三百万円、それから訪日旅費を、今回は百八十人ほどお招きすると、こういう形で予算上は計上してございます。そういったことを中心といたしまして、できるだけ早く中国に残留しておられますところの孤児の日本への訪日を促進するし、また、それらの費用につきましても十分配慮してまいりたい、こういうふうな形で予算が計上してございます。
  243. 黒柳明

    黒柳明君 肉親捜しのための来日孤児の増員、百二十人から百八十人にする、一回六十人で年間三回実施する。それで、五十七年が五千三百万を五十八年は八千万にすると、こういうことですね。ただ、この八千万、億にもいかないわけなんですよ。ちょっとこれは少ないんじゃないんでしょうか。まあちょっと次元は違うかと思いますけれども、上野公園のパンダ、あのパンダの施設。あれどのぐらいかかっていると思いますか。ちょうど八千万なんです。これ、非常に失礼な例かと思いますけれども、たとえばパンダを一匹連れてきてあの施設をつくるだけで八千万かかっているんですよ。それを、要するに五千三百万円から八千万にしました、増額しました、充実させます。これはちょっと費用としては非常に少ないんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  244. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 黒柳議員の御質問にお答え申し上げます。  中国孤児を日本へお招きする問題につきましては、中国政府側の御了解もいただかなければなりませんし、昨年来いろいろな話をしておりまして、やっと話がついてきたところでございます。そういった形で中国側の体制もございますし、日本側といたしましても一気にこれをやるという話もなかなかできないので、いま、先ほど申し上げましたようなことで、現在中国側とも話をやっておりますし、また、これから話をさらに進めていかなければならないと思います。  金は、先ほど申しました八千万円と、こういうふうなお話でございましたが、いろいろな形で養父母に対する手当てをしなければならないとかということもございますので、民間の資金も導入いたしまして、そして中国孤児の日本におけるところの処遇の問題、また日本で生活できるような費用の問題、と同時に、養父母に対するところの費用の問題等も相当考えてやらなければならないので、予算と相まちまして、民間資金を広く集めましてやっていかなければならないと考えているところであります。幸いにいたしまして、新聞テレビ、その他で大変御協力をいただいておりまして、多くの方々から、ボランティアと申しますか、いろんな形での御寄附も来ておるようなことでございますし、より一層充実を図っていかなければならないと考えているところでございます。
  245. 黒柳明

    黒柳明君 当面の問題ですからこれ以上は申しませんけれども、やっぱり民間ボランティアから始まったこの孤児の肉親捜し、それについてはもうちょっと——この八千万の金額だけじゃないことはよく知っております。いろんなところで費用があろうけれども、圧倒的には総理、ボランティア活動に頼っているんですよ。通訳にしたって、レセプションにしたって。ですから、何もこの八千万、一人当たり四十万、少ないじゃないかと、こんな短絡的な意見を言うんじゃないんです。  それから、孤児センターつくります、四億予算つけています、結構なことです。ですけれども、もうちょっとかけて、要するに事前に政府がいろんな広報活動をやるとか。マスコミだってこれだけ大々的に費用を使ってやっているんですから、それと比べて余りにも政府の援助額が少な過ぎる、こういう点を私は指摘して、ボランティアに頼り過ぎる、あるいはボランティアの方がもう比率としては圧倒的に多い。こういう面でもうちょっと充実させていただきたいと、こういうことなんですが、総理、いかがでございましょうか。
  246. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国側の御協力をいただいてやっておる、せっかく大事な仕事でございますから、費用につきましてもよく厚生省に検討をしてもらい、また、大蔵省にも協力してもらうようにいたしたいと思います。
  247. 黒柳明

    黒柳明君 総理が提唱した緑化の「みんなで木を植える国民運動」ですか、これは党、あるいは内閣にそういうのをつくろう——まあ閣議でちょっとがちゃがちゃしたとはいうけれども、これも非常に結構ですね、趣旨としましては。ただ、この生活環境保全林整備事業、ここで新たな補助金を出していますね、五十七年二十三億。これはいろんな、各県に聞きますと、この補助金が来たために、伐採しなくてもいい木を伐採してまでも、この補助金を使ってむだな木を植えなきゃならないという意見が各県から出ているんですよ。これ、ちょっとそうなると、何か緑化運動総理の意思とは逆なところに、各県ごとに行くと費用のむだ遣いがされているような感じがしますので、ひとつ総理、この点まで握ってはいらっしゃらないと思います、細かいことですから。緑化の本質と、それから補助金のむだ遣いがあってはならないと、こういうことなんですが、どうでしょうか。
  248. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 黒柳さんのお説はごもっともであると思いますから、よく注意してやるようにいたしたいと思います。
  249. 黒柳明

    黒柳明君 それからもう一つ。同じく経済林の人工造林の推進地域指定をされている山林、これも問題がある。要するに花を植えると、こういうわけです。そこには補助金が来てるから。こんなところ花なんか植えなくてもいいと言うんだけど、補助金使えということで植えると。これも県名もみんな出ているんです、県から吸い上がっていますから。そうすると、これ自体も、補助金行政がこんなことでいいのかと、こんなふうに私感ぜざるを得ないんですが、ひとつこれも総理の頭に入れて是正の一環としてやっていただけますか。
  250. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまお聞きしたところによりますれば、ちょっと常識外れのことのように思いますので、よく注意いたさせます。
  251. 黒柳明

    黒柳明君 総理、靖国神社の公式参拝。大阪での判決がありました。これは公務員の宗教行事への参加は憲法解釈上常に私人としての行為と見るほかはなく、公務となる余地は全くない、大阪地裁の判決、これは御存じのとおりであります。そうなりますと、靖国神社の公式参拝というのは一切まかりならぬと、大阪地裁の判決をもとにしてはですよ、こうなるんですけれども、総理、これはどうですか。あのときは総理コメントされなかったんですね。これに対してはいかがでしょう。
  252. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地方裁判所、下級裁判所の判決でございますから、最高裁に至ってどういう結論が出るかまだ未定でございます。しかし、そういう判決が出ているということは一つ過程として心にとめておくという考えでございます。
  253. 黒柳明

    黒柳明君 時間ありませんから、経企庁長官と通産大臣に三つだけ。  いまOPECががたがたしてますですね。石油の値下げか、あるいは生産量の調節かであれしておりますけれども、その値上げの見通しをどう見ておりますか。それから一〇%、二〇%下げられた場合のわが国の経済成長、これはどう変化すると思いますか。電気料金は当然値上げが行われると思いますが、どの程度のOPECの値下げならば実施されると、こう判断していますか。以上三点。
  254. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 時間切れ間際に、あなた速射砲みたいなそんな質問したって、答弁が……
  255. 黒柳明

    黒柳明君 労働、防衛の方に怒ってください。
  256. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まあ、そうですけどね。  一遍にはちょっと答弁できませんが、要点だけ。  まず、値上がりと、あなた用語間違えたが、値下がりですね。
  257. 黒柳明

    黒柳明君 値下がり。
  258. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、最初どういう形で、OPECか、あるいはOPEC外の産油国も含めて、ロンドンでかどこでか、夕べの七時から、日本時間のですね、ここでまとまるだろうと。その時、きのうの観測では恐らく、三十ドルの線を割らないとしようとする努力の国と、それから事実上スポット物等は二十九ドルのものが出ているから、そこらのところでまとまるのかな、あるいはメキシコあたりも行っていますから、OPEC非加盟国との間での何らかの新しい一種の別な違った意味のカルテルでも、相互援助等が入ったものを結ぶのかな、そういうことで待っていたんですが、まだきょうも決まってなくて、続行するそうで、今週いっぱい続くかもしれないと思ってくれなんという石油相もいるようでございますけれども、しかし、値下がりするであろうことは間違いないですね。  その際に、われわれはいま六ドルのケース、それが二十五ドルになったケースというようなことでいろいろとやっておりますが、長期的に見ていつまで続くかの問題は別にして、石油が上がり続けは、棒上がりに上がってきたことのわが国への、あるいは世界経済全体への悪影響というものから、みんないま苦しんでいる、それに対してはほっと一息の天の恵みという感じがいたします。これを起点として、わが国経済の活性化へ、これは経済全体、国民生活全体を含めて、ここで一つのはずみをつけなければならないということで、誤まりのない経済政策を展開したいと考えております。  その中の一つの電気料金だけ抜き取って言われてみましても、まだ幾ら下がるのかもわからない、その油もまだ現地にあるわけで、日本に着いているわけじゃありません。着くまでの時間、高い油が入っているのと入れかえるまでの、混合しながら完全に安い油にしていくタイムラグ、それが産業に実際に影響を及ぼしつつ、最終的には商品とか料金にはね返ってくる。タイムラグというのは、先の方にいきますと、やがては税の増収にもなるだろうというようなことを予測していますけれども、いいことばっかりじゃないでしょうが、そういうときの中の一つの検討のファクターとして電気料金がある。そのことは、これはあり得ることでありますが、全体としての調整をしてまいります。
  259. 黒柳明

    黒柳明君 冒頭の問題がありますから、若干時間残っておりますけれども、保留させていただきます。  以上でおしまいになります。ありがとうございました。(拍手)
  260. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 残余の黒柳明君の質疑は後刻行います。     ─────────────
  261. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、瀬谷英行君の総括質疑を行います。瀬谷君。
  262. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最初に、中曽根総理大臣の政治姿勢についてお伺いをしたいと思います。  本会議における所信表明から衆議院における予算委員会、ずっと引き続き拝聴いたしておりまして、あなたの政治姿勢についての不安が二つほどある。  一つは、世間の疑惑を一掃するためにどうしても政治倫理の確立というのをやらなければならないという、これは衆議院における田中議員に対する決議やらいろいろありましたけれども、それらの問題についての態度がきわめて消極的である、ほかのことはわりあいと歯切れがいいんだけれども、この問題に関する限りは逃げの姿勢で終始しておる、これが第一であります。  その次に、第二は、アメリカのレーガン政権に対して日本総理の節度を超えて傾斜し過ぎる、そういう不安がある。  これらの不安が国民の間にあるんだということを私は指摘をしたいと思うんでありますが、その点についての総理見解をまず第一にお伺いしたいと思います。
  263. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 瀬谷さんの御指摘につきましては謹んで拝聴いたす次第でございます。  まず、政治倫理の問題につきましては、本会議でも委員会でも申し上げておりますが、民主政治は国民の信頼の上に成り立つと考えておりますから、議員一人一人が模範になるように進退しなければならぬと思っております。そういう点については私みずから戒めなければならないと思っておりますが、議員の進退という問題になりますと、これは憲法やら国会法やら、代議政治の本質に絡んでくる問題でございまして、そういう意味におきまして、先般来の考えを申し述べさしていただいているわけでございます。  それから、アメリカとの関係でございますが、鈴木・レーガン会談、あるいはそれ以前から、大平さんのころから、日本の防衛問題について日米間の摩擦らしきものが若干ございました。そして鈴木・レーガン共同声明ともなりまして、日本は、イーブン・グレーター・エホーツという言葉で表現されておりますが、より大いなる努力をすると、そういう約束もしてきたところでございます。そういう点から見まして、やや不協和音がありまして、昨年の私が就任いたしましたときには、アメリカの上院で日本の防衛努力に関する決議が満場一致でたしか通過したということがございます。こういうような状況のもとに、日米関係が不協和音であるということは、日本安全保障の上からもゆゆしい事態であると私は考えた次第でございます。時たまたま経済摩擦もございました。そういう意味におきまして、一番基本的に重大な関係であるアメリカとの関係を円滑に是正する、円滑化する、より改善する、そういうことが非常に重要であると私考えまして、それらの諸問題に取り組んだわけでございます。そういうためには、世界に向かって開かれた日本という基本的な姿勢を示す必要もある。そういう意味から、経済摩擦の問題につきましても、関税率やその他の点で御協力もいただいたりいたしましたし、また防衛努力の問題にいたしましても、やはりある程度常識的な線で日本がこれぐらいはやるべきであるということはやはりやる必要はあるし、約束してきたことは実行する必要があると。こういう点からいたしまして、一昨年のころでございますか、大村防衛庁長官アメリカへ参りまして、大村・ワインバーガー会談の際に、武器技術の問題について原則的に承知して帰ってきておるわけです。それを約二年近くの間検討してまいりまして、先方としてはしびれを切らしてきておるという状態でもございました。そういう意味において、この問題も解決しなければいけない。防衛費の問題についてもいろいろ先方側は日本に対する期待と強い要望がございました。しかし、日本の防衛問題は日本人みずからが決める問題であり、日本予算日本の国会や日本政府が関係している独自の問題でございますから、われわれみずからの判断によって決定はいたしました。しかし、決定するにつきまして、このアメリカとの関係をより円滑化し、改善するという気持ちを持ってやったことも事実でございます。しかし、その結果対米関係の経済摩擦、あるいは防衛上の問題はある程度改善できたと思っております。現に、昨年来いろいろ響いてきた雑音はアメリカからは響いてこなくなったと思っております。また、貿易摩擦の問題にいたしましても、牛肉、オレンジの一番農民の関心のあった問題についても、アメリカ日本と事務的話し合いに応ずるということで、自由化を強く迫ってきた態度が変化をしてきていることも御存じのとおりでございます。そういうような対米関係を是正するという考えに立ちまして、懸命の努力を払ってきたのが私の心境でございまして、決してアメリカに傾斜するというような考えでやったものではございません。
  264. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 政治倫理の問題は、これはモラルの問題であるし、公判がまだ続行中であるとは言ってみても、この問題についての内容はもう余りにも明らかになり過ぎております。したがって、 訴訟技術の点で引き延ばしを図ったからといって、もう結論は見えておるというふうに考えなきゃなりません。それだけに、やはり政府としてもはっきりとした態度を打ち出すのが私は至当であると思いますけれども、これはもういままで何回もやってきておりますし、同じことの繰り返しとすれ違いをしてもしようがありませんから、これ以上はもう申しません。  第二の、レーガン政権に対する態度でございますけれども、アメリカ世論調査でもレーガンに対する支持率というのは必ずしもよくない、こういうことが伝えられております。したがって、アメリカ国民からどこまでレーガン政権の方針というものが支持されるかというのは疑問があるのじゃないのか。それだけに、こちらとしても二人三脚のようなかっこうでもって一緒に行くということは問題があるのじゃないか。二人三脚じゃなくて、ある程度離れて歩くということが必要ではないかという気がするのでありますけれども、今日までの対米の努力についてはまことに御苦労様であるというふうに申し上げますけれども、事が非常に重要でございますので、今後の軍事的な問題についての日米相互の協力関係というものは、おのずからそこに節度がなきゃならぬという気がいたします。その点どうでしょうか。
  265. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レーガン政権というものを相手に頭に置いて仕事をするということも大事でありますが、それ以上に大事なことはアメリカ議会の動向でございます。アメリカ議会におきましては、民主党、共和党の二大政党全部が一致して日本に対してあのような期待と、あるいは行動を要望しておったわけでございます。例の防衛問題に関する上院の決議も民主党、共和党、与野党一致してこれを通過さしておる。あるいはさらに、いわゆるローカルコンテンツ法、あるいは相互法案というのがまた国会へ提出されておりますが、これらについては与野党こもごもおのおの同じような歩調で動きそうな気配であります。そういう意味において、一レーガン政権だけを頭に置いてやっておるのではないのでございまして、アメリカ国民全体の世論、あるいはニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストに出てきているアメリカのジャーナリズムの対日観、あるいはアメリカ議会全体の動向と、こういうものを考えまして、アメリカ全体を頭に置いて処置をしているということを御理解いただきたいと思うのであります。
  266. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 アメリカ日本に対して防衛努力を強く要請をする、あるいは上院において議決をするなどというようなことは、これはもうまことにその分を越えた行き過ぎである、日本内政に対する不当な干渉であるというふうにわれわれは考えざるを得ない。そういう干渉を許しているということは、やはり日本側の態度にある程度甘さがあるんじゃないか。いろいろ注文つけて文句を言っていけば、幾らでも日本は引き受けてくれる、防衛努力等にしても同じことである、こういう意識が向こうにあるからじゃないかという気がするんでありますが、その点は一体どのようにお考えになっているでしょうか。
  267. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は世界から孤立してはいけない国でございます。過去のあの大戦争は世界から孤立して浮き上がった結果、ああいうところへ走ってしまった、これは深くわれわれは考え反省しなきゃならぬところであります。ところが、私が総理に就任しました十二月前後の情勢では、ややもすれば日本は世界から孤立する情勢にあったという気がいたしておりました。それは経済摩擦の問題でEC、ヨーロッパ方面からは、例のポワチエの問題で日本のVTRの輸入がああいうような妨害を受けるという情勢で、あれが一つの象徴でございますし、アメリカからは牛肉やオレンジの問題、あるいは防衛努力の問題等等について非常に強い期待があったわけであります。もちろんそれらの問題はわが国が独自で決めるべき主権の事項でございますけれども、しかし、国際関係というものを良好に円滑に処理していくということも、孤立を防ぐためには非常に大事な関係にございます。日本のような、貿易で生きていくこの国が、世界から孤立したら相当な不景気が日本に来るということも心配しなけりゃなりません。そういう意味におきまして、一アメリカというだけを考えているのでなくして、世界における日本の立場、日本が外国からボイコットされたり、疎んぜられたりして、経済的な苦境に陥らないように——GATTやそのほかの問題でもびしびしやられたら、日本はまた不景気が訪れるという危険性が出てまいります。失業はさらにふえるという危険性も出てまいります。そういう面をうまく処理して、経済を良好に維持して、国際関係を処理していくというのは行政の重大な責任でございます。そういう観点に立ちまして、諸般の政策考えてきておるのでございまして、アメリカだけを対象にして考えているのでもないし、あるいは防衛問題だけを考えてやっているのでもない。日本全体の繁栄と平和のためにわれわれは真剣の努力をしているということを御理解していただきたいと思います。特にまた、日米安全保障条約を結んでおるという特殊の関係にあるアメリカにつきましては、防衛努力の問題についても考慮せざるを得ません。世界的に抑止力ということによって均衡を維持して、戦争を起こさせないようにしているのが現状でございます。ヨーロッパ側においては大体GNPの三%増で防衛費をふやして、ヨーロッパ方面における均衡を回復しようというので彼らは努力をしておる、アジアの側におきましてはアメリカ安保条約日本と結んで同じように抑止力を増勢して、ソ連あるいはその他の各国との間に均衡を維持しながら平和を維持しようと、こういう努力を実はしておるわけでございまして、安保条約を結んで日本防衛のために必要な範囲内においては、われわれはわれわれの努力をしなければならぬと思っております。  そういう日本防衛のために必要やむを得ざる範囲内のこととして、われわれは防衛努力も実はやっておるのでございまして、不必要なことや過剰と思われることはやっておるのではないということを御理解いただきたいと思います。
  268. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 しかし、現実にアメリカ日本に注文してきたことは、シーレーンの防衛とか、三海峡の封鎖と、こういうきわめて現実的な問題であります。これはいま総理日本の平和のためにということを言われたけれども、われわれ考えてみると、日本の平和のためにきわめて危険な火遊びをやることになりはしないかという心配があるわけですよ。きょうは東京大空襲の記念日なんです。近代戦争というのは罪もない女、子供、老人を含む多数の市民を焼き殺してしまうという現実を、われわれは昭和二十年に実際に東京で体験をしておるわけです。したがって、このシーレーンの防衛とか、三海峡封鎖といったようなことが、一歩間違うとこういうアメリカとの抱き合い心中になるおそれがあるのではないかということを懸念しないわけにいきません。その点、総理としてはどのようにお考えでしょうか。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは日本の防衛の基本的なポイントに関する大きな問題を御指摘いただいたと思うのであります。われわれはやはり安保条約を結びまして、自分自分の国を守るということを基本にしつつ、足らざるをアメリカと提携して日本の防衛を全うすると、そういう考えに立って、その基礎にあるのは自分もある程度力を持ち、また同盟国とも提携して力を合成して、そして均衡を維持しながら戦争を起こさせないようにする、それがわれわれの基本的な考え方です。そういう意味においては非武装中立とか、非同盟中立論という考えをわれわれはとらない。これだけ大きな国になりますれば、そういう立場を日本はとることができないぐらい影響力を持つ国になっておると思っておるわけでございます。そういうような基本的考えに立って、安保条約日本自分自分の国を守るというこの二つの点を考えてみますと、やはり若干の努力はしていかなければならぬのであります。自分自分の国を守らない国をどうしてほかの国が守ってくれるか、こういうことも外国からは言われる危険もござい ます。まず自分自分の国は守ると、そういう誠意を示して、その上に立って足らざるを人の力に頼むというのが生きていく上の筋であると思います。国家も同じことであると思います。そういう意味におきまして、必要最小限のことを憲法の範囲内において持続的に努力して均衡を維持し、抑止力をつくり上げて戦争を防止しようというのが、われわれの基本のやり方であるということを申し述べさせていただきたいと思います。
  270. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まともに戦争ということを考えると、まず邪魔になってくるのは現行憲法です。いまの憲法がある限り戦争はできません。  そこで、今度は憲法論議の問題に触れてくるんでありますけれども、憲法論議にタブーがあっちゃならないということをいままでしばしば総理は言ってこられました。私はそれはそれで結構だと思います。また評価すべき点は評価をするということもかなり克明にいままで国会で述べておられます。それはそれで結構でありますが、しかし、同時に憲法を常に勉強して検討を加える、見直していくということも大事であると、国民全体が認識を深める、これも好ましいことである、こういうふうに言われていますね。そこで、それならばどう勉強をし、どこを見直すのかということをはっきり言わなきゃいかぬと思うんです。その点はどうなんでしょう。
  271. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国家が存立していく法的基本体系の大事な部分は憲法でございます。この憲法をつくっているものは国民の力でございます。したがって、主権在民と言われますが、これは憲法で主権在民というものが描かれております以前に、やはり国民の力というものが憲法をつくっていると、そういうふうに考えざるを得ないと思います。そういう意味において、主権者である国民が共同に生きていく基本法である憲法について、お互いが自由に議論をし、そしてよりよきものへ志して議論をし見直すということは、民主主義を発展させる基本的な立場の一つとして私はとうといと思います。そういう意味におきまして、憲法みずからにおいても言論の自由というものを保障し、あるいは学問の自由、信仰の自由を保障しているのだろうと思うのでございます。そういう民主主義の基本的な原理の援用として私はそういうことを申し上げておるのでありまして、これは法律にいたしましても、社会制度にいたしましても、教育にいたしましても、憲法にいたしましても、これを研究し見直す、あるいは全般について考え、あるいは特殊の御関心のある方は特殊の部分について御議論をなさり、あるいは見直しをなさる、いずれも自由におやりになって結構ではないかと思うのです。    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕
  272. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 前の会議録もちょっと見ると、赤桐議員の質問に対して、一体どこを見直すんだと、こういう質問に対して、国民皆さんや議員の皆さんが御論議を願いたい、ここをさわってはならないという、そういうタブーがあっちゃならない、こういうことを言っておられる。だから、どこを見直すのかということをはっきりしないと見直しようがないんじゃないでしょうか。その点どうですか。
  273. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が申し上げているのは、民主主義の基本的なあり方として申し上げておるのでございまして、憲法典、あるいは憲法典のよって立つ基礎的な問題、あらゆるものを含めて日常よく勉強もし、見直し研究する、そういう態度が国家をますます民主的ならしめるゆえんではないかと思って、特定のどこということを特に申し上げておりません。全体を見直したい方は全体、局部を見直したい方は局部、御自由におやりなさることではないかと思うのであります。
  274. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 見直せと言う以上は、どこを見直さなきゃならないかということをはっきりさせなきゃいかぬと思うんです。私はタブーがあっちゃならないという点については同感であります。しかし、見直すべき点があるならば、この条文のこういうところはどうもよくないから改めた方がいいと、こういうふうにした方がいいということを示さなければ勉強のしようがないんじゃないでしょうか。その点はいままではっきりしてこられなかった。これはよくないと思うんですよ。見直せと言う以上は、ここをというふうに言わなきゃならぬでしょう。その点どうですか。
  275. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府の方からどこここと指定することは、これは民主的ではないと思うのであります。主権者であり、憲法をつくっておる国民の皆様自体が、みずからそういうような意思を持って見直していく、あるいは勉強していくということが民主主義発展の上の基本的な態度ではないかと、そう思うのであります。
  276. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これはしかし、やっぱりごまかしですよ。見直せと言う以上はここをと言わなきゃいかぬ。火事だ、火事だと言うから、じゃどこだ、どこだと言ったら、それは言えない、それじゃ困るじゃないですか。火消しはまごついてしまいますよ。その点どうしてはっきりさせないんでしょうか。あなた自身がタブーがあっちゃいかぬと言いながら、あなた自身がみずからの答弁ではタブーをつくっているじゃないですか。そうとは思われませんか。
  277. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どこと指定すること自体が限定的に物を考えているのでありまして、御自由に自分の好きなところを全体でも部分でも御勉強なさり、あるいは見直してくださいと言うのがタブーのない態度ではないかと思うんです。こことかあそことか政府が特別に考えたり言ったりすべき性質の問題ではないと思うのでございます。
  278. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 自分のお好きなところとおっしゃいますけれども、動物園へ遊びに行っているわけじゃないんだから。そういういいかげんなことで憲法の論議、勉強ができると思われませんよ。勉強する以上はちゃんとその問題点を明らかにする必要があると思う。  そこで今度は文部大臣にお伺いしますけれども、いままで校内暴力とか非行対策といったようなことは大変に問題になってきておるのでありますけれども、総理大臣が言わないから今度は文部大臣に聞きますけれども、これらの問題の原因は一体どこにあったのか、占領政策にあったのか、憲法に原因があったのか、それらの点について、今度は国民の思想の問題でございますので、文部大臣としてひとつその見解をお伺いしたいと思います。
  279. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 校内暴力であるとか青少年の非行であるとかいうことは大分前から心配されておりましたが、最近御承知のような、細かく申し上げませんが、異常とも思われるような中学校あるいはその卒業生徒によって行われたことを非常に残念といいますか、遺憾に思い、また心配をいたしております。  その原因がどういうところにあるか、これはなかなか一言では私は申し上げられないと思います。まあ私なりに考え、また識者の意見等を総合してみますると、第一番にといいますか、これが重いとか軽いとかという意味じゃなくて順番的に申し上げるわけでございますが、やはりその本人の資質といいますか、素質にも大いに関係がある。また、幼児から小中学校でございますから、家庭の教育あるいはしつけ、家庭のあり方ということにも大きな原因があろう。それから申し上げるまでもなく学校の教育指導の点についても問題がある。そのほかに大きく言いますと、社会全般の経済発展のもとにおける大きな変化、これがいろいろな部面で影響がある。総合的に見てそれを考えていかなければ、この問題は解決しないのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  280. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 その原因はどういうところにあるのか、対策はどうしたらいいのか。聞くところによりますと、文部省でも、いろいろと文部大臣経験者等を集めて文教部会等で御相談をしておられるようでありますが、それらの点についてどういうことが問題になり、どういう対策が練られておるのか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  281. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど申し上げましたように、こういう問題はいま突然始まった問題ではございません。御承知のとおりでございます。でありますから、教育の責任省としての文部省、あるいは学校——小中学校は御承知のとおり地方の各都道府県の教育委員会の所管になっておりますから、そういう方々と従来から教育の内容のあり方、あるいは学校の校長を中心にした指導体制の確立、あるいは学校の教育の内容の改善——改善といいますと、もう少しゆとりのあるような学校教育にしなければならない、教育指導要領の改善と、こういうことをいろいろやってきておりますが、ただ、先ほど申し上げましたような異常な事態、社会を非常に心配させるような事態が起こりましたから、過去におけるものでどこに欠陥があったのか、これをもう一遍細かく分析して再検討してみなけりゃならない、そういうことで、先般、早速、世間の識者と言われる方々においで願いまして、そこでいろんな意見を聞き、さらに現場の教育者等も加えて文部省内で検討会を開いて、そして、いま申し上げましたように、家庭の問題、あるいは学校教員の養成それから採用の問題、あるいは教育内容の問題、受験のあり方の問題、いわゆる受験地獄とかなんとかいっておりますけれども、そういうもののあり方の問題等、詳細の点についてはもし必要があれば事務当局から申し上げますが、そういう点をまとめてもらいまして、実はきょう、全国の都道府県の教育長さんお集まり願いまして、この問題は大変な問題であるから、将来に向かってのわが国の基礎条件の問題にかかわる、でありますから、従来より以上にこういう細かな点を検討して、全力を挙げてこの改善と申しますか、排除に努力をしよう、こういうことをやっておる状況でございます。
  282. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 もう少し詳しく述べていただきたいと思うのであります。漠然と言われたけれども、たとえば受験地獄のあり方に問題があるというなら、じゃあどうするのか。ゆとりのある学校教育と言うけれども、いままでそうするとゆとりがなかったのか、どういうふうにゆとりをつくるのか。それらの点についてどんな結論が出たのか、お伺いしたいと思います。
  283. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) お答えいたします。  ただいま大臣が申し上げましたのは、この町田市、横浜市の非常に社会に衝撃を与えましたケースにかんがみまして、この問題がこれまで起こりました校内暴力の一連の線上にある問題であるかどうか、あるいは文明現象といたしまして、今後、非常に深いところから起こった問題であろうかどうかという観点から、そこで、従来文部省といたしましても諸種の施策を講じてまいったわけでございますけれども、改めて従来の施策を反省いたしまして、新たな観点から有識者による懇談会を開いたわけでございまして、その懇談会の提言は、つづめて申しますと、緊急に取り組むべき課題といたしまして四つ挙げているわけでございます。  その前提となる認識といたしましては、非常に特異なように見えるけれども、一連のこれまでの校内暴力等に見られる問題行動の流れの中にある根の深い問題であるということから、早急にまず、対症療法的ではございますけれども、取り組むべき課題といたしまして四つ挙げているわけでございますが、それが、第一は、学校におきます教師の一致協力体制を確立するということでございまして、これはあたりまえのことと考えられるわけでございますけれども、実は、この問題が起こります学校の指導体制等を見ますと、やはり校長を中心といたしました校内の指導体制が十分に確立していないというふうなことがほとんどの場合に指摘されるわけでございまして、これが改めて指摘をされたわけでございまして、この点につきましては、各学校におきます問題点をチェックいたしまして、改めてどのような点に問題があるかということをチェックするシステムを検討しろということになっているわけでございます。  それから第二は、やはり、その問題を抱えている学校に対しましては重点的に指導を行う。指導主事あるいは管理関係の教育委員会の職員が参りまして、総合的、重点的に指導を行うことによって一日も早く原状を回復いたしまして教育環境を整えるということが必要であろうということでございまして、これには教育相談のような事業を活用いたしまして、校長なり不安を抱える教師の相談に応ずるようなことも必要であるという御指摘があるわけでございます。  それから第三は、具体的に問題行動を抱えている子供に対しましてどのように対応するかということでございますが、これは、学校といたしましては、子供に対して愛情のある人間関係から出た教育指導を行うのは当然でございますけれども、しかし、努力を最大限にいたしましてもなおかつ暴力行為がとまらないという子供に対しましては、たとえば法令にございます出席停止の措置でございますとか、あるいは学校内謹慎というふうなことを考えて、他の子供に影響を与えないような措置を速やかにとったらどうかというふうな具体的な提言があるわけでございます。  それから第四が、これは学校、ともいたしますと、問題を抱えている学校におきましては、閉鎖的と申しますか、どうしても学校内で事態を処理しようという傾向がございますけれども、これは、従来から指導をしておりますように、問題を基本的に解決するためには、できるだけ早く問題の起こりました時点におきまして、PTAとかあるいは関係の機関と連絡をとって速やかに地域社会全体として取り組むという必要があるということでございまして、そういう大体四つの具体的な提言をいただいているわけでございます。  それから、先生御指摘ございました受験競争の問題につきましては、確かに現在、いまの入試制度のあり方と申しますか、学歴偏重社会の中で子供たちが塾に通いましたり、過度な勉強を強いられている面はあるわけでございますが、いま大臣が申しましたのは、現在実施しておりますところの新しい教育課程、これは五十五年度から小学校実施いたしております。これは過去の反省に立ちまして、知的な教育に偏っておりましたところを改めまして、授業時数等を削減し、道徳あるいは体育を重視するという意味で、知と徳と体育と調和のある人間形成に必要な教育を行うということが主眼になっているのでございまして、これを五十五年度に小学校、五十六年度に中学校、五十七年度に高等学校というふうに順次いまその教育課程を実施いたしまして、現場に定着を図っているところでございます。それをまず徹底する必要があるということを大臣が申し上げたわけでございますし、また入試問題につきましては、これはいろいろ問題があることは承知しておりますが、現在、高等学校入試のあり方につきましては、都道府県教育委員会に文部省といたしましては基本的な原則を示しまして任せているという状態でございますので、たとえば内申書の比重でございますとか、あるいは偏差値による進路指導でございますとか、いろいろ問題がありますので、その点も大臣の指示によりまして、省内のプロジェクトチームにおきまして、これからどのような点に改善を加えたらよろしいかという点を現在検討しているというところでございまして、少しでも事態を解決するために努力をいたしたいと、かように考えているところでございます。
  284. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 総理にもお伺いしたいのですが、結局いまのような問題、いまの学校教育のあり方が受験競争に重点がいってしまって、人間形成というか人格教育というものが二番手になってしまっているといったような嫌いがあるのではないか。だとすれば、それは一体どうしたらいいとお考えになるか、お伺いしたいと思うのですが。
  285. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おっしゃるとおり、過度の受験競争というものが子供たちの生活、あるいは学問的なあるいは肉体的な伸びというものをずいぶん阻害しているということは認めざるを得ません。このために中教審等を通じましていろいろ御論議も願い、あるいはまた国立大学協会等とも連携をとっていろいろな改革をやっているところでもございますが、やっぱりある制度をやる 場合には必ず別の問題が出てくるという、これは社会制度のどこにおいてもやむを得ないところでございますが、いろんなことをいろいろ試みてみて、そして過ちを改めながらよりよきものへ前進していく、それが現実的な立場ではないかと思います。  しかし、今日ああいう暴力の問題その他を見ますと、いかにも噴き出た感じがいたします。そういう意味において、一番大きな原因であると思われるような問題については、みんなで力を入れてメスを入れていく段階に入ってきていると思います。その中の一つに受験競争問題というものがあるのではないだろうか。その基礎的な問題としては、知育、徳育、体育のバランスの問題も基礎的な問題としてはあると思いますし、あるいはさらに学校と家庭の結びつきという問題もあるように思います。これらの問題については、中教審を中心にしまして専門家の御討議を経て、そして改革を着実に前進さしていきたいと思っています。大事なことは、政治権力が教育問題や家庭に過剰に介入してはいけない、やはり政治権力というものの限度をよく知らなければならぬと、この点は注意してやらなければいけないと思っているところでございます。
  286. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 警察庁の方にちょっとお伺いしたいと思うのでありますが、警察ざたになったといったような問題は最近の動向としてどうなのか、ふえているのかどうか、こういったことも参考にちょっとお伺いしたいと思います。
  287. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) お答え申し上げます。  少年非行はここ数年来著しい増加を続けてまいりましたが、昨年の刑法犯少年の補導人員は十九万一千九百三十人でございまして、前年比七千二十八人、三・八%の増加ということで、増加率自体は昨年はやや鈍化をしたという傾向でございます。しかし、戦後最悪の状態が依然として続いていることは事実でございます。内容的にも、中学生の非行が著しく増加をしておる。それから校内暴力事件の多発、あるいは傷害とか恐喝といった粗暴事犯が増加をしておる。またさらには、シンナー、覚せい剤等薬物の乱用少年の増加といった、状況としてはきわめて憂うべき状況にあろうかと思います。  その中で特に校内暴力事件につきまして申し上げますと、五十七年中に警察が把握をいたしました校内暴力事件は千九百六十一件でございます。前年に比べて百二十四件、五・九%件数で減少をしております。しかしながら、相変わらず内容的には凶悪粗暴な事件が多いことと、校内暴力事件のうち特に問題の多い、教師に対する暴力事件が八百四十三件発生をいたしました。これは前年に比べて七十一件、九・二%と大幅な増加を示しておる、こういう状況でございます。
  288. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 文部大臣に今度改めてお伺いしますが、われわれの年代の者は、中学生のころ生徒が先生を殴るなんということは聞いたこともないし、考えたこともないし、こういうことは実に驚くべきことだと思うのであります。しかし、この原因を考えなければ対策も立たないと思うのでありますが、教育行政のやはり頂点に立つのは文部大臣ですから、これらの問題についてはやはり考えなきゃいかぬと思うのでありますけれども、一体どうしたらいいか。  たとえば、いままでの文部大臣の発言の中にも占領政策云々という話もあったようだし、憲法という話もあったようでございますが、しからば教育勅語やら軍人勅諭というものが効き目があったと考えるのか、それとも、やはり最近の社会的な動向がしからしめたものでやむを得ないというふうに考えるのか、それらの点についてもあわせてお伺いしたいと思います。
  289. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 確かにわれわれの古い人間から見ますると、少なくとも学校の先生を殴り飛ばすとか、けがをさせるとか、あるいは学校を壊すというようなことはちょっと想像ができなかったです。まあこんなことを言うとまた古いからということでおしかりになる方があるかもしれませんが、昔は先生というものは神々しいといいましょうか、非常にとうといものであると尊敬をしておった、信頼をしておったといいましょうか、私は教育には尊敬と信頼が大事だ、また教師の方では教え子に対しては非常な深い愛情がなければならないと、こういう考えでおるわけでございますが、そういう点に欠けておるのはどういうわけだろうかということを私も素人ながらいろいろ考えております。  昔は修身とかなんとかありまして、あるいは道徳とかいう項目もありまして、いまの学校でも道徳ということを教えるように最近なっておりますけれども、昔のような項目を立ててやるということはなかったです。どちらがいいかどうかということはやはり考えてみる必要があるのじゃないか。  私は、御存じのとおりに、いまの教育は憲法の精神に従って、教育基本法には憲法のこの精神を子供に植えつけるのが教育の道だと書いてある。すばらしいことだと思っている。先ほど総理大臣からもお話しになりましたが、御承知のとおり、いまの憲法はとにかく社会が平和でなければならない、日本の国が平和でなければ幸せにならない、平和を第一に取り上げておる。平和主義とか言われております。それから、人間の尊厳を考えなければならない。それには自由であるとかあるいは人権であるとか、こういうことが原則として掲げられておる。そういうすばらしい原則を子供の時代から教育をして、より平和な物心両面にわたる豊かな国をつくらなければならない。これが憲法の精神だと思いますが、そのことを教育によって指導しなければならないと教育基本法につぶさに書いてあります。  私は、そのとおりに教育がいっておりますれば、人間の社会でございますから何もかにもきれいにいくとは思いませんけれども、いまのような、すさまじいと私言いますけれども、すさまじいような世の中にはならないのじゃないかと、こういうことを考えておるわけであります。  私が就任早々新聞記者会見で、こういう非行の問題等については一面占領政策にも原因があると、こういうことを言いましたらいろいろ非難される向きもありますけれども、全部これが占領政策にとは言いませんけれども、占領政策にも原因がある。これは私は、あるいは反論される方もあるかもしれませんが、こういうことを考えておるわけなのです。いま憲法なり教育基本法でやりますとこんなふうにならないと思うのですけれども、御承知のとおりに、占領政策ではあらゆる日本の歴史、地理あるいは習慣、習俗あるいは隣組というようなそういう組織まで全部これ一遍破壊しなければならない、こういう占領政策になっておりました。  私はいまから考えますと、その当時に生きておったわけでありますが、そこまでしなければ過去の、外部から見ますると悪習が、悪習といいますか、人権が余りにも束縛されたと、こういう状態が改まらないと、そういう意味でそういうことになったと思いますが、私はこれはその当時としてやむを得ないことである。  そこで個人の尊厳を言い、人権の尊重を言い、自由を鼓吹した。ところが、それまではいいのですけれども、私から見るとそのほかにもまだ要素がある。これは私は、日本人の受け方が間違っておったと、こう見るわけでございます。個人の尊厳あるいは自由、人権というものを尊重しなければならないけれども、それだけでは済まない。憲法にも書いてありますように、教育基本法に書いてありますように、お互いに助け合って連帯の社会をつくるようになっておる。人を尊重しなければならないと、こういうことがいろいろ書いてあるわけであります。その趣旨が教育の面で本当に生かされておるのかどうなのか、こういうことを今後の教育についてもう少し、それこそ衆知を集めてやるべき必要があるのじゃないかということを考えておることでございます。
  290. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 占領政策についてもお触れになりましたが、私も占領政策がよかったとばかりは言 えないと思います。われわれ、大変に占領政策で迷惑をこうむったというふうに感じた点の方が多かったと思います。しかし、昔のことをあれこれ言ってみたって始まらないわけで、これからどうしたらいいかということなのです。  そこで、たとえば昔はやはり子供のうちから塾に通うなどということは余りなかったような気がする。この塾がいっぱいあって受験競争に拍車をかけているという現行の教育のあり方というのは、果たして妥当だというふうにお考えになるのかどうか、この点もお伺いしたいと思うのです。
  291. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私が妥当であるとかないとか言うと言い過ぎになるかもしれませんけれども、私はそこまでしなければいかぬものかという感想を持っております。  そこで、私は素人ですということをよく言いますけれども、素人ですから文部省の専門家の諸君に、私はいま教科書を幾らかずつ読んで、とても忙しいから全部読めませんが、小学校、中学校、高校の教科書を見ると、われわれが経験したときの教科書とは全然違っておりまして、事細かに詳細、高度になっております。こんなにつぎ込んだら頭が爆発するんじゃないかということを私は申し上げておるのですけれども、だから、そこで、こういう教科書を本当にそしゃくしてなかったら、いまの中学なら高校、あるいは高校ならば大学、試験は受けられないのかということを私は率直に聞いておるのです。これだけ物知りになって、物知りだけじゃいけませんけれども、これだけ内容の豊富な教科書で教育を受けて、そしてなおかつ塾に行かなければならぬ。学校から帰ったらもう御飯もろくろく食べないですぐに塾に通う。私は率直に言って子供がかわいそうだと思う、かわいそうに見えます。そこで、そうしますと、いやこれだけそしゃくしておれば大体中学校の教科書で高校の試験は通る。ところが、通らないところがあるんだそうです。いわゆるエリート校というのは高度な試験をするそうでございます。教科書だけじゃとても間に合わない。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 私はきょうはいろんなことを言いますけれども、教科書をよく勉強しそしゃくしておれば、そんな塾なんか行かぬでいいはずだということを、これまた記者会見でそういうお話をしました。どっかの新聞に出ておったんですよ。どこからか遠いところでございますが、どなたとおっしゃいませんでしたけれども、私が留守中に私の自宅に夜電話がかかってきたそうであります、どっかの奥さん。文部大臣がそういう認識では困るんだと、そういう塾にも行かぬで試験を受けられるようなことを考えられたら困るとえらい文句がきたと言って私の家族が言っておりました。まあ教育熱心なのは結構でございますけれども、これは子供のことをもう少し考えて、親御さんたちといいましょうか、社会全般がそんなに苦しめなきゃ——苦しめるというと言葉がおかしゅうございますが、苦労しなければ、あんなに塾だ何だということでやらなければ、学校教育、一人前の人間になれないのかどうかということを、私は率直に世間の皆さん考えてもらいたい。これは文部省がどうするこうするというわけにいきません。しかし、こういう点もいろいろ懇談会等でも議論がありますから、今後こういうことも呼びかけていきたいなとは思っておりますけれども、皆さん、塾にやってもらっちゃ困りますと言うわけにもまいりませんし、塾のあり方等についてもこれは世間的に考えてもらわなきゃならない時代に来ておる、かように考えております。
  292. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 文部大臣からは憲法の精神ということについては評価をされた言い方がされましたし、改めて憲法が原因であるというふうにはお考えになっていないようでございます。  そこで、憲法問題の締めくくりでもう一度総理大臣にお伺いいたしますけれども、先ほど来どうもはっきりしておりませんが、見直すべき点を論議してまとめる機関というのはどこにあるのか。この点がないまんまただ勉強をしろ、見直せというのは無責任になると思うんです。どっかでまとめる、こういう機関があるのかどうか。また、これらについては密室の中でこそこそと結論だけを出して、ぱっと持ち出してまるごとのませるというようなことをしてはならぬと思うのでありますが、それらの論議の集約という機会をどのようにお考えになっているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) わが国は自由民主主義の国でございますから、民間側の発意において自由に論争もし、勉強もし、見直しもしていただいたらいいと思うのです。学会の中におきましても、公法学会において勉強している人たちも多いでしょうし、あるいは政党の中におきましても、自由民主党のように憲法調査会をつくって見直しと検討をやっておるところもございますし、あるいは民間の団体、有志の集まり等においてやっておるところもあります。あるJCのサークルでそういうことをやっておるところもあるということを聞いております。  自由に、みんなが自分たちのイニシアティブで多彩に、自由にやっていただくというのが民主主義の好ましいやり方でありまして、それをどっかで総括するとか結論をつけるとか、そういうことをやることは必要はないと考えております
  294. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それならば、そんなにむきになって、見直しをしろの勉強をしろのだの、よけいなことを言うこともなかろう、こういう気がするんですよ。しかし、この点については総理と幾らやっても結論が出ませんから、ほかの問題に入ります。  武器技術の輸出の問題でございます。  昨日もいろいろと問題になりました。そして、この武器技術の輸出の問題は、国会の決議に穴をあけたんじゃないのか、こういう心配がわれわれはあるわけですよ。抜け道をこさえたんじゃないのか。そうなると、これは国会の決議の権威に関係する問題でありますし、これはゆるがせにできないと思うのです。しかも、武器の本体の輸出の点については、中曽根内閣はと、こういう言い方をして、やらないんだと、こういうふうに言われておる。この辺はどうもあいまいだという気がするんですが、武器技術の問題は、結局武器の輸出の問題とこれはもうどれだけ違いがあるのかということは疑問だと思うんですが、国会決議に穴をあけたままで果たしていいのかどうか、その修復をしないでいいのかどうかという点をまずお伺いしたいと思うのです。
  295. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今回の政府の決定が国会の決議に穴をあけたんじゃないかと、こういう御趣旨のようですが、私どもさような不遜な気持ちは毛頭ございません。  きのう申し上げましたように、政府としては、国会決議には違反しないと。慎重に厳正に政府としての政策の一部変更をしたものである。国会の御決議については、これは政府側で行政府として有権的な解釈をする立場ではない。私どもは違反をしてないという立場でこういう決定をしたのであるから、ひとつ政府のこの立場を国会側においても御理解を賜りたいと、こういう私どもの立場でございます。もちろん、本件については行政府と立法府との関連というきわめて重要な問題を含んでおるように思いますが、これらについては国会においてひとつお決めをいただきたい。政府としては、政府の立場は先ほど言ったように違反をしてないつもり、将来も守っていくつもりでございまするので、この立場をぜひ御理解を賜りたい、これが私どもの基本的な考え方でございます。
  296. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この点は、率直に言って政府側の一番怪しい点なんですよ。いまだって後藤田官房長官は、違反をしていないつもりですと、小さい言葉だけれどもそう言ったんですよ。自信がないからそう言ったんでしょう。例外があっちゃいけないんですよ、これは。武器輸出しないと。しないと決めたらどこに対してもしないということでなきゃ、これは原則は通りませんわね。  たとえば、禁煙という以上は、そこでたばこを吸っちゃいけないということなんですよね。だれ それは別だというわけにいかないですよ、これは。ところが、この武器技術の問題については、禁煙という張り札はしてあるけれどもそのわきに、ただしレーガン様御一行を除くと、こう書いてあるようなものですね。そういうことになりませんか。禁酒という以上は、酒を飲んじゃいけないということなんですね。ただし小原庄助さんは除くと、こういったら、これは禁酒にならぬわけだね。こういう例外を設けるということは、決議そのものの権威を失うことになるんじゃないかという気がするんですよ。その点はどうですか。
  297. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今回の決定はアメリカに限り、しかもそれは武器技術に限っているのですね。それで、瀬谷さんが言っていらっしゃるのは武器の輸出、これについて中曽根内閣としては武器の生産ですか、こういうものはやらないと、こう言っているんで、私は、武器技術と武器とはこれは相当に違うのではないのかと思いますね。  武器の生産、輸出ということになると、ある意味において死の商人といったような批判を受けるおそれがあるわけでございます。ここらもやっぱり考えなきゃならない。むしろ技術の方は、私のこれは見解なんだけれども、汎用技術と武器技術との関係においてはなかなかむずかしい面があるなという気がいたします。  いずれにいたしましても、中曽根内閣云々というのは、武器の共同生産あるいは輸出、こういった点についてはやる考えはない、こう私は言っておるように思うわけでございます。
  298. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それはちょっとね。武器と武器技術は違うかのようなことを言われましたけれども、じゃ具体的にどう違うかということになるとむずかしいですよ、これは。まんじゅうの皮は売るけれどもあんこは売らないんだという、こういうふうな言い方でもってごまかしがききますか、実際問題として。その点がどうも怪しいと思うんです。言葉のごまかしじゃないんですか。そういうごまかしがあるから政府の答弁が苦しくなるんですよ。その点どうですか。
  299. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) だんだんそういうところまでこれ議論が詰まってきますと、武器とは何ぞやといったようなことになりまするので、これは専門家がおりますから、通産省の専門家から御答弁をしていただくことにいたしたいと思います。(笑声)
  300. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は全然おかしくありません。この武器技術についての具体的な輸出に関する責任は、私、通産大臣にございます。なぜ笑われたのかよくわかりませんが、専門家ではないという意味かもしれません。  しかし、そこのところを自信を持ってやらなければ、これはわが日本として将来に大きな禍根を残しますから、きちんと関係省庁でこれは詰めてあります。したがって、具体的には法律に従って、外為管理令あるいは輸出貿易管理令等によって、堀田ハガネ事件の際にとられました国会の厳重な改善、管理を望む、せよという政府の方針に対する決議がありますので、その点はいささかももぐるような、堀田ハガネ砲身事件のようなことは起こらないように措置済みであります。すでに改正済みである。それは税関のところに至るまで、物あるいは技術の対価、そういうものできちんと示してありますが、武器技術というのは、極端に言うと、それを頭の中に入れて飛行機に乗って人間が向こうに行っても、それは技術に違いないと私は思うんですよ。  ですから、その証拠には、国会でこのことを例に挙げることの了解はとっておりませんが、全く反対の現象、すなわち、アメリカで先端技術の一分野に対して協力をしていた企業が、具体的には京都セラミツクでありますね。これがセラミックの本来の生産研究をやっているわけですが、そこが、アメリカに取引をいたしておりました会社から、やめて新会社をつくりたいから資金援助を頼むというグループに資金を出して、そして赤字に赤字を重ねながら、最終的には八三%ぐらいまで持ったとか言っていました。ところが、そのうちにその技術者の研究が実を結んで、アメリカとしては実を結んでですよ、そしてアメリカの国防総省から指定された、その製品についてですね。そのかわりアメリカは、アメリカの国防総省の、国の定めている国家安全保障上の機密ということにそれを位置づけて、日本の役員をまず全員アメリカ人にかわれという命令が出た。やむなくかわった。ところが、門に行っても門のところで門から入らしてくれぬ。じゃホテルのロビーで会おうと言っても来てくれぬ、なぜかと言えば国務省が行くなと言ったと。それじゃもう資本を出した者としては、会社経営というものに全く何もできないことになるからということで、アメリカの別の会社がそれを日本の持ち分を買いたいと言ったので、京都セラミックは売り渡したということであります。したがってこれは、京都セラミックは普通のセラミックの技術の進展のための研究会社であると思って資本を出していたところが、それがアメリカの国務省の指定する機密保護法の範囲内の物品を完成するに至った。ここには技術的に京セラは関係していないわけなのですね。したがって、京セラとしては、とてもそんな物騒な、日本人の管理人が立ち入りもできないような企業に出資しておく企業者はいないということで……(「そうなっちゃう」と呼ぶ者あり)だから引き返してきたのですよ。やめたと言って帰ったのですよ。だから、これは逆の例ですが、日本の場合でも、国内の民間の企業とアメリカの国、ペンタゴンかもしくは国務省か、それとの引き合いが仮にあった場合でも、そのようなことが示しますように、民間の企業に対しては、これは全くコマーシャルベースで、嫌なものは嫌ということを何も強制もしませんし、企業の判断にゆだねるわけであります。  そこで、武器とはどこまでかということは前の臨時国会でもお答えしたと思いますが、頭の中の知識から始まって、設計図あるいはまたそれがいろんな部品、部分品というようなものになりましょう。あるいは技術の完結したものを一緒にしてもらわなければわからないというものがあったら、形状は武器の形に似たものまでいくと思う。しかし、そこまでいくと、それから先は試作品ならばいいけれども、それから先の生産を国内でやるということは、共同生産までしないという総理の言明があります。国内でアメリカの軍のために製作をするということも、武器として完成したものを出すのですから、それももちろんしないということでありますから、技術の完結という点でどうしても形を示さなければならないものは出ていくことがある。しかし、これは形状は武器であっても武器ではない。そういうことで、試作品という数の少ないものでしょうが、そういうものについて限って認めるので、そこで、もう完全に終結点であって、それから先武器の分野には入らないということで関係省庁明白に取り決めて、総理のもとでその了解を得た政府の方針でありますから、これはこれから先それが想像つかないような状態に広がっていくということは絶対にないと確信をいたしております。
  301. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 通産大臣がこの武器の輸出についてはかなりはっきりとした態度をおとりになったということはわれわれも承知をいたしておりますが、やはり事の起こりは、アメリカに対する配慮あるいはレーガン政権からの注文、防衛努力の要請といったようなことからみんな出てきているわけです。  この武器技術の輸出の問題あるいは武器の輸出の問題、これは武器技術を認めるということは、武器の方にそのまま移動、連動するという可能性が、だれが考えたってあるわけですよ。どれだけ違いがあるかといったって、事実上違いなんかあるのだかないのだか素人には区別がつかないようなものです。そこで妙な抜け穴をこさえられると大変にわれわれはこれから先心配なのですけれども。  そこで今度は、三海峡の問題もやはり武器技術と同じような事の起こりではないかという気がいたしますから、その点についてもお伺いしたいと 思うのでありますけれども、これまた統一見解として、三海峡の封鎖をアメリカ軍が行う場合にはこれはどうするかといったような問題が、論議されましたね。そうしたら統一見解では、国籍不明の艦に攻撃を受けたというような場合には云々というお答えが、やはり衆参両院で出てきております。この点、ちょっとこれまた問題ではないかと思うのでありますが、もう一度この点をはっきりと述べていただきたいと思います。
  302. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 三月八日に衆議院予算委員会の方に官房長官より提示さしていただきました統一見解の中で、一つの「理論的な可能性の問題として、我が国に対する武力攻撃は発生していないが、我が国の船舶が国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合等我が国に対する武力攻撃が非常に緊迫性をもっている場合において、そのような米側の要請に応ずることが我が国自身の安全の確保のため是非共必要と判断されるような可能性も完全には排除されないので、そのような例外的な場合にはそのような事情を考慮に入れるべきである」と、この点につきまして、「国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合」ということとの関連で御質問がありました。そこで私から御答弁さしていただいた経緯がございますが、いずれにいたしましても、ここに申し上げておりますことは、「我が国に対する武力攻撃が非常に緊迫性をもっている場合」と、そういう場合の一つの例示といたしまして、「我が国の船舶が国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合」ということを申し上げた。その場合に、国籍不明であるからおかしいではないかという、さらに御質問がありましたわけでございますが、ここで申し上げておりますことは、確かに国籍がまだ確認されていない、理論的な可能性の問題として、日本の船舶を攻撃している艦船の国籍がまだ確認されてはおらないという事態でありましても、その当該攻撃を行っております艦船の国籍が、他方におきましてアメリカが自衛権を行使しておる相手の国の国籍と同じものである。要するに、同じ国に所属しておる艦船によって攻撃されているのだと、そういう蓋然性が非常に高い場合というのが状況によってあり得るであろう、そういう場合を念頭に置いてここに一つの例示として申し上げた次第であるということを衆議院の方で御答弁さしていただきましたが、同じことを御説明さしていただきます。
  303. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 回りくどければいいというものじゃないのですよ、これはね。ごちゃごちゃ言ってみたけれども、何のことだかさっぱりわからぬ。これじゃ困るんですな。  大体、潜水艦というのは海の中にもぐって攻撃するのでしょう。やられた方はわからないですよ。国籍不明というのはあたりまえなんですよ。潜水艦がもぐって攻撃をして、攻撃をした後で浮かび上がって、ただいまの攻撃は私どもでございます。こんなことは余りないですよね。そうすると、潜水艦で攻撃を受ければ、これはもう国籍不明ということになってしまう。具体的な例とすれば、アメリカの潜水艦に日本の日昇丸という船が沈められたこともあったでしょう。ああいったような場合が出てきて、アメリカの潜水艦に沈められたにもかかわらず、国籍の不明の艦に攻撃を受けたからというので、三海峡の封鎖をやるということになったらどうなりますか、これは。おかしなことになりませんか。
  304. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 余り軍事的な問題、専門的な知識ございませんので、私から御答弁申し上げることは必ずしも適当でないかもわかりませんが、もちろん委員御指摘のように、単発的な潜水艦の攻撃が行われた場合に、その潜水艦がどこの国の潜水艦であるかということがわからない場合というのが、それはそういう単発的な場合にはあろうかと思います。しかし、他方におきまして、先ほど私が申し上げましたことは、統一見解をごらんになっていただけば、そこに明らかになっておりますが、単に国籍不明の艦船——潜水艦から攻撃があったら、直ちに他方におきましてアメリカの海峡における実力行使を日本として認めるということを申し上げておるわけでは毛頭ございませんで、あくまでも「我が国に対する武力攻撃が非常に緊迫性をもっている」と、そういうふうに判断される場合に、日本「自身の安全の確保のため是非共必要と判断されるような可能性も」、「理論的な可能性の問題として、」「完全には排除されないので、」そういう場合は諾否を一応留保しておく、原則ノーであるけれども、諾否、イエスという場合を一応留保しておく必要があるであろう、こういうことを申し上げておる次第でございます。
  305. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃ、だれがどうやって判断するのかと、こういう問題が出てきますね。先ほども申し上げたように、国籍不明の艦に攻撃を受けたと、それじゃこれはてっきりソビエトに違いないということになっても、実際はアメリカかどこだかわかりはしません、潜水艦なんというのは。右側の人間にひっぱたかれたからといって左側の人間を殴り返す、こういうことをやっちゃこれは大変な問題になりますよ。そういう可能性があるのじゃないか、統一見解には。だからそのことを私は指摘したのです。そんな心配はないんだと、こういうふうに言い切れるのですか。
  306. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 前提を御理解いただきたいと思うのでありますが、これはあくまでも一つの、もともと御議論の発端が非常に理論的な可能性の問題としてのいわばケーススタディー的な御質問がございまして、これに総理がお答えになられた経緯があるわけでございますけれども、前提となっておりますことは、いずれにいたしましてもアメリカが、まあこれはどこの国と申し上げることは適当ではございませんが、仮定の問題といたしまして、アメリカが自衛権の行使をする立場に立って行動をしておると、その自衛権の行使の一環としてわが国の近辺の海峡におきまして実力を行使したいと言って日本の了解を求めてきたと、こういう仮定の前提の問題でございます。したがいまして、アメリカが対応しておる相手の国というのは、そこははっきりしておるわけでございます。  先ほど私が申し上げましたことは、そういうわが国の船舶に対して攻撃を行っておる国籍不明の艦船の所属国が、そのアメリカが他方におきまして自衛権を行使しておる相手の国と同じ国の艦船であるという蓋然性がそのときの状況から見て非常に強いと、そういう場合においては、日本の安全を守るために、アメリカのそういう行為を容認することがあり得るかもしれないと、そういうことが統一見解内容でございます。
  307. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 回りくどいだけで、どうもよく意味がわからぬですな。しかし、回りくどい話を延延と続けられますと、きょうは終わりの時間の予定もあるようでございますから、これ以上申し上げませんけれども、要は、平和に対する不安というのは日ソの間より米ソの間にあるのじゃないか、こういうふうに思われるわけです。第一、三海峡の封鎖にしたところで、アメリカの側の強い要望でしょう。シーレーンの防衛だって同じでしょう。そうすると、米ソの間にトラブルが生じた場合に、日本がそれに巻き込まれるというおそれがあるのかどうかということをわれわれは心配しているのですよ。日ソの間には格段の武力紛争の起こり得る可能性というものは現在はないのじゃないかというふうに考えますが、その点はどうでしょうか。
  308. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) わが国の周辺、特に極東の地域におきまするソ連軍の増強というものは、わが国にとりまして、外務大臣も御答弁のございましたごとく、潜在的な脅威であることは事実でございます。しかしながら、総理大臣も御答弁ございましたが、これが顕在化するか、つまり潜在的な脅威であってもそれに対して意思が伴わなければ顕在化いたさないわけでございますが、私どもは直ちにソ連にそういうような意思があるとは今日考えてはおりません。
  309. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それならば、こちらの方からやたらとアメリカの武力を背景にして戦争準備を急いでいるかのような印象を与えるということは、外 交政策としてはよくないんじゃないかなと、こういう気がするのです。特に北方領土の問題についていろいろと言われておりますけれども、武力を背景にして返還交渉を行うということでは相手は乗ってこないというふうに考えられるんですが、この北方領土の問題、先ほども総理もちょっと言及されましたけれども、対ソ外交と北方領土の関係、あるいはこの解決方法はどのようにされるおつもりなんでしょうか。
  310. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 対ソ外交につきましては、これは歴代内閣一貫をいたしておりまして、御承知のように、やはり北方四島があるわけですから、この未解決の問題を解決をして、一日も早く平和条約を結ぶと、そして真の日ソの友好関係を確立するというのが日本外交のこれは基本でございます。  ただ、残念ながら、ソ連はもはや解決済みだということで、そうした交渉にも頑として応じようとしないと、こういう状況にありますし、またソ連自体が御承知のようなアフガニスタンに対する軍事的介入であるとか、あるいはまたポーランドに対する介入といったような膨張政策等も進めておるわけでございますし、同時にまた、日本外交姿勢あるいは防衛姿勢、これも一貫して基本姿勢を堅持しておるわけでございますが、これに対していたずらに、私から言いますと誤解といった面もずいぶんあると思いますが、そういう立場で日本を一方的に批判をしております。そして、SS20等につきましては日本に向けるというふうな、そういう発言すらある。こういうふうなことでありまして、われわれとしても非常にこれに対して警戒をせざるを得ないわけであります。しかし、われわれは領土問題が解決はしておりませんけれど、何もソ連との間では対決を好むものではありませんし、あくまでもやはりソ連との間の実務的な交流あるいは交渉といった関係は、パイプは持ちながら、この一方的にはソ連との関係を改善したいということで努力をいたしておるのが今日の実態であります。  なお、ソ連が極東において軍事的な強化をしておるということも事実でございます。先ほど防衛庁長官も答弁をいたしましたように、これに対して日本としては、基本的な立場としてはソ連がしかし日本に対する侵略の意図というものは持っていない、こういう判断のもとに、潜在的脅威というふうにわれわれとしては判断をいたしておるわけでございますけれど、いまのソ連のああした北方領土に対する軍事力の増強であるとか、あるいはSS20の極東への配置、さらにその増強といったような状況を見ますると、その潜在的な脅威というものもやはり増大しておる、こういうふうにわれわれはとらざるを得ないと思っております。
  311. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 SS20の問題を言われましたけれども、日本でも三沢にF16を配備するし、エンタープライズあるいはミッドウェーというような、ソビエトのミンスクの倍もあるような航空母艦が日本の港には出入りしているわけです。そういう点を考えると、この三海峡封鎖といったような新しい問題を提起しますと、事実上、これはアメリカがやったとしても、その了解を与える、日本が了解を与えるということになると、これは共犯者になってしまって、国際法上は事実上の戦争状態が発生をするということになるのじゃないかと思うんですね。そうすると、片手であいくちを突きつけて、片手で北方領土を返してくれと、こういうような交渉が事実問題としてできるのかどうかということを考えなきゃならぬと思うのですが、その点はどうですか。
  312. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはわれわれ何もあいくちを突きつけて領土を返してくれ、こういうことを言っているわけじゃなくて、日本本来の固有の領土でございますから、当然の権利としてソ連に対して強く領土返還を要求しておるわけでございますし、このわれわれの基本の考えというものは今後とも変わらざるものである、こういうふうに存じております。
  313. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 あいくちを突きつけているんじゃないというふうに外務大臣は言われるけれども、三海峡の封鎖ということは事実上ソビエトに対する宣戦布告の予言のようなものじゃないかという感じがするわけなんです。封鎖と言ったって簡単にできるものじゃないでしょう。踏切の遮断機おろすようなわけにいかないです。あるいは道路工事でもって交通どめの標識を立てるというようなものじゃないでしょう。機雷を敷設をするなりいろいろな方法でもって船が通れないようにするわけですから。そうすると、たとえば宗谷海峡の場合はサハリンに接しておる。対馬海峡の場合は韓国に接しておる。韓国もそれじゃソビエトに対して戦争状態を覚悟しなければこれはできないことになるのですよ。国際法上、三海峡封鎖というのは戦争状態を触発をするという、それだけの意味を持っているんだというふうにお考えにならないのかどうか、その点どうでしょう。
  314. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本のこの場合はあくまでも専守防衛という立場に徹しておるわけでありますし、日本の自衛隊もそのために存在しておるわけで、外国から攻撃を受けたときに日本を守るということで、日本は憲法からしましても外に出ていくということは一切ないわけでありますから、そういう意味においては脅威を与えるということはあり得ないわけでありますし、また三海峡の封鎖といったような事態につきましては、あくまでも日本が有事、攻撃を受けた場合の日本を守るための軍事行動ということを言っておるわけでありまして、基本的にはそうした有事の際における行動というものを踏まえて、ソ連に対して何らの脅威を与えるものでは一切私はあり得ないと、こういうふうに思っておりますし、私たちは平和裏のうちに話し合いでこの領土の返還というものを強く求める、今後とも話し合いで解決をして、そしてソ連からの返還を求めてまいりたい、こういう考えであります。
  315. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これでほかの問題にと思ったのですが、外務大臣、三海峡の封鎖がソ連に対する脅威を与えるものじゃないと思いますということをおっしゃったけれども、そこのところはちょっと問題だと思いますよ。  三海峡の封鎖、これは、宗谷海峡はサハリンまで全部日本でもって、あるいはアメリカでもってふさいでしまうということなんですよ。これが戦争状態にならないというふうにどうして言えるんですか。
  316. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私が申し上げているのは、日本が攻撃を受けた場合、侵略を受けた場合の三海峡の封鎮といいますか、総理大臣はコントロールと言っておられるわけでありますが、こういう自衛のための自衛権に基づく措置というものは、これは日本の自衛権の範囲内における措置としては私は当然のことではないだろうかと、こういうふうに思います。
  317. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 時間の関係でこの問題は一応後に残しておきまして、海峡の問題が出ましたから、青函トンネルの問題もここでお聞きしてみたいと思います。  先ごろ総理がボタンを押して、青函トンネルの先進導坑が貫通をいたしました。これはまさに画期的なことだろうとは思いますけれども、じゃ、この青函トンネルができ上がって、それを一体どういうふうにするのだという問題ですがね、まだどうも方針が決まってないということを聞いておりますが、総理考え方をまず第一にお伺いしたい。
  318. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 瀬谷委員がおっしゃったように、青函トンネルはすばらしい国家的プロジェクトと、こう思っています。あと二年ぐらいしますといよいよ通るわけですが、その際は在来線を通してみたい。問題は、そのときに借料等々どうするかと、こういうことが瀬谷さんの御心配のところだろうと思いますが、こうした問題等々はこの国会でお願いしている再建監理委員会、そういうところで御審議いただくというふうな感じを持っております。
  319. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 一体この青函トンネルの使用料はだれが払うことになるのか、国鉄としてこれを払うことになればどうなるのか、それからもし国鉄 が払わないとするとどこの機関が払うことになるのか、その点国鉄総裁の方からまずお伺いしたいと思うのです。
  320. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 原則として鉄建公団でつくられた線路を私の方がお借りをして走らせるというのは現在まで決まった一般的な考え方だと思いますので、われわれとしては、トンネルが貫通をいたしました場合にはやはりわれわれの方で運営さしていただくというか、運営せざるを得ないというふうに考えております。  その場合に、借料を払うわけでございますけれども、従来鉄建公団がつくられました線路については大別して二つの方式があって、一つは無償で貸してもらう、これは地方交通線等でございます。それから一つは私どもが有償で借りるということでございます。ほとんどすべての線路は、建設の当時からどれが有償かどれが無償かということは確定をいたしておるわけでございます。俗にAB線と言っておりますのは無償であり、CD線と言っておりますのは有償であるということになっておるわけでございますが、実は青函トンネルについてはAB線ともCD線とも決まっていないわけでございまして、これはわれわれとしては大変不満であります。政府でぜひAB線あるいはCD線、あるいはその中間的なものというようなことでも結構でございますけれども、その借料計算のベースを決めていただきたいということをかねがねお願いをしているところでございまして、ただいま運輸大臣から御答弁ございましたのも、監理委員会等でそれをもう一つ煮詰めてもらうということをおっしゃったものと考えております。
  321. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この種の巨大なプロジェクト、大きな投資、そのツケが国鉄にそのままかぶさるということになると、累積赤字は切りがないと思うんです。今日十六兆という膨大な累積赤字があるわけでありますが、それらの赤字の中には、この種の工事費というもののパーセンテージが非常に高いと思うのでありますが、その点どうなんでしょうか。まず国鉄の累積赤字の内容についてお伺いしたいと思います。
  322. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 国鉄の経営のぐあいの悪い点を表示する数字として、いまおっしゃいました累積赤字という概念と、それから赤字の額とはちょっと別に借りております累積債務という概念でよく表示されるわけでございますが、いまおっしゃいました十六兆という数字は、五十六年度末におきますところの累積債務の方の、借りました額の方の額でございます。  その累積債務額で申しますと、五十七年度末には十八兆四千億ぐらいになるのではないかということが予算上表示されておりますし、ただいま御審議いただいております五十八年度の予算がそのとおり実行されるということになりますと、五十八年度末の累積債務は二十兆三千億という大変巨額になります。  それから欠損ということで申しますと、五十六年度末では七兆五千億強、五十七年度末では八兆九千億強、さらに五十八年度末では十兆六千億強ということになると予定いたしております。
  323. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この国鉄の赤字なんですけれども、累積の債務、借金でもって採算の合わないところに工事をするということになれば、借金がふえるのはあたりまえなんですよ。人里離れた山の中にデパートをつくって大いに稼げといったって、これはだれがやったってできないでしょう。こういうことをいままで国鉄はやってきた。ところが、臨調の答申というのは、この累積債務のあり方について的確な診断を下してないのです。これが臨調の答申の一番抜けている点だと思う。  また、国の財政もちょっと似たところがあるのですね。いままで赤字公債をどんどん出して、それでいまになって首が回らなくなった。この点は国鉄の赤字それから国家財政の赤字、やや似ている点があると思うのです。  これらの赤字を解消するためにどうしたらいいかということになるのでありますが、大蔵大臣はきのうの答弁で減税についてどうもはっきりした答えがなかった。しかし、一体どうなさるおつもりなのか。きのうの答弁の中で歳出構造の見直しをしなきゃならぬということもちょっと言われたのです。じゃ、その歳出構造の見直しによってどれだけの財源が浮いてくるのかというようなことも具体的にこの際お伺いしたいと思います。
  324. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、この本予算審議をいただくに当たりまして、政府として財政改革に対する基本的な考え方を、予算審議の手がかりともなればと思って提出したわけであります。  その中の最初のところには、まず何としても赤字公債からの脱却、そしてひいては公債依存度を下げていく、こういう方向に努力をしなければならない。  そして、その手順といたしまして、とにもかくにもまずは歳出構造の見直しをしていかなければならぬ、こういうことを申し上げておるわけであります。  したがって、その歳出構造の見直しとは何ぞや、こういうことでございます。これにつきましては、先般来、いわゆる臨調あるいは財政制度審議会等から百数十項目にわたっての御指摘をいただいております。そういう点を一つ一つ具体的に精査をいたしまして、このことは個人または企業の分担すべきものではないか、あるいはこれは自治体の分担すべき分野ではないか、これはまさに国自身の責任でもって行うべき分野ではないか、そういう分野調整等を積極的に進めることによってまず財政改革の第一歩を踏み出したい、こういう考え方でございます。
  325. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 第一歩の話ばかりずっと続けてこられて、先のことがさっぱりわからないんですが、それでは時間の関係でもう一度国鉄問題に関連して臨調についてお伺いしたいと思うのですけれども、臨調の答申どおりに国鉄を分割をして、たとえば北海道、九州、四国、これらの地域の運営が運賃値上げをせずに、補助金をもらわずにできるのかどうか、その点をまずお伺いしたいと思うのです。
  326. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 臨調が、国鉄が大変な危機的な情勢、先ほど国の赤字と国鉄が同じだという話がありましたが、国の方は皆さんにいま御審議いただいておるのは五十兆円の予算です。ところが、国債が百兆円。国鉄は年間三兆円の仕事をするのに、さっき国鉄総裁から話があったように二兆円ずつの赤字、それがたまりたまって二十兆円。ですから、国の方よりももっともっと危機的な情勢であるということは瀬谷さんも御案内のとおりだと私は思う。そうしたときに臨調の方から一つの方法として分割、民営ということも考えるべきではないか、こういうふうな答申が出ているわけでして、私は、そういう答申などもいただいた今日において、国鉄再建のために再建委員会法案をぜひひとつ御審議いただいて、その委員会において経営形態を含めてどうにかしてこの国鉄をいかにしてすばらしいものにして残していくかというところに御審議いただきたい、こう思っております。
  327. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これもしかし問題の先送りですよね。臨調だって青函トンネルなんてのはでき上がることはわかっている。そうすると年間九百億ずつだれかが払わなければならぬのです。そういうことになるとどうすればいいかということだってちゃんと答えなければならぬ。そういう問題を先送りをしているのです。しかも、この膨大な赤字の内容について触れようとしていない。診断を間違っていますよ。内科疾患であるにもかかわらず、処方せんは水虫の治療薬か何か出している。こんなことで腹痛は治るわけがないでしょう。こういう間違った診断をしているものを尊重していったらどういうことになるんですか。尊重しても内容ができることならばいいです。できないことだったならば一体どうするのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  328. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) いろいろな疾患がずっとたまりたまった今日のことでございますから、ありとあらゆる階層において国鉄問題は御討議いただき、そしてそれがマスコミあるいは国民全体から注目されているこの時期にこそ、私は基本的 な問題として五人の委員会皆さんによって根本的にここ四、五年の間にその治療策をお話しいただき、それをまた総理直轄の中においてありとあらゆる政策を講じてまいりたい、こう思っております。
  329. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そんなきれいごとで解決できるとは思いません。しかし、いまの問題については、時間の関係もございますから、保留をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  330. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で瀬谷英行君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十六分散会