運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-05-25 第98回国会 参議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月二十五日(水曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十七号     ─────────────   昭和五十八年五月二十五日    午前十時 本会議     ─────────────  第一 内閣総理大臣中曽根康弘問責決議案瀬谷英行発議)(委員会審査省略要求事件)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 徳永正利

    議長徳永正利君) これより会議を開きます。  日程第一 内閣総理大臣中曽根康弘問責決議案瀬谷英行発議)(委員会審査省略要求事件)  本案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、これを議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳永正利

    議長徳永正利君) 御異議ないと認めます。  よって、本案議題といたします。  まず、発議者趣旨説明を求めます。瀬谷英行君。    〔瀬谷英行登壇拍手
  4. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました内閣総理大臣中曽根康弘問責決議案提案理由説明いたします。  最初に、問責決議案の主文を読み上げます。     内閣総理大臣中曽根康弘問責決議案   本院は、内閣総理大臣中曽根康弘君を問責する。   右決議する。    理由   一、中曽根総理大臣は、国会において「私は改憲論者である」と発言し、「タブーに挑戦する」、「戦後政治の総決算の時」などと言って国務大臣の憲法順守義務をないがしろにし、自民党総裁として憲法改正の運動と準備作業を推進させている。また、一月訪米に際して「日米運命共同体」論を唱え、「日本列島沈空母」化を説き、三海峡封鎖作戦について公言するなど、憲法精神を蹂躙する多くの言動を重ね、施策のなかで、具体的に展開しようとしている。このような政治姿勢総理大臣に率いられる中曽根内閣に対して、とうてい信を置くことはできない。   一、今国会の最重要課題一つは、政治倫理確立し、国民政治不信を解消することである。しかるに中曽根内閣は、法務大臣・官房長官等重要閣僚ロッキード事件裁判批判検察批判とも受けとれる発言をくり返し、また中曽根総理自由民主党総裁として衆議院における佐藤孝行田中角榮被告議員に対する議員辞職勧告決議案の取扱いについて、その審議を引きのばし討論採決を拒む自由民主党暴挙を容認し、ロッキード事件政治的、道義的責任を追及する道を封じようとしている。これは、内閣総理大臣の犯罪であり、日本政治史上消すことのできない汚点であるロッキード疑獄政治的、道義的責任を明らかにすることを妨げ、国民政治不信を一層深めるものであって、厳しく糾弾しなければならない。   一、中曽根内閣は、国権の最高機関である国会決議に背き、憲法違反軍拡政策を進めている。中曽根内閣は、核兵器搭載の疑いがある米国艦艇航空機等の我が国への立入りを容認しているばかりでなく、武器技術の対米供与を推進している。これは憲法と同時に、国是である非核原則武器輸出原則違反する暴挙であり、軍縮を目指す国際世論に背を向けるものであって、断じて許すことができない。   一、中曽根内閣は、本年度予算編成に当たって防衛関係予算を異常に突出させ、社会保障、医療、教育等国民生活に直結する予算をその犠牲にした。また、前内閣人事院勧告無視態度を改めようとせず、福祉諸手当や年金等にこれを連動させ、福祉切捨てを図ってきたことは断じて容認できない。   これが中曽根内閣総理大臣問責する理由である。  次に、問責決議案提案趣旨について説明をいたします。  中曽根総理大臣は、組閣以来今日に至るまで、戦後の歴代総理大臣のだれよりも露骨に軍事大国への道のりを進もうとしております。  アメリカ国民がどこまでレーガン大統領積極的軍備拡張政策を支持するか予測をすることはできませんが、いやしくも日本総理大臣が、いかに強い米国の要請があったとしても、節度を超え、先走ってレーガン政権に傾斜をすることは厳に戒めなければならないところであります。  中曽根総理は、新年早々アメリカに飛び、先ごろはASEAN諸国を歴訪いたしました。アメリカ訪問の際は武者人形のようにたけだけしく、その勇ましい発言の数々は帝国海軍軍人の再現を錯覚させるほどでした。ASEAN諸国を歴訪したときは、打って変わって、ひな人形のように優雅に振る舞い、鮮やかに変身して、日本は決して軍事大国にはならないことを強調されました。  しかし、中曽根総理日本列島を不沈空母になぞらえ、日本を盾として、有事の際の三海峡封鎖を公言し、一千海里シーレーン防衛に至るまで手を広げることを天下に表明したことをわれわれは忘れていないし、ASEAN諸国が知らないはずはないのであります。何はともかく、訪問する相手国によって色合いの全然違う発言をされることは、国際信義の上からも好ましくありません。これでは風見鶏ではなく七面鳥であります。  この国会の中で、中曽根総理みずから、憲法論議タブーがあってはならない、評価すべきは評価をするが、憲法は常に勉強し、検討を加え、見直していくことが好ましいと述べております。ところが、どこを見直し、何を勉強すればよいのかと問われれば、一切答えようとしませんでした。タブーがあってはならないと言いながら、肝心の要点はみずからタブーの煙幕を張って国民をはぐらかしております。もし国民に対して何もはばかるところがなければ、いかなる理由で何を見直すべきかを明言できないはずはないのであります。  それを明言できないのは、軍事大国への障害が現行憲法の第九条であり、総理真意が実は何よりも第九条を中心とする平和条項見直しにあるからではないでしょうか。日本列島沈空母を初めとする一連総理発言は、その真意日本戦時体制の着実な推進にあることを示しており、眼中すでに憲法なく、このまま推移すれば、一億国民がブレーキのきかない車で山道を走る思いを忍ばなければなりません。信をおくことのできない第一の理由であります。  次に、今国会で何よりも先にはっきりさせなければならなかったことは、政治倫理確立して国民政治に対する信頼感を回復することであったはずであります。  ロッキード裁判が長期にわたりなお決着を見ないのは残念でありますが、被告側の周到かつ綿密な訴訟戦術の展開によっていかに裁判そのものが長引いたとしても、国民は決してロッキード事件を簡単に忘れ去るものではありません。いわんや、事件がシロで、金銭の授受もなく、汚職はもともと存在しなかったなどという話を信ずる者はいないと思います。その裁きの結論ももはや時間の問題でしかないのであります。国民の注目を集めたこの事件も、ここまで来れば、政府はもちろん国会としても、国民の前に政治的、道義的責任のけじめを明らかにするための必要な措置を講ずる義務があると信ずるものであります。  にもかかわらず、政府与党態度きわめてあいまいのまま終始し、時としては閣僚の中から田中被告を弁護するための援護射撃と受け取れる言葉が何のためらいもなく発せられるに至っては、驚くほかありません。しかも中曽根総理は、そのような閣僚発言をことごとく黙認し、日本政治史上に大きな汚点を残したこの事件についても一切口をぬぐい、政治的、道義的責任国民の前に明らかにすることを事実上かたく拒否しております。こんなことで、国民の疑惑を一掃し、政治不信を解消することができるでしょうか。  政治最高責任者がこのような態度では、青少年の非行を云々する資格なしと言わざるを得ません。政治倫理確立という基本的な問題に対し、私情を差し挟んで、国民に対する信義をなおざりにするという無責任政治姿勢は絶対に許すことのできないところであります。第二の問責理由であります。  次に、中曽根内閣は、国会決議に対し勝手な解釈を下し、非核原則武器輸出原則等を骨抜きにして、憲法を空文化しようとしております。  アメリカ海軍に所属する世界最大原子力航空母艦、八万トンクラスのカールビンソン、エンタープライズや原子力潜水艦等が、丸腰で走り、核兵器を搭載していないというようなことは常識で考えられないことであります。この種の艦船日本寄港やF16の三沢配備を認め、武器技術から、なし崩しに武器輸出原則を形骸化していこうとするねらいは一体何なのか。総理みずからが発言をした憲法見直し論と、もくろみが全く一致をすることを改めて思い知らされるのであります。  中曽根総理は、火中のクリを頼まれもしないうちから進んで拾いに行こうとしていると見られても、いたし方ないのではないでしょうか。国会決議のたがを勝手に緩めることがどんな危険を招くことになるかを真剣に考えるべきであります。元来、国会決議憲法解釈は、時の内閣都合で勝手に拡大したり曲げたりできるものではありません。中曽根内閣はやってはならないことをあえて強行しました。許しがたい理由の第三点であります。  最後に、内政の問題に触れたいと思います。  本年度予算特色が、福祉犠牲にして軍事を優先した防衛費突出予算であることは周知の事実であります。戦前から、軍事費が増大すればそれだけ内政が圧迫される結果になることは、当然の成り行きだったのであります。本年度予算でも人事院勧告が凍結され、公務員給与犠牲のやり玉に上がりました。事は公務員のみにとどまらず、全勤労者の賃金を抑える有力な口実になり、年金等に連動し、弱い者が結局重いしわ寄せを受ける結果となりました。また、不公平税制の是正や国民の待望久しかった減税問題についても、回答を渋り、最後まで逃げの姿勢に終始しました。  内政外交ことごとくが厳しい批判にさらされた中で、中曽根総理行革に退路を求めたかに見えました。行革三昧などというきざな言葉も出ましたが、中曽根内閣行革なるものが、世間を欺くとんだ食わせものであることを改めて指摘しなければなりません。  行革の原点となった第二臨調がそもそも財界主導であって、決して民主的な人選、運営が行われたわけではないことは、いまや隠れもないところであります。臨調答申が、身のほどをわきまえず、憲法や立法府の頭越し政治の分野に立ち入り、政府財界の癒着に大きな役割りを果たしたことは見逃すことができません。非公開のまま、議事録も公にせず、重要な問題を一方的に決め、国会に追認させるような方法は議会制民主主義を形骸化するおそれがあり、断じて許すことはできないのであります。  果たせるかな、答申内容には不可解な点多く、補助金整理等大きな問題にはほとんど触れず、枝葉末節に走ってお茶を濁しております。中曽根総理は再三にわたり臨調答申を最大限尊重すると言明しましたが、内容のない答申尊重したり、実行したりすることは不可能であります。国民の期待するところには冷淡に答えることなく責任を回避して、問題をいたずらに先送りしました。それに反して危険な火遊びには異常な熱意を示す中曽根内閣を、これ以上黙って見ていることはできません。特に総理政治姿勢を厳しく糾弾して、趣旨説明を終わります。(拍手)     ─────────────
  5. 徳永正利

    議長徳永正利君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。大島友治君。    〔大島友治登壇拍手
  6. 大島友治

    大島友治君 私は、自由民主党自由国民会議を代表して、ただいま上程されました内閣総理大臣中曽根康弘問責決議案に対し、断固反対の意見を表明いたすものであります。  反対の第一の理由は、何がゆえに本決議案提出したのか、趣旨目的理由がきわめて不明確である点であります。  およそ本院における総理大臣問責決議案は、これを提出いたすには、国民がひとしく理解し、納得する重大な政治的理由がそこになければなりません。しかしながら、ただいま提案者よりその趣旨説明を承ったわけでありますが、中曽根内閣を真に問責するに値するほどの政治的理由ありと判断するにはほど遠い内容のものでありまして、提案者真意は那辺にありやと疑問を持つものであります。  会期最終日を明日に控え、国民の審判を仰ぐ参議院選挙が目睫の間に追っているこの時期に、突如として理由なき本決議案提出するがごときは全く党利党略以外の何物でもなく、良識の府としての本院の権威を失墜させるものであります。  反対の第二の理由は、本決議案提出が一党単独ということであります。  およそ内閣問責するからには、そこには与野党の激しい対立の場があるのがこれまでの通例でありました。しかるに、今期通常国会を振り返って、これまでかような例は一度もなかったではないでしょうか。今期国会ほど各党各派がきわめて協調し、円滑な議会運営が図られた例は少ないのであります。衆議院送付の閣法は本日までに全部成立し、残る議員立法有線ラジオ放送業務運用の規正に関する法律等改正案最終日に可決される見通しにあるのであります。  特に、今期国会特色は、国民の負託にこたえて重要政策が中長期の総合的展望に立った審議ができるよう、与野党一致して選挙後の国会から調査特別委員会制度を導入する新しい参議院の改革が図られたことであります。このように各党各派が今国会ほど真摯な立場協力して実り多き成果を上げたことはありません。  本院において本会議に上程された総理問責決議案は過去三回例がありますが、いずれも野党各派共同提案に係るものであるということは、野党各派に共通した受けとめ方があったからでありましょう。しかるに今回は、野党一党のみの提出によるもので、本議場に公明党、民社党等が加わらないということは、一体どういうことでありましょうか。  すでに昨日衆議院内閣不信任案が否決され、法的には何ら拘束されない本決議案とは申せ、政治的に大きな意味を持つ本案が一党のみの政治目的のために提出されたことは、議会政治を全く私物化するものでありまして、断じて承服できるものではありません。  反対の第三の理由は、中曽根内閣に対する政治姿勢認識の違いであります。  その第一は、憲法問題であります。憲法第九十六条に改憲規定があるからには、憲法は不磨の大典ではありません。多くの国民より強い要望があれば、必要に応じこれを見直す検討は全く自由であるはずであります。総理改憲政治日程にのせないと言明し、内閣として憲法尊重擁護義務を忠実に果たしているのでありまして、非難すべき理由はございません。今回の参議院選挙におけるわが党の公約においても憲法問題には一切触れていないことを見れば、いまわが党が改憲を意図するものでないことは、十分御理解いただけるはずであります。  続いて、総理訪米における発言問題でありますが、わが国外交の基軸が米国との友好関係確立にあることは申すまでもないことであります。日米安保条約に基づいて、わが国自分の国は自分で守るという姿勢を表明することは、今日の国際軍事情勢を厳しく受けとめ、西側の一員として、同盟国、パートナーとして強い連帯関係を持ち、運命をともにすることは当然のことではないでしょうか。  次は、政治倫理の問題であります。  わが党は、この問題は政治基本に係る問題として認識し、三年前の臨時党大会において党倫理憲章を決定して、全党員がこれを尊重し、厳しい政治倫理に徹して、公正な責任政治確立に努めているところであります。  提案者は、衆議院議員辞職勧告決議案に触れておられますが、そもそもこれは国会マターの問題であって、総理姿勢とは関係ないことであります。仮に一歩譲って政府与党一体という立場をとるならば、自民党総裁問責決議案として提出し直してはいかがなものでございましょうか。ましてや、本院に属さない他院議員の身分に関する件については余り干渉なさらない方がベターと考えますが、この点いかがでございましょうか。  提案者側もお急ぎになられて衆参同文決議案をお出しになったようでありますが、多少なりともここに細工があった方がよかったかと存じますが、これまたいかがなものでございましょうか。  次は、武器輸出原則違反があるとの指摘でありますが、わが国防衛力整備は、憲法及び基本的防衛政策に基づいて、非核原則を守り、専守防衛精神を貫いており、提案者の言う憲法違反軍拡政策を進めているとの批判は全く当たりません。  武器技術供与の問題は、日米安保体制効果的運用を確保する上から、日米相互防衛援助規定関連規定に基づく枠組みのもとで実施するものでありまして、憲法平和精神に反するものでなく、国会決議武器輸出原則に何ら抵触するものではありません。われわれは、武器技術供与の道を開くことにより、わが国及び極東の平和と安全に大きく寄与することを信ずるものであります。  最後は、予算編成の問題でありますが、今回の予算は過去に例を見ないマイナスシーリングを採用し、徹底した削減合理化を行い、一般歳出伸び率昭和三十年度以来の抑制予算となったのであります。しかも、厳しい財源の中でも、真に国家にとって重要な施策、たとえば経済協力、エネルギー、防衛には格段の措置を講じておりますほか、社会保障、文教、中小企業等に対してもきめ細かい配慮をいたしております。  防衛予算伸び率六・五%について異常突出と申されておりますが、防衛予算二兆七千五百四十二億円は、社会保障費九兆一千三百九十八億円の三分の一以下であり、対GNPの国際比較を見ても、ソ連は約一五%、アメリカは六・一%、イギリスは五・四%、西ドイツ四・三%であるのに対し、わが国は〇・九八%であります。一方、社会保障の中でも社会福祉費は二千億円、一一・五%と大幅増額をいたしまして、各種福祉給付水準の維持や在宅福祉の拡充など、社会的に弱い立場の方々に対する真に必要な福祉については手厚い配慮をいたしておるのでありまして、福祉切り捨てというがごときは事実不認識もはなはだしいと言わなければならないのであります。  いま、行革は天の声であります。人事院勧告実施の見送りについては、公務員国民の公僕として、この際率先して痛みを分かち合うことは当然のことではないでしょうか。官公労の組織労働者側から見るのではなく、広く全国民的立場から物事を判断願いたいのであります。  以上、総じて今回の問責決議案は全く問責に値しない理不尽な悪例を残す以外の何物でもなく、かかる時期にかかる内容ひとり相撲で、中曽根内閣批判世論喚起が起こるほど現下の政治情勢はなまやさしいものではありません。私は、最後に、中曽根内閣のたくましい前進を期待いたしまして、本決議案に対する反対討論を終わります。(拍手
  7. 徳永正利

    議長徳永正利君) 広田幸一君。    〔広田幸一登壇拍手
  8. 広田幸一

    広田幸一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました中曽根総理大臣に対する問責決議案に賛成する立場から討論を行うものであります。  決議案に賛成する最も大きな理由は、中曽根総理が、平和主義民主主義基本的人権尊重を定めたわが国憲法をじゅうりんしようとするきわめて危険な政治姿勢が明らかになったからであります。  憲法九十九条に規定された憲法尊重擁護義務を無視して、中曽根総理はみずから改憲論者だと宣言し、憲法改悪をねらっているのであります。しかも総理は、「憲法論議タブーを設けてはならない。常に検討を加え、見直しを行うべきだ」と再三述べられながら、本院での、何を見直し検討を加えるのかという具体的な質問には、総理大臣立場では影響するところが大きいとの理由で、貝のように口をつぐんで答えませんでした。  このことは、総理の持論である再軍備など、聞かれて都合が悪いことは憲法論議を回避するタブーをつくり出すもので、言行不一致政治姿勢であると同時に、同じ総理立場憲法改正論者と宣言してはばからないことは、世間に悪影響がないとお考えかどうか。全くの矛盾撞着であると指摘せざるを得ないのであります。  戦後三十八年、この間世界の至るところで局地的戦乱紛争が繰り返され、罪も責任もない多くの民衆が犠牲をこうむったのであります。しかし、幸いにしてわが国戦争と絶縁した結果、一人の青年の血も流すことなく、一軒の家も焼かれることなく、平和に生活することができました。加えて、民生中心産業構造、勤勉な国民の努力によって、世界有数経済大国を築き上げることもできました。  こうした恵まれた戦後体制の構築は、世界に本当に誇り得る、戦争を永久に放棄した平和憲法を大多数の国民協力によって大切に守ってきたからではないでしょうか。中曽根総理憲法改正論は全くの的外れであり、わが国の平和と安全、国民生活を根底から覆す大変危険な考え方であるとともに、憲法第九十九条に違反するものであって、とうてい容認することができないのであります。  賛成の第二の理由は、憲法違反軍拡路線を推進している中曽根総理政治姿勢に対してであります。  中曽根総理は、一月の訪米で「日米運命共同体」を唱え、レーガン米大統領積極的軍拡競争の片棒を担ぐことを約束し、「日本列島沈空母」や「三海峡封鎖シーレーン防衛作戦」を言明するなど、総理一連言動は、核戦争の危険が現実的脅威となっている今日、大変危険な火遊びであり、あすの日本を破滅に引きずり込むことが憂慮されるのであります。歴代保守党政府米国の圧力に抗しながらも自衛隊活動をできるだけ限定的に解釈運用してきたその規範破りを、意図的、積極的に中曽根内閣は行おうとしておるのであります。  本院予算委員会で、シーレーン防衛を従来のラインから海面ないしは海域防衛に拡大したのを手始めに、「米国艦船日本周辺からソ連基地攻撃に向かう場合自衛隊の護衛を認める」とか、「防衛に役立つなら自衛隊が核を搭載している米艦船を公海上で守ることもあり得る」、こういったように個別的自衛権範囲を逸脱して集団自衛権に踏み込むべく、外務省、防衛庁は意図的に自衛隊活動範囲をエスカレートさせておるのであります。  さらに、五十八年度予算では対前年度比六・五%の防衛費増という聖域扱いをしたのを初め、五六中業の達成のため五十九年度以降は毎年度一〇%から一二%の伸びをもくろむなど、危険きわまりない軍拡タカ派的路線を指向しておるのであります。  米国向け軍拡協力姿勢を、先ごろのASEAN諸国訪問では「軍事大国にはならない」などの耳ざわりのいい言葉を乱発して、東南アジア諸国中曽根軍拡路線への警戒と批判をかわそうといたしましたけれども、口先だけでアジアの人々に幻想を与えても、総理が実際実行している政策を変えない限り、必ずメッキははげ落ちて、わが国は信用を失い、日本の将来に禍根を残す危険があります。  さらに、五月二十日、中曽根内閣経済原則の中で軍縮を提案していますけれども、全くそらぞらしいとしか言いようがありません。こうした二枚舌で軍拡を推し進める中曽根総理政策を許すわけにはいかないのであります。  決議案に賛成する第三の理由は、政治不信を増幅させて恥じない総理態度であります。  今国会の最重要な政治課題一つは、政治倫理確立を図り、国民政治不信を解消することであります。しかるに中曽根内閣は、ロッキード疑獄政治的、道義的責任を明らかにすることを妨害をし、政治不信を増大させております。田中総理汚職収賄の罪で懲役五年の求刑を受け、日本政治史上消すことのできない汚点を残し、国政の最高責任の地位にあった者として政治的、道義的責任をとるのは三歳の童子でもわかるはずであります。しかるに、刑事被告人が何ら責任をとらないばかりか、自民党最大の派閥の長として勢力を誇示し、みずからキングメーカーを自認し、日本政治を陰で操っていることは断じて許されないのであります。  中曽根総理は、この田中軍団の支持で総裁のいすを得て、直角、仰角の内閣を組織されましたが、法務大臣や官房長官らは、ロッキード事件裁判批判検察批判とも国民に受け取られるような発言を繰り返し、なりふり構わないロッキード隠しは目に余り、政治不信の解消どころか逆に墓穴を内閣自身が掘っておるではありませんか。  さらに、すべての野党が一致して要求してきました田中角榮議員辞職勧告決議案佐藤孝行議員辞職勧告決議案審議を引き延ばし、その成立、採決を阻んで廃案をねらおうという全く数の暴力をあえて強行していますことは、何人としても許されないところではないでしょうか。金とそして数の力をかりれば、三歳の童子でもわかる理屈がねじ曲げられ、正当化されるといった今日の保守党政治のやり方は、社会常識と社会の価値基準を破壊して社会秩序を混乱させる根本的原因となっていることを総理は反省するとともに、この決議案に明確なけじめをつけるべきであります。その責任を回避していることは実に重大であり、厳しく糾弾されなければならないと思うのであります。  決議案に賛成の第四の理由は、国権の最高機関である国会を軽視する総理姿勢であります。  一月訪米のおみやげに、対米軍事技術供与を国会武器輸出原則決議の枠外処理という暴挙を行ったことをまず挙げなければなりません。  武器輸出原則は、平和憲法精神と国際協調主義の立場から武器輸出を厳格に禁止することを国会が全会一致で決議したものであります。中曽根内閣は、安保条約締結国の米国国会決議の枠外と勝手に決め、決議の当事者であり、当然に有権的解釈権を有する国会の考えも聞かずに米国に一方的に同意を与えたやり方は、民主主義政治のじゅうりん以外の何物でもないのであります。百歩譲って、安保条約の相手国ということで武器技術供与を是認したとしても、米国を通じて第三国に武器技術が移出されることの歯どめすら取り決めておらず、紛争当事国への武器技術移出の可能性もあって、国連決議に挑戦し、まさに死の商人の迷路に落ち込まないとは言えないのであります。  さらに、最近、米原子力空母エンタープライズの日本寄港、F16戦闘機の三沢配備等、従来の自民党内閣の慎重な対処姿勢中曽根内閣は放棄して、わが国を米軍核戦略基地にしようとしているかに思えるのであります。これは国会非核原則決議に背反し、国権の最高機関の空洞化をねらっているもので、断じて容認することができないのであります。  最後に、財政経済等の政策運営について指摘しておきたいと思います。  中曽根内閣発足当時のキャッチフレーズは、「仕事をする内閣」でありました。しかし、その政策運営国民生活を圧迫し、格差と不公正を拡大させるだけであります。五十八年度予算では、軍事費だけは対前年度六・五%の異常優遇突出型とした反面、社会保障費伸びはわずか〇・六%にとどめ、文教予算の大幅切り込みを行い、さらに憲法が保障する労働基本権の代償機関である人事院勧告を棚上げにする等、まさに福祉、文教の切り捨ての政策そのものであります。勤労者とそして弱い人たちにしわ寄せをし、国民生活犠牲にして顧みない現内閣のやり方を許すわけにはまいりません。  また、重要な政治課題であります財政再建も、赤字国債脱却の時期すら明確にせず、「財政の中期試算」では三案を全く機械的に計算しただけであって、どの案で再建を図るかも示しておりません。それでいながら、口では「財政再建ではなく財政改革」などと言っているのは、無責任もはなはだしいと言わざるを得ません。  最後にさらに、長期深刻な不況についても、内需拡大型の政策運営はかけ声ばかりで、減税は六年間棚上げ、公共事業は四年間横ばいといったやり方で、何らの景気浮揚対策もとっていないのであります。ただひたすら世界景気の回復と米国の高金利の是正を希求する他力本願の政策運営であります。高い企業倒産と失業者は一向に減らず、増加しております。国民大衆の生活はますます苦しくなっておるのであります。  中曽根総理は、最近にわかに内政重視のポーズをとり始めましたが、これが全くのつけ焼き刃の選挙対策としか言いようがないのであります。  四月五日に発表しました景気対策十一項目中、実際実行されたのは公共事業前倒しだけというお粗末なものであります。五月二十日に発表した経済運営の五原則は、各新聞の社説が異口同音に、中身のない、きれいごとの羅列と指摘しております。そのことに尽きると言っていいでありましょう。皮だけのあん抜きもなかで、一見うまそうでも歯ごたえがなく、腹の足しにはならないとA社の社説は痛烈に批判を加えておるのであります。中曽根内閣経済財政運営は、口先だけの仕事をしない内閣と断ぜざるを得ません。中曽根内閣が発足してちょうど半年になりますが、この間の足跡をたどれば、この内閣には一日も早く退陣してもらうことが国民の幸せにつながることは明々白々であります。  以上で、私の中曽根総理問責決議案に対する賛成討論を終わりたいと思います。(拍手)    〔市川正一君登壇拍手
  9. 市川正一

    ○市川正一君 私は、日本共産党を代表し、また、平和、民主、生活安定を願う広範な国民世論にこたえ、ただいま議題になりました内閣総理大臣中曽根康弘問責決議案に賛成の討論を行うものであります。  いま、わが国政治には三つの転換が求められています。その一つは、日米軍事同盟の強化、レーガン戦略への加担をやめ、非核、非同盟中立の日本への方向に歩みを変えることであります。その二つは、果てしない軍備拡大と大企業奉仕の政治をやめ、国民の命と暮らしを守る姿勢を貫き、日本経済の危機を打開することであります。その三つは、憲法改悪と軍国主義復活がもたらすファシズムへの道を阻止し、民主主義を守り、発展させることであります。  私は、この三つの転換の実現こそが、わが国政治に課せられた最も緊急かつ重要な課題であることをまず冒頭に強調するとともに、戦後政治の総決算などと称して中曽根内閣がこれに真っ向から対立し、日本民族の破滅につながる危険な路線を推進していることに対して、怒りをもってここに厳しく糾弾するものであります。  問責されるべき第一の理由は、わが国核戦争に引き込む軍拡路線を異常な勢いをもって進めていることであります。  中曽根総理は、ことし一月の日米首脳会談で、日本アメリカ運命共同体だと述べ、日本列島の不沈空母化、四海峡封鎖シーレーン防衛などを約束してまいりました。すでに国会決議は反した対米武器技術供与、日米シーレーン防衛研究開始など日米共同作戦体制の実戦化に名実ともに踏み出しております。また、F16核攻撃機の三沢配備、エンタープライズの寄港承認に引き続いて、原子力空母カールビンソンや巡航核ミサイル・トマホーク装備の戦艦ニュージャージーなどの寄港も認めようとしております。  日本共産党は、いま日本核戦争の危険から救うため、「非核日本宣言」を政府に行わせることを求める署名運動に取り組んでおりますが、現在、日本世界の平和にとって最も緊急に必要なことは、レーガンの危険な核戦略への協力加担をやめ、軍拡から軍縮への転換を図ることであります。この道をとらずに、逆に唯一の被爆国であるわが国国民の願いに背いて日米軍事同盟体制国家への道を突き進む中曽根内閣は即時退陣せよ、これこそまさに国民の声と言わなければなりません。  問責されるべき第二の理由は、中曽根内閣による国民生活破壊の政策がもはや耐えがたいものになっていることであります。  中曽根内閣は、今日の財政危機、深刻な不況の真の原因である軍事費の増大や莫大な大企業への補助は聖域として一切手も触れないばかりか、ますますこれを増大し、他方、公務員に対する人事院勧告は凍結、減税は六年間拒否し続け、逆に大型間接税の導入をたくらむ、これがその実態であります。とりわけ老人医療無料化制度を覆した老人保健法は、長い間社会に貢献した多くのお年寄りの老後へのささやかな願いさえ踏みにじり、お年寄りが病院から追い出されるというむごい事態さえ生み出しているのであります。このような中曽根内閣に、もはや国民がその暮らしの保障を託し得ないことは全く当然と言わなければなりません。  問責されるべき第三の理由は、その救いがたい金権腐敗の温存、田中角榮議員擁護の姿勢であります。  中曽根内閣は、国会での真相解明、責任追及を妨害し、決議案の採決を不当に拒否している自民党と一体になって田中議員擁護の姿勢を取り続けております。しかも、中曽根総理自身、広く報道されているように、政局の重要問題で刑事被告人田中議員と連絡を取り、その了解のもとに行動していること、また、秦野法務大臣のたびたびにわたる指揮権発動を正当化する発言、後藤田官房長官の公然たる検察批判言動などは、中曽根内閣姿勢を立証して余りあるものと言わなければならぬのであります。  問責されるべき第四の理由は、中曽根内閣の危険な改憲、ファッショ指向の政治姿勢であります。  中曽根総理自身、みずからを改憲論者だと明言し、わが党の追及によって取り消しはいたしましたけれども、かつては徴兵制の導入などを含む改憲案を公表している人物であります。しかも、中曽根総理アメリカにおいて、「日本国会では言わない」が、「改憲の時間表を持っている」などと公言しているのであります。今国会でも政府は、「公海上でのアメリカ核兵器を積み込んだ艦船を護衛する」ことや、「核装備したアメリカ艦船自衛隊が共同対処する」ことも可能だとするなど、憲法違反する一連の重大な答弁をあえて行っております。これは憲法の平和的、民主的条項を骨抜きにする解釈改憲ばかりでなく、明文上の改憲にさえ至る歩みにほかならず、いまや中曽根内閣退陣は、平和と民主主義を願うすべての国民の一致した要求になっていることを私は重ねて強く主張するものであります。  最後に、私は、来るべき参議院選挙において、国民はこの中曽根内閣、自民党及びこれに同調追随する政治勢力に対して断固たる審判を下すであろうことをここに表明し、賛成討論を終わるものであります。(拍手
  10. 徳永正利

    議長徳永正利君) これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  11. 徳永正利

    議長徳永正利君) これより採決をいたします。  表決は記名投票をもって行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  12. 徳永正利

    議長徳永正利君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  13. 徳永正利

    議長徳永正利君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  14. 徳永正利

    議長徳永正利君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         百七十二票   白色票           六十三票   青色票            百九票  よって、内閣総理大臣中曽根康弘問責決議案は否決されました。(拍手)      —————・—————   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      六十三名       阿具根 登君    青木 薪次君       赤桐  操君    茜ケ久保重光君       穐山  篤君    上野 雄文君       小野  明君    大木 正吾君       大森  昭君    加瀬  完君       粕谷 照美君    片岡 勝治君       片山 甚市君    勝又 武一君       川村 清一君    小谷  守君       小柳  勇君    小山 一平君       佐藤 三吾君    坂倉 藤吾君       志苫  裕君    鈴木 和美君       瀬谷 英行君    田中寿美子君       高杉 廸忠君    竹田 四郎君       対馬 孝且君    寺田 熊雄君       野田  哲君    広田 幸一君       福間 知之君    藤田  進君       松前 達郎君    松本 英一君       丸谷 金保君    宮之原貞光君       村沢  牧君    村田 秀三君       目黒今朝次郎君    本岡 昭次君       八百板 正君    矢田部 理君       安恒 良一君    山崎  昇君       吉田 正雄君    和田 静夫君       市川 正一君    上田耕一郎君       小笠原貞子君    神谷信之助君       沓脱タケ子君    近藤 忠孝君       佐藤 昭夫君    下田 京子君       立木  洋君    宮本 顕治君       安武 洋子君    山中 郁子君       青島 幸男君    秦   豊君       美濃部亮吉君    山田耕三郎君       秋山 長造君     —————————————  反対者(青色票)氏名     百九名       井上 吉夫君    井上  孝君       井上  裕君    伊江 朝雄君       石本  茂君    板垣  正君       稲嶺 一郎君    岩上 二郎君       岩崎 純三君    上田  稔君       臼井 莊一君    衛藤征士郎君       遠藤  要君    小澤 太郎君       大河原太一郎君    大木  浩君       大島 友治君    大鷹 淑子君       大坪健一郎君    岡田  広君       岡部 三郎君    沖  外夫君       長田 裕二君    加藤 武徳君       梶木 又三君    梶原  清君       片山 正英君    金井 元彦君       金丸 三郎君    上條 勝久君       亀井 久興君    川原新次郎君       河本嘉久蔵君    木村 睦男君       楠  正俊君    熊谷太三郎君       源田  実君    小林 国司君       古賀雷四郎君    後藤 正夫君       郡  祐一君    佐々木 満君       斎藤栄三郎君    斎藤 十朗君       坂野 重信君    坂元 親男君       山東 昭子君    志村 愛子君       嶋崎  均君    下条進一郎君       世耕 政隆君    関口 恵造君       田沢 智治君    田代由紀男君       田中 正巳君    田原 武雄君       高木 正明君    高橋 圭三君       高平 公友君    竹内  潔君       谷川 寛三君    玉置 和郎君       土屋 義彦君    戸塚 進也君       名尾 良孝君    内藤  健君       内藤誉三郎君    中西 一郎君       中村 太郎君    中村 禎二君       中山 太郎君    仲川 幸男君       夏目 忠雄君    成相 善十君       西村 尚治君    野呂田芳成君       長谷 川信君    秦野  章君       初村滝一郎君    鳩山威一郎君       林  寛子君    原 文兵衛君       桧垣徳太郎君    平井 卓志君       福岡日出麿君    福島 茂夫君       福田 宏一君    藤井 孝男君       藤田 正明君    降矢 敬雄君       堀内 俊夫君    堀江 正夫君       前田 勲男君    増岡 康治君       増田  盛君    町村 金五君       松浦  功君    円山 雅也君       三浦 八水君    宮澤  弘君       宮田  輝君    村上 正邦君       森山 眞弓君    八木 一郎君       安井  謙君    安田 隆明君       山崎 竜男君    山内 一郎君       山本 富雄君      —————・—————
  15. 徳永正利

    議長徳永正利君) 本日はこれにて散会いたします。    午前十一時八分散会