○佐藤昭夫君 私は、
日本共産党を代表し、
臨時行政改革推進審議会設置法案について、
総理並びに
行政管理庁長官に
質問いたします。
中曽根内閣が最優先の課題としている
臨調行革路線に対しては、
国民の審判がすでに下っております。どの世論調査を見ても、真っ先に削減すべき
予算項目としては軍事費、
防衛費が、逆に絶対に削ってはならない項目、増額すべき項目としては社会保障費、教育費が挙げられていることは、
総理や行管庁長官もよく御存じのはずであります。
中曽根内閣が
国民世論に多少なりとも耳を傾ける
姿勢を持っているならば、軍拡、大企業奉仕、
国民総犠牲の
臨調路線の強行は直ちに中止し、本
法案の
提出は当然行われなかったでありましょう。
私は、具体的
質問に入る前に、
総理並びに行管庁長官が、
臨調路線に対する
国民世論の厳しい批判を謙虚に受けとめるのか、それとも全く馬耳東風と無視されるのか、はっきりと伺っておきたいのであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
以下、四点にわたって
質問いたします。
第一は、
中曽根内閣として、
臨調の五次にわたる
答申内容のすべてを実行に移すつもりなのかどうかであります。
私は、
臨調答申を読み返すたびに、社会保障、教育の
分野を中心に、
国民の長期にわたる運動が築いてきた民主的諸制度に対する財界の異常なまでの敵意に心から憤りを感ずるものであります。たとえば、年金給付の引き下げ、支給開始年齢の引き延ばし、軽費医療の自己負担化、
事務費国庫負担の廃止など年金制度、健康保険制度の大改悪。教科書有料化、奨学金有利子化、私学助成の切り下げなど教育の大幅後退。
総理は、
臨調が要求したこれらのことをあくまでも強行するというのですか。
また、すでに三カ年の
期限つきで実行に移した年金国庫負担率の引き下げ、四十人学級制の凍結は、
期限の切れる六十年度以降一体どうする
方針ですか。もとの制度に戻すのですか、それとも継続するのですか。
中曽根総理の具体的な
答弁を求めます。
第二は、本
法案によって
設置される
臨時行政改革推進審議会の役割りについてであります。
この
審議会が
臨調答申の実行を監視し、推進する
機関であることは法文上も明白でありますが、役割りはそれにとどまりません。この
審議会は、その他のすべての
審議会の上に立ち、すべての
行政機関、特殊法人を実地に調査し得るという他には類を見ない強力な権限を持ち、
総理大臣の
諮問に応じて
答申するだけでなく、随時
意見を述べることができるとされております。これは「
行政改革に関する
重要事項について高い
立場から提言を行う」という
臨調第四次
答申どおりの、全く新たな提案も行い得る事実上の第三
臨調であります。なぜこのような第三
臨調をつくる必要があるのですか。行管庁長官の明確な
答弁を求めるものであります。
あわせて、
総理、あなたの周辺から、次は教育
臨調をつくるとか、あるいは安保
臨調をつくるなどという構想が次々と打ち出されています。これらはあなた自身の
考えから出たものかどうか、明確にしていただきたいのであります。
第三は、
臨調路線の一枚看板である「
増税なき
財政再建」についてであります。
この看板がいまや全く色あせ、「
財政再建なき
増税」に成りかわろうとしています。
総理、直間比率の
見直しなどという詭弁で大型間接税の導入を合理化できるなどとは、まさか
考えておられないでしょう。「消費一般に対する課税は一般消費税(仮称)とは異なる」、こういう竹下
大蔵大臣の論理に至っては、まさに「白馬は馬にあらず」そのものであります。
中曽根内閣は、大型間接税は導入しないし、その準備もしないとはっきり約束されるのかどうか、改めて伺いたいのであります。
福祉切り捨て、実質大
増税の
臨調路線が
国民の購買力をますます低迷させて消費不況を深刻に
し、それがまた税収の一層の落ち込みを招くという悪循環を断ち切らない限り、不況の打開も
財政の再建も絶対になし得ないことは明白であります。その第一歩は、言うまでもなく大幅所得減税の断行であります。
政府として年内減税の
実施、その財源の確保に
責任を負うと明言されるのか、この際、しかと承っておきたいと思います。
最後に、
臨調路線の行き着く先についてであります。
総理は、これまで繰り返し、
行政改革とは「国家改造」「統治権行使の
改革」であり、「第三憲政への血路」であると述べています。国家改造、第三憲政とは一体何ですか。恒久平和と主権在民、基本的人権、
議会制民主主義、地方自治という憲法の基本構造を根本的につくりかえることではないのですか。
日本列島不沈空母化という誓約をもとに、レーガン核戦略への全面追随、恐るべき大軍拡を進めるということではありませんか。
あなたは、先日の
ASEAN諸国歴訪の先々で、「
わが国の軍拡への不安は杞憂だ、
中曽根内閣には改憲の意思はない」と説いたそうであります。しかし、「隠すよりあらわる」とはよくも言ったものです。つい最近、ある雑誌が、あなたが
昭和三十六年に作成したという改憲草案を明らかにしています。すでに私が昨年の
予算委員会で取り上げたと同様の恐るべき
内容であります。
「すべての
国民は国を防衛する義務を負う」とは徴兵制の復活であり、「天皇は」「自衛力の発動につき」「国際法上の宣言を発する」とは宣戦布告そのものではありませんか。「
参議院は」「選挙された議員及び推薦制により選任される議員で組織する」とは、
議会制民主主義の根本的否定ではありませんか。あなたがこのような改憲思想をいまも抱き続けているという証拠ではありませんか。だからこそアメリカで、「改憲への長期のタイムテーブルを持っている」と述べたのではないですか。私は、「
行革でお座敷をきれいにし、りっぱな憲法を安置する」というあなたの昨年五月の発言の真意をここに見るのであります。
このような危険きわまりない
臨調路線と、その強行のための本
法案に断固として
反対する
決意を表明して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕