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1983-01-28 第98回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年一月二十八日(金曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   昭和五十八年一月二十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 徳永正利

    ○議長(徳永正利君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る二十四日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。小柳勇君。    〔小柳勇登壇拍手
  3. 小柳勇

    ○小柳勇君 私は、日本社会党を代表して、国政の基本的問題について総理に質問いたします。  最初に、私は、総理の政治姿勢の基本として、政治倫理について厳しく総理を追及しなければなりません。  総理、ロッキード事件が発生して以来、世紀の汚職事件、総理の犯罪として、また大規模な政官財の癒着による構造汚職として内外を震撼させ、国民の政治不信を高めたのであります。その焦点である田中角榮元総理の論告求刑が一昨日行われ、実刑五年、追徴金五億円という最高刑が求められました。憲政史上、悲しむべき汚辱のページを加えられたものと言わなければなりません。  しかるに、きのうの衆議院本会議におけるわが党飛鳥田委員長に対する総理の答弁は、一国の総理として、また政治家として、全く責任を感じていない傍観者的態度であったことはまことに残念なことでございます。刑事事件の原則は「疑わしきは罰せず」でありますが、政治倫理は「疑わしきは罰する」が原則でなければならないと思うのであります。  国民の皆さんもすでに御存じのように、田中被告は公判の法廷で、「起訴事実の有無にかかわらず、いやしくも総理大臣在職中の汚職の容疑で逮捕拘禁せられ、しかも起訴に至ったということは、それだけで総理大臣の栄誉を汚し、日本国の名誉を損なったこととなり、万死に値するものと考えました」と述べているのであります。また、総理として外国の企業から賄賂を取るなどということが絶対にあってはならないとみずから宣言しているのであります。それならば、田中角榮議員は当然辞任すべきであります。国民もこのことを強く求めております。  政治に失われた信頼を回復し、政治倫理を確立するために、あなたは総理として田中議員辞職勧告をされる意思があるのかどうか。本人が辞職しないならば、わが党は他の野党及び自民党の良識ある議員と相談をして、国会に田中議員辞職勧告決議案を提出する決意であります。私は、政治が自浄能力を失ったら民主政治は成り立たないと思っておるのでありますが、総理の見解をお聞きする次第であります。  中曽根総理、あなたの三十余年の長い政治生活総理大臣になるためのものであり、風見鶏がなぜ悪いと開き直られました。これが政治姿勢にもあらわれておるのであります。一国の首相が風見鶏の政治姿勢で、国会での自民党多数を背景に自分の考えを独裁者的に国民に押しつける行動をとることは民主主義の否定であり、国家の存亡にかかわる事態であると指摘せざるを得ないのであります。  そこで、まず尋ねますが、自民党は先日の大会で「自主憲法制定」を決議されたようであります。中曽根総理はこれをどう考えておられるか。「個人中曽根憲法改正論者であるが、首相中曽根はそんなことを考えていない」などと国会の場では二枚舌の答弁をしながら、アメリカでは記者会見において、「国会でも明らかにしてないが、憲法改正に関する長期のプログラムを持っている」と本音を吐いているのであります。これは国権の最高機関である国会無視もはなはだしいと言わなければなりません。  また、「対米軍事技術供与武器輸出三原則の枠外とする」との閣議決定に至っては、民主主義政治を否定するものであると断定せざるを得ないのであります。わが国は、死の商人にはならないとの決意のもとに、歴代内閣は「米国も例外ではない」との方針をとってまいったのであります。ことに、死器輸出三原則及び政府統一方針を踏まえた武器輸出に関する国会決議全会一致で行われております。国権の最高機関である国会が立法府の意思として、国政の基本として内外に明らかにした国会決議を行政府が一方的に破ったことは、国会の権威と議会制民主主義に対する公然たる挑戦であり、中曽根総理民主主義否定の思想を示すものであります。  私は、中曽根総理政治姿勢を見るとき、ドイツを敗戦に導いたヒットラー、あの独裁者の政治行動に思いをはせざるを得ないのであります。また、イラン・イラク戦争を巻き起こしたイラクのフセイン大統領覇権主義を恐れるものであります。レーガン米大統領軍事力増強の要請に応じて、右手に日韓首脳会談の手みやげをぶら下げ、左手に対米武器技術供与というずだ袋を下げ、背中に平和憲法改悪ののぼりを差して、勇み立ってアメリカの空港におり立った中曽根総理の姿を目の当たりに見る思いがいたすのであります。  中曽根首相、あなたはタブーに挑戦するなどと気負って猪突猛進しておりますが、その行動はアジアの諸国民の不安を高め、わが国をアジアの孤児にするものであり、国民に犠牲を強いるものであると言わざるを得ません。  私は、この際、中曽根総理民主主義政治の基本に立って明確な答弁をお願いしたい。  その第一は、憲法改悪は行わないことを、本音とたてまえを区別しないで一国の首相として明確にしていただきたいのであります。  第二は、武器輸出三原則と政府統一見解を踏まえた国会決議を無視するような閣議決定は、直ちに撤回することを明らかにすべきであります。民主政治とはいかなるものか十分に考えて答弁していただきたいのであります。  次に、外交、防衛問題について質問いたします。  まず、日韓首脳会談は、正規の外交ルートではなく首相の思いつきで決定されたと関係筋は言っているのであります。日韓国交正常化以来、わが国の総理が韓国を訪問したのは初めてのことであります。この間、三木総理福田総理鈴木総理に至る歴代首相がさんざん考え、二の足を踏み続けた総理訪韓を、あなたが独走して決定なされた真意はどこにあるのか。クーデターによる軍事独裁体制の延長線上にある韓国の全斗煥政権と韓国の民主主義についてどのように評価を改められたのか、明確にしていただきたいのであります。  総理、あなたと全斗煥大統領との会談内容について韓国側の報道は、「韓日米三角安保体制の一層の緊密化について原則的に意見の一致を見た」と発表されております。ところがあなたは、「そういう話はしなかった」と述べておる。日韓どちらの報道が正しいのか。さらに、国民の血税とも言うべき四十億ドルもの対韓経済援助具体的内容とその性格についても、その真相を国民の前に明らかにしてもらいたいのであります。韓国では当然としてこの金を軍事力増強に用いると言われておるのであります。  韓国も米国も、またASEAN諸国においても、中国やソ連、東欧の諸国も、一様に中曽根訪韓によって日米韓の軍事同盟が強化され、世界の緊張を激化させるものと見ているのであります。ひとり日本の政府のみが、「安保絡みでない」、純粋な「民生安定のための経済援助」と主張しても、だれが一体信用するでしょうか。国民にも世界の人々にも納得できる言葉で答えていただきたいのであります。  また、朝鮮半島が不幸にして分断国家になっている現実について、総理はどのような認識を持っておられるのか。隣国の民族的平和統一にどのように対応していかれるのか、お伺いしたいのであります。  また、わが国の主権を侵害した金大中氏事件について真相を究明すべきでありますが、総理の訪韓と訪米の中でどのように対応してこられたのか、明確にしていただきたいのであります。  次に、総理はレーガン米大統領との首脳会談で、日米関係は「運命共同体である」と強調されただけでなく、ソ連のバックファイアーに対する防空体制として日本列島を「不沈空母」とする、ソ連の艦艇の通航を許さないよう「三海峡封鎖」をする、グアムと東京、台湾と大阪を結ぶシーレーン防衛を確立すると発言されております。これは平和憲法を持つわが国の総理の発言としては異例のことであるだけでなく、これまで政府の公式見解である「ソ連は潜在的脅威であるが仮想敵国とは見ない」という国会答弁、全方位外交に置くという外交政策の基本、これの大きな転換と言うべきであります。このような重大な問題を国権の最高機関である国会の議論も待たず発言することは、一国の総理として全く非常識きわまると言わなければなりません。  私は、中曽根内閣がわが国の平和国家としての基本的な枠組みを、レーガン米大統領世界戦略に追随し、次から次へと独裁的に修正し、国民を戦争の道へ駆り立てているのを深く心配するものでございます。総理、あなたは、わが国が再び軍事大国にならないことを誓った福田元総理のマニラ演説、鈴木前総理のバンコク演説をほごにするつもりでございますか。  いま米ソの巨大な戦略核時代にあって、わが国がいかに軍事力を増強したところで安全を確保するには十分でないことは、だれの目から見ても明らかなことであります。自民党の長老政治家であります赤城宗徳さんは先般朝日新聞に投稿され、「核軍縮、核廃絶を国際的に進める以外に安全保障の道はない」と主張されております。私もわが国の安全を保障する道はこれしかないと信ずるのであります。  米ソ両国は、レーガン大統領のゼロオプションなど、戦域核兵器戦略核兵器に関して双方が具体的に提案を行い、それらを基礎に話し合いに入る情勢にあります。これを機会に、わが国としては核軍縮交渉が進展するよう米ソ両国に強く働きかけるべきであります。総理は、レーガン米大統領に対して核軍縮についてどのように働きかけたのか明らかにする責任がございます。明らかにしてもらいます。  また、政府は、アジア・太平洋非核地帯設置の問題を真剣に検討すべきでありますが、この提案を受け入れるかどうか、見解を聞きたいのであります。  現在、世界で軍事費に投入されている金額は年間五千百八十七億ドル、日本円に換算いたしますと約百十九兆円という膨大なものであります。昨年三月に国賓としてわが国を訪問されたイタリアのペルチーニ大統領は、この壇上から、「死の道具の製造に乱費されている資金が世界の飢餓と闘うために用いられることを祈る。一九八〇年には栄養失調のため千七百万人の子供が生命を失っておる。兵器庫を空にし、穀物庫を満たそうではないか」と呼びかけ、平和を説き、難民の救済を訴えられたのであります。  中曽根総理、わが国を核戦争の悲劇から守り、安全を確保する道は、軍事力増強軍事協力にあるのではなく、核の廃絶に向かって国際的な努力を積み重ね、軍事費を削減して開発途上国へ援助することではないでしょうか。私は、中曽根総理に猛反省を促すとともに、決意のほどをお伺いしたいのであります。  次に、財政問題と景気政策について伺います。  まず、昨年来低迷している経済不況の克服策についてであります。景気はいまや底割れの状況になっており、企業の倒産件数は増大し、失業者は百四十万人に達しようとしております。政府の経済見通しは全く外れ、経済政策に対する国民の信頼は失われてしまっております。所得税減税を初め、昨年の予算審議で約束した下期公共投資の追加などがほごにされた当然の結果であると言わなければなりません。今後も政府案の五十八年度予算に固執する限り景気回復はあり得ず、二番底、三番底と縮小経済をたどることは明らかであります。米国金利の低下による円高と世界景気回復による輸出の過大期待は、昨年完全に裏切られたのであります。  私は、いまやわが国の経済政策内需拡大に思い切って転換すべきだと考えるのであります。その具体策は、法人税の不公平税制を是正し、各種引当金に課税を行えば、十二兆円に及ぶ財源が確保できるのであります。その財源で一兆円以上の所得税減税を断行すべきであります。民主団体労働団体もこの一兆円減税については熱烈に要望いたしておるところであります。それが景気回復の王道であり、ひいては税収増をもたらし、財政再建に寄与すると思いますが、総理の所見を伺いたいのであります。  第二に、人事院勧告の凍結の解除であります。五百二十六万人を超える公務員労働者が一兆円以上の賃金カットをされ、この直接的影響は家計収入の減少、個人消費の低迷となって不況を深刻にしております。さらにこれが年金の物価スライドの凍結や福祉諸手当の抑制に連動して、福祉切り捨てがまかり通っておるのであります。私は、スト権の代償として与えられている人事院勧告の凍結は違法であり、凍結を解除すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。  第三は、突出した防衛予算とその歯どめの具体的措置について伺います。五十八年度予算の特徴を一言で表現するならば、「弱き者に強く、強き者に弱い」という中曽根政治を端的に示しておるのであります。国民生活に直結する社会保障や文教費が低い伸び率にとどめられたのに、大企業に関連の深いエネルギー対策費や諸外国から相当批判の多い経済協力費は高い率が確保され、なかんずくレーガン米大統領が強く要求した防衛費は六・五%、人件費のベースアップ分を加えると八・六%にも達する軍事費突出の予算となっているのであります。これでは財政再建は名ばかりで、防衛費捻出のための歳出削減と言わざるを得ません。  しかも、防衛費増強は後年度に約二兆円の負担を含んでおり、五十九年度には防衛費はGNPの一%を軽く突破することさえ予想されておるのであります。防衛費のこの枠を外すことは、とめどのない軍事力拡大への道であります。これを阻止する具体的な歯どめ措置はいかなるものか、総理は国民にこの際はっきり明示して安心させるべきだ、国民が戦争への脅威を払拭するように安心させるべきだと思うが、見解を伺いたいのであります。  第四は、増税なき財政再建の推進と大型間接税による増税についてであります。約百兆円に近づきつつある国債の累増は、まさに自民党政府の多年にわたる放漫財政の結果であり、財政危機の責任は挙げて政府にあることは言うまでもありません。過去、中央省庁地方出先機関を通じ地方自治体特殊法人などにばらまいた補助金体質からの脱却は、当然政府みずからの責任で行うべきであります。しかし、このような基本的な歳出構造に手をつけず、やみくもに一律的歳出抑制を続ける一方、政府が、それに限界があるとして直間比率見直しの美名のもとに大型間接税の導入を示唆していることは、国民に財政破綻のツケを回すと批判されなければなりません。中曽根総理は、増税なき財政再建を堅持し、新たな大型間接税による増税をしないことをこの際確約すべきであります。明確に御答弁をお願いいたします。  次に、基本的人権民主主義にかかわる問題として、世界百七カ国が批准している人種差別撤廃条約早期批准を図るとともに、さきに批准した国際人権規約に基づき国内法の整備に着手すべきだと考えるが、総理の見解を伺いたいのであります。  最後に、行政改革問題に関して質問をいたします。  行政改革とは、まずロッキード疑獄で明らかになりました政財官の腐敗と汚職の構造にメスを入れることであります。また、行財政上の問題としては、世論調査ではっきり示されているように、第一に所得減税と税の不公平是正であります。第二に国民のニーズにこたえる教育や福祉の実質的な充実とその改善であります。第三には情報公開を初めとするガラス張りの行財政であります。それには住民みずから政治に参加できるように地方自治体に中央の諸権限を移していって、これに合わせた中央行政機構抜本的改革でなければならないのであります。  しかるに、総理、いま政府がなりふり構わず強行しようとしている行政改革は、このような本来の行政改革とは全く異質のものであります。すでにさまざまな報道によって国民がそれを知り、失望の声が高まり、それ以上に、危険なものと見始めておるのであります。  臨時行政調査会土光会長は、さきの臨調の基本答申で、行革の理念とは、第一に「活力ある福祉社会の建設」であり、第二に「国際社会に対する積極的貢献」であると、もっともらしくうたい上げられました。  活力ある福祉社会とは一体何か。臨調委員でもあり、このたびの中曽根訪韓の裏話を取りつけたと言われる瀬島氏の「日本の国家戦略行政改革」という論文に明確に述べられておりますように、「福祉負担は社会の活力をそぎ、国民は働かなくなって経済は停滞する」ということであり、国民にハングリー状況を強要する福祉切り捨ての活力信仰なのであります。また瀬島氏は、国際社会への積極的貢献なるものは、経済力にふさわしい政治的貢献であり、国力に見合った防衛力の整備を強調しておるのであります。その思想がその後の防衛費の突出、無原則で安保絡みの約一兆円に及ぶ対韓経済援助となり、そして米国における中曽根総理の勇ましい発言に連なっておるのであります。  総理、土光臨調中曽根行革をわれわれは「財界主導による反国民的行革」と呼んでおります。その証拠は、臨調委員の構成を見れば一目瞭然であります。勤労市民の代表もごくわずかは入っておりますが、そのほとんどは財界、大企業グループの代表と高級官僚の系統で占められ、その利権グループのエゴイズムで動いていると断定せざるを得ないのであります。  一例を挙げれば、郵便貯金事業に関する第四部会報告ですが、定額貯金の金利が不当に高過ぎるという指摘をするなど、預金者の、国民大衆の利益ではなく、大銀行の立場からの発想を露骨にも展開しているのであります。  特に、国鉄の民営分割ということについては、政府の公共交通政策として受け入れることのできない暴論であります。国鉄赤字の原因となっておる長期債務の大部分は政府の責任による新線建設の投資であり、さきに開通した上越・東北新幹線には約四兆三千億円が投資され、この分だけでも五十七年度には約一千七百億円の赤字が生じているのであります。また、鉄道貨物が赤字の元凶と言われておりますが、自家用トラックの約八百万台を野放しに走らせておいて、しかも貨物運賃は、基準を定めてはありますが、これを管理する機構がないのでダンピングが自由であります。一方、国鉄貨物運賃公開でこれを遵守しております。これでは自由公平な競争ができるはずがありません。  けさ、横浜の佐々木さんという方から電話がありました。青函トンネルは開通したが、これは自衛隊が戦車輸送に使うそうであります、われわれはもう税金を納められません、本会議で発言してくださいと言っております。これもむだな投資ではないかと国民は怒っております。言うならば、国鉄を今日の状態に追い込んだものは、日本政府総合交通体系に対する無策と怠慢だと言わざるを得ないのであります。  鳴り物入りで騒がれた第二臨調は三月に最終答申を出しますが、一体何が行政改革されるのでありましょうか。大山鳴動してネズミ一匹のたとえのとおり、大騒ぎの中曽根行革は、結局、一匹のネズミ、国鉄をたたくだけたたけということで終わるのではありませんでしょうか。このような財界主導行政改革は一応白紙にして、国民が求めておる「国民のための行政改革」で出直すことを強く総理に要求し、総理の見解を求める次第であります。  これで質問を終わりにいたしますが、総理は、自民党多数を背景に、自分の考えを国民に押しつけ、それが通らなければ解散だと恫喝し、また有罪求刑を受けた田中元総理はダブル選挙を示唆しているのでありますが、あなたは、目白のやみ将軍の言うことを聞いてダブル選挙を考えておるのかどうか、あれこれ言わないで、イエスかノーかを答えてもらえばいいのであります。  総理は施政方針演説で、「日本は戦後史の転換点に立っている」と時代認識を述べられました。私は、この転換点に立って、わが国の進むべき道は平和であり、福祉の充実による国民生活の安定であり、政治倫理の確立であることを強く訴えて、質問を終わるものでございます。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 小柳議員の御質問にお答え申し上げます。  まず、民主政治における政治倫理の問題でございます。  民主政治は、政治に対する国民信頼の上に成り立っておるという点については全く同感でございます。したがいまして、政治家が常に自粛自戒して、国民信頼を得、模範になるようにならなければならないと思っております。そういう面からいたしまして、制度面におきましてもあるいは議員個々行動にいたしましても、われわれとしては十分よく考え、かつ改革を志していくべきものであると考えております。  先般のロッキード事件論告求刑がございましたが、これは裁判の一つの過程、一つの区切りに当たるとは考えられます。しかし、これらの諸問題につきましては、裁判に対してわれわれは一応厳粛に受けとめるべきものであると思います。  しかし、議員の辞任とか進退に関する問題は、これは非常に重要な問題でございまして、前にも申し上げましたように、これは本人自由意思に任すことが適当ではないか、前に申し上げたとおりでございます。  また、御提案議員辞職勧告決議案というお話につきましては、その御提案がありました際に、これは各党で協議いたすべき問題であると思いますが、議員身分等に関する重要な問題でありますので、取り扱いは慎重であるべきであると考えております。  次に、憲法問題について御質問がございました。  私は、前から申し上げますように、戦後の日本は、現在の憲法安保条約平和条約とこの三つの大きな土台の上に建設されまして、この憲法が果たした役割りについては大きく評価しているということは申し上げたとおりでございます。  戦前の日本と戦後の日本とを考えてみますと、人権が確立され、明るい平和な民主主義世界が展開され、市民社会の岩盤が厳然とでき上がったということは、否定し得ない大きな戦後のいわばピラミッドとも言うべきわれわれの努力の成果であると思っております。しかし、いかなる制度にせよ欠陥のない万全なものというものはないのでありまして、常にわれわれはこれをよりよきものへ改革を志すのは当然であります。そういう意味におきましても、憲法もみんなで研究し、勉強し、検討を重ね、見直しを行い、そして常に国民的コンセンサスを獲得するように努力していくべきものであると思っております。  先般の自由民主党の党大会におきまして、「自主憲法について、広く国民の理解を深めるようつとめる。」、国民の理解を深めるように努めるという意味は、これはやはりみんなで勉強し、検討し、理解し合うようにし、そしていかなる改革案が適当であるか、そういうような意味において決議が行われたものであると、そう考えております。  また、憲法に関する一つの構想を持っているのではないかという御質問でございますが、私は衆議院でも申し上げましたが、明治十四年の政変というものをわれわれは大いに勉強する必要があるとかねて考えておったわけでございます。御存じのように、明治におきまして自由民権派が非常に活動を開始いたしまして、西南戦争明治十四年におきましては、大隈さん一派が内閣を脱退いたしまして非常に政局が揺れたことがあります。国会早期開設を要求した動きでございました。それに対して明治天皇を初め時の内閣の、そのときは太政官制度でございますが、みんなでいろいろ相談しました結果、中長期路線を設定したわけです。明治十八年に内閣制度をつくり、二十二年に憲法をつくり、二十三年から議会政治を行う。このような中長期路線を設定して、そうして伊藤博文以下が憲法の研究に入り、内閣制度を行い、その路線に沿って明治の大きな前進が行われたわけでございます。  憲法のようなこういう重大な問題については、そのようにある程度の中長期路線をつくって、いかに処理すべきか、与野党が合意し、全国民が合意して、そうして平和のうちに、冷静のうちにこれを進めることが望ましいと、そういう考えを私はかねてから持っておりまして、それを自分の構想と考えておるわけなのでございます。  次に、対米武器技術供与問題について御質問がございました。  アメリカに対する武器技術供与に道を開くことは、日米安保体制の効果的運用を確保する上できわめて重要であり、わが国及び極東の平和と安全に資するものという考えに立って行うものであります。本件供与は、日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとで実施することとしておりまして、これにより国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出原則等のよって立つ平和国家としての基本理念は確保されておるのであります。  また、御指摘の国会決議は、武器輸出について厳正かつ慎重な態度をもって対処する、こう書かれておるのでございます。この国会決議は、例の堀田ハガネの問題で問題が起こりましたときに、そういう違反を防止せよという趣旨のもとに、厳正かつ慎重な態度をもって対処せよと、そういう意味の御趣旨の決議でございました。政府といたしましては、同国会決議武器輸出原則等について、わが国自身の平和と安全を確保するため必要不可欠な基盤をなすものである日米安保体制の効果的運用のために必要な調整をも禁じたものとは考えておりません。したがって、政府としては今般の決定を撤回する考えはございません。なお、今後とも政府としては基本的には武器輸出原則等を堅持し、また国会決議の趣旨を尊重していく考えでおります。  次に、日韓関係について御質問がございましたが、日韓は最も近い重要な隣国でございます。政府といたしましては、この一番近い、しかも自由主義を奉ずるわれわれ日韓関係が、良好な友好な関係で平和共存するということが最も望ましい状態であると考えておるわけであります。政府としては、他国の政権に対する評価といった問題について軽々に論ずることは差し控えるべきであると考えております。  いずれにせよ、一番近い、そして自由、平和、民主という考えをともに分かっておる日本韓国との関係は、やはり最も一番近い関係にあるだけに仲よくしていくというのが常識の考え方でありまして、その常識を実践したと、そのようにお考えいただきたいと思います。  全斗煥大統領との会談におきましては、わが国は国際的立場や憲法上の制約を踏まえつつ、独自の立場から東アジアの平和と安定及び繁栄のための努力をするという従来からの考え方を説明いたしました。日米韓三国の安保体制、そういう同盟関係というものもございませんし、そういうことを論議したこともございません。  小柳議員は、中曽根首相は右手に日韓、左手に日米と、こういう御指摘がございましたが、私は、アメリカへ行きまして講演をしましたときに、右手に禅、左手に円を持って、文化、経済協力を行いますと、そういうことを演説してきたのであります。  さらに、対韓経済協力について御指摘がございましたが、共同声明でも明記されておりますとおり、隣国の友邦たる韓国経済社会発展五カ年計画を中心とする国づくりに対しまして、わが国経済協力の基本方針のもとにこれを実施したものでございます。防衛分担的発想に基づく協力ではございません。  次に、朝鮮半島の将来につきまして御質問がございました。  基本的にこれは南北の両当事者による解決にゆだねられるべきものでございます。この日韓関係の問題を処理いたしましたにつきましては、外務省を通ずる外交ルートを通じてこれを行ったものなのでございます。今後、両当事者間に実質的な南北対話が速やかに再開され、平和統一へ向けて建設的な努力が着実に積み重ねられていくことを希望しております。わが国といたしましても、南北対話の再開、南北間の緊張緩和のための諸方策に関して、韓国を初め友好諸国との立場を十分に踏まえつつ、日本としてもできることがあれば協力をいたしたい、このように考えております。  全斗煥大統領との会談におきましても、北側に対する呼びかけを全斗煥大統領はやりまして、首脳会談を提起しておるのでございます。私は、全斗煥大統領のこの勇気ある行動を非常に支持いたしまして、ぜひ実りあるように成功することを期待している、その積極的努力を継続されることを希望すると、このように申し上げてきたのでございます。  金大中事件は不幸な事件ではございますが、すでに外交的に決着した経緯もあります。しかし、わが国で起こった刑事事件といたしまして、捜査当局におきまして現在なお捜査を続行中でございます。政府といたしましては、韓国政府が同氏に対する刑の執行停止を行ったこと及び米国へ対して出国を認めたことを人道的措置としてこれを評価しておるものであります。  わが国外交基本政策について御質問がございましたが、わが国は、日米安保体制に基盤を置く日米友好協力関係をまず外交の基軸といたしております。そして近隣諸国を初めソ連を含む各国との間の友好協力関係をつくり上げ、維持発展させていく、これがわれわれの考えであり、その上に立って世界の平和と繁栄に貢献していきたいと考えておるわけであります。このことは、いずれの国とも無原則に仲よくしていくという外交方針意味しているものではございません。  また、ワシントン・ポスト紙との会談におけるソ連のバックファイアあるいは潜水艦等への言及は、ソ連の一貫した軍事力の増強が極東における国際情勢について影響を与えているという事実を踏まえつつ、わが国の自衛力整備の問題を述べたものでございます。  私は、行政府の最高責任者として、日本アメリカとの間に安保条約が結ばれておりますけれども、日本人が自分自分の国を守る決意を十分表明もせず、努力もしないでおいて、いざというときにアメリカが来援する気持ちを持つであろうかどうかということを心配しておるのであります。アメリカは、ベトナム戦争以来、外国に対する出兵や援助に対してはきわめて消極的であります。そういう面を考えますと、やはりみずからなすべきことをなして、その上に立って外国と提携しあるいは来援を求める、これが本筋ではないか。そういう意味において、日本総理大臣としてみずから自分の国を守るという決意を表明したというのが真実でございます。  また、わが国は、憲法及び基本的防衛政策に立脚して防衛力整備しておるのでございまして、非核三原則を守り、専守防衛の精神に徹しまして、そして近隣諸国に軍事的脅威を与えることがないように、軍事大国にはならないという方針で行っておるのでございます。われわれはソ連仮想敵国とは考えておりません。仮想敵国というのは、その侵す意思があり、かつ能力がある、これが両方結合した場合でございます。そういう点から見れば、ソ連が現在仮想敵国として考えておる対象ではございません。  かつ、アメリカ大統領に対する核軍縮の働きかけの問題でございましたが、私はレーガン大統領との会談におきましても、米ソ間の軍縮交渉の進展が実質的に図られるように強い期待を表明いたしました。そして、特に中距離核戦力交渉の問題につきましてはゼロオプションを支持をいたしましたし、また、例のSTART、戦略兵器制限交渉につきましても実りある進展を期待したのであります。レーガン大統領はタカ派とよく言われておりますけれども、会談した結果におきましては、非常に軍縮と平和の問題については熱意を持っておられました。私は、そのレーガン大統領の熱意に対して非常に敬意を表して、その線で努力してもらうように強調してきたのであります。  アジア・太平洋における非核地帯の設置につきましては、まだ現実的条件が整っていないと思います。しかし、政府といたしましては、一般的構想としてはそのような考え方は十分理解できます。やはり今後は核を持っておる国々がまずみずから実証してその核を撤去しあるいは廃絶する、そういう実証的な措置をとりつつ、現実的に核を廃絶していく道をとっていただきたいと私たちは念願しておるものであります。  シーレーンの問題や海峡封鎖の問題は、いずれもこれは自国防衛、つまり個別的自衛権の行使というものを前提にしていままでの防衛政策を述べたその一環の問題でございまして、いままでの考え以上にはみ出るものではございません。海峡封鎖という問題は、本土がもし侵されるという場合には、本土防衛の一環として日本に関連する海峡をコントロールする、そういうコントロールという言葉を使ったのでございまして、これは本土防衛上当然の行為であると私たちは考えております。  次に、軍事費削減の問題の御質問がございました。  この点につきましては、軍縮とのにらみにおきましてわれわれも同感でございます。鈴木前総理は、軍縮会議に出まして、世界軍事費を削減してこれを発展途上国へ向けるようにという強い強調をなさいました。私たちは同じ考えに立脚して政策を進めたいと念願しておるものでございます。  なお、アメリカソ連との関係、軍縮について御質問がございましたが、私は、現在、アンドロポフ政権が出てまいりまして、政策形成期にあると見ております。したがいまして、さまざまな試みやら、あるいは情報は来ているわけでございます。たとえば、SS20をどういうふうに処理するであるとか、それに対する諸外国の反応であるとか、あるいはアメリカがそれに対して柔軟な姿勢をとりつつあるという新聞情報は来たりしております。これは政権が交代した場合によく起こる現象でございまして、いまお互いの立場を見守っておる、そして情勢を模索しているという段階にあると思うのです。これは日本としても重大関心を持って見守っていくべき時期に来ている、そう考えております。  スターリンが死んだ後、やはり米国ソ連との間で交渉してオーストリアからの撤兵をやるとか、あるいはキューバ事件の後にケネディがフルシチョフと話をして核実験停止条約を結んだとか、ともかく政権交代があったときというのは国際関係が一つの変化の転機になるものなのであります。日本におきましても、自民党政権が交代して韓国との関係を打開するとかあるいはアメリカとの関係を改善するとかそういうような措置も実はしたわけでございまして、ソ連がアンドロポフ新政権のもとにどういう態度に出てくるかということはやはりわれわれは注目しておく必要はあると考えております。  次に、所得税減税、引当金制度について御質問がございました。  引当金制度法人税の課税所得を合理的に計算するために設けられているものでありまして、その繰入率等につきましては常に見直しを行っていくことは必要でございます。この制度自体を政策税制として考えることは適当ではございません。五十八年度におきましては金融機関の貸し倒れ引当金について見直しを行うこととしております。  また、租税特別措置につきましても、五十八年度におきましてはさらに見直しを行いまして、各種特別償却や準備金制度について縮減を行うことといたしております。  一兆円の所得税減税について御主張がございました。  所得税減税を望む声が強いことはよくわれわれも承知しております。また、国会におきましてもいろいろ御論議が行われました経緯もよく承知しておる次第でございます。しかし、五十八年度におきましては、歳出削減に努める一方、あるいは税外収入等も最大限に努力をして予算を編成した次第でございますが、税収における今日の歳出のカバー率は六四・一%、つまり歳出の中で税でこれを埋めておるというものは六四・一%という非常に低い水準に日本はございます。また、個人所得に対する所得税負担の割合は四・九%、昭和五十六年度でございます。これも国際的に見れば低い水準にございます。  景気対策として所得税減税を行うといたしましても、その財源をどうするか。これを国債に求むるということになると金融市場に影響を与えまして、情勢によってはまた高金利を生み出すという危険性があり、それは不況を招くという原因にもなるわけでございます。  以上のような点を踏まえまして、昭和五十八年度において所得税減税を見送ることは、税制調査会の答申においてもやむを得ない措置として報告されたところでございまして、御理解を願いたいと思います。  税調答申にもありますように、この問題につきましては、昭和五十九年度以降できるだけ早期に税制全体の見直しを行う中で、課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行うことが必要、このように指摘されておりますが、私も同感に存ずる次第でございます。  人事院勧告につきまして御質問がございました。  人事院勧告の取り扱いは、たびたび申し上げますように、労働基本権の制約、良好な労使関係の維持等に配慮しつつ検討を加えてきたところであります。しかし、遺憾ながら、この危機的な財政事情のもとにおきまして、公務員の皆様方に痛みを分かち合っていただかざるを得なかったことはまことに遺憾でございますが、異例の措置としてこの給与改定を見送ったことを御理解いただきたいと思うのでございます。  次に、防衛費とGNP一%の関係でございます。  五十八年度防衛予算につきましては、現在の環境に照らしまして、厳しい財政事情の中にありまして他の施策とのバランス等も考えながら、わが国のため必要最小限の経費を計上いたしました。大体本年度はゼロないしマイナスというのが一般経費でございましたが、もちろん社会保障費等においては昨年よりは上がっております。しかし、経済協力関係が七%上がっております。防衛関係が六・五%、そしてエネルギー資源関係が約六・一%ぐらい上がっております。これらはいずれも国際関係等をにらんだ点もございまして、現在の日本の環境から見まして御理解をいただきたいと思っておる次第でございます。  五十九年度以降、防衛費の対GNPがどのようなものになるかということは、今後のGNPの推移あるいは防衛費の動向、物価の動向等不確実な要素がありまして、いま見通しを申し上げることは困難でございます。  防衛費のGNP一%に関する昭和五十一年の閣議決定は、現在のところ変える必要はないと考えております。いわゆる新しい歯どめの問題につきましては、具体的にそのようなものが必要となったときに考えて検討してみたいと思っております。  また、増税なき財政再建、この理念はあくまで堅持してまいりたいと申し上げておる次第でございます。安易に増税を念頭に置くということではなく、行財政の守備範囲を見直すという見地からまず歳出の見直しを徹底して行う、そういう意味におきましても増税なき財政再建基本理念は堅持してまいるつもりです。  補助金の整理はかなり努力いたしまして、私の記憶では約五千億円程度補助金の削減を実行したと考えております。  なお、歳入歳出構造見直しを行う場合は、受益と負担の関係や、直接税と間接税とのバランスをどうするか等の問題がございまして、これらは将来の検討課題であると思っております。  次に、人種差別撤廃条約の御質問がございました。  この趣旨につきましては十分理解できるところであり、その内容の詳細はさらに検討を慎重に行う必要のある点もございます。しかし、本条約の趣旨にかんがみ、できるだけ早期に加入すべく検討したいと考えております。  国際人権規約につきましては、わが国昭和五十四年に同規約を批准し、以来、国民年金法、児童手当法等の国籍要件を撤廃いたしましたが、今後も同規約の趣旨を踏まえ、必要に応じ漸次国内法整備を図ってまいりたいと思っております。  今回の行政改革は全国民のための行政改革でございまして、一部のための、あるいは財界のための行政改革をやっておるわけではございません。御指摘のように、簡素にして効率的な政府をつくり、そして二十一世紀に向かっていかにも対応できる新しい有効な政府をつくろう、それが行政改革のねらいでございます。政府といたしましては、このために全国民的視野に立ちまして臨時行政調査会の人事をお願いをいたし、国会承認人事として国会の御承認もいただいております。労働団体の代表者もジャーナリズムの代表者も出ておりまして、国民的視野に立って検討は行われておるものと考えております。  国鉄再建の問題について御質問がございましたが、国鉄再建は急を要する問題でございまして、今議会におきましても監理委員会設置法等を提出しております。御審議をお願いいたす次第でございます。  なお、解散について御質問がございましたが、私は、原則として国会議員は任期いっぱい務めるのがこれが当然である、また選挙民の意思であると、そういうふうに考えておりまして、解散、選挙の問題は全く考えておりません。(拍手)     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  5. 徳永正利

    ○議長(徳永正利君) 山内一郎君。    〔山内一郎君登壇拍手
  6. 山内一郎

    ○山内一郎君 私は、自由民主党・自由国民会議代表して、国政の重要課題について、総理に対し質問をいたします。  中曽根内閣は誕生して二カ月を経過したばかりでありますが、この間、新内閣のやり遂げた仕事は、まず不況対策の補正予算を成立させ、続いて新年度の緊縮予算の年内編成、さらには新春早々中曽根総理訪韓、訪米など、矢継ぎ早に懸案事項の解決と友好親善外交の積極的な展開を図られておりますが、国民の評価と期待はまことに高いものがあります。この間の中曽根総理の御労苦に対し、心から敬意を表するものであります。    〔議長退席、副議長着席〕  さて、わが国を取り巻く内外情勢を展望するとき、今日ほど難問が山積し、その解決が困難で厳しいときはありません。すなわち、国際面においては、米国では中間選挙が終わり、二年後の大統領選挙へ向けての態勢づくりが着々と進められているほか、ソ連におけるアンドロポフ政権の誕生や中ソ会談の再開等政治的に大きな節目を迎えております。また、経済的にも社会的にも不況とインフレが混在する中で著しい失業者の発生を見ております。  一方、国内においては、長引く不況で失業率は高くなり、また、税収不足により赤字財政からの脱却も思わしくなく、行政改革最終答申も近くなるにつれて各論反対の声は高まりを見せております。これを受けた今期国会は、新年度予算を初め、財政改革行革関係法など与野党対立の重要議案が日程に上り、厳しい議会運営が予想されます。  このように、だれが総理になられてもその解決が困難な時期に総理の座につかれたのでありますが、今日の内外情勢をどのように分析し、認識して政権を担当していくのか、その決意を伺いたいと思います。  今日、わが国における政治体制は、議会制民主主義による政党政治が基盤となっており、政党はその目指す政策目標を掲げ、民意の媒体として存在しております。すなわち、国民はみずから共鳴、共感する政党を通じてその政治的な意思の実現を託しておるわけでありますから、政党に課せられた責務と使命はまことに重きものがあります。国民信頼され期待される政党になるには、絶えざる自戒のもと、厳しい政治倫理に徹することが政治に携わる者の要諦でありましょう。  われわれはこれまで党の倫理憲章に基づき政治倫理の確立、向上を図ってまいりましたが、今後とも高い倫理感を自覚し、綱紀を粛正して、清潔な政治を断行することが責任政党としての果たすべき使命であると考えるものであり、それがひいては国民信頼と負託にこたえる道であると確信いたすものでありますが、総理政治倫理の確立についてどのような所見を持たれておりますか、承りたいのであります。  続いて、外交問題について伺います。  わが国外交の基軸は米国との友好関係にありますが、最近、日米両国間において安全保障、貿易上の問題で若干のきしみがあると言われてきました。これらの解決のため総理は、就任後早々訪米されましたことは高く評価されるものであります。日米首脳会談を通じ、両国が信頼関係を強化し、引き続き協力して世界の平和と繁栄のため努力し合うことを合意されたことはまことに大きな成果であります。しかし、重要なことは、わが国がこれら合意事項を今後誠実に実行し、米国信頼を得ることにあると存じます。  日米首脳会談後の中曽根総理の公式声明で報ぜられていることは、次のとおりであります。「レーガン大統領と率直な意見交換を通じてお互いの強い個人的信頼関係を築き上げた。重要な同盟関係にある両国間の緊密な協力は アジア・太平洋と世界の平和の礎石である。日米両国が世界においてそれぞれの国にふさわしい責任を分担する意図があると確認し合ったこと」などであります。  一方、レーガン大統領の公式声明では、総理のイニシアチブによって、日本政府が平和と安定への負担をさらに担う決意であることを喜ぶものであると報ぜられておりますが、このことは、わが国米国に対し、平和友好国としてのより一層の努力をすると確約したものであったのではないかと言われております。  また、総理は、会談において軍縮問題についてもレーガン大統領と協議を行ったとのことであります。今日、世界の平和が辛うじて保たれているのは米ソ両巨大国の戦略核の均衡によって支えられており、両国間の核軍縮の具体的話し合いも進展を見せておりません。それだけに、唯一の被爆国としてのわが国が、人類の希求である核兵器の廃絶、軍縮の推進について日米両国が話し合われたことを評価いたすものであります。  そこで、総理は今回の訪米について、その成果をどう受けとめておられるのか、また、会談が成功に終わった裏には表に出ない将来の約束事が何かあったのではないかと言われておりますが、その間の真相及び今後の日米関係のあり方について御見解をお聞きしたいのであります。  さらに、関連してお尋ねしたいことは、ワシントン・ポスト紙との記者会見の内容であります。  総理は、有事を前提として、日本列島を不沈空母のように防衛し、三海峡をコントロールするということが同紙に報ぜられ、ソ連からは、核報復の攻撃の的となる危険性があると発表されております。  また、首脳会談総理は、日米関係を「運命共同体」と表明されたとのことですが、従来の首脳会談では出なかった言葉であり、新たな外交負担を負うのではないかと懸念する声も出ております。  これらの発言は、日米安保体制の円滑な運用のための措置としてわが国の平和と安全の確保のため当然と考えられますが、しかし従来からわが国が国是としている平和主義、すなわち憲法の範囲内、専守防衛、非核三原則の堅持という防衛姿勢から逸脱した考え方ではないかとする意見がありますので、この際、その真意と意図はどうであるのか、国民理解できるようはっきりさせていただきたいのであります。  さらには、総理施政方針演説において対ソ関係の安定的な確立について述べられておりますが、このためにも無用の誤解が生ぜぬよう十分配慮すべきであると考えられますが、対ソ外交について今後どのように対処されますか、お伺いをいたします。  次に、韓国との関係について質問いたします。  総理は、日本総理としては実質的に初めて韓国を公式訪問されましたが、懸案でありました経済協力の解決も図られ、日韓両国の親善友好に新たな基礎を築かれました。また、総理と大統領との間で最近の国際情勢について隔意のない意見交換が行われ、特に、朝鮮半島における平和と安定の維持が日本を含む東アジアの平和と安定にとって緊要である点について認識をともにしつつ、この地域の平和と安定及び繁栄のため今後とも互いに努力していくことを確認されたことはまことに有意義であります。  両国は、自由と民主主義という共通の理念を追求する重要な関係にある隣国であり、首脳レベルがもっと気軽に往来し、忌憚のない意見交換のできる雰囲気をつくり上げていくことが必要であり、この観点からも今回の総理訪韓は重要な意味を有するものと考えます。こうした両国にあっては、首脳レベルの交流と相まって、幅広い国民的基盤に基づく交流を深めていくことが、安定した日韓関係を新しい次元で発展させていく上できわめて重要であると考えます。そこで総理は、国民的基盤に基づく交流を具体的にいかなる方針のもとに進めるのか、お伺いしたいのであります。  次に、安全保障問題について伺います。  わが国と同様に厳しい財政事情にある米国は、ソ連の一貫した軍事力増強を前に、自由世界の安全を確保するため並み並みならぬ犠牲を忍んで努力しております。自由世界第二位の経済力を有するわが国に対し、米国が同盟国として応分の負担を求めることは当然のことでありましょう。極東ソ連軍の最近の動向を見ましても、日本近海までバックファイアが飛来しているのを初めとして、欧州に配備していた中距離ミサイルSS20が日本向けに極東配備が着々と進められているようであり、これは不安を一層増大せしめております。  総理は、レーガン大統領との会談において、国際軍事情勢、特に厳しい極東情勢についてどのように分析し、両国がこれに対処するのか、その場合のわが国役割り分担についてどのような話し合いがあったのか、忌憚のない御説明を承りたいのであります。  五十八年度予算において、防衛費が六・五%伸びたことで突出論の批判がありますが、防衛費二兆七千五百四十二億円は社会保障関係費九兆一千三百九十八億円の三分の一以下であり、また、社会福祉関係予算について見れば、伸び率は実に一一・五%であり、社会的弱者への配慮に十分心しております。さらに、経済協力費伸び率は七%であり、国際的役割りを果たしておるのでありまして、決して防衛費だけが突出しているものではありません。他方、GNPとの国際比較においても、欧米が四ないし六%程度であるのに、わが国は〇・九八%とかなり低くなっております。  申すまでもなく、自国の防衛はあくまでも自主的に決定すべきことは当然のことでありますが、一方、現在の国際社会情勢の中にあっては、一国のみで国の安全を確保することは現実的に不可能であります。したがって、わが国の独立と平和を守るためには、その置かれている国際関係に十分配慮して防衛力整備すべきでありますが、総理は、防衛費突出論についてどのような所見をお持ちになりますか。また、防衛計画大綱の水準の早期達成を含む今後のわが国の防衛政策はいかにあるべきと考えられておりますか、伺いたいのであります。  次いで、防衛関係費の対GNP一%の問題でありますが、この方針を決めた五十一年の閣議決定は、その中に「当面」とあるように、何ら固定的な期限を予定したものではなく、経済状況内外の情勢変化がある場合には改めて検討されるべきものと考えます。  私は、近年の経済成長の鈍化、さらには厳しい国際軍事情勢の中にあって、西側の一員としてのわが国の国際的責任考えれば、五十八年度の対GNP〇・九八%は五十九年度には一%を超えるのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。ただ、この場合、今日の異常な財政危機のもとではそれなりの国民理解が得られるような歯どめが必要だと思います。これについて総理のお考えを伺います。  次は、武器技術供与の問題であります。  今回、政府は、米国から要請のあった防衛分野における技術の相互交流にこたえ、その一環として行われる対米武器技術供与の実施に当たっては武器輸出原則によらないこととすることを決定いたしております。同盟関係にある両国が防衛技術に関する相互交流を図ることは、これまでわが国米国から防衛技術の提供を受けていたことからすれば当然のことであり、また、このような対米協力を行い、日米安保体制の効果的運用を確保することは、わが国の平和と安全を守るゆえんであると思います。  このような今般の政府の決定に対し、武器輸出原則の重大な変更であるとの批判が一部にあります。また、昭和五十六年三月の武器輸出問題等に関する国会決議に違反し、国会意思を無視したとの批判も聞かれます。私はこの批判は当たらないと思いますが、この際、対米武器技術供与についての政府認識を明確にされるとともに、今回の決定に当たって、政府として武器輸出原則国会決議との関係をどのようにとらえているのか、明らかにしていただきたいのであります。  次に、当面の経済動向と景気対策について伺います。  世界経済がインフレと失業に悩む中で、日本経済が比較的恵まれた状況にあることは言うまでもありません。しかし、世界不況背景輸出が減少し、生産、出荷が伸び悩み、五十七年度の経済成長率も当初の見通しより二%程度下回る三・一%に下方修正されるなど、経済に停滞感が強まってきております。民間の金融機関の中には、五十八年度は一%台にとどまる見通しさえ発表されておりますが、政府として今後の景気動向をどのように見ているのか、一部にうわさされる景気底割れのおそれはないのかどうか、お伺いをいたします。  このような経済状況のもとで、景気のてこ入れのための財政による対策を要請する意見も少なくありません。五十八年度予算は一般歳出の伸び率はゼロ、公共事業予算も前年同額に据え置かれております。一般会計の公共事業が四年連続据え置きで、事業量は従前に比し一割以上減っている中で、財政投融資計画も二%の伸び、地方財政計画の投資的経費に至っては〇・三%の減と見込まれる現在、財政は確実に民間経済にブレーキ役となっていることは否めません。  財政再建を達成するために厳しい予算を組まざるを得ない事情は理解できますが、公共事業の財源としての建設国債は、後世に資産として残ることを勘案すれば赤字国債と同様な考え方は避けるべきであります。今後、円レートの動向に即しつつ、思い切った金融政策も期待し得ると思いますが、公共事業費について五十八年度予算の前倒し実施を行い、さらに、経済が一段と悪化した場合には、公共投資を含む財政の追加を考慮する柔軟な選択を政府として考えるべきと思いますが、総理見解をお伺いしたいのであります。  なお、所得税減税につきましては、過去六年これが見送られております。税負担の公平の見地から、また景気浮揚にも役立つ所得税減税を実施すべきと思いますが、総理の所見を伺います。  いま世界は五十年ぶりの深刻な同時不況に陥っておりますが、最近欧米諸国のインフレの鎮静化に伴い、世界金利は低下に向かいつつあり、景気回復の条件は整ってまいりました。それだけに、自由世界第二位の経済力を持つわが国としても、この際世界的な不況に対処するための役割りを果たす必要があります。本年五月末にはアメリカのウィリアムズバーグにおいてサミットが開かれる予定でありますが、世界経済再活性化のためにわが国はパイオニアの役を果たすべきだと考えます。総理の所見を承りたいと存じます。  次に、財政改革について伺います。  昭和五十八年度予算は、歳出の徹底した節減合理化を進めることにより、三十年度予算以来実に二十八年ぶりに一般歳出を前年度同額以下とするという、かつてない厳しい抑制が図られておりますほか、制度、施策にかなり切り込んだ検討が加えられておりますことは、財政再建に取り組む政府の真摯な姿勢のあらわれとして高く評価するものであります。  しかしながら、このような政府努力にもかかわらず、五十六年度以降税収の伸びが大幅に鈍化したため、これまで政府が目指してきた「五十九年度赤字公債依存体質からの脱却」が事実上困難となっております。このような事態を招いたのは、基本的には第二次石油ショック以来の世界経済の停滞によるものであり、やむを得ない面があったと考えます。しかしながら、公債の累増は容赦なく進んでおり、五十七年度末には九十七兆円、五十八年度末には百十兆円に上る見込みであります。  いまや財政再建は 過去の財政政策の反省に立って、議論より一つ一つ具体的な解決策を講ずべきでありますが、政府赤字国債からの脱却の目途をいつに置いているのか。また、増税なき財政再建のためには、既存の歳入歳出構造をどのように改め、財政健全化のための方策、増収の確保を図るのか、お示しを願いたいのであります。  今日、経済情勢が不透明で、低成長下の社会経済のニーズもまた大きく変わってきているだけに、財政もこれに応じて対応力を回復すべきが緊急の課題であります。政府は新しい視点に立って財政構造改革を目指し、それを通じて赤字公債依存体質からの脱却を図るべきだと考えますが、今後どのような方向で財政改革を進めるのか、総理に伺いたいのであります。  終わりに、わが自由民主党は、立党以来二十八年、一貫して政権を担当してまいりました。この間幾多の困難に遭遇しながらも、国民各位の絶えざる英知と努力によりこれを乗り切り、今日の目覚ましい国力を築いてまいりました。これは、自由と民主主義政治体制を堅持してきたわが党の政治理念が正しく評価された証左でありましょう。  わが党は、今後とも人権が尊重され、創意工夫が生かされる活力ある自由社会を堅持し、高い道義によって培われた誇り得る国家、民族の構築を図るべきであります。そのためには、唯一の政権を担う国民政党として、その重き責任と使命を十分に心し、絶えず反省、研さんに努め、国民の強い支持のもと、二十一世紀へのたくましい文化と福祉の新しい国づくりに邁進しなければなりません。この際、中曽根総理・総裁におかれては、決意を新たにし、国民の先頭に立って全力を尽くされるよう要望いたしまして、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 山内議員の御質問にお答え申し上げます。  御指摘のとおり、現在は、内外、問題山積の時代でありまして、また、世界じゅうが未曾有の経済的、社会的困難の中で行き詰まっておる状況でございます。そして国際情勢は、ソ連におけるアンドロポフ政権の出現等もありまして、多少の流動性が出てくるのではないかとも一部ではうわさされており、微妙な時期にあると思います。しかし、経済的には各国とも非常に苦悩しておる。いかにしてこの不況から脱出するかというところで努力しておる状況でございます。わが国といたしましては、このような状況を踏まえ、世界の情勢をよく分析を行いまして、国の進路を誤たないようにしていかなければならないと思っております。  当面の問題といたしましては、世界からの孤立を防いで世界に開かれた日本へ前進していくということ、また内政におきましては、行財政改革を徹底して新しい時代に対応し得る活力日本社会に回復していくということ、これが基本的に大事な問題ではないかと考えております。  政治倫理の問題につきまして御質問がございましたが、先ほど申し上げましたとおり、国民信頼政治の基礎でございます。自由民主党もこのような国民信頼をつなぐために最善の努力を続けていかなければならないと思っております。わが党といたしましても、三年前に臨時党大会におきまして倫理憲章を決定いたしましたが、全党員がこれを踏まえて精進、努力していかなければならないと考えております。  訪米の成果について御質問がございました。  私は、今回訪米をいたしまして、アメリカ大統領を初め米側指導者との間に個人的信頼関係を確立する。同時に、幅広く世界情勢、日米関係等について率直な意見交換を行いまして、これらを通して日米の信頼関係を一層強化し、また近年、防衛、経済摩擦面で生じているぎくしゃくした問題点を、これを友好的な方向に改善し得たものと考えております。  首脳会談におきましては率直な意見交換を行いましたが、私は、たとえばオレンジや牛肉の輸入問題等につきましても日本考えをはっきり申し述べまして、できることと、それからできないことと、それから引き続いて継続協議していくことと、そういうものの区別と仕分けをはっきり言ってきたつもりでございます。アメリカの大統領は、この二カ月間にわれわれの政府がとりました諸般の措置について高く評価をいたしました。それと同時に、アメリカ側が見ておる国際情勢等についてわりあいに詳細に説明していただいたことでございます。  また、軍縮問題につきましても、レーガン大統領はかなりの熱意を示しておられまして、自分の生涯の間にこの核軍縮の問題については確実な成果を得るように努めていきたいと思っているという個人的真情も吐露された次第です。そして、たとえばジュネーブにおきまするSTARTの実りある状況がどの程度前進するか、そういう実証的なソ連側の出方を見きわめた上で外相会談等を行って、そしてさらに適当であると思う場合には米ソ首脳会談も考慮してよろしいんだ、そういうことを私に言明した次第でございます。私はそれを強く支持いたしまして、そういう機会が来るように最善の努力を尽くしていただきたいと申し上げておった次第でございます。  また、日米関係におきまして、表に出ない約束というようなことは何らいたしておりません。  次に、私の発言について御質問がございましたが、不沈空母という発言は、日本としては安保条約というものをもってアメリカと提携している以上、自分自分の国を守る、そういうはっきりした意思アメリカに表明する必要がある。そういう自国防衛という面から発言をいたしたのでございまして、私、海軍におりましたので空母という言葉を使いましたが、これは比喩でありまして、まあいわば不沈列島と解釈していただけばいいのではないか、こう考えております。  三海峡につきましては先ほど申し上げたとおりで、本土防衛の 一環として海峡をコントロールする、これは自国防衛上当然のことである、こう考えております。  運命共同体という発言はいたしました。これは首脳会談でもいたしました。その意味は、日本アメリカは自由主義、民主主義という信条において共通しておる、さらに日本アメリカは文化や経済の膨大な交流をもってお互いの間は非常な連帯関係を持っておる関係にある、第三番目に日本アメリカは日米安全保障条約等を通じて防衛についても強い提携を持っておる、こういうような三つの関係で非常に強い連帯関係にあって運命を分かち合っておる。そういう意味で、以上の三つを挙げまして運命共同体であると申し上げた次第でございます。私は、あたりまえのことではないか、そう思っておるのであります。  いずれにせよ、平和憲法のもとに専守防衛に徹し、近隣諸国脅威を与えるような軍事大国にならない、そして非核三原則を守る、こういう基本方針には変わりはございません。  今後の対ソの外交方針について御質問がございましたが、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立するために努力してまいりたいと思っております。  しかし、日ソ間におきましては、ソ連側におきまして北方領土に軍事力を強化しておりましたり、あるいはアフガニスタンやポーランド問題等々もございまして困難な状況にあることは御存じのとおりであります。しかし、わが政府といたしましては対決を求めるものではございません。今後、日ソ外相協議等を通じまして、ソ連側に対して粘り強く問題の解決を求めていく考えでございます。私は外交の要諦といたしまして、手ごわい相手に対しては常に対話と交渉の道を開いて、そして粘り強く常に交渉を継続していく、そういう態度が必要ではないかと考えておる次第でございます。  日韓関係につきましては、安定した日韓関係構築のため、幅広い国民的基盤に基づく交流がきわめて重大であるという点については全斗煥大統領とも一致して、共同声明に明記したところでございます。この間におきまして、私の訪韓に際しましては、やはり日韓両国にある議員連盟の皆さんはこの不幸なぎくしゃくした間にも粘り強く両国の関係を維持してこられた、この努力の成果が非常にあったということを私、痛感しておりまして、この議員連盟の役割りについて非常に高い敬意と評価をなすものでございます。  なお、日韓両国の間におきましては、具体的には学術、教育、スポーツ等の文化交流、特にこれからの新しい世代の交流を拡大していくことは大切であると思います。そのためには政府、民間双方の努力が必要でありまして、政府間では文化交流に関する実務者会議の開催に合意が済んでおります。  また、日韓両国の議員や民間有志が進めている文化交流基金、そのほか民間ベースの文化交流に対しても、政府としてもできる限り側面的協力を惜しまないものでございます。  また、訪米時の私の発言につきまして御質問がございましたが、今回の首脳会談におきましては、先ほど申し上げましたように、国際情勢、二国間の問題について幅の広い率直な意見交換を行った次第でございます。  特に、東西関係につきましては、アンドロポフ新政権が目下政策形成期にある、したがって西側陣営としては結束をして慎重に対応することが重要である。ソ連に対しては、一面においてアフガニスタン問題その他等にもかんがみまして、自制を求めると同時に対話も必要である。そしてアジア情勢につきましては、中国が穏健で現実的な近代化政策をとり、鄧小平体制が安定した国づくりに進んでいることが望ましいと、このように考えました。さらに韓国につきましては、私から訪韓の模様を説明いたしまして、韓国との間に親善友好の関係を築き得たと申しました。これに対してレーガン大統領は、これを歓迎して、日米両国はそれぞれの立場から東アジアの平和と繁栄、そして緊張緩和のため今後とも努力していくという点において意見が一致した次第であります。  さらに私から、北方領土におけるソ連軍事力の増強状況、あるいは日本周辺におけるミンスクやバックファイアの活動状況等、ソ連軍事力増強を示す情報を得ていることも先方に示しておきました。またさらに、ソ連が欧州配備のSS20をアジアに追加的に配備するような情報が参っておりましたけれども、もしそのようなことが行われることであるならば、わが国としても重大関心を持って注目しなければならない、こういうことも述べておいた次第です。  このような国際情勢等も踏まえ、わが国の自衛力整備の問題につきましては 米国側から、みずからの防衛のために一層速やかに前進することの希望が述べられました。これに対して私からはわが国としてはわが国自身のために今後憲法及び基本的防衛政策に従って自主的判断に基づいて防衛力整備を図っていく、この旨を申したのでございます。私は、貿易の自由化、市場の開放も、あるいは日本の防衛も、これは日本の国益に基づいて、みずからの判断によって行っていくものだということを強く強調したところでございます。  次に、防衛費と今後の防衛政策でございますが、先ほど申し上げましたように、憲法の許す範囲内で、自衛のため必要な限度の防衛力を自主的判断のもとに整備していく、こういう考えに立っております。  五十八年度の防衛予算につきましては、財政事情と内外の防衛の必要性とのぎりぎりの点でバランスをとったのが六・五%ということになったと考えております。今後とも、以上の防衛力整備基本考え方のもとで、防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く到達するように努力いたしたいと思っております。  防衛費GNP一%の問題でございますが、これも先ほど御答弁申し上げたように、GNP一%に関する昭和五十一年の閣議決定は、現在のところ変える必要はないと考えております。五十九年度以降の問題につきましては、今後のGNPの推移及び防衛費の動向等に不確定な要素がございまして、見通しを申し上げることはむずかしい情勢です。いわゆる新しい歯どめの問題につきましては、具体的な必要が生じました事態において検討いたしたいと思っております。  対米武器技術供与の問題で御質問をいただきました。  今日、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることは、日米安全保障体制の効果的運用を確保する上できわめて重要となっております。このような新しい状況のもとで、かかる相互交流の一環として、日米相互防衛援助協定の枠組みのもとで米国に対し武器技術を供与する道を開くこととして、その供与に当たっては武器輸出原則等によらないこととすると決定した次第です。同協定におきましては、供与される援助について、国際連合憲章と矛盾する使用や、第三国への移転等に関しては厳しく規制しております。したがって、この措置は、国際紛争等の助長を回避するという武器輸出原則等のよって立つ平和国家としての基本理念を確保しつつ行い得るものと考えております。  昭和五十六年三月の国会決議は、堀田ハガネ等の違反事件に事例が生じたことにかんがみまして、そのようなことのないように、武器輸出についての厳正かつ慎重な態度をもって対処するとともに、実効ある措置をも講ずる、これを政府に求めたのでありまして、政府はその趣旨を尊重して努力すると御答弁申し上げております。したがって、同決議政府に対して、武器輸出原則について、わが国の平和と安全を保障するための必要な不可欠な基盤をなす日米安保体制の効果的運用のために必要な調整をすることまで禁じたものとは考えておらない、政府としては今回の決定は国会決議に違反するものとは考えておらないのであります。政府としては、今後とも基本的には武器輸出原則等を堅持し、国会決議の趣旨を尊重していく考え方であります。  次に、景気の動向について御質問がございました。  世界情勢は、最近アメリカの高金利の是正、それから各国における物価の鎮静、こういう状況によりまして、少し立ち直りの方向に向かい始めているのではないかとも考えられます。しかし一方、国内経済につきましては、物価の安定傾向、五十七年十二月の消費者物価は対前年度上昇率一・八%であります。世界で一番低い物価上昇率の国になっております。そのほか在庫調整の進展等もありまして、景気も総じて回復の方向へ向かう兆しが出てきつつあるのではないかとも思います。  しかし、政府としては、さき閣議決定されました五十八年度の経済運営の基本的態度のもとに、物価の安定を基礎としつつ、国内民間需要の喚起を中心として景気の着実な回復を図っていきたいと思います。これによりまして、五十八年度の経済成長は実質三・四%は確保し得るものと考えております。  さらに、五十八年度におきましては、非常に厳しい財政事情のもとに、御指摘のように公共事業費につきましては前年度同額を確保いたしましたが、今後民間資金の活用等により事業費の確保を図る等景気にも配慮してまいりたいと思う次第でございます。  なお、長期的な観点から財政のあるべき姿を考えますと、建設公債といえども問題がないというわけではございません。歳出歳入構造の徹底した合理化、適正化を進めることによって、できるだけ早期に特例公債依存体質からの脱却、さらに公債依存度の引き下げにやはり最大限努力していかなければならないと思います。予算の運営につきましては、予算を成立させていただきました後で、経済状況を見ながら機動的に検討してまいりたいと思っております。  所得税減税につきまして御質問がございました。  昭和五十三年以来、課税最低限の据え置き等によりまして実質的に負担が増加しているというその関係から、減税を望む声が強いことはよく私ども承知しているところでございます。しかし、遺憾ながら五十八年度におきましては、歳出削減に努める一方、あるいは租税特別措置の整理合理化等を推進をいたしましても、税収による歳出のカバー率は六四・一%と非常に低い水準にございます。また、個人所得に対する所得税負担の割合は四・九%、昭和五十六年度。国際的に見ればこれまた低い水準にあります。  こういうような情勢下におきまして、昭和五十八年度において所得税減税を見送ることは、税制調査会の答申においてもやむを得ない措置として答申されておるところでございます。昭和五十九年度以降できるだけ早期に税制全体の見直しを行う中で、課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行うことが必要であると税調答申に言われておりますが、われわれはこの線に沿って考える必要があると思っております。  しかし、実質可処分所得の対前年同月比を見ますと、五十五年、五十六年はマイナスでございましたけれども、五十七年に入ってからは一貫してプラスになっております。であるがゆえに、所得税減税が必要でないと申すわけではございませんが、実質的には、実質賃金は五十五年、五十六年よりはよくなっておる、こういう情勢でございます。  さらに、不況からの脱出について日本経済が先駆的役割りを果たせと、こういうお話でございました。  確かに、雇用情勢を見ますと、米国は失業率が一〇・八%で千二百万人の失業であります。ECが一〇・一%で一千百五十万人の失業でありまして、非常な停滞に悩んでおるわけでございます。そうして欧米諸国を中心に、これがために保護主義的傾向が強まってきているというのが現在の情勢でございます。わが国といたしましては、一面におきまして国内需要の喚起、それから市場開放、こういうようなやり方によりまして世界との協調を保ちつつ、景気を着実に回復していきたいと考えておりますが、やはり世界全体の再活性化へ向けて先進国の共同歩調は必要であると考えております。このために、産業協力あるいは先端技術協力あるいは発展途上国への金融協力等諸般の措置を必要とすると考えておりまして、サミットにおきましてもかかる見地から発言をしてまいりたいと目下のところ考えております。  今後の財政運営につきましては、わが国財政は五十年度以降大量の公債に依存して、現状のままでは来るべき高齢化社会あるいは国際化の進展に対応できないような情勢になりつつあります。このために、五十八年度予算におきましても厳しい予算編成を行いまして、昭和三十年度以来初めて一般歳出の規模を前年度以下に圧縮をいたしました。また、税外収入等歳入面におきましても増収努力を重ねまして、公債発行額を五十七年度補正後に比べまして一兆円減額した次第であります。そして、増税なき財政再建基本理念に沿いつつ、今後も財政改革に向けて出発してまいりたいと考えておるところでございます。  今後、新しい観点に立った長期的な経済展望のもとに歳出歳入構造の徹底した合理化、適正化を進め、できる限り早期に特例公債依存体質からの脱却、さらには公債依存度の引き下げを図りまして、財政の機動性を回復してまいりたいと思います。  なお、財政改革に当たっての基本考え方につきましては、できる限り明らかにしたいと考えており、近くこれをお示しいたすべく検討させておるところでございます。  なお、歳入歳出構造見直しを行う場合、受益者と負担との関係、直接税と間接税とのバランスをどうするかという問題は、究極的には国民の合意と選択にゆだねるべき問題であると思っております。  次に、財政改革の方向でございますが、財政改革に当たっての考え方は近くお示しすると申し上げました。いずれにせよ、歳出面について言えば、単なるぜい肉落としという考え方から構造改革に取り組む必要がある段階に来ておると思っております。そして、社会経済情勢の進展に即応するよう歳出歳入構造全体を見直して、そして特例公債依存体質からの脱却あるいは公債依存率の引き下げを図る、さらに新しい時代に向かって機動的に対応できる力を培養していく、このような考えに立って計画を考えてまいりたいと思っております。  たくましい文化と福祉の国建設について御激励をいただきました。謹んで感謝する次第でございます。(拍手
  8. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 秋山長造

    ○副議長(秋山長造君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十二分散会