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1983-05-12 第98回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十二日(木曜日)    午前十時八分開会     ─────────────    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     宮本 顕治君  五月十二日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     安武 洋子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 一弘君     理 事                 名尾 良孝君                 寺田 熊雄君                 中尾 辰義君     委 員                 臼井 莊一君                 土屋 義彦君                 中山 太郎君                 平井 卓志君                 八木 一郎君                 小谷  守君                 安武 洋子君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  秦野  章君    政府委員        法務大臣官房長  根岸 重治君        法務省民事局長  中島 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        警察庁警備局審        議官       三島健二郎君        外務大臣官房審        議官       藤田 公郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十日、近藤忠孝君が委員辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。     ─────────────
  3. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 冒頭に警察庁の方にお尋ねをしますが、去る五月十日、奥田福岡県知事県議会ロビー右翼団体の者から暴行を受けたことが報道せられております。  これは、私どもとして、暴力による政治への干渉という、とうてい軽く見逃すことのできない事実でありますが、一応新聞紙上報道せられてはおりますが、警察が把握している限度で事実をまず御報告願いたいと思います。     ─────────────
  5. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、宮本顕治君が委員辞任され、その補欠として安武洋子君が選任されました。     ─────────────
  6. 三島健二郎

    説明員三島健二郎君) お答え申し上げます。  ただいまお尋ね事件でございますが、五月十日午後零時四十五分ごろでございますが、福岡県庁内の県議会棟の一階のロビーエレベーターの前におきまして、ちょうど臨時県議会を終了いたしまして行政棟の方へ戻るためにエレベーターに向かっておりました奥田八二福岡県知事に対しまして、右翼団体でございます玄洋青年同盟石橋民雄という者がやにわに右腕で知事の腹部をこづくなどいたしまして、知事に全治三日間の傷害を負わせたと、こういう事件でございます。  これに関しまして警察のとった処置につきまして御報告申し上げますが、当日福岡県警では、議会棟内におきますところの右翼動きに備えまして、所要私服警察官配置をいたしまして警戒に当たっていたという状況にございました。ちょうど午後零時四十五分ごろに、知事のほかに県議会議員、あるいは報道関係者等で大変混雑いたしております議会棟の一階ロビーにおきまして、突然大声を出しました大日本愛国党員四名、それから玄洋青年同盟員らの二名を、ちょうど現場警戒しておりました警察官が押し出すようにしまして、これを行政棟の方に排除いたしたわけでありますが、その最中にさらに知事周辺で騒がしい状態が起きました。直ちに警察官二名が知事のところに戻ったところが、さらにもう一人の男が知事に向かいまして何事かわめいているという、こういう状態でございました。したがいまして、今度はこの男を警察官背後から羽交い締めにいたしまして現場から排除をいたしたわけであります。その後も警察官知事と行動をともにいたしまして、エレベーターに乗り込みまして行政棟知事室周辺まで警戒に当たったと、こういう状況にあるわけであります。このような状況下でございましたので、たまたま現場警察官は実は知事に対する暴行のその事実というものを現認していなかったわけでありまして、したがいまして、現場ではわめいている男を排除したというにとどまったわけであります。  ところが、その後奥田知事暴行を受けたとの聞き込みを得ましたので、直ちに必要な捜査を行いまして、被疑者石橋民雄を割り出しまして、同日午後十時二十分傷害容疑で逮捕いたしたわけでございます。同時にまた、石橋自宅等二カ所の捜索も実施いたしております。現在石橋民雄につきましては、博多署に留置いたしまして、その動機あるいは背後関係等を鋭意取り調べ中でございます。
  7. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 当日は奥田知事を支援する婦人たちの叫び声と、右翼のいつもの大変強力なマイクによる宣伝とが交錯いたしまして、騒然たる空気であったというような新聞報道もありますし、それで右翼のうちの相当部分暴力団であるということは、かつて警備局長予算委員会等答弁しておられますので、とかくそういう暴力的な徒輩が右翼の仮面をかぶって出没するということはあなた方でおわかりになっておったんじゃないかと思うのですね。そうすると、もう少し警備の仕方に工夫があってしかるべきではなかったかと、私どもはそういう感想を持つわけですが、あなた方はその点についてはどういうふうに考えておられますか。
  8. 三島健二郎

    説明員三島健二郎君) 今回のこの事態につきましては、実は福岡県警はちょうど臨時県議会の初日でもございますので、特に右翼動きがあるということで、事前警察官現場配置をして必要な警戒態勢をとっていたということでございます。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その必要な警戒態勢をとっておったという事実はわかりますけれども、こういう暴 力事件が起きるということになりますと、やはりそこに手抜かりがあったのじゃなかろうかという印象を国民が皆持ちますわね。ですから、その点はよくあなた方もお調べになって今後に対処したらどうでしょうかね。どうでしょう。
  10. 三島健二郎

    説明員三島健二郎君) 警察といたしましては、従来から右翼に対しまするところの不法事案につきましては、できる限りこれを未然に防止したいということで、その具体的ないろんな情勢がございますが、その情勢に応じまして必要な警戒態勢をとるということが一つでございます。  もう一つは、万が一違法行為を彼らがした場合には、それはもう絶対看過しないということがこれまた基本姿勢でございます。そういうことで、この基本姿勢右翼に対して警察としては取り締まりを実施している、こういう状況でございます。  実は今回この事件に関連いたしまして、知事からも警察に対しまして、このたび身辺警戒要請も出されているわけでございます。そういうことでございますので、一応警察といたしましては知事に対しまして所要身辺警戒処置を講ずるというようなこともいたしたいと思いますし、また私邸、あるいは県庁の内外におきますところの知事に対しまするところの警戒を実施をいたしまして、各種の努力を積み重ねてこの種の事案が再発しないように努力してまいりたいと、こう思っております。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これから奥田知事に対するそういう身辺警護という点について十分な配慮をしたいということでありますので、その点は私の方も了承いたすわけでありますが、私ども暴力による政治への支配とか、介入とかいうことぐらい危険なことはないと、これは戦前の私どもの体験で嫌と言うほどそれを身にしみておるからやかましくあなた方によく言うのですね。それで、事あるごとに私もあなた方にそういう要望をいたしておるので、予算委員会では警察庁長官に来てもらう、この委員会でも常に警備局長に来てもらうと、そして右翼取り締まりを厳にしてほしいということをその都度要請しておるわけです。その都度警察庁長官なり、警備局長は、いまあなたがおっしゃったように、事前予防と、それから、もし起きた場合には徹底したそれに対する刑事的処断をするということを私ども答弁しておられるわけだけれども、こういう事案が起きたことが今回だけじゃないんで、かつて三木さんが何か右翼のやつに転ばされたことがありましたね。それからその前に、岸元総理のようなああいうどちらかというと右寄りの人でも、ももを刺されたというようなことがあった、それから、日教組へ暴漢がピストルを発射したということがあった。この間は岡山で右翼の車が労働組合員の中に突入して、大変な騒ぎになったということがあったのです。そういう暴力事件が頻発しますからね。だから、そういう点を見ると、あなた方の右翼を取り締まるという御計画なり、気持ちというものが下部に徹底しないのじゃないだろうかと、下部の方は何か見ていると、こう右翼の方に少し遠慮しているようなふうにうかがわれる節がある、私ども見ておりますとね。もっと厳しくやってくれたらいいじゃないかと思うのに、何かこう遠慮をしているようなふうがある。それじゃ困るので、あなた方は暴力行為は許さないと、事前に必ず防止するのだというお気持ちを、よく管下の警察第一線の人々に伝わるように工夫努力をしてもらいたいと思いますが、それを強く要望しますが、どうですか。
  12. 三島健二郎

    説明員三島健二郎君) ただいま先生指摘のとおり、できる限りもちろんそのような不法事態を起こらせないという意味での予防をいたすというのは当然でございます。同時にまた起きた際の違法行為に対しましてはこれは絶対看過しない、そういうことで、実は昨年一年間警察庁といたしましても厳しく第一線を指導いたしまして、第一線での右翼事件検挙が四百五十九件、六百八十三人という数字になっております。これは実は戦後最高の数字でございまして、第一線右翼のこのような違法行為に対しましては、徹底して取り締まるということでもってその努力を重ねているところでございますので、今後ともなお努力を続けていきたいと、こう思っております。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次はレフチェンコ証言に関してお尋ねをするのですが、これは外務省ソビエト関係担当者が、この二月二十三日の衆議院法務委員会で、この事件政府としましてはいま外交ルートを通じて詳細な資料提出アメリカ政府要請しているわけでございますという答弁を、自民党の熊川理事に対して答弁しておられるわけですが、いまあなた方のおっしゃる外交ルートを通じて詳細な資料提出を求めておるその資料なるものは、もう届いたのでしょうか、どうでしょうか。一説には何かアメリカ政府が、外交ルートに乗るべき筋合いのものでないといって拒否回答をしてきたというような報道もあるかのようでありますが、その点ちょっと明らかにしていただけませんか。
  14. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) ただいま先生指摘のように、外務省といたしましては、レフチェンコ証言の内容につきまして、可能であればさらに関連情報提供を得たいということを、今年の一月末、一月の二十五日でございますが、在米のわが方の大使館を通じまして、アメリカ国務省に対して申し入れを行った次第でございます。いま先生が引用なさいました外務省説明員答弁というのは、そのことを指しているものと思います。  その後、その申し入れに対します回答といたしまして、三月の十五日に、アメリカ国務省から在米わが方大使館に対しまして、米国政府としては本件情報外交チャンネルを通じて伝達することは適当でないとの結論を得たという旨の回答を申しよこした次第でございます。したがいまして、先ほど先生おっしいましたように、拒否回答といいますか、外交ルートを通じては本件について回答するのは適当でないという態度を明らかにしてきたということでございます。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうといたしますと、外務省としましてはもうレフチェンコが昨年の七月十四日の米下院情報特別委員会でした証言記録、これは外務省がもうすでに入手していらっしゃるようでありますが、それ以外、たとえば亡命直後CIAにどういう供述をしたかとか、そのほかのアメリカ政府機関にどういう供述をしておる、またその後におけるアメリカ政府機関との接触の程度とか、アメリカにおけるレフチェンコの生活の状況とか、そういうことについてはもう資料を入手するすべがないわけですか。それとも、何か特段のやはり工夫をこれからなさる御意図があるのか、またなしつつあるのか。その辺ちょっと聞かせてください。
  16. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) 先ほど申し述べました外務省からの正式の調査依頼と申しますか、その前の段階はいま委員がおっしゃいましたように、昨年の七月のレフチェンコ米下院におきます証言記録が十二月に公表されましたので、その資料一つと、それから、アメリカ側から三月の中旬に外交ルートを通じては回答できないと言ってまいりましたことにかんがみまして、それをも踏まえまして、警察の方で捜査の方をアメリカに派遣されまして、レフチェンコと会っていろいろ話を聞いておられるという資料一つございます。これはもちろん捜査の方の資料でございますけれど。それからその他はもう委員も御承知かと思いますが、レフチェンコ自身が語ったところに基づきまして、リーダーズ・ダイジェスト編集委員でございますバロンという人が著書をつくりまして、これがつい数日前九日でございましたか、五月の九日にアメリカの国内で発売されております。この日本関係部分は月刊のリーダーズ・ダイジェスト誌が二回わたって連載をしておりまして、四月の二十三日に第一回分というのが公表されている次第でございます。したがいまして、そういう公表されているものは当然詳細に検討しているということでございます。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 アメリカ政府が、外交チャンネルを通じて伝達すべき筋合いのものでないと言って 拒否してきたのは、どこにそういう合理的な理由があるんでしょうか。あなた方としてはどういうふうにお考えになっておられましょうか。なぜ外交ルートを通じて外交チャンネルではいけないのか。あなた方がそういう方途をおとりになったことに対して向こうが拒否する理由合理的理由は何なんだろうか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  18. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) これはアメリカ側からその理由について詳細な説明があるわけでもございませんので、全くの推測でございますけれども、本来の物事の性格上、外交チャンネルという国と国との間の正式のルートを通じまして渡すには適さないものであるとアメリカ側が判断したかということかと想像いたしております。  ちなみに先ほど若干付言いたしましたように、捜査当局同士という関係ではいろいろと協力を得ているわけでございますので、いわゆる正式のレートで堂々と渡すということには適当でないと、ほかのルートでいろいろ協力しましょうということもあるのかと思っております。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはわかったけれども、なぜ正式の外交チャンネルではいけないのか。その合理的理由というのはどこにあるだろうかという疑問があるから、外務省としてはどう解釈しているのかを伺っているわけです。
  20. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) 特に私どもとしてこういうふうに解釈しているという確定的な解釈というものは特にございません。ただいま申し上げた程度のことを想像しているにとどまっている次第でございます。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それにしてはおかしいでしょう、あなた方は外交チャンネルを通じてすでに要請をなさっているわけだからね。それを向こうは拒否したという以上は、何らかそこに合理的理由がないと、そんな恣意的なものじゃないと思うね、お互い国と国との関係だから。だから、先方はそれを外交ルートでなぜいけないのか。たとえばそれは極端に機密を要することであるというようなこととか、それをやることによって国益を害するとか、何か合理的な理由がそこにないと、一国の外務省を通じての要請を簡単に断り切れるものじゃないと思うんだけれども、そんなに簡単に断る、片っ方はそうかというふうに引き下がると、そんなもんだろうか。
  22. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) 私ども、特にアメリカ側がわが方の協力依頼に対して全く協力しないと、こういう態度であるというふうには解しておりませんで、公式のチャンネルでの申し入れに対しては、外交チャンネル回答するのには適当でないという回答を得たわけでございますが、別途捜査当局に対する便宜供与というのは得ているわけでございますので、やはりその捜査秘密等々という考え方から、そういう判断をアメリカ政府としてしたものというふうに判断いたしている次第でございます。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そこがわからないんですよ。つまり、何かこれが犯罪であるとか、それからよくアメリカ政府が重く見るのは、司法的な手続にもう入っちゃって、裁判所に予断を与えるとか、あるいは裁判事件に影響を与える訴訟関係人以外にこれを開示するのは適当でないとか、そこにやっぱり合理的な理由があれば私どももなるほどと思うんだけれども、別段レフチェンコのやったことは、犯罪でも何でもないわけで、犯罪捜査とは言えないでしょう。だから、警察捜査ならばよろしいと、外交チャンネルではいけないんだというのがつまり納得できないわけだから、だからあなた方が何も考えませんでしたと言うのがちょっと納得できないわけですよね。もうちょっとそこのところをあなた説明してくださらない。
  24. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) どうも説明の仕方がまずかったかと思いますが、私どもとしましては、アメリカ側が御承知のようにレフチェンコ尋問等をしております当局というのは、日本で言えば捜査当局でございますので、捜査秘密というようなことがあるものかというふうに想像して、外交チャンネルでの照会というものに対するアメリカ側回答はそういうふうに受け取って、別途捜査当局によるレフチェンコ本人とのインタビュー等々の結果を伺っているという、こういう状況でございます。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、またこれは違うんでね。あなた方が、衆議院法務委員会とか、外務委員会ロシア課長の丹波さんが答弁しているところでは、CIAその他のアメリカ国家機関に対してと、こう言っているんで、アメリカ捜査機関が事情聴取しているというふうには言っていないわけですね。CIAその他の国家機関に対して供述をしているということはもう常識でありますと言って答弁しているわけだ。だから、犯罪捜査機関に対する供述をわれわれが要求しているわけじゃないでしょう。あなた方も要求したわけじゃないでしょう。そこがあなたの御説明とちょっと食い違うからね。やっぱり国会議員であるわれわれが、ああそうか、もっともだと思うような答弁をしていただかないと、どうもわけのわからないような答弁されたんじゃ困るから、しつこいようだけれどもお尋ねするわけです。
  26. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) 捜査当局と私が申し上げましたのが正しくなかったかもしれませんが、私の念頭にございましたのは、CIAというような機関念頭に置きつつ申し上げた次第でございます。  私ども外務省資料要請をいたします相手は、当然のことながらアメリカ国務省でございますので、国務省に対して、レフチェンコ氏のアメリカ議会における証言等々にかんがみて、その他の何か関連情報で、わが国について特に関心のあるものがあれば提供を得たいということを、いわゆる正式のチャンネルと申しますか、公式のチャンネルと申しますか、それで申し入れたわけでございます。  それに対しましてアメリカ側としましては、CIAという、アメリカ亡命をした人を尋問と申しますか、いろいろ話を聞いている機関というのは、先生おっしゃいましたようにCIAというような機関でございまして、そういう機関にはそれなりのやはり、捜査秘密という言葉が正しいかどうかちょっとわかりませんが、特別の秘密というものもあるかと思いますし、そういう機関が行った結果を国務省を通じて正式チャンネル外務省提供するというのにはちょっと適さないんだという回答でございますので、それはそれなりに理解できるというふうに私どもは受け取っていた次第でございます。それで、日本側関心を持っていることに対しましては、別途外交チャンネル以外のたとえば捜査当局に対する協力便宜供与ということで先方協力をしてくれているわけでございますので、やはり日本にとりましては同じ政府機関でございますから、外務省国務省という関係の問題ではちょっとないと思うので、これはこのルートではちょっと回答するのは控えさせてくれという、ただし別途協力はしましょうということでございますから、日本政府全体として見ますれば、アメリカ側は一応それ相応の協力をしてくれているというふうに私どもは考えております。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 形式的にはやや前進の御答弁のように思いますけれどもCIAがどうも国務省と違う機関だからというなら、CIAに対応する日本機関というのは内閣調査室になるんじゃないか。あるいは公安調査庁になるのか、その辺がわからないけれども警察といきなり、警察だけには協力しましょうという点は、それはちょっとやっぱりのみ込めない面があるのね。だけれども、きょうは余り時間をとってはいかぬので、これはここだけにしておく。  それからもう一つは、レフチェンコ証言によると、コード名ナザールという外務省事務官が、外国駐在日本大使、あるいは大使館からの通信文を同省の電信課で入手して、これを撮影ないしコピーして、自分のケース・オフィサーに渡していたというような証言をしている。これはリーダーズ・ダイジェストの三十八巻五号に出ているんですね。これはあなた方から私も大体お聞き し、資料も収集したわけだ。  安倍外務大臣がことしの四月十三日衆院外務委員会での答弁で、私も警察当局から四月の初めに聞いて、外務省当局調査を命じ、目下調査を進めていると言って答弁していらっしゃるわけですね。四月初旬からということになると、もう一カ月以上たっているんで、当然もう調査は済んでいるんじゃないかと思われるんだけれども、その結果はどうなんでしょう。
  28. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) 外務省員ナザールに関連する部分でございますけれども、これは先生指摘リーダーズ・ダイジェストの記事にも明らかでございますように、レフチェンコ自身が扱っていたケースということではむしろなくて、レフチェンコが前にこういうことがあったんだと、ないしはほかの人がやっていたということで記述をしているものでございます。いわば伝聞と申しますか、レフチュンコの伝聞として書かれている部分に属しております。それで、若干その結果もございましてか、記述自体もかなり漠然としたものでございまして、それだけで十分な参考資料になるというものではないわけでございますけれども、仮にこれが事実であるということになりますと、きわめて重大な問題でもございますので、ただいま先生御引用になりました外務大臣答弁でも申し上げましたとおり、四月の早々から鋭意調査を行っているというのが現在の状況でございまして、現在まだ調査継続中という状況でございます。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはナザール日本人の何という外務事務官であるかという点はわかったんですか、わからないんですか。
  30. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) 現在まだ調査継続中ということでございますので、その点も含めて現在お答え申し上げる段階にないという状況でございます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはその人物がだれかということがまず一つあるわけですよ、調査には。それからその人物が果たしてレフチェンコが言ったように、外務省の機密を漏らしたか、つまり通信文なるものを提供したという事実があるかどうかという、それがさらにまた日本の国益を著しく害したかどうかというようないろいろな調査があるわけで、私はその人物がまずわかったかどうかをお尋ねしているんで、調査中といったって、何か法務大臣がちょっといま耳打ちされたようだが、余り国会の答弁で事実を隠したりなんかせずに率直に言ってほしい。
  32. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) ただいま先生おっしゃいましたように、まずだれかという問題が一つ、それからその問題とももちろん関連いたしますが、どういう秘密が電報等々漏れていた形跡があったかどうかという二つのアングルというものがあるかと思いますが、双方を調査しているわけでございまして、第一点の人物を特定したかという御質問に対しましては調査中ということでございますので、まだ特定するには至っていないということでございます。  それから、文書が漏れたか否かといういわゆる物の方からの調査でございますけれども、それについてもいまなお調査を続けているという状況でございまして、それ以上のお答えはちょっといまのところできかねる状況にございます。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは外務省が鋭意努力をなさるということであれば、そんなに長くかかる問題じゃないんですね。そういう電信課の事務に介入できる、その資料を入手できる人物というようなものがそんなたくさんあるわけじゃない。それもレフチェンコの言った期間というのは時期的に限られているわけだ。それをなお調査中というようなことを言って答弁できないというのは、これがもし事実無根であれば、レフチェンコという人間の言った証言というものが信憑性が崩れ去るし、それからもしこれが事実であれば、外務省というものの威信にもかかわるし、あなた方が板挟みになって大変困っておられるということが容易にこれは想像できるわけだね。それだから答弁を引き延ばしているんじゃないかというわれわれは印象を持っておるが、限られた人間の調査に、そんな時間かかる道理がない。これはもうちょっと何というか、あなた方、事実をどう処理していいかということを困却しているために、調査調査中と言って逃げているんじゃないですか。
  34. 藤田公郎

    説明員藤田公郎君) これはもう先生もおっしゃいましたように、外務省にとりましてもきわめて重要な問題でございますので、本当に誠心誠意実は調査努力を続けているということは事実でございまして、単に引き延ばすために調査調査中ということを申し上げているということは全くございません。全力を挙げて調査を行っているというのは私が申し上げたとおりでございます。ただ、冒頭に申し上げましたように、レフチェンコ記述していること自体が余りに漠然としておりますので、限られた人数の中から割り出すのはそんなむずかしいことではないんではないかという御指摘ではございますけれども外務省調査と申しますのも、別に何と申しますか強制力を持って云々ということではございませんし、私どもとしてのでき得る限りの内部調査ということで行っておりますので、限られた漠然たる資料をもとに、先生おっしゃいましたように両方の面から、人の面及び物が出た形跡があるかどうかという、この両方の面から調査に全力を挙げて取り組んでいるというのが現状でございまして、お答えを引き延ばすために調査調査中と申し上げているということは全くございませんので、その点はぜひ御理解を得たいと思います。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 一応きょうはこれだけでね。  法案それ自体の審議に入りますが、このマンション法の中で、私は特に著しい改正点というものは管理者の権利義務というものが非常に拡大した、それを非常に重く見ていらっしゃる。これは現実に即応した事態かもしれません。管理者が適切でないと、建物自体の管理もおろそかになって、マンション自体がスラム化していく。それからもう一つは共同生活の快適さというものを守ることができなくなる。そういう意味で、管理者の地位というものを重く見ておられるという点は私は適切であると思う。そして、その「管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。」ということが二十八条にうたわれておりますが、これは結局管理者と区分所有者全員との法律関係は委任契約によって始まる、そして規律されるという趣旨なんだろうか、何か別な不定型な無名契約によるものと解釈すべきだろうか、その点まずお伺いしたいと思うんです。
  36. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 管理者を選任いたします場合には、まず集会の決議によって管理者の選任決議をするということになるわけでありますけれども、選任決議と申しましても、これは内部的な意思決定の問題でありますので、それに基づいて区分所有者全員と受任者たる管理者との間で契約関係が成立しなければならないという点はただいま御指摘のとおりであろうかというふうに私ども考えております。これにつきましては、株式会社の取締役の地位と申しましょうか、選任の方法につきましていろいろな説がありますように、管理者についても同様の考え方があろうかと思うわけでありますけれども、選任決議の性質をどういうふうに理解するにいたしましても、選任決議があったということだけで管理者となるべき者、被選任者の意思を無視して非常に重い義務と責任を負うべき管理者の地位につかせるということは、これは妥当でないというふうに考えておりますので、選任決議があって、これを被選任者が承諾するということは少なくとも必要ではないか。選任決議があって、それを被選任者が承諾すれば、そこに委任契約類似の契約が成立するというふうに解すべきものではないかというふうに考えております。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、ちょっとそこは違うんじゃないかな。選任はあると。それは内部事項ですからね。だから、その選任があって、それが決まったら全員がやはりその人間に対して何らかの意思表示が必要じゃないですか。そしてその意思表示があって、わかりました、お受けしますという承 諾があるんで、選任それ自体は内部行為と見るべきじゃないだろうか。それはやはり一種のあなたが委任契約でないとおっしゃるのか、委任契約ですと言われるのか、あるいは無名契約、一種特別な無名契約ですというのか、ちょっとその辺をもう少しね。
  38. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) おっしゃるとおりでありまして、選任決議があって、それに基づいて区分所有者全員と被選任者との間で契約が結べればこれは一番はっきりするわけであります。われわれもそういう構成をとれれば一番ぴったりくるというふうに考えておりますことはおっしゃるとおりなんですが、ただ区分所有者全員が意思表示をするということになりますと、それが小人数の場合には別といたしまして、非常に大きな多数ということになりますと、現実の問題としてそれも困難ではないか。現に管理者がおりまして、それが交代するというような場合には、現在の管理者が区分所有者全員を代理して委任契約の申し込みをするということが可能でありますけれども、新しく区分所有関係が成立いたしまして、最初に管理者を選任するという場合には、区分所有者全員から申し込みの意思表示をするということは非常に現実の問題として困難な面があるんじゃないかということを考えますと、そうかたく考えないで、選任決議があって、それに対して管理者となるべき者が承諾すれば、そこに契約が成立する、契約があったと同視してもいいという構成はとれないだろうかということを考えておるわけでございます。
  39. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは違う。それはあなたは事実行為と、それから法律行為とをごっちゃにしておられるから。それはなるほど、たとえ百人ある人間が全員が意思表示するというわけにはいかぬでしょう。だけれど、それはやはり、それをたとえば総代みたいな者が全員の意思を代表して、そしてその選任した管理者との間に契約をするんで、それはやはり法律的には全員と、それからその管理者との間の契約なんでね、それを契約という以上はやっぱり申し込みがあり、そして片っ方が受け入れるんであって、その法律関係と、それから事実的に全員が申し込むわけではありませんという、その事実行為とごっちゃにしちゃいけませんよ。
  40. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 商法の二百五十四条でございますか、取締役の選任の際にやはり同じような問題があろうかと思いまして、その辺の逐条解説などを読んでみますと、やはり現在における通説的見解といたしましては、被選任者を取締役に就任せしめるためには、会社と被選任者の門において任用契約の締結を要するものというふうにいたしておるわけであります。ただ、別の考え方といたしまして、総会の選任決議を被選任者の承諾によって効力を生ずる、そういう単独行為であるというふうに解しまして、この問題を解決しておる考え方もあるわけでありまして、実際上は、会社においては取締役会において取締役候補者を選んでおいて、その者との間に総会の決議を条件とする任用契約を締結していることが多いというようなことが書いてございます。でありますから、私どもも原則は委任契約、委任類似の契約が必要でありまして、そのためには申し込みと承諾が必要である。申し込みのためには本来区分所有者全員から申し込みをすべきものであって、それが幾ら多数になりましても、全員から委任状を集めて代理人が全員のために意思表示をするということであろうというふうに考えておりますけれども、それ以外の構成は全くないかということになりますと、先ほど申しましたように選任決議があって、それを管理者が承諾すれば、委任契約がそこにすでに成立したと見る余地はあるんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  41. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうしてそうがんばられるのかな。内部的に選任行為をしたというのは、だれだれに頼みましょうという内部的な意思決定でね、それは何も管理者に対して、あなた管理者になってくれという申し込みはないわけだから、承諾の余地がないわけでしょう。やはりそれは何というか、それがあなたは共同所有者のうちの一人のことを考えていらっしゃるのかもしれぬわね。そうしたらそれは中に自分が入っているから、だから、よろしゅうございます、私受けましょうということで、その時点で、全員とその男との間に契約が成立したというふうに見れるだろうけれども、管理会社である第三者がなった場合に、そこへ意思表示しなければ、それは管理契約が成立する余地がないでしょう。あれは明瞭なことで、そんなことをがんばられちゃいかぬわな。
  42. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) がんばっておるわけではございませんで、理論的には、典型的な場合を考えればおっしゃるとおりでございます。
  43. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、第二十五条の第二項は、解任について集会で過半数の決議が得られない場合のことを言っておるんじゃないかと見られますが、そういうふうに解釈してよろしいかな。
  44. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 得られない場合といいますと、一度それでは集会を開いて決議をやってみるのかということになりますが、そういう意味ではございませんが、実際問題としてこの二十五条一項による解任ができない場合、あるいはそれが相当でない場合が二項の問題になるというふうに考えております。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 つまりこれは第一項の規定によって集会の決議で解任するということが決まって、その代表が、つまり全員がということですが、解任できれば個々の区分所有者が解任の請求を裁判所にする必要はないわけだから、それで私がお尋ねしているわけで、そういうことになるんでしょう。
  46. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 実際問題としてはそういう趣旨の規定でございます。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、管理会社を管理者とする場合と、区分所有者の一人を管理者とする場合と、その全体との法律関係ですが、それは変わりはないんでしょうがね、その点どうでしょうか。
  48. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 第三者が管理者になる場合と、区分所有者が管理者になる場合は全く差がございませんで、その第三者が管理業者である場合も同様であるというふうに考えております。
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 管理会社が区分所有者のために原告、被告となる、つまり訴訟の当事者となり、かつ訴訟行為を行うという点が、これは衆議院でも問題になっておるようでありますが、当初、日弁連が非常にこれに反対をいたしましたね。しかし、これは民事局長が大変御努力になって、日弁連もいまは納得しておるようでありますが、この管理者が区分所有者全員のために訴訟の当事者となり、訴訟行為を行うというのは、これは代理人としてではないんですね。じゃどういう資格なんでしょう。その点ちょっと説明してください。
  50. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) この規定につきましては、講学上はいわゆる任意的訴訟担当というようなことが言われておりますけれども、本来の権利義務の帰属主体の承認のもとに行われる訴訟担当、それを法律が認めたものであるというふうに申し上げたいと思います。類似のものといたしましては、民事訴訟法四十七条の選定当事者の制度があるわけでありますけれども、選定当事者の場合には、選定者の全員が授権をするということが必要になっております。それに対しまして管理者の場合には、訴訟の目的である権利義務が集団的なものであるということから、この授権も集団的にと申しますか、規約または集会の決議によってすることができるというふうにしたものであります。
  51. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは衆議院でも非常に論議されておるようでありますが、弁護士法七十二条等その他の法律の規定と抵触するという問題は全く起きないんですか。
  52. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 弁護士法の七十二条の規定は、ここに関係のある部分だけ申し上げますと、弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟行為の代理をすることができないという規定であります。したがいまして、ただいま申しましたように管理者の訴訟追行権は訴訟代理ではございませんので、形式的には七十二条違反の問題は起こら ないということになります。ただ、日弁連その他でおっしゃいましたのは、この規定に直接は抵触しないでも、この弁護士法七十二条の精神に反するのではないかというような御指摘があったわけでございます。ただ、その精神に反するのはどういうことかといいますと、管理業者などが管理者となることによりまして、他人のために業として訴訟をする道、そういうものを開くことになる。それがただいま申しました弁護士法七十二条、あるいは民事訴訟法の七十九条、信託法十一条というような規定の立法趣旨からいって問題ではないかと、こういう御意見であったわけでございます。そういうことからこの訴訟追行権は区分所有者から選任された管理者に限るべきであるということを一つおっしゃったわけです。  それからもう一つは、あらかじめ規約によって包括的に与えることができないことにして、個別的な集会の決議による授権だけによって認めるべきであるということをおっしゃったわけであります。しかし、この点についても法制審議会で十分に検討されたわけでありますけれども、このような制度を認めることによって、信託法十一条、それから民訴法七十九条、あるいは弁護士法七十二条というような規定を潜脱するというような事態が起こるおそれというものはほとんど考えられない。現実の問題としてはほとんど考えられない。それよりも、このような制度を設ける合理性と申しましょうか、必要性が非常に高いということで、そういった御意見が法制審議会でも多数を占めまして、答申をいただいたわけであります。  ただ、前回も問題になりました五十七条の差しとめ訴訟というのがございますが、そういう訴訟についてまでも規約で一般的に管理者に訴訟追行権を授権することができるということはどうかという点につきましては、日弁連の御意見も一つの考え方であるというふうに思われるわけでありまして、この法律案においては差しとめ訴訟については別に規定を設けまして、これを管理者が提起するには必ず個別的な集会の決議によらなければならないということにしたわけであります。管理者の権原のうちで訴訟追行権だけを区分所有者たる管理者に限定するということは法制度としては非常に整合性を欠くわけであります。しかも、先ほど申しましたように、五十七条の訴訟についてはこれから外すということにいたしますと、日弁連の指摘されるような弊害が起こる懸念というものは大半は払拭される、こういうことになるわけであります。そのようなことを日弁連にも御説明をいたしましたところ、現在では反対ではないという御意向のように承っておるわけでございます。
  53. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 管理者でない集会において指定された区分所有者、これが全員のために訴訟行為をする場合にも、あなたがおっしゃるように任意的訴訟担当者といいますか、任意的訴訟担当行為と、こういうことになりますか。
  54. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) そのように考えております。
  55. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なお、管理会社が管理者として訴訟行為をする場合は、その管理会社の代表者だけが訴訟行為ができるんでしょうね、法廷に出て。つまりその雇い人が出ていって、私は代表取締役の旨を受けて来ましたと言って訴訟行為はできない。支配人ならばこれは特別に規定があるから、支配人という資格があれば、証明すればいいわけだけれども、それ以外にほかの者が訴訟行為をするということは許されないわけでしょう。
  56. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 代表権のある者に限り訴訟行為ができるということになろうと思います。
  57. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 代表権というのは支配人も含めるわけですね、あなたのおっしゃることは。  それから、管理者が区分所有者の一人であるときに、その者が集会で代表者として選ばれた場合、管理者でないわけですが、当該の訴訟についてだけ全員のために選ばれたとき、これもやはり選定当事者でなくして任意的訴訟担当者、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
  58. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 五十七条の規定によって訴訟追行権を与えられておるわけでありまして、私どもとしてはそのように考えております。
  59. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、二十六条第二項の代理ですね、「管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。」、こういう規定がある。これと第四項、これがいま言ったように、職務に関して原告または被告となる。その両者の関連をどういうふうに理解したらいいんでしょう。これは全く別個に考えていったらいいのか。
  60. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 二項は、管理者がその職務に関して裁判外で区分所有者を代理して各種の行為をするというために必要な規定でございます。  第四項は、管理者が裁判上職務を行使する、原告または被告となるために必要な規定であるというふうに申し上げたいと思います。
  61. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 非訴訟行為の場合は代理である、訴訟行為の場合は代理ではなくて任意的訴訟担当である、こう区分けをしたのでありますが、そういう必要があったのだろうかどうかという、そういう疑問を私は持ったものだからお尋ねしたわけで、両者を代理として貫いてみてもいいのじゃないかと考えたわけだけれども、両者をどっちも代理だというふうにしたのではぐあい悪いわけですか。
  62. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 二十六条の二項は、現行法の十八条の二項の規定でございますが、「管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。」という趣旨の規定でございます。これが裁判外の行為について適用があることについては、全く異論がございませんけれども、管理者がこの規定に基づいて区分所有者の代理人として訴訟の提起ができるかという点につきましては、従来から現行法のもとで全く議論がなかったわけではございませんけれども、これを否定する考え方の方が強かったということになるわけであります。  今回法制審議会においてその問題が審議されまして、管理者が区分所有者全員のために、あるいは修繕業者に対して修繕義務の履行を求めるとか、あるいは管理費未払いの区分所有者に対して管理費の取り立て訴訟を起こすというような場合の制度としてどういう制度が相当であるかということで、代理説あるいは訴訟追行権のような考え方、両説あったわけでありますけれども、訴訟の追行ということになれば、やはりこの四項に書いてありますような訴訟追行権という形で構成した方が相当であろうということになったわけでございます。
  63. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 代理権ということになると、訴訟を任された人が区分所有者の一人である場合には、本人及び他の者の代理人というふうに区分けせにゃいけないからめんどうくさい、したがって、独自にこれは訴訟追行権だとした方がさっぱりする、そういうたしか考え方もできないことはないわね。  次は集会の議事でありますが、これはしばしば過半数の場合は、区分所有者の過半数それから議決権の過半数、両方の過半数を必要とするわけでしょうね。  それから、特別決議の場合は、ことに区分所有者の一人を相手として決議が行われる場合に、その問題となった当該の本人もやはり決議に加わると解すべきかどうかという疑念はないことはないけれども、特別な規定がないから本人も決議に加わるんですというふうに考えた方がいい。そういうふうにも考えられる。その辺のところをちょっと御説明いただきたい。
  64. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) ただいま申し上げましたように、特別の規定ということになりますと、商法の五十六年改正前の二百三十九条には、ただいまおっしゃったような特別利害関係人は議決権を行使できない旨の規定があったわけでありまして、五十六年の改正でそれを削除したというようないきさつもあるわけでありまして、この集会の決議につきましても同様の問題が一応考えられるわけでありますけれども、そういった特別の規定を置いておりませんので、行使をすることはでき るというふうな考えでございます。  その適否ということになるわけでありますけれども、区分所有者は全員の利益のために集会の決議に参加するというよりも、やはり自己の区分所有権の維持という観点から集会の決議に参加するという面も強いわけでありますから、利害関係人を排除すべきではないという考え方であります。  五十七条以下の差しとめ請求、使用禁止の請求等につきましては、特にその問題が取り上げられまして、法制審議会でも御審議されたわけでありますが、排除すべきでないという説が多くてこういう結論になったわけでございます。
  65. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから区分所有者及び議決権の過半数とか、四分の三とかいうのは、区分所有者全員の過半数、全員の四分の三、それからまた、議決権の過半数、議決権の四分の三、両方ともなくては決議が成立しない、こういうわけでしょう。
  66. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) そのとおりでございます。
  67. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、五十七条第一項の、さまざまな不当行為、これを排除するための「必要な措置」というのは、たとえば二、三例を挙げていただくと非常によく理解できるのですが、あなた方が把握していらっしゃる現実の事例、これを二、三挙げてくれますか。
  68. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 「必要な措置」ということになりますと、それは「その行為を予防するため必要な措置」ということになるわけであります。実際の例として思いつきますのは、まず騒音を発して共同の利益に反する行為をしておるという場合に、その停止を求めるのも一方法でありますけれども、将来の行為を予防するということのためには、防音工事をしろというような請求をする。これは予防のための必要な措置ということになろうと思います。それから、悪臭を発散させているというような場合に、悪臭を発散させないように密閉した何か容器を設けて、その中に悪臭を発散しているものを入れさせるというような、密閉その他の措置というようなことも考えられようかと思います。
  69. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に競売の裁判というもの、これは前回も私質問をしたのですが、これはずいぶん思い切った規定で、よくここまで法制審議会もあなた方も踏み切られたと思うのですね。これは裁判によると、判決を求めるという点で大変救いがあるわけで、かつて成田新法の場合、運輸大臣が、危険分子がたくさん利用する建物は、危険分子以外の所有者の建物であっても、その建物を持っている人間の意見を聞かずに壊してしまうことができるという規定を設けた、これは議員立法で。私どもはこんな適正手続違反の規定、憲法三十一条に反するような違憲な法律があるものかということで、大分これを論じたのだけれども、これは自民党の方々の多数で押し切られてしまって、大変違憲の法律であるということで遺憾の念を持ったわけですが、この場合には、これは裁判で所有権を奪うということでありますので、これは一番国家機関として厳格な手続で、公平にやるという機関の判定に任すということでありますから、これは私は非常に適切というか、許容されるものであるというふうに考えておる。しかし、ずいぶん思い切った規定だと思うわけですが、これが競売を許すという判決がおりたときに、その執行力というのは、その当該の区分所有者から適法に賃借をしている賃借人にも及ぶかどうかという問題がある。これは当然に及ぶというふうに考え得べきものだと思うけれども、念のためにあなた方の有権解釈をお伺いしたい。
  70. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) この裁判の認容の判決は、原告に問題になっております専有部分と敷地に関する敷地利用権、これを競売する、そういう権限と申しましょうか、資格を与えるということでありまして、しかもそれにとどまっておるわけでありますから、第三者に対しては効果はない、効力を及ぼさないと、こういうふうに考えております。
  71. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、六十三条五項の請求、この請求は非訴訟事件手続によって行うものか、もしそうすると関係法令の整備が必要になるのではないだろうか。普通の訴訟事件であれば、これは現在の民事訴訟法で賄われると考えておるわけですが、この裁判の種類、どういう裁判だというふうに理解したらいいのか。また、普通訴訟であると考える場合に、それは原・被告をだれだれか、請求の趣旨はどういうふうになるのか、期限の猶予を求めるのは答弁書で、あるいは準備書面で期限の猶予を求めれば、それが認容された場合には裁判の主文の中にそれが当然うたわれるというのか、そういう点をよく技術的に説明していただきたいと思う。
  72. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 順次御説明をさせていただきますが、六十三条の五項の期限の許与の裁判という制度につきましては、現行の区分所有法にも二つばかり規定がございます。三十五条の二項と三十五条の四項でありますが、それをそのまま改正法案にも取り入れておりまして、改正法案では六十一条の九項の規定でございます。これはどんな場合かと申しますと、区分建物の一部が滅失をいたしました場合に、滅失した部分建物の価格の二分の一以下である場合には、滅失した共用部分を復旧した区分所有者は、他の区分所有者に対して復旧に要した費用の償還を請求することができるわけでありますが、この場合に、裁判所は他の区分所有者の請求によりまして「相当の期限を許与することができる」ということになっております。  それからもう一つは、その滅失部分建物価格の二分の一を超えるときは、区分所有者は、建物の再建に関し協議をしなければならないことになっておりますが、「協議をすることができないとき、又はその協議が成立しないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。」わけであります。そしてこの場合にも「裁判所は、他の区分所有者の請求により、代金の支払につき相当の期限を許与することができる。」ということになっております。  ところで、この期限の許与という制度は、区分所有法で初めて採用された制度かと申しますとそうではございませんで、もともとは民法に規定があるわけでございます。たとえば民法の百九十六条の二項のただし書きで、占有者の有益費償還請求の場合、回復者の請求によって期限を許与する。それから、民法の二百九十九条の二項のただし書きでございますが、これは留置権者の有益費償還請求の場合に、所有者の請求によって期限を許与することができるということになっております。  ただいま申しました期限の許与は、いずれも金銭の支払い請求に対する期限の許与でありまして、ただいまお尋ねになっております六十三条の五項の期限の許与は、建物の明け渡し請求に対する期限の許与ということで、その点違いがありますけれども、この期限の許与が裁判手続によるのかどうかとか、あるいはそれが通常の裁判手続であるかどうかとか、裁判の性質はどう考えるのかというような点につきましては、両者全く同じであるというふうに考えておるわけであります。したがって、この期限の許与は、六十三条の五項に定めるものが形成の訴えによって求むべきものであるというふうに解しております。ただ、通常の場合を考えてみますと、期限の許与が問題になるのは、期限の許与だけを求めるという場合に限りませんで、その他にも考えられるわけでありまして、一つは、買い主が明け渡し訴訟を提起いたしました場合に、その手続内で売り主が期限の許与を求める場合、もう一つは、売り主が代金請求の訴訟を起こしまして、それに対して買い主の方が明け渡しと同時履行の抗弁権を提出した。それに対して、売り主の方で期限の許与を申し立てる場合というような場合が考えられるわけでありまして、通常の場合ですと、ただいま申しました後の二つの方がむしろケースとしては多いのではないかというふうに考えるわけであります。その場合に、独立の訴えか、あるいは攻撃防御の方法でよ いのかという点についても、ただいまお尋ねがあったわけでありますけれども、やはりこの場合でも、期限の許与ということは、独立の訴訟物とする必要があるということを考えますと、攻撃防御の方法としてではなくて、訴えまたは反訴という形で、独立の訴訟として提起しなければならないものというふうに考えております。
  73. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、いまあなたのおっしゃった独立の訴訟だというその訴訟が形成の訴えである、こういうふうに理解していいわけですね。
  74. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) そのとおりでございます。
  75. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、原告としてはその建てかえに応じなかった者、それから被告は第四項によって区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきものを請求した者、つまりその形成権を行使して、区分所有権と敷地の所有権を取得した者、それが被告になると、こういうことですな。
  76. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 期限の許与だけを求める訴えというものを考えますと、ただいまおっしゃるような形になるだろうと思います。
  77. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 売り渡しを求める形成権といいますか、それを行使して、区分所有権と敷地権というものを取得した者、それが明け渡しの訴えを提起した場合に、建てかえに同意しなかったその当該の被告は、期限の猶予を求める場合には、答弁書や準備書面でそれを求めてはいけないので、反訴の提起によって求むべきであると、いまあなたの御説明はそういうふうにおっしゃったわけでしょう。どうでしょう。
  78. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) そういうふうに申し上げました。一方において、反訴を提起して、そしてその期限の許与を明け渡し請求における明け渡しを拒む攻撃防御方法として使うと、こういうことになろうかと思います。
  79. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 他に御発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。  本案について安武君から修正案が提出されております。  この際、その趣旨説明を聴取いたします。安武君。
  81. 安武洋子

    安武洋子君 私は、建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案に対する日本共産党の修正案について提案理由説明を申し上げます。  一、本法案は、区分所有建物、いわゆるマンションの近年急速な普及と増加にかんがみ、その管理・運営について、一定の必要な法的規制を加えようとするものであり、全体として見れば国民の要求にこたえる内容となっています。しかし、従来区分所有建物の建てかえ、義務違反行為者の追い出しについて全員一致の決議を必要としたものを、建てかえについては全体の五分の四の賛成で、違反者の追放は四分の三の賛成決議で実施できることにした点については若干の検討の余地があります。  思うに、どのような建物であれ、いつかは老朽化し、取り壊すなり、建てかえるなりしなければならぬときが来るのは当然でありますから、法律で妥当なルールを確立しておくことが必要であります。そして、現行法の全員の賛成がなければ建物を取り壊して建てかえることができないというのはいかにも窮屈であり、場合によっては建てかえを不可能もしくは著しく困難ならしめるものでありますから、これを緩和する措置自体に反対するものではありません。しかし、このような場合にも機械的な多数決で決めることは極力避けて、住民自治の精神をあくまでも尊重し、住民が十分話し合い、コンセンサスをつくり出すことを基本とするものでなければなりません。  のみならず、本法案では、この多数決により区分所有権を失うに至った建てかえ反対者の転居先の確保等については何ら具体的な措置を講じておらず、またその補償金額等についても多くの不安を残すものとなっています。さらに、マンションの建てかえによって住宅不況の打開を目指す大手不動産業者、デベロッパー等が区分所有権を買い占めたり、買収したりして多数を確保し、建てかえを容易にするという事態も十分予想できるのであります。このように考えると、建てかえを多数決で決しなければならぬ場合にも相当慎重な態度が求められ、全体の合意は必要でないまでも、それに近いかなり厳しい条件を定めておくことが望まれるのであります。  事実、法制審がまとめた改正試案にも、十分の九以上の賛成を要するという意見があったことが付されていますが、わが党は、むしろ少数意見や、経済的弱者保護の見地から、この十分の九以上の議決数を妥当だと考え、そのように修正するよう提案するものであります。  次に、共同生活の規律を乱す者の強制追い出しについても特に慎重な配慮をもって臨む必要があります。  確かに、暴力団員が入居して暴れたり、自分本位の生活態度に固執して他の住民に著しい迷惑をかけるという例も少なからずあるのは事実であり、共同生活の秩序を守るため、規律の必要性を否定するものではありません。  しかし、このような追放決議が安易に認められるならば、気に食わない隣人や、思想、信条の違う者を村八分的に追い出す手段としてこれが悪用されるおそれもなしとしないのであります。また、一度追い出しの決議がなされると、決議された者が引き続きとどまって居住することは心理的にも大変苦痛であります。  このような共同生活の秩序を守る問題でも、住民の話し合いによる解決を基本とし、入居者の保護を図る立場から、賛成決議数を十分の九以上に修正するよう提案するものであります。最後に、本法案は、管理組合の法人化は三十人以上の区分所有権者のあるところに限ってできるものとしていますが、これを十人以上と修正するよう提案いたします。  法務省が作成した資料を見ても、一棟当たり戸数の現状を見ますと、三十戸以上よりも三十戸未満の方が多いという実情であり、たとえば、法人化を二十戸のところでは認めないというような合理的根拠は何もないからであります。  以上の諸点につきまして、慎重審議の上、御賛同くださいますようお願いいたしまして、提案理由説明を終わります。
  82. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、安武提出の修正案の採決を行います。  安武提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  83. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 少数と認めます。よって、安武提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手)
  84. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十四分散会