運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-05-10 第98回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十日(火曜日)    午前十時十四分開会     ─────────────    委員異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      降矢 敬雄君     梶木 又三君      小谷  守君     丸谷 金保君      近藤 忠孝君     宮本 顕治君  四月三十日     辞任         補欠選任      岡田  広君     安井  謙君  五月二日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     小谷  守君  五月九日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     近藤 忠孝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 一弘君     理 事                 名尾 良孝君                 真鍋 賢二君                 寺田 熊雄君                 中尾 辰義君     委 員                 臼井 莊一君                 平井 卓志君                 小谷  守君                 近藤 忠孝君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  秦野  章君    政府委員        法務大臣官房長  根岸 重治君        法務省民事局長  中島 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        警察庁刑事局捜        査第二課長    森廣 英一君        建設省住宅局民        間住宅課長    鹿島 尚武君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月三十日、岡田広君が委員辞任され、その補欠として安井謙君が選任されました。     ─────────────
  3. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 本法案の五十九条でありますが、これは債務不履行によるものでもない。それから一般的な抵当権設定によるものでもない。ただ周囲の人々に対して迷惑をかける行為がある、そのために著しくマンションにおける共同生活に支障を生ずるという事情で所有する不動産競売させられると。いわば私的所有権の剥奪をもたらす、私としては、何か画期的な制度のようにも思うのですが、この共同生活維持が困難になるという点、実際問題としては非常にこれは争われる問題だと思いますが、これはどの程度、またどのような態様の行為があった場合はそういうふうに見られると、一般的なメルクマールになるような事態が考えられますか。その点をちょっと御説明いただきたい。
  5. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 五十九条ということになりますと、そもそもはこの区分所有法の六条一項ということから出発をするわけでありまして、六条一項は「建物の保存に有害な行為その他建物管理又は使用に関し区分所有者共同利益に反する行為」を禁止しておるわけでございます。それがありますと、五十七条によりまして「共同利益に反する行為停止等請求」ができることになっております。「その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。」ということになるわけであります。  しかし、そういった差しとめ請求ではまだ不十分であるという場合がございます。そういう場合に備えまして、五十八条で「使用禁止請求」という制度を認めておるわけであります。五十八条の要件といたしましては、六条一項に規定する行為による区分所有者共同生活上の障害が著しく、しかも、ただいま申しました行為停止等請求によっては、その障害を除去して共用部分利用確保その他区分所有者共同生活維持を図ることが困難であるときという要件が必要になるわけであります。  しかし、その「使用禁止請求」を考えましてもまだ不十分な場合があるわけでありまして、その場合に備えて五十九条の競売請求というものを認めておるわけであります。したがいまして、五十九条の請求の認められる要件といたしましては、六条一項に規定する行為があって、それによって区分所有者共同生活上の障害が著しく、他の方法と申しますのは、先ほど申しました五十八条の使用禁止請求によっては、その障害を除去して共用部分利用確保その他の区分所有者共同生活維持を図ることが困難であるときと、こういう要件のもとに競売が許されると、そしてこの場合は永久的に区分所有者たることを失わせてしまうということになるわけであります。
  6. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その当該区分所有者行為が、たとえば建物を非常に毀棄するとか、あるいは毀滅させるとか、その建物自体の存在、効用等を失わしめる行為である場合には、これは犯罪を構成するかもしれない。それはひっくくってしまうと、あるいは仮処分でとめてしまうと、しかしなお聞かない、そこでもう所有権を奪ってしまう、そして共同生活利益を図る、これは全体の利益のためには、もう個人所有権を奪ってもいいんだということで、ある意味では社会主義的な思想といいますか、それが根底にあるのか、私はそれは決して反対じゃないですよ、結構だと思うけれども、ずいぶん思い切った規定を置いたもんだと、あなた方の、立案者の御苦心というものをそこに見るわけだけれども、したがって、所有権を奪うというところまでいくということになると、その人間建物物理的破壊以外にどんな行動があるんだろうかと、もうちょっとその人間の反社会的な行動というものの具体的な例示、この間局長はたとえば住居という目的を有しておるマンション印刷機械を持ち込んで、そこで実質的な営業的な行為をして、近隣に震動であるとか、あるいは騒音であるとか、非常な迷惑をかける行為が考えられますという一つの例を挙げられておりますね。そのほかにはどんなことが考えられるんだろうか。あなたが現実に、そういう事態を大衆の現実生活からくみ上げて、そうして立案なさったのか、頭の中で観念的にいろいろ考えておつくりになったのか、もし現実にさまざまなそういう事態があって、そのあれをくみ上げて立案したということになりますと、もう少し例を御説明され て、そして全体を総合してこういうメルクマールをわれわれが求めることができますというような御説明があってしかるべきじゃないかとも思うのだけれども、その点どうでしょうか。
  7. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 御承知のように、六条一項につきましては、現在の法律におきましても五条に規定があるわけでありまして、その五条の考え方と申しましょうか、メルクマールといたしましていろいろな説明がされております。一つ説明といたしましては、これをおおむね三つに分けまして、一つ建物不当棄損行為である、それから二つ目といたしまして建物不当使用行為である、たとえば区分所有者の一人が共用部分をほしいままに使用して、その結果他の区分所有者通常使用が妨げられるような行為でありますとか、あるいは建物内に危険物を持ち込む行為でありますとか、あるいは建物の上の方の階の所有者がそこに極端な重量物を格納するというような行為、それから三番目といたしましては、いわゆる生活ニューサンスに当たるような行為がこれに当たる、こういう分け方で説明をしておられる方があります。それから人によりましては、いま申しました建物等の不当の棄損行為、それから建物等不当使用行為に加えまして、建物等不当外観変更行為というようなものを加えまして、それにニューサンス、四つに分けて説明をしておられるという方もあるわけであります。私どももおおむね類型的な分け方としてはそういうことであろうと思いますけれども、五十七条、五十八条、五十九条の一時的または永久にその区分所有関係から特定の区分所有者を排除するというためには、その六条一項違反行為があるばかりではなく、先ほど申し上げまして繰り返しになりますけれども、その行為による共同生活上の障害が著しく、しかもほかの方法では共同生活確保が、維持を図ることが困難であるというきわめて厳格な要件のもとに、こういった請求が許されるという考え方でございます。  こういった考え方は、スイスの法律、あるいはドイツの法律にすでに若干似た制度があるわけでありまして、昭和三十七年に区分所有法が新たに制定されます場合にも、区分所有権というものに内在する制約として、そこまでいくべきではないかというようなことも議論になったようであります。ただその際は、とにもかくにも新しい区分所有関係に関する法律をつくるということでありましたので、慎重を期して見送られたというふうに聞いております。  その後十数年間の実績を見ますと、われわれが見ましてもこれはひどいと、差しとめ請求だけではどうも不十分じゃないかというようなケースも若干報告を聞いておるわけでありまして、制度としてはやはりここまで手当てをしなければ、完全な区分所有関係の、権利関係調整使用関係調整ということについては不十分ではないかということで、法制審議会の答申もいただきましたし、それに沿って条文立案したと、こういうことでございます。
  8. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この競売手続というのは、どういう執行方法でこれを実施なさいますか。
  9. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 競売を許可する旨の判決がありますと、その判決をつけて、民事執行法規定によって競売の申し立てをするということになるわけであります。民事執行法規定には、一般的な競売手続規定がございますので、それによって換価をする、こういうことを考えております。
  10. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 民事執行法の何条でしょうか。
  11. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 百九十五条でございまして、「留置権による競売及び民法、商法その他の法律規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。」という規定でございます。
  12. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に第六十条ですがね。占有者共同利益に反する行動をとったときに、全体が契約解除専有部分の引き渡しを求め得るということになっておりますね。その訴え原告は、管理者または共同所有者全員であるということになっておりますが、ただこの訴えを起こすことを集会決議で決める場合は、これは全員の賛成がなくても、四分の三の多数決訴えの提起が決し得るわけでしょう。恐らく当該契約をしたところの区分所有者は、その集会決議反対をする可能性も考えられますね。そうすると、全員訴えを起こすという場合に、法律条文では全体が訴えを起こすと、管理者でもいいけれども全員でもいいということになっておるけれども当該契約当事者である区分所有者は、契約解除を求める訴えでは被告になりますね。原告の中に被告が入っているということはおかしいわけだから、そこのところはどういうふうにあなた方は理解せられますか。
  13. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) この場合の訴訟被告といたしましては、ただいまおっしゃいましたように、義務違反者たる占有者と、その者に対して貸借契約を結んだ区分所有者と両名であるというふうに考えております。したがいまして、訴訟原告といたしましては、当該区分所有者を除く他の区分所有者全員というふうに考えております。
  14. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まあ実際の結果としてはそうなるでしょうが、法案の形式としては、当該契約当事者である区分所有者を除くということをやはり法案には書くべきでなかったんだろうか。そうでないと、全員というと、当該契約当事者である区分所有者も当然包含されるわけだから、だからやはりそういう条文を書くべきではなかったかと私は思うんだけれども、その点どうお考えになりますか。
  15. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 確かに区分所有者全員という記載条文にはなっておりますけれども訴訟の性格から考えまして、被告たるべき区分所有者を除く全員であるというふうに理解できると存じます。
  16. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういう理解をしないと確かにこれはおかしいんで、局長の言われるように、そういう理解をして条文を読めということになるんだろうと思うけれども、しかし法律というのは、そういう場合には疑いを持たないように、そういう場合は当該契約当事者である区分所有者全員の中から除くんだという配慮は、やはり立法者としてはぼくはあってほしかったと思うんですね。こういうふうに理解できますといったって、条文の上では全員訴えを起こすと書いてあるわけだ。そうすると、その全員の中には、被告になる区分所有者も当然論理上入っているわけだから、いやそれは除いて解釈してくださいというのはちょっとやっぱり条文としてはまずいんじゃないだろうか。どうでしょう。
  17. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) この意味は、個々の区分所有者ではなく、また過半数とか、あるいは四分の三というような多数の区分所有者でもなく、全員であると、しかし、合理的な理由、むしろ制度そのものからして当然除かれるべき区分所有者は除くと、そういう意味理解をしていただきたいわけであります。
  18. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なかなか苦しい説明でね、まあそういうふうに読まざるを得ないけれども、やっぱりこれは少し条文作成者が丁寧な条文の書き方で、私は精力、根が尽き果てたんだろうと思うんですね。これはずいぶん苦心して、細かいところまで配慮してよくできているからね。もうそこんところで根が尽き果てて、そこまでの何といいますか労力を払い得なかったと。まあ局長がそこまで言われれば、それはそういうふうに解釈してよろしいが、やはり将来立案されるときには、そういう疑いがないように私は立案に当たっていただきたいと思うんです。  それから、今度は六十三条、建てかえ決議に賛成した区分所有者等が、これは区分所有者から一定の契約を締結をした者も入るから区分所有者等というのはわかりますが、それが時価で売り渡すことを請求し得るというのでありますけれども、この区分所有者権利というのは形成権であるというふうに理解してよろしいんですね。
  19. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) そのとおりでございます。
  20. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、区分所有者中の何ぴとがその権利を行使するかということは、やはり集会決議で定めることが望ましいわけですね。それとも、それが望ましいけれども個人個人が自分の経済的な利益を考えて、独自にやっても差し支えないという規定にはなっておるけれども、これは局長としてはどういうふうにこの権利が行使されることが望ましいと考えておられますか。
  21. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 法律規定では、ただいま御指摘のように各人がひとりでできるということになっております。ただ、これが文字どおり各人がてんでんばらばらに行いますと、確かに競合関係というようなものも起こってまいりますし、実際問題としては、これは必要に応じて集会等協議の結果、だれが行使するかということが決まって、それに基づいて適切な運用が行われることが望ましいと、また実際問題としてそうなるのではなかろうかというふうに考えております。
  22. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この時価というのは具体的な価格を示すのですか。それとも時価によって買い受けたいということを相手方に通告すればそれで足りますか。その点いかがでしょう。
  23. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 法律的に申しますと、時価売り渡し請求権行使のための要件として明示する必要はないというふうに考えております。
  24. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、そういう通告をして、後でその時価がいかほどであるかということは当事者間の協議によって定まる、当事者間の協議が決まらなければ結局は裁判所の認定にゆだねると、こういうことになりますね。
  25. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 私どももそのように考えております。
  26. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に六十七条でありますが、附属施設たる建物規約によって団地共用部分とするという場合は、これはそういう決議をしますね。これは何のためにこういう規定をわざわざ設けたんでしょう。まずその立法理由をちょっと御説明いただきたいと思うんですが。
  27. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) この規定立法趣旨を御説明いたしますためには、まず四条二項の規定を御説明した方がいいかと思いますが、四条二項の規定によりますと、いわゆる規約共用部分というものを定めた規定でございますけれども区分所有建物専有部分とすることができる部分、あるいは附属建物でありましても、たとえば管理人事務室でありますとか、あるいは集会室として区分所有者全員が共用しようとするものを規約共用部分と定めることができるということにいたしております。単に全員共用関係にしておくのと、規約共用部分にするということとの違いは、主として規約共用部分といたしますと、これに対する区分所有者共有持ち分法律上当然に専有部分一体化されまして、これと分離して処分することができないということになるわけであります。これは改正法案で申しますと十五条、現行法で申しますと十一条でございます。さらにはその持ち分については登記をすることを要しないということになるわけであります。これは改正法案で申しますと十一条の三項、現行法では四条三項というわけでございます。現行法におきましては、ただいま申しましたような規約共用部分というものは、一棟の建物区分所有者の共用すべきものについてのみ規定をしておるわけでありますけれども、同じような関係団地関係におきまして、団地内にあるある棟の一部分、その建物一部分団地全体で共用すべき管理事務室とする、あるいは団地内の附属建物団地全体の集会室として共用するというような場合にも同じような問題が起こってくるわけであります。こういうようなものにつきまして通常登記をして、団地構成員全体の共有登記をいたしますと、前回申しました敷地登記簿と同様の登記簿の膨大、複雑化ということが起こってくるわけであります。そこでこの六十七条の規定は、ただいま申しましたような団地構成員全員の共用すべき建物部分または附属建物を、団地規約によりまして団地共用部分と定めて、これに対する各構成員持ち分を、構成員の有する建物または専有部分一体化させまして、その持ち分登記をしないものということにする方法を開いたわけであります。
  28. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは当然に、決議があったからといって、区分所有者、あるいは他の所有者所有権を動かす効力はありませんね。そうすると、そういうふうな共用部分としましたということは、登記関係では共用部分といたしました、共用部分になりましたということだけをその所有権登記の中に書くわけですか。
  29. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) この規約によりまして、共用部分とすることができますものは、当然に他人所有物等は含まれないわけでありますから、その他人との間の権利関係というものは別途の契約等によりまして解決されなければならないことはもちろんであります。したがいまして、そういった別途の契約等による解決が図られていないものにつきましては、規約共用部分を定めた規約だけを提出されましても、登記官としてはこれを共用部分たる旨の登記はできないことになります。
  30. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、その場合、登記しなければ対抗できないということですから、やっぱり登記は必要になりますね、現にその場合。どういう方法でどのように登記しますか。
  31. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) これは表題部記載をいたしますいわゆる表示に関する登記であります。したがいまして、登記官としては実質的審査権が働く部分でありますから、その実質的審査にたえ得るような権利関係を証明していただかなければならないということになるわけであります。したがいまして、その建物部分あるいは附属建物が、規約によって共用部分とすることのできる、そういう権利関係のもとにあるということを証する書面を添付していただかなければならないわけであります。
  32. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それと集会決議が要るんでしょうね。
  33. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 規約設定が要るわけでございます。
  34. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 規約設定というのは、その規約と、いまあなたがおっしゃったような、これが団地共用部分とするに適する位置関係にあるということの証明と、この二つでいいわけかな。規約集会決議の結果として規約が生まれるわけだから、その集会決議も要るのか、それとも規約だけでいいのか、その点どうです。
  35. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 不動産登記法の九十九条ノ四というところにその規定がございますが、「共用部分タル旨ノ登記ハ団地共用部分タル旨ノ登記ハ申請書ニ其旨ヲ定メタル規約証スル書面添付シテ表題部ニ記載シタル所有者ハ所有権登記名義人ヨリ之ヲ申請スルコトヲ要ス」、こうなっておりますので、先ほど私申し上げました答弁を一部この限度で訂正さしていただきますが、登記簿所有者または所有権登記名義人になっておる者からの申請でなければならない、こういうことになります。
  36. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いろいろ検討していくと疑問が出てくるので、私の質問も条文があちこち飛ぶことをこれは御容赦願いたいと思うんだけれども。  次に、第五条の問題ですね。区分所有者建物敷地一体として管理使用する庭、通路その他の土地は、規約によって建物敷地とすることができる。これは当該区分所有者反対があっても多数決で決め得ると、こういうふうに解釈してもよろしいのでしょうか。
  37. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 共有に属しておりますものにつきましてはおっしゃるとおりでございます。
  38. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、これは所有権に対するやっぱり共同生活維持という面からの比較的大きな制約だというふうに考えてもよろしいでしょうか。
  39. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 比較的大きなというその程度でございますけれども所有権に対する制限であるという点では異論がないと思います。
  40. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そして、そういうふうにみんなの多数決で決めましたときに、補償関係というふう な問題は、これは当該所有者と、それから管理人の場合が多いんでしょうが、全体との間の協議で決めるということになりますか。
  41. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 共有にあるものをどういうふうに使用するかという使用方法についての決定でございますので、補償関係は生じないというふうに考えております。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、そいつを利用するという面では従前と同じである。ですから補償は生じないとしても、今度はそれを所有者が処分できなくなりますね。いままで処分し得た、所有権を。たとえその利用権はどうあろうとも処分し得た。しかし、今度はもう処分ができなくなってしまう。それはやっぱし補償問題は生じないだろうか。
  43. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 現在問題にしておりますのは、共有になっております土地等につきまして、それを規約によって建物敷地とすることができるという制度でありまして、しかもそれは五条によりますと、「区分所有者建物及び建物が所在する土地一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地」に限られるわけでありますから、その限度では補償問題を生じないと、こういうことでございます。
  44. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは所有者が全く同一の場合に限るわけですか。
  45. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 原則的にはおっしゃるとおりでございますが、ほかに賃借り権等を準共有している場合も含まれると思います。
  46. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ですから、私がお尋ねしたのは、そういうふうに所有者が異なる場合に、その土地敷地として決めてしまってこれを処分できなくなってしまう。従来は賃借権が設定してあろうとそれを処分し得たわけだから、所有者としては何らかの対価をもって処分し得たのじゃないだろうか。しかし、それもいまはその道も閉ざされてしまうということになると、やはりそこに補償問題を生ずる余地があるんじゃなかろうかと思うけれども、それはどうでしょう。
  47. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 区分所有者敷地利用権を有しておる場合に、その敷地利用権専有部分一体化させるということになるわけでありますから、第三者の関係が加わっております場合には、この問題は起こらないということになるわけであります。
  48. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、所有権はそのまま他人に譲渡してもいいわけですか、所有者は。
  49. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 区分所有者共有しておる土地についてだけ一体化の問題も起こってくるし、さらにはこの規約による敷地の問題も起こってくるので、第三者が加わっておるような土地、あるいは敷地等については、補償の問題によって解決しなければ一体化の問題、あるいは規約による敷地の問題ということはできないという趣旨で申し上げたわけでございます。
  50. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 よくわからないが、補償の問題はやっぱり生ずるわけですか。生じないのか、どちらでしょうか。
  51. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 規約の効力といたしまして、区分所有者に限られるわけでありまして、区分所有者以外の者には何らの効力を及ぼしませんから、その者との関係では補償関係等によって解決しておいて、自分たち区分所有者が自由にできる権利関係というものをつくり出しておかなければ、ただいま申しましたような規約による敷地とか一体化の問題は生じないと、こういう趣旨で申し上げたわけであります。
  52. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、そういう人との補償関係集会決議で決める前に、あるいは規約で決める前に解決しておきなさいよと、そうでないとこの規約によって共用部分に入れちゃうということはトラブルを生じますよと、こういうことかな。あるいはできませんよというのか、どちらです。
  53. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) どちらかといえば、いま後の方でおっしゃいました、できないという趣旨でございます。
  54. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なかなかこれは解釈上むずかしいね。これちょっとやはり補償についての規定を置くとか、あるいはあなた方がよほど解説をしないと、実際問題の運用は非常にこれはトラブルを生ずるおそれもあるんじゃないかと思いますがね。  そして、この敷地権の問題、これは不動産登記法ではどういうふうな登記をしますか。
  55. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 一方におきまして専有部分登記にその敷地利用権を書き込むことになるわけであります。そして、他方におきまして敷地たる土地登記簿には、この土地はかくかくの建物敷地権になったという旨の記載をするわけであります。
  56. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、この法律で非常に管理者というものが活躍をするということが一見してわかります。それから規約というようなもの、集会決議というようなもの、こういうものが非常に大きくクローズアップされてくるわけですが、この管理者は、この法律では委任による受任者という規定をされておりますが、しかし、これは相当な権限を持つし、仕事量も多いと思われる。とてもわれわれの居住関係における町内会長の比ではないようにも思われる。つまり損害保険契約の締結であるとか、保険金の受領であるとか、あるいは訴訟の提起であるとか、訴訟の遂行であるとか、弁護士はだしの行動もしなければいかぬ。もちろん弁護士を頼むこともその権限の中にあるのだろうけれども、自分でやっても構わないという大きな権限を持っておる。そうすると、これは委任の場合は民法上は原則として無報酬ということになるけれども、当然報酬がなければなし得ないことでありますけれども、これは規約で報酬を定めることができるというような注意的な規定を置いた方がよかったんではなかろうかという感じもするのですが、その点はあなた方どうお考えになります。
  57. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 規約で報酬を払うことができるということを定める必要があることは御指摘のとおりでございまして、三十条には「管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」という規定がございます。管理者に対する報酬の問題は、まさにこの管理に関する事項として規約によって定めることができるというふうに考えております。
  58. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 区分所有者の責任については第二十九条の規定がある。これは管理者が職務の範囲内において第三者との間にした行為については区分所有者がその責めに任ずることを前提にして、その任ずべき割合はどうかという点の規定でありますけれども、これは管理者の不法行為については何らの関連がない、不法行為についてはどういうふうに理解したらいいのか、この点をまず御説明いただきたい。
  59. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 二十九条は区分所有者の責任等について規定を置いておりますけれども、この場合に管理者の不法行為等に対しては区分所有者が責めに任ずべきでないことは、ただいま御指摘のとおりでありまして、その他にも区分所有者管理者の不法行為について責任を負うべき根拠というものは考えておりません。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、一般論だけれども管理者の不法行為については、管理者自身が不法行為による責任を負うべきであって、他人である区分所有者はいかに関連があろうとも、自己が選任した者であろうとも責任を負うべき筋合いではない、こういうふうに理解してよろしいかな。それならば、その不法行為なるものが職務の遂行に関連して生じた場合はどうだろうかという疑念が起きないでもないんですが、その点はどういうふうにあなた方理解しておられますか。
  61. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 御承知のように、法人につきましては、理事等の不法行為について法人が責任を負う場合があり得るわけでありまして、その類推ということで、この区分所有者の団体が一種の社団であるということになりますと、その社団が責任を負う。その社団と申しましても、その実質は区分所有者であるというような考え方一つあり得るかというふうに思いますけれども、従来の一般的な考え方といたしましては、区分所 有者は管理者の不法行為については責任を負わないということで考えております。
  62. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次は五十二条、これは、管理組合法人の事務は、すべて集会決議によって行うという規定でありますが、これは日常のルーチン的事務は含まれないと解釈していいんでしょうね。
  63. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 五十二条の一項ただし書きにおきまして、特別決議事項を除いては、「規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。」と、こういう規定がございますので、この規定によって理事その他の役員の専決事項というふうに定めることが可能であります。
  64. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただし書きによる専決事項というふうなものでなくて、これはつまり規約なり、集会決議で、それはもう一切理事に任せちゃうじゃなくて、いわゆる家庭で言えば日常の家事みたいなものですね、日常生活を行うに必要な事務というようなものは、ルーチン的な事務ですね、これは当然常識上どんどん理事が行ってしまって差し支えないということでしょう。
  65. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) その範囲が一つ問題になろうかと思いますけれども、限られた範囲内におきましては、おっしゃるとおりであろうというふうに思います。
  66. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、先ほどちょっと話が出ましたが、不動産登記法九十一条第二項にいわゆる敷地権ですね、これはどういう種類の、法律的な類型がいろいろありましょう、所有権から地上権、賃借権というような、いろいろな類型があるでしょう、使用貸借による権利とか。そのうちのどういうものを一切包含したものなのか、その敷地権が包摂するいろいろな、もろもろの権利、そういうものをちょっと説明していただきたいと思います。
  67. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 敷地利用権という言葉と、敷地権という言葉と両方使っておるわけでありますが、敷地利用権という場合には所有権あり、地上権あり、賃借権あり、まれな場合としてはあるいは使用貸借上の権利というようなものも含まれるわけであります。しかし、ここで言う敷地権と言いますのは、そのうちで登記できるものに限られるわけでありますから、所有権と地上権と賃借権に限られることになるわけであります。
  68. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、不動産登記法の第百十条ノ十三、それから百四十条ノ二、これはなぜこういう規定を設けねばならなかったのか、その立法理由をちょっと説明していただきたい。
  69. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 前回も申し上げたかと思いますけれども、現在大規模な区分所有建物敷地登記簿が非常に膨大になり、複雑になり、一覧性を欠くようになっておる。と申しますのは、これは結局建物敷地とがそれぞれ別個の不動産であって、それぞれ別個に処分をすることができる。そうなりますと、登記も別々にする。建物登記簿にもする、土地登記簿にもすると、こういうことになるわけであります。専有部分敷地共有持ち分は、通常一体的に処分されているにもかかわらず、その登記建物登記簿土地登記簿の両方にされねばならないということに、このような弊害を生じておる原因があるということになるわけであります。それを解消いたしますために、今回の改正におきましては、いわゆる専有部分敷地持ち分権の一体化という制度を取り入れておるわけであります。専有部分敷地持ち分権とは分離して処分することができない。そして、この一体として処分された処分を専有部分登記簿のみに記載して、敷地登記簿には記載をしないという方法によってこの弊害を除去しよう、解消しようということであります。そのためには、登記簿上の技術的な方法といたしましては、百十条ノ十三という規定が必要になってくるわけでありますが、「土地所有権敷地権ナル場合ニ於テ敷地権タル旨ノ登記ヲ為シタルトキハ其土地登記用紙ニハ所有権ノ移転ノ登記ハ之ヲ為スコトヲ得ズ」と。土地の方にはもう登記をしないわけであります。ただいま申しましたのは所有権の場合でありますが、百四十条ノ二の第三項におきまして、ただいまの規定敷地権が地上権または土地の賃借権である場合に準用をしておるわけであります。
  70. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、結局それ単独ではもう一切処分はできないんだから、処分を前提とするような登記はもう一切しちゃいかぬと、簡単に言うとこういうことですか。
  71. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 建物専有部分の方だけにして、土地の方にはしないということでございます。
  72. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 結局私がお尋ねしていることと同じことだね。土地敷地権の対象というか、目的となっておる土地については、処分を前提とするような登記はもう一切なすべからざるものであると、こういう考え方をうたったものだと、こう理解してよろしいんじゃないですか。
  73. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) そのとおりでございます。  先ほど私ちょっと説明を漏らしましたけれども、百四十条ノ二の第一項という規定がございまして、これはそういうようにして建物の方だけに登記をいたしますので、敷地権たる旨の登記をした土地につきましては、その登記用紙には、処分その他の登記をしないわけでありまして、担保権設定登記などをしないという規定であります。
  74. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それからまた大分戻って申しわけないが、第九条の立法理由説明していただきたい。
  75. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) これは民法の七百十七条という規定を前提にするわけでありますが、民法七百十七条におきましては、土地の工作物——この場合は土地の工作物である建物であります、土地の工作物である区分所有建物に瑕疵がありまして他人に損害を生じた場合には、その賠償関係は云々というのが七百十七条の規定でありますが、一般の建物の場合には、その責任主体である建物占有者または所有者が何人であるかということについて特に困難な問題を生ずることはないわけであります。ところが、この区分所有建物の場合におきましては、その瑕疵が専有部分にあるのか、あるいは共用部分にあるのかということによりまして、占有者または所有者が異なってくる場合があるわけであります。と申しますのは、専有部分にあるのであれば、通常その区分所有者が賠償責任を負う、共用部分にあるのであれば、通常区分所有者全員が賠償責任を負うということになるわけであります。ところが、その設置、保存の瑕疵が、専有部分にあるのか、あるいは共用部分にあるのかということの区分が不明な場合があるわけであります。たとえば、建物の欠陥によって水漏れが起こった。そして特定の専有部分の居住者に損害を与えたという場合に、その欠陥が建物のどの部分にあるのかということがわからない場合があり得るわけであります。そのような場合に、被害者といたしましては、どちらに対しても損害賠償の請求をすることができないということでは大変不都合でありますので、区分所有建物の性質から考えまして、一応共用部分の瑕疵に原因があるという推定規定を設けるのが適当ではないかということで、この九条の規定が設けられたわけでございます。
  76. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなた方のお考えになっておられる趣旨は、損害を受けた被害者が訴訟を起こしやすいように、反証のない限り区分所有者全員の責任とするということを定めたことになりますね。だから、区分所有者全員が責任を負うと。ただし、その損害が専有部分から生じた場合には当該占有者の責任とするという規定の仕方をしてもよかったわけだ。同じことだね。そういう理解をしてよろしいのですか。
  77. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 趣旨と申しますか、精神としてはおっしゃるとおりでございます。
  78. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 六十三条の区分所有権の売り渡し請求の問題でありますが、これは書面による催告の到達が争いを生ずることがないように配慮する必要があったんではないだろうかという感じを持ったわけです。非常に事が売り渡し請求——これも形成権なんでしょうね。そうすると、到達した ときにこの売り渡しの法律的効果が生ずるという問題だというと、この書面の到達というのが非常に重要な意味を持ってくる。ですから、こういう場合には内容証明郵便によるというようなことが当然考えられるわけですが、そういう配慮はする必要はなかったんだろうか。その点あなた方はどう考えておられますか。
  79. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 証拠方法でありますから、これは個々具体的な場合場合によって判断していただくということで、法律規定としては特にその催告の方法等については規定を置いておらないわけでありますけれども、後日紛争が起こる可能性が強いというような場合には、恐らくは内容証明等の方法がとられることになるであろうというふうに考えております。
  80. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは民法の四百六十七条だったかね、債権譲渡の場合に民法はわざわざそういう点の配慮をしておるんですね。だから、債権の譲渡と同じように、これは所有権の売り渡し、建物の、マンションの自己の所有するものについて所有権が移ってしまうような、重要なこれは意思表示でありますので、やはり民法四百六十七条によるような配慮が必要だったんではなかろうか、そんなふうに考えるんですが、まあそこまでの必要はないと、これはまず売り渡し請求をする者の知恵に任せればよいと、こういうふうに考えられたわけですね。
  81. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 民法四百六十七条は第三者が出てまいりますので、その優劣の関係等も問題になろうかと思います。そこで、こういう方法を特定するということであろうかと思いますけれども、この区分所有の売り渡し請求、あるいは催告の場合は、これ事実関係千差万別でありますので、一律に規定をすることはしなかったわけでございます。
  82. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは議論があるところだけれども、まあそれが特に悪いというわけじゃないから、そうお聞きしておこう。  それから第十条、これは区分所有権、売り渡し請求権。これはやはり敷地要件を有しない区分所有者に対してその専有部分の収去を請求する権利があるのだ。これはやはり時価で売り渡すべきことを請求できる、これはもう形成権と考えてよろしいですか。
  83. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 権利の性質としては形成権というふうに考えております。
  84. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そしてこれは、その形成権を行使しなくても収去を求めてもいいわけでしょう。この点いかがでしょう。
  85. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 法律的にこれによって収去請求権をなくしたのかということになりますと、この規定にもかかわらず収去請求権は依然として認められておるというふうに申し上げることになると思います。ただ、区分所有建物にありましては、その専有部分の収去というものが、社会的経済的にも非常に適当でないという場合が多いために、その場合に対処するためにこの新しい十条、現行法の七条が設けられておるわけでありますから、収去請求は不能な場合が多いかと思いますし、仮にそれが不能でなくても、権利の乱用等によって制限される場合が起こってくるというふうに考えております。
  86. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なかなか、この法案をおつくりになった、思い切ってあなた方なさっておられるから、それならば他の区分所有者権利を著しく害するおそれがあるときは、収去を請求することができないというようなところまで百尺竿頭一歩を進めて、思い切ってそこまで規定したらよかったんじゃないだろうかという感じがするんですよ。でないと、これは非常に、強制執行だって不可能でしょう、建物を切っちゃうわけだから。だから、そんなことをしたら建物全体がもうひびが入るということも考えられるし、大騒ぎになるし、だからもう思い切ってそれはできないというところまで言ってもよかったんじゃないだろうか。というのは、もともと敷地利用する権利がない人間マンションを建てちゃったのを所有者が放置しておったわけでしょう。もしも、自分の土地を勝手にやっているんなら仮処分でとめりゃいいわけで、建物が建った後で、さあのいてくれということを遡求するというのは、これはまあどういうんだろうか。そいつはできませんよと言っちゃった方がよかったんじゃないかなという気がしますが、その点どうお考えになります。
  87. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 区分建物の全体が敷地利用権なしに建てられておるというような場合には、ただいま御指摘のようにこれはむしろ収去に親しむわけでありますけれども、区分建物の一部が敷地利用権を持っていない、区分所有者敷地利用権を持っていないという場合の解決方法はこの十条も考えられるということであります。  それじゃ、十条一本でよかったかということになりますと、これまた区分建物といっても千差万別でありまして、たとえば木造の棟割り長屋というようなものは、これは真ん中に共通の壁がございますから、片方を切ってとってしまうということができるかどうか、場合場合によると思いますけれども、そういった収去方法が可能な場合もある。しかも、それがむしろふさわしい場合もあるのではないかというふうに考えるわけであります。
  88. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なるほど、私もいまちょっとあなたの答弁を伺い、考えたんだけれども、遠隔地にある所有者が、その自分の土地に勝手にマンションが建てられておるのを知らなかったというような場合も考えられないではないわね。そうすると、やっぱり収去を求める権利というものは、いかなる場合にも行使し得るとしておいた方がいいのかもしれないですね。ちょっと私もこの点は疑問に思ったんだけれども、まあ今後の検討事項としておいて……。  次に第十四条。この第一項はよくわかるんだけれども、第二項、これはちょっと御説明をしていただきたいと思うんですね。何のためにこういう規定を置くのか、議決権に関連をするんだろうかというふうにも考えたのだけれども、ちょっとこれを御説明いただきたい。
  89. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 原則は十四条の一項のそれぞれの専有部分の床面積割合によるわけであります。しかし、それでは必ずしも適当でない場合があり得るのではないかと思います。たとえば甲、乙、丙と三名の区分所有者がおりまして、甲の専有部分は二十坪であると、乙の専有部分は三十坪で、丙の専有部分は六十坪であるといたします。ただ、甲と乙につきましては、一部共用部分として廊下とか階段とかが十坪あるという場合には、この二項の規定によりまして、その十坪を甲、乙の二十坪と三十坪の割合で分けまして、甲が四坪、乙が六坪を自分の専有部分にプラスをいたします。そうしますと、甲が二十四坪、乙が三十六坪、丙が六十坪となりますので、その割合は二対三対五ということになるわけであります。専有部分の面積だけで申しますと二十と三十と六十でありますから、二対三対六と、こういうことになるわけでありまして、一部の者が共用部分を持っておる場合には、この二項のような計算方法の方が合理的と申しましょうか、公平に合致するというふうに考えるわけであります。
  90. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、結局これは全体の建物維持の負担を公平にする、こういうことのためですか。そうすると議決権の問題が関連するかしら、その点ちょっと。
  91. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 一方において議決権の割合の問題があるわけであります。また一方において共用部分等の負担の問題、あるいはそこから生ずる利益の収取の割合の問題等、この十四条の一項の共用部分持ち分の割合というのは、いろいろなところで出てまいりますので、そのすべてに通じて公平なり、合理性なりということを考えたわけでございます。
  92. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、二十条の第二項。第一項が共用部分所有者、これは区分所有者全員のために共用部分管理する。その所有者は十七条第一項に規定する共用部分の変更をしてはいけないということですね。これはつまり全体のための信託的な所有権を行使するんだから、勝手にしちゃい かぬと、やるなら全員の承諾を得てやれと、こういう趣旨に理解すればいいわけですか。
  93. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) おっしゃるとおりでございまして、そもそもが十一条の規定によりまして「共用部分は、区分所有者全員共有に属する。」わけでありますが、その二項におきまして「規約で別段の定めをすることを妨げない。」ということになっております。この規約によりまして、区分所有者にいわゆる管理所有という形の所有権を与えるわけでありますが、これはあくまでも管理所有という非常に特殊な所有権でありまして、区分所有者全員のためにこれを管理しなければならない義務を負うわけであります。したがいまして、その変更につきましては、十七条の規定によってやると、こういう考え方でございます。
  94. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次は、第二十二条の分離処分の禁止の規定についてお尋ねをしたいんだけれども、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。」と。これはやっても当然無効ではないと思うんだけれども、できないというのは、当然無効となるという趣旨なんだろうか。  それからもう一つは、「規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」、規約で認めてさえおれば、敷地所有者建物所有者が別人になることもできるという趣旨だろうか。もしそうだとすると、建物所有者敷地利用権は当然に生まれると解するんだろうか、そういう点ちょっと説明していただきたいんですが。
  95. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 最初のお尋ねでありますけれども、分離処分禁止の場合に、その禁に反して処分した場合には、これは無効であるというふうに考えております。ただ、二十三条によりまして、無効の主張の制限その他の規定を例外的に設けております。  それからその次は、そのように専有部分敷地利用権とは一体化し、分離処分を禁止をするわけでありますけれども、これは分離処分を可能にしなければならない、あるいはした方がいいという場合が考えられるわけであります。たとえば、現在百戸の専有部分がありまして、その百人が敷地共有しておる、共有持ち分を持っておるという場合に、それぞれの共有持ち分専有部分一体化しておりまして、分離処分が禁止されておる。ところが、その建物にさらに一戸増築をいたしまして、新たに区分所有者が一人ふえた、その者に対して敷地利用権を与えてやる必要があるという場合には、その者に与えるべき共有持ち分を、従来の区分所有者から比喩的に申せば供出をさせて、そしてそれを新しい区分所有者に与えてやるという必要が起こるわけであります。でありますから、その場合には分離処分の禁止を規約で外しまして、そして従来の区分所有者から持ち分の一部ずつを供出させまして、新しい区分所有者に与えるという必要が起こってまいります。  それから、非常に小規模な区分建物につきましては、必ずしも分離処分を禁止しなくても、法律関係が複雑になるというわけでもございませんし、登記簿が膨大化し、複雑化するということもないわけでありますから、規約によってそういう場合には分離処分の禁止を外す道を開いておく必要があるわけであります。それがこのただし書きの規定であります。
  96. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、第二十四条についてお伺いしたいが、「第二十二条第一項本文の場合には、民法二百五十五条の規定は、敷地利用権には適用しない。」、これのまず立法の趣旨をちょっと御説明いただきたい。
  97. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 民法の二百五十五条は、「共有者ノ一人カ其持分ヲ抛棄シタルトキ又ハ相続人ナクシテ死亡シタルトキハ其持分ハ他ノ共有者ニ帰属ス」という規定であります。これは、共有物の処理といたしましては、大変合理的な規定でありますけれども、この区分建物敷地であります共有土地区分所有者共有土地につきましては、この規定は非常に不都合な規定ということになるわけであります。と申しますのは、先ほど申しましたように、二十二条の一項本文におきまして、敷地利用権専有部分一体化いたしまして、分離処分を禁止してあるという場合には、専有部分とその敷地利用権とは同一の運命に服すると申しましょうか、同一の権利関係にならないと困るわけであります。ところが、この二百五十五条を適用いたしますと、土地だけは他の共有者で、専有部分所有者が死亡いたしました場合等を考えてみますと、専有部分は特別縁故者に与えるとか、あるいは国庫に帰属するとかという運命をたどるわけでありますが、一方敷地利用権の方は、この二百五十五条の規定によって他の共有者に帰属するわけでありまして、それはまさに二十二条一項の趣旨に反することになるわけでありますから、この二百五十五条の規定を適用しないことにしたわけであります。
  98. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは、建物所有権を放棄した場合、どういうふうになります。
  99. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 建物は、専有部分については単有の場合考えられますので、無主の不動産として国庫に帰属するということになろうかと思います。
  100. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そして、相続人なくして死亡した場合も国庫に帰属しますね。その場合、その敷地利用権も同時に国庫に帰属する、こういう理解でよろしいね。
  101. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) そのとおりでございます。
  102. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 最初に、共用部分についてお伺いいたしますが、建物の修理または改築につきましてどの程度のものが共用部分の変更、つまり第十七条ですな、これに当たるのか。またどの程度のものが共用部分管理となるのか。その辺のところをわかるようにひとつ説明してください。  それから、これは金額で基準が決まるのか。合計金額ないし一人当たりの費用負担額がどのくらいとか、そういうめどがあるのか、その辺のところについて。なぜ私がこれを聞くかと言いますと、共用部分の変更の場合は、議決権の四分の三があればいいが、しかし、管理の場合は過半数となっておりますので、お伺いしておきます。
  103. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 共用部分の変更と申します場合には、物質的変更を意味するというふうに言われております。あるいは形質の変更、形と性質の変更であるというふうに申し上げた方がいいかと思いますが、たとえば階段室をエレベーターに改造することでありますとか、あるいは附属の物置や、自動車の車庫を増築すること、あるいは屋上や各階の廊下から地上に通ずる非常用の階段を設けるというようなことがこれに当たるというふうに考えております。  それに対しまして、共用部分管理と言います場合には、ただいま申しました物質的な変更までには至らない、そういう程度共用部分利用なり、改良行為意味するというふうに考えております。たとえば、ビルの塗装工事、いわゆる壁塗り工事でありますとか、あるいは共同の洗面所の内部の改装工事というようなものが管理に属するというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、金額ではなく、そういった変更と申しましょうか、改造の程度によるということでございます。
  104. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 わかりました。  それじゃ金額の多寡ではなくて、そういう形を変える場合、あるいは形は変えないが、いまおっしゃったような塗りかえとか、そういうような場合ですね。そうすると、その辺もう一つ明確でないようなことも起こるかもしれませんですな。はっきりと断定的にこれは決められるものか。だから私は、そういう決められない場合にお金の額とかいうようなものが参考になるのか、ちょっとお伺いしたいんですがね。
  105. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 典型的な場合というものははっきりしておると思いますけれども、限界的な事例というものはあり得るということになります。
  106. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いまあり得た場合に、変更と管理 の何といいますか、決め方ですな、これは総会で決めるわけですか。今度の場合は変更に当たるとか、今度の場合は管理に当たる、どっちでもなりそうな場合もあり得るような場合どうするんですか。
  107. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 変更なり、管理行為なりの決定を決議いたします集会において、まずそれが変更であり、あるいは管理行為であるということを判断いたしまして、それにふさわしい議決割合によって決めるということになろうと思います。
  108. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 次に、修理、補修につきましてお伺いしたいんですが、マンション維持していく上には、だんだんと年月がたっていくと、当然修理、補修、そういうことが出てくるわけですが、こういうことは計画的に行っているところは、いまの現状ではあるところもあれば、ないようなところもあると思うんですが、そこで、建設省だれか見えていますか。そういう場合に行政上の指導とか何か必要じゃないかと思うんですが、何か考えておりますか。
  109. 鹿島尚武

    説明員(鹿島尚武君) いわゆるマンションと申しますのは、昭和四十年代後半から大都市圏を中心に飛躍的に増大をしてまいりまして、現在では百十万戸を超すというふうに推計もされておるわけでございます。これらのマンションの修繕その他の管理につきましては、住宅政策推進の立場からも非常に重要な問題であると承知をいたしております。  しかしながら、昭和五十五年度に私ども建設省住宅局で調査をした結果によりますと、修繕のための、たとえば積立金にいたしましても、平均一戸当たり月額千七百円程度というような積立状況でございまして、これで必ずしも十分だというふうには考えられない状況にございます。そのため、私どもといたしましては、従来からあらかじめ適切な額を積み立てるようにということで奨励をしてまいっておりまして、今後とも、中高層共同住宅標準管理規約というものをつくっておりますので、この規約の普及等を通じまして適切に対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。また、修繕資金の不足を補うための金融上の助成措置といたしまして、昭和五十六年度から住宅金融公庫の住宅改良融資の活用の道を開き、制度の拡充を図ったところでございますので、今後ともこうした制度の活用が図られまして、修繕等の管理が充実されますように対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  110. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 実際二千万も三千万もする分譲住宅を長年のローンで、二十年、三十年のローンで買っているわけですわな。最近は給料も余り上がらないし、その払いでいっぱいですわな。大体、六万、八万、多いところもう十万ぐらいまである、中には夜逃げする人もあります、破産してですな、これは御存じでしょうけれども。そういうことで私は聞いているんですよ。だから、積立金としても、いまおっしゃったようにわずか千五百円、これじゃ実際、いざというときには間に合わない、そういうことが私考えられるんです。  そこで、あなたの方で管理規約というようなもの、これはあるところもあればないところもある、今度の法案ができれば、成立すると思いますが、何か建設省でモデルとなるような管理規約、そういうものを考えているのかどうか、もう一遍お伺いします。
  111. 鹿島尚武

    説明員(鹿島尚武君) 昭和五十五年度に私どもが調査をいたしました結果によりますと、管理規約を持っているマンションというのはおよそ九五%というような状況にございます。それから、私どもの方といたしましては、百十万戸を超えるというような、こういう推計されておりますマンション管理に当たりまして、この規約というものが非常に重要な問題でございますので、五十七年一月でございますが、住宅宅地審議会から中高層共同住宅標準管理規約というものを答申をいただきまして、その普及を今日まで図ってきておるところでございます。
  112. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 住宅宅地審議会から出されておりますこの中高層共同住宅標準管理規約、これが建設省のモデル管理規約として指導をされておるわけですか、いまちらっとおっしゃったけれども、もう一遍。それから、その中身を簡単でいいから、大体のところ。
  113. 鹿島尚武

    説明員(鹿島尚武君) 五十七年一月に住宅宅地審議会から答申されました中高層共同住宅標準管理規約というものは、八章六十六条から成っておるわけでございます。専有部分等の範囲とか、敷地共用部分等の共有、用法、管理の仕方、管理組合等について規定をいたしております。  この標準管理規約は、五十五年度の私どもの調査におきまして、一棟当たりの平均戸数の規模が七十戸程度であるというような実態でございましたので、住居専用の五十戸から百戸程度の各戸均質のマンションを対象といたして策定をしたものでございます。したがいまして、特定の方が多数の住戸を所有するような場合とか、店舗が兼用されるマンションのような場合とか、戸数が大幅に多かったり、あるいは少なかったりというような場合につきましては、別途それぞれこの標準の規約に考慮を払ってお決めをいただいてということで、各方面にお願いをいたしてまいったわけでございます。  申すまでもありませんが、この標準管理規約と申しますのは、新規の分譲が行われる場合に使用するために作成いたしたものでございますので、既存のマンションにつきまして、すでに規約を設けたものについて修正を求めるというようなところまでは実はまいっておらないわけでございます。建設省といたしまして、こういう答申を関係の業界、団体、あるいは都道府県知事等に対しまして通達、お願いをし、その普及に今日まで努めておるというような状況にございます。
  114. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 次に、これは前回も同僚議員から質問がありましたが、区分所有者の団体のところですが、これは第三条ですが、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設管理を行うための団体を構成し、」と、こういうふうになっておりますが、これは民事局長のこの前の答弁を聞きますと、区分所有者は当然にこれに加入するというような答弁でありましたけれども、これは三条の法文から素直に読めるのかどうか、構成しなければならないとかいうふうにはならないのか、その辺ちょっとお伺いします。  それからこの団体というものがどの程度実体を伴ったものなのか。もしある程度実体を伴ったものにしようとするならば、規約集会管理者についても任意ではなく当然に置くと、こういうふうにする必要があるんじゃないか、こう思うんですが、その辺いかがですか。
  115. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 私申し上げました趣旨は、区分所有者は、区分所有者となることによって当然に団体を構成すると申しましょうか、言葉をかえて申しますならば、当然にその団体の構成員になるということで申し上げましたわけでございます。したがいまして、加入するとか脱退するとかというようなことはないわけであります。  次に、御質問になりましたその団体の実体でございますけれども、その団体の実体は、そこに建物があり敷地があるわけでありまして、その建物敷地管理するためにその区分所有者が当然に構成しておるその団体と、こういうことになるわけであります。その管理方法をどうするかということでありますけれども、団体であります以上その管理方法としては規約を定め、集会を開き、管理者を置くというのが最もふさわしい形ではないかというふうに考えるわけであります。これを強制してはどうかということでありますけれども、必要的と申しましょうか、そういう規定を置いたといたしましても、これを強制するという方法はございませんし、もともとが自治の団体のその仕組みの問題でありますから、それを必要的あるいは強制するということはいかがであろうかというふうに考えるわけでありまして、区分所有法という法律がタッチできる範囲のことといえば、それは団体の運営としては規約管理集会 という方法でやるべきものという規定を置いて、そして、これを区分所有者の皆さんに活用していただくということがせいぜいではないかというふうに考えておるわけでございます。
  116. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 もう余り時間がありませんから聞きませんが、結局この法案ができますと団体に加入するということになるわけですね、簡単に言えば。
  117. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 私どもとしては現行法のもとでも区分所有者が当然にそういう団体を構成しているというふうに理解しておりますけれども、それをもっと明らかにするために三条の規定を置いたということでございます。
  118. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、これは占有者権利義務についてですが、占有者に第四十四条で「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる。」、こういうふうになっているわけですが、意見陳述権を認めた理由とその権利の性格はどのようなものか。  それから、さらにこの四十四条の規定違反して集会決議をしたような場合、集会決議の効力、影響はどうなるのか、これについて。
  119. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 意見陳述権を認めましたについては、まず賃借人等にその権利義務についての規定を置いたということが前提となるわけであります。現行法では占有者等については何らの規定をいたしておりませんけれども共同生活維持するためには、区分所有者が遵守すべき共同生活のルールを占有者にも守ってもらわなければならないということがあるわけであります。したがいまして、新しく六条三項なり、四十六条二項なりという規定を置いて、占有者に対して義務を課したわけであります。そうなりますと、専有部分占有者に対しては義務だけ課すというのも不適切でありますので、その意見陳述権を保障しなければならないだろうということになるわけであります。  権利の性質でありますけれども占有者集会構成員でもございませんので、しかし、その者に対して義務を課するということになるわけでありますから、手続を慎重にするために関係人の意見を聞くということであります。  もしその意見陳述の機会を与えないまま決議をしてしまった場合の決議の効力という点についてお尋ねがあったわけでありますけれども決議の手続に瑕疵があった場合には決議の効力は無効であるということになろうかと思いますけれども、ただその瑕疵が非常に軽微な場合には無効とまで言う必要はないんじゃないかというふうに考えております。  この意見陳述権を与えなかったという瑕疵はどの程度のものかと申しますと、先ほど申しましたように占有者集会構成員ではございません。それから、義務を課したと申しましても、その義務は本来区分所有者が負うべき義務でありまして、たまたまこの場合には区分所有者にかわって占有者建物使用しておりますから、その者が義務を負う、こういうことになるわけでありますから、意見陳述権を与えなかった、意見陳述をさせなかったからといって、その瑕疵はさほど大きなものとは考えられないわけでありまして、無効とまで言う必要はないのではないかというふうに私どもは考えております。
  120. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしたら、意見陳述人がこれになかなか出てこない、どうかひとつ集会へ出て意見を述べてください、こういうふうに勧告しても、何やかんや言って出てこないような場合は、これは無効となるんですか、その集会決議は。いま無効とならないとおっしゃったですけれども、最初はなるとおっしゃったですね。その辺もうちょっと明確に言ってくださいよね。
  121. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 決議の手続に瑕疵があった場合には、決議は無効になるという一般論を申し上げたわけであります。ただ、その決議を無効にするような手続の瑕疵というものは、これは重大なものに限られるのではないか。したがって、軽微なものについては無効原因とはならないのではないか。この場合の意見陳述権を与えなかったということは、軽微な瑕疵と考えるべきではないか、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  122. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それが軽微な瑕疵ということであれば集会決議は無効にならないということですね。  それからもう一つ、これはマンション管理につきましては今度の改正によりまして、集会の意思決定機関があるわけですけれども、実際、都心のマンションではマンションに住んでない人も多く、所有権はあるけれども、かぎかけて留守が多い。あるいは会社の出張所——仮に東京とか大阪へ出張した場合に、ホテルに泊まるのはお金がかかるので、マンションの一室を借りて、そこに出張員を寝泊まりさせる、そういうようなものもありますわね、実際。  そこで、委任状でもなかなか出さない人があるわけです。そういう場合にそういう欠席者に対して何らかの措置が必要となるんじゃないかと思うんですがね、そういう点はどうなっているんですか。
  123. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 確かに区分所有者管理に無関心であるというような実態も現実問題としてはあるわけであります。まあ徐々に区分所有者が自分たちの立場というものに目覚めて自主的な管理が行われるようになってきておるというふうに考えておりますけれども、私どもとしては、それをもっとこの管理をしやすくなるように、規約の変更も容易にできるようにというのが今回の改正でございます。そういった改正の趣旨を十分に認識をしていただいて、これを活用して十分な管理を行っていただきたいというのが私どもの期待でございますけれども、いまおっしゃいました委任状というような制度もあるわけでありますし、あるいは書面による議決権の行使というような制度も、これは現行法からございますが、あるわけでございますから、そういうものを利用して十分な管理をやっていただきたいというのがわれわれの願いでございます。
  124. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いまおっしゃった書面による議決権、これもうちょっと詳しくおっしゃってください。
  125. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 集会の議事でございますから、本来は本人が集会に出席をいたしまして、そこで議決権を行使するというのが原則でございます。しかし、集会に出席できないために議決権を行使できないという場合に備えまして、あるいは代理人によって行使することができる、あるいは書面によって行使することができるという道を開いております。条文で申しますと、三十一条の第二項でございまして、「議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。」、こういうことになっておりますので、重要な問題でありますと、あらかじめ議事の対象となるべき事項が通知されてまいりますので、それによって賛否の意見を書面にしたためて送付するということによって議決権の行使ができるわけであります。
  126. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、管理組合法人の件につきまして、これ第四十七条に出ておるわけですが、これは三十人以上となっているんですね。なぜこれ三十人以上になっているのか。三十人未満のものでも希望があれば認めてよいのではないかというような気もするわけです。特に、その当該区分所有建物の財産的価値が高いような場合、その要請があった場合、あるいは法人化にふさわしいのではないかと、こういうような気もするんですが、その点どうなっているのか、三十人で線を引いたということですな。その辺のところをひとつお伺いしたい。
  127. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 区分所有者建物管理をいたします場合に、対第三者といろいろな契約をするという場合には、本来ならば区分所有者全員が対第三者と法律関係に立つとこういうことになるわけでありまして、区分所有者が少数の場合はこれでさしたる不都合はないわけでありますけれども、これが多数になってまいりますと、法 律関係が複雑になる嫌いがあります。したがいまして、これに法人格を持たせまして、権利義務の帰属主体というものを別個に設定するということにいたしますと、対第三者の関係法律関係が明確になるわけであります。そういうことからこの管理組合法人という制度を新しく設けたわけでありますから、この法人になるメリットというのは、区分所有者の数が多い団体について認められるわけでありまして、管理組合の構成員であります区分所有者の数が少ない場合にはメリットはないわけであります。  じゃ、どの辺のところに線を引いて法人化の道を開くかということについては、いろいろ議論があったわけでありますけれども、一方において法人化の道を開くということになりますと、これは法務局の法人登記を扱います登記所の事務処理能力というようなことも考えなきゃならないわけでありまして、それよりもまず考えなければならないのは、先ほども申しましたような、どれぐらいの規模の団体に法人化の道を開くことがどのぐらいのメリットがあるかという問題でありまして、あれこれ考えまして、二十人以上とか、三十人以上とか、五十人以上とか、いろんな御意見があったわけでありますが、中間試案を発表いたしまして、各界の御意見を伺いました際に、三十名以上という数字を支持する御意見が大多数であったと、私どももまずその辺のところが最初のスタートとしてはいい線ではなかろうかというふうに考えたわけであります。三十人未満でありますと、現在の改正法案のもとでは、管理組合法人になれないということになります。
  128. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そこで、いまの御答弁にも若干ありましたけれども、この区分所有者の団体が、いまおっしゃった法人化された場合と、されない場合ですね、これは区分所有者の責任に差異はあるのか。これは第二十九条、五十四条ですが、その辺のところですね、具体的にひとつ説明してください。  それと、さっき答弁漏れがありましたけれども、三十人未満で法人化の要請があってもだめなのかと、これで時間がありませんから終わります。
  129. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 後の点から申し上げますが、三十人未満でありますれば、御希望があっても法人化の道はないということになります。先ほどおっしゃいましたように、価値のある区分所有建物というようなものもあるわけでありますけれども、先ほど申しましたように、法人化のメリットは区分所有者の数の大小によるわけでありますから、三十名で線を引いたということでございます。  それからもう一点は、いまの区分所有者の責任の問題でありますけれども、二十九条と五十三条、基本的に申しまして、最終的には区分所有者が原則として専有部分の床面積割合によって責任を負うという点は全く同じでございます。ただ、法人格を取得いたしました場合には、その法人が権利義務の主体ということになるわけでありますから、まず法人が責任を負うということになります。法人がその資力で弁済することができない場合には、区分所有者が責任を負うというのが五十三条の規定でございます。法人になっておりません間は、まず権利義務の帰属主体というものがございませんから、それは区分所有者が最初から責任を負うと、こういうことになるわけであります。
  130. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ─────・─────    午後一時三十四分開会
  131. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  132. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 本法案に関する質疑に入る前に若干時間いただいて緊急の問題について質問をしたいと思います。  地方選が終わって選挙違反などの捜査が行われておるようですが、この捜査のあり方ですね、あくまでもこれは公訴との関連で行われている。それからやはりその特定の犯罪にあくまでも必要な範囲で捜査を行うべきであるということ、いやしくも特定政党の実勢を探るとかね、支持者の状況を探るとか、あるいは党の活動に介入するとか、そういったことあってはならないと思いますが、どうでしょうか。
  133. 森廣英一

    説明員森廣英一君) そのとおりであろうと思います。
  134. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、これは京都の福知山で市会議員選挙に当選した田辺富士野という婦人議員ですが、いまそれに対する個別訪問の疑いということで捜査が開始されております。これは要するに桃太郎というやつですね。何人かでゆっくり町の中歩いて、そして話しながら行くという、桃太郎というのはみんなやっていることなんですが、特にここだけ捜査になって、それで私は捜査の中身については特に申しません。その過程で問題になったことは、その関係で令状による押収がありましたね。持っていかれたものが、関係は多少あるものもありますけれども、全然無関係なものを多量に持っていっているんですね。一つは党全体の選挙に関する活動の日誌とか、それから一番ひどいのは、これは党に対するこの議員の誓約書、党公認で立つ以上、党の規約に従い、指示に従って活動する。それからもう一つ、辞職願というのがあるんですが、これはわが党の場合には、党の規約などに反した活動があった場合には、議員をやめるということで、あらかじめ辞職願なども出すわけですね。それから歳費の請求の委任状、そんなものまで持っていっているんです。もうずいぶん何十件と持っていっていますが、ほとんど関係ないものなんですね。これらがどうして関係あるんですか、御答弁いただきたい。
  135. 森廣英一

    説明員森廣英一君) 京都府警察が適正な手続に従いまして証拠物件としていろんなものを押収したという報告は受けておりますが、個々具体的な押収物件につきまして、犯罪の立証上どのような関連があるかということにつきましては、これは現在捜査中の事件でもございますので、ここで御説明することは差し控えさしていただきます。
  136. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 実態は何を持っていったかということわからないというのであれば、いまお示ししたようなものなんです。たくさんありますが時間の関係で省略しまして、要するに桃太郎をして個別訪問した、みんなやっているのにどうしてここだけ捜査するのかという問題もありますけれども、それは省略します。  問題は党に出した誓約書とか、要するに党に対する誓約書ですよ。党内手続の書類、これどう関係あるんですか。それだけちょっと説明してください。実際持っていっているのだから、令状ありますから御説明いただきたいと思うのです。
  137. 森廣英一

    説明員森廣英一君) せっかくのお尋ねでございますけれども、先ほど申し上げましたように、現に捜査をしておる事件の押収物件について、これが京都府警が捜査をしておる事件といかなるかかわりになるかということにつきましては、まさに捜査の内容に触れることになると思いますので、せっかくでございますけれども答弁は差し控えざるを得ないので、御了承をいただきたいと思います。
  138. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃ一般論でもいいんですがね、要するに党内に出したそういう議員活動に関する文書、要するに個別訪問ですよ。要するに桃太郎で、みんながやっている、一緒にゆっくり町の中を歩く行為、旗をかついでね。これはもう客観的に明らかな事実です。たくさん個別訪問を受けたという側からはちゃんと調書がとってあるし、逃げも隠れもしないのですがね。一般論として、そういう個別訪問に対して党内に出したそういう誓約書とか、あるいは党の全体の活動に関する問題、それがどう関係あるのか、一般論でいいで す。
  139. 森廣英一

    説明員森廣英一君) 一般論というお断りをつけた上での御質問でございますけれども、事実私もその証拠物を見たわけでもございませんし、ただいまこの場でかかわりがこうであるというようなことを断言できるだけの資料を持ち合わしておりませんので、その点は答弁をする立場にないと存じますので御了解いただきたいと思います。
  140. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃこの委員会でこういう指摘があったということをひとつ府警の方へお伝えいただきたいと思うのです。  それからもう一つ、私はこれは捜査の開始自身が大変私憤だと思うのですね。たまたまその部落はもう一人の候補者の一番の地盤だったのですね。そこから何票か出れば、その人は落選と言われておったところへ行ってしまったものだから、どうも指されたという感じがするんですね。  それはそれとして、問題は、そこの落選候補の事務長が、福知山の警察署員を案内して被訪問者宅を回っておるんですよ。それで捜査している。こんなことはほとんどあり得ないと思うんですけれども、こんなことでいいんだろうかどうか。それで、そういう事実があれば、これは私憤と見られてもしようがないんじゃないか。私憤に警察が手助けしているんですね、どうでしょうか。
  141. 森廣英一

    説明員森廣英一君) 事前に御質問の趣の御通告を受けましたので、早速府警の方にも照会をいたしましたけれども、いま御指摘のような反対候補派の人物に捜査の道先案内をさせたというような事実は断じて府警としてはないと、このような報告を受けております。
  142. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃあ、それはないということですね、これはあればまた大変な話になるのでね。  大臣こういう問題がありますので、ひとつ選挙違反の捜査は厳正に行うようにこれは要求して本法案に入りたいと思います。  まず、区分所有法の第二条等で定義があります。その関係専有部分とそれから共用部分ですね。これは法律できちっと基本が決まっているというように理解するわけですが、問題は管理組合の規約に別の定めをすることができると、こういう規定があることの意味なんです。これは確認ですが、この規約というのは、あくまでも、たとえば十一条の二項、これは管理の必要上の定めであって、いわば基本的な専有部分共用部分権利としても動かすものではない、こう理解してよろしいでしょうか。
  143. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 実質につきましては、ただいまおっしゃるとおりでございます。
  144. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから十七条がありますが、ここで言う「共用部分の変更」というのは、これは具体的に言うとどういう場合を指すのでしょうか。
  145. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 共用部分でありますから、たとえば階段をエレベーターに改造するというような場合、あるいは共用部分であります車庫を増築するというような場合が考えられると思います。
  146. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その範囲における規約の変更ということになると思うんですね。  それから、次に第三条ですが、これは先ほど中尾委員からもちょっと指摘がありかかったのですが、三条の趣旨として、いわば団体強制であると。当然にこの管理組合ができるのだと、結成されるのだということですね。それを強制したものである。私は、もちろんそれに賛成ですし、そういう要望が大変強かったことに対する対応措置としてよかったと思います。ただ、条文として、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」というぐあいにあるんですが、この「できる」というのが「構成し」にもかかる可能性があるんじゃなかろうかと思うんです。やはり法文ができますとひとり歩きしますから、このことでたまたま被害を受けた人が裁判で、そんなもともと団体なんてできてないはずだと、その団体の決定などは従えないということで、この構成そのものを争った場合、この「できる」というのは裁判官が別な角度から判断しまして構成にもかかると。要するに、構成することができると、これは任意じゃないかと。せっかくいままで説明しておるんですけれども、肝心の条文がそうなってない。この点はどうお考えですか。
  147. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) この「構成し」というのは、別の機会にも申し上げたかと思いますけれども区分所有者となることによって当然に構成員になるという意味で使っておるわけであります。まあ文章的に申しますと、「できる」という言葉は、三行目にあります「この法律の定めるところにより、」というところを受けておるわけでありまして、「構成し」というのにつきましては「法律の定めるところにより、」という文章がかぶってまいりませんので、これは「構成し」というところで切れるというふうに考えております。したがいまして、この表現が先ほど私が申しました構成という点は当然に構成するんだと。そして、集会規約管理者については、これは任意的なものでできるという性質のものであるというわれわれの考え方をあらわすために適切な表現であるということで採用した次第でございます。
  148. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そうであれば、ほかに立法例があってそういうぐあいに解釈されるのがこれが通例だというのならそれで納得するんですね。だから、そういう立法例があるかどうか。そして、やっぱりあくまでもこれができてしまえば——ある人からこれは任意の規定だということで私に電話をかけてきている人がいるんですね。だから、素直に読むと「できる」が上へかかっちゃう場合があるんです。大体憲法九条だってよけいな前項云々というのが出たために、解釈が違ってきて国じゅう大騒ぎしているのですね。やっぱり言葉というのは誤解のないようにする必要があったと思うのですよ。ですから、私はここで「構成する」と切って、そしてその後「この管理組合はこの法律の定めるところにより、」と、こうすれば全く疑いの余地もなく適切な内容になったと、こう思うんですが、その点はどうですか。
  149. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) まず立法例についてのお尋ねがございましたけれども、特に私どもこの表現を採用する場合に、特定の立法を参考にして、それと同じ表現をということで取り上げたという事情ではございませんので、ほかに似たような表現の法文があるかないかという点についてははっきりしておりません。  それから、二つに分けて表現したらどうかというお尋ねございましたけれども、この三条の規定の趣旨でございますけれども、これは「集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」という点にあるわけでありまして、「団体を構成し、」というのは、その前提とも言うべき部分であります。言葉を変えて申しますと、「この法律の定めるところにより、集合を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」こととされていることが、すなわち団体を構成していることを意味することでありまして、団体を構成すること自体に独自の意味はない。したがって、これを二つの文章に分けることは適切でないということになるわけであります。
  150. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 確かに今回の規定は何度も法務省が説明しているとおり、やはりこれは当然団体ができるんだという、いままでいろいろそう考えられるけれども、解釈に争いがあったわけでしょう。それに対して法務省としては、できるという立場を明確に打ち出したという宣言なんですね。きわめてこれは歓迎すべき宣言なんですよ。ところが、いまの説明ですと、集会を開き、規約を定めることができるということがこの三条の一番中心の規定だということになりますと、そこに重きがある。「構成し」はつけ足りにすぎないんだと。ならば、よけいこの「できる」が上へかかっちゃうんですね。要するに、この条文の中心が「できる」というところに中心があるとなりますと、よけい「構成し」までかかっちゃうわけで、私は適切さから言いますと、ここで「構成する」と言っ たところで一向に差し支えないわけです。あと技術的にはこの管理組合はという主語を入れればいいんだから、その方が明確になるわけでしょう。大体これは社団ですから、団体が一つの主体になって規約を定めると。  外国の立法例では、たしかアメリカだと思いますけれども管理組合が一つの主体となって規約を定めるという、そういう規定もあるわけですから、そうしても差し支えなかったんではなかろうか。この程度の字句の修正でしたら、そうやっておいた方がいいんじゃないかと思うのですが、重ねてお伺いします。
  151. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 「団体を構成し、」という意味でございますけれども、これはもうすでに申し上げたかと思いますけれども、要するに、区分所有者になることによって、各種の団体的拘束を受ける、そのことがすなわち団体を構成しておることであるというふうに考えております。  その団体の運営はどうするかというと、それは集会を開き、規約を定め、管理者を置くことによって運営するのが本来でありますけれども、しかし、事柄は自治の問題でありますから、きわめて小規模な区分所有建物等につきましては、これを必要的な機関等とすることを避けておるわけでありまして、団体を構成するということによって、その区分所有建物管理の仕方が変わってくるということではないわけであります。
  152. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は基本的趣旨は賛成ですから、今後裁判所を迷わせないように、立法者の意思を明確に何度も何度も繰り返しここで言っておいてもらうためにしつこく言っておるわけですね。  ただ気になるのは、いまも言ったとおり立法例としては的確なやつがないわけですから、となれば、必ずしも日本でこういう規定の仕方がそのままそういう説明になるとは限らないということで、いわばこれからはこういう構成の仕方の一番先駆けになるかもしれないと思いますし、ただ、私はこれはやっぱり誤解を避けるという、より国民には親切な、素人が読んで誤解しないような規定ということで、こういうことは余り宣伝しない方がいいんじゃないか、こういうことを申し上げて、立法者の意思はもう当然できるんだということを確認して次へ進みたいと思います。  それから、法人格を三十名以下に与えないことについていろいろ意見があるんですが、一点だけお聞きしますと、小さい人数に認めるといろいろ差し支えがある、支障があるというんですね、これを悪用したりとかね。しかし、数が少ないからどうして悪用なんだろうかということが一つです。  それから、いままでの衆議院以来のこの質疑を聞きましても、法人化することのメリットというのは、そんなにもたくさんあるわけじゃないですね。いわば第三者保護に一番重点がある。といいますと、第三者保護ということを考えれば、人数が多かろうと少なかろうとこれは関係ないわけで、人数が少なくて建物が大きい場合だってあるわけですね、その建物の大きさその他から言って、法人格を与えた方がいい場合だってあるわけで、全部三十人以下に法人格を認めないというのは、これはちょっと行き過ぎじゃなかろうかと思うんですが、どうでしょう。
  153. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 少人数の区分所有建物の場合の団体に法人化の道を開くことが積極的に弊害があるというよりは、むしろそういうものに法人化の道を開くことのメリットはないのじゃないか、あるいはきわめて少ないのじゃないかという点に主眼があるわけであります。マイナスの面としては、これも以前に申し上げたかと思いますけれども、法人登記の処理の事務能力の問題ということが問題になろうかと思います。  第三者保護ということでは、区分所有者の数が多くても少なくても差がないのじゃないかという御意見がございましたけれども、第三者保護というよりは、むしろ第三者との関係で、法律関係を明確にするというメリットがあるわけでありまして、それには人数が多ければ多いほどメリットが大きい、少なければ少ないほどメリットはない、こういうことになろうかと思います。
  154. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この問題は、法人格が別になくてもそんなに支障はないようですし、権利能力なき社団としても行動できるということですから、本質的な問題ではないと思いますのでこれにとどめます。わが党としてはそれに対する修正案を持っております。  それから、この管理組合に関して、区分所有権者の責任の問題ですが、これはそれぞれの持ち分の割合に応じて分割された責任を持つ。その限りにおいては、これはやはり管理組合の事業などによる債務に対しては無限責任ということになるんですね。そこで、私、これは管理組合の性格が余りはっきりしないのじゃなかろうか。権利能力なき社団という要素が強いけれども、しかし、分割された範囲ではあくまでもこれは無限責任となりますと、これは株主などよりはずっと責任としては重いわけですね。出資の範囲よりもっと責任を負うわけですからね。だから、そうするとこれは民法上の債権の項にある組合的な要素もあるのじゃなかろうかというぐあいに思うんですね。しかし、それにしても、この管理組合の事業に関する債務について、区分所有者の無限責任をどこまでも認めるということで、少し過酷過ぎはしないかという感じもするんですが、その辺はどうですか。
  155. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 結局、区分所有者が本来ならば全員として対第三者との関係契約を結び、債務を負担するということになるわけでありまして、その責任の負担の方法、割合をどうするかということについては、これは連帯債務、連帯責任という考え方もあるわけでありますけれども、それでは余りにこの区分所有者等権利が重きに失するというようなこともありまして、持ち分割合による分割責任ということにしたわけでありますが、そもそも第三者に対して契約等をいたしまして法律関係に立つ場合に、その利益は各区分所有者に帰属するということになるわけであります。仮に管理者が代理人として行為をするにいたしましても、その法律契約法律行為の効果は区分所有者に帰属するというのが本来でありますから、したがって、債務も区分所有者が負担すべきもの、しかも本法においては分割して負担すべきものと、こういう立場をとっておるわけでございます。
  156. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから次に、規約集会規定も、これは積極的なものとして歓迎されておるわけですが、問題は、いまのマンションの現状からいって、果たして機能するかどうかという問題があると思うんですね。特に最近新聞などにもよく出ていますワンルームマンションとか、ミニマンションとか、きわめて小さい区画で、しかも区分所有者がそいつをまた学生なんかに又貸しをする、ちょいちょい占有者が変わる、そういうようなものが大分はやっていると聞きますね。そうすると、こういう人々は集会なんかへの参加もほとんどない場合が多いのじゃなかろうか。そして、いわばこれはせっかく規定した規約集会についての規定が形骸化しはしないかという問題があると思うんです。特に欠席者などが多い場合、これらの規定、たとえば過半数にしましても、なかなかこれはもうむずかしいという、そんな場合もこれは想定しておるんでしょうか。
  157. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 確かに実態といたしましては、ただいま御指摘のような事例も少なくないというふうに考えるわけでありますが、そういうようなことでは適切ではありませんので、集会の権原を充実し、集会の運用ができるだけしやすいようにということで今回の改正も考えられた面もあるわけでありますが、この改正を契機にいたしまして、区分所有者が自己の所有権の健全な維持、適正な管理のために努めてもらいたいというのが私どもの期待でございます。  先ほどおっしゃいましたように、ミニマンション等、あるいはセカンドハウスなどもそういうことであろうかと思いますけれども、確かに一層そういった傾向が顕著であるかと思いますけれど も、やはり一年に一回ぐらいは集会を開いて報告を聞く、そして重要な問題については区分所有者みずからがその管理をチェックするということがぜひとも必要ではないかというふうに考えるわけでございます。
  158. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いま局長が言ったのは、それは望ましい形ですが、どうも現状はなかなかそうはいかない面があると思うんですね。そして、権利の上に眠っているんだからそれはしようがないと言うかもしれませんが、逆にそれがかえって後で紛争を大きくする場合があると思うんですね。ふだんは全然出ていかないで、もう決議決議がどんどん重なっていって、全然そういうのを知らないで、それがもとになって紛争になって、過去の決議全部の無効を主張するとか、こんなことだってあり得ると思うんです。  そこで私は、そういう場合も想定して、この集会決議管理人の責任において区分所有者に通知をするという制度があってしかるべきではないかと、こう思うんです。これは総会の招集とか、事前のものはあるんですね、集会の通知とか、事前の通知はあります。ところが、集会決議についてあるのは議事録の確認だけですよ。それさえしちゃえばもういいというわけですね。ところが、大体出てこない連中は議事録なんか見にこないですよね。大事なことどんどん重なっておって、ときにはその決議に瑕疵があるかもしれない。それが後になってもう何年もたって、それで大問題になって裁判で争われるということだと、かえってこれは権利関係が複雑になるんじゃなかろうか。むしろこれには、これはたしかフランスの立法例でしたね、管理人の責任として決議の執行ということでその通知をなす義務があると、そして一定の期間に異議申し立てなりしないと、区分所有者の方は権利を失うというようなことで権利を確定していますよね。むしろそういうのがあってよかったんじゃなかろうかと思うんですが、そういう決議の通知を規定しなかった理由は何でしょうか。
  159. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 法律的には四十二条の三項によりまして、三十三条を準用しておりますので、議事録の閲覧権というものが認められております。したがいまして、区分所有者権利としてはそれで十分であって、それ以上に権利保護の必要はないというふうに考えて通知を必要的にしなかったわけでありますが、実際の運用といたしましては、たとえば管理費を増額するとか、あるいは大修繕を行うとかいうような集会決議が行われました場合には、これはもう当然通知をしなければならないわけでありましょうし、あるいはそういった事態でありませんでも、一般的に通知をするというような運用がされるということも考えられます。これはこれで結構なことでありますけれども法律としてはそこまで規定する必要はないだろうというのが私ども考え方であります。
  160. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 やっぱり法律はなるたけ実態に合わせて規定することが私は円満な対処だと思うんですね。たとえばいま言われているように、実情として決議の通知もしているというんであれば、むしろ義務づけてもね——全部が全部義務づけることはないと思いますけれども、重要な事項については義務づけることをした方が、私はお互いの権利関係にむしろこれは安定性を与えるんじゃなかろうかと、こう思うんです。これは意見です。  そこで、今度は決議の問題で、先ほどこれは中尾委員の質問に対して、四十四条、「占有者の意見陳述権」、この規定違反しても、要するにこの手続をしなくてもその決議は無効ではないと、こう言い切られたんですけれども、これはちょっとやっぱり言い過ぎじゃないでしょうか。私は無効になる場合もあると思うんですね。特にその対象となる占有者権利に関するような問題、それが著しく制限される。それがこういう規定がありながらその機会が与えられなかった、意見を言う機会がなかった。そして全く不利な決議がされ、その結果、自分の権利関係が大変侵害されたという場合に、これが無効でなければ持っていくところないわけです。私は、すべてがすべて重要な無効原因とはなるとは思いませんけれども、中身によっては、あるいはその経過等総体的に見て無効になる場合だってあるんじゃなかろうか。そうでないとこの規定を設けた意味ないわけでしょう。じゃなぜこの規定設けたのかということになりますね。その点どうでしょうか。
  161. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) ただいまお挙げになった例は、手続にも瑕疵があり、かつ決議の内容自体も瑕疵があるという例であろうかと思いますので、そういう場合は決議の内容に瑕疵があるということで無効原因になるのではないかというふうに考えます。  私が先ほど申しましたのは、手続的には意見陳述権を保障しなかったという意味で瑕疵があるけれども、内容自体は瑕疵がないという場合には、手続的な瑕疵だけで無効というわけにはまいらないのではないかと、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  162. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 内容の瑕疵の場合もいろいろあると思うんですね。これも重大な瑕疵と、それからささやかな瑕疵と。私はきわめて重大な瑕疵があった場合にはそれだけで無効でしょうけれども、しかし、それほどでもない、と同時に、手続的にもこういうぐあいに権利者の意向を全く無視してやったとなりますと、そこを総体的に考えて無効になる場合だってあり得ると思うんじゃないかと。それをこれは四十四条の手続を踏まないことは小さな瑕疵だと言ってしまうことは行き過ぎじゃなかろうかと思うんですが、どうでしょうか。
  163. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 私が申し上げましたのは、あくまでも一般的な問題として意見陳述権を与えなかったということだけでは、軽微な瑕疵として無効原因にはならないのではないかというふうに申し上げたわけであります。  非常に極端なレアケースの場合にどうなるかということは、その個別的なその事案のいかんによって、一般的な結論では賄い切れない場合があり得ないこともないかもしれないとは思います。
  164. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それでいいんですね。余り割り切ってもらうと困るわけです。  それから、次に団地管理組合ですが、それぞれ共通する敷地に関して団地管理組合ができるということでは特に問題ないと思うんですが、各棟の管理事項、それぞれの基本的権利に関することまで含めて、それを吸い上げた団地管理組合ができた場合、問題が幾つかあると思うんです。  一つは、そういう団体が分裂したり、あるいは一部脱退する可能性も、これは人間の集団ですからあると思うんですね。そういう事態には法的にはどうなるんでしょうか。
  165. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 団地管理組合が団地内の各棟の管理をするためには、団地管理組合の集会決議と、それから各棟の集会決議とが両々相まってそういう状態になっておるわけでありますから、各棟のうちの一部の者がそれを脱退したいというようなことになりましても、法律的には依然として団地管理組合が各棟の管理をもあわせ行うという関係は変更されないというふうに考えております。
  166. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するに一たんつくってしまうと、全体が解散を決議しない限りは、そのまま一部が脱退したくもできないということになりますね。  それじゃ今度は各棟の管理事項ではない団地管理組合ですね、要するに吸い上げてない場合のね、そういう場合で多少問題が起こるのは、敷地などについて共通部分がありますから、それはいいんですが、そうでない、たとえば建物の色とか、これは各棟が決めることですね、吸い上げてない場合には。そして全体としては、たとえば比較的淡い色にしようというけれども、あるところだけもう原色がいいなんてことになった場合、これはやはり困るんじゃなかろうかという意見があるんですね。そういう場合でも団地管理組合に優先権を認めるべきじゃないかと、こういう意見があるんですが、要するに吸い上げてない場合は。そういう意見についてはどうでしょう。
  167. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 団地管理組合に原則的にと申しましょうか、優先してと申しましょうか、各棟の管理についてもさせるべきではないかというような御意見があることは私どもも承知をいたしております。ただしかし、基本的には各棟の問題はやはり各棟の所有者である区分所有者管理すべきものというのが原則ではないかというふうに考えるわけでありまして、ただ、その各棟の区分所有者の大多数の者が、団地管理組合によって管理してもらって結構だという意思の場合に限って、団地管理組合で管理するという制度の方がやはり本来ではなかろうかというふうに考えております。
  168. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もちろんそれは原則は法的にはそうなるんでしょうけれども、ただ、実際の運営としますと、やはり団地全体として行動している場合には、その優先権があるのが実情だと言うんですね。それに対してこの法案ですと、個々の棟の管理組合員の決議が優先するとなると、実際上実態とはちょっと離れているんじゃないかという意見がありますので、これは今後の検討課題として御検討いただきたいと思います。  それから、次に義務違反者に対する措置として幾つかの規定がありますが、これはいままでの質疑の中でも、追い出すんですから大変厳格な規定であることはわかりますが、ただ余りこれが発動される事例は少ないんじゃなかろうかという、こういう理解を法務省はしているようですね、答弁見ますと。しかし一面これが最終的には、この規定があるために悪いやつもそういう悪いことはできないんだという歯どめにもなっているというんですが。ただ発動できないんだなんという、発動する場合はきわめて少ないなんて言いますと、それこそ悪いやつはああ大丈夫だというんでやってしまう場合もこれあり得るんですよね。それで私は、立法方法としましては、具体的例で、たとえば暴力団の一定の行為について、それが明らかに追い出せるようなことがもうちょっと明確に出ておってよかったんじゃなかろうか。確かに追い出すんですから大変むずかしいことだと思いますよ。しかし、その辺もう少し工夫があってよかったんじゃなかろうか。大変厳格で、私は手続的にはこういうことであろうと思うんですが、ただ余りはっきりと発動される事例が少ないなんという、そういう立場で立法されたとなりますと、その辺の問題が起きてきやしないかと思うんですが、どうでしょう。
  169. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 義務違反者に対する差しとめ請求というだけでは不十分だということで、五十八条なり、五十九条なりという制度を設けたわけでありますけれども、一方ではこの排除される区分所有者の立場というものも十分に配慮しなければならないわけでありますので、慎重を期するということで、現在のような形になったわけであります。それはそれで存在理由のある規定ではないかというふうに考えているわけでございます。
  170. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 二十二条の分離処分の禁止の問題です。これが原則になって、これも大変結構なことだと思うんですが、ただ規定上それから実態上、分離処分が可能な場合、要するに敷地利用権区分所有権とが別々になる場合というのがどうも幾つかあると思うんですね。どういう場合にそうなるのか。そしてそれぞれの場合における法律関係はどうなんでしょうか。
  171. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 分離処分禁止の原則というものを打ち立てたわけでありますけれども、これを全く例外なしに貫くということでは、またいろいろと不都合な場合が出てくるわけであります。たとえば、非常に小規模な区分建物でありまして区分所有者の数も少ない、あるいは木造棟割り長屋というようなことで、そう長期にわたって区分関係が続くというふうに考えなくてもいいようなケースというようなものもございます。そういう場合には、当事者たちが規約で現状のままということを決めた場合には、それを認めることが適当ではないかというふうに思うわけであります。  それから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、たとえば現在区分所有者がおりますが、その建物にさらに専有部分を増築をする、新しく区分所有者がふえてくる、その区分所有者に対して敷地利用権を与えるというためには、従来の区分所有者から土地共有持ち分の一部を供出してもらって、それを新しい区分所有者に与えるということになるわけでありますが、そのためには分離処分の禁止を外さなければならないというような必要もあるわけであります。そういうことを考えまして、規約に別段の定めがあるときは分離処分が可能であるという道を開いておるわけでございます。  それぞれの場合の法律関係ということでありますが、規約で分離処分の禁止を外しますと、専有部分土地共有持ち分は別々に処分することができるということになります。これは現行法どおりということになりまして、現行法でもそういう制度にはなっておりますけれども、実際問題としては専有部分土地共有持ち分が別々に処分される例というものは、これはもうほとんどない、皆無に近いというふうに考えておるわけでありまして、改正法のもとではますますそういった例はなくなるというふうに思います。
  172. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、あることを法は予定してまして、二十三条本文でその処分の、要するに土地だけの処分ですね、無効を主張できない場合と、ちゃんと予定されているわけですね。こんなことが起きる例は少ないと思いますけれども可能性あるわけです、たとえば建築中のある段階に発生するとか。そこで問題なのは、いつの時期から一つ建物が区分所有を内容とする建物になるのか、その点はどうですか。
  173. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 一番はっきりいたしますのは、現実にある建物が複数の所有者によって区分所有されるという事態であろうと思いますけれども、その前の段階でありましても、区分所有に適する構造の建物が建築されまして、そして最初は分譲業者等一人の所有、一人が区分建物の全部を所有するという関係になろうかと思いますが、その際にこれを区分建物にするんだという所有者の意思が外部にあらわれた場合には、それによって区分所有関係が成立するというふうに考えております。
  174. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 外部にあらわれたというのは、たとえば売りに出したとか、広告に出したとか、外形的にそれが明らかになった場合を言うんでしょうね。
  175. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) そのとおりでございます。
  176. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に建てかえ決議ですが、これはこの間もちょっとお聞きしたんですが、問題はその六十二条の要件があるかどうかという問題が一つと、それから今度は反対した人に対する売り渡し請求権、その場合の時価が問題だと思うんです。そして一つは、これは衆議院の答弁見てみますと、六十二条の要件があるかどうかという判断を裁判所がする場合に、経済的弱者がやむを得ず建てかえに参加できないという、そういう状況などは考慮の対象外だと、要するに六十二条の要件があるかどうかだけの判断だというんですね。私はこれも先ほどの問題と同じように割り切り過ぎじゃなかろうか、無効の問題と同じように。というのは、一つ建物が建てかえが必要かどうかというその判断、客観的にできるにしましても、そこに居住している人の条件、どんな生活条件か、どんな仕事をしているか、そういうのがやはり総合的に判断されるんだと思うんですよ。たとえば相当金を持っている人のグループであれば、一定のところが傷んできて、じゃ直そうかということが、そのグループとしては相当な場合だってあると思うんです。ところがそうでない、経済状況から見ればこれはちょっと早過ぎると、もう少しもたせたっていいじゃなかろうか。大体木造の場合には住む気だったら朽ち果てるまで住めるわけですからね。それとの比較から言いまして、私は衆議院のあの答弁、六十二条の要件があるかどうかの判断だけで、そういう経済的状況は一切考慮の 対象外だというのは、これまたちょっと余り割り切り過ぎた答弁じゃなかろうか、もう少しその辺は入っている人の状況その他も総合的に考慮されるべきじゃなかろうかと思うんですが、どうでしょうか。
  177. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 判断の対象になりますのは六十二条の要件、すなわち「建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至つたとき」かどうかということに尽きるんだろうというふうに考えるわけであります。したがいまして、その判断をします場合には、個人個人の個別的な事情がどうであるかというようなことではなくて、その建物の全体としての用途でありますとか、あるいは使用状況を前提として考えることになると思います。たしか衆議院で御指摘のような答弁をした記憶がございますけれども、そういう意味で、個別的な事情は判断の対象にはならないというふうに考えておるということを申し上げたかと思っております。  しかしながら、たとえば「建物がその効用を維持し」というこの条文がございますけれども、その同じ建物の効用を維持すると申しましても、一等地にある商業ビルの効用を維持するのと、居住用のマンションの効用を維持するのとでは事情が違うわけでありますし、同じ居住用のマンションと申しましても、その住民の使用状況等もここに条文にあります「その他の事情」として入ってくる余地はあるかとは思います。そのような意味において、反対者の経済的事情も全く判断の対象にならないかと言われれば、そうは言い切れないだろうということにはなろうかと思います。
  178. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういう答弁でよろしいわけで、その辺柔軟性を持っておってもらわないとこれは後で大変なことになりますので。  それから、次に時価ですね。これはなかなかむずかしいと思うんですが、ただ時価がどういう時期に裁判所の判断対象になるかといいますと、明け渡し請求があった場合、要するに建てかえ組側からですね。あるいは今度は代金請求などがあった場合、そういう訴訟の中で最終的に決まるというんですが、時価についての判断そのものを求める裁判はできないわけでしょう。そうでしょう。
  179. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 売買代金の請求訴訟という形で許されると思います。そのうちの時価の額だけを確認するための訴訟というものは、確認の利益関係でどういうことになりましょうか。それよりもっと直截簡明に、給付の訴訟ということになるのではないかと思います。
  180. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 給付の訴訟と言いますけれども、まだ額が確定していないわけでしょう。要するに決まらないからね。その場合どうなんですか。要するに出ていく側からは、自分の要求する額を請求すると、こういう形になるんでしょうかね。それが一つですね。  それから、今度は逆の場合は、これも要するに時価についての協議が調わないうちに明け渡し請求を受けちゃうと。この場合、私はかなり不安定な状況じゃないかと。自分が幾らで売れるのか、幾らもらえるのかわからないうちに明け渡し訴訟を受けて、そこに火がつくなんというのは、私出ていく側にとっては大変な苦痛だろうと思うんですが、その辺どう考えますか。
  181. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 最初のお尋ねにつきましてはおっしゃるとおりだというふうに思います。  それから、後の点につきましては、売り渡し請求権の行使がありまして、売り主の方と買い主の方との時価についての主張が一致しない場合でありますから、売り主の方としてはあくまで自分の主張に基づいて時価を主張していくことになろうかと思います。それが裁判所の明け渡し判決が仮にあるといたしましても、それが必ず時価の支払いと引きかえにということになるわけでありますから、そこで売り主としては自分の置かれておる立場というものがはっきりするわけかと思います。
  182. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それはあくまで同時履行ですからそうなりますけれども、ただやっぱり額が決まるまでにもうどんどん裁判上請求を受けちゃうなんて、これは余り気分のいいものじゃないですね。  それはそれとして、問題は私は裁判所がそういう時価を本当に正確に決め得るだろうかと、こういう問題があると思うんです。要するにこれは、壊して建て直して、そこからそれにかかった費用を引いてみなければわからないわけですから、建て直した後の建物が幾らに売れるかということだと思うんですが、本当に正確にできるのかどうかが一つの問題。  それから、マイナス時価、あるいはゼロ時価というのもあり得るんじゃないかと思うんです。これは先ほどの十一条で、敷地利用権のない区分所有権というのがありましたね。こういう場合なんかは、建てかえの場合にはもう全くゼロもしくはマイナスになるんじゃないかと思うんです、取り壊し費用がね。この場合これはどうするのか。  それから、一般の場合でもたとえばこういう場合があると思うんです。いままでたとえば十階建っておった。それがその後の建築基準法などの改正等によって十階は建てられなくなった。より小さな建物を建てなきゃいけませんね。たとえば八割の建物を建てた。そして二割の人が反対で、いわば賛成者だけがもとどおりの建物、居住を確保するというと、結局結果的には出ていく人はゼロ、もしくは限りなくそれに近い時価になってしまうんじゃなかろうか。となりますと、建てかえに反対したがために、ほとんどゼロ同然で追い出されてしまう。やはり多数決ですからね。そういう意味で私はこの多数決のやつはもっと厳格にすべきだと思うんですけれども、いま言ったとおり五分の四ですからね、八割が要するにあとの人をそれこそ追い出せる。それはもう徹底的に反抗しますよね。こういう問題があるんですよね。  だから、前回から申し上げているけれども、この時価というのは、一般の一戸建て住宅と違ってきわめてこれは不利な状況に置かれるわけです。それに対する救済措置なり、もう少しこれに対する親切な対応があってしかるべきじゃなかろうか。私はその一つ決議の数をもうちょっと厳格にすべきだと言うんですけれども、そういうゼロ時価、もしくはそれに近いものは考えられませんか。
  183. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) まず最初のお尋ねでありますけれども時価がやはりこれは一種の法律上の問題と申しましょうか、法律上の争いということになるわけでありますから、裁判所によって終局的には確定をするということにならざるを得ないわけでありまして、裁判所が適正な時価を決め得るように、当事者間において十分に主張立証を尽くしてもらわなければならないというふうに考えるわけであります。  それから、後の問題でありますけれども、現在建てかえが問題になっております建物、特にマンションということになりますと、二十年、三十年以前に建てられた建物、もっと五十年、六十年以前の建物ということになるわけでありまして、いずれもかなり都心に近いところに建っておりまして、二階とか三階とかというような低層の建物でありますから、建てかえを前提として時価を計算すれば、試算すれば、二DKあるいは三DKぐらいで三千万とか四千万になるというような実例を二、三聞いておりますけれども、ゼロになるとか、あるいはゼロに近いような実例というようなものはちょっと考えにくいのではないかというふうに思います。
  184. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは衆議院の答弁以来一貫して、要するによくなる場合、八階が十階になる、そんな場合しか大臣も局長も想定してないわけですね。それは実際あり得るんですよね。そういう意味で、私は大臣も局長もそんなよくなる場合ばかり考えて、ゼロもしくはマイナスになる場合、建てかえ費用なんかを考えるとマイナスになっちゃいますよ。特に敷地利用権のない場合なんか完全にマイナスになってしまう。そういう場合、私は本当に責任持てるのかどうか、これはひとつ御一考いただきたいと思うんです。  時間の関係で建設省にお伺いしますが、住宅金 融公庫の方で、いままで要するにマンションなどの区分所有権の処分をして、後に引き継ぐ場合、それに対して債務承継を認めておったというので、これは年間相当多かったと聞いておりますが、大体年間七千件ぐらいですか、それを今度やめてしまうというのですが、その理由は何でしょうか。
  185. 鹿島尚武

    説明員(鹿島尚武君) 債務者が融資を受けました住宅を第三者に譲渡するという場合につきまして、貸付金を一括返済させるというのが私どもの一応原則というふうに考えておるわけであります。しかしながら、公庫債権の管理上必要と認められるものにつきましては、債務引き受けを認めるというようなことでやってまいったわけでございます。そこで、従来は住みかえのために融資を受けた住宅を譲渡をするというような場合につきましても、債務引き受けを認める運用をいたしてまいっておるわけでありますけれども、昨年このやり方に見直しを加えまして、ことしに入りましてから生活困窮とかいうような特別の事情によって住宅を譲渡しなければならないというような場合に限りまして、また債権管理上の必要があると公庫が認めたものに限りまして、債務引き受けを認めるというふうにいたしたわけでございます。  その理由は幾つかございますけれども一つは新規の貸し付けに、昨年からでございますけれども、段階金利制度を導入いたしたわけでございまして、従来の運用を行うということになりますと、新たに借り入れをなさる、融資を受ける方々も融資の条件と異にするようになりまして、公庫利用者間の不公平というものを生ずることになるわけでございます。  それから二つ目は、既存住宅貸し付け制度につきまして、最近貸し付けの限度額をふやすとか、あるいは対象を広げるということで、中古住宅の流通につきまして、別途中古の住宅流通という視点からこれを拡充しようということで、制度を大幅に広げてまいってきたわけでございます。このようなことでございます。  そこで、中古住宅の流通の円滑化につきましては、公庫の既存住宅貸し付けにつきまして、年々ただいま申し上げましたとおり、限度額の引き上げ等を行い、ことしからは木造の戸建ての住宅等につきまして、中古の貸し付け対象とするというようなことで、大幅な制度拡充を講ずることといたしたわけでございまして、このような背景理由をもって、この際債務引き受けにつきまして、運用の内容について一部手を加えさしていただいたということでございます。
  186. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私はこれは二つ意味で逆行していると思うのですよ。一つはせっかくこういう区分所有法を改正しましたね。要するに円滑に権利関係をやろうということは、やっぱりその間の建物の取引なども、こういう関係でうまく生かせようという一つのこれは法務省の考えだと思うのですよね。まずそれに逆行。もう一つは、中曽根さん中心にやっている、華々しく打ち上げましたね、われわれは余り中身ないと言っているんだけれども、景気対策ですよ。景気対策の重要な問題が住宅ですよね。全くその中身ないじゃないですか。せっかく景気対策と言って、住宅に対しても建設すると、大体売ろうという人は貧困者、生活困窮者なんというのは別として、いままでより、三DKからもうちょっと大きいところね、あるいはいい土地があったから一戸建てへと、要するにこれを円滑にするということは住宅建設が進むことなんですよ。これは建設省わかるはずだと思うのですね。それにやっぱり逆行しているんじゃないですか。むしろそれは大蔵省何と言おうと、この後、私は大蔵大臣に質問しますから、ちゃんと言いますけれどもね。大蔵省何と言おうと、それは景気対策のためにも、そしてそういう円滑にするためにも、まさに区分所有法がいま審議されているんじゃないかということでがんばるべきだと思います。これは一考すべきじゃないでしょうか。
  187. 鹿島尚武

    説明員(鹿島尚武君) ただいま申し上げましたとおり、流通対策といたしましては、中古の流通融資につきまして、私ども制度の拡充を図ったというふうに申し上げたわけであります。ぜひこの制度の御活用を図ってお進めをいただければというふうに思うわけでございまして、民間の金融機関におきましても、債務の一般的な引き受け制度というものはないようでございますし、あるいは公的な融資制度につきましても、たとえば年金融資等におきましても、私ども公庫がやっておりますような広い範囲のものはないようでございます。それらの例も勘案いたしつつ、中古の流通制度を主体として私ども制度拡充をさせていただいておりますので、中古としての流通対策として理解をしていただきたいというふうに考えております。
  188. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それは中古のやつは結構ですよ。しかし、いまある七千人も利用しているのをやめちゃうなんて、これは私はとんでもないと思うのですね。大臣、こいつはひとつせっかくこれは閣議で景気対策やっているんでしょうから、ひとつそういう問題があるというんで、これをやめるのは取りやめると、やっぱりいままでどおりこいつは債務承継認めるということを、ひとつ大臣閣議で御発言いただきたいと思うのです。  終わります。
  189. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時三十六分散会