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1983-04-28 第98回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十八日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      沖  外夫君     梶木 又三君      立木  洋君     宮本 顕治君  四月十四日     辞任         補欠選任      寺田 熊雄君     竹田 四郎君  四月十五日     辞任         補欠選任      竹田 四郎君     寺田 熊雄君  四月十九日     辞任         補欠選任      寺田 熊雄君     丸谷 金保君  四月二十日     辞任         補欠選任      梶木 又三君     源田  実君  四月二十一日     辞任         補欠選任      小谷  守君     安恒 良一君      丸谷 金保君     寺田 熊雄君  四月二十三日     辞任         補欠選任      源田  実君     梶木 又三君  四月二十五日     辞任         補欠選任      梶木 又三君     降矢 敬雄君  四月二十六日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     近藤 忠孝君  四月二十七日     辞任         補欠選任      安恒 良一君     小谷  守君  四月二十八日     辞任         補欠選任      安井  謙君     岡田  広君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 一弘君     理 事                 名尾 良孝君                 真鍋 賢二君                 寺田 熊雄君                 中尾 辰義君     委 員                 臼井 莊一君                 岡田  広君                 平井 卓志君                 八木 一郎君                 小谷  守君                 近藤 忠孝君    国務大臣        法 務 大 臣  秦野  章君    政府委員        法務大臣官房長  根岸 重治君        法務省民事局長  中島 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三月三十一日、沖外夫君及び立木洋君が委員辞任され、その補欠として梶木又三君及び宮本顕治君が選任されました。  また、去る二十五日、梶木又三君が委員辞任され、その補欠として降矢敬雄君が選任されました。  また、去る二十六日、宮本顕治君が委員辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。     ─────────────
  3. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事寺田熊雄君を指名いたします。     ─────────────
  5. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。秦野法務大臣
  6. 秦野章

    国務大臣秦野章君) 建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、最近における区分所有建物に関する管理及び登記等実情にかんがみ、区分所有建物に関する管理充実及び登記合理化等を図るため、建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は次のとおりであります。  まず、建物区分所有等に関する法律につきましては、第一に、区分所有建物とその敷地の一体的な管理を図り、かつ、区分所有建物に関する登記合理化を図るため、専有部分敷地利用権とは、原則として分離して処分することができないこととしております。  第二に、区分所有建物に関する管理を適正化するため、共用部分変更及び規約設定変更または廃止は、現行法原則として全員合意によることとされているのを改め、集会特別多数決議、すなわち区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議によってすることとしております。  第三に、区分所有建物に関する管理充実を図るため、区分所有者は、全員区分所有建物等管理を行うための団体を構成することを明らかにするとともに、区分所有者の数が三十人以上であるときは、その団体は、右と同じ特別多数による集会決議に基づき、法人となることができることとしております。  第四に、区分所有者共同生活維持を図るため、区分所有者共同利益に反する行為をした場合には、右と同じ特別多数による集会決議に基づく訴えをもって、その者の専有部分使用禁止、またはその区分所有権競売請求することができることとしております。  第五に、老朽化等により区分所有建物建てかえを相当とするに至った場合における区分所有者間の利害の合理的な調整を図るため、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数による集会決議に基づき建てかえを実現することができることとするための措置を講ずることとしております。  次に、不動産登記法につきましては、専有部分敷地利用権とを分離して処分することができない場合には、専有部分登記用紙敷地利用権の表示を登記することとした上で、専有部分及び敷地利用権についてされた処分に関する登記は、この登記用紙のみにすれば足りるものとすることとしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いいたします。
  7. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 以上で趣旨説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最初に、この建物区分所有等に関する法律不動産登記法の一部を改正する法律、この両法律改正することを必要とすると、その背景となった社会的事実、それをまず詳しく説明していただけませんか。
  9. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 御承知のとおり、現行区分所有法は、昭和三十七年の第四十回国会において成立をいたしまして、三十八年の四月の一日から全面的に施行になった法律でございます。当時、特に都会地におきましては、中高層マンション分譲がかなり行われるようになりまして、建物区分所有ということが次第に社会的な意義を持つようになりつつあった時期であります。したがって、建物区分所有をめぐる法律関係について適切な立法を行うことが必要となりまして、現行区分所有法が制定されたというわけであります。  その後、御承知のとおり、いわゆる分譲マンションの数は飛躍的に増加をいたしまして、現在では分譲マンションの個数は推計で百二十万個に達したというようなことが言われております。その結果といたしまして、いろいろと区分所有をめぐる問題も増加してまいったわけでございます。分譲業者からも、あるいはまた現に分譲マンションを買い受けて利用している人々からも、さらにはまた不動産登記の現場をあずかっております法務局からも、区分所有関係の見直しを求める声が出てまいったわけであります。  その内容を若干申し上げたいと思いますけれども、建物部分に対する所有権もやはり所有権であることには変わりがないわけでありますから、所有権の絶対ということを強調するといたしますと、規約設定変更にいたしましても、あるいは共用持ち分変更にいたしましても、そういうものは区分所有者全員の同意がなければできないということになるわけであります。  共同利益に反する行為をする区分所有者がおりました場合でも、差しとめ等の請求はできますけれども、その判決があっても従わない者に対しましては、間接強制の手段しか認められないということになるわけであります。  また、建物老朽化いたしまして、客観的にはその効用を失ってしまっているというような場合でも、全員一致でなければ建てかえはできないということになるわけであります。これでは余りにも硬直過ぎて、管理も十分に行われないわけでありますし、区分所有関係合理的調整という点でも不十分ではないかということになるわけであります。  所有権といっても、区分所有権建物部分に対する所有権でありまして、その対象が壁と壁とで互いに離れがたくくっついている、そういう特殊な対象でありますために、それに対する所有権についても特別の配慮が必要ではないかということであります。  もちろん、現行法区分所有という点に着目をいたしまして、管理等について若干の手当てをしておることは事実であります。けれども、もっと所有関係の合理的な調整を図り、管理充実を図る必要があるということが言われるようになってきたわけであります。  それから、もう一点は、登記に関する関係であります。大規模な区分所有建物敷地登記簿が膨大となり、複雑となり、その公示機能を全うしていないという実情が出てまいりまして、登記所における執務にも障害となりますし、利用される区分所有者の皆様にも大変御迷惑をかけているわけであります。これを何とかする必要があるのではないかという意見が強く出てまいりましたのも無理からぬ実情となっておったわけであります。  そこで、昭和五十四年から法制審議会においてこれらの問題を審議されることになった次第でございます。
  10. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この法律、非常に浩瀚な法律でありますので、まだ詳細に目を通してそしゃくする時間的余裕はなかったわけでありますが、いまあなたのおっしゃったそういうもろもろの法改正必要性、そういうものがこの両法律改正のどの部分にどのように生かされているか。詳細はちょっと時間的ないま制約があってできないんですが、その主要な部分だけちょっと説明していただけますか。
  11. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) これに対処いたしますために、まず最初に、専有部分敷地利用権一体化ということが取り上げられております。法律の条文で申しますと二十二条ということになりますが、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。」という規定でございます。  これを前提といたしまして、不動産登記法上も所要手当てをいたしまして、現在の敷地登記簿が非常に膨大となり、複雑となり、一覧性を欠いておるという弊害を解消することに努めております。  それから、先ほど申しました管理充実の点につきましては、まず共用部分変更につきまして、十七条という規定がございます。これは現行法は十二条でございまして、「共用部分変更は、共有者全員合意がなければ、することができない。」、こうなっておりますのを、改正法案の十七条では、「共用部分変更は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会決議で決する。」、このように議決要件を緩和したわけでございます。  それから悪質な義務違反者に対する処置といたしまして、まず第六条というのがございますが、「区分所有者は、建物保存に有害な行為その他建物管理又は使用に関し区分所有者共同利益に反する行為をしてはならない。」という規定がございます。これは現行法の第五条と同じ趣旨規定でございます。現行法はここにとどまっておったわけでありますが、これを受けまして、改正法案では、五十七条以下の規定を新設いたしております。  五十七条は、「共同利益に反する行為停止等請求」という見出しになっておりますが、悪質な義務違反者に対しましては、「他の区分所有者全員又は管理組合法人は、区分所有者共同利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。」という規定を新設いたしております。これは現行法では明文規定はございませんけれども、民事上の一般法理からして、こういう差しとめ請求はできるんじゃないかというふうに私ども考えておりますけれども、規定がございませんので、必ずしも明らかでなかった点をはっきりさせるという趣旨規定でございます。  改正法はさらに進みまして、五十八条という規定を置いております。そういう差しとめ請求等によりましては、共同生活上の「障害を除去して共用部分利用の確保その他の区分所有者共同生活維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者全員又は管理組合法人は、集会決議に基づき、訴えをもって、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分使用禁止請求することができる。」、使用禁止請求でございます。  さらに進んで、五十九条におきまして、区分所有権競売請求をすることができるということにいたしております。使用禁止では足りないという場合には、競売によって区分所有権を失わせてしまうという制度であります。  それから、建てかえにつきましては、六十二条に規定がございますが、「老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、建物の価額その他の事情に照らし、建物がその効用維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至ったときは、」という非常に厳格な要件のもとに、集会において、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で建てかえの決議をすることができるということにいたしまして、その後の手続について所要規定を置いておるわけでございます。  それから順序が逆になりましたが、先ほど申しました「共用部分変更」のときに一緒に申し上げればよかったんですが、「規約設定変更」につきましても、現行法原則として全員一致ということになっておりますが、それを区分所有者及び議決権の各四分の三以上の特別多数決によって決することができるということで、要件を緩和いたしております。改正法の三十一条でございます。  それからもう一点でございますけれども、第三条におきまして、区分所有者は、建物並びにその敷地及び附属施設管理を行うための団体を構成するんだということを明文規定をもって定めております。これは特にこういう規定がございませんでも、区分所有者はそういう密接な関係にあるわけでありますから、一種の団体としての制約を受けるということで、現行法でも先ほど申しました五条でありますとか、十二条でありますとか、十二条の本文ではなくて、ただし書きとかいうような規定があるわけでありますけれども、そういう団体を当然に構成するんだということをはっきりさせまして、そしてさらに区分所有者の数が三十人以上であるものについては法人格を取得することができるという制度を設けたわけでございます、改正法の四十七条。  総じてただいま申しましたように、共同管理の仕組みを充実して、強化すると申しましょうか、管理のために必要な体制づくりということが一つ考えられております。もう一つは登記に対する手当てをするための一体化制度ということになろうかと思います。
  12. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 幾つかお尋ねをしたいのですが、時間的ないま制約もございますので、法人格を取得させるというメリットはどこにあるのか。それは区分所有者のためのものなのか、それともやはり第三者取引安全等を顧慮してのものなのか。その辺のところをちょっと説明していただきたい。  それと三十人以上という条件を設けたのはどういう理由によるのか。その二つをちょっとあらかじめお尋ねをしたいと思うんです。
  13. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) ただいまお尋ねのうちで、どちらかと申せば第三者との関係というようなことが中心になろうかと考えております。区分所有者が、建物等管理のために共同して第三者との間でいろいろと取引をする必要があるわけであります。たとえば、管理業者管理委託契約をする、あるいは修繕業者修繕請負契約を締結する、あるいは銀行と預け入れ契約をする、あるいは借り入れの契約をするというようなことが考えられるわけであります。区分所有者の数が多い場合には、このような法律関係を各区分所有者との間でとらえるということになりますと、法律関係がきわめて不明確になるわけでありますが、区分所有者団体法律上の人格を認め、これを権利義務帰属主体として構成いたしますれば、その法律関係が非常に明確になるということがあるわけであります。また、法人格を取得いたしますと、団体財産個人財産との区別が非常に明確になるということがあります。たとえば、修繕積立金管理者個人の名前において預金をいたしますと、その個人の固有の財産との区別が必ずしも明確でないというおそれがありますが、法人の名において預金をすればそのおそれはないということであります。さらには、法人格を取得いたしますと、その団体の存在や代表者の氏名などが登記簿によって公示されることになりますために、第三者にとってこの団体取引しやすくなるというようなこともあるわけであります。このような理由に加えまして、さらに現に活動しております管理組合から法人格を取得する道を開けという御要望が大変強かったわけであります。そこでこの制度を採用したわけでございます。  後の方のお尋ねは、三十人以上に限ったのはなぜかということでございますけれども、ただいま申しましたように、法人化することによるメリットは、主として第三者との関係であります。したがいまして、区分所有者の数が多い団体ほどメリットが大きいと申しましょうか、区分所有者の数が少ない団体については法人格メリットはない、あるいは非常に少ないということになるわけであります。そういう非常にメリットの少ない団体にまで法人格の取得の道を与えるということになりますと、登記申請が出てまいりますので、これは法人登記の方でありますけれども、法人登記申請が出てまいりますので、これを処理する法務局事務処理能力の点も考えなければならないということになるわけであります。そこで法制審議会審議の段階におきましては、二十人以上というところから、三十人、四十人、五十人以上というあたりが多数意見であったわけでありまして、幅のある数字でありましたので、五十七年の七月に試案を公表して御意見を聞きましたときにも、この点について特に御意見を聞いたわけであります。そういたしますと、大多数の御意見は三十名以上というところを支持するということでございました。まず最初に新しい制度をつくるわけでありますから、三十人程度が妥当ではなかろうかということでこの数字を採用したわけでございます。
  14. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この法人性格はどういう性格法人だと規定してあるのですか。それともあなた方どういう性格法人と思っていらっしゃるのか、その辺ちょっとお伺いしたい。
  15. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 公益目的とする公益法人でもなく、営利目的とする営利法人でもないわけでありまして、いわゆる中間法人と呼ばれておる部類に属するものであろうかというように考えております。
  16. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その定款はどういうふうな作成上の手続を経て行うというような、そういう細かい規定は置かれなかったわけですか。それから、やはり公証人の関与をさせるような配慮をなさっていらっしゃるのか、目的としてはどういうことをうたっておるのか。そこら辺のところをちょっと御説明いただきたい。
  17. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 先ほど申しましたように、管理組合法人についての規定は四十七条でございますが、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会決議法人となる旨を定め、並びにその名称事務所を定め、主たる事務所の所在地において登記をすることにいたしております。集会決議でございますから、そこにおいてその他必要なものも定めるわけでありますが、名称等をも定めることができるわけでありますが、目的は、その区分所有建物及び敷地管理ということになろうかと思います。
  18. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それじゃ公証人認証は必要じゃない。
  19. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 法人会社等定款とは異なりまして、公証人認証は必要といたしておりません。
  20. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この法案を拝見いたしますと、かなり規約というものが非常に重要性を持ってくる。それから所有者全員決議、これも非常に重要な意味を持ってくる。それで法案を拝見いたしますと、それぞれかなり緻密にこういう点を規定しておるわけでありますが、しかし、そういう規約集会決議をなすに当たりましても非常にむずかしい問題が発生するのは、たとえば区分所有者全員共同利益に反する行為をした場合というような規定があるわけでありますが、これはまあ憲法のいわゆる公共の利益、あるいはしばしば労働判例にある国民共同利益、そういうようなものが具体的な認定では非常にむずかしいものがあるのと同じように、当該の具体的な個人行為共同利益に反するか反しないかというような、これは争いがある場合には必ず裁判に持ち込まれると思うんですけれども、実際問題としてはあなた方はどういう具体例を把握していらっしゃるのか。たとえばこういうことなんですよと、こういうことがたくさん起きておりますというような具体例がありましたら、ちょっと御説明いただきたいと思うんです。
  21. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) やや類型的に申し上げれば、まず六条一項、「建物保存に有害な行為」でありますから、たとえば共用部分変更を加えて、建物安全性を低めるような行為、たとえば建物の壁に穴をあげて、そこから排気のパイプを取りつけたというようなことが実際の裁判例になっておりまして、それは差しとめられた例を見たことがございますけれども、そういうことが考えられます。あるいは自分の専有部分でありましても、そこに危険物を持ち込むとか、あるいは非常に重量の重いものを持ち込むというようなことは、建物保存に有害な行為ということになるのではないかと思います。  それから、共同利益ということに反する行為ということになりますと、一番事例として多いのは、いわゆる生活ニューサンスと申しましょうか、騒音を発する、これも著しい騒音を発する。あるいは悪臭を発散させるというようなことが実際に考えられるわけでありまして、どういう実際の事例があるかということを調べたことがございますが、たとえば一階の店舗においてスナック営業を始め、カラオケ騒音によりマンション住民の安眠を妨げ、再三防音措置を施すよう求めても耳をかさないと。そのほか共用部分営業用の器具を置くなどの違反行為について注意をしても耳をかさないというような事例でありますとか、あるいは住居用マンション印刷機持ち込み印刷業を始め、床スラブへの影響、騒音出入り業者による共用部分使用等管理上著しく有害であるため、再三にわたり印刷業の中止を文書で申し入れたが聞き入れようとしない。その他各様の行為が報告されております。
  22. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その本来住居とするものに印刷機を持ち込んで営業をするというようなことは、これは明らかに、それも静かにやればいいが、夜中に騒音を発するということになりますと、共同利益に反することになるかもしれない。よく争われるのは、住宅としての使用ではあるけれども、たとえばピアノをたたく、それが大変周囲の人の怒りを買う。ウィーンなんか行きますと、ベートーベンの住んだ家というのがたくさんあって、ベートーベンは何か十六回も家を引っ越したとか、いやもう三十回だというようないろいろなことを言う人があるけれども、娘の教養のためにピアノを習わせると、ピアノをたたくというようなことが、共同利益に反するというようなことで追い出されても気の毒な面もあるし、やむを得ないとも思われるし、こういう点では、あなた方は立案なさった場合どういうふうにお考えでしたか。
  23. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 一方においてピアノを弾くということの必要性、あるいはその自由というようなことも尊重しなければならないでありましょうし、それによって迷惑をこうむることのある他の区分所有者の立場というようなものも考えなければならないと思いますので、一概にピアノは弾いてもいいとか、ピアノは弾いていけないとかということではなくて、そこにやはりその場所、その時代における一つの限界と申しましょうか、一つの妥協点というようなものがあろうかと思うわけであります。たとえば、夜八時以降は弾いてはいけないとか、十時以後は弾いてはいけないとか、時間を制限するとか、あるいは防音装置を施した上でなければピアノを弾いてはならないとか、そういったようなことをその区分建物実情に応じて、規約その他で決めてもらうのが一番適切ではなかろうかというふうに思うわけでありますが、基本的には規約がありましてもありませんでも、この六条一項から、他の区分所有者共同利益に反する程度のピアノの弾き方であるか、そうでないかというものが出てくるのではないかというふうに考えております。
  24. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 最初に今度のマンション法の改正案をまとめるに当たりまして、法制審議会の民法部会は昭和五十四年から改正審議を行ってきたということでありますが、その中で特に議論が多かった点はどういう点があったのか。  それから昨年の七月に要綱の試案を公表し、各界の意見を検討したということでありますけれども、その場合にもどういう意見が多かったか、説明をしてください。
  25. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 法制審議会の民法部会、特に財産法小委員会におきまして審議されたわけでありますが、議論された点ということになりますと、区分所有関係の全般にわたるわけであります。そのうち主なものということになりますと、まず専有部分敷地利用権一体化原則を採用するかどうかという問題が挙げられると思います。  それから管理組合の法制化及び法人化の問題がございます。  第三には、共用部分変更または規約設定変更もしくは廃止の要件を緩和するかどうかという問題がございます。  第四番目には、悪質義務違反者に対する排除とか、競売とかをどうするかという問題がございます。  第五番目には、多数決による建てかえの制度を取り入れるかどうかという問題があるわけであります。ごく主なところを拾ってみますと、以上のようなことになろうかと思います。  なお、試案に対する各界の意見でありますが、ただいま申しました各項目といいましょうか、各点ごとに順次申し上げますと、まず専有部分敷地利用権一体化原則を採用するかどうかという点につきましては、試案の考え方に否定的な意見、あるいはこれを疑問視するような意見はほとんどなかったわけであります。  次に、管理組合法人化につきましては、これを支持する意見がほとんどでございました。法人格を取得できる団体の規模としては、区分所有者の数が三十人以上のものという意見が最も多かったわけでありますが、五十人以上という意見、あるいは人数制限をするべきではないというような意見もあったわけであります。  第三番目に、共用部分変更または規約設定変更もしくは廃止の要件を緩和するかどうかということにつきましては、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会決議変更するということについては異論がなかったわけでありますが、決議要件については規約で別段の定めをすることができるというふうにすべきであるという意見が若干あったわけであります。  それから第四番目に、悪質居住者の排除につきましては、このような制度を設けることについては、条件つき賛成も含めて肯定的な意見が多かったわけでありますが、一部に制度自体に対する懐疑的な意見、あるいは乱用のおそれを懸念する消極論、あるいは競売までいかないで、建物からの退去と一定期間の建物使用禁止にとどめるべきであるというような意見もあったわけであります。  それから建てかえについてでありますが、多数決による建てかえの制度の導入については、これを支持する意見が多数でありましたが、一部に少数者の居住権を保護する立場からの消極論、慎重論があったわけであります。すなわち建てかえの要件として、建物建物としての効用を果たさなくなった場合については特に異論がなかったわけでありますが、試案の段階で掲げておりました、建てかえた方が土地の高度利用に役立つ場合については意見が分かれたわけであります。反対理由の根拠といたしましては、土地の高度利用に役立つための多数決による建てかえは、反対者の区分所有権を奪う根拠としては十分でないということであったわけであります。また決議要件につきましては、区分所有者及び議決権の五分の四以上という意見が多かったわけでありますが、十分の九とするべきであるというのも、あるいは建物効用を果たさなくなった場合の建てかえは五分の四でいいが、土地の有効利用を図るための建てかえは十分の九とすべきであるとするものがあったわけであります。  主要な御意見は以上のとおりでございます。
  26. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、第二十二条で専有部分敷地利用権一体化原則を定めておるわけですけれども、これは民法が建物と土地を別個の不動産としていることの大きな例外となるわけでありますが、そこでこの原則は、敷地利用権専有部分に附属するものと見るのか、単に処分の際一緒にしなきゃならないと、これだけのことなのか、その点はいかがですか。
  27. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 改正法案の二十二条に書いておりますように「分離して処分することができない。」ということを言っておるわけでありまして、土地と建物が別個の不動産であるという民法の原則に対する例外を認めるという趣旨ではないわけであります。ただ、登記関係では専有部分を中心として、専有部分の表題部に敷地権を書き込むということによって一体的に扱う、その方が整理がよくできておりますから、検索に便利であるということからそのような手当てをしておるわけであります。別々の不動産であれば別々に処分をすることができるというのが、これが原則でありますが、その原則の例外として一括して処分しなければならないということを決めたわけでございます。
  28. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうすると、いまあなたがおっしゃったように、これは建物と不動産と別々になるわけですか、その例外であるということですか、その点明確にひとつ。
  29. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 原則が二つあろうかと思います。  まず、建物と土地は別々の不動産であるという原則と、別々の不動産であれば別々に処分してもよろしいという原則と二つあろうかと思うわけであります。  今回の改正は、建物と土地は別々の不動産であるという原則には例外を設けておらないわけでありますが、別々の不動産であれば別々に処分してもよろしいという原則に対しては例外を設けまして、これは一括して処分しなければならない、分離して処分してはならないということを決めたわけでございます。
  30. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、この処分は何処分というんですか、法律的処分というんですかね、この辺はどうですか。
  31. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 主として問題になりますのは、売買によって所有権を移転する、あるいは抵当権を設定するというようなことであろうかと思います。
  32. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは、たとえばおばあさんが一人住んでおって相続人がおらない、そういうような場合は、あるいはまた子供がおっても相続を放棄するといったような場合ですね、これはどうなるんですかね。
  33. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 専有部分に被相続人が住んでおった場合というふうにお聞きしたわけでありますが、その場合に相続人がおりませんければ、まず遺贈があったかどうかということが問題になろうかと思います。遺贈がありまして、受贈者がその遺贈を承認すれば、受贈者に所有権が移るということになります。もしそれがありません場合には、特別縁故者に対して帰属させるという審判ができることになっておったと思いますが、それもありません場合には国庫に帰属するということになるわけであります。
  34. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そしたら、国庫に帰属した場合には、またそれを払い下げするとか、そういったようなことになるわけですね。
  35. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 国庫に帰属した場合には、普通財産として大蔵大臣がこれを管理処分するということになるわけでありますが、実際問題としてはただいまおっしゃいましたように、払い下げ等が問題になろうかと思います。
  36. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 次に登記の問題をちょっとお伺いをしますが、これは私も見たことがあるんですが、現在のマンションの敷地登記簿の多くは、あなたもさっきおっしゃったように非常に膨大複雑なものになっているんですが、一覧性に欠ける状態も出ておるわけですけれども、その辺も現在のどのような複雑な状況になっているのか、ちょっと説明してください。
  37. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 御承知のように、専有部分登記は、これは専有部分ごとに登記用紙を備えるということになっておりますので、まず、一棟の建物全体の表題部がございますが、その次に、各専有部分ごとに表題部を設け、甲区を設け、乙区を設けておるわけであります。ところが、その敷地である土地につきましては、一筆の土地ごとに登記用紙を備えるということになっておりまして、区分所有建物敷地であるがために特別の手当をしてないわけであります。そこで、たとえば専有部分が百個ある区分建物敷地でありますと、その百人が一筆の土地について共有持ち分を持っておると、その共有持ち分が一枚の登記用紙、継続用紙を使うことになろうと思いますけれども、次々に記載をされていくということになるわけであります。したがいまして、勢い登記簿は膨大となり、一階の一号室の敷地利用権登記が出てきたかと思うと、その次には三階の五号室の敷地利用権登記が出てくると、その次には十階の十号室の敷地利用権登記が出てくるということでありますから、非常に複雑になりまして、ある人が自分の敷地利用権登記を見ようと思いますと、その全部を初めからしまいまで探さないと、どこに記載があるかわからないという実情になるわけでありまして、先ほども申しましたように、登記所も事務処理に大変困っておりますし、区分所有者利用上大変迷惑をしておられる、こういう実情にあるわけでございます。
  38. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これ、できるかできぬか知りませんが、こうして委員会で審議しているんですから、いまあなたがおっしゃったような複雑なマンションの登記簿、これはその写しか何か、現物かを皆さんに見てもらうわけにいきませんか。そういうものは出せませんか、次の委員会でもいいけれども。
  39. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 次の委員会までには写しを準備してまいります。
  40. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、区分所有建物用に新しい登記用紙をおつくりになるのかどうか。もし、つくるとしたら、どういうような形態にするのか、その辺いかがでしょうか。
  41. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 先ほど申しましたような弊害を解消いたしますためには、専有部分登記というのは非常にわかりやすくできておるわけでありますから、それに敷地利用権登記一体化させてしまうということを考えております。そのためには専有部分の表題部に敷地権の表示をする、わかりやすく申しますと、専有部分の表題部に、この専有部分にはかくかくの敷地権がついておりますということを書き込んでしまうわけであります。書き込む方法でありますけれども、専有部分の表題部の次に継続用紙をつくりまして、そこに敷地権の表示欄、敷地権の表示をする欄を設けるということにしようということをいま考えておるわけでございます。それから、一方、土地の登記簿の方には、この土地はかくかくの建物敷地権となったということを記載することになるわけであります。
  42. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういうマンションの問題などがわが国では最近の問題になっていますが、欧米ではずっと昔から問題になっているのですね。そこで、登記の問題と、それからこういう区分所有権権利関係をめぐる問題について、欧米の法制度等はどうなっておるか、これについて御答弁いただきたいと思います。
  43. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 外国の立法例を私ども必ずしも全部十分に把握しておるわけでございませんけれども、主なものといたしましては、西ドイツに一九五一年の住居所有権法という法律があるようでございます。スイスにはスイス民法典の中の階層所有権についての規定がございます。それから、フランスには一九六五年の建物不動産の区分所有規制を確定するための法律というのがございます。それから、アメリカでございますが、一九七七年の統一共同所有不動産法、いわゆるモデル法でございますが、こういうものがございます。  それぞれの法律がそれぞれの特色を持っておるわけでありまして、今回の改正、あるいは前回、三十七年の法制定に当たりましては、こういった外国の法制度を参照したことは事実でございますけれども、必ずしもどこの法律制度を取り入れたということではございませんで、全体としてマンションの先進国であるこれらの法律を検討して、とるべきものは取り入れたという次第でございます。
  44. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから、わが国のマンションの建物の数、いわばこの法律対象になる建物の数、それから、それの耐用年数は大体どれくらい来ておって、建てかえが当面ここ何年かの間にどの程度問題になるのか、その点の実情はどうでしょうか。
  45. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) マンションの数ということになりますと、これは建設省の推計でございますが、五十七年末現在で百十九万個、これは非木造であり、三階以上であり、かつ住宅用のものというのを対象にして推計をした数字のようであります。  その経過年数別の内訳でございますが、そうなりますと若干古い数字になります。五十五年十二月末現在で全体で九十四万三千個と推計されるが、これを建築時期別に見ると、四十五年以前が十三万四千個、一四・二%、四十六年以降五十年以前が三十七万七千個、四〇%、五十一年以降が四十三万二千個、四五・八%となっているというのが、財団法人高層住宅管理業協会というところから出ております中高層共同住宅総合調査報告書に記載があるわけでございます。
  46. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 堅固な建物で六十年は大丈夫だろうと思ってきたんですけれども、実際はどうもインチキな建物もありましたね、そうでない。そうなると、耐用年数なども案外短いんじゃないかという感じもするんですが、その辺の実情はどうつかんでおりますか。
  47. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) それは的確な調査の結果が出ておらないようでありまして、私ども常識的に考えておる程度でありますが、たとえば同潤会の青山アパートのように、大正末期にできたマンションで、現在建てかえが問題になっておるとはいうものの、まだ使われておるというような建物もあるようであります。
  48. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その辺はまた建設省にお伺いします。  そこで今度、建てかえが必要になった時期に、ある人の場合には出て行ってもらう。そして、六十三条によりますと、その買い取りが時価だというんですね。この時価というのはなかなかこれはむずかしいと思うんですが、基準としてはどういう考えをしているわけですか。
  49. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 一種の法律問題でございますので、最終的には裁判所で決めていただくことになるわけでありますが、私どもとして一応考えておりますのは、すでに建てかえの決議があった後における売り渡し請求権の行使による時価でありますから、やはり建てかえを前提にして考えるということになろうと思います。そうなりますと、更地価格を前提にいたしまして、もちろん建物の取り壊し費用というものは差し引くことになろうかと思いますが、その更地価格を基準にして、各区分所有者の持ち分割合で配分した価格というものを考えることになろうと思います。もちろん、現実の問題としては、それに建築費をプラスしたものがこの建てかえ後の建物敷地を含んだ価格と、こういうことになるわけであります。
  50. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 現在のいわゆる木造一戸建てですと——木造でなくてもいいんですけれども、大体建てかえが必要になったころは建物はゼロと見て、そしていわば更地価格で大体売買しますよね。今度の場合、特に高層になりますと、一戸当たりの更地面積なんていうのは何坪になるのか。場合によっては、一坪になるかならぬのかというようなことだってこれは出てきかねないと思いますね。その場合に、更地価格が基準だとしますと、一般の住宅に比べてこの時価というのがかなり低く見積もられやしないか。大体建物部分はほぼゼロになっちゃうんですよね、この話ですと。いや、ゼロ以下になってしまうかもしれません、取り壊し費用、建てかえ費用を含めますと。その辺については何か配慮の必要はないんでしょうか。
  51. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 一戸建て建物の場合はその敷地の全所有権を一戸の人が持っておるということになりましょうし、区分建物の場合には専有部分の数の人たちがその敷地を共有しているという関係でありますから、その割合で配分する。したがって、一戸建て建物のようにはまいらないというふうに思います。
  52. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 取引だから、まさに民事局長の言うとおりなんですね。ただ、問題なのは、ここで要するに新しく建てかえる建物に入居できない人。これは主に経済的事情ですよ、入居できない人がいわばどこかもっと遠い、恐らく郊外に土地を求める、そしてそこへ家を建てるとか、そういうことになる可能性があると思うんです。また、もう少し小さいマンションへ行く例もあるでしょうけれども。要するに一戸建ての家に住居をかえていく。特に通勤等の不便はがまんしてとなった場合、私はまともなものが今度は買えないんじゃないか。せっかく高層マンションへ入ってしまったがために、建てかえ時期が来た、その後に今度はきわめて不公平なことに実際はなりはしないか。取引だから仕方がないという考えかもしれないけれども、しかし、実際上は、こういう法律をつくる機会に、何らかのそういう手当て民事法的な手当てはあるいはむずかしいかもしれぬけれども、そこら辺何かできなかったのか。それがむずかしいとすれば、いわば行政的にそういう点ができなかったか。その点はどうでしょうか。そういうことは全然考慮にならなかったんでしょうか。
  53. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 建物そのものが老朽化等いたしまして、客観的には効用を失っておる、社会的、経済的には効用を失っておるという段階でありますから、通常の場合、任意に処分しようといたしましても、それは非常に時価は安いものにならざるを得ないだろうと思います。あるいは、もう時価どころでなくて、そういうものは買い手が全くないということもあろうかと思います。それを今回は、建てかえの決議をするわけでありますから、その建てかえを前提として、したがって、更地価格を前提としたといいましょうか、更地価格を反映したそういう時価というものが考えられるわけでありまして、売り渡さなければならない人にとっても、経済的な面からだけ言えば、むしろ有利であっても不利にはならないというふうに考えております。ただ、居住の問題がありますから、これは経済的な問題だけで割り切ることはできないというふうに思うわけでありまして、区分所有法以外の問題として、各所管のところで御検討願わなければならないような問題もあろうかというふうに思っておりまして、そのときには私どもも十分に御協力をしたいと、こういうことでございます。
  54. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いまの答弁でわかったのは、やっぱり更地価格が基準だということね。それは一戸建ての場合も、こういうマンションの場合も基本的には同じだということになりますね。さらに突っ込んで言えば、もっとこの場合には不利だということにやっぱりなるんだと思うんですね。建てかえ費用その他でもっとそれは買いたたかれるということになりますと、そのことがはっきりしている以上、私は均衡というものがあると思うんですね。そうすれば、やっぱりこれは一つは社会政策的な問題になるかもしれぬけれども、そういうものが明確である以上は、それに対して法務省としても、これはむしろ積極的に関係省庁に、こういう問題なんだということで当たるべきじゃなかろうか。特に追い出し規定があるわけですからね。われわれはちょっといまのはもう少し厳格にすべきだという修正案を持っていますけれども、どうでしょうか。大臣、そういうことは一つの社会問題になると思うんですよ。特にお年寄りなどが、とても建てかえ費用も出せなくて、大体いまマンションが長い期間の月賦でやっと返し終わったころ老朽化して、そして建て直しする金がなく、住めない人も大変多いんじゃないかと思いますね。その辺に対しては、ひとつそういう配慮を法務省としてもすべきじゃなかろうかと思うんですが、どうでしょうか。
  55. 秦野章

    国務大臣秦野章君) いままでもそういうような御意見が出ておりまして、われわれもまた当然そのことを考え、実はそれは法務省自体のみならず、建設省、そういうところとも十分な連携をとって善処していきたいと、こう考えております。
  56. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いろんな法律的な問題はまた後で、次回にお聞きしますけれども、もう一つは、こういう大きなマンションになってきますと、やはり不動産業者が相当大きな役目を果たすと思うんですね。そういう不動産業者と、あとは個々の区分所有権者との関係となりますと、法律知識とか、いろいろな経験その他を通じて、力の格差が相当大きいと思うんですね。そういう場合に、一つ問題になるのは、最初つくる規約の段階、あるいはその後の、たとえば駐車場などの専用使用権をめぐる問題等、たくさん問題が出てくるのじゃなかろうかと思うんで、逐次お伺いしますが、最初のできる規約ですね、これはどういう経過でできるんでしょうか。いきなりみんな最初区分所有者が集まってつくるにしましても、その前段階があるわけでしょう。その辺は具体的には、実務的にはどうなんでしょうか。
  57. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 法律的に申しますと、現行法の二十四条で、「規約設定変更又は廃止は、区分所有者全員の書面による合意によってする。」ということになっております。実際の実情を聞いてみますと、分譲業者規約案というものをつくりまして、それを分譲の都度区分所有者に示して書面による同意をもらう、その同意が全部そろったところで規約が成立する、こういう取り扱いのようになっておるものが多いようでございます。中には規約案を用意しまして、改めて集会を開いてそこで書面による同意をするというものもあるようであります。
  58. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 今後、利用に関するいろいろ細かな規約、それは入居者、区分所有者同士の話で決まっていくんだと思うんです。ただ、もっと一番基本的な所有に関する問題、あるいは専用範囲に関する問題とか、そういう問題というのは、これはいわば建設業者なり、販売会社、それがやっぱり実質的には決めるんじゃなかろうか、こう思うんですが、実情はどうでしょうか。
  59. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) これは規約の問題と申しますよりも、むしろ分譲の売り渡し契約の内容の問題ではないかというふうに思います。この専有部分にはこれだけの敷地権がついておりますとか、あるいはこの敷地利用関係はどうなっておりますとかということを業者が決めまして、そしてそれを買い主に売る、買い主はそれを承知して買う、こういうことであろうかと思います。
  60. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、実際はそういう基本契約に基づいて条件が決まりますわね、たとえば駐車場などはどの程度使えるかという問題とか、庭の問題とかいろいろあると思うんですね。そんな問題について、個々の要するに区分所有者と業者との契約で基本的に決まるんでしょうけれども、しかしそれが、幾つもの契約が集まって一つのあと基本的な権利関係がいわばできますよね。それがやっぱり一つ規約のもとにはなるんじゃないでしょうか。
  61. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 各区分所有者が取得する権利の内容は、分譲業者と各区分所有者との売買契約によって決まるということであろうかと思います。その権利を取得しました各区分所有者が、区分所有者相互間においてどういう共同管理をするかということになりますと、これはお互いの規約によって決めるということであろうかと思います。
  62. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから、よく駐車場をめぐって問題が起きますが、この辺は法務省としてはどういう問題点としてとらえていますか。
  63. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 分譲業者等が敷地の共有持ち分権は専有部分とともに譲渡するわけでありますが、その際に駐車場等のために専用使用権というものを設定いたしまして、それを自分に留保するというようなことが行われたことがございます。そうなりますと、この区分所有者としては、敷地は全部自分たちの共有で、自由に管理使用することができると思っておった。ところが、税金だけ払わされて、使用ということになると業者が専用使用権を持っておるからというので、また別途それを処分したり、賃貸ししたりしておるということでトラブルがあったことはございます。
  64. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この法律ですと、いわば区分所有者に駐車場なども権利があって、それをお互いの使用の場合の規約で決まるという、これが恐らくこの法律の予定している対象だと思うんですけれども、だから二つあると思うんですね。全くこの法律の予定する外の、要するに契約以前の、契約の段階でもう別になっている場合と、それから契約として取り込まれている場合とね、二つあると思うんですが、私はそれぞれにやはり問題があろうと思うんですね。特に前段階の場合、いま局長が言われたようなトラブルの発生の場合ですね、私はこれについてもそういう業者と区分所有者の間の力関係その他を見まして、あるいは法務省ではない、建設省かもしれませんけれども、それについてもきちっとした法的な措置なり、そういう事故発生を未然に防ぐというような配慮があってしかるべきだと思うんですが、それについてはどうですか。
  65. 中島一郎

    政府委員中島一郎君) 最初のころには確かにただいま問題になっておりますような専用使用権をめぐるトラブルがあったわけでありますが、最近では分譲業者の方もそういうトラブルを避けるということを考えておりますし、区分所有者の方もそういう問題が起こらないようにということでいろいろ確かめますから、トラブルは減ってきておるといいましょうか、もうほとんどないというふうに聞いております。しかも宅建業法の第三十五条という規定がございますが、重要事項の説明等をしなければならないということでありまして、それが五十五年でありましたか改正されまして、第三十五条の一項の第五号の二というものが改正されまして、いまのような問題も十分に告知しなければならないということになりまして、現在では適切な、適正な運用が行われているというふうに聞いておるわけでございます。
  66. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午前十一時十六分散会