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1983-05-12 第98回国会 参議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十二日(木曜日)    午前十時四十三分開会     ─────────────    委員の異動  五月十二日     辞任         補欠選任      内藤誉三郎君     田代由紀男君      秦野  章君     高木 正明君      宮之原貞光君     対馬 孝且君      藤田  進君     瀬谷 英行君      小野  明君     赤桐  操君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         堀内 俊夫君     理 事                 片山 正英君                 田沢 智治君                 粕谷 照美君                 佐藤 昭夫君     委 員                 井上  裕君                 山東 昭子君                 杉山 令肇君                 世耕 政隆君                 田代由紀男君                 高木 正明君                 内藤誉三郎君                 中西 一郎君                 仲川 幸男君                 赤桐  操君                 瀬谷 英行君                 対馬 孝且君                 柏原 ヤス君                 高木健太郎君                 小西 博行君                 前島英三郎君    衆議院議員        文教委員長代理  石橋 一弥君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       丹羽 兵助君    政府委員        内閣総理大臣官        房総務審議官   手塚 康夫君        日本学術会議事        務局長      藤江 弘一君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     高岡 完治君        厚生省医務局医        事課長      横尾 和子君    参考人        日本学術会議会        長        久保 亮五君        一橋大学教授   永原 慶二君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本学術会議法の一部を改正する法律案内閣提出) ○学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案衆議院提出)     ─────────────
  2. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本学術会議法の一部を改正する法律案の審査のため、本日、日本学術会議会長久保亮五君及び一橋大学教授永原慶二君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 粕谷照美

    粕谷照美君 すでに四月の二十八日、そして五月の十日、そしてきょうが十二日で、三回目の審議に入っていてこういう質問をするのも実はおかしいのですが、心の中でどうも釈然としないものがあるので、少々法律審議についての質疑をいたします。  まず、この法律総理府設置法の十六条の三に基づく日本学術会議法の一部改正案であります。したがって、本来であれば内閣委員会審議をされるべきものであるというふうに考えております。私ども社会党文教部会でも、あるいは参議院の中でも、文教なのか内閣なのかということでずいぶん議論が起きたところでございますが、この文教委員会審議をするという、この法律的な根拠というものは一体どこにあるのでしょう。
  6. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 正直申しますと、私どもの方も当初は内閣委員会と実は思い込んでおりました経緯がございます。法案化というような動きもございまして国会の方に御相談に参りましたら、実は国会事務局の方が衆議院規則参議院規則を参照いたしまして、これはどうも内閣委員会では扱えないかもしれないというお話もございまして、私どももさらにいろいろ御検討願ったわけなんですが、過去の経緯を見ましても、二十三年にこの会議法ができましたときも実は文教委員会衆参ともやっておられましたし、それから途中二回ほど改正がございます。これも実は文教委員会でやっておられるわけです。  特に衆議院規則の場合には明確に、日本学術会議の所管に関する事項は文教委員会で扱うというふうになっているものですから、そういった点、それから過去の点も考えて、これは文教委員会でやらざるを得ないんではないかという事務方の意見もございましたし、これは最終的には国会の問題でございまして、国会の方で文教委員会という御判断をいただいたというふうに私ども考えております。
  7. 粕谷照美

    粕谷照美君 確かに衆議院では規則にありますけれども、その当時この法律審議するのは総理府総務長官のもとでこれができるという条件になかったから、便宜的にといいますか、そういうことで文教委員会でやったのではないか、こういうふうに判断いたしますけれどもわが国学術体制学術行政というものに大きな影響を与える重要な法案であれば、普通通常国会の冒頭に出してきて、そして国民議員科学者の前にその内容について早くから明らかにしておかなければならない問題だったというふうに思うわけですが、それが突如としてというような感じ参議院に回ってきて、しかも文教委員会ということについては、やっぱり納得のいかないものがあるわけであります。  そうしますと、もしこの次にこういうような法律を改めるということになれば、また文教委員会、こういうことになるわけですか。
  8. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 私ども判断と申しますより、国会事務局に御相談に参ったときに、たしか先生のおっしゃるような議論も出たわけでございます。総理府総務長官国務大臣になりましたのは四十年からでございます。そういう意味で、先生のおっしゃいましたように、過去の学術会議法改正はそれより以前でございますので、現時点で見ればこれは規則改正していてもおかしくはなかったなということは確かに事務局は申しております。ただ、そういう機会が私ども意識している間にございませんでしたので、そういう措置をとってなかったということでございますが、今後どうするかについては、私どもと申しますよりは、やはり総務長官国務大臣になっているというような点も勘案して、衆議院規則など改正する際に国会の方で御判断願わなければいけないことだというふうに考えております。
  9. 粕谷照美

    粕谷照美君 参議院では規則にないわけですから、明確に総理府設置法に該当するものは常任委員会である内閣委員会でやるというようにきちんと認定をすればいいし、衆議院規則だって変えた方がいいというふうに思います。  といいますのは、重要な内容を持ったこの法律案、もう会期もあと一カ月だ、こういう時期にこちらの方に持ってきた。その当時は衆議院解散ではないか、衆参ダブル選挙ではないか、こんな情勢の中でどの法律を優先して上げていかなければならないかなどということを各党それぞれ非常に神経を使って考えていたときであります。文教委員会で言えば学校教育法改正案献体法案など、本日回ってきますけれども、どうしても全会派一致で上げておきたい、こういう法律があるときに、ごり押しにこの学術会議法が入ってきた、こういう感じを私は捨て去ることができないのであります。その意味も込めまして、ひとつ皆さんの方でも御相談に、出すときに御相談に行くばかりじゃなくて、こういう法律についての相談もちゃんとやっていただいて、それぞれの常任委員会審議ができるようにやっていただきたいということを要望しておきたいと思います。  それでは内容についての質問に入りますが、まず最初に、日本学術会議に対します総理府総務長官の基本的なお考えというものをお伺いいたします。
  10. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいま先生からお尋ねのことでございますが、これはもう大変大事な基本に触れる大きな問題についてのお尋ねであると、私はこう受け取らせていただきます。非常に重要なお尋ねであると、こう考えておりまして、日本学術会議はいまさら私ごとき者が申し上げるまでもないことでございまするが、しかし担当の大臣として言わしていただきまするならば、法律に基づいて設置されておりまする国の機関でございまして、内閣総理大臣の所轄のもとに置かれております。その経費は国庫により負担されておりながら、しかも政府指揮監督というようなものは受けることなく独立してその職務を行うこととされておりますと私は考え、また承知をしておるのでございます。  特にわが国のように資源に恵まれておらないところにとりましては、科学振興あるいは科学の発展というようなことは、言うまでもないことでございますが、これほど大切なことはないとまで言えるほどに大事なことでありまして、いまさらここで私の申し上げるまでもないことでございますが、こういったことの重要性は今後ますます高まっていくと考えることでございまして、少なくなるというようなことは絶対にあり得ないものと考えております。したがいまして、学術会議役割りと申しまするか、お尋ねのその任務重要性と申すようなことは今後ますます強くなっていくのであって、少なくなっていくようなことはないと考えておるようなわけでございます。  私としましては、こういうような基本的な考えのもとに今後とも学術会議に対処してまいりたいと考えておる次第でございますが、また、学術会議がこのようなその任務重要性を一層自覚され、今回の改革を一つのきっかけとして、科学者のみならず広く広く国民全体の期待にこたえて、その機能を十分発揮していかれまするよう心から希望をいたし、心からそれを願って、そうしたことから今回の提案をさしていただく、こう私は先生にお答えさしていただきたいと思います。
  11. 粕谷照美

    粕谷照美君 学術会議任務重要性を高く評価をされた総務長官、この日本学術会議の独立して職務を行うというその立場をきちんと守っていただけるものだというように私は理解をしております。  ところが、今度の法律が出てきた経過というものをずうっと眺めてみますと、総務長官のその独立して職務を行うということが侵されているのではないか、こういう感じがしてなりません。それは特に二年前の当時の中山総務長官学術会議に対する発言、いろいろ出まして、国会の中でも取り上げられましたけれども、そういう中からこの法律が出てきたのではないか、こういう感じがしてなりません。  それで、久保会長にお伺いをいたしますけれども学術会議活動は非常に重要である。しかしそれに沿わない、活動が不活発だったのではないか、いままで取り上げられてきた問題点が出ているわけですけれども、私はそんなことはないというふうに思うんですけれども、いかがですか。
  12. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 御質問の御趣旨必ずしもはっきり理解しなかったかと思いますが、学術会議のいままでの活動学術会議趣旨に合わないようなことがあったのではないかという御質問でございましょうか。
  13. 粕谷照美

    粕谷照美君 済みません。いままで大変批判が多く出された中に、学術会議活動が不活発であった、こういう批判が出ている。そうなりますと、先ほど総務長官がおっしゃった、学術会議職務を行ってきて、ますます学術会議に対する期待というものが高まっていく、そういうものにはこたえ切れない部分が出てくるのではないかという意味で、きちんと活動してこられたのかどうなのか、そういう批判は当を得ているのかどうなのかということについてお伺いしたい。
  14. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 多少お答えしにくい御質問でございますが、学術会議は、これまでたびたび御説明もいたしましたが、できる限りの努力はしてきたと思います。ただ、それがいろいろな条件から思うに任せないという点は多々ございました。御承知と思いますけれども学術会議の会員はそれぞれの本務を持っておられるような方でございまして、このために、必要な熱意は持っておられますけれども、専心することはできませんし、また会議経費その他にいたしましても、必ずしもというか、十分と申すところからはかなり遠かったと率直に申し上げざるを得ません。また、いろいろな活動、世の中にあるいは必要なところに具体的な形で提言する場合に、そのことも必ずしも思うに任せなかった、科学者の間にそういうことを周知させるというようなこともなかなか思うに任せなかったというようなことは多々ございます。  しかし、それはそういう条件でございまして、それにもかかわらず努力はしてまいったと思うのでございますが、御批判いただくようなところで不十分と、これについては弁解するよりは今後とも一層の努力を払いたいというふうに申し上げておく次第でございます。
  15. 粕谷照美

    粕谷照美君 現役でそうそうたる活躍をし、しかも著名な学者科学者であられます久保参考人がこういうところにおいでになって、その仕事を中断されるだけでも私は大変なロスだと、普通であればこうお考えになるのに、やっぱり学術会議重要性を認識して、会長という大役を果たされて出席をされることに心から感謝をしながらも、非常に残念でなりませんのは、五十六年の十月の二十三日、衆議院文教委員会日本学術会議の問題について嶋崎議員質問をしているわけであります。それはどういう質問をしているかといいますと、中山長官がイギリスへいらっしゃった。 王立協会を訪問した際に、日本学術会議なんていうのは知らないと、こういうふうに言われて、大変評価が低いということにびっくりした、こういうことを言われたことに対する質問であります。  それで、それは知らないと言われた人の方が有識者でなかったのではないかということに対しては、いやいや王立協会ハックスレー会長以下幹部全員に会っている。そこの中で学術振興会は知っていて非常に活発に運動しているけれども日本学術会議というのは一体何なのか、それは知らないと、こう言われた、こう言うのですね。日本学術会議が国際的に低い評価だと、こういう発言をされていることに対して、久保参考人会長としてどういう心境でいらっしゃるかお伺いしたいと思います。
  16. 久保亮五

    参考人久保亮五君) ただいまのロイアルソサエティーでございますか、そこでのどういうことであったか私詳しくは存じ上げませんが、いま御発言のようなことであったといたしますと、一つには、これは繰り返し申し上げているわけでございますが、やはり外国のシステムというようなものはなかなか理解できないことでございます。私どもにいたしましても諸外国でどうなっているかというようなことはそれほど知っているわけではございません。それでなおかついろいろなコンフュージョンといいますか、そういうようなこともあろうかと思います。  一方、日本学術会議国際会議等に代表も派遣し、また諸外国からいろんな御連絡があればそれに対してお答えするというようなこともやっております。ハックスレー会長のような方々が御関心を持っておられますICSUというインターナショナル・カウンシル・オブ・サイエンティフィック・ユニオンズというのがございますが、それは学術会議が加盟しております重要な国際組織でございますが、そういうところには私も二回ほど学術会議を代表して出席したこともございますし、学術会議から推薦した常任委員のような方も出ているわけでございます。  日本学術振興会のお仕事は非常にりっぱなことをやっておられるわけでございますが、そういうような仕事はしておらないわけでございますので、しばしば日本学術振興会と比べられるというようなこともございますが、これはいわば問題の性質が違うことであろうかと思います。それで、これはもっと国際的にもよく知られて、正当な評価を得るような活動をしていかなければならないことは御質問の御趣旨のとおりでございまして、そういうことに努めたいと思うのでございますが、ひとつ御理解いただきたいことは、やはりこれもたびたびの繰り返しになって申しわけございませんけれども学術会議というのはそもそもじみな仕事を着実にやっていくというのが本務でございますので、そういう目でごらんいただきたいと思います。
  17. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はそういう目で見ていきたいと思っておりますけれども、その学術会議を直接担当される総理府総務長官がそういうことをおっしゃるということを非常に残念に思って、そのあたりから何か意図的なものがあるのではないか、こういう感じがいたしましたので、学術会議がきちんと、王立協会などとも交流があるということをいまお伺いいたしまして安心したわけですが、日本学術会議編大蔵省印刷局発行で、「一九七〇年代以降の科学・技術について」というこの冊子を見せていただきましたけれども、ずいぶん活躍をしているわけなんですね。そしてまた、「学術会議のしおり」などの写しもありますけれども、国際的にもそういう交流をやっていらっしゃるのであって、私はいらっしゃらない元総務長官のことをこういうところで残念だと非難をするのは本当に心の中ではじくじたるものがあるわけですが、大変残念だという気持ちでいっぱいなわけであります。  ところで、総理府にお伺いしますけれども、もともとこの日本学術会議というのはどういう動機でどういう経過をたどって誕生したものですか、報告をしてください。
  18. 久保亮五

    参考人久保亮五君) ただいま総務長官の方への御質問かと思いますけれども、私、もしよろしければ答えさしていただきたいと思います。  日本学術会議ができましたのはいまから三十四年前ということでございますが、これは戦後混乱の、混乱と申しますか、日本敗戦の廃墟の中にあった時期でございます。私は、私自身のことを申しては恐縮でございますが、私自身がまだきわめて若くて、それでも大学に勤めておりましたけれども、よそながら先輩の大先生方がこういうことのために尽瘁しておられるのを拝見していたわけでございます。  御承知のように日本敗戦の後のどん底にあったときに、日本を再建するためには学問によらなければならないということが当時日本全体の世論と申しますか、基本的な考え方であったと思います。そういうときに、私ども先輩先生方は、ぜひとも日本学問を再建しなければならないということでこういうものをつくるという運動をされたのでございますが、それ以前のことを申し上げれば、わが国には学術に関して三つの主要な機関がございました。一つ日本学士院でございます。もう一つ学術研究会議という組織、それから学術振興会、こういう三つ組織があったわけでありますが、こういうものを考え直して、そしてそういう学者に負わされた重大な責任を果たしていくためにその支えになるようなものをつくるということでありました。  このことに関しましては、当時日本はアメリカの占領下にあったわけですが、総司令部におられたケリーという方が非常に尽力をされまして、その方のためにできたということではございませんが、そういうことのあっせんもあえてしてくださったという経緯もございます。  一番最初は、主に自然科学の関係の方々がこの渉外連絡会というものをつくられましてそういう運動を始められたわけでございますが、それが発展いたしまして学術体制刷新委員会というのができるということになるわけですが、その運動がだんだん成熟してまいりますと、もちろん当時の政府、特に文部省に非常に御助力いただけたわけであります。それで、学術研究体制刷新のために、まずは学術研究体制世話人会というものができまして、それから学術体制刷新委員会というものが組織されたわけでございます。それができましたのは昭和二十二年八月でございますが、学術体制刷新委員会、当時百八人というふうに伺っておりますけれども、各分野、法、文、経、理、工、農、医と、これは現在の学術会議の部と同じことでございますが、それから総合部門、そういうようなところから計百八名の委員方々が選ばれまして、その方々が大変精力的に御検討になりました。  それで、翌年の昭和二十三年四月にはその検討結果をまとめて、当時の内閣総理大臣あて報告をされたわけであります。総理大臣はこの報告を受けられて、日本学術会議法案というものをつくられ、二十三年の六月三十日には国会に提出されて、七日十日に法律として公布されたと、こういう経過でございます。  それが大まかなことでございますけれども、そのように、そのとき日本の再建のためにこういうものがつくられまして、思い起こしますけれども、私どもはチンピラでございますからそういう組織それ自体には何ら関与することはございませんでしたが、思い返しましても何か明るい空が、青い空が見えたというようなことでございました。
  19. 粕谷照美

    粕谷照美君 お若い科学者方々にも非常に大きな期待を持たれてこの法律が成立をしたというふうにいま伺ったわけでありますが、その学術体制刷新委員会、百八名の選出ですね、政府が任命をしたのですか、あるいはどういうふうにしてその七部あるいは総合部門から選ばれたのですか。
  20. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 新しい学術体制をどうつくるかということにつきましては、まず新体制審議するための審議機関をどうするかということが問題になったわけでございます。これにつきましてはもちろん学会の総意を代表するものでなくてはならないということで、まず最初に四十四名の各界から選出されました世話人会選出されたわけでございます。この世話人会で慎重に審議されまして委員選出方法を定められたということでございます。  この方法といたしましては、法、文、経、理、工、農、医学部の七部門から十五名ずつ、それから総合部門から三名、計百八名の委員で構成するということで、これを選出するためにはいろいろな広い基盤の協力を得なければならないということで、相当の啓発もなされたわけでございますけれども選挙自体は四月に始められまして八月に終わったということでございます。  選出方法はただいま申しましたように選挙でございますが、各部門すべて多重選挙でございました。実態的に申しますと、理、工、医学部門では全国的な学会が整備されておりましたために、専門学会母体として選挙が行われたようでございます。ただ法、文、経の人文諸科学及び農学部門におきましては、全国的に統一的な学会が整備されてないというふうなこともございましたので、一定の資格を持った研究者を登録してその集団を委員選出の第一の母体として、最終的には選定人の互選によるということで選ばれたようでございます。
  21. 粕谷照美

    粕谷照美君 私がお聞きしたかったのはそうなんですね。その最初の出だしから民主的に選挙で出されてきた、そういう人たちによってこの学術会議の土台がつくられ始めてきたということは大事な、私たちは忘れてはいけないことだというふうに思っているわけであります。そして、だからこそ国会審議でも、参議院では文教委員会でも本会議でも満場一致、ただし衆議院では文教委員会では全会派一致でしたけれども、本会議では多数で決定をした、こういうふうになるわけですね。  ところがいまのこの法案審議見ますと、社会党、共産党はこれは大変問題があると、こういう中での審議になっているわけであります。科学者の中でも非常にたくさんな議論がありまして、ここ連日、私は科学者方々の応対に追われるというような、反対意見、または改革要綱に賛成だけれども若干の自分の意見もあるなどというような御意見の方々がおいでになるわけであります。そういう意味で、今度の法律案科学者の自主性や学術会議の独立性を尊重して作成をされて出されてきたかということになりますと、大変な問題があるというふうに考えないわけにはまいりません。  それでやや古い話になりますが、昨年の八月十九日、自由民主党の日本学術会議改革特別委員委員長中山太郎名で出されました中間提言、これを読んでみました。その中に、学術会議の実態は「設立当初の目的からは程遠いものとなり、科学者一般の関心と信頼を失い、その期待された本来の機能を果していない状況にある。」と、こういうふうに断定をしているわけであります。そうしますと、先ほどの総務長官学術会議に対する御認識とは、自由民主党と総務長官の違いですから変わって私は構わないと思いますけれども、大変大きな隔たりがあるというふうに思います。その辺は長官、いかがお考えですか。
  22. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいま先生からお尋ねいただきましたその自由民主党の特別委員会の中間提言の中で、その実態は設立当初の目的から云々という先生がいま御指摘くださったようなことが書かれております。これについておまえはどういう考えを持っておるんだというお尋ねでございますが、確かに先生がお述べくださいましたように、中間提言には御指摘のようなことが書いてございます。表現はともかくといたしまして、これはいわゆる世間で言われておりまする学者離れのことを言わんとしておられたのではないかと、私はそう善意に解釈しております。  この学者離れのことは自由民主党からばかりでなく、総理府、私の方の懇談会におきましても、また関係の各方面からもそういう声があり、指摘されておりますのは事実でございまして、私としましては、こういったような指摘を謙虚にかつ厳粛に受けとめ、学術会議は、先生にも申し上げ、また先生からもおっしゃっていただきましたように、学術会議そのものが科学の進歩発展と学術の多様化、専門化に対応し、また第一線の科学者の信頼と期待にこたえて、名実ともに科学者の内外に対する代表機関としてその本来の機能を十分果たしてまいることができるようにという願いを込めて、そういうようにしていただきたい、そういう学術会議にしていただきたい、それにはこの程度の法の内容を直していただきたいという、そういう願いを込めてこの法案を提出させていただいたのでございます。
  23. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういう願いを込めて出された法律のそのもとになりましたこの中間提言、長官のおっしゃるように学者離れをしているからというようには私は読めないわけですね。やっぱりこれは学術会議に対する手厳しい非難だというふうに思います。もっと言えば、中傷だというふうに考えているわけです。そうでなければ、国の機関としてあれば学問の自由を守るために何物にも拘束されないでいるということはできないというその次の結論が出てこないわけでしてね。本当に私は、先ほどから申し上げていますように、この法律に至るまでの経過としてこういうものは大変な問題を含んでいるというふうに思っているわけであります。    〔委員長退席、理事片山正英君着席〕  さらにこの中間提言の中に、国の機関として残す場合には会員の選出制度はこれを廃止をするというふうに出されているわけですね。そうしますと、その会員の選出制度をやめた場合には学者離れがなくなって、そして学術会議が自由民主党の期待するようなものになっていくんだろうかという疑問も非常に大きくなってくるわけであります。これに対しては、会員の選出制度についてはいままでも、学術会議自体で問題があるから改革をしなければならないといって改革要綱が出ているわけですから、そのこと自体については私は自主性を尊重していきたいと思うんですが、その自主性すら尊重できないような法律が出されてきたというのは、いまの長官のお答えとはずいぶん違うのではないでしょうか。私の疑問の方が間違っているんでしょうか。
  24. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 自民党には自民党の立場がございます。政府とはまた違う点があるかと思います。ただ、私どもは何も自民党の意見だけを聞いているわけではございません。いまの政党内閣制でいけば、法案を出すについては自民党に反して出すことはできないのはもちろんでございますが、なるべくその正しいことを党の方にも御理解いただいてつくり上げているわけでございます。  それで、私ども判断をいたしましたのは、むしろもっともろもろの点を考慮いたしまして、学術会議から出された改革要綱も十分考慮に入れましたし、私どもの懇談会の審議、八回行われましたが、これに総務長官は全部出席して、そこで行われている議論を全部自分の耳で聞かれて、そういったものを踏まえて最終的に判断をしたわけでございます。  学術会議に問題ありという点は、たとえばここでも、  「科学の向上発達を図る」ことは学術会議の基本的目的中でも第一義的なものであるが、二十一世紀を展望した長期的、先見的、総合的な諸科学の発展の構想のような、それこそ学術会議でなくてはなしえないはずの構想の策定を広範な科学者、学・協会の協力を得て推進し得たであろうか。一方、「行政、産業、国民生活に科学を反映浸透させる」というもうひとつの目的について見ても、なるほどここ数期来、科学者の社会的責任を重視する立場が再認識されたとはいえ、今日のように科学・技術の社会的影響が深刻になっている状況下では、学術会議活動はけっして十分であるとはいえない。科学者及び国民にとって、日本学術会議とは何か、その真価が問われてもやむをえまい。 こう言っております。これは改革要綱のもとになりました学術会議の改革試案の中の文章でございます。  こういった問題点を踏まえ、自主性というのはわかりますが、正直その懇談会での御意見では、残念ながら改革要綱まだ不十分な点があるという声が強かったことも事実でございます。その点を全部勘案して、その自主性を尊重しながらこういった問題点を解決する策はないだろうかということで、総務長官最後決断でこざいますが、総務長官試案を提示して御検討いただいたと、そういう経緯になっております。
  25. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は私なりに若干の調べをやってみました。学術会議の本来的な任務であります勧告の状況は一体どうなんだろうか、幾つか並べてみましたけれども、たとえば一九五〇年、朝鮮動乱のときですが、戦争目的の科学研究を絶対に行わない決議、このアピールがありました。また、単独講和反対決議、これもありました。そして、五二年には破防法反対のアピールがありました。いずれも政府の政策に対しては厳しい姿勢で臨んでいるアピールでありました。五三年には吉田首相が曲学阿世の徒などという有名な言葉を出された。そういう中で学術会議の民間移行を主張されております。これがまず学術会議に対する私は一つの試練だったというふうに思います。  五四年、ビキニ死の灰、そのときには原水爆実験停止、核兵器廃絶世界の科学者にアピール、こういう大きなアピールをやられております。五八年には警職法改正反対の申し入れ。そういう中で、総理府設置法の中に科学技術会議が発足をしてくるわけです。学術会議離れの状況を総理府みずからがつくってきた法律じゃなかったか、私はこういう認識を持っております。  六二年、大学管理法案に反対をする声明、六三年に原潜入港を望まない、こういうアピールがまたありました。それ以降政府からの諮問は年に一件だけ。もう学術会議を相手にしないという態度が政府から出されてきた。そして、さらに学術審議会が発足をいたしました。学術振興会が発足いたしました。そして、学術会議の予算はもう急激に減っていくわけであります。権限も大幅に縮小をされています。そういうことが科学者学術会議に対する関心を弱くさせたのではないだろうか、こういう私は分析をしているのです。  さらに一九七一年、自民党の鯨岡氏が学術会議に対して、左翼偏向、こういうのではいけない、それで選挙制度を変えていきなさいという主張をされました。また七四年には、小坂総務長官選挙の推薦制を主張されている。したがって、この選挙の推薦制というのはずいぶん長い歴史を持っているなという感じかいたしました。そういう中で機構の改革構想が作成をされていくわけであります。  さらに七九年、スリーマイルの事故がありました。学術会議は原子力の安全性確認についてのアピールをされ、また八〇年には国際紛争の平和的解決の声明、こういう勧告を出していく中から、例の中山太郎長官の公選制が偏向の根源だという、サイマル出版社からの「脱石油時代の科学戦略」という本の中に学術会議に対する非難が出されている。そしてマスコミに対しても大きなアピールが出た、こういうふうに判断をせざるを得ないわけで、現行法第三条による学術会議の独立は、時の政府期待に反する、あるいは批判的な声明、決議などを出すことによって、懲罰的な扱い方を受けていると判断をせざるを得ない、こういうふうに思いますが、総務長官いかがですか。
  26. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 先ほど申し上げました改革要綱のもとになりました試案の中でも、先ほどのような問題点の原因として三つ挙げている。そのうちの一つが、政府との関係において、これは政府にも会議側にも双方に責任があるだろうが、両者の相互信頼関係が著しく低下したという点を挙げております。  その点は一つの重要な問題点だろうと思いますし、私も懇談会でなるほどという感じの意見を聞きましたのは、学術会議政府との関係は、適当な緊張関係がある方がいいんではないか、しかしそれが対立関係になるのはやはりまずい、べったりはもちろんいけない、適当な緊張関係というのはあるべきだと。それは一委員の御意見ですが、私も現在の立場でもそういう目で実は学術会議というものを考えてやっておるわけです。過去にいろいろ不信感が増大するような出来事があった点は事実の点もございましょうが、しかし私どもは、将来に向かってはそういうことのないようにというふうに考えてこの改正案を出しているところでございます。
  27. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、法律の中に、国立の機関として残していく、そして独立性は守るというのは、もともときちんとあるわけですから、そういう態度でやっていくということでございますか。
  28. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) この点、当時の総務長官判断、なかなか大変でございました。と申しますのは、片や自主改革要綱ということで学術会議として十月に決定しております。それで先生御指摘のように、片や自民党の方も、自民党としての考えでの中間提言を出しておられます。それらを総合的に御判断いただいた懇談会、これ十五人の方ですが、やはり十五人の方が集まってもなかなか意見が一致するというものではございません。これは諮問機関ということではございませんので、一本の答申をということではありませんでしたが、その議論を伺っていても、国の機関がいいのか、むしろ外国の例を見ても民間でそれこそ自立してやっていく方がいいじゃないかという御意見、最後までやはり対立してまいります。  そこで最後の報告も、四つの案になったわけです。しかも新しい懇談会というのを設けて、一年さらに議論を続けたらどうかというような御提言でございました。しかしそれをやったとすれば、あるいは十五人を、人数をふやせばもっとそうなるかもしれませんが、一年間やっても相変わらず国の機関がいいか、民間の方がいいんだというような議論が続いてしまう、これではどうにもしようがないじゃないかということで、現実的な処理を考えまして、ある意味では自主改革要綱に一番近い線を総務長官判断で選ばしていただいて、そして自民党に対しても説得を行ったということでございます。
  29. 粕谷照美

    粕谷照美君 確かに参考人の御意見をいただきました四月の二十八日のいろいろなお話の中では、われわれの要望がずいぶん入れられたということで、総理府のその努力は私は高く評価をしたいと思います。しかし根本がやっぱり問題だというところなんですから、その違いのところを私たちはいま問題にしているわけであります。  ただ、いまお話しになりました政府学術会議の関係のことについて、学術会議がいいのか政府が正しいのか、政府が悪いのか学術会議が悪いのか、そういうことを言っているわけではないのであります。学術会議が独立性を持って、そして政府のお気に入らないような勧告やアピールを出しても、そのことはもう当然のことであると、こういう理解をしてよろしいか、いかがですか。
  30. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 先ほど、対立関係はいけないけれども緊張関係は必要だという意見に私は感銘を受けたと申しました。これは私個人の感想ではございますが、しかし現在のポストから考えてもそういったものが必要ではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、どの議論でも対立点だけをとらえて議論されている面がございまして、私ども自主改革要綱、本当に全体として改革を目指していると見ています。選出方法だけではございません。その他の点でいろいろな提言をされています。法律にはならないような部分もあるわけです。その点は今後大いに学術会議側にやっていただきたいというふうに実は熱望しているところであるわけなんです。その辺全体として御理解いただきたいというのが私どもの希望でございます。
  31. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかし、私がいま歴史的にずっと挙げてきたような経過の中から、学術会議の権限をもぎ取られていった、そして予算はどんどんどんどん、これは後でやりますけれども、縮小されていった。そういうこととあわせて、政府からの諮問が年一回だけになっている。この辺は学術会議を軽視し無視しているというように言われてもやむを得ないと思いますが、いかがですか。
  32. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) これはなかなか私の立場でお答えしにくいのは、総理府ですべて学術会議に諮問するということではございません。やはり関係各省がありまして、それぞれの分野で必要なもの、これを諮問していくということでございます。それで過去の経緯を見ますと、確かに相互不信感が助長されて、そのために諮問も減ってしまっている、こういった不幸な経緯がありますので、今度の改革を契機に、そういった政府から見ても、耳の痛い点があるにしてもやはりその意見を聞きたいというような学術会議になってほしいというのが一点でございます。  それからもう一つ、権限が奪われたとおっしゃいますが、ある意味では科学技術に対する学術会議以外の審議会等が整備されてきたとも言えるわけなんです。それらの機関との関係というのも一つ問題点でございまして、いたずらにそういったものをあるいは取り込んだりとかいうふうには私は思いません。一昨日も、たしか久保会長からもそういう御発言がございましたが、むしろそういうことで余計な荷を軽くして、まさに学術会議としてやるべき先見的総合的長期的な視野に立った科学のあり方、こういった提言をやっていただくというのは、私としてはむしろ今後やりやすくなるんじゃないか、そういうふうに考えているところでございます。
  33. 粕谷照美

    粕谷照美君 改革要綱の中にもその辺を十分に配慮をしていかなければならないと、こう書いてありますから、私はりっぱな結論、整理が出ることを期待しております。  それとあわせまして、この学術会議学者離れしている、こういうふうに言われますけれども、行管庁が昭和五十七年の六月に日本学術会議を中心とする科学技術行政関係審議機関等に関する特別調査結果報告書というものを出しているわけです。それを拝見をいたしましても、有権者の数が確かに減っている時期もありましたけれども、しかしこの第十二期の数字を見ても、ずいぶん若い方々が入ってきているというふうに判断をしまして、やっぱり先輩の御努力が、学術会議の問題が大きくなれば前進をしていくのかなという感じですけれども久保参考人の方は、確かに科学者の数がふえていますから、三十六万人もいるのに有権者が二十二万人では少ないというこういう判断も一方にはあろうかと思いますけれども、それでも毎年一万二千人、一万四千人、二万三千人とこう年々加入者がふえている、有権者がふえているということは、私は学術会議が信頼を取り戻してきているというふうに思いますけれども、どう判断をされますか。
  34. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 全般的に申してそう申し上げてよかろうかと思うのでございますが、この有権者の数は確かに減少した時期もございますが、全体としてふえてきております。この中身についての分析というものは余り行われていないわけでございますが、実感からいたしますとやはり関心が薄れているというような感じはぬぐえないところがございますが、この数で見ている限りにおきましては確かにふえています。これは喜ぶべき現象であろうかと思っております。
  35. 粕谷照美

    粕谷照美君 第七表を見ますと、新規登録者数、十二期は十一期に比べて四万九千五百九十九人ふえているわけですから、非常に大きな数の人たちがここに入ってきているというように私は判断をしていきたいと思っているわけです。もともとこの学術会議の誕生が、日中事変だとかあるいは太平洋戦争中の科学者の果たしてきた事実からの反省から始まった、こういうふうに認識をしているわけであります。ナチスドイツ民族優越論を説いた御用学者によってユダヤ人撲滅、大量虐殺の悲惨な事件も起きている。こういう事例もありますし、また三、四日前のNHKのテレビニュースには、ローマ法王が、宗教裁判にかけられたあのコペルニクス、ガリレオの復権を宣言をしておられました。三百五十年前の方の復権であります。私は権力に屈しない科学者の集団の崇高な使命感あふれるこういう活動というものをこれから大きく期待をしていきたいというように考えております。  さて、次に久保参考人にお伺いをいたしますが、昭和五十七年の二月、自由民主党から日本学術会議についての提言、同じく六月二十四日、自由民主党の政務調査会会長田中六助氏名で総務長官あての日本学術会議の改革についての申し入れが連続をしているわけであります。おくれて十月二十六日、今度は学術会議から改革についての要望が総務長官あてに出されているわけであります。何か連続して出されてきた提言あるいは要望、申し入れなどに対して学術会議がようやく動いたような感じかするわけでありますけれども、押しつけではないとこういうふうに断言をし、私どもが理解をしてよろしゅうございますか。
  36. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 前にも申し上げたと思いますが、学術会議で改革問題に取り組んだのはかなり長い歴史があるわけでございますが、法改正までを含めての改革問題に抜本的に取り組むということは十二期の初めからでございました。その期が始まりまして、こういうような自由民主党を中心とするようなものが出てきたわけでございます。自由民主党は言うまでもなくわが国の最大の政党であり、国政に対して非常に責任を持っておられる党でございますから、そういう党がこの日本学術会議についてお考えくださるということはきわめて重要なことであろうかと思います。その意味におきましてこういう御提言、日本学術会議といたしましてももちろん率直に受けとめて、それに対しても十分の考慮を払ってきたわけでございます。
  37. 粕谷照美

    粕谷照美君 その自主的な態度について、今度は総理府といろいろ法律作成について会長としてお話し合いをされた。そういう中で、先日の会長の御答弁の中に、第十九条から第二十二条の二までについては政令ではなくしてできるなら規則にしてもらいたい、こういう態度で臨んだというのでありますが、なぜそこのところを政令ではなくて規則にしてほしいと要望されたのですか。
  38. 久保亮五

    参考人久保亮五君) これが政令でなければならないとする理由が政府側、立法の方のことでおありになるのかもしれませんが、学術会議の立場からすれば、こういう条項につきましては、学術会議として全く自主的に決められるところの規則というものにゆだねていただくというのが最も望ましいことだと考えたわけでございます。これがそういかないということは、法案の作成に当たられた責任ある方々のお考えでもあろうと思いますが、もしこのとおりということであれば、これは政令の中身につきまして十分学術会議としても意見を申し上げるし、そしてこれがそういう自主的な運営を拘束するようなことにならないようにお願いいたしたいと思っております。
  39. 粕谷照美

    粕谷照美君 改革要綱を決めて、自主的な態度をもって交渉された、しかし出された法律は、いろんな点で受け入れてはいただいたけれども、やっぱりこの規則のところを政令にしなさいとか、あるいは選挙のところは推薦制にしなさいとかというようにして受け入れていただけなかった部分がある。しかも、それは非常にこの学術会議の自主性にかかわる根幹部分のところが特に受け入れてもらえなかった、私はそういうふうに判断をするわけですが、ここの部分もこれからもしこの法律が通ったならば、これから長いこと政府相談をするわけにはいかないわけですね。期限が大体決まるわけですね、一年間という期限があるわけですから。そうすると、その間に話し合いを詰めなければなりませんけれども、そういうことで本当に自主性ある皆さんの御意見が全面的に受け入れられるという感触を得ましたか。いかがですか。
  40. 久保亮五

    参考人久保亮五君) これは折衝の段階でも繰り返し申し上げ、また総理府側からも私、会長の申し上げた趣旨は十分了解するということでもございました。それからこの参院の審議の段階でも、学術会議の自主性というものについての総理府総務長官の御見解も伺ったわけでございます。これは私といたしましては、そういうふうに公式の場で表明された御見解に御信頼申し上げるというのが筋であろうかと思います。
  41. 粕谷照美

    粕谷照美君 総理府の方は、なぜ学術会議規則にしてほしい、自主性を認めてほしいというように折衝したにもかかわらずこのような政令事項にされたのですか。
  42. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) いまの十九条以下の点につきましては、学協会を基盤にし、研連を母体にしてという技術的になかなかむずかしい点がございました。会長ともずいぶん協議を重ねまして、私ども本当にずいぶん教えられて、それで基本的な仕組みはつくり上げたということでございます。  その中の途中経過で実は法律案なるものは最終的には私ども内閣法制局の議を経なければ表には出せないわけです。正直国会の各党ともその途中段階では出しておりません。しかし学術会議側のやはり意見を吸い上げなければいけないということで、法案そのものではございませんが、内容をある程度わかるようにしたペーパーをつくって、そこで御検討をいただいたわけですが、その際に、まだ詰まっていない点についてもたまたま政令、規則というふうに何か書かれてしまった点が一つちょっと問題があったわけでございます。ただ、いまの点につきましては、私どもは会員選出というきわめて基本的なものにかかわる重要な柱でございますので、これはやはり政令できちっと定めるということにさせていただきたいと、これは法制局とも相談しながら私どもはそういう観点に立ったわけでございます。  ただ、もちろん柱だけで物事ができるわけじゃございませんでして、むしろ具体的な細かい中身から積み上げていくということになりますと、その点はむしろ規則にゆだねてその積み上げをある意味では待って、政令というものを御相談しながらやっていきたいと考えておりますので、一年余の期間がありますので、その間に十分御意見を伺って制度を定めたいというふうに私ども考えております。
  43. 粕谷照美

    粕谷照美君 久保会長にお伺いするのは、政令になったということはそれは政府の責任でありますけれども学術会議の自主性というものは押さえられない、同じことでやっていけるという御判断をされておりますか。
  44. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 今後そういうことで主張すべきものは主張いたします。もちろん国の機関としての体系ということもございましょうから、そういうことに関する理解がないわけではございません、もちろんあるわけでございますけれども学術会議の自主性、真にあるべき自主性というものについては十分御理解をいただくように努力するつもりでございます。
  45. 粕谷照美

    粕谷照美君 総理府にお伺いしますけれども学術会議からの申し出は政令ではなくて規則にと、こういうことでありましたね。そうしますと、みんな、それじゃ希望は入れるれないけれども、もう法体系上これは政令にしなきゃならないんだということでやられたというのでありますが、しかし、そういう中で久保会長からの意見を入れて、本来政令とすべき第十五条の設置基準など、これを規則としている。あるでしょう、例外が。どうなんですか。
  46. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 先生ただいま御指摘のように、第十五条の第一項では、本来でございますれば政令と書くべきところを学術会議の方からのたってのお話もございまして、私ども内閣法制局ともいろいろ折衝を重ねまして、ぜひにというようなことで無理をお願いをいたしまして、ここのところは事務的には大変な努力を積み重ねたと思っておりますけれども規則という例外を一つつくらしていただいております。こういうことからも私ども総理府の誠意のあるところをおくみとりいただきたいと存じます。
  47. 粕谷照美

    粕谷照美君 誠意のある努力は高く評価をしたいと思います、要望を入れてそういうふうに法律を直していったわけですから。じゃなぜその一つだけそうやって要望を入れて直しておいて、その他の十九条から二十二条の二までは要望を入れることができなかったんですか。その疑問なんです。やっぱりそこのところをきちっと押さえておかないと、何か何やるかわからないという不信感があったのではありませんか。どうでしょう。
  48. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) これはもっと技術的な問題が実は絡んでおりまして、参事官からの方がよろしいのかもしれませんが、実は私ども途中会長といろいろ協議をしておりまして、途中認識が違っていた点があります。一つは学協会というもの、いろんな研連に関係してくるんですが、会員推薦に関しては一つの研連、一応主たる研連ですね、を通じてやることにするようにしたいというふうに実は私ども考えていたわけなんです。そのうち、お話伺いましたら、やはり学協会あるいは研連の実情を見まして、必ずしもそうはいかない、少なくとも推薦人については複数の研連に出せるようにしていただきたいというお話がございまして、これは二十一条関係になりますか、そうなりますと、これは組織にかかわる問題ですから、やはりそれじゃその点は政令で、どこでもどんどん出せるということにはできませんので、一応抑えなきゃいけないということで二十一条政令という話はつきました。  その当時は、十九条の点は、なるほど推薦人は複数で、複数の研連に出せる。しかし会員候補ですね、これについては単数の研連に出すという理解だったものですから、それなら別段政令で条件を定めていく必要もございませんので、規則でいいじゃないかという話をしていたのは事実です。ただ、その後、実はそういった会員候補についても複数の研連に出せるようにしてほしいという御要望が参りまして、正直夜中の十時から一時過ぎろろまで会長と私、協議いたしました。最後に上の方の判断も仰ぎまして、その点は取り入れたわけです。そうしますと、推薦人が複数研連に出せるときには政令としているものを、会員候補ですね、これを複数の研連に出せるのを規則のままにしておくわけにいきません。そういう意味で法制局とも相談して、この点はそろえさせていただくということで政令にいたした。きわめて技術的な点なんですが、ぶちまけますとそういうことでございます。
  49. 粕谷照美

    粕谷照美君 もう一度確認をいたしますけれども、私もいろいろの法律をつくっていただくように法制局にお願いをして、大変なものだということをいつもしみじみ感じているわけですが、政令にしたということによって学術会議が要望をしている規則にするということと同し条件になるということでよろしいですか。法律にするわけですね。政令にするということと要望している規則にするということと、もう法律にするわけなんですからイコールにならないでしょう。やっぱり私どもの目から見れば自主性が阻害をされる。法技術の面ではわかっても、自主性が阻害されるのではないかということについては心配は要りませんと、先回も総務長官そうおっしゃったけれども、あえて確認をさせていただきたい。
  50. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 政令に書きますのは正直柱でございます。実際の運用に影響を持ってくる細部は規則にゆだねるつもりでございます。そういう意味で、その柱をつくるときにはもちろん学術会議側の意見、私ども十分聞いてまいるつもりです。その政令のできばえを見ていただけばわかると思いますが、私どもは自主性を損うようなことになるとは実際には全く考えていないということでございます。(「その柱が中心じゃないか」と呼ぶ者あり)
  51. 粕谷照美

    粕谷照美君 その問題にしている選挙制度の母体なんですからね、いま不規則発言がありましたけれども、本当にそこのところが柱だというふうに思うのです。こういうことについての、四月の十三、十四日ですか、日本学術会議の総会においては、久保会長どうでしょう、この点は了解をいただけたような雰囲気だったのですか、いかがですか。
  52. 久保亮五

    参考人久保亮五君) その点についていろいろな御発言がございましたが、了解するとかしないとかいうことではございませんでした。
  53. 粕谷照美

    粕谷照美君 じゃ、推薦制そのものに関する一連の流れとして流会であったから了解を得られたということにはならない、そう私たち判断してよろしいですか。
  54. 久保亮五

    参考人久保亮五君) この推薦制ということでございましたが、これについていろいろな御意見が出ました。そのことは前にも申し上げていることでございます。それでいろんな御意見がございまして、これを全面的にこれでよろしいとかあるいは全面的にいかぬとか、そういうようなことではございませんでした。
  55. 粕谷照美

    粕谷照美君 久保参考人に対する質問は、私これで終わります。お引き取りいただいて結構です。  次は、日本学術会議の改革についてのいわゆる吉識委員会の報告書を資料にして質問をいたします。  この末尾ですね、七ページのところに、   本懇談会として一致した結論を得るには至らなかった。   何れの案についても細部にわたり検討を要する問題が多く、これらの問題について結論を得るには今後なお相当の時日を要するものと思われる。   なお、日本学術会議の改革については例えば新たな懇談会等を設けて引続き検討を行っていくこと、さらには当面、来年十一月に予定されている第十三期日本学術会議会員の選挙について、これを一年間延期する措置をとることなどが考えられる。 こういうことを言っていらっしゃるわけです。この、いろいろ出されてきている懇談会の問題点あるいは学術会議の改革要綱、それなど参考にしながら出された法律でありますけれども、私はつまみ食いだと思うのです。どうしても法律をつくっていきたいという考え方からは、あそこからこうやって都合のいいところだけ取って、妥協の産物としていろんなものが法律に入ってくるわけですね。この一年間延期しなさいなんていう提言というのは非常におもしろいと思うのですけれども、何でこんなところに頭が回らなかったのですか。
  56. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 先ほどもこの点にはちょっと触れたわけでして、先生はつまみ食いとおっしゃいますが、私どもから見ますと、総務長官本当に熟慮の結果の決断であったと思っております。実はこの起草段階でも、この一年間延期の件についてずいぶん御説明はしたつもりなんです。十五人の方ですが、やはり皆さん方意見が違ってしまって、十何人の方々の御意見を並べてみても、大きく四つかあるいはそのほかという意見もございますが、そういったものを並列するという形になってしまって、これを詰めていくとしたら、それじゃもうそれぞれの案について細かく具体的に検討していくか、そうなるとこれは時間を要するじゃないか。しかも十五人ではだめだ、そうなると、もう少し専門家が多くなければいけないというお話なんですね。  ですから、私ども申したのは、いや、このうちの一つの案であっても、これでできるのはやはり大きな骨組み、骨格でございまして、それは細部を詰めていくためには、実は現在の会員の任期の延長、一年はやっていただかなければいけないのですという御説明はしていたのですが、どうも先生方には私ども役人が細部を事務的に詰めていくというこの作業はなかなかおわかりいただけないのか、大きな枠が固まればいいというお感じなのか、一年間延ばして、それで大きな問題を議論せいというふうにおっしゃっているわけですね。  そうなりますと、総務長官いろいろ考えてみますと、じゃ新しい懇談会を、七部を反映させるとして百人からの懇談会をつくって、それで細部を詰めて、どれがいいかとやっていたら一年延長してもこれは不可能である。しかも、この四つの案というのは本当に幅広いものでございます。自民党の中間提言も入っておれば、確かに改革要綱そのものはいいじゃないかとかという線まで入っているものです。その中で総務長官としては、現実的に考えていくと、四つの案をそれぞれ詰めるのは無理ではないか。そうならば、一つの案を総務長官の責任において選ばせていただいて、それを詰めるのが必要だということで、ごらんいただければわかりますが、この四つの案の中では一番自主改革要綱に近い線を選んだわけです。  しかも、そこで新しい懇談会といっても、過去の事情を知らない方々にやってもらうのではどうにもなりません。それで一番ふさわしいのは学術会議であるわけなんです。それで直ちに試案をつくりましたら、会長以下三役においでいただいて、ぜひこれを検討していただきたいという要請をし、それで学術会議側で現実に検討していただいて、二月の総会にできました分科会報告、ああいった形になったわけです。私どもはそれも参考にしながら、学術会議と協議を重ねて現在の法案に至ったということでございます。
  57. 粕谷照美

    粕谷照美君 有名な、重大なお仕事を持っていらっしゃる十五名の方々が八回にもわたって懇談会をやっていらっしゃる、非常な御努力だったということを評価をいたしますけれども、しかしそれにしても、この出された中から皆さんは確かに改革要綱に一番近いものを選んだのだから学術会議の了解を得られると、こう言われるけれども、近くったって根本が違うのだと、こうこの間の岡倉参考人はおっしゃっているわけですが、そこのところが何としてもまだ私どもには納得がいかないものがあるわけです。それでいろいろなことを参考にいたしましたと、こういうふうにおっしゃいますけれども、私その参考にする中に、学術会議内容に対する評価というものが非常に大きく皆さんの頭の中にはあったのじゃないか。その内容に対する考え方を一体どこで頭の中に入れてまとめていったのか、確かにお話もあろうかと思いますけれども、私はやっぱり行管庁報告だというふうに思うんですよね。  この行管庁報告を見ますと、私は大変客観的に書いてあるようでありながら、この法律をつくっていかなければならないような方向に向けての報告書だというふうに判断をしているわけであります。科学者の分析、加入状況などというのは、これは客観的なことでありますから、それは正しく見ていってもいいと思いますけれども、「勧告」という部分がありましょう。勧告の分類がありますね。表三十六、ちょっと皆さんにわかるように読んでください、三十六表の勧告の分類内容
  58. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 内容、研究施設等の整備に関するもの、件数六十七件、割合二九・〇%。国際協力等に関するもの三十件、一三・〇%。科学振興方策等に関するもの二十六件、一一・三%。研究助成等に関するもの二十六件、一一・三%。科学者の待遇改善に関するもの十九件、八・二%。その他六十三件、二七・三%。総計二百三十一件でございます。
  59. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、先日の参考人の御意見、御答弁など私は議事録をずっと読んだんですけれども、最近の研究施設等の整備などに関するのは八十件あると、こういうふうに久保会長が言っていらっしゃるわけです。数字が違うんですね。何かありますか。
  60. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 先生御指摘のとおり六十七件でございます。
  61. 粕谷照美

    粕谷照美君 この議事録は、じゃ後で御訂正くださるということになるんですか。
  62. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) そのようにお願いいたしたいと思います。
  63. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は意図的に十三件も減らしているのかと思ったんです。だんだんこうこちらの猜疑心が強くなってくるんですね。数字を見てもそんなふうな感じがしてなりませんが。しかし、この分類ですけれども、こう書いていますね。「勧告内容を厳密に分類することは困難であるが、第十一期末までの勧告二百三十一件を概括的に分類すればおおむね第三十六表のとおりであり、研究施設等の整備に関するものや国際協力等に関するものが多い。しかし、科学・技術の長期的・総合的在り方等に関するものは、多くはみられない。」と、こう書いてあるんです。私は、この「科学・技術の長期的・総合的在り方等に関するもの」というのは、学術会議の本来の任務というふうに理解をしているものですから、それがそう見られない、多くは見られないと、こう書かれたんでは、学術会議何しているかということになりませんか。いかがですか。
  64. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 先ほど総務審議官からも申し上げましたように、試案等におきましても、自己反省が学術会議側にもあることは事実でございます。ただ、分類の問題であろうかと思いますけれども、これらの勧告の内容等につきましては、まさに学術会議といたしまして総合的、長期的視点からの勧告であるというふうに私ども考えているわけでございます。
  65. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうするといまのお話は、行管庁報告を否定するというふうに理解してよろしいですか。
  66. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 学術会議側の意識といたしましては、私が申し上げましたような視点からやっているつもりでございます。
  67. 粕谷照美

    粕谷照美君 次に、同じく勧告の策定状況もずいぶん詳細に調査をしています。このことは私は大変いいことだというふうに思います。何しろ学術会議一つの勧告に対して本委員会二十三回、小委員会十六回、計三十九回も開催して出しているということが書いてあるわけですから。しかし、こうやって出されたものが必ずしも政府に大きく取り上げられているわけではないということは先ほどから問題になっているわけですが、特に関係省庁との交流が悪いというんですか、折衝が足りないということを報告をしているわけです。組織的に行った形跡が見られない、これは学術会議側の態度が足りないんだと、こういう書き方ではないでしょうか。どうでしょう。
  68. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 学術会議側の視点としましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、これを行政に密着しない立場でいろいろ意見を言うというのが学術会議の独立機関たる存在理由であろうかと思います。その意味で、御指摘のように行政機関相談しながら、端的に申し上げますと、合作という形ではなくて、もちろん各行政機関の作成過程では意見を聞くことは当然にやっておるわけでございますけれども、そのような趣旨職務を執行しているということでございます。
  69. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると⑦に書いてあるように、日本学術会議のこれは独自性なんだ、だからそれでよろしいんだと、こういうように理解をしてよろしいかというふうに思うわけです。ところが、私が非常に気にしますのは、学術会議の方では報告をしていますよと、こういうふうに言っているわけですね。申し入れもしていますよ、勧告もしていますよと言うんですけれども、省庁の方で対応をし切れないというのは、私は省庁の方が手落ちがあるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  70. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 学術会議からの勧告につきましては、これを一応科学技術庁の連絡部会で受けまして、各省それぞれに対応してもらっているところでございます。各省の対応につきましては、もちろん学術会議側としてはできるだけ実現していただきたいということではございますけれども、それぞれ各省の判断によるところであると考えております。
  71. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうではなくて、学術会議がそういうことをやったら、各省庁はこれに対応しなければならないと私は思うんですけれども。だから、省庁の方が手落ちがあるというふうに判断をするわけです。そうして学術会議に対して、あなたのところから勧告を受けたけれども、うちの省庁としてはここのところに問題があるのだと、だからこれは取り上げるわけにいかないとか、こういう対話がなされなければならないわけですね。それは学術会議から来ないからしないんだという言い方もありましょう。しかし逆を言えば、政府はその提言をどのように取り入れるか取り入れないかということについての報告をする義務というんですかね、それがあると思いますが、いかがですか。
  72. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいまのその後の処置状況等につきましては、科学技術庁を窓口といたしまして学術会議の方に返ってくることになっております。
  73. 粕谷照美

    粕谷照美君 じゃ、科学技術庁がそういう回答をしていると、こういう御答弁と伺ってよろしいですか。
  74. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 科学技術庁の方からその意味での報告書をいただいております。
  75. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかしですね、⑦には「当該勧告が関係省庁において具体的に取り上げられた形跡もない。」と、こう書いてあるんですよ。あなた答弁違いませんか。
  76. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) その後の実施状況等につきまして時間のかかるもの等がございます、あるいはなかなか処置のとりにくいものというふうなものもございます。したがいまして、その意味での報告がおくれるということはままあることでございます。
  77. 粕谷照美

    粕谷照美君 まあ、時間のずれと、こういうふうに理解いたしましょう。しかし、そういうことにしても、なぜいま取り上げられないかという回答ぐらいは学術会議になされなければ、学術会議は何のためにやっているかということがわからないわけです。何かありますか。
  78. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) その意味におきましては、先ほど来申し上げておりますように、科学技術庁の方の連絡部会におきましてその意味でのまとめをいたしまして、学術会議の方にその説明等を内容といたしますところの書面をいただいているということでございます。
  79. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかし、この調査報告書を見ますと、それが十分に行われているというようには読み切れません。だからこそ改革要綱の中にもその問題が取り上げられているんだろうというふうに思いますので、これからの学術会議努力、各省庁の努力というものを期待しなければならないと思います。  そういう中で学術会議におけるその審議活動として「諮問・答申、勧告のほか要望、申入れ、伝達等がある。」と、こうなっておりますが、日本学術会議法に明確な根拠がない。読んでみましたけれども確かにありません。「各々の区分や定義も必ずしも明らかでないが、量的には諮問・答申、勧告よりも多い」と、こういうふうに書いてありますけれども、この諮問だとか答申などというのは、一体どのように理解をしていったらよろしいんですか。    〔理事片山正英君退席、委員長着席〕 やっぱり勧告活動の一環であると、こう判断をして、よく学術会議もやっているわいと思ってよろしいですか。
  80. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいまの諮問の方につきましては、これは法定されておりまして、政府から諮問してそれに学術会議が答申するという形のものでございます。  なお、要望等につきましては、これも法律上の根拠はございませんけれども学術会議の意思決定をした上で、政府等に対しましてできるだけ実現してもらいたいという形での意思表示をするということでございます。
  81. 粕谷照美

    粕谷照美君 この要望、申し入れ、伝達などについても、政府は反応するということですか。
  82. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 要望等につきましては、もちろんこれは政府その他関係機関等に手交いたしているわけでございまして、その中で実現されたものも当然にございます。
  83. 粕谷照美

    粕谷照美君 申し入れも同様ですね。
  84. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 同様でございます。
  85. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは次に、予算の部分に入っていきたいと思います。  昨日、私はこの予算のグラフをおつくりになった科学者の方からその資料をいただいたわけですけれども、国の予算の伸び率に対して日本学術会議の予算は非常に伸びが落ちてますね。三年ごとに上がっていくというのは、これは選挙があるからだというふうに思うわけですけれども、この辺は学術会議の予算というのは十分なんですか。
  86. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 予算の伸び率につきましては、確かに国の予算の伸び率に対しまして相対的に低いということはございます。
  87. 粕谷照美

    粕谷照美君 相対的に低いということがございますと合ったって、あなた学術会議事務局長なんだから、努力したんだけれどもこれだけでまことに残念ですと言う気持ちもないんですか。まあ、いいでしょう。  同じくこの報告書の中の七十六ページですね。主要費目別割合の推移というのがありますね。その中で、事務局職員の人件費が出ています。昭和五十七年度で七億七千三百十八万円のうち四八・五%に当たる三億七千四百七十三万円。先日も、人件費にほとんどとられるというお話がありましたけれども、私、人件費というのはこれあたりまえの話であって、総理府の人件費減らしなさいなんて、そんなこととてもじゃないですが、ますますいい仕事をしてもらうためにふやしてもらわなければならぬくらいだというふうに思っておるわけですが、枠が狭まってくるわけですから、人件費の割合というのは非常に大きくなってきますね。ところが一方、会員、委員の手当、それから国際学術団体加入分担金などというのは、この枠が人件費に比べて逆行しているんですね。庁費というのはそう大きく変わってないんです。この会員、委員の手当、国際学術団体加入分担金等で非常にこの枠が減ってきていることで何か不都合はありませんか。
  88. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいま御指摘の加入分担金でございますけれども、これは従来四十三の国際機関に対しまして分担金を支払っております。御指摘ではございますけれども、これにつきましては基準単価の改定あるいは通貨の差額によります改定増等が認められておりますので、その点では増額した形になっておるはずでございます。
  89. 粕谷照美

    粕谷照美君 確かに、会長、副会長、部長、副部長、幹事、会員などというのは単価が決められていますので、それは出されてくる会議などに支払われるわけでありまして、もうちょっと下の部分の会議に出ていくそういうときにはお金ほとんどないんでしょう。手弁当でと、国立大学先生なんかしょっちゅう言っていらっしゃるけれども、手弁当でやっているというふうになっているわけです。これ、大体横並びになっているんですか、国の予算全体としては。
  90. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいま御指摘の国立大学の教授であります会員につきましては、これは国家公務員の特別職の職員の給与に関する法律で支給が禁止されております。したがいまして、まことに申しわけないのでございますけれども、その意味では支給できないという形でございます。  なお、いまの手当等、一般の先生方にお支払いいたします手当等につきましては、ただいま御指摘がございましたように、研究連絡委員会等では予算の制約からやむを得ず手弁当でと、その意味でまさにボランティア的なことでお願いするケースも確かにございます。
  91. 粕谷照美

    粕谷照美君 七十七ページの第七十四表を見ますと、外国旅費の枠組みが物すごく減っていますね。しかも金額まで減っているわけです。十二年もたってこの金額が減ってくるというのはどういうことですか。
  92. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 五十六年度に対比いたしまして五十七年度は確かに減っていることは事実でございます。この点につきましてはまことに遺憾なことではございましたけれども、中山元大臣と私どもの伏見会長との間で派遣対象の問題につきましていろいろと問題があったわけでございまして、その際に、学術会議側として組織的に対応すべき会議というものが洗われたわけでございまして、その意味組織的に対応すべきものに必要な経費ということで、前年度に比べまして減ったわけでございます。ただ、五十八年度になりまして、新たに二国間交流と、これは非常に強い要望、要求を出しまして、二国間交流という新しいカテゴリーで増額になっていることも、これまた事実でございます。
  93. 粕谷照美

    粕谷照美君 いま事務局長がおっしゃいましたね。中山長官からの派遣問題に関する発言もあって、学術会議総理府で話し合ったと、そして外国会議に派遣をする人間の枠を決めたから額が少なくなった、こういうふうにおっしゃっていますけれども、それだけですか。
  94. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいま御指摘でございますけれども、派遣の人の問題でなくて、派遣すべき会議がどの程度あるかということでございます。
  95. 粕谷照美

    粕谷照美君 あのときは、派遣すべき会議の質の問題ではなくて、派遣される人間が会員であるか非会員であるかということで大きく問題になったのではないですか。
  96. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 問題提起は先生御指摘の形でございましたけれども、予算査定、予算の段階ではただいま私が申しましたような事情でございます。
  97. 粕谷照美

    粕谷照美君 何かけしからぬところに派遣でもしていたのですか。あなた、事務局長としてそういうことについての事務一切やってこられたわけでしょう。何かありましたか。
  98. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 私が申し上げましたのは、決して、けしからぬとかけしかるとかということではございません。あくまでも非常に厳しい財政事情下で学術会議組織的に対応すべき会議かどうかということで洗いました結果が予算に反映したわけでございます。
  99. 粕谷照美

    粕谷照美君 その洗われた部分の中に二国間交流というものは大分入っていましたか。
  100. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) それは入っておりませんで、五十八年度に、先ほど申しましたように要求の結果新規に認められているわけでございます。
  101. 粕谷照美

    粕谷照美君 何か一つ一つぽつぽつと言われると、うっかりしちゃうと聞き逃すような感じかするんですけれども、その前の年にあったものからぐっと減ってきたこの外国旅費というので、こことここは学術会議の旅費で行きなさい、それは総理府としても認めますよ、こっちはだめですよとして大分落とされた部分があるわけでしょう。落ちなかったのですか、それは。
  102. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 予算の段階では個々の、もちろん会議についてというよりはこれまでの実績等を考慮して、厳しい財政状況下でどのように積算するかということが議論されたわけでございます。
  103. 粕谷照美

    粕谷照美君 どうもよくわからないんですけれども、やっぱり余り行ってもらいたくないところに、しかも学術会議が勝手に、勝手にという言い方は悪いですけれども学術会議が会員以外の者を派遣をしているということが気にいらなくて削減された予算ではないか。その疑問に対してはいかがですか。
  104. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) その点につきましては実は学術会議側でもいろいろ検討されたわけでございますけれども学術会議側の責任のあるお立場の方の御意見としても、たとえば個人の研究集会への出席旅費といったものについては、これは文部省の方の関係の予算で措置されるべきものであろうということがございますわけでございます。もちろん具体的にどれがどうということではございませんけれども、そのような形の旅費がこれまで出されていたということもこれも事実でございます。
  105. 粕谷照美

    粕谷照美君 行ったらよかろうということと学術会議として行ってはいけませんということとは全然違うと思うんですよ。非常に締めつけが行われている。学術会議が自主的に独立をして、こういうところには行かなければならない、こういう人を派遣しようということを決めている、それが気にいらないからといって会長を呼んで、もうあなたのところでやりなさいなんて、こういう圧力をかけてつくり上げられた予算ではないのですか。
  106. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 先ほどから申しておりますように、どの会議にだれを派遣するかということにつきましては、本来学術会議で決定すべきものでございまして、そのような形で現に行われているところでございます。
  107. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういたしますと、有権者を派遣してもよろしいと、こう理解していいですね。わかりました。どのような会議にだれを派遣するかというのは学術会議の自主性だといまお話しになったんですから、それで了解をいたしました。  それで、予算のとり方なんです、総務長官。厳しい財政状況だ、財政状況だなんて言うけれども、こんなに旅費を激減されるようなそんな財政状況じゃないですよ、ほかを見ましてもね。ヨーロッパ各国比べた表があるんですけれども、各国ちょっと見てください。報告してください。
  108. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 非常に申しわけないんですけれども、資料が十分にございませんので若干の国につきまして御説明申し上げたいと思います。  まず、もちろん学術会議と全く同じ種類の機関が各国にあるということはこれは必ずしも言えないわけでございます。比較的近い形のものとして各国のアカデミーというものが挙げられると思います。その場合、たとえばアメリカの科学アカデミーでございますと、一九八〇年度では約百六十億円ということでございました。そのうち八割強が政府補助になっております。それから次に、イギリスのロンドン法律協会につきましては、一九八〇年度で約二十五億円ということで、そのうち四割強が政府補助で、ほかは各種基金の運用によっているわけでございます。  確かに日本学術会議は五十八年度におきまして約八億円でございます。したがいまして、単純な予算規模の比較といたしましては少ないということは言えるわけでございますけれども、その活動内容につきまして、日本学術会議は先ほど来御説明申し上げているとおりでございますけれども、アメリカの科学アカデミーにつきましては、受託研究の実施といったことだとか、褒章の授与とかその他の仕事もやっているわけでございます。また、イギリスのロンドン法律協会では研究費補助を実施している、あるいは褒章の授与といったものも行っているということでございまして、つづめて申しますと、一概な比較というのは若干無理があるんではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
  109. 粕谷照美

    粕谷照美君 私も、同じ仕事をしているわけではありませんし、人数もずいぶん違うわけですから、それは総額だけで比較をしようとは思いません。しかし国の機関として非常に高い評価を与えられている日本学術会議、いま日本学術会議に対する諸外国科学者の目が非常に熱い期待を持って注がれているときに、この予算というのは非常に少な過ぎるのではないか、こういうふうに思っているんです。長官いかがですか、今度のそろそろシーリングが始まると思うんですけれども、予算獲得について。法律ばかりごり押ししようと、こういうふうな態度じゃなくて、少し予算の面でもがっちりととっていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
  110. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ずっと長い時間先生お尋ねやら御意見等拝聴いたしておりまして、学術会議が非常に重要な任務を帯びて仕事をしておる大事な機関であるということを勘案して、大いに自覚して、何と申しますか、科学者のみならず広く国民全体の期待にこたえての学術会議としての機能を十分発揮していただきたい、またいただくためにこのような法の内容の一部を改正することをお願いしておるのでございますが、しかし制度はどうぐあいよくいっておりましても、金がなければ十分な使命を果たすわけにいかぬということはだれしも考えることであり、当然なことでございます。  いま御指摘のございましたように、なるほど世間では現下の厳しい財政事情ということでございますから、なかなかむずかしい問題ではございまするが、こういうような非常に大切な会議でございますので、国民にこたえられる本当にりっぱな学術会議としての運営がなされていくように法律改正していただき、そしてともにこの運用についての予算と申しまするか、それが先生から御注意、御指摘のありましたように、私としてはひとつがんばらなくちゃいかぬ、力いっぱいがんばらなくちゃいかぬ。それについてはただ政府のシーリングがどうなるかこうなるかという一般的な考えを持たずに、今後その衝に当たられる学術会議当局とも、予算の内容、要求の内容について、私自身が何と申しますか、相談に乗せていただいて、そして政府部内でせっかくの先生からの御注意であり、御指摘でもあり、先生のみならず皆さんのお考え方と考えまするので、努力させていただきたいと、こう考えております。
  111. 粕谷照美

    粕谷照美君 日本学術会議が国際学術団体に加入をしている、その数が四十三あるというふうなことで、その四十三ある中で分担金というのが支払われるわけですけれども、これはもう十分に間に合う予算なんでしょうね。あわせて、いま総務長官が十分にがんばりますと、こういうふうにおっしゃったけれども日本における国際会議を開いてもらいたい、こういう要望が非常にたくさんある。しかし数字でいうと年三回から四回で、あとは共催、後援みたいな形になっているというのがあるんですが、そういう面の予算もきちんと取らないと、国際的な評価というものも上がらないというふうに思うわけです。  ところで、国際学術団体に加入金を払っていながら出席していないじゃないか、こういうおしかりが中山元総務長官からあったということも事実であります。それは一体どことどこですか。
  112. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 五十六年の衆議院文教委員会中山長官発言された内容に関しましての御質問と思いますが、その際三つということで申し上げましたのは、法学国際協会、それから世界気候変動研究計画、昔は地球大気開発計画と申しました。それから三番目が世界工学団体連盟でございます。以上の三つでございます。
  113. 粕谷照美

    粕谷照美君 学術会議がどうしてそこに人を派遣していなかったのかということについてはおわかりですか。わからなければ結構ですが、しかしこの議事録を読んでみますと、最初九つも参加してないじゃないかと、こう言って学術会議を非難していらっしゃるわけですね。ところがだんだん調査をしたら七つになって、それがまた調査したら三つになった。嶋崎さんの質問によれば、一つじゃないかと、こういうことがあるんです。その辺は何が正しいんですか。どれが正しいのですか。そして、そのような九つが七つになり七つが三つになる、こういう恐喝的な、まずデマとしか言いようかないようなこと、数字を挙げて学術会議を非難するようなことがなぜ出てくるのでしょうか。事務局からそういう数字が出ているんじゃないですか。
  114. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 七つという話が確かにございましたようであります。これにつきましては、大変に私ども事務局の者といたしまして補佐が足りなかったということでございますけれども、主としてこれは外国旅費の観点から調べましたために、結局のところ加盟しております国際会議の中で日本で総会等が開催されたものを中に数えたわけでございます。したがいましてそれが七つということで、それを整理いたしますと三つということでございます。
  115. 粕谷照美

    粕谷照美君 七つと三つじゃ大きな違いですからぬ。目を総理府の方ばっかり向けていないで、事務局学術会議事務局なんですから、しっかりと学術会議を守っていただきたい。要望いたしまして午前中の質問を終わります。
  116. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ─────・─────    午後一時五十三分開会
  117. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  118. 粕谷照美

    粕谷照美君 午前中に引き続いて、午後は大体選挙制度の問題を中心に質疑を行いたいと思います。  まず、学術会議が、政府の出してきましたこの法律をどのような形で審議をする時間帯があったか、そういうチャンスがあったかということについて伺います。
  119. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいまの、まず試案の提示は十一月に大臣からございまして、会長検討を約されたわけでございます。これを学術会議に持ち帰りまして、運営審議会それから部長会あるいは改革委員会というものを通じましての審議をいたしたわけでございます。
  120. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまのは試案をでしょう。私が聞いたのは、法律案審議をする時間的余裕、ゆとりはどのくらいあったか。
  121. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 失礼しました。  その後、二月の総会におきまして会長が授権をされましたので、その授権に基づきまして総理府と折衝をいたしたわけでございます。その際、要綱についても再三要望はいたしましたけれども、試案につきましても具体的ないろいろな協議等がございました。その過程におきまして、先ほど申しましたような運営審議会あるいは部長会においての審議があったわけでございます。  なお、言い落としましたけれども、試案の提示を受けました後の段階におきまして、改革委員会でこれを検討するということで、改革委員会の中での選挙制度分科会というのがございます。そこで選挙制度一般の問題点と、それからさらに具体的な方法等についての検討をいたしたわけでございまして、その際、四案が検討の対象となっておりまして、その検討結果につきましては二月の総会の際に報告されておるところでございます。  法案の中身につきましては、四月の総会におきましてその内容等についての説明をいたしまして御意見を伺っているところでございます。
  122. 粕谷照美

    粕谷照美君 確かにいま御説明をいただいたように、試案に対して学術会議は、改革委員会、選挙制度一般に関する分科会というもので十分な検討のもとにまとめているようですね。しかし、これは、まとめてはいるけれども問題点を出している。配慮すべき原則は何かというような形できちんとした結論を出していないというふうに理解しますけれども、その点はどうですか。
  123. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 試案について、受けるとか受けないとか、あるいは評価はいたしておりません。御指摘のとおりでございます。
  124. 粕谷照美

    粕谷照美君 そして四月の十四日の総会では法律案が、案の案だと思いますけれども示された。突如として見たという形になるわけですね、法律案は。そうでありませんか。試案と同じものでありますから十分御討議をいただいたというように総理府の方としては理解をするのですか。
  125. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) たしか二月の総会で要望が出てまいりまして、これは私どもがいまの案を最善と思うように、学術会議としても十月の総会で決定していますから当然だと思います。要望では、自分たちの自主改革案が最善だと思う、しかし政府の方で法案作成を進められるなら十分協議してほしいという要望が出てまいりまして、その申し合わせには、その窓口として会長を充てる、会長は運営審議会等と十分諮りながら進めるとなっておりまして、それを受けて私ども会長以下三役の方とお話を進め、会長は恐らく運営審議会とお諮りになりながら進められたと思います。  総会としてはたしか四月までしか、途中はなかったと思いますが、その間やはり申し合わせに沿ってやっていられたものと私どもは信じております。
  126. 粕谷照美

    粕谷照美君 私も大きな労働団体に属しておりまして、一つの方針を練り上げるためには相当の期間をかけてこういうものをつくるわけですね、原案を。つくられた原案を、やっぱりずっと会員、学術会議で言えば会員は当然のこと、有権者の段階までおろしていかなければ本当に審議をしたということにはならないというふうに思うんですね。そういう有権者の段階に至るまでの審議ができる条件を与えていたかと言えば、とられていない。私はとても無理な条件だというように思います。現にいろいろな研究所にいらっしゃる方々からの書面もありまして、われわれはそんなものを見せてももらっていない、われわれの意見も聞かないでこういう法律をつくるのは大変問題があるというきつい抗議の文書も来ています。そのところをどういうふうにお考えになりますか。
  127. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 形式論的に申せば、私ども法案提出に当たっては学術会議の同意を必要とするものでもございません。しかし内容考えまして、やはり学術会議側と十分協議しなければいけないということで私どもはそれに努めてまいったつもりでございます。それをさらに広げて会員一般の方というふうにおっしゃいますならば、たとえば私ども法案を出すに当たってはやはり政府内部、それから与党もクリアしなきゃいけないわけですが、与党に対しても、正直申しまして法案が本当に固まるまで御相談できずに、大体その短期間の間にお話しして御了解いただいているわけです。最後はやはり国民の代表たる国権の最高機関たるここで御審議いただくということで、私どもはそれでいいのではないかというふうに考えているんですが、いかがでございましょうか。
  128. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はよくないと思っているんです。それは、設置法の中に学術会議は独立をしているんだという考え方でありますし、そしてその会員は選挙で民主的に選ばれてくるわけですから、そういう方々に対して本当に周知徹底をさせていくという義務があるというふうに思いますから、その点はあなたとは意見を異にするものでありますけれども、しかし今回法律を出したとしても、いままで行われてきた民主的な選挙というものは否定をなさっているわけじゃないですね。やっぱりいままでの選挙というものは非常に民主的な手続であったと、こういうふうに理解をしていらっしゃるんですか。
  129. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 私ども選挙を全く否定しているというふうにとられているのは不本意でございまして、今度の問題を考えるに当たって、いまの部、専門、これで割り振っていっても、先日も申し上げましたが、懇談会の意見でも、全く知らない人に投票せざるを得ないような状況になっているというんです。それではうんと細分化していったらどうかというようなことも検討したわけです。ただ、それよりもむしろ学会ならば、その中ではどのような業績を上げているかよくわかるんだというお話がございまして、きわめて印象が深かったわけです。学会単位に選ぶなら、いい人、本当に業績がある人が出てくるのではないかと、そういうふうに考えたわけです。したがって、今回の案でも、学会が自主的に選んでくるということでございますので、学会であるいは選挙によって出てくる、これを否定しているわけではございません。
  130. 粕谷照美

    粕谷照美君 推薦制によるメリットというものは、そういうものも考えられると思いますね。たとえば第三部、商学、経営学の有権者というのは千四百九十二人いらっしゃるそうです。ところが、日本経営学会の方は千七百八十八人、日本会計研究学会の方は千五百二十二人、そういう学会を基礎にして出ていくということになると、その学会の中からだれを出そうかというので非常に学術会議に対する理解が深まるというのですか、刺激を与えるというのですか、有権者の数がふえるであろうというようなことも含めてメリットはあるというふうに思いますけれども、しかしいまの制度をどうしても推薦制にしていかなければならないんだと、皆さんの御納得をいただかなければならないとするものは一体何だろうか。改革案そのものには選挙と三分の一の推薦制ということがあるので、推薦制そのものを全く否定はしていないわけですからね。その辺の歩み寄りというものができないものだろうか。
  131. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 私は選挙を否定するものではないと先ほど申し上げました。学協会なら学協会の中で選挙をして適切な人を出してこられる、これはこの法案も認めているところです。  ただ、学術会議自体で、おわかりのように第一期のころは有権者が四万四千人足らずという比較的少数だったわけですね。これならなるほど直接民主制というものがあるいはできるのかもしれません、これは七部に分かれるのですから。ただ、現在は二十三万人近くまでいっているわけですし、それから懇談会での議論では、一体有権者というのは、潜在的な有権者と言うけれども、そもそも科学者の定義からやらなければわからないじゃないか。現在登録しているのが本当にそれで科学者なのかどうなのか、その辺の問題もあるではないかというお話もございました。正直、登録されるような学協会はやはり学術のためのれっきとした存在でございますから、そういったものを単位にすることによってよりよいものができるのではないか。  逆に言いますと、三分の二公選制を残して、じゃいま選挙についていろいろ言われている弊害ですね、これが除去できるという保障は全くございません。そういうことで、私どもは懇談会のいろんな御議論も伺いながら、総務長官も、やはりこれならむしろ全部推薦制にした方が選挙の弊害はなく、また現在の科学の発展の状況に応じた二百十名のいい方が出てくるのではないか、そういう結論に達したわけでございます。
  132. 粕谷照美

    粕谷照美君 三分の二選挙、三分の一推薦ということで現在の選挙の弊害は除去できない、こういうお話ですけれども、その弊害というのは、どういう実態があるからこれは問題であると、こうお考えになっていらっしゃいますか。
  133. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) これは先ほど申し上げました学術会議側でも自己批判もしているところですが、少なくとも私ども考えるときに二つの問題があるのではないか。一つは、いわゆる学者離れということで現実に立候補者が減ってしまっているという問題がございます。それから、先生、有権者はふえているとおっしゃいますが、果たして日本科学者研究者の増加に見合ってふえているのかどうか、私どもちょっとデータがありませんのでその辺はコメントできませんが、さっき申しました科学者とは何ぞやという問題も含めましてその辺の問題もある。それから、投票率が現実に九〇%台から六〇%に落ちております。それから、実態を見ますと、実際に二百十名の会員、順次出ておりますが、そのうち純粋に立候補で出てきた方は十五名、七%だけである。こういった点を見ても、選挙というのは形骸化していて、いわゆる理論的な民主主義というものを考えましても、果たしてそれが満たされているのかどうか、その辺一つ問題があるかと思います。  第二の点は、日本科学がどんどん進歩して、それに学術会議組織が対応できないという問題がいろんな方面から指摘されているわけです。いわゆる総合的な領域あるいは学際的な領域、こういったものがうまく反映しない。それについては私どもは部と専門、そういった縦割り、これは役人にはなじみやすい発想なんですが、その専門をいかに細分していってもどうもうまくいかない。会長などとお話すると、どうもうまくいかないようだという発想になりまして、むしろ研連が学協会をいわばグルーピングして活動している。それで、学協会自身がいわば科学の発達に応じて学際的な面も持ったり複合的な面も持ったりしている。学術会議の内部でも研究連絡委員会、研連がやはり同じような要素を持っている。これに着目して、学協会を基盤にし研連を母体にするということによって、より現在の日本科学の状況に合った方々が出てこられるんじゃないか、このように考えたわけでございます。
  134. 粕谷照美

    粕谷照美君 推薦制を一切否定するという立場でもまた私もないわけなんです。  弊害というのは、現実にもう推薦制になっているじゃないか、こういう実態に合わせて推薦をやったって間違いないだろうという判断だろうというふうに考えるわけですが、やっぱりこれで行管庁も十分な調査をやっているようであります。  第十二期会員選挙における候補者二百四十二人のいろいろな形態別を見てみましたけれども、推薦を受けて候補者になっている者が多い。それは二百二十人で、全候補者の大体九一%。すると、推薦を受けないで立候補しているという方が九%あるわけで、推薦制のみにしていけば、立候補して会員になりたい、こういう人たちの芽を摘むものになる。それから、この実態を見てみましても、最初に立候補して後から推薦をいただくということもあるわけですが、今度は法律が通りますと、推薦がなければ立候補できない、こういうことになるんではないですか。その辺の違いがあると思いますが、いかがでしょうか。
  135. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 立候補という言葉が適当かどうか。今度の改正法案によりますと、立候補という概念はあるいはなくなるかもしれません。一つの研究連絡委員会、それに関係する幾つかの学協会それぞれから、推薦人とともにその学会で一番ふさわしいと思われる方を出していただいて、それを研連という、いわば関係の深い学協会の集まりになりますので、そこでいろいろお話し合い等をしていただいて、その中からさらに、学術会議の中で国の内外に対する代表機関としてふさわしい方を選出していただくということになりますので、正直、先生おっしゃるような方が本当にふさわしい方だとすれば、やはりどこかの学協会に所属されて、また推薦されて出てこられるということは当然あるのではないかと思うんですが、学協会に私は入りたくない、しかし会員になりたいという方が仮におられるとすれば、おっしゃる点は確かにそのとおりでございますが、私どもは、そういった人の道を封じてしまうということが大問題だとはちょっと考えられないのでございますが。
  136. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、実態は推薦である。その推薦によって出てきた人たち選挙をいただくわけでありますから信任をされているんですから、私どもも何にも文句はないわけですけれども、ほかに立候補者がいなければその人に投票する以外ないわけですね。その推薦状況についてだって非常な問題点があるわけですね。地方区などは、ほとんど第十二期の四十九地方区のうちで五地方区以外は無投票であった。候補者一名にしぼられた経過というものが全然不透明である、こういう批判もあるわけですね。  だから、現状の中でも推薦制というのは直接選挙制を事実上無視している。そうしますと、これからそういうことになってくるとますます、全部が推薦なんですからね、その弊害の方がすべてに出てくるのではないか。科学者を信じなさいという言葉があれば、それはそれでいいですけれども、なかなかそうはいかないからこそいま疑問をただしておかなければならないと思っています。
  137. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 先生もおっしゃいましたが、分科会で御検討いただいた中にも、推薦制をとることによって学術会議に対する学協会の関心を高め、学術会議と学協会との結びつきを強化し、ひいては広い範囲の学協会構成員の支持基盤をつくり得るというプラスの面を持っているというふうに書かれております。私どもは、いま確かに実態推薦制でありますが、現在、学協会の推薦は、ある意味では余り責任を負っていないんじゃないかというふうに見ております。要するに、出しておいて、あとは投票によるわけですから。しかし、今度私ども考えているのはそうではない。日本の代表としてふさわしい方を学協会として責任を持って出していただくということなんですね。それが余りふさわしくない方を何回も出してくるような学協会であれば、少なくとも研究連絡委員会の協議の場においてそういう評価が定着すれば、自然そこでの話し合いで、そこから出ていく方は恐らく会員になれないんじゃないかというふうに思うんです。やはりそういう意味では、学協会は今度は責任を持って一番ふさわしいという方を出し、それを広く二百十名の構成の中で、こういう方がいいじゃないかと、そういう話し合いで出てくることを期待しているわけでございます。
  138. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまの審議官の御答弁は非常に問題が大きいと思いますね。いままでの推薦は学会が余り責任を持たなかったのではないかと、冒涜ではないですか。長官、その点についてどうお考えですか。いままでこの会員になられて立候補される方、それは推薦をされて立候補する方もいらっしゃるし、立候補した後で推薦を受ける方もいらっしゃるけれども、推薦はちょっと問題があったのではないかと、これ、だれがどこで判断するのですか。
  139. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 私がお答えするのは、あるいは差し出がましいことかもしれませんけれども、先ほど先生から御指摘ございましたように、現在会員立候補者の方々は、ほとんどが学協会あるいは大学等から推薦を受けておられる方々でございます。もちろん数学会から推薦を受けておられる方もおられるわけでございますし、その事情等についてはいろいろ背景としてはございますでしょうけれども、私どもとしては、学協会はそれぞれが責任を持って推薦されているものと考えております。
  140. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、答弁違うじゃないですか。長官、どっちが正しいんですか。余り推薦人責任を持っていないんじゃないかと、片一方は、いや、学会ちゃんと責任を持って推薦したんじゃないかと。どっちをとったらよろしいんですか。
  141. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 私、いろんな方々、懇談会ばかりじゃなくていろんな先生方などから御意見伺ったときの、一つの御意見として承ったことは事実なんですが、ただ、もう一つ問題点は、現在学術会議の登録学協会というのは五百程度なんです。その中で実際に出しているのはどのくらいかというと、現在また少なくなっている。ですから、今度の仕組みは学協会にもう少し責任を持たせて選ばせるという点にあるんだということをちょっと裏から申し上げた点でおしかりを受けますのは、その点は撤回いたします。ただ、今度の仕組みは、さらに学協会に責任を持っていただくという仕組みになっているというふうに御理解いただきたいということでございます。
  142. 粕谷照美

    粕谷照美君 もう少し責任を強く持ってもらいたい、こういう気持ちで言ったんだが言葉が足りなかったと、こういうふうにじゃあ私も理解をいたしましょう。  しかし、確かに立候補された個人の方について、個人有権者がいろいろな批判は持っているというふうに思いますよ。何で延べ三十三年もやっているんだとか、あんな二流、三流が何だとか、あると思いますよ、自分が一流だと思えばそういうことを言えるわけでありますから。しかし、その言っている人に対して、あなたは一流だということをどなたが言ってくださるか、こういう問題も含めまして、学者の偉い先生の社会というのは非常にむずかしいものがある。たとえば弗素専攻などということを考えましても、弗素は人体に有害であるというのと、もう大丈夫だというのと、もう全然価値判断が違うような方が、あれは一流の学者だ、こっちは二流の学者だなんというようなことを判断できない部分があるというふうに思いますので、そんないろんな雑音には振り回されないで、私はやっぱり学協会は、いままでの公選制でやっていっても、選挙制でやっていっても、きちんとした責任を持った推薦をやってもらうように努力をお願いをする、注意をするというのが総理府の態度ではないだろうかというふうに考えているところでございます。  ところで、この推薦制にいたしますと、競争率が低下したのが上がるのではないかというふうに考えていらっしゃる方もいますけれども、競争率というんですか、立候補者が少ないという原因そのものは、鶏が先か卵が先かという問題がありますが、どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  143. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいまの御質問でございますけれども、競争率とは推薦制は必ずしも私ども関係はないというふうに考えております。
  144. 粕谷照美

    粕谷照美君 推薦制になれば確かに競争というのはなくなるわけですからあれですけれども、推薦制をとっていくということで非常に有権者の方々が大きく学術会議に対して目を向けるようになっていく、なっていくとは思いますけれども、飛躍的になっていくというような判断をしていらっしゃるんですか。
  145. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいまの御指摘でございますけれども、改革委員会等でもその点の議論はございまして、先ほどもお話ございましたように、学協会内での関心というのは非常に強まるであろうという推定はいたしております。
  146. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、この学術会議に対する、若い人たちが入らないとか、あるいは信頼感が落ちているとか、意識が薄れているとかといういろいろな批判をつくり出す条件というものが政治的にあったというふうに思います。それは、午前中にいろいろな例を挙げながら意見を申し上げたところですけれども科学技術会議学術審議会、学術振興会、そういうものをつくっていって権限を委譲していった。委譲していくからこそ要らないものが取られて、本質が残って学術会議の本当の仕事ができるんだという見方もあろうかと思いますけれども、しかし、そういう本当の仕事をするという意味も含めて、それでは予算措置はどうなんだろうか。この問題がありますね。活動力を制限されていてなおかつ本質的な仕事ができるんだろうか、こういう疑問があります。その辺のところの疑問点を学術会議の会員の方々に明確に説明もすることなしにこういう法律を総会の前に決めてしまうなんていうことは、私は問題があるというふうに判断いたします。その点はどういうお考えですか。
  147. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 先ほども申し上げましたように、私どもは、学術会議の同意を取りつけるということがわれわれ法案を出す前提とはなっていないと考えておりますが、しかし、学術会議側の意見を十分取り入れていかなければいけないということで協議は重ねてまいったつもりでございます。それは申し合わせによっても、会長を窓口とし、会長も運営審議会等に諮りながら相談していくということでございまして、私どもはそういう意味で十分協議を尽くしたつもりでございます。あと総会内部での問題もございましょうが、それは内部の問題として、会長からやはり会員の方に御理解いただくようにしていただくのが私は先決かと思っております。
  148. 粕谷照美

    粕谷照美君 それは学術会議の同意を取りつけないでも法的にはできるでしょうね。しかし、法律の精神そのものを本当に尊重していくという態度からは――あなた方はこれで十分努力をしたと、こういうふうにおっしゃいます。しかし私たちは、その努力はなってないと、こう判断をしているので、そこの判断が違っているんですね。だから同じことを何度も何度も、繰り返し繰り返し質問しているし、あなたの方も同じことを何度も何度も答弁をしている。全くもうすれ違いの論議にしかなっていないことを非常に残念に思っております。  さて、それで推薦制のことは別にしましてその次に移りますが、学術会議の会員について、いままでは総理大臣の任命行為がなかったわけですけれども、今度法律が通るとあるわけですね。政府からの独立性、自主性を担保とするという意味もいままではあったと思いますが、この法律を通すことによってどういう状況の違いが出てくるかということを考えますと、私たちは非常に心配せざるを得ないわけです。  いままで二回の審議の中でも、たしか高木委員の方から国立大学長の例を挙げまして御心配も含めながら質疑がありましたけれども、絶対にそんな独立性を侵したり推薦をされた方を任命を拒否するなどというようなことはないのですか。
  149. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 前回の高木先生の御質問に対するお答えでも申し上げましたように、私どもは、実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右するということは考えておりません。確かに誤解を受けるのは、推薦制という言葉とそれから総理大臣の任命という言葉は結びついているものですから、中身をなかなか御理解できない方は、何か多数推薦されたうちから総理大臣がいい人を選ぶのじゃないか、そういう印象を与えているのじゃないかという感じが最近私もしてまいったのですが、仕組みをよく見ていただけばわかりますように、研連から出していただくのはちょうど二百十名ぴったりを出していただくということにしているわけでございます。それでそれを私の方に上げてまいりましたら、それを形式的に任命行為を行う。この点は、従来の場合には選挙によっていたために任命というのが必要がなかったのですが、こういう形の場合には形式的にはやむを得ません。そういうことで任命制を置いておりますが、これが実質的なものだというふうには私ども理解しておりません。
  150. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、いまのことを思いますと、この法律を見て思い出すことは、いままで教育委員というのは選挙で選ばれていましたね。それが今度任命制に変わるときに猛烈な反対運動があったわけですね。私なんかもその先頭に立って反対した方なんですけれども、やっぱり任命制になってから大変違ってくるのですね。その与える影響とか権限とか、それから姿勢とかが全く直通になっていくわけですね、上からの。そういう意味も含めまして、学術会議の独立性というものが侵されはしないだろうか、こういう心配を持つものですから、何度も何度も念を押しているわけです。そうしますと、いままで行われた二度の国立大学長の拒否事件が起きないという保証はこの法律の中にどこに含まれていますか。どこのところを読んだら、ああなるほど大丈夫なんだと理解ができるんですか。
  151. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) ただいま御審議いただいております法案の第七条第二項の規定に基づきまして内閣総理大臣が形式的な任命行為を行うということになるわけでございますが、この条文を読み上げますと、「会員は、第二十二条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣がこれを任命する。」こういう表現になっておりまして、ただいま総務審議官の方からお答え申し上げておりますように、二百十人の会員が研連から推薦されてまいりまして、それをそのとおり内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を私どもは解釈をしておるところでございます。この点につきましては、内閣法制局におきます法律案の審査のときにおきまして十分その点は詰めたところでございます。
  152. 粕谷照美

    粕谷照美君 たった一人の国立大学の学長とは違う、セットで二百十人だから、そのうちの一人はいけませんとか、二人はいけませんというようなことはないという説明になるのですか。セットで二百十人全部を任命するということになるのですか。
  153. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) そういうことではございませんで、この条文の読み方といたしまして、推薦に基づいて、ぎりぎりした法解釈論として申し上げれば、その文言を解釈すれば、その中身が二百人であれ、あるいは一人であれ、形式的な任命行為になると、こういうことでございます。
  154. 粕谷照美

    粕谷照美君 法解釈では絶対に大丈夫だと、こう理解してよろしゅうございますね。
  155. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 繰り返しになりますけれども法律案審査の段階におきまして、内閣法制局の担当参事官と十分その点は私ども詰めたところでございます。
  156. 粕谷照美

    粕谷照美君 同じところに、二十五条、二十六条でですか、会員の辞職の承認も総理大臣が行うということになっていますが、その理由は何ですか。
  157. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) これは、従来の選挙制が今回の改正法案によりまして推薦制ということに変わるものですから、特別職国家公務員としての日本学術会議会員としての地位といいますか、法的な地位を獲得するためには、何らかの発令行為がどうしても法律上要ると、こういうことでございます。そのために二十五条、二十六条は、従来は総会の単なる普通の決議、あるいは意に反する解職の場合につきましては総会の特別決議によりましてその地位を奪うという規定になっておったわけでございますけれども、その普通決議、特別決議の点は現行法のとおりといたしまして、形式的にその要件を欠いたままで辞職の発令行為を行うということでございまして、これも法第七条第二項と同様、全く形式的な発令行為と、このように私ども理解しております。この点は内閣法制局とも十分第七条第二項同様詰めたところでございます。
  158. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは内閣総理大臣の任命行為は、そういうことになればむしろこの趣旨に反するのではないですか。任命はあくまで形式的であって実質的な意味がないというのであれば、こんなのやめた方がいい。学術会議の独自性、自主性の趣旨に合わない、こう思うのに対してはどういうふうに理解していらっしゃいますか。
  159. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) これはむしろ先生御指摘のように、そういうところにあるのではございませんで、今回の改正法案は推薦に変える、こういうことでございますので、選挙制から推薦制に変えるというところにこの改正法案の眼目があるわけでございます。内閣総理大臣の発令行為と申しますのは、それに随伴する付随的な行為と、このように私どもは解釈をしておるところでございます。
  160. 粕谷照美

    粕谷照美君 学会が責任を持って、先ほども言われましたように、いまと違ってもっと強い責任を持って推薦をされた人は自動的になる、内閣総理大臣が任命しなくたって学会員になると、こういうことには法的にはならないのですか。
  161. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 国家公務員になるかどうかというのが学術会議最初にできたとき問題になったようでございますが、そのときに、国家公務員である、しかもそれは特別職ということで人事院も判断しているところでございます。その中で、国公法の中で、就任について選挙によることを必要とする職員ということで、この場合にはそのままでいわば特別職になるということで、実際には任命行為を行っていない。ただ、今度のような形になりますと、それで読むことはもちろんできませんし、いま参事官からも申しましたように、付随的な行為として形式的な任命を行わざるを得ないということでございます。
  162. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまの学術会議の会員構成についてですけれども、推薦制になったら本当に望ましい何か新しい会員構成になるのかなあという期待ども持っていらっしゃる方もおりますのでお伺いするわけですけれども、たとえば年齢構成だとか男女比あるいは職業別、民間企業、研究機関研究者の占める比率だとか、あるいは大学の教員については国公私立別の割合だとか、国立大学については旧帝大の系統、地方大学と、こういうような割合についての御調査はありますか。
  163. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいま御指摘の全部ではございませんけれども、部分的には用意いたしております。
  164. 粕谷照美

    粕谷照美君 部分的にあったら、それ御説明ください。
  165. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) まず、所属機関別でございますけれども、国立大学の方が百十八名でございます。公立大学が十三名、私立大学が六十二名、官公署の方が四名、公社公団等が二名、民間会社の方が五名、その他が六名でございます。そのうちには女性の方が一名いらっしゃるわけでございます。
  166. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、行管庁の報告を見ましても、学の比率が九一・九%、官の比率が二・九、産の比率が二・四、その他が二・八ということになりますね。非常に国立大学先生方の占める比率というのは大きいわけですね。しかし、私立の大学というのは国立大学先生よりももっと数がよけいなんですね、私学の先生の数。 教授の数そのものが多いんだと思うんです。そういう方々が会員になる比率というのは非常に少ないですね。この辺のところが直りますかということです。いかがですか。
  167. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) その点につきましては、もし仮に新しい制度になりました場合に、どのような実効のある推薦制度が確立されるかということにつきましては、これはまさに、学会あるいは個々の科学者の方の、私が申し上げるのは非常に僣越でございますけれども、それによるものであると考えております。
  168. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかし、学会から出されるといって、別によその学会から私立が出てくるかとか、あるいはこっちから民間の方が出てくるかなんて、そんなことは考えないわけでしょう。全然違いますね。そういう意味では私は余り大きな期待が持てないのではないかと思いますが、いかがですか。
  169. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 学術会議は短期間にずいぶん本当によく検討していただいたと思うんですが、さっきも、改革委員会、選挙制度一般に関する分科会ですね、その報告でも、このときは研連母体という発想はまだ余り入っていないわけですが、四つのうちの一つにしかすぎないのですが、学協会を基盤にして出してくるというためのいろんな方策を考えておられまして、その中の最後でございますが、学協会内の推薦手続ということで、学協会の自主性を尊重するんですが、学術会議としてガイドラインをつくってそれで指導していくということで、たとえば地方の問題なんかにつきましては、全国的な学協会でも地方支部を持っているんじゃないか。そうでない学協会についても地方代表が含まれるよう配慮できるところは配慮してもらう、そういったものをガイドラインで協力を求めるという形でやっていこうというふうになっております。こういった努力学術会議として私どももしていただかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えておるところでございます。
  170. 粕谷照美

    粕谷照美君 そのガイドラインが、この法律が上がったとすれば一年の間に行われると、こういうことになるのですか。私は、学問の社会というのは非常にわりかし封建的なところもありまして、女性の科学者がいるにもかかわらず女だからということで非常に差別をしたりするような部分があるわけですけれども、本当に出てこれるのだろうか。ガイドラインの中にすらそんなものは入らないんじゃないだろうかという感じがしますし、民間の方々でも、連続してやっていく中でそんな仕事にとられたらかなわぬというような方々もいらっしゃって、なかなか民間の第一線で活躍している方々の割合がふえるだろうかということについては疑問を持たないわけにはいかないのですけれども、その辺はいかがですか。
  171. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 確かにそのとおりでございまして、懇談会でも、学、官に比べて産業界がきわめて少ないじゃないかという問題点はずいぶん指摘もされました。それに対する端的な対策になるかと言えば、私は正直言って、先生が危惧されるとおり、これがこの案によってすぐ直るとは思いません。婦人の問題もそのとおりでございまして、私ども総理府は婦人問題担当室もありまして、婦人問題も抱えているところでございますが、しかし、その婦人問題担当室としては、各種審議会に婦人の委員を一〇%入れるように各省に協力を求めているんですが、学術会議にそういうようなことを私どもから申せばこれは介入になりますので、学術会議内部の御議論で十分その辺は検討していただき、各学会あるいは研連でそういう認識を持っていただくことが、それだけが解決策ではないかというふうに考えております。
  172. 粕谷照美

    粕谷照美君 ですから、選挙にしても推薦制にしても非常に問題点がある。しかし、やっぱり個人の科学者という者をみんなで選んでいく、学会の会員というすばらしい仕事をやるその個人を自分たちが選んでいくというのと、一部の方々が選んでいくということの違いが出てくる。総理府が言うには、それぞれの学会選挙してもいいんですよと、こういうふうになっていますけれども、なるほどそれならば私は一つ選挙だというふうに思います。しかし、推薦制という言葉が入っている以上は、ボスの方々が集まってそうして推薦してくるんじゃないだろうか、こういう疑問は現場の方々持っていると思うんですよね。本当に選挙で選んでよろしいというように皆さん理解しておられますか。
  173. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) この分科会報告の中でもたしかそういうふうになっていたと思います。大きな学会ではやはり間接選挙、小さな学会なら直接選挙で出てくることになるだろうというふうに実は挙げてあるところです。私などは、学者先生方のお集まりなら話し合いで出てくる。要するに、どなたが一番優秀だというのは必ずしも選挙でなくてもわかるのではないかと、素人なものですから考えるんですが、まあしかし必要な学協会では選挙をやってこられるのは何ら差し支えないというふうに考えておるところでございます。
  174. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、何ら差し支えないじゃなくて、やっぱり原則として選挙でそこのところから出てくるというのが望ましいというふうに思うんですね、そこのところの違いがあります。
  175. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) いまの点、ちょっと補足さしていただきます。  私ども選挙でやれとかあるいは話し合いでやれというような仕組みになっておりません。学協会からの推薦は学協会の自主性を尊重してということにいたしております。あとはやはり学協会内部の、学協会に所属している会員の方々がどういうような認識を持たれるか、それにかかってくると実は思うわけです。現在も学術会議と学協会との関係というのは希薄じゃないかという一つの問題が提示されているわけですが、私はこの改組案によりそれはより緊密になってくる。したがって、学協会のまたその会員の方々も学協会自身に対する関心を深め、それから学術会議に対する認識も深めていただけるんではないかと、そういうふうに実は考えているところでございます。
  176. 粕谷照美

    粕谷照美君 あなたのおっしゃることよくわかるんですよ。選挙できるという窓口をあけてありますよということをおっしゃったんだと思います。私は窓口をあけておくというよりも選挙で出されてくるということの方がやっぱり原則じゃないかということを言っているのでありまして、同じことのようであってやっぱり違う部分があります。それは見解の相違だということでわかりますけれども学会が登録学術研究団体として登録される具体的な要件などというものを一体いつどこで決めていくのでしょうか。
  177. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 具体的な登録要件につきましては、その重立ったものだけはお手元の法律案の方に書いてございます。それ以外のものにつきましては、この法律案に書いてございますように「規則で定めるもの」ということになっております。私どもといたしましては、この第十八条の第一項第一号から第三号まで、いろいろと学術会議会長先生を初め両副会長ともお話し合いをさせていただきまして、意見の対立を見ることなく、大体こういうものに常識的になるのではないかということで書いたわけでございますが、第四号につきましては「規則で定めるもの」ということで、その規則で定められる範囲といいますのも活動状況あるいは構成に関する事項でという一つの網を、枠をかぶせているところでございます。  この点につきましては、今後におきます学術会議の内部における御検討の結果をいただきまして、それこそ先ほどのいろいろ御指摘のありました学術会議自身によって決めます規則で決めていっていただくことを私どもはお願いをしたいと考えておるところでございます。
  178. 粕谷照美

    粕谷照美君 学術会議の自主性はそういう点にとどまるという説明のように思いますが、いかがですか。
  179. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 大変厳しい御指摘をちょうだいいたしておりますけれども、私どもはそういうことではございませんで、先ほども政令につきましては総務審議官の方から御答弁申し上げておりますが、基本的な事項については政令で定めるというのがそもそも法律制度の基本的な考え方でございます。それに従って政令、規則という振り分けを法案を実際作成する過程におきまして行ったわけでございまして、この政令の中身につきましても、たびたび御答弁を申し上げておりますように、学術会議の御意見を十分お聞きし、そしてその上で政令を定めていくということを考えておるところでございまして、そのような政令であるから、規則であるからということで自主性云々ということには直ちにつながらないのではないか、かように考えております。
  180. 粕谷照美

    粕谷照美君 学術団体の自主性に任せるということは私は当然のことだと思いますが、それでもいままでずいぶん話し合いも進められてきたというふうに思うわけで、その辺は総理府としてはどういうふうに考えているかを伺いますが、たとえば登録学術研究団体となり得る規模、すなわち会員数などはどのようなことを、本当は久保会長にいらっしゃっていただければよかったわけですが、私は午前中で結構ですと申し上げましたので。  それから全国的規模の学会もあればまた地域的な学会もあるわけで、どちらもこの登録学術研究団体というふうになれるのかどうなのか。もし地域的な学会がだめだというのであれば、地方における教育だとか研究、学術の水準など下げることになりはしないか、こういう不安を持っていますが、いかがですか。
  181. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) そういった先生御指摘のような点につきましても、第十八条第一項では特段触れる、それに枠をはめるというような書き方は御案内のとおり一切いたしておりません。ここにも書いてございますように、人数につきましても一項第三号で「規則で定める」ということになっておりますし、また第四号につきましては先ほど申し上げましたようなことになっておるわけでございます。
  182. 粕谷照美

    粕谷照美君 大体時間が参りますのでこの辺で質問を終わりたいと思うのですが、総務長官、私はどうしても午前中から言いましたように学術会議のいままで出してきた政府に対するアピールだとか勧告だとか申し入れだとか、そういうことが非常に政府のお気に召さなくて、そして出てくる会員の方々も、余り気に入らない人たちがいっぱいいるんで、この際この法律を出してそういう人たちが出てこないような条件をつくらなければならないのではないかというようなことに追い込んでいったのではないかという疑問を払拭し切れないわけでありますね。こういう法律をつくることによって、学術会議のこの独立性は一切侵されることなしにいままでと同じような解釈でもって運営ができますということで今後も進んでいかれるのかどうか、それをお伺いして終わります。
  183. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) けさほどから先生にいろいろと御意見も聞かしていただき、お尋ねもちょうだいいたしました。その都度お答えを申し上げておりますが、いままでの学術会議の果たされた業績というものは大変なものであると全く評価していかなければならないし、より以上に今後もやっていただきたい、そういうことを願っての今回の法の改正をお願いしておるのでございますが、先生が最後におっしゃっていただきましたように、あくまでもこれは独立した機関である、自主的に運営される、そういうことを政府がああこうと干渉してはならぬ、こういうことでございますから、いままでとってまいりました姿勢、考えは今後とも必ず守り続けていくということをお約束を申し上げておきたいと思います。     ─────────────
  184. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ただいま質疑の途中でありますが、一たん中断いたしまして、この際、学校教育法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。瀬戸山文部大臣
  185. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) このたび政府から提出いたしました学校教育法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、大学において獣医学を履修する課程の修業年限を四年から六年に延長しようとするものであります。  大学において獣医学を履修する課程の修業年限は四年でありますが、近年の畜産の発展、公衆衛生の拡充等による社会的要請にこたえるため、学部段階における教育内容の充実を図り、かつ、効果的な教育を実施し得るよう修業年限を六年にし、獣医学教育の改善を図るものであります。  なお、現在、獣医師の国家試験につきましては、大学院の修士課程二年を積み上げた六年の教育が受験資格として必要とされているところでありますが、この改正に伴い、これを大学において獣医学の正規の課程を修めて卒業した者に改めることといたしております。  この法律は、昭和五十九年四月一日から施行することとしております。  また、この制度改正に伴い所要の経過措置を定めることといたしております。  以上がこの法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  186. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  187. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 次に、医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案を議題といたします。  まず、提出者衆議院文教委員長代理理事石橋一弥君から趣旨説明を聴取いたします。石橋君。
  188. 石橋一弥

    衆議院議員(石橋一弥君) ただいま議題となりました衆議院提出医学及び歯学の教育のための献体に関する法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  人体の正常な形態と構造を学び、これを明らかにすることは、医学または歯学の教育の基本であります。  このため、人体解剖学の実習が不可欠であることは申すまでもないことでありますが、この解剖実習こそ医の道を志す者にとって、人間の生命及び身体の尊厳を、身をもって心に刻みつける端緒をなすものでありまして、医学教育の根底にある医の倫理の涵養のため貴重な教育の場となっております。  現在、死体の解剖及び保存に関する包括的、統一的な法律として、死体解剖保存法が制定されており、大学における医学、歯学の教育のための解剖及び解剖用遺体の交付等は、この法律に根拠を置いております。しかしながら、同法はすでに死亡した者の死体について規定しているものであり、また、解剖については原則として遺族の承諾が必要とされております。  ところで、解剖学実習用遺体につきましては、医・歯学部設置基準要項により、入学定員について一定数の確保が求められておりますが、近年の医科・歯科大学の新増設や、社会状況の変遷に伴い、その充足状況は必ずしも十分とは言えず、このままに推移すれば医学教育に支障が生ずるおそれもあります。  このような状況にかんがみ、医学教育の発展のために、自己の身体を死後、無報酬で提供しようとする、いわゆる献体運動が篤志家団体や大学関係者により、じみちに進められており、今日ではほとんどの医学及び歯学の大学献体篤志家団体が置かれ、献体登録者の数は通算四万一千人を数え、解剖学実習用遺体の約三四%はこの献体に依存しております。  自己の死後その身体を医学教育のためにささげようと、生前から献体の意思を表明する行為は、解剖体の確保のみならず、それ自体崇高な行為でありますが、一方、宗教上から来る遺族感情等もあって、献体の意義が必ずしも国民一般の理解を得るに至っていないのが実情であります。  現在、わが国の法制上、献体に関しては何らの規定もなく、せっかくの生前の献体の意思が死後生かされないという事態も生じており、篤志家団体や大学関係者等から、献体に関する法制化についての強い要望が出されております。  これらの事情にかんがみ、医学及び歯学の教育の向上に資するため、献体に関する法制を整え、国民の理解を深める必要があると考えられるのであります。  このような観点から、衆議院文教委員会におきましては、ここに御提案申し上げましたような法律案を起草し、提出いたした次第であります。  本案においては、献体の意義を法令上明らかにし、本人の献体の意思について定義を定め、これが尊重されるべきこと、遺族感情にも配慮しながら献体に係る解剖の要件の緩和等について規定を設けるとともに、国として行うべき献体篤志家団体への指導助言及び国民一般への献体の精神の啓発普及について規定を設けようとするものであります。  その主な内容は、第一に、この法律の目的を、献体に関して必要な事項を定めることにより、医学及び歯学の教育の向上に資することとしております。  第二に、この法律において、献体の意思とは、自己の身体を死後医学または歯学の教育として行われる正常解剖の解剖体として提供することを希望することを言うこととしております。  第三に、献体の意思は、尊重されなければならないこととしております。  第四は、医学または歯学に関する大学において、正常解剖を行おうとする場合に、死亡した者の献体の意思が書面により表示されており、かつ、大学の学長または学部長が、その旨を遺族に告知し、遺族がその解剖を拒まない場合には、死体解剖保存法第七条本文の解剖のための遺族の承諾の規定にかかわらず、遺族の承諾を要しないこととしております。  第五は、死亡した者が献体の意思を書面により表示しており、かつ、その者に遺族がない場合には、その死体の引き取り者は、学長等から、医学または歯学の教育のため引き渡しの要求があったときは、これを引き渡すことができることとしております。  第六は、学長等は、正常解剖体として死体を受領したときは、その死体に関する必要な記録を作成し保存しなければならないこととしております。  以上のほか、文部大臣献体篤志家団体の求めに応じて、その活動に関し、指導助言ができること、国は献体の意義について国民の理解を深めるための必要な措置を講ずるよう努めることとしております。  なお、以上のような趣旨からしまして、この案の内容はさきに述べました死体解剖保存法には溶け込みにくい面があり、また、献体を推進する上からも、新たな法律として制定することが適当であると考え、このような法案の形式をとることとした次第であります。  以上が本案の趣旨及び内容であります。  何とぞ、御審議の上速やかに御可欠あらんことをお願い申し上げます。
  189. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  190. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 引き続き、日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  191. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 まず最初に、総務長官質問いたします。  一昨日の当委員会で、私は五日八日のNHKテレビの政治討論会における中山太郎自民党国対委員長発言の問題をただしました、三つの具体的事実を挙げて。うそをつき、悪法の本質を覆い隠す、そういう発言がテレビを通してやられておるということはこれは許されざることということで、この法案審議のさなか、法案について責任を持っておられる総務長官として、中山氏に対して訂正謝罪を明確にひとつ要求をされるよう私は指摘をしたわけでありますけれども、よく事実を調べよう、国対委員長とは言え、それが事実とすれば問題だと、こういうことで事実をよく調べて対処をしますということであったんですけれども、どのように事実を確認をされましたでしょうか、まずお尋ねします。
  192. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) 先生の私に対するお尋ねにお答えさしていただきますが、先生から御指摘のございましたとき、私も、何と申しますか、事実を述べたのでありますが、それはまことに残念なことでございますけれども、そのときのテレビは私は見ていなかったのでございますから、中山さんがどのようなことをおっしゃったのか知りませんのでと言って、ただし、先生から非常な強い御叱正等御注文がついたんですから、早速どういうことを言われたのか放送せられたそれを取り寄せまして、そして先生から御指摘の点を二度も三度も目を通したのでございます。  目を通さぬ前に中山さんに会うわけにいきませんものですから、自分が目を通してから中山先生にお会いしようと思ったんですけれども、なかなかその日のうちにはお会いできなくて、きのうもう一遍目を通して、ちょうど、先生と特別に連絡をとったわけじゃございませんけれども会って――先生にお答えしなくちゃならないということで、幸いにいたしまして昨日官邸で政府・与党の連絡会議がございましたものですからそこで先生にお目にかかりまして、いま先生からもおっしゃいましたように、せっかくこの法案を御審議願っておるさなかにおいて、間違ったことを言われては大変こちらは迷惑しますということを強く私からお話し申し上げ、抗議と申しますか、私もそう抗議というような口調では申し上げなかったんですけれども、大変こちらも迷惑することであって、大変困る、事実とは違うんじゃないですかと、こういうことを申し上げましたら、率直に申しますると、なるほどおれも舌足らずであって、自分の意を十分伝えられず、何と申しましょうか、誤解を招いたような点があった、まことに申しわけない。申しわけないから許してくれという言葉はなかったけれども、申しわけなかったという陳謝の意味がございましたものですから、私も同じ仲間のことでもあるものですからね、謝れということもよう言わずに、困りますという話で私は終わった。  その後当局の者を、どういうぐあいに間違えられて言われたのか、どうして舌足らずであったのか、それをひとつ聞いてきてくれ、舌足らずと言われたから、その点をよく確かめてきてくれ、こういうことで確かめに行かせました。  だから、私としては先生からの御指摘のことについては誠意を持ってやったつもりでございまするし、けさほどもまた電話で、おいでになったらと思いましたけれどもよそへ出ておられましたので、この委員会に出てくる前に電話をかけまして、私は先生にお答えしなくちゃならないと思うから、こういうぐあいに申し上げるよというようなことで、強く私から、強くと言うと言い方は悪いかもしれませんけれども、こちらは迷惑していることだからという、そういう強い気持ちで、先生に陳謝までは私はよう言わなかったけれども、舌足らずで事実と反したことを申し上げて悪かったと言っておられますから、これ以上私が責めることはできぬと思いまして、それでいま申し上げたことで経緯報告にさしていただきたいとそう思っております。  それで、どういう点が舌足らずであったか、どういうぐあいで勘違いせられたのか、そういう点は、当局の者が行きまして聞いてきておりますから、その点は当局から御報告というんですか、事実を先生にお話しさせていただきたいと、こう思っております。
  193. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) ただいま大臣から御答弁ございましたが、私も御指示によりまして中山国対委員長にお会いして事実関係確認させていただきました。その際、中山委員長おっしゃるのは、ただいま大臣からもお話がございましたように、どうも多少舌足らずのところがあったようだなと、正直私の方は中山先生は舌足らずというより舌が多いんじゃないですかという感じのこともちょっと申し上げたんですが、中山委員長おっしゃるのは、自分の本当の気持ちはこういうつもりで言ったんだと言っていた点が以下の点になりますが、第一点、会長総務長官との間で合意して国会法案を出すといった点につきましては、実はこの法案をまとめるに当たっては、新しい会長総務長官とが十分協議を行っているというのは中山委員長にも前に御報告してございました。そういうことで中山委員長としても、総務長官学術会議の意見を全く聞かないで法案をまとめたものではない、こういう趣旨のことを言いたかったんだということでございます。  次に、国立大学の学長が学術会議の会員の中にはいないという発言でございますが、確かに誤解を与えたかもしれないとおっしゃっていました。御自分の記憶では、実は何人か知っていますかと聞いただけだと実は記憶されていたんです。それで……
  194. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 一人もいないと言っているんです。
  195. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) ええ、委員長に申し上げました。委員長、その後、おられないんですよと言っていますと、そしたら、そうだったかなと、そうだとすると確かに誤解は与えたかもしれない。しかしあそこで自分が言いたかったのは、国立大学の学長で会員になっている方が二百十名の会員の中できわめて少ないということで、そのことが示しているように、優秀な学者が会員に選ばれることが大変むずかしい実情にあるんだということを言いたかったんだと、そういうことでございました。  それから最後に第三点の、会員の任期を一年間延長するだけの法案だと、そうおっしゃいましたかということにつきましては、それはちょっと正確ではないんじゃないか、あそこで自分が言ったのは、現在の会員の任期が秋には切れるものだから、その任期を一年間延長して、その間にいろいろと新しい会員の選出方法というものをさらに具体的に詰めていこうと、そういうような内容になっている法案だと、それを説明したものなので、今度の法案内容的にただ任期を延長するだけのものだなんて、そんなことは決して言ってないよと、それはもっと調べてもらえばわかるはずじゃないか、そういうふうにおっしゃっていました。  私が直接お会いして伺ったのは以上でございます。
  196. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私が先日指摘をしました三つの事実に関して、三番目の問題についてはちょっと言いわけをされている模様でありますけれども、少なくとも第一の、国立大学の学長が一人もいないという点、それから私が言ったのは、学術会議会長と合意の上これを出しましたという、これは明白に違うじゃないかと。この間も、学術会議側も総理府側もそれはそうですと、合意している部分も出ていますけれども、肝心の選挙制度のあり方の部分は、これは合意ができずに出ているんですというふうに言われておる、これはもう明々白々たる疑いようのない事実ですね。  そこで、それに対して中山氏が舌足らずであったとかなんとか、こういうのを舌足らずとは言わないんです、舌が多過ぎたんです。舌が多過ぎて学長が一人もいないということを言ってみたり、合意ができてないものを合意の上出したんですと言ってみたり、しかも私が重大視をしておりますのは、少なくとも政府・与党の国対委員長でしょう。それは野党の国対委員長といえどもその発言については軽率であってはならぬけれども、なおのこと政府・与党の国対委員長が、この法案審議をしているまさにこのさなかに、この法案の問題にかかわって国民にうそをつき、この法案内容を覆い隠すような、学術会議と合意の上出していますと、こういうことをテレビを通して国民発言をするという、このことは舌足らずであった、誤解を招いたと、その程度の釈明で許される問題では私はないと思いますけれども総務長官どうですか。
  197. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいまの先生の御指摘にありましたように、私もこれ言われたことを見たものですから、いま先生のお言葉の中にもありましたように、この法案の御審議をいただいておるときに、そういう舌足らずだとか、そう思ったとか、あるいはそういうふうに感じておったとか、あるいは何というのですか、学術会議会長さんと私の合意の上で出したというような事実と違ったことを言っていたことを、全く困る、こっちは迷惑しますと。陳謝せよとは先ほど申し上げましたように私はちょっとよう言わなかったけれども、非常にこれは迷惑するということは強く私は言ったのでございますから、ここらで間違っていたことを言ったということについては違いありませんので、ひとつお許しをちょうだいいたしたいと思います。
  198. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私はどういう形をとられるかは、それは総務長官の御意見なり、中山氏自身判断にゆだねたらいいと思うのです。しかしいまも言いましたように、テレビを通して政府・与党国対委員長がそういう発言をしたというこのことについて、少なくともうそを言ったということ、法案内容を曲げて説明をしたということ、この点については何かの形で取り消しと謝罪をしてもらう必要がある。それは、あれはうそを言いました、間違いでございました、正確に言うとこういうことですということを、もう一遍NHKテレビでやってもらうとか、あるいは文書で謝罪と取り消し文を内外に出してもらうとか、それは任せます。しかし、明らかにそういうことで国民に目に見える形で、耳に聞こえる形でやってもらわなくちゃならぬ。そのことを総務長官にもう一遍よくひとつ中山氏と協議を願いたい。  そのことがはっきりいたしませんと、私は、こういう形のままでどんどんとこの法案の推進を図るというわけにはまいりませんね。総務長官、提案者ですからはっきりしていただきたい。
  199. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) 先生からお教えいただき、御指摘をいただき、御注意をいただいて、またそのように指示をいただいて、私と中山元長官、いまの国対委員長さんとその話をすることは、当然これはしなくちゃならぬと思います。どういう方法にしろ、ここで御発言でございますが、伝えなくちゃならぬし、私は会わしていただいて話をしますが、しかし、私はそのために大変迷惑をしているんだ、非常に困っておる、それは舌足らずか言葉が多かったか知りませんけれども。とにかくそういう事実と違ったことを言って迷惑をかけた、済まぬということを私には言われましたから、私に対しては陳謝した。  それで、私はここで先生に深く陳謝を申し上げて、そういうことを言われたが違っておった、言葉が足らなかったと言っておられましたから、どうかひとつお許しを願いたい。先生におわびを申し上げて、お許しを願って、審議を進めていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
  200. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 総務長官が迷惑をされた以上に、国会国民が迷惑をしておるんですよ。だからそれを当然謝罪すべき点は謝罪する、取り消す部分は取り消すということで、国対委員長たるもの正々堂々とやってもらってしかるべきだということを、総務長官に私は繰り返し要求をしておきます。ということで、これだけやっているわけにはまいりませんから、重ねてその点は要求をしておきますので、対処策をよくお考えをいただきたいと思います。  続きまして、特に文部大臣出席を願いましたので、文部大臣に幾つかお尋ねをしておきましょう。  この法案、提案者は総務長官ということではありますが、文部省教育文化行政の上にも学術会議が果たすべき役割り、これは非常に関係の深いものがあると大臣もお考えのことと思います。これまで日本学術会議がやってこられました幾つかの勧告、声明、そういうものが文部省教育文化行政にずいぶん生かされているんじゃないか、こういった点について、まずどのような把握をされているでしょうか。
  201. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 日本学術会議は、所管は総理府所管になっておりますが、その内容はいわゆる学術研究に関係するものでございます。文部省学術研究を主体として担当しておるものでございますから、日本学術会議文部省の関係は、そういう意味において学問研究、学術研究の上で実質的な緊密な関係にある、かような認識を持っておるわけでございます。
  202. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 先ほど趣旨説明の行われました衆議院の同僚議員から提案がありましたいわゆる献体法案、これも日本学術会議での長い議論の末、いよいよ国会へこういう形で提起をされる段階に至ったと、こういう経緯をたどっておる問題でありますし、いま大きな国民運動、同時に臨調路線ともかかわって大きな注目を浴びております私学助成問題、これについても日本学術会議の長年にわたるいろんな提言あるいは声明等々、こういったもの、これを通して国会としても政府としても経常費の二分の一助成を目指してという方向が打ち出されてきたという歴史的経緯もあるという点で、本当に文部行政にとっても深い関係を持つということで、日本学術会議の今後のあり方について、文部大臣文部省としても私は当然深い考慮を払われてきたに違いないし、今後も払われていかなくちゃならぬというふうに思うわけでありますが、そこで、さて今回のこの日本学術会議の改革問題について、総理府といつごろから何か具体的協議を始めたことがありますか。
  203. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 学術会議の改革問題につきましては、わが国学術振興学術研究体制という観点から、文部省学術振興行政と密接な関連を有するものでございますので、その改革案の検討に関しましては、私どもといたしましても状況の把握に努めますとともに、総理府あるいは学術会議から検討の状況につきまして随時御連絡をいただいてきたところでございます。
  204. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私が承知しているのでは、いま提出をされています法案についての協議が文部省総理府から要請が来たのは四月の十二日ごろ、そして四月の二十二日閣議決定、国会提出、こういう経過をたどってきているというふうに聞いているんですけれども、大筋、こういうことですか。
  205. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 正確な日時の記憶は現在ございませんが、大体四月の十日過ぎに法案の形での総理府からの御説明があったというふうに承知をいたしております。ただ、それ以前に、議論されておる改革案の内容あるいは検討の状況というようなものにつきましては、学術会議事務局あるいは総理府から御連絡をいただいたというふうに記憶をいたしております。
  206. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 以前から連絡を受けておったということですが、文部省として意見を表明をする場はあったんですか。
  207. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 文部省としての正式な態度と申しますものは、法案の閣議決定に至る過程でこれに賛成をしたと、こういうことでございます。
  208. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、情報としていろんな話、報告などは少し以前からはあったけれども、具体的に文部省の意見はどうだという形で協議を求められたのは四月の十日過ぎで、具体的には閣議決定、そしてこの法案が出てくるというこの局面だと、こういうことでありますと、まことに事は重大じゃないか。口では理念的に、日本学術会議のあり方というのは文部省の行政にきわめて深い関係がある、深い考慮を払っているんだと、こういうふうに言いながら、文部省の意見を求められる局面というのがまことに押し迫った段階、こういう時期になって、言うならタイムリミットをかけているようなこういう形で、いろいろ意見を出そうにも出し得ないような姿、こういうやり方で事が進められてきたということは、私は重大だと思うんですよ。文部大臣、よくこの経過を御承知で閣議決定で簡単にオーケー、閣僚の一人でオーケーと、こういうふうにサインを出されたんですか、文部大臣
  209. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほども申し上げましたように、これは所管が総理府でございますから、いままで局長から御説明申し上げましたように、学術会議なり総理府から途中の考え方等については連絡を受けながらやってきたわけでございますが、成案を得てから正式のこういうことではどうかという相談が最終的にあった。これはいつもそうでございます。  そこで、学術会議については、御存じのとおりその選出方法について従来からいろんな議論があったわけでございます。私どもは今度の成案のような方法ならばまず適当じゃないか、こういうことでこの案に賛成をして閣議で決定した、こういうことでございます。
  210. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 閣議の段階で文部大臣としても了解を与えたわけですから、いまのこの局面で大変これは多々問題ありますというようなことは、それは言えませんわね。しかし、私が問題にしているのは、文部省としていろいろの報告を聞いておったその段階で、これはちょっと文部省としても黙って見ていていい問題かということで、何か発言があってしかるべきではなかったか。それから、片や、文部省に対して協議も求めようとしない総理府側の一方的な、密室的というか、こういう事の進め方、ここが問題だというふうに私は言っているわけです。  一つは、さっき言いました中山氏のあのテレビ討論に端的にあらわれておるように、うそまでついて法律のごり押しを図ろうとする。この間言いました、四月の日本学術会議の総会に配った法案骨子なるものは、実際に国会に出てきたものと違ったものを配っておいて、学術会議までだまして事を進める。それから、ここでは理念的には密室的に事を進めてきている。こういうやり方でこの国会で早く通してくださいと言ったって、それは話の道理が通るものではありませんよ。総理府文部省、それぞれにこの事を進めてきた経過についての重大な反省を求めたいと思います。  次に移りますが、きょうはせっかく参考人として、理事会の御同意も委員会の御同意もいただきまして一橋大学永原先生に御出席をいただいたわけでございますし、次に参考人お尋ねをさしていただきたいと思います。  まず、永原参考人の御経歴といいますか、どういう学会に属され、また日本学術会議とのかかわり、そんな点について最初にお話しいただきたいと思います。
  211. 永原慶二

    参考人永原慶二君) 私は、現在一橋大学の教授をしておりまして、日本歴史を専攻としております。学術会議では第一部人文科学分野であります。第一部の副部長をいたしております。同時に歴史学研究連絡委員会の委員長をいたしております。学会は、歴史学研究会という学会がございまして、そこの現在会員でございまして、かつてそこの代表をいたしておりました。また、歴史学分野には諸学会、たくさんの学会がございますが、そういうものの連合組織として日本歴史学協会という協議体がございます。そこの役員等で長年歴史学関係の学術体制の問題に携わってまいりました。  以上でございます。
  212. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは、いま国会に提出をされております学術会議法案、この法案についてどういう御見解を持たれるのか、また、そのことと表裏の関係かと思いますけれども日本学術会議というこの組織のあり方をどのようにお考えになるのか、まずその点を少しお話しをいただきたいと思います。
  213. 永原慶二

    参考人永原慶二君) 大変大きな問題でございますが、私は、ただいま申し上げましたように、歴史学分野でございますので、そういうような分野に即しながら申し上げたいと思います。  まず最初に、学術会議会員の条件と申しますか、そういうような、特に学術会議法に規定されておりますような学術会議任務を遂行していく場合に必要な会員の条件というようなことを考えてみますと、これは当然のことでありますが、純粋に学術研究の立場、その論理に立って学術研究の発展の方策を考え、かつそういう学術研究の成果を国の政策に反映していくという任務でありますから、会員が学識、経験において豊富でなければならないということは当然でございます。  同時に、私は最もこの点が大事だと思いますが、現在研究の先端に立っておられるような研究現場の方々、この方々ともっと緊密な連絡をとって、そういう研究現場で出されている研究体制に必要な諸問題、これを十分に受けとめて、これを学術会議活動に反映させる、この点が最も大事なことだろうと思います。そういう意味で、学術会議の改革の方向は、直接研究の第一線に立って活動をしておられるような有権者の方々、あるいは有権者にもなっておられない場合もあると思いますけれども、研究現場の方々との連携をどのようにより緊密にするか、この点が最も改革の方向としてまず配慮されるべきことだろうというふうに思っております。  たとえば、この問題の重要性ということを私ども歴史学の分野の例にとって考えますと、学術会議では、特に前期におきまして公文書館法というものの制定を学術会議政府に勧告いたしました。それ以前にも資料保存の問題についてさまざまの勧告をいたしてまいりました。歴史学にとってみますと、この資料の保存、公開の問題、これは国及び自治体の資料と同時に民間の問題を含みますが、そういうものの保存、利用の体制の問題はきわめて切実であり、研究の発展の上に基礎的な問題でありますけれども、こういうような問題については、もちろん会員はそれなりの見識を持つわけでありますが、最も必要なことは、やはり全国各地に散在しておられる現場研究者の意見、これが当然大事でありまして、そういうようなものをどれだけ確実にくみ上げるかということであります。  したがいまして、こういうような文書館法の制定等についての勧告を行う場合にはさまざまな形で、たとえば学術会議の中でその問題についてシンポジウムを行うとか、また各地に私どもが参りまして、各地の研究者と話し合いながらそういう問題のあり方、あるべき姿を討議してまいりました。そういうような形がどうしても必要であります。このためには現場の第一線研究者学術会議に対して非常に積極的な関心を持ち、また期待を持つ、こういう関係が確立してなければとうていこの問題はうまくいかない、こういうことを私自身経験を通しても痛感しておるわけであります。  ところが、今回改正法案として出された問題を考えてみますと、これは従来のような有権者制度、有権者による直接選挙制度というのをやめまして、学会推薦という、候補者を推薦いたし、研連がこれを選考して最終的な会員候補者を政府に申請する、こういう形をとるようになっておりますけれども、こういった場合には、やはり直接第一線の多数の研究者にとりますと、やはり会員の選考を自分たちの手で直接的に行うという形でなくて、学会あるいは研連にゆだねるという間接的な形をとらざるを得なくなるわけであります。そのことは、やはり研究者学術会議に対する関心を薄らげるおそれがあるということを私自身は憂えざるを得ませんし、学術会議がとりわけ前期以来検討してまいりました方向もその問題を特に重視いたしました。  そういう意味で、やはり基本的には有権者による直接選挙制が学術会議研究者との連携を強め、学術会議活動基盤を強めるという上で欠かせないものというふうに理解しておるわけでありまして、私も全くこの点は大事な点だろう、改革の方向はやはりこれを確保した上で考えていかなければならないというふうに思っております。  それからまた、現在のものは選挙制度であるけれども選挙制度にいろいろな弱点が出てきて、したがって学会推薦によって研連が選考する方がより適切な会員が選ばれるという考えがあるわけでございますけれども、私は現在のやり方、これはやはり候補者につきましてはおおむね学会の推薦という形を大多数はとっておるわけであります。もちろん個人で立候補されることも非常に望ましいことでありますが、しかし、実情としてなかなか個人が立候補するということはむずかしいといいますか、研究者かたぎから申しますとなかなかあり得ないわけで、やはり学会から推されるということが自然の形になっております。  その点で、今度の改正法案学会推薦という点ではそんなに変わらないんじゃないかという考え方もございますけれども、現在は、やはり自分自身学会から推薦されて出ておりますけれども、しかし、そういう形で推薦された者が有権者によって直接選挙されるというこの関係によって、会員は当然有権者に責任を直接的に負うという関係を客観的に強めるわけでありますし、また研究者の側も、直接国の制度によって保証された選挙というものによってみずから選ぶという関係がございますから、この点はやはりそれ自体として非常に有意義な、今日考えられる上では最も学術会議の基盤を強めていくという点から言えば適切な方向として私は維持していった方がよろしいというふうに考えます。  ただ、にもかかわらず学術会議でも、自主改革案では、三分の一程度は推薦制ということも自主改革要綱と称せられている中で挙げておりますけれども、これは確かに学問は日進月歩でありまして新しい研究分野が生まれてまいります。あるいは既存の学会では包摂し切れない幾つかの学会に関係するような分野もございます。そういうような分野につきましては、なかなかまだ学会が十分に成熟した形をとっていない、こういうこともございまして、そういう分野の専門家は意外に今日のような選挙制度では出にくいということもございます。そういう選挙の弱点をカバーするという点では、これは推薦制を一部導入するということは現実に対応しているというふうに思いますけれども、やはり基本的には国によって直接保証された直接選挙制度ということが、研究者学術会議との結びつきを強める手だてとしては最も適切であろうと思います。  そして、現在そういうことによって行われているにもかかわらず、次第に研究者学術会議に対する関心が弱まってきているとか、立候補者が少ないということも言われておりますけれども、それは必ずしも選挙制度そのものに対する失望とか、あるいは選挙制度の欠陥というようなことだけがその要因であるというふうには考えない方がよろしいんではないかというふうに私は感じております。むしろ、これはなかなか研究に従事しております者の立場から申しますと、学問専門分化して、細かいことに専念していかなければならない、次第に学問は高度化する結果、全体に対する関心が弱まるというようなことは一つ学問分野でもあることでありまして、まして学会行政全体というようなことについては、研究者とりわけ若い研究者の間の関心が弱まるというようなことも一面ではやむを得ない面がございます。  そういうような面とか、あるいは有権者の規模が非常に大きくなっているにもかかわらず学術会議につけられております国の予算はそれほどにふえておりませんから、そのために学術会議が地方有権者との間で接触できる機会というものは予算の制約から非常にむずかしいということもございまして、そういうような制約からも研究者学術会議に対する関心が弱まっているというようなこともあり得るわけでありまして、直ちに選挙制度だけが全く欠陥であって、だから学会推薦とか、あるいは研連推薦ということにすれば、その問題がすべて解消して最も適切な人が選ばれるというふうには単純に割り切れないのではないかというふうに感じております。  そういう意味で、基本的にはやはり有権者による直接選挙制というものを原則といたしまして、その上で現行の制度の弱点というものを是正していくという方向がやはり学術会議を活性化していくという点でも考えるべき最も重要な筋道ではないかというふうに思っております。これが第一の問題であります。  次に、少し具体的に改正法案との関連について申し上げさしていただきますが、今度の改正法案によりますと、学協会が候補者を推薦し、その候補者を研連が選考いたしまして、最終的な候補者を決めて、政府にそれを提出すると、こういうことになっておりますが、ことには大きく分けて二つの問題がございます。一つは研連の問題であり、一つはその母体になります学協会の問題であります。  研連の問題について申し上げますと、研連は、実はこれは六十近い研連が今日法律で決められておりますけれども、各部の実情に即して研究連絡委員会というものを実際に見てまいりますと、非常に多種多様なあり方をしておりまして、これは、学術会議の発足以来実際の必要に応じて随時に研連がつくられてきておりまして、必ずしも研連というものがどういう活動をすべきものであるというようなことは具体的に画一的なものではございません。大きく分けまして研究連絡委員会というのは、国際対応と申しまして、国際的な学術研究会議に対応するという仕事と、国内の研究連絡仕事、この二つを任務としております。  たとえば歴史学研究連絡委員会、私が現在責任を負っておりますが、この委員会は伝統的に国際対応の仕事だけをやってきておるわけであります。そして、国内問題については主として、これは任意団体でありますけれども学会の連合体としての日本歴史学協会というのがその仕事をやっております。そういう形をとっておりますが、他の研連によっては、これは両方をやっている場合もあるし、主として国内問題だけに重点を置いているというようなこともございます。    〔委員長退席、理事片山正英君着席〕  そういう意味で、その役割りは現在非常に多種多様であるということでありますが、まあそれはそれなりに各研連はそれぞれの任務を設定いたして、またそれに適当な人を選出するような研究連絡委員会の委員選出方式を持っているわけであります。この委員選出の方式については、別に学術会議の規定でも直接的に詳しい規定はございませんけれども、そういうような形をとっております。  したがって、今回の改正法案によって研連が新たに会員候補者の選考を行うという非常に新しい重要な任務を負うことになりますが、そういたしますと、新しい会員選考という仕事と、たとえば従来行っておりました国際対応の仕事をあわせて研究連絡委員会は行わなければなりませんけれども、歴史学研究連絡委員会で言えば、その国際対応に適切な方が選ばれて委員になっているわけであります。その方がそれでは会員選考に適切な学会を代表するような方であるかどうかということになりますと、これはそう一概にそうであるというふうには言えないわけであります。非常に新しい任務の変更が出てまいります。そういうような問題は、決して既存の研連というものがあるからそれにおぶさって今度会員候補者の選考の任務も行わせればよいというふうに単純には言い切れないことであります。    〔理事片山正英君退席、委員長着席〕  したがって、今度のような形がもし実現いたしますと、研連自体が非常にやっかいなといいますか、困難な任務を負わざるを得ないし、私どものおそれますのは、いままでの経緯から申しますと、非常な混乱が生ずるだろうと思います。また意思の統一が行われるまでに非常な時間がかかる。たとえば第一部の関係の研連は現在八つ正規にはございまして、そのほか、たとえば予算の関係で正式の研究連絡委員会ではないけれども学術会議の内部ではそれに準ずるものとして扱っております研究連絡会というのは四つございまして、一部関係で十二ありますけれども、十二だけではとても選考分野を覆い切れない。新しく発展してまいりました、たとえば文化人類学とかそういうような分野については全く研連が現在ないというのも実情でございます。したがって、研連自体をどういうふうに編成し直すかというようなことから始まりますし、また、果たして国の側で、今度研連は法制化されますけれども、研連が必要なだけの予算の面でも措置されるであろうかどうかということは、非常に私どもにとっては現実上不安でありまして、そういうことの保証なしに研連でやれますというふうには単純には申し上げられないというのが私の率直な学会の現状に即しての感想でございます。  もう一つ最後に、この学会の問題、登録学術団体の問題でありますが、この登録学術団体が候補者を推薦するということになっておりまして、その学術団体についてはこの法案にも示されておりますような基準が設けられるというふうに思いますけれども、しかしこの学会全体のことを、たとえば歴史学分野に即して考えますと、それはその学会誌をどんな感覚で出しているかとか、会員数がどれだけであるかというようなことだけでは単純に割り切るべきことではない。特に日本歴史の研究のようなことになりますと、各地の地域的な郷土史研究団体のようなものが実は研究の上で非常に重要な問題を果たしております。たとえば国文学では、場合によってはアマチュア的な方が入っておられる学会、細分化したある一つのテーマについての学会がございますから、そういうものが非常に大事な役割りを果たしているわけでございます。  そういうものまでを含めまして、やはり語学会学術会議の候補者の問題について積極的な姿勢をとれる、これは実際に会員候補者を推薦するかどうかは別問題でありますけれども、そういう問題が積極的に考えられる客観的条件が保証されていなければ当然ならないわけであります。しかし、そういうことになりますと、現在の登録団体ではとうていこの問題は済まないわけであります。  現在、第一部関係においては百一の学会が登録されておるわけでありますけれども、これは一部関係の学会の実情から申しますときわめて限定されたものにすぎないわけであります。したがって、当然こういう新しい法改正が実現いたしますと、再登録をやり、新しいそれについての条件審査をしなければならないということがありますが、余り既成の成果だけにそれの基準を求めるということになりますと、学問の進歩の芽を摘み取ってしまう。そういう実際の新しい方向の持っている要求というものが学術会議に反映されなくなるおそれがあると思います。  これは特に一部関係ではそういう郷土史とかアマチュア的なものというふうに申しましたけれども、もっと専門的に言えば、新しい、既存の分野でない分野の研究は当然のことながら最初は少数派であります、学会全体に。当然そういうところからも会員が出ていただきたいわけでありますけれども学会推薦という方式をとります場合には、やはり学会代表ということになり、自分の学会を中心にするという、これは学会エゴイズムだと言われるかもしれませんけれども、結果的にはそういうことになるおそれがあるわけであって、やはりそういう意味でも一つ学会の利害を超えて広く適切な会員を選ぶ場合には、学会推薦をとりながら同時に最終的には有権者自体が会員を選んでいくという方が学問の発展の可能性を伸ばしていくという観点からも適切なんではないかというふうに思うわけでございます。  以上、仮にこの法案を実現した場合ということについて考えましても、とりわけ研連のあり方の問題、学会の扱い方について非常な困難を含んでいるのではないかというのが率直な感想でございます。
  214. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ありがとうございました。  この法案がもしも可決をされた場合、研連や学協会にどういう影響が出てくるのか。特にいま歴史学の分野に即して基本的な使命、運営にかなり大きな混乱、変更、そういうことが起こってくるというのを具体的にお話をいただいたのですけれども、ちょっと私の持ち時間の関係で政府側にもう少し質問をしておかなくちゃならぬこともございますので、最後にもう一つだけ簡単にお答えをいただいたらと思いますが、この十八日から日本学術会議の定例総会が予定をされておる、こういうことでありますので、当然この定例総会でこの法案についてのいろんな議論が出されるだろうという、ここの結論を見ないままに国会が性急にたとえばこの法案についての採決とかそういう決着を図るというこのことの可否についても、この委員会でもさまざま意見が出ておるところですけれども、こうした点について、学者の一人として、国会いかにあるべきかという点で御意見があれば簡単にお聞きをしておきたいと思います。
  215. 永原慶二

    参考人永原慶二君) まだ法案を、具体的な案を四月の臨時総会の段階まででは会員は見ておりませんでした。したがって、法案に即した討議、意見の交換ということは全く行われてないわけであります。来週の総会になって初めて会員全体が今回の法案を見て意見を交換するわけでありますから、そういうような意見交換、審議も行われないままに国会でこれが通過いたすというようなことになりますと、私どもとしては何としても残念であるということは当然なことではございましょうけれども、会員の一人としては痛感しております。
  216. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうもありがとうございました。  それでは政府側にお尋ねをいたしますが、同僚委員のいろいろ質疑を聞いておりましても、今回の法改正の一番根幹の部分、すなわち日本学術会議の会員の選出方法、公選制を全面推薦、総理任命というシステムに変える。現在の公選制の一体どこが悪いのか。これを全面推薦にしなければならないというこの根拠は、幾ら聞いても政府側からの納得できる説明はないわけであります。  そこで、久保会長にも御出席願っておりますので、まず最初会長に少しお尋ねをしておきますけれども会長は、公選制を推薦制にする、こういうことについて合意をされたわけではありませんね、この法案が提出をされてくるここまでに。
  217. 久保亮五

    参考人久保亮五君) これはたびたび申し上げたことでございますが、学術会議といたしましては、要綱で掲げた三分の二の公選制、三分の一の推薦制というのを最善と考えているわけでございます。これを撤回したわけではございません。しかしながら、政府におかれては、学協会を基盤とした科学者の自主的な選出というこの方針でいくということを堅持しておられまして、それで法案をつくるということであります。  前にも申し上げましたが、政府がそういう方針を堅持なさる、そして法案を作成するという段階においても、会長としては日本学術会議の改革のために最善の努力をせよ、協議をせよということでございました。その責任におきまして、会長及び副会長、三役といたしましては、改革要綱の基本精神をその枠の中にも最大限に生かすということを目標として折衝を重ねてまいってきたわけでございます。
  218. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 学術会議としてもまた会長としても、自主改革のあの要綱の立場を最善として考えた、その考え方をいまも撤回しているものではない。しかし、まあ政府の態度が非常にかたいから、その中でいろいろ苦しい思いをしつついろいろやってきたんだという、こういうお話でありますけれども総理府は、一体今回の法案について、さっきもお話ありましたように、四月の総会に配った内容というのは実際にここへ出している法案とは違うという、私も言ってきた、いまも言われておる、参考人も言われておることでありますけれども総理府は総会やあるいは学術会議の運営審議会に、直接この法案説明に行ったことはありますか。
  219. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 私自身としては、必要があれば行くことはやぶさかではございませんでした。その辺は学術会議側と相談してその必要はない、いまの段階では学術会議内部でその点は話し合いをするんだということでございましたので行っておりません。
  220. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それはしかしこの説明にならぬじゃないですか。とにかく実際に学術会議の内部で説明をなさっているのは、事務局長が政府を代行するような形でやっているということで、総理府が直接説明に出向いたということはないと、その必要はなかったというんですけれども、あなたたち確信を持って今度の選出方法を変えるというこの提案を出すのだったら、なぜ時間も道理も尽くして学術会議説明に直接出向かないのですか。
  221. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 大体法案の途中でそういったものをお話しするというのは本当は異例でございます。正直法制局でもまだ固まっていないもの、それについて本来ならできないものを、それでも法案そのものは出せない、法案の原稿的なものですが、出せないがということで、まあしかし内容はなるべくわかるようにと事務局で整理したものをこの間の四月の総会にはお諮りしたということでございます。  私自身は、途中段階のものを説明するというのは困難でございます。特に政令規則といったものはまだ固まってないもの、これは正直、その学術会議事務局の方で答申の案を整理したものでございまして、その間の事務的な経緯は先ほど御説明もいたしましたが、そういう段階で私どもが行って説明するというのは本来は余りやっておりません。しかし、必要あれば私は行くのはやぶさかではないと思っておりましたが、学術会議事務局と話し合った結果、私は行かなかったということでございます。  あとは向こうの方から答弁いたします。
  222. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく弁解にもなっていませんね。  しからば、政府というか、総理府、今回の提案を出すに当たって全面推薦制というこの内容法案を出してきているわけです。この内容は、私も触れてきた、同僚委員からも出ております、いわゆる総理府諮問機関としての吉識委員会、ここでも意見の一致を見た方向ではない。これは明白な事実でありますけれども、しからば、何かほかの機関、どこかのある機関、そして、どういう内容で一定のコンセンサスを得ていよいよこの法案提出という、この内容が固まってきたということがあるんですか。
  223. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) これも、先ほどもすでに御質問にお答えしたとおりでございますが、確かに吉識委員会、大変お忙しい先生方十五名ですが、集まっていただくのはなかなか大変でございました。しかし、八回集まって熱心に御議論いただいた結果は、なかなかやはり皆様それぞれの信念もお持ちでございましょう。そもそも諮問して答申いただくということではなく、有識者の御意見を伺うということだったものですから、総務長官八回全部参加して、議論はつぶさに直接耳で聞いていただいたわけでございますが、結果としては、まとまるものならまとめたいという座長の御意向もありましたが、報告としては大きく分けて四つの案ということになりました。  その間、もう少しいろいろ議論したら意見が一致するかなという声が最初の間はありましたが、やはり幾らやっても、基本的に、外国の例を見ても国の機関とするのはかえっておかしいという方は、やはりそういう意見は変わらないわけでございます。そういうことでいきますと、やはりそういう案を併記するよりしようがないだろうということになりました。  それで、懇談会の先生方の意見としては、もう一年さらにやって、何だったらこの四案のそれぞれについてもう少し具体的にやってもらったらどうだ、ただそうなると、自分たちはもうそういう能力はない。もっと大ぜいの方集めて、分科会になりますか、部会になりますか、四つの部会つくってやったらどうかというような御意見がございまして、私どもそれをいただいたときに、総務長官とも本当に真剣に検討したんですが、それをやったのでは、仮にいまの会員の任期を一年延ばしたところでそこで意見がまとまるとも思えませんし、仮にまとまったとしても、さらに細かい具体的な仕組みの積み上げのためにはさらに時間を要する。これは現実的な処理を考えますといわば不可能に近いではないか。こうなれば、やはり担当大臣たる総務長官の決断でもって方向をしぼって検討していただくよりしようがないだろうということで、四案の中ではいわば自主改革要綱に一番近い線でございますが、それを選択して、その内容についてさらに何か懇談会的なものをつくるとしたら、大変なやはり組織が必要になります。それに一番ふさわしいのは学術会議ではないかということで、学術会議にその検討を依頼したわけでございます。  学術会議の方も、当初、そういったものを自主改革要綱を決めているのに検討するのかという反論もあったと聞いていますが、しかし、幸いお引き受けいただいて、改革委員会の中に分科会を設けて、簡単によくまとめていただいたと思いますが、分科会報告を出していただいたわけです。私どもはそれをもとにして今回の法案を積み上げたということでございます。
  224. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく政府としての決断をするまでに、どういう名称のものであれ何らかの諮問機関、そこでの検討に基づく見解の一致に基づいてこの法案を出してきておるということではない。あなたも言うように、政府の決断というか、見切り発車をして政府判断でこれを出してきたということはもう明白ですね。何か言い逃れのように学術会議検討を依頼して、小委員会の討論を経てと言うのだけれども、そこの討論の結論を、一致した結論を得て出してきたというわけではさらさらないわけでしょう。  それではここで……。
  225. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 会議の運営上、暫時休憩いたします。    午後四時六分休憩      ─────・─────    午後四時三十九分開会
  226. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  227. 小西博行

    ○小西博行君 今回の改正案は、学術行政あるいは学術体制にかかわる重要な問題であるために、その改革には科学者国民全体の合意を得る努力、手続が大変重要な要素になってくるというふうに私は考えるわけであります。今回の提案に至るまでにどのような配慮がなされたか、これがまず一点お聞きしたいことであります。  そしてまた、今後この改正案に基づく新たな制度を定着、発展させるためには、運用において、学術会議会員はもとより、科学者あるいは国民全体の意見を十分吸い上げる、そして反映させる、こういう必要性が私はあるのではないか、そのように思いますが、この二点についてどのような考え方を持っておられるのか、これをお聞きしたいと思います。
  228. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 確かにこの問題、日本科学行政あるいは行政を超えた科学全般について重要な問題だという認識、私も担当していよいよ持っているところでございます。  そういう意味で、もちろん国民全体の意見を直接聞くようなことが可能であるならば、それはそれで私どもも、とることはやぶさかではございませんが、直接そういったすべというのはございません。そういう意味で、科学者を代表して現在出ておられる学術会員、そちらの意見は十分くみ上げられるように協議を重ねてまいったわけでございます。そういう意味で、そればかりでなく、各界でいろいろ出ておられる御意見、そういったものも参考にし、それを集約的に懇談会で御議論いただいて、われわれの認識が深まったところで今回の成案を得たということでございます。  それで、第二点の今後どうだという点につきましては、私ども、たとえばそれは、今後の問題としていけば、科学行政に対するうちの方は広報室も持っております。世論調査などもやはり科学についても行っております。そういった際にも、学術会議のあり方等について、やはり参考になるものをそういうところでくみ上げていくというのも、確かに先生の御示唆のように必要かとも思いますので、そういった点も今後検討していかなければいけないかとも思いますし、それから、この改正案でいく場合には、学術会議はより学協会と密接な連絡をとり、その意見をくみ上げていくことになると考えております。そういった方法を通じて、先生のおっしゃる方向で精いっぱい努力してまいりたいと思っております。
  229. 小西博行

    ○小西博行君 私は、もう何度もこの場でも申し上げていますように、学術会議というのは、本来研究者の自主性というのは当然認めてあげるべきだし、そうなければ余り意味がないのではないかというように私自身も実は考えているわけです。  しかし法案という種類のものは、どうしても私は一つの団体の一〇〇%の要求を聞かなければ一つ法案が成立しないというものでもまたないのではないかというふうに考えるわけです。特に、そういう中でさっきもちょっと申し上げましたが、一般国民がこの学術会議に対してどのような考え方を持っておられるのだろうか。最近のいろんな情勢の中で、学術会議はもうだめになったんじゃないか、そういうような非常に強い批判が私はあるんじゃないかと思うだけに、国民に対して十分説明をする必要があるのじゃないかということで、申し上げたわけであります。  そして、次に移りますが、この法案の中心は、何といっても推薦制という問題が論議の中心になっておりますし、この推薦制が成功するか否か、これは一にかかって研究連絡委員会の充実の有無にかかっていると言っても私は過言ではないというふうに考えるわけです。したがって、この研究連絡委員会の充実については、学術会議側からも強く要請されているところであるというふうに考えます。従来、任意団体である研運が、今回法令上明確に位置づけられたことは大きな前進であるというふうに私は考えますけれども、それとともに予算措置の拡充、これもつい先日いろいろの議員から論議がありましたけれども、この予算措置の拡充というものも、成功させるためには大変大切な要因になってくるのではないか、このように考えますので、再度現状と今後の充実対策といいますか、どのように予算の問題について考えておられるのか、これについてお聞きしたいと思います。
  230. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 現状の予算についてまず御説明申し上げたいと思います。  五十八年度予算総額は八億五千万でございまして、そのうち、審議関係経費が一億三千万、それから国際学術交流関係経費が一億七千万、選挙関係経費が一億五百万、人件費が四億四千七百万という形で計上されているところでございます。  なお、ただいま御指摘の研究連絡費につきましては、審議関係経費のうちで四千万を占めているわけでございます。ただ、ただいま御指摘のように、今度の改革の大きな重点的な柱を形成いたしておりますのが研連でございます。その意味で、私どもとしましては、そのための経費につきまして十分な配慮を賜るように関係方面に強く要望してまいりたいと考えております。
  231. 小西博行

    ○小西博行君 総務長官、この予算の問題は、つい先日もずいぶんいろいろ議論されたので、大変厳しいからなかなかむずかしいだろうというような御議論もありますけれども、その辺のところを長官の決意を明確にひとつしていただければ幸いだと思います。
  232. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) 先ほど来先生の御意見の中に、今後における新たな制度の運用に当たっても、科学者国民全体の意見が十分反映されるようにして、りっぱな学術会議としての使命を果たしていかなくてはならない、そういう御意見でございますが、私も全くそのとおりと心から敬意を表する次第でございまして、それについては、いま先生からただされましたように、何といっても予算の措置が必要でございまするので、なるほど御承知のように、現下の厳しい財政状況のもとではございますが、そうしてこれが十分なことを考えるにはなかなか困難なことではございますが、私としては、せっかくこのようにして先生も激励いただけることであり、また、やらねばならない仕事でございますので、お世話をさしていただく大臣として力いっぱい誠意を持って関係方面との折衝を重ねて予算の獲得に努力したい、こう考えております。これは私の決意でございます。
  233. 小西博行

    ○小西博行君 予算の問題につきましては、なぜ会員に積極的に参加してもらえないんだろうか、あるいは選挙に参加してもらえないんだろうかといういろんな問題がございましたですね。その中に一つ、出張の旅費その他も非常に厳しいというお話がありましたから、私は、せっかく法改正するわけですから、何か明確にそういうものがなければ、会員の方々というのは、新しい制度だけに非常に不安の要素というのはどうしてもぬぐえないというように考えます。したがって、ぜひともその検討を十分お願いしておきたいというように考えます。  次に移りますが、学会は約千あると言われております。これは千三ですかね、正確には。非常にたくさんの学会があるというように言われておりますが、それぞれの規模あるいは専門分野あるいは運営方法等が違うために、どの学会に何人の会員候補者を出してもらい、推薦人を何人指名してもらうかは、実際の運用上非常に困難な課題であるというように私は思います。この問題が各学会、研連で円満に解決され、運用、実施されることが推薦制の成否のキーポイントであるというように私は考えます。どのような運用について考えておられるか、これを明確にしていただきたいと思います。
  234. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 御指摘のとおりであると思います。しかしながら、これは細目につきましてまだ検討をしているわけではございません。ただ、学術会議というものがどういうものであるか、学術会議の会員としてどういう方に出ていただきたいかというようなことは、学術会議改革要綱にも記されているところでございます。それで、登録された学協会の認定の基準とか、それからいまおっしゃいましたような数の問題とか、そういうのはこれからもしこの法案が実施される段になれば、規則を定め、順次に積み上げて考えていかなければならない問題でございます。学協会、科学者研究者方々日本学術会議というものがどういうために存在するかということをもちろん御理解いただけるものと思いますが、そういう御理解の上に立って自分たちで選んでいくということであれば、もちろん困難はございますけれども、皆さんに御協力いただけるものと考えております。
  235. 小西博行

    ○小西博行君 改正案では従来とかなり異なっておるわけでありますが、特にその中で全国区制ですね、それから地方区。この二つに一応分かれておりますね。今度はそういうものがございませんね。一本化するということになっておるわけですが、地方大学研究者、こういうものをどういうような形で確保して持っていかれるのか、この辺についてお聞きしたいと思います。
  236. 久保亮五

    参考人久保亮五君) これはこの法案によりますると、学協会の基盤としての自主的な選出ということでございますから、科学者方々が、まず第一に地方における大学その他そういうところにある研究者というものをいかにお考えになるかということにかかっているわけでございます。従来から学術会議では、地方における問題を十分に認識しておりまして、地方活動としていろんなことを行ってくるわけでございますが、これをこの選出の過程でどのように制度化するかということは、いまの時点で申し上げることは余りできないのでございますが、定員の中にもある程度そういうことに配慮できるようなものをつくるとか、そういうようなことも当然考えられるのではなかろうかと思います。詳細につきましては、詳細と申しますか、具体的な方法につきましてはまだ検討するに至っておりません。ただ、先ほど申しましたように、そういうことを十分配慮するようにやっていく必要があるというふうに考えます。
  237. 小西博行

    ○小西博行君 これは総理府にちょっとお聞きしたいんですが、資料によりますと、全国を七つの地方区に分類されているんですね。そして地方区選出会員から互選された世話人という方がおられて、それを中心にいろいろ活動されている。特にその中で、私大切だと思うのは、地方区内の科学者との懇談会とか、あるいは後援会の開催、あるいはニュースの発行ですね。    〔委員長退席、理事片山正英君着席〕 こういうふうな活動を現実にやっているというふうに聞いておるわけですが、その活動の状況とか評価というのは現在の時点まででは一体どういうことなんでしょうか。これを知らせていただきたいんです。
  238. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 学術会議が真にわが国科学者の代表であるということで機能するためには、全国的な基盤を求める必要がございます。したがいまして、その意味で地方との結びつきというものも確かに重要な問題でございまして、この点につきましては従来から学術会議の内部でも慎重な検討がやられたところでございます。これまでのところ、ただいま御指摘ございましたように、各地方区ごとに地方区会議を設けまして、そこにただいまお話ございましたような世話人を置いて、「有権者ニュース」の発行であるとかあるいは懇談会の開催であるとか、そのほかの活発な地方活動を行っているわけでございまして、この点につきましては科学者の間でも評価を得ているところであると存じております。
  239. 小西博行

    ○小西博行君 そのことは当然そうだと思いますけれども、私は過去のそういう、過去というか、現在もそれは続いておるわけですけれども、そういう地方区と、今度新しく法案が通った場合に、そういう非常にさめの細かい活動というものが現実にうまくいくかどうか、その辺を心配しているから何回も聞いているわけです。どのような姿勢で考えておられるのか、それをぜひお聞かせ願いたいと思います。
  240. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいま御指摘の地方区の問題でございますが、ただいまの法律案そのものには明確な形では出されておりませんけれども、これも先ほど申しましたように、学術会議の中でも、実は率直に申しまして、改革要綱としましては地方区を廃止するという線が出ておるわけでございます。しかし、地方区の重要性というものは、これは皆さん御認識になっておるところでございまして、これを運用上何とか出すような仕組みを考えようというふうな点で合意いたしておるわけでございまして、先ほども会長が御説明申し上げましたように、この新しい法律案が仮に成立した場合においても、その仕組みは十分に可能であろうということで、今後の問題としてその点については細部を詰めてまいるというふうなことになろうかと思います。
  241. 小西博行

    ○小西博行君 地方の産業を一つ考えましても、どうしても地方の大学とタイアップしなきゃいかぬということですね。そして、産学共同という体制をいつも口では言っているんですけれども、現実問題、その結びつきが非常にむずかしいわけでして、私は、それとは直接関係ないにしても、いろいろな情報をぜひ産業の方もいただきたい。あるいはひょっとしたら産業の方が進んでいる分野も実はあるわけでありまして、ぜひともそれをお願いしたいと思います。  次に予算のことをちょっとお聞きしたいんですが、これも先日から、七億円少しですか、予算をもらっていろんな活動をしていると言うんですが、これは外国と比べると、体制についていろいろ内容的に違うということでお話は聞いたわけですが、えらい金銭が違うんですね。私は、これどうしてこんなに違うんだろうかなと不思議で仕方がないわけですけれども、これは制度的ないろいろな問題でこんなに、たとえばアメリカとかイギリスと比較して金額的に違うんでしょうか。当然これはいろんな国の事情によっても違うと思いますが、その辺の説明をちょっとお願いしたいんです。
  242. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 先ほど御質問がございましたときにお答え申し上げたところでございますが、国によりまして機関の性格がそれぞれ違う、あるいは構成人員がかなり違うわけでございます。たとえば、アメリカのアカデミーでございますと千三百、日本の六倍以上。イギリスの王立協会が八百九十三人とかなり規模が大きい。しかも、先ほどお話し申し上げましたように果たすべき機能も違っているわけでございます。そのような違いが金額の差にあらわれているんじゃないだろうかということを推定はいたしますけれども、ただ、私どもその細かい使途につきまして詳細に存じませんのでその点まことに残念でございますけれども、十分にお答えいたしかねるところでございます。
  243. 久保亮五

    参考人久保亮五君) いま局長からお答え申し上げましたが、私もすぐにどれだけというようなことは申し上げかねますが、確かに局長説明のように、やっております仕事内容が違うということで予算の規模も違うことはあると思います。  しかしながら、これまでたびたびお話に出ておりますように、予算の規模が七億とか八億とか申しますが、そのうちの人件費を除きますというと、あと、本会議委員会等々のものとかあるいは国際団体への支払いとか、それから国際会議の主催等々というようなことがございますが、それが三億程度であろうかと思います。あえて申し上げるならば、せめてこれが倍ぐらいにはなってほしいと、倍でも足らないと言えば足らないんですが、予算の厳しい折からそう一挙に大きくということではございませんけれども、着実にその仕事内容を充実していって、十分日本を代表する学術会議の名にふさわしいものにするためには、予算の面でも格段の御配慮をいただきたいというのが念願でございます。
  244. 小西博行

    ○小西博行君 長官、久保会長が非常に遠慮がちに具体的な数学を出されましたですね。私は科学技術特別委員会の方にも実は所属しておりまして、流動研究システムという、中川長官時代にあれはたしか五十六年の十月だったと思いますが、非常に新しいものができましたね。これはもちろん官とそれから産業、学ですか、この三つからそれぞれ優秀な人材を集めて、現在六チームでもって二十数億というふうな、当初予算ですから非常に小さいわけでありますけれども、そういうことで新しい先端技術の開発をやろう。中川長官は非常に意欲的でございまして、当時の渡辺大蔵大臣に対して、将来は五百億ぐらいまでいきたいと、こういう非常に積極的な形で進められております。  私はそういう意味で、従来から文部関係のいわゆる学者さんあたりは、一体なぜもう少しいい研究が積極的にできないんだろうかなあという心配もしておったわけでありますが、どうなんでしょうか、今度推薦制に持っていった場合に、いまの倍ということになりますと、大体十四億円ぐらいだと思いますが、このぐらいの経費でどのように機能が変わるんでしょうか。いままでよりは少しよくなるという程度でしょうか。それとも具体的にこういう面が非常に助かるしもっと活性化ができると、そのようにおっしゃるんでしょうか。もしそういうようにおっしゃっていただけるんなら、大臣に対してぜひ予算をということで、はっきりここで約束をしてもらうような質問をさせていただきたいと思いますが、会長どうでしょう。
  245. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 金額として幾らというようなことははなはだ申し上げかねることでございます。  また非常に大きなお金を一遍にいただきましても、それに対して実際に活動できるかどうかいろいろむずかしい点もあろうかと思いますが、改革された学術会議が出発するということになれば、当然やります仕事の中身を十分考えて、集中的にいろいろなこと、できることをやるということが必要であろうかと思います。国内での問題につきましても、学問の動向その他について将来を見渡すような作業というようなものも必要かと思います。そういう場合には調査費というようなものも、調査活動に要する経費というようなものも必要でありましょう。  それから日本学術会議では、国際会議を毎年幾つか主催しておるわけでございます。これは学会と共同して主催するわけでございますが、そのようなものももっと活発にすべきだと、実は御要求も大変たくさんあるわけでございますけれども、その御要求にこたえられない。  それから、そういう各国際会議ばかりではございませんで、国際的な学術研究の組織への加盟の問題というのも、これも予算上の理由からずいぶん長い間とまっているわけです。とまっていると申しますのは、学問の進展に応じましていろんな分野からそういう御要求が出ているわけですけれども、そういう御要求にこたえられないというような面も多々ございますし、そういうものを一遍にということもむずかしいかもしれませんが、できることから順々に着実にやっていきたい。それで、そういうようなことを検討いたしまして予算要求の方もお願いいたしたいと思います。
  246. 小西博行

    ○小西博行君 大臣どうですか、いまの倍という非常にどんぶり勘定的ではありますけれども、そのぐらい出してもらったらかなり前向きに、積極的にできるんだと。私その金額そのものは決して大きな金額ではないというふうに思うんです。ただ、私は思いますのに、これは事務長にもぜひ聞いてもらいたいんですけれども、やっぱり国のいろいろな諮問を受け、答申し、そして学術会議を盛り立てていくというのは、政府そのものは当然ですけれども事務局体制というのが少し弱いんではないかなと、言うなら、もう会長と一身同体になりましてどんどんサポートしてあげられるようなそういう体制でなければいけない。七十数人も大ぜいおられて、どうも私はその辺の活動が鈍いんではないかなという感じがしてならないんですけれども、その辺の対応はどうですか。今後のことですよ。
  247. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 非常に厳しいお話でございますが、私どもとしましては私どもの能力の限り、事務局といたしまして会長を初め会議体を補佐いたしておるつもりでございます。ただ、仮にこの法案が通りました場合には、臨調答申等でも指摘しておりますような機構、定員等の簡素、合理化というふうなものが必要かどうか、私どもとしましてはむしろ端的に申しますと、仮に今度の改革によりまして学術会議の機能あるいは果たすべき使命というふうなものが拡大するということであれば、さらに私どもとしては事務局体制あるいはその機能につきましても十分に分析をした上で、さらに充実強化するように、必要があれば私どもとしては関係方面にも十二分に要請してまいりたいと考えております。
  248. 小西博行

    ○小西博行君 これは総理府の所管になりますから、私はスクラップ・アンド・ビルドという行革賛成派でありますから、ぜひとも、量の問題じゃなくてこれは質の問題があると思うんです。学術会議はどういうことを事務局に対して要求しているという問題も非常に私は明確なものがあるのではないかと思うんです。会長さんに言ってもらってもいいんですけれども、恐らくたくさんの不満もあるし、あるいはこれからぜひこういうふうにやってもらいたいというのもあると思いますので、これは長官、ぜひ最高のメンバーで最高のシステムでサポートできるようなそういう体制に、予算面だけじゃなくて、予算も上げてもらわなきゃいかぬと思うんですが、その両面をぜひ長官時代に実現していただきたい、このように思いますが、これは所見だけで結構ですが、お願いします。
  249. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいまの小西先生のお考え、もっともだと思いまするので、御趣旨を十分体してひとつ努力させていただきます。
  250. 小西博行

    ○小西博行君 具体的なことを聞くようなんですけれども、この推薦だとか選挙だとかいろいろ手続上の予算が、今度は選挙は実際的にはやらないんですよね、推薦制度ということなんですが、一昨日もお話を聞きますと、大分経費が余分にかかるんだということを聞いておるわけです。大体一億円ぐらい余分にかかるんじゃないかということを聞いておるんですが、これはどうなんでしょうか、ちょっと教えていただきたいんですが。
  251. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいま五十八年度予算におきましては、先ほど申し上げましたとおり法律上予定しておりました選挙経費として一億円余を計上いたしておるわけでございます。ただ、仮に推薦制に移行した場合にはこの経費は不用となるわけでございまして、その意味での一億円ということは私どもわかるわけでございますが、ただ、今度の推薦のためにどういう費目がどの程度必要であるかということについては、まことに残念でございますけれどもいまの段階ではまだ試算いたしておりません。しかし、十分この制度が円滑に働くような必要な予算については、私どもとしては全力を尽くして要求してまいりたいと思っております。
  252. 小西博行

    ○小西博行君 私は、特にさっき言いましたこの合理化という問題は、当然政府もそこに焦点があるんじゃないかというちょっと感じがいたしますので、定員を決める場合というのは、やはり仕事内容といいますか職務といいますか、それと、学術会議は、先日一番最初お聞きしたと思うんですが、やっぱりその目的とか機能、この辺を明確にしないと決まらないと思うんです。これは何も学術会議だけじゃなくて、政府のいろんな合理化問題が出るたびに私そういう問題があると思うんです。ですから、人数ばっかりたくさんいるから機能が十分果たせるという種類のものじゃないような気がするんです。それだけに私は、事務長としても内部の機構とかそれから定員の簡素合理化、こういう問題をもっと徹底的にちゃんとした案を持っておられないと、もう一方的につぶされてしまうという可能性が私は出てくるのじゃないかと思います。  特に、これは一般の企業でもそうなんですが、現業部門といいますか、つまり生産とか販売の部門はわりあい量的な扱いをやっておりますからそれほどつぶされないのですが、どうしても研究部門ということになりますと、この数年の間にどれだけ新しいものが出たかどうか。この間も同僚委員の方からそういうのがありましたけれども、そういうことで削られる要素というのは非常に強いと思います。同時に私は、研究というのは何年かむだなことをしながら、そこに一つの輝く星のようなものがばっと出てきたら大成功の部類もあると思うので、私はその辺の体制を、事務長だけではあれかもわかりませんが、総理府としてちゃんとしたものを、学術会議相談されてつくっておかないと、特に事務局体制は危ないのじゃないですか。その辺の決意をできれば聞かしてもらいたい。
  253. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 事務局からお答えすべき筋のものもあるかと思いますけれども、私、会長として事務局の皆さんが働いている姿を拝見しておりますが、非常に熱心にやってくださっております。ことに現在などは、連日徹夜のような状況でお仕事をやっておられますが、この問題ばかりでなく、ふだんのもっと平常的な活動にいたしましても、いまの職員の方々は非常に熱心にやっておられまして、実はこれは学術会議一つの大きな問題でございますけれども、会員といいますものは、たびたび申し上げますようにほかに本務を持っていて、そしてときどきにしか来ない。実際に会員が学術会議に来られるのはそう頻繁ではございません。文書の上での連絡とか電話の上での連絡とかそういうこともございますが、実務的なものはすべて事務局にお願いしているわけでございます。  そういう意味で、まことに縁の下の力持ちというか、学者というものはわがままなものでございまして、なかなかそういうことを察しないという向きも往々にしてございまして、事務局の方にお気の毒に思う面もありますが、にもかかわらず非常に熱心にやっておられます。  それで、本来でしたらもっとやるべきものがたくさんあるということも事実でございます。特に私自身の感想で申し上げれば、学術会議自体のいろんな活動、それからいろんなところから集まってきます重要な資料とか、そういうようなものにいたしましても、そういう資料をちゃんと整理して、そして御要求があればすぐにお渡しできるとか、そういうようなシステムなども非常に重要な一つの問題ではなかろうかと思いまして、そういうことにつきましては、事務局の方でも常に御検討にはなっておりますが、それはただ一例でございまして、事務局学術会議をサポートする者としてやっていただかなきゃならないものは決してふえこそすれ減ることはない。いろんな意味で合理化も必要でございまして、もっと能率的にやる必要もあると思いますが、それは人の面と、同時にいろんな予算あるいは機構といったようなものがあろうかと思いますので、この辺は事務局に十分検討していただきたいと思っております。
  254. 小西博行

    ○小西博行君 もう時間がなくなりましたのですけれども、私も大変責任を感じているというのは、議員の一人として、やっぱりもう少し私自身もこれから学術会議にひとつ興味を持って、元学術会員というのは何名もいらっしゃるわけですから、これから大いに関心を持っていろいろまた教えていただきに参るかもわかりませんし、私はそのことが非常に大切だと思うのです。長官も、きのうでしたかおとといでしたか御質問があって、ぜひともそういう大会のあいさつにでもお伺いしたらどうだろうとか、いろいろのお話がございましたが、私はそのことは非常に大切じゃないかと思うのです。私自身は、当初申し上げたように多少不安感がありまして、学術会議というのは、この法案が通過してもよくならぬのではないかなと思ったのです。ですから、私はどうなのかなと、むしろ反対の姿勢でいこうかなとかいろいろ考えておりましたのですが、まあしかしだらだらというのもどうもぐあいが悪いし、せっかくこういう法案が出されようとしているわけですから、私は、これをひとつ機会に、いろんな改善点というのはむしろ内部にもたくさんあるし、それから政府側にももうこの間の論議どおりやるべきことをやってないことがたくさんあるわけですから、そういうものを反省していただかなきゃいかぬと思うし、それから学術会員自身の問題ですね、一人一人の問題、この辺も世間が非常に厳しくそれを見詰めているということも私は心してもらわなきゃいかぬだろうと思うのです。そういう意味で、私はこれから先、会長さんも大変御苦労だと思いますけれども政府も協力を十分してあげて、日本を代表するすばらしい学術会議にしていただきたいと、そのことを申し上げて質問をきょうは終わらせていただきたいと思います。
  255. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は、日本学術会議法改正案がこのような形で今国会に提出されたことにいささか驚きを禁じ得ないでいる者の一人でございます。  現行の選挙制がいいのか、あるいは今回提案されている推薦制がいいのか、あるいはまた両者を併用するやり方がいいのか、それぞれにまさしくこれは一長一短あると思うのです。どの方式が最もいいのかは決してにわかに断ずることはできないと思うのです。だからこそ学術会議が時間をかけて検討してきたのでありましょうし、いまようやくその方向が出かかったところでもございますから、それなのにいま政府が押しつけるような形で今回のような改正案を出してくるというのは何とも納得できるものではありません。なぜもう少し待てないのだろうか、これは率直な私の感想です。なぜ学術会議が出している選挙と推薦の併用制を採用しようとしないのか、後ほど順次お尋ねしてまいりたいと思いますけれども、率直に私は疑問を感じてもいるわけでございます。いずれにいたしましても、学術を支えている多くの科学者のコンセンサスを得ずして改革案を出すことに私は驚きを感じてもいるところです。  さて、学術会議に関しましては、私ども障害者の立場から見ましても大変強い関心を持っております。学術会議法の前文にもありますように、科学及び科学者が人類社会の福祉に貢献する、この点も大きな使命として掲げられているところでございます。ここで言う「福祉」とはかなり広い意味があろうかと思うのですけれども、障害者の福祉がこの中に含まれているのは当然であると私は 思っております。現に、科学の進歩によりまして障害者の生活あるいは教育、あるいは労働等々のあらゆる領域におきましても実に大きな可能性が開けてきておりますし、今後もさらなる発展を期待するところはきわめて大きいと私は思っております。科学と福祉とが直接つながることは必ずしも多くはないかもしれませんけれども、しかし学術会議がこの分野で具体的に貢献してくれたことを忘れることはできません。  一昨日の当委員会におきまして、私はちょっと事情がありまして質問することができなかったんですが、それらの質問の中身を伺いますと、学術会議は何をやっているのかというような議論もあったようでございますが、私は昭和五十二年五月の「リハビリテーションに関する教育・研究体制等について」という日本学術会議の勧告を改めてここで話題にしたいと思っているのであります。  福祉というものは一日一日変わっていきましょうし、人間の住んでいるところには必ず障害者がいるのがまた正常な人間社会だろうと思うんです。障害があるとその地域に住めないとか、障害者は国民ではないという方向がもし考えられるとするならば、それは大変危険な社会だと言わざるを得ません。  昭和五十二年はくしくも私が国政に参加した年でもありましたので、このときのリハビリテーションに関する教育・研究体制等についての日本学術会議勧告というのを当時一生懸命勉強したことを思い返してもいたわけでありますが、まず、この勧告を学術会議がお出しになったその背景ですね、昭和五十二年のことになりますが、その理由というものをまず冒頭承っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  256. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 先生ただいま冒頭におっしゃいましたように、学術会議といたしましては、人間性の尊厳、平和に立脚いたしました科学技術の振興を図るという立場を堅持していたところでございますが、特に障害を持った方々の問題にも従来から深い関心を払ってきておるところでございます。しかしながら、わが国の社会福祉体制の整備が諸外国に比べまして大変立ちおくれているというのも、これも事実でございまして、そのため昭和四十九年の第六十五回総会におきまして、障害を持つ方々教育福祉を含めました「社会福祉の研究・教育体制等について」という勧告を行ったところでございます。  ところで、一方、国際的に申しますと、国連におきましても、昭和五十年に障害者の権利に関する宣言が採択されまして、これは先生承知のところとは存じますけれども、リハビリテーションに関する教育体制重要性がその中でうたわれているところでございます。このような事情を背景にいたしまして、他方わが国の最近の傾向といたしまして、労働災害とか交通事故、公害等による障害者の増加というふうなよくない傾向が見られる反面、リハビリテーションに関する体制というものがきわめて整備不十分であるというふうな事実が幾つかあるわけでございまして、これに対しまして種々検討を加えまして抜本的な施策が必要ではないだろうかということで、リハビリテーション関連の教育・研究体制に重点を置いて勧告をいたしたところでございます。
  257. 前島英三郎

    前島英三郎君 いまお答えがありましたように、日本学術会議昭和四十九年五月にも「社会福祉の研究・教育体制等について」という勧告を出しておりまして、その姿勢は一貫しておりまして、急に思いつきで勧告を出しているわけではないと思うんです。  私は、日本の障害者福祉の最近の歴史を振り返りましたときに、昭和四十年代に各地で芽を出しました障害者自身による町づくり運動を高く評価しているんでありますけれども、そうした運動の広がりをもいち早く視野に入れまして、その時点で何が不足しているのか、これは専門的ないわばハンディキャップを持っている人たちの不利な条件を補う立場の科学者の皆さん、学者の皆さん方が、学術会議という皆さん方を中心とした怪訝な状況等に照らしながら的確に指摘をされ続けたというふうに評価もしているわけです。  そこで政府側にもお尋ねしたいと思うんですけれども学術会議法は第五条におきまして、学術会議政府に勧告することができる旨を明示しております。これは当然勧告を受けたら政府はその勧告に従って最大限の努力をして忠実に実行すべきことがこの条文の前提となっていると思うんです。リハビリテーションに関する勧告につきましてもそうであると思うんですけれども総務長官は、国際障害者年におきましては障害者問題の、総理が推進本部長で総務長官は副本部長、厚生大臣も同じく副本部長、しかも障害者の対策室がこうしたもろもろの状況を反映しまして総理府の中に設置された。いままで厚生省一辺倒の福祉からいわば一つの窓口を総理府に設けながらこうした新しい日本の福祉の始まり、この背景にも学術会議のもろもろの勧告が生かされていたと言えるかもしれませんし、そう私も理解をしているわけですけれども、この勧告を政府としてどのように受けとめたのか、まず総務長官にお伺いをしたいと思います。
  258. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいまの先生お尋ね、大変大事なお尋ねでございますから、そういう気持ちで私もお答えさしていただきたいと思いますが、日本学術会議からの勧告、どういう勧告につきましても、政府といたしましては当然誠意を持ってこれに対処しなければならないものと考えております。  これは当然なことでございますが、特にただいま先生から御指摘のございましたこれらの勧告につきましても、いかに厳しい財政事情のもとにありましても、事柄が事柄であり、大事なことでございますから、重要性にかんがみ、こういうことを本当に誠意を持って目下それぞれ関係の各省において――先生からいまお話がありましたように、各省にこれは関係する、厚生省もやらなくちゃならない、文部省考えなくちゃならぬ、各省が関係を持つことでございまするので、各省においてそれぞれ取り組んでおっていただきますけれども、幸いにいたしまして私のところが窓口になって取りまとめの役所になっておりまするので、先生の御指摘のようにひとつしっかり取りまとめて推進していくように努力さしていただきたいと、かように考えております。
  259. 前島英三郎

    前島英三郎君 少し立ち入りまして、いま長官からも厚生省、文部省というお言葉もありました。厚生省、文部省に具体的に質問をしていきたいと思うんですが、学術会議が出しました勧告はリハビリテーションにかかわる人材の養成確保という緊急の、しかし時間のかかる課題について適切に取り上げたものであったと私は思っております。    〔理事片山正英君退席、委員長着席〕 勧告から六年たちました。時間がかかる課題とは言え、もうそろそろ具体的な結果というものが出てきてよい時期に入ってきているんではなかろうか。大きく五項目ありますが、どのように実行に移してきたのか。取りまとめて厚生省、文部省、それぞれ答弁していただきたいと思います、この勧告に踏まえてですね。
  260. 横尾和子

    説明員(横尾和子君) 学術会議の勧告の中身は幾つかに分れておりますが、すでにその当時身分制度として制度化されていながらも、なお大変な手薄な状況にある職種についてその充実を図るということと、それからまだ職種として確立してない新しい分野について医学の進展をもとにした職種の制度化を図るべきである。大きく分けますとその二つの御提言ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  その前者の方でございますが、たとえて申しますとPT、OTでございますが、勧告をいただいた当時PTではわずかに十一校、OTではさらにそれを下回って五校という状況でございました。非常に強い御指摘も受けましたので、関係者とお諮りをしてまいったわけでございますが、幸いにしてことしの四月の時点ではPTの養成校が三十八校、OTの方も二十四校というところまで到達してまいりまして、当初私どもが、昭和六十年の前半にはこの程度欲しいと思っていたこの職種の充足ということについてはとりあえずのめどがついたという状況でございます。  しかしながら、たとえば一般の養成校ではなくて大学院を、あるいは少なくとも三カ年の短期大学の課程をということについては一部先ほど申し上げました数字の中の七校ほどがそれぞれ短期大学になっておりますが、大学はまだ実現していないという状況で、なお今後いろいろと努力をしていきたいと思っているわけでございます。  それから義肢装具士等の新しい職種の関係でございますが、それは関係者とお諮りをしていろいろ御相談申し上げてきたところでございます。一部につきましてはあるいは実現の合意が得られるかというところまで話が煮詰まったものもございますが、最終的な調整のところで難航しておりまして、なおしばらく実現には各方面、各学会の御理解をいただくことが残されているような状況でございます。
  261. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘のリハビリテーション関係の医療需要の増大に伴いまして、理学療法士なり作業療法士のそれらの医療技術者の養成の増加なりその資質の向上ということは大変重要なことでありますことは、私どもも十分、勧告もいただいておりますし、承知をしている点でございます。そういう点につきましては、私どもも厚生省とも十分密接に連絡をいたしまして、五十四年度以来国立の医療技術短期大学部については理学療法学科及び作業療法学科の設置を進めてきております。現在までに既設が金沢、弘前、北海道、神戸、京都の五つの医療短期大学部に入学定員で、合計で二百名でございます。さらに五十八年度におきましては、信州大学医療技術短期大学部にこれらの学科を設置し、入学定員で四十人の増員をしているという状況でございます。現下の財政状況は大変厳しい状況でございますが、重要性を十分踏まえまして、私どもとしても順次年次的に整備を進めてきておるというのが現状でございます。  それから次に、大学のリハビリテーション医学に関する講座の件でございますが、独協医科大学、東海大学、川崎医科大学、産業医科大学におきまして、その四大学において講座が設置をされているという状況でございます。  ほかに勧告の指摘の中では、一つは「大学医学部ないし医科大学教育において、リハビリテーション医学を必須科目とする」という点がございますが、実は医学部の教育課程については、従来は具体的な基準を決めておりましたけれども、いろいろ大学教育課程の構成について関係者の要望もございまして、各大学が開設すべき具体的な授業料目の個別具体の列挙をやめまして、これは弾力化をいたして、むしろ大学側の対応にお任せをしたというのが今日までの方向でございます。そういうような経緯もございますので、特定の科目について必須として挙げるということについては関係者の意見も十分徴しながら、今後慎重に検討しなければいかぬ課題ではないかというぐあいに理解をしております。  そのほか専門医養成のための卒後医教育の体系の問題も指摘をされておりますが、専門医の養成については日本リハビリテーション医学会において、五十五年度に専門医制度が発足になったわけでございまして、その認定に基づく専門医も順次増加しているというのが現状でございます。したがって、大学附属病院においても、これらの専門医の指導のもとにリハビリテーション医学に関する研修の充実が図られていくということが今後も期待されるわけでございます。  そのほか、先ほど短期大学部の増設については申し上げたわけでございますけれども、四年制の大学ないし大学院課程の設置の問題ということは、大学院問題そのものが大変大きな課題でございまして、今後どのように整備をしていくかという全体の整備の構想についてただいま慎重に検討しているところでございまして、将来の課題ということで私ども考えております。  以上のような点でございまして、私どもとしてもその重要性については十分認識をしまして、大変厳しい財政状況下でございますが、国立の医療短期大学部の設置等についても、今後ともそれらの充実については取り組んでまいりたいと、かように考えております。
  262. 前島英三郎

    前島英三郎君 おとといの委員会で、学術会議は何をやっているのか、何もやってないんじゃないかみたいなことがもしあったとしたならば、私はこういういろいろな勧告、事障害者問題一つをとりましても、大きく世界的にリハビリテーションのいろいろな問題が動きつつある、その中に学術会議では的確な一つの指摘をされ、そこに勧告に基づいて厚生省もあるいは文部省も大変大きなはずみになったのではなかろうかというふうな気がしてならないわけでございます。  いまのお話もありましたけれども、理学療法士、作業療法士の養成につきましては、それなりに目に見える形で成果が上がり始めていることは評価いたしますし、しかし三年制より四年制でやった方がよいのではないか、その方が将来の指導者養成につながるのではないかという点はまだこれからの検討課題であると思います。学術会議の勧告の後老人保健法の成立という新たな状況も生まれているわけですので、一層積極的な対応をお願いしたいと思っております。  一方、リハビリテーション医学教育あるいは研究の充実という面ではかなり物足りないものがあると私は思っております。リハビリテーション科を独立した講座として開設している大学は四大学しかございません。それもすべて私立でございます。リハビリテーションの講義が受けられる大学が十八大学ということで、勧告時の十一校から七校ふえただけという現状だと私は思います。しかも、その内訳を聞きますと、国立大学の場合四十二校中七枚、公立は八校中一校、私立大学では二十九校中十校、これを見ても私立大学に傾いているという感じがはっきりとしているわけなんです。勧告ではリハビリテーション医学を必須科目とすること、こういうことを指摘していると私は理解しております。このようにはっきりと述べているわけですから、この現状と勧告が求めている姿とはまだまだ相当大きな隔たりがあると言わざるを得ないと思います。  項目によってでこぼこはありますし、あるいは実行に踏み切るにはなお時間を必要とする、また検討も要する部分もあるかとも思うんです。しかし、学術会議勧告がリハビリテーションにかかわる人材養成について的確な指針を与え、その関連施策を大きく推進させたことは、私は十分に高く評価すべきであると思っております。逆に、先ほどの厚生省、文部省の答弁に対して私はたくさんの不満を持っているわけなんですけれども、きょうは余りそのことには触れませんが、学術会議がせっかく勧告しているわけなんですから、もっと思い切ってやったらどうかなと、こう申し上げたい部分もかなりあるわけでございます。  そこで、学術会議のあり方一般の問題に戻りますけれども、今日学術会議に関して出てきているさまざまな議論なんですが、学者学術会議離れですとか、あるいは学術会議が目立った仕事をやっていないんじゃないかとか、そんな指摘もあるわけですが、そういった議論が出てくる背景を考えますと、学術会議が果たしてきたじみではあるけれどもきわめて貴重な役割りが十分知られていないんじゃないかということなんです。あるいは勧告を受けとめる政府の側の姿勢に問題があるんじゃないか、もっと積極的に勧告の実行を心がけるべきではなかったのかというふうにも私は思うんです。私はそう思うんですが、学術会議会長はこの点を政府と同じような考えでいたのか、こういう見えない部分に実は学術会議は実にじみではあるけれども大きな貢献を果たしているという自信に満ちたお気持ちを持っておられるのか、ひとつ率直にお述べいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  263. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 大変具体的な例をお挙げくださいまして重要な点を指摘していただきました。たびたび申し上げているわけですけれども学術会議のやっておりますことがじみなところに非常に重要なものがあるということの御認識、大変ありがたいことと思います。私自身もそういうことで、そこに学術会議の本領があるというふうに思っているわけでございます。これまでの勧告等の処理状況を見ますと、これは勧告の中の一部分でございまして、たとえば研究施設というようなものでございますが、研究施設のようなものにいたしましても、勧告したのが六十七ありまして、そのうち実現したものが二十六とか、部分的に実現したものが四とかそういうような、それから現にまだ検討中のものが幾らというようなことでございます。これは研究施設等のことでございますが、研究施設につきましても、学術会議の勧告でできましたものが多々あるわけでございます。  ただ、これは前回にも申し上げたのでございますが、残念なことには、しばらくたつとそのことが忘れられてしまう、そこにおられる研究者ですらそういうような設立のいきさつについてはもうすっかり忘れたという場合もしばしば経験するわけでございます。しかしさればといって、あなたのところは学術会議の勧告でできましたよと、これは、学術会議の勧告は一つのきっかけになったのにすぎないかもしれませんし、そういう場合もございますし、それから学術会議自体はそういうものを実現する力を持っていないわけで、適確な指摘をし、適切な勧告をして、あとは政府の御努力にお願いするということでございますから、何もそう手柄顔するようなことではないと思いますけれども、いま先生の御指摘のように、やはり長い目で、そしてじみな仕事評価していただけるということは大変ありがたいことです。  私はそれに対しては、最近の状況を見ますと、財政状況もありそのほかのこともあり、必ずしも勧告がスムーズに運ぶというふうにはまいりませんけれども、それでもやはり大事なことは、勧告なり何なりということは当然やるべきことである。もちろんそれがすぐに実現するかどうか、別な問題がございますけれども、やはり学問の長期的なこと、学問が社会にどう役に立つか、そういうことの展望に立って言うべきことを言っていくということは非常に重要なことであると思っております。
  264. 前島英三郎

    前島英三郎君 当事者の方はともすれば勧告した後忘れがちになるかもしれませんが、しかしさて与えられた勧告にまつわるいろいろな人々は、それがもう本当に宝物のように一つの目的に向かって邁進をし、またその動向がどう変わっていくのかというのは十分見守っているわけですから、私は、いわばお産のときのお医者さんのように、まあ確かにその部分が一番大切なんじゃなかろうかというような気がするんです。それが果たして現実的に実行されているのかどうかというのは、これはもう政府あるいはまた私たち一つ努力の結果によらざるを得ないと思うんです。  そこで、日本学術会議の会員の選出方法の問題に移っていきたいと思うんですけれども、確かに学術会議は、時代の変化に伴ってそのあり方に改革を加えるべき時期に来ているのは多くの人々が同意するところだと思うんですけれども、しかしどのように改革するかについては、現時点では多くの人々のコンセンサスを得ているとは思えません。  そこで、学術会議会長久保さんにまた引き続き伺いたいんですけれども日本学術会議は昨年十月、改革の要綱をおまとめになりました。その中で会員選出制度につきまして「会員の選出制度は有権者の直接選挙によることを原則とする。ただし、定数のおよそ三分の一について、コオプション制を加味した推薦制を採用する。」としておりますけれども、このような形にした理由、考え方というものについて、ほかの皆さんからも御質問があったと思うんですが、私も改めて御説明をいただきたいと思います。
  265. 久保亮五

    参考人久保亮五君) ただいま御指摘の自主改革要綱として、会員選出につきましては三分の一を推薦、三分の二を公選ということを改革要綱で提言しているわけでございますが、直接選挙制というものは、やはり民主主義の原則から見れば最も望ましい。それから科学者の代表としてだれがふさわしいかを判断するのは科学者自体でございますが、これを選挙によるというのが、表現としてはあるいは測定としては最も端的な方法である。それから学術会議の独立制というものともこれは非常に密接な関係がある。科学者との直接の結びつきということから見ても直接選挙制というものは残しておく必要があると、こういうようなこと。  あるいはまたその一つの、ずっと有権者という概念がございまして、科学者は自分たち選出するという権利を持ってきたと、こういうようなこともあります。しかし一方、三十何年間行われてまいりました直接選挙制につきましての、弊害とまで申しませんでも問題が非常にたくさんあるということは、日本学術会議自体におきましてもよく認識していることでございます。この改革問題につきましてはアンケート調査等もいたしたわけでございますが、その御返答の大多数は選挙制の何らかの改革というものが非常に重要であるということを指摘しておられるわけでございます。ただ、それをいかに改革するかということについては非常に意見の分かれるところでございまして、この改革要綱はいわばそういう非常に分かれている意見の集約としてこういうものを打ち出した、公選制は残す、しかし、それでは不十分なところあるいは欠陥があるから、それを三分の一は推薦制ということにしてその欠陥を補うことにしたらどうか、これが改革要綱で提案したところでございます。  学術会議といたしましては、先ほども申しましたように、選出制度の改革というのがすべての人の指摘する重要問題であるということはよく認識しているわけです。先ほども申しましたように、さればいかなる具体的方法がいいのかということについては非常に意見が分かれる。それでその集約としてこういうものを打ち出したということでございまして、この改革要綱をまとめましたときに、これが学術会議として考えられる最善のものであるということでありました。その考えはいまでも変わっておらないわけでして、学術会議の提案している方法が一番いいということには変わりないわけでございます。
  266. 前島英三郎

    前島英三郎君 選挙制を原則として三分の一を推薦制にするという方式についていま伺ったわけですけれども、これもいろんなアンケートをとりながら伺ったということですが、そこでどの程度まで煮詰まっていたのか、そしてまたその後どのように検討して結論を出す御予定だったのかという、この辺はどうなんでしょうか。
  267. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 改革要綱を出しましたのは去年の十月でございまして、それ以後、これはそういういわば原則のようなことをうたっているわけでございまして、それを具体的にどのように詰めるかと、具体的な方策としてどういうことをやるかということにつきましては、改革委員会で検討をさらに重ねてはまいりました。一方、総理府の方から長官試案というものが出てまいりまして、それと、その検討も進めなけりゃならないというようにところで、この改革要綱自体検討はこの法案に対応するほどには詰めておりません。
  268. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうは詰めてはいないといいましても、それは流れが非常に変わってきてしまっている部分もありますけれども、煮詰めざるを得ない状況に追い込まれていることも私わかるんですが、日本学術会議は、今月十八日から定例総会を開催することになっていると聞いております。私のところに陳情、要請がたくさん来ておりまして、その中で、せめて総会の成り行きなり結論を見た上で改革案を出すべきだということもほとんどの方が一様に訴えておられるんですね。昨年十月に学術会議としての改革の要綱が出たわけですから、今度の総会では、この要綱についての会員の意見というものは当然出てくると思うんです。  選挙というのは、これはどれもそうですが、有権者が主役でなければいけないわけでありまして、それは当然。昨年の十月、まだ一年もたってないという状況の中ではいろんな意見が予想されると思うんですが、この意見を踏まえて改革の方向を煮詰めていくのは、きわめて私は自然な形であると思うんですけれども会長さんは、この辺はいかがなものでしょうか。
  269. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 御承知のことと思いますけれども、この選出制度を中心とする問題につきまして、総理府としてはこの要綱の線を認められない。それで、長官試案の、学協会を基盤とした科学者の自主的な選出という方式で法案をつくりたいという強い御意思でございまして、それを動かすことはできなかったわけでございます。  それで、これも繰り返しになりますが、その条件のもとでも会長及び副会長としては、対政府の折衝をせよという総会の御命令でございまして、それで、この法案の作成の段階に入りましたときには、会長、副会長といたしましては、その枠の中でも改革要綱の基本的な精神を最大限に生かすべく努力を重ねてまいったわけです。その結果、こういう法案が提出されたということになったわけでございますが、御承知のように、学術会議内部でもいろいろな意見が分かれておりまして、賛成の意見もあれば反対の意見もある。ただ、問題はかなり複雑でございまして、一色にただ賛成とか反対とか割り切れない問題が多々ございます。  そういうようなことで、前回の臨時総会でも意見がまとまるには至らなかったわけでございます。来週に予定されます総会で、もちろん会員の間でこの問題は論議されることと思います。この法案国会に提出された段階におきましては、国民の代表である国会がこれをどう御判断なさるか、それを十分御検討いただきたいと思うわけでございますが、学術会議といたしましては、来週の総会でももちろんこの問題は討議されると思います。先ほど申しましたように、問題はかなり、かなりといいますか、非常に複雑な問題でございますので、十分慎重に協議したいと思っております。
  270. 前島英三郎

    前島英三郎君 参考人にもう一点お尋ねしたいんですけれども日本学術会議は、昨年十月改革の要綱を提出した際に、そしてまた、本年一月に推薦制についての検討結果を報告した際にも、政府に対して日本学術会議の意見を尊重するよう重ねて要望している経緯を私は承知しております。にもかかわらず、政府の提案は明らかに学術会議の意向を無視したものとなっているわけですね、現実には。政府のこのような行き方について、学術会議会長としては当然きわめて遺憾に思われているのではなかろうか。御答弁にお疲れがあるのかどうかわかりませんが、賛成とも反対とも言えないとか、いろんな意見の述べ方をされておられますが、私はきわめて遺憾に思われていると推察するんです。改めて参考人の率直なお気持ちを伺ってよろしいものかどうか、いかがですか。
  271. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 改革要綱の提案自体が認められておりませんことは遺憾と思います。ただ、しかしながら会長といたしましては、改革要綱の基本的精神を総理府に御理解いただくことについては、最大限の努力をいたしまして御理解はいただいておると思います。それで、そのことが今次の法案の上にもあらわれているとは思っております。
  272. 前島英三郎

    前島英三郎君 それでは政府に伺いますけれども日本学術会議の改革に関して、前にも触れました学術会議自身の改革要綱と、それから推薦制についての検討結果が出ておるんですが、このほか総務長官の私的諮問機関として日本学術会議に関する懇談会が、昨年十一月でしたか、一つ報告を出しております。この三つ報告について、政府はそれぞれどのように受けとめられ、どのように検討をし、その結果今回の政府案にどのように反映をされたのか。先ほど会長は、その意見もかなり反映されておるというようなお答えがありましたが、この点をまず承っておきたいと思います。
  273. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 学術会議の改革問題、学術会議自体昭和二十四年にできまして、二十年たった第八期から問題になっておりました。それはやはりなかなか結論も出ず、今回の十二期になって法律改正も含んで検討するというふうに、学術会議側もいわば熱意を持ってやるようになったことは事実でございます。片や自民党の方でも、学術会議に対する改革が必要ではないかということで特別委員会もつくられ、中間提言なども出された。  そういった状況を踏まえまして実は懇談会が持たれたわけですが、その懇談会には学術会議の改革案、試案段階ですが、当時の会長以下の方もお見えになって御報告も受けました。そのときに責任者であった方がちょっと述懐されていましたが、自分で座っているいすを持ち上げるのはなかなかむずかしいものですというふうな述懐をしておられました。正直、その懇談会の先生方も、自主改革要綱の中身を伺って、どうも中途半端だな、まだ足りないという意見が実は多数を占めていたわけでございます。  そういうことで、懇談会の結論は前にも申し述べましたように、十五人の方ですが、やはり一つの意見にはまとまらず四つの案になった。その四つの案のうちから、総務長官が技術的な処理ということも考えまして、いわば自主改革案に一番近い形の案を採択して、それでその検討学術会議側にお願いをし、学術会議の特別改革委員会の中の分科会で御検討いただいて、それに対する技術的なものでございます、評価を加えてないとなっておりますが、報告書をいただいた。その報告書をもとにしまして、それと二月の総会で対政府折衝の窓口は運審等を経ることになっておりますが、会長一任ということを踏まえまして、その報告一つの基礎にしまして、実は今度の案を会長あるいは副会長と何度も何度も協議を重ねてつくり上げたものでございます。その際には、学術会議側の御意見、まあ全部が全部私ども取り入れたとは申しませんが、極力私どもとして理解できる御意見は取り入れてこういう成案を得たというふうに、自信を持って言えるかと思います。
  274. 前島英三郎

    前島英三郎君 自信を持ってとおっしゃったと思うんですが、要するにそうしたいろんな報告を、肝心な点は無視して政府案をまとめましたというのが実態であろうと私は思っているんですが、改革要綱を初めこれらの報告は、いずれも最終的なものではなくて、幾つかの案を併記するなど、今後の検討にゆだねる部分を多く残しております。特に、懇談会の報告はその結びで、「何れの案についてもそれぞれ問題点が指摘され、本懇談会として一致した結論を得るには至らなかった。」と述べておりまして、さらに続けて、「結論を得るには今後なお相当の時日を要するものと思われる。」と述べているんです。ただ、あなたの答弁のように歯切れが余りよくありませんですね、こちらの方では。  こうした意見を尊重するとするならば、当然、もっと関係者と協議を重ねて、学会国民のコンセンサスを得た上で法案の提出をすべきであることは、これはだれの目にも明らかだと私は思うんです。それにもかかわらず、かくも不自然な形で改革を急ぐ理由はどこにあるか。政府は何か特別の意図を持って学術会議を強引にどこかに引っ張っていこうとしているのかと、いろいろ憶測はされているんですが、その辺はいかがですか。
  275. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) ことしの十一月に予定されています選挙をいまのままでやった方がいいという意見は学術会議側の内部を見ましてもごく少数だと思います。懇談会の十五人の意見は、ほとんど全員がそれはまずいということでございました。ところが、懇談会では大きく四つに対立してしまった。その意見をもう少し詰めていくのに一年間ぐらい必要ではないか。ただ、そういうことになりますと、一年間新たな機関をつくってその問題を検討してみてもとても間に合わないということでございます。そういうことで時の総務長官は、やはり現実的な処理という点も考えまして、実現可能性の強い案、懇談会の中でも多数説を占めた意見を取り上げて今度の案に持っていったものでございます。
  276. 前島英三郎

    前島英三郎君 民主主義ですから、これは多数決というのはある場合はやむを得ないにいたしましても、いろいろ混在した問題があるとしたならば、それをやはりきれいにしてこそ初めてすべての意見が私は反映されるというふうに思うんです。  そこで伺うんですけれども、急ぐ理由はまだよくわからないんです、私。急ぐのであれば、学術会議がたたき台を示しているんですから、その線に沿って急げばいいんじゃないかなと、こうも思うんです。三分の一の推薦制にするという案が出てますね。これはどうしてだめだったんですか、その辺はどうなんです。
  277. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) ほかの先生方の御質問に再三お答えした質問でございますが、いまの選挙制度にはやはり学者離れ的な現象が多々見られるわけですね。この方こそと思われる方が立候補もされない。ですから、競争倍率も落ちております。有権者の数は徐々にふえてはおりますが、投票率は逆に減ってきている。現実に無競争で当選する方も多い。そういった問題が一つあります。  それからもう一つは、日本科学の発達に照らしていまの学術会議が機能してないじゃないかという批判は昔から、私どもだけじゃありません、いろんな方面であるわけなんです。会員選出についても、私はいまの選挙というのを縦割りで細分していってやるよりも、むしろ学協会を基盤にして研連を母体にすることによってそれを反映することはより可能であり、しかもそれによって日本のいまの学術会議の重要なファクターである研連機能、それも充実できるではないか。私どもとしては一石二鳥をねらったつもりでございます。
  278. 前島英三郎

    前島英三郎君 僕はいままでの話を聞いていまして、昨年の六月ごろをふっと思い返したんですよ、六月ごろを。それは何だったかというと、参議院の全国区制、これですね。今回提案されている推薦制について少し立ち入って見ると、全体的な印象として私は、参議院全国区を拘束名簿式比例代表制にしたときと同じような感覚を持っているわけです。現に類似している点が随所にあるんですよ。いいですか。制度が複雑でわかりにくい点、候補者個人よりその推薦母体の学協会の意向が優先される点、あるいは、登録学協会の登録要件については、選挙法の政党要件の問題と相通ずる問題が含まれておりまして、参議院選挙制度の論議ではよりふさわしい人についていろいろ意見が闘わされたんです。学術会議法の場合でも、制度の改革によってよりふさわしい会員が選出されるよう心がけていくべきだと私は思うんです。  どのような会員がよりふさわしいのか。それは抽象論になってしまいますから、法案に即してお尋ねしてまいりたいと思うんですが、このあと十五分までということですから、実はこの部分は一気にやりませんと、間に休憩を入れたんじゃどうにもならない話になっちゃいますからここまでといたします。理事会の後、引き続いてやらせていただくということでございますから。     ─────────────
  279. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) この際、委員の異動について御報告します。  本日、宮之原貞光君が委員を辞任され、その補欠として対馬孝且君が選任されました。  なお、会議の運営上理事会を開きますので、しばらく休憩をします。    午後六時六分休憩      ─────・─────    午後六時三十一分開会
  280. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  中曽根総理大臣出席されましたので、質疑のある方は順次御発言を願います。
  281. 粕谷照美

    粕谷照美君 総理もすでに御存じだと思いますけれども、この法律案は、会員の選挙をやめて推薦制にしよう、そして、その推薦された会員を総理が任命しようと、こういうことであります。この委員会で大変問題になったのは、そういうことをすることによって学術会議の独立性が侵されるのではないか、こういう心配がるる出されました。そのことについての総理のお考えをお伺いしたい。  二番目には、学術会議の本来の職務であります勧告や答申、そして要望などについてもなかなか政府の対応がはっきりしない、こういうことも議論の中で出てまいりました。そういうことについて、政府はその趣旨を尊重して適切に対処をしなければならないと、こういうふうに考えるわけでございますけれども、総理のお考えをお伺いいたします。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 学術会議法改正につきまして、従来の選挙制度がいわゆる推薦制に変わりましたが、これはいままでの経緯にかんがみまして推薦制というふうになったのであるだろうと思います。しかし、法律に書かれてありますように、独立性を重んじていくという政府の態度はいささかも変わるものではございません。学問の自由ということは憲法でも保障しておるところでございまして、特に日本学術会議法にはそういう独立性を保障しておる条文もあるわけでございまして、そういう点については今後政府も特に留意してまいるつもりでございます。  また、勧告や上申等につきましては、いままでかなりの数の勧告や上申がございまして、中には政府が取り上げてこれを法律にしたものもございます。私もそういう記憶がございます。そういう意味におきまして、今後とも内容がりっぱで必要であると考えられる上申等につきましては、これを採択いたしまして、必要な処置を講じていきたいと考えております。
  283. 粕谷照美

    粕谷照美君 この学術会議職務を充実するために、会員の方々が大変手弁当で努力をしていらっしゃる、こういうこともるる述べられました。そしてまた、予算を見てみますと、海外旅費などというものも大幅に削減をされているわけであります。こういう予算面についても、非常に国家財政も厳しい折ではありますけれども、格段の努力というものが必要だと思いますが、総理のお考えをお伺いいたします。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本学術会議は国際団体にも入っておりまして、国際間の交流も多いと考えております。特に、現在の科学技術の情勢を見ますと、国際的交流の必要性というものは非常に増大してきていると思います。そういう点につきましては、政府といたしましても今後とも予算上においてできる限りの努力をいたしたいと思っております。
  285. 田沢智治

    ○田沢智治君 総理に一問だけお聞きいたしたいのですが、今日やはり国民の多くが、がんに悩んでおる。がんを制圧して国民生活に安定と福祉の光を与えたいというようなたくましい姿勢の中で、意欲的にそういう問題を内閣挙げて取り組みたいというような総理のお考え、そしてまた、社会が高度化し多様化すればするほど、学術研究も多様化し、細分化されて、特に遺伝子の組みかえができる情勢、試験管ベビーができる情勢、心臓そのものがおかしければ心臓を取りかえることもできるというような、いろいろな高度な科学技術の発達の中で、多くの国民が一面において期待するもの、一面において危険性というものを感ずるものが私は交差していると思うんです。  そういうような時代の中に立って、今後学術会議が果たさなければならない問題も数多くあると思いますが、政治家に政治倫理が求められるように、人間の生命の尊厳というものに対する扱いが絶対的倫理の確立を図る、学術会議がそういう使命を果たきなきゃならぬ問題がたくさんあるんじゃないだろうか。  そういう意味において、今後学術会議そのものが多くの科学者に、広い視野に立って、いろいろ細分化される中で参画いただいて、より充実した学術会議の方途を私は望みたいわけでございます。果たしてそういう目的、内容が、今回の改正で総理は具備されると思われますか。あるいはそういうものを踏まえて今後期待するために政府原案をつくって提案したんだというようなお考えでございますか。御所見をお伺いしたいのでございます。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は昔、科学技術庁長官を二度ほど務めたことがございますが、やはり学問評価というようなものは必ずしも投票になじまないものがあると思っておりました。むしろ学術的に優秀な人はそういう世俗的な投票を獲得する運動というようなものには無関心な方々が多いんです。そういう面も私の経験では多少ございました。  そういう面で、今回選出制度を改めまして学者同士が推薦する、そういう形になったことは、ある意味において質を高めるゆえんであろう、そう考えておりまして、この法案の妥当性があると思っておるわけであります。たしか向坊君が落選したという話を前に聞いて、東大総長までが落選するというのではちょっと困った話だなと当時考えたことがあります。  そういう意味において、この法案一つの大きな前進を示していると思うんです。これだけで完全であるとは思っておりません。いま田沢委員御指摘のように、非常に科学技術の分野が人間の倫理性と接触する部分が出て参りまして、遺伝子の組みかえというようなことが、人間の尊厳性とか生命の問題にも触れる問題も出てきたわけであります。したがって学術会議におかれても、こういう方面から人間の生命とか人間の尊厳性というものをよく深く考究されて、これをいかに扱ったらいいか。学術会議は総合的な学者の集まりでございますから、自然科学も社会科学もあるはずでございますから、そういう一番適したところではあると思うんです。もちろんほかの分野でもそういうことをやる場所はずいぶんございますが、学術会議あたりは適当なところであると思います。  いずれ私は、そういう人間の尊厳とか生命の扱いの問題というものは人類共通の課題でございますから、一国だけでやれるものでもなし、やるべきものではない。国際条約をもって世界人類が一致して行うべき性格を持っておる、いずれ条約を締結すべきほどの問題であると思います。そういう意味において、学術会議等はこういう分野において大いに貢献されんことを期待しておるものであります。
  287. 高木健太郎

    高木健太郎君 私も以前二期、六年にわたりまして学術会議の会員でございました。その間、勧告あるいは申し入れ等を行ってきたわけでございますが、この日本学術会議ができました当初におきましては、いまで言えばりっぱな方がたくさんおいでになりまして、そのころは政府からの諮問も非常に多かったわけでございます。しかし、ここ十年ぐらいと思いますが、次第に減ってまいりまして、現在では政府から諮問があるというのは年に二つぐらいしかないのではないかと思うわけです。  学術会議の会員の構成につきましては、いろいろなうわさ、風聞もございますけれども、私から見ますというと非常にりっぱな方々が全国からそこに集まっておられるわけでございまして、現在、いま総理がお話しになりましたような非常に学際的な、あるいは国際的な問題の多い中では、学術会議に諮問をされて、その意見を聞けば非常に私は参考になると思うことがたくさんあるわけでございますが、近来そういうことをされたことがございません。かなりの苦しい財政の中で政府は予算をとっておられますし、また学者も一方では自分の仕事があるにもかかわらず会議場に集まって熱心な討議を続けている、それが何ら報いられないといいますか、非常にむなしさといいますか、無力感といいますか、そういうものを味わった経験がございます。これは国家予算にとりましても非常にむだでございますし、学者を集めておいて何もそこから引き出さないというのも大きな私は人間の材としてのむだであると思うわけです。  今後は、ひとついろいろな問題につきまして、単にそのときどきの審議会をつくるというのではなくて、この学術会議を十分利用していただきまして、そして活用をしていただきたい、こういうふうに思っておるわけでございますが、それにつきましても非常に財政が苦しい、手弁当でというお話がございましたが、確かに私も手弁当で何回も参りました。そういうことのないようにひとつ総理はお考えいただければありがたいと思っております。  二つの事項、学者を活用させる、また種々の問題についてもそこに諮問をされる、その答申を十分尊重していかれるということと、財政的なバックアップをしていただきたい、こういう希望でございます。
  288. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまの二点につきましては、私も努力をいたしたいと思います。  まず、私の方の願いを申しますと、どうぞ学術会議の皆様方がその職責に目覚められまして、初期から中期のころややもすると政治的に流れた部面がなきにしもあらずでありました。そういう点で政党や社会の一部の反感を買った点がございます。やはり学者あるいは学術会議として中立的態度を堅持されて、あくまで学問中心に科学的にお考えになり、また処置されんことを期待しておる次第でございます。
  289. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 一九四八年一月にこの日本学術会議が発足をいたしますとき、その発会式において、当時の片山総理大臣がどういう祝辞を述べておるか御記憶ですか。
  290. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大分昔のことでありますから記憶ございません。
  291. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 「その」、これは学術会議の、「使命達成のためには、時々の政治的便宜のための制肘を受けることのないよう、高度の自主性が与えられておる」、こういう祝辞を当時の総理が述べておられるわけであります。  そこで、今回の政府の態度、すなわち強引に公選制を変えようとする今次法案は、学術会議に制約を加え、高度の自主制を阻害するものではないでしょうか。
  292. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのようには思いません。学術会議がさらに活性化され、国際的にももっとりっぱな、機敏な活動ができるようにという配慮からこういう改革が行われるものと考えております。
  293. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 五月八日のNHKテレビを通しての政治討論会、ここにおいて自民党の参議院国対委員長中山太郎氏が大変重大な発言をしている。特にその要点を再び、総理には初めてでありますのでここで申し上げておきたいと思うわけでありますけれども、国立大学の学長の中で学術会議の会員になっておる人は一人もいないと。これは実際当、委員会でも公式に学術会議事務局にただしますと、四人現存をしておられるということが明瞭でありますし、さらにもう一つの点といたしまして、今回の法案学術会議久保会長と合意の上これを提出してきたと、こういう言い方をテレビを通して言われているわけでありますけれども、これも事実と違う。  一番肝心の公選制を学会推薦、総理任命というシステムに変えるという、この点については合意ができないまま見切り発車的に政府提案が国会へ出されたということも、これは明瞭でありますけれども、私が問題にしてまいりましたのは、テレビを通してこのようにうそをつく、こういうやり方、あるいは法案提出の重大性を隠蔽をする、これまたうそをつく、こういうやり方というのは政治家として、一般としても許されないやり方であるにとどまちず、政府・与党の国対委員長としてこれはまことに看過できない重大な問題だということで、総務長局にもとのことをただしてきたところでありますけれども、すなわちこの中山氏のテレビを通しての発言については、正式に訂正と謝罪を国民国会の前に明らかにしていただくということを求めてきているものでありますが、総理としてもまた自民党総裁としても、この中山氏がはっきり訂正、謝罪を明らかにされるよう指導をいただきたいということを求めるのでありますが、見解を求めたいと思います。
  294. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中山議員相談してみます。
  295. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 事実であれば当然訂正、謝罪の何らかの形がとられるべきであるというふうに、政治倫理を口にされる中曽根総理、総裁でありますから、明らかにうそが言われたということが確認をされれば何らかの対処をされますね。
  296. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく相談はいたしてみます。
  297. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 まだちょっと、一分ありますね。  何らかの相談をする、それは総理としての、総裁としての指導性は何も発揮しないということですか。
  298. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり本人の自主性においてなさるべきことでありますから、相談はいたしてみます。
  299. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 結局そこへ逃げ込むんですね。  終わります。
  300. 小西博行

    ○小西博行君 日本の将来のためには、私は先端技術の開発というものが非常に大きな重要な要素になってくるというふうに前々から考えております。  研究集団というのは何も総理府だけじゃなくて、科学技術庁にもございますし、各省庁にございます。特に、その中で総理が学術会議に対してどのような期待をされているのか、その点をまず一点お聞きしたいと思います。
  301. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 学術会議は一番総合的な各方面を網羅した学者の集団であると思います。また、国際学術団体に対する加盟、あるいはその交流の度合いもわりあいに総合的に行われている場であると思っております。そういう意味において活躍期待いたしておるところです。
  302. 小西博行

    ○小西博行君 学術会議の立て直しを図るために今度の改正法案が出たというふうに私は考えておるわけであります。しかし、私はその法案だけの改正では前向きにならないじゃないかという心配も同時にしているわけであります。先ほども議論しましたが、予算の問題であるとか、あるいは学者それぞれの動機づけといいますか、こういう自主性とか、そういう問題も十分に考えてあげるべきではないかというふうに考えておりますが、その点に対してはいかがでしょう。
  303. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国立の機関としてこのようなりっぱな機関ができておるわけでございますから、十分に活躍できるように諸般の面でわれわれも配慮をいたしたいと思います。
  304. 前島英三郎

    前島英三郎君 いろいろと質疑の中で、この法案は大変問題点があるのではないかという私の個人的認識を持っているんですが、学術会議のいろいろな意見をも伺う耳を持たず、何か、大変妙な形でこの委員会に付託されているような形になっているんですけれども、その急ぐ理由というようなものが総理の中にもあるんですか。それはいかがですか。
  305. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 学術会議は非常に重要な団体でございまして、それが早く活発化すればするほど日本学術は深められますし、国際交流も盛んになると思います。一日もゆるがせにすべからざるものであり、またこの問題は、久しく論議されてきておる問題でもございますから、もうこの辺で法律として成立させていただきたいと思うわけであります。
  306. 前島英三郎

    前島英三郎君 特に、先ほど私は、見えない部分の学術会議の今日までの評価というものをいろいろ取り上げてきたんですが、たとえばリハビリテーションの問題あるいは障害者の職業の問題、これらが、いろいろな方々が現場の中から体験したものが勧告として政府に出されている。その勧告を、政府は守ったかどうかは別といたしましても、特にわれわれのように、科学にあるいは学術に、今後の失われた機能を取り戻すための期待感というのが非常に多いだけに、それが学閥とかあるいはそれぞれの派閥のような形の中で、本当に草の根の中で生きてきたような、そういうわれわれの気持ちをくんでくれるような人たちが選ばれるであろうか、そういう疑問を持つのでありますが、その辺は今後の学術会議に対しては総理はどのような期待を持っておられますか。
  307. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは日本学者の心構えに関することでございまして、学術会議を重要視して、おのおのの学会なり集団からそれにふさわしいりっぱな学績のある方を出していただけるかどうか、それによって学術会議が権威のあるものになるかどうか、そういうことにかかっていると思っております。
  308. 前島英三郎

    前島英三郎君 代表が選挙によって選ばれるということが国のいろいろな審議機関に見られないわけですけれども、この中では、いままで選挙によって選ばれてまいりました。これはやっぱり大変重要な特質でありまして、この原則が守られなければ本会議の存在理由もまたあり得ないというふうな気がするんですけれども、今後この学術会議は、たとえば他の諮問機関のような形に変わっていくのでしょうか。その辺はどうなんでしょうか。
  309. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、学会やらあるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております。
  310. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では、政府案を私ずっと聞いておりましても、学術会議の存在理由をなくすというふうな危険性をも一面感じているのですけれども、その辺は、全く自主独立、そういう介入する意図はあり得ない、こういうことで理解してよろしいですか。
  311. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昔のような学術会議はなくなってくると思います。つまり、学者選挙運動に狂奔して、郵便を配ったりいろいろやっておると。学問の権威というものは票数にかかわるものではないという面があるのであって、そういう意味において、生きた人間同士が生きた人間の権威者を選ぶという方がより真実に学問の場合は近いと私は考えております。
  312. 前島英三郎

    前島英三郎君 終わります。
  313. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 総理に対する質疑は以上をもちまして終了いたしました。中曽根総理は御退席をいただいて結構でございます。  それでは、引き続き前島君の質疑を行います。前島君。
  314. 前島英三郎

    前島英三郎君 総理の質疑がありちょっと中断いたしまして、どういう流れであったか、何となく意をそがれた感じかするんですけれども、昨年の参議院全国区の比例代表制の選挙制度の審議を思い返しながら臨んでおりますが、学会並びに学術会議の自主性にゆだねるということは非常に民主的なように聞こえますけれども、大もとの方式のところで政府案を押しつけておいて、調整がややこしくなりそうなところは自主性に任せる形で押しつけてしまっているとも言えるような気がしてなりません。私は、大枠につきましては当然自主性を重んじて、学術会議の自主改革の後押しをするという姿勢がやっぱり政府になければならないというふうに思うんですけれども総務長官の見解を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  315. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいまのお尋ねでございますが、総理からもお答えのございましたように、この改正案を取りまとめるに当たりましては、科学者の意見や各方面の議論を十分念頭に置きながら、また政府との折衝を委任せられました久保会長とは私自身がたびたびお会いいたし、その意見を十分間きながらこの改正法案を取りまとめたものでございまして、御理解を賜りたいと思います。先ほど総理の申されましたような考えで運営に当たっていただきたい、かように考えております。
  316. 高木健太郎

    高木健太郎君 学術会議の改革につきましては、学術会議の内部におきましてほぼ十年ぐらい前から取り組んでおられると思います。で、お聞きをしたいのは、まず改革の必要性というのをどういうふうにお考えになったのだろうか、その中にやはり推薦制というようなものもお考えになったかどうか。また、どうして今日までこんなに長い間かかってもそれが決まらなかったのか、その点についてお伺いします。
  317. 久保亮五

    参考人久保亮五君) ただいまの御質問で、推薦制のようなものを学術会議として考えたことがあるか……
  318. 高木健太郎

    高木健太郎君 また、どうしてこんなに長い間かかっても結論らしいものが学術会議からは出されなかったか。
  319. 久保亮五

    参考人久保亮五君) これは、私が学術会議の会員になります以前のものでございますが、改革問題に取り組んだのが第八期が初めかと思います。第八期に非常に綿密な論議がございまして、その記録もございます。そこで、いまのお話しのような学協会による推薦ということもその討議の資料には出ておりまして、こういう方法考えられると。それもずいぶんお考えになったことだと思います。どこでしたか、ちょっとそこの場所、すぐに発見できないんですけれども、その時点では、これは十分考えられる方法ではあるが時期尚早だ、学協会の組織とかそういうようなもの、あるいは運営の仕方とか、そういう現状を見ると、その時点では時期尚早だというふうに書いてございます。  学協会による推薦というか、学協会から選出してくるという方式のことは、それ以後の改革委員会の中でもたびたびそういうことの御議論は出たように思います。しかし、口で言えば簡単のように聞こえますけれども、実行は非常にむずかしいということで、立ち入った議論は余りなされなかったように伺っております。私自身は改革委員会に初期のころは加わっておりませんでしたので、詳細は存じません。
  320. 高木健太郎

    高木健太郎君 もう一つ、非常に長くかかりましたのですが、これは会議の回数が少なかったのか、どういう原因であるか、それをお聞きしたいんです。といいますのは、ここでまた一年、二年かけて討議していただきたいといっても、その結論が学術会議の中から出てくるだろうかというような心配があるからなんです。
  321. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 過去のお話でございますと、どうしてなかなかまとまらなかったかと、私その改革委員会の方に参画していたわけではございませんので、簡単に申し上げかねるわけでございますが、先ほども申し上げましたような、日本学術会議のあり方に関する報告、これは非常に綿密な分析でございまして、このお話を伺いますと、これをやるときには、どこかに委員方々が缶詰めになって集中的に御議論なさったというようなことも伺っております。  問題点の整理とか、そういうようなことはそういうふうでできたわけでございますが、その具体化ということになりますと、一つの大きな問題は、これを法律を変えるというところまでやらなければならない。法律を変えるという段になりますと、非常にむずかしい問題が次々に起こってくるであろうということで慎重にならざるを得なかったというのが実際ではなかろうかと思います。  それで、八期以来その御検討があったわけでございますが、その法律を変えるところまで踏み込んでというところまでなかなか学術会議全体としての決議がいかなかった。しかし、それではやはり抜本的な改革はできないということで、第十二期の初めに、今期は抜本的な改革をするというふうに総会で決めたわけでございます。ですから、歴史は長くて、いろんな分析はずい分あったわけでございますけれども法律改正まで踏み込んでやるということの問題のむずかしさがこれをおくらしておったということでございます。
  322. 高木健太郎

    高木健太郎君 このようなデータは、もちろん事務当局においても十分いままでお調べになったことであろうと思いますが、そういうことであるにもかかわらず、今度の法案が出されるについては、非常に唐突の感を抱いている人が私は多いように聞いております。このことにつきましては、先ほどから御質問がございましたけれども、その唐突の感を抱かせたということは、今後もいろんなことがまた、政令の問題でもいろいろあると思うんですね。そういうことのないように、今後は十分注意される必要があるんじゃないか。お話を承ると、そうではない、順序を踏んでやったんだがこれ以上に方法がなかったんだというふうにお考えのようでございますけれども、それでもなお、唐突の感を抱かざるを得なかったというところに、私は反省をしなければならぬ点が大いにあると思います。いかがお考えですか、その点は。
  323. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 先生方から同じような御質問を受けておりますので、われわれ反省しなければいけない点もあるかと思います。正直、十月に自主改革要綱が出てまいりましたし、ことしの十一月の選挙はやらないでということになりますと、総理府としても態度を早目に決定しなければいけない。そういう意味では、懇談会の方でも、忙しい先生を何回も集まっていただくというようなことをやったわけでございます。その辺、外部から見て唐突の感を与えたのかもしれません。それからさらには、学術会議と協議を重ねなければいけないというようなことで、対外的に、こうやっていますよというようなPRは、ある意味ではかえってできなかった面もあるという点をひとつごしんしゃくいただきたいと思います。
  324. 高木健太郎

    高木健太郎君 そこで、今度の改革をおやりになることでは、もちろん学術会議の案も十分御検討されたと思うんです。改革の眼目というのは、これはいままでの欠点を補って、そしてより学術会議の活力が出てくるようにというふうにお考えになっているようでございますが、これによって、学術会議の目的がよりよく達成できるとお考えになっている、その根本はどういうことでございますか。
  325. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 学術会議の自主改革要綱と違う点が会員選出制度であるために、その点だけ際立って論議されているわけでございますが、たとえば職務の明確化についても、御質問ありましたように、これは法律事項ではございません。いまの職務はそのままにしてありますが、しかし自主改革要綱ではもっと長期的、総合的、先見的なものをやっていくべきだと言っておられます。それは私どもとしても当然そういうふうに受け入れてやっていただくということを考えております。  ほかに、会員のあり方として、やはりすぐれた方、その専門分野で内外にすぐれた業績を残した方、業績を持っている方というような点、やはりそのまま受け入れているわけです。資格も、従来のような大学卒二年ではなくて、五年といったものも取り入れておりますし、それから、もっといまの科学の現状に対応するという意味で、部制、専門別、これが法律できちっと定員が決まっているものをもう少し柔軟にできるようにというようなことも取り入れております。  それから内部諸機関組織運営についても、従来の運審をもう少し規則でつけ加えることができるという柔軟性を持たせております。研究連絡委員会については法制化を当然行っておりますし、予算については再三、大臣からも大いにがんばっていくというふうに申しております。  その他の点、法律に載っていない点については、学術会議側で十分検討された自主改革要綱、これが実現することを私ども本当に願っているわけでございます。
  326. 高木健太郎

    高木健太郎君 なかなかこの問題は、委員会、懇談会におきましても、四つの案が出た、それをどれに決めていいかわからないという非常に不確定要素が多いわけでございますから、今後いろいろおやりになりましても、またそういう問題が起こってくるだろうということは考えられるわけです。  それで、一つ私が自分自身感じたのは、会議の持ち方というようなものも、これは私が学術会議のことに口出しするのははなはだあれですが、昔、会員であったという経験から言いますと、二百十人の方が一堂に集まって、その持ち時間も決まっていない。だれがしゃべっても、幾らしゃべっても、何回しゃべってもよろしい、こういうような持ち方で、各人がいろいろの御意見をお述べになる。これも私は一つのやり方だと思うわけです。しかし、二百十人というのはなかなか統一した見解は得られないのではないか。やはり会議の持ち方というようなものも、たとえば部会で一つ意見をまとめてくる、それによって考えるというような方法もあるのじゃないか。いまの方法では、十年かかってもなかなか決まらないということが何か証明しているようにも思うわけです。今後はそういうこともひとつ内部的にお考えいただいたらどうであろうかなと思うわけです。これは私の感想でございます。  いままでの方法でおやりになっておりまして、審議官にお尋ねしますが、投票率、それから有権者の登録率ですね、登録する数、そういうものはだんだん下がっているとお考えですか。有権者の数はふえているのに、実際の有権者の登録の数は減っているんじゃないか、あるいはふえているのか、あるいは投票率はどういうふうになっているのか、それもちょっとお聞かせ願いたいと思います。  それから、今回の方法では、研究歴を五年以上というふうにおやりになりましたが、先ほど永原参考人からもお話しがありましたように、私はこの研究歴の評価というのは非常にむずかしいと思う。ただ五年という年数で決めてしまうというのはどうか。本当にできるのかなということですね。特に、人文科学自然科学との間では少し違うのじゃないか。それから学位の論文でも、数でやるのか、内容でやるのかといったときに非常にむずかしいわけですね。それを非常に大ぜいの方の研究歴を調べ、学歴を調べ、そしてそれを何か一定の枠の中にはめてしまうということが現実的には果たして可能なのか。何かお考えがあったら、まだこれからお考えになることでしょうが、お考えがあったらお聞かせ願いたい。
  327. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) まず、登録している有権者の数が減っているとは私申しておりませんでして、ふえていますと先ほども一度答弁いたしましたが、ただ、私どもまだちょっと調べていませんのは、たとえばうちの統計局で調べています研究者の増加率に比べてどうなのかというのは、そういえば先ほどちょっと思いついたんですが、調べたことはございません。有権者はふえているんですが、しかし、投票率は下がっております。明らかにかつては九〇%台であったものが六二・……
  328. 高木健太郎

    高木健太郎君 登録数はどうでしょう。
  329. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 登録有権者数はふえております。  それから会員資格の問題、五年というのは単純な面だけでございます。ただ、現行法でいきますと、有権者イコール会員資格ということになるものですから、大学卒二年であればまず可能なんですね。しかも、口頭での論文発表的なものも認めているというふうにゆるいという御批判がありまして、これは自主改革要綱でもその点言っていますので、取り入れております。  ただ、この段階でも先生と全く同じ御議論がございました。論文の数では評価できないんだ。東大紛争の際に東大の教授、助教授などについてそういう審査をやろうとしたけれども、結局それは不可能に近かったというわけなんです。それが実は今度の案にもつながっているわけです。数ではなくて、学会の内部ならば本当に業績あるものがよくわかるのではないか、その学会が集まっての、比較的近い学会が集まっての研連ならば、そこでも評価できるのではないか。ですから、最後に会員となって出てくるのは、最低要件を満たしているのではなくて、そのうちのトップの方に出ていただきたい、そういう意味ではこの案がいいのではないかと私ども考えたわけでございます。  あと細かい数字の点は事務局長から。
  330. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 有権者数の推移でございますけれども、第一期から比べますと十二期、今期では五倍強増加いたしておるわけでございます。ただ、ずっと増加かというと一時的に減っている年もございます。  それから投票率でございますけれども、一期が八三%、二期が九〇%を維持しておりましたのが、その後漸減いたしまして十二期では六二・八%。それともう一つ、候補者数が激減いたしておりまして、第一期が九百四十四名だったのが十二期では二百四十二名。そのために競争倍率は四・五倍から一・一五倍に減っているというのが実態でございます。
  331. 高木健太郎

    高木健太郎君 いまのように、上からさらっとながめればそうなりますけれども、実は各部によって非常に事情が異なっているんだと思うんですね。特に人文系と自然科学系は違う。また七部とか五部はかなり妙な形、妙だと言うとまずいですが、全く違う形をとっている。地方区なんかは、七部なんかは非常に変わった形を持っているということですから、数の上だけではわからないというように思います。おまえも登録しておけよと、いろいろそういう運動がありまして、無理に登録をする人もありますが、四部のようにラジカルに物をお考えになるところは、自分が出すまいと思えば出さないという人がかなりおられるというふうで、登録数を一般にながめるとこれは私、間違いじゃないか。そういうことも今後は早く調べておかないと、この新しいたとえば改革案に入ったときでも私は大変めんどうだろうと思うわけです。    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕  もう一つは、先ほど永原参考人もお話しになりましたけれども、学協会をどのように今後整理されるおつもりなのか。また、研運と学協会とはもともと無関係にできておりますので、それらの整理統廃合もしなきゃならぬですね、研連の。これは、研連を一つふやすといっても方々の部会からの取り合いでございまして、そういうことで、何か一定の法則を決めて、それによってぱんとやるとかしないと、いろいろ意見を聞いてもこれは非常にまとまりにくいのじゃないか。この法律が通りましても、一年の間に果たしてそれが実行できるのかなということを私は一番心配しておるわけでございます。これに関して久保会長の御意見もお伺いしておきたいと思います。  それからもう一つは、今度は学協会からの推薦ということになりますと、学協会にかなりの負担をかけることになるわけです。この費用はいまのところ何にもないわけですから、それを、今度は公選制から推薦制に変わった、少しはこっち金が余るからこっちへ持っていけばそれで足りるというようなものでもない。事務局では、何かこの費用について試算をされたことがございますか。その二つをお聞きしたいと思います。
  332. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 御指摘の点でございますが、残念ながらいまのところまだ試算はいたしておりません。  しかし、先ほど御質問にお答えいたしましたように、どのような費目がどの程度必要かということについては、十分この仕組みが円滑に実行できますような額を十分確保できますように関係方面に要望いたしてまいりたいと思っております。
  333. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 研連の整備はこれ非常に重要な問題でございまして、これからやらなければならないことでございますが、研連の検討はかなり進んでおりまして、それぞれの関係でこういう研連を整備すべきだというようなことも出ております。  ただ、これがこの選出制度と関連しての問題は新しい問題でございますので、その面からはまた見直さなければならないところが多々ございます。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕  いずれにいたしましても、従来ございました研連の拡充――研連につきまして新しく設けたい、あるいは拡充したいという御要求が非常にあったわけですが、これはいま高木先生の御指摘どおり、決められた枠のために非常に困難な状況でございます。これはこのことがなくても当然要求申し上げて、学問の進展に即応するように研連の再編成をしなければならないわけでございますが、新しい事態に即応してそれはぜひとも速やかに進めなければならない問題でございます。  それから、ちょっと御発言最初に、あるいは私の聞き違いかもしれませんが、学会の編成というようなことをおっしゃいましたでしょうか。ちょっとその点について申し上げさせていただきたいと思うのでございますが、学協会を基盤にして会員を推薦するというこのシステムの一番の大きな問題は、ボランタリーな集まりであるところの学協会というものと、国の機関としてのこの学術会議というものと余りダイレクトに結ぶということは非常に大きな問題を起こすというところが一つの大きな問題でございます。それで、この二段階選出方式のようなものは、そういう直接の何と申しますか、相互作用と申しますか、干渉というようなものをできるだけ少なくするというのが一つの大きな眼目であるわけです。全く影響がないと言うと言い過ぎかもしれませんが、学協会はあくまでも自主的な立場を守っていただきたいわけでございまして、このために再編成をしなければならないというようなことはきわめて望ましくない。  もちろん、学協会が自主的に学問の進展からして再編成をしなければならぬとお考えのところは多かろうと思います。そういうところでそういうことをなさるのは当然でございますが、これがそういうような影響をダイレクトに及ぼすということは極力避けなければならない。それは、この総理府の御方針に従って法案を作成されるという段階におきまして、会長、副会長として折衝に当たりましたときの最も大きなポイントでございますので、その点ちょっと申し上げたいと思います。
  334. 高木健太郎

    高木健太郎君 私もそうだと思います。命令権も何もない、学術会議の所属機関でもない学会に、こちらの方からおい、出せというようなことはこれは言えない問題じゃないか。だからそっぽを向くという学協会も中には出てくるというようなこともございまして、現実的には非常にむずかしい問題がここに生じてくるのではないか。その点も、これは事務当局が非常に法律的にもよく考えられて、学術会議が学協会からそっぽを向かれないように、喜んでその推薦をしてくるという方策を考えるべきじゃないか。それにはこの学術会議改正案なら改正案につきまして、十分な理解を今度はかなり暇がかかってもやっておかないと、後になってまた悔いを残すということになるのじゃないかと思いますので、重ねて私からもお願いをしておきます。  もう一つは、この日本学術会議というのは、先ほどもお話がちょっとあったと思いますが、科学技術庁、それから文部省関係の事務が非常に多いと私は思うわけですが、現在、総理府の中の事務の構成はどういうふうになっているのか。そういう関係各省庁との間の事務官の入れかえといいますか、あるいはそこからどのような手伝いが来ているかとか、そういう実数はどういうふうになっているものでしょうか。こんなことを聞いていいかどうかわかりませんが。
  335. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) ただいまの御質問は、文部省との間の人的交流の問題であろうかと存じますが、ただいま私どもの方に文部省から五人参っております。具体的に申しますと、私ども局長に次ぐ次長、学術部長、学術課長、係長級が二名でございます。
  336. 高木健太郎

    高木健太郎君 科学技術庁からはどうですか。
  337. 藤江弘一

    政府委員藤江弘一君) 科学技術庁との間には交流はございません。ただ、科学技術庁は、先ほど御質問でお答えいたしておりますけれども、勧告の取り扱いについての連絡部会というのがございまして、そちらとは常時密接な連絡を保っておるところでございます。
  338. 高木健太郎

    高木健太郎君 たとえば科学技術会議は、これは科学技術庁でございますか、総理府と両方でございますか。それから日本学士院はこれは文部省、あるいはまた学術審議会ですか、これは文部省ということになっています。あるいは日本学術振興会文部省の外郭団体である。こういうのは全部何か非常に深い関連をお持ちだと思うわけですね、この日本学術会議は。だからそういう人たちとの交流を密にして、それで学術会議がスムーズに動くためにはそういう事務関係もかなり人事の交流が私はあった方がうまく回るんじゃないか。全然科学技術庁の人が入っておらないで、総理府出身の人がそこへ行かれてもなかなか話がうまく通じないということもあるんじゃないか。こういう意味で、事務官構成というようなものも将来お考えになっておく必要があるのじゃないか、こう思うのですが、長官、何かこういうことでお考えございませんか。
  339. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいまの高木先生のお話でございますが、私は全くの素人ではございますけれども、本当にいいお考えだと思いますので、そのようにひとつ今後検討さしていただきたい、進めるようにさせていただきたいと思います。
  340. 高木健太郎

    高木健太郎君 どうぞひとつ御検討をお願いいたしたいと存じます。  それから、事務局長は会長の意見を聞いて任命するということになっております。いままでそういうこと、実際に会長から、自分はああいう人がいいから――この人は嫌だとは言えぬかもしれませんが、そういう意見を総理府なら総理府にお出しになった会長というのはいままでございますか。というのは、大学事務局長ですね、これは学長があの人をくれと言えばかなりの程度それを見てくれるわけですね。そしてまた、会長という責任者にとりまして、事務局長というのは非常に大事な補佐をしなければならぬ人間でございますので、会長の意向というものがよくわかる人、また、一緒になってやっていける人、そういう人じゃないと私うまく動かないと思うんです。この点もひとつお考えいただきたい。規則には書いてあるわけです。それをいままで実行されたことがあるかということです。
  341. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 私は存じません。
  342. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 私も残念ながらそういう立場にもおりませんでしたので、ちょっとそういうことが本当にあったかどうかということをお答えできない立場でございます。
  343. 高木健太郎

    高木健太郎君 ぜひそういうふうにして、会長と事務の人たちが心を合わせてやらないとこういう問題は動かない。よくあることなんですけれども、事務官の顔は総理府の方を向いている、ちっとも学術会議の方を向かない、向こうを向いて話をしておる、こういうことを耳にすることがある。こういうことでございますので、ぜひその点も今後御考慮願いたい。  最後に、もう時間もなくなりましたのでちょっとお聞きしますけれども、先ほども総理にお話ししましたように、諮問の数が非常に少ないわけです。これははなはだ残念なことだと思うんですね。一年にたった二つしか諮問しない。聞かれて喜ぶというわけではないですけれども、頼りにされているということは、やはり会員にとりましてはやりがいがあるという気持ちかするんじゃないか。それが全然ない。また、勧告を出しましても、それに対する反応は余りないということになると、私はやはり活力が減っていくのではないか、魅力もなくなるのではないか。もちろんいままでたくさんの研究所なり、あるいはまた勧告によって、きょうの献体法というようなものも出していただいたわけでございますよ。そういうものをもう少し政府の方も、こういうりっぱな人が集まっているんだから、ぜひそういう人物を活用するということ。何も金だけの倹約じゃなくて人間の倹約、活用することが一番大事だと思う。そういう意味では、今後、長官としてもできるだけこの人材を活用されて、せっかくの金を使ってやっていることだから、十分にそれを活用していただいて、この所期の目的をひとつ達成していただきたい、こういうふうに思うわけです。  長官の御所見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  344. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいま高木先生からお聞かせいただきましたそうした考え、御所見と言うよりはそのお考えはまことに結構な私はお考えだと思いまするし、当然そのように進めていかなくてはならぬ、そう思いますので、これから努力さしていただきます。
  345. 高木健太郎

    高木健太郎君 どうぞよろしく。     ─────────────
  346. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。  内藤誉三郎君、藤田進君及び小野明君が委員を辞任され、その補欠として田代由紀男君、瀬谷英行君及び赤桐操君が選任されました。     ─────────────
  347. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、本日前段の質疑においても、今次法案内容の重大性と表裏の関係として、法案提出の異常さの問題をいろいろ取り上げてきたわけでありますが、以下、今度は法案内容の問題に関して幾つか重大な点を指摘しつつ質問をいたしたいと思います。  何といっても今次法案の最大の改悪点、根幹とも言うべき、今日までの学術会議会員を公選制で選んできた、それを学会推薦制、そして総理任命というシステムに変えるというこの問題について。推定約千の学会があるというふうに言われているわけですけれども、ことから二百十名の会員を選ぶということになるわけであります。こうなりますと、勢い会員候補者を推薦する指名権を持たない学会というのが、これが相当数出てくるということは明瞭でありますけれども、大体これはどれくらいの数と予想をされるのか、そこの線引き基準をどうするのか、政令で定めるとしてますけれども、どうするんですか。
  348. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) この法案では、いろいろと第十八条の第一項に、四号にわたりまして具体的な要件を書き記してございますが、その要件につきましては、御指摘のような政令ということではございませんで、規則で定めるということになっておるわけでございます。  ここに三つばかりはかなり具体的な形で要件を掲げておりますが、その他構成等につきましての要件につきましては規則で今後定めていただく。その規則を定めるに当たりましては、当然のことながら学術会議の中におきまして今後十分御議論、各学会の御意見をお伺いしていただきながら、いろんな関係の方と御相談の上、規則を定めていっていただくということになろうかと考えております。
  349. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私が尋ねておるのは、従来であれば約一千あるこの学会、その中には会員といいますか、構成員の非常に多い学会から小さい学会までさまざまある。しかし小さな学会といえども会員候補を選出をする、そういう権利があった。またそこの会員は立候補する権利があった。これが今回はなくなるということは明らかですね。ですから聞いているのは、約一千のうち二百十の会員を選ぶ、この配分基準は、それならどういうふうにするんですか。
  350. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) これは、基本的には先ほどお答え申し上げたようなことでございますけれども学術会議の内部の一部におきましては、たとえば人数で申し上げますと二百人程度というような数も考えられるという意見が一部にあるやに伺っております。仮に予測された数字ではございますけれども、二百人という形で学会の人数を切るといたしました場合には、恐らく七百から八百ぐらいの数になるのではないか。これも全く見込みの数字でございまして、確たる根拠のある数字ではございませんが、私どもはそのように伺っております。しかし、これを果たして二百人ということにするのかあるいは百人ということにするのかはいずれも規則で定めるということになっておりますので、久保会長を初めとする学術会議先生方の間で十分御議論の上お決め願いたいと、かように考えておるところでございます。
  351. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いずれにしても、会員を推薦をする権利を持ち得る世帯の大きな学会、それからそういうものを持ち得ない小さな学会、こことの差が出てくるということは否めませんね。
  352. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 御指摘のとおりでございます。
  353. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、そういう学会の中に会員選出をめぐっての格差が生まれるというとのことは、学会の運営に混乱を持ち込むというふうに、これは久保会長お尋ねしましょうか、そのようにお考えになりませんか。
  354. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 会員の推薦をする学会というのは、学会学問的な業績とかそういうこととは別な次元の問題でございます。要点はこの学会学問の分野をカバーすると、その所属する学会の会員がほぼ研究者を網羅するということが要点でございまして、そのことと学会学問的な評価ということとは必ずしも同一ではないわけです。もちろん名前だけが学会で、学問的なことがなければこれは問題外でございますが、そういうこととは別な問題でございます。実際にそれではどうするかということは詰めてはおりませんが、現在ある学会を見まして、もちろん相当な数に上るとは思いますが、非常に大きな混乱があるというふうには思いません。  それから、学会の格差ということでございますが、その意味におきまして私が申し上げたいのはこれをもって格差と言うか、言わないか。それはお考えによることでございますが、それをもって格差とは私は考えないのです。
  355. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は考えないと言っても、客観的に見てどうかという、ことが問題になるわけでしょう。少なくとも従来の制度でいけば学会の構成員の大小にかかわらず平等に会員を選ぶ、制度的には。実際にどうなっているか、制度的には同等の権利を持つという、こういうシステムになっておったわけですね。これがさっきも確認しましたように、勢い構成員の多いところと小さいところとの一定の線引きをせざるを得ないということから言って、会員選出ということを通して日本学術会議が大きな学会の利益代表集団という方向へ、心ならずもそういう方向へ流れていくという、そういう傾向が生じやしないかという、この点については会長どうですか。
  356. 久保亮五

    参考人久保亮五君) いかなる制度におきましてもいい面と悪い面とがあろうかと思います。しかしながら、もちろん学会学会の利益を追求するために学術会議に会員を推薦するとは私には考えられないのでございます。学術会議なるものがいかなるために存在するかということをお考えいただければそうはならないと思います。それから、先日も申しましたけれども学術会議というのは、いわば目前の研究者個々の利害に関連したようなことをやるところではございません。
  357. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私はそのように説明をされてもその説明は納得ができませんね。しかも、先日もまた本日も当委員会へ来られた参考人のお話の中にもあるように、学問学術分野というのは日進月歩だと、いまの段階はまだきわめて発展初期の段階で、非常に構成員は少ないというものでも将来うんと大きな学問分野になるかもわからぬ。こういうところというのが十分予想もされるそういったときに、大きな学会の利益集団という、利益という言葉がふさわしくないと言うんだったら、それはそれでいいですよ。大きな学会が中心になる、特に会員選出というこのことについては。小さな学会は権利が切り捨てられる。大きな学会中心の代表集団と、こういうところになっていかざるを得ないということは明瞭じゃありませんか。それを余り妙な理屈で合理化をされるのは、これはもうやめていただきたいというふうに思うわけであります。  そこでさらに問題を進めまして、いままでいろいろ指摘をされてきた問題、すなわち会員選出の基準、方法、ここら学術会議の将来にとっての根幹とも言うべきこの問題が、一つは私も先日指摘をしましたように、また日本学術会議の四月総会においてはそれを規則で定めるという形で法案骨子が配付をされておった。それがいま国会に出されておるこの法案によりますと、それが政令で定めるという形にすりかわっている部分が幾つかあるという重大性のこの問題、学術会議としてはっとにこのことについて極力学術会議の自主性が尊重されるようにということでの意見を出されてきたわけだけれども、それが政府案には人れられなかったということになっておるこの問題にかかわって、たとえば第十九条は会員候補者の数とその割り振りを政令で定めるわけですね。これこそ会長の言われるごとく、日本学術会議学会は利益集団ではありませんということであれば、本当に日本学術文化の将来の発展という、そういう見地に立って学術会議としての自主的な共同の討議、ここを通して決めたらいい問題だ。それを一体なぜ政令で決めなくちゃいけないのか、これは総理府説明してもらいましょう。
  358. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) この第十九条の規定につきましては、午前中、私どもの総務審議官の方から御説明を申し上げました。前回の委員会で先生から御指摘のありました点については御理解をいただいたと存じます。ここで、この法案で政令、規則とそれぞれ使い分けておりますのは、基本的な考え方を申し上げますと、いわば推薦制というこの法律の基盤ともなるようなもの、学術会議の構成の基本的事項にかかわりますようなことは、これは原則として政令で決めるべきであるというのが法律制度についての基本的な考え方でございまして、それに従って書いたということでございます。  ただ、学術会議事務局の方で、四月の臨時総会におきましての書かれましたものは、午前中にも御説明申し上げましたように、研究連絡委員会が一つであるということで、それはいろいろな判断が入り込む余地がないということから規則でもよかろうということで、内閣法制局で規則ということになっておったわけでございますが、途中で学術会議の方から、やはり複数の研連に会員候補者を出す必要がある、どうしても学会に悪い影響を与えていかないように配慮するためにはそれが必要だと、こういう強い御指摘、御要望がございましたので、ことを推薦人と同様複数ということにしたわけでございまして、そのようなことでここが政令ということに変わったようなわけでございます。基本的な考え方は、学術会議の構成の基本的事項であります事柄を政令で決めるということでこの法案はすべて貫かれておる、こういうことでございます。
  359. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私が先回来指摘している四月の日本学術会議総会でのあそこをめぐる問題ですね、要するにだましてきた、総会さえだましてきた、法案とは違う内容を配ってきたという、この問題は御理解をいただいた――私は何も理解をしてないわけで、そのあなた方の答弁を通しても三カ所重大なそういう違いがあるということを確認をしてきたわけでありますから、そんなことはもう要らぬことを言うたらまたこれは大論争になるだけ。  問題は、第十九条のこの定めをしからば重要な事項は政令で定めるというふうにしているんだと言うんだけれども、十九条を規則というふうにしたらどこがぐあい悪かったんですか。やっぱりぐあいが悪かったから、政令と変えたんでしょう。
  360. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 特にぐあいが悪いからということで政令ということにしたわけではございません。先ほども申し上げましたように、会員推薦制度の基本的な事項でございますので、それを政令ということにしたわけでございまして、十九条から二十二条までをごらんいただければ、すべてそういう考え方で貫かれておるところでございます。
  361. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 しからば第二十条はどうですか。登録学術研究団体、まあ学会ですね。これが会員候補者の推薦に当たるその者を日本学術会議に届け出ると。これこそ個々の学会学術会議に届け出るというこの問題でありますから、学術会議の内部問題、規則で定めて何もぐあい悪いことない。なぜこれを政令にしなくちゃならぬのですか。
  362. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) この第二十条は、会員の推薦人を学会から指名することができるという規定でございますけれども、これも先ほど申し上げましたように、一つの登録学術研究団体が複数の研連、複数の推薦人をそれぞれ届け出ることができる、指名することができるという規定でございますために、その推薦する基準というものは、やはり今回の会員推薦制度の基本的事項、根幹にかかわる問題ではないかということで政令ということにしたような次第でございます。
  363. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 まだあるわけです。この第十一条の二項、ことでは各部の定員、さらに政令で専門別を定めるんだという、だから、たとえば自然科学分野一つ例にとれば、物理、化学、生物、地学等、こういうそれぞれの分野の専門別を政令で決めるというわけでしょう。しかし、どういう専門別を定めるかという、このことこそが日本学術会議というか、日本学術会議に所属をされる科学者判断にゆだねるべき問題じゃないかと思います。それをなぜ政令という形で政治の問題にするんですか。  たとえば、そういうことでいけば、応用物理というような専門、これが一番優位だとか、地球物理というような専門、これが一番優位だとか、そんなようなことをもしも政治が介入をして決めたらどういうことになるんですか。ここにこそ学問に対する国家統制の萌芽があるんだということで問題になっている。結局、すべて重要事項を政令で定めます、そうあなたたちが言えば言うほどそこの部分が危ない。重要部分だから規則という形で日本学術会議にゆだねるわけにはいかぬ、ここぞというときには政府が口を出さなくちゃならぬ、だから政令で決めるんだ、こういう論理になるわけだから、だからこそそこが危ないというふうにわれわれは思わざるを得ないじゃないですか。  いま言った各部の専門別、各部の定数、これをどういうふうに配るか、これこそ学者にゆだねたらいい問題じゃありませんか。学者専門家じゃないですか。なぜ政令で決めるんですか。
  364. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) この十一条の政令は――いわゆる日本学術会議というものも広い意味では行政組織であることはお認めいただけるだろうと思います。ただ、それはきわめて独立性の強い、内閣総理大臣の所轄機関であるという点におきまして、私ども総理府のような一般の行政機関と非常に異なるところではございます。しかし、いずれにいたしましても行政組織につきましては、これは法律または政令によってその基本を決めるというのが法律制度一般の原則的な考え方でございます。  ここで私ども考えておりますのは、この第十一条の第一項で部の定員を決める、これは自主改革要綱におきましても、先ほど複合的あるいは学際的領域云々の関係から流動化を図っていただきたいという、こういう御要望がございました。関係省庁とも相談の上、やはり組織関係ということで、法律制度一般の原則に従って、ここは政令としたわけでございます。  しかしながら、先生がおっしゃいますように、じゃどの専門にどういう定員がいいのかというようなことは、私どもではなかなか決めるだけの能力を、またその判断力を持ち合わせておりません。それにつきましては、たびたびお答え申し上げておりますように、日本学術会議の内部におきますこの点についての議論、御検討の結果を持って、十分総理府日本学術会議との間で相互に意見を交換いたしまして、この部の定員の具体的な数というものを決めていきたい、また場合によってはここの政令に基づいて規則に落とすというようなことも考えていきたい、そのような二つの考え方をもちましてこの法文の明文化を図ったところでございます。
  365. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 二つ聞きましょう。  政令と書いているけれども規則に落としてもいいというふうに言い逃れをされるけれども、それならばなぜ規則というふうに書かなかったか。依然として重要な事項だから政令と書いたんですと、ここへ戻るんでしょう。  それからもう一つ、結局、今度の法案の基本点が公選制を学協会の推薦、総理任命というこのシステムに変えるということからすべてが出発しているから、ここが大前提になっているから、したがって政令と書かざるを得ないんでしょう、選出の重要部分については。そういうふうに正直に言ったらいいんですよ、どうですか。
  366. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 今回の改正法案のこの制度の改正は、内閣総理大臣の任命制をとるということが目的では毛頭ございません。選挙制を推薦制に変えるというのが今回の改正法案の骨子でございます。先ほども説明申し上げましたように、推薦制をとるがために国家公務員としての位置づけをされております日本学術会員が、その法的地位を獲得するためには何らかの入口をあげ、中に引き入れるという行為が法律的には必要になってくるわけでございまして、そういう随伴する行為として内閣総理大臣の任命というものを考えたわけでございます。したがって、申し上げるまでもなくそれは形式的任命ということでございまして、これは先ほども総理からお答えになりましたとおりでございます。
  367. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 久保会長お尋ねします。  私は三つほどの具体的な問題を挙げて、具体的には各学協会での会員候補者の推薦をするその数の割り振り、あるいは各学会が会員候補者の推薦人を日本学術会議に登録するという、届け出るというその問題とか、各部の専門別定数問題、まさにこれこそ日本学術会議が自主的に決めたらいい問題じゃないかということをいろいろ申し上げたつもりです。  実は久保会長は私もよく存じ上げている。というのは、これは余分なことかもしれませんけれども、私もかつて学生時代に物理の一分野を勉強しておった人間として、先生学問的業績についてはそれなりに大変敬服はしているわけですけれども、しかし、本当にそうであればあるだけに、どうやってこの日本学術会議の自主性を守り抜くかということで、そういう立場で、しかし、片や政府の政治的な壁が非常に厚いということで、苦悩をしておられるのはよくわかるんですよ。しかし、いよいよというこの段階へ来たこの時に、本当に日本学術会議の当然学問分野にかかわる問題だとか、さっき三つほどの問題を挙げたわけですけれども、こういった問題、日本学術会議が自主的に決めてしかるべき問題、その問題を、重要事項だからという言い方で、重要事項だからさっき言ったんですけれども、政令で決められたらまさに危ないと、こういうふうにお考えになりませんか、会長
  368. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 政令と規則の関係につきましては非常に多くの時間を費やして論議もし、折衝もしたところでございます。政令でなければならぬという理由は、私は法律専門家ではございませんので、そういう意味ではあれですが、御説明を伺うところでは法律の体系としてそうせざるを得ないということでございました。学問的な内容に関することにおいて、もしそれが政治の干渉によって曲げられるということであれば、それは私のみならず学術会議としては入れがたいことであり、いつの時点においてもはっきりそのことは表明することと思います。
  369. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 もう余り時間がありませんから、さらにもう少し問題を進めましょう。  第二十二条の二で会員の推薦管理会の問題を定めているわけですね。これは現行制度のいわゆる選挙管理委員会、これと任務、権能は変わってくるんですか、総理府
  370. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 現在の選挙管理と今度の推薦管理、推薦と選挙では確かに違いますから、やる内容は確かに変わってくる部分もあります。しかし……
  371. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どこが変わるんですか。
  372. 手塚康夫

    政府委員手塚康夫君) 細かい点は、じゃ、参事官の方から御説明させます。
  373. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 現行の選挙管理会のことにつきましては、選挙制ということを前提にいたしまして、たとえば有権者資格の資格認定でございますとか、あるいは当選についての確認作業といったようなことが行われておるわけでございます。私どもこの二十二条の二の会員推薦管理会につきましては、原則として選挙管理会にかわるものというふうに考えておりますけれども、ただいま総務審議官から御答弁申し上げましたように、中身が変わるということで、たとえばいままでの有権者という概念が全くなくなりますために、会員の方の資格の認定というようなことでございますとか、あるいは登録学術研究団体としての要件を充足しているかどうか、こういった確認作業、認定作業を今度の新しい会員推薦管理会では行うことになるわけでございます。
  374. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、この法の仕組みでいきますと、第十七条で会員候補者には資格要件を定めているんですね。一方、会員推薦管理会の委員、これについては資格要件を定めていない。しかしこれも政令で定める、こういう形ですね。なぜこういうふうになるんですか、違いが。
  375. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 第十七条につきましては、会員の候補者の資格、つまりは会員の資格ということになるわけでございますが、これはきわめてやはり重要な点でございますので、法律でもってやはり御審議をいただかなければいかぬだろう、法律事項であろうという考え方で十七条はそのまま法律に書いたわけでございます。この中身は、自主改革要綱で、有権者資格のところで、こういう研究歴五年以上というものに一本化するということが書かれておりますので、それをそのまま取り入れさせていただいたところでございます。  次に、会員推薦管理会の委員につきましては、この法文を解釈をいたしまして出てまいります点は、会長が委嘱するということで、会員以外の人という要件はこの二十二条の二の第二項において決めているわけでございますが、しかしその人数でございますとか、あるいは会長が委嘱される基準でございますとか、そういったものにつきましては政令で決めるということになっております。この政令を定めるに当たりましても、やはり従来から申し上げてまいりましたように、十分日本学術会議の内部での御意見、御検討の結果をまって、私ども十分御相談をさせていただいた上でこの政令を定めさせていただきたい、かように考えておるところでございます。
  376. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 先ほど来の答弁で、会員推薦管理会、この任務、権能は従来の選挙管理委員会とは違うというふうに言われておる。その中には会員の資格認定、こういったようなことも含んでるんだということでありますが、こうなりますと、実質上の会員の選考委員会のようなところに進んでいくおそれを感ずるわけです。しかも、この推薦管理会、政令で定めると、こうなっているわけでありますから、私が言ったような、会員の資格認定、資格確認ということを通しつつ、思想差別や学問の自由、これを侵害をするようなそういう資格認定というところへ突き進むおそれがあるんじゃないか。  なぜならば、重要事項だからという、またもやこの論法、そして重要事項だから学術会議規則にゆだねるわけにはまいりません、政令で定めるんですというこの論法でしょう。そういうようなことは絶対に起こり得ない、起こさないというふうに……。もう大体しまいですから、総務長官、どうですか。
  377. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) 先ほど来先生からいろいろと御意見ありお尋ねがあり、それに当局の方からお答えしておりまするように、そういうことは絶対にあり得ないように、学術会議とも十分十分打ち合わせの上にやらしていただきたいと考えております。
  378. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 もう一言、念のために。  言葉にこだわるようですけども、絶対にそういうことがあり得ないように日本学術会議と十分十分相談をと、こう言われたわけですが、私がそういう危険があるんじゃないかという指摘をしておるこの問題について、提案者の責任、総務長官の責任において絶対にそういうことは来たさないと、一件たりともそういうことは起こさないと、こういうふうにはっきりこの文教委員会の席上で明言ができますか。ちょっと注意が抜かっておってとか、後で言いわけをするようなことを起こさないと、御心配はさらさら無用でありますというふうに断言ができますか。――いや、大臣
  379. 高岡完治

    説明員(高岡完治君) 僣越でございますが、技術的な御説明を簡単に。  先生御指摘の点につきましては、第二十二条の三の条文をごらんいただきますと、ここにこういうふうに書いてございます。「この章に定めるもののほか、会員の推薦及び会員推薦管理会に関して必要な事項は、規則でこれを定める。」ということになっておりまして、いかなる資格認定の方法をとるか、基準をとるかということは規則において決めるという仕組みになっておりますことを申し上げさせていただきたいと存じます。
  380. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいま参事官から申し述べましたように、さらさら心配のないように、御心配かけないように、申し上げたことを取り消しのないようにさせていただきます。     ─────────────
  381. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、秦野章君が委員を辞任され、その補欠として高木正明君が選任されました。     ─────────────
  382. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 以上をもちまして質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議あり」「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  383. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 異議のある方は、二分以内の時間で御意見をお述べいただきたいと思います。
  384. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 本法案は、日本科学者を内外に代表する日本学術会議の性格を根本的に変えるきわめて重大な法案であります。しかるに、参考人質問を入れましても約十数時間、いまだに未解明な部分が数多く残されており、この段階での議了は日本学術会議の今後のあり方についても、また日本科学の発展のためにも重大な禍根を残すものであります。私は、引き続き地方公聴会や連合審査会を含め徹底審議を要求をしてまいりましたが、さらに五月の十八日より予定されています日本学術会議総会を目前にしながらここで質疑を打ち切ることは、良識の府としての参議院の権威を著しく汚す暴挙として断固反対であります。審議継続を強く委員長に要求いたします。
  385. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 御異議があるようでございますから、改めて採決を行います。  質疑を終局することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  386. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 多数と認めます。よって、質疑は終局することに決定いたしました。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  387. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、日本社会党を代表して、本改正案に反対の討論を行います。  まず、本改正案提出に至る手続、経緯についてであります。  日本学術会議は、戦後発足して三十年余、文字どおり科学者の内外の代表機関として、科学の向上発達に重要な役割りを果たしてきたのであります。しかしながら、現在までの諸科学の目覚ましい発展と学際的領域の出現、科学者数の激増、政府による他の学術関係諸機関の設置等、諸情勢が大きく変化する中で、学術会議がその使命をさらに達成するために、学術会議の改革が必要不可欠であることは言うをまたないところであります。  日本学術会議においても、一九六九年以来改革に取り組み、昨年十月には会員の三分の一については推薦制を導入するという改革要綱をまとめたところであります。しかしながら政府は、明確な理由を明らかにしないまま、この改革要綱による選出制度を取り入れていない本改正案学術会議の了承も得ぬまま強圧的に提出したのであります。  このように、本法案科学者国民の合意を得ずに、政府・自民党が独走して提出した法案と言わざるを得ないのであります。特に、この十八日から開催予定の学術会議総会の討議の経過も見ぬまま強引に裁決することは、学術会議の独立性、自主性を侵すものと言わなければならないのであります。  次に、学術研究団体を母体にした推薦制の問題点についてであります。  まず、公選制は民主主義の基礎であります。しかるに委員選出を一切推薦にゆだねることは、学術会議の民主的組織形態を掘り崩すことになります。また、参考人も指摘されたように、会員は個人としてよりは学会の代表であるという色彩が強くなるため、学会を離れた個人の自由な発言、独創的な提案が行いにくくなり、いわば科学者国会から学会代表者連合へと変容せざるを得なくなり、学術会議の変質、機能低下が危惧されるのであります。  また、各学会からの会員候補者には、いわゆるボス、またはその声がかかった者が送り出され、若手、女性、地方大学、民間研究機関等の研究者の確保は一層困難になり、科学者の総意を反映することはむずかしくなる危惧がきわめて強いのであります。  最後に、本制度による推薦制の技術上の難点についてであります。登録を認める学会には、会員数や活動歴、地域的規模等で一定の条件をつける方針のようでありますが、現在一千を超えるといわれる学会に対してどこに一線を引くか、その引き方によってはさまざまな弊害が危惧されるのであります。  さらに問題なのは、推薦活動の中核となる研究連絡委員会についてであります。部門ごとに組織されているものもあれば、研究プロジェクトごとに組織されているものもあり、また分野によっては組織されていないといった状況にあります。いずれにしても、研究連絡委員会を推薦母体にするためには大幅な再編成が必要であり、これを一年余の短期間に行うことは非常に困難であろうと思うのであります。  以上述べましたように、本改正案には手続的にも内容的にも問題が多く、このまま実施した場合には、わが国学術体制学術行政上悔いを千載に残すことは必至であり、本改正案には反対せざるを得ないのであります。  以上で反対討論を終わります。
  388. 片山正英

    ○片山正英君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております日本学術会議法の一部を改正する法律案につきまして、賛成の討論を行うものであります。  日本学術会議は、昭和二十三年に、わが国科学者の総意を代表し、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的として設立されたものであります。科学が細分化し、専門化している今日においては、一層このような役割りを果たす科学者組織が重要であると言わなければなりません。  しかるに、日本学術会議設立後三十余年を経過した今日、まことに残念ながら科学者一般の関心と信頼を失い、その期待された本来の機能を発揮していないのが現状であります。すなわち、業績のある学者よりも組織力や集票不能力のある人を当選させる結果を招き、学界を代表するような研究者は立候補しなくなる傾向が強まるとともに、有権者の資格のある研究者で、登録しない者もふえている現状であります。まさに研究者日本学術会議離れは深刻であると言わざるを得ません。  このような状況の改革の必要性については各方面からつとに指摘されてきたところであり、また日本学術会議においても、昭和四十四年当時からその検討に着手されたにもかかわらず、今日まで改革の実が上がらなかったのでございます。  しかし、もはや一時もこのような現状を放置することは許されません。本法律案は、このような状況をもたらした根本原因である会員の公選制にかえて、日本学術会議に登録された一定の要件を備えた学会を基礎とする研究連絡委員会ごとの推薦制を採用し、もって日本学術会議の活性化を図ろうとするものであり、まことに時宜にかなった措置と考えるものでございます。  この会員推薦のあり方についての政令、規則の制定に当たっては、日本学術会議の自主性尊重を基本として、政府学術会議が十分協議することとしており、何ら問題はないと考えるものであります。  かくして、本改正により日本学術会議が名実ともに科学者の総意を反映する組織となり、政府その他の学術研究諸機関と密接な連携協力を図って、本来の目的、機能を十分に果たし得るよう再生することを心から願って、賛成の討論を終わります。
  389. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、まず、わが党の慎重審議要求にもかかわらず、日本学術会議法の一部を改正する法律案の議了、採決をいま強行しようとする委員長並びに自民、公明、民社党を初めとする諸君に対して、厳しく抗議するものであります。  本改正案は、日本学術会議の根本的性格を変える重大な内容を持つものであります。しかも、わずか十数時間足らずの質疑を通しても、きわめて重要な問題が多々明らかにされました。にもかかわらず採決を強行することは、きわめて無責任かつゆゆしき事態であります。私は、まずこのことを指摘し、反対の討論を行うものであります。  第一に、日本学術会議の同意を得ないまま、政府が一方的に法案を提出するという経過が示すように、この法案提出自体日本学術会議の自主性、独立性を踏みにじるファッショ的なものであります。しかも四月十四日の学術会議の総会に正式に法案を示すことなく、かつまた二十三万有権者に法案内容を知らせることなく、一方的に有権者の権利を奪い、また推薦の母体となる学協会の意見をも聞くことなく法案を提出することは、言語道断の暴挙と言わなければなりません。  第二に、本法案内容であります。  この法案の根幹は、これまでの公選制を廃止し、全面推薦制に変えるということであります。言うまでもなく、日本学術会議政府から独立して職務を行うためには、公選制こそがその制度的保障であります。これを推薦制に変えることは、選挙という民主主義的原則を踏みにじるとともに、学術会議をきわめて細分化された学会の利益代表機関に変質させるものであります。そのことは、時の政府から独立して科学学術の総合的、長期的発展を広い視野から審議するという学術会議国民に負っている重要な職務の遂行を不可能にし、日本科学学術の発展に重大な障害をもたらすものであり、断じて容認できるものではありません。  第三に、部の定員、専門別の定員、学協会の候補者及び推薦人の届け出、会員推薦管理等、学術会議のあり方及び推薦方法の根幹が政令にゆだねられており、二重三重に政府統制を強めるものとなっています。学術会議の独立性、自主性を奪うとともに、憲法に保障された学問の自由を奪うものとなっていることであります。  そもそも日本学術会議は、第二次世界大戦に際し、わが国科学者がその自主性を失い、戦争に協力したことへの深刻な反省から生まれたものであります。だからこそ、わが国科学者の代表機関として選挙によって会員は選ばれ、政府から独立して科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的として一九四九年に発足したものであります。  学術会議が、科学者の立場から戦争と平和の問題を取り上げ、原子力の研究と利用に関し公開、民主、自主の原則を要求する声明、原水爆禁止、核兵器の廃棄について世界の科学者に訴えるなどの声明を採択してきたことは当然のことであります。また、プラズマ研究所や霊長類研究所など、今日の重要な共同利用研究所などは、学術会議の勧告に基づくものであります。  ところが、政府・自民党は、こうした学術会議に対し攻撃を繰り返し、一九五三年には吉田首相が学術会議が政治批判ばかりやるなら、政府機関であるよりも民間団体になったほうがいいだとか、七四年には、当時の小坂総務長官が、学術会議はホットな政治問題に巻き込まれないよう慎んだ方がいい、選挙方法を推薦制にしてはどうかなどの批判を続け、今回の法改正の発端をつくった中山太郎元総務長官などは、日本学術会議の現状は左翼的なイデオロギーに偏向した会員に牛耳られている、この体質的欠陥はすべてその会員公選制に起因しているなどと自著に記しているのであります。これこそ言語道断ではありませんか。こうした攻撃とともに、学術会議予算を徹底して抑え、五九年には科学技術会議、六七年には学術審議会、日本学術振興会を発足させ、学術会議の機能を他の機関に移し、学術会議の形骸化を図ったのであります。今日、政府・自民党が学者離れだとか形骸化などと声高に批判していますが、その責任の一切は政府・自民党にあることは明白であります。それこそそれを理由に法改正を行い、公選制を推薦制に変えるごときは、まさに党利党略に基づく学術会議の御用機関化を図るものであり、今日進められている臨調下の軍拡、大企業奉仕に対する科学の従属であり、学術統制に道を開くことは言うまでもないことであり、わが党として断固反対することを表明して討論といたします。
  390. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  391. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  日本学術会議法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  392. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  高木健太郎君から発言を求められておりますので、これを許します。高木君。
  393. 高木健太郎

    高木健太郎君 私は、ただいま可決されました日本学術会議法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、無党派クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     日本学術会議法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   日本学術会議が、我が国の科学者の内外に対する代表機関として、その機能を十分発揮できるよう、政府及び日本学術会議は、左記事項について特段の配慮をすべきである。  一、会員の部別・専門別定員、推薦等に関して政令を定めるに当たっては、日本学術会議の自主性尊重を基本として十分協議すること。 なお、内閣総理大臣が会員の任命をする際には、日本学術会議側の推薦に基づくという法の趣旨を踏まえて行うこと。  二、日本学術会議は、科学者の総意を反映するため、幅広い分野から適切な会員が確保されるよう努めること。  三、日本学術会議が、その目的・職務を十分果たせるよう、必要な経費その他諸条件の整備を図ること。  四、日本学術会議科学技術会議学術審議会、日本学術振興会その他の学術関係機関との連携協力体制の確立に努めること。特に、日本学術会議が行う勧告、答申、要望等について、政府はその趣旨を尊重して適切に対処すること。  五、本制度について、その実施結果を踏まえた見直しのため、適当な時期に国会報告すること。   右決議する。  以上でございます。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  394. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ただいま高木健太郎君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  395. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 多数と認めます。よって、高木健太郎君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、丹羽総理府総務長官から発言を求められておりますので、この際これを許します。丹羽総理府総務長官
  396. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) 日本学術会議法の一部を改正する法律案の御審議をお願いいたしましたところ、長時間にわたりましてあらゆる角度から御検討を賜り、御可決をいただきましたことを深く感謝いたしております。御審議中に賜りました貴重な御意見また御要望につきましては十分拝聴いたしましたので、委員長初め、諸先生の御期待に沿いたいと考えておる次第でございます。  さらに、ただいま附帯決議として決議されました点につきましては、御趣旨を踏まえつつ、制度の運用等に万全を期してまいる所存でございます。
  397. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  398. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時三十分散会