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1983-04-28 第98回国会 参議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十八日(木曜日)    午前十時十一分開会     ─────────────    委員異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      福田 宏一君     秦野  章君  四月十一日     辞任         補欠選任      秦野  章君     中村 禎二君      佐藤 昭夫君     沓脱タケ子君  四月十二日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     佐藤 昭夫君  四月十五日     辞任         補欠選任      中村 禎二君     秦野  章君  四月十八日     辞任         補欠選任      秦野  章君     古賀雷四郎君      小西 博行君     藤井 恒男君  四月十九日     辞任         補欠選任      井上  裕君     中村 禎二君      仲川 幸男君     衛藤征士郎君      古賀雷四郎君     秦野  章君      藤井 恒男君     小西 博行君  四月二十日     辞任         補欠選任      衛藤征士郎君     仲川 幸男君      中村 禎二君     井上  裕君  四月二十五日     辞任         補欠選任      小西 博行君     柳澤 錬造君  四月二十六日     辞任         補欠選任      柳澤 錬造君     柄谷 道一君  四月二十七日     辞任         補欠選任      柄谷 道一君     小西 博行君  四月二十八日     辞任         補欠選任      世耕 政隆君     沖  外夫君      中西 一郎君     林  ゆう君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         堀内 俊夫君     理 事                 田沢 智治君                 粕谷 照美君                 佐藤 昭夫君     委 員                 井上  裕君                 沖  外夫君                 山東 昭子君                 内藤誉三郎君                 仲川 幸男君                 林  ゆう君                 柏原 ヤス君                 高木健太郎君                 小西 博行君                 前島英三郎君    国務大臣        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       丹羽 兵助君    政府委員        内閣総理大臣官        房総務審議官   手塚 康夫君        日本学術会議事        務局長      藤江 弘一君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    参考人        日本学術会議会        長        久保 亮五君        日本学術会議改        革委員会委員        長        岡倉志郎君        東京大学名誉教        授        向坊  隆君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○日本学術会議法の一部を改正する法律案内閣提出) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ただいまから文教委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、中西一郎君及び世耕政隆君が委員辞任され、その補欠として林ゆう君及び沖外夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事佐藤昭夫君を指名いたします。     ─────────────
  5. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 日本学術会議法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。丹羽総理府総務長官
  6. 丹羽兵助

    国務大臣丹羽兵助君) ただいま議題となりました日本学術会議法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  日本学術会議は、わが国の科学者内外に対する代表機関として、科学向上発達を図り、行政産業及び国民生活科学を反映浸透させることを目的として設置された機関であります。  昨今の科学発展には目覚ましいものがあり、学術研究多様化が進む一方で、学術研究細分化専門化も多く見られるところであります。 これらの学術研究進歩発展に対応し、日本学術会議目的を果たすために、日本学術会議会員選出方法を改めるほか、日本学術会議組織等改正を図ることとし、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、法律案概要について申し上げます。  まず第一点は、学術研究多様化細分化等に対応するため、日本学術会議会員選出方法を、日本学術会議に登録された一定の要件を備える科学者の団体を基礎とする研究連絡委員会ごと推薦制に改めようとするものであります。  第二点は、日本学術会議会員となることができる者の資格を五年以上の研究歴を有し、その分野ですぐれた研究または業績がある科学者とすることに改めようとするものであります。  第三点は、日本学術会議会員選出方法推薦制に改めることに伴い、日本学術会議会員推薦管理会を置くこととし、会員候補者資格の認定その他会員推薦に関する事務を行わせようとするものであります。  第四点は、学術研究多様化細分化等に対応するため、日本学術会議会員部別専門別定員は、政令で定めることに改めようとするものであります。  第五点は、日本学術会議職務遂行の充実を図るため、研究連絡委員会等に関する規定整備を行おうとするものであります。  このほか、所要の規定整備を図ることとしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願いいたします。
  7. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後刻行うことといたします。     ─────────────
  8. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本学術会議法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会日本学術会議会長久保亮五君、日本学術会議改革委員会委員長岡倉志郎君、東京大学名誉教授日本学術会議に関する懇談会委員向坊隆君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時まで休憩いたします。    午前十時十七分休憩      ────・─────    午後一時四分開会
  10. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  日本学術会議法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、お手元名簿にございます三人の参考人の御出席を願っております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査参考にいたしたいと存じます。  つきましては、議事の進行上、名簿の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただき、参考人方々の御意見の陳述が全部終了した後、委員質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず久保参考人からお願いいたします。久保参考人
  11. 久保亮五

    参考人久保亮五君) それでは、日本学術会議会長として意見を申し上げます。  まず、日本学術会議とはどんなものかということにつきまして、ごく簡単に申し上げます。  日本学術会議は、日本学術会議法によってできたものでございまして、そこに述べられておりますように、日本科学者内外に代表する機関でございます。そして日本学術向上発達を図り、学術行政産業国民生活に反映浸透させる、こういう目的を持っているものでございます。  それで、法文のことについて一々申し上げる必要はないわけでございますが、職務といたしましては「科学に関する重要事項審議し、その実現を図ること。」「科学に関する研究連絡を図り、その能率を向上させること。」この二つが法律職務として規定されております。  それではさらに、どういうことをするかと申しますと、科学に関する研究、そのほか科学の振興を図るために政府に対して必要なことの勧告をする、また政府からはそういうことに関しまして御諮問がある、そういうようなことでございます。かいつまんで申しますとそういうようなことですが、さらに、もっと具体的にどういうことをやっているかということを多少申し上げたいと思います。  科学向上発達を図る、あるいは行政産業国民生活に反映浸透させるというようなことでございますが、そのためにいろいろなことをやってまいりました。その中から幾つかのことを拾って申し上げますと、一つ科学向上発達を図るために必要な方策というようなものについて政府勧告するというようなことをいたします。中でも学問の進展に応じて必要とされるような研究所あるいは研究上の便宜、施設というようなものについて政府勧告するというようなこともいたします。たとえばその中で、研究所の設立のようなことに関しましては、これまで八十件を勧告いたしましたが、そのうち、そのまま実現されているものが二十六件ございます。それから勧告どおりではございませんが、部分的に趣旨を酌んでいただいて、施設とかいろんな形においてそれを実現されているというものが相当な数でございます。  二、三の例を申し上げますと、最近、わりあい新しいところで申しますと、たとえば万博の跡地にございます国立民族学博物館とか、あるいは岡崎の新しい研究団地がございますが、そこにございます分子科学研究所基礎生物学研究所あるいは国立国文学研究資料館、そういうようなものがございます。そういうようなことで、皆様余りお気づきでないかもしれませんが、私の専門から見まして重要なものが幾つもございますが、その一つの例として申し上げますというと、日本大学における大型計算機のシステムというのは世界でもまれに見るほどの整ったものでございます。これはずいぶん古いことにはなります。一九六三年に学術会議から勧告が出まして、東京大学大型計算機ができましたが、その後文部省の御努力によりまして、そういう設備が日本全国に張りめぐらされまして、しかもそれが非常にタイムリーに改善、拡充されております。これなども学術会議の功績とは申しませんが、いたしました仕事の非常に重要な結果であろうかと思います。  それから、学術会議には種々の委員会がございまして、常置委員会特別委員会等々ございます。そういう委員会で、たとえば長期計画の問題とか研究費の問題とか、あるいは学術体制の問題、あるいは国際学術交流に関する問題等々、そういうようなものを検討審議いたしまして、必要なことについては政府要望するというようなこともいたしておるわけでございます。  それから、研究連絡委員会というものがございまして、これはさきに申し上げました常置委員会特別委員会のようなものは主として会員から構成されますが、研究連絡委員会のようなものは会員ももちろん加わっておりますけれども、それ以外に研究者方々多数がお加わりいただいて、それぞれの専門分野、あるいは緊急を要する問題等々について研究上の御連絡を図っていただき、それから将来計画、新しい分野を進めること、そういうようなこと、あるいはシンポジウムを必要に応じて催されたり、また国際会議の企画をしたりというようなことをなさっております。国際交流のようなものは、ちょっといま申しましたけれども、学術会議の非常に大きな活動でございまして、これは法律にもそのことが規定されておりまして、日本を代表してそういう国際的な学術組織に加入するということでございます。  会員は、御承知と思いますが、二百十人でございまして、七部に構成されているわけでございます。  日本学術会議は、できましてから三十四年たちました。戦後間もなくのころ、日本学術体制を刷新するためにどういう方策をとるべきかということにつきまして、当時GHQにおられましたドクター・ケリーという方が非常に尽力されましたが、そういうこともございまして、当時のわれわれの大先輩の方々が真剣に討議された末、こういう組織をつくるということになったわけでございます。自来三十四年たちまして、その間にいろいろな活動をしてまいったわけでございますが、時代変化もあり、学問自体変化もあり、そういうことで改革すべき時期に来ているということは何人も認めるところでございます。  さて、それでその改革の問題に入るわけでございますが、その前に私、多少とも個人的な観点になるかもしれませんが、私の感じているところを申し上げます。  三十四年の歴史を通じまして、学術会議はいま申しましたような仕事を着実にやってまいったわけでございますが、世の中の大勢の変化、いろんなことからいたしまして、学術会議の役目は終わったのではないかというような声も聞こえるわけでございます。そういうことが改革問題とも大いに結びついているわけでございますが、あえて私の観点を多少申し上げることをお許しいただけるとすれば、私の気持ちといたしましては、日本の戦後の全く荒廃した時代から立ち上がるために日本学術会議ができ、そして大いに貢献したわけでございます。それから、高度経済成長時代を経てここまで来ている。これからの時代というのは、戦後間もなくの、だれの目にも非常な困難な時代とまた違った意味で非常にむずかしい時代に向かっている、これは間違いないことであると思います。  私は、実は正直申しますと、はなはだペシミストでございまして、人類がおよそこれから何年長らえることができるかということさえ思うのですが、全世界的にそういうむずかしい時代を迎えまして、学問技術が、ただ学問のため、技術のためというようなのでなくて、本当に人間のために、人類の生存のためにぎりぎりのところでどういうことをやらなければならないか、そういうところで科学者技術者の一人一人が問われるわけですが、科学者技術者がまさにそういう問いに答えるためにもこういうような組織がぜひ必要になる。いまはそれほどに思われないかもしれないけれども、そういうものがやらなければならないこと、日本のため世界のためにやらなければならないこと、それがいよいよはっきりしたかっこうで目の前に迫ってくるであろう、そういう時代だと思います。その意味で、私は学術会議というものはなくしてはならないというかたい信念を持っているわけでございます。  そこで、時間もございませんので簡単に、次に改革経過のことを申し上げますが、三十四年の歴史の中で、改革問題が真剣に取り上げられ始めましたのは、設立されて二十年目のころでございます。昭和四十四年のころで、学術会議で申しますと第八期ということでございますが、それ以来改革問題というものが非常に真剣に取り上げられて論議されたわけでございます。しかしながら、今日に至るまでその改革もまだ実現していないわけでございますが、この現在の学術会議の期、十二期でございますけれども、この十二期の初め、昭和五十六年四月の総会において、われわれはこの問題に抜本的に取り組むつもりであるという決意を示したわけでございます。抜本的にと申します意味は、法改正までを含めてこの改革考えなければならないということでございます。  それで、昭和五十六年の十月には改めて声明を発しまして、この改革問題に真剣に取り組むという決意を表明したわけでございます。それで、昭和五十七年、昨年の十月に改革要綱をまとめたわけでございます。これについてはその改革委員会責任者であられました岡倉先生からさらに御説明があろうかと思いますので、それ以上ここでは申し上げませんが、改革要綱総務長官に提出して、改革に御努力いただくようにお願いしたわけでございます。  当時総務長官は、いわゆる吉識委員会ということで私的な懇談会を設けられまして、何回かにわたってこの問題を非常に綿密に検討されたということでございます。それで学術会議要望、これは改革要綱を実現したいということの要望でございますが、そのこと、それから吉識委員会の御報告、そのほか自民党の特別委員会、そのほかいろいろ各方面の御意見をお聞きになったと思いますが、昨年の十一月に至りまして総務長官試案というのをいただいたわけでございます。これは日本学術会議改革要綱が、選出制度として提案いたしました三分の二公選、三分の一推薦という、これを退けまして、それではなしに、科学者自主性によって学協会基礎として会員を選出する、こういう考えでございます。その試案をいただきまして、これを検討してほしいということでございました。  それで、それを会長としてお受けいたしまして、学術会議の方に持って帰りまして、運営審議会改革委員会に諮ってこれを検討いたしました。その改革要綱とこの長官試案との違いは、学術会議にとって非常に大きなものでございます。学術会議にとりましては、改革要綱に申しましたような選出方法が最善と考えられるわけでございますが、その後、いろんな客観情勢を拝察いたしますというと、要綱の線を実現するということは非常に困難である。この際としては試案のことを十分検討しなければならないということで検討いたしました。  それで、その検討の結果につきましては、二月の十五日の臨時総会に提出いたしまして、重ねて政府に対しては改革要綱の線でぜひお考えいただきたいということを要望しましたと同時に、政府として改革を早急にまとめなければならないという場合には、十分御協議いただきたいということを申し入れたわけでございます。  その後、総理府におかれましては、前長官試案の線に沿って改正法案をまとめたいということでございました。それで、その協議ということになりまして、会長といたしましては改革要綱の基本的な精神長官試案の枠の中で最大限に生かすということを指針といたしまして協議いたしてまいりました。それでまとめられましたのがここに出ている法案でございます。  簡単に申しますというと、私会長といたしまして、そういう考えでできるだけ要綱精神を生かすようにと、そういうことの主張をいたしましたが、それはずいぶんお酌み取りいただけたと思います。協議調わずという点も若干ないわけではございません、ございますけれども、そういう基本的な考え方自体は御了解いただけたと思います。  しかし、ここまでは学術会議会長といたしまして政府と折衝をする任務を負わされましたところでいたしましたことで、学術会議がこれを受け入れると申しますか、これでいこうというような結論がすぐ出るかどうかということになりますと、なかなかむずかしい問題があるわけでございまして、この間、四月十三、十四、部会と総会臨時にいたしましたけれども、そこではいろんな御意見が出まして、まだその段階でこれにイエスともノーともはっきりは言えないというか、いろんな意見が出たというところでございました。そういう段階でございますが、政府におかれましてはこの時期に踏み切ってこれを出すという御決断をなさったわけでございます。  時間ももう尽きたようでございますので、また申し上げ足らなかったところは御質問に応じまして御返事申し上げたいと思います。
  12. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ありがとうございました。  次に、岡倉参考人にお願いいたします。岡倉参考人
  13. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) 改革要綱策定に当たりました前委員長ということで、改革要綱策定のあらましの経過とその内容につきましてが第一点、それから第二点として、改革要綱考え方等と比べまして、今回提案されております改正法案とを比較してどういう問題点があるかということを中心に申し上げて審議の御参考にさせていただきたいと思います。  まず、改革要綱策定の経緯は、先ほど久保会長から簡単にお触れになりましたし、お手元に配付されております資料が四点ございますが、その中の昨年十月二十六日付の内閣総理大臣に対する久保会長からの要望文書にその辺のことも書いてありますので、御参考にしていただければ幸せと思います。  改革要綱ができるまででございますが、一昨年の秋から昨年の春にかけまして、学術会議改革に関する第一次案、次いでそれを検討した結果の第二次案をつくりまして、昨年の五月の総会日本学術会議改革についての試案というものを採択いたしました。この試案は、学術会議の内部で検討をまとめたものでございますので、これだけで改革の構想を決めてしまうわけにはまいりませんので、この試案を広くアンケートに付しまして意見を求めたわけであります。  その一つは、約二十三万の各分野科学者一定資格を持っている学術会議会員選挙における有権者の方々に、これは大体二百分の一ぐらいのランダム方式でございますが、アンケートをして結果を伺いました。それからすべての学協会、それから大学研究機関の長の方々、それから最近の学術会議会員であっていまおやめになっている方々、合計三千数百通のアンケートをいたしました。その結果は、およそこの試案考え方を支持する、その他幾つかのコメントがございましたが、そういうことでございます。  もう一つは、厳正中立立場でしかも深い学識経験を持っておられる方々を、当時の伏見会長諮問機関として組織いたしまして、そこでもこの試案検討していただきました。その委員長は元文部大臣永井道雄先生で、ほかにここにいらっしゃる向坊先生、同じく東大元総長の加藤一郎先生、それから慶応義塾大学石川塾長、上智大学柳瀬学長、理化学研究所理事長宮島龍興先生、それから元一橋大学学長都留重人先生などでございます。  この方々は大変慎重にこの試案検討され、かつ独自の学術会議改革についての御意見を出されましたが、その中で学術会議のあり方についていろんな御注文もいただきましたけれども、学術会議会員選出方法につきましては、会員には科学者としての識見を持ち、学会において指導的立場に立つすぐれた研究者を選ぶことが第一の条件である。そして、この会員選挙制度日本学術会議の根幹をなす制度であるので、これを維持するとともに、適任者会員に加えるための推薦制を新たに取り入れるということで、その中身がこの永井委員会答申にはございました。  私どもは、この永井委員会答申というものを非常に重視しまして、この考え方を大いに取り入れまして、その結果、昨年の十月の総会でほとんど満場一致、二、三不賛成の方があったようですが、ほとんど満場一致で採択したものが日本学術会議改革要綱という文書でございます。これは、本日理事会の御承認を得てお手元にお配りしてございますので、ごらんになっていただければ幸せと存じます。  以上が、改革要綱のでき上がるまでの大まかな経過でございまして、お聞きのように、これは学術会議会員だけでつくったものではない、広範な科学者あるいは学協会大学研究機関の長あるいは永井委員会のそうそうたる公正な立場の学者の方々の御意見を入れてつくったものであるということを御認識いただければ幸せでございます。  次に、この要綱の重点でございますが、お手元の資料をごらんになっていただくと幸せでございますけれども、その第一ページに改革の基本的前提というものが六点ございます。これは学術会議法によって規定されている学術会議の性格とか目的とか任務とか、それから三十数年間の歴史の中で打ち出されてまいりました慣例、慣行を含めた活動の実態等を踏まえまして、そういった特色なり基本的な性格の中で欠陥があるので、改めるべきものはもちろん改めるが、この重要な特色あるべきものは今後とも改革に当たっても維持すべきであるという、改革についての基本的な考え方がここにございます。  その六点はこの一ページにございますが、第一は、国の機関であるけれどもきわめて独特な性格のものである、つまり独立してその職務を行うという点でございます。  それから第二は、これとうらはらになりますけれども、政府から独立して職務を行う国の機関である。  第三は、日本科学者内外に対する代表機関である。この点は今度の法改正でも変更しないということが明らかにされております。  それから第四点でございますが、これが改正法案とかかわりのある点だと思いますけれども、公選制を基盤とする、しかも重層構造性を備えているということが書かれております。この重層構造性と申しますのは、先ほど久保会長からもちょっと御説明がありましたが、二百十人の会員によって構成されている総会その他の機関並びに六つの常置委員会、約十近い特別委員会、これは一部から七部までの学際的なメンバーによる組織を持っているものでございますが、そういう基本的な組織と並行して、先ほど久保会長もおっしゃいました研究連絡委員会というものがございますが、この研究連絡委員会には会員もメンバーになっておりますけれども、約千二百余りの会員外の第一線の科学者が加わっております。その意味では、学術会議は二百十名の会員プラス千二百数十名の会員外の科学者によって構成されているという重層構造性がある。この点は学術会議の大変特色でありまして、その職務を果たす上で大変役に立っている。その点でこの研連の組織というものの充実強化を図ることが必要であるという改革一つの方向もそこから出ているわけです。  第五番目に、組織、運営上総合性を持っている。これは一部から七部まで各三十人ずつの現行法では会員がございますが、これは人文科学、社会科学、自然科学、その中には基礎と応用とございますが、そういう総合的な組織形態あるいは運営がとられていて、これは諸外国のアカデミーあるいはカウンセルなどにもほとんど類例がない、また外国の科学者からも大いに高く評価され、うらやましがられている点でございます。  それから六番目には、学術会議はもとより国の機関でございますけれども、しかし、この学協会とか科学者研究機関等々、そういうものに根をおろしていて、実質的には科学者の自主的な組織として機能している側面を持っている。この六つの点は相ともに一体をなしておりまして、学術会議の基本的性格や特色、存在理由をつくり出しているものであるから、これはあくまで堅持すべきである。この前提の上に立ってこの欠陥を是正し、重要な改革を施して、目的職務を達成するために資したいということでこの改革内容が定められているということでございます。  特に今回の法案との対比におきまして注目していただきたいと思いますのは、五ページ目に、公選制を基盤とし重層構造性を備えていると、先ほど申し上げた特徴の説明がございます。この中で、この会員の公選制というものは学術会議を「「日本科学者内外に対する代表機関」たらしめる最大の特色であり、非任命制は独立性の制度的保障である。」と書かれております点。それから別のところでございますけれども、学術会議の公選制が失われれば学術会議の存在理由もまたあり得ないというふうにシリアスに考えているという点に御注目いただきたいと思います。  先ほども申し上げました永井道雄元文部大臣委員長とする永井委員会答申でも、先ほど読み上げましたように、この会員選出制度、つまり公選制というものは学術会議の根幹である、これは維持すべきである、同じ結論というよりはむしろ永井委員会によってオーソライズされたという点にもう一度御注目いただきたいと思います。  しかし、その後この選挙制度については従来の全会員を選挙で選ぶということについては深い反省が施されました。あらゆる制度がそうですけれども、国会議員の選挙も含めましてすべての制度に欠陥がないというものはあり得ませんで、学術会議会員公選制という制度にもさまざまな欠陥がございます。そういう点をどう是正するかという配慮から、この三分の二までは有権者たる科学者による直接選挙で選ぶ、残りの三分の一についてはその当選した科学者が、これなかなか日本語にうまくならないので横文字で申し上げますが、いわゆるコオプションに基づく推薦制を併用するというのが結論でございます。  なぜこういうことを考えたかと申しますと、そもそも改革考える基本的前提として、今度の法改正の理由にも挙げられておりますが、学問科学研究多様化とか細分化とか、とりわけ複合的、学際的領域の出現というような状況がございまして、これに対応しなければ学術会議職務は果たし得ないということでございますので、その点を考えますと、たとえば複合的、学際的領域からの会員を選挙によって選ぶというのは大変むずかしいことで、そういう方々推薦によって加わっていただける。それからまた、国際学術団体がいまたくさんございますが、日本人の科学者でその会長とか副会長をやっていらっしゃる方もいっぱいございます。そういう方の中の主な方だけでも学術会議会員にいわばなっていただく。これも選挙では必ずしも制度的にうまくまいりません。  それから、お隣におられて大変失礼なんですけれども、向坊先生のような日本でも屈指の見識のある科学者がおられますが、向坊先生会員選挙では落選されたことがございます。これは選挙制度一つの欠陥でございまして、そういう方に、選挙でたとえ出られなくてもぜひ出てほしい、会員になってほしい方は、推薦制度でコオプション制ならば加わっていただけるというような配慮で、この一部推薦制というものを取り入れられたのがこの改革要綱の基本的な会員選出制度についての考え方でございます。  これにつきまして、お手元にお配りしてあります久保会長から提出されました二つの要望がございますが、この中で一貫しておりますのは有権者による直接選挙に加えて推薦制を併用するというやり方が最善であるということ、これは必ずしも保守的な立場ではありませんで、本当にこれが一番すぐれていると考えましたので、現在もなおこの考え方は、久保会長も含めて学術会議は捨てていないということでございます。  次に、それと比較しまして今回政府から御提案になりました改正法案について、どういう問題点改革要綱と比べてあるかということを簡単に申し上げたいと思いますが、若干私見も加わるかもしれませんので御了承いただきたい。  一つは、これは私見でございますけれども、この改革要綱が、ぜひ法改正をして実現していただきたいというふうに政府に要請しておりました若干の部分が取り入れられていることは、これをごらんになれば一目瞭然でございますが、この点は大いに評価したいし、かつ感謝もしたいと考えております。  ただ問題は、先ほどから申し上げております最も根幹的な部分、つまり学術会議の基本的な構成の仕方でございますが、要するに会員選出制度でございますが、この点が、この改正法案では全面推薦制ということで、私どもの考えた三分の二選挙、三分の一推薦という考え方とは、公選制の全面的な否定という点では質的に全く異なっております。したがって、いわば致命的とも言うべき——改革要綱の中にある文章をそのまま引用しますと、これがなくなれば学術会議の存在理由はなくなるとまで考えている、そういう部分が否定されているということから申しますならば、ほかの部分はなるほど取り入れられて、その点は評価できるわけですけれども、それとこれとは実は比べものにならないほどの違いを持っているわけで、その意味からは、大筋において改革要綱が取り入れられたというようなことは言いがたいと考えております。  そこで、先ごろ四月の半ばの学術会議臨時総会、各部会では、当然のこととして、これに対する反対論、あるいは技術的不可能論、あるいは保留意見というものがかなりたくさん出ました。特に反対意見は、人文・社会科学部門ではほとんど圧倒的であります、一部、二部、三部では。  その主な点だけを御参考までに申し上げますと、この改正法案内容という文書でわれわれは検討したのでございますけれども、順序不同で列挙いたしますと、もしこういうことになれば、学術会議の独立性、それを支える支柱が失われるおそれがある。  第二は、学術会議科学者代表機関というのが現在の性格、規定ですが、これが学協会代表連合に変質するおそれがある。  第三点は、複合的、学際的領域や、地方の時代と言われておりますけれども、この学会推薦制でやりますと、地方在住の科学者会員として加えることが制度上非常にむずかしくなる。ほとんど困難になる。  それから、幾つかの学問領域では、現在の関連学協会の現状に照らしてみますと、改正法案による全面推薦制は実施不可能に近いという技術的な困難論でございます。  それから研究連絡委員会の性格と機能、これは会員推薦母体の役割りを果たすことになりますが、そうなりますと研究連絡委員会は、元来は国際、国内の研究上の連絡というようなことを主たる任務にしている。学術会議法三条二項が主たる任務でございますが、そうなりますと、この学術会議職務、主たる任務の二番目の方にこの性格が片寄っていくおそれがないかどうか。総合的な科学技術政策を人文、社会、自然、諸科学の学際的な分野に属する科学者審議して、たとえば政府勧告等をして実現を図るというような主たる任務がひっくり返ってしまうのではないかという危惧。  それから六番目には、学会からの推薦ということになりますと、学協会の間に、あるいは学協会会員の中にいろいろな混乱、動揺を招くおそれがある。たとえば学会から学術会議会員推薦するということになりますと、たとえば山階宮のやっていらっしゃる鳥類学会がございます、それから天文学会、こういうところでは会員の半分以上がアマチュアです。アマチュアと専門研究者が一緒になってやっているところに意味が大いにあるのですが、その中に差別が持ち込まれるおそれが少なくともある。こういう点で、へたをすれば学会に大変な混乱を与えるおそれがあるのではないか。  それから、ある会員は、この推薦制度の導入によって、学協会、ひいては科学研究に対する国家統制に結びつくおそれがあるのではないかということを、戦前と現在を比較して指摘した方もございました。  それからまた、選挙制をやめて推薦制に変えるということは、実際問題としては、約二十三万のいわゆる有権者、一定資格を持った科学者から選挙権、被選挙権を剥奪することになるが、そのことについて、そういう有権者の意向も確かめないで一方的にやっていいのかどうかという御意見もございました。  それから、保留の意見の中には、私どもが総会審議した段階では、この法改正趣旨も明らかでない、それから法文それ自体も見ることができない、そういうことでは責任のある賛否は決しがたい。これは主として法律学者の間からの、これはもっともな意見だと思いますが、そういう御意見がかなりたくさん出まして、結果的には、先ほど久保会長がおっしゃいましたように、この賛否を決しがたい。逆に言えば、学術会議としては、会長の見解という文書がございますが、現在の段階ではこの法案に対してにわかに同意しがたいというのが総会の状況であります。  で、これらの理由は、この委員会で御審議になる場合にぜひ御参考にされたいと思います。  最後に、本日午前中に、総理府総務長官がこの法律案提案理由説明された、その資料もいただきましたが、法案の中では、ただ簡単に改正理由として、「科学多様化等にかんがみ、」と書いてあるだけでございます。長官の御説明はもう少し長くて、五点ございますが、その中の一番重要な点は、学術研究多様化が進む一方、細分化専門化も多く見られる、そこでそれに対応するためには全面推薦制というふうになっております。  これは私の私見ということになりますが、若干これは考え方として短絡があるのではないか。 この基礎になりました田邉前総理府総務長官の試案では、この学術会議会員科学者の自主的な選出によることを基本とするとありますが、自主的な科学者の選出ということであれば、この民主主義社会のもとでは一般には選挙ということになるわけで、それがどうして推薦制に短絡するのかというのは、ちょっと説明がないと理解しがたいと思っております。  そして、先ほどもちょっと触れましたけれども、多様化あるいは細分化にこたえるということでございますと、私どもの改革要綱の、三分の二公選、三分の一推薦ということで考えますならば、たとえば学際的、総合的領域の科学者とか、国際学術団体の役員であるとか、地方在住の科学者であるとか、そういう人を拾える仕掛けになっているわけで、そこまで配慮しているんですが、この学協会を基盤とする推薦制ですと、一〇〇%不可能とは申しませんが、制度上はきわめて困難になります。そういうことで果たして多様化細分化に対応できるかどうか、時代逆行ではないか、極言すれば。そういうような危険をはらんでいるように考えます。そういう意見は私だけではございませんで、何人かのいろいろの分野会員が言っている点でございます。  そういう点を考えますと、最後に二言三言、委員皆様方にお願いもございますので申し上げますが、一つは、学術会議がかねがね政府にお願いしておりましたように、学術会議法の改革、特に選出制度改革というのは、単に学術会議会員をどうするこうするということではなくて、日本の学会あるいは大学研究機関、また科学者に大変大きな影響をもたらす、ひいては日本科学研究の将来のあり方にも重大なインパクトを及ぼしかねないきわめて重要なものを含んでいるので、本当は政府改正法案をつくられる過程でももっとじっくり審議をしていただければよかったと思うんですが、それがこういう形で性急に出されてしまいましたことは、朝日新聞の十八日付の社説が論じておりますように、きわめて遺憾だと。この後は、皆様の慎重な御審議をお願いするしかないと、いまとなりては私思っておりますが、そういう点が一点。  第二点は、元来学術会議改革というのは、日本学術体制全体の中で学術会議をどう位置づけるか、その位置づけられた学術会議改革するためにはどうすべきか、そういうコンテクストで考えるべきでありますし、その意味ではたとえば科学技術会議とか文部省の学術審議会とか、そういう幾つかの関係の機関がございますが、そういう全体の中で学術会議をどう位置づけるか、その相互補完性はどうかとか、それならば学術会議はどういう性格、任務を与えるべきか、こういう考慮があって出されてくるというのが本格的な考え方だと思います。学術会議改革要綱でもそういうことは一応やっておりますけれども、まだまだ不十分だと私どもも思っているくらいです。本来はそういうことを検討してから学術会議改革政府におかれても取り組まれるべきだというふうに私は考えております。  また最後に、学術会議の創設の歴史につきましては、先ほど久保会長もおっしゃいましたけれども、これは過ぐる太平洋戦争、あるいはそれに先立つ日中事変、そういう戦争に科学者が盲目的に協力した、またそのために学術体制がゆがめられていた、そういう深刻な反省の上に立って学術会議のような組織をつくるべきであるという、そういう反省と意見日本の各分野科学者の間に強まりまして、それはGHQからももちろん指示されましたけれども、これは片山内閣のときでございますが、そのことについて科学者諮問をする。その諮問に当たったのが学術体制刷新委員会という組織ですが、これは各分野科学者の中から選挙で選ばれた人々が委員になって、そしていろいろ知恵をしぼったあげく学術会議のような組織が必要であるという結論を得て、これが芦田内閣のときに国会に提案され、国会で採択されまして学術会議が生まれたわけであります。学術会議の創立総会のときにはくしくも当時の参議院の議長の松平恒雄先生がわざわざ祝辞を述べられ、芦田総理大臣も祝辞を述べられましたが、総理の祝辞の中には、この学術会議組織方法、つまり選挙による組織方法というものが日本中の科学者が英知を傾けた結果であって、これは非常に重要であるということまで触れておられます。これは日本学術会議の二十五年史の中に収録されておりますので、御参考になさってくだされば幸いでございます。  いずれにしても、そういう点から本委員会におかれましては十分関係の資料も検討され、特に学術会議改革要綱に盛られている会員選出方法政府提案の方法と、この長短の比較を多方面的にやってくださることをお願いして私の陳述を終わりたいと思います。
  14. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ありがとうございました。  次に、向坊参考人にお願いいたします。向坊参考人
  15. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 向坊でございます。  私は、総理府でおつくりになりました日本学術会議に関する懇談会委員をしておりましたので本日お呼びがあったものと承知しております。私は座長でもございませんし、またこの懇談会は御承知のように一つのはっきりした結論を打ち出したわけでもございませんので、懇談会での議論のごく概要は申し上げますが、本日私の申し上げますことは、まあ一学識経験者の意見と、そういうふうにお受け取りいただきたいと存じます。  私、この懇談会の最初に出ましたときに、それぞれが意見を述べましたのですが、そのときの自分の言ったことはいまでも覚えておりますが、私は、学術会議はいままでの活動の状況からも考えまして、国立であるということはやっぱり必要だろうと思うということは申しました。しかし、設立以来三十数年を経ておりますし、その間、先ほどからお話が出ておりますように、社会も学会も相当変わりましたし、それから、学術会議に対する批判もいろいろな形で出ておりますので、改革の時期に来ていると思うということを申しました。  ただ、この懇談会が非常に短期間に結論を出すような計画のように伺いましたので、私は、これは相当重要な問題なので少し時間をかけて、少なくも一年ぐらいは議論をし、方々意見を聞いてから結論を出すべきではないかということ、大体その三点を申した記憶がございます。  その学術会議に対する批判と申しますのはいろいろな形で出ておりまして、その懇談会でも、非常に強い意見から学術会議に対して同情的な意見まで、かなり幅がございました。非常に強い意見、もう全く不要である、国立である必要もないし不要であるという意見から、いまの学術会議活動を高く評価して、何とかいまに近い形で存続すべきというところまで幅があったように記憶しております。このように非常に幅が出ますのは、それぞれの個人のお考えにもよると思いますけれども、私の感じましたところでは、同じ学者と申しましても専門分野によって事情が非常に違うということが、そういう幅を生じた原因であろうと思いました。  事情が違うと申しますのは、学問によって考え方もいろいろ違いますけれども、たとえば、学会というようなものが、一つ専門分野で非常にしっかりしたものができておって、学問活動がその学会を中心に行われている、そういう分野もございます。たとえば、私の属しております化学会とか、久保先生の属しておられる物理学会のようなところはそれに当たるところでございますが、専門分野によりましては、そういう体制が全くできておらないように見えるところがあるわけでございます。小さいグループがたくさんあって、化学会、物理学会に相当するような学会活動が行われているようには見えないような分野までございまして、非常にそれが多様であるということが学術会議改革においてもいろいろな意見が出てくる一つの大きな原因ではないだろうかと、そういうふうに感じた次第でございます。  ここでちょっとこの懇談会の様子を簡単に申し上げたいと存じます。  懇談会では、ただいま申し上げましたように多くの意見が出ましたけれども、報告書ではそれを四つにくくっております。  一つのA案と申しておりますのは、学術会議のまとめられました改革案に一番近いものでございまして、国の機関として、そして会員の選出は、まあ学術会議の案と似たような一部推薦、一部公選という形をとるという点で大変似ている案でございます。  それからB案と申しますのは、学術会議の任務であるところの二つの任務でございますね、科学の進歩のために重要な問題を審議して、必要があれば提言を行うという機能と、それから研究連絡という機能でございます。これは国内の連絡もあり国際的な連絡もございますが、その二つの機能を分離したらどうかというのがこのB案でございます。その方が、二つの機能には同じ人が一番適しているとは必ずしも言えないので、分離した方がそれぞれの機能をちゃんと果たすのではないかというのがB案でございます。  それからC案と申しますのは、これは全機能を民間に移すのがいいんだというのが簡単に申せばC案の骨子であります。  それからD案は、学術会議改革は非常に重要事項なので、根本的に改革すべきであって、しばらくは現状のままで置きながら、時間をかけて慎重に改革審議したらどうかというのがD案でございます。  これらについて、いろいろ意見が交わされましたけれども、それぞれの案について問題点が指摘されまして、一致した結論を得るには至らなかったわけであります。  その主な点を申し上げますと、学術会議案に近いA案につきましては、学者の独立性を非常に強く主張するならば、むしろ国の機関である、政府機関であるということは矛盾するのではないか。会員選出制度については中途半端ではないか。この程度の、一部推薦、一部選挙というのは微温的であって、現在欠点として指摘されているところを必ずしも直すことにならないんじゃないかという批判がありました。  それからB案、分離案につきましては、分野によっては、第一の、審議して必要事項を提言するというような機能が弱まるのではないか、研究連絡という実質的な科学者の日常関心のあるようなことにばかり力が注がれるのではないかというような批判がございました。  それからC案の民間案につきましては、やはり一番根本は、安定した活動がちょっと心配だというところにあるのだと思います。政府機関として経済的にも安定した活動ができることが必要なんだということが批判の要点だと思います。  それからD案の、現状維持で時間をかけるというのは一つ考え方ではございますが、こういう改革というものにはやはりムードと申しますか、機運のようなものがありまして、政府側にも学術会議側にも、改革の機運がせっかく盛り上がっている時期に精力的に詰める方がよろしいんだということで批判されたのだと思います。  こういうわけで、一致した結論を得るには至らなかったのがこの懇談会でございます。  私個人の意見を若干つけ加えさしていただきたいと存じます。  私は、やはり学術会議がいままで果たしてこられたような任務は、国立機関でやるのがやっぱり安定しておって必要なんだろうと思います。主要各国を眺めてみましても、学術会議と全く同じものは見当たりません。それぞれの国の特徴によってあり方が違いますけれども、ほとんど主要な国では、国がこれをやっぱり指示して安定した活動をさせているわけでございますので、何とか私も国の機関であってほしいと思っているわけでございます。  それから現時点で、総理府がお出しになりました案と学術会議側でまとめられました案といろいろな点で一致しているところもございますし、相違している点もございますが、非常に大きなのは、やはり科学者自主性を尊重するということを第一に掲げて、公選制を強く打ち出しているのが学術会議の案であって、それがとられてないというところに一番大きな不満があると私は思います。  しかし、その科学者自主性を重んずるということは、やはり科学の進歩のために非常に大事なことと思いますけれども、それは大学なんかでも同じでございまして、国立大学学長は、御存じと存じますけれども、学内で選挙いたしまして、それを国に大学の評議会が推薦いたしまして、国が任命するわけでございます。そういう意味で、自主性の方は手前の方の選挙で生かされておりますし、国の機関としての制度は、国が投票結果を重んじて、ほとんど変更なしに任命がされているわけでございまして、この推薦制選挙制度というのは私は適当な組み合わせをすることが可能なのではないだろうか、そういうふうに思っております。具体的には私、この詳しい審議に入っておりませんから、申し上げる資格がございませんけれども、長い大学生活を通じまして、これは矛盾なくやれる可能性があるのではないか、そういうふうに思う次第でございます。  学術会議に対する批判、いろんな形で出ておりますけれども、やはり会員の選び方が非常に大きな影響を持っていると思うのです。最近、学術会議に対してみんなが冷たくなってきたのが二つの面であらわれておりまして、一つ会員に立候補する人が非常に減ってしまって、無投票の場合が多くなってきているという形であらわれておりますし、もう一つは、有権者の資格を持っているにかかわらず、有権者として登録しない若い人たちが非常に多いということでございます。  よく大学なんかで、だれかを立てようというような場合に、あわててその有権者を調べてみますと、若い人の非常に大ぜいが知らぬ顔をしておりまして、それで先輩が勧めて、学者として参加しろということで登録させるのでございますが、そういう面でもあらわれておりますので、何らかの形でこの会員の選び方を改めるということは、やはり学術会議に対する批判にこたえる一つの重要な道であろうと、そういうふうに私は思っている次第でございます。  外国との比較も非常に重要でございまして、外国との間の国際交流がいろいろな形で非常に盛んになっておりますので、学術会議のように国の科学者を代表する機関のあり方も、ほかの国と全く違ったことをやっているというのも必ずしも都合のいいことではないわけでございますが、外国と申しましても、また事情が非常に違っておりまして、必ずしも世界的に共通なあり方の認識というのも確立しておらないように思います。たとえば社会主義諸国では、学術会議に相当するものは恐らくアカデミーと呼ばれているものだと思いますが、アカデミーは非常な実力と申しますか、実行機関としては非常に大きな組織になっておりまして、国の一流の研究機関がほとんどアカデミーの設立、運営しているものでございます。私は社会主義国を全部歩いたわけではございませんが、数カ国を歩いて見ておりますが、どこでも私の行ったところではアカデミーが国のお金でつくり、運営をしておりますので、日本学術会議に比べると、はるかに実行機関的な色彩の強いものでございます。  それから、アメリカの場合には、そういう研究機関のようなものは一切持っておりませんが、何と申しますか、頭脳集団としての活動を非常に盛んにするところでございまして、たとえば国から非常に大きな、一件数億円というような非常に大きな委託研究を受けまして、それで学者を集めて、その結果をまとめて報告を提出する。これは政府のために働くというよりは、国のために働くという意識が非常にあるわけでございまして、そういう活動が非常に盛んなのがアメリカのアカデミーの特徴のように思われます。  その他、省略いたしますけれども、国によって事情が非常に違いますけれども、余り日本だけ別なことをやっても、向こうの人たちの理解を得にくいというようなこともございますので、参考にはする必要があるだろうと思います。私は、今回の改革案、十分に意見を申し上げる資格がございませんけれども、両方の案を拝見いたしまして、これはこれから実際に決まるまでの間に十分御連絡になれば、両方の、まあ百点満点とはいかないでもある程度まで満足し得るような案をつくり得るのではないか、そういう期待を持っているということを最後に申し上げます。どうもありがとうございました。
  16. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、参考人皆様には、各委員質疑時間が限られておりますので、恐れ入りますが、簡潔にお答えくださるようお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  17. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 最初に久保参考人にお伺いをいたします。  日本学術会議学術会議改革要綱をほとんど満場一致のような形で出されたということを伺いまして、私どもはそういう意思統一があるのであれば当然団結していらっしゃるわけですから、政府としてもその案を十分に取り入れなければならないというふうに考えるだろうと、こう思っていたわけですが、案に相違して学術会議改革要綱とは違う法律案が出てきた。そこのところが一番の問題点になるわけですけれども、学術会議にやはり問題がある、こういうふうに判断をして改革問題が起きてきたのが昭和四十四年の第八期のころからだと、こういうふうに言われております。その当時の問題点というのは、一体どういうことが改革しなければならないというような問題であったのか。それは学術会議の内部そのものからの問題なのか、あるいは今回のように、政府の方から大きな声が上がって改革の問題が討議をされてきたというふうに私どもは考えていいのかどうか、その辺についてお伺いをしたいと思います。
  18. 久保亮五

    参考人久保亮五君) ただいまのお話は、いまから十何年前の昭和四十四年ごろからのお話だと思いますが、問題の本質はいまとほとんど変わりません。  日本学術会議に対する科学者の関心が衰えてきているとか、それから、対政府の関係におきましてもとかく順調を欠くとか、元来政府と十分連絡して、協力して日本のために仕事をしなければならないわけでございますが、そういうところにいろいろ支障があるとか、それから学術会議自体の活動といたしましてはなはだ、そう言っちゃあれですけれども、予算の関係等もあり、いろいろな制限があってむずかしいとか、本質的な問題は現在とほとんど変わらないと思うんです。  しかし、この時代にどういうことを考え、どういうふうに取り組んだかといいますと、そういう問題を根本から検討するということをやる一方、これをまずは学術会議内部の問題として法改正に至らない範囲でやれるところだけやろうというのがこの時代のことでございました。しかしながら、そういう限界を設けて改革しようとしても、それだけでは非常にむずかしいということの意識がだんだんございまして、そして十二期に至ってあえて法改正、そういうことまで踏み込んで、いわば抜本的な改革をしよう、そういう検討をしようというのが十二期の初めのときからでございます。  ですから、ただいまの御質問にそれだけでよろしければ、問題の本質は当時と変わっていなかった。それに対する取り組み方は、最初のうちは問題の掘り下げとその内部的な改革を目指していた。それが十二期からは法改正を伴う問題にまで踏み込んでやろうと、こういうことになったのでございます。
  19. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 それから、総務長官試案が出されて、改革要綱と比較をしてみましたら、非常にその差が大きい。しかし、客観情勢を見ると、要綱案でいくのは非常にむずかしいというように判断をして対政府交渉をやられたというようなお話を先ほどされたわけですが、客観情勢を見ると非常にむずかしいという、この判断は一体何が原因で、何が条件でそういう判断をなされたのでしょうか。
  20. 久保亮五

    参考人久保亮五君) ここに、お手元には差し上げてございませんが、改革委員会報告というのがございます。これは二月の総会の時点で提出されたものでございますが、総務長官試案をいただきましたのは十一月の末でございました。それで、この検討をしてほしいということでございましたので、検討をする一方、問題をいろいろ掘り下げていったわけでございますが、改革委員会のその一つの報告として出ておりますものでは、こういう状況にあるという判断がございます。  つまり、学術会議改革要綱は、学術会議といたしましてはこれが最善であるということでございまして、そのいろんな問題がそこに出ておるわけでございます。試案で出ましたものは、その選出制度に関するものでございまして、そのほかの点については触れてなかったのでございますが、その根本的な、ほかの点についてのことは、たとえば国の機関——国の機関ということは触れておるわけでございますが、あと基本的なことを幾つか、そういうことはその事前までもたびたびお話をして御理解をいただいているわけでございます。  二月の時点での改革委員会の報告を見ますというと、要綱政府、国会の一〇〇%同意するということにはなり得ないという状況がある。これはなぜかといえば、そういう学術会議改革要綱、それから総理府総務長官の私的諮問機関、そういうようなものを総合して、矛盾するところがあるわけでございますが、それを総合して出されました回答が試案であるということは、その改革要綱の主張も考えた、これも考えた、それで総務長官としてはこういう答えだというのが試案という形で出てきた。ですから、要綱政府、国会の一〇〇%同意することにはなり得ないという状況がある。要綱の自主改革がそのままで受け入れられることがきわめて困難であるという事態に当面した現在、この事態をどのように認識するかが判断の重要なファクターである。これが改革委員会からの報告にございます。  その局面においては自主改革を実現したいという本会議の希望と、国会に責任を負う政府の判断との間に距離があることがわかった現在、それを調整の余地のないものとして歩み寄りを拒否するか、それとも調整の余地を認めて歩み寄りを認めるか、一にこの判断にかかっている。  さらに、その長官試案の線で政府改革を、改正法案を進めようとする場合、それが学術会議として許容範囲のものであるかどうかということは幾つかのファクターによるということが挙げられております。独立性、任務、代表すること。選出に公正が期待されるか。形式的任命制が実質的任命制に移行しない制度的歯どめが可能であるか。学協会に不必要な介入、統制、差別を引き起こすおそれがないであろうか。こういうようなファクター、これは法案がもしその改正試案の線でつくられていきましたときに、それがいかなるものであるか、こういうような判定のクライテリオンから、基準からいたしまして、許容範囲に入るかどうかということであるというふうに記されております。  それで、二月十六日以降、政府がその試案の線で進むというかたい決意を表明された段階に及びましては、会長としてはこれがいかなる形でこういうような判断にこたえるかということに対して最大の努力を払った、その結果がこれになってきたわけでございます。
  21. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 簡単に言うと、政府試案の線を譲りそうもない。したがって民間などにされては大変だから、国立の、しかも独立の機構であるという意味ではこの選挙制度のことは譲っても仕方がない、こういうふうに判断をして、全員の皆様にその態度をお諮りをした。そしてその態度についての会員の皆さんのお答えは、新聞報道なんかによれば、流会になったからないというふうに私どもが判断してよろしいのかという点はどのように理解したらいいのでしょうか。
  22. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 四月十四日ですかの総会におきましては最終的な判断には至らなかったわけでございます。  先ほど反対論の方の御紹介がございましたが、賛成論も多々ございまして、どちらとも決しかねたというところがございます。これは時間が十分用意されてなかったという点もございまして、そういうことでございますが、会長といたしましてはそのとき述べたことでございますけれども、この政府原案は、要綱精神を最大限に酌んでいただきたいという会長の折衝過程における主張を相当に取り入れていただいたことはこれは確かでございます。  それで、これは会員全体の判断では、現在の時点でそうではございませんが、折衝に当たった者といたしましては、これによって要綱全体の精神を損なうことなく日本学術会議が、これからの発展を期することができるというふうに考えております。  これは多くは科学者自体の努力によるところがあり、また同時に、もちろん政府、国会、そのほか各界の御理解をいただく必要がある問題だと思います。
  23. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 岡倉参考人にお伺いをいたします。  ただいま久保参考人の方から、賛成意見もずいぶん述べられた、こういうふうに言っておられます。しかし、先ほどの岡倉参考人の御報告では、根幹にかかわる選挙制度のことが全く違う形で法律として出されているのですから、私どもが判断しますにはこれは受け入れられないというのが筋ではないかと思うのです。しかし、賛成論が出てきたという点についてもどうしてもお伺いをしたいんで、その賛成論などについての岡倉参考人の御意見をお伺いいたします。
  24. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) 先ほど申し上げましたのは、総会や部会で出された反対論あるいは技術的不可能論の主なものを御紹介したのでございまして、私個人の意見ではございません。  それから、いまの御質問の賛成論の方でございますが、賛成論はいろんな角度から行われましたけれども、主なものは四つぐらいございました。総会等での御意見でございます。  第一点は、今回の政府改正法案は、会員の公選制以外については国家機関としては存置するし、独立性も保障するということなので、われわれの学術会議改革要綱考え方をかなり取り入れている。だから、これに賛成すべきだというのが一つ意見でございます。  それから第二の種類の賛成意見は、研究連絡委員会を基盤にして学協会会員推薦する、この推薦制度というものは確かに改革要綱のあの三分の二公選、三分の一推薦というものと比べると次善のものである。ベストではないが、それに次ぐものであるけれども、しかし、学協会というものは御存じのとおり科学者の自主的な組織でございますから、その意味科学者自主性を保障していると評価することができるという論拠からの賛成意見もございます。  それから第三の賛成意見は、これまでの経過に照らしてみると、学術会議がこの政府改正法案に反対するということは、学術会議の将来の展望を非常に困難にする恐れがあるから、その意味でこれに反対しない方がよい、こういう考え方でございます。  それから第四点は、この法案の提出権を持つ政府との合意がなければ学術会議改革を実現することができない以上、科学者自主性を損なわない範囲内で政府案に積極的に対応すべきである、これが第四の賛成意見のあらましでございます。  それから最後に第五の賛成意見は、この機会に、この政府改正案ですと、学術会議の中の組織としての研究連絡委員会が拡充強化されるということが前提になりますので、この際、研究連絡委員会の拡充を実現するということが可能であるから、その点で非常にメリットがある、だからこれに賛成すべきだ。  およそこの五つぐらいに分類できると思いますが、そういう賛成意見幾つかの部会で、特に工学の第五部とか、あるいは医学、歯学の第七部とかでは非常に多い意見でございます。総会でもこういう賛成意見は何人かの方々が述べられました。
  25. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 この改革要綱審議するに当たりまして、学術会議に対する世論の厳しい批判というものがそれまでにもたくさんあったと思います。そういう問題についての自己反省といいますか、その辺についてはどのようになっておりましたでしょうか。
  26. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) いまの御質問でございますが、先ほど久保会長もおっしゃいましたように、第十二期になりましてから法改正を含む抜本的な改革に取り組もうということになりましたのは、科学者の間からの、これは長老の科学者から第一線の若い科学者を含めて科学者の間からの批判とか、あるいは先ほど向坊先生がおっしゃいましたように、科学者学術会議離れとかそういう冷厳な事実がありますし、だから学術会議改革すべきであるという意見がそういうほかならぬ科学者の間からも出てくる、あるいは報道機関などの社説等からも出てまいりましたし、また、政界のレベルでは中山前総理府総務長官がかなり包括的にそういう御意見をお出しになった。そういう外部の声を深刻に受けとめて、そしてみずからどういう点に欠陥があるかということを、完全ではないにしてもできる限りえぐり出してつくったということでございます。
  27. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 若い科学者の学会離れということを先ほど向坊参考人からもお話しになりましたけれども、岡倉参考人は、そういう学会に若い人たちが入っていないとか、あるいは若くなくてもテレビなんかでずいぶん活躍している人が、あんなものおれは入らないなどということを公言されたんでは、日本学術会議に対する信頼なんというのは、マスコミを通じても非常に大きく国民の中に入っていくと思うわけですが、その学会離れをしていく原因そのものの分析はどのようにお考えですか。これは岡倉参考人向坊参考人、あわせて久保参考人にもお伺いしたい。
  28. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) いまの御質問でございますが、もちろんそういうことは検討いたしました。これにはさまざまな理由がございます。  一つは、学術会議組織運営の欠陥から生ずる学術会議自身の責めに帰すべきものでございます。それは先ほど久保会長もおっしゃいましたように、学術会議ができたころと比べると、簡単に言えば権威を失墜した、社会的な影響力を低下させたということで、これはまたいろいろ原因があるんですが、将来をはるかに展望した壮大な科学研究のプログラムをつくるというようなことが必要なのに、そういうことができないではないかというような批判もありますし、そういうことができないのは、一つは予算が大変限られていてその枠の中でしかやれない。会員は非常勤の特別職公務員でございますけれども、特別職公務員の給与に関する法律規定によりまして、国家公務員の身分を持っている国立大学の教官とか研究所の所長というのはびた一文も手当はもらえませんので、学術会議会員の約半分は文字どおり手弁当で仕事をするという点で、魅力もないということにもなります。  そういういろいろな制約から、果たすべき社会から期待された任務を果たし得なかったということが一つございますし、それから他方、現在の若い世代の研究者の側にも問題がないではない。  一つは、手短に申し上げますが、このごろの若い研究者は、大体自分の研究本位に徹しておりまして、私、大学にいますが、大学でも助手クラスの方々は、自分の業績、論文を上げることには大変熱中しますが、学内の行政業務からはできるだけ逃げようとする、そういう風がございます。明治生まれの私などは大変考えられないことなんですが。  そういうことからすれば、学術会議なんて何に関係があるんだということになりますし、もし学術会議が巨額の広報活動用の経費でも持っていれば別ですが、三年に一度投票用紙が舞い込んで投票してくれというだけで、学術会議がどういう活動をやっているかということが有権者のところには全然届かないわけです。これで関心を持てといっても、これは持たない方があたりまえなので、そういう点は大変残念なことですが事実でございまして、双方が相まっていわゆる地盤沈下が起こっているということであると思います。  また、学術会議がせっかくじみちな長大な展望に基づく勧告等をいたしましても、残念ながら政府がすぐそれを取り上げてくださらないというようなこともありまして、新聞の報道などで学術会議活動が十分科学者の間にも国民の間にも伝わらないというようなことがこれまた裏目に出るということもございます。  このごろ国会などでも、たとえば献体登録を法律化しようという動きがございますけれども、あれはつとに学術会議がそういう勧告をしたのかようやく実ってきたということですが、そういう中では学術会議のガの字も出てこない、これは新聞にも責任があると思いますけれども、そういういろんなものがかたまっていわゆる地盤沈下が起こっている。  長くなりますから終わります。
  29. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 私は、先ほど若い人たちのことを申しましたのは、最近の事実を申し上げたわけでございまして、その理由は、ただいま岡倉先生のおっしゃったような、若い人たちが自分の業績に関係のないことには関心を持たないということもあるかと思いますが、やはり学術会議のイメージが若い人にはアトラクチブでないという点もあるし、それから、私の若いころには学術会議会員になっている先輩に依頼されまして、委員としていろいろなことをやらされたわけです。  たとえば、学術会議大学院の充実問題について政府勧告したい、そのときに大学院の実情を調べたり、問題点を若い者で議論したりする機会があり、先輩の依頼でやったわけです。それから、原子力の研究が始まりましたときに、原子力の研究は大変お金がかかるので、政府がつくった原子力研究所というりっぱな施設を全国の大学で共同利用しようというのが学術会議で話が起こりまして、私はまだ非常に若かったんですけれども、そのまとめの世話役をやらされまして、実現したわけでございます、原子力研究所。  そういう時代にはわれわれは一種の生きがいを持ってお手伝いをしたわけでございますが、最近そういうことがほとんど起こっておらないということもあるんではないかと思います。  簡単でございますが。
  30. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 ちょっと済みません、久保参考人の前に……。  そうしますと、若い方々がそういう関心を持たないというのは、いわゆる学術会議会員である先輩の方々の指導がちょっと足りない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  31. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 研究室の中での指導に直接関係しているとは必ずしも言えませんけれども、その先輩方の学術会議における行為なり言動なりがやはり若い人たちには敏感に響くと思うんですね。そういうことも影響していると思うんです。自分らに関心のないことばかり議論しているというような感覚を持っているということはあると思います。
  32. 久保亮五

    参考人久保亮五君) おおよそのことはいまお二人から申されましたので、余りつけ加えることはございませんが、そのことは私が一番最初意見を申し上げたときに多少は抽象的には触れたわけでございます。  これは大きく申せば時代の流れというものでございまして、学術会議が当初できました時分は、私どもは本当は真剣に自分たちがやりたいことがどうやって実現されるかということを考えたわけですが、いまそれほどいい時代になったかどうかよくわかりませんけれども、若い人たちにとっては、相当の施設もできている、研究環境もかなり整っているというようなことで、自分のことに忙しいという面もございます。  それで、実はある面ではそれは仕方がないというか、学術会議に関心が薄まるのも仕方がないことでございまして、学術会議といたしまして別段、この研究所学術会議勧告のおかげでできたんだ、あるいは全国の計算機の整備学術会議勧告のおかげでできたんだということをことさらに宣伝しているわけではございません。じみちな活動をするのが学術会議の持ち前でございますから、それはある程度やむを得ないことだと思います。  しかしながら、やはりそういうことの関心を若い人に持ち続けてもらうこと、そのことはこれからの世の中にますます必要になるということは先ほど私が申し上げた、そこを私は申し上げたかったのであります。そして、そういうことは研連の活動なども通じまして、会員のみならず、そういうことによって高められていくということを私は望んでおりますし、それが十分可能だと思っております。
  33. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 向坊参考人にお伺いいたしますけれども、日本学術会議に関する懇談会というのは、これは学術会議改革について結論を得るようにという形で諮問をされたものでしょうか。これを見ますと、両論併記みたいな形で、最終的に結論が出ないような感じで出されておりますが、その辺はどうでしょうか。
  34. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 私は自分の公務が忙しくて、この会議にそう勤勉に出たわけではございませんけれども、最初はやはり何らかの意見をまとめてほしいということで御依頼があったんだと思いますけれども、議論を始めてみますと、先ほど申し上げましたように、非常に広い幅のいろいろな意見が出ましたものですから、座長がおまとめになれなかったというのが事実だと思います。
  35. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そうしますと、この懇談会の代表としての結論というものが出ていないわけですからお答えづらいと思うんですけれども、しかし「何れの案についても細部にわたり検討を要する問題が多く、これらの問題について結論を得るには今後なお相当の時日を要するものと思われる。」と七ページに書いてあるわけです。「なお、日本学術会議改革については例えば新たな懇談会等を設けて引続き検討を行っていくこと、さらには当面、来年十一月に予定されている第十三期日本学術会議会員の選挙について、これを一年間延期する措置をとることなどが考えられる。」と、要はまとめていきたい、こういう趣旨だと思うんですけれども、でもそれにもかかわらず今回、具体的に法律案として出されてきた。  私などは国会議員として、こういう出し方は何だという、今回は大変強い不満があるわけなんです。本当にもっと十分に討議をして出してくればいいんだけれどもという考え方があるわけですが、この辺については強く総理府要望されたものでしょうか、どうでしょうか。
  36. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 期間を置いて十分議論してほしいという意見はかなり強く要望されました。しかし、何年という程度のものではございませんで、先ほども申し上げましたように、改革の機運が消え去りますとまただめになりますので、私どもの主張は一年ぐらいを考えておったものでございますし、ほかの方もその程度のものであったんではないかと、そういうふうに思っております。そして、今度の総理府要綱は、一応一年ぐらいをかけて学術会議とすり合わせをするということはお考えになっているように受け取っております。
  37. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私たちはすり合わせをするということについてはわかるんですけれども、基本的に公選制であるか、推薦制であるかというところのすり合わせはできない形の一年延期ということになるわけでして、この辺もやっぱり問題があるというふうに思います。  久保参考人にお伺いいたしますけれども、先回総会が流れた、久保会長のことは信頼をする、信認をするんだということになっているような報告がありましたけれども、これから学術会議としては、法案審議の間には何もなされないのかということはどうお考えですか。
  38. 久保亮五

    参考人久保亮五君) ちょっと最後の御趣旨がよくわからなかったんですが、学術会議総会は五月に予定されております。そのときにやはり改革のこの問題は論議されることと思います。
  39. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 総会が予定をされているといいますけれども、大体その日程はいつごろになるんですか。
  40. 久保亮五

    参考人久保亮五君) これはかねがね決められておりました通常総会でございます。十八日から二十日までの間でございます。
  41. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そうしますと、私どもは学術会議の意向というのは非常に国会審議の中では重要に考えているわけですので、学術会議はこの法律についてやっぱり総会の中に出して意見を問われるというふうにいまお考えになっていらっしゃるんですか、どうでしょう。
  42. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 国会審議の間にこれについてどういうふうな意見の出し方をするかということは、これから慎重に考えてまいりたいと思います。
  43. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そうではなくて、そのことはわかりました。国会審議の間にどのようなことをやるかということは慎重に考えていくというのはわかりましたけれども、その総会そのものに、この法律について総理府はこのように出しているというようなことをおろされるつもりですかどうですかという質問なんです。
  44. 久保亮五

    参考人久保亮五君) おろされるということですか。
  45. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 討議をされるかどうか。
  46. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 討議はすることになると思います。
  47. 田沢智治

    ○田沢智治君 学術会議につきましては、私も皆さん方の御意見を伺う中で認識をさらに新たにしました。社会が高度化し、多様化すればするほど学術研究多様化し、かつ細分化され、遺伝子組みかえすらできる、生命の変革が可能になってきておる現状を思うとき、政治家に政治倫理が求められるように、科学者には科学者としての生命の尊厳に対する絶対的倫理感が求められるものであると私は思っておるんです。  そういう意味において、幅広く多くの科学者、学者の部門別、専門分野から有資格者全員の参加を求めるような体質的変革をみずからの力でなさないと、私はこの使命遂行はできないと思います。四十四年に問題提起されて、十四年間ちっとも進展しないということはあなた方の私は怠慢だと思うんですよ。 やはり科学者科学者としての良心があるし、国家、国民に対する責任があるとするならば、みずからがみずからを改革し、それに対する真摯な気持ちで問題点を提起して、国民とともに生きる行き方というものを提言していく努力を私は続けなきゃいかぬと思うんです。そういう意味で、率直に私は各参考人方々意見を求めます。  久保会長さんについては大変に人格、識見に対して多くの人々は尊敬しております。あなたがまとめるならばまとまるんじゃないかという声もあります。そういう意味学術会議目的、使命を達成するために公選制でなければだめだと思われておられるかどうか、まず第一点、お聞かせください。
  48. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 公選制と申します意味は、もちろん現在の公選制は、何と申しますか、国がその選挙を管理してやる、直接には学術会議でございますが、そういう形の公選制でございます。今回長官試案の根本になっております学協会推薦というものが具体化されます段階におきましては、もちろんこれはそういう意味の公選制ではないわけです。いま法案に出ておりますのは、これは二段階選出で、二段目の選出は学術会議が管理して、あるいは国が管理して行うことになっておりますが、一段目のことにつきましては学協会の全くの自主性ということでございます。  その辺にいろいろな考え方もあるわけでございまして、学協会推薦というのがいかなる意味において公選制と違うか。公選制というものが、学者の、研究者の一票一票ということがそういう国の国営選挙という形で行われるような公選制である、そういうふうにいたしますと、これはここからは私の私見としてお受けいただきたいと思うんですが、そこに絶対的な意味があるとは私は考えません。これは学術会議でそういう意味での討論はなかったと思います、そういう意味では。しかしながら研究者が自分たちの代表を何らかの形で選び出してくるということは、やはり学者の代表たる学術会議を構成するということについてきわめて重要なことと考えます。
  49. 田沢智治

    ○田沢智治君 私もそういう意味においては理解いたします。  第二に、政府の原案は学術会議要望意見を大方入れた案であると先ほどのお話でございますが、そのように認識してよろしゅうございますか。
  50. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 大方と申します意味は、これは折衝に当たりまして、学術会議会長といたしましてこの要綱の基本的な精神をこの中にいかに実現するかということに最大の努力を傾けたわけでございます。それで、すべてについて私の会長としての折衝が、会長として満足するものになったとは断言いたしません。そうならない点がございます。 ただ、基本的な性格として必要なことというのは基本的にお認めいただいていると思います。  ただし、これもお断り申し上げておきたいと思うんですが、この折衝というものは、皆様御存じのように、特に学術会議のように会員全体の意思を常に問いながらということができないそういう組織体において、折衝のぎりぎりというのは一々なかなかむずかしいものでございますから、これは基本的には二月十六日の総会において、政府改正案の提出を、作成を急ぐというような場合にも十分折衝してほしいということでありまして、それについては、その陰におきまして私は会長としての努力をいたしました。
  51. 田沢智治

    ○田沢智治君 三番目には、政府の原案の弾力的な運用、要するに、学術会議側の考えているものもできる限り生かすというような運用面での配慮が保証されれば、合意が取りつけられると思われますか。
  52. 久保亮五

    参考人久保亮五君) これは、いま法案が提出されている段階で、いわば国民の代表である国会に御判断をお願いするわけでございますが、学術会議として、先ほど申し上げましたように、現在ではこの法案そのものに賛成、反対ということが決まっていない状況でございます。  それで、いまおっしゃいました合意という意味でございますけれども、この法案は、会長といたしましては実行可能な案をつくることに最大限努力したわけで、その辺が会員がもし納得されれば十分実行できると思っています。
  53. 田沢智治

    ○田沢智治君 岡倉参考人に二、三点お聞きいたしたいんですが、結局、学術会議の実態を見ると、出たい人より出したい人を出さなければ実質的な意味はないのじゃないか。いまの公選制の中だけでは、すぐれた研究または研究実績のある学者や科学者学術会議会員になりたくても、全国区だとか地方区の選挙運動を一年間ぐらいにわたってやらないと当選できない。こういうような弊害が一方においてあるので、まじめに一生懸命やっている学者は、そんなことよりも自分の研究をより発展させて、国家、国民のために尽くしたいということで、学術会議に背を向けていく、遠のいていくというような嫌いがあると私は聞いております。しかも、先ほどの参考人意見がありましたように、若い学者あるいは研究者がだんだん背を向けていっているというような欠点を私は直接に感じております。  その中で一番言われていることは、結局、科学者、学者というものは、研究活動においては最大限の自由を主張しながらも、反面自分の専門分野の領域になると、おまえはおれの教え子なんだというような保守的拘束力が強くて、公選制という制度はあるけれども、実態は、教え子を伝うて、おれは立候補するんだからひとつ僕に支援してくれとか、あるいは系列的に、企業別に、学会別に、学校別にというような形で、個人と個人の科学者との連携あるいは利害関係、そういう関係で、公選という美名のもとに実質的には自分本位の選挙をやっておるというような嫌いが随所にあると私は思っておるんです。  ですから、公選制公選制と言っても、科学者自身がそういうような次元での保守的分野をもうぶっ壊しちゃって、若い世代が一生懸命研究すれば、先輩格の科学者を抜いていけるような社会的地位が授けられるんだというような、みずからのそういうような変革、精神改革あるいは若い世代を思いやるというようなそういう雰囲気をつくらないと、形の上の公選制であっても、実質的には縦型の選挙の実態を披瀝しているようでは私は意味がないと思うのでございますが、そういう点についてどうお考えになられますか。
  54. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) いまおっしゃいましたようなことは、改革要綱選出制度改革につきまして当然考えたわけでございます。  おっしゃいましたように、これ現在どうかということは私も知りませんけれども、過去におきまして「白い巨塔」という有名な小説がありますが、いま田沢委員が御指摘のようなことが多々あったということはこれは残念ながら事実だろうと思います。 その意味で、公選制というものに欠陥があるということは当然認識しなければなりませんが、これはあらゆる選挙にはそういうものが随伴しやすい一般的な傾向はございますが、これはむしろ選出制度そのものが悪いというよりは、選出制度の運用、つまり選挙運動のあり方とか、こういうものの規制の仕方がまずいというようなことがかなり影響しているのではないかというふうに私は考えます。  それからもう一つ、出たい人が出なくて云々というお話がありまして、これはまさにそうでございます。先ほど失札ながら向坊先生を引き合いに出したんですが、要するに出てもらいたい人であるのに出られないというのでは、本当にこれは国の科学者代表機関としてはまずいわけでございますから、そこで推薦制と併用すれば十分それは救い出せるだろう。たとえばノーベル賞を最近もらわれた福井先生のような方ですね、これはぜひ会員になっていただく必要があるし、しかし選挙でございますと、万一落選した場合はということを皆さん、特に学者はプレスティージがございますのでお考えになるわけで、そういう場合にはやはり選出、公選以外の場で出ていただくということを考えざるを得ないだろうということでございます。
  55. 田沢智治

    ○田沢智治君 そこで、自主改革案の中では、会員の三分の一を推薦制にしたらいいだろうというような案が出てきていますが、この三分の一の推薦制というこの数字についての根拠と合理性について、どのようにお考えになられておられますか。
  56. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) その点はもちろん検討いたしました。先ほど御紹介いたしました永井委員会ですね、学術会議の方の諮問機関答申では、公選制を維持すべきだが、推薦制を併用せよ。その場合に半々にしろ。要するに半分は公選、半分は推薦ということでございます。これは参考までに申し上げれば、元東大総長の加藤一郎先生の強い御意見でございます。  そこで、永井委員会答申を尊重するということで、改革要綱の中の推薦制のパーセンテージでございますが、これを検討いたしましたが、この改革要綱考え方は、やはり科学者が直接会員を選ぶというところにいわば学術会議の独自の組織上の原則があるので、その意味からすると、半々ということになるとその原則が崩れる、せいぜい三〇%ぐらいではないかということで、最初は改革要綱の原案のときには、三十人か四十人推薦でいいんじゃないか、これは予定をいろいろ考えましてやっていったのですが、しかし永井委員会は半分とおっしゃるのでその間をとる。ですから、これは余り厳密な科学的根拠があったとは申せません。ただ、三分の一を超えると公選制の原則が崩れるのではないかということで、そこに限界を引いたというのが実情でございます。
  57. 田沢智治

    ○田沢智治君 そうしますと、必ずしも推薦制を否定するものではないというふうにも理解できますね。
  58. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) はい。  ただ、三分の二と三分の一ですから二対一という比率がございます。それで、公選制を基本とする、それのつまり欠陥を是正する手段として、科学多様化とか学際化というものも十分配慮しながら、また、出てもらいたい人を確保するというようなことからいわば推薦制を併用する。しかも、その推薦制はいわゆるコオプション方式を加味する。つまり、当選した会員がそれ以外の外部の学識経験者等とも御相談して、だれが出てもらいたい人かということを決めるのでございますから、この三分の二の枠で選出された人がしかるべき方を推薦で加えるというので、そちらに主体がございますから、コオプションというのは大体みんなそういうものですが、そういう意味では公選制の原則は土台にあるという考え方でございまして、その意味では併用でございます。
  59. 田沢智治

    ○田沢智治君 もう一点、学際的分野科学者研究連絡会の構成員として全員参加した場合、推薦制を認めてもいいのではないだろうかと私は思うんですが、いかがですか。
  60. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) いまの御質問、理解が食い違っておりましたら後でまた御指摘願いたいと思いますが、学際的分野あるいは複合的な分野というのは、御承知のとおり、たとえば環境科学とか遺伝子工学もそうだと思いますが、宇宙、海洋、いわゆる巨大科学はみんなそうですが、この分野に対応する研究連絡委員会ももちろん現実にもございます。 しかし、まだまだ足りないというのが実情でございますが、これがうまく組織されれば、その分野をカバーすることはもちろん不可能ではございませんが、かなりな技術的困難は伴うだろう。とりわけ、私は日本平和学会の理事をしておりますけれども、平和学とか平和研究、これは国際的にも学会がございますけれども、これは人文から社会から自然、全部にわたって、学術会議で言いますと一部から七部全部にわたっているわけでございます。そういう学会でだれを選ぶか。会員推薦するか。  ある場合には、たとえば東大の坂本義和教授のような、こういう方が出れば、これは国際政治学ですから、現行法の区分では第二部に所属するというふうにせざるを得ませんですし、たとえば名古屋大学の豊田利幸会員が選ばれれば、物理学ですから第四部というふうになると思いますけれども、そういう追加的配分というようなかなり技術的にめんどうくさい、したがって各部の定員を法律ないしは政令で固定しがたい大変複雑な問題が起こってまいります。しかし、複合的学際的領域の研究連絡委員会を非常にうまく工夫すればそういう分野からも拾えるだろう。ただし、国際学術団体の、これはたくさんありますが、その中の連合体のような主なものの会長とか副会長をやっていらっしゃる日本人のすぐれた科学者、いっぱいおられますが、こういう方がそういう中から果たして確保できるかというまた別の問題もございます。  以上でございます。
  61. 田沢智治

    ○田沢智治君 向坊先生にお伺いしますが、先生がまとめられたチームの中に入られて、A案は、一部公選一部推薦は中途半端になる。B案は、機能を分離した場合その機能が落ちる。C案は、民間委譲案は財政的に安定した研究活動が保証されないので不安が伴うというようなお話をされて、私も一部そういう面においては理解を示すことができると思うんですが、そこでいまお話にあったように、潜在的会員を掘り起こして活力ある学術会議に刷新するために、今日この時期において何が必要で、どうしたらそういう学術会議によみがえるか。そのために今日どうしたらいいのか。先生自身が考えられていることを客観的に一つか二つお述べいただければと思うんですが。
  62. 向坊隆

    参考人向坊隆君) ただいまの御質問、大変重要な御質問でございますけれども、大変むずかしくて、私にはちょっと残念ながらお答えする資格がないと思いますが、一つ学術会議が何らかの形で活力を取り戻して大いに活動していただきたいということもございますが、学会活動分野によっては非常に盛んになっております。自分の学会のことを申して恐縮でございますが、日本化学会という学会は、会員が約三万数千名おりまして、春秋の年会のときには六千名ぐらい集まって三千件ぐらいの研究報告を発表し、百ぐらいの分科会で若い人たちが議論する。 非常にそういう盛んな学会でございまして、アメリカと五、六年に一回合同でやりますけれども、そのときには両国合わせて五千人ぐらいがハワイに集まって討論する。  そういう非常なアクティブな学会も幾つかございますので、そういう学会を育てていくということが私としては一番学問発展に近道だと思っているんです。大学の活気なんかもその学会を通して非常に生きますので、それは非常に大事だと思っておりますが、国の政策、科学技術政策とかそういったものは個々の学会は全く論じませんので、そういった意味学術会議独特の役割りと申しますか、任務があるんではないか。それを十分果たしていけるようなものにこの機会に改革されてほしいと思っております。それ以上はちょっと申し上げかねます。
  63. 田沢智治

    ○田沢智治君 最後に、私は久保会長にお願いしたいことは、学者というものはわりあいと保守的なんです。言うことは自由を求めるけれども、本当に保守的な者でございますので、保守的な人たちが集まった集団というものは理屈が多くても実行性が乏しいと思うんです。  ですから、私は率直に申して、今度の政府の原案というものは必ずしも最良のものであるとは思っておりません。しかしこの原案を通して、そしてまた別の次元において、科学者科学者としてこの案についてはこういう欠陥がある、ああしてほしい、こうしてほしいという具体的事実を披瀝しながら、そして直すべきものは直してもっとよりよいことにしていくというきっかけをつくらないと、また五年、十年そのままずうっと行っちゃうと、わけのわからないうちにぐじゃぐじゃになっちゃうと思うんです。私はそういう意味で、一応けじめをつけるものはけじめをつけて、久保会長がこうしてほしい、ああしてほしいということがあるならば勇敢に物を申していただきたいということを要望して終わりたいと思います。
  64. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 久保参考人、何かありますか。
  65. 久保亮五

    参考人久保亮五君) ここですぐさま申し上げるということはなかなかむずかしゅうございますが、この法案が成立いたしまして、こういう線で学術会議改革が進むといたしましても、やはり御指摘のとおりいろいろ問題が出てこようかと思います。場合によりましてはまた法律改正ということを求めなきゃならないというようなことも起こり得るかと思います。
  66. 高木健太郎

    高木健太郎君 私、前に学術会議に、九期、十期ぐらいだったと思いますが、お世話になっておりまして、私からいろいろ聞くのは何か聞きにくいところもございますけれども、学術会議が、初めに久保会長がおっしゃいましたように、現在であるからこそきわめて重要な任務を果たし得るのではないか、こういう意味で、この学術会議を存続させて、そのかわりに学術会議本来の任務をしっかりやっていただきたい、こういう意味で私、申し上げたいと思います。  私が学術会議会員としておりましていろいろ気のついたことがございましたが、一体何をやっているのかという非常に無力感に正直言ってとらわれるわけでございまして、勧告政府にやっても政府は素知らぬ顔である。また、「諮問することができる。」と書いてありますが、全く何もしない。最近三期か五期ぐらいは一年間に三件とか二件の諮問である。それも申しわけ程度に、まあやっておかなきゃ悪いというおつき合い程度に諮問をするしかない、こういうことであります。  また、先ほど久保会長からお話がございましたし、岡倉委員からもお話がございましたように、研連という委員会は非常に重要な委員会でございますけれども、表面に出ている研連、あるいは費用として概算されている研連よりもより多くの委員がその中に含まれておりまして、委員はその会合に出ようといたしましても手弁当でなければ出られない。暇もつぶし金もつぶす、そういうことには出たくない。しかし、どうしてもやらなければならないということで、第七部の方では研連の下に分科会というものもつくりまして非常に数をふやしました。そして委員は、遠方からでは金がかかるからというので東京近在の人だけを委員にする。非常に苦肉の策を講じておりまして、そういうことまでやって、そして結果が余り有用でないというようなことでは全く無用の長物であるというような慨嘆をする人もあったわけでございます。 この際私は、改革をされまして、そういうような嘆きが会の中から起こらないように、また若い学者も含めて、なるほどこの会議があってよかった、そのような会議にぜひしていただきたいと思うわけです。  そこで、最初にまずお聞きいたしたいと思いますが、先ほどから、出したい人よりも出たい人の方が公選制では出てくるのではないかという気がするわけです。というのは、現在でもある部では恐らく推薦で出てきているのではないかと思うわけです。現実的には大学あるいは学会から推薦されて、その人に対して皆さんに了解を求めてその名前を書くということでありまして、一人一人がその学者をよく存じ上げているというわけではない、非常に学問の庭も広いわけですから、どこのだれかも知らない。そうすると推薦された人に入れているというようなことが多いのではないかと思うわけです。七部なんかでは大学推薦で大体やっているという状況でございます。  それから優秀な学者であれば、自分が出たい、優秀であってしかも出たいという方は、実際学者としては組織を持たないわけですから、千も二千も票を集めるということはその人には私は不可能だと思うわけです。 そういう意味では、いまの公選制ではかえってりっぱな人が出てこないというように思いますし、結局は出たい人ばっかり出てくるというようなことになるのではないか、そういう危険性があるということでございます。  だから、言葉の上では出したい人を民主的に選挙する、非常にりっぱですけれども、こう広い学会になってまいりますと、実際はそれは不可能に近い、そういうふうに思いますので、学術会議でお考えになりました三分の二は公選、三分の一推薦という案も結構でございましょうけれども、いずれその三分の二もやはりそういう形でまた出てくるのではないか。そして推薦とは言いますけれども、何と言いますか研連のところで選挙か何か知りませんが、ある方法でそこから選び出されるわけですから、また学会の中でもそれを選び出しているわけですから、何かそれはやはり選挙をやっているんじゃないかという気もするわけです。そういうことにつきましては久保会長、どのようにお考えでございますか。
  67. 久保亮五

    参考人久保亮五君) いまの御質問は、この制度になった場合のことでございましょうか。
  68. 高木健太郎

    高木健太郎君 この改革案についてでございます。これで十分ではないか、推薦制でもいけるのではないかということです。
  69. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 確かに御指摘のようなこともあると思います。この法案では、学協会会員候補なりあるいは研連の委員候補あるいは選出人をどういうふうに選ぶかということは全く規定しておりません。それはそれぞれの学会において、科学者自主性においてというその精神と、それからそもそも学術会議というのはいかなるものであるか、どういう人を学術会議会員にすべきだという御理解があれば、いかなる方法をなさるかはこれはその学会の自主性においておやりになることだというのがこの法案の基本にあるんだと理解しております。
  70. 高木健太郎

    高木健太郎君 向坊先生にお尋ね申したいと思いますが、この学術会議というのは政府から独立した非常に特異な、日本特有な機関である。それだけに非常にこれはおもしろいことと言っちゃ悪いですが、独自なことが、外国と違ったことができる、科学者としてまた遠慮なく物が言える、それは政府にぜひ取り上げてもらいたいというようなことで私、意味があると思うんですが、ところが、一方では政府から年間七億以上の金をもらっている。先ほどもお話がございましたが、永井委員会におきまして民間におろすかというお話がございました。私、本当に独立するならば、やはり民間におろすべきじゃないか、あるいは財団でもつくるべきじゃないか、あるいはこれこそ特殊法人というふうなもので経営すべきじゃないか。片っ方でもらっておいて片っ方で独立だと言ってもそれは虫がょ過ぎるじゃないか。 非常にひどい言葉でございますけれども、そういうふうに思うわけです。  だから、その点を論議されたということでございますが、財政が不安定だということで、これにもいろいろ問題があるということはわかりましたが、もう少し突っ込んでどのようなお話がございましたかお聞かせ願いたいと思うのですが。 また学術会議の方でも民間に移管するということについては何か御議論があったかと思いますが、その点については岡倉先生にもお聞きしたいと思います。
  71. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 総理府懇談会で民間に移すことの是非について突っ込んだ議論が行われたかどうか、そのとき私おりませんでしたのでよく存じません。したがって、私は個人の意見としてしか申し上げられませんけれども、やっぱり一つは、おっしゃいましたような財政の安定性の面から国立であることが望ましい。もう一つは、やっぱり対外的に、外国に対して実際に国際的な、学会のまた学会みたいな国際的な問題が幾つもございますが、それに対して日本を代表して学術会議が出ているわけでございますね、そのメンバーになっているわけでございますが、その場合には、やはり国を代表しているという意味で国立機関であることの方が外国に対して都合がいいだろうと思います。  そういうふうな意味で、私は国立であることが——国立でなくなってしまったらいまほどの活動もできなくなるんじゃないかということを心配している次第でございます。
  72. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) お答え申し上げます。  いまの点はもちろん検討いたしました。 先ほどお手元にお配りしました改革要綱の三ページ以降五ページぐらいまでのところにその点も書いてございますけれども、やはり学術会議は国の機関であり、かつ政府から独立して職務を行うという国の機関であるということが重要である。なぜかならば、国の機関であれば、その機関が慎重に審議した結果、勧告政府に対して発するというようなことが持つ重みというものは、民間の団体が提言すると、もちろんこれは経団連とか武見先生の日本医師会はまた別ですけれども、普通ですと、やはり国の機関として政府に対して勧告することができる、勧告権があるものと民間とでは重みが違うということが一つございます。  それからもう一つは、これは学術会議だけのことではなくて、日本の国全体の、国家機構全体のことを考えてのことでございますけれども、科学技術行政というのはもちろん行政の重要な面でますます重要になってきているんですが、これは当然政府が責任を持って行う筋のものであることは確かですけれども、政党政治のもとですと、これは政党や国会に対するコメントみたいになりますけれども、私、政治学者なのであえて申し上げますけれども、どうしても内閣がかわったり、まして政権政党がかわったりすると、それによって断絶するとか変更を来すということは重々起こり得るわけです。  科学分野ではそういうことでは困るので、長期的なあるいは広い視野での国の科学政策はいかにあるべきかということを科学者の論理に基づいて、政治や行政から一応離れて検討して意見を出す、ときには政府に痛いことも言うけれども、反対のために反対するわけではございませんから。そういう組織が国家行政組織の中にあるというのは、これは日本のほか余りないんです。そういう内部に、国家行政組織の中にそういう機関を持っているということは、日本の国家機構全体が、少なくとも重要な科学技術行政の面で健全性を発揮し得る大変なメリットだと、世界に誇るべき制度だとわれわれは考えております。  しかし、そのためには政府の側も、学術会議をそういうものとして活用する必要がありますし、学術会議の方もそういう重責にこたえるだけの仕事を十分果たさなければならない。両方に責任があると思いますけれども、それがうまくいけば、民間ではなくて国家行政組織の中にあるということがはるかに重大だし、われわれは少なくとも学術会議はそういう任務を果たすべく努力したいということで、民間に移すということはこれはきわめて少数の意見でございました。  以上でございます。
  73. 高木健太郎

    高木健太郎君 少し細かいことをお聞きしますけれども、学協会と研連で今度やるわけですけれども、研連というのは元来専門分野の方からできた委員会でございますし、学協会の方は学会として別な形でできておるわけですから、今度は学協会から推薦した者を研連でやるということになりますと、研連の方をそれに合うように変えていかなければならぬ作業が一つ残っておるのではないかと思います。それらはもちろん会議の中で今後の宿題としておやりになると思いますが、なかなか大変だと思います。それのお見通しについてはどんなふうにお考えですか、久保会長ひとつお願いします。
  74. 久保亮五

    参考人久保亮五君) いま御指摘のことは大変貴重な御意見でございます。もちろんそのことは非常に重要でございます。  まず研連でございますが、現在あります研連はいろいろなものがございますが、将来も、研連といっても一色ではございませんで、その性格はいろんなものがあるわけでございます。それで、会員の選出のことに関しましては、研連の委員候補者が選出人としてその候補者を選ぶということに当たるわけでございますが、これはすべての研連がそうだというふうには——私の持っているイメージはそうではない、研連にもいろいろな性格のものがございますので、ある研連はそういうことに当たりますが、そうでない研連というものも、特に、かなりその時点において重要な問題を取り上げるために構成される研連というようなものは、そういう任務は負わないということでございます。  別の面から申しまして、いろんな性格があるということと、各分野を十分カバーしなければならない、全分野にわたってそういうものをカバーする必要があるわけでございますが、それにつきましてはもちろん研連の拡充ということもその面からも必要でございます。しかし、研連の拡充強化ということは実は長年の宿題でございまして、こういうことと別に各方面から学術会議の内部でも研連を充実してくれ、充実したいという御要求が非常に強かったわけでございます。それで、そういうことをあわせまして、もちろん研連につきましては拡充強化ということが必要でございますので、そういうことにつきましてはぜひ応援をお願いいたしたいと思うわけでございます。
  75. 高木健太郎

    高木健太郎君 向坊先生、ちょっとお答えにくいことをお伺いしますが、私の聞いているところでは、いままで学術会議に東大の方は会員におなりになっていないと、そういうことを聞いていますが、これは七部ではそうだと思いますが、他の部についてもそうでございますか。それについて、今度改革をされたら入っていただけるかというようなことですね。 これは会員としておりましたときから、東大が全然入らないんだというような話を聞いておりましたので、結論は結構でございますから、どういうふうな理由で入らないんだという先生のお考えをひとつお聞きしておきたいと思います。
  76. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 東京大学は大きな大学なものでございますから部局によって意見が相当違いまして、工学部、理学部あたりは別にそういうことなしに会員になられた方々は何人もおられますね。部局によっては学術会議をボイコットしているように見える部局があることは事実でございます。さっぱり出ないところがあると……。
  77. 高木健太郎

    高木健太郎君 それ以上は私は聞きませんが、今度の改革案で問題になるのは、確かに学術会議自主性を害しはしないかというその御心配、たとえば政令事項が非常に多い。自分自身で規則で決めたいと思ってもそれが決められない。これが総理府なり政府なりとの話し合いで政令でやるんじゃなくて一方的にやられると困るという、そういう何か懸念がおありになるのじゃないかということが一つですね。  もう一つは、たとえ改革案を示されても、あるいは研連のことを非常に重視されるような法律でありましても、結局は金を全然くれないということではやっぱりいま以上の仕事は私はできない。そうすれば、学術会議を余り当てにしない、それに対して重きを置かないということになりますので、私はそういうことを心配するわけですが、会長にひとつ忌憚のない希望を、要望をこの際ここで申していただければ、私はそれを拝聴しておきたいと思います。
  78. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 最初の御指摘の点でございまして、この法律案の中に「政令で定めるところにより」というようなところが何カ所かございます。 その中で、会長といたしまして折衝の段階で、これは政令でなくて規則にしていただきたいというようなことを強く申し上げていましたが、結局それはこの法案ではそうはなっていないところが何カ所かございます。しかし、これにつきましては、もちろん将来その政令の制定に当たって総理府が責任を持たれるわけでございますが、十分学術会議側の意見によってそういう政令を定めるということにしていただけるものと信じております。ただ、はっきり申し上げておきますけれども、この点につきましては、この政令のことにつきましては特に専門の法学の関係の方々からかなり強い御指摘がございました。  それから、後のことでございますが、やや一般的な問題でありますが、この法案が田邉前総理府総務長官の試案を中心としてその線に沿ってつくられている、それで学協会推薦ということになっているわけです。 その点において岡倉先生も御指摘のとおり、学術会議が最善のものとして提示したところの要綱とは違っているということでございます。それで、先ほども申し上げましたが、そういうのをやむを得ないとする状況の中で、これが日本科学者を代表する学術会議として許容する範囲にあるものかどうかという判断が学術会議として最終的にはできていないというのが現状でございます。  これは先ほども申し上げたのですが、会長個人といたしましては折衝の責任を持って当たったわけでございますので、これはそのクライテリオンにかなうだけのものにするという私の信条と申しますか、それで折衝に当たったわけで、その会長自身の判断としては、これはそういう範囲にあるというふうに考えているわけですが、もちろんこれは学術会議としての全体の見解というわけではございません。それで、それが本当に学術会議の再生として基礎になるかどうかということは、実は単にこの法案だけの問題ではなくて、ここで定められていないところの政令とか規則とか、そういうものがいかに具体化されていくかということにもございますし、それから、そういうものを実施し、また学術会議が本来やるべき仕事をやるということにつきまして、各界において十分御理解をいただいて御支援いただけるかどうかというところにこの改革の成否がかかっていると思います。その辺についてぜひ応援といいますか、御声援、御後援をお願いいたしたいと思います。
  79. 高木健太郎

    高木健太郎君 終わります。
  80. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まず、久保参考人にお尋ねいたします。  先ほど来のお話で、四月の学術会議総会で今回の政府提案について賛成意見もあったけれども、少なくともこの法案の根幹部分といいますか、会員選出方法改正について学術会議組織として同意することにはならなかったということが明確になっているわけでありますが、そこで、先ほどのお話でも、五月の十八日から五月定例総会を予定をしておる、そこで当然この問題が議論をされるであろうということでありますけれども、その学術会議として圧倒的多数が同意できるようなこの法改正、これが会を運営をする会長としてそういう法改正であってほしいというふうに願われるのじゃないかと思うんですけれども、この点どうでしょうか。
  81. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 学術会議会員の大多数が御賛成になって、支持なさるようなものであってほしいと思っております。
  82. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうしますと、この五月十八日からの総会ということでありますけれども、国会として結論を出すのはその五月総会でどういう議論になったかという、ここを踏まえて国会として結論を出す、なかなか会長として言いにくいかもわかりませんけれども、心の中の気持ちとしてはそういうふうに願われませんか。
  83. 久保亮五

    参考人久保亮五君) これは法案の提出は総理府がなさるわけでございますが、総理府として諸般の状況を御賢察の上御提出になったものだと思います。おっしゃることはそうでございますが、国民の代表たる国会の御審議に対してとやかく申すべき筋合いではないので、そのことにつきましては国会の御審議に御信頼を申し上げます。
  84. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 なかなか言いにくいかと思いますね。  岡倉先生、自主改革検討委員会委員長でもあられましたし、いまも学術会議会員であります。いまお尋ねしている問題ですね、せっかく五月総会、十八日から三日間、そういう総会での議論の場があるということでありますから、そこの議論を経て、最終的に国会としてどういう結論を出すというふうにしてほしいというふうに国会には御要望にならないでしょうか。
  85. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) 私は前の副会長改革委員会委員長でございましたが、いまはそれを離れて平の会員でございますが、前身は改革委員長をやった、要綱をまとめた、そういうことがございますので、そういう会員二百十人のうちの平の会員の一人としては、先ほども一番初め申し上げました最後のところでも、国会で慎重に審議していただきたいと、これは朝日の四月十八日の社説も強行するなというようなあれなんですが、これは、私個人としては全く正論だと思います。  これは私見でございますが、現行法でも、今度改正されるときにもその部分が残されておりますが、学術会議政府から独立して職務を行う機関であるということが明記されておりますが、この独立して職務を行うというその機関組織形態が基本的に全く変わるわけです。ということは、元来は、これはいまからそんなこと言ってもしようがないのですが、元来はたとえ時間がかかっても、政府、具体的には総理府ですが、総理府学術会議の間で十分意見をつき合わせて、あるいはさっき向坊先生もちょっとおっしゃいましたが、    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕 政府からあるいは各党からあるいは学識経験者から、それに学術会議会員を何人か加えた大型の諮問組織をつくって、そこで仮に半年でも一年でもかけても、双方が合意できる改革案を打ち出して、そうすれば学術会議の合意は必ず取りつけられる。そういう学術会議の合意を取りつけて法案が提出されれば、恐らく国会でも各党が御賛同になるだろうというふうに考えるのですけれども、そういう過程を経ないで、少なくとも学術会議の合意が取りつけられないでこの改正法案が出されたということは、私個人としては大変遺憾に思いますし、私は第二部の法律学、政治学の分野に所属しておりますけれども、公法学者やあるいは行政学者やそういう会員の中には、これは独立して職務を遂行すると法にも規定されているその機関の根本的性格の変革につながるわけであるから、これを合意なしにいわゆる見切り発車をするというのは、これは少し根本的にさかのぼれば学術会議の独立性の侵害である、これはほかの行政省庁とはちょっと違う性格のものですから、そういう意見専門法律学者の間からは強く出されておりますので、それは代弁的にも申し上げておきます。  そういう点ではそういう事態を踏まえて、少なくとも今度の五月の学術会議総会で果たしてこの改正法案学術会議改革要綱の射程距離の中にあるかないか、    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕 そういう論議を十分踏まえて慎重に国会ではお決め願いたいということを強くお願いしたいと思います。
  86. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう一つ岡倉参考人にお尋ねをいたしますが、冒頭の御陳述の最後にも、時間の関係でごく短かく触れておられましたけれども、日本学術会議は戦前のわが国の学術研究体制の深い反省の上に発足をした、そういう非常にユニークな組織なんだというお話がありましたけれども、そこの経緯と、これがもしも今回の政府提案によって、この法律案によってそれが押し切られる、こういうようなことになった場合に、今後のわが国の科学学術の将来についてどういう点が懸念をされるか、そんな点を少しお話をいただきたい。
  87. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) ただいま佐藤さんから御指摘の点ですが、先日の総会の中である会員から、戦前の学術研究会議あるいは学術振興会等々戦前の日本学術体制がどういうふうになっていったか、そしてその結果、戦後になりまして、敗戦後になりまして強い反省の上に立って学術会議ができた、これは当時の科学者の、全国各分野科学者の合意として生まれてきたわけです。  そこで、学術会議の発足に当たっての日本学術会議科学者としての決意表明という学術会議にとっては憲法的な文章がございますが、それもそのことが強く打ち出されておりまして、新しい日本の今後は、科学が文化国家あるいは平和国家の基礎である、そういう確信の上に立って云々ということがあり、当時の松平参議院議長の御祝辞とか、あるいは総理の御祝辞の中にもその点を全く同感であるということがあったのは、その当時の時代的なあれを語っていると思うんですが、そういう学術会議創立の原精神というのはいまだにわれわれは金科玉条と思っております。もちろん学術会議をめぐる科学界の状況とか社会状況は変わっておりますけれども、その原点はやはり貫くべきであるというのが改革要綱に根本的にもございますので、その点から申しますと、われわれ十二期の現会員というのは大変な重大な局面に当面している。言ってみれば、今後の成り行きいかんによっては学術会議歴史は終わるというふうに感じている会員も大変多いわけです。私自身も非常に深刻に受けとめております。  その意味では、学術会議の創立の精神と、それをつくられた先輩の科学者たち、あるいはその後三十数年間の会員のきわめて犠牲的な御努力、こういうものがあるいは水泡に帰するかもしれぬというような重大な事態であると思います。そしてその結果は、まかり間違えば日本科学の将来、その支えである日本学術体制の将来、また科学研究の成果は当然国民に還元されるものですけれども、ひいては国民の生活に影響を与えるというきわめて重大な問題をはらむのではないかと憂慮しているわけであります。
  88. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 向坊参考人にお尋ねをいたしますが、先ほど来触れていますように、この重要な法案が有権者である科学者方々にもよく知らされないまま国会の会期末近くに提案をされて、政府の態度としてはこれを今国会で押し通す、こういう懸念をされる動きになってきているわけでありますけれども、先ほど同僚委員も引用されておりました吉識懇談会日本学術会議に関する懇談会ですね、あなたも参加をされました懇談会、ここでのまとめといいますか、結びの部分でいろいろ意見が別れて、いずれの案も細部の具体的な検討を要する問題が多々ある、それには相当の時日を要するであろうということになっているわけであります。そのことと関連をして、なお一年間ぐらい何らかの形での慎重な検討を継続し、その上でこの結論を出すべきだということを、あなたもきょうおっしゃっているわけでありますが、いまのこの局面についても、なおでき得るならそういうふうにした方がいいというふうにお考えでしょうか。
  89. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 私は、ただいまの御質問に適切にお答えする資格が実はございませんで、余りよく議論がわからないんですね、どこが対立しているかが本当のところがよくわからないのです。  私が了解しているところでは、先ほど申し上げましたように、公選という言葉もこの場合にどういう意味かよくわからないんですけれども、そこのところにひっかかっているように見えるわけですね。私は、学者の独立性を守るためにどこかの段階選挙制度が入るというのが非常に好ましいと思いますけれども、それと推薦制度とが全く矛盾するものとは思っておらないわけです。いまの大学のやり方なんか考えてみましてもそれは両立し得る制度である、そういうことで余り長いこと対立して結論を出さぬという理由が私にはちょっとよくわからないんですよ。 ですからそういう意味で、それだけが対立しているのなら一年もやる必要はないぐらいに思っているわけです。ただ、無責任なことを申し上げるわけにはいきませんから、本当の個人的な感想としてお聞きいただきたいと思います。  それから、政府の提出なさろうとしている案では、その点だけはこれは僕は対立として残るんじゃないかと思っているんですけれども、その点を除きますと、やっぱり一年ぐらいかけて詰めていこうという姿勢が見えますので、それで久保会長のもとに何とか学術会議改革案をまとめていただけるんではないかと期待しているのでございます。
  90. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 重ねてお尋ねをいたしますけれども、確かに具体的な改革プラン、A案、B案、C案、D案、四つほど出ておりますね。この点については両論併記というより四論併記ぐらいの形になっている。しかし、いま粕谷委員も引用されましたし、私も引用しているここの部分は、この懇談会としての見解一致部分じゃないかということで私引用しているわけですけれども。  というのは、こういう意見もあったというふうには書いてないんです。「何れの案についても細部にわたり検討を要する問題が多く、これらの問題について結論を得るには今後なお相当の時日を要するものと思われる。なお、日本学術会議改革については例えば新たな懇談会等を設けて引続き検討を行っていくこと、さらには当面、来年十一月に予定されている第十三期日本学術会議会員の選挙について、これを一年間延期する措置をとることなどが考えられる。」という、こういう意見もありましたとはなってないわけですね。  ですから、これはあなたも含めて懇談会としての大体一致した結論ということになっているんじゃないかということで聞いているわけです。そういう点で、いまのこの局面でも、一年ぐらいという表現を使うか、相当の期間という表現を使うか、それはどちらでもいいと思いますけれども、相当の期間なお慎重に検討をするというふうにすべきだというお考えではないかと、こう聞いておるんですけれども、どうでしょう。
  91. 向坊隆

    参考人向坊隆君) 私に問い詰められましてもどうもお答えできないので、率直に申しますと、さっき言ったように、公選のところだけが対立しているのならもう議論をやめなさい、その趣旨を生かした方法で改革の道があるんじゃないかというのが私の個人の意見です。ですから、そういう意味であとどれだけ待てとか、そういうこともいま申し上げる気はございません。
  92. 小西博行

    小西博行君 たくさんの委員の方からいろいろ論議を煮詰められておりますけれども、大変私もきょうの先生方の御意見、勉強さしていただきました。  そこで、この自主性という話が、これは私も昔大学にいましたから、自主性とわがままとがどうしても学者の中に共存しているような気がしてならないわけです。と申しますのは、予算的にはどうしてもいただかなければ学術会議の運営というのはむずかしい、これはもうわかっていると思うんですね。同時に自主性というのは、私は、従来の学術会議でもそれぞれやっぱりすばらしい先生方が集まって、そして十分論議されながら今日までやってきたと思うんですね。しかし、最近になってみて学術会議はどうもおかしいじゃないかというのはもう国民の世論だと思うんです。 そういう中で、本当にじゃ何が一体悪かったのかな。  いま公選制という話がたくさん出ております。これは、私はさっきからお話を聞きながら全くわれわれの選挙と同じだなというのを実は感じながら、つまりりっぱな方が出てこられるバックボーンがよければ、当然私はりっぱな人が委員として出てくるのじゃないかと思っているんです。 ですから、どうやら学術会議がうまくいかなかったというのは、その中の仕組みとかいろんなやり方もあるでしょうけれども、出てこられる方、一人一人の学者の方々が本当にいい状態といいますか、一級品の方ばかりが出ていただいて、そして日本研究の将来ということでやっておられたのか、その辺が非常に私は疑問になっているんです。その辺に対してはどうなんでしょうか。  いまいろいろ出てきている問題の中に、どうも本当の学者同士での煮詰め方というんですかね、そういうことを今日までやってこられたのかどうなのか。これ新聞で私はいろいろ読ましていただきながら、かなり中には問題がある、悪く言えば総会屋的な人もいらっしゃる、そういうふうに私も、言葉は悪いんですけれども思いますんですが、その辺の感じ非常に表現しにくいと思いますけれども、何かそこをお聞きしたいなと、さっきからそういう気持ちになっておりますので、どうぞ。
  93. 久保亮五

    参考人久保亮五君) 確かに非常にお答えしにくい御質問でございます。  私は、日本学術会議のこれまでの姿が理想的であったとは決して思えない。ただ言えますことは、少なくとも初期の学術会議にはそれだけの、そこにもいろいろ問題はございましたが、意気込みがあったというふうに思うんですね。それに対してこのごろの学術会議が意気込みがないと言ったらこれは大変同僚に対して申しわけない次第ですが、これは個人個人の意気込みの問題以上に、そういうことでなしに、社会全体の中の学術会議として置かれている条件が変わってきた。その条件というのはいろいろございますが、非常に基本的な条件から、あるいは現在、対政府とか対社会とかいうところにおいてやっぱりそれだけの説得性を持つことができないでいるというようなこと、それは学術会議自体としてみずから責めることが大部分だと思いますけれども、必ずしもそれだけではない、社会の環境の違いというものがあると思います。  しかしながら、一方これはよその国がよく見えるということでかもしれませんけれども、一つの例を申し上げれば、アメリカのナショナル・アカデミー・サイエンシズ、これは科学学士院でございますが、それにいわば協力機関のようなものとしてリサーチ・カウンシルというのがございますが、その辺のところが不可分になって、エンジニアリング・アカデミーというのもございます、それからインスティチュート・メディシンというのがございますが、そういう四つの団体が非常に密接な協力のもとに、すばらしいと言っていいかどうか知りませんが、その時点においてきわめて重要なこと、それからロングレンジの問題、そういうようなことに非常に積極的に取り組んでいる。 こういうふうなことはどうしても日本でもなければならぬものだと思うんです。各省の審議会のようなものもございますが、また学術会議もございますけれども、それとは違ったものとしてそういうものがなければならないし、それはやれるはずだと思います。  それで、これは御質問に対するお答えになってないんですが、しかるべき条件が整えば日本科学者も、そんなに自分の殻だけにとどまっているわけではなくて、十分やるだけの意気込みを持っていると思います。
  94. 小西博行

    小西博行君 向坊先生にちょっとお尋ねしますが、特に最近は日本の先端技術という問題で、科学技術庁も流動研究システムによる創造科学研究といいますか、こういうことを六つのテーマでもって、これは産、官、学といういろんなあらゆる分野から専門家を集めまして、それぞれのチーム二十名ずつで五十六年の十月からスタートしているわけですね。これから先日本の将来となれば、どうしても新しいそういう先端技術が必要であるということでやってるんですね。ところが、文部省という縦割りですね、科学技術庁、文部省、農水省とかいういろいろの分野がありまして、私はこれずっと各委員会へ行ってみますと、それぞれの分野で、たとえば遺伝子工学なんかやっている、それを何か一つでまとめて——まとめるというのは人間をただ集めるというのじゃなくて、それぞれの分野で情報をもっと密に交換して、そしてある予算でもってもっと効率のいい研究体制をつくったらどうなるんだろう、そういうことをずっと思うときに、必ず科学技術という問題に突き当たってくるんです。  ですから、私は大学の中にも当然そういう分野も必要だし、皆さん方のところは当然いろんな分野から出てきて、学術会議なんていうのはいろんなメンバーがいらっしゃるわけですから、そういうものと対応しながらこれもう少し日本の将来のためにがんばれないのだろうか。  そこで、私また自主ということを申し上げたいんですけれども、自分の好きなことを研究するというのは、もうこれは当然大学の中ではずっと守られてきているんですけれども、何かそこに一つ目標を与えていくというやり方が非常に大事なんじゃないか。しかも、さっきお話をお伺いしますと、どうもこういう法案に対しても、賛否をいろいろ聞いても、医学だとか工学関係ですか、こういうところはわりあい賛同していただきやすい分野である。恐らく社会科学なんかというのは非常に反対が強いとか、もっと自主性を重んじろとかいう問題が出てくる。ある意味では世間知らずの分野がその辺にあるのではないか。というのは、いまの産業日本の置かれた立場というものを理解しながらの研究体制、そういうものが私は非常に大切になるという感じでおるんですけれども、将来の、学術会議の中でも私はそういうことはいろいろ議論されているんじゃないかと思うんですが、その辺に対してのお考え方をちょっとお聞きしたいと思うんです。
  95. 向坊隆

    参考人向坊隆君) おっしゃるとおり、そういう新しい分野がこれからどんどん国としても取り上げられまするし、それを縦割り行政や何かでそれが妨げられたりしたら困るわけでございまして、学術会議のような場でそういう調整が行われるのは望ましいわけですけれども、ちょっと性格的に学術会議というのとは違うんですね。学術会議にも産業界の人も入っておりますし、いろいろの分野の人がおられますけれども、学術会議での議論は必ずしもそういうものの調整というのではないような、私、実際にはよく存じませんけれども、そういう気がするわけで、日本としてそういうものの調整をしなきゃならぬ、する場がほしいということは確かでございますが、それが即学術会議のあり方と直結するのはむずかしいんじゃないかという気はしております。  先端技術の場合はこれはどんどん進みますけれども、進歩すればするほどほかの分野との関連が密接になりまして、社会科学とかあるいは倫理学まで及ぶいろいろな分野の方の協力の場というものは必要になってくる。ですから、日本としてそういうものをつくっていくことを皆さんで考えなきゃならぬし、その基本的な考え方学術会議なんかで議論していただくのは大変結構だと思いますけれども、学術会議自身がそういう組織考えたりするのはちょっとむずかしいんじゃないかと、そんなふうに考えております。
  96. 小西博行

    小西博行君 最後に岡倉参考人にお尋ねしますが、先ほど、若手の学者が学術会議というものに対して余り関心持っていない、むしろ研究室の中でいろんな論文を一生懸命やるとか、ある学会の中だけでやる、そこに何か私は一つの動機づけが要るんじゃないかという感じを、先ほど同僚議員の方からも質問がありましたが、ああいう研究室の中あるいは学者の中でそういう学術会議に対するPRですね、こういう何か方法というのは考えていらっしゃるかどうか。今度の法案を幾らやっても、急にその面が改善されるというようには思われないわけです。その点をお聞きしておきたいと思います。
  97. 岡倉古志郎

    参考人岡倉志郎君) いま小西さんから御指摘になった点、私どもも痛感してきたところでございます。私、第八期以来、改革検討にどういうものか携わりまして、それから九期以後は広報委員会、この場合は世間で言う広報というよりは、むしろ科学者とか学協会学術会議連絡ですね、そういうところに一番任務があるんですが、その仕事に当たってきた者として、三年に一遍だけ投票用紙が行くというのでは、これは関心が薄れるのはあたりまえなので、何とかそれをやりたいということを考えざるを得なかったんですけれども、これ全く予算の制約でございます。多くのいまのような使命感のある会員は本当に手弁当で、たとえば中国、四国というような地方区がございますが、手弁当でそこを駆け回って、大学とか研究機関でじかに有権者と接して報告をするというようなことをやってくだすった方もありますけれども、これは当然限界があるわけです。  私ども考えましたのは、もしもこの予算がつけば、少なくとも一年に一遍は、学術会議のことしの活動はこうであったということのリーフレット、タブロイド版四ページぐらいのものであっても全有権者に配るということができれば、いまのような無関心は若干は補えるんじゃないかということもいろいろ考えましたが、そのほかに、お金がないものですから、たとえば学協会機関誌がございます。そういうものに学術会議活動のダイジェストの原稿を差し上げて、それを転載していただく、人のふんどしで相撲をとるような話ですが、そうしますと、向坊先生日本化学会などは数万の研究者が学会の機関誌を通じて少しでも目に触れるということになりますので、それは二、三年前から努力して、それだけの成果も上がっておりますが、一番の困難はそういう点にあると存じております。  以上でございます。
  98. 小西博行

    小西博行君 終わります。ありがとうございました。
  99. 堀内俊夫

    委員長堀内俊夫君) 以上で、本日御出席いただきました参考人に対する質疑は終わりました。  参考人皆様に一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時一分散会