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1983-05-12 第98回国会 参議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十二日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 岡部 三郎君                 高木 正明君                 初村滝一郎君                 川村 清一君                 鶴岡  洋君     委 員                 大城 眞順君                 熊谷太三郎君                 田原 武雄君                 中村 禎二君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君                 下田 京子君                 伊藤 郁男君    国務大臣        農林水産大臣   金子 岩三君    政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        水産庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    参考人        家畜改良事業団        顧問       阿部 猛夫君        千葉畜産セン        ター酪農試験場        長        多賀 貞二君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○家畜改良増殖法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○酪農振興法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  家畜改良増殖法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会参考人として家畜改良事業団顧問阿部猛夫君及び千葉畜産センター酪農試験場多賀貞二君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 家畜改良増殖法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、参考人方々に御出席を願っておりますので、御意見を承ることといたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきましてありがとうございます。  本日は、それぞれの御専門立場からの御意見をお伺いいたしまして、自後の法案の審査参考にさしていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、これより御意見をお述べいただきたいと存じますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。  御意見をお述べ願う時間は議事の都合上、お一人二十分程度とし、その順序阿部参考人多賀参考人といたします。参考人の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、阿部参考人からお願いいたします。阿部参考人
  5. 阿部猛夫

    参考人阿部猛夫君) 阿部でございます。  それでは、最初お話をさしていただきたいと思います。大変大きな課題をいただきまして、一日ぐらいかかるところのお話を二十分でいたしますので、大分はしょった話にならざるを得ないと思いますが、その点はひとつあらかじめ御了承をいただきたいと存ずるわけでございます。  早速本論に入りますけれども、その前に、順序といたしまして、お話三つに分けたいと思います。  第一は、家畜改良に関しまする多少歴史的なことと現状というようなお話をまず申し上げまして、その、そういう発展の背後にありますところの学問進歩、それから技術進歩というふうなものについて第二段でお話を申し上げ、それから最後に、今回の家畜改良増殖法改正につきましての意見を多少述べさしていただきたいと、そういう順序お話を申し上げてまいりたいというふうに思っております。  で、家畜改良というものにおきまして、その基本的な方法と申しますと、それは選抜でございます。これは平たく申しますと、いい雄を探し、いい雌を探し、そしてそれを交配をしてまいると、つまり選抜とこの交配の繰り返しによって遺伝的な改良が図られていくというのが基本的な事柄でございます。で、その場合のその選抜の手段といたしましては、これは歴史的にいろいろありますけれども、最近の重要な問題として取り上げました場合には、その選抜のために能力検定というものを行う、たとえば泌乳能力検定とか、——泌乳でございます。これは当然乳牛でございますけれども、肉牛とか豚につきましては、産肉能力検定というようなもの、あるいは場合によりましては、豚におきましては、たとえば産子検定と申しまして、子供の数がどれぐらい生まれるか、そろっているか、あるいはそれをうまく母豚が育てる力があるかというような産子検定というようなものもあるわけでございますが、そういう能力検定というものが主要な改良の武器でございます。  次に申し上げたいことは、その改良の場合には、先ほど雄と雌をかけ合わせると申しましたけれども、この改良におきまするところの雄と雌の重要性ということから申しますと、雄が圧倒的な重要性を持っております。と申しますのは、雄はたくさんの雌に交配をできる、また実際にそういう形で行われている、一夫一婦性ではないわけでございます。したがいまして、雄のよしあしというものが集団全体の改良に及ぼす影響は雌の場合よりずっと大きい。特に最近のように人工授精普及いたしますると、その点は一層明瞭になってまいります。したがいまして、改良というものにおきましては、古来雄選抜というものが非常に重要視されてまいったわけでございます。それで雄の選抜にはしばしば後代検定という方法が使われます。この後代検定という言葉はちょっとわかりにくい言葉かもしれませんけれども、作物の方では次代というふうにも申します。要するに次の世代ということ、つまり子供のことでございます、平たく申しますと。要するに、ある一定の数の子供をとってみて、本当にこの雄はいい子供生産してくれるかどうかということを確かめて——確かめるのは大変お金もかかる、多少の時間もかかる仕事でございますけれども、しかしそういうことをしてもいい雄が本当に見つかって、それを効率的に利用することによって改良には非常に大きなプラスになるという立場から、後代検定というものが雄については非常に重要視されるということでございます。そういうことから、欧米におきましては大体第二次大戦の終わるころまでには完全とはまいりませんけれども、かなり能力検定というものを基盤に置いた改良体制というものが整いつつあったわけでございます。翻って日本の場合には、多少その点おくれまして、戦後でございますが、昭和三十年代の後半からそのような能力検定による選抜というものへの動きが官民の間ではっきりと出てまいった、いわばそういう能力検定による選抜胎動期であった、あるいは黎明期であったということが言えるかと思います。一々申し上げませんけれども、豚におきましても、肉牛におきましても、乳牛におきましても政府、国あるいは県というところがいろいろの施策を講じ始めたということでございます。さらにそれが四十年代の後半に入ってまいりますと、かなり軌道に乗り始めまして、そして現在に及んでいるというふうに申し上げることができるかと思います。たとえば乳牛におきましては乳牛後代検定事業、これは予算上の名前はまた別途大変ややこしい名前がついておりますけれども、要するに、乳牛後代検定事業というようなものが進められ、あるいは牛群検定事業、これは乳牛の雌の方の能力検定をどんどん進めるという事業でございます。それからまた、肉牛におきましては、これもいろいろあるわけでございますが、計画交配によりまして、そしていい雄牛生産をすると、そしてそれを直接検定なりあるいは後代検定にかけて選抜をするというような事業が進められ、さらに最近になりましては、いままでどちらかというと各県ごと改良体制改良を進めてまいったものを全国的な視野で、各県でつくったものの中から全国的な視野でいいものを選んで、広く使っていただこうという平準化——産肉能力平準化事業、大変ちょっとわかりにくい名前でございますが、趣旨は私がいま申し上げましたようなことでございます。そういう事業出現を、出現と申しますか、発進をいたしておるわけでございます。そういうことで、昭和四十年代の後半からただいままで十年ちょっとを経過しておるわけでございますけれども、そういう意味での改良体制は一応の段階に達しているというふうに私は判断をいたしておるわけでございます。  さて、そういう進歩改良事業におきましても、実際の改良の成果におきましても見られた背景には、実は学問進歩というものと、それから技術革新というものがあったことを忘れることはできないわけでございまして、その技術革新の中には今回も話題にと申しますか、焦点になっておりますところの凍結精液の問題とかあるいは受精卵移植というようなものが含まれるわけでございます。  まず、学問進歩という意味では、いわゆる集団遺伝学というようなものが発達をいたしまして、これがいろいろの能力検定方法ですとかあるいは後代検定方法とかいうふうなものの理論的な裏づけと、その発展を支える基盤になってまいったという経過がございます。これはこれ以上申しません。  それから次には、繁殖におきまするところの技術革新一つ人工授精、特に牛の凍結精液でございます。それから第二番目といたしましては、受精卵移植、これも実態は牛にほぼ限られるわけでございますけれども、この受精卵移植という新しい技術発展というものが見られたわけでございます。  それでは、まず人工授精、特に凍結精液というものが一体改良の姿と改良やり方あるいは改良体制とどういう形でつながったかと申しますと、これはすぐおわかりのように、昔、自然交尾の場合には雄が種つけできる範囲というのはごく近隣に限られていた。それが人工授精、初めのうちはこれは液状精液で用いられたわけでございますけれども、その液状精液段階にしましても、今度は雄のいわゆるサービスのできる範囲というのは大体少なくも県単位に拡大をいたした。それから、さらに凍結精液ということになりますると、これはもう一頭の雄の精液供給範囲種つけ範囲というものは全国にわたるわけでございます。九州でも北海道の牛の精液を使えるというような時代になった。そのことは実は改良立場から言いますともろ刃の剣でございます。その全国的に流通する雄の精液がよいものであった場合、よい、非常に遣伝的にすぐれた牛の精液であった場合にはその改良効果はまことに大きいものがある。ところが、逆にそれが不良遺伝子を持つものであったりあるいは遺伝的に能力の低いものであった場合にはどういうことになるかというと、それは改良を阻害し、改良を停滞させるということになるわけでございます。つまり、雄のいいものを使うか悪いものを使うかということのその影響というものは甚大だということになってまいります。しかしながら、そこでそういうふうに雄というもののサービス圏というものが全国範囲になったということは、この事態を積極的に受けとめ積極的に利用することによりまして、改良というものを全国一円を一つの牧場のごとくした改良という、いわゆる全国組織改良というものができる素地が与えられたというふうに考えることができるわけでございます。したがいまして、そういうことから全国規模乳牛改良事業とかあるいは肉牛の先ほど申し上げました産肉能力平準化事業というように、全国一つの対象あるいは全国改良の場にした組織的な活動としての改良体制、そういうものができたわけでございます。これは日本だけじゃもちろんございません。先進国では全部そういう形になっておりまして、事実そういう全国組織改良によりまして改良効率はきわめて上がっておるというのが実態でございます。多少歴史的なことをちょっとつけ加えますと、昔はその改良というのは個人ブリーダー活動だけに頼っていた、個人ブリーダー方々創意工夫だけに頼った改良体制であったわけでございますが、いまや、もちろんブリーダーもたくさんいらっしゃるわけでして、その他の酪農家もいらっしゃる、こういうブリーダー方々も全部巻き込んだ形での一つナショナルベース事業というものに改良事業はなってまいったと、こういう改良体制変革、これは非常に大きな変革でございます。それは何からきたかといいますと、この凍結精液普及ということがそれを可能にしたということが言えるわけでございます。と同時に、今度は凍結精液はもう一つ新しい問題を、あるいは新しい事態を生み出した。それは何かと申しますと、凍結精液国際商品化という現象でございます。これはもう単に、先ほどは全国的に使われると申しましたけれども、全国的な範囲ではなく、これはグローバルに使われるということになってまいったわけでございます。そこにまた、一つのいわゆる世界的な規模での改良の考え方というものがまた生まれてくることになるわけでございます。それが凍結精液改良体制をいかに変革することになったかというお話でございます。  次に、受精卵移植でございます。受精卵移植という技術につきましては、先生方は御承知かと思いますので詳しくは申し上げませんけれども、要するに、ある雌の体内から受精した卵を取り出しまして、それを別の雌牛子宮に入れて着床をさせるということでございまして、このことによりまして一頭の雌牛子供が一遍に、あるいは短期間にたくさんとれるということになるわけでございます。牛の場合ですと、通常は単体でございますから、一頭しか生まれない。それが何頭もとれるということになるわけでございます。こういう技術は一体何に役に立つのかと申しますと、いろいろな役立て方があるわけでございますが、非常に資源が限られた品種とか、あるいは入手が非常にむずかしい品種で、少ない頭数しかいないというものを急速にふやすという場合にはこの技術が 非常に役に立つ。実はアメリカにおきまして最初にこの受精卵移植というものが非常に発達しまして、企業化までされた場合の理由というのは、いま申し上げたことで、ヨーロッパからの肉牛が病気の関係でごく数少なくしか入ってこなかった、肉牛改良熱がその当時アメリカではほうはいとして上がっていた時期でございます。したがいまして、シャロレーとかリムジンとか、あるいはイタリアの品種ですけれどもキアニナなんていうような、非常に数少なくしか入ってこなかった品種につきましては、この受精卵移植子供をうんとふやして用に供したという歴史があるわけでございます。  それから、次に第二といたしましては、優良な雌牛の子を優良でない雌牛のおなかを通して増産できるということでございます。これは当然改良につながってくるわけです。つまり雌につきましても選抜がいままでよりははるかに強くできるということに、そういう可能性を生んでくるわけでございます。  それから、第三番目といたしましては、双子生産、計画的にあるいは人工的に、人為的に双子生産ができる。それは双子生産やり方についてはいろいろありますけれども、たとえば牛の子宮というのは人間の子宮と違いまして、実は先の方が二つに分かれております。それを子宮角と申しますけれども、それぞれの部屋二つあるとお考えいただければいいわけですけれども、それぞれの部屋一つの卵を、二つになりますけれども、それを着床させることによりまして双子生産するというような方法もあります。そういうようなことで、これは質の改良というよりは、どちらかと申しますと量的な増産ということの可能性もひとつ秘めている技術でございます。  さらに、この受精卵移植に関連をいたします技術としましては、凍結受精卵というような技術受精卵凍結技術でございますが、そういう技術もございまして、これはもし御質問があれば少し詳しく申し上げますけれども、国によりましては、もうかなりの程度確立した技術になっております。これがまた精液の場合と同じように、一つ国際商品化をしつつあるということでございます。  それから、さらに受精卵分割移植と、これは最近新聞などにもちらほらと成功例が出ておりますが、全体といたしましてはまだ研究中と申しましょうか、まだ研究段階でその事柄が進行中と言った方がよかろうと思いますが、受精卵分割移植というようなことがございます。これは要するに、遺伝的に全く同じ個体を二頭ないしあるいは四頭、五頭というふうに複数つくれるという技術でございます。  それから、今度は受精卵で性別の判定をする。受精卵の非常に早い段階ですでに多少の細胞分裂を起こしておりますけれども、その分裂した細胞のうちのわずかを取り出しまして染色体を調べることによって性を見きわめて、そしてそれをまたこれは雌であった、あるいはこれは雄であるということを見きわめてから、必要なものは受精卵移植でまた雌に入れてやるというような形でございます。そういうことで、まだ将来の問題でございますけれども、もしそういうことが非常に簡単にしかも安価にできるということになれば、欲しい性だけが得られるということになります。雄が欲しければ雄だけ、雌が欲しければ雌だけが得られるというようなことも可能になります。  それからもう一つは、体外授精でございます。これも実はおととし、日本ではございませんけれども、アメリカで初めて家畜におきましてはこの体外授精児がちゃんと分娩をした、誕生をするというところまでいっております。しかし、これらの技術研究中であって、ちらほら成功例が出ているというふうに全体としては理解した方がよろしいかというふうに存じます。  それから、少し話が戻りますが、受精卵移植技術そのものはまず確立をいたした。技術でございますから、この後さらに改善が全く行われないということではございませんけれども、一応これは確立ということで普及段階に入っているというふうに理解をいたしてよろしいかというふうに存じております。  多少時間が長くなったようでございますが、最後家畜改良増殖法につきまして申し上げさしていただきたいと思います。  家畜改良増殖法昭和二十五年の制定以来、三十六年にまた改正がございましたけれども、われわれ改良に携わる者にとりましては一つ基本法として支えになってまいった法律でございます。今回、先ほど申し上げましたようないろいろな新しい進展に応じた改正を国の方でお考えになっておられるということでございます。その一つは、受精卵移植規制ということと、もう一つ精液輸入に関することでございますが、この受精卵移植規制につきましては、先ほど申しましたように普及に入りつつある段階でございます。したがいまして、国内に関する限りいろいろ問題が現実に起きているというようなふうには私ども理解してはおりませんけれども、しかし、これは広がれば広がるほど必ずいろいろな問題、その取り扱い等の不備から来る問題というようなものが出てくるであろうというふうに考えられますので、問題が起こってからではなく、早目規制をなさる。規制というのも決してこれは受精卵移植を、何と申しましょうか、抑えよとかいうようなことではないようでございますので、早目にきちっとした形の規制をなさることについては私は賛成でございます。  それから次に、第二の精液輸入の問題でございますが、先ほど私は育種方法として基本的なものは選抜交配であるというふうに申し上げましたけれども、実はもう一つございます。それは何かといいますと、育種素材を、もちろんいいものを外から持ち込むという、それは導入育種というような言葉もございますけれども、導入をするということ、この育種素材導入と、それから自分たち集団の中での選抜交配というもの、これを巧みに使い分けることによりまして改良というものは進むわけでございます。今回、外国のいい精液輸入され得るということになりましたことのメリットはいま申し上げたところにあるわけでございます。その場合に反対の面でつきまとう心配は、今度は余り適当でないものが多量に流入するのではないかという心配も理論的にはつきまとうわけでございますけれども、最近の情報化時代、それから私も海外のいろんな家畜改良関係の情勢を多少は存じておるわけでございますけれども、正しいたとえば後代検定記録とかいうようなものの情報というものは各国ともきちっと整備しておりますし、それが正しい形で大体政府なりあるいは政府に近いような団体の力で公表をされ利用されておりますので、したがいまして私どももその正しい情報をわれわれの農家に与える手だてはあるわけでございまするので、大勢におきましては不適当なものが多量に流入して困るということはないだろうというふうに判断をいたしております。ただしかし、この点につきましては、国とか県とかあるいはまた団体等が万全を期しましてやはり人工授精師酪農家方々の指導には力をいたすという必要は十分あろうかと思っております。  それからさらに、これは特に私の希望として御理解をいただいておきたい点は、いま申しましたように、さしあたっての問題として、そんなに私は心配する問題はなかろうとこの点について思っておりますけれども、ただこういうことはあるわけでございます。それは将来の問題ですけれども、外国精液につきまして門戸を開放したという以上は、これは今後は外国との実力勝負ということになってくるわけです。したがいまして、われわれとしても決してうかうかとはしていられないということは十分に心にとめなければならないことであろうかというふうに思います。したがいまして、やはりわれわれ自身の改良体制というものをしかとこの段階でまた十分に見直して一層強化をしてまいる必要があるのではないかというふうに存じております。つまり、多少具体的に申し 上げますと、いろいろな家畜の場合がありますが、たとえば乳牛の場合で申しますと、これは諸外国どこでもしっかりとやっておりますように、やはり雌の能力検定というものをもっと広範囲にしかもしっかりとやって、そしてそのデータを利用することによっていい雄を選んでそしてそれを凍結精液で広く利用をしてまいるということでございます。そういうふうな配慮を十分に今後持たなければならないだろうというふうに存じております。  大変時間を超過いたしまして申しわけございませんでした。これで私の話を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  6. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ありがとうございました。  次に、多賀参考人にお願いいたします。多賀参考人
  7. 多賀貞二

    参考人多賀貞二君) 多賀でございます。このような場所に出席するのは初めてでございますので、よろしくお願いいたします。  話の内容を三つに分類させていただきまして、一つは、千葉県における家畜改良増殖上の受精卵位置づけにつきまして、それから二つは、千葉県の受精卵移植現状などについて、それから三番目に、受精卵移植技術の展望につきまして、三つに分けてお話を進めさしていただきます。  まず最初に、千葉県におきます受精卵移植位置づけでございます。  受精卵移植の利用目的につきまして主に二つを挙げてみます。その一つは、本県の場合北海道に次ぎます酪農県でございます。能力の高い牛を、いわゆる採卵用、卵をとる牛に使いまして、それから採取した受精卵を活用いたしましていわゆる家畜改良のスピード化を図る、これが一点でございます。それからもう一つといたしましては、本県の場合肉専用種でございますいわゆる黒毛和種の資源がきわめて少ないわけでございます。この黒毛和種の雌牛から受精卵を取り出しまして、能力の低い乳用牛を利用いたしまして優良な肉用牛の生産を図るとともに、先ほど阿部参考人さんの話の中にありました双子生産等もあわせて活用いたしまして、肉用牛の増殖を図ろう、この二点を挙げさしていただきたいと思います。このために受精卵移植技術は画期的な技術でございまして、今後の改良増殖にとりまして不可欠なものと判断しておるわけでございます。現在これが実用化のために鋭意努力中でございます。  二番目に、千葉県におきます受精卵移植現状などについて申し上げてみます。  本県では、昭和四十五年から受精卵移植技術関係の試験研究に着手してございます。特に農林水産省畜産試験場の御指導を得て実用化を図るべく推進してまいりました。  その試験研究の経緯について若干申し上げてみたいと存じます。昭和四十五年から四十九年までは県の単独事業といたしまして牛の人工妊娠技術受精卵移植と同じでございますが、人工妊娠という名称でその実証試験という形を行いました。これは研究の当初でございまして、どういうふうに卵をとったらいいか、またそのとった卵をどういうふうな手法で雌牛の中に入れたらいいか、そういうことを当初の開発技術ということで理論的なものを含めまして研究を進めたわけでございます。それから五十年から五十四年までは国の委託試験といたしまして、受精卵移植による多胎技術——多胎技術と申しますのは胎児が多いというふうに書きまして、子供を数多くとるという、理論的には可能であろうということで、これも行ったわけでございます。それから五十五年から五十七年まで国の助成研究ということで、牛の人工妊娠技術の簡易化——簡易化ということは、要するに、当初は諸外国でも腹を切って外科的にやったという例が数多いわけでございますが、それでは非常に大変だということで、もう少し簡略化できないかと、外科的でなく非外科的に、——牛の場合、体が大きいものですから人間の手が入ります。たとえば、ちょっとびろうな話でございますが、直腸から手を入れますとすぐその下に子宮がさわれます。これはある程度技術がなければできないわけでございますけれども、技術を習得すれば……。まあそういうことで、子宮の頸管から入れれば手術や何かしなくてもできるんじゃなかろうかということでその簡易化に取り組んだわけでございます。  この試験研究機関のちょっと成績につきまして申し上げたいと思います。  卵をとる方に関しましてでございますが、卵を多くとるためにホルモンを注射します。これは処置でございますけれども、このホルモンを処置しました牛が百六頭おります。それからとれた卵は三百九十四個でございます。一頭当たり平均三・七個をとっております。なお、これは通常の場合は一個しか出ないわけでございます。これは人の方も同じでございます。そのとった卵の移植につきまして五十五頭に実施したわけでございます。このうち妊娠したものは十八頭でございまして、その割合は三二・七%でございました。  続きまして、五十七年度から国の補助事業といたしまして本県が実施しております受精卵移植技術の利用促進事業について若干その取り組みにつきまして触れさしていただきたいと存じます。  これは、取り組みにつきましてはメーンセンターとサブセンターに分けて実施いたしております。メーンセンターにつきましては私ども酪農試験場で担当しておりまして、この作業内容といたしましては、受精卵をとるために排卵の先ほど申し上げましたホルモンを処置いたします。この排卵誘起剤といいますか、排卵誘起につきましては若干ちょっと申し上げますが、牛は人間と同様に通常卵は一個でございます。失礼でございますが、人間の五つ子の例がありますように、卵をたくさん出しますようにいわゆるホルモンを注射しまして誘導するわけでございます。こういう誘導の言葉を排卵誘起の処置というような、いわゆる多排卵という表現を使います。そういうような仕事をいたしまして、採卵までメーンセンターで行いまして、その検査、それからストローの中に受精卵を——ストローと申しましたら、よくジュースや何か飲むあのストローと若干質は違いますけれども、〇・二五ミリの太さで約長きが十五センチくらいのストローの中に封入いたします。サブセンターの方としましては、千葉県の場合、千葉県農業共済連の家畜診療所三カ所をお願いしてございます。その作業内容につきましては、メーンセンターでとりました受精卵を現地に持っていきまして融解いたしまして雌牛の方に移植するという作業を行っております。それぞれ担当技術者としましては、獣医師もしくは人工授精師が当たっております。特にこの関連作業は、卵の品質保持ということである程度手早く行わなければなりませんということで、獣医師と人工授精師がペアを組んだような形で作業を現在は進めております。この五十七年度の実績といたしましては、黒毛和種から卵をとるということで、この黒毛和種十五頭を使いましてそれから百八個の卵をとっております。一頭平均七・二個でございます。これは先ほどの試験研究の時期の三・七個に比較しますと大変向上した成績となっております。ある程度技術的にも定着したような感じのところはございます。次に、卵を移植した方でございます。これはホルスタインのいわゆる乳用種に注入しまして、五十四頭を使ったわけでございますが、現在妊娠の確認ができているのは四頭でございます。まだそのほかは移植後日が浅いものでございますので、その辺につきましては妊娠未確認ということになります。  次に、受精卵凍結技術。これはいままでのは卵をとりましたらすぐ雌牛の方に注入したと、移植したということでございますが、今度はそのとった卵を現在やっております精液のように凍結するというお話を若干さしていただきます。  先ほど申し上げましたように、現在とり出した卵を直ちに注入しているわけでございますけれど、品質の確保とか長時間の輸送の問題、また実用化に対応するためには受精卵を保存して、受精を受ける牛の需要に応じていつでも受精卵を出せ るような対応をしなければならないと思います。この保存という技術の中で凍結という問題が出てくるわけでございます。私ども酪農試験場では凍結、いわゆるそれを凍結卵と申しますが、凍結卵の製造に当たりましては液体窒素を使っております。液体窒素は温度はマイナスの百九十六度Cでございます。ですからその中に入れますと半永久的にもつだろうと。現在凍結精液の方ではそれを実施しているわけでございます。それと同じ形式をとっていけばと……。この凍結卵の移植実績といたしましては十九頭の雌牛に移植いたしまして三頭が妊娠しております。  次に、肉用牛の関係について若干触れさしていただきたいと思います。  肉用牛につきましては、先ほど申し上げましたように千葉県の場合非常に数が少ないわけでございますが、現実にはその黒毛和種の需要も相当多いわけでございます。そのために、千葉県としまして、先進地から、関西、九州の方から黒毛和種を導入していたわけでございますが、今後はこの受精卵移植の実用化ということで、この肉資源、特に黒毛和種の増殖にこの受精卵移植の手法を生かしていきたい、すこぶる効果的ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  次に、三番目の、受精卵移植技術の展望について若干触れさしていただきたいと思います。  受精卵移植技術は、いわゆる新しい技術ということを現在は言われているわけで、これは当然のことでございます。しかし、昨今の研究体制、いわゆる情報化時代、こういう背景の中で、この技術の実用化につきましては、早い時期に訪れてくるんではなかろうか。この問題につきましては、量的にはどの程度ということは推計できないわけでございますが、非常に早い時期にいずれにしろいまの研究体制の中では実用化の時代が来るであろうというふうに考えております。  そこで、この技術を行う技術者の関係でございますが、受精卵は〇・二ミリというような微小な生命体でございます。そのため、品質を損わないような取り扱いをしなければなりませんし、その取り扱いにつきましては、ある程度高度の技術が要求されるわけでございます。また、丁寧かつ慎重にいわゆる子宮等の中に入れる。若干の器具も使いますので、丁寧に取り扱わなくてはならないわけでございます。これに従事する技術者は、それに伴う適確な知識を有していなければならないと思います。その技術の習得は非常に重要な問題ではなかろうかと思います。  それから、今後の受精卵移植技術普及でございます。  先ほど若干申し上げましたんですが、この実用化、普及がどのような速度で、また量的にどの程度に普及するか、現状でちょっと推計することは困難であろうと思います。しかしながら、二十五年前に牛の人工授精精液がいわゆる液状から凍結精液に移行したその時点の技術革新を振り返ってみますと、その当時はある程度の時間を要しましたが、現在の技術開発の速度というものにつきましては、社会文化上、種々の条件が飛躍的に進歩向上しております、そういう今日でございます。受精卵移植におきます種々の技術的な課題がまだ残されてはおります。しかし、この解決は早期になされるんではなかろうかというふうに考えておりまして、普及上における受精卵移植時代、こういうものは急速に到来するのではなかろうかと思います。  終わりになりますけれど、今回の法律改正によりまして、受精卵移植についていわゆる制度化されるということでございますが、この件につきましては、私どもこれにタッチする技術者といたしまして非常に時宜を得た適切なことではなかろうかというふうに考えております。  以上をもちまして、はなはだ雑駁でございますが、私のお話にかえさしていただきます。どうもありがとうございました。
  8. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳を終わります。  それでは、これより参考人方々に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 高木正明

    ○高木正明君 簡単にお話を聞いても、ちょっと専門的でありますので、どんなことを聞いていいか、実は正直言っていまの話だけでは私もよくわかりませんですが、しかし、受精卵移植技術が畜産振興の基礎である家畜改良増殖に大変画期的なものであって、またすぐれた有用なものであるということだけはおおよそ見当がつくのであります。  そこで、時間もありませんから、両参考人にお尋ねをいたしますが、とりあえず阿部参考人にお尋ねをしてみたいと思いますが、先ほどのお話の中で、受精卵について新しい技術があるということのお話でありましたが、この受精卵移植に関連した技術についてこれから先どのような展望があるのか、簡単に一言お願いしたいことと、もう一つは、わが国ではそんなに歴史が古くないようなお話でありましたが、お話の中で、アメリカでこれが盛んに発達した、その発達した理由も、ヨーロッパから牛が入らなくなったから必然的にやったという話も聞きました。それで、諸外国研究開発の状況はどのようなことになっておるのか。この二点。  それから、多賀参考人に一点だけお伺いいたしますが、家畜受精卵の移植が普及するに当たっては、たとえば農家の実施依頼に速やかに対応し得るようしっかりした技術者を養成することが私は大事だと思うのですが、技術者の養成に当たってどのような点にポイントを置いたらいいのか。これは多賀参考人の御自身の経験も踏まえて一言お聞かせいただきたいと思います。  以上であります。
  10. 阿部猛夫

    参考人阿部猛夫君) 二つの御質問がございましたけれども、簡単な方から先にお答えをさせていただきたいと思います。つまり、海外で家畜受精卵移植研究あるいは実施がどうなっているかという方からお答えさしていただきたいというふうに思います。  先ほど申し上げましたように、受精卵移植技術というものは、それ自身といたしましては普及段階に入っております。したがいまして、最近の情勢では、外国では、もちろんその進み方の度合いはいろいろございますけれども、一般的に申しましてかなり実際に使われるようになっているということが申し上げられるわけでございます。で、先ほども申し上げましたように、やはり北米、特にアメリカにおきまする発展と申しますか、利用と申しますか、それが最大でございまして、これは一九八一年の、つまりおととしの数字でございますけれども、アメリカでは三万頭以上の子供がこの受精卵移植によって分娩をしているということでございます。これは分娩頭数でございますから、実際に移植をした数はこれの倍近いというふうに考えてよろしいというふうに存じます。アメリカが筆頭でございますけれども、その次に、多少数字を申し上げますと、三万頭以上がいま申しました米国で、それから次に二千頭から五千頭が受精卵移植で生まれているという国は、たとえばカナダ、イギリス、フランス、それからオーストラリアというような国がございます。それから、そのあと、もっと少ないのも一応申し上げてみますと、たとえば西ドイツとかベルギーとか、それからアルゼンチン、グアテマラというように中南米などでもやっておりますし、またこの中には日本も入るわけでございます。日本では大体千頭ぐらいが移植をされまして、これは移植をした数でございますから、それで生まれているのはまたその半分ぐらいになろうかと思いますけれども、そういう状況でございます。それが海外での受精卵移植というものの実施状況と申し上げることができるかと思います。  それから次に、これに関連する技術、先ほど幾つか申し上げました、たとえば受精卵の凍結の問題とかあるいは分割移植の問題、それから受精卵での性別の判定の問題というようなことを申し上 げましたが、いずれも受精卵移植の周辺を取り巻くやはり非常に新しい技術でございます。それらにつきましては、この凍結受精卵の問題につきましては、多賀参考人から多少の御説明がございましたので省略をさしていただくことにいたしまして、受精卵分割移植というもの、これは先ほども申し上げましたように、まだいわゆる研究段階でちらほらと成功例が報告されておるという状況でございます。これにつきましては、比較的最近でございますけれども、北海道のある事業体の農場におきまして卵を分割をいたす——この卵の分割というのも大変、多少説明をいたしますと、長ったらしくなるので省略をさしていただきますけれども、卵が受精いたしますると、中で細胞分裂を起こしまして幾つかの、だんだん一つのものが二つになり、二つのものが四つになりというような形で細胞分裂をしていくわけでございますけれども、大体十六から三十二ぐらいの、それを、その状態を桑実期にあると申しますけれども、そういう時期の卵を半分に割りまして、それぞれ一つの卵として着床をさせるというような技術で、この分割の方法も実は二つ三つ違った方法がございます。これ一々申し上げていると大変長い話になりますからいたしませんけれども、そういうような技術でございまして、これも日本での成功した例は、最近の例が大変目立つ例でございますけれども、一カ所で成功いたしますると、恐らくこれからは日本でもあちこちで成功例が報告をされていくようになろうかというふうに思います。これは期待をしてよろしいだろうというふうに思います。諸外国におきましてはあちこちの大学あるいは研究所等でこういう研究をやっておりまして、報告も毎日のようにいろいろとその成功例、不成功例が出ているという状況でございます。  それから、受精卵での性別判定の問題でございますが、これも、これは先ほどちょっとお話の中で申し上げましたように、分裂をしてふえた細胞の中から一部を取り出しまして、染色体を調べることによりまして、雄か雌かの判定ができるということでございます。そういう研究、この研究もかなり前からやっておりまして、成功例はもちろん出ておるわけでございますが、ただ、これは一口に言いましても、その細胞を取り出してその染色体を調べるというのは、かなり現実の問題といたしましては、だれでもそう簡単にできるものでないという点がございますので、これは将来の問題でございますけれども、普及段階までいくにはかなり時間がかかるんではなかろうかというふうに思っておりますし、研究それ自体も技術として定着というようなところまではいかない。どちらかというと、名人芸的な成功の仕方をしているというふうに理解をいたしたらよろしいかというふうに存じております。  ひとまずそういう御説明で終わらせていただきます。
  11. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ありがとうございました。
  12. 多賀貞二

    参考人多賀貞二君) お答えいたします。  技術者の養成ということでございますけれども、これは非常に大事なことでございます。基本的には獣医師の場合は臨床経験もございますし、この技術の習得は反復実習という形で容易であろうかと存じます。しかし、一般の人と申しますか、少なくともこれは家畜人工授精師の知識と経験と申しますか、こういうものを持った人にさらに受精卵移植の理論と技術、こういうものを植えつける必要があろうかと思います。特に実習のトレーニングが必要だろうと考えております。  それから、本県におきます技術者の養成につきまして若干触れさせていただきますと、これは県の技術職員の場合は、農林水産省の畜産試験場を中心に福島の種畜牧場での研修、それから大学におきます研修、長期研修等を含めまして技術の習得をさせておりまして、それぞれの人たちが持ち返って研さんし合うという形式をとっております。それから、県内の民間団体におきましては、県の職員関係が、先ほどの習得した技術者が講師という形になって進めるわけでございますが、これは三つのステージに分けまして、まず第一にスライドによります理論と実技の研修、それから二番目にステーションといいますか、場におきましての実習でございます。それから三番目に現地におきまして実習を行うと、この三つのステージに分けて現在行っております。  以上でございます。
  13. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ありがとうございました。
  14. 川村清一

    ○川村清一君 大変専門的な立場からいろいろお話を聞かせていただきまして大変勉強になりましたことをまずお礼を申し上げたいと存じます。  お二人に対しまして二、三お尋ねしたいんですが、どの先生にお尋ねした方が適当なのかよくわかりませんので、私はただ問題を提起いたしますので、適当にお二人の先生で選択されて御答弁を願いたいと思います。  問題は、私たちは政治家でございますから、政治的な立場で一応これは考えなければならないんですが、確かにこの受精卵移植というものが今日までいろいろ試験研究、実験した結果、これはもう成功していると、大丈夫であると、普及して差し控えないものであると、こういうような御見解。そこで、農林水産省としましてもその上に立って今度は法制化される、制度化されるわけでありまして、制度化されるということになれば、これは一般の酪農家あるいは一般の肉牛生産家がその方法を取り入れるということになるわけで、今度は大学の研究室やあるいは試験場で研究しているのと違いまして、これは失敗を許されないことなんでありまして、やっぱりそれをやっていただく生産者にしましては、その受精卵を移植した以上は必ず子供が生まれてくれなければ、これはやっぱり経済的にも問題が起きるわけでありますから失敗は許されない。  そういう立場で、先生方はもう心配ないと、こうおっしゃっておりますが、私も二、三の先生方にお聞きしましたところが、これは実験の段階を超えて制度化することはまだちょっと問題があるんではないだろうか、時期尚早ではないかといったような御意見等も聞いておるのでありますが、そういう点については心配がないかどうかといったようなことについてひとつ確信を持って教えていただきたいと思うわけであります。法案審議に当たりましてやっぱりこれは重要なそれを判断する基礎になりますので、ひとつお願いをいたしたいと思います。  それから、私は出身地が北海道の日高でございまして、私の町には浦河の種畜牧場があり、また静内町には静内の種畜牧場がありまして、そこではやっぱりりっぱな種牛がおりまして、その種牛の精液を採取して、これを凍結して全国に配っておると、こういうような実態でございます。  そこで、二、三の種畜牧場では種牛のりっぱな牛を見て、いやあ牛にもこんなりっぱな牛がいるのかという驚いた経験はあるのですが、そしてそれは精液をその牛から採取して、そして全国に配っておるのだという話は聞きましたが、受精卵研究をしておるというようなことは、これは大分前の話ですから、聞きもしておらなかったわけで、今回初めてこういうようなことになっておるということを知りました。なるほどずいぶん技術進歩したものだなと思って驚いておるわけです。もっとも人間の世界にもそういうような状態が出てきておるのですから、ましてこういう家畜の世界には出てくるのは当然だと思います。  そこで、お尋ねしたいのは、この人工授精による受胎率、これは一体何%ぐらいのものなのか。それから受精卵をとってこれを雌牛子宮に移植いたしまして、これは受胎しているのですから受胎率ということでない、それが今度は子供になって生まれてくるわけですが、これが成功率はどのくらいあるのか。その雌牛子宮に移植したのは必ず生まれてくるのかどうかということが一つ、これは技術的な問題です。  もう一点は、優秀な雄牛から精液をとって優秀な雌牛にその精液を注入いたしまして、そこで受精卵をつくってとるわけですが、その受精卵とい うのは何個ぐらいできるのか。先ほどの北大あたりで研究しているやつはまだこれからの問題で、それは一つのものを何か分割するんですから、私は分割することを言っているのではなくて、いわゆるホルモン注射をいたしまして、人間でも四つ子だとか五つ子を産んだお母さんにはホルモン剤ですね、卵子をたくさん排出するような、そういう作用の薬を注射しておいて卵をたくさん持って、そこへ精子を打って受胎するということになるわけですが、一体この受精卵というのは幾つぐらいが普通できるのか。それで、仮に五つできたとしますか、五つできたとしたならば五つを取り上げて、その五つが全部それは優秀なのか。今度は雌牛子宮にそれを移植して完全にそれが着床する、その着床する率はどの程度か。ということは、先ほど言いました人工移植と受精卵移植とを比べての効率なんですが、効率はどっちが高いのかどうかということをお伺いしておきたいと思うわけであります。  それから、精液輸入する、それから受精卵輸入する、こういうことが今度発展していきますというと、普及していきますと、将来人工移植というものはこれはなくなるのかということがちょっと考えられると思うのですが、その点はどうなのか。もう全部外国から優秀な精液輸入する、あるいは受精卵輸入する、そうして雌牛にそれを移植していくということになると人工移植の要がなくなるような——人工移植というのは日本ですよ。日本の種牛というものが要らなくなるのかどうか。  それから、日本の現在種畜牧場なんかにいる種牛は非常に優秀な牛ですが、これは生体輸入外国から輸入してくるのですが、生体輸入といったようなことはこれは効率が悪いから今後これはなくなるのかどうか。そういうようなこともちょっとお聞かせいただきたいと思うわけであります。  それから、先ほど多賀参考人が申されたこと、その中に、私、間違って聞いたんならちょっとあれしますが、何か黒和牛——和牛の優秀な雄と雌との間に受精卵をつくったと。その受精卵を今度は乳用牛、これはホルスタインかどうか、肉用牛ではないですね、乳牛子宮にそれを注入して、そして子宮に着床させまして、そして今度は乳牛の腹から出てくるけれども、生まれてくるのは和牛が生まれてくるわけですね。結局腹だけ借りたわけだ。こういうような方法を何か千葉県でやられたというふうに私は受け取ったのですが、そういうことは将来ともやっていくのですかどうか。これは別段人間の世界じゃないですから道徳的にどうとかヘチマだとかいうことはないですけれども、ちょっと腹だけ借りてあと産むといった、受精卵そのものがそうですからいいんですけれども、今度は和牛と乳牛ですから、和牛の子を乳牛の腹を借りて出してくるといったようなことにちょっと疑問があるんですが、この辺は技術的にはできると思うのですが、将来ともそういうことをやるのかどうか、この辺についてちょっとお聞かせいただきたいと思うのです。  以上でございます。
  15. 多賀貞二

    参考人多賀貞二君) お答え申し上げます。  まず最初に、現在の人工授精におきます受胎率の問題でございますが、これにつきましては、牛はまず、御案内かと存じますが、発情が参りましたときに交配、種つけということをするわけでございますが、もし第一回目の発情のときにとまらなかった場合には、その後二十日たちますとまた発情が来ます。とまらなかったというのは受胎しなかった場合ですね。とまらなかった場合は、その次発情が来ます。またそのときに交配してとまらなかったら、その次約二十日後に、約二十日ないし二十三日の性周期で回っております。それで、まず第一回目の発情のときに注入いたします。このときに百頭第一回で注入しましてとまるのは、受胎いたしますのは、大ざっぱに申し上げまして恐縮なんですが、約五九%から六〇%くらいでございます。このときに六十頭とまりましたと。その次に二回目には発情しましたのが四十頭残っているわけです。その四十頭の中で約十五頭ぐらい受胎します。そうしますと四十頭のうち十五頭ないし二十頭と申しますか、わかりやすく二十頭程度、余り細かく小数点以下になりますので、そういう言い方をさせていただきます。二十頭とまります。その時点で二〇%、それから最後に三回目、これ三回目まででとまらないのはもう病気だというふうに考えてよろしいのじゃないかと。ですから、六〇、二〇、その次に一〇ということで、約九〇%全体、三回目くらいには受胎します。あとの一〇%近くは病気だとか、その発情の時期の問題だとか、飼養管理の失宜等いろいろあろうかと思います。ですが、中には一年ぐらいとまらないのもあります。これは人間の方を想定していただければある程度連想がつくかとは思いますけれども、全般的に九〇%はとまろうかと思います。  それから、次の方へ移らしていただきますと、五番目に御質問いただきました和牛のことですが、おっしゃられましたことと私の申し上げましたのは同じようなことでございまして、ここへ和牛の雄がおります。ここへ雌がおります。この雌に発情が来ます。これに和牛のいい雄の種を授精します。それから七日目ぐらいたちまして、この中へ手を入れまして子宮の中といいますか、そこへ落ちてきました受精卵を取り出します。取り出しましてこちらの方のホルスタインの、どちらかといえばホルスタインでも余り能力の高くない牛にこの卵を移植します。子宮の中へ入れてあげます。そうしますと、そこで生まれるわけでございます。これを将来的にも行うかということでございますが、千葉県の場合、先ほど申し上げましたように、非常に肉専用種の和牛が少ないわけでございます。かつ需要も多いわけでございます。ですから、千葉県はこの技術を十分活用いたさしていただいて、そういうものを生産振興する、すなわちそれはひいては肉用牛農家の経営安定、それからまた消費者のニーズにもこたえ得るものではなかろうかというふうに理解しております。  以上でございます。
  16. 阿部猛夫

    参考人阿部猛夫君) この受精卵移植技術につきまして、いろいろ技術そのものについての御懸念という、あるいはもっと具体的にその成功率というようなものはどうかという御質問だったと理解をいたします。それで、技術確立は大丈夫かということの具体的な内容といたしまして、現在もちろん個々別々のところでの成績はいろいろと違うわけでございますけれども、世界的な大勢といたしまして大体この辺が一つの現在の技術の標準ではなかろうかというところを、多少大胆な言い方になろうかと思いますけれども、申し上げてみたいと思います。  確かに先生の御質問のように、私どもも人にこの問題をお話しするとき多少みずから抵抗を感じますのは、人に非常に短くお話しするときは、多排卵を誘起させて一遍にたくさんの卵をとって、それを別の雌につけるんですというお話をいたします、一番手っ取り早く申すために。そうしますと、お聞きになられた方は、そうすると、その多排卵でたくさん出た卵が全部着床をして全部生まれてくるというふうな、そうはこっちは申してはいないんですけれども、そういうふうな当然印象でお受けになるということがございまして、私どもも多少その点はもう少し正確にいろいろお話をするときにはしなければならないなということは考えておるわけでございます。  で、前置きが長くなりましたけれども、まず多賀参考人からお聞きになられましたように、一番初めの手順は多排卵をさせることでございます。ホルモンをやりまして多排卵をいたします。そのときに、それじゃ、多排卵と言うけれども、一体どのぐらいの数が排卵されるのかということでございますけれども、これはもちろん牛の状態によりまして、あるいはまた使うホルモンにもよりまして変わりますけれども、十個ないし二十個というふうに考えてよかろうかと思います。そうすると、平均すると十五卵と、十五卵が排卵をされたというふうにまあ仮定をいたします。それでは、その十五排卵をされたものが全部回収できるのか というと、必ずしもそうではございません。大体〇・七、つまり七〇%が平均的な数字として回収をされるというふうに考えてよろしいかと存じます。なぜそういうことになるかと申しますと、ちょっとややこしい話になりますが、いまのその開腹手術をしないでとるという方法では子宮におりてきたものしか回収できないわけでございます。卵が十か二十ありますと、一列横隊で全部子宮におりてくるわけではございません。次々にぽつんぽつんと子宮におりてくるわけでございますから、その最初の方が子宮におりてきたときには、まだ残りのものは卵管に残っているということでございまして、したがいまして、子宮洗浄という方法でいま取り出しているわけでございますので、卵管にどうしても多少は残ってしまうということが一つと、それからあとは技術の問題でございますけれども、灌流液の中に出てきたものを顕微鏡下で見まして卵を見つけるわけでございますから、まれには見損なって捕捉できないという場合もございます。そういうファクターを考慮いたしまして大体七割が回収率というふうに考えてよろしいかと思います。そういたしますと、大ざっぱな数字ですが、十五の卵のうちの七割が回収されると考えますと、十卵が回収をされたということになります。  それでは、回収された卵はそのまま全部移植に使えるかと申しますと、実はそうではございませんで、中にはいろいろな原因がございます。実は受精をしているのですが受精してないものとか、あるいは受精はしているけれども、卵の分割の程度がまだ少なかったり、つまり胚としましての発育段階が早過ぎたり、それからまた今度は進み過ぎたりというようなものがあったり、あるいは中には変性を起こしているというようなものもあったりいたします。そうしますと、この検査ということを——卵の検査、採取した上での卵の検査ということをやりますが、これは非常に重要でございまして、そういう、その正常でない卵をはじかにゃならぬわけです。そのはじかれる卵がどれぐらいの割合であるかと申しますと、大体三〇%ぐらい、三分の一ぐらいは使えない卵があるということになります。ですから、使える卵は逆に言うと七割ということになります。そうすると十卵回収されたものの中で正常に使えるものが七つということになろうかと思います。さて、それをそれでは今度は移植をいたすわけでございます。そうすると移植の成功率は一体どれだけか、成功率を受胎ということで考えますと受胎率になるわけですが、これが現在のところでは大体六〇%というふうに考えられます。六〇%、そうしますと七卵を移植をいたしまして、そのうち六割が受胎をするわけですから、四卵が受胎をいたすというふうに考えてよろしいかと思います。受胎後は特別のことがなければこれは一応分娩までいけるというふうに考えてよろしかろうと思います。ただ、特殊なやり方をする、たとえば一つ子宮角二つわざわざ入れる、つまりたくさん子供を一遍に、双子をとったり、あるいはもっと、三つ子、四つ子をとろうなどと思いまして、一つ子宮角二つ入れたりなんかいたしますと、流産の例が多くなるというようなこともありますが、通常のやり方でございましたら、大体一応は生まれてくるというふうに考えてよろしいかと思います。そうしますと、大体いまのお話で申し上げますと、一回の処置から出てくる卵で四頭生まれるということに相なるわけでございます。それで、それならばその雌については、それぞれその卵をとることはできないのかと申しますと、そうではございませんで、何回もとれるわけでございます。ただ、何回もとれると申しましても、それを余り頻繁にやりますと、これは体の方の機能がついてまいりませんので、だんだん排卵数が落ちてくる、あるいはまた未熟の卵が排卵されてくる、こういうようなことになりますので、これについてはいろいろ説もありますけれども、やはり年にせいぜい、五回と言う人もありますけれども、私は四回ぐらい、いまの多排卵処理をして卵をとるということは四回ぐらいにとどめておいた方がいいんじゃないかと思うのですけれども、仮にいま四回という数字をとりましても、一回に四つ、それで四回ということになれば十六頭の子供が受胎をする、そんなふうに大変平均的なお話でございます。  それからなおこの際、ついでにと申しましてはあれですけれども、それじゃいま私が申し上げましたような数字で、日本全国どこでも大体いっているのかというふうにお考えになられるとちょっと困りますんで申し上げておきますと、これはやはり熟練した人たち、たとえば日本で申しますと、先ほど先生もお話に出ておりましたように、北海道の種畜牧場、あれは日高でやっておるわけでございます。最近は福島でも始めておりますけれども、そういうふうにあの種畜牧場には大変優秀な技術者がおりましてやっておるわけでして、そういう方々段階の話でございます。そういう方々が今度県の方々なりにいろいろ御指導申し上げ、またその県の方々がまた必要なところに御指導するという段階になりますと、これはまだいま私が申し上げましたような数字に至るまでにはこれは一つのタイムラグがどうしてもあろうかと思いますので、その点はひとつ誤解のないようにお願いをいたしたいというふうに思います。  それから次には、今度は、——いまの受精卵移植技術そのものにつきましては大体御了解をいただけたんではなかろうかと、それでその場合に成功率が六割である、六〇%であるというお話し申し上げたわけです。何だ、低いではないかというふうにこれはその数字をどうとるかでございますけれども、そういう印象を持たれる向きもあろうかと思います。確かに一〇〇%に比べますと六〇%というのは低いわけでございますけれども、しかしこれは先ほど多賀参考人も申されたように、人工授精の初回授精の受胎率が六〇%であるということをお考えいただけば、あれだけ広く普及している人工授精でその六〇%の受胎率でございますから、それに比べまして一層大変手の込んだ仕事をした上での受胎率でございますので、私は技術者の立場から言えばそんなに低いとは思っておりません。ただもちろんできることならこれを七〇%にも八〇%にも上げたいという、これは世界の研究者あるいは技術者の目標でございますけれども、そういうような状況にございます。  それから海外からの精液だとか受精卵がどんどん入ってきたら日本では改良が要らなくなるんじゃないか。日本の種雄牛とかあるいはいい雌というようなものは要らなくなるんじゃないかという御質問でございますけれども、これは私、冒頭のお話でも申し上げましたように、育種素材といたしまして非常にすぐれたもの、これはどこの国でも、どこの国——まあ特定の国にはわれわれの持っているものよりもすぐれたもの、すぐれたものと申しましてもいろんな点でわれわれの持ってない点ですぐれているというのもありますし、それから全体的にすぐれているという場合もいろいろあるわけでございますけれども、われわれが育種素材として欲しいなというものはもちろん外国にあるわけでございます。そういうものを取り入れるということでございまして、外国にもそのかわり余り結構でないものもたくさんあるわけでございますので、決して全部が全部入ることをわれわれとして望んでいるわけではございませんし、それはもう非常に厳選されたものだけが育種素材として入ってくるということを望んでおるわけでございますし、先ほども申し上げましたように、農家も外国情報なり何なりを正しく判読——判読といいますか、判断をする方法さえとって差し上げれば正しく判断をしていいものだけを入れるという態度であろうかというふうに思いますので、それはまた受精卵についても同様でございます。  ただ受精卵の場合は、実は少し余談になりますけれども、私去年たまたまヨーロッパの幾つかの国を回ってまいって、やはりヨーロッパでもアメリカあたりから受精卵が入ったりしておるわけでございますけれども、そういう場合にどう考えているのかという話をちょっと話のついでに水を向けてみますと、いや受精卵についてはもう心配してないんだという話なんです。それはどういうこ とかというと、受精卵移植あるいは受精卵の採取あるいは処理、そしてそれを凍結するというようなのは非常に金のかかることである。そういう金をかけてもいいようないい雌、しかもいい雄をつけた、つまり非常に優秀な受精卵しかどうせ入ってはこないだろう。その辺のいいかげんな牛の凍結受精卵をつくる人もいないだろうし、またそんなものを売ろうとする人もいないだろう。そういう意味で言うと、われわれは凍結受精卵については、入ってくるものがあってもそれは非常に遺伝的に優秀なものしかあり得ないというふうに考えておるので、全く心配はしておりませんというような話をしておりました。そのとおりであろうというふうに存じております。  それから、精液が入ってまいった場合に生体輸入がどうなるかというお話でございますが、これはやはり多少減少することはあろうかと思います。多少減少はするかと思いますけれども、やはりある程度の生体輸入も、まあいいか悪いかは別といたしまして、多分ある程度は続くであろうというふうに私は観察をいたしております。
  17. 川村清一

    ○川村清一君 大変ありがとうございました。
  18. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 きょうはお忙しいところお二人の参考人においでいただきまして、貴重な御意見をいただき大変ありがとうございました。  最初多賀参考人にお伺いしますけれども、これごく素朴な質問ですけれども、いまお話しになった川村先生は北海道ですが、私、千葉なんですけれども、天候とか気候とか自然環境というのは全然関係はないのかどうなのか。たとえば受精卵の供給というのは、先ほどお話あったように全国的にもなったし、またグローバルにもなっていると、それ以前の問題として、研究段階で、自然環境または牛の体調、体質等もあると思うんです。すなわち研究場所、良質の受精卵を確保すると、こういうことで、ごく素朴な質問ですけれども、ごく寒いところ、ごく暖かいところと、こういう自然環境は全然関係あるのかないのか、多賀参考人からお伺いいたします。
  19. 多賀貞二

    参考人多賀貞二君) お答えします。  ただいまの自然環境と申しますか、天候の関係でございますが、これは全面的にないということは言えないと思います。何らかの形であろうかと思います。特に、寒い場合は飼養環境の改善等である程度カバーできるだろうと思いますが、夏の暑い場所につきましては、経済動物という関係もございまして、夏の場合はどうしても一般的に動物自体が繁殖能力はやや落ち目になるというような傾向がございまして、実際に私どもが受精卵を移植する場合も、気候の暑いときにはどうしても受胎の状況が落ちるんではなかろうか。いままでの人工授精関係でも夏にはどうしても受胎率が落ちます。そういうことで試験研究段階でも夏はできるだけ外したようなこともございます。しかし、現実には農家の場合そういうことは言っておられません。ただ若干受胎率が低いということは否めない事実でございます。  それからほかの、受精卵移植関係につきましての場内だとか、そういう問題は、飼料の給与とかそういう人為的な環境制御である程度は抑えられるんじゃなかろうかというふうな感じが、まあこれは具体的にまだそこまで行っておる技術ではございませんので、はっきりお答えできない一面があろうかと思います。ですけれど、いままでの一般の人工授精から勘案しますと、そう強く影響は受けないだろうというふうに判断しております。  以上でございます。
  20. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 きょう午後からこの法案の審議に入るわけですけれども、専門研究されている阿部参考人からお伺いしたいんですけれども、酪農振興法が酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律と、こう題名も変わって改正されるわけですけれども、また、この振興法とあわせて、いまここで話題になっている家畜改良増殖法の一部を改正する法律案、この改正が行われるわけですけれども、二法の改正によって今後の家畜振興法について、諸外国に比較して法体系的に整備されたと、このように思われるかどうか、この辺はどういうふうにお考えですか。
  21. 阿部猛夫

    参考人阿部猛夫君) 大変私にとってはむずかしい御質問でございまして、法体系的にというようなことに相なりますると、これは専門でございませんので、何とお答えしてよいかちょっと戸惑うわけでございますけれども、そういうことを抜きにいたしまして、今回の改正について、いわゆる家畜改良に携わってまいった者としてどう考えるかという御質問というふうに受け取らせていただきますと、結論的に申しまして、この家畜改良増殖法というのは昭和二十五年というときにできた法律でございまして、その後の先ほどもるる申し上げましたような家畜改良というものの変化というものを踏まえ、また技術発展というようなものを踏まえた場合には、実は正直のところ申しまして、確かに三十六年の小さな改正はございましたけれども、昭和二十五年の家畜改良増殖法がいつまでもそのままということではこれはもう時代おくれではないかと、まあ言葉は悪いですけれどもそんなふうに感じておったわけでございますので、今回新しい情勢の変化に対応して増殖法の改正が行われるということにつきましては、大変結構なことであろうというふうに思っております。
  22. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 申しわけございません、じゃあ、もう一つ。  先ほど川村委員の方からちょっと話がありましたけれども、畜産家個々に対して、もちろん直接携わるわけではないんですが、受精卵移植の教育とか講習会とか、こういういわゆる予備知識というんですか、そういうのも私は経済的な面、いろいろな面考えて必要ではなかろうかと、こういうふうに考えるわけですけれども、畜産家にはどういうふうに啓蒙し啓発することが望ましいのか。技術的な面から、この辺までとか、この程度言っておいたらいいだろう、そういう点についてお考えがあったらお聞かせ願いたい。これが一つと、また家畜受精卵の価格や、受精卵を販売する業者等がありますけれども、さらに流通ルートについても本格的に取り組まなくてはならないんではないかと、こういうふうに思いますけれども、この点について御所見ございましたらお願いしたい。
  23. 多賀貞二

    参考人多賀貞二君) まず、畜産農家に対します啓蒙普及でございますけれども、私ども現在実用化試験段階でございまして、具体的には一般農家の方まで細かくこの事業についての説明は行っておりません。県としましてはほとんど——普及関係でございますね、農業改良普及関係については全部承知しているわけでございますが、そこから先につきましては実際には行っておりませんが、しかしながら試験研究機関といたしまして、新しい技術ということで一般畜産農家に集まっていただきまして、研究会と申しますか、そういう新しい技術の披露を行っております。そういうところで、実際には畜産農家が理解していただく、それから一般的には新聞もしくは雑誌、そういうもので畜産農家はほとんどこの問題はある程度承知している、具体的に細かい話までは当然わからないかもしれませんけれども、概念的なお話は承知しているのではなかろうかというふうに考えております。  それから、流通の関係でございますけれども、これにつきましては、現実問題として余りそういうルートはございませんですが、現在の人工授精を行っております関係のルートは適切なような感じもいたします。その辺についてはまだ具体的に私どもの方で検討いたしておりませんので、はっきりお答えしかねる一面があろうかと思います。  以上でございます。
  24. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 畜産農家への啓蒙等は、これは行政面のいわゆる行政指導の面になると思いますので、これはまた後で政府の方へお伺いしたいと思いますけれども、最後に一点、今後の課題として卵分割技術、それから双子等のいわゆる生産、それから雄雌の判定、こういう技術の開発がどんどんされるようになると、端的に言って牛の生産がふえるわけです。皆さん一生懸命研究されているのに水をかけるわけじゃないんですけれども、子 牛の価格がそうなると暴落するんではないか、こういう心配も持たれるわけですけれども、そうなると牛肉の価格にも影響してくる、こういう点についてどんなお考えをお持ちでおられるか、この点をお伺いいたします。
  25. 阿部猛夫

    参考人阿部猛夫君) これはまた大変むずかしい御質問でございまして、私、流通あるいはその価格の問題ということになりますと大変弱いのでございますけれども、ただ、私考えまするに、御承知のように、ただいまいろいろ牛肉増産ということが叫ばれておるにもかかわらず、その子牛の生産が必ずしも十分でないという状況にあることから考えますると、まあ多少いわゆる高い値段に影響がないとは言えませんけれども、しかし、その影響というよりも、やはり、国といたしまして牛肉生産の素地が拡大をされるという点では大きなプラスになるんではなかろうか、そういうふうに考えておるわけでございます。これはあくまでも私見でございます。
  26. 下田京子

    ○下田京子君 大変いろいろありがとうございます。  阿部参考人にお尋ねしたいんですが、凍結受精卵、これも今回政府機関等の証明があるものは輸入できるようになるわけですが、国際商品化してくるということでいろいろお話がございまして、今後日本にあっては実力勝負ということにいかなければならないんで改良体制の見直しなんかも必要だと、こういうお話がありましたが、時間が来たようで途中で何か簡略化された感じもいたしましたので、その点で何かまだお述べいただける点がございましたら聞かせてほしい。特に、国際的になりますので、流通問題で今後日本が考えていかなければならない点をお聞きしたいと思います。  それから多賀参考人に、これは大変具体的で恐縮でございますが、黒毛和種のことで先ほどお話がございましたが、日本短角種の改良の問題なんです。  御承知のように、東北北部の厳しい自然のもとで粗飼料の利用性を巧みに利用してやられておるわけなんですが、ただ、サシが入りにくい品種だということで市場の評価が低い。大変問題にされているんですが、現地の皆さんは、奥山における草資源の有効利用や、あるいは今後の子牛生産費の低減、何というか、安く生産していくというふうなことを考えた点で非常に大事ではないかというふうに言われておりますので、この点での御意見を聞かせてほしいと思います。
  27. 阿部猛夫

    参考人阿部猛夫君) 私の最初に申し上げましたことに関連をいたして、今後実力勝負段階になった場合にどういうふうにわれわれやっていかなきゃならないのか、その点について多少詳しく説明せよという御質問だったと思いますが、この実力勝負ということはあらゆる家畜について同様なわけでございますけれども、肉牛につきましては、これはまた、日本の需要の特殊性もございますし、それから日本が古来持っている黒毛和種あるいはその他の、先ほどもお話出ましたような短角というふうな問題も含めまして、いわゆる日本肉牛品種というものはございますので、いわゆる国際商品としての精液の問題については、肉牛の場合はわりあいにテンションは低いのではないかと思うわけでございますが、一番やはり問題なのは乳牛であろうかというふうに存じます。  これについては、先ほども申し上げましたように、乳牛改良の根幹というものは私はやはり雌牛検定であろうと思います。雄牛後代検定もこれはもちろん同時に非常に重要でございますけれども、乳牛に関して申しました場合には、雄は乳を出してみるということができません。したがって、乳牛の雄の選抜というものはかかってその娘とか母とかいう女性の方の能力によって判断をしてまいる必要があるわけでございます。しかも、これは多少専門的な話になりますけれども、たとえば正確な後代検定ということになりますと、三頭や五頭の子供をとってみて、その子供がよかったからあの雄は遺伝的にいいというようなことは言えないんでございまして、まあこれは国にもよりますけれども、やはり諸外国の場合、特にアメリカ、ヨーロッパの場合には娘の数は数十頭、国によりましては一雄当たり百頭ぐらいの娘をとって能力検定した結果をもって父親の遺伝的な能力を推定するというような状況になっておるわけでございます。したがいまして、やはり実力勝負ということに相なりますると、やはりわれわれとしてもその規模とそのやり方において劣るようなやり方をやっていたのでは、これはいけないわけです。で、そのためには、まあ話はもとへ戻りますが、やはりまず雌の検定というものを、これは少し極端な言い方をいたしますと、全国津々浦々にまず広げる、まあそれは極端な話でして、諸外国を見ましても津々浦々一〇〇%雌牛検定が行われている国はございませんから、それは少し誇張した言い方でございますけれども、まあわが国の場合、これは本当の私の私見でございますけれども、私に言わせますと、少なくもわが国の雌牛の四〇%は毎年検定をするというような状態が必要であろうかと、こういうふうに思います。その上に立って雄の遺伝的な能力判断もされていくというようなことがいわゆるもうルーチンワークと申しますか、経常的な事業として着々と進むという状態になれば、これは一つもどこに対してもひけをとらない乳牛改良が進められるというふうに存じておるわけでございます。多少補足させていただけば、いまのようなことになります。
  28. 多賀貞二

    参考人多賀貞二君) お答え申し上げます。  日本短角種のことでございますが、これにつきまして私も伺ってはおります。ただ、千葉県におきましては日本短角がほとんどおらないわけでございます。この辺、東北関係につきましては非常に粗飼料の利用とか、それから生産性を考えますときに非常によい牛ではなかろうか。ただ、サシが入らないから和牛との、黒毛和種との比較の上ではお値段も違うけれども、生産性、大衆肉という面からはよろしいんじゃなかろうかという考え方は私自体持っておりますけれども、若干まだその辺の研究千葉県では日本短角についてはほとんどしてございません。東北関係の資料に基づくだけでございまして、現実に農家の場合に日本短角というような話が私どもの方にはすぐぴんとこないという一面がございます。  と申しますのは、先ほど申し上げましたように、千葉県は酪農県でございまして、現在九万頭乳牛がおります。それから、黒毛和種の場合は本当に現在八百頭しかいない。片一方九万頭、片一方八百頭、そういう中での黒毛和種の需要というような意味合いでございまして、肉牛生産振興、そのほかにつきましては、本県の場合は乳用牛の肉利用ということでございますので、日本短角については大変申しわけございませんが、私どもの方として識見が余りございませんので、この辺で御了解願いたいと思います。
  29. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 素人でございまして、大変きょうはよいお話をお聞かせをいただきました。  そこで、時間がございませんので、一点ずつお伺いをしたいんですが、多賀さんに先ほど実験の成果、そういうものにつきまして実験例を御報告いただいたわけでありますが、恐らくこの受精卵移植というものが普及をしてきますと双子生産というのが主力になってくると思うんですが、いま実験をやっているのは、先ほどの阿部さんのお話だと牛は二つ子宮があるそうで、全部双子生産の、移植というんですか、その実験をやっているのかどうか。あるいは双子でやった場合、一頭の場合と品質的にはどうなんだと。一頭の場合と全く同じなのか、多少は劣るのか、その辺のところお教えをいただきたいということが一つです。  それから阿部さんにお伺いをしますが、今度この法律が通りますと、輸入精液が使われるということになるわけですが、先ほどのお話だと大丈夫だ、各国相当情報網が発達していまして、そんな悪いものが大量にわが国に入ってくる可能性はないんだ、こう太鼓判を押されたんですが、果たしてその辺大丈夫なのかどうか。遺伝性疾患を持った精液が入ってきたり、能力の劣ったものが入っ てきたりするということになると、阿部さんが前段に申されましたように、大変国内の全体的に悪影響が及ぶ、こういうことになるかと思うんですが、その点についてもう一度お考えをお聞かせをいただきたい。  以上でございます。
  30. 多賀貞二

    参考人多賀貞二君) お答え申し上げます。  ただいま、今後の受精卵移植につきまして、子宮角二つございますので、そこへ入れますと双子生産ということが主力になるんじゃなかろうかと、必要に応じて当然そういうふうになっていくんじゃなかろうかと思います。ただ、現在の段階で全部それをやっているかと申しますと、人的技術者の関係もございますし、対象動物の関係もございまして、双子研究だけを進めているというわけではございません。いろいろ総合的に受精卵移植の実用化に伴う研究を進めております。  それから、生まれた子牛、双子が生まれた場合に品質的にはどうか。これは一般的に言いますと、双子の場合は小さく生まれる。普通、一頭生まれるのが普通でございます。この場合には、約三十八キロから四十キロございます。しかし、双子の場合は三十二、三キロとか若干体重が少なくなってまいります。ちょっと数字持ち合わせておりませんですが、そういう傾向がございます。しかし、多胎生産といいますか、牛から四つとか五つとかそういうものを産ませようとすることになりますと、未熟児的なものになろうかと思いますが、双子の場合は一切品質的には支障はないというふうに考えております。  以上でございます。
  31. 阿部猛夫

    参考人阿部猛夫君) 輸入精液の問題で、わが国の改良体制に支障をもたらす危険はないのかというお話でございました。具体的に言えばその不適性なものが多量に入るおそれはないのかというお話でございます。それについてもう一度述べよということでございまするが、これは先ほど申し上げましたように、大勢におきましては混乱はないというふうに思っております。ただ、これだけの人間が集まっておるところでございますから、ごく部分的にそういうものを趣味半分あるいは何と申しましょうか、無関心で使う者が全くいないということはもちろん断言ができないわけでございますけれども、しかし大勢におきましては心配するようなことはなかろうというふうに思っておるわけでございます。部分的にあるいは一部そういうものが起きることもやはりこれは好ましいことではございませんので、その点についてはやはりわれわれ、これは国も県もそれからまた団体もその点については十分配慮をして、やはり人工授精師さんなりあるいは農家の方々に正しい情報を提供するとともに、ただ情報を上げましたよだけではなくて、やはり相談に乗ってあげて、そのおかしなものは使わないようにしてもらうというやはりきめ細かい指導措置というものが当然これは伴わなければならないであろうというふうに存じておるわけでございます。その場合に、特に家畜人工授精師という方々、この方々は農家に最も近い位置にいらっしゃるわけで、農家も人工授精師さんにいろいろどの精液を使ったらいいかというような相談をされることが多いわけでございますので、やはり人工授精師方々には十分その改良というものについての教育をする必要があろうかというふうに考えておる次第でございます。
  32. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 以上をもちまして参考人方々に対する質疑を終わります。  参考人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、皆様には、御多用中にもかかわらず当委員会に御出席をいただき、大変貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  午後二時まで休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ─────・─────    午後二時十一分開会
  33. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから、農林水産委員会を再開いたします。  酪農振興法の一部を改正する法律案家畜改良増殖法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  34. 川村清一

    ○川村清一君 私は最初に、酪農振興法の一部を改正する法律案について若干質問いたしますが、まずお尋ねしたいことは、この酪農振興法の一部を改正する法律案として提案されました内容は、法律の題名を酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律と、こう改めておるわけであります。そこで、酪農そのものがきわめて重大な情勢の中にありまして、酪農振興法に基づいて酪農の振興にいろいろやっていただいておるわけでございますが、もちろん肉用牛の生産そのものを肉用牛の需要の動向、そしてそれを肥育している生産者の生産・経営の問題等々、いろいろあるわけでありまして、したがいまして、私の立場から言えば酪農振興法酪農振興法として、酪農の振興に大いに機能してもらう、そして大事なこの肉用牛の問題、これはやはり畜産の中においてきわめて重要な問題を抱えた問題でございますので、肉用牛生産振興法とでもいう名前の独立立法をいたしまして、両々相まって酪農の振興と肉用牛の振興を図るのが至当でないかと、そう考えておるわけでございますが、あえてこれを二つくっつけまして、酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律と、こういうふうに題名を改めた理由がよく理解できませんので、この点についてまず御説明を願いたいと思います。
  35. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 私ども今回の制度化を図ります際に、いま先生御指摘のありましたように、肉用牛だけを単独にして立法化すべきかどうかということも含めましていろいろ検討したわけでございますが、いま御提案しておりますような姿になりました理由といたしましては、一つはやはり御承知のように、酪農といえども、あるいは肉用牛生産といえども、ともに牛という草食性の大家畜を使ってやっている産業でございまして、草地の利用、特に土地利用の面とか、あるいは家畜衛生管理といったような面では全く共通の基盤を持っているわけでございます。そういう中で、現状のわが国の肉用牛生産を考えてみますと、もうすでに御承知のとおり、肉用牛生産の七割は実は乳用種から出てきておりまして、そういう意味では酪農という世界から肉の七割が出てきているということが一つございます。それから日本と似通った姿を考えてみますと、たとえばECのように明らかに酪農部門と肉用牛部門が一つの経営の中で行われている、そういうようないわば乳肉一体生産といったようなのがかなり諸外国にはありますと同時に、日本では比較的専業的酪農が多かったわけでございますが、私どもの調査でも酪農経営の七%ぐらいの方がこの乳肉一体経営といったような形をやってきておられまして、またこれが広がってきているということ、それから特に牛乳の生産を調整いたします際には、実はいままでは雌の子牛が生まれれば当然酪農生産に向けるというように考えていたわけでございますが、雌の子牛も未経産のままで肉の供給に回されるということが非常に割合も多くなってきているというような諸事情を考えますと、やはりこの際この酪農と肉用牛生産は密接不可分ではなかろうかなというような感じをしているわけでございます。したがいまして、別個の法律体系をとりまして二つを並列的にやることも一つ方法ではございますが、この二つの大きな酷農、肉用牛生産というのを一つの体系に入れまして、その相互の関連を十分考えながらやっていくというのが一番望ましいんではないかということが一つございます。  それから、いままでの政策のいわば展開の歴史を申しますと、実は酪農の方がいわば先進的でございまして、かなり早い時期からこの酪振法とそれから不足払いの法律と、それから畜産物価格安定法、この三本柱で酪農を展開し、比較的短い期間でいわばEC水準に近づいてきたという、そういう歴史もございます。そういうようなことも頭に置いて考えますと、この酪農振興法の法域の中 に肉用牛生産も包含して、両者の関係をいわば総合的に進めることが最も望ましいではないかという判断をいたしまして、このような姿で御審議をお願いしているわけでございます。
  36. 川村清一

    ○川村清一君 局長のいまの御説明、これは理解できないわけではないんです。理解はできるわけなんです。非常に両者が深い関係にあることも承知しております。それから肉用に使われておるところの牛の七割が、これが乳用牛がその方に向いているということも承知しておるわけでございますが、物事は似たようなものが二つある、この二つを合わせることによって相乗的な効果を上げて、両方にメリットを与えるということもあります。逆にこれをくっつけたことによって、お互いに足を引っ張り合って効果が減退するということもあり得るわけでありまして、局長の考えではこれをくっつけたことによって酪農の振興の方にもメリットがあるし、肉用牛振興の方にもメリットがあると、こういう理解でやったものと思いますが、そうですか。
  37. 石川弘

    政府委員(石川弘君) まさしく御指摘のとおりでございまして、たとえば大きなメリットといたしましても、まあ資源論的な立場から申しましても、よく申しておりますように、乳雄を肥育します場合に初期で母牛から離すことによって事故率が大変大きい。酪農家が自分である程度まで肥育をしていただくことによって、乳雄資源のいわば資源としての活用の度合いが非常に高まるということもございます。それからそういうことは単なる国家としての資源論だけではございませんで、酪農経営家の収支というようなことも考えました場合でも、いわば乳なり乳製品だけで価格、所得をとるというんではなくて、この肉をも十分いわば収入源として上げるというようなことも考えられると思っておりますので、御心配になりますような、何か二つ足したことによって、たとえば酪農に対する施策がなおざりになるとか、そういうことは全く考えておりませんので、むしろ両方合わせることによって政策的にも効率を上げていきたいと考えておるわけでございます。
  38. 川村清一

    ○川村清一君 御承知のように、私は北海道出身でございますから、どうしても酪農と言えば北海道の酪農が頭の中にあって、それで北海道の酪農の立場から議論を始めるものですから、本州の方の酪農とはあるいは合わない点があるかもしれませんけれども。そこで、私が言うまでもなく、局長は十分御案内のように、酪農の現状はどうかということを考えてみますと、これはやはり政府の酪農近代化方針に基づきまして、府県あるいは市町村の一つの計画、その上にも乗りまして、北海道の酪農などは非常に規模が拡大されて、多頭飼育、大酪農が形成されているわけです。その規模は、いままさにEC並みの規模に匹敵するぐらいにまで拡大されておると。しかしながら、一方考えるというと、こういう情勢の中で五十四年以来の生産調整、それから五十八年にはもちろん限度数量が百九十三万トンから二百十五万トンまで引き上げられましたが、保証価格これも若干、昨年五十銭ですか、ことしは八十銭ですか、引き上げられましたけれども、実質的には六年間据え置かれていると言っても過言でない情勢であって、こういうような状態から経営というものはますます厳しくなってきておる。そこで、北海道の酪農家は一戸平均二千百万円に及ぶ負債を持っておると、そしてその負債の重圧に全く苦心惨たんしているというのが現在の酪農の状態でありますが、しかも長期的に考えてみても、牛乳生産、需要の伸びというものは今後、従来ほど高くなっていくというような見通しもないようなこういうふうな状態であると、酪農がこういうような状態にあるときに、その酪農がさらに政府の肉用牛生産の振興の基本方針に基づいて、そして酪農と一体化されたところの肉牛生産経営をやっていく場合においてこれは相乗効果があるだろうか。すなわち酪農がそういう状態にある、この状態にある酪農に対してさらに肉牛生産をやれと、この経営をやれと言っても、これはむしろ酪農のこの状態というものが肉牛生産の拡大を阻害するところの要因にならないかということを私は危惧するわけでございますが、政府としてはどういうふうにこれを考えますか。
  39. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 法律を実は一体的に整備をいたしまして、一本の法律といたしておりますけれども、これは何も酪農家が全部肉牛生産をしていただくということまで想定している制度ではございませんで、御承知のように酪農の場合、大半の方は専業的酪農家でございますが、先ほど申しましたように、現在七%程度ございますが、さらに経営の中でまず第一義的には子牛の生産を自分のところでもう少し長く保育をする、まあいわばスモールという段階で放さないでもう少し育成して、もう少し値段のいいものにして、肉牛の、乳雄の肥育農家に渡すということも一つの乳肉一体経営でございます。それから、もっと意欲的にさらに肉牛として肥育までやるような方もあろうかと思います。それからもう一つ、御承知のように、和牛のように、要するに肉の専用牛として生産なさる農家の方もいらっしゃるわけでございますので、法体系として一体といたしておりますけれども、すべての酪農家がいわば何と申しますか、必ず肉の肥育部門等まで取り入れてやるということまで私ども別に期待はいたしておりませんけれども、先ほど申し上げましたように酪農家というものは牛乳をつくるのが専業的なんだという、それが酪農家の使命だということも一つの使命ではございましょうが、現にヨーロッパ等で行われているように、牛乳も自分がつくって売るけれども、自分の経営の中で出てくる雄の牛なりあるいは雌の牛も肉としてつくって売るというような経営も経営としては十分考えられるし、またそのことは、先生いま御心配になっております、たとえば酪農が急速に発展した段階での非常に大きな負債を抱えている農家が何か新たに追加的に大きな投資をしてやる場合という御心配かと思いますが、いまの酪農家方々の中でもそういう新規の投資をあえてしなくても自分の経営内である程度スモールから肥育の、いわば小牛生産までやれるようなのも十分あり得るというように伺っております。したがいまして、私どもは、御心配の負債の問題につきましてはこれは別途負債対策としてかなり充実をさせているつもりでございますし、それからここ数年間の大変苦しい事態につきましては、幸い生産者の自主的な生産調整の結果、いわば乳製品の面でもこれは明るさが出ておりますし、あと市乳の混乱をある程度解消するめどもつきかかっておりますので、率直に申し上げまして最近の酪農家方々とお会いした場合に、かなりそういう面では明るさを持っていらっしゃる。そういう中でさらに肉用牛といったような新しい分野も取り入れてやっていただくことは私は十分可能ではなかろうか。問題はやはりそういう新たに展開していきます場合に、一部の酪農においてかつて反省すべき点がありましたように、余り大きな資金を投入しまして過剰な投資をする、そのことがなかなか経営の回転を困難にするというような事案がございますから、やはり徐々に、いわば一歩一歩前進させながら経営を固定させていくということが必要であろうかと思っております。
  40. 川村清一

    ○川村清一君 どうも局長のお話は、一番先に聞いているように、これは酪農振興法と肉用牛振興とを一体にした、一体にしたということは、これは酪農と肉牛生産経営というもの、いわゆる乳肉一体の経営というかっこうにするためにこうしたと思うんですね。ですから、酪農家でできないものはしなくてもいいとかという話になってくると、これは別な話であって、あくまでも酪農家が酪農経営とともに一体となって肉の生産、複合経営をやるんだという見地に立って立法されたと思うから、そういう立場から私はいろいろとお尋ねしているんであって、先ほど言いましたように、わが北海道の大酪農地帯における酪農家というものはほとんど借財に苦しんで新たに投資するなんということに対する意欲というものは非常に薄いと思うんです。一番先に局長がおっしゃったように、酪農家が子雄牛、これをもう早く売り飛ばし てしまうよりも、自分のところで肥育して、そしてある程度大きくなったものを売っていく、そのことは酪農そのものに、経営にプラスになるんではないか。私も確かにそう思うんです。それで、それを拡大していくというとどういうことになるかというと、それはうんと大きな草地を持っているところは別として、大したところでないものはまず飼料の問題もありますし、それからさらに新たに今度は畜舎をつくるとかなんとかといったようなことでもって、新たな投資をするんだと、それじゃ投資するならするように金は貸してあげるよと。そこで、肉牛生産拡大資金というものをもってそして十分に融資をしてやると、こう言うけれども、いまこれだけの借金を抱えているものが新たにまた借金をする、やっていこうというような意欲はなかなか持てるものではないと思うんです。そういうようなことから、せっかく考え、計画されていると思うんですが、計画どおり進むかどうか。酪農には近代化計画というのがありますね。五十五年から六十五年までの計画を持ちましたね。これは肉牛はどうなんですか。これもやっぱり近代化計画を持つわけなんでしょう。そうすると、その近代化計画の中に一体飼育頭数はどのくらいにするとかどうとかというようなものが具体的にこれはやっぱり指標として出されるんではないかと思うんですが、この辺はどうなっているんですか。
  41. 石川弘

    政府委員(石川弘君) いま私がちょっと肉は肉でと申し上げたのは、たとえば南九州のように肉専用地帯で酪農と一体とした計画というのはこれは事実上不可能でございますから、そういう地帯は肉専用地帯として肉牛生産計画を立てるという意味で申し上げたわけでございます。  その次の近代化計画でございますが、肉の方の近代化計画で考えておりますのは、基本的飼養といたしましては肉用牛生産の中核的担い手として技術と経営能力にすぐれた経営をどう育成していくかというガイドライン、そういうものを頭に置きまして、地域別、経営タイプ別に定めるつもりでございます。地域別と申しますのは、いま先生も御指摘がありましたように、比較的広大な土地を持っております、そういう意味で土地条件の制約が比較的少ないと思われます北海道とかあるいは東北の一部の地域、それに対して普通都府県はかなり広がりに問題がございますので、この二つはやはり分けて目標を示してやるべきではないかなと。  それからもう一つ、肉用牛生産の非常に多くの部分は他の農業との兼業でございまして、稲作と肉をやるとか、ある種の畑作と肉をやるという形の複合でございますので、そういう複合経営の方たちのガイドラインと、それからこれは北海道等にございますような肉用牛だけをおやりになっているような専業的な方々との間のこれを区分してつくらなければいかぬのじゃないかと。  それから、経営のタイプといたしましては、特に和牛等の経営タイプに多い繁殖、要するに子牛を生産をしているタイプの経営のガイドラインと、それから肥育、要するに子牛を買ってきて肉として仕上げるという肥育に力を入れている方のタイプ、それから現在若干ずつふえてまいっておりますが、繁殖から肥育まで一貫してなさっている方、こういう三つに分けて考えなければいけないと思っております。そういう地域なり経営のタイプなりに分けました上で、一般的な家族労働とかあるいはそういう家族労働の活動のもとにどれくらいの所得を期待するかというようなことも頭に置きまして、これはこれで大体、たとえば稲作と肉用牛の繁殖なら繁殖でほぼこの程度の所得を確保するというためにはどれくらいの飼育頭数が要るものであろうかといったような意味で、飼育頭数の規模も定めたいと思っておりますし、そういう経営の中ではどれくらいの飼養管理の労働がかかるかとか、あるいはえさをつくるための労働時間が要るかとか、あるいは飼料作はどれくらいの単収を考えれば大丈夫かと、飼料、粗飼料、特に粗飼料の自給率はどれくらいの高さにすればいいかといったような生産性の目標についても定めるつもりでございます。
  42. 川村清一

    ○川村清一君 その酪農と肉牛との一体の中で言うから酪農のことを言っているんですが、今度は酪農から離れて肉牛専用ですね、その問題が出てくる。それならそれでまた問題があるわけです。そういう問題もあるから私は分けた方がいいんではないかと言っているんであって、いま局長がおっしゃったように、現行の第四次酪農近代化計画によれば、これは収益性の高い安定的な酪農経営の指標が決定されておるわけですよ。その指標によれば、もちろん土地条件の制約と経営形態の相違によっていろいろ違いますけれども、飼料、えさの自給率、これが八〇%から六五%の間に設定されることが適当である、こうなっておる。確かにこの六〇%から八〇%程度の飼料自給が確保できれば経営の安定度というものは高くなることはこれは当然なんであります。しかし、酪農の現状はどうかということと、さらに肉牛専用、南九州あたりではこれは全く稲作耕種農業との複合経営で肉牛を飼っておるんであって、この肉専用種の繁殖経営及び肥育経営についていいかげん問題がある。したがって当然酪農の近代化計画をつくって指標を示したように、この肉牛専用の経営に対してでもこれは近代化計画の中にどう位置づけて、そうしてどうするかという国の基本方針並びに都道府県、市町村の計画というものを、これを明示されなければならない。その場合に、いま局長が言われたように飼育頭数を何頭にするか、労働力をどうするか、それから飼料の自給率はどうするかといったようなことになってこなければならないんで、これは全く肉牛専用の問題なんだ。私が前に言っているのは酪農の問題だ。酪農をやりながらこれをやれと言ってもこれは非常に無理な条件があるんでないかということを言っているんであって、それはそれとして、今度は肉牛専用の問題になってくるというと、肉牛の問題としてこれは重大な問題が出てくるんであって、これに対して、それじゃ肉牛専用になりましたからそこへ質問を向けますが、どうなされるつもりですか、この九州なんかでやっておるこの肉だけの、しかも現在のところは飼育頭数は大体二頭から三頭程度ということを言われておるんですが、そのような零細な畜産農家に対して、この法律をつくってどういうふうに今度は指導されてどういうふうに発展させようと考えられておるのか、その点を説明していただきたい。
  43. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 酪農につきましては、これは現在六十五年見通し等で粗飼料の自給率をある程度考えているものとの格差は比較的小そうございまして、たとえば北海道の酪農で申しますと、六十五年見通しで八〇%程度の粗飼料給与率を目標にいたしておりますのが五十六年段階で七〇%程度でございます。まあこれから先一〇%上げるということにも相当困難がございますけれども、いわばねらっている方向の線上を走っているんではないかと思います。北海道以外につきましても六十五年見通しが六〇に対して五十六年で四一ぐらい、これは格差は大きゅうございますけれども、そういう形でございますが、いま御指摘のありましたように、肉専の粗飼料給与率で見ますと、六十五年見通しで繁殖経営が九〇%でございますが、五十六年の現状は七一%、これはまだそれでもいわば極端な差ではございませんが、一番その六十五年見通しの数字とかけ離れておりますのがいわば肥育段階でございまして、肥育は六十五年見通しで四〇%程度の粗飼料給与率を頭に置いておりますことに対して現状は五十六年度で一八%でございます。これが乳雄の肥育になりますとはるかにまだこれより低うございます。一けたぐらいの粗飼料給与率でございます。そのあたりが実は肉用牛経営の合理化のために一番必要なことでございまして、この粗飼料給与率をいかに上げるかということが今後の肉用牛経営の一つの大きな、いわば施策の一番かなめのところと考えております。今度の法律の中の基本方針の中では、この粗飼料給与率を引き上げる目標というものを掲げますと同時に、具体的な政策としては、御承知のような草地の開発改良事業、これは今度の長 期計画の中でも五十八年から六十七年までの間で四十七万ヘクタールの農用地造成を考えておりますが、この農用地造成の非常に多くの部分は畜産用に回される性質のものでございます。それから、既耕地に作物を入れていく問題としましては、既耕地の基盤の集積、これはどうやりましてもやはり飼料作物をつくります場合に、耕地が分散をいたしておりますと非常に経営能率が悪うございますんで、この集積の問題とか、それから水田利用再編等のいわば転作の中でどれほど飼料が入っていくかということ、それから、最近ややもすれば比較的少なくなっている水田の裏にえさを入れていく問題、それから、そういうことを、いずれにいたしましても個人ではなかなか困難でございますので、粗飼料生産生産流通組織の組織化の問題、これらの問題はいずれも現在私どもがやっております例の畜産総合の中にいろんな助成事業として組み込んであるわけでございます。それから、そのほかに稲わらその他の低位利用あるいは未利用資源の活用とか、それからことしの予算に特掲をいたしておりますが、公共利用の公共牧場、これがかなり整備はされて千百ばかりの牧場がございますが、これの利用を上げますための再整備、そういうようなことも考えております。御指摘のように、この粗飼料の給与率を上げるということが肉用牛生産の合理化の最大の問題点だと考えておりますので、単に目標を掲げるというだけではなくて現実的な施策面でもこのあたりに、まあ資金はもちろんのこと、あらゆる政策努力を集中したいと思っております。
  44. 川村清一

    ○川村清一君 全くそのとおりだと思うんです。肉用牛の経営でも、酪農との関係で複合経営をやっているところは、まあ酪農の方も余るだけの粗飼料があるわけではないですけれども、肉用専門の経営から見れば、これはまあわりあいに楽に経営が展開されていけると思うんでありますけれども、肉用牛だけをとってみれば、これは大変なことで、いま局長が言われたようなその政策は絶対必要なんですね。それで、それをやる場合に、これはどういうぐあいにしてやっていくのか。国がその方針を立てて、そして実際は県なりあるいは市町村に計画を立てさしてやっていくのか。そしてその場合に本当に、稲作と複合してやってきたんですから、粗飼料というものは全くないと言ってもいいぐらいでありますから非常に大変なんですね。肥育の場合にはもう濃厚飼料ばかり食わしてやっていくというような状態ですから、したがって頭数も実に少ない、限定されたものであり、もう零細経営なんですね。そこで、この近代化計画でいくというと、肉用事用の経営であってもどのぐらい牛を持たせるという計画なんですか。やはり二頭か三頭じゃしようがないでしょう。
  45. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 現在は、これ内部で検討しているものでございますんで、そういう意味でお聞きを願いたいと思いますが、たとえば繁殖経営で申しますと、ある程度複合経営を頭に置きました場合でも、稲作と複合いたします場合に、親牛で最低五頭ぐらいは持っていただきませんと、なかなかいかに兼業といってもある程度合理的な経営はできないわけでございます。まあ現在わが国の、たとえば和牛の供給の中で五頭以上で供給しております経営体数では一二、三%でございますが、五頭以上層がつくり出しております小牛の数はすでに全体の四割を超えております。これくらいの頭数になりますとある程度の稲作との複合で安定供給も可能かと思いますので、そういうものは五頭ぐらいはかなりの程度は必要じゃないかと思っておりますし、それからもう少し放牧も取り入れますと、この階層は十ないし二十頭程度持っても十分やっていけるのではないか。後に山があるとか、あるいは公共利用の牧場があるとかといったようなものにつきましてはもっと大きな規模を想定いたしております。それから肥育で申しますと、たとえば稲作と複合した場合でも最低三十頭ぐらいありませんとなかなか経営としては安定しないのではないか。それから、百頭程度持ちますと専業的にある程度やれるんではないかというのが、これはどちらかというと土地条件の恵まれていない比較的内地型の経営ではこういうものが一つのパターンだと考えております。それから、これがしたがいまして北海道等におきましてはもっと大きな規模で十分想定できるわけでございます。  具体的にどうするかと申しますと、一定のものを国の基本方針で定めますと同時に、その国の基本方針に基づきまして都道府県計画、市町村計画を策定していただくことになっておりますので、その段階で各県なりあるいは地域地域、市町村の実情に応じてこれがどのように消化されるかということを市町村段階でひとつ絵をかいていただいて、それに必要な、たとえば土地改良だとか、あるいは既耕地の利用といったようなものも組み合わせていく。内地の比較的耕地に恵まれませんところでも、たとえばいろいろと優良事例等を私ども徴して見ますと、いろんな工夫をなさいまして、背後にありますような雑木林にある程度放牧施設をつくることによって頭数を増加なさる例とか、あるいは比較的休閑地あるいは耕作放棄をしていらっしゃるようなところをある集団で積極的にえさの栽培をいたしまして頭数を増加した例といったようなものもございますので、そのあたりはひとつ地域地域の実情に応じた、いわば経営努力というようなものでいま申し上げましたようなことはある程度可能かと思っております。
  46. 川村清一

    ○川村清一君 局長のおっしゃることはよく理解できるんですがね。そこで、いまあなたがおっしゃったようなふうにこの規模を拡大していく、経営を拡大していくとするならば、当然そこに資金が必要なんで、その資金は貸してあげますよと、畜産拡大資金という制度があって、これは公庫資金ですが、これから貸してあげますよと、こういうことをおっしゃると思うんです、現にそうなっているわけだから。ところが、この畜産拡大資金の貸借関係がどういうことになっているのかということで調べてみましたところが、貸す方は貸すからどんどんやれと、こうおっしゃる。ところが、今度は事業をやる借り手が激減していっている。四十五年には三百七件あった。五十年にはそれが四十二件に減ってしまった。五十六年にはわずか十四件。そして金額にして五千万円になっちゃった。これはどういうわけなんですか。こういうように借り手が激減しているという状態を政府としてはどういうふうに分析してこれは判断しますか。これは酪農家、それから肉牛経営を加えての実態ですから、これひとつどういうふうに判断するか、それを説明してください。
  47. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 実は畜産経営の拡大資金ができました際には、ある程度期待のできる資金ということで相当程度の資金需要があったわけでございますが、その後、たとえば自立経営の育成資金といったようなものができてまいりました中で、いわばどちらかというと条件によりましてそちらの方が有利であるというようなことから、それからもう一つは畜産経営拡大資金の中で、特に肉用牛生産につきましては、先ほど申しましたようないわば経営としてかなりの時間もかかり、いろいろ価格の変動等もありました中でこの資金の需要がだんだん衰えてきたように思います。  今回私どもが条件を相当改定をいたしまして、償還据え置き期間を長くいたしておりますのも、やはりいまの条件ではなかなか借入者の方の期待に沿えなかったのではないかなあと。現状におきましても、たとえば自立経営育成資金のようなものを借りられるような方々にとっては、あの資金を借りていただいて結構なわけでございますが、やはりもっと一般的にたとえばもう少し小規模の方で中規模へ目指して借りていくというような場合には、あの自立経営の育成資金というのは借りられない形でございます。  したがいまして、私どもとしましては、今回の条件改定と、それからやはり特に肉用牛経営の場合は、この資金制度だけでやっていくということを考えているわけではございませんで、こういう資金制度とあるいは家畜導入といったような国の別途の助成とか、あるいは基盤整備のようなものとか、そういうものをあわせてやはり投入してい きませんと、この資金だけですべてが解決するわけではないと思っておりますが、そういう意味でいままでだんだん借り手が少なくなってきたというようなことがこの資金のたとえば条件等にも問題があったということで改定をいたすわけでございまして、そういう意味では、私は今後こういう法制度によるいろんな支えとあわせてこの資金は伸びてくるのではなかろうかと、実質的には五十九年度以降に真の資金需要は出てまいると思いますが、ある程度の伸びは十分期待しているわけでございます。
  48. 川村清一

    ○川村清一君 これは酪農の立場から言えば、国の近代化計画に従って、そして大酪農経営というものをつくっていったと、しかし、その結果がどうなったかというと、いま言ったような莫大な負債をしょって、そうして去年、おととしからようやく国も負債整理資金のようなことをやっていただいたので若干助かっているわけでありますが、こういう状態の中から、もう借金で首が回らない、これ以上借りられないと、投資はできないということがこの資金の需要というものが激減したことはこれは間違いないわけですよ。  そこで私が心配なのは、今度は肉用牛の方に、またこれは近代化計画をつくって、そしていま言ったように相当頭数もふやす、頭数がふえればやはりそれに必要な施設というものも要るし、それから草地の造成であるとか、やはり土地そのものも必要になってくるわけです。そういうものに今度はいろんな資金がまた当然必要になってくる。全部国の助成なり国の事業でやってくれるならいいですけれども、やはり自己負担ということになれば相当の借金になってくる。そして、そこへ計画に基づいて、いま二頭ぐらいの牛をこれは繁殖用五頭だ六頭だ、あるいは十頭だと、こうふやしていくというと、そうするとまた借金がふえてくる。後で言いますが、これは価格と関係してくるわけでありますが、そして借金でこれまた首が回らないような状態になってくる。  こう言っちゃ悪いかもしれないけれども、私もこの国会へ来て相当年数たっているわけですから、一番先に農水委員になったのは昭和四十年ですから、いまから十八年前の農水委員であったのですから、その当時このやっぱり酪農問題で、一体北海道では牛を何頭飼えば、搾乳牛何頭持てば酪農として経営が成り立つのかと、こう聞きましたら、その当時の畜産局長は、まあ七頭から八頭持てば経営が成り立つということを私に答えたんです。それはいまから十八年前です。いま七頭や八頭のそんな酪農経営やっておったって飯食えるものではないでしょう。それからもう農林省の言うとおりやっていったものが、みんなこれが失敗と言っちゃ語弊があるでしょうけれども、そのことによって農民が借金をしょったりして苦しんでおる。初めのうちは相当希望を持ってやっておったが、もう離農してしまって、そうして農村からは人が減って全く過疎地帯になっておるといったような状態なんであって、極端に言えば、これは、農業は農林省の言うことと反対のことをやっていればいいんだという。たとえば下北、あの付近にビートをつくらしたことがあるでしょう、盛んにつくれつくれと言って。ビートをつくったところが、そんなビートはみんなだめになって、それで大変な騒ぎになったことがありますが、これも農林省の言ったことをやればかえってだめだということに——これはまあ怒らないで聞いていてくださいよ、そういうことが実際あるんだよ。だから、いまそういうことをおっしゃって、肉専用の経営者に対して今後拡大させていったと、ところが、まあ後でも言いますけれども、せっかく生産した牛の値段がぐっと下がってしまって、そうして利益どころか損になってしまったといったようなことになればまた大変なんで、この辺を私はまた心配しているわけですよ。ですから、そういう点は絶対ないんだと、肉専用の生産もきちっとやれる、心配ないと、こういうことをここではっきり言明してくださいよ。それでないと安心して農民はやれませんよ。
  49. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 北海道の負債の問題についてのいろいろな御心配もあったわけでございますが、実は最近私ども皆さん方とお会いした場合でも、負債の問題の重圧の問題もありますと同時に、大変いわば力がついてきておりまして、負債の総額というものはある程度大きなものでございますが、たとえば根釧等で持っております農家のいわば力というものを資産という形で考えますと、かつてわれわれが想像もしなかったような大きな規模の土地、あるいは家畜、あるいは機械類を持っているわけでございます。  問題は、拡大のタイミングなり、あるいはその拡大をいたしますときの資金調達等につきまして問題のあった方についてこの負債整理をやっておるわけでございまして、北海道のいわば一万五千ぐらいの農家の中で四十数%、四五%以上の方は何らの国のそういう特別施策なくして現在もかなりの生産を続けておられる。そういう特別、たとえば機械投入をしたけれども、計画生産にぶつかって思う存分乳をしぼれなかったといったような方には、いろいろと負債対策等をやっておるわけでございます。  この肉の問題につきましては、御承知のように最終的な牛肉の価格自身は、畜安法によりまして価格安定帯の中で価格が下がれば国が買い上げてでも一定の価格を保証する制度でございますが、御承知のように輸入までしているしろものでございますから、この畜安法がつくられましてから国で生産された牛肉を畜産振興事業団が買い上げたことは実は一度もないわけでございまして、製品価格としては一応は安定をしていたと思います。  ただ、子牛に関しまして御承知のようにかなりの変動があって、そのために子牛価格を安定させるという意味の補助事業によります基金制度を設けておりましたが、これも農民の立場からすればいつまでも続くものではないという、その安心感がないということもございまして、今回の法改正で国の制度として子牛の価格安定の制度をつくるわけでございますので、これも下がりますれば下がっただけ損ということではございませんで、現在も実は二十九万数千円というような保証水準に対してそれを割っている状態でございますが、その九割は基金を発動して補てんをしているわけでございます。  その他のいろんな援助措置を加えますと、実はこの間から計算をしておりますけれども、宮崎、鹿児島あたりでも一頭当たり三十一万円ぐらいの手取りにはなっていると、そういうことでございますので、私はこの肉用牛生産に関しましては、今度の子牛価格の安定制度を加えますことによってかなり農家の方に安心してもらえるような水準になってくるんではないかなと。そういう意味で、御心配のような何か非常に暴落して困るというふうな事態は直接的にはないんではなかろうかと思っております。
  50. 川村清一

    ○川村清一君 その子牛価格の安定につきましては、いま局長が言明されたようにこれはもうしっかりひとつやっていただきたい。それがなければこれは大変なことになりますので、ぜひそれはやるように強く要望しておきたいと思います。  この牛肉価格の問題に入りましたので、若干価格の問題で議論してみたいと思うんでありますが、この臨時行政調査会の答申の中に、牛肉価格政策というのが出ているわけであります。その答申ではどういうことを言っているかというと、畜産事業団について、「牛肉の行政価格について、速やかにEC諸国並みの水準を達成することを目標に、毎年度の水準を見直す。」ことと、これを指摘しておるわけです。速やかにEC諸国並みの水準を達成せいという一つの指摘をしておるわけであります。  ところが、一方この農林水産省の方の関係ですが、「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」というこの農政審議会の答申では、わが国牛肉価格はEC諸国の三割高程度の水準になっていると、政府は、この価格差を縮小し、中長期的に、EC並み価格水準に近づけることを政策の目標にするということを指摘しているわけであります。現に日本の牛肉価格というものは、生産も拡 大されたし、需要も伸びていったということで、いまやECよりもまあ三割程度高い程度になってきて、大体水準が近づいてきたということはこれは事実なんです。これは事実だけれども、臨調の言うように速やかにやれと。ところが、この農政審議会の方は、それに近づくように中長期的な展望を持って努力していけと、こういうことなんですが、政府の方針はどうなんですか、これは。
  51. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 臨調の答申の中の文章をつくるプロセスにおきましても、私ども関係者の方々にいろいろと日本の畜産の事情なりあるいは諸外国との関係を御説明したわけでございまして、私どもが理解する限りにおいては、まあ「速やかに」というのはいわばアズ・スーン・アズ・ポシブルといいますか、できるだけ早くという御趣旨であろうかと思います。この御説明をしました際に申し上げておりますのは、このEC水準云々ということは要するに、牛肉のような、あるいは乳製品もそうでございますが、大家畜生産におきましては与えられた土地の広がりというのがこれが絶対的な要件である、中小家畜のように安い穀物を使えば安くつくれるというそれだけではございませんで、やはり土地の広がりというのがどうしても必要なんで、その土地の広がりの絶対的違いのところには何らかの意味の、いわば内外の格差なり、あるいはそれを格差があるがゆえに障壁を設けるということは必要なんだと、そういうことをむしろ臨調の方々にも御理解をいただいたものだと私どもは考えております。  したがいまして、ここにありますようにECを目指すという目指し方も、実は現在私どもがECを目標にしてやっておりますことは、ECの場合は御承知のように二百年もあるいは数百年も続いた酪農なりあるいは肉用牛生産の伝統的な国でございますから、これ以上に余り何か改善努力によってそのコストを下げるということよりも、まあどちらかといいますと、現状においてコストがかかるものはコストがかかるということで毎年の価格を見直しながら、非常に上がるときは年率一〇%も実は価格を上げてきて、そのことによって格差は縮小してきたわけでございますが、わが国の場合は、いまの経営の規模とか、あるいは経営技術、そういうものの中で生産者が努力してなるべく価格を上げないで、結果的には生産性を上げることによって農家手取りをふやす、消費者には値段を上げるという形ではない形でここ数年やっていただいておるわけですが、そのことが比較的牛肉価格が消費者にとっても割り安感と申しますか、牛肉の値段は余り上がらないと、水準自身は高いという御批判は多いわけでございますが、決してここ数年どんどん上がっているしろものではないということで消費も実は伸びている。こういうような条件をここ数年間もしがんばること、それは生産資材が極端に上がったりしますればこんな方法はとれぬわけでございますが、生産資材等が安定的に推移するとしますれば極力経営の努力によって、いわば生産性を上げることによって農家所得は確保する、価格はなるべくそういう価格を上げるというような意味の誘導をやらぬということであれば消費も十分ついてくる。そういうことによってこの格差を縮小をしたいと考えておるわけでございます。したがいまして、そのことは臨調等の場でも申し上げておりまして、臨調等の場で何か価格を年率何%下げるというような手法というのはあるかないかというような御議論もありましたが、それは現在の経営努力の中で上げないで努力するということがいかに大変かというようなことも御説明しながら、私どもが御説明した上でこういう表現になっていると思っておりますので、御指摘のように臨調の答申の案文そのものと、たとえば「八〇年代の農政の基本方向」の中では、ニュアンスの違いがございますが、私どもはこの「八〇年代の農政の基本方向」で御説明したようなことを臨調でも理解をしていただいていると思っております。
  52. 川村清一

    ○川村清一君 大体EC並みに近づいてきているということは、これは結構なことだと思って歓迎するわけですが、しかし、仮にEC並みになったとしても世界の牛肉価格から見れば、これはアメリカのでは大体二倍ですか、それからオーストラリアで言えば三倍から四倍近いくらい日本の牛肉価格は高いわけでありますから、EC並みになったからといって日本の牛肉価格は世界の国際貿易の中で堂々と伍していけるというものでは決してない。この点は同感だと思うんですが、それで満足だと、だからもう世界の貿易市場に堂々と出て競争していっていいんだというようなことにはならない。とてもじゃないけれどもまだアメリカ、特にオーストラリアなんかに比べたんじゃもう競争にも何もならない状態だろうと私は思うんですが、いかがですか。
  53. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 御指摘のとおりでございまして、EC自身が、現在そういう状態でございますので、ECは御承知のように関税の上に可変課徴金というのを設けておりまして、ほぼ一〇〇%ぐらいの、関税プラス可変課徴金が一〇〇%ぐらいの水準でございますから、これはいわば禁止的な可変課徴金ぐらいの高さでございます。そういう形で障壁を設けておりますのは、やはりオーストラリアなりアメリカとの間で大きな格差があるからでございます。そのことは何もECに限らず先ほど先生申されましたように、オーストラリアとアメリカの間にも格差が一〇〇%、ちょうど倍ぐらいの——物の値段の倍という意味でございます。アメリカにおきましても豪州との間で格差があるわけでございますので、アメリカは御承知のような食肉輸入法という法律を持っておりまして、一定のトリガー水準を超えたら輸入を禁止できるという制度を持っておりますのも、やはり同じ新大陸型の広大な土地を持っておりましても、格差のあるところにはそういう対外的な障壁があるということでございます。
  54. 川村清一

    ○川村清一君 ECはアメリカ、オーストラリアに比べてはずっと高いと、日本もだんだんその水準に近づいてきておると。しかし、ECはECで多額の課徴金制度をもってやっぱり保護している。いま局長の言われたとおりです。その点は非常に重大な問題だと思ってこれはわれわれ理解しておかなければならないと思っております。アメリカもやはり輸入に対してはそういう措置をとっておるということ、やはりこれも一つの保護政策であると私は考えておるんです。  そこで、私が特にこの際申し上げておかなければならないのは、わが国の牛肉価格というものは、やはりこれは土地資源の制約を受けておるし、あるいは肉用牛の生産の歴史的な経過等々ありますから、国際的に見るとかなり割り高であることはこれは言うまでもないわけであります。これは事実なんです。また、これに対して国内的においても、消費者からは牛肉が高い、高いと、外国の品物に比べて余りに格差が大き過ぎると、もっと安くせよと、こういったような声が出ていることも事実であって、それが諸外国から、特にアメリカあたりからは輸入の自由化枠の拡大というものが迫られておるわけでありますが、このときに、この時点で今回の酪振法の改正をやったと、それで特に牛肉に関する問題が大きく取り上げられてきたと、そこで、内外の厳しい要請に対応できる肉用牛の生産体制をこの際ひとつ構築していこうということを一つの戦略目標としてこの法律改正をやったのではないかと勘ぐる向きもあるわけです。そんなことはないと思いますけれども、なかなか石川局長は深慮遠謀でありますから、先をずっと読んで大体そういう体制をつくるためにこういう法律の立案を考えたのではないかと、——私がそう思っているわけではないですよ。そういうふうに考える人もいるが、まさかそういうことはないと思うが、いかがですか。
  55. 石川弘

    政府委員(石川弘君) この牛肉の問題を担当しておりますと、非常に残念なことではございますが、大変いわば国論といいますか、皆さんの御意見が違うのを痛感するわけでございまして、どんなに安くても、いやどんなにあれでも構わぬから安い物を入れるというようなお話から、完全自給自足で、一片たりとも入れなくてもやれというようなお話まであるわけでございますが、私は率直 に申しまして、国内の資源を極力有効に活用しながら、しかも消費者の方々にある程度合理的な価格で納得いきながら供給できるような肉用牛生産が望ましいのではないかなと、そう考えましたときに、日本の国土というようなものが、やはりアメリカとかオーストラリアのようないわば新大陸型のような国家ではございませんし、比較的世界の文明国の大半がありますEC、しかもそのECにおいてはある程度の農家のいろんな努力もしながらも合理的な自給に近いものをやっておるわけでございますので、そういうようなことを生産する方々あるいはこれを消費する方々あわせて、そういうことに向かってみんな努力しているんだということがはっきりすることがやはり牛肉問題の一つの解決策ではなかろうかなという気がするわけでございます。そういう場合に、たとえば酪農の世界を見ますと、先ほど申しましたように、酪振法で、国はこういう施策をとってこういう酪農を国内に築き、そのことが国内の消費者にこのようにやっていくんだという趣旨のことが酪振法の世界にあるわけでございますが、残念ながら牛肉の世界にはそういうものがなかったわけでございますので、私はむしろこういう法制度をつくっていただくことによって、国内における牛肉生産の目標、これは生産者にとっても目標であると同時に消費者にとっても、国内でこういう供給はする、逆に言って国内でこういう供給をして足らざるものは、先ほど申しましたように基本的に土地条件が違いますから、いまのようなこういう海外との間の障壁は設けながらも安定的に必要なものは入れると。しかも、牛肉の生産だけじゃなくて流通等についても合理化を進めるということになれば、私は生産者にとっても消費者にとっても利益のあることではなかろうかと思うわけでございます。そういう基本的な考え方でございますので、こういう法制度をしたからといって、アメリカあるいはオーストラリアとの間の障壁をなくするような、いわば自由化というような手法は当然これはとることができないわけでございますので、そういうことを前提にしてこういう制度を構築しようということではございません。
  56. 川村清一

    ○川村清一君 もう一点、これは土地利用型の酪農肉牛生産ということで、土地利用型農業として大きく取り上げられているわけです。そこで、先ほども局長言われておりましたが、肉用牛、これは酪農の方は相当土地を持っておりますが、肉用牛の方を拡大するとすれば、その土地の、いろいろな未利用土地の開発であるとかいろいろある。特に減反政策によるところの水田再利用政策というものの中で飼料作物をつくるといったような、そういう政策にもっと国が力を入れてもらわなければならないと私は思うんですが、それは当然考えていると思いますが。  それから、肉用牛に対していろいろな金融面からその他の面において相当力を入れられるということは聞きました。それはぜひ強硬に実施していただきたいけれども、一方今度は酪農ですが、また酪農に返って恐縮ですが、大酪農地帯は、先ほど言っているようにとにかく多額の負債をしょっておる。そこで、これもやはり国の近代化計画に基づいて経営を拡大していったので、経営規模は平均して二十二、三頭持っておるというようなことになっていますから、大きな規模なら五十頭も六十頭も持っておると、こういうようなことで、しかしながら中身というものはもう負債でどうにもならない。そこで、負債整理資金というものを考えていただいている。これは非常に歓迎されているんであって、これは切ることなくさらに拡大していってもらいたい。せっかくこの酪農及び肉用牛生産振興法という一つ法律にこれをまとめたわけですから、肉用牛の方に対してはそういう措置をやっていく。酪農も肉牛をやるにはやっぱりそういう施策がありますけれども、特に負債で困っておる酪農に対するところの負債整理資金というような問題は、これは法律が一緒になったと同じように、この二つの問題は酪農を振興させ、そしてまた肉牛生産を振興させる車の両輪であると、こういう感覚の上に立って、こっちの方もやるし、こっちの方もしつかりやると、こういうような政策を強硬に進めていただきたいことを私は要望するんですが、いかがですか、それは。
  57. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 酪農につきましては、御案内のように、五十六年、五十七年と総額三百億の負債整理資金の貸し付けをいたしております。これは単に高金利のものを借りかえたというだけではなくて、その際にいろいろと経営面あるいは生活面でも改善の手だてをしていただいたという意味で大変有効であったと思うわけでございます。ただ、三百億では所要資金が十分でないということでございますので、本年三月の価格決定時の対策といたしましてさらに約百五十五億円の融資枠を追加をいたしております。これは可及的速やかに貸し付けを行いますとともに、先ほど言いました経営改善のための各指導措置が大変大事でございますので、現地において一層の指導をしていただくということを考えております。大変そういう意味では今回限度数量等を引き上げることができましたので、農家の一戸当たりの収入金額はかなり大幅にふえるはずでございますので、こういう機会にこの負債整理も合わせ行うことによって、ここ数年間問題でありました北海道の負債整理問題等については少し明るい形で結論が出るようにしたいと思っております。  肉用牛につきましては、五十七年度に総額一千億の負債整理を予定いたしましたが、現実に貸し付けを行いましたものとしまして七百億弱のものが借りかえを行っております。これにつきましては、その後の資材なり製品の価格が比較的好転をしております。いわば交易条件がよくなっておりますので、ことしは一般的な負債整理は特に必要はないと思っております。本当に必要なものにつきましては、自作農の維持資金等いろいろございますので、その辺のことは考えていきたいと思っております。
  58. 川村清一

    ○川村清一君 最後になりますが、この牛肉の自由化枠拡大と肉用牛生産振興との関連についてお尋ねしますが、この食料需給表によりますと、牛肉の需要量は、五十六年度の場合四十三万八千トン、このうち三十三万三千トンが国内生産量、十一万六千トンが輸入量、こうなっております。これは農林水産省からいただいた資料による数字でありますが。そこで、農産物の需要と生産の長期見通しでは、牛肉の需給は、六十五年になると需要量は五十九万四千トンから六十四万四千トン、このうち生産量が四十四万トン、輸入量が十八万トンとなる、こういう見通しが書かれているわけであります。  そこで、本改正案による肉用牛生産の近代化の基本的な指針においても、当然牛肉の中長期需給の姿はこれと整合性を持っているものと私どもは判断しているわけであります。間違いないですね。いいですね、それは。
  59. 石川弘

    政府委員(石川弘君) いろいろと精査をいたしますが、基本的にはいままでの生産の状況等はその長期見通しの線上にほぼ近いところを走っております。ただ、長期見通しをつくりました際の、いわば国の経済全体の伸び、これは特に需要を想定いたしますときの可処分所得の見方等によって少し動きますので、これはやります際にまた精査をいたしますが、いまのところ基本的にそう大きく動くものではなかろうと思っております。
  60. 川村清一

    ○川村清一君 私も微動だにしないということを言っているんではなくて、経済の状況によって変わることは当然ですが、その見通しとしてはそういうようなものです。でなければ、前のあれと整合性を持たなくなりますから。ただ、ここではっきり申し上げておきたいことは、この長期見通しを立てる段階において、日米の農産物貿易交渉の結論がどうなるかということは出てない、出てない中でこういう見通しができておる、これが一つの問題です。したがって、この日米貿易交渉の結果、牛肉の自由化や大幅な輸入枠拡大が行われるようなことになれば、もうこの指針というものは、見通しというものは根本から崩れ去ってしまう、これははっきりしておる。で、牛肉の自由化や大幅な輸入枠の拡大で、アメリカの言っている ことにもし譲歩するようなことになれば、肉用牛生産の振興どころか、せっかくいま法律をつくってこれをやろうとしているその振興どころか、肉用牛生産経営そのものが壊滅することになると私は思うわけです。で、このことは本委員会においては何度も何度も議論されて、それで本委員会の特別決議においても自由化反対というような決議がされておるわけですね。  そこで、政府としてこの酪農振興法の一部改正、題名、酪農及び肉用牛生産の振興法ですね、この法案を提出した政府の責任としても、日米農産物交渉において、交渉もいよいよ大詰めになってきておるようでございますけれども、そういう決議があることと、いま審議しているこの法案との関連の上に立っても、絶対にこれは自由化や大幅拡大といったようなことを認めてもらっては困るわけであって、この点は政府は重大な決意を持って臨んでもらわなければならない。われわれにこういう法案を審議させておいて、この法案が雲散霧消するような、さっぱり機能を発揮できないような、そういう状態をつくるようなことだけは断じてわれわれとしては認めることができませんので、そういう立場でひとつがんばってもらわなきゃなりません。この点は、これは畜産局長でなくて最高責任者の大臣の責任ある決意の表明をいただきたい。
  61. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) ただいまの御指摘は当然でございまして、私の持論は、やはり足りないものは輸入に仰ぐけれども、余るものまで輸入して冷蔵庫で手持ちをして持ち越すようなそういうことはやらない。したがって、この法律が施行されまして、やはり肉用牛の生産は多少なりとも上昇する、こう計算をしておるわけですから、需要の伸びと生産の伸びを、目安の需給の動向を検討して、足りないものは輸入する、それで足るものを余るように輸入はしない、こういう考え方でいきますと、現在の十三万トンの輸入枠が恐らく、将来はいざ知らず、当分は枠の拡大は必要ないんではないかということを私は申し上げておるわけでございます。したがって、御指摘のとおり、自由化はもちろんのこと、輸入の枠の拡大については需給の動向を慎重に検討いたしまして、昨年五月の本委員会の決議もございます。十二月の申し入れもあります。わが国の畜産農家にいささかでも迷惑をかけることがないように、責任を持って努力をしてまいる所存でございます。
  62. 川村清一

    ○川村清一君 この法案に関連して、価格の問題からいって流通の問題であるとか、乳用雄子牛の価格の問題であるとか、まだいろいろありますが、まあ質疑の中で局長の考えも大体聞きましたので、これは省略さしていただきます。  次に、簡単に家畜改良増殖法の一部を改正する法律案に対して意見を述べて、お答えをいただきたいと思うんですが、けさほど専門の学者先生あるいは技術者から貴重な御説明をいただいて、大変勉強をいたしました。お二人の先生には心から敬意を表する次第でございますが、そして、その先生方の御意見を聞いて感じたことでありますが、学問的には実験してきちっとできてこれは普及してもいい段階に来ておるということですから、これは法制化することはいいと思います。思いますが、あの先生方がおっしゃっているように、それをいわゆる移植する技術、これは相当むずかしいようだ、むずかしいというか、相当勉強してなれなければできないというようなふうに受けとめたんです。ですから、法制化はしましていよいよ普及する段階において、その技術を行う技術屋の指導ですね、これにつきましては万全を期してやっていただきたい、その技術屋の養成について努力していただきたい、こういうふうに私は思うわけでございます。  それからもう一点は、同僚議員からもあのときあったわけでありますが、要するに精液輸入あるいは受精卵輸入、こういうものがどんどん行われることによって国内の家畜改良、増殖、その増殖そのものが、増殖事業がそれによって混乱が生じないように十分な注意を払ってやっていっていただきたい。もちろん、不良遺伝子を持つそういうものの輸入は絶対に避けてもらわなければなりません。  まあ、そういうようなことを私は感じたわけでありますが、これに対して局長の御意見を聞いて私の質問は終わります。
  63. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 受精卵の移植技術普及のための研修でございますが、五十七年度からすでに国の種畜牧場におきまして研修の場を設けまして指導者養成をやっております。私の聞きましたところでも大変熱心な講習をやっておりまして、私も実は見てまいりましたけれども、教える側、習う側がもう大変な熱意で勉強いたしておりますので、御期待に沿うようにこの指導者育成をやってまいりたいと思っております。さらに、北海道ほかの八府県におきましては受精卵移植技術の利用促進という実験的な事業もすでに開始をいたしておりますが、こういうものと相まちまして、こういう新しい知識が正しく普及されるように努力してまいるつもりでございます。  それから、もう一つ心配になっていらっしゃいます、輸入をいたします授精の精液なりあるいは受精卵でございますが、私どもも、まずそういう育種素材としてわが国の育種にプラスになるものを入れるというのを大原則にいたしまして、われわれといたしましては、あの一定の要件の中で厳しくそれをチェックをいたしますが、もう一つはやはり使うサイド、いわば使う立場方々がそれがはっきりされてないといかぬわけでございますので、幸い、獣医師さんなりあるいは人工授精師さんに限って授精なりあるいは移植の技術ができるわけでございますが、そういう特殊の技能を持っていらっしゃる方々の組織を通じまして、それから利用者の方には、きょうの参考人も申し上げましたように、そういう非常にすぐれたものについてはそれなりの情報があるわけでございますので、そういうものを流しながら、間違ってもそういう国内の家畜改良、増殖の組織あるいはその流れにマイナスにならないようにということを心がけて始めたいと思っております。
  64. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 酪農振興法の一部を改正する法律案並びに家畜改良増殖法の一部を改正する法律案につきまして若干の御質問をいたしたいと思います。  ただいまも同僚委員からいろいろお話がございました。私どもも酪農振興法の一部改正につきまして、今度、肉牛のことにつきまして基本計画を立ててやろうというわけであります。このたびのこの法律改正につきましては、私どももそれはそれなりに評価をいたしました。また、家畜改良増殖法につきましても時宜を得たものだろうと、時の推移の中で必要なことであろうと、こう思うわけであります。しかし、最近、肉牛、酪農、いずれにいたしましても、取り巻く諸情勢というのは非常に国際環境や国内の問題につきましても厳しい環境にあることは御存じのとおりでございます。今日までも大変な御努力をいただいてきておるわけでありますが、いかんせん、日本におきます短い歴史の中で、ECに追いつき追い越せということで、酪農の方は北海道を中心にいたしました地域についてはそれなりの、規模だけで見ますとそこまでいったところがありますけれども、内容的にはまだまだ問題が山積をいたしておる。こういうことですから、今日までも当委員会におきましてもいろんな問題についても提起もされ、また担当の皆さん方も本当に大変な御努力をいただいてきたわけでありますけれども、特にこのたび酪農振興法の一部改正の中で、乳肉一体というこういう考え方をとっていこうと、このことは今日までもいろいろ議論もされておったことでありますし、また私も、五十六年の二月に質問主意書でお尋ねをいたしましたところ、農水省から何の返事もなかったのですが、当時としてはどういうお考えだったのかわかりません。今日までこの厳しい環境の中で、いろいろ部内でも検討して今日の成案に至ったのであろうと思うのでありますが、この法案が成案に至りました経緯と、そしてまた今後のこの法案に対するそれなりの期待していらっしゃる効果についてどのようにお考えになって いらっしゃるか、まずその点からお聞きいたしたいと思います。
  65. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 最初に、法案の御審議をお願いする際に私どもがいろいろと考えましたプロセスをざっと申し上げますと、一つは酪農の問題において、いままでどちらかと申しますといわば供給が過剰になるという前提が全くない前提で制度がつくられているのではなかろうかなと、大いにつくって、つくればつくるほどどんどんつくれるのだという前提でつくられている。たとえば不足払いの制度なんかはそういう要素があったのではないかと思いますが、そういう事態が計画生産という場のもとで大分様相が変わってきた。そういうことから、酪農問題についていわば計画生産下における酪農生産といまの酪農三法の関係というようなことを検討をいたしております。  それからもう一つ、全然別の角度から、肉用牛生産が特に今後の日本の農業におきまして大きな問題点を持っているわけでございますが、残念ながら肉用牛に関しましては御承知のように法律の制度としては畜産物価格安定法だけでございますので、この肉用牛をめぐります現状から、何らかの法制度化が必要ではないかという二つの方面から検討を続けたわけでございますが、まず酪農の方から申し上げますと、酪農の問題いろいろ詰めてまいります段階で、どちらかといいますと、法制度の問題もさることながら、むしろ現行法制度下における運用の問題としてさらに詰めるべき問題が多いのではないか。もちろん法律的にもいろいろとより問題として深く詰めなければいかぬ問題もありますけれども、酪農問題の非常に多くの部分は現行法の運用によって相当カバーができるというようなことにだんだんなってまいりましたけれども、肉用牛につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、国内で肉用牛生産をやっていくということに対する基本的な認識と申しますか、そういう点につきまして非常に大きく意見が分かれている。しかしながら、先ほど申しました臨調の場等におきますいろんな論議を通じましても、私先ほど申しましたように、国内で極力合理的な生産をやっていくと、どんなに高くてもいいということではございませんで、やはり酪農でもそうありましたように、日本に与えられた土地あるいは技術あるいは資金というようなものを使いながら、相当程度の努力をするということをやりながら、しかもそういうことで比較的安定的な生産ができるのであればそれを国内の供給にまちまして、それでも足らないものを輸入でやっていく、そういうことをやりますためには、国内でやはりどういうところを目指すのかということを明らかにしてやらなければいけない。そういう目で今回の制度の改正の中にあります基本方針なり計画というような制度が生まれてくるわけでございます。それと同時に、非常に具体的な問題として、製品の肉の価格安定はしているけれども、繁殖農家にとっては生産物であり、かつ肥育農家にとっては大事な生産資材であります子牛の安定ということについて制度がないということに対して、いろいろと問題があるんではないか。  それからもう一点、たとえば資金等につきましても、同じ畜産経営資金の中で、牛肉に関しては必ずしも十分ではないんではないかなと、そういうようなところが際立って問題点として出てまいりましたので、そういういろんな検討の結果を踏まえまして特に肉用牛の国内生産を振興する問題につきましては、対外問題等の中でいろいろと肉の問題が論議されておりまして、特にこれを急ぐ必要もあろうかと思いまして、先ほど申し上げましたように酪農との一体性を考えながら国内生産を振興するということからこういう制度の御審議をお願いしておるわけでございます。私どもの期待といたしましては、こういう制度を実現させていただきました場合に、極力早くこの基本方針なり都道府県計画というようなものを公にすることによりまして、生産者にとりましては一定の生産目標を明らかにして、いわば国内でどれだけつくられるかということをはっきりさせると同時に、消費者にとりましても、そういう努力のもとに行われる牛肉生産を前提として、足らざるものは外国から入れるという形で安定供給を果たすという意味の御理解をいただきたいと、そのように考えております。
  66. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 ECにおきましてもいろんな経緯をたどって今日にあるわけでありまして、酪農に力を入れて今日まで来た経緯の中でも、やはり肉乳一体という形の政策というのは必要ではないかというのも時折叫ばれてきておったわけであります。やはり日本の国はどっちかというと濃厚飼料もほとんど輸入に依存しておる。こういうことでえさが高騰しますと酪農経営というのは非常に破綻を来す。またとれた乳用雄の子牛、これの価格、こういうものと、それから老廃牛、これをどういう価格で売却できるのかということで酪農経営も乳価と乳量、こういうだけじゃなくて総合的に酪農経営の中でそういうものの一体性というものは今日までいろいろ見られてきましたし、またこういう形のもの、乳肉一体という考え方というのは、やはり農家の経営の中では必要ではないかということも論じられてきておったことは当然のことだと思いますし、そういうことも踏まえて、私も五十六年にそういう考え方を持つべきじゃないかという質問主意書をお出ししたわけであります。いまいろいろ局長からお話ございましたからわかりましたが、これも同僚委員からもお話ございましたけれども、乳肉一体ということで、これは何も別なものだという考えじゃなくて、一つの農家の経営の中で一体として考えていかなければならないことだと思うんですが、非常に地域的に酪農に集中している、酪農のウエートの大きい県と、それからまた肉牛の大きなウエートの県と非常に違いがありますし、また地域的にも乳牛ですと北海道あたり三七%を占める。その次というと関東が二一%ですか、肉用牛になりますと北海道は九%の割合ということで、東北一九%、九州が三三%ということですね。これがまた各地域になりますと大きな差異が出てくるわけで、こういうことですから、経営の一体化の中でこれがどういう作用をする——作用といいますか、経営する方は一戸の農家なわけですけれども、この新しい制度によってどのようにこれが運用されていくかということが、私ども今後非常に関心を持って見ていかなければならないことだろうと思います。  このことを次に、またいろいろお聞きするわけでありますが、まず、酪農振興法で、今日まで四十年以来、この法律を中心としまして酪農近代化計画が第一次から第四次ずっと計画が立てられた。この四十年代、五十年の前半、非常に経済の大きな荒波をかぶった、そういう時代でもございましたけれども、第一次から第四次に至ります、第四次は途中でありますけれども、こういう酪農近代化計画というものが打ち立てられて、それに向かって法にのっとった計画のもとに進められてきたわけでありますが、第三次まで、そしてまた今後の四次に対する見通し、先ほどちょっとお話ございましたけれども、政府としては、この一次、二次、三次に対してどのように評価をし、また四次についてはどのように評価をしていらっしゃるのか。これは酪農振興法ができて以来の今日までの経緯ということになるのかもしれませんけれども、まずそれを、政府の見解をお伺いしておきたいと思うんであります。
  67. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 御指摘のように、一次から四次までいろいろな経緯をたどり、しかもその間に石油ショックその他の大きな経済変動も伴ったわけでございますが、そういう意味では目標と実績というもの、これはいろいろと目標年次に至るまでに経済変動等のことがございまして、見直し、改定もしておりますので、厳密に計画と実績という意味で比較することは大変困難でございますけれども、各全体としての基本方針等通じまして共通に目標といたしました点は、需要に見合って生産を増大させなければいけないということ、それから、生産性の向上を図るということ、特に飼料の自給率を上げると、この三つの点に中心が置かれていると思います。この各段階の努力がこれまでわが国の発展でどれくらいに動いてきたか というようなこと、そのことは結局酪農をいまの現状にしたわけでございますが、そういう意味で、各年次年次の目標なりとそれから結論というものよりも、三十九年にこの目標がまず立てられた一次の時点と四次の五十六年の時点とを比較してまいりますと、その動きというのは大変はっきりしてまいっておりまして、生乳の総生産量で言いますと、三十九年が三百五万トンでございます。それが五十六年にはそれの二倍以上の六百六十一万トン程度まで倍増いたしております。それから戸当たり飼養頭数が、三十九年が三・一頭でございましたのが、御承知のようにほぼ二十頭、一九・八頭という数字でございます。それから酪農部門に投下します労働の生産性と申しますか、一時間当たりでどれくらいの生乳生産量があるかというようなことで比較いたしますと、三十九年が八・六キロでございましたのが、五十六年には三〇・三キロ、これも四倍近い数字に上がっております。それから経産牛一頭当たりの管理労働時間で申しますと、三十九年が四百九十時間でありましたものが、これも三分の一程度の百六十七時間で管理ができると。ただ、飼料自給率はむしろ三十九年の方が、頭数の少なかったころの方が五九という数字が五十六年に四二と出ておりますが、これは御承知のような規模拡大、頭数の拡大とそれから粗飼料の方の拡大が必ずしも伴ってなかった、そういう意味でこの近代化計画の中での最大の弱点かと思っております。  で、もう一つ御指摘の四次酪近で現状はどうかということでございますが、これは五十五年に作成をしたわけでございますが、基準としました年次は五十三年度でございます。五十三年度を基準年次にしまして六十五年を目標にしましたいわば第四次計画を立てたわけでございます。ここでは生乳の地域別の需要見通しなりあるいは地域別の生産数量の目標だとか近代的な酪農経営の基本的指標といったものを示したわけでございますが、実はこの五十三年を基準にして六十五年を見通しました際には、御承知のようにいわば過剰問題に直面しました計画生産にぶち当たる時期でございますので、このいわば五十三年と六十五年見通しを真っすぐ結んだ線で、その真っすぐ結んだ線上から見てどうなっているかという比較で申し上げますと、五十四年以降は実はその需要よりも生産の方が伸びておりまして、生産が二%から四%ぐらい目標の数字を上回った数字が出ております。それからこれは五十二年から五十四年度に発生しました過剰乳製品在庫を需要に充当したこともございまして、五十五年以降実績値で申しますと今度は試算値を一、二%下がるというような形で推移をいたしております。  それから基本的指標、これは経営規模等でございますが、経営規模は着実に伸展をいたしておりまして、三十頭以上の戸数のシェアが北海道では四〇%、それからこれは五十三年では二〇%でございましたのが四〇%になっておりますし、都府県でも五十三年は五%でございましたのが一〇%と、いずれも大規模階層が増加をいたしております。  それから投下労働時間当たりの生乳の生産量、これは北海道の四十頭以上経営では、指標値を二割程度下回る、他の経営ではほぼ同じ水準でございます。  それから管理労働時間でございますが、各経営形態とも指標値につきまして二割程度上回っております。なお一層の合理化が必要だという数字になっております。  それから飼料作物の生産量につきましては、指標値の二、三割程度、それから自給飼料、飼料自給率では北海道では二割ぐらい、都府県で五割程度下回っております。これはいずれもその後六十五年の目標値に対して相当の今後の努力が要るという数字になっております。
  68. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いま第一次から第四次につきましての、三次までとそれから四次についての現状お話があったわけでありますが、今度の法改正によりまして、今度は酪農肉用牛生産近代化計画、これ今度立てるわけですね。それは肉用牛については今日までの経緯を見てこの基本計画をお立てになるんだろうと思いますが、酪農の方についてはいまお話ありました六十五年までの第四次があるわけでありますから、これはこのままで、現在策定したこの四次の計画で推進していくのか、これを一体化ということの中でまた調整があるのかどうか。それからまた、基本計画を立てられるに当たりまして、地域の現状とかまた現在の国際情勢の中で非常に地域におきましても苦悩いたしておるわけでありますけれども、いつごろまでにこの基本計画はお立てになられるのか、その辺のことについてお伺いしておきたいと思います。
  69. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 基本方針の策定の時期につきましては、施行後六カ月を目途にやろうと思っております。  それから酪農の基本方針、変えるかどうかというお話でございますが、これはもちろん現時点でのいろんな指標等を使いまして見直しの作業をいたすわけでございますが、現段階までにいろいろとお話を聞いております線では、特段大きな変更をする必要はなかろうかと思っております。ただ、乳肉一体経営といったようなものを頭に置いておりますので、経営の育成方向等でそういうような要素を加味しなければいけないと思っておりますので、数字でたとえば牛乳の生産量をどうするかというようなあたりで大きな動きはないと思いますが、どういうものを目指して経営を展開するかというようなことでは盛り込むべき新しい事項がございますので、これらの点についてはさらに検討を進めたいと思っております。
  70. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 先ほど現状の第四次計画について労働時間や飼料、それらのものの推移についてお話があったわけですが、総体的なこの計画についてはそれなりに推移をいたしているようでありますが、当然これ乳肉一体ということになりますと、それに伴いましての、数字的なものについてはそう変わりはないのかもしれませんが、今後の運び方等については一応やっぱり考えなきゃならないという問題が出てくるのだろうと思います。  今回、臨調、それから農政審議会の報告、こういうものの中で非常に農業に対しまして厳しい眼が向けられ、そしてまた、いろいろな指摘があったわけでありますが、臨調についても、速やかにEC水準を達成し、内外格差を縮小することを目標に、毎年度牛肉の行政価格を見直すという、こういう厳しいといいますか、指摘があったようでありますね。ここで私ども一口に肉用牛の生産の近代化と、こう言うわけですけれども、酪農につきましても追いつき追い越せということで多頭化飼育、先ほど局長がお話しになったようなデータを見ますと、自給飼料の面は別としましても、労働時間から、そのほかの管理、いろいろな面については確かに年々向上している面はありますけれども、やはりそれを営んでいる農家という単位を見ますと、これは個人差もありますし地域差もありますけれども、総体的に見ますと、やっぱり農家経済という、農家経営というのは大変な急激な経済変動また規模拡大ということの中で現在は非常に苦悩していることは間違いありませんね。肉用牛の生産につきましても、やはりある目標のもとに基盤確立しなきゃならぬ、そういうことでいまこれから対策を講じようというわけでありますけれども、何といいましても一年一産といいますか、酪農牛みたいにどんどん品種改良によりまして一頭当たりの乳量をふやすというこういうのとは違って、なかなか時間もかかる、金もかかる、農家の経営上いろんな問題が出てくるだろうと思うのですね。こういうことですから、内外の諸情勢の中から価格差を縮めるということが至上命題としていまあるわけでありますけれども、総体的に近代化、今度の法律改正によりまして近代化を目指すということは、言うはやすくして実際は非常にむずかしい問題が山積していると思うのですね。こういうことで近代化というのはどういう方向を目指して進むということなんだというように、これは基本計画との兼ね合いということになるかもしれませんが、農水省としてはお考えになっていらっしゃるのか、そこらあたりの問題に ついてお尋ねをしておきたいと思うんです。
  71. 石川弘

    政府委員(石川弘君) いわば酪農がいろいろとたどった道が一つの例になろうかと思いますけれども、一つは、やはり何と申しましても規模を拡大するということであろうかと思います。特に繁殖経営の場合におきましては、これが一番規模が小さい一、二頭飼いが圧倒的に多いというような話でございましたけれども、先ほど申しましたように、ここ数年の流れの中で五頭以上層で全体の四割を供給できるようになった。このことがやはり和牛の場合でも非常に強い力になったわけでございまして、規模拡大、これは決して数が多いほどいいという意味ではございませんで、背後の飼料基盤だとか、あるいは労働力の燃焼の問題だとか、資金の問題等当然ございますから、大きいことはいいことだ式ではございませんが、いまの一、二頭飼いという形ではこれはなかなかそういう合理的生産はいけないわけでございますので、先ほど言いましたいろんなタイプに応じまして、専業はそれなりに大きく、兼業的なものはほどほどの大きさでということで、大型化は一つの絶対の要件かと思います。  それからもう一つは、何度も申しますやはりえさでございまして、この場合、繁殖もそうでございますし、肥育もそうでございますから、経営的にいいのはどういう経営かといえば、粗飼料の給与率が高いのがまず間違いなくいい経営でございますので、そういう粗飼料の給与率が上げられるような体質に持っていく。これは飼料基盤の整備の問題であったり、既耕地の飼料作物の導入の問題であったり、いろいろしますが、そういう粗飼料給与率を上げるという方向でございます。  それからもう一つは、これは肥育の場合に特に問題でございますが、わが国の肥育がどうしても穀物に頼りがちでもございますし、肥育期間が大変長いというような意味での経済肥育の導入、いろんな物の考え方でえさが最も効率的に使われる期間で肥育を完了すればいいわけでございますが、非常に高品質のものを求めるというようなこともあろうと思いますけれども、肥育期間の長期化というのはこれはコストを上げる大変な要因でございますので、これは市場取引のあり方の問題も含めて改善をすべき点であろうかと思います。  それからもう一つは、やはり事故の率を下げていくという、特に乳用雄等におきましてスモールの段階での事故率が大変高いわけでございますので、乳肉一貫経営等の中で事故率を下げていくということはやはり経済効率を上げるゆえんであろうかと思います。  そのほかいろんな問題があるわけでございまして、かつて行われたような、たとえば非常に高金利の資金を使ってむちゃくちゃにいわば経営を伸ばすというようなことでは、これは金利負担一つ考えましても不可能でございますので、そういう資金手当て等を法律的にやるような問題もあろうかと思います。  そういう意味で、今度の基本方針の中で一定の目標を掲げようと思っておりますが、そういう目標を地域の実情に応じましてひとつ具体化をしていただきたい。やはり背後に余り粗飼料供給の力もないのにいきなり多頭飼育に向かうというようなことであれば、えらい購入飼料比率の高い経営になるわけでございますので、そのようなことを今度の基本方針なり都道府県計画なり市町村計画でつくりますと同時に、それの個別実行に当たりましてもいろんな指導組織等を使いまして、過去のいろんないい例は受け継ぎますし、あしき、いわば何と申しますか反省すべき点は反省しまして、目指す近代化——近代化と申しますと何となくはでに聞こえるわけですが、じみちな意味での経営の近代化をやっていくという考え方でございます。
  72. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 そういう点では確かにきめ細かな地域またはそれぞれの伝統的な土地に根ざしたまた行き方もいろいろあるのだろうと思いますが、それは国からの基本方針を受けて県、県から市町村、それぞれで計画を立てられるのだろうと思うんです。  まず、農水省としまして、今度の法改正によって法律の題名が変わったり、また今度は融資制度につきましてもそれなりの配慮をしているということが一つの柱にもなっておるんですが、やはり何といっても農家の経営の安定のためには、飼料基盤とかそれから労働力、こういうものが制約されるようなことではなかなか大変なことになります。ですから、どちらかというと、複合経営、家族労働の中でどれだけのことができるかということでありますが、特に私ども心配といいますか、保育とか育成とか肥育とか、それぞれに作業手順といいますか、違うわけでありますから、そういう点で、技術的なことや、それから働く者の立場からしますと、やはり一貫性を持ってこれを推進するということはなかなかむずかしいようですね。  今日までも国の政策として草地造成ということが非常に行われてきて、国営、県営、それぞれパイロット事業なんかでずいぶん進められてきているんですけれども、さっきの局長のお話の中にもありましたが、やっぱりこういう自給飼料ということよりも濃厚飼料を与えるものの方が非常に多い。それは草地がないからということだけではなくて、肥育する上においては、最近のこのサシ志向の中ではどうしても濃厚飼料で、しかも放牧ということではなくて屋内肥育、こういうふうにもう偏重してしまう傾向が非常に多いようですね。各地を見ましても、国の当初の計画でつくりました草地が実際は草が生かされていないという、東北、北海道を回りましてもそういうことを特に私ども痛感しておるんですけれども、これはやっぱりただ一つのことだけではないんですけれども、これは消費者の嗜好というものもありますし、また食肉の規格というものをもう少しこれは考えなきゃならないのではないか、こういうことも私現場を見てしみじみ、この前も岩手県の各地を回りましたけれども、そういうことも思いますし、そしてまた、これは消費者の好むものをつくらなければ結局売れないということになるわけですからあれですけれども、総合的な改革というか、対策を講じませんと、草地造成、それが即飼料の自給率向上ということには結びつかない今日の農家の非常にジレンマというものがあるんですね。こういうものをどう克服するかというか、対処していくかということは非常に大事なことだと思うんです。  こういうことで、一つは、飼料の自給率の向上ということに対して、これは水田再編対策とも関連があるんだろうと思いますが、今日の現状、そしてまた、これから飼料の、えさの自給率向上のためにどういうふうに考えていらっしゃるかということと、それから、サシ志向による生産効率の低下に対して食肉規格を再考しなければならぬのじゃないか、こういう声も非常に多いわけですけれども、こういう食肉規格というものとの絡みの中でどういうふうにこれを考えていくべきなのか、これは現場としては大変に大事なことなので、ぜひひとつ農水省の見解を伺っておきたいと思います。
  73. 石川弘

    政府委員(石川弘君) まず、飼料の自給率の向上の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、酪農の場合よりも肉用牛生産の場合の方が粗飼料の給与率が低い現況でございます。特にその中でも肥育の経営の場合に、肥育の場合でも乳雄の場合が一番低いわけでございます。そういう意味で、私どもは安定した、安い、極力コストを下げて生産します場合にはこの粗飼料給与率を上げることが何より大切でございます。そういう意味で、草地の基盤整備とか、あるいは先ほども申しました既耕地にいろんな飼料作物を入れていくということが大変大切でございまして、ありとあらゆる施策をそこに集中するわけでございますが、もう一つは、どちらかといいますと、今度はえさを売るという立場で、たとえば農協自身も何とか方式と称するような肉牛生産方式の中では、こういうようなえさのやり方をして、こういうぐあいにやると、こういう規格の肉ができると、そういういろんな飼養の方式がございます が、そういう方式にもある程度反省をしていただいて何でもかんでもえさを多投するという形は避けていく必要があろうかと思います。これは基本方針に書きますと同時に、いろいろの生産団体につきましても、そういういわばよく言われております肉牛の肥育方式にも反省を加えてもらう必要があろうかと思っております。  そのことはもう一点、いま先生も御指摘のように、そういう牛の生産をすることが高い牛肉をつくれるという前提で行われているわけでございますが、実はサシ志向と申しましても、サシが本当に問題になりますような非常に上級のものというものは量的には非常に少ないわけでございます。そういう非常にサシを問題にするようなものが少ないにもかかわらず、いわば上物と言われているものは大体九%程度しかないわけでございますが、それにもかかわらずえらい高い、大量な飼料を投入するということは決して有利なことではないわけでございまして、特に、わが国の牛肉の嗜好につきましても、いわゆる非常に高級なものだけではない牛肉の消費というものは十分ふえつつあるわけでもございますし、それからそういう意味で、その多様化した牛肉の消費に合いました評価の仕方がやはりあってしかるべきではないか。現在の評価が特段にサシを目指してということではございませんけれども、どうもそういうような一つのサシ志向がそういうことをしているんではないかということもございます。すでに私どもは五十七年から肉用牛の経済肥育の普及事業ということを行っておりまして、そういう経済肥育をしたものが農家にとっても有利であると同時に消費サイドにも受け入れられるようなというようなことを実験的にやっておりますけれども、単にそういうことだけではなく、さらにやはりいろいろと規格についても見直しを進める必要があろうかと思っておりまして、検討項目といたしまして、まず技肉重量、いまは毎年技肉重量が重くなっている、重くなっているというのは肥育期間が大体長くなってきているということもございますけれども、そういう技肉重量の見直しの問題とか、あるいはいわばサシといわれます脂肪交雑基準の見直し、それから品種別の規格の適用性の可能性、これは現在、乳も和牛も同じように適用いたしておりますが、そういう種類に応じたものができるかどうかというようなことをすでに勉強会という姿ではございますが、着手をいたしております。いずれにしましても経済的に肥育しますことが農家にとってもそれから消費者にとっても望ましいように誘導をしていくつもりでございます。
  74. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 局長のおっしゃる方向で進んでいけばいいんですけれども、これはこれからなさろうということ、またそうしなきゃならないという期待感も込めてのお話なんだろうと思うんですが、現場へ行きますと、なかなかこれは同じものの価格が上物と格づけされるかどうかということは大変なことでして、価格差が激しいものですから。これは格づけというのは、これは御答弁でいただけるかどうか知りませんけれども、ある規格があって客観的な規格のもとにこれはなされることなのか、やっぱり格づけには判断する人の個人差というのがあるのか。これは農家の方々に言わせますと、それは牛それぞれみな血統とかいろんな産地とかいろんなのがありますから、一概には言えないだろうと思うんですけれども、要するに同じ肥育したものが上物でどのくらいになるかということと、ゾーンに入らないということであれば価格差が大変な差になる。あるいは一軒の農家の方のちょっとお話聞いて、これはそのときの変動がありますから、一概に一軒の肥育農家でこうだからこうだというわけにはいきませんけれども、去年の九月枝肉が三百九十四キロでこのときはもう単価が二千四百五十一円だったんですね、ことしの二月、三百三十四キロ出してこれが単価が千三百円ということですから、これだけで大変な差なんですが、そういうことから金額が倍近い差ができるという。保険料から農協の手数料から預託原価から、そういうの全部、金利ずっと引きますと、去年のもの六十四万、ことしの二月出したのが六万一千という大変な差ができる。これはそのときの価格差やまたそれに伴います手数料から何からいろいろなものありますからね。しかも、岩手県あたりですと、みんな品川へ出してからでないと自分の出したものがどの格づけになって幾らになったかというのがわからないという。これは流通機構非常に複雑で、きょう時間ありませんからそこまでいろいろお話しする気はありませんが、後日ぜひこれしたいと思います。また、行管からも食肉に対してのいろんな問題の中に流通のことも指摘されておりますね。それは肥育した牛、それからまたその時期、子を買ったときの価格、そういういろんな諸条件がありますから、ただ一概にここで比較してどうこうとは言えないんですが、いずれにしましてもやっぱり、サシ志向と言うけれどもそんなものはほんのわずかなんだということですが、生産する立場から言うと、これは実は少しでもいいものを出さなければということで結局は屋内肥育ということで濃厚飼料だけでということになって非常に肥育費が高くなる。本来もう草地造成等でできるものも二十二カ月ぐらいですか、草地で長くやるよりも早く出さなきゃいかぬという、こんなことになって結局悪循環が繰り返しているということですね。ぜひこれは現地からまたそれぞれの都道府県でまた計画を立てられるだろうと思いますが、こういう流通の段階の問題や、それから飼料の自給率、それから食肉規格の問題、行管からも厳しく指摘がありますが、農水省としましても一つの大きなポイントになりますので、これはぜひひとつお取り組みをいただきたいと思います。先ほど答弁ありましたけれども、大臣このことについては十分御理解いただいたと思うんですけれども、どうでしょう。
  75. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) 大変、御質疑を承っておりましていろいろむずかしい問題があるようでございます。この法律が通りましたならば、この運用面においていろいろと疑問をお抱きになっておる点等も含めて、ひとつ局長以下を督励して、できるだけ現実に即した法律の運用をやらしたいと思います。
  76. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 ぜひひとつ、生産者の立場はもちろんですけれども、消費者からも納得いくような形でこれはお取り組みをいただきたいと思うんです。  それから、これは私から申し上げるまでもないことだと思うんですが、先ほどいろいろな統計を見ましても、現在の北海道の酪農家、平均いたしまして二千百万ですか、平均の負債ですね、借入金。これはもう四十年代非常に高度成長に乗って、また多頭化飼育ということでどんどんやりましたから、建物そのものはすばらしいものが建ってますね。サイロもスチールのサイロが三本ぐらいということで、億を超す借入金、こういう方もいらっしゃる。比較的、岩手県とか宮城県とか、こちらの方に参りますと、そう大きなのは個人でなさるという方は少ないんですけれども、あちこち行ってやっぱり聞くのは、これは何も酪農とか肉牛のことに関することじゃないんですが、農業の補助金というのが最近、文藝春秋なんかでも、「補助金は高くつく」なんていう、こんな題名でいろいろ論じられていますけれども、補助金でいただいてつくったものには、補助金ですから勝手につくられたら困るということで、それなりに規格に準じなきゃならぬわけですけれども、山奥の畜舎が建築基準法にのっとって、この厳しい規格でつくらなきゃならないというのは農家の方たちにとりましても非常に納得のいかないことなんですね。これは確かに国からの補助金をもらってつくるわけですから、いいかげんなものをつくられたら困りますけれども、もっと実態に即したものでなければならないんじゃないか。私はあるところへ行きましたら、本当に二千万を超す大変な補助金もらって建てた、二千万の大きな畜舎がございまして、これは五十頭ですか、こちらの方、自分の自費で六百万とか七百万で建てたというのも同じやっぱり五十頭のがございましてね、それはもちろんこちらの方がりっぱに決まってるんで す。床の方はコンクリートに鉄筋入ったちゃんとしたやつですから。こちらの方は真ん中の丸太ん棒はもう電信柱の払い下げですから、これは比較にならぬかもしれませんけれどもね。もっと農家の実態に即した建築様式といいますか、規格の緩和ということが当然ないと、補助金もらったって結局自分も自己負担あるわけですけれども、もっとその土地に合ったものですと大きくできるものが、またもっと安くできるものが、規格どおりにしなきゃならないために、結局はもう高い堅牢なもの、その土地にふさわしくないもの、ふさわしくないといいますか、畜舎としてですね。これはもうやっぱり県庁なんかでいろいろお話聞きますと、やっぱり農業担当者の方も頭を痛めていることですが、それを担当します建築とか土木とかという関係方々はやっぱりちゃんと規格どおりにやってもらわなきゃいかぬというふうなことで意見がいろいろあるようですけれども、そんなこと言ってたらとても高くてしようがないというので、まあ無視でもないかもしれませんが、余りそういうことに気を使わないでつくっているところもあるみたいですけれども、これはぜひ、国が補助する以上はということなんだろうと思いますけれども、もう少しこれを実態に即したもので建築のできるような、これは今日までもずいぶん論じられてきたことですから、検討なさっていらっしゃるんだろうと思うんですけれども、この点ぜひお考えをいただきたい。そして実態に即したものにぜひひとつしていただきたい。それが農家経営の借入金の軽減ということに大きく結びつくことなんですね。本当にもうこういう話は今日までもいろいろありましたから、部内でもいろいろな検討がなされていると思うんですけれども、どうでしょうか。
  77. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 畜舎等の施設を極力効率的なものにするようにというお話、再々伺っております。私どもも実は、五十七年度に畜産局の予算を見直しをいたしまして、この種の助成をすべて畜産総合対策事業という一本の補助事業に変えたわけでございますが、その際におきまして、事業費を極力軽減させますために、間伐材とかあるいは古材といったようなものを使うことはもちろんのこと、業者が施工するんではなくて、畜産農家自身が直接施工することも認めるように通達上も明らかにいたしております。それから、建築基準法上のいろんなお話もございますが、まあこういうものでやはり人命の安全等で守らなければいけないものもあるわけでございますが、そういう基本的なことを守りましても決して大変な高価なものにつくということではございませんで、私ども極力そういうものも守りながら、うんと実用的でかつ低コストの畜舎を具体的につくりまして、そういうものがまあいわば一般的にどこでも応用できるように、それを使えばどこでも文句なしに安くつくれるというようなことをやりますために、今年度に低コストの肉用牛の畜舎の設計基準というものをつくるのを、これはいろいろと外部の人たちも頼みまして、すでに勉強を始めておりますが、こういうことをやりながら私どもも極力安いコストで牛肉生産をしていただきたいということをお願いしている立場でございますので、こういうことにまあいわばむだな経費がかからないようにという意味で、補助事業なり融資事業なりあるいは指導事業を行ってまいりたいと思っております。
  78. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いろいろ御検討なさっているようですが、それのひとつ結論を得るということと、それからまた徹底をして、必要以上の負債にあえぐということのないよう、健全経営のために非常に大事なことなので一言申し上げておきます。  それから、先ほどちょっと申し上げましたけれども、牧草についてはお話はございましたが、粗飼料の生産ですね。これは水田再編とも絡んでくるんですけれども、最近の粗飼料生産現状、それから農地の流動化といいますか、それからこの計画を立てるには、あっちに一軒こっちに一軒というんじゃない、やっぱり団地化といいますか、ある程度のまとまりがなきゃならぬわけでしょう。こういうことで、今後の計画、肉乳一体の政策を進めるに当たりまして、何かこういうことについての農水省としての現状と、それから今後に対するお考えがありますか。
  79. 石川弘

    政府委員(石川弘君) その粗飼料給与率を上げますためにいろんなありとあらゆる施策を考えておるわけでございますが、一つはやはり草地開発のように絶対的な面積を上げる種、これは主として公共事業でございます、それが一つ。それからもう一つは、既耕地にどうやって飼料作物を入れるかということでございますが、これは水田転換がその大きな一つの枠でございますし、もう一つは水田裏にどれほどえさが入れられるかということ、それからそういうことをやります場合に、いまも先生も御指摘にありましたように、個人個人ではできませんので、作物を集団的につくる生産組織をつくっていくという問題、そういうことが一つの課題でございます。それからもう一つは、比較的低利用になったりあるいはまだ利用されてないような資源、稲わら等で非常に利用が低いところもございます、こういうものをどうやって利用するかということ。それから、先ほどの草地開発の面拡大と実は同じことでございますが、若干角度を変えて申し上げますと、いまあります公共牧場の利用度が低いのをどうして利用度を上げていくかという再整備の問題。それからさらに加えますと、日本の場合、粗飼料の種子その他で優良なもの、あるいは日本の風土に適したものをどうやって入れていくかというような問題が問題意識としてございますので、実は五十七年度に畜産総合という補助事業を立てます際に、この種の補助事業を一体といたしまして、ありとあらゆる角度から組み合わせができるように補助事業としてはつくってございます。しかしこの問題は、何と申しましても、金があるからできるということじゃございませんで、たとえば土地の集積の問題というのは、やはり周辺の農家がいかに畜産農家群に協力してもらえるかというような、かなりじみちな努力なくしては拡大がなかなかできぬ分野がございますので、このあたりは行政的な指導なり、あるいは団体の指導を通じまして、いま申し上げましたような施策がうまく浸透しますように努力をしたいと思っております。
  80. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 まあ、話があっちこっちにいって申しわけないんですが、酪農とそれから肉牛、これは切っても切れない関係にあるものですから申し上げるわけでありますが、一つは乳肉複合経営ということで、肉用牛の生産に今度は力を入れるといいますか、その意味は一体どこにあるのか。これはいろんな見方があるんだろうと思いますが、ことしの農業白書を見ましても、生乳需給の伸びは生産ほど高くは見込めない、生乳価格の上昇も多くは期待し得ないという、そういうことが掲げられ、実質的に保証乳価六年ですか、ほとんど据え置かれたと言っても過言でないような現状の中にあるわけですね。これは国際的に、または国内の問題はもちろんですけれども、国際的に国産牛肉の増産と価格をとにかく他国並みにしようという一つの目標の中で、ここに牛肉生産に対しても力を入れていこうということですが、一方では酪農が非常に低迷状態にあって、いま農業白書でもこのように書かれておるということでありますから、一つはやっぱり酪農の活路をここに求めているのかという、そういう見方もないわけじゃないわけですね。そういうことから、今度の乳肉複合経営という、こういうことを打ち出した、こういうことを進めようということの中には、保証乳価にはどういう影響があるんだろうかという、こういうことに対しての農民の素朴な疑問といいますか、疑義といいますか、今日こういう六年据え置かれたという現状の中で、単純に外圧の中で肉牛生産一つ一つ基盤確立しなきゃならないぞという、そういう受けとめ方でいいのか、やっぱり保証乳価に対しましてもそれなりの影響があるのではないかという、こういう心配をする方がいらっしゃる。こういうことについて、ぜひひとつ農水省のきちっとした——これは局長いろいろ御答弁なさると思うんですけれども、大臣からも ひとつこれはきちっとお答えいただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
  81. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 先ほども申し上げましたように、肉と酪農の制度を比べますと、やはり酪農の制度が一歩前を走っていると思っております。そういうものに比べて肉用牛生産に関する制度はおくれをとっておりましたのを、今度の改正によりまして肩を並べて制度としても確立をしたいということでございます。したがいまして、こういうことをやりましても、酪農関係から手を抜くとか、あるいは酪農の、別に価格の保証に関する規定を動かしているわけではございませんので、酪農のいわば価格制度については、現行のとおり運用をしていくということでございますので、その点は御安心を願いたいと思います。
  82. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) いろいろ御指摘いただいております。御心配のような向きが生じないように十分配慮をして法の運用をさしていただきたいと思います。
  83. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 時間もございませんから、次に移らしていただきます。大臣からも御答弁ございましたから、非常に厳しい環境にある中で御努力いただいている農家の方々が希望を持って仕事のできるようにぜひひとつ進めていただきたいものだと思います。  最後になりますが、これは大臣の今日までの御発言がありますから、こんなことを聞くのはやぼじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、何といいましてもこれ相手のあることですからね、交渉事というのは。アメリカとの話も、先月の二十六日ですか、経済局長行っていろいろお話し合いをしてきたようです。何がどうなったという結論めいたことではないのかもしれませんが、今後の推移、粘り強くということで、過日の委員会でも大臣のお話がございました。今度、来週ですか、日豪牛肉交渉、これは東京で行うことになっておりますね。豪州側ではやっぱり輸入の枠の拡大やアメリカとの不公平を是正せよということが言われるんじゃないかというようなことも報道されておりますけれども、これはアメリカと同じだぞと一言言えば、そうじゃないなんという根拠もないんですが、これは酪農家にとりましては非常に関心事でありますし、その国その国の特徴があるわけでありますから、アメリカとまだ結論がついておりませんし、そこへまた豪州との話し合いということでありますから、この辺のことについてひとつ大臣のお考え、この交渉に当たります心構えといいますか、所信といいますか、大臣の腹の内をひとつお述べいただきたいと思います。
  84. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) いつも申し上げておるとおりの心構えでございます。先ほどちょっと時間をいただいてみたときに、やはり豪州との事務的レベルの会議を二十日にやりたいという相談があっておるので、これは外交ルートを通じて来ておるわけです。それについていろいろ相談があって出たんですが、これはアメリカは五十九年度以降のことなんですが、豪州のやつは五十八年度、現年度のことで、豪州の方は一年早く取りまとめなきゃならないようになっているわけですね。したがって、この二十日に協議に入っても、それこそ、日本の国内事情の説明をしてよく理解を求めるということで、いわゆる数字等には触れないという方針で今度の事務的レベルの会議を進めていくようにしております。いずれ五月、六月にもなりますと具体的に問題が俎上に上ると思いますが、いま藤原先生おっしゃっておるとおり、アメリカとの関係がありますので、非常に微妙な関係がありますので、その点十分ひとつ配慮をして慎重に取り組んでまいりたいと思います。
  85. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 これ最後になります。  大臣、先ほど、私の心情としてというお話、同僚委員にお答えになるときお話しだったんですが、金子大臣は私どもも信頼をいたしておりますから、大臣の心情として対米交渉に、またオーストラリアの問題につきましても、そういう御心情だろうと思うんですが、これはまあ大臣の心情というより、日本の農政を預かる方として、これはもう動かないものであって、非常に大事なときでございますし、そのためのまた一環としての今度の法律意味もあろうかと思うわけでございまして、ぜひひとつ基盤確立とともに、諸外国の動静等もございますから、それぞれの問題につきましては、要するに日本の農業が後々に禍根を残すことのないような政策に対しまして、責任を持ってひとつ進めていただきたいと思うんですね。  家畜改良増殖法については、これはいろいろお話をお聞きしたいこともございましたが、時間ありませんから、もう最後一つだけ。  これから外国への門戸が開放されていいものがどんどん日本に入ってくるということですから、それなりにこれは評価をしなきゃならないことだろうと思いますし、時代の推移の中で当然そうあるべきだと思うんですが、ただここで私が心配することは、日本日本の長い風土の中で培われてきたものがあるわけでございますから、日本の国に役立つといいますか、日本の風土に適したものということで、やっぱり品種改良ということについても技術発展とともに、これはいままでのいろんな経緯の中から外国の証明のものはそのまま認めるということになっておるわけですけれども、ぜひその点は慎重にこれは進めていただきませんと、まあ優秀なものを入れるんだからということですが、日本の国の今後の畜産の方向性といいますか、こういうものがここでまた大きくゆがめられることのないような慎重な取り扱い、そしてまた対処、日本の国に適した、日本の国の畜産に大きな貢献のできるようなこの制度の運用というものについてひとつ十分な慎重な御配慮をいただきたいということだけ一言言っておきたいと思いますが、どうでしょう。
  86. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 私ども御指摘のとおり考えておりますし、関係者もそのつもりでございますので、そういういま御指摘の趣旨に従ってやっていきたいと思っております。
  87. 下田京子

    ○下田京子君 今回の法改正というのは、現行の酪農振興に肉用牛を加えて一体化、総合的に振興を図ろうと、こういうことでございます。としますと、昭和四十年改正で酪農近代化計画制度というものが創設されました。いろいろ他の委員からもお話がありましたけれども、この酪近制度の果たした役割り、積極面と同時にマイナス面を十分に総括して、これを肉用牛の今後の計画の中に生かしていくことがとりわけ重要ではないかと思うんです。今日の酪農が一つは深刻な負債問題を抱えている。それから二つ目には、計画生産ということでもって生産調整が余儀なくされているような状況の中でいわゆる過剰問題、こういう点が生まれているのは御承知だと思うんですが、なぜこのマイナス面が生まれたのか。この点をしっかり反省して肉用牛生産に生かしていくことが重要だと思うんですが、いかがでございましょう。
  88. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 御指摘のように大変な進歩を遂げたわけではございますが、その過程におきまして残念ながら需給調整の要るような需給の状態になったり、あるいはそれのもとになりました経営の弱体化の事例がないわけではございません。私どもやはりこういう生産物については需給に応じた生産をするということが基本でございます。その点、牛肉につきましては御承知のようなまだ自給自足ができない、むしろ足らないものであるということから、どちらかというと生産増強型に考え方をやっても、いまのところ奥行きのあるものではございますが、しかしこれとてやはりいわば需要に応じた生産というのが基本でございます。それから、投資をします場合にも着実な投資、まあ酪農で一部見られましたような、非常に急速な拡大を急ぎます余りに投資規模が急速にふくれ過ぎたというようなこともございますので、今回の計画等におきましては国が方針を示しますと同時に、その地域、地域に応じた都道府県計画なり市町村計画で、いわば何と申しますか、体の大きさに合ったようなそういう計画をつくっていただいて、過剰投資だとかあるいは不適正な投資というようなものが行われないようにこの点は十分注意をしていきたいと思っております。
  89. 下田京子

    ○下田京子君 いまもお話がありましたけれど も、着実な投資が必要だと、それを具体的に政府がどうされていくかということが大事だと思うんです。基本的には需給に応じた生産生産増強型だと、こうおっしゃっているんですけれども、酪農の経験で大事なのは、やっぱり規模拡大ということでもって、その裏でどれだけ多くの人たちが泣いてきたかということだと思うんです。もう局長も御存じでしょうし、大臣も、長崎ではどうか知りませんが、北海道の根釧地域に行きますと、これはもう大変なものでありまして、いまでも離農あるいは離村している農家がございます。そういうところに行きますと、一体なぜにこういうことが出たんだろう。着実な投資が必要だと言いつつも、実際には第二次酪近、これが第一次酪近と比べますともう急激な規模拡大をやってきているんじゃないか、計画自体の中で。第一次酪近がこれは北海道型で十五頭でしたね。それが第二次酪近で四十頭と、こうばっといっています。実態はどうかと言えば平均二十七・八頭。現在ようやくその第二次酪近で立てたところに追いつくというような実態なんですね。だから、勝手にそういうことで投資が急激にやられたということではなくて、計画自体に問題があったんだ。そういうことで、本当にこういうことを押さえてかからなかったら重大だと、こう思うんです。どうですか。
  90. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 肉用牛の生産目標をつくります場合には、先ほど申しましたような背後の土地利用の条件なり、あるいは兼業か専業かというような情勢なり、あるいは一貫生産か繁殖型かあるいは肥育型かといういろんな形をとらえまして、現実に到達可能であり、かつそのことが少しでも経営のいわば近代化に役立つというようなものを目標に掲げながらやっていきたいと思っております。したがいまして、私どもとすれば、いわばここまでおいでといったような非常に高い目標を掲げて引っ張るというよりも、特に肉の場合はなかなか規模が大きくなりませんですから、比較的身近な目標を焦点に置きながら誘導をしていくつもりでございます。
  91. 下田京子

    ○下田京子君 そうしますと、明確にはお述べになってませんけれども、酪農でやられてきたような形のここまでおいで式ではなくてと、こういうことでやられると言われておりますが、さっき他の委員に対して一定の基本計画、考え方としてはこうなんだとお示しになりましたね。繁殖で言えば稲作複合の場合には五頭、放牧だったら十頭から二十頭、そしてまた肥育だったら三十頭で、専業は百頭以上と、こういうお話なんですが、昨年八月に出されました農政審の報告で、「八〇年代の農政の基本方向」の推進ということで、六十五年度を目標にして肥育経営でもっても都府県で七十頭、北海道百頭と、こういうことが出されているわけなんです。ただ目標はあくまで目標だということであって、実態に見合ってやっていくんだよというふうなことなのかどうか、それは念のために確認しておきたいと思うんですが、酪近計画の中でどれだけ多くの人たちが泣いてきたかということを実数も含めて、あるいはまた離農していった人たちのお声も含めて御報告しておきたいと思うんです。  北海道の酪農家の場合には、第一次酪近で当初、昭和四十年四万九千六百戸ありました。いま現在どのくらいになっているか。この十七年間の間に実に三万二百戸離農して、現在一万九千四百戸になっているわけです。  その離農していった人たちが一体どういう気持ちで離れていったのか。これはNHKブックスで三年ほど前に天間さんという方がまとめられた本がございますが、十勝の中で離農していった一万人の方を追跡したんですね。その人たちの声を言いますと、農業をやめてよかったと思っている人は本来的にいない、こういうことを言われておりますし、それから、「農業をやめてみて淋しい思いが三年くらい続いた。今でも農作業の夢をみます。一生一代の転換をしたので、後を継いだ人は一生懸命に農業をやってほしいと思います。」こういうことから、「若かったので仕事のつらさは大して感じなかったけれど、昭和四七年か八年頃にお産した牛が腰が立たなくなり、治らず家畜処理場に行くことになり、車につむ時、牛が泣くんです。牛にもきっとわかったのでしょう。その時の気持ち、自分も涙が止まらなかったのです。家族と同じ悲しさでした。このことは一生忘れることはできません。」——みんなこういう思いを抱きながら離れていったんだと。ですから、肉用牛の生産の計画という中にあって、またこういう第二次の犠牲者を出すということがないようにということを肝に銘じて進めていただけるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  92. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 経営規模の拡大の過程で、要するに経営規模拡大という背後には大きな土地利用が要るわけでございまして、そういう場合に離農した方々の跡地も活用しながら規模拡大をし、力をつけてきたというのが酪農の実情でございます。したがいまして、規模の拡大の背後にあるいは離農等があるわけではございますが、これはやはり一つの経済の進歩の中で行われていることでございますので、私どもとすれば、もし現状で北海道で四万戸の農家が酪農いたすとすればなかなか合理的な酪農経営はできなかったんではないか。まあ、おっしゃるように離農の場合にいろんな問題がございまして、離農農家のための施策もやったわけでございます。私ども、そういう形で残念な思いをなさっている方々のお気持ちは十分わかりますし、今後いろいろな投資をします場合に極力合理的な投資が行われるように、先ほど申されたような目標も、ある日突然何頭にするということではございませんで、経営の努力をしながら頭数をふやしていっていただくのがいいわけでございますから、そういう意味で過去におけるいろんな問題点は十分腹に据えてやりますが、私はやっぱり日本肉牛生産の場合でも戸数がある程度ふえていく裏にはそういうたとえば一、二頭飼いはやめていっていただくというような農家も結果的にはある。しかし、そのことは全体としての日本肉牛生産を強めていくゆえんではなかろうかと思っております。
  93. 下田京子

    ○下田京子君 問題だと思います、いまの発言は。結果としてそういう農家が出るということは絶対にあり得ないということは言えないでしょう。しかしそれを、規模拡大をやる中で一、二頭飼いというのは落ちこぼれていくのは当然だという考え方があったらこれは問題だと私は言いたいと思うんです。なぜならば、いまもう残っている酪農家が現実やっぱり莫大な借金抱えているんですよ。いつ組勘停止食うのかということで、いまもなおゴールなき規模拡大と言われてがんばっている人たちの中にも問題があるわけなんですから、そういうことをよく踏まえて、——具体的な点でお尋ねしたいんですけれども、地域の具体的なことは加味しながらやっていきますよと、こうおっしゃっているんで、それではということでお聞きしたいのは、広島県のママさん牧場のお話なんです。ここは非常に棚田地帯で山間地です。ですから面積規模も少ないわけなんですね。しかし、その面積規模が少ないところでどういう経営をやってどういう肉用牛を育てているのかということで、お話を御紹介しておきたいんですけれども、五十四年から行われたママさん牧場の設置事業というのは、とにかくお母ちゃんが中心になって農業を守ろう、そして家庭を守ろう、それから大事なのは農村という地域を守ろうということで、一人が三頭から五頭平均。で、年間大体百万円ぐらいの収入を得よう、こういうことで始められました。実施主体は県でございまして、推進するのが市町村。で、どのような仕事をやっているかというと、グループの活動費に対する助成、繁殖の雌牛導入だとか、あるいは畜舎の一部増改築、あるいは牛の運動場の設置、ミニサイロ、あるいはビニールハウスなんかの貯蔵施設、あるいは草刈り機なんか、こういうことについてミニミニ開発といわれるようなそういう助成事業をやって育ててきた。で、結果としてどうだったかといいますと、この地域の君田村というところのグループなんですけれども、このお母さんたちが年に十五回も勉強をやっているんですね。で、健康づ くりの方も非常に熱心にやられている。それから三次市、ここに私行ってきたんですけれども、三つのグループがありまして、そのうちの一つのグループは二十八名の会員で、牛舎を改築したりして、五十四年当時百三十一頭だったのがその後二カ年で三十頭ふやしまして、五十六年には八十八頭の子牛を出荷して、年間百万という目標を達成した農家も出てきました。それから、神石牛で知られている神石町のグループの代表の大崎さんという方なんですが、これは五十六年の第二十回農林水産祭で肉用牛部門内閣総理大臣賞を受賞されたんですね。そして広島県全体でもって、昨年福島県下で開かれました第四回の全国和牛能力共進会に出品した十九頭の広島牛がいずれも上位に入賞した。で、雌三頭がグランドチャンピオンになるということで和牛日本一の座を獲得して全国制覇をなし遂げた、こういうことなんです。  ですから、いま言うように一、二頭という答えですが、その一、二頭から出発していって、そして三頭、五頭というかっこうで、こういうことで大変すばらしい仕事をやられているわけですから、こういうこともしっかり政策の基本に据えた形での肉用牛の振興ということを進めていただきたいと思うんです。
  94. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 私どもも地域の実情に応じたいろんな御努力は大変結構なことだと思っております。いま御指摘の広島の事例も国の家畜導入事業等をお使いになって、それに地域のいろんな助成を使いながらおやりになったことと聞いております。特に生き物を飼います場合には高齢者の方とか婦人の方々でも、そういう高齢者の生きがい事業といった形で入れているものもあるわけでございますから、そういうことも今後もやっていきたいと思います。  ただ、私が申し上げますのは、やはり一、二頭でそれで生計が立つということはこれは不可能でございますので、いろんなそういうものを努力を重ねながら、やはりある程度経済的基盤を持つ形に伸びていっていただきたい。そうでございませんと国民に納得のいく値段で肉を供給するということがだんだんむずかしくなるわけでございますので、その辺は各地域の実情に応じた御努力を期待しているわけでございます。
  95. 下田京子

    ○下田京子君 ちょっと明確にお答えいただきたいんですが、地域努力結構ですでこっちへ置くんではなくて、そういう努力を、その肉用牛生産振興の地域計画づくりの一つの政策的な考え方においてそういうものも包含しながらやっていただくということで理解してよろしいですね。
  96. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 先ほど申しましたように、基本方針というものを国はつくりまして、政策誘導の方向づけをいたします。これを現実に肉づけをしまして県計画、市町村計画をおつくりいただくわけでございますので、そういう中で地域の実情を織り込んだ計画としていただくことが望ましいと思います。
  97. 下田京子

    ○下田京子君 そこが非常に大事だと思うんですね。繰り返しませんけれども、本当に国が基本計画をつくって都道府県がつくって市町村がつくるわけですからね、そういうときに生かしていただきたいと思います。  ところが、ここでもいろいろ問題がございまして、一つはいろいろ努力しているんですけれども、子牛価格が低迷している。これはいろいろ言われておりますけれども、ぜひこの子牛価格の改善といいますか、これを図っていただきたい。今回は子牛価格安定制度ということを法的に明確化したという点では一定の意味はあるわけですが、中身を見ればさしていままでやってきたところと変わっていないわけなんで、ぜひここは努力していただきたい。さっき御紹介いたしました広島のママさん牧場のお母さんたちも、子牛価格が低迷しておりまして、とにかくお勤めに出ているお父ちゃんの給料で牛を飼ってやっているような状態だとか、息子からは採算に合わないものは母ちゃんやめろと言われて、幾ら牛がかわいくても、そして農業を愛していても、こうなるともうどうにもならないということも言われていましたんで、ぜひここも改善方いただきたい、こう思います。
  98. 石川弘

    政府委員(石川弘君) いまのままではございませんで、私どもが予算措置だけでやっていることが国の法律として、制度として確立するということはそれだけ信頼性が全く違うわけでございます。いままでともすれば金がなくなればあの協会はおしまいではないかと、こう言われてきましたのが、今度は法律によりまして確固たる基礎を得るわけでございますし、具体的にもたとえば都道府県の協会が金がなくなりましたときに国の協会から貸します金の量なりあるいは金利水準等も大幅に改善をしておるわけでございますので、私どもはこの制度改正によりまして子牛価格安定のためにはかなりのプラスになると思っておりますし、そのような運用をするつもりでございます。
  99. 下田京子

    ○下田京子君 局長、よく聞いていてくださいよ。私は法的に明確化したというのは一定の意味はあると、安定にしたんだから。だけど、中身の点では大した改善になっていないんで、もっとがんばってくださいよと、こういうことを言っているんです。  それで、資金問題でもお話申し上げたいと思うんですが、さっきも他の委員からお話ありました例の畜産経営拡大資金の問題ですけれども、これは制度発足の三十九年当時九百五十四件ございましたのが最近、近年、この二、三年が十件台だということで、なぜこんなに落ち込んだんだというときに、局長の御説明では、その減退の理由として二つほど挙げられたと思うんです。一つは経営面での困難と、それから二つ目には自立経営資金の方が条件がよいと、こういうことなんで、全くそのとおりだと思うんですよ。  問題はやっぱりこの自立経営資金、つまり、総合施設資金ですね。これはどちらかといえば中核農家が中心になるでしょう。この畜産経営拡大資金の方というのはどちらかといえば零細なんですね。今回の法改正に伴いまして償還期限を五年ほど延長しましたけれども、金利の面ではどうかといえば改善がないわけですね。この施設資金と比べましても〇・五%落ち込んでいるわけですから、一つにやはりこの金利の改善、あるいは運用面で条件緩和をして借りられやすく、しかも局長自身指摘されているように、経営が困難であるという状況の中であればもっと改善を図っていただきたいと思います。
  100. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 私どもも金融面につきましては、今回この資金の貸し付け、償還条件、据え置き期間だけではございませんで、近代化資金の借り方等につきましてもいろいろ改善の努力をしたわけでございます。さらに金利水準をも下げたらというお話でございますが、私どもの今回のいろいろな交渉の経緯の中でやはり最大の問題点は償還条件、特に据え置き期間が短いことにあるのではないかと思っておりまして、そこを五年間という、まあ三年を八年といいますのはかなりの長期でございます。そこに努力を集中しまして、こういう改善案を御審議いただいているわけでございます。金利につきましては、さらに安い方がもっといいという御意見があろうとも思いますけれども、全体のいろいろな交渉の中でこういうことが現時点でわれわれの努力としてやりました限度でございます。いろいろと今後の問題としても考えていきたいと思っております。
  101. 下田京子

    ○下田京子君 大臣、いまいろいろ出てきた予算面にかかわる点、こういう点での御努力は大臣の方からより積極的に図っていただきたいと、こう思うんですが、直截的に大臣にあとお聞きしたいのは、この前、四月二十六日ですか、交渉にちょうど出かけられているときに当委員会で私質問いたしました牛肉自由化、枠拡大の問題なんです。  現在、こうして国内の肉用牛の振興ということで法律を審議し、通していって、今後大いに力を入れていこう、こういう中にあって、やはりアメリカ、豪州等の牛肉の自由化、枠拡大に毅然たる態度で臨むということがいよいよ重大になってきたと思うんですね。ところで大臣、先般私言いましたときに私の質問に、いま自由化はもちろん枠の拡大はしないと、こういうふうに述べられまし た。で、いまというのは実は来年三月までのことなんだということで発言されたんです。私はあのとき、それは重大だと言いまして、現実いま、その日米の自由化、枠拡大問題で議論になっているのは、来年四月以降の話なんですね。そういう点で大臣の決意というのは何の意味もないと思うんです、つまり、いまというのは来年三月までは枠拡大しないなんてことだったら。その辺の真意をもう一度明確にお聞きをしたいと思うんです。
  102. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) 来年三月以降も枠の拡大は必要はないと私は考えますね。大体需給状況、現在の状況を見ましても国内生産の伸びを考え、それからいわゆる消費需要の伸びを考えてみますと、現在決めておる枠を広げる必要はないのではないか、ということは来年四月以降のことなんですよ。それを申し上げているわけですから……。
  103. 下田京子

    ○下田京子君 もう一度確認しますが、そうすると、二十六日、先般私が質問したときに、いま枠拡大必要ないというのは来年三月までだというのは誤りで、来年四月以降の、つまりいま日米交渉の問題になっていることについても、需給上から見て枠の拡大も必要ないということをはっきりお述べになっているんだということですね。
  104. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) 別にただ、いまという表現をしましたから、来年四月以降のことではなくて、現時点の、今年度中のことを言ったわけでもないんですよ。私は、いまの時点で考えてみると来年以降の枠の拡大も必要はないのではないかと、こう申し上げておるわけですから、いまの時点で考えると。
  105. 下田京子

    ○下田京子君 そのいまの時点で考えてみるとそうだけれども、また後々変わるというふうなことになりませんように、先般来の日米交渉の再開のその中身等を見ましても、アメリカの態度というのが非常にかたいということは、大臣うなずいておられますが、おわかりだと思うんです。ですから、いまの時点ではなくて、その交渉でどうなるかということも含んでおるんだろうと思うんですけれども、しかし、そこはきちっとした態度で臨まなければならないということを重ねて指摘しておきたいと思います。
  106. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) きちっと私はしておりますけれどもね。ただ交渉事ですから、農林水産大臣だけでこの問題が処理できないということも下田先生もよく御理解いただけるでしょう。したがって、大事をとって言葉にあやを少し残しておるわけでございまして、私の信念としては必要はないと、こういう信念で進めておりますので、どうぞ御安心をください。
  107. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 、私は、この行管庁が本年の一月、「畜産物の生産及び流通に関する行政監察結果報告書—牛肉を中心として—」を出されておりますので、この点を中心にいたしまして四、五点お伺いをしておきたいと思います。  第一点は、この例の畜産振興事業団が行っています事業で、この差益金が五十三年度は四百四十六億円、五十四年度四百十三億円と、五十五年度は二百三十九億円と、こう減ってはきておりますが、この輸入牛肉差益金を財源として行っている指定助成対象事業の問題につきまして、行管としてはこのような勧告をしているわけですが、それはこの差益金の性格から見て、肉用牛の生産振興対策を重点にしてこれからその助成対象事業をやっていきなさいと、こういうことを指摘をしているわけでございますが、この勧告をどのように受けとめ、どういうようにこれから対処していこうとなされておるのか、そこを第一点お伺いします。
  108. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 実はこの指定助成対象事業につきましては、その勧告にもございますように、牛肉の差益から出ておるものでございますから、牛肉の生産対策、これは生産者だけのためということではございませんで、生産者が結果的に努力することによって安い国産牛肉をつくれるようにというようなものと、それから牛肉の流通消費対策が極力これに充てておりまして、比率で申しましても牛関係は五十五年度で九七%、五十六年度九六%、五十七年度が若干下がりますが八二%、それから五十八年度の計画では九八%というぐあいにほぼ肉に集中して、牛肉に集中して現在も使っております。若干鶏とか何かに使うのに問題があるんではないかという御指摘があったわけでございますが、これは非常に限られた生産技術普及その他のようなものでございますので、私ども当然にそういう運用をいたしておりますので、今後におきましても牛肉関係に主力として使っていくと。ただ、酪農に使っておりますものも、これは先ほど申しましたように、わが国の牛肉の供給の七割がこの酪農から出ておりますので、牛関係を主力に置いて使うというのは今後もやっていくつもりでございます。
  109. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それでは、第二点でございますが、この中にも先ほども質疑がございましたが、例の牛肉の格づけ制度ですね、これについても触れておりまして、格づけ頭数の割合は四五%にとどまっておると、そして、現行取引規格の適用条件は全国で統一されていないこと、あるいは部分肉取引規格による部分肉の格づけは二%にすぎないこと。またこの格づけが生産上の品質改善にも十分活用されていないこと、こういうことが指摘をされておりますけれども、この格づけ問題につきましてどのように今後対処されていこうとしているのか、お伺いをします。
  110. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 格づけの中で、いま申されましたように市場取引における格づけはまだそれでも四五%台でございますが、部分肉は実は部分肉流通のための規格というのができましたばかりでございまして、まだまだそこまで及んでいないわけでございます。それから規格等につきましても、取引実態、これは同じ、ここは一種の商慣行がございまして、これが統一されてないというような実態がございます。やはり私どもとすればこの格づけが消費のサイドでも、あるいは生産サイドでも非常に重要だと考えておりますので、五十八年度におきまして、学識経験者、それから生産流通関係分野の専門家を構成員とします検討委員会を設けまして、まず生産流通実態の変化に対応しました規格取引のあり方とか、格づけ結果の生産流通上の活用方策も含めまして検討に入っておるところでございます。至急問題を詰めまして実用の段階に入らせ、またこれの普及に努めたいと思っております。
  111. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 次に、この行管は、肉用牛生産対策について、その中の公共育成牧場の利用状況及び繁殖雌牛導入に係る事業に触れておりまして、維持管理が不十分なため有効利用をされていない牧場が中にあるんだと、こういうことも指摘をしています。  そこで、農水省としてこの牧場の経営利用状況の実態などをどのように把握をされておるのか、あるいはまた公共育成牧場を活用し、子牛生産基地としての機能向上を図るためどのような今後方策を講じようとされておるのか、これをお伺いをいたします。
  112. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 公共育成牧場は全国で約千二百弱のものがございまして、これはそうでなくても土地の利用が問題な中で、比較的公的な、これは公共団体とかあるいは農協等でございますが、公的な利用を通じまして草地利用するわけでございますので、私どもとすればこれが何とか活用できるようにということを常々考えておりまして、公共育成牧場の利用現状等につきましてもいろいろ調査をいたしております。その結果、一部におきまして御指摘のような利用度が低いものその他がございます。もちろんこれつくりましてから現在までの間に畜産の状況も大分変わっているというようなこともございますけれども、私どもはせっかくの広がりというものを有効に活用する必要があろうと思っておりますので、五十八年度の予算から公共育成牧場の再編整備、それから利用農家の飼料基盤の整備、これは夏山冬里と申しまして、夏は公共牧場にやりますけれども、里へ返しましたときに農家の周辺で草地が造成されてないということから利用度が低いということもございますので、こういうものの再編整備対策だと か、あるいはその中でも指摘されております放牧衛生対策等を充実させてまいるつもりでございます。  それからもう一点の御指摘の繁殖雌牛導入事業でございますが、これはものによっては規模拡大のためにやっているわけでございますが、勧告の中では規模拡大じゃなくて現状維持程度のものがあるということでございましたけれども、先ほども申しましたようにこの繁殖のところが一番経営規模が小さいのですが、何度も申しますが、一二%ぐらいの農家がすでに五頭以上になったとか、あるいは五頭以上層から四割の牛が出てきているということもこの種の事業の成果であろうと思っております。そういう規模拡大につながるというような方向に進みますようにさらに地域地域を指導してまいるつもりでございます。
  113. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 行管はさらにこれは勧告という形で、牛肉を安く供給するためには、「繁殖段階においてはもとより、肥育段階においても生産コストを低減する必要がある。」。そして、「肥育段階における生産コスト低減のための方策としては、肥育期間の適正化と粗飼料の有効活用が考えられる。」と、こういうように前提を置きながら、いろいろのことを指摘をしながら、そして次の処置を講ずる必要があるのではないか、こういうことを述べているんですが、一つは、「肥育期間の適正化が図られるよう、都道府県等を通じ肉専用種肥育経営農家に対し適切な指導を行うこと。」。第二番目として、「濃厚飼料依存型の飼養形態の改善を図るため、サイレージの普及等による粗飼料給与率の向上につき検討すること。なお、稲わらの有効利用についても検討すること。」と、こういうように指摘をしておるわけでございますが、これについてはどのように考えられますか。お伺いをいたします。
  114. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 肥育期間の長期化の問題につきましては、すでに家畜改良増殖目標の中でもより短縮する方が経済的に高いということで、そういうことをわれわれの施策としてもやっておりますし、また先ほどもちょっと申し上げましたような経済肥育のための実験事業等も実用化させておるわけでございますが、残念ながら農家の段階で肥育期間が長期化の傾向があるわけでございます。こういう点につきましては、今度の基本方針の中にも明らかにうたいますと同時に、それが県段階、市町村段階で着実に実行できるよう指導の体制を強くしていくと同時に、やはりこの背後には、サシ志向のようないわば商品流通の面からするところの誘導も必要でございますので、先ほど申し上げました格づけ問題その他の商品規格の問題にも前進を図らなければならないと思っております。  それからそのほかの御指摘の中の自給飼料の向上問題、これはもう今回の政策の中でも最重要なことでございまして、極力購入型の飼料から自給飼料に転換させるための草地造成だとかあるいは飼料作物の導入といったようなことをこれも基本方針にうたいながら、各実地に実行できるような対策を考えてまいりたいと思っております。
  115. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 肉用牛の例の病気を防ぐことですね。これは非常に重要な懸案の一つと言われているわけですが、この行管の調査によりますと、ピロプラズマ病の発生が公共育成牧場に見られるというようなことでいろいろな調査の結果を出しているわけでございますが、農水省としてこの実態をどのように把握をされておるのか、あるいはこの事故を防止するために今後どのような方向で臨もうとされておるのか、その点をお伺いをいたします。
  116. 石川弘

    政府委員(石川弘君) ピロプラズマは、これはダニによって媒介される病気でございますが、放牧時に大変これにかかることによる事故がございます。放牧時のピロプラズマ病による発病率は、五十四年で見ますと四七%前後と大変高いわけでございます。これをやはり防ぎませんと、せっかく放牧しましてコストを安くしようと思っても事故がふえるわけでございまして、私どもまず入牧いたします時期の衛生検査だとかあるいはピロプラズマ病の原虫を媒介しますダニの駆除が効果的であるということで家畜保健衛生所が中心となりまして、その対策をやってきているわけでございますし、まあダニの駆除をしますための防除用の器具の整備等につきましても助成をしてきております。さらに、先ほど申しました公共育成牧場に関する再編整備の中で、今年度からそれぞれの牧場に適しました飼養管理プログラムというものを作成しまして、これによりまして放牧に伴う疾病防止を図るというための衛生対策もこの事業の中に入れてございます。いろんなことを考えておりますが、これはかねがね言われておりながら、なかなか効率が上がらない問題でもございますので、ひとつ本腰を入れて一つ一つの放牧地においてこれが実行できるようにやっていきたいと思っております。
  117. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 最後にお尋ねを申し上げますが、これは法案と直接関係ありませんが、いま多少議論されておりまする例のLL牛乳の問題ですが、これは何か三カ月ないし六カ月くらいもつというわけですから、これはもう北海道で生産されたものが沖縄まで自由に牛乳を流通させることができると、こういうことで大変な問題ではないかと思うのですが、これについて厚生省は衛生上特段問題はない、こういうような見解も明確にしているわけですが、これが本格的に出回るということになりますと、さまざまいろいろな問題が出てくると思うのですが、これについて農水省としてこのLL牛乳、一部では大企業ではもう生産をしているようですが、しかし、これはいまは特殊なところに流通されていると、こういうことを聞くわけですが、この問題について農水省として現時点においてどのようにこれを取り扱おうと考えておられるのか、お伺いをして終わります。
  118. 石川弘

    政府委員(石川弘君) LLにつきましては、いろいろと過去においても問題がございましたが、現時点で厚生省が要冷蔵要件を外すかどうかということで、特に最近また問題が顕在化したわけでございますけれども、わが国の場合は御承知のように、この大都市圏の周辺でも、たとえば東京の周りの千葉県でも茨城県でも、あるいは栃木県、群馬県でも大規模に酪農をやっているというように、ほとんどの地域で実はフレッシュの牛乳を飲もうと思えば飲める条件がございます。それから消費者も牛乳に関しては基本的にフレッシュ志向でございまして、たとえば牛乳の日付がちょっと古いものになりますと大変売りにくいというようなこともございまして、一般論としますればフレッシュが主力であることは今後も変わりがないと思います。フレッシュに対しましてLLの利点としましては、たとえば離島だとか僻地だとか、あるいは船舶用だとか、そういう面でフレッシュでは供給しがたいところに供給できるというメリットと、それから最近牛乳自身が他の乳飲料、乳飲料と申しますか、他の飲料、たとえば豆乳だとかスポーツドリンクといったようなもので、主として自動販売機等の販売の場合に、フレッシュの場合に非常に競争がしにくうございますので、そういう面で競合商品にかえって駆逐されるというような面もございます、やってないことが。  それからもう一つは、やり方次第では牛乳というのは需給調整がむずかしいわけでございますが、うまくやり方を使えば、これが需給調整の要因になるという、そういう面でのプラス面もあるわけでございます。しかし、逆の面で御心配する立場から申しますと、これがいま市乳が大変混乱をいたしておりますが、それをさらに混乱を拡大させる要因があるんではないかとか、あるいはLLそのものがまだ完全に安心できる製品ではない。たとえばピンホールといったような問題がありますとか、そういうような御議論もありまして、いまそういう面でいろいろ御議論があるわけでございますが、これは要するにLL自身はすでに生産は認められているわけでございまして、これを要冷蔵要件を外すかどうかというところに論点があるわけでございますが、実は問題点の大半はこの要冷蔵かどうかということよりも、そもそもLLをどう位置づけ、どのように生産並びに流 通するかということにかかるわけでございまして、LLのメリットを生かしながらそういう生産サイドあるいは流通、消費のサイドで利益のある使い方をすれば、LLそのものが危険なものとは私どもは考えておらないわけでございます。  それはどういうことかと申しますと、たとえば現段階におきましても、LLにつきましては、生産者あるいはメーカー等が協議をいたしましたいわばLL三原則と称するようなものがございまして、この中では牛乳というのはフレッシュというものをまず大原則にするとか、ロングライフミルクの海外からの輸入は反対するとか、要冷蔵要件は当分現行の取り扱いにしようとか言いながら、必要に応じて協議をする、あるいは当分年間五万キロリットルの範囲内にするといったような、いろんな生産者あるいはメーカー等の合意の上で動いているわけでございまして、私どもは、今度の問題も、やはり生産、流通、消費の方々がLLのメリットを生かしながらやれるところはどこかということが合意が得られますれば、混乱なしにこの問題も解決できるのではないか。たとえば先ほどちょっとお話のありました北海道の牛乳の問題一つとらえましても、北海道でLLに詰めます原価が幾らだというようなことが問題を大きくする可能性はあるわけでございます。そこが調整がとれておりますれば別段LLが北海道対内地の紛争の道具になるわけでもございませんし、そういういろんな問題点を関係者が煮詰めた上で事柄が前進することが望ましいと考えております。  私ども、そういう意味で、最近生産者あるいはメーカーの方々がそういうことをお話し合いになる場を設けておりまして、数日前そういう会合も開かれたわけでございますが、そこではいろんな論議がされておりまして、こういう論議が深まりまして、関係者が皆さん納得をするような形の上でこの問題が前進するように指導するつもりでございます。
  119. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 他に御発展もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。  討論は両案を一括して行います。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより両案の採決に入ります。  まず、酪農振興法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  121. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  川村君から発言を求められておりますので、これを許します。川村君。
  122. 川村清一

    ○川村清一君 私は、ただいま可決されました酪農振興法の一部を改正する法律案に対し自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     酪農振興法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   大家畜生産の振興は、今後の牛肉、牛乳・乳製品の需要の堅調な伸びに応えるとともに、国内草資源の有効活用とあわせ地域農業の展開、農山村の振興を図る上で重要な課題となっている。   よって政府は、大家畜生産を我が国の土地利用型農業の基軸として位置づけ、その積極的振興が図られるよう次の事項の実現に万遺憾なきを期すべきである。  一、牛肉生産の拡大と肉用牛経営の安定・合理化を図るため、繁殖経営等の規模拡大、乳肉複合経営の育成、一貫経営の推進、肥育期間の短縮等に必要な各種施策の的確な推進に努めること。  二、牛肉の輸入自由化及び枠拡大要請については、本委員会における「農畜水産物の輸入自由化反対に関する決議」に即して、国内の畜産農家が犠牲となることのないよう対処すること。  三、酪農・肉用牛生産近代化計画の作成に当たっては、肉用牛経営の地域ごとの実情に十分配慮し、適切な振興合理化方策を明らかにするとともに、経営改善計画の認定、資金の貸付けに当たっては、健全な経営の確保に十分配慮した指導を行うこと。   また、畜産経営拡大資金については、資金需要の実態に応じた融資枠の確保、借入手続の簡素化等に努めること。  四、繁殖経営の安定に資するよう肉用子牛価格安定事業の推進に必要な予算の確保及び乳用雄子牛に係る加入率の向上に努めること。   また、これとあわせ、肥育農家に対する素牛価格の安定対策の推進に努めること。  五、牛肉の流通合理化を一層推進するため、産地食肉センター等の整備、部分肉取引の促進、取引規格の改善、品質表示の普及等必要な措置を講ずること。  六、酪農経営の固定化負債の整理等、経営体質の改善強化を図るための各種施策を的確に実施すること。   また、飲用牛乳の流通については、秩序ある取引と適正な価格形成が図られるよう適切に対処すること。  七、合理的な大家畜生産基盤となる粗飼料の供給を確保するため、草地開発と田畑輪換使用のための土地改良の推進、裏作の利用促進、低未利用資源の活用、林間放牧の推進等、地域の実態に応じた施策を積極的に推進すること。   また、転作田による良質粗飼料の確保を図るとともに、飼料用稲に関する試験研究を推進すること。   右決議する。  以上でございます。
  123. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいま川村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  124. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、川村君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。金子農林水産大臣
  125. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  126. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、家畜改良増殖法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  127. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  鶴岡君から発言を求められておりますので、これを許します。鶴岡君。
  128. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 私は、ただいま可決されました家畜改良増殖法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     家畜改良増殖法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、家畜改良増殖事業の推進が、畜産の振興及び農業経営の改善にとって極めて重要であることにかんがみ、本法施行に当たっては、次の事項に十分留意し、適切な措置を講ずべき である。  一、家畜受精卵移植については、その健全な発展を図るため、移植技術の開発・普及技術者養成等に努めるとともに、特定近縁系統への集中等家畜改良に悪影響が生ずることのないよう適切な指導を行うこと。  二、家畜受精卵については、健全かつ優良な受精卵の確保が可能となるよう、その検査等につき十分指導するとともに、凍結保存・融解技術等の確立に努めること。  三、海外から輸入される家畜人工授精精液及び家畜受精卵の使用については、国内における家畜改良増殖体制に悪影響を及ぼすことのないよう十分配慮すること。   また、優良遺伝子の導入が図られるよう、海外との情報交換や技術交流を積極的に進めること。  四、畜産経営の体質強化に資するよう、家畜改良増殖目標の達成のための各種施策を的確に推進すること。   右決議する。  以上でございます。
  129. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいま鶴岡君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  130. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 全会一致と認めます。よって、鶴岡君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金子農林水産大臣
  131. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  132. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  134. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。金子農林水産大臣
  135. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) 沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  沿岸漁場整備開発法は、沿岸漁業の安定的な発展等に寄与することを目的として昭和四十九年に制定されました。以来、同法に基づき、沿岸漁場整備開発計画を策定し、魚礁の設置等の事業を計画的に推進するとともに、漁業協同組合等による特定の水産動物の育成を図る事業の実施を推進してきたところであります。  しかし、近年、国際的に二百海里体制が定着してきたことに伴い、わが国沿岸漁場の生産力を一層増進することが必要となっております。  このため、栽培漁業を計画的かつ効率的に推進するとともに、沿岸漁業と釣りとの間の安定的な漁場利用関係の確保を図ることとし、この法律案を提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、栽培漁業の計画的な推進のための措置についてであります。  農林水産大臣は、栽培漁業の対象とする魚種について、その種苗の生産及び放流並びに育成に関する基本方針を定めることとしております。  また、都道府県は、国の基本方針と調和を図りつつ、当該都道府県の地先水面の実情に応じた基本計画を定めることができることとしております。  第二に、栽培漁業の効果の実証及びその普及を図るための措置についてであります。  漁業者による栽培漁業の本格的実施を推進するためには、生産された稚魚を放流して漁業生産の増大の効果を実証し、その成果を漁業協同組合等に対し普及する放流効果実証事業の効率的な実施を推進する必要があります。  このため、都道府県知事は、この事業の実施主体として、一定の要件を備える民法法人を、当該都道府県に一を限り指定することができることとしております。  第三に、沿岸漁場の安定的な利用関係を確保するための措置についてであります。  国民のレクリエーションとしての釣りが盛んになったことに伴い、沿岸漁場の利用をめぐり、漁業との間で紛争が見られるようになっております。  このため、漁業協同組合等と釣り船業者団体等との間で漁場利用協定の締結が促進されるよう都道府県知事は勧告をすることができることとするとともに、当該漁場利用協定の遵守について紛争が生じた場合にあっせんをすることができることとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決をいただきますようお願いいたします。
  136. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。松浦水産庁長官
  137. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  まず第一に、目的規定の改正についてであります。  目的規定につきましては、沿岸漁場の生産力の増進を図るという観点から、栽培漁業の計画的かつ効率的な推進に関する措置及び沿岸漁場の安定的な利用関係の確保に関する措置を加える等の改正を行うこととしております。  第二に、栽培漁業の計画的な推進のための措置についてであります。  農林水産大臣は、沿岸漁場の生産力の増進に資するため、魚介類の稚魚の生産、放流及び育成に関する基本方針を定めなければならないものとし、基本方針においては、栽培漁業の推進のための基本的な指針と指標、技術の開発に関する事項等を定めることとしております。  また、都道府県は、その区域に属する水面における沿岸漁場の生産力の増進に資するため、国の基本方針と調和を図りつつ、基本計画を定めることができることとしております。この基本計画においては、栽培漁業を推進することが適当な魚介類の種類、その種類ごとの稚魚の放流数量の目標、技術の開発、漁業協同組合等が実施する特定の水産動物の育成を図る事業に関する事項等を定めることとするほか、放流効果実証事業に関する事項を定めることができることとしております。  第三に、放流効果実証事業についてであります。  都道府県知事は、基本計画に放流効果実証事業に関する事項を定め、業務実施計画に基づいて、稚魚の放流等を行い、当該放流によって漁業生産の増大の効果を実証し、その成果を漁業協同組合等に対し普及する事業を実施する民法法人をその申請により、当該都道府県に一を限り指定することができることとしております。  この場合、都道府県知事は、放流効果実証事業が適正かつ確実に実施されることを確保するため、その指定を受けた民法法人に対し、当該事業に協力する者が任意に拠出した協力金の収支に関する事項を含む事業報告書を提出させるとともに、業務の方法の改善命令等必要な行政上の監督を行うことができることとしております。  第四に、漁場利用協定についてであります。  漁業協同組合等と釣り船業者の団体等が、漁場 の安定的な利用の確保に必要な事項の遵守につき、それぞれの団体の構成員を指導すべきことを内容とする漁場利用協定の締結をしようとする際に、相手方が交渉に応じないときは、都道府県知事に対し、交渉に応ずべき旨の勧告をするよう申請することができることとしております。この場合において、都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該相手方に対し、交渉に応ずべき旨の勧告をすることができることとしております。  また、漁場利用協定の遵守につき紛争が生じた場合には、都道府県知事は、あっせんをすることができることとしております。  なお、このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上をもちまして、沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  138. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ─────────────
  139. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 次に、漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。金子農林水産大臣
  140. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) 漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  漁業法及び水産資源保護法に規定する罰金の額は、それぞれ昭和二十四年、昭和二十六年の法制定後現在に至るまで改正されておりません。この間における物価上昇等経済事情の変動には著しいものがあり、両法の罰金の額は現在の経済事情等に必ずしも適合したものとなっておりません。また、栽培漁業の進展に伴い、密漁等両法の違反が多発しており、その発生を防止することが緊要となっております。  このため、漁業法及び水産資源保護法に規定する罰金の額等について所要の改正を行うこととし、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、漁業法及び水産資源保護法に規定する罰金及び過料の額をそれぞれ十倍に引き上げることであります。  第二に、漁業法及び水産資源保護法の規定に違反した者に科する没収の対象として、水産動植物の採捕の用に供される物を加えることであります。  以上がこの法律案の提案の理由及び改正内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  141. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会