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1983-03-23 第98回国会 参議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)    午前十時三十四分開会     ─────────────    委員異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     伊藤 郁男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 岡部 三郎君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 瀬谷 英行君                 鶴岡  洋君     委 員                 大城 眞順君                 北  修二君                 熊谷太三郎君                 古賀雷四郎君                 田原 武雄君                 中村 禎二君                 初村滝一郎君                 川村 清一君                 村沢  牧君                 中野  明君                 藤原 房雄君                 下田 京子君                 伊藤 郁男君    国務大臣        農林水産大臣   金子 岩三君    政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房審議官     船曳 哲郎君        農林水産大臣官        房予算課長    京谷 昭夫君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        林野庁長官    秋山 智英君        水産庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (農林水産省所管及び農林漁業金融公庫)     ─────────────
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十二日、田渕哲也君が委員を辞任され、その補欠として伊藤郁男君が選任されました。     ─────────────
  3. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) この際、御報告いたします。  去る十五日、予算委員会から、二十三日及び二十四日の二日間、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、農林水産省所管農林漁業金融公庫について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  金子農林水産大臣から説明を求めます。金子農林水産大臣
  4. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 昭和五十八年度農林水産関係予算について、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十八年度一般会計における農林水産関係予算総額は、総理府など他省庁所管分を含めて三兆六千六十七億円で、対前年当初予算比二・五%、九百四十三億円の減額となっております。  本予算におきましては、財政再建行政改革推進方向に即し、限られた財源の中で優先順位の厳しい選択を行い、予算のより重点的な配分に努めつつ、農林水産行政を着実かつ効率的に展開するよう努めたところであります。  以下、予算重点事項について御説明いたします。  第一に、国土資源を有効に利用し、生産性の高い農業を実現するため、構造政策推進することであります。  今日、土地利用型農業規模拡大生産性向上を実現し、その体質強化を図ることが緊急の課題となっております。  このため、土地利用型農業経営規模拡大に資するよう、中核農家を中心に兼業農家等を幅広く包摂した地域農業集団が行う農用地の利用調整活動等に対し助成を行うとともに、新農業構造改善事業後期対策を発足させ、土地利用型農業構造改善重点を置いて実施することとしております。  第二に、需要の動向に応じた生産性の高い農業生産体制整備を図ることであります。  まず、水田利用再編対策につきましては、第二期対策を引き続き着実かつ適確に実施することとし、奨励補助金等として三千四百九億円を計上しております。  次に、耕種部門の各作目生産対策等統合・メニュー化した新地域農業生産総合振興対策につきましては、新たに稲の生産性向上対策を含めるなどその内容充実し、五百五十九億円を計上しております。  また、畜産関係生産から流通消費に至る各種対策統合・メニュー化した畜産総合対策につきましては、酪農と肉用牛生産振興合理化を総合的、一体的に推進することに重点を置いてその内容充実し、三百二十一億円を計上しております。  第三に、農林水産業発展基礎となる技術開発につきましては、バイオテクノロジー等革新的技術発展を踏まえ、長期的視点に立って試験研究推進することとしております。また、この方向に即して農業関係試験研究機関再編整備を行うこととしております。  次に、普及事業につきまして、地方公共団体自主性の発揮を促進するとともに、農林漁業をめぐる諸情勢変化に即応した事業の効率的、弾力的な運営を図るため、制度運営改善を図るほか、的確な統計情報の作成、提供により効率的かつ適正な施策推進に資することとしております。  第四に、農業生産基礎的条件である農業生産基盤整備につきましては、生産性向上及び農業生産の再編成に資する事業等重点を置いて推進することとし、九千億円を計上しております。  また、農業及び農村長期的展望に立って、第三次土地改良長期計画を総事業費三十二兆八千億 円で策定することとしております。  第五に、国内生産との結びつきを持った健康的で豊かな食生活定着促進を図るとともに、農産物需給価格の安定に努めることとしております。  また、食品産業近代化流通合理化を進めてまいります。  第六に、農林漁業基盤とする活力ある農山漁村を建設するため、生産基盤生活基盤の一体的な整備推進するとともに、農林漁業従事者の福祉の向上に努めることとしております。  このため、農村総合整備事業農村地域定住促進対策事業、第三期山村振興農林漁業対策事業等推進を図るほか、農業者年金制度の適切な運営を図ることとしております。  第七に、国際協力推進輸入安定確保等を図ることであります。  今後とも食糧相当部分海外に依存せざるを得ないわが国としては、世界食糧需給の安定のために積極的に農業協力推進するとともに、わが国食糧輸入の安定に努めることとしております。  以上申し上げましたほか、農業金融充実農業災害補償制度の円滑な運営等により、農業経営の安定を図ることとしております。  第八に、森林林業施策に関する予算について申し上げます。  近年、林業生産活動が停滞し、森林保育管理が十分に行われていない状況が進行していることにかんがみ、緑資源確保に関する啓蒙普及等を行うとともに、森林適正管理を総合的に推進することとしております。  また、国土保全対策充実林業生産基盤整備を図る観点から、治山、林道造林林野関係一般公共事業について二千八百八十一億円の予算を計上し、これらの充実強化と計画的な推進を図ることとしております。  さらに、国産材供給体制整備を進めるとともに、マツクイムシ対策充実を図るほか、新林業構造改善事業林産集落振興対策等推進いたします。  第九に、水産業振興に関する予算について申し上げます。  漁業経営は、諸外国による二百海里規制の強化燃油価格の高水準での推移、水産物需要低迷等によりきわめて困難な状況に置かれております。このような事態に対処するため、漁業生産構造再編整備推進に必要な助成や融資の充実に努めるとともに、新たに、省エネルギー化、低コスト化を実現する新しい漁業技術体系の確立を図ることとしております。  また、栽培漁業推進体制整備沿岸漁場整備開発事業推進等により「つくり育てる漁業」の振興を図るほか、水産物流通加工対策消費拡大対策等を進めることとしております。  さらに、漁業生産基盤である漁港の計画的整備を進めることとし、千六百五十五億円を計上しております。  このほか、漁船積み荷保険本格実施等漁船損害等補償制度改善海外漁場確保漁場環境保全対策等推進いたします。  次に、特別会計予算について御説明いたします。  まず、食糧管理特別会計につきましては、米の消費拡大推進するほか、麦の政府売り渡し価格の引き上げ、管理経費節減等食糧管理制度運営改善合理化に努めることにより、一般会計から調整勘定への繰入額を四千七十億円に減額したところであります。  また、五十四年度から計画的に実施している過剰米の処分に要する経費として、一般会計から国内米管理勘定へ一千六百五十四億円を繰り入れることとしております。  国有林野事業特別会計につきましては、国有林野事業経営改善を計画的に推進することとし、事業運営改善合理化等自主的努力とあわせて、国有林野における造林林道事業に対する一般会計からの繰り入れを行うほか、財政投融資資金の導入の拡大を図ることとしております。  このほか、農業共済保険等の各特別会計につきましても、それぞれ所要の予算を計上しております。  最後に、財政投融資計画につきましては、農林漁業金融公庫等による総額八千三百九十五億円の資金運用部資金等の借り入れを予定しております。  これをもちまして、昭和五十八年度農林水産関係予算概要説明を終わります。
  5. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 村沢牧

    村沢牧君 大臣所信表明で、農業を取り巻く情勢が大変厳しいこと、また試練の時を迎えておることを強調しておられる。農業を取り巻く情勢の厳しいことはだれも承知をしているところでありますが、問題はなぜそんなに厳しくなってきたかという分析と、いままで政府が進めてきた農業施策というのは適切であったか否かという反省、さらにはその上に立って日本農業をどのように展望発展をさせていくかという方針が出されなくてはならないというふうに思います。  大臣所信表明を聞いておりましても、農業が厳しくなってきた背景として、わが国経済事情変化やあるいは国際環境変化等を強調しているわけでありますが、問題はそれだけでいいのか。つまり農水省当局が進めてきた施策は果たして適切であったのかどうか、この分析といままでの施策についての反省があったらその反省、これらについてまずお聞きをします。大臣ですよ、大臣
  7. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) いろいろ今日まで戦後のいわゆる農政について御批判があろうと思いますけれども、私は、わが国高度成長を来した昭和三十五年以来新しい農業基本法が樹立されまして、その基本法をもとにしていろんな施策が毎年法律改正が行われたり、新法が制定されたりしまして、戦後三十五年以降、二十年経過した今日のいわゆる成長期間に、やはり農業もともに日本経済の進歩とともに歩いてきたと、こういう私は理解を持っております。  ただ、一般鉱工業全盛時代所得水準農業者所得水準を比較しますと、それは大変落ち込みがあります。しかし、私は長い目で見るならば、日本農業が戦前あるいは終戦当時と比較して大変飛躍しておる、このような見方をいたしております。  ただ今日、低成長に入りましてから、やはり農業一般鉱工業落ち込みと同じような、いわゆる農村においては所得水準は年々横ばいになっております。したがって、農業者生活一般鉱工業あるいは給与生活者と比較してよくなっておるかというとよくはなっておりません。その点は、やはり日本全体の経済あるいは国民所得水準考えてみるならば、やはり農政にはまだいろいろやらなきゃならない問題がたくさん山積しております。こういう問題にこれから取り組んでまいりますならば、私は日本農業農業従事者一般国民余り遜色のないいわゆる所得水準を維持して生活を守ることができる、このような考え方でおります。
  8. 村沢牧

    村沢牧君 それでは大臣、いままで進めてきたいわゆる自民党農政農業施策は正しかったと、反省すべきものはないと、そういうことなんですか。
  9. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 反省と言われますと、いろいろ振り返って日本農政考えてみますと、やはり適切を欠いた点もあったかもしれませんけれども、まとめて考えてみるならば大体日本の戦後の農政推進は、私は正しかったと、このような考え方でおります。
  10. 村沢牧

    村沢牧君 私は参議院議員になって六年という、まだ日は浅いわけでありますけれども、しかし、一貫して農林水産委員会に所属をし、今日まで政府の皆さんといろいろと議論をし、検討し、また、私なりきに政策も提言してきました。この六年間に農林大臣鈴木善幸大臣から金子現農水 大臣に至るまで七人変わった。六年間に七人も大臣が変わるということ、そのことも私はどうも不自然なような気がしますが、これは与党のやることであるから私が云々する理由はないと思う。ただ、私は、大臣が何人変わろうともその都度農政発展をすればいい、しかし、私のいままでの論議の中で、また今日の農政の中において日本農業は、残念ながら明らかに後退をしてきておる。たとえば食糧自給率は低下をしている、あるいは農産物輸入は増加をしている、中核農家農業就業者は減少し、さらに所得の格差は大きくなってきておる、農林予算の比率は低下している、この実態大臣はどのようにお考えになりますか。——大臣に聞いているんです、私は。基本的な問題ですから。
  11. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) いろいろ御意見がありますが、鈴木前総理の農相から後七人も六年で農林大臣が変わったとか、いろいろその他、村沢先生から見ると、これは農水省ばかりでなくして日本行政のあり方について全般的に言えることでございますが、やはり大臣が変わっても次の大臣が後を踏襲してよりよき政策を樹立しておるものであると、このように考えていただかなければいまの日本のいわゆる議院内閣制のこの方式である以上はやむを得ないことでありまして、それぞれ何カ月大臣いすにおるかわかりませんけれども、やはりそれぞれの大臣自分の持ち味を生かして、自分の信念に基づいて日本農政に取り組んできたものであると。その結果についてはいろいろ御批判はあると思います。私もやはり大臣になる前はいろいろ農政について批判を持っておりましたから、当然なこととして御意見は受けとめております。
  12. 村沢牧

    村沢牧君 私は大臣にお聞きをしたことは、六年間に大臣が七人も変わって、そのことがどうしたのだと、そんなこと聞いているんじゃないんです。この六年間に大臣が七人も変わるように、先ほども具体的に例を挙げましたが、このように農政が後退してきた、このことについてどういうふうにお考えになるかということを聞いているんです。
  13. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 農政が後退したということは、他産業と比較してやはり結局は農民所得の伸びが落ち込んでおるという結論になるのでしょうと思いますが、その点は先ほど申し上げましたとおり、やはり景気のいいときは農村漁村が悪くて、一般鉱工業従事者その他給与生活者がいいんですから、景気が非常に極端に悪くなると昔から農村は非常に暮らしがよくなる、こういうことが言われておったことは事実でありまして、いまでもやはり農林漁業原始産業に、それを自分の生業としておる階層は、いまのように景気横ばいになったり落ち込んだりするとわりと農村はよくなる。ただ政策面政府がどのように新しい政策を打ち出して、そして、いわゆる農業の足らないものを補充していくか、政策を展開するかということは、それぞれやはりその政治責任がある者、あるいは政府責任であろうかと思います。私は、いままで過去戦後三十四、五年を振り返ってみて全体をみつめて、日本農業が大変たちおくれて後退しておるというような見方はしていないということを申し上げておるのでありまして、一つ一つを取り上げてきますと、やはり農業大変比較にならないほどおくれておるとか落ち込みがあるとかいうような批判は、私自身もそれは大臣にいまなっておりますからそういうことは言えませんけれども、平でおるときは大いに批判もしておったわけですから、十分お考え方なり御批判あるいは御忠告ということは皆私はまじめに受けとめておりますから。
  14. 村沢牧

    村沢牧君 大臣は非常に農業問題についても見識を持っている先輩である。いまお話があったように、野にあるときはいろいろ提言をされておったのですから、大臣といういすに座ったのですから思い切って自信を持って日本農業発展を図ってもらいたいと私は要望しますが、そういう考え方に立って、それでは日本農業わが国経済、国政の中でどういうふうに位置づけるのか、そして発展させていくという展望はないのか、あるいはそのためには具体的に施策をどういうふうにするのか、これらについて大臣どうですか。これから何とかやろうとすること、お答えを願いたい。
  15. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 私、これは政治家ですから当然政治的な立場も申し上げますが、私のいわゆる今日まで政治家として支援をいただき育てていただいた基盤は、やはり農林漁業が九〇%なんですよ。したがって、私の身についたものは二十五年間農林漁業ばかり専門的にやってきたように、したがって、私の政治家としての体質は土臭くて生臭い、こういうような体質でございます。  そこで、このようなポストについてみますと、ひとつかねて考えていたことを思い切って金子農政を新しく打ち立てたいなという野心を燃しております。ところがどうでしょうか、時間がかかってそう長くやれるかどうかが問題で、これは少なくともやはり一年か二年かからなければ、その人が理想として考えておること、野心を実現、実行に移すということは不可能ではないかと思いますが、ただ、時間がなければないなりでできること、小さいこと、やさしいことでもひとついままでと変わった本当に農家のためになること、日本農業振興基盤になることを手がけてまいっております。それは御忠告いただいたとおりやっていきます。それでひとついろいろと御指導と御声援をお願いいたします。
  16. 村沢牧

    村沢牧君 大臣決意はよくわかりましたが、時間がないということはどういうことか私はわかりませんが、余り長くおやりになれないということかもしれませんが、しかし大臣ですね、日本経済の中における農業位置づけ、これについて大臣のお考えを述べてください。
  17. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 日本農業位置づけは、世界における日本農業位置づけ日本のいわゆる経済社会の中での位置づけであるか、私は両面からいって、やはりこれは発展途上国、特に南方東南アジア、こういうところに向かっては大いにひとつ日本農政についてあるいは指導的役割りを果たさなければならない使命を帯びておる。また、日本にはそれだけの技術経済力もあるのでございますから、大いにひとつアジアの農業指導的役割りを果たしていきたい。また、国内における農業位置づけというのは、これは農業漁業もあわせてでありますが、やはり私は、もともと御承知のとおり日本農業漁業から生まれてきた国でございますから、これはどこの国でも同じです。食う物から先に求めて人間が居を構えて住んできておるわけでございますから、私はこのあらゆる面から見て、何よりかにより食糧生産をする使命というものは大変重大な使命を帯びておる。したがって、政府国民もよくこれを理解して、農業を興すこと、農業を育てること、農業をよりよく発展させることが、やはりその国の一番いわゆる発展基礎である、こういう考え方に立って農業を大事にしていくべきだ、このように考えております。
  18. 村沢牧

    村沢牧君 大臣所信表明で、「国内生産可能な農産物は極力国内で賄うという方針のもとに、総合的な食糧月給力を維持強化することが基本的に重要であります。」と述べております。これは当然のことでありますが、率直にお伺いいたしますけれども、輸入は不足するものについてだけ行う、また、国内生産が高まったものについては輸入を削減をしていく、こういう基本的な考え方を示してもらいたいというふうに思いますが、どうですか。——委員長に申し上げます。私は、大臣に聞いているんですよ。基本的な問題ですからね。
  19. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) では、お答えします。  みんな待っておりますから、手ぐすね引いて。私が遠慮しているわけです。  私は、やっぱり国民が求めるものは、できるだけ国内でいわゆる自給率を高めていって、なるべくひとつ輸入することは将来やめなきゃならない、こういう考え方で基本的な取り組み方をしております。特に、いまいろいろ貿易の自由化ある いは市場開放についてたびたび話題になり、問題になっておりますけれども、私の考え方は、やはり牛肉にしましても要らないものまで輸入して冷蔵庫で腐らすような、そういうやり方はやるべきではない、また当然やってもいません。必要に応じて輸入していけばいいのであって、ただ肉の消費が伸びておるのにやや近いような生産も伸びております。したがって、いまの約十三万トン余り牛肉輸入は、これ以上輸入をふやす必要は当分ないのではないかというような考え方です。当然急激に肉の消費が高まってくればこれは別でございますけれども、大体いまの十三万数千トンの輸入で完全に食糧の、この肉だけを考えた場合は一応需給はバランスがとれておる、こういう考え方で、自由化はもちろんのこと、輸入拡大もいま必要ではないんじゃないか、ここにいま輸入をすることはいわゆる畜産農家を痛めつけることになるじゃないか。畜産農家ということは日本農業中核であります。オレンジにおいてもそのようなことです。大体二割減反して、十五万ヘクタールを十二万ヘクタールに減反して、そして三百二十万トンを二百七十万トンの生産にしておってもやはりミカンはでき過ぎでございますから、これとてやはり輸入の必要はないんじゃないかというような考え方です。その他できるだけ、やはり大豆にしましても小麦にしましても転作はもちろんのこと、私はやっぱり畑作では輸入を仰いでおる大豆小麦も努めて自給率を高めていくことにひとつ積極的な指導をしていくべきだ、このように考えております。
  20. 村沢牧

    村沢牧君 大臣からそのような決意、答弁をいただいたわけでありますが、農産物によってはわが国で過剰で、国内計画生産あるいは生産調整を行っているものがたくさんあります。しかしこれらについても現実には輸入をしている、また輸入も減っておらない、こういう実態をどういうふうにお考えになりますか。
  21. 佐野宏哉

  22. 村沢牧

    村沢牧君 委員長、私は大臣に聞いておるんですよ、基本的な問題ですからね。そんな数字を聞いておるわけじゃない。
  23. 下条進一郎

  24. 村沢牧

    村沢牧君 委員長、待ってくださいよ。質問者大臣を指名しておるのに、何で……。
  25. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止
  26. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記を起こして。
  27. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 国内生産を調整するほどいわゆる困っておる農産物輸入することは、理屈に合わないと私も考えます。しかし、生産調整はしておるけれども、やっぱり足らないものは輸入で補てんしなきゃならない。足らないものは輸入はして、——足るものを輸入して、ストックして倉庫で腐らすようなそういう愚かなことは私はやっていない、このように考えております。
  28. 村沢牧

    村沢牧君 具体的に一、二お伺いいたします。時間が余りありませんから、これからの答弁は局長で結構ですから、簡潔に答えてください。  いま畜産政策価格要求が起こっておりますけれども、その中で乳製品についてでありますね、生乳の生産調整が行われている。しかし、一面では乳製品の輸入がされている。したがって、生産農家のことを思うならば、日本の畜産のことを思うならば、この輸入規制こそ最大の課題であると思う。昨年、指定乳製品のバターが三千トン緊急輸入された。また、ココア調製品、調製食用油脂などの擬装乳製品の輸入が前年に比べて一〇・三%も伸びている。このように非自由化品目、また自由化品目を問わず輸入がふえているということは、これはわが国農業の、あるいはまた酪農の生産価格安定機能を崩しているものだ。これについてはどうお答えになりますか。
  29. 船曳哲郎

    政府委員船曳哲郎君) 乳製品の輸入につきましては、主要な品目を畜産振興事業団の一元輸入の対象にいたしますとともに、その他の品目の多くにつきましては、輸入割り当ての対象といたしまして従来から対処してまいったところでございます。  それで、ただいまお話のございましたバターでございますが、これにつきましては現在の価格安定制度の運用を精いっぱいやってまいりましたけれども、今後ともその制度の安定を守っていく観点から、必要な最小限度のものをスポット的に三千トンだけ輸入したものでございまして、今後の生乳生産を阻害するようなものではないと考えております。今後とも引き続き用途別の需要に見合った生乳の計画的生産によりまして生乳需給の均衡を維持していくことが大切だ、このように考えております。  それから、自由化品目でございます調製食用油脂なりココア調製品でございます。これにつきましては、従来から輸出国の自主規制なり、需要者及び輸入業者の輸入自粛の指導なり、輸入貿易管理令に基づく事前確認制等を有機的に組み合わせまして調製食用油脂の輸入については措置してくるとか、それからココア調製品につきましても輸入の自粛を業者に指導するなど努力してまいったところでございます。五十七暦年におきましては、五十六暦年に比べましてこれら品目の輸入はふえておりますけれども、今後ともいま申し上げましたような考え方指導をしてまいりたい、このように考えております。
  30. 村沢牧

    村沢牧君 生産調整をしている生乳の中で、非自由化品目のバターを輸入しなければならないということはこれは需給調整を誤ったものだ、こう指摘をせざるを得ないんです。したがって、指定乳製品については輸入はしない、このことをはっきりここで確約してもらいたい。  なお、また自由化品目の擬装乳製品、これは輸入を規制しているけれども、しかし、いまとっている措置は非常になまぬるい。したがって、もっと輸入規制を強めるという政策を出してもらいたいし、なおまた、国内で不足をするものだとするならば、ナチュラルチーズ等の振興策をまず国内で立てるべきだ、この点についてはっきりした答弁を聞きたい。
  31. 船曳哲郎

    政府委員船曳哲郎君) まず指定乳製品でございますが、これにつきましては今後輸入をしなくて済むようにできるだけ適確制度の運用を図ってまいりたい、このように考えます。  それから、調製食用油脂なり、ココア調製品につきましては、自由化品目でございますので、私どもとすれば精いっぱい指導をしてまいりたい、このように考えております。  それから、ナチュラルチーズの国産振興につきましては、近年国内において増産の動きが見られますが、私どもも、このような動きに対しまして、必要に応じ、適切な指導を加えてまいりたい、このように考えております。
  32. 村沢牧

    村沢牧君 審議官の答弁、きわめて消極的なんですね。そういうことだから日本農業はここまで後退してくるんですよ。あなたは、農水省農業を守るという立場なんだから、もっと実効ある措置を講じなきゃだめなんですよ。  そこで、次は、豚肉、ブロイラーあるいは鶏卵について聞きたいんだけれども、豚肉や鶏卵も国内生産調整をされている。しかし、これは無秩序に輸入されているため、これまた国内需給価格の低迷に拍車をかけている。特に鶏卵なんというものは、需要が固定化されておりますから、わずかの輸入でも価格にすぐ響いてくる。消費が停滞ぎみの中で輸入がふえる、このことがまた国内生産を阻害しているんです。生産者を苦しめている。たとえ自由化品目であっても、国内生産を守るために、輸入規制を強めるための強力な行政指導が必要ではないか。先ほどの私の指摘にあわせて答弁してください。
  33. 船曳哲郎

    政府委員船曳哲郎君) 豚肉及び鶏卵につきましては、先生お話ございましたとおり、自由化品目でございますが、これも御案内のとおり、生産者団体が計画生産に努力をいたしておりますが、輸入につきましては、生産者団体それから実需者それから輸入業者等々の間で情報の交換を緊密にやり、不必要なものが輸入されることがないよう に従来から指導してまいったところでございますが、今後ともそのようなかっこうで指導してまいりたい、このように考えております。
  34. 村沢牧

    村沢牧君 大臣、いまお聞きのように、国内では生産調整をしている品目についてこのように輸入がふえている。したがって、私は、最初に指摘したように、国内生産調整をしている農産物については輸入を規制をしていく。そのことが法的に規制ができないものもあるでしょう。それは、行政指導を強めて、さらに輸入がふえないようにしていく。このことについて大臣決意を聞きたい。
  35. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 端的にいまの村沢先生の御質問に答えようとするならば、国内で調整して、生産を規制、制限しておるものを輸入する必要はないわけですね、これは。  しかし、いつからやはり競合するものを輸入しなければならないようになってきたのか、そこまで私も過去のいきさつは勉強不足で……
  36. 村沢牧

    村沢牧君 農政の専門家がそんなこと言っちゃだめだよ。
  37. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 就任して日にちが短いものですから、朝から晩まで追いまくられて勉強する時間が足りなくて、そこまでそのいきさつをよく説明するほど私は知らないわけなんですよ。したがって、ひとつよく事情を知った政府委員説明させた方が御理解がいただけると思うので……。
  38. 村沢牧

    村沢牧君 私は、そんな経過を聞いているんじゃないの。国内生産調整をしているようなものについては輸入をしない、あるいは行政指導を強めて輸入を抑制していく、その決意を聞いているんですよ。
  39. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) お答えいたします……
  40. 村沢牧

    村沢牧君 委員長、私は基本的な問題ですから、大臣にその基本的な見解を聞きたいんですよ。それ以上聞いているんじゃないんだ。
  41. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  42. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記を起こして。
  43. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) これは、物資別にいろんな事情がございますが、先ほど船曳審議官から御説明いたしましたようなココア調製品でございますとか、そういうすでにIQが撤廃されております物資はつきましては、これは従来から私ども行政指導その他の手法で対処してまいったわけでございますが、これにつきましてさらに補強し得るところはできるだけ補強をいたしまして、御趣旨に沿うように運用してまいりたいというふうに存じます。  それから、畜産振興事業団の一元輸入制度になっておりますようなものにつきましては、これは、畜産振興事業団は畜産物の価格を安定帯の中で維持するように義務づけられておるわけでございますから、安定帯の上限が突破してしまうというような事態に国産の畜産物がなければ輸入をして放出しなければならないということは、これは制度上やむを得ないところでございますが、畜産局といたしましては、それについてはそういう事態が生じないようにできるだけ的確な需給をやっていくつもりでございます。  以上総じて、国内の自給力のあるものにつきまして輸入を抑制的に運用するという基本的な考え方については、先生御指摘のとおりでございますので、さらに一層心して制度を運用していくつもりでございます。
  44. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 村沢先生の御指摘、御提言は、私は正しいと思っております。  それで、ただ、いつからそういう競合するものを国内で規制までして入れなきゃならぬようになったかということを、いまかいつまんで官房長から説明を聞いてみますと、やはり価格が安いということが一つ。それをいわゆる輸入して、仮にバターをたとえて申しますと、そういうことで国民の嗜好に基づく、あるいは価格が安いというようなことで輸入をして、そして事業団の扱いにしておる、こういうことなんで、それが正しいことであるか、いいことであるかということになりますと、これは私はやはりいろいろ御批判があることだと理解いたします。今後、ひとつこれにはいろいろ御意見も十分尊重して対処いたしますから……。
  45. 村沢牧

    村沢牧君 大臣所信表明で、「私は、今後とも、わが国農業の実情やこれまでの農産物市場開放措置について諸外国に十分説明し、その理解を得ながら、自由化要求に応ずることなく、慎重に対処してまいりたいと考えております。」、このように述べておりますけれども、大臣もっと歯切れよく、輸入制限二十二品目については絶対自由化しない、こういう決意がおありになったら述べてください。
  46. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 私がかねていわゆる市場開放の問題について意見を述べておるのは、牛肉とオレンジは、これは自由化は恐らく将来とも認められない。それから、輸入の枠についてはやはり国内需給状況をよく検討して、足りないものは輸入せざるを得ないだろうと、その時点でそれは起こる問題であって、いまから枠を拡大してこれをこうしよう、あれをああしようということは必要ないんじゃないかと。いまは要らない。いまは枠の拡大も必要ないんではないかというようなことを申し上げておるのでありまして、アメリカとの交渉においても、その枠の拡大については専門家で話し合ってひとついい結論を出していこうじゃないかということにとどまっておるわけでございますから、基本的な考え方は、やはり国内でできるだけひとつどんどん生産を伸ばして自給力を高めていくということが農政の基本姿勢であり方針でありますので、外国から物を入れるということはよほど慎重じゃなければならないという考え方で私は取り組んでまいっておるわけであります。
  47. 村沢牧

    村沢牧君 大臣牛肉、オレンジについていまは輸入する必要がないという答弁ですが、将来はそれは輸入する必要性も出てくるということにも裏返せばそうなりますがね。同時に私がお聞きをしたことは、輸入制限をする二十二の品目があるわけですね。これらについては自由化をしない、そういう決意をお持ちであるかどうか、牛肉、オレンジも含めて。
  48. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) それは、私は牛肉、オレンジは自由化まかりならないと、将来ともこれは認めないということをはっきり申し上げておるわけでございますから、その他のものについては、やはり国内需給状況を見てどうしても入れなきゃならないもの、足りないものがあれば、その時点で考えるべきであって、いまの時点でどの品目を枠を拡大して輸入しなきゃならないというものは私は見当たらない、こういうことを申し上げておるわけですよ。
  49. 村沢牧

    村沢牧君 枠拡大もこれから聞いてまいりますけれども、私がいま聞いていることは、自由化しない、市場開放しない、そういうことなんですよ、そのことについてはどうなんですか。
  50. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 自由化はまかりならないと、認めないということをずっと私は強調して、その考え方を貫きます。
  51. 村沢牧

    村沢牧君 わが国のそういう態度にもかかわらずアメリカは執拗にこの自由化要求を続けてきておるわけであります。本年一月の中曽根・レーガン日米首脳会議では、農産物については相互に納得いく解決策を専門家レベルで今後話し合っていこうと、こんなことになったということが報道されているんですが、この会談の内容についてわかりやすく説明してください。
  52. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) 私が伺っておるところによりますと、中曽根総理からレーガン大統領に対して自由化ができないという事情を御説明になった上で、この問題は双方が冷静に専門家同士で話し合うことにするのがいいと思うという趣旨のお話をなさったというふうに伺っております。
  53. 村沢牧

    村沢牧君 一番、この農産物交渉に当たる農林水産省の経済局長、その程度の内容を聞いた程度ではどうも心細いんですが、局長は直接総理からそのことを聞いたんですか。
  54. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) 中曽根・レーガン会談の後、外務省の経済局長から随行した各省の局長に対して総理と大統領との間の会談の模様の説明が行われました。その際、いま申し上げたようなことを伺ったのであります。
  55. 村沢牧

    村沢牧君 局長は外務省を通じてその内容を理解したと。大臣はこの内容について直接総理からお聞きをして、何らかの指示を受けていますか。
  56. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 聞いたようでもあるし、聞いてもないようでもあるし、——私はこの問題について総理からアメリカではこういう話をしてきたというような改まった話は聞いておりません。しかし、いろんな話の中で、こういうふうな言い回しをしてレーガンの考え方日本の実情をよく検討してもらうように改めさせてきたと、こういう話はいろんな話の中で出てきますけれども、特に農水省に関係があるからということで四角張った話でアメリカの模様を聞いた記憶はありません。
  57. 村沢牧

    村沢牧君 農産物自由化させるかしないかということは重大な問題ですね。総理かこういうことを言われて決めてきたと、総理の方から話がなくても、むしろ担当大臣が総理、これはどうなっていますと聞くのが当然じゃないですか。しかし、大臣は総理から直接聞いたこともないような話をしていますけれども、そんなことでこれからの農政進むんですか。つまり農業行政も全部総理にお任せですか、どうなんですか。
  58. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 私は、総理が出かける前は二回会って公式に二人でいろいろお話をして、私どもの考え方を十分総理にお話をして、そのとおりやってくるという約束をして出かけていったわけですよ。したがって、そのとおりやってきたものと私は信じていますから、帰ってきてから事改めてどうでしたかと聞く必要ない。それは私のところからやはり佐野局長が、専門家がついていって前後の模様なんかもすべて承知しておるわけですから、それで何か変わったことがあれば局長も何か私に報告があるでしょうけれども、訪米する前に私どもが主張しておったことをそのまま中曽根総理はアメリカで言ってきたと、こういうふうに受けとめておるわけですよ。
  59. 村沢牧

    村沢牧君 それでは、日米農産物交渉が今後どういう方法でいかなる時期に再開され、これが進展をしていくんですか。
  60. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) 交渉の今後の段取りというのは外交ルートを通じて相談をしていくことになるわけでございますが、いままでのところ特に双方からそういうことを仕掛けておりませんので、今後の協議の段取りについて見通しを立てるべき材料はいまのところございません。
  61. 村沢牧

    村沢牧君 局長はそういう答弁でありますが、二月の十日から十三日に来日したアメリカのブロック代表は、安倍外相との会談で市場開放のためさらに話し合いを行っていくということを確認をし、牛肉、柑橘類以外の農産物についても一層の努力をしてもらいたいと、こういう要請があったというふうに報道されているんですけれども、農産物交渉の主役は、これは外務大臣なんですか、それとも農水大臣なんですか。
  62. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) これは、従来から外務省と私どもとの間でこの種の交渉は農水省側から首席代表を出して外務省にも参加してもらうという形で進めるということになっております。
  63. 村沢牧

    村沢牧君 そこで大臣にお聞きをしますが、今後の農産物交渉はどうなるかまだわからないという答弁でありますけれども、アメリカは、日米農産物交渉は日本の選挙、すなわち四月の統一地方選挙、六月の参議院選挙あるいはダブル選挙になるかもしれぬ、これらの選挙が終わるまで待った方がよい、こういうふうに言っているというふうに伝えられております。また、日本の中曽根総理にとっても、選挙前に自由化や枠の拡大を打ち出したらば、与党にとって、中曽根内閣にとって不利になるので、選挙が終わるまで棚上げをしようとする思惑があるのではないか。そこで、中曽根・レーガン会談では日本の選挙が終わるまで待とうという約束がある、こう言われる人がおります。日米運命共同体と言われる中曽根総理の政治姿勢から見れば、なるほどなとうなずけることもあるわけですね。  自民党政府は過去においてこうした悪い実績がある。すなわち、グレープフルーツの自由化は絶対行わないと言ってきた政府が、昭和四十六年六月、第九回参議院選挙の開票日の翌日、閣議で抜き打ち的に自由化を行った。したがって、私は中曽根総理の、自由化はできない、この言葉は一〇〇%信用することができない。  大臣、あなたは農水大臣として、また国務大臣として、選挙に関係なく、選挙が終わった後でも、自由化はしない、輸入枠の拡大もしないということをこの委員会で、また国民の前ではっきり答えてください。できますか。
  64. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) かつてのグレープフルーツのときのことがよくちょこちょこ新聞で出たりしておりますけれども、私はそういう過去のいきさつをとらえていろいろ勘ぐる必要はないんじゃないかなと、こう思うわけですね。恐らく選挙までこういうことを言っておって選挙が済んだらすぐ手のひらを返したように政治家が豹変をされるだろうか。私はやはり少なくともこの主張は、いわゆる一九八三年いっぱいは一応いまのアメリカとの取り結びがあるわけですから、それを過ぎた後なら話が出ても不思議でないかもしれませんけれども、選挙が六月に済んだらその後というようなことで、いまのアメリカに対する市場開放の問題について豹変するようなことはないと思います。私は日本政府自体のことを申し上げておるので、私自身は絶対豹変いたしません。
  65. 村沢牧

    村沢牧君 そんなことがあってはならないし、ないと思うということなんですが、あなたは国務大臣として絶対しない、農林水産大臣としてしない、もしそんなことを中曽根さんがおやりになったら私は農水大臣としての責任をとる、そのくらいな決意がこの問題については必要なんですが、お持ちですか。
  66. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 大変適切な御指摘でございますから、ひとつ御意見を十分尊重したいと思います。
  67. 村沢牧

    村沢牧君 それでは中曽根内閣としては、選挙が終わった後であっても、牛肉、オレンジについてはいろいろ取り決めがあるんですから、八三年までという話がありましたが、東京ラウンドの線に沿って交渉していくんだ、これを自由化するようなことはないとはっきりお答えできますか。
  68. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) はっきり申し上げます。
  69. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、いま申しましたように牛肉、柑橘類の輸入枠は、さきの東京ラウンドで八三年までは決まっている、この線は崩さないであろうというふうに思いますけれども、これまた新聞報道によると、牛肉輸入枠は拡大をする、柑橘類は季節輸入枠を新設する、こういうことは、つまり自由化はできないけれども、輸入拡大で譲歩していこうとすることを検討していると、こういうことを言われておりますが、その真意はどうですか。
  70. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) 今後の交渉の進め方につきましては、当委員会が昨年の五月十三日に御決議をいただいておりますので、私どもといたしましては自由化の問題につきましても、枠の問題につきましても当委員会の御決議を体して対処するつもりでございます。
  71. 村沢牧

    村沢牧君 自由化輸入枠の拡大の要求は、これはアメリカからだけではない、国内でも財界を初め各方面からいろいろの問題が提起をされている。その主な主張は段階的自由化あるいは不足払い制を併用した自由化、こういう提言が多いわけですけれども、これに対して農林水産省としてはどう考えますか。
  72. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) 私どもは繰り返し即刻であろうと段階的であろうと、自由化ということはできないということをアメリカ側に言い続けておりますし、その点についての私どもの考え方が変更されるという可能性はないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  73. 村沢牧

    村沢牧君 大臣は、食糧の安定供給のためには、「総合的な食糧自給力を維持強化する」、こう述べておられますけれども、わが国食糧自給率は一体どういうふうになってきたのか、その推移について説明してください。
  74. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 自給率の計算につきましてはいろいろ方法がございますが、一般的に私ども用いております価格表示でやっておりますものには、食用農産物総合自給率がございますが、いまお尋ねのように三十五年度におきましては、総合自給率におきまして九〇、これが四十五年度におきましては七八、五十六年度、これは概算でございますが七二になっております。  また、穀物の自給率でございますが、穀物には食用とえさ用がございます。全体として見ました場合には、穀物の自給率は三十五年度八二、四十五年度四五、五十六年度で三三でございますが、主食用の穀物だけをとりました場合には、三十五年度八九、四十五年度七四、五十六年度六九でございます。このように穀物自給率あるいは農産物総合自給率が低下しました原因は、主として畜産物におきますえさ用穀物、これの輸入が非常にふえたというところに一番大きな問題があろうかと考えております。たとえば鯨肉を除く肉類につきますと、一人当たりの消費量が三十五年度におきましては年間三・四キロ、これが五十六年度には約七倍の二十二・三キロになっております。また牛乳、乳製品について見ましても、三十五年度の二十二・三キロが五十六年度六十四・八キロというように約三倍になっている。  したがいまして、いまの自給率が低下しました一番大きな原因は、やはり畜産物に対します飼料穀物の輸入、こういう問題があろうかと考えられます。
  75. 村沢牧

    村沢牧君 さきに閣議決定を見ている食糧の自給の長期見通しでは、穀物自給率は五十三年三四%であるが、六十五年には三〇%ということになっている、自給率を下げる計画、この見通し、これがいいのかということについては、私もかつてこの委員会で何回も論議をしたわけでありますけれども、六十五年を待たずして、だんだん自給率が下がってきている。さらに総合自給率においては、六十五年にはこの計画で言うと七三%になるということでありますが、いま官房長の答弁では、すでに五十六年度で七二%になっている。六十五年度を待たずしてもうそれ以下に下がっちゃう。こんなことで食糧の安定供給を図っていくということが言えるんでしょうか。こういうことがあるから国会決議も行われているんですよ。一体、いままでどのように努力をし、今後自給率を高めるためにどういう努力をしていこうとするのか、飼料穀物についても私は承知しています。しかし、自給率は現実に下がっているんですよ。どうするんですか。
  76. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) ただいま村沢先生御指摘の点はごもっとも、そのとおりでございますけれども、ただ、私ども六十五年度の見通しを立てるに当たりましては、主として米につきましては完全自給、これは当然のことでございますし、また、小麦につきましても、小麦にはパン用あるいはめん用のものがございますから、日本産の小麦というのはパン用に向かないというところから、主として日本めん用につきましては完全自給というように、品目別にそれぞれの自給の目標を立てまして、またそのための努力をしてきたわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、飼料穀物につきましては、日本におきましては残念ながらトウモロコシ、マイロといたしましても収量も低い、また収益も低い。また、土地条件、気象条件等から見ましても必ずしも適作物ではないという点から、これは、今後とも国民消費動向がやはり畜産物に偏っていく、また、畜産物に相当程度まだ消費がふえていくということであればこれに伴ってやはり飼料穀物の輸入はやむを得ないということで、六十五年度の見通しにおきましても、穀物自給率としましては飼料穀物の輸入が大半でございますから全体としては減ると、ただし、主食用の穀物につきましては現状以上に悪化をさせないということで自給見通しを立てたものでございます。先ほど申し上げましたように、品目別に、米、小麦、豆類、野菜、果実、その他、それぞれの自給目標を立てまして、私どもそれに対する努力をいたしております。ただ、えさ用の穀物につきましては冒頭申し上げたような問題がございますし、ただ、一方では水田利用再編対策ということで、現在水田につきまして相当の転作を農家の方々にお願いをしているわけでございますが、この水田を生かすためには、他用途米——えさ用を含めました米の他用途利用ということを考えまして、この点について真剣に取り組んでいくことによりまして、仮に飼料用の米が、米の他用途の中に飼料用というのが相当程度活用できるということになれば、やはり今後の飼料穀物の自給率も増加をしていく、その結果としては、やはり穀物自給率ひいては総合自給率も上がっていくというように考えているわけでございます。
  77. 村沢牧

    村沢牧君 日本食糧自給率が下がってきておるということは、これまた輸入の増加なんです。  そこで大臣、ちょっとさっきの問題に触れて恐縮ですが、レーガン・中曽根会談のことについて大臣は希望的な御意見大臣決意からお話がありました。そこで、これが中曽根内閣の統一見解であるかどうか、そのことについて、午後でいいですから、私、質問時間を残しておきますからはっきりした答弁をいただけませんか。
  78. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 統一見解という、そういう厳格なものでなくして、総理のお考えと私の考えは一致しておるということを申し上げておるわけです。
  79. 村沢牧

    村沢牧君 では、中曽根内閣の国務大臣として責任を持ちますか。中曽根・レーガン会談ではそんないろいろ密約みたいなものはないということについては責任を持ちますか。
  80. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 当然でしょう。責任を持ちます。
  81. 村沢牧

    村沢牧君 そこで大臣、また伺いますが、大臣にばかり聞いて大変済みませんが、所信表明ですからね。  米が不足になるのではないかというこの不安に対して、農水省が五十八米穀年度十万トンの持ち越し量になるので心配はない、こういうふうに言っておるようであります。十万トンの在庫は一週間分の供給量にしかすぎないのです。しかも、五十三年度産米を加え、これから生産をされる五十八年度産の早場米も出荷をされることを期待をしての十万トンなんだ。もし五十三年度の過剰米がなければ在庫は二万トンしかない。ですから、この食糧庁も出荷督励をしている出先の職員は何と言っている、米の生産調整をする、減反をしてくださいと言っていままで指導したけれども、今度は、米があったら出してくれませんか、そんなことは出先では言えない、と言っているんです。こんなことで米問題に絶対に国民に不安をかけないかどうか、大臣、お答え願いたい。
  82. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 詳細に説明をさせたいと思いますので、食糧庁長官にひとつ。
  83. 村沢牧

    村沢牧君 数字については私の申し上げた数字は間違いないと思いますから、いろいろ会議録等で私は見ておりますから、大臣にお聞きしたいことは、こんなことで国民に米問題で不安をかけないかどうか。
  84. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) いろいろ御心配をいただいておりますけれども、大体五十八年度産米が端境期に早場米が三百五、六十万トン出ますので持ち越しは十万トンしかないことになっておりますけれども不安はない、このようにひとつ考えていただきたいと思います。
  85. 村沢牧

    村沢牧君 私は当委員会で米の問題についても何回も論議をしてきた。政府はその都度米は過剰である、不足になる心配は絶対にない、だから減反政策をいたしますということで答弁を終わったわけです。ところが、在庫の状況を見るとどうか、五十五年には百八十万トンあったものが五十六年には九十万トン、五十七年には四十万トン、五十八年には十万トンの見込みだ。十万トンとい うのは、先ほど申し上げましたように一週間分の供給量しかないんですよ。農産物は天候によって支配されるのです。国民の主食の米はこんな心細い綱渡り操作でいいと大臣はお考えになりますか。
  86. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) 数字にわたりますので私の方からお答えさしていただきます。  御指摘のように、十万トンという持ち越し米の水準は、従来に比べますと非常に低い水準であることは事実でございます。したがいまして、在庫の積み増しをする必要が当然あるわけでございます。五十八年産につきましては生産調整の緩和をして六十万ヘクタールにいたしまして、在庫の積み増しを図って、来年秋には五十万ないし六十万トン程度の在庫積み増しに復元いたしたい、このように考えております。それから先の問題といたしましては、御案内のように、五十九年産米から第三期対策になります。その関連におきまして、今後この備蓄のあり方、備蓄水準等につきまして検討してまいりたい、早急に結論を出したいと考えております。
  87. 村沢牧

    村沢牧君 食糧庁長官は、いま米の備蓄についても考えていきたいという答弁をされておりますが、現在ある備蓄というは、つまり、国民の食用に供することのできる備蓄というのは五十八米穀年度持ち越し十万トンですか。
  88. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) 五十八米穀年度、正確に申しますと、五十七年昨年の十一月から本年の十月末になるわけでございますが、この際の前年産——五十七年産の持ち越し米の数量は十万トンでございます。
  89. 村沢牧

    村沢牧君 まことに心細い備蓄ですね。一昨年食管法を改正する際にこの備蓄問題についても論議したのですが、その際、備蓄問題については基本計画で定めなければならないということになっておったわけですから、基本計画では備蓄は対してどういう定めをしておるのですか、備蓄のあり方ですね、その数量。
  90. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) 昨年基本計画を定めましたが、その際には具体的な数量は提示しておりません。今後備蓄のあり方について私どもとして考えなければなりませんが、具体的に現在三年不作が続いているような状況で、現実に品物自体が手薄になっている状況におきましては、今後この備蓄についても考えるべきことは指摘しておりますけれども、具体的な方針については、これからの第三期なりに私どもとしては考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  91. 村沢牧

    村沢牧君 それはおかしいじゃないですか。基本計画では、備蓄もやっぱり基本計画の中であり方、数量等についてうたわなければならないということになっているんですよ。そうでしょう。  そこで、第九十四国会で、私の質問に対して前松本食糧庁長官は、「備蓄につきましては、この基本計画の中におきまして、そのあり方、数量等につきまして明確にしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。」という答弁をしているんですから、これはあれですか、この答弁は誤りなんですか。これ答弁どおりなぜできないんですか。こういうことは御承知ですか、長官。
  92. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) 改正法におきまする論議において、そういう御指摘なり問題があったことは私どもも承知いたしておりますが、具体的に生産なりが不作等の影響で、現在物自体がない事態に立ち至っております。また、食管法におきましては、備蓄につきまして必ずしも絶対数量を表示しなくちゃならないという形にもなっておりません。私どもは、今後の備蓄のあり方につきまして、先ほど申しましたように、具体的には五十九米穀年度末におきまして五、六十万トンの在庫の復元を図り、さらに第三期対策におきまして今後の備蓄水準のありようを私どもとしては考えたい、こういう基本的態度で進めたいと、こう考えておるわけでございます。
  93. 村沢牧

    村沢牧君 長官、前の長官は、この基本計画で定めるということを国会で答弁しているの。これは法律に基づいて当然なことだ。しかし現在やってないということは、これは法律違反にもなるし、余りにも国会軽視ということになりませんか。速記録よろしかったら見てください。
  94. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) なお、私どもよく調査いたしますけれども、私ども現実に備蓄についての考え方は、先ほども申しましたように、現在三年連続の不作から持ち越し米がこの秋に十万トンになる、このこと自体が非常に低い水準であることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、今後もまず五十九米穀年度末の在庫水準としては五、六十万トンに復元すべきだ。さらに、今後国民食糧におきまして不安をかけないような備蓄水準のあり方については、今後の第三期の問題として私どもは取り組む所存でございまして、そういう方向で、今後の基本計画なりにも臨んでまいる考えでございます。
  95. 村沢牧

    村沢牧君 いろいろ言っているけれども、つまり米がないから備蓄なんてことは当然この計画の中には入らぬし、やることができない、そういうことですね。  そこで、備蓄を二百万トンくらいにしたらどうかということですね。これ衆議院のわが党議員の質問に対して、大臣は、私はそんなことは知らない、こういうふうに答弁をしておるんですが、政府は二百万トン備蓄なんということは言ったことがないんですか。  そこでなお、私のさきの会議録に戻りますが、松本食糧庁長官は、「従来、二年間の不作があったときに備えて順々に食べていくという形の備蓄を前提として約二百万トンということを申し上げておったわけでございます」、こういう答弁しているわけですね。これは政府は知らないところじゃない。だから、そういうことを言っておったから、そういう方向であったから食糧庁長官もこういう答弁をしているんです。これについてはどういうふうに考えますか。
  96. 渡邊五郎

    政府委員(渡邊五郎君) 衆議院におきます大臣からの御答弁としまして、答弁のやりとりの過程で御指摘のようなこともございましたが、再度大臣の方から、昭和五十年の総合食糧政策の転換におきまして、二百万トンの備蓄の考え方を農林水産省として打ち出したことは事実であるということは申し上げたわけでございます。  経過を申し上げますと、その後過剰が続きまして、これを上回る在庫水準に達しまして、しかし、五十五年以降の不作の連続によりまして、現実には先ほど申しましたような前年産米の在庫水準に著しく低下してきておるわけでございます。今後の備蓄のあり方につきまして、二百万トンという数字も当然従来の考え方からございます。これらにつきましても、五十五年の農政審議会の答申におきましてもそのありようについての見直し等の問題も出ております。金利、保管料等のコストの問題、あるいは消費者の新米志向の問題等組み合わせながら今後の備蓄水準のあり方、仕組み、規模なりを私どもとしては改めて検討いたしたいと考えております。
  97. 村沢牧

    村沢牧君 大臣所信表明の中で、五十八年度においては減反面積を六十万ヘクタールにいたしたいなんて簡単に触れておりますけれども、さらっと触れておりますけれども、米がこういうふうに足らなくなってきておるんですよ、心配になってきておる。ですから改めて大臣にお聞きしますけれども、米不足で国民に不安なんかかけない、先ほど来言っておりますように、備蓄は完全に確保していくんだ、このことくらいは、金子大臣の任期がいつまであるか知りませんが、ことしからやらなきゃならない。やっていただけますか。
  98. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) いろいろ衆議院で、二百万トンの問題で私の舌足らずがありましたけれども、ただ、二百万トンを持ち越した場合、翌年古米になって、それを古米として処理する場合、いろいろ財政が非常に厳しい時代になりましたので、二百万トンを備蓄という名目で持つことが農水省の財源、予算を食うことになるものですから、他の方に少しでもゆとりを持った予算の執行をしたい、こういう考え方もありますので、私はいまあえて、二百万トンが昭和五十七年ですか、に出ておりますけれども、五十五年の農政審議会 では、やはりそれは見直すべきだという報告がありますので、いわゆる凶作が三年続いた関係で十万トンになって心細くなった。私もあるとき、私は世田谷の成城に住んでおるんですが、米屋が米がないと言って米屋から断られた、これは自由米なんですね、ということで大変なパニックが起きているということでびっくりしまして、農水省でみんな集めていろいろ話したんですが、それはただ、新聞に二、三日書き立てたものですから、それをとらえて米屋が売り惜しみをしたような、後で調査しましたところ形跡がありました。非常に国民に与える影響、新聞報道によって敏感にやはり国民に大変な大きな影響を及ぼすものだなと思って私もつくづく考えました。十万トンというのはちょっと減り過ぎた考え方ですよ、私もこれは減り過ぎだなと。やっぱり少なくとも四、五十万トンは持たなければ、皆さんからいろいろ確かめられた場合自信を持ってお答えすることはできないのじゃないかなと、正直に申しまして、ことしの端境期に十万トンしかないということは、私はなかなか、皆さんはこれは手落ちだったということはだれも言いません、私が一人言うだけです。これは十分反省の上に立って、今後はいわゆる持ち越し米、備蓄米、こういうものについては取り組んでまいりたいと思います。ひとつお任せ願いたいと思います。
  99. 村沢牧

    村沢牧君 食糧庁長官大臣は昨年の暮れに就任したばかりですよ。しかし、大臣がこういう心配をしている。あなたたちが今日までこの米行政を進めてきた。大臣にこんなことを言われておっていいですか。しっかりしてくださいよ。  次は、五十八年度予算に関連をして伺います。  農林水産予算は三兆六千六十七億円、前年対比二・五%の減である。これは、前年度より農林予算が減少したのは昭和三十一年以降二十七年ぶりだと言われている。また、総予算に占める比率も、かつては一〇%程度あったものが、五十八年度は七・五%、たとえ臨調絡みの予算だといっても余りに低くなっているんじゃないか、私はこういう指摘をいたします。  そういう中で、この予算内容を見てみますと、あるいは大臣所信表明や先ほどの予算説明を聞いておりましても、主要な農林推進施策構造政策生産対策重点を置いているけれども、しかし価格の問題については、大臣所信表明でもこの予算説明でも何ら触れておらない。一体、農産物価格というのは農林水産省はどう考えるんですか。大臣農産物価格は今後どうしようと考えてますか。
  100. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 農産物価格をどのように進めるかと申しますと、やっぱり一般日本消費経済の物価と均てんのとれた価格を保持したいというような考え方でおります。高くなるとやはり消費が鈍りますから、特に農産物でも水産物でも、適正価格というのがいかに大きな国民需要、購買力に影響があるかということを慎重に考えて、適正価格でひとつ農家経済も十分念頭に置きながら決めてまいりたいと思います。
  101. 村沢牧

    村沢牧君 もう少し突っ込んでお聞きしましょう。  いま適正価格というお話があったんですが、農水省のねらいとしては、価格は国際価格に近づけるために、また財政負担を軽減するために今後は抑制をしていくんだ、あるいはまた、価格農産物需給調整の役割りを果たさしていこう、こういうねらいがあるんではないんですか。  時間がありませんから、簡潔に答弁してください。
  102. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 価格政策につきましては、五十五年度に農政審から報告が出ておりまして、価格政策につきましては、本来的にやはり農産物価格の過度の変動の防止であるという点が第一の機能だというように考えております。  また、需給調整につきましては、最近の農産物が、米初め一般的に過剰の傾向の農産物が多いという点もございますので、これにつきましては、価格の持つ需給調整機能も重視する必要があるということだと思います。  ただ、反面、現在の農業者農家の置かれている地位あるいは所得状況というものは必ずしも他産業に比べましても十分だということは申せませんので、こういう所得政策の面におきましても今後は重視もしていく必要があるわけでございますが、その場合には、中核農家的な専業農家農業で高能率を上げられる、そういう方を中心に考えていく。それから、全般的に、現在農産物につきましては、やはり片一方では国民消費需要というのがございますから、最近の経済の停滞を反映いたしまして、消費支出の伸びも非常に鈍化をしております。また、現在の食糧の摂取量も大体二千五百カロリーというので、ほぼ今後大幅な伸びは望めないということから見ますと、価格につきまして一般に上昇を望むということは、現在の経済状況あるいは消費動向から見ますと非常にむずかしい状況になっておる。  したがいまして、今後の価格政策方向といたしましては、やはり構造政策を中心にいたしまして生産性を高めていく、また、それを補完するような形で価格政策が動いていくというふうに考えている次第でございます。
  103. 村沢牧

    村沢牧君 そうすると、官房長の答弁は、価格政策需給調整だけではなくて、将来、構造政策にまで連動させていこう。つまり、価格を抑えることによって農地を手放していく人も出てくる、農地流動化も進んでないけれども、価格を抑制してそこまで持っていこうというねらいがあるようにうかがわれるわけですけれども、そのことの論議はまた後日にいたしましょう。  そこで、大臣価格は適正な価格で決めるという大臣の答弁がありました。農産物価格は、それぞれ算定方式があって決められるわけです。しかし、従来の農水省のやり方は逆算方式である、最初に据え置きを決めておく、引き下げをするという方針を決めていて逆算して数字を合わせる。これは間違ったことをやっているわけなんです。価格は、再生産が償われるように正しい計算方法によって算出されねばならない。大臣は、ことしの価格決定に当たって、正しい方法によって再生産が償われるように計算をし、それを農産物価格とする、こういう決意を持ってもらいたいというように思いますが、逆算方式なんかやらないと。
  104. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 農業政策は、いわゆる保護政策であることが基本でございます。やはり食糧の自給度を高めて、いわゆる食糧による安全保障を確立したいという考え方に立ちまして、これはいずれの国も同じでございますから、やっぱり日本といえども農業は保護をしなければ成り立たない、保護政策をやらなければ農業という産業は成り立たない、こういうことを絶えず念頭に置いていますので、価格政策においても、やはり消費が落ち込むような価格を出してはこれは大変なことでありますので、そういう一般の物価の動き等も兼ね合いますので、適正な価格を絶えず維持していかなければならない。これは農家所得考え、やはり消費も何とかして伸ばしていきたい。輸入農産物との兼ね合いもいろいろありますけれども、すべてを総合的にひとつ取り込んで、そして適正な価格をつくっていく、こういう考え方で進みたいと思います。
  105. 村沢牧

    村沢牧君 大臣、適正な価格ということは、最初から据え置きにするんだ、引き下げるんだ、こういう答えを出しておいて、そしてそれに数字を合わせていく、こんなことはやらない。あくまで正しく計算をして、そして価格を決めていく、そういうふうな決意をお持ちですか、ことしの場合。
  106. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 具体的にどの種のものはどう、どの農産物はこうといったようなことをここで申し上げることはできませんけれども、基本的な考え方としては、やはり農業産業として成り立つかといういろんな問題が絶えず出ますけれども、農業日本の国を今後支えていく基幹、根幹をなしておるということを考えていきますと、やはり当然後継者も農業に魅力を持ってひとつ跡を継いでもらわなきゃならぬし、いろんな面から考えますと、この適正価格をどのように農産 物についてとっていくかということは、大変重要な問題でございます。  余り高くしても売れなくなると困るとか、外国の輸入物が非常に安くて、これがやっぱり国民にいろいろ国産品にいわゆる嫌みを持たれるようなことがあってもならない。いろんなことを勘案しまして、やはり農家経済一般のいわゆる鉱工業産業従事者と同じような所得水準が維持できるような考え方に立って価格はひとつ適正に決めていきたい、このように考えております。
  107. 村沢牧

    村沢牧君 それで、価格に関連して養蚕の価格について伺いますが、養蚕を発展させるためには、再生産確保することができる繭価を保証することが最も重要でありますが、一昨年、基準糸価、繭価も下げられ、昨年は据え置きにされたと。その際、時の亀岡農林水産大臣は、この価格を引き下げることによって日本の養蚕は発展していくんだからどうかがまんをしてくださいということで農民にも訴えたし、当委員会でも答弁をしている。しかし、その後日本の養蚕は発展したかどうか、発展しておりません。ちなみに昨年の繭の生産費は、一キロ当たり三千三百八円と農林水産省が発表している。これに対して基準繭価は二千五十円。基準繭価が低くても実勢繭価が高ければいいということでありますが、実勢の取引価格は二千二百十六円、つまり生産費が三千三百八円かかるという農水省のこうした統計資料があるにもかかわらず実際は二千二百十六円で取引しておる。千九十二円は一キロ当たり赤字だと。これでは繭生産に希望が持てない。なぜこんなことになったかというと、つまり最初に据え置きなり引き下げを決めておいて、こんな生産費があるはもかかわらず逆算してこういう数字を出したからこういうことになった。ことしはどうしますか。
  108. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 基準糸価につきましては、繭糸価格安定法によりまして生糸の生産条件、需給事情、その他の経済事情から見て適正と認められる水準に決定するということにされております。御承知のように、生糸につきましては一本価格ではございませんで、安定帯制度をとっておりますので、行政価格が即農家の手取りということではないわけでございます。現に昨年の事例で申しましても、前年の手取り約キロ当たり二千円強という水準から二千三百円前後という水準が現実に実現しているという経過もあるわけでございます。五十八生糸年度に適用する行政価格につきましては、現在生産費あるいは生糸の製造加工経費の集計を行っている段階でございますが、御指摘ございましたように、頭からその結論を決めるということではございませんで、数字を慎重に検討いたして、また需給事情も念頭に置きながら蚕糸業振興審議会の議を経て決定をいたしたいと、かように考えております。
  109. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、農産物価格需給関係によって支配されることも私は否定するものではありませんが、この養蚕の場合を見ると事業団の在庫が非常に多いからなかなか糸価が上がらない、こういうことが言われているんです。が、昨年末には十四万二千俵という在庫があった。昨年この繭糸価格安定法の審議の際に局長が、このいまある在庫を三年間で適正在庫の五万俵にすると、こういう明確な答弁をしているんですが、この自信をいまもお持ちですか。
  110. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 昨年繭糸価格安定法の一部改正法案の御審議の際におきまして私からお答えを申し上げておりまして、おおむね三年ぐらいの間にはほぼ適正水準にもっていきたいという願望を持っておると、こういうことをお答えを申し上げておりまして、その願いはいまでも変わることなく持っておるわけでございます。ただ、昨年の夏以降一時また大変在庫が低い水準まで行ったのでございますが、昨年十月以降また国産糸の買い入れを再開しなけりゃならないという事態を余儀なくされておりまして、本年二月末現在の在庫は十四万七千俵ぐらいの水準まで戻ってきております。そういうことから、やや見通しは暗くはなってきておりますが、何とかしまして需要の増進を図り、一方では供給面の適正化を図りましてこの願望を実現にもっていくように努力をいたしたいと思っております。
  111. 村沢牧

    村沢牧君 時間がぼつぼつ参りますから質問をしぼってまいりますけれども、そこで局長の答弁聞いておってもだんだんだんだん自信がなくなっちゃうわけですね。法律審議のときには三年間でひとつやりましょうなんて、いまになったら願望だと。それに対しても見通しは暗いなんて言っている。それじゃだめなんですよ。国会で答弁したことをぴしゃっとやってもらわなきゃね。その指導性を持たなきゃいけないんです。そのことを要求しておきます。  最後に、畜産物価格で加工原料乳の保証価格や限度数量の引き上げ問題あるいはまた豚肉、牛肉等についてでありますが、これは家族労働費を含めて生産費を正しく反映してことしの価格を算定すべきだ、また限度数量についてはいまの需給事情の中からこの数量を引ぎ上げるべきだと、このように指摘をしますが、これから審議をしていくということじゃなくて、基本的な考え等を聞かしてください。
  112. 船曳哲郎

    政府委員船曳哲郎君) 現在、最新のデータを集めまして、いろいろと精査をいたしておるところでございますが、来週月曜日、火曜日の審議会で御意見をお聞きいたしまして、三月末まで、この月末までに適正に決定したいと考えておるところでございます。ところで、加工原料乳の保証価格の算定に当たりましては、従来から飼育管理の家族労働費は主要な加工原料乳地域である北海道の製造業五人以上規模の労賃によりまして評価して算出し、それから飼料作物生産の家族労働費は農村雇用労働賃より評価して算出しておるところでございます。
  113. 村沢牧

    村沢牧君 全体のことは知っていますから。
  114. 船曳哲郎

    政府委員船曳哲郎君) はい。本年度は先ほども申し上げましたように、審議会の御意見を聞いて適正に決定してまいりたいと、このように考えております。それから、限度数量につきましては、五十八年度は生乳の生産事情とか、乳製品の需給事情を十分踏まえた上で審議会の意見を聞いて、これまた三月末までに適正に決定してまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  115. 村沢牧

    村沢牧君 最後に、大変失礼ですが、大臣に私は御要望申し上げておきたいというふうに思いますが、きょう大臣からいろいろな見解を承りました。また昨日来の大臣の答弁をお聞きしておりまして、簡潔であるということは、私は評価します。しかし、その中身については、あるいは政策を具体的に進めていくというこの自信のほどについては何となく、こんなことを言っちゃ失礼ですが、心細い。私は先ほど申しましたように、この委員会で六年間七人の大臣と論戦をした。それぞれ性格が違い、あるいはまた言うことも違うけれども、また意見のかみ合わないこともあった。それぞれ自信を持って農政を進めていくという決意の披瀝があったんです。これからも私、大臣に今後の委員会で質問いたしますけれども、もっと自信を持って日本農政発展をさせていくんだと、そういうひとつ心構えを持って、あるいはまた官僚諸君をよく統率してがんばってもらいたい、そのことを要望して私の質問を終わります。
  116. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本件に対する午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  117. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、農林水産省所管農林漁業金融公庫を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  118. 川村清一

    ○川村清一君 予算の質問の前に、まあ予算に関係がないことはないわけでありますからお尋ねし たいんですが、これは昨日の委員会で同僚の議員からも御質問がありまして、長官からいろいろと御説明のありました韓国の二百海里の問題ですが、これは当面する問題としては漁業者にとっては重大な問題でございますので、私もずいぶん昔からこの問題にはタッチしておりますので御答弁をいただきたいんですが、まず、水産庁としましてもずいぶん御心配になって努力されたことはきのうの御答弁でもよく承知いたしましたが、改めて先般松浦長官が訪韓されまして向こうの水産庁長といろいろお話されましたその件につきましてかいつまんで御報告をお願いしたいと思います。
  119. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 先般、大臣の御命令によりまして私、韓国を訪問いたしまして先方の水産庁長の金庁長と当面の日韓問題につきまして話し合いをいたしてまいったわけでございます。そのきっかけとなりましたのは、川村委員よく御承知のとおり、北海道の周辺水域につきましては昭和五十五年の十月に、当時の今村長官の時代でございましたが、取り決められました、いわゆる韓国船の自主規制、その合意があったわけでございますけれども、この合意があったにもかかわらず去年の暮れからことしの初めにかけまして非常に深刻な違反の問題が起こったわけでございます。その内容といたしましては、ことしの一月に操業禁止期間の違反あるいは禁止水域の違反といったような非常に深刻な違反問題が起こったと。それから第二に、韓国船の位置を通報するということが合意上の約束になっておったわけでございますが、これにつきましての位置通報が行われてこなかったと。それからまた、民間で同意をいたしておりました漁具の設置個所、これにつきまして通報をこちらがいたした場合に先方が受信をするということでございましたが、この受信をしなくなったといったような事態が起こりまして、しかもこれに伴いました漁具被害が約二千万円という状況に達したわけでございます。かようなことから、北海道の漁民の中に大変なショックと申しますか、この違反に対する怒りの声が沸き起こりまして、私どもに対しましても非常に強い御陳情があったわけでございます。さような事態を放置するわけにはまいりませんので、庁長と会談をいたしたというのがこのきっかけでございます。  この会談に当たりまして先方が申しましたことは、やはり日韓の漁業関係につきましては、過去十八年間の長い歴史があり、その間話し合いによって問題を片づけてきたという歴史と伝統がありますので、今回も友好的に話し合いをしたいということを先方は申しまして、かなり積極的に対応をしてまいったわけでございますが、わが方といたしましては、やはりこの北海道の周辺水域におきますところの韓国船の違反操業というものはゆゆしい問題であるということで、特に漁民の方々が非常にエキサイトしておられる、そしてまた不測の事態が起こりかねないということも先方に十分説明いたしました。また同時に、北海道の漁民の方々から二百海里の適用をしてほしいという強い要望があるということも先方に話をしたわけでございます。このようなことから、私どもとしましては、今回の韓国漁船の違反操業につきましては厳重に抗議をする。そしてまた、このような緊迫した国内事情もありますので、再発の防止のために実効ある措置をとってほしいということを先方に強く要求した次第でございます。  これに対しまして、まず第一点といたしまして、韓国側は、違反操業につきましては遺憾の意を表するということを申しましたと同時に、韓国の指導船、これは監視取り締まり権を持った監視船のことでございますが、この韓国の指導船を早期に北海道周辺水域に派遣して取り締まり指導に当たりますということを金庁長が約束をした次第でございます。昨日入りました電報によりますると、韓国側から漁業の取り締まり船ムグンファ九一号、これ千三百四十トンの監視船でございますが、これを三月二十一日には北海道の水域に向かって派遣するという旨の通報があった次第でございます。先方も約束を守ってきたということでございます。それからまた、同時に韓国のこの周辺水域に参ります漁船の高級船員、正確にはきのうの電報では船長と一等航海士になりますけれども、これにつきましては、漁期前に十分に再研修を行って北海道の水域に派遣するということを言ってまいりました。このような約束についても、先方は実行するという意思を明確にきのう言ってまいったわけでございます。それからこのような効果的な取り締まりということが必要でございますので、それを保証いたしますために日韓の実務者間におきまして、いかにすれば実効ある取り締まりができるかということについて今後相談しようということでも話し合いが決まった次第でございます。  次に第二点といたしまして、五十五年十月に結ばれた協定はこの十月末に期限切れとなるということになっているわけでございますが、この北海道及び済州道周辺水域におきますところの操業につきましてこの自主規制措置が切れた後にどうするかということについても話し合いをいたしてまいりました。この点につきまして私どもといたしましては、特に北海道周辺水域、なかんずく武蔵堆の周辺水域におきましては非常に資源状態が悪化しているということを先方に申しまして、特にその中でもタラのはえ縄漁船等につきましては、すでに全船係船といったような事態が生じているということも先方に申しました。この資源問題というものを十分に論議した上でなければ協議が調って次の段階に移ることができないということを先方に説明した次第であります。  また同時に、操業上のトラブルの防止のための実効ある措置ということについてもこれについて十分実務者間で協議をして、その協議の結果によってこの十月以降の措置を決めようではないかという話をいたしまして、この点について合意をした次第であります。なお、最初の実務者会議は四月下旬を目途に開催するということで合意をいたしてございます。なお、日程、場所等につきましては外交のチャネルを使いまして確定をいたすつもりでございます。  それから次に、北海道沿岸漁業者の漁具被害でございますが、この点につきましては、先方に対しましてその処理の促進方を要求いたしますと同時に、特に両国政府が民間団体を十分指導するということでこの漁具被害を早期に解決したいということで話し合いをいたしてまいりました。  なお、西日本の周辺水域につきましても御案内のように、福岡あるいは長崎の沖合い等につきまして日韓漁業協定に盛られました合意書の中に決まっておりますところの沖底船の操業区域につきましては、韓国漁船も操業をしないという約束があるわけでございますが、これも非常に違反が多い水域になっておりますので、この点につきましても先方に実態を十分話をいたしまして、その結果、先方はなるべく継続的にこの水域にも監視船を派遣して取り締まりに当たるということと、特に問題がありますのは、監視船がいなくなりますと、途端にまた違反が起こるということが頻発しておりますので、特に監視船間の通信方法というのが非常に重要でございます。この点につきましては過去半年の間いろいろと協議をしてまいりまして、ようやくその結果が実りましたので、この監視船から監視船に対して通信をして至急にこちらの方に韓国の監視船を派遣してもらうということにつきまして、四月十五日からこれを実施するということについて話し合いをいたし、合意をしてまいった次第でございます。  なお、以上のほか韓国のイカ流し網の漁業につきましては、わが方の国内規制を尊重してほしい、自主的にこれを規制してほしいということを要請いたしますと同時に、日韓間の技術協力等の問題についても意見の交換を行ったということでございます。  以上が御報告でございます。
  120. 川村清一

    ○川村清一君 長官がいろいろ御苦労されましたことにつきましては敬意を表する次第でございますけれども、この韓国漁船の特に北海道周辺海域における無法操業というものは、これはもういまに始まったことではなくて、実に長い歴史的な過 程がありまして、もう昭和四十年の初めごろからこれが起きている。当時はもちろんソ連船も北海道周辺にありまして、これも相当の被害を与えておりました。日ソ間におきましては五十二年の日ソ漁業協定ができましてからこれはなくなりましたけれども、その前はずいぶんありまして、その被害につきましては被害に対する損害を補償せいといったような立場で私もいろいろここで論議いたしました。その結果、協力協定のようなものができまして、それをもとにして漁業損害賠償請求処理委員会というものが日ソ間に、これは政府間ですね、こういう委員会ができまして、東京に一つの事務所があり、モスクワにも事務所があって、東京委員会でいろいろ調べて決まったものをモスクワ委員会の方に上げて、そこで処理、決定するということになっておるんですが、いまだに一件もこれは決着ついていないんではないかと思うのですが、日ソ間の問題はどうですか。
  121. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 日ソの漁業の漁具被害の問題につきましては、ただいま先生お話しのように、東京とモスクワと双方におきまして委員会を設けまして、事件を詳細調査いたしまして、東京の委員会で決定をし、これをモスクワ委員会に送って処理するということにいたしておるわけでございますが、この漁具被害のうちで二種類ございます。一つはAカテゴリーと言われているものでございます。それから次はBカテゴリーと言われているものでございまして、一口で申しますと、Aカテゴリーの方は被害を生じしめたソ連側の漁船、これがある程度までわかっている、わりあい被害内容が明確になっているものでございます。  それからBカテゴリーと申しますのは、これは被害船が余り明確でないというものと二つございまして、Bのカテゴリーの方はつきましては、実は当時の渡辺農林水産大臣がモスクワに行かれまして、カメンツェフ漁業大臣と話をしまして、一括解決ということである程度まで、何と申しますか、個別の案件に余り立ち入らない形でありますけれども、概算的な解決で支払いをしようということになりまして、これは非常に話し合いが進みまして、Bカテゴリーの方は若干の件数がまだ残っておりますが、相当程度解決を見ております。  問題はむしろAカテゴリーでございまして、これはいろんな理由がございますが、一つはなかなか調査が進まないという点もございますけれども、一つのネックになっておりますのは、もしも被害を与えたソ連船が明確になりますと船長の責任が出てくるものでございますから、ソ連側がなかなかその被害を認めないという問題がございまして、Aカテゴリーの方はほとんど審査が進んでいないということでございます。恐らくただいま川村委員のおっしゃられたのはAカテゴリーの部分であろうというふうに思うわけでございます。この点につきましては、実は先般カメンツェフ漁業大臣日本を訪問されました際に、金子農林水産大臣から強くこのAカテゴリーの解決を図ってほしいということを要請していただきまして、先方もぜひこれは処理いたしたいということで、年内にモスクワとそれから東京の委員会の合同委員会を開いて、このカテゴリーの処理につきましてお互いに協議をしたいという話し合いが調った次第でございまして、これがうまくいきますれば、大臣間のお話でございますので、Aカテゴリーの部分についても話し合いが進むんではないかというふうに期待をいたしている次第でございます。
  122. 川村清一

    ○川村清一君 大体わかっていることで質問を申し上げているので、詳細親切に御答弁いただかなくても、私は漁業損害賠償請求処理委員会、東京事務所、モスクワ事務所、この中で言ったものがこれは私はいまだ一件も解決しないと思うものですから、解決したものがありますかということをお聞きしたので、経過をずっと長く御説明いただいてありがたいのですけれども、それでは私の質問の時間がなくなりますのでひとつ簡単にお願いいたします。  そこで韓国の件ですが、これもずいぶん何回もやっておりまして、ぜひひとつ会議録をずっと読んでいただければ、ほとんどわが党の方は私がこれを質問やっておりますので御理解いただけると思うんですが、たとえばいまここにいらっしゃる初村さんが農林水産省の政務次官をやられていたときなどは初村さんも韓国へ行っていただいていろいろ御苦労もお願いしたといったようなこと、それでずっと長い経過を経て、そしていよいよ昭和五十二年にこれはアメリカも二百海里を設定した、ソ連も二百海里を設定した、それから朝鮮民主主義人民共和国も二百海里を設定した。特にソ連との関係がありまして、そして当時、鈴木農林水産大臣が大変御苦労されましていわゆるわが国も二百海里暫定水域法というものを制定したわけですね。そこからそれでは韓国の問題はどうするか、どう対処していくかということでございまして、もうそのときから私は、この暫定水域法の中に韓国を適用除外することは間違いである、なぜ一体二百海里をやらないんだということをずいぶん主張してきたわけです。たとえば日本とソ連の北方領土、これは全く距離的には近いわけです。特に貝殻島なんというのは納沙布岬から三千八百メーターのところにその島があるわけですから、この島から二百海里引いたら北海道本土にずうっと入っちゃうわけですね。こっちの方からまた二百海里引いたらはるか向こうまで行っちゃうわけですね。二百海里が重なるわけです。その場合は中間線、いわゆる北方領土はわが国固有の領土ということを確認し、そういう固い信念のもとに——だけども漁業問題、こういうものを処理するためにそういうふうな処理をして、そして中間線からこっちだと、こっちはソ連といったようなことで現在漁業をやっているわけですね。これと同じようになぜ日本は二百海里引かないのかと、そうすると当然韓国も二百海里を引くでしょうと、引いた場合にその中間線でこれで処理できないものかと、これは二百海里というのはいまや国際的にもうどこの国でもやっていることでありますから、韓国だけを除外するなんというのはおかしいじゃないかと。それから外務省の方にもそういう一体協定というものはあるかと、国際的に、どっかの国とどっかの国が漁業協定を結んだと、その場合に特定の国を適用枠を外すという、そういうものがあるかというようなこともお尋ねしたが、そういうものは国際的にもないというお話等も承っておるわけですよ。ですけれども、私どものこの主張を入れないでとうとう暫定水域法をつくり韓国を適用除外したということからもう大変な問題が起きてまいりまして、そこでずいぶん国会の中でも論議しました。いま行われておるこの協定というものに対して私は、昭和五十五年の十一月二十一日、この当委員会におきまして、当時の農林水産大臣は亀岡さんで、水産庁長官は今村さんでございました——それから協定でございますから、いや協定であればいいんだが、協定でないんですから、しかしやっぱり条約の専門家にいろいろ意見を聞きたいと思いまして外務省の条約局長の伊達さんにもおいでいただきましていろいろ論議しました。このときの五十五年十一月二十一 日に当委員会で私が質問した会議録というものをぜひ長官読んでみていただきたいんですが、お読みになりましたかどうか、ひとつお伺いしたい。
  123. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) しさいに読ましていただきました。
  124. 川村清一

    ○川村清一君 その中で私が将来当然起きてくるだろうという問題を全部出しまして、そして今村長官と鋭い議論をやりとりしたわけです。ところがやっぱりだめでした。これはもういみじくもこれ見て私はなるほどなと思ったんですが、これは先般衆議院の予算委員会の分科会でわが党の他端清一君がこの問題で質問いたしまして、それに対する金子農林水産大臣——金子さんは何と言いましたって長崎県で大きな漁業をやっていらっしゃいます漁業者であり、したがってこの方は専門的な方でございますが、金子国務大臣の御答弁として、「韓国のやり方がむちゃくちゃなんでございまして、そういうことでもしなければどうにもならないなという感じでおりますけれども、」と、いわゆる「むちゃくちゃなんでございまして、」とい うこの金子農林水産大臣の御発言が示しているように全くむちゃくちゃなんです。そこで、長官が大変御苦労いただいた、そしてこういうことを約束してきたということを言われておりますが、これは一体私はこれでもって本当に約束どおりやってくれるのかどうかということが心配なのですね。それはいま行ってお話ししてきたばかりですから当分の間約束守ると思います。そしてこの十一月にもまた話し合って今後どうするかということを決めるわけですから、ですから現在はそうだと思うんですが、長官としてはどうですか、いま御報告されたことで自信がありますか。
  125. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 先ほどお話のございました川村委員と当時の今村長官あるいは当時大臣をなすっておられました武藤大臣、亀岡大臣、この間のやりとりをなされました議事録につきましては詳細読ましていただきまして、そこで起こった、あるいは予測をしておられた問題というものが確かに今回起こったということにつきましては、私もこれを読みまして非常に印象づけられた点でございます。ただ、今回金庁長と話しました感じといたしましては、韓国側も非常に現在の日韓関係というものにつきまして漁業の問題でこれを壊したくないという気持ちは非常に強く持っていたという印象を持っております。そしてまた、今回この会議を通じまして約束したことにつきましては、先ほども御報告いたしましたように、きのうの電報によりますると、直ちに約束を守って監視船を派遣してくるということも実行してきておりますので、私どもとしては韓国の政府の誠意というものはこれは信じまして交渉をしなければいかぬという気持ちでおるわけでございます。もちろんいままでのいろいろな経緯、議事録においても私、拝見さしていただきました。経緯はございますので、十分に将来ともウオッチをしていかなければならぬということは私よくわかっておるつもりでございますが、しかし一応はこの韓国の誠意を信じて交渉を今後いたし、十月以降の対応策を考えてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  126. 川村清一

    ○川村清一君 長官も基本的なお考え方としてこれがことしの十一月になると消えますね。新しいまた何かやらなければならぬ。これ、協定でないことわかりますね。最初は文書やりとりしたと言いますから、これはいわゆる外交における交換公文のようなものかと思った、交換公文なら協定と同じ、これは外交的な責任政府が持たなければなりませんからそう思っておったんですが、そうではなくして、ただ手紙のやりとりをしただけということであって、これは自主的な約束みたいなものです。民間の約束みたいなものですね。ですから、なかなかこれが破ったからといって政府責任追及し、あるいは損害が起きた場合に損害賠償を要求するというようなこともなかなかむずかしいようなことであり、それからこの日ソ協定だとかソ日協定のように、やはりその協定違反をした場合にそれを取り締まる権限はいわゆる主権を持つその国が持っているわけですね。したがって、その監視なりあるいは違反した場合にはそれに対していろんな罰を与えるといったようなことは、日本の二百海里でソ連がやった場合には日本政府が持っているわけですね。ソ連の二百海里で日本漁船が違反した場合にはソ連政府が持っているわけですね。ところがこの協定はないわけですよ。そういうことはないわけですね。あくまでも旗国主義であって、韓国の漁船の違反をいわゆる処分するという権限というものは日本政府にはないわけですね。これは韓国政府が持っているわけです。そこにまず大きな問題がある。幾らやっても現に違反操業が行われておるわけです。ですから、私はいまのような自主的な決め方ではなくして、やはりきちっと政府間でやるとかということでなければ問題は解決しないと思うんです。  そこで、この十一月に新しく出る場合にどういう取り決めを行うという考え方なのか。やはりいまのままの形のもので延長していくのか。いまもう北海道の漁民だけではないわけですよ。当時は北海道の漁民が一番困っておったんで北海道の漁民から盛んにそういう要求が上がってきましたが、ところがいまは西の方も、もう福岡県やあるいは長崎県もこの韓国漁船の無暴操業によって相当困っておると。二百海里を引けというこういう要求があるということも私、聞いているわけですよ。したがって、次の段階ではいわゆる暫定水域法にある韓国適用除外条項を除いてそうして完全に二百海里法を韓国にも適用すると、こういう考え方でいるのか、それともいまのままの形を延長するという、それで延長する形の中でいま長官が言われたようなことを厳しくやらしていこうという考え方なのか、その辺が非常に大事なことですから、これはもう北海道の沿岸漁民あるいは日本海の西の方の漁業協同組合の皆さん方の意見を聞けばそういうことを強くおっしゃっておりますから、この点しかとひとつ方針をお聞きしておきたいと思うんです。
  127. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) お尋ねの点を分けまして、二点のポイントにつきまして御説明申し上げたいと思いますが、まずこの書簡の性格でございますけれども、これは前回の当委員会での御議論にもございましたように、外務省の側の答弁も一致してそうであったというふうに私承知しておるわけでございますが、この交換された書簡は双方の自主規制措置を通報し合う形式をとっておりますけれども、その内容は両国政府間の長期にわたる困難な交渉を経て合意した結果をそれぞれの政府が表明しているものであって、法律的権利義務関係は別として、外交的には十分な重みを持っていると。おのおの政府はその自主規制措置を自国漁民に対して十分遵守させればならないものと考えているというのが外務省の考えであったと。また私どももそう思っておったわけでございます。現に私も韓国の政府の人に問い合わせをいたしまして、この措置を守らせるために向こうは操業の許可状を、どういう一体権限を韓国政府が持っているかということを問いただしてまいりました。そうしましたら、やはり操業条件ということできちんと入っておりまして、操業条件の中にこの自主規制措置というものを遵守せよという、そういう操業条件のもとにこの水域に漁業を許可しているという状態になっております。したがいまして、操業条件の違反をいたしました場合には、当然向こう側は何らかの罰則なりあるいは行政処分といったようなことを適用できる、そういう状態にしているということでございまして、これはただその政府が、自主規制とは申しましても、自分国民に対して責任を持ってこの協定を、協定と申しますか合意を遵守させるという状況をつくっているということが言えると思うのでございます。これが第一点でございます。  それから第二点は、確かに先生おっしゃられますように、この問題の抜本的な解決ということのためにはわが方が取り締まり権を持つ、つまり旗国主義によらずして二百海里を適用しているその国の権限、取り締まり権に基づいて、現在ソ連にやっておりますと同様な取り締まり権を日本側が持つということが根本的な解決になろうということはよくわかるわけでありますし、またそれが最もいい方法であると思うと、ベターな方法であると思うということを前の今村長官も答弁しておられたということは私も承知しておるわけでございます。しかし同時に、当時からの御議論といたしましてこの一体二百海里の適用、これを韓国にもできるかどうかという問題が当時も十分に御議論なされまして今日に至っているわけでございますけれども、その情勢は私は御議論なすった時点といまとではやはり変わりがないのではないか、やはりそのむずかしさはあるのではないかというふうに考えているわけでございます。と申しますのは、韓国に対しまして漁業水域を適用するか、あるいは五条二号というものを適用するかといったようなことをやりますというと、これはやはり一方的にこれを適用するという関係が起こってまいりますので、韓国も当然二百海里を引き返してくるといった事態になってくると思います。そこにおきましてはどうしても韓国水域に出漁しているわが国漁業に対する影響も考えなければなりませ んし、また竹島も含めまして現存の日韓漁業秩序との関連というものを十分考えてみなければならない。さらには日韓関係全般にわたりますところの影響等につきましてもいろいろな問題が生じてくるということが考えられますので、この前、大臣からも確かにむちゃくちゃな操業であるということをおっしゃいましたと同時に、これは慎重に検討しなければならない問題だということも御答弁なさっているところでございます。したがいまして、この問題はやはり二百海里の適用ということにつきましてここで踏み切るかどうかということにつきましては、相当にこれは慎重な検討をしなければならぬというふうに考えるわけでございます。さようなことを前提にいたしますれば、もちろん現行の取り決めというものをそのまま延長するということにつきましては、これは取り締まりの内容がいまのような状態では不十分であるという問題、あるいは資源の保全の状況といったような点について武蔵堆その他に相当な問題があるといったような問題、こういう問題は先方と十分に話し合いはしなければならないと思いますし、これを補完するような、また実効あらしめるような措置を国会の合意の中で先方と十分に話し合っていかなければならぬ、そのための努力は尽くしたいと思うわけでございますが、二百海里の適用という形でこの問題を解決することはやはり私は困難な情勢にあるのではないかというふうに考えている次第であります。
  128. 川村清一

    ○川村清一君 二百海里を適用するかどうかということは、まあこれは重大なひとつ政治的な選択が迫られる問題ですから、それを私は全然知らないわけではないわけです。しかしながら、とてもじゃないけれども私の長い経験からいってこれは実行できないと、いまのままでは、取り決めも相当内容的にも変えていくなら別として。それからこの二百海里が適用できないという政府のそれがどうもよく理解できないわけですね。おっしゃっていることはわからないわけでもないんですけれども、しかし二百海里法を適用することによっていまの日韓漁業協定がなくなるでしょう、向こうの方も二百海里引きますからね。そうしますとそれは西の方の漁業者にもいろいろ影響があると思います、あるいは以西底びきなんかにもあるかもしれませんが。しかしいま西の方の漁民の方々もやってくれと、こう言っている。北海道なら昔からで、いままた二百海里なぜしないのだというわけで猛烈な声が起き上がっておりますね。どうしてできないのかということなんです。そうしてどこの国だってさっき申し上げましたように条約局長に、ある一つの取り決めがある。まあ協定じゃないですけれども協定みたいなものですね。この協定ができて、この協定をいわゆる二百海里水域法という法律をつくってこの法の適用を特定の国だけ除外すると、こういうようなのが国際的にあるかと言ったら、いやそういうものはないというようなことで、何で日本は韓国だけにそうしなければならないのか、まあ竹島問題なんか起きることもこれは承知して申し上げているんですがね。  そこで、金子大臣大臣は実際に長崎県でよく御承知されておると思うんですが、どうしてこれ二百海里法を適用することはまずいんですかね。まあ日韓のいま漁業条約があります。これが失効すると思うんですが、向こうも二百海里引きますから。国益上そんなに日本は損害がありますか。その点ひとつ大臣あなた専門家ですから、あなたの御意見をひとつ聞かしてください。
  129. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) いろいろ韓国船の日本沿岸における密漁の影響によって、わが国国内でいろいろ大変な意見が出ておるということをよく承知いたしております。長崎県の漁連、ここでも二百海里を引くべきだという決議をしておるようでございます。それで北海道だけじゃなくして、韓国漁船が日本の領海内まで入り込んで荒らしておることは、これは西の方にも大変顕著な事例がありまして、私の郷里の島なんか韓国に近いものですから、三海里のところまで入ってきて全部タコつぼというのを皆ひったくって、底びきが持っていく、手荒いことをやっておりますので、その都度水産庁、海上保安庁に私もいろいろお話しをして取り締まりをやっていただいておるんでございますけれども、最近長崎港口いわゆる長崎港の入り口まで来ておりました底びきは、ずいぶん一ころからすると非常におとなしくなって、昨年の春ごろ見たような厳しい密漁はないようでございます。その都度やはり抗議を申し入れて、水産庁でそれぞれ韓国の方にも話をしてもらっておるのでございますが、私はこの状態が永遠に続くものであるならば、日本の置かれた立場、わが国は海洋国いわゆる漁業国でございますので、わが国自体が二百海里を周辺に持つことが、果たして日本世界一の漁業国が得策であろうかというような点を考えますと、いろいろこれは大変意味深長でございまして、慎重に検討していかなきゃならないことでございますので、これは将来、しかしそういう場合、日本のいわゆる国益がどうなるかということは絶えず検討を続けていかなければならないと思います。いま現時点では、やはりこの間松浦長官が出かけていっていろいろお話をしてくると、すぐその折り返しに直ちにやはり向こうは自粛をして厳しく取り締まりをやるようになってきておりますので、やはり日韓の関係がこれによって悪くなってはまずいということは韓国国民も十分承知しておりますので、韓国の政府指導もある程度私は浸透して徹底するのではないか、こういう期待をいたしております。しばらくはやはり厳重な取り締まり、当然日本の監視船によっても取り締まりはしていかなければなりませんけれども、韓国自体でやっぱり厳しい姿勢で臨んでもらわなければ、これがまず先決でございますから、絶えず外交交渉によって韓国の自重を求めていく、日本側では厳しい規制を設けて取り締まっていく、こういうことでしばらくひとつ様子を見るということがいいのではないか、このように考えております。
  130. 川村清一

    ○川村清一君 政府の態度がそういう態度であれば何をか言わんということでございますが、しかし、これはいま起きたことではなくて、昭和四十年初頭からずうっと始まってきて、そして長い経緯の中でこうなって、また私が発言しているわけで、そこでさらに十分これは検討してもらわなければならないことだと思うんです。  そこで、いままでの例から言いますと、長官ね、確かに取り決めができた当座は問題が起きないんですよ。それから四年、五年たったでしょう。もう全然これは、大臣の御発言ではないですが、めちゃくちゃ、でたらめなんですね。大体取り締まり権がこっちにないんですから、したがって、水産庁の監視船やどこの監視船が監視しておったってね、もう全然聞かないんですよ、実際のところ。そして、向こうの監視船が来ると、これはこわいですから皆そこから離れていっちゃうんです。ところが、それじゃ韓国の監視船がしょっちゅう来ているかというと、先ほど長官のお話ですが、三月二十一日ですか、向こうから来る、そして常時配備しておく、こういうような話だと。いままでいないわけですね。初めはいたんですよ。いまいなくなった。それはそうでしょう。韓国の監視船が北海道の周辺に常時配備されておるということは、これは経費もずいぶんかかるわけですよね。それで韓国の財政も非常に困難であることは承知しております。そういうことにお金をかけるような財政的なあれがないわけですよ。したがっていなくなっちゃう。いなくなると、こういうような問題が起きてくるわけですね。私は、単に漁具、漁網、いわゆる生産手段が切断されたりいたしまして損害を与えるということだけで言っているんではなくして、大事な資源が滅亡してしまうわけですよ。そして、韓国の一番欲しい魚は何ですか、スケソウでしょう。スケソウの問題については、きのうの委員会で私いろいろお話し申し上げましたが、いまスケソウは日本の沿岸でどのくらい生産ありますか。
  131. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 北海道周辺で大体二十万トン、そのほか入れまして周辺水域で大体二十万トンから三十万トンの間だと思います。
  132. 川村清一

    ○川村清一君 いまおっしゃったように、日ソの 漁業協定でもって二十九万トン、それからアメリカ水域から九十五万トンぐらいですね。その九十五万トンのアメリカ水域は、これは洋上すり身ですから、母船でもって処理しますね。ですから、陸上すり身の北海道には経済的に大した効果かないわけです。ソ連の二十九万トンとそれから沿岸の約三十万トン、二十万トンから三十万トン、その沿岸のわずか二十万トンから三十万トンのスケソウ資源というものは、もうこれは大事な、貴重なる資源なんですね。この貴重な資源がいわゆる韓国のオッタートロール船によって乱獲されてしまう、漁場が全く荒廃してしまう、北海道の沿岸漁業というものは壊滅状態になるということを恐れるがゆえに、心配するがゆえに、私はいままで長年かかってこの問題を取り上げてきておるんだと。ところが長官は、武蔵堆その他のところにおいて資源状態がどうなっているか、これを今度調査する、この十一月の取り決め更新までの間に調査するというような……。調査することは結構ですよ、結構でございますけれども、いまの認識として、いわゆる日本の北海道沿岸のスケソウ資源に対する影響はあるのかないのか、どの程度の影響があるのか、どういうふうに判断されておるのか、これをお聞かせいただきたい。
  133. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 私、ただいま申し上げましたことは、調査するということだけではなくて、韓国との間で科学者を交えて、武蔵堆周辺水域を含めまして、その資源の状態を十分協議するということを申し上げたわけです。その協議の結果、これを何らかの形で今後の合意に反映さしていくということなくしては、この問題は解決できないということを先方に申してきたということを申し上げたわけでございます。  この資源の状態が非常に悪くなっておりますことは、これは単に日本船の操業だけではなくて韓国側にとっても非常に深刻な問題であろうと思います。来ましても魚がとれない状況になっておるわけでございます。特に武蔵堆の周辺水域のスケソウは相当小型化しています。現に、先方からの報告によりますと、北海道周辺水域で恐らく去年一年で三万トンか四万トンぐらいの漁獲しか先方も上げられなくなってしまったという状況でございます。
  134. 川村清一

    ○川村清一君 そのとおりなんですよ。それでもう資源がどう影響を受けてどうなっている状態かなんということは改めて調査しなくてももう現実の姿として明らかなんですよ。向こうだってむだな費用をかけて漁労はいたしませんわな。魚のいないところに来ないですよ。ですから、いまの襟裳西海域、ここらは私の家のあるところですが、この辺はもう最近は韓国船はあらわれて来ないんですよ。来たってすぐいなくなる。なぜか、いないんです。ことしの冬なんかもう私の近くの浜からはスケソウは全くないです。全くないから来ないですよ。しかし、この武蔵堆のところに行っているということはなぜかというとあすこにまだ資源があるからなんです。ですから、向こうの方も相当の費用をかけてやってくるわけですから、生産性を上げていかなければならないとするならば、わが国にとって最も大事な好漁場をねらってやってくるわけです。これは当然のことなんです。先ほど長官がおっしゃったように、スケソウ資源があるか、減ったかどうかということは体形一つ、魚体を見ればわかるんであって、いま日高の沖合いあたりでとれるスケソウなんというものは全く小さなものですよ。これはもう資源が枯渇してきているということを実際に示していることなんですね。ですから、実態調査されることは結構でございますけれども、もう資源が本当にひどい状態になってきているということをぜひ知っていただきたいということと。それから沿岸の小さな漁師だけでなくて、いま稚内の機船底びき組合から猛烈な陳情が来ているわけです。もう日本の底びきと向こうのオッタートロールというのが競合しまして大変な状態になってきておるということです。おまけにまあこれも御承知だと思いますが、噴火湾近海でやったことしあたりの韓国のやり方というものはまことにもうふらち千万な話でありまして、スケソウの卵だけとって、そしてがらと、われわれがらと言いますが、身の方は皆捨てちゃう。それから日本のイカ釣り船には許可しておらないところの流し網を使って太平洋岸でもってイカをとる、こういうめちゃくちゃなこともやっておる、これが実態なんですよ。それからもう日本漁業調整規則によって底ひきが操業できない水域にこれに韓国のいわゆるオッタートロールが入っていく、こういうことは取り決めの中にできるわけですから、そういうことをも許していいものかどうか。そこで、資源を乱獲するんでなくて、資源を大事にして、そしてまた、取る漁業よりも育てる漁業ということで資源をふやして、そうして漁民の方々が漁業を永続的にやれるようなそういう海をつくるというのがこれは現在の日本にとっては大事な水産行政方向ではないかと私は思うわけですね。それと相反したようなことを韓国やっているわけですよ。これをそういう内容の取り決めしているわけですよ。ですから、私はぜひこの新しく変えるときには、もう二百海里を適用してもらいたい。どうしてもできないというならば、そういうことが一切心配ないような、日本にとって大事な資源をみんなとられちまう、こんなことを許していいものかどうか、これを考えてもらいたい。どうも一番そのことに対して強い信念を持って当たってくれるはずの金子大臣はあなたは水産人なんだから本当に日本漁業を守る、日本の漁民を守るという立場から考えていただきたいんですが、大臣どうですか、私がいま申し上げたことに対してあなたの所見を聞かしていただきたいと思います。
  135. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 先ほども申し上げましたけれども、私は痛いほど北海道沿岸の漁業者の悲痛な叫びを感じております。それはトロール底びき漁業発展したところは沿岸は皆衰微の一途をたどるほどにいわば海底をひっくり返すわけなんですから、資源の繁殖も何もあったものじゃない。いわばあの漁業は海賊漁業と言われるほどのいわゆる資源保護上からいうと大変よくない漁法でございます。それで日本も以西底びきを初め、底びきが非常に発展した後は、やはり漁業の沖合いから沿岸にかけての傾向としては衰微をたどっておる状況でございます。特に水深の深い底で沿岸の資源をいわゆる繁殖さしておった、その水深の深い位置であの数千トンのオッタートロールを引きまくってしまうとこれは資源的には大変大きな被害を受けておるというような実態も私はよくのみ込んでおります。これを何とかして、端的に言うならもう二百海里を引いてぴしゃっと締め切ってしまったら一番手っ取り早くてというようなことも考えたりいたしますけれども、これはやはり長期的に日本漁業をどのように位置を位置づけるかというような考え方で、日本の一千万トンが、いわゆる海外でやっぱり二百五十万トンから三百万トン近くの水揚げをして、そして一千万トンの水揚げが日本のいわゆる動物たん白の五〇%以上を供給しておる、こういう実態なのでございますので、やはり日本の周辺を二百海里を引くということが日本の将来にとって漁業資源を、あるいは漁業資源によるたん白の自給率を維持できるだろうかと、そういった点まで深刻に考えてみなければならないということでございますので、大いにひとつ検討課題として私は取り組んでまいります。  しかし、いまのさしあたっての措置としては、やはり韓国の取り締まり船を常時張りつけて盛漁期だけはひとつ監視をしてもらう。それは北海道はもちろんのこと、西日本の二十三県にも及ぼしておるわけでございますから、いわゆる日本周辺の韓国の密漁船をどのようにして、これを完全になくすることは不可能であっても、いまの状態を、ひとつこれを本当に韓国政府国民に自覚をして、自重をしてもらって、そしてこの被害を半減あるいは三分の一にとどめるかということにひとつ取り組んでまいりたい。その方法、手段、手だてについてはいろいろ長官も一生懸命取り組んでおりますので、ひとつもうしばらくこの方の段取りをつけることに御理解をいただきたいと思う のでございます。
  136. 川村清一

    ○川村清一君 この件につきましてはせっかく長官が御苦労されていろいろ話し合ってこられたわけでありますから、向こうがどういうふうに実施してどういうような状態で進むかいましばらく見せていただきたいと思います。それに基づいてこの十一月において新しい取り決めをするときに政府がどういう態度をとられるか、これも注目しておりたいと、かように考えまして、とにかく現在のままじゃ困りますから善処していただきたいということを漁民にかわって強く要請いたしておきます。  もう時間がございませんが、予算の面でひとつお尋ねしますが、五十七年から行われました漁港の七次整備計画、これは総額一兆八千五百億円、六年間でこれは達成するわけですが、昨年の時点においてこれを六年間で達成するためには五十七年度から大体一三%ですか、やっていかなければ達成できない。ところが、五十七年度が二千二百三十九億円で、五十八年度では一・一一%しか伸びておらないと、そうしますと、とても一三%にも及ばないわけですね。  そこで、こういうような情勢で、あの委員会ではずいぶん私はしつこく長官にいろいろと申し上げまして、本当に六年間でこれが達成できるかということを申し上げたんですが、この状態ではとてもと思うんですが、いかがなものですか。
  137. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ただいま先生御指摘のとおり、五十七年度末における計画事業費に対する進度率が約一二%、それから五十八年度におきましては、ただいま御要求申し上げているのは事業費約二千二百六十四億円、国費千五百四十五億円に対しまして、同じく千五百四十五億円でございますので五十八年度末における進度率が約二四%という状況でございます。これでまいりますると、今後約一八%ぐらいの予算の伸び率でやりませんと六年間で目標達成できないという状況でございまして、今後相当の努力をしなければならぬということでございますが、何分にも財政事情がこのような状況でございまして、特に公共予算は五十八年度もゼロシーリングという中で編成をいたしたわけでございまして、その中でも漁港は公共事業の中でも三番目の伸び率ということで、ようやくその予算確保したという状況でございます。非常にむずかしい状況であることは私も認識しておるわけでございますが、今後さらに努力をいたすということにいたしたいと思っておる次第でございます。
  138. 川村清一

    ○川村清一君 昨年に比べてことしは一%伸びたわけですね。しかしながら、これでもって考えていくと、いま長官がおっしゃいましたように、一八%ずつ五十九年から伸びていかなければとうてい六年間では達成できないと。この点についてできるか、できないかといってずいぶんやかましく議論しまして、当時の田澤農水大臣は、胸を張って必ず達成できるように最大の努力をするということをおっしゃったわけです。  そこで金子大臣ね、もうあなたは一番この漁港の重要性については認識されている方ですが、この第七次計画、これを達成することに非常に財政的にむずかしいんですが、どうですか、ひとつ大臣決意をここで明確にしていただきたい。
  139. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 川村先生の大変な、いわゆる農水省の水産庁の予算で一番大きい柱になっております漁港予算について大変御熱意を持って御指摘をいただいております。適切な御意見で、当然努力をしていわゆる年次計画を完成させなければと、そういう決意を持って臨みますけれども、かつての高度成長時代の予算編成とは違いまして非常に厳しい予算編成が続けられておりますので、ここで決意だけを大きく御披露申し上げても実行が伴うかどうか、いろいろ不安がありますので、ひとつ御期待に沿うように全力を挙げて努力はいたしますというお約束でひとつお許しを願いたいと思います。
  140. 川村清一

    ○川村清一君 余り頼りのない御答弁で、それじゃそういうことを、全国の漁港の計画が早く達成されることを願っている漁業者に対しては失望感を与えるだけでないかと思うのです。私もいろいろの大会みたいなものに出ますが、全国漁港大会、漁港協会が主催する全国漁港大会ぐらい盛大な大会はないと思っています。これには総理大臣農林水産大臣、それから各党代表者が出ましてそれぞれ決意を述べられておるわけですが、それぐらいみんなが待望しておる。何といったってこの漁業振興生産基盤であり、そして流通基盤である漁港なんですよ。それが何だかそういう頼りない御答弁ではこれがっかりするわけですが、ひとつむずかしいことは十分わかっています、一兆八千五百億というものを六年間で達成するというのですから。しかし、これは去年から始まって一三%ずつ上げていかなければならない。ところがもうことしの予算分をもって今度は一八%、これはちょっともう夢のような話なんですよ、いまの段階では。しかしそれでは困るので、これは何といったって日本食糧面から言って、たん白食糧約五〇%を提供している日本漁業者の一番大事な根拠地である漁港ですから、漁港計画を達成する、推進するように最大の努力を払ってもらいたい。  と同時に、漁業と関連して漁業集落環境整備事業というのがありますね。これはあれですね、農村で言いますと、本当に農村環境をよくしていくという、ちょっと法律の名前はあれしましたけれども、わかりませんが、とにかく農村の環境をよい環境にしていこうとしているその努力と、いわゆる漁村の環境をよくして整備していこうというこれが、農村に比べてはこっちの方は非常に低いと思うのですが、どうですか、長官。
  141. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 確かに農村と漁村を比較いたしますると、漁村の場合には非常に地形的にも狭いところにたくさんの家が建っているというような集落でございまして、特に集落道の整備あるいは給排水事業あるいは団地造成といったようなことによりましてこの漁村集落というものを近代化するということは非常に必要な段階にあるというふうに考える次第でございます。
  142. 川村清一

    ○川村清一君 それで、その計画として五十七年度から五年間の事業計画ありますね、五年間でこれは八十地区ですか、こういう計画だと思うのですが、それで五十七年、五十八年で何地区になります。
  143. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 五十七年度の漁業集落環境整備事業の対象個所は四十六カ所、五十八年度が四十七カ所であります。
  144. 川村清一

    ○川村清一君 ということは、五年間で八十地区ということですか、できますか。ちょっといまの数字が違うような気がする。
  145. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 全国ベースで八十カ所でございますが、これをすだれ事業で実施してまいりますので、ある断面で切りますとこれが何カ所になるかということでございまして、その数値を申し上げましたのが五十七年度が四十六カ所、五十八年度が四十七カ所ということを申し上げたわけでございます。
  146. 川村清一

    ○川村清一君 農業の方では、農村総合整備モデル事業というのがありますね。これはどのくらいやってますか。
  147. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 農業につきましては、農村地域の生活環境整備を行う目的で御指摘の事業を実施しております。この事業量につきましては、私いま、後ほどまた御報告いたしますが、中期的な目標を立てまして、たしか年間大体七十地区程度の目標で事業を実施していると記憶をしております。後ほどまた数字は確かめまして御報告をいたしたいと思います。
  148. 川村清一

    ○川村清一君 農村の方が多いことは事実ですから、それは結構なんですけれども、それに比較して余り低いということはこれはまずいと思うんです。先ほど申し上げましたように、もう漁村におきましては漁港そして漁村の環境をよくしてやる、環境を整備するということがやはり漁村の若い方々が後継者として残り、そして励みを持って漁業生産に当たると。いわゆる漁村の環境をつくるということなんですね。ですからこの点は、五年間で八十地区を決めたけれども、しかしこれは とても全国で八十なんてこんな数字じゃどうにもならぬですから、ですから、これはもっともっとふやしていくように、今後予算を獲得するように努力してもらわなければならないと思うわけです。  そこで、もう時間がありませんが、一つだけ聞きますが、現在水産庁関係の予算というものは、農林水産省全部、先ほど大臣の水産関係予算説明のときにも総額三兆六千六十七億円これに対しまして水産庁の予算というものは何%ぐらいあるんですか。
  149. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 現在、五十八年度予算で八・六%でございます。ただし、ちなみに昭和五十年度のシェアを見ますと五・三%でございまして、一応徐々にではございますがシェアが上がっているという状況でございます。
  150. 川村清一

    ○川村清一君 確かに昭和五十年ごろは五%予算でございまして、それで私はずいぶんこの委員会で文句言いまして、先ほども申し上げましたように、国民たん白食糧の半分を提供しておる水産が農林省全体の予算の五%とは何事だというようなことをやりました、本会議でもやったことがあるんですが、それがいままでの歴代の大臣、そしてまた長官その他事務屋の皆さん方の努力によってここまで上がってきた、八・七%まで上がってきたということに対しましては大いに敬意を表するわけです。  ところが、この予算のうち、大方が公共事業である漁港予算の方へとられちゃうんですね。本当の一般的なもの、私は時間がないから申し上げませんが、もっとやってもらわなければならないことがたくさんあるわけですが、これが実は水産庁ではできないということなんです。ですから、この八・七%ぐらいで満足しないで、ともかくもっともっと強硬にがんばって、そして漁港予算もさることながら、漁港予算だってこれだけあったってさっき言ったような状態ですから、もっともっと一般の水産行政も進めていくように努力してもらいたいと、これだけ申し上げて、長官のお考えを聞かしていただいて、私の質問を終わります。
  151. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 農林水産省全体の予算の中で水産庁が持っております予算の額が余りシェアが大きくないということにつきましては、大臣からも常々おっしゃっておられるところでございまして、私ども水産予算充実ということに対しまして全力を今後とも挙げたいというふうに考えておるわけでございますが、何分にもかつての水産行政は許認可行政が中心でございまして、特に二百海里以降、あるいは燃油価格の高騰が生じました以降におきましては、予算が非常に必要な時期になりまして財政が非常に悪くなったという状況で、なかなか財政的な側面からこれが充実を図り得ないということについて残念に思っておる次第でございます。しかしながら、非常に重要な今後の政策を完遂していくためには、やはり一方におきましてはスクラップ・アンド・ビルドということも考えながらその予算内容充実していくということも考え合わせまして、今後の予算充実に全力を挙げたいというふうに考えている次第であります。
  152. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 五十八年度の予算案は、昨年八月末の大蔵省に対する概算要求時点で、原則マイナスシーリングという大変に厳しい状況下で編成されました。また国の一般会計予算の枠組みを見ましても、五十六年度決算補てん戻しを除いた歳出総額が対前年比三・一%減というものであります。これらを勘案いたしますと、五十八年度の農林水産予算案は総額でこそ二・五%の減額でありますけれども、内容的には相当積極的な施策経費が盛り込まれておりますし、現下の農林水産業情勢からして決して十分とは申せませんまでも、まずりっぱな成果ではなかったかと思うわけでありまして、この予算編成のために日夜御尽力いただきました大臣初め農水省の幹部の皆さん方、また主計官もおいででございますが、主計官も含めまして改めて深く敬意を表する次第であります。  そこで、予算の個々の問題に入る前に、当面の最重要課題であります農畜産物の市場開放問題につきまして、一言大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  先般の日米首脳会談によりまして、農産物自由化問題は若干鎮静化したかに見えますけれども、これは午前中のいろいろな御議論にもありましたように、これによって問題が決して解決したものではない。むしろこれからが交渉の本番を迎えるのだと思うわけであります。大臣は常々、農産物自由化要求には応ぜられないと明言されております。また、農薬が工業製品輸出のための犠牲になるようなことはいけないとも述べられておるわけであります。恐らくこれからの一連の交渉に際しては、たとえば農産物自由化に応じなければローカルコンテント法案が成立しても仕方かないといったような、農政以外の分野と絡めた要求が盛んに出てくるのではないかと思うわけでありますが、改めてここでこれらの交渉に臨まれる大臣の御決意をお伺いをいたしたいと思います。
  153. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) 岡部先生の御指摘のとおり、必ず将来そういった問題が出てくると予想いたしております。それで、私どもはやはり日本農業を守るために最後まで現在の考え方を貫くように省内も皆、幹部にお話をして、農林省ではひとつこの決意を貫くというような考え方で皆取り組んでいただいております。いろいろなことが生じてくると思いますけれども、私どもで日本農業を守っていくという考え方でひとつ努力を続けてまいります。
  154. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 大変力強いお言葉を賜りまして安心をいたしたわけであります。これもまた大臣が常々言われておることでありますが、一方で農産物自由化に応じないと同時に、他方では国内農業生産につきまして、その生産性を高め、コストの軽減を図る処置を強力に講じていく必要があると思うわけでありますが、当面、問題の牛肉、柑橘につきまして、五十八年度はどのような振興策を講じようとしておられるか、事務当局からで結構でございますからお伺いをいたしたいと思います。
  155. 船曳哲郎

    政府委員船曳哲郎君) お答え申し上げます。  わが国牛肉需要は今後とも増大するものと見込まれますために、土地利用型農業の基軸といたしまして長期的な観点に立ちまして肉用牛の生産振興を図ることが必要であると考えております。この場合、国産牛肉価格は、土地条件の異なるアメリカ、豪州並みは無理といたしましても、土地条件の比較的似通っておりますEC諸国並みを目指しまして生産性向上を図ることといたしておりまして、飼料基盤整備などの諸施策を総合的に実施しておるところでございます。また、肉用牛生産振興合理化に関しまする制度整備強化を図ることといたしまして、現在、酪農と肉用牛生産が密接に関連しておる状況等にかんがみまして、この通常国会に酪農振興法の改正案を提出いたしたところでございます。  その内容をごく簡単に申し上げたいと思いますが、まず、法律の名前を酪農振興法から、酪農及び肉用牛生産振興に関する法律というふうに改めたいと考えております。その内容は、大きく三つあるわけでございますが、一つは、酪農と肉用牛生産振興及び合理化を総合的、一体的に推進するための計画制度でございます。二つは、いま申し上げました計画に即しまして、経営改善を行います者に対する農林漁業金融公庫からの資金の貸し付けの措置でございます。三つ目は、肉用子牛の価格の安定を図るための措置でございます。これら三点が主な内容でございます。
  156. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 柑橘関係につきまして申し上げたいと存じます。  御承知のように、ミカンを中心といたします柑橘はわが国の西南暖地におきます、特に急傾斜地帯におきます基幹的な作物でございまして、今後ともその生産振興を図ってまいるつもりでございます。果樹は永年性の作物でございますから、その生産の安定を図りますためには、何といっても植栽面積、栽培面積の段階で需要に見合ったものにしていく必要があるわけでございます。昨今、経済の動向を反映いたしまして果物の全体的な消 費もやや落ち込みぎみでございますが、その中でも大量消費型の果物、国産品で申しますとミカン、輸入品で申しますとバナナ、こういったものの消費減退が大変著しいわけでございます。そういうことに着目をいたしまして、現在園地転換を初めといたしまして、生産需要に見合った規模に縮小をするというための転換対策を実施いたしておりまして、大体五十八年度をもちまして所期の十二万ヘクタールという目標を達成するつもりでございます。そのほか御指摘ございましたように、国産の柑橘産業体質強化のために優良品種の更新、あるいは土地基盤整備生産流通体制の整備のための機械施設等の導入というふうなことを強化いたしてまいるつもりでございます。特に五十八年度は生産性品質の非常に高い新しいモデル暖地を育成をいたしまして、今後の柑橘産業の一つの指針と申しますか、新しいよりどころをつくっていくつもりでございます。さらに、この種の作物につきましては豊凶変動がどうしても避けられないものでございますから、従来から加工品を中心とする消費の周年化、あるいはそれの調整保管というふうなことを通じて需給の安定を図ってきておるわけでございますが、さらに学校給食、これもいろいろ臨時行政調査会あたりで問題になってはおりますけれども、今後ともこれを続けるというかっこうで将来の需要の安定を図ってまいりたい、かように思っております。
  157. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 お話がありましたように、土地利用型農業生産性向上するためには土地基盤整備が前提となるということは言うまでもないわけでありまして、その意味で今回第三次土地改良長期計画総額三十二兆八千億と、実質事業量において第二次計画を上回る線で決められたわけでありますけれども、問題は、現下の厳しい財政事情のもとにおいてこの計画事業量を期間内にいかにして達成するかということでありまして、いろいろと工夫が必要なのではないかと思うわけでありますが、構造改善局長のこれに対する見通しなりあるいは御決意なりをお伺いをいたしたいと思います。
  158. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、今後十カ年の土地改良長期計画として三十二兆八千億の投資規模を想定したわけでございます。また、内容につきましては、農政上の課題にこたえると同時に、県及び市町村のそれぞれ持っております土地改良事業に対する要望なり計画をナショナルベースに引き直すと申しますか、受けとめて実施する態勢で計画を考えているわけでございます。率直に申し上げまして今後経済成長がどうなっていくか、またそれに応じて財政事情がどうなり、また公共投資の規模がどうなってくるか不確定な要因があると思いますし、高い経済成長あるいは財政事情の好転ということを大きく期待することはできない状況であることは事実であろうと思います。そういう意味においてはまさに御指摘のように厳しい状況にあるわけでございますが、私どもやはり基盤整備事業の計画的推進ということは構造政策基礎的前提でございます。また同時に、先ほど申し上げましたように地域からの必要な事業量の積み上げの上に立って策定されたものでございますので、やはり目標達成のための努力というものを今後続けていかなければならないという決意を持っているわけでございます。いろいろむずかしい問題があると思いますが、最大限努力をしたいという考えでおります。
  159. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 最近の農村は兼業農家もふえましたし、混住化現象が一段と進展をしておるわけであります。こうした地域の定住条件を整備し住みよい農村を築くことは国土の均衡ある発展を図るためにも緊要な施策であることは言うまでもないわけであります。と同時に、わが国では集落機能というものを無視しては農業近代化のための施策も、あるいは生産性を上げるための施策も十分にその効果を発揮し得ないのではないかと思うわけでありまして、こうした意味からも中核農家を中心とする農村集落を健全に育成するということが大変大切であると思うわけであります。このためには生活環境の整備は不可欠であるわけでありますが、今回の臨調答申でも生活環境施設整備は抑制すべきだということが載せられておりますが、この答申を受けられて農水省は今後農村整備事業をどのように推進していくおつもりか、お伺いをいたしたいと思います。
  160. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 政府といたしましても臨調の御指摘についてはこれを十分検討の上、実施に移さなければならないことは言うまでもございません。具体的な問題といたしましては、生活環境施設のうち特に御議論の集中いたしました集会施設等につきましては五十七年度から全体として総事業費に占める割合の上限を設定いたしまして抑制するとか、あるいは内部設備等の内容をできるだけ簡素なものにしていくとか、規模や単価等についても限度を設けていく。それからさらに施設の多角的利用を図る、複合化を図る等の措置を講じたわけでございますし、やはり今後の課題としても全体予算の中で合理的な限度を設けながら執行の効率化を図ることは重要な任務だろうと思っております。しかしやはり御指摘のように、また同時にこのことは私ども臨調にも強く御説明申し上げてきたわけでございますが、やはり農業生産農村における生活という問題は表裏一体の関係で展開されている関係にある、また農村地域における生活環境の整備というものは著しく都心部に比べると立ちおくれている、さらに今後通勤兼業農家中核農家の関係、さらに混住化の進展に伴い非農家農家との関係を調整しながらやはり構造政策を進めていかなきゃならぬというのがそれぞれの農村地域の課題であるという実態から見まして、私ども農村整備関係の事業は重要であり、また今後とも確保していかなければならないと思って、長期計画でも必要な金額を織り込んだ経過があるわけでございます。そういう意味においては、予算の計上や執行については筋道をつけ、臨調の答申に対応できる措置を講じつつも、一方においては必要な予算確保には今後とも努力していきたいと思っているわけでございます。
  161. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 生産性向上を図るもう一つの柱は言うまでもなく農地の流動化による経営規模拡大でありますが、農地流動化の現状とそれからことしは特に地域農業集団育成事業等新たな施策を講ずることになったわけでありますが、これらの諸施策を通じまして今後流動化がどのように進展していくか、その見通し等をお伺いをいたしたいと思います。
  162. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農地法が改正され、さらに現在の新しい流動化促進のための立法措置が講ぜられて三年たちまして、いわば利用権の集積による規模拡大の動きというものもかなりの進展を見ております。最近までの時点では約十万ヘクタールの土地が利用椎の設定が行われているという実績まで上がってきているわけでございます。やはりこれから構造政策を進める場合において一番ポイントになる規模拡大につきましては、現実の地価の動向や農地の資産的保有傾向の高まり等を考えますとき、やっぱり利用椎の設定ないしは作業受委託による規模拡大ということに力点を置くことが非常に重要なことだろうと認識しているわけでございます。そこでやはりこれは地域社会における地権者同士の合理的な話し合いを通じて段階的に規模拡大を進めるということが私どもやはり現実的な施策として最も重要なことだろうと認識しているわけでございます。そこで御指摘もございましたが、五十八年度予算からは地域農業集団の育成に関する経費を広範にわたって計上いたしました。中核農家の育成、端的に申しますと規模拡大、それからあるいは中核農家を中心とした高能率生産組織の育成ということを本格的に取り組むスケジュールをつくりまして、当面大体全国の四分の一の集落を対象に、この地域農業集団の育成に努めてみたい、また従来の賃貸奨励施設その他についてもこれに直接リンクして運営を図っていきたいと思っているわけでございます。こういった規模拡大政策というものは、同時に、一方においては土地改良事業の進展と申しますか特に面的な基盤整備推進ということと十分な連携を持って推進を図っていかなければ、なかなか 実効性を上げにくいし、また効用も十全に発砲できないという面もございます。そういう点も今後十分重視して土地改良事業運営に当たってまいりたいと思います。また同時に、ことしから発足いたしました第三次の構造改善事業後期対策におきましては、特に土地利用型農業を重視して、その利用椎の集積等による規模拡大というものに着目いたしまして、先ほど申し上げました地域農業集団の育成と直接連携を持たせながら事業推進を図っていきたいと考えているわけでございます。
  163. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 三年続きの不作で米の在庫が相当低水準になっておるという議論が午前中もなされたわけでありますが、こうした最近の米需給の実情を踏まえまして、五十八年度中にはいよいよ水田利用再編第三期対策を決めなければならないわけでありますが、この基本的な枠組みをどのように考えておられるか。それからまた、これは農家にとってはいわば五十九年度以降の営農の指針となるものでありますので、農家の立場を考えますと、できるだけ早い機会にその基本的枠組みを示すべきだと思うわけでありますが、いつごろ発表できるかお伺いをしたいと思います。
  164. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 御承知のように五十八年度をもちましてただいま実施中の水田利用第二期対策が終了いたすわけでございまして、五十九年度から第三期に入るわけでございます。そういう事態を踏まえまして、ただいま省内で検討チームをつくりまして三期の枠組みの検討に入っております。  検討の視点といたしましては、今後の米需給をどのように見ていくのか、また現在までやってまいりました転作の定着化の動向、そういったことを踏まえまして早急に枠組みを決めたいと思っております。従来もこれはできるだけ早く農家に示すようにという御要望がございまして、予算の本筋からまいりますと、五十九年度予算編成をもって一応政府の原案が確定、さらには国会の承認を得まして予算が執行される、こういう段取りでございますが、大体その前年の秋ごろまでの間には概要をお示しするというまあ助走段階をつけて走っておった経緯がございます。第三期に入ります場合にもそのようなことを十分配慮いたしたいと考えております。
  165. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 次に、林野の問題についてお伺いをしたいと思いますが、木材の需要の減退や木材価格低迷等によりまして、森林の伐採や造林等の林業生産活動が現在著しく停滞をしておるわけであります。また間伐保育のおくれによる森林の脆弱化と機能の低下が問題になっておりまして、このままで推移しますと、国産材の供給が不十分になるのみでなく、国土の保全あるいは水源の涵養等の公益的な機能にも支障を来してくる、ひいては山村地域の衰亡につながるおそれがあると思うわけでありますが、このような状況に対処しまして林業の振興を図るために、五十八年度、林野庁はどのような施策を講じようと考えておられるか、特に森林保育管理の適正化のための措置についてお伺いをいたしたいと思います。
  166. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) いま御指摘のとおり、最近、木材需要の減退あるいは林業生産費の高騰によりまして、生産活動が停滞しておるわけでございます。特に懸念されますのは、戦後植えられました人工造林地が一千万ヘクタールに及んでおるわけでございますが、その中で約半数ほどが間伐の対象等になっておるわけでございます。したがいまして、当面の最大のやはり重点は、この森林を適正に管理するための手だてが大事だと思っております。そこで、私ども、その基本的な考えに立ちまして、今国会におきまして、市町村によるところの森林整備計画制度創設の問題、それから従来分収造林でございましたが、新たに分収育林という制度を導入するということを内容といたしました森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案を提出いたしまして、今国会でこの御審議をいただきたいと考えております。このような方向でやはり当面一番大事でございます森林適正管理に特に力を入れてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  167. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 次に、水産の問題についてお伺いをいたしますが、水産業も、いよいよ本格的な二百海里時代を迎えまして、また燃油価格が高い水準で推移をしておるという等、最近厳しい環境にあるわけでございますが、先般、カメンツェフソ連漁業相が初訪日をされまして、金子大臣とも漁業問題につきまして会談をされたわけでありますが、その成果を踏まえまして、今後の日ソ漁業交渉の見通しをどのようにお考えになっておられるか、この点は特に御造詣の深い大臣にお伺いをいたしまして質問を終わりたいと思います。
  168. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) カメンツェフさんと二回会談をいたしました。大変友好的で三つ、四つの懸案事項を出し合っていろいろ相談いたしましたが、私はその日に即答は得なかった案件でも行く行くはうまく合意ができるなという見通しをいたしております。いろいろ、お帰りになるときに四月に行われますサケ・マスの協定につきましても、ホテルまであいさつに行きましてお願いをしておきましたが、大変好意的でした。私はやはり単なる漁業だけでなくして、ああして出かけておいでいただくということは、日本は初めてお越しいただいておるんでございますから、一週間の滞在ですけれども、大変友好的で、一週間のカメンツェフさんの行動、言動を静かに私は見ておりまして、やはり日本においでいただいて大変な認識を新たにしておるんじゃないかな、それがいま当面は漁業問題での懸案で交渉しておりますけれども、日ソ全体の今後の問題にも大きなプラスであったなと、このように非常に有意義であったということを考えております。
  169. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 ありがとうございました。終わります。
  170. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 いまも岡部委員からわが国水産業を取り巻く情勢がきわめて厳しいことのお話がございました。そこで、私もこれらの水産業にかかわる問題につきまして、きょうは質問をしていきたいと思います。  最初に、日米漁業交渉についてでございますが、この日米間の水産外交で当面の重要な課題というのは、アメリカ二百海里内の対日割り当ての問題と捕鯨の存続問題だと、こういうように私は認識をしているわけであります。アメリカ政府は二百海里内漁獲量の対日割り当てに際しまして四月、七月の二回に分けて今年度の後半分を割り当てることとして、そしてこの分割割り当てに当たっては、米国水産業振興への貢献度、操業違反等に応じて行われるということになっていますけれども、このような分割割り合て方式というのは、実際はわが国水産業界の操業計画というものがこのような方式でいくと実際立てられない、こういうように悩みを持っておるわけですが、そこで、このアメリカの年三回の現在の分割方式に対しまして水産庁としてはできるだけこの実績主義をとるよう交渉に臨むべきだ、こういうように私どもは思っておりますが、その点の御見解をまずお伺いします。
  171. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 日米の漁業協定は五年間の期間を終了いたしまして、ことしから更新されるという状況に相なったわけでございますが、実はただいま先生御指摘の分割割り当て方式と申しますのは、先方の漁業に関しまする法律、関内法に基づきましてどうしてもこの漁業協定にも分割方式をとらざるを得ないということを申しまして、この新協定締結交渉に当たりまして最大の問題点であった一つでございます。この点につきまして私どもからは、わが国としては日本漁業者の操業を不安定にするという点で非常に心配であるということでアメリカ側に強く折衝いたしたわけでございます。そこでその結果、米国政府は一応米国国内法によりまして制約されているということから協定本文にはこれを明記することはできないけれども、しかしながら、合意議事録の中におきまして米国は年間割り当て量及び割り当て予定日を可能な限り早急に対日通報するということをいたしまして、対日漁獲割り当てに対しまして柔軟に対応するということを先方は合意議事録の 中で書いてまいった次第でございます。私どもといたしましては、このようなことでなかなか協定本文の中には入れることができなかったわけでありますが、合意議事録中に記載しているとおりの運用がなされることを期待しておったところでございます。  ことしの割り当てにつきましても、この合意議事録に基づきまして一応分割割り当てでございますが、今後の割り当ての方針というものにつきまして先方も通報をいたしてくるということに相なっておるわけでございまして、御指摘のような一括割り当てに戻すということはなかなかむずかしいわけでございますが、今後ともこの合意議事録どおりに柔軟な運用を先方がやるようにわが方としては米国政府に働きかけていくということで対処したいと想っておる次第であります。
  172. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 来月、四月の割り当てが始まるわけですね。昨年のように一〇%削減ということが非常に懸念されておるわけですが、この四月の割り当てに当たっての交渉の見通しはどうでしょうか。
  173. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 米的はわが国に対しまして去る一月本年の年間割り当て量の二分の一に相当いたしますところの五十七万五千トンの配分を行ってまいったところでございまして、この点につきましては約束どおりその割り当てをいたしてまいったわけでございますが、今後は四月と七月の二回にそれぞれ年間割り当て量の四分の一が配分されるということになっているわけでございます。ところが私ども懸念をいたしておりますのは、米国内で捕鯨問題を理由といたしまして対日割り当てを削減すべきであるという動きがかなり顕著でございまして、このために捕鯨問題に関しますところのわが方の立場につきまして米国の理解を得るよう今日まで最善の努力を続けてきておるわけでございますが、また同時にわが国がスケトウダラの洋上買い付けをやるといったようなことで、先ほど先生がおっしゃられましたようにわが方も協力するという姿勢を示しておるということの説明もいたしております。また同時に、アメリカの輸出水産物の半分が日本に輸出されているわけでありまして、さような意味でわが方の対米協力というものは非常に大きいのだということについても十分説明をいたし、今後ともいたしていくということを考えておる次第でございます。しかしながら、昨今の情勢を客観的に率直に申し上げますと、米国の捕鯨禁止への執念というものはかなり根強いものがございまして、さようなことで四月の割り当ては必ずしも予断を許さないというのが実態でございます。今後ともさらに米国に対しましては粘り強い働きかけをしてまいりたいというふうに考えている次第であります。
  174. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 ぜひひとつ、アメリカからわが国が買っている量というものは相当のものですから、そういうものを背景にしていまおっしゃったように粘り強くしかもかつ強力に交渉を続けていっていただきたいと思います。  そこで、いまお話がありました洋上買い付けの問題ですが、これは昨年の六月からことしの五月まで十二万トンの洋上買い付け、こういうことになっているわけですが、これが来年からは二十万トン、このように洋上買い付けの量が増大することになるわけですけれども、このように洋上買い付けが増大するということはわが国水産業界の雇用問題にも大きく波及してくるゆゆしい問題だと、そのように私どもは認識しておるわけですが、この問題についての対処方針をもう一度お聞かせいただきたい。
  175. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) アメリカとのスケソウダラの洋上買い付けにつきましては、昨年六月日米双方の民間当事者間で話し合いが行われまして、その結果一九八二年の六月から八三年五月までの買い付け目標数量十二万トン、八三年六月から八四年五月までは二十万トン、これ以降についてはこれら洋上買い付けで得られる経験等に基づいて決めるということが合意されておるわけでございます。これまでの洋上買い付けの実績を申し上げますと、五十六年が一万一千四百トン、五十七年が六万六千二百トン、五十八年三月五日現在で五万六百トンという状況でございます。参加隻数はわが方九隻というかっこうになっております。このようなことで必ずしもこのJV方式は目標数量を達成するところまでいっておりませんが、しかしながら、わが方の可能な限度における協力ということを示しますためにはある程度までこの協力方式をとっていかざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。アメリカの年間数量が割り当て数量で百四十万トンでございますから、二十万トンという数字はこれに比しましてさほど大きな状態ではございませんけれども、しかし、先生御指摘のように、これが余りふえてまいりますとわが方の割り当てがそれに応じて削減されてくるということも考えられますので、わが方もこれは限度があるんだということを当然頭に置いて今後の交渉に当たらなきゃならぬというふうに考えております。  なお、雇用問題でございますが、現在米国との間で実施しております洋上買い付けは、いわゆる大型単船トロールを使用いたしまして、洋上におきまして米国の漁船からスケソウダラ等を買い付けるという方式でございますので、単船トロールでございますから当然独航船は附属しておりません。したがいまして、洋上買い付けを終了したら直ちに単船トロールでございますからその船が自船操業するという形になっておりますので、雇用面ではいまのところ影響は出ていないという状況でございます。
  176. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 アメリカは、この水産資源保護の観点から最大持続生産量、いわゆるMSYというこの考え方をもって漁業規制を実施してきたと。最近はこのMSYを基礎にして経済社会的考慮を入れたいわゆる最適生産量、OYの考え方を米周二百海里法に取り入れたということですが、この方式のもとで今後わが国への漁獲量割り当てはさらに減ってくるのではないかと、こういうような懸念もあるわけですが、これはどうでしょうか。
  177. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 現在米国からの対日漁獲割り当てにつきましては、いろいろ問題はございますけれども、結果といたしましては、一九七七年以降昨年まで毎年大体百二十万トンから百四十万トンという量を確保してきておりまして、粘り強い外交交渉の結果、ようやくこのような状況を実現しているという状況でございます。ただ先生御指摘のように、今後のアメリカの漁業政策考えてまいりますと、特に国内法の動向、さらには最近の漁業専管水域宣言、そういった動向をいろいろと見ておりますと、一つは、やはり自国の漁業振興ということを図るために、できるだけMSYといったような考え方ではなくて、まず自国の漁業のために割り当てを優先的に与えていくという考え方が非常に強くなってきておりますし、中には、将来外国漁船はフェーズアウトするんだというような議論をなさる方もおられます。いわゆる余剰原則というものがなかなか適用しがたくなってくる水域ではないかということが考えられるわけでございます。  それからまた同時に、フィッシュ・アンド・チップス・ポリシーと彼らは言っておりますが、漁獲割り当てを得るためには何らかの協力、特に輸入面あるいは合弁といったような面での協力を要請するといったようなことも相当強まってきているわけでございまして、私どもとしましてはこの点につきまして、なかなかむずかしい状況が将来続いていくんじゃないかというふうに考えている次第であります。
  178. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そういう厳しい見方の中でこれから対日割り当ての確保のために交渉に臨まれると、こういうわけでありますが、その場合やっぱりよほどの腹を据えてやらないと大変な影響が出てくるということですから、その対米交渉に臨む御決意をまずお伺いしたいということと、それから、水産アタッシェの確保などの情報収集体制、これは一体万全なのか、その辺のところもあわせてお伺いをしておきます。
  179. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ただいま御答弁を申し上げましたように、アメリカの漁獲割り当てに対す る方針というものは今後ともなかなか厳しい状況が予想されるわけでございますが、私どもといたしましては、米国に対しまして引き続きわが国は米国二百海里内において伝統的な漁獲実績を持っていた国だという点を強調しますと同時に、米国とは一般的に友好な関係にあると、この関係を崩すということは漁業の面のみならず全体的に言って非常にまずい影響があるのじゃないかというそういう点、それからまたスケソウダラの洋上買い付けの実施、あるいは米国水産物の最大の輸出市場であるといったような点を強調いたしまして、わが国としてはできる限りこの点を説得し、米側に対して可能な協力の姿勢はすると、協力は行うという姿勢をとりまして、この漁場の確保に全力を尽くしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。  ただ一つ非常に懸念をされますことは、やはり後で御質問があるかと思いますが、捕鯨の問題でございまして、この点についてはなかなか向こう側は厳しい態度をとっているということが実態としてございます。  それから、情報収集その他の漁業外交上の体制を整備するようにというお話でございますが、この点につきましてはつとに大臣から御指示のあるところでございまして、私どもも外務省と一体となりまして対米交渉、対ソ交渉等重要な漁業交渉に当たってまいりたい。特に水産につきましては、私どもは最も経験知識があるわけでございますから、その経験知識を生かして漁業交渉してまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、特に漁業のアタッシェにつきましてはできるだけこれを配置したいというふうに考えておるわけでございますが、五十八年度予算におきましても、アメリカに漁業の専門の外交官を水産庁の経験者から出したい、それからまた南米の国についてもこれを出したいということを考えておりまして、二名の増員をお願いしておる次第であります。実現いたしました暁におきましては最も優秀な人材の中からえりすぐりまして、このような分野の担当に充ててまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  180. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それで、先ほどからしばしば長官の言葉に出てまいりました捕鯨の問題でございますけれども、政府はIWCの例の捕鯨禁止の決議に対しまして異議申し立てを行っているわけですが、アメリカの国内法では捕鯨禁止というものは国是だと、したがって、IWC決議を守らない国国には専管水域内の対外割り当てを削減できるのだと、こういうようになっていますですね。したがって、そういうアメリカの強い態度の中で今後のこの問題に対するアメリカの出方というものも、これもまた大変注目されなければならない、こういうように思うわけですが、この捕鯨問題に関して対米交渉に臨む、あるいは臨んでいる基本的な姿勢についてお伺いをしておきたいと思います。
  181. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 昨年十一月、わが国は捕鯨禁止の決定につきまして異議の申し立てを行ったわけでございますが、これは昨年の七月のIWCの決定が必ずしも科学的な根拠に基づかない、またその決定の過程におきましていわば数の力によりましてこのような決定が行われたということが、わが方としてどうしても納得ができないということで異議の申し立てを行ったところでございます。しかしながら、米国は特にこれに対して非常に強く反発をしてまいりまして、実は昨年の末におきますところの日米の漁業協定の成立も非常に危ぶまれたという状況でございましたが、ようやくこれを乗り越えて米側もこの協定の批准をいたしまして今日漁業は続いているという状況でございます。  そこで、わが方といたしましては、わが国の立場を米側に十分説明いたしまして、特にIWCにおける科学的な根拠に基づく合理的な資源管理措置というものを実現してほしいということで先方の理解を求め、また捕鯨問題が日米漁業問題とは切り離してほしいと、これに波及しないようにしてくれということの基本的な態度で米側とその後話し合いを続けておるわけでございまして、二度にわたりまして実は非公式の協議をいたしております。  特にことしの二月でございますが、東京で開催いたしました協議におきましては、米国のバーン米国海洋大気庁長官、これは日本水産庁長官に当たる人でありますけれども、それからクロンミラー国務次官補代理、これは大使の称号を持った人でありますが、この二人の方が日本に来られまして、私が対応いたしましてアメリカとの間で主として捕鯨問題について話し合いをいたしたわけでございます。  で、私どもの方からは日米の水産関係は相互依存的な関係であるし、それからまたわが国は米国の水産物輸出額の五割もとにかく買っている国だ、また合弁事業拡大している、また水産技術協力というものも推進しているということを強調いたしまして、このような良好な関係を日米の漁業関係でつくっているわけであるから、捕鯨の問題はひとつ別に扱ってほしいということを申したわけでございます。また、わが国が現在捕獲している鯨の資源というものは、その資源状態が最もよく把握されているし、また実際には良好な状態なんだ、たとえばミンクにいたしましてもマッコウにいたしましてもそういう考え方を私どもは持っておりますので、このような資源に対しまして一律に捕獲を全面禁止するということは科学的根拠がないではないかということで議論をいたしたわけでございます。  しかしながら先方は、やはりこの捕鯨の禁止ということがいわば非常に強い世論になっておって、先方の特に政治的な非常に深刻な問題になっているということで、なかなかわが方の説得は応じる態度は示さないわけでございまして、二度の協議をやりましたけれども、意見の一致を見るに至らないという状況でございます。そこで、引き続き意見の交換を行いまして相互の理解を深めるということで別れたわけでございますが、今後ともこの問題については双方受け入れ可能な解決策を探求しなきゃならぬということでございます。わが方といたしましては、今後とも国際的な資源調査に協力するといったようなこと、あるいは米国を初めとする非捕鯨国等とも、あるいはもちろん捕鯨国も含めまして、関係国と十分話し合いをいたしまして、とにかくわが国の捕鯨が何らかの形でとにかく存続し得るように最善の努力を払っていくという姿勢で臨みたいと思っておる次第であります。
  182. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 この問題に対してちょっと心配になりますのは、要するにIWCの決議そのものはきわめて理不尽かつ非科学的なものであってとうてい納得ができないものでありますけれども、年年しかしこの捕鯨の割り当ての量がどんどんどんどん下がって、そしてかつ、たとえば北洋の水揚げが約千五百億とすれば、鯨は百二十から百三十億、まあ一割程度だということで、この捕鯨存続に対する国論の一致というのですかね、伝統的捕鯨に対する国論の一致というのが場合によっては、そういう水揚げ量などの比較をもって、もうそろそろやめてもいいではないかというようなそういう声が一部にでも出てくると私は問題だと思うわけでありますから、したがって政府としてはそういう伝統的な捕鯨、しかもいまお話しになったような強い決意であるとするならば、もっと国内水産業あるいは関連業界、そういうものの中の意思統一というものを図りつつ、それを背景にしてさらに交渉に臨んでいく、こういうことが必要だと思いますが、その点の御見解をお伺いしたいと思います。
  183. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) わが国におきまして捕鯨業はきわめて伝統的な産業でありまして、また地域経済とも非常に密着した重要な役割りを果たしている産業であります。また、これに従事する人人も多数存在しておりまして、その雇用の確保ということも図っていかなきゃならぬということでございます。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、IWCであのような決定がございまして、われわ れとしては科学的根拠が欠けていると考え、またその手続にも非常に数の力を頼んできたということで、納得しがたい状況のもとに置かれました。これは対する異議の申し立てをしたわけでございますが、やはり対外的にも機会あるごとに捕鯨についての理解を求めていくということと同時に、国内的にもこういう地域的な非常に重要な産業であるし、また社会的に経済にも重要な役割りを果たしているということ、そしてまた国民の食生活にも古くから非常に根強い伝統のある食糧であるということ、それからまたわが国の捕獲している鯨種というものは、現在の捕獲枠というものを守っていくならば、決して資源的に問題はないということを国民の方によく理解をしていただくということは非常に重要なことであるというふうに考えておる次第であります。    〔委員長退席、理事坂元親男君着席〕
  184. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 ぜひそういう立場でこの問題に対処していただきたい、このように強く要望をしておきたいと思います。  それから次に、日ソ漁業交渉についてでありますけれども、中曽根政権ができまして、中曽根さんが例の不沈空母発言等々、要するにタカ派的政治姿勢、こういうものがSS20の極東配置などの発言に見られるようにソ連をかなり刺激しておるのではないか、こういうような、これが日ソ間の今後の漁業交渉に影響をもたらすのではないか、こういう懸念の声もあるわけですが、間もなく開始される日ソサケ・マス交渉に際し、政府としてはどのような見通しを持っておられるのか、お伺いをしておきます。
  185. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 先ほど金子大臣から、カメンツェフ漁業大臣との交渉をなさいました雰囲気につきましてるる御答弁があったわけでございますが、私もおつきをいたしておりましたけれども、全くそのとおりでございまして、ただいま先生お触れになりました中曽根総理のいろいろな御発言が当然あった後でございましたけれども、それが先ほどのような御答弁のとおりでございまして、非常に友好的な雰囲気のもとにこの会談が行われたわけでございます。そしてまた、この日ソの漁業関係というものは、やはり日ソ関係全般の中の非常に太いきずなであるということが双方の大臣のお話の中で出てまいっているような状況でございまして、私は今回、先ほど大臣がおっしゃられたように、非常に有意義な会談だったと、そしてまた今後の漁業問題、これはいろいろな困難な問題は個別にはございますけれども、これを乗り越えていくために非常に私は有益な会談だったんじゃないかというふうに思う次第でございます。  このような会談を踏まえまして、私どもといたしましては、この四月にまず日ソのサケ・マス交渉を行っていくわけでございますけれども、私どもとしましては個々には、漁獲量の問題あるいは協力金の問題、いろいろなことを協議しなきゃならぬわけでございます。あるいは取り締まりの問題、これもカメンツェフ大臣も言っておった問題でございまして、個々の点についてはいろいろ問題がありますので十分協議をしなきゃならぬと思いますけれども、私は、金子・カメンツェフ会談、そこにおいてでき上がりました雰囲気を踏まえまして、またその成果を踏まえまして粘り強くソ連側と交渉を行うことによりましてこの局面を打開できるというふうに考えている次第であります。
  186. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 漁獲量は、五十三年以来、四万二千五百トンを確保してきたわけですが、この漁獲量のみならず、いま必要だと思われるのは、漁場を拡大すること、さらに日ソ漁業協力金、この取り扱いというのが重要なポイントではないかと私は思っているわけですが、現在の漁場は確かに狭いわけですね、したがって安定的、効率的な操業のためには漁場の拡大が必要ではないだろうか。また、漁業協力金の政府補助というのは二十億足らずですね、あとは業界が負担している。したがって、これ以上の業界負担というのは操業の継続に相当影響をしてくるわけですから、これからこれらにつきまして日ソサケ・マス交渉の中でどのように対処していくいまお考えを持っておられるのか、この点をお伺いします。
  187. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ことしの日ソのサケ・マス交渉につきましては、まだこれから交渉することでもございますので、相手方もあることでございますから、余り細かなコメントをすることは差し控えさしていただきたいと思いますが、私どもとしましては四万二千五百トンという漁獲量は、いろいろな経緯はございましたが、五年間の間、何とかこれを確保してまいったわけでございます。現在のところ、わが国のサケ・マス漁業の維持安定を図るということを基本方針にして交渉に臨みたいと考えておるわけでございます。  そこで、御指摘の漁業水域の拡大の問題でございますが、これは漁業者の方々非常に強く望んでおられることは私どもよく承知をいたしております。ただ私は、この現在の漁業操業水域が決まってまいりますときに海洋漁業部長をいたしておりまして、当時の大臣は亡くなられました中川一郎大臣であられたわけでございますが、先方がイシコフ大臣でございまして、最初はソ連側は公海の水域においても一匹もサケ・マスはいわゆる海上の漁獲はさせないという態度で臨んでまいりましたのを、ようやく大臣が最大の努力をされまして、非常に悲壮な交渉であったわけでございますが、ようやくこの四万二千五百トンの漁獲量の確保と現在の水域というものを獲得して帰ってこられたという事態であったわけでございます。この交渉の状況をつぶさに眺めておりました私といたしましては、当時の状況考えてみますると、この操業水域の拡大というものはなかなか困難な問題である、こういうことを申さざるを得ないというふうに考えるわけでございます。しかし、業界の関係者の意見も十分聴取しながら慎重に検討いたして対処してまいりたいというふうに考えております。  それから次にコンペ、いわゆる協力金の問題でございますが、現在四万二千五百トンの漁獲量を確保する一方で、サケ・マスにつきましては協力金四十億円を払っておるわけでございます。これは昨年の交渉、この委員会でもよかったということでおほめをいただいたわけでございますが、五十六年と同額で帰ってまいれたわけでございます。政府助成につきましては、五十七年度の補正予算におきまして十七億円を出していただいておるわけでございます。ただ、今後の交渉でございますが、交渉の直前でございますので、どのようなことになるか、また相手方もございますので、このコンペの問題がどうなるかということをここで申し上げることはとうていできないわけでございますけれども、私どもとしては、極力これを抑制するということで粘り強く交渉してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。ただ、政府助成につきましては、国の財政状況等から見まして、これを拡充することは非常に困難であるということで、そのような財政状態のもとにおいてどうするかということでわれわれは交渉に当たらなきゃいかぬというふうに考えておる次第であります。
  188. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 次に、日韓の問題ですが、先ほども川村委員からの質問がありまして、さまざまお答えがあったわけですが、長官行かれましたですね、その際は例のトラブルの問題だけじゃなしに、イカ流し網操業について交渉があったのかどうか。あったとすればどのような交渉が行われたのか、お話をいただきたい。
  189. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) もちろん、イカ流し網につきましても、先方に話をいたしてまいりました。先ほど川村委員からもこの問題が非常に深刻な問題であるという御指摘がございました。私もそれが十分に頭に入っておりましたので、先方にこれを申したわけでございます。御案内のように、わが国のイカ流し網漁業につきましては、漁業調整と資源保護という角度から省令を出しておりまして、北緯二十度以北、東経百七十度以西の太平洋の海域において操業禁止という措置をとっておりますということを先方にも十分話をいたし まして、特に先方の庁長に対しまして、私からこのイカ流し網漁業につきまして、韓国側もこれを尊重してひとつ規制をしてほしいということと、それから東経百七十度以東の操業水域、これはわが方の流し網がやっている水域でありますが、この水域についてもわが方は網と網との距離あるいは網を流す方向、これを決めておりまして、網が双方で絡まないようにしておるわけでございます。韓国はこのような協調の措置ということがございませんので、網の流す方向がまさに九十度になりまして、引っかかってしまう、絡まり合うといったような事態もございますので、このためには民間ベースでこのような問題も話し合ってほしいということも言ってまいりました。これに対しまして韓国側は、これは公海における日本側のいわば自主的にとられている措置であるので、韓国側としてはこれを直ちに受け入れるというわけにまいらないけれども、しかし、一応検討しますということで、向こう側の検討を約束いたしましたので、今後の交渉におきまして、この問題につきましても引き続き話をしていくという方針でございます。
  190. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 時間が迫ってまいりましたので、これは最後になるかと思うんですが、これは大臣にお答えをいただいた方が適当かと思うんですが、水産物わが国国民の食生活における重要性、これは動物たん白源の五割を占めているわけですから、これはいまさら私から申し上げるまでもないと思うんです。ところが、農林水産予算に占める水産予算、こういうものを見ますと一割足らず、こういう状況ですね。これにはいろいろ理由はあるでしょうけれども、私はこれに不満を持っている者の一人です。たとえば、官房の段階で予算などを振り分けするときに、農林水産予算の全体の中で水産関係は最初から一割だと、一割程度振り向けておけばよろしいと、こういうような機械的な割り当てというんですか、配分、このようなことをやっているのではないかと、私は勘ぐりかもしれませんが、そういうようにも思わざるを得ないわけですが、やっぱりもっと、いまの今日の厳しい情勢から見ましても、水産業振興のためにかなりの予算を振り向けるべきではないか、大幅な増額を要求し、それを実現すべきではないかと、こういうように思っているんですが、大臣の御見解を……。
  191. 金子岩三

    国務大臣金子岩三君) わが国食糧のいわゆる動物たん白は、ただいまお話がありましたとおり、五〇%以上ですが、全部ひっくるめて食糧の中のいわゆるたん白を四分の一は水産物によって供給しておるわけでございます。したがって、私は持論として、まず水産省をつくる、そして充実した政策予算確保すべきだということで長年、農林管の中に入るんじゃなくして、別に水産省をつくるべきだということを言い続けておったんですが、六、七年前ああいうことで農林省の中に水産がつきまして農林水産省という役所になったわけでございます。そのときやはり名実ともに予算もいままでと違った水産に充実した予算を確立したい、確保したいという考え方であのように農林省の下に名前をくっつけたわけでございますけれども、自来遅々として予算の増額ができない。ただ、いろいろ先ほど松浦長官が説明しておりましたとおり、かつて五、六年前の農林省予算の中に占めた比重と現在とではずいぶん伸びておるようでございますけれども、それでも全体の農水省予算の八%しか占めてないのでございまして、何とかしてひとつ農業と均衡のとれた、匹敵するような予算をここに確立したい、どのような手段でいけばそれがここ五年、十年のうちにいわゆる公正なバランスのとれた予算になるかということで苦慮いたしております。もちろん水産というのはやはり自前で、自分の力でやるといういわゆる漁業根性ですか、そういうことから発足した産業でありますので、政府の保護は受けない、余り厄介もかけないということで、進取の気性で世界の海を制覇するほどに日本漁業は飛躍しておるところでございます。そういういわゆる産業の性格上、農業と違ってやはり役所を頼らない、政府に頼らない、こういう考え方の発想が今日になっておると思うのでございます。やはり漁業といえども頼らなくては、あるいは政府の保護がなければやっていけない年々厳しい条件になってまいっておりますので、今後はひとつ均衡のとれた点までいかぬでも少し飛躍した水産予算を何とかして確保して、そして公正な日本の動物たん白の確保責任を持って水産で確立していく、このような考え方でおります。
  192. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 以上で終わります。
  193. 坂元親男

    ○理事(坂元親男君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。  次回は明二十四日午前十時開会とし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十分散会