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1983-04-19 第98回国会 参議院 地方行政委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十九日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     山田  譲君  三月三十一日     辞任         補欠選任      関口 恵造君     玉置 和郎君      内藤  健君     加藤 武徳君      宮澤  弘君     小林 国司君      藤原 房雄君     和泉 照雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         宮田  輝君     理 事                 松浦  功君                 志苫  裕君                 田渕 哲也君     委 員                 岩上 二郎君                 加藤 武徳君                 金井 元彦君                 小林 国司君                 原 文兵衛君                 上野 雄文君                 佐藤 三吾君                 大川 清幸君                 神谷信之助君                 美濃部亮吉君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君    政府委員        内閣法制局第三        部長       前田 正道君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁刑事局保        安部長      大堀太千男君        自治大臣官房審        議官       田中  暁君        自治大臣官房審        議官       津田  正君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治大臣官房審        議官       吉住 俊彦君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     坂  弘二君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      飛田 清弘君        文部省社会教育        局社会教育課長  石井 久夫君        厚生省環境衛生        局水道環境部環        境整備課長    小林 康彦君        厚生省保険局国        民健康保険課長  阿部 正俊君        社会保険庁長官        官房総務課長   北郷 勲夫君        運輸大臣官房審        議官       武石  章君        運輸省船舶局監        理課長      藤冨 久司君        運輸省自動車局        総務課長     野尻  豊君        労働大臣官房総        務課長      岡部 晃三君        労働省労働基準        局安全衛生部計        画課長      菊地 好司君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○地方行政改革に関する調査  (地方行財政消防行政警察行政等基本施策に関する件)     ─────────────
  2. 宮田輝

    委員長宮田輝君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三月三十一日、関口恵造君、内藤健君、宮澤弘君及び藤原房雄君が委員辞任され、その補欠として玉置和郎君、加藤武徳君、小林国司君及び和泉照雄君が選任されました。     ─────────────
  3. 宮田輝

    委員長宮田輝君) 次に、地方行政改革に関する調査のうち、地方行財政消防行政警察行政等基本施策に関する件を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まず、大臣に聞いておきたいと思うのですが、いまちょうど市町村の首長、議員選挙が行われておりますが、この立候補状態を見ると、たとえば有罪が確定しておる候補者が控訴を理由にして立候補を次々にしておる。非常に政治倫理の欠如の問題が問われているときに、こういった実態が続出しておることについて、所管大臣としてどういう御見解を持っておるか、聞いておきたいと思います。
  5. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 選挙というのは公正に自由に行われなければならないというたてまえは当然に尊重していかなければならないわけだと思います。したがいまして、法律の範囲内で許されておる選挙権あるいは被選挙権については、たてまえ上はやはり尊重をされるのが選挙という民主主義手続、ルールであろうと思います。  ただ、いまお話しのような点につきましては、いろいろそれぞれの事情もあることかと思いますが、要するに、それらに対する国民の、選挙民皆様方の御判断民主主義がどこまで成熟をし、そして選挙民皆様方の御判断がそれに対して下ることであろう、こう思うのであります。したがいまして、それはあくまでも国民皆様方の御判断によって決断が下されることだろうと、こう思うのでございます。
  6. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、あなた所管大臣として好ましくない現象だという答弁がいただけると思っていたのですけれども、あなたにもやっぱりこういう問題を、前科と言うか、それがあることもあって、そういう国民の信託ということに逃げられたのだと思いますが、私は決してこれはよろしいことじゃない。むしろこの問題を通じても、いま問題になっておる国会における政治倫理の問題を閣僚の一員としてもきちっと正すべきじゃないか、そう思うのです。しかし、きょうはこれ以上追及しませんが、またひとつ別の機会にさしていただきたいと思います。  そこで、きょうはひとつ過ぐる県議選で、山口徳山市で問題になりました同点候補当落に当たりまして、いわゆる目の見えない人の点字投票が無効になった、この問題についてお聞きしておきたいと思うのです。これはもうすでに異議申し立てが行われております。それで、同時に山口県の盲人協会の方からもこの問題に対して善処方の申し入れも行われております。この取り扱いはどういうふうになっているのか。まず答弁お願いします。
  7. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) この前の山口県の県会議員選挙で、御指摘徳山市都濃郡区選挙で、最下位当選者と申しますか、定数四の選挙区でございますが、第四位の得票を得た者が二人ということがありまして、くじ引きによりまして当落が決定されました。  そのことに関しまして、お話しのように点字で記載された投票のうち、点字投票用用紙と申しますか、点字投票の判を押した投票用紙でございますが、これに記載されていないで普通の投票用紙に記載された投票があった。で、市の開票管理者はそれを無効と判定いたしまして、その結果同数になったということがあったのは御指摘のとおりでございまして、お話しのとおり目下県の選挙管理委員会に対して異議申し出が出ておる、県の選挙管理委員会は近くそれについて委員会を開いて態度を決め、調査にかかりたいという状態になっていると承知しております。
  8. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、今回の場合を見ますと、市の選管事務局長の佐伯さんのお話を聞きますと、この投票不在投票で行われたのか一般投票で行われたのかということについては、投票用紙一般投票で行われた部類だ、そうして六十九の投票所で行われたので、開票の際わかったのですから、どこで行われたかはわからない、その中で十一票点字投票があった、十一票の点字投票のうち九票は有効である、二票が無効だと、こういうお話なんです。  無効と断定したのはそのうちの一票だと、こういうことです。その二票の無効の中の一票が福田さんと書いてあったわけですね。これは正確に福田さんと点字で打たれておったのかと言えば、正確に福田さんとありましたと。点字器はどうなっておるのかといいますと、これは各投票所に備えておる点字器申し出があればやるけれども本人が持参する点字器もあると、こう言う。ですから、そのどちらでやったかということについてはよくわからない。  この場合の手続はどういうふうに宣伝しておるのかといいますと、これは一般の活字のパンフレットで出してあるだけで、点字でこういう手続をとらなければなりませんよという、たとえば盲人協会に対してとか、そういうことはやってない、恐らく全国でもやってないのじゃないでしょうか、こういう御意見ですね。したがって、いわゆる目の見えない人にとっては宣伝一つもやってないということになる。目の見える人については点字手続について宣伝やっているけれども、こういう状態にしておる。  それでは、だれが点字で打ったかということについては、これはまあ開票の際わかったわけだから、調べる権限もないし、わからない、こういうことのようなんですが、いかがですか。
  9. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) これも御承知のとおりでございますが、現在点字による投票というのは盲人の方について特に認められている制度でございまして、したがって、点字投票したいという盲人の方は、その場合投票管理者申し出をしていただくという仕組みになっております。その申し出があれば、これは点字投票であるという記号をした投票用紙をお渡しする。今回のケースは市の選管の話ですと、そういう申し出がなかった投票のようでございます。したがいまして、果たしていまお話しのようにどのような方が投票された投票かはわかりません。普通の投票点字で記載された投票であったというわけでございます。  この制度はずっと昔からある制度でございまして、いままでこの問題をめぐって特に問題になったことはございません。これが私の記憶する限りでは初めてのケースでございます。それぞれの関係者の方にもそれなりに理解をしていただき、かつ周知も行き届いておったと考えておったところでございますけれども周知宣伝については、今後こういったことを機会にしてさらに反省もし、努力もしてみたいと考えております。
  10. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、周知徹底なんだけれども、いま申し上げたように点字によるパンフレットは一切出してない、だからこういった意味では目の見えない人については一切宣伝をしてないということに通ずるわけです。そこら辺はひとつ確認しておいてもらいたいと思うのです。  そこで、法四十七条では文字で候補者名前を記入するということになっていますね。それに基づいて政令三十八条の一項で別表第一というのを表示していますね。そうして、これを使用した場合に四十七条の扱いになる、こういうことでしょう。そのためには、二項の申し立てで、規則第七条に基づいて申し立てた者に八号様式用紙を与える、それで投票する、こういうことになっておるわけですね。これが有効だと。  今回の場合には、この用紙は八号様式が使われてなかった、したがって無効だ、その無効の根拠は六十八条でこれを定めておるわけでしょう。いわゆる所定投票用紙、その中に入るわけですね。ところが、今度の場合見ると、この六十八条の「所定用紙」というのは選管が定めた投票用紙ですね。今度の場合、この投票用紙は使っておるわけです。ただ、規則第七条に基づく用紙の八号様式ですか、これは使ってないわけですね。これは届け出なければならない。  そこで問題になるのは、いわゆる六十八条の「所定用紙」という意味は一体何なのか。これはどういうふうに解すべきなのか。私が考えるのは、一般選挙用紙で書いてきたのじゃだめですよ、選管印のある限られた交付されるもので使いなさい、これ以外はだめですよという意味だと私は思うのですが、いかがなんですか。
  11. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) ただいまの「所定用紙」の解釈につきましては、これもずっと長い歴史があるわけでございますけれども、私どもの手元では、一般投票用紙と、それから点字投票用投票用紙、これは点字投票用の印を押すことによって点字投票用投票用紙になるわけですけれども、それはそれぞれ種類の違う投票用紙であって、それを取り違えた場合は所定投票用紙によらない投票になるということで、ずっとやってまいりましたし、そのように解釈をしております。
  12. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、それはわかるのですが、それでは、そのスタンプを押すというか、八号様式ですか、この意味は一体どういう意味なんですか。たとえば点字の場合には字で書いてないから白票と間違えられる。ですから、そういう意味でこういう八号様式というのが定められておるのじゃないかと私は思うのですよ。ところが、そのことまで無効にするという意味が私はわからない。  選管が出した投票用紙に間違いなく点字を打ったことは間違いない。ただ、それが点字投票というスタンプを押してない、しかし、ちゃんとそこには「福田」という有権者意思が明確になっている、そのものまでその様式理由にして無効にするということが、選管の発行した用紙以外のものを使ったというなら別ですよ。そこら辺について私はどうも解せないのです。  これは少し私はやっぱり六十八条のこの解釈を余りにも形式過ぎてないかと思うのですね。やっぱり本人投票意思というものは基本的な権利ですから、これが明確に出されておる。しかも、それは選管が出された用紙の中で書かれたことも間違いない。しかも、それは一般投票所でやられている。この三つを考えてみて、それすら八号様式のみを理由にして無効にするという根拠はどういうことですか。
  13. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) 御意見はいろいろあるだろうと思いますが、いまの制度の上では、最初に申し上げましたように、点字投票というものは盲人に対してだけ特に認められた特別の投票でありますので、申し出ていただいて点字投票手続をとっていただく、盲人以外の方が投票するというのはちょっと考え過ぎかもしれませんけれども、要するに盲人にとっての点字投票であるということをはっきりさせる意味点字投票用紙によっていただく、そういう手続をとっていただくという考え方でございまして、そういう所定方法をとらなかった投票は残念ながら無効と考えざるを得 ないというのが現在の解釈でございます。
  14. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ところが、私はどうしても解せぬというのは、なぜそういう手続をとったのか。政令事項で定めたのか。それはたとえば郵送の場合は認められていませんよね、不在投票の。不在投票の場合は認められるけれども郵送の場合は認めていませんよね、投票用紙郵送の場合は。で、一般投票不在投票は、そういう意味でその投票用紙によれば認めるけれども郵送の場合認めてないという根拠は一体何なのか。私はやっぱりそういう不正選挙を正すという意味で厳密に処理した規定だと思うのですよ。  しかし、今回の場合考えてみますと、一般投票所に来た。いいですか。そこで、来るといえば目の見えない人の場合はだれか付き添いがおるか、もしくは白いつえを持っていますよ。そうでしょう。それを、来たときにたまたま本人申し出がなかったという理由受付が普通の投票用紙をやった、で、本人は、点字をする場合には、点字器というのは一般人たち投票所にはないのですね。記載場所にないのですから、特別の記載場所があるはずです。そこに行ったかもしれない。それを立会人事務員も全部見ておるわけだ。何も広いところではない。どこだって小さいところだからね。そうして、それを盲人であるという判を押さなかったということで、しかも、それはその投票用紙に「福田」と明確に書いてある、点を打っておる、それは認めておるわけだ。これは目の見えない人、盲人だけの責任ですか。それとも、そこに立会人、何のために受付に並んでおるのですか。  あれは必ず名前を書いて受付がございますよね。そこで言うと、そこから必ずこっちに票を渡す人は別ですよ。何番、何の何子と記号を入れますよ。そうするとこっちが渡すわけだ。その間を白いつえをついて行くか付き添いで行く。そうして投票の箱も投票記載所も違う。それを見ておって、これを押さなかった、だから無効という論理がそれこそ役人的な発想じゃないですか。法の趣旨というものはそういうことを規定しておるのじゃないでしょう。法の趣旨というのは、そういうことを念入りにしたのは、いわゆる不正をなくすという意味でやったのであって、現実にずっとこう見て行っておるものを、それをスタンプを押すことを本人が知らないから、そういうことが起こったかもしれない。そのことについて知っておる者が、それはスタンプを押さないと悪いのですということを言うべきじゃないですか。こういうことについてあなたの見解は、それでも六十八条で無効という見解に立ちますか。  私はなぜこれ問題にするかといいますと、その一票が当落を決めておるわけです。そうでしょう。そういう意味で非常に重大な一票になる。そこに有権者意思が生かされないということになれば、これは私は正常な投票あり方まで問われる問題だと思う。しかも前段に申し上げたように、盲人皆さんに対する点字のこういう手続をしなければだめですよという宣伝は一回もやってないのです。どうですか。
  15. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) これも市の選管の聞いた話でございますけれども、また私たちもそう思っておりますけれども、実際の投票所においては投票従事者はそういった問題がないように、盲人と思われる方についてはできるだけのサービスをしているはずであります。そのように努めております。ただ、今回の場合、一体どうしてこういうことが起こったのか、あるいはその方が外観上盲人と見えないような方であったのか、そういうことは一切本人がわからないからわからないわけでございますけれども選挙管理委員会側としてはそれなり現場努力はしておるというように考えております。
  16. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これはあなたとやってもなかなからちが明かぬけれども、しかし、あなたが言うように現場の人がそういう手続をしておるならば、あわてて翌日に通達を出すこともなかろう、山口選管があわてて翌日に通達を出していますよね。それほどやってないわけです。  現実に私は電話で聞いたのだけれども選挙事務長が言うには、そんなことは全国でどこでもやっていませんと。しかし、その目の見えない人が一般投票に来る場合、白いつえついて来るか付き添いで来るか、どっちかしかないわけだから、一般投票に間違いございませんかと言ったら間違いないと言う。不在じゃないと言う。そうすれば、どう考えてもおかしいじゃないですか。目の見える人が受付をやっておって、白いつえか、そうでない付き添いか、どっちかしか来ない人に、そういうことをしないこと自体に問題がありはしませんか。しかも、ちゃんとそこには本人意思が明確になっている。それがただ六十八条を理由にして、手続の問題だけを理由にして無効とやられることについては私はどうしても納得できない。  これは大臣、あなたはどう思いますか。これはいずれ上告されてくると思うのですが、この問題についてどういうお考えを持っていますか、いまお話を聞いておって。
  17. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) この問題は点字投票という非常に特殊な例で、手続上は、いまお話のように政令三十八条で点字投票をしていただく場合はこういうふうにやっていただくという手続が書いてあるわけなんで、一応選挙事務というのはやはり法令に従ってきちっとやるというのがたてまえであろうと思います。したがって、投票管理者の方もそういう考えで、開票管理者の方もそういう考えでおやりになったものであろう、選管としてはやはりそういう法令に従っておやりになったものだと思うのです。やはり選挙事務というのは、選管の御判断というのは一応権威のあるものとしてやっていかなければ、選挙事務の何といいますか執行というもの、秩序というものもなかなかむずかしいことになるのではなかろうかと思うので、やはり選管取り扱いというのはそれなりに私どもは受けとめていかなければならないと、こう思います。  そのときの投票所状況がどんなふうであったか、時間的にあるいは混んでおったのか、あるいはすっかりすいておったのか状況もわからぬわけでございますが、いずれにせよ、一応選管でそういう判定をしたのでありますから、いま異議申し立てで県の選管審査というのですか審議をするという段階にもなっておりますので、そちらでもひとつ御判断をしていただく。自治省としては、いま選挙部長がお答えしましたように法律のたてまえに従ってやっていただくというふうにお願いをするということでお答えを申し上げておるわけでございますので、今後はこういうことの起こらないように指導をひとつ徹底をさしていきたい、こう思います。
  18. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 四月十八日付の新聞の投書欄ですが、「それほど選管自治省が突っ張るなら、それだけのアピールをしてきただろか。」、こういうことで問題を投げかけておりますよ。「自治省の役人は本気で考えてほしい。健常者でも五〇%前後の投票率なのに、小雨降るなか不自由な身で、一票を無駄にしまいと投票所まで足を運んだのである。身障者に前もって投票方法を知らせる義務も十分に果たさず、あまりにも一方的な扱いではなかろうか。」ということで抗議の投書が入っておりますが、私はやはり、二十日に県の選管でこの問題について異議申し立ての審理をするそうでありますが、どう考えてみてもこれは私はやはり選管側のミスが大きいと思わざるを得ない。  なぜかと言うと、事前宣伝にしたって点字宣伝はやっていないわけですから、これはやっていないでしょう。あなたもおっしゃったように初めてのケースでしょう。ですから、へたをすると、私は全国的に見れば無効投票の中にまだまだ点字投票がいっぱいあるかもしれないと思う、実態を見てみないとわからぬけれども。そういうことだから、これは周知徹底はきちっとやってもらわなければいかぬ。  しかも、それは点字皆さんについては点字でやらなければいかぬ。それが一つだけれども、しかし、この一票が本人意思表示をしたものが、その一票によって当落が決まるという重大な一票だけに、私はやっぱり何というのですか、不正を排除するという意味で設けられているようなこの規定の中で、どう考えても一般投票所に来て、そして公正な選管の前で一票の用紙をもらって、そして、だからそこには不正はないということですね。ただ手続を間違った、こういった一票については生かすべきであるという、そうしてやっぱりこういう目の見えない人にも自分たちの一票が当落を決めるのだということを認識してもらうことの方が投票制度、いまの議員を選ぶ制度あり方から見ても必要である、こう思うのですが、そういった意味でひとつもしこれからの異議申し立てに伴う選管における判断指導に当たっては十分ひとつ意のある措置をとっていただくように、私もこの機会にお願いしておきたいと思うのですが、よろしいですか。
  19. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) 先ほど来お話ししましたように、これがいわばこの問題について議論された初めてのことであります。たまたまその一票差といいますか、同点数に絡んだのでありますけれども、たとえそういうことであろうとなかろうと投票の効力に関しての問題でございますから、ひとつ私どもも十分にこの周知考えてみたいと思っております。  なお、その審査異議申し立てにつきましては、これは選挙管理委員会がまた独立の立場でしかるべき判断をするものだと考えております。
  20. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、この問題についてはいまの答弁は不満な点がたくさんございますが、一応恐らくこれは選管だけで片づかずに裁判問題になると思うのですね。そういうことも想定しながら、ひとつ自治省の対応をお願いしておきたいと思います。  次に、もう一つこれに関連して聞きたいのですが、熊本県の知事選挙で、選挙妨害事件でいま公判が開かれていますね。この中で中原さんですか、あの起訴状を読みますと、明らかに選挙妨害があったということを認めていますね。これは起訴状ですが、その中で二月二十一日に中原さんが知事選無効の異議申し立てをしておるわけですね。ところが、この申し立てについて公選法二百十三条ですか、あれでは一カ月以内に決定を出すように努めなければならぬということになっていますね。ところが、もう二カ月近くになるのにこの問題については放置されておる。これについてはどういう指導をなされたのですか。
  21. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) 私どもの方としては、いまお話がございました規定趣旨に基づいて、できるだけそういう期間内に判断をするようにということを常日ごろ指導しておりますけれども、それぞれの事件にはそれぞれの事情というものがございますので、それぞれの事情に基づいて、あるいは遅くなっているというようなものも散見される状態でございますが、私ども前段申し上げましたような趣旨に基づいていくよう常日ごろ指導しているところでございます。
  22. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それぞれの事情とかいう、そのそれぞれって何の事情かさっぱりわからぬけれども、熊本選管は統一地方選挙が迫ったのでということを理由にしておるようですね。しかし、私はこれは理由にならぬと思うのですよ。出しているのが二月二十一日ですからね。だから、意識的じゃないかという感じもするのですが、これはやっぱりちゃんとそれこそ法で定められておるならきちっとした方がいいと思うので、これは希望として申し上げておきたいと思います。  そこで、きょうはもう一つ問題がございますので、この問題はこの程度にして次に移りたいと思うのですが、昨年七月に労働省が清掃事業における安全衛生管理要綱というものを改正して施行しましたですね。これは私も決算で取り上げた問題なんですが、この徹底と効果というか、それがどういうふうにやられておるか。もしあれば説明いただきたい。
  23. 菊地好司

    説明員(菊地好司君) 御指摘の清掃業の労働災害防止のための要綱につきましては、従来策定されていたものを硫化水素の対策等も盛り込んで、かつ関係労働組合等の意見も一応聴取しまして改定をしたわけでございます。その周知徹底を目下図っているところでございますが、その効果がどうかということについては、まだ時日も短いということもありまして、必ずしも見きわめがたい状況にございます。
  24. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ところが、これが七月に施行されてから以降を見ますと、清掃現場で事故が続発しておるわけですね。私が調査した中でも八件、十名が死亡しておるわけです。  去年七月に、千葉県の松戸市で、給食現場の運用エレベーターで一人が巻き込まれて死亡しておる。同じ七月に、静岡県金谷町のごみ収集作業中に、ロードパッカー車の投入口で回転盤に巻き込まれて死亡しておる。また今年に入って、同じ金谷町のごみ収集作業の民間委託の労働者がまた一人死亡しておる。それから滋賀県の豊郷ですか、この一部事務組合では去年十一月に屎尿処理場の酸欠で一人が死亡して、一人が重傷を受けている。それから九月に、三重県の伊勢市の一部事務組合で度会環境衛生組合ですか、ここで酸欠で一人死亡しておる。それから十二月に、山口県の萩、ここで、またロードパッカー車の回転盤に巻き込まれて臨時作業員が死亡しておる。それから本年の一月に、北海道標津町の一部事務組合で屎尿処理場で酸欠による三名が死亡しておる。また同じく一月に、兵庫県明石市で下水道清掃中に酸欠で死亡している。そして近江八幡で、プラントの灰バンカーというのですか、その点検棒口から転落して重傷しておる。これは私現地に行きましたが。  こういった事例が次々に起こって酸欠災害だけで四件、六十名が死亡しておるわけですね。そして、その内容を見ると一部事務組合に集中しておる。施設の構造欠陥も出ておる。こういう実態が出ておるのですが、いまあなたがおっしゃったように、周知徹底をした上の事故ですか。
  25. 菊地好司

    説明員(菊地好司君) 周知徹底について鋭意努力しておりますが、残念ながら事故が起こってしまったということで十分かみしめておるところでございます。
  26. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私が近江八幡を見に行ったのは三月ですが、あそこは彦根ですか、二年前にも五名酸欠で、死亡している。またそれにもこりずに死亡している。労働基準局長とも会いましたが、この通知は届いてないのですね、要綱が。よく調べてみると、ここだけじゃないです。基準局まで行っておるのですが、三重県の伊勢市の場合も要綱は現場に届いていない。これがあなたが言う周知徹底あり方ですか。
  27. 菊地好司

    説明員(菊地好司君) 周知徹底にまだ至らない点があったという御指摘でございますが、私どももそういうことのないようにする観点から、ことし二月の全国担当課長会議の場において、各都道府県の段階で、われわれの出先機関、それから衛生関係の県庁の機関、それから関係事業者等で連絡協議会を設けてもらうようにしまして、その場を通じながら、さらに周知徹底を図るべく手を打ったところでございます。
  28. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこが一つの盲点ですよね。たとえば労働基準法で、こういう保安業務であるとか基準法の一部施行について市町村長に監督権を委任しておるのですよ。したがって、実態を見ると、一般職員の場合には確かに労働安全衛生委員会なるものがある場合もある、ない場合もある。これは後で自治省に聞きますが、いずれにしても労働基準監督業務は民間に比べてこういった現場に対する監督がほとんど行われていない実態にある。  いまあなたが言うように、講習会とかのじゃなくて、協議会とかなんとかいうのはありますよ。ありますが、いま言うようにそれはほとんど一般職相手ですね。ところが、こういう清掃現場であるとか給食現場というのは、事故を起こしたのは全部現場労働者です。現業の労働者。そしてその係長は一般職ですよ。いいですか。それから所長も一般職ですよ。これはもういわゆる基準監督業務の委任を受けていますから、したがって、ここら辺については全然労働安全衛生に対する認識がない。しかも機械はもういま近代工場になってきている。そういう一つのエアポケットみたいな存在になっているわけですね。  そこら辺に対しては、私は、やっぱりこういう事例が起こったことを転機にして、直ちにやっぱり立ち入り調査をやるとか、たとえばきのう韓国でディスコで大火災が起こって死亡した、直ちに消防庁は、日本の消防庁は一斉に検査に入った、そのくらいの即応態勢があっていいのじゃないですか。これだけどんどん事故が起こっておるのに、とりわけ一部事務組合についてはおたくの方も管理職がくるくるかわって手のつけようがないと現場は言っておる。何ぼ言ったって意味ない、行ってみると、かわっておるというのだ。  こういったところについて私はやっぱり事例のあった県には直ちに立入調査をやっていく、こういったことをやるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  29. 菊地好司

    説明員(菊地好司君) 死亡災害だとか一時に多数の被災者を出した重大災害については、例外なく実地に調査に入っているものと私は承知しております。さらに今後の徹底の一助といたしまして、第六次労働災害防止計画を今年度を初年度として五箇年計画を策定いたしましたが、その中で重点業種の一つに清掃業を加えまして、かつ五カ年間の具体的な展開として毎年度運営方針を定めておりますけれども、五十八年度の運営方針の中でも、清掃業につきましては重点的にとらえまして、今年度の大きなテーマとして取り組むような受けとめ方をしております。従来至らなかった点等も含めまして、今後五年間に清掃事業についてなお一層努力を重ねてみたい、かように考えております。
  30. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつそれをお願いしたいと思うのですが、とりわけ一部事務組合ですね。おたくの方は管理者がくるくるかわるので手をやいておるようですけれども、どこの基準監督署もそう言っておる。これについては、それだけやっぱりこういう労働安全とか労務とかいう面が手落ちになっておるわけですから、これは私の要望ですが、ぜひその特定の中に入れてもらって、厳重にひとつ立入検査をして未然に事故を防止する体制をお願いしておきたいと思います。よろしいですね。  そこで、厚生省にお伺いしますが、こういった清掃職場に補助金を出しておるのがおたくなんですね。四分の一ですか。そういう交付の基準はどういう基準で行っておるのか。  それから、たとえば近江八幡の場合を見ると、私はこれは現地に入ったのですが、試運転段階からもう問題があったというのです。これは業者の方も認めている。ところが、それにもかかわらず、何というのですか、業務開始をやった。やればやるほどどんどんたまり始めた。たまっていったから、それを本来なら、そこはつつくところじゃないのだけれども、しかしつつかなければ下にはけないということでつついていった。それが度がひどくなってきた。その結果、これが爆発して、今度は事故の原因になっておるわけですね。また宮城県の石巻の場合を見ると、労働安全について二十五カ所の改善をメーカーに求めた、その結果四千万かかって改善をしておるわけですね。ところが、室蘭や秋田の大館でも同じ業種で灰バンカーの詰まりが報告されておりますし、そしてしかも労働基準監督署が近江八幡の場合には四十五項目の改善計画を指示していますね。  こういった事例が次々に起こっておるのですが、そういうものを含めてこの補助金対象で補助するという、これはどういう理由なんですか。ここら辺は事故の現状というものをちゃんとつかまえて、そして、そういうところに対してはより厳密に検査していくというのが、これは当然とられていかなければならぬと思うのですが、ここら辺の問題、どういうふうな措置をとられているのかお聞きしておきたいと思うのです。
  31. 小林康彦

    説明員小林康彦君) 厚生省では、廃棄物処理施設の補助を行うに際しまして地方公共団体から補助の申請を受け、その補助の申請の規模が適正であるか、補助事業として適切な効果を発揮できるかという点を主体にして審査をすることとしております。そのため、廃棄物処理施設についての構造指針を定めまして基本的な事項を定め、それから申請者でございます市町村において十分検討し計画をされるための留意事項を取りまとめて示しておるところでございます。
  32. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それはあたりまえでしょう。問題は、しかしこういう事故の起こった事例について、どういうふうに検証をし、改善を加えてきておるのかということを聞いておるわけです、補助金の許可に当たって。
  33. 小林康彦

    説明員小林康彦君) 廃棄物の処理に当たりまして、安全対策というのはきわめて重要な案件でございますので、私ども全国の衛生主管部長あるいは担当の課長が集まります全国会議におきまして、十分その点に留意した計画を立てられるよう、そのように市町村を指導されるよう県にも強く要請をし、注意を喚起してきておるところでございます。
  34. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は彦根にも行きましたが、これは五人亡くなったわけです。私が行ったときには、もうすでに構造欠陥の部分を業者があわてて直して、もうそういう事故が起こらないような形に改善していました。近江八幡の場合にはまだ直す途中に私が飛び込んだわけですが、こういう事例が、もう設備の構造欠陥というのが次々に出ておるわけです。  その出ておる構造指針というのは、おたく持っておるわけでしょう。構造というのは木へんの構造でしょう。機械の構造のことでしょう、いまいう構造というのは。そういう構造上の問題についておたくの方できちっと審査をして、そして、これならよかろうということまで言っておるのじゃないのですか。その上で許可をしておるのじゃないのですか。どうなんです。
  35. 小林康彦

    説明員小林康彦君) 構造指針につきましては、たとえばごみ処理施設の設計に当たっては施設内の安全対策に十分配慮しなければならないというふうに定めておりまして、具体的なこの実現に当たりましては、設置者でございます市町村が関係法令を遵守しながら計画を立て、安全対策に手落ちのないようにということで、私ども厚生省といたしましては補助審査に当たりまして細部にわたっての審査を行うという体制にはございません。
  36. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ところが、市町村長とか自治体に入ってみると、あなたのところから県を通じて細かく構造指針出していますね。それに基づいてこの機械がどうだこうだという判断材料にしておるのじゃないのですか。その上でおたくの方は補助対象にしておるのじゃないのですか。そういう面で、それは構造指針は出しておるけれども、最終決定権は市町村にあって私どもの知る限りでないという論理にはならぬのじゃないですか。どうなんですか。
  37. 小林康彦

    説明員小林康彦君) 私ども、留意すべき点については機会があるごとに、かつ、なるべく詳細に地方公共団体に情報を提供するように努めておるつもりでございます。ただ、補助の審査に当たりましては、地方公共団体がやられることでもございますし、この後に知事に対する施設の届け出という制度もあるものでございますので、私どもといたしましては、安全対策が十分立てられておるものという観点で受けとりまして、補助の事務手続をしておる、こういう状況でございます。
  38. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 おたくは、たとえば業者を選別するわけではないと私は思いますね。しかし、こういうふうに次々に事故が起こってくる。しかも、それが機械の構造上の欠陥から起こってくる。その場合に、そういう欠陥施設をつくっていく会社、そういうものについては、それは市町村の責任で私ども厚生省は何の関係もありませんと、こういうことですか。
  39. 小林康彦

    説明員小林康彦君) 私ども非常に関心の深い分野でございますので、構造的に問題がある、あるいはあるおそれがあるという場合につきましては、それを製作しておりますメーカーの集まり、工業会等に対しましても注意を喚起し、再びそういう事故のないようにという要請をしてきております。
  40. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 だから、私は言っておるのです。 こういう事例をさっき私が挙げましたね。こういったところについてはどういう改善措置をとったのかと、こう聞いておるわけです、さっきから。いかがですか。
  41. 小林康彦

    説明員小林康彦君) お尋ねの彦根市あるいは湖東事務組合のケースにつきましては、幾つかの原因が重なり合っての事故というふうに私ども承知しております。そのため、全国の主管部長あるいは主管課長に対しまして通達を出し、あるいは全国での部長会等を通じまして注意を喚起し、工業会に対しましても、一般的な意味でございますが、事故防止にさらに留意をするようにという注意を要請しておるところでございます。
  42. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そんな通り一遍のことを聞いておるわけじゃなくて、中身を聞いておるわけなんです。一遍ひとつ、さっき私が申し上げた内容について、きょうは時間がございませんから、ここにはどういう指導をしたというやつを私の方に出してください。そして、厚生省がどういう具体的な対応をとっておるか、そこを聞きたかったのだけれども、きょうは時間がございませんから、それを後で結構ですから出してください。要請しておきます。いいですね。
  43. 小林康彦

    説明員小林康彦君) 後日先生のところへ御説明に上がります。
  44. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。  次に、自治省にお伺いしておきたいのですが、どうもこの災害の実態を見ると、一部事務組合に集中しておるわけですよ。一部事務組合というのは、三つ、四つの町村が集まって事務組合をつくってやっておる。だから、これは管理者がくるくるかわるわけです。大体一年ぐらいで管理者がかわっていますね。だから、そういうことに、労働省の方も指導に当たって一番困っておる点、ここなんですよね。Aという町長が管理者のときにこの内容を言っても、いつの間にかBにかわっちゃって、その間はもう糸が切れておるわけです。こういうところにこの発生の原因があるような気がしてならぬのです。  そこで、お聞きしておきたいと思いますのは、こういった事態に対して、事件が起こってきておるわけですから自治省も知らないはずはないと思うのですね。こういった一部事務組合のいわゆる管理者の持ち回りが原因であるかどうかはわかりませんが、そういう実態にあるわけですから、どういう措置をとられておるのか。特にごみ収集を見ますと、民間委託が二五%に達しておる。そして、さっき申し上げましたように、静岡県金谷町で、民間委託のところでこういう事故が一年に二回も発生しておる。こういったことに対してどういう指導を行っておるのか。特にILO九十四号条約、公契約における労働条項に関する条約の批准、こういった問題についてどういうふうな考え方を持っておるのか、あわせてひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  45. 坂弘二

    政府委員(坂弘二君) ごみ収集、屎尿処理、主としていわゆる現業的職場におきます労働災害のお話であろうと思います。それが特に一部事務組合の場合に、労働安全衛生上、対策が不十分じゃないかということで御質問だと思います。  ただ、これらの点につきましては、いわゆる労働基準法第八条のたとえば十五号、焼却、清掃等の事業というようなものにつきましては、先生御案内のとおり、直接の監督機関はこれは労働基準監督機関になっておるわけでございます。ただ、それでありましても、もちろん地方団体、一部事務組合の行うことでございますから、その組合長と申しますか、管理者は、十分職員の安全衛生に留意することは、それは当然のことでございます。  そこで、われわれといたしましても、ことにそういうような盲点が生じないように従前から安全管理者とか衛生管理者とか、そういうもの、あるいは委員会の設置等について事あるごとに指導しておるわけでございますが、たとえば先ほど例に挙げられました近江八幡市の場合ですと、従業員五十名以下のものでございますから、法律上は各種管理者とかあるいは委員会を設置する義務はないようでございます。ないようでございますが、このようなことがございましたので、われわれといたしましても強く指導いたしたわけでございますが、任意のものになりますが、現在安全衛生委員会を設置するというような体制の整備に努めているようでございますが、いずれにいたしましても、実際問題といたしまして労働安全衛生面につきまして非常に不十分な点があるのも事実でございますので、その指導を従前にも増して強化いたしておるわけでございます。
  46. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣どうなんですか。さっきからお聞きのように、こういう痛ましい事件が次々に起こって、この一年間だけでも約十名亡くなっているわけですね。私がさっき言ったように、大体清掃現場の最高責任者というと市の民生部長ですね。この民生部長というのも大体もう一年か二年でかわっていくものですから、所長も非現業、一般職、現場の係長も一般職、こういう関係でそこら辺が労働安全衛生思想が非常に低い。もっと言うと無知という状況にある。そこから労働基準局のいろいろな指導が行われてもくるくるかわっていくものですから、やられていない、事故が発生する、特にその典型が一部事務組合、こういう現象なんですよね。  いま、今後改善努力するということでございますが、大臣見解を聞いて質問を終わりたいと思います。
  47. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 先ほど来、非常に具体的な例で、特に一部事務組合に非常にたくさん起こっておるというお話もありますし、これは大変痛ましい事案でございますから、私どももこれ本当に重大な関心を持ってそういう事故の起こらないように、ぜひともその要請をしていきたいと思うのです。  やはり構造上の問題もあるでしょうし、あるいは運営のやり方の上の問題もあるだろうと思うのです。それらを含めまして、いままで自治省が関心を持っていなかったというわけではもちろんありませんけれども、今後一層この問題は関心を持ってひとつそういう災害の起こらないように努力をしていきたいと思います。特にこれはやはり専門的な知識も要るでしょうから、関係の現地においては労働基準監督署とも十分連絡をとってやっていく。実は先日も自治労の書記長さんお目にかかったときもこの問題は特にお話がありまして、私どもも今後ともこれには大きな関心を持って対処していきたい、こう思っております。
  48. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 終わります。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 きょう私は、BG財団と俗に言われているのですが、ブルーシー・アンド・グリーンランド、この財団と、あるいはこの財団が行うプラン、事業と自治体とのかかわり、地方自治とのかかわり一本にしぼって少し細かく質問をいたします。三月二十三日の当委員会で若干問題点を指摘しておいて、いずれこの次にやりますからと予告をしておきましたので、皆さんの方もそれなりの御準備をいただいたものと思います。  まず、BG財団というものはいかなるものなのか、何をしようとしておるのか、まず監督官庁ですか、運輸省の方から答えてください。
  50. 武石章

    説明員(武石章君) BG財団とはどういうものであるかというお尋ねでございますが、BG財団とは、ブルーシー・アンド・グリーンランド財団というものをBG財団と言っておりまして、昭和四十八年三月に運輸大臣の許可を得て設立された民法上の公益法人でございます。財団法人でございます。  同財団の目的は、寄附行為によりますと、「わが国の四周をめぐらす青い海と、これに続く緑の国土を場とし、主として青少年を対象に、海洋性レクリエーション事業を軸とした実践活動を通して、海事思想の普及をはかるとともに、その人間形成と体力向上をはかり、もって海洋国日本の発展に資する」ということとされております。  また、具体的な事業といたしましては、青少年に対する体験航海の実施、青少年を海に親しませるための海洋性レクリエーションの提供と指導、その他青少年に対する実践的海事思想の普及、これらの事業を実施するため、青少年の船、海洋青少年センター及びこれらに関連する施設の整備運営、指導者の養成及び研究調査、機関誌及び刊行物の発行などを行うこととなっております。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 そのぐらいのことはわかっているので、もう少しはっきり目的、事業、その財源、これ的確に答えてください。あなたの言うのは寄附行為読んだだけでしょう。
  52. 武石章

    説明員(武石章君) 目的ということは、寄附行為第一条に目的が書かれてございまして、まさに目的は、いま申し上げたとおり「わが国の四周をめぐらす青い海と、これに続く緑の国土を場とし、主として青少年を対象に、海洋性レクリエーション事業を軸とした実践活動を通して、海事思想の普及をはかるとともに、その人間形成と体力向上をはかり、もって海洋国日本の発展に資すること」ということが目的になっております。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 あなた相手に聞いておったのじゃだめだから、私が一々聞く。  まず、「海事思想」とは何ですか。「人間形成」とは何ですか。「海洋国日本」というのはどういう意味ですか。この三つ答えてください。
  54. 武石章

    説明員(武石章君) お答え申し上げます。  「海事思想」と申しますのは、海に関する思想全般のことを申すわけでございます。    〔委員長退席、理事松浦功君着席〕 特に日本は海洋国でございます。四周を海に取り囲まれた海洋国でございますので、その海について、海の産業あるいは海におけるトランスポーテーション、そういう事柄に対して十分な理解を国民が持つということは大変大事なことである、そういうことをすることが海事思想の普及であるというふうに考えております。  それから、「人間形成」ということでございますが、これは人間として成長していく形成の過程というふうに理解いたしますし、海事に関して、日本のような、海洋国日本の人たちがその成長していく、あるいは人間形成の過程でそういう海事思想というものを身につけていただくという意味で人間形成を図るというようなことを言っておるわけでございます。  「海洋国日本」と申しましたのは、四面海の日本の国でございます。日本の国は非常に多くの島嶼がその海の中に点在いたす形にあるわけでございまして、まさに海洋の中に浮かんだ島が中心の国でございます。そういう意味で「海洋国日本」ということをここには書いてあるというふうに理解しております。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 目的には哲学があるわけでしょう。あらゆるものには理念があるのですね。  一点に聞きましょう。「人間形成」、どういう人間の形成なんですか。どういう人間の形成を目的にしているのですか。
  56. 武石章

    説明員(武石章君) このBG財団の目的といいますのは、あくまでわが国は四周を海に取り囲まれているという国でございます。そういう国の青少年を対象にして海に関する海洋性レクリエーション事業とか、そういうようなものを軸とした実践活動を通じて、海事思想というもの、海事に関する日本の置かれた状態というものを理解していただくということが、その「人間形成」という内容の中にあるわけでございまして、それを目的の中で規定しているというふうに理解しております。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 おいおいと聞きますが、これは社会教育事業ですか。人間形成しようというのは、どういう何の事業なんですか。
  58. 武石章

    説明員(武石章君) お答え申し上げます。  社会教育であるかどうかということでございますが、BG財団の事業は、あくまで海事思想普及という行政目的の実現のために行われる啓蒙啓発活動でございまして、単に特定の事業及び思想の普及を図るということを目的として行われる事業にすぎませんので、その手段として社会教育類似の事業を行っていても社会教育事業には該当しないと考えております。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 財団からこういうものが出ていますね。「B&Gプラン」、これ、お持ちでしょうから、だんだんいくのですが、まずその前に、この財源はどうなっていますか。
  60. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) BG財団でございますが、これ五十六年度までと五十七年度以降と若干趣旨が変わっておりますが、まずBG財団の行う事業と申しますのは、わが国経済の高度成長期におきまして、工業化の進展、都市化現象が一段と進んだ一方、自然に親しむ機会が減っておりまして、特に青少年についてそれが憂慮されるという状況から、モーターボート競走関係者がモーターボート競走法制定二十周年記念事業といたしまして、その対策に取り組むこととして開始されたものでございます。  それで、周囲を海に囲まれましたわが国にとりまして、海洋性レクリエーション施設を整備いたしまして海に親しみ海を知る機会を持たせることが長期的に見てぜひとも必要であるということから、海に関係のある唯一の公営競技としてのモーターボート競走といたしましては、この機会に実践的な海洋活動を通じて次の世代を担う青少年に、より一層の海事思想の普及を図るために必要とされる施設等を計画的に速やかに整備することが海洋国家であるわが国にとって特別な意義を持つということの考えから、この事業を対象といたしましてモーターボート競走の施行者全員の協力のもとに特別協賛競走が実施されたものでございます。これによる拠出金が財源になったわけでございます。  さらにまた、BG財団は、その施設整備につきまして、公営競技を主催していない市町村等の区域を優先的に取り扱うということになっておりますので、その事業が収益の全国的な均てん化にも資するという趣旨に沿ったものであったわけでございます。この特別協賛競走は五十六年度まで行われたものでございます。そこで、これに続く五十七年度の問題になろうかと存ずるわけでございますけれども、現在はその五十七年度以降の問題になっているわけでございます。  そこで、五十七年七月に実はモーターボート競走法施行規則の一部改正が行われておりますので、これがその財源と絡んでおりますから、この改正の趣旨を御説明してみたいと思います。    〔理事松浦功君退席、委員長着席〕  公営競技は、明るい環境の整備等関係者努力もございまして、健全な大衆娯楽として国民の間に定着しつつあるということで、五十四年六月の公営競技問題懇談会の意見書でも、これらの実情にかんがみまして競走場開催日数等について抑制基調は維持しつつも多少弾力的に検討していくという考え方が出されたのでありますが、モーターボート競走と申しますのは、もっぱら来場ファンの確保を通じて売上増を図るという方針で積極的に施設改善、周辺環境整備はやってきたのですけれども、五十六年度以降売上高が減少傾向を示してきております。そこで、そういった所要の施設改善、周辺環境の整備というものの進捗に支障を生じつつある状況になってきたというのが一面でございます。  また、国、地方公共団体の財政事情も逼迫してまいりまして、たとえば国際科学技術博覧会の協賛要請等がございまして、公営競技に対する高度の公益的な各種の資金需要が高まってきたという状況にありましたので、こういった状況から当分の間に限りまして、従前運輸大臣の承認を得て特別に開催を認められていた開催日数の範囲内におきまして、施設等の改善事業と高度に公益的な事業に限ってその所要資金を確保するための競走開催ができることとしたわけでございます。これが現在のBG財団の特別競走でございますが、それが財源につながっているわけでございます。
  61. 志苫裕

    志苫裕君 それ、いままでBG財団に入ったというのですか、交付されたというのですか。財源、原資はどれだけになっていますか。
  62. 武石章

    説明員(武石章君) お答えいたします。  四十九年から五十七年度までの累計で六百三十三億でございます。
  63. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと参考のために、特別競走、前は特別協賛競走と言っていたのですね。これの船券の売り上げ、それから何か諸経費というので すか、大まかに言って払い戻し、それからBG財団への交付額というふうに分けてくれませんか。
  64. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 実は特別競走分だけの数字が現在ちょっと手元に持ち合わせておりませんので、後ほどお届けしたいと存じますが。
  65. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、それ後ほど。  で、いま話もあったけれども、五十七年三月三十一日まで、この間政令二度変わっていますが、特別協賛レース、それが五十七年七月十日に特別レース、特別競走というふうに名称が変わりました。いま当分の間というお話があったが、当分の間というのはどこにも書いてないような気がするのだが、まあ当分の間か無期限かというふうに変わったのですが、特別協賛レースというのと特別レースというのは性格的に別のものなんですか、継続のものなんですか。
  66. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) たてまえ上と申しますか、規則上で申しますと、この根拠が変わっております。  それで、在来の特別協賛競走と申しますのは、これは省令で決めてあったのでございますが、国際博覧会、それから海事思想の普及等の事業で運輸大臣が告示で定める事業ということで、BG財団というのが告示で決められていたわけでございます。で、今回の五十七年七月の競走法施行規則の改正の後におきましては、そういうスタイルでございませんで、施設の改善、それから国際博覧会その他高度の公益性のある事業については特別競走を認めるということで規定ができておりまして、その手続に従いましてBG財団の行います地域海洋センター整備事業も行われているわけでございます。  ちなみに、BG財団が従来特別協賛競走時代に行っておりましたものは、体験航海の実施、海洋競技大会の開催、海洋センターの整備等を内容とする実践的活動を通じての海事思想普及事業ということで実施いたしてきておりますが、現在五十七年七月以降の改正後におきます省令に基づいてなされました手続におきまして出てまいっておりますのは、地域海洋センターの整備についての事業ということだけでございまして、これについて各広範の地域住民、地方公共団体、地方自治関係機関等からセンター整備について強い要望が出てきたということが、この省令を改正し、さらにまたこの地域海洋センター整備事業を高度の公益性のある事業と認めた趣意にもなっているわけでございます。
  67. 志苫裕

    志苫裕君 そうしますと、省令、運輸省令第十七号ですね。昭和五十七年七月十日、二の二号、「その他高度の公益性を有する事業」、これにBG財団が行う地域海洋センターの施設の整備、これが該当するということなんですね。念のために「高度の公益性」というのはどういう意味ですか。
  68. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) これは海事思想の普及及び観光に関する事業並びに体育事業その他の公益に寄与する事業であって、国家的な要請あるいは広く国民的な要請に基づき行われるものということで運用いたしております。
  69. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、このBG財団が、あなたの先ほど説明ありましたように、あなたの言葉で言うと、青少年の現状を憂えて、その人間形成を図り、もって海洋国日本の発展に資する、この仕事が高度の公益性のある事業であるという認定に立っておるわけですね。イエスかノーかで答えてください。
  70. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 高度の公益性のある事業と認めました趣旨についてもう少し御説明してみたいと思います。  それで、先ほど申し上げましたように、特別協賛競走時代にそもそも二十周年記念事業として行ってきたわけですが、その後その事業が、競走が終わりました後におきまして、地域海洋センター整備の事業につきましてはその整備の進捗に伴ってその有用性についての認識が高まりますとともに、広範な地域住民、地方公共団体のみならず、地方関係機関等からも強いセンター整備についての要望が出てまいったわけであります。  それとまた一方で見ますと、海洋国日本の現状を見てみますと、海運界では日本商船隊の国際競争力が低下しておる、あるいは船員が高齢化しているといった状況が問題となっております。他方、海洋の調査とか海洋開発といった問題も非常に緊急性が高まっている。さらにはまた、海洋法条約の成立に端的に示されますように、新しい海洋秩序の確立の機運が高まってきている、こういった海洋国日本の現状等々から見ますと、海事思想の普及ということを拡充することが緊急の課題になっているという、こういった両面の事情を勘案いたしまして、BG財団の行います地域海洋センターの整備を高度の公益性を有する事業として認めたものでございます。
  71. 志苫裕

    志苫裕君 日本船舶振興会から幾つかの類型に分けて補助金が出ていますね。それはたとえば町村、自治体などのその種の施設の整備などには出ていませんか。
  72. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 船舶振興会の補助事業、これは各種各般にわたりまして、ただ対象は公益法人として出してきているわけでございますけれども、ここで申し上げておりますような地域海洋センターそのものがあるかどうかということになりますと、現在のここ数年間見たところではございません。
  73. 志苫裕

    志苫裕君 地域海洋センターという名前はBG財団がつくったのだから、それはないでしょう。  私が聞き方が悪いのかな。競走が行われて、その上がりが船舶振興会へ行って、そこからBG財団というところへ行って、出るのはなぜそういう仕掛けなんですか。船舶振興会から直接でもいいのじゃないですか。BG財団というところを一遍通ることになったのはどういう理由なんですか。
  74. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 特別協賛競走、当時の特別協賛競走でございますが、によって得られる資金を船舶振興会が通常の補助対象としております一般の海事思想の普及その他の公益事業よりも高い公益性を有する事業に配分する必要があるということがまず第一でございますが、また公益事業の必要資金量が振興会の配分量によっては賄うことができないという事情があったわけでございまして、そういったものについて特別の競走を認めるというのが省令の趣旨になっております。したがいまして、その省令の趣旨に乗ってきた後は自動的な流れになっていくということでございます。
  75. 志苫裕

    志苫裕君 いや、その自動的な流れと言うが、先ほど継続かと言ったら、継続じゃなくて、あなた、新しいものだと言うが、その全体のレースの枠で需要が賄い切れなければ、そのレースの開催日数をもうちょっとふやすとかいう形でも財源を、まあ私はこの財源の生み方のよしあしは一応こっちにおきまして、財源を生むことはできるわけであって、それで資金量をふやすことはできるのですね。特別枠を設けて、その特別枠が船舶振興会なり主催者を通しまして特別にBG財団に行くというシステムは、それはどういう特別の意味を持つのですかと言うのです。
  76. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) この特別競走を認める趣旨といたしましては、高度の公益性もあるというのが大前提になっております。そしてまた、この特別競走によらなければそれの資金の確保はできないという事情が大前提にございまして、その前提のもとに認められましたならば、それによる収益については少なくとも一定量以上はその特別競走を目的とした高度の公益性ある事業に拠出するというのが前提になっております。
  77. 志苫裕

    志苫裕君 そうしますと、論理はこういうことになりますね。BG財団の行う、これは後で言いますが、BG運動、BGプランという一種の運動体ですよ。これが行う仕事が高度の公益性のある仕事なものですから、従来のこの船舶振興会を通ずる補助事業等の枠の中にはなかなかなじみにくい、したがって、その高度の公益性のある事業のために、特別に原資を生むために特別競走をという、そういう枠を新しく確保したというふうに考えればいいのですか。
  78. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 先ほども御説明いたしましたように、今回の省令の改正の趣旨といたしましては、施設の改善に要する経費が多額に上る場合には従来の競走分だけでは不足するであろうということと、たまたま国際科学技術博覧会に対する協賛の要請が参りまして、それに対する公益競技からの拠出を関係閣僚会議で決められたわけでございますが、それを拠出するには一般の競走枠だけでは不足する、それにさらに加えてそういったたぐいの高度の公益性のある事業というものに対しては特別の競走をいたしませんと、一般の競走の枠だけでは資金が不足する。とは申しましても、その枠をどこまでも拡大していいというわけではございませんので、そこで枠の限界はおのずからあるということでございます。
  79. 志苫裕

    志苫裕君 現在、高度の公益性を有する事業はBGプラン以外に何がありますか。
  80. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 現在申請が出てきておりますのは、国際科学技術博覧会に対する協賛といいますか、その事業、それからここの地域海洋センターの整備、この二件が現在まで申請が出てきている案件でございます。
  81. 志苫裕

    志苫裕君 いや、その国際博覧会は二号の頭に書いてあるのですから、「国際博覧会その他高度の公益性を有する事業」、この「その他高度の公益性を有する事業」というのはBGプランだけですね。
  82. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 現在申請が出てきておりますのが地域海洋センター整備だけでございます。
  83. 志苫裕

    志苫裕君 逆に言うと、BGプランがあるので「高度の公益性を有する事業」と書いたのですか。
  84. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 省令は一つの事業だけを念頭に置いて書いたものではございません。規定にありますように、高度の公益性のある事業ということで趣旨として書いたわけでございます。それに基づいてBG財団の地域海洋センター整備事業について協賛したいという申請が出てきたわけでございます。
  85. 志苫裕

    志苫裕君 くどいようですが、前の政令は、この「国際博覧会」に該当するところに沖縄海洋博と書いてあったのです。そして「高度の公益性を有する事業」というところに該当するものに「海事思想の普及事業」とあった。この「海事思想の普及事業」と「高度の公益性を有する事業」というのは違うのですね。同じですか。
  86. 藤冨久司

    説明員藤冨久司君) 範囲がおのずから違います。高度の公益性のある事業というのが幅広いと思います。
  87. 志苫裕

    志苫裕君 そこで、公益性のある事業かどうかを、これからいろいろお伺いをしていくわけでありますが、実は先ほど私は、目的がここにあります「海事思想の普及」、「人間形成」、「海洋国日本の発展」ということになっているようです。  そこで、特に私は、BGプランあるいはBG運動、こういうふうに呼ばれて、以下いろいろなプログラムが出てくるわけでありますが、このBGプランというのを読んでみますと、多分に、あなたは笹川さんの名前は出しませんでしたが、「関係者のリーダーである笹川会長は、日ごろから日本の青少年の健全な育成に心をくだき、未来を築く青少年は心身ともに健康で、礼と節をわきまえ、人のために尽くす人間でなくてはならない、また世界は同じ一家であり、人類はすべて兄弟姉妹であるという広い心を持った国際人であってほしい、と説いてきました。この会長の願いを基に、」こういう仕事をすることにしましたと、「会長の願いを基に、」。でありますから、会長の願いというのがまず基本的にこの事業なり運動の性格になっているわけです。これは公式に市町村にこれを配って、これに基づいてこの仕事を始めているのですから、一体その会長の願う人間形成とは何だというところに当然問題が行くわけなんですよ。  念のために、会長はこの「ごあいさつ」のところで、あなた御存じでしょう。「ごあいさつ」と一番最初に会長の願いが載っていますが、「私は、青少年には礼と節、義理と人情、愛国心と親孝行が必要である」、こういう考え方を示してありますね。恐らく人格形成に関する部分はこの辺なんです。言うなら「永年私が心にかけてきた青少年の健全育成事業」、健全育成事業といったって人によってそれぞれさまざまあるのですよ。  だから、後ほど言いますが、社会教育というふうなのは、国、地方公共団体が奨励されていかなければならぬ、こう言っておるのでありまして、これは後ほど触れますけれども、だけれども、これはそうでないのです。笹川会長の願いを基礎にこれは関係者がつくったのですから、それに合うように、財源が出るように運輸省は省令を書いたのだから。それで、この人格形成、人間形成は、礼と節、義理と人情、愛国心と親孝行というのがこの人間形成、それ以外にちょっと見当たりませんので、そして、世界は一家、人類皆きょうだいという哲学ですね。これは後ほども触れます、施設には必ず入っておるのですから。この辺が何ともわれわれわかりにくいので、文部省は、文部省が社会教育あるいは学校教育等で目指す人間形成というのはどういうものですか。
  88. 石井久夫

    説明員(石井久夫君) なかなかむずかしい御質問だと思うわけでございますけれども、社会教育の立場から申し上げますと、やはり日本という国の社会の成員を育てる、りっぱな社会人を育てるということが一つの目標だというふうに理解しているわけでございます。
  89. 志苫裕

    志苫裕君 そんな抽象的な議論じゃなくて、教育基本法の前文から説明してください。あなたの方の一般的なことを言われちゃ、たまらない。
  90. 石井久夫

    説明員(石井久夫君) 教育の目的、教育基本法に一般的に書いてあるところを読み上げさしていただきますと、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」、この辺が教育の目的だというふうに理解しております。
  91. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、人間形成、教育基本法のわれわれの普遍的に規範とすべきものは、そのようなことになっています。しかし、BGプランを進める会長の願いというのは、礼と節、義理と人情、愛国心と親孝行、世界は一家、人類きょうだい、こういう哲学を一つの規範にして人間形成、心身ともに健全な人間をつくるということになってまいりますと、いささか公共性の強い事業であるかどうかということが私には疑問であります。  疑問点は一応疑問点としてそのままにしておきまして、中身に入ってさらに問題にしていきますが、念のために、笹川会長というのはどういう考えを持っており、どういう経歴の人ですか。
  92. 武石章

    説明員(武石章君) 笹川さん自身の、会長個人の理念、哲学がどういうものであるかということについては、御本人意思と責任において表明されるべきものであるというふうに考えます。経歴はちょっとここに持ち合わせておりませんので。
  93. 志苫裕

    志苫裕君 経歴といって履歴書みたいに何年何月生まれなんて聞いているのじゃないのです。どこの学校を出てどこ行ったなんて聞いているのじゃないので、もっと聞きたいことわかっているのだから答えなさいよ。  国粋大衆党の元党首ですね。もっと申し上げると、大正十五年に国防社を主宰していますね。これは家に戸締まり、国に国防ということをスローガンに掲げていらっしゃいますね。昭和六年に国粋大衆党党首、翼賛選挙でこれは政党が禁止になりますので、国粋同盟に改称いたしますね。それで、戦後このゆえをもって追放になり、A級戦犯として巣鴨プリズンに収容される。それで、出所してからいま問題になっておりますモーターボート関係の仕事に大変活躍をされた方だと伺っております。現在国際勝共連合名誉会長ですね。日本郷友連盟副会長ですね。違いますかな。世界統一神霊協会顧問ですね。一種の哲学というか理念というか、笹川さんのそういうものをおぼろげながらつかむには、国際勝共連合であるとか、日本郷友連盟であるとか、世界統一神霊協会であるとか、そういうところにそれなりの影響力を持った方だと。  それで、先ほどございましたように、そういう方が青少年には礼と節、義理と人情、愛国心と親孝行、世界一家、人類きょうだい、こういう理念なり哲学を持って現在の青少年の実態を憂い、心身ともに健全な青少年の人間形成を図ろうという事業なんですね、これは。それで、そのBGプランというのは、一つは施設をつくって提供すること、リーダーをつくること、組織をつくること、海洋性スポーツ、レクリエーションを提供することという四つに、これによりますとなっておるわけてすね。  これはどなたか答えられるか、国粋主義というのはどういう主義ですか。国粋主義というのはわかりますか。こういうのは文部省が詳しいのかな。どこが詳しいのですか。大臣じゃないか、こういうのに詳しいのは。国粋主義というのはどういうイデオロギーでしょう。大臣、おわかりになりませんか、国粋主義。
  94. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) そんな言葉いまあるのかと思うくらいで、昔はそういう言葉があったように思いますが、いまは一体どういうニュアンスを持っている言葉なのか、久しぶりといいますか、に聞く言葉で、私がここで中身がどんなことかという解説を申し上げるほどのことはないと思いますが、これは昔そういうことがずいぶんはやったように思うのです。しかし、最近はこんな言葉はもう日本語から消えていたと思うのですけれども、昔の旧憲法時代の言葉で、新憲法時代にはそういう考え方はもう私はないと思っております。
  95. 志苫裕

    志苫裕君 それは特に大臣に聞きましたのは、国家公安委員会、警察庁の方では、俗に言う右翼団体といいますか、こういうものを対象にしておりますから、それぞれの何対象というのですかな、しておりますから、いま昔と同じ形で進んでいないにしても、一種の右翼思想とでもいうか、右翼団体というか、こういうものにかかわりがあるので、ちょっと聞いてみたのです。  私から念のために言っておけば、辞典によりますと、国粋というのはナショナリズムの大変過激なものというふうに解されておりまして、その国の文化や伝統が他国のどれよりも優越をしておる、あるいは優先されなければならない、そういう考え方で、戦前で言えば皇国史観というふうなものが、恐らく皇国思想というふうなものが典型的な例だったのでしょうが、そういうものとされております。  実は笹川さんがそうであるかどうかは別にいたしまして、戦前右翼と戦後右翼は、戦前右翼が天皇信仰、大アジア主義というふうなものが二つのスローガンになっておったようでありますけれども、実は戦後、基本的には変わらないで、欧米文化に対する反発というふうなものが消えて、反米が親米になっておる、反共はもちろん以前と変わらないというあたりの違いだけで、そう基本的に変わっていないのじゃないかというふうに私は思うわけです。  いかにも大臣お答えになったように新憲法下にはなじまない物の考え方、行動の態様だと思うのですが、BGプランなりBG運動にそういう影が落とされておるというふうなことを私は否定し切れない。それが先ほどいみじくも礼と節、義理と人情、愛国心と親孝行、しかも青少年の健全育成というところで、四十七年三月十五日に財団から出された文書の中には「真に日本を担う次代の若者をつくるには、その心身を鍛練し、国を愛し、公衆道徳を守る心と国難に敢然と立ち向かえる気力と肉体をつくる」と書いてあります。この後法人として認可をされまして、こういうものが出されていくわけなんです。もっとそれ以前にもあるにはあったのですけれども。  そういうものだということを私は少し指摘をしておきまして、次に自治省の方に参りますが、BGプランと自治体はどうかかわっておりますか。
  96. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 先ほど来お話しのBG財団との間におきまして、いろいろ体育施設を各地で設置するという合意に基づきまして、相当数の体育施設がBG財団と地方団体、特に市町村との間の契約によりまして設置され、地方団体がその契約に基づきまして運営管理の委託を受けておるのが現状でございます。
  97. 志苫裕

    志苫裕君 先ほど言いましたが、BGプランというのは、施設づくりと、指導者づくりと、組織づくりと、海洋性スポーツ、レクリエーションの提供、こういう四つ。そのうち直接自治体にかかわってまいりますのが、この施設づくりの中の地域海洋センターですね。これがストレートに自治体とかかわってくる。そのほか、指導者づくり、組織づくり、海洋性スポーツ、レクリエーションの提供もかかわっていますけれども、まずここから入っていこうと思うのですね。  地域海洋センターの概要をこの機会に御説明いただけますか。地域海洋センターの概要。
  98. 武石章

    説明員(武石章君) 地域海洋センターは、BG財団が主として青少年を対象とした海洋性レクリエーション活動等により海事思想の普及を図るとともに、その人間形成と体力向上を図ることを目的としておりますが、この目的を実現するために、地方自治体の要望に基づきまして同財団により整備が進められている地域的な海洋性レクリエーション施設でございまして、施設の内容は、プール、艇庫及び体育館という組み合わせになっております。これらの施設の中には、全部、三点セットと申しますか、それを全部そろえているものもあれば、そうでないもの、あるいは順次整備中のものというものがございます。
  99. 志苫裕

    志苫裕君 それで、いまお話しのように、何か幾つか組み合わせていいのだそうですね。三点セットが基本だけれども、そのうちのプールがないとか、体育館と何とかだとか、何か一類、二類、三類、四類、五類、五種類ぐらいになっておるそうですが。  自治省、募集から利用まであらかじめあなたの方が自治体にかかわることですから一切知っていることとして、私は時間もないので若干問題を指摘しながら大事なところを聞きます。  まず第一段階で募集が行われます。募集要項が自治体あてに出まして、こういう一連の募集要項、それに依頼文がつきまして、この依頼文というのは、BG財団から市長会とか町村会とか、そういうところ、それから県の余暇担当課長のところにも出ます。市長会や町村会の方、あるいは余暇担当課長からも今度また市町村におりてくる。二重、三重に非常に念の入った募集が行われてまいります。このためのPRの予算といいますか、そういうものだけでもBG財団は五十七年度の予算を見ますと四億七千万もかけています。相当念の入った宣伝をし、募集をしているようです。  そこで、いま来ないとだめですよということで、いろいろ新産都市やなんとかの指定と同じことで、指定競争やなんかもあるわけですが、回答の締め切りを行いますと書類審査を行って、書類上でいいとなると第一次調査、現地調査をやり、第二次現地調査をやって、それが施設部会というようなところで一次、二次の審査が行われて、決定または内定の通知が理事会から来る。さて、ここまでまいりますと、用地無償貸付契約というのが行われるわけであります。  応募要項のセールスポイントというのは三つだと思うのですよ。無償で土地を提供してくれたらただで建ててあげます、建てて、したがって無償で提供しますと。その施設は自治体が自主的に運営できます、これが第二点。第三点は、三年たったら、三年うまく運営をしたら、ただでくれます、この三つなんです。これが自治体はこたえられないのですよ。土地をただ出してくれれば、貸してくれれば施設をつくってあげます、大体三点セットで三億ないし四億ですから、規格品ですから場所によって変わるということはないのですから、で、それをあなた自主的にお使いなさい、三年たったらただあげると。これほどうまい話はないのでありますから、飛びつくわけです。  その飛びつき方がすごいのですよ。第一次現地調査や第二次現地調査の熱烈歓迎ぶりというのは、もう消防団から婦人会から青年団から町の職員から、その辺にいるやつはみんな動員しまして、手に手に日の丸の小旗を持ち、BG財団の既製のシャツを着て、役場の職員は朝からトレーニングウエアでみんな出勤しまして熱烈歓迎と、こうやるわけです。歓迎の仕方が悪いというと点数が悪くなるわけですから、これはあとう限りの歓迎をやるわけです。そうやってパスをしますと、用地無償貸し付けの締結にまず入ります。  そこで、用地無償貸付契約についてお伺いをいたしますが、この契約は、契約の中の第三条には、貸し付け物件、土地に附帯する物件というのも入っておりますけれども、これを一応指摘しておいて、まず、この契約は自治法の第何条の契約になりますか。
  100. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 地方自治法第九十六条の条例または議会の議決を要する契約、こういうスタイルになると思います。
  101. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、九十六条を受けて二百三十七条になりますか。
  102. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) そうでございます。
  103. 志苫裕

    志苫裕君 二百三十七条に基づいて、自治体は、自治省あたりが出したのでしょう、モデル条例で、これは財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例というものを多くの自治体が設けておるようです。これですね。これに基づいてやるわけですね。
  104. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) そのとおりであります。
  105. 志苫裕

    志苫裕君 そうしますと、ここにモデル条例一つ持ってきています。これは新潟県大和町の条例を例に引きましょう。  第四条「普通財産の無償貸付又は減額貸付 普通財産は、次の各号の一に該当するときは、これを無償又は時価よりも低い価額で貸し付けることができる。 一 他の地方公共団体その他公共団体又は公共的団体において公用若しくは公共用又は公益事業の用に供するとき。」、これに該当するのですね。
  106. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) いま指摘された条項に該当すると思います。
  107. 志苫裕

    志苫裕君 そうしますと、この土地の相手は、この条項によれば、相手は公共的団体であり、公共の用に供するという認定になっているわけですね。
  108. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) そうだと存じます。
  109. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。この点をまず確認をいたしておきます。  ところで、この貸付契約の第五条、大体どこでも同じものですから皆さん持っていると思うのですが、「この貸付物件の貸付期間は、」いつからいつまで「十年間とし、その期間経過後といえども乙の建設に係わる建物及び工作物の存続する限り更新するものとする。」、すなわち三年たったらといううまい話は、まずここでは出てこない。貸した土地は十年、というのは十年その上に建物があるということです。十年たったら建物がある限り更新というのだから永久ということです。火事で焼けるか地震で流れるかということになるわけですが、これと募集要項、公式文書ですが、この違いは運輸省さんはどのように理解なさっていますか。
  110. 武石章

    説明員(武石章君) お答えいたします。  地域海洋センターは市町村が用意をいたしました用地の上にBG財団が施設を建設し、その施設を市町村が管理運営することによって海事思想の普及や体力づくりに役立てようというようなことでございます。地域海洋センターの管理運営に関する財団と当該市町村の契約では、一応有効期間を十年としておるわけでございますが、これはこのような多額の資金を投入して建設する固定資産でございます。そういう施設の管理運営委託契約としての通常の社会通念上の有効期間は十年というような期間であるということは、きわめて常識的な期間設定であるというふうに考えております。  一方、当該施設の市町村への譲渡につきまして、BG財団の行う活動について地元の理解と協力が定着し、将来にわたって施設の利用が十分に行われるという、そういう見通しを得るには三年程度の期間が通常必要であるというような判断から、施設整備後三年を経過したもののうち、利用状況が良好であり、かつ地方自治体から譲渡の要望があるものについて、運営委託契約の期間にはかかわらず、譲渡されてしかるべきだという判断をいたすという考え方でございます。
  111. 志苫裕

    志苫裕君 あなたはいつも少しずつぼけた答弁をするが、募集要領の参考資料のIIの(12)「その他 運営委託契約締結後三年を経過し、B&Gプランの考え方が定着し、」云々、「これらの施設は当該市町村へ条件を付して無償で譲渡される予定です。」と、ここのところにうまい話、飛びつくわけ。  こういうのは、たとえば全国市長会から都道府県あてに出ている文章にこういうことが書いてある。これは体験航海の誘いなんですが、「ご承知のとおりB&G財団は市町村に体育館、プール、艇庫等を内容とした海洋センターを建設、無償譲渡するなどの諸事業を実施しておりますが、」と、こう書いてある。これは市長会から市町村長へ出ている文章なんですね。「無償譲渡するなどの諸事業を実施しておりますが、」という、無償譲渡などの諸事業はどこにも実施してない。契約見れば十年だ、十年たったらまたおいでというので、また長くなる。この後の運営委託にもありますが、この条項というのは、運輸省、どこから出てきたのですか、募集要領の三年たったらというのは。
  112. 武石章

    説明員(武石章君) お答えいたします。  地域海洋センターの無償譲渡につきましては、五十五年八月四日付で無償譲渡に関する基準というのを承認しておりまして、その譲渡基準というものにのっとって譲渡するということになっております。
  113. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと済みません、五十何年。
  114. 武石章

    説明員(武石章君) 五十五年の八月四日でございます。
  115. 志苫裕

    志苫裕君 無償譲渡の基準。
  116. 武石章

    説明員(武石章君) はい。
  117. 志苫裕

    志苫裕君 手に持っているの、後でくださいね。お願いしますよ。  いずれにしても、この募集要項に載っていることは土地の契約の段階では出てこないということをひとつ指摘しておきますが、それで第六条、「この契約の履行について、第三者から異議の申出があったときは、甲においてすべて解決するものとする。」、こうなっています。これはどういうことを想定していますか。
  118. 武石章

    説明員(武石章君) ちょっとよく聞こえなかったのでございますが。
  119. 志苫裕

    志苫裕君 第六条、「この契約の履行について、第三者から異議の申出があったときは、甲においてすべて解決する」、これはどういう事態を想定していますか。
  120. 武石章

    説明員(武石章君) お答えいたします。  地元に管理を委託しておりますので、地元における関係者とのいろいろな折衝があろうかと思います。そういう意味で第三者との関係についてはその地元において解決していただきたい、そういう趣旨のものだと考えております。
  121. 志苫裕

    志苫裕君 言うなら、異議申し出に対する措置というのは、それは土地を市役所から借りたら、おれの土地だなんていうのが出てきたりして、もめたりすると困るという事態はひとつわかります、それはそっちで解決しなさいと。と同時に、これにはたとえばBG財団の性格に関して、そういう土地を貸すことは相ならぬというふうな住民監査や訴訟、こういうのが出た場合の想定もこの中に入るのですか。
  122. 武石章

    説明員(武石章君) お答えいたします。  これはあくまで地方公共団体の要望によりまして設置する施設でございますので、実際にその施設の設置が円滑にいくように、こういう条項を置いたというふうに理解しております。
  123. 志苫裕

    志苫裕君 いや、あなた、運営の話じゃないのだよ、土地の無償貸し付けの話を私はしているのだよ。じゃ、まあいいです。  そこで、土地の無償貸し付けが、いま相手を公共的団体であり公共の用に供するという認定の上で、自治省解釈によりますと、九十六条、二百三十七条、それに基づく条例に該当をして契約を結ぶ、自治体の行為そのものには特別の問題はないということになったようです。そうなっていきますと、その次に、工事の起工が行われて、工事の竣工が行われて、さあ建物ができました、で、運営募集要項にありますように、いよいよ今度あなたに運営をさせます、あなたに管理を任せますという運営委託契約の締結が行われます。これは自治省、ひとつ運営委託契約を手元に置いてください、私少し細かく聞きますから。  運営委託契約は、何々のものを何々するから始まりまして、第二条、乙、当該施設のある市町村の乙は、財団が定めるセンター運営要領に基づいて「運営をしなければならない。」、財団の運営要領というのは十項目に規定をされておりますから、両方一緒に見ながら答えてください。  まず、運営要領で二つの問題点で、三つ聞きますが、「B&G運動の推進に関すること。」、BG運動というのは自治体の運動じゃないのですよ。BG財団という一民間の運動なんですよ。それの推進に関すること、これが約束されるのですね。二つ目、運営要領に「政治、宗教、結社及び労働運動等のための集会、演説会並びにこれらの広報治動を行なわせてはならない。」という禁止規定があります。その「禁止事項」の第八項に「許可なくポスター等の印刷物を掲出し、又は広報物を頒布させてはならない。」、「許可なく」です。その前段に二項から全部「許可なく」というのがあるのですが、これはだれの許可を言っているのかわかりませんが、運営をする市町村長なのか、それに貸せるBG財団なのか、その主体ははっきりしていませんけれども、許可なく張っちゃならぬのだという、この三つの点についてひとつ簡潔に答えてください。「B&G運動の推進に関すること。」というのをなぜ自治体がやらなければならぬのですか。
  124. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 自治体がBG財団とこういった施設の運営の管理委託契約を結びます場合に、契約の一方の相手方でありますBG財団が、自分の財団として啓発活動を行いたいというようなことについての合意を市町村側に求めて、市町村側がその趣旨を了解して契約の合意ができたものと考えております。したがいまして、BG財団の啓発活動、そういったものについての市町村にとってもそれが適当である、こういう合意がなければ、こういった契約は成立いたしませんので、両者の合意に基づいて行われておるものと考えております。
  125. 志苫裕

    志苫裕君 あなた、運営委託契約というのはいつ提示になるかわかりますか。募集要項のときにも説明会のときにも無償貸付契約のときにも出てこないのですよ。土地は貸した、議会は議決をした、そこでこれが出てくるのですよ。そのときになって合意もへったくれもないでしょう、後戻りできないのだから。そのときに御自由に貨せますと言っておいて、さて委託契約を結ぼうと思ったら、財団が定める運営要領でなければだめですよというのが前提にあるわけ。財団が定める運営要領の中には手続その他ありますけれども、BG運動を推進しなさいよというのが一つ入っているのですよ。合意なんという状況じゃないのですよ。一応問題指摘しておきます。  その次の「禁止事項」ですが、公共的団体で公共の用に供するのですよ。後ほど、憲法で言っていますが、公の支配に属するわけですよ。そうしておいて、当然契約が行われれば、まあ私から指摘しましょう、百四十九条の長の担任事務になります。そして、その中の特に七項、「公の施設を設置し、管理」することでしょう。私の言うこと間違っていたら言ってください。百五十七条、公共的団体等の監督、同二百四十四条、公の施設、同二百四十四条の二、こういうふうに該当すると思うのですが、このうちの二百四十四条、公の施設というのは「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」を公の施設と言うのです。二項、公供団体は正当な理由がない限り住民の利用を拒んではならぬ、第三項、不当な差別をしてはならない、念のために九十六条、議決事件、公共的団体の活動調整権限持っています。なお、憲法十四条、法のもとの平等、憲法八十九条、公の財産は公の支配に属さない事業に対し利用に供してはならない、この施設が公の財産ですね。これに該当をしないから、恐らく公の支配に属するということであるから、いろいろな公金や財産を提供しているわけですね。そうだろうと私は思う。  さて、これこれの条項から見て、いま、まず言う「禁止事項」を自治体が受け入れるというのは、どういうことですか。
  126. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 地方自治法の観点から申しますと、二百四十四条以下に「公の施設」という条文がございます。公の施設と申しますのは、住民の福祉を増進するために住民の利用に供する、こういう施設を言うわけでありまして、原則的には差別取り扱いの禁止という規定がございます。ただ、この施設が公の施設に当たるかどうかという点から申し上げますと、地方団体が地方団体の意思で住民の利用に供するために施設を設ける場合に、地方団体が所有権を持っておるのが通常の形態ではありますけれども、場合によりましては借りたりすることもございましょう。したがって、所有権の有無というのは必ずしも公の施設であるかないかのポイントにはなりません。したがって、この海洋センターも地方団体の二百四十四条に定めます「公の施設」であろうと思います。  その場合に、所有権を持って住民の利用に供する場合、まず一般の利用に平等に供するのが通常の形態でありましょうが、こういった私法上の契約によりましてBG財団のつけた条件を地方団体が受け入れた場合に、ある程度の使用の制約ということも、これは考えられると思います。そういったある程度の使用の制約があるからといって、またこれは公の施設でないというわけにもまいらないであろうと思います。  あと、憲法上の問題につきましては、いろいろ御論議のあるところであると思いますが、ちょっと憲法上の問題との関連についてはお答えする立場にございません。
  127. 志苫裕

    志苫裕君 ある程度云々というのは、正当な理由とか支障とかそういうことを言う。これは原則禁止なんですよ。都合が悪かったらだめだというのはあり得ることなんだが、これは原則禁止なんです。それを地方公共団体がこの契約に基づいて、この条項をもって住民に対応するのですよ。借り物の施設とはいえ公の施設、そして長の担任事務としてやるわけだ。法制局、この点についてお答えください。
  128. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 海洋センターの運営の実態等につきましては十分承知しておりませんので、運営要領を前提にお答えするほかございませんけれども、運営要領において問題にしておられます禁止条項というものが、仮に特定の政治団体等によりますセンターの利用を禁止しているというようなものでございますれば別でございますけれども、センターの設置目的なり、あるいはその業務内容からいたしまして、一律にそのような形での利用を制限するというものでございますれば、その限りにおきましてはそのことが直ちに不合理な差別を定めたものということはできないと思いますので、その意味におきまして、この禁止条項が直ちに憲法十四条に反するということにはならないと考えております。
  129. 志苫裕

    志苫裕君 では、法制局に念のため聞きますが、第八十九条、公金あるいは財産は公の支配に属さない事業の「利用に供してはならない。」とありますね。これが先ほど自治省がずっと答えてきておることからいきますと、この八十九条には該当しない。逆に言うと、公の支配に属する施設ですね、これは。
  130. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 先ほどもお答えしましたように、センターの実態等を十分承知しておりませんので、運営要領を前提にいたしましてお答えすることになりますけれども、運営要領から見ます限り、センターは青少年に対しまして青少年の海事思想についての知識を豊富にしたり、あるいはその関心を高めるというようなことを目的と します業務を行っているような施設に思われます。そうだといたしますと、まずここで、その海洋センターで行われております事業が直ちに憲法八十九条に言う教育の事業に該当するということは言えないように思います。  したがいまして、その貸し付けにつきまして憲法八十九条との関係で問題になることはないのじゃないか、先ほどから御議論がございましたように、その無償貸し付けなるものが条例に定めます無償貸し付けの要件に適合するものでなければならないことは申し上げるまでもございません。
  131. 志苫裕

    志苫裕君 法律家というのは長々言うのだが、だから、私聞いているでしょう。八十九条に該当しないということは公の支配に属するということなんでしょう。
  132. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 憲法八十九条は、御承知のように「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」と、こう定めておるわけでございます。そこで、問題になりますのは、ここで行われております事業が教育の事業に当たるかどうかという点がひとつ問題であろうと思います。それは先ほど申し上げたような点で教育の事業には該当しないと解されますから、その限りで八十九条との関係は生じない、こういうふうに理解をしております。
  133. 志苫裕

    志苫裕君 あなた、教育の事業といったって、これは後ほど文部省の方にいくのですが、これは自治体は社会教育施設として扱っているのですよ。法制局、そんな乱暴なことはだめですよ。これは学校の体育館として使っているところもあるのですよ。そんなもの実態もわからぬで、いいかげんなことではだめですよ。いまの取り消しなさい、あなた。
  134. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 私はただいま憲法八十九条に言う教育の事業というものを前提にしてお答えをしたわけでございますが、憲法八十九条の教育の事業に関しまして、先般、まあ先般といいますか、以前に当局から法制意見というものが出されております。それを見ますと「人を教える行為が介在していても、単に人の知識を豊富にしたり、その関心をたかめたりすることを目的とするだけの事業であって、教育される者について、その精神的又は肉体的な育成を図るべき目標があって計画的にその達成を図るのでないものは、教育の事業には該当しないものと解される。」、これは憲法八十九条の教育の事業を言ったものでございますが、この法制意見を前提にいたしまして、先ほどから申し上げておりますように、実態等を十分承知しておりませんので、運営要領を前提にして申し上げますと、運営要領で書かれている事柄の内容は、ここの憲法八十九条で言う教育の事業に当たらないのではないかということでお答えをしたつもりでございます。
  135. 志苫裕

    志苫裕君 運営要領を先に私言うたから、この運営要領をいま問題にしていますが、この運営要領をもとにして自治体がこれを運営するのですよ。いいですか。自治体は運営委託契約を結ぶのですから。これは後でまた触れますが、契約の方にいきましょう。  自治省、私から問題点を一つ言いますが、契約の第四条ごらんなさい。まず名前はそういう名前にしなければならない。第六条は事業計画、収支予算、こういうものを全部届けろ、第七条、センターには主任を、責任者を置かなければならぬ、責任者はだれにするのか、あらかじめ協議せよ、三項、長が定めるじゃないのですよ、センターが定める基準で人を配置しなければならない。これ第七条。第八条、新たな設備をする場合には承認を求めよ、第十条、損害保険契約をするときには、その額だとかそういう内容は全部甲の承認を求めよ、第十六条、センターの運営状況は、これは実際は一週間置きなんですけれども、運営を甲に絶えず報告せよ、第十八条、施設等の状況の確認のため必要な書類を提出せよ、報告をせよ、立入検査をする、こうなっておりますね。立入検査。そして第十九条、先ほど問題になりました有効期間は三年でない、これは十年。そして二十条、こういうめんどうなものはいやだ、あるいはいろいろやって、住民から支障が出てきたので、これやめるということになると、契約解除、やめたということによる損害は全部市町村が持て、こうなっておりますね。契約の解除を町村の側から言い出す権限はないのだ、財団からおまえのところは誠実にやってないから解除すると言われたときには、それに基づく損害は全部自治体が持たなければならない、こうなっていますね。  さて、この条項を自治省さんお読みになって、これは少なくとも自治体が運営するようになれば社会教育施設としてのスポーツ施設ということになるわけです。そして、先ほど述べたように、長の担任事務であり、それで相手は、百五十七条で公共的団体等の監督をする権限を持ち、そして議決事件としては九十六条で公共的団体等の活動調整をする権能を持ち、そういう立場に立つ自治体が一民間法人の一から十まで指図を受けなければならない。こういう契約というのはありますか、これ。  後で職員の設置も聞きますが、私は、センターを運営する、これはもうすぐれて自治の中身になるわけですが、これが運営要領を大前提として、契約の中で立入検査権も認め、職員を置く場合には、その人の氏名から素性まで協議をし、BGセンターという民間が養成をし、訓練をし、登録をした職員を基準どおり置かなければならないという義務を負って運営に入る。これがどこに自主的運営ですか。  募集要項ごらんなさい。いいですか。「財団が施工業者から施設の引渡しを受けますと、財団は、当該市、町、村と無償の運営委託契約を結んで、自主的な運営に委ねることとなります。」、これが募集要項です。ところが、契約を結ぶと、いま私は全部で何項目言いましたか、四条、六条、七条、八条、十条、十六条、十八条、十九条、二十条、そして大前提となる第二条、一体こういう施設、私が幾つか引用した長の権限あるいは施設のありよう等々から見て、それらの条文趣旨、総称して、地方自治と運営委託契約のいろいろな指摘した問題点との関係について、私はこれは違法な契約だと思う。こういう契約は法律違反ですよ。これは地方自治の否定ですよ。この点について答えてください。
  136. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 運営委託契約で御指摘になったいろいろな条件がございます。確かにいろいろな施設の運営委託契約といたしましてはかなり手が込んだかっこうになっておるなという感じはいたしますけれども、結局はこういった運営委託契約の内容というものを市町村の方で了承をし、またその了承をする場合には、結局住民の意思を代表する議会とも相談をし、条例あるいは議会の議決という手続を経た上で、こういった運営委託契約を結んでおるわけでありまして、結局その市町村にとりまして、この運営委託がいいものかあるいは悪いものかというような判断は議会を通じてやられておることでもありましょうし、あるいはその運営の途上におきまして住民の意見というものもいろいろ出てまいりましょう。そういった過程を通じて、この財団と市町村との間で、この施設の委託を通じてその市町村としましては住民の福祉の向上を目指すということになっておるわけでありまして、結局はその市町村自体の判断あるいは住民の意見の問題、こういうことになろうかと思います。
  137. 志苫裕

    志苫裕君 あなた、こういうときになると市町村の判断と言うのだが、まああなた方はどの程度このBG運動というものについて認識を持っているかはわからぬが、なぜここまで拘束を、三年たったらくれるとか、あるいは自主的に運営させるとかと言いながら、なぜこれだけ細かい拘束をするかといいますと、自治が発揮をされて自主的な運営をされたのではBGプラン、BG運動が進まないからなんですよ、笹川さんの言う運動や人間形成が。だから紙の出し入れまで拘束をして自治体に運営を委託するのですよ。  この次の機会にやりますが、一週間置きに報告をする、一定のノルマを達成しなければ注文が来るというようなことで、ずいぶん涙ぐましい、ばかばかしい努力をしておるのですが、きょうは時間が来たから、以下私は連続物で続けていきますけれども、連続物でこれはずっと続けていきますが、きょうはここまでということになりますが、いまの行政局長の答弁は私は納得ができない。公の施設である、公の支配に属する公共的な事業だ、公共の用に供するのだと、こう言うておいて、その施設が長の権限行使も、担任事務に当たるあれもできなければ、活動調整もできなければ、一切の権能を持ってないで、まさに設置者である建てたBG財団に自治体や施設の運用が全部コントロールされるというありようは、どう考えてもまともじゃないですよ、あなた。自治を育てよう、自治を伸ばそうと日ごろから言うて、そのことを役割りにしておる自治省の局長の答弁としてはまことにもってだめだ。これは、あなた、この答弁だけでも失格だよ。きょうやめるとは言わぬが、まだ質問は残っておるから。  最後に一つだけ、文部省せっかく来てもらって、一つだけ聞いておかぬと悪いから、この体育施設、これは私は委託されれば社会教育の一環として管理運営されるべきものだと思います。こういう社会教育施設の配置計画等は教育委員会の所管になるはずでありますし、現に職員は多くのところで教育委員会に所属をします。教育委員会はこれにどうかかわってますか。
  138. 石井久夫

    説明員(石井久夫君) 実はまことに恐縮なんでございますけれども、BG財団につきましては文部省が所管している法人ではございませんので、きのう先生の方からこの御質問があるということで、率直に申し上げまして、あわてて都道府県を通じまして二、三の県に照会したところによりますと、確かに社会教育課の職員が委託された場合に、その担当課となった場合に所管の職員を配置しているところがあるというふうに二、三のところで聞いておりますけれども実態については承知していないところでございます。
  139. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、この次までにその辺、実態をよく調べていてくださいよ、これからだんだん本論に入るわけですから。  きょうはこれで終わります。
  140. 宮田輝

    委員長宮田輝君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ─────・─────    午後一時三十五分開会
  141. 宮田輝

    委員長宮田輝君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、地方行政改革に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  142. 大川清幸

    ○大川清幸君 初めに、現在行われております市議会、市町村議会議員の選挙、真っ最中でございますが、せんだって東京都下の国立市でポスターの枚数制限の問題で何か問題があったように報道されておりまして、新聞報道だけでは細かいところまでわかりませんが、この国立市では掲示場以外には認めないという条例等もつくっていない市だそうでございますが、これはどんな実情でどういうことになっておりましょうか、御報告を願いたいと思います。
  143. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) 御指摘のありました国立市につきましては、公職選挙法第百四十四条の四に基づくポスター掲示場、つまりポスター掲示場はつくるけれども、それ以外のところにも張ってもいいのだという古い形のポスター掲示場の制度がございまして、条例が設けられております。ところが、過去二回の選挙におきまして候補者の方たちが自主的にそのポスター掲示場以外のところには張らないということで二回の選挙が行われた実績があるようでございます。  今度の選挙につきましても、選挙管理委員会の方で候補者周知会のときに、そういう実績を踏まえまして協力をお願いして、結局従来どおりと申しますか、証紙を要するにそういうポスター掲示場に張るのに必要なだけ、まあ若干の余部を含めて一人当たり百五十枚ずつの交付しかしなかったということがございます。その後、候補者の一人から証紙の全数を交付しろというお話がございました。目下選挙管理委員会の方といたしましては、いままでの経緯もあるので何とか御協力をいただけないかということで、協力依頼の折衝を重ねておるようでございますけれども、現状はそういう状態でございます。
  144. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、これはいまの段階で明確な判断をそちらで出すのもちょっと微妙な段階なので、お答えがいただけるかどうかわかりませんが、これは法律上のたてまえからいうと、やっぱり制限する方がちょっと主張されると不利な立場ではないかと思いますが、その辺の判断はどんなものですか。
  145. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) 進行中の選挙、しかも折衝中に絡んでの話でございますけれども法律のシステムから申し上げますれば、法律はこの場合、市議会議員選挙の場合、こういう状態のもとにおきましては千二百枚のポスター証紙を交付するというたてまえになっておりますので、法的には千二百枚のポスター証紙を交付しなければならないものというように考えております。
  146. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうしますと、今後、これ珍しいケースだと私は思うのですけれども法律上のすり合わせの点で問題があるまま選挙に飛び込んで、いままで過去二回は候補者側の方の大体良識というかそれに依存をして選挙そのものは順調に運営をしてきた、今回一人承知しなかったということになるのでしょうけれども、この辺は整備をする余地がありますかどうですか。
  147. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) こういった一種の候補者の方たちの自発的な合意に基づく選挙運動の自粛と申しますか、法律で許容されていてもそこまではやらないというやり方は、やはりあくまで候補者の方たちの合意とお話し合いの上で行われるものでございまして、それに対して法律的な措置といったものではなかろうと存じております。
  148. 大川清幸

    ○大川清幸君 それじゃ、選挙関係結構です。どうもありがとうございました。  次に、最近大分新聞紙上をにぎわしております例のサラ金問題ですが、大変悲惨な事件等も起こっておりまして、これは借りる側の、近ごろの方々は何というのですか、ローン型人生みたいなことになっておるものですから、比較的安直に借りる方が多いので、このような追い詰められて悲惨な事故を起こしているのだと思うのです。また一方から言うと、この間は何かサラ金側をうまく乗せて担いだみたいな事件もありまして、なかなかこれからの社会問題として処理をするのに大変だと思うのですが、警察側としては実際に起こった問題について対応を今日までされてきたと思うのですが、今日まで発生した事件の状況等を御報告願えればお願いしたいと思います。
  149. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 警察といたしましても御指摘のような事案に対しましては重大な関心を持って対処をしておるところでございます。これらの事案の原因ともなります高金利あるいは貸し金の取り立てに伴う恐喝等の悪質な事犯につきましては、年間を通じて取り締まりの継続をやっておりますし、特に年一回は金融事犯取り締まり強化月間というものを設けまして集中的に取り締まりを実施しておるところでございます。  その結果、件数的なものを申し上げますと、貸金業者、高金利等についての規制をしております出資法違反の昨年の検挙状況といたしましては七百二十一件、八百三十二人という結果になっております。このうち高金利事犯の検挙は三百七十六件、これは前年に比べまして五十三件の減少、それから無届け貸金業につきましては二百十五件で、前年に比べまして三十九件の減少になっております。高金利事案につきましては、いま申し上げましたように検挙件数では五十一年をピークといたしましてその後減少傾向にございますが、中身といたしましてはやはり悪質なものが多くなっておりますし、特に悪質な事案につきましては報道発表するなどいたしまして被害防止にも努めているところでありまして、今後とも適確な取り締まりを推進してまいりたい、かように考えており ます。
  150. 大川清幸

    ○大川清幸君 やはり行方不明その他自殺等の事犯も起こっているようなんですが、これらはやっぱり取り立て等側の方の、何というのでしょう、乱暴な行為といいますか、そういうようなことが主な原因でしょうか。
  151. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) サラ金からの借金が原因となっていろいろな事犯が起きております。先生御指摘の家出をするあるいは自殺をする、あるいは取り立てに絡んで不法なことが行われるというようなことがあるわけでありますが、警察庁で統計的にはサラ金を原因にした家出あるいは自殺というものを正確にとっておりませんので、概数だけしかちょっとわかりませんが、たとえば自殺で申し上げますと、これは五十六年の統計しかまだございませんが、年間自殺者総数が二万四百三十四人でございましたが、このうち経済問題あるいは生活問題ということに限って見ますと二千十九人で九・九%、約一〇%ぐらいということであります。これがすべてサラ金であるかどうかはわかりません。  それから、これは昨日急遽まとめたといいますか、各県から報告を徴したものでありますので、まだ若干の動きがあろうかと思いますが、御報告を申し上げますと、サラ金など借金苦による家出状況は五十七年中で見ますと全国で七千三百十六人でございます。これは五十七年中の全体の家出が十万五千六百五十三人でございましたので、その割合からいいますと六・九%、約七%近いような状況でございます。  それから、昨年の十一月に実施をいたしました金融事犯の取り締まり強化月間で、その一月間に行いました高金利等の事犯の際に、その被害者に当たる人にいろいろと調査をいたしました。その結果を見てみますと、取り立てに伴ってどんなことをやられましたかという質問に対しまして、一番多かったのはやはり早朝、深夜の電話というので、全体の四五・一%でございました。それから、張り紙とか大声を出されたというのも一三・八%、それから、職場への電話あるいは訪問による嫌がらせを受けたというのが一三・八%、その次に、家族、親族等に対する嫌がらせとか、あるいは早朝、深夜の訪問、こういったような態様のものが大きなものでございます。
  152. 大川清幸

    ○大川清幸君 大臣、これ状況はいま御報告を受けたとおりで、状況としては憂慮される点が多々あると思うのですが、現在大蔵委員会でこの法案の審議中でございますが、あの法案自体もちょっといろいろ問題があるようなんで論議があるようですが、今後のこうした状況から考えて取り締まりの観点からも、ある程度の何といいますか、効果が期待できるような方法考えていただいた方がいいのじゃないかとも思っておりますが、御所見を伺っておきたいと思います。
  153. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) いま警察の窓から見たサラ金ということで申し上げたわけですが、これ貸し金自体をめぐる取り締まり、それから取り立てにいろいろな事犯が起こる、それから借りた方のいろいろな悲惨な家庭内のトラブル等が起こるという、いろいろ一つの社会問題と考えても大変重要な問題であると思います。一方、やはりこの庶民金融といいますか、サラ金に対する資金の需要というものも否定できない。さすれば、私は、やはり今回議員提案でいま審議中で、参議院できょうも御審議があったと承りますが、そういう貸金業に関する法律案をひとつつくっていただいて、一つの規制の枠の中に入れて、そして取り締まりをして健全な営業の方向にひとつ向かわせる、そういうものの方がベターである、こう考えておるわけであります。
  154. 大川清幸

    ○大川清幸君 これ、簡単に借りられる、それから借りる方は大体サラリーマンの奥さん方が多かったりして、まあ商売をやっている方は金銭的な感覚や金利の恐ろしさをよく知っているので余りひっかからない。まあひっかかるという言い方はおかしいかもしれませんが、事件にならないのじゃないか。そういう点から考えると、やっぱり何か啓蒙的なことをやっていただく必要があるのであって、これは地方公共団体あるいは大蔵省関係でやっていただくことかもしれませんが、大分いろいろな被害が広範に出ている観点から考えて、そうした金利の恐ろしさ、それから生活に対する自覚は本人たちの問題なんですが、金利の恐ろしさみたいなものに対するPRなり教育なりというものはどこかでやる方法はないものかどうか。これは一回大蔵省中心で相談してみていただけませんか。どうでしょう、大臣
  155. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 確かにそういうことも考えてみなければならないと思いますが、ずいぶんやっぱりサラ金の何といいますか、事案というのは新聞にも出ますし、ずいぶん私は認識はあるのだけれども、そこのところがまたやむを得ずお借りになるという、そういう私はまことにやむを得ない、そのお方としてはまことに緊急やむを得ない事情から、そういうことをおやりになるのだろうと思いますから、できるだけそうした営業に対する規制というものをきっちりして、そして視線の中に入れて健全な営業をさせるという方向でやってみたらどうか、こう思っておるわけであります。
  156. 大川清幸

    ○大川清幸君 警察庁、結構です。どうもありがとうございました。  それでは、次の問題で、今回第二臨調から答申が出まして、その中の地方事務官の問題なんですが、これは大臣の所信表明の中でも「行政改革の推進と地方行政の充実」といいますか、そういうようなことで御所見は伺っておるのですが、この地方事務官制度といいますか、これについてはどうも身分の扱い等については、従来自治省側での考えと言っていいかどうかわかりませんけれども、その辺のいろいろな記録を見た関係から判断すると、ちょっと逆の答申の結果になったのではなかろうかという心配をしておりますが、この点はいかがでございますか。
  157. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 御案内のように、臨調の答申は大体五次まであったわけでございますが、第一次のときは臨調の行政改革に対する一つの理念が出たわけですけれども、その理念の中では、地方自治というものに対する御認識が私は述べられておって、それには住民の身近な行政というものはやはり地方でやるのが適当である、そういう地方自治に対する御認識を得て、そういう方向でお考えをいただいてきたものだと、こう思っております。ただ問題は、その具体的な問題に入ってきますと、一つ一つがやはりまたそれなりの沿革、歴史があり、またそれぞれの過去のいろいろないきさつというものも出てまいりまして、私ども少しそういう理念と具体的な問題との間を今後よく考えて詰めていかなければならぬ問題というのはやはりある、こう考えているわけでございます。  その一つがこの地方事務官問題でございまして、この問題はいまもお話がございましたが、私どももほぼ同じような感じを持っておるのでありまして、今後この問題はさらに私どもとしても詰めてひとつ慎重に考えていきたい、こう思っております。
  158. 大川清幸

    ○大川清幸君 今後確かに関係省庁の間で詰めて、地方自治体とも話し合いしたりという必要はあるのだろうと思うのですが、従来当委員会でも「五十一年三月三十一日を目途として地方公務員とするよう努めること。」というような附帯決議をかつての委員会等でつけたことがあるのですよ。これは四十九年五月二十八日の委員会ですか、これは議会側の意思ですね。さっき申し上げたように、自治省の立場あるいは地方の首長さん方の御意見等でも、どうもこの答申とは結論が違うみたいなことになっておりますが、今後詰めるということですから、いまの段階で具体的なお答えをいただくのは大変むずかしいかと思うのですけれども、これは実際実施する場合に混乱等は起こらないでしょうな。どうですか。
  159. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、臨調のいわゆる総論部分と申しますか、いわゆる国と地方との関係、行革の中における国と地方との関係の理念、こういうものとの関連で具体的な結論がどういうことでこういう結論になったのか、どうもつまびらかでないわけでありますが、この答申をいろいろ読んでみました場合に、今後問題を解決してまいります場合には三つほど大きな問題があるのではないかと考えております。  一つは、答申が具体的に書いております事務配分につきましても、一応例示としてこういうものは地方へ残す、あるいはそれ以外は国というふうな例示をしておるわけでありますが、その例示をもとにしながら、さらに具体的、個別的に今後臨調答申の理念に沿って詰めていく作業が一つあろうと思います。  それから二つ目は、そういう事務配分の作業をいたします過程におきまして、結局従来長年の間、地方事務官の仕事が地方の仕事として定着をしてまいった経緯もありますので、現在では地方団体の総合行政の中の一つの重要な一環になっておるわけでありまして、これがほとんど国の方に事務が移るということになりました場合に、県の総合行政との関連が一体どういうことになるのか。つまり国と地方との相互協力であるとか調整であるとか、そういうシステムをどういうふうに考えていけばいいのかという問題。  それから三番目は、職員の身分取り扱いの問題、これが一番むずかしい問題であろうと思います。答申におきましてもできるだけ職員の希望を尊重して反映して行うようにと、こういう注文もついております。二万一千人ほどの地方事務官におきましても、それぞれに希望もあり意見もあろうかと思います。こういった経過をたどる必要があるのが三つ目。  この大きな三つの問題を、今後具体的に進めていきます場合に、いろいろ関係方面の御意見を聞いてまいらぬといかぬだろうなという気がいたしております。
  160. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、いろいろ心配される問題があるのですが、いま御説明の中にあったこの地方事務官二万一千人余りですね。これ五十七年度が純減二か、それでまた労働省関係の職安関係で四百八十二カ所の一万三千百二人か、これを入れると、実際の数字は三万幾らになるのか、まあ数の方はいいですが、これらの在籍する地方事務官、厚生省あるいは労働省、運輸省関係で、全運輸へほとんど運輸省関係は入っていますが、労働省関係だと七五%が全労働省関係の労組で、あとは自治体労組関係に二五%前後入っている。厚生省関係の場合は八〇%近くが自治体労組関係にも籍を置いて、これは二重登録になっている方々もあるのでしょうが、この身分の問題を具体的に扱う場合に、これは本人たち意思によってそれぞれの労組へ登録していらっしゃるのでしょうけれども、こんな問題の整理なんかも絡んでくるのだし、いろいろそういう点で人事上の問題でむずかしいことが起こりはしないかという心配をしているので、先ほど混乱はないか、心配ないかと聞いたのですが、その辺はどうですか。
  161. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) そういった身分の切りかえに伴います職員の希望をいろいろ考慮してやるということになりますと、対応はかなりむずかしいであろうと思います。
  162. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、これを実際事務的に進めていく場合に非常にむずかしい問題があることはいままでの御報告と説明でよくわかったのですが、現実問題としてこれら二万一千数百人の方々のそれぞれの胸のうちというか、これ希望があると思うのですね。国家公務員、現状のままでよろしいとか、あるいは地方公務員になりたかったとか、給与ベースその他の問題でもいろいろ損得がありますので、そういう点から考えますと、この問題は基本的には答申の方向で処置をするとしても、これら事務官の方々の要望等については御調査をなさいますか、どうしますか。問答無用でやりますか。
  163. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) いま大川委員のお尋ねでございますが、そういうふうにするということがまだ入り口でやっておるわけなんで、家の中に入って話がだんだん進んでいくというまだ段階ではありませんので、はなはだ恐縮ながら自治省としましてもさような問題まで検討はまだしていない、こういう段階だということで御承知おきを願いたいと思います。
  164. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは、くどいようですが、この制度自体は廃止の方向、私もそれでよろしかろうと思っているのですよ。で、答申は事務の大半は国の方へ帰属されるというか、吸い上げるというか、そして一部を除いて国家公務員に全部するということに答申はなっていますよね。だから、その方向で整備し、措置せざるを得ないのでしょう。このことは間違いないのでしょう。
  165. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) いま申し上げたように、そこのところがまだ入り口で、これからいろいろ検討をしなければならぬことがあろうと、こう思っておるわけでして、いまのお尋ねはそれを一歩踏み込んで、そう答申どおりになるという前提でいまお尋ねをいただいておるわけですから、そこまではまだ私の方も踏み込んで検討はやっていないものですから、なかなかお答えがしにくい、まだいまはその段階でありますと、こういうことを申し上げておるわけです。
  166. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうすると、政府としては臨調答申を受けてそういう方向が示されていますね。示唆されていますね。政府としてはその方向でやるかやらないか、意思決定はこれからするという意味に受け取っていいのですか。どうなんですか。
  167. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 答申は一応答申としていただいて、政府はこの答申は最大限に尊重してやりますということで、そういう大前提でやっていることには間違いないわけです。その大前提の中で、具体的にどうして、どういうふうにやるかということについてまだ詰めが行われておりませんので、具体的にここでお答えするだけのまだ用意がない、こういうことでございます。
  168. 大川清幸

    ○大川清幸君 答申の方向で制度自体は廃止、それから一部を除いて国家公務員化することについても基本的には出ておって、その基本的なマクロの部分についても検討してから態度を決めるという受け取り方でいいのですね。
  169. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) いま申し上げるように、同じことを繰り返すわけですけれども、答申は尊重をしなければならぬ、それは政府はそういう態度でやっておるのですから、その中でいろいろ詰めをして、具体的にどういうふうにやるかということはまだこれからでございます、少し気の長い検討をさしていただきたい、こういうふうに思っているわけです。
  170. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは、雲をつかむような話なんですけれども、念のため聞いておきますが、答申がはっきりしておりますので、その方向で所見を伺っておきたいと思うのですが、自治省、労働省、厚生省、運輸省、それぞれ関係の省庁ですが、大部分の職員を地方公務員として吸収するというか、そういう形でいくという答申については、これは大臣が決まっていないと言うから答弁はできないのか、どうなりますか。大体その方向で関係各省庁いらっしゃるのか、それともまた、国家公務員とすることでメリットはどんな点があるのか、御説明願えればお願いしたい。どうですか。自治省、労働省、厚生省、運輸省と申し上げましたから、その順序で答えていただいても結構ですけれども
  171. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 自治省はどう思うかとお尋ねになりますれば、私どもは国家公務員とすることにメリットがあるというふうなお答えは遠慮さしていただきたいと思うわけであります。
  172. 北郷勲夫

    説明員(北郷勲夫君) この問題は、自治大臣がお答えになりましたように、非常に経過のある問題でございますが、臨調での考え方を推測いたしますと、私のところの社会保険事業というのは国の一つの経営でございますので、保険料を全国一本で集めまして、給付も全国一本で財政収支を図る、こういう性格の事業でございますので、たとえば県ごとに保険料を変えるというふうなことのできない事業でございます。こういった事業の性格から考えまして、国の事業というように割り切られたのではないかというふうに思っておるわけ でございます。  メリットというお尋ねでございますが、率直に申しまして、いわばよく言われております変則的な制度だと、こう言われておるわけでございまして、身分は国、業務上の指揮監督権は県、こんなようなことで、いわば変則的だと言われておりましたものが解決するというようなことがもちろん最大のメリットだと思うわけでございますが、そのほかに私どもの事業運営上から申しますと、国による一種の経営でございますので、こういった一元的な事務処理体制というのがより明確になるというような点はもちろんあるわけでございます。
  173. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) 先生御指摘のように、これは三十数年来の大問題でございまして、過去にいろいろな議論があったわけでございます。労働省の職業安定行政につきましては職業紹介と雇用保険の業務が中心でございますが、職業紹介業務につきましては全国的、広域的な視野に立って行われなければならないという観点、それから、雇用保険事業につきましても国が一元的な体制のもとに、その管理運営に当たる必要があるというふうな考え方から、臨調におかれましてはこの行政の性格、実態を勘案の上、出された結論であるというふうに考えております。私たちの役所におきましても、これによって行政の円滑な運営はさらに確保されることができるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  174. 野尻豊

    説明員(野尻豊君) 臨調の答申によりますと、車検登録関係事務、それから輸送関係事務については運輸省において処理するということ、それから陸運事務所は運輸省の地方支分部局とし、当該事務に従事する職員は運輸事務官とする、こうなっております。  このうちの車検登録事務については、先生御案内のように、関係省庁の御了解を得ましてすでに道路運送車両法等の一部を改正する法律案という形で国会で御審議をいただいているところでございます。それから、輸送関係の事務でありますが、これにつきましては総合交通政策の観点、あるいは輸送行政と保安行政との一体性の問題とか、あるいは自動車の広域的活動とかいったようないろいろな観点から見まして、臨調答申のとおり運輸省において一元的に処理するのが一番望ましいのではないだろうかというように考えております。  それから、先ほど先生の方で身分のお話もありましたけれども、陸運関係の地方事務官、約三千名近くおりますけれども、これは先生御案内のように、陸運事務所は都道府県の庁舎とは違いますし、また人事権、予算も国の責任において処理する、しかも私どもの職員は管理職を除きまして全部全運輸に加盟しているということで、身分関係もはっきりしておりまして、公務員宿舎に入っており、また国家公務員共済組合に加入しているというようなこともありまして、したがって、地方事務官を運輸事務官にするということによりまして、職務上の指揮監督は都道府県から受け人事上の監督は国から受けるといったような変則的な事態が解消されるということになりますので、望ましいことではないだろうかというように考えております。
  175. 大川清幸

    ○大川清幸君 これはいずれ具体化してくると党の態度も決めなければならないから、私どもの方も立場をはっきりした上での御質問はちょっときょうは差し控えておくのですけれども、廃止をするという方向で考えますと、運輸省さんの方は確かに車検なんか場所もちゃんと別ですから、その辺の問題は余りないのじゃないかという感じが私もいたしますけれども、年金関係ですとか職業安定、まあ職業安定所はあれは別かな。それから雇用保険等、これらの問題については都道府県の中に事務所を借りているというか、設置しているというようなところが実情としてあるでしょう。これは廃止の方向で言うと、これらはまた別に施設をするとか、対応はそういうことになるのですか。予想の御答弁しかいただけないと思うのですが、これは具体的にはどうなりますか。
  176. 北郷勲夫

    説明員(北郷勲夫君) 厚生省関係の社会保険庁関係のことで申しますと、現在組織が県の組織に入っておるわけでございまして、県の民生部系統の中に保険課でございますとか国民年金課、こういう二課が大体あるわけでございまして、したがいまして県の組織でございますので、これは県庁の内部にありますのと、それから社会保険事務所、これは各県大体平均しますと五つぐらいございますが、これは社会保険事務所の方はいわば国の施設、国のお金でつくった国の財産みたいなものでございますが、ただ県庁の中の本課の保険課、国民年金課は、県の方でお世話になっておるわけでございまして、これが県の組織から外れますと、おっしゃいますように、ほかに事務所を求めなければならないということになるわけでございます。
  177. 大川清幸

    ○大川清幸君 ですから、答申の趣旨もわかるし、これ廃止することは結構なんだけれども、何か逆に金がかかるような面も出てくるので、百点満点にいかないことは私も了解しますけれども、これから慎重にこれらのことも含めて各省庁関係の分は検討するという意味に受け取っておいて、大臣、よろしいのですね。
  178. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) いま三省からそれぞれ御意見がありまして、やや政府の中でも部内でも意見の調整をしなければならぬということが浮き彫りされたわけでして、これは今後の政府として全体の課題として検討をしていく、こういうことでございます。
  179. 大川清幸

    ○大川清幸君 それから、念のためお伺いをしておきますが、三省庁とも事務そのものについては広域的な視野とか全国的な視野とか、事務の一元化の観点からメリットがあるような御説明を受けました。部分的には私もそれは了解いたします。しかし、実際に義務教育その他でもかなり全国ある程度のレベルをそろえて教育をしたり、その他の事務でもいろいろありますよ。けれども、実際には教職員なんか身分ははっきり地方公務員ですし、ですから、全国統一する事務のことは今日のようにコンピューターその他が発達すれば余り技術的に問題はないのであって、身分の問題とはこれは別に考えてもよろしいのじゃないかという感じもするのですが、メリットの方もわかりますが、いまの人事その他ではデメリットもあるような感じもいたしますので、その辺はどんなふうに関係省庁はお考えになっていますか。どうですか。
  180. 北郷勲夫

    説明員(北郷勲夫君) メリットとおっしゃいましたので、そういうふうに申し上げたのでございますが、行政局長からお答えがございましたように、長年にわたってやってきたことを変えるわけでございますから、それはいろいろ慎重にやりませんと確かにデメリットも出るおそれもございますので、大臣や行政局長からお話もありますように、よく御相談して慎重に進めなければやっぱり混乱が出るというふうに思っております。
  181. 大川清幸

    ○大川清幸君 いままでのやりとりの経過で、これから慎重に関係省庁あるいは地方公共団体の関係の部署ともいろいろ意見交換をやったり慎重にやらなければならないこと私もよくわかります。ですが、答申が出てからそのとおりやれとか、私はそういうことを言っているのじゃないのですよ。そうかといって、またこれ身分の問題でも御承知のとおり二通りいままで意見がありましたからね。国家公務員にすべきだというのと、事務は定着しているのだ、職員は地方事務官にしちゃえという二通りの意見があるわけです。  それぞれにやっぱりそれなりの筋論なり根拠はあるわけなんで、この点はさっき申し上げたように、たとえば保険課の問題なんか考えると別に金がかかったりする面もあるので、財政の厳しいときだし、それから行政事務をどう処理していくかという体制づくりの面でもやはり効果のある方がいいし、やりいい方がいいし、混乱の起こらぬ方がいいし、金のかからぬ方がいいのですから、それらもよく含んだ上で検討していただくということでよろしいですね。大臣どうですか。
  182. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) これは何せ終戦直後から三十数年間これで、「当分の間」というのが三十何年間も続いたということなんですから、やはりいろいろそれは問題点はあるけれども、地方公共団体としてもそれなりの実績を持ってきたと思うのですね。しかし、そういう暫定的な制度だということでございますから、何らかのこの際決着をつける、ややそれは変則的な形であったことは間違いないのですから、それの決着をつけるということになると思うのです。そこで、臨調がこういう答申をお出しになったそのお気持ちというのは、私どもややこの答申には戸惑っているわけなんで、その辺のところもひとつよく検討をしたい。  それから、いま社会保険事務所のお話が出ましたが、これはやはり県庁の外に統括社会保険事務所というものをつくる、それから労働省関係は地方に労働局というものをおつくりになる、それでなければ、これは処理はできないということのようになると思うのですね。そういうこともありますので、相当の変革になる、それだけにこの問題はひとつ政府部内で慎重に協議をしていきたい、こう思っておるところです。
  183. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、地方事務官制度の廃止、これ基本的には先ほどから繰り返して申し上げているとおりで、廃止の方向で処置をしていただく方がよろしいのだと思っているのですが、特殊法人などの財政負担を軽くしたいというような基本的な考え方が重点になっているせいかどうかわかりませんけれども、関係の経費の負担を地方へ押しつけようというか、転嫁しようというか、そんな方向でいろいろな検討がなされるという、そればかりでも私ども困ると思っておりますので、「地域振興整備公団の地方都市開発整備等業務及び中核的工業団地造成事業については、今後、」云々というふうにこの答申の中にも出ておりますし、「また、資金調達の方法についても、民間資金の活用の方途を講ずるとともに、地元の地方公共団体による適切な負担の導入を図る。」云々と、こうなっています。この点がどうもやはり地方の方へ負担がかかってくるのじゃないかという心配があるのですが、この心配はあるのですか、ないのですか。どうでしょうか。
  184. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) ただいまの先生の御指摘の個所でございますが、答申では地域整備公団の地方都市開発整備業務あるいは中核的工業団地の造成事業について述べているくだりなんですけれども、「地元の地方公共団体による適切な負担の導入を図る。」と、こういう表現でありまして、具体的にどういう事業に関連してどういうふうな負担を考えているのかわからないのであります。  結局、地域整備公団が行う事業の内容によりまして、本来地方公共団体が自分で行わなければならない、また通常の補助事業あるいは単独事業として行うようなものを整備公団が行うことに関連して、つまり通常の負担を求めるというのであれば、これはまた通常の制度とのバランスで、しようがないのですけれども、従来地域整備公団がその方針に基づいて行っている事業について、単に整備公団の負担を軽減するという見地で地方に負担を求めるということは、これは筋が通らないと思うのであります。  今回の答申全体に共通して言えることでありますけれども、特殊法人等の合理化を図る上におきまして、それぞれ事業の見直しあるいは運営方法の見直しが行われるべきことは当然でありますが、ただ、それが合理化の名のもとに地方への負担の転嫁ということがあってはならないと思うのであります。御案内のように地方財政も国の財政と同様に大変厳しい状況にありますので、これらの合理化に当たりましては、当然、国、地方を通じて行政改革の理念に合致するような方途が講ぜられるべきものではないか、このように考えております。
  185. 大川清幸

    ○大川清幸君 いまの御答弁で、何を想定したのかわからないというお話があったのですが、これ調査会では、ここまで文章にあらわしたいきさつから言うと、何かこれ具体的な考え方にねらいがあったのじゃないかなというふうな私予想したものですから、それは全くないのですか。
  186. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) このくだりについて、こういった文章が最終的に入っているわけですけれども、この審議の過程において私どもに地方の負担に関連して特に意見を求められたこともございませんし、説明もないのでございます。
  187. 大川清幸

    ○大川清幸君 次に、厚生省さん待っていただいているので、国民健康保険給付費の一部負担の問題等に関係いたしまして、たとえば国民健康保険給付費とか児童扶養手当あるいは特別児童扶養手当等に関する国庫負担を都道府県へ振りかえる問題等で臨調から答申が出ておりますが、これらに関しては政府部内で今年末までに検討を加えて結論を出すというようなことになっているはずですが、これは経緯はどうなっておりますか。
  188. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) 国民健康保険の給付費につきまして、五十七年度予算編成に絡みまして都道府県に一部お持ち願えないだろうかというふうなことを検討されたわけでございますし、臨調でも御議論をいただいて、五十七年度の予算編成に当たりましては、先生御指摘のように政府部内でさらに検討する、こうなっておるわけでございます。それを契機にいたしまして、厚生省の中に国保問題懇談会というふうな、関係者を構成メンバーとします懇談会をつくって検討してきつつあるわけでございますけれども、いろいろな御議論ございまして、なかなか結論を得られる段階にまだ至っておりません。  加えまして、国民健康保険制度といいましても他制度といろいろ絡む問題がございます。たとえば退職者医療制度をどうするかとかいうふうな問題もございまして、この問題に結論を、国民健康保険制度の中だけで結論を出すというのは現段階では非常にむずかしいのではないかと、こういうふうな状況になっておりまして、私どもとしては、国民健康保険制度をそのままにして、都道府県の役割り等も現状のままの中で、給付費の一部を単に財政的な見地から都道府県に御負担願うというのはきわめてむずかしいのではないかというふうな判断に現在では立っております。
  189. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうしますと、現状はわかったのですけれども、これは結論出すのにちょっと時間かかるというふうな受け取り方でいいですか。
  190. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) はい。最終的にはもう少し医療保険制度全体の流れを見ないと、なかなか結論は出せないというふうに考えます。ただ、先ほども申し上げましたけれども、繰り返しになりますが、いろいろな状況考えますと、現在の国民健康保険制度をそのままにして医療費負担を都道府県に御負担願うというのは大変むずかしいというふうには考えております。
  191. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうすると、いまのお話聞いていると、いまの健康保険制度をそのままにしてという前提でお答えになっていますが、そこまで考えて、どこか変更しなければならないということになると大問題ですが、そういう受け取り方でいいのですか。
  192. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) たとえば先ほど言いましたように、被用者保険から高年齢になりますとリタイアされまして国民健康保険に移ってくるというふうな階層の方がかなりおるわけでございますけれども、これから先、高齢化社会の進展に伴いましてそういったふうな方々がますますふえてまいります。そういったふうな方々につきましての費用負担というのは現在のままでいいだろうかというふうな一つ大きな問題がございます。  さらに大きな問題といたしましては、これから先の医療費の問題を社会保障制度全体の中でどういったふうな負担にし、かつ給付にしていくか、非常に大きな問題がございますので、医療保険制度全体が現在のままでこれから先行き推移できるというふうな見通しもございませんし、もう少し基本に立ち返って医療保険制度全体の再編成も含めまして議論が今後されていくのではなかろうかというふうに考えておりますので、そういった流れの中で改めて費用負担というのは議論されるべき問題ではなかろうかと、こう思っております。
  193. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは、国保問題懇談会の報告の内容ですけれども、中間報告、八月と十二月ですか、その中身はどういうことになっておりますか。
  194. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) 最終的には昨年の五十七年十二月二十日に国保問題懇談会のいわば第二次中間報告のようなものが出たわけでございますけれども、その中でも直接例の都道府県の負担問題については触れてございません。いろいろな議論がございますので、継続的に引き続き検討課題にするというふうな立場で直接負担問題については触れた内容になっておりませんで、その他の問題につきまして御報告があるというふうな内容になっております。——中身ちょっと御紹介申し上げたらよろしゅうございましょうか。
  195. 大川清幸

    ○大川清幸君 それじゃ、高額医療費の共同事業を実施する云々というようなことも提言されているのですが、この点はどうですか。
  196. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) いろいろな各分野に及んでおるわけでございますけれども、より具体的な懇談会の御報告として御提案いただいておるものが、先生いま御指摘いただきました高額医療費につきましての共同事業というものをやりなさいというふうな御提言がございます。  これはその趣旨は、医療費が大分高くなっておりまして、しかも国民健康保険の保険者といいますのは各市町村にお願いしているわけでございますけれども、規模も小さいものは数百人という町村もございますので、高い医療費の高額医療が出ますと保険財政全体が非常に不安定になるというふうな状況が頻々に最近出てきておりますので、そういったふうなことにつきまして、これを解消するといいましょうか、少しでも緩和し円滑な運営をするようにということで、都道府県単位に、ひとつ各市町村が共同して高額な医療費については県単位で共同負担をしてみたらどうかというふうな御提言になっておるわけでございます。
  197. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、それはそれとして、都道府県への負担の問題ですが、心配するのは、先ほどお話があったように基本的な問題まで含めて検討しないと単純には地方へ負担は肩がわりさせられないという御議論ですが、これ厚生省として保険制度そのものと、それから地方と国の分担の部分をどうするかということは、基本的なところまで掘り下げた上で、制度改革をやった上で臨みたいという意味に受け取っていいのですね。
  198. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) 全体の医療保険制度をどうするかということにつきましての厚生省としての一つの方針というのは、まだ特に固まったわけではございません。ただ、国民健康保険というふうなサイドからしますと、現在の制度のままでは先生御心配のような都道府県に費用の一部を負担してもらうというふうな仕組みにすることは非常にむずかしいし、必ずしも適当だとは言えないのじゃないかというふうに現在の段階では考えておるというふうにお受け取り願いたいと思います。
  199. 大川清幸

    ○大川清幸君 じゃ、基本的な問題はちょっと横へ置いておいて、この保険問題懇談会の報告がなされたことについて、五十八年度でその報告の中から何か実現したか、あるいは取り入れたものありますか。
  200. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) 懇談会の御報告の中身は共同事業のほかに数点ございまして、特に強調されておりますのは医療費の適正化といいましょうか、医療費が毎年非常に大変増高しておりますので、この辺をある程度セーブしていかないと、将来の医療保険全体、特に財政力の弱い国民健康保険につきまして運営が大変むずかしくなるというふうな現状を踏まえまして、医療費の適正化ということを特に強調されておるわけでございます。  こういったふうな点につきましては厚生省の中に国民医療費適正化総合対策推進本部というものを設置いたしまして、いろいろな角度から医療費の適正化、さらに端的に言えば節約といいましょうか、できるだけ大切な保険料でやる保険だから節約しようということで、いろいろな方面からこまごまとした対策の、総合的な対策でございますけれども、こういったふうな点を現在できるものから手を打ちつつあるというふうな現状でございます。
  201. 大川清幸

    ○大川清幸君 それで、厚生省としては高額医療費共同事業モデル案というものをおつくりになっているようですが、これの概要をちょっと御説明願えますか。
  202. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) 高額医療費の共同事業モデル案というのを、現在案の段階でございますが、私どもの方でお示ししておりますが、その要点を御説明申し上げます。  性格的には各都道府県下の保険者である市町村の自主的な共同事業ということでございますので、特段法的な意味での強制力はございません。目的といたしましては、やはり先ほど申し上げましたように高額な医療費、数百万という医療費も頻々と出るような現状でございますので、そういったふうな高額な医療費が出ますと、特に小規模の保険者、数百人から数千人オーダーの町村になりますと非常に財政が不安定になる、それを県下の全体の共同事業によってならしていきましょうというふうな目的でございます。実施主体は、各市町村の共同事業でございますので、各都道府県にございます市町村の連合体、国民健康保険団体連合会と、こういいますけれども、そこを実施の母体にしたらどうかと思っております。  それから、共同事業の対象にする高額医療費の基準でございますけれども、私どもとしては大体医療費で百万円以上の分を共同で負担するような形にしたらどうかと思っております。そのための必要な拠出金というものを事前に各市町村から医療費の実績に基づきまして出していただきまして、高額な百万円以上の医療費が出たときに、その経費の一定割合を各市町村に戻していくといいましょうか、というふうなかっこうの共同事業にしたらどうかというふうに考えておるわけでございます。
  203. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうしますと、この制度自体については私も理解をいたしますが、先ほど基本的な問題として論じた地方への負担の肩がわり等とは全く別の問題だという解釈でよろしいですね。
  204. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) これは全く先生御指摘のように本質的に全然違うものでございまして、あくまでも高額な医療費が出たときの、特に小規模な市町村の財政の安定化をするための市町村間の自主的な一つの事業であるというふうに考えております。
  205. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間がなくなっちゃったのですが、老婆心ながら聞いておきますけれども、五十九年度の予算というのは、これ厚生省関係で、国全体で大変なんですよね。予算編成がちゃんとできるのかどうかと私も心配しているぐらいなんですけれども、どうせ予算編成の時期、概算要求の時期になると、いろいろまた迫られて要求もしなければならないのだろうと思うのですけれども、その段階でどうですか。地方への負担を今度はちょっと、さっきの基本的な問題も含めて検討しなければならないという、それをちょっと横に置いておいて、お願いしなければならないということになりませんか。大丈夫ですか。
  206. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) もともと五十九年度の政府予算の編成といいますのは、どういう形で行われるかということがまだ未定だと思っております。確かに先生御指摘のように、仮にゼロシーリングとかマイナスシーリングということになりますと、社会保障経費につきましては非常に大変な事態に立ち至るというふうには考えられますけれども、現在の段階で五十九年度予算について、政府全体の枠といいましょうか、方針が固まってない段階で、国民健康保険の予算の中身につきまして、県負担あるなしということをいまの段階で御議論するのは、私としてはちょっと無理でございますし、発言を差し控えたいと思っております。
  207. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間が来ましたが、それじゃ、もう一つ児童扶養手当等の問題、これもやっぱり同じように概算要求の段階では私はちょっと心配をしているのです。この点はどうですか。やっぱり返事むずかしいかな。
  208. 阿部正俊

    説明員(阿部正俊君) 直接私の仕事じゃございませんのであれですけれども、私いま国民健康保険について申し上げたような、同じようなふうに考えられるべき問題ではないかというふうに思っております。
  209. 大川清幸

    ○大川清幸君 じゃ、厚生省どうもありがとうございました。  最後に、この間大臣もお聞きになっていたと思うのですが、例の工業再配置の問題で、何か通産省の方でもちょっと基本的に私に対する回答に沿った線で検討なさったようでございます。現実の問題としては地方公共団体にいろいろ財政的な問題でも負担がかかってきたりしておりますので、通産省の方で最終的にはどのようなことにして、あれを見直してくれるのかわかりませんが、地方公共団体も絡んでいることですから、これには対応していただく用意あるでしょうね。どうでしょう。。
  210. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 先日の予算委員会で、大変私どももあの御質問は拝聴したわけで、地方公共団体としても、あれは大変な問題だと私も認識するわけです。しかし何といっても通産省がまず動いてくれなければわれわれの方もやれない。そこで、通産省がお話のように積極的に調査して、テクノポリス問題も起こってきましたから、テクノポリスもあれを私は活用するのだろうと思うのです。そういう活用方法を今後とも通産省がまず先頭を切って考えてもらい、われわれの方もひとつぜひ、地方財政の立場から言っても非常に困ることでございますから、協力をしていきたいと思っております。
  211. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間来ましたから、以上です。
  212. 神谷信之助

    神谷信之助君 前回、当委員会で警察関係の汚職、腐敗問題を取り上げましたが、そのときに捜査中ということで詳しく御報告いただけなかった兵庫県警の特ににせ調書作成をめぐる問題について、一応の整理ができておるようでございますので、まず事件の概要と、それから処分の内容について報告をしてもらいたい、こう思います。    〔委員長退席、理事松浦功君着席〕
  213. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 昨年の十一月に発覚いたしました兵庫県警察におきます遊技機賭博の取り締まりをめぐる汚職事案に関連いたしまして、警察関係者一名、関係業者二名を逮捕送致するとともに、関係警察官四名についても捜査を終了し、四月十四日、書類送致したところでございます。  また、本件捜査の過程で、ただいまお話がございました風俗関係事犯の捜査に関し捜査協力者の参考人供述調書を作成するに当たり、供述者の住所、職業、氏名、年齢等について虚偽の事実を記載するなどした事案についても捜査を終了し、四月十四日、書類送致をいたしているところでございます。  事案の概要は、尼崎中央警察署関係につきましては、二月二十五日、懲戒免職処分にした上、逮捕いたしました同署保安課保安係長警部補松葉武則、五十六歳が賭博遊技機リース業者等二名から十数回にわたり現金百四十五万円を収受し、また部下の巡査部長四名らに指示して虚偽の参考人供述調書四十五通を作成させ、松葉の部下である四人の巡査部長は松葉を介して賄賂を受け取るなどのほか、松葉の指示により虚偽調書を作成したものであり、四月十四日、諭旨免職処分としていずれも書類送致いたしたものでございます。なお、虚偽調書に加功いたしました巡査一名につきましても、減給処分とし、同日書類送致をいたしております。  尼崎北警察署関係につきましては、同署保安係長、現在篠山署勤務にかわっておりますが、警部補橋口安弘、四十一歳が部下の巡査部長に命じて虚偽の参考人供述調書を作成したものでありまして、四月十四日、諭旨免職処分にして書類送致をいたしております。また、橋口の指示を受けまして虚偽供述調書を作成もしくは加功いたしました同署保安係、巡査部長ら四名につきましても、同日それぞれ停職及び減給処分の上、書類送致をいたしたものでございます。
  214. 神谷信之助

    神谷信之助君 この諭旨免職になった警部補一名、巡査部長四名、計五名ですが、これらはなぜ懲戒免職にならないのですか。
  215. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 諭旨免職になりましたうち、先ほど申し上げましたように尼崎中央警察署関係につきましては巡査部長四名でございますが、これにつきましては事件の中心的な役割りを果たしました警部補につきましてすでに懲戒免職といたしており、その警部補の部下でありましたこれらの者に関しましては、関与した不祥事案について原因、態様、事案の軽重、収受した金額等詳細に把握いたしましたところ、事案は賄賂を収受したり、虚偽調書を作成するといったきわめて悪質なものでありまして、懲戒審査委員会等におきましても当然懲戒免職処分に相当するというような意見もあったようでございますけれども、兵庫県警察本部におきましては、慎重に何日もかけてこの問題を検討し、結果といたしまして、上司の警部補を介して賄賂を受け取り、あるいは命ぜられて調書を作成したことなどの諸事情を勘案いたしまして、諭旨免職処分が相当というふうに判断したという報告を受けておるところでございます。
  216. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは、直接賄賂をもらったのじゃなしに、松葉を介してもらったから、したがって諭旨免職相当、それからもう一つは、命ぜられてにせ調書をつくったので、自分の意思でやったのじゃない、だから諭旨免職だと、こうなんですね。それからもう一つ、北署の方の橋口、これは教えられてやっているのですね。命ぜられたのじゃない。これは自分の意思でやっている。これも諭旨免職でしょう。これはどうしてですか。
  217. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) ただいまお話がございましたように、北署の警部補につきましては自分の意思で、松葉からこういうやり方があるという話を聞いてそれでやったわけでございますけれども、内容につきまして収賄等の問題がなかったというようなことも勘案いたしまして諭旨免職処分ということになったものでございます。
  218. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは私は非常に甘い処分だと思うのですね。中で懲戒免職が当然だという意見もあったようだけれども、長期間審議をして結論は諭旨免職だと。これは警察庁は全然そういう点について相談を受けなくて、県警でも自由にやれるわけですか。
  219. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 今回の事案は、当然事の性質上警察庁の方も事前に相談にあずかっております。しかし、事細かい詳細の問題について各人ごとに詳しく事情を知っているのはやはり県警本部の方でございますので、県警本部の最終的な決定というものを尊重して私どもとしても了承をいたしたという事情があるわけでございます。
  220. 神谷信之助

    神谷信之助君 一般的に言って公務員が賄賂をもらうと、その金額の大小で罪の軽重が違うということではなしに、賄賂をもらうこと自身が悪いのですね。しかも警察官で、にせ調書をつくる、そういう協力、それからさらに賭博リース機の手入れに手心を加える礼としての賄賂をもらっておる。それで、それが仮に松葉を通じてもらったにしても、何回かもらったら、どういう金の趣旨か、金の趣旨というものは全く警察官やもらったところの巡査部長なりが知らないということは言えないだろうと思う。とすれば、やっぱり賄賂をもらったことは事実なんです。それが少額だから、あるいは松葉を通じてもらったのだから、直接ではないのだからということで、それが退職金がつく諭旨免職になるというのは一般国民としてはちょっと納得できないですね、前回にも取り上げました幾つかの問題と同じように。  しかも、それを警察庁が相談も受けておりながら、個々の具体的な内容までわからないということで警察庁の責任を逃れるというのは、私はどうも解せぬですよ。賄賂をもらったのが悪い、にせ調書をつくった者が悪い、悪いことを命令されたからといって黙ってやるやつがあるか、おまえはロボットじゃないのだと、やっぱりはっきりしなければいかぬですよ。そこのところをはっきりしなければ、上が悪いことを命令すれば部下はどんどんやってもしようがない、退職金は少なくとももらえますと、そういう前例をつくっているわけですよ。そこのところが私はどうも納得できないのですが、いかがですか。
  221. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 今度の事案を全体的に見ますと、ただいま先生お話しのような当該行為者、それが悪いことは当然でございますけれども、やはりその上におりました監督者、これらが本来の監督機能、指揮機能というものを十分果たしていない、その責任も非常に大きいのではないかというふうに判断いたしまして、これらの監督責任につきましては従来にないほど非常に重い処分ということで、これは警察庁というか、国家公安委員会が直接権限を持っております地方警務官の分も含めてでございますが、全体的にいわゆる監督責任といいますか、上級幹部の責任というものを非常に重くとったという形で、全体の姿というものを厳正な処分という形でまとめたわけでございます。
  222. 神谷信之助

    神谷信之助君 いや、監督責任を問われるのは当然ですが、ただ、監督責任を問われる中でも私が疑問に思うのは、この松葉がやっている保安係長の直接の上司の保安課長ですよね。保安課長は各署に、まあ中央署もそうだろうし、北署もそうだろうと思うけれども現場は私見ておりませんからわかりませんが、課長室が別にあるわけでもないだろう。大体署の保安課あたりですと、課長と係長皆一緒にいますよ。係長が四十五回にわたって、四十五通の調書ですか、何回やっているか知りませんが、四十五通にわたる調書をつくっているそういう現場を認知してないはずがない。知らないはずはない。これは現認できる立場にある人ですね。あるいは直接指揮監督をしているそういう立場にある人ですから、だから、そういう意味では本部長その他の責任は、本部長としての責任はあるでしょうけれども、もっと厳しく問われなければならないけれども、この人らは減給でしょう。  だから、そういう点で言えば、一回か二回やられて気がつきませんでしたということではなしに、長期間にわたってやられる、しかも、それは北署の橋口に教えられて、橋口もまた部下を使ってやっている、こういう状況ですからね。それぞれの課長さんあたり、あるいは当該の保安行政を担当している者がそれらの問題に長期にわたって気がつかないということ自身が、これもまた腑に落ちないのですが、その点はいかがですか。
  223. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 確かに、尼崎中央警察署の保安課長の黒江警部でございますけれども、これは五十六年二月から五十八年三月まで同署に保安課長として勤務をいたしていたわけでございますが、そういう大部屋の中で一緒に勤務しているところであるにかかわらず、そういう点についての仕事上のチェックあるいは公私にわたる部下の行動把握というのが全くなされていなかったということは非常に重大な責任であるということで、監督責任としては異例とも言える停職十日間の処分に付したものでございます。
  224. 神谷信之助

    神谷信之助君 法務省にお伺いしたいのですけれども、言うたら、にせ調書で検察側の方はペテンにかけられたようなことに結果としてはなってしまっておるわけですね。これは略式裁判ですから、公判廷で証拠を争うというその行為自身が、手続自身が省略されるわけですから、むずかしい面もあるかと思うのですが、片一方はこういうにせ調書四十五通に上る、それから、橋口の方も五十六年三月から五十七年八月までですから、相当長期にわたってやっていたわけなんで、これらというのはやっぱり検察庁では見抜くことはできないものですか。
  225. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) いま当面の問題になっております当該事件につきましては、本年四月十四日に神戸地方検察庁では兵庫県警から事件の送致を受けたばかりでございまして、現在検察庁において事件の捜査をしているところでございます。その実態がすでにもう明らかになっていれば捜査する必要はないわけでございますので、そこのところを検察庁としてその実態関係、事実関係を確実に把握するために、いま検察庁の捜査が行われているわけでございまして、そういう段階で、すでに事実関係がこうだということを前提としてお答えするわけにはちょっといきません。  ですから、わかるかわからないかというのは一般論としてでしかお答えできないわけでございますけれども一般論といたしますと、おおよそ捜査に携わる警察官が、調書をまあ偽造と言えるのだろうと思いますが、虚偽有印公文書作成ということになりますと、そういうふうなことをするという前提で検事が警察からの事件送致記録を見るということは、そういうことは本来あり得べきことではないわけでございますから、そういう目で検事が見るということはないわけでございます。これはもちろん適正に、真正に作成された調書であるということを前提として見るわけでございます。  まず、それが一点でございますし、それから、これは風俗営業関係の事件が多いのだろうと思いますけれども、これらの事件は、恐らく一般的に申しましても、風俗営業違反をしたその被疑者という立場にある人たちは、大部分もう間違いなく犯罪を犯したということで、本人自身が認めている事件が非常に多うございます。そういう事件につきましては、参考人の調書がそれに沿うようなものであるかどうかということを確かめて、疑問があれば検事が捜査するというのが普通でございまして、一々全部警察で捜査してある参考人をもう一度検事が調べるということは例外的なものでございますから、事実上、そういうふうなことがなされることはあり得ないことでございますし、それを検事が見抜くということはなかなか事実上はむずかしいというのが一般的なことであろう、こういうふうに考えております。
  226. 神谷信之助

    神谷信之助君 この事件は風俗営業の事犯ですし、それから被疑者の方も早く罪を認めて、できるだけ罪を軽くしてもらってという意識が働きますから、だから略式裁判を要求するし、こうなってくる。略式裁判でやれば、書類上整っておればそれは検事のところはすっとパスする。だから、そういう盲点をついて松葉らがにせ調書をつくっている感じもするのですが、しかし、この間もちょっと言いましたが、十年前の京都の峰山署の場合は、これは少年を窃盗犯に仕立て上げたまさに悪質な犯罪ですからね。だから、恐らくそれ全部いろいろなやつをいろいろな形でにせ調書をつくって、そして略式でさっさっとやっちゃったということになったのだろうと思いますが、だから、全く起こり得ないことだけれども全く起こらないことではない。しかも私が知っている限りでも、こう出てきているのですからね。だから、こうなると、なぜそういうことをするのか。  それで、警察庁の方の話聞くと、参考人が住所、氏名を明らかにすることを拒む場合は、そのことを本人が言えば、そのことをちゃんと調書につけて、そうしてペンネームで調書を出すということで普通はやっていると、こういうわけでしょう。だから、わざわざそういう偽名、あるいは捺印というか母印、私印までつくり上げるというようなことまでやって、調書をそういうにせのものをつくり上げなければならぬのか、その辺はどういうことなんですか。
  227. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 調書に偽りの事実を記載したということで、偽造調書事件ということで、私ども保安行政を担当する者といたしましては、まことに国民の信頼を損ねるということで遺憾に思っておる事件でありますが、今回、なぜこのようなことが起きたのかということを兵庫県警からの報告を徴してみますると、一つは保安係長であった松葉元警部補の個人的な資質に問題があったのではないかと思っております。  それは御案内のとおり、風俗関係事案の参考人は社会的な体面から自分の品行に関する供述をなかなか話したがらない、極度に避けたがるという傾向がございます。これを説得して供述調書をつくるということになりますと時間がかかる、あるいは説得することができないで供述調書自体の作成ができないというようなことをこの松葉自身は百も承知をしておった、そういった意味では非常に経験豊富な捜査官であった松葉でありますが、ある意味では、やはり自己の力を過信して労を惜しんだ、違法であるにもかかわらず安易な手法として調書の署名等の偽造を行ったというふうに考えられます。  松葉自身供述しておりますのは、本部からも注目をされておる風紀関係のベテランである、したがって、それなりの検挙実績を維持したかったというようなことも言っておりますし、また検挙実績を上げるためには、手続に不備があっても、現実に目の前でたくさんの違反が行われているのだから許されるのではないかという安易な気持ちを持っていたようでございます。また、松葉が協力を得ていた協力者も、当初は単なる喫茶店経営者でさしたる取り締まり対象業者ではなかったにせよ、地元で商売をしている以上、敵をつくりたくないという気持ちがあるのは当然であります。したがって、実名を出すということは困るという強い要望もあって、仮名をあえて黙認をしておったというようなことからだんだんと陥っていったと思われます。  このように、いずれも言いわけとなるわけでありますけれども、目的の前に手段を軽視するという大きな誤りがあったことと、それから先ほど官房長からお答え申し上げましたように、原因の大きな第二番目は、やはり監督機能といいますか、幹部の捜査指揮、指導に問題があったというふうに考えられるわけでありまして、松葉の上司であった保安課長は松葉より捜査経験が少なかった、そういった意味で、経験豊富な松葉を信じて仕事を任せきりにしておったということでありますが、そのことがやはり事件の指揮、掌握ということが不十分であったということであろう、かように考えております。
  228. 神谷信之助

    神谷信之助君 やっぱりそこの中には検挙の実績を落とさないようにという成績主義も出ているようですし、それから、協力をした巡査部長の中には、こういう違法なことをしていいのかどうかという意見も出ていた、批判の声もあった、しかし結局それが上司の命令ということで押しつぶされて、上にはわからないままで、にせ調書づくりが続けられていくということになりますね。  だから、この点では私は警察の職場、何遍もこの問題で言いますが、労働組合もつくらせない、上意下達、命令一下動かせる、指揮命令だけがのさばっているという、そういう状況の中では批判の自由はないし、したがって、悪い者に対して本当に仲間の中で批判ができるような状況にない、民主主義がそこに確立をしていないこと、これは非常に重要な問題だというように思うのですよ。  この点はひとつ考えてもらいたいと思うのが一つと、風俗営業のこういう関係の捜査はそれなりの困難さはわかりますが、しかし競争相手の業者を陥れるためのいろいろなそういう意図も含まれて協力をするし、またお互いに担当する警察官自身も長くなってきますと、そういう持ちつ持たれつの関係になってくるというようなことも今度の事件で出てくるかと思うのです。    〔理事松浦功君退席、委員長着席〕 この辺はひとつやってもらいたいということ。  それから、処分基準ですね。これはやっぱり警察庁自身でもう一遍再検討して、見直しをしてもらうべきだと思うのですね。かけマージャンをやっても懲戒免職にならず諭旨免職、賄賂をもらっても諭旨免職、にせ調書つくっても諭旨免職、それから取り締まり対象の業者と一杯飲んでも、あのときは警視で署の次長でしたね。あの人は減給でしょう。厳重注意であったか、減給くらいなところですよ。だから、そういう何といいますか、癒着をしたり、そういう汚職、腐敗の温床になるような芽はもうぴちっと摘んで、それを乗り越えた者に対してはやっぱり厳罰をもって処するのだということなしに、賄賂、金はもらったのだけれども上司を通じたからしようがないのだと、そんなことならぬですよ、あなた。ぐるみに汚職をするというか、ぐるみに悪いことをするというか、ぐるみだから一番悪いやつらだけ悪いのだと懲戒免にして、けつについていったやつはしようがないわというような、こんな基準というのは私はだれも納得できないと思うのですね。だから、この辺の見直しもやってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  229. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 処分の問題につきましてはいろいろな要素がございまして、ただいま先生からもいろいろお話ございましたけれども、ある意味ではケース・バイ・ケースの要素もあるわけでございます。今回の事案につきましても先ほど申し上げましたような関係者が非常に多うございますので、その中で本当に責任がある者はどこにあるかという点に最大の重点を置いて処分をしたわけでございますけれども、ただいまのお話等も十分頭に置きながら今後とも厳正にこの種の問題に対処してまいりたいというふうに考えております。
  230. 神谷信之助

    神谷信之助君 法務省に聞きますが、これ十四日に送検をされてきて、それで具体的な警察の方は事実を確認して処分をされたわけですけれども、処分をすると同時に送検の手続とられた。検察は検察の立場がありますから、改めて事実関係を捜査するというのはこれは当然のことですね。その中で、その結果、にせ調書事件でそういうにせ調書がつくられていたということが明らかになってくれば、現在まだ係争中のものとかなんとかというのは別として、刑が確定している事案についてはどういう手続をとるということになりますか。
  231. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) これも検察庁としての捜査が終わりませんと何とも言えないところでございまして、と申しますのは、御案内のように、内容虚偽の有印公文書を作成したというそのこと、その事件を検察が調べます場合には、ある問題となっている元警察官がそのにせのものをつくったかどうかというだけを調べるわけでございませんで、その調書の内容と申しますか、その調書の内容にも虚偽があったのかなかったのか、先ほど来ありますように、単なる供述者の氏名だけの問題だったのか、それとも内容まで問題だったのか、それらのことを当然調べて、それから被疑者となっております元警察官の供述が正しいかどうかということを裏づけるいろいろな人の参考人の調書なり、また客観的な事実をも全部調べ上げませんと、いわゆる調書偽造事件の捜査が終わったということにはならないわけでございます。  そういう捜査を行いますれば、当然その確定している事件が間違って確定されているのか、あるいは間違いなくて確定されているのか、その問題の調書がなかった場合でも、これはほかの証拠で有罪になった事件か、あるいはこの調書が決め手であったのか、それらのことまで当然に捜査の結果判明してくるわけでございまして、それらを踏まえた上で、それぞれの事件に応じた措置をとることにならざるを得ない、こういう段階でございまするから、いまの段階でどういうふうにするかということはちょっとお答えしにくいところでございます。
  232. 神谷信之助

    神谷信之助君 それから、これはこの捜査に協力をした一人に直接面談をして確めた中身です。これはただ日時が確定できないで不確かな面がありますが、検察庁へ呼ばれて、支部ですか、呼ばれて、検事に調べられて、名前と住所が違っているということを申し述べた、そういう話が出ております。これは捜査をこれからなさるのですから、そのことも踏まえて、仮にそういう事実があるとすれば、そのときに検察側もそういうにせ調書の可能性というのを知り得たことになりますね。しかるべく早く手を打てば、それ以上の事件の拡大はなかったかもしれないということもありますから、これは単なる情報ですから、情報だけを申し上げて、しかるべき措置はお願いしておきたいと思います。  そこで、公安委員長、これ、そういうにせ調書つくられて、今度は改めて送検されて、検察の方は改めてもう一遍捜査をし直して、そしてその問題のにせ調書が事案の中心の、犯罪を証明する中心でなければいいですけれども、もしそうであるとすれば再審もやらなければならないということもあり得る、そういう事態ですね。これは単ににせ調書をつくってやっただけではなしに、片一方ではそういうむだの労力、浪費、それからお金の方もそれで要りますよ。くどいようだけれども、私は、それに対してほんまに退職金千数百万円になるでしょう、もう巡査部長クラスになると長い人ですから。だから、それらの人たちにやっぱり退職金も渡して、ちゃんとせんならぬようなものになるのかどうかということが非常に、これは私だけじゃないと思うのですよ、だれが考えてもおかしい。泥棒に追い銭みたいなものじゃないかと思うのです。だから、この辺は国家公安委員会としてもこれを契機にひとつ考えてもらいたい。  前回もいろいろな事案申し上げましたね。前回は警務局長の方がとにかく部外者あるいは取り締まり対象者とのそういう宴会とか送別会とか、そんなことはもう「厳禁する」というようにこの間答弁されていましたが、そういったことを厳禁してやってもらうと同時に、国家公安委員長としても、国家公安委員会でこの点についての厳しさを処分の面でも、国民にやっぱり仲間内には本当に甘いのじゃないかという、そういう批判を受けないようにやってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  233. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 今度のこの事件は警察部内としてもあり得べからざる事案だったと思うのです。それだけに警察の内部としても、特に保安の立場では深刻に反省をして今後に対処をしていかなければならぬと思います。まことに私は遺憾な事態であったと思います。  いまお話しのように、これは偽造をしたということ、あるいは加工をしたということになっているわけなんで、これは本当に申しわけないことだと思います。ただ実態的に全く作り事であったのかどうか、どうも私は実態的には作り事ではなかった、ただ名前とか住所とかそういうところは隠してくれとか、あるいは実名、実際の住所でないところにしてほしいという参考人の方のお話をまともに受けたという事案も中には私はあったというふうに聞いております。  しかし、ともあれこういうあり得べからざる事案であったと私は思うだけに、今後とも部内はしっかりとひとつ引き締めて、かようなことは繰り返さないようにということで、部内の規律の振粛をひとつ図っていきたいと思っております。
  234. 神谷信之助

    神谷信之助君 最後にもう一つ、ちょっとお伺いしておきます。  この間、いま申し上げましたように、警務局長もそういう宴会なんか「厳禁する」というようにおっしゃいましたが、そういう点について具体的な措置、通達なり指示なり、こういうようなのはおやりになりましたか。
  235. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) これは具体的に通達という形ではまだ出していないと思いますけれども、これから本部長会議その他の機会も間近にございますので、そういうようなところを通じまして、この前お約束いたしましたような点をはっきりと伝達をする、指示をするという考え方でおります。
  236. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、栄転祝いとか転勤のせんべつとか、それからそういう送別の宴とか、とにかくそういう種類のやつで、いわゆるだんだんと染まっていくような麻痺感覚がつくられるようなことは厳にやっぱり慎むようにはっきりしてもらいたいということをお願いしておきたいと思います。それでは警察関係終わります。  次に、第二臨調が第五次答申まで出して、最終答申がこの間出ましたが、それにかかわって、特に地方自治にかかわる問題といいますか、あるいは地方自治のあり方にかかわる問題、こういった問題の基本点についてだけきょうは少し議論したいというように思います。  それで、最終答申の九十五ページ、「第三章 国と地方の関係及び地方行政 一 改革の方向」というところに、国と地方の問題について基本的な理念というものを「基調をなす理念」というものとして、「「選択と負担」の仕組みが明確に位置付けられるべきこと」ということが提起されています。これは一体どういうことなんだろうか、どういう認識でこう提起をされたのか、この辺について自治大臣の御見解を聞きたいと思う。どうも私この意味がよく理解できないのです。お願いしたいと思います。
  237. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 臨調答申の国と地方との関係ということにつきましては、理念としては、地方自治を尊重して、いわゆる「地方への分権化を重視する」、あるいは国と地方とを通ずる行政改革を推進するということ、そういうような方向は理念としては打ち出されておると思っております。  そこで、いまお尋ねの、この「選択と負担」という仕組みのことでございますが、これは私どもは、地方行財政に対する行政改革、そういう場において、厳しい地方財政の現状でもありますから、そういう中で地方自治の発展を図っていく上において「選択と負担」という、そういう観念をひとつ頭に入れて運用をしてほしいということであろうと思うのです。  私どもは、やはり地方自治の進展を図るという意味においては、地方の自主性を尊重するという意味において、地方自治体が、つまりそれぞれの創意でおやりになる、実施されるという、そういう分野をできるだけふやしていくということが一つの筋道であろうと思うのです。そういう意味で賢明なひとつ選択をしてほしい、しかし、そういう選択する場合に、やはりそれぞれの負担を伴うわけでございますから、なるべくその選択の余地は広めていくけれども、しかし、その中でやはり負担ということも考えながらやっていただきたい、こういうことだと思うのです。そこで、その負担が、全く独自のお考えでおやりになる場合は、そういう負担についてはそれぞれの地方公共団体においてお考えをいただくという、そういう場面も出てくるであろう、要するに、なるべく地方自治体のその選択の範囲を広めながらも、しかし、同時に負担についてはできるだけのお考えをいただいて地方自治の進展を図ってほしい、そういう考え方であろうと思うのです。
  238. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は、この「選択と負担」というのはなかなかうまい言葉を見つけ出してきたと、こういうように思います。  これは国といいますか、国家権力がまだ形成をされていない段階、あるいは確立されていない段階、そういうこと、あるいは国がないという状況、国家、国というものを捨象して考える場合には「選択と負担」というのはきわめて簡単です。わかりやすく言うと、西部劇がありますね。西部劇で、あの西部へどんどん行って、新しく自分たちの土地を勝手にどんどんつくっていく。そして秩序を保つために寄り集まってシェリフをつくり、そして必要な金融機関をつくり、そして自治組織をつくっていきます。その場合は、負担についてもそれぞれの分に応じ、それから受益に応じて負担をする。こういう状況がありますね。  だから、地方自治のある面では、何というか、地方自治の概念を行政の内容として考えれば「選択と負担」というそういう言い方できますね。地方自治体自身が住民自身の組織であり、そしてそれをやることはその住民全体の問題であり、住民のために、自分たちのためにやるわけですから、それはわかるのですよ。いまそういう現状じゃないわけでしょう。現状はそうじゃなしに、もう大臣もよく御承知のように、税金は国の方は七割取って自治体の方は三割で、実際にやる仕事は自治体が七割やり国が三割しかやっていない。足らぬ分は交付税とか補助金とか、あるいは起債を認めてやるという、いまは認めてやるですよ。「当分の間」というのがそうなってきているのですから、そうなっているという状況ですから。  だから、そういう国家権力が存在している今日の日本の地方自治制度の中で、この「選択と負担」というのは一体どういうことになるのか。自分たちで広く選択をして、そして選んだものについては自分たちが責任を持ちなさいよというようなことが言えるような、そういう行政システムなり財政システムになっているのかどうかということが私は問題だというように思いますよ。この辺、財政局長どうですか、お詳しいはずだから。
  239. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、地方行政考える場合に、「選択と負担」、一定の行政サービスというものを選択する、それに関連してその地域の住民がその経費を負担していく、これはそういう意味での「選択と負担」という理念は地方自治の見地から正しい考え方であろうと、このように思います。また、今回の臨調答申の中で用いております「選択と負担」は、一定の限定を置いているというか、前提を置いてこれを述べております。  第三次答申、いわゆる基本答申でこのことをかなり詳しく述べているのでありますが、「地方財政の自律機能の強化方策」というところで、一般的な考え方といたしまして「本来、各地方公共団体が国の委任を受け、又は自らの事務として標準的に行うべき行政の範囲があり、そのための所要の財源は、制度的に保障されるべきであるが、」と、こういうような言い方をしまして、それを標準的な行政と考えているように思われるのですが、「それ以外の各地方公共団体の独自性に基づく行政については、基本的には、住民の選択と負担において行われるべきであると考えられる。」、すなわち一定の法令規定その他によって一定のところまでは国が財源的に保障をする、そしてそれ以外の部分、それを超える部分については基本的にはその団体がみずから財源を探して行政を選択するかどうかを決めるべきだと、このように述べております。こういった考え方は現行制度の基本的な前提になっておりますし、それ自身は私は間違いではないと思うのであります。  ただ問題は、その場合に具体的にはどこまでを財源的に保障していくのか、どこまでを標準的な行政と考えるのかということになりますと、これまたいろいろむずかしい問題が出てくるわけであります。特にこの臨調答申で現在の地方交付税の計算の基礎となっておりますところの基準財政需要額において想定されております行政施設水準あるいは行政の規模、これをそのまま標準行政というふうにとっているように受け取れるのですが、この点はやはりちょっと技術的に問題があるのじゃないか。と言いますのは、現在の基準財政需要額というのは、五十八年度もそうでありますけれども、そのときどきの財政状況に応じましていろいろな特例があり、制約が加えられておりますから、これを直ちに標準行政というふうに考えて、それを超えるものはすべて標準行政を超えるものとして「選択と負担」、自分で財源を探してやるべきだ、こういうふうに直ちに結論づけることについては若干問題があるのではないかと、このように考えております。
  240. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、この臨調の答申では「選択と負担」ということを言って、具体的には標準行政以上の行政をやる場合には住民が負担をしなさいよ、それが基本的な考え方ですよと、こう言っているわけですね。ところが、実際はその標準的な行政とは一体何かというと、これはなかなか線が引っ張れない。すると、どういうことになるのですか。  逆に標準的行政というものを国が設定できるのかどうかという問題があるし、国が標準的行政というものを、いまのあなたのおっしゃるように、財政需要額の対象になっている行政水準、これをそのまま標準的行政と言うのには問題があるとおっしゃる。それなら別のいろいろな物差しでつくり上げたものがそれが標準的な行政で、それを超えたものは自分のところでやりなさいということを、いま直ちにいまの国税、地方税の関係、補助金制度の関係、それから起債の承認を必要としている今日の状況、このシステムの中でそういうことが直ちに言えるのかどうか、この辺はどうですか。
  241. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 先ほど御答弁申し上げましたように、現在の交付税算定の基礎となっております基準財政需要額というものを、それをとらえて、それを直ちに標準行政のバロメーターにするということについてはいろいろ技術的な制約もあり、いろいろ問題があると思うのでございます。いずれにいたしましても、現在の地方行政全体について今日の段階で一義的に標準行政がこれだということを決めるのはなかなかむずかしいと思うのであります。  やはりこれは、結局各行政対象ごとに、行政項目ごとに現在の法令規定の仕方あるいは各自治体における行政の実態、こういったものを総合勘案して、もちろん現在の財政環境も前提にしながら、この辺が標準ではないかというものが各行政部門ごとに論議されていくのではないかと思うのです。一律にすべての行政分野についてこれが標準でございますというものを決めるのは非常にむずかしいというふうに思います。
  242. 神谷信之助

    神谷信之助君 むずかしいといって言われてもこれは答申が出ているわけでしょう。だから、これはいずれにしても具体化しなければいかぬと、こうなる。しかし、現実にはこの答申の出る出ないにかかわらず、この方向は進んできているのじゃないですか。というように私は思うのです。  というのは、自治体行政の守備範囲論というのが最近特に言われてきておるでしょう。自治体はやらぬでもいいことまでどんどんやっているじゃないか、だから自治体が実際やらなければならない範囲というのをもっと限定しなさい、こういう議論でずっと出てきていますね。その発想から言えば標準行政以上のやつはおまえら勝手にやったらいいと、こういうことになってきますよ。そしてそれを、標準というやつは国が決めたらいい、こういう発想になってくる。これはもうまさに国の基準を押しつけて自治体の自主性、独立性を損なうもの、それは逆に言うと、財政制度がそのまま、現状のままであればますますそういう状況になってくる。三割自治とか二割自治とか、あるいは一割自治とか言われているのをそのままにしておいて、そしてこれ基準以下、この基準までは財政は国が見ます、それ以上はやめておきなさい、こういうことになるわけですからね。  これはまさにそういう意味では地方自治の侵害だというふうに思うのですけれども、この辺はどう自治省考えですか。
  243. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 標準的な行政水準を全行政分野にわたって一律に決めることはむずかしいと申し上げたわけですが、しかし、現実の行政を進める上で、現実の財源措置を論ずる過程で具体の問題が出てくれば、どこまでこの段階で国として財源的に保障していくべきか、どこまでを地方団体がみずからの努力で対応すべきかということは個別の行政については答えを出していかなければならないと思うのであります。その個々のケースに当たって答えが出てくる問題であろうと思うのです。  ただ、その場合に、やはり標準的なレベル、国として財源保障をするレベルというものは絶対不変ではないと思うのであります。やはり財政環境が厳しくなってくれば、その環境に応じて行政の水準、行政のあり方というのは考えていかざるを得ないと思うのであります。しかしその場合でも、もちろん社会経済情勢のそのときどきの情勢の中でおのずから国民の支持というか要求というか、そういうものはあると思いますけれども、それにしてもかつてのように非常に財源が豊かに伸びてくる時代において想定されたところの行政水準というものと、今日のように非常に財政環境が厳しくなっている環境のもとで考えられる行政水準とが全く同じだということはないという、やはりそこは変わってくることはやむを得ないと思います。  特に行政の具体的な内容を考える場合に、法令規定によりまして行政の内容が具体に細かに決められているものについては、少なくともその法令によって義務づけられた行政を遂行できるように財源的な保障を国としてしていかなければいけない、これはもうはっきりしていると思います。問題は、地方公共団体がその独自の施策として対応する分をどの程度まで財源的に保障していくのかということではないかと思うのです。現在でも、いわゆる法令によって義務づけられた事務以外でも、地方公共団体が独自に対応する余地というのは、対応できるような財源的な手だてというものは現在でも講じられております。  これは一般行政費についても投資的経費についても現在の地方財政計画の策定を通じて一定のところまでは保障されているわけでありますけれども、そのレベルをどう考えていくのか、今後どう考えていくのかということについては、やはり財政環境と切り離して絶対的な水準というものを想定することはむずかしい、このように思います。
  244. 神谷信之助

    神谷信之助君 これはおっしゃるように、絶対的なその基準を想定するというのはむずかしいわけですよね。しかし、そのときどきの経済の状況なり財政の状況を勘案して、前はよかったけれども、いまはもうそんなことはできませんよということになるのだろうかというのが私は問題なんです。それは国の都合でそういうことを考えても、自治体は自治体の都合でその地域の条件に応じて選択をする自由がある。そしてまたそれを保障する、その財源をどう使うかということは、自由に配分される問題について保障されなければならない。  具体的に言うと、たとえばいま問題になっている、今度老人保健法で七十歳以上の老人に対する医療費の無料化をやれば、財政調整交付金ですか、これを富裕団体と認めて交付をしない、こういうことになっていますね。自治体がそういうことをやるのは法律違反ではないのだ、しかし、そういう団体は財政的余力があるとみなして交付金は配りませんよと、こう言って、この間の予算委員会でも答弁されています。  これはおかしな話なんで、大体初めから国の制度ではお年寄りの医療費無料化の制度というのはなかったのですからね。われわれ自治体の方でそういう要求に基づき検討して、そうしてその中から財源をひねり出して、苦労して市町村にも協力を求めて、あちこちの府県で実施をされるという状況が始まった。国の方もほっておけぬということになってそういう制度をやった。それにこたえて、さらに自治体は七十から下の六十五とか六十八以上とかいうのを苦労しながらやりくりをしてやっています。そうしたら、今度は頭越しに老人保健法つくって、それはいかぬのだ、困りますとして、やるならおまえのところは金はやらぬぞと、こういう言うなれば財政的脅迫を行っているわけですよ。  そして、それが実際にそういうことを恐れないでやっている自治体の数というのはいまは非常に少なくなりました。なぜかというと、片一方では自治体の方はどんどん当然もらうべき交付金を借金に肩がわりされたり、減収補てん債で皆借金です。借金がどんどんふえて公債費支出はふえてくる。だから、自己財源というのはうんと少なくなっていくわけですね。地方税源なり交付税財源というのは非常に少ないわけ。だから、それだけのものを賄うには、なかなかやりくりがつかぬような状況で、財政調整交付金をもらえなければできなくなってくる。  しかも、人事院勧告の完全凍結の問題でもそうですよ。そうしたら起債で抑えるぞとか、制裁ではありませんが御遠慮いただくとかいうような言い方で、実際にはやろうとすれば自分たちで勝手にやりなさい、こうなる。だから、それが借金に次ぐ借金で、やれない状況になっているでしょう。借金は自治体の責任で借金しているのじゃなしに、われわれから言わしたら、国の政治的、経済的な失政の中から生まれてきているわけですから、だから、そういうことで、実際上は自治体がその住民の要求に応じて、いろいろなことを工夫して、仮に現在のシステムの中でもやろうとしてもできない仕組みになっています。  各自治体ごとにいまの地方債、全部あれ地方債はほとんど自分のところの責任で事業債で持っているやつもありますよ。だがしかし、交付税の肩がわりやら減収補てん債の肩がわりやら、そういう種類の分で言えば相当なものになるので、だからそれらの分が仮に借金でなければ、それは自主財源というのは比較的現状よりはもっと自由になる。それはそうすれば政策の選択の幅というのはもっと広くなるのですよ。地方自治を具体的に権利を行使することができる、そういう条件にあるのだけれども現実にはそうじゃなしに、借金づけにして、そうして片一方ではそういう財政的な締めつけ、報復措置をする。  これでは私は、そういうためにこの「選択と負担」という、こういう言葉が使われれば、これは地方自治の本旨をあらわす言葉ではなしに、地方自治を破壊するスローガンになってくるというように私は思うのですが、この辺はいかがですか。
  245. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 「選択と負担」という、その具体的な物差しを当てはめる前提として、標準的な行政については国の責任で財源的な保障を行う、それを超える分については「選択と負担」で、いわば自前でやりなさい、こういう考え方に臨調答申の基本的な考え方は立っていると思うのですが、その場合、御指摘のように、標準的な行政の内容というものが地方行政の現状を無視して著しくこれを厳しく抑えてしまうということになる、そうして、それを超える分は自前で自分で財源を探してきなさい、こういうことになりますと、地方行政の選択の幅というのは著しく狭められてしまう、自治は後退してしまう、こういうおそれがあると思うのです。  したがいまして、私どもは御案内のように、現在具体的な標準的行政といいましょうか、今日の地方行政において最小限度これだけは必要であると考えられる歳出水準につきましては、地方財政計画の積算を通じて具体的な金額としてこれを示し、それに対して現行制度のもとで見込み得る地方税収入あるいは地方交付税収入その他の収入を積算して、いわば標準計算の上に立って見込まれる財源不足額について今回地方交付税法の改正法案等を通じていろいろ御審議をお願いしておりますが、地方公共団体が少なくとも地方財政計画上想定された行政水準は維持できるように財源の保障を行っている、政府として最大限の努力をしているわけであります。その財源対策の中身が大変残念ながら、現状においては一部は地方債に振りかえざるを得ない、一部は交付税会計の借り入れに依存せざるを得ない。今日の財政環境のもとで、まことにつらい話でありますけれども、こういった措置をとらざるを得なかったわけでありますが、いずれにいたしましても、こういった方法はとりつつも、少なくとも地方財政計画上の歳出、そこに想定された歳出については財源が完全に見合うように必要な措置を講じているわけであります。  そこで問題は、ですからその財政計画を立てる場合の歳出のレベルというものが地方行政の現状に対して著しく抑えられたものになりますと、先生御指摘のような心配が出てくるわけであります。私どもはそうしないように、少なくとも財政苦しくても現在の社会経済情勢のもとで地方公共団体が最小限度住民の負託にこたえるために必要な行政経費というものは積算しているつもりでございます。
  246. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうしますと、現在の行政水準というもの、あるいは地方財政計画で想定をする、あるいは財政的に保障をしている行政水準、これはやっぱり自治省としてはそう高いレベルではない、しかも財政事情が財政事情だから、少なくともこの程度は保障しなければいかぬということで財政計画というものを立てておられるのか。それとも臨調の部会報告見ますと、「高度成長に支えられた豊かな財政事情を背景にして飛躍的に改善され、」「近年相当程度の水準に達した。」、今日の自治体の行政水準というのは相当の高いレベルとみなしているのか。この辺はいかがですか。
  247. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 現在の地方財政計画の歳出において想定しております行政水準というものは、私どもとしては法令規定によって義務づけられた経費は完全にこれを賄い得るような水準、それから単独施策につきましても、少なくとも今日の地方公共団体の実態をも踏まえて、実態をも勘案しながら適正な水準のものを積算している、このように考えております。  じゃ、これが、この水準が理想的なものなのか、あるいは非常に不満足なものなのか、こういうふうなお尋ねですけれども、私どももこの歳出のレベルを考える場合に、やはり国、地方を通ずる財政の現況というものを全く度外視して理想の計算をするわけにいきません。経済の現状というものをも踏まえて積算せざるを得ない。  たとえば地方の単独事業については、過去三年間、国の公共事業はゼロに抑えられたのですけれども、地方の単独事業につきましては七・五、八・〇、八・五というかなり高い伸び率を確保してまいりました。しかし、最近の地方財政の状況、国、地方を通ずる財政環境、あるいは地方における単独事業の実施状況などを勘案して、五十八年度の場合には単独事業についても据え置きにいたしております。これなども地方財政の状況がもっとよければ、地域経済などを考えますと、もっとふやした方が望ましいという見方も当然できると思うのでありますが、地方財政の現況から、これを少なくとも前年同額を確保するにとどめざるを得なかったと、こういう事情はあります。しかし私は、全体としては国、地方を通ずる今日の財政環境のもとでは、少なくとも地方公共団体がこれだけは自分のためにしなければならないという程度のレベルと経費は確保していると、このように考えております。  なお、臨調答申の中で、地方行政の水準というものはかなりのものになっているというような表現があり、それから、地域間の行政水準の格差というものもかなり縮んでいるのじゃないかというような指摘がありますけれども、この辺は見方によっていろいろでしょうけれども、私どもは実感としてはまだまだ地域間にかなりの行政水準の差は存在する、これを縮めるための努力は引き続きしていく必要があるのじゃないかと、こういう認識を持っております。
  248. 神谷信之助

    神谷信之助君 局長も言っておるように、地方財政計画上保障している財源措置というのは、国の法律に基づいている仕事は地方自治体もやれるように財源を保障しましょうと。だから、言うなれば国の基準ですよね。現在の財政経済の状況の中における国の基準は保障します、そうすると、後は言うなれば、ちょっと荒っぽく言えば保有財源率でしたね。これはある程度自由にやりなさいよ、その点での自治体のそれぞれの地域ごとの特殊性なり条件というものはそこで配慮しましょうと。これも当初から見たら五%ずつどっちも減っていますね。前は三〇と二五がいまは二五と二〇でしょう。だから、そういうように逆に言うとこれは減らされてきて、今度またそれも減らせと言わんばかりの答申になってきていますわね。そこに地方自治が逆に言うと財政制度上から言っても狭められている。  だから、いま言っているのは地方財政計画上はずっと保障しているというものは、とにかく国の言っている事業というのは保障しましょう、若干の余裕は、ゆとりは見ていますよ、そこで辛うじて地方自治は財政的にも保障していますよと言うのだけれども、それで、それは高度成長時代はどんどん財源があったからやってもいいけれども、いまは低成長だからそうはいかぬのですよという、そういうようなわけには私はいかぬと思う。逆に言えば、自治体の方こそ住民に直接かかわりがあるわけですからね。低成長時代なればこそ、それぞれの自治体がそれぞれの条件に応じて知恵を働かせ工夫をして、やっぱり住民の生活を保障していく、守っていく、あるいはよけいに地域経済の振興を図っていくというようなことをやらなければいけないということになるわけでしょう。その辺のところが、もう現状は国も財政がどうにもこうにもならぬのだから、地方自治体の方も借金だらけになっているのだから、だから、最低限とにかくいまは保障しましょうということでは、これはだんだん自治体がじり貧に落ち込んでいく、地方自治が破壊されていく道でしかないというように思うのですね。  それで、しかも生活道路の舗装率は東京が七三%、大阪七二%ですけれども全国的に言うと三五・七%、それから公共下水道の普及率も東京九九・八で大阪七一%ですが、県庁所在地と大都市だけを平均しますと三九・一七%、こういうように非常にまだまだ社会資本の充実というやつはおくれているわけですね。だから、地域住民の環境改善の問題もおくれている。しかし、もう財政がどうにもならないからこうだと、こうなっているわけです。  それで問題は、何でそうなっていくかという点は、そのほか補助金の見直し問題もちょっと触れたいのだけれども、きょうは時間がありませんから次の機会にいたしますけれども、非常に何と言うのか、要らぬことを自治体がやり過ぎているという発想が基調にあって、そうして今度の臨調答申というのが出てきているということを強く感ずるのですね。  これは、たとえば具体的に言いますと、去年の暮れ、十二月四日ですけれども、第三部会長の亀井部会長さんに給食の補助打ち切りは困ると言うてお母さん方が陳情に行ったら、朝寝坊をして子供に朝食を食べさせない母親がふえておる、給食はそのかわりになっておるのだというような暴言を吐いているのですね。文部省でも、これ、給食は単に飯を食わすというように考えてない。教育の一環なんですよ。教育の一環として給食事業というものを促進したのだし、それで、いまもそれを指導しているわけでしょう。ただ、それは朝寝坊する母親のための給食をやっているというばかなことがあるかと言って補助金を削る。発想が違うのですよ。住民とのかかわりで補助金を見るのじゃなしに、国の財政が赤字だから、どうやって国民に対する仕事はどんどん打ち切っていくかという、そういうのが露骨に出ている人が部会長になって今度の自治体問題に関する答申が出ています。発想が違うわけです。  いわゆる小さな政府に対して小さい自治体、だから、われわれもむだのない効率的な行政は望みますけれども、しかし、それは国と自治体との関係で見るのじゃなしに、国民の生活と自治体との関係で一体どうなのかということを見なかったら、私は重要な問題だというように思うのですよ。だから、理屈はいろいろあるのですけれども、結局は初めにどえらい借金が国にある、だからその借金の肩がわりを自治体にどうするかというのが自治体との関係の臨調答申の基本である。だから、初めに借金の肩がわりありきと言わざるを得ないというように私は思うのですよ。  ですから、この点は自治省も政府機関の一つですから、国と自治体とのどっちも財政困難で困っておるのに、国に対してそう要求ばかりもできぬじゃないかということになるのか知りませんが、私は、本当に地方自治を守って地方自治の拡充を図る、強化を図るということであれば、そのことをもっと問題にすべきだし、本当に「選択と負担」を無理なしにやるというならば、荒っぽい言い方をすれば、補助金は、あれ、全部国税に入っているやつが自治体に来ているのですから、一たん国税に入って、そして各省から自治体に補助金として来るのだから、だからその分を初めから自治体に地方税財源としてよこしたらどうか、それで地域的アンバランスが当然起こりますが、これは交付税制度で財源調整をする、それで十分財源を与えているというのなら、いわゆる七割の仕事を自治体がやっているのなら、その七割の仕事を自治体にやらすなら、それに必要な財源を全部自治体の財源にしちゃったらいい。何も国に頭を下げてやっていかなければならぬことはない。それで、国が奨励すべきそういういろいろな仕事があれば、それは国の責任で別の形をとればいい。補助金なり何なりをやる。そうして、それぞれの自治体が「選択と負担」を自分たち考えなさいというのならわかりますよ。取るものは全部取っておいて、そして渡すものはちびりちびりしか渡さない。その範囲内で「選択と負担」だというのは、そんなばかな話はないですね。  だから、それではいつまでも親がかりでしょう。乳離れできない自治体、この辺の財政制度の問題にメスを入れなければならぬわけですけれども、そのことを抜きにして、行政事務の再配分の問題も含めてですが、そういうことにメスを入れないで「選択と負担」ということだけが先走りするということは一体どういうことなんだということを私心配するのですが、この辺はいかがですか。
  249. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 先ほどからのお話承っていまして、要するに地方自治を伸ばそうと思うたら、やっぱり財政を充実していかなければだめだ、要するに地方自治体が自由に使える金をふやすというのが私は根本だろうと思うのですよ。  ところが、いま地方税制を考えてみますと、いつもよく言われるように五〇、五〇に国税と地方税の比率をせいと、こういうことで考えてみますと、そうしますと今度は大きな地方公共団体は税収は非常に上がるけれども、小さいところは一つも上がらないという大きなアンバランスができてきますと、そこで、結局交付税のようなやっぱり調整機能を持ったものが要るのだ、しかし交付税は地方団体にいったときは自由に使えるという金になっているから、調整機能を発揮しながら地方の財源を豊かにするということ、一方、やはり地方公共団体も日本の国の中にあることは間違いないのだから、だからやっぱりその中で国全体の中での統一性といいますか、整合性といいますか、そういうことをやはり地方公共団体もやっていただかなければならぬ面も私はあると思うのですよ。だから、財源的にはなるべく自立させていきたい、しかし同時に、一方においては統一性といいますか、統合性あるいは整合性というものも考えていかなければならないという、そういう要求があると思いますね。  そこで、いま先ほど来のお話しのように、地方公共団体にはいまのところ財政需要に対して交付税をやるときは基準財政需要額というものをはじいて、一応標準的な財政需要にこたえられるように考えてやっている。しかし、それは十分ではないよと、また先ほどお話のように、補助金というものも国の方からひもつきでやらないで、もっと自由に使える金でやったらどうだと、私もそういう議論はあると思うのです。たとえば、人件費などというようなものはもうひもつきでやらずにやりなさいとか、あるいは補助金の統一メニュー化とか、そういう一つの動きもあるわけなんで、自由に使えるという財政的なゆとりをなるべく地方公共団体に、全体の整合性というか統一性を保ちながらそういうことをやっていく道はどうしたらいいのかという模索を私どもは今後の目標としてやっていきたい、こう思っておるところでございます。  これは非常にむずかしい課題でありまして、いまおっしゃるように地方自治体の創意工夫というものを尊重しながらやっていきたいわけであります。財政はいま非常に厳しい状態にありますから、私は地方公共団体もこの行政改革の中ではやはり効率性、あるいは現在は単一な、スマートな言うなれば減量していくということも考えながら、その中で住民の福祉を求めていくというむずかしい課題と取り組んでいかなければならぬ、こう思っておるところでございます。
  250. 神谷信之助

    神谷信之助君 やっぱり財政が窮屈になってくると、そこからどうやってむだを省くか、それは当然のことで、むだを省くこと自身は悪いことじゃない。ところが、それを逆に、そのことを逆手にとって、実は国と自治体の関係の問題じゃなしに、自治体と住民との関係でどんどん切り捨てていくというそういう形、これが自治体行政の守備範囲論の発想の根拠になると思うのですけれども、そういう状況でずっと進められてきているのですね。  私はそういう点で逆に発想の転換を考えれば、実際に自治体が七割の仕事をしているならば、税金の割合を地方税七割にしちまえ、国は三割の財源でやってみなさい、そうしたら国がやれることは何ですか。外交、防衛、それから相互間の調整事業ですね。防災その他の事業も含めてですけれども、そういうことになるでしょう。そうすると、その三割の税金、総税額の三割でやると、その中に防衛予算というものは膨大になってまいります。そんなものは必要なのかどうか知りませんが、これははっきり国民の前に議論になるわけです。  皆吸い上げておいて、財布を補給しておいて、中身これだけですよ、わずかですよと言ってごまかしをやっている。いかにも国が全部めんどうを見ているような形をしている。そこに本当に主権者である国民に政治の姿を身近に見分けられない、そういう何というのか、マジックというか、ごまかしというか、そういう仕組みがあるのです。その仕組みの中で地方自治というのは抑えられ、ぐんぐん締められてきているのです。  そこのところを私は根本的に考えないと、いつも三割自治でございます、二割自治でございます、一割自治でございますと地方選挙をやったら言われるわけだけれども、それじゃ、それをちゃんとはっきりしたらどうだ、金を使うところに国民の税金を回すのだ、それを上からおろさなければならぬというところに官僚統制の思想、考え方、発想というものがあるのだ。だから「選択と負担」というと、いかにも自分たちが自由に選んでやれるかのようなそういう幻想を与えるけれども、イメージを与えるけれども、しかし実際はそうじゃない。何にも自由がない。選択する自由がどこにある、またこれ以上負担をせいというのか、要らぬ負担までこれは要求しているじゃないか。  だから、そういう点がはっきりすれば人件費の問題も定員の問題もそれぞれの身近なところの自治体で、自分たちに役に立つ役所の仕組みはどうなのか、人員はどうあるべきなのか、あるいは賃金体系はどうあるべきなのか、これは議論になります。膨大なやつを全国民で、一億一千万で議論しなさい、それはなかなかできるものじゃない。そこにいろいろなペテンやごまかしが生まれてくる。  私はきょう、ほかに国政参加の問題や、少し交付税そのものの問題もやろうと思ったのですけれども、大体予定の時間来ましたから、これに入ると時間がもう足りませんからなんですが、大体原点として、私はシャウプ勧告で、地方公共団体の事務で国家的影響のあると認めるものについても法律により地方公共団体に処理を義務づける事務はなるべく限定し、「地方団体がその活動のいわば限界線において真に自由——活動の際明確に責任を持って前進しようが、また後退しようが自由——であるならば地方自治は現実のものとなり得る」というのがありますね。それを受けて関連報告もそういうなにを出していますけれども、ところが、いまはそうじゃなしに、逆に、国家的影響のあると認めるものだと逆にどんどん広げて、法律によって処理を義務づけていって、また逆にそれだから三割であってもあとの補助金、交付税その他のやつで一応七割の仕事ができるように地方財政計画がうまく書き込まれる。逆にそのかわりここに言っているように、真に自由なそういう地方自治というものが現実化しない、そういう状況になってきていると私は思うのですよ。  だから、この点はこれからもあと補助金問題や交付税問題、それから国政参加問題ですね。こういった問題、機会あるごとに議論していきたいと思いますが、きょうはもう時間がありませんから、これで終わります。
  251. 宮田輝

    委員長宮田輝君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時五十八分散会