運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-05-10 第98回国会 参議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十日(火曜日)     午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二日     辞任         補欠選任      勝又 武一君     穐山  篤君      小谷  守君     丸谷 金保君  五月九日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     宮本 顕治君  五月十日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     近藤 忠孝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         戸塚 進也君     理 事                大河原太一郎君                 中村 太郎君                 増岡 康治君                 塩出 啓典君     委 員                 上田  稔君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 鈴木 省吾君                 塚田十一郎君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 鈴木 和美君                 竹田 四郎君                 桑名 義治君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        行政管理庁長官        官房審議官    古橋源六郎君        大蔵政務次官   遠藤 政夫君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       塚越 則男君        大蔵大臣官房審        議官       岡崎  洋君        大蔵省主計局次        長        窪田  弘君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   宍倉 宗夫君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省証券局長  水野  繁君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        国税庁直税部長  角 晨一郎君        運輸大臣官房審        議官       熊代  健君        労働省職業訓練        局長       北村 孝生君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        大蔵省銀行局保        険部長      猪瀬 節雄君        農林水産省畜産        局競馬監督課長  安橋 隆雄君        郵政省電気通信        政策局監理課長  吉高 廣邦君        労働省労政局労        働法規課長    齋藤 邦彦君        労働省労働基準        局監督課長    野崎 和昭君        日本電信電話公        社職員局次長   大星 公二君        日本電信電話公        社経理局次長   勝屋 俊夫君    参考人        日本銀行総裁  澄田  智君        日本中央競馬会        常務理事     塩田 清隆君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○電源開発促進税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月二日、勝又武一君及び小谷守君が委員辞任され、その補欠として穐山篤君及び丸谷金保君が選任されました。  また、昨九日、近藤忠孝君が委員辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。     ─────────────
  3. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事穐山篤君を指名いたします。     ─────────────
  5. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案の審査のため、本日、参考人として、日本銀行総裁澄田智君及び日本中央競馬会常務理事塩田清隆君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣には昨日来いろいろ御意見を承っておりまして、あるいはきょう若干ダブる部分があるかもしれません、なるべく避けるようにはいたしますけれども、ダブる部分についてはひとつお許しいただきたい、こう思います。五十八年度の予算も成立いたしまして、いよいよ大蔵省は五十九年度の概算要求枠づくりのための検討に入っていると思うのですけれども、それはどんなふうなぐあいでございましょうか。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま竹田委員から御指摘がございましたように、五十九年度財政事情、これはもとよりいまのところは明らかであるわけでもございませんが、財政改革という考え方に立って、まず歳出全般にわたった徹底した見直し抑制を行う、こういう必要があろうかと思っております。それがためには、所管をされます各省庁におかれて、その施策経費全般にわたって厳しい見直し、取捨選択を行っていただく必要があるというふうに考えておるところでございます。  そこで、五十九年度の概算要求限度額、いわゆるシーリソグにつきましても、これは厳しいものとしてまいらなければならぬというふうに考えております。四月四日に本院において予算を通過さしていただきまして、五日の日に私から閣議発言してお願いを申し上げておるところでございます。具体的にはなおしばらく時間もございますので、今後の経済情勢の推移でございますとか、そういうものを見ながら、政府部内において十分検討していかなきゃならぬ問題である。私の閣議発言を受けました後、主計官会議が行われたというところでございますので、なお具体的にはしばらく時間をおかしいただきたいというふうに考えておるところでございます。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 検討中でありますから、必ずしも正確なお答えを私は求めているわけではございませんでして、ある程度傾向的な状況でいいわけでありますけれども、ことしの一月末に出されました中期試算ですか、これによりますと、五十九年度の一般歳出は、すなわち歳出から国債費地方交付税を除いたものでありますが、三十四兆三千億という試算が出ておりますけれども、これは五十八年度より約二兆円程度多くなっているわけでありますが、大体そんな枠でおさまるのでしょうか、どうでしょうか。
  11. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) いま御指摘になりました中期試算をごらんいただきましても、下の税収の方を見ていただきますと、六・六%の増加で三十四兆四千億、五十八年度当初に比べまして二兆一千億の増加でございます。これに対しまして、上の歳出の方でごらんいただきますと、国債費だけで二兆五千億の増加になりますし、地方交付税では一兆三千億の増加に相なっております。現在一月時点での粗っぽい計算でございますから、なお若干の変動はございますが、税収が二兆一千億しかふえないのに対しまして、国債費地方交付税を合わせましても三兆八千億もふえてしまう、こういう状況には大きな変化はなかろうと思います。  でございますから、一般歳出を極力切り詰める必要がございまして、この中期試算一般歳出はいまの傾向を延長しているだけでございますが、そういうことから、さらに厳しく切り詰めていかなければならないと思っております。
  12. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、いまのお話は、国債費地方交付税お話は、この中期試算に基づいて具体的なお話があったんですが、一般歳出については具体的なお話はないわけでありますけれども、大体この中に切り詰めておさめる、無理やりにでもここの中に詰め込んじゃう、出たものは頭をちょん切ると、こういうことでございますか。
  13. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 恐らく、まだ来年のフレームは全くやっておりませんけれども、この中期試算で見込んでいる程度も伸ばし得ないのではなかろうかというふうな感じを持っているわけでございます。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは結局、税収がそれだけ伸びないから、この一般歳出の三十四兆三千億にも達することはできない、それよりももっと圧縮すると、そういう意味でございますか。
  15. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) そういうふうにしていかざるを得ないのではなかろうかという感じをいまの段階で持っているわけでございます。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、社会保障関係費のことについてまず伺いたいと思いますが、五十八年度の予算で見ますと、九兆一千四百億くらいでありますけれども、いままでの制度とか規定とかそういうものを一切手をつけないで、五十八年度のままで計算しますと、これは九兆一千四百億というのはどうなんでしょうか、そのままでやっていけば一兆円ぐらいふえると、こういうふうに一部の報道では伝えられておりますけれども、大体そのように理解してよろしゅうございますか。
  17. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) いまの御指摘社会保障の当然増と思いますが、社会保障の当然増というのは、ほかの債務負担行為歳出化などとはちょっと性質が違っておりまして、いわゆる傾向増でございます。つまり年金受給対象になる人間がどれだけ出てくるかとか、あるいは医療費伸びがどのくらいかというふうな傾向を見込んで計算をするわけでございますが、これはいまの段階ではじきますのと、予算最終段階ではじきますのと、例年かなり違っておりますので、いまの段階でそういう当然増の計算は特にしていないわけでございますが、いずれにしてもかなりの伸びになる。恐らく一兆とかそんな額にはならないと思いますが、相当の額になるのではなかろうかと思われます。  そこで私どもは、仕組みをいまのままにしておきますとそういうことになるので、来年度以降の財政改革においては、仕組みまで分析をしまして、再検討をしていこう、そうしていかざるを得ないのではなかろうかと、こう考えているわけでございます。
  18. 竹田四郎

    竹田四郎君 それからもう一つ大きな問題としては、五十七年度に人事院勧告凍結したわけでありますけれども、五十八年度には当然これは実施をするということに——いままでの鈴木前総理以下の関係閣僚お話でも、五十七年度の凍結というのは、これは特別異例なことであって二度とこんなことはしないと、こういうお話でありますから、当然五十八年度は実施すると、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか、どうですか。
  19. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは去る三月の議長見解におかれましても、「二年続けて凍結事態にならないよう政府最善努力をすること。」という御見解が述べられておりますし、また官房長官発言といたしましては、「人勧問題についても、人事院勧告の持つ重要性を踏まえ、一方、現下の財政状況をも勘案しつつ、二年続けて凍結事態にならないよう最善努力をする所存でございます。」と、こう述べておられます。  そこで、私どももこの趣旨を受けまして、二年続けて凍結というふうなことにならないように最善努力をするという考えではございますが、ただ五十八年度の人事院勧告、これは八月に例年でございますと出されるわけでございます。その段階でこの扱いを総合的に考えてまいりたいと、こう考えているわけでございます。
  20. 竹田四郎

    竹田四郎君 これはまだそのときになってみないと、八月の人事院勧告が出ない限りにおいては、五十八年度分がどれだけになるかということはわかりませんけれども、通常二%ぐらいではないかという説も、これはむしろ役所側から出ている声のような気がしますけれども、二%ぐらいはある意味じゃ仕方かないというようなことも聞かれるんです。その最低のところをとったとしまして——五十七年度の勧告が四・五八%で、四・五八%じゃ五十八年度はやらない、こういうことになるのか、その辺は一体どういうふうに考えたらよろしいんですか。両方を加えて、五十七年度も人事院勧告をカットする、五十八年度もカットすると、こういうようなことで、するにはするけれどもカットをするというんですか。それとも五十八年度は人事院勧告が出たらば、五十七年度はもう出ているわけでありますが、それがプラスされた額にする、こういうふうに考えたらいいんですか。どうなんですか。
  21. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは人事院が四月の段階でいわゆる官民較差というのをもう一遍ことしの段階で御調査になり、それに基づいて八月の勧告をお出しになるわけでございますから、五十七、五十八というふうな分かれたかっこうになるのか、あるいはそれを一緒にして御勧告になるのか、そこは人事院勧告の内容を見ないと何とも言えないわけでございます。  財政面からしてもこれは大きな問題でございますが、ただ財政面にとどまらない大問題でございまして、給与関係閣僚会議というふうな政府全体としてどうするかという意向を決めてまいるわけでございます。その取り扱いを待ちまして私ども考えさしていただきたいと思っています。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは私の勝手な計算ですが、五十八年度分を含めて六・五%。これは仮定の数字で、これを私が望んでいるという意味じゃないですが、それは間違わないでひとつ受け取っていただきたいわけですが、六・五%という数字を仮定してみます。そうしますと、どうなんですか、五十八年度にベースアップ分としてすでに一%分六百何十億かというのは組んであると思いますが、それを含めまして五十八年度のベースアップ分というのは大体四千五、六百億、そのぐらいは必要であるし、もしそれをやるとなれば、その分プラスアルファになるのかどうなのか、それはわかりませんけれども、これは五十九年度分に上積みされると、こういうふうに見るべきだと思います。さっき申し上げました三十四兆八千億ですか、中期試算にある一般歳出ですね、その分にはそういう計算は入っているんですか、入ってないんですか。
  23. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 仮に六・五というお話でございますので六・五でまいりますと、御指摘のように一%相当額が大体七百億でございますから四千五、六百億になります。この中期試算では一%分はこの上の段の三十四兆三千億の方に入っておりますが、それを超える分は、予備枠として、全体の歳出の一・五%を加算した三十四兆八千億の方で対処するという前提計算してございます。したがって、予備枠含みの三十四兆八千億の中にはその給与改定分も入っていると申しますか、その給与改定分もこの全体で対処すると、こういう前提計算をいたしております。
  24. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、ここでもし最小だと思われている六・五%のベースアップがあるとしますと、五十八年度の三十四兆幾らというのは、もうそれで四千億ぐらいはオーバーしてしまうというわけでありますが、これも切るということですか、その辺はどうなんですか。そうじゃなくて、それは認めてやる、しかしそのほかのもので抑えつけちゃうと、こういうことなんでしょうかね。  その前にちょっとお聞きしたいんですが、この三十四兆八千億には防衛関係費伸びというのは、これは一体どうなるかということは当然考えられますね。それから海外経済協力費の問題も考えられる。それからこの当時は恐らくエネルギーの問題も考えられたと思いますけれども、そういうようなものはこの中の三十四兆三千億ですか、この中にはどのぐらい計算されているわけですか。
  25. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この中期試算は、いまの計画をそのまま延長した場合という前提でございますので、防衛費の場合でございますと、国庫債務負担行為歳出化分で五十九年度の歳出化になる分、それと人件費等の義務的な分でもう決まっているものをはじいて入れているだけでございます。また政府開発援助ODAにつきましては、五年間で倍増という計画がございますので、あれの残りを等比で計算いたしますと一三・六%の伸びになります。それの所要額をことに計算いたしてございます。  そういうふうな機械的な計算でございまして、そういうものを積み上げたのがこの上の段の三十四兆三千億でございますが、それでカバーできないものがなおあり得るという想定で、全体の歳出の一・五%相当額、この場合で申しますと、経常分で申しますと、五千二百億でございますが、五千二百億を予備枠として別に内訳なしで足しているわけでございます。  初めの方のお話にございました給与の分、四千億ぐらいはどうするかというものは、この下の三十四兆八千二百億の五千二百億の予備枠で対処すべき分になるわけでございますが、予算編成はどこの分をどうするというわけではございませんで、もろもろの財政事情全体を一遍横に並べまして、それをどう圧縮していくかという作業でございますので、いまの段階でその給与の分はどう、どこの分はどうというふうに具体的にはちょっと申し上げかねるわけでございます。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 先ほどのお話から見ますと、金額はいずれにしても、人勧については五十八年度実施せざるを得ない。それを実施すれば、当然五十九年度へそれは伸びていくわけであります。それから恐らく防衛費の中の五十九年度についての国庫債務負担行為、これはもう払わざるを得ないということであります。だから恐らくこれをカットできない。できるのですか、どうですかね。きのうは大蔵大臣聖域はないと、こういうふうにずいぶんはっきりおっしゃっていたわけでありますけれども、この分をそう切れないんじゃないか。この試算考えられている以上にそう切れないんじゃないかというのが一つの心配であります。  また、ODAなどを含めての海外経済協力にしても、大分ASEANに、言うならば、大盤振る舞いしたような感じもするわけでありますが、あれが五十九年度の予算に直ちに出てくるかどうかはわかりませんけれども、かなり大盤振る舞いをしているということになりますと、カットする部分というのがもう非常に範囲が狭められてくるような感じがしますね。  そのほかにもいろいろたくさんふやさなくちゃならぬ分というのはあるわけでありますけれども、そういうこと全体として考えてみますと、どうなんですか、大蔵大臣は、防衛費海外経済協力費聖域ではないと、こういうふうにきのう決算委員会で、聖域ではない——それほど強くなかったと思うんですが、聖域ではあり得ないだろうというような、聖域ではないというよりもちょっとやわらかい表現だったように思いますけれども、いずれにしても、その辺をカットするという考え方はおありのようでありますけれども、これは大蔵大臣、どのぐらいカットできるんですか。  この辺をカットしなければ——人件費についてはもう国会でまとまっている。政府間でもこれはしようがないだろう、こう言われているわけですが、それでなければ、社会保障費はそれだけにとどめておくにしましても、出る分がかなりあるわけでありまして、いまの主計局次長お話ですと、出る分はちょん切っちゃうと、こういうわけです。その辺はきのう答弁いただいたばかりでありますが、どうも私その辺、本当に切れるのか。聖域でなくすることができるのかどうなのか、人件費あるいは施設費か何か、そういうもので減らしていくのか。その辺問題があるように思いますけれども、その辺はどう考えたらよろしゅうございますか。五十九年度大変厳しくなってくるような気がしますけれども、どんなふうに考えたらよろしゅうございますか。
  27. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) ちょっと大臣お答えの前に補足させていただきますと、五十八年度予算におきましても、防衛費は千六百三十五億伸びておりますが、国庫債務負担行為歳出化、その他人件費の義務的な増加だけでも千七百億円以上実は義務的な増加があるわけです。国庫債務負担行為既定分も延ばせるものはできるだけ先に延ばしましたり、あるいはそういう義務的な分でない、いわゆる後方などというものをかなり切り詰めまして、六・五%の伸びにとどめる。あるいはODAにつきましても、計算上は一一・四%の伸びになるわけでございますが、それを五十八年度でも八・九%の伸びにとどめているわけです。  ただ、来年度は果たしてそのぐらいのものでいけるかというと、これは御指摘のようになかなかむずかしいわけでございますので、私ども、いまの仕組みのままですとどうしてもそういうことになりますので、さらにその制度とか、あるいは慣行でございますとか、取り決め、そういうもの自体をもう一遍見直してみようということで、なお一層努力をしたいということで、先ほど大臣からもお話のありました主計官会議を早速開きまして、いま勉強を始めたところでございます。どこをどうするかということはまだ具体的に申し上げられる段階ではございませんが、そういう仕組みまで切り込んで抑制をしていこう、こういう努力をしているところでございます。
  28. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに竹田委員委員長であります決算委員会におきまして、五十九年度予算編成に当たって、防衛費といえども、またODA関係費といえども、いわゆる聖域扱いをする考えはございません、というふうに申し上げたわけであります。この問題は大変むずかしい問題でございます。いわゆる国際取り決めに基づく後年度負担、それがまさに五十九年度にやってくる問題等々ございますけれども、それらの中にありましても、やはりたとえばジャンプできるものはジャンプするとかいうような工夫は、当然のこととしてしなきゃならぬというふうに思っております。  したがって、これからまず、いま主計官会議をやって、そうして各省でそれぞれの制度施策根源にさかのぼって勉強してくださいということの協力を御要請申し上げたばかりでございますが、一つ一つにわたってその制度施策根源にさかのぼった議論を重ねながら、最終的に、これは予算でございますから、総合調整をしていかなきゃならぬ、厳しい道であると思っております。  で、五十八年度予算を通していただいた途端に、やれやれ、五十九年は一体どうすればいいだろうと、素朴なそういう感じが私もいたしました。周囲の諸君は、いや、だれも予算が通ったときには、一体来年どうなるだろうか、衆知をしぼっていくのが長年のわが国の財政当局のまた伝統でもあるし、どんなことがあってもこれに取り組んでいかなきゃならぬという鞭撻を受けながら、今後の作業のむずかしさを十分認識しつつもそれに対応していかなきゃならぬというふうに思っておるわけであります。  したがって、まずは、これからの作業の積み重ねの上でシーリソグ枠を設定していかなきゃならぬ。それにつきましても、いろんなまた議論が出てくるであろうと思うんでありますが、それら国会の議論等を通じながら、どこに調和点を求めていくかということに苦心をしていかなきゃならぬのだなと。だから、いま竹田委員も御議論なすっておりますように、確かにこの中期試算のケースCを念頭に置いてみても、本当にこれは大変なことだなと思います。  したがって、今日の段階で具体的なことを申し上げる状況にはまだございませんとはいえ、本当に聖域という概念そのものを持たないでこれに取り組んでいかなきゃならぬではないかということで、頭を痛めておるというのが素朴な今日の私の心境でございます。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 御心配のほどよくわかるわけでありますけれども、もう少しいまの議論をちょっと続けていってみたいと思うんです。  いままでは私、大ざっぱな一般歳出の面を触れたわけでありますけれども、歳入面で減税問題が出てくるわけですね。これは五十八年減税というふうに私どもは受け取っているわけでありますけれども、そして減税の時期とか額とか規模とかいうようなことについては、必ずしもまだ明確でないと思うんですけれども、与野党間でついた話で私が判断するには、恐らく規模は一兆円以上でなくちゃならぬだろうと思いますし、きのうの木下和夫税調会長代理の話でも、恐らくもっと大きいんじゃないだろうかというようなお話もあったように記憶しているわけであります。  そうしてみますと、財政中期試算税収の三十四兆四千五百億というような中には、減税というようなものは税収の中に入れて計算しているんですか、そういうものは入れないで計算しているのか、この辺もちょっと伺っておきたいと思います。もしこれがない、減税分を計算してないということになりますと、五十九年度のC案で要調整額四兆一千六百億になっているわけですけれども、これはもうとてもそんな額ではだめだろう。歳入不足額が七兆から八兆に近いもの、そういうものにそのままいってしまうとなるだろうと、このぐらいの計算をせざるを得ない。これは私の計算でもそのぐらいいくわけでありますから、税収は減る、一般歳出はふえる。こういう形になりますと、どうもこの財政中期試算というのは、もはや紙に書いた数字を並べてあるだけというふうになってしまうわけであります。しかし私どもがこれから計算をし、いろいろなことを考えていくのに手がかりになるものは、いま、この中期試算しか実はないというわけでありますから、仕方なしにこれをやるわけであります。  そうすると、七兆ぐらいの不足というものになるんではないかと思うんですが、これは主計局どうですか。
  30. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この税収の方は、成長率を経済企画庁の御検討の中央値六%に弾性値一・一を掛けて機械的に六・六%で延ばしたにすぎませんので、減税が入っているか入ってないかということについては何も触れていないといいますか、そういう機械的な出し方でございます。  そこで、ここからさらに税収が落ちれば、それは要調整額かさらに一層ふくらむ。いま御指摘のA計算で五兆四千億の要調整額からさらにふくらむ、Cという七年間で特例公債から脱却という計算でもここからふくらむ可能性があるということは、御指摘のとおりでございます。そこを私どもは何とかして努力してやっていこう。  しかし、これはむずかしいことはむずかしいわけでございますが、昭和五十六年度の中期展望を一番初めにお出ししたときから五十八年度の歳出を見ましても、結果においてはかなり歳出の方は抑えられているわけでございます。私ども五十六年度の中期展望で計算しました五十八年度の予算額と五十八年度の実際の予算額との間では、七兆八千億、実は試算を下回っているわけでございます。もちろんその中には交付税の減とか、そういう要素もございますが、一般歳出で六兆一千億下回っております。したがいまして、むずかしいことはむずかしいわけでございますが、なお要調整額をできるだけ圧縮することに全力を挙げていきたい、こういうことで、いま努力をしている最中でございます。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、さっきもちょん切るという話が出たわけでありますが、五十八年度ではマイナス五のシーリングだったんですが、マイナス五ではどうも済みそうもないというふうに思うんですが、どうなんでしょうかね。これは一〇%に近い割合ぐらいでシーリングをやらなければ収支のバランスは——ほかに税収を急速に図れば別ですよ。あるいはここに言われておりますところの国債による収入、あるいは税外収入、こういうものをもっと多くすれば別でありますけれども、この中期試算でいけば恐らく八%から一〇%、このぐらいのマイナスシーリソグで枠をつくって抑えつけなくちゃならぬ。こういうふうなことに私の勘で、これは計算しておりませんから勘でありますが、そのくらいにならざるを得ないと思うんですけれども、そのくらいに見てよろしゅうございますか。
  32. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) このシーリングの数字は、まだ具体的に私ども検討しているわけではございませんので、いまたとえ勘でありましても、そうでございますとはなかなか申し上げかねるわけでございます。  ただ、去年マイナス五%を決めましたときに、マイナス五というから全体にマイナス五がかかるのかと思ったら、投資的経費とか補充費途、義務的な分を除いて、残りの六兆円にマイナス五%で、非常になまぬるいではないかという世間の御批判もございました。しかし他方、各省の立場に立ちますと、たとえば厚生省のように、生活保護、年金、医療、それぞれふくらむ要素を掛っているところは、そういうところは横ばいにされた上で、なおその他で五%削られていく、削れる弾力性のあるところで五%以上のカットをせざるを得ない状況でございまして、これは非常に大変だと、五%でも悲鳴が上がっている状況でございます。  そういった事情、それからいま御指摘のありましたような来年の厳しい状況、こういうものを一つ一つ細かく分析してやりませんと、大ざっぱに何%という粗っぽい作業ではなかなかもたないというか、各省も納得させられない状況でございますので、いま細かく経費を分析しましてどうするか研究をしているところでございます。まだ何%、あるいはことしより楽になることはないと思いますが、しかし厳しいということも、もっとマイナスを大きくするということも、まだ断定的に申し上げかねる状況でございます。
  33. 竹田四郎

    竹田四郎君 いずれにしてもことしよりは厳しい、五十八年度よりは厳しいというふうに理解して間違いないですね。
  34. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) ことしより楽になることはないと思います。
  35. 竹田四郎

    竹田四郎君 それでは五十七年度の税収ですね、きのうもその質問がありましたけれども、きのうは大蔵大臣のところに三月末ですか、の税収見込みがいってないということでありますし、私も余りゆっくりどんなふうになったかということな検討する時間的余裕がなかったわけでありますけれども、五十七年全体としてどうなんですか、どのぐらい見込みよりも減るんですか。かなり減るんじゃないか、五千億ぐらいは不足するんじゃないかというふうに私は見ておるんですけれども、どうなんでしょうか、その辺は。
  36. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 五十七年度の税収につきましては、いま御指摘のとおり、昨日三月末の税収を取りまとめまして発表したわけでございます。三月末の累計で見ますると、前年の決算に比べまして五・九%の伸びになっております。五十七年度の補正後の予算は前年度の決算に比べまして五・三%の伸びを見込んでおりますので、三月末の累計という時点のいわば瞬間風速で見ますると、まだ補正後の予算伸びに対して若干の余裕があるという状況でございます。  三月の税収の半分以上は実は五十七年分の確定申告所得税の税収でございますが、これは私どもが補正後の予算で見込みましたものをほぼ達成できるような水準で推移しておりますが、問題は法人税でございまして、三月の決算の法人税収は年間の法人税収の三割以上を占める非常に大きなかたまりでございます。ただ、三月期の決算につきましては、常々申し上げておるところでございますけれども、先般の日銀の短観等にもあらわれておりますように、三月決算の上に関する限りは、去年私どもが補正予算を見積もりました秋の時点は比べましてやや下方修正——収益が業種によって違いますけれども、製造業を中心にしてやや下方修正になっております。  したがいまして、私どもも大法人について個別のヒヤリングを最新時点で行っておりますけれども、補正予算を見積もりました時点よりもやや収益が下向いておるということで予断を許さない状況にあるわけでございます。したがいまして、いずれにいたしましても、五十七年度の税収の決算は七月にならないと確定しないわけでございまして、いまの時点で計数的に申し上げるということはなかなかむずかしいわけでございますが、短観といたしまして、なかなか補正予算を達成するということは予断を許さない状況にある。  率直に言って、そういう状況にあると思いますけれども、それではどれぐらい補正予算の見積もり額と決算額との開差が生ずるのかということでございます。これは常々大蔵大臣が申されておるんでございますけれども、一%の誤差の範囲内、つまり補正後の税収見積もり額は三十兆四千七百八十億円、約三十兆円強でございますが、これの一%以内の範囲内におさまることを念願しておるというふうに申されておるわけでございますが、私どももどうやらその範囲内ではおさまるというふうに考えてもよいのではないかというふうに考えております。
  37. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは五十七年度が決まらないと五十八年度もまたはっきりわからないし、五十九年度もしたがってはっきりわからないということでありますが、これはどうですか、大蔵大臣、五十九年度ということを聞くよりも、むしろ五十八年の後半から五十九年にかけての景気の問題に恐らくかかっていると、こういうふうに言ってもいいと思うんです。それが一番大きい問題であろうと思いますが、あとはひとつ税外収入をどう見ていくかというようなところに大きな問題があると思うんです。  さっきのマイナスシーリングでも、主計局次長も、大変ことし以上にやるのはむずかしいと、あちらこちらにかなりの抵抗がこれは出てくるだろうと。これは私どももそう思います。いままでも臨調に基づいての歳出カットというのは騒いだほど金額は多くはなかったわけですね。たしか五十六年度で二千五百億程度のものでありましたし、五十七年度というのもそう大したものじゃなかったし、まあ大騒ぎするほど出てくる問題じゃないような気もいたしますけれども、その辺の見通しですね、五十九年度あたりの。  大変先のことで申しわけないんですけれども大蔵省はその辺を一体どう見ているのか。いまのような状態がずっと続いていくのか、あるいは若干アメリカの景気も上向きになってきているという話があるわけでありますから、その辺は、大臣余りこれを聞くのも無理かもしれませんけれども、大ざっぱに言ってどんな感じを持っていますか。これは後で、あのときこう言ったと言って、別に言葉じりをとるつもりはございません。
  38. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ありがとうございます。  いま梅澤主税局長からお話ししましたように、私これも後から考えてみて、揚げ足を取る取らぬという議論、ありがたい議論いただきましたが、一%は誤差のうちと言ったのも、私も本当はあれを言った後、必ずしも正確じゃなかったなと思うんであります。誤差とほ何ぞやということになりますと、何となく勘で言ったような感じがしておりますが、いまのところ大体、給与所得等々から見ますと、開票率九〇%。三月期に大目玉があります法人税が開票率まだ六〇%台。だから、開票率九〇%台のやつを見ますと当確が打てるような気がしますし、開票率六〇%台ではまだ当確が打てない。その当確も税収見込みが達成できましたという当確じゃなく、一%の誤差の範囲内ということで、竹下持論といいますか、余り論理的じゃないと自分でも思っております。  そういうような状態から見てみますと、今度はこれを経済諸指標で見ますと、五十七年度の実績見込みの下方修正を二回して三・一。これは達成が確実になったなということが言えると思うんであります。  そこで、五十八年でどうするかということで、景気対策について若干意見の分かれるところでございますが、私どもとしては、三・四%をより確実にするための経済対策が、先日行われた経済対策の当面の課題と検討すべき事項との二つに分かれたものであるという考え方で臨んでおるわけであります。確かに三・四%というものをより確実にするために、公共事業の前倒しにいたしましても、あるいは金融の機動的運営とか、いろんな項目を並べたわけでございますが、そのような無責任な表現をすれば、感じから見ますと、私は三・四%というものは決して不可能な数字ではないと思っております。  かてて加えて、いまおっしゃいました米国経済が若干底をついて回復基調にあるんじゃないか。確かに先般七カ国蔵相会議に参りまして、あるいは個別に対談をいたしましても、アメリカは若干そういう傾向は見えると思うんであります。それにしても、その見通しについては三%台程度でございますので、諸外国もかつてのような成長率を期待しておる向きはございません。しかし、順番で言いますと、アメリカ、西ドイツ、イギリス。フランス、イタリーはまだ遠く及ばずというような感じでございますが、そういうことから回復の基調というものは、先行きやや明るい材料というふうにその点はとるべきではないか。  それからもう一つは、石油価格の引き下げだと思うんであります。その石油価格の引き下げとわが方がいま一つ大いに関連して存在するのが、いわゆる円安是正傾向と二つであろうと思うんであります。石油価格の下落というのは、確かにいまストックもございますが、それらの問題は、言ってみれば、在庫の価格は高いものでございますだけに、ある種の値崩れをすれば、短期的に見れば、税収の面においてはマイナス効果になるかもしれません。また石油税等従価税に当たるものは、これまた値下がりしただけは減収にあるいはなるかもしれません。とはいえ、一方、節約思想もかなり徹底しておりますから、安くなったからといって大変需要が伸びるとも思えません。しかし、それはすべて原材料としての産業という立場から見ますと、明るい好影響を与えるものというふうな範疇でこれはとらえるべきものだ。  そこでむずかしい問題は、それがどれぐらいなときにその明るい材料が実際の景気としてのいい面の指標としてあらわれるかということが、いまおっしゃいました五十八年下期から五十九年にかけての課題じゃないかというふうに思うんでございます。その点、われわれとしましては、急速な石油ショックを受けました値上がりのときの体験は持っております、一次、二次と。今度は値下がりのときのトタの体験というのは持っていないわけでございますから、その辺でどれぐらいなタイムラグがあるかということについて、先行きこうですよといったような判然とした形の意見を述べるだけの自信とまた環境にもない。しかし長期的に見た場合、私は決して悪いとは思わない。  そういうことになると、総じてまあまあ言えるかなと思うのは、そういう好材料というものにかてて加えて経済対策として先般決めたものが調和して行われたら、三・四%をより確かなものとするというような意味で、これからなお息の長い安定的な経済成長というようなものが徐々に、タイムラグはございますが、徐々に定着していくではなかろうか。  非常に判然としないお答えでございますが、大体私は余り判然とようしておりません傾向もございますけれども、現状の認識から言えば大体そんなところじゃないかなと、お言葉に甘えて率直に感想を述べさせていただいたわけであります。
  39. 竹田四郎

    竹田四郎君 この試算によりますと、ことしは税外収入というのを四兆七千億、これはかなり無理をしてがんばった。しかしその始末は非常によくない、やり方はよくないと思いますけれども、税外収入でがんばったという点は、よくがんばったというふうに申し上げてよかろう、こう思います。  これは五十九年度は二兆七千億、六十年度が二兆七千五百億程度の二兆円台になるわけですが、これはもうそんなにないということですか、どういうことなんですか。私はもう少しこういうものを引き出して、いままで政府がうまくやったというか、非常に勤勉にやったというか、そういうことで稼ぎ出しておるところもないわけではないと思うんですけれども、そういうものはこういう時期でありますから、まあ先行きがどうなるか、いまの大蔵大臣の言うことを言質にして僕は物を申すわけではありませんけれども、こういう非常時にはそういうものは活用するということは必要だと思うんです。  まず、とりあえず五十八年度は、五十七年度ですか、国債整理基金の繰り入れ停止ですね、これは一兆五、六千億するものでありますから、かなり金額的には大きいんですが、これはこれからどうするんですか。これはこの前本会議でお聞きして、減債制度をどうするかと言ったら減債制度は残すんだと、こういうお話だったわけですが、制度は残すけれども機能はしないという形にしておくんですか、どうなんですか。これから国債整理基金への繰り入れというのは一体どういうふうにお考えになっているんですか。
  40. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 定率繰り入れは、五十七年度、五十八年度臨時的にそれぞれこの法律でお願いいたしまして停止をさしていただいておりますが、ただこの仕組みそのものは、国債償還制度の基本でございますので、これを廃止する考え方は持っていないわけでございます。  しからば五十九年度はどうするのか、こういうことでございますが、これもたびたび申し上げているところでございますが、まだ具体的はどうするかという検討は行っておりませんけれども、この試算等では再び復活してやるという前提計算をしておりますし、また国債整理基金の資金繰り状況とかなんかを考えると、なるべくやることが望ましいわけでございます。したがいまして、原則としては、私どもは定率繰り入れは五十八年度は臨時的に停止をさしていただきましたけれども、五十九年度以降再び定率繰り入れを行うという前提で物を考えているわけでございます。
  41. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると二兆円に近いものになってくるだろうと思うんですが、そういうものを出し得る、一般歳出の中にそれだけの余裕が出てくるというふうに考えていいんですか。
  42. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) それは余裕はもともとないわけでございますが、ただそういう事務的な国債償還のための基本的な制度の繰り入れを軽々に行わないと言うべきではないわけでございますし、そういう諸般の財政事情、それからいろいろな財政需要を総合的に勘案しまして検討していきたいと思っております。
  43. 竹田四郎

    竹田四郎君 私はそんな簡単なものがすぐ出てくるとは思いませんけれども、恐らく五十九年度、ここへ行きましたら、このことがまた大きな問題になってくるだろう、特に六十年度あたりにいけば大変大きな問題になってくるだろう、こういうふうに思うわけでありますが、どうなんでしょうか、大蔵大臣、税外収入というのはもう少しずっと洗ってみたらどうなんですかね。  私は、特別会計なり特殊法人の中に洗ってみれば、もっとここからは出してもいいというようなものがあるんじゃないかと思いますね。高度成長の中でいろいろと行われたことでいま実際に必ずしもうまくいっていないという部分もありますし、そういう面に対して特別会計に一般会計から補助している部分というのも洗ってみると私はかなりあると思うんですよ、いろんな関係に。まあ一つ一つここでそのものを言えば非常に時間かかりますから言いませんけれども、かなりあると思うんですよ。そういうのを節約していくだけでもかなりのものが出てくるんじゃないだろうか。そうすると、ここの二兆七千億よりもっと多くのものが出てくると思うんです。これは臨調の部会報告でもその辺については言及されていますね。そういうものをもう少し徹底的に洗ってみるということはできないんでしょうか。  あるいは、時間がありませんから私一つずつ言いませんけれども、たとえば政府関係機関の金融関係のものでも、会計検査院から御指摘を受けているように、回収がなかなかつかない。その中には本当に金がなくて回収がつかないものもあるだろうと思いますけれども、まあ結構安い金利だからこの際借りておこうというので、ずるを決め込んで返済しないものも私は必ずあると思うんですよ。そういうものを引き揚げることによって財投をそれだけ少なくすれば、今度は運用部資金がそれだけ負担が軽くなるわけですからね。そうなれば今度は、後から申し上げますけれども、国債あたりの資金運用部の引き受けというようなこともこれは容易になってくるだろうと、こう思います。  そういう意味では全体を身軽にするといいますか、機動性がふえてくるんじゃないだろうか。そういうようなことが最終的には一般会計へのプラスにもつながってくると思うんですが、この辺はどうなんですか、大蔵大臣。もっと全体的に洗い直す、むだをやっているところもあるような気がしますのでその辺を全体的に洗い直すとか、何かひとつ大蔵省考えて、一つ一つの特別会計あるいは特殊法人というもので、余りいじめちゃ困りますが、国民金融公庫みたいに、きのうもいろいろその議論が出ておりましたけれども、金貸すのをむずかしくしてしまって貸せないようなことをされちゃ困るんですが、悪用しているというものも私はきっとあると思うんですよ。そういうようなものをもう少し検討してみることによって、恐らくこの税外収入というようなものももう少し積み上げることができるんじゃないだろうか。こう思うんですが、その辺はやってみる気はございませんか、大蔵大臣
  44. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいまの財政を担当しております責任者として大変に良心の苛責を感ずることが二つあります。一つは何かと言えば、言ってみれば、先人の蓄積に手をつけること、二つ目は後世の納税者に負担を回すこと、こういうことであります。  ただ、その先人の蓄積に手をつけること、いま御審議いろいろといただいておるわけでございますが、ことしの場合徹底的に洗ってみて、そこにわれわれとしてある種の良心の苛責を減殺し得るものとしては、五十六年度決算の不足補てんの繰り戻しというものが念頭にあったわけでございます。したがいまして、先人の善悪は別として、特別会計及び特殊法人からの特別な協力を求めてきたわけでございます。  そこで五十九年度以降も、いまおっしゃいますように、臨調の指摘にもございますし、税外収入の確保については、これはできる限りの努力はしなければならぬというふうに思っております。  ただ、われわれが今度御協力をいただいた、実際各省に対して、いろいろ御批判のあります自賠責の積み立ての運用益等にまで御協力をいただいておるわけでございますから、そういうことから見ると、かなりの蓄積を納付していただいたということを率直に感じております。したがって、新たなる財源確保というのはなかなかむずかしいなとは率直に思っておりますけれども、いまの御意見等が一つのてこになって、われわれは過去の蓄積というものに対して、さらにこの税外収入の面でむずかしい中でも最大限の努力は払っていかなきゃならぬという基本的な考え方は、私は隔たりがあるとは思っておりません。
  45. 竹田四郎

    竹田四郎君 ここで私、新聞の報道で非常に気がかりな点があるんですがね。マイナスシーリングをやるというために、児童手当、特別児童手当を見直すとか、国民健保を中心とした医療のあれを見直すとか、教科書の無償制度を見直すとか、全く一般国民に関係のあることだけを見直すと、こういうふうに新聞では報道されているわけですがね。こういうところだけにしわ寄せされるというのは、これは私はずいぶんむちゃなことをやると思うんですがね。こういうようなところにこういうことをするということは、私は消費動向をふやしていくという面でもいろいろこれから問題があるし、あるいは国の財政に対する信頼度という面でもこれは非常に問題があると思うんです。この辺を余り切り詰めるということは恨みを買いますよ、窪田さん。ですから、その辺だけに見直しをするというようなことは余りしてもらいたくないということを要望として申し上げておきます。  そこで、外国為替資金特別会計貸借対照表というのを見ますと、五十八年度末の積立金の予定額が三兆三千八百三十五億円もあるわけですね。これは私、公式の席で申し上げるのは初めてでありますけれども、この辺の一部というのは取り崩しできないのですか。繰越評価損なんというのが一兆八千三百六十四億ぐらいあるということでありますが、ことしはそういう点では、五十七年度あたりはかなり評価益も出てきそうな気がするわけでありますが、ことしはまたこの為替の評価のあれが二百二十九円で評価しているところを、上期は平均で幾らになりますか、恐らくもっと円安で評価せざるを得ないという形になるでしょうから、まあ幾らか違ってくるでしょう。これは全部積み立てておく必要はないんじゃないですか。この辺の取り崩しはどうなんですか。これはもちろん積立金は資金運用部に預けてあるのでしょうから、そっちの方にはそれだけマイナスになるかもしれませんが、この辺をもう少し動員したらどうなんですか。そうすればこの二兆七千億なんというのは、これで三分の一やるにしても、一兆円というものがふえてくるわけでしょう。この辺はできないんですか。    〔委員長退席、理事増岡康治君着席〕
  46. 大場智満

    政府委員(大場智満君) 外国為替資金特別会計の問題でございますが、いま先生御指摘のように、昭和五十七年度末で見てみますと、積立金は三兆六百十五億円ございます。しかし、このとき同時に私どもとして見ていかなければいけないのは、外国為替の累積の評価損が二兆六千億円あるということでございます。昭和五十八年度末ではこの外国為替等評価損が著しく減ることになっておりますが、これは昭和五十八年度末でございますから、いまからそのときの為替相場を見通すことができない。したがいまして、現在の基準相場でこれを見ざるを得ないという状況から、そのような姿ができ上がっているわけでございます。  もともと、この外国為替資金特別会計は、利益は利益として積立金で積み立てていきまして、同時に外国為替はほとんどがドルの資産ですけれども、これの評価損益はそのまま積み立てていく、これもまたそのまま計上していく。現在まで大体傾向としては円高でございますから、絶えず評価損が出ている、こういう状況にあります。  いまの問題は、たまたま五十七年度に大きな利益が出ておりますのは、私は非常に異常なことがあったからだと思うのです。その異常なことと申しますのは、米国の高金利があったからだと思います。しかも、その米国の高金利があるにもかかわらずと申しますか、あるいは米国の高金利があったからということかもしれませんか、ドルが強かったということでございます。ですから、ドレが強いということは、私どもが持っている外貨資産の評価益がかなり計上されたということでございます。  それからもう一つ、金利が非常に高かったものですから、運用収入で九千億以上のものを稼ぎ出したということがあるわけでございます。もちろん九千億以上のものを稼ぎ出したといいましても、外為証券を発行してその円でもってドルを持っておるわけでございますから、その外為証券の支払い利息はこれまた五千億近くあるわけでございますけれども、いずれにしても四千億以上の利益、金利差といいますか、利益は嫁いだことになるわけでございます。  しかし、これは高金利があって、しかもドルが強かったということでございます。そうしますと、逆に今後の将来を見通していきますと、まず金利が下がるということは現実の問題として実現しておりますし、それからもう一つ評価損がこれからかなり大きく出るのじゃないかと思っております。  現在の評価レートは二百六十円でございます。きょうは朝方二百三十一円九十銭という相場が出ておりますから、仮に二百三十円としますとすでに三十円、円が強くなっているわけでございます。根っこの資産を、外貨資産を仮に二百億ドルとしますと、すでに六千億円の評価損になる、この時点でたまたまきょう切ってみますと。ところが、さらにもし二百円になりますと、一ドルについて六十円の評価損が出てくるということになりますと、根っこの資産を二百億ドルとしましても、これは一兆二千億という評価損が出てくるわけでございます。  ですから、考え方によりましては、この評価損の計上ということを常に頭の中に置きながらこの会計は運用しなければいけない。そういうふうに実は考えておりまして、いま先生御指摘の積立金を取り崩したらどうかということでございますけれども、私どもはこの評価損が将来ふえる、もうそれは現実のものとなっているだろうと思います。いまの二百六十円の評価レートということは、これはあり得ないわけでございますから、いずれこれは必ずより円高、ドルが安くなる事態になります。そういうときにやはり備えておかなければいけない。  今年度の利益の中から四千六百億円を一般会計に出すことができましたのは、まさにこれはアメリカの高金利による異常利益というふうに御理解いただきたいと思いまして、そのようなことはこれからはもう起こらないのじゃないかというふうに考えております。
  47. 竹田四郎

    竹田四郎君 私もこれはずいぶん勉強したつもりですよ。あなたは評価損があるから、これは毎年相殺されるようなことをおっしゃっている。これは相殺するようになっていないんですよ。もし相殺するということになったら、この勘定を清算するときにのみ相殺せざるを得ないでしょう。それまでは相殺しないわけです。この積立金はその相殺に使ってないですよ。資金運用部に入っちゃっている。あなたの言っていることは違う。  それからアメリカの高金利等、ドルが強かったとか、こんなことはもうめったにないんだと。確かにそれはないでしょう。しかし、いままでこれを見ますと、利益の上がった年の方が多いんですよね、金額は別として。確かにおっしゃるように、五十七年度はこの上がり方はちょっと異常だと思いますけれども、それにしても、いつも損が出ていて得が出るのはことしぐらいのものだというわけではないと思うのですね。  それから五十八年度、これについても損が出るでしょう、確かにおっしゃるように。しかし、それにしても、この積立金から見れば、一兆円ぐらいの余裕は出てくるわけですよ。法律を変えさえすれば、私はこれは引き出せるものだと思うのですよ。この辺はどうなんですか。大蔵大臣、もう少し検討してみてくれませんか。私は出ると思うのですよ。  確かに、この勘定を持っている担当者としては、評価損と評価益というものを常にバランスさせておきたいと、この気持ちはわかりますよ。しかし、それは実際にバランスするわけじゃないんですからね。これは埋めることができないことになっているわけですよ。あなたもそう言ったように、両方ともずっとこれは積み立てていくだけなんです。こう考えたら——それは長い年月考えていけば、この積立金はどうなるかわかりませんよ。しかし、いま異常なときにこういうものを考える、せっかくあなた方を初めとして国が売買する利益によって得たものを積み立ててきているわけなんですからね。これは余り国民にも私は直接は影響ないものだと思う。こういうものを臨時に、財政がこれだけ窮迫しているときに使えないということはないと思うのですよ。  あなたのおっしゃったことも、私はいろいろ調べてみて、それほど根拠のあるものじゃない、理論的には根拠があっても実際上は根拠があるものじゃない、こういうふうに思うんですよ。この辺は一回検討してみていただけませんでしょうか、大蔵大臣。  いまこういう時期でありますから、せっかく国の機構の中で蓄積されたものについて、国家非常のときでありますから——私は、これは役人のへそくりだと、こう言っているわけでありますけれども、そういうものは、家が倒産しそうなときでありますから、やっぱり奥さんのへそくりもこの際は少し出してもらわなければ家計はもたない、私はこう思うんですよ。これは確かに担当者は出したくないと思うのですね。だから私は官僚のへそくりだと言っているのですよ。私が小遣いがなくても女房は金を出したくないのは事実です。ですけれども、国家財政がここまで来るということになればこれは考えざるを得ないと私は思うんですよ。大蔵大臣どうですか。
  48. 大場智満

    政府委員(大場智満君) いまの御指摘の点でございますけれども、貸借対照表上の問題と損益計算上の問題と、両面あるわけでございまして、私が先ほど特に強調しましたのは貸借対照表上の問題で、外国為替の評価損と積立金が見合っている、しかもその外国為替の評価損が今後ふえるから積立金の総額と見合うように、金額的にも見合うような状況になっていくんではないかということを申し上げたわけでございます。  次に、損益計算の方で申し上げますと、積立金については、確かにこれを資金運用部に預託する等のことをいたしましてこの金利が入ってまいります。ところが、その評価損の方ですが、繰越評価損、これは実はその評価損として計上されておりますけれども、根っこは外為証券でもってカバーされているということだろうと思います。そうしますと、この部分についてはむしろ金利を払っている。評価損につきましても、これは外為証券を発行して、それでその外為証券の発行の結果、買ったドルが減価しているということでございますから、その分についても金利を払っているという形になるわけでございます。  したがいまして、私どもがこの為替の評価損と積立金とをできるだけ量的にも見合わせていきたいという考え方の背景には、そういう損益計算書上の考え方、現実にそうなっているわけでございますけれども、評価損も実は過去に外為証券を出していたというふうに理解すべきだと思うんです。過去に出した外貨資産が減価した結果評価損となっているわけでございますから、その分についてもこれは円の利息は払い続けているんだという状況にあるわけでございます。その点、貸借対照表上の問題と損益計算書上の両方からいさまして、どうしても積立金とこの評価損とを見合わせていくということが、この会計の健全性を図るというふうに考えているわけでございます。  しかも、この会計は平衡勘定、介入勘定でございます。市場におけるドルの介入、売りにしても買いにしても、この勘定の責任でやっているわけでございまして、この勘定の安定性というのは、経営の安定性というのは私は非常に大切だというふうに考えているわけでございます。
  49. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、それは全く違うと思うんですよ。それなら、そんなに外為証券を出すために金利を払うというなら、余っている金を、利益で毎年利益を積み立てているわけですね、何千億か、なぜそれを先に使わないんですか。それを使っていないじゃないですか。おっしゃるように、いまのお話ですと、外為証券を出すための担保的な問題として積立金というものを考えているようなお話です。そういうことになってないでしょう。それならば外為証券と積立金、それとのバランスというのかなくちゃならぬでしょう。それができていないでしょう。それは私は理屈だと思うんですよ。もしそういうことがあるならば、利益金でどんどん介入資金を出したらいいじゃないですか。そういう意見もあるそうです。しかし現実にそれをやってないでしょう。それだから積立金がどんどんふえていくわけです。だからあなたのいまの議論というのは私は違うと思うんです。やってないことをやっているように説明しているにすぎない。実際はやってない。  そういうことでありますから、この議論をいつまでもしていても私はしようがないと思うんで、これは一同検討してください。私は、少なくも全部出せとは言わない。その一部を出すことによって税外収入をふやすことはできる。これは大蔵大臣、どうですか。国金局長といつまでもやっていてもこれはきりないと思うんです。
  50. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは四千六百億というものを今度取り崩しをしたわけであります。私もこれからの円高傾向とかいろいろなものを見て、これだけのものが期待できるというようには思いません、率直に言って。しかし、私自身本当は、外為特会の説明を何ぼ聞いても余りわかりません。でございますが、かねての竹田委員の御議論がある、それは私も聞いております。いまの問答等を踏まえながらもう少し勉強するに時間をかしていただきたいと思います。
  51. 竹田四郎

    竹田四郎君 それじゃ、私に不十分な点があるかもしれませんけれども、私もかなりこれは勉強したつもりです、自分では。それでおたくの国金の関係の方とも議論をしました。問題は、あとは法律を改正する問題だけだと、こういうふうに担当者も言っておりました。それだけで私はこの議論をしているわけじゃありません。そういう意味でこれを検討してもらいたい。わかっている人が少ない点も事実だと思うんですよ。いま検討を約束していただいたわけでありますから、これはぜひひとつ早く検討してください。さっきの話で、五十八年度はこれはがくっと減るかもしれませんからね、早期にひとつ検討していただきたい。いままで大蔵省が言っているのは、これは積立金じゃなくて利益分を正しているにすぎないんですね。これだけ四千六百億出したって、まだ残りが、それに匹敵するそれ以上の六千億ぐらいの積み立てをしているわけでありますから、そういう意味では普通のだってまだあるのですから、その辺で評価損だって見合いが十分できるわけでありますから、その点ひとつ考えていただきたいと思います。  それから時間がなくなってまいりましたんですけれども、そういう税外収入でことし二千五百六十億ですか、入れたのに自賠責からのお金があるわけでありますけれども、確かに自賠責全体としてお金の余裕金のあることは私はわかっております。これは運輸委員会でも余ったら金貸してくれないかということを私は言った覚えがございますから、そういう意味ではここから一般会計が借りるということは私は非常にいいと思うんです。しかしなぜ運輸省は——これは国民の金ですよ、ユーザーの金ですよ。車検をもらうときに払い込まなければ車検をくれないんですから、このお金は強制的に徴収している金ですよ。この金を利子もつけないでどうして大蔵省に貸したんですか。  私はこの点はきわめてよくわからない点です。いまの外為会計のようなお役所の仕事でもうかったものを入れる分なら、私はこれはいいと思うんです。しかしこの自賠責のお金というのは、国民のユーザーが払ったお金の六割がこの自賠責にいっているはずです、積立金なんです。しかもこの自賠責の保障の最高限度額は、ユーザーに対しては二千万円が最高の限度額。しかし、いま不幸にして人を一人命を奪った場合に、恐らく二千万円なんかで話がつくなんということはないと思うんです。恐らく八千万円から場合によれば一億円ぐらいが賠償の金額になるわけであります。  今度は、よく私どもは任意保険と言っておりますけれども、別にそれだけ保険を掛けておかなければ車の運転は危ない、こういうことになっているわけですね。それでいても今日交通遺児問題というのはかなりの大きな問題になっております。率直に言って、私どものところへも交通遺児の基金を何とかしたいんだから協力を願いたいということが次から次へ来ております。お母さん方が駅頭で交通遺児にというあの姿を見ると、二千万円限度ぐらいだからこんなことになるんだ。金は余っているんだから還元しなさいと臨調答申にも書いてあるわけです。そういうお金が余っているから、さっきの話じゃないけれども一時一般会計に貸したわけだ。これは利子をつけなかったというのはどういうわけですか。運輸省。
  52. 熊代健

    政府委員熊代健君) 今回の一般会計への二千五百六十億の繰り入れ措置でございますけれども、先生おっしゃいますように、この運用益の累計というものは、強制保険に基づきます保険契約者からの保険料を原資として生じたもので、本来その保険契約者のために使うべきものであるということは、われわれも十分そのつもりでいままでもやっておりますし、十分理解しております。  ただ、今回の一般会計への繰り入れ措置につきましては、先ほど大蔵大臣からもお話がございましたが、一般会計財政事情が非常に厳しいということ。それから一般会計から自動車事故の防止関係に対しましても直接間接に相当程度の支出が行われておること。これは四十四年以来保険料を動かさないで保険金の限度額を三回にわたって引き上げるということができた結果でもございますし、それから運用益がこれだけたまった原因にもなっているということでもございます。そういったことを勘案いたしまして、いまおっしゃいました利息の点がございますけれども、その利息の点も、いま申し上げたようなことを勘案いたしまして、臨時異例の措置としてやむを得ないというふうに判断いたした次第でございます。  なお、この一般会計への繰り入れ分を含めまして、われわれといたしまして、保険料の抑制あるいは御指摘のありました保険金の限度額の検討、これらを中心にいたしまして、保険契約者のためにどういうふうに使うのが一番適切な還元方法かということを目下検討しているところでございます。
  53. 竹田四郎

    竹田四郎君 この自賠責の保険、単年度ではもう赤字でしょう。したがって、積立金の利子収入でその赤字を埋めているわけでしょう。たしか四、五百億から七百億ぐらいになりますかね。そのくらい入れていると思うんですよね。ですから、単年度から見ればとてもこれは足りないわけですよ。保険料を上げざるを得ないんです、単年度から見ていったら。ところが、二千六百億近くのものの利息があればかなり埋められるわけですよ。そういう意味で、私は自賠責の単年度の会計を見て、これをただで金を貸すなんというのは——しかも人の金ですよ。自分の金ならいいけれども、人の金ですよ。それを貸すなんということは、全然私は考えられないですよ。私が借りたって利子を払わなければいかぬ。それを金のあるのに貸して利息も要らぬというのはよくわからないです。  新聞によると、ことしは保険料を三〇%ぐらい上げると、こういう報道があるんですが、こんなことをしても片方じゃ上げるんですか。自動車保険も上げると言っておりますし、自賠責の方も上げると、こう言っているんですが、これは上げるんですか。どうですか。
  54. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 自賠責の保険料率につきまして、ことしの初めでございますか、引き上げというものが検討されているというような新聞報道があったこと、これは私も承知いたしておりますが、実はこれは一月の二十六日に保険審議会を開催いたしまして、車両運送法が改正されましてことしの七月から車検が三年になりまして、それに伴いまして自動車重量税なり、あるいは三年一括して自賠責保険料を徴収する、そのために、いままで二年間の保険料しか算定していなかったものを三年分に算定するためにはどうするかという諮問をいたしたわけでございます。恐らくはこれが一般的な形で誤り伝えられたのではないかというふうに考えております。  現在の自賠責保険の収支でございますが、先生御指摘のとおり、五十三年度以降いわゆる単年度で見ますと、赤字になっておるわけでございますけれども、過去の蓄積等の収支累計で見ますと、現在なお黒字を見込んでおるわけでございますので、現在自賠責料率の引き上げというものをする必要があるような状況だとはいま考えておりません。したがいまして、現在私どもとしましては、料率引き上げのための準備ないし検討というようなこともいたしていない状況でございます。
  55. 竹田四郎

    竹田四郎君 それにしても、この二千万円という金額、限度額は何としても私は少ないと思うんですよ。それは自勤車保険、いわゆる任意保険を掛けてない人も相当あるわけですね、現実には。そういう場合に、結局交通遺児などが出た場合には、何か本人に支払い能力がないというときには、これはしようがないわけですよね。そういう意味ではこの限度額というのはもっとふやすべきだと思うんです。これは大蔵省なのか運輸省なのか、どっちがあれですか、私、細かいところまでわかりません。  いまだって、ことしあたりは交通の死者はふえているわけでしょう。減っているわけじゃないんですよ、これからふえていくわけですから。そう考えてみますと、いま保険部長が言ったようなのんびりした状況ではないと私は思うんですよね。    〔理事増岡康治君退席、委員長着席〕 単年度ではもうどんどんと赤字に転化していくという事態ですから、そういう中でここには利子も払わないというのはわからないんです。  これはこの前本会議では、特別会計から借りる場合には利子は一切つけないんだと、こう言うんですが、それは本当ですか。
  56. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 国庫内の勘定の振替、会計間の振替は、原則として利子をつけないというのが原則でございます。この間——この間といいますか、五十六年度の決算で穴があきまして、国債整理基金から二兆二千億ほど借りましたが、これについても利子はつけていないわけでございます。  先ほど運輸省から御説明もありましたけれども、そういった財政理論のほかに、五十六年度決算補てんのために私どもとしては、できるだけ利子のつかない、返済も要らないお金が欲しかったわけでございます。で、いろいろ御協力をいただきまして、この自賠責からも格段の御協力をいただいたわけですが、これは返さないというわけにはまいりませんので、お返しをするという約束を法律上もしているわけでございますが、利子につきましては、結局一般会計で利子を払うということは一般納税者の負担になるということなので、その自動車保険を契約しておられる方に一般会計の納税者の負担でやるということはがまんをしていただくということで運輸省の御協力をいただいたわけでございます。
  57. 竹田四郎

    竹田四郎君 それではこういうような貸し借り、実際上の貸し借りの問題というのはたくさんあるわけですね、今度は。  たとえばこれは五十六年からでありますけれども、厚生年金保険会計への国庫負担額は、これは四分の一を削って四分の三にすると、当分の間。これは五十九年ぐらいまでですか。そういうようなことで二千億から三千億近いものを結局は借りているという形。普通のあれでいけば払わなくちゃならないのを借りて、これは恐らく将来返すことになっているんだろうと思いますけれども。  しかし、五十六年の十月の八日ですか、衆議院の行政改革の特別委員会で村山厚生大臣は、これは利子をもらうのはあたりまえだと、こう言っていますわな。それから国民年金特会でもこれも同じです。これも平準化と称して、五十八年、五十九年三千百八十億円を本来ならば負担すべきものを負担しないで、後年度にこれはその分を返してやると、こういうふうになっているわけですが、こういうものを全体として見て、ある面ではそれは、厚生年金の利子を払うのか払わないのか大蔵省からの返事を私聞いておりませんけれども政府を代表して村山厚生大臣が運用収益が含まれるのはあたりまえだと、こう言っているわけですから、これは恐らく国民年金のこれもそういうことになると思うんですが、こっちの方は村山厚生大臣の言うことが本当なんですか。それともいまの政府間の会計でありますから、これには利子をつけないというのが本当なんですか。どっちが本当なんですか。
  58. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 会計間の振替は利子をつけないのが原則であると申しましたその例外は、年金の場合でございます。年金計算上、運用益というものが計算に入っておりますので、この場合は利子をつけざるを得ないわけでございます。  そこで、御指摘の厚生年金の場合につきましても、この運用収入の減少分も含め適切な措置を講ずる、つまりお返しをするということにしておりますし、国民年金平準化措置の場合につきましても、利子分、運用収入減少分というものも後に補てんをする、こういう考え方でございます。厚生大臣の御答弁を御引用されましたが、渡辺大蔵大臣も行革の特別委員会でそのような答弁をしておられます。
  59. 竹田四郎

    竹田四郎君 いずれにしましても、この自賠責にいたしましても、この厚生年金あるいは国民年金あるいはその他住宅金融公庫もありますし、いろんなものがありますけれども、そういうものの貸し借り、これについての条件というのはその都度その都度やっているんだ。相手側の力関係を見て適当にやって、運輸省はどうも弱そうだからここからはもう金利は払ってやらないというような形に私は思えてならないんです。  そういう点で、こういうものはもう少し基準をぴしっとつくっていかなければ、これから金を貸す、あるいは返してもらうべき金を延ばす、これは実際上貸すことになるわけですが、そういうものに対する信頼性というのが失われるんじゃないですか。この辺は大蔵大臣、しっかりした、どういう条件で、いついつこういうことで返します、金利の点についてはこういう場合にはこうします、こういう場合にはこうしますというしっかりした基準というのをつくらないと、その都度その都度でやっている、こっちはこうだ、こっちはこうだでは国民にはよくわからない。これからは貸してくれる人も貸してくれなくなるかもしれない。そういう心配があるわけですから、これははっきりとそうした貸し借りの基準あるいは返済の基準、こういうものをつくるべきじゃないですか。これは大蔵大臣に伺います。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私ども自賠責特会からの繰り入れのときに、一番悩みました問題もいま御指摘の問題であります。確かに私どもとしては、五十六年度決算不足補てんに繰り戻すという臨時的支出に充てるため、できるだけ利子のつかない金を探そう、これが基本にございました。そうして国庫内部のやりくりであることから、利子を付さないというのが、一応一般会計と特別会計の間で繰り入れ繰り戻しを行う場合の原則である。さはさりながら、いま御議論のあったような問題がございましたので、私どもとしても、直接間接に今日自賠責に影響を与えておる財政支出も確かにある。したがってこれは高度な政治判断が必要だということから、私もこの問題については総理にお話をいたしまして、総理からこの問題について協議してみたらどうかという経過を経て、運輸大臣と私とで相談するという経緯を経たわけであります。したがって、今日こうしたお願いして御協力を得るまでの間に、いま御議論いただきましたような問題について、われわれも何度か議論を繰り返したわけであります。  したがって、これに対しては、私の立場から言えば、運輸大臣に大変な感謝をしておるわけでありますが、さはさりながら、一概に一般会計と特会との繰り入れ繰り戻しについて、いわゆる貸し借りについて一つの基準を設けるか。元来、余り貸し借りしないでやるのが本当でございますので、この基準を設けておくということについては、貸し借りの間には一応利子はつけないという原則の上に立って、物によって別だということの方が、なおわれわれが対応するのにかえって厳しい姿勢を持ち続けていくための一つの背景にもなりはしないだろうか。基準をそれぞれにつけて、その基準さえ満たせばいつでも借りられるというのも、またわれわれとしても安易な姿勢ではないかというような感じもいたしますので、いまの御議論を踏まえて私ども検討さしてくださいとお願いします。
  61. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣大蔵大臣の時間もあるでしょうが、いま金利だけのお話ですが、返済の場合どういう返し方をするのか、均等で返すのか、三年間なら三年間は据え置いてあとどうするのか、こういうようなことももう少し明確にしておくことが私は重要だと思うんですよ。そういうことがあれば、このときにはこれだけ返さにゃいかぬということになれば、ほかのいろんな歯どめにこれがなるわけですから、その辺はひとつ基準をつくっていただきたい、こう思います。  時間の関係もあるようでありますから、次は日銀総裁に伺いたい、このように思います。  もう時間がありませんから、余り余分なことは聞くのをやめたいと思うんですけれどもお話が先ほどもありましたように、きょうの円相場は一ドル二百三十一円幾らで、いままでから見ればかなり高くなってきたようなんですが、円安というのは解消されつつあるわけですね。幾らがいいのか。いままで言われていたのは、二百二十円ぐらいが合っているんだろうというお話であったわけでありますけれども、この円安の解消の原因——これはいままでも日銀は短期金利を上げることによって、金利を引き上げて日米の金利差をなくすることによって円安を防ごう、こういうことをいままでもなさってきたわけであります。そういう方向でいま円がかなり高くなってきているわけなんですが、これはどういうふうな背景の中で円が上がってきたか、どう見たらいいですか。
  62. 澄田智

    参考人澄田智君) 申すまでもなく、為替相場は金利の差だけで働くものではないわけでございますけれども、しかし最近の、昨年来と申したらよろしいですか、円安あるいはドル高傾向は金利差によって生じている、あるいは金利差によって動いている、そういう面が相当大きい、あるいはそれが一番大きな原因になっているということが言えるんではないかと思います。  このところ円がやや高くなってきているという背景でございますが、これは本年に入り、ことに二月以降あるいは三月以降ずっとアメリカの金利が下げ渋っておりました。むしろ反騰してきておりました。それがこのところ小幅ながら徐々ながら低下をし始めてきております。このようなアメリカの金利の小緩み状況というのは、さらにその原因といたしましては、過去二、三週間アメリカのマネーサプライにやや鈍化の兆しが出ている。ただ、金曜日の先週分はちょっとまたふえたというようなあやはありますけれども、鈍化の兆しが見えているということはうかがわれるところでございます。  こういうことを背景に、市場関係者の間に、アメリカの市場関係者等に、アメリカの金利が先安なのではないかというような期待感も出てきているというようなことなどによって、全体がそういう空気に市場がなってきている。こういうことでそれが現在の円高あるいはドル安になって、若干そういうふうになってきているところの背景であると思います。  しかしながら、アメリカの金利がなお今後とも間違いなく大幅に低下していくかということになると、それを阻害する要因もいろいろあることも事実でございます。短期的に言えば、アメリカの景気がこのところ回復してきている、持続的な回復を示しているというようなことも金利を強くする。そういう面を持っておりますし、また中長期的にはアメリカの財政赤字が非常に大きくて、これを減らしていくというのが今後非常に困難、しかも時間がかかる。こういうようなことから底には、底流にはインフレマインドが払拭されていない。こういうような事情があって、これが、今後どんどん金利が低下していくかというようなことになりますと、その足かせになる。こういう事情があると思います。  いずれにせよ、今後こういう状況、金利の動向、それが円に及ぼす影響等については十分今後なお注視していく必要があるのではないかと、かように考えております。
  63. 竹田四郎

    竹田四郎君 いろいろお聞きしたいことがあるんですが、私の時間余りございませんので、もうどんずばりお聞きをしたいと思います。  いままで、ことしの初めのごろでしたか、三月ごろでしたか、政府の方もラッパを吹きました。公定歩合の引き下げをしろ、公定歩合の引き下げをしろと、予算が通ったら日銀は恐らく公定歩合の引き下げをするだろうというようなことでずいぶんラッパを吹きましたね。前川総裁だけが何かえらい抵抗をしている、悪者になっていたような感じもするわけであります。  公定歩合の引き下げによって、金利の低下によって景気を浮揚する以外、いまの景気対策は少しぐらい経済対策をやったってだめだろうということであったんですけれども、幸い日銀が望んでいる二百四十円前後から二百三十円。しかもいまおっしゃられた赤字の問題とか何かというのは、まさに長期的なアメリカの問題であろうと思います。そういう意味では、そろそろ公定歩合の引き下げをやってもいいんじゃないかというふうに私思っておりました。  これはきょう澄田総裁に質問しようと思っていたらば、きのうの夕刊に、前川総裁が大阪の方で、公定歩合を引き下げる環境に向かっていると言ったような新聞記事をきのうの夕刊で見たわけでありますけれども、やっぱり前川さんもそういうことを若干考えているのかなと思ったんですが、きょうはその記事がほとんど消えてしまっているわけであります。  どうなんでしょうか。もうそろそろその辺をやって、国内の設備投資、そうしたものを含めて公定歩合の引き下げをやるべき時期に来ていると思うんです。一方、国内でも国債問題を通じて金利が上がらざるを得ない。三月はたしか事業債と国債とが、発行利回りだったですか、逆転していますわな。こういう問題がありまして、公定歩合を下げても、実際はプライムレートを初めとするその他の金利が下がっていかないというような条件があるのかどうか。その辺は私よくわかりませんけれども、そろそろその辺は、どのくらいの幅になるか、それは私どもわかりませんけれども、アナウンスメントをおやりになってもいいんじゃないか、こういうふうに思うのですが、その辺は日銀はどういうふうにお考えでございますか。
  64. 澄田智

    参考人澄田智君) 私どもも、金融政策として、景気情勢にできるだけ配慮していくというのは当然の方向であると考えておりますし、従来から金融政策の運営の余地が生じてくるというようなことを期待していたわけでございますが、それには、繰り返し申し上げてまいりましたように、円相場が円高方向でしかもそれが定着していくということが、きわめて重要な要素であると考えておりまして、この点は今日においても全く同じでございます。  申すまでもございませんが、円相場の安定を図りますことは、物価の安定確保、なかんずく今回の原油価格低下の効果を国内各方面に均てんさしていくためには、円が円高方向で安定するということが、これが何よりも不可欠な条件でございますし、また対外的に見ましても、現在のわが国の海外諸国との経済関係のむずかしさというようなところから申しまして、円高方向での円相場の安定ということに努めるということは重要な課題である、こういうふうに思っております。若干円高に転じてきている、円高方向に転じてきているわけでございますが、これはごくここのところわずかな期間、二、三日のところでございます。定着するということを十分見きわめていくということが必要であろうと思います。  先ほど申しましたように、アメリカの金利情勢につきましても、このまま順調に低下していくかどうか、依然見通しはわからない。こういうことでございますし、現在当面の金融緩和の基調を、量的には十分緩和しているわけでございますから、この緩和の基調を維持しつつ、海外の金融経済情勢や円相場の動向というのをなお慎重に見きわめることが必要である、そうしなければならない段階であると、こういうふうに考えております。  なお、前川総裁、大阪で記者会見で申しましたことがきのう伝えられましたが、見出しはともかく、中をよく読んでいただきますと、いろいろ十分注視していく必要がある、こういうことを申しているわけでございますので、その点もつけ加えさせていただきます。
  65. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまの副総裁の一番大きな点は、円高が定着するというところに一番の重点があると私は思うのです。アメリカの状況というのは、これは相当これからもそういう不安定な状況というのは続くだろう、こういうふうに思いますけれども、円高が定着するという定着というのは一体どんなふうに考えたらいいんですか、定着ということを。たとえばわれわれが定着というのを考えるならば、二百三十円前後が半月なら半月続くとか、一カ月続くとか、こういうタームで考えたならば、それは定着と言っていいんですか、どうですか。
  66. 澄田智

    参考人澄田智君) 相場がある程度の期間引き続いて安定的に動いているということも、やはり重要なことであろうと思います。その場合に、しかし期間の長さということもさることながら、内外の市場、このところ東京の市場よりむしろ海外市場において円相場が非常に動いている、不安定である。こういうところでございますので、海外相場等で、何かある一つのことなり経済の動きなりニュースなりというようなことで、ともすれば円か安い方、ドルが高い方に動く、そういう材料が特に取り上げられる、そういう相場の地合いというのは、これは円高方向に安定するということが決して言われない状態だと思うんです。  つい先日まで、何かといえば、円は安い方に振れたがる、ドルは強い方にいく。基本にそういうような相場の気配がニューヨーク市場等でございました。そういう状態は、これはきわめて不安定な状態であると思っております。
  67. 竹田四郎

    竹田四郎君 余りよくわからないというのが実情でございますけれども、国の財政面から見て、あるいは税収面から見ますと、いろいろな苦労はありますけれども、国債を発行するのではなくて、本来の税収をなるべく多く確保したいという要請というのは私はあると思うんですよ。そういうことを考えてみますと、いま景気対策ということで出動できるのは、金融政策が一番出やすい。これは国民みんな望んでいるんですよね。早く金融政策が前に出てきて景気が早く直るようなことを期待しているわけですが、これは公定歩合のことでありますから、余り詰めて私が聞くのも適当でないと思いますし、解散と金利の問題は幾らうそをついてもいいということになっているそうでありますから、これ以上聞きませんけれども、そろそろ私は下げていただいていいんじゃないかというふうに思うわけです。  それからもう一つ、もう時間がありませんがお聞きしておきたいことは、これからの政府の国債発行、あるいは景気がもしよくなってくるということになりますれば、他の事業債なり金融債なり、そういうものの発行も多くなってくるでありましょうし、あるいは政府の方の借換債の問題ですね、これも恐らくことしあたりから、借換債を含めますと、恐らく二十兆くらいの借換債を含んでの公債発行になってくると思いますが、そういたしますと、どうなんでしょうか。いままでのような固定的な、国債はこうでなくちゃいかぬ、金融債はこうでなくちゃいかぬ、事業債はこうでなくちゃいかぬという金利体系ですね、これは崩れてきた。この三月の事業債と国債との逆転で崩れてきた。あるいは国債も実際は最近は休債が多くなってきております。  こういう点で崩れてきたんだと、こういうふうに思いますが、今後の国債市場、こういうものは一体どんなふうになっていくんだろうか。いま銀行あたりも預金増と国債の引き受けシェア、そういうものを見まして銀行なんか余りいい顔していないように思いますし、それに対していろんな政府の方でも何か本格的ではない対策をやっているようでありますけれども、今後のそういう債券市場というものは一体どんなふうな様相になっていくわけですか。いまの政府考えているように、国債というのは一番信用度が高いんだからこの金利でやっていっても、実際休債などしなくても、これからの借換債を含んだ大量の国債発行というものもみごとに消化できるんですか、どうですか。
  68. 澄田智

    参考人澄田智君) 国債の大量発行がある、あるいは借りかえ分を含めて今後とも続くというような、そういう場合においてどういうふうな金利に影響があるかというと、何といってもやはり長期金利がともすれば高どまりに推移する、こういうことであろうと思います。そうしますと、短期金利は下がるような場合であっても長期金利がスムーズに下がりにくいというようなこと、そして現在の金利選好が非常に強くなってきているという状態等を考えますと、どうしても資金の間にシフトが起こる。預金が集まりにくくて長期の債券その他、あるいは投資信託でありますとか、その他の長期の方に金が行きやすくなる。こういった資金シフトが起こるというようなことを通じまして、金融のスムーズな調節、金融政策の働きというようなものにおいてとかくいろいろそういう影響が出てくる、こういうことが一番やはり大きな問題だと思います。  お話しの国債の消化という点につきましては、預金の伸びが悪くなってくる、そういう状態で預金の伸びが悪くて、しかも国債を消化するというようなことになりますと、やはり金融機関等では相当困難を感ずるというようなこともあり得るわけでありますが、それはやはり国債の発行条件が十分に市場実勢を反映したものであることが必要でありますし、それかどうかに非常によるわけでございますし、発行条件が市場に反映する、そういうような面が一層強くなってくると思います。  そういう中で、先ほどもお話のございましたように、長期金利が国債の利回りを基準にしてとかく硬直的な関係にあるというような点について、これは今後、それぞれの資金コストあるいは資金の需給等を反映してより一層弾力的に変動するように市場慣行ができていく、関係者の理解を得てそういうことが見直されてそういうことができていくというような市場の状態ということも必要であると思います。したがいまして、かれこれいろいろな影響のある中で、そのときどきの情勢に応じて、しかも、いままで硬直的であってそれが障害になったようなものは見直していってということでこれに対応していかなければならないことである、かように思っているわけでございます。
  69. 竹田四郎

    竹田四郎君 副総裁、ありがとうございました。  そこで大蔵省に伺いますが、ことしも、新規財源の発行債とそれから借換債を含めますと、発行総額というのは十七兆をオーバーする、そういう規模になるように私は承知しておりますが、どうでしょうか、これは。
  70. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 念のために数字を申し上げますと、いまお説のように十七兆八千五百九十六億でございます。新規財源債が十三兆三千四百五十億、借換債が四兆五千百四十六億、合わせまして十七兆八千五百九十六億でございます。
  71. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう時間がなくなってしまいましたから困っているんですが、その借換債というのは四条債が中心で、特例債は含んでいない、こういうふうに私は理解しておりますが、本年における借換債、これはまだわずかでありますけれども、借換債の場合に、前に借りたやつを償還するわけでありますから、期限というのが非常に厳しくなってくるんじゃないかと思うんですね。新規債の場合なら、出さなくていいときは休債して短期証券で食いつないで、その筋でやっていくということですが、借換債の場合にはそういうことはできないわけですね。  そのときには、これからは、たとえばどこをとったらいいか、時間がありませんからわかりませんけれども、たとえば十一月、十二月、こういう特殊な月に償還期限が来るのが集中している、一兆円あるいは二兆円近いものが将来そこに集中してくる。ことしはそうではないでしょうけれども、そういうときに借換債を発行するということになると、そのときの市場関係、こういうものは相当問題になってくるんじゃないでしょうか。  いまもお話がありましたように、昔だったら金融機関が持っておる借換債は、あるいは事業会社が持っておる借換債は、何でもかんでも強制的に借りかえをさせるということができたと思うんですが、最近みたいに金利選好が非常に強くなってきているということになると、そう簡単に借換債に応ずるということはなくなってくると私は思うんですよ。そうなってまいりますと、借換債でありますから、たとえば六十年なり六十二年の十一月にはもう一兆円借りかえるというような事態というのは起きてきませんか。私はそれは起きてくるように思うんです。  時間が来ましたが、もうあと一、二分ですから申しわけありません。  そのときに、あとまた十年の長帆債でというわけにはなかなかいかないんじゃないでしょうか。ですから、必然的にそこでは短期債で乗りかえていくというようなことが将来起きませんか。その辺をちょっと。
  72. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 全体の問題でちょっと時間をいただいて申し上げてみたいと思いますが、五十九年度までは現在発行しているのと同じもので借りかえていくという方針が決まっておるわけです。六十年度以降どうするかというのがまだ目下勉強中でございます。その場合に、まさにおっしゃるようなことが国債管理政策、要するに市中の国債の期間と金利の構成をどうやっていくかというのが管理政策になるわけでございますが、お説のような場合もありましょうし、あるいは低利借りかえとか長期借りかえとか、そういうようなものもあるわけです。あるいは短期に借りかえる、あるいは高利に借りかえる。それはそのときどきの金融情勢によってどっちの方向になるかという問題があるわけです。したがって、私どもとしては、おっしゃいましたような期間分布、毎月の発行額をできるだけ平準化するとか、あるいは残存期間のバランスがとれるように組み合わせて発行していくとか、そういう努力は現在ずっとやってきておりますが、さて六十年の何月になってどういうことになるかという問題がございます。  その場合には、いま申しましたように、低利借りかえ、長期借りかえ、あるいは高利借りかえ、短期借りかえ、いろいろなケースの組み合わせがそのときどきの金融情勢で出てくる。これはこれから二年間ばかりかかりまして本格的に勉強しますが、そういうことに備えて一応現在できるだけ平準化していく。たとえば二年から四年のものが出ておりますので、十年超えて十五年を出すとか、あるいは毎月の発行の分布をできるだけ全体百兆の中の構成が平難化するような努力をしておる。目下のところはそういうような前段階にあるわけでございます。
  73. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう一問だけ聞かしていただきたいんですが、その特例債は、いままではこれは全額償還するという規定になっていたわけですね。これからもそういうことでいくんじゃないだろうか、私はこう思うんですが、先ほどもお話が出ましたように、減債基金というのは制度はあるけれども、実際に金はないという事態が恐らく出てくる可能性があると思うんです。  今後何かそれに組み込むといったんですが、そうすると組み込むために今度はまた特例債を出さざるを得ない。たとえば四兆円なら四兆円をそれに組み込むとすれば、四兆円の今度は特例債を出す、実際は赤字国債の借りかえだ、こういうような事態が私は必ず起きてくる。この前何か本会議では大蔵大臣はそういうことは一切しないと、こういうふうにおっしゃっていたのですが、それは形式的にはそうじゃないかもしれないけれども、実際上はこれを返すためにこっちで特例債を出す。しかし金融情勢でいまいろんなことをやるというわけでありますから、それもそういうことができるかどうか、これはわかりません。いままでみたいに日銀や大蔵省がたくさん国債を持っていて、個人や事業会社が持っているものが少ないときは、そういうことで進められたけれども、これからもっと広がるでしょう。そうすると結局は、四条債だけでなくて特例債の借りかえも実質的には行わざるを得ない、こういうことになりませんか。
  74. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 理論的にはそういう場合もあり得ると申しますか、六十年代の大量償還の時期にいわゆる私どもが借りかえをしないという借りかえは、国債整理基金特別会計で借換債を発行するという意味での借りかえでございますが、そういうことはしないと言っておりますが、仮にその時期まで特例債の発行が続いているような状況考えますと、理屈の上では定率繰り入れをする、あるいは償還費が不足する場合は一般会計から繰り入れなきゃなりませんから、その財源としてさらに特例債を発行する場合、あるいはそれをせずに歳出カットで賄う場合、あるいはその他の負担増を行う場合、理論的にはこの三つのケースがあり得るわけです。それがその後具体的な時点でどうなるかということは、そのときの具体的な予算編成の姿がどうなるかということによるわけで、いまのところ必ずそうなりますということは申し上げられませんけれども、そういう場合もあり得ないわけではございません。
  75. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ機会を求めて、きょうは終わります。
  76. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は明日また業界の参考人の皆さんの御意見も伺いますが、国債の窓販に絡んで行政当局のこれからの指導の問題について若干お尋ね申し上げたいと思います。  この四月九日から始まりました銀行による国債窓販において銀行は本格的に証券業務に参入することになったわけであります。そこで当面問題となると思われるのは、預金という元本保証の安全商品を販売してきた銀行が、国債が価格変動商品であることを顧客に対していかに認識してもらうかではないかと思うんです。特に証券の顧客層と銀行の顧客層は多少異なっているわけであります。国債を買ったが途中で売却したら損をしたというようなことになると、販売金融機関への不満もさることながら、国債そのものに対して大変な不信を招くことになるのじゃないかと私は思うんです。その点について金融機関をどのようにこれから指導していくのか、まず大蔵省見解を聞きたいと思います。
  77. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 国債等の窓口販売に当たりましては、国債等が価格変動商品であるということにかんがみまして、顧客が中途換金を行う場合に、そのときの市況いかんによりましては、おっしゃるとおり売却損が発生する可能性があるわけでございまして、もちろん売却益が発生することもございますけれども、損が発生する可能性もあるわけでございまして、この点につきまして、投資家に対しまして十分説明をして勧誘すべきであるというふうなことを金融界に指導いたしておるわけでございます。  具体的には業務内容方法書というものを金融機関から出させまして、その中に十一条でございますが、「顧客に対し有価証券の性格等について熟知させ、国債証券等の発行条件を明示するなど証券投資について正しい説明と適正な助言を提供するものとする。」というふうなことでもって指導いたしているわけでございます。
  78. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまもお話しのように、国債の窓販に際しての基本は、途中で換金しないで満期まで保有してもらう、つまり国債の安全性とか高利回り性を認識してもらうことにあると思うのです。長期債しか認められていない現下では、その保有期間は十年でありますから、また国債は有価証券で有価証券本来自由な売買が可能なものであるはずですね。それだけにオファリングトラブルというようなものを起こしやすい。そういうことが、つまり銀行窓販の批判の一つにあると思うのですね。ですからいまお話しのように、変動金利商品である債券販売はそうなまやさしいものではないという見方を私はしているんです。  そこで、もう一度お尋ねしますが、具体的に変動価格商品であるということを説明したり徹底するというお話なんですが、それはどういうぐあいに行政当局が金融機関を指導していくのか、また金融機関が顧客に対してする具体的な説明の仕方ですね、それはどういうふうにやっていくのか、もう一度説明してくれませんか。
  79. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 先ほども申し上げましたように、金融機関に対します窓口販売の認可に当たりまして、業務内容方法書というものを出させておりまして、それの内容につきまして、十分私どもといたしましても、説明会などによりまして、金融機関を指導いたしておるわけでございます。  同時に、その後どういう売り方をしているかという点等につきましては、いわゆる証券業務に関します検査というふうなものもあるわけでございまして、銀行局、証券局が当該金融機関に参りました際に、証券業務に関します検査等を通じまして十分アフターケアをしてまいるというふうなことで対応してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  80. 鈴木和美

    鈴木和美君 ぜひお客さんにわかりやすいような、トラブルの起きないような指導というものが徹底するような方法をとってもらいたいと思うんです。  そこで、今度は、銀行の証券業務をめぐる銀行と証券会社の垣根論争というものが長い間続いておって、いつも問題になるんですが、特に新銀行法によって銀行の証券業務が法制面では一応整備されたというようには思っているんですが、業務内容や実施時期についてはいわゆる三人委員会での審議にゆだねておられるわけですね。その結果として、幾つかの条件をつけて今回の窓販がまず認可されたことだと思うんです。  そこで、今後の課題は、中期国債、割引債の窓販と、既発債の売買のそれぞれの認可時期が問題になると思うんですが、二月の三人委員会では大筋について合意を見たということを聞いておりますが、前者については十月ごろでしょうか、後者については来年の春だというように見られているんですが、いつごろまでにこの三人委員会の結論を出してもらうのか、その認可時期について見通し、それから要望、希望、そういうものをお聞かせいただきたいと思うんです。
  81. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 三人委員会でございますけれども、これはただいま先生がおっしゃいましたとおり、銀行の行います証券業務につきまして公正中立な御意見をいただくということで、三人の権威の方々に大蔵大臣から私的にお願いいたしまして、中で御議論いただいているわけでございます。したがいまして、その報告の時期とかあるいは報告の内容につきまして、これはいずれ大蔵大臣に直接三人の先生方から御報告があるものと期待しておりますけれども、内容、時期につきましては、全くお三方の御判断にこの会議の性格上ゆだねておりますので、正確には私ども申し上げるべき立場にもございません。ただ、昨年十月に審議が再開されておりまして、すでに六カ月経過しておりますので、かなり適切な時期に御報告がいただけるものというふうに期待しておるわけでございます。
  82. 鈴木和美

    鈴木和美君 確かに三人委員会にお願いしている関係ですからなかなか言えないかもしれませんけれども、もう時期は来ているわけでしょう。ある程度もう詰まってきているわけですから、そういう意味では早急に結論を出してもらうような要望とか要請とか、そういうことはできるんじゃないんですか。また、やっていらっしゃると私は聞いているんですが、まだめどはわからないということでありましょうか。
  83. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 私どもの事務局の立場から、そういうことをいつというふうに申し上げるわけにいきませんけれども、ただいま申し上げました、すでに六カ月も経過しており、精力的に御審議いただいているということで御判断いただければ大変ありがたいと、大変恐縮でございますが、それで御判断いただければ大変ありがたいと思っております。
  84. 鈴木和美

    鈴木和美君 それではもう一つですが、今後中期国債の窓販やディーリング業務の認可をしていく場合に、中期債については金融機関本来の預貯金と競合する問題、またディーリングでは三百兆円強にも及んでいる公社債への影響などの問題も私は出てくるんじゃないかと思うんです。  たとえばこの四月の国債窓販の実績を見ると、都銀、信託銀行に比べて長期信用銀行の販売というのは余り進んでいませんですね。これは長期信用銀行の対象のお客さんが少ないということももちろんありましょうけれども、利付の金融債との競合を警戒して積極的な販売をしなかったというように見ているんですけれども、そういうことについての銀行局の見方についてお伺いしたいと思うんです。
  85. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 今回の長期国債の窓販につきましては、国債の個人消化の促進という見地から、広く金融機関をできるだけ広い範囲で認めるということで対応いたしたわけでございますが、ただこの問題につきまして各金融機関がどのような対応の仕方をするかという点につきましては、基本的には国債の個人消化ということを基本として対応してもらいたいということは言っているわけでございますけれども、それぞれの経営姿勢というものがございます。いま御指摘のように、長期信用銀行等につきましては、あるいは同じ競合商品である金融債との競合という面があって、売り方が少なかったというふうな点もあろうかと思いますが、基本的には、長期信用銀行の場合には、店舗の数が非常に少ないというふうな点も大変影響しているのではないかというふうに田思うわけでございます。  いずれにいたしましても、国債の販売につきましては、お客さんの方の選択の問題でございまして、それに適正に金融機関が対応していくべきであるというような方向で私どもとしては指導いたしているわけでございます。
  86. 鈴木和美

    鈴木和美君 いつもこれは問題になることですが、金融機関のディーリング業務への進出について証券業界は余り賛成していないわけですね。証券サイドにとってみれば、戦後みずから苦労して育成してきた公社債の流通市場は、現在では大きなトラブルや欠陥もなく十分やってきているわけですから、銀行の力をかりる必然性はないということを証券業界はよく申しているわけですね。国債の発行残高が百兆円にも達し、公社債全体でも三百兆円強にも達しているわけです。そういう時代になってきますと、適正な流通市場の育成は当然私はなされなければならないと思うんですが、それが単に業界の縄張り争いにすりかわってしまうということは、やはり避けていかなきゃならぬことだと思うんです。  そこで、証券業界の主張をそのまま認めるというわけにはいかぬと思うんですけれども、いま証券業界のこの窓販についてのまとまった意見というか要望というか、そういうものは現在の時点でどんなぐあいになっているんでしょう。
  87. 水野繁

    政府委員(水野繁君) 先生御指摘のとおり、証券業界はいままで公社債市場を担当してまいりまして、先ほどもございましたとおり、一年間の売買が三百五十兆にも達しているということでございます。公社債市場は質的にも量的にも相当かなりの成長を遂げてきている、こういうふうに考えております。  銀行がディーリング業務に参入するという話は、こういった非常に大きな規模になってきているところに銀行が入ってくるということでございまして、証券業界としてもいろいろな意見がございます。先ほど御指摘のように、いままで自分たちがやってきたんだということもございますけれども、非常に大きな規模になり、国民経済的にも、銀行が入ってくることについては、市場の厚さを厚くするという考え方もございますので、一層の拡大と信用機能の拡充という観点から、証券業界もいままでやってきたという立場はございますけれども、そういう観点も考えなければいけないのではないかというふうな意見を持っていると聞いております。
  88. 鈴木和美

    鈴木和美君 証券業界のいま主張しているように、いま銀行のディーリング参入によって価格についてひずみが出てきやせぬかと、そういう主張をなさっている面もありますね。その点はどうでしょう。
  89. 水野繁

    政府委員(水野繁君) 先ほど申し上げましたように、いろいろな意見がございますけれども、証券業界が価格について心配をするという点は二つほど理由があろうかと思います。  一つは、銀行が自分自身でもって運用する債券、国債を非常に持っておる。それのためにそれに有利に動くんではないかという懸念が一つでございます。  それからもう一 つは、銀行は従来の立場から言いますと、取引関係だの、資金面でもって企業に対する力を持っておって、したがって、それに対して、普通の価格だけではない力の強制によって相手方に有利に取り扱わせることがあるんじゃないか。これもまたもう一つの懸念でございます。  主としてそんな懸念があるように聞いておりますけれども、しかしこれは銀行自体が入ってくる、ディーリングをするということで市場の厚味が厚くなるということ自体を否定するものではございませんで、銀行がどういう形でどういうふうに入ってくるかということ、その仕方にかかってくる問題でございます。これは適正な価格形成を促進してもらうということで全面的な配慮をしながらそういうことは考えてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  90. 鈴木和美

    鈴木和美君 私が聞いている中では、証券側の主張というのは、結局は銀行とのイコールフッティング論だと思うんですね。その一つとして、国債の担保金融の要求があると聞いているんですが、これに対して現在両業界の条件案が提示されているように聞いているんですが、その内容はどんなものでしょう。
  91. 水野繁

    政府委員(水野繁君) 銀行業界がもうすでに長期国債のいわゆる窓販を開始しておるわけでございますけれども、銀行の方々が国債を売ります場合に、仮に現金が必要な場合に国債をお客様に売っていただく場合と、場合によってはお金をお貸しすることができますと、こういう両用の対応が銀行にできるわけでございます。証券業界も、銀行と同じように、国債を担保でお金を貸せるようにしてほしいというのが証券業界の要望でございます。  いま先生がおっしゃられました両業界からの対立云々ということは、いろいろ取りざたをされておりますが、実は国債担保といいましても、証券界にとっては、やるとするならばこれは初めてのことなんでございます。金融についての専門家である銀行の方のいろいろな意見を参考のために聞かしてもらっている。その中にはいろいろな意見がございますことは事実でございますけれども、そのいろいろな意見の範囲内から具体的なことを決めていきたいということで検討中でございます。
  92. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは、逆に銀行側の方は、今度は投資信託への進出というようなものを検討しているということも言われていますね。私は、このような業界のバーター的な取引がどんどん進むことによって証券と銀行の垣根が低くなるということは、それはそれなりにまた国民の側から見ればいいんですが、垣根が低くなった結果、魅力ある商品が提供されないというようなことになって、業界のエゴがどんどんエスカレートしていくというような危険を感ずるんですが、そういうことに関する見解、見方、展望、それはどういうことになりましょう。
  93. 水野繁

    政府委員(水野繁君) 私の方は証券局でございますので、証券業務の立場から申し上げますと、基本的には、証券会社と銀行がそれぞれの固有の分野、これについてはそれぞれの役割りを果たしていくということ、少なくともそういった基本的な姿は変わりがないと、こういうふうに考えております。  ただ、国債の大量発行、それから内外の金融情勢の変化、こういうものに応じまして、両業界の競合する分野がふえてきていることは事実だろうと考えておりますので、この問題につきましても、先ほど先生がおっしゃられました業界同士のけんかということじゃなくて、広い視野に立ちまして適正な運用を図ってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  94. 鈴木和美

    鈴木和美君 明日また参考人の皆様方に業界の考え方などをお聞きして、総括的に国債問題についての私の意見はまた後ほど、十二日になりましょうか、提示をしたいと思うんです。  そこで、きょうはせっかく日本競馬会の皆さんを呼んでおりますので、若干の時間、中央競馬会からの特別国庫納付の問題について質問さしていただきたいと思うんです。  まず第一に、今回特別国庫納付金として三百億引き続き中央競馬会から納めてもらうということになっているんですが、前回も競馬会の問題について議論をしたときに、なるべくならば利益を特別に納めてもらうということはしないような方向に持っていきたいというようなことを聞いておったんですが、今回また三百億の特別国庫納付をしてくれということに対して、直属の所管省である農水省と中央競馬会から、この三百億円を納めろということに対する率直な見解をまず聞かしていただきたいと思うんです。
  95. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) 国の財政状況がきわめて厳しい状況でございます。こういう状況でございますので、日本中央競馬会が第二納付金と合わせまして五百億の特別の納付を行うということが、競馬会の現在の特別積立金の状況でありますとか、あるいは将来の予想される設備投資、将来の不測の事態への備え等から見まして、やむを得ないものではないかというふうに判断いたしまして、競馬会に特別納付の御協力をお願いしたような次第でございます。
  96. 塩田清隆

    参考人塩田清隆君) 競馬会は、日本中央競馬会法第二十七条の定めるところによりまして、勝馬投票券の売り上げの一〇%を第一国庫納付金として、さらに毎事業年度の剰余金の二分の一を第二国庫納付金として国庫に納付するということとされておりまして、この制度の中で対応するのが本筋であるというように考えております。  しかしながら今回、国の財政運営に必要な財源確保を図るため、昭和五十八年度の特別措置として、第二国庫納付金と合わせて五百億円を特別国庫納付するということとされたわけでございますが、競馬会といたしましては、勝馬投票券の売り上げが伸び悩みまして大変厳しい状況にあるわけでございますが、主務官庁であります農林水産省の指導のもとに、臨時のやむを得ない措置として受けとめまして、できる限りの協力をすることといたしたものでございます。
  97. 鈴木和美

    鈴木和美君 所管省の農水省は、笑ってにっこりして、競馬会に出してくれと、やむを得ないというような態度なんですか。
  98. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) いま競馬会から御説明がありましたように、競馬の馬券の売り上げの状況というのが伸び悩みの状況にあることは事実でございます。しかしながら、国の厳しい財政の状況、それからただいまも御説明しましたように、競馬会の積立金、特別積立金の状況等々を総合的に勘案いたしまして、今回の第二納付金を合わせまして五百億円という範囲内でございますれば、競馬会の当面の運営には支障を生じないというような判断をいたしまして、やむを得ないというふうに考えた次第でございます。
  99. 鈴木和美

    鈴木和美君 いや、やむを得ないということを最後に判断したのはいいんですが、それは農水省が主体的に判断したというよりは、大蔵省からいろんな話があってということに理解をした方がいいんですか。農水省自身が、おまえ、ちょっともうけ過ぎるから、よこせということを言ったか。そこをはっきりしてください。
  100. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) 五十八年度の予算の編成段階におきまして、財政当局から特別納付についてお話があったことは事実でございますけれども、農水省といたしましても、そういう厳しい国の財政状況も見まして、あるいは競馬会の方の積み立ての状況、それから将来の設備投資などの備え、そういったものも考えまして、独自に判断いたしまして、やむを得ないというふうに考えた次第でございます。
  101. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、農水省にお願いしておきますけれども、こういう席ですから、はっきり竹下大臣の顔を見ながら、われわれは不満なんだ、竹下さんにくどかれたからやむを得なんだと、そこを私はあなたから答えてもらって議事録に残しておきたいんですよ。ちょっとやってください。
  102. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) 先ほども申し上げましたように、およそ、競馬だけには限りませんけれども、公営競技全体が売り上げの伸び悩みということで厳しい状況にさらされている事実はございます。そういうことで、できれば将来の備え等を見まして特別納付をしないにこしたことはないわけでございますが、しかし一方で国の厳しい財政状況もございますわけでございます。で、今回の五百億という第二納付金を合わせての納付という範囲内であれば、何とか当面の競馬会の運営にも支障は生じない、そういうふうな判断もあったわけでございます。そういうことで、今回の五百億納付につきまして競馬会の方に御協力をお願いしたような次第でございます。
  103. 鈴木和美

    鈴木和美君 競馬会にお尋ね申し上げますが、非常に簡単で結構ですから、現在の収支の状況というんですか、それですね。もう一つ私が聞きたいのは、特別積立金という制度がありますね、この特別積立金というのは何に使うんですか。
  104. 塩田清隆

    参考人塩田清隆君) まず五十七年度の決算でございますが、収入の大部分を占めます勝馬投票券の発売額が、景気の低迷、レジャー活動の多様化等によりまして伸び悩みまして、総収益につきましては一兆四千四百七億円ということでございます。一方、支出につきましては、経費の節減、予算の効率的執行に努めました結果、総費用は一兆三千八百六億円ということでございまして、この結果、昭和五十七年度末の当期の純利益でございますが、六百一億円ということになったわけでございます。  そこで、特別積立金でございますが、六百一億円の半分が積み増しをされるということになりますので、昭和五十七年度の剰余金処分後の特別積立金は総額で三千二百七十七億円でございます。  そこで、特別積立金の内訳でございますが、そのほとんどが競馬場のスタンド、それから厩舎の建物、馬場、その他競馬開催に必要な土地建物等固定資産化されたものでございまして、これが金額にして二千九十五億円でございます。その残りが流動資産として積み立てられたものでございますが、これが金額にいたしまして千百八十二億円でございます。なお、この流動資産の中には五十八年度中に固定資産化される予定のものが二百六十五億円含まれておりますので、これを差し引きますと、残りの九百十七億円が純流動資産ということで保有いたすことになるわけでございます。
  105. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一度競馬会にお尋ねしますが、現在の競馬振興を円滑にやっていく中で、現在の施設とかファンサービスの環境整備というものは、現在の状況でも十分だと思っていらっしゃるんですか。
  106. 塩田清隆

    参考人塩田清隆君) 先ほど申し上げましたように、競馬会の特別積立金の中のいわゆる純流動資産は九百十七億円でございますが、今後、競馬会といたしましては、内容の充実した明るい環境の中でファンに楽しんでいただく必要があるということから、計画的にスタンドの増改築、それから投票業務の機械化その他施設の改善に取り組んできておりますが、この設備投資に必要な資金につきましては、その年度の設備投資予定額が収入で賄えない部分につきましては、最近ずっとそうでございますが、特別積立金の流動資産分を取り崩して充当をし、使用しておるわけでございます。なお、そのほかに、この積立金につきましては、災害あるいは競走馬の疾病等によりまして競馬の開催が中止となった場合の準備金と申しますか、そういう資金としても保有しておく必要がある、こういうことで、私どもとしては現在の資金が必ずしも十分ではないというように考えておるわけでございます。
  107. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま私がお聞きしているのは、結局、スタンドとか場外売り場というんですか、そういう環境整備にしっかりお金を使わないでためておくものだから、そこに竹下大蔵大臣が目をつけちゃって、それでよこせということになるんじゃないですか。だから、もっと徹底したファンサービスをやって余り残さないでおけば、よこせというように言われないんじゃないかという意味で、余り良心的じゃないのかなと私は思うんですよ。  そこで、大臣にちょっとお尋ねしますが、大臣は、こういう競馬とか競輪とかボートというギャンブルに対してどういう認識をお持ちになっていましょうか。つまり健全娯楽と見るのか、かけごとだからあれはいやだというように思っていらっしゃるのか。個人的な感想で結構ですが、お聞きしたいと思うんです。
  108. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大変むずかしい問題でございますが、それぞれ歴史的経過を見ますと、競馬ということになりますと、それはイギリス等等、まさに国全体から、ある意味において一つの国のカラーを象徴するような感じもありますし、そうしてこれがいわゆる国民の大きな象徴的娯楽の一つとして認識されておるというような伝統もあろうかと思うんであります。よって立つ歴史的経過から、ギャンブル性の濃淡の問題はそれぞれあろうかと思いますけれども、今日わが国では、戦災復興とかというような点から他のそういう競技も催されるようになって、それぞれその趣旨において健全に私は進んでおるではなかろうかというふうな認識でございます。
  109. 鈴木和美

    鈴木和美君 大変恐縮ですが、もう一つ大臣にお尋ねしますが、長い歴史もあることですから、私もときどき楽しましていただいておるんですが、そういう競馬というものに対して、競馬を一番だれが支えているというように見るか。もちろんファンということは当然ですよ。しかし従事者、関係者というか、その中でだれが一番重要な役割りを果たしているというように見るか。序列と言っちゃおかしいんですが、点数をつければだれが一番だと思いますか。
  110. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに一つの興行ではございますが、その支えの一番は一般ファンということであろうと思っております。それから馬主の方々、生産者の方々、調教師の方々、騎手の方方、窓口で券をお売りになる方々、そういう大きな構成から、まさに広範な人々によって支えられておるというふうに理解をしております。
  111. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま大臣がおっしゃったそのおっしゃり方は、順序が重要度合いから順に並ばっているというふうに理解していいんですか。
  112. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、鈴木委員のように直接にお世話になるというよりも、場外馬券の方で多少お世話になる程度でございますので、認識の度合いについては、鈴木委員自身がお持ちになっておる認識の方が私の認識より正しいという前提の上に立って、初めから降参して、順番はそちらへお任せいたします。
  113. 鈴木和美

    鈴木和美君 私はちょっと茶化しではないんですけれども、競馬の振興を支えている一番大きいものは、もちろんファンとか馬主ということは当然ですけれども、馬が走ることによって成り立つ事業ですから、その走らせるまでの調教というか、厩務というか、馬丁というか、そういう人たちが大きな支えになっているんじゃないかと思うんです。その人たちが調教しないことには競馬馬としては成り立たないわけですから、そういう意味で、私は厩務員という者が非常に大きな役割りを果たしているという実は認識に立っているんです。  そこで、労働省にお尋ねしますが、昭和三十二年ごろと記憶しているんですが、厩務員と雇用関係を結ぶところがどこかということで、当時大変混乱の時代が一時あったと思うんです。そこで、馬丁というか、厩務員も働く労働者ですから、当然近代的な労働法に基づいて雇用契約をしっかり結びたい。ところが、昔は親方というようなものが厩舎に所属しちゃって、なかなか労働条件の確定が思うようにいかないというようなことがあったと思うんです。そこで、労働省が当時あっせんとか仲介とか、そういうことに立ち至った経過があるので、この機会にどういう時期にどういう労働省のあっせん通達が出たのか、簡単に示していただきたいと思うんです。
  114. 野崎和昭

    説明員(野崎和昭君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、昭和三十二年ごろ、厩務員の方、この方が労働基準法上の労働者であるということは明らかだと思いますけれども、使用者がだれかという点が問題になりまして、私どもの方で実態調査等をいたしまして、労働基準法上の使用者であるための判断の基準といたしましては、雇い入れ、解雇の権限がどこにあるかとか、あるいは具体的な労務の指揮命令関係がどこにあるか、あるいは賃金をだれが払っているかというような点が問題になるわけでございますけれども、そういった点を総合勘案いたしまして、使用者は調教師の方である、そういう判断を下しまして、その旨通達を出し処理しているところでございます。
  115. 鈴木和美

    鈴木和美君 これは昭和三十五年二月十九日という資料なんですが、いまお話しのように調教師と厩務員が労務契約を結ぶ、雇用契約を結ぶというとき、そういう状態にしておって、団体交渉というようなものが、交渉ですね、つまり労働条件の交渉が行われるというのには厩舎と厩務員が行うんですか、それともどういう状態で団体交渉というのが行われるんですか。
  116. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 厩務員の方々の使用者はだれかという問題につきましては、先ほど監督課長がお答えしたとおりだろうと思いますが、現在のところ、厩務員の方々が団体交渉をし、労働協約を締結している相手方と申しますか、使用者は調教師であるという実態になっておると判断しております。
  117. 鈴木和美

    鈴木和美君 いや、私が聞いているのは、労働協約を結ぶ相手は調教師、つまり厩舎の主ですか。それとそこに働いている人とが交渉する場合の状態はどういうふうになっているか、労働条件についての交渉する状態ですね。
  118. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 先生の御趣旨と若干違うかもしれませんけれども、この厩務員の方々の労使関係が一体どこにあるのかということにつきましては、三十二年ごろから労使紛争がございましていろいろもめた経緯がございます。先生御指摘ございましたのは、三十五年の二月十九日に中央労働委員会からあっせんが出た、そのことを指して言っておられるんだろうと思いますが、この場合のあっせん案の趣旨といたしましては、あくまでも労働協約を締結するということ自体は調教師会とやっていただきたい。ただ、それだけではなかなか実質的な解決がうまくいかないであろう。そういう意味で馬主協会あるいは中央競馬会の代表の方々も十分に関心を持って、その団体交渉に助力といいますか、うまくいくような環境づくりをするように努めなければならないんではないか、こういうような趣旨のあっせんが出ておるというふうに承知しております。
  119. 鈴木和美

    鈴木和美君 先回りの答弁をしていただいたんですが、私が言わんとすることは、調教師とそこに所属する労働者と団体交渉する、労働条件の向上などについて交渉するとあなたおっしゃったが、そうじゃないんじゃないかと思うんですよ。いみじくもあなたいま調教師会という言葉を使われたでしょう。調教師と調教師会とは違うわけでしょう。つまり調教師というのは一人なんですよ。調教師会というのは調教師がみんな集まってやるわけでしょう。したがって、いまの交渉の状態というのはもう連合体みたいな状態で交渉されているわけでしょう。調教師会と片一方の方の厩務員の労働組合との間に団体交渉が行われていると私は思うんですよ、いまの状態は。  ところが、ここで今度は農水省にお尋ねしますけれども、そういう状態になっているんだけれども、現在の調教師会と労働組合とが団体交渉を行う、つまり法律的な体はなしているんだけれども、実態が調教師会にはお金がないものだから、団体交渉をするんだけれども、交渉の体をなしていないということに現状あるんじゃないかと私は思うんですが、その認識はいかがですか、監督官庁として。
  120. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) いま先生御指摘のように、労働条件の基本的な事項につきましては、調教師の集まりであります日本調教師会と厩務員の労働組合が話し合いをしているわけでございます。現楽の契約は、その話し合った結果に基づきまして、個々の調教師と個々の厩務員の雇用契約ということになっている、こういうふうに私ども認識しているわけでございます。
  121. 鈴木和美

    鈴木和美君 そこで、今度はまた労働省ですが、そういう状態で交渉しているんだけれども、私が先ほど指摘したように、調教師会の方にはお金がない、お金がないから交渉しても実体が伴わない、そこにストライキがはまってくるというようなことになって、そこで労働省は、調教師会だけと交渉することは適当でないんじゃないかということで、松崎さんのあっせん案が出たんじゃないですか。  そのあっせん案の中ではっきりしておきたいことは、ここに書いてありますように、これは何項ですか、「本あっせん案の受諾にともなうものを含め」、一番後段ですが、「使用者側の債務履行については、日本中央競馬会において、これが担保に任ずること。」ということを言っているというわけです。つまり調教師会だけではだめだ、日本競馬会もそこにちゃんと担保して、よくめんどう見るなり話し合って援助してやれということが、このあっせん案の趣旨だと思うんですが、間違っていますか。
  122. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 確かに当時の中労委のあっせん案にはそのような趣旨のことが書いてございます。これは先ほども若干申し上げたところでございますけれども、法律的には、調教師会と厩務員組合との間の団体交渉というのは行われるべきものであろう。しかし、それだけではなかなか実質的な団体交渉がうまくいかない。そういう意味で、馬主なり中央競馬会というような方々もその団体交渉に十分協力すべきではないか。こういう趣旨であっせん案は出ているんではないかというふうに思っております。
  123. 鈴木和美

    鈴木和美君 つまり調教師会だけでは団体交渉をしても実際上、何というんでしょう、なかなか円満な妥結に至らない、財源上の問題が山てくるから。そこで、中央競馬会もよくタッチをしてやりなさいということであるというように理解しますけれども、それでいいですか。
  124. 齋藤邦彦

    説明員(齋藤邦彦君) 簡単に申し上げればそういうことだろうと思います。
  125. 鈴木和美

    鈴木和美君 そこで、農水省にお尋ねしますが、そういうことだとすると、現在、先ほどの説明では、流動資産が九百十七億であるというお話だったですね。そこで、支出を差っ引いてみたら、たまたま三百億残るみたいな計算になっているものだから、竹下さんが目をつけたということになるわけですね。  そこで、いまの厩務員の労働条件というものについてもう少し円満に交渉が進むようなことにするためには、中央競馬会から、調教師というんでしょうか、そこに対する振興、助成というようなものを常に行っていなければ、いま労働省が述べたようなあっせん案の趣旨を生かし切れないんじゃないですかと私は思うんですが、監督官庁としてそういう御指導をなさる気持ちがありますか。
  126. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) 基本的に、厩務員の雇用主は調教師であるということからいたしますと、基本的原則といたしましては、基本給その他は雇用主である調教師が支払うということでございますけれども、競馬の円滑な施行のためには厩務員の身分関係の安定というのが前提になるわけでございますので、ただいまお話がございましたようないろいろな歴史的経緯も踏まえまして、競馬会の方で諸手当に対します助成でありますとか、あるいは福利厚生施設に対します助成というようなものも行い続けてきているというような現状でございます。
  127. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵省のどなたに尋ねたらいいのかわかりませんけれども、主税局長でないかもしれませんけれども、競馬会の第一次納付金というものと第二次納付金というもの——つまり第一次納付金というのは売り上げの一〇%ですね。それから第二次納付金は利益の上がった半分ということになりましょうか。それを俗称、別な税の言葉で言うと、第一次納付金の方はいわゆる消費税みたいなものだ、それから第二次納付金の方は法人税みたいなものだというように私はとらえたいんですけれども、それは間違いですか、税の性格から言うと。
  128. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) たとえとしては大体そういうことかと思います。
  129. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうしますと、大体たとえでそんなものだというんであれば、私はぜひ農水省、労働省で、先ほどから申し上げてきた厩務員の条件改善に関する、つまり雇用のあり方というものに対してもう少し総合的に考える必要があると思うんですよ。つまり中央競馬会と馬主協会と調教師会とありますね。それから働いている人がいますね。そういうものを、中央競馬会という名前にするか、何々会社というふうにするかは別にして、総合的に考えて、そこと厩務員が雇用関係を結ぶというようにこれから発展した取り扱い考えるべきだと思うんですが、そういう検討をしていただくような気持ちはございますか。
  130. 安橋隆雄

    説明員安橋隆雄君) 御案内のように、調教師は馬主から馬を預託を受けまして調教、管理を行うということでございまして、厩務員はその調教師に雇われている、こういう関係で歴史的な経過をたどってきているわけでございますから、この関係自体がいまここで特に問題が出ているというふうにも思っていないわけでございます。過去におきましては、厩務員と調教師との間のいろいろな紛争で、競馬の円滑な施行が行われないというような事態もあったわけでございますけれども、最近におきましては、円満な話し合いも行われておりますし、そのために競馬会もいろいろ努力をしているというようなことでございます。したがいまして、いま先生がおっしゃいましたような競馬会が直接厩務員の雇用者となるというようなことは、適当ではないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  131. 鈴木和美

    鈴木和美君 時間がありませんので、いずれまた、委員会だけじゃなくて、私は私なりの見解を持っているものですから、その雇用のあり方とこれからの事業のあり方について、ですから別途の機会にまた委員会でなくてもぜひ意見を聞いていただきたいと思うんです。  そこで、最後ですが、大蔵大臣にお尋ねしますが、先ほどから話をしてきたように、たまたま九百十七億という流動資産を持っているものですから、そういう関係でことしも三百億出してくれというようにお願いの儀に及んだというんだと思うんですが、いつまでもこういうような、つまりファンのサービスに使わなきゃならぬお金をため込んだものを、それを持っていくというやり方は、余り適当でないと思うんですね。したがって、今後こういう問題のあり方について、基本的な考え方で結構ですから、大臣見解を聞いて、私の午前の質問を終わりたいと思います。
  132. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに設備投資によるファンへのサービスの向上でございますとか、本来あるべき問題もあろうかと思うんであります。したがいまして、今後考えなきゃいかぬ問題というのは、安易にこういうものをすぐ念頭に置くべきものではない、そういう基本姿勢には変わりございません。
  133. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後三時まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ─────・─────    午後三時一分開会
  134. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  135. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、午後の質問は、電電公社の納付金問題について御質問したいと思います。  本件については、すでに五十六年から実施されている問題でございますので、基本的な部分については当委員会でもすでに議論があったところだと思います。しかし私は再確認の意味も含めまして、多少ダブるところがあるかもしれませんけれども、勉強の意味でもお聞かせをいただきたいという立場で質問したいと思います。  まず第一は基本的な問題ですが、電電公社における収支差額は予算段階から、資本勘定、つまり債務償還や建設投資のための資本勘定の重要な資金源として計上されてきたと思うんです。仮に予算を上回った場合においても、すべて資本勘定に繰り入れられることが法的に定められているわけであります。したがって、公社法第六十一条に言う利益金の積立金はすべて有形固定資産であると思うんです。そういう意味から申し上げますと、民間企業における内部留保金とは全く性格を異にしていると思うのであります。つまり利益積立金から減額し今回整理することで国庫納付することは、現実的ではないと思うんでございますが、電電公社の基本的な考え方をお尋ね申し上げたいと思います。
  136. 勝屋俊夫

    説明員(勝屋俊夫君) お答えいたします。  電電公社といたしましては、当面、高度情報通信システムの形成、あるいは料金の遠近格差の是正というような重要な経営上の課題を抱えておることは先生御承知のとおりだと思います。そういうような現状におきまして国庫納付金を納付するということは、こういうような経営に非常に大きな支障を与えることに相なるわけでございまして、私どもといたしましては、私どもの経営努力の成果は、まず料金の是正あるいはサービス改善の投資などから利用者に還元すべきである、こういうように考えておるところでございます。  したがって、こういうふうな国庫納付金は公社としてもとより望むところではございませんが、一方国の財政再建の緊急性というようなことを考えますれば、政府関係機関としてこういうような御要請におこたえするのもやむを得ない措置である、こういうふうに受けとめておる次第でございます。
  137. 鈴木和美

    鈴木和美君 ただいまの御答弁を伺いますと、電電公社としては法的にも現実的にもこういう利益があれば利用者に還元という立場をとるべきであって、基本的には余り賛成でない、しかし国の要請だからやむを得ない、そういう態度であるというように伺ってよろしゅうございますか、いまの態度は。
  138. 勝屋俊夫

    説明員(勝屋俊夫君) 基本的に賛成でないというふうなことは、ちょっとこの席で申し上げるわけにはまいりませんが、先ほど私が御答弁申し上げましたとおり、国家財政の再建の緊急性を考えれば、政府関係機関の一員としてはやむを得ざる措置である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  139. 鈴木和美

    鈴木和美君 まあ余り賛成でないはずですから、これ以上質問は申し上げませんが、大蔵省にちょっとお尋ねします。  私は電電公社の経理のあり方については必ずしも十分修得しているわけではございませんが、今回、損益勘定じゃなくて資本勘定の方にこれが繰り入れられたということは、どういう経過とどういう議論の整理を行って資本勘定の方に入ったんでしょうか。
  140. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは五十六年度の財確法のときに、四千八百億円の御協力をいただきましたときにいろいろ検討されたわけでございますが、損益計算上費用となる方式をとりますれば、それは結局利用者に直接の負担をかける結果にもなりかねない、そういうことで公社が過去に累積した積立金から納付していただく、こういう方法をとらしていただいたわけでございます。この臨時納付金は、いま御答弁がありましたように、臨時かつ特例的な措置として公社の御協力を求めまして、公社の過去の利益の蓄積である利益積立金を取り崩して納付する、こういうことにしていただいた結果、資本勘定から支払うこととしていただいているわけであります。
  141. 鈴木和美

    鈴木和美君 過去の積立金ということは、結局、利益は利益ですね。それが何で損益勘定に入らないで資本勘定に入るのかなというのが、いまの説明でもよくわからないんですが、もう一度説明してくれませんか。よくわかりません。
  142. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 五十六年度に決めましたときに、その計算のやり方はいろいろあるわけでございますが、五十五年度の公社の自己資本の比率が過去の平均自己資本比率を上回っている程度を見まして、その上回っている程度、過去の平均が大体三三・五%とか六%とか、とり方によっていろんな数字があるわけでございますが、それと五十五年度の自己資本比率三八・六%の差を五十五年度の総資本に掛けまして、大体四千八百億円という数字が出るわけであります。それを参考にしましてこの四千八百億円を決めさしていただいたわけでございます。したがって、その資本勘定における公社の過去の利益の積み立て、それが過去の平均を上回っている率を納付していただく、こういう構成をとりましたために資本勘定で処理をする、こういうことになったわけでございます。
  143. 鈴木和美

    鈴木和美君 電電公社の場合には、利益が上がった場合に、その利益の還元の仕方というのは、先ほどのお話ではございませんけれども、料金でないにしても、たとえば新規事業とか新しい計画をする場合にお金を借りながらやっていますし、またその利益金はそういうふうに使うということになっているわけですね。だから、そういうことであれば、資本勘定に入れるということは、国が金を貸してやらせることをまた取り上げて、またその取り上げたものに対して今度は電電公社の方が逆に公社債とか何々債を売って埋め合わせするというようなことのサイクルになるわけでしょう。だから、早い話、大蔵省が金を借りなきゃならぬものを電電公社に金を調達させるというようなことのために、資本勘定の方に入れたというふうにしか私は理解できないんですが、おかしいですか。
  144. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) そういうことではございませんで、四千八百億円というのは、過去に積み立てられているもの、ごく簡単に申しますと、過去の利益から積み立てられているものを崩して払っていただく、それを四年間に払っていただくというお約束をしたわけでございますが、今回の措置は、五十九年度分として予定されていたものを五十八年度に繰り上げて払っていただくということをお願いしている。  そうしますと、御指摘のようにその間の資金繰りは確かに問題になります。積立金を崩して払っていただくわけですから、公社としての資金繰りとしては確かに資金が不足する部分が出ます。それはしかし公社全体の資金収支を見まして必要な資金措置はしてあるわけでございますから、その支払いには差し支えないものと考えております。
  145. 鈴木和美

    鈴木和美君 電電公社にお尋ねしますが、昭和五十六年、五十七年度の収支の状況というのは、利益がどのくらい上がったかということを尋ねたいんですが、いかがでしょう。
  146. 勝屋俊夫

    説明員(勝屋俊夫君) お答えいたします。  五十六年度におきましては、当初予算上九百三十八億円の収支差額を見込んでスタートしたところでございますが、結果的には事業収入におきまして約千七百八十億円の増収、支出につきましては約八百四十億円の節減が図られまして、収支差額は三千五百五十八億円となったわけでございます。  また、五十七年度につきましては、当初一千七十六億円の収支差額を見込んでおったところでございますが、これは、御承知のように、五十七年度の決算は現在計数の取りまとめ中でございまして、まだ最終的にははっきりした数字を申し上げるには至らないわけでございますが、事業収入につきましては一千百億円以上の増収、事業支出につきましては一千億円以上の節減が図られると、こういうふうに見込んでいる次第でございます。  したがって、このような見通しによれば、五十七年度の収支差額は少なくとも三千二百億円を上回ると、こういうふうに考えておるところでございます。
  147. 鈴木和美

    鈴木和美君 五十七年度はまだ見込みだと思うんですが、増収分で千百億円、それから節約分で約一千億円というように承ったんですが、この節約の一千億円というものはどういうことの節約で一千億円上がったと見込まれますか。
  148. 勝屋俊夫

    説明員(勝屋俊夫君) お答えいたします。  支出の節約分につきましては、基本的には予算執行に当たる姿勢を非常に堅実にするということが第一点でございます。そういうような堅実な予算執行に基づきまして、さらに五十六年度から新たに導入したいわゆる月次決算というような手法を軸にいたしまして、事業全般にわたり厳しい見直しをいたしまして、経理の効率的な使用あるいは金融費用の節減に努めたところでございます。そういうような結果、先ほど申し上げましたような数字の節減が生じる見込みでございます。
  149. 鈴木和美

    鈴木和美君 月次決算という言葉が出たんですが、それはどういうことですか。
  150. 勝屋俊夫

    説明員(勝屋俊夫君) お答えいたします。  月次決算というのは、公社の中で二千数百の事業所がございますが、そのすべての事業所におきまして、毎月の収入支出の決算をできるだけ早く把握いたしまして、それを計画と実績とを対比する、あるいは前年度との比較などを通じまして、会計処理の適正化はもちろんでございますが、サービスの提供あるいは業務遂行の円滑化、あるいは増収努力というようないろいろの問題につきまして分析、評価を行いまして、これを翌月以降の業務に生かす、こういうことによって事業の活性化を図ろうとするものでございます。  その具体的な進め方といたしましては、地域の特性を踏まえながら、各機関の創意工夫を尊重してできるだけ自主的、機動的に実施していく。こういうふうにしておるわけでございまして、この結果、予算執行の適正化、効率化につきまして公社全体に責任感が非常に徹底してまいった。その結果、各機関においてサービスの向上、収入の確保、業務内容の見直しによる経費の効率化というような点で見るべき成果を生んでいると、こういうふうに考えているわけでございます。
  151. 鈴木和美

    鈴木和美君 月次決算というと、ある意味では理解はできないわけじゃないんです。つまり利益目標とか管理目標という意味なんでしょうから、それはそれなりに私はわかるんですが、言葉をかえて言うと締めつけということですな。締めつけ目標を徹底したというように理解できないわけではないんじゃないですか。
  152. 勝屋俊夫

    説明員(勝屋俊夫君) お答えいたします。  私ども月次決算というこの手法の中で考えておりますのは、直接的な締めつけというふうなことでは全くないわけでございます。私どもがやっております手法は、各機関にそれぞれの利益目標を与えるとか、収入目標を与えるというふうなやり方、あるいはその節減の目標額を示してそこまで絶対節減させる、こういうようなことではございませんで、先ほど申し上げましたように、各機関の創意と工夫を尊重して、できるだけ自主的、機動的に実施させるということでございます。  やや具体的に申し上げますと、たとえば収入面につきましては、お客様に対するサービスの向上あるいはいろいろな便利な各商品の販売活動などを通じまして増収施策をする。その増収施策の結果が一定の増収の金額としてあらわれてくる。支出面につきましても、直接的に職員を締めつける、あるいは設備に本来かけるべき金をかけないというふうなことではなしに、仕事のやり方、進め方を見直すことによりまして、結果として経費の効率的な使用が図られる、こういうふうに考えておるところでございます。
  153. 鈴木和美

    鈴木和美君 それぞれ創意工夫をもって経費の節減に当たるということは、それはそれなりに決して悪いことではないと思うんですよ。ただ、創意工夫という言葉は言葉としていいんですけれども、実際に支出の面で節約をするということを、締めつけというよりも、自動的にそういう気持ちを起こさせるというんですか、そういうようなやり方は最近では余り聞かないんですが、最初取り入れられたとき電電公社の現場あたりにあいさつに行ったときに聞いた話としては、余り評判がよくなかったんですね、この月次決算方式というのは。  そういう意味で、最近は余り聞かないことになっていますけれども、いずれにしても、支出の面で節約されて一千億上がったということは、電電公社流に言うと、これはある意味では経費の節減ですから、合理化という言葉に置きかえてもいいですか。
  154. 勝屋俊夫

    説明員(勝屋俊夫君) 先生御指摘のとおり、ある意味では合理化というふうに置きかえていただいても結構でございますが、いま先生がお触れになりましたことについてちょっと触れさしていただきたいと思います。  ただいま先生御指摘のように、この月次決算を導入いたしました当初は、この手法に対する誤解というようなものがいろいろとございまして、いま先生御指摘のようないろんな率直な声というのが私どもの現場の中にあったことは、否定できないところだと思います。しかしながら、そういうようなことではない、私が先ほど御答弁申し上げましたような趣旨だということを繰り返し繰り返し浸透することによりまして、最近はこの月次決算の本来の趣旨というものがようやく現場の隅々まで徹底しつつある、こういうふうに認識しているところでございます。
  155. 鈴木和美

    鈴木和美君 私も、ある意味では、効率化とか合理化によってそれぞれの努力が払われて利益が上がったというように理解をしているわけですよ。それは電電公社の労使の関係は、いろいろな問題は個々にはありましょうけれども、お互いの話し合いの方式が非常に先進的だと思って私はいつも敬意を表しているんですが、そういう意味で、誤解のないような労使の話し合いというものをぜひこれからも進めてもらいたいと思うんです。  そこで、いま答弁がありましたように、仮に節約によって一千億上がった、それは合理化であるということだとする。  ちょっと話題が変わりますけれども、電電公社には労使間で合理化に関する基本的な合意で成立した労働協約がございますね。どんなものかちょっと説明していただけませんでしょうか。
  156. 大星公二

    説明員(大星公二君) お答えいたします。  昭和三十二年に全電通労働組合と私どもとの間に「合理化の進展に伴う労働条件等に関する基本的了解事項」というのが結ばれているわけでございますが、その中の主なことを二、三申し上げますと、一つは、企業の合理化の進展に伴いましてそれなりに労働条件を改善していくという点が一つでございます。  それから自動化等に伴いまして、たとえば人が要らなくなるというようなことが起こるのでございますが、そういう場合には極力職種転換あるいは勤務先を変えるなど——配置転換と申すのでございますが、そういうようなことを全力を尽くしていろいろやりくりいたしまして、絶対に首切りのようなことはやらないというようなことが一つございます。  それから、いずれにいたしましても、技術革新等新しい技術の導入に伴いまして、いろいろ仕事のやり方や何かが大幅に変わる場合に、その受け入れ側の職員の労働の態様なんかにつきまして、いろいろ受ける側からの意見といいますか、考え方ども聞いてくれというようなことでもって、事前協議制というのをやってございます。  そして、実際に導入する二カ月前ぐらいに大体こんなような計画で入れるということをあらかじめ労働組合の方に話しまして、組合の方で検討いたしまして、これについてはこんなふうにやってもらった方が労働態様としてはベターではないかというような話し合いをいろいろやっております。しかしながら、すべてそれをのむわけにはいきませんものですから、最終的に話し合いがつかない場合には公社が一方的にやるというようなこともございますが、そういうふうに事前協議制などを導入しながら労使の間で円滑に合理化を進めるようにしてございます。
  157. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま御説明がありました「合理化の進展に伴う労働条件等に関する基本的了解事項」という昭和三十二年十一月三十日の協約の説明だと思うんですが、そこで一項に、「企業合理化の進展に伴い、労働条件は向上させる。」と、こう書いてありますね。この協約を当てはめようとすれば具体的にどういうふうに運用されてきているんですか。
  158. 大星公二

    説明員(大星公二君) 御説明いたします。  労働条件の向上というのは個別、具体的な場合だとか、かなり幅広くいろいろな場合があるのでございますが、たとえば自動化までには、昔からの非常に老朽化した局舎でもって、暗くかつ狭隘なところでもって執務をしていたというような場合があるのでございますが、そういう場合はは極力自動改式の時点におきまして局舎を整備いたしまして、光だとかいろいろなスペースなどもある程度考えまして、いわゆる職場環境の改善をやるだとか、あるいは単純作業は省力化するだとか、それから特に最近交換機などには実質的にはコンピューターのような非常に高度な技術が入ってまいります。そういう場合は、それを十分受けられるようにかなりの事前の訓練というものを相当時間的にも金もかけましてやってございます。  またそのほか、御存じのとおり、週休二日制というような大きな流れがございますものですから、それらにも対応いたしまして徐々に週休をふやしていく。また公共企業体というようなことで、手当等につきましては、当然のことながら一定の枠があるのでございますが、その現行制度予算の範囲内でそれなりに関係方面の御理解を得ながら、手当等の支給もやってきているというようなことでございます。
  159. 鈴木和美

    鈴木和美君 俗称、労働条件の向上を図るという、その労働条件の定義なり内容というのは、それぞれのところでいろんな解釈があるようですが、仮に労働条件というものが、賃金とか時間とか仕事量とか、その環境とか、そういうような分類に分けたとすると、いまお話しのように、同じ賃金でも基本賃金と賞与みたいなものがありますね。そういうものはこの労働協約に基づいて、電電労使の場合には、特別にそういう賞与制度とか、賃金についてはこれはなかなか当事者能力があるようでないわけですね、現在は。そういう意味で賞与制度とか労働時間について当事者能力を発揮して労働条件の向上を図ったというようなことはあるわけですか。
  160. 大星公二

    説明員(大星公二君) 基本的には先生いま御指摘のとおり、公共企業体ということの性格から、いわゆる基本賃金については特に電電のためにどうのこうのということは不可能でございますが、しかし考えてみますと、事業体として当然ながら合理化努力をすることは、前提でもって、毎年ベースアップができているということが一つあるんでございますね。  それから電電固有の問題につきましては、基準外のところで、言うならば、年間の臨時給与というようなところで関係方面の御理解をいただきながら、当然のことながら予算、つまり給与総額の中ででございますが、一時金のような形のものをいただいていくということでございます。
  161. 鈴木和美

    鈴木和美君 ちょっと抽象的かもしれませんけれども、「合理化の進展に伴い」という、「合理化の進展」という言葉とその時間的なものはどういうふうに考えたらいいのですか。たとえば合理化の実施に伴って労働条件の向上を図るという協約を書いてあるところもあるし、電電さんの場合には進展に伴って労働条件の向上を図る。進展に伴うというその進展というのはどういうことを指すのですか。
  162. 大星公二

    説明員(大星公二君) 先ほどお話し申し上げましたように、直接的に結びつくのは、たとえば局舎の合理化とか何か環境整備というようなことでございますが、一般的に手当とかなんかいうような問題につきましては、そういったようなものをやった結果業績が具体的な数字であらわれた場合に、予算総則の範囲内で関係方面の御理解をいただいてそれなりに支給しているということでございます。
  163. 鈴木和美

    鈴木和美君 電電公社の場合には第何次合理化計画という、第何次というのがよくつきますね。  私はいまこの協約を中心にして質問したんですが、私の知ったり見た限りにおいては、今回のこの増収分も一千億も支出の面で上がっている。つまりそれも合理化であると。みんなにいろんな創造性を生かしてもらって知恵を出してもらったと。ある面から見れば、ちょっと金の使い方もシビアになったというようないろんなことを総合して、一千億というのは私は上がっているんだと思うんですよ。したがって、この協約から言うと、もっと電電労使において当事者能力を発揮して労働者に還元できる、また還元しなきゃならぬという意味のことの、つまり労働協約を締結してあるわけですから、私はもっと大胆にその点をおやりになったらいいんじゃないかと思うんですよ。それがよそばかり見なきゃならぬ。まあ、よそばかり見ているわけじゃないんでしょうけれども、結果として横並びに何でもさせられるというかっこうになりますね。職員にしてみれば、何のために苦労しているのかというようなことになって意欲かわかないんじゃないでしょうか。  そういう意味では、もう少しこの一時金などについても、今回の月次決算によるそういう制度を導入したことによっての経費節減が行われるというようなことについての対応策をもっと大胆におやりになったらいいんじゃないかと思うんですが、それに関する基本的な考え方はいかがですか。     ─────────────
  164. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 委員異動について御報告いたします。  本日、宮本顕治君が委員辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。     ─────────────
  165. 大星公二

    説明員(大星公二君) 基本的な考え方は先生のお考えで結構だと思うのでございますが、一方では、先生御案内のとおり、私ども公共企業体という企業特性がございますし、それから御案内のとおり、電気通信事業を公衆電気通信法等によりまして法的な独占を与えられるというようないろいろな特殊な状況もあるわけでございます。  そんなことから、私どもは民間の場合と違って、公共企業体としての一定の節度といいますか、そういう中での合理化に対応するところの反対給付というものを関係方面の御理解を得ながらいままでいただいてきたつもりでございますし、今後もそういう努力を続けていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  166. 鈴木和美

    鈴木和美君 現行の公共企業体の公社制度では、予算総則とか給与総額制度があって、電電の労使においていろんな苦労をなさっておっても、現行の制度の中ではどうにもならぬ。したがって、現行の制度がえをしないと、条件向上とか労使の円滑な話し合いが進まないというようなことに電電公社の関係者は考えておられるようだというような話をよく聞くんですが、現行の制度を変えなければ円満な労使の話し合いができないというようにいま思っていらっしゃるんですか。
  167. 大星公二

    説明員(大星公二君) 立法論的な話でございますので、大変むずかしいことでございますが、従来、私ども電電公社に与えられました電気通信事業の社会的な使命を果たすに当たっては、それなりの企業努力とそれに対応する従業員に対する還元というのをそれなりにやってきたつもりでございます。世上いろいろ話が出ておりますのは、臨時行政調査会の電電公社の経営形態絡みで、電電公社個人、個人といいますか、企業個人といいますか、一応現在の公共企業体の一員ということを離れて、一般論として、今後電気通信事業というものが非常に変化し発展していく過程でいろいろ経営形態のあり方というのは考えられるだろう、そういう論議の中で、一つ考え方として弾力性を与え、より効率化を進めるというような話も出ております。
  168. 鈴木和美

    鈴木和美君 私の自分の個人的な見解は、現行制度でも予算制度とか給与総額制度にもう少し弾力性を持たせるような、つまり早い話は、電電公社に当事者能力をもっと持たせる、そういうようなことができないわけはないと思うんですよ。それがただいま臨調の経営形態の論議がたまたま複合しちゃっているものですから、なかなか話が進まないということがあると思うんですが、ぜひ電電公社においても、せっかく労使がここまで苦労してやっている話なんですから、職員に報いられる、流した汗が報いられるみたいなそういう制度と、それから対応というものをしっかりやっていただきたいと思うんですよ。これは電電公社にお尋ねしているわけですけれども大蔵省もそこのところはしっかり電電の労使の状態というものを見るべきだと思うんですね。何でも横並びで、あれはだめだ、これはだめだ、カラ超勤がどうだなんか言うみたいな、重箱の隅を突っつくみたいなことじゃなくて、もっと大きな視野に立って、そういう努力に対する報奨、表彰というような意味でも対応をこれからやってもらいたいというように大蔵省にもお願いをしておきたいと思うんです。別に答弁は要りません。  さて、それでは郵政省にちょっとお尋ねしますが、いま電電公社からお話を承っておりますと、こういう利益金というものは国庫納付というようなことで特例で持っていかれるということよりは、料金の還元というような、つまり利用者に還元すべきじゃないかというような御意見もありましたが、私も実はそう思っているんです。それが、お金がたまたまそこにあるものですから、すぐ持っていかれるんですけれども、本来は利用者に還元するという立場に立ってこういう問題の利益の処分というのが行われるべきだと思うんですが、郵政省の考え方はいかがでしょうか。
  169. 吉高廣邦

    説明員(吉高廣邦君) 臨時国庫納付金の件につきましては、先ほど公社からも御答弁申し上げましたように、国の財政の緊急な事態ということで、やむを得ざる措置として国会の御審議を経て現在の仕組みになっておるわけでございますが、先生いまお話の収支差額をどういうふうに見ていくかという問題につきましては、私どもといたしましても、できるだけ利用者の立場を配慮した、あるいは利用者に還元していくということを基本に考えていくべきだと考えております。  そのような見地から、利用者への還元のための施策といたしまして、サービスの維持改善のための設備投資にそうした資金を充当するということのほかに、利用料金面におきまして、これまで五十五年には夜間通話料金の引き下げ、五十六年には遠距離通話料金の引き下げ、日曜祝日料金の割り引きを行いまして、なお今国会におきましても、さらに遠距離通話料金の引き下げを図るために所要の法案を御審議願っておるところでございます。
  170. 鈴木和美

    鈴木和美君 衆議院の大蔵委員会だったと思うんですが、郵政省は、このような四年間にわたって千二百億ずつ召し上げるというようなやり方について、郵政大臣としては今後絶対にやらない、賛成しないというような態度を表明されたように聞いておりますが、郵政省の本件に関しての基本的な態度というか、これからはこういう問題が起きたときにどういう態度をおとりになるのかということについてお尋ねしたいと思うんです。
  171. 吉高廣邦

    説明員(吉高廣邦君) 五十六年のときにもいろいろ御論議があったわけでございますけれども、五十六年の法律が臨時かつ特例的なものであるということで措置されたところでございます。私どもとしてそのように受けとめておるところでございますが、国の財政が一日も早くこうした事態のないように願っているところでございます。
  172. 鈴木和美

    鈴木和美君 郵政大臣が衆議院の大蔵委員会で、絶対にこういうことには反対である、今後そのように対処をしたいということを答弁なさったと思うんですが、いかがですか。あなた大臣のかわりにここで答弁してくれませんか。
  173. 吉高廣邦

    説明員(吉高廣邦君) 大臣が答弁しましたことはそのとおりでございます。
  174. 鈴木和美

    鈴木和美君 そこで、時間がございませんので最後ですが、いままで電電公社の問題について質問してまいりましたけれども大蔵大臣がおりませんので、大蔵省から最後に見解を聞いておきたいんですが、今回の国庫への特別納付金というものは、電気通信事業の使命やいま議論をしてまいりました独立採算制というものの堅持から言っても、本来あるべき姿ではないと思うんです。もちろん、特別異例であるという言葉をはっきりつけているように、あるべき姿でないということは大蔵省もこれは認めているところだと思うんです。そこで、今後公社財政の安定の立場からも、このような方法というものはもう絶対にとらないと、郵政大臣と同じような見解大蔵省から表明していただきたいと思うんですが、いかがですか。
  175. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 先ほど来御質問を伺っておりまして、御質問の御趣旨は一々ごもっともだと拝聴しております。  今回の繰り上げ納付によりまして、五十六年の財確法によります特例国庫納付金の総額が全部完了することになるわけでございます。今後、将来の問題につきましては、ただいま御質問ございましたけれども、国の財政状況あるいは公社の財政状態、こういったものを考えると重大な関係があるわけでございまして、したがいまして、いまこの時点でこの問題についてやるとかやらないとかいうことを言及する段階ではないと思いますが、絶対にやらないということもいまここで申し上げることもできませんけれども、しかしいずれにいたしましても、少なくともこういった問題につきましては、安易に、イージーにやるべき問題ではない、かように考えているわけでございます。
  176. 鈴木和美

    鈴木和美君 最後にもう一度お尋ねしますが、人のふところに手を出して盗むようなことはしないということに約束できますか。
  177. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 御趣旨はごもっともでございまして、今後国の財政状態が十分改善をされまして、こういう事態が起こらないように私どもは念頭に置いてまいりたい、かように考えております。
  178. 多田省吾

    ○多田省吾君 昭和五十八年度の財源確保法案につきまして基本的な問題から若干お尋ねをいたします。  五十八年度予算は、伸び率一・四%で、昭和三十年以来二十八年ぶりの超緊縮予算でございます。一般会計の規模は五十兆三千七百九十六億円ですが、これを賄う税収は三十二兆三千百五十億円しか見込めないわけで、残り十八兆円余りは公債発行と税外収入に頼らざるを得ないということになったわけです。しかも国債につきましては、その消化面からの制約も強いために、十三兆三千四百五十億円にとどめて、あとは税外収入の増加を図って四兆七千百九十六億円を確保することとなっております。この国債につきましても、赤字国債脱却ということから言えば、まだまだ大変な状況です。  ただいま議題となっておりますこの五十八年度財源確保法案、これによりますと、特例公債の発行で六兆九千八百億円、国債費定率繰り入れ等の停止によって一兆三千九百七十三億円、それから特別会計、特殊法人からの繰り入れ、納付によって税外収入四兆七千百九十六億円のうちの四兆七十七億円を確保しようとするものでございますが、この財源確保法案は、財政収支の不足分を可能な限りあらゆるところからかき集めて帳じりを合わせるための手段としたという性格を持っております。財政再建が達成されるまでに毎年同じようなかき集め作業を繰り返すことになるのではないかと懸念されますが、この点大蔵省は今後どのような見通しを持ってやっておりますか。
  179. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 午前中の本委員会でも御議論がありましたように、財政の状況は容易でないことでございまして、今後歳出を切り詰めて、あるいは税外収入等にもあらゆる努力を傾注していかなければならないと思います。  いま、あらゆる財源をかき集めてと、こうおっしゃいましたけれども、私ども今後財政改革を進めてまいります途中の段階では、過去に蓄積されたものはすべて取り崩す、あるいは先に延ばせるものはできるだけ延ばしていくというふうな努力をして、その過程の中でまた制度見直しにも取り組みまして、できるだけ早く特例公債に依存する体質から脱却をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  180. 多田省吾

    ○多田省吾君 この財源確保法案は法律の体系からいってもちょっと無理があるのではないか。特例公債の発行と特別会計、特殊法人からの繰り入れ、納付というものは歳入項目に属するものである、国債費定率繰り入れ等の停止は歳出項目に属するものである。これらを一まとめにして一つの法案とするのでは、法律の体系としては大変不自然だという非難もありますが、これはいかがですか。
  181. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 確かに定率繰り入れの停止は歳出にかかわる問題でございますし、税外収入は歳入にかかわる問題でございます。あるいは特例公債の発行も歳入面の問題でございます。そこで、私どもはこれを歳入確保法ではなくて財源確保する法律、こう定義づけているわけでございます。  まあ、こういう問題につきましてはどの範囲のものを一括すべきか、あるいは国会の御審議のためにはそれぞれ御審議をいただくべきかどうかという問題がございますが、私どもが内閣法制局に御相談をいたしましたところ、内閣法制局としても、一つの基準をもって考えなければならない、その法案の各事項が相互に関連して一つの体系を形づくる場合に一緒にすることが認められる、こういうふうな見解でございまして、今回この特例法にまとめましたものは、特例公債の発行をお認めいただく権限をいただくということ、それに関連いたしまして定率繰り入れの停止をお願いをしております。これは定率繰り入れの停止を五十八年度に行おうとすれば、結果的にどうしても特例公債の増発につながってしまいます。したがいまして、この定率繰り入れの停止と特例公債の発行は公債制度に関する措置であるという点で共通をしておりまして、また停止によって特例公債の発行額を縮減できる、こういう点で共通な面がある。さらに税外収入の確保、定率繰り入れの停止、これらは広い意味で国庫内部における繰り入れに関する措置であるという点で共通をしている。大きく五十八年度の財源対策であるという共通の目的のもとに、それぞれそういった面で共通の面を持っているということで、ここまでのものは一緒にしてもよかろう、こういう内閣法制局の了承をいただいて法案の御審議をお願いしている次第でございます。
  182. 多田省吾

    ○多田省吾君 歳入確保法ではなくて財源確保法だからよろしいのだという御説明ですが、ちょっと苦しい御説明でございます。  それじゃ、その財源確保のための法改正であるならば、税外収入四兆七千百九十六億円を確保するために財源確保法以外にも数本の法律改正が必要なわけでございますけれども、なぜこの財源確保法案に盛り込まなかったのか、その辺の事情はどうですか。
  183. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) ちょっといま御答弁漏らしておりましたが、そのほかに制度の恒久改正になるものはそれぞれの法律の改正でお願いすべきである。五十八年度の臨時的な措置のものをこの財確法にまとめさしていただいたわけでございます。  そこで、いま御指摘のように、造幣局特別会計法の改正、いわゆる補助貨の取り崩しでございます。あるいはたばこの定価法の改正というものは、これはそれぞれの制度の恒久的な改正でございますので、これは別途御審議をいただくことにいたしまして、この一括法から外してあるわけでございます。
  184. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは制度改正だから別法案にしたとおっしゃいますけれども昭和五十六年度の財源確保法案におきましては、電電公社の納付金についても四年間にわたる措置を講じておりまして、これはまさに制度改正とも言うべきものでありますが、これはどういうわけでございますか。
  185. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 五十六年の電電公社からの特別の納付金をいただくのは、これはそのときの臨時的な措置でございまして、電電公社制度そのものの改正ではないわけでございます。  また、四年間にわたる納付をしていただいていますが、四千八百億円を納めていただくということはそのときに決めていただいたわけで、その納付を四年間に分割して払っていただく、こういうことでございますので、五十六年度のときはその支払いが四年にわたる点も入っておりましたが、今回の財確法では五十八年度の単年度限りの措置だけを一括法にまとめさしていただいております。
  186. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公債の発行とそれから税外収入の増収策という異質のものを一つの法案にまとめることすら疑義があるのに、先ほど申しましたように、この法律案は加えて歳出削減の手段としての国債費定率繰り入れ等の停止措置、こういう正反対の内容を持つものまで一括して盛り込んでおります。こういう財源確保法案のようなものを、私はことしだけの異例の措置とは思っておりますけれども、もし財政再建が着実に進行しなかった場合、また五十九年度も六十年度もこういったものが出てくるんじゃないかと非常に恐れておりますが、今後のお考えはどうですか。
  187. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 国の財政が容易ならぬ事態でございますから、けさほどからもお話にありましたように、あらゆる努力をし、また制度見直しも行っていく考え方でございます。その過程の中では、法律の改正をお願いせざるを得ないものも多々あろうかと思います。  そこで、私どもはどの範囲をまとめてお願いし、どこは、どれは別々にお願いする、これは国会の御審議の権限とも関係があることで、余り差し出たことを申し上げるべきではございませんが、しかし私ども考え方といたしましては、似たようなものはまとめて審議をお願いした方が御理解をいただきやすいのではなかろうか。特例公債の発行をお認めいただく場合に、それと関連した措置をとっております場合は、それをまとめて御審議をいただいた方が、あるいは御理解を得やすいのではなかろうかという考え方もありまして、こういう措置をとっているわけでございまして、今後いろんな面でまた関連する法案を一緒に審議していただくことも全くあり得ないわけではないと考えております。
  188. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、特例公債の発行と国債費定率繰り入れ等の停止に関連しまして、国債の問題について若干質問します。  金融機関における国債窓販はまだ始まったばかりでありますけれども、金融機関別の販売実績あるいはその特徴などをひとつ簡明にお答えいただきたい。
  189. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 正確な報告は、五月二十日まででございますので、正確な数字ではございませんが、ヒヤリングいたしましたところによりますと、全体で九百五十億販売できております。主なところは都市銀行三百四十、地銀が二百五十、信託銀行が百四十五、農林中金が百十と、こういうようなふうになっております。  感じといたしましては、窓販の最初の月であるにもかかわらず、すべり出しといたしましては、まずまずであったのじゃないかというふうに考えられます。
  190. 多田省吾

    ○多田省吾君 銀行サイドには、将来のディーリング認可を早めるために窓販の実績をつくっておきたいという意向もあるようでありますが、そのような傾向は見られるのですか。
  191. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) この銀行等によります窓販は、まさに国債の円滑な個人消化の促進を図るものでございまして、そのディーリングに結びついているものとは考えていないわけでございます。  ディーリングがいつ認められるかにつきましては、まだ結論が出ておりませんわけでございます。しかも、私どもといたしましては、ディーリングにつきましては、非常にリスキーな面がございますので、仮にこれが認められまして、具体的に認可をしていくというふうな段階になりましても、窓販とは別の観点から慎重に判断していくべきものと考えておりまして、そういうふうな意向は事前にも金融界に伝えてございますので、お尋ねのように、金融機関が窓販の実績を上げることによりましてディーリングの認可を得ようということを期待したものとは考えておりません。
  192. 多田省吾

    ○多田省吾君 ディーリング業務は、公社債売買によって利ざやや手数料を嫁ぐことになりますけれども、ディーリングによって赤字を出さないで済むのは銀行でも幾つもないのではないかと、こう言われておりますが、大蔵省はこれをどのように見ておりますか。
  193. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) いま申し上げましたように、ディーリング自体はまだいつからというふうなことが決まっておりませんわけでございますから、具体的な御質問にお答えするわけにはまいらないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、仮に認められた場合に、具体的な認可をするに当たりましては、その点なども十分考慮しながら判断していくことになるものと考えております。
  194. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、国債の銀行窓販に加えて、今度は郵政サイドからも、郵便局窓口で国債販売をやらしてくれというような要求も出されていると伺っておりますけれども、そのような事実はございますか。
  195. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 郵政省からそのような要請は聞いておりません。
  196. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは銀行窓販のねらいというものは、大量発行の国債を個人にも安定的に持ってもらうということにありますけれども、この点でのみ考えれば、全国津々浦々にある郵便局の窓口で国債を販売するということは、その要請に合致するものだとも言えますけれども、この点についてもし要求があれば大蔵省のお考えはいかがでございますか。
  197. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 先ほどの金融機関の窓販を始めたばかりでございますので、これの定着に努力をいたしていきたいというのが基本ラインでございます。  郵政省の方のそういう要請があった場合云々という御質問でございますが、臨調の答申の中に官業のあり方につきまして、民業を補完しつつ適切な役割りを果たしていくことを基本とするというような趣旨が盛られております。私どもといたしましては、このような考え方と、それから大量国債の安定消化という観点等々を踏まえまして、慎重に検討をしなければならないと思います。
  198. 多田省吾

    ○多田省吾君 昭和五十七年度分国債について伺いますが、本年三月までの国債発行実績はどうなっておりますか。
  199. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 補正後で、総体で十四兆三千四百五十億でございましたが、三月末までの実績は十四兆四百七十七億、残りが三千三億円ございます。  内訳で申しますと、シ団引受の十年利付国債が七兆一千億、シ団引受の五年割引国債が二千億、公募入札による中期国債が二兆六千六百五十億、運用部引受の十年利付国債が三兆七千億、信託業界向けに発行いたしました十五年利付国債が三千億というふうになっております。
  200. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまお答えございましたように、補正後発行枠と実績額の間には三千三億円の差額がある。これは出納整理期間発行ということになると同時に、現在の税収動向から見ましても、全額発行ということになると思われますけれども、どうでございますか。  それから年度当初の発行計画と実績はもう四兆円ほどもずれがあるわけでございますが、そのずれの理由をひとつ簡明に御説明いただきたい。
  201. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 発行が当初よりふえましたのは、異常な災害がありましたこと、あるいは税収が当初予定しておりましたより大幅に落ち込みましたので、それを埋めるために結果的に公債発行を増加せざるを得なかった事情でございますが、御指摘のように三千三億残っております。しかし、これは出納整理期間発行ができる権限を認めていただいておりますが、いま税収につきましては、まだ七月初旬になりませんとはっきりいたしませんし、税外収入は五月の末、歳出につきましても大体五月末になりませんと、どのぐらい剰余が出るかということがはっきりいたしません。そこで、これらの状況を最終的に見きわめまして、剰余金が出ないように適切な対処をしていきたいと思っています。
  202. 多田省吾

    ○多田省吾君 年度途中の増発分の大半は、シ団引受とそれから中期国債の増加で賄われておりますが、国債世話人会等の場では、シ団側は、シ団引受分を増加させることを拒否するという態度をとっております。その際シ団側は、国債の売却制限、発行後約百日間を撤廃すること、それから発行条件の実勢化等を要請しておりましたけれども、これに対しまして大蔵省はどのように対処されましたか。
  203. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 御指摘の点でございますが、売却制限につきましては、シ団内部に必ずしも意見の一致が見られておりません。それから市場実勢をできるだけ尊重するという点は、私どもも本来そういう考え方でございますので、極力努力をいたしておるわけでございます。  そういうことでシ団側が増額発行の引き受けを拒否したというような事実はございません。
  204. 多田省吾

    ○多田省吾君 五十七年度中には七月とそれから五十八年二月の二回、休債という異常事態が生じております。この要因は、一つは国債の過剰発行、二つは市場金利を無視した発行条件の設定等にあると指摘されておりますけれども大蔵省はどのように認識されておりますか。
  205. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 七月とことしの二月に休債をいたしました。これは内外の関係する諸情勢が非常に激動いたしております。その中で前回の条件で発行したいという基本的なスタンスを私どもが持ったわけでございますが、その考え方をめぐりまして周囲の環境が非常に激動いたしておるために、シ団側との間で明確に将来の見通しがまとまらない、意見の一致を見ないというような事情がありましたことが、基本的に休債をいたした理由だと考えております。
  206. 多田省吾

    ○多田省吾君 国債というものは年度間を通じて平均的に発行されることが公社債市場の安定という立場からも大事だと思います。ところが、本年二月に国債発行を休んだことから、これにつられまして、事業債も四十七年六月以来十年八カ月ぶりに休債という事態が生じております。これは国債が事業債の起債市場に対する攪乱要因になったと理解されますけれども大蔵省はこの点どう考えておりますか。
  207. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いろいろな見方がございますことは事実でございます。ただ、国の方の資金需要というのもございます。それから民間の資金需要もある。金融市場、資本市場のそのときどきの内外のいろいろな動きがあるわけでございます。その中で、御指摘のように安定的に、平準的に発行していくという基本的な考え方をとっておるわけでございますが、内外非常に流動する場合、なかなか理想論のようにいかない場合が間々出てまいります。たまたま二月には非常に内外関係が激動いたしまして休債ということになったわけでございますが、事業債がそのあおりを食ったということよりも、国債が休債したから休債したということよりも、国債の休債を方向づけた内外の市場動向、資金需給、そういうような方に問題があったんだろうと考えております。
  208. 多田省吾

    ○多田省吾君 五十八年度の国債発行について伺いますが、国債発行額十三兆三千四百五十億円について、発行形態別に発行計画を簡明にお示しいただきたい。
  209. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) シ団引受の分でございますが、十年利付国債が六兆四千億、五年割引国債が二千億、合計六兆六千億が一つのグループでございます。第二のグループは、資金運用部による国債引受で三兆七千億でございます。それから中期債、二年から四年でございますが、公募入札によりまして三兆四百五十億円予定いたしております。これ以外に借換債で市中に出る分もあるわけでございます。
  210. 多田省吾

    ○多田省吾君 割引国債を除いたシ団引受分六兆四千億円は、全額従来のシ団引受形式で行われると理解してよろしいのかどうか。それとも、たとえば私募形式の直接発行や期間の変更等があり得るのかどうか、お尋ねします。
  211. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 目下のところは、全額シ団引受で発行いたしたいと考えておりますが、先々そのときどきの情勢を見きわめながらやらなければいけない要素があることは事実でございます。
  212. 多田省吾

    ○多田省吾君 発行計画を作成するに当たって、シ団側から特に要望された事項としてどのようなものがあったのか、それに対して大蔵省としてどう対処されるのか、お伺いしたいと思います。
  213. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 四点ございました。  一つは発行額自体を圧縮するということと、その中から市中に出ていく分をできるだけ減らしてくれというのが一番でございます。それから二番は発行条件をできるだけ市場実勢に合わせて機動的に考えてくれ。それから三番目が国債の引受手数料の引き上げでございます。四番目が先ほど御指摘がありました国債の売却制限の撤廃でございます。  それで、四番目の売却制限の撤廃につきましては、シ団の中の証券団の方から慎重に取り扱うような要望が出されておりまして、これにつきましては、さらに慎重に検討ということにいたしたわけでございます。  まず、最初の発行額の圧縮、なかんずく市中消化額の減額でございますが、これは前年の補正後に比べまして明らかに数字が減っているわけでございます。  それから二番目の市中実勢に合わせて機動的改定ということでございますが、これは昨年来の事実の中にそういうような私どもの基本的な姿勢が反映されております。  それから三番目の手数料の引き上げでございますが、これは今回予算積算上、従来の六十銭から七十銭に引き上げまして、約六十五億円になりますが、増額を図っております。
  214. 多田省吾

    ○多田省吾君 引受手数料の引き上げで国庫の負担増が六十五億円という御答弁でございますが、この引受手数料の引き上げはどのような理由からなされたのですか。
  215. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 御承知のように、証券団は募集と引き受けをやるわけでございます。それから金融機関は従来引き受けだけをやっておった。それがことしの四月から証券団と同じように一定部分は、われわれ募取りと省略しておりますが、募取りと引き受けをやる。そうしますと、その分金融機関は証券と同じような二つの手数料が必要になるわけでございます。そういうようなことで、大体その両方をやる分として三七%ぐらい——従来その半分ぐらいの率であったわけですが、そういうような積算をいたしまして、全体で両方やった場合、募取りと引き受けをやった場合は一円でございますが、そういうような一円の部分の比率を上げたと、そういう改定でございます。
  216. 多田省吾

    ○多田省吾君 国債費定率繰り入れ等の停止について伺いますが、五十七年度、五十八年度の繰り入れ停止に続きまして、さらに五十九年度も停止されるという報道もございますが、三年間も連続して繰り入れ停止するというのでは、公債政策に対する国民の理解と信頼を得るところにあるとされている国債整理基金の制度そのものを否定する結果になると思いますが、これはいかがでしょうか。
  217. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 一部そういう記事が新聞に出ることがございますが、私ども現在のところ、定率繰り入れを五十九年度停止するというふうなことを決めているわけではございません。いまおっしゃったように、定率繰り入れ制度は国債償還制度の基本でございますので、これを今後とも維持していきたいと考えております。
  218. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、特別会計、特殊法人からの繰り入れ、納付について伺います。  まず、自動車損害賠償責任再保険特別会計からの繰り入れについてでございますが、五十八年度において保険勘定から二千五百億円、保障勘定から六十億円を一般会計に繰り入れることになるのでございますが、それぞれの勘定の剰余金はどのように推移してきたのか、五十年以降の数字をひとつ簡明に御報告をお願いします。
  219. 熊代健

    政府委員熊代健君) 自賠特会の累積運用益の推移を御説明いたしますと、保険勘定が五十年度一千三十三億円、以下各年度を追って申し上げますと、五十一年度千四百十三億、千八百五十五億、二千三百五十億、二千九百五億、三千五百四十億、四千二百四十五億、五十七年度五千十億、それから保障勘定が、五十年度二十億から二十八億、三十七億、四十七億、六十億、七十七億、九十九億、五十七年度百二十四億でございます。
  220. 多田省吾

    ○多田省吾君 政府が行っている自賠責再保険事業でいま報告していただいたような黒字になっておりますけれども、民間の保険会社が行う自賠責保険事業、これも累積黒字があると思いますが、実態はどのようになっていますか。
  221. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 民間につきましても、自賠責につきましては四割を再保険いたしておりますので、運輸省の特会が六割といたしますと、原則としてその四割が黒字として残っておるわけでございます。過年度の細かい数字がちょっと手持ちにございませんので、大変恐縮でございますが、五十六年度末の数字で一例として申し上げますと、全体の収支の累計が二千百二十六億円あるわけでございますが、このうちいわゆる損保会社分は七百二十七億円、全体の約三四%でございます。六対四の割合に必ずしもなっておりませんのは、原付、いわゆる二輪車でございますが、これにつきましては特会での再保険というものがございませんで、すべて民間保険会社だけで再保険をいたしてございます。したがいまして、最近のように二輪車の事故が非常に多うございますので、必ずしも四割にはなってないわけでございますが、現在五十六年度末で七百二十七億円の黒字を持っております。
  222. 多田省吾

    ○多田省吾君 自賠責保険は、最近の自動車事故の増加によりまして、五十三年度以来単年度収支では赤字が続いているために、自賠責保険審議会では料率引き上げの検討に入ったとされておりまして、引き上げ幅は三〇%程度という大幅なものになりそうだという予想もありますが、自賠責保険は自動車損害賠償保障法に基づく強制保険でありまして、いわゆるノープロフィットが原則であるはずでございます。したがって、単年度収支が赤字であったとしても、今日までの経過で累積された黒字があるとすれば、安易に料率の引き上げを行うことは避けるべきだと、このように考えますが、いかがでございますか。
  223. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 全くお説のとおりだと存じます。御承知かと存じますが、自賠責の保険収支は、五十三年度以降単年度で赤字になっておりまして、特に最近は自動車事故の増加が反映されまして、その赤字幅は年々拡大の傾向にあるわけでございますが、過去に蓄積いたしました収支の黒字がございますので、これを食いつぶすと申しますか、補てんいたしながら、現在なお黒字が見込まれている以上引き上げというようなことは考えておりません。自賠責審議会でそういった検討が行われているというような報道があったことは私も承知いたしてございますが、実際に審議会においてそのような一般的な引き上げというものを御審議願っているというような事実は全くございません。
  224. 多田省吾

    ○多田省吾君 第二次臨時行政調査会では、五十八年一月の第二部会報告で特別会計制度の合理化について触れておりまして、特別な資金の保有を認められているもので、保有額の妥当性に疑問があるものといたしまして、その例に補助貨幣回収準備資金を挙げており、長期的に多額の剰余金が繰り越し処理されているものの例といたしまして、この自賠責特別会計を挙げまして、これらについて一定の合理的な限度を超える場合は、その超過分を一般会計への納付、受益者への還元に充てることを改革の方策として打ち出しております。今回の措置はこの答申を受けて行われたものではなくて、予算編成段階ですでに措置されていたものでありまして、政府の事業についての抜本的見直しが行われた上での余裕金の繰り入れではなく、単に現時点での余裕金を実質上借り入れる形をとっておりまして、疑問が残るわけです。  そこで、今後の問題といたしまして、一定の合理的な限度額というものはどの程度の額をいうのかということを、第二臨調の報告からすれば、明らかにしなければなりません。その第二臨調の答申が出されてすでに四カ月が経過しておりますけれども、この点どのような検討がなされましたか、御報告願います。
  225. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 確かに臨調でそういう御指摘をいただいておりますが、今回の措置はそれと直接関係なく、いまもお話がありましたが、その累積運用益の半分に相当する額を国で一時お借りをするという措置でございます。  なぜ半分かということもさしたる理由はないわけで、現在その運用益の使途を運輸省で御検討中でございますので、さしあたり二分の一程度お借りをしても、この特別会計の運営に支障はないであろうという想定のもとにこういう措置をとらしていただいているわけでございまして、自賠責特会が収支のバッファーとしてどのくらい積立金を常時保有すべきかというふうな問題は、事故率でございますとか、支払い状況と関連をいたしまして、現在まだ具体的な計数をお示しできる段階ではございません。
  226. 多田省吾

    ○多田省吾君 運輸省に対して一点お尋ねしたいんですが、運輸省ではこの受益者還元というようなことはどのような検討をしておりますか。また保険金の引き上げの問題あるいは自動車事故対策センター補助金の増額の問題、あるいは交通遺児の方々に対する対策、こういったものがどうなっているか、ひとつ簡明に御説明いただきたいと思います。
  227. 熊代健

    政府委員熊代健君) 自賠特会の運用益につきまして、保険契約者の納付した保険料を原資として発生したものである、したがって本来保険制度の趣旨に沿って活用しなきゃいかぬということは、私どもも十分そのように考えております。  で、いま御質問の累積運用益について、これまでも先生御指摘のように、将来の保険収支の改善のために留保すると同時に、自動車事故防止事業あるいは被害者救済事業というものに活用してまいったところでございますが、われわれとしまして、今回の一般会計の納付分を含めまして、保険料率の抑制、保険料率をできるだけ抑制していくということ、それからもう一つは、保険金限度額を検討する、この二つを中心に現在保険契約者への利益の還元方法としての具体的な方策を検討中でございます。いま申し上げた大きな二つの柱をどのように組み合わしたのが一番適切であるかというような点を中心に検討をいたしておる次第でございます。
  228. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後のいま交通遺児の方に対する対策はどうなっているか、これをお願いします。
  229. 熊代健

    政府委員熊代健君) いまも申し上げました交通遺児関係は、被害者救済事業ということで、保障勘定の方から毎年補助金の形で出しております。これは中身といたしましては、一つは高等学校の授業料の免除を県が行う場合にこれに対する補助をする、あるいは交通遺児育英会を通じまして貸し付けをするものに対する補助を行うというようなこと、それから先生先ほど御指摘になりました自動車事故対策センターを通じます貸し付け、無利子貸し付けでございますが、こういう点でやっておりまして、五十八年度予算におきましても、自動車事故対策センターからの貸し付けの月額を引き上げる、あるいは交通遺児育英会に対する補助金を二〇%強ふやすというような施策も講じておるところでございます。
  230. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、交通遺児の方々に対する対策等は強化していただきたい、このように強く要望いたします。  それから任意制の自動車保険についても二〇%程度の保険料の引き上げが損害保険会社で検討中であると聞いておりますが、保険収支の動向と再保険を行う特別会計の余裕資金の存在というものは、明らかに関連性のあるものでございまして、特別会計の余裕資金を無視して料率の検討を行うというのでは自動車ユーザーの合意は得られないと考えますが、大蔵省はどのように考えておりますか。
  231. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 任意自動車保険につきましてのお尋ねでございますが、任意自動車保険の収支も自賠責保険の収支と同様、最近における自動車事故率の上昇というものを原因といたしまして急速に悪化しております。特に対人関係を中心に悪化しているというのが現状でございます。  ただ、任意保険におきましては、毎年料率の検証を厳格に行いまして、毎年の収支をよく検討いたしまして、余裕がある場合には翌年に料率を引き下げるという形で、その都度契約者に還元してきておるところでございます。たとえば対人賠償につきましては、昭和四十九年に平均一四%の引き下げを行っておりますし、昭和五十一年には平均で一六%引き下げ、昭和五十三年には五%の引き下げをやっております。また昭和五十六年には、対物で平均しまして約八%、車両で約一六%余りの料率の引き下げを行うというようなぐあいに、年々の収支状況を見てきめ細かな料率調整を行っておるところでございます。  したがいまして、任意保険では、いわゆる自賠責と違いまして、その余裕がほとんどないわけでございまして、収支が悪化すればそれ相応の手当てを考えるのはやむを得ないというぐあいに考えております。  現在、自動車料率算定会で料率調整を検討中でございますが、いわゆる純粋に保険金の支払いに充てられます純率の部分、この点につきましては、収支に見合った引き上げはやむを得ないのではないかと思うわけでございますが、ただ、会社の経費相当部分につきましては、極力引き上げの圧縮を図りまして、少しでも契約者の負担増を食いとめるように努力してまいりたいと、かように考えております。
  232. 多田省吾

    ○多田省吾君 自賠責特会から一般会計への繰り入れに関する今回の措置につきまして、五十七年度十二月二十五日でございますか、運輸大臣大蔵大臣との間で覚書が交わされたと聞いておりますが、どのような内容でございますか。
  233. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 三点ございまして、  一、一般会計への繰入れは、昭和五十八年度限りの臨時異例の措置として行うものとする。  二、自賠特会から一般会計への繰入金相当額は、原則として昭和六十一年度から昭和六十七年度までの間において分割して、一般会計から自賠特会に繰り戻すこととする。  三、自賠特会の積立金は自動車損害賠償責任保険契約者の利益のために活用することとし、その具体案については今後検討する。 以上三点でございます。
  234. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、電電公社の臨時国庫納付金の特例についてでございますが、今回の措置は、五十九年度に納付されることになっております千二百億円を、五十八年度に繰り上げ納付させることとするものでございますが、これでは五十六年度の財源確保法で予定していた五十九年度の財源が完全に先食いされて穴があきますが、この手当てはどうするのか。  それから第二点は、五十九年度分として予定されていた財源を先食いしてしまうのは、電電公社の経営が技術革新や生産性の向上等の企業努力によって順調に推移していることから、五十九年度以降も相当程度新たな臨時納付金を納付させることが可能であるという判断があってのことと思わざるを得ないのでありますが、大蔵省考えはいかがでございますか。
  235. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 今回の千二百億円は五十九年度に納付していただくものをいわば繰り上げていただいたわけでございまして、その意味では五十九年度に予定されておりました税外収入を先食いしてしまったわけでございますが、五十九年度の予算、これは全体として非常に厳しい状況にございます。その収支の状況歳出を切り詰め、税外についてはできるだけの努力をすることによって財政改革を一歩進めてまいりたいと思っております。  これを繰り上げたということは、五十九年度も当然この同じ措置をするということを前提にしたのではないかという御指摘もありましたが、それはそういうことはございません。五十九年度以降もこういう措置を絶対しないということは、いまの段階で申し上げかねるわけでありますけれども、しかし、安易にこういうことをやるべきものではないというふうには考えております。
  236. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣に二、三点お尋ねしたいと思います。  一つは公定歩合の引き下げの問題でございます。午前中も論議があったそうでございますが、大蔵大臣は四月末の七カ国蔵相会議に御出席なさってこられたわけでございますが、三月から四月にかけて景気回復のためにはどうしても公定歩合の引き下げが必要だという論議が高まったわけでございます。ただ、日銀はそれを実行しなかった経緯がございます。それで外国政府やOECDなんかが、公定歩合を日本が引き下げると円安加速がつくので好ましくないという考えで、慎重に臨むべきだというような考えを伝えてきたのではないかというような予測もされているわけでございます。  また、日銀総裁はワシントンでの記者会見で、公定歩合の引き下げには長期金利体系の抜本的な見直しが必要である、政府にその対応を求めるというような発言をされておりますけれども、その点大蔵大臣はどのような見解を持っておられますか。
  237. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 公定歩合の操作、これは日銀の専権事項であるという大原則があることは申すまでもないことでございますが、私ども四月四日に本院で予算を議了していただきまして、翌四月五日、今後の経済対策の中で「当面の課題として」、「金融政策の機動的運用」、こういうことを一項目書いてあるわけであります。それは当然日銀の持たれる権限においてやられることでございますが、いわば公定歩合の繰作、そしてまたこれは公定歩合の操作と直接の関係はないにいたしましても、長期金利等々の問題についても抱合してそういう言葉として書いておったわけであります。  そこで、確かに公定歩合の操作によって円安という結果を招いた場合においては、これはまたぞろ先進国間におきまして、日本が作為的な円安を誘導することによって輸出の増進をもくろんでおると、こういう批判が従来も出ておったことも事実でございます。そういう為替レートの安定という問題が、いわば公定歩合の操作をおやりになるに当たりまして、重要なポイントの一つであるというふうには私も一般論として承知しておるところでございます。  しかしながら、きょうは二百三十二円十銭でひけたわけでございます。全般的に見ますと、この円安傾向からのあるいは円高指向への定着とでも申しましょうか、そういうような状態にあるわけでございますけれども、現実問題として、為替レートというものは、短期的には確かに相互の金利差、二番目は経常収支、三番目はインフレ率とでも申しましょうか、そういうような感じで進むものでございますので、中長期的には経済のファンダメンタルズによって決定されますが、どれだけが、いまが適正かどうかということになりますと、それが適正であるという表現は、率直に言って、これはむずかしいものでございます。私どもといたしましては、まだ円高の基調が継続されるということをいま期待しておるという段階でございます。  ただ、七カ国蔵相会議等におきまして、日本の公定歩合の操作が円安につながる危険性があるからこれは避けるべきだというような意見はございませんでした、率直に申しまして。
  238. 多田省吾

    ○多田省吾君 確かに外国政府やOECDでは、一ころ一ドル二百三十五円から二百四十円という円相場の水準が持続したわけでございますが、日本経済の実力から見て安過ぎるという一致した判断があったと思います。いま大蔵大臣から、この二、三日二百三十二円台に推移いたしまして、きょうは二百三十二円十銭でひけた、これは円高指向への定着という言葉を使われておりますが、二、三日じゃ継続と言えない、何日ぐらい継続したら継続と言えるのかですね、その辺。  それからそのような二百三十二円程度の継続になったならば、まあ円相場が安定したということで、公定歩合引き下げの一つのこれは要因になると考えてよろしいのかどうか。その辺もう一度ひとつお答えいただきたい。
  239. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 為替相場の継続的安定あるいは円高基調というようなものは、日銀当局におかれて公定歩合操作の一つの要因とされるであろうことは、私も同意見でございます。一方今度は、ここのところ実際、連休がございまして、また土曜日は市場がクローズいたしますし、それでワシントン、日本、ロンドンと、こういう順番でやってまいりましても、わが方は連休、向こうはあいているという事実もございます。したがって、わが方の日にちから見れば、確かにまだ日にちはわずかである。したがって、多田委員おっしゃいます、されば何日が継続的円高基調の継続というふうに認められるかということになりますと、それこそ大変むずかしい問題でございまして、およそ何日ぐらいということは言葉で、尺度ではかるということはむずかしかろうと私は思っております。  したがいまして、今日のところ二百三十二円十銭でひけまして、そうしてこの円高の基調が継続されることを期待しておる。そしてわが方から見れば、米国及び西独に比べましても経済のファンダメンタルズはいいというふうなお答えまでが限界ではなかろうかなと、こういうふうに考えております。
  240. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一点は、先ほども御質問したのですが、日銀総裁は、長期金利体系の抜本的見直しが必要であり、政府はがんばってもらいたいというような発言をしているわけでございます。長期金利をどうしたら引き下げられるかという問題、大変でございますが、これはどうお考えでございますか。
  241. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 元来、長期金利は、長期資金需要等を勘案しまして関係者の間で自主的に決定されるべきものでございます。が、結果として、いま国債の金利を中心としていわゆる長期金利体系ができ上がっておることは事実でございます。  で、国債の大量発行あるいはこれに伴う公社債市場への急拡大を背景といたしまして、長期金利の自由化、弾力化が漸次進展してきておりますが、こうした中で金融の自由化がさらに進展していくとすれば、いまのような長期金利体系を維持することは次第に困難となってくることも考えられようと思いますが、いま直ちにどのようにして長期金利を政府として、日銀総裁発言の趣旨は定かでございませんけれども、要するに公定歩合を下げて短期金利は連動しても、長期金利が恐らくなかなか下がらぬ、そこの点については政府当局がもっと工夫すべきだと、こういうふうに仮にそれをとるといたしましたら、にわかにどのようにしてこれをとっていくかということはなかなかむずかしい問題でございますが、私ども十分現実に対応するような工夫をするべくこれは勉強さしていただかなきゃいかぬ問題だと思っております。
  242. 多田省吾

    ○多田省吾君 四月二十八日の与野党書記長・幹事長会談で自民党の二階堂幹事長から、減税問題につきましては、一つには景気浮揚に役立つ相当規模の減税を必ず実施する、それから二つには政府税調の結論も急がしておるから規模も含めて秋口には結論を出させる、それから三つには減税の財源に増税をもってすることは考えていないと、こういう発言があったわけでございますが、減税の財源に増税をもってすることは考えていないということは、具体的にはこれは大型間接税と絶対に抱き合わせはしないということだと私たちは理解しているわけでございますが、大蔵大臣はどのようにお考えなのか、この辺をお尋ねしておきたいと思います。
  243. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはそのときにも御報告申し上げたと思うんでございますが、税制調査会を四月二十五日に開くようにということの要請も受けまして、私どもは、これは総理の諮問機関でございますから、私が呼ばれてそういう御意思を承ったわけでございますけれども、官邸の方へも連絡いたしまして、四月二十五日に最初の税制調査会が開催されたわけであります。そのときには政府側からは、国会におけるきょうのような御議論等々を念査いたしたものを詳細に御報告いたしました。税制調査会におかれましても、所得税、住民税に関する部会を設置することが決まったわけでございます。  したがいまして、いま、あらゆる予見を持たないで税制調査会にこの御議論をいただくという立場をとっておりますので、政府から、何はいけない、これはこうだという指示とか誘導するべき性格のものではございませんが、いまのような国会の中で行われた各党間の話し合いの問題等につきましても、そのまま正確にこれをお伝えすることによりまして、その議論の中でそういう意思が反映されていくようにということを期待しながら、税制調査会の御議論にゆだねていきたい、こういう考え方でございます。
  244. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、私は財源確保法案を中心に御質問したわけでございますが、私は昭和五十九年度からしっかりした財政再建計画を明らかにして財政再建を図り、昭和五十九年度におきましては、こういった財源確保法案にならないようにすべきだと、こう考えておりますが、大蔵大臣の御決意をお尋ねいたしまして、質問を終わります。
  245. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いつも御指摘いただいております、もっと精度の高い、いわば多田さんのお口を借りて言うならば、財政再建計画というようなものを出して、もって議論の対象として進めたらいいではないかと、こういうことであります。私どもも財政収支試算、中期展望、中期試算と、三つの過程をくぐり抜けてきましたが、御要望に応じてできるだけ精度の高いものを予算審議の、あるいはわれわれの方から言えば、編成の手がかりとして作成する努力は今後とも鋭意続けていきたいと思います。  そうして財源確保法の問題につきましては、もとより特例公債を脱却するということに重点を注ぐわけでございますけれども、その都度都度この特例公債の発行につきましては国会の御審議をいただいていくという姿勢をとって、これからも脱却年度までは一年ごとにそういう御審議をいただかなきゃならぬというふうになろうかと思います。  ただ、これがいわば性格が一致しておるとか、いろんな理由で一本にまとめて御審議をいただいたということにつきましては、確かに多田委員の御議論もそれなりに私にも理解できるところでございます。が、一方、法律の数がたしか千五百幾らでございますか、あります場合、若干でも軌を一にするようなものはまとめていくというのも、法律の持つ行政のあり方としては行政改革の趣旨にも沿うし、また国会の審議権に対応してはもっとばらばらに出した方がいいと。まあいろんな議論がございますが、それの中和をとりながら今度はこういう形で御議論をいただいたわけでございます。が、しかし帰するところ、できるだけ展望の角度を深めたものを提示して、それに沿ってその都度この財源確保の問題については、特例公債の脱却までの間いろいろ御協議をいただかなきゃならぬ問題が数あるというふうな認識で対応していきたいと思っております。
  246. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、本法律案はすでに成立しております五十八年度予算の歳入にかかわる授権法案であり、加えて財政再建との関連においてきわめて重要な意味を待っているという点を重視して、まず五十八年度予算の財政再建過程における位置づけについて確認をしておきたいと思います。  鈴木前総理の公約でございました五十九年度特例公債脱却が歳入面から崩壊をし、これを受けた中曽根内閣は新しい財政再建計画が策定されない状況のもとで本年度の予算編成を行い、成立を見たわけでありますが、    〔委員長退席、理事増岡康治君着席〕 率直に言って、五十八年度予算は新計画未策定のもとでの過渡的な予算と言わざるを得ないのではないかと、私たちそのような印象を持っておるわけでありますが、大蔵大臣の御見解を承ります。
  247. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに五十九年度赤字公債脱却年次というめどをギブアップした、そしてお示しいたしました中期試算は七年、五年、三年というようなものでもってお示ししたという意味においては、その年度が確定しないということは、いわば過渡的な措置としか考えられないではないかというような御議論は、これは私は謙虚に承らなければならぬ議論であると思っております。  しかしながら、私どもといたしまして、五十八年度予算そのものの編成に当たりましては、徹底的な歳出見直しを行いました。まさに三十年度以来二十八年ぶりに一般歳出を前年度以下に圧縮するといったこともやりましたし、そして内容におきましても、補助金の整理合理化を初め、臨調答申改革方策の趣旨に沿っていろいろ盛り込んでまいりました。したがいまして、私どもは、この歳出歳入構造の見直しを基本とする財政改革に向けての新たな一歩を踏み出したという評価もまたいただきたいものであるというふうに考えておるところであります。  したがって、特例公債脱却年度が、いわば単一年度ではなくして複数で、しかも七、五、三という幅の広い形でお示ししたということにおいては、過渡的であるという御批判も私は謙虚に承りますが、その内容に至りましては、いわば大きくとは申しませんが、第一歩を印したという御理解もまたちょうだいしたいものだなというふうに考えておるところであります。
  248. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 確かに五十八年度予算は、一般会計も前年度当初予算に比して一・四%増、財政投融資にいたしましても二・〇%増で、きわめて小型な予算と言われているわけであります。特に、いま大蔵大臣も言われましたように、一般会計では五十六年度の税収不足を補てんするための決算調整資金制度を通じて国債整理基金特別会計から借りた二兆二千五百二十四億円の返済分が含まれているので、これを差し引くと対前年度当初三・一%減と、こういう実質マイナスの緊縮型予算ということは、われわれも認めるわけであります。  特に一般歳出が前年度より五億円減で、いままでは大体前年度よりふえるのが常になっていたわけでありますが、そういう一味違った編成をわれわれは認めるにやぶさかではございませんが、しかしこれからの財政再建を考えるときに、この五十八年度予算編成におけるいわゆる歳出カットというものはかなり進んでいると考えていいのか、この程度歳出カットを続ければ財政再建はできると考えていいのか、あるいは五十九年度以降はもっともっと歳出カットをしなければ、とてもとても財政再建の道はむずかしいと考えていいのか。そのあたり、これは非常に抽象的なことでございますが、大蔵大臣としての感触を承っておきたいと思います。
  249. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに塩出委員もおっしゃいますように、お答えもまたむずかしいお答えになるわけでございますけれども、私は臨調とか財政審とかいうところから指摘されたものに対して、ほとんどのものに手がつくなり、あるいはその方向を見出すことまではできたなというふうに考えて、一歩を印したというような表現をしたわけでございますが、さてこれからということになりますと、まさに大変だなという気持ちでいっぱいでございます。  したがって、「財政改革に当たっての基本的考え方」でも申し述べましたように、結局施策制度根源にさかのぼって歳出抑制ということにこれからは当たっていかなければならない問題だということを肝に銘じて、閣議でも、予算を通していただきました翌日発言いたしまして、そして主計官会議を開き、いわば各省に制度施策根源にさかのぼって勉強していただくようにお願いをして、そうした勉強をしていただいておるさなかであるということでございます。  歳出カットだけでやれるかとおっしゃいますと、大変これはむずかしい答えになりますが、まずはそれをやって初めて、それでもなおかつ国民の皆さん方が現行の施策制度、水準を維持すべきであるという合意に達せられた場合に初めて、ではその新たな負担というものをどうするかという御議論はいただける問題であって、まずは制度施策根源にさかのぼった歳出の削減からこれに当たらなければ、そういう合意を得ることも困難ではなかろうかという感じを持って臨んでおるわけであります。
  250. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 二十八年ぶりの実質マイナスの緊縮予算と言われておりますが、これは各界から指摘されておりますように、一つは五十八年度の租税印紙収入が大幅に落ちた、対前年度当初に比べれば四兆三千九十億円も減った。その結果、地方交付税交付金が一兆九千百五十七億円減っておるわけであります。また今回、この法案の内容であります国債整理基金への定率繰り入れ停止を五十七年度補正予算に次いでやっておる。それからまたもう一つは、五十七年度の人勧見送り、さらに恩給、共済の関係、あるいはまた厚生年金、国民年金の給付の物価スライドの改善の停止とか、こういうようなこれだけでもう約四兆円になるわけでありますが、こういうものは言うなれば一過性のもので、五十九年度以降も使える財政再建策ではないわけであります。  そういう点から考えますと、経費の見直し、削減というよりも、予算編成技術を駆使した予算である。したがって、いま大蔵大臣も、制度施策根源にさかのぼって歳出改善をこれからやっていくと言われる。そういうことは、裏を返せば、五十八年度予算等ではまだ制度とかあるいは施策根源にさかのぼった歳出カットではなしに、いよいよこれからが本番であると、そういうお考えであると理解していいのかどうか。
  251. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一歩を印したというふうな表現をさしていただいておりますが、その意味においては一歩を踏み出したのであって、まさにこれから本番とでも申しましょうか、一層の努力が必要であるということは、私も事に当たり折に触れ感じておる実感でございます。
  252. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう点いろいろこれから大変でしょうけれども大蔵大臣の本当の真価を発揮するのが来年度予算の編成ではないかと思いますし、そういう点大いに期待をしておるわけであります。  そこで、今回定率繰り入れが引き続いて中止になったわけでありますが、現在のいわゆる減債制度というものが四十二年度にスタートしたと聞いておるわけでありますが、財政制度審議会はそのときにその意義と効果について匹つの点を指摘しております。  第一に国債制度に対する国民の理解と信頼を得る。二番目には財政の膨張、ひいては国債残高の累増に対する間接的な歯どめ。三番目には財政負担の平準化。四番日には国債の市況維持への活用。こういう四つの点を指摘しておるわけでありますが、今日の時点でもこの制度の意義と効果というものは変わりないと考えているのかどうか、この点を伺います。
  253. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 財政審で意義を四点御指摘いただいていることは、いまお話しのとおりでございますが、その後特例公債を発行するようになりましてから、五十四年度の財政審でもう一度御検討をいただきまして、片一方で特例債を出しながら定率繰り入れを続けることには疑問があるという意見は強くございましたが、しかし五十四年の段階では、これは国債償還制度の基本であるので、基本的にこれを維持するのが適当であるという御答申をいただいたわけでございます。  その後、昨年いよいよまた大きな税収欠陥が生ずる等で、もう一遍この問題を財政審で御議論をいただきまして、結局五十七年度の状況では、定率繰り入れを予定どおり繰り入れいたしますと、その分だけ特例公債の増発につながってしまう、結果としてそうなってしまう。片や国債整理基金特別会計の方は、いまそれだけの繰り入れがなくても運営に支障がない。こういう点を考えまして、まあ一年停止するのもやむを得ないという御答申をいただき、さらに五十八年度予算についても同様の観点から停止もやむを得ないという御答申をいただいております。  しかしこの制度の意義そのものは、当初の財政審の答申で指摘された四点、これは変わりないわけでございまして、私どももこれはあくまでも臨時の措置としてお願いをしているわけでございます。
  254. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 確かに今回の定率繰り入れの停止についての財政制度審議会の意見として、いま言われたように、特例公債を発行しながら償還財源を積み立てると、これはそれだけ特例公債の増発をもたらすことになるわけで、将来の負担によって将来の償還のための財源を、利子を払いつつ蓄えることにほかならず、不合理であると。これは確かにそういう意見はあると思う。そういうことになりますと、特例公債発行がなくなるまでこれから定率繰り入れはやめるということになるのではないか、来年度も停止と理解せざるを得ない、その論調でいきますとですね。この点はどのようにお考えですか。
  255. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 財政審答申では、同時に、国債整理基金の当面の運用には支障がない、その他財政事情、国債管理の面の問題等考えてやむなしという判断をしておられるわけでございまして、五十九年度予算の問題といたしましては、またそれらのことを総合的に検討いたしまして決めるわけでございますが、私どもといたしましては、これは国債償還制度の基本をなす制度でございますので、軽々にこれをまた停止するというようなことは考えるべきではない、五十八年度の繰り入れ停止措置というのはあくまでも臨時的なものだというふうに考えております。
  256. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣にお伺いしたいわけでございますが、結局繰り入れを停止したからといって財政再建が早くなるわけではない。要は国債発行額を見せかけだけ少なくすることになるわけでありまして、私は財政再建ということは財政の現状の深刻さを国民に理解を求め、そういうことがあってこそ国民の協力もまた得られるんじゃないかと思うんですね。それを、大変な状況を国民に知らせないで、そしていろんなことを負担しろと言っても、これは私は協力は求められないと思うんですけれども、そういう点から言うならば、私はこのようなことはやるべきではない、国民の協力を求める点ではマイナスの効果のみあるんではないか。来年度以降はこれはちゃんと繰り入れはやるべきであると、このように思うわけですが、大蔵大臣のお考えを承っておきます。
  257. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には私は、昭和四十二年当時、赤字公債ではないにいたしましても、この制度ができました考え方はいまでも堅持すべきものであると思っております。確かにその後いろいろな御議論ございまして、いわば赤字公債を発行しておる間は、言ってみれば、定率繰り入れを行うためにまた金利のつく金を公債発行によって賄っているという論理も、これを直線的に結びつければ成り立つではないかというような議論もございます。しかしながら、こういう苦心をして、そうしてこのようにして国会で議論していただくということが、また国民の皆さん方に対して、大変むずかしい財政状態であるなあということを御議論いただける一つの大きな場を提供しておるということも、逆に見れば言えるかなあというような感じもしないわけではないわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、昭和四十二年以来の精神を持ちながら、したがって半分の間なんと言わないで、一年、一年こういう場で御審議をいただいて、このような措置をとらしていただいておるということでございますので、そういう措置をとらざるを得ないという実態もまたこういう場で御議論をしていただけることによって、国民の理解を、財政の非常にむずかしい事態を理解していただく一つの素材にもまたなっておるんではないかというふうな印象も持っておるところでございます。
  258. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから財政制度審議会のもう一つ意見は、先ほども窪田次長がおっしゃいましたように、今年度は国債整理基金への繰り戻しがあるために、五十八年度に定率繰り入れを停止しても、同基金は公債の円滑な償還に必要な流動性を確保し、また公債の市価維持のためある程度の資金を保有することとなると、このように言っておるわけでありますが、減債制度一つの役割りであります国債の市況維持への活用ということが今後どうなっていくのか。繰り入れを続けても六十一年度には底をつく。あるいは新聞等で言われているように、大蔵省はそうはまだ決まったとは言っておりませんが、五十九年度以降繰り入れをやめればもう六十年度末には底をつく。いずれにしても国債整理基金というものの資金がなくなってくるわけでありますが、市況維持のためには今後どうするのか、この点をお伺いしておきます。
  259. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) いまのこの法案でお願いをしておりますように、五十八年度を停止させていただきますと、六十年度末の基金残高は二兆一千九百億、これが六十一年度にはゼロになりまして、六十二年度には三千億円の予算繰り入れが必要となります。その後は基金は枯渇をいたしまして、毎年何兆という繰り入れが必要になるわけでございます。したがいまして、その場合の国債管理は、こういった基金残高という手金がなくなってしまうわけでございますから、非常に困難を加えるわけでございます。その状況に一体どう対応するかということは、現在理財局で学識経験者等のグループを設けまして検討を始めたと聞いております。その御意見も伺って今後検討していきたいと思っております。
  260. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、そういう国債の価格維持のためにもこの定率繰り入れというものを停止すべきではない。しかも、これを停止しなくても実際はもうなくなっちゃうわけですから、そういう点考えれば、恐らくこういうことは当初予想していなかったわけでありまして、本来ならば償還に充てなきゃならない財源も市況維持のための資金として国債整理基金で保有する、こういうようなこともこれは必要ではないかと、そのように考えるわけでありますが、その点の御意見を承りたいと思います。
  261. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) それは望ましいわけでございますが、実際問題として、いまおっしゃったようにこの繰り入れを続けていったとしても、六十年代前半には枯渇してしまうわけでございますから、その事態に即応してどうやるかということは、またその情勢に応じていろいろ工夫をし、国債管理政策を行っていかなければならないと、こう考えております。  なお、先ほど私、六十二年に三千億の繰り入れが要ると申しましたが、間違いでございまして、六十一年度に三千億の繰り入れが必要になるのでございます。
  262. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、自賠責特別会計からの繰り入れの問題でございますが、これは先ほどの同僚委員の質問、多田委員の質問もありましたので省略をしたいと思いますが、二、三点お尋ねいたしたいと思います。  今回の処置は、臨調答申に特別会計の剰余金繰越額の一定の合理的な限度額を超えた部分についてのいろいろな報告があったわけでありますが、先ほどの御答弁では、これは臨調の前にやったと、このようなお話があったわけでありますが、そうすると結局、これは臨調答申では、一般会計に繰り入れるかあるいは消費者に還元をしろと、そういうような内容であったように思うわけでありますが、これはどちらでもないわけで、どうも一時的に借りて、そして利子はつけないで返すと、こういうことで、臨調の答申とはちょっと路線が異なるように思うわけですがね。こういう点をどう考えているのか。  それと、もう一つは、六十一年から六十七年度の間にこれを返す、こういう運輸大臣大蔵大臣の覚書があるわけでありますが、この六十一年から六十七年度とした理由は何か。大体この期間にほぼ赤字国債脱却ができるんではないか、こういう見通しでこのように明示をしたのかどうか。この点をお伺いいたします。
  263. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 前段の臨調答申との関係でございますが、臨調の第二部会報告でこの問題が指摘されておりますが、この部会報告が出ましたのがことしの一月八日でございまして、予算編成後でございました。  ただ、この第二部会の報告では、自賠責の名前が載っかっているところは特別会計の現状を記したところでございまして、「長期的に多額の剰余金が繰越処理されているもの」として、例として自賠責保険もある、こういうふうなことが書いてありまして、これをどうしろという指摘は直接ないわけでございます。  そこで、部会報告が合理化しろと言っている点は、特別の資金保有をしている特別会計を見直して、一般会計に繰り入れてしかるべきものは繰り入れる、受益者への還元等に充てるべきものは充てるというふうな、それぞれ再検討をせよという御指摘でございます。したがいまして、それぞれの特別会計の性格に応じて検討すべきものと考えております。  この自賠責の問題につきましては、保険契約者の利益のために還元するというたてまえのものでございますから、そういう観点から検討すべきものと思いますが、ただ、十年これをお借りするということにいたしましたのは、別にその間に特例公債から脱却するというめど等があってしているわけではございませんで、運輸大臣がこれから契約者への利益の還元の方策を検討される、それが決まるまでの間、まだいま決まっていない現状で運用益積立金の半分をお借りするということでございますから、十年ぐらいが限度ではなかろうか。しかも、ここ三年ぐらいはすぐお返しするというゆとりもないので、三年据え置きにしていただくという取り決めでございまして、そういったはっきりしためどがあってやっているものではございません。  そのために、この覚書におきましても、「原則として」という文言を入れておりまして、国の会計あるいはこの特別会計の状況に応じて、若干返済の時期、テンポ等については今後検討し得る余地を残すようにしているわけでございます。
  264. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回、一部の報道では、自賠責保険料を三割上げる、そういう報道がありましたが、当委員会のお話ではその必要はない、こういうことで、われわれも安心をしたわけですが、しかしいま保険収支については五十三年度以降単年度収支は赤字である。しかし、いままでのいわゆる剰余金というか繰越金というか、そういうもののいわゆる運用利益でその赤字を消して、結果的には繰越額は年々ふえてきておる。このように理解していいのかどうか、その点はどうですか。
  265. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) お答え申し上げます。  自賠責保険の収支状況で、五十三年度以降単年度で赤字になっているということは、先ほど来御説明申し上げているところでございますが、実は過去に、これは昭和四十四年でございますが、料率を改定いたしまして、それから十三年余りその料率を据え置いているのでございますが、その間におきまして自動車事故がかなりのスピードで低下いたしたというようなことが幸いいたしまして、四十五年以降各年度の収支が実は黒字になっておったわけでございます。  それで、これをずいぶん累計でため込んだものが相当額ございまして、たとえば五十三年度で単年度の赤字が二百六十億でございましたが、それまでの収支残の黒字、これでその二百六十億を消しまして、なおかつ三千九百七十七億円の黒字が残ってございます。  その後の状況を各年につきまして申し上げますと、五十四年度の単年度の赤字は四百九十三億円でございますが、五十四年度末における累計の収支残は三千四百八十三億円、五十五年度につきましては単年度の赤字が五百二十九億円、年度末の収支残の黒字が二千九百五十五億円、五十六年度につきましては赤字が八百二十九億円、若干年々拡大してきておりますが、収支の累計残の黒字が二千百二十六億円、こういう状況にございます。  このほかにいわゆる運用益というものが別途積み立てられている。こういう状況にございます。
  266. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、自賠責再保険特別会計予算の概要(保険勘定)という資料がここにあるんですが、これを見ますと、いわゆる雑収入というものがありまして、恐らくこれはいわゆる余剰金というか、繰越金というか、予備費というか、そういうものの運用益であって、それを結局合計すれば、だんだん再保険特別会計の方は前年度余剰金受入金額というものはふえているわけですね。そうなっていないんですか。いまの話だと、だんだん手持ちがなくなってもう二千百二十六億しかなくなってきておると。
  267. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) いわゆる特会自体の会計の中身につきましては、私ちょっと十分承知しておりませんので、後からしかるべく御説明さしていただきたいと思うのでございますが、一つ誤解があるといけませんので、ちょっとややこしいのでございますが、御説明さしていただきたいのは、物事と申しますか、会計を考えます場合に、その期間に出入りがあったといういわゆる発生主義的な考え方で、一体幾ら残っているかというような考え方一つございます。それと同時に、その期間に保険料収入が幾ら入って、これの支払いが将来幾ら出ていくかといういわゆる期間対応で考え考え方もございます。  私ども、ただいま御説明申し上げましたのは、いわゆる発生主義的にその年度においてとにかく入ってきて、出たという差額を申し上げたわけではございませんで、たとえば五十六年度ならば、五十六年度中に契約いたしました保険の支払いが将来にわたって一体幾ら出ていくか、ということをその期間対応で推計いたしたものでございますので、特会の勘定に現実にお金として幾ら残っているかということとはあるいは若干の相違があろうかと存じます。
  268. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、再保険特別会計の大体一兆二千二百十三億の余剰金のうち、約二千五百億を今回一般会計の方に繰り入れる。そういうことになりますと、これは運用する金額が減っちゃうわけですから、当然運用益も減ってくる。結果的には自賠責特会も赤字の方向により近づいていく。そういうことを心配し、結果的には料率アップにより早くなるんじゃないか、このように考えるわけですが、その点の見通しはどうなんですか。今回はアップはしないにしても、大体いつまで料率の値上げはしないのか。
  269. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 料率につきましては、先ほど多田委員にもお答え申し上げましたように、単に単年度の収支が赤字になったというだけでは必ずしも検討が適当かどうかという点がございまして、過去における収支の累計との総合的な勘案というのが必要であろうということで、現在その必要が直ちに必要な状況にないというふうにお答え申し上げたのでございますが、ただいま先生御指摘の点は、そのほかにさらに運用益がある、この運用益をもって将来赤字が発生した場合にはその保険料率の引き上げに、つまり収支の赤字に充てていくべきではなかろうか、こういうような一つの御指摘ではなかろうかと思うんでございます。私どもも、この運用益というものが本来保険契約者の保険料から発生するものでございますから、これを将来の赤字を補てんするというような形で契約者に還元していくというような考え方につきましては、全く私どももそのとおりだと思っておるわけでございます。  ただ、現在の自賠責保険の仕組みでございますが、これは自動車損害賠償保障法で定められておるわけでございますが、この法律で定められた仕組みによりますと、特会のお金は、要するに特会から支払えるお金は保険金の六割を限度とするということになっておりまして、残りの四割は民間から支払われることになるわけでございます。ところが民間の運用益はこれは税金がかかっておりますので、とても六対四の割合では留保されてございません。五十六年度末で約六百五億円を数えております。  したがいまして、仮に現在の仕組みというものを前提といたします限りは、民間の運用益を全額保険料率の引き上げに充当していくというようなことをいたしましても、それを使い切ってしまった場合には、特会でなお黒字があった場合でも、これも制度仕組みを変えない以上、この四割の方には回すというわけにはいかないわけでございますので、現行制度前提といたします限りは、どうしても料率で調整せざるを得ない部分が残るわけでございます。  いつまでそういうのがもつかというのは、今後の言うなれば自動車事故の増加状況が一体これからどうなるかというようなことに大きなかかわりを持つわけでございますので、現段階でいつまではもつというような推定をいたすわけにはまいらないんでございますが、しかしそういった仕組みではありますけれども、いずれにしましても、運用益が保険契約者に還元すべきであろうという点はまことにごもっともでございますので、現在その具体的な活用方法を運輸省におきまして御検討中と聞いております。もちろん私どもにもいろいろ御相談をいただくわけでございますので、その際には、保険契約者にとりまして公平な形になるような、また自賠責保険の化組みがうまく幾能するようなそういった方向で御相談をしたいとは思っております。
  270. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回は電電公社からの臨時国庫納付金の処置も、いままでの論議で明らかになりましたように、これも来年度分を今年度先取りをする、こういうことで結果的には後年度負担増加させることになるわけであります。あるいはまた別途本委員会で審査することになっております国民年金特別会計への一般会計からの繰り入れの問題につきましても、国庫負担金の繰り入れの平準化を図るためとは言いながら、現実には五十八年から六十三年度の一般会計からの繰入額を削減してその分を六十五年以降に加算しよう。これもまた後年度負担を増高させることになるわけであります。私は、五十八年度予算が、財政再建計画というものが未策定の段階で、しかも中曽根内閣が発足して短期間で編成をしなければならなかった、こういう点でやむを得なかったとしても、そういうような後年度負担の累増をもたらすやり方は、財政再建の本旨に逆行するものであると指摘しておきたいと思うのでございます。  そして、いよいよ予算が成立いたしまして、もう一カ月余を経たわけでありますが、大蔵省としても五十九年度予算編成の基本構想が練られていると聞いておるわけでありますが、五十九年度予算こそ中曽根内閣のもとでの新しい財政再建計画に沿った内容でなければならないと思うのでありますが、この計画はいつ提示するつもりか、また五十九年度予算は財政再建に向けて編成されるものと考えていいのかどうか。これをお伺いしておきます。
  271. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず五十九年度予算編成、これは最後におっしゃいましたように、財政再建、財政改革の基本的な考え方に沿って編成していくべきものであるという基本認識を持っております。  そこで、私どもといたしまして、予算の成立いたしました翌日、閣議発言を許していただきまして、五十九年度予算編成に向かっては制度施策根源にさかのぼっていかなければならぬ、したがって、あるいはこれは個人とか企業に帰着すべきもの、これは自治体に帰着すべきもの、これこそまさに国がその責めを果たすべきもの、そういうような分野調整に向かっても進んでいかなければならない環境にありますので、御協力をお願いしたいと協力を求め、そして主計官会議を直ちに開きまして、いま各省においてそれぞれ所管される制度施策根源にさかのぼっての御勉強をいただいておるというところでございます。  したがって、まず概算要求限度額、いわゆるシーリング、こういうことをいずれは発表しなければならないと思っておるわけでございますが、これは大変厳しいものとしてまいらなければならないであろうというふうに考えておるところでございます。具体的にはなおしばらく時間をおかしいただきまして、その方針を明らかにしていきたいという現況を率直に申し述べたわけであります。
  272. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 きょうの午前中の御答弁でも、現行の制度施策前提にした場合は来年度の歳入不足が五兆円程度に達する、そういうお話でございましたが、臨調では一般会計予算は名目成長率の中にとどめろと。  ところが、財政中期試算では、もうすでにこれは六・五%、これはたしか六%の名目成長率としておりながら一般会計予算は六・五%、予備費を入れると七・五%、この中期試算でもかなり歳入不足が出る。こういう点から考えますと、私は、かなり思い切ったマイナスシーリング、まあスーパーシーリングをやれ、新聞にそんなことも出ておるわけでありますが、少なくとも昨年のマイナス五%よりもさらに切り込んだ方針で臨まなければならないと思うのでありますが、大蔵大臣見解を承りたい。  特に昨年、本年度予算では、防衛費の問題あるいは海外経済協力費等は別枠であったわけでありますが、こういうものも聖域を設けないで経費の節減に努めるべきである。また、私たちも福祉の予算を絶対削ってはいけないということを言っているわけじゃありませんけれども、特に弱い者のところにしわ寄せするような、こういうような歳出カットは断じてすべきではない。こういう点を意見として申し上げたいわけでありますが、それについての大蔵大臣の御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  273. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま塩出委員おっしゃいましたように、いまの御指摘一つ一ついただきましても大変なことだなと率直に思うわけでございます。したがって、聖域を設けることなく、そして制度施策根源にさかのぼって、まずは徹底的な歳出削減をもって臨みたい。それに対する塩出委員の弱者切り捨てとかいうような施策に結果としてならないようにというような御注文に対しても、十分な工夫をこらしていかなきゃならない課題だという厳しい御叱正として受けとめて臨んでいきたいと思っております。
  274. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 前回の委員会の後、大臣が七カ国蔵相会議にお出かけになったので、そのことに関連して若干お聞きをしたいと思います。  これは大臣が着く前に、大場国際金融局長大臣代理演説ということだったようですが、二点ばかりそのことに関してお聞きをしたいと思うんです。  一つは、その演説の中で銀行間の負担の公平化を強調した。これは発展途上国の利払い繰り延べ、それから利子軽減などの融資条件の改定が求められておる。その場合に、邦銀が米銀の肩がわりをするなど不当な犠牲を強いられないようくぎを刺したと。こういう報道がされておりますけれども、そういう可能性があるんだろうかどうか、これが第一点。  そして実際、現実上、途上国からの融資条件の改定について実際どういうことになっておるのか、これについて答弁をいただきたいと思います。
  275. 竹下登

    国務大臣竹下登君) えてしてこれは、IMF等が介在したりいたしました際に、率直に言いまして、先進国がまま債権者会議みたいな感じになるわけでございます。そういう場合に、どっちかといいますと、貸した当時、言ってみれば十年ぐらい前とでも申しましょうか、そのときのわが国のそういう国際機関への出資比率と今日の経済の実力では、いまの方がかなり上になっております。したがって、別に債権取り立ての座長でもございませんけれども、ある程度そういうリード役をしなければならぬ場合も、それはございます。  が、その際、心しておかなきゃならぬのは、先進国共通の責任でこれらには対応していくべきものであって、一国の問題を、たとえば日本なら日本なりがこれを肩がわりして対応すべきでないという考え方は、絶えず持っておりますので、そういう趣旨を、私が到着いたします前、本委員会から参りましたので私は一日おくれましたが、そういう考え方が基調に置かれた意見発表を大場国際金融局長が行ったということであります。
  276. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その大臣前提の話として、途上国からの融資条件の改定などは、全部は大変でしょうけれども、大体大ざっぱに言ってどうなっておるのか。それに対して邦銀が米銀の肩がわりをするような、そうせざるを得ないような状況が現実にあるのかどうか。その点はどうですか。
  277. 大場智満

    政府委員(大場智満君) 細かい問題でございますので私からお答え申し上げます。  融資条件の改定と申します場合には、商業銀行の融資条件の問題かと思いますが、これは国のカントリーリスクといいますか、リスクが増大いたしますと、どうしても金利が高くなるという問題があります。これは非常に矛盾したことでございますけれども、つまり開発途上国にとってみれば、一番苦しいときに金利が上がるのではないかという問題がございます。もちろんそれがゆえに米ドルの金利が低下してくれることが望ましいわけでございますけれども、一本一本の契約、貸付契約という点から見ますと、たとえばメキシコの場合ですと、二年前ぐらいはユーロの六カ月分の金利プラスの八分の三%ぐらいで借りられたものが、最近の五十億ドルのニュークレジット、新規貸付という場合には、ユーロダラーの六カ月分の金利プラスの二%ぐらいということになってきております。これは銀行サイドから言いますと、リスクが高まっているときに貸す金であるから、スプレッドといいますか、その上乗せの金利が高いのはあたりまえではないか、危なくなってから貸すんだからという考え方が、どうも背景にあるようでございまして、この辺は逆に債務累積国からすれば苦しい点かと思います。しかし、大きな新しい金を動員するときにはやむを得ないことではないかというふうに考えているわけでございます。
  278. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 肩がわり問題。
  279. 大場智満

    政府委員(大場智満君) 肩がわり問題につきましては、私は具体的に米銀から肩がわりを求められたことはないわけでございますけれども、アメリカの銀行は非常に中小銀行を含めたくさんの銀行がありますものですから、そういった小さな銀行の中にはラテンアメリカ諸国への貸し付けから手を引いたところもあるわけでございます。ところが、御承知のように、日本の銀行は、大体こういった国際業務に通常従事しております数は二十数行でございますから、一行の脱落もない。むしろ私どもが少し小さな銀行に、あなたのところは別に引き下がってもいいですよというようなことを申し上げると、とんでもないという答えが返ってくる状況でございます。  ですから、そういう意味では非常に協力的なわけでございますけれども、いま申し上げましたように、米銀の脱落というのを防ぐ手だてを米国も考えてもらわなければいけない。もちろん小さな銀行の脱落ですから、金額的には大したことはございませんけれども。そういう意味で私どもは、その負担の公平といいますか、バードンシェアリングということを言っているわけでございます。
  280. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それからもう一つ、代理演説の中で指摘されている点は、アメリカの高金利の主因となっている財政赤字縮小を迫ったと。これは記事の方は暗に迫ったですから、どの程度はっきり言ったのかわかりませんが、しかしこれは、いままさに審議しているとおりで、日本自身の問題でもあるんですね、多額の財政赤字というのは。どうも自分のところでそんな問題を抱えながらよう人のところへ行って言えたものだという、こんな感じがするんですけれども、これはどんな趣旨なんですか。
  281. 大場智満

    政府委員(大場智満君) いまの点でございますけれども、私どもが開発途上国の債務累積問題を解決するときに一番大事なことは、その債務累積国自体の自助努力である。厳しい経済調整を進めていただくことが一番肝心であるということが第一でございます。  その次には貸し続けていけない。いつまでも貸し続けられないからこそ、こういう問題が起きたわけでございますので、そうしますと、債務累積国自身が輸出で稼いでもらわなければいけない。つまり経常収支がよくなってもらわなければいけない。経常収支には二つありまして、貿易収支と貿易外収支でございます。  貿易収支につきましては、彼らの輸出してくるものを先進諸国ができるだけ買ってやる努力が必要ではないか。ですから保護主義の台頭を許してはいけないという問題があるわけでございます。  次に、貿易外につきましては、これは一番大きな支払い要因は金利でございますので、しかも開発途上国はほとんどドルで借りているわけでございます。したがって、アメリカの金利が低下していくことが開発途上国の経常収支の改善にとっては望ましい。金利の低下をもたらすものは米国の財政の赤字の削減ではないであろうかということで、ちょっと踏み込み過ぎたかもしれませんけれども、そこまで私どもの日本のステートメントの中に盛り込んだわけでございます。
  282. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 よそへ行ってそういうことを言ってくるんですから、国内ではもっと一層の決意を持って臨むんだろうと私は思うわけです。  そこで、次にもう一点ちょっとお聞きしたいのは、サラ金二法が通過しまして、その後、きのう決算委員会で答弁があったようですが、    〔理事増岡康治君退席、委員長着席〕 金融機関に対して融資の状況の調査をするということと、それから書面による通達を出すというかなり積極的な対応があります。  そこで、通達の具体的中身ですが、きのうの答弁では必ずしもはっきりしなかったんですが、第一には社会的問題になっているサラ金業者への融資はまず自粛すること。その場合、大手だからといっていいというわけではなくて、大手でもずいぶん問題を起こしている。たとえば最大手の武富士なんか大変な問題を起こしているわけですからね。大手の場合はいいということではなくて、そこは厳格にやっていくべきだろう。  それから二番目には間接融資も抑制していくべきであろう。三番目には担保の確保など健全融資を徹底させること。こういう内容であるべきだと思うんですが、その点はどうでしょうか。通達の中身です。
  283. 岡崎洋

    政府委員(岡崎洋君) 昨日、銀行局長決算委員会でも御報告いたしましたように、私ども最近の貸金業者に対する金融機関の融資につきましては、その実態をできるだけ早くつかみたいということで実態調査の作業に取りかかっておるところでございます。いまお話の出ました通達につきましては、その調査の実態を踏まえまして現状に適した通達を出したいと思っております。  ただ、通達の骨子につきましては、かねてより口頭で五十三年以来指導しております私ども考え方、つまり金融機関は公共性の高い機関でございまして、社会的に非難を浴びるような営業活動、融資態度というのは許されないわけでございますので、そういうことの御批判を受けないような健全な融資態度をとってもらいたいということを骨子として通達を出すつもりでございますけれども、個々具体的な内容につきましては今後もう少し詰めていきたいというふうに思っております。
  284. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから法律施行のための政令も準備していると思うんですが、それはいつごろになるか。  かつ中身について——法案が通ったときに比べてその後大変な社会的な批判が巻き起こっていますね。さらにきょうも、これは夕刊ですが、香典まで取り立てたなんていう、こんなものが出ていまして、もう大変なことなんですね。ますますひどくなっていく。あの法案だけで十分にこういう状況までチェックできないということも、当委員会でも十分指摘された点なんですね。政令も、法律のもとの政令ですから、それは限度があると思うんですけれども、その辺でそういう事態に対処して踏み込めるようなことを考えているのかどうか。単なる施行規則的なものだけではなくて、もうちょっと実体を持ったものになるべきではないかと思うんですが、どうですか。
  285. 岡崎洋

    政府委員(岡崎洋君) 貸金業規制法の法律の成立に伴いまして、現在その実施のために鋭意準備を進めておるところでございまして、政省令あるいは通達等を今後整備していこうというふうに思っております。  その内容につきましては、国会の御審議、御議論、あるいは今日の社会的ないろいろな御批判、世論の動向等も踏まえまして、行政といたしましても、一歩前進したなという認識を得られるような中身のものにしたいというふうに考えております。  なお、いま御指摘のやや具体的な取り立て規制の問題あるいは誇大広告等の問題につきましては、政令になじむ面、なじまない面もございますので、なじまない面につきましては通達等で配意をして、やや具体的に例示をして、好ましくないと思われるものについては極力排除するような形で、具体性を持った通達指導をしていきたいというふうに考えております。
  286. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に、国債発行の問題ですが、大臣は国債発行は前年度よりも一兆円減額したということを大変強調されておるわけで、私は本会議でそれは粉飾じゃないかという指摘をしたことがあります。というのは、一つは、補正後との比較であって、半初予算で言えば、逆に二七・八%もこれはふえておるわけで、決して減額したことにならないという点が一点。  それから粉飾というのは、二億とかわずかな部分は別にして、たとえば自賠責の問題にしましても、電電の方にしても、結局、翌年の分を前借りしたようなものですね。あれは将来返すものだから将来の分の借金、要するに借金なんですよね。という点では、これは要するにかっこうだけそろえたと先ほど指摘がありましたね。  ということで、かなり無理に無理を重ねて集めてきた、こういう金ではないかと思うんです。午前中、いや、ほかにもまだあるんじゃないかという点で指摘があったようですけれども、恐らく相当もう無理に無理を重ねて、これはもう来年はこういうやり方はむずかしいんじゃなかろうか、こういう財源は期待できないんじゃないか、今度で言う自賠責とか電電公社からの。その点の認識はどうですか。
  287. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま近藤委員おっしゃいましたように、確かに補正後に比べて一兆円の減額、これは私も小さい声で言わなきゃならぬぐらいなつもりでおります。前の大蔵大臣のときには、五十四年の当初に比して五十五年一兆円減額したと。しかし五十四年の経済状態がよかったから、結果としては、五十四年は一兆八千億でしたか発行しなくて済んだから、それよりは、戦後最高には結果としてはなりましたが、今度の場合は初めから対当初予算じゃないわけでございますから、小さい声して言わなきゃいかぬというようなことも言いましたのは、そういう対当初予算ということでなかったからそういう表現をしたわけでありまして、それでも精いっぱいのことであったと思っております。  それから次の税外収入、まさに財確法でいろいろ御審議いただいておる問題、このもろもろの先人の蓄積とでも申しましょうか、それを出していただく。これはこれなりにまたいろいろ探した問題でございますが、自賠責等はお借りするわけでございますね。金利がつかないというだけの考えようによれば相違だと言えぬこともない。こういうことでありとあらゆる知恵をしぼったわけでございますが、この税外収入というものが五十九年度予算編成に際して期待できるという面は、これはことししぼるだけしぼった、知恵をしぼったというふうに申しましょうか、そういう意味において大きな期待はできないだろうなという気持ちはございます。しかし、やはり指摘もございますので、税外収入の確保については精いっぱいの努力はしていかなきゃならぬと思っております。
  288. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 期待できないとなると大変厳しいし、来年はことしよりよけい厳しいという御答弁もあったようです。  これは衆議院のとき以来大蔵大臣が言っておりますことは、赤字国債の脱却時期の問題で質問されまして、大体目標年次は八年ぐらいのところに置いている、それから計算して大体五十九年度も一兆円程度の赤字国債減額を考えているんじゃないか、こういう指摘がされているんですが、それはそのように理解してよろしいんですか。
  289. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 赤字国債の脱却年度をどこに置くかと。中期試算は、いずれにしましても、七、五、三の計画の中で等率等差という考え方で並べておるわけですが、赤字国債の縮小ということには、これは金額的にいま言う段階ではございませんが、やっぱり一番心を注がなきゃならぬ点だというふうな理解の仕方は持っております。
  290. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 まあ、できるかできないか、やってみなきゃわからぬことなんでしょうけれども、一兆円ぐらいは赤字国債を減額したいというお気持ちはおありなんですか。
  291. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは一兆円と言わず、精いっぱい赤字国債は縮小していきたいという気持ちは変わりありません。
  292. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、それは実際できるかどうかという問題ですね。これは後での増税の問題とも関係します。ただ、実際見てみますと、来年度は国債費が二兆五千億円増、地方交付税が一兆三千億円増、それから一般歳出人件費増などが約二兆円。そうしますと、歳出増要因が五兆八千から九千億円。片や中期試算によっても自然増収が二兆一千億円。そしてそれに対していま言った赤字国債一兆円ぐらい努力をするとなりますと、中期試算のCケースの倍以上にも大変な困難な状況になってくるんじゃないかということ、これも午前中指摘をされました。  で、それに対して、ことしより楽になることはないというような大臣の答弁だったんですが、むしろ本当に苦しいことはもう明白ではないか。要調整額が明らかにこれは超えてしまう。それはいま言った計算からでも明白じゃないんでしょうか。
  293. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま、審議の手がかりとしてお示ししておる中期試算、それを手がかりとされるというのは、私どももそれ以上のものを提出していないわけでございますから、当然のことだと思うんでございますが、従来の中期展望なりからしましても、その要調整額を上回る努力をした経過もございますので、予算編成はこれからでございますが、それこそ制度施策根源にさかのぼって、各般の立場から調整していくという考え方で当たっていきたい。少なくとも赤字国債依存を五十九年に脱却するというのは延ばしたわけでございますから、その延ばしたある種のめどがついたら、それに対して当然ある種の整合性を持った脱却の計画を念頭に置いた予算編成をしていかなきゃならぬだろうというふうに考えております。
  294. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、先ほど来マイナスシーリングの問題が出ているわけで、これは皆さん聞いたので省略しますが、マイナスシーリングの例外、別枠として防衛費、海外協力費、エネルギー対策費などが出てくるんじゃなかろうか、こういう指摘がされていますね。それに対してまだわからぬとおっしゃるかもしれぬけれども、しかし防衛費などは後年度負担で五十九年度で九千九百億円、それだけでもう対前年五%増ということは明らかですね。それに加えてさらに人勧実施による人件費増と。なれば、この防衛費については少なくともいまのまま、正面装備その他われわれが非難するようなことやらなくても、いまのままでももうマイナスシーリングの別枠になってしまうということは、これは明らかじゃないでしょうか、これは現実の認識の問題として。
  295. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) シーリング、従来防衛費な別枠にしているわけではございませんで、国際的な取り決めに基づく国庫債務負担行為歳出化分を別枠にしているわけでございます。去年と同じような別枠というか、例外をことし設けるかどうかすら、まだ今後検討すべき問題と思っておりますが、昨年の場合も国庫債務負担行為歳出化だけで千七百億を超える増加があったのに対して、実際の防衛費増加は千六百三十五億でございますから、その他の部分で削減を図っているわけでございます。したがって、シーリングそのものを厳しく検討していくことは、第一歩として当然でございますが、さらに予算編成自体としてもいろいろ工夫して財政改革の一歩を踏み出したい、こう考えています。
  296. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その名目はどうでもいいのですけれども、この後年度負担という厳然たる事実があるね。それは指摘されているように計算すれば必然的にそうなっていく。となれば、結果的にいま私が指摘したようなことにならざるを得ないのではなかろうか。その点、大臣どうでしょうか。
  297. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱりいわゆる国際取り決めに関するものというようなものにつきまして、昨年はこれを例外といたしました。それがあるいは科学技術振興費であり、それから防衛費であったということになるわけでございますが、それにしても、それにいろんな工夫をこらして後方装備の問題でございますとかというものを対象としながら、各般の施策と調和をとりながら予算を編成したわけでございます。したがって、この国際取り決めに関するものの全額の支払い分が幾らある、たまたま防衛費にこれだけのものがある、だからこれは例外だという性格のものではない。やっぱり聖域を設けないでこれに対処していかなきゃならぬ問題だというふうに考えております。
  298. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いずれにしても、ことしより大変であることは間違いない、明白だと思うのですね。そうしますと、これは財源の問題とすれば、当然のことながら、一つは大型間接税の問題と、それからもう一つは、これも繰り返し指摘されておりますように、国債整理基金への繰り入れ停止。これについてはまだ未確定だ、未決定だと、こうおっしゃるけれども、これはまた後で聞きます。  もう一つはマル優の見直し。これは大変魅力的な財源のようです。それが出てくると思うのですが、この点はどうですか。
  299. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) いま御指摘のマル優、民間の非課税貯蓄の取り扱いの問題でございますけれども、これは今度の国会で成立させていただきまして、租税特別措置法、いわゆるグリーンカードを三年間凍結ということに相なったわけでございますが、先ほどほかの関連で大臣から答弁がございましたように、四月二十五日の税制調査会でこの問題を受けまして、税制調査会の中に利子配当課税に関する小委員会を設置することをお決め願ったわけでございます。私どもの希望といたしましては、この小委員会で利子課税の適正な課税のあり方について御議論をいただくということになるわけでございますが、そもそもグリーンカードの問題は利子配当課税の適正化ということで、一つは郵貯も含めました非課税貯蓄がきちんと利用される、その前提に立ちまして総合課税を行うという考えに立ったわけでございますが、今後の利子配当課税のあり方につきましても、非課税貯蓄につきましてその制度をどのように展開していただくかは別にいたしましても、これをきちんとした制度としてどうすればよいのかという観点から御議論を願うことになろうかと思います。  ただ、ただいま委員が御指摘になりましたように、これから税制調査会で御議論願うわけでございますけれども、この利子配当課税の問題は、そのマル優も含めました非課税貯蓄のあり方について、いわゆる財源問題として私ども意識しておるわけじゃございませんで、適正な課税のあり方について一体どういうように考えたらいいのかということでございますので、非課税貯蓄につきまして、これを存続するか、あるいは廃止するか、世上いろいろ議論があるようでございますけれども、私ども税制当局といたしましては、現時点でこの制度の今後の成り行きにつきましては、いかなる予断も持っていないわけでございます。今後の税制調査会の御議論を待ちたい。財源問題とは切り離して税制の公平な適正なあり方という観点から御議論を願いたいと考えておるわけでございます。
  300. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もちろん適正な税制の問題は大事なことですがね。ただ、こう苦しくなってくると、それが審議されているとなりますと大変に期待も大きいのじゃないかと思うのですね。それで一定のもしも答申があれば、大蔵省としては当然これも五十九年度でも実施したい、こういうお気持ちを持っているんじゃないですか。
  301. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 先ほども申し上げまして繰り返して恐縮でございますけれども、郵便貯金を含めまして、現在の非課税貯蓄制度について今後どのように持っていくかということについて現時点で私ども具体的ないかなる予断もまだ持ち合わせていないわけでございます。
  302. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、この問題は局長が言われたとおり、財源の問題としてではなくて、本当に適切な課税の問題という点でひとつ処理をしてもらいたいと思います。  それからもう一つの国債整理基金への繰り入れ問題、これが未定だと言うんですが、要するに半分やるかもしれぬということですし、恐らく実情から言うと、やらざるを得ないようなことになるんじゃないか、こう思うんですね。  そうしますと、大蔵省が示した国債償還についての仮定計算というのがありますが、これを見てつくづく感じましたのは、たとえば六十年度までは、要するにあれがありますから何とかなりますが、六十一年から定率繰り入れと予算繰り入れ、これがごちゃごちゃになってしまうんじゃないか、こういう心配があるわけですよ。たとえば六十一年ですと、定率繰り入れが二兆四百億円、予算繰り入れが三千億円、合わせて二兆三千四百億円ですね。六十二年度が両方合わせたのが五兆九千三百億、ピークが六十七年の八兆九千三百億。となりますと、要するに一般から出ていくことは間違いないでしょう。同じですよね。  その場合に一々、ここまでが定率繰り入れ、ここまでが予算繰り入れと、これが区別つかなくなってくる。そうなりますと、今度、ええ、めんどうくさい、一緒だというようなことになりはしないか。六十年までは恐らく別々に——別々というか、予算繰り入れないわけですから、定率繰り入れですということでちゃんと計算して予算措置がとれるのだろうけれども、六十一年以降、果たしてその制度が実質的に維持できるんだろうか、そういう心配は——そういう心配というか、これはわれわれが心配するんで、大蔵省はまた別の考えかもしれませんが、その辺についてはどういう考えで臨んでいますか。
  303. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 定率繰り入れ制度は、財政制度審議会の報告にもありますように、今後とも基本的にはこれを維持すべきであるということでございますし、私どももその考え方でございます。  ただ、六十年代、そうは言っても基金は枯渇しますし、かなりの予算繰り入れが必要なことは御指摘のとおりでございますが、ただ、定率繰り入れで入れるべき額というのはどういう状況になってもはっきりするわけでございますから、別にごゃごちゃになるわけではないと思いますし、また六十年代はかなり苦しい状況でございますが、特例債の償還が一山越えれば、またこの制度は機能を回復して正常な働きをするわけでございますから、制度としては私どもあくまでもこれを維持してまいりたいと考えております。
  304. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私はなぜこんなことを言うかといいますと、いままで剰余金があったときに、剰余金があったら法律どおり返せ、こう言いますと、これは大平さんの時代からそうなんですが、どっちみちまた国債発行しなきゃならないんだ、同じなんだ、だから、要するに国債発行を少なくするんだから、剰余金はひとつ勘弁してくれ、こう言うわけですよ。私は同じ論理がこの定率繰り入れと予算繰り入れの問題で出てきやしないかということを、これはいままでの剰余金の例があるから心配するんですね。実際そうでしょう、実態はね。  実態は、いままでですと、ちゃんと繰り入れして別にちゃんととっておくというから区別つきます、かっこうの上で。ところが、今度は定率繰り入れです、それからもう一つ予算繰り入れです。一挙に返しちゃうというわけですから、全然どこへもこれが形がつかないわけです。そうなりますと、この制度がいまでさえきちっとあるべきなのに、それが崩れるとなると、こういったことを繰り返しことしもやり来年も繰り入れしないという事態が続くと、今度は六十一年ころにはその癖がついてしまって、この制度が本当になし崩しになくなってしまいはしないか。こういう心配をするんですが、その心配は全く杞憂でしょうか。
  305. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) そういう心配をすれば切りはないわけですが、とりあえずこの特例公債をこんなに発行している状況から一日も早く脱却したい。それから国債が百十兆も累積して国債費の負担に悩んでおりますので、これから脱却したいという苦闘を六十年代にかけてやらざるを得ないわけで、まあ、そういった御心配も十分あり得るわけでございますけれども、いろいろ国債の償還そのものはこれはまたやらざるを得ない話でございますから、その他の面で財政の改革を進めまして、一日も早く、一年でも早く特例公債から脱却する状況をつくりたい、こう考えております。
  306. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私の心配があり得るということですので、もう一つ突っ込んでお聞きしたいのは、そうなりますと今度は借りかえの問題なんです。これは大臣繰り返し、理論的には赤字国債の借りかえはあるけれども、実際やらない決意だと。もしやると言ったらば、それこそ国債は一挙に暴落しちゃいますから、とても言えないのでしょう。ですから法律的にそれはない、法制度がありますからね。大臣もそういう決意だと。それをしないとなりますと、財政が苦しくなってきた場合にやるのは、もう一つ建設国債の方の借りかえが、いまの仮定計算よりも多くなってくるのじゃなかろうか。要するに端的に言いますと、定率繰り入れ分、その分がよけいに借りかえになってしまいはしないか、こういう心配を私はするのです。これはあり得ないことではなかろうと思うのですが、どうですか。
  307. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) いま建設国債は六十年で全体の償還を終える。といいますのは、建設国債の対象になる施設、総合いたしまして、大体耐用年数が六十年ということで一つ制度をつくっていたわけでございますから、これはこれで動かしがたい一つの理屈の上に立っておりまして、じゃこれをどういうふうに延ばすかと言っても、それはやりようがないわけで、そういうことは全く考えておりません。
  308. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 考えてないとおっしゃいますけれども、本当に苦しくなりますと、どこから出そうか、順序から言いますと、どうしても借りかえしなくちゃいかぬ。その場合に、赤字国債は当然してきた経過もあり、制度上もしないとなりますと、建設国債の六十年に返していくというあの六十分の一、これは決して法律事項じゃないでしょうから、となれば、よけいできるわけですよ。片方は法律を変えなければできぬけれども、これは法律を変えずにできるとなったら、やっぱり手がつけやすいんじゃないですか、こちらの方が。だから、そういう意味では私はこれもまた杞憂ではないのだろうと思うんですが、絶対ないと断言できるでしょうか。
  309. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは恐らくそういうことは考えられないのじゃないか。建設国債は六十年耐用年数で償還するという、ずっと長年の定着したルールがございますし、借りかえをふやせば結局借換債がふえてまいりますし、全体の国債市場、借換債ももちろん市場での償還になるわけですから、そういった制約もございますし、いろいろ御懸念をいただいておりますけれども、建設国債の借りかえの年数を延ばすということは全く考えていないところでございます。
  310. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そうすると可能性とすると、建設国債の借りかえよりは、赤字国債の可能性の方があるということになりますかね。そうしたら法律的には赤字国債の方がしにくいんですけれども、逆にこれは借金という面から考えれば、片方は十年の借金ですわね、片方は六十年の借金ですからね。六十年の借金を返さぬということは、六十分の一も返さぬという、これは大変なことだからこれはあり得ない。となると、苦しくなったらやはり今度は十年の方に手がついちゃう。その方が借りやすいですわね、感じからいけば。六十年目のやつを返さないよりは、十年目のやつの方がちょっと待ってくれという方が言いやすい。ということで、そうなる可能性も出てくるのじゃないか。あくまでも可能性ですがね。どうなんでしょうか。
  311. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは特例債は借りかえをしないということを、今回の法律にも書いて審議をお願いしているわけですから、借りかえしますなんていうことは申し上げることはできないわけでございますし、また理論的には歳出カット、負担増、それから借換債の発行じゃない償還のために新たに特例債を発行するといったいろんな道がございまして、それはいまから数年先の六十一年度、二年度の予算編成のときにどうなるかという話でございますから、いまからどうなるかということをちょっとはっきりした形で申し上げるわけにはいかないと思います。
  312. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 きょうのところはそれ以上の答弁は出てこないと思いますけれども、ただ私きょう指摘したことは、数年後に、まだ私の議席があるかどうかわからぬけれども、あったときには、どうだということで、そのころは竹下さんが大蔵大臣であるかどうかわかりませんけれども、あるいは総理の竹下さんでいるかもしれませんし、そういう問題なので、そうあってもらっちゃ困るので、ひとつ肝に銘じていただきたいと、こう思います。  次に、国債消化の問題ですが、報道によりますと、サウジが対日投資を抑制した、そしていままで過去二年間で一千二百億円、直接大蔵省が発行する中期国債の購入をしておったけれども、五十八年度は購入が無理だという報道がありますが、そのとおりか。そして、それがもしそうだとすると、この国債消化にどのような影響を持っているだろうか。
  313. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) そのような事実はございません。
  314. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ないということは、サウジがいままでどおり購入するということですか。
  315. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 新聞に出ておりましたようなそういう決定がなされたというような事実はないという意味でございます。
  316. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そうすると、これからどうなるかはわからぬということですな。
  317. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) そういうことでございます。
  318. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もし新聞報道のようなことになった場合の国債消化上の影響としてはどうでしょうか。
  319. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いま御指摘のように金額もそう大きなものでございませんし、そのときどきの国内の資金需給あるいは円レートの問題とか、いろんな問題が絡みますので、何とも明確には申し上げられませんけれども、毎月国内で二回中期債を出しておりますが、大体三千億ぐらい一回でやっております。そういう金額とお比べいただければ、これは買ってくれれば非常に助かりますけれども、率直に申して余りそう心配することはないと思います。
  320. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大臣にお伺いするのですが、国債の危機ということが言われておるんですが、これをどのように理解しておるのか。これは要するに国債の過剰発行が問題ではないかと、こう思うわけですね。その点についての大臣の御認識をお聞きしたいと思うんです。
  321. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国債の発行高は、できるだけこれは縮小すべきものである。だから財政再建と言われた時代からなお今日も、まずは赤字国債を脱却し、総体的には国債依存度を下げていくというのが財政改革の大きな筋道ではないかという理解をしておるわけです。大きくなれば、市中消化のときにおきましても、あるいはこの条件の問題等々につきまして、それが市中金融の金利をも圧迫するようなことになるということは、まさに経済運営全体からいって困ることでございますので、そういうことがないようにできるだけ——補正後に比して一兆減したという御批判もございましたが、やはりそういう姿勢は持って当たっていなきゃならぬ課題だというふうに考えております。
  322. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういう国債の過剰発行が、たとえば国債相場の下落とか、そういった事態に反映しておるわけですが、そういう中で日銀信用依存レートというのができてきているんじゃないかと、こういう感じがしてならないのですね。一つ政府短期証券の日銀引受、もう一つは資金運用部の国債を日銀が買い取るということですね。大蔵省としては、それは日銀引受とは違うと。これはたしか形式的には違うけれども一つの脱法行為じゃないのか。実質的には日銀信用に依存するその体制ができて、日銀引受禁止という事態が実質的にだんだんだんだんなし崩し的にだめになっていくんではなかろうか。こういう心配があるんですが、どうですか。
  323. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いろんな側面がございまするので、私が担当しているファクト、実態の方から御説明いたしますが、蔵券でございますけれども、これは財政法の七条に書いてありますように、年度末までに歳入で償還しますから、そういう意味で御指摘のようなことは制度的にあり得ないし、実態的にもないわけでございます。  それからもう一つの運用部と日銀との取引の問題ですが、現在やっておりますけれども、これは最初にまず日銀のを買うという行為から始めているわけです。要するに運用部に余資がありました場合に、日銀の持っておる国債を買ってその利回りを享受したいと。それで売り戻し条件づきで約定の日が来ますとまた買い戻してもらう。ですから、そういう意味で御指摘のようなことは実態問題としてあり得ないわけでございます。
  324. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、そういうことが専門家からも指摘されているということは申し上げたいと思います。  それから次に、経済の実態の問題で、大蔵省が経済の構造変化と政策の研究会というのを発足させましたけれども、その研究成果ですね。これは二年ほど前ですか、私はアングラマネーなどを追及しましたが、いろんな角度から見ていこうということでの大蔵省の積極的な対応だろうと思うんですが、現状をちょっと御説明いただきたいと思います。
  325. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 御指摘の研究でございますけれども、そもそもこの研究の動機と申しますのは、最近のわが国経済社会を見ておりますと、経済の成熟化が進行している。そういうことを背景にいたしまして、二回石油危機がございまして、これを契機にいたしまして経済のソフト化、サービス化というような大きな構造変化が生じているということに着目したわけでございます。  こういうソフト化、サービス化というのは、大変大きな複雑な概念ではないかというふうに思われるわけですけれども、それを、明確な定義はございませんけれども、あえてどういうようなものかというようなことで申し上げさしていただきますと、まず一つの特色としましては、非製造業、特にその非製造業の中でサービス業という分野で新しい産業分野が発展してきている。例示いたしますといろいろございます。情報サービスとか、家庭サービスとか、文化、スポーツとか、いろいろございますけれども、そういうサービス業の進展が見られる。これは雇用にもあらわれておりますし、生産額でも出ておるわけでございます。  それからもう一つ出てまいりますのは、製造業の中でございますけれども、それも物的生産を中心とした段階からソフト面を重視した高度の段階、たとえばファインテクノロジーというようなものが出てくるとか、IC産業が出てくるとか、そういうような現象が第二の特色として見られるわけです。  それから第三番目といたしましては、これは需要面でございますけれども、消費の中において物離れが出てきている。たとえばサービス支出が恒常的にこのところ消費の支出の中からも増大しているというようなことでございます。  そういうように明確な定義はございませんけれども、これは世界共通でございますけれども、わが国においても非常に著しく見られるということで、それに着目いたしまして、そういう経済構造の変化があるからには、今後の政策の対応にも、こういう背景、経済構造、社会構造の変化に対応していかなければならないのじゃないかということでございます。  そこで、私どもといたしましては、これは大蔵省の委託研究でございまして、それで館竜一郎先生を座長といたしました学者とか、世間研究機関の方々にお願いいたしまして、いま先生御指摘の名前の研究会を設置したわけでございます。  この研究成果自体は、ただいまの予定といたしましては、六月上旬に研究会の報告書として取りまとめて発表していただくことになっておりまして、これはあくまでも委託研究でございますから、大蔵省の正式研究会とかなんとかというようなものでもございませんが、しかしそういう重要な事実もございますので、大蔵省の執務の参考にしてまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。  その場合にも、執務の参考とする場合でも、経済社会構造のことと関連いたしますので、各省とも関連いたしますので、十分相談しながら、政策対応上の執務の参考というふうに考えておるわけでございます。
  326. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その研究が進むと、たとえば経済予測などへも影響が出てくると思いますけれども、それはどのように考えておりますか。
  327. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) その経済動向の判断でございますが、ただいまいろいろ例示を申し上げましたように、各種のところ、構造面でございますと就業面、それから消費面、消費構造、就業構造、それから産業構造というところにあらわれてくるわけでございます。そう言っても抽象的でございますので、おわかりにくいかもしれないと思いますが、たとえばGNPの成長率などにも影響を及ぼしてくるだろうと思います。ソフト化ということでございますから、いままでのような巨大工業の生産の急速な拡大というようなことではなくて、むしろ人的面あるいはサービス面というようなことでございますから、緩やかな成長が予測されるような要素も強まってくると思います。一方、その経済成長というのは、逆に無理をしなければなだらかなものがあるかもしれません。  それから、先ほど先生ちょっとアングラと勘違いしているんじゃないかというふうにおっしゃいましたけれども、ただいま私どもが申しましたのは、経済社会構造の大きな変化というところに着目しておりますので、アングラというよりは、むしろもっと大きな意味での全体の経済構造の変化としてとらえている。アングラというようなものということになりますと、それに関連して申しますると、いままでどちらかといいますと、景気予測などでも物的面に着目した統計が多いとか、あるいは産業構造でも伝統的な産業、製造業を中心にしているようなところ、そういうようなところで統計上の把握の問題などもあろうかと思いますので、そういう点もいまの委託研究の中でも御研究いただいており、新しいサービス産業、ソフト産業の分類なども研究しているわけでございます。そういう点なども考えながら、今後の景気予測の判断に役立てていかせたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  328. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 税制との関係では、一つは、法人税の比率が所得税との関係でだんだん年々ずっと落ちてきておりますね。これは産業構造の変化と関係があるんじゃないかというのが一点。  それから今度、実際課税していく場合、課税逃れをなくすという点で変化——かなり高度の技術などもありますから、そういう点で課税対策としてもこれから考慮していく必要がずいぶん出てくるんじゃなかろうかと思うんですが、その点についてはどうですか。
  329. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 税収に占めます法人税のウエートでございますけれども、四十年代、五十年代を通じまして達観して申し上げられることは、税収の中に占めます法人税のウエートが、三〇%を軸にいたしまして、そのときどきの景気循環に応じまして上へいく年、下へいく年、これは四十年、五十年を通じてこの傾向は変わらないわけでございますが、ただ注意しなければならないことは、国民所得統計で見ますと、ただいま委員が御指摘になったこととも若干関連するんですけれども、雇用者所得のウエートがこの十数年間に一〇数ポイント上がっているわけでございます。  その中身を見ますと、個人の自営業種から雇用所得の方へ振りかわったという一つの構造変化と、それから法人企業形態での企業所得のウエートが若干減る傾向にございます。にもかかわらず、ウエートが三〇%を軸にしてわりあい循環を描いておるというのは、これはこの期間に実は四十五年、四十九年、五十六年と三回にわたりまして法人税率の引き上げを行っております。それが恐らく文えになっているだろうと思います。  ただ問題は、これをどういうふうに分析するかということなんですが、法人企業のウエートが下がるということは、日本の産業構造全体が雇用所得化していく、税制面から言えば給与所得化していくということなんですが、それがいまおっしゃるように経済のソフト化と関連があるのかどうか、つまり、もっとわかりやすく言いますと、経済のソフト化ということは、企業の収益の形成過程におきまして恐らく人件費のウエートが高まってくるという傾向だろうと思うんですね。したがって、それが結果的に雇用者所得の分配率が高まるというかっこうであらわれるのかどうか。世上、経済がソフト化して、いわゆる泡沫企業のようなものがあらわれてそういうものが課税面から逃れる。いわゆるアングラ経済の問題でございますけれども、そういう傾向はないとは言えないとは思いますけれども、それが税収構造に響くような形であらわれてくるということは考えにくいというふうに考えております。
  330. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 あと自賠責の問題ですが、時間もないので端的な質問にしたいと思うんです。  最近、保険会社の中で、もちろん自賠責と任意保険と両方ありますが、その獲得競争が大変強まっておる。そのことが契約者に対して何か問題を起こさせてくるようなこと、そんなにたくさん多発はしてないようですけれども、そういう傾向になりはしないかということが指摘されているんですが、その辺の認識はどうでしょうか。
  331. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) ここ数年来自動車の保有台数の伸びが低下してございますので、いわゆる自動車保険の保険料収入がなかなか高度成長のときのようなわけにはいかない。そういうところから御指摘のような顧客の獲得競争という点が激化しているという面は、あるいはあろうかというふうに思うのでございますが、この競争が激化いたしますと、サービスが追いつかないんじゃないかというような御指摘ではございますが、むしろ損保各社では、査定体制の充実なりあるいは保険金の支払いの迅速化といったようなサービス内容の向上に努めませんと、とうていこの競争に勝っていけないわけでございますので、直にそういったサービスの低下を来しているというふうには考えられないわけでございます。
  332. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから、これは先ほどから指摘されておりますように、自賠責のこのお金は利用者の方に還元すべきだという指摘がされています。そこで、その一つとして、特に交通遺児に対する制度、これはどんなものがあって、実際の運用の状況はどの程度、どうなっていますか。
  333. 熊代健

    政府委員熊代健君) お答えいたします。  自賠特会におきまして、交通遺児関係に対しましては、自動車事故対策センターを通じました無利子貸付、それからこれと関連する形なんですけれども、交通遺児育成基金事業というのをやっておりまして、これの助成、それから都道府県の行っております高等学校の授業料の減免事業に対する助成、それから交通遺児育英会の修学援助事業に対する補助といったものを行っております。
  334. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、国の方が無利子でこのお金を横取りしてしまう前に、もっともっといま言ったような事業を充実させるべきじゃなかろうかというんで、一つの例だけ申しますと、いま言った高校生、それから大学生に対する育英資金というのがかなり苦しいようですね。そして現に、これはことしの四月二十二日の新聞記事によりますと、金が苦しいので街頭へ出て募金をしている。こういう状況のようで、この部分の補助をもっとふやすようにと、こういう大変強い希望がありますが、それは御存じかどうか。それで、それに対してはどういうお考えか。
  335. 熊代健

    政府委員熊代健君) 先生御指摘の問題は、先ほど申し上げたうちの交通遺児育英会の問題だと思います。  現在、私どもがやっております交通遺児関係の事業としましては、自動車事故対策センターが義務教育機関ということでやっておりまして、あと、この交通遺児育英会が高等学校と大学をやっておるわけですが、足長おじさんといったような問題は、基本的には大学の問題について寄付を中心にしてやっていく。私どもがやっておりますのは、高等学校の修学に対する貸し付けを助成するということでやっております。私どもとしましては、五十八年度予算におきましても、先ほどもちょっと触れましたけれども、交通遺児育英会に対する助成としましては、五十七年度二億八千八百万というものに対しまして、五十八年度予算におきましては三億四千九百万ということで、他の補助金等が抑制ぎみでございますけれども、これにつきましては二一%強の増額を図っている。  先生御指摘の今後の問題としましても、われわれとしましては、交通遺児対策については今後とも十分配慮していきたいというふうに考えております。
  336. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 義務教育からだんだん充実していくということはもちろん大事ですけれども、ただ最近は高校へは皆ほとんど行っているわけで、交通遺児だから特別に恩恵的に考えることではないんじゃなかろうかと、こう思うんです。  そこで、大臣、最後に、この問題では、これは午前中の質疑の中で、これに対して、国が借りたものに金利をつけないのは、要するに国と国の貸し借りだからつけないんだという御説明だったんですが、しかし元来このお金は、運用益ですからね、だからそれを活用すれば利益が出る。そしていま言ったような交通遺児の方へ回すお金、もっともっとこれが出てくる可能性もあるし、それから会計全体の赤字を防いでいくという意味で動いている感じですね。国がそれを無利子で借りたということはこういう問題にも大変な支障が出ているんじゃなかろうか。ですから、私は、運輸省が大分努力をされて、いま言った高校生のお金をふやしていくということは大変結構ですけれども、これはもっともっと充実するという点で、そう安易に横へ持っていってしまうというようなことはやはり慎んでいくべきではなかろうかと、こう思うんですが、御答弁いただいて質問を終わります。
  337. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、一般会計から特別会計への繰り入れ繰り戻しという関係は、これは金利がつかない。そしてまたいろいろな見方があると思います。これは民間であったら法人税で持っていかれる。それがいわば運用益が発生してもそういうことはないという性格の金でもあるわけです。いずれにしても、この金については再三申し上げましたが、私どもとしては非常に重要に考えて、一大臣同士の話し合いにすべきものじゃないというところから、総理にある種の調整役をお願いして、そして事務的に詰めていった問題でございますので、安易に考えるべき課題ではないという基本姿勢は持ち続けて、そして御協力をいただいた自賠責特会に対して、あるいは運輸省に対してと申しましょうか、感謝をしておるという気持ちを素直に申し上げておきます。
  338. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 終わります。
  339. 柄谷道一

    柄谷道一君 まず最初に、自賠責保険の取り扱いについて御質問いたします。  多くの委員から指摘されましたように、自賠責保険は、いまさら私から申し上げるまでもなく、交通事故の被害者救済を主たる目的として自動車全所有者に加入を義務づけている制度であります。昭和三十年五月、政府はこの提案趣旨説明の中で、自動車による人身事故の場合の賠償責任を適正にする措置である、そして自動車側の賠償能力を常時確保するための措置であると、法の趣旨、目的を明らかにいたしております。そして自賠責特会の運用益、滞留資金の運用益につきましては、昭和五十三年六月十二日の自賠責審議会答申の中でも、「今後の使途については、保険収支の動向をも勘案し、将来の収支改善のための財源として留保しておくことを考慮するほか、救急医療体制の整備及び交通事故防止対策等への活用については効率的に行うことが適当である。」と、その運用益の使途を限定いたしておるわけでございます。  私はこのような法の趣旨、目的、今日までの経緯、また特に自賠責特会が自動車ユーザーの保険料からなっているという事情にかんがみまして、一般会計が苦しいからといって保険料の運用益を一般会計に繰り入れることは、元来筋違いであり、制度そのものの根幹を揺るがしかねないものではないか。こう認識するわけでございますが、大臣のまずしかとした御認識をお伺いしたいと思います。
  340. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 昭和三十年の提案理由、それから五十三年の答申等に示されました自賠責保険の趣旨、それから運用益の使い道については、そのとおりでございますが、現在運用益の累積したものをいかに保険契約者のために還元するかという方策について運輸省で御検討中でございまして、まだ具体化していない段階でございます。そういう段階で、使途の決まっていないものでございますから、その二分の一程度一般会計で一時お価りしたいという趣旨でございますので、これが制度の根幹を揺るがすとか、そういうふうには考えていないわけでございます。
  341. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは大臣、これは法の趣旨、また自賠責審議会の答申、限定して運用益の使途を明示しておるそれから比べて、これは理にかなうものであって当然であると、こういう御認識ですか。
  342. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私は当然であるという認識はございません。理解を得て、まさに財政確保のために御協力をいただいたものであるという認識を持っております。
  343. 柄谷道一

    柄谷道一君 五十八年三月の臨調最終答申では、五十八年度の予算案において、一般会計歳出予算の一部を特別会計や財政投融資に振りかえるようなやりくりがある、このように指摘をいたしまして、あわせて一時的なやりくりは真の問題の解決を先に延ばすだけである、このように政府の安易な姿勢を厳しく批判いたしておることは大臣も御承知のとおりであります。  大蔵省は、三月十八日わが党の伊藤郁男委員予算委員会で質問をいたしておりますが、その答弁の中で、今回の措置がなければ自賠責特会が得たであろう運用益分だけ、一般会計から特会へのツケ回し、いわゆる振りかえをしたということをみずから認めておられるわけでございます。これは今回の措置が臨調答申の精神に反するものであると、こう思うのでございますが、大臣の御認識はいかがでございますか。
  344. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 臨調の趣旨は、一般的にそういう問題を先に延ばす一時的なやりくりは好ましくないという御指摘だと思いますが、この自賠責につきましては、五十八年度予算で五十六年度の歳入欠陥を埋めなければならないという臨時異常の需要がございまして、そのために特別財源対策としていろいろなものを各省に御協力をいただいたその一つをなすものでございます。そういった異常な歳出需要に充てるための特別の財源対策として運輸省にも格別の御協力をいただいたと、こういうふうなことでございまして、一般的な臨調のこの答申、決してそのやりくり自体好ましいことではないわけでありまして、そういうことをやらずに済めばそれは一番いいわけでございますが、いまの財政の状況からいきますと、あらゆる努力をして財政の収支を合わせていかざるを得ない現状でございますので、まあやむを得ないのではなかろうか。そしてまた仕組みの問題でございますので、法律改正をお願いをいたしまして御審議をいただいているわけでございます。
  345. 柄谷道一

    柄谷道一君 臨調の精神は、一時的緊急避難措置は回避すべきであるというのがその本流に流れているわけですね。そうして万やむを得ず行う緊急避難措置であっても、これは速やかに解消せよと。これが政府に求めている臨調の精神だろうと思うんですね。したがって、心ならずもやらざるを得なかったけれども、しかし臨調の趣旨には残念ながら沿い得なかったと正直に告白されるのが正直な姿じゃないですか。
  346. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) まあ、そういうふうなことが言えるかと思います。その一時的なやりくりというのは決して好ましいこととは私ども考えませんけれども、しかしいまの財政の状況から見てやむを得ないという措置であったと考えております。
  347. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで大臣にお伺いいたしますが、いままでの答弁で、今回のこの措置は当然のものとは考えない、万やむを得なかったんだ、そして臨調の答申には必ずしも沿うものではないけれども、こうせざるを得なかったんだということだろうと思うんですね、これは。  そこで私は、大臣が、この自賠責保険制度の趣旨や目的にはそぐわないし、運用益は本来基本的には保険金支払い限度額の引き上げや保険料の引き下げないしは交通防止対策等、強制加入させられている自動車保有者に還元する性格のものであるというものを率直に認められた上で、それを十分認識された上で、万やむを得ず財政上の理由からとった一時的緊急避難措置であるということをまず率直に認められて、こうべを下げてとはあえて申しませんが、謙虚にひたすら議会と自動車ユーザーの理解を願うという性格のものではないかと、こう私は思うのでございます。大臣、そのとおりでございますか。
  348. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 厳しい財政事情のもとで、五十六年度決算不足分の補てんの繰り戻しという臨時的な支出に対処するための特別措置のまさに一環として行うものでありますので、自賠責特会の累積運用益については最終的には保険契約者の利益のために活用することとして、繰入額についても後日一般会計より繰り戻すこととしているというものでございます。だから、いまおっしゃった趣旨は、私はそれで肯定していただいて結構だと思うんです。  実は、最終答申をいただきましたのが三月の十四日。このときに指摘を受けましたわけですが、この議論というのは、従来のもろもろの政府の政策手段の中のものが言われておって、これを念頭に置いて——まあ、これより前にとった措置でございます、率直に言って。これが出ましたときにそういう感じを私も持ったわけでございますが、そう言ってみたところで、確かに一時的なやりくりという批判も当たらないものではない。だから万やむを得ざる措置としてこれをとらしていただいたという御理解をいただくほかにはない。これはユーザーにも、所管される運輸省にも、また御審議いただく国会に対しても、そういう考え方は持っております。
  349. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで運輸省にお伺いいたしますが、この自賠責保険の収支状況、これはポリシー・イヤー・ベーシスにより推計した数値でございますが、五十三年度マイナス二百六十億、五十四年度マイナス四百九十三億、五十五年度マイナス五百二十九億、五十六年度マイナス八百二十九億、このように単年度では支払い超過になっておりますし、その額も年々拡大傾向にある。そうした単年度支払い超過分は今日まで滞留資金の運用益によって埋め合わせをしてきておる。これが現状であろうと思うんですね。  一方、交通事故の発生状況は、五十三年度以降、対前年比で増加し続けております。また保険金限度額も五十三年七月以来、五年近く据え置かれておりまして、政府も現在保険金限度額の引き上げの要否について検討中である、こう承知いたしております。もしそれが行われるとすれば、保険料率に響くことは避けられないと思うわけでございます。  私は、こうした現状から考えれば、無利子で十年間も一般会計に貸し付けるという余裕は全くないのではないか、こう思うんでございますが、運輸省の認識はいかがでございますか。
  350. 熊代健

    政府委員熊代健君) 先生御指摘のように、五十三年度以降単年度の保険の純収支が赤字になっておる。ただ、これは大蔵省の方からも前に御答弁ありましたように、純収支だけで見ました累積でまだ現在黒字が残っているわけでございます。運用益は、それと別個に運用益としてあるわけでございまして、ただ長期的に見れば、車の増加率に比べて事故の減少率が下がって減少傾向が下げどまりになっている。したがって、事故の件数がここのところ一、二年ふえておる。それが保険全体の収支に悪影響を及ぼしておるということは事実でございます。  ただ、これは私の立場から一つ特会だけの観点で見た場合に、特別会計の単年度の収支規模は現在約四千六百億ぐらいでございます。先ほど申し上げましたように、純収支の部分じゃなくて、運用益の累積部分だけで、五十七年度末五千十億というかっこうでございます。したがいまして、これは利子分について云々という議論などもございますが、一般会計からの直接間接の事故防止のための支出というものが自賠責保険そのものにとっても有効に働いてきているということも勘案いたしまして、先ほど申し上げました単年度の収支規模、それから現在の自賠特会におきます資産構成等から見まして、直ちにこれを保険契約者に還元いたすとしましても、これを直ちに全額取りつぶしてしまうというような状況にはないんではないか。そういった観点から、返していただけるということを前提にいたしまして、今回のような繰り入れ措置に合意したわけでございます。
  351. 柄谷道一

    柄谷道一君 しかし、本来この措置をやらなければ得たであろう運用益分は減少する、これだけのことはお認めになりますね。
  352. 熊代健

    政府委員熊代健君) 御指摘のとおり、二千五百六十億に対します利息分は、三年間はそのままですし、三年たって返還分が出てまいりましたら、残りの分についての運用益が特会としては減少になるということは事実でございます。
  353. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、衆議院段階及び本院における質疑段階を私なりに要約しますと、政府答弁は大体次のようになると思うんです。  五十八年度の厳しい財政状況を背景に大蔵省は運輸省にお願いをして、税外収入としてお借りをした。運輸大臣としては、総理大臣からの話もこれあり、運用上支障を来すかどうかを調べたが、当面そのようなこともないのでお貸しすることにした。五十八年予算編成に当たって、五十六年の決算上の不足額の処理に充てた二兆二千五百億円を返還するために利子のつかない金を探し、一回限りでもあるので自賠責特会からお借りをした。国庫内部のやりくりには利子をつけないというのが原則である、こういうことだと思うんですね。  そこで、一昨年十一月二十七日に成立いたしました厚生年金保険事業等に係る国庫負担金の繰入れ等の特例では、その第二条で、「その他の適切な措置を講ずる」と、こううたい、そしてこれの実態は利子をつけることであると答弁しておられるわけでございます。同じ特会間でもこれは利子をつけているわけですね、つけて返す。今会は利子をつけない。  そこで、その理由は何かと本来質問したいんで、すが、時間も限られておりますので、政府のいままでの答弁を要約しますと、年金の場合は、長期間にわたり、かつ保険設計上その積立金の運用益が予定されているから利子を払ったんだ。しかし自賠責の場合は、短期であり、その運用益は保険設計上積算の基礎に入っていないから利子をつけないんだと。政府のいままでずっと一貫してやってきた答弁を要約すれば、こういうことになると思うんですね。  私は、これは余りにも形式的な答弁ではないかと思うんですよ。一般会計への貸し付けということは、大臣も冒頭申されましたように、これは本来当然の事項ではない、万やむを得ざる緊急措置としてお借りをするんだと、こう言っておられるわけですね。いわば超法規的という表現が当たっているかどうか知りませんけれども、やりくり上やむを得なかったんだと、こう言っておられる。一方、金利の取り扱いについては原則を述べておられる。  私は利子の取り扱いについて原則を主張されるなら、貸し付けがいいかどうかにも原則を貫くべきである。万やむを得ずやったとするならば、利子の取り扱いについても特別の措置が考えられてしかるべきではないか。片方だけは万やむを得なかったんだ、ひたすら運輸省、ユーザーの理解を求めたい、こうお願いをしながら、利子の取り扱いに関してのみはたてまえを通すというのは、ちょっと私は、身勝手という言葉は失礼かもしれませんけれども、そうユーザーが受け取っても、これはやむを得ないと思うんですね。  私は、法の例外的緊急避難措置として今回の措置を求めるならば、利子の取り扱いについても弾力的配慮があってしかるべきではないか。しかも滞留資金の運用益はユーザーそのものの拠出金でございます。その使途の本来の目的に照らしても特段の措置をとるということは、私は当然ではないかと思うんです。これは全く政策的な問題でございますから大臣からお答えをいただきたい。
  354. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに自賠責保険は短期保険でございますので、保険設計上は運用益の発生は見込まれていないものだと私は思います。したがって、私どもこれを議論するに際して、私はいま申しておるような姿勢であるべきだと思っておるわけでありますが、それはお互いの協議の中には、いま運輸省の審議官も非常に丁寧に物を言っていらっしゃいますが、事実、一般会計その他、直接間接に自賠責保険そのものに益するところの施策も率直に言ってなされておるではないか。そしてこれが、たまたま五十六年度の繰り戻しというもので税外収入をたくさん探したことは事実でございますが、総体的に言ったら、予算の歳入の一環となった場合に、言ってみれば、直接間接的に自賠責保険そのもののこの保険制度上益することにもなり得る面もあるわけでございますから、情に絡んだというわけじゃございませんが、そういう意味も加えてお願いをしたわけであります。  したがって、長谷川運輸大臣のこれはジョークでございますけれども、よし、貸してやろう、金利は別のところで取れよ、とかいうような、お互いそういう話し合いもその過程においてはあり得た。これはふまじめな議論と言われれば、その指摘にも甘んじなければなりませんが、私どものこの議論の過程においては、そういうこともあったということを率直に申し上げて、御理解をいただきたいものだというふうに考えております。
  355. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは問題をさらに進めますが、今日までの審議の中で大蔵省は、五十三年度以降単年度収支は赤字になり、その幅はさらに拡大の傾向にある。しかし料率を引き上げるかどうかという場合は収支の累積も考慮する必要がある。現在、収支の累計では若干の黒字が見込まれておるので、今後自動車事故の急増あるいは支払い限度額の引き上げといった急激な支払い増があれば別であるが、そうでなければ直ちに料率を引き上げる必要はないと。こう一方で述べておられるんですね。  しかし、他の一方で、現下の収支状況等から見て料率の手直しはいずれ必要になる。保険限度額は五十三年に改定してから五年近く経過しており、改定が必要かどうか、引き上げるとすればどの程度でよいかを検討しておる。ただし、検討結果がいつ出るかは現在未定である。こういう要旨の答弁をされているわけです。  私はこういう答弁から見て、今後、貸し付けておりますこの十年間に限度額の引き上げ、料率の改定がないという保証はとうていできないと思うんです。十五年もほうっておくということはできませんからね。  そこで、私はこの法の趣旨、目的、いままでいろいろ述べましたけれども、それらに照らしましても、保険料の値上げが避けられない事態になったときは、これは償還すべきである。また収支状況が悪化しても、安易に料率を引き上げるのではなく、まず運用益の取り崩しで対応していくというのが筋ではないかと、こう思いますが、いかがでございますか。
  356. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この運用益の使途自体は、運輸省でこれから御検討なさるわけでございまして、それがいま御指摘のような方向になるかどうか、これはいま確言できない話でございますし、保険料率を上げざるを得ない場合に、これを返すというふうなことをいまお約束できる段階ではございません。と申しますのは、いまこの自賠責の構造自体から言いまして、民間保険と両方あるわけでございますが、民間保険の積立金運用益そのものは自賠責に比べてはるかに小さいわけでございますから、そのバランスをどう考えるかというふうな問題もございますし、いろいろなお検討すべき問題が多いわけでございますので、ちょっといまの御指摘には沿いがたいと思います。
  357. 柄谷道一

    柄谷道一君 いまの答弁では、保険収支の赤字が発生した場合に特別会計の運用益をもって全額その赤字を補てんする仕組みになっていないと、こういうことに尽きるんですね。当然四割相当の保険会社分は、その利益の約半分は法人税で取られますから、運用益の五十六年度末残高は六百五億円でございます。一方、税金のかからない特会は保険勘定で四千二百四十四億、保障勘定で九十九億円に達しております。そこで四対六の割合で今後使用して、保険会社分が六百五億がゼロになったというときに、特会から同じように四対六でこれを補てんして穴を埋めていくということに仮にいたしましても、特会にはなお三千三百億の金が残ると、こういうことになるわけですね。これは私の計算でございます。  この特会から保険会社分にその三千三百億円というものを還元するということは、運用益のユーザー還元の一つの方法ではないかと、私はこう思うのでございます。これだけの特別措置をやるんですから、私は現在のたてまえというものを主張するんではなくて、その現行の仕組みを変えてでもユーザーの立場を守る、その視点に立った検討が真剣に行われてしかるべきではないだろうかと、こう思うんです。いかがですか。
  358. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この運用益自体については、保険契約者の利益のためにどういうふうに還元するかということをいま運輸省で御検討なさっておられます。私どもも御相談しながらその運輸省の結論を待って適切に対処したいと思っておりますので、いま御指摘のような方法がいいとかどうとかを申し上げかねるわけでございますが、ただ特別会計に生じた運用益を民間の損害保険会社に融通するというようなことになりますと、これは現在の再保険制度仕組みそのものの基本に触れる問題でございますので、慎重に考えたいと思っております。
  359. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは運輸省にお伺いしますが、慎重に考えるという大蔵省の御答弁なんですけれども、私はいままで私が一連の質問をいたしてまいりましたように、保険料の引き上げが必要になった場合、特会の運用益について本院の意見ないしは、これは当然審議会にかけられますが、その審議会の意見を十分に聴取して、現在のたてまえの変更を含めて前向きに検討する、こういう姿勢があってしかるべきではないか。その際には保険料拠出者であるユーザーの意見というものは当然十分に尊重されてしかるべきではないか、こう思うんですが、そういう姿勢で検討されますか。
  360. 熊代健

    政府委員熊代健君) いま先生が言われましたように、この累積した運用益そのものが保険契約者に還元されるべきものであるということは、そのとおりでございますし、保険審議会あるいはここでの先生方のいろいろの御意見、それからユーザーの御意向、こういうものは十分尊重してまいりたい。  ただいま御指摘いただきました四、六といういまの再保険制度そのものについても、それを全然いじらないという前提じゃなしに、それも含めてもっと検討しろという御趣旨かと思いますが、私どもとしましては、保険料をできるだけ上げないで、ユーザーの負担にならないようにするというのも大きな利益還元の方策だと思います。もう一つは、保険金限度額をどうするかという、この二つが一番大きな問題だと理解しております。  したがいまして、先生御指摘の再保険制度そのものの根幹にかかわる問題として、これは大蔵省とも十分協議してまいらなきゃいかぬと思いますけれども、私どもといたしましては、いま御指摘のことを含めまして十分検討してまいりたいと、このように考えております。
  361. 柄谷道一

    柄谷道一君 拠出者たるユーザーの意見というものが十分尊重されて、現在の仕組みを改善することも含めて、適正な還元方法というものが検討されることを強く期待いたしておきたいと思いますし、ただいまの運輸省の答弁を素直に私は受けとめておきたい、こう思います。  そこで大臣、これは三年据え置き七年分割返済ということになっておるのですが、何も法的な根拠がこの法案にはないんですね。これは大蔵、運輸両大臣の覚書という形になっております。しかもその覚書の文章は、「原則として」と、こうなっているのですね、「原則として」と。したがって、私は可能な限り早期に繰り戻しを完了すべきである、こう思うものでございますが、「原則として」とここにうたっておることは、収支状況によっては期間を早めて完済する趣旨も含まれていると、こう理解していいのかどうか。私はそう理解したいわけです。  それから第二点は、また逆に、この「原則として」ということを逆用して、財政状況に藉口して返済期間を先送りすることは全くないと、私はそう理解したいわけですが、そのとおり、私の理解は間違っておりますか。
  362. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この「原則として」という文言を入れました趣旨は、将来の国の財政事情は現時点で確実に見通せませんということ、他方、自賠特会の収支状況も自動車事故率の変動等により影響するものでございますから、いまその返済の条件をはっきりさせない方がいいという趣旨で設けたものでございます。したがいまして、どういう事情になるかわかりませんが、その事情によっては早まることもあり得ると思いますし、また逆の場合もあり得るのではなかろうか。私どもの趣旨としては、長くすることは避けたい。十年でお返しするという約束をいただいておるわけですから、それを守ってまいりたいとは考えております。
  363. 柄谷道一

    柄谷道一君 いまの御答弁のうち、前者はできるならば早く返したいと。ここは一緒なんですね。しかし、場合によればだけはちょっと余分ですね。そんなこと言ったら、これまた法案審議がよけいややこしくなりますよ。これはもう「原則として」とはうたっても、この「原則として」というのは早期返還もあり得るということを意味するものであると、これだけははっきり大臣言っていただかないと。国の財政状況が苦しいから先送りもあり得るでは、一方ユーザーの立場はどうなんですか。それだけはないということは、大臣、これは約束してくださいよ。
  364. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは最終的に大臣折衝に上がった問題でございまして、「原則として」という言葉を使いましたのは、率直に言って、両方のことをお互い考えておったと思うんであります。だから、いま窪田次長からもお答えいたしましたように、財政事情により返済時期の先送りはないか、収支状況によっては早めることはないかというふうに問われれば、これはどちらのケースについても事情によってはあり得る。だから「原則」であるという言葉を使ったわけでございます。  しかし、私どもの精神は、いま窪田次長からもお答えしましたように、先送りのことが可能であるということが「原則として」という言葉につながったという理解を持ってはならぬという気持ちだけは十分持っておるつもりであります。
  365. 柄谷道一

    柄谷道一君 御信用申し上げておきます。
  366. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ありがとうございます。
  367. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで、私はこの問題だけで約四十分近くを消化しましたので、時間の関係でひとつ資料要求をしたいと思うのです。  一つは、五十三年度以降、自賠責収支が赤字となっていることはさきにも指摘したところでございますが、特に収支が悪化した原因、特にその車種は一体何なのか。時間の関係もございますので、この収支関係悪化の実態と分析の結果を、これは後ほどで結構でございますが、文書をもって御提示を願いたい。この法案の審議に直接どうこうという問題ではございませんが、今後のために私は重要な参考資料として検討してみたいと、こう思いますのでお願いをいたしたい。  第二番目は、保険料を算定するためには、当然大蔵省は四輪、二輪等の車種別に損害率に関するデータを整備しているものと思うのでございます。これがなければ保険料の算定ができないわけですから、そのデータがないとは私は言えないと思います。そこで五十三年以降、車種別のデータの提示を求めたい。これは今後の自賠責問題を審議する重要な指針になりますので、この二点について、時間がかかっても結構でございますが、資料提示を求めたいと思いますが、お約束いただけますか。
  368. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) まず第一点の五十三年度以降の収支悪化の原因というもの、これにつきまして文書で提示せよという話につきましては、私どもできるだけ早急に作成いたしまして御提出申し上げたいと存じます。  また、各車種別の損害率の推移でございますが、これも五十三年度以降、自動車料率算定会におきまして、かなり細かいものでございますが作成してございますので、その資料を取り寄せました上で、これは自動車料率算定会とも相談しなければいけない点がございますので、その相談によって提出できる場合にはすぐ提出いたしたいと存じます。
  369. 柄谷道一

    柄谷道一君 お願いをいたします。  私は、この任意保険では最高五〇%までの無事故割引がありますが、自賠責にはこれはございません。任意保険では、事故を起こしますと、割引の恩典がなくなりまして高い料率を負担しなければなりません。ちなみに、五〇%割引の人が一たん事故を起こしますと、その後五年間は保険料は五〇%割引と比べて六〇%の増額になるわけでございます。私は、交通事故及び交通事故死の抑止に当たりましては、運転者の交通安全意識というものを高揚させる必要があると、こう思います。そこで優良ドライバーに対するメリット制導入及び事故原因者に対するデメリット制の導入ということは、一挙には無理ではございましょうが、交通安全意識の定着という意味からきわめて意義のあることではないかと、こう思います。いま即答はできないと思いますけれども、これは審議会等で私の意見を徴して、ひとつ真剣に御検討願いたいと思いますが、検討していただけますか。
  370. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 自賠責保険にもいわゆるメリット、デメリットシステムを導入してみたらいかがかという御提案と承ったわけでございます。  自賠責保険につきましても、メリット制を導入すべきであろうというような御意見は多々ございまして、かつて自賠責審議会におきましても、そういった御指摘があったことがございます。その御指摘に基づきまして、私ども種々検討いたしたわけでございますが、御承知のように、自賠責保険が被害者救済というところに主眼を置きまして、被害者救済のためには無保険車というものの存在を許さないということのために、その保険が車にいわばついて回るような保険制度になっておるわけでございます。  ところが、メリット、デメリットという評価は、これは運転者本人にかかわる話でございまして、一つは車というものについて回る保険と、片方は運転者についての評価と、これの結びつきが非常にむずかしいわけでございます。それをたとえばある車を運転いたします人間を特定してかかれば、あるいはそれが可能になるかもしれません。しかし、その場合ほかの人が運転して事故を起こした場合には、それはもう免責条項になりまして、かえって被害者救済という趣旨に合わなくなるおそれもあるわけでございますし、さらに自賠責保険の期間中は特定したこの人だけが運転するというシステムになれば、ほかの人には譲渡できないというような不便さもこれはあるわけでございます。こういった基本的な点がなかなか解決つかない。  それと、仮にそういった点に何かうまい知恵が浮かんだといたした場合におきましても、実際の問題といたしまして、自賠責保険はこれは強制保険でございますから、一瞬たりとも無保険のままに放置するわけにはまいりませんので、直ちにその引き受けをしなければいけない。ところが、全国津々浦々にある代理店におきまして、たとえばいままでA社というところで保険を掛けていた方が、同じA社の中で保険を掛け直すというようなときは、比較的情報伝達が早いのでございますが、保険会社を違えたような場合には、果たしてその運転者の運転歴というものを的確に把握して即座にその場において引き受けができるかどうかという能力の問題もございまして、これは実は長い間検討いたしてまいったのでございますが、先ほど申し上げましたような車と運転者との結びつきというところが解決がつかないものでございますから、ずいぶんと検討はいたしましたけれども、いまなかなかいい知恵がないというのが正直なところでございます。
  371. 柄谷道一

    柄谷道一君 従来の経緯は私も十分承知いたしておりますが、私は多くのユーザーの方からそのような強い要望も受けておりますので、この問題だけ議論しておりましたら、あと私の質問時間がなくなります。そういう強い意見があるということで、いままでの問題点を技術的にどう解明できるのか。この点についても、頭からノーではなくて、関係者等の意見も徴して前向きに御検討を願いたい、このことを要望いたしておきます。  私は、道路運送車両法の改正による初回車検有効期間の延長に伴いまして、自動車ユーザーの新車購入時における自賠責保険、自動車重量税の負担は大幅に増加することになります。所得の伸び悩み、景気回復のおくれというこの現況の中で、今日国民の足になっております、しかも経済のかなめになっております自動車利用に対して、これ以上の負担増というものは極力回避すべきである。そのために自賠責特会への繰り戻しを完済しない前に安易に保険料の引き上げを行うことは許されないという私の主張を改めて申し述べまして、質問を次に移してまいりたい。最後は私の意見でございます。  次に、お手元にお配りいたしました資料は、「五十八年度における定率繰入等の停止に関する財政事情の展望」でございます。これは五十八年度において定率繰り入れ等を停止したことがどのように後年度の負担増を伴うことになるかを私なりに計数的に明らかにするために試算したものでございます。  一ページは、五十八年度定率繰り入れ等を行った場合の国債整理基金の資金繰り状況についての仮定試算でございます。二ページは、それを停止した場合の仮定試算でございます。  それを比較いたしますと、六十二年までの要繰入額は、前者の場合十一兆四千三百億円、後者の場合は十一兆七千七百億円となりまして、余裕金残高の運用益分だけ余分に繰り入れる必要が生ずるということを意味しております。  これを年度別に見ますと、五十九、六十両年度の要繰入額は全く同じでございますが、六十一年度は定率繰り入れ等を停止した場合は二千八百億円、六十二年度は一兆四千六百億円負担が増大する結果になることを数値が示しております。  これは五十八年度の定率繰り入れ等の停止によって一時しのぎはできますけれども、それは後年度、特に六十二年度に負担を先送りする結果になるということを端的に示していると思うわけでございまして、本質的には定率繰り入れの停止は財政再建に何ら寄与しないということが裏づけられている、こう私は数値で分析をいたしました。大臣の御認識はいかがでございますか。
  372. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この定率繰り入れの問題でございますが、確かにこの問題につきましては、特例公債を含む大量の公債発行をせざるを得ない状態に今日あって、このような財政状態のもとで、仮に定率繰り入れを実施するとすれば、結局その分だけが特例公債を増発せざるを得ないということになる。それで定率繰り入れを停止すれば、その分将来予算繰り入れが必要となって後年度の財政負担が増大するのは御指摘のとおりでありますが、逆に、仮に定率繰り入れを実施するとしてもそれを特例公債の増発によってやるということになれば、利払い及び償還のための後年度財政負担が同じようにまた増大をしていく。したがって、この定率繰り入れそのものが、どちらにしても、それはそれなりの先送りという批判は受けなければいけない問題ではないかというふうに私は思っております。  それといま一つは、この数値は私は正確であるという認識の上に立って比較をいたすわけでございますが、さらに公債発行という、いわゆるその分だけ仮にもし赤字公債を増発した場合に、それが金融市場に与える影響、そうしたものを考えた場合、いずれをとるかというのが、そこのところの大きな判断のポイントになるべきことじゃなかろうかなという考え方であります。
  373. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は大臣の御答弁を聞いておりますと、一言で言えば、五十八年度に定率繰り入れ等を行うとすれば、赤字国債の発行をそれだけふやさなければならぬという一言に尽きるのですね。大臣も再三御答弁されておりますように、財源調達の道は、一つ歳出カットですね。第二は何らかの形における国民の負担増です。第三は赤字国債。もしくは緊急避難措置で逃げること。この四つしか道がないんですよね、だれが考えても。  そこで、私は、いま大臣が五十八年度の定率繰り入れ等を実施するには赤字国債を増発しなければならないという見解を示されることが、臨調の第二部会が指摘しておりますように、歳出構造の徹底的見直しによる制度改革ないしは不公平税制の是正と税執行面における体制の整備、これは非常にむずかしい問題であるということで、これは手直し程度にとどめて、四つある方法のうち不足額は緊急避難措置か赤字国債か、そのいずれかを選択するという姿勢というものを端的に示されているというふうに受けとらざるを得ないんですけれども、いかがでしょう。
  374. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いろいろ徹底的な削減を行って、そしてそれは肩書きからして言うべきことでもございませんが、補正後予算に対して公債の一兆円の減額を行って、なお公債を発行せざるを得ない状況にあったという場合は、最終的なつじつまの問題だけを考えた場合には、いまの二つの問題の議論というものが残ると思うんです。しかし、それは結果として最終的に判断したものであって、基本的にはそれ以前の問題として、いま一層の歳出削減あるいは増収措置とかいうことを図るという努力がぎりぎり行われて、なお後の課題として選択肢として要望があり得た場合に、いわば繰り入れ停止措置をとったということであって、初めから繰り入れ停止措置という一つの緊急避難というお言葉をお使いになりましたが、この法律をその都度改正、その都度出して御審議をいただかなければならない措置をとるか、赤字国債の増発に待つかというのは、そのときの私はぎりぎりの選択肢であったのではないかというふうな理解の仕方をいたしております。だから、初めからこれを前提に置いてイージーに取り組んだ性格のものではないということであります。
  375. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣の御認識はそうなんですけれども、しかし臨調答申が指摘しておるのは、歳出カットについても確かにマイナスシーリングはやっておられるけれども制度の根幹に切り込むという改革はいまだ不十分ですよ、まだまだ余地はありますよ、それから税制の改正なり税執行面の改善というものももっとやりなさいよと。それもやらずしてこういう緊急避難措置に逃げるということは問題がありますよという指摘なんですね。  そこで、緊急避難措置と赤字国債の増発いずれがベターかと、こういう論議に議論が発展していきますと、大もとの財政再建議論が隠れてしまう。こういう懸念を持つがゆえにこの質問をいたしておるわけです。私は決してイージーだとは申しませんけれども大蔵省大蔵省なりの努力はされたとは思いますけれども、しかしなお土光臨調は、その大蔵省努力はいまだ不十分であると、こういう認識ですから、この認識を大臣、まずおつかみになることが前提ではないでしょうか。
  376. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 臨調の最終答申、そして土光臨調の精神とでも申しましょうか、もろもろの指摘がまだなされております。このようなものを対象にして歳出の削減に取り組むべきである。しかもそれを安易な負担増によって求めることなく、増税なき財政再建、こういう哲理のもとに事を運べと、そう仰せられておるわけであります。このことについては私どもはこれは大きな哲学としていただいていなきゃならぬ問題であって、私は、いまおっしゃいましたこの点、どちらかという選択肢を初めに求めてとった措置ではなく、結果として最終的に二つの選択肢というものがあって、そしてそれをもいいことをやったなどということは毛頭思っておりませんし、一応土光臨調の精神に照らして褒められるものであるなどというおこがましい考えは私どもも持っておりません。もっともっと拳拳服膺して身を引き締めてこれに対応しなきゃならぬ問題だと思っております。
  377. 柄谷道一

    柄谷道一君 五十八年度の政府予算窓が決まったのは十二月ですね。臨調の最終答申が出たのは三月ですよね。そこで三月の臨調の最終答申でそういう指摘が行われたということは、なお臨調としては大蔵省努力足りずということですから、余り神の御託宣程度に聞かれずに、もっと真剣に行革に取り組まれる大臣の姿勢を期待いたしておきたいと思います。  そこで行管にちょっとお伺いしますが、私は昨年十二月二十五日の当委員会で、これは臨調事務局に対しまして、定率繰り入れ等の停止などの緊急避難措置についての臨調の認識と検討の現状をただしました。そのときに、御答弁は、一月上旬をめどに集中して審議をするので現段階ではその方向を示すことができないと、こういう答弁にとどまったわけでございます。  しかし、その後一月八日に示されました臨調第二部会報告では緊急避難的措置の回避が明示されております。また三月十四日の最終答申でも財政再建の目標を示すと同時に、「一時的なやり繰りは、真の問題の解決を先に延ばすだけであり」、こういう指摘が行われたわけでございます。  そこで、行管庁はここで大臣がおるということで遠慮をしてもらうと困るんだが、率直に、今回の措置は、いわゆる定率繰り入れ等の停止という緊急避難措置は、臨調答申の意思とぴったり一致するものではないということだけは言えると思うんですが、いかがですか。
  378. 古橋源六郎

    政府委員古橋源六郎君) いま委員指摘の臨調答申の趣旨、こういうものは、先ほどからも大臣が言われましたように、いまの財政窮乏の中において財政再建をどうしても進めていくというためには、歳出構造の根幹を一回洗い直してみよう、そして行政の守備範囲であるとか、そういうものの根幹を洗い直せ、そのためにはこそくな手段をとってはいけないと、こういう趣旨だと思うのでございます。  その点につきまして先ほども大伍が言われましたように、五十八年度予算編成におきましては、財政当局におかれましては、三十年以降初めて一般歳出をマイナスにするというような非常な厳しい歳出の節減努力をやられた、こういうふうに私ども考えております。  また、財政マンとしては当然歳出カットをやるということは当然の生きがいであるし、当然そうやっておられるというふうに私ども考えております。そういうような厳しいことをやられた中において、いまのような定率繰り入れの停止ということを選択されたわけでございますから、その場合においては定率繰り入れの停止に伴ういろいろな問題、あるいは定率繰り入れを行った場合におきますそれに伴う公債発行に伴う利子負担、あるいはそれに伴う国民経済に及ぼす利子の高騰であるとか、そういうようなものを考えなければいけないわけでございまして、そういう点を財政当局が総合的にお考えになってやられたということでございますので、これについては臨調答申の趣旨に特に反するということにはならないのではないかと、こういうふうに私どもとしては考えておる次第でございます。
  379. 柄谷道一

    柄谷道一君 多くの質問を準備しておりましたが、時間が参りましたので、もう一点だけ簡単に御質問します。  大臣に確認したいんですが、来年度以降は臨調答申を文字どおり尊重して定率繰り入れ等を含む緊急避難措置を回避するということがお約束いただけるかどうか、この点だけを質問いたしまして終わります。
  380. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私ども、この臨調の最終答申、これは最大限尊重すべきものであって、これを絶えず念頭に置いて予算編成に当たっていかなければならない問題であるというまず基本論を申し上げておきます。  そうして、この定率繰り入れという問題については、種々の議論はございますものの、国債の減債制度という根源にさかのぼってみれば、これは今日も一年のこのたびの措置としてお願いしておるわけでございますので、安易にそれに手を染めるという考え方を持って臨むべきものではないというふうに考えております。
  381. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。     ─────────────
  382. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 電源開発促進税法の一部を改正する法律案国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次両案の趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  383. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました、電源開発促進税法の一部を改正する法律案及び国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、電源開発促進税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、電源立地対策及び電源多様化対策に要する費用に充てる財源確保するため、今次の税制改正の一環として、電源開発促進税の税率を引き上げることとし、本法律案を提出した次第であります。  この法律案は、電源開発促進税の税率につきまして、千キロワット時につき現行の三百円を四百四十五円に引き上げることといたしております。  次に、国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  国民年金特別会計への国庫負担金の繰り入れにつきましては、その額が多額に上っておりますが、老齢福祉年金及び拠出制国民年金の受給者数の推移等から、昭和六十四年度までは減少し、その後は増加することが見込まれています。  この法律案は、このような状況にかんがみ、拠出制国民年金及び福祉年金を合わせた全体としての国民年金特別会計への一般会計からする国庫負担金の繰り入れの平準化を図るため、昭和五十八年度から昭和七十二年度までの間における当該繰り入れの特例に関する措置その他これに伴う必要な措置について定めるものであります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  まず、昭和五十八年度から昭和七十二年度までの各年度における拠出制国民年金及び福祉年金に係る国庫負担につきましては、昭和五十八年度から昭和六十三年度までの各年度にあっては、当該各年度に係る国庫負担金の額から所定の金額を控除した金額を、昭和六十四年度から昭和七十二年度までの各年度にあっては、当該各年度に係る国庫負担金の額に所定の金額を加算した金額を、一般会計から国民年金特別会計に繰り入れることといたしております。  次に、昭和五十八年度から昭和六十三年度までの間において国民年金法による年金たる給付の額を改定する措置が講ぜられた場合には、当該措置に応じ、昭和五十八年度から昭和七十二年度までの国庫負担金の繰り入れの特例に係る所定の控除額及び加算額を、政令で改定することといたしております。  さらに、国庫負担金の繰り入れの特例に関する措置がとられたことにより国民年金特別会計において減少する運用収入に相当する金額を、昭和七十二年度以降において、平準化の趣旨にのっとり、予算の定めるところにより、一般会計から同特別会計に繰り入れることといたしております。  なお、本法律案は、その施行日を昭和五十八年四月一日と提案しておりましたが、その期間を経過しましたので、衆議院におきまして、公布の日に修正されておりますので御報告いたします。  以上が、電源開発促進税法の一部を改正する法律案及び国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案の提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  384. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。  なお、両案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十五分散会