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1983-04-28 第98回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十八日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月十九日     辞任         補欠選任      藤井 孝男君     斎藤 十朗君  四月二十日     辞任         補欠選任      板垣  正君     藤田 正明君      斎藤 十朗君     藤井 孝男君      仲川 幸男君     衛藤征士郎君  四月二十一日     辞任         補欠選任      寺田 熊雄君     丸谷 金保君  四月二十六日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     宮本 顕治君      柄谷 道一君     柳澤 錬造君  四月二十七日     辞任         補欠選任      柳澤 錬造君     柄谷 道一君  四月二十八日     辞任         補欠選任      穐山  篤君     勝又 武一君      丸谷 金保君     小谷  守君      宮本 顕治君     近藤 忠孝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         戸塚 進也君     理 事                大河原太一郎君                 中村 太郎君                 増岡 康治君                 塩出 啓典君     委 員                 岩動 道行君                 上田  稔君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 鈴木 省吾君                 塚田十一郎君                 藤井 裕久君                 勝又 武一君                 小谷  守君                 鈴木 和美君                 竹田 四郎君                 桑名 義治君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       岡崎  洋君        大蔵省主計局次        長        窪田  弘君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省証券局長  水野  繁君        大蔵省国際金融        局次長      長岡 聰夫君        国税庁直税部長  角 晨一郎君        運輸大臣官房審        議官       熊代  健君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        国土庁長官官房        防災業務課長   西澤 辰夫君        大蔵省銀行局保        険部長      猪瀬 節雄君        水産庁漁政部漁        業保険課長    木村 邦雄君        郵政大臣官房審        議官       田代  功君        建設省住宅局民        間住宅課長    鹿島 尚武君        消防庁地域防災        課長       長谷川寿夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十日、仲川幸男君及び板垣正君が委員辞任され、その補欠として衛藤征士郎君及び藤田正明君が選任されました。  また、二十一日、寺田熊雄君が委員辞任され、その補欠として丸谷金保君が選任されました。  また、本日、丸谷金保君及び穐山篤君が委員辞任され、その補欠として小谷守君及び勝又武一君が選任されました。     ─────────────
  3. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は前回聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 鈴木和美

    鈴木和美君 四月の二十八日二十九日の両日ワシントンで開催される世界銀行IMF開発合同委員会及び二十九日の先進七カ国蔵相会議大蔵大臣が出席されるということですが、大変御苦労さまでございます。それに関連して若干の質問を申し上げたいと思います。  まず第一は、今回の世界銀行IMF開発合同委員会及び蔵相会議目的とその主要テーマは何であるかについてまずお聞きしたいと思います。
  5. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 本院のお許しをいただきまして、きょう出発するわけでございますが、いま鈴木委員質問になりました世銀IMF合同開発委員会の問題でございます。二十八、二十九でございますので、基調演説財務官の方にすでにお願いをしてございます。  この開発委員会暫定委員会二つ委員会がございまして、開発委員会というのは、大臣レベル委員会として大蔵大臣が開発問題についての意見交換を行って、その結果を世銀IMFに助言、報告するというのが目的になっております。したがって、今回の開発委員会主要テーマは、開発途上国の対外債務問題、それからもう一つIDA、第二世銀の増資問題ということになるであろうというふうに思っております。ただ、当然のことながら、開発委員会機会に、主唱国大蔵大臣が接触いたしまして話すということ、これはロビー外交であろうと、あるいは飯のときであろうと、あるわけでございますが、これは為替問題、それから各国経済運営の問題についての意見交換、このようになろうかと思っております。
  6. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは、わが国政府は次の課題に対してどのような方針で臨むのか、またその委員会及びその会議でどのような主張を行うかについてお尋ねをしたいと思うんです。  まずその一つは、世界不況現状を打開するためには、私はアメリカに対してアメリカの高金利 政策をやめることを主張すべきだと思うのです。すなわちアメリカ公定歩合は、八三年四月で八・五%と言われておりますし、最近ではその低下傾向があるというように聞いているんですが、それでもなお日本公定歩合の五・五%と比較すれば非常に高いわけですね。アメリカ金利を下げないことには日本金利も下げられないということで金融政策の手詰まりになってしまうんじゃないかと思うのです。そういう意味大臣見解をまずお伺いしたいと思うのです。
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私ども先般お許しを得てパリへ参りましたときにも、ある国の大蔵大臣が一緒になって合唱しよう、アメリカ金利を下げろと、こういうようなある種のジョークを交えたお話もあったぐらいでございます。  ただ、昨年の七月以降はアメリカも、きょうの統計でも出ておりましたが、インフレ率低下いたしまして、インフレ鎮静化というふうな状態になっておりますので、それに伴って昨年の十二月まではかなり低下してきました。が、しかし、一層これが低下しますことが、GNPで二十数%、あるいは世界経済力から言えば三〇%というような国でございますので、低下しましたならば、たとえば債務累積国を対象にしてみましても、当然それだけ金利低下すれば累積債務そのものも軽減されることになります。  それからもう一つわが国にとってみれば、短期的な問題ではやっぱり為替レートでございます。この問題が安定するでありましょうし、それが安定すれば、またわが国金融政策、これにもいわゆる余地が拡大してくるということでございますので、そのためにはやっぱり金利低下努力すべきだ。  いささか仕組みの相違もございますけれども、その主張をすると同時に、それには客観的に見れば、アメリカ財政赤字が結局、日本公債政策にもある意味においては共通しますが、市中金利を押し上げておる結果になっておるわけでございますから、財政赤字削減ということにもアメリカ努力をさるべきだというようなことは、今度の場合は公式の場所でその議論が展開されるとは必ずしも思いませんけれども、非公式な立場、それぞれ折に触れて主張していくべき課題ではなかろうかというふうに理解をいたしております。
  8. 鈴木和美

    鈴木和美君 後ほど為替レートのことについてはまたお尋ねしますけれども、私がいま述べましたように、現在八・五%は、日本の場合の五・五%というような状況から見ると、アメリカ金利を下げなければ日本公定歩合も下げられない、同時に内需拡大もなかなか進まないという関係に私はあると思うのですが、そういう見方は間違いでございましょうか。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 間違っていないと思います。ただ、多少注釈を加えますならば、実質金利ということになりますと、日本は物価が落ちついている割りにはまだ若干高いという意味においては、いま公定歩合であらわれた数字だけでもって議論をするのはいかがかと思いますが、趨勢としてはおっしゃるとおりでございます。
  10. 鈴木和美

    鈴木和美君 ぜひ、大変むずかしいこととは存じますが、金利引き下げについて大合唱の音頭をとるように御努力いただきたいと思うのです。  同時にもう一つの問題は、世界不況打開のためには、もう一つアメリカ財政赤字をなくすことも必要だと思うのです。つまりアメリカ財政赤字をなくすために、福祉を削っておりますけれども、むしろ軍事費を削ることを私は優先すべきだと思っているんです。世界軍事費が現在約六千億ドルを超えるんじゃないでしょうか。それが先進国発展途上国ともにこのことによって重圧で苦しんでいると思うのです。世界軍縮を進めるには、アメリカ軍備増強から軍縮へという方向転換することが絶対に必要であり、わが国被爆国であるという意味からも、アメリカに向かって率直に軍縮方向へ転換すべきであることを直言すべきだと思いますが、大臣いかがですか。
  11. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その国々政策選択優先度というものがございますので、言ってみれば、米国自身財政赤字削減については努力をされているところであるというふうに私どもは思っております。しかし、それを見てみましても、国会との問題等でいろいろな問題があるようでございますけれども、短期的な歳出凍結とか財政改革に関する提言、いわゆる向こうで考えておる四項目というようなものを見てみましても、そうしたことに対する議論も十分行われておるというふうに私ども見ております。
  12. 鈴木和美

    鈴木和美君 時間がございませんので、その点についても折に触れて、正式な会議ではないにしても、サロンなどでぜひ私の気持ちを大臣なりにそしゃく、しんしゃくをされて伝えていただきたいと思うんです。  次は、世界金融不安の原因となっております開発途上諸国の累積債務問題でございますが、この累積債務残高は、世銀報告書でもことしはすでに六千億ドルに上ると言われていると思うんです。他方わが国銀行のそれらの諸国に対する貸付残高も約五百九十億ドルに達すると見込まれているんじゃないでしょうか。こういう問題がわが国にとっても非常に深刻な影響を及ぼすことは言うまでもないと思うんです。そこで、わが国としてこの問題、つまり発展途上国救済策についてどのような対策大臣会議で提言しようとしているのか、お聞かせいただきたいと思うんです。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘ありましたように、中南米、東欧、その他のいわゆる非産油開発途上国、これで大変な経常収支赤字が今後とも続くと見込まれておりますし、それからメキシコ、アルゼンチン、ポーランド、これらはもうすでに債務返済に困難をもたらしておる、こういうことでございます。  わが国は今日まで、この債務返済困難な国々等に対する対応策としては、指導的役割りというと表現がいささかオーバーになりますが、その分に応じて——その分とは、率直に言って、かつての日本でございますとその中に占める日本のシェアというのは五番目か六番目。ところが、実質経済力から言えば二番目というような感じで諸外国は見るわけでございます。その中において適切な対応をしながら、IMFとか、そういうものが主導権をとりますと、各国ともいわば協調融資にいたしましてもうまくいきますので、そういう国際機関協調に対しては、かなり地位も上がっておりますし、極力主張していかなきゃならぬ問題である。基本的にはこれは債務国自身が厳しい自助努力というものをしてもらわなきゃいかぬわけでございますので、いささか言いにくいことがございましても、そのようなことについては積極的な発言をしていかなきゃならぬ。ただ、全般的に申しますと、幾らか金利低下傾向がございますので、たとえば産油国に限って言えば、値下がり分をある程度金利の下落によってカバーできる面もあろうかな、そういう感じがいたしておるわけでございます。  それで、日本民間銀行におかれましては、要するに日本が他の先進国と余りアンバランスでないようにということに気をつけながら、中長期的な視点に立った貸付方針を考えていかれるように指導をいたしておるということでございます。そういう自助努力をしなさいというのも、たとえば世銀とかIMFとかいう国際機関でありますと、意見として非常に強烈に言いやすいという面もございますので、意見がそういうふうな方向に行くことを誘導し、そしてそういうものが稼働すれば、それに付随して各国民間金融機関も出やすいわけでございますから、そのような形の中で協調してやっていこう。ただ日本の場合は、銀行の数もアメリカ等に比べれば少のうございますし、それぞれ力もございますので、いまのところ二つの面がありますが、一つは、外国から見た場合、脱落しないでよくやってくれている、こういう見方もあろうかと思います。それだけに国内でこれに対応する場合は、リスクがないように相手側自助努力の推移も十分見ながら対応していくという考え方でいなきゃならぬというふうに、指導といいますか、誘導してまいろうという考え方であ ります。
  14. 鈴木和美

    鈴木和美君 中曽根総理が間もなくASEAN諸国を訪問するというような時期だけに、開発途上国発展途上国はこの問題に関する動向というのを非常に注意深く私は見守っていると思うんです。  そこで、巷間伝えられているアメリカなどの政策は、発展途上国に関する援助の問題に対して、相対関係とか二国間関係とかについてのレーガン政権態度が非常にきつく前面に出ているような傾向に私はあるように見受けておるわけです。そういうときに、アメリカとの関係を考えたときに、一体日本態度というのはそういうレーガン政策の追従に入るのか、国際的なプールにおいての公平な取り扱いをするというような路線を強調するのか、この辺のところは、出かけられて、どちらの見解大臣はお持ちでしょうか。
  15. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいろんな見方がございますが、要するに第一次石油ショックが起きた。日本はそのとき、これは批判のあるところですが、どうして対応したかといえば公債発行、いわば財政が出動いたしまして、言ってみれば、失業者も出ないようにいろいろな角度からこれを支えてきたわけでございます。財政対応をどっちかといえばしないで、石油が上がればそれだけ、日本みたいに九九%依存していない国になりますと、どうしてもイージーになりがちでございますから、したがって財政が出動しないで、とにかくオイルダラーを借りてしのげばいいというような風潮が幾らか他の先進国にはあったんじゃないか。したがって、石油ショックからの立ち直りというのは世界の中では日本がずば抜けて早かったんじゃないか。  しかし、そういう状態の中にございますが、一方、南北問題等で果たさなければならない先進国役割りが相対的に落ちているわけじゃないわけです。役割りはそのまま残っておる。ただ、したがって今後の経済協力については、開発途上国国々も、高度経済成長という形ではなしに、安定成長路線に適応した援助を受ける方の計画とか対応もされていかなきゃならぬじゃないかというような考えを基本的に持ちながら、全体の中で果たしていかなきゃならぬ役割りというのはそれなりに私どもは忠実に守っていこう。そういう方向でございますが、どちらかといえば、では仮に増資するかというと、みんな日本さんお願いしますと、こういう形になってもなりませんし、その辺は主張すべきは主張しながらも、果たさなきゃならぬ役割りというものを果たしていきます。  そうして、二国間の問題になりますと、やっぱり鈴木先生、これはアジアでございます。ASEANの問題は、歴史的にも地理的にも日本が果たす役割りは大きいという自覚の上に立って、そういうこともかどあるごとにお話だけはしておこう。たまたま総理ASEAN訪問とほぼ軌を一にしておるわけでございますので、もう明日になればその話はできるわけでございますから、そうした話題だけは正確に伝えておくべきだろうと思っております。
  16. 鈴木和美

    鈴木和美君 経済大国と言われるような日本状態ですから、世界的な誤解を招かないような、それで信頼されるような方向にぜひ指導していただきたいと思うんです。  さて次は、世界不況対策として先ほど若干の御説明がありましたが、私は為替相場の安定問題も欠かせないと思うんです。私のつたない知識ですが、現状では必ずしも安定していないと思っています。そこで変動相場制の改定や、いわゆるターゲットゾーン方式主張ども最近出ているわけでありますね。他方では、固定相場制への復帰といったようなそもそもの議論も今日出ていると思うんです。つまり各国協調介入といった段階から一歩進めようとする見方だと私は思っているんです。わが国としてどのような対処の仕方をするのか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま鈴木委員御指摘になりましたが、確かに各国のそれぞれのエコノミストあるいはマネタリストの中でそのような意見が出ておることは事実です。日本でもいろいろな意見がございます、とにかくフロート十年という歴史を経たわけでございますから。しかし、いま国としてまとまって変動相場制にかわる為替相場を採用しようというところまでは来ておりません。したがって、各国のそういう専門家の中の意見はあるにしても、主要国間においても、ターゲットゾーンを設けるということとか、あるいは固定相場へ復帰しようとかというのは、専門家意見としてあって、国としてのそういうまとまった動きというのは現在ないというふうに私は理解して差し支えないんじゃないか。  この問題につきましては、わが国としては、貿易立国でございますから、まさに為替相場の安定が大事でございますので、非常に基本的な問題で、中長期的な視点に立って、お互い先進国同士経済政策調和を図っていこうじゃないか、これが基本になると思うんです。  さればとて直ちに日本と同じように——別日本がすばらしくいいというわけじゃございませんが、もろもろのファンダメンタルズは確かにいい。失業率にいたしましてもまだ五倍、六倍、それからインフレ率にいたしましても、たとえばイタリーと比べれば十数%と二・数%。こういうことになりますと、中長期的な経済運営経済政策調和ということに対しては必ずしも、現実の問題としては、スムーズに行くとは思いませんが、方向としては、インフレ鎮静化したたとえば日本、その次になりますと西ドイツ、アメリカ、イギリスの順番でございましょうか、そういうところは、そういう政策調和を図ろうということは、全部が全部じゃございませんが、合意に達するテーマじゃないか。それからもう一つは、行き過ぎた場合においては各国協調して介入すべきではないか。  ただ、この協調介入ということになりますと、されば行き過ぎた範囲とはどこまでか。なかなか基準を設けるということになるとむずかしい議論がございますが、どちらかといえば、従来はアメリカは、協調介入は原則的にそれが効果を持つであろうという認識はあるものの、積極性は必ずしもなかった。が、その方もそういう方向に若干ぶれておるような感じもいたしますので、協調介入問題は、具体的にこのような事態のときにというところまで議論がいかないまでも、私はやっぱり主張し続けていこうという考え方をしておるわけでございます。これはいかなる場合でも主張してみようという基本的な考え方でございます。
  18. 鈴木和美

    鈴木和美君 これは読売の四月二十三日の記事ですけれども、三十人委員会専務理事のプリングル氏が話をしておったことについて、大臣はどういうふうに現状を見ておられるのか。  こういうことが書かれておりますね。彼が言っている中で、ソニーの盛田会長は、「為替相場の乱高下は世界製品価格変動につながり、メーカーにとっては大影響を受ける。さらにコスト低減努力相場変動で無駄になってしまうなど、社員のモラールを下げてしまうという悪影響もある」というようなことを指摘したが、これはある意味では核心をついていると言うて、そういう状況にあるとすれば、ターゲットゾーンというかネガティブ・ターゲットゾーンか、そういうものを設けることも必要ではないかと思うというような見解を述べられているんですが、この見解について大臣はどのような御見解をお持ちですか。
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まあ盛田さんのかねての持論とでも申しますか、特にあの人は、日本国内で生産してそれを輸出するのみでなく、諸外国においても投資して企業が実存しているわけですから、そういう意味において専門家でございますが、確かにいわばメーカーにとりましては、それが輸出向けであります場合には、特に中長期にある種の安定した見通しが必要であるというのはそのとおりであります。  ただ、ターゲットゾーンを採用する上でどういう問題点があるかと申しますと、具体的なゾーンとすべき為替相場水準を確定することが実際問 題むずかしい。結局、ある種の幅のある固定相場という表現もできるわけでございますから、主要国間で合意に達することが現実問題としてむずかしい、それが一つございます。  それからゾーンの変更が必要となった場合、速やかに変動幅を確定してこれに合意するというようなことは、それは直通電話のある時代でございますけれども、実際問題としてはなかなか機動的な対応がおくれるということがございます。  それからもう一つは、いつも言われることですが、マネーゲームでもございませんが、投機をむしろそれによって奨励するようなことになりはしないか。そういうこともございますので、一定範囲におさめるということは実際問題なかなか困難だ。したがって、一定範囲におさめるとなれば、それに付随した金融政策から経済政策全体がそればかり中心に動きますと、大変負担がそこに生じてまいりますので機動的な国内経済運営に支障を来す、それを追い詰めていきますれば。  そういう意味において、いつもターゲットゾーンを設けるという問題は理論として必ず展開されて、そして現段階ではそれに対する否定的な結論がずっと展開されていく。だれしも一度は考えてみる議論でございますが、そういう傾向にありますので、勉強の課題としてはこれからも持ち続けるべきものでございますけれども、にわかにワイダーバンドみたいなのを設けてそこでやっていくというのはむずかしい問題じゃないかという認識を持っております。  と申しますのも、いささか答えが長くなりましたが、昭和四十六年、ドルの兌換制停止が行われた際からある議論ではあるんでございます。が、十何年結論が出ないというのは、それだけむずかしい問題だということじゃないかと思っております。
  20. 鈴木和美

    鈴木和美君 私も、つたない知識で勉強し始めたら、固定相場制変動相場制の間に何かもう少しきちっとしたものがつくり得るんじゃないのか、またつくらなければ大変なことになるなあというような認識であったんですが、いまの大臣お話を聞いていますと、なかなかむずかしい問題であるということはそれなりに理解します。  そういう意味では、読売の四月二十六日でしょうか、大臣の行かれるのに当たっての解説的な記事で、「予断許さない為替協調介入」というような題で、結局は「協調介入をめぐる先進国間の共同歩調がどこまで実現できるか予断を許さない情勢」だと、こんな解説が出ているんですが、いまのお話によりますと、まあ話は出るけれども、確定的というか固定的というか、そういうものの方針というのはなかなか出にくい状況にあると、こういうふうに承ってよろしゅうございましょうか。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) かつてよりは私は進んだと思うんであります。ヨーロッパの通貨、EMSがありますから、仮に西ドイツを代表したといたしまして、他の先進国、たとえばイギリスとかカナダも含めて見てみますときに、協調介入は経験上も実効が上がるんじゃないか。そこまではアメリカ認識しておるんじゃないか。  ただ、これは直通電話でございますけれども、少し下世話な言葉になりますが、勘でやるというわけにもなかなかいきませんので、ちょうど僕はきょうこういう話をしておって、理財局長の加藤さんはかつて国金局長で介入の名手で、名手という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、当時からいろいろ相談しながら、もちろん公定歩合は日銀でございますけれども、原則的に言えば、為替の安定の問題は日銀に指示して大蔵省自身がやるという筋道だもんですから、いろいろな勉強をしてきましたが、徐々にそういう空気は私は醸成されるではあろうと思っております。
  22. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは、次は内需拡大問題でございます。国内的にいま一番求められている内需拡大による経済発展の問題ですが、この問題はわが国だけの経済政策という意味じゃなくて、国際的にもあらゆる場において、日本国内内需拡大というものは国際的な影響というものが非常に強いというようなことで、日本の国そのもので内需拡大による経済発展というものはどういう政策なのかというようなことが必ず話題になってくるんじゃないかと思うんです。  そこで、わが国経済の現状についてちょっと聞きたいんですが、たとえば経済企画庁、通産省の見解が、依然として日本経済は景気低迷の局面が続いているというのに対して、大蔵省は回復の過程にあるというように見ているというように私は伝え聞いてるんです。たとえば経済企画庁の四月十九日の月例経済報告では次のようなことを述べていますね。  我が国経済をみると、個人消費はゆるやかな増加を続けている。設備投資は、大企業では当面これまでの高い水準を維持しているものの、伸びには頭打ちの気配がみられる。一方、中小企業では製造業を中心に停滞が続いている。住宅建設は前年を上回る水準にあるものの、前月より減少した。以上、国内需要の回復力は、在庫調整の進展はみられるものの、総じて盛り上がりを欠くものとなっている。一方、輸出は一部に動意がみられるものの、なお一進一退で推移している。このような動向を反映して、生産は弱含み横ばい気味に推移している。また、労働力需給は悪化した状態が続いている。こういうふうに述べていると思うんですが、大蔵省としての認識は一体どういうものか、その根拠を明らかにしつつ説明をしていただきたいと思うんです。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一つ言えますことは、わが国経済は個人消費に支えられて、要するに物価が安定しておるということでございますが、内需中心に着実な成長を示しておって、その一つの根拠とでも申しますのは、五十七年度、何回か下方修正してではございますけれども、三・一%、これはどういう角度から見ても確実に達成し得たというふうに言えるんじゃないかと思うんでございます。そうは言っても、世界経済の回復のおくれから、輸出はいまおっしゃいましたように一進一退という状態でございます。したがって、それぞれの企業別に見ました場合に、あるいは産業別に見ました場合に、大変厳しい対応が迫まられておる分野、これは確かにございます。したがって、そういう私ども大蔵省の見方と最近言われておりますのは、数字的な積み上げよりも、出先の財務局長会議等でいろいろ意見聴取をいたしますと、これ以上悪くならないだろうなと、こういう空気はある。これ以上悪くならないだろうなというのをどういうふうに実際表現すべきかということは、人によって違うと思うんですが、そういう認識にまでは来たんじゃないか。  したがって、一応お示し申し上げているのは、五十八年は三・四%の実質成長を確保しようと。そういうことになりますと、この三・四というようなものが、われわれ高度経済成長になれておる者から見ますと、好景気とかいう認識は全く実際ないわけでございます。しかし、こういう状態の中で日本だけが少なくとも三%台の成長を保ってきた。そうすると、三・四%というようなものは、過去の経験に対応するわれわれの体質からすれば、大変好況だという感じはしないまでも、これがあたりまえだという一つの意識を持つようにならなければならないという考え方を持っておって、そこでそれをより確実にするための方策は何だということから、先般の四月四日に本院で予算を議了していただいた翌日、いわゆる経済対策閣僚会議を開いて経済対策を決めたわけでございます。  あの問題、当面講ずべきこと、そして検討に付すべきこと、二色に分かれておりますが、これらは財政がこれに対応していくだけの力は、率直に言って、ございませんが、民間活力を誘導することによって対応していくならば、三・四%をより確実ならしめるという意味において効果が上がってくるんじゃなかろうか。したがって、これから考えなきゃいかぬことは物価の安定、これの基調を持続いたしまして、それから米国経済の景気の底入れと、こういうことが最近言われております。しかし、それにしても三%台の話でございま すから、これまたかつてのような認識を持ってはいけません。  しかし、とはいえ、もう一方、念頭に置いていかなきゃならぬのは、それが結果として輸出に寄与した場合の貿易摩擦という問題もございましょう。そういうことに配慮もしながら対応していかなきゃならぬわけでございますが、総じて米国経済の景気の底入れ、そしてもう一つは何と言っても石油価格の引き下げ、それから一進一退とでも申しましょうか、ボックス相場というようなところで、いま二百三十六、七円のところへはりついておりますが、私どもが就任したころは六十円でございましたから、そういう円安是正傾向の定着とでも申しましょうか、そういうことから見ますと、いまの経済対策の効果と相まっていけば、五十八年度政府見通しの三・四%をより確かなものにしていけるんじゃないか。そういう考え方で、少し話が長くなりましたが、対応していきたいと思っております。  ただ、もう一つ世界経済の牽引車になれという議論は、よくエコノミストの議論としては出ますが、いざ先進国の責任者の会議になりますと、その議論はいまは余り出ません。それよりも、みずからの国のインフレ鎮静化さして、持続的な成長路線をまずみずからがとることに努力する。特定の国にその役割りを押しつけることはいまの国際経済情勢の中では望む方が無理だ。小国は別でございますけれども、そんな感じがしておりますので、私は牽引車論はそう出ないんじゃないかと思っております。
  24. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、大蔵省として、三・四%の成長率を支えていくというか、それ以上悪くならないであろうというように、見方としては、大蔵省的にはそう言わなきゃならぬのかなと実は思うんです。なぜならば、一つは、責任というのもございまして、願望というのもありますから、なるべくそこに抑えたいということなんでしょう。ちょっとうがった見方をすれば、回復の兆しにあるというようなことを言えば、春闘の賃上げや内需拡大のいろんな方向などについても、反論的な意味でも言えるというようなことで大蔵省はそう言っているのかと、実はそんなふうに思ったりしているんです。  取り巻く環境の方の幾つかの指標などを見てみると、抽象的には回復の兆しが見えると言っても、具体的に一つ一つとらえてみるとまだまだ寒いというか、冷えているというか、そういう状況にあると思います。そこで、国際会議に行きまして、アメリカ金利ばかり言っておったってしようがないことでありまして、国内的にどういう内需拡大方向日本としては考えているのかということなどが各国からも指摘されている現状から見れば、何らかここで日本国内内需拡大政策を国としても出さざるを得ない、また出さなきゃならぬのじゃないかというように私は見ているんですが、そういうことに関して、大臣として会議に出席されてそういう話題が出たときに、内需拡大方向の具体策というようなものについてどういう見解を述べられるのか、差し支えない範囲でお聞きいたしたいと思うんです。
  25. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この内需拡大問題、財政がこれに対応する力を失っておる、そういう意味においては日本のいわば財政赤字を少なくしていく、すなわち財政赤字が民間金融市場の金利に対して大変な影響を持つものでありますだけに、そのことはどこも評価しておることではなかろうかというふうに思うわけでございます。したがって、日本の場合、国民がみんな一緒になって物価の安定ということに、結局、賢いからそうなったと思うんですが、そういうインフレなき持続的成長というようなものが日本経済の今日の運営の基本的なスタンスだなということは、各国もおおむねそれを見て、別にモデルとして見ておると、そこまで思い上がっておりませんけれども、国民全体が賢いから、よその国から見れば、大変経済の基礎的諸条件がいい状態になっておるなというふうに見ておると思うんであります。したがって、その意味においては、歳出等においてある種の厳しさというものが、要するに高度経済成長ではなく、安定成長の中で、それをより物価安定の方でこれを支えていったならば、それは結果として内需の拡大にもなるという認識でもって見てくれておるな、こういう感じがしております。  ただ、一方に確かに、そんなことを言ったって、おまえさんのところは貯蓄率が世界一べらぼうに高いじゃないか、だからあれを借りればまだまだあるじゃないかという一部議論がときどきございますが、これは総じて人口も多い国から出る議論では実際は余りございません。一人当たり所得はかなり高くても——極端な言い方をしますと、一人当たり所得で見ますと、アラブ首長国連邦が世界で一番にしましても人口は八十万ぐらいでございますし、二番のカタールがたしか二十二万、三番のナウルが七千人で、四番がやっとクウェートで百三十万人ぐらいでございますから、人口が五千万以上の国というようなところが本当の力を持っておると思いますと、その中では、おまえのところはもっと公債を発行してでもやれというような議論は、私は出ていないというふうに理解しております。
  26. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまお話があったように、三十人委員会あたりでも、貯蓄率の高いことと公債発行のことが議論になっているようですが、人が見るほど、自分の世帯というか、ふところは裕福じゃないのでありますから、そういう問題に目をくれないで、別な内需拡大方向についてぜひ努力をしてもらいたいというふうに思っております。  以上申し上げましたことが、今回、大変御苦労さまでございますが、会議に出席するに当たっての質問にさしていただきます。  次は、財確法に関連する事項について質問いたしたいと思います。  財確法の問題につきましては、通告をずっとしておりますけれども、私の持ち時間はきょうは八十分なものですから、通告をしておる問題で質問ができない点は次回のときにまた引き続き行いますので、そういう点で前段に御理解をいただいておきたいと思うんです。  さて、本件については、租特法などのときにもたくさん議論がありまして、ある程度議論が済まされた問題があるかもしれませんけれども、再確認の意味を含めてぜひ御答弁をいただきたいと思っております。財政再建は国民経済的に重要な課題でありますから、これを確実に実現することなくして、財政の本来的な機能としての所得再配分とか、資源の適正配分とか、経済の安定化などは期待できないと思うのです。周知のように、わが国財政は、昭和五十年度以降、巨額な税収欠陥がそれこそ定着しちゃいまして、現行財政法で禁止されている赤字国債を発行せざるを得ないというような状況に追い込まれまして、聞いたところによると、これで本件が議論されるのは九回目であるというようなことは、赤字国債の発行授権法案をここでまた審議するということは、財政当局の怠慢ということを私はある程度指摘せざるを得ませんし、きわめて遺憾であると思います。今年度末には、赤字国債四十八兆円を含めまして、国債残高は実に百十兆円に達すると見込まれておるわけです。今後、国債の著しい増加などによりまして、財政が圧迫されるということは、本来向けられるべき国民生活に直結した社会保障関係費などへの財政の配分が非常にむずかしくなるというような意味で、財政の重要な諸機能はまさに期待できないというような状況にあると思うんです。  そこで、この改正案について質問するに当たりまして、まず第一は、これまで政府のとってきた各種の財政的措置がきわめて場当たり的で、何ら財政再建に寄与するものではなかったんじゃないかというような観点、第二は、継続的な国債の大量増発で、国債の消化及びその償還が今後ますます困難となってきていること、第三に、今月上旬より開始されました国債の銀行窓販問題、この三点がどういうぐあいに進んでいくのかというようなことについて大変心配をしておりますので、この財確法をこうやって提案しなければならないというようなことに至りました政府の責任の所在と いうことについて、基本的に大臣からまず御答弁をいただきたいと思うんです。
  27. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほども少し申し上げましたが、私は公債政策というものは、戦後、言ってみれば、新しい経済社会に対応する時代というのが一九四〇年代であって、そして五〇年代は、結局、例に出すことすらはばかりますが、いわゆる朝鮮戦争、そうしたものの特需にある程度刺激されながら、神武景気とか岩戸景気とかいう時代を過ぎ去って、一九六〇年代に入ってきた。そうして日本は、一つは、二ドル原油に支えられて高度経済成長をひた走りに走ってきた。その間、オリンピックの翌年、昭和四十年が戦後最大の不況と言われたときに、いわば公債発行に踏み切った。それで戦後最大の不況と言われたものをいち早く脱却し得たと思っております。そうして一九七〇年代、なかんずく昭和四十六年まで、一九七一年とでも申しましょうか、二ドル原油に支えられてまさに順調に伸びてきた。そこでドルショックがあって、そのときに世界の国の中で対応力があったから公債発行政策に踏み切って、それでいち早くドルショックを切り抜け、そうして今度第一次石油ショックになったと思うんであります。第一次石油ショックもまだ赤字国債というところまでいかないで、建設国債という感じでやってきて、そうして今度は第二次石油ショックになる。それで赤字国債。  したがって、私は、公債政策というものを選択した国民とでも申しましょうか、先ほど来の議論のように、諸般の経済指標からいえば、確かに世界の中で一番うまくいった、客観的にはよそから見ればそうであるかもしれぬ。しかしそこにおのずから限界がきたのが昭和五十四年じゃないか。すなわち公債依存度がまさに四〇%近くなりますと、私どもよくお話ししますが、人間でも四割借金すると人が金を貸してくれなくなる、逆に言えば国債が売れなくなるとでも申しましょうか、そういうところから対応力を返すために公債を減していこうということになって、昭和五十九年に少なくとも赤字公債脱却に向けて努力しようという道がたどられてきた。  ところが、日本経済もそうでありますが、あるいはそれを除く他の先進国はまさに第二次石油ショックからもいまなおある意味においては立ち直れていないんじゃないかということから、これは予見し得ざる国際不況の中でわが国の生産も停滞していきますし、それが歳入欠陥にもなってきた。だから、五十六年、七年というものはあれほど大きい御迷惑をかけて、見通しとの大変な両乖を生じた歳入欠陥、それでこれではいけないというところで、いまこの財政改革というのが本格的に始められてきたんじゃないかというふうな歴史的経過というのが一応考えられるのかなと思います。  したがって、ただ歯どめとして、結果としては、当分の間赤字国債を発行してもいいという法律でもいいような、結果としてはそうなっていますものを、一年ごとに、これは一年限りでございますといって提出するのも、赤字国債というものに対する一つ対応の仕方としても、それでもイージーになったと言えばそれまでですが、それなりに努力をしておるから一年一年でお願いしてきたと思うんであります。  だから、日本経済全体は世界的な規模の中では良好な状態にあって、そして政府の財政運営というものは、公債政策というものはそれなりの効果をあらわしたものの、いまその限界に達して、これから歳出の削減であるとか、そういうことを国民の皆様方にお願いしながら、国民一人一人の体質もまたかつての高度経済成長ではないのがあたりまえだという感じを誘導しながら、これに対応しておるところではないか。そういう背景が、今日なおお願いして赤字公債の発行を年ごとにこうして御審議いただいておるという一つのポイントじゃないかなと思っております。そこへもってきて、五十六年度の繰り戻すべき金が必要だったから税外収入としていろんなものを考えて、それを一括してこの財源確保法という形でお願いすることに至ったと思っております。  基本認識として、必ずしも私はだから御理解いただきたいと申し上げるわけではございませんが、歴史的経過の中ではそういう道を歩んできたのかなという感じがしておるところであります。
  28. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、いずれにしても、今日までの財源確保方策というのは、わが党の穐山理事がいつも本委員会で指摘しているんですが、後年度に負担を繰り延べたり、財政の体質を弱くしているものばかりであって、財政再建という意味では本当にその財政の体質強化ということにはなっていないということをやっぱり認識せざるを得ないと思うんです。これはもういい悪いと言うてみても、現実にそういう道を歩んできたということで、今日こういう結果を招いているわけですから、場当たり的であったということは免れないと思うんです、このことは。  そこで、これから一体どうするのかということが大きなポイントになってくるわけだと思うんですね。前内閣の政治公約でありました五十九年度赤字公債脱却という問題は、結果としてほごにされちゃったと思うんです。国民の側から見ると、これまで財政再建に協力するというような意味合いを含めて所得税の減税も見送って実質増税になったし、現存の間接税の増税、各種公共料金の値上げなど負担増も押しつけられてきたけれども、まあやむを得なかったのかなと思いながらも、いつになったら明るい見通しが出てくるのかということで、非常な不満とジレンマに置かれているというのが国民の状態だと思うんですね。来年度あたりは、マイナスシーリングなどによって社会福祉もまた切り捨てられるというような状況などを見てみると、高負担低福祉というものが強制されているものですから、一体財政再建というのはいつ本当にできるのかということを、何回も言うようですが、国民の側は大きく期待していると思うんです。  そこで尋ねたいんですが、いままでの問題は問題としながら、財政再建期間を今後七年に置くというようなニュアンスの発言がなされているわけですね。この財政再建の時期的な目途ですか、それとその中身などについて固まっているものがあれば、この機会に国民の前にぜひ明らかにしてほしいというように思っています。
  29. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる財政再建問題でございます。申すまでもなく、現下の財政をめぐります環境は大変厳しいと同時に大変流動的な要素もございます。そこで特例公債への依存というものも、五十九年度赤字国債脱却というのは国民にもわかりやすかった一つのめどであったと私も思います。それが五十六年、五十七年の国際経済の不透明さの中にわが国の生産も停滞して、歳入欠陥をもたらし、結局そのことは現実不可能でありました。それを明瞭に申し上げると同時に、されば国民にわかりやすい物の考え方としては、赤字公債からの脱却というのは一つのめどとして念頭に置くべきではないか。そこで財政改革に対する基本的な考え方というものをお示しいたしまして、そして歳出構造の見直しをやり、あるいは歳入構造も国会における各般の議論を聞きながら見直していき、そして赤字国債からの脱却年度を設け、基本的には公債依存度を、まだ確たる数字を決めておるわけじゃございませんが、財政審で一遍一〇%以下にしたらどうだ、こういう議論もございましたが、そういう段取りで問題が進んでいくんじゃないか。そうすると一つは、赤字公債からの脱却のめどというのは必要になろうというので、一つの仮定計算ではございましたが、中期試算というものをまあ七、五、三みたいなのでお出ししたわけです。  最近、この七年ということがいろいろ議論されておりますのは、経済審議会の方で中長期なかつての言葉で言えば経済社会計画とでも申しますか、これからは指針とか展望とかという言葉になるかもしれませんが、そういうことが大体八年、ことしを含むわけでございますから、八年ということになりますと、たまたまそれがお出しした試算の七年と合致するわけでございます。しかし、 経済審議会でこれから議論が進められていきますその中で、財政の果たすべき位置づけというものも並行して議論していくわけでございますから、七年でございますという結論を得ておるわけじゃございませんが、これは多少の幅が仮にあったとしても、五十九年度予算御審議いただくまでには御審議いただく手がかりとしてもより実のあるものでお示しするような方向でこれから部内でそれこそ相当検討していかなきゃならぬ課題だ、最終的には財政制度審議会等で御議論いただく課題でございますが、部内でも早速始めていかなきゃいかぬ問題だという問題認識を持っておるところでございます。
  30. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうすると、いまのお話はこういうふうに承ってよろしゅうございましょうか。つまり特例国債依存財政からの脱却ということを一つの目標というように考えて財政の中期試算、あれはCですか、あのケースをもとにして、とにかく七カ年というようなことをより実現性の高い目標としてもう検討を始めたと、そういうふうに受け取ってよろしゅうございましょうか。
  31. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこのところ、鈴木委員のおっしゃっているところまでまだいっておりませんで、たまたま経済審議会で八年計画をひとつ議論してみようかと言われますと、私どもが来年から三年とか五年とか七年とかいうのと、七年の分が最終年度が一致するわけでございます。だからそれも一つ考え方だなと思いますが、さて五十九年予算編成に当たって、あるいは御審議に当たって確定するものがどんずばりケースCになって、経済審議会の最終年度と一致するようになりますとまでは、もちろんまだ言えないと思いますが、念頭に置きながら検討は進めていこうという考え方でございます。
  32. 鈴木和美

    鈴木和美君 まだそこまではいってない、そういうものを総合的に検討する時期であるというようなことに承っておきます。  そこで、私二十分までななものですから、大臣にもう一つお尋ねしますのは、直間比率の見直し、増税なき財政再建の中で歳出カット、いろんな議論のある中で、直間比率の見直しということは具体的には、結果として、間接税というか、ある意味では国民大衆の消費に対する負担の増になることは避けられないというように思うんですが、そういうふうに受け取ってよろしゅうございましょうか。
  33. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 直間比率という言葉は私どももよく使う言葉でございます。昭和五十五年当時は直間比率の見直しと言えば、すぐいわゆる一般消費税(仮称)と結びついて、何だかその言葉を使うことそのものが一般消費税を指向しておるんじゃないかというような環境にあったんじゃないかと思います。その後税制調査会でも直間比率という言葉が使われております。それから臨調でもそれをお使いになって、これらをやっぱり検討の対象にすべきじゃないか。  しかし、税調でもいろいろ御議論なすったようでございまして、考えようによれば、直間比率というのは結局最終的には、結果として直接税と間接税がこうなっておるということであって、結果としてなるものをあらかじめ断定的に決めて議論するものではなく、言葉で言えば、税構造の見直しと言った方がいいんじゃないかというようなことであったでございましょう。最近の言葉では税体系の見直しというふうに表現がされておりますが、概念的に直間比率と言っておったものと私はそう違ったものじゃないと思いますが、そういう言葉になっております。なるほどその方が正確かなという感じがしておるわけでございます。  税体系そのものはやはり絶えず見直していくべきものであって、ただ、いま直ちにさればとて大型、中型、小型、それも基準のむずかしいところでございましょうが、そういうものを念頭に置いて考えておるという実態にはいまの段階ではございません。  とりあえず税調にお願いいたしましたのは、先般の各党合意、それから本院における予算委員長見解、あるいは衆議院の議長見解、これに対する政府答弁というようなものに基づきまして、所得税減税の問題について国会においてこのような議論がなされました、よってまずはこれから御検討をいただけませんでしょうかというような意味で、二十五日に初めての税制調査会の総会を開いてお願いをした。その税制調査会には、あらゆる予見を持たないでわれわれは出てくるが、国会であったことは全部委員会の論議も含めて正確に報告するという姿勢できておるわけでございます。  今年度予算編成に際しては、税制のところで、税制調査会は所得税減税を見送る、五十九年度以降いろいろ検討すると、こう書いてありますが、一事不再理などという議論はしないで、抜本的に論議してやろうということだけは言っておったんだから、そういう政治の流れを踏まえてこれを少し早目に議論しよう、そこで特別部会を設けてやろうというところまで今日きております。元来税調というものは国税、地方税の全般にわたって審議されるところでございますので、もちろん税体系の見直しという議論も結果としてはいろいろなされるにいたしましても、ただいまのところはそこのところまでいったということでございます。
  34. 鈴木和美

    鈴木和美君 私がなぜそういう質問をするかというと、ちょっと私の理解がおかしいのかもしれませんが、直間比率の見直しということが国会の場で議論をされ始めたその契機というか始まりというのは、私の記憶では、グリーンカード問題をめぐって、高額所得者の方が非常に税率が高いので、その体系というか構造というか、それをぜひ見直ししなきゃならぬというようなことがスタートになって議論されたように私は思うんですよ。  ところが、昨今この直間比率という問題が議論されるのは、概して増税なき財政再建ということとの兼ね合いで直間比率という問題が大変議論されているように思うんです。前段の方から言うと、グリーンカードの方の問題は先送りになっちゃったんだから、いまは何も直間比率とか高額所得者の累進税率を直すとかというようなことを話題にしなくてもいいじゃないかというような認識を私は持っているんですが、仮に二つ目の点で言うと、増税なき財政再建ということとの絡みで直間比率が議論されるということは、いろんな言い方はあるかもしらぬけれども、結局実質的な消費税の導入の肩がわりみたいなことで、財源確保したいという意味で直間比率の見直しということが議論されているんじゃないのかというような理解に私は立っているんですが、いかがでございましょう。
  35. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一つグリーンカード問題でございますが、これも本院ですでに議了していただきまして、これはここで問答する中においても、法律が通りましたら利子配当課税のあり方について可及的速やかに税調にお願いすると、こういう答弁をしておるわけでございます。したがって、先ほど所得税の方の話ばかりいたしましたが、この利子配当課税の問題につきましては、小委員会をつくってこれも早速検討にかかろうということにしていただいたわけでございます。  ただ、直間比率という言葉そのものは、グリーンカード問題ももとよりでございますが、いま一つは税調、それから臨調の中でも、増税なき財政再建とは、すなわち一応租税負担率というものが大きく変化しないようにしろ、そうして一方、直間比率の見直しも検討すべきだと、こう書いてございます。そういう意味において、アメリカは別といたしまして、間接税は地方税でございますが、他の国は結果としてあらわれる直間比率というのが大変バランスしておるとでも申しましょうか、日本の場合は直接税が非常に高いという意味において検討すべきだというふうな環境、いわば勉強する環境というのは確かにできておるなと思います。  しかし、まだ税調においてそこまで突っ込んだ御議論はありませんが、基本的に税体系の見直しという言葉が五十八年度税制に際しての答申の中にもございますので、それは恐らく御議論になる課題だとは思いますが、まだそこまではいっていない。したがって、必ずしもグリーンカード、い わゆる利子配当総合課税論から出た問題だけではない。税制全体を審議する中で指摘されてきた問題だというふうに御理解していただけたらというふうに思います。
  36. 鈴木和美

    鈴木和美君 それはわかりました。  そうしますと、これから検討される中で、税調などで議論されるんでしょうけれども、大蔵省としての確定的な考え方でなくてもいいんですが、適正な租税負担率という言葉がよく使われますね。いまも大臣使われましたけれども、五十六年で二三・六%、経済七カ年計画では二六・五%というんですか、そういうものが基礎というか基準というか、そういうことを大蔵省としてはこれからも考える基礎に置いていきたいということになるんでしょうか。それとも、まだそこは固まってないというように承っておいた方がいいんでしょうか。どちらでしょうか。
  37. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 租税負担率という問題は、臨調の最終答申にもございますし、これは念頭に置くべき問題だと思っております。  ただ、それが新たな措置によって租税負担率が大きく変わるという表現にされておりますけれども、これも本当にぎりぎり詰めた議論をいたしますと、租税負担率とは国民総生産を分母にして、そして国税、地方税を足したものを分子として出した数字でございますので、経済の変動によって結果としては違ってくる場合もあろうかと思うんです。ただ、現行いまおっしゃいましたような負担率である。経済社会七カ年計画の中には確かに二六カ二分の一というのもございました。そうしてあの答申を読んでみますと、租税負担率ということを念頭に置け、そうして社会保険の負担と合わしたものはヨーロッパほど高くちゃいかぬが、いまよりは高くなるであろうというふうな表現もされておりますので、税調等で御議論いただきます際には、きょうの議論なんかも報告するわけですから、念頭に置いて議論されるものだと思っておりますが、租税負担率、厳守すべき租税率とはという固定的な考え方というのは余り持たぬのが現実的かなあという感じもいたしております。これはまだいささか私の感想の域を出ませんけれども、そのような感じがいたしております。
  38. 鈴木和美

    鈴木和美君 本日の最後ですが、質問は以上で終わりますが、先ほども申し上げましたように、国債の問題、償還の問題、中央競馬会の問題、電電公社問題などがありますけれども、私の持ち時間、また十日にありますので、そのときに議論さしていただきます。  きょうは大臣にずっとつき合っていただきまして大変ありがとうございました。
  39. 岩動道行

    岩動道行君 私は、本日の議題から若干それますけれども、大変重大な突発的な問題が起きましたので、まずその方から質問をいたしたいと思います。  それは昨日の二十七日に異常乾燥強風下のもとに東北各地で火災が頻発いたしました。特に岩手県の久慈市長内町地区においては大変な火災災害が起こりました。この機会に被災者に対しましては心からお見舞いを申し上げたいと存じます。  また、この地帯は零細農山村地帯でございます。したがいまして、これらの被災者そしてその生業等に対しては特段の配慮を、政府並びに関係の皆さんに配慮をお願いしたい、かように考えておるところでございます。そういう中におきまして、寝たきりの老人ホームの方々が、地域の皆さんの大変な協力によって、自分の家が焼けるのも顧みずにこれらの方々に対して救助作業が行われて全員無事だったということは、まことに感銘の深い地域の活動として高く評価をさせていただき、感謝を申し上げたいと思います。  そこで、県あるいは地元の市町村においてはそれぞれ災害対策本部を設け、また災害救助法も発動いたしたわけでございますが、これらの被災者に対する応急的な対策、特に国、県等の財政的な措置、あるいは金融上の措置、あるいは税制上の措置等、これらをどのようにお進めになるのか、この機会に伺いたいと思います。  特に、住宅などが焼けておりますので、仮設住宅あるいは恒久住宅に対する財政金融上の措置等もございます。あるいはまた山林の災害も大きいわけでございますが、これらに対する対策、また漁船あるいは漁業、船が焼けてしまった、あしたから収入の道がとだえている、こういうことに対してどのような対応ができるのか。  そこで、その災害の状況を概括的にまず伺って、いま申し上げたようなことについての対策をそれぞれ大蔵大臣初め関係省庁から伺っておきたいと思います。
  40. 竹下登

    国務大臣竹下登君) たまたま、岩動委員質問の問題、けさの閣議で、突発的な事故でございますから事前通告なしに、自治大臣から御報告がございました。東北の山形県を除く五県、そしてプラス能登半島、石川県でございますか、特殊なフェーン現象で同時にこういう多発災害が起こった。山林焼失約一万ヘクタールでございました。いま御指摘になりましたとおり、地元の方々の御協力等によって人命に損傷がなかったというのが何よりの救いであったと、こういうふうな趣旨の御説明でございました。  それに伴うもろもろの問題につきましては、財政当局としていろいろ対応すべきことがあろうかと思いますが、まず閣議でそういう御報告のありましたことだけを申し上げ、あと具体的に当局からお答えをした方が適切かと思います。
  41. 長谷川寿夫

    説明員長谷川寿夫君) 昨二十七日の東北地方を中心といたしました林野火災につきまして概略御報告申し上げます。  昨日の多発林野火災、これを焼損面積がほぼ十ヘクタールを超える大規模なものについてのみ取り上げてみますと、東北及び北陸を含めまして、青森、岩手、宮城、秋田、福島、石川、以上六県十二市町村から出火しております。その焼損しました、影響を受けた市町村数は十九に及んでおります。  本日十三時現在の状況でございますが、その焼損面積は、いま大臣が申し上げましたけれども、一万ヘクタール程度と言われておりまして、焼損家屋は百二十九戸、死者はゼロで、負傷者は六ということになっております。  現在、火災の進行状況でございますが、十二地区のうち延焼中は岩手県の三地区と宮城県の一地区となっておりまして、ここ数時間焼損面積の変動がございませんようですので、かなり鎮火の方向にあるのではなかろうかと思っております。  この火災につきまして、その特徴を一口に申し上げますと、一定の地域、つまり東北地方と北陸の一部である石川県に集中的に、しかも時間がおおむね午前十一時ごろから十五時ごろまでの間にかけまして、その十二カ所で発生しているということであります。しかもそれが規模の大きな火災になって、それから住宅を一部巻き込んだ火災になっていると、こういう点が特徴的な火災であろうかと思います。  出火原因などにつきましては、今後の火災原因調査を待たなければ明確なことは申し上げられませんが、日本の林野火災の状況からいたしますと、自然発火ということは全くと言っていいほど考えられませんので、何らかの人為的原因による火災であろうと思われます。特に、東北地方は現在この四月、五月が、年間を通じまして一番林野火災の多く発生する月となっております。これはちょうど桜前線が南から北に移動しますように、林野火災の多発月といいますのが南の方から、沖縄から順次北にさかのぼってまいります。沖縄が十月、鹿児島、宮崎が二月というように月をさかのぼりまして、東北、北陸のあたりは四、五月がその時期に当たっております。ですから、ちょうど多発時期にぶつかった。しかも、報告によりますと、二十三日から当日事故の発生するまでの間、宮城県、岩手県では異常乾燥注意報が出ていた。また当日にはそれに加えて……
  42. 岩動道行

    岩動道行君 ちょっと簡潔にやってください。
  43. 長谷川寿夫

    説明員長谷川寿夫君) 強風注意報が出てたということで、こういう火災に発展したんだと思います。  以上で御報告を終わらせていただきます。
  44. 西澤辰夫

    説明員(西澤辰夫君) 今回の火災でございますが、いま消防庁の方から申し上げましたように、現段階はいまだ数カ所で延焼中という状態でございますので、これに対処するに消防庁を中心として対処しておるところでございまして、また現地では自衛隊が三千名以上出動するなどこの火災の鎮圧に努めておるところでございます。  そういう状態でございますので、被害の状況等の把握もいまだ完全にできる状態ではございませんけれども、すでに被災者の応急住宅の問題であるとか、あるいは災害救助法によるその他の救助の問題であるとか、あるいは焼け跡の造林の問題でありますとか、問題が多方面に関係してまいります。これら関係する省庁も多くなりますので、私ども災害の調整官庁といたしまして、これらの関係省庁とよく連絡をとり合いまして、これからの被害の状況の把握に努めながら、必要な措置をできるだけ早くとり得るように努力してまいりたいと、そういう所存でございます。
  45. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  46. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 速記を起こして。
  47. 鹿島尚武

    説明員(鹿島尚武君) 私ども建設省といたしましては、住宅金融公庫に対しまして、破災された方々の住宅の建設あるいはまた補修を行う場合につきまして、一般の貸し付けよりも有利な貸付条件の災害復興住宅資金の貸し付けを行うようにということで直ちに指示をいたしたところでございます。
  48. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  49. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 速記を起こして。
  50. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) いま各省で被害をお調べ中でございます。私どもも速やかにその状況を伺いまして、いろいろたとえば治山治水、緊急治山、緊急砂防、それから激甚の指定等々いろいろ問題がございますが、速やかに適切な措置をとりたいと思っております。
  51. 岩動道行

    岩動道行君 もう一つ伺っておきたいんですが、漁船が焼けていて、そしてあしたの糧にも困るという状況ですが、この漁船関係、漁業関係、あるいはその栽培漁業の関係等どの程度の被害が現在わかっているか、簡潔に答えてください。
  52. 木村邦雄

    説明員(木村邦雄君) お答えいたします。  水産の関係におきます被害の状況についてでございますが、現在調査中でございますが、本日の十一時半現在の報告によりますと、漁具倉庫の焼失が四十五棟、それから漁船の焼失が七十八隻に及んでおります。
  53. 岩動道行

    岩動道行君 それぞれの対策についていま概括的なことは国土庁からも伺ったんですが、たとえば漁船などはたちまち魚とりに行かなきゃならないんですが、どういうふうに対応されますか。
  54. 木村邦雄

    説明員(木村邦雄君) 漁船につきましては、漁船保険に加入しておりますものにつきましては、早急に仮払い等を含めまして早期支払いに今後努めてまいりたいということでございます。  それから漁船保険に加入していない漁船はどうするかという問題がございますが、これにつきましては、金融対策といたしまして、漁船の焼失被害や漁具倉庫の焼失被害については、農林漁業金融公庫から主務大臣指定施設資金の災害資金、漁船の災害資金等を活用して対処してまいりたいというふうに考えております。  また、災害に見舞われました沿岸漁業者の方々につきましては、経営維持を図るため沿岸漁業経営安定資金の融資を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  55. 岩動道行

    岩動道行君 本来の議題ではございませんので、この程度で、また災害特別委員会等でもさらに詳細に対策についてやっていきたいと思います。  総括的にただいま各省庁からお話があったんですが、この機会大蔵大臣から、財政、金融、税制等総括してこれにどのように対応していただけるか、応急の対策、そうしてまた零細な地帯でもございまするし、あるいは保護世帯等もあるかもしれません、母子世帯等もあるかもしれません、そういうものの生きていく道、あしたから困らないように対策を早急に財政的にもいろんな面からお願いしたいと思いますが、大蔵大臣から伺っておきたいと思います。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは関係省庁からそれぞれ被害の状況は、当然のこと、至急に聴取しなければなりません。と同時に、関係省庁におかれてあるいは災害救助法——私もとっさにそれがどのような基準になるかという理解の度合いはございませんものの、そうした問題でございますとか、金融とか、そういう当面の措置、それからいま一つ、私どもに当然のこととして、プロパーの問題として関係のございます金融、そしてまた若干おくれますものの税制上の諸問題等については、これについて注意をおさおさ怠らないで配慮しなければならない課題である。そして財政的な措置につきましては、それこれ各省庁から被害に基づく具体策というのが上がってまいるでございましょうから、時間を置かず対応していくという姿勢で対処したいと、このように考えております。
  57. 岩動道行

    岩動道行君 貧弱な市町村財政でもありますから、交付税の繰り上げ交付であるとか、あるいは特交とか、特段の御配慮をこの機会にお願いを申し上げておきます。  そこで、この問題は一応これで終わらしていただきまして、本来の議題であります財確法について、特に私は自賠責の特別会計から一般会計への繰り入れの問題について、この機会に総括、締めくくり的な観点から伺っておきたいと思います。  まず一般会計への繰り入れでございますが、これは二千五百六十億円自賠責の運用益から持ち込んだわけでございますが、これは繰り入れということで、実質的には借り入れということではないかと思いますが、借り入れということになると利子も当然伴っている。こういうようなことから繰り入れ、そして繰り戻しと、こういう政府間の会計間のやりとりというような形で、大変苦しい財政の中からの知恵を出されたものだと思います。しかしながら、この自賠責の運用益というものは、ユーザーの立場から見ますと、ユーザーに還元されるべきものであると、こういう基本的な考え方があるわけでございます。    〔委員長退席、理事大河原太一郎君着席〕 私どもは緊急避難的にこの案を認めて、予算も賛成して成立をさしてきたわけでございますが、この機会に二、三の点について確認をさせていただきたいと思います。  この繰り入れに対して、繰り戻しでございますが、これは大蔵大臣と運輸大臣との間に覚書が交わされておって、三年据え置きの七年で繰り戻すということが覚書になっておりますが、この点について確認をさしていただきたい。
  58. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) いま御指摘のように大蔵大臣・運輸大臣間の覚書がございまして、それによりますと、  一、一般会計への繰入れは、昭和五十八年度限りの臨時異例の措置として行うものとする。  二、自賠特会から一般会計への繰入金相当額は、原則として昭和六十一年度から昭和六十七年度までの間において分割して、一般会計から自賠特会に繰り戻すこととする。  三、自賠特会の積立金は自動車損害賠償責任保険契約者の利益のために活用することとし、その具体案については今後検討する。 この三点が確認をされておるところでございます。
  59. 岩動道行

    岩動道行君 本来ならば、予算の定めるところにより繰り戻すというのは、そのときの財政事情、予算によってどうなるかわからないという不安定要素があるわけです。したがって、これは財確法の中の法律でいま言ったような覚書の内容を本来ならば法文にしておくべきだということが、私どもユーザーの立場から見ますと当然出てくるわけでございます。したがって、私ども与党の立場から言いますと、いまはこれをどうしろと言うわけにはまいらない状況でございますが、いまの 覚書は法律と同じ重みを持って実行される、法律と同じ重みのものであると、こういうことをこの機会に確認をさせていただきたいと思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに確認をいたすべきものであると思っております。  いまユーザーの立場からという御表現がございましたように、この問題につきましては、確かに財政がこのような危機的状況にありますときに、特会から一般会計への繰り入れということにつきましても、ユーザーの金でありますだけに、一大蔵大臣と運輸大臣の間で早速話し合いに入るということについていささか私なりにも抵抗を感じましたので、総理から運輸大臣に対して協力要請をしていただきました後、私どもを含め事務当局間で積み上げたものでございますので、いま御指摘のように、そのような趣旨の申し合わせであるというふうに確認すべきであると思っております。
  61. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、昭和五十三年の六月十二日に自賠責の審議会の答申がございます。これはユーザーのため、保険収支の改善その他救急医療体制の整備、交通事故防止対策等に活用され、そのために使われるべきものだという趣旨の答申があるわけでございますが、これを十分に尊重していただかなければなりませんが、まず運輸省はこの点についてどうお考えですか。
  62. 熊代健

    政府委員熊代健君) 先生御指摘のとおり、われわれこの答申の線に沿って従来もやってまいったつもりでございますし、今回もこの繰り入れた金額を含めましてこういう線でとり進めていきたいというふうに考えております。
  63. 岩動道行

    岩動道行君 ぜひ審議会の答申を尊重してやっていただきたい。  したがって、今回の繰り入れというのは、運輸大臣も大変苦悩の中で、運輸大臣としてではなくて国務大臣としてお決めになったという心境は私もよくわかります。またそのように大変厳しい財政状況である。しかしながら、本来の特別会計の性格、そしてまたユーザーの保険料支払いによって成り立っている運用益でございますから、その点については原点に返って厳正に対応を今後もしていただきたい。したがって一年限りということはもう当然でございましょうが、ぜひそのようにして、来年もまたということのないように。大体税外収入の中で今回の自賠責の繰り入れは一番苦しい、苦悩をあらわしたものだ、私どももしんから賛成はできなかった、しかしやむを得なかったと、こういう気持ちでおりますので、ユーザーという立場からも特段に今後厳しく対応していただいて、厳正にユーザーのための自賠責という運用を運輸省もまた大蔵省もやっていただきたいと思います。  そこで、時間もございませんので一点だけ最後に確認をさしていただきたいのでございますが、この一月ごろに自賠責の保険料の引き上げというようなことが新聞に一斉に出てまいりました。これについてはいろいろな機会に、国会でも、大蔵省はそのようなことを一遍も言ったことはないというような答弁が出ているわけでございますが、この点は、五十八年度は少なくともこういう繰り入れをやっているという中で、保険収支全体から見たら、単年度では若干の赤字になってきているという傾向が続いている。しかしながら、まだまだ累積残高もありますから十分にやっていけるのではないか。  さらにまた、限度額を上げるという問題が別途あります。これは過去十年以上保険料率を上げない中で、限度額は一千万から一千五百万、そして二千万と上がってきております。これはまさにユーザーへの還元として十分に評価されますが、さらにこれをあと五百万上乗せをしたらどうかというような考え方も次第に出てきている。したがいまして、限度額を上げるということになれば、保険料率を上げるのかどうかということもございますが、仮に五百万円上げるとすれば、大ざっぱに言うと年間六百億円程度支払いがふえるのかなと、こういう数字もあるようでございます。そうなりますと、限度額を上げるとしてもまだまだ運用益で賄っていける。こういうことも考えられますので、この保険料率の引き上げということは当分日程に賄賄は上らない、五十八年度はもちろんのことである、このように理解をしたいと思いますが、この点について関係の省から伺っておきたい。
  64. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 自賠責保険の収支につきましては、ただいま先生御指摘のように、五十三年度以降赤字に単年度ではなっておるのでございますが、過去の蓄積を合わせました収支の累計で見ますと、現在でも若干の黒字が見込まれておるところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在のところ保険料率の引き上げというような点につきましては検討には着手いたしておりませんし、現段階では考えておりません。
  65. 岩動道行

    岩動道行君 ユーザーの立場から言いますと、いまのような収支状況、そしてまた事故率は若干横ばい状況で、そんなに急激にふえるとは思えない。まあバイクなどがふえてきたので、これがどのように影響するかという問題はありましょうけれども、大勢にはまだ影響がないと思う。そこで私は、特にいまの保険料率の引き上げの問題は慎重に行うべきだと。特にまた車検が二年から三年に変わります。その結果ユーザーの一時的な負担というものは大幅にふえます。五割はふえるわけであります。そういう時点における保険料率の引き上げということは、まさにユーザーにとってはダブルパンチにもなるわけでありますから、この点も含めて、そのようなことをしないということを最後に大臣に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 自賠責保険は、単年度収支で見ますと、それはいま御指摘になりましたとおり赤字でございますが、収支残累計ではまだ黒字が見込まれておるところでございます。したがって、今後保険金支払い限度額の引き上げあるいは自動車事故の急増、まあとてつもないという表現は適切でございませんが、大変な意味における支払い増加要因でも生ずれば別といたしまして、常識的に考えまして、現在の料率の引き上げを必要とする状況ではない。そういうことは今度、いま委員いみじくも言われましたように、運輸大臣としては本当にがけから飛びおりたような感じだったと思うんです。お願いする私の立場も、これについてはどれがどうという区別をするわけじゃございませんけれども、税外収入の一つとして大変重い気持ちがいたした問題でございますので、御趣旨の精神を十分生かすべきだと私も理解をしております。
  67. 桑名義治

    ○桑名義治君 赤字国債発行のための財確法案というものは、今年度ですでに九回提出をされているわけでございますが、毎回提出されるたびごとに今年度限りの臨時的異例の措置である、こういうふうに言われてきたわけでございます。しかも五十五年度以降政府は財政再建を強調し、それを大義名分にしながら国民生活関連費の圧縮、あるいは六年の連続しての所得税減税の見送り、こういった事柄を強行しながら、しかも財政状況がますます悪化の方向へと追い込まれてきたというのが実情ではないか、こういうふうに思うわけでございますが、果たして財政がこのような破局的な方向に進んできた主たる原因はどこにあるというふうに大蔵大臣はお考えになっておられますか。
  68. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かにいま委員御指摘のように、九年間もやっているんじゃないかと、そのとおりでございます。本当に私どもも振り返ってみると、ある時点で当分の間とやっても結果としてはやむを得ぬような感じになっておる。しかし、これそのものの性格からして一年ごとに御審議をいただくということがそれなりに私どもに自戒の機会も与えるという意味で、このようなことで審議をお願いしておるわけでございます。  どこに原因があるかと言えば、第一次石油ショックを契機としますところの経済の停滞から、景気の回復を図って、失業あるいは雇用の場の確保、そうしたことに対して最初は公共事業を中心 としての財政がこれに対応する積極的な役割りをまず果たしてきた。しかしそのような役割りがある意味においてはもろもろのファンダメンタルズの中ではそれなりに評価される効果はあったんではなかろうか。しかしこれが限界に達して今日のような財政問題が生じたというふうに一つは考えます。  それからいま一つは、昭和四十八年、たまたま福祉元年という言葉を使っておったところでございますが、第一次石油ショックで税収は伸び悩んだ、そうして第二次石油ショックへ入らんとしておる、そこへ福祉元年という政策を立てて、そして他の制度、施策の水準も落とさないでとにかく突き進んできたというような、財政面から見ればそういうことが今日限界に達したゆえんのものではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  69. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの大臣の答弁は私はわからないことはないんですが、しかしそれはあくまでも言い逃れであって、しかし政府のこういう財政方向に悪化さしていったというその責任は、私は逃れられないものがあるんじゃないかと思うんです。国民の税金というものは政府に一切合財こういうふうにいいように運用してくださいという委託を受けているわけでございますので、したがって財投にいろいろ金を使ったとか、あるいは福祉元年ということで福祉の方に金を使い過ぎたとかいう事柄は、これは国民の立場から見た場合には決して言いわけにならないと思うのですが、その点の責任をどういうふうにお考えになりますか。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も果たした役割りというものをそれなりに評価しての発言を申しましたが、少なくとも四十八年が福祉元年であったからだとは私も思いません。それならばそれなりに制度、施策の中で他にもっとメスを入れるものがありとすればあったではないかという反省ももちろん持っております。と同時に、五十六年、五十七年というものの特殊な世界景気の低迷から来るわが国の税収動向等の見込みとの大きな乖離ということも率直に認めなければならぬ。それは世界経済が見通しが悪くてこんなことになりましたので仕方がありませんでしたという表現もまたすべき問題じゃない。何分大変な乖離でございますから、これから政策運営の上でそういう乖離が生じないような見通し、そういうことにも精度をますます加えなければならぬことでございますし、そして財政運営を今日に至らしめた、一方でその効果があったにしろ、今日このような形で御審議をお願いするに至ったことに対する責任というものは、しかと受けとめておくべき課題であるというふうな認識をしております。
  71. 桑名義治

    ○桑名義治君 私がこういうふうに申し上げたのは、そういう新たな徹底した認識の上に立って新しい計画を立てていかなければまた同じ轍を踏むんではないか、こういうふうにも思いますし、この財確法が一年ごとに九回も提出されたら、これはオオカミ少年と一緒で、国民はもうこういう財政の運営について政府を信用しなくなる。政治に信用がなくなったときほど恐ろしいものはないと私は思うんです。そういった意味でこの問題を提起したわけでございます。  次の問題として、鈴木内閣の公約であった五十九年度の特別公債依存脱却は、五十六年度の二兆二千五百二十五億円の赤字決算、それから五十七年度には六兆一千四百六十億円という史上最大の税収不足、さらに財政再建目標は完全にこういうことで崩壊をしたわけでございます。これを受けた中曽根内閣の財政再建の目標があいまいなままに五十八年度の予算が編成された、こういうふうに私は見るべきであろうと思います。さらに新内閣の時間的な経過という事柄もありましょうけれども、しかし五十八年度の予算の中には財政再建の芽すら見出せないというような状況にあるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そういった立場から考えますと、予算が成立してすでにもう三週間がたつわけでございますが、財政再建の計画策定に着手しているのかどうか、あるいはもし着手しておられるとするならば基本方針はどういう方向を提示されているのか、ここをお話しを願いたいと思います。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに一部目的税は別といたしまして、税というものの富の再配分の権限をわれわれ政府がゆだねられておるという御指摘、そのとおりでございます。そしてそれが大きな乖離を生じた場合われわれとして責任を感ずべきものである。  そういうことを踏まえながら、五十八年度予算編成に当たりましては、結果として仮にもし評価していただけるならば、ごく短時日の間でございましたが、とにかく一般歳出を昨年度以下に抑え込んだとでも申しましょうか、削減をしたというのが一つの私は努力の結果ではなかろうかというふうに思います。その中にはまさに臨時異例の措置としての人事院勧告の見送りというような措置も含まれておったわけでございます。私もそれに対応する際、非常にじくじたるものを感ずると同時に、また厳しさというものをいやおうなく感じしめられたものでございます。  そこで、これからの問題ということになりますと、この財政再建のめどをどこにおくかという問題に当然のこととしてわれわれは立ち向かっていかなきゃならぬわけでございますが、いまのところ、まず通過いたしました翌日、私が閣議で御発言を申し上げました。これから進んでいくために、まず一つの問題としては五十九年度予算編成というものに立ち向かっていかなければなりません。それの数値を申し上げる段階にはまだございませんが、当然のこととしてシーリング等厳しい枠にならざるを得ない。したがって現行制度、施策の根源にさかのぼって各省の御協力をお願いする趣旨の御発言を申し上げまして、それを受けて主計官会議を開いて、そして各省の協力を得る。それを出発点として、今日もろもろの事務次官会議でございますとか、そういう過程を経ながら、各省自体の検討の中にも協議、参画しておるというのが今日の実態であります。
  73. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、大臣の御答弁の中では、財政再建計画の策定というものはまだ行われていないということになるわけでございますが、私は、この九回出された財確法案の問題にしましても、これは場当たり的な措置にすぎないというふうに思うわけでございます。たとえば病気の場合でも、軽微で、軽い病気であるとするならば、これは指圧、あんまで済むかもしれません、あるいはこう薬で済むかもしれません。しかしこう薬で治らない病気は、これは当然投薬をしなければなりません。投薬で治らない病気は手術をしなければなりません。病気によってそれぞれの病気に対する処置というものが異なってくるわけでございまして、この処置を間違えたならばこれは大変なことになるわけでございますが、その処置を間違えているような感がしてならないわけであります。  なぜかと申しますと、財政再建計画の策定にしましてもまだ行われていない、あるいはまたこの財確法案にしましても、これはあるべき財源を右から左、左から右へと動かしているのにすぎないわけでございます。どうしても財政再建をやろうとするならば、いま大臣が御答弁になりましたように、五十九年度はいわゆるマイナスシーリングをお願いした、これは歳出の削減に当たるわけでございますが、この百十兆円という赤字を抱えた現在、財政再建を考えた場合には、これはもう歳出削減だけでは当然対応できないことは大臣がもうよく御存じのはずでございます。  そうしますと、ここで考えなければならない問題は、どういうふうにして増収を図るかということ、景気をどういうふうに回復さしていくかというこの手段が当然必要になってくるわけでございますし、あるいはまた、これは好ましいことではありませんけれども、こういった借換債を発行するとか、あるいはまた増税の方法があるとか、いろいろな方法が考えられるわけでございますけれども、いま大臣のおっしゃったような、来年度、五十九年度の予算編成がマイナスシーリングによ ってこの問題が解決の方向へ進むということは、それこそ焼け石に水、ジュッと終わってしまうような、音を立ててなくなってしまうような感がするわけでございます。  そういう全体の総合的な方向をどういう方向に持っていこうというふうにお考えになっていらっしゃるのか、そういう基本的な話をまず国民の前に提示すべきだと、こういうふうに思うわけでございますが、その点はどうでございますか。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 「財政改革に当たっての基本的考え方」の中でお示しいたしておりますように、まず五十八年度予算編成における心構えから説きまして、そして今後は、言ってみれば、まずは歳出カット、そして制度、施策の根源にさかのぼって、いわば個人または家庭の責任に帰すべきもの、あるいは企業の自助努力にお願いすべきもの、地方と国との分野調整はどうあるかというようなところまでさかのぼった作業を始めていこう。そして、それがあって初めて、国民の皆さん方が現在の制度、施策をどうしても残すべきだというところで、受益者も国民であり、負担する方も国民であるとするならば、初めて負担増の問題というものが議論されていくべき問題ではないか。そうしてその後さらに大量の償還期を迎えます時期におきまして、いまいみじくもおっしゃいました借換債等々の問題が議論されていくべきではないかというような一つ段階というものがあるんではなかろうかというふうに思っております。  しかし、その段階段階としてはあり得るが、もう少しその展望を国民の前に明らかにした方がより国民の理解を得やすいではないかということに対して、私も否定する考え方はございません。したがって、その問題につきましては、やっと経済審議会におかれまして、経済のかつての言葉で言えば五カ年計画と申しましょうか、今度は八カ年をめどに展望なり指針なりを議論してやろうということができたわけでございますので、それと整合性を持ちながら財政の果たすべき位置づけをしつつ、ここに国民の皆さん方のおおよその理解を得るようなめどをつける努力を進めていこうという考え方でございますので、いままず国民の皆さん方の前に、かつていろいろ議論された財政計画というようなものとは若干趣を異にいたしますものの、理解の得やすい一つの展望というようなものを中期試算としてことしはお示しいたしましたが、それをより具体性のあるものとしてお示しできるような検討を進めていかなきゃならぬと思っておるところであります。  まずは制度、施策の根源にさかのぼった勉強からしていこうではないかという段階でございます。
  75. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、いま大臣が御答弁になりました地方と政府との行財政の改革問題、あるいはまた行政のいわゆる削減問題、あるいは増税の問題にしましても、これは政府だけではこういう重大な問題はできないと思うんですよ。国民の皆様方がどれだけ現在の行政なり財政に対して理解をするか、そこから初めて新しい芽が出てくるんではないかというふうに思うんです。  先ほども申し上げましたように、財確法案が九回、これ限りこれ限りで九回でしょう。しかもそのたびごとにだんだんだんだん財政は悪化していってしまう。それでここまで悪化してきた。しかも五十九年度には特例公債への依存脱却ということを鈴木総理がお約束を国民の前でなさったが、このなさった赤字国債、特例国債への依存脱却は、そのとき、その時点ではなお一層大きな赤字を抱えてしまっている。こうなれば国民の皆さん方が不信を持つのはあたりまえだと思うんですよ。  私はいま政治生活十年を超えましたけれども、いままで国民の皆さん方が国の財政の問題について私たちと議論をすることはほとんどなかった。ところが、最近はそれが一番の主題になって議論を吹っかけられるんです、実際問題。そこまで国民は考えている。国の財政が今後どうなるのか、百十兆円という赤字国債をどう解決していこうとなされるのか、果たしてできるんですかどうなんですか、手法はどうなんですかと。    〔理事大河原太一郎君退席、委員長着席〕 これは私たち現実に迫られているわけです。そこまで国民の目が向いているということなんです。だとするならば、赤裸々な姿で、政府はこういう手法でやれば、先ほどからたびたびめどが申されているようでございますけれども、後七年間、七、五、三の七、この時点においては一応脱却のめどがつく、こうなれば耐乏生活なら耐乏生活あるいは自助努力なら自助努力を国民の皆さん方にもやっていただけるのではなかろうか、こういうふうに思うわけです。そういう意味財政再建計画策定というものを早急にやるべきであろう、私はこういうふうに思うわけでございますが、大体いつをめどに審議会に依願をなさっているわけでございますか。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま審議会に御依頼申し上げたのはいわば経済展望でございまして、これについては経済企画庁の方でございますので私から定かに申し上げるわけにはまいりませんが、この間来の表現を聞いておりますと、夏ごろまでにはと、こういうような表現を経済企画庁長官はしていらっしゃいました。  私どもの方の財政運営財政改革の基本的な考え方をより詰めていきますのは、私はそれと整合性は持ちつつも、それと軌を一にするということには必ずしもいかないかもしらぬなあというふうに考えております。およその財政の果たすべき役割りというものは、お互いの協議の中で出てくるわけでございますが、それに対応して、さてそれと赤字国債脱却年度とをどういう整合性の中で結びつけていくかということになりますと、にわかに結論の出せるいまはまだ状態ではないという感じがしております。
  77. 桑名義治

    ○桑名義治君 では私は一点だけ端的にお聞きしておきたいと思うんですが、いまから先五十九年度もマイナスシーリング、恐らくこれは続くと思います。それと同時に景気の回復というもの、先ほどから経済成長率が何%、三・四%云々というお話がずいぶん出ておりますけれども、こういう景気の状況の中で単に行政改革あるいは財政改革をやったのみで百十兆円の特例公債依存脱却が七年後にできると、こういうふうにお思いになっていらっしゃいますか。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まあ七年後になるかどうなるか確定的なことは申し上げるわけにもまいりませんが、予算編成に当たっての赤字公債脱却の年度というものは、一応その辺に定めなければならないだろうという考え方は持っております。  それをいかなる手法でやっていくかということにつきましては、それは先ほど来申しました歳出構造の見直しとか、あるいは歳入構造そのものの見直しも過程において当然出てくる議論であろうと思うんであります。そのようなものでもってその脱却年度のある種のめどかついたら、それに整合性のある非常にリジッドな計画ではございませんが、ものは検討を進めていかなければならない課題であるというふうに思っております。  確かに御指摘のありましたように、いかなる制度、施策とはいえ、国民の理解と協力なくしてこれが機能するものじゃございません。一つは、国会の問答を通じながら国民の方も最近確かに議論なさいます。中にはこれは調整インフレでやるしか手がないじゃないかというような議論をする方もいらっしゃいますし、それは財政というものが、茶の間と申しますか、茶の間へ入ったというのは、あれは前大蔵大臣が標準語ならざる日本語でテレビを通じて茶の間へ入れたんで、私は大臣の功績の一つだと思っております。私のは余り標準語じゃございませんけれども、茶の間へ入りかねる点はございますが、確かに国民全体が財政というものに対して理解を深めつつある。少なくとも大いなる関心を持っておられるという状態であるという認識を持てば持つほど、それにこたえるもの、少なくとも議論の素材を提供するような努力はたゆまざる私ども課題じゃないかなと思っ ております。
  79. 桑名義治

    ○桑名義治君 だから、ここで申し上げたいのは、確かに関心が非常に深まったんです。しかしその関心は、どこにいったら解決ができるのか、全く不透明、それと同時にお先真っ暗というもう絶望感に近いところにその関心があるわけですよ。  よく言われますように、経済というものはまあ心理学だ、一種の心理学みたいなものだ、こういうふうにもよく強調される一面があるわけでございます。今後どういう形になっていくかということが国民の経済活動にも大きな心理的影響を与えていくことは事実なんです。そういう意味からも、私がくどいようにたびたび財政再建計画を策定し国民に信を問うべきではないかということを申し上げているわけでございます。この問題は、マクロにとらえた話、どこまで行っても終着点には達しないと思いますので次に進ましていただきます。そういう意味からも私は早急に財政再建計画というものに対しては努力を続けていかなければならない重要な一つの方策であろう、こういうふうにいま思っておる次第でございます。  そこで、本法律案の構成について伺っておきたいと思いますが、各年度の特例債の発行を授権する法律、これは財政法の特例法であって、過去八回の立法において、五十三年度とそれから五十六年度を除きまして、特例債の発行のみに関する内容を持つものであったわけでございます。ところが、今回は特例債の発行のほかに、国債費定率繰り入れ等の停止、それから税外収入の増収策としての自賠責特会、あるいはあへん特会、造幣局特会、電電公社、中央競馬会からの繰り入れや納付金の納付等、実に多種多様の内容のものを一本の法律に盛り込んで提出をされているわけでございます。そこで特例債の発行にしろ、あるいは定率繰り入れ等の停止にしろ、また税外収入の増収策にしろ、それぞれが重要な問題を抱えておりまして、それぞれが十分な審議を尽くすためにも独立して提案をすべきではなかっただろうかと、こういうふうに思います。財源を調達あるいは確保するための内容を持つからとは言いながらも、じゃその性質の異なるものを一本の法律案に一括して提出したというその主なる理由は那辺にあるのか、お答えを願いたいと思います。
  80. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) いま御指摘のような内容、三つの大きな内容を一括しておりますが、これはいずれも財源確保する措置であるという点におきまして立法の動機と趣旨が同じであるということが第一点でございます。  それから第二点は、いずれも五十八年度限りの措置であるということでございまして、たとえば税外収入の中でも五十八年度限りでないもの、恒久制度の改正でございます補助貨の取り崩しとか、あるいはたばこの定価の改定というようなものは、別建ての法律にさしていただいております。  それから第三に、税外収入の確保等により特例公債の縮減が図られる性質のものである。つまりことし五十八年度予算では五十六年度の穴埋め二兆二千五百億ほどの臨時の需要がございますが、もし税外収入を総動員して特別な財源対策を講じないといたしますと、それだけ結果的には特例公債の増発にならざるを得ません。それを税外収入を動員いたしましてこの穴埋め、五十六年度の補てん対策に充てているわけでございます。  こういうことで、いずれも特例公債の縮減が図られるという点において特例公債と密接な関連を持っているという点におきまして、この範囲のものは一括してもよかろう、内閣法制局とも御相談をいたしまして一括さしていただいた次第でございます。
  81. 桑名義治

    ○桑名義治君 その点につきましては、私もいま申し上げましたように、財源を調達する、あるいはまた確保するためというその内容においては一致しているということは申し上げたはずです。しかし、あるいは性質が異なるもの、これが一本になったところがいかがかと、こういうことを申し上げているのであって、あなたの御答弁になられた問題についてはわからないことはないんですよ。ないけれども、しかしそれぞれの法律にそれぞれの性質がある。これが一般化されていることに問題がある、こう申し上げているわけですね。  さらに、公債にかかわる事項であるとは言いながら、特例公債の発行という歳入にかかわる事項、国債費の定率繰り入れ等の停止という歳出にかかわる事項を一括して提案した。しかも特例公債の発行は五十八年度の財源補てんのための措置であり、一方繰り入れ停止は、これにより五十八年度の歳出が圧縮されるとはいえ、将来の国債償還の財源に直ちにつながる問題である。さらに五十七年度に続いてこの処置がとられることは、わが国の減債基金の制度を根本から改変するということにつながる問題であるというふうにわれわれは考える。  で、少なくとも歳入増収策のための本法案から歳出削減のための国債費定率繰り入れ等の停止の措置は切り離して審議すべきであるのが当然ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、この点はどうでしょうか。
  82. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 確かにいろいろな性格のものを一括している点は御指摘のとおりでございますが、要はどういう形でまとめた方が御理解をいただきやすいかということを考えたわけでございます。  そこで、特例公債、ことし六兆九千八百億円の発行をこれでお願いを申し上げておりますが、この発行に至る過程で、片一方こういう努力もいたしております。定率を従来どおりやれば、それだけ結果的には特例公債の増発にならざるを得ませんが、こういう臨時の措置をお願いすることによってこの縮減を片一方図っております、関連する税外収入等々も図っております。こういうことで特例公債に関連するものを一括した方があるいは御理解を得やすいのではなかろうかという私どもなりの考え、これは御批判があり得ると思いますが、そういう考え方から一括さしていただいたわけでございます。
  83. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで一点、特にお伺いしておかなければならぬ問題は、新聞紙上によりますと、五十九年度も定率繰り入れを停止する方針を固めた、こういうふうな報道があるわけでございますが、五十九年度はこの問題についてはどういうふうにお考えでございますか。
  84. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 五十九年度については、まだ何ら検討いたしておりませんし、具体的なことを決めたという報道は全く何かの誤解でございます。  ただ、定率繰り入れ制度は、四十一年の財政審の御答申にもありますように、国債について国民の御理解を得る基本的な制度でございますので、軽々にそんなやめるとかやめないとかと言うべきものではないと思います。今後財政事情とか国債整理基金にどのぐらいの財源があるかとか、いろんな状況を勘案しまして、中長期的な観点を踏まえまして検討してまいりたいと思っております。
  85. 桑名義治

    ○桑名義治君 いま、五十九年度の定率繰り入れを停止する方針の報道というものは根拠のないものだ、こういふうな御答弁でございました。しかし現在の財政事情から考えた場合には、これは当然予想ができるような問題であろうというふうに思うわけでございます。かつての予算委員会のときにも、大臣の御答弁の中にございましたが、いろいろな角度からこういうふうに財源を求めるけれども、しかしもう大体限度にきたんではないか、こういう意味の御答弁があったわけでございます。そういった立場から考えてみますと、五十九年度の定率繰り入れ停止という方針も、あながちこれはうそではないんじゃなかろうか、また、しなければ来年度の予算編成が非常に厳しくなってくるんじゃないか、こういうふうにも私たちは思うわけでございますが、そういう方針が確として固まっていないということを前提にして私はお尋ねをするわけでございますが、この可能性というものはどうでございますか。
  86. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 一遍こういうことを始め ますと、先もやるのじゃなかろうかと思われますし、またなかなか誘惑に満ちた話でもございますけれども、しかし国債を出す立場の理財局からいたしますと、やはり国債整理基金にある程度の手金があるということが重要でございますし、省内的にもなかなかそんな簡単に結論の出るものではございませんので、いまここでやらないという御返事もいたしかねるわけでございますが、こういう非常に基本的な仕組みを簡単に来年もやめますというふうなことを申し上げるべきではないと思っています。
  87. 桑名義治

    ○桑名義治君 大体御答弁の中から読み取れるものはあるわけでございますが、いずれにしましても、先に進めていきますが、償還が始まる六十年度以降におきましては、国債整理基金が早晩底をつくことは、これはもう当初から予測されたことでございます。定率繰り入れの停止を一切行わない状況のもとにおいても、昭和六十二年度に基金の財源はゼロになることが明らかにされているところでございます。五十七年、五十八年両年度にわたる繰り入れ停止により、基金が底をつく時期は六十一年度に早まり、予算繰り入れを三千億円行わなければならない状況になるわけでございますが、さらに三年連続して定率繰り入れを停止すれば、六十年度の基金の財源は五千五百億しかなく、他方六十年度の現金償還額が一兆一千五百億円で、その不足分の六千億円を予算繰り入れしなければならなくなるわけでございます。  国債整理基金の資金繰りについて、五十七年、五十八年度の繰り入れ停止措置による影響、それから五十九年度にも続けて停止した場合の影響について御確認をしておきたいと思っています。
  88. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 五十八年度に今回お願しております法律でとめました場合は、御指摘のように六十一年度末にはこの資金はゼロになりまして、三千億円の予算繰り入れが必要に相なります。そういう意味で一年早まる措置でございます。五十九年度にとめた計算はいましておりませんけれども、当然のことながら五十九年度にも一兆六千億ぐらいの繰り入れが必要になるはずでございますから、それをしないといたしますと、六十年度末いまのままですと二兆一千九百億の残高があるはずでございますので、したがいまして、そこから一兆六千億程度減りました五、六千億の残が六十年度末にはまだ残っている。六十一年度の繰り入れがいまのままですと三千億円で済むのが、それが約一兆六千億ぐらいふえると、こういう計算になろうかと思います。
  89. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、わが国の国債整理基金は、総合的減債制度として国際的にも類例のない機能を持っている、こういうふうに思うわけでございますし、現実にそういう姿になっているわけでございますが、国債残高が百十兆円に達しまして、ますますこの制度の効用に期待しなければならないときに、二年間行い、さらに三年間の可能性を含みながら、いま財政というものが進んでいく、こういうことになりますと、これは完全にこの制度の機能が崩壊したと、こういうふうに考えなければならないと思います。そうなりますと、いままでのいわゆる減債制度を整備確立した趣旨はどこにあったのだろうか、こういう新たな疑問が生まれるわけでございます。この制度にどのような機能と期待を持ちながら制度化されたのか、この点をもう一遍初歩に返って伺っておきたいと、こういうふうに思います。
  90. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) これは四十一年の財政審の御答申ではっきり指摘されておりますが、実はその御議論のときもいろんな考え方がございまして、この答申の文句の中にもこういうことが書いてあるくだりがございます。たとえば「公債償還について基本的な考え方さえ確立しておけば、あえてその額や方法等を法定する必要はなく、むしろ財政運営の弾力性を確保する見地から政府の運営に委ねるのが適当であるという考え方もなりたつ」、しかしわが国の政治的、社会的環境を考慮すると、これを制度として法定しておくことが適当である。  こういう結論でございまして、その意味するところは、「公債政策に対する国民の理解と信頼をうる」ことというのが第一でございます。第二は、「財政の膨脹ひいては公債残高の累増に対する間接的な歯どめとして働く面がある」。第三に、「財政負担を平準化する効果も期待できる」。第四に、「国債の市価維持のために活用することも考えられる」。この四点からこの制度をつくることを当初お決めいただいたわけでございます。  その後、特例公債を五十年度以降発行するようになりましてから、これを維持すべきかどうか、財政審の中でも賛否両論がございまして、五十四年度の答申では、これを「見直すべきである」と。片っ方で特例公債を出しつつ積み立てるのは不合理であるという御意見もあって、「見直すべきである」という意見も有力でございましたが、しかしいろいろ御議論の結果、基本的には現在の仕組みを継続すべきであると、こういう御答申を五十四年の十二月にいただいております。  昨年の暮れ、この定率繰り入れの停止をもう一遍御審議いただいたときも、この五十四年の答申からの引き続きで非常にいろいろな御議論がございました。確かに、「将来の負担によつて将来の償還のための財源を、利子を支払いつつ蓄えることに」なるので「不合理である」という意見もございました。他方、しかし、五十七年度、五十八年度定率繰り入れを停止しても、当面国債整理基金の残高はあるので、公債の円滑な償還に必要な流動性を確保したり公債の市価維持のためには当面差し支えがないと。そういういろんなことを考えて、五十七年度、五十八年度で「定率繰入れを停止することはやむを得ない」という御答申をいただいております。  したがいまして、この制度の基本に返りますと、確かにこの停止ということは好ましい措置ではございませんが、しかし一時の緊急的な措置としてお願いを申し上げておりますので、特例公債から将来脱却をできました場合はこの仕組みの意義がまた生き返ってくると、こういうふうに考えているわけでございます。
  91. 桑名義治

    ○桑名義治君 るるこの制度の問題について御答弁がございました。しかしながらこの減債制度が果たしてきた役割りというものはこれは否定できないものがあると思います。  そこで、減債制度が、先ほど申し上げましたように、事実上は崩壊してしまった。従来この制度が果たしてきた役割り、機能、これを今後どういうふうに何をもって補うのか、ここら辺がまた一つの問題になろうかと思います。まず、公債政策に対する国民の信頼は何によって担保するのか、この点を伺っておきたいと思います。
  92. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) これは財政制度審議会でも、この信頼を確保するためにあらゆる機会によく説明せよというくだりがございまして、当時世間に誤解がありましたのは、これをやめてしまえば国債は返さないんじゃないか、あるいは借りかえになってしまうんじゃないか、こういう御議論がございましたが、それはいま公債のお持ちの方には必ず現金でお返しをします。問題は、そのための財源をどうするかという問題になるのでございまして、国債の信頼を得るためにはいろんな機会を利用しまして説明をさしていただいておりますし、また必ず現金でお返ししますということは、大臣の御答弁その他いろんな機会説明をさしていただいているわけでございます。
  93. 桑名義治

    ○桑名義治君 いま御答弁の中に、国債の償還については償還期が来たら全額必ず現金でお返しをしますと、こういう御答弁があったわけでございます。そう言うだけで国民の信頼をつなぎとめることは私はなかなかむずかしいのではないかと思います。それは日本の現在の置かれている財政事情というものを国民が先ほどから議論しておりますように熟知しておるわけですね。国債整理基金にこれだけの償還財源がありますよということで一つの安心感を買うことができる、こういうふうに思います。また財政当局の最高責任者である大蔵大臣が間違いなく償還すると言う以上、国民の公債に対する信頼は確保し得るのだというのならば、何のためにこれまでの制度を維持してきたの か、こういうことになるわけでございます。  そこで、崩壊を目前に控えているわが国の減債制度に取ってかわる制度より、政策をどうするのか、ここが非常に重要になってくるわけでございますが、大蔵大臣の御答弁を願いたいと思います。
  94. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、いま桑名委員いみじくもおっしゃいましたように、国民の皆さん方は大変な関心を持っている。その場合によく言われますのは、国債は本当に現金で返るのですかとか、もう一つは、大変ラフな議論ですが、われわれの時代になったら年金はもらえないそうですねとかいうようなことすら、われわれの平素の日常生活の会話の中で出てくる。事ほどさように財政に対する国民の関心というのは高まっておると思います。  したがいまして、かどあるごとに、現在お持ちになっております国債の償還は、これは必ず現金で確実に行うことが何よりも大切でございます、それはやりますと、こういうことを申し上げておるわけでございます。この点はまさに建設国債であれ、また特例債であれ、同じことでございます。  そこで、それじゃ将来の償還の財源をどうなさいますか、こういう質問に対して、われわれはそこでこの減債制度に積み立ててあるじゃないですか、そこに精神が少なくとも生きておるんじゃないですかという問題が、このような措置をとれば若干薄らいでいくという感じは私自身も持たないわけじゃございません。これは理論的に申しますと、まさに歳出カットか、負担増か、あるいは借りかえということも含めての公債発行の三つが考えられますが、これとてもあくまでも現金でお返しするための手法として理論的にその三つがあるのであって、現金でお返しするというようなことは、これはまさに金科玉条、これは絶対に変えてはならない哲理であると思うのであります。  そういう考え方に立って、さてどのようにしてそういうものを調達していくかというようなことにつきましては、それこそまた原点に返って歳出歳入構造の見直しをやり、その都度の移り変わっていく経済情勢の中で国民との対話、その代表的なものとして国会での問答というようなものを通じながら、その那辺に求めるかということは研究していかなければならない課題ではないかというふうに考えております。  しかし、そこに、大蔵省内においてはイージーに考える向き、また減債制度というものを大変大事に考える向きがあると同じように、財政審でもあれだけの議論がございますから、国民との対話の中でもいろいろな議論が出てまいるわけでございますけれども、それはまずこの現金償還という大前提の上に立って、さてその調達手段としての問題はこれから議論をしながら詰めていく課題であるという認識をいたしております。
  95. 桑名義治

    ○桑名義治君 現金償還についていまからどうするかということは、国民の皆様方との対話の中でも考えていかなければならない問題だし、あるいは国会の中でいろいろなさまざまな議論を交わしながら確立をしていかなければいけないというふうなお話でございますけれども、これを数字の上から見てみますと、六十年度以降は、その年度の現金償還額をそのまま一般財源から償還しなければならないわけでございますが、六十年度は六千億、六十一年度は二兆四千九百億、六十二年度は三兆八千億、国債の償還費はウナギ登りに上がっていくわけでございます。利払いだけでも巨額の負担がかかってくるわけでございます。国債償還費と利払い費を加えた国債費では、実に六十年度は十兆三千億、六十一年度は十二兆八千億、六十二年度は十四兆四千億と、まさに破局的な状況に至るわけでございます。  こうなると、借金返済のための借金という形で国債発行が継続されることとなるのではないかと、こう思いますが、これを少しでも改善するために政府はどのような構想を現実にお持ちなのか。ただ国民との対話を進めていく、議会の中で議論を進めていく、これだけではおさまらない問題ではないか、こういうふうに私は思うわけでございますが、この点をどういうふうにお考えでございますか。
  96. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 従来から国会の答弁、そうしてまた法律そのものからいたしまして、借りかえをしない、こういう方針をとっておるわけでございます。したがって、御審議いただいております五十八年度の特例公債につきましても同様の規定を置いておるわけでございます。  したがって、この規定を置いておる根底にありますわれわれの基本的な考え方というのは、借りかえということを念頭に置いた途端にイージーになっていくんじゃないかというのが、私どもとして一番厳しく律していかなきゃならぬことだ。そうは言ったって、桑名委員の御見識の中では、経済の変動とかいろいろなものが予測されるではないか、こういうことになろうかと思うのであります。確かに取り巻く環境は厳しく流動的でありますが、やはり筋は、何としても特例公債を脱却して、そしてこの償還財源は特例公債によらないでやっていくというのが、これは筋であるわけでございますので、原点にさかのぼれば、財政改革の基本に立って努力をこれから積み重ねていかなければならぬ。  そうすると、結局何に求めるかということになれば、先ほど申しました歳出カットか負担増か、公債発行、その一形態としての借りかえというようなものに、理論的にはそういうことに私はなっていくと思うのであります。したがって、まさにその時点になった場合、その点は国民の選択に帰する問題であると思いますが、いまは各方面の意見を聞きながら慎重に検討してまいらなきゃならない課題でございますけれども、借りかえというものを念頭に置いた途端に、イージーになっていくという厳しさも一方持ち続けていかなければならない課題だというふうに認識をいたしておるところでございます。
  97. 桑名義治

    ○桑名義治君 理論的な話ではございますが、借換債の問題も理論的には一応成り立つというお話がいま大臣の御答弁の中にございました。  そこでその点を確認しておきたい。国債償還利払い等の支払いのために五十九年度以降増税する意図があるのかどうか。また本法律案第二条四項の特例債についての借換債の不発行、今後この方針を破ることはないと、こういうふうに断言できるかどうか、この点を確認しておきたいと思います。
  98. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず増税、いわゆる負担増の問題でございます。先ほど申しましたように、理論的には歳出カットか負担増か、あるいは借りかえを含む公債発行か、こういうふうに申しましたが、いやしくも安易な道を選んではならない。そしてまた負担増という問題につきますと、これは現行の施策、制度そのものをどうするかというところからの議論であって、償還財源そのものを対象にしての負担増というようなことは考えるべき問題ではない。総体の中で考えるべき問題ではなかろうか。そして借りかえということは、答弁もしておりますが、法律でこういうふうにしてお願いしている限りにおいて、それを念頭に置くようなことがあってはならないというふうに考えております。
  99. 桑名義治

    ○桑名義治君 借換債。
  100. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 借換債もいわゆる公債発行の一形態でございますが、それも念頭に置いて対応したら直ちにイージーに流れてしまうというふうに私ども認識しております。
  101. 桑名義治

    ○桑名義治君 借換債の問題を念頭に置いて対策を考えてはならないという御答弁ですが、私はそういう言葉のあやを要求しているわけではなくて、借換債を絶対にやらないと、こういうふうに断言できますかということをお話し申し上げているわけです。
  102. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この特例公債の償還期にまだ特例公債依存から脱却していない場合を仮に想定しますと、それは償還の財源を新たな特例公債の発行によって賄わざるを得ないという場合は、これも理論的には私はあり得ると思うのであ りますが、その際、いわゆる財源調達を特例公債の発行によるか、借換債の形によるかというような問題、そういう理論的にあり得る時点においてそういう二つの手法が理論的には考えられると思います。しかしそれを考えた途端から私は財政改革に対するわれわれの身の引き締まりがだれてくるんじゃないかと思いますので、それはやはり借りかえを念頭に置くことはございませんという趣旨でお答えをすることが、われわれが縛られることでございますので、そういう精神で貫いていくべき問題であるというふうに考えております。
  103. 桑名義治

    ○桑名義治君 くどくて申しわけないですが、いまの大臣の御答弁は精神論なんですね。この公債の実際に返還のときにはこれは精神論ではおさまらないのです。だから、そういう事態に立ち至ったときには、こういう二つの理論が成り立つ。しかしこの理論は念頭に置いてはならないということでは、これはずっと念頭に置かないで努力はしていきますけれども、理論的に成り立つ事柄でもございますし、その時期に至ってやむを得ない場合はやれますという言葉になるわけですよね、現実に。どうなんですか。
  104. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 理論的にあり得るという前提のお話をいたしましたが、そういう時期にも理論的にあり得るとしてもやってはならないというのは、いま御審議いただいている法律に借りかえはいたしませんということを規定してお願いしている限りにおいて、私はその精神を貫くべきであるというふうに思っております。桑名委員の御質疑の中において借りかえを一つの方法だということを私が念頭に置いた場合に、現実あり得たとすればこのような手法がありとお答えしたので、いまお願いしている法律は借りかえしないという法律でお願いしているのでございますから、これは念頭に置くべきでないことは事実であるし、やってはならないことである、という認識の上に立っていなければならない問題であるというふうに理解しております。
  105. 桑名義治

    ○桑名義治君 本当に申しわけないのですが、どうしてもひっかかるんですね、御答弁の中で。いまこの法律をお願いしている段階でそういうことを念頭に置いてはならない、こういう論理で、では法律を改正すればできるということになるわけですね。そういう事態に立ち至ったときには法律によって定めればできる、こういうことになるわけでございまして、どうもこれは一つの政府の今後の方針として、絶対に借換債は不発行だと、こういうふうに断言できないんですかということをお尋ねしているわけです。
  106. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やはりそういう規定でお願いしております限りにおいて、私はこれは断言すべきである。ただ、私がいわゆる借換債を公債発行の一形態として議論をしてきましたのは、理論的にはあり得る状態を想定した議論でございますので、ある意味においては、いまの法律をお願いしておる段階においてすべき議論ではなかったかなというある種の反省もいま持っておりますが、法律でお願いしておるとおりの筋で対応すべきものであるというふうにお答えするのが正当なお答えであると思います。
  107. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで特に申し上げておきたいことは、さきの委員会からたびたびこの種の問題については議論が進んでいるわけです。大蔵大臣は非常に慎重な御答弁をなさっているわけでございますけれども、その御答弁の中からうかがえる事柄は、借換債あるいは増税、こういった一つの素地を徐々につくり上げていく、そういう方向へ持っていっているんだという議論が非常に高まっている、これはもう私は事実であろうと思うんですよ。確とした、ぱちっとした御答弁がないんですな。非常に巧妙な、慎重な御答弁でございまして、それだけに傷はないかもしれませんけれども、国民の気持ちの中に一種の疑心暗鬼が逆に醸し出されているのではなかろうかと、こういうふうな危惧を私は抱いております。その点を御指摘をしておきたいと思います。  で、自動車賠償保険の問題もずっとやりたかったわけでございますが、時間が十分しかございませんので、この問題ははしょって電電公社の臨時納付金の問題についてお伺いをして終わりにしたいと思います。  電電公社の臨時納付金は、これ自体が五十六年度の財源確保法によるものであって、それを今回五十九年度分をも一年早く納めさせようとする、いわば先食いの措置であるわけでございます。五十九年度以降、電電公社から同様の納付金の納付の特例措置はとらないことを断言できるかどうか、これを明確にしていただきたいと、こういうふうに思います。
  108. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 今回の繰り上げは、五十九年度分として五十六年度の財確法で決まったものの繰り上げをお願いしているわけでございますので、その措置は、五十六年度にお許しをいただいた四千八百億円はそれで終わりでございます。  御質問はその先をどうするかということかと思いますが、今回の措置はあくまでも臨時異例のものでございまして、その先をいま具体的に考えているわけではございません。
  109. 桑名義治

    ○桑名義治君 この先は考えていないということでこれは理解しておきます。
  110. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) いまのところは考えておりませんけれども、しかし将来絶対やらないかと言われるとあれですが、これは特別の御協力をいただいたものでございますので、軽々にイージーにやるべきものではないように思っております。
  111. 桑名義治

    ○桑名義治君 詰めていくとだんだんおかしくなるんですね。それだけに、先ほどからたびたび申し上げておりますように、国民の皆さん方もだんだん一種の疑心暗鬼ですね、疑心暗鬼とはもろに申し上げません、一種のと申し上げますが、それが醸し出されているわけです。それがだんだん景気の低迷にもつながっていくんですね。そこら辺は少し考えていただいて、確とした一つ方針に向かって前進をしていく、こういう姿が最もいま必要な時代ではなかろうか、こういうふうに私は思います。  臨時特例の納付金を納める余裕があれば、本来サービスの供与か電話料金の引き下げに充てるのが筋であろう、こう思います。わが国の電話料金は、国際比較で見ても遠近格差が大きく、遠距離通話料の値下げの必要性に迫られていることは事実であります。今回公社の黒字基調を背景として、七月からの電話料金の値下げを行うための公衆電気通信法改正案が国会に提出されているわけでございますが、この内容では一対六十が一対四十になる、このような状況でございまして、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、これと比較してみましても、アメリカは一対二十二、イギリスが一対六、西ドイツが一対十五、フランスが一対十五、こういうことでまだまだ外国と比較した場合には大変な格差があるわけです。この内容ではまだ遠距離通話の料金は高い、こう思うわけでございます。  黒字基調が続くのなら、より適切なサービスの供与、それから電話料金の引き下げ、適正化に資するべきで、安易に一般財源化して歳出削減への努力を回避すべきではない、こういうふうに思うわけでございますが、郵政省としてはどうお考えですか。
  112. 田代功

    説明員(田代功君) 納付金を納めるぐらいならという御指摘ですが、これは先ほどお話ございましたように、国が財政的な危機に陥っているということで、臨時特例的にやむを得ず電電公社に協力を求めたということで、二年前の法律でお願いしたわけです。  電話料金そのものにつきましては、一般論としては、確かに大ぜいの国民が使う公共料金ですから、安いにこしたことはありませんが、ただ電話料金は非常に長期の見通しのもとに決めていかなければいけないと思います。先々の投資に向けるといいますか、長いこと電話が安定的に確保できるという観点から料金を決めていかなければいけないと思いまして、ことしこの国会に先ほどお話ございましたような料金引き下げの法案をお願いいたしております。  一対四十というのは外国に比べてまだ大きゅう ございますが、一対四十の一の方は、日本の場合十円でございますが、たとえばアメリカなど、市内ではもう二十円とか二十五円とかいう料金でして、市内料金は世界的に非常に安い水準に置かれておりますために、比率でいきますと、一対四十という比較的大きな差を持っております。  今回お願いしております法案が通りましたら、また引き続きこの先の料金体系についてはいろんな角度から見直していきたいとは考えております。
  113. 桑名義治

    ○桑名義治君 私はそのことを尋ねているんじゃないんですよ、逓信委員会じゃないんだから。料金が高いとか安いとか、もうちょっと下げろとか、こういうことを言っているんじゃないんです。納付金を出すぐらいならばそれを有効に使った方がいいんじゃないですか、サービスの方に使った方がいいんじゃないですか、今後の技術革新のために使った方がいいんじゃないですか、このことを申し上げているんであって、私は別に料金の問題に入ろうと思っているわけじゃないです。ここはそういう委員会じゃないですから。もう少し適切な言葉と場所を考えて答弁してくれなきゃ困りますよ。まあ、いいですよ。  そこで時間が参りましたので、もう一問で終わりたいと思いますが、こういうふうに電話料金の問題を考えましても、あるいはまた技術革新、これも外国といまから比肩していかなければならないわけでございますし、あるいは施設というものも老朽化していくわけでございますが、そういった立場を考えて、こういった納付金の措置を今後とも続けていくということになるとするならば、これまた一つの大きな問題が起こるのじゃないか。場当たり的な目先だけのことを考えるんではなくて、総体的な立場に立ちながら措置をしていかないと後から大きなツケが返ってくるおそれがある、こういうふうに思うわけでございます。この問題について先ほど、今後は永続しないんですか、こういうふうに確認をしましたら、いまのところという妙な言葉が頭についたわけでございますが、この点については大臣はどういうふうにお考えなのかお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  114. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに繰り上げ納付措置でございますし、これは五十六年度の財確法に基づいて四千八百億円、それを前倒ししてもらうんですから、これはこれで終わりと、こういうことになるわけです。  私どもこの問題についていささかこの答弁が慎重でありましたのは、一つはこれは私が従来携わってきておった、大蔵大臣をやめて党におりますときいろいろな問題の調整をやらされるときに、経営形態問題というのが頭にありまして、そうなった場合の国税、地方税とかいうような問題から、いろんなことを念頭に置いておりましたので、これは将来にわたって云々ということは言うべきでない、こういうような考え方を持っておりました。  そういうことでやってみますと、これがどういうふうに変化してくるかは別といたしまして、私がお答えできる限界というものは、これはまさに財政状況と公社の財務状況等々が明確でありませんので、何とも申し上げられないことでございますが、絶対にやらないというお答えは困難じゃないか。だが、イージーにやるべきものではないという思想は持っておりますというのが、将来展望と現実との調和の中の限界の答弁かなと思って、そういうことで通さしていただいておるわけです。  いま桑名先生お話しになりましたように、確かに私にも注意する者がおりまして、君の発言というのは、言ってみれば、ある種の世論誘導、疑問を投げかけながら世論誘導をしているんじゃないか。しかし、事ほどさように、僕にも先見性があるわけでもないし、結局はみずからの表現力の拙劣さかなというある種の反省も持ちながら、また同じようなお答えをして申しわけないと思っております。
  115. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会