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1983-03-24 第98回国会 参議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十四日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      鳩山威一郎君     嶋崎  均君      衛藤征士郎君     関口 恵造君      近藤 忠孝君     宮本 顕治君      藤井 恒男君     柄谷 道一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         戸塚 進也君     理 事                大河原太一郎君                 中村 太郎君                 増岡 康治君                 穐山  篤君                 塩出 啓典君     委 員                 岩動 道行君                 上田  稔君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 鈴木 省吾君                 関口 恵造君                 塚田十一郎君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 桑名 義治君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   遠藤 政夫君        大蔵大臣官房会        計課長      冨金原俊二君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        高倉  建君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省関税局長  松尾 直良君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省理財局次        長        勝川 欣哉君        大蔵省証券局長  水野  繁君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        大蔵省国際金融        局次長      長岡 聰夫君        国税庁次長    酒井 健三君        国税庁税部長  角 晨一郎君        国税庁調査査察        部長       大山 綱明君        通商産業大臣官        房会計課長    鎌田 吉郎君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        大蔵省銀行局保        険部長      猪瀬 節雄君        農林水産大臣官        房参事官     中川聡七郎君        農林水産省農蚕        園芸局畑作振興        課長       吉田 茂政君        資源エネルギー        庁石油部流通課        長        落田  実君        中小企業庁計画        部振興課長    桑原 茂樹君        建設省住宅局住        宅企画官     内藤  勲君        日本専売公社総        裁        長岡  實君        日本専売公社総        務理事      岡島 和男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、鳩山威一郎君及び藤井恒男君が委員を辞任され、その補欠として嶋崎均君及び柄谷道一君が選任されました。     ─────────────
  3. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 昭和五十八年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算中、大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 桑名義治

    桑名義治君 過日来、五十八年度の予算が成立した後に政府総合景気対策を打ち出すということで、いろいろと現在論議が進められているようでございますが、その骨子論議の対象になっている骨子でございますが、それと、発表する時期は大体いつごろになる予定でございますか。まず大臣所見を伺っておきたいと思います。
  5. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先般、総理から御招集がありまして関係閣僚が集まりました。そこで、きのう来議論になっておりました十—十二月のQE、それから月例経済見通し等について、経済企画庁からそれぞれの意見が述べられまして、それを基礎にいたしまして、非公式ながら隔意ない意見交換、こういうことをやったわけであります。総理は、いわゆる行財政改革の精神を踏まえて、わが国経済活性化、諸施策、端的に言えば、景気対策についての実現性とか効果とかいうものについて勉強を始めてもらいたいと、こういうことでありました。  それで、次はいつにするか、予算成立後適当な時期ということにとどめまして、今週は恐らく国会日程等がございますので、来週になるんじゃないか、第二回とでも申しましょうか、非公式ながら集まってもう一遍議論してみよう、それぞれの省において、総理の基本的な考え方の中の一つとして、財政が出動する対応力というものには多くは期待できないから、いろんな規制の解除とかそういうものをそれぞれのセクトセクトで真剣に勉強してこいと、大筋こういうような会合でありました。
  6. 桑名義治

    桑名義治君 過日の委員会から、与野党を問わず、景気総合対策早目に打ち出した方がいいんではないかというような御意見が多数出たわけでございます。予算委員会の節にも私はこれを総理に要求し、あるいはまたその真意を尋ねたわけでございますが、その前日だったですか、通産相から、八項目にわたるいわゆる景気対策を検討しろということで、山中通産大臣通産省内部に指示をしたわけでございますが、この八項目のほかにまた何か柱として出てくるものがあるでしょうか。
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる通産省検討項目として示された八項目、それの中には抽象的なものもございますので、それらをいろいろ分けていけば中身はもっとふえるということにもなりましょうが、大筋その範囲内の問題だというふうに御理解いただいて差し支えないと思います。
  8. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、総理が特に強調なさっている事柄は、民間経済活力を期待するという言葉が所々に出てくるわけでございます。民間経済活力を期待するということは具体的にどういうことを意味するのか、そこら辺がまだまだはっきりしないわけでございます。それと同時に、政府みずからの財政金融政策指針を明らかにすることが必要である、こういうふうに思うわけでございますが、この二点についてどのようにお考えでございますか。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 政府みずからということから申し上げますと、財政の出動といえば、議論になります問題の一つ公共事業の執行の問題であると思います。これにつきましては、いろいろこれから部内で検討するわけでございますが、余りこれを公な議論とするのはいかがかと申しておりますのは、本院において予算がいま審議中のものである、そういう立法府と行政府との精神的な一つのかせがあると思うんです。  が、その中でもそれはいろいろな議論をしておりますが、昨年来この御審議いただいて通過さしていただいた補正予算、その中に二兆七百億円の公共事業等がございますので、これの契約がちょうどいまごろ大体済んだ時期じゃなかろうか。そうなりますと、私も建設大臣をしておったことございますが、一般的に人事異動とかいろんなことで四、五月切れます。それがなだらかな下支えの役割りを果たしているという向きもあるじゃないか。だから、それがどれぐらい五十八年度の第一・四半期に寄与するのか、そういうことも勉強してみよう。それからただかけ声だけの数字を示してみましても、現実執行する側の方でいわば完成するまでの期間というのは、かなり雨も降りますれば、いろんなことで余裕をいつも見ておりますので、それに沿ってなだらかに執行した場合、必ずしも早期発注が集中的な公共投資効果を上げ得ないじゃないか。こういうような議論部内ではしてみてございますが、いずれにしても、これらはやっぱり財政の果たす大きな役割り一つでございますので、今後もっと国会議論等を通じながら一生懸命にやっていかなきゃならぬ問題だと思っております。  それから二番目の金融の問題でありますが、これはいつもいわゆる機動的弾力的に対応するという言葉であらわせば、そういうことに尽きるわけでございますけれども、全般的に金融自身は緩んでおると言って差し支えないと思うんであります。したがって、金融政策と言えば勢い金利政策になってくる。そうなりますと、日銀の専権事項でございますので、表現はおのずから限界がある。しかしながら、この間からのEMSの騒動が一段落した。ちょうどいま見ますと、一喜一憂じゃいけませんが、きょう寄りつき二百三十七円八十銭でございます。そういうようないろんな状況を見ながら、これについてのこの考え方というものも、政府部内ではいつでもそれに対応できる準備も整えておかなきゃいかぬじゃないかということであります。  それから民間活力まさにそのものということになりますと、総理が例示的におっしゃっておりますのは、総理のみならず閣僚間の議論になっておりましたのは、いわゆる都市政策でありますとか、あるいはかねて主張しておられる住宅建てかえ促進でございますとか、そういう問題について、政府自体はその指針を示してある程度サポートする環境をつくれば、民間資金なり民間自助努力景気に役立つものがそこにできてくるんじゃないか。具体的に総理からおっしゃいませんが、たとえば線引き問題なんかも議論の中には出ておりました。そういうことになるのかなあ、こういう感じがしております。    〔委員長退席理事増岡康治着席
  10. 桑名義治

    桑名義治君 いわゆる民間経済活力に期待するというその説明の中で、現在いま大蔵大臣の御説明は従来どおりやっているような問題なんですね。だから、総理が特に強調なさるには、何かのそこにいままでと違った手法を考えられているのかなあ、こういうふうにわれわれは現在思っていたわけでございますが、いまの大蔵大臣お話の中では、従来の手法とそう変わったところがないような気がするんですが、どうでしょうか。何か変わったことありますか。
  11. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私も従来考えてきておりながら、なかなか実行に移せなかった問題でございますので、その辺法的整備を含めて、あるいは政令等々含めてどの程度できるものかなあと思っておりますのがたとえば木賃住宅地帯問題等、これがいわば払い下げを受けられるんじゃないかという期待感というものがありながら、現実立ち退きなんかが成就しておりません、計画だけに終わって。そんなものも念頭にあるんではないかという感じがしておりました。  で、強烈なインセンティブを与えるものとしてどういうものがあるかということも、たまたま国土庁長官とか建設大臣もそのフリートーキングに参加させられておりましたので、具体的に上がってくる課題であるであろう。私も若干の経験もありますので、詰めた相談相手にならなきゃならぬという覚悟はしておったところであります。
  12. 桑名義治

    桑名義治君 日本景気対策——日本景気という問題は、これはアメリカ景気が大きく影響すると思われるわけでございますが、過日新聞紙上によりますと、二十一日の日にアメリカでは第一・四半期米国GNPは前年比四%の大幅な伸びを示している、こういう発表がなされているわけでございますが、この発表に対して、果たしてアメリカ経済GNP四%の伸びができ得るというふうに日本としては見ておられるのか、また永続的に今年度はアメリカ経済の大きな伸びがあるというふうに予測されているかどうか。この点はどういうふうに評価なさっておられますか。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 総じて言いますと、私は米国向け輸出等が、原則的に言えば、若干でも回復する環境になるのかなとも思いますが、大きく期待できる状態にはないじゃないか。きょう大場国際金融局長が一緒に来ておりますが、きのうも向こうから来ます電信とか、われわれのパイプでいろんな論文を見たり、対話を、内話とでも申しますか、そういうものをみましても、金利動向というものが必ずしも下げの方向へ向くような状態にもないという見方もかなり強うございますので、私もまた四%の上方修正そのものについては議論があるようでございますので、ある種の期待感を持ちながら見守っておるという表現になりましょうか、正直に申しますと。
  14. 桑名義治

    桑名義治君 先ほど景気対策の問題について大臣から、要するにEMS、この通貨調整ができた、それがややいい方向に向いているんではないかというような意味合いのお話があったわけでございますが、実際にこのEMS通貨調整についてどういうふうに評価なさっておられますか。
  15. 竹下登

    国務大臣竹下登君) フランスのいわゆるフラン切り下げ、最初はそう見て、それからいろいろEMS内部の中でいろんな議論があって切り上げ切り下げと並行したと、結果から申しますと。それに対する評価は、パンクしなくてよかったなあという評価はしておりますが、いささか興味のある問題でございますので、正確にちょっと分析いたしましたから、大場国際金融局長の方からお答えを申し上げます。
  16. 大場智満

    政府委員大場智満君) いま大臣からお話ししたことのとおりでございますけれども、私どもEMS調整前、つまり先週におきましては、この調整はかなり大変なものになるかなと思っていたわけでございます。それはすでにドイツ金利を下げておりますので、ドイツは、恐らくマルク切り上げをがえんじない、弱い通貨の方で切り下げたらどうかという主張をするでしょうし、フランスは自国の通貨切り下げはいろんなことを考えてなかなかできない。つまりドイツに対してマルク切り上げを要請する、そういう形でかなり難航するかなと思っておりました。  事実、三日間この交渉はかかったようでございまして、月曜日の午前中には通貨当局が介入できない。市場閉鎖という言葉はちょっと大げさかと思いますが、ヨーロッパではインターバンクといいますか、銀行間の取引は行われているわけです。市場閉鎖といわれる場合もインターバンク取引は行われておりまして、通貨当局市場に出ていかないということだけの意味のようなんですが、そういうことにもあらわれますように、折衝が難航したわけでございますが、結果は先生御承知のように、マルクの五・五%の切り上げフランの二・五%の切り下げという形でおさまったわけでございます。  それから対ドルレートへの影響ということを考えてみましたのですが、    〔理事増岡康治退席委員長着席〕 これは率直に言いまして、先週ではまだよくわからなかったわけです。ただ、過去の経緯が、二つども経験を持っておりまして、一つは昨年の六月に同じようにEMS調整が行われましたときには、その後マルクドルに対して弱くなっております。ところが、一昨年の秋に、同じようにEMS調整が行われたときは、このときももちろんマルク切り上げという形ですけれども、そのときは調整マルクドルに対して強くなっているわけでございます。  全く同じようなことをやって、ドルに対するレートが違うということはどういうことかということで考えてみましたのですけれども、これはやはりそのときのドル基調がどっちにあったか。ですから、昨年の六月はドル基調が強い基調にあったから、EMS調整がむしろマルク等EMSを弱くする方向に働いてしまった。ところが、一昨年の秋の場合には、ドル基調が弱くなる、若干弱くなる時期にぶつかったものですから、EMS調整マルクを結果として強くしたというように感じられるわけです。  今回見ておりますと、どうもマルクがやや弱くなっておりますが、私はこれは早晩是正されていくのではないだろうか。というのは、ドル基調が若干いま、先ほど大臣から御指摘がありましたように、金利が三月の初めに比べますと上がっておりますために、若干ドル基調が強いということがございます。そういったことがあったためにマルクドルに対して弱くなったのかと思います。これはいずれ若干の是正が行われるのじゃないだろうかという感じで見ております。
  17. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、EMSのいわゆる通貨調整に対しまして、いわゆるマルクドル関係の御説明がいまあったわけです。一番問題になるのは、私たちとして関心があるのは、通貨制度安定期待というものは円高に左右するという説と、それと同時に、一方ではドイツフランス経済格差がさらに拡大していくんじゃないか。そういったところからいわゆる通貨危機が再燃する危惧がある。そうなってくれば、今度円の不安定要素を強めていくんではないか。それと同時に、現在アメリカがまだ高金利、いま御説明のように高金利でございますので、この二つの要因の中に挟まれて、円が不安定な様相をいまから先もまだ続けていくんではないかというような説も、また一面にあるわけでございますが、大蔵省としてはどちらの説を大体有力視し、いまから円レートに対するいわゆる対策をとられようとするのか、そこのところをちょっと御説明願いたいと思います。
  18. 大場智満

    政府委員大場智満君) 基本的には、EMS調整は円に対してはニュートラルであるというふうに考えております。ただ、EMS調整がここでまとまりましたということは、国際通貨体制に対しては私はメリットがあると思います。  しかし、いま御指摘のように、ドイツフランスファンダメンタルズにかなりの違いがございますから、特にインフレ率が五%は違っていると思いますから、今後ともフランスがよほど国内経済対策に力を入れませんと、再度のEMS調整というのは必要になってくる可能性があるわけでございますけれども、私どもとしては、フランス国内対策に期待しているわけでございます。  それからEMS動きが円に対してニュートラルであるということは、別の言葉で申し上げますれば、円というのはいつもドルによって動いている。これは日本輸出の七割がドルでございますし、ドル建てでございますし、輸入の九七、八%がドル建てで輸入されているという事情もございますけれども、私どもは、円の対ドルレートということで、円をドルを通して見ているわけでございます。そういう意味アメリカ動きというのがやはり円に対して大きな要素になってくる。  ただ、私は、基本的には長期的には円の対ドルレートというのはインフレ率格差で決まるというふうに考えております。インフレ率の高い国の通貨が弱くなるという考え方でございますし、中期的には経常収支赤字黒字の大きさが円の対ドルレートには響いてくる。また短期的に、いま先生の御指摘のように、金利動向が円の対ドルレートにかなり響いていくということでございます。いま金利は、確かにアメリカ金利が若干反騰しておりますので、その影響も受けているわけでございますけれども、中長期的に円を決めておりますファンダメンタルズインフレ率格差あるいは経常収支——経常収支は、ことしは日本黒字アメリカ赤字だろうと思いますが、そういったことを考えますと、私は円というのは少し長い将来といいますか、少し先を見ていけば必ず強くなるものだというふうに見ているわけでございます。
  19. 桑名義治

    桑名義治君 いまEMSに対する御見解が述べられたわけでございますが、円レートというのは、これは米ドルとの対比の中、あるいはまたそれぞれ各国のいわゆるインフレ率、そういったところが一番大きな要素になるんだというお話でございますが、そういう立場から見ましても、先ほど申し上げましたように、まだアメリカではGNPが一・四半期は四%伸びるであろうという予測をしておりますし、この問題に対しては、大臣の御答弁は、まだまだそういうアメリカ経済の好調がいまから先続くということは疑問符であるというふうなお答えではございますけれども、しかし、いずれにしましても、アメリカはそういうふうに景気の上昇の芽が大分大きく出てきた。  それからヨーロッパにおきましては、通貨の問題でもございますけれども、一応通貨制度が安定をした、一時的ではございますけれども安定をした。それと同時に、二十一日からEC首脳会議がございまして、このときにも、国際的な協調の中で景気回復を図っていかなければならない。その中ではECの一番重点に置いているところは、新聞紙上ではございますが、アメリカ金利を下げること、これを要求しようではないか、こういう事柄が上っておるわけでございます。  そういう世界の客観情勢というものを眺めてみましても、あるいは石油の五ドル値下げということを見ましても、このまま一兆六千億ぐらいの黒が出てくるわけでございますが、そういうことを考えれば、確かに先ほどから申し上げておりますように、政府としてはこの予算が終われば総合景気対策を立てる、打ち出すというふうに言われてはおりますけれども日本景気対策というものは常に後手後手に回っているような気がしてしようがないわけでございます。機を逸すればいかなる施策もこれは効果が生み出せないというのが現実でございますので、ここら辺を踏まえて、総合景気対策というものは早急に打ち出していく必要があるのじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、そういった客観情勢を踏まえて再度大蔵大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる一般的な経済政策というのは、まさに弾力的に機動的になされるべきものであるというのは、私も異論を挟むものではありません。  そこで、当面の景気対策、こういうことになりますと、アメリカは、私は若干否定的なことを申したとは申しながら、いわゆる景気底離れというような状態にあるということは、これは否定できないと思うのであります。  それから一方、ヨーロッパはどうかということになりますと、首脳会議でいろんな議論をいたしますものの、まずはフランスさん、あなたのところは経済政策そのものの基本にさかのぼって少し改めたらどうだと、こういうような議論から始まりまして、総体的なヨーロッパあるいはEC全体の景気対策というものがあげつらわれるまでにいくかどうか、私も若干疑問に思っております。  そういう背景の中で日本景気対策ということになりますと、いまのところ三・一%の五十七年度の成長率は、一応これはどうやら見込み得た。そうすると、いまの場合、われわれが念頭に置くものはやはりいま御審議いただいております予算、その一応の前提として三・四%、その三・四%をより確実なるものにしていくというのが景気対策か。あるいは三・四そのものでも、長らく高度成長経済になれ過ぎておりますので、私どもとしては、必ずしも好況感などというものは三・四なんかでは感じられるものではない。だから体質的になれていくためにも、かつての二けた成長の夢見るわけではないが、三・四なら三・四があたりまえであるというある種の心理状態に置くためには、なだらかに安定成長に持っていく考えからして、少し高目のものもねらってみたらどうだという景気対策とあるわけでございます。  大蔵省は渋い方でございますから、三・四%をより確実なものにするという考え方で臨むべきだ。そうすると、いまの場合、物価の安定度等からいたしますならば、そうして財政力がこれに対応するその力が必ずしもないということになると、急速にそれをやるべきものか、あるいはそれこそ欧米の状態等を見ながら、むしろ世界経済全体が議論されるサミットとかいうものに合わしての議論を詰めていくものかというようなことで、いま私自身もスタンスの取り方について、幾らかちゅうちょというとちょっと表現が消極的になり過ぎますが、慎重に考えておる、こういうふうに御理解いただければと思います。
  21. 桑名義治

    桑名義治君 いずれにしましても、サミットが目の前に来ているわけです。このサミットで日本が要求されることは何だろうか。これは端的に考えて一口に言えば、日本の国内の経済の拡大をしろ、こういうことに集中してくるのではなかろうかというふうに思います。そうしませんと、再び貿易摩擦のおそれが十分に出てくるわけでございますので、そういうことも一方ににらみながら考えてみますと、早急に日本としては国内需要の拡大を図っていくことが一番急務ではなかろうかと、こういうふうに私は思うわけでございます。  そういった意味で、現在五十八年度の予算の審議中ではございますけれども、そこら辺をにらみながら早手早手に手を打っていく必要がある、こういうふうに考えるものですから、この議論をきょうは提起したわけでございます。  次にお伺いしておきたいのは、金融行政の自由化が進められているわけでございますが、その中で金融の自由化というのは、都市銀行のような巨大ないわゆる金融機関に対してはともかく、中小金融機関には不利になると思われるというふうに思うわけでございますが、そういう中小金融機関に対しての十分な保護対策は考えているかどうか、その点をお伺いをしておきたいと思います。
  22. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 御指摘のとおり、金融の自由化は、好むと好まざるとにかかわらず国際化が進展する、あるいは大量の国債累増をてこにいたしまして国内の金融市場が自由になっていくということで、好むと好まざるとにかかわらず自由化が進展していくわけでございますけれども、私どもといたしましては、この自由化が自由化のための自由化であってはいけないのであって、いかに日本経済の中にこの自由化を軟着陸さしていくかということが大変大切なことだと思っておるわけでございまして、金融の秩序に混乱なく進めてまいりたい。そういうことによりまして、金融全体が信用秩序の維持を保ちながら、自由化がうまくわが国の中にソフトランディングしていくということをねらいとしているわけでございますから、中小企業に対しましても、急激な影響がないようにいろいろ配慮しながら進めなきゃいけない、こう考えておるわけでございます。  特に、御指摘のように、大きな金融機関の方が有利で、中小の方が不利だというふうな御指摘、まさにそう思います。競争が進展いたしますと、どうしても強者の論理といいますか、そういうものがだんだん強くなってくるということはよくわかるわけでございまして、そういう点につきましては、その強い者だけが生き残るというようなことではなくて、中小も含めまして、金融全体がうまく回っていくように私どもが努めていくことが、これが行政の務めだと思っておりますので、できるだけ中小企業金融対策にも配慮いたしながら行政を進めてまいりたい、こう思っております。
  23. 桑名義治

    桑名義治君 いま局長の御答弁をお聞きしておると、確かに金融の自由化というものは、これは好むと好まざるとにかかわらずどんどん進められていく、そうなってくれば大きな金融会社から中小金融会社というものは圧迫をされていくことは事実だ、したがってその中小金融機関が不利な状態に置かれないように配慮しながら進んでいかなければならないと、こういう御趣旨のお考えのようでございますが、では具体的にどういうふうな方策がとられているか、ここを私は一番お聞きしたいわけでございまして、そういう論理は論理として、これは当然な論理ですから、ただ具体的な問題としてお聞きしているわけですから、具体的にお答え願いたいと思います。
  24. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 自由化を推進していきます場合には、まず金融機関個々がみずから経営努力をしていただきまして、そういう厳しい状況に耐え得るような経営体質をつくり上げていっていただくことがまず基本かと思います。  ただ、私どもといたしましては、金融秩序に混乱がないような意味で、環境づくりはいろいろいたしていかなくちゃならないわけでございますので、特に中小企業金融機関等につきましては、従来からもかなりいろいろと対策を講じてきておるわけでございまして、たとえば相互銀行、信用金庫等におきましては、一般の普通銀行とは違うようないろんな優遇措置を講じておるわけでございます。  相互銀行等におきまして、たとえば最近の店舗行政等につきましても、特別に普通の銀行とは違いまして、店舗の出し方等につきましてもかなり弾力的な配慮をいたしておりますし、それからいろいろ行政的な指導基準みたいなものをつくっておりますけれども、そういう面におきましても、普通銀行とはかなり違う計数のものを提示いたしまして、きめ細かな指導をいたしておるということでございます。
  25. 桑名義治

    桑名義治君 そうおっしゃいますけれども、一覧表をつくっていろいろと眺めてみますと、大体相互銀行法もあるいは普通銀行法も、その法律に規定されていることをずっと列挙してみますと、相互銀行と普通銀行というのは大体同じなんですね、法律で規制されている問題は。ところが、相互銀行の方がむしろ規制されている事実の方が多いわけですな、現実は。ところが、信用金庫等と比較をしてみますと、信用金庫等は税制の点ではずいぶんと優遇をされているという一面がありますね。  当初相互銀行が相互銀行法によって銀行として認められたそのときの状態と現在の状態というものは、ずいぶんと社内の事情が変わってきていることは事実、会社の態容が変わっていることは事実であります。もうほとんど普通銀行と同じような状況に入っていると思われます。特に、融資の対象としては、相互銀行あたりは中小企業あるいはまた個人融資、そういったところに重点を置かれておったわけでございます。そうして大企業に対しての融資というものはある程度の制限枠が設けられている。たとえばの話でございますが、そういうふうに一つのいわゆる格差というものがある。  それに加えまして、都市銀行あるいは地銀あたりも、そういった相互銀行あるいは信用金庫等のいわゆる貸付地盤というものをどんどん侵食しつつある。大体中小企業あるいはまた個人融資というものが五〇%にもう突入してきたと、こういうような状況の中にあるわけでございます。  ところが、相互銀行あたりは長期信用金庫の金融債のような見るべき固有な商品もないというような状況の中に置かれているわけでございますが、いろいろと義務化が——この相互銀行の中にはいろいろの義務が負荷されているわけでございますが、そういう義務があれば、それに伴う権利もあるのは当然だと思うんですが、その点はどういうようにお考えですか。
  26. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 先生指摘のとおり、相互銀行制度は非常にむずかしい問題をはらんでいるわけでございますけれども、相互銀行は株式会社組織でございまして、信用金庫、信用組合のような組合組織とは違う、基本的に違うものでございますから、税制等の問題におきましても差があるのは、これはやむを得ないんじゃないかという感じがいたします。  一方で、普通銀行と相互銀行との差はそれじゃどうなのかという点でございますが、この点につきましては、いま申し上げましたように、基本的には株式会社組織で、普通銀行と最近はほとんど変わらないような仕事をいたしておるような状況でございます。  そこで、今後相互銀行制度をいかにするのかという問題は、これからの大きな検討課題であると思いますけれども、三年前にちょうだいいたしました金融制度調査会の答申におきましては、当面は中小企業金融機関として十分機能してもらいたいという答申をいただいておるわけでございまして、私どもといたしましては、その辺を十分考えながら、普通銀行と相互銀行との間の業務の内容の進展に応じまして、できるだけきめ細かに具体的な面で、先ほど申し上げましたような、行政指導等の面におきまして指導に差を設けながら、相互銀行制度の円滑な運営を図っていくというふうなことを基本的なスタンスにいたしておるわけでございます。
  27. 桑名義治

    桑名義治君 昭和四十八年の六月二十一日、この日に参議院の大蔵委員会で中小企業専門金融機関に対しましてのいわゆる附帯決議がなされているわけでございます。この附帯決議の中に、「政府は、相互銀行等の中小企業専門金融機関における国、政府関係機関及び地方公共団体等の公金取扱業務の充実に努めること」と、こういうふうに附帯決議がなされているわけでございますが、しかし、こういう附帯決議が昭和四十八年の六月に出されて、決議されて、その後の状況を見てみましても、公金の開拓というものはこれは遅々として進んでいないというふうに思うわけでございます。  日本銀行の一般代理店及び地方公共団体の指定金融機関の増加に努力するとともに、少なくともたとえば中小企業金融公庫とか国民金融公庫の資金は行政的に優先的に行わせるような配慮をする必要があるのではないかと、こういうふうに思うわけです。たとえば景気対策の一環として、あるいは中小企業を育成するという意味から、いわゆる公共事業についてはなるべく中小企業の方に分割発注するようにという、こういう行政指導がなされて、国会のたびごとにこの問題が俎上に上がっているわけです。そういうような方向がとれるものかどうかですね。とり得るならば、いま申し上げましたような国民金融公庫あるいは企業金融公庫、こういうところの資金を行政的に優先順位をつけながら発注をしていくと、こういう取り扱いをしていくということが最もベターではなかろうかと、こういうふうに思うわけでございますが、この点はどういうふうにお考えですか。
  28. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 附帯決議にございますように、相互銀行等は、地元の金融機関でございますから、地方公共団体との密接な関係を保っていくということで、私どもといたしましても、公金取り扱いにつきまして相互銀行等にもできるだけ取り扱わさしてもらいたいということでいろいろお願いいたしているわけでございまして、この数年間におきましても、相互銀行の指定金融機関あるいは指定代理、収納代理、こういう地方公共団体の公金の取り扱いの機関なり店舗がかなりの数で伸びておるわけでございます。また、国庫金の代理店につきましても、日本銀行の一般代理店、歳入代理店、あるいはいま御指摘の各政府関係金融機関、公庫等の代理業務、これもかなり計数的には伸びておるわけでございます。  ただ、相互銀行自体も先ほど申し上げましたように、普通銀行と非常に似通った姿になってきておりますし、また地方等に行きますと、地方銀行自体が相手にいたしております取引先というのは、ほとんど中小企業であるというような面もございまして、非常に同質化が実は進んでいっているわけでございます。この同質化が進むという問題と中小企業金融専門機関だというところをどう調和さしていくのかというのが非常にむずかしい問題でございまして、私どもといたしましては、あくまでも制度的にはまさに中小企業金融専門機関でございますので、その辺のバランスをとりながら行政的な対応をしてまいりたいと、こう思っております。
  29. 桑名義治

    桑名義治君 もう時間が四分程度になったので、これ以上議論が進まないわけでございますが、いずれにしましても、相互銀行は都銀あるいは地銀からの圧迫、それから信用金庫、信用組合からの下からの突き上げ、そのはざまの中で非常に呻吟しているというのが現実の姿であろうと思います。附帯決議にもございますように、ひとつ十二分な配慮を今後とも続けていっていただきたいことを要望しておきたいと思います。  それから、もう時間ございませんので、一問だけ聞いておきたいことがあるんです。税金の問題でクロヨンあるいはトーゴーサン、こう呼ばれる所得捕捉の不均衡から生ずる税負担の不公平が所得税負担の増大によって拡大するからでございますし、これは所得減税というものがないところからも、据え置かれているところからもくるわけでございますが、所得納税者の有所得者に占める割合を所得種類別に見ますと、五十三年以降五十六年度までの間で、農業所得者は一八%から一二・一%へ、それから農業以外の事業所得者、いわゆる商工・サービス業でございますけれども、三四・六%から三七・八%へと微増をしつつあるわけでございます。  減少あるいは微増しているのに対して、サラリーマンは七八・九%から八六・二%へと急増をしているというのが現実の姿でございます。これが五十七年度は八七・三%、五十八年は八八・一%へと、農業や商工業、サービス業などよりきわめて高い水準から、さらに高くなってくるというふうに思われるわけでございますが、これに対する大蔵大臣所見並びにクロヨンを解消していく具体的な方策をどのようにお考えなのかお聞きをしておきたいと思います。
  30. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 率直に申しまして、私ども与えられた諸条件とでも申しましょうか、そういう中で適正かつ公平な課税を実現するための正確な記帳を行うための青色申告者の育成とか、税務調査の充実等について従来ともできる限りの努力を重ねてきております。税務調査実績等から見 まして、巷間言われるほどに税負担の不公平があるとは考えておりません。しかし過少申告を行うとか、そういう不誠実な納税者がおることも事実でございますので、課税の公平を確保することは、これは今後とも重要な課題であるという一つの共通認識に立っておるわけでございます。  そこで、これを執行面でどうとらえていくかということは、一つには誠実な納税者の育成であり、次には不誠実な納税者に対する税務調査の徹底が柱となりますが、具体的には税務調査の充実、そういうことが一つございます。電算機の活用等による事務の効率化による調査事務量の確保、あるいは資料、情報の収集、高額悪質重点の調査を中心に効果的効率的な税務調査を実施する。  それから環境の整備という問題につきましては、税務当局や税理士会、そういう関係民間団体の協力のもとで青色申告者の育成、充実に努めてまいりますほか、効果的な広報活動、税務相談、さらには租税教育とかというような各般のPR活動等を行うことによりまして、納税環境の整備とか意識の向上とでも申しますか、そういうことに配慮していかなきゃならぬ問題であります。  だから、言ってみれば、そのものずばりの対応策、総合的にたゆまない、そういう環境の整備とかPRの問題とかに配慮して臨まなければならない課題であるというふうに考えております。
  31. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 きょうは予算の委嘱審査でありますので、まず最初に大蔵大臣の基本的な姿勢についてお伺いいたします。  大蔵大臣の職務の公正というのは何よりも大切にしなければならないと思いますし、それに対するいささかの疑惑もあってはならない、こう思いますが、いかがですか。
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘のとおりであると思っております。
  33. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、これは最近の三月十八日の夜、新聞記事にも出ておりますけれども、都内のホテルで開かれた竹下大蔵大臣の「国会活動二十五周年を祝う会」について、二万円のパーティー券を金融界が大量に買ったという報道があります。  そこで、銀行局長にお伺いしますけれども銀行、保険業界あるいは証券会社がそれぞれどれほどパーティー券を引き受けたのか調査を求めておきましたけれども、どうですか。
  34. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 金融機関が政治家の励ます会などのパーティー券を購入する場合でございますが、これはそれぞれの金融機関独自の判断で行われているものでございまして、私どもといたしましては、その事実関係は承知いたしていないわけでございます。先生の御指摘のようなことで調査しろというふうなお話でございましたが、いま申しましたように、行政当局は、そこまで立ち入って私どもとしては資料を提出させることはどうか、こう思っておりまして、事実関係としては承知いたしてない状況でございます。
  35. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは新聞でも報じられているとおり、大蔵行政、わけても銀行行政の公正に係る問題であって、銀行局長としてはおちおちしておれぬ問題だと思うんですね。調べれば、個々の銀行を調べなくても、たとえば金銀協会とかあるいは損害保険協会に聞けばすぐわかるわけですね。それもなさらなかったということだと思うんです。  それだけじゃなくて、最近これは新聞にまさに花盛りですけれども、「解散風でパーティー乱発の自民各派閥」とか「資金集め過熱」とかいうことで、これは集めたら、幾らでも新聞記事は出てくるんですね。これらの状況についても調査していないんですか。
  36. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) いま私が申し上げましたように、この問題は個別の機関の対応の問題でございまして、私どもといたしましては、そこまで調査をいたしておらないわけでございます。
  37. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、それじゃしようがないので大蔵大臣にお伺いしますけれども、この記事によりますと、竹下さんの話として「今回のパーティーは、私が蔵相に就任する以前の約一年も前から、私の関係者がチームを組んで準備を進めてきた。しかし、閣僚のポストにものをいわせるやり方は一番避けるべきことで、蔵相就任以後は所管の業界に対するパーティー券のお願いは十分注意するよう強く指示しておいた」ということなんですね。そのとおり大臣はしゃべったんですか。
  38. 竹下登

    国務大臣竹下登君) たしか私は、永年勤続はことしの二月ということになっておりまして、去年の春ごろからでございますから、十カ月ぐらいだと思います。前回二十年記念というのを一回やりまして、この次は三十年記念をというようなことを言われておりますが、そこまで国会議員でおりますかどうかわかりませんけれども、蔵相就任以前であったことは事実でございます。  それから、ここにコメントが出ておりますが、ちょうど予算委員会で行かれませんでしたので、その予算委員会が済んだころに社会部の記者の方がお見えになりまして、おおむねこの筋のお話をコメントしたことは事実であります。
  39. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 といたしますと、その前提として、このパーティーは事前に知っておったということが一つですね。  それから金融界にもパーティー券を買わせる努力がされておったということも知っておったというのが第二点。  それから金融界にパーティー券を買わせることは大臣影響があることであるんですね。公正さに疑惑を持たせることである、こういう認識があったことは事実なんでしょうね。
  40. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 別に金融界に買わせようなんということは考えてもおりませんでした。大体毎度——毎度じゃありませんが、十年記念あるいは二十五年記念、私の後援者名簿には数万人はございますし、個々にいろいろ皆さん方にお願いをしたであろうと思っております。特に何業界に対してとか、あるいはなかんずく職務権限の及ぶとでも申しますか、そこへ圧力をかけるようなことをしましたら、今度は政治家としての私がだめになりますので、いつでも心しておるところでございます。
  41. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 しかし、記事によれば、大臣も認められたことは、「所管の業界に対するパーティー券のお願いは十分注意するよう」に強く指示しておいたということですから、これは大臣の認識が相当あって、金融業界に買わせようとしている、あるいはすでに買わせている、こういう認識がすでにあったんではないんでしょうか。だからこう注意したんでしょう。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこのところが近藤さんと私の認識が違いまして、買わせるというような性格のものじゃございません。それをやったら政治家だめになりますから、お互いに注意すべきことだと思っております。
  43. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 買わせるのか買っていただくのか。買っていただくでもいいですよ。  私がいまお聞きしているのはそういう評価の問題じゃなくて、そういう認識があったでしょうと。だから、言葉とすれば、銀行などに頭を下げて買っていただく、そういうことがすでに行われている、あるいは行われようとしている、こういう認識はあったんでしょう。
  44. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 金融界によらず、たくさんの友だちがおりますので、そういうことがあった場合にも、大蔵大臣になりましたときにやめようかなと本当は思ったことがあるんです、現職の大臣ですから。大臣だからいけないというわけでもないでしょうが、考えてみました。国会などでいまの近藤さんのおっしゃるようなお話が出る可能性もありますから、やめた方がいいかなあ。それは皆さんの善意に従ってすんなりといこう。それで、一万人お見えになりますと、会場にも御迷惑をかけますので、その点セーブしまして、極力会場に入る人は五千人程度にお願いしようということにしたことも事実であります。事実、武道館でないとだめかなあとも思ってみましたけれども、そんなことをしちゃならぬと思いまして、自粛したつもりでございます。
  45. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 自粛したつもりが、破格の一億数千万円、こういうことになるんですね。  そして、報道によりますと、都市銀行に興銀などを加えた大手十六行が買ったパーティー券は約五百枚、一千万円。それから全銀協の会長、副会長をしている二行が五百枚単位で引き受けた。だからそれで二千万円。銀行だけで合計約一億数千万の三分の一近くですね、あるいは超えるかもしれませんが、になるんですが、この事実はお調べになりましたか。
  46. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一枚一枚でございますので、この新聞記事が出ましたときに、調べてみておいてくれ、こう言っておりますが、そうおっしゃるような報告はまだ受けておりません。大変問題意識を僕自身が持つべきだというような報告は受けておりません。  それからまた、事実、大新聞さんでございますから、正確にお調べになったでございましょうが、私の意識とは若干異なりますので、余りあげつらわない方がいいんじゃないかと私自身も思っております。
  47. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 一枚一枚調べたら大変ですけれども、事は五百枚、一千万単位ですからね。これは大どころだけでも調べ——しかも新聞で指摘されているのは、まさに職務に関係する金融界が大量買った。「竹下蔵相にらみの力?」ということになっているわけですからね。これは冒頭に大臣が答弁したとおり、当然職務の公正に係る問題、それに対する重大な疑惑がかけられておるんですから、当然もう重大な関心を持って、少なくとも大どころだけでもいいですよね、百枚単位でもそれは調べるべきだと思うんですが、調べてないとおっしゃるので仕方ありませんが、しかし、この報道が違う、事実に反するということはないでしょう。それがもし事実と違えば、これは告訴したっていいくらいの問題ですね。それは大臣だけじゃなくて、大蔵省全体の名誉にかかわる問題ですから。どうですか。
  48. 竹下登

    国務大臣竹下登君) よく私も新聞やら週刊誌に、赤旗も含めまして、いろいろ書かれておりますので、その都度都度告訴するなどというようなことはしないがいいじゃないかなあと、ある種の人生観でそう思っております。
  49. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 きょうのことも赤旗の記事になると思いますけれども、問題は大臣個人の問題じゃなくて、要するに大蔵行政全般にかかわる問題ですがね。ただ、いまの話を聞いていると、これに対して、事実は違うという自信はおありにならないようだと思うんですね。  そこで、国税庁にお伺いしますが、これは入金した側、この場合では励ます会ですが、そこではこれは税法上はどういう扱いになるのか。それから支出した金融界側はどういう名目の支出として扱われるんでしょうか。
  50. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) お答え申し上げます。  収入をいたしました金額は、政治家個人の主催ということでございますと、政治家個人の収入ということになります。雑所得に係る収入金額ということになるかと思います。  後援会等が行いました場合には、これは後援会が人格なき社団であるという場合が多いかと思いますが、人格なき社団の収入金額ということになるかと思います。  それから銀行等の支出でございますが、その支出先と銀行との関係の強さといいますか、そういったものによっても違うかと思いますが、おおむね寄附金ないしは交際費ということになろうかと存じます。
  51. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そうしますと、課税対象としてはどう考えられますか。たとえば個人とした場合には、雑所得だから、これは課税対象になりますね、その分、経費を引いた分がね。それから人格なき社団の場合ですと、この場合、政治団体ということになるんでしょうかね。
  52. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 個人の場合には、先ほど申し上げましたとおり、雑所得に係る収入金額でございますが、政治家として一方におきましていろんな支出がございます。それは雑所得に係る必要経費ということで差し引きをいたしますので、その残余があれば課税ということになります。  それから人格なき社団の場合には、収益事業が課税の対象ということになりますが、かようなパーティー、お祝いの会、こういったものは収益事業とは考えられておりませんので、課税対象となる収入ではないということだと思います。
  53. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 竹下さん、これは個人としての収入でしょうか。そうしますと、これは経費が三千万だそうだから、一億円以上が課税対象なったら大変ですよ。ほとんど持って行かれちゃいますね。あるいは違うんですか。どちらですか。
  54. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 定かに知りませんけれども、五年前の二十年のときにやりましたときには、人格なき法人をたしかつくりまして、それが主催した。したがって、今度の場合も、そのことは最初からずいぶん注意して、政治団体も主催者の中へ入れるとかいろんな配慮をしておったようでございます。
  55. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 抜け目なく課税対象にならないようにやっているんだろうと、私こう思うんですよ。  今度は出した方の銀行側ですが、寄附金か交際費か。寄附金だと非課税ですね、一定の限度までは。そして交際費だと、これは最近特に大企業の場合には全部課税対象という形になっていますが、問題はその区別はきわめてむずかしいんじゃないでしょうか。その区別をどこに置くんでしょうか。
  56. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 一般的に申しまして、何々を励ます会なんかの会費の支出、これは税法上は原則とすれば寄附金ということになろうかと思うんでございますけれども、ただ会社が当該政治家の会合に出席いたしましてその政治家と、何と申しますか、かなり親しいといいますか、出席することが会社経営に資するところがあるというような考えで支出いたしましたような場合には、交際費としてその限度計算の対象になる。  こんなところで私ども見ておりますが、実情をよく調べておりませんけれども、多くの場合には交際費として会社が計上してくるという場合が多いかと思いますが、その場合にはむしろ交際費の方が課税上はきつくなっておりますので、私どもはその処理を是認するというようなことで処理をいたしております。
  57. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 「交際費課税のすべて」という書物、これは大蔵省関係が出しているやつですが、大変区分けがむずかしいと。実質的にはほぼ変わらないわけですよね。ただ慈善事業への寄附とか、あるいはこういう政治団体への寄附などという名目で分けているような面もあるけれども、実質はむずかしいということなんです。  問題は、ここは政治問題ですから実質的に考えていくとなりますと、いまも答弁ありましたけれども、会社経営に資する場合があると思って、だからこそこんなに何千万も出したんだろうと私は思うんですけれどもね。そうなりますと、大臣銀行の経営に資するとなりますと、これはまさに大臣の職務と重大な関係があるし、新聞にあるようににらみがきいたということになりはしませんか。まさにそのことが大蔵行政の公正を害することになるんじゃないでしょうか。どうですか。
  58. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる何といいますか、強制的に割り当てするとか、それはいいことじゃないと思っております。大体そういうことをすると、政治家はそれでだめになりますから、しないように心がけております。  それからにらみがきいたと言われる。大変にらんだような顔もしておりませんし、大蔵大臣であるということは厳然たる事実でございますから、これは政権がかわればだれでもおなりになることでございますが、自分の節度は考えていなきゃならぬ問題だ、それはいつでも政治家として私自身気にしておる問題でございます。
  59. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 気にしておって結果的に破格の一億数千万が集まったんですが、いまこのように指摘され、かつ大臣も事前に、銀行などにパーティー券を買ってもらうのはまずいことだと、こういう認識もあったとなりますと、私は事後の処置として、本当に公正をここで維持していくというためには、それなりのとるべき措置があるんではないかと思うんです。一つは、この機会にこういう政治家のパーティー、特に大臣の地位にある者、大蔵大臣の場合には特に銀行とか金融関係建設大臣であれば建設業者等々にパーティー券を買わせることは、あるいは買ってもらうことは、これは慎むべきで、やってはならないことだと、こういう決意表明をまずすべきじゃないでしょうか。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる買ってもらうにしましても、割り当てにするにしましても、それは絶えず申し上げておるとおり、私もいいことじゃないと思っております。ただ、この種の問題は、なかなか自分一人でこれをやろうと決めるものでもございませんし、多くの人の善意の中に立つ問題でございますから、そして相手が考えようによっては私企業様でございますし、あるいは個人で買った人もたくさんいらっしゃると思いますから、したがって一概に論評する性格のものではないのかなあという感じがいたします。
  61. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は個人が買ったものは全然問題にしていないんですよ。特に大臣の所管の金融業界、この場合には——私はほかの業界を特にいま問題にしておりません。金融業界ですね。そうするとこれは職務に重大な関係がある。そしてこの経過のように、業界に一定のものが来ますと、これは買わざるを得ないような雰囲気があるということが一つですね。それが大変大事だと思うんです。それが一つです。  それからもう一つは、これはもらった方は恐らく非課税の扱いになるだろうし、出した方も、もし寄附金となりますと恐らくほとんど非課税なんですね。これは私は一般の例に比べてきわめて扱いが優遇されていると思うんですよ。たとえばある会社の社長が叙勲を受けたということで社としてお祝いパーティーをやりますと、これは交際費ですよ。それからそこへ人が金を持ってきた場合には、それは全部会社の益金だと、こうなると思うのです。ちゃんとここに書いてあることだからそうなると思うんです。  そうすると一般の場合には入りも出も全部課税対象。しかしこの場合、竹下さんの場合には入りは全部非課税、それで出の方もかなりの部分が非課税になる可能性がある。となりますと、これは余りにも政治家という地位、特に大臣という地位を利用して大きな金が非課税のまま動いている。そのことは大臣の立場にある者として一体それでいいんだろうかと、こうお考えになりませんか。
  62. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 節度は私も大事だと思います。しかし、私は別に会社に頼んだというような感じも持っておりませんので、善意の第三者がたくさんお世話いただいておりまして、個人もたくさんあるでございましょう、そういう認識でございますので、問題はむしろそれは大臣になる、ならぬは別といたしまして、私はいままさに大蔵大臣でございますから、その点の配慮とか、あるいは受けるべき批判とか、それはあると思います。が、一般的に非課税の金をたくさん集めてやろうとか、そういう意識があったわけでもございませんし、自分自身その金を使おうとも思っておりませんし、そしてそれなりの自分の節度というものは、これは政治家ですから、絶えず心していなきゃならぬことでございますので、こういう批判をよかれあしかれ受けるということはやはり不徳のいたすところであろうということであります。
  63. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もう一つ伺います。節度とおっしゃいましたけれども、破格の一億数千万が集まったことが節度なのか、節度を超えないのか。特にはっきりしただけでも、銀行関係の大どころだけで三千万、全体のうちの三分の一が集まっている、しかも一パーティーで。これが節度を超えないと、こうおっしゃるんですか。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、銀行だけで幾ら幾らとおっしゃいますが、私それを把握しておるわけじゃございませんけれども、そんなことはないと思っております。
  65. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もしあったら、これは私は節度の問題が出てくると思うんですね。  そこで、あるかないかはわからぬとおっしゃるけれども、実際ぜひ調査していただきまして、もしあったら、どうですか、大臣、こういう疑惑を避けるために、また批判に対して、大臣として本当に潔癖なんだということをおっしゃるなら、この分、特に金融関係大臣の所管する業界から来たお金については、これは返済したらどうですか。そうすればすっきりしますよ。  しかも私は、大臣のこの経過から見まして、意図はなかったということはそのまま信ずるわけじゃないけれども、一応前提にしまして、しかし過失があるんですよね。過失があることは間違いないですよ。事前にそういった金はまずいということを知りながらちゃんと注意した、しかし最後の最後まできちっと注意しなかったために入ってきちゃった。これは過失ですよ。そういうわけでこの機会にこの分を、恐らく三千万以上になると思いますけれども、このお金を大臣は返して、そして初めて公正であると胸が張れるんじゃないでしょうか。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まあ一つの前提、三千万、三千万とかおっしゃいますが、それも近藤委員の御計算でそうなっておるのでございましょうから、それが間違っておるとかおらぬとか、その問題を議論しようとは思いませんが、善意の第三者というものに対してみずからその意思に反するというような問題もございますから、これは近藤委員に指示されて、あるいは近藤委員の教えを受けて自分で対応すべきことでなく、私自身が対応すればいい問題だというふうに考えます。
  67. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 また時間もあれですから、一応この程度で打ち切りますけれども、しかし私は、何も個人じゃなくて、国民から選ばれた国会議員として、要するに国民の意思として大臣に勧告申し上げます。ですから、この中身を、特に金融関係からこのパーティーに出された金額をひとつ正確に調査されて御報告いただきたいということが一つ。  そしてこのあとは私の勧告です。国民に成りかわっての勧告ですけれども、それは銀行に返すべきだということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  次に補助金の問題ですが、先端技術産業などへの大企業補助金が、これは五十八年度予算でも大幅にふやされていると思います。たとえば高カロリー石炭ガス化技術開発費が二八・九%増、それから海底石油生産システム開発費二六・九%増、次世代産業基盤技術研究開発費二二・六%増、それからさらに、新たに創設されたものといたしまして、新型転換炉実証炉建設費、それから産業活性化技術開発費などがふえておるわけですね。  この間私も本会議で、これらの補助金は大企業のためではないかということを指摘したんですが、それは見方の問題だと、こうおっしゃるんです。しかし、財政審の答申でも、企業に対する補助金等について全体として縮減合理化を図るべきだと、こう言っておるわけですね。これから見ますと、この趣旨に反するのではないかと思うんですが、どうですか。
  68. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) このような企業に対する補助金につきましては、いろいろな財政的な効果あるいはそれを受ける企業の技術開発等の効果、そういうものを勘案しましてやっておるわけでございます。したがいまして、一般的にそういう問題について、われわれとしては、否定的に考えたり、あるいはすべてそういう補助金がいいというふうにも考えておるわけではございません。
  69. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それは共産党と同じ立場に立って、これは大企業だからいかぬというようなことを私は大蔵省に求めちゃおりませんけれども、しかし財政審の答申にこういう指摘があるわけでしょう。この指摘から見てどうかというのが私の質問なんです。
  70. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 財政審の報告及びその後の臨調の答申等にも、こういう企業補助金につきましては、非常に厳しい財政事情の折から、できるだけ支出を点検して予算を決定してほしい、こういうお話がございます。そういうようなこともございまして、五十八年度の予算におきましては、補助率の引き下げあるいは収益納付期間の延伸等々の措置もとっているわけでございます。
  71. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その収益納付金の制度の問題ですが、これは昨年も私取り上げまして、先端産業プロジェクト補助金として合わせて一千四百九十九億円の額が支出されている、しかしその対象はいずれも資本力、技術力で補助金がなくてもこういう開発ができる企業や団体であるということを指摘したのですが、その問題の収益納付金の制度があるものにつきましても、実際支出された補助金に比べて収益納付はきわめてわずかだということを指摘したわけです。  通産省にお伺いしますけれども昭和五十七年度収益納付規定のあるものについて、その補助金の総額と、それから現に収益納付がなされている額について答弁いただきたい。その比率もお願いしたいと思います。
  72. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) 通産関係の技術開発関係の補助金で、先生指摘のございました五十七年度におきまして収益納付の規定があるものの総額でございますが、五十七年度予算で七百三十三億八千五百万円でございます。  収益納付額でございますが、五十七年度につきましては、今後に確定いたしますので、現段階ではお答えできないわけでございますが、五十六年度の数字について言いますと、十五億四千五百万円ということになるわけです。
  73. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、ほぼ七百三十三億、そんなに違いがないでしょうから、それに対して収益納付は十五億。先ほど収益納付制度があるのだということで私の批判を避けられたわけだけれども、実際このように少ないのですよ。ただ、中身を見てみますと、事業終了前だということもあって、まだその納付期間が来てないというのがあるんだということは認めます。  ただ問題は、私は資料をもらいましたけれども、これらいまやっている事業について大体収益納付が期待できるのだろうか。これは昨年の西垣次長の答弁でも、大体収益納付が期待できれば、そのような事業であれば、そんな補助金じゃなくて融資しますよと。もともと考えるとすれば、収益納付と言ったって余り期待できないようなものがたくさんあるんじゃないかと思うのですが、その辺の見通しどうですか。
  74. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) この問題につきましては、先ほど委員指摘のように、個々におきましても、財政審なり臨調等からいろいろのお話を伺っているわけでございます。そういう中で、これにつきましてわれわれとしても常に見直しているわけでございまして、先ほど申し上げましたように、五十八年度予算におきましても、民間航空機開発費補助金とか、あるいは重要技術研究開発費補助金等について収益納付の期間を延伸するということもやっております。これ以外のものにつきましても、五十八年度予算案の各省との折衝の段階でいろいろ話し合っているわけでございまして、今後も引き続きこの収益納付期間のあり方については、いろいろの観点から真剣に検討していきたい、このように思っております。
  75. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いまの期間の問題ですが、現在五年ですから、あっという間に来てしまって、それを過ぎちゃえばもう返さなくていいということになるところに私はこの制度の問題があると思うのですね。物によっては五年が適切なのもあるかもしれぬけれども、しかしこれを見てみますと、かなり長期にわたって効果のあるものもずいぶんありますよね。しかも多額の補助金があるとなりますと、この五年というのは、昨年の答弁でも、絶対かどうか、実態を見て調査したい、検討したいと、こうおっしゃっておるので、もう一歩進めて延ばす方向で検討するという点はどうですか。
  76. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) いま先生お話でございますけれども、それにつきましては、個々の補助金の実態に応じて検討したいと、このように考えております。
  77. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 終わります。
  78. 柄谷道一

    柄谷道一君 まず、五十七年度の税収見込みについて御質問いたします。  政府は、昨年の補正予算編成に際しまして、当初の税収見積もり三十六兆六千億円を三十兆五千億円と六兆一千億円減額補正したわけでございますが、本年一月の税収は前年同月比四・二%、これは補正後税収達成に必要な五・三%を一%も下回る結果が出ておるわけでございます。  発表された資料を見ますと、一月の税収が伸び悩んだ原因は、主として、一月税収の六割を占める所得税が、昨年末のボーナスが低調であって当初予定したより伸びなかったということ、法人税が前年同月比一二・三%減と経済の不振を反映して落ち込んだこと、さらに揮発油税が前年同月比〇・五%減、輸入の不振によりまして関税が同じく八・五%減と低調であった、さらに源泉課税も伸び悩んだ、こういうことが表の上からは読み取れるわけでございますが、大臣はこの現状についてどう認識していらっしゃいますか。
  79. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま御指摘のように、五十八年一月税収の前年同月比は四・二%にとどまっております。この要因といたしましては、法人税が、これも御指摘のように、企業収益の低迷を反映して、十一月期決算法人の申告が低調でありましたことに加えて、五十七年度税制改正によります延納制度の縮減が行われました結果、九月期決算法人等の延納分収入が前年と比べて減収するという、これはある意味においては特殊要因とでも言えましょう。そういうことでございます。  それから二番目は、揮発油税、物品税、関税が、各課税物品の消費が、輸入が伸び悩んでそれが前年を下回ったこと、そういうものでございます。  一月末税収のいままで累計の伸び率は六・〇%と、現時点では補正後予算伸び率五・三%を、累計ではございますが、上回っておるというのが正しい現状認識であります。
  80. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいま大臣も述べられましたように、確かに五十七年四月から本年一月の累計税収は、前年同期に比べまして六・〇%増となっております。しかし、これもしさいに検討いたしますと、昨年十一月の累計税収は六・八%増、十二月は六・三%増、そして一月はさきに申しましたように六・〇%というふうに低下傾向が続いているわけでございます。したがって、こうした低下傾向が今後二月、三月と続けば、補正予算で見積もった税収を下回る可能性が大きく出てきておるのではないだろうかと、こう思うわけでございます。  この点を質問いたしますと、恐らく政府は、確定申告の状況、さらに三月期決算法人の収益動向を見なければ何とも言えないと、こうお逃げになるだろうと私は予測いたしますけれども、しかしこれらが今後上向く、もういま三月でございますから、二月三月の実態を見ますと、上向くという材料はなくて、むしろ悪材料というものが多く見られるというのが現実ではないか。  そこで、大蔵省は、聞き取り調査ではございますけれども、三月期決算企業の法人税収に関する調査を実施されたと、こう聞いておりますけれども、そうした聞き取り調査の結果も踏まえて、五十七年度の税収についてどのような現段階で展望を持っておられるのか、率直にお答えをいただきたいと思います。
  81. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま御指摘になりました大企業の個別の聞き取り調査でございますが、まだ全部の調査を完了いたしておりません。ただ現在まで聞き取り調査を終わりましたところでは、たとえば電力、ガス等は去年の秋の時点よりもよくなっている業種もございますが、総体的にやや低調であるという感触でございます。このことは、先般発表になりました日銀の下期の短観を見ましても、製造業、非製造業を通じまして、去年の秋の時点に比べて二月時点で、少なくとも三月までに関する限り、収益予測が下方修正されておりますので、全般的にただいま委員が御指摘になりましたように、三月までに関する限りはやや低調である、補正予算を組みました時点に比べまして。  そういうことで先行き懸念されるところではございますが、これは冒頭に実は委員の方からお答えを出されてしまったわけでございますが、計数的に率直に申しまして、いまの時点で五十七年度の決算税収が金額的にどれぐらいになるかということをきちんと明示できる段階ではないわけでございます。ただ、非常に懸念されますので、何とか補正予算で減額いたしましたけれども、その税収額まで何とか確保したいという期待を持っておりますが、非常に予断を許さない情勢であることは事実でございます。
  82. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵省当局が期待されることは当然だと思うのですが、いずれにしても、ただいまの御答弁によりましても、補正後の税収見積もりに黄信号——赤信号とはあえて申しませんが、黄の信号がともっておるということだけは否定できない現実であろうと、私はこう思います。一説によりますと、補正後見積もりより三千億円ないしは五千億円の税収不足になるのではないかということも言われておりますけれども大臣、この補正後見積もりは完全に守れるという確信がおありでございますか。
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私もいつもお答えしておりますが、率直に言って、これは別に法律で決まっているわけじゃございませんけれども、私はかねて一%というものが誤差の範囲内かなあと思っております。したがって、いずれにしても、その一%の私なりに思っている誤差の範囲におさまることを期待しておるというのが私の率直な実感であります。
  84. 柄谷道一

    柄谷道一君 前回の補正予算編成のときに、何しろ税収を六兆一千億円下方減額した予算案を出されたわけですね。そのときは、政府としては、この税収については確信ありということでわれわれの質問にお答えになったわけでございます。そこで、仮にでございますけれども、税収見積もりに狂いを生じた、しかもいま期待されておる一%の範囲を超えたという場合、財政当局はどのような責任をとられるわけでございますか。
  85. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 五十七年度の補正予算の税収の見積もりに際しましては、五十六年度、それから五十七年度の当初見積もりが、実体経済の急激な変化とは申せ、見積もりが大幅に乖離したものでございますから、そういった経験も踏まえまして、従前以上にたとえば中小企業等についても事前のサンプリング調査等も行いながら、できる限りの手法を使いまして正確を期する意味での見積もりに努めたところでございます。先ほども議論ございましたように、税目別に補正後の状況を見ますと、税目によっては補正後の見積もりよりも確実に上回ると見込まれる税目もあるわけでございますが、何といいましても、税収の大宗を制するものは今後の法人税の動向でございます。  法人税につきましては、先ほど申しましたように、補正予算を見積もりました秋の時点と現在の時点で、残念ながら、実体経済基調の見積もりがその時点よりもやや下方修正せざるを得ないという状況にございます。そういう客観情勢にはございますが、いずれにいたしましても、七月時点で決算は確定するわけでございますから、私どもが補正後見積もりました税収見積もりに対しまして、誤差のぶれが何%ならどうという議論ではなくて、その結果を見て、私どもの作業が世の中にきちんと説明できないような見積もり誤りであれば、それ相応の責任を負うと申しますか、これはこのことに限らず当然のことであると考えております。
  86. 柄谷道一

    柄谷道一君 その場合、五十八年度予算は、税収において万が一足らなく不足した場合、その出発点から狂うということに当然なるわけですけれども、このことに対してはどう措置されるんでございますか。
  87. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 理論的に申しますと、五十七年度の決算後、委員が懸念なさいますように、税収の土台が落ちますと、当然その土台の上から五十八年度の税収を見積もっておるわけでございますから、理屈の上では影響を受けるわけでございます。  ただ、これは現時点で先ほど来申し上げておりますように、五十七年度の税収について計数的に現在申し上げられる段階にはございません。したがいまして、五十八年度の税収を云々するという具体的な材料を持ち合わせないわけでございますが、いずれにいたしましても、七月の五十七年度の税収決算が確定する時点において、五十八年度の先行きの経済展望もかなり明らかになっている段階と思います。したがいまして、税収動向についてもいま以上に展望は透明になっているわけでございますから、その時点においてどういうことになりますのか、自然増収があるのかないのか、その時点の判断に立たなければならないわけでございますが、いずれにしても、それ以降の時点で五十八年度の財源事情を見ながら適確な財政処理をしていくということでございますので、現時点で具体的にいろんな場合を想定してどうこうするというのは、まだ早いというふうに思います。
  88. 柄谷道一

    柄谷道一君 もちろん五十八年度の経済動向というものも、これは見きわめなければなりませんけれども、ただいまの御答弁からしますと、五十八年度税収が、いま審議されております予算と比べてさらに不足する、その税収不足を補うための補正予算編成の可能性もあると、これは経済動向いかんによってはですね。このように理解していいんですか。
  89. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これは先ほど来申し上げておりますように、現時点で、五十八年度の私どもが提出申し上げております税収見積もりについて、これを修正すべき材料はないと考えております。
  90. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは大臣にちょっとお伺いいたしますが、渡辺前大蔵大臣でございますが、昨年五月二十五日の閣議後の記者会見で次のように述べられているわけですね。「税収が減ったのは物価が予想外に沈静化したため、法人税や物品税などが落ち込んだからだ。そうした構造上の説明は簡単で、政治責任でも何でもない。物価の安定で国民生活は安定している」、したがって、「税収は減ったが、全体としてみればこれによって国民生活がうんと悪くなったわけではない。世の中は静かだし、悪政ではなく善政だ。」こう言っておられるんですな。これは見方によれば、責任回避でもあり、大蔵大臣の姿勢としてはいかがなものかと私は当時感じたわけでございます。  ところが、いま政府経済見通しでは、一ドル二百五十五円と想定して編成されておりますけれども、最近の円相場は二百三十円台に推移しておりますし、三菱総合研究所など民間の八研究機関の見通しも、大体二百二十円から二百三十五円で今後円相場は推移するんではないかと、こう展望しております。政府経済見通しより円が強いわけでございますから、当然物価は政府見通しよりもさらに安定するという可能性が強いと、こう思うんですね。前渡辺大臣のこの論法からすれば、税収不足は、今後物価が見通しよりも安定すれば安定するほど税収は不足を生ずる、しかしこれは当然なことであって、むしろ善政であると。こういう渡辺前大臣の発想と現大臣の御発想は一緒でございますか。
  91. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは税は名目の所得や売り上げに課せられるものでございますので、国民生活安定の観点からは望ましい結果である物価の安定、これが税収不足の一因となるということは、私はあり得ることであるというふうに思っております。  そこで、さらに今度は一方、円高傾向が持続していきますと、物価は一層安定いたします。しかしながら、政府経済見通しの前提となります為替レート、これは経済見通し策定作業開始直前の実勢レートを参考として定められるというふうに承知しております。一ドル二百五十五円ということであります。現在のレートは、政府経済見通しの前提と比較しますと、円高傾向で推移して、物価の安定要因となることが考えられますが、税収面におきましても、輸入原材料などのコスト低減を通じて、今度は総じて見れば、企業収益の改善に資することが期待されますので、だからたとえば石油税のような従価税とか、そういう問題については、そのものずばり減収ということになりますけれども、一方それが企業を通じて収益の改善に資するという点も考えられますので、私は、物価が落ちついたのもこの減収のワン・オブ・ゼムではあるが、為替レート、そしてそれが物価の安定をより定着さすことが、すべて減収につながるものではなく、企業収益の方にはいい作用を施すものであると、こういう認識の上に立っております。  五十三年でございましたか、景気全般が上昇局面にあったことに加えまして、円高が進行した結果、物価上昇率は政府見通しを下回って、そして税収は順調に伸びたという時代もございますので、一概にその問題だけで、まあ従価税の問題等をとらまえていえば言えますけれども、断定すべき問題じゃないじゃないかな。一因であったことは事実であると思っております。
  92. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、それは大蔵当局も神様ではございませんから、絶対に予測がぴたりと当たるということは、これはなかなか至難のわざだと思うんですね。しかし予算を編成する姿勢としては、経済動向をできるだけ正確に展望し、物価動向も把握して、その上に予算というものが編成される、これは大蔵当局としての当然の節度だろうと思うんですね。しかし、物価が鎮静したから減収が出たのだ、これはあたりまえだということでは、大蔵当局の予算編成の基本姿勢そのものが国民に疑われかねないと私は憂います。渡辺前大臣が、これは記者会見で、新聞には本当に簡単にしか報道されておりませんから、真意はわかりませんけれども、国民はその新聞を見て政府の姿勢を推定するしかないわけでございます。  竹下大蔵大臣、まさかそういう姿勢はとっておられないものと確信いたしますけれども、これは苦言として、これは内閣は継続しておるわけでございますので、この点は注意を喚起いたしておきたいと、こう思います。  そこで、次の問題に移りますが、大蔵大臣はこの二月十四日の予算委員会で、歳出カットに関連しまして、五十六年度予算編成時に参考資料として示した五十八年度の歳出規模、これはもちろん試算でございますが、それは五十八兆三千億円であった。ところが、実際の五十八年度予算案では五十兆三千七百九十六億円となっているのであるから、約八兆円の歳出が何らかの形で五十六年当時の試算と比べて抑制されたことになる。これから見ても歳出カットが不可能と断言することは適当でないと、このような趣旨の答弁を予算委員会の総括質問のときにお答えになっております。  しかし、私は、五十六年一月に出されました財政中期展望、いわゆる五十五年度から五十九年度の展望の主要経費内訳を見てみますと、確かに全体の歳出規模としては約八兆円の削減という姿にはなっておりますけれども、しかしその中身は、地方交付税の減額が約三兆四千四百億円、公共事業関係費の減が約一兆一千七百億円、予備枠分が約一兆七千五百億円の減、これだけで約八割を占めているわけでございます。  そこで、この五十六年の中期展望におきましては、地方交付税の伸び率を、これはやや非常識だとも思われる一五%以上の伸びを見ておったのに対しまして、今回出されました財政中期試算では、五十九年以降の地方交付税の伸び率を七・二%と手がたく見込んでおるわけでございます。したがって、五十九年度から六十一年度の地方交付税の見込み額を実際の予算額が前と同じように下回るということは期待できないと思います。また公共事業関係費につきましても、今回の試算では、投資部門の歳出が五十九年度以降ほぼ横ばいということがされておりますから、これも前回以上の削減を期待することもできない。  さらに、五十六年に出されました中期展望では、一般にも用いられました要調整額には予備枠が含まれておりました。しかし、今回の試算で出されております要調整額については、今後の歳出削減可能額の中に予備枠分は含まれていないと、こう読み取ります。  こうして考えてみると、大蔵大臣は、前回の展望に比べて八兆円ぐらい歳出がカットされたんだから今後も大幅な歳出カットは可能であると、こう言い切られておるわけですけれども、前回の前提と今回の前提は非常に違っておるわけでございますから、前回同様の大幅歳出カットを行うということはきわめて困難だと、こう考えざるを得ないわけでございます。前回答弁との関連において本当に大蔵大臣は五十九年度五兆四千五百億円、六十年度八兆八千五百億円、六十一年度十一兆一千九百億円に及ぶ要調整額を歳出カットによってその大部分を補うことができると、こういう確信がおありですか。
  93. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは御指摘のように、大変むずかしい問題だと私も認識はしております。あのときのいわば中期展望、そのときにも仮定の前提を立てたわけでございますが、今度御提出申し上げております中期試算というものは、その仮定の前提も変えて、いま御指摘のとおり、当時の展望から見れば、現実性をかなり厳しく見ておるわけでございます。したがって、前回のは例示として私は確かに申し上げましたが、あのときもいわゆる要調整額をいかにするか。議論の過程においては要調整額を一つの絶対的なものとしての議論が多かった。しかし、にもかかわらず、結果としてこうなりましたと。中身の点について地方交付税なんというのは御指摘のとおりです。私もその事実を否定いたしません。したがって、なお努力の余地は私はあるということを申し上げたかったわけでございます。  しかしながら、後年度負担の推計、ある種の仮定を立てて等率等差でこれをお示ししておりますので、それが厳しい見通しになればなるほど、それだけにこの歳出カットというものも苦しくなるということは事実であります。しかし、それを踏まえてもきちんとした、臨調答申にございますように、いわゆる糧道を断って、そして歳出削減に取り組めという精神を体して対応していかなきゃならぬ重大な課題だと、ある意味において身の引き締まる思いを感じております。
  94. 柄谷道一

    柄谷道一君 ここで私ひとつ大臣に御要望申し上げたいんですけれども、この中期展望が、あるときは甘く、と言ったら失礼でございますけれども、見積もられ、ことしの場合は非常に手がたくと、大臣は現実性をより強めてと言われたんですが、見積もられる。その前提が余り大きく違いますと、われわれ自体が財政の中期展望というものを考えるに当たって、これは戸惑いを感ずるわけですね。その点に対して一貫性を貫いてもらいたいと思います。  同時に、私がいま質問申しましたようなことは、五十六年に主要経費別内訳が展望の中に発表されたわけですね。私は、この主要経費別内訳が明らかにされるということは、まじめにわが国の財政の将来というものをわれわれが検討し、国民が理解する上できわめて有益であったと思うんです。ところが、今回の中期試算におきましては、これまでの経緯がございまして、これを明らかにされておりません。私はいま直ちにこの内訳を明らかにせよとまでは、無理は言いませんけれども、少なくとも来年からは中期試算の主要経費別内訳を提示して、真剣な国会における議論というものが行われるようにその素材を提供するのが大蔵当局の義務でもあるんではないかと、こう思うんですが、そういう点お約束いただけますでしょうか。
  95. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま柄谷委員おっしゃいますように、実際五十五年度予算案を御審議いただくときには、財政の収支試算、それから中期展望、そして今度は中期試算と、こういうことに変化していったわけです。それもいろいろ御要求に応じながら模索して、できるだけ現実的なものに近づけていこうという努力をしたと私は思います。  そうして、前提が違うじゃないかと。おっしゃるとおりです。たとえば公共事業等、いわゆる新経済社会七カ年計画の二百四十兆、それが下方修正されて百九十兆、それに基づくもろもろの長期計画というものを前提にするんだと。今度の分と違いますですね、確かに。そういう点は一貫性がないではないかと言われれば、私もそうだと思うんです。しかし事ほどさように、予算審議の手がかりとしてもらうために、より現実に近づけたものの努力というものが一貫性がなかったというふうにまた理解してもらわなきゃならぬのじゃないかなと、こうも思うんです。  そこで、主要別経費の問題でございますが、私は主要別経費も、審議を行っていただくために、この手がかり足がかりとなったというメリットはあったと率直に思うんでございます。ただ、私どもはいま考えてみまして、私どもなりの反省もあるわけでございます。いわゆる経費の横並びが既得権化しまして、既得権のようになりまして、予算編成の際にここまでは前提だというような考えになりがちであるということから、ある意味においては、無用とは申しませんが、議論を呼び戻す種を提供したような感じも率直に言ってございました。  そこで、今度は作成しなかったわけでございますが、よしんばそのものにそういうデメリットはあっても、審議する側から見れば、そういうものを出すのは少なくとも親切というものじゃないかとおっしゃれば、私もそういう気がするんでございます。その場合どういうものの形で作成しますかということになりますと、国会でのこういう議論を通じたり、各方面の意見を聞きながら、御質問の点については真剣にこれは検討をさせていただきます。にわかにどういう形のものでという約束はできないまでも、真剣に検討するお約束はさせていただきたいと思っております。
  96. 柄谷道一

    柄谷道一君 われわれ財政の将来を展望して国会審議というものを実のあるものにしていくためには、やはり継続性のある資料の出し方というものが必要でございますし、いま真剣に検討と、こう言われたわけでございますが、私たちの立場からしますと、これが非常に有益であると評価をいたしております。デメリットよりもむしろメリットの方がきわめて大きいと、こう考えておりますので、その点は五十九年度の中期展望を出される際は十分に意を酌んで御善処を願いたいと、これは要請をいたしておきます。  そこで、私はいま大臣の御答弁を聞いておったわけですが、五十九年から六十一年度の要調整額を、五十六年の時点と違って、今度は非常に手がたく見積もっているわけでございますから、この膨大な要調整額を歳出カットだけで処理するということは、これはもう常識的に見て至難のわざであろうと、こう思わざるを得ません。特に現在の政府の姿勢からしますと、これは不可能と言っても過言ではないんだろうか。もちろん行革は進める、歳出カットはしなければならないけれども、それを超える余りにも大きい要調整額であると、こう認識せざるを得ないわけです。  一方、大臣は二月五日のこの予算委員会で、赤字国債の借りかえは不見識のそしりを免れないと、こう言われたわけでございますから、安易に借りかえを行うことは大臣もお考えになっていない。としますと、問題は増税しか道が残されていないということに必然的に結びついていくわけです。  大臣は、この問題について質問いたしますと、絶えずこれは国民の選択に帰する問題であると、こう逃げておられるわけです。いま予算審議のときであり、かつ各種選挙が迫っておるときですから、なかなか言いにくいんだろうとは思うんでございますけれども、私はそれでは政治家としての見識が疑われるのではないだろうか。財政の最高責任者である大臣が、この要調整額に対してどういう手法をもって解決していくのか、そのあり方をまず示し、その示された大臣の見解が一つの火種になって国民的な合意というものが形成されていく、それが私は大蔵大臣としての、つらいではあろうけれども、責務ではないかとすら思うわけです。大臣いかがですか。
  97. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私はたびたび国民の合意と選択という言葉を使っておりますが、私は現行の制度、施策は、積み上げられた国民の合意と選択の集積がまさにそれであるというふうに思っております。  そこで、この要調整額をどうするが。平たく言えば三つの方法がございましょう。それは歳出カットあるいは負担増あるいは公債の増発、こういうこと、あるいは借りかえも含むそういう問題になっていくんでございましょう。しかし、私は、その際、まずこの歳出カットというものについて、臨調で言う糧道を断ってこれに対応しろという哲学を踏まえながらそれに対して真剣な検討作業を進める中で、それでもなお現行の施策、制度をそのまま維持するためには、負担者も国民であり、そして受益者も国民であるという点において、初めて負担増の議論というものが俎上に上ってしかるべきものではないか。  私は日本経済全体を見ておりまして、世界の中ですばらしいと言われる。仮に私どもの実感は別として、客観的に見てそう言われる。その原因はどこかといえば、日本国民全体がずば抜けて勤勉であり賢いからであると思います。したがって、私自身も政治家の一つの物の考え方として、一つ指針を示しておれについてこいという時代ではないではないか。むしろ姿勢を示す中に、国民の側からこのような手法をとるべきだということが浮かび上がってきて、それを酌み取って対応するというのが、これだけ近代化し知識水準の高い日本の国の政治家としてはそれがとるべき道じゃないか。だから三つございますが、しかし、まずこれからやります、そこで国民の理解を得ていくべき問題ではないか。これは私の一つの物の考え方に固執するようでございますが、そんな感じがいたしております。
  98. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間が参りましたので、ただいまの大臣のお考えには同調できません。またその手法について引き続いて質問したいと思いますが、時間は守りたいと思いますので、これで終わります。
  99. 野末陳平

    ○野末陳平君 私は、例によって納税者に身近な問題について質問したいと思うんです。  五十八年度の税調の答申にもありましたけれども、「納税環境の整備等」というところなんですが、「税務行政の効率化を図る観点から、例えば、医療費控除のあり方、年末調整の対象となる給与収入基準額、所得公示の基準額等の見直しについて今後検討する必要がある」というのが答申なんですがね。私はもう検討というよりも、来年は改めるべきだという気が強くしているんですね。そこで、これについて一つ一つきょうは、大臣の決断を迫るというとオーバーですけれども、そんなことで聞いてほしいと思います。  まず、サラリーマンですけれども、年収一千万円の人は年末調整をされないで確定申告をしなけりゃならない。これはずっと常識になっておりますけれども、ここのところ一千万円以上のサラリーマンがふえていると思うんですね。もちろん全体から言えば少ないのは、これはあたりまえですが、このふえ方がいまどうでしょう。最近一千万円以上のサラリーマンで確定申告する人の数、ここ二、三年の推移なども含めて、まず基礎データをちょっと示してほしいのですがね。
  100. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) お答え申し上げます。  年末調整の対象となる給与所得者の数でございますが、五十年に八百万円から一千万円に引き上げられましたが、そのときは全体の給与所得者が三千三十二万人でございましたが、そのうち一千万円超の方が五万五千人、〇・二%でございました。最近に至りまして、五十四年分の所得について申し上げますと、給与所得者の数が三千二百五十三万人、そのうち一千万円超が二十三万五千人で〇・七%、五十五年分につきましては、給与所得者の総数が三千三百三十六万人、そのうち一千万円超の方が二十八万二千人で〇・八%、五十六年分につきましては、給与所得者の数が全体で三千三百六十六万人でございまして、そのうち一千 万円超の方が三十七万五千人で一・一%でございます。
  101. 野末陳平

    ○野末陳平君 いまのは当然民間のサラリーマンですね。そうすると、国家公務員、地方公務員なども含めますと、もうちょっと数は当然上がるということで理解してよろしいですか。
  102. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) ただいま申し上げましたのは民間給与実態調査による数字でございますので、おっしゃるようにふえるかと思います。
  103. 野末陳平

    ○野末陳平君 いまの数字でも、ここのところ、前年に比べれば、確定申告をするケースがふえているわけですね。  そこでお聞きするんですが、昭和五十年に年収一千万円という限度が決まった、変わったんですけれども、その一千万円の根拠。その前は八百万円だったけれども、いまこの一千万のラインが妥当かどうかちょっと疑問なんで、とりあえず線引きしたその根拠を言ってください。
  104. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 実は、この制度は四十二年にできたわけでございますけれども考え方は、一定の所得以上の給与所得者は、給与所得以外に何がしかのほかの所得もお持ちだろう。そういたしますと、年末調整をしても結局確定申告に来てもらわなければならないということになりますので、一定の高額の給与所得者については、源泉徴収義務者の事務負担の軽減という観点も踏まえまして年末調整をしない、したがって確定申告をしていただきたいと、こういう制度になっておるわけでございます。  五十年当時、仰せのとおり八百万から一千万に引き上げました。当時の数は、いま国税庁から御説明申し上げましたように、総体で五万五千人ぐらいの水準でございますので、税率構造等から見まして、一千万ぐらいで線を引くということでございまして、厳密な根拠ということはなかったんだろうと思います。したがいまして、いま野末委員の御提起の問題も、その後の給与所得者の名目所得水準はどんどん上がってまいっておりますし、同時にその数が、五、六年たちますと、その一千万円超の人の数が当時より七倍ぐらいにふえているわけでございますから、税務署の方も確定申告時に非常に事務負担にもなるということでございます。  ただ、これは逆に言いますと、源泉徴収義務者の事務負担の軽減にも役立っておりますので、その辺のバランスをどう考えるかということでございますが、これはかなりの長期間ほうってあるわけでございますので、機会を見まして、近い機会にもう一遍洗い直して見直すべき問題であろうというふうに私どもも率直に考えております。
  105. 野末陳平

    ○野末陳平君 何しろ八年間ずっとこの一千万円のラインが据え置かれているがかなり情勢が変わった。いま主税局長は、税務署の負担も軽くなるが、逆に言えば源泉徴収義務者の方の負担はきつくなるかもしれないしと。  だけれども、もう一つ、給与収入以外にほかから、内職というわけじゃないけれども、ほかの副収入もあるなんという人も、それはいることはいるでしょうが、しかし現実にはほかは何もなくて給与収入だけで、年末調整でしてくれりゃいいものを、わざわざ税務署へ忙しいのに行かなきゃならないという人もかなりの数いるんですね。そういうデータというのはないわけですよ。そうすると、これがないからその辺の断定はできないまでも、この手間もまた大変なんですね。そうすると、だれにここで少しがまんしてもらうかということになると、やっぱり年末調整でひとつやってもらった方がいいんじゃないかとも私は思うわけですね。  そこで、率直に言いまして、これはもう一千万を一千五百万円ぐらいまで思い切って引き上げるべきだというふうにして、サラリーマンの申告へ行く手間も省く、同時に税務署の方の手間も省くということが一番いま望ましいんじゃないかと、こう思うんですよ。  で、これからまたお聞きするんですが、年収一千五百万以上の給与所得者のみが確定申告に行くんだということにした場合にはどのくらいの数がいるのか、いまとどのくらいの税務署の事務量が減るのか、その辺の見当がつかないんですが、そこはどうですか。
  106. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 五十六年分について申し上げますと、一千万円以上の給与所得者の数が、先ほど申し上げましたように三十七万五千人でございまして、全体の給与所得者の一・一%でございます。  それで、五十六年分につきまして仮に一千五百万円に引き上げられたとすれば、一千五百万円以上の給与所得者の数は、五十六年分について見ますと八万二千人でございまして、全体の〇・二%ということになるわけでございます。  したがいまして、この確定申告の件数が約三十万件ぐらい減少するというような数字になります。この申告件数の減少というのが所得税事務全般に影響を及ぼすことになりますので、これによって削減する事務量を正確に見積もることはなかなか困難でございますが、概算で約八千人日程度の事務量の削減になるのではないかというふうに推測いたしております。
  107. 野末陳平

    ○野末陳平君 いま興味ある数字が出たのは、千五百万円以上の給与所得者の数というのは全体から言うと〇・二%ぐらい。これはいみじくも五十年に八百万から一千万に引き上げたときとほぼ同じわけでしょうね。ですから何か妥当じゃないかという気もするんですね。  いまの八千人日ですけれども、結果的には、この引き上げが実現すれば、税務署の事務量というのは四分の一か五分の一ぐらいになっちゃうわけですね。そこまではならないですか、この部分に関して。でも、かなり軽減になるだろうと思います。  サラリーマンは、これからますます一千万円以上という人がふえていくわけですから、これは大臣、来年は、私は千五百万というラインがいいと思いますけれども、絶対に改めるべきだと思うんですが、御所見はいかがですか。
  108. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いまも御答弁申し上げておりますように、御意見を体した検討の時期には私も来ているというふうに思っておりますが、何分非力な大蔵大臣でございますから、来年からやりますという明言をするだけの立場にはございませんが、よく理解はしております。
  109. 野末陳平

    ○野末陳平君 やった方がサラリーマンが喜んで、少しは自民党も人気が上がるんじゃないですか。サラリーマンのことをどこの政党が考えるかということになると、非常にあいまいで、別にサラリーマンの味方をするばかりが能じゃないけれども、やはり相当に確定申告に行く手間はきついですよ。  二番目に、高額所得者のいまの公示の制度ですけれども、所得公示の基準額の見直しの問題です。これも所得一千万円以上が公示される。もうこれはおかしい。おかしいというか、実情に合わなくなっていると思うんです。  ただ、これは何のためにこういう制度があるかということもいろいろ考えなければなりませんから、軽々に結論は出せませんが、とりあえずここ数年間の公示されている納税者の数、これを正確に知りたいと思うんですね。一番最近は五十六年までわかっているんですか。ここ数年間の推移、どのくらいの数、合計でいいですからお示しください。
  110. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 公示の所得基準額は四十五年分から一千万円超になっておりますが、その当時は一千万円超の公示対象人員が七万八千人でございまして、全体の納税人員の一・七%でございました。    〔委員長退席理事増岡康治着席〕 最近、五十四年分につきましては、公示対象人員は三十三万七千人でございまして、納税人員の五・九%、五十五年分につきましては、公示対象人員が三十八万四千人弱でございまして、納税人員の六・五%、五十六年分につきましては四十万七千人弱でございまして、全体の納税人員の六・六%になっております。
  111. 野末陳平

    ○野末陳平君 これも着実にふえている。  公示所得の基準額が一千万円になったのが四十五年ということでしたね。いまはもう五十八年ですから、十三年たっていて、これが据え置きになっているということもそろそろ見直しの時期だということだろうと思うんです、税調の答申などはね。  そこでお聞きしますけれども、この公示制度が何のためにあるかという淵源はいろいろと調べてわかっているんですが、果たしてこの現在の時点で公示制度というのはどういう目的でどういう機能を果たしているか、これについての認識はどうですか。
  112. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これは野末委員十分御承知のことと思いますけれども、この制度の前身は、戦後の第三者通報制度というのがございまして、これは日本の風土に合わないということで、シャウプ税制でこの公示制度というのができたわけでございますが、考え方は、申告納税制度のもとにおきまして、一定の高額の所得者の申告状況を公開して、きちんとした申告を身につけるということを間接的にこういう制度でもって促進するというのが、制度の目的というふうに説明されておるわけでございますが、実は政府税調の中でもこの公示制度についていろいろ議論がございます。  ただ、シャウプ税制以来この制度はそれなりに日本の申告納税制度のもとに定着してまいりましたし、毎年シーズンになりますと、特にマスコミの方が非常に珍重されましていろいろ報道されて、世の中の人も非常に関心を持って見ておるということでございますから、それはそれなりに制度として定着をしておると思うわけでございます。  ただ、いまの一千万という限度はかなり以前に設定されたものでございますし、実際税務署の現場へ行ってまいりますと、都市の税務署なんか大変な分量になっておりますので、そういった税務署の事務量のことも考えなければいけませんけれども、片やそういう制度のそれなりの意味というものもございますし、いずれにいたしましても、いま申告納税制度部会等でもいろいろ勉強もしていただいておりますので、そういう中でこの制度を改めて問い直していただくというふうなことも作業していただかなければならないと思いますが、今後の問題につきましては、いろんな方面の意見も聞きながら、どういう方向に持っていったらいいのか今後の検討課題であろうと考えております。
  113. 野末陳平

    ○野末陳平君 公示制度そのもの役割りはわかるし、これをもちろん問い直すと言っても、なくすとか、そんなことは考えておりません。ただ欠陥もあるようで、脱税なんかで更正決定を受けた場合にはそれは載らないんでしょう、結論としてはね。となると、その後修正する場合もあるでしょうが、更正決定を受けているようなのが結果的に載らないという不備もあるだろうし、問題はいろいろあると思うんです。ただきょうは、この限度額を一千万はもうちょっとおかしいので、二千万円に引き上げるというぐらいの大胆な改正をしてほしいと思うんですよ。もちろん、こうなった場合のいろいろな問題点も質問していきたいんですが、とりあえずこれから二千万円に公示の所得ラインを持っていった場合の人数はどう変わっていくと思われますか。
  114. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 五十六年分につきまして、先ほど申し上げましたように、現在の一千万円超でございますと、四十万七千人弱でございまして、全体の納税人員の六・六%でございますが、これを仮に二千万円超の方を公示するというふうにいたしますと、公示の対象人員が十二万九千人でございまして、納税人員の約二・一%程度になるというふうに計算しております。
  115. 野末陳平

    ○野末陳平君 その場合に、二千万というラインが妥当かどうかは意見の分かれるところでしょうが、何かこの限度額の引き上げということによるマイナス点といいますかね、デメリットのようなものはどうですか、これは何か考えられますか。
  116. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) いまの公示制度の沿革なり考え方につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますので、高額の所得者の所得を公示するというのが制度本来の目的でございますが、ただその一千万という限度がかなり前に設定されておるということも私どもは念頭に置かなければならないと考えております。したがいまして、一千万を二千万に上げること自体、非常に厳密な理屈というのは私どもはそれなりに見つけることはむずかしいと思いますけれども、常識的に世の中の移り変わりをよく考えてみた場合に、いま二千万に引き上げることによって公示される方の数が非常に減るわけでございますけれども、それはそれなりに許容される問題であるのかどうかという、そこは判断の問題になるのではないかと考えております。    〔理事増岡康治退席委員長着席
  117. 野末陳平

    ○野末陳平君 私は友達にこれを言ったら、こうですよ。うん、政治家みんな載っからなくなるんじゃないかと、こうくるわけです。  そこで、これがデメリットかどうか、そんなことじゃないんですが、一千万という高額所得者のラインを二千万に引き上げることは、世論の中にはいろいろな何か抵抗があるかもしれないんですが、こうも考えられるんですね。たとえば政治家はいまでも所得一千万以下で載らないというのが新聞記事になる。二千万になれば、今度はまた載らないということで、やはり結果的には載ったと同じ意味合いが出てくるだろうと思うんですね。ですから、事務量の軽減、税務行政の効率化を図る観点だけで言うわけではないんですが、二千万にしたらそれなりにまた別の受け取られ方をいろいろするので、結果的にこの公示制度が機能するだろうと、こういうふうに思うんですが、大臣、ここでいかがでしょうか、引き上げを来年あたりやってほしいなという気がするんですがね。
  118. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も同じような意見を聞いたことがあります。一千万円以上というと事務量も大変じゃないか、だから二千万円にしたらどうだ。そうすると君たち皆載らなくなるな、こういう話でありました。私自身見ましても、そう言われてみればと思ってそのとき感じましたのは、大臣をしておるときは兼職禁止になりますから、私は二千万以下になります。大臣をやめますと、その他の収入、兼職禁止が解かれますから、二千万以上になります。そういう自分を中心にして考えちゃいかぬことでございますけれども、そんなに出たり入ったりするのもおかしいから、やっぱりいまのままでもいいんじゃないかなと、そのときは瞬間的にそう思ったんですがね。  しかし私も、これはあちこちで話を聞きますし、事務の効率化、そういう問題から検討すべき課題であろう。これはかなり税調の部会等でも検討をされるであろうというある種の期待感も持っております。
  119. 野末陳平

    ○野末陳平君 私の個人的考えはこうなんですよ。いまの一千万だと、載った載ったということで話題になるかもしれないけれども、政治家の場合は載らないことでおかしいと言われるわけですよ。今度二千万にした場合に、載る人よりも載らない政治家の方が多いでしょう。別に政治家のために考えているわけじゃないですよ。だけれども、載らない人が多ければ、多いことが山つの批判になるのか、あるいは話題になるのかしりませんが、引き上げたことによって何かおかしな意味合いにとられることないと思うんですね。  だから、これは大胆に二千万円のところまで引き上げて、そしてむしろ税務署の事務量の軽減ということを考えるのが本筋で、この公示制度の目的、第三者の目にかなりの高額所得者がこれこれだということを触れさせる、この意味合いは失われないと思うんですね、二千万円に引き上げても。  で、簡単に大ざっぱですけれども、どのくらい事務量が減るか、税務署の数で割ってみたら、一税務署当たり平均で八百人ぐらいになるらしいんです。さっき当局の話にもありましたとおり、集中する税務署もありますから、これはぐっと公示の人数が減ることが最終的には一種の行政改革につながるとは言いませんけれども、税務署の人数が足りない現状で、もっと有効な仕事に振り向けるというのが筋じゃないかと思うわけですよ。まあ大臣の御意見はわかりましたけれども、ひとつ主税局長からも答えてください。
  120. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これは先ほど大臣お答えになりましたとおりでございまして、当面の検討すべき課題として取り組まなければならないと考えております。
  121. 野末陳平

    ○野末陳平君 次は、この税調答申の医療費控除のあり方ですが、これは私もずいぶんいろいろ宣伝もしたりした結果、普及したのはいいんですが、いよいよ現在においては問題点も出てきているんで、これについても質問したいですけれども、ちょっと長くなるんで、持ち時間の関係で別のことに変えますので、医療費控除、自営業その他の記帳義務の問題とか、サラリーマンの必要経費の問題とかはあしたやります。  そこで、残り時間少ないから簡単に、私の提案をどう受けとめられるか。これは金(きん)の問題、金貨ですね。わが国も金貨を発行することを検討してもいいときに来たんじゃないか、こういうようなことなんです。恐らく大臣などは全く歯牙にもかけないということなのかしりませんが、まあ聞いてほしいと思うんですね。  金(きん)そのものよりも金貨に対してかなり大衆の関心が高まり人気も集まっている。わが国の金貨というのは、明治時代の古いもので、いまや骨とう価値ですから、一般の人はとうてい買えません。一般の人が買うのは、新聞などにもしょっちゅう記事になるような南アフリカのクルーガーランド金貨とかカナダのメープルリーフ、それから中国のパンダの金貨で、それなりに日本の人が買っている。日本で金貨を発行するとすると、当然現行法じゃ無理なわけですけれども、金貨発行を考える場合にどういう法律があってどうなっているかと調べたわけですよ、聞いて。そうしたら簡単にはできないわけですけれども、貨幣法とか臨時通貨法ですか、いろんなものがあって、現行法の範囲ではできないと。これはできなくていいわけです。ですから、こういうものを今後改めても金貨を出すべきかどうかということを考えたいわけですね。  そこで、どうでしょうか、いまの法律のどこを改めれば金貨は発行できるようになるんですか。余り具体的なことじゃなくて、何法ということで結構でございます。
  122. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) その前に何のために出すかという問題があろうかと思うんですが、二つありまして、一つは日常の決済手段なり取引手段として高額のコインが要るのか要らないのか。この観点で見ますと、現在日銀券と補助貨がございまして、国民の日常生活にはほとんど迷惑をかけていない。  そうすると二番目の問題として、いま御指摘のカナダとか南アフリカとか中国とか金貨を出しているではないか。これは金貨ではなくて、どちらかというとメダルといいますか、あるいは地金型金貨というんでございます。どこが違うかというと、券面額と実質の価格との間に差が出るわけでございます。そういうものを何のために必要とするのか。一つは、世に言われております国民の金選好があってメープル金貨なりクルーガー金貨を買っているじゃないか、それなら日本だって造幣局がそういうものを出したらどうだというような御議論になろうかと思うわけです。  一番目の方のグループでございますと必要がない。二番目の方で必要があると仮にした場合に、しからばどの法律を直すかという、そういう御質問かと思うのですが、二番目の方でございますと、いまの券面額と実際に売る金との差額がどうしても出るのか出ないのか。たとえば四分の一オンスのやつに三万円とか二万円の券面額を打つのか打たないのか。それによってもどこをどう直すかというのが変わってくるわけでございますが、貨幣法でいま御指摘のように五円と十円と二十円の金貨は現に生きているわけでございます。だから実質価値が三万円、二万円するものを、五円、十円、二十円で売るのかどうか。券面額をそのままにしておくのかどうか。  そういうような前提条件の置き方によりまして、どの法律をどういじるかという問題になりますが、現在補助貨を発行しております臨時通貨法では金貨は出ない。貨幣法であれば、いま言いましたように券面額を五円、十円、二十円で出すならそのままでいけるわけでございます。  その場合に、さらに細かく言いますと、流通しない金貨という考え方をとっている国もあるわけです。五円の券面額でも実際には三万円や二万円で売ってもいいんだという法律構成をしている国があります。日本の場合、それは一体どういうふうに考えるのかというような問題もございます。  さらに、実質論といたしまして、一九八〇年以降金貨を出した国を見ますと、御指摘のカナダが二回出しておりますが、それから中国、それから南アフリカというように産金国が多いわけでございます。券面額と実質価値を一致させない場合にはえらい損をするわけでございます。妙な言い方ですが、二十円のものをつくるのに三万円のコストがかかる。だからそこらを一体どう考えたらいいのか。いろんなそういう前提によって法律のどこをどう直すかというのは変わってまいる問題だろうと思います。
  123. 野末陳平

    ○野末陳平君 むずかしそうだというのはよくわかっていますけれども、私の言うのはいまの地金型で、そんな額面どおりの現実に合わないようなことを考えられるはずがないわけですから、地金型のメダル金貨でもいいわけですね。要するに、そういうものが出れば国民に喜ばれるであろう、しかもそれがある意味の資産形成にも役立つであろう、そういう時代にもう入っているんだということで考えを聞いていただいているわけです。  それで、何のためにと言えば、それはいろんな目的があっても、発行する国としては、これはもうからなければ意味がないわけです。もうかるという言い方というのか、中国などは外貨獲得のためにやっているし、それからカナダや南アフリカは付加価値をつけて、そこでやっているわけでしょう。ですから日本の場合、財源難の解消にはとうてい役に立ちませんけれども、そういうことを考えてもいいんじゃないかと、そういうふうに思ってちょっと御意見を聞いてみたわけなんです。  そこで大臣、これはむずかしいという話で、私はやれというんじゃないんです。しかしわが国が金貨を発行して悪いとは思えないし、それなりの意味があるんではないか。ただし、積極的な意味というのはなかなか見つけにくいわけなんですね。だけども検討することは時代的な要請ではないかなと私個人はそういうふうに思っているわけです。  たまたま衆議院大蔵委員会の造幣特会のときの附帯決議を見ましたら、記念貨の発行については弾力的にとか書いてある。この意味はもちろん詳しく知りませんが、記念貨を発行するときに無額面の金貨を出すなんということも今後考えてもいいんではないかと、そういう広い意味を含めてお聞きしたかったわけです。大臣に、どっちみち興味がないようなお顔ですけれども、お聞きしておきたいと思います。
  124. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 記念コインの場合の議論はありましたが、いま初めて聞きまして、金メダルなら民間の業者もつくっておるし、それとまた競合することにもなるのかなあ、あるいはそもそもが産金国でないから、そういう資産として考えたら、輸入等で事足りるのかなあ、なかなかむずかしい問題だなあという感じを素直に申し上げます。
  125. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) これをもって、昭和五十八年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算中、大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  126. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後二時まで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ─────・─────    午後二時二分開会
  127. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、近藤忠孝君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。     ─────────────
  128. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 租税特別措置法の一部を改正する法律案製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  三案の趣旨説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  129. 鈴木和美

    鈴木和美君 私はただいまからたばこに関しての質疑を行いたいと思います。  最初に竹下大蔵大臣に、いつも専売公社のいろんな事業や要請に関して温かい御配慮をいただいていることに対して感謝を申し上げたいと存じます。同時に専売公社の幹部の皆さんにも、大変な時代を迎えまして、これから先行きのことを考えて大変心配な点がたくさんあると思いますが、日常の御精勤に対して敬意を表しておきたいと思います。  私、専売公社出身の議員ですが、正式にたばこの問題を議題として取り上げるのは今回初めてなんです。いままでは、どっちかというと、関連質問みたいなことで、本格的な論争というのをしたことはないんですが、大変心配な点が多くあるものですから、きょうは多少時間がかかるかもしれませんけれども、いろんな点について見解を述べながら意向をただしたいと思うんです。  まず最初に、昨日与党の質問として鳩山威一郎先生が御質問なさっておりましたが、私の理解としては、問題を取り上げられたのが、購入価格の問題のディスカウント問題と、それから円建てドル建てどっちがいいんだという問題のように承ったんですが、与党質問の鳩山さんの御意見というのに対して、専売公社はどういうふうにあの意見を認識されているのか、まずお尋ねしたいと思うんです。
  130. 長岡實

    説明員長岡實君) 昨日の鳩山委員の御質問のポイントは、いま鈴木委員のおっしゃった二点であろうと存じます。  第一点目の購入価格の問題でございますが、現在のところ、まだはっきりはいたしておりませんが、アメリカは関税率の引き下げ分をフルに日本の国内における価格の引き下げに反映させたいという意向を強く持っておるようでございまして、そういう観点から、五十七年度の対日輸出価格と申しますか、私どもの輸入価格そのままで据え置くのではないかというような、感触程度でございますけれども得ております。  問題は、その価格が不当に安い価格であるかどうかという問題でございます。標準輸出価格よりも低いことは事実でございますけれども、これがほかの国に対してどのくらいの価格でアメリカ輸出しているかといったような詳細な資料を、なかなか私ども入手し得ないわけでございます。そういった意味で、いわゆるダンピングと申しますか、不当に安い価格であるという判定はなかなかむずかしいというのが現状でございます。  それから、鳩山委員も御質問の中で触れておられますけれども、来年度以降においてそういう価格を是正する意思があるかないかという点でございますが、私ども輸出先でありますアメリカの意向を十分に酌み取りまして、大いにお互いに事務的に詰めて来年度以降の価格を決めていくという態度でございまして、安ければ安いほどいいとか、そういう片寄った考え方は持っておりません。  第二点のドル建てか円建てかという問題でございますが、これは現在円建てになっておるわけでございますけれども、ただ、わが国がたばこを輸入しております国はたくさんございまして、銘柄も非常にたくさんございますが、その中で相手国がドル建てを希望しているものについては、ドル建てで契約をしているものも現在あるわけでございます。そういった意味で、この問題につきましても、今後の相手方の要望等を十分に踏まえまして、当事者双方において協議をして決めていきたいというふうに考えております。
  131. 鈴木和美

    鈴木和美君 なぜ私がそのことを質問したかというと、受け取り方はいろいろあると思いますけれども、私の昨日の受け取り方としては、自由貿易ですから、それぞれ均衡した貿易をやることは必要だと思うのですが、何かアメリカとの関係だけで、つまり民族産業である日本のたばこというものに対しては、逆に今度はむしろしわ寄せされていくみたいな傾向が強いというように、昨日の質問を私はそうとったんです。それが与党の質問かなと多少奇異に感じたものですからいま御質問したわけです。  さて、本論に入らしていただきますが、今回のたばこの値上げの問題に絡みまして、原則的なことですが、昭和五十五年三月三十一日に専売納付金率法定制度というものが導入されたと思うのです。そこで、その導入された沿革とその理由について明らかにしてほしいと思うのです。つまり専売納付金制度ではなぜまずかったのか、その運営上の批判点と、その時期に改正を行わなければならなかった理由などについてまずお伺いしたいと思うのです。
  132. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 五十五年に公社法が改正になったんでございますが、それ以前の専売納付金制度につきまして若干申し上げますと、昭和四十三年に実は定価改定があったわけでございます。それを契機といたしまして、専売納付金制度にかえて消費税制度というようなものを導入するかどうかというようなことが大変議論になったのでございますけれども、いろいろ私どもも勉強し、また関係のところと議論したわけでございますけれども、なかなか煮詰まりませんでした。その後、公社の方といたしましても、いろいろ勉強いたしまして、昭和四十六年から大蔵省と公社の間で、納付金制度に関しまして本格的な制度改善に至るまでの、いわばテストと申しますか、試行として覚書方式というのをとっていた時代がございます。  一種納付金、二種納付金というようなことを想定してやっておったわけでございますけれども、ただ、覚書方式と申しましても、これは根本的には法律を改正しない段階でございますものですから、専売納付金制度そのものとしては、公社の総利益から総損失を控除した額、それからさらに公社が必要な内部留保を引いたものを国庫に納付する。いわば利益処分というかっこうで納付するという形には変わりがなかったわけでございます。  そういたしました場合に、大体三つほど問題が生じたというふうに当時議論されました。一つは、その製造たばこの小売定価が定価法によって法定されているということもございまして、コストの上昇があれば、だんだん専売納付金にしわ寄せされまして、いわば意図せざる実質的減収と申しましょうか、そういうものが生じまして、安定的に財政収入を確保することがむずかしいという問題が一つございました。  それから専売納付金が公社の利益から納付するということになっておりますために、幾らもうけても全部納付金の方で納付する。逆にまた利益が減ってもその分だけ納付金を減らせばいいというような考え方になってくるわけでございまして、その結果公社の経営責任が必ずしもはっきりしないじゃないかという議論もございました。  それから三番目の議論といたしまして、その製造たばこの定価に占めます納付金部分、税相当分でございますけれども、それが利益によって年々動く、変動するということがございまして、結局 消費者がどの程度に税相当分を負担しているかということがなかなかわからない、明確性がないということ。それから定価改定に際しまして、コストの上昇による定価改定なのか、あるいはまた財政収入を増加させるために税相当分を変えるということなのか、そういう点がどうもはっきりしない。こういう明確性の問題がございます。  そういう三つの問題を踏まえまして、そういう三つの問題を解消するということで納付金率の法定化を行ったと、こういうことでございます。
  133. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまの御説明はこういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。私もそうだと思うんですが、まず一つ財政収入が安定的に確保できない、納付金制度では。二つ目には、経営責任が不明確となって経営方針や合理的な価格決定方式を確立しにくいこと、つまり企業性が発揮されにくいというような問題。もう一つは、消費者、国民にとっても税負担分が明確にされないために定価改定の理由がわかりにくい。それから四番目には、輸入製造たばこについても議論があったと思うんです。当時、税相当分、価格決定の不透明さが外国から指摘されておるというようなことで、従来の納付金制度ではどうも納付金の部分と原価の部分とが不明確だというようなことで納付金率の法定制度ができ上がったと、こういうふうに理解していいですか。
  134. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 私の説明以外に、いま外国から指摘があったという点まできちんと御指摘がありまして、大変恐縮しているわけでございますが、そのとおりでございます。
  135. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つ、原則的なことですが、なぜそのときに納付金率法定制度ということをとらなきゃならなかったんですか。消費税制度では何でだめだったんですか。
  136. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 消費税制度というものも納付金率法制度というものも、ある意味で似ているところがあるわけでございますが、納付金率法定制度の方が公社制度によりなじむのではないかということが一つ考えられたわけでございます。  そういうよりなじむということが議論のいわば中心になったと思われますが、各種の審議会の御答申も消費税制度ではなく、納付金率の法定の方がいいのではないかと、こういう御答申が出されたものでございますから、そういう経緯を踏まえまして納付金率法定という方を選んだと、こういうことでございます。
  137. 鈴木和美

    鈴木和美君 税とコストというものを明確にするという意味では消費税制度の方がより鮮明なはずですね。ところが、なぜその納付金率法定制度をとったかということは、いまお話の中では、公社制度になじむという面からこちらを選択したというお話ですが、公社制度になじむということは一体どういうことですか。
  138. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 非常にいわく言いがたい面もあるわけでございますけれども一つ言えますことは、納税義務者が専売公社だけであるということでございまして、消費税にしなければならないという非常に積極的な理由がない。もちろん、たばこ消費税制度を公社制度の上に導入するということも不可能ではないということでございますけれども、単一の納税義務者しかないということから納付金制度の方が一口で言えばなじむというふうに考えられたということでございます。
  139. 鈴木和美

    鈴木和美君 消費税制度をとるということは、税金を納めさえすればいいんですから、後は自分で自由に経営をやれるというメリットというものもあるわけですね。しかし当時の議論は、なぜ法定制度をとったかということは、もう一つ大きなファクターとして、消費税制度をとるということは、専売制度、公社制度の抜本的な経営上の変革、つまり民営化というか、そういうことを志向するようになるんじゃないんだろうか。当時、制度議論も大変華やかにやられていたときです。だから、そういう意味でどうも専売公社も、多くの国民も、私もそう思うんですが、民営よりは公社制度の方が多くの国民の期待にこたえられるということを考えていたから、消費税制度をとらなくて納付金率法定化制度をとったんじゃないんですか。そういう考えは当時なかったですか。私はあったと思うんです。
  140. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 確かに、いま御指摘のような議論があったことは事実でございますけれども、とことん詰めてまいりますと、制度的な問題といたしましては、先ほどお答え申し上げましたように、たばこ消費税制度と公社制度が相入れないものではないということが制度的には考えられたわけでございます。ただ、言われましたように、経営形態の問題というものが、何と申しますか、暗黙のいわば理解として、消費税制度になれば、より民営の方向に近づくのではないかというふうなことを多くの人が考えておったということはおっしゃるとおり事実でございます。
  141. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵省に尋ねますが、いま専売公社が述べられた考え方について、当時納付金率法定制度をとるときに大蔵省がとった考え方は専売公社の考え方と同じですか、違うんですか。
  142. 高倉建

    政府委員(高倉建君) お答え申し上げます。  ただいま公社から御答弁申し上げましたことは、大蔵省としても同じに理解をしているところでございます。
  143. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうしますと、たばこ製造という問題、また葉たばこを含めまして、現在取り扱っている日本専売公社のたばこ事業と言った方がいいでしょうか、たばこ事業については公社制度、専売制度が制度的には一番いいんだということを考えてこの納付金率法定化も考えたというふうに理解していいですか。大蔵省どうですか。
  144. 高倉建

    政府委員(高倉建君) 五十五年改正当時の判断としてはそうであったろうと思います。ただ、その後いろいろ情勢が変わってきておりますことも、これまた事実であろうかと思っております。
  145. 鈴木和美

    鈴木和美君 五十五年の当時はそういう考え方があったと。いまは違うんですか。
  146. 高倉建

    政府委員(高倉建君) 違うと申し上げるのはちょっと語弊があるかもしれませんが、御承知のとおり、臨調その他いろいろ御議論がありまして、具体的な改革の御意見もいただいているわけでございまして、そういうものを踏まえまして、今後どうするのが適当であるかということにつきまして、公社ともどもどもただいま鋭意検討を行っているところでございます。
  147. 鈴木和美

    鈴木和美君 この問題ばっかりやってますと時間がかかりますので次に移らしていただきますが、私は、いまの問題は、当時もいまも、国民の専売公社という意味では、専売制度、公社制度の方がより公共的に多くの国民の期待にこたえられると、私はそう思っておるものですから、いまもその考えは変わっていません。  さて、当時納付金率の法定化を行うときに、納付金の率と水準、おおむね五五・五%ということになってますが、この率をはじき出した理由というのはどこから来ているんですか。
  148. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 納付金率の水準をどうはじくかという問題は、一つ財政収入をどのくらいにするかということで、一つは専売公社の方の内部留保をどのようにするかということとのいわば関連で決まってくるわけでございます。  公社といたしまして、当時財政当局といろいろ議論したわけでございますけれども、もちろん過去の納付金率の水準というものも一つにらみました。それからもう一つは、平年度におきまして、国に対する専売納付金と地方たばこ消費税とが大体バランスするということも必要ではないかと、こう考えたわけでございます。  地方たばこ消費税というのは税率は二八・四%でございますが、あれは前年度の単価を基準にしておりますものですから、当年度ベースに引き直しますと、大体二八%になるわけでございます。二八%が地方分、それとバランスするということで、国の分を考えますと、その二倍の五六%ということになるわけでございますが、先ほども少し議論に出たわけでございますけれども、輸入たばこに対しまして新たに関税を納付するという問題が出たわけでございます。  その分は国に入るわけでございますけれども、専売公社としては、輸入たばこに対する関税の分 というのは別途納付するものですから、納付金率としてはその分を差し引いていただくということにいたしまして、その関税相当分を大体定価代金の〇・五%程度というふうに見まして、先ほど申しました五六%から〇・五%を引きまして五五・五%というふうに設定した、こういう経緯でございます。
  149. 鈴木和美

    鈴木和美君 当時この率をめぐって、大蔵省と専売公社との間に大変血なまぐさい争いがあったように私は承知しているんですが、専売公社の当初の言い分は何%と主張したんですか、大蔵省は当時何%と主張しましたか。
  150. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) これは交渉の経緯を一々申し上げるのが適当かどうか問題でございますが、私、実際に交渉に当たった者でございますからその感じだけを申し上げさせていただきますと、どちらもある程度落ちというのをにらんでおったかと思いますけれども、私どもは決まった率よりも多少低目の線を打ち出し、それから財政当局の方は決まった線よりも高目の線で交渉をしたというのが実態でございまして、結局のところ、そのほぼ中間をとって五五・五%という数字が決まったと、このように御理解いただきたいと思います。
  151. 鈴木和美

    鈴木和美君 つまりいまのお話は、双方が駆け引き、取引で、確固たる数字もなく、お互いにやりとりやって、にらんで五五・五%が決まったと、こういうふうに理解していいですか。
  152. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 中をとるというのは、単純に理屈なしに中をとったということではございませんで、私どもの将来の益金率というようなものを考えますと、ほぼ六〇%程度というものが考えられまして、それからだんだん六〇%というものが五六%、実際には関税を納めますから五六%ですが、その差が四%あるわけでございます。その四%というものがコストの上昇によってだんだん減っていくだろう、四、三、二、一とだんだん減っていくであろう。五年間たつと大体ゼロになるだろう。そうなったときには、あのときお願いしておりました法定制の緩和という制度がございますが、そのときにはそこで定価改定をお願いするということがございまして、そうしますと四、三、二、一の平均的なものは大体二%でございますから、その二%ぐらいの内部留保を五年間ぐらいにわたって私どもの方で確保すれば、ほぼ内部留保としては足りるのではないか。こういうことも考えていろいろ議論を進めたわけでございまして、ただ単純に両者の中をとって、足して二で割って真ん中にしたということではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  153. 鈴木和美

    鈴木和美君 なぜ私がそのことを問題にするかということは、今回の二千億に及ぶお金の調達について、当時の議論からすると、非常に異例であるということを言わんがためなんです。当時、いまお話しのように、覚書方式のときには、第一種納付金として五三%、第二種納付金として、つまり法人税に相当する部分として残りの三七・五%ですね、そういう覚書方式をとってきている中で、本格的な納付金率を決めるときには、専売公社は少なくとも、先ほどお話がございましたように、内部留保の問題を含めながら、それから十年間ぐらいの実績といいますか、そういうものをにらみながら、当時私の記憶では五五・二%だったと思うのですが、その五五・二%というものは一銭ももうまけられないということで、五五%というのが専売公社が主張した譲れないぎりぎりの線であるということではなかったかと思うんです。  大蔵省の方は、いまお話しのように、地方消費税二八・四%ですから、二八%を国と地方と取り分を五〇%、五〇%と考えれば五六%ですね。だから五六%を主張したということは、これもまたそれなりの主張の仕方はあると思うんですよ。そうして五五%と五六%のぎりぎりの接点が、先ほどお話しのように中をとった五五・五%になった、私はこう記憶しているのです。そのときに、その五五・五%ということは、お互いがぎりぎりに折衝してきた数字であるから、当分の間はこの数字はいじらないということが双方の中に了解があったわけじゃないですか。私はそういうふうに記憶していますが、間違いございますか。
  154. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) いろいろ議論しておりますときに、納付金率というものが、そういう公社制度と申しますか、財政の安定的な収入を考えてつくったということもございますし、一方公社経営の面も考えてつくったということでございますから、私どもはそこのところをいつ変えるとか変えないとか、そういうことを詰めた議論はいたさなかったわけでございますけれども、一遍決めた納付金率というものは軽々に変更されるべきものではないというふうに考えておりました。
  155. 鈴木和美

    鈴木和美君 非常に大切なところですからはっきりしてください。そういう詰めた話はしなかったんですか。ただ専売公社は、この納付金率というものについてそう軽々にいじれるものではないというように自分で判断したということなんですか。そこをはっきりしてくださいよ。
  156. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 当時の法案の中には二つのことがあったわけでございます。一つは納付金率の法定という問題、もう一つは法定制の緩和ということがございました。法定制の緩和というのは、御存じのように、専売公社が赤字になったようなときに、国会の御承認を得ないで、定価法を一々改正しないで、一定の条件のもとに大蔵大臣の認可を得て定価を上げることができるということにするという、そういう法定制の緩和の制度と、この二つのことが同時に提案されたわけでございます。  そういたしまして、法定制の緩和ということが非常に実は大きな議論になったわけでございまして、そういうことを考え合わせますと、この納付金率を動かすというようなことは考えていなかった。大蔵省と特に詰めたということもございませんけれども大蔵省の方も、私が言うのはおかしな話でございますけれども、それを動かすということを当時言っておったということはございませんし、なかなか考えていなかったんじゃないかと、こういうふうに思っております。
  157. 鈴木和美

    鈴木和美君 当時の専売公社の総裁と労働組合との団体交渉の議事録を私はここに持っておるんですが、その説明では、専売公社は五五・五%というものは当分の間動かさないということで大蔵省との間に了解が成立したので、職員についても、これから企業努力部分というのが非常に明確になるから、そこのところをはっきりあなた方に申し上げておくから頭の中に入れておいてくれよというお話があって、当時いろんな議論はあったけれども、そうかということで了解した経緯がありますが、そうすると、あなたのおっしゃっていることは、当時の議事録ではうそを言ったということになりますか。
  158. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 私の言葉が足りないのかもしれませんけれども、一たび決めた納付金率を軽々に動かすべきでないことは当然のことでございまして、そういうことを踏まえて当時の泉前総裁が言われたんだというふうに思います。
  159. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうすると、しつこいようですが、専売公社が自分で軽々にいじれるものではないであろうという判断に立って話をしたということになりますか。そうすると、大蔵省の方とは全然関係なく、専売公社の自主的なというか、勝手というか、専売公社側というか、それだけの判断で当時説明をしたというように理解していいんですか。
  160. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 納付金率を変えますには、当然のことながら法律が必要になるわけでございます。法律を出すということになれば、当然のことながら財政当局と公社との間に議論が行われるわけでございますが、私どもとしては、未来永劫絶対この率は動かすべきものではないということを大蔵省に念を押して言ったわけじゃございませんけれども大蔵省としても、当時納付金率を動かすというようなことは想定していなかったのじゃないかというふうに私どもは見ておりました。
  161. 鈴木和美

    鈴木和美君 二千億の財源を調達するために値上げするわけでしょう。そうすると、五五・五% というものは動かさない、当時大蔵省と専売公社との間にも、暗黙かどうか知りませんけれども、そういうことがあったとすると、今回の措置というものは当時からの約束から見るとおかしいということになりますね。そうなりませんか。  二千億の中に約千二百億と七百億ぐらいですか、今回の違いは。つまり内部留保というか、そこに来るべき金まで持っていかれるわけでしょう。そうすると、五五・五%という数字が動くということですね。そうでしょう。だから、私はそこを言っているんですよ。  専売公社と大蔵省との間には、当時から五五・五%というのは当分の間動かさない——仮に動かすという場合がどういうときかということは後から質問しますが、どういう場合に値上げしなきゃならぬかとか、率を変えようじゃないかというのは、それはそれなりに議論はある。当時そういう約束ではなかったということをはっきりしたいんですよ。だから、今回のこの措置は必ずしも正当ではない、異例特例というか、そういうことの性格であるんだろうということを私ははっきりさせるためにいま聞いているんですよ。いかがですか。
  162. 長岡實

    説明員長岡實君) 納付金率の法定に移行いたしましたときのその理由として、岡島理事が数点挙げて御説明を申し上げましたけれども、そのときの趣旨から申しましても、法定された納付金率をみだりに動かすべきではないという点については、大蔵省と私ども専売公社の間で暗黙の意見の一致を見ておったものと理解をいたしております。  そういう意味におきまして、今回御審議を煩わしておりますたばこの値上げの関係法案の内容につきましては、納付金率そのものは動かさない、一本一円の値上げをお願い申し上げるわけでございますが、その納付金率は従来のままでございまして、それ以外に特別に一本当たり三十四銭公社の取り分となるべきものを財政の収入として上げるという仕組みになっておりまして、これは現下の異常な財政逼迫状態から、何とかしてそれだけの財政収入を上げなければならないという国の事情に対しまして、私どもも、財政専売という事業を国からお預かりいたしております公共企業体としての性格上、やむを得ないものと考えたわけでございます。
  163. 鈴木和美

    鈴木和美君 長岡さんは、大蔵省におられたから、両方心配しながら答弁なさっていると思うんですけれども、専売公社が、今回の国からの上げてくれと言われたことに対して、やむを得ないといういま表現なんですが、率直な気持ちは、私のさっき言った経緯からすると、不満なんじゃないですか。いまここで値上げをしなきゃならぬという理由はないわけでしょう。だから、何で当時の約束からしておかしいと言って反対なさらないのですか。いかがですか。
  164. 長岡實

    説明員長岡實君) 納付金率法定の趣旨から申しますれば、鈴木委員の御指摘のような問題点は確かにございますし、また私どもがたばこ事業を経営するいわゆる企業体としての立場から考えますと、たばこの消費が停滞ぎみのときに値上げを行うということは決して好ましいことではない、でき得るならばしばらく避けていくべきものであるというのが、基本的な私どもの考えではございますけれども、ただ、先ほど申し上げましたように、私どもの仕事は、たばこ事業を円滑に営むことを通じまして財政収入を上げる、国の財政専売事業を委託されておるという立場にもございますので、いろいろと大蔵省との間では議論をいたしましたけれども、最終的にはただいま御審議をお願いいたしておりますような形になったわけでございます。
  165. 鈴木和美

    鈴木和美君 別な観点からお尋ねしますが、現在の納付金率法定化制度を導入してからの公社の事業運営は現在どのような状態になっていますか。五十七年度決算見込みと、五十八年、五十九年度の財務見込み、つまり定価改定をしない場合の事業実績ですね。ちょっと御説明いただけませんか。
  166. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 五十七年度につきまして、決算見込みというのにはちょっとまだ時間が早いので、実行見込みということでお話を申し上げたいと思います。たばこの販売本数につきまして、大体三千百億本ぐらいになるんじゃないかと見込んでおりますけれども、そういう前提でたばこ事業の損益を試算してまいりますと、五十七年度は約八百八十億ぐらいの純益が見込まれております。  それから定価改定をしない場合の五十八年度、五十九年度のたばこ事業損益でございますけれども、これもいろいろ前提を置いて試算をしてみないといかぬわけでございますが、試算をしてみますと、五十八年度は五百五、六十億の黒字、それから五十九年度は二百億円弱のやっぱり黒字になると、こういうふうに見ております。
  167. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうしますと、たばこの値上げという問題を考える場合には、公社の財務上の損失が生じる場合とか、納付金を引き上げるというような場合に、値上げというものが考えられるわけですが、いまの財務状況から見ると、たばこをことしから上げる必要は財務上から言えばないわけですね。そういうふうに理解していいですか。
  168. 長岡實

    説明員長岡實君) お説のとおりでございます。
  169. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵大臣にお尋ねしますが、公社の財務上から見れば今回値上げをする必要がない、そういう財務状況にあるんですが、あえてたばこを値上げするということは、いままで竹下大臣が増税なき財政再建という言葉を用いられて、いろいろな財務見通しについての答弁があったんですが、今回のこの値上げは増税でございましょうか、増税でありませんでしょうか、どちらでしょう。
  170. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今回の定価改定は、公社の経営上の理由ではない、これは私もそのように認識をいたしております。ちょうどいまの鈴木委員の問答を聞いておりまして、またぞろ、五十五年度の制度改正のときの大蔵大臣は私でございまして、当時のことを乏しい知識ながら思い出しておったわけでございますが、増税かとおっしゃいますと、増税ではないが増収ではある、こう言わざるを得ないと思います。
  171. 鈴木和美

    鈴木和美君 いままでの議論の中で、大臣のいまのお話は初めてのように私は伺うんです。つまり制度上、制度があって、それで法律改正をしなくとも税収を上げていくようなものを私たちは増収という感じで定義しておったんで、国民所得の中から少しでも法律改正をするということで増収を見込むということは増税だ、額の少ない多いは別にしても、増税というようにはっきり定義なさるのが至当だと思いますが、いかがでございますか。
  172. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あくまでも私が増収と申しましたのは、いわゆる税の範疇ではないから増収と、こう言っただけでございまして、基本的観念として、委員が御指摘なすっておりますそれは、確かに専売物資でございますので、物価の変動等を勘案して負担の適正化を図るという観点ではございますものの、鈴木委員のお持ちの観念から見た場合、増税によるところの増収に類するものだという認識は私も否定いたしません。
  173. 鈴木和美

    鈴木和美君 そういう意味で私は、基本的に今回の法案については反対という立場をとらざるを得ません。そのことは明確にしておきたいと存じます。  さて、その次の問題ですが、いま議論の中で出てまいっております内部留保という言葉ですが、納付金率法定制度に切りかえる際、利益積立金、つまり内部留保ですが、これについても相当審議があったと思うんです。その際の内部留保金の性格と将来の使途についてどのような審議が行われたのか、明らかにしていただきたいと思います。
  174. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 公社の内部留保金、利益積立金のことでございますけれども、これにはどういう性格があるかというのがそもそも議論のあるところでございますけれども、私どもといたしましては、資本金の一部としての性格を持っている、資本金の一部であるという考え方を持っております。  それから前回の法改正のときにおきまして、欠損の補てん機能というものもあわせ持つということになったわけでございまして、そういう二つの機能をあわせ持っているということでございます。  いまお話しの将来の使途についてということでございますけれども、これは法律上欠損の補てんに充てられるというふうに規定してございまして、またそれ以上のことにつきましては、現行法の中では考えておりませんということでございます。
  175. 鈴木和美

    鈴木和美君 現行の法律の解釈、条文上から言えば、おっしゃったとおりだと思うんです。しかし、この議論を通じて、つまり内部留保としてある程度の額を置くということは、もちろん固定資産に見合うものであるということもわかりますけれども、この内部留保に積み立てたお金というものは、その当時は法律の条文上はなっていませんけれども、将来、専売公社の当事者能力が回復されてその自主性が発揮されるというようなときには、職員についてもこの内部留保からいろいろなものを考えるというような制度に持っていきたい、こういうような議論というものは当時なかったんですか。
  176. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) そういう議論をされた方がおられるというふうには承知いたしておりますけれども、私の知っている限りにおきましては、国会の御議論の中でそういう議論が行われたというふうには承知いたしておりません。
  177. 鈴木和美

    鈴木和美君 専売公社の内部留保金が金額的に非常に多いということがよく指摘されるわけですよ、知らない人からは。なぜあの多額の内部留保を持たなきゃいかぬのかということについて公社の方から明らかにしてほしいと思うんですよ。たばこの在庫も抱えにゃいかぬのですから、そういう意味内部留保の金が高いとか。何か比較検討すると、専売公社だけが内部留保で非常に持っているみたいな感じで、誤解を受けやすいので、そんならあそこから召し上げろというようなことに往々にして議論がなるわけですね。内部留保はなぜ多く持たなきゃならぬのかということについて説明してください。
  178. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 公社の資産は、固定資産のほかに葉たばこを持つわけでございます。葉たばこは実は公社の棚卸し資産の大半、大宗を占めているわけでございますけれども、葉たばこは、その性質上、二年間の在庫期間というのがございます。したがって、大変に固定性が強いということでございまして、それに見合う内部留保をぜひ持ちたいということで、多額の内部留保というふうにしばしば言われるわけでございますけれども、そういう固定資産及び非常に固定性の強い棚卸し資産、葉たばこ資産に見合うものとして公社としては保有していると、こういうことでございます。
  179. 鈴木和美

    鈴木和美君 それではその次に、総裁にお尋ね申し上げますが、これは五十五年三月三十一日、日本専売公社法等の一部を改正する法律が可決成立をしましたときに、これは泉さんですが、泉総裁の所信表明が行われています。その中で特に注目を引くものとして、定価改定後の需要の推移などを見きわめつつ、新たな総合的な計画の策定を進めるとともに、経営の自主性(当事者能力)の発揮、業務の拡大などについても附帯決議の趣旨を尊重し、その方向に向けて検討すると、こういうふうに述べていらっしゃるわけです。  そこで、この総裁の所信表明の検討の結果を明らかにしてほしいと思うんです。
  180. 長岡實

    説明員長岡實君) 経営の自主性の発揮、業務の拡大などにつきましては、五十五年の法改正の際の国会の附帯決議及び昨年の臨調の答申におきましても指摘されており、公社といたしましても、鋭意その方向で努力をいたしております。  具体的に申し上げますれば、五十六年度にたばこ製造技術及び製造設備機械の輸出を促進するため財団法人、これは海外たばこ技術協力協会という法人でございますが、これを設立をいたしておりますが、五十八年度には製造たばこの輸出を推進するための新会社を設立すべく準備を進めております。  当事者能力の拡大及び業務範囲の拡大につきましては、今後たばこ事業の効率的な経営を行う上でも重要な要件と考えておりまして、国会の附帯決議も踏まえまして、今後も関係方面の御理解を得るよう努めてまいりたいと考えております。
  181. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵大臣にここで中間的にお願い申し上げたいんですが、先ほども出てまいりました二千億というお金なんですが、これは先ほど、納付金率法定制度の際の議論などをずっと紹介をしながら、事実経過を明らかにしてまいったんですが、五十八年、五十九年二年間にわたってこういう措置をとるということについては、本当に私は異例の措置だというように思うんですが、私は反対でありますけれども、五十八年、五十九年は異例の措置である、今後は、つまり六十年以降はこういうことはやらないということについて確約ができましょうか。
  182. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も、これは納付金率法定制の基本を変更するものではないとしても、異例の措置であるというふうな理解はいたしております。だから、異例の措置というのは、異例が異例でないようなことになってはならないというふうに理解をしております。
  183. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま大臣からお答えがいただけましたので、私は大蔵委員長にお願いがあるんですが、衆議院で本件についての審議の際に、附帯決議をめぐりまして、異例の措置であるということで、今後はそういうことのないようにやりましょうという附帯決議をつけてほしいということだったんですが、とうとう衆議院の方では附帯決議の中にそれが入っていないというようなことでございますので、いま大臣からも明快な答弁がありましたので、なお附帯決議など考えられるときに、ぜひ委員会としてもその考え方をとってほしいと思います。
  184. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 理事会で協議いたします。
  185. 鈴木和美

    鈴木和美君 それじゃ、当事者能力の問題はもう一度最後に議論さしていただきますが、次は技術的なことでございます。  今回の値上げで紙巻たばこ十本当たり十円、パイプたばこ十グラム当たり十円、葉巻たばこ一本当たり十円とそれぞれ引き上げることとしていますが、その性格と理由についてそれぞれ明らかにしてほしいと思うんです。
  186. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 今回の定価改定の全体としての理由につきましては、ただいまるる御説明を申し上げたところでございますけれども、一本一円という考え方でございますが、たばこ定価改定の全体としての幅につきましては、前回の定価改定のときから、つまり五十五年の四月からでございますが、それからの物価上昇率、大体一〇%見当でございますが、そういうものに見合った引き上げ率にするのが適当ではないかということで、全体として一〇%程度になるような幅を考えたということが一つでございます。一本一円といたしますと、平均単価が九十円弱でございますから、全体として一本一円で十本十円という値上げに落ち着くわけでございます。  それで、一律に一本一円というふうなことにしておる考え方でございますけれども、現在におきましても、下級品の損益状況というものを見てまいりますと、実は下級品の方は赤字でございます。したがいまして、一律に一本一円の値上げをするということの方が、公社も非常に効率的経営を言われているものでございますから、この際そのようにさせていただいた方がいいのではないかということが一つでございます。  もう一つは、現在国際的な関係から、内外製品間の価格差というものが非常に問題になっておるわけでございます。そういたしますと、国内製品について一本一円、それから輸入製品についても一本一円上げるということにいたしますと、つまり同額の引き上げをいたしますと、その価格差が今回の定価改定によって広がることはないという考え方もございまして、一律に一本一円ということで考えたわけでございます。パイプ、シガーも大体同様な考え方でございます。
  187. 鈴木和美

    鈴木和美君 もっともらしい理屈をつけなきゃならぬのでしょうが、早い話は、二千億くれと言うから、二千億に見合うやっつけ仕事でこういうことにしたというように理解していいんじゃないですか。
  188. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 財政当局がどう言ったからということだけでは額が決まるわけではございませんで、恐らく財政当局としては多々ますます弁ずというお立場であることは疑いを入れないわけでございますけれども、値上げをいたします場合には、それなりにその理由が要るわけでございます。いろいろ国民の負担も増すわけでございますから、それに対しましては、物価の上昇というようなことも勘案して決めなければならないということから、いま申し上げたような幅になったということでございます。
  189. 鈴木和美

    鈴木和美君 専売公社の経営上とか財務諸表を見れば、値上げする必要はないんですよ。先ほどのお話しのように、増税というか、増税的増収というか、つまり国は金が足りぬから二千億何とかしてくれや、専売公社、こう言われたわけでしょう。物価とか何とかかんとか言ってみたって、全然数字が合わないじゃないですか。だから専売公社も、国からたばこでとにかく煙に巻いて金を上げると言われたから、上げることにしましたと言った方が、国民に対して素直でわかりやすいことじゃないですか。いかがですか。
  190. 高倉建

    政府委員(高倉建君) 大変厳しい御指摘でございますが、正直に申し上げまして、私ども先生ただいま御指摘のありましたとおり、また大臣からも御答弁がありましたとおり、今回の定価改定がもっぱら財政上の理由であることは、そのとおりであるわけでございます。大変厳しい財政事情の中で、公社としても何とか御協力をお願いしたいということをお願い申し上げたのも、これまた事実であるわけでございますが、正直に申し上げまして、何千億なければならないということでお願いをしたわけではございませんで、当然定価を改定いたすとしますれば、物価の変動等を十分勘案して行わなければならないということは、われわれも重々承知して検討を進めたわけでございまして、その結果が二千億余の増収といいますか、負担の増をお願いするということになったというのが実態でございます。
  191. 鈴木和美

    鈴木和美君 それは平場ですから、そう説明しなければならぬでしょう。私はそれも理解します。しかしもともと四千億から始まった話でしょう。それで専売公社も困っちゃって、二千億に落ちついて、じゃんけんぽんしたのかわかりませんけれども、そんな状態なんであって、つまりこれは余り理屈を言い出すとつじつまが合わなくなると思うんですよ。そういう意味で、私はいまの状況で値上げをする必要がないという見解に立っているだけに、国民に対して、これは増税なんだということをはっきりしてお願いするきりないんじゃないかというのが私の見解です。それだけに専売公社は、これから関税の問題もちょっと議論さしていただきますが、大変な仕事量というか、仕事の質的な苦労が多くなると思うんですね。  そこで、私は数字的にも知らせていただきたいんですが、今回の値上げによる影響というものは、つまりたばこの売れ方と言った方がいいんでしょうか、それと、そういうものが関連企業とか、設備投資とか、労働者などにどういう影響をもたらすのか、この値上げとの関連でお聞きしたいと思うんです。
  192. 長岡實

    説明員長岡實君) 今回の定価改定によりまして、値上げがない場合に比べますと、五十八年度は年間で四十億本程度の販売数量の減少が見込まれております。販売数量の減少に伴いまして、工場では若干の操業度の低下が予想されるわけでございますが、これにつきましては、欠員の補充を見送るとか、あるいは製造体制の準備を進めておるわけでございまして、職員への影響は極力回避するように努力する所存でございます。  また、葉たばこ生産あるいは関連産業にも若干の影響が出ることは予想されますけれども、公社といたしましては、新製品の開発、販売促進活動、小売店対策の充実等の積極的な営業活動及び製品の輸出の促進等によりまして、たばこ事業に与える影響を最小限度にとどめたいというふうに考えております。
  193. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまのお話じゃございませんけれども、四十四億程度の誤差が出てくるということですね。四十四億というのは、専売公社の工場は平均大体七十億工場で、七十億の工場が四十四億本売れなくなるんですから、早い話が一つの工場がなくなるというぐらいの大変な影響力を持つわけでしょう、これだけの値上げであっても。だから私は、そういう意味では大変重要な問題だと思うんですよ。  ですから、職員の問題については最後にお話ししますけれども、二千億だということで、大したことないんだという理解よりも、これは大変なんだなあということをまず全体に私は理解してほしいと思うんですよ。  同時に、いま嫌煙権運動というのが進んでいますね。この嫌煙権運動というものに対して専売公社が把握されている現状、それを知らせていただけませんか。
  194. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 嫌煙権運動と申しますのは、いまから数年前に市民団体のグループでいろんな動きが出てきたわけでございます。いろんなPR活動をしたわけでございますけれども、現在公社と一番かかわり合いを持っておりますのは、嫌煙団体の一つのグループが国鉄と国を相手取りまして、一つは、国鉄の車両のどの部分だったかちょっと正確に記憶いたしておりませんけれども、禁煙席を、禁煙車両というんでしょうか、それをもっとつけるべきだということと、それからある特定の方が、自分が通勤しているときに、その車両が禁煙車両でなかったために非常に健康上被害を受けたということがあって、精神的な慰謝料も含めて損害賠償を請求するという訴訟が行われておりまして、これは両三年ぐらい続いておりまして、現在まだ係争中、こういう段階でございます。
  195. 鈴木和美

    鈴木和美君 そういうこともさることながら、何と言ったらいいんでしょう、その嫌煙権運動というのは、私の知り得ている情報では、嫌煙権運動に参加されているのは、加盟というんですか、四千人ぐらいだというように昔、聞いたことがあるんですがね。そういう嫌煙権運動に加盟なさっているみたいな団体というんですか、そういうものを数字的には専売公社はまだ掌握していないんですか。
  196. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) いま現在、手元にその数字は持っておりませんけれども、幾つかの団体の人数がどのくらいあるかは正確に把握しておりませんけれども、団体名は把握しております。また、必要に応じまして資料で御提出を申し上げます。
  197. 鈴木和美

    鈴木和美君 たばこの愛好者というのは全体でどのぐらいの数になりますか。
  198. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 全体としての人数につきましては、推定をしなきゃならないわけでございますけれども、三千四百万人から三千五百万人ぐらいというふうに私どもは見ております。
  199. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうすると、三千五百万人の愛好者の問題と四千人の問題だというように理解していいですかな。たばこを吸いたいという人が三千五百万人、嫌だという人が四千人ですな。  それで、専売公社としては、たばこを吸うと肺がんになると思っておられますか。
  200. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 嫌煙権運動というのは、喫煙者の方が非喫煙者に対する思いやりがないのではないかということを権利という名前を——名前というか、権利ということでいろいろ御主張になっておられるわけでございますけれども、嫌煙権という名前が、何と申しますか、マスコミにもう定着しておりますし、それから確かに喫煙者に対しまして非喫煙者に対する思いやりというのが必要だということを訴えたという、それなりの効果があったということでございますものですから、その団体に参加しておられる方が四千人だからといって、それだけの力であるというふうには私どもは思っておりません。  公社といたしましても、その嫌煙権運動が出てからそれに触発されまして、もっと喫煙する方は非喫煙者に対する思いやりをしなければならないよということで、いろんな広報を行うというような結果が一つ出てきております。  それから、もう一つの御質問の喫煙と健康の問題でございますが、私どもは疫学的な数字から、たばこを吸うと非常に健康によくないということが出ておることは承知いたしておりますけれども、私どもが知り得ているところでは、病理学的には喫煙と健康の因果関係はまだ解明されていないという立場に立って、だからといって私どもは喫煙する方に対して何をしてもいいんだということではなくて、たとえば非常に低ニコチン低タールのたばこを発売するとか、また包実には「吸いすぎに注意しましょう」というような文字を印刷するとかいたしましてそれなりの配慮をしている、こういうのが実態でございます。
  201. 鈴木和美

    鈴木和美君 この前、私は横浜から平塚まで行く電車の中だったんですが、平塚の手前のところでひょっと車両の中でたばこを吸い出したら、車掌さんがおいでになって、たばこを吸わないでくれと言うんですわ。ここは禁煙区間だと言うんですな。禁煙車じゃなくて、禁煙の区間だ、こう言う。だれが決めたんですかと、こう言ったんです。吸わないでくれと言うから、だれが決めたんですかと言ったら、いや、私よく知りませんと言う、その車掌さんは。ただ、禁煙区間だから吸わないでくれませんか。いや、おれは吸わないとふるえちゃうんだ、こう言ったんですよ。そうしたら、いや高木総裁の命令なんです、こう言うんです。  それなら長岡総裁、大蔵省で一緒だったけれども、営業妨害されているんじゃないか。高木総裁が決めたということ——たとえば中曽根総理大臣が決めた、国会で決めたというんであれば、全体の合意ですから従わなきゃならぬということはわかりますけれども、高木総裁が、ここからここまでは禁煙区間だと決めたからといって、何で長岡さんは文句言わないんですか。営業妨害じゃないですか。
  202. 長岡實

    説明員長岡實君) 喫煙と健康の問題につきましては、先ほども岡島理事からもお答え申し上げましたけれども、嫌煙権運動に参加している方の人数以外にも、喫煙というものに対して抵抗感を持っておられる方は相当おられるんじゃないかと思っております。それで、最近出ました「嫌煙権を考える」という本を読みましても、嫌煙権の推進論者でいらっしゃいますけれども、われわれは決して喫煙の楽しみを喫煙者から奪うつもりはない、ただ周囲に喫煙を嫌う者がいるというときには、そういう周囲に対するおもんぱかりがあってしかるべきである、というような点が書いてあったわけでございます。  そういう点につきましては、私どもたばこをあずかっております企業の経営者といたしましても、そういう細かい配慮をしながら、末永くたばこを吸っていただく方に対するサービスを続けたいという気持ちが基本にございまして、特に車両内における喫煙の問題というのが、やはり一番最近大きくクローズアップされているものでございますから、禁煙車両の設定あるいは禁煙席の設定と並びまして、ごく短距離、短時間の場合に禁煙区間をお設けになるということに対しても、私どもとしてもできるだけ協力を申し上げるべきではないかというふうに考えております。
  203. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま私もひやかしみたいな話をしたんですが、私自身もスモコロジーの提唱者なわけですよ。嫌煙権運動という四千人の中にいろいろなことを聞いてみますと、たばこを吸うことによって肺がんになると思っていらっしゃる方もおるけれども、多くの人はそうじゃないんですね。たばこの吸い方が気に入らぬとか、嫌いな人の前でよけい吸うとか、そういうことが非常に問題にされているようですね。私も直接その自分の運動を提唱してみてわかるんです。そういうことだとすると、嫌う者に無理無理嫌われることはないんですから、そういう意味では、みんなに親しまれる喫煙ということでは、専売公社もどうぞその方にしっかりした力を入れられることを私は望むんですが、そういう意味では、さっきの高木総裁の話じゃないですけれども、そういうことが国民全体の合意として進められていくというようにぜひ努力をしてほしいと思うんです。  さてその次は、四十四億本たばこが売れなくなるということになりますと、これはどうでしょう、地方税と国との取り分の中で問題が起きはせぬですか。これはどういうふうに処理なさるつもりですか。これは大蔵省にお尋ねします。
  204. 高倉建

    政府委員(高倉建君) お答えを申し上げます。  現在の地方たばこ消費税は、それぞれの地方公共団体の区域の中におきます売り上げ販売本数が課税の基礎となっておりますために、今回の定価改定によりまして、一時的に売り上げ本数が減少するということになりますと、地方たばこ消費税自体の計算は、単価自体は前年単価を使いますので、五十八年度に減収が起こるという事態が起こります。こういう事態を回避いたしますために、別途今国会で御審議をお願いしております地方税法等の一部改正法案におきまして、定価改定がなかりせばとした場合の売り上げ本数まで現実の売り上げ本数を調整する措置を講じて、地方財源の減収が生じないように手当てをしているところでございます。
  205. 鈴木和美

    鈴木和美君 地方の財源が確保できないということになると問題が起きると思いますので、例年自治省と大蔵省とでいろんなお話があると思うんですが、地方財源の低下を来さないように配慮していただきたいと思います。  よろしゅうございますか。
  206. 高倉建

    政府委員(高倉建君) ただいま地方税法等の改正法案を御審議いただいておりますので、その法案が成立いたしますと、地方のたばこ消費税の減収が生じないように措置できることに相なろうかと思っております。
  207. 鈴木和美

    鈴木和美君 それじゃその次は、関税の引き下げの問題に移らせていただきますが、今回三五%から二〇%ということになりまして、大変な問題を私は引き起こしたと思っています。この引き下げということは、一つはたばこの自由化というか、新しい日本における国際競争、日本市場における国際競争の窓口が開かれた、私はこういう認識なんです。ですから、一番最初にお尋ねしたように、関税という問題と原価の契約というものとは、国内で輸入たばこの価格を決めるときに大きなウエートを占めると私は思うんですね。ですから、これからのたばこの自由化、日本市場においての国際競争というようなものを展望したときに、専売公社は先の経営のあり方などについてどういう問題点、心配、意識を持っていらっしゃるか、まずお聞きしたいと思うんです。
  208. 長岡實

    説明員長岡實君) アメリカを中心といたします外国たばこの輸入、国内における消費は今後相当程度ふえるものと覚悟せざるを得ないと思います。  その場合私どもがどういう基本的な態度で将来に臨むかという問題でございますが、一番大切なことは、国際競争に負けないような製品をつくりまして、これを市場に投入するということが一番大事であろうと存じます。私ども専売公社といたしましては、従来からどういう傾向のたばこを国民の皆さんが好んで吸っていただけるかという点については、十分に検討をいたしまして、消費者の好みに合うような商品を投入して今日に至っておると考えておりますけれども、今後はそのような努力が従来にも増して必要になろうかと存じます。  それから私どもの経営の面におきましても、でき得る限り経営の合理化を促進いたしまして、製造コストその他の面においても輸入製品との競争ができるような経営体制を実現していかなければならないというふうに考えております。
  209. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵大臣にお尋ねしますが、十二月の二十五日、自民党三役と竹下大蔵大臣と自民党の専売特別委員の皆さんとの間に申し合わせ事項というのがありますね。大臣、御承知でしょうか。
  210. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 十二月二十五日でございます、輸入製造たばこの関税率引き下げに伴う諸対策ということでありましたが、申し合わせ事項というものを、自民党の専特の人が私にまず、まあ根回しの段階とでも申しましょうか、個人的に話がありまして、それは適当でないから、せいぜい要望、せいぜいじゃございません、要望書とすべきではないかという意見を私から申しまして、それで要望書というものを書いてこられましたことは知っております。
  211. 鈴木和美

    鈴木和美君 その中身についても御承知だと思いますが、どなたか説明してくれませんか、その中身。
  212. 高倉建

    政府委員(高倉建君) 昨年末の関税の引き下げ方針を決定いたしました際に、ただいま大臣からお話がありましたとおり、与党の関係者の方から、国内のたばこ産業への影響を極力緩和すべきであるということでいろいろ御意見が出されました。  それで、政府の幹部の方々、それから党の幹部の方々、話し合いをされたわけでございますが、その中で触れられておりますのは、たとえば葉たばこ耕作への配慮であるとか、あるいは国内葉たばこの生産性の向上、品質改善等への諸施策をさらに充実する、あるいは輸出の促進等の措置を講ずべきであるとか、主なところこういった点につきましてお話し合いが行われたと承知しております。
  213. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は非常に不可解なことだと思ってこの問題を見詰めているんですが、「輸入製造たばこの関税率大幅引下げに伴う諸対策についての申合せ」というんですか、これはある人から見せてもらったんです。その中を読んでみますと、「輸入製造たばこの関税率の引下げは今回をもって最後とする」。これは第一項。第二項は、「輸入製造たばこの関税率引下げに伴い、そのシェアーが増大しても、昭和五十九年の耕作面積には影響させないこと。また、昭和六十年以降の耕作面積については、極力従前の面積を維持し、需給事情の極端なアンバランスを生じた場合には、関係者間において十分協議を行い、決定する」。三、「国内葉たばこ生産の構造的改善を促進するため、生産性向上、品質改善等の諸施策に対する助成措置の充実をはかる」。四つ目、「たばこ耕作組合の果たす役割の重要性に鑑み、その体質強化をはかるための措置を推進する」。五つ目、「国内製造たばこ及び葉たばこの輸出の促進をはかるため、特段の措置を講ずる」。  こういうものなんですが、大臣、この四番目の「たばこ耕作組合の果たす役割の重要性に鑑み、その体質強化をはかるための措置を推進する」ということで、六億円のお金がついたと聞いているんですが、間違いございませんですか。
  214. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはたしか一般歳出の関係じゃなかったと思いますので、公社の方からお答えをいたします。
  215. 長岡實

    説明員長岡實君) 製造たばこの関税の引き下げによりまして、葉たばこの品質向上が大変緊急な課題になるわけでございます。そういう問題につきましては、耕作組合の中央会が中心になって、良質葉の生産運動というものを強力に展開をしていただかなければならないわけでございまして、そのために公社の予算の中で六億円の予算を計上した次第でございます。
  216. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵大臣、どうしても大蔵大臣から私は答弁をいただきたいんですが、この申し合わせ事項について大蔵大臣は事前に承知をなさったのか、また署名をなさったのか、そこを明らかにしてくれませんか。
  217. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いまちょっと誤解しておりました。  事前に承知しておったか。まあ、いろんなことを持っていらっしゃいまして、それで私の方で種々指摘をいたしました、これはいけないとか、いいとか。そういうことは記憶をいたしております。したがって、事前に承知しておったということになります。
  218. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、本件の議論がされているときにいち早く察知しまして、亡くなられた平林剛さんを通じて、ここにおいでになっているかどうか知りませんが、大蔵省の某幹部にこういうことはどうも理不尽だと申し上げた。中曽根さんがアメリカに行くのに、関税の問題を通さないとおみやげができない、そのためには、葉たばこへの影響が非常に大きいので、何か予算折衝その他のことがあれば、六億くらいの金を積んでやりたいがどうかというような話が、まことしやかに永田町かいわいを回ったことは事実であります。私は、そういうことは理不尽だからおかしいじゃないかと言って抗議もいたしました。しかし結果としては六億金がついています。  金がついているのはまだいいんですけれども、専売公社がよくも黙っていると私は思うんですが、このために耕作組合に六億円渡すのに、別に渡すのならいいですよ、専売公社の金から六億渡してやれというんですよ。ダブルパンチでしょう、専売公社は。選挙目当てないしは関税率をおみやげに持っていかにゃいかぬから、そういう理不尽なことをやって口封じをするというようにとられても、私はこの問題はしようがないと思うんですね。  別な意味で、私は、お金をこうやっていただけるなら、これからいただきたいところを申し上げますから、ここにこのぐらいの金を出すんですから、こっちの方にもいただきたいということを私は申し上げたいと思いますが、大臣、少なくとも大蔵当局が増税なき財政再建で支出をカットしようというようなときに、何とも納得ができない問題がこういうことで出ているということはいかがでございましょうか。
  219. 長岡實

    説明員長岡實君) ただいまの耕作組合に対する六億円の支出の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、関税率の引き下げ等に伴いまして、日米間でのたばこの競争はますます激化することが予想されます。その場合に、私どもの立場からいたしますと、何と申しましても、製造原価の大半を占めます葉たばこにつきまして、特に国産の葉たばこにつきまして、できるだけ低コストで、できるだけ良質の葉をつくっていただくということが、私どもの運命を左右するほどの大きなウエートを持つものであるという認識を持っております。そういう点からいたしまして、この際、耕作組合の中央会を中心として、耕作組合自身がこの問題について責任を持って、私どもが希望しているような方向日本の葉たばこ耕作農業を持っていってもらうということが、とりもなおさず公社のためにもなることであるという基本的な認識のもとにおいてこの予算措置を講じたわけでございます。
  220. 鈴木和美

    鈴木和美君 私はそういう問題について了解しません。なぜならば、三番目に、いま長岡総裁がおっしゃるようなことは大切だから、それはそれなりにお金をつけているわけでしょう、いまあなたがおっしゃったことについては。  この四番のことは、「たばこ耕作組合の果たす役割の重要性に鑑み、その体質強化を図るため」に六億金をやるというんですよ。全然意味が違うじゃないですか。だから、それは大臣から私ははっきりしていただきたいと思うんですよ。何としても納得できませんよ。時間がありませんから、後でもう一回これを最後に問題にさしていただきますから、どうぞ答弁を調整しておいてください。  調整なさっている間に、時間がないと困りますから、もう一つだけはっきりしておきたいんですが、これから貿易の自由化によって国際競争が発展するときに、いつも専売公社の経理の中で問題にされるのが、葉たばこについて割り高であるということがよく問題にされますね。この割り高であるということが現状の問題であることは事実ですが、その問題を抱えながら国際競争に向かっていくことになるわけですね。私は、これはアキレス腱みたいなものだと思っているんですよ。専売公社はそういうことに関して、こうしてもらったらいいとか、ああしてもらったらいいという施策とか要望とか、特別にございますか。
  221. 岡島和男

    説明員(岡島和男君) 日本農業全体の問題といたしまして、その農作物が国際的に見て割り高であるということは事実でございます。私どもの葉たばこも国際的に見て割り高であるということでございます。ただ、それをどういうふうに把握するかということになりますと、品質の問題をどう処理するかというような問題も実はございます。それから私どもの総裁の諮問機関である耕作審議会におきましていままで毎年いろいろ議論をいたしまして、収納価格を決めてきておるという経緯もございます。それからそういう価格を前提にいたしまして、専売制度の中で輸入品との競争もそれなりにやってきたという実態もございます。  それを担保する一つが関税率の問題であることは事実でございますが、私どもといたしましては、一番基礎的な問題といたしまして、生産面から製造面に至りますその競争力の強化を全体として図っていくということが、まず一番の基本であるというふうに考えておりまして、そういう認識のもとに、こういう国産葉たばこが国際的に見て高いという問題についてどう考えるかということにつきまして、まだ結論が出ておりませんけれども、いろいろまだ勉強していると、こういう段階でございます。
  222. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、この今回の関税率の引き下げと単年度に行われる原価契約の交渉などなどを見ていますと、個人的な観測ですが、日本専売公社の力と、レイノルズでもフィリップモリスでもいいんですけれども、たばこ独占と言われているBATも含めて三社と体質を比較すると、それは葉たばこの原価も全部入れ込んで、たとえばアメリカのレイノルズならレイノルズと比較すると、向こうが一〇〇だとすると、専売公社はそれから四〇%ぐらい落ちるんじゃないですか、力として。それでようやく関税を何か二〇%引き上げて——もともと持っている体質から、葉たばこの価格高によって本当にハンディなしで国内市場で競争できるだろうか。どうもハンディをしょって国際競争をしなきゃならぬということが専売公社の実情だと私は思うんですよ。だからといって、安い輸入葉ばかり買えるかということになると、それだって見込みはそんなに立ちませんね。  もう一つは、高い葉っぱとは言うけれども、国内の農業、農政問題全体を通して、自給率を高めるということと農民の生活を保障しなきゃならぬという問題から考えれば、やはり国内で葉たばこをつくらなきゃならぬという問題は欠かせないと思います。そういうことになってくると、同じ競争するのにも、ハンディをしょったまま競争するのではいかぬので、私は、これはむしろ大蔵大臣にぜひ検討課題として考えていただきたいと思うんです。  たとえばECの状況を見てみると、ECの介入機関というのがありまして、安い葉たばこと高い葉たばことを調整する。不足部分を補てんするというような制度がECの中にはでき上がっているわけですね。これをもう少しアレンジして、正当な国際競争ができるような、つまりハンディ部分について国が何とかめんどうみるというようなことを私は考えていただきたいと思いますが、検討課題になりましょうけれども大臣、見解どうでしょう。
  223. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は島根県でございますから、そう大変な規模ではありませんが、耕作者農民が存在しておる選挙区でございます。この葉たばこ耕作問題というものを、考えようによれば、農政の範疇からとらえるべきだという意見。そうなりますと、農政全般について申しますならば、たとえばアメリカ農用地面積の国民一人当たりにすれば四十分の一、あるいはヨーロッパでも六分の一か五分の一ぐらいになるわけでございますので、そういう面積からくるものについては、そこにいかに効率的な措置を行っても、おのずから価格差が生じてくるいわゆる宿命を持っておる。そういう角度から農政全般に対するいろんな施策が行われる。  ところが、葉たばこ問題ということになりますと、農政の範疇から離れて、いわば食糧という範疇から離れますから、いわゆる専売物資としての範疇からこれを議論しなければならぬということからして、時に葉たばこ耕作者の皆さん方は、みずから農民であるという考え方に立ちつつも、また自分の所管省は農水省じゃなくて大蔵省だという意識もまたあるわけであります。したがって、その都度いろいろな問題に対してそれなりの関心は持ってまいりましたが、例のECがとっております、EC十カ国の中における問題でございますが、これは財政負担からしても、ちょっと検討するにも初めから若干おじけがつくような感じが実はいたすのであります。  しかしながら、経営形態その他、これは直ちに、いまの議論には出ておりませんが、今後の問題として、この十万四千の葉たばこ農家というものの施策というのはむしろポイントになってくる。そうすると農政的な感覚も持ちながらこれに対応していかなければいかぬなと、こういう気持ちは十分持っておるわけです。  ただ、私はいつも国会で思いますのは、こうして質疑を展開しておりますと、普通の場合、質問というものは知らないことを知った者に質問する。ところが鈴木さんと僕の場合は、事、専売に関しますと、知った者が知らない者に質問するという逆な状態になっておるわけです。だから、むしろ私はいまずっと意見を承っておりまして、そういう一つの見識をみずから吸収して対応すると、こういう姿勢をお示しすることによって私のお答えの責めをふさがしていただきたいと、このように考えます。
  224. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、これから起こり得るであろう非常な心配事のために、いま予見をしながら、対策を早く急いでほしいという意味で言うているんですが、いままでも、専売公社の予算の中で葉たばこ価格問題が議論されるときに、いつも農政部分が専売公社の予算の中に組み込まれちゃっているものですから、本来別にこれが組み込まれるというようなことがあっていいと思うのですね。予算が同じであるというのであれば、農政部分は幾らだから、納付金からそれは差し引くと言うても構いませんし、いろいろなそういう方法はあると思うのです。つまり農政部分というものをどう組み込んでくれるのかということは前々から問題点として指摘をしておったと思うのです。  しかし、それがこの貿易の自由化によって、日本の国の中で国際競争が始まっていくということになると、問題は新しい展開であるという理解なんですね。新しい展開であるということからして、たとえばどうでしょう、今回チョコレートとかビスケットというような問題の関税引き下げについて、それぞれ砂糖消費税の減免をメーカーにやっているわけですね。これは正当な国際競争というものを考えながら企業に力をつけてやろうということだと思うのですね。こういうこともこれから、専売の葉たばこ問題を抱えた苦しい状況の中では、私は考えていかなければならぬことだと思うのです。  それから、ちなみに農産物の中でも不足払い制度というのがあると思うのですね。農水省の方、きょうおいでになっていると思いますので、この不足払いのことについても付言してたばこ全体に関しての見解を述べていただきたいと思うのです。  私は大豆についてちょっと調べてみたんですが、五十五年の例で保証価格が大体一万六千七百円ぐらいでしょうか、保証価格が、六十キログラム当たり。しかし実際市場価格というのは五千二百円ぐらいじゃないでしょうか。その間一万一千五百八十一円というのを新たに国が大豆をつくっている農家にその保証しているということでしょう。これだって国内自給率——まあ食糧ということであると言ってしまえばそれまでかもしれませんけれども、私は葉たばこの問題についても、この大豆の問題についても、その国際競争というような形の中でハンディを解消させるということであれば、ここのところをしっかり国が手をつけなきゃならぬというように実は思っているわけですが、そういう意味で、大臣の御答弁よりは、大豆などの問題も含めながら農水省の見解を聞かしていただけませんか。
  225. 吉田茂政

    説明員吉田茂政君) お答えいたします。  葉たばこは、地域特産農作物といたしまして、農業経営にとりましてきわめて重要な作目でございますので、農水省といたしましては、従来から日本専売公社と十分連絡をとりながら、いろんな生産振興対策を講じてきたところでございます。いま先生がおっしゃいましたような、不足払い制度というようなものはたばこの場合にはございませんが、たばこの所管につきまして、先ほど大臣からも説明がありましたように、私ども農水省といたしましては、あくまでも農家経営の安定を図るという見地から主として生産面での助成をやってきたわけでございます。したがいまして、今回の関税率の引き下げによります生産農家への影響を最小限に食いとめるという観点から、各種の補助事業でありますとか、あるいは制度融資の充実を図りまして、品質の向上と生産性の向上に努めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  226. 鈴木和美

    鈴木和美君 長岡総裁、私が述べたことについての専売公社総裁としての感想をちょっと聞かせてください。
  227. 長岡實

    説明員長岡實君) 先ほど鈴木委員がおっしゃいましたように、アメリカの巨大たばこ産業と私どもと製造原価を比較いたします場合に、製造原価が公表されませんのではっきりとした数字的な把握は不可能でございますけれども、私どもの方が若干と申しますか、数割と申しますか、製造原価は高いと思います。その高い原因の相当部分は、その原料である葉たばこが高いと、これも事実であろうと存じます。  私どもといたしましては、将来厳しい国際競争の中で生き抜いていくためには、あらゆる方面での努力が必要でございますけれども、国産の葉たばこについてもそれなりの努力をしていただきませんと、そのハンディキャップはなかなか解消しない。  これは大変議論の存するところであろうと存じますけれども、その国際比較においてコストその他の面で立ちおくれている日本のたばこ農業に対して、何か価格差補てん的なものを設けるという場合と、それからそうではなくて、私どもの仕事の中で合理化を図っていくという場合と、どちらが、何と申しますか、真剣に農民にも取り組んでいただけるかということになりますと、大変むずかしい問題ではございますけれども、いわゆる補助金的なものなしに日本のたばこ産業全体の中における葉たばこ農業の位置というものを認識していただきまして、あらゆる努力を払って生産性を上げていただく、そして少しでも国際的な競争の中でのハンディキャップを克服していくということの方が私は現実的ではなかろうかというふうに考えております。  先ほどビスケットその他の例もお挙げになりましたけれども、ビスケットとたばことの違いは、これは釈迦に説法でございますが、私どもが公共企業体であり、いわば独占企業であるということ、また葉たばこ農業につきましても、いわゆる葉たばこ専売で全量買い上げという仕組みになっていること、その他私どもの置かれている立場の特殊的な事情から、私どもといたしましては、でき得る限り公社の努力によってこれらの問題を解決し、日本のたばこ産業全体の安定的な発展を図ってまいりたいと考えております。  先ほどお答えが十分にできずに恐縮でございましたが、申し合わせの中にございました三項、四項と申しますのは、三項につきましては、従来から実施しております構造改善その他を今後も強力に進めていかなきゃならないという項目でございます。  四項につきましては、今回の関税率の引き下げが相当大幅でございまして、私どももその結果もたらされる国際競争の激化ということを十分に覚悟しなければならない。そういうときには、従来の路線以上に、葉たばこ耕作農業の中で中核的な役割りを果たすべき耕作団体にこの問題に対する責任をとってもらいまして、その団体が中心になって良質葉の生産活動その他を強力に推進してもらわなければならないという角度から措置がとられたものでございます。
  228. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまの一番最後の問題は、一番最後にさせていただきますが、どうぞ私が述べてきたいままでの自由化に備える施策ということについて専売公社も検討していただきたいと思うんですが、大臣にもぜひ検討を要請したいと思うんです。  もう一度申し上げますが、検討を要するということは、何といっても葉たばこ対策の問題であり、そのためのハンディをしょわないで国内で自由な競争態勢に入れる仕組み、方法などについて私たちも考えますから、当局の方でも考えてもらいたいし、大蔵省も考えてもらいたいと思うのが一つです。  それからもう一つは、先ほど専売公社の総裁から見解が述べられましたけれども、現行の専売制度の中での、つまり予算統制というようなものがある中で、本当に日に日に変わる貿易戦略、市場戦争と言われるようなものに対して、それで太刀打ちできるんだろうかということも、私はもう一つ心配の種として持っているんです。だからそういう意味では、先ほど当事者能力の改善、自主性の発揮ということが議論として行われましたけれども、どうぞこれは大蔵大臣にも見解をいただきたいと思うんですが、できれば公的な規制、つまり経営活動は経営者の創意と責任に任せて、国による公的規制というのは最小限度にとどめておくというような見解を一致させて、専売公社にそれこそ死にもの狂いに仕事をさせるようなことにしたら私はいいと思うんですけれども大臣の見解いかがでございましょう。
  229. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 最初の問題につきましては、いろいろ鈴木委員意見も聞いたり、またそれぞれの専門的な立場で意見を交えながら検討していくべき問題である。  基本的に若干意見を申し述べますと、私はこの問題に対応しつつ考えましたことでございますが、一つには、いわゆるアメリカのたばこ巨大企業というものは、世界の貿易戦略の中である種の大変な自信を持っておる企業じゃないか。ほかの企業はだんだん自信を失っておる。そうすると、日本が知識水準——まあ頭がアメリカに比べて余りいいと言ってもいけませんが、要するにいろいろな意味における能力があるから大きな、いい悪いは別として、ライバルになる可能性というものも心の底にはあるんじゃないかというような感じすら実は持ってみたわけであります。したがって、いずれにいたしましても、これが葉たばこ専売であり、またまさに独占事業であるという今日の経営形態でございますが、この葉たばこ問題につきましては、今後の推移の中でも絶えず意見交換をしながら、対応策は耕作者の皆さん方とも一緒になって考えていかなきゃいかぬ問題だという問題意識は持っております。  それからその次の予算統制等々の問題でありますが、これもまさに私は、いわゆる専売物資を扱う独占事業であるという点におきましては、これはそれなりの統制というものはあろうかと思います。しかしながら、今日までいろいろな角度から議論されてきて、そしていま当事者能力というものの限界をどこにするかというむずかしい議論は別といたしまして、労使双方の自主努力によって、当事者能力の範囲内において私はいろんな問題が年を追うて前進してきた一つのティピカルな存在じゃないかとまで実は思っておるところであります。
  230. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまのお話だと、これは大臣、労使関係というか、労使でいろんな知恵を出して議論するということは、長い伝統の中で専売の労使関係というのは案外議論をよくするところですから、そこはそこで私は余り心配してないんです。  ただ問題は、大蔵省と専売公社との関係なんです。いままで大蔵省財政専売の中で、大蔵省専売局ということの認識、発想というのがどうしてもあると思うんですね。けれども、私はこの関税率の引き下げということを奇貨として、さっきも申し上げましたように、新しいたばこ戦争が日本市場の中で始まってくる。それで輸入会社をどうしても別途つくらなきゃならぬでしょう。私の感じとしては、専売公社の中に取り込むということはどうしても無理だと思うんですね。そうすると、営業の面でも宣伝の面でも、とにかくいままでの発想とは違った対応を専売公社は迫られると思うんですね。そのときに、全額出資の会社ですから、ある意味での管理統制というのはあるんだろうけれども、ぎしっと縛った予算総則や給与総額制度みたいなものがあったんではやりにくい、日々対応がしにくいということも私は出てくると思うんですね。そういう意味において、いま直ちにとは申し上げませんけれども、検討の素材に挙げていただきたいということを申し上げたんです。  それからもう一つは、これは専売公社総裁に聞きたいんです。これほどの大事業をこれから進めなきゃならぬ。同時に恐らく私が反対だと言うてもたばこの値上げ法案は通っていくでしょう。そうすると、定価改定の仕事は大変なことですわ、現場に行くと。恐らく四月の連休は、休みのやつを返上して定価改定の仕事をやらなきゃならぬですね。それから新しい貿易戦争、たばこ戦争に対応するためには、公社の経営部内においても合理化の推進を図ってコストダウンを行わなきゃならぬというお話ですね。コストダウンということは何かというと、人に直接関係してくるということもあるわけですね。そういう問題をあれやこれや考えると、職員に対する手当てが問題だ。さっきの耕作者の手厚い保護じゃないですけれども、職員が非常に苦労して、これからタコの足を食って生きていかなきゃならぬような時代に入るかもしれないんです。そういうような時代に専売公社総裁として職員にどれほどのことをやってもらえるのか、このことに対してお答えいただけませんか。
  231. 長岡實

    説明員長岡實君) 御指摘のように、私どもを取り巻いております環境は大変厳しいものがございますし、将来を展望いたしますと、これは一層厳しさを加えるものと覚悟いたしております。たばこの需要そのものは停滞ぎみでございますし、そこへ値上げを行うわけでございますから、需要が若干落ち込む。これをその後どういうふうにして回復していくかということにも大変な努力が必要であろうと存じますし、関税率の引き下げによって輸入品との競争関係が一段と激化するということも事実でございます。  こういったような状況の中で、日本のたばこ産業の維持発展を図り、財政への寄与という国民への負託にこたえるためには、私どもとしては、従来にも増して事業運営にあらゆる努力を傾けなければならない、事業運営の合理化にも努めなければならないというふうに考えております。そういったようなことを促進してまいりますためには、公社の全職員が一体となりました意欲的な参加が求められるような措置を何か講ずる必要があるのではないかというふうに考えております。
  232. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵大臣、いま総裁の見解に対して大臣の見解いかがでしょう。
  233. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この間来いろいろ勉強さしてもらっておりまして、総裁の御意見は私も大変参考になる御意見である、むしろ同感であると思います。
  234. 鈴木和美

    鈴木和美君 そこで、先ほどの問題に戻りますが、どうしても私が納得できない問題がある。  その前に大蔵委員長にお願い申し上げますが、職員の手当の問題であるとか、それから当事者能力、自主性の発揮、そういう問題などについて、大蔵委員会としても、附帯決議の際に委員会で採択できるように努力していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  235. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 理事会で協議いたします。
  236. 鈴木和美

    鈴木和美君 一番最後に、先ほどの問題で、自民党三役、大蔵大臣、そして自民党専特の皆さんの覚書というか、申し合わせというか、こういうものが公然とまかり通るということは、国会審議の問題もあわせ考えながら、私は非常に不届きだと思うんですね。こういうことが予見できたから、先ほど申し上げましたように、わが党の平林書記長を通じながらそういうことも話をしておった。公然とこれが出てきたということについて何としても納得できませんので、竹下大臣の本件に関する御答弁をもう一度いただきたいと思うんです。
  237. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題につきましては、輸入製造たばこの関税率引き下げの際にいろんな議論をいたしました。私なりにまさに第三項の良質葉の生産運動展開のための補助金というものの金額にまで深く立ち入ったわけではございませんが、この申し合わせの文言を読む限りにおいて、私は方向に著しく逆行するような申し合わせをしたという認識は、率直に言って、私にはございません。ただ、全体的にいまの御高見を拝聴しながら、これからますます問題が重大になりますので、これを取り扱いますときには、言ってみれば、アメリカ側から見れば、たばこというものにある種の自信を持ちながら、シンボリックな問題としてこれが提起されておったというので、一生懸命、急場の場合、私なりに議論してまいりましたが、今後の展開につきましては、御高見を体しながら、私どももこれに真剣に対応していく気持ちでいっぱいでございます。
  238. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、本件に関する限りは、六億という金を中央会に良質葉とか品質改善のためというようなことでやったって、金額的には全然話にならぬのですよ、六億なんかという金では。やるならもっと何十億とか何百億という金なんですよ。六億という金そのものの金額から見ても明らかなように、この関税の引き下げについて自民党専特も絶対反対だったんですよ。もうすべて反対だったんですよ。ところが、中曽根大臣アメリカに行くということになって、急遽いろんな相談事が行われてこういうことになったということを私は自分の目で見ているものですから、非常に納得がいかないわけですよ。お金が補助的につけてやれるということはいいことかもしれません。しかしこの金自身は、片一方では、さっきも言ったように、行革を論じながら、歳出カットを論じながらしているときに、自民党の自分たちの都合の中で、つかみ金でぼっと選挙資金みたいなことをやってやるというようなやり方について、私は何としても賛成できないんです。そういう意味で厳に注意していただきたいことを申し上げて、きちっとした大臣の見解を述べていただきたいと思うんです。確かに文言上から見れば、これは大した問題じゃないですよ。知らぬ人から見れば、これはそうかなと思うだけである。しかし現実はそういうことであったということを十分踏まえて、最後の答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  239. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 専売公社の方も、そうした支出につきましてはきちんとした支出ができるよう今後とも監督、指導をしてまいる、こう申されておりますし、私どもといたしましても、この問題につきましては、いろいろ国内に競争力をつけるための問題点の数々がございますので、御高見を拝聴しながらこれに適切な対応をしていきたいというふうに考えております。
  240. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 今回御提案されておる租税特別措置法の一部を改正する法律案、非常にたくさんな条項の改正がなされているんですが、そのうちで七十条の相続に関する関係の問題ですね。多少従来よりも減税することになったということで、特別措置法の中においては目玉商品のような感がいたすんですが、これについての法の概要を簡単に御説明願いたいんです。
  241. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま御提案申し上げております租税特別措置法の一部改正法案におきまして、個人の事業用または居住用の宅地につきまして、課税の特例ということで改正を提案しておるわけでございます。  実は、個人の事業者、それから事業者以外の場合につきましても、従前、国税庁評価上の取り扱いの問題といたしまして、二百平米までの小規模の宅地につきましては、それが事業の場合でございましても、事業以外の方の居住の用に供される場合にいたしましても、最低限の生活基盤をなすものであろう。そういうことで、当然処分上も制約がございますので、そういった小規模宅地の特性に着目いたしまして、時価の二〇%減額するという評価上の特例の扱いをしておったわけでございます。ところが今回は、後ほど御議論の対象になるかと思いますが、中小企業の上場されていない株式の評価の問題と一緒に、いわゆる中小企業の承継税制の議論が出てまいりまして、これらの問題を一括いたしまして税制調査会の専門の小委員会で御議論をいただきました結果、今回は従来の国税庁の取り扱いの問題から、取り扱いといいますか、むしろ法律事項ということできちんとした形でお決めを願うということで、実は法律事項としてお願いをしておるわけでございます。  その内容は、ただいま申しました二百平米までの小規模宅地の部分、この範囲は従前と一緒でございますが、個人事業者の場合、事業の用に供されています部分については、新たに現行の二〇%を四〇%の減額に高める。その他の居住用の部分については二〇%でございますが、あわせて全体として減額幅が三〇%をくだらない程度にする。同時にそれとのバランスを考慮いたしまして、事業者以外の方の場合、居住の用に供されます宅地につきましては、同じく二百平米までの部分につきましては、現行の二〇%から三〇%の減額を行うということでございます。
  242. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 この法律の施行によって減額される税収の見込みは大体どの程度なんですか。いま、いろいろあれしますと、まとまったものはあるんですが、この法律条項の分が数字として出ておりませんのでひとつ。
  243. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま委員が御指摘になりましたように、今回の改正に伴います税収減につきましては、実は、制度の改正による増減収額ということで、別途毎年度区分してお示ししているわけでございますけれども、この部分につきましては、ただいま申し上げましたように、実際上の話といたしましては、従前国税庁で通達におきまして取り扱ってまいりましたもののいわば延長のものでございますので、いわゆる制度改正の減収額としては特掲をさせていただいてないわけでございますけれども、私ども税収の見積もりに当たっては、この部分を約四十億円、平年度で約九十億円の減収になるということで織り込んでおるわけでございます。
  244. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 この条項に対して中小企業庁の方ではどういうふうにお考えになっておりますか。
  245. 桑原茂樹

    説明員(桑原茂樹君) お答えいたします。  私ども、この七十条の改正によりまして、中小企業、特に土地が非常に高いところに立地しておりますような中小企業にとりましては、相当の相続税上の効果があろうというふうに考えております。また、問題になりますケース、小売店が多いだろうと思っておりますけれども、小売店の場合ですと二百平米ということで、九〇%以上の企業をこれでカバーし得るのではないかと思っておりますので、この制度によりまして相当な効果が出ようかと思っております。
  246. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 中小企業庁にお伺いいたしますが、大体昨今の中小企業というのは経営者の高齢化が非常に進んでおりまして、大体六十歳以上の経営者が三割近くある。いわゆる世代交代期に入って、当然相続の問題その他というのが非常に大きく出てくる時期にあると思います。昨年、予算の公聴会で、京都で実はこの種の問題に対して中小企業関係団体から要請を予算委員会で受けたことがあるんですが、そのときも実は、相続のときの株式の評価とか、そういう問題をもう少し大企業に近づけてくれないと、結局は廃業せざるを得ないような事態が非常に多く出るということを聞かされて、私たちもこれは大変な問題になってくると思うんですが、この点についてはいかがなんですか、このくらいの特別措置法の改正でそういう事態が解消されますか。どうでしょう。
  247. 桑原茂樹

    説明員(桑原茂樹君) ただいま先生指摘のとおりでございまして、われわれの問題意識といたしましては、一つは中小企業の世代交代期というのが現在あるのではなかろうかということで、相続税の問題が大きな問題となっておりますし、また土地が戦後ずっと高くなってきております。こういうことで相続税の評価額も上がってきております。したがいまして、相続税が高額になって円滑な中小企業の承継が行えないような例も出てきておるという観点から、いろいろ従来努力をさしていただいておるわけでございます。  今回の改正につきましては、いま御議論いただいております個人事業者の事業用土地の問題と、それから先生指摘の株式の評価の問題と二つあるわけでございます。この双方ともに今回改善が行われるわけでございます。  私ども感じといたしましては、土地の評価なり株式の評価が非常に高額なものになって、相続税が非常に高いというようなケースにつきましては、今回の制度の改善によりまして相当程度効果が出るものと思われますけれども、相続につきましては、先生御承知のとおり、ケース・バイ・ケースでいろいろなことになるわけでございます。したがいまして、われわれとしては、五十八年度からこの制度を実施することにより、実際にどういう効果が出てくるかというのを見ていきたいと思っておるわけでございます。
  248. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これは面積だって、二百平米というと六十坪ですね。たとえば中小企業が倉庫一つ持っていますと、もうこんなものでは問題にならないんですよ。呉服屋さんの倉庫一つにしたって、底地の面積なんていうのはこれくらいな対応の仕方で、おたくが考えているように、こういう事業の土地が、株式でもって実際に純資産価額方式で評価されたときに救われますか。ほとんどこんな程度のことじゃ問題にならないんじゃないかというふうに私は常識的に考えるんですがね。
  249. 桑原茂樹

    説明員(桑原茂樹君) まず、個人事業者につきましては、かなり零細な企業が多いだろうと思いますけれども、これにつきましては、小売店など調べましても、二百平米ということでほとんどおさまるケースが多いわけでございます。それからちょっと大規模にやっておりますような企業においては、大体株式会社、法人化されておるわけでございます。このようなケースにつきましては、今回、従来純資産価額方式というようなことだけで評価されておりましたケースにつきましても、新しく企業の収益性を加味いたしました類似業種比準方式というものが半分ぐらい導入される等々ございまして、その企業の収益性を加味した評価がなされるわけでございます。したがいまして、土地をかなり持っておって、いままでのやり方ですと相当相続税が高額になったようなケースにつきましても、今回の制度の改善によりまして相当程度効果が出てこようか、こういうふうに思っているわけでございます。
  250. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 五十八年度の税制改正の要綱の中で、いわゆるいまおっしゃった類似業種比準方式によるところの類似業種の弾力的なとり方を行う、これはそうするとどこの条項によって行われるんですか、この条文は。
  251. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 相続税の具体的な評価につきましては、従来国税庁の通達で取り扱っておりますので、いまお示しの要綱に従いまして、国税庁の通達を改正いたしまして措置をする予定でございます。
  252. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それは、そうすると通達で評価の仕方を変えるということなんですか、従来の純資産方式から類似方式へ。
  253. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 若干申し上げますと、現在、中小企業の取引相場のない株式につきましては、中小企業を資産、取引等によって区分をいたしまして、大会社につきましては類似業種比準方式、それから小会社につきましては、会社の財産価値をもとにいたしましたいわゆる純資産価額方式、それから中間の中会社につきましては、両者の併用方式ということでやっておるわけでございますけれども、今回改正をいたしますのは、この小会社につきまして類似業種比準方式の要素を加味して評価をする。  その場合のウエートのとり方は、従来は一〇〇%純資産価額方式でございましたが、それを五〇対五〇のウエートで加味して評価をする、そういうことでございます。
  254. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それは国税庁内の通達だけでそういうことが簡単にできるようになっているんですか、いまの税法。
  255. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 今回の改正につきましては、税調に特別の委員会を設けられまして長時間御審議をいただいたわけでございます。それで、税制調査会の答申におきましても、現行の評価体系の枠組みの中で株式価格の形成要素一つである収益性を評価上配慮するのが適当である、こういう御答申をいただいておるわけでございまして、私どもこの現行評価体系、非常に簡単に先ほど申し上げた仕組みでございましたが、それをその枠組みの中で小会社について改善合理化を図る、そういう趣旨でございます。
  256. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それでは、たとえば大企業の上場会社、これは三カ月間の株価の平均価格もしくは相続開始時の最終値のいずれか有利な方をとって相続をすることができる、こうありますね。これも通達でそうなっているんですか。
  257. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) さようでございます。その時価の見方として、合理的な線を通達で決めておるということでございます。
  258. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 私はこういう重要なことが全部通達一本で行われているということに対して非常に大変だな、まさに国税庁の国民の相続に対する生殺与奪の権ですね。どんどんどんどん自分たちの考え方でやっていけるわけですね。税調と言ったって、それは国会なんかかかわる問題でないんです。どういうふうにでも、有利にも不利にもそんなことだけでやっていけるということは大変なことだと実は思うのです。特に、いまの通達でも、大企業の場合には上場株の平均というものをとりますね、今度半分だけ認める。いつから認めるのですか。
  259. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) これは先ほどの土地の評価の改正に合わせまして、本年の一月以降の相続開始の分から適用することになります。
  260. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 すでにその通達は出しているわけですね。
  261. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 現在作業中でございます。
  262. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 さかのぼって一月一日から適用させると、こういうことなんですか、現在作業中の通達で。
  263. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) さようでございます。
  264. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 どうもちょっと……。  そうすると、もうすでに相続が始まって、たとえば相続税開始して支払いが終わるというふうなのがありますね、こういうものの救済はどうするのですか。というのは、そういう場合に、これは相続で均分相続するために事業をやめなきゃならぬというようなのが一月以降出てくるわけですよね。これはもとへ戻らないですよ。こういうのをどうするのですか。
  265. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 先ほどの土地の評価減の規定も同様でございますが、本年の一月一日以降相続を開始したものに適用する。制度改正に伴いまして、必ず適用時期の区切りが出てくるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、その土地の評価減の規定と合わせまして、本年一月一日以降の相続開始の事案について適用する、そういうことでございます。
  266. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、相続というのは、相続が開始になってから何カ月もありますね。早くにぱきぱきとやった人たちは方法がなくなっちゃう、もう財産も処分したり事業もやめたと。ゆっくりゆっくりやっていた人はこの恩恵にあずかるでしょう。ちょっと不公平だと思いませんか。その辺は、その救済どうするんですか。
  267. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 相続税の申告は相続開始後六カ月以内ということになっております。私どもその六カ月という線を念頭に置きまして、できるだけ事前の周知も含めまして、申告される方にいま御指摘のような問題が生じないように心がけていきたいと思っております。
  268. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それは心がけていきたいじゃなくて、心がけているんですか、現在もう周知しているのか、税務署には。こういうことになるから、六カ月あるんだからもう少し待ちなさいというふうに周知しているんですか。
  269. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) これはもうすでに周知をいたしております。
  270. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、どうしてここで中小企業と大企業をこういうふうに分けなきゃならぬのか。これで半分だけよくしたと言っても半分は悪いですわね、実質的には。  これは税調の方のあれを見ますと、類似業種比準方式というふうなものでも、どちらでもとれるように小規模な会社の株式の相続については行うべきだというのを、五〇%しか見ないというのはどういうわけなんですか。大企業は全部見るんです。    〔委員長退席理事増岡康治着席
  271. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 同族会社には、中小の同族会社の場合でございますけれども、上場会社に非常に近い規模、内容のものから個人事業にきわめて類似した小規模なものまで、千差万別なものがあるわけでございます。数的に言いますと、非常に規模の小さい中小同族会社が多いわけでございますが、何と申しましても、経営と財産の所有というものが同族株主によって行われておるわけでございまして、必ずしもその上場会社と一律に同じような経営、さらにはその事業内容にはなっていない。むしろ個人経営に非常に近い実体もかなり持っておるというようなことをいろいろ考えまして、従来は純資産価額方式一本であったわけでございますけれども、収益性を客観的な物差しで反映させるという意味で類似業種比準方式を導入する、その場合はフィフティー・フィフティーにするということで改正を行おうとするものでございます。
  272. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そのフィフティー・フィフティーというのがどうもわからないんですがね、なぜ半分・半分をそういうふうにしなきゃならぬかという根拠が。というのは、たとえば大会社であれば、上場していないのでも全額類似のあれでもってできるでしょう。たとえば国土開発なんというのはたしか上場会社でないですよね。しかし膨大な資産を持っていますね。こういうのは上場してなくても、大会社であればフィフティー・フィフティーでないんですよ。そうでしょう。どうしてそういうことになるんですか。  ですから、たとえばフィフティー・フィフティーにしても、とてもじゃないけれども相続税も払えないし、分けて会社をやめようかというのが出てきますよ。あるいはまた、つい最近も日本一の相続税をお払いになるというふうなことになった大きな会社もございますね。ところが、これなんかでもほとんど大半は、その株を持っている人は、個人会社と同じように同族でみんな持っているという話ですわね。これらも含み資産も全く出てこないんです。この場合ね。なぜそんな区別をするか。  だから、いまおっしゃったように、同族会社的なもの、個人会社的なものというなら、上場されている会社の中にだってそういう的なものがあるじゃないですか。なぜそこで区別をつけなきゃならぬのですか。
  273. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 類似業種比準方式というのを若干内容にわたって御説明をいたしますが、これは上場会社の株価を一つの比準要素といたしますが、その上場会社の利益、配当、それから純資産、そういうものと、比較対照しようとする同族会社の利益、配当、純資産それぞれを比較するわけでございます。したがいまして、類似会社の上場株価だけとストレートに比準するわけで はないんでありまして、あくまでいま問題にしている会社の利益の大きさなり配当の大きさ、それから含み資産も含めまして、その資産が多いか少ないかということを比較するわけでございます。  一方、純資産価額方式というのは、完全に純資産の積み上げ計算になるわけでございますけれども、その場合に個人は完全に純資産方式で評価するわけでございますので、上場会社と個人の間をどう評価体系の中で組み合わせて連続させて物を考えていくかということを考えていきますと、おのずからその割合があってしかるべきではないかということでございます。  したがいまして、その割合としては、いろいろ御議論があるかと思いますけれども、両方の要素をイーブンに見るという意味では五〇対五〇ということになるわけでございます。
  274. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そういう調子だから、どうも税制そのものが大企業べったりだ、大企業に有利な税制だというふうなことになるんですよ。本来、憲法からいえば、法のもとに平等でなきゃならないのです。税法という法のもとで通達一本でそういうふうにいつでも変えられる。それで、そのくらいが適当だろうということですわね。はっきりした何の根拠もないでしょう。それくらいが適当じゃないかというふうなことで個人の財産に対する税がかけられる。  これは国税庁にお伺いしますけれども、一体事業の社会性というものに対する評価、これは大企業だろうが、中小企業だろうが、個人企業だろうが、それぞれあると思うんですが、どうなんですか、これに対しては。
  275. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) おっしゃいますように、それぞれの企業にはそれなりの社会性がございますが、同時に株式を通じてその会社を支配する、経営するという面もあるわけでございます。
  276. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 企業というのは、大きくても小さくても、そこで働く人がいるし、そこで生活する人がいるわけです。  これは一橋の会計学の番場教授がもう二十年ほど前にゴーイングコンサーンという説を立てまして、これはいま定説になっていますね。もう企業というのはその継続性を持っているんだと。そうすると、そういう何といいますか、純資産方式というふうなものは元来そういう企業の継続性というものを損なう非常に大きな要因になる。これを逆な立場から言いますと——農業の方ではちゃんとそれはあるんですよ、個人でも農地に対する特例が。これは企業のやっぱり社会性を認めたんでしょう。そうすると、中小企業なんかの場合はそれがなぜ認められないんですか。
  277. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 若干その制度の議論になりますので私からお答え申し上げることをお許し願いたいんですが、今回のいわゆる小会社に対する非上場株式の評価の問題でございますが、これは先ほど国税庁から御説明を申し上げましたように、従来いろいろ御議論があったわけでございますが、ただいま委員がおっしゃった企業の継続性と申しますか、収益性を加味して現状に一番即したやり方が、いま国税庁が改正しようとしておりますように、純資産価額方式と、それから客観的に株価の時価相場が立っております類似業種の株式とを併用して評価する。その意味で従前の方式よりも、委員がいま御主張になっております点に一歩前進したということはぜひ評価願いたいと思うわけでございます。  ただ、それに関連いたしまして現在農地に認めております納税猶予は、これはいわゆる事業の継続性という、いま委員がおっしゃいました会計原則のような考え方そのものからきているのではございませんで、農地は、御承知のとおり、農地法によりまして所有と経営が一体ということで、権利といいますか、農地の権利そのものに非常に処分に制約性がございます。同時に、国の政策的要請といたしまして、自立経営農家の分散を防止するということで、民法上の均分相続に必ずしもこだわった相続が行われないという観点から、農地の再投資価額という概念をつくりまして、それによって評価をして一たん相続税を納めていただく。二十年間営農を続けられましたら、結果的にその納税は猶予するということでございまして、いろいろ考え方はあるかと思いますけれども、ゴーイングコンサーンというその近代的概念そのものでもって農地について相続の特例を認めているわけではございません。あくまで政策上の要請でございます。
  278. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 政策上の要請というんですが、結局、農業の場合には、生前贈与を認めていまおっしゃったようなことが行われていますわね。そういう政策要請というのは、やっぱり農業の継続性を維持するための政策要請でないんですか。農業経営の継続性を維持するためと企業の継続性を維持するため、これは政策的な要請は同じですよ。どこが違うんですか。
  279. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 継続性を維持するという点では確かにおっしゃるとおりでございますが、もう一つ中小企業と農業の場合違いますのは、先ほど申し上げましたように、農地には農地法上通常の宅地等にない権利の制限があるということと、農業基本法によりまして経営の細分化を防止するという観点があるわけでございます。政策上の要請ということを申し上げましたのはその点でございまして、一般の中小企業とそこはやはり違うのではないかということでございます。
  280. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 実は、農業は生前贈与を認めさせる、ここまでもずいぶん長い運動の経過があるし、私たちも一生懸命やってきたんです。やってきたんだから、このことが悪いというんでなくて、こういうふうにやってきた。そしてそれと同じように、小さな事業主がいま抱えている問題が同じように出てきているんですよ。先ほど申し上げましたように、もう高齢化になってきまして、そろそろ世代交代の時期がきているんです。ところが、それじゃお店屋さん、いいですか、四人子供がいて、跡を継いだ息子が一人でやっていた、父親が亡くなったと。これは四つに分けて商売になりますか。同じことですよ。いま農村に嫁がないという深刻な問題と同じように、小ちゃな小売屋さんにそういう点で嫁さんがないといって皆非常に困っているんです。ここいら辺が非常に不安なんですよ、跡を継いでやっている跡取りが。これはやっぱり同じだと思うんですが、中小企業庁どうですか。あなた、それでいいんですか、この考え方で、農地は。
  281. 桑原茂樹

    説明員(桑原茂樹君) 生前贈与につきましては、中小企業表の中から、ぜひこれを中小企業にも認めてほしいという強い要望があることは、私どもは承知いたしております。先生のおっしゃるように、農業にあるんだから自分たちにもこれを適用してくれということでございます。  ただ、われわれとしましては、農業と中小企業の場合でやや事情が違う点はございますし、それから法律上いろいろ考えまして、生前贈与というのが果たしてどういう形で可能なのかどうか、その他いろいろむずかしい点があるわけでございますので、私ども中小企業庁としては、本件については少し検討をさしていただきたいということにいたしております。とりあえず五十八年度から今回承継税制といいますか、中小企業の承継という問題を考えまして、新しいシステムが動き始めるというのは非常に大きな一歩前進であろうかと思いますけれども、とりあえずはそういう一歩前進した改善の効果というものを見きわめていきたいというふうに考えるわけでございます。
  282. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 あんた、研究していきたいと言うけれども、おたくの研究のあれがもう出ているじゃないですか。「中小企業事業承継税制のすべて」ということで、おたくの方の税制問題研究会の専門委員の方が「ぎょうせい」というのに書いていますよね。この中で、「承継税制問題発生の背景」という中で、明らかに農地、農業における生前贈与制度の特例と対比して、これは早くそういう中小企業あるいは個人企業にもこういうものを認めるべきだということを主張しているのですよね。この方はこの会の専門委員だったんですから、この専門委員会の中でやったことですよね。それをおたくが、これから研究すると言うのはおかしいのです。検討しますといって、もう検討した結果が出ているのですよ。この専門委員には報酬でも何でも払っているのでしょう、おたくの方で。そうでないんですか。勝手にやっているんですか、これ。
  283. 桑原茂樹

    説明員(桑原茂樹君) お答えいたします。  実は、この承継税制の問題につきまして、われわれ二年ほど前でございますけれども、中小企業庁長官の私的諮問機関ということで、中小企業承継税制問題研究会というものをつくったわけでございます。ここへ大学の先生方とかあるいは中小企業関係の方々とか、その他税に明るい方々とかを委員にお願いいたしまして、ここでいろいろ研究をして、一定の結論というか答申といいますか、まとまりが出ているわけでございます。  その場におきまして、正直申し上げまして、生前贈与の問題については委員の間でいろいろ意見が分かれております。ぜひすぐ直ちに実現すべきであるという先生もおりましたし、あるいは、これはなかなかむずかしいんではないかとおっしゃる先生方もおられまして、実のところ、その具体的な明快な意見というものはその研究会では出ておらなかったというふうにわれわれは理解をいたしております。  そういうようなことで、この生前贈与の問題というのは、一方、中小企業者の中からは実現の要請があることも知っておりますので、先ほど申し上げましたように、これについて今後勉強していきたいというふうにお答えしたような次第でございます。
  284. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 実は、こういう問題で一番問題になるのは、大臣ね、土地の価格の評価なんですよね、一番問題になるのは。その評価で相続額が上がるものですからトラブルが絶えないのです。これは土地政策が悪いために土地の値段がどんどん上がるのであって、そこで事業をやっている人は余り関係ないのですよね。事業をやっている、売るのでないのですから。しかも相続のときには、もう倒れるか倒れないかというふうな、あっぷあっぷしながらやっているような小ちゃな企業でも、土地を持っているためにこういうときにはもうやめざるを得ない。  いま、そういう生前贈与の方法だとか、それから類似企業とのあれを五〇%認めるといっても、まだ五〇%は認めないのですから、もう少しきちっとしてあげないと、いま現にそういう問題でわれわれもそういう公の立場でも切実な要請を受けている。こういうのにちょっとこの法律だけじゃ対応できない、もっと突っ込んでもらわないと。しかも諸悪の根源は政府の土地政策なんですよ。土地政策の無為無策が土地の値段の暴騰になって、売り買いするような土地でないものが、相続の段階になるともう事業をやめなきゃならぬ。そうすると、そこで働いている人たちも困っちゃう。具体的な例がそこへいろいろ出ていましたけれども、実際にもう出ているのです。これらに対してもう少し何かもっと踏み込んで大企業並みにすきっとした法体系にするというふうなこといきませんかね。
  285. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 現実問題といたしまして、現在相続税の課税問題をめぐって、いろいろ議論が行われます一つの大きな原因といたしまして、ただいま委員がおっしゃいましたわが国における地価の特殊な状況があるということは、そのとおりでございます。今回御提案申し上げておりますのも、先ほど申し上げましたように、二百平米という小規模宅地に限定してではございますけれども、そういう異常な宅地の情勢を勘案いたしまして、いわば課税の特例ということで租税特別措置法で御提案を申し上げておるわけでございます。  それから、先ほど来大企業と零細企業と申しますか、対比の御議論があるわけでございますけれども、相続税の場合の評価の基本は、これは法律にございますように、資産については時価、債務についてはその時点の現況によるということでございます。したがいまして、客観的な株価の時価の相場の立っておりますものは、まさに現在、大会社につきまして類似業種比準方式で国税庁がやっておりますように、客観的な同業種の時価相場の株で評価できる、こういうことでございますが、小会社は、これはいろいろ議論があるとは思いますけれども、一番小会社の下の方にまいりますと、実は法形式としては法人格を持っておられまして、たてまえとしてはその同族株価に純資産価額が反映しておるということになるのでございますが、その実態は、実は個人と変わらないという実態があるわけでございまして、したがいまして、従来は課税の公平、バランスという観点から、そういう小規模な会社につきましては、資産と負債、純資産価額で評価するということで貫いてきたわけでございまして、評価の公平論から言いますと、それはそれなりに私は一つのやり方であったと思うわけでございます。  ただし、先ほど来委員が御主張になっておりますように、そういう小会社といえども、やはり事業の継続性、収益性を反映した評価があってしかるべきである、これも一つ議論でございます。先ほど議論になりました中小企業庁で行われました研究会では、たとえばこういった小さな会社につきましても、収益還元とかあるいは配当還元という手法評価すべきじゃないか、静態的なそういう純資産価額方式で評価するのはおかしいではないかという提案があったわけでございます。これも理屈は理屈としてそのとおりでございまして、税制調査会の小委員会でもそういう角度から議論されたわけでございますけれども、この提案の最大のネックは、小規模会社になりますと、収益あるいは配当について非常に操作可能性というものがある。客観的に収益還元という手法を使って時価が評価できるかどうかというのは非常に問題があるわけでございます。  たとえば収益をどういうふうに観念するのか、あるいはある時点配当を操作した場合に、配当ゼロというような会社について、果たして配当還元という評価ができるのかどうか、あるいはその還元率を一体どういうもので適用するのか。それから現在小会社の実態といたしまして、半分以上が形式上は欠損会社になっているわけでございますから、その時点で収益はゼロということになると、それではその会社の評価はゼロであっていいのかというと、これはなかなか問題がある。つまり静態的に見れば、資産価値として評価し直せばそれはそれなりの財産価値を持っている場合もある。そこはいろんな理屈はあると思いますけれども一つの前進として、いわば妥協の産物であるかもわかりませんけれども、とりあえず従来やってまいりました方式と純資産価額方式の併用ということで一歩を進めさせていただきたい。その課税の実態等を見ながら、今後ともまた適正な方向を模索していくという趣旨でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  286. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それじゃ従来併用していた中会社、いわゆる卸で十億以下ですか。これの取り扱いは今度どうなるんですか。
  287. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 中会社も従来三段階に規模に応じて分けておりまして、その比準の割合、先ほど小会社を五〇対五〇にすると申しましたが、中会社の一番下は、従来類似業種比準方式のウエートが〇・二五、純資産方式のウエートが〇・七五、それから中会社のちょうど真ん中のところが従来〇・五対〇・五、それから一番大会社に近いものは純資産価額の割合が〇・二五、類似業種比準方式の割合が〇・七五、こういうことでございました。したがいまして、一番下の会社に〇・五という割合を導入いたしましたので、申し上げました従来の〇・二五という区分はなくなるわけでございます。
  288. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、卸以外でたとえば十億に近いところはどうなるんですか。そっちの方は従来どおりですか。
  289. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) いま御指摘のありました資産価額なり取引の数字、規模自体は動かしておりませんので、たとえば総資産が十億以上でございますと、いままでも大会社でございましたが、これからも大会社として類似業種比準方式を 適用する、こうなるわけでございます。
  290. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうでなくて、たとえば卸売以外だったら五千万以上十億未満でしょう、中会社の定義が。これの十億に近い方の十億未満のところ辺に対する取り扱い、あるいはいままでハーフハーフだった中どころの取り扱い、これは従前どおりで変わらないのかということです、小会社の方をそういうふうに変えて。
  291. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) もう一回整理して申し上げますと、中会社で——中会社と申しますか、中小の会社で〇・五の割合が適用になりますのは、総資産価額で申しますと五億円未満の会社でございます。五億円以上十億円未満は、従来も類似業種比準方式の割合が〇・七五でございましたが、それは変わりません。十億円以上はすべて大会社として取り扱うということでございます。    〔理事増岡康治退席委員長着席
  292. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 どうもせっかくの法改正でありながら、純資産評価方式というふうなものを残しておくということ、いまの土地政策との絡みからいっても、特に中小の企業については相続のたびに問題が起こってくる、まだまだ起こる。もう少しこれはすっきりすべきだと、こう思うんですよ。税調も、これは本来どちらでも、両方取り入れるようにしたらいいということを今度の改正要綱の中で述べていますわね。どうして税調でもそういう意向が出ているのにそこのところを取り上げなかったんですか。
  293. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 税調の御答申をいただきました内容は、先ほど申し上げたとおりでございまして、私ども現行の評価体系の枠組みの中で収益性を評価上配慮するというふうに御答申をいただいております。現行の評価体系の枠組み、大中小、それぞれ段階に応じて上場会社に近いもの、個人に近いもの、その間のバランスをとりながら評価の仕組みを考えていくということから、先ほどの御議論にもございましたような配慮も加えまして、五〇対五〇の比率をとったということなんでございます。
  294. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それじゃ、きょうは、先ほど大臣が、わかっている人がわからぬ人に質問するという、そうでなくて、わからないので私は聞いているので、どうも納得できない。  もう一つ、この条項の中で小さい問題なんですが、よくわからないのでお聞きしたいと思うんです。七十七条の五第二項で農住組合の登記の、これは今度アップになっているんですよね。私は農業六法も調べてみたんですが、農住組合はよく出ていないので聞いてみたら、二年くらい前にできたというんですがね。このまず法は、おおよそ大体市街化区域内における農地と宅地との交換分合をしてということだと思うんですがね。農住組合というのは、これは一体どこにあるんですか。僕は余り聞いたことないんだな。
  295. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 具体的には主管省から御説明申し上げた方がいいのかと思いますが、いま委員が御指摘になりましたように、農住組合法ができまして、五十六年度の税制改正でこれを取り入れたのでございますが、農住組合法は、三大都市圏の市街化区域内の農家が、一方で農業を進めながら農地を住宅地等に転換する、そういうものを御一緒にやられる組織が農住組合でございまして、実際にそういう仕事を、たとえば宅地の造成とか、住宅をおつくりになる場合に、当然組合員の持っている農地の交換分合が起こるわけです。その交換分合を計画を立てて、それを知事が承認して告示をされたら、所有権の移転が行われる、こういう法制になっておるわけでございます。  現在いま手元にあります資料でできておりますのは、たしか二つ一つは埼玉県上尾市上平農住組合、それからもう一つは、大阪府の箕面市萱野第一農住組合、現実に存在する農住組合はこの二つのようでございます。
  296. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、これは税率を上げてどれぐらい税収を見込んでおるのですか。
  297. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 実は、この二つの農住組合もまだ事業を行っておりませんので、この制度が五十六年にできましてから、増収というよりも、これは実は減収になるわけでございますね。本来登録免許税の税率は千分の五十でありますのを千分の十六にしてあるわけでございますから、千分の十六にして、結果、事業が行われておりませんので、税収の実績は出ていないわけでございます。
  298. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、これはちょっとよくわからないんだけれども、税収の実績も出てないのを今度千分の二十に引き上げるんでしょう。この法律効果は何なんですか。
  299. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま申しましたように、登録免許税におきましては、不動産の移転登記の本則の税率は千分の五十でございますが、いろんな政策上の要請に適合いたしますものについては軽減税率を決めているわけでございます。たとえば中古住宅なんかを取得される場合には、現行は千分の三でございますが、そういうことで各政策要請に応じまして軽減税率の段階がいま五つか六つございます。五十八年度の税制改正に当たりまして、これは当委員会でも従前御議論がございますように、租税特別措置法をなるべく整理合理化しろと、こういう御要請がございますので、私どもといたしましては、五十八年度の現在御提案申し上げております租税特別措置法におきましては、現行の期限の参りました登録免許税の税率につきまして、それぞれ一ランク軽減割合を縮減させていただくという、いわば一律の措置を講じたわけでございます。  したがいまして、本件の場合はまだ実績も出てないわけでございますけれども、いわば税率の軽減度合いを縮減させていただいたと、こういう御提案でございます。
  300. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これは農水省にお伺いしたいんですが、これを改正するときに相談があったんでしょうと思うんですが、どういう対応をされたんでしょうね、このときに。
  301. 中川聡七郎

    説明員中川聡七郎君) 申しわけございませんが、所管外でございまして存知しておりませんが、当然のごとく相談はあったかと思います。
  302. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 出席要求の中でこのことを聞くから担当の人に出てこいと言ったはずなんだけどなあ。担当は国土庁なんですが、農水省の方も当然かんでいるので……。  実は、来られたときにも、国土庁担当だから国土庁の方から聞いてくれという話はあったんです。だけれども、私はやっぱり農業政策の一環として農住組合という制度がある以上、農業の立場から見ていかなきゃならぬと思うんですね、住宅政策の立場から見るんでなくて。交換分合になって、残った後の農地の問題はどうするんだということを実は質問したかったので、それで農水省に出てきてくれと。農水省の方だって相談受けてないはずがないし、担当ないはずないと思うのですよ。それだから、いや国土庁でなくて、聞くのはそういう方でないんだから、残った農地の問題、市街化区域内における残った農地の問題について聞きたいんだから出てきてくれと言ったんだけれどもね、きょう。
  303. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  304. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 速記を起こして。
  305. 中川聡七郎

    説明員中川聡七郎君) もとより、都市農業につきましては、都市住民に対して野菜を供給する、あるいはゆとりある緑や空間を提供するといった非常に多面的な機能を持っておりまして、現実にかなりの農家の方がなお営農を継続しているという実態もございますので、それはそれなりに私どもも営農の実態に着目していろんな施策をやっていく必要があるというふうに考えております。  それで、市街化区域の中の問題になろうかと思いますけれども、逐次市街化されていくということでございますので、農政全般の対応といたしましては、効用が長期に及ぶ土地基盤整備事業みたいな事業につきましては、原則的にやらないというようなことにしておりますけれども、当面の営農の継続に配慮しまして、野菜関係施策、あるいは災害復旧事業とか病虫害防止、そういう関連の仕事については実施しておるわけでございまして、そういう意味で安定的な、あるいは需要の非常に高い宅地の供給を計画的に進めながら、かつ営農の実態に即して営農の継続を図るという趣旨からすれば、農住法というのは非常に重要な役割りを果たすべきものであるというふうに考えておるわけであります。  なお、今回の税法改正との関係におきましては、先ほど申しましたように私、所管外でございまして直接的にお答えをすことはできませんけれども、今回の措置がいろんな特例措置といわば一律の関係で処理されている経過でございまして、いわばやむを得ないものとして対応したんではないかというふうに私自身は推測しているわけでございます。
  306. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 確かにそうだと思うんですよ。しょうがないわということで、実害ないからだと思うんですが、実は私もともとこの農住組合法というのは、いまお伺いしていてぴんとくるのは、宅地にしろといっても、どうしても私は農業をやっていくんだという人たちについては農業をやらせなきゃならぬから、そうすると、こっちの中にある農地は、交換分合で、あなたはこっちの方にまとまってもらって農業をやりなさい、こっち側だけは宅地にしてもいいという人もいるんだから団地をこしらえようと、こういうところから起こったんだと思うんですよ、ちょっといま話聞いてみているとね。  そうしますと、僕は農水省に特にお願いしたいのは、市街化区域内における農業を一生懸命やっていこうという人に対して、近所も非常に冷たいし、それから農政の中でも何か置き去りにしている感じがするんです、都市農業に対して。いまそういうことを言っていますけれどもね。特に、そういうところには固定資産税をうんとかけろというような議論も、税の立場では出てきておるので、実にけしからぬと思っておるんですがね。先祖代々農業をやってきて子供にも継がしていきたいと思うと、固定資産税をぶっかけられたらどうにもならないので、大臣にひとつお願いしたいんです。この問題に関連して、要するに農業をやっていきたいという人のために、農住組合法という法律をつくって交換分合をやって残したんです。ここにはゆめ近隣宅地並みの固定資産税をかけるというふうな発想を大蔵省は絶対に持っていない、こういうことをこの機会に言っていただけませんか。  私、東京にいまたくさんそういう農家のいることを知っているんですよ。一生懸命やっている、無農薬栽培とか。みんな非常に不安に思っているんです。これは多分言えると思うんですよ、大臣。そうするとずいぶんみんな安心するんです。だからこの機会に、この法律は何もいま出しても出さないでも関係ない、意味のないようなのがただ員数で出てきているようですが、そういう機会ですので、特にその点について大臣考え方をひとつ。いきなりむずかしいですか、どうですか。
  307. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) あるいは大臣お答えがあるかもわかりませんが、御案内のとおり、宅地並み課税の問題につきましては、土地税制との関連で税制調査会でも長年御議論のある問題でございますが、これは実は地方税でございますので、私ども国税の税制当局者が直接お答えするのにふさわしい問題かどうかということをぜひ御了解賜りたいと思います。
  308. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も答えに渋っておりましたのは、まさに地方税でございますので、正確にお答えするならば、丸谷委員のそのような御意見があったことを正確に税制調査会にお伝えするというにとどまらざるを得ない立場だと思います。
  309. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これは地方税に間違いはないんですよ、固定資産税。ところが、問題になるときは自治省サイドから出てくる問題でないんです、いつでも。むしろ大蔵とか税制調査会とか、いろんなよそから出てくるんですよ。自治省はこんなもの、固定資産税を評価してというようなことは余り考えていないんです。いや、それは無理だということをいつも言っているんですがね。  それで、最後に一つ残しておいた一番大きな問題に入りたいんです、グリーンカード。今度の措置法の中でも一番大きな問題点であるし衆議院の記録を見ましても、いろいろずいぶん議論になっているところでございます。  衆議院の記録もずっと拝読してみて、大臣はこの提案したときの所管大臣なんで、責任はどうだというふうなことが入れかわり立ちかわり質問されて、それなりに大蔵大臣は、何といいますか、責任は大変感じているということで御答弁をなさっておるので、その点についての責任論は、もう衆議院でもやり尽くしているようでございますから割愛します。本来はやっぱり私も責任論からやりたいんですが、時間の関係もありますので、責任論を抜いてやりますが、その中でただ一つ、私これだけははっきりしてもらわなきゃならないのは、この三年間延期の理由。これはわが党の塚田委員その他から衆議院で出ているんです。延期する理由は何だ、これがポイントなんですよというものがないんですかということで聞いているんですが、この点だけは微妙に答弁で外しているんです。一体なぜ三年廷期するんだ、理由は何なんだ。ほかのところはまことによく答えているんですが、ここの質問については、ずっと読んでみますと、まことに明快な答えが出てないので、これだけはやっぱりきちっと聞いておきたい。簡単でいいんです。一体この延期の理由は何なんだ、これだから延期したんだというやつをひとつ。ずっと長く答えているんですが、ちっとも答えてないんです、衆議院の記録を見ると。これだけひとつ答えていただきたい。
  310. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) グリーンカード制度につきましては、五十五年の所得税法の改正で御提案を申し上げまして成立をいたしました。五十八年の一月一日からカードの申請交付が始まり、五十九年の一月一日以降本格的実施ということで進めてまいったわけでございます。  その後、法案が成立いたしました後、実はこの制度をめぐりまして世上いろんな議論が展開されました。特に、法案成立後、まず最初に……
  311. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) できるだけ簡潔に願います。
  312. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 民間の預金と郵貯のシフト問題が起こりました。あるいは金へのシフトの問題とか、あるいはゼロクーポン債、各種のいわゆる金融資産のシフト論が起こったわけでございますが、私どもは、必ずしもグリーンカードのせいである、原因であるということは考えておりません。いまもそう思っておりますが、ただ問題は、この種の議論がグリーンカード制度と絡めて議論が行われたという事実がまず一つでございます。それからもう一つは、五十六年の八月に、いろんな経緯を経まして、与党である自由民主党の議員提案で五年延期するという法案が提案されまして、これは結局昨年末の臨時国会で廃案になったという経緯がございます。そういった経緯を踏まえまして、私ども客観的に世の中の事象を見ておりますと、特に議員提案がされました時点で、世間全般もそうでございますし、われわれ執行当局もかなりの投資を必要とするものでございますから、いろんな点を勘案いたしました場合に、いろんな意味での制度実施の準備を相当スピードを落としたという問題もございますし、世間一般もこの制度自身は果たして実施されるのかどうかという、かなりの不安といいますか、危惧が一般化した、これも否定できない事実であろうと思います。いずれにいたしましても、利子配当課税といいますのは、わが国の場合、人口のもう七、八割の方がそれぞれ金融資産をお持ち、利子配当を、所得を受けておられますので、この制度をいまのままで実施するとした場合に、やはりその法的安定性という観点から相当の混乱が予想されるということでございます。  私どもは、そういう危惧がございましたので、本年の一月十三日に税制調査会にこの問題をお諮りいたしました。税制調査会としても、従来の経緯から見て、非常に残念なことではあるけれども、法的安定性並びに混乱回避の観点から、一定期間この制度を凍結することはやむを得ない、ただし、そのことによって政府が従来とってきた利子配当の適正課税という基本的な方針を一歩も後退させてはならない、そういう前提で、凍結するのもやむを得ないといういわば御意見もいただきまして、御提案を申し上げたわけであります。  非常に長くなりましたけれども、これが凍結を御提案申し上げている理由でございます。
  313. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 同じことを衆議院でも言っているんだよ。そこのところを読んできたから本当は要らないんだ。  大臣にお聞きしたいのは、法的安定性という答弁から一歩も出ていないんです。わからないんだよ、わからないから聞くんでね。大臣ね、これは大臣が答弁しているんです、局長が答弁しているんじゃないんだよ、衆議院で。だから、ぼくは大臣に聞くんで、これは大臣が答えてくれないと困るんです。三年延期した理由は何なんだ。法的安定性というのは何なんだということがわからないんだ。法的安定性と大臣が答弁しているけれども
  314. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が法的安定性と申しますのは、いかなる制度、施策も、国民の理解と協力が得られなければならない。したがって、協力や制度への信頼、それがあって初めて円滑に運営されるという意味において、いわば未熟状態にあるということが法的安定性を欠いたと、こういう理由であります。  それからおっしゃいましたいま一つは、三年はなぜかと、こういう話でございます。私どもは利子配当課税のあり方について国会議論してもらって、そして適していただいたという前提に立ちますと、そこでその議論を踏まえて税制調査会で検討していただく、この検討はできるだけ速やかに結論をまとめていただいて実施に移すという考え方です、基本的には。そうすると、かつて五年という議員立法が出ておりましたが、五年というのは長過ぎるじゃないか、率直にそう思いました。じゃ一番短いときにどうかというようなことを考えてみますと、まず法律を通していただいた後、この国会での議論を踏まえて税制調査会で議論をしてもらう早い時期、秋ということが予測されるのかなと一応思ってみたわけであります。そうなると今度はそれに伴う予算要求をしなきゃならぬ。その予算要求とそれから執行体制の整備、こういうものを考えて、そして準備期間を考慮すれば、まあ最低三年の期間は必要じゃないかと、こういう結論に立って三年ということにいたしたわけでございます。  ただ、早くまとめていただきたいという考えはございますけれども、税制調査会には、何分これは行うべしという立場に立って長い間議論してもらって、答申をいただいて、そして国会で通してもらった法律ですから、したがって、その内容、時期についてある種の予断をもって、早くやってもらいたいという気持ちはあっても、ある種の予断をもってそれに対応するのはいけないんじゃないか、あれだけ長い時間かけて議論してもらったのを凍結するわけですから。したがって、そういう意味において三年ということが適当だというふうな結論に至ったわけであります。
  315. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 五十五年のときも、私は参議院の本会議でこの所得税法の改正に反対討論をしたんです。そのとき、グリーンカードの問題点を委員会の中でもずいぶん論議した。それに対して、私たちがいろんなこういう懸念を主張したのに対して、大蔵大臣は、いや、そういう心配はないんだと、一生懸命言っておられた。その経緯はもう経緯として、責任は痛感しておるんだろうし、申しわけないと思っているんだろうから、あえて言いません。  実は、党内では、不公平税制是正ということで、これは実施すべきだという社会党の中でも意見がありますが、私は個人としてはむしろこういう制度には反対なんです。そのときも提言したんですが、分離課税一本にして税額を——特にマル優制度の立法の趣旨から言うと、零細な預金者保護なんですから、低所得者の年金生活者だとか、いろんなそういう人たちの預金保護というのが最初の立法趣旨なんですから、その趣旨に合わなくなってきているんですね。これを三年延ばすとかなんとかいろんなことを言うより、もっと根本的に分離課税というふうなことにもう一遍メスを突っ込んで検討してみる必要があるんではないか。  たとえば、これは私の質問に対して前の渡辺大蔵大臣が、二百兆というふうに預金を見ても、六%にして二〇%の分離課税で全部税をもらうということになると、二兆五千億ぐらいのものになるという答弁をやっているのです。ですから、むしろマル優の制度の精神を生かして、たとえば五百万未満の所得の者は、年金生活で五百万以上なんてほとんどいませんから、そういう零細なこの制度の趣旨から言って救済すべきところは、税金を一遍払って銀行で証明書をもらえば、税務署の窓口に持っていかないでもいいと思うんです。町村でもこんな事務は扱えるのですよ。それを何かこの前も私がこの話をしたら、大蔵の方では、そうすると税務署のいまの人数ではとてもやれないというふうなことを言うのですが、町村窓口を利用することにすればそんなにめんどうなくできるはずなんです。やりたくないからやれないというんです。  大蔵は本質的に本来この総合課税というふうなものに対する、何といいますかな、執念というか、こういうものが大蔵の主税当局は抜けないのじゃないか。だもんだから、今度も三年延期だというふうなことで総合課税に持っていくんだ、持っていくんだと。しかし経済の実態の流れの中では、私が五十五年のときも指摘したように、それは無理じゃないか。もっときちっと税収の上がる方法で、マル優の精神を生かす方法を検討してそういうことも考えていかないと、三年延期したからといってこれがやれますか。そうすると、ますます不公平税制の形で多額の架空名儀のマル優預金というものは続いていっちまうんですよ。それをほっておく。  一説にはこういう話もあるんですよ。この制度をなくしたら、一番困るのは政治家だなんというような悪口も出ているぐらいなんですから、われわれもその一員として、これはきちんとする時期が来ているので、こういうこそくな三年延期だなんというようなことでやるべきものじゃないと思うんですが、大臣どうですか。     ─────────────
  316. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、衛藤征士郎君が委員を辞任され、その補欠として関口恵造君が選任されました。     ─────────────
  317. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、とにかく御答申をいただいて、そうして非常に苦悩する立場でありますが、私の大蔵大臣時代にこの法律を通してもらった。そうして変化してきたもろもろの事情は省略するといたしまして、ここでまさに交付申請の始まる直前まで至ったわけですね、昨年の暮れ。その時点に、たとえいま丸谷委員のおっしゃる一つの分離課税を残して、それの税率を上げて、あるいは証明書を提出して、このマル優制度の実態は残してという新しい仕組みを、ここに直ちに導入する時間的ないとまもなかったと思うんです。したがって、いまの意見、これはもちろん税制調査会で審議してもらう中に正確に報告する事項になるわけです。  こうなると、いわばこれを凍結してさていかにすべきかということを税制調査会へ衆知を集めてお願いするという立場からすると、私自身の予見はやっぱりいま吐くべき段階でもないという考え方なんです。だから国会議論等を踏まえて正確に報告するというこの役目は果たさなきゃならぬ。しかし、それに対して私の予見を持った一つの発言は差し控えて、まさにその意味においては白紙の立場で税調に御審議を可及的速やかにお願いして、心の中ではその結論が出ることを大変急ぐと、こういう立場をとらざるを得ないというふうに考えております。
  318. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 この問題もこれは五十五年に私は提言しているのですがね、そういうことも考えないとうまくいきませんよと。案の定うまくいかなかったのですよ。やるったって、これは実際問題としては、うまくいかないと言うとおりうまくいかなくなってきている。ここでまだそういうことをおっしゃっている。  たとえば同じようなことがあるんですよ。バンクディーリングの問題も、証券会社に中期国債ファンドを認めると言ったら、バンクディーリングを銀行にやらさなきゃ権衝がとれなくなりますよと。そのときの銀行局長は、前例がないからだめだと言ったんだよ。いまになったら今度やるんでしょう。  銀行局長来ていますね。当時のことを知っていますか。当時の銀行局長はそれはちょっと無理だと言った。私が五十五年だったか、中期国債ファンドの問題が出たときに、これだけ証券会社に認めたら、それは銀行の通知だとか定期だとか振替、何か銀行の方にも与えなかったら問題になりますよと言ったら、それはできないと銀行局長が答えたということを知っていますか。
  319. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 私は存じ上げておりません。
  320. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 五十五年のその当時の記録を一遍読んでおいてください。当時の銀行局長は僕にそう言ってるんだから、前例がないから無理ですと。  それで、同じように、こういうグリーンカードの問題に関連して、この預金操作の場合で、結局こういうことがどこへあらわれるか。こういうことがはっきりしないので、銀行に対する預金の吸収力が悪くなってきましたね。片っ方では、たとえば信託銀行なんかビッグなんというふうな新しい商品を売り出した、非常に利率もいい。それから証券会社は証券会社で、金融機関が発行価格で買い入れたやつを時価でもって販売して資金手当てをしている、そういうのを買って利回りよく回している。こういう問題も起きてきているでしょう。銀行局長は御存じだと思うんですがね。  こういうことというのは、三年間延期するなんというようなことをやるから、ますますそういうことに拍車をかけて、何といいますか、最近では銀行と証券会社の戦争だとか、いろいろなことを言われていますけれども金融に対する深い不信につながったら大変だという気がするんです。三年たてば何とかなるだろうということを考えないで、大蔵大臣はまだこれからも先の長いお方ですから、三年たったらもう後は野となれというようなことにならないんで、ひとつ十分考えて対応していただきたいと思うんです。  それから最後に、銀行の週休二日制はどうなるんですか。たとえば大蔵省は暮れに休むでしょう、二十八日からね。銀行は休まないんですよね。だから、官庁が週休二日でないから金融機関は全部二日にするというのはちょっと行き過ぎだとか、そんなこと言わないでね。暮れには経済の状況から言って金融機関は休めないですよ、役所が休んでも。そのかわり経済の状況で、大きなところの企業が大体週休二日制が定着してきている中で、金融機関の週休二日制というのはもっと積極的に大蔵省として進める考えはないですか。
  321. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 週休二日制問題につきましては、社会的な大きな流れでもございます。また国際的な摩擦の問題もございまして、私どもといたしましても、できるだけ金融機関の週休二日制を推進いたしたいということで、まあ陰ながら助力してまいったわけでございます。  ただこの問題は、いろんな利用者側との関係もございまして、中小企業者の方の週休二日制の状況であるとか、あるいは消費者団体、あるいは地方公共団体等々、大変利用する側との問題もございます。また金融機関の中でもいろいろその格差がございますし、あるいは機械化の進展のぐあい等の差もございます。  そういうこともございまして、これも漸進的に実現していくべきでないかということで、今回月一回ではございますけれども、八月から一回の土曜日を閉店いたしまして、週休二日制を実施するというところまでこぎつけたわけでございますけれども、今後利用者側の御理解を得ながら、また金融機関側の体制も整えながら、漸次月二回、三回というふうなことで推し進めてまいることが必要かと、こういうふうに思っております。
  322. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすれば、銀行局としては、できるだけ完全週休二日制への方向に向けて、たとえばいろいろなシステム化してきますから、そういうことの進みぐあい等を見ながら進めていくという方向であると、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  323. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 実は、本件は第一義的には労働行政の問題でございまして、大蔵省銀行行政というところの真正面からの問題ではないと思いますけれども、しかし私ども監督いたしております金融機関の営業日、営業時間の問題でございます。ただ銀行行政的に言いますと、銀行の立場及び利用者側の立場というものも十分考えながら対処していかなくちゃいけない問題でございますから、基本的には週休二日制の実現に向かって助力はいたしますけれども、一義的にそれではどの程度でどうすべきかということにつきましては、私どもといたしまして余り前面に出るわけにはいかないと、こういう状況でございます。
  324. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それじゃもう一つ。そういう点では銀行関係なんかも非常に苦しくなってきている、こういう中で、たとえばリース業だとか保険の代理業だとか、こういうふうなことは銀行業務でやれませんわね、いま。こういうふうなものの枠を広げていくという考えはありませんか。  というのは、戦前は銀行は保険の代理業をやっていたんですよ。それからさっきのバンクディーリングの問題にしても、戦前は私やったことがあると思いまして、前例あるはずだと言ったら、当時の銀行局長はないと言うのだけれども、戦前、戦時国債は銀行の窓口で扱いましたよ。それから代理業なんかもやっていたことあるんです。ですから、前例もあるんです。こういうものはおたくの方の所管でしょう。そういうものを広げていくという考え方についてはどうですか。
  325. 宮本保孝

    政府委員宮本保孝君) 金融機関の業務に関しましては、時代の変遷とともに、国民、利用者側の方も、金融機関に対しまして多様な金融サービスの提供を求めてくる時代でございます。また金融機関自体も、そういう金融のノーハウというものは十分蓄積しているわけでございますので、業務につきましては、できるだけ弾力的に対応してまいりたいと思っておりますが、ただ金融機関の場合には、預金という大切なお金を扱っている商売でございますし、そのために免許事業ともいたしておるわけでございますので、余り銀行業と関係のない業務への進出、これはまた抑制しなくちゃいけない問題でございまして、預金を集め、貸し金をする、為替を扱うという本業が大切でございますので、本業に差し支えない範囲で、かつまた金融のノーハウの範囲内でできるだけ弾力的に対応していくべきじゃないかと、こういうふうに考えております。
  326. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣ね、いま銀行のその関係に入ったんですが、局長の答弁にもありましたけれども銀行の関連業務、これについてももうだめだというふうなことでなくて、戦前にもやったことのあるようなものについては、時代の趨勢に応じて検討していくというふうな、何というか、柔軟な対応の仕方をひとつ金融政策の中でやっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  327. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほどバンクディーリングの問題等も具体的な御指摘があっておりましたが、この問題は一応の議論がある方向にいきつつあると思っておりますが、その他金融機関が弾力的に対応すべき課題については、いつでも検討を続けていなければならない問題であるというふうに理解しております。
  328. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、初めに、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について若干質問いたします。  まず、大蔵省にお尋ねいたしますが、今回のたばこ定価引き上げは、前回の値上げからわずか三年しか間を置いていないわけでございます。提案理由の中には小売定価の適正化を図るという理由も見られますが、最大のねらいは税外収入の確保ということであり、典型的な財源あさりとも考えられます。政府は五十九年度赤字国債脱却というものを正式に放棄いたしました。いま国民が望んでいるのは、どのような財政を改革していくか、立て直していくかという展望でございます。その財政改革の展望を示さないで、目先の財源対策として、一方的な都合でたばこの値上げを行うということは、たとえたばこが嗜好品だからといっても許されるべきことではありません。まず財政当局の見解をお伺いしておきたい。
  329. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今回の値上げは、いわば専売公社の経営そのもの関係があるわけじゃございません。委員も御指摘になりましたように、この厳しい財政事情のもとにあって、各般から考慮してお願いしておるところでございます。したがって、今度のこういういわゆる税外収入というものは、いわば五十六年度の赤字補てんのための繰り戻しというような特別な事情にもございますので、税外収入というものに対してずいぶん各方面に協力をいただいたわけであります。基本的にはいま多田委員おっしゃいましたように、もっと中長期の財政再建の展望を立てて、その上でこうした問題については提出してきた方が筋としてもいいじゃないか、こういう御議論を決して否定するものではございませんが、当面の財政対策としてやむにやまれず各方面にお願いした大きな一つであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  330. 多田省吾

    ○多田省吾君 最近は嫌煙権運動などがございまして、たばこの消費傾向は若干減退傾向にあるとも言えるし、また横ばいとも言えるわけでございますが、喫煙人口は相変わらず三千四百七十万人程度と言われております。まだまだ需要は高いわけです。しかし五十二年度を最後に所得税減税というものが見送られて、国民の可処分所得、実質所得はかなり落ち込んでおります。特にたばこ喫煙者にとって平均一一%の値上げというものは大変厳しい。財政事情が厳しいのはわかりますが、だからといって、一方では減税を見送る、一方では負担増を求めるというのでは、国民は納得できないと思います。特に今回は、いま大蔵大臣おっしゃったように、政府サイドの財政事情からの値上げでございまして、せめて減税がないときぐらいは公共料金の据え置きを考えるという御配慮があってもよろしいのではないかと、このように思いますが、これはいかがですか。
  331. 高倉建

    政府委員(高倉建君) 先生指摘のとおり、たばこの小売定価が公共料金であることはそのとおりでございます。また私どもとしても、二千億余の御負担をお願いするということの重さは重々感じているわけでございます。ただ、何分にも財政の状況が危機的な状況であるわけでございまして、そういう中で税外収入の見直しということを行いまして、たばこは財政専売物資という位置づけをされているわけでございますが、そういう性格にもかんがみまして、前回の定価改定、五十五年の四月でございますが、それ以降からの物価の変動、こういうものも勘案しまして負担の適正化をお願いするということから、税制調査会にもお諮りをいたしまして、法律の改正をお願いしているわけでございまして、何とぞその点の御理解を賜りたいと思うところでございます。
  332. 多田省吾

    ○多田省吾君 専売公社の総裁及び大蔵省当局にあわせてお尋ねいたしますが、今回の値上げにつきましては、専売公社に入るべき値上げ部分は特例措置として国庫に納付されるわけです。本来なら専売内部留保あるいは減価となるべきところが、この部分は五十八年、五十九年度にわたって特例措置として国庫納付されるということになります。その結果、特例措置がない場合に比べますと、公社経営の赤字到来期は早くなると思われます。そうなりますと、五十五年度の定価法の改正によりまして導入された価格法定制緩和措置によりまして、大蔵大臣の認可による値上げ措置も、特例措置がない場合に比べまして早くなる可能性が出てきますが、これをどう考えますか。
  333. 長岡實

    説明員長岡實君) たばこ事業の損益の見通しにつきましては、今後のたばこの消費の動向あるいは物価の動向などにつきまして、なかなか予測がむずかしい面もございまして、いまのところはっきりとしたお答えは申し上げかねるわけでございますけれども、国内の紙巻たばこの販売数量を五十七年の実行見込み程度、大体三千百億本ぐらいの横ばいに推移すると見込みまして、かつ現在程度の物価上昇を織り込んでいろいろと試算してみますと、今回の定価改定をしない場合でも、昭和六十年ごろには公社の経営上の必要から値上げが必要となるのではないかという試算をしておるところでございます。  今回値上げが行われることになるわけでございますが、六十年度には、例の特例納付分、一本三十四銭に当たる特例納付分が公社に帰属することになりますため、六十年度には公社の損益状況は改善されることになるわけでございます。したがいまして、六十年度に値上げを行う必要もなくなるわけでございます。  その後の値上げの時期については、これもなかなか確たることを申し上げにくいのでございますが、六十二年ごろに再び値上げが必要となる可能性もあるのではないかと考えております。しかし、公社といたしましては、極力値上げの時期を先に延ばしますように努力をするつもりでございます。  御質問の今回の値上げによって次の値上げの時期が早まる可能性があるのではないかという点につきましては、値上げに伴う販売数量の減少等によりまして、公社の損益を悪化させる面はございますにしても、公社としては、コストダウンや販売努力によって損益の改善に努め、極力値上げの時期を先に延ばすように努力いたしたいと考えております。
  334. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵省はいかがですか。
  335. 高倉建

    政府委員(高倉建君) ただいま総裁からもお答え申し上げましたとおり、基本的には、現在推定をいたしますと、今回の定価改定を行わなくても、六十年あたりには公社の損益の理由からくる定価改定が必要となるのではないかと思われるわけでございます。  一方、今回定価改定をいたしまして、しかも五十八、五十九年の両年度は、そのうちの本来公社に帰属すべき一本三十四銭というのを特例として国に納付をいただくことになっておりますから、これは二年間の特例措置として行うわけでございまして、六十年度になりますと、本来公社の取り分であるものは公社に帰属するようにいたしておりますので、そのために六十年度における公社の損益はかなり大幅に改善をいたしまして、定価改定なかりせばとした場合にも、予測されました六十年度ごろの値上げというのは避けられる、こういうことになろうかと思っております。
  336. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、行政改革の観点から、専売公社総裁及び大蔵省当局に御質問いたしますが、既定の専売納付金に加えまして、今回値上げによって公社に入る部分を特例措置として国庫に納付させるということは、徴税機関としての役割りをいままで以上に専売公社に求めるということになりまして、政府が尊重すると言っております臨調答申にも反するのではないかと、このように考えられます。  昨年七月に出された臨調の基本答申におきましては、専売公社は、当面、特殊会社、その後に民営化という線が打ち出されておりますが、答申の根底にあるのは、専売公社も含めて三公社の政府関与できる部分をできるだけ排除するということであり、とりわけ専売公社につきましては、徴収機関からの脱却を求めていると考えております。としますと、今回の値上げ、それから専売納付金の特例措置というものは、臨調で言ういわゆる行政改革方針と矛盾するのではないかと考えますが、この点はどう思われますか。
  337. 長岡實

    説明員長岡實君) 臨調答申の中での専売公社の改革については、ただいまおっしゃいましたような内容になっておりまして、たばこ事業主体として厳しい経営環境を乗り越えていくためには、一層企業性を発揮させるために、公的関与は必要最小限度にとどめるような提言が行われておりますし、財政収入との関係では、たばこ消費税制度への移行を提言し、この制度のもとで財政収入の安定的確保を図ることを期待しているというところがうかがわれるわけでございます。  こういった点につきましては、私どもも目下鋭意将来の方向に向かってどのような制度の改善等が望ましいかということについて詰めておりまして、関係方面との意見調整も行っている段階でございますが、今回の措置は、財政の危機的な状況にかんがみまして、税外収入を何とか確保しなければならないということの一環として、たばこの財政物資という性格にかんがみて特別に行われた措置でございまして、臨調答申とは直接は関係があるものではないというふうに理解をいたしております。
  338. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、総裁遅くまでありがとうございました。  大蔵省にお尋ねいたしますが、たばこをめぐる経済摩擦解消の一つといたしまして、別途提案されております関税暫定措置法の改正によりまして、たとえば紙巻たばこは現行関税三五%が従価換算で二〇%まで下がることになりますが、これによってどの程度経済摩擦が解消されると考えておられるのか。また従量と従価を組み合わせている理由はどの辺にあるのか、お答えいただきたい。  また、アメリカがたばこ市場の開放を求める根本にある考え方は、ヨーロッパなどでアメリカのたばこシェアがほぼ二けたを超えているわけでございます。それに対しまして、日本ではわずか一・五%程度しかありません。その大きな理由は、わが国のたばこ専売制度に問題があるからであるというものではありませんでしょうか。としますと、たとえ関税部分を下げたとしましても、アメリカ等の日本に対する市場開放要求がおさまるとはとうてい思えません。この問題に対する政府考え方及び今後の対応策について御見解を承りたい。
  339. 松尾直良

    政府委員(松尾直良君) このたばこ関税問題は、いわゆる日米貿易摩擦の中で非常に大きな問題の一つでございまして、米国側にとりましては最大関心品目の一つであったわけでございます。  今回、三五%から従価換算二〇%という米国並みの水準に思い切って引き下げることを、先生ただいま御指摘ございました関税定率法並びに関税暫定措置法の一部改正でお願いをしておるわけでございますが、このような米国並みに思い切って引き下げるということにつきまして、レーガン大統領初め米国政府当局者は非常に高く評価をいたしておりまして、昨年来のいわゆる摩擦問題の鎮静化に非常に大きく資しておるというふうに私ども判断をいたしておるわけでございます。  次に、従軍従価併課方式をとったのはどういうわけかというお尋ねでございますが、アメリカのたばこ関税もこのような併課になっております。従量税、従価税それぞれの特質があるわけでございますが、短期間の価格変動に対して国内産業を保護するときには、従量税というのは非常に有効な手段であるわけでございます。為替レートが非常に短期間に変動するというような事情もございますし、今後米国側のたばこの出し値がどうなっていくかというようなことにつきましては、なかなか予測は困難でございますけれども、短期間に価格が下がることによって関税が結果として低くなるというような事態に備えるためには、やはり従量税を導入した方が適当ではなかろうか。こういう観点から従来の従価一本にかえて従量従価の併課ということを御提案しておるわけでございます。
  340. 高倉建

    政府委員(高倉建君) 米国がわが国のたばこ市場について、いろいろ広範な不満といいますか要請を示していることは先生指摘のとおりでございます。ただ、国内制度の問題になりますと、これはそれぞれの国のいろいろな政策判断が入るわけでございまして、譲るべきところもありますし、譲ることができないところもあろうと思います。  ただ、米国側の当面一番大きな関心は、何といってもたばこの流通制度についてでございまして、特にただいま関税局長からも御答弁申し上げたとおり、最大の関心事は内外の製品の価格差ということであるわけでございます。これにつきましては、今回の関税率の引き下げによりまして、いずれにいたしましても、程度は確とまだ申し上げることはできませんが、内外製品間の価格差は縮小の方向に向かうと予想されるわけでございます。  さらに、今回の一連の措置の中で、輸入品の取り扱い店舗の数の拡大ということにつきましても、具体的な実施の店舗を決定しているわけでございます。たばこという商品は、その商品の特性から見まして、嗜好性とか習慣性といいますか、そういうものが大変強いわけでございまして、これらの措置によって具体的に外国のたばこのシェアがどの程度になるかということを予測することは、これはなかなかむずかしいことでございますけれども、これも先ほど関税局長から御答弁しましたとおり、今回の一連の措置は、アメリカ側も高く評価していると私どもは理解しておるわけでございます。  なお、外国たばこの流通制度をどうするかという問題がもう一つあるわけでございますが、これは国内におけるたばこ産業のあり方と密接に関連をいたしております問題でございますので、今後専売公社の改革問題を検討します際に、その一環として検討を進めてまいりたいと考えているわけでございます。
  341. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣、専売公社の行革について一点お尋ねしておきたいと思います。  昨年七月の臨調基本答申を受けまして、政府は昨年九月二十四日の閣議で行革大綱を決定され、専売公社の改革法案を今国会に提出される方向であったと聞きますが、その進捗状況はどうなっておりますか。  この二月の衆議院の本会議での御答弁では、鋭意検討を進めていくという答弁がなされておりますけれども、三月十七日の日本商工会議所総会で中曽根総理は、国鉄法案なんかについては大変積極的な御意見をお述べになったんですけれども、この専売公社の改革案等については何ら触れておられないということで、今国会の提出を断念されたのではないかという報道もなされているわけでございますけれども大蔵大臣としてはどのように認識されておりますか。基本答申に示された民営化構想につきましては、与党内にも異論があると言われておりまして、大蔵大臣も自民党の議員さんのお一人でございますから、しかし基本答申尊重という中曽根内閣の重要な一員であられますので、その点どのように改革を進めていこうというお考えか、お聞きしておきたいと思います。
  342. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいま御指摘になりましたように、専売公社の改革問題については、行革大綱に沿ってこれに対処するということは私どもに課せられました大きな使命でございます。  そこで、いま日商総会での御指摘がございましたが、その問題は取り方によって違う方もございます。しかし政府・自由民主党行政改革推進本部常任幹事会、これにおきまして関係者の出席を求めながら調整を進めることとされております。大蔵省、専売公社におきましても、いわば事務的には鋭意検討をしているところでございます。  具体的検討に当たりましては、御指摘がありましたように、葉たばこ耕作者の取り扱いの問題、そして小売人の取り扱いの問題等、大変影響するところの大きい問題がございますので、慎重な配慮が必要な問題でございます。一方、税制、いわゆる納付金の問題のあり方等もございますので、それこそ関係方面と十分この意見調整しながら進めていかなければなりません。その上に、私ども立法技術的にも多くの問題がございますので、取りまとめにはまださらに時日を要すると考えられますものの、いまいわば完全にギブアップしてしまったということではなく、やはり行革大綱に沿って鋭意努力をしていかなきゃならぬ問題でございます。  民営構想についてでございますが、基本的には企業性の発揮が可能なものであらなければならないわけでございます。これは御指摘されておるとおりです。しかし同時に葉たばこ耕作者への影響等を十分配慮する必要がございますので、これは率直に言って、営農という側から見れば農政の問題でありますし、それから専売の側から見ますならば、葉たばこ専売という問題でもございますので、これらの十分調整を図りながら慎重にこれから検討をしていく。実際問題、こうして国会へ出ておりましても、気にかかっております問題の大きな一つでございます。
  343. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、私は租税特別措置法改正案についてお伺いしたいと思います。  今回の改正案では、五十八年度ベースで見ますと、増税と減税がともに行われておりますので、それを相殺しますと九十億円の減税となります。国民の間には強い税に対する不公平感が高まっているときでございます。この租税特別措置法という政策税制面で不公平を是正するためには、当然増税であるべきだと思うのでありますけれども、結果的には減税になっているということは、ますます税に対する不公平感が増大するものと思われますけれども、これはどうお考えですか。
  344. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) お答え申し上げます。  ただいま提案申し上げております租税特別措置法、整理合理化並びに新しい措置の増減収額のネットで九十億円の減収になっておるというのは、御指摘のとおりでございます。  ただ、御理解を賜りたいと思いますのは、租税特別措置法につきましては、租税特別措置のうち企業関係の特別措置につきましては、五十一年度以降累年にわたりまして縮減合理化の努力を一貫して続けてまいっております。現に五十八年度におきましても、項目数で申し上げますと、整理合理化の割合は四八・六%、前々年度に比べましても遜色のない水準になっておるわけでございます。  ただ、このように累年縮減合理化をしてまいったものでございますから、特に企業関係租税特別措置の合理化の余地というものは、近年著しく狭まってきております。しかしそうした中にありましても、政策の意義の薄れたものとか政策の効果に疑問のあるもの等につきましては、五十八年度におきましても、精力的に整理合理化の努力を払っているところでございまして、たとえば価格変動準備金の廃止年度の繰り上げとか、各種の特別償却とか、準備金の縮減を図っておるところでございます。  同時に、そういう努力を通じまして縮減合理化だけで平年度二百二十億円、初年度百四十億円の増収効果があるわけでございますが、ただいま御指摘のありましたように、結果的に九十億円の減収になっておりますのは、一つは、困難な財政事情のもとではございますけれども、精いっぱいの措置といたしまして、中小企業の設備投資促進のための特別償却の手当てをいたしました。これで初年度二百二十億円の財源を使っております。またもう一つ住宅建設という観点から住宅取得控除の拡充の措置を講じております。  この二つによりまして、政策的な措置によりまして、結果的に九十億円の減収が生じておりますわけでございますけれども、整理合理化の努力というのは引き続き進めておるところでございまして、五十八年度に至ってこれが逆行しておるというふうに私どもは考えていないわけでございます。御理解を賜りたいと思います。
  345. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は減税の部分は反対というわけではないわけです。しかし、不公平是正のための増税が少ない結果、結果的には、合わせますと減税九十億円ということになっているわけでございまして、その辺が納得できないと申し上げているわけです。  税制調査会は、各種引当金の繰り入れ率等について実態に応じて常に見直すべきであるという見解を述べております。ところが、五十八年度改正で実現を見たのは、いつも言われるとおり、法人税法の中の金融機関の貸し倒れ引当金の繰り入れ率の積増停止措置を若干縮小しただけだということになりまして、抜本的見直しではないわけです。各種引当金について早急に実態に応じた見直しを行うべきではないかと思いますが、大蔵大臣はこの点どう考えますか。
  346. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる租税特別措置という問題につきましては、これは御指摘どおり、いつでもこれに対しては検討を継続していっておかなければならぬ問題であると、そういう認識に立っておりますので、各種引当金制度そのものを見ますと、いわゆる法人税の課税所得を合理的に計算するために設けられたものでありまして、制度そのもの自体が政策税制であると、こういうことは必ずしも適当ではないとも思われますけれども、繰り入れ率等については、おっしゃいますように、実態に応じて見直していくということが私どもの基本的なスタンスであります。
  347. 多田省吾

    ○多田省吾君 内容に入ってまいりますが、主な減税効果を持つものとして、住宅取得控除の拡充による十億円と、それから中小企業の設備投資促進措置の導入による二百二十億円の減収が見込まれております。    〔委員長退席理事増岡康治着席〕 このうち、住宅取得控除についてその改正内容を要点をおっしゃっていただくと同時に、この場合一万七千円の定額控除を廃止したということでありますけれども、これによって、民間住宅ローンを利用しない者にとっては、住宅取得控除の適用が受けられないことになりますし、また年間返済ローンが四十五万円以下の人にとっては、いろいろ計算しますと、控除額が少なくなることになりますけれども、この辺大蔵大臣はどのように理解されておりますか。
  348. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 住宅取得控除につきましては、ただいま御提案申し上げております租税特別措置法の五十八年度の改正におきまして、ただいま御指摘がございましたように、現行の定額控除一万七千円を廃止いたしまして、それによりまして生じます財源等を十分に活用する観点から、住宅取得控除をいわばローン控除に純化する、民間ローンを利用して住宅を御取得になる方についての税額控除に純化するという考え方に立っておるわけでございます。したがいまして、ローン控除の控除率現行七%を一八%に引き上げますと同時に、税額控除の限度額五万円から十五万円、これは三年間の税額控除の措置でございますので、最高の人は三年間で四十五万円の税額控除を受けられるということでございます。  それからもう一つは、従来、中古住宅を取得する場合に、この住宅控除を受ける要件をかなり厳しくしておったわけでございますが、五十八年度におきましては、従前の譲渡者要件と申しまして、もとの持ち主が三年以上所有し、かつ二年以内居住していたものに限るということになっておったわけでございますが、この要件を一切廃止することにいたしまして、したがって、五十八年四月一日以降、居住の用に供せられる住宅を取得する方につきましては、不動産業者の買い取り仲介を経て中古住宅を取得される場合にも適用があるということでございます。  そのほか、取得者の要件といたしましても、前一年以内持ち家に居住していた人は除くというのが従来の要件でございましたけれども、こういう要件も今回は廃止するということにいたしております。  それから建築後の経過年数でございますが、いままで一律新築後十年以内の住宅に限るとしておったわけでございますが、主としてマンション等を念頭に置きまして、耐火構造住宅の場合は、新築後十五年以内のものでも適用の対象とするというふうな緩和の措置を講じておるわけでございます。  この結果、先ほど申しましたように、民間ローンを利用して住宅をお建てになる方にとりまして は、実質上金利負担の軽減という効果を通じまして、住宅建設の促進に資する効果を私どもは期待をいたしておるわけでございます。
  349. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、後の方の質問ですね。民間住宅ローンを利用しない者にとっては、住宅取得控除の適用が受けられないことになる。  それからもう一点は、年間返済ローンが四十五万円以下の人にとっては控除額が少なくなる。この二点をどう考えますか。
  350. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) その限りにおいては、委員指摘の問題はあろうかと思いますが、冒頭に申し上げましたように、今回の措置は、自己資金だけで住宅建てる人よりも、民間金利の要るお金を借りて家を建てる方に恩典を集中するという一つ考え方に立っております。  それから一万七千円を廃止いたしたものでございますから、その返済額が四十五万円以下の方にとっては、御指摘のような問題は起こりますけれども、私ども建設省の民間住宅資金の実態調査等を見ましても、大体現在平均の年間返済額が八十万円前後でございますので、普通の民間ローンを借りて家をお建てになる方は、今回の住宅取得控除の恩典に十分浴されるわけでございまして、返済額が比較的少ない方についてはそういう問題も起こりますけれども、大局的に見て、ローンの度合いの多い方にひとつ恩典を厚くしようというのが私ども考え方でございます。
  351. 多田省吾

    ○多田省吾君 われわれは、せめて減額については歯どめをかけていただきたいと思ったわけでございますが、今回の措置によりまして、大蔵省では一体どの程度住宅建設促進の効果があると考えておられますか。
  352. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これも計数的に申し上げるのは非常にむずかしい問題でございますが、先ほど触れました建設省の民間住宅建設資金の実態調査で典型的なケースについて計算いたしますと、今回の措置によりまして三年間で金利の軽減効果が一・七二%でございます。今回の住宅金融の引き上げの措置と相まちましてかなりの効果が出るのではないかということでございます。  私どもこれによってどれだけの効果が起こるかというのは、税制当局として数字をもって申し上げるのはなかなかむずかしいのでございますが、所管省である建設省の事務当局内部では、非常にうまくいけば一万戸ぐらいの建設効果はあるのではないかというふうに分析されておるということを聞いております。
  353. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は現在の状況を見ますと、サラリーマンの賃金上昇率が低くなっている現在、それを大幅に上回る地価あるいは建設資材の値上がりがございますので、そういうもとではローン返済面で若干有利になったとしましても、さほどの効果は得られないのではないかと危惧するわけです。ですから、地価抑制について税制面だけではどうしても限界があると考えざるを得ません。この辺大蔵省はどう考えておりますか。
  354. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 先ほど申しましたように、三年間で最高四十五万円、これは税額控除でございます。私どもいま五十八年度の歳入見積もりで、給与所得者の一人当たりの平均給与収入が三百六十五万円、その場合標準四人世帯の税額に換算いたしますと、十二万六千円でございまして、これと比較いたしましても、三年間で四十五万円、年間十五万円の税額控除ということは、平均的な給与所得者の世帯を頭に描きまして、これからローンで家をお建てになるという方々にはかなりのインセンティブになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  355. 多田省吾

    ○多田省吾君 建設省にお尋ねしますが、過去五年間の住宅建設についての動向を、公的住宅民間住宅とに分けまして、その件数を明らかにしていただきたい。特に昭和五十七年度の着工件数はどの程度になる見通しなのか、また昭和五十八年度はどの程度を見込んでおられるのか、明らかにしていただきたい。
  356. 内藤勲

    説明員(内藤勲君) 過去五年間の公的、民間住宅の建設状況ですが、公的資金による住宅の建設につきましては、五十三年度が五十七万戸、五十四年度が六十一万戸、五十五年度が五十四万戸、五十六年度が五十四万戸、五十七年度は、五十八年一月までの累計でございますが、五十万戸という状況でございます。  一方、民間資金による住宅につきましては、昭和五十三年度が九十三万戸、五十四年度が八十七万戸、五十五年度が六十七万戸、五十六年度が六十万戸、五十七年度はやはり五十八年一月まで、ことしの一月までの累計でございますが、四十八万戸というところでございます。  それから五十七年度、今年度と来年度の見込みでございますが、五十七年度の住宅の着工戸数につきましては、五十八年一月までの累計で、公的、民間両方合わせまして、九十八万戸ということでございますが、この数字は前年同期に比べまして、一万七千戸、約一・八%の増ということでございますので、このまま推移しますと、昨年度は百十四万戸程度でございましたが、今年度は百十五万戸程度ということではないかというふうに考えております。  それから来年度、五十八年度につきましては、その住宅建設を取り巻く環境は厳しいものがあるわけですが、先ほど大蔵省の方からも説明がございましたが、五十八年度につきましては、税制面では住宅取得控除の大幅な改善、それから中古住宅に関する税制の改正、それから金融面では住宅金融公庫の個人住宅建設の無抽せん体制の維持とか貸付限度額の引き上げ、そういったことを考えておりまして、五十八年度におきましても、五十七年度並みの住宅建設水準は確保できるのではないかと考えております。
  357. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣にこの際、所得控除方式と税額控除方式の二つについて、どの方が望ましいかということについてお尋ねしておきたいんです。  住宅取得控除制度は税額控除方式をとっておりますけれども、昨年住宅貯蓄控除制度が廃止されております。残る税額控除というものは、この制度と配当控除制度、外国税額控除、これだけであると思いますが、これでよいのかどうか。  また私は、控除方式としては、所得控除よりも税額控除の方が担税力に応じた税負担を求めるという課税原則に沿うものでございますので、所得控除方式がいまたくさんございますが、それを税額控除方式に移行することが税負担の公平に合致すると思いますけれども大蔵大臣、どう思われますか。
  358. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) まず事実問題を私からお答え申し上げたいと思います。  税額控除は、現在わが国の所得税制の中で、いま委員が御指摘になりましたもの三つが代表的なものでございます。ただ、事業所得者の場合は、このほかに租税特別措置法で試験研究費の特別税額控除、それからもう一つ、これは三年間の時限的な措置でございますが、省エネルギー設備等を取得した場合の税額控除がございます。しかし、代表的なものは、ただいまお挙げになりました住宅取得控除と配当控除と外国税額控除でございます。  それから所得控除がいいのか税額控除がいいのかというのは、これは税制の議論として大変議論があるところでございますが、最近五十五年に出ました政府税調でもこの御議論をいただいております。所得税の物の考え方といいますのは、理屈といたしましては、限界効用逓減という考え方がございまして、その考え方から一定の方法で出てまいります担税力といいますか、課税標準に累進税率を適用する。これが一番公平な税制ということになっておりまして、その場合、基本的な課税標準を計算する過程におきまして、まず基確的な非課税部分はむしろ所得控除で控除する、それに累進税率を適用するというのが理論的でもあるし、非常にわかりやすいというのが、五十五年にいただいております税制調査会の御答申の結論でございます。  これは主として人的控除について議論されました経過でございますが、ただいま先生指摘になりましたように、その物によりましては、必ずしも所得控除によらず税額控除によりました方が、税負担の公平あるいは適正な負担を求める意味でよい場合もあるわけでございまして、現にそういう意味で税額控除もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、今後とも、所得控除を基本としながら税額控除というものをどういうふうに取り入れていくかという方向で検討が進められるべき問題と考えております。
  359. 多田省吾

    ○多田省吾君 今回の中小企業の設備投資措置の導入につきまして、今回の改正で二百二十億円の減収を見込んでいるわけでございますが、過去に行われた産業投資促進税制は税額控除方式をとったわけでございますが、今回そういう方式をとらなかった理由をおっしゃっていただきたい。また、過去五年間の平均投資額を超えた部分だけに三〇%特別償却を認めた理由は那辺にありますか。
  360. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) この中小企業の設備投資の促進税制の問題につきましては、実は昨年秋景気対策が問題にされました以降、通産省当局とわれわれの間でいろいろ議論を重ねてきた問題でございます。  当初通産当局から、税額控除と特別償却のいわば選択というかっこうで政策が提案されたことは事実でございますが、税額控除といたしますと、結局、中小企業の場合年間二十数兆円の投資がありまして、しかもこの税制によってどの部分がどれだけふえたかというのがなかなか判定しにくいという問題もございます。特に、税額控除でございますと、これは絶対免税ということで大変な財源を要するということがございます。  したがいまして、この非常に厳しい財政事情の中で最小限の財源をもってどれだけの効率のいい制度が仕組めるかということで、私ども通産省当局と鋭意議論を重ねました結果、一つは、ただいま委員が御指摘になりました過去の幾つかの投資促進税制の実績がぼつぼつ出てまいっておりますが、その実績を見ますと、むしろ中小企業の場合は、大企業と違いまして、特別償却を選択する割合が非常に高いわけでございます。これに着目したことが第一点でございます。  それから第二点は、何しろ非常に窮屈な財源のもとでこの税制を仕組むといたしますと、過去五年間の平均投資額というものを一応当該企業ごとに出しまして、それを超える部分が実はこの税制によってフェーバーを受ける部分ということで、企業が自発的に投資をされると、その部分について特別の償却を適用するという考え方も十分成り立ち得るのではないかということで、非常に新しい制度の試みでございますけれども、五年間の平均投資額を上回る部分に限定いたしまして特別の手厚い特別償却の割合を適用するという制度といたしたわけでございます。
  361. 多田省吾

    ○多田省吾君 通産省にお尋ねいたしますが、いま景気低迷の一つの要因は、申すまでもなく、中小企業の設備投資が低調であることでございます。中小企業の設備投資促進税制を強く通産省は要請してこられたわけでございますが、当初の原案はどういうものであったのか、また今回の改正案について通産当局は中小企業の設備投資意欲を大いに喚起できると考えておられるのかどうか、その辺お伺いしたい。
  362. 桑原茂樹

    説明員(桑原茂樹君) お答えいたします。  私ども通産省が、昨年暮れでございますけれども、中小企業の設備投資促進のための措置として大蔵省に持ち込んだ案でございますけれども、ただいま主税局長からもお答えがありましたけれども、私どもとしては、制度として一〇%の税額控除あるいは四〇%の特別償却の選択適用ということでお願いいたしました。対象としては、百十万円以上の機械、それから建物が入っておったわけでございます。それから中小企業のみならず、中小企業者に機械をリースする業者、リース業者も対象にしていただきたいというようなことでお願いをいたしておったわけでございます。  で、今回の措置につきましてその効果でございますが、これでどの程度中小企業の設備投資が増加するかというものを正確にお答えするのは非常にむずかしいわけでございます。非常に大胆な仮定を置きまして考えますれば、五十八年度には約一千億円余りの新しい投資がこの新しい税制上の措置により追加されることになるのではないかという、一応の試算がございますが、いずれにしても、われわれとしては、中小企業者にこの新しい措置についてよく知ってもらい、要するにわれわれがよく周知徹底し、一人でも多くの中小企業者がこの制度を使うことによって投資を促進するというようなことになるように努力していきたいと思っておるわけでございます。
  363. 多田省吾

    ○多田省吾君 三月十五日で五十七年度の確定申告が終了したわけでございますが、その申告状況は、還付申告が激増したと報道されておりますが、国税庁は現在わかっている状況をおっしゃっていただきたい。
  364. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 五十七年分の所得税の確定申告は三月十五日に終了したわけでございますけれども、現在提出されました申告書につきまして、所得、税額などの計数を全国の税務署で整理、集計しておるところでございます。例年のことでございますが、確定申告の結果は、各税務署ごとの計数を三月末日の現在で取りまとめまして、国税局を経由して国税庁に報告をするということになっております。    〔理事増岡康治退席委員長着席〕 全国の計数がまとまりますのは四月の下旬ごろということでございますので、いまの時点では本年の確定申告状況につきまして具体的に申し上げるまだ段階ではございませんので、御容赦いただきたいと思います。
  365. 多田省吾

    ○多田省吾君 しかし、還付申告も含めて、確定申告の数が五十六年度と比べてどうかという、その程度は言えるんじゃないですか。
  366. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 最近の傾向といたしまして、還付申告が確かに年々増加してきております。本年もきわめて限られた範囲で私ども見聞したところでございますけれども、やはり還付申告者が若干ながら増加しておるということ、還付申告者を含めまして、税務署に相談等のために来署されておる数がふえてきておるということを聞いております。
  367. 多田省吾

    ○多田省吾君 私どもは、確定申告のかなりの部分が還付申告であると聞いております。確定申告の混乱を防ぐ意味から、医療費控除など比較的年末調整で対応しやすい調整は年末に移してもよいのではないかという意見もありますが、この点どう考えますか。
  368. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 御提案でございますが、ただいま年末調整で源泉徴収義務者にやっていただいておりますのは、たとえば社会保険料とか生命保険料のように、金額の領収証がありまして、源泉徴収義務者で大体画一的に年末調整の場合処理していただけるものは、なるべく年末調整にお願いするという制度になっておるわけでございますが、医療費の場合は、たとえばその医療費控除に該当する医療費であるかどうか。たとえば整形美容の医療費は医療費控除の対象にならないとか、いろんな微妙な認定の問題がございまして、そういうものを一々源泉徴収義務者にお願いするというのもかえって事務が繁雑になりますし負担もかけるということで、医療費控除とかあるいは雑損控除のような、支出ごとに認定を要するようなものにつきましては、確定申告のときに税務署へ出していただきまして、税務官署でこの認定を行うということになっておるわけでございます。  したがいまして、いま直ちに年末調整に医療費控除を持ってくるのがいいのかどうかというのは、私どもは率直に言いましてむずかしい問題があるとは思いますが、ただ御提案のように、事務執行当局の事務負担の軽減あるいは納税者の事務負担の軽減等も含めまして、この辺の問題、事務効率化の観点から今後どういういい工夫があるのか検討すべき問題であるという問題意識は持っております。
  369. 多田省吾

    ○多田省吾君 次にグリーンカード制の三年凍結問題についてお伺いします。  利子配当所得の分離課税は、税の不公平の中では最も大きいということで、与野党一致して総合課税をするための条件整備として、政府みずからが提案し、法制化し、そしてグリーンカード制を制定し、法律、政令までもつくって、そのための施設等も何百億もかけて着々と整備してきたわけでございます。  今回三年間凍結を打ち出してきたことは各方面から大きな非難が上がっているわけです。先ほども議論がございましたように、当初は自民党の議員立法でございましたが、今回は政府提案に切りかえた。大蔵省は、この税収不足の状況から見て、グリーンカード実施については大変積極的だったわけです。われわれも当初は二、三の点で、たとえばプライバシーの問題等で反対しまして、それに対して大蔵大臣からは絶対心配ないのだということで、賛成に回った経過もございます。  ですから、他に不公平税制の是正のためのりっぱな措置があるのなら別ですけれども、それがない現在、このグリーンカード制を凍結するということは大変疑問だと思います。そして、前渡辺大蔵大臣もこの席で、もう絶対やりたい、やりたいと、局長さんも一緒におっしゃっていたわけです、立場上、そうおっしゃったんでしょうけれども。国民から見た場合は、一体何を考えているんだということになるわけです。心配なのは、他の不公平税制是正にも大きなブレーキになるんじゃないか、もっと大蔵省は毅然たる態度をとれなかったのか、非常に残念でございます。  凍結の理由として、いま二点挙げられたわけでございますが、私は三年以前にこの凍結を解除する可能性というものを強く求めたい。実施の体制はできているのですから、無理して三年延ばさなくても、三年以前に凍結解除したらどうかと提案しますが、大蔵大臣どう考えられますか。
  370. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは御指摘がありましたように第九十一回国会で成立さしてちょうだいしたものです。今日までの推移を見ますと、残念ながら、長い間定着しました利子配当課税制度に大変な変革をもたらすものでありますだけに、さまざまな議論が行われました。国会で、いま多田委員指摘のように、プライバシー問題等、それが法律が通過した後もなお大変な議論を巷間行われたわけでございます。必ずしもその責めに帰するとは思わないような郵貯とか、金(きん)とか、そういうシフト問題も起こってまいりました。そうなりましたところへ、昨年八月、いわゆる五年延期法案が議員立法されて、そうしてこの前の臨時国会におきましても、ここで苦しんで答弁をいたしましたが、最終日の十二月二十五日には廃案が確定した。  そういうことになりまして、いかなる制度、施策も、国民の協力と理解を得ることなくてこれを実施に移すことはできないという意味において、まさに法的安定性、そういうことでこれを一定期間凍結せざるを得なかったということであります。政府としても、これをとにかく通していただきましたならば、それこそ適正公平な利子配当課税の実現という基本方針は変わっておりませんので、そのあり方については税制調査会で、本委員会においての御議論等をも踏まえて、急いで結論を出していただきたいというところでございます。  三年といたしましたのは、気持ちとして、できるだけ早く結論をまとめていただいて実施に移すという意味においては、五年ではいささか長過ぎるじゃないかということと、そして仮に、仮にでございますが、この秋に結論をいただいたとしても、予算を要求しましたり、執行体制の整備を考えてまいりますと、三年という期間が必要ではないか。こういう考え方に立ったわけでございます。  したがいまして、この問題につきましては、私ども言ってみれば、政治家としては弁解の余地もないところでございますが、そのような現状を踏まえまして、そこで精神的にはできるだけ早い機会に結論を出していただき、そして姿勢としては、あれだけ長い間議論をしていただいて御答申いただいたものでありますだけに、言ってみれば、あらゆる予見を持たないで本委員会等の議論を御通知申し上げて、そして税制調査会の議論にその結論はゆだねていきたいと、こういう考え方でございます。
  371. 多田省吾

    ○多田省吾君 税制調査会では、本年の一月十三日にグリーンカード三年凍結について、総会を開いて審議されたようでございますし、梅澤主税局長も出席されているようでございます。ですから、当然その審議経過は御存じだと思いますが、そのとき小倉会長を初め各委員は今回の措置について、三年後に必ず実施することを前提とした凍結措置であるということで、少なくとも昭和六十二年一月一日からの実施を確認されたと聞いておりますが、その辺どうですか。
  372. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 一月十三日に総会が開かれまして、いろんな御意見がございました。税制調査会での意見の集約でございますが、むしろ小倉会長御自身が総会の締めくくりとして要約されました御発言が記録に残っておりますので、それをちょっと読ませていただきます。   税制調査会としては、政府がグリーンカード制度を三年間凍結することとし、そのための法案を政府提案することについては、混乱回避の必要性、法的安定性等諸般の事情を考慮すればやむを得ないものと考える。ただし、これはまさにやむを得ないということであり、このような事態に立ち至ったことについては、多数の委員から遺憾であるとの意見が表明された。当調査会としては、税負担の公平化を推進することは現下の急務であると考えており、今回の措置がこうした方針の後退を意味するものでないことを、政府においてこれを提案する際に内外に表明する必要があると考える。グリーンカード制度の三年凍結が国会で決まれば、今後における利子配当課税のあり方をどう考えるか、税制調査会が検討すべき問題であると考えざるを得ず、当調査会としては三年間じっとしているということでなく、早い機会に利子配当課税のあり方について審議し、提言することとしたい。そのため、法案成立後、たとえば特別部会を設ける必要があると考えるが、その具体的な検討の進め方等については今後改めて総会に御相談したいと思う。 こういうことでございまして、ただいま委員がおっしゃいましたように、たとえば六十一年なら六十一年からグリーンカードを必ず実施するとかしないとか、そういうことではございませんで、もう一度いろんな議論を踏まえて特別調査会で基本的に検討したいということで、一応当日の意見は集約されております。
  373. 多田省吾

    ○多田省吾君 昭和五十八年度の租税特別措置減収額の見積概要によりますと、利子所得の課税の特例減収額百億円、配当所得の課税の特例は減収額を四百七十億円としておりますけれども、グリーンカード凍結期間にこれらの特例を放置しておくことは、金持ち優遇というそしりを受けることになりますので、現行三五%の税率を引き上げるのが当然ではないかと思いますが、いかがですか。
  374. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) これは大変御議論のあるところでございますが、私どもは、この三五%の源泉分離選択制度、現行のままとりあえず三年間凍結ということでお願いしておりますのは、実は現在の利子配当に対する課税制度は、基本的には総合課税ではございますけれども、源泉分離選択が租税特別措置法で認められておるわけでございます。同時に二〇%の源泉徴収の制度と、それから片やいろいろ議論が出ておりますマル優の制度等この辺の制度、たとえばマル優の本人確認とか限度の厳正な管理の問題、あるいは総合課税にいたしました場合の本人確認とか集計を一体どうするかという技術論が非常に議論になりまして、五十五年度のグリーンカード制度の提案になっておるわけでございますが、この制度を凍結するということになりますと、仮にいま委員御提案のように源泉分離選択税率をいままでよりも引き上げますと、現行の制度のままでは、たとえばそれが二〇%の方に流れたり、あるいはマル優の乱用というかっこうで流れる、そちらの方へ流れるという問題もございます。あるいは現在はそのほか割引債の一六%の償還差益という制度もございまして、利子配当に対する現在の税制というのが一つのシステムとして安定をしておるわけでございますから、どこかを一ついじりますと金融資産の選択に不測の影響を与える問題がございます。  したがいまして、この種の問題は、先ほども税制調査会の議論の経過を御紹介いたしましたが、今後の利子配当課税のあり方全体のシステムの中でどういう議論が行われるかということが大事でございまして、ここの部分だけをいじるというのは、税制上もそれから金融市場に与える影響からも、やはり適当でないということで、とりあえず現行のままの三年延長ということで御提案を申し上げているわけでございます。
  375. 多田省吾

    ○多田省吾君 これらの点で私は大蔵省に御要望をするのは、税制調査会の答申にも、「税負担の公平化、適正化を一層推進する観点から税制の厳しい見直しを行うべきは当然である。」、このように租税特別措置については厳しい見直し要求をしておりますし、また臨調でも財政再建のために国民に協力を強く求めているわけでございます。こういう観点から、税負担の公平化ということ、不公平税制是正ということはきわめて厳しく受けとめていただきたいと思います。  それで、次にお尋ねいたします。大蔵大臣、渡辺前大蔵大臣が老人向けの非課税貯蓄シルバーマル優の創設について、その実施について検討すると約束されておりましたけれども、その後これはどうなっておりますか。
  376. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 現行の非課税貯蓄制度は、マル優三百万円、特別マル優三百万円、郵便貯金三百万円、計九百万円、国民の貯蓄の現状から見ますとかなりなものであります。また、わが国個人の非課税貯蓄残高はすでに約二百兆と、世界にもまさに例を見ない。この問題は年金に対する課税の問題、それから非課税貯蓄制度のあり方の問題、そうして広くは老人の方々の所得税負担のあり方というものにも関連しますので、なかなかこれはむずかしい問題であります。  そこで、前通常国会での御議論につきましては、税制調査会でも御報告をいたしました。そして大蔵省内部でも勉強しておりますが、いま申し述べましたような問題があって、今後ともなお慎重に検討をされていく問題であるというふうな位置づけをいたしております。
  377. 多田省吾

    ○多田省吾君 大変消極的になったのは遺憾でございます。  最後に、この問題の最後といたしまして、退職給与引当金について質問しておきたいと思います。  貸し倒れ引当金につきましては、今回実施されまして四百二十億円の増収を見込んでおられます。しかし退職給与引当金につきましても、税制調査会は見直しを明らかに提言しているわけです。特に、退職給与引当金の累積積立限度四〇%を三〇%に引き下げることによって二千億円の増収額を見込んでいたわけでございますが、今回見送りになったのはどういうわけでございますか。大変残念である。  また、この退職給与引当金について、昭和五十六年末の東京証券取引所第一部上場会社について同所で採用さしておる業種分類による各業種ごとの資本金の最も大きい会社二十八社についてみますと、当期増加額が当期減少額より同額あるいは上回っているのが二十五社となっておりまして、もう九割近いわけです。この実態から見て、やはり退職給与引当金のいわゆる累積積立限度を四〇%からせめて三〇%に引き下げる、これは当然行うべきではなかったかと考えますが、どうしてやらなかったのかお尋ねしたい。
  378. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 退職給与引当金は、先ほど大臣の御答弁にもあったわけでございますけれども、いわゆる政策税制で議論さるべき問題ではございませんで、企業の課税所得を適正に計算する上で、当期の費用としてどれだけカウントすべきであるかということで議論さるべき問題でございます。各企業は労働協約等を通じまして、従業員に退職金の支払い債務を負っておるわけでごさいまして、それを当期の原価にどれだけ配賦すべきであるかということが、繰り入れ率を検討する場合の基本的な問題になるわけでございますが、現在の税法上の引当金の考え方は、将来企業が支払うべきであろう退職金債務につきまして、いわば年金数理の方式で現在価格に価格を引き直す。それがただいま委員が御指摘になりました累積限度額でございます。  この累積限度額につきましては、昭和五十五年の税制改正で、昭和三十年代からずっと五〇%でございましたのを四〇%に引き下げたわけでございますが、それは高度成長時代から安定成長期に移行いたしました過程で、各企業の雇用の実態を見ますと、従業員の平均予定在職年数が非常に長くなっておるという事態がございます。したがいまして、年金数理の方式で割引をいたしますと、五十五年の時点で百分の四十で十分であるという結論に達しまして、実は引き下げを行ったわけでございます。  それ以降も私どもは税制調査会の答申にもありますように、引当金の繰り入れ率については、絶えず実態に即して見直すべきであるということで、絶えず見直しをしておるわけでございますが、現在特徴的な事態が起こっておりますのは、企業の中でもいわゆる大企業の平均在職年数が他の企業に比べましてかなり長くなる傾向がございます。これは一つは定年制の延長が非常に各企業に普及してまいりました反映でもあると思うわけでございますが、したがいまして、五十八年度の税制改正に当たりましても、その辺について税制調査会で御議論をいただきました。  結局、答申に盛られておりますように、いまの退職給与引当金制度は、全企業について規模別のいかんを問わず一律の累積限度額を定めておるわけでございますが、そういう企業の雇用の実態から見ますると、今後引当金制度について、もう少しきめ細かい繰り入れ率を考えるべきではないかということも一つの検討課題でございますので、そういう点について引き続き検討すべきであるという御結論をいただいておるわけでございます。したがいまして、私どもも退職給与引当金については五十八年度はそのままの制度といたしたわけでございますけれども、五十九年度以降もできるだけ実態に即した的確な繰り入れ率を設定する努力を続けてまいりたいと考えております。
  379. 多田省吾

    ○多田省吾君 財源として二千億徴収できるのでございますから、いろいろな理由をお述べになっておりますけれども、税制調査会の答申もこれあり、これは早急に私は実現すべきものと思います。  最後に、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案について若干御質問いたします。  提案理由にありますように、災害により廃車した販売業者等の保管中の自動車にかかわる還付制度を新たに設けるようとすることにした経緯と背景、簡明に御報告いただきたい。  また二番目に、最近における本法律に該当する被災自動車の実態についてどう把握しているか。還付すればどのくらいの金額になるのか。また、五十八年度の予想件数、予想還付額はどのくらい見積もっておられるのか、あわせて御答弁いただきたい。
  380. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま御提案申し上げております災害減免法の一部改正によりまして、自動車重量税の還付制度をお願いしておるわけでございますが、これは自動車の販売業者等、つまりディーラーの段階で車検を受けて、ディーラーの段階でとどまっているものが災害等によって廃車になったということになりますと、ユーザーの手元に渡っていないで一度も道路を走行していないということでございますので、こういうものについては、自動車重量税を還付して差し上げるのが適当であろうということで、これを提案しておるわけでございます。  自動車重量税につきましては、従来私どもは権利取得税という考え方に立っておりますので、車検の有効期間の間にたとえいかなる理由で廃車になっても、これは還付すべきではないという従来の考え方を変えておるわけではございませんが、昨年の長崎の水害の例等にもございますように、ユーザーの手に渡っていない段階で一度も走らない車が廃車になったというような場合は、他のたとえば酒税とか物品税の場合でございましても、課税済みの物品が販売業者の段階にとどまっております限りは、災害等で滅失した場合には税金をお返ししているわけなんで、それとのバランス等も考慮した上で今回の措置を御提案申し上げているわけでございます。  なお、今回の措置を仮に五十六年度あるいは五十七年度にとりました場合にどれだけの適用台数があるかということは、これは運輸省の自動車局からいただいた資料によりますと、五十六年度でおよそ六百八十台、五十七年度で六百台弱ということでございます。なお、五十八年度はどういう災害が起こるかちょっとわかりませんので、ちょっと台数を予測することは困難でございます。
  381. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま御答弁にありましたように、昭和五十七年度におきまして、長崎の豪雨、それから台風十号による災害が一番大きかったわけでございます。長崎は最近ようやく落ちついてきておりますが、いまなおそのつめ跡が残っておりますし、地元の方たちも懸命にがんばっておられるわけです。直接にはこの災害が本法律案一つのきっかけになったわけでもございますし、金額的負担もけた外れに大きいわけでございます。これにさかのぼって遡及適用を考えるわけにはいかないのか、強く要望しますが、どうですか。
  382. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま御提案申し上げております災害減免法の一部改正では、この還付の規定は、本年四月一日以降生ずる災害によって被害を受けた自動車ということで御提案申し上げておるわけでございます。  遡及という考え方は、考え方としてはないわけではございませんけれども、この還付の場合は税務署長が個々に法律の要件に該当するかどうかを認定いたして還付するわけでございますので、過去の事柄にさかのぼって税務署長が確認するということはなかなか問題が多いということと、この種の改正でさかのぼるということになりますと、一体どこまでさかのぼるのかといういろんな議論がございます。過去のこの種の法律の制度の改正の例にならいまして、今回も遡及適用はしないという考え方に立っておりますので、御了解を賜りたいと思います。
  383. 多田省吾

    ○多田省吾君 この法案に関連してお伺いしますけれども、現在災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する制度がございます。また所得税につきましては別に雑損控除の制度があります。特に後者の場合、住宅や家財などの資産に損害を受けた場合は、雑損控除として所得控除が認められておりますけれども、この家財等の中に、本法律で言うところの一定の要件に該当する被災自動車は該当するのですか、しないのですか。
  384. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 雑損控除の対象になります財産損害は、これは動産の場合を申し上げますと、税法上は通常生活に必要な動産ということになっております。したがいまして、実際の認定に当たりましては、個々の事実に即して税務当局が認定をするわけでございますが、この雑損控除になる動産の範囲の問題と、今回のいわゆる自動車重量税の還付の対象になる被災自動車は、税目も違いますし、そもそも税の性質が違いますので、所得税の雑損控除の対象になる動産と問題はまた別の問題ではないかというふうに考えております。
  385. 多田省吾

    ○多田省吾君 通常生活に必要でない資産については、その対象から外されるということはある程度理解できます。しかし本法律に該当する自動車等は、私は雑損控除対象にしてもよろしいのではないかと思いますが、重ねてお伺いいたします。
  386. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 雑損控除の対象となる資産は、いまも主税局長申し上げましたように、生活に通常必要なものということになっておるわけでございます。したがいまして、執行上の取り扱いといたしましては、自動車の場合、構造や価格などから見て生活に通常必要と認められないような高級乗用車、それからスポーツカー、そういうものは雑損控除の対象として取り扱っておりません。したがいまして、サラリーマンがもっぱら通勤用に取得して使用しているというような自家用車でございますと、雑損控除の対象になるということでございます。
  387. 多田省吾

    ○多田省吾君 それじゃいまの御説明では、いま私が質問した本法律に該当する自動車は、雑損控除の対象にはしにくいということですか、ならないということですか。
  388. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま直税部長が御説明申し上げましたとおりでございまして、私が先ほど申し上げましたように、所得税法上のいま問題にされております生活に通常必要な動産というカテゴリーと、それから今回提案申し上げております自動車重量税で還付の対象になる被災自動車のカテゴリーが、違うということを申し上げているわけでございます。
  389. 多田省吾

    ○多田省吾君 現在の自賠責の保険料がどうなっているか、また三〇%の値上げの報道もなされておりますが、この点はどうなんですか。
  390. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 現在の自賠責の保険料の料率水準についてのお尋ねと存じますが、自動車の種類によりましては保険料がそれぞれ違ってまいりますので、大体一般にサラリーマンが持っているようないわゆるマイカー、こういった普通乗用車というカテゴリーで申し上げますと、一年物で現在一万八千六百五十円でございます。二年分一括徴収いたします場合にはこれが三万二千六百五十円ということになっております。  この現在の保険料率は昭和四十四年に改定されたものでございまして、その後現在まで十四年余りそのまま料率は据え置かれておるわけでございます。その間におきまして、いわゆる支払い限度額が五百万であったものが一千万、さらに千五百万、さらに現行では二千万に引き上げられておるわけでございますし、さらに大体二年に一遍ずつの割合で、いわゆる査定単価と申します支払い基準が引き上げられてきておりますところでございます。こういった内容の充実を反映いたしまして、このところ五十三年度から、いわゆる単年度のポリシー・イヤー・ベースで見ますと、保険収支は悪化の傾向にあるわけでございます。  しかしながら、保険料率の引き上げ問題につきましては、ただ単に単年度の収支状況だけではなくて、やはり過去の収支の累計というものもあわせ検討する必要があろうかと思っておりまして、こういった観点を総合的にいたしますと、現在なお収支の残におきまして、累計におきまして若干の黒字が見込まれておる状況でございますから、いますぐに料率を引き上げなければならないという状況にはないわけでございまして、先般新聞等に三〇%引き上げというような報道がございましたことは、私どもも承知いたしておりますが、大蔵省といたしましては、現在料率引き上げの検討はいたしておりません。
  391. 多田省吾

    ○多田省吾君 時間も来ましたので、原油価格の問題一、二点お尋ねしたいんです。  原油の値下がりというものがエネルギー予算の財源になっている石油税収入の減になりますけれども、五十八年度で見ても税収が四百億円から五百億円と言われておりますが、大蔵省石油税の税率引き上げについてどう考えておりますか。
  392. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 石油税は従価税でございまして、原油価格の引き下げが現実となってまいりますと、これは今後の輸入量がどうなるかという問題もございますが、バレル・一ドル当たり税収額で、年度を通じまして約百億円前後の減収が予想されるわけでございます。ただ、石油をめぐる情勢は、単に石油税収という観点で論じるべき問題ではございませんで、経済各般のいろんな要因がこれから出てまいると思うわけでございまして、現段階で石油税の税率についてこれを云々するというふうな具体的な問題意識は私ども持っておりません。
  393. 多田省吾

    ○多田省吾君 原油価格が一バレル二十九ドルをさらに下回って、年度半ばには二十五ドルくらいに値崩れするという見方もございます。これは今後のことですからわかりませんけれども、とにかくOPECの原油値下げに伴って、ガソリンなど石油製品価格についても種々取りざたされておりますけれども、国民の間から、消費者の間からは、ぜひ家計に反映してほしいという要請が強いわけでございます。通産省は業界にこの点どういう指導をしていく考えか、この辺お尋ねしたい。
  394. 落田実

    説明員(落田実君) お答え申し上げます。  私ども原油価格の引き下げの効果につきましては、基本的には広く国民経済に反映さしていくというのが基本的考え方でございますが、その具体的な方法につきましては、従来からとっておる方式でございますが、市場メカニズムを通じまして石油製品のそれぞれに反映をさしていくというのが適当ではないかというふうに考えているわけでございます。  ちなみに最近の石油価格動向について若干申し上げますと、需要の低迷あるいは円レート関係等ございますが、すでに原油の価格の引き下げの期待感というのが高まっておりました関係上、非常に急激な値下がりが来ておりまして、こういう現状、あるいは高値在庫の問題とか、それから過去の赤字の問題、それから円レートが今後どうなるか、種々の要因がございますので、今後とも、いずれにしましても、コストの変動が市場メカニズムを通じまして価格に反映されていくものと考えておりまして、今後の動向を注視してまいりたいと思います。
  395. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、原油問題で大蔵大臣に要望し、またお答えいただきたいんですが、原油値下げに伴って、業界あるいは国、消費者の三者での差益の還元競争にもなりかねません。私は、大蔵省も短絡的な増税はこの際慎んで、まず消費者還元を考えることが、それがますます国の財政に波及効果を大きくするのではないかと思いますが、その点お考えをお聞きして終わります。
  396. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに短絡的な増税、これは慎むべきことであると思っております。したがいまして、今後の推移を見なければわからないことでございますが、実際問題、いまも通産省から話がありました高値在庫とかそういう問題、あるいは安売り競争とか、いろんな問題が出ておりますので、各業界に対する影響、そしてそれがどういう形で、たとえば法人税の増収とかそういうことになってくるか、かなり長期的な見通しも立てなきゃならぬ問題でございますので、いずれにしても、そこには重大な政策選択の問題が残ってまいります。しかし、その際、御指摘のように短絡的な増税、こういうものを念頭に置いて、それを前提に置いてかかるべきじゃないではなかろうかというふうに私ども考えております。
  397. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 三案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十九分散会