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1983-03-22 第98回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十二日(火曜日)    午後二時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     谷川 寛三君      丸谷 金保君     小谷  守君      多田 省吾君     三木 忠雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         戸塚 進也君     理 事                大河原太一郎君                 中村 太郎君                 増岡 康治君                 穐山  篤君                 塩出 啓典君     委 員                 岩動 道行君                 上田  稔君                 衛藤征士郎君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 鈴木 省吾君                 谷川 寛三君                 塚田十一郎君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 小谷  守君                 鈴木 和美君                 竹田 四郎君                 丸谷 金保君                 桑名 義治君                 多田 省吾君                 三木 忠雄君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   遠藤 政夫君        大蔵省主計局次        長        窪田  弘君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    参考人        日本銀行総務局        長        青木  昭君        日本銀行発券局        長        戸田 善明君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○造幣局特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  造幣局特別会計法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会に、参考人として、日本銀行総務局長青木昭君、同じく発券局長戸田善明君の出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は、前回聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 鈴木和美

    鈴木和美君 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案質問に入る前に、大蔵大臣、連日御苦労さまでございますが、予算委員会でも質問があったと思うんですが、私はまず最初に、三月も半ばを過ぎましたので、五十七年度補正後の税収見込みが果たして確保できるのかどうか、その件について大臣にお伺いしたいと思うんです。
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは正確を期しますために政府委員からお答えすることをお許しいただきたいと思います。——私でも必ずしも不正確ではございませんので……。  五十八年一月分税収は、前年比四・二%、累計で六・〇%の伸びでございます。これを補正予算伸び率にいたしますと、五・三%となっております。そこで、進捗割合は六八・四%でございますので、前年同月が六七・九%でございますので、わずかではございますが、〇・五%上回っております。  そこで、五十七年度税収については引き続き低迷を続けておると言わざるを得ませんが、ウエートの大きい所得税確定申告や三月期法人申告、これが大物でございますので、これが残されておりますから、確たることは申し上げる段階にはございません。したがって、これからの推移を見なければわからない、そういうことになります。  私どもかねて、要するに、三十兆といたしまして、一%といえば三千億、その辺が誤差範囲だと思っております。したがって、誤差範囲内におさまってくれたらいいがなと、こういう感じでございます。
  7. 鈴木和美

    鈴木和美君 私が五十七年度税収動向を気遣うのは、先般衆議院予算委員会で、相当規模所得税減税を五十八年度中に実現するよう最大限の努力をするという与野党合意が行われたわけでありまして、この場合の財源対策として、本年七月に確定するであろう五十七年度税収動向が重要なポイントになるからと考えたからであります。つまり、相当規模減税を実現するように国民に期待を持たせ、結果的には一連選挙対策としてのリップサービスにすぎず、五十七年度税収欠陥が生じたから減税規模を圧縮するというようなことで、前回のラーメン減税程度でお茶を濁されたのでは、国民はたまったものでないのであります。大蔵大臣、相当規模財源を一体どのように調達するのか、あわせてお伺いしたいと思うんです。
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさにそこのところが大変な問題でございまして、いま鈴木委員が御指摘になりましたとおり、七月になれば五十七年度の税収確定をする。それは一つの期を画する時期でございますので、検討を進める大きなポイントになると思っております。  したがって、私ども与野党合意をよく読んでみますと、とにかくそうしたことをやるための財源というものを含めて合意がなされておるという理解をいたしておるわけでございますので、そうなると特例公債をもって充てるということは、これはやっぱり一番念頭に置いてはならないことだと思います。仮にそういうことが出たといたしま すならば、むしろ金融市場に対して影響をもたらして、逆に金利の高騰等につながって、景気浮揚に役立つというより、足を引っ張る結果になりはしないか。したがって、税収動向を見きわめて、そして本国会において御論議をいただいたことを踏まえ、それを正確に政府税調に報告いたしまして、そこで精力的に御論議をいただくと、こういう手順になるのではないかというふうに考えております。  と同時に、衆議院大蔵委員会の小委員会議論された経過等については、それをフォローして参考にしなければならない重大なポイントが数あるというふうに理解をいたしております。
  9. 鈴木和美

    鈴木和美君 再度お尋ねしますが、いま大臣のお答えの中に、税収誤差程度、つまり三千億程度におさまれば一番いいんだがというお話ですが、新聞でも、若干見ますと、今年度も相当また落ち込むような見込みというのも、非常に残念ですが、一方で予測されるわけでありますね。他方減税の約束がされた。  そこで、私ははっきりさせておいてほしいと思うんですが、与野党合意ということではありますけれども、この減税問題については政府も高らかに進軍ラッパを鳴らしたわけですから、これは政府責任において財源調達は行う、責任を持って政府が措置すると、こういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 結論から言うと、政府の責めに属するべきものであるということを私も否定をいたしません。ただ、いままで各党の言ってみれば専門家の小委員会等で御議論をいただいておる、それらはやっぱりフォローしていくべきだという考えでございます。
  11. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは本論に入らせていただきます。今回提案されている造幣局特別会計法の一部を改正する法律案の中身を審議するに当たって、きわめて原則的なことでありますが、次のことをまず教えていただきたいと思うんです。  その一つは、明治三十年施行の貨幣法とか、臨時通貨法、これは昭和十三年だと思いますが、この法律の中に「貨幣」という文言があるのでございますが、この法律から見た貨幣というものはどういうふうに認識すればよいのでございましょう。
  12. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 貨幣法及び臨時通貨法で言います貨幣とは、貨幣法第一条にも書いてございますが、政府発行する通貨紙幣以外のものと理解しております。
  13. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一度お尋ねしてみますが、貨幣法というのがありますね、それから臨時通貨法もありますね。その中で貨幣という言葉がございます。貨幣というのは一体どういうものかということをお尋ねしているんです。
  14. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) ただいま法律文言によって定義を申し上げたわけでございますが、非常にわかりにくいわけでございますので、実態に即して申し上げてみます。  貨幣法によります貨幣本位貨幣補助貨幣とございます。それから臨時通貨法によります補助貨幣というものがございます。これらが合わさって貨幣理解しております。それから紙幣でございますが、臨時通貨法によります紙幣と、日銀法によります日銀券とがございます。これらを総称して通貨と申しまして、その中の貨幣でございますが、実定法では、貨幣法による本位貨幣補助貨幣臨時通貨法による補助貨幣、現在実際問題としてわれわれが取引に使っておりますのは、臨時通貨法による補助貨幣でございます。  ちなみに、貨幣法による補助貨幣は現在通用禁止になっておりますが、本位貨幣は、御承知のように、金(きん)で二十円、十円、五円とございますが、実際問題として通用しておらぬ。  そういうようなことで、通貨の中で日銀券紙幣以外のものを貨幣というわけで、その貨幣の中に二色ございますが、現在通用しておりますのは、実際問題として流通しておりますのは、臨時通貨法による補助貨幣であろうと思います。
  15. 鈴木和美

    鈴木和美君 これは造幣局特別会計法の中の第九条に、「回収準備資金への編入」ということで、「この会計において、製造済補助貨幣貨幣法明治三十年法律第十六号)第三条に規定する貨幣金貨幣以外のもの」というのがありますね。この貨幣というのを、もう一度金(きん)との関係を相対的に対置させながら御説明いただけませんか。
  16. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) ただいまお読みになりました特別会計法の九条でございますが、貨幣法の中に本位貨幣補助貨幣とがございます。これは法律には出ておりませんが、貨幣形式令というのがございます。そこの中に、金貨が二十円、十円、五円とありまして、そこに本位貨幣と書いてあります。それ以外に五十銭、二十銭の補助銀貨、それから十銭、五銭の補助ニッケル貨補助青銅貨で一銭と五厘、こういうものが貨幣形式令にございます。そうして小額通貨整理法というのがその後出まして、ただいま申し上げました本位金貨以外の補助貨通用が禁止されております。  したがって、このもとの第九条に戻りますと、製造済み補助貨幣、これは貨幣法による金貨以外のコインのことを言っておるわけでございますが、それと臨時通貨法、現在われわれが目に触れておる五百円とか百円とか五十円、十円、五円、一円というようなものがございますが、こういうようなものを臨時通貨法による臨時補助貨幣というふうに呼んでおるわけでございます。
  17. 鈴木和美

    鈴木和美君 私も勉強不足で大変恐縮なんですが、教えていただきたいのです。いわゆる貨幣法の中に言う貨幣というものは、いま御説明のあった金本位制とか、銀本位制とか、兌換制とか、そういうものが主体になったものを貨幣と呼び、そうでないものを補助貨幣と言うように、俗称、私などは理解しているんですが、それは間違いでございましょうか。
  18. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 実質論としてそのとおりでございます。
  19. 鈴木和美

    鈴木和美君 日本歴史において、金の兌換というものが実際に行われた歴史はございましょうか。
  20. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) これは明治三十年から昭和七年まで——七年は入りませんが、実際に兌換銀行券金貨との兌換が行われた実績が各年ございます。
  21. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうすると、金本位制とか、銀本位制主体とした貨幣法はあるんだけれども、実際上、定義で言う貨幣というものは、兌換がなかったというようなことから見れば、存在をしないというように理解をしてもよろしゅうございましょうか。
  22. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) お話のように、貨幣本位貨幣というふうに理解いたしますと、お説のとおりでございますが、現在の実定法の書き方を見ますと、貨幣の中に本位貨幣補助貨幣がある。貨幣法段階ですでに補助貨幣という言葉がございますので、補助貨幣貨幣にあらずということであればともかく、実定法上は、紙幣以外の通貨貨幣と言うという意味では、補助貨貨幣の中に含めて整理されております。
  23. 鈴木和美

    鈴木和美君 日本銀行発行の一万円札は貨幣ですか。
  24. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) これは日銀法の二十九条にございますが、日銀券であって、日銀債務の証書になるわけでございます。
  25. 鈴木和美

    鈴木和美君 いままでの御説明や教えていただいたところから申し上げますと、いわゆる貨幣というものは存在しないで、いわゆる通貨というように理解した方が一番国民的にはわかりやすいというように理解してよろしゅうございましょうか。
  26. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 実定法で考えるか、常識的に考えるかの差でございますが、一番明確なのは、刑法通貨にかかわるいろいろな罰則が書いてある条文があるんでございます。その中に貨幣銀行券通貨というような言葉を使っておりまして、通貨の中に、いまの御説の本位貨幣補助貨幣日銀券がある、全部合わせて通貨というような使い方を明確に規定しております。  刑法の中に実定法としてそういう表現がありますので、全体の貨幣法なり、臨時通貨法なり、あるいは日銀法等々を読みますと、最初に申し上げましたように、通貨の中に貨幣法による本位貨幣補助貨幣と、臨時通貨法による補助貨幣日銀法による日銀券、これらをあわせて通貨と言う。それで、お話のような本位貨幣でなければ貨幣でないという説もございます。そういう立場に立ちますと、補助貨幣はあるけれども、いわゆる貨幣はないというような解釈も成り立ちますが、行政的には、実定法の規定から見まして、ただいま申し上げたような貨幣紙幣銀行券貨幣の中に補助貨幣本位貨幣があるというような分類が、実定法上から読み取れる概念だと思います。
  27. 鈴木和美

    鈴木和美君 御説明は御説明としてわかるんですが、一般的国民理解からしますと、実定法ということから言葉を述べることと、通常行われている通貨という概念からすると、法律そのもの言葉実態に合ってないんじゃないかと思うのですよ。本位貨幣とは言うけれども、言葉上は存在するけれども、実態が、金の兌換とか、一万円の日銀券発行の中にも、昔のように金何匁と交換するとは書いてないですもんね。そういうことから見ると、私は、貨幣という言葉はあっても、実態は全部通貨になっていると思うのですよ。そういう意味からすれば、この実定法という法律言葉というのは、もう少し前から改められるべきだと思うんですが、いかがですか。
  28. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 一般的な基礎法規でございます民法では、確かに通貨という言葉を、たとえば四百二条でございますが、そういう言葉を使っております。それから刑法では百四十八条でございますけれども、「貨幣紙幣ハ銀行券」。いろいろな現在の実定法規を見ますと、貨幣という意味本位貨幣だけを意味しているという定義はとられていないように思うわけでございます。本位貨幣補助貨幣とあわせて貨幣と言う。要するに、紙幣以外の通貨貨幣とするというふうな概念になっておると思います。
  29. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一度。紙幣以外のものを貨幣と言うんですか。
  30. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 紙幣の中に銀行券を含めまして、通貨の中で銀行券政府紙幣以外のものを貨幣と言って、貨幣がさらに本位貨幣補助貨幣になる。
  31. 鈴木和美

    鈴木和美君 ちょっとよく理解できませんけれども、もう一度説明してもらいたいんですが。
  32. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) まず、通貨という概念があります。それが貨幣紙幣日銀券と三色になっていると思います。その貨幣貨幣法による本位貨幣補助貨幣があります。それから臨時通貨法による補助貨幣があります。だから貨幣には現在実定法上三色あるわけです。それから臨時通貨法によりまして政府紙幣というのがあります。それから日銀法によって日銀券というのがあります。  現在死んじゃっているのが貨幣法による補助貨幣でございます。それから臨時通貨法による政府紙幣が死んでおります。生きているのは臨時通貨法による補助貨幣と、実体的にはないわけですけれども、貨幣法による本位貨幣法律上は生きているわけです。  だから、したがって、実際に生きているのは、臨時通貨法による補助貨幣と、日銀法による日銀券です、通貨がですね。
  33. 鈴木和美

    鈴木和美君 日銀券政府紙幣という言葉がありましたですね。政府紙幣というのは何ですか。
  34. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) これは政府債務でございます。日銀券日銀債務でございます。まあ日銀券まであわせて、広い意味通貨の中には中央銀行券も入れているのが通例でございます。
  35. 鈴木和美

    鈴木和美君 大臣にお尋ねしますけれども、この実定法上で言う貨幣という言葉と、それから本位貨幣補助貨幣という問題の定義について、これは五十年だったと思うんですが、わが党の堀昌雄先生がやはり同じような議論をされまして、法律上は確かにそういう言葉はあるんだけれども実体をなしていない、国民生活の中に非常にわかりにくい、したがって法律改正言葉改正というものを行ったらいいんじゃないかということの問題提起を行いまして、政府の方は検討させていただきますというような御答弁があったんですが、竹下大蔵大臣本件に関する御見解を承りたいと思います。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 堀さんのは昭和四十五年でございます。亡くなりました中川一郎さんが大蔵政務次官のときでございます。そういう議論がなされたわけでございます。  そこで、確かに貨幣法金本位制度をたてまえとして立法されたものでございますので、必ずしも管理通貨制度現状にそぐわないということは御指摘のとおりであります。臨時通貨法小額通貨整理法によって現実に即して法令上の措置がなされておりまして、国民日常生活または経済取引の上で特に支障を来しておるというふうには考えられません。  それからまた、一国の貨幣制度国民生活経済の根幹にかかわる問題でありますだけに、その見直しに当たりましては、通貨制度についての国民の総意の一致とか、経済の安定とか、十分見きわめる必要がございます。  それからもう一つは、最近、特に国際通貨制度との調和のとれた法体系であることが、率直に言って、望ましいわけでございます。  そういうことを考えますと、現状においては内外経済が不透明であるし、国際通貨制度の帰趨も不確定でございます。この間来もめておりましたが、ヨーロッパのEMSでございますか、トラブルと申しますか、意見の相違はようやくなくなりましたものの、あの中の議論でも、いつでも、本当の共通通貨にした方がいいじゃないかとか、いろんな議論がなされております。したがって、現在考えますと、国内法だけでなく、そういう国際的な通貨制度がございますので、十分関心は持ちながらも非常に慎重に対処しなきゃならぬ課題ではないか。特に国際通貨問題でいろいろ壁に、いろんな問題に出くわすたびにそんな印象を強くしております。
  37. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま大臣から国際的な関係お話がございましたので、この機会に、短時間で、中曽根総理大臣デノミ発言について、ちょっと真意をはっきりさせていただきたいと思うんです。  先般総理が訪米した際に、総理デノミを考えているというようなニューズウイーク誌の発表が証券市場に意外な反響を呼んだと思うんです。また大きな波紋を投げかけたと思うんです。その辺の事実関係を明らかにしてもらいたいと思います。
  38. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはニューズウイーク仮訳でございましょう。結局、私は非常に政治的な発言になってあるいは非礼かとも思うんでありますが、よく国際会議に出ますと、世界第二位、場合によっては第一位の実力を持ちながら、三けたでございますと、ちょっと表現が適切じゃございませんが、国威発揚の上から何かある種の劣等感を感ずるような気がいたします。したがって、そういうことがよく言の葉に上りがちでございますが、中曽根総理からはこのことについて何らの御指示も受けたことございません。  ただ、現実問題としてこれをとらまえてみますと、確かに物価が安定しておりますとか、そういう点は従来とは違った要素はあるものの、結局、鈴木先生竹下登くらいまではまだいささか国威発揚的意識があるんですが、二十歳代の人に聞きますと、何でそんなに不便なことをするんだ、いま血となり肉となっておるから単なる呼称の変更など行うべきじゃないじゃないか、こういう意見もございますので、早々に取り組む環境にはないじゃないか。いまのところ考えてもいないというのが実態であります。
  39. 鈴木和美

    鈴木和美君 デノミ実施条件として、景気とか物価国際収支が好条件であることが私は絶対必要だと思うんですね。そういう中で中曽根総理が、仮に誤報に基づくものであっても、総理大臣が何らかの軽率な行動をとったということは、どうも私は納得がいかないんですよ。  そこで、いま、大蔵大臣としての見解よりも、中曽根総理が向こうでそういうことを言ったという事実関係というものをもし把握していらっしゃるんであれば、もう一度御答弁をいただきたいと思うんです。
  40. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一月二十四日のニューズウイーク誌発言をしたということについて、中曽根総理は、そんなことはない、全くないと、そしてさらに国会等答弁では、その必要はないというまでの表現をしておりますので、私はないというふうな事実を信じております。
  41. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、これを機会にはっきり申し上げておきたいと思うんですが、総理が、誤報であっても、デノミ発言をしたと報道されて、日本経済を混乱に陥れるような総理の軽率な行動については、私はきわめて遺憾だと思うんです。うがった見方をすれば、衆議院とか参議院の選挙に備えて選挙資金稼ぎのためのデノミ論をぶち上げた、それは株価操作による資金稼ぎだというように他方で思われるような行動をとったということは、私ははなはだ遺憾だと思うんですよ。そういう意味で、もう一度竹下大蔵大臣本件に関するきちっとした見解を示していただきたいと思うんです。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) デノミネーションを行うということになりますれば、当然これは総理大臣から大蔵大臣指示があり、協議されることでもございますので、そういう事実は全くございません。私も所々方々へ出かけますと、一連のそういう報道に基づいて質問が出ます。いつからですかと聞く。かなり喜んで発言をされておった人は印刷会社のおじさんであったり、そういうことがあればあるほど慎重であらなければならぬ問題でございますので、かえってそういう事実は全くないというふうに正確に申し上げておきます。
  43. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは、もう一度本題の方に入りますが、補助貨幣回収準備資金制度が設けられたという意義と理由についてもう一度御説明をいただきたいと思います。
  44. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは補助貨幣の引きかえまたは回収を円滑に行って、補助貨幣の信認を維持するのが目的でございます。現在のような補助貨幣回収準備資金制度が設けられましたのは、昭和二十五年の法改正によるものでございます。  そのときの提案理由説明をいま振り返ってみますと、いまの制度になる前に貨幣整理資金という制度がございました。これは明治三十年につくられました古い制度でございますが、この「従前の特別会計におきましては、製造済補助貨幣発行高に相当する金額は同特別会計の歳入として計上されて来たのでありますが、補助貨幣発行の性質に鑑み、この発行高に相当する金額を発行補助貨幣回収のための準備資金として積立て、その運用につきましては、大蔵省預金部に預入れることができることといたしたいのであります。」と、このように提案理由で申しておりまして、回収のための準備資金を設けることによりまして補助貨幣の信認を維持したい、これが創設の目的でございます。
  45. 鈴木和美

    鈴木和美君 そこで言う、補助貨幣に対する信認の維持を図るということをもう少し具体的に説明してください。
  46. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 補助貨幣は、造幣局でつくりまして日本銀行に渡すわけでございますが、これは市中の市場の状況によりまして、また必要がなくなれば戻ってまいります。あるいは損傷いたした場合引き取る必要がございます。その引きかえ、回収を円滑に行うということによりまして補助貨幣の信認の維持を図るというものでございます。
  47. 鈴木和美

    鈴木和美君 補助貨幣の引きかえですね、補助貨幣が出回っている総量というんですか、そういうものをすべて引きかえるときに、つまり安心して引きかえられるよう蓄えておくというか、その趣旨で設けられたということなんですか。
  48. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) そのとおりでございます。
  49. 鈴木和美

    鈴木和美君 その考え方というものは、いまでも大蔵省としては本質的に正しいと思われているんですか。
  50. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この制度は、先ほど少し申しましたように、明治三十年に清国から賠償金をもらったのを機会に、その特別会計制度を改めまして貨幣整理資金というのをつくっております。これも回収等のために充てるものでございまして、ずっと沿革的には明治三十年までさかのぼるわけでございます。  その間に、先ほど御議論のありましたように、貨幣制度そのものも変わっておりまして、いまは補助貨幣、いわゆる通貨しかございません。しかし、通貨であればあるほど、本位貨幣じゃなくて、通貨であればなおさらのこと、それが返ってくるときに確実に引きかえる仕組みそのものは必要である。それがあることによって補助貨幣が信認を得て流通するものであると考えておりまして、その仕組みの必要性については私どもいま従来と変わった考えを持っておりません。
  51. 鈴木和美

    鈴木和美君 いまお答えの制度の仕組みという言葉と、全量、すべての金額を含めましたものと、言葉の使い分けが行われているような感じがしないでもないんですが、仕組みそのものよりも、いままでの積み立ててきたということに対して正しいと思うかと私は聞いている。
  52. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) その制度は昭和四十五年に一遍改正がなされました。従来は、流通している額を上回っても、それを持っていられるような制度でございましたが、四十五年の改正で、流通額に見合うところまでの積み立てというふうに一遍制度が変わっております。  そこで、今度御改正をいただくまでは、流通額に見合う準備資金を持っているわけでございますが、かねがねそこまでの保有をする必要はないんではないかという議論がございました。特に昨年、これを減税財源に充てたらどうかという御指摘をいただきました際にも、これを流通額相当額まで保有する必要はないんじゃないかという御議論がございました。  私ども大蔵省としては、何しろ事柄が貨幣制度通貨制度に関する問題でございますので、この改正には非常に慎重な態度をとっておりましたが、昨年来の経緯にかんがみまして、流通額に相当する額までのものを保有する必要はあるまいということで、今回法改正をお願いしているわけでございますが、しかしこの仕組みそのものは、先ほど来申し上げておりますように、補助貨幣の信認を維持するというのが究極の目標でございますので、この仕組みは今後とも維持してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  53. 鈴木和美

    鈴木和美君 いま窪田局長のお話の中で、かねがねそういう話があったという答弁ですが、このかねがねというのはいつの時点を指しますか。
  54. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは私どもの内輪なお話をこういうところで申し上げるのも、大変失礼なんでございますが、予算を編成します主計局としては、こういうものをいま置いておく必要があるのかないのかという議論をしておったことは、認識していたことはございましたが、ただ大蔵省全体としては、これは通貨制度に関連する問題でございますから踏み切れない、これを崩すのは適当でないという判断をしてまいったわけでございます。  ただ、国会におきましては、五十六年におきましても、この参議院の大蔵委員会で近藤委員からもその問題提起がなされておりますし、昨年は非常にたくさんこれに関連した議論がございました。そういう御指摘をいただいているわけでございます。
  55. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうすると、いままで考えておった考え方というものを、つまり大蔵省自体は誤っておった、制度改正をしてもいいということに踏み切ったということになるんですか。
  56. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 誤ったというふうには考えておりませんで、この制度があれば、手厚くあればあるにこしたことはないと思いますが、しかしいまのような財政事情、特に五十六年度に大幅な歳入欠陥が生じてその穴埋めをする必要があるというふうな事情を背景にしまして、発想の転換 をせよといういろいろな国会の御議論なども踏まえ、またこの制度の重要性にかんがみまして、財政制度審議会の御意見を伺うとか、いろいろ手順を尽くしまして、この際まるまる流通高と同額まで保有する必要はないのではなかろうかというふうに、いわば発想の転換を行ったわけでございます。
  57. 鈴木和美

    鈴木和美君 昭和四十四年以降、補助貨幣発行現在額に見合う金額が保有されてきたわけですね。それまでの制度の運営の経験や欧米諸国の実例などから見て、発行現在額と同額の資金を保有していたことは、つまり無意味であったというように私は理解せざるを得ないのですが、減税財源に充てよというような問題や赤字国債の返還に回せというような問題があったときに、皆さんの答弁というのは一貫してはっきりしていたわけでしょう。「補助貨幣回収準備資金につきましては、補助貨幣の引きかえ、回収に充てるために補助貨幣発行高に見合う準備資産を保有して補助貨幣に対する信認の維持を図ろうというものでございまして、この制度の趣旨、沿革にかんがみますと一般財源として取り崩すことは適当ではない」ということを、近藤さんの質問に答えているんですね。それが今度は途端に、財政再建というか、赤字だというようなことでもって急遽その考え方を変えるということは、どうも納得ができないし、御都合主義だというふうに私たちは思うんですが、もう一度見解をお尋ねしたいと思います。
  58. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) いまお読み上げになりましたのは、私の前任者でございます西垣主計局次長の答弁でございますが、その後、近藤先生とのやりとりがございまして、最後に渡辺前大臣が、「これはいろいろ物の考え方の問題でございますから、なかなか安易なこともできない。しかし、いろいろ研究はしてみたいと思っています。」と、こういう答弁で締めくくっておられますし、また、大変潜越でございますが、近藤先生は最後に、「私はそこでひとつ考え方の問題を一歩進めるということを要望したいと思います。」という、こういう御議論がこの大蔵委員会でございました。  ただ、私どもとしては、通貨制度貨幣制度に関する問題でございますから、非常に慎重な態度をとっておりましたが、たまたま五十六年度に歳入欠陥が非常に大きく生じまして、この穴埋めのやりくりの中で財政審にお諮りするとか、いろいろな検討を経まして今回の改正をお願い申し上げている次第でございます。
  59. 鈴木和美

    鈴木和美君 社会党としても、それは財源の問題として減税の措置に充てろということや、近藤さんも先般質問の中で赤字国債のそれに充てろというような、特に指定してやっているわけですね。ところが、今回の政府の措置というものは、全く論をすりかえちゃって、自分の都合のいいような、しりぬぐいに持ってくるという論理に置きかえられているんですね。だから、私はそういう意味で非常な不満であるし、政府の態度もよくないと思うんですよ。  そこで、大臣にお伺いしますが、そういう私どもが持っていた見解に対する大臣見解——今回の措置での税外収入の増は一兆一千億でありますね。これは単年度限りの財政措置にすぎませんから、この資金を取り崩すことは、資金運用部の資金繰り悪化と同時に、当資金から繰り入れられてきたいわゆるオーバーフロー分というものの現象というものをもたらしていますね。まさに私は財政体質の悪化というものを招いていくことになりかねないと思います。  ちなみに、この制度が出てきたときに、わが党の議員からは、むしろほかに使っちゃいかぬぞということを指摘されて、政府はほかに絶対使いませんということも答弁しているわけですね。だから、本件については、御都合主義だというように言われても、私は何の答えもないのじゃないかと思いますね。そういう意味で私はここで大臣見解を承っておきたいと思います。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かにこの問題、種々議論がございました。なかんずく回収準備資金減税財源に充てるべきじゃないか——そのときにお答えいたしましたのは、先ほど来問答の中で政府側からお答えしておる、またあるいは鈴木さんの御指摘の御答弁をしたわけでございます。本資金の取り崩しというのはまさに一過性のものであるということから、この減税財源としては適当でないというふうに申し述べた。  その後五十六年度、もちろん五十七年度もでございますが、巨額の歳入欠陥が生じて、それで初めて国会へ検討すべき財源としてお出しした、昨年の六月に資料提出をいたしました。その中で、補助貨幣回収準備資金も取り崩しの検討にのっけますということで、初めて去年の七月に資料提出をしておるわけでございます。  それからはいろんな議論を重ねて、五十八年度においては、厳しい財源事情だから、そうしてまた五十六年度の決算不足補てんの繰り戻しという、まさに臨時的な支出に対処する必要があるということで、結局最終的には、財政制度審議会の意見も伺いながら、これを取り崩すことにしたというわけです。  そして、いま鈴木委員指摘のように、この蓄積は資金運用部資金として運用され、そして貴重な第二の予算とも言われる財投の原資としての役割りも果たしておったじゃないか——これはそのとおりだと思います。  私も大蔵大臣として考えますのは、非常に痛みを感ずるのは、一つは先人の蓄積に対して手をつけることです。それから二番目は後世にツケを回すこと。この二つがやっぱり一番心を痛めるところでございます。  したがって現在、回収準備資金としての効果をもたらすには、それだけのものがなくてもいいにしても、まさに先人の蓄積で財投原資というものにもなっておったということになれば、やはり非常に痛みを感ずる一つの問題であったことは、これは紛れもない事実だと私は思います。しかしながら、一過性の財源で、一応五十六年度の繰り戻しに使うということになれば、考えようによれば、それだけ今度は後世のツケが減るという意味において、先輩様相済みません、後に続く人のために取り崩させていただきますと、簡単に言うと、そういう心境であります。
  61. 鈴木和美

    鈴木和美君 私の持ち時間、五十一分でございますので、言い足りないところは、また明日引き続きいろんな問題をさせていただきます。  最後に、私としては、今回の取り崩しという問題は、そのこと自体は、とにかく引きかえに間に合いさえすればいいんですから、その資金をどう使うかということは政策判断だと思うんですね。しかし、今回のような逆なでするみたいな、人の議論を逆にとってしりぬぐいをするというやり方に対しては、非常に不満でありますので、不満の意を表明して、最後にもう一度大臣見解を伺って質問を終わります。
  62. 竹下登

    国務大臣竹下登君) とにかく、いままでこういう回収準備資金、よしんばそれが減税財源に重点を置いて議論されたとはいえ、そういう資金があるではないかと指摘されたそういう歴史的経過の中で、われわれもやむを得ざる措置としてとらしていただいた、そういうふうにこれは御理解をいただきたいところであります。
  63. 丸谷金保

    丸谷金保君 いまの大臣の御答弁を聞いていて、大変どうも苦しそうな御答弁で同情せざるを得ないんですが、ただ私、ここまで国家財政が落ち込んだということについてもう一度大臣の御心境をまず最初に、ここまで落ち込んじゃったんだということに対して……。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も再度大蔵大臣を拝命して、大変だなと、こういう心境であります。  考えようによりますと、一九四五年に戦争が終わりまして、そうして四〇年代というのは、言ってみれば、新しい政治社会体制の準備の期間であって、GHQの間接統治下であって、財政というようなものにも非常に主体性がなかったと思います。五〇年から五一年、一九五一年の講和条約の発効以後いろんな財政運営の点においても自主的な施策が行われるようになってきた。あるいは、その前でございますが、復興金融公庫なんていう のもやや機能するようになってきた。そうして日本人の勤勉さによって営々として積み上げてきて、今度は一九六〇年代というものを迎えたんじゃないか。その六〇年代というのは、二ドル原油を糧として高度経済成長をやった。そうして国民の水準もずいぶん上がってまいりました。そこまでは、まだ外国からも余り大きな指摘も受けないままに自立経済なり自立財政運営ができた。  それから一九七〇年代に入りました。七一年の一つはドルショックというものがあったんじゃないかと思うんであります。いわばドルの兌換制停止というものに起因したこのときに、政策選択というもので建設国債の増発に踏み切った。それはそれなりに私は意義があったと思います。それから第一次、第二次石油ショックを重ねて、福祉水準等も落とすことなく世界の水準に達しつつ、一方とにかく赤字公債に踏み切った。それの爛熟期、表現は悪うございますが、それが結局、予算で言えば、五十四年度がそれのピークじゃなかったか。それで、今度は対応力がなくなりましたから、いろんな知恵をしぼって、言ってみれば、財政再建という言葉の中に模索をしながら今日来ておる。だから、対応力を回復するというのはこれは大変なことだなと思います。  ただ、私はいつもそういうことを思いながら国会議論を重ねて、毎日のように外国のお客さんが参りますが、その外国のお客さんから見ると、何で日本経済はこんなにうまくいっているんだ。財政赤字の話をしますと、そんなに貯蓄力があるならもっと借りりゃいいじゃないか。税金が安いからもっと増税すればいいじゃないか。外国の方から見れば、なるほど指標を見ればたくさん世界一はございますけれども、現実、国家財政としての責任を与えられてみると、本当に大変なことだ。何とか国民理解と協力を得ながら対応力の回復というものをどうしてもやっていかなきゃならぬ。たとえやりくり算段と言われても、これはだれかがやらなきゃならぬことだ。こういう感じがいまひしひしといたしておるという、少し長くなりましたが、心境を吐露いたします。
  65. 丸谷金保

    丸谷金保君 外国と都合のいいところだけ比べると、大変いい点がたくさんありますが、たとえば社会資本の問題とかいろんなことになると、必ずしもそういう数字だけでは比較の対象にならないだろう。  それでまさに福田さんが昭和元禄と言われた、それに対応して、この機会大臣見解をお伺いしておきたいんですが、江戸幕府の勘定奉行で元禄時代の荻原車秀、この人はどういうふうな事績を持っておられる方か御存じでしょうか。
  66. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 荻原重秀は、元禄九年、一六九六年から正徳二年、一七一二年まで勘定奉行でございまして、ちょうど江戸幕府の財政難に対処するために貨幣の改鋳を行ったことで知られております。  この経緯は、新井白石の自叙伝であります「折たく柴の記」に詳しく出ておりますが、それを見ますと、幕府が年々収入する金は年に七十六、七万両である。それに対して夏冬のお給金を支払った残りが四十六、七万両でございます。一方、幕府の費用は百四十万両毎年必要でございます。そのほかに、その時期ちょうど内裏の造営をやっておりまして、七、八十万両かかります。結局、出る方は、二百十万両から二百二十万両要るのに対して、収入の方は四十六、七万両しかない。百七十万両から百八十万両のお金が不足をいたします。御先代綱吉の時代から、支出は収入の倍ありました。  そこで、自分は決していいこととは思わないけれども、貨幣の改鋳をやって、その倍の収入を賄ったんだ、こう言っておりまして、もしこのことによらざれば、十三年間は何をもって国の費用を賄うことができたでありましょうか。したがって、まずこういうことをして当座の用を足して、いずれ将来豊作の年もあって国のお金が余るときになれば、貨幣の構成もまた昔に戻すことはいとやすいことであろう。こういうふうに荻原重秀が述べたということが出ております。  これに対して、新井白石は反対をいたしまして、貨幣改鋳を昔の成分に改めておりますが、ただ、新井白石も、足りないものは絶対的に足りないものでございますから、その払いは大体半額しか払わない。来年残りを払う。また、いままでたまっているものは、六、七年あるいは十数年で払わなければしょうがないじゃないか。その間に節約していけば財政の再建はできるであろう。こういうことを述べているわけでございます。
  67. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで結局、いまおっしゃったように、新井白石が今度また貨幣の改鋳をやめてもとへ戻す。えらいデフレになりましたね。そして今度その後に吉宗が出てきて、また多少緩みをつけながら、何といいますか、徳川の中興の祖と言われるような事績を上げたということなんですね。結局、荻原時代の貨幣の改鋳で大きな元禄のインフレが起こってきた。小さいけれども、今度のこの法案見ていますと、そのことを感じるのです。こういうところまで手をつけ出すと、とめどもなくなるじゃないか。どこかでデフレをしなければ、これはとまりませんわね。  大臣、新井白石になったようなつもりで大改革をやるという信念はございませんですか。どこかでやらないと、このままだと大変だ。これは一事が万事になりかねない。といいますのは、結局、増税路線を歩むよりほかに方法がないんではないかというところに行きそうな気がするんです。それでなければ、吉宗がやったような改革をやるか。吉宗がやったというのは大奥に手をつけたんです。いま日本で大奥というふうなものに手をつけるとすれば、これに比肩するのは何でしょう。
  68. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、当時と実際問題違いますのは、ある種の管理通貨制度で、それがいわゆる国際金融というものの完全にネグられた中の国内だけの問題であったということが、今日と大きな相違ではないかなという感じがしております。  しかしながら、当時いろいろなことが言われておりますものの、さて大奥に手をつけるかとおっしゃる、その大奥とは何ぞやと。私も大奥時代に生存しておりませんので、よくわかりません。
  69. 丸谷金保

    丸谷金保君 結局、手をつけられなくて、どんなに貨幣の改鋳をしたりデフレをやってみてもどうにもならなかった。  いまその点で、何といいますか、公社公団、天下り先をどんどんつくって、ここに政府資金がどんどん流れているんです。これが今度の行政改革なんかでも結局手のつかないところなんですね。こういうものに対して蛮勇をふるわなければ、増税以外に私はないと思っているんですが、いかがでしょう。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 公社公団というものは、政府がやるには必ずしも適せず、そして民間に委ねるにはなお公共性等々いわゆる採算上非常にむずかしいというような問題から、そのつど公社公団というものができてきた淵源であろうかと思います。したがって、それはそれぞれの機能を果たしておるわけでございますが、臨時行政調査会の答申等を見ましても、あるいは経営形態、あるいはそれそのものの存廃ということについても、いろんな御議論をいただいておりますので、それらのものを念頭に置きながら、これから政府部内で真剣に対応していかなきゃならぬ問題が数々ある、こういうふうに私も理解しております。
  71. 丸谷金保

    丸谷金保君 公社公団はいまおっしゃったようなことですが、それじゃ天下り先の特殊法人はどうですか。これはもう少ししっかり見ていかないと……。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 特殊法人もその例外でなく、いろいろ指摘されておるところでございますので、それらについてメスを入れるとでも申しますか、そういう対応をしなきゃならぬ課題であるとは思っております。しかし、一つ一つについて、それぞれそれなりの歴史的淵源なり、また果たしてきた役割りというものもございますので、一概にばっさりとやるわけにはまいらないことではなかろうかというふうに考えております。
  73. 丸谷金保

    丸谷金保君 それでは公社公団は、いろいろ公益的な問題もあるから、そう簡単に手のつかない という面もあるかと思います。その中で、これだけはどうですか、公社公団、特殊法人を含めて、天下りの規制をもう少しきちっとやるということ、こういうことについて、大蔵大臣として財政当局の立場で、ここにこういうむだがあるではないかということをきちっと指摘する、そういう勇気をお持ちでございませんか。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 従来も国会でいろいろ御指摘いただきながら、いろんな閣議決定がございます。その閣議決定がなされて、それの基準に沿って対応されておるということも、いまのような御意見に対してのとられつつある措置ではなかろうかというふうに理解をいたしております。
  75. 丸谷金保

    丸谷金保君 理解はいたしておるけれどもなかなかできないということになると、きょう出てきたこの法律案も、先ほど冒頭に申し上げました荻原流の手口と変わりのないようなことになってくる。たとえば国鉄のように、地方の一番困っているローカル線なんというものだけを問題にして取り上げるというふうなやり方では、とてもこれは解決する問題じゃないはずなんです。  一体、回収準備資金というのは資産なんでしょうか、益金なんでしょうか。
  76. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 資産か益金か、どっちに分けるのもなかなかむずかしい性格の一種の資金ではなかろうかと思います。と申しますのは、政府補助貨幣をつくりまして日本銀行に交付いたしました場合に、その額面相当額が回収準備資金に編入されるわけでございます。そういう意味では、いわば一種の発行収入として益金が資金に入れられるわけでございますが、それが積み立てられる、財政法の四十四条に申します「特別の資金」ということで積み立てられております。そういう意味では資産的な性格を持つものでございますが、一種の益金の累積額である資産、これを財政法の四十四条に言う資金——資金というのはほかにもいろいろございますが、そういうものだと理解をいたしております。
  77. 丸谷金保

    丸谷金保君 これを益金と見る見方をしますと、これはまさに元禄時代の考え方と同じなんですよね。益金だと、原価がそんなにかからないんです。それでいいでしょうか。もう一回ここのところをはっきりさしてください。
  78. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) ただ、この問題には歯どめがございまして、補助貨はあくまでも小額通貨でございますから、市中の需要がなければ出せるものではございません。政府が幾らつくりまして日本銀行に渡しましても、それは別段預金、別口預金として眠っているわけでございまして、市中の需要があって初めて日銀の窓口から世の中へ出てまいるわけでございます。たとえば貨幣の販売機とか、あるいはゲームでありますとか、そういう需要があってコインが出てまいるわけでございまして、現になかなか五百円通貨がないと言われますが、紙幣と両方ありますと、通貨の方は重たいからいやだというふうにして、なかなか流通しないというような面もあるわけでございまして、おのずからその歯どめがございますので、これはどんどんつくってインフレになるというふうな性格のものではないのではないかと思っております。
  79. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、その歯どめ論なんですが、まさにおっしゃるとおり、その歯どめがあれば、インフレ要因になっていくということはないということも一つの見方だと思います。  しかし実際に、いまおっしゃられた五百円ですね、これは五十六年から始めまして、五十七、五十八と随時貨幣をふやして出していっています。しかし実際の需要はどうなんですか、まだ余り出回ってないと思うんですけれどもね。どういうわけで余り出回らないんでしょうかね。
  80. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 取引手段の、何といいますか、単位で申しますと、五百円というのは、大体六億枚ぐらいあればいいというような感じがございまして、それを五十六年度の際に、札が三億、コインが三億というような感じで考えまして、五十六年に一億枚五百円コインをつくったわけでございます。五十七年に二億枚つくりまして、三億枚つくってそれを日銀に渡したわけでございますが、本年の二月末現在でまだ九千枚ばかり日銀に残っております。  確かに五百円札ほど五百円コインがわれわれの目につかないわけでございますが、いろいろ考えてみますと、一つは、ただいま申し上げましたように、五百円という単位が六億枚あればわれわれの日ごろの取引に支障がないというようなことで、比較的枚数が少ないわけでございます。それから新しいものなので、どうしても手に入れるとそのまま退蔵しちゃうというような問題もあるようでございます。それからいま話が出ましたように、四枚か五枚財布に入れますと重いわけでございますね。  そんなことで、全部つくっただけ発行はしたんだけれども流通しない。もろもろの要因があって、われわれも研究しておりますが、定かな理由はわかりませんけれども、三億枚つくって九千万枚まだ残っているというような状況にあるわけでございます。
  81. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはあれですか、これらの五百円、百円というような貨幣にしても、要するに市中銀行からの需要がなければふやせないということの歯どめというのはずっと続くわけですか。
  82. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 統計的な問題で申しますと、いわゆるキャッシュでございますね、日銀券とコインの割合というのは非常に安定しております。日銀券の流通高とコインの流通高を比べますと、大体六%前後で非常に安定しております。そういうようなことで、差益をうんと出そうと思ってコインをうんとこしらえても日銀の窓から流通しないわけでございます。わが国の場合はもう経験的にそういう感じがございます。それから理論的にも、各国で、補助貨というものはむちゃらやたらにつくっても流通しないものだというようなことが一般的には言われております。
  83. 丸谷金保

    丸谷金保君 いま大体まだ約一億枚近く余っておると。これは五百円紙幣と両方が流通しているから余るわけですね。そうすると、五百円紙幣というのはずっと流通させていくんですか。
  84. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 札の方は、五百円の場合一年ぐらいで汚くなっちゃったり、回収したいというような問題がございます。  そこで、五十八年度で申しますと、五百円札の回収部分を計算いたしまして、それからコインの方は、一年で回収、引きかえということはパーセントが低いわけでございますから、そこいらにらみ合わせまして、五百円札とコインとが適当なバランスをとってできるような、そういう製造計画で五百円札の方も新しく印刷いたしますし、コインの方も新しく鋳造するというような計画を立てております。すべて実態をよく分析しまして、そういうようなことを考えております。
  85. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、五十八年度に五百円紙幣を二億枚くらい発行する計画ございますね。こういうふうにずっと続けていくんですか。
  86. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 目下のところは、いまお話のございましたように、札とコインを並行流通していった方が国民取引に便利ではないかというような考え方で、並行流通を考えております。
  87. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、補助貨幣の五百円、紙幣としての五百円と五百円の白銅貨幣を出していく。ニーズに応じて出していくんだというふうな考え方でいくと、五十八年度あるいは五十九年度予算に向けてのこの回収準備資金、これの予算計上というのは、もう余り来年度からは見込めなくなりますね、五十九年からは。
  88. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 率直に申しまして、五十九年の見積もりも計算をしてみたんですが、なかなか不確定要因が多くて計算できませんけれども、いま御指摘のように、余り大きくは見込まれなくなっていると思います。
  89. 丸谷金保

    丸谷金保君 提案理由の説明を見ますと、この補助貨幣発行現在額と準備金とは必ずしも同額でなくてもいいんじゃないかと。一体この割合はどれくらいを想定しておりますか。
  90. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この資金は何に使うかと申しますと、大きく二つに分かれまして、一つ回収の場合の準備金でございます。もう一つは造幣局の費用に充てると申しますか、鋳造経費でございます。  この二つの要素がございますが、過去の数字をずっと調べてみますと、それぞれ流通額の五%程度あれば賄えるのではなかろうか。いまの制度になりましてから三十年の歴史があるわけでございますが、一〇%を超えました年が九年ございます。しかし最近は、この比率は非常に落ちておりまして、三、四%ぐらいで最近は推移しておりますが、新しい種類の通貨をつくるとか、あるいは記念硬貨をつくるというふうなことがあると、この比率がぐっと高まるわけでございますが、趨勢として、流通高の一〇%ぐらいをここに置いておけば、まず足りるのではなかろうか。こう考えて、これは政令で決めさせていただくような仕組みにしてございますが、流通の一〇%というものを保有すると、こういうふうにやらせていただきたいと思っております。  ただ、万一の場合に備えまして、一般会計から、足りない場合は、この資金に繰り入れることができるような規定も今回整備をさせていただいております。
  91. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、私その点で非常に心配するのは、金額が少ないからインフレの懸念はないんだと、こうおっしゃいますが、もともと貨幣回収準備資金というものは、私は益金じゃないと思うんです。これは従来からの国の方針としても、あくまで国民の信用を維持するために設けられた資産であるということを再三にわたって従来は言い続けてきましたね。本来これは資産なんであって、これを食いつぶすということ、この考え方というものはインフレにつながりませんか。元禄の貨幣の改鋳と同じで、これを益金だという考え方を持つと私は大変だと思うんですよ。たとえば千円でも一万円でもできるんですから、つくり出す気になれば。そうでしょう。
  92. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) いま積み立ててある資金を崩す問題と、それからそもそもこの鋳造差益をどう観念するかという問題と、二つあると思うんでございますが、いますでに積み立ててある分、一兆何がしの分は、すでに財政投融資計画にも、財投の原資に組み入れられておりまして、それは経済の中を循環しているわけでございます。したがって、それを取り崩すと申しましても、これはいわば国の中の会計の振替でございまして、その取り崩し自体がインフレ要因であるということは言えないのではないかと思います。
  93. 丸谷金保

    丸谷金保君 財政投融資の方に入れてあるんだから、それを回収するからインフレ要因にはならないと。それは現況ではそうでしょうけれども、たとえば千円硬貨、これを出すとしますと、大体五千億くらいの益金になりますね。どうですか、益金という考え方になるともうかるでしょう。
  94. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 確かにそういう問題はございますが、いままでの経験で申しますと、記念硬貨やなんかは、退蔵されちゃうというような問題もございます。理論的にはお話しのような問題があります。
  95. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、五百円にしても大体二十倍ですか、ですよね。強制通用の二十倍でしたね。千円にすると、あれでしょう、やはりその二十倍。それから一万円の硬貨をつくりますと、十兆円くらいのことになるんですよね。これが益金になっていくわけです。この歯どめを一体どこでするんですか。要するに、冒頭に市中銀行からの需要の問題だと言っていますね。五百円の紙幣、確かに五十八年度では計画があります。しかし、これをやめていきますと、強制的にあれでしょう、五百円の銀貨でも千円の銀貨でも使わなきゃならなくなりますよね。この場合はどこで歯どめするんですか。
  96. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 形式的な歯どめは、現在補助貨は五百円までが政令でできるわけでございますが、それ以上ですと法律を出さなきゃなりません。それは形式的といいますか、国会の議決に待たなければならぬわけですね。  それからもう一つ実態的な歯どめは、率直に申して、千円のコインというのはオリンピックのときに一回出したことがあるわけでございますが、記念コインの場合と普通のコインの場合とあろうかと思います。記念コインの場合には、仮に千円を出す場合には、まず国会法律を出さなきゃならない。同時に、記念コインというのは退蔵という問題がある。このごろコイン収集の、何といいますか、趣味もかなり普遍化しておりますので、そういう問題があろうかと思います。  では、一般のコインとしてそういうものを出すのかどうか。これはただいま申しましたように、日銀券との関係で、軽いもので質が悪いというようなことをすれば別でございますが、おのずから品格というようなことを考えると、日常生活上不便である、大きさなり何なりが。質をよくしますと、コストが券面額を上回っちゃうというような問題が出てまいります。というようなことで、自然におのずから限度があろうかと思うわけでございます。
  97. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうも自然の限度というのはちょっとよくわからないんです。貨幣の問題は天然現象じゃないんですからね。もう少し何か明確なめどというふうなものを定義できませんか、自然現象じゃちょっと困るんだよね。
  98. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 経験的に申しまして、ただいま申しましたように、いろいろな補助貨をコインで出した場合、われわれが差益が欲しくてうんとつくっても、実際問題として、発行しても流通しないというような経験的な現象があるわけでございます。それを先ほども申しましたが、大体銀行券発行残高に対しまして補助貨の流通残高は、この何年間、十年ぐらいの間五、六%、五%と六%ぐらいの間に非常に安定した関係がございます。これは何も日本だけの関係でなくて、どこの国でも一般的に言われております。
  99. 丸谷金保

    丸谷金保君 大体いまの御答弁である程度の輪郭がわかってきたんです。そこで、大臣ね、ひとつ明確にしていただきたいんですが、一つの歯どめとしては市中銀行のニーズの問題がある、こういうことなんです。したがって、五十八年度も市中銀行のニーズの関係で五百円紙幣も二億枚を印刷して出すんだと。将来にわたって市中銀行のニーズに応じてそうした五百円の日銀券も出していくということをお約束できますね。ニーズによってと、そう言ったんだからね。いま、ニーズによって出していくのだということですからね、大臣。これが歯どめだというのです。これはお約束できますね。ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  100. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 技術的な問題なので、最初技術的なことを申し上げてみますけれども、札の方は、さっき申しましたように、一年で耐用年数が来る。もう一つは、五百円コインであれ、五百円券であれ、大体目下のところ四、五%の増加率がございます。こういうような現在の取引慣行が極端に変わらない限り、両方の並行流通というのをむしろせざるを得ないという問題がございます。  ただ、いろいろ世の中変わりますから、将来まで見通すことはできませんけれども、私どもは、この二、三年の間は、一応そういうふうに全体で毎年五百円という単位がどのぐらい要るであろうか、それがコインと札でどういうふうな案分になるだろうかというめどは、二、三年ぐらいについては、ただいま申し上げましたような要素で、何といいますか、心づもりは立てております。そういう限り、そういう諸条件が変わらない限り、並行発行と流通というようなことになっていくと思いますが、ただいま申しましたように、自動販売機だとか取引手段が変わりますと、それをどういうふうにするかという問題がまた出てまいります。
  101. 丸谷金保

    丸谷金保君 たとえば五百円紙幣は五十六年には三千三百億、五十七年には二千二百億、それから五十八年は一千億とたんだん減っていっているんです。減らしていく計画ですわね。減らしていくというか、減っていっているし、減らしていく。それは五百円の硬貨が出たからだ、こういうこと になっていくわけですがね。あくまで問題は、ニーズによるのだということがお約束できますねと私は聞いているのだ。
  102. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 第一点は、その五百という単位が大体六億枚ぐらいということなんですが、その六億枚が大体四、五%ぐらい伸びるわけでございます。それをコインと日銀券でどうするか。現在のところの自動販売機の普及とか、人々のコインと日銀券の選択の取引形態というものがあるわけでございます。それを前提にする限り、われわれが二、三年見通しますと、やはり両方を並行流通せざるを得ない。  ただ、自動販売機なんかがどんどん普及いたしまして、国民の多くがコインの方を選択するというような事態になる、あるいは札の方をむしろ軽いから便利だというので選択するようになる、そういうような取引手段というものはかなり変わるものでございますので、そういうものが変わればやはりまた変わらざるを得ない、こういうように考えております。
  103. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはわかるのです。変われば変わらざるを得ない。わかるのです。  私は日銀の支店なんかも歩いて、一体五百円どうなんだと聞いたら、特に地方に行くほどニーズがないんですよ、率直に言ってね。支店も訪ねていって聞いてみたんです。ないんです。しかしこういう制度ができますと、今度は五百円はなるたけ刷るな、五百円白銅貨をできるだけとってくれというふうに、押っつけが始まるのじゃないかということを心配しているのでしつこく聞いているのですが、それはないですねということなんです。
  104. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) もう一つの歯どめとしては、造幣局の製造能力、印刷局の製造能力の問題もあるわけでございます。押っつけというのは、それはあるのかないのかというのはわかりませんが、先ほど申しましたように、自然の経済の流れの中で取引者によって選択されるわけでございますから、現在でもそれは、ただいま申しましたように、三億枚刷っても約一億枚近くのものが、差益がとれないような別口預金という方へ入って在庫になっちゃっているわけです。そういう自然の取引の制約というのがあろうかと思うんです。
  105. 戸田善明

    参考人戸田善明君) ただいまの理財局長のお話に尽きるわけでございますけれども、日銀の本・支店から五百円貨を押しつけているということはないかという御心配がありましたのですが、そういうことは私はしておりません。いままで出しましたのが、先ほどもお話が出ましたように、この二月までに約二億一千百万枚出ておりますが、これはいわば自然体で出ていったものでございます。ちょっとよけいでございますが、補足させていただきます。
  106. 丸谷金保

    丸谷金保君 いや、日銀が押しつけているというのでなくて、押しつけるようなことになる、この法律ができますと。益金を上げなきゃならないんだから。益金を上げるという考え方になりますと、押しつけが始まると困るという立場で申し上げているので、いま押しつけていると言っているんじゃないんです。それはございませんね。  これは歯どめとして一つ大事なところなので、大臣いかがですか。ここが歯どめなんです。そして両方刷ったりつくったりしているんですから、それでやってくれればいいんですけれども、片っ方やめて片っ方だけになると、これは歯どめがなくなるんです、五百円でも千円でも次から次へと。
  107. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは全く素人でわかりませんですが、五百円札のことでいまちょっと私が思い出したのは、私が前回大蔵大臣のときに、私の子供がお医者へ行きまして五百円札を出したら、これはニセ札じゃないかと言われまして、これは大変だと思って、帰って大蔵省で見てもらったら、なるほど大蔵省印刷局じゃなくて、大蔵省印刷庁と書いてありまして、これはすぐ七百円で売れますと、こういう話でございまして、紙幣というものはいろんなことがあるものだなあという気がいたしました。  そういう問題は別といたしまして、あくまでもニーズに適合するように発行するわけでございますから、押しつけというようなものはあり得ないことじゃないかなと、こういう感じでございます。
  108. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは感じでなく、そこら辺はぴたっとしていただきませんとインフレ要因に——これはアヘンみたいなもので、手をつけ出すと、これは五百円でよければ千円でもいい、千円でよければ、一万円硬貨だってやってやれないことないじゃないかということになりかねないんです。そうするともう五千億ぐらいすぐ財源出るんですよ。ですから、これは大臣から、そういう押しつけはしない、あくまでニーズによって五百円札もずっと刷っていくのだと。  いま印刷能力の問題も言ってますけれども、逆なんですよ。余り減らされたら困るということで、労組との間でもあれやっていますでしょう。コウゾをつくっている農民だってすぐ刷るのをやめちゃったら困る。逆なんですよ。あなたの言うことは逆を言っているんで、能力はもっとあるんですから、そういうごまかしを言ってもだめなのね。これだけひとつ。
  109. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) ごまかしではないんで、造幣局の方の能力とか、そういう両方の能力のバランスがあるわけでございます。いま印刷局の方は改札をやっておるわけでございますね。そういうふうに決してごまかしを申し上げたわけじゃなくて、造幣は造幣の能力の問題があり、印刷は印刷の能力の問題があって、両方がそれぞれ、コインが出れば、印刷局の方は自分の方が減るのじゃないかと思ったり、あるいは改札をやれば印刷局の方の能力がオーバーになったり、そういう問題があるので、両所の製造能力もこの場合一つの前提条件になりますと、そういうことを申し上げたわけでございます。
  110. 丸谷金保

    丸谷金保君 その能力は歯どめの要件にはならないんですよ、どっちもまだまだたくさんあるんですから。五百円紙幣の印刷能力だって、まだいまの何倍かありますでしょう。そうすると歯どめにそれはなるはずがないのです。歯どめは、要するに、片一方に押しつけるかどうかということの問題であって、ニーズに応じて両方やっていくんだということなら歯どめになるけれども、これがどうもはっきりしない。  それで、もう時間ですから、もう一つ最後に大事な問題を一つ。というのは、先ほど鈴木委員からも質問がありましたけれども、財投との関係なんです。財投との関係では、財投から引き揚げるんだからインフレ要因にならぬと。まさにそれはお説のとおりなんです、その段階ではですね。しかし資金運用部の資金繰りが窮迫して、いま国債を売却しながら穴埋めをしているというような状態でしょう。これは日本経済新聞に言わせれば、普通の銀行ならまさに破産状態だと。この破産状態にあるところから引き揚げるんですか、一兆一千億からの金を。まさに破産状態の財投資金の足を引っ張るようなものじゃないですか。大臣どうなんですか、こういうところから引き揚げることは。これで財投は大丈夫なんですかね。
  111. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 国の予算編成が非常に窮地に立っておりまして、いろいろ財投に御迷惑をかけております。地方財政の問題にしろ何にしろ、財投に非常に負担をおかけして、予算を編成する立場から大変申しわけないと思っておりますが、ただ本件に関しましては、全体の財投規模もことし非常に抑制されておりますし、全体の資金繰りの中で何とか協力をしていただけるということでございますので、私どもこの資金を五十六年度の歳入欠陥の穴埋めという、これは異例の財政事情があったものでございますから、こういう一時的な資金を総動員いたしましてこれに充てる。財投には大変御負担をおかけしておりますことは御指摘のとおりでございます。
  112. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣、この法律というのは、財政運営の面から言いますと、異例の措置として万やむを得ず行われるんだという認識を持って法案を提案されているというふうに理解してよろしゅうございますか。
  113. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そういう御理解をいただいて私も結構だと思います。  それからいま一つ、私も不勉強で、先ほどの歯どめ問題というのはどうもよく理解できませんでしたが、だんだん問答を聞いておりまして私なりにもわかりました。あくまでもニーズによってこれは製造すべきものであって、押しつけ等をやらせないと、こういうことを申し上げておきます。
  114. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣にはっきりそう言っていただいたので、財投問題その他はまた後日に譲りまして、きょうはこれで質問を終わります。
  115. 桑名義治

    ○桑名義治君 まず最初にお伺いしたいことは、今回の補助貨幣の取り崩しは、五十七年度の予算審議に際しまして、わが公明党側からも減税財源として提示をしてきたわけでございます。税収見積もりの誤りによりまして大幅な税収欠陥が生じまして、その穴埋めとして今回この取り崩しが決定したようでございます。その件につきましては、先ほどからも多少議論があったわけでございますが、私たちといたしましても、大変に遺憾に感じているわけでございます。  そこで、今回の取り崩しに至った事情、われわれ野党側としましては、これが減税財源として取り崩しをしてもらいたい、こういう提案に対しまして、それは却下されて、今回は歳入欠陥の穴埋めにした。ここら辺のいきさつなり、そしてまたここらの補助貨幣の取り崩しに対する考え方、これをまず最初大臣に述べていただきたいと思います。
  116. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘のとおり、従来から減税財源としてこれを使ったらどうだ、こういう御質問がたびたびなされております。その際お答え申し上げておりますことは、とにかく本資金の取り崩しはいわば一過性のものでございます、一遍きりでございます、したがって、減税財源といえば、一過性のものを財源にするということは適当でございません、こういうふうにお答えしてきたわけであります。  そこで、五十六、五十七において巨額の歳入欠陥が生じた。五十七年の六月、去年の六月初めて、政府として、これからこの税外収入を一生懸命で検討します、対象はこれこれでございますという中へ、初めてこれを入れまして、資料を国会の御審議の際に提出した。それから一生懸命で議論をいたしまして、五十八年度の厳しい財源事情の際、五十六年度の決算不足補てんの繰り戻しという、まさにこれはある意味においては臨時的な支出でありますから、それに対処する必要がある。そうすることによって、それだけいわば公債発行の減額もできるというような種々検討を重ねまして、最終的に財政制度審議会の御意見も伺いまして、そこで取り崩しということで、今回この法律案並びにこれに伴います税外収入を含む予算案をそれぞれ予算委員会、そして大蔵委員会で御審議していただいておると、こういう経過になるわけであります。
  117. 桑名義治

    ○桑名義治君 その経過については、一応その理由としてはわかった。それが適当であるか適当でないかという問題はまた別問題だと私は思う。こういうふうな財政事情に陥っている、あるいはまた現在の日本経済情勢というものは非常な不況のどん底に陥っている。    〔委員長退席、理事増岡康治君着席〕 この不況の問題につきましては、現在は、日本のこういった景気の問題も、日本だけで対処できる問題ではなくて、世界同時不況、世界の中の日本という、そういう視点から見つめていかなければならない。  この論理もすぐわかるわけでございますけれども、そこで今回の金額を見た場合に、野党側からの要求のときには約二千億だったわけでございますが、それを上回った取り崩しをやられているわけですね。そうなった場合に、これも政策上の選択の一つとして取り上げてもおかしくなかったのじゃないかと私は思う。景気回復への一つの手段として減税ということは大きな一つの役割りがあるわけですから、これを単独でやっても、効果というものは、これは余り期待できないことはわかるわけでございますけれども、そういった立場から考えた場合に、減税に使うのがよかったのか、あるいはこういう一時的な穴埋めのために使った方がよかったのか、ここら辺は恐らく、大蔵省としても、大臣としても、政策の選択からも多少検討がなされたのではなかろうかと、こういうふうに思うわけでございますが、その点はどうでございますか。
  118. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは昨年のことでございますが、三月の六日でございましたか、私はまだ自由民主党の幹事長代理でございました。その際に減税問題というのが議せられて、そしてそれの財源を含め衆議院大蔵委員会の小委員会をつくって専門家の皆さん方に御検討してもらった。その御検討の経過を見ますと、一過性の財源を充てるべきではないと、こういう議論があるわけであります。一過性、一遍ぽっきりのことをいままでして減税に充てたことはあるかとおっしゃれば、いわゆる四百八十四億でございますか、剰余金をそのまま減税財源に充てたということがございます。それのある種の反省というものがそういう議論につながっていったんじゃないかなあという感じがいまいたしますので、いままさに桑名委員指摘のとおり、一過性の財源というものは、いわば一遍ぽっきりでございますから、五十六年度の歳入欠陥の補てん分の繰り戻しというようなものを念頭に置いたことで、政策選択の方向が決まったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  119. 桑名義治

    ○桑名義治君 どうもそこら辺がはっきりわからないわけです、私は理解ができないわけです。  そこで、今回の回収準備資金というものは財投の原資に運用されていたわけでございますが、これを取り崩したことによって財投の原資そのものが減少したわけですね。そうするとこの財投自身の原資の減少はどのように手当てをなされたわけですか。
  120. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 五十八年の場合には、この問題だけじゃなくて、郵貯の伸びも七兆九千というふうに同額であったわけでございます。それから厚年、国年も平準化ということでこれが減になっております。等々で非常に原資事情が苦しい。そこで、すでに御発表しておりますが、財投四十八機関は二%の増と六千億ふえたわけでございますけれども、二千を国債引き受けの増に回しまして、四千百四十一億というもので四十八機関の中を賄った。これは各機関の事業の中身とか重要度を見まして、約二十機関が四千五百億前年より減っております。四機関がプラマイ・ゼロで、二十四機関が全部で八千五百ふやした。要するに八千五百ふやしたところと四千五百減らしたところで四千、端数がございますが、そういうような配分をやっておるわけでございます。
  121. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、今回の回収準備資金の取り崩しを含めまして、税外収入の確保策によって、五十八年度予算では、五十七年度の当初予算と比較して約二倍、四兆七千二百億円を見込んでいるわけでございますが、検討過程では、どのような収入源が一応見直されたのか、それが一つ。  今後とも検討を続けるものと、こういうふうにしてあるわけでございますが、もうこれでぎりぎりじゃないかなあというふうにわれわれは思うのですが、そのほか今後の検討事項としてどういうものがあるか、具体的な問題として挙がってくるならば、これも伺っておきたいと思います。  さらにまた、五十九年以降の税外収入の見込みは大体どのぐらいになるか。私もこの問題は多少予算委員会でも御質問申し上げたわけでございますが、私たちがずっといろいろと精査した関係の中では、なかなか厳しい状況にあるわけでございますが、今後も税外収入のために検討していくというふうに言われていますから、どういうものが検討されているのか、具体的にお話できればお示し願いたいと思います。
  122. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 五十八年度予算の税外収入は、いま御指摘のようにもう洗いざらいというぐらいにかき集めたわけでございますが、ことしの予算編成に当たりましては、いままで臨調の部 会でございますとか、あるいは国会の御論議などで俎上に上がっていたものを総点検いたしまして、幅広く検討いたしまして、できる限りの協力を、各法人とかあるいは特別会計から、していただきました。  そこで、私どものいまの感じは、もうできるものはすべてやったと、こういう感じでございまして、あとたとえば積立金が残っているとかいうふうなものもございますが、それは資産になっておりましたり、あるいは保険の準備金でございましたりして、使えないものでございまして、もうある程度の金額、税外収入として意味のあるほどの金額のもので残っているというものはまずほとんどないのではなかろうかという認識でございます。  ただ、こういう厳しい予算編成が今後も続かざるを得ないと思いますので、私ども増税をお願いする前に、歳出は切り詰め、税外収入で賄えるものは何とか賄えないかという検討を今後もいたしてまいりたい、こういういわば決意を先日お出ししたペーパーには書かしていただいておるわけでございます。  たとえば国有財産なんかはもっと処分しろというふうなことをおっしゃる方も多いわけでございまして、そういう点につきましても、今後大いに努力してまいりたいと思いますが、しかしそれにしても、そんなに大きな金額のものは出ないのではなかろうかというふうに考えておりまして、率直に申しまして、五十九年度以降税外収入の捻出には今後精いっぱいの努力はいたしますが、ただ新たな財源の確保はなかなかむずかしいのではないかというふうに思っております。
  123. 桑名義治

    ○桑名義治君 私がいま申し上げたように、大蔵省としても、来年度は、税外収入をどんなに探してもほとんど見当たらないということになるわけでございますが、しかし今後とも検討を続けると、こういうふうにおっしゃっておるわけですね。今後とも検討を続けるということは、まだあるということになるんじゃないですか、裏を返せば。ないものがはっきりしておって、今後とも続けるということになれば、これはおかしな問題になってくるわけですが。  そうすると、来年度の予算編成はどういうふうにやられますか。こういう厳しい状況の中におきまして、来年度の予算編成はどういうふうにやられようと思っておられるのですか。
  124. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 来年度の予算編成方針はまだ決めたわけじゃございませんけれども、率直に申しまして、一方増税なき財政再建と、こういうことがうたわれております。そういう中で、しかも臨調の答申を読んでみますと、糧道を断つことによって云々と書いてあります。普通の役所の文書にはないような言葉が書かれてあるわけです。その構えでまず歳入削減というものを、いままでの制度、施策の根源にさかのぼって、法律改正をも含めたものでどれだけのものがやれるかということを一方考えなきゃいかぬ。  もう一方の手順といたしましては、当然のこととして、概算要求に対するシーリング枠を決めなきゃなりませんよね、国会が終わりますと。それに対してはまず各省の内部で徹底的な精査をしてもらわなきゃならぬ。したがって、シーリングというものは大変厳しいものにならざるを得ないじゃないかというふうに考えるわけであります。したがって、今度いろいろ協議する際には、それこそあらゆる従来の施策、制度の中で、あるいは個人、企業の責めに帰すべきもの、あるいは自治体の担当すべきもの、国の担当すべきもの、そういう分野調整というものもやりながら作業を進めていかなきゃならぬ。大変な覚悟で臨まなければならない課題であるというふうに私もつくづくと感じておるわけであります。
  125. 桑名義治

    ○桑名義治君 税外収入の大枠の問題についていま議論がちょっと入ったものですから、来年度の予算編成の問題まで敷衍したわけですが、こういった問題についてはまた後ほど少し議論をしてみたいと、こういうふうに思っております。  そこで、補助貨幣回収準備資金発行現在額の保有については、資金から一般会計への繰り入れ措置を設けた昭和四十五年の法律改正の際にも、その必要性については疑問が出されているわけでございます。政府委員答弁も、資金の存在理由として、理念上の理由のみを挙げられて、現実の必要性は余り言われていないわけでございます。当時からすでに十数年経過しているわけでございますが、いままでこの問題について再検討したことがあるのかどうか、それをまず伺っておきたいと思います。
  126. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 率直に申しまして、大蔵省の内部でいろいろ議論している段階では、私どもこういうものを取り崩すことはどうかなという問題意識は持っておりました。ただ、これが事、貨幣制度通貨制度に関する問題であるということ、それからさっき御指摘のように財投資金になっているということ、あるいはさらに、仮にこれを使って、私どもの立場でいきますと、赤字公債の発行額をそれだけ減らしたとしても、その翌年はすぐまた戻ってしまう。一時的なものでしかないというふうなことをいろいろ考えますと、これは取り崩すのは適当でないなという判断をずっとしてまいったわけでございます。
  127. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、今回こういうふうに補助貨幣回収準備資金の取り崩しが考えられてきたわけでございますが、従来からのこの資金の設立の意義というもの、これをどういうふうに考えられていたのか、まず伺っておきたいと思います。
  128. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは補助貨回収に充てる、あるいは造幣局の経費に充てるということによりまして補助貨幣の信認を維持する、こういう制度であると、こう考えておりました。
  129. 桑名義治

    ○桑名義治君 この説明、これは調査室から出ているのですが、「補助貨幣に対する国民の信認を維持するため」、こういうふうに載っかっておるわけでございますが、この一面もあるわけですか。
  130. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 補助貨幣回収を円滑にするという面を通じまして、補助貨の信認を維持するというのがこの制度の主たる目的だと思います。
  131. 桑名義治

    ○桑名義治君 その信認という意味はいろいろあるんじゃないかと思います。それと同時に、鋳造あるいはまた回収費、あるいはまた補助貨幣発行しているその裏打ちとしての信用度、そういういろいろな信頼という意味を含んでいると思うんですが、こういうふうに取り崩していく、あるいはまたそういう信頼度というものを維持する、そういう立場から考えた場合に、大体大蔵省としてはこの資金というものはやはり必要だというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  132. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この制度そのものは非常に必要であると思っておりますし、これを今後とも維持していきたいと思っております。  ただ、現行制度では、補助貨幣発行高に見合う資金を保有することになっておりますが、そこまでの資金の保有は必要ないのではなかろうか。この資金の使途は、回収、引きかえに対処するためが一つと、それからもう一つは、造幣局の経費支弁のためでございますが、過去の推移をずっと検討いたしますと、両方合わせまして一〇%も残しておけば、まずまず間に合うのではなかろうか。過去確かに一〇%を超えた年もございますけれども、しかしそれはかなり古い時代のことでございますし、あるいは万一今後超えるようなことがあれば、一般会計からこの資金に繰り入れるという制度をまたこの法改正の際に入れていただいておりますので、範囲を広げていただいておりますので、この一〇%を当面維持しておけば、信認の維持という目的からは足りるのではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  133. 桑名義治

    ○桑名義治君 今回の取り崩しの場合に一〇%程度を残しておけばよろしいという、その一〇%の積算の基礎というものはどこにあるわけですか。
  134. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) こういうものは、積算といいましても、毎年変動が非常にございますので、細かい積算をするという性格のものではなかろうと思っております。大体のところ補助貨幣の引きかえ、回収に対処するために五%、造幣局経 費の支弁のために五%、合わせて一〇%でございますが、この程度を持っておけばよろしいのではなかろうか。回収のために五%近くになりましたのは、最近では昭和四十二年度に四・七%という事例がございます。それ以後はずっと低くなっておりますが、それより前はもっと高い数値もございます。また造幣経費のための比率では、四十九年度に四・七%という事例がございます。そういったことで、まずそれぞれ五%、合わせて一〇%保有しておけば、当面まず十分ではなかろうかと思っております。
  135. 桑名義治

    ○桑名義治君 次にお聞きしておきたいことは、補助貨幣をどれだけ発行するかを決定する基準、それをどこに置いているのか、あるいはまた補助貨幣日本銀行券とは流通高あるいは発行高なりにおいて何らかの関係があるかどうかということでございます。
  136. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 補助貨幣の流通量の測定でございますが、過去の経験によりますと、GNPとの相関が非常に強いというような事実がございます。これで補助貨の総量を見まして、あと、現在五つの券種がございますが、その間の構成比、そういうようなもので製造計画を測定しております。  それから第二点の、日銀券との関係でございますが、これは日銀券の流通残高と補助貨の流通残高との間にも、かなり安定した関係が実際の問題として見られます。
  137. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御説明の相関関係というものは、大蔵省は、日銀等と検討した上でのいわゆる相関関係なのか、あるいは自然の成り行きの相関関係なのか、どちらですか。
  138. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 事実問題でございますが、名目GNPと補助貨の流通高あるいは日銀券の流通高、これは客観的事実として、そういう相当安定した関係にある。そういう日銀との間で検討云々——もちろん将来の予測の場合などに相談をしておりますが、過去の事実として、まずそういう事実がございます。
  139. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、これは事実関係の上から見たいわゆる相関関係である。事実関係の上から出てきた相関関係である。この相関関係というものをどういうふうに大蔵省としては認識なさっているわけですか。
  140. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) この事実関係がかなり安定した関係にございますので、特段に自動販売機の普及が急に変わるとか、あるいは回転速度などが急に変わるとか、そういうようなことのない限り、この安定した関係が将来の予測の場合に使えるというふうに見ております。
  141. 桑名義治

    ○桑名義治君 次の問題でございますが、補助貨幣とは言いますが、実際にはこれは何を補助するんですか、それが一つです。  それから補助する対象としての貨幣は実際には存在するのかどうか、これが二つ目でございます。  それから明治三十年の公布で、昭和八年以降一度も改正のない貨幣法というこの法律が、いま存在しているわけでございますが、金銀貨等はいまはない貨幣になっているわけでございます。そういったときに規定している法律でございます。またその上に、日本銀行券銀行券であって紙幣ではない。そして、いまの日本には法律貨幣紙幣もなく、ただ補助貨幣のみがあるという、何となく不自然な形になっている。こういうふうに言わなければならないと思うのです。  この際、貨幣法を初め、通貨関係の古い法令というものをある程度整理する必要があるのではないかというふうにも思うわけでございます。たとえば補助貨幣という名前をやめて貨幣という名前に切り変えるとか、いや硬貨という名前に切り変えるとか、いろいろ方法があるとは思うのですが、これはどうでしょうか。全く名前だけ存在し、実際、事実関係としてそれにふさわしいものを見落としている、こういう関係にあるわけです。法律が浮いているような感じがするわけでございますが、その点、どういうふうにお考えになられますか。
  142. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 補助貨幣というのは貨幣にあらずという、そういう問題意識もございますが、実定法から見ますと、貨幣法の中に本位貨幣補助貨幣があり、貨幣形式令というのがございますが、そこの中に明確に概念されております。したがって、補助貨幣貨幣であるというふうな整理できているわけでございます。  ただ、率直に申して、ただいま貨幣法による本位貨幣補助貨幣——貨幣法による補助貨幣は現在ないわけでございます。それから臨時通貨法による補助貨幣臨時通貨法補助貨幣だけでございます。それから紙幣は、臨時通貨法によって政府紙幣という規定がございますが、これは小額通貨整理法通用禁止になっておりまして、現在ありません。それから日銀法によって日銀券がある。こういう構成になっております。  そこで、いまの補助貨幣貨幣にあらずという実質論がありますが、実定法貨幣法なり臨時通貨法なりで読みかえなり、現実の変化に適応する措置がとられておりまして、そういう立場をとりますと、貨幣の一種として補助貨幣があるというような実定法関係がございます。  私どもの方は、すでに貨幣法が死んでいるのではないかということですが、貨幣法の条文は三つの部分に分かれておりまして、現在死んでしまっているのと生きているのと、それから疑問がある、あるいはほかの法律で一時停止になっている、その三つのグループになっておりますが、完全には死んでいないわけです。  そういうようなことで、確かにいろいろ先ほど大臣からも答弁がございましたが、これをどうするかという問題が、前回の四十四年のオーバーフローをとった場合、当委員会でも議論されておりますが、その際いろいろな制約条件を申し上げているわけでございますが、現実の問題として、臨時通貨法なり小額通貨整理法によって、現実にマッチするような国内通貨制度になっておるというような認識です。ただ、御指摘のような問題は絶えず勉強はしております。そういう問題だと思います。
  143. 桑名義治

    ○桑名義治君 この問題は、もうこれ以上詰めるのはやめます。  次の問題として、現在は世界同時不況の長期化ということで今後の経済動向というものは予断を許さない。確かに石油の価格の問題あるいは円為替の問題、レートはまたきょうちょっと下がっているようですけれども、あるいはアメリカのインフレが鎮静した。いろいろな条件は出ているわけでございますが、為替のレートはやはり依然としてまだ不安定な状況にあるわけです。そういうことを考えますと、今後の税収伸びに占めるいわゆる自然増収、この伸びというものは、また来年度も余り期待ができないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  それから、いろいろと国会議論で現在爼上に上っておりますが、いわゆるサラリーマン層では、五十二年度から課税最低限の据え置きで、実質の収入の目減りあるいは生活費のための貯金の取り崩しということから、減税要求というものが非常に盛んになっておりますし、国会でもこれが大変な一つの大きな柱として爼上に上っているわけでございます。政府は五十八年度中の所得減税を約束されているわけでございますが、国民減税とそれから増税の抱き合わせ、これは本会議でも私は質問したわけでございますが、そういった立場から、減税は確かにほしいけれども増税は余り好ましくないという抱き合わせのような御発言が、所々に聞かれるわけでございますが、この点もう一遍大臣から御答弁を願っておきたい、こういうふうに思います。
  144. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに世界同時不況、そうしていまのところ、政府として幾らか明るい要素とでも申しましょうか、その一つ、この間のQEを見ますと、補正後、一応のめどとしております五十七年度の成長率三・一%は達成できるんじゃないか、これが言ってみれば一つのいい要素でありましょう。しかしそれにしても、当初から言えばずいぶん下方修正して、最終的な下方修正し た数値に合わせてのお話になります。したがって、五十八年度いま見込んでおります三・四%というものの成長をより確実なものにするためにいろんなことをこれから考えなきゃいかぬわけでございますが、石油価格の下落というのは、総体的に見たら日本経済にプラスになる。  しかしこれを税収そのもので予測してみますと、いま御指摘になりましたとおり、たとえば今日の在庫あるいはランニングストック等も含めて、いまは高い油をまだ保有しているわけでございますから、そういう問題のある意味においては、在庫の評価がえとかいうようなことを考えると、五十九年度以降なら別といたしまして、いわゆる自然増収というものが大きく期待できる状態にはない。それから、先ほども質問がありましたように、五十七年度の税収見込みももちろん自然増収が期待できるような状態ではない。  こういうことになりますと、確かに減税問題、各党の代表者の皆さん方ずいぶん気を使って、財源をも確保して減税に充てろ、こういうことをおっしゃっているわけであります。そうすると、これも先ほど来のお話じゃございませんが、途端に赤字公債の増発をもってこれに充てるなどというものを安易に考えることはもちろん慎まなければならぬ。一方また、仮定の問題として、大型間接税をいわば抱き合わせ減税財源として考える、こういうことになりますと、それこそまた、まさしくそれ自体は増税ということになりますので、増税なき財政再建というたてまえに容易に手をつけるべき問題ではない。  結局、私どもといたしましては、これから各方面の意見を聞きながら、そしてまず作業を始める一つの契機として、七月の五十七年度決算見込みがついた段階からあらゆる方向を模索していかなきゃならぬ。したがって、これらの財源問題につきましては、従来も行われてきました小委員会とかいうような審議の過程、あるいは個々に意見を聞いて回るというような努力も重ねた上で結論を模索していく、最終的には政府責任で結論を模素していかなきゃならぬ課題だ、大変しんどい課題だなというふうに自覚をいたしております。
  145. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、これは減税の問題あるいはまた財政再建の問題、いろいろとむずかしい問題を持っているわけでございますが、臨調の答申の中で、増税なき財政再建は、絶対的なものとして、いま絶対的な課題として上っているわけでございますが、減税のために赤字国債を増発することは、こういう立場から言うと、これは禁止せざるを得ないというふうに思いますし、財政再建という立場からも、増税なき財政再建でございますので、こういった立場からも、この赤字国債を増発するということはこれまた厳しい状況の中にあるわけでございます。先ほどからの局長の答弁の中にありますように、税外収入も、もうこれ以上何も財源的なものはない。また予算委員会でも、歳出は今回はよくぞここまで切り込んだと、こういう大臣答弁もございます。そうなってくると、来年度の予算編成なりあるいはまた減税ということの財源がどこから出てくるか、これはどう考えてもやっぱりむずかしい課題でございます。  そこで、十八日の日に、衆議院大蔵委員会政府の税制調査会の小倉会長が、財政再建のために行政サービスの低下または増税を選択しなければならない、こういう意味発言をなさっておられるわけでございます。また間接税の問題については、景気にそれほど左右されない税収を確保できる長所があるとか、あるいは所得減税財源として間接税の検討は避けられないとか、あるいはまた十八日の参議院の予算委員会参考人として出席されて、税調内部には増税なき財政再建が可能だという考えはないと、全く臨調の増税なき財政再建の答申と真っ向から対立しているような発言がなされているわけでございます。  その間の中で、政府としてはどちらかを選択しなければならない、そういう立場に追い込まれていることは事実だろうと思います。先ほどからたびたび申し上げておりますように、税外収入というものも期待ができない。予算委員会の中では、歳出もよくぞここまで切り込んだという意味大臣の御答弁もある。環境というものがこういう非常に厳しい環境の中にあるわけでございますが、これをどういうふうに考えられているのか。  特にぼくが申し上げたいことは、財政再建のためにも、あるいは減税をするためにも、間接税を考えずに達成することはできないということが、税調の内部でもほぼもう意見が統一されているような意味の事柄が表へ出てきているわけでございますが、この点について大臣はどういうふうにお考えになっているんですか。大臣としてもある程度は微妙な発言をなさっておられますけれども、これはもうある程度国民の選択に任せざるを得ないような状況の中に来たんじゃないかと、こういうふうに思うわけでございますが、どういうふうにお考えですか。
  146. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは非常にむずかしい問題でございます。確かに増税なき財政再建、しかも先ほども申し上げましたように、糧道を断って、そして歳出構造の改革にメスを入れると、こういう趣旨が書いてあります。それをてこにしてやらなければ、安易に増税に走るということは、これは一番慎まなきゃならぬ。  それで、私はこの問題について最近考えておりますのは、臨調の答申を見ますと、おおむね歳入面では三カ所の一応記述がなされておる。一つは、そういう増税なき財政再建のてこ、哲学の問題であります。そうして二つ目には、現行の施策水準を維持するために、長期的には租税負担とか社会保障負担とを合わせた全体としての国民の負担率は、現状よりは上昇することとならざるを得ないという言及がなされておる。それからもう一つはいわゆる直間比率。課税最低限、税率構造と一緒に直間比率を検討すべきだと、こう書いてある。この三つの点だと思うのであります。  したがって、私は齋藤行管長官ともお話をしておりますが、臨調では、まずは歳出構造の見直しということが重点に置かれて、その答申の多くはそっちに文面が割かれておる。したがって、税制の問題は税調の方で具体的には考えられるべきだという考え方があるんじゃないかと私も思うんです。  また、税の部分で触れられておる面を見てみますと、直間比率の検討、こう書いてある。一方では、直間比率というのはあらかじめ決めるべきものじゃなく、結果としてあらわれるものであるから、税制体系の見直しという言葉に直ってきておりますが、同じようなことを御指摘なすっておるという意味においては、私は、税調と臨調とがそれぞれ相反する方向にこの位置づけをなされておるとは、実態として、中身を見ても、必ずしもそういうふうには思わないわけであります。  したがいまして、いろんな議論がされておりますが、税調というものには、ある種の予見を持つことなく、臨調もあれば国会議論もある、ことごとく正確に御報告申し上げておるわけでございますから、予見をわれわれが持って臨むことなく、広範な立場で税調では税制のあり方を審議してもらう立場ではないか。事実三年ごとに諮問しておりますが、諮問案を見ると、地方、国を通じてあるべき税制の姿についてと、こういうふうな非常に一般的な諮問になっておるわけでございますので、ある種の予見を持って当たるべきものではないというふうに思っております。したがって、私どもとしても、結局、国会で出た御議論、そして臨調の答申ももちろん御報告してあるわけでございますが、そういうものを御報告申し上げて、そこで幅広い議論をして、減税財源の問題にいたしましても、それから五十九年度予算編成に向かってのあるべき税制の姿におきましても、御検討していただかなきゃならぬ問題だなあと。  事実、私どもとしても、予見を持って臨むべきではないが、されば予見を持つだけの能力があるかと言われた場合、私どももいままさに模索しておって、そういう能力を持ち合わしておりますと言うだけの自信もないという複雑な心境でありま す。
  147. 桑名義治

    ○桑名義治君 この税の問題、増税の問題につきましては、いま私が議論として投げかけた問題は、税調の考え方と臨調の考え方というものが真っ向から対立していると、こういうふうに発言の中身等を通して大臣にいま投げかけたわけでございます。そうなってくると、大臣の御答弁の中を大きく集約しますと、臨調の方の税の問題は大幅に税調に任せるんだという考え方、これが一つ、それからもう一つは、税機能の見直しということを言われているから、大体税調と同じような考え方ではないか、そういう中で国会にゆだねていろいろな議論を続けていただきたい——私の大臣答弁の大まかな把握の仕方は大体そういうふうになるんじゃないかと思います。  そうなってくると、臨調と税調との一致点、この双方が一致しているということは、増税ということで一致しているというふうに私は聞こえるわけです。税調としても、この前はっきり申し上げましたように、税調内部には増税なき財政再建は可能という考え方はないとか。これはもちろん集約して新聞には書いてあるわけでございますがね。それから衆議院大蔵委員会では、景気にそれほど左右されない税収を確保できる長所があるとか、いわゆる間接税についてはそういうふうな発言がなされているわけでございます。それと、いわゆる税機能の見直しというのは、これは中身としては大体一致点だと思うんです。そうすると、政府のそういう答申をなさる機関としては全部環境が整備されておると、こういうふうにわれわれはどうしても見ざるを得ない。そうなってくると、あと国会がどうなるのか、国会議論がどうなるのか、あるいは国民の選択がどうなるのか、もうそこまできているような気がしてしようがないわけでございますが、大臣はこの問題についてはどういうふうにお考えになられますか。
  148. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 新聞などを見まして対立的な感じを与えたのは、一つには、増税なき財政再建というものが、増税なきという言葉がひとり歩きした場合に困るというような趣旨の見出しが出ております。よく読んでみますと、要するに増税というものは、ある種の利益団体あるいは個人、それから自分中心にして、ああ、自分がかねて反対しておるあの新税はないんだなとか、言ってみれば、個々人によって増税なきというのをみんな自分に都合のいいように理解して、極端に言えば、俗に言われる不公平税制も全部手をつけちゃいかぬというふうにひとり歩きされたら困る、こういうふうにおっしゃったんであろうというふうに私も整理してみたわけであります。  いま一つの問題は、直間見直しの問題が出ておるのと税体系の見直し、両方があるわけですが、それはある意味において同じようなことをおっしゃっておりますが、一方、増税なき財政再建とはというところに、厳密さはないにしても、抽象的に租税負担率の問題が言われております。税調の方のお話を聞いておりますと、租税負担率というのはこれまた結果として——国税、地方税二つが分子で、国民総所得が分母ですが、分母分子も景気に左右されて違うじゃないか、だから必ずしもこれもアプリオリに達成すべきものじゃないじゃないかという意見もおっしゃっておりますが、大筋、新たなる税目によってかなりの増収を期待するというようなものが増税という認識ではないか、私は意思が、話し合って決めたわけじゃありませんが、両方の答申を見まして、通じておる問題じゃなかろうか。  だから、逆に私は、いろいろな税制は検討しなければなりませんが、いわば増税の環境が、両者から出てきたものを見て、整ったというふうには私は見れないんじゃないか。むしろ先行しておりますのは、ひとり歩きという批判はあったにいたしましても、自分それぞれに都合のいいように取り扱いがちだという批判はあったにいたしましても、増税なき財政再建、こういうものが前面に出て、その中で税制については、専門的な個々の問題は税調で議論していかれる課題ではないかというふうに整理して、私どもの意見も交えたものが国会の問答でございますので、御報告されるものでございますから、そういうことで広範な角度から御議論をいただくことではないんだろうか、こういう感じがいたしております。
  149. 桑名義治

    ○桑名義治君 増税の問題は、臨調と税調とが完全に一致はしていないかもしれませんが、その方向性というものは、やや接近をしたというか、同方向に走っているというふうに見ざるを得ないと、私はこういうふうに思うわけでございます。  いずれにしましても、景気をよくしなければ、これはどうしようもないわけでございまして、そして税収を上げていかなければならぬ。そういうことで景気対策についていろいろと閣議その他で検討なさっているわけでございますが、その中で一つだけ欠けているわけですね。それは公定歩合をどうするかということが欠けているわけです。具体的には通産省から八本の柱が出されているわけでございますが、そのほか政府としては経済閣僚会議等でいろいろな議論がなされ、あるいは総理からも景気対策について指示がなされているわけでございます。その中に、いままでとってこられた景気対策の中の最大の柱と言われた公定歩合の問題がそっくりそのままおかれている。これをどうするかという問題ですね。  たとえばきょうの昼間のニュースで、山中通産大臣が、公定歩合の引き下げの環境は整備されたと、こういう非常に強気の明確な発言をなさっておるわけでございますが、公定歩合の引き下げの問題については、最終的には日銀の問題かもしれませんが、大蔵省、大蔵大臣としては、これは看過できない問題でございます。この問題をどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、ちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  150. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる公定歩合の問題について若干時間をいただくといたしますならば、私が佐藤内閣のまだ官房副長官をしておりましたころ、二十年も前の話でございますが、公定歩合の議論を一遍しましたら、総理が、公定歩合の操作と国会の解散はそのときまで人をだましておっても——だますという表現は適切ではありませんが、突然言っても免責されると、こういうことを言われました。それは恐らく、昔、政友、民政という二つの財閥の上に立っておった政党政治というものがあった場合には、公定歩合の操作なんていうのはある種の投機を呼んだんじゃないかと思うんです。  それで、まさに日銀の専管事項であるという通貨量から、いろんなことの決定事項、経済運営の基本として、それはそれなりに位置づけされておる。しかし事ほどさように金融も国際化した今日でございますので、いまは日常大変な議論のされる問題であります。したがって政府も、いつの場合でも、景気対策等を決めます場合に、いわゆる公定歩合問題については、金融の弾力的運営とか機動的運用とかいう言葉でもって総合的に読んでもらう、こういう手法を今日までとってきておるわけであります。したがって、この間も総理から、こういう問題について議論してみないかと言われた中にも、機動的運営というものが書いてありました。  そこで、まさしくそういう前提に立って申しますので、一般論でございますけれども、一般論として申します場合に、欧州の通貨問題がとにかく決裂するんじゃないかと言っておったものが、フランスの切り下げ、その他西ドイツの切り上げなどなどによって一応決着がついた。だからそれなりに一つの選択の幅はふえたのかなと思いました。が、そう見ても、一方、確かに為替レートは、きのうは日本は休みでございますけれども、向こうは休みじゃございませんから、それがぶれてきて、きょうは二百四十一円台でございますか、もうひけておる段階だと思いますが、そういうような——失礼いたしました。またもとへ戻っております。二百三十九円八十五銭で、戻っておりました。午前中が二百四十円五十銭だったものですから気にしておりました。  事ほどさように、為替レートというものが確かに一つポイントになることは事実でございます ので、その人その人の立場によっていろいろな議論はあると思います。一説にはまた、これも定かな数字じゃございませんにしても、円高七円、金利〇・五%と匹敵すると、こういうような議論もございますし、その辺は諸般の情勢を見ながら日銀でお決めになることでございますけれども、一般論として、弾力的機動的運用というものが経済運営、なかんずく景気問題に役割りを果たす一つの柱であるという認識は、共通認識だというふうに、回りくどく申しましたが、御理解をいただきたいと思います。
  151. 桑名義治

    ○桑名義治君 確かに、大蔵大臣が前回大蔵大臣をなさっておるときも、この問題を出したらそういうふうに言われる。これはもう通説になっていますね、公定歩合の問題と解散はうそを言ってもいいというのは。だからそれは言えないでしょう。  それじゃ山中通産大臣の昼間の発言と同じか、環境は整ったという認識はお持ちですか。
  152. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これを見ますと、為替相場の動向を気にし過ぎてわが国の公定歩合引き下げのタイミングを失うべきでないとの判断を示した、こういうことでございますが、産業の実体を担当していらっしゃる大臣さんと、私も通貨そのものを担当しておりますものですから、山中大臣と同感でございますと、それもただこのペーパーを見てだけの話でございますが、にわかに申し上げるわけにはまいりませんけれども、少なくともヨーロッパの通貨がああいうことで一応の落ちつきを見せたということは、それなりの、まあ言ってみれば、判断の範囲が広がったとでも申しましょうか、環境は悪い方向には行っていないというふうには言えるんじゃないかと思います。
  153. 桑名義治

    ○桑名義治君 為替レートが、円がまたもとに戻したということは、条件としては、日本からの自動車輸出が少し上向いたということが一つの大きな原因になったというような解説がなされているようでございました。  もう時間があと三分ちょっとでございますので、もう一問だけお聞きしておきたい。  こういうような財政状況でございますので、マル優の廃止論、これが前大蔵大臣発言の中で出てきたわけですが、五十七年の個人の金融資産というのは三百五十兆円、その中で非課税貯蓄が約二百兆円、これに廃止によって税をかければ、最低見積もっても約一兆二千億ぐらいのいわゆる税収があるのではないか。    〔理事増岡康治君退席、委員長着席〕 これはあらゆる場でいろいろな方が言われているわけですね。たとえば総合政策研究会の理事長の土屋さんがこういう意味発言をなさったり、前大蔵大臣もそういう意味発言をずいぶんなさっているわけでございます。東京証券取引所の前理事長の谷村さんがそういうふうな発言をなさったり、いろいろとこの問題についてはかまびすしく発言があるわけでございますが、この問題についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  154. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも私はいま国会にお願いして、いま衆議院で御審議いただいておりますいわゆる租税特別措置、その中でグリーンカード制の三年間凍結ということをお願いしておるわけでございます。したがって、これが通過さしていただきましたならば、グリーンカード制度も含め、今後における利子配当課税の適正化というようなものを税調で議論してもらう。さすれば、それこそ予見を持って——いま桑名委員がおっしゃいましたような御意見も、税調でペーパーとして配られたことも私どもも聞かされておりますが、予見を持って私どもがこれに諮問を申し上げるというわけにはならぬ問題ではないかな。だから、いまのところ、そういう問題について検討しておるという事実は私どもの方にはないと、こう申し上ぐべきではなかろうかと考えております。
  155. 桑名義治

    ○桑名義治君 いよいよもう一、二分しかございませんが、財政再建を達成するという意味合いにおきましては、歳出構造の徹底的な見直しをしろと、こういうふうに臨調も言っておるわけでございますが、今回のこの措置を見てみますと、いろいろ見直した見直したと言いますけれども、安易な見直しですね。一番取りやすいところからかき集めて何とか埋め合わしたと、こういうような状況にあるわけでございます。  いまから残されておる問題は、大蔵省に言わせればそうじゃないとおっしゃるかもしれませんが、不公平税制の是正という問題がまだまだいまから先また多分に切り込んでいかなければならない、あるいは新規の財源の確保の道を本気で探っていかなければならない。こういうふうに思うわけでございますが、今後のこういった問題に対する取り組みはどういうふうにお考えになっておられますか。
  156. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは一概に——私どももいわゆる不公平税制という言葉をよく使うわけでございますけれども、その使う意味は人によって大変に違うと思います。しかし一般論として、租税特別措置というようなものは絶えず見直していかなければならない問題である、五十八年度御審議いただいております予算の中におきましても、そういうことには留意してきた。今後とも、概念的に不公平税制とは何かという問題は別として、逆に税の公平感を維持するとでも申しましょうか、そういう点は絶えず念頭に置いて配意すべき課題であるというふうに考えております。
  157. 桑名義治

    ○桑名義治君 終わります。
  158. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は最初に、いま審議されておりますこの造幣特会法の一部を改正する法律案に反対であるという態度を表明いたします。  先ほど来議論のとおり、補助貨幣準備資金を取り崩して財源にしろと言い出したのはおまえじゃないかと言うかもしれませんけれども、趣旨が違うんですな。理論的には、この二年来の議論で、これは取り崩し得るものということで、それを大蔵省も認めたわけですから、だから裁判で言えば、まあ自白したわけですね。これは勝負は決まったんですが、問題は有効な使い方の問題なんです。  私の方で申し上げたのは、五十六年で一兆円赤字国債を減額すれば、当時の状況では、もうちょっとで赤字国債ゼロに手が届くという状況だったんですね。しかし実際はまあ粉飾予算でしたから、そうはいかずにまた逆にいってしまったという一つの原因もありますけれども、問題はそういうことでして、私の方は、減税財源なりあるいは赤字国債を本当になくしていく、そういうきっかけをつくり、それにはずみをつけるというものであれば賛成できますけれども、違うものでありますね。そうして、先ほど大蔵大臣は、後世のツケを少なくするためにと言いましたけれども、違うんですね。要するに軍拡予算財源であるということで、私は断固反対であるということを表明いたします。  そこで、あと具体的な中身に入っていきますが、大蔵省にお伺いします。発行されている補助貨幣の額面総額と、それから補助貨幣の製造コストの差はどれくらいですか。
  159. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 五十八年度予算で申しますと、発行額面額が千四百三十七億円でございますが、製造経費が二百五億円、一四%程度でございます。
  160. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、一兆を超えるものが問題になりますけれども、それは結局インフレマネーにはならないんですか。
  161. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これはすでに財投の原資として運用されているものでございますから、それを取り崩しましても、経済的にはインフレマネーになるとは考えておりません。
  162. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 二年前のときの理財局長の答弁はこういうことなんですね。「この補助貨幣の製造コストというのは貨幣の表面金額よりはかなり低いわけでございまして、何にも政府が見返りなしにそれを発行するということは、まさに発行コストと表面金額との差額を全く何にも代償なしに政府が手に入れるということでございまして、それこそまさにその部分はインフレマネーの発行につながるわけでございます。」というんですが、そう しますと、この答弁はこの機会に撤回しますか。
  163. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これは一般的に発行差益というもので資金ができますので、それを使えばマネーサプライの増加になるという一般的なことをお答え申し上げているんだろうと思います。このたび過去に積み立てたものを崩すのがインフレかどうかという問題は、ちょっとこれとは違いまして、すでに運用されているものでございますから、崩して他に使いましてもマネーサプライの新たな増加にはならないんではないか、次元がちょっと違うのではなかろうかというふうに考えております。
  164. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は同じ次元で聞きまして、取り崩しても差し支えないだろうと具体的な問題で聞いたんですよ。それに対して、そのときにはインフレマネーになると言い、いまはならないと。ですから、インフレの問題というのは、これは一つ経済現象でして、そのときの大蔵省の主観の問題、発想の転換の問題で、ときにインフレになったりインフレにならなかったりするものじゃないわけですよ。そういう意味で、結果的にはこのときの答弁が私はいいかげんな答弁であったということを指摘せざるを得ません。  そこで、次に日銀にお伺いしますが、日銀券発行の保証物件としてそれに見合う資産を保有しておりますけれども、この制度はどういう理由で行っておりますか。
  165. 青木昭

    参考人青木昭君) 日本銀行は、日銀法第三十二条に基づきまして、発行高に見合う保証資産を保有することが義務づけられておりますけれども、これは日本銀行券の価値を確実な資産によって裏づけることによりまして、通貨としての信認の維持を図ろうとする趣旨というふうに解しております。
  166. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで大蔵省にお伺いしますが、この補助貨幣の準備資金の方も補助貨幣の信認を図るためだとずっと答弁してまいりました。そうしますと、これも趣旨としては、いま言った日銀券発行の保証物件として積む資産と同じような趣旨のものなんですか。
  167. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 日銀券の場合はいわゆる銀行券としての保証でございますし、これは貨幣回収のための準備というふうなことでございますから、ちょっと意味合いが違うのではなかろうかと思います。
  168. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これも大蔵省はよく違ったことを言うんですね。ちょっと古いところを持ち出しますけれども、四十五年三月三十一日、当時の理財局長岩尾さんがこう答弁してます。「ただ、補助貨幣発行高と同じ準備資金が、ちょうどいろいろな商業手形あるいは金地金あるいは国債というものを、日銀券発行の保証物件として持って見返り資産としておるというのと同じでございまして、発行額と同じものを見返り資産として持っておるということが国民の信認を得る大きな要素」である。  これも趣旨が問題。前のときは、当時法案を通してほしいから同じと言い、今度取り崩す番になったらば違うと言う。これは一体どういうことですか。
  169. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 日本銀行券日本銀行の債務でございますから、それの見合い資産がございまして、貸し付け、国債、外貨その他ございまして、それぞれ経済の必要に応じて発行される。その資産の健全性が担保になっているということであろうと思います。  その当時の記録を、答弁をよく私は拝見しておりませんが、政府補助貨幣発行した場合、それを日銀に引き渡した場合に同額の資金が形成される。その資金そのものが当時は発行高に見合って積まれておりましたから、その同額の資金が積まれているということが補助貨幣の信認の担保になる。同じ対応する額の資産があるという意味でそれが信認の根拠になるという、一種のなぞらえたたとえとして日銀の場合を出されたものだろうと思いますが、メカニズムは若干違うように思います。
  170. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私も二年前に議論したとおり、いまの答弁の方が正解だと思うんですね。ただ、指摘したいのは、大蔵省の答弁は、そのときどきの法案通してほしい方の御都合主義で答弁しているという、そういう態度は大臣、これから改めて本当に正確に言わなきゃこれはいかぬと思うんですね。どうですか大臣、いまの議論を聞いて。
  171. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私もいまちょっと読んでみましたが、その答えた方が、その前提の置き方が若干違うんじゃないかなというふうな感じで読んでおりましたので、その都度の御都合主義だけでお答えしたものじゃないんじゃなかろうかな。私の感想でございます。
  172. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 御都合主義と申したのは、私は今回のこの取り崩し自身が御都合主義だと思っているからそう言うわけです。  と申しますのは、これは少し前の新聞記事にこういうのがあるんですよ。この造幣特会で補助貨幣の準備資金を取り崩したということについて、「存在がバレた以上、放っておけば野党から減税財源にねらわれる」、これは大蔵省幹部がしゃべったと。そういう思惑があったというんですね。まあ、しゃべった方がここにおるかもしれませんけれども。ここなんですよ。実は、二年前に私がこの問題で質問通告しましたら、大蔵省の方が部屋へ飛んできましてね、質問しないでくれと言うんですよ。いま思い当たったのは、やっぱりばれてしまったという感じね。そうでしょう。  私がここで指摘したいのはこういうことなんです。要するに減税したくないんですよ、大蔵省は。だから、これをそのままにしておきますと、一昨年来、特に去年は各党から言われたわけだから、どうしてもこれは減税財源にされてしまう、さあ大変だ、いまのうち予算に入れてしまえ、そういう態度がこれは明々白々ではないでしょうか。私はこの記事を決してうそだとは思わぬし、実際大蔵省から取材してきたものだと思いますし、二年前に私のところへ青い顔して飛んできたそのときの態度と思い合わせますと、まさに減税したくない、そのための今回のこの法律案であると、こういう指摘をせざるを得ないんですが、大臣どうですか。
  173. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 衆議院でございますが、去年の三月六日ですかに、議長見解に基づいて衆議院大蔵委員会減税に関する小委員会ができた。その中の合意の中でも、一過性の財源というものを充てるべきじゃないじゃないか、恒久財源でやるべきじゃないかと、こういうようなことが議論されております、これをつまびらかに読んでみますと。したがって、そういうことは、五十五年度の剰余金を五十六年度の財源に繰り入れることによってやりました、四百八十四億でございますか、あの戻し税、ああいうある種の反省というものがそういう議論になってあらわれておるんじゃないか。だから、減税財源としては一過性の財源であるだけに適当ではないというのは、かなりいろんな場所でも議論された問題として理解していただければいいんじゃなかろうかというふうに思います。
  174. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、一過性のものは減税財源としては不適切であるという論理からは、五十八年度予算を編成するときに、こういう一過性の、しかも相当一兆円のものを入れることも、問題があるんじゃないでしょうか、どうですか。
  175. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこのところは一つの政策の選択の問題になりますのでしょう、恐らく。要するに、五十六年度の歳入不足に対しての繰り戻しのための財源というものは、それこそある意味において一過性のもので充てられればそれにこしたことはないという判断の上に立った。だから政策選択の問題に帰するというふうにも言えるかと思います。
  176. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まさに政策の選択の問題で、大蔵省としては、おいとくと減税財源にされてしまうから、そういうことはしたくない、こういう政策を選択した。こう指摘せざるを得ませんし、それには強く抗議します。  日銀側にちょっと質問いたしますが、日銀の国債保有高が、いただいた資料によりますと、五十 四年から急増してますね。五十三年が九兆五千に対して、五十四年十三兆二千億、五十五年が十五兆、五十六年が十九兆、五十七年十二月末で十九兆五千億と大変急増しておりますし、それから日銀券発行高に占める国債保有高の比率も、昭和四十年にはわずか一七%であったものが、四十八年ごろからこれまた急増しまして、特に五十六年には一〇九・四%、こうなっておるわけです。  まずお聞きしたいのは、どうしてこういうことになったのか御答弁いただきたいと思います。
  177. 青木昭

    参考人青木昭君) 国債保有のふえております原因は二つあると思います。  一つは、いわゆる成長通貨供給のための買いオペということをやってまいりまして、大体日本銀行券発行高に見合って長期国債の買いオペをやってまいりました。そういうことで五十五年まで長期国債の保有がふえてまいりました。  もう一つは、最近政府短期証券の保有が大変ふえております。これは政府短期証券の発行高自体が、外為会計の資産保有の増大、あるいは大蔵省証券の発行の増加からふえております上に、政府短期証券の保有をしておりました資金運用部といったようなところが、最近資金繰りの関係もございまして保有高が減っておる、その身がわりにいま日本銀行が抱えているというようなことでございます。
  178. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大蔵省にお伺いしますが、国債は最も信用できる債券だということですが、実際その概念も崩れまして、最近の国債利回りでは社債よりも国債の方のが高くなったということで、これは大蔵省は大変なショックを受けた、こう聞いておるんですが、その辺はどうですか。
  179. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 私どもは摩擦的なものであろうと思っております。  と申しますのは、クーポンで見ますと、国債の方は七・五でございますが、事業債の方は七・七と、結局アンダーパーのところで違いが出てきているんではないか。ただ、率直に申して、いかにいい品物でもたくさん並びますと、どうしてもいやがられるという問題は否定できないわけでございます。
  180. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最後に日銀にお伺いしますが、国債が日銀券発行のために保有されていると。それは確かに補助貨幣の場合とは違った大変必要なものである、こう思うんです。ただ、国債がこのようにずっとふえてしまって、時には全額なってしまうというこの事態、これがいいんだろうか、経済上問題がないのか、財政上問題がないのかということ。  それからもう一つは、国債の利回りが高くなっておる。となりますと、資産として国債だけ持っておっていいんだろうか、こういう問題も絡むんですね。この辺はどう考えているんでしょうか。
  181. 青木昭

    参考人青木昭君) 中央銀行として国債を大量に持つことが過当かどうかということがお尋ねの趣旨かと思いますけれども、中央銀行は、国債は、私どもが成長通貨を供給する買いオペの対象債券としましては、信用度あるいは市場性という点から最も適した債券でございまして、今後とも成長通貨の供給のために買いオペが必要であるということになりますと、これをある程度のテンポで取得していく必要があるわけでございます。そういった範囲内で国債を取得していく、あるいは増加させていく限り、むやみにふやさないというようなことでまいる限り、中央銀行の資産の健全性を損なうというふうには考えておりません。  また、私ども、国債の経理につきましては、できる限り中央銀行の資産の健全性を維持するようにやっているつもりでございまして、たとえば国債の評価を低価法でしているとか、あるいは国債の価格変動積立金を積んでおるというようなことで、極力価格変動に対する備えをしているつもりでございます。
  182. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間が来ましたので、議論はその程度にしまして、この問題はまた財源確保法案等がありますので、その機会にひとつ大蔵大臣とまた議論したいということを申し上げて、質問を終わります。
  183. 柄谷道一

    柄谷道一君 補助貨幣回収準備資金の取り崩しの問題は、昭和五十六年の十二月ごろ、五十七年度の予算編成に当たって、財源不足を補うために大蔵省が検討を始めたことに端を発しているんではないか、こう承知しております。  五十六年十二月十二日付の新聞報道を見てみますと、欧米諸国にはこのような制度をとっているのはベルギー以外にはない、また一斉に補助貨幣紙幣にかえるよう求められるという想定は現実的でない、したがって造幣特会法を改正して、硬貨発行残高に対する準備金積立額の割合を現行の一〇〇%からたとえば八〇%に引き下げて、一般会計に繰り入れることを大蔵省は考えている、このように報道されているわけでございます。しかし結果的には、五十七年度予算編成に際してこの取り崩しは見送られております。その理由は那辺にあったんでございましょうか。
  184. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) そういう報道を私いま記憶しておりませんけれども、大蔵省の内部ではかねがねそういう問題意識はございまして、主計局としては、いつも財源が苦しいものですから、これを取り崩したらどうかなあという問題提起はたびたびしておりましたが、しかし通貨の信認の維持のための制度であるということ、すでにこの資金が財投の原資になっているということ、それから仮に一遍限り崩してもまたその次困るんじゃないか、こういうふうな問題から見送ってまいったわけでございまして、五十七年度予算編成のとき、あるいは五十七年度予算国会で御審議いただくときには、そういうお答えを申し上げておりました。
  185. 柄谷道一

    柄谷道一君 補助貨幣回収準備資金制度は、もとをたどれば、明治三十年に金本位制がしかれたときにできた制度であろう。そして、その後、管理通貨制度に移ってからも、昭和二十五年にできた造幣特会法によりまして継続されることになった。昭和四十四年以降は、補助貨幣発行現在額に見合う準備資金を保有し続けてきた。これが歴史ですね。  そこで、私たちはかつての減税要求の際に、国民が一斉に硬貨を紙幣にかえるように求めるという事態は全く非現実的である。したがって、市中流通額の約九〇%程度を取り崩すという今回の措置はむしろ、私の考えからすれば、遅きに失したと言わなければならないと思うのでございます。  昨年われわれ民社党の提唱が契機になりまして、減税要求の財源措置としてこれを使用するように全野党で統一要求を組み入れた際に、大蔵大臣もたびたび御答弁になっておりますように、減税は恒久的な財源を必要とする、この取り崩しというのは、いわゆるスポット的といいますか、一過性的な財源である、したがって減税に回すことはできないという御主張をなさいました。それは横に置きまして、ただそれだけが理由じゃなかったんですね。  渡辺前大蔵大臣の速記録をずっと読み返してみますと、一つには、昭和二十五年に設立された制度とはいえ、長い伝統の中で維持してきた補助貨幣の信認性を崩すことはできない。第二には、過去の国民の蓄積を取り崩し、後代の納税者に負担を回すという姿勢はとれない。第三に、現実に金が余っているわけではなく、財投に使われており、財投計画に穴をあけることはできない。この三点のうち、特に第一点、第二点は、取り崩しそのものに対する大蔵大臣としての否定の言質であり、そして野党要求は非現実的であるとしてこれを退けたわけでございます。  その本質的な第一点、第二点について、今回の提案はどのように関連づけておられるんでございますか。
  186. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 通貨とか貨幣は一国の経済の非常に大きな柱でございますので、先ほど来、明治三十年の貨幣法をなぜ直さないかという御質問もございましたが、私ども貨幣通貨に関する制度については非常に保守的な態度をとっているわけでございまして、これは軽々になかなか手をつけがたいという意識がずっとありました。それをお答え申し上げたのだと思います。
  187. 柄谷道一

    柄谷道一君 その態度は今回一変したわけですね。
  188. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) しかし、この制度そのものはあくまでも維持してまいりたい。発行高に見合うだけの資金を保有する必要はないのではなかろうかという点で、発想の転換をさしていただいたわけでございます。
  189. 柄谷道一

    柄谷道一君 制度は残りましても、これは市中流通額の九〇%を取り崩すわけですね。事実、いままで信認性を維持するために積み立ててきたこの制度は、本質的に様相を一変するということは認識されますね。
  190. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 最近の経過を見まして、一〇%維持しておけば当面何とか間に合うであろう。しかしそれで手放しで安心はできない。減らしっ放しで後はいいんだということじゃなく、心配でございますので、いざというときは一般会計から繰り入れることができるような仕組みも同時に取り入れているわけでございます。
  191. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣にお伺いいたしますが、これは一過性的財源であって、恒久的減税に振り向けることは不適当、こういう御主張であるとすれば、戻し税は一過性的財政支出ですね。そのときに、われわれ野党の制度的減税に対して、これを崩して、一過性的戻し税方式でも、景気浮揚と増税感に苦しんでおる勤労者にこたえよう、そういう発想は出なかったんですか。
  192. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 従来戻し税という方式がとられておることも事実でありますが、これもよく経過をたどってみますと、必ずしも単純に戻し税というよりは、一つの経過の中で、年度途中から考えられるから、与野党合意で、ある意味においては戻し税という形の方が結果として目的に沿え得るのじゃないかというような意味でとられた、そういうような考え方でとられた手法であった場合もございます。  それからもう一つは、衆議院議長への中間報告を見ましても、去年の場合、専門家の方にお集まりをいただきまして、長々議論してもらいましたその中の三つのとるべきでない条件として、戻し税方式はやらない、それから一過性の財源は使わない、そして恒久税制によるものとすると。そこで、減税の必要性は認めたが、しかし財源について議まとまらず、こういうことになったという中間報告をいただいておりますので、そういう議論というものも、その際は真剣に検討された議論ではなかったか。  ただ、戻し税の財源として使うということは、その時点においては、私は、そういう専門家議論の場でも出てこなかった発想じゃないかというふうに考えております。
  193. 柄谷道一

    柄谷道一君 もう一つ質問しますが、五十七年度の予算編成時、主計局内部では一応財源一つとして検討はされたが採用されなかった、こういう御答弁でしたね。ところが、五十七年度の予算は、執行してみますと、早くから巨額の歳入不足が出るということが予想されていた。五十七年の四月十九日の新聞報道でございますけれども、結果として五十七年度の予算は六兆一千四百六十億円の税収不足、そしてその穴埋めとして三兆三千八百五十億円の赤字国債の追加発行、こういう事態に至ったわけですね。そこで、この補正予算編成のときに、赤字国債の発行額を極力抑える、いわゆるスポット的財源としてこの取り崩しということは全然お考えにならなかったのですか。
  194. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 先ほども大臣から御答弁がありましたように、部内ではいろいろの議論はございましたが、大蔵省として正式にこれを検討しますということを申しましたのは、昨年の六月でございますか、衆議院予算委員会提出資料でございます。それ以来、取り崩した場合の補助貨幣制度の円滑な運営を確保するにはどうしたらいいか、あるいは従来、補助貨の信認を維持するための制度であると言っておりましたが、この信認をどうやって確保するかとか、いろいろ検討をいたしまして、また財政制度審議会の議にもお諮りをいたしまして、そういう手続をいろいろ経る必要がございました。したがいまして、五十七年度の補正には取り崩しは間に合わなかったわけでございます。
  195. 柄谷道一

    柄谷道一君 この問題が国会議論されましたのは、私の承知する限りでも、わが党に限っても、神田厚衆議院議員、中村鋭一参議院議員、塚本書記長を含めまして、五十七年三月二十四日以降約十回に及んでおります。私自身も去る五十七年七月五日に決算委員会の場でこの問題を取り上げてまいりました。  そのときの答弁、そしてきょうの御答弁を見ますと、政府の考えは、スポット財源であって減税という恒久財源には使えないんだ、今回は決算整理基金への繰り入れというスポット的な財源に充てるんだから、スポット・イコール・スポットということでつじつまが合っているとか、それから途中から財投計画に穴があく、今回は五十八年度の財投計画全体の中で組み入れられているんだから穴はあかないんだとか、それから補助貨幣に対する信認性は、もし不足すれば繰り入れるという形をとっているんだから、信認性は損なわれない。私は、何かつじつま合わせの答弁であり、かつての答弁減税を阻止するために、今回はいままで言ったことをうまくつくろってつじつまを合わせるために、そういう印象しか私は受けないわけでございます。  そこで、問題を別の観点から指摘したいと思うんですが、五十七年二月二十八日、各党政審会長におけるNHKの討論会が行われております。これはそのときのNHKの速記録です。長々とさきに言っておられますのを省略しますが、最後の締めくくりで田中政調会長は次のように述べているわけですね。  金本位制を離脱して管理通貨制度だから、そんなら裏付けは要らないかといいますと、そんなことを許しておったならば、誰でも時の政府がいろいろ変わっていった場合、それを日銀にやって、日銀が輪転機回しますね。そうすると、それが発行されていくと。そうしますとインフレになりますわね。しかもまたイージーにいろいろそういうこと、やはり通貨、つまり貨幣というものはその裏付けというものがちゃんとあって、手形の裏付けがあってきちんとしておかなくては、これは重大な国家の問題でございますのでね。私は安易にそれをそうというふうに納得できません。 こう述べておられる。これは国民の前に明らかにされた与党の政調会長の御意見ですよ。わが国は政党政治ですね。  そこで、私はいままでの経緯、そして国民の前に明らかにされた与党の政調会長という責任ある人の国民に対する説明、これから考えて、公の場で表明してきたことに対して、国民に対してその不明をわびるとか十分の解明もしないまま、いままでの説明を翻して、財源がないんだからスポット財源に充てるんだという姿勢をとるということは、私は、極端かもしれませんけれども、これは大蔵省の思い上がりの姿勢ではないだろうか。私はもっと端的に言うならば、これは大蔵当局の独善とも言って過言ではないのではないかとすら思うわけでございます。この点は大臣のしかとした御答弁を賜りたいと思います。
  196. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま、私も田中政調会長の放送討論会での発言を読んでみたわけでございますが、田中政調会長の発言というものは、私なりに予測してみますと、いわゆる管理通貨制度になっておる今日、金本位制でないから、そういうものは必要ではない、ベルギーと日本ぐらいなものだという塚本先生、大内先生でしたかの主張に対して、それはそれなりに認めますが、要するに、通貨というものは、これがイージーに発行されれば、いわゆるマネーサプライとか、そういう問題の歯どめなくイージーに発行された場合には、大変なインフレになるものだから、それなりの担保されるものがなくてはいかぬと、こういう趣旨ではないか。  一つ一つを具体的に正確にお答えするだけの自信は私にございませんけれども、そういう考え方で物を言ったものではないだろうか。あくまでも 補助貨幣という問題は、そのときのニーズによって製造するものでございますし、また強いて言えば、一応この歯どめもございますので、私は、インフレにつながるとかいうようなものとは一概に言いがたいんではないかというふうに考えております。
  197. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは大臣国民は当時どう受けとめたかということですね。一党の政調会長が、野党の言うように取り崩したら、これはインフレのおそれがありますよ、だから野党の要求は非現実的なんですと、こう言われた。前大蔵大臣も、貨幣に対する信認性を崩すわけにはいきませんと。そうでしょう。したがって野党の要求は非現実的なんですと、こう言われた。しかしスポット的財源であれば、いまはインフレの心配もないし、これは単なる発想の転換であって整合性があるんだと述べておられる。これじゃ国民はわかりませんよ。まことに御都合主義の政府の態度だなと、こう国民が受け取るのは私は避けられないと思いますよ。その点はひとつ、言い合ってもしようがございませんから、指摘しておきましょう。  もう一つお伺いします。五十八年度予算は税外収入を四兆七千百九十六億円見込んでおられますね。これは五十七年度、前年度の補正予算では、税外収入は二兆六千百六十八億円であったわけですから、二兆円税外収入がふえるわけですね。しかも財投の中期試算によります税外収入は、来年二兆七千億円と見込まれております。六十年度も二兆七千五百億円。したがって、去年よりもぽこっと二兆円多くことしは歳入が計上され、来年はまたどかんと二兆円落ち込むと、こういうことですね。しかも五十九年度の財政中期試算では、歳出は五十三兆六千二百億円ないし五十四兆一千四百億円、これに対する歳入は四十八兆一千七百億円で、五兆四千五百億円ないし五兆九千七百億円の税収不足、要調整額が生ずる。これは大蔵省の発表した数字なんです。  そこで、大臣にお伺いしますが、私は本会議中曽根総理に御質問しましたら、増税なき財政再建の基本線は貫くと、こう答弁されました。それでは大蔵大臣、この要調整額五兆四千五百億円、場合によれば約六兆の税収不足、これにプラスして減税が出てくるわけですね。これは減税要因は含まれていませんから、これに減税財源が出てまいります。それだけの財源を行政改革とマイナスシーリングだけで乗り切れるという確信がおありでございますか。私は一連の数字から見て、これは一連選挙終了後の増税の方向がこの数字の中に隠されていると、こう受けとめざるを得ませんが、これに対する明確な答弁を求めまして私の質問を終わります。
  198. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 必ずしも明確な答弁であるとは私も自信がございませんが、この増税なき財政再建というのは、これは行政改革を行うに当たってのてことして、あの文章を見てみましても、とにかく糧道を断ってというような、普通の役所で書く文章では使われないような言葉も書いてあるわけであります。したがって、これはまず哲学としてこのことを踏まえておるべきだということであろうと思っております。  そこで、中期試算にわたっての御質問がございましたが、まさにこのお出しいたしました中期試算、いわゆる財政収支試算に始まり、それから中期展望、それから今度の中期試算、ずいぶん苦労してつくったものでございます。これは財政運営を進めていく上の検討の手がかりの一つとしてお示しいたしました。だから、この特例公債の減額幅につきましては、一定の仮定のもとに複数の計算を行っておりまして、したがって要調整額についてもこのような仮定のもとで計算をしたものでございます。  したがって、そこへ出てくる歳入歳出ギャップをどうして埋めるかというようなことにつきましては、特例公債の減額をどうするかという点については、国民合意を得ながら予算編成の過程で考えていかなきゃならぬ問題だ。だから、いまこの要調整額というものは、どの手法によってこれを埋めますということを言える段階にはない。  そして仮定計算とは、すなわち言ってみれば、現行の制度、施策というものをそのまま前提に置いたものでありますだけに、まずはいわゆる歳出構造にそのよってもって立つ淵源にさかのぼりながらメスを入れて、そしてなおかつ現行の施策、制度、水準を維持するために必要だというコンセンサスに対しましては、そのとき負担する者も国民でございますし、受益者もまた国民でございますから、それこそ国会議論を通じたりしながら、国民の選択はここにあるということを見定めて決めるべきものであって、これからの大きな課題であるというふうに理解をいたして取っかからなければならないと思っております。     ─────────────
  199. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、多田省吾君、丸谷金保君及び藤田正明君が委員を辞任され、その補欠として三木忠雄君、小谷守君及び谷川寛三君が選任されました。     ─────────────
  200. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  別に御発言もないようでございますから、これにより直ちに採決に入ります。  本案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  201. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十三分散会