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1983-02-23 第98回国会 参議院 商工委員会、外務委員会、農林水産委員会、科学技術振興対策特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二十三日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。    商工委員会     委員長         亀井 久興君     理 事                 降矢 敬義君                 吉田 正雄君                 市川 正一君     委 員                 岩本 政光君                 大木  浩君                 金丸 三郎君                 川原新次郎君                 楠  正俊君                 福岡日出麿君                 降矢 敬雄君                 森山 眞弓君                 村田 秀三君                 馬場  富君    外務委員会     委員長         増田  盛君     理 事                 安孫子藤吉君                 福田 宏一君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 小山 一平君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 山田  勇君    農林水産委員会     委員長         下条進一郎君     理 事                 岡部 三郎君                 坂元 親男君                 鶴岡  洋君     委 員                 大城 眞順君                 熊谷太三郎君                 古賀雷四郎君                 初村滝一郎君                 瀬谷 英行君                 山田  譲君                 中野  明君                 藤原 房雄君                 下田 京子君    科学技術振興対策特別委員会     委員長         中野  明君     理 事                 後藤 正夫君                 林  寛子君                 太田 淳夫君     委 員                 江島  淳君                 長田 裕二君                 片山 正英君                 杉山 令肇君                 高平 公友君                 成相 善十君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 松前 達郎君                 八百板 正君                 吉田 正雄君                 小西 博行君                 山田  勇君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君        常任委員会専門        員        山本 義彰君        常任委員会専門        員        安達  正君    参考人        日本自動車工業        会専務理事    中村 俊夫君        全国農業協同組        合中央会専務理        事        山口  巌君        野村総合研究所        政策研究部主任        研究員      森谷 正規君        在日米国商工会    議所会頭 ローレンス・F・スノーデン君        在日EC企業間        運営委員会委員        長  ロバート・アペルドーン君             (通訳 久保悦子君)             (通訳 横田 謙君)     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際経済摩擦に関する件     ─────────────    〔商工委員長亀井久興委員長席に着く〕
  2. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会外務委員会農林水産委員会科学技術振興対策特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が連合審査会会議を主宰いたします。  国際経済摩擦に関する件を議題といたします。  本日は、お手元の名簿の五名の参考人方々からの御意見の聴取を予定しております。  午前中に御意見をお述べいただく三名の参考人を御紹介いたします。  日本自動車工業会専務理事中村俊夫君、全国農業協同組合中央会専務理事山口巌君、野村総合研究所政策研究部主任研究員森谷正規君、以上の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々におかれましては、本日は御多忙中のところ、貴重なお時間をお割きいただき、当連合審査会のために御出席を賜り、まことにありがとうございます。委員一同を代表して、お礼を申し上げます。  さて、本日は、現在国際的な懸案となっております経済摩擦問題について、商工委員会外務委員会農林水産委員会及び科学技術振興対策特別委員会の四委員会のメンバーが集まり、日ごろ第一線で御活躍なさっております皆様方の御意見を伺い、今後の審査に役立てたいと考えておりますので、何とぞ忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、中村参考人山口参考人森谷参考人の順序で、お一人約十五分程度ずつ御意見をお述べいただき、その後、委員からの御質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず中村参考人にお願いいたします。
  3. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) ただいま御紹介をいただきました日本自動車工業会専務理事をいたしております中村俊夫でございます。  諸先生には、平素から自動車産業に関しまして、高いお立場から格別の御指導と御高配をいただいておりまして、厚く御礼を申し上げます。  本日は、国際経済摩擦問題についてというテーマで、自動車産業立場から、私ども考え方を申し述べ、先生方の御理解をいただきたいと存じます。  私どもは、貿易摩擦問題が、今日、国の内外を問わず、重要な問題であることを十分認識いたしておりまして、この問題の解決のために最大限の努力を傾注する所存でございます。  今日、自動車輸出入に関しまして、政府間で交渉が行われてきております相手国といたしましては、主として米国、カナダ、それにEC諸国がございます。  まず、米国の場合につきまして、私どもの見解を申し上げてみたいと存じます。  御承知のように、第二次オイルショック以来、ここ三、四年の間、米国自動車産業は、経営の不振と失業増大というきわめて困難な状況が続いております。米国メーカー及び労働組合では、日本からの輸入車についてもこれを制限しようといたしております。このため、アメリカ議会でも保護主義的な法案が次々と提案されております。いわゆる貿易摩擦でございます。しかしながら、過去において日米間に数多く見られました貿易摩擦自動車の場合とでは、若干事情が異なっております。  と申しますのは、米国自動車産業の困難が日本からの輸入車増大によって生じたものではないという点でございます。日本車の対米輸出は、長年の間に徐々に増加はいたしましたけれども、いわゆる集中豪雨的な増加でもなく、またダンピングを伴ったような不公正な輸出でもないのであります。  自動車の場合は、一九七五年のダンピング提訴でもシロの判定でございました。また一九八〇年のITCの審決におきましても、米国自動車産業の不振は日本車輸出が主たる原因ではないとの、いわゆるシロ審決がなされたのであります。  米国自動車産業のここ数年の苦境は、石油危機に伴うガソリン価格高騰によりまして、米国メーカーの主たる生産車でありました大型車需要が、燃費が悪いという理由で急減いたしまして、しかも小型車生産への移行のための対応がおくれたということによるものであります。  それに加えて、米国経済における高金利が自動車需要を大幅に減少させたからにほかならないのであります。  したがいまして、日本車輸出による貿易摩擦とは申しましても、それは日本車米国業界に被害を与えた結果というのではなくて、もっぱら米国側事情によって生じているという点が従来の日米間の他の業種での輸出による貿易摩擦と異なっている点でございます。  したがいまして、米国の主要な新聞論調あるいはまた有力な消費者団体、いずれも日本車輸入制限することは、いたずらに米国自動車価格高騰をもたらすばかりでなくて、長期的に見まして米国自動車産業競争力の強化にも役立たないということで一貫して反対してきているのでございます。  まず、この点について御理解をいただきたいと存じます。  もちろん、このような状況から脱却するために、米国自動車業界労働組合協力を得て労賃を凍結するなどの措置を含む各種合理化に努めつつ、小型車生産への転換のための多額設備投資を行いまして、燃費のよい、安くて高品質の車の生産体制の確立に努めてまいっております。そして、その達成までの間、日本車との競争という面で時間的余裕を与えてほしいというのが米国側の偽らざる気持ちであります。  一昨年五月に、日本政府が対米自動車輸出について自主規制措置実施いたしましたのも、これに協力するためのものでありました。  しかし、少なくとも昨年秋までは、米国自動車市場の回復は決してはかばかしくございませんでした。このため、アメリカメーカーは、コストの低減を図るためにメキシコや日本などから安くて良質な部品を職人するなどの措置をとるに至っております。しかし、海外部品の購入ということは、米国におきます失業改善にはならないということで、アメリカ自動車労働組合でありますUAWは、ローカルコンテント法案議会に持ち込んできたのであります。これらのローカルコンテント法案を初めとする米国議会での各種保護主義法案の成立は、アメリカにとどまらず、ECを初め、各国保護主義の流れを助長するきわめて危険な存在と言わざるを得ません。  EC諸国におきましても、オイルショック以来の長期の不況と、失業増大によりまして、自動車産業各国とも不振に陥っております。したがいまして、これらの国々でも日本車輸入制限しようという要求がありまして、現実に制限している国もございます。特にフランスの場合にはきわめて不公正かつ不明朗な手段によりまして、自動車市場需要の三%に日本車制限しております。これに対しまして日本側からは機会あるたびに抗議をいたしておりますが、フランス側は耳をかさないのであります。しかしながら、私どもECに対しましても引き続き分別ある輸出姿勢を続けておりまして、最近におきましてはEC向け輸出も減少しておりますので、先般の政府ECとの会議におきましても自動車に関しては具体的な数量規制といったような要求は出ていないわけでございます。しかし、自動車には限りませんけれどもECは御承知のように、日本に対して市場開放を求めてきておりまして、もしこれに適切な措置をとらないならばガットに提訴するというようなことを申しております。御承知のように米国のダンフォースさんの出しております相互主義法案も同様な市場開放をねらったものでございます。しかしながら、自動車に関します限り、日本は全く市場開放されております。日本自動車市場外国からの輸入や、外国自動車メーカー生産流通に対する投資といった面でも、全く開放されております。しかも輸入関税は、一九七八年からゼロとされまして、日本輸出車に対する関税を完全に撤廃した最初にして唯一の自動車生産国でございます。白勤車完成車のみならず、その部品輸入に対しましても制限はもちろんございませんし、ほとんどの部品関税はゼロでございます。もちろん安全や公害の面におきましては、各国ともそれぞれ別個の規制がありまして、日本におきましても、安全や公害に関する規制はございます。しかしながら、これも輸入車国産車の差別はなくて、およそ日本で走っておりますすべての自動車に平等に適用されるのでございます。むしろ輸入車に対しましては三年間の猶予期間をさえ与えておるわけでございます。  今日、日本の車は世界各国輸出されておりますけれども、われわれ日本自動車メーカーが初めて外国市場に入ろうといたしましたとき、各種の困難を経験いたしまして、その他域での特殊性は、われわれがそれとその要件に適応することによって克服する以外に、その市場での成功はおぼつかないということで大変な苦労をいたしましてきたのでございます。この努力に比べますとECアメリカメーカー日本に対する輸出努力というのはいささか十分ではないのではないかと思われますが、しかし、私どもEC及びアメリカの車が日本市場に参入できるようにするため、むしろ私ども販売網を活用いたしまして輸入車販売協力をさえしてまいりました。そうしたことによりまして、たとえば日本にはノン・タリフ・バリアがあるとか、日本市場が閉鎖されているとか、そういったような諸外国の言いわけを排除することがわれわれにとっても重要であると考えたからであります。  私どもといたしましては、国内はもとよりのこと、全世界において自由貿易自由競争が行われることが必要でありまして、これを推進すべきであると思っております。特に、自動車国際商品でありまして、したがって日本自動車産業国内市場だけではなく、世界市場全体に立脚して今後も発展せざるを得ません。日本はもとより世界経済発展にとっても自由な貿易維持最大の利益をもたらすということはこれまでの歴史が証明しているところでございます。  保護主義的な考え方や、そういった動きが新たに米国や他の欧州諸国に広がることを未然に防ぐことが、今後における最大の課題となっております。  自動車業界といたしましては競争と協調、この二つを柱といたしまして、技術の面から文化に至るまで、あらゆる面で相互理解と交流を深め、自由な貿易維持発展に努める考えでございます。諸先生のこの方面での積極的な御支援をお願いいたしたいと存じます。  最後に、もう一点御理解をいただきたい点がございます。と申しますのは、自動車産業は多くの関連産業の上に成り立つ非常にすそ野の広い産業でございますので、先進自動車生産国はもちろんのこと、まだ自動車生産が未発達の国々におきましても、それぞれの国におきまして、きわめて重要な産業となっております。自動車産業の好不況がそのままその国の経済の好不況となって反映するからであります。このことは日本においても例外ではございません。日本自動車産業製造業といいますか、鉱工業の製造業生産額の一割を占めております。あるいは雇用の面におきましても、総就業者数の約一割を占めております。国税、地方税を合わせましたわが国の総租税収入の一割近くを負担しており、輸出におきましては総輸出額の二割強を占めておりまして、石油輸入額の約五割以上の外貨を獲得しているのでございます。したがいまして、その消長は大きく日本経済の動向を左右するものと言うことができます。  第一次オイルショック以後今日まで、他の先進国がインフレと不況失業に苦しんでいた中で、日本が比較的順調な経済運営を続けられました陰には、常に日本経済を下支えしてきた自動車産業の貢献があったからと言っても過言ではないと存じます。  しかしながら、昨年は米国及びヨーロッパ諸国による輸入制限に加えて、世界的不況の浸透から輸出が大幅に減少いたしました。そのため生産数量も約四%マイナスとなりました。本年も対米自主規制の継続もあり、生産の伸びは期待できないのでありまして、このことが日本経済景気低迷をさらに長引かすのではないかと憂慮いたしております。  自動車産業が不振になった場合の国民経済全般に与える影響は、現在の米国状況をごらんになれば容易に御理解いただけるかと存じます。日本経済の中に占める自動車産業重要性について深い御理解を賜りたいと存ずるわけでございます。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次に、山口参考人にお願いいたします。
  5. 山口巌

    参考人山口巌君) 全中の山口でございます。  先生方案内のとおり、最近、日本米国あるいはEC諸国との間の貿易摩擦問題が顕在化するにつれまして、これら諸国よりわが国農産物市場開放要求が一段と強まってまいっております。特にアメリカ政府並びに議会筋は、前回の東京ラウンド以来の関心品目でございます牛肉オレンジ等に対するわが国輸入割り当て制度に対しまして、日本市場閉鎖性のシンボルであるというとらえ方をいたしまして攻撃を繰り返しておるわけでございまして、その全面開放要求をいたしてまいっております。  そこで、貿易摩擦問題と農産物貿易問題との関連、並びに農産物貿易に対する私どもとしての考え方につきまして、これから申し述べさしていただきたいと思います。  まず貿易摩擦農産物貿易関連でございますが、このアメリカわが国に対します市場開放要求、これを正当化しまする論拠として、二つ理由アメリカは挙げておるわけでございます。  第一の理由は、日本からの自動車、鉄鋼、電気製品等輸入により多額貿易収支赤字を生じておるので、貿易収支改善のために、農産物市場開放しろということでございます。事実、日米間のこの一年の貿易収支状況を見てみますと、一九八一年には約百八十億ドルの赤字でございました。一九八二年の暦年、一月から十二月の実績を見てまいりましても、アメリカ側の発表によれば百八十九億ドルの赤字になっております。しかし、この貿易赤字解消手段として農産物市場開放するということになると、現在彼らが要求しております牛肉オレンジ等のいわゆる残存輸入制限品目——二十二品目ございますが、これを全面開放したところでせいぜい五億ドルないし八億ドル程度収支改善にしか役立たないというのが実態でございます。そういうわけでございますので、ここでアメリカ要求を受け入れるということは、次には貿易赤字解消理由といたしまして、現在国民生活安定のために法律で守っております米麦主要乳製品全面開放しなければならない羽目に追い込まれることが危惧されるわけでございます。  御案内のとおり、現在農産物についてはわが国二つ国境措置をとっておるわけでございます。  一つは、行政措置でやっておりますIQ物資と称するいわゆる残存輸入制限品目でございます。輸入割り当て制度実施をいたしておるわけでございます。もう一つは、法律に基づきまして国が貿易を管理している品目でございます。これは食管法に基づく米麦、それから加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づく主要乳製品でございます。そういう二十二品目残存輸入制限品目貿易収支改善に役立たないということになりますと、次にはいわゆる国家が管理しております米麦乳製品要求が及んでくることを、われわれは非常に心配しているわけでございます。  なお参考までに申し上げますと、アメリカの米の生産量は、近年とみに増加してまいりまして、一九八一年には八百二十八万トンに達しております。わが国の米の生産量は、いま生産調整をやっておりますが、千百万トン水準でございますので、ほぼその水準に近づいてまいっておるというのが現状でございまして、なおアメリカは米が過剰なので昨年から一五%の米の作付制限実施をいたしておる現状でございます。  また、乳製品を見ますると、バターで十万トン以上のアメリカ過剰在庫を抱えておりまして、最近におきましてはエジプトに二万トンのバターをいわゆるダンピング輸出をいたしまして、ECとの間に物議を醸しておることは御案内のとおりでございます。  アメリカ自由化要求の第二の理由は、日本輸入割り当て制度が、ガット協定に違反するということでございます。しかし、アメリカ自体の実情を見てみますると、アメリカはいち早く一九五五年に農業調整法二十二条に関連いたしまして、ガットウエーバーを取りつけておるわけでございます。日本ではすでに自由化しておりますチーズ等を含めまして、非自由化品目は、いわゆるウエーバーを取りつけておる冊日は十三品目にも及んでいるわけでございます。また、これとは別にいわゆる精製糖、砂糖でございますが、これを現在もアメリカ残存輸入制限品目として輸入割り当てを行っておるのが実態でございまして、また牛肉、ヤギの肉、羊の肉、それから牛肉調整品につきましては、食肉輸入法に基づきまして輸入制限実施をいたしておりまして、昨年の十二月から豪州、ニュージーに対しまして自主規制を求めておるのが実態でございます。  ガット残存輸入制限品目は、わが国ガット加盟がおくれたために、そのときの加入の状態といたしましてウエーバーを取りつけられなかったために、やむを得ず残存輸入制限品目として残しておるわけでございます。日米両国の行っている輸入制限ガット上合法なものか違法なものかという違いは、いわば歴史的な偶然によって決定したものでございまして、米国ウエーバーガット上合法であり、わが国残存輸入制限が違法だということは、全く形式的な論議にすぎないと考えるわけでございます。  以上のように、アメリカの主張はまことに私どもから見ますと身勝手な一方的な論理に終始しているというふうに考えられるわけでございます。しかし、最近アメリカ日本がもしわれわれの要求に応じないならば、日本からの工業製品輸入に対し、たとえば自動車に対するローカルコンテント法案のような保護主義立法を、これを国内で通せという声を抑えることができないという、一種の恫喝に等しい姿勢農産物市場開放を迫っておるのが最近の姿でございます。私どもは、このようなアメリカ側姿勢に非常な反発を感じておるものでございます。  その理由は、農産物貿易に関する限り、わが国アメリカ最大の顧客であるという事実があるからでございます。一九八一年の対米貿易農林水産物と非農林水産物、まあほとんどが工業製品でございますが、これに分けてみますると、農林水産物では九十八億ドルの輸入超過でございます。非農林水産物では二百三十二億ドルの輸出超過でございます。農産物わが国輸入というのがアメリカ貿易収支に大きく寄与しておることは事実でございます。アメリカ世界に対する農産物輸出総額の実に一五%以上を日本は一国で輸入をいたしておるわけでございます。また、日本農産物輸入全体に占めるアメリカのシェアは四二%にも及んでおります。特に小麦につきましては五七%、トウモロコシは八九%、グレーンソルガムは九〇・四%、大豆に至っては九五%を占めておるわけでございます。農業物貿易に関する限り、われわれはアメリカから感謝こそされ非難される筋合いは何一つないわけでございます。  また、日本ほど私は農産物市場開放を行っている国はないと考えます。FAOの統計によると、わが国の一九八〇年での実績で、ソ連、西ドイツを上回り世界第一の農産物の純輸入国となっております。純輸入総額が百六十九億ドルに達しておるわけでございます。このように考えてまいりますと、現在言われている貿易摩擦わが国農産物貿易は何らかかわりのない問題でございますが、アメリカがかくも執拗に市場開放を求める背景は、御案内のとおり、一九三〇年以来と称する不況にさらされておりますアメリカの農業者の目を国内問題から対外問題に転じさせるためのレーガン政権のこうかつな企図と断ぜざるを得ないわけでございます。私どもはこのような企図に対しまして、最近アメリカ国内からもこれに対する批判の声が上がっているということを聞くわけでございます。特に、ファーマーズユニオン等の農民組織はこのアメリカのレーガン政権の姿勢に対して強く反発をいたしまして、機関紙等で公表をいたしておるわけでございます。  次に、農産物貿易のあり方について申し述べさしていただきます。  第一に、私ども農産物貿易に関する限り、完全自由化には反対であるということでございます。  農産物の自由化は、御案内のとおり生産性におきまして比較優位に立つ国の農産物というものが、他の国の当該農産物生産を破壊、駆逐するというのが実態でございます。このことはわが国の例を見ましても、自由化をいたしました飼料穀物あるいは大豆、なたね、あるいは最近におきましてはレモン、この例を見ても明らかでございまして、安いコストのものが入ってまいりますれば、相手国の高いコストの農産物生産を駆逐をいたしてまいるわけでございます。  問題は、それでいいのかという問題でございます。工業原料としての農産物は別といたしまして、農産物の大部分というのは御案内のとおり、直接食べるかあるいは家畜の腹を通して人間の食糧といたしておるわけでございまして、食糧問題に重大なかかわりがある産品でございます。私どもは食糧問題を考える場合には、二つの前提が大切であると考えます。  その一つは、長期的な視点でこの問題は考えなければならないということでございます。  第二には、地球的な規模でやはり食糧問題は考えていかなければならないという問題でございます。  最近、世界各国の調査機関の発表によりますと、西暦二〇〇〇年に向けての食糧需給に関するいろんな調査をそれぞれ行っておりますが、たとえばFAOでは二〇〇〇年の農業、米国政府ではカーター政権のときに二〇〇〇年の地球研究、OECDはインター・フューチャーズ・プロジェクト、それから農林水産省は昨年二〇〇〇年までの食糧需給予測等を発表しておりますが、共通しております点は、今後の食糧需給をめぐりましてはさまざまな不安定要因があるということを指摘をいたしておるわけでございます。それは発展途上国における人口の急減な増加であるとか、あるいは気象による収量の偏差であるとか、あるいは中進国におきまする飼料穀物需要増大の問題であるとか、あるいは世界全体におけるこれからの農地造成の困難さであるとか、こういうことを指摘をいたしておりまして、二〇〇〇年に向けまして国際需給の先行きは必ずしも楽観を許さない、むしろ需給はきわめてタイトに推移をするであろうということが大方の予想でございます。このような予想のとおり、仮に食糧の絶対量の不足が生じた場合に、日本貿易立国でドルを持っておるからといって一方的に食糧を買い占めることができるかどうか考えてみましても、その保証は全くないわけでございます。その意味においては、世界各国が農業生産力をこれ以上落とさない、現状維持を落とさないという努力をすることが何より肝要でございます。したがいまして食糧はできる限り自国でつくる、不足するものに限り輸入するという考え方をわれわれは農産物貿易の原則として考えておる次第でございます。事実、世界各国とも自国の農業を守るために懸命な努力をいたしておるのが現状でございます。アメリカの例は先ほどの事例で申し上げましたが、ECにおきましては御案内のとおり、共通農業政策で輸入農産物についてはきわめて高額な課徴金を課し、国内農業の保護に努めておることは御案内のとおりでございます。  また、われわれは、貿易問題を考えるに当たりまして、農業と国民生活との多面的なかかわり合いについて、これを重視していかなければならないと考えるものでございます。  その第一は、食糧の安全保障の問題でございます。現在、穀類の自給率は三三%を割り込んでおるというのが実態でございまして、カロリーでいきますと、五三%は輸入食糧によって賄われておる、国民が摂取するカロリーの五三%が輸入食糧によって賄われておるというのがいまの実態でございます。これ以上自給率を落とすわけにはまいらないぎりぎりのところに日本は来ておるというのが私は実態ではなかろうかと考えるわけでございます。  第二には、国土と自然環境の保全の問題でございまして、農業は緑と水を守る重要な産業でございます。この農業を自由化によってこれ以上荒廃させることは、日本の国是として、私は当然とるべきではないと考えるわけでございます。  第三点は、農村は日本社会の原点であるという問題でございます。  地域社会の共同と連帯のもとに農業というのは営まれておるわけでございます。水を一つとりましても、自分だけで農業用水を確保しているわけではございません。地域の財産でございます。みんなで共同いたしまして、農業生産というものは、地域の連帯感、人と人との結びつきの中に成立をいたしておる、それが日本の社会を形成している一番大きな基礎になっているというふうに私どもは考えるわけでございます。  特に、工業製品輸出におきまして日本が非常に輸出力を持っておる、国際競争力を持っているというのも、いわゆる労使関係がきわめて円満にいっている、きわめて勤勉である、こういういわゆる勤労者がおるからでございまして、こういう人間をつくり上げている基礎は農村社会である、まさに農村社会というものは日本の社会の原点であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  このような観点から、われわれは日本農業を滅ぼすような農産物の自由化には絶対反対するものでございます。  以上、農産物貿易のあり方について率直な意見を申し述べたわけでございますが、最後に、われわれはこのような情勢の中で、農業者として何をなすべきかについて申し述べたいと思います。  端的に結論を申し上げますと、与えられた条件の中で、より良質でより安価な農産物を国民に供給するため最大努力をしなければならないということでございまして、私ども農業協同組合は昨年十月の第十六回大会におきまして系統農協としての農業振興方策を決定いたしましたが、その内容は、分散錯圃の状態にございます農地を共同の力によりまして集積をいたしまして、また担い手として地域営農集団を組織化いたしまして、土地利用型農産物のコストを今後十年間で二〇%低減するという目標を打ち立てたわけでございます。  御案内のとおり、日本の農家一戸当たりの経営面積はわずか一・二ヘクタールでございます。アメリカの百八十二へクタール、フランスの二十六へクタールとは比較にならない狭さでございます。また、農地価格もアメリカの四十倍、フランスの七倍の高さでございます。この国土的制約を経営の努力によりましてどこまで圧縮できるかということがわれわれに課せられた国民の期待であり、貿易摩擦問題との関連におきまして、農産物を犠牲に供しない国民的な合意を得る唯一の道であると私どもは考えておるわけでございます。そのために最善の努力を今後払うことをお誓いいたしまして、私の意見開陳といたします。  どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次に、森谷参考人にお願いいたします。
  7. 森谷正規

    参考人森谷正規君) 野村総合研究所森谷でございます。  私は研究所で技術開発問題を調査しておりますが、特に最近は技術の国際比較の問題について力を入れて研究しております。  で、本日のテーマは国際経済摩擦ということでございますが、これは言うまでもなく日本工業製品貿易製品において非常に力が強いと。で、その力を生み出しているのが技術力でございまして、技術力と貿易摩擦というのは非常に密接な関連がございます。そういう視点から私の意見を申し上げたいと思います。  日本技術力はいま非常に強くなっております。しかし、なかなかその強さを認めようとしないという、こういう問題がございます。これは、御承知のように、日本はこれまで欧米に追いつく、キャッチアップということでやってきたわけでございまして、まだまだわれわれはかなわないというような見方をとかくしがちでございます。もちろんかなわない面もたくさんございますが、貿易商品においては決してそうではない。今後まあ先端技術が非常に大きく伸びていくわけでございますが、今後どうであろうかという見通しを持つのが非常に重要であるというふうに考えます。  結論を申し上げますと、私は、先端技術力においても、先端技術においても日本技術開発力はますます強くなると。したがって、貿易摩擦の火種は今後とももっと大きくなるかもしれないというふうに考えております。  で、その根拠を申し上げたいと思いますが、まず最初にいまのイノベーション、御承知のようにこの三、四年来大変なイノベーションでこざいますが、技術が急速に発展するという状況を迎えているわけですが、このイノベーションの性格を考える、それが非常に重要でございます。  先端技術といいますと、とかくスペースシャトルのようなものを頭に浮かべる。あれは大変なものであるというふうに考えますが、あれも確かに大変な先端技術ではございますが、私はいまのイノベーションというのは、先端技術の大衆化の時代であるというふうに考えております。一つのその典型的な例を申し上げますと、ゲーム・アンド・ウォッチというのを御承知かと思いますが、まあ皆様方のお孫さんが遊ばれるものでございますが、わずか六千円ぐらいの商品にLSI、液晶という先端技術が使いこなされておるわけでありまして、あるメーカーはこれをすでに一千五百万個生産しております。  私はいまのイノベーションをコストイノベーションである、それから応用のイノベーションであるというふうに考えておりますが、コストイノベーションといいますのは、性能はどんどんどんどん向上する、超LSIというようなものは五年で十倍、十年で百倍というくらい性能は向上しますが、コストは全然変わらない。いまの一番最先端の超LSIがわずか一個千円である、これは十年前も千円でございました。したがって、コストがどんどんどんどん安くなるという、まさにコストを下げるということがイノベーションの原動力になっているということでございます。  それからもう一つは応用のイノベーションでございますが、超LSIですとか、光ファイバーですとか、あるいはセラミックスですとか、あるいは炭素繊維、これは御承知のようにゴルフのブラックシャフトに使われておりますが、こういうものをいろんな製品に多様に応用していくと、それがごくごく身近な製品にまで入っていくというのがいまのイノベーションの性格でございます。したがいまして、日本は今後も、たとえばパソコンですとか、ワードプロセッサーですとか、あるいはビデオカメラあるいは産業用ロボットといったような量産商品に先端技術を応用していくということにかけては非常に強いわけでありまして、それがまさに貿易商品、大型の貿易商品になるわけです。というようなところから、日本は今後も先端技術において十分強い力を発掘し得るというふうに考えております。  もう少し広くその日本アメリカ技術力ということを比較してみますと、もちろんアメリカには日本よりはるかに強い技術がたくさんあります。数から言えばアメリカの方がはるかに多い。しかし、この技術というのはオリンピックではないわけですから、金メダルの数を勘定してもしようがないわけでありまして、どういう商品で強いか、それが大型商品であるかあるいは貿易商品であるのか、そうでないのかということが一番重要でございます。  アメリカ技術が強いのは、これはもう御承知のように、たとえば国防、宇宙開発がございます。これはもう当然でございまして、国防は日本の国防の研究開発費の百倍を超えるお金を投じているわけですから、これはもう全然足元にも及びません。宇宙開発も非常に大きな格差があるのは当然でございます。あるいは原子力もかなり弱い、あるいは航空機、これも軍事技術と非常に密接に関連がありますので、まだまだアメリカにかなわない。あるいは民生の分野で言いますと、たとえば医療機器のようなものはかなり弱い——最近は日本もかなり力をつけておりますが。こういうどちらかといいますと特殊な、非常に高度な技術アメリカは力を入れる。それは基本的に市場が小さいわけであります。日本はどちらかといいますと、まあ技術的にはそれほど高度でないものに力を入れる、そこに先端技術をどんどん使いこなして大量に生産していくというのが日本の方向でございます。  ここで一言申し上げておきたいのは、国防、宇宙開発、これに強ければこれが技術を先導していく、したがって、アメリカはやがて日本をまたひっくり返すのではないかというような意見もよく言われますが、私はそういうふうには思いません。いま国防、宇宙技術と民生産技術はかなり性格を異にしております。したがいまして、国防、宇宙からの波及効果は——これはまあないとは言いませんが、それはまあ多少はありますけれども、そんなに大きくないと、むしろアメリカの問題はこの国防、宇宙開発に非常にお金を投じる、お金よりもむしろ人を投じる。一番優秀な人が国防、宇宙開発の分野に行くというのがいまのアメリカの一番の泣きどころだろうというふうに考えております。それが民生産業の技術がおろそかになってきた最大理由であるというふうに考えております。逆に言いますと、日本が幸いながら防衛負担が軽いというのは、これは金の問題もあるかと思いますが、私はむしろ人の問題にある。最も優秀な人が自動車ですとか、鉄鋼ですとか、VTR、こういった製品の開発に携わってきたというのが、これがまあ日本の強さでございます。  今後を考えましても、アメリカはとかく新しいものを開発するというのが好きでございまして、これは御承知のように、アメリカというのはフロンティアスピリットが非常に旺盛でございます。これはいまでも健在でありまして、たとえば超LSI、これは非常に高度な技術ですが、しかし、やることは大体決まっている。いかに線を細く書いてたくさんトランジスタを一つのチップに詰め込むかという、こういうことは余りアメリカは力を入れない。ジョセフソン接合素子という全く新しい原理の製品をやりたがるというのが、これがまあアメリカの国民性でございますが、それがだんだんだんだん普及するころになると日本が力をつけていくという……、したがって、アメリカは常にどうも損な役回りばかりやらせられるといういらいらが生じてくるはずだろうというふうに考えております。  たとえて申し上げますと、アメリカ日本技術の争いというのは、わかりやすく表現しますと、サッカーとラグビーの試合であるというような表現をよく申し上げるわけですが、アメリカは国防、宇宙開発もやっておりますし、あるいは福祉技術のようなものも非常に力を入れております。それから、もちろんテレビだとか自動車もつくっております。で、非常に広く展開しているというのがアメリカでありまして、日本はもっぱら民生産業の量産商品に集中的に力を入れる。たとえて言いますと、ラグビーでキック・アンド・ラッシュというボールをけ上げて全員が一団となって突っ込んでいくというような形の争いといいますか、それが貿易に出ているわけでありまして、しかも、どちらかといいますと、アメリカの一番手薄な部分に全員が一丸となって突っ込んでいくわけでありますから、これはアメリカが悲鳴を上げるのも無理はないというふうに考えます。  こういう話を官庁などでもよく申し上げるわけですが、しかし、私が日本技術が強いと言いますと、弱い分野はどこかという質問がすぐ出てまいります。私はこれが大変危険であるというふうに思います。  私はいま日本として考えるべきことは、何をやらないかということだろうというふうに思います。何ができるかではなくて、何をやらないか、何をやるべきでないかということがいま非常に重要になってきている。といいますのは、貿易というのは輸出があり、同時に輸入がないといけないわけでございますが、御承知のように昨年あたりから日本の黒字幅は非常にふえております。私がいま大変心配しておりますのは、原油価格がかなり値下がりを始めております。これは見方によっては二十ドルくらいに下がるという見方もございますが、それが世界経済に与える影響はどうだろうか、逆オイルショックはというような話がよく出ます。しかし、その原油が下がるということのマイナス、これに関して日本の黒字幅がべらぼうにふえるということの指摘がほとんどないのは不思議に思うわけですが、たとえば原油が二十ドルに下がりますと、それだけの要因を考えますと百五、六十億ドルくらいの黒字の要因が出てまいります。となりますと、いまでも日本世界からお金をかき集めているんではないか、マージャンでいきますと一人浮きのような状態で、ついにOPECまでハコテンになってしまうというような時代になろうとしているわけでありまして、日本はますますほかの国から恨まれるという、それを非常に気にしているわけでございます。  しかし日本にも構造的に弱い部門がございます。申しわけないんですが、農業はやはり構造的に弱いんではないか。これは土地の問題が致命的でございますが、ほかにもたとえば労働コストが非常に安ければ国際競争力が強いという、したがって新興工業国、発展途上国が追い上げてくるという、こういうものもたくさんございます。これからはその強い分野と弱い分野のバランスをどうとるかということが非常に重要なポイントになってくるように思います。いまは強い分野はどんどん伸ばしていく、日本にももちろん弱い分野はありますが、それを何とか保護しよう、これは農業に限らず工業でもそういう面があるわけでございますが、やはりこれでは通用しない。強い分野をどんどん伸ばしていくんであれば、弱い分野をやはり開放しないといけない。農業を開放すべきかどうかというのは私はちょっと意見を差し控えさしていただきますが、私はむしろ工業だろうというふうに思います。  いま山口さんがおっしゃいましたように、農業製品の輸入をしましても、五億ドルとか八億ドルという金額でございます。石油が二十ドルに下がりますと、百数十億ドルの黒字になるわけでございます。私はこれは大変厄介な問題になると思います。ですから、その解決策としては工業製品輸入しないといけない。何とか工業製品輸入すべきであるというのがこれからの日本の方向だろうというふうに考えております。  ところが、日本市場は非常に高度なものを要求するということでありまして、いろいろ探してはいるんですが、なかなか日本市場で売れるような製品がない。あるいは自動車部品にしましても、日本自動車に組み込めるような部品は探してもなかなかないということだろうというふうに考えております。そこで、日本技術を、これはアメリカにもあるいは新興工業国、発展途上国にも提供する、日本ができるだけ協力をしてあげる、それで工業製品輸入をふやすということを今後はやるべきだろうというふうに考えております。それをやらなければ、こういう原材料価格が下がっていくという状況が続きますと、黒字幅はどんどんふえる。となると、どうしても輸出をさらに減らさざるを得ない。  これまで日本輸出立国できたわけでございますが、だんだん輸出は悪であるというふうな見方も出てくるんではないか。まあ悪というのはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、輸出は決して望ましくないというような見方も出るんではないかということも恐れております。  そういう状況になりますと、まさに世界貿易は縮小均衡になるということになりますので、繰り返しますが、日本技術力は強いという自覚を持って、どんどんその技術を外に出して製品を買い入れる、それによって世界貿易発展さしていく、それくらいの力は日本は持っているはずだというふうに考えております。  以上で私の意見を終わります。(拍手)
  8. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  以上で各参考人の御意見の開陳は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 国際経済摩擦という大変に広範なしかも困難な問題に関しまして、非常に明快な御見解を賜りまして本当にありがたく感謝をいたしておるわけでございます。せっかくの機会でございますので、二、三の点につきましてさらに御意見を賜りたいと、かように考えておる次第でございます。  最初に中村参考人にお願いをいたしたいと思います。  先ほどのお話で、貿易摩擦の原因、特に米国における自動車輸出の問題に関連をしましていろいろお話がございました。中村さんの御意見によると、これはもう米国側事情によって生じたものであって、わが国ダンピングをしたわけでもないし、集中豪雨的な輸出をしたわけでもないというようなお話があったわけでありますが、確かに私も、この八〇年代になってから、米国を初め欧米諸国経済の基礎的な条件が大変に悪くなってきた、まあインフレも非常に進行しましたし、それを抑えるためにアメリカでは高金利政策をとる、そのことがドル高につながり、また円安につながり、日本輸出を一層振興させるといったような、いわばグローバルなアメリカを初め先進諸国の内政の影響が貿易摩擦という現象を起こしておる大きな原因だと思うわけでございまして、したがってこれを基本的に解消する手だてとしては、これは米国の景気がよくなる、あるいは世界経済が活性化するという以外に方法はないんだと思うわけでありますけれども、同時に、特にこの数年、日本経済構造が、どちらかというと外需依存型であった。それによって集中豪雨的とは言わないまでも、相当の輸出が伸びた。まあそれあるがために、逆に言えば日本経済先進国の中では最もいい状態に保たれてきたわけでございますけれども、そうした日本経済運営というものもやはり貿易摩擦一つの要因であったんではないかと思うわけでございますが、この点いかがでございましょうか。
  10. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 私も先ほど申し上げましたように、オイルショック以後の経済運営日本が比較的ほかの国に比べて困難が少なかったというのは、まさにそういう外需依存といいますか、輸出による経済の支えといいますか、これが最も寄与したと思います。ですから、実質的なGNPの——国民総生産の五%程度の伸びがあったとしますと、そのうちの三%ぐらいは恐らく輸出による、外からの所得による成長であったかと思います。ただ、先生御指摘のように、自動車の場合につきましても、いま世界自動車需要を見ますと、大体年率にいたしまして二%弱というのがこれからの伸びだと思います。もちろんこれは先進工業国と発展途上国とでは違います。発展途上国の場合にはまだ七%ぐらいの年率で自動車需要というのはふえてくると思いますけれども世界じゅうをおしなべて言いますとやはり二%を切るんではないかというふうに思っております。したがって、これからわれわれの自動車需要というものも、多くを期待することはできない。したがって、やはり内需というものにかなり依存をしていかなきゃならぬだろう。いま大体日本自動車需要国内国外半々でございます。恐らくこういう状態がやはり続いていかなきゃいかぬじゃないかと、こういうふうに考えております。
  11. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 それからもう一つ、これは中村さんの御指摘には入っておらなかったわけでありますが、やはり欧米諸国から見ると、日本は自由世界第二位の経済大国になった、にもかかわらず、どうも防衛の面とかあるいは経済協力の面とか、いわば経済大国としてなすべき国際的な責任と申しますか、そういうものを十分果たしてないんではないかと、これは多分に私は、日本現状を十分に欧米諸国の人たちが認識をしてこういう主張をしているかどうかという点については、いわゆるパーセプションギャップといいますか、認識のずれが若干あると思いますので、それを向こうの言うのを一〇〇%受け入れる必要はないと思いますけれども、こういった主張、考え方貿易摩擦を激化させているもう一つの大きな要因ではないかと思うわけであります。この点いかがでございましょう。
  12. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 恐らく先生の御指摘は、たとえば自動車産業の面で申しますと、海外投資とか、そういった産業協力という面で経済大国としての責任をもう少し果たせと、こういう主張があるということを御指摘いただいているんだろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、自動車産業というのは商品が非常に国際商品でございますので、発展してまいりますと、おのずから多国籍化してくるというのが従来の発展の経過でございます。特に発展途上国につきましてはノックダウンという形でいま日本の各社も世界で恐らく五、六十カ国ノックダウン生産をしておると思います。ですから、そういうような発展途上国に対する経済協力といった意味の自動車生産ということだけでなくて、やはりヨーロッパあるいはアメリカのような先進工業国に対しても、日本の、先ほどの森谷さんのお話のような日本が持っている生産技術というもの、これをやはり持ち込んで、その国の産業発展に寄与するというような方向に行かざるを得ないんではないかというふうに考えております。
  13. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 それからまた、これはもう中村さんもお触れになりましたけれども市場開放問題との関連でございます。海外から市場開放に対する要求が非常に強い、貿易摩擦の原因があたかも日本市場開放が不十分であるために起きておる、あるいは輸入品に対する種々の非関税措置がとられているために起きているかのごとき印象を与えている面もあるわけでありますけれども、私は、日本貿易立国、通商国家として市場開放をもっともっとすべきだ、こういう面に努力をすべきだということはもちろんだと思いますけれども、この貿易摩擦解消あるいは緩和といった面から考えますと、市場開放というのはそれほど役に立たないんではないか。先ほど食糧の問題も触れられましたけれどもわが国の総輸入額の一位は何といっても石油でありますし、二番目は農産品であります。これを合わせて大体輸入額の半分を占めるわけでありますから、石油については、御案内のように、省エネ努力によって量的にも減ってまいりましたし、価格も低落をしてきた。食糧についてもいまや日本はまさに飽食の時代でありますし、カロリー的に見ましても、また栄養のバランスという面から見ましても最も満足すべき状態にすでになっておる、これ以上なかなか消費するわけにはいかないというようなこともありまして、実際問題として、これ以上輸入市場開放によってふやしていくと——先ほど森谷さんもおっしゃいましたけれども、なかなか他の工業製品でも適当な輸入すべき品物がないというふうなことから考えますと、輸入をふやすということは事実上むずかしいんではないかと思うわけでありまして、市場開放によって貿易摩擦解消していくということは、私どもは大変にこれはむずかしい問題だというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。
  14. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 先生の御質問、一般的な御質問かもしれませんけれども自動車という面から考えてみたいと思います。  先ほども申し上げましたように、自動車につきましては全くフリーなマーケットになっております。したがって、これをふやすといいましても、これはもう日本がかつて行ったようなことと同じような努力を、諸外国がしていただかないことにはふえないと思います。したがって、自動車の面で輸入をふやすことによって貿易バランスを改善するというようなことは、これはなかなかむずかしかろうと思います。  しかし、貿易というのはそういう商品ことでバランスを保つということは必要ないわけでこざいまして、それぞれ有無相通ずるということでございますので、先ほどのお話にもありました、確かに日本で買いたい物、要するに日本のユーザーのニーズに合うような商品というのを何か諸外国が開発して提供してくれない限り、先ほどの製品輸入というお話もありましたけれども、非常に困難が伴ってくるんではないかと思います。
  15. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 そういう点を考えていきますと、輸出が悪であるというお話、まあこれは冗談ですけれどもお話がありましたが、私も決してそうは思いません。やはり通商国家として、貿易立国としていくからにはもっともっとこれから輸出努力をしていかなければならないと思いますけれども、実際問題としてここ当分の間は、貿易の拡大均衡を目指していくということには相当な困難が伴ってくるんではないかというような感じがするわけでありまして、どうしてもやはり輸出についてもある程度節度ある輸出を図っていく、それからまた、先ほどもお話がありました国際協力といったような面についてもより一層努力していくということがやはり貿易摩擦解消の手だてではないかというふうにも考えますが、総体的にそれらの問題につきまして御意見がございましたらお伺いをしたいと思います。
  16. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 先生御指摘のとおりでございまして、そういう観点から実は私どもも、先ほども申し上げましたようにEC諸国向け、これは先方がかなりえげつないといいますか、差別的に輸入制限をしておりますけれども、にもかかわらず、われわれとしましてはきわめて分別のある輸出を続けておりまして、たとえば英国との間では、私ども自動車工業会で英国の自動車工業会と毎年二回会長同士が意見交換をいたしておりまして、お互いの状況というものをよく理解して、その理解した上に立ってそれぞれが分別ある態度をとると、こういうことに努めております。ドイツとかその他べネルクスといったような国についてはそういう工業会同士の会談ということはいたしておりませんけれども、先ほど申しましたように大変プルーデントな輸出をいたしておりますので、現実に昨年は若干ヨーロッパ通貨に対する円高もございましたけれども、約一割ほどの輸出が減少をいたしておりまして、要するに集中豪雨的なといいますか、売れればいいというようなそういう態度はわれわれとしても控えておる。アメリカに対する自主規制につきましても、先般三年目を政府がお決めになりましたけれども、われわれとしてはアメリカのこれからの自動車需要というのはかなりふえると思いますので、その意味では先般の百六十八万台据え置きというのは、決して満足はしておりませんけれども、しかし政府が情勢判断ということでお決めになりましたので、これについては従来どおりわれわれも従っていくと、こういう態度を続けていきたいと思っております。
  17. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 ありがとうございました。  次に、山口参考人にお願いをいたしたいと思います。  山口さんは、先ほど日本世界一の農産物輸入国である、アメリカ最大の顧客だ、また農産物市場開放度は非常に高いんだと、したがってこれ以上の自由化ということには絶対に反対である、こういうお話をされたわけでございますが、一方財界等からはいろいろな提言が最近なされておりまして、その中には残存輸入制限の撤廃というものはできるだけ早く実現すべきだと、撤廃しがたい品目については当面はこの輸入枠の拡大を図って段階的な市場開放を図る必要があると、また市場開放五カ年計画を策定して具体的な施策を進めるべきであるというようないろいろな提言があるわけでございますが、これらに関しましてはいかがお考えでございましょうか。
  18. 山口巌

    参考人山口巌君) それは、財界等の提言というのは、主として価値観として考えておりますのはコストの問題を中心にして考えているんだろうと思います。だから、輸入枠の拡大をやりながら漸次日本農産物のコストダウンを図っていって、国際競争力が出たところで自由化すればいいではないかと、こういうことでございますが、農業というのは御案内のとおり土地が何と申しましても生産手段の最たるものでございます。土地の狭隘ということがコストの大半を決定するわけです。土地にかかわりのない施設園芸であるとかあるいは小家畜の生産であるとか、この点についてはすでに自由化もしておりますし、国際競争力を十分持っておるわけでございます。問題は、土地のかかわりのいわゆる土地利用型農産物をどうするかという問題でございますが、これは私は段階的な自由化ということもとうてい国土の自由化でもやってもらわない限りできないのではないかということでございます。  ただ、現状において、いまの国際的に高いコストでいいのかということは別の問題でございまして、これは国民的な倫理といたしましてできるだけ安いものをつくるべきであり、そういう方向にやはり政府としても目標をつくって、コストダウンの指標を出すべきであり、われわれもそれに対して、喜んでコストダウンに対して最大努力をしたい、こういうふうにこれは国民の倫理として考えておるわけでございます。  自由化問題につきましては、私は土地利用型農産物については、自由化をすることは不可能であると、自由化すればこれは当該農産物が全部壊滅をするということはやむを得ない現状ではないかと、こういうふうに考えるわけでございます。
  19. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 さらに、学者グループといいますか、政策構想フォーラムというところから最近、いま問題になっております牛肉、オレンジ、これの自由化に関連しまして、先ほど山口さんもお触れになりましたけれどもECのような課徴金をかけて、その範囲内でひとつ自由化をしたらばいかがと、さらに、牛肉等については、それでも不十分なら、それを財源にして不足払いの制度を考えたらどうか、そういう条件つきの自由化を考えるべきだというような提言がなされておりますが、これについてはどうお考えでございましょう。
  20. 山口巌

    参考人山口巌君) 課徴金制度そのものに私どもは反対するものではないわけでございますが、ただ、非常に先般の提言等を見まして誤解をされておる点があるんではないかと思うんですが、ECの課徴金は輸入禁止措置として牛肉については取っておるわけでございまして、非常に高い課徴金を取るために、それだけの課徴金を払ったんでは牛肉EC諸国に対する輸出はほかの国はできないわけで、そこでいわゆる輸入禁止措置として非常に高度な課徴金をかけておるわけでございますが、実際、ECは必要な肉は輸入割り当て制度を別にとっておりまして、国を指定いたしまして、たとえば豪州、ニュージー、こういう国にそれぞれ輸入数量を割り当てを行っております。それは課徴金を取らないで輸入しているわけです。そういう形で不足量につきましてはいわゆるIQ物資と同様な方針で、相手国に対して輸入割り当て制度をとって、課徴金を取らない。一般的には高い課徴金をかけて輸入禁止措置をとっているというのがEC牛肉に関する問題でございます。  で、この間の政策フォーラムの課徴金の問題でございますが、私はNHKでちょっと三十分ばかり討論をやった経過があるわけです。しかしこれも、そのときに申し上げたんですが、いまの牛肉を例にとりますと、牛肉価格は日本を一〇〇といたしますとECが七〇ぐらいの水準でございます。現在ECがいわゆる課徴金をどのくらい課しているかというと、七五から七八%の課徴金をかけておりますから、三〇%乗せますと、一〇〇%を超える課徴金を日本はかけなければ現在の価格水準が保証されない、維持できないと、こういうことになります。それだけの課徴金をいまの日米間の問題あるいは国際関係において課徴金を取る——新しい打ち起こしをやるわけですから、国際的に許されるかどうか。それはむしろいまの輸入割り当て制度を守るよりもっとむずかしい問題ではないか。  それから、牛肉は国際相場が変動いたしますから、果たして恒常的に課徴金で不足払い財源が調達できるかどうかということも大きな問題でございまして、財政が非常に逼迫している現状におきましては、国の財政負担が私は非常に伴うんではないか。現在、あの構想は二五%の牛肉に対する関税も不足払い財源とカウントをいたしておりますが、二五%財源は、御案内のとおり全部大蔵省に入りまして一般会計で出ているわけで、それが別に不足払い財源として固定化していくわけで、これは恐らく財政当局としても非常に私は問題視するのではないか。  さらに根本的な問題は、御案内のとおり牛肉は代替性がきわめて強い。豚肉、ブロイラー等と代替性があるわけです。牛肉を自由化いたしました場合、自由化でございますから市場価格がうんと下がります。ともかく豪州が一番安いわけですが、豪州並みの水準まで仮に下がったといたしますると、豚肉を食っていた人が牛肉を食う、それから、あるいはブロイラーを食べていた人が牛肉を食う、こういう価格が仮に実現したとすれば、これは牛肉生産農家には不足払いで所得が仮に補償されたといたしましても、豚肉、ブロイラーの生産農家は一体どうなのかと、こういう問題が出てくるわけでございまして、これは畜産、食肉生産全体の問題としてそういう視点からとらえていかなければ非常な誤りを犯す。結果的には牛肉の自由化問題だけ残って——実は、不足払いはなたね、大豆でやっておるわけです。全部日本は衰退してしまったわけです。自由化の問題だけ残りまして、もう大豆をつくる人もなたねをつくる人もいなくなっちゃったわけです。で、不足払いの価格水準というのが財政によって支配されますので年々下がるわけです。それじゃ再生産できない価格が現実の姿として出てきまして、つくる人がいなくなったというのが現状でございますから、その轍をわれわれは踏みたくないというのが農業団体としての気持ちでございます。
  21. 岡部三郎

    ○岡部三郎君 ありがとうございました。  森谷参考人にもお伺いしたいと思ったんですが、すでに時間が来てしまいましたので、まことに申しわけございません。これで失礼します。ありがとうございました。
  22. 八百板正

    ○八百板正君 きょうは、御多用の中を参考人の諸先生においでをいただき、御協力をいただきまして、ありがとうございます。  伺いまして、私、感じました点を申し上げたいのでありまするが、いずれも参考人皆様方の御意見はある意味では共通したものを持っておるわけでありまして、何かそういう意味で大変うれしく頼もしい感じをいたした点をまず最初に申し上げまして、お礼の言葉といたします。  どなたにだけお伺いするというものではございませんが、いずれも共通した問題が結局は大事な点のように考えますので、そういうふうな点をちょっと申し上げながら、まず山口参考人からお話を伺い、それから中村参考人森谷参考人、それぞれお願いをしたいと、こういうふうに思います。  農産物の自由化に関連いたしまして、山口参考人が申されましたように、日本アメリカの穀物の一番の大きなお得意さんになっているという事実、また日本先進国として世界の中で一番食糧をよけいに輸入をしておる国であるということ、非常に自給率が低くなっておるという点、この一事を数字の上でまともに取り上げますならば、もうそれだけで、何と申しましょうか、開放しなさいとか、閉鎖性がどうのというふうなことは通らない話になってくるだろうと、私はこういうふうに思います。  それから、日本国内において、農業以外の関係の人の中から、よく、安ければ買ったらいいじゃないか、ほかの方でもうけた金で買ったらいいじゃないかと、こういうふうな意見が素朴に消費者からも出てくるわけでございまするが、しかし食べ物というものは、これは余っているときに余っている国から買えるものであって、足りなくなればこれはどこからも買えないのであります。また同時に、安いから買った方がいいといいまするが、安いというのは、まずまず日本の今日の食事情がまあまあ食べて余るぐらいに豊かにあるから安く買えるのでありまして、これがもし日本の食糧が——もうすでに米の問題が出かかっておりまするが、本当に足りないということになりますると、これは安くは買えないのでありまして、仮に外国から安く入ったとしても日本の今日の経済仕組みの中では、安く売ってくれる人はないのであります。やっぱり安く買っても高く売ると、こういうふうな仕組みになっているわけでありまして、そういうふうな点は、私、やはりもう決まり切ったことでございますから、素朴にみんなに理解してもらう必要があるというふうに常日ごろ考えておるわけであります。  そこで、結論的に申しますというと、やっぱり自給力を高めていくという立場に帰着するだろうと思うのでありまするが、その場合には、日本だけの自給力を高めるということだけではなくて、世界じゅうのそれぞれの国が、それぞれの国土を最大限に生かして食糧の自給度を高めていくという、こういう努力をやってもらうということが大事だろうと思います。そういう面の協力をわれわれ日本は、農業だけではない、農業ももちろんのこと、あらゆる面でやらなければならないというのが、今日の日本の基本的立場ではないかと、私はこういうふうに考えます。そういう点で、しょせんはわれわれは国土をどういうふうにして値打ちをつけていくか、そしてそこに住んでおる人間の可能性をどういうふうに高めていくかということに帰着するだろうと思うのでありまして、そういう面から、おくれた地域に対して、われわれはそういう素地を引き上げていく、上に協力をしなくちゃいかぬと、こういう立場が基礎に大事じゃないかと、こういうふうに私は考えます。  貿易摩擦という言葉が使われまするが、私はこの摩擦という言葉を余り使わないように工夫したらいいのじゃないかと思います。摩擦というものでもないと私は思うのです。やっぱり競争社会の中で国際的にも競争していくということは当然のことでありまするから、そういうふうな公正なる競争を基礎に考えていくべきであって、何かこう、摩擦、摩擦なんというふうに物をとらえるというのはどうかなと私は思っております。  そこで私は、まず山口参考人にちょっとだけお伺いしたいのでありまするが、日本は国土が狭い、したがって貧しいと、こういうことでございます。それはそのとおりでございまするが、しかし日本にはやはりほかの国と比べて豊かな国土と申しましょうか、条件を、気候条件にしてもいろいろ持っておるわけでありまするから、そういうふうな面では日本の農業の中のすぐれた面、太陽の光を浴びて草木が繁茂するという、この原初的な太陽のエネルギーをとらえていく、そのメカニズムとしての草木の繁茂、農業の繁栄と、こういうふうに考えていきまするというと、日本は必ずしも貧しいものではないのではないかというふうにも私は考えられるわけであります。そういう面で、農業の上に大きな指導力を発揮することのできる可能性のある立場にあられまする山口参考人にこの点で農業の展望を一言触れてお答えを願えれば結構だと、こういうふうに思います。
  23. 山口巌

    参考人山口巌君) 先ほども申し上げましたように、与えられている条件の中で、最大限良質でコストの安い農産物をつくっていく、こういう努力をこれから続けていきたい、こういうふうに私どもとしては考えておるわけでございます。  そういう意味におきましては、これからの非常に大きなたくさんの課題を抱えておりますが、農地の集積も、あるいは土地の有効利用に関する問題も、われわれの努力とそれから農民の共同の力によりまして解決できるはずである、こういう私どもとしては自信を持って現在進めておる状態でございます。
  24. 八百板正

    ○八百板正君 やはり日本の農業に対して自信を持って取り組むということが私は山口参考人のおっしゃるとおり大事だろう、こういうふうに思っております。  時間もございませんから、引き続いて中村参考人にお伺いをしたいと思うんでありまするが、ちょっと言葉にこだわって物を言うようでございまするが、日本は非常に海外の市場開発に努力して苦労をした、それに比べるとEC努力にいたしましても、あるいはその他の国々努力にいたしましても日本のような努力をしてないというふうな面のお話がございましたが、私は、これを別にその言葉を取り上げてどうこうとがめるという意味ではございませんが、日本のこの努力をしたというのは、いわゆるセールス的立場において大いに苦労をして努力したということであって、やはりわれわれの商品がさばける土壌というものは、それなりの長い歴史と文化と産業の蓄積の中で開発されておるものでありまするから、そこに乗り込んでいって、いわゆるセールス的努力をうまくやって、うんとがんばって努力して克服して、そして市場を開発したというのは、これはそのとおりでございまするけれども、やはり本当の開発というものはそういうものではないんじゃないかというふうなことを私は感じるんであります。言葉にとらわれて申し上げて恐縮でございまするが、そういう意味では、先進国でも同様でありまするが、途上国の場合特にそうでございます。その途上国の発展の基礎に対して協力するという、そういうところを忘れないで取り組んでいくという構えが、今日たとえばこれだけ世界的に大きな市場を持つ立場になった日本自動車産業としては、そういう面についてもうちょっと御配慮があっていいのではないか、こんなふうに私は考えるわけであります。そして、競争相手としておくれた途上国に対してはこれを引き上げるための基礎的な協力が必要である、それは自動車というだけに考えてはいけないと思うんであります。同時にまた、先進国の似たような産業を持っておる国に対しても、それを競争相手として、何か打ち負かすんだというふうな、そういうふうな考え方でいきまするというと、日本はやがてだめになるんじゃないかという感じを私はいたしております。やっぱり、そういう競争相手を打倒するんだというふうな方向であっては結構でないんじゃないかというふうな感じをいたすわけであります。  これは森谷参考人のお話にも関連するわけでございますから、あわせて申し上げまして御意見を伺いたいと思うんでありまするが、日本の場合に、いわゆる日本は先端技術を駆使して、そしてこれを大量生産に向けて、何と申しましょうか、そういう面で広げていくという日本の特色なり努力が展望されておるというふうな意味に私は伺ったのでございまするが、ここでアメリカ日本を比べて、アメリカは新しい原理のものを開発するという能力において、日本よりすぐれているというふうなことをお話しいただきました。日本は、それに比べてそういう面では貧しくとも、いま申し上げましたように、その先端技術を取り上げて、そしてこれをもっと掘り下げて、これを駆使して大量生産をするというそういう能力に、あるいは勤勉な努力にたけておる、こういうことが言えるだろうと思うのでありまするが、しかし創造的な能力を日本よりは持っておるという見方に立って、アメリカ産業なり技術なりを見てまいりまするならば、これは決して日本アメリカの優位に立ち得るということにはならないのではないか。いまこそ、なるほどいままで何といいますか、ずっと優位に立っている立場でおっとりと構えてまいりましたアメリカ産業の取り組みが、そういう創造的意欲を持った特性が積極的に発展して産業の中にあらわれてくるようになりまするというと、とてもとても日本などは及びもつかない大きな先進的な立場アメリカが立つのではないか。アメリカを追いつき追い越すなんというんじゃなくて、ぐんぐんアメリカに離されていくのではないか、こういうふうなことを私は感じます。  そういう点から申しまして、たとえば今日エレクトロニクスとかバイオ新素材、航空宇宙、いろいろの面でアメリカとの関係が言われておりまするけれども、先ほどおっしゃいましたように、私よくわからないのでございまするが、今日いわゆるイノベーションの形でこれが非常に子供にまで普及して大衆化の方向にあるということをおっしゃいました。これに対してかなり力を入れて伸ばしていっていいという考え方だろうと思うのでありまするが、私はこれを伸ばしていくというそのものに対してどうこうというのではございません。しかし、やはり先ほどアメリカのことをちょっと触れましたように、子供の創造性を育てる、あるいは子供の意欲を育てる、あるいは困難に耐えて克服していく、あるいは持久力というようなもの、そういうふうなものをやはり子供の中に培っていくという点に欠けるものが出てくるのではないかというふうな点を私は非常に心配をするわけであります。そういうふうな点については、どんなふうなお考えをお持ちか、一言だけちょっと意見を聞かしていただきたいと存じます。  以上です。
  25. 森谷正規

    参考人森谷正規君) いまのお話でございますが、創造力、確かに日本人がこれからますます創造性を——ますますといいますか、これまではどちらかというと足りなかったわけでありまして、今後は大いに創造性を発揮しないといけない時代に入ってきているのは確かでございます。  この創造性というのはいろんなレベルがありまして、ある研究所長の方は、独立型の創造性、つまり何にもないところに全く新しいものを生み出すような創造性と、それから触発型の創造性、つまり何かあるきっかけがあって、もう原理はわかっていて、それをもとにスタートして、開発していくという、そういう形の創造性があるということをおっしゃっておられますが、私は日本はその触発型の創造性はかなり強い。いま技術開発の主流になりますのは、どちらが主流かといいますと、もちろん独立型の創造性、これは多分ノーベル賞をもらうような大変革新的なもの、これも当然必要ではありますが、しかし、バイオテクノロジーですとか、エレクトロニクスでも、先ほどちょっと申し上げましたジョセフソン接合素子あるいは最近よく話題になります人工知能、第五世代のコンピューター、こういうのが二十一世紀の技術である。これはかなり先の技術であるという認識がまず第一でございますが、そういう先の技術を開発するための創造性もどちらかといいますと触発型でいいということでございますから、私は、日本はこれからかなり新しいものを、原理を生み出すというのはなかなかやらないにしても、それを育て上げていくというような面では大いに貢献し得るんではないかというふうに考えております。実際に、これからの子供がそういう創造性を伸ばしていけるかどうかということになりますと、これは教育の問題が絡みますし、いまの受験勉強に追われるという状況の中ではむずかしい面もあるかと思いますが、しかし、一面、たとえば子供でも小さいころからパソコンに取り組む、好きな人は一生懸命パソコンに取り組んでこういう機器を使いこなすというような余裕も出てきておりますので、これは教育の問題でございますからなかなかむずかしいのではありますが、やりようによってはもっと創造性を伸ばせる、伸ばしていくことも可能でありますし、それをできるだけやらないといけないというふうに思っております。
  26. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 先生のお話の中で、ヨーロッパのメーカーあるいはアメリカメーカー努力が足らぬじゃないかということを私が申し上げたことについて、若干誤解があるといけませんので敷衍して申し上げてみたいと思うのですが、私が申し上げましたのは、まさに先生のおっしゃるセールスのことでございまして、日本市場というのは制度的には開放されているけれども、ノン・タリフ・バリアが一様にたくさんあってなかなか入れないというようなことをよくヨーロッパ、アメリカメーカーが申します。これは先ほど申しましたように、私らも、その国その国で事情はそれぞれ違います。文化も違います、歴史も違います。したがって、その国のニーズに合うような商品をつくる、あるいはその国の制度に合うようなやり方で輸出をしていく、こういう努力をしてきたということを申し上げておりまして、優等生が劣等生に対して努力が足らぬじゃないかといったような、そういう意味で申し上げているのじゃございませんので、われわれはどこまでも、よくECから来た人たちに申し上げるんですが、道路の上に小さな石がありましても、それをまたぐ気持ちがなければバリアになるわけでございます。われわれはかなりの石をまたいでまたいで前へ進んできた。その小さな石さえのけようという気がなければこれは前に進めないんだということをよく私ら申し上げるのですけれども、そういう意味でもう少し日本の実情に合うような車を持ってこられるということが必要だということを申し上げているわけでございます。  それで、たとえばよくアメリカで五千ドルぐらいの車が日本へ来ると一万ドルにもなるというようなことを言う方があります。これもわれわれの所管ではありませんが、輸入組合の方々に伺いますと、アメリカで使っておるんだからそのままで日本でも使えるはずだということで持ってこられる。したがって、もちろんハンドルは逆ですけれども、ハンドルの逆なのはまだいいとしても、バックミラーあるいはフェンダーミラーもそのままドアミラーでつけてくるとか、フェンダーミラーをつけないとか、いろいろなことで向こうで使っているままで使えるはずだという考え方でマーケティングをしてこられますので、港へ着きましてからこれを全部外してつくり直す、あるいは輸送中にも傷んでくる。それを全部塗装し直す、そういうようなこちらへ来て一台一台手直しをすることによって非常に金がかかる。そのために外車が非常に高くなるということを輸入業者が言っておりますが、われわれは仕向け国がナイジェリアであろうとフランスであろうと、その国の規制基準に合うような車を工場のラインでつくって出しておりますので、先方へ行って直したり、あるいは塗装し直すというようなことのないような輸送もしておる。こういうことでございまして、そういう意味で少し外国もお考えになったらどうか、こういうことを申し上げております。われわれはアメリカを打ち負かすとか、そんな大それた考えはございません。GMのような大きな会社は、一昨年来赤字になっておりましたけれども、昨年九億六千万ドルの税引き後の利益を上げております。あれだけ市場が減って、売り上げが減って減収になりながら増益をしております。これは九億六千万ドルの税引き後の利益というのは、トヨタよりも大きい利益でございます。これだけの力を出す相手に打ち勝つということは、なかなかわれわれも考えられないということで、決して侮っておるわけではございませんで、その意味で競争と協調ということをわれわれは二つの柱としてやっていきたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  27. 八百板正

    ○八百板正君 ありがとうございました。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 お三方の参考人の方御苦労さまでございます。時間も大分もう経過してしまったわけですが、一つだけ御意見をさらにお伺いしたいことがございますので、森谷参考人にひとつお願いいたしたいと思います。  貿易摩擦解消の面で非常にむずかしい問題だと思いますが、金銭的な面といいますか、金額的な面だけ考えれば、これはたとえばアメリカから空母一隻買ってきてしまえばこれでもっていいんだという暴論もあるわけですね。ですけれども、本来の問題としてはそれだけの問題じゃないというふうに思うわけでありまして、その点先ほど森谷参考人おっしゃいましたアメリカ日本技術の格差とは言いませんが、内容の差というものについて私全く同感でございます。  そこで、わが国は科学技術で立国をするという、そういう方向で進むとすれば、やはり技術というものが今後の貿易問題に大きなウエートを占める。これも当然だというふうに思いますが、その中で、特に生産技術の問題ですね。よく非関税障壁の問題が言われるわけですが、品質の格差と価格の差というものが、それそのものがもう非関税障壁だと私は思っておるわけですが、この生産技術一つにしましても、先ほどの話にございましたことから言いますと、たとえば日本技術を提供する、その提供した技術によって高いレベルの生産品を生産してもらって、それを日本輸入していくという一つのルートとしての考え方ですね。これも一つ考え方と私は思うわけですが、その場合問題になってくるのは労働者の質の問題ですね、これがなかなか解決できないんじゃないかという問題。それからまた同時に品質上の問題からしてロボットの導入という問題も当然そこで問題が出てくる。たとえばECあたりで、私、前にも議論したのですが、ロボットが失業を生むという問題が出てきてしまう。それから、もう一つは、日本とたとえばアメリカ労働組合組織ですね、このシステムが違うという問題。そういったようないろんな問題がこれに派生して出てくるんじゃないか。その辺の解決も同時にしないと、なかなかうまくいかない面もあるんじゃないかというふうに思うのですが、その点もうちょっと深く御意見述べていただければありがたいと思うので、ひとつよろしくお願いいたします。
  29. 森谷正規

    参考人森谷正規君) 確かに日本の強さは生産技術がベースにある。ただし、いまや生産技術ばかりではなくて開発技術にも相当強くなっておりますし、これから新しい製品を生み出すというようなところでも力を発揮するという状況に入っていくわけですから、生産技術はできるだけやはり海外にも、私はおすそ分けをするという言葉をよく使うわけですが、おすそ分けをしないといけないということでございます。  いまおっしゃいました労働者の質の問題でございますが、これはやはり余りはっきり言いますと、民族の優劣ということになりますと非常に問題がございますが、やはりそういうことではなくて、日本人というのは工業化社会に大変向いているという面がございます。それは、まあ勤勉ということは当然でございますが、大変機敏であるという、あるいは応用力が非常に強いという、あるいは最近よく話題になりますのは、超LSIは非常にクリーンなルームを必要とします。このためにはやっぱり日常生活において大変清潔に暮らすとか、あるいは非常に緻密でないといけないという、この辺がいまの工業化社会に日本は大変向いているという面があるように思います。ほかの国はどうかというと、それはたとえば芸術的には非常にすぐれていても余り緻密でない、あるいは大変大ざっぱであるというような国が多いわけでありまして、そういうような国にいまの工業の生産に合うようなそういうシステムを持っていくというのはなかなかむずかしい。これはまさに文化の問題でございますので、よく言われますように経済摩擦というのは要するに文化摩擦ということにも結びつくわけですが、しかしまあそうは言いましても、日本の企業でアメリカあるいはヨーロッパに現地の工場をつくっている企業は、非常に大きな努力をして日本的なやり方を少しずつ定着させていっております。ですから、そういう形で日本的なやり方をやればいい製品が安くできるんだということを身をもって実証して、それに賛成をする日本シンパといいますか、そういうような企業をどしどしふやしていくという、そういうような中で、やはり単に勤勉ということではなくて、緻密であるということに、非常に気を使うような心がけをしてもらう、まあそこまでいかないといけないんではないか。これには非常に時間がかかると思いますし、それはやはりなかなか大変な努力だと思いますので、日本もそういう面で大いに努力を、こちらからそういうことの手助けをする努力をすべきだろうというふうに考えております。
  30. 馬場富

    ○馬場富君 三人の参考人方々には、本日は大変御苦労さまでございます。  私は、最初に自動車を中心とする貿易摩擦について質問いたします。  最初に中村参考人に、アメリカに対する自動車自主規制は、一九八三年も引き続き百六十八万台と決まりました。この自主規制のねらいはアメリカ自動車産業の再生のための時間を与えるというところにあったと思いますが、過去二年間の自主規制について、業界はこの点をどのように評価してみえるか。  また、本年はアメリカ市場も昨年よりは回復の傾向にある、こういう予測が多く出ておりますが、昨年は七百九十七万台でありました。本年は予測からまいりますと八百八十万台から九百五十万台という見通しが多いようでございます。それにもかかわらず八三年は百六十八万台に据え置かれておりますが、このように回復が現実となった場合に、業界はやはり機会損失の可能性が大きいと私は考えますが、この点業界はどのように受けとめてみえるか。回復状況によっては年度の途中で見直しを求めるという考えはあるかないか、この点質問いたします。
  31. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 御質問が二つあったと思いますが、一つは、日本が一昨年から自主規制実施してその今日までの二年間の間どうであったか、要するに所期のような推移をしておるかという御質問であろうかと思いますが、結論的に申しますと、二年間時間的余裕を与えたにもかかわらず、その成果が上がっていないということでございます。ただ、これは一概にアメリカメーカーなり労働組合だけを責めることは酷であろうかと思いますが、この二年間を振り返ってみますと、 自主規制を始めましたときに、アメリカの商務省が、八〇年が八百九十八万台であったものを恐らく八一年には九百五十万台になるであろう、さらに八二年は千百万台にふえるであろう、こういうことを言っておったんですが、実績は五十万台ふえる初年度が実は逆に八百五十三万というふうに約五十万台減少いたしました。さらに昨年に至っては千百万台と言っておった見通しが逆に七百九十八万とまさに八百万を切るということで、約三百万ぐらいの見通しの差ができました。この大きな見通しの差というのは、先ほど申し上げましたような高金利が一番大きく影響していると思います。もちろん世界的な同時不況ということでアメリカも例外でございませんで、そういう不況もありますけれども、高金利の影響というのが住宅産業とともに自動車のようなローンを使います消費者にとっては非常に大きく影響する。したがって、これは一概にメーカーの責任とは申しませんが、しかしメーカーの方も実は日本車制限したために日本車の価格が上がりました。それで価格競争上若干有利になったはずであるのに、アメリカメーカーは自分たちの車も値上げをいたしました。かなり大幅な値上げをいたしました。ところが品質が伴わないために売れない、そこでリベートを出すという売り方をいたしました。消費者にとってみますと、リベートがなくなってしまえば買わない、また高い値段をつける、またリベートを出す、こういうような価格政策をとっておったためにアメリカ国産車需要が伸びなかった、こういうことで、したがって需要が減り、そういうことで国産車販売ができなかったために、この二年間の間に小型車への移行の設備投資をするという資金がなかなか確保できなかった。いろんな資産の売却等をいたしましたけれども達成できなかったということで、現状では先ほど申しましたように所期の目的は達していないということでございます。  それから百六十八万台につきまして、ことしはむしろ需要がふえるので、プラスアルファすべきではないかということでございますが、率直に申しまして私ども業界はプラスアルファをしていただきたいという意見でございます。しかしながら、まあ政府がお決めになることで、政府はあの時点でああいう判断をおとりになった、したがってできることであれば、これが非常にアメリカ市場が急速に回復するようなことであれば、ぜひ見直しをしていただきたいというのが率直な希望でございます。
  32. 馬場富

    ○馬場富君 次に、自動車産業はどうしても輸出のウエートが高くなってくる状況であると思いますが、そういう点でやはり経営戦略としては現地生産あるいは海外企業との協力関係が重要である、そういうふうに私は思うわけです。それだけに国際間の自由貿易体制の維持が重要となると考えます。そういう点でいま米国議会に提出されているローカルコンテント法案業界としてはどのように受けとめてみえるか、また仮にこの法案が成立するとすればどのような影響があるか、この点質問いたします。
  33. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 冒頭にも申し上げましたとおり、われわれはあのローカルコンテント法案というのは大変危険な法案であろうと思います。もともとが先ほども出し上げましたように、アメリカメーカーがコストを下げるためにメキシコであるとかその他の外国生産をしたりあるいは外国から部品を購入したりということをいたしておりますので、これに対して労働組合が雇用の機会が失われるということでローカルコンテント法案というのを発想したと思いますけれども、同時にこれがわれわれのようなアメリカ輸出をしておりますメーカーにも適用されますと、たとえば七十万台輸出をしておりますと、七〇%の国産化率を達成しないとペナルティーをかけられて次の年から減らされる、そういうことが続いていくとしまいには一切出せなくなると。いま日本輸出の中で四割がアメリカでございます。輸出は大体生産の半分でございますので、生産の大体二割がアメリカ向けの輸出でございます。したがって、これが出せないとなりますと大変な影響を受けます。ある銀行の調査の方の試算によりますと、日本自動車生産が五十万台、約五%ですが、五十万台減りますと失業者が十六万人余り出て、その家族を含めますと鳥取県の人口ぐらいの方が失業保険に依存しなきゃならぬと、こういうような試算がございます。百二十万台生産が落ちますと神戸市の人口全部が失業するというような試算もございます。最近はさらに影響が大きいというような試算もできておりますので、もしローカルコンテント法などができまして、これが通過をいたしますと、ヨーロッパその他の保護主義が助長されるだけでなくて、まず日本自動車産業あるいは日本経済そのものが大変大きな影響を受けると憂慮をいたしております。
  34. 馬場富

    ○馬場富君 次に森谷参考人にお尋ねいたします。  一般的に日本自動車産業は国際競争力があるとこう言われております。これに対しまして、アメリカ産業技術の国際競争力というものもやはり相当潜在的力量があると考えられるわけでございますが、こういうものを対比いたしまして、やはり長期的に見てこの面がどのような一つ状況になるか、見通しを持ってみえるか、お尋ねいたします。
  35. 森谷正規

    参考人森谷正規君) 先ほど申し上げたことでございますが、やはりアメリカ日本技術開発の力の入れ方が相当に違う、あるいは方向が違うということでございまして、アメリカは国防、宇宙開発あるいは非常に先端的なあるいは新領域を開拓するような技術アメリカは力を入れる。ですからそのレベルではアメリカは大変力は強いわけですが、伝統的な産業はどちらかというと手抜きがされる、鉄鋼ですとか自動車あるいは家電といったようなところは手抜きがされるということでございます。これを長期的に考えるとどうなるかということでございますが、数年前からアメリカ日本技術を出さなくなるということがよく言われております。そういう方向に向くのは確かでございましょうが、たとえばバイオテクノロジーを見てみますと、アメリカのベンチャービジネスは日本技術を売りたくてしようがないというのが現状でございまして、と言いますのは、日本技術を売って日本生産してもらった方がいい製品を安くつくりますのでロイアルティーはたくさん入る。アメリカのベンチャービジネスというのは個人がやっておりまして、個人が要するに巨満の富を得ようということで猛烈にやっているわけですから、その技術日本に売った方が得だというふうに考えますと、アメリカ政府はこれをなかなかとめるわけにはいかないというのがアメリカのつらいところだろうというふうに思います。現にもう二年ぐらい前から、このバイオテクノロジー、日本の大手の製薬メーカーあるいは大手の化学のメーカーはほとんどアメリカの企業と技術提携をして技術をもらっておりまして、まだ一生懸命売り込みに来ているというのが現状でございます。その技術がどうかということを見るのは非常にむずかしいわけでございますが、要するに、これが産業化しさらに大型商品に伸びるという時点になりますと、日本が力を発揮するということでありまして、したがって、日本技術力は私は強いというふうに、それは民生産業分野に限るわけでございますが、しかし私は、その強さが問題になる。アメリカはいつも日本にうまくしてやられているという気を持つというのが問題点だろうというふうに考えております。
  36. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 時間がございませんので一点だけ山口参考人に御苦労さんでございます。  先ほどの山口参考人の御意見には私も同感でございます。農産物の自由化の問題でございますけれども、現在の日本の農業経営またその経営規模から見て、特にアメリカから執拗に農産物の完全自由化の話があるわけですけれども参考人のおっしゃっているように、アメリカの身勝手であるとか、一方的であるとか、アメリカから感謝はされても批判される筋合いはないと、私もそのとおりだと思います。したがって、自由化の問題については私は反対でございます。数字も言っておられましたけれども、確かに対日貿易収支赤字アメリカ、去年ですか約二百億ドル、ことしは二百五十億ドルぐらいになるだろうと、そこへもってきていわゆる残存輸入制限品目の二十二品目、これ全面いわゆる開放したとしても十億足らず、こういう数字から見ても私は当然ではなかろうかと、こういうふうに思います。  しかし反面、考えなければならないことは、世界経済を初めとして、世界の趨勢といいますか、日本の農業の経営規模また経営の技術革新さらに交通、運輸のスピード化、加えて消費者の動向等も総合的に考えていきますと、近い将来、またいつまでも反対とはいかないと思うのでございます。もちろん食糧安保のことも考えなきゃいけないし、先ほど申しました日本国土の水と緑を守る、こういうことはもう当然でございますけれども、昨年の暮れからことしの初めにかけて、先ほど岡部委員がおっしゃっていましたが、経済同友会や近代経済学者グループが言っていたように、五年後には農産物は自由化すべきではないかと、こういう意見もございます。同じものであれば高いものよりも安いものの方がいいに決まっているわけですから、消費者の中にもそういう意見があることは確かでございます。  そこで、参考人は、こうした意見に対して、日本の農業の将来、これは大きな問題になりますけれども、どういう形でどう対処されていくのが、たとえば構造的に基本的にこれは中央会の協力を得て、国が、政府が大胆にやらなければならないことでございますけれども日本農業の体質強化といいますか、力ある日本の農業というものを考えていかなきゃならないんじゃないかと、こういうふうに考えるわけですけれども、御意見としてどういう御意見をお持ちか、この一点だけお伺いいたします。
  37. 山口巌

    参考人山口巌君) お答えいたします。  先ほどから申し上げておりますように、日本の農業の生産性においてアメリカに劣っておりますのは、土地を使う土地利用型の農産物に限られておるわけですが、これを抜本的に改革するということになりますと、土地制度そのものを根本的に法律的に、第二の農地改革と申しますから、思い切った土地制度の改革をやらなければ私はならないだろうと。現状の中で推移いたしますと、この十年間を見通しまして、農地の流動量は約九十万ヘクタール程度にすぎないのではないかと思います。中核的ないわゆる専業農家約七十万戸にこれが帰属いたしましても、十年間でふえます耕地面積というのは一・五ヘクタールに満たない、非常な狭隘な面積しか農地がふえないわけでございます。したがって、土地の耕地面積、経営面積からくる制約というのはついて離れないわけで、もしそういうことを抜本的に直すというんなら、土地制度を思い切って、法律をつくりまして、改正をしなきゃならない、こういうふうに思うわけでございますが、それは、現状の世情から申しまして私はきわめて困難ではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、私どもとしては、したがって、この与えられた条件の中で、どうやって農民相互の話し合いによりまして耕地面積を広げるか、共同のいわゆる力によりまして効率的な、アメリカ並みとは言いませんが、少なくともヨーロッパ水準生産コストまで引き下げるという努力を今後全力を挙げてやりたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。  なお私は、自由化の問題につきましては、いまのこれは、工業製品を含めましてガットでは物の自由化ということを基本として協定をやっておりますが、現状においては、いろいろ参考人からお話がございましたように、繊維を初めとして自動車あるいはVTR、あるいは鉄鋼、すべて工業製品におきましても、いわゆる自主規制という形で、国際協調を旨とした、国家間で管理された自由貿易体制に移行しているのが私は現状ではないかと思うわけでございます。一国の主張だけで自由貿易を主張するというのは、すでに工業製品につきましても実態的にはそういう動きではなくなってきておるわけでございます。まして人間の生命にかかわる農産物貿易につきましては、相手方の国のやはり立場に立って貿易というものは、秩序ある、相手方の利益を損なうことのないようなやっぱり貿易体制というものを組んでいくというのがこれからの世界の方向になっていくんではないかということをつけ加えて申し上げる次第でございます。
  38. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 ありがとうございました。
  39. 下田京子

    ○下田京子君 皆さん御苦労さまでございます。  まず、山口参考人にお尋ねしたいんですが、日米貿易摩擦の真の原因は一体何かということなんです。これは参考人もお述べになっておりますけれどもアメリカ側では、日米貿易摩擦の原因はもっぱら日本市場閉鎖性にある、こういうふうに申されまして、その閉鎖的な市場のシンボルとして農産物を挙げているわけですね。牛肉、オレンジなどの輸入自由化に非常に大きな攻撃がかけられてきている。そういう中にありまして、山口参考人、いまお話の中にもございましたが、農産物市場は決して閉鎖的ではないんだと、むしろアメリカ最大の顧客であり、感謝されてもというお話があったと思うんです。この点につきましては、先般総理が訪米直前に日本共産党が質問主意書を政府に出しました。その際に政府の公式答弁でも、わが国世界一の農産物輸入国であるということからも、国際的に見て全体として閉鎖的とは言えないと、こういうふうに明言しているわけなんです。一方、先ほど日本自動車工業会専務理事をされております中村参考人のお話によれば、貿易摩擦の原因は、もっぱらアメリカの高金利政策等にあるんだと、こういうふうなお話でした。一体、日米貿易摩擦の真の原因というのはどこにあるのか。米側ではどんなものか、国内にあってはどういうふうに見られているか、簡潔にお答えいただきたいと思うんです。
  40. 山口巌

    参考人山口巌君) 御案内のとおり、世界貿易量というのは一九六〇年代が八%水準、七〇年代は五%水準、現在ではもう対前年を下回るというような状態になりまして、貿易量全体が減ってまいっております。世界貿易量の中で七〇%程度工業製品貿易であり、しかもこれは先進国相互間の貿易でございます。したがいまして、産業体質が非常にEC日本アメリカともに似ております。したがって、比較生産性においてすぐれている製品、たとえば自動車等が相手国に出ますと、これは当該産業に打撃を与えるのは当然のことでございます。したがいまして、世界貿易量がふえる、すなわち世界経済が回復するということ、こういうことがありませんと貿易摩擦はついて回るわけでございまして、われわれの農産物とはかかわりのない話である、私はそう申し上げておるわけでございます。  したがいまして、今後の貿易のあり方というのは、相手方の立場を尊重して、やはり国際協調を旨とした、いわゆる国際管理下にある自由貿易主義で貿易をすべきであり、自分の一国の主張で相手方に押しつけるというような世の中ではなくなるんではないかということを申し上げたいわけでございます。
  41. 下田京子

    ○下田京子君 中村参考人にお尋ねしたいと思います。  農産物などの市場開放をやれば貿易摩擦解消が成るというふうにお考えかどうかという点です。  といいますのは、アメリカ下院でもって昨年十二月十五日にローカルコンテント法が可決され、その翌日でしたか、同じ工業会の石原会長さんがこういうことをお述べになっておると思うんですね。日本が早く対処方針を決めないと欧米との経済関係が爆発するというふうなことをお述べになりまして、農産物などの市場開放を早急にすべきだと、こういうことがあったと思うんです。また、稲山経団連会長さんも、オレンジと日本経済を刺し違えるようなばかなまねはやめてほしいと。こういうことで、大変財界等で農産物市場開放の声が大きくなったわけです。一方農家の皆さん方の方は、いまもお話しになっておりますように、農民を殺して何が日本経済かというふうに言われていますし、消費者サイドからもそういうお声が出まして、市場開放即安心して、安定的に安価に食糧が手に入るとは限らぬと、こういうことを言われているわけです。そういう中にありまして、先般ブロック米通商代表もお見えになりました際に、記者会見で、農産物が解決しても貿易摩擦の圧力が除かれたというふうには考えられない旨の発言もされているわけです。ということになりますと、この農産物市場開放が、つまり日米貿易摩擦解消につながるというふうにお考えかどうか。
  42. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 農産物の自由化あるいは枠の拡大ということが日米貿易摩擦解消になるかという御質問ですけれども、私はできることならした方が日米経済摩擦の緩和になるというふうに思います。ただ、アメリカのいままでの、要するに、自動車が出ているから、あるいは国際収支が悪いから、したがって農産物の自由化をしろと、こういうようなことを言っている向きもあるようでございますけれども、国際収支が悪いから農産物を自由化しろと、こう言うんであれば、アメリカECに対しては言えないはずでございます。つまり、ECに対してはアメリカは黒字でございます。ところが、ECに対しては、農産物に対して補助金を出しているのはけしからぬとか、いろいろとアメリカ農産物ECに売ろうということを考えて、ECとの間で農産物の摩擦が起こっております。ですから、私は、国際収支云々というような、あるいは日本からの輸出が非常に多いからとかいうことのための農産物に対する自由化要求ということではないというふうに思っております。
  43. 下田京子

    ○下田京子君 ありがとうございました。
  44. 小西博行

    ○小西博行君 大変参考になりました。  私どもは五分しか実は時間をもらっておりませんので、特に森谷さんの研究が比較技術論ということをやっておられるというので大変私は興味を持っております。これから先また教えていただきたいというふうに思います。  まず一点でありますけれども日本貿易摩擦の問題です。  この問題ずっと追及していきますと、どうしても、先端技術を海外に求める——その典型的なものがIC産業だというように私は思うわけですね。海外からそういう優秀な、すばらしい基本技術を買って、そして後はもう応用的にそれを、先ほどどなたかおっしゃいましたが、管理技術といいますか、生産技術といいますか、そういうもので大量生産、コストダウン、こういう方法を今日までとってきていると思うんです。  そこで、将来のことを考えますと、どうしても技術立国ということをやっぱり私は考えるべきじゃないかと思うんですね。そういう意味で、中川長官時代に、科学技術庁でございますけれども、民間といわゆる官界が一体になって何か新しい技術の開発、つまり、先端技術の開発というものをやっていこうということで今日まで進めておられます。これは流動研究システムという非常に大きな、私は将来力になると思いますが、そういうことを進めているんですが、何さま海外、特にアメリカとか西ドイツに比べて、官民からの出資金の割合ですね、これは日本は非常に研究開発に国が援助していないという結果が出ているわけですね。つまり、国の場合はリスクを多少しても思い切った先端技術の研究開発ができるんじゃないかと、民間になりますと、どうしてもそれがペイしなければいけないという問題があると思うんですね。  その辺の問題で、日本の将来、貿易摩擦を考えた上で、どういう形のそういう研究開発というものが、森谷さんが考えられている理想であるかと、これをひとつあれば教えていただきたいと思います。
  45. 森谷正規

    参考人森谷正規君) 日本生産技術あるいは海外から技術を取り入れて応用するのが強い、創造性に欠けるというのが一般的な見方でございますが、もう少し細かに考えますと、私は、技術を五つの段階に分けております。  工業化を始めまして一番最初に取りかかるのが改良向上技術、それで、その次が応用技術、たとえばトランジスタを導入をしてトランジスタラジオをつくるという応用技術、その上が先端技術というその時代、その時点における中心になる、核になる技術、それからその上のレベル、まあ第四段階が未来技術で、これがいまおっしゃられました科学技術庁の創造科学技術推進制度あるいは通産省の次世代産業基盤技術制度で、十年くらい先に可能性が出てくるような、まあ実用化が始まるような技術と、それからその一番上にありますのが非常に画期的な発明、発見、まあノーベル賞をもらうような発明、発見というような段階があるように思います。これは、研究開発はその逆の段階からいくわけでありまして、原理の発明、発見があり、それをじっくり基礎研究をやると、それがいよいよ実用化して、その時代の主流の技術になる、それを非常に広く応用していく、さらに改良していくという五つの段階に分けますと、日本はこれまで、戦後着実に一段階ずつ上がってきております。昭和三十年代に第五段階、四十年代に第四段階と、いま第三段の先端技術、次が未来技術でございまして、私は、当面はともかく未来技術、つまり九〇年代に入って大きく伸びるような技術にもっともっと力を出すべきであるということでございまして、それには、いままさにおっしゃいましたように、リスクがありますので、政府がお金を出すというシステムが現在始まっておりますが、この未来技術も大体原理はわかっているものが多いわけであります。ただし、通産省の次世代産業基盤技術は原理がわかっていて大体やることがわかっているんですが、科学技術庁の方はそうではなくて、むしろ新しい種を探そうということですから、ひょっとしたらここから、いま申し上げました第五レベルといいますか、一番上のレベルのノーベル賞級の発明、発見が生まれるかもしれないという、そういう性格の違いがあるように思います。  したがいまして、こういう第四段階あるいは第五段階といったようなレベルに政府がもっともっとお金を出して、日本のよさというのは、その政府のお金を中心にして民間企業が一致協力をしてやるという、これがアメリカなどではとても考えられない日本のよさでございますが、その日本のよさをうまく引っ張り出すような仕組み、これがすでに始まっておりますが、これをさらに拡大していっていただきたいというふうに考えております。
  46. 小西博行

    ○小西博行君 もう一点だけ中村参考人にちょっとお伺いします。  実は、最近貿易摩擦を前提にしまして海外に対して資金援助であるとかあるいは技術援助という問題を大変盛んにやっておられると思うんです。私もつい先日中近東、特にタイですね、タイの国へ参りまして、そしてあの近辺の国々のいろんな実態調査を実はして帰ったわけです。これは自動車だけの問題じゃございません。ただ、私そのときに思ったのは、本当に相手の国が必要としているような技術を適確にやはり提供しなければ余り効果がないんじゃないかという実は感じがしたわけです。これは森谷さんの著書だったか何かに書かれていたと思うんですが、品物ばかり提供すると、そして実際には人間が欲しいんだと、農業の改良をするにしましてもあるいは工業にしてもその指導する人間が欲しいんだと、そういうことを言っているわけですね。そういった意味で自動車産業の方では、具体的にそういう海外に対する技術援助という形で向こうの現地に合った何か指導というものをとっておられるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  47. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) 先生の御質問が、恐らくタイであるとかインドネシアとかそういったASEAN諸国に対する技術援助の御質問かと思いますが、私どもはタイにおきましては、たとえばサイアム・モーターというのがございまして、これが大体日産の協力関係になっておりますが、ここで古くから生産をいたしております。そのほかにもトヨタほかほとんど各社がタイには進出してノックダウンをしておりますが、かなり国産化比率の高い生産をいたしております。ただ、何分にも、まさにASEAN諸国というのは、自動車が必要としますいろんな基礎的な産業といいますか、鍛造であるとか鋳造であるとか、そういった各般にわたる工業の基盤というのが必ずしも先進国に比べて十分整備されているというわけではございませんので、また車の使われ方も、先進国で使っておりますような高級な乗用車とか、そういったようなものを求めるというよりは、むしろもっと大衆がタクシーにも使えるようなといったような乗用車、あるいは場合によってはトラックをそういう乗用車がわりに使うというような使われ方をしておりますので、おのずから最先端の技術を持っていっているかというと、そこまではまだ要求がないといいますか、むしろ持っていきましても活用できないといいますか、そういうような段階も見受けられるということがございます。しかし、われわれといたしましては、ASEAN諸国へいろいろお互いに自動車産業を盛り立てるために相互補完計画というようなものも進めておりますし、これにわれわれも各ブランド別にそれぞれ協力をするということで、いまASEANの諸国、タイも含めてASEANの諸国とは会合を持っておりますので、先生御指摘のようなこと、まだ十分でないかもしれませんけれども、そういう方向で進めてまいりたいと思っております。
  48. 小西博行

    ○小西博行君 終わります。
  49. 山田勇

    山田勇君 私が最終質疑者でございます。  私は外務委員会と科学技術特別委員会に所属しております山田でございます。  三参考人は大変長時間御苦労さんでございます。与えられました時間が三分でございますので、一点ずつお伺いをさせていただきます。  先ほど来いろいろお話を伺っております中で、中村さんにお尋ねをいたします。  先日、NHKで「勇者は語らず」という、自動車工業がアメリカへ進出するドラマが放映されましたが、その中で大変御苦労があったように、ドラマの中ですから、あくまでこれはフィクションでございましょうが、やはり現実トヨタがアメリカ生産工場を持つということで、このユニオンの問題について、先ほど来森谷さんのお話の中で、民族の優劣ということなればちょっと言葉が過ぎるかもわかりませんがと言われましたが、勤労意欲の問題、そういう点で非常に御苦労があるように描かれておりましたが、そのユニオンとの問題。それから、そういう生産工場が、今後日本が諸外国輸出するについての問題があるんですが、この際はアメリカというふうにしぼっていただきまして、どのようにトヨタが優遇政策を受けたのかという、税制の問題にしろいろんな問題でどういうふうな、まあ、あれは政府ぐるみといいますか、商務長官まで出てきてパーティーが開かれたというようなことを聞かされておりますので、何かそういうことがあるのか。  森谷さんにお尋ねしたいのは、先端技術輸出によって生産国にインパクトを与える、そして生産性を高めるというお話を伺ったわけですが、その場合、仮に相手国にそういう大きないい意味のインパクトを与えて生産を向上させると日本生産性が低下しないか、日本生産性に与える影響とはどういう問題があるのかということをお尋ねしまして私の質疑を終わります。
  50. 中村俊夫

    参考人中村俊夫君) ただいまの御質問、トヨタという話がかなり出ておりましたが、個別の企業の問題についてはちょっとお答えしかねますので、一般的に。UAWという労働組合がございますが、ことは大変労賃が高うございます。で、今回のアメリカ大型車が売れなくなって小型車に切りかえなきゃならぬというときの最大の問題はやはりコストの中の労務費でございます。一般の製造業の労務費があのころ、二年前でございますが、大体平均時間当たり七ドルから八ドルぐらいの、賃金でございましたときにすでにUAWの労賃は十六、七ドルというぐらいの、約倍の労賃でございまして、それも三年契約でございまして毎年上がっていくと。最終、つまり昨年には時間当たり約二十ドルになるというような契約であったわけでございます。これが小型車のような利幅の少ないものをつくります場合には非常に障害になっておるわけでございまして、したがってアメリカメーカーにおきましてもとの労働組合と交渉いたしまして賃金の凍結ということをやったわけでございますが、しかし依然として時間当たりの労賃はかなり高うございますので、これは日本が進出いたします場合もそれに近いところでやらざるを得ないかと思います。ただ、UAWの組織に入るかどうかということは、これはその工場の労働者が投票といいますか、で決めますことなので、新たに日本の企業が向こうへ進出して雇用いたします労働者の意思によって決まってくると。その辺によって日本式な労務管理ができるのかできないのかというようなこと、大変むずかしい点が確かにあるかと思います。  それからトヨタが今度GMとフレモントで合弁会社をつくりますが、これについて何か優遇措置があったかという御質問ですが、これは発表されたもの以外は私ども伺っておりませんので、お答えできません。
  51. 森谷正規

    参考人森谷正規君) 御質問は、日本技術をどんどん出していったらどうなるかという御質問でございますが、いま生産性というふうにおっしゃいましたけれども生産性ともう一つ品質というのが非常に重要でございますが、一般的に言いましてやはり日本技術を供与しても日本並みの生産性、日本並みの品質に達するというのは、なかなか容易ではないというふうに思います。ですから、私はむしろ、先ほどから申し上げておりますように、日本工業製品を買わないと、もっともっと買わないと輸出を減らさざるを得ないのではないかというふうに申し上げておりますが、買えるようなものが——売れるかどうかというよりむしろそちらの方を心配しております。しかし、何とかして日本市場で売れるような工業製品をつくってもらって、それを輸入すると、それは当然日本メーカーにもインパクトを生ずるわけでございますが、日本の企業としましては、やはりもっと高度な製品ですとか、あるいはもっともっと新しい製品を生み出すという方向に進むべきでありまして、それはそういう力は十分できているはずだと思います。先ほどのゲーム・アンド・ウォッチもそうですが、たとえばいまコンパクトディスクという非常に音のいい新しいプレイヤーが大変売れておりますが、近い将来にたとえばカメラ一体型VTRというのもこれも多分、日本が一番得意としております。そういうような新しい製品を何とかして生み出す、現在、国内市場はどうも沈滞しておりますが、なかなか買いたいような商品が出てこないという悩みがございますが、ウォークマンのようなものは大変ヒットいたしました。ああいうような新しい製品を日本がどんどん開発していくという方向にこれから力を入れていけばいいんではないかというふうに考えております。
  52. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 午前中の参考人に対する質疑はこの程度といたします。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  参考人方々には、貴重な御意見をお聞かせくださり、厚くお礼を申し上げます。拝聴いたしました御意見につきましては、今後の委員会審査に十分活用してまいりたいと存じます。本日はまことにありがとうございました。(拍手)  午後一時十五分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十七分休憩      ─────・─────    午後一時十七分開会    〔商工委員長亀井久興委員長席に着く〕
  53. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会外務委員会農林水産委員会科学技術振興対策特別委員会連合審査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際経済摩擦に関する件を議題といたします。  午後は、二名の参考人方々から御意見を拝聴いたします。  参考人方々を御紹介いたします。  存日米国商工会議所会頭ローレンス・F・スノーデン君(拍手)、在日EC企業運営委員会委員長ロバート・アペルドーン君(拍手)、以上の方々でございます。  なお、両君の外、参考人としてAS EAN貿易投資観光促進セーター貿易投資部長ヤーネス・J・ピットイ君の出席を予定しておりましたが、御病気のため出席できなくなりましたことを御報告いたします。  なお、本日の通訳久保悦子君及び横田謙君の両君でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々におかれましては、本日は御多忙中のところ、当連合審査会のために御出席をいただきましてまことにありがとうございます。委員一同を代表して御礼を申し上げます。  さて、本日の連合審査会は、現在国際的な懸案となっております経済摩擦問題について、商工委員会外務委員会農林水産委員会及び科学技術振興対策特別委員会のメンバーが集まり、広く外国方々から御意見を聴取し、もって問題を的確に把握し、今後の対応策の樹立に資するための会議でございます。したがいまして、参考人方々には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  最初にスノーデン参考人、次にアペルドーン参考人の順序でお一人約十五分程度ずつ御意見をお述べいただき、その後委員からの御質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言の際はその都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。  それでは、まずスノーデン参考人にお願いいたします。
  54. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) 委員長及び御参会の皆様、在日米国商工会議所、通称ACCJを代表いたしまして、本日はこの場で国際貿易関連する現在の問題、なかんずく日本アメリカの間の貿易問題について米国が抱いております懸念につきお話し申し上げる機会をいただきましたことを感謝申し上げます。  ACCJは、日本で仕事をし、そして生活をしております五百の米国企業及び千二百の個人メンバーを擁する組織であります。ACCJは、私ども二国間の貿易問題に対しお互いに受け入れることのできる解決策を積極的に模索しております。そして、本日はこの場で皆様方に私どもの見解を表明できる機会をいただきましたことを歓迎するものであります。国際経済摩擦に関する連合審査会が、本日の議事を通してこれらの貿易問題に対し直接関心を表明されていることを大変うれしく思います。皆様方の御参画及び御支援が日本側でとらねばならないと考えております行動、措置にとってきわめて肝要なものであると考えております。  ACCJの設立目的の基本的なものは、米国日本の間の貿易及び商業関係を改善するということであります。この役割りを果たすに当たって、私どもは、日米双方の政府、実業界そして労働界の方々に、私ども業界からの立場から見た貿易関係の問題につき、いろいろと説明しようと努力しております。問題の原因等につき私どもは率直な意見を述べるべく努めてまいりましたし、またこういった問題の解決策につきましてもわれわれの意見、提案を提起をしてまいりました。本日、この場で私どものそれぞれの苦情を長々と申し上げるつもりはございません。むしろ米国の実業界立場から現在の情勢をどのように見ているか申し上げ、そして米国日本双方が現在の状況改善するためにとらねばならない迅速な措置の必要性を強調したいと思います。  現在の自由貿易の慣行から得る利益を今後とも守っていくために、米国及び日本は、ガット体制を維持改善していくために力を合わせていかなければいけません。昨年末のガット閣僚会議が示しましたように、この課題は相当な難問であります。容易ならざる課題ではありますが、しかし二国とも世界貿易の自由化から大き裨益してきた国々であり、それを考えれば米国及び日本は保護貿易主義への後退と、ガット体制の弱体化を避けるべく先頭に立っていかなければいけません。米国日本はまた発展途上国と貿易をし、そして彼らの発展を進めるべく協力をしていかなければいけません。これらの国々が私ども二国に偉大なる繁栄をもたらしてくれた自由貿易体制の便益、利益を享受するようにすることは、私ども二国の相互の最善の利益にもかなうものであります。それにかわる、代替的な道というのは、私どもの考えでは、過去三十年間にわたって私どもが達成してきたすべてを失うということであります。もしそのようなことになれば自由貿易を促進するような体制を再び私どもは築き得るのかどうか疑わしいと思います。  米国日本の間の二国間関係は世界の中でも最も重要な二カ国間関係であるとしばしば言われます。過去三十年間にわたって二国の間で貿易が劇的に増大したことによって、世界貿易に前例のないほど大きな相互依存の状態が私ども二国の間に生まれてきたのであります。たとえば米国日本は、自由世界貿易の中で、エネルギー関連製品、食糧及びその他農産物、原材料、そして完成品及び技術の取引は実はこの世界全体の三分の一ほどまで占めるに至っているのであります。このような相互依存の関係が、日増しに増大する摩擦をある程度もたらしたとしても、決して驚くには当たらないと思います。工業が発展し、そして積極的に競争し合う二つ経済の間で交流が行われれば、このような摩擦が起こるのは当然の帰結でありますが、しかし現時点で私どもは、現在のこのような摩擦が果たして米日関係の根幹を揺るがしかねないような、手に負えない次元にまで発展しているのかいないのか、注意深く気を配っていかなければいけないと思います。  もちろん方程式には二辺があるわけですが、開放的な市場体制の中で生存し、そして競争し続けていくためには、アメリカはいままでおくれをとってきた多くの基幹産業部門における競争力を再確立するべくすべての努力を払っていかなければいけないと思います。  現在は米国経済が回復に向かいつつある兆しが見えております。インフレはコントロールされ、そして金利は低下してまいりました。失業も頭打ちとなり、今後下がってくるでありましょう。 アメリカは、その全世界的な責任及び利害からいって、自由質易そして開放的な市場を育てていくに当たって指導的な役割りを果たしていかなければいけないのであります。  日本にとっては課題はより複雑なものがあるでしょう。日本はさらにその市場開放の過程を迅速化して、それによってアメリカ市場日本の企業が得ているのと同じような市場参入の容易さを、日本市場でもアメリカの企業に与えるようにしていかなければいけないと思います。日本人は閉鎖社会の中で孤立し、そして保護を得ることを望んでいるんだというような観念を変えるべく努力をしていかなければいけません。そして、日本の人々がより国際的な物の見方ができるように奨励していく努力もなされなければいけないと思います。特に日本政府、官僚体制は、このような見方を変えて、より実際的な見解を持っていくことによって、日本とその他の貿易パートナーとの間に存在する貿易摩擦を軽減、払拭するべく努力をしていかなければいけないものと思います。  一九四八年以来のそのユニークな歴史的背景に基づいて、ACCJの立場から、現在の貿易摩擦の原因となっている要素について私どもの見解を申し述べてみたいと思います。  今日日本におきましては、関税及び輸入割り当てを軽減し、そして金融的な規制を緩和し、また非関税障壁を撤廃する措置がとられ始めておりますが、しかし私ども、高度経済成長期においては、外に対して門戸が相当部分閉ざされていたということを忘れることはできないのであります。私どもは、日本の門戸が開放されたのは、日本国内産業が余りにも強力に成長してしまった後であり、その段階では、外国企業にとりまして、日本国内市場が余り魅力のないものになっていた時点のことであったと思っております。  日本におきましては、包括的な行政手続及び規制の体制が長年にわたって存在してまいりました。もちろんこういった手続の中には、国内産業を保護するため、外貨準備を節約するために、あるいはその他のいろいろな理由によって導入されてきたものがあるわけであります。しかし、その根源が何であるにせよ、ことに保護主義の時代に育った官僚体制によってこのような行政手続及び規制が運用される場合には、輸入を抑制する効果を持ってきたのであります。  広く公表されてまいりました自由化措置は、多くの場合実質を伴わぬ形だけのものでありました。あるいは余りにも少なく、遅きに失したものでもあり、そして根本原因に対処することなく問題を解決することをねらった官僚の戦術でもあったと思います。  日本輸出で成功をおさめてきた部門は、自動車、鉄鋼あるいは民生用電子機器といった主要産業部門に集中してきております。アメリカの場合には、このような産業部門こそ現在財務的に苦しい状況にあり、そして高い失業率に苦しんでいる産業であります。このような失業の大部分は、日本からの輸入が余りなくても、あるいは全くなくても当然存在したものでありましょう。しかしながら、余りにも多くの人々が職を失っているということによって引き起こされている現在の窮状は、米国議会に対しまして攻撃する対象を見出さねばならないような圧力を、政治的な強い圧力を加えるに至っております。そして残念なことに、今日その対象——ターゲットと申しますのは日本となる傾向が強いのです。  私がいま申し上げましたようなこういった観念は、単に法令、法を制定することによって消えるものではないと思います。こういったことは歴史的な事実なのだという純粋な確信を人々は持ってしまっているからです。そして建設的な、目に見える措置をとり、そしてそれにより結果を実証することによってのみこのような観念は払拭することができる、あるいは最小限に抑える、ないしはコントロールすることができるものだと思います。  農産物貿易は大変センシティブな国家の問題であると思います。そしてガットの場でも、また私どもの二国間関係におきましても長年にわたって問題として存在してまいりました。確かに先進工業国のほとんどが、農業部門に対しましては、国内の政治的配慮から特別の扱いを与えてきたことは認識するものであります。しかし国内的な、厳密に国内的な性質の政策と考えているものが、国際貿易にどれだけの影響を持ち得るのか、私どもはしばしば見過ごしてきたのではないでしょうか。  ACCJとしましては、いままで特定の農産物、たとえば柑橘であるとか牛肉等、そういった特定の産品に余りにも多くの注意が集中され、その一方でより大きな全体的な問題は看過され、無視される傾向があったのではないかと思います。私どもの考えでは、いまや新たな、そして建設的な農産物問題に対するアプローチが要求されていると思います。国内的な及び国際的な観点から、農業政策及び農業関連規制の全体を見てみる必要があり、そしてそれによってお互いに受け入れることのできる農産物部門の一般的ガイドラインあるいは目標をつくり上げ、実行していくことを考えねばなりません。  このようなより視野の広いアプローチをとることによって、米国日本双方ともそれぞれの社会政治的なあるいは安全保障上の関心事を十分考慮に入れていくことができるようになると思います。そしてしかもその上で、国際的な貿易に対するこのような農業政策のマイナスの影響を最小限に抑えるような政策の修正も行えるようになると考えます。農産物問題に関するこのような新しいアプローチがとられるに至るまでは、私どもは不必要な重圧をこの全体的な二国間関係の中で抱えながら戦っていかなければいけないと思います。  投資の分野におきましては、私どもACCJ自身が行いました米国製造業の対日投資に関する調査も含めまして、いろんな調査が、貿易の流れの中で、直接の外資投資も重要な要素なのであることを示してまいりました。このことを念頭に置きつつ、また投資がもたらし得る政治的及び経済的な利益も考慮に入れて、日本アメリカの間の投資の流れを十分に自由化し、促進していかなければいけないと思います。  一九八〇年に改正され、そして施行されました外国為替管理法は、その改正自体正しい方向への建設的な第一歩であったと思いますし、ことに製造部門での投資にとりまして大きな改善をもたらしたと思います。とは言え、顕著な障害が残っており、ことに多くのサービス業部門におきましては、外国からの参入を抑制する要素が残っていると思います。外国為替管理法はそれを施行する方向によっていまだに非常に大きないら立ちの要素となり得るものを抱えていると思います。  日本の企業は、ことに米国におきまして相当のマーケットシェアを築き上げた場合には、その投資を行うことを奨励されるべきであろうと思います。日本企業はわずかの例外を除き、このような対米直接投資につきましては後ろ向きの姿勢を示してまいりました。このような直接投資を行わないという、みずからがアメリカで築き上げたマーケットシェアに後ろ盾を与えるような直接投資を行わないということが、経済、政治的にどのような影響を起こしているのか、日本企業は十分把握していないということが、現在の米国議会におきます相互主義法案であるとか、あるいはローカルコンテント法案といったようなものに対する要求を引き起こしている一因にもなっているのであります。  サービス部門は、そもそもこのサービス部門という言葉があらわす範囲がきわめて広いがために対処しにくい問題分野であります。サービスと私どもが言う場合には、通常、経営コンサルタントから航空企業まで、あるいは公認会計士、コンピューターシステム、外食産業、そして運輸部門等を網羅しております。このようなサービス部門のそれぞれの活動が、日本におきましては何らかの特別な問題を抱えています。  米国の航空企業はすべて私企業、民間企業でありますが、それに対し、日本航空は三五%日本政府所有の企業であります。繰り返し政府間での交渉が行われてきたにもかかわらず、日米間で相互に乗り入れのできる路線について、米国側企業は日本航空と対等の扱いは与えられていないのであります。  また、海運業につきましては、ハイキューブコンテナ——容量の大きいコンテナの利用であるとか、あるいはコンテナのアベイラビリティー——利用可能性を最大化するためにコンテナを配置するということにつきましても制限を受けております。  さらに、日本の船会社の場合には、米国におきましてみずからの貨物の配送を確実にするために、みずからのトラック輸送会社を運営することはできますが、米国企業は日本においてこのようなことを許されておりません。  ACCJのメンバーとなっております銀行業の代表たちは、日本において完全な金融自由化への良好な進捗が達成されてきていると考えております。新しい外国為替管理法が成立し、施行に移されたということは、一九七九年のACCJの貿易白書の中にしるしました苦情の源の多くを取り除くことになったのであります。これは日本におきまして官僚体制の一部が、日本への外資投資あるいはその他の日本への外国の金融業の参入を妨げるのに利用してきた古い、あるいは時代のおくれた陳腐化した法律を変更したよい例ではないかと思います。  サービ経済、サービス業への重点の移行は、変貌を遂げる世界貿易におきまして重要な進展の一つではないかと思います。私ども二国の間におきましては、米国日本の間での自由な、そして二方向の流れがサービス部門で行われるようなオープンな体制を確保していかなければいけないと考えております。サービス部門は、必ずや今後の将来におきまして、私ども双方にとり大きなチャレンジとなってくるものと思います。  私どもACCJとしては、アメリカのビジネスマンに懸念を抱かせてきたような貿易、そして投資上の問題に対処しようと日本政府が最近努力を示してこられたことに心強く思っております。  一月に発表されました第三次貿易パッケージ、市場開放パッケージは、ことにわれわれとして歓迎できるものがありました。と申しますのも、この市場開放パッケージは、ことに日本独自の基準、そして検査手続を設定してきた法律の改正ないしは撤廃を含んでいるからであります。さらに、OTO諮問会議を設置されたということは、日本政府貿易障壁を緩和しようということを真摯に考えていることの証左でもあると思います。  そのほかにも関税を軽減し、外国製たばこのための販売店数を開放化する、そして医療品、医薬品及び家電製品等についての外国での試験データも受け入れるという措置を決定されたことも、アメリカの実業界が長年にわたって求めてきた積極的なステップであると思います。  また、ACCJは、昨年十二月二十一日に経団連が外国企業の日本市場への参入を実質的に妨げてきた日本政府のいろいろな規制あるいは承認手続に見られるような時代錯誤的な考え方姿勢を抜本的に変えることを呼びかけた勧告案を見て大変心強く思うものであります。  ここで、私はACCJとして、中曽根総理大臣がみずから直接米日間の貿易問題解決に対して関心を示しておられることに感謝を申し上げたいと思います。  日本がさらにその経済開放していくのだということを保証され、そして迅速かつ果敢な第三次市場開放パッケージの実行を呼びかけられたということをうれしく思っております。このことは私にとって非常に大きな意味を持つものです。また、総理がこのようなことを実施していくためには、必要な法改正等を達成するために、日本の国会の支持も必要であることを私どもは認識しております。その意味で、ぜひこのような重要な分野におきます皆様方の御支援をお願い申し上げたいと思います。  将来に目を転じると、私どもACCJのメンバーとして非常に大きな関心を抱いておりますのは、このような建設的な問題解決へのスタートをできるだけ迅速に、さらに効果的にフォローアップしていただくということであると思います。時間は限られております。そして米国その他の国々におきます保護貿易主義的な圧力は今後とも増大していくでありましょう。今後貿易自由化の新たなパッケージを日本がどれだけ迅速に実施できるか否かが将来の日本に対する貿易パートナーがとる措置、そして国際貿易体制を現在の形で今後とも維持できるか否かを決定する大きな要因となると思います。  日本がこのような新しい貿易措置実施に当たって、今後数カ月の間に実質的な進捗を実証することができれば、日本アメリカの間の経済関係を改善することに関心を持っているすべての者がより楽に息をすることができるようになると考えております。このような日本のとる措置は、日本自身の最大の国益にもかなうものでありますし、また偉大な経済国としての責任でもあろうと思います。  今後、市場開放パッケージの実施への努力が進められるに従って、国会が世論の理解を構築し、そして緊急に必要とされ、有意義なこういった変革の必要性を日本の官僚体制にも理解させる、説得していくということにおいて国会が重要な役割りを果たしていかれることも認識しております。  今後多くのことがまだなされなければいけませんが、しかし皆様方の御理解と御支援によって成功がおさめられるであろうことにつき私は楽観的な気持ちを抱いております。  ここの場で私は委員長そして皆様方にお約束申し上げたいと思います。皆様方がこのような重要な問題に対し、解決策を探求されていく過程におきまして、私の個人的な立場からも、またACCJのメンバー全体を代表いたしましても、可能な限りの御支援を申し上げることをお約束申し上げます。  どうも与えられました時間十五分間の枠を超えまして申しわけなく思います。私自身、個人的にこの課題につきましては非常に強い熱意を抱いておりますので、時として時間の枠内にみずからの発言をおさめ得ないことも発生する次第であります。ありがとうございました。(拍手)
  55. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次にアペルドーン参考人にお願いいたします。
  56. ロバート・アペルドーン

    参考人(ロバート・アペルドーン君)(横田謙君通訳) 委員長、そして御参会の参議院議員の先生方、私がアペルドーンでございます。在日EC企業間運営委員会の現委員長といたしまして、欧州産業、欧州企業が、一般的に言って日本市場を探求、探索する場合に直面する問題につき、少々ヨーロッパの実業界の見解を申し上げる機会をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。  このような欧州企業が直面いたします問題が、現在ヨーロッパと日本の間で論じられておるような貿易摩擦の一部の原因となっていると考えられます。本日は、この連合審査会出席できることを大変光栄に存ずる次第でありますが、このような私どもが本日論じます問題を解決するには、すべて可能なレベルでの努力を組み合わせることが肝要であることを認識するものであります。  本日は、まだ日本に足場を築いていない欧州の企業、欧州の産業、つまり、現在まで足場を築こうと試みた、あるいは試みている、ないしは今後足場を築きたい、参入したいと考えている企業の分野についてお話し申し上げます。  すでに日本で活動している、日本で代表されている欧州の企業は、世界のほかの地域で、もちろん競争には同様直面するものでありますけれども世界のほかの地域で達成している企業の実績、パフォーマンスと比べれば、日本での成功の度合いはいささか少ないものではありますが、しかし、彼らの利益、営業利益であるとか、あるいはマーケットシェアなどを考えた場合には、すでに日本で成功をおさめたとみなしてよいものと思います。今日、日本におります欧州の企業は八百社以上に上っており、現在までの総投資額は六億米ドルを超えております。  皆さんも御周知のことと思いますけれども、何も今回がACCJあるいはEC企業間運営委員会として欧州等の企業あるいは投資家の日本で経験している問題に関する見解を述べる初めての機会であるということではないのであります。たとえば、昨年十一月二十四日には私どもの在日企業間運営委員会は、池田芳蔵氏が会長を務めておられる製品輸入対策会議に対しまして詳細な見解の陳述を行っております。そのほかの公式、非公式のもろもろの場におきましても、欧州のビジネスマンは、これはビジネスマン一般についても言えることでしょうけれども、みずからの見解を述べ、そして日本で企業活動を行ってきた経験について申し述べることを要請されてきたのであります。  本日与えられました時間が比較的短いので、本日の私自身の比較的短い口頭の発言に加えまして、池田会議に私どもが提出いたしました詳細なテキストを、一月十三日に発表された第三次市場開放パッケージ等を勘案してさらにその後内容を更新した形で提出申し上げます。この、内容を更新いたしました、アップデートいたしました私どものテキストは、本日の午後ないしは遅くとも明朝にはお届けするようにいたします。  さて、一九八三年は再び私どもすべてにとって経済的にむずかしい年となると思います。相変わらず経済成長の停滞が続き、失業率は高まり、エネルギー情勢は不明確なまま続き、そして、ことに発展途上国の債務状況をめぐって国際金融情勢は不安定な推移を見せるでありましょうし、世界の先進工業国の三つの柱、日本米国そしてECの間で経済貿易の面での緊張が続くと思います。ヨーロッパにおきましては、このような情勢がゆえに、いろいろなその情勢の影響あるいは圧力を感じております。そして、ヨーロッパのビジネスマンとしてこのような問題を解決するためのいろいろな機会をより真剣に、またより強固な決意をもって探求していく所存です。  日本を見た場合に、ヨーロッパのビジネスマンはヨーロッパの製品、サービスあるいは投資に関して日本市場へより良好に参入できるようにならなければいけないと考えております。少なくとも、すでに長年にわたって日本の企業がヨーロッパで享受してきたような機会と同等の機会を、ヨーロッパの企業が日本で享受できるようにしなければいけないと思います。  日本が現在経験しておられるもろもろの批判の多くは、一九四〇年代末から七〇年代の中ごろにかけて日本産業日本市場で享受してきた保護に源を見出すことができると思います。外国の企業あるいは産業は、この期間におきます日本市場のたぐいまれなる成長に参加することはできなかったのです。  その間に、日本産業は、もちろん非常にすばらしい広範囲にわたる製品に支えられたことはありますが、ビジネスのすべての側面において確固たる足場を確保してこられたのであります。  さて、すでに存在し、そして確立されてしまった市場に参入しよう、その中でシェアを確立しようということは、今後新しく参入しようと考えているものにとってはきわめてむずかしくなるものであり、また大きなコストを伴うもので、場合によってはとても参入もできない状態になるのであります。  現在の関税障壁を軽減し、そして割り当て規制を撤廃するということは、このような状況改善に十分寄与し得るものではないと思います。さらに、法律及び流通の観点からもたらされている現在の非関税障壁も撤廃されていかなければいけないと思います。  先ほど申し上げましたこういった過去の遺産、過去の遺物はいまだに多く存在しておりますけれども、私どもの考えでは日本が表明されている市場開放しようという考え方とは合致するものではないと思います。  非関税障壁等の貿易への障壁を撤廃する、軽減するという必要な措置をとらないということは、いわばすでに切符が売り切れて立ち見席しか残っていないのに、あるパフォーマンスといいますか、演劇の切符を売りつけるのと同じ状況ではないかと思います。  一月十三日に、第三次市場開放策が採択されたことは、日本の最高指導者のレベルにおいて、今後継続的に日本での変革を実行していかなければいけないという信号であると感じ取り、われわれは心強く思っておるものであります。  このパッケージの一番大きな貢献といえば、この変革の過程に外国企業が少しでも参画できるようにしようというコミットメントを表明していることではないかと思います。  もちろん私どもがいろいろな話し合いを通してお願いしてきた変革あるいは改善等は、一夜にして達成できるものではないことは重々に認識しております。しかし、重要なのは、このように変革の過程が進む中で私どもの声に耳が傾けられたということであります。  このような観点から、私どもが現在伺っておりますような以下の改善策を歓迎するものであります。  一つは、日本国内でこのレベルで対話を行う機会を与えられたということであります。  第二に、日本日本国内で現在行われております後藤田官房長官がその長を務めておられます基準・認証制度等連絡調整本部の行っておられる日本国内法律及び各基準の、規格の国際化作業にわれわれが参画する機会を与えられたということ。  第三に、池田芳蔵氏、そして波のもとで製品輸入対策会議が民間レベルでの貿易障壁に関する作業を行っておられるということであります。この関連で、三月に山中通産大臣に提出されると伺っております報告書の中で、私どもが十一月にこの製品輸入対策会議に出しましたような意見書の中に示されておりますわれわれの提案等を十分に考慮に入れて、抜本的な、積極的な策を提言されることを望むのであります。  第四に、日本において企業活動を行う際のその構造につきまして、幾つか再検討作業を公正取引委員会が行われているという点であります。  第五に、牛場氏のもとにOTO諮問会議を設置され、そして代理人申し立て制度を設けられることによってOTO、市場に関する苦情処理機構の強化を図られたということ。  最後に、また日本で事業を行う私どもにとって、長期的な観点から最も重要な点として申し上げられますのが、私どもの企業活動と関連のあるもろもろの政府、官庁へのアクセスが強化され、そしてそれによって対話が強化されるということであります。  日本で活動しております外国人ビジネスマンにとりまして、このような手続面での改善がもたらす実際的な効果、影響というのは非常に重要な意味合いを持つものでありますし、私どもにとりましては、これは一つの大きな突破口を開いたものとも感じております。  しかし、貿易及び投資双方の面におきまして、まだまだなさねばならぬことは多く残っております。日本ECの関係は余りにも一方向の状況に置かれていると思います。  一九八二年におきます貿易収支は、EC側にとりまして百億ドル以上の赤字でありました。一方、ECに対する日本投資は、ECによる日本への投資を十倍凌駕しておりました。  それでは、一体どういったプライオリティーを考えなければいけないのでしょうか。ここでいささか一般的なことを申し上げることをお許しいただきたいと思いますが、こういったことを、ことに皆様方の御支援をいただくことによって達成していくことができると私どもは考えているものであります。  まず第一に、日本は長年にわたってすでに輸出志向型の考え方を持ってこられたわけですから、ここで輸入志向型の考えをつくり上げていくのがいいのではないかと考えているということであります。そこで、日本政府に対しましては、特に製品輸入増大する意味で日本が目標値を設定されることをお願いするものであります。  第二に、商業、産業の面での欧州の企業の日本における存在をさらに増大さしていかなければいけないということであります。先ほど申し上げましたようなマイナスの要素を補っていくということだけではなく、日本に今後投資したいと考えている者に対しましても支持を与えることが必要であると思います。  二カ月間にわたって百名の欧州のビジネスマンを日本に招待するというイニシアチブは、そのよい一つの例だと思います。このような計画は、ヨーロッパの企業重役に対しまして語学研修を提供し、そして職場研修、職場訓練を提供する現在のECエグゼキュティブ・トレーニング・プログラム、重役研修プログラムの精神と同じものがあると思います。  このような計画、またその他生まれてくるであろう同様の計画の成功をおさめるためには日本の官民双方の支持がなければいけないと思います。  また、日本のビジネスの構造を開放的なものにする、あるいは少なくとも外国企業が参入できるような形のものにしていく必要があると思います。外国企業が日本業界団体、そして政策意思決定機関にメンバーとして参画できるようにするということはこの意味でも重要なものであり、ことにたとえば、工業規格に関する決定機関に参画するということはそのよい例だと思います。  さらに、安全性あるいは検査手続等の面も含んだ日本製品のための規格、基準を、世界の既存規格に合わせていくことが必要であると思います。ことに日本がそういった国際的な規格設定団体にメンバーとして参画している場合には、このことはなおさら必要であると考えております。それによって、日本市場のために製品を再設計する、あるいは開発し直すというような不必要なコストを避けることができるようにしなければいけないと思います。  この意味で、すでに世界全体で標準化を成功裏に行うことによって、消費者及びメーカー双方に利益をもたらしたすばらしい例は幾つか存在しています。  次に、輸入制限されている、ないしは完全に禁止されているような分野は、今後漸進的に自由化を進める計画を設定しなければいけないと思います。  さらに、流通制度は日本の各産業部門にそれぞれ独自のものが存在するわけですが、この流通体系の近代化も自由に進展できるようにしなければいけないと思います。流通方式を近代化するということ、たとえば大型小売店舗をつくることによって近代化していくということは、終局的には消費者に対し、より好ましい価格水準で、より多くの品物を提供することになると思います。  以上、私どもに与えられました時間にかんがみ、できるだけ手短に意見を表明するべく、すでに改善が可能と感じられているような特定の部門につきまして詳細を申し述べることは避けた次第であります。  私どもは、この在日BC企業問運営委員会の小委員会の専門家たちと、われわれの関連いたします事業分野について特に関心をお持ちの国会の議員の方々との間で、ぜひ対話が確立されんことを望むものであります。  本日は皆様方の各委員会がこのような議事を行われたこと、そして皆様方出席されたことによってあらわされております皆様方の関心に感謝を再度申し上げたいと思います。  日本政府が昨年末に採択されました市場開放パッケージを、私どもとして最大限に活用していく所存であります。そして、疑いもなく私ども双方がぜひ解決したいと考えております諸問題に対しまして、今後そのような解決がもたらされるべく、今後とも皆様方と対話が続けていかれることを楽しみにするものであります。  皆様方、ありがとうございました。(拍手)
  57. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  先ほど、お話の中にありました資料につきましては、お届けいただきましたら早速委員に配付することをお約束いたします。  以上で各参考人の御意見の開陳は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  58. 夏目忠雄

    ○夏目忠雄君 ただいまスノーデン参考人からは視野を広くアプローチをということで相互投資、その他のサゼスチョンをされ、またアペルドーンさんには、日本輸出志向型のあれから輸入志向の方へという、大変貴重な御提言をいただきまして感謝いたします。  そこで、まず率直に、いまの平均的な日本人は、この貿易摩擦についてどういうことを考えているか申し上げたいと思うんですが、アメリカ、レーガンさんの高金利政策というものは、もちろんそれなりきの理由があっておやりになってきたのには違いありませんけれども、私ども日本人一般から見ると、あれだけ高い金利ならもう企業活動というものは萎縮するに決まっている、そのために史上最高の失業率が出てきている。ですから、アメリカなりヨーロッパの一番大きな問題は失業率の問題だと思うんですが、これがむしろアメリカなりヨーロッパなりの国内事情から出てきているにもかかわらず、日本のせいだということで一種のスケープゴートにされてしまっているという感じを日本国民一般は持っております。  なるほど、たとえばアメリカ日本との間の貿易収支というものは大変な日本の黒字になってアメリカ赤字になっております。ヨーロッパも同じことでございまするが、単に貿易品の収支だけではなくて、広い意味のサービス産業その他の収支を加えますると大分低くなりますし、特に私は、アメリカではアラスカ石油を入れてくれれば一挙に問題は解決するんじゃないかということで、歴代の総理はアメリカに行くたびにこの話を持ち出しているはずでございまするが、この数年間何らの進展を見ておりません。特に、最近幾らか油がだぶついてきたときになってやや進展を見せたという皮肉な現象でございまして、これらの問題を、アラスカ石油の問題などをどういうふうにお考えになっておられましょうか。  それからまたアペルドーンさんにお伺いしたいんですが、日本の企業がヨーロッパの市場で受けておると同じような自由さで日本においてECの企業も同じ自由さを持たせてもらいたいと、こういうことであります。これはもちろんそのとおりでありまするが、日本の企業がECの内部でもっていろいろな企業をやっていく、商品を売るのに対して投入しておる従業員というか、会社員というか、その人たちの数、それから、何といいまするか語学を含めて努力、そういった非常な努力があるんでありまして、ぜひそれと同じ程度努力日本国内でおやりにならないと私はむずかしいんじゃないかと、こう思います。  特に、先ほどOTOの問題が出たわけでございまするが、OTOの——これは御存じのように昨年の一月からちょうど一カ年やってきましたけれども、あれだけ非関税障壁に対する非難が高いんですから、このOTOに対してのその苦情の申し込みというのは、私はわっと押し寄せるんだと思っておった。ところが、この一月までのちょうど満一年たって受け付けた総件数はわずかに九十三件でございます。一月に十件足らず、非関税障壁とあれだけ批判をされておっても、実態というものはそれほどじゃないんじゃないかと、こういうふうに考えられるのであります。  EC諸国を見ておりますると、遠慮なく申しますると、関税障壁並びに非関税障壁、両方引っくるめまして日本程度の障壁はEC各国全部お持ちになっておられる。日本だけ持っておるんじゃない。特にフランスなんか私が見て非常に非関税障壁が高いように思う。どうして日本だけが批判されなければならないのか、こういう感じを非常に持つわけでございます。  まず最初に、そこの点をお二人からお聞きしたいと思います。
  59. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) コメントありがとうございました。大変よいコメントをいただきました。決して初めて伺ったコメントではないわけではありますけれども、そのおっしゃることはよく理解できるものがあります。おっしゃったことにつきまして幾つか言及しておきたいと思います。  まず第一に申し上げておきたいのは、米国の高金利政策とおっしゃいましたが、合衆国大統領レーガン氏が意識的に、意図的に高金利政策をとったということではありません。合衆国政府が借り入れを行っていたということが大きな原因であります。つまり米国連邦政府の債務状況が深刻なものであり、それゆえに大幅な赤字が発生している、これが高金利状態の大きな原因であって、意図的に政策として高金利をもたらしているものではありません。ただ、確かに高金利がゆえにいろいろな問題が発生してきたことは事実であります。一つには、米国企業が工場拡張のために再投資を行うことができない、あるいは失業を起こすまいとして労働力を、従業員をできるだけ維持していこうということもなかなかできないという問題がありまして、これは端的に言いますと国内需 要が存在しなかったからであります。ただ、先ほども私の話の中で示唆申し上げましたように、今日いささか変化が生まれてきております。  また、レーガン大統領が就任された当時に直面いたしました高いインフレ率も、この高金利情勢の一因であったわけであります。しかし、先ほど私の話の中でも申し上げましたように、今日はインフレは良好に抑制されております。そしてインフレ率が下がってくるに従って米国の金利は下がってきておりまして、今日の金利レベルは一年半前と比べればきわめてよいレベルまで下がってきています。  おっしゃるように、確かにアメリカ人の中には、みずからの問題の原因として日本をスケープゴートにしている、日本を責めている人間がいることは、私もそうだと思います。ただ、多くの日本方々に十分に理解していただけないと感じていることもございます。つまり、非常にすばらしい燃料効率の高い、そして快適な日本車が、実は米国自動車産業にだけ影響を与えているのではなくて、米国経済全体にも大きな影響を与えているのだということです。今日失業率が高くなっております自動車部門の労働者たちは、自分たちの窮状は日本ゆえに、そして日本だけが原因となって引き起こされているんだと考えております。私自身は彼らの考えに意見を一致することはできませんけれども、しかし彼らは日本こそがその原因なのであるということで、日本をスケープゴートにする意見に迎合しがちなのであります。  それから、貿易外収支も重要であるとおっしゃったこと、それも私まさに同感であります。そしてこのことは政府レベルでは十分に認識されていると思います。ただ、平均的な市民のレベルになりますと、貿易外収支がどういう意味合いを持っているのか理解はできないのではないかと思います。ことに二方向の貿易が総額で六百億ドルである中で、日本にとりまして黒字が二百億ドルに上っているというような状況を目の当たりにしたときに、一般市民は貿易外収支が二国の貿易にとってどのような意味合いを持つのか理解はできないのではないかと思います。  それから、私への御質問の点でありますアラスカ原油の日本への輸出という点でありますけれども、これは米国日本の間に存在いたしますその他の数多くの問題と同様、もろもろの政治的あるいは国内的考慮が絡まっていると思います。ただ、今日米国におきましてはアラスカ原油を日本輸出することを可能にしてもいいではないかという気持ちも増大しつつあるのではないかと思います。私自身は個人的に輸出を可能にするべきだと考えております。ただ、それを解決するためにはまだまだ非常に大きな政治的な問題が残っております。しかし、終局的には実現するでありましょうし、それを実現させる立法措置も成立するであろうと考えております。ただ、もし実現した場合に、これはあくまでも二国間のドル、つまり貿易不均衡を金額の面で変化させるということにはなりますけれども、しかし日本側で相当大きな重要な措置が加えてとられなければ、商品貿易、商品取引の面では大きな変化は生まれることにはならないと思います。
  60. ロバート・アペルドーン

    参考人(ロバート・アペルドーン君)(横田謙君通訳) ありがとうございます。  それでは、いま御指摘の点の二つについて言及してみたいと思います。  まず第一に、日本企業あるいはほかの国、企業にとりましても、ヨーロッパで問題があると、これは企業活動の面でも現実であるということでありますが、現在いろいろな場で問題が討議されております。そして、欧州で日本企業が活動する際に経験をせられる困難もあるということでありますけれども、もちろんそういった問題がある場合には当然その問題をオープンにまた論じる機会が提供されなければいけないし、提供されるであろうと私は思います。  第二の御指摘、ヨーロッパの企業はもっと努力をせよという御指摘でありますけれども、私どもは懸命に努力をしていると自分たちでは確心を持っております。そして、日々このようなより大きな努力をするためのインセンティブ、それを奨励する要因も増してきていると思います。先ほど私の冒頭発言の中でも申し上げましたように、いろんな障壁が存在すると感じておりますけれども、それ自体がより大きな努力をする障害になるとは思っておりません。ですから、今後とも私どもは日増しにより大きな努力を払っていくつもりであります。さて、欧州と日本の間で百億ドルの赤字が存在するということであれば、それは何らかの意味合いを当然持つものではないかと私は考えております。  ありがとうございました。
  61. 夏目忠雄

    ○夏目忠雄君 スノーデンさんは特定不況産業安定臨時措置法というのを御存じですか。
  62. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君) イエス、イエスアイアム。
  63. 夏目忠雄

    ○夏目忠雄君 それが今度国会で私どもこれから議論しなければいけないんですが、その参考のために、先般たしかブロックさんですか、ちょこっと批判をされて帰られましたが、ひとつそれに対するお考えを述べ、あわせて日本のいままでの政府の、通産省その他の行政措置のあり方についての御意見があればお聞きしたいと思うんです。ただ、一つお断りしておきたいのは、なるほど御指摘のように日本輸出志向型でありました。これはもう日本は石油がなきゃどうにもならぬという国ですから、それがオイルショックでもって何百億ドルという石油代金を払わにゃいかぬ、それには輸出して決済するより手がないんですから輸出志向型になったことはこれはもう御理解を願えると思うんですが、それから時代が変わってきましてこういう時代になったわけですが、その際こういう特定不況産業安定臨時措置法なんかどういうふうにごらんになっておられるか、あわせて通産省の有名な行政指導などというものに対してどういうお考えをお持ちになっているか忌憚のない御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  64. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) 残念ながら私自身この法案関連してブロック代表が言われた言葉を具体的には存じ上げておりません。いずれにしましても、歴史的に言ってアメリカ人は日本において政府及び企業の間の協力関係のいままでの記録といいますか、長年にわたるこういった官民の関係に対して懸念を抱いてきたわけであります。そして、日本政府が特定の不況産業に対しまして何らかの助けを与える、カルテル取り決めを許すというようなことをした場合には、その結果としてその不況産業が何らかの補助金を受ける、あるいはその他の何らかの支援を受けることによって米国その他の国々の同業種、同業者に対し不公平な競争上の利点、アドバンテージを得ることになるんではないかと考えるわけであります。このような観念は日本におきます政府産業協力関係の歴史に根差したものなわけです。米国人の場合には、政府と企業の関係についてこのようなアプローチはとっておりません。ですからこのような日本政府のアプローチがあらわれてまいりますと、アメリカ人はその対策の結果として、米国の同業者に対して日本不況産業が不公平なアドバンテージを得るようになるんではないかというおそれを抱くわけです。  次に行政指導に関する御質問がございましたが、私、ぜひ行政指導に関する専門家であると言いたいところでありますが、いろいろと勉強してきたにもかかわらずまだこの点についての専門家であるとみずから唱えることはできないと思います。恐らく日本において行政指導ほどアメリカのビジネスマンが理解していないものはないのではないかと思います。歴史的に見て私どもが考えてきたことは、法律が一体何を言おうが行政指導が優先する、そしてその行政指導によって、日本産業界を、日本にとり、よりよい方向に導いてきたという観念を持っているわけであります。行政指導につきましては、外国人のビジネスマン、ことに恐らくは米国のビジネスマンが最も大きなフラストレーションを覚えている、不満を覚えているんではないかと思います。  確かに通産省その他日本政府におかれては、いろいろこの面で努力をされてきたことは認識しておりますけれども、しかし、少なくとも過去においては行政指導は、日本産業の最善の利益にかなうものであって、しばしば米国の企業にはむしろ不利な結果をもたらしてきたものであると感じております。
  65. 夏目忠雄

    ○夏目忠雄君 それじゃオーバーエスティメートだということを申し上げたいと思いますが、委員長の命令だからやめます。
  66. 松前達郎

    松前達郎君 ミスター・スノーデンと、それからミスター・アペルドーン、きょうはお忙しいところありがとうございます。  貿易摩擦の問題が中心になっておりますけれども、これらの問題、数字だけですべて解決しようということでは事が済まない問題だと私は考えておりますから、こういう機会があってお互いに意見が交換されていく中でやはりお互いの理解ができると、そして今後の問題として前向きにこれをどう解決するかという問題等も含めて今後展開ができる可能性がありますので非常に有益な会だと思っております。  そこでこれから、基本的な問題としてこれはもう恐らく御理解いただいておると思いますが、スノーデンさんに御意見を伺いたいんですが、日本の基本的条件としてこれはもう変えられない条件でありますが、資源エネルギーが少ないという、これは仕方がないわけであります。これはもう十分御承知でありますし、また日本自身が先進国の一員としていまのわれわれの生活レベルを守っていく、生きていくというためには、やはりどうしても貿易というものに頼らざるを得ない、これも当然だということになろうと思います。したがって、産業の中で付加加値の多い製品をつくり、それを輸出をするということも、これはやむを得ないことであろうと思います。  その辺が一つのシチュエーシュンとしてあるわけですから、これをわれわれとしては基礎に置きながら今後の問題を考えなければいけない、こう思っておるわけです。いま自由貿易の問題がいろいろ出ておりますけれども、この自由貿易をたてまえとして諸外国との貿易を行っていこうというわけですが、現実から見ますと、どうやらこの自由貿易というのはたてまえであって、いわゆるガット関税貿易一般協定にどうも違反している面が多々出てきているんじゃないか。これが経済摩擦という名目で、この違反がある程度黙認されていくような感じを持っておるわけですが、特定の二つの国の間だったらこれは構わないというふうな、どうもそういう感じがだんだん出てきている。この点についてスノーデンさんの御意見をひとつお伺いしたいと思います。
  67. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) おっしゃるとおり、まさにアメリカ側におきましても、日本側におきましても、数字というものを見ただけですべての問題が反映されていると考えることはできないと思います。  さて、私は、このような率直な意見を申し述べる機会をいただきましたことを感謝申し上げたいと思いますし、また各委員会のメンバーの方々にも率直な御意見を伺うことができ、感謝を申し上げたいと思います。ACCJのメンバーほどこれら一連の問題に対し、ぜひ何とか解決策をもたらしたいという熱意を持っている人々はほかにいないのではないかと自負しております。  私の考えでは、大体外国人ビジネスマンの大部分は日本が置かれている状況を十分に理解していると思います。日本は、一つには、天然資源がないということ、もう一つ、その天然資源を加工することによって付加価値を加えていかなければいけないということ、そして第三に、日本独自の生活様式、ライフスタイルを今後とも維持していきたいと願っておられるということ——私自身、もちろん、日本に滞在している間、この日本の生活様式を十分満喫させていただいておりますけれども。  確かに、自由貿易という言葉は、その言葉は非常に自由に使われているけれども、しかし、実際の貿易面では実態はそれほど自由ではないということは私も感じております。国際貿易を考えた場合に、どの国も完全に潔癖だということは言えないんではないでしょうか。貿易を何らかの形で妨げるような規制輸入枠の設定であるとか、輸入関税の設定を、何らかの形で、程度の差こそあれやっているはずです。私が日本に来てからのワシントンの雰囲気というのは、自由貿易ということを唱えているものではなくて、たとえば昨年、私、議会で証言を行いましたけれども、その際に米国の議員が言っておりましたのは、重要なのは公正な貿易だということです。そして、彼らが感じているのは、国際貿易の中で日本は公正な貿易をやっていないということです。このような感じを彼らが持っておりますのは、日本企業が米国市場に参入できるその自由度に比べれば、米国企業が日本市場へ参入できる自由度は等しくないではないかという観念が根底にあると思います。これはいささか考え方を単純化したものかもしれませんけれども。  もう一つ加えてコメントしておきたいと思います。  日本のほかにも天然資源が限られた国はあるわけです。ですから、確かに日本はほかの国よりはなおかつ天然資源の保有量が限られているということは言えるかもしれませんけれども、少なくとも世界の自由主義諸国の間では、日本というのは、市場あるいは貿易のやり方、慣行というものを非常に制限した形で維持してきたというような気持ちを与えてしまっていると思います。
  68. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、日本のシチュエーションについては、大体皆同じような考え方だと思うんですが、貿易摩擦の基本的な問題についてちょっと御意見を伺っておきたいんですけれども、いままで日米間の貿易摩擦というのは、たくさん、一つ一つの事例で挙げてもあったと思うんですね。これは、繊維の問題がありましたし、あるいはカラーテレビの問題がありましたし、あるいはいま自動車が問題となっておりますし、恐らくこれから将来IC関係もその中に含まれてくる可能性も出てきます。これらについて全般的に言えるのは、さっきのお話では、一九七〇年までの日本貿易政策といいますか、これが非常に閉鎖的であったとおっしゃった、これは私も多少そういう面はあったと思いますが、いまの状態の中で特に工業製品について言いますと、やはり日本の製品の品質と価格の問題が非常に大きな要素になっているんじゃないかと、こういうふうに思うんですね。しかもこれに加えて、いまおっしゃったように、日本の社会とアメリカの社会の基本的な、国民性といいますか、そういうものの相違というものもあると思うんです。ですから、数字の面での解決はできても、これから先の問題として、こういった面までお互いに相互に理解しながらやっていきませんとなかなかこの問題は基本的に解決しないんじゃないかと、こういうふうなことを私考えておるわけで、これはちょうど農業生産のものについても言えると思うんですね。広大な土地を持っているアメリカの場合と、日本の場合みたいに国土が狭くて一六%以下の耕地しか持たない。ですから、生産力の差というのは、これは農業に関しては圧倒的にアメリカが高いわけですから、これがこの逆の立場で言えば同じようなことになると思うので、こういった問題を含めてわれわれ考えて、もっと視点の高いところからこの解決策を見ていかないとならない、こう思うんですね。たとえて言いますと、企業の努力の問題もありましょうし、それから労働者の質の問題、これもありましょうし、あるいはユニオン、労働組合の組織の問題がある。それから当然生産技術の問題もある。いろいろな問題があるわけですから、こういった問題の解決というもの、これについて一つ一 つ理解した上での解決がやはり基本的に必要だろうと私は思っているんですが、スノーデンさんの御意見いかがでしょうか。
  69. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) どうも、七〇年代ごろまでは日本は いささか閉鎖的な市場であるという問題があったということをおっしゃっていただきまして感謝申し上げたいと思います。  過去におきましては、おっしゃったような繊維であるとかほかの問題があったわけでありますけれども、このような困難な問題も、喜ばしいことに私どもはいままで乗り越えてくることができました。そうして、現在われわれがぶつかっております問題にしましても、必ずや乗り越えていくことができると楽観的な気持ちを持っております。本日このようにして皆様方と話をしているということ自体、まさにその問題に対処するためのものであります。  さて、私も二国の社会の間には違いがあると思います。だからこそお互いの社会を理解するような努力をしていかなければいけないのだと思います。私ども日本におります外国のビジネスマンとして、毎日、相当このような日本社会の理解のための努力をしているつもりでありますけれども、果たして大きな進歩を遂げることができているのか、定かではありません。  日本の製品の品質及び価格の御指摘についてはおっしゃるとおりだと思います。  さて、アメリカのビジネスマンとして私が申し上げたいのは、アメリカにも品質及び価格の面で競争し得る商品がいろいろあるということです。いままでの問題は、そういった競争力を持った製品を日本の消費者の方々の目に入るところに持ってくることができなかったという点であります。つまり、しばしば政府、官僚の方あるいは政府の見解を代表していると言われるような業界団体の方々が、アメリカの製品は満足できるものではないということを言われた。それゆえに、いままで長年にわたってアメリカのビジネスマンは日本の消費者に直接品物を見せる機会を与えられなかったということに不満を抱いているわけであります。こういう製品は、品質、価格の面で、必ず競争力を持っていると思うわけでありますけれども、果たしてその競争力を持っているか否かは、われわれとしては日本の消費者の方々に決めていただきたい。政府、官庁あるいは業界競争いたします業界団体の方々に決めていただきたくはないという気持ちを持ってきたわけです。  次に、農業問題について取り上げてみたいと思います。  農業問題というきわめて複雑になり得る専門分野の詳細に立ち入ることなくお話し申し上げますと、一方で日本は、工業製品についてはその比較優位をもとに世界貿易の面で非常に積極果敢な行動をとってこられた。それに対して農産品になると、米国の効率的な農業生産者、そして米国農産物輸出業者が日本市場で比較優位をもとに入ってくるのを妨げることをしてきた。そのような意味で、日本の場合には、工業と農業の間で明確なコントラストが見えるということが言えるわけであります。そして、これが議会におきます保護主義的なムードの高まりの一つの大きな原因となっていると思います。つまり、ワシントンから見ておりますと、日本の工業面での行動と農業面での行動の違いが非常に目立つということで、この農業問題というのが私ども二カ国関係の中で問題を起こす火種となり得ると考えているわけであります。その意味で、先ほどの私の冒頭の見解表明の中で、ともにこの農業問題については注意深く検討を加え、そしてより幅広いアプローチをとっていかなければいけないと申し上げた次第です。  ただ、現在のワシントンの立場から見ますと、事農産物あるいは食料品に関しては日本競争から国内を遮断する、あるいは外国からのこういったものの供給から国内の部門を遮断するということをやっていて、農業と工業製品の間では非常に明確なコントラストが見えているのではないかという気持ちを抱いているわけです。そして、議会におきましては保護主義的な風潮が高まっているわけですから、米国議会におきますこのような政治的な過熱状態から熱をぜひ取り除いていきたいものだと願っている次第です。
  70. 松前達郎

    松前達郎君 私は実は、一九八一年にストラスブールのヨーロッパ評議会に参議院の代表で出席をさしていただいたわけですが、このときにもやはりEC諸国の議員と貿易摩擦について議論みたいなことが行われたわけです、これは非公開で行ったわけですが。このときに話題となったのが非関税障壁の問題ですね。これが一番大きな話題として提起されたわけですが、最近になりますと、どうも非関税障壁の中に言葉まで入ってきたようで、日本語の壁というのが非常に厚いんだと。だから仕様書は全部日本語で書いたまま輸出してくれとか、いろんな、これは笑い話になりますが、そういう話も出てきているぐらいなんですが、最終的に私は、非関税障壁というのは品質とかそういった信頼性の問題がやはり最後の非関税障壁に残ってしまうんじゃないかと思うんです。  二月十二日の日米、日欧通商協議、この結果として合意がされたわけですが、日本としてはこれに対しての約束を忠実といいますか、まじめに実行していくというのが一つの課題になったと思いますし、ECあるいはアメリカ側にとってみますと、今日までの産業のおくれといいますか、先ほどお話出たようなギャップを一日も早く埋めるというのが宿題になったわけですね。ですから、ある意味で言うと、ボールが今度アメリカEC側に投げ返された感じを持っておるんですけれども、こういう点やはり今後、米国EC側でも努力をされて、これは日本ももちろんそうですけれども、できるだけそのギャップが早く縮まっていくようにと、これを私願ってやまないわけなんです。  それにしても、これECの方なんですが、フランスが非常にこそくな手段をとっておられるのがあるんですね、輸入規制。最近だと通信機器まで何か検査を強化するというようなこと。VTRのダンピングの問題とか、いろんな問題があるんです。自動車も比較的パーセンテージを抑えておられるわけで、こういうふうなものもやはり一日でも早く取り去っていただく方がいいんじゃないかと、こういうふうに思うわけですが、ECでは現在どうなんですか。前に先ほどのストラスブールで議論になったときは、もっぱら失業の問題が中心になって、貿易のインバランスの問題につながっていったわけですが、現在でもやはり同じような状況で議論がされているのか、それが一つ。  それからもう一つは、ECアメリカの間の摩擦というのは一体あるのかどうか、これについて状況をひとつお知らせいただければと思うんです。これはアペルドーンさん。
  71. ロバート・アペルドーン

    参考人(ロバート・アペルドーン君)(横田謙君通訳) 全く予期していなかった質問でございますけれども、こういったことも歴史的な観点から考えてみる必要があると思います。  もちろんヨーロッパ共同体のそれぞれの国は、この共同体という概念が生まれてくるはるか昔からそれなりに存在してきたわけです。そして、それぞれの国が今日も米国と良好な文化的、人的あるいは貿易関係を持っております。実は、ECの中で一番小さな国がECの中でも対米投資の面では一番大きな国となっております。そして、そのほかにもいろいろと頻繁な交流がEC諸国アメリカの間で行われております。  確かに、貿易不均衡の問題は存在するようでありますけれども、手元に具体的な数字は持ち合わせておりません。しかし、双方で協議を行い、最大限の努力を払っておりますので心配はないと考えております。  農業問題はいささか性格が違うのかもしれませんけれども、その面の専門家ではございませんので的確なアドバイスを申し上げることはできないと思っています。  一つ具体的な例として、過去の繊維取引、繊維貿易の問題に言及しておきたいと思います。  何らかの理由、特定の理由があったわけでありますけれどもEC諸国は繊維の分野で失業が起こるんではなかろうかという心配を抱いたと。つまり、一夜にして繊維の分野で雇用を失いたくはないということで、これが一つの大きな問題になった例はあります。
  72. 松前達郎

    松前達郎君 どうもありがとうございました。
  73. 八百板正

    ○八百板正君 割り当ていただいた時間がございませんから、端的に、率直に意見にわたる面を申し上げまして、できればちょっと参考人先生の御意見も伺っておきたいと、こう存じます。  スノーデンさんは将軍でありまして、いわゆる軍事参謀としてつい三、四年前まで重要な地位についておられた方であります。そういうふうに承知しております。でありますから、単に商工会議所の会頭という、狭い視野と言っては失礼ですが、だけではなくて、もっと世界的な地球的規模においてお考えになっておられると思うのでありますが、いまもちょっと話が出ました、お国の農産物日本市場開放という問題について、時間がありませんから率直に申しますが、日本はお国の農産物を買っている量の点において世界一なのです。それからまた、日本は食糧を外国から輸入しているといういわゆる海外依存という点においても先進国の中で日本世界一なのです。これは言葉じゃなくて事実ですから、そういう事実がある限りは、日本アメリカの食糧を受け付けない閉鎖的なものを持っているということにはこれは全然ならないと思うのです。お話は逆だと思うのです。この点ひとつよく私の考えを述べておきたい。  それから、日本の中でいろいろな面で問題がございますけれども、参謀長さんでございますからちょっとかかわり合ってお尋ねするのでありますが、日本の場合島国ですから、やっぱり食糧をある程度自給して農業を守っていかないと不安だという面があるわけでありまして、そういう面から、もうさきにお国の小麦を日本が買い入れたことによって日本の小麦はつぶれてしまったのです。小麦農業はお国の輸入によって実際上つぶれたのです。こういう経過もございますから、お国の食糧だけに頼るという不安があるわけなのです。現に大豆にしても都合の悪いときには日本に売らないというふうに宣告された時期があるわけです。それから国は違いますけれども、ソ連に対しても約束した食糧をお断りすると、こういうふうなことをされた経過があるわけなのです。そうするというと、われわれとしては、こういう島国に住んでおる日本としては、食糧についてこんなにまるまる外国に依存して、しかもまたアメリカにまるまる依存するということに対しては、非常な不安を持っているわけです、率直に言って。現に日本アメリカの核の傘に、言ってみれば支配を受けているわけです。もうううもすうもないのです、これは。そういう立場にある。その上に、今度は食糧の面でまるまるお国の支配を受けるというような形になったら日本立場は、これは非常に不安でたまらないという国民感情があるんです。この点を、おわかりだと思うんだけれども、やっぱりアメリカ方々にものみ込んでいただくように、ひとつこれは日本の実情としてお伝えをいただきたいと思うんです。  たとえば牛肉とかオレンジというような話になりますが、現実に全面的に開放しろということになりますると、もうお国のカリフォルニアの米が日本に入ってきます。カリフォルニアの米は日本の米よりもまあある意味では上等だと言ってもいい、そういう面もあります。これがカリフォルニアだけで八百数十万トン現にとれているんです。お国は、御承知のように、農業に対して近代科学の粋をぶち込んで、農業に力を入れておくということ、それから教育というものを将来伸ばしていくということ、それからエレクトロニクスを初めとする先端産業に対して力を入れていくということ、この三つは二十一世紀を展望したアメリカの方針だと私は伺っております。ということになりますというと、アメリカの米は、カリフォルニアの米はもう日本市場を完全に奪ってしまうということになる。ということになると、これはやっぱり日本の図としてはちょっと立っていかないという非常に不安があるわけなんです。そういうふうな点をよくひとつお国の方々理解をいただきまして、そして、これは自動車の場合に、日本に対して自主規制を、強要という言葉を使うとしかられるかもしれませんが、まあ自主規制を求められて自主規制をやったわけですから、これと同じように、さっきの先生のお話とは逆だけれども、農業の面でもやはり日本に対する農産物の売り込みについては、アメリカ自身が自主規制をして、日本の農業をある程度守っていくという雅量を示されるということが、やはりこれは偉大なるアメリカの義務だと思うんです。それはまた両国の永遠の友好を築いていく基礎になると私は思うんです。これは率直なそういう意見が、われわれの国民から聞かれましてちょっと返事に困る場合があるんです。ですからひとつスノーデン、かつての海軍参謀長からちょっと御意見をこの際聞かしていただきたい。
  74. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) ありがとうございます。  私、ビジネスマンとして日本にやってくるまで三十八年間軍人であったわけでありますが、これが農業問題の解決にいかように役立つのか、私自信はありませんけれども、皆様にぜひ御理解いただきたいのは、私ども日本が島国として、島嶼国として抱えている問題は十分理解しているということであります。  そして、これはどこの国でもそうですけれども日本も一国家として何らかの程度の食糧の自給率を達成したいと願っておられることも重々理解できるわけです。私自身、完全に一 〇〇%海外からの食糧輸入に依存せねばならないような国にはなりたくないと思います。ただ、アメリカ日本の間の農産物問題に関してアメリカ側がとってまいりましたアプローチは、何も日本に完全に自給自足のレベルを放棄せよということを要請してきたわけではありません。むしろアメリカ側は、日本がみずからを守るためにも、たとえばすべて必要な食糧を輸入できないような緊急事態が発生した場合にも、みずからをより良好に守っていくことができるような、より効率的な農業政策をとれるんではないかということを申し上げてきたわけです。  たとえば、そういった緊急時に備えるための基礎食糧に関して、もっと備蓄を日本はふやすことができるというような点であります。ですから、アメリカは何も日本に完全に食糧の自給を放棄せよというようなことを申し上げたつもりはございません。現在とは異なった農業政策をとることによって、農耕地をより効率的に利用することができるんではないでしょうかと申し上げてきたのであります。  日本がその農業政策を抜本的に変えるというようなことをすれば、直ちに日本国内で農業構造の調整あるいは再調整が必要になってくるということは認めざるを得ないと思います。  ただ、この関連で申し上げたいのは、十年以上前に日本は豚肉及び鶏肉の輸入を自由化し、それ以来日本国内へ比較的自由にこういった産品は輸入することができるようになったわけです。そして、その結果として日本国内の養豚業あるいは養鶏業というのは近代化され、そして相当合理化されてきたわけです。牛肉の場合に同じような措置を実行していくのはもっとむずかしいかもしれませんけれども、しかし日本政府が適切な政策をもってすれば、時間はかかるかもしれないけれども牛肉につきましてもいずれ合理化は可能なのではなかろうかと考えるわけです。  ですから、アメリカが言っているのは、日本がもっと効率的に農業資源を利用するようにしたらいいのではないかということであります。そして、それと相まって、より大きな食糧生産能力を持っている米国は、日本の消費者に対しまして、より低い価格で、幅広い品ぞろえの食糧品のチョイスを、選択肢を日本の消費者に提供するようにしていただけないかということであります。  アメリカの人々は、現在何も完全な自由化を要求しているとは思いません。  たとえば、昨年の十二月の段階でも、米国側は、八四年を問題解決の一応のめどとして、その時点までに日本が農業を完全に自由化できないとしても、少なくともそういった完全自由化を最終的な目標として設定し、そこへ到達するための時間的な計画を提示してもらえないかということを日本側に提案してきたわけであります。現在のところ、このようなタイムテーブルを示すというアメリカ側の案に日本側はこたえてくださっていないと思います。その意味で、重要な最終目標へ向けて決して大きな進捗がなされているとは思いません。もちろん、日本が米あるいは大豆に関して感じられる御懸念は理解できるものであります。かの大豆ショックのときに、私はちょうど軍人として日本におりましたけれども、その経験から、日本がこのような大豆問題をめぐって抱いておられる懸念を十分に理解できるものです。私もビジネスマンといたしましては、純粋、政治的な理由で食糧の禁輸を行うとか、その他の禁輸を行うということは一般的には支持できないものであります。今後、日米関係が成熟し、そしてささいな政治的ないさかいゆえに食糧供給がとだえるというような心配を日本が抱くことがない段階まで二国間関係が成熟することを望んでいます。  もう一つだけ申し上げておきたいと思います。  いま、米国は大きな国である、そして比較的高い経済面での成功をおさめてきた、だからもう少しアメリカは忍耐強く寛容になって、そして日本に農業の面でそれほど強硬な要求をしないようにしてくれないかという意味合いのことをおっしゃったと思います。  それで、それをいささか逆にひっくり返すようなことになりますけれども、今日の多くのアメリカ人が日本に対してどういう気持ちを抱いているのか申し上げておきたいと思います。  日本は大いなる経済の成功をおさめた。だから、いまや日本はいろいろな貿易面の障壁を払拭し、そして柑橘であるとか牛肉のようないろんな農産品問題についても解決策を見出すだけの力を持っている。たとえこのような大胆な措置を実行したとしても、日本経済的な面で余り甚大な痛手はこうむらないぐらいのところまで成長したではないかというのが、今日の一般的なアメリカ人の考え方ではないかと思います。
  75. 八百板正

    ○八百板正君 どうもありがとう。
  76. 中野明

    中野明君 お二方どうも御苦労さんでございます。  私、最初にスノーデンさんにお尋ねをいたしますが、ローカルコンテント法案、これにつきましてどういうお考えを持っておられますか。それで、これはアメリカの国会で成立するとお考えでございましょうか、御意見をお聞きしたいと思います。
  77. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) ここに御参会の皆様は御存じのことと思いますけれども、暦年一九八二年におきまして、その年度末に、米国議会のこれはいわゆるレーム・ダック・セッションと呼んでおりますけれども、すでに選挙を終えて議席を失う者云々も参加した議会のセッションということでありますが、その会期におきまして下院がローカルコンテント法を成立させました。現在新たな議会の会期が始まりまして、そして再度ローカルコンテント法案が提出されております。  ACCJといたしましては、このような法案には強固に反対をしております。自動車問題であるとか、その他の製品問題の解決策にはならないと考えるからです。これは保護貿易措置以外の何物でもないわけで、良好な二国間関係にとりましても、また、他の民主主義国との自由貿易を進めるという観点からいいましても、決してわれわれの利益にかなうものではないということですので、ローカルコンテント法案に対しましては反対の意思を表明してまいりました。  さて、第二の御質問のローカルコンテント法案が成立するか否かという点であります。  見通しを立てるのは大変むずかしいと思うのですけれども、下院が再度これを承認することは考え得ると思います。ただ、上院もそれを承認するか否か、大変見通すのはむずかしいわけですけれども、可能性は存在していると思います。  それで、一つの想定ですけれども、両院がこの法案を成立させたとする。そうしますと、あとは大統領がそれに対して拒否権を発動するか否かということになるわけで、私は、もちろん大統領が拒否権を発動されることを望んでおりますけれども、しかし、拒否権を発動した場合には、それが確定的に成立するためには、大統領は上院の三分の一の支持を取りつけなければいけない。その過程で、柑橘であるとか牛肉等のきわめてセンシティブな問題が再度表面に浮かび上がってくるであろうと思います。大統領は、彼の拒否権を成立させるために、何とか上院で波を支持してくれる政治力、政治的な協力を取りつけるようにしなければいけないわけです。その上院の中で日米間の貿易の問題を何とか解決しなければならない、しかし、ローカルコンテント法のようなものに頼ることなく解決しなければならないと考えているような上院議員の協力を得ることはできるとは思いますけれども、柑橘、牛肉等の問題というのは、このように政治のプロセスとして見てきた場合には、それぞれ別個の問題として考えていくことはできないと思うんです。いずれもこのような上院の場における政治的なプロセスという大きな流れの中の問題として見なければいけないと思います。
  78. 中野明

    中野明君 いま御意見ございましたが、非常に私どもも関心を持ってこの成り行きを見守っております。賢明なアメリカ議会の判断を期待いたします。  それで次の問題に移りますが、両参考人にお尋ねをしたいんですが、一般的に第一次、第二次オイルショック、これのそれぞれの国の対応の違いによって、その国の経済に多大の影響を与えて、それが貿易摩擦一つの発端になっていると、こういうことが一般的に言われているわけでございますが、今回御承知のように、原油の価格は今度は逆に、逆オイルショックといいますか、大幅に下がり始める傾向が見えております。これは非常に先進工業国としては歓迎すべき意見が多いわけでございますが、これの国際金融に及ぼす影響と、そして貿易摩擦の緩和に何らかの役割りを果たすんじゃないかと私も思っておりますが、スノーデンさんとアペルドーンさんの御意見をお聞きしたいと思います。
  79. ロバート・アペルドーン

    参考人(ロバート・アペルドーン君)(横田謙君通訳) ヨーロッパの場合には、大体の国が相変わらず石油輸入国ですから、石油価格が下落することによって大部分のヨーロッパ諸国は利益を享受することになります。  そして、過去五年ないし十年間続いてきたインフレ的な傾向が逆転して、デフレ傾向になることを望むものであります。それが実際に起こることを期待するのはむずかしいかもしれませんけれども、少なくとも希望だけは抱いていたいものです。  エネルギー価格が変化することによって、それが製品の価格面及び競争力に好ましい影響をもたらしていくだろうと考えております。このような状況は、ヨーロッパ、日本の間でそれほど大きな違いはないのではないかと思います。
  80. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) いまアペルドーン氏が申し上げたことの中の一点を強調し、もう少し敷衍してみたいと思います。  つまり、石油価格が下落することによって最も大きく稗益するのが日本かもしれないということです。日本は、従来しばしば石油価格の高騰によって痛手をこうむってきたと思います。つまり、それが高い電力料をもたらす。その電力料が当然製品の価格に反映されるわけですから、影響をこうむってきたと考えるわけです。その意味で、石油価格が下がれば、これは日本にとっては恩恵をもたらすものになると思います。製品価格もその分だけ安くなるということで、その結果、国際的な市場の場で日本製品の競争力はさらに強まるんではないかと思います。ですから、石油価格が下落することによって世界貿易の場におきまして最も大きく裨益するのは日本であるということになりますから、今日存在しているような貿易不均衡は、将来はさらに拡大する可能性があると思います。
  81. 中野明

    中野明君 御意見ありがとうございました。  それでは、先ほど問題になっておりましたが、食糧の問題でお尋ねをしたいと思います。  これはスノーデンさんにお願いをしたいと思いますが、日本の国は、先ほどの話にありましたように、世界で一番農産物輸入している国になっております。その片方で生産調整、要するに減反政策をとっておるという、非常に矛盾をした立場であります。  しかも、世界的に見ましたときに、この地球上には四億とも、あるいはそれ以上とも言われている飢餓人口、食糧にありつけないといいますか、飢餓で苦しんでいる国があると。こういうことで、人道的に見ていきますと、これは将来必ず大きな問題になってくるのは当然でありまして、日本の国も独立国として食糧の自給率を上げるということに今後も専念をしていくことは当然でございますが、そういう食糧が買えないようなそういう国に、ただ物質的な問題だけで援助をするのではなくして、自立できるようないわゆる社会体制、生産ができるような社会体制あるいは経済体制をやはり先進諸国は本気で考えていかないと、人道的に考えても、世界の平和の上から言っても、大変な問題になってまいります。そういう点についてスノーデンさんの御意見、どういうお考えをお持ちになっているか、お聞きしたいと思います。
  82. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) 私は国際農業問題と呼びましょうか、いまもおっしゃったような問題につきまして、日米間で将来密接に協力していくことができるというふうに考えており、大変楽観的な見通しを持っております。  確かに、私どもの間の取引の問題等があるでありましょうし、その点につきましては、日本米国農産物につきまして最大の顧客であるということはわれわれとしても大変感謝している次第であります。  農産物貿易を今後さらに広げる可能性はあると思いますけれども、国際的な農業問題の面につきましても二国で協力はできるということは私確信を抱いております。たとえば、私どもそれぞれの国の緊急事態に備えるだけではなくて、ほかの国々の緊急事態に対しましても利用できるような食糧備蓄を、ともに積み増していくということもできるんではないでしょうか。また、物理的にそういった食糧備蓄に貢献できない国の場合には、資金的に貢献を行うことはできるというふうに考えております。そのようにして先進国発展途上国の緊急事態に対してめんどうを見ていくといいますか、配慮をしていくことはできるようになると思います。  さらに、アメリカ日本協力して発展途上国が必要としている農業技術を提供するということもできるんではないでしょうか。このような協力最大限の効果を得るために、食糧生産の低い国に対しまして、アメリカ日本それぞれが最も得意とする分野の農業技術の専門家を派遣し、そして適切な農業技術を与えるということが好ましいのではないかと思います。このような協力をやっていけば、これは国際農業問題の分野でその解決のためにこのようにお互いに協力をしていけば摩擦も起こらないようになるんではなかろうかと考えております。  いささか楽観的に過ぎる感がするかもしれませんけれども、いまの御質問に対して私が申し上げたいのはこういうことでございます。
  83. 中野明

    中野明君 どうもありがとうございました。
  84. 市川正一

    ○市川正一君 私に与えられた時間はトータル六分、ミスター・スノーデンのように十五分を五十五分にするすべを存じませんし、また討論のやりとりの場でもございませんので、私は総論的に意見を述べ、御両者からまとめて御見解を承りたいと思います。テキストを渡していますからスピーディーにやります。  御両者の意見は、要するに日本経済市場開放パッケージ期待論であります。しかし、それは日本の言葉で申しますれば、いささか虫のいい言い分だと言わざるを得ません。私は、次のような問題をどうしても考察する必要があると思うんです。  まず明らかにしたいのは、日本市場のいわゆる閉鎖性なるものについてであります。たとえばアメリカ農産物がその象徴であるかのように主張しております。しかし、午前中のわれわれの審議の中でも明らかにされましたが、日本農産物輸入額ですでに世界最高になっています。しかもアメリカ自身、昨年に入って砂糖の輸入枠を削減し、あるいは日本に自由化を迫っている牛肉についても、オーストラリアに対米輸出自主規制を求めるなど、農産物輸入制限や保護政策をとっています。さらに乳製品、落花生など十三品目についてもいまなお輸入制限を続けています。自国の農産物には保護措置をとりながら、他国には市場開放を求めるというアメリカの態度はまことに身勝手であると思うんですが、いかがお考えでしょうか、第一問です。  第二に、より根本的には、世界不況による市場の停滞、落ち込み、これが長期化しておる、構造化していることであります。その大きな原因に、各国の、特にアメリカの軍拡優先政策があると言わざるを得ません。これは単に財政問題にとどまらず、資源の優先配分や、技術の軍事優先による民間部門の立ちおくれなどにあらわれています。このことはIMFでも指摘され、いまや国際的常識になっています。各国経済界は、いまこそ自国の政府に対して経済活性化のために軍縮を要求すべきではないでしょうか。第二問です。  最後に、これは質問ではありませんが、確かに日本の大企業の国際競争力が異常に強いこと、これをめぐる問題があることはこれはよく承知しております。その背景には、わが国の労働者の賃金や労働時間など、労働条件が欧米諸国と比べてきわめて劣悪であること、大企業がその傘下に膨大な下請中小企業を組織し、必要ならばデータを出しますが、低コストと短い納期で高品質の部品を供給させる仕組みをつくっていること、さらに、日本の大企業には、法律、税制、財政、金融などあらゆる優遇措置が講ぜられていることがあると思います。また、それがいわゆる集中豪雨的輸出の基礎になっています。私たちはこうした仕組みを是正し、賃上げや減税などで国民生活を守り、国民経済の拡大対策をとることが必要だと考え、努力していることをこの機会に明らかにした上で、さきの二点について御見解をお聞かせ願えれば幸せです。  以上です。
  85. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) 二つの点、農業の点とそれから経済の停滞に関する点につきましてはお答え申し上げますが、日本の大企業とそれからその下請企業との関係につきましては、これは日本国内の問題という性格でありますから、私が申し上げたところで有益なコメントはできないのではないかと思います。おっしゃっていることはよくわかりますけれども、ただ一言、日本の大企業は日本のために世界各地ですぐれた業績を上げておられるということだけ申し上げます。日本国内でどういう関係になっているかということは、私は触れないことにいたしますが、そのほかの二つの点についてお答え申し上げます。  さて、農産物問題につきましておっしゃったことにお答えしてみたいと思います。  確かに、米国におきましては、農業問題というのが一つの象徴になってしまった感があります。どうも柑橘及び牛肉について理解した人間であれば、それはもう農業の専門家であるというような考え方がまかり通ることは非常に不幸な事態であると思いますが、それに比べれば貿易のほかの部分というのは、問題を明確にするということもなかなかむずかしいところがあるということであろうと思います。  米国保護主義問題等をめぐって言っていることはどうも一貫性がないではないかという御指摘がございました。確かに、アメリカ政府は、一方で砂糖の割り当て枠のことを決定を下したり、あるいはオーストラリアに対しましては、牛肉の対米輸出自主規制を要請したりということをしつつも、もう一方で農産物、ことに牛肉等をめぐって、日本に対しましてはもっと自由化をしてくれということをお願いをしている。  ただ、ここで覚えておかなければいけないのは、米国日本との関係で言っているのは、その根本に大幅な貿易不均衡があるということです。このような大幅な貿易不均衡が存続する限り、米国議会貿易不均衡を是正する方策に焦点を合わせてくるであろうと思います。  つまり、ほかの国に言っていることと一貫性があろうがなかろうが、要するに日本との関係の場合には、その根本原因に大幅な貿易不均衡があるのだということで、それをもとに議会措置がとられてくるだろうということを申し上げておきたいと思います。  世界経済の停滞というもう一つの点に話を移したいと思います。  確かに、御指摘ありましたように、ここ三年ほどの間世界経済は停滞してきたと思います。ただ、ソ連の軍備増強に対応して、米国大統領が米国の軍事力増強に重点を置いているから、国内景気の回復が抑えられてしまうというそういった見解に私は合意することはできないわけであります。冒頭の私の発言の中で申し上げましたように、米国経済は現在回復へ向かいつつあります。そうしてことし——これは暦年でのことしでありますが、年末までに、米国の景気は、人々が驚くほどに顕著な回復を示すことになるだろうと考えております。しかも、そのような景気回復は、一方で米国の国防力増強へ重点を置きつつも達成されるということです。ですから、軍備増強に米国が力を入れることによって健全な経済の回復が妨げられるということは私は考えません。世界経済の停滞という点につきまして、これの中で米国がいわば機関車して牽引力としての役割りを果たすべきだという意見がございますが、私自身ことし米国の景気が回復をしていくに従って日本を含めた世界各国に対しまして、いろいろな経済面の刺激を与えていくことになるであろうと楽観的に思っております。そうなれば、日本にとりましても、日本輸出市場としての米国もさらに拡大することになると思います。  ですから、米国が今日持っております世界的な経済力あるいは政治力を考えた場合に、ソ連に対抗してその軍事力を増強すること、ことに米国が最も野心的な国防力増強計画を実施した場合よりもさらに急速なペースでソ連が軍備力を増強している中では、ことに米国が軍備増強を十分に行っていくことは重要なものがあると考えております。三十八年間軍人であったということから考え方の偏りがあるかもしれませんけれども、しかし、決して景気回復が妨げられるということにはならないと思います。恐らくこれから一、二年の間、この景気回復とそれから軍備増強という二つの目的がお互いに足を引っ張り合うことなく、むしろ相携えて進んでいくことができるんだということを見ることができるのではないでしょうか。
  86. 市川正一

    ○市川正一君 もしミスター・アペルドーンがございましたら、——しかしもう時間もたっていますし、御自由に、御判断で結構です。
  87. ロバート・アペルドーン

    参考人(ロバート・アペルドーン君)(横田謙君通訳) ありがとうございます。  三つの御指摘があったと思いますけれども、その三つ目につきましては市川先生の方からもそれは何もお答えを要求しておられぬということでございますのでそれはわきに置きまして、貿易不均衡の問題につきまして不公平なアプローチがとられているということでありますが、しかし、私どもとしては問題がある、だからその問題を論じたいということだけであります。  第二につきましては、年末までに、これは期待というよりは希望ということで申し上げるべきだと思いますが、米国と同様不況から脱却したい、あるいは少なくとも石油価格の下落に支えられて回復局面に入りたいと願っているということです。  ヨーロッパ諸国の国防支出は、ヨーロッパのそれぞれの国がこの国防の面で実際に感じておりますニーズの範囲に、必要性の範囲にそぐう形で続けられていくでありましょう。
  88. 市川正一

    ○市川正一君 時間がなくて残念です。サンキュー。
  89. 小西博行

    ○小西博行君 先ほどから各同僚の議員の方から御質問がありまして、私が申し上げることはほとんどないぐらい質問があるいはお答えがありました。したがって、非常に簡単に、しかもせっかくのチャンスですから、ふだんなかなかこういう機会ございませんので、二、三の問題についてお聞きしたいと思います。  その一点は、いま貿易摩擦という問題が非常に大きな問題としてクローズアップされております。  私は民間の出身でありますから、しかも鉄鋼会社の出身であります。ちょうど三十年前に米国へ勉強に参りまして、管理工学といいましょうかコストコントロールあるいはクオリティーコントロール、こういうような一連の管理というものについて勉強さしてもらった経緯があります。大変米国は品質管理がりっぱで、しかも作業研究が非常に徹底しており、大変まあ管理の行き届いた産業がしかも大きく発展していた時代だと思います。それから、われわれはその米国のマンデルさんとかあるいはドクター・デュランとか、こういう一流の管理技術の大家に教えていただいたとおり、鉄鋼を中心に造船、機械、自動車、こういう産業でそのテクニックをそのまま忠実に守って今日の管理をなし遂げたと言っても過言ではないと思います。  そこで、一昨年私も米国へ行かしてもらったときに感じたわけでありますが、この先輩の先生方が何を言われたかといいますと、よく売れる商品というのは絶対いい品物なんだ、いい品質なんだと、こういうことをおっしゃいました。  したがって、いま米国でつくっておられるたとえば自動車、最近はずいぶん小型になりましたけれども、やはり市場のニーズに従った調査という問題が私は非常に大切じゃないだろうか。日本市場開放するということも非常に大切なんですけれども日本人が本当に必要とする車、乗用車、こういうものが一体どうなのかという市場調査ですね、米国日本に対する市場調査、これを私は徹底的にやる必要があるんではないかなと。  それから、同時にこれはECでも同じことだと思うんです。たとえばハンドルが左についているという、これはもう非常に不便です。高速道路を通りますと料金を払わにゃいけませんが、手が届きません。そういう非常に問題点が、これは自動車だけの問題じゃなくて、いろいろな商品にあります。一方では、非常にすばらしい商品がまたあります。そのことは私どもも十分理解しております。  それだけに、これから先の貿易関係で、これは確かに日本がかなり市場開放せなきゃいけない、手続をもっと簡略しなけりゃいけない、こういう問題はありますけれども、あわせてその辺の製品の設計という問題について、非常に私は大切な問題じゃないか。まあ技術屋の一人としてそういうふうに思いますので、その辺の御意見を、できればお二人の参考人からお聞きしたいと思います。六分しか実はございませんので、簡略にひとつ。
  90. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) 大変むずかしい御質問に対して手短にお答えするというのは大変むずかしいわけでありますけれども、なおかつ手短にお答えするよう努力をしてみたいと思います。  第一点。おっしゃるとおり、こと数年の間、生徒であった日本の方が経営管理あるいは品質管理、製造工程の効率化等の点におきましては先生を追い越したということが言えると思います。そのように生徒の方が余りにも教師を追い越してしまって、そしていまや生徒が余りにもよく勉強したがために、教師の方が面目を失うところまで来たと思います。  そこで、それに気づいたということは、米国製造業者は落ち込む底までもうすでにたどり着いたということが言えるんではないでしょうか。その関連米国の経営者たちは日本に見学に来まして、いろいろと日本のこのような効率といいますか、日本の成功の秘密を勉強しようとやってくるわけであります。で、彼らが発見いたしますのは、何も秘密はないと。唯一秘密があるとすれば、日本方々は以前学んだことを一生懸命心して働いておられるということだと思います。このようなことをアメリカの人々が学び取って、必ずやそれが今後より高い品質のアメリカ製品、競争力の強いアメリカ製品という形になって生まれ出てくると考えております。もっとも彼らが学び取りましたこの教訓というのは何も新しいものではなかったと思いますけれども。  自動車問題は、特にいま与えられている時間を考えますと、余りにも複雑で十分意を尽くしてお話をすることはできないと思いますけれども、簡単に申し上げますと、日本市場で大量に米国車を売れるという期待がないので、日本市場向けに大量生産を行う米国自動車メーカーは出てこないだろうと思います。以前は、アメリカは非常に大きな国ですから、そのために大型車をつくって、それを得意としておりました。その当時はまだ燃料コストの問題もなかったわけであります。しかし、いまやこの燃料費の問題に何とか取り組まなければいけない。そして米国メーカーも、より小型の、燃料効率の高い、そして快適な、しかも競争力のある価格の車をつくらなければいけない状況に置かれております。しかし、日本外国輸入に対するもろもろの規制要件を緩和しない限り、米国自動車メーカーといたしましては、日本市場での米国車に対する需要はきわめて限られたものしかないという期待しか持てませんから、日本市場向けに車をつくるということはないと思うんです。その意味で、ぜひ日本市場、現在のままでは、そもそも市場が非常に良好な状態においても余り日本に売り込むことはできないということでありますから、より制限を緩和するということを期待したいと思います。
  91. 小西博行

    ○小西博行君 時間がもうすでに超過いたしましたから、アペルドーンさんに一問だけひとつ質問さしていただきます。  実は、日本の場合も電力料金、これをできるだけ安くしたいという産業からの強い要望があります。もちろんこれはコストリダクションという問題もありますし、永遠にエネルギーが供給できるような体制に持っていきたいということがありまして、原子力の平和利用ということがいま特に科学技術の方では検討課題として上がっているわけです。  特に、EC関係ではフランスを中心にして大変原子力発電、これが盛んだというふうに聞いておりますが、どうも最近いろんなニュースを聞きますと、反対同盟の方がいろいろ行動なさっているということも聞きます。日本もあと十年ぐらいしますと廃炉の処理という問題が残っておるわけでありますが、その問題に対してECのいろんな情勢について知らせていただきたいと思います。
  92. ロバート・アペルドーン

    参考人(ロバート・アペルドーン君)(横田謙君通訳) まず最初に、自動車生産に関してスノーデン氏がおっしゃったことに私の方から一言つけ加えたいと思います。  ヨーロッパ諸国は、長年にわたって小型の燃料効率の高い車を生産してまいりましたけれども、にもかかわらず日本市場では成功をおさめることはできないでいるわけであります。この原因は先ほど申し上げ、説明しようとしてみた次第でありますが。  第二点、原子力につきまして。この問題は、一ビジネスマンとしていささかそのことを語ることすらちゅうちょの念を感じるものがありますけれども、最近は統合されたヨーロッパということを言う人がおりますけれども、実はこの原子力の問題こそヨーロッパが決してまだ統合されるには至っていないことを示しているんではないかと思います。一部のヨーロッパ諸国は、真剣に原子力開発に打ち込んでおり、それに比べましてほかの国々は違う考え方を持って原発を制限するということをしています。
  93. 小西博行

    ○小西博行君 ありがとうございました。
  94. 山田勇

    山田勇君 ただいま質問しましたミスター小西は大変ラッキーボーイでございます。彼は六分間の質疑がございます。私は三分でございます。よろしくお願いをいたします。  ただいま同僚議員が質疑をいたしましたいわゆるニーズの問題について、私も同じ質問をさしていただきます。  きょう午前中の参考人の中に、日本自動車工業会専務理事のミスター中村がお見えになっておられました。その方がきょうの陳述でお話しになった中で、われわれは輸出ばかりに力を入れているんではない、アメリカ車及びヨーロッパ車に対するいわゆる販売路ということについては格段なる努力をしている、日本の持っている販売路というものを利用しながら強力に売っているということですが、いま先ほど小西委員の方からも言われたとおり、ニーズに合わないものが多過ぎるというのが率直な私の意見でございます。  たとえば、右ハンドル、左ハンドルの問題はさておき、きょう午前中の中村氏が言われた中に、いわゆるサイドミラーといいますか、バックミラーといいますか、そういうミラーの取りつけ一つとっても日本日本なりの規制があります。それは十分アメリカ自動車工業会も知っていることです。それについて依然としていわゆるドアにミラーをつけて輸入されてくる。ですから、港におりてきてからそれを取り外し、そして取り外した後の穴、ホールについてペイントをする、そういう仕上げというものについて非常にコストが高くつくということが指摘されておりましたが、私も全く同感です。私も長くアメリカの車を四台ばかり乗りましたが、行き着くところはやはりトヨタ、日産になってしまいました。ということはやはり燃費をたくさん食べる、それからパーツ一つ一つが大変コスト高につく、そういうようないろんな問題がございました。  そこで、そういう摩擦の問題ばかりを取り上げていてもいたし方がないんで、きょうはグッドニュースがございました。これは特にECのアペルドーンさんに対してプレゼントできるニュースではないかと思います。  きょう三時のNHKニュースで、かねて懸案になっておりましたVTRの問題について、ECがすべてを了解し、恐らく来月からはいわゆる輸入制限を解除するであろうという、これは大変日本の弱電メーカーにとっては喜ばしいニュースが発表されておりました。そういうふうにして一つ一つのヨーロッパの製品にとっても、ニーズに合ったからVTRも向こうで売れる、そのかわりヨーロッパ、ECからでもそうですし、アメリカから持ってくる製品についても日本国民のニーズに合ったものがあれば、僕はまだまだ売れるものがたくさんあると信じております。  たとえば、先ほどアペルドーンさんは、ヨーロッパの小型車について非常に私は努力したけれども一つ伸びなかったと言いますが、日本の警察ではフリーウエー、ハイウエーパトロールとしてポルシェを入札をして大量に仕入れております。ですから、官公庁の車についてでも、何もトヨタ、日産だけが独占企業ではありません。性能その他価格、そういうものがよければ幾らでもアメリカの製品であろうが、ヨーロッパ小型車であろうが、いわゆる日本のガバメントが買い入れる品物であるということは僕は言えると思います。  そこで、たくさんまだヨーロッパの問題についても私はお話をしたいことがありますが、端的に私の経験から少しだけお話をさしていただきます。  先日、カナダのビーフを日本輸入するために、私は一業者のライセンスをもらって行きました。これはよりよい、いい肉を安い価格で消費者に供給するという形でカナダ政府協力を得てカナダへ行ってまいりました。そこで、いわゆる日本人のニーズに合ったビーフというのは、いわゆ る赤いミートの中にオイルがまいてある、いわゆる日本で言う霜降り、鹿の子状態といいますか、そういうビーフでございます。しかし、アメリカ、ヨーロッパでは、その赤いビーフの中にオイルがまざっているミートはB級品としてランクが下げられます。しかし、そのテストを私はやりました。えさづけを、牛にたくさん二カ月間やりますとオイルが回ってまいります。いわゆる霜降り状態、鹿の子状態になります、ビーフが。そうしてA級の牛を飼っているのですが、輸出するときには加工されたビーフはB級の烙印を押されます。ですから、関税も少し安くなりまして、そういう形で輸入をします。そういうふうにしていろんな体験の上から私はお話をさしていただきたいと思います。  たとえば、ヨーッパで非常に高級品と言われているロブスターのスープなどは日本にいまたくさん入ってきていますが、あのにおいが日本人には受け入れられない。だから相当高級な缶詰も売れないままでストックとして残ってしまう。ですから、その辺私はもう一段研究をしていただきたいと思います。  われわれが朝ブレークファストでいただきますいわゆるパンケーキにかけるメープルシロップがございます。これも半分が純正品とは言えません。先日カナダへ訪れたときには純正のメープルシロップをかけて食べますと、これほどおいしいシロップはなかったわけです。ですから、そういうふうにしていろいろもっともっと貴国が研究をする課題というのはたくさんあると思います。まして、日本民族は舶来志向型ですから、そういう弱点というところをうまくついた形の中で商売すれば、ニーズに合ったものは全部繁栄しています。マクドナルド、そうです。ケンタッキーフライドチキン、そうです。そういうふうに、外食産業にしてもすべてニーズに合ったものは繁栄をしております。ですから、そういう意味でひとつこれから日本市場開放要求すると同時に、われわれもそういう努力は重ねますが、ニーズに合った品物をぜひわれわれに供給をしていただきたいということを申し上げまして、これは質問になるかどうかわかりませんが、ひとつお答えをいただきたいと思います。これによって貴国の製品がレベルアップをし、そうして売れたら私はアメリカ政府から感謝状をいただきたいと思います。
  95. ローレンス・F・スノーデン

    参考人(ローレンス・F・スノーデン君)(横田謙君通訳) ぜひそのようにして、またわれわれの製品がよくなることによって輸入をしていただきたいものだと期待をしておりますが、以前はしばしば、たとえば食料品にいたしましても日本に入れてもその量が日本人に合わないとか、その重量が日本市場向けでないとか、嗜好が日本の消費者に合わないというようなことが指摘されたものです。ただそれは過去の話だと思うんです。今日ではアメリカの五百社以上がこういった食料品の面では成功をおさめております。そうして日本の消費者の嗜好に合うようになってきております。アペルドーンさんのお国の近辺の産品だとは思いますけれども、いま御指摘の値段の高いロブスタースープを一つ例にとってお話をしてみたいと思うのですけれども、たとえば、私がロブスタースープの供給者であるとしますと消費者だけが私にロブスタースープが好きだとか嫌いだとかと言う権利を持っているのではなかろうかと思います。消費者がそういうことを言えるようにするためには店の棚にその品物が並べられなければいけない。そして消費者がそのスープを手にとって買ってみて、家で飲んでみてよかったと言うか否かということであって、いままでの傾向としてはむしろただ消費者がこれは好まないよということを消費者以外の人から言われてきたわけです。  私どもとしても、消費者が実際にそれを味わってみて、それで、これは嫌いだと言えば、われわわも素直に品物を引き揚げます。  自動車の問題につきましては、これは時間がきわめて限定されておりますので、十分にお話しできないと思いますけれども、実は私、日本に来るまでは日本車に乗っておりまして、その経験からいって、よい日本車にも当たったことがあるし、悪い日本車にも当たったことがあります。つまり、確かに一般的に日本車は品質が高いということ、これは正当なことであろうかと思いますけれども、具体的に一台一台見た場合には、場合によっては同じクラスの米国車ほどよい品質でない日本車もあり得るわけです。ですから、日本車にせよ、アメリカ車にせよ、あるいは日本の製品にせよ、アメリカの製品にせよ、一つ一つを取り上げて、これは品質がまずいからというようなことで注意をそらされてはいけないと思います。  もう一つ自動車について申し上げますと、日本政府米国メーカーに対しまして自動車の自己認証制度を許してくだされば、つまり、米国メーカー側が日本に車を輸出する前に、日本の規則、基準、その他の要件に自分がつくった車は合致しているということを認めるということができるようなシステムにしてくだされば、いままで存在してきた多くの問題は解決されるんではないかと思います。言いかえるならば、アメリカ側の工場でチェックをして、そして、日本のいろいろな要件にこの車は合っているということを書面にちゃんとサインをするということですべての手続は終わるという形にすれば問題は解決されると思います。  ところが、日本政府は、この点については頑として譲らず、そのままの状態が続いてきているわけですから、米国メーカーとしては、それなら、船に乗っけて車を出してしまえと。で、日本が一々検査したいならばやりたいようにやらせようではないかという気持ちになってしまうのではないでしょうか。  このようなシステムを変えていくことができれば状況を変えることはできるんだろうと思います。  ただ、先ほど申し上げたことに戻りますけれども日本市場米国車にとって非常に可能性が限定されているということで、米国メーカーとしても、それほど可能性のない市場ならば、その市場向けに大量に車をつくるのはやめようやということになるんだと思います。
  96. ロバート・アペルドーン

    参考人(ロバート・アペルドーン君)(横田謙君通訳) スノーデンさんがおっしゃった製品の規格等の点につきまして、私の方から一言申し上げますと、ヨーロッパの企業はいろいろな異なった市場での、異なった製品仕様、製品規格にアメリカよりはなれているということで、その意味でいろいろ異なった要件に適応していくだけの柔軟性がアメリカよりはあるのではないかと思います。  さて、車の話にまた戻りますけれども、先ほど申し上げましたように、ヨーロッパの自動車メーカー日本市場に合うような車を長年にわたって生産してきたわけであります。最初は、日本メーカーとの間で、たとえば日本へ車をそのまま輸入するとか、あるいは日本自動車メーカーとノーハウの取り決めを行う、ライセンス生産取り決めを行うというようなことをやっておりましたけれども、その後、どうやら日本で車をつくるという、何といいますか、すべて日本でやるという解決策を好み、このような提携関係が放棄されたのだと思います。その当時はそういう解決策を求めてもよかったんだと思いますけれども、今日はそれがむしろ問題を引き起こしていると思います。
  97. 山田勇

    山田勇君 どうもありがとうございました。
  98. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 以上をもちまして、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言お礼を申し上げます。  参考人方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせくださりまことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見につきましては、今後の委員会審査に活用いたしますとともに、本日の会議国際経済摩擦解消に必ずや役立つものと信じております。  両参考人におかれましては、いよいよ御自愛の上、一国の御活躍をお祈り申し上げます。  本日は御多忙中のところ、まことにありがとうございました。(拍手)  本連合審査会はこれにて終了することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 御異議ないと認めます。よって、連合審査会は終了することに決定いたしました。  これにて散会いたします。    午後五時二十九分散会