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1983-04-21 第98回国会 参議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十一日(木曜日)    午前十時四分開会     ─────────────    委員異動  四月二十日     辞任         補欠選任      井上  計君     三治 重信君  四月二十一日     辞任         補欠選任      三治 重信君     井上  計君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         亀井 久興君     理 事                 降矢 敬義君                 吉田 正雄君                 市川 正一君     委 員                 岩本 政光君                 大木  浩君                 金丸 三郎君                 川原新次郎君                 楠  正俊君                 降矢 敬雄君                 森山 眞弓君                 阿具根 登君                 田代富士男君                 馬場  富君                 三治 重信君    国務大臣        通商産業大臣   山中 貞則君    政府委員        通商産業大臣官        房長       柴田 益男君        通商産業大臣官        房審議官     野々内 隆君        通商産業大臣官        房審議官     村田 文男君        通商産業大臣官        房審議官     池田 徳三君        通商産業省産業        政策局長     小長 啓一君        通商産業省立地        公害局長     福原 元一君        通商産業省基礎        産業局長     植田 守昭君        中小企業庁計画        部長       本郷 英一君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    参考人        全国紙パルプ産        業労働組合連合        会書記長     青山 陽一君        素材産業懇話会        座長       鈴木 治雄君        全国金属労働組        合中央執行委員        組織部長     飯田  功君        日本化学工業協        会会長      土方  武君        慶應義塾大学教        授        正田  彬君        成蹊大学教授   上野 裕也君        全国商工団体連        合会常任理事   木村  純君        社団法人化学経        済研究所編集部        長        山本 勝巳君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○高度技術工業集積地域開発促進法案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十日、井上計君が委員辞任され、その補欠として三治重信君が選任されました。     ─────────────
  3. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 次に、特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案及び特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、お手元に配付いたしております名簿の八名の方々参考人として御出席願っております。  午前中に御出席をいただいております参考人方々を御紹介いたします。  全国紙パルプ産業労働組合連合会書記長青山陽一君、素材産業懇話会座長鈴木治雄君、全国金属労働組合中央執行委員組織部長飯田功君、日本化学工業協会会長土方武君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。ただいま議題となっております両案につきまして、皆様方から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  なお、議事の進め方でございますが、まず、参考人方々から御意見をそれぞれ十五分程度お述べをいただいた後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。また、発言の際は、その都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。  それでは、まず、青山参考人お願いをいたします。
  4. 青山陽一

    参考人青山陽一君) 洋紙製造業及び板紙製造業単位労働組合を組織しております紙パ労連書記長青山でございます。  特定産業構造改善臨時措置法案について、数点にわたって私の意見を述べたいと思います。  法案審議に当たり、まず申し上げたいことは、従来の政府業界産業政策経営政策の反省が前提にならなければならないという点であります。  今日の紙パルプ産業問題点は、消費不況による需要の減退、需要構造の変化、北米を中心とした外国からの日本への紙の輸出攻勢などの要因がありますが、基本的には、政府に支援された紙パルプ経営者のもたらした慢性的なしかも無秩序な過当競争過剰設備過剰生産によって産業を困難にしていることであります。こうした背景のもとで、雇用削減を初め、減量経営が進み、労働者雇用不安が増大しております。  紙パルプ産業では、七〇年代において石油危機のときには、通産省指導もとに過大な設備投資があり、七八年以降、景気が上向いた時期に洋紙部門設備投資が行われ、今日の過剰設備状況を生み出してきたのであります。紙パルプ経営者は、数量拡大主義的経営もとで、みずから過当競争体質をつくり出してきたものと思うのであります。したがって、当面の行き詰まり状況をもって、このような法律もとにした緊急避難的政策が、あたかも正当性を持つかのような議論だけで進められるとすれば、きわめて問題があると言わなければなりません。  産業構造審議会紙パルプ部会の八〇年代紙パルプ産業ビジョンでは、シェア意識転換、節度ある行動といった企業サイドでの意識面変革がない限り、公的介入に効果があるとは考えられないと指摘しています。紙パルプ経営者意識変革がない限り、設備廃棄などの構造改善施策が講じられ、多くの犠牲をもたらしても、産業体質産業基盤を根本から改善するものとはなり得ないと思うのであります。  紙パルプ産業では、現行法に基づき、四年前、段ボール原紙部門設備廃棄が行われましたが、多くの失業発生と、労働条件への大きな影響が出ました。段ボール原紙の各社では、軒並み、雇用調整という名で労働者解雇し、特に中小メーカーの七社が廃業に追い込まれ、強制的な解雇となりました。このため、労働省調査だけでも三千名以上の労働者紙パルプ産業から去っていきました。解雇だけでなくて、重要な労働条件が切り下げられるという大きな犠牲を払いました。  こうした大きな犠牲の上に、段ボール原紙業界は、一定期間安定しましたが、最近の傾向は、再び、かつての過当競争を繰り返すという、きわめて問題ある状況になっています。結局、カルテル、操短設備廃棄を繰り返し、中小企業整理淘汰産業編成合理化により、労働者に大きな犠牲をもたらす現実だけを残しました。この現実をまず直視していただきたいと思うのであります。  次に、この法案に対する私の見方を率直に述べたいと思います。  今回の法案は、過剰設備処理事業集約化産業活性化の諸策をもとに、構造改善を推進し、産業基盤の強化を目指すというものでありますが、産業構造転換産業編成を促進する性格を持ち、雇用安定に関する積極的施策が盛り込まれておらず、雇用中小企業経営の安定という問題については保障がなく、副次的なものとして扱われていると考えます。したがって、原案のままでは、労働者雇用労働条件関係中小企業経営に重大な影響を及ぼすものと思うのであります。  紙パルプ産業における過剰設備状態とその根源を放置しておくことは、紙パルプ産業全体の正常な発展は望めず、労働者の将来にわたっての安定を期待することができないと考えておるのでありますが、しかし、法案設備廃棄とこれにとどまらない内容であることから、前回を上回る大量解雇と重大な労働条件変更が予測されます。したがって、特定産業において構造改善が必要だとしても、法の内容は、労働者雇用労働条件確保を明確に据えたものでなければならないと考えます。  今日、失業者の増大のもとで、雇用問題は社会問題となっており、雇用問題の解決が法案を提出する政府施策として最優先されるべきであります。  次に、具体的な意見を述べたいと思います。  第一点は、雇用の安定に関する事項であります。  法案では、雇用の安定という問題が、先ほども申し上げたとおり、副次的に扱われ、条文では努力条項になっております。構造改善施策だけが先行して、労働者雇用問題が置き去りにされていることに大きな問題があると考えております。適用事業労働者の離職を前提とした施策になっていると思うのでありますが、これでは失業の予防ではなくて、問題なく解雇するための解雇促進法案であると言わざるを得ません。  紙、板紙製造業装置産業であり、一社一工場設備が一系統、二系統というところが多く、しかも同一品種専抄メーカーが多いのであります。こうした企業の場合の設備廃棄は、即廃業全員解雇大幅事業縮小大幅解雇につながってくるという実情にあります。  紙パルプ常用労働者数は、構造不況業種と言われる業種を含めた製造業全体の中で最も減少しており、労働組合としてはもはやこれ以上の雇用削減は認められないという実態にあります。  通産省業界は、洋紙一五%まで、段ボール原紙二五%までの設備廃棄をもくろんでいますが、この数字をもと紙パ労連実態調査を行い、設備廃棄による雇用への影響を試算いたしましたところ、パルプ、紙、紙加工三十万人のうちのパルプ、紙、板紙の総従業員六万六千四百人に対し、最低でも約一七%、一万一千人の従業員雇用に直接影響が出るという結果が出ました。  さらに、設備廃棄による財務圧迫を軽減するため、固定費、とりわけ人件費削減が進むことが予測され、実際にはもっと大きな雇用への影響があると見なければなりません。したがって、構造改善基本計画策定に当たっては、雇用労働条件確保について、計画に織り込むことを関係条項で明らかにしていただきたいと考えております。  第二点は、中小企業経営の安定に関する事項であります。  紙パルプ中小企業が多く存在している産業であります。中小企業の場合、総合品種生産大手企業とは違い、特定品種専抄が多く、さきに述べたとおり、一社一工場、一または二系列という規模でありますから、大小画一的な廃棄率では、設備廃棄による打撃は大企業に比べ著しく大きく、雇用への影響もはかり知れないほど大きなものになります。したがって、一定生産シェア以下、一定生産量以下の企業適用対象から除外する措置などが必要であり、その趣旨法案に盛り込まれるべきであると考えております。  紙パルプ産業は、素材産業の中でも最も多くその周辺に下請企業が存在しています。原科、製品の搬送部門を初め、原料仕込み、製品仕上げ、修理、保全などの部門があり、しかも製紙の親企業への受注依存度が高く、製紙企業廃業もしくは縮小は、下請企業存立にかかわる問題として、直ちに下請企業にはね返ってくる実情にあります。下請企業の単価の切り下げ、雇用削減などの問題が当然発生してくるのであります。こうした下請関係があることから、法案には下請企業経営と、雇用の安定に関する事項が、関連条項の中で明記されなければならないと考えております。  紙パルプ産業のすそ野が広く、紙器加工分野を含めた従業員数は三十万人を超えております。製紙部門設備廃棄は、当然川下紙器加工部門影響が出てきます。原紙部門設備廃棄は、加工部門への原紙メーカーの進出、系列への要員の転出など、二次加工中小への影響が容易に想定できる実情にあります。川下紙加工中小分野を侵すことのないよう、法案条項にこの趣旨が明記されることが必要であると同時に、分野確保法の厳格な運用が期されなければならないと考えております。  第三点は、設備廃棄率設定についての意見であります。  私は、設備廃棄は最小限にすべきであると考えております。通産省は、設備廃棄率算定基礎になる生産能力の算出に当たって、適正稼働率を九〇%に設定し、月間稼働日数を、洋紙二十九日、段ボール原紙二十八日と設定して、年間稼働日数洋紙三百四十八日、段ボール原紙三百三十六日を基礎にすることを前提としています。  私は、稼働率について、洋紙が八十数%、段ボール原紙が七十数%という過去の実績からすると、通産省の九〇%の設定は高過ぎると考えております。また、現実稼働率六〇%台から七〇%台でも収益を上げ得る企業体質を保持しようとする企業がある中では、稼働率九〇%の設定現実的ではありません。  稼働日数について申し上げますと、通産省労働時間や月次の稼働日数を二十八日から二十九日として固定的に考え、生産能力過剰率を算出しようとしているのですが、これは問題があると考えております。現状操短下での操業率七〇%前後という実情からすれば、年間三百三十六日、三百四十八日というのは、実態と大きくかけ離れています。通産省稼働率稼働日数設定数値は、結果的に設備廃棄率を高くするものとなっているのであります。  紙パルプ産業は、年末年始操業する企業が多くありますが、紙パルプ労働者年末年始操業を停止して世間並みに休みたいと思っておりますし、職場は高温多湿で騒音が激しく、労働者が一斉に夏休みをとりたいと考えるのは当然のことであります。  設備廃棄人減らしを実施した上で、年中無休のフル操業を行うことを前提とした構造改善では、労働者はたまったものではありません。労働者は機械の従属物ではありませんし、労働環境において人間性の回復が図られなければならないと思っております。  労働省の、昭和六十年までに年間労働時間二千時間以内にするという通達がありますし、産構審紙パルプ部会の八〇年代紙パルプ産業ビジョンでは、週休二日制の早期完全実施長期休暇制度段階的導入、そのときどきの経済情勢に左右されない夏季休暇制度としての定着などが述べられているのであります。少なくともこうした考えに立脚した構造改善計画でなければならないと考えているところであります。  紙パ労連の試算では、洋紙の場合、月間操業日数二十八日、稼働率八五%で、設備廃棄率は五%で済むという結果が出ていることを申し添えておきます。基本計画策定に関し、結果的に過剰生産を規制する労働時間短縮計画を織り込むよう、関係条項で明示していただきたいと考えております。  第四点は、労働組合との協議合意関係を明確にしていただきたいと思うことであります。  法案では、構造改善基本計画策定に当たって、大臣関係審議会意見を求め、関係審議会は「主たる事業者団体及び労働組合意見を聴かなければならない。」となっております。紙パルプの場合、この関係審議会というのは、産構審紙パルプ部会であると聞いていますので、紙パルプ部会労働組合代表出席意見を述べることになりましょうが、これまでの現行法運用状況産構審紙パルプ部会運営状況からしますと、通産大臣構造改善基本計画を政令で定め、関係審議会にかけられるときには、すでに基本計画の修正、変更の余地がないということになってしまうおそれがあります。こういうことでは労働組合意見を聞くという条項が死文化することになりますし、運用の誤りとなってしまいます。  設備廃棄事業集約化という重大な産業政策変更に当たって、生産の担い手であり、産業の一方の当事者である労働組合合意を得ることを前提とされなければなりません。本来、労働組合意見を聞くという条項にふさわしい関係審議会の構成であるべきであると考えているのでありますが、現状はそうなっておりません。  構造改善基本計画策定から具体的な構造改善実施段階に至るまで、変更可能な時期での関係審議会への提言保証を含め、産業別労働組合及び当該労働組合との協議を尽くし、合意を得るというものでなければならないと考えます。このことを関係条項に明記していただきたいと考えております。  時間の関係もありますので、以上をもって私の意見といたします。ありがとうございました。
  5. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次に、鈴木参考人お願いをいたします。
  6. 鈴木治雄

    参考人鈴木治雄君) 素材産業懇話会座長をしております鈴木でございます。本日は、新法案に対しまして、素材産業を代表して意見陳述の機会を与えていただきましたことにつきまして感謝申し上げます。  私は、新法案、特に特定産業構造改善臨事措置法案に対しまして、積極的に賛成の立場から意見を以下申し述べたいと思います。  最初に、一言素材産業懇話会というものについて簡単に紹介さしていただきますが、この会は、鉄鋼、化学、非鉄、アルミ、合繊、紙パセメント等基礎素材産業のほとんどすべての業種における企業経営者が定期的に集まりまして、素材産業が共通して直面している問題あるいはあるべき素材産業姿等につきまして意見交換を行っておる民間の任意の会合でございます。必要なときには対外的にも問題の提起を行ったり、あるいは提言、アピールを行う等の対外活動も行っております。  さて、基礎素材産業は、過去におきまして、わが国高度成長の原動力になった基幹産業であったことは皆様御承知のとおりであります。現在でも国民経済における位置は非常に大きくて、その役割りは依然として重要だと思います。ちなみに、全製造業におけるウエートをちょっと申しますと、従業員数で一七から一八%、出荷額で三三%、付加価値額で二四%、有形固定資産四四%ということになっております。  従来、素材産業が、組み立て加工産業に対しまして、高品質素材を安定供給させることによって相携えてわが国産業構造高度化に成功してきたわけでありますが、今日、組み立て加工産業が強い国際競争力を持つようになっておる下支えの役割りを果たしたということは周知のことでございますが、将来を展望いたしましても、わが国が期待しております先端技術産業に対しまして、新素材開発供給役割りを、素材産業の多くが期待されておりまして、依然としてその重要性というものは減少しておらないわけでございます。  わが国経済が今後順調に発展していくためには、素材産業組み立て加工産業が、いい形でバランスしていること、それから先端技術産業を発展させる中において、業者が連携、協力するということが非常に必要であります。  ところが現状はどういうことになっているかといいますと、素材産業の多くのものは、次に申し上げるような理由で非常に疲弊しておりまして、業種によっては崩壊の危機に瀕しているというような産業もあるわけであります。  原因の一つ需要の低迷でありまして、低成長経済へ移行したために、素材産業の多くの素材需要が鈍化してきたということ、それからよく世間で言われますように、軽小短薄傾向がありまして、素材節約型の技術が進展しているということも一つ理由でございます。  そのほかに、エネルギーの事情、特に、第二次石油ショック以降、日本素材産業相当部分国際競争力を相対的に喪失いたしまして、そのために輸入品が非常に増加しているというような事情がございます。そういうわけで、素材産業は非常に現在困難な状況にあります。  特に、素材産業の大きな特色として、競争価格競争に集中して、いわば消耗戦のような様相を呈しているわけでございます。したがって、現在のような状態をただ市場原理のみに任せるだけでは心配な状況で、素材産業重要性にかんがみてこれを立て直すためには、どうしても対策が必要であると思います。特に、今回掲げてあります対象業種というものは、そういう点で対策が緊急に待たれているというふうに考えております。  そこでこの法案に対しまして、私なりに法の精神というものについて考えますと、これはあくまでも業界自己責任において企業を健全化する、合理化するための法的な枠組みというふうに理解しております。そのためには、素材産業の中でもすべての業種がこの法律枠組みに入る必要はない。それは各業種自主的選択によってこの法律枠組み外でやり得るという業種は、別に指定する必要がないのだと思います。そういう意味では業種選択ということが一つあるんじゃないかと思います。  それから構造改善基本計画というものに基づいていろいろなことが行われるわけでありますが、構造改善基本計画なるものは、十分に審議会その他で練られて、現実的なものであって、決して政府が一方的にこれに基づいて企業を干渉すると、そういうような性格のものではないというふうに思います。むしろ構造改善基本計画というものが、いわば素材産業活性化のための具体的な環境整備条件であるというふうに受けとめております。  そこで、法律のねらいはどういうことかということを私なりに考えますと、一つ過当競争排除でありまして、先ほど申し述べましたように、素材産業特色として競争価格競争にもっぱら集中して消耗戦になるということを防ぐための過当競争排除というのが一つのねらいではないか。  それからなお、国際競争力を少しでも強める意味で、業界内でできるだけ連携して合理化をやる。それからさらに前向きの考え方として、企業活性化をやるというようなことがねらいであると思います。  いずれにいたしましても、業界なり各企業自己責任においてそういうことをやらなきゃいけないというふうに考えております。  それからなお申し添えますが、私ども企業としての姿勢として、決してこの法律があることによって政府に甘えたいというような気分は全然ないということを申し上げておきたいと思います。これは法律にもございますが、決して私どもは、いま非常に苦しいので、補助金政府からもらいたいというようなことは、いささかも考えておりませんし、また今日経済が国際化されている環境の中で、外国から批判されるような、この法律によって輸入排除をするとか、そういう措置も期待しておりません。輸入制限というようなものを全然私ども開放経済の中で期待すべきではないというふうに考えております。  それでは、具体的にどういうことができるのかということについてちょっと申しますと、一つ過剰能力削減、凍結というようなことでありまして、これはぜひやらなければいけないと思います。  それから第二は、生産の集中というようなこと。これによってコストをいささかでも下げまして、国際競争力に近づけたい。それからまた、過当競争の弊害が最もあらわれる販売について共同化を行う、あるいは原料を有利に購入するために原料共同購入というようなことも考えていきたいと思っております。  こういう、以上挙げたような具体的なことはいずれも独占禁止法との関係で、微妙な関係が起こりますので、短期的、時限的にこの法律枠組みによって、以上のようなことを独禁法の時限的弾力運用というような意味で、この法律枠組みでやっていきたいというふうに思っております。  最後に、この産業政策競争政策の関係でございますが、私どもはやはり企業としては競争というものは基本であると、しかし現在のように、非常に事態が困難な場合に、業界なり企業を健全なものにして、その上で競争をしていくということが本当の競争ではないのかと、そういう意味では、産業政策競争政策というものは、中期的、長期的には矛盾しないというふうに考えております。  そういうわけで、私どもはぜひ独禁法を運用されております公正取引委員会と、産業政策の責任官庁であります通産省御当局が、今後も現実的によくお話し合いをしていただいて、私ども自己責任による具体的な方法に対して、運用をいいような形にしていただきたいことを、この法律の成立と同時に希望として申し上げて私の陳述を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  7. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次に、飯田参考人お願いをいたします。
  8. 飯田功

    参考人飯田功君) 全国金属労働組合の飯田でございます。  全国金属労働組合は全国で約千二百の支部、分会、十六万二千人の組合員をもって組織している労働組合であります。  まず、特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案について、数点意見を申し上げます。  全国金属労働組合は、金属機械の各業種企業で働く労働者を広く組織をしていますので、当組合の組合員が働く各企業は、すべてではありませんが、この法律によって指定されることになっている特定産業の関連企業になります。  五年前になりますが、特定不況産業安定臨時措置法が審議をされていた昭和五十三年四月二十七日の参議院商工委員会において、全国金属労働組合は関連中小企業労働者雇用保障を中心に意見を述べさせていただきました。その後の審議の中で、参議院は特定不況産業安定臨時措置法の附帯決議として関係審議会の構成、運営に労働者及び必要に応じ関連中小企業関係地方公共団体の意見を十分反映させることなどを決議されましたが、関連中小企業労働者雇用安定にどれだけ実際の効果があったかについては、否定的見解を持たざるを得ません。  今回の改正案では、特定産業に指定されることになっていませんが、特定不況産業安定臨時措置法の特定不況業種となっていた船舶製造業は、特定船舶製造業安定事業協会法によって、昭和五十三年十月から五十七年三月までの期間で設備処理を実施しました。この設備処理は、実際には昭和五十五年年末までにほとんどが終わったと言われています。この当時、昭和五十四年ですが、全国金属労働組合の組合員が働く三つの企業が、負債十億円以上の大型倒産に至りました。この三企業業種は、それぞれバルブ製造業、厨房器製造、鋳鋼品製造でありますが、三企業ともすべて船舶製造業関連であります。  また、合成繊維製造業の関連になる繊維機械について言えば、昭和五十三年から昭和五十六年にかけて事業所数が三千四百八十七から三千三百二十へと百六十七減少しています。従業者数では五万四千百四人から、四万八千七百九十四人へと五千三百十人減少しています。これでは関連企業、とりわけ関連中小企業で働く労働者雇用が保障されたとは言えません。今回の改正案で、特定産業として七業種が挙げられていますが、この特定産業に関連する金属機械の実態について、まずバルブ製造業を例に申し上げたいというふうに思います。  バルブ製造業は、中小企業が多い業界であります。特定不況産業安定臨時措置法によって造船用のバルブ専用メーカーは、倒産に至る企業も多く出るなどひどい状況で、現在造船用バルブの仕事はないと言っても言い過ぎではありません。石油化学用のバルブも一昨年と比べ大変な落ち込みようであります。石田バルブ、日東機械、宮入バルブ、金華機械、和田特殊、トモヱバルブ、ウツエバルブなど、生い立ちからいって石油化学用のバルブ専用メーカーと言われるところは、現在ほとんどが五割操業であって、その五割も他の需要口によって維持されている状況であります。石油化学用のバルブは、中小企業のバルブ生産実績において、従来一〇%を占めていたものが、昭和五十六年度には七・一%、現在に至っては二%前後ぐらいだというふうに言われています。中小企業が多く乱立しているバルブ業界の各企業は、造船の落ち込み、石油化学産業などの設備投資後退、設備削減によって需要口を失い、そこにかわる需要口を確保しようと四方八方に入り乱れています。  そういう状況の中で、一方、価格は、材料費プラスアルファ程度のダンピング競争になっています。この事態が続けば、しかも政府施策によってこの事態が加速されるならば、造船用のバルブ専用メーカーが倒産に至ったように、バルブ業界に倒産企業がまたぞろ出るであろうというふうに言われています。  特定産業として七業種が挙げられていますが、機械金属の各業種がどうなるのか、そこで働く労働者雇用確保されるのかどうか、特定産業と深く関連しているわけであります。  次に、関連企業実態について、地域で見てみますと、愛媛県の新居浜市では、アルミ製錬の住友アルミニウム製錬株式会社が、昭和五十七年三月に磯浦製錬工場を停止し、同年九月に磯浦鋳造工場を停止しました。また、石油化学の住友化学工業株式会社が、昭和五十八年一月に愛媛製造所の大江エチレンプラントを休止しました。  住友化学工業株式会社の大江エチレンプラントと、住友アルミニウム製錬株式会社は、これまで地域の百社余りの中小企業工場設備の修理、保守などに年間百億から百五十億の仕事を、また輸送業務でも関連十社に百億円近い仕事を出していたそうであります。エチレンプラントの休止によって、一五から二〇%の仕事量の減少となり、関連会社の中には、従業員の一〇%から三〇%もの首切りが出されてきているところもあります。当組合の支部がある中小企業も、新規受注の激減と、親会社に入っていた従業員の仕事の確保で悩んでいます。昭和五十六年に比べ、五十七年は、仕事量で約二〇%、金額では三五%もの大幅ダウンという状況であります。  次に、全国金属労働組合の組合員が働いていた大阪の大日金属工業株式会社が、ことしの一月、昨年の十二月に申請した和議申請を取り下げ、自己破算を申請しました。負債六十億円で、五十七年十二月の二番目に負債額が多い大型倒産でありました。大日金属工業の業種は、管工事、塩ビ管、鉛管製造ですが、昨年の十月に負債三十億円で倒産した西神紙工の関連倒産であります。しかも、この西神紙工の倒産は、昨年の六月に負債六十億円で倒産したポリプロピレン、ポリエチレンの特殊織物製造の平和産業の関連倒産であります。  日本産業構造は、底辺の多くの中小企業によって支えられている重層構造になっています。改正案においては、設備の処理だけではなく特定産業生産もしくは経営の規模、または生産の方式の適正化の促進等のための措置を講ずる構造改善を推進することをも目的としています。この目的と、その結果の影響が大きいということから言って、関連企業、とりわけ関連中小企業労働者雇用の安定と並びに構造改善基本計画策定に際し、関係審議会が関連企業労働組合協議すること、事業提携計画の申請に際しては、当該事業者が関連企業労働組合協議することを法に明記すべきであります。  衆議院において「構造改善基本計画策定に際し、関係審議会において極力広範に関係労働組合意見を聴くよう努め、当該特定産業の関連中小企業等の労働者をも含めた雇用の安定に最大限の考慮を払い」また、「事業提携計画の申請に際しては、その内容により、当該事業者において関係労働組合意見を十分聴取するよう指導すること。」が附帯決議として決議されていますが、すでに述べましたように、特定不況産業安定臨時措置法の五年間の実績から言って、関連企業、とりわけ関連中小企業で働く労働者雇用の安定にとって実効性が確保されるように法に明記すべきであります。  次に、改正案に関連して、解雇の制限について意見を述べさせていただきます。  愛媛県新居浜市の例をすでに挙げましたが、人員削減についてもっと詳しく見ると、住友アルミニウム製錬株式会社の関連企業の場合、昭和五十七年四月から五十八年三月の一年間で約二百六十人が退職し、そのうち解雇が三十八人。また、住友化学工業株式会社の関連企業の場合、昭和五十七年十一月から五十八年三月の五カ月間で約四十人が退職し、そのうち解雇が十九人と新居浜職業安定所は発表しています。  整理解雇の有効要件として、裁判所の判例において、一つには必要性ということで、整理解雇を行うまでに、一時帰休、時短、配置転換、経費の節減など、企業危機を克服するための手段がとられていて、解雇を行わなければ倒産するなど、企業の維持存続が危機に瀕する程度に差し迫った状態にあること、二つには解雇基準及び基準適用の合理性ということで、整理の基準及びそれに基づく人選の仕方が客観的かつ合理的なものであること、三つには解雇手続の合理性ということで、労働者労働組合に対し、事態を説明して了解を求め、人員整理の時期、規模、方法などについて労働者側の納得が得られるよう努力したこと等が確立をしていると言えます。  改正案の目的と、現実実態から言って、判例として確立していると言える整理解雇の有効要件を含めた解雇制限法の整備がなされるべきであります。たとえ時限立法といえ、改正案に示された目的を政府が推進する以上、解雇を制限する法を整備しないことは、片手落ちと言わざるを得ません。しかも、この改正案によって、判例で確立していると言える整理解雇の有効要件があいまいにされることがあるなら、改正案について、解雇を促進するものと断ぜざるを得ません。  次に、特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案について、意見を述べさせていただきます。  特定業種関連地域の指定に当たって、地方自治体の意見を尊重することは言うまでもありませんが、地域の労働組合などが特定業種関連地域の指定を求めているにもかかわらず、地方自治体が動かない場合があります。このような場合には、地域の労働組合意見を最大限尊重して、求人倍率などを考慮しながら、強力な行政指導を行うべきであります。  最後に、北九州市の新日本製鉄八幡製鉄所関連の企業の例になりますが、鉄冷えと言われる中で、昨年北九州市戸畑区の戸畑新工業団地協同組合の実情が報道されていましたが、それによると、同協同組合は五十六年七月に製鉄所関係の機械部品メーカーなど十四社が移転し、新鋭設備での生産を始めたばかりで、言うまでもなく中小企業高度化資金などを利用しています。それが行き詰まりを訴えているわけであります。政府が推進する施策の総合性から言っても、また特定産業の関連企業で働く労働者雇用の安定のためにも、特定産業の関連中小企業等の労働組合事業者団体との協議等を法に明記すべきことを申し上げ、私の意見といたします。
  9. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次に、土方参考人お願いをいたします。
  10. 土方武

    参考人土方武君) 日本化学工業協会の土方でございます。  先生方には常日ごろから化学工業に対しまして多大の御指導と御鞭撻を賜っておりまして、この席をおかりして厚く御礼申し上げる次第でございます。  諸先生方御高承のとおり、化学工業の中の基礎素材部門でございますこの特定産業にも指定されております石油化学工業と、化学肥料工業とは、現在深刻な不況に直面しておるわけでございます。もとより、私ども個々の企業といたしましては、企業レベルにおいて可能な限り、あらゆる経営努力を行っておるわけでございますけれども、今回の不況が深刻でありかつ構造的なものであるだけに、その克服には企業の自助努力だけではきわめてむずかしい点が多くあるわけでございます。  本日は、こうした石油化学工業と、化学肥料工業の不況の現状問題点につきまして簡単に御説明申し上げて、引き続きまして新法に対する意見と要望を述べさせていただきたいと思うわけでございます。  まず石油化学工業でございますが、まず第一の最大の問題点は、石油化学原料問題でございます。日本の石油化学工業は、その発足以来原料として主としてほとんどナフサを使用してまいったわけでございますが、このナフサの価格が二度にわたる石油危機を経まして約九倍にも上昇いたしました。このために製造コストに占めます原料費の割合が七〇%にも達しまして、こうした高い原料を使用せざるを得ないことが今日の石油化学工業の困難の第一の原因と言えるわけでございます。  他方、アメリカ、カナダ等の国々におきましては、石油化学原料といたしまして天然ガスから分離されますエタンが使われております。この天然ガスの価格というのは、これらの国々のエネルギー政策の一環といたしまして、非常に安い値段でコントロールされておるわけでございます。したがいまして、この安い天然ガスを原料とする石油化学製品、これと日本の高いナフサを原料といたします石油化学工業の国際競争力が、原油価格の上昇に反比例いたしまして、日本の方が急速に低下してまいったわけでございます。これを石油化学基礎製品でございますエチレンの価格で比較してみますと、日本を一〇〇といたしますと、現在アメリカは約七〇、カナダにおきましては約四〇と非常に大きな格差があるわけでございます。  こうした原料事情に起因する国際競争力の低下によりまして、貿易上非常に大きな変化が当然起こってまいりました。またアメリカなど現在不況でございますので、石油化学製品の需要もやはり低迷しております。そのために特にこれらアメリカ、カナダなどから非常に安い石油化学製品の輸出が活発になってまいりまして、東南アジア、日本への輸出攻勢がかけられておるわけでございます。  従来、東南アジア諸国は、日本のマーケットであったわけでございますが、近年は急速にこれを失ってきておりまして、さらには直接日本への輸入が急激に増加しております。すなわち昭和五十三年当時には、エチレンに換算いたしまして約七十万トン程度は輸出超過であった日本の石油化学は、五十七年の上半期には、ついに逆に輸入超過に陥ったわけでございます。五十七年の下半期は為替の動向に助けられまして小康を保ったのでございますが、本年、五十八年に入りまして、再び輸入超過が懸念されるという現状でございます。  さらに今後の見通しにつきましても、カナダあるいはサウジアラビア、こういった天然ガス資源の保有国におきまして、非常に大規模な石油化学の新設計画がございますので、こういった供給圧力を考えますと、昭和六十年ごろまでは相当大幅な輸入超過になるように見通されるわけでございます。  以上申し上げましたような状況もとで、石油化学工業の生産は、昭和五十五年の年央を境といたしまして急激な落ち込みを見せてまいりました。これをエチレンの生産量で申しますと、たとえば端数を丸めますと、五十四年は四百八十万トンのエチレン生産、五十五年が四百二十万トン、マイナス二〇%でございます。さらに昭和五十六年は三百六十五万トン、マイナス七%、昭和五十七年にはやはり三百六十万トンとさらに減少いたしまして、実に三年連続の後退を記録しておるわけでございます。まさに十年前の水準に逆戻りいたしました。したがいまして、現在ではいわゆる生産設備が六百三十五万トンございますので、三百六十万トンの生産ということはつまり六〇%の稼働率を割っておる水準でございます。しかも今後の見通しにつきましても、国内での需要は若干回復していくと思われまするけれども、先ほど申し上げましたように、輸入が増大してまいる見込みでございますので、生産の方は昭和六十年になりましても、現在程度の低水準にとどまるというふうに見られておるわけでございます。  もう一つの大きな問題点といたしまして、国内の生産体制の問題があるわけでございます。先ほど申しました六百三十五万トンのエチレンの生産能力というのは、昭和四十年代の前半に当時の高度成長の見通しに合わせまして一斉に建設が行われたわけでございます。オイルショック前には約八〇%程度まで稼働率が上がってきたわけでございますが、オイルショックの結果、いま申しましたように六〇%を割るような低操業に陥ったわけでございます。また、石油化学工業は典型的な装置産業でございますために、このように稼働率が低下いたしますと、非常に大きなコストアップになるわけでございます。したがって、各企業といたしまして、何とか稼働率を高めたい、市場のシェアを高めたいという気持ちが働きがちな側面を持っておるわけでございます。その上に、日本の石油化学工業は一つの品目に対しまして同じような規模の企業が多数競合しております。しかもその規模自体が、ヨーロッパ、アメリカと比較いたしますと小さくて、かつ基盤も弱いといった要因があるわけでございます。さらに、先ほど来申し上げておりますように需要が低迷いたしまして、総体的に非常に大幅な過剰設備というところへ安い輸入品が入ってくるということで、こういった原因が絡み合いまして、非常な過当競争に陥っているわけでございます。したがって、原料が上がったコストアップの要因というものを、石油化学の製品の方にはね返すということができないような事情になっておるわけでございます。  こういったことによりまして、石油化学系の企業の収益性は著しく悪化いたしまして、エチレンセンター十二社の経常損益は昭和五十六年に石油化学部門だけをとりますと約六百億円程度の赤字となってまいりました。さらに昨年、五十七年にはもう一社で百億円、二百億円という赤字を計上せざるを得ないといった状況になっておる次第でございます。  そこで、石油化学工業の再活性化のための対策につきまして若干申し述べたいと思うわけでございます。もちろん産業活性化は基本的には企業の自助努力というものを主体とすべきであることは申すまでもないわけでございますが、企業の自助努力のみでは解決できないという困難な点も多くあることを御推察いただきたいと思うわけでございます。  まず原料問題でございますけれども、ナフサを原料といたします日本の石油化学工業は、先ほど来申しておりますように、エタンを原料といたします外国と比べますと——若干原油の値下がりによりまして差が少しは縮まったわけではございますけれども、依然として大きな格差が残っておるわけでございます。ただ、天然ガスより分離されますエタンというものは、世界的に量的な制約がございまして、石油化学全体の三分の二ないし四分の三は今後ともナフサなどに依存せざるを得ないという状況にございます。したがいまして、日本の石油化学工業といたしましては、まずナフサを国際価格で入手できるようにすることが国際競争力を保持する上での大前提となるわけでございます。この点につきましては、関係御当局の御理解を得まして、昨年四月から国産ナフサの価格の決定の方式が決まりまして、輸入のナフサの平均価格を基準として決められるというようになりましたので、一応国際的な価格でもってわれわれも原料を手に入れることができるということになったわけでございます。ただ、まだナフサの備蓄という問題がございまして、備蓄の費用の負担、これはちょっと諸外国にも例のない制度かと思うんでございますが、そういった特殊の負担がまだかかっておるということを一言申し上げたいと思います。  次に体制整備の問題でございますが、過当競争を排して国際競争力の回復を図りますためには、業界ぐるみで体制整備を行うことが急務でございます。昨年の産業構造審議会提言におきましては、共同生産、共同販売、共同投資といった合理化対策とともに、グループ化によりまして主要な化学製品品目に対して二七ないし三六%の過剰設備の廃棄を求めております。業界といたしましても、こうした提言に沿いまして、体制整備の一環として、まず共販会社を設立し、さらにこの会社を土台といたしまして、生産の効率的設備へ集中するとか、あるいは過剰設備の処理をするとか、早急に具体化を進めていきたいと思っておるわけでございます。こういったことを円滑に進めますためには、今回の新法による後ろ盾がぜひ必要であると、このように考えておるわけでございます。  以上のような業界としての対策以外に、個々の企業での自助努力といたしましては、従来からも相当力を注いでおります省資源、省エネルギーということに一層努力を図りますとともに、製品の構成を高付加価値化あるいは高品質化という方へ移行するという努力もいたしまして、輸入品と競合しない製品をつくっていきたい、その方面に力を注ぎたいと思っておる次第でございます。  次に、化学肥料工業の現状問題点につきまして、若干申し述べさしていただきたいと思います。  日本化学肥料工業は、農業生産基礎資材でございます化学肥料の安定供給を果たす、こういう観点から、戦前からもう法律によりまして統制を受けてまいりました。現在でもいわゆる肥料二法の枠組みの中に置かれておるわけでございますが、生産の態様といたしましては、石油化学の発展と時期を同じくいたしまして、石炭から石油への原料転換と、それから大型化というものをいたしてまいりました。ナフサ等石油系の原燃料に対する依存度が非常に高くなっております。このために、化学肥料の中心でございますアンモニア、窒素系肥料というものを中心といたしまして、石油危機影響を非常に強く受けて、コストの競争力が低下いたしました。加えて、原料の安い海外での大型設備の稼働によって、従来からのかなりの部分を輸出に依存してまいりました日本化学肥料の体質というものは非常に弱くなってまいりました。輸出の激減によりまして、相対的に大幅な過剰設備を抱えるに至ったわけでございます。  このために、昭和五十四年には、現行の特安法の対象品目の指定を受けまして、第一次の構造改善策といたしまして、アンモニアで二六%、尿素で四五%、湿式燐酸で二〇%と非常に大幅な設備処理を実施いたしました。ところが、その直後に発生いたしました第二次の石油危機影響を受けまして、第一次の構造改善事業前提が崩れまして、また、輸出が減少したということで再び大幅な設備過剰の状態となったわけでございます。この処理に新しい法律でもってまた実行していきたいと思っておるわけでございます。  今後の化学肥料のあり方につきましては、昨年の産構審の答申の中では、原料転換等によりまして今後一層コスト削減努力を行うとともに、国内の需要に見合った生産体制への組みかえを求められております。具体的には、六十肥料年度を目標といたしまして、さらにアンモニアで六十六万トン、尿素で八十三万トン、燐安で十一万トンの設備処理をするよう提言されております。これら、一次、二次合わせてみますと、五十四年以前の生産能力から、削減率はアンモニアで四一%で、尿素で六五%の削減といった非常に大幅なものになっておるわけでございます。業界といたしましては、この新法の適用を受けまして、その枠組みの中で設備処理を具体化したいと考えておるわけでございます。  引き続きまして、新法に対する意見と要望を簡単に述べさせていただきたいと思います。  その第一点は、先ほどからるる申し上げてまいりましたように、石油化学化学肥料の両業界によって若干環境の差による立場の相違がございますけれども、基本的には、いずれも、過剰設備の処理、共同生産、共同販売、共同投資といった構造改善を早急に実施し、健全な価格形成力と国際競争力を回復するためには、どうしても新法の後ろ盾が必要であると存ずる次第でございます。特に石油化学におきましては、いま共販会社の設立の最中でございまして、早急に新法の後ろ盾を得て実現いたしたいと思っておるわけでございます。  ただ、新法におきましては、事業集約化に関する独禁法の適用除外という点が盛られていない。もう一つは、アウトサイダーに対する規制が織り込まれていない。こういう点は私どもといたしましては若干不満でございますけれども、まずは独禁法との関係につきまして、公正取引委員会関係御当局との間で、迅速かつ弾力的な調整をしていただけるということを期待しております。また、アウトサイダーの問題につきましても、設備処理を行いますには、やはり全員が参加することでないと効果が非常に減殺されるのでございますので、ぜひとも御当局の指導によりまして、実効のある運用ができますようお願いする次第でございます。  第二点は、基礎素材産業の再活性化は、この新法によってすべて達成されるというものではございませんので、現在のこういった不況が、基本的には原料価格の高騰ということによって始まったわけでございますだけに、原料及びエネルギー対策につきましては、この新法以外に引き続いて格段の御配慮をお願いしたいということをあわせてお願いしたいわけでございます。  そういった御配慮をいただきまして、私ども努力してまいるわけでございますが、日本基礎素材産業というのは、技術的に見ますると世界的にすぐれておるわけでございますので、国の基幹産業としての役割りを今後とも十分果たしていけるということを確信しておるわけでございます。  以上、少し時間を超過いたしましたけれども意見の陳述を終わりたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。
  11. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  以上で各参考人の御意見の開陳は終了をいたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 降矢敬義

    降矢敬義君 ただいま、四人の参考人方々には、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、大変ありがとうございました。  限られた時間でありますので、私は、まず鈴木さんに、素材産業全般についてのお尋ねをいたしたいと思います。  鈴木さんは、いま御自分でもお話ありましたように、素材産業懇話会座長でもあられますし、また昭和電工の会長さんでもあられますので、これまでも素材産業全般について非常にお詳しいというお話を聞いております。また、お話がありました中に、素材産業懇話会で昨年の十二月御提言をされております。それは、このわれわれがいま審議をしておる法律関係もあり、また私は、ある意味ではこの法律の作成に貴重な意見、あるいはもう少し強い言葉で言えば、影響をお与えになっているんじゃないかなと思っております。  その内容を見ますと、言うまでもなく産業体制の整備、過剰処理、あるいは共販体制、事業提携、それから国際競争力の強化、あるいは活性化のための新投資の必要性、こういうことを説かれておるように私も拝聴いたしたわけでありますが、こういう、いま素材産業、非常にむずかしい状況の中で、また御説明ありましたように、素材産業それぞれについて特殊な事情がある中で、せっかく御提言になったこういう対策が、業界の中で十分合意が得られたものかどうか。あるいは、現在得られておるのかどうか。それは、新法が仮に成立した後におきましても、この問題は結局いま御提言趣旨と余り変わっておりませんので、せっかく民間で自主的に研究されました成果が各業界の中でいまどの程度合意が得られるかどうかということは、新法の施行にとってもきわめて大事であると考えておりますので、その点をざっくばらんにお話しいただければ大変ありがたいなと思っております。あるいはもう少し進んでまいりますれば、もし差し支えなければ、その合意の結果、業界ごとに、たとえばアルミ業界がどの程度のものが話し合いとして進んでおるのかどうか説明していただけるならばぜひそうしていただきたいと思います。  それからもう一つは、これは多少いま鈴木さんからお話しありましたように、素材産業日本産業において占める重要性、特にこれからの先端産業に対する関連において特別の重要性を持つんだということを御強調されたわけであります。私もそうだと思いますが、一方においては素材産業というのはだんだん悪くなれば、もう極端に言えば無用論もあることは鈴木さん御自身が御案内だと思います。また、公取が経済調査研究会というところにいろいろ研究を願ったその報告書の中にも、素材産業について、特に経済安全保障論というようなことがあるけれども、それは無用ではないか、根拠は乏しいんじゃないかということが言われておりますが、私はそう思っておりません。いま鈴木さんがお話しされたように、素材産業重要性ということは十分私は認識して御質問しているつもりでありますが、一方でそういう意見があります中で、私が、この法律は、時限立法で、五年間であります。それで山中大臣の六原則の第一に、業界の自主努力によってまず再活性化することを基本にしているんだということを言っておりますが、一方ではやっぱり素材産業の今日の状況にかんがみますと、やはり産業政策として国の手だて、生き残りのための手だてが必要だということを私たちは認識しながら審議を進めているわけでありますが、一体一定期間後に、つまりこの法律は五年間で時限でありますし、審議の過程では、通産大臣も、五年たってもだめならもうだめなんだというようなある程度強い御意見も述べられたように私は記憶しておるんでありますが、この法律案が成立し、あるいは業界の自主努力と相まって一定期間後には自立可能なものになるのかどうか、その辺の見通しについてぜひお聞かせ願いたいと思います。以上二点お願いいたします。
  13. 鈴木治雄

    参考人鈴木治雄君) いまの御質問に対しましてお答えいたします。  いろいろ御質問が多岐にわたっておりますので、できるだけ御質問の趣旨に沿ってお答えいたしたいと思いますが、なお不足の点があれば重ねて御質問くだされば補足的に説明さしていただきます。  最初の御質問は、今度の法律ができることによって、非常にむずかしい幾つかの素材産業がいい方向へ救済されるのかどうか、現実状況はどうかという御質問でありますが、先ほど私の陳述の中でも申し上げましたように、法律というものはあくまでも一つ条件整備でございまして、その中に仕事をしております私ども企業なり業界が、自分の責任で自己努力をしない限り、いかにこういう枠組みがあっても、活性化といいますか、そういうことは行われないと思います。では、それが現実にどうなっているかということでございますが、先ほど土方参考人からもお話がありましたように、企業としては必死の努力をしておりまして、それは一つは、先端技術との関係の話も出ましたけれども、決して従来の素材を単純に継続しているだけではうまくいかないだろうということで、研究開発を非常に熱心にやって、新しい時代の要請に応じた需要に対応する新製品、まあ最近の世の中の言葉で言うと新素材であるとか、機能材であるとか、複合材であるというような問題、あるいはファインケミカルとか高付加価値製品というようなものに向けて、各企業は必死の努力をしております。これは時間がかかりますけれども、漸次実っていくものだと思います。現実いままでやっております伝統的な資材につきましては、できるだけ過剰の設備をなくすとか、さっき申し述べましたように、価格競争が目に余るような汎用的な製品については共販会社をつくるとか、あるいは並行的に低稼働で生産しているようなものを集中生産して効率を上げるとかいうようなことを企業間で話し合いをしております。そういうことは、一方においては独禁法の解釈いかんによってはなかなか微妙な関係にございますけれども、私どもが見るところでは、最近は公正取引委員会も、素材産業も非常に重要であるにもかかわらず非常に困っているというようなことも相当御理解が深まったようでありまして、恐らくこの法律が成立すればそういうような問題というのは弾力的に運営されて解決がされるのだと思います。  それで、もとに戻りますが、現状はどうかということのお尋ねでございますが、確かにまだ非常にうまくいく見通しがついているというわけではございませんけれども、漸次方向性がはっきりしてきて、企業なり業界の努力の方向ができてきたと、これについては通産御当局も非常に御熱心にいろいろ指導をされておりますが、そういう点で絶望的といいますか、非常に困っておってこの法律ができてもどうにもならないという状況ではございません。  ただ、先ほど土方参考人からもお話がありましたように、該当業種の中には、エネルギー多消費産業のものが非常に多くて、ちょっと先ほどアルミニウムのお話が出ましたけれども、アルミニウムの製錬業のようなものは、この法律で対応できる面以外に電力料金という問題が非常にございまして、この問題については引き続きエネルギー政策との関係で、いろいろ通産省ともなおお話し合いをさしていただかなければいけない問題があるんじゃないかと思います。それで、一番業種として大変なのはアルミニウムでございます。アルミニウムは、日本の電力が高いというほかに、この一年間ぐらいの間世界的に非常に需給が不均衡で、供給過剰のために、アルミニウムの地金価格が異常に下落いたしまして、世界で一番電力の安いような会社すら赤字に陥ったというような非常事態といいますか、悲惨な状態でございます。しかし、幸いに最近国際価格が急速に上昇傾向にございます。それから、後ほどちょっと時限立法との関係で申し上げたいと思っておりましたけれども、石油が下がりつつありますので、共同火力等の場合においては、使用している重油が相当下がりつつあるというようなことがありまして、その限りでは電力代が下がっておりまして、若干いい方向の条件が出ております。しかし、その二つの条件でそれではいいのかといいますと、まだ大きなギャップといいますか、開きがございますので、企業関係御当局と、なお、あるいは電力会社含めて、検討しなきゃいけない問題があるというふうに考えております。  それから、素材産業は要らないんじゃないかというような考え方が世間にあると、あるいは学者の中にもそういう考えの方がある。その問題についてどう考えるかというような御質問だったと思いますが、私ども素材産業は決して斜陽産業ではないと。それで、どの素材産業も、条件いかんによって違いますけれども、一定の生産規模というものは日本に持っていないと組み立て産業との関係においてもまずいし、もしもそういうものを自然に市場原理にゆだねて短期的に壊滅するというような場合には、日本全体の経済がある時期に非常にショックを受けるんじゃないかと思います。あるいは外国から輸入するにしても、その価格の交渉力というようなものが非常に弱くなるんじゃないかというふうに思います。  それで、従来の化学工業は斜陽で、先端技術と関連するものは必要だというふうな割り切り方も現実的ではなくて、現在やっている素材産業も、いま申しましたように、一定の規模のものは必要なんだと思います。これは幸いに産業構造審議会のような場で、学識経験者あるいは消費者、生産者を交えまして、どういう程度の規模が日本経済として必要かというようなことを真剣に検討されておりますので、そういう審議、その結果としての生産規模というようなものを勘案して今後進んでいったらいいんじゃないかと思います。  それで、ちょっと話がそれますけれども、ノーベル賞を受賞されました福井謙一教授が最近新聞や雑誌に発表しておりますが、素材産業、特に化学工業の中核的な技術である化学技術、これは非常に重要であって、福井先生のお話では、今後、極端に言うと、人間を論ずるのに化学技術なくして論ぜられないような世の中になってきたと。それから、それはバイオケミストリーのようなことを言っているんだと思いますが、遺伝子工学とか、そういう関係で生命現象というものについても化学技術というのは欠かせないし、それから、あらゆる産業技術革新で前進する中で、物質というものが必ずつきまとっている。それで、物質については化学技術というものが全部関係してくるので、化学技術というものは非常に重要であると。それで、現実化学工業は停滞して悲惨であるけれども、決して失望しないで、化学工業を中核にして、こういう化学技術というものの重要性を国民全体が認識してもらわなければ困るということをおっしゃっておりますが、私どももそういうつもりでおります。  それから、先ほど先生のおっしゃいました安全保障論ですが、これは、いわゆる軍事力であるとか食糧のような意味において素材産業の安全保障論を言うということについては若干問題があると思います。むしろそういう角度よりは、組み立て産業、ユーザーとの関係においてどの程度の生産規模が必要かというような角度から現実的に検討していったらどうかというふうに思います。  それから最後に、これは時限立法で、五年たってまたもう一度やっぱりだめだということで、延長とか法律をさらにこのままにするというような問題が起こりはしないか、あるいはその間にいま取り上げられているような問題を産業が完全に解消するかというような御質問だったと思いますが、五年間というのは、考えようによっては非常に短いとも言えますが、非常に長いとも言えるわけですね。こういうスピード時代に、各企業とも五年後もなおかつ見通しがないというような形で経営をするということは許されないんじゃないかと思います。したがいまして、私どももできれば三年くらいの間に何か片をつけたいと。しかし、幸いに五年という期間があるわけですから、遅くもその間にはどういう形かで活性化を図り、消極的な意味で生き残りというんじゃなくて、必要な産業としての位置づけができて、国民の中にも素材産業が必要だ、重要だという形で承認を受けるような形の姿にぜひしたいというふうに考えております。それについては、何といっても政府に頼るというんじゃなくて、この新法の枠組みの中において、自己責任で自己努力をやっていきたいと、そういうふうに思います。
  14. 降矢敬義

    降矢敬義君 全体として業界活性化あるいはこの法律趣旨に沿った方向にだんだんまとまりつつあるということ、それから五年というのはあるいは場合によっては長過ぎると、そういう背景に業界の決意を私は認めました。  それで、もう一つ土方さんに御質問したいんですが、事業提携、つまり石油化学業界でいろいろ、いままでもちょっと共販会社のお話もありましたんですが、今度の新法では一つの大きな目玉になっていることは御案内のとおりであります。石油化学業界では事業提携、共販会社の設立その他をめぐって、あるいはグループ化の計画もあって公取といろいろお話をしている様子も私は聞いております。そこで、簡単にそのいまの実情と、それからもう一つは、お話の中にもあったんですが、今度のこの事業提携に関しては主務大臣と公正取引委員会との間の事前調整についての新しいスキームを、法案の中に書いてあるわけでありますが、多少アウトサイダーの規制がないこと、あるいはこういう独禁法適用除外がいいんじゃないかというような節のお話もありましたが、私の意見は、いまの新しいスキームが一つの型じゃないかなと思っておりますので、その辺についての評価がもう少しあればお聞かせ願いたいと思います。
  15. 土方武

    参考人土方武君) ただいま石油化学工業のグループ化の現状についての御質問と存じますが、現状といたしましては、新しいこの法律の成立を待って本格的に動き出すわけでございますが、現行法で許される範囲におきまして四つのグループを組んで四つの共販会社を設立するという体制で通産省の御了解を得て、公取委といま事務折衝をいたしておるところでございます。私どもの見通しでは、恐らく来月あるいは遅くも再来月には認可になるというふうに存じておるわけでございます。とりあえずは汎用でございますポリエチレン、ポリプロピレンといったものの共同販売をまずいたしまして、この共同販売会社の中で次第に設備合理化あるいは物流の合理化、さらには研究開発もひとつ合理化していこうと、そういったふうに生産面にまで及んでいきたいと思っておるわけでございます。これは新法の成立と相まって実行していきたいと思います。  それから、同時に新法の成立と相まちまして、ちょっと違った形になるかもしれませんが、やっぱり設備の廃棄につきましても、グループ化で、各社一律というわけじゃございませんので、グループを組みまして、廃棄するところしないところお互いに融通いたしまして、全体の量としては目的を達成するという方向に進むようなグループ化を図っていきたいと思っておるわけでございまして、これはいまのところ石油化学業界挙げてその方向に努力いたしておる次第でございます。  そこで、先ほど私も触れました適用除外、独禁法の適用除外に関連してでございますが、私ども企業から見ますと、どの程度の話し合いが独禁法に触れるのか非常にむずかしい微妙な点が現在あるわけでございまして、非常に判定に苦しむ場合もあるわけでございます。したがいまして、ただいま申しましたようなグループ化につきましては、はっきりと明文でもって適用除外していただきますと私どもわかりやすいんでございますけれども、なかなかいろんな事情でむずかしいということでございますので、関係御当局が公取とまず話し合っていただけるということで、私どもその効果はほとんど同じではないかというふうに期待しておる次第でございます。  以上でございます。
  16. 降矢敬義

    降矢敬義君 終わります。ありがとうございました。
  17. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 参考人の皆さんには大変御苦労さまでございます。社会党の吉田正雄でございます。  衆議院の審議段階を通じ、あるいはただいまの各参考人の御意見をお聞きいたしましても、現行特安法五年間の経過等を見ますと、法案によって対象業種の各企業の経営が必ずしも安定化をされなかったというふうなことだと思いますし、特に雇用面におきまして、むしろ現行法というものは首切り促進法ではなかったかという意見労働界のほとんどの意見ではないかというふうに私お聞きをいたしたところです。  そこで、当初に青山参考人にお尋ねをいたしますけれども、率直に言って紙パルプの場合、今度指定業種の中に入っておるわけですけれども、そういう指定業種として法案の適用を受けることが業界にとっていいのかどうかということ、まあ簡単でよろしいんですが、それ一点と、それからただいま紙パルプ関係企業実情というものと、それから雇用実態というものが非常に深刻であるという具体的なお話を伺ったわけでありますけれども、さらにまた新法案におきましても、雇用確保というものが十分ではないんじゃないか、法案上もその保障というものが必ずしも十分でないという懸念の念が表明をされたわけであります。  そこで、構造改善基本計画通産大臣が定めることになっておりますが、その計画の中に一体雇用確保というものをどういうふうに具体的に盛り込んでいくのかということになりますと、そのためには事前に、企業労働組合との当然事前協議というものがあろうかと思うんですね。そういう点で、私はいままで十分でなかったという反省も込めて、最もどこに重点を入れたら雇用確保というものが図られるのか、そういう点で企業との関係あるいは通産省との関係でどの点を最も重視をすべきではないかという点で御意見がありましたらお聞かせを願いたいと思います。
  18. 青山陽一

    参考人青山陽一君) 紙パルプの場合に、今回のその指定を受けることで、実際にこの業界としてはこういうことでいった方がいいのかどうかという点でありますけれども、私は労働組合の立場から考えていることがあるわけですけれども、やはり業界の抜本的な体質の改善であるとかあるいは産業基盤をもっと強固にしていくという点からいたしますと、いま進められている設備廃棄を中心としたこういうやり方だけで本当にその産業基盤が強化されるのかどうかという点について、非常に疑問を持っているわけであります。  というのは、たとえば日本紙パルプ産業にとって一番大きな問題点というのは、何といっても原料問題だと思うんでありますが、やはり私たちの立場からいたしますと、現在六割から七割、原木、チップを海外に依存をしているという、こういう態勢があるわけですけれども、こういう態勢にだけ依存するような形でなくて国内で生産される木材、これを有効に活用するというところにもっと目が向かないというと、将来にわたっての紙パルプ産業の存立といいますか、そういう関係からいたしますと大変重大な問題があるだろうというふうに思うわけで、少なくとも林業政策なり森林政策なり、こうした関係の木材に関する資源政策というものをもっとやはり追求した中で紙パルプ産業の将来にわたっての安定を確保すべきだろう、こういうふうに実は思っているわけです。  それから二つ目は、本当の意味業界協調が足りないという趣旨の発言を先ほどいたしました。それは、従来から紙パルプ経営者方々は、どうもやっぱりシェア拡大意識だけが先行して、量産をすることによってコストダウンを図るという意識がぬぐえないで今日まで来ているというふうに思うわけですけれども、近ごろは需即生——需要に見合って生産をするというような感覚にだんだん変わりつつあるんですけれども、まだ決定的に改善されてないというふうに実は思うんであります。やはり、何といってもいまの国民の紙を消費するという感覚について、私自身は実は少々疑問を持っているんですが、週刊誌にいたしましても新聞にいたしましても、自分の好きなところだけ読んで、後は電車の網棚にポンと上げるという、こういう消費感覚なんですが、そういう消費感覚に基づいて紙パルプ経営者が紙を生産するということ自体、ちょっとやっぱり問題があるんではないだろうかというふうに思っているわけです。  ただ、労働組合といたしましても、現在の過剰生産過剰設備という状態をこのまま放置しておくわけにはいかぬだろうというふうに実は思っているんです。それは、少なくともいまのその状態が続きますと、結局は労働者の賃金を初めとした労働条件なり、雇用なりに、重大な影響を持ってきておるわけですから、このままの状態を放置するわけにはやはりいかない。今度の法案の中で中心になっているのが、紙パルプの場合に、設備廃棄をとにかくやりたい、こういうふうな関係になっているわけですけれども、私どもの考え方としては、いま申し上げましたように、過剰設備過剰生産の体制というのは何らかの形によって解消しなきゃいかぬ。いかぬが、直ちに設備廃棄というような形にだけストレートに持っていくのは間違いだろう、こういうふうに実は基本的に考えているんです。すべての手を尽くして、それでもなおかつやっぱり過剰だというときには、これは設備廃棄を行うということも最終的にはやむを得ぬかもしれませんが、しかし、考え方の基本はさっきも言いましたように、労働時間の短縮というようなことで過剰度が削減できるわけですから、こういうことをまず明確にしていく必要があるんじゃないか、こういうふうに実は思っております。  それから、構造改善基本計画策定する段階で労働組合意見を十分聞き入れてほしいということを先ほど申し上げたわけですけれども、どの点を一番重点に置くかということでいま御質問がありました。  私は、やはり雇用問題では構造改善基本計画策定の段階で大臣関係審議会意見を聞く、関係審議会が具体的に大臣意見を言うという関係になると思うんですが、その関係審議会の中にもっと有効に、単にいまの関係審議会、産横審の紙パルプ部会では二つの単産の代表者がそれぞれ一名ずつというようなかっこうになっておるわけですが、これではやっぱり本当に労働者意見が通るような構成になっているかどうかというのは大変疑問がありまして、もっと雇用重視で仕事をやるんだとすれば、もっと関係審議会では労働者意見が聞けるような審議会の構成にしていかなきゃならぬだろうと、こういうふうに思うんです。その点では、少なくとも、まずその法律の中に、雇用確保労働条件確保等の問題について、構造改善基本計画計画策定関係で、たしか三条だと思いましたが、そういう計画をつくることについて義務づけると、こういうことをまずやらなきゃいかぬだろうと思うんです。  それから、形式的に関係審議会だけをやって、それで聞いたということでなくて、政府は、あるいは業界も含めて、労働組合意見を十分聞いてもらうと、それから同時に、実際問題として雇用問題が発生するのは単位企業単位労働組合関係でそういう問題が出てくるわけでありますので、具体的に構造改善基本計画に基づいて設備廃棄等の構造改善が行われるという場合には、少なくともその関係労使間でとことんやっぱり話し合いをして、できることなら労働組合がきちっと合意するという中でやっていく、こういうことが必要ではないかというふうに思っております。
  19. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 どうもありがとうございました。  それでは、引き続いて飯田参考人にお尋ねをいたしますけれども、ただいまの御意見の中で、具体的に新居浜のアルミ化学の関連企業について実態をお聞かせを願ったわけでありますけれども、もう少し個別の関連企業についてどれくらい影響があるのか、簡単にお聞かせ願いたいと思うんですが。
  20. 飯田功

    参考人飯田功君) 先ほど新居浜の状況について大まかに申し上げたわけであります。御承知のように、新居浜というのは先ほど申し上げましたように住友アルミあるいは住友化学、住友重機械という一連の住友資本の企業城下町になるわけであります。そういう状況の中で、余り名前を、固有名詞を出してもらったら困るというのがほとんどのところでありまして、具体的に出してもいいというのが一カ所ありますので、そこの例を取り上げて、ほぼ大体それと同じようなことがそれぞれの企業にあるというふうに思います。これは、住友の関連の下請企業というのは新居浜市だけではなしに、西条市とかあるいはその他のところにたくさんあるわけです。西条機械というのが西条市にあるわけでありますけれども、ここは五十六年の四月ごろには従業員が四十五人だったと、それがことしの四月には住友関係の仕事をほぼ八〇%を行っていると、そういう関係から人員を約半分の二十七名程度に実は減らしているわけです。ただ、この四十五名から二十七名に減っただけではなしに、ここの西条機械というのは第一次石油ショックの当時には百名を超えるような企業であったわけです。その後どんどん人員が減ってきて、さらに最近になって二十七名、一時のことを思えば四分の一のやっぱり労働者数になったと、こういうような関係に実はあるわけであります。これは西条機械だけの例を申し上げたわけでありますけれども、新居浜なりあるいは西条市にある私たち全国金属の支部の実態というのは多かれ少なかれこういうふうに人員が大幅に減っているという状況にあるわけです。  それから、非常に端的な例として御理解いただけると思うんですが、いま私たちは実は春の賃上げ闘争をやっているわけであります。御承知のように五けたに満たないとかあるいは五%に届かないとかいうことが非常に問題になっているわけです。ところがこの新居浜なりあるいは西条なりここらの住友関連の仕事をしていた企業では、とてものことじゃないけれどもその賃上げを社会一般的に出ているような金額は出せないということで、いまほとんどが二千円とか二千五百円しか実は出ていないわけです。この二千円、二千五百円というのも本来は出せないところだけれども、ゼロでは組合が承知しないだろうからということでもって二千円あるいは二千五百円と回答してきている。非常にその後ストライキをやってみても、幾ら交渉してみても、これが全く上がらないと、こういう実は状況にあるわけです。だから、それとたった二千円なり二千五百円の回答でありますけれども、さらに春闘の中で人員の削減をしていきたいのだというような逆提案が現実にはやっぱり出てきている、こういうような状況にあります。
  21. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 いずれにしても具体的に解雇という状況がいろいろ出てきておるわけですけれども、先ほどのお話の中で、整理解雇の場合の有効要件といいますか、そういうものが判例で確立しているのじゃないかという趣旨の指摘がありましたけれども飯田さんの所属をしておられますこの全国金属労働組合の中といいますか、経験といいますかね、そういう中ではあれですか、具体的にどういうふうな判例というものがあるのか、おわかりでしたらお聞かせ願いたいと思うんですが。
  22. 飯田功

    参考人飯田功君) 整理解雇というのはさっき申し上げましたように、第一次石油ショックがあってそれぞれの企業が非常に減量に取り組んだわけであります。減量に取り組んで、当初の段階では希望退職とかいろんな肩たたきとかいうことで進めるわけでありますけれども、どうしてもやっぱり企業の思っている予定数に達しない場合には、会社は強硬に解雇をしてくる、こういうことが実はこの昭和五十年以降大分出てきているのではないかというふうに思っているわけです。私たち全国金属の場合も、第一次石油ショック以降非常に整理解雇なるものが出されてきました。しかしながら、この会社の整理解雇に対してほとんど裁判闘争を闘っているわけでありますけれども、この裁判闘争の中では、ほぼ、一〇〇%とは言わなくとも、九十何%までは整理解雇では地裁でもって勝利をしているということであります。  具体的に申し上げますと、昭和五十年の七月二十六日に徳島地裁でゴール工業というところが行った解雇に対して同意約款違反であると、先ほど申し上げましたこの三つの解雇の要件、こういったことを裁判所はずっと述べてきて、さらにゴール工業の場合には、支部とか企業の中に同意約款があるわけでありますから、ここの同意約款を守っていないということでもって同意約款違反であると、こういう決定が出ています。  それから五十一年の七月の十九日には、福島地裁の郡山支部でありますけれども、松田製線というところが、実はこれも整理解雇協議約款違反でもって無効であるという決定を出しています。  それから同じく五十一年の九月の二十四日には、山形地裁におきまして、米沢製作というところでもってこの整理解雇の無効の判決を出しております。  次に五十三年の八月三十日には、福島地裁でもって福島製作の整理解雇、これは四十二名というような大量の解雇であったわけでありますけれども、この解雇も無効であるということでもって判決が出されています。  あるいは五十四年の十月二十五日には、盛岡地裁でもって、北斗音響というところで、これは組合も何にもなかった、圧倒的に婦人労働者でありますけれども、この婦人労働者を抜き打ち的に全員解雇工場閉鎖をやったわけでありますけれども、直ちに首切り後労働組合をつくって反対闘争をやった結果、盛岡地裁は、これは解雇権の乱用であってこの解雇は無効であるという決定を出しております。  また、五十五年の二月の二十七日には、鳥取地裁の米子支部でもって内田工業というところの解雇に対して解雇無効の決定を出しております。  五十五年の三月二十六日には、大阪地裁で大鵬産業というところの解雇無効の決定。  それから五十五年の九月二十九日には、浦和地裁でもって明峰工業というところの解雇無効の決定がそれぞれ出されております。  まだほかにたくさんあるわけでありますけれども、特徴的な例をいま申し上げました。五十五年の九月でもって私どものところもそれ以降余り整理解雇というところは出なくなってきています。そういうことで、五十五年ごろまでに非常にたくさんの整理解雇に対する解雇無効の決定がそれぞれの裁判所でもって出されているということを私たちは実際の闘いの中でもってかち取ってきているわけであります。
  23. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 次に、鈴木参考人にお尋ねをいたしますけれども素材産業の不況の最大の原因というのが、原材料あるいはエネルギーコストの上昇ということで、一次、二次石油ショックということが盛んに挙げられておりますけれども、いままでの特安法とそれから新しい法案の中におきましても、私はエネルギー政策との関連がきわめて不明確であるといいますか、エネルギー政策の面からの対応というものが欠落をしているんじゃないかというふうに思うわけです。したがって、単に設備廃棄であるとか、あるいは事業提携というだけでは、根本原因がエネルギーコスト等の上昇にあると言われているだけに不十分ではないかというふうに思いますが、その面からどのようにお考えになっておるのかお尋ねをいたします。
  24. 鈴木治雄

    参考人鈴木治雄君) ただいまの御質問は非常に重要な御指摘でありまして、先ほどもちょっと触れたかと思いますが、この新法で解決できる部門とそうでない問題があります。その一番大きな問題としては、やはりエネルギーの問題があると思うんです。エネルギー政策をどうするかということは、いまの石油がひところの予測に反して世界的に過剰になって下がる状況にありますし、まだ下がるだろうという予測もあるわけです。そういう中で国がどういうエネルギー政策をとるのか、素材産業はそれとの絡みにおいてどういうことをすべきなのかという問題が別途にあると思いますが、この新法の中にエネルギー政策を具体的に盛り込むということは、法体系としても、実際問題としても非常に困難だと思いますので、これは別途御審議すべき性質のものじゃないか。それで、確かに御指摘のように非常に重要な問題であって、その問題というものが十分に解決されませんと、この法律枠組みと、業界企業の自己努力だけではなおかつ不十分だという理解を持っております。
  25. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 もう一点なんですけれども、これは土方参考人の御意見の中にもありましたけれども、もう一つの大きな理由といたしまして、過当競争、つまり過剰設備過剰生産、そして需要の低迷ということが挙げられておるわけですけれども、いまの特安法あるいは新しい特安法によりましては、そういったエネルギー問題と関連して、根本的な原因の除去、対策というものがない限り同じような結果になって、他のお二人の参考人からもありましたように、従業員の整理というところが結果として残るというだけでは、これは非常に問題だと思うわけです。そういうことで私ども一番心配いたしておりますのが、すでに基礎素材産業で四十万人も減少しておるという事実にかんがみまして、これからの新しい法案のこの適用に当たって雇用の面から産業界としてどのようにお考えになっておるのか。また労働組合といっても、親の組合だけとの話し合いでは、俗に言う川下下請関連中小労働者意見というものが必ずしも反映をされていないというのが今日までの実態だったと思うんです。そういう点で、法案趣旨を本当に生かしていく、あるいは社会の安定という観点からも、雇用確保というものは私は最大限重視をされなければならぬと思うんですけれども、そういう点で今後関係中小企業労働者雇用安定という面からどういうふうにこの法案運用というものをお考えになっているのか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  26. 鈴木治雄

    参考人鈴木治雄君) いまの御質問でございますけれども、私どもも非常に雇用というものは重要なものだと思っています。私どもは、経営の姿勢として労使一体というような考え方で経営しております。そこで、先ほどエネルギーの問題が出ましたけれども、さらに大きな背景として、雇用確保するためには、やはり俗な言葉で言えば景気刺激、経済政策を積極的に運用して、日本経済全体が拡大基調になるということが、これは素材産業に限らず絶対に必要だと思います。そういう意味で、これは法案の問題じゃございませんけれども、ぜひ先生方にお願いしてやはり政府経済政策というものも積極的に運用されるようなことを強く希望いたします。
  27. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 独禁法との関係でお尋ねをいたしたいと思います。  これは先ほど土方参考人の方からも独禁法についての運用面での御意見も述べられておったと思いますが、私は現在の開放経済体制あるいは市場メカニズムという観点から考えますと、やはり適正な競争ということは、これは基本だと思います。競争を法等によって制限をしていくというふうなことになりますと、そのことによって一般消費者へはね返っていくということではこれは困るわけですから、そういう点で私は、独禁法というものは、むしろ産業界を基本的にはやはり守ると言ったらいいんでしょうか、育成をしていく土台ではないかというふうに思っているわけです。今度の法によって通産と公取との協議ということが盛られておりますけれども、しかしそれはあくまでも独禁法の枠内において、しかし運用面で不必要な独禁法違反が出てこないような、そういう面での配慮からああいう項目が盛られたろうと思うんですが、独禁法というものについて、私は今後も堅持をすべきじゃないかと思いますが、その点と、それからもう一つ、アウトサイダー規制につきましてお話が土方参考人の方からもあったと思いますけれども、私はやはりアウトサイダー規制についても、原則としては各企業の自主努力というものがなければいけないというふうに思っておりまして、法等で一方的に規制をするということは、これは極力避けなければいけないんじゃないかと、まさに業界内の自主的な話し合いとかあるいは通産の行政指導、いい意味での行政指導という面でそれはあってもいいと思いますけれども、法で規制をすべき問題ではないんじゃないか、角を矯めて牛を殺すというふうな結果になっては、この独禁法の弾力的な運用も、アウトサイダー規制も、結果として私はまずいんじゃないか、長い展望で考えますとそういうふうに思うんですが、これについて鈴木土方参考人意見、簡単で結構でございますが、お聞かせ願いたいと思います。
  28. 鈴木治雄

    参考人鈴木治雄君) ただいまの御質問にお答えいたしますが、競争の問題と産業政策という問題だと思いますが、非常に俗なたとえで申しますと、草競馬とダービーというようなものがあると思うんですね。いずれも競争しているわけですけれども、現在の状況では石油化学などは各企業が非常に体力消耗して、競争させていれば見物人が満足しないような草競馬の状態になるんじゃないかと。それで時限的にやはり競争する一つ一つの単位の企業を強化して、ダービーのような競争にするということが日本経済について望ましいんじゃないかと。そういう意味で、産業政策を相当配慮した条件つきの時限立法としての新法というものは、中長期的な意味における独禁政策からくる競争原理というものと根本的に背馳していないというふうに私は考えております。  それからあとの問題については、土方参考人からひとつお答え願ったらどうかと思います。
  29. 土方武

    参考人土方武君) 先ほどの吉田先生の御意見に私は基本的に全く賛成でございまして、何ら異論ございません。  ただ独禁法は、現在許されております範囲内で、たとえば合理化カルテルとか、不況カルテルとかいうものができるわけでございますので、それを極力タイムリーに活用してまいりたいと思うわけでございますが、そういうときにいまの独禁法そのものが非常に難解で、手続きが繁雑で、まことに利用しにくいというような点を私ども感じておりますので、そういう意味でいろいろお手直ししていただきたいなと思う、そういう観点から、今回通産省があらかじめ私どもの方へ話を聞いて介入していただくという意味で、むしろやりやすくなったんじゃないかというふうに感じておる次第でございます。
  30. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 アウトサイダー規制について……。
  31. 土方武

    参考人土方武君) アウトサイダー規制につきましても同様でございまして、ただアウトサイダーに対して意見を変えるように説得するというようなことが、またこれ独禁法に違反するんではないかというわれわれ心配がございまして、そういう話し合いがスムーズに行われて、十分意見を交換しての上のアウトサイダーなり、あるいは一致するなり、そういう方向に向かっていきたいと思うわけでございまして、できるだけそういった意味での独禁法の運用と申しますかがわかりやすくなればいいと思っているわけでございます。
  32. 馬場富

    ○馬場富君 参考人の皆さん方には大変きょうは御苦労さまでございました。先ほど来、貴重な意見を拝聴いたしまして、この意見に対しまして二、三御質問いたします。  最初に青山参考人にお尋ねいたしますが、青山参考人は、法改正に伴う現法の過去の実施状況から合わせまして、非常に厳しい批判と問題点が指摘されたようでございますけれども、これは全く同感でございます。そういう角度から見まして今回の改正案は雇用確保を図る上で有効なものとなるかどうかという点、不十分であるならばどのような点が問題なのかお聞かせ願いたいと思います。
  33. 青山陽一

    参考人青山陽一君) 今度の法案については、現行法関係では設備廃棄というのが主体でありましたけれども、今回は事業の集約とかこういう関係も全部入っておるわけでありまして、そうした法律性格からいたしますと、たとえば事業集約化という場合には、お互いの企業がお互いのそのメリットを求めて合併なり系列になるという、こういうふうな関係からいたしますと、当然そこには不採算部門の切り捨てのような形が起こってくるわけでして、こういう関係を重視して考えますというと、特に現行法のときよりも雇用問題については重視をしてかからなけりゃならないという、こういうふうな関係があると思います。  そこで、私が一番気にしておるのは、やはり何といっても、単に直接の企業関係だけじゃなくて、先ほど申し上げましたように、中小企業下請関連の関係の経営にも相当大きな影響が出てくるという、こういう問題もありますし、それから素材メーカーの川下関係で、いろんな関係が特に雇用問題を中心にして問題が出てくる、こういうふうな関係現行法に比べて一層強くなるという、こういうふうなことでありますので、そういう点を考慮いたしますと、今度の法案の中では特に法案の第三条の二項の関連ということになると思いますけれども構造改善基本計画計画策定に当たっては、雇用問題とそれから中小企業及び下請関連企業の経営を不当に侵してはならないというような趣旨と、それからもう一つは、分野確保法の厳格な運用というものが期されるような、そういう形をこの第三条の構造改善基本計画計画策定に当たってのやはり、何といいますか、必要要件といいますか、そういうものを明確に義務づけられる必要があるんではないか、こういうふうに思っております。
  34. 馬場富

    ○馬場富君 もう一点は、特に新特安法では、活性化という問題が一つは加えられておるわけですけれども、これにつきまして通産省等の意見を聞いておりますと、これは必ず雇用の創出になるということが言われておるわけですが、この点については私は過去の問題点から推して非常に大きい疑問があるわけですけれども、中長期的に見ましてこの活性化という問題について、雇用の拡大につながるかどうかという問題ですね、青山参考人意見をお伺いしたいと思います。
  35. 青山陽一

    参考人青山陽一君) 率直に言いまして、雇用の拡大には通じないと思います。  少なくとも過去の実績からいたしますと、段ボール原紙に係る特定不況産業安定臨時措置法のときの設備廃棄問題のときにどういう状況があらわれたかということは、先ほど意見陳述の中で申し上げたわけでありますが、労働省が発表しているだけでも三千人減っちゃった、紙パルプ産業から労働者が排出されていったというこういう実情であったわけですが、こういうふうな事態が来るときには、必ず企業側というのは、その法律の先取りをやりながら雇用削減を図るというふうな、こういうふうな状態でありましたので、実際に昭和五十四年に設備廃棄が実施されたときには三千人ということですが、その前年度からもう雇用削減がどんどん始まるというような状況が出てまいりましたので、実際には四、五千名は段ボール原紙にかかわる労働者紙パルプ産業から排出していった。あと、当然先ほども言いましたように、関係の関連下請中小企業なんかでも雇用削減が出ておるというふうな状況でありますから、そういうふうなことを考えますというと、今度の法律はさらに大きな雇用削減が到来するであろうということで、非常に不安に感じております。
  36. 馬場富

    ○馬場富君 次に、飯田参考人にお伺いいたしますが、参考人は、特に、この五年前の附帯決議等が余り守られなかったという御指摘もございました。全く同感でございます。そういう点について、現行特安法の規定に、基本計画策定する際に労働者側の意見を十分聞くという規定があるわけでございますが、これまでの経過については余りこのことが十分考えられなかったということですから、今回の場合には、この意見が必ず取り入れられるようになるかどうかという点をどのように理解してみえるかという点と、先ほど意見の中にもう一点出ました、でき得れば中小企業の、そういう関係者の意見も聞く必要があるという意見もございましたが、この二点あわせて御説明願いたいと思います。
  37. 飯田功

    参考人飯田功君) 私のところは直接の指定業種じゃないわけですね。それですべてが関連という形でもって影響されてくる、こういうことでありまして、前の法律でも、労働者並びにそういった意見を十分聞くということとあわせて、関連の企業並びにそこに働く労働者意見ということも若干含まれているわけでありますけれども、ほぼそういったことはなかったと言ってもいいと思うんです。だから、そういった観点から、今度の場合も関連企業の場合ですから、直接物を言えるという機会がほとんどやっぱりないわけでありますから、そういう観点を意見の中で強く要望として申し上げているということでありまして、ひとつ前回の足らなかった分は、今度の新法の中ではぜひともそういう下請企業あるいは下請に働く労働者、そういったところの意見というものを十分に聞くようなものにしてほしいということを強く意見、要望として申し上げているわけであります。
  38. 馬場富

    ○馬場富君 いまの労働組合代表のお二方にあわせまして、現行特安法の評価についてでございますが、この五年間にやはり設備廃棄が十五業種、平均二三%が実施されて、素材産業全体で約四十万の労働者が実は去ったわけです。労働組合の皆さんとしては、現行特安法についてこの点をどのようにお考えか、お二方の意見を承りたいと思います。
  39. 青山陽一

    参考人青山陽一君) おっしゃるとおり、現行特安法でも大変多くの失業発生と同時に、労働条件への大変な影響が出たわけです。意見陳述でも申し上げましたように、私どもの方の段ボール原紙中小メーカーが、七社廃業に追い込まれたというふうな実態からいたしますと、まさに人員整理だけが先行して、業界の体質とか、業界の活力とか、この法案によってそれが強化されたというふうな実情がまさになかったんだろう、こういうふうに実は見ております。したがいまして、先ほども申し上げましたように、やはりこうした法律もとにしてやるなら、それなりの経営者の自助努力なり、本当の意味業界協調体制の中で業界運営が行われていかなきゃならぬだろう、こういうふうに思っておりますので、現行特安法では、再々申し上げましたけれども、結局大量の失業者を出してしまったということと、中小企業が切り捨てられたという結果だけが残ってしまった、こういうふうに実は見ております。
  40. 飯田功

    参考人飯田功君) 大体ただいまの青山参考人と同じ意見を持っているわけでありますけれども、先ほども申しましたように、私のところは直接この法案によって設備の廃棄をさせられたということでもって雇用が減少したとか、あるいは失業者を出すことになったということにはならぬわけですけれども、関連会社としてやっぱりしわ寄せが来て、非常にたくさんの労働者が私たちの職場から離れていくことになった。御承知のように、私のところもこの法案のできる直前には組織人員が二十万人を超えていたわけでありますけれども、今日は十六万二千人というふうに言われているわけで、やっぱりこの間に四万人近い仲間が私たちの職場から去っていっているということでありまして、直接この法律によってそうなったかどうかということに直線的に結びつけて物を言うわけじゃありませんけれども、非常にこの間にたくさんの仲間が職場から去っていったということでもって特安法によって労働者雇用というものは全く守られるということでなしに、そのことによってやっぱり労働者が職場から離れていったという結果を招いたというふうに思っています。
  41. 馬場富

    ○馬場富君 では次に鈴木参考人にお尋ねいたします。  先ほど参考人は御意見の中で、産業政策競争政策の問題について触れられました。この点に関連いたしまして、新特法では事業提携については独禁法の適用除外にはならず、公取と通産省との調整、すなわち新しいスキームの設定でこれを実施に移すということに実はなっておるわけでございますが、業界の皆さん方としてはこの点をどのようにお考えでしょうか。
  42. 鈴木治雄

    参考人鈴木治雄君) お答えいたします。  いまの問題はできれば除外をしてもらった方がよかったんだというふうに思いますけれども、しかし、独禁法の考え方というものは一方において強くあり、産業政策との調整というものが必要なわけで、結局法律としてはこういう形に二つの考え方が調整されて条文になったんだと思います。かくなる上は公正取引委員会通産省が隔意なく現実の事態を分析して、一番いい形にスキームができるということを私ども企業の側としてはそれを期待しております。
  43. 馬場富

    ○馬場富君 次に、土方参考人にお尋ねいたします。  今回の新特安法では、新たに事業提携と活性化条項がつけ加えられたわけでございますが、これらの措置について、構造不況の産業が、これによって、活性化事業提携によって再建ができるかどうかという見通しは、特に石油産業関係を中心に担当してみえる参考人としてはどのようにお考えでしょうか。
  44. 土方武

    参考人土方武君) お答えいたします。  現状非常に深刻な不況であるわけでございまして、各企業それぞれの努力をいたしておりますけれども、まことに効果があらわれず、三年連続ますます悪化しておるという現状におきまして、何らかの対策が必要だということは痛感しておるわけでございます。  そこで、足かけ三年、産業構造審議会で学識経験者その他集まっていただいて、われわれも参加いたしましたし、労働組合側も参加されましたし、そういうところで知恵をしぼって出てまいりました結論に従って、企業の提携をし、あるいは活性化を図るということ、これはもうこれしかないんではないかといういま心境にあるわけでございまして、何とかこれを達成していきたいと思うわけでございます。われわれ企業経営者といたしましては、常に企業の存続を図るのみならず、新しい分野に進出していこうと。御承知のように、技術革新の時代でございますので、ぼんやりしておればもう後退してしまう、生き残れないということでございますので、絶えずそういう努力はいたしておるわけでございますが、先ほど鈴木参考人からもお話がございましたが、新しい技術というのはたくさんございますが、いずれにいたしましても、相当な時間がかかりませんと実りが出てきません。その間何とかいまの事業でもって技術革新の研究費用も賄い、あるいは雇用確保しということで努力をしておるわけでございまして、そういう意味ではこの方法がいまのところ最善だということで進んでおるわけでございます。
  45. 馬場富

    ○馬場富君 特に参考人は、石油化学化学肥料を中心に具体的な意見が出されました。この点については、私も五十二年以来商工委員として、特に構造不況の中で石油化学の構造不況については全面的に取り組んできた一人として、特にその中で参考人がおっしゃいました原料価格の問題、いわゆる国際ナフサとの価格差の問題、あわせまして天然ガスとの価格差の問題、これが大きい焦点だということは同感でございますが、特に技術については世界にひけをとらない日本ですけれども、この差についての問題点は、私は大きい政策上の問題であると。かつて江崎さんが通産大臣のときの五十四年の予算委員会で、私はこの問題を取り上げました。そして、結局、この石油業法の中の、いわゆる消費地精製主義というのがいまだに残っておるという問題なんです。そして、かつて石油精製業者が非常に設備拡大のときに苦労をしたと、それが一つは国の保護という形になってあらわれたが、現在やはり今日化しておるような問題の中でもこれは残っておると、これは非常に見当違いではないかと。これは当時国際ナフサが二万円の価格のときに、日本の国内ナフサと国際ナフサの差が八千円近くもあったわけですよ。こんなことで採算がとれるわけないじゃないか。幾ら日本の科学技術が進歩しておったって、三割にも近いような価格差を持った外国日本とは太刀打ちできぬじゃないかと。この枠をはめておるのは、結局国がそういう差額をわざわざつくっておるんじゃないかと。こういう点で、江崎さんにこの点を自由にさせるべきだということを、法律でも自由になっておるんだから実質自由にすべきだということを私は確約さしたわけですよ。その後業界との折衝の中でなかなか実らず、今日までこの差額がずっと続けられてきたと。昨年やっとこさいま二千円の差額の問題が出てきたと。このことが私は原因だと思うんです。こういう点で、こういう不況の中で特に石油化学の不況に陥った原因は、私はここらあたりの影響力が大きいんじゃないかと。この問題を論議せずにこの問題を論議したって始まらないじゃないかということで、ここらあたりの一つは改善策ですね、現状も二千円価格は決めておるわけですね。こういうような問題について、ひとつ突っ込んだ意見をお聞かせ願いたいと思います。
  46. 土方武

    参考人土方武君) 石油化学工業の問題点は、一つ原料問題で、一つは体制整備の問題、これはまあ車の両輪のようで、両方とも並行して進みませんとうまくいかないわけでございます。したがいまして、ここに問題になっております法律は体制整備に関連したわけでございまして、原料問題は全然別に進めていかなきゃいかぬと私ども痛感しておるわけでございます。  いま馬場先生の御指摘の点は、私ども一つは、まあ国際価格でわれわれの原料を入手したいということであるわけでございますが、御承知のように石油業法というのがございまして、われわれは自由に安い原料ナフサは輸入できないと、特定の業者でないと輸入できないということになっておるわけでございまして、その点、長い間通産といろいろ折衝してまいりまして、まあ結局のところそれに実質上近い解決策を昨年の四月からとってきたわけでございます。ただ、そう言いながら、いま先生御指摘の二千円という差額があるわけでございます。輸入価格プラス二千円が国内価格というわけでございます。以前はそのほかにまだ石油税がくっついておりましたけれども、これはおかげさんで取っていただきました。この二千円の差額の大部分というものはやはり備蓄費用ということになるわけでございます。エネルギー政策といたしまして一朝有事の際に備えて石油、石炭、これを、エネルギー源を備蓄されることは当然でございますが、われわれ石油化学原料としてのナフサについても九十日間の備蓄をしなきゃいかぬということについては、私ども納得のいかない点が多々あるわけでございますので、何とかこれを軽減してほしいということは、今後とも通産といろいろお話し合いを進めていきたいと思っておる点でございます。  それと同時に、並行いたしまして、私ども、国際的に何といっても天然ガスとナフサという差がございますので、そういう意味では石油化学というものの全体の方向を、コストの中で石油の占める部分の少ない製品、付加価値の高い、そういったスペシャリティの製品の方向に重点を置いていこうということで進めてまいっておるわけでございます。  以上でございます。
  47. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 馬場君、時間が来ております。
  48. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、あと一点だけ。  この二千円の差ですね、これは法的には自由なんです。差をつける——石油業法どれだけ研究してみても、そこに国際ナフサと国内ナフサの差をつけるという、そういうものは一つもありません。これは当局も自由に輸入できると言っておるわけですけれども、実質面になるとそういう規制があるという、不可思議な問題でございますが、ここで二千円の差がそういう当局の指導のもとに起こっておるということは、明らかにこの価格というのは国の政策的な要素でもって価格が設けられておると、差額が設けられておると。それはあなたがいまおっしゃっておるとおり同感でありまして、備蓄費だと。そういう、政策的に国が必要だとしたならば、これは国家備蓄の性格を持ったものだと私は思う。だから、これはやはり国が補助をすべき段階のものであると私は考えますが、どうお考えでしょうか。
  49. 土方武

    参考人土方武君) 備蓄をなしにしていただくことが一番いいと、その責任をなしにしていただくことがいいと思います。と言いますのは、補助金などでいただきますとまたいろいろ問題が起こって波及してまいりますので……。
  50. 市川正一

    ○市川正一君 私、日本共産党の市川であります。持ち時間の関係で、また青山参考人が何かお時間の御都合がおありだそうなので、私一括してお聞きいたします。  まず、青山飯田参考人にお尋ねいたしたいんですけれども、先ほど来問題になっておりますように、基礎素材産業からのこの間の人員削減が約四十万人と、こう言われております。また、特安法の現行指定業種からの人員削減だけでも四万人、先日私、通産省から伺いましたが、率にして一八%、こういう人員削減が行われている。で、先ほど青山参考人は、特安法は解雇促進法だと、こうおっしゃいましたが、私もその意味では全く同感であります。私は、特安法がむしろてこになって事実上解雇が強行される、かつまた下請中小企業労働者にも深刻にそれが波及していると、そういう事態を招いているんじゃないかという重大な懸念を持っておるのでありますが、私、先ほど来一連の実態もお伺いしましたが、雇用労働条件をめぐって、そういう点でなお実態的に現場の状況を、もし補足的に伺えれば幸いだと思います。  そういうこととかかわって、もう一点は、特安法では労働者への配慮ということが規定されています。この内容は、企業労働組合とが十分に話し合われているかどうかをチェックする、そういう規定だと、こういうふうに通産省も述べております。しかし、そういうことで労働者雇用問題に対処できるのかどうか、いままでの経緯やら実態から含めて。ですから、企業に対してこれだけの手厚い措置をとるならば、たとえば労働時間の短縮の問題だとか、あるいはまた労働組合合意なしには強行しないだとか、こういう労働者あるいは労働組合の立場から見て、改善すべき点があれば、ぜひこの際お聞かせ願いたい、こう思うわけであります。  次に、土方参考人にお伺いいたしますけれども、衆議院の商工委員会での参考人質疑の中で、吉田正樹副会長——おたくの副会長さんでありますが、石油化学コンビナートが立地の地域で、雇用、購買力の喚起あるいは財政等について直接間接に大きな貢献をしていると、こうおっしゃっている。そこで、私はそういう企業の社会的貢献あるいは社会的責任ということについて伺いたいのでありますが、たとえば、先ほど飯田参考人も触れられました新居浜の問題です。新居浜の瀬戸内海側の埋め立ての約九六%が住友系企業によって占められ、御承知のように、いんしんをきわめております。それには当該地元地方自治体からのさまざまな助成措置あるいは税制その他の優遇措置を受けて今日に至っているんだということを私はまず指摘いたした上で、現状は不況というこの事態のもとでも、一方ではもうかるとなると新居浜の工場を閉鎖して海外に進出する。先ほどのお話によりますと、輸入超過になった、こう言っておられます。私は、ウエートは別として、その中にはこういう開発輸入も含まれていると、こう思うのでありますが、一方地元では大量の人員削減等関連下請中小企業の事実上の切り捨て、飯田参考人もリアルにおっしゃったんですが、そういう地域経済現実に大きな打撃というか、これをやっぱり与えているわけです。私は、そういうことで企業の社会的責任、吉田正樹副会長が言っておられるようなことを果たしているんだろうかという疑問を持つのでありますが、この点いかがお考えなのかということをそれぞれ聞かせていただきたい。
  51. 青山陽一

    参考人青山陽一君) 特安法下で大量失業が出たということは先ほどお話し申し上げたんですけれども解雇だけでなくて、いろんなことが実は出てきたわけです。これは労働者労働環境にかかわるいろんな問題でありますが、配置転換、出向、賃金の引き下げ、それから期末一時金などの引き下げ、諸手当の削減、さらには定年延長がせっかく協定に持ち込めるというような状態になっておったものが中止されるとか、あるいは定年年齢が引き下げられるとか、さらに再雇用期間の短縮、福利厚生費の削減下請関連企業の整理、こういうことが現行法の中で出てきた設備廃棄等による構造改善の中で実施されたというふうなことで、直接的に雇用に重大な影響が出たというだけでなしに、重要な労働条件部分がどんどん低下をするというような、こういう実態が起こったということであります。そういうふうな状況があるものですから、非常に首切り促進というようなことをさっき申し上げましたけれども、単に雇用関係だけでなしに、そうした問題にも重大な影響が出るということをぜひひとつ御理解をいただきたいというふうに思うわけです。  それから、本当に産業活性化をするためには、やっぱりそこに働いている労働者が生き生きとして働くという環境がなければいけないというふうに実は基本的に思っているわけです。他の産業のことは余りよく知りませんけれども紙パルプ産業の場合には、先ほども申し上げましたように、非常に職場環境というのは高温多湿で、騒音の激しい職場であるわけですけれども、こういうような職場環境と、同時に、昼夜兼行で働いているという、こういう交代勤務の労働者が六割ほどおるわけですけれども、こういうふうな産業実情からいたしますと、もっと働きいい職場環境というものが本来なければいけないというふうに思うのであります。  そういうことを考えますというと、実際問題として、いままで紙パルプ経営者は比較的とにかく操業度を上げながら、しかもたくさん物をつくってたくさん売り込もうという、こういうふうなかっこうが優先してきたものですから、非常に年間操業日数も多くして、一斉休日等がほとんどもう少ない、こういうふうな状態であるわけですけれども、やはり私たちとしては、こうした労働者年間休日日数をきちっと確保するというふうなことの中で操業計画が立てられるというような、つまりそこに働いている労働者を大事にするような経営者のモラルというのが確立されなければいかぬだろう、そういうこととあわせて産業活性化を図るという施策がとられていかなければならぬだろう、こんなふうに実は考えておるわけですけれども紙パルプ産業の場合には、特に、操業短縮をやっておっても、たとえばこれは衆議院でも経営者側の方の参考人で出ておられた方が言ったわけですけれども、いま七割の操業状態、格差はありますけれども、全品種おしなべて七〇%の操業率というふうな状態の中であるわけですけれども、なかなか産構審の紙パルプ部会が言っているような夏休み等の制度化というような問題も思うようにいってない、こういうような状態でありますから、少なくとも、先ほど申し上げましたように、結果的に過剰状態を解消することのできる労働時間の短縮というのを、もっと経営者は積極的に考えていただきたいものだと、こういうふうに思っております。
  52. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 青山参考人には、お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございました。御退席いただいて結構です。
  53. 土方武

    参考人土方武君) 企業が赤字を出して、税金も払わず、無配になって、それで退職者も出てくるということでは、企業責任を果たしておらぬではないかという市川先生の御意見だと思うわけでございますが、私の自分の企業でも三十数年ぶりに今年無配になりまして、まことにそういう意味では企業責任を果たし得ず、社会的な責任を果たし得ず、遺憾に思っておる次第でございますが、あくまでもわれわれ経営者といたしましては、労使一体となりまして共存共栄を図る。また地域におきましても、先ほど来お話の出ております新居浜はたまたま私の会社の場所でございますが、全く城下町という感じでございまして、共存共栄を図っておる次第でございますが、非常に残念なことに、現在ただいまはそれが少しまずい方向に進んでおるということはもう事実でございます。ただしかしながら、私どもはいま必死になりまして企業活性化を図り、終身雇用を続けながら新しい分野に進出していこうと。むしろ現在よりも過去よりも企業を増進していこうという方向に進んでおるわけでございまして、そういう意味では必死の努力をいたしておるつもりでございます。そのために、先ほど来お願いしておりますように、この新しい法律によりまして企業の提携を図り、活性化を図っていきたいと、そのうちに技術革新にも乗っていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから輸入に関連いたしまして、開発輸入など海外に出ておるんではないかというお話もございましたが、私が申し述べました数字の関係では、まだ開発輸入は計算の中に入っておりませんで、ことしから少しサウジアラビアのメタノールが開発輸入日本へ入ってくると、来月ぐらいから入ってくるという程度でございまして、まだ日本で海外への進出の化学工業の製品はないわけでございます。ただ、将来はそういう傾向もございますが、これはやはり企業のそれこそ生き残り策としての原料の安い立地で生き延びようという政策の一つでございまして、国内の企業を休止して外へ持っていくということは意図しておるわけではございませんで、国内は別の適正な企業で置きかえていきたいというふうに絶えず努力をいたしておる次第でございます。  以上でございます。
  54. 飯田功

    参考人飯田功君) 私のところは、先ほどから何回も述べておりますように、いままでもこの特安法が直接のかかわりの中でもって設備の廃棄をやったり処理をしたりということで直ちに云々ということではないわけで、むしろそれであるがゆえにより悲惨だということが一つは言えると思うんですね。直接であれば話し合いをして、あるいは合意ができるかできないかは別問題にして、一定の期間内にその準備をするということもできると思うんですが、直接でないために、要するにそこの企業がそういう設備の廃棄をすることになったと、あるいはその企業を休止することになった、まあ一挙に今度はもう来月からその仕事は要らないよという形でもって出てくるという形になってきていると思うんですね。だから、そういうことから言えばやっぱり直接不況業種に指定されたところよりも、むしろ関連下請企業の方の、あるいは企業者あるいは労働者の方がより悲惨な状況になっているということを言わざるを得ないと思うんです。そういう立場から、先ほどから何回も申し上げておりますように、単にやっぱりそこの企業だけの労使の合意とかあるいは協議とかということではなしに、少なくとも、やっぱりそれをやることによって関連の出てくる企業者なりあるいはそこの労働組合、そういったところの意見も十分聞くあるいは協議をするということをぜひともやっていただきたいということであります。
  55. 三治重信

    三治重信君 どうも本日は御苦労様です。もう大分質疑が行われましたので、重複を避けて一、二の問題点をお聞きしたいと思うんですが、特安法の改正の施行によって今度指定されるという七業種のいわゆる過剰設備の廃棄計画とか、いわゆる構造改善案で実施までにいく、その案ができるのはどれぐらいの期間かけて七業種それぞれやられるものか、そういうような準備段階といいますか、そういうようなことについて鈴木参考人にひとつお伺いをします。
  56. 鈴木治雄

    参考人鈴木治雄君) 七業種個々に非常に詳しい知識を持っておりませんが、法律ができましたら機を逸せずに構造改善計画をつくってもらいまして、それに沿ってできるだけ早く行動を起こす。その結果がすぐ出るかということについてはそう簡単ではないと思います。やっぱり一年、二年、三年というふうに時間がかかるんだと思いますが、余り悠長にやっていますとこれ企業もちませんから、一年ぐらいかかってはっきり具体的なあれを決めて、遅くも二年目ぐらいには効果が相当出るようにしなきゃいけないんだというふうに思っております。
  57. 三治重信

    三治重信君 次に、土方参考人にお尋ねいたしますが、非常に有望とされていた石油化学工業がこういうふうにして非常に急激な不況業種になっているということなんですが、これは主に原料の問題と過剰設備といいますか、これはやはり需要の見込みを相当見込み違いをしたのか、需要は大体、石油化学工業として各設備投資をしたときの需要見込みはそう違っていないんだというのか、その点ひとつ需要の見込みを業界として持っていたやつと、もちろんこれ需要といっても数量と価格の掛け算になるわけなんですが、価格の部面で需要が特別減ったのか、それとも他の業種との競争で負けてそれだけの需要確保できないと、こういうふうなことになったのか。私はきょうこれ聞いていて、前に、三十年代の石炭産業の整備を私関係したことがあるんですが、あのときには非常に需要の問題で議論になって、需要がどれだけ確保されるかされぬかによって雇用の量も決まってくるし、企業整備の程度も変わってくる、こういうことだったんですが、今度石油化学の問題でお話を聞いていますというと、需給の調整の案は非常に具体的になって考案されておるようなんですが、需要の見込みというものが少なくとも五年程度で回復したいと、調整したいと、不況を脱出したいと、こういう御希望のようですが、それの見込みというものがある程度確信を持ててこの案ができる予定なのかどうか。
  58. 土方武

    参考人土方武君) 需要の見込み違いであったということは確かでございます。ただどうしてそんな大きな見込み違いが起こったかということになりますと、石油化学製品について言いますれば、原料のナフサが六千円から六万円にもなったと、それだけ値段が高くなりますと製品ももちろん、それに比例したほどではございませんけれども相当な倍数で上がっております。そういう値段が上がりますとやはり節約ムード、先ほど軽薄短小という言葉も出ておりましたが、たとえば包装用のポリエチレンの袋にしましても厚さを半分にするとか、それから使い捨てをやめて二度も三度も使うとか、そういうことになってまいりまして、価格が非常に何倍にも上がりました結果、需要が激減したということが一つ言えるわけでございます。さらにまたわれわれ、たとえば中国などもう少し石油化学製品を使うんではないかというような見込みを持っておったわけでございますけれども、これも値段が高くなった結果全然使われないというようなことでございまして、市場も伸びない、使っておったところもふえないというような事態になったんじゃないかというふうに、やはりこれは二度にわたるオイルショックの世界的な傾向ではないかというふうに思っておるわけでございまして、したがいましてやはりそれはそれなりに、そういう構造のもとに石油化学というものを再建していこうということで知恵をしぼっておる次第でございます。
  59. 三治重信

    三治重信君 次に、雇用の問題も相当論議をされたんですが、石炭産業のときも雇用の問題が非常に大変な問題だったんですが、これひとつ鈴木参考人なんですが、構造改善事業計画のときに経営者側としてもやはり労働組合側とよく意見を聞いておやりになっておられることと思うんです。ことに日本化学エネルギー労働組合協議会なんかの指導者の意見や書き物なんかを見ると、政策形成レベルで、また産業レベルにおいて化学エネルギー労協は使用者側と協議をして、そして意思疎通を図っていると、こういうふうに述べられておるわけなんですが、だんだん深刻になってくるときにやはりこの問題なんですが、その場合に雇用の急激な変動というのは非常にショックを与えると、できるだけ過剰設備の廃棄でも、またあるいは企業整備にしてもあらかじめ弾力的に早くから計画的にやってほしいと思うんですが、そういう配慮について特にいわゆる労働側が要求するのは、やはり雇用確保のための労働時間の短縮やそれから配備計画についての急激な配備、構造改善の特に緩和を望むと思うんですが、そういうことについての配慮を業界としてどのように考えておられるか、ひとつ簡潔に。
  60. 鈴木治雄

    参考人鈴木治雄君) ただいまの御質問ですが、私どもとしてやはり雇用というのは非常に重要なので、企業ベースでも毎日のように労働組合と真剣にその問題について討議しております。それで、何か新しい法律ができたら雇用がもっと厳しくなるんじゃないかというような見方も若干あったようですが、私どもそう思いませんで、もしもこの法律ができなかったら、いまおっしゃったようにもっと事態が厳しくなってきて対応が容易じゃないと思います。ですから現実の厳しさを前にして、法があった場合とない場合とを比較した場合に、新しい法律ができることによってそれだけ対応は相対的にはよくなるんじゃないか、そういう条件の中でいま御指摘がありましたような点についてできるだけ具体的にいろいろ配慮していきたいと思っております。
  61. 三治重信

    三治重信君 ぜひそういうふうな計画作成でも実行可能な案でひとつ進めていただきたいと思うんですが、この特定不況業種で五年ということなんですが、特にそういう意味においてやはり計画というものを早く決めていただくと、最後まで完成しなくても大どこ、第一次なら第一次でやっていて、具体的な計画については第二次的にでもということでやっていただくと私は非常にいいことかと思うんですが、いずれにしても余り、皆さん方のきょうの話で自助努力ということで努力されて、前の石炭産業経営者と非常に態度が違うなと思って、やはりそれだけ業界の厳しさというものを身を持って体しておられて非常に敬意を表します。ひとつがんばってください。どうもありがとうございました。
  62. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 他に御発言もなければ、午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、大変お忙しいところをわざわざ御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴させていただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ─────・─────    午後二時一分開会
  63. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、三治重信君が委員辞任され、その補欠として井上計君が選任されました。     ─────────────
  64. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 休憩前に引き続き、特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案及び特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案議題とし、参考人からの御意見を聴取いたします。  御出席をいただいております参考人方々を御紹介いたします。  慶應義塾大学教授正田彬君、成蹊大学教授上野裕也君、全国商工団体連合会常任理事木村純君、社団法人化学経済研究所編集部長山本勝巳君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。ただいま議題となっております両案につきまして、皆様方から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  なお、議事の進め方でございますが、まず、参考人方々から御意見をそれぞれ十五分程度お述べをいただいた後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。また、発言の際は、その都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。  それでは、まず、正田参考人お願いをいたします。
  65. 正田彬

    参考人(正田彬君) ただいま国会で御審議になっておられます特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、私の意見を簡単に申し上げたいと思います。  不況が深刻化してまいりまして、不況に対して当該業界企業を中心にして、いかにして不況を克服していくか、こういうような努力を進めること、これは申し上げるまでもなく、当該企業にとってもあるいは国民経済全体にとってもきわめて重要なことであり、また特に当該企業にとっては死活問題だと、こういうことは申し上げるまでもないわけであります。こういった不況の事態に対応するためにさまざまな努力が行われているわけでありますが、それに一定の制度法律制度を設けて、どういう形でこれに対応するかということになってまいりますと、非常にむずかしい、あるいは基本的な幾つかの問題点があると言わなければならないと思うわけであります。  今回御審議になっております法律案、これは一応現行の特安法、これを改正する、こういう形でございますが、従来の内容に加えて一定の新しい事業提携についての制度が盛り込まれているということが特徴であろうと思います。こういう法律内容としております事業提携について、一定の基本計画を主務大臣設定をして、この基本計画に合致した形で行われる事業提携について承認し、さらにそれに一定の税制上、また法律案には明示されていないようでありますが、恐らく金融上の優遇措置を講じて基本計画内容の実現を図る、こういう制度一つ設けられていると考えられるわけであります。  新しい点からまず少し問題点を申し上げたいと思うわけでありますが、企業がどういう形でどういう企業事業に関して提携をするか、これは合併という提携のいわば最も強い形を含めまして基本的に企業の自由な判断にゆだねられているということは申し上げるまでもないわけであります。企業がそれぞれの判断に従って将来の業界あるいは経済全体の動向を見通して、その判断に基づいた事業活動として他の事業者と提携をする、こういうことが予定されているわけです。この自由な将来についての企業の責任ある判断というのが、現在の経済的な仕組みのいわば基本をなしているわけでありまして、そういうものがいわば組み合わさって市場が形成され、その市場がどういう形で展開していくかということに関しては、企業が予測しないようなさまざまな状況が生じることも当然含めて対応できる体制をとるというのが現在の自由な企業体制の基本だということと考えられるわけであります。  こういった業界の、ある特定の業界の市場構造と申しますか、そういう構造というのは個々の事業者の自由な行動のいわば集合したような形ででき上がるということになるのが本来日本経済社会が予定している仕組みだと。  こういう点から考えてまいりますと、主務大臣が一定の産業構造について事業提携に関する基本計画設定し、そしてそれに従った形で産業構造をいわば誘導して形成していく、こういうことになってまいりますと、かなり問題があるというふうに考えられるわけであります。もちろん、各業界が、企業が、予測できない事態が生じるということはあり得るわけでありますが、行政庁、主務大臣が予測できない事態が生じないという保証があるのであればまたこれはいいのかもしれません。しかしながら、そこでまた予測できない事態が生じる。将来の市場の構造を主務大臣がいわば判断し、そしてそういう方向に向かって誘導し、結果的にはそういう市場構造ができ上がるということになってまいりますと、企業の自主的な判断を前提として組み上げられている日本経済の仕組みの中で自由な競争というものが阻害される方向というのが強化されていくという危険性、そういう危惧を抱くものであります。そういう意味では、企業事業提携あるいは合併を含みまして、これは自由に企業の判断に基づいて行い、そして、それが競争秩序と相反しない範囲であれば全く問題がないと、こういう形での基本的な仕組みでもって十分なのではないか、むしろ、その方が企業自己責任体制を貫徹していく上では望ましいことなのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。  それから第二点は、従来から行われております設備廃棄あるいは設備の新増設についてこれを制限する、こういうことを内容とするカルテルの問題であります。  この場合、市場の構造が一定の形でもって誘導され、しかもその中で、市場内における競争が、設備廃棄という点についても、基本計画に基づく指示を前提として、いわばお互いに事業者相互にもたれ合いながら、一社だけの責任ではなくてほかがするから自分もするという形で設備の処理を進める、こういうような仕組みというのは基本的に問題を含んでいる。ということは、企業設備処理をするということは当然あり得ることでありますし、もうすでにそうことと関係なしにいろいろな形で行っておられる企業もあるわけであります。それを横並びでするということにやはり問題があると言わなければならないと思われます。  企業設備過剰に陥っている、非常に困難な状態にあるということはいろいろな要因があるだろうと考えられます。場合によりましては、行政の指導に誤りないしは一定の判断の見通しの違い、誤りがあったかもしれない。そういうこともあるかもしれませんけれども、基本的には企業の責任だ、こういうことが言えるだろうと思います。  そういう場合に、それぞれの企業が不況に対処して自分の責任でもってそれに対応するという姿勢を、あるいは考え方を堅持して、そしてそれを乗り切るということをしてまいりませんと、不況になればもたれ合いでもって不況を回避できる、こういう体質が定着してしまうという危険性は非常に大きい。そういう意味で、この二つの点を含めまして、企業の相互依存、さらには行政に対する依存、こういう方向というのは促進されこそすれなかなか除去されはしないというふうに考えられます。  果たしてこういう形で、相互依存という形であるいは行政に対する依存ということで、一時的に不況自体に対応するということができたといたしましても、それによって企業の体質が強化されあるいは競争力がついていくのかということになってまいります。競争を回避し、あるいは自己責任体制が確立していない、こういう状況もと競争力が強化されるということを考えることはきわめて困難だというふうに思われるのであります。  そういう意味では、従来から行われております指示に基づくカルテルによる設備の処理、将来の設備のいわば市場全体の供給量についての協定と、こういう点に関しても私は疑問を持っているわけであります。  この両方につきまして独占禁止法との関係が当然問題になってくるわけでありますが、今度の新しく入りました事業提携の問題について独占禁止法の適用除外にしない、こういう形で法案ができ上がっている点は、適用除外にするということと比較いたしますと好ましい結果が出ているということは否定できないと思います。しかしながら、こういった法律というのが、制定についての議論の場ではございますが、制定されてその適用除外にしないという、こういう基本的な考え方が今後の運用においてどの程度貫徹されていくのか。日本における自由な市場経済前提とした競争秩序が、これが不況に耐え得る、あるいは構造的と言われるような——構造的ということの意味が、私は実はよく正確にはわからない、またはっきりしていない面もあるようでありますが、非常に深刻な不況にも耐え得るような、またそういうものに対してどういう形で対処するかという道をみずから切り開いていくような、そういう企業体制というのが確立されていく、そのためには、やはり競争というものが常に尊重されていかなければならないというふうに思います。  そういう意味では、この事業提携の問題につきましても、あるいは指示カルテル、設備の処理あるいは新増設の制限、こういう問題につきましても、独禁法の施行機関であります公正取引委員会が基本的な線を確立し、そしてそれを前提にしてこの法案法律化された場合には運用されるということを希望しておきたいと思うのであります。  非常に一般的なことになったかもしれませんが、以上で終わらせていただきます。
  66. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次に、上野参考人お願いをいたします。上野参考人
  67. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) 俗に産構法と申しておりますこの法案を中心としました構造不況産業に対する対策について、一般に経済学者の立場なかんずく産業調整という最近重要になってきました政策の立場から御意見を申し上げたいと思います。  御承知のように、二度にわたる石油ショックのために、非常に強い衝撃をあらゆる産業につけましたが、特にその中で強烈な衝撃を受けたのはアルミ製錬、石油化学化学肥料、合繊、電炉、合金鉄というようなエネルギーコストの非常に高い基礎素材産業であります。この種の基礎素材産業に対する影響は世界の多くの国で共通して見られるところであります。日本もこの点については同じでありまして、そこにあらわれてきました現象というのは、需要生産の非常に長期停滞、それから過大な在庫ストック、市況の低迷、稼働率の低下、それから大量の過剰設備国際競争力の喪失、それから採算割れ経営、特に累積赤字の拡大というようなことがあらわれてまいりました。これを私企業的な立場だけではなくて国民経済的なかんずく社会的、地域的な観点から見てまいりますと、大量の失業であるとか不況経済地域が方々であらわれてくるというような形で、単なる私企業的な立場からだけではなくて、国民経済的、社会的な立場からも憂慮するような事態がここ数年間続いております。  一般に、マクロ的な経済政策でこれを緩和したり除去したりすることができるかもしれませんが、御承知のように世界各国ともマクロ政策については最近限度が出てまいりまして、これを補完するものとして、どうしてもこの種の産業調整策というものを必要とするということになっております。これはどこの国もそういう立場をとってこの種の産業調整策というのを試みております。  これはまず第一点に、この産業調整策というものについて必要性と正当性という観点からどうであるかということを考えてみたいと思います。  大量の過剰設備が存在するということは、これは明らかに何らかの形で除去されなきゃならない。その除去の仕方もできるだけ非経済的な、非効率的な過剰設備を除去するようにしなければいけないということであります。  それから第二は、先ほど申し上げましたように、エネルギーコストの比率の高いという形で起こってきたこの種の調整というのからいたしますと、極端にあらわれてまいりましたのが、国際競争力の喪失という形であります。そこで、それに対してどういう形でそれが表面にあらわれてきたかと申しますと、明らかに一つは輸出の減退であります。もう一つ輸入の増大という形であらわれてまいりました。この形に対してもしもわれわれが何らかの形で対応しなきゃならないといたしますと、本来輸出の減退を輸出増大に向けるような形でのコストと価格の構造に何らかの政策措置をとるとか、あるいは輸入増大に対して直接的には輸入の規制をするとか制限をするとかというような考え方がないわけではありません。普通企業の方が自己の責任において、あるいは自己の能力においてこのようなことが短期間のうちに適用できるならば、この種の政策ないしはこの法律を必要とするわけではないということが言えます。しかし、実際には先ほど挙げた産業はすべてが大容量の設備工業であり、しかもきわめて資本集約的である巨大設備を持っていますためにこれを短期間のうちに廃棄したり、分割してそれを処理するというようなことが不可能だという産業であります。これを普通専門的な用語で申しますと、資本の固定性であると言います。そういうような資本の固定性というような大きな産業では、短期的に自己の能力の範囲でこれを行うことができます。  それから、長い間各企業は御承知のように、不況の様相を強めてきておりますから、財務的にも企業の自己の努力の範囲の中でこれを行うということは不可能ということになります。あるいはさらに別の産業転換するとかいうようなことも財務的にきわめて不振な個々の企業では、そういう転換をするかということも短期的には不可能であるということになります。  そこで、この面についてはできるだけスムーズに過剰設備を除去してやったり、あるいは経営の体質を改善したり、さらに国際競争力が強まるような形に、あるいは回復するような形に、効率的な企業を改めてつくり出してくるという必要がある。このような観点から実際にはできるだけ市場の声を聞き、企業の自主性を尊重し、企業自身の自助努力を踏まえた上で、国がこれを助けてやるというのはどこの国もとっているところであります。ECのあらゆる国でも、イギリスも、フランスも西ドイツも、場合によってはアメリカでさえもとっておるということは確かであります。  これが地域経済という名目であろうと、社会政策という名目であろうと、雇用政策という名目であろうと、産業構造政策という名目であろうと、どういう国もがとっているところであります。  私が申し上げたいのは、この考え方というのは、市場経済の原理とか、競争的市場の原理とか、自由貿易の原理と抵触するものではなくて、それとできるだけ整合的に、補完的にやるということであると言われています。その限りにおいて、この種の政策は、必要性と、正当性を認められている。同時に、その政策は、いま申し上げた自由貿易の原理であるとか、競争的市場の原理と、全体的に整合性ができるだけ確保できるようにするということが、最近のこの種の産業調整策に対する考え方の要点であります。  私の考えるところは、この法律はきわめてその点においては、いまの必要性と、正当性と、整合性のいずれもうまく勘案して、非常によくできている法律であろうと思います。その意味は、できるだけ個々の企業の自主性や、自己責任の原則や、自助努力を発揮できるようにしてある。同時に、その枠の中で、できるだけ国が手助けをするという形になっておる点。  もう一点は、これは正田参考人も言われたことでありますが、日本には明らかに独占禁止法あるいは競争政策という、一つ経済憲法と言われるような形、あるいは日本経済政策の基本点になるような考え方があることは御承知のとおりであります。したがいまして、この点におきましても、この種の産業調整策とか、産業政策は、国の法律的には独占禁止法と、できるだけいま——これ一般法と言いますが、この種の一般法と、今回御審議をいただいておりますような産構法というような特殊法との間の法的整合性をできるだけ欠かないようにしておかなければいけないというのが一点であります。  もう一つは、この種の産業調整策あるいは産業政策は、競争政策と十分に調整されていなければならないということであります。この点においては、先ほど正田参考人が言われましたように、最も重大な点は事業提携等にあるところであります。この点につきましても、この種の法案はきわめて巧妙にできています。巧妙にというのは、私はずるいと言っている意味ではありません。どういう意味かと申しますと、日本経済風土とか、社会風土に非常によくマッチしておる、実情にマッチしておると言われています。  すべて法律というものは、何も法律そのものではなくて、何か法は人のため、社会のため、企業のため、消費者のためにあるものである。法自身がそれなりのひとり歩きするとよく言われますが、それ自身は人々のためにあるということであります。  そういたしますと、この法律独占禁止法そのものも、見ますと、きわめてうまく整合性、実情に合った形での整合性を持っているというのが私の意見であります。その意味におきましては、この程度の政府の助成策は国際的にも非難されるべき筋合いのものでもありませんし、国内的に競争政策、あるいは独占禁止法上から言ってもそれほど強く非難されるべきものではない。特にこの意味におきましては、むしろ五年という臨時的な措置法になっております。  と申しますのは、この種の政策というものは、日本からいたしますと、競争政策上あるいは自由貿易の原理、あるいは競争的市場の原理という全体的な形からいたしますと、きわめて臨時的、例外的な措置であるという考え方に立っておる。できるだけその間にこれを有効、効果的にこの種の産業を再建し、再活性化するというところにねらいを置いているということに非常に重要な意味があるのであります。  最後に一つ申し上げておきたいのはこの点であります。単にこの法律は、この種の産業を救済するとかいう意味ではなくて、今後それを再活性化し、特に国際競争力確保し、さらに日本産業構造上の地位を一層高めるということにあると。その意味においては、まさに単なる再建ではなくて、再活性化するというところに力点がもう一つあるということであります。その意味では、この法律は明らかに技術革新に対しても十分に配慮をしてあるということであります。技術革新をやって、その産業がさらに強まってくるということに重要な意味があるのであって、単なる過剰設備の処理であるとかいう形での縮小ということではないと思います。この点がこの法律を中心とした産業調整策の力点のもう一点だということになっているということであります。これが五年間のうちに個々の企業はもちろんのこと、行政府においても、十分にもろもろの問題に配慮されて、できるだけ有効に構造不況産業というものが再活性化することを参考人は特に要望しているものであります。
  68. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次に、木村参考人お願いをいたします。
  69. 木村純

    参考人(木村純君) 全国商工団体連合会、略称全商連といいますが、木村でございます。  私どもは、全国各地にある民主商工会の全国組織です。民主商工会というのは中小零細な商工業者の団体であります。現在、四十七都道府県に県の連合会がありまして、全国で五百七十六の地域に民主商工会があります。会員は現在三十七万人、機関紙の全国商工新聞の読者は会員を含めて五十万人になっております。  本日は、私たち中小零細業者の意見を聞いていただく機会を与えられたことについて、まず感謝申し上げます。  さて、私は、現在御審議中の二つの改正法案について、まず結論から申し上げたいというふうに思います。  特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案については、関連の下請中小零細業者の救済に活用できる内容を含んでおると、そういう点から賛成するものでありますけれども特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案については、特定の大企業に国が援助を与えるだけで、これによって関連の中小企業あるいは労働者が救済されるとか、条件がよくなるとかそういう保証はないと、逆に労働者の首切りが促進される、そういう結果を招くのではないかというふうな危惧を抱いておるものであります。したがって、後者については反対せざるを得ません。  こういう結論に至った理由について、若干申し上げたいというふうに思います。  基礎素材産業について、これがいままでお話しになったように、第一次及び第二次の石油危機、この影響で厳しい事態になっている事情ということについてはよく承知しております。しかし、基礎素材関係の大企業は、現行の特安法のもとですでにこれまで四十万人に近い労働者失業させている、そして、関連の中小零細企業にも、仕事の発注の打ち切りを進めるということで、地域経済を疲弊させているということをまず指摘しておきたいというふうに思います。  実例を申し上げたいと思います。現行の特安法は、こうした大企業設備廃棄とともに、労働者の首切り、こういったものにいわば法的根拠を与える結果になりました。  四国愛媛県の新居浜市、ここには私ども傘下の新居浜民主商工会というものがあります。この新居浜市は、住友資本の城下町だというふうに言われておりますが、基礎素材産業一つの住友アルミ、これは昨年一月インドネシアのアサハンで年産二十二万五千トンの世界最大規模といわれるアルミ工場を稼働させております。その反面、その直後の昨年三月には、新居浜の磯浦工場を全面的に閉鎖しました。住友化学も同じように新居浜のエチレン関連部門を、昨年一月に仕事を停止する一方、同年六月には、シンガポールで年産三十万トンのエチレンプラントを操業さしております。  こういうふうなわけで、昨年の新居浜市では、失業者の増大、それに関連下請企業の受注減によって大変な苦境に陥って、現在でも打開策がないまま、私ども全商連傘下の新居浜民主商工会に加盟している中小業者だけではなくて、多くの中小業者がいま深刻な状態に置かれております。  愛媛県当局は、こういう事態をどう見ているか。県商工労働部商工課がまとめた「構造不況からの脱出」という報告書があります。これによりますと、「素材工業部門は発展途上国の開発援助、あるいは海外進出の方が期待される」というふうに述べております。したがって、先ほど申し上げたように、基礎素材産業、こういうふうなものが、今後とも海外投資を重点にして、国内からどんどん撤退していくんではないかという、そういう不安を地元住民に与えております。  こうして新居浜市では、住友アルミや住友化学の海外進出で、直接犠牲となった労働者や、関連下請業者だけではなくて、市全体が活気を失ってきております。新居浜市の中心的な商店街に昭和通りというのがございます。ここには約四百店の店舗があるわけですが、昨年の秋には四十八店が閉店した。年末にはさらに加えて三十五店が店を閉めるというふうなことで、まさに市内の目抜き通りが歯抜け通りになっているというふうに言われるほどさびれてきております。また、いわゆる町の電気屋さんと言われる家庭電器販売店、これも新居浜市でこの一年間に十店舗が廃業をしてしまった。市民の購買力がほとんど出ない、売れない。そういうふうなことで採算が合わなくて廃業するという憂き目に遭っているわけですが、そのうちの二軒の場合は奥さんが蒸発してしまう、こういうふうに家庭の崩壊まで招いている。  このように地域経済を破滅の方向にいま追いやっている事態を放置しながら、基礎素材産業というのは、国民経済にとって大きな役割りを果たすのだという美名のもとに、特定の大企業だけに資金の援助や税制上の優遇措置、これを新たに設けるという今度の新特安法案については、その内容からいって大企業だけに奉仕するものというふうに言わざるを得ません。  新居浜市の例でも明らかなように、これによって特定の大企業だけは利益を得るでしょう。しかし、これは地域経済の発展に還元されないで、地元の中小企業、そして労働者の深刻なこの状況を救い得ないということは、この法律だけではもう明白なことであります。  衆議院段階での審議の中で、政府企業の甘えは絶対に許さない、企業の甘えを徹底的に排するということをしきりに強調しておりましたが、われわれ零細な業者、多くの下請業者の立場から見ますと、この新特安法案そのものが企業の甘えにこたえているんではないかというふうに見ざるを得ません。大企業はそれだけ力があると思います。また、大企業はそれぞれグループがありますから、グループの力を結集して努力して解決をするということが強調されなければならないんではないかと、私ども中小業者の置かれている状況から見れば、そう言わざるを得ないのであります。  さて次に、特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案について、これに賛成をするという理由を申し上げるとともに、私ども零細業者の立場から、率直な要望を、この機会にお願いしたいというふうに思います。  通称城下町法案というふうに言われているこの改正法案は、新特安法によって大企業設備の廃棄だとかその他の処理を進めるとき、その犠牲が、労働者や、関連中小企業にも及ぶというふうなことは先ほどお話ししたとおりですが、この関連の中小企業に対して一定の救済策をとろうというものです。特に新商品、新技術の研究開発、需要の開拓、人材養成などの新分野開拓事業に対する援助、こういったものが新しく対策として盛り込まれております。そういう点は私たちは活用できるという面から評価できるというふうに思っております。したがって、この改正案が成立すれば、直ちにこの法律の目的に沿うように地方公共団体を初め積極的な行政によって対策が前進するように希望するものであります。  たとえばこれらの特定不況地域の中小業者は、いま現在やるべき仕事が全くないという深刻な状況であります。新分野開拓事業の実施計画をつくって都道府県知事に提出すると、その承認を受けて、実施をするというふうな段取りになるわけでありますが、そういうふうな承認を受けるまで仕事をどうするかというふうな問題も、いませっぱ詰まった問題となっております。地方公共団体は、こうした親企業に対して仕事を単純に打ち切るということではなくて、その地域における社会的責任を果たすように求めて、たとえばグループ内の別会社の仕事をあっせんするとか、そういうふうなことを指導できるように地方公共団体が努力するというのもその一つではないかというふうに思います。  また、特定地域を含めて、日本全体の雇用問題も解決し、地域の中小企業全体に活気を取り戻すために、次の事項を実施するようこの機会にお願いしたいというふうに思います。  一つは、官公需を地元の業者を中心に積極的に出してもらうということです。特に深刻な事態にある特定地域の場合は、創意工夫して官公需を生み出し、そして地元業者に仕事を保証するようにお願いしたいというふうに思います。  二つ目には、国及び地方自治体の公共事業を、町場の大工さんや、中小の建設業者がやれるような、地域住民に身近な上下水道の建設あるいは生活道路の整備、高校増設、こういった住民生活に密着した事業に重点をぜひ置いていただきたい。大型プロジェクトということになると、なかなか町場の建設会社は手が出ない。そういうところから町全体が低迷をするということにもなっておりますので、ぜひともそういうふうなことにお願いしたい。  現在、全国で中小業者は五百万いるというふうに言われております。労働者も四千万人というふうに言われておりますが、その三分の二は中小企業関連の労働者であります。したがって、現在低迷している中小企業全体を底上げしていく、こういうことになれば、労働者の賃金のアップもできるし、雇用の増大もできると。そういうふうな意味で、中小業者の低迷している景気動向を上向くようにてこ入れするということがいま緊急に必要なことではないかというふうに思います。  三つ目には、大幅な所得税や住民税の減税をやるとか、福祉や教育予算を拡大するなどして、国民個々人のふところを豊かにしてもらいたい。そういうふうにしていまの消費不況を打開することができれば、特定地域も含めて活気を戻せるのではないかというふうに考えます。  以上をもって私の意見を終わりたいと思います。
  70. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  次に山本参考人お願いをいたします。
  71. 山本勝巳

    参考人(山本勝巳君) 社団法人化学経済研究所の山本でございます。  私は、特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案特定産業対象業種としております七業種のうち、石油化学工業、化学肥料製造業及び化学繊維製造業など広範囲の広い意味での化学工業を調査研究しております立場から意見を述べさしていただきたいというふうに考えます。  法律案が、特定不況産業対象業種としております七業種は、御承知のように、わが国基礎素材産業として重要な地位を占めておりまして、加工組み立て産業など関連産業の発展と国民生活の向上のために、引き続いて開放経済体制のもとにおいて、国際競争に耐え得るような形で安定的に発展することが求められている産業であるというふうに私は考えるものであります。  中でも石油化学工業を中心としますわが国化学工業は、工業統計表で見ますと、たとえば昭和五十六年で従業員数で約四十一万人、製品の出荷額は十八兆円ということでございまして、製品出荷額で見ますと、輸送機械の二十八兆円、電気機械の二十六兆円、食料品の二十四兆円、一般機械の十九兆円に次ぎまして第五位の産業を占めているわけでございまして、鉄鋼業の十七兆円を上回るわが国における最大の基礎素材産業というふうに言えるわけでございます。そうした化学工業の約半分を占めるのが本法律対象業種となっております石油化学工業、化学肥料工業並びに化学繊維の三業種であるというかっこうになっているわけでございます。  化学工業に含まれております三業種を初め、法律案の特定不況産業対象業種に共通する大きな特徴を、私はやはり主要な生産プロセスに化学反応を利用する産業が多いというふうに理解しておるものでございまして、これらはいずれも石油エネルギーの多消費産業というふうに言えるのではないかと思うわけでございます。  第一次石油危機以降におきまして、わが国産業構造につきましては、いわゆる基礎素材産業と加工組み立て産業の二極分化ということが言われておりますけれども、このことは、言葉をかえて申し上げますと、主要な生産プロセスに主として化学変化を使う基礎素材産業が低迷する一方で、いわば主たる製造プロセスに物理的な加工を利用する加工組み立て産業が好調であるというふうに言いかえることもできるのではないかと思うわけでございます。  すなわち、言ってみれば、一九六〇年代において石油エネルギーの安価かつ安定的な供給を背景にわが国産業構造の重化学工業化を担ってまいりましたこうした基礎素材産業が、七〇年代における二度にわたる石油危機を経まして、構造的な転換期を迎えている、これが現在の姿ではないかというふうに考えているわけでございます。  中でも石油化学工業に代表されます業種は、石油を、化学反応のためのエネルギーとして利用するだけではなくて、これを主たる原料として使用しているところが、他の候補四業種と基本的に異なる点であろうというふうに考えているわけでございます。したがいまして、こういった基礎素材産業の特徴と、化学工業の実態を踏まえまして、今回の法律案につきまして私の意見を以下述べさしていただきたいというふうに考える次第でございます。  まず、対象候補業種である基礎素材産業に対して法律が必要であるという点につきまして、幾つか論点をしぼりまして、特に化学工業を例にとりながら御説明をしたいというふうに考えるわけでございます。  御承知のように、わが国化学工業は、第二次大戦によりまして壊滅的な打撃を受けたことは皆様方御承知のとおりでございますけれども、戦後における食糧増産の要請によりまして、化学肥料を中心に急回復をいたしまして、早くも昭和二十五年には戦前水準を回復すると、以降昭和三十年代には石油化学工業を中心にして急激な成長を遂げてきたことは御承知のとおりでございまして、いまや世界の化学工業生産の約一割を占めておりまして、アメリカに次ぐ世界第二位の規模を誇り、いわば国民生活の衣食住のすべての分野にわたって広く貢献している産業であります。  こうした成長の過程におきまして使用する原料は、御承知のとおり、カーバイドであるとか、あるいは石炭であるとかいったものから、逐次石油中心になりまして、生産する品目自体も、化学肥料等々のいわゆる無機化学工業製品から、合成繊維、合成樹脂、合成ゴムといったような石油化学工業を中心に構造的な変化を遂げまして、いまやこれら石油化学工業製品が化学工業の全体の約五〇%を占めているという状況に至っているわけでございます。  したがいまして、こうしたわが国化学工業の構造から見ますと、石油化学工業の消長は、わが国化学工業全体さらには化学工業の中核的化学企業にきわめて重大な影響を与えるということと同時に、これらの製品を利用する広範囲の諸産業にきわめて深刻な影響を与える産業になっているというふうに言うことができるのではないかと思うわけでございます。  このことは、同時に、石油化学工業等の基礎素材産業が、加工組み立て産業等にいわば良質な材料、素材を安く安定的に供給することが求められているというふうに言いかえることもできるわけでございまして、基本的には企業の自主的な努力により、開放経済体制下のもとで十分国際競争に耐え得る産業として発展することが重要であるというふうな産業であるということを示していると思うわけでございます。  しかし、こうした前提に立ちつつも、先ほど参考人の方から御意見ございましたけれども、やはり市場原理に基づく企業の自主的な努力だけでは解決できないいわゆる産業実態というものがあるわけでございます。  たとえば石油化学工業については、現在国際競争力の大幅な低下、さらには設備の大幅な過剰という問題に直面しておりますが、これを市場原理に基づく優勝劣敗によってのみ解決することは著しく困難だという産業特性がございますし、かつまた、仮にこうした事態が発生した場合には、雇用あるいは地域経済にかなり深刻な影響を与えるであろうということが想定されるわけでございます。  たとえば、現在わが国においては、エチレン製造設備を保有する十二社を中核にいたしまして、全国に十五の石油化学コンビナートが形成されておりまして、一つのコンビナート当たり、直接常用雇用者数といたしましては千五百人から二千人の労働者が働いているということでございます。周知のようにエチレンの製造設備というのはエチレン、プロピレンといったようないわゆるオレフィンのほかに、たとえば合成繊維などの原料になりますいろいろな芳香族の原料、さらには燃料油といったようなものを同時に併産するプラントでございまして、たとえば通常エチレン三十万トン設備と言われるような設備からはほぼこれらの製品が年間百万トンぐらい不可避的に連産をされるという体系になっているわけでございまして、これらからきわめて効率よくいろいろな石油化学製品が生産されている。こういう生産体系を形成しているわけでございまして、したがいまして、エチレンの製造設備あるいは一部の主要な連産品の急激な設備処理というのは、こういったコンビナートの全体の生産体系の崩壊をもたらす危険性を持っているわけでございます。特にエチレンの製造設備について見ますと、一番典型的な例は、一社、一工場、一プラントというようなケースがあるわけでございまして、こうした場合、一プラントの休止というのは、そのまま企業の存続につながるということになるわけでございます。したがって、こうした企業にとって一プラントの休止というのは、化学工業の設備の特性から見まして、その転用がほとんど不可能であるという実態から勘案しまして、言ってみれば、一万数千トンの鉄くずを残すだけというような最悪の事態になる可能性があるわけでございます。  したがいまして、こうした事態を極力回避するためには、やはり競争政策との調整を図りつつ、高効率生産設備生産集約化するといったような手段を講じつつ過剰設備の処理を進めるとともに、事業の提携などによってこの国際競争力の回復に努めるということ、さらには、その一方で積極的な産業活性化を図るということがどうしても必要になってくるという構造になっているわけでございます。  こうした事業提携のメリットについては、すでにたとえばポリオレフィンにおける四社の共販計画等で幾つかの試算がなされておりますけれども、具体的には高効率生産設備への生産の集約であるとか、あるいは銘柄の統合による生産合理化、さらには物流、販売経費の削減、さらには将来的な共同投資メリット等によりまして、試算によりますと四グループ全体で年間四百億近いコストの低下が予想されるというようなことがあるわけでございまして、こういったことによるコスト競争力の回復メリットというのはかなり大きいということが考えられるということがあるわけでございます。  もとより、こうした設備の処理、さらには事業提携が市場原理を大きくゆがめるということはもちろん避けなければならないわけでございますが、たとえば石油化学工業を全体的にとらえてみました場合には、輸入品の存在あるいは原料基盤を異にする化学製品間の競合、さらには他素材との競合あるいは大量の化学製品を購入する需要産業実態等々を考慮すれば、現在予想されている程度の事業提携等々には大きな問題はないんじゃないかというふうに考えられるわけでございます。  このうち輸入品について考えますと、予想される当面の世界的な需給見通しと、国際競争力の問題を前提にいたしますと、少なくとも輸入制限を行わない限り、経済原則にのっとって輸入品が入ってくるということはかなりの確率をもって予想されるわけでございます。  それからもう一つ基礎素材産業にとって法律を必要とする理由は、石油業法あるいは電気事業法あるいはガス事業法といういわば石油エネルギー政策に関連する政策との問題でございます。先ほど来、私申し上げておりますように、基礎素材産業は、一般にエネルギー多消費産業でありまして、特に石油化学工業においては、これまで化学反応を効率よく進めるために主として高温、高圧反応といったことを主要な生産工程に利用しております一方で、石油製品の一部でありますナフサを原料としております関係上、こういった石油エネルギー政策の影響をきわめて強く受けるという立場にあるわけでございます。  先ほど来申し上げておりますように、その意味におきましては、従来の原油が安価かつ安定的に供給されておりました背景の中で、石油エネルギー政策に支えられてこれらの基礎素材産業は順調な拡大を遂げ、同時に国際競争力を強化して、そういった基盤に立って組み立て加工産業に良質の素材を供給するという役割りを果たしてきたわけでございますけれども、御承知のような、七〇年代における二度にわたる石油危機を経まして、こうした条件が大きく変化をしてきているわけでございます。  したがいまして、現在、政府での総合エネルギー調査会でも長期のエネルギー需給見通しあるいはエネルギー政策自体の総点検が行われ始めておりますけれども、今後はこういった点検に際しましては、やはり基礎素材産業産業特性を十分考慮され、こういった政策との整合性が一段と図られることが必要になっているんではないかというふうに考えるわけでございます。  それからもう一つ化学工業を中心といたします基礎素材産業を考える場合考慮していただきたい点は、わが国化学工業における産業組織の特殊性と、国際的な競争関係の問題でございます。  まず、わが国化学工業の特徴は、法律案が対象としております石油化学あるいは化学肥料など基礎的な化学品を生産する企業と、通常ファインケミカル製品と呼ばれ、近年かなり順調な成長を遂げておりますいわゆる加工型の化学品を生産する事業主体が異なっているという産業組織上の特徴がございます。これはこうした事業主体の差というものは、欧米の巨大企業と比べますと異なる点でございまして、このことがわが国企業がたとえば石油化学事業から撤退をいたしまして、化学工業内部における他の成長部門に経営資源をスムーズにシフトをしていくということが困難になっている理由一つとして挙げられるんではないかと思うわけでございます。  それからもう一つ、これとの関連で考慮すべき点は、先進工業国においてはいずれも化学工業が主導的な産業を形成しかつ巨大な化学企業が、多国籍的な事業展開を含めまして強力な事業基盤を形成している、こういう事実でございます。たとえば、世界最大の化学工業国でありかつ石油、天然ガス等の資源国でもありますアメリカにおきましては、ケミカルメジャーあるいは石油メジャーが、事業の国際化、多角化、高付加価値化というようなことを積極的に進めているというのが現状でございます。また西ドイツにおきましては、旧IG系三社を中心にきわめて寡占的な、これらの三社が寡占的な地位を占めまして、総合的な化学事業をやはり多国籍的に展開をしているという事実がございます。一方、フランス、イタリアなどにおきましては、国営エネルギー資本を中核としたいわば国家介入によりまして、基礎的な化学部門の強化が図られているという事実がございます。  さらに発展途上国におきましては、サウジアラビア等々の産油国は言うまでもなく、非産油途上国におきましても、国家の積極的な助成によりまして、一定規模の石油化学工業等の育成が進められている、こういう状況があるわけでございまして、基本的には世界的に見ますと、石油化学工業等の基礎的な化学部門においては、石油メジャーあるいは国家の影響力が増大するというような国際的な競争関係の変化があるというのが現状でございます。  したがいまして、わが国化学工業におきましては、こうした国際的な供給構造の変化を踏まえて、同時に国際的な競争下の中で生き残るための条件整備を進めるということが、素材産業としての石油化学工業に課せられている大きな問題になっているというところに注目すべき点があるんではないかと考えるわけでございます。こうした事態は、今回の原油価格の低下ということによっても基本的には変わるというふうには考えられないわけでございまして、その意味におきましては、法律案に基づく構造改善の推進が求められているところではないかというふうに考える次第でございます。  とはいいましても、化学工業は、本質的に技術集約型の装置産業でございまして、これを維持発展さしていくためには、やはりすぐれた労働力が不可欠であるということからも明らかなように、やはり法律運用に際しましては、十分雇用対策等々に配慮されることが重要ではないかというふうに考えるわけでございます。  同時に、設備の処理あるいは事業の提携等においては、関連中小企業へのいろんな影響ということも十分予想されるところでございますので、法律の目的に沿った構造改善の実効が上がるような形で運用されることを期待するものでございます。  以上をもちまして私の意見の陳述を終わらしていただきます。
  72. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ありがとうございました。  以上で各参考人の御意見の開陳は終了をいたしました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  73. 降矢敬義

    降矢敬義君 参考人の先生方には、大変貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。  限られた時間の中でございますので、問題をしぼって私は質問さしていただきたいと思います。  まず第一番に上野先生にお伺いしたいんでありますが、ただいまこの法律産業調整の問題に関連いたしまして、正当性、必要性、そして自由貿易、自由競争の原理との整合性というものを説明されまして、高い評価を下されたものだと私は思って聞いておったんでございますが、そのときに、実情に合っている、あるいはわが国経済風土、社会風土によく合っているという意味で整合性が高いんだということを御説明されましたが、それはどういう点がそうであるのかということをまず第一にお伺いしたいと思います。
  74. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) 日本経済風土とか、社会風土というのは、美徳的な発言をいたしますと、きわめてハーモニー、協調の社会である。それから明治以来、日本では、先進国へキャッチアップをしなきゃならないという形で、政府企業も個々人もそういう形で物事を行ってきた国であります。そのために、自然のうちに、一つの組織あるいはタイプ、たとえばすべてのものが集約的、凝集的に事を行うという風習が身についておるわけであります。他方、欧米の諸国というのは、きわめて個人主義に立ちまして、インディビデュアリズムに立ちまして、その中できわめて競争をしていき、その競争のメリットを活用するというふうな国民性を持っております。  戦後になりまして、一つはそういう経済民主制度とか、個人主義が成り立ったところの競争的な社会というのが要請され、同時に日本はその道をとってきたのであります。しかし、現在の時点のところで考えますと、これが全面的に西欧的な個人主義に立脚したところの競争的な社会というわけにはまいっておりません。事実上そういう形で運用されなきゃならない場面あるいは経営の面におきましても、そういう経営の仕方をしているところがたくさんあるわけであります。で、どうしてもその意味からいきますと、この二つの物の考え方というのは何とか調整され、最も両方のいいところがうまくかみ合って日本経済進歩、社会の進歩に役立つように動いていかなければいけない、これが一つの点であります。  それからもう一点は、これは特にイギリス、フランス等々に代表されるように、独占禁止法とか競争の物の考え方につきまして、事後的に弊害を規制するという考え方と、アメリカにおける事前的にその弊害を調整してしまうという考え方とあります。この二つにもそれぞれの物の考え方がございまして、長所、欠点があるというわけであります。日本のこの点の戦後の運用の仕方もどちらかといいますと形式上は事前調整主義をとっておりますけれども、実際上は長い間やはり事後調整的なあるいは事後規制的な物の考え方がかなりずっと行われてやってきたわけであります。そういう意味におきましては、しばしば政策上これをきわめてうまく協力的あるいは協調的あるいは調整するという形で運用されてきた面が多いわけであります。この物の考え方は、一つには日本の特徴でもありますので、その意味においてはこういう形の調整は非常に実情に合っていると、こういうふうに申し上げたわけであります。
  75. 降矢敬義

    降矢敬義君 ありがとうございました。  次は上野先生と正田先生に、お二人にお伺いしたいと思います。  この新法の一つの新しいアイデアといいますか、それは御指摘の事業提携のところにあるんだと思います。通産省と公取の間の立案のいろんな過程における議論はともかくといたしまして、今日でき上がっているこの法律を見ますと、新しいスキーム、競争政策と産業調整政策のうまくマッチしたものだと、こう私は理解しているんでありますが、先生方の御陳述の中にも、やっぱり企業の自主努力、政府に対する、行政に対する甘えというものを避けて、それは絶対いかぬという前提に立ってこの法律を評価されているようでありますが、私たちも全く同じ考え方であります。そういう全体の枠組みの中で、この事業提携の問題が現実運用されていく場合に、つまり通産省、公取の間の承認あるいは意見調整、こういう現実運用されていく場合に、特に注意すべき点はどういうところにあったらいいのかという点でお気づきの点があればぜひお示し願いたい。運用上格別やっぱり留意すべき点があればお示し願いたい。  それからもう一つは、この法律についてわれわれ審議をしてきたときにしばしば同僚議員から御質問あったんでありますが、このアウトサイダー規制という問題が法律の上には出ておらない。大臣大臣なりの御見識で御決断されたという御答弁がありましたが、両先生としてこの点をどういうふうにお考えになっておるのかお示し願いたいと思います。
  76. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) 運用上留意すべき点というので申し上げますと、一つは、これも一種の行政機関間の覚書に基づくところの運用ということになると。このことは明らかに両政策、つまり一つは独禁政策、競争政策を維持促進する当局である公正取引委員会と、片一方は産業調整あるいは産業政策を維持促進するところの機関である通産省との間に全体に大きな視野の立場からうまくやれるかどうかという点であります。はっきり言いますと、基本的には産業政策競争政策、あるいは産業調整策と独禁政策というものの間にもう少し全体的に調整するような機関なり機能があった方がいいのではないかというふうに考えられる点が一つであります。ということは、きわめて運用上うまくいかないときには、基本的にこの問題で二つの政策の意思決定が行われるかもしれないと。その結果、実態的にこの重要な問題が、ある短期間のうちに有効に活用されなくなるかもしれないということになるかもしれないわけです。これがこういう覚書の要請、あるいは広い意味でいきますと政府機関による行政指導にゆだねられるということの問題であります。これはもろ刃の剣でありまして、非常にうまくいったときにはほめられる、非常にまずくいったときには非常に欠陥を露呈するという点であります。  それから第二番目は、ある程度この問題はすべて客観的な資料の中で議論尽くされるかという点の問題であります。と申しますのは、たとえばアメリカでも、独占当局がこの種の問題を判断するに際しては、かつてアメリカは、大分国内的な市場の条件なり集中度の要件なり市場の支配力なりというものについて判断をしておった。ところがいまやこの問題はきわめて国際的になってきた。国際的ということは、市場の集中度の度合いであるとか、支配力の問題というだけではなくて、国際的な観点でこれを見なければならないと。それからまた調整策なりそういうことをやっているときにこの点においても国際的に見なければならないということであります。この辺が両方の当局の見方の中にどのように考えられてくるかという点であると思います。  もう一つ、アウトサイダー規制についても……
  77. 降矢敬義

    降矢敬義君 一緒にお願いします。
  78. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) アウトサイダー規制につきましては、これが少なくとも独禁政策を十分に尊重し、競争政策を十分に尊重するという点と、それから企業のできるだけ自主的な判断あるいは自由企業体制の根幹であるところの企業自己責任の原則というのをできるだけゆがめないし抵触するようなことをしないというのがこの法案の重要な点の一つであります。そこで、すべてこの法案の考え方は、企業側が自主的に計画を提出し、あるいはこの法案に盛られたところのもろもろの共同処理を行うとか、あるいは事業提携の計画をつくるということ、あくまでも企業側の自主的な判断と自主的な責任において行うということになっております。そこで、その範囲の中でやるのであって、それを望まないあるいはそうしないというものについてまでアウトサイダー規制という形において踏み込んでしまうということは、これは独占禁止法趣旨にも合いませんし、自由企業体制の趣旨にも合いませんし、同時にそれは企業の自由企業体制そのものをゆがめる形の統制色を持ったものになると。政府の統制色を持ったものになる。これは日本の基本的な経済政策の原理からすると行き過ぎである。その点において、仮にこの法案がねらっているところのものの有効性が傷つけられたとしても、多少傷つけられた、あるいは傷つけるという言葉は悪いから弱められたといたしましても、この点のところはむしろ甘受すべきであろうというのが私の意見でございます。
  79. 降矢敬義

    降矢敬義君 正田先生お願いします。
  80. 正田彬

    参考人(正田彬君) まず最初に運用についてということでございます。いま上野さんからも御指摘がありましたように、この法律は、一方においては産業政策、他方においては競争政策、こういう両者とかかわり合っている、こういう御指摘がありました。大体そういうふうな御理解だろうと思うのであります。  ただ、基本的に考えてみますと、これは私の考え方なのでありますが、政策の調整問題なのかという点をやはり一遍検討してみる必要があるのじゃなかろうか。たとえば競争という、あるいは自由経済ないしは競争経済という基本というのは、これは日本の現在の経済社会においては、特定の分野は別でありますが、あらゆる業種について原則として妥当をしているわけでありまして、これはもう原則であって、これを何らかの形で修正するというようなことは恐らく考えられていないのだろうと思います。あらゆる場合に自由企業体制、競争経済体制を前提にしながら、一定の政策的な配慮が妥当かどうか、こういうことが論議されているというふうに考えております。そういう意味では、やはり独占禁止法あるいは競争経済体制の基本という点についてのはっきりした認識というものが常に前提になければならないということで、恐らくそういうことがこの法案、さっき申し上げましたように、業務提携についても若干疑問はございますけれども独占禁止法の適用除外とはしない、こういう形で法案が成立しているんだ、こう考えております。ですから、そういう意味では、やはり運用に際しまして最も基本的な事柄は、競争経済体制を揺るがすような技術をつくり出さないということであろうと。その点に関して一つ問題になりますのは、先ほどからも多くの方から御指摘のありましたような企業の自主的な努力、ないしは自己責任体制を確立する、こういうことであろうというふうに思います。必要な事業提携ということについての自己責任体制を前提にした形での運用というのは、この法律前提にいたしましても決して不可能ではないだろう。したがって、統制色はない、確かにそのとおりで、基本計画を立てて、自主的な計画を承認するという仕組みでありますが、しかしながらここまた日本の特殊な風土と申しますか、行政のいわば指導、誘導に関して特殊な力が働いているという側面もございますので、その点でこの基本計画設定、作成に際して、企業の自主性を損なわないような、どういう形でもって構造改善基本計画というのを作成、策定していくかという点に非常に重要なポイントがあるのではなかろうかというふうに考えております。  あとの具体的なケースの事例につきましては、これはみんなそろって協定して業務提携しようという、事業提携しようというのでグループ化が行われていくというようなことになってまいりますと、これはまた企業の自主性という点とのかかわりでかなり問題が出てまいりますし、その辺には一つ今後残された問題があるだろうというふうに思います。  なお、アウトサイダーの規制につきましては、私も上野さんのおっしゃった御意見とほぼ同意見でございまして、アウトサイダーの規制ということが行われることになれば、この諸制度企業の自主性を前提としたものであるという、少なくともこの形すら失われてしまうという意味で、これはもう理論的にも実態的にもとり得ないという法案の考え方は結構だろうと思います。
  81. 降矢敬義

    降矢敬義君 山本参考人にちょっとお伺いさしていただきたいんですが、石油化学の問題、午前中もいろいろお話を承りましたが、私は、山本さんが社団法人の化学経済研究所ですかの編集部長をされておるお立場において、石油化学だけでも結構でございますが、この法律、なかなかいろんな議論のある法律でありますが、企業の自主努力を前提にして、そういう素材産業の再活性化をねらっている法律である、そういう意味じゃ環境を整備して企業がんばれという法律だと私も思いますが、いま山本さんのお話を承りながら、企業側でこの法律をどう受けとめておられるのか。要するにもう少し端的に言うと、五年の間にこの法律に乗って自主的な努力をきちっとやろうとする心構えで受けとめておられるのか、多少逡巡があるのか、これからこれについてどうしようと考えている状況なのか、そのことを端的にお伺いしたいと思います。  それからもう一つだけ、午前の御質疑のときに、国産ナフサと輸入ナフサの価格の問題で両者の間に約二千円ぐらい違うというようなお話も参考人の方からあったんでありますが、どうしてこうなるのか、何か御事情があれば御説明していただきたいと思います。  以上であります。
  82. 山本勝巳

    参考人(山本勝巳君) 企業がこの法律についてどういう基本的な態度で臨んでいるかという御質問かと思いますけれども、いろんな意見等が新聞等では出ているかと思いますけれども、本法案の対象が考えておりますような、どういう産業実態がありますかということを冷静に考えますと、やはり基本的にわが国の石油化学工業が競争力を失っているという問題は、たとえばわが国の現在プラントの中心的な技術が諸国に劣っているとか、そういう問題ではございませんで、むしろ過剰設備によって高効率生産設備が必ずしも効率的に運転をしていない、あるいは一部製品の輸入の増大等によって総合的な連産体系のバランスが失しているとかというようなことにその競争力低下の原因の一つの大きな要因があるわけでございまして、これが先ほど申し上げましたように、個別企業の自主的な判断でそれらの均衡を回復することが非常にむずかしいということにあるわけでございますから、これを事業提携等を通じまして設備の処理を行い、高効率生産設備生産を集中することによってこのメリットを分かち合うということによってある一定の競争力が回復できるということが基本的な筋書きであろうかと認識しておりますので、こういう基本的な産業実態を踏まえてなおかつ法律が余り必要でないというようなことは常識的には考えにくいんではないかということが第一点でございます。  それから、国産ナフサ価格と輸入ナフサ価格との関連でございますけれども、これにつきましては、従来わが国の国産ナフサ価格につきましては、わが国の石油製品の価格体系の中で独自にコストに基づいて決められていたというのが従来の方式でございますけれども、昨年の四月以降、四半期別輸入CIF価格——円でございますけれども、プラス二千円、プラス九百円、つまり輸入CIF価格に対して二千九百円が加えられるという価格決定システムが採用されているわけでございます。このうち、いわゆる九百円分が石油税相当額の二分の一ということで、石油化学企業がこれを負担するというかっこうで二千九百円ということになっているわけでございます。恐らく問題の、御指摘のポイントはこの二千円の中身ではなかろうかと思うわけでございますけれども、これは必ずしも明確に公表はされておりませんけれども、私の知る範囲で申し上げますと、金利負担が八百円、それからオーシャンロス等のそういったものが三百円、それから関税が五百六十円、それから諸掛かりが百円、それから備蓄負担が二百四十円ということで、合計二千円が輸入CIF価格に対してのっかっている。このうち関税五百六十円のうち四百三十五円は還付がされておるということになっているというふうに承知しております。
  83. 降矢敬義

    降矢敬義君 ありがとうございました。終わります。
  84. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 参考人の皆さんには大変御苦労さまでございました。社会党の吉田正雄でございます。  本法案の審議の中で、各方面の意見をいろいろお聞きをしてまいったところでありますけれども、いままでの審議あるいは御意見を通じまして私が感じましたことは、現行特安法では必ずしも十分な対策になっておらなかったんではないかということと、それから労働界の圧倒的な意見といたしましては、この法律というものがむしろ解雇を促進するのに役立ったんではないかというふうな御意見が非常に強かったというふうに私受けとめております。  なぜ十分な対策でなかったのかという点につきましては、不況に陥った最大の原因というものを、一次、二次エネルギー危機によっておる、つまり原材料とエネルギーコストの上昇ということに起因しているということでありますけれども、そういたしますと、単なる設備処理だけでこの構造的な不況というものを克服することにはならないということになるわけでして、その点の対策がきわめて不十分だったんではないか。したがって、今度の法改正におきましても、単に設備処理であるとかあるいは事業提携ということで果たして十分なのかどうかという点では非常に疑問に思っておるわけです。そういう点でよりエネルギー政策と結びついた総合的な政策というものが立案をされていかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えております。  それはさておきまして、私が一番憂慮をいたしておりますのは、この法案の中で論議の中心的な一つといたしましては、独禁法とのかかわりでいろいろ論議をされておるわけですが、そこで正田先生にお尋ねをいたしますけれども、先ほど来の御意見で、独禁法という大枠、土台というものはやはりきちっと守っていくべきではないかというふうに受けとめたわけでありますけれども、具体的に事業提携に関する公正取引委員会意見を主務大臣に対して述べることができるというふうな内容になっておりますけれども、その意見内容はどうあるべきかといいますか、性格づけというような点で問題があるのかどうなのかということと、それから指示カルテルの運用についてのあり方といいますか姿勢といいますか、そういうものはどうなければいけないのかという点でまずお尋ねをいたします。
  85. 正田彬

    参考人(正田彬君) 今度新しく法案に入っております事業提携について、主務大臣が公正取引委員会に通知をして、それに基づいて意見を述べるという、この公正取引委員会意見についてという問題につきましては、これは公正取引委員会が具体的な案件について独占禁止法の立場から判断をした結論を率直に述べるべきだということであって、この対象業種であるからということは特段の配慮がなされるべきではないというふうに思います。対象業種であると否とにかかわらずその事業提携、まあ典型的にはたとえば合併なら合併についての申請ないしは届け出があったときに配慮すべき事項というのは、これは非常に広範囲でございますので、その広範囲な事項を当然同じように考慮をして、配慮をして、そして意見を述べるということになるということで、この法律の適用業種であるから、本来の独禁法のたてまえとは違った判断をするという形で意見を述べるべきではないということだけははっきり申し上げられると思います。  それから、指示カルテルについて、指示カルテルの場合には、公正取引委員会が同意をするという形で関与するわけでございますけれども、この同意の際にどういう判断基準かということについては、果たしてこの指示カルテル自体が独占禁止法の枠を超えた形でもって、独禁法上は本来理論的には容認できないものを容認しているのかという点が一つ問題になるだろうと思います。もし独禁法上理論的に容認できないものを容認しているんだというふうに考えますと、これは公正取引委員会は可能な限り独禁法の原則に従った形でもってその指示カルテルの内容についての意見を持つはずでありますから、それを前提とした対応ということが必要になってくるだろうと思います。  ただ、そういうことも考えられるんでありますが、全体としての整合性、ことに法律制度の整合性ということから考えてまいりますと、独占禁止法の枠の中あるいは独禁法といういわば基本的な法律の枠で、とうてい容認できないものがこの新しい産構法のような形でもって、少なくとも行政庁の側のはっきりした措置ないしは明白な指示というよりも、より強い権限に基づいた権限の発動という形でなければ認めることがきわめてむずかしいということが今度逆に言えると思います。そうなってまいりますと、公正取引委員会は、設備の処理については、独占禁止法に基づく不況カルテルによっても容認でき得るわけでありますから、不況カルテルによって容認し得る範囲の設備処理についてのカルテル、これについて了承をするという形で本来運用されるべきものだろうと考えております。
  86. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 引き続いてお尋ねいたしますが、共販会社については、従来も幾つか問題が出てまいっております。たとえば、消費者に犠牲のしわ寄せをするというふうなこともあるわけですけれども、今度の法案によって、たとえば予想される問題が出てくるのかどうなのか。また、共販会社のあり方というのは、この法案によってもどうあるべきかという点についてはどのようにお考えになっておられますでしょうか。
  87. 正田彬

    参考人(正田彬君) たまたま私ども最近業務提携についての勉強をしたことがございますが、みんなで議論をいたしまして、またある程度実態も調べてみましたところ、やはり対外的な商品の販売活動に近づけば近づくほど競争秩序に対する影響は大きい、こういうことが言えるように思います。したがいまして、この事業提携という形で業務提携が行われる場合に、販売についての共販会社の設立という点に関しては、競争秩序とのかかわりが最も大きいという意味で、それに慎重に対処することが必要だ。技術開発等のための業務提携と比較いたしますと、共販会社という形での事業提携が競争に対する影響は大きいし、またそれによって市場における価格競争自体が大幅に減殺されるという可能性もあるわけでありますので、この点については慎重に対処をする必要があるというふうに考えております。
  88. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 事業提携の最も強いものとしては合併ということになってまいるわけですけれども、この合併審査基準について、通産省と公正取引委員会との間の覚書というものが交わされておるわけですけれども、独禁法が厳正に守られるということになれば、あえてこの覚書も要らないんじゃないかという意見も一部にあるようでありますけれども、その必要性についてどのようにお考えになっておるのか。  それから、あの覚書の内容について問題点があるというふうにお考えになっておりますかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  89. 正田彬

    参考人(正田彬君) 合併についての覚書でございますか、基準みたいなものが一応設けられているようでございますが、さっきも申し上げたと思いますが、私は、特定産業であるからということでもって、合併規制について別個の基準を設けるということは必要はないというふうに考えております。  この合併の審査についての、特定産業についての基準というものの中で、特に問題になると考えられますのは、構造改善基本計画の目標達成時の市場構造のもとにおける競争状況ということでございます。つまり、ある事業提携が行われます、それを個別に審査するわけでございますね。そのときに、構造改善基本計画が全部達成したらどうなるか。これは法律趣旨からしましても、事業提携というのは自主的に行うんだというたてまえがもし前提になっているとすれば、この構造改善基本計画に乗る企業もあるだろうし、乗らない企業もある。そういう事業提携をする、しないは企業の自由である。これが本当に実質的にも自由であるならば、個々の事業提携について構造改善基本計画が全部行われたときに、これはどういうふうに位置づけられるかと、こういうことを判断するというのは、非常に不明確な材料を根拠に判断するということになるということだろうと思います。  もしそれを判断することができるんだということになってまいりますと、今度は構造改善基本計画というのは、かなり強力な指導、あるいは誘導をもって実現させるということになるのか、あるいは業界がこういう形で業務事業提携を行うという協定を行った、この協定に基づいて構造改善基本計画というのができ上がるのか、あるいは今度は行政庁と業界とが、構造改善基本計画策定について協議をする、これいずれも法律には予定していないことでございますが、そういうことになるだろうと思います。  ですから、そういうことがもし行われずに、強くそういう御説明がなされているような、乗る、乗らないは自由なんだということであるとすれば、この目標達成時の市場構造のもとにおける競争状態ということを考慮の中に入れるということは問題があるというふうに考えております。  その他の点は、これは一般の合併の際に当然考慮される、少なくとも一つの要因でございましょうから、特に問題にする必要はないし、さらにこれ以外にいろいろな要因が考慮されて、そして合併の当否が判断されるということになると考えております。
  90. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 上野参考人にお尋ねいたしますけれども、先ほどの御意見の中で、産業政策競争政策というものが十分整合性を持つものであればいいのではないか、特に今回の産構法は必要性、正当性、整合性の上で十分——まあよくできておるというふうにおっしゃっております。  そこで、お尋ねをいたしたいと思いますが、この産構法自身は独禁法の適用除外というのはうたっておりませんし、独禁法に直接触れたものではないということなんですが、そこでよく運用という言い方の中で、非常にあいまいさが出てまいると、これは産構法にとっても独禁法上にとっても非常な混乱が起きてくるんじゃないかというふうに思いますが、先ほどの御意見の中にあれでしょうか、運用面で独禁法というものを、ある程度弾力的な運用といったらいいのか、緩めてもいいのではないかというふうな御意見なんでしょうか、どうなんでしょうか。
  91. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) 経済政策全般について、これまで明らかになっているのは、たとえばマクロ政策のような場合でありますと、目的と手段の関係が政策の論理としてかなりの程度明確性を持っておるわけであります。しかし、一般に競争政策とか公共政策、たとえば広い意味でいきますと、この産構法に基づくところの産業政策とか産業調整策というのは、広い意味ではやはり公共政策の一部になると私は考えますが、この種のものにつきましては、目的と手段の関係とか、あるいは政策の手段についての選択なり判断の基準というのがそれほど明確でございません。その意味は、日本でも、ほかの国々においても、共通した点になっております。  また、独禁法上に規定されているときの場合の適用の基準につきましても、先ほどからいろいろございました、たとえば不況カルテルの容認につきましても、指示カルテルの容認につきましても、合併につきましても、事前にどういう判断基準を示し、それが一番客観的、妥当であるかというような問題につきましては、はなはだ不明確であります。  同時に、経済は生き物でありますし、産業は生き物でありますので、実態は刻々と変わっておる。しかも、その意味におきましては動態的であるというのが特徴的であります。したがいまして、ある時期に静態的にある基準を置きまして、これに従わなければならないということをとりますと、そのことは実情からはなはだしく乖離するという事態を起こすわけであります。これは実は、独禁法というような競争政策の場合につきましても、産業政策ということに基づく、あるいは産業調整策に基づきますところのこの法案から基づくいろいろの計画なり施行上の問題につきましても同じであります。  私の意見は、その意味においてはまさに動態的な立場を踏まえて、絶えずこの二つの法律運用は、双方について余りリジッドでなくフレキシブル、つまり弾力的に調整され、運用されなきゃならないだろう、こういう私は意見でございます。
  92. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 これは正田先生にお伺いいたしますが、この法案に限らず、日本産業政策をめぐって、いまOECDあるいはアメリカ等からそれなりの批判というものが出されておりまして、きょうの新聞ですか、通産大臣の方からこれに対する日本政府の見解といいますか、反論というふうなものも出されておりますけれども、要は主体的な考え方と諸外国の批判というものを考えるときに、こちらはそう思っておると言うだけではなかなか国際的には通用しないんじゃないかというふうに思います。  そこで、OECDの例のPAPの精神にこの法案が合っているんだという意見もありますし、いややはりそうじゃないんじゃないかというふうな御意見もございますが、外国における実情がどのようになっておるのか。また、その外国実情を踏まえれば、外国側からこの法案を眺めたときに、一体どういうふうな評価というものが出てくるんだろうか。そういう点についてどのようにごらんになっておりますでしょうか。御意見をお聞かせください。
  93. 正田彬

    参考人(正田彬君) 非常にむずかしい問題だと思いますが、いろいろと日本のことが外国において理解されていないという向きは、これは一方では明白にあるだろうと思います。しかしながら、今度は逆に案外わかっているということにぶつかる場合もあるわけでありまして、たとえば日本語の行政指導という言葉を、これを私がこれはもう拘束力は何もないんだと、行政的な、行政庁が推奨するだけなんだという説明をいたしましたら、これはある国際会議でありますが、並みいる外国の代表から、そんなことない、行政指導したら事実行われているじゃないか、行政指導というのは、行政庁のむしろ統制に近い行為なんだ、これをお前は行政庁の推奨であるなんて言うのは、これは非常に形式ばかり主張しているんだと、こういう批判が相次いだという経験がございます。私も別にその行政指導を特に弁護するという意味ではなくて、本来法律学者の集会でございますから、法律的にはこれは拘束力がない、したがって行政的な推奨みたいなものなんだと言ったのでありますが、いや実態は違うということを法律学者からさんざんつるし上げられまして、中には幾つか例を挙げてきた研究者もおりました。そういう意味では、案外外国の方は今度実態を知り出しているという面もあるという点をやはり考慮に入れながら考えていかなければならないんじゃなかろうかという点が一つであります。  そういう点と関連いたしまして、さっき上野さんからお話がありました、ヨーロッパ諸国でもいろんな不況業種企業に対しててこ入れをしているということをおっしゃったのでありますが、やはり一つ非常に問題になるのは、カルテルを通してやるということがどういう印象を、ことに欧米諸国に与えるかという点に特に配慮をする必要があるような気がしております。そういう意味では、やはりカルテルを通して一定の設備廃棄設備処理をして、そしてそれを国が援助して、それで不況産業に対応する、こういう点が、私が耳にしました範囲では非常に問題だと言っているかなり大きなポイント、少なくとも研究者の間ではそういう点が一つ問題になっております。  それともう一つは、さっき申し上げたような自主的にやるんだということが、形式的には自主的になっているけれども、実際上はそのとおり行われるということを予測しているんじゃないか、であればこれはもう一種の事実上の統制ではないか、こういう考え方がある、見方がある、こういう点が一つでございます。  それから、やはりこの事業提携、合併というような問題につきまして、これが先ほど申し上げましたように、独禁法の基本的な枠の中で対応される、こういうことであるならば、私は諸外国から何ら批判を受ける筋合いはないというふうに考えるのでありますが、もしこれが独占禁止法の枠を少し広げて、そして一定のいわば市場支配的なあるいは競争制限的なそういう力の形成を容認する可能性があるんだということになってまいりますと、これはOECDの基本的な考え方あるいはPAPの考え方等ともこれは明白に抵触をしてくるだろうというふうに思います。事業提携についての制度というものをどう見るかという見方でありまして、これが先ほど私が申し上げたような運用であれば問題にされるはずはないだろう。それを出たらば、やはりOECDの考え方とは反するという批判を免れない。その場合に、さっき申し上げたような合併の審査の基準みたいなところに構造改善基本計画の目標達成時の市場構造というものを考慮するんだということになってまいりますと、これはやはり自主的な自発的な行為ではなくって、一定の何らかの介入、過度の介入に基づくものであって、自由な市場経済を維持していくというOECDの基本線と反するという批判が出てくる可能性はあるのではなかろうかというふうに思います。
  94. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 もう一点だけお聞かせ願いたいと思うんですが、不況対策、あるいは産業構造の改善、あるいは活性化ということを理由にして、最近非常に独禁法の緩和とかあるいは改正という意見が一部に非常に強まってきておりますけれども、私はあるべき正当な競争原理、あるいは開放経済体制という点から見て、独禁法という、これはひとつ経済なり産業における憲法的なものとも考えられるんですけれども、これはやはりきちんと踏まえた上で体質の改善ということで努力をしていくべきではないかというふうに、これは私の個人的な見解ですが、この独禁法改正、緩和という意見についてはどのようにお考えでしょうか。
  95. 正田彬

    参考人(正田彬君) カルテル規制が一つの中心の問題にもなっているように見られるのでございますが、もともとカルテルというのが問題になりますのは、大体不況期であって、好況期にカルテルというのはいつの間にか消滅してしまうと、こういうことが一般的な従来の経験の示すところだと言っていいだろうと思います。したがって、その不況期において独占禁止法というのはむしろ意味を持つのであって、好況期においては、たとえばカルテル規制をするといってもカルテルやる必要がないという状況が一般だろうというふうに思います。ですから、ただいま御指摘のように、不況期であるということが独占禁止法を緩和する根拠という形で出てくるという、こういう方向は少なくとも理論的にはあり得ないんじゃないか、不況であるということを根拠にすることは。  それから、やはり現在の日本独占禁止法、これが全くどこも問題がないわけじゃないというふうには思います。まだいろいろと検討する必要があると思うのでありますが、少なくとも現在の独占禁止法を緩めなければならないという必然性ないしはそれこそ正当な理由のある条項というのは、これは現実には存在していないんじゃないかというふうに考えます。そういう意味では、そういった意見というのは、どういう論拠で改正をどういう点についてということを、もっと詳しくいろいろ伺ってみなければわかりませんけれども、一般に新聞等で伝えられておりますような問題については、改正の根拠というのはどうも見当たらない、むしろ不況期に独占禁止法意味が、ことにカルテル規制の意味というのが出てくるんじゃないかというふうに考えております。
  96. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 ありがとうございました。  上野先生にお伺いいたしますが、いまの独禁法に対するまた先生の御見解もお尋ねいたしたいと思いますし、それからもう一点、どうしても雇用面に対する保障というものがこの産構法では不十分ではないかということが盛んに指摘をされておりますが、その面について先生は、この法案に対する評価といいますか、問題点があるのかないのか、どういうふうにお考えになっておりますでしょうか。
  97. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) 最初の、独禁法につきましては、全体としてはほぼ、正田参考人意見に賛成でございます。  私は、しばしば、独禁法あるいは競争政策と産業政策、あるいは産業調整、調整されなければならないという意見を申し上げましたけれども、これは先ほども言いましたように、本来、実態である方の経済とか産業の方が刻々と変わっていくんだと、特にそれが国際市場という場、あるいは国際的な産業の場というところで変わってくるということの意味もついでに申し上げておきたいと思うわけであります。そういう意味でありますと、これは両方の法律、つまり競争的な政策と、産業政策的なものは、実態を踏まえて、常にできるだけ整合性、あるいはできるだけ有効な形で共存できるものであるというふうに考えております。したがいまして、余り短期的な視野の中からどちらがいいとか悪いとかいうことを判断しまして、そして法律の根幹に触れるようなところを改正すべきではないというのが私の意見でございます。そして、私が最初申し上げましたように、日本の社会的経済的風土からいたしますと、多少世界から違ったような目でもって見られるかもしれませんけれども、十分現実的、フレキシブルにしかもプラクティカルに運用することによって両者はうまく経済実態産業実態に適合していくものだというふうに私は考えております。  それから二番目につきましては、この法律についての有効性に触れていることかと思います。御存じのように、この中にも雇用面について十分に配慮するような形のものが盛り込まれておりますし、以前の特安法といったものについても十分に配慮をされてあるわけであります。しかし、雇用対策という形からいたしますと、これだけで十分かといいますと、これはあくまでも産構法は生産あるいは販売の事業を行う主体である企業に対する法律であって、雇用に対する法律ではないのであります。したがいまして、ここに同時に、企業城下町法とかで考えられている雇用対策であるとか、そのほかの幾つかの法律が用意されておることは御承知のとおりでございます。それらが相まってやるということが非常に重要な点でありまして、その一つの構造不況対策というのは、地域経済という形のものもありますし、当然雇用という問題も非常に重要な問題であるわけであります。それらがすべてパッケージとしてここにあるんだという私は認識をしております。同時に、できるだけマクロ政策の上でも、こういう法律の有効性が期待されるように、財政金融政策が運営されることが私は望ましいと思っております。こういうことが非常にうまくいくというためには、できるだけ低成長よりもなるべくなら高い成長の方がはるかに有効であるということを私は考えております。特に日本は、いま雇用の問題は非常に大切でございますけれども日本は全体といたしましては欧米諸国に比べますといいパフォーマンスを持っておるわけです。これにつきましては、雇用実態を本当に反映しているか。たとえば失業率が日本は低いのも実態を反映しているかどうかということにつきましてはかなりいろいろな議論がされているわけです。日本が数字上低いということと、実態上とがうまくかみ合っているのかどうかということは、確かに問題がある点であります。十分にこの方面については調査研究をしなきゃならないところでありますけれども、しかし、諸外国から言わせますとはるかにまだいいんだということ。これは、一つは、日本のこの種の調整策が、日本企業を中心とする社会の中でかなりうまくいっているんだということの私は一つの証拠であろうというわけであります。したがいまして、諸外国に比べると雇用面についてそれほどドラスチックな政策の手段を適用してはいないように私は思いますけれども一つはいままでのところ成功しているということのように私は考えております。
  98. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 時間もなくなりましたので、最後に山本参考人にお伺いいたしますが、私、当初に申し上げましたように、特にこの対象産業では、原材料それからエネルギーコストの上昇というものが非常に大きな影響を及ぼして今日の事態を招いておるわけですね。そういう点で、その面での政策との有機的な結合というものが不足をしておったんじゃないか。たとえばエネルギーを見ますと、供給力の確保といいますか、エネルギー資源の確保に余りにも重点が置かれ過ぎて、いま言った不況産業との関連で必ずしもエネルギー政策が立てられておらなかったというふうに思いますので、その点について、この法案との関係でどういう御意見をお持ちなのかお聞かせ願いたいと思います。  これで私の質問を終わりますが、各参考人の先生方、大変どうもありがとうございました。
  99. 山本勝巳

    参考人(山本勝巳君) ただいまの御質問に関しまして、石油化学工業を若干例に引きながら申し上げたいと思うわけですけれども、現在のわが国のエネルギー政策が一つのいろんな再検討期にあるであろう、これはまた素材産業との関連でいろいろ若干の検討が必要であるということは、これは政府自身でもお考えになっているようでございますし、そういう時期にあるということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、現在のたとえばこの石油化学工業等における構造不況の問題というのが、わが国の石油エネルギー政策の固有な影響によって国際競争力が低下しているのかどうかということについて考えますと、むしろ、たとえば諸外国における天然ガス等の新しい供給関係等考えますと、むしろそういったものとの構造的な格差ということが主要な要因を形成しているということではないかと思うわけでございます。このことは、たとえば当然それとの関連での電力の問題とかいうことに派生するわけでございますけれども、そういう観点からすれば、確かに御指摘のような、エネルギー政策の整合性を若干新しい観点で再検討していく必要が、当然、基礎素材産業全体としてあるということでは、おっしゃるようなことではないかというふうに考えております。
  100. 馬場富

    ○馬場富君 参考人皆様方にはきょうは大変御苦労さまでございます。貴重な御意見の中で二、三点質問いたします。  最初に上野先生にお尋ねいたします。  現行特安法の評価の問題でございますが、十四業種で二三%の設備廃棄がなされまして、結果としては四十万の離職者が出たということになっておるわけでございますが、こういう面で現行特安法を先生はどのように評価してみえるか、あわせまして、先ほど先生が、新特安法につきましては、活性化という意味で中長期的に見てはやはり雇用の創出も考えられると、こういう意見もございましたが、ここらあたり、あわせて両面を対比しながら御説明いただきたいと思います。
  101. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) 日本のこの種の産業調整策とか、産業政策と申しますのは、かつて日本高度成長期に産業の保護育成策をとってきた時代から比べますと、はるかにソフトで、市場原理に沿うような形の政策に全体的になっております。と申しますのは、かつてのときは小国の論理が通りまして、徹底的な保護育成策、なかんずく輸入の制限とか、保護関税の障壁を高めるとかというようなことをとりましたけれども、現在の日本の置かれた国際的な立場であるとか、日本の持っているところの経済力であるとかいうことからいたしますと、そのような政策をとることができなくなっております。したがいまして、第一次石油ショックによって起こったところ、それの対策としてとられたところの特安法の場合でも、かつて行われたような目的のためにあらゆる手段を割りづけて徹底的にやるというような方策をとれないし、とっておりません。その意味におきましては、きわめてそういう構造不況産業というものに対する対策としては、直接的な有効性は小さいということになっております。  その結果、この形で行われてきたところの対応の評価といたしますと、日本経済の全体の産業の風土の中で調整しやすいものから調整されていった、たとえば、労働の場合の調整というようなものはかなり早くいったと、つまり、労働転換というようなことがかなり進んだわけであります。ところが、企業自身が持っているような設備の調整、つまり、資本ストックの調整というようなことについては不十分なまま、第二次石油ショックを受けてしまったというようなことであります。私がかなりやっておりました、たとえばアルミ製錬のような場合でありますと、強烈な市場原理が働いていて、むしろ当初予想したよりもはるかに早くあらゆる面で調整がいってしまったというのが実情で、非常に悪い言葉を使いますと、この特安法、新特安法に盛り込まれた対策以上に事が進んでおって、事実の追認ということになりかねない面も持っておると。ところが、全体的な市場での雇用を、十分に市場の原理が強烈に働いている中でいっても、全体的には日本のパフォーマンス、あるいは転換活性化というようなことにつきましては、かなりよく進んでいると。これは国際的に見てよく進んでいるというのが私の評価であります。  新しい法律についての見通しは、先ほど私が全体的に申し上げましたが、大事な点は、単にこれらの産業縮小ということであるならば、この政策は消極的な調整策をやったにすぎないということになります。それでは産業構造高度化であるとか、国際的に見た総合工業力の競争という点からいたしますと困るわけであります。  そこで、この中に盛られているところで重要な点は、技術開発であるとか、技術革新に対するところの調整ということであります。私がその意味で期待をかけているのはむしろこの点で、この点が十分に五年間のうちに実現できなければ、この法律の本来の趣旨であるところの積極的調整と言われている部分についてはなはだ困ったことになる。私は、その点によれば、もう少しこの法律はこの点にもっと留意しておいてもいいんではないかというのが私の意見でございます。
  102. 馬場富

    ○馬場富君 次に、やはり同じく上野先生と正田先生にお尋ねいたします。  新特安法と独禁法との関係でございます。今回の新特安法の原案作成に当たりましては、事業提携と独禁法との関係をめぐって、公取と通産省との間に論議があったわけでございますが、この問題については、正田先生、上野先生はいかがなようにお考えであるかという点。通産は、当初、事業提携について、独禁法の適用除外を主張したが、公取はこれに反対して、結局、新しいスキームが設定されたわけでございますが、この新しいスキームの評価について、両先生から御説明願いたいと思います。
  103. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) 先ほど正田参考人がおっしゃったわけですが、アメリカはさておきまして、ヨーロッパの、特にEC諸国におきましては、たとえば、先ほど言いましたように、こういう指示カルテルに基づく過剰設備の処理であるとか、事業提携、特に合併に関してのものというのは、カルテルないしはカルテルの黙認、あるいは実質的に基準を緩める、あるいは合併等におきますとむしろ促進するというふうな場合を含めまして、かなりこういうことについては積極的な対応策をとっているというのが実情であります。たとえば、過剰設備の指示カルテル等につきましては、繊維であるとか、石化であるとかについては、EC委員会は承認ないしは黙認をしておるという形で行っております。それから、フランスであるとか、イギリスであるとか、ドイツを含めまして、国有化であるとか、国家資金による産業の再編成であるとか、あるいはフランスにおいては積極的に国際競争力が十分に強化されるような形での国有化ないしは産業の再編成というのを積極的に進めているというのが実情であります。むしろ、日本は、これまでの合併とか事業提携につきましては、国の置かれた立場もありますし、独禁法上の基本理念を踏まえていまして、むしろ、どちらかというと、アメリカ型に近くて、わりに厳正に行われているというのが実情であります。そういう意味におきましては、私は、もう少し、アメリカという国は、いままで独禁法とか競争政策上の考え方は、どちらかといいますと、アメリカが自給自足型の経済であったために国内的な状態について強く物事を判断していた、それに国内的な立場、国内的な意味での競争ということに留意をし過ぎていたというのが実情でありまして、むしろ、日本のように、貿易立国であり、開放市場体制をとらなければならないというような、あるいは国際的な競争という形を考えていかなければならぬ国では、この種のものについては、もう少し国際面、なかんずく輸入とか輸出とか、そういう面について、はるかに留意した運用をした方がいいというのが私の意見でございます。
  104. 正田彬

    参考人(正田彬君) 日本の合併等の業務提携、事業提携について、適用除外にするかしないかという点、この点についての御質問だと思いますが、私はむしろいまの上野さんの御意見とちょっと違うので、企業集中の規制というのはドイツあるいはECを含めまして、日本よりはるかに厳格に行われているのが現状だと言っていいのだろうというふうに思います。日本法律、まあ厳格に解釈すれば解釈できるということもあるのでありますが、少なくとも合併、集中規制という具体的な形でもってあらわれているこれらの国々の事例を見てみますと、日本であったら恐らく全く問題にならないであろうと考えられるようなケースが差しとめられるというような場合、特に西ドイツあるいはECの委員会の場合等の具体的な例を見ていると出てきております。そういう意味で、日本の方が独禁法の合併規制、企業集中規制がきつ過ぎるということはちょっとお隣にいて反対の意見言うのは悪いんですが、どうも言えないように思うのです。  ただ、さっき申し上げましたように、したがって事業提携あるいは合併を含む事業提携については、わが国の場合に、もう一遍はっきり問題点を洗い出して、そして問題になり得るものというのをどういう形でとらえていくかという点、考え直してみる必要がある。これはその点についての監視を強化していくという意味であります。その場合に、この点は全く同意見でありますが、輸出、輸入、国際的な諸関係というのを考慮に入れるというのは、これはもう当然のことでありまして、その点は十分留意しながら進めていくということが必要であろうというふうに思います。  そういう意味では、従来の公正取引委員会の独禁法の合併を含む企業集中についての諸制度運用という点から考えてまいりますと、それでも適用除外にするというようなことにならなかったのはきわめて当然のことなのかなという印象を持っております。その点について、公正取引委員会がもう少しきちんとした形で問題の整理をして意見を述べ、そして主務大臣の、所管官庁の側で産業政策通産省はそれを尊重すると、こういうキャッチボールがうまく機能していけば、独禁法上問題になるような業務提携、企業集中、合併、こういうようなものは具体的には起こってこない。そういう意味では、さっき申し上げたように、基準を変えるものではないという原則が明らかにされているということで、この法案の根底についての用意された制度というのは、その範囲で一応の合理性を持っているというふうに考えていいだろうと思います。
  105. 馬場富

    ○馬場富君 次に、山本参考人と上野参考人にお伺いいたします。  午前中もこの点について論議しましたが、新特安法を、今後生かしていく、効果を上げていくという面では、事業の提携と、原料転換というものが一つはやはり基礎になってくると、こう考えます。そういう点で日本の石油化学業界では、グループ化とかあるいは企業の合併、共販会社の設立とか、今日大きな問題が起こっておるわけでございますが、これら事業提携が石油化学業界編成の有効なステップになっていくものかどうかという点の問題点を一点お尋ねいたします。  もう一点は、わが国の石油化学業界が国際競争において後退したというのは、やはり原料のナフサのコスト高と、午前の質問の中でも論議しましたが、一つはいわゆる天然ガスの問題にあると、こう思います。そういう点で、一つは二千円の価格差の問題もございますが、あわして、近年の日本の石油化学業界が、このコスト高の問題で非常に大きい問題があったという点の今後の解決策とあわせて、いわゆる天然ガスへの転換の問題ですね、これについてはどのような御意見をお二方は持っておりますか、お尋ねいたします。
  106. 山本勝巳

    参考人(山本勝巳君) 一つは、わが国石油化学工業、現在、原料に石油製品の一部であるナフサというのを利用しているわけでございますけれども、これを天然ガスに転換云々という御質問かと思いますけれども一つは、御承知のように、わが国の石油化学工業の生産体系というのは、原料ナフサを中心にして、ここからいろいろ併産されますいろんな製品をそれぞれの製品に総合的に有効活用すると。つまり、わが国のコンビナートの特徴は、その中核であるエチレン設備の規模効果と連産される製品を総合的に有効活用するということに非常に特徴があるわけでございまして、確かに御指摘のように、一部の原料をナフサに加えてほかのガスに転換するということは一定の経済性を持ちますけれども、こういったことをやる限界というのは当然あるというふうに私は考えているわけでございます。ですからむしろ問題は、わが国のそういった特殊なナフサを原料にしているという生産体系に立脚いたしまして、それが御承知のような過剰設備の中でそういったコンビナート体制の持つメリットが発揮できない状況にあるということでございますから、これを事業提携等を通じて設備の処理をする、あわせてこれら大型設備稼働率を引き上げるということの中で、先ほど冒頭にも申し上げましたように、かなりのコストダウンのメリットが出てくるということでやはり基本的には考えるべきではないかということでございます。  ただ、御指摘のように、ある種の非常に石油化学製品の中でも原料費のウエートの高い、かつ大量に輸送しやすい製品につきましては、当然天然ガス等の資源立地国が非常に有利になっているということがあるわけでございますから、わが国は石油製品の一製品であるナフサを原料にして、そういった天然ガス国に比べますと相対的に原料が割り高であるという構造は容易に解消しないわけでございますから、そういった付加価値の低い製品については輸入に依存をするというようなことの中でわが国石油化学工業全体の競争力を回復していくというようなことが有効ではないかというふうに考えているわけでございまして、そういう観点からも装置産業の特徴を踏まえた事業提携のメリットがかなり出るんではないかというふうに考えているということでございます。
  107. 上野裕也

    参考人(上野裕也君) 産構法の対象となっている各業種に共通します重要な課題というのは、一つ産業編成と、一つは本来そのエネルギー問題にあるわけでございます。この産構法はどちらかと言いますと、力点は全体的には過剰設備の処理と産業の再編成というところに置いていることになっております。もう一つの直接的な重要な課題であるエネルギー問題については、悪い言葉で言いますと逃げているということになっております。余り触れないような形になっております。これはもう申すまでもなく、原料エネルギーコストの高騰からこの種の業種のほとんどが国際競争力を失ったというところに原因があるわけであります。その点からいたしますと、どうしても現在、原油が比較的値下がりをしているという時期こそ、このエネルギー問題に本格的に私は取り組むべき時期に来ていると思います。その意味は、エネルギー政策と、産業政策とを十分に連結をするという形で、これまでとられてきたエネルギー政策全般をひとつ見直すことである。それは価格体系や供給体系そのものを見直すことである。このことはきわめて政府の規制産業の枠の中に入っております石油精製、これは石油業法が十分に存在しておる。それからもう一つは、電気事業法とかガス事業法という形になっておるところの二次エネルギーの供給価格、この辺のことを税制を含めて全般的に見直す時期じゃないか。もう一点は、御存じのように為替相場がきわめて円高、円安になってはなはだしく動く。動くたびにそれに伴うところの分配上の問題が非常に露骨に出てきておる。私はこういうことについて短期的にその都度分配上の問題として即断をすることはエネルギー政策や産業政策上余り好ましいことではないというのが私の意見であります。したがいまして、こういう為替相場が変動相場制のもとで動くことはいたし方のないことですが、この変動に対応した国内エネルギーの価格が安定するようなスキームを設置すべきである、考えるべきであるというのが私の意見であります。  なかんずく、石油化学は、先ほど言った石油精製と石油化学は連産品であって、それもコンビナート方式でやっておるということは御承知のとおりであるわけです。この問題は石油化学から見ても石油精製業と切り離しては対策にはならない。石油精製側からも石油精製業と石油化学と切り離しては対策はできない。そういう意味においてはまさにかっこうのエネルギー政策と産業政策を同時的に見直してみるということであるというのが私の意見であります。
  108. 市川正一

    ○市川正一君 私は日本共産党の市川正一でございます。  私の持ち時間はやりとりを含めまして十分なのです。四人の参考人の方すべてに御質問ができなくなると存じますので、ひとつ御了承を願いたいと思います。同時に、残念ながら参考人方々との論戦の場でもございませんので、ただお伺いして、若干質問の前提の立場というものを少し触れさしていただきたいのであります。  正田参考人がそれぞれの企業が基本的に自己の責任で対処するのでなしに、もたれ合いの相互依存や行政援助への依存では、一時的に解決しても自己責任体制が確立されない限り同じ問題が繰り返される、こう指摘なさったのですけれども、まさにそれは適切な指摘であり私も同感であります。私は現行の特安法の五年間が実はそれを示したとこう考えております。  他方、上野参考人は、装置産業であり集約産業であるこの基礎素材産業については、企業の自己能力では短期的な転換はできない、したがって政府の介入、助成を積極的に肯定する立場を表明なすったわけでありますが、今日ニューディールは古くなっただとか、あるいはケインズ理論は過去のものとか、そういう議論が非常に横行する中で、私、日経における紙上の御所見などを含めまして非常に関心を持ってきょう伺ったところであります。  御承知のように、私ども日本共産党は科学的社会主義の立場に立っております。しかし、それはいま直ちに社会主義経済制度をとれということでないことは申すまでもございません。私どもはいま必要なことは、資本主義経済制度もとにおいても、経済民主主義を徹底すること、すなわち、大企業の最大限利潤追求を保証するそういう経済政策ではなしに、国民生活の安定と向上を図る立場での経済政策をとること、そのためには必要な民主的規制を行うという意味政府が適切な対策をとるべきであると、こう考えております。  しかし、その方向は、あるいはその内容は、歴代自民党内閣、またいまの政府がとっている対策とは、そしてまたこの特安法の改正案と全く百八十度違うものであるということを前置き的に申し述べた上で正田参考人に御質問いたしたいんでありますが、先ほど正田参考人は、今度の改正案が税制、金融などの優遇措置ばかりでなしに、従来からの設備廃棄の指示カルテルに加えて、新たに事業提携についても制度化している。このことを指摘なすったんですが、私、この事業提携については、独禁法の適用除外とせずに主務大臣と公取との協議になっているんでありますが、参考人もこれがどの程度貫徹されていくかが問題だとさっきおっしゃった。確かに共同行為に対して厳しくチェックできる仕組みという反面、公取への適用あるいは運用いかんによってはカルテルの容認につながりかねない危険を持っていると思うんです。  本委員会でのやりとりの中では、通産大臣は断じてそういうことは許さぬと、こういうふうに言明なすっておるわけであります。しかし、たとえば衆議院の商工委員会参考人と質疑が行われまして、そこで経団連の代表は、「将来的に産業政策競争政策とは一本で行くべきものだという見地から、独禁法の除外例でなしに、新しいスキームで進んで、さらにそれがもっと大幅な弾力的な見直しにつながっていくということを期待しておる」というふうに述べているんですね。ですから、私はそういう状況もとでは非常にまだいろんな危険性を持っていると思うんですが、先ほどの、今後のいわば貫徹によるということを含めて、若干そのあたりの御見解を承りたいと思います。
  109. 正田彬

    参考人(正田彬君) いまの御指摘の点につきましては、少なくとも独占禁止法の原則というものはこれを堅持していくということを前提にして、その事前に一応独禁法とのかかわりについての公正取引委員会意見を述べ、それを尊重して、公正取引委員会が好ましくないという意見を述べたときにはそれを承認しない、こういう考え方に基づく制度という形で理解をして、そして当該事業提携については独禁法の枠内でと、この限りではさっき御紹介がありました通産大臣のお話のとおりに進められることを期待するということを申し上げたいと思います。通産大臣は独禁法に大変詳しい方でいらっしゃいますから、その点については十分前提を踏まえた上で立案をされたんだろうと思います。  私が、やはりこの点についても問題があると申し上げましたのは、事業提携についての基本計画を行政がつくって構造を決めていくというところ、ここの問題はやはりどうも問題があるんじゃなかろうかと、乗るのと乗らないのが出てくるということでありますが、乗っても乗らなくても自由だということなんですが、乗らないのが出てくると計画自体が壊れてしまう、実現できないと、こういうことになるわけで、そこでひとつ過剰な介入という形があらわれてきやしないかということと、やはりそこで立てた計画というものが第一次石油ショックに続いて第二次石油ショックが起こったので、特安法の場合にどうも余りうまくいかない部分が出てきたと、これは予見できなかった、予見できないことというのは無数に起こってくるわけでありますから、そういう意味計画というところに若干私は疑義を持っているということでございます。  さっき御指摘の点については、独禁法の超旨が貫徹されれば、それで貫徹し得るような意見のやりとりのスキームができたということで理解をしていきたいと思っております。
  110. 市川正一

    ○市川正一君 次に、木村参考人にお尋ねいたしたいんですが、先ほど城下町法については積極的な運営によって対策が前進することを希望されました。  具体的に伺いたいのでありますが、たとえば金融措置について、今度の対策では特定地域振興貸与という制度があるんですが、中小企業への融資としては、たとえば金利をもっと引き下げるべきだ、そういうふうに私思うんでありますが、そういう点も含めて、中小企業あるいは中小業者の立場から、金融制度やその運営について実態をも踏まえて御意見を伺いたいのであります。  もう一つは、先ほど仕事の確保が緊急かつ切実な問題であると、こう指摘なされました。今度の政府対策の中にも、下請取引の広域あっせんの制度を設けております。しかし、これが現実にはなかなか効果的に機能していない面もあるようで、私おとついも本委員会でこの問題を取り上げたのでありますが、木村参考人は、仕事の確保対策としてどういう措置あるいはどういう配慮が必要なのか、日ごろお考えになっておられるところをぜひ伺いたいと思います。  以上です。
  111. 木村純

    参考人(木村純君) まず金利の問題ですが、実は設備投資その他で融資を受けたい、そういうふうなケースも考えられるわけですけれども、その前に、なかなか安定的に仕事がないと、借りても返せない。そういうふうな状況から、要求はありながらなかなか大変だと。そういう意味では、仕事確保の問題と融資の問題というのは密接に結びついているのではないかというふうに思うわけなんです。そういうふうな意味で、仕事の確保というのがその前提になるわけですが、まず金利の問題から言いますと、今度の新城下町法でも、特定地域振興貸し付け、これを見ますと、金利が設備が七・三、運転が八・二と、こういうふうなことになっております。同じ中小企業関係のさまざまな融資制度の中に、たとえば中小企業設備近代化資金というふうな場合はこれは無利子という制度もあるわけなんですね。そのほか中小企業新分野進出計画特別融資、その中の高度化融資という場合は現行の制度でも無利子というふうな制度もあります。あるいは中小企業事業団の融資制度の中で、集団化のための融資は年利二・七%、また工場共同化のためあるいは共同の公害防止を図るための設備という場合は無利子と、こういうふうな制度になっているわけなんで、まあこの城下町法においてさらに技術革新その他能率を高めていく、そういうふうなものの設備だとか、あるいは運転資金については、ほかの中小企業関係法律を見てもそういうことがあるわけですから、現実は非常に厳しい。そういうふうなことを配慮して、さらにこういう融資制度についてももっと低利な方向を打ち出してもらわないとなかなか積極的な対応ができないんではないかというふうに考えております。  仕事確保の問題は、先ほど言いましたように、融資の問題についての前提でもあります。域下町法の中で、広域あっせんというふうなこともありますけれども、いま仕事のあっせんその他中小企業全体でも下請振興協会というものがありまして、各都道府県で仕事のあっせんをするということも出ております。しかし、いま技術革新、そして多くのところで、たとえばロボット化、こういうふうなことを進めて、いままで下請に出していた仕事まで親企業が社内で全部こなしてしまうという傾向も一面では出てきておりますし、また非常に全体として不況感がまだぬぐい切れないというところから全体として仕事が少ない、こういうふうな条件もとですから、特に企業城下町の場合、親企業が撤退してしまうというふうなことになれば、ますます仕事の確保が大変になる、そういうふうな状況ではないかというふうに思うわけです。広域あっせんといっても零細な業者の場合は、その仕事を受け取るために他県まで出かけていって、そしてこなすというふうな状況というのはなかなかないんではないか。現在の神奈川県あたりでも、下請振興協会あたりがそれなりのあっせんしておりますけれども、そのあっせんの中身を見ますと、いままでの下請企業を整理して、そしてさらに単価を安くして、この単価でできる下請があるかどうかというふうな意味でのあっせんなんというのもありまして、実際問題としてはなかなか単価が引き合わない、そういうふうな状況も続いております。  仮にそういうふうな仕事をとっても、従来の下請の仕事がなくなってしまうというふうな状況現実になっております。したがいまして、自治体などの方で官公需、これを積極的に出してもらう、創意工夫して官公需を地方公共団体なり国の方も考えていただいて、そしてできるだけ零細な地元の業者にそういったものができるように、大きな工事なんかについては分割発注するとか、そういう配慮をして地域の多数が仕事を確保できるような、そういう状況をつくり上げない限り非常に深刻になってしまうんではないかというふうに思うわけなんです。
  112. 市川正一

    ○市川正一君 どうもありがとうございました。時間がないので……。
  113. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙中のところ、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴させていただきましたことを心から厚く御礼を申し上げます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。     ─────────────
  114. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 次に、高度技術工業集積地域開発促進法案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。山中通商産業大臣
  115. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 高度技術工業集積地域開発促進法案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  わが国経済は、内外の著しい環境変化により構造的な諸問題に直面しており、この中で地方の経済も停滞の方向にあり、また、大都市との経済的格差も拡大しております。こうした状況を改善するためには、産業構造の高付加価値化、知識集約化の利点を生かした高度な技術力を持つ工業、いわゆる技術先端産業の新たな地域展開が必要であると考えられます。  このためには、臨海地域を中心に素材産業の大規模展開を図ってきた従来の地域開発とは異なる内陸型、技術先端産業型の地域開発を図り、また、これに伴う技術の波及による地域の産業を育成することが必要であります。  本法案は、こうした見地から、地域における高度な技術力を持つ工業の効率的な開発を促進することにより、地域の経済の発展を図り、地域住民の生活の向上と国民経済の均衡ある発展に資することを目的とするものであります。  次に本法案の要旨について御説明申し上げます。  第一は、本法案に基づいて行う工業開発の内容についてであります。  本法案に基づいて行う工業開発は、工業の集積の程度が著しく高い地域及びその周辺の地域以外の地域であって、よりどころとなる都市、高度技術に係る大学及び企業の集積が存在していること、高速自動車国道、空港等高速輸送に係る施設の利用が容易であること等の要件を満たす地域について、すでに立地している企業高度化するとともに、高度な技術力を持つ企業の立地を促進することを内容としております。  第二は、開発指針の作成についてであります。  主務大臣は、対象地域の設定、高度技術に立脚した工業開発の目標等について、都道府県の作成する開発計画のための指針を定めることとしております。  第三は、開発計画の作成についてであります。  都道府県は、主務大臣の定めた開発指針に基づき、特定の地域について開発計画を定め、主務大臣の承認を受けることができることとしております。開発計画においては、対象地域、高度技術に立脚した工業開発の目標、当該工業開発に必要な業務を行う機構に関する事項、工業用地、住宅用地、道路の整備並びにこれに必要な土地の確保に関連した農用地の整備に関する事項等を定めることとしております。  第四は、開発計画の実施を促進するための税制その他の助成措置についてであります。  まず、主務大臣の承認を受けた開発計画に定められた開発促進業務を行う民法法人の基金に充てるための負担金については、損金算入の特例を適用することとしております。  また、当該開発計画に係る地域において一定の試験研究設備を新増設した事業者に固定資産税の不均一課税をした地方公共団体に対しては、地方交付税による補てん措置を講ずることとしております。  さらに、国及び地方公共団体は、開発計画の達成に資するため助言、指導等の援助を行うとともに、地方債の起債、農地法等の許可について特別の配慮をすることとしております。  なお、本法案は、通商産業大臣、建設大臣、農林水産大臣及び国土庁長官が協力して実施することとしております。  以上が、この法案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  116. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 次に、補足説明を聴取いたします。福原立地公害局長
  117. 福原元一

    政府委員(福原元一君) ただいま大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。  産・学・住が有機的に結合された町づくりを目指すテクノポリス構想は、通商産業大臣の諮問を受けて、昭和五十五年三月に産業構造審議会によって取りまとめられました答申「一九八〇年代の通商産業政策のあり方について」において打ち出されて以来、時代の要請にこたえる構想として地方公共団体を初め各界の賛同を得、その具体化に向けて各道県において所要の調査が進められるなど順調な進捗を見せてまいりました。  こうした状況の中で、テクノポリス構想の推進のための基本的な方向づけを行うべく、関係各省庁の協力を得て、法案の提出につきまして検討を進め、今日御審議をいただくことになった次第であります。  次に、本法案の要旨を補足して御説明申し上げます。  第一は、本法案において行う高度技術に立脚した工業開発の内容についてであります。  本法案第二条において定義しております高度技術に立脚した工業開発は、立地している企業について技術開発等に対する助成等の措置を講ずることにより、高度技術の開発または利用を行う企業に成長させること、及び立地条件の整備等の措置により高度技術の開発を行う企業の立地を促進することを内容とするものであり、技術革新の進展に即応した地域の工業開発を目指すものであります。  第二は、高度技術に立脚した工業開発を行うべき地域についてであります。  本法案における工業開発が、既存の企業集積及び産業関連施設の活用等を図りつつ、地域における効率的な工業開発の達成を図るものであることにかんがみ、一定の企業の集積、都市機能、大学、高速輸送施設等の条件を備えている地域を対象としております。  第三は、国の定める開発指針についてであります。  これは、地域の設定のあり方、高度技術に立脚した工業開発の目標の設定方法等、各都道府県が実際に開発計画を作成する際の指針となるものであります。  第四は、各都道府県の定める開発計画についてであります。  これは、本法案で規定した要件を満たすと認められる地域を対象として、各都道府県が地域の工業の現状等を勘案し、開発指針に適合し、かつ、周辺の地域に適切な波及をもたらすような工業開発の計画を作成することとしております。国としては、所定の要件に照らして審査を行い、開発計画の承認をすることとしております。  第五は、開発計画実現のための国の助成についてであります。  まず、開発計画に基づいて行われるべき重要な事業として、主として立地している企業の育成のために行われる試験研究等に対する資金の融通の円滑化、人材育成事業の実施等が挙げられますが、これらの事業の円滑な実施を図るため設立される民法法人につきましては、その事業の実施のための基金に充てられる負担金について、損金算入の措置を講じております。  次に、高度技術の開発を行う企業の立地を促進するとともに、立地している企業技術開発の活発化を図るため、地方公共団体が一定の試験研究設備に対し、固定資産税の不均一の課税をした場合には、地方交付税による減収額の補てんをすることとしております。  このほか所要の施設整備の促進等のための支援を行うこととしております。  以上、この法案につきまして、補足説明をいたしました。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  118. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 本案に対する質疑は次回に行うこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会