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1983-04-12 第98回国会 参議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         亀井 久興君     理 事                 野呂田芳成君                 降矢 敬義君                 吉田 正雄君                 市川 正一君     委 員                 岩本 政光君                 大木  浩君                 楠  正俊君                 福岡日出麿君                 降矢 敬雄君                 松尾 官平君                 森山 眞弓君                 阿具根 登君                 村田 秀三君                 馬場  富君                 井上  計君                 森田 重郎君    国務大臣        通商産業大臣   山中 貞則君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君    政府委員        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        通商産業大臣官        房長       柴田 益男君        通商産業大臣官        房審議官     野々内 隆君        通商産業大臣官        房審議官     斎藤 成雄君        通商産業大臣官        房審議官     池田 徳三君        通商産業省通商        政策局長     中澤 忠義君        通商産業省貿易        局長       福川 伸次君        通商産業省産業        政策局長     小長 啓一君        通商産業省基礎        産業局長     植田 守昭君        通商産業省機械        情報産業局長   志賀  学君        通商産業省生活        産業局長     黒田  真君        工業技術院長   川田 裕郎君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        松田  泰君        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君        中小企業庁長官  神谷 和男君        中小企業庁計画        部長       本郷 英一君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    参考人        石油公団理事   松村 克之君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (通商産業行政基本施策に関する件)  (経済計画等基本施策に関する件) ○特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査のため、本日の委員会参考人として石油公団理事松村克之君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  さきに聴取いたしました所信等に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 吉田正雄

    吉田正雄君 先般来、石油備蓄問題についていろいろ質疑をやってまいりました。この問題も、できたらきょうで通産当局の見解を伺って一応終わりたいと思っておりますが、また残るようなことがあれば、これは別の機会でお伺いいたしたいと思っております。  そこで、大臣、いままで何回か私の質問をお聞きになっていただいて、私の言い分についてはそれなりに御理解もいただいたと思うんです。私は、経済安保とか、エネルギー安保という観点で、国民生活に必要なエネルギーというものを確保していくということは、行政上、政治上、これは重大なことであると思いますし、その必要性は認めますけれども、ただ、そこにエネルギー浪費構造を逆につくり上げていくということになっては非常にまずいと思うんです。たとえば、今度法案がかかっております特定不況産業構造改善等につきましても、長期的な展望がないままに生産設備を拡大をして、そして過剰生産に陥って、逆にまたその設備を廃棄しなければならないということですから、資源のないわが国エネルギーの少ないわが国にとっては非常にむだだということになるわけですね。  そういう点で、私は長期的な見通しというものについては、現状の分析というものをきちっとやる必要があると思いますし、それから、数字的に明らかになる問題は、これはやはり科学的、客観的にきちっと分析上から数字というものをはじき出していく必要があると思うんです。そういう客観的な情勢分析に立って、仮に、答えが二つといいますか、どういう政策選択をするかというときには、政治的判断とか、政策的判断ということで、これは事務当局が積み上げてきた、そういう客観資料に基づいて、最高責任者である大臣判断をしていただく、これが私は正しい政治的な判断じゃないかというふうに思っておるんです。それだけに私は、事務当局の、大臣判断を仰ぐ場合の資料等については、正確なものでなければいけないし、的確なものでなきゃいけないと思うんですね。もし、そこに誤りがあるといたしますと、政策判断を誤るということになろうかと思うんです。  そこで、ずいぶん石油問題でも、私時間をかけてやってまいりましたけれども、いままでの答弁の中では、将来の展望について情勢が流動的であるとか、あるいは財政面で不明確な点があるとか、あるいは大蔵省との交渉状況によるというふうな説明で、空白な部分というものがあるわけです。しかし、最終的な計画に基づく数字というの ははっきりいたしているわけですね。したがって、途中経過についてどうなのか、あるいは国備予算関係展望というものはどうなるのか、こういうものがないと、計画だけあるけれども、やってみたら大変な赤字財政になるということでは困ると思うんです。いままでの論議を通じて、しかも通産省当局からいただいた資料をもとにしても、この国家備蓄基地計画の将来展望というものを見ますと、財政的に非常に困難性が予想されます。  御理解をいただくために、きょう大臣のお手元にも行ったかと思いますけれども、各委員皆様方にも資料を配付をして、余り数字を口で言ってもなかなかはっきりいたしませんので、そういうことで、今後の国備関係費用というものが一体どういうふうにふくらんでいくのかということを一覧表にしたのが一枚と、その内容について注釈をつけた補注という、二枚を出しましたので、それをごらんになりながら、大臣からも十分ひとつ御検討をいただきたいと思っております。  そこで、表の説明を若干いたしますけれども、いまの通産省備蓄計画というものを見たとき、三千万キロリットルということになっておるわけです。三千万キロリットルの備蓄の際、民間が仮に参加をしたという場合には、二割が上限ということになっておりますけれども、その場合にはタンク容量が四千四百万キロリットルになるわけです。  それから民間参加をしないという場合、三千万キロリットルというものを備蓄をするということになりますと、タンク容量というものは三千五百二十万キロリットルになります。  それから仮に民間タンク等でまだ余裕のあるところがたくさんあるわけですね。この前の数字でも概算では二千万キロリットルくらいあるのじゃないかということだったんですが、その後審議の中や、民間タンク状況等資料によって調べますと、少なくとも千六百万キロリットルくらいは余裕量というものを持っております。その場合どういう状況になるのかということです。  三千万キロリットルで民間不参加の場合でも、II―(i)、II―(ii)、II―(iii)、II―(iv)というふうに民間が全然ないという場合が一番左のII―(i)になるわけですね。それからII―(ii)というのが少しある場合、三番目がもっとある場合ですね。四番目というのができるだけ民間というもの――これは民間不参加ですね。  それから、三番目の方です。三番目の方が二千万キロリットルで民間不参加の場合、いろいろ例があります。たとえばむつ小川原、それから苫小牧東と、福井一期分秋田一期分、この福井一期分がことし三月、から建設に入っているわけですね。それから秋田一期分というものが四月から建設着工するというふうになっておるわけですが、その場合大きなマルというのは、そこに可能な限り入れていくということになるわけです。小さなマルというのは、全部でなくてもある程度入れていくというふうな状況ですね。幾つかのケースに分けてあるわけです。大きなIIIというのは一番右になりますが、二千万キロリットルで民間不参加という場合のタンク容量、これはいまの三千万キロリットルでは過大だという想定のもとで二千万キロリットルでもいいんじゃないかと、これはIEA等の、この前から論議をやっております備蓄量そのもの適正量というものは何かということを考えた場場には二千万キロリットルでも十分ではないかという観点から二千万キロリットルで、これは民間不参加という場合を考えておるわけです。  そこで、左側のうち国備基地でA1、A2、A3、A4ということで、ずっと各基地の名前が書いてありますけれども、いま申し上げましたように、A1というのはすでに基地建設が行われ、着工したところなんですね。  それからA2というのはいまも申し上げましたように、三月着工秋田が四月着工予定というところです。  それからA3というのは福井秋田の二期分と白島、上五島ですが、これは立地決定いたしておりますけれども、未着工というところです。  それからA4というのは、候補に挙がっておりますけれども、まだ立地決定を見ていないというところ、志布志馬毛島久慈などです。それから、その表の中でマルの次に括弧がしてありますのは、これはタンク容量です。先ほど申し上げましたように、大きなマルというのは十分にそのタンクを活用するということと、小さなマルというのは全部でなくて利用できるとき、一部利用するということであるわけです。それからその詳しいことは、A1からA4の違いというのは、補注のもう一枚の紙の方に、そこにずっと書いてありますからこれを見ていただきたいと思います。  それからもうちょっと具体的に申し上げますと、いま通産省が進めようとしている民間借り上げのない、一番左の方に民間借り上げのないI―(i)、それからI―(ii)ないし両者の中間ケース、これは民間参加を零から二〇%という場合の説明と、それから真ん中の三千万キロリットルで民間不参加の場合のII―(i)というもの、そういうものに沿ってもうちょっと詳しく説明を申し上げますと、まずここで申し上げたいと思っておりますのは、将来の建設費とか油代借り入れの利息なり、それから建設総額がどのようにふくらんでいくのか、その返済がどういうふうになっていくのかということを説明をいたしたいというふうに思っておるわけです。一番左の欄のところに、一番上がタンク容量になっておりますが、その下に借り入れ等と、こういうふうになっておりますので、その借り入れ等について説明を申し上げます。  まずイ、このイとそれからニ、つまり建設費借り入れ累計と、油代借り入れ累計がどうなるかということですけれども、そこに米印が書いてあります。たとえばニの油代借り入れ累計というところが、一番左のところを見ますというと一兆五千億円、こうなっているわけですね。これは借り入れですから、これはずっと右までずっと一兆五千億円になっているわけですが、これは通産省からいただいた資料でそうなっておるわけですね。  それからイ建設費借り入れについても、この数字八千八百というのと、それから三千万キロリットルのところのII―(i)ですね。そこのところでは一兆一千億円ということになっておるわけです。  それから二番目のロのところです。ロというのは、備蓄会社から公団への六十三年度までの元金返済額です。これが千二百五十億円です。これはたとえば一番上の方にありますむつ小川原というところがありますが、むつ小川原では五十八年度にオイルインしているわけですね。そうすると六十三年度までに約五年半、タンク利用料のうち減価償却費を、これが千九百円、一キロリットル当たりということになっているわけですけれども、これを備蓄会社から公団への建設元金返済に充てるということになっているわけです。  それからA1からA3の既存六プロジェクト全体で、六十三年度末までに約六千六百万キロリットルの返済が出てくるわけですね、計画に従ってやっていきますと。そういたしますと、減価償却分つまり備蓄会社から公団への借入金の返済額というのは、一キロリットル千九百円ですから、それに六千六百万キロリットルというものを掛けますと、千二百五十億円というロの数字というものが出てまいるわけです。  それからハの建設費借り入れ残高つまりイの借り入れ累計から備蓄会社公団返済した分を引いた分ということになるわけですが、これは一兆五千億円から千二百五十億円を引けばよろしいわけですね。そうするとその数字が出てまいるわけです。一番左のところでは一兆五千億円から千二百五十億円引きますから、残高というのが一兆三千七百五十億円、それから真ん中の三千万キロリットルの民間不参加II―(i)というところを見ますと、これは建設費借り入れが一兆一千億円、これは通産資料から出ておりますから、そこから返済金の千二百五十億円引きますというと、九千 七百五十億円という数字が出てくるわけです。  それから油代借り入れは先ほど申し上げたとおりです。一兆五千億円になるわけです。  それからホ、六十三年度末の油代借り入れ残高がどうなるかということですけれども、これは通産省も認めておりますように、油代借り入れ利子補給だけは千三百億円というものをこれは通産省も認めているわけですね。そうすると六十三年度までの利子補給はあっても元金返済がないわけですね。いままでも返されていないわけですから、そういう点で元金返済がないということで見ていきますというと、そこに残高というものがそのままずっと、借り入れ累計がそのまま残高として残っていくということになるわけです。  その次、六十四年度国備関係費というのがございますけれども、その六十四年度予算ですね、そのうち③の公団備蓄増強対策補給金、これは油代借り入れの利息です。これはいま申し上げましたように千三百億円。これは大体予算に乗っかっておるわけですが、これはずっと続いていくものというふうに思われるわけです。  それから、④は公団備蓄事業費等交付金、主として備蓄経費ということで、これも千五百億円というものが通産資料で示されております。  そういたしますと、①と②ですね、これは建設費元金返済、それから建設費借り入れ利子ということになるわけですけれども、この①プラス②の金額の合計ですね、これをいま三千万キロリットルのII―(i)というところを見ていただきますというと、一番上の三千万キロリットルの民間不参加というところがありますが、そこは四つに分かれておりますけれども、そのうちの一番左のII―(i)というところですね、そこを見ていただきますと、ずっと下へ参りますと、千十五から千百六十という数字がございますけれども、これはいま申し上げました建設費元金返済と、その借入利子合計です。これを、そこに二十年返済、十五年返済というふうに書いてありますが、いま減価償却が十五年ということですから、十五年の計算でやれば千百六十億円返さなければいけない。それから、二十年という場合には千十五億円。これは元利均等という計算で出したものです。元金だけ均等にいたしますというと、当初の返済額が非常に大きくなってくるわけですね、後に行ってだんだん小さくなりますけれども。この場合には一応十五年、二十年の元利均等返済数字がそこに掲げましたように、二十年の場合には千十五億円、十五年の場合には千百六十億円ということになるわけです。  そういたしますと、これらの①、②、③、④というところをずっと合計といいますか、それを見ますというと、必要となる国備関係費というのが、いま国が進められておるのは三千万キロリットルで民間不参加というふうにおっしゃってますから、主としていま申し上げましたこの真ん中の三千万キロリットル民間不参加II―(i)に沿っていまずっと説明をいたしますというと、その国備関係費が二十年返済を考えた場合には三千八百十五億円、十五年返済を考えた場合には三千九百六十億円というものが必要になってくるわけです。  そこで、今度はその下の段へ移りまして、一番左側にa、b、c、dというふうに書いてありますが、aというところは五十八年度から六十三年度の国備関係費不足累計額がしたがってどうなるかということを計算をいたしたわけです。そうすると、国備関係費というのは五十八年度予算では千六百五十億円なんですね。そこで、どんどんどんどんふえていくわけですね。それで、六十四年度にはどうなるかというと、三千八百十五億円から三千九百六十億円と、毎年一定額ずつふくらんでいくというふうに考えた場合、石油税率三・五%のままで充当可能な国備関係費がどれくらいになるかというと、千五百億円なんですね。そういたしますと、いま言った国備関係費が三千八百十五億円から三千九百六十億円ということになってまいりますから、その千五百億円との差額というものがそこへ出てくるわけですね。したがって、そこのaの数字の六千三百億円から六千七百億円というのは、五十八年度から六十三年度までの累計額です。つまり、これだけ赤字になるということですね。三角印で六千三百億から六千七百億円というふうに書いてあるわけですが、これが国備関係費が五十八年度から六十三年度の間に不足する累計額です。どうして出てきた数字かはいま申し上げたとおりですね。  そこで、充当可能な千五百億円のこの国備関係費というのは一体どこから出てきたかということになるわけですけれども、これは石油勘定の原資として、原重油関税剰余金等、これが五十八年度予算では二百二十一億円です。それから石油税繰り入れが四千二百九十億円のほぼ一〇〇%近い九九%が繰り入れられておりまして、これが四千二百五十億円ということで、石油勘定合計というのが四千四百七十一億円、うち、国備関係費がその約三七%の千六百五十三億円ということになるわけですね。  ところが、御承知のように石油税が減少してまいるわけですね。この前も原油等の値下がりによって、石油税の場合には従価税なんですね、したがってこれが減ってくるということで、大体この前の場合には約六百億円くらい減ってくるだろうということでありますから、いまの四千二百九十億を三千六百五十九億として、さらにその繰り入れを九九%でなくて一〇〇%としても、そのまま三千六百五十九億円です。したがって、これを全部石油勘定に入れても、さっき言った原重油関税剰余金、これが二百二十一億円ですが、それをそのまま入れますと石油勘定全体で三千八百八十億円になります。したがって、そのうち国備関係費現行と同じく三七%と見ますと千四百三十四億円になるんですね。まあしかし、これを多目に見ても千五百億円という数字が出てくるわけです。したがって、いま言ったように五十八年度から六十三年度までの累積不足額が六千三百億円から六千七百億円という数字にふくらんでいくわけです。いまのは不足累計額a。  その次のbというのは、その不足額に、通産質疑の中でのやりとりで、いままでの余った分の約五千億円を積んであるといいますか、手持ちがあると、こういうことですね。その五千億円というものを加えた分、一般会計からの未繰入分です、これが約五千億円くらいあるということですから、その不足額に五千億円をつぎ込んだというものと、それから備蓄会社から六十三年度までの元金返済というものがあるわけですから、これらを全部加える、つまり五千億円と備蓄会社からの六十三年度までの元金返済、これを全部入れても、いま言ったaの不足額と比較をいたしますというと、二十年返済でも五十億円の赤字、それから十五年返済の場合には四百五十億円の赤字という数字が出てくるわけですね。  それからcです。六十四年度以降約十五年間の毎年の備蓄会社から、公団への建設元金返済がどうなるかということですけれども、これは、先ほど申し上げましたように、タンク利用料、そこから減価償却分で返していくわけですから、六十四年度以降三千五百二十万キロリットル、一番上に書いてありますタンク容量三千五百二十万キロリットルですから、この三千五百二十万キロリットル分のタンク利用料、その中の減価償却分、一キロリットル千九百円というものの総計というのが六百六十九億円になるわけですね。  それからdというのが――これはいま言ったその上のc、返済分が、石油勘定国備関係費、先ほど申し上げました千五百億円からは独立した財源になり得るから、したがってこの千五百億円にcを加えたものというものがdになるわけです。それからその額がその同じ欄のところに二千百六十九億円と、こういうことになるわけです。そしてそのdの下のeというのは、したがってdから⑤――先ほどの、その上の欄に①②③④⑤と書いてありますが、その必要となる国備関係費、⑤をdから引いたもの、これが幾らになるかということになるわけですね。そういたしますと、そのdから⑤を引きますというと千七百九十億円の赤字つまり六十四年度以降毎年国備関係費が千七 百九十億円も不足をするということなんですね。  そこで今度はfということなんですけれども、fは御承知のように石油税税率現行三・五%ですが一体それを引き上げる必要があるのかないのかという検討に入ってくるわけです。そういたしますと、各欄三千万キロリットル、民間参加の場合が二つケース、それから民間不参加の場合が四つケースというふうにずっと大きく三つに分けてあるわけですけれども、それぞれについていま言ったような計算をいたしますというと、一番左から申してまいりますというと、三千万キロリットルの備蓄民間参加をした場合、その場合にはタンク容量が四千四百万キロリットルですけれども、その場合も、A1、A2、A3、A4というそこのところだけという場合と、それからまだ立地決定をしていないA4、志布志馬毛島久慈などを除いて、そのかわりにBの北海道共備あるいは北海道共備以外民間タンクというものの五百万キロリットル、それから七百四十四、こういうものを利用した場合というふうにあるわけなんですが、そういうふうに見てまいりますと、一番左の欄から民間不参加ということでまいりますというと、とにかく不足財源が二千百億円も出てまいるわけですね。したがって、現行の三・五%ではとうてい足りない。少なくとも税率を五・七%くらいまでに上げないというと追いつかないということになってくるわけです。  それから、同じ三千万キロリットル民間参加の場合でも、北海道共備、これはほとんどいま、十五基のうち十二基が民間のものが入っているわけですね。したがって、これは当然利用すべきだということになりますから、そういたしますというと、この場合は約千六百八十億円の不足になるということですから、税率を五・一%くらいに上げなければならなくなるだろうということです。  それから、真ん中の三千万キロリットル民間不参加の場合の一番左の欄のII―(i)のところですね、これは先ほどずうっと説明をしてきたんですが、この場合ですというと、千七百九十億円の不足ですから、これは五・三%税率を引き上げなきゃならない。  それからその次の(ii)の欄は、北海道共備とここのところ、これはまだ立地決定してない志布志だとかそういうものを除いて、北海道共備の一部を利用する、三百六十四万キロリットル利用したという場合ですね、そのときが少し減ってまいって千六百二十億円不足するということですから、この場合でも五・一%を上げなければいけない。  同じようですから、今度IIIの、二千万キロリットルで、民間がそれでは不参加の場合どうなるかということですが、この場合、III―(i)、民間の借り上げがないとした場合、その場合はA1のむつ小川原苫小牧東は大部分利用する。福井一期分秋田一期分も、これも最大限利用する。そして福井秋田の二期分と白島、上五島の一部八百三十四万キロリットル、これを利用したという場合で計算をいたしますというと、赤字が四百六十億円に減ってまいります。そういたしますと、いまの税率が三・五ですけれども、三・五四%、ちょっぴり上げる程度で済むということになります。  それから、III―(ii)の場合ですね、この場合は三百十億円、少し少な目になっておりますけれども、これはもう、この程度の数字はほとんど率から見ますと影響がないということが言えますから、この程度の赤字ならばほぼ税率というものは現行で据え置いてやっていけるんじゃないかということです。  こういうことで、大臣のところにもう一枚、委員の皆さん方には二枚しか表が行ってないんですが、大臣のところには、通産からいただいたもう一枚の資料が行っていると思うんです。「国備関係費について」ということで、「空欄の部分は未定である」という表が一枚行っていると思うんですが、大臣御存じでしょうか。――したがって、私が非常に――空欄の意味はわからぬわけじゃないんです、そこにるる釈明が書いてあります。釈明が書いてありますけれども、その上の欄の一番右の六十四年度というところには、もう、公団備蓄増強対策補給金の千三百億、それから公団備蓄事業等交付金が千五百億ということと、それから、上の方へ参りまして、建設費借り入れ累計が一兆一千億円、それから油代借り入れ累計が一兆五千億円という数字は、これはもうぴちっと決まっておるわけなんですね。決まっておりますし、石油の消費量も大体横ばいでいくだろうし、タンク容量はどうか。いずれにしても、三千万キロリットル備蓄すれば、年度で若干建設のおくれがあったとしても、必要な返済金とか利子補給金がどうなるかということは、おのずからここに埋められてこなきゃならないんですが、これは埋めてない。埋めてなくても結構なんですが、いずれにしても、いままでの通産資料や答弁から計算をしてまいりますと、いま言ったような、こういう一覧表ができ上がってくるんです。少しぐらいそこで五十億や百億違っても、大きな数字についてはほとんど変わりがないということなんです。そこで、この表全体を見ますと、この数字は変わっても、ほとんど大差ない数字にしかならないと思うんですね。  そこで、通産省が進めようとしているのは、この中で一番左の三つの大きな枠の三千万キロリットル、民間参加のI―(i)と、あるいは民間不参加II―(i)と。だから、一番左の欄と、先ほど来説明をしてきたII―(i)ですね。あるいはその両者の折衷と。両者の折衷と言う場合には、民間参加が大体二〇%を上限とするんでしょうけれども、そういう場合ですね。いずれにしても、通産省がいま進めようとしておる方針でまいりますと、石油税率というものを五・七%から、いま言ったIIの(i)の場合でも五・三%に引き上げなきゃならぬという結果が出てくるわけですね。そうなりますというと、これはもう財政破綻は避けられないんですよ。それから、民間参加をなくして、必要なタンク容量を少なくした方が、また民間借り上げを進める方が財政負担が少なくなるというのが、この表からずっとわかってくるということです。  それから、三千万キロリットル国家備蓄では、いずれのケースの場合でも、いま言ったように、税率は引き上げなきゃならないんですが、もし税率を引き上げないで国家備蓄を進めていくということになれば、あの答申にも出ておりますように、当面はとにかく二千万キロリットルまではやると。それから長期的には、いろいろな石油の需給状況等、諸条件というものを勘案し、それらを照合しながら検討を加えるということになっておりましてね、絶対三千万キロリットルやれという答申ではないんですよ。そういう点で、石油の値段が非常に下落をしてきた、石油の需給状況というものが非常に緩んできておる。たとえば、七九年から八一年度までに、重油、ナフサ等の減少というものが、三千九百万キロリットルも減っているわけですね。このうち燃料転換分が二千二百万キロリットル、それから省エネ分が千万キロリットル、それから不況対策分というのはわずかでして、これはたった七百万キロリットルなんですね。これは、素材産業というものが、構造改善がどんどん進んでいるということですから、不況が克服されたら石油の需要が大幅に増大するというのは、これは誤りです。燃料転換という場合には、一バレル十七ドルぐらいでないと、これは再転換というのはあり得ない。その辺が大体めどだと、こういうふうに言われておりますから、仮に現行二十九ドルが二十五ドルに引き下げられても、燃料の再転換ということはあり得ないということがはっきりいたしておるわけですね。  したがって、大幅な税率引き上げを避けるためには、少なくともいろんな組み合わせがありますけれども、私は、財政の負担あるいは財政再建という考え方からするならば、二千万キロリットルの国家備蓄にこれは縮小していくということでないと、大変な結果になるんではないかというふうに思うわけです。  さらに、同じ二千万キロリットルの国家備蓄であっても、国備基地としては、現在建設中のA1ですね、むつ小川原苫小牧東、それからすでに 着工した福井秋田のそれぞれの一期分、これはもう仕方がないわけですね。しかし、あとの分については、これがなくてもやっていけるんですね。この前も申し上げましたように、三千万キロリットル認めても、民間の借り上げが季節変動値の八百万キロリットルを考慮に入れても十分ある。北海道共備と沖縄を入れますと千六百万キロリットルくらいの備蓄余裕量というのがあるんです。  そういうことで私は、未着工の部分と、それからまだ立地決定してないA4ですね、志布志だとか馬毛島とか久慈、こういうところの建設というものは取りやめるべきだ。そしてあとは、民間の借り上げを無理のない最大限に引き上げていく必要があるんではないか。そうでないというと、この数字が示しておりますように、税率の引き上げはもうやむを得ないというふうに思うんですね。  しかも、これは報道等ですから、これはきょう大臣からもお考えを聞きたいと思っておるんですけれども、石油税率の引き上げというものを、原子力を除くその他の石油代エネルギーの経費というふうなことを言われておるんですけれども、実は石油代エネルギーの経費というのは非常に少ないんですね、大臣。何かもう石油代エネルギーというと、原子力も何もみんなごっちゃになっていますけれども、原子力予算は、いま言ったこの石油勘定とは全然別なんですよ。石油勘定の中に含まれております石油代エネルギー予算というのは、エネルギー対策予算ですね、これは五十五年度が三百四十九億円ですが、決算は三百九億円。それから五十六年度の場合は五百五十六億円なんですが、決算は二百九十四億円。五十七年度は、今度五十六年度よりも減って五百三十七億円で、これはまだ決算出ておりません。五十八年度予算が五百五十億円ということで、ほぼ石油代エネルギー対策費の予算というのは横ばいになって、決算はほぼ五十六年度あたりというのは半分くらいなものなんですね。これはそんなに大幅にふえる内容の費用じゃないんですね。  したがって、この石油代エネルギー対策予算がふくらむから石油税率を上げなきゃならぬというのは、全然筋違いであり、見当外れなんです。そういたしますと、このまま国家備蓄計画を進めるということになりますと、これはもう税率の引き上げというのはどうしようもなくなってくるということで、現在の財政再建という観点からすると、大変な問題が出てくるということがこれは表から言えることなんですね。  そこで私としては、いきなりこういう数字を並べてやったものですから、なかなかいますぐ返答というのはできかねると思うんですけれども、少なくとも客観的に示されたこういう数字、これは通産資料を基本にしておりますから、あとは計算は、もう金利が幾らとか、長期プライムレート八・四%あるいは八・三%という、そういう計算でずっとやっていっているわけです。  そういうことで私としては、大臣に大いにひとつ今後検討をしていただきたいと思う点を申し上げますと、石油情勢が変化をしているということはもう御承知のとおり、大臣専門家でおいでになりますから、一番よく御存じなんですが、それと財政事情ですね。私は、五十九年度以降も財政というのはますますどうも厳しくなるんじゃないかというのが、この間の予算論議を通じて感じたことです。そういう点から、いま無理をして三千万キロリットルにしなければならぬという客観的な根拠、エネルギー需給状況に財政上ないということで、二千万キロリットルにまず減らすことが必要なんじゃないかと思いますし、それから国備基地建設については、先ほど来るる申し上げておりますように、むつ小川原苫小牧東部と、それから着工に入った福井一期分秋田一期分、ここのところで取りやめて、あとは民間余裕タンクを借り上げると。これはもうこちらの方がずっと安くつくということも、この間の論議で申し上げたとおりです。安く済むんですね、ということでやるべきではないかと。したがって、なおさらまだ立地決定をしていないその他の地区については、これはもう抜本的に再検討すべきじゃないかというのが私の見解であるわけです。  もう一気にいろいろずっとしゃべりましたから、大臣もいきなり数字を示されて、いま直ちにということはお答えはできないと思うんですが、少なくとも、しかし問題があるということについては御理解をいただいたんじゃないかというふうに思っておりますので、いまお聞きの限りでのまた御見解等があれば、これは印象でもいいんですが、そういう点があればお聞かせを願いたいと思うんです。
  6. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) まず冒頭に、今国会にこの委員会審議をお願いする構造不況業種、こういうものはやはり見通しを誤った結果、その後始末をせざるを得なくなったじゃないかと。したがって、いまお述べになったようなことを詳細に踏まえながら国家石油備蓄について考えるというようなお話でございました。振り返ってみれば、そういう点が確かに肯綮に当たります。しかしながら、その当時日本の国家、政治家、国民民衆の頭の中には、石油は何となく無限であって、そして二ドルぐらいのもので手に入るんだと。それを前提にして日本が工業発展ができるんだという、一応その勢いで滑り出してしまっていて、高度成長期と言いかえてもよろしいんですが、それが私たちにとってはある日突然、産油国の人々にとっては、考えれば当然のことと思われる石油を戦略物資に使ったということによって、私どもの側の言い分は、第一次石油ショックという名前をつけざるを得なかった。そこのところは一応日本独特の努力によって克服をし得た国として諸外国も認めたんでありますが、しかし、第二次石油ショックについては、この重みから脱却できないままに今日に至って、やはりいまおっしゃったように見通しが、その意味においては、日本の要因ではなく、外国のどうにもならない要因によって、変更ないしそれの見直しを迫られておる。このことについては、そういう経過を踏まえれば見通しを誤ったと言われてもいたし方がないと思いますが、私たち自身の誤りであったかどうかについては、諸外国ともに同じ現象に、非産油先進国が苦しんでおる、産油のある国もありますから石油輸入先進国と言い直しましょうか、諸外国も苦しんでおる。そういうことを考えれば、これは私ども逃げようとは思いませんが、対応するための努力をやはりやるしかないというふうに思うんです。  そこで、本来の問題の石油に入ってまいりますが、まずこの石油税率三・五%というものがなぜ設定されたのかという議論が一つ抜けておるわけであります。それは、初めに三・五%があって、そしてそれから種々のそれを財源とする特会が始まったのではないんです。これは私、党のことでありますが、税制調査会長としてこの三・五%を決めたわけでありまして、その決めるときには、どうしても国家備蓄を初めとする代替エネその他の特会について特別の財源が要る、しかし、大蔵省としては既存の税目と税制の中ではとてもそのような将来にわたる長期的な、しかも相当大きな金額に達する計画を埋めるようなものはできませんという話でございました。そのとき、私はもちろん野にあったわけでありますが、通産当局の当時の責任者からその苦衷を聞かされまして、私の個人事務所でいろいろと相談を受けまして、まさか私がいま通産大臣に来ようとは思いも寄らぬときの話でありますが、それならば自分が、通産省の中でこの三・五%に反対する業界もあるわけでありますから、しかし省全体、民族、国家の前途を展望してどうしてもやりたい計画であるというならば、自分がここに新税をつくってあげよう。当時、為替のレートが非常に石油産業には有利でございましたので、一説には為替差益八千億、七千五百億とも言われていた背景もありまして、それを全部取り上げるというわけには、為替レート変動によるものであるという特殊性を考えれば、変動は今後もあり得るのであるから、それが石油産業をまた追い詰めるという程度でない税率、三・五%ぐらいということで、時期も、すでに十 二月と言えば政府税調も答申案の作成にかかるころでありましたが、十一月の半ば以降に私がこの三・五%案を政府税調にかけるように大蔵省に申し渡したのでありますが、当時の大蔵省は、率直に言って、どうせついでなら五%ぐらいこの際かけたらどうでしょうかという話がありましたが、これはやはりそうむちゃなことをやるわけにもいかぬじゃないかということで、三・五%でしんぼうしてもらうかわりに、そのかわり当初の計画の間は金は余るから、それは大蔵省の一般財源で使ってよろしい。ただし、これは将来の目標が決まっているのであるから、使っていいが、それは預けてある金である。将来は引き出されるということを前提だぞと申し渡しました。そうしてその三・五%が設定をされたいきさつがあるわけでございます。  したがって、これは将来計画必要性というものを考えて、それに対して三・五%で足りる。事実上、今日まではそれで足りてまいりますし、若干のまだ、通産省の立場から言えば、その当時のいきさつでは大蔵省に貸しがまだ残っておるという点があるわけでありますが、いまの詳細な御苦労された作業の内容の結果は、そのようなものではとても足りないぞというお話でございます。  確かに、この御苦労された試算を私もつぶさに数字を目で追いながら、計算の誤りはないということで拝見、拝聴いたしますと、結論の御指摘について、私自身も御主張される点はよくわかりました。また御主張される理由もわかりました。しかしながら、さっきの三・五%をなぜ置いたかという前提が、この計画達成のために必要な数字として石油税を新設し、その税率を三・五%とするという税制、税率をつくったときのいきさつから考えまして、それを踏まえていけば、確かにこれは財政破綻につながる、石油税率の引き上げしか道がないじゃないかという御意見もうなずける点がありますし、したがって、現在の三千万を二千万にとどめたならば、計算上は石油税に食い込まなくてもやっていけるではないかという、具体的な場所まで指摘してのお話でありますから、このことはこのこととして、もう少し、またもう一遍政治の考え方として原点に戻りたいと思いますが、このような、日本は特別にまた国産資源はこの石油については皆無という国でありますから、そうすると限られた供給地から持ってくるしかないもので、自給率ゼロに近いわが国として、どのような国策をとるべきなのかという基本に戻りますと、私は日本の決断は非常に遅かったと思っております。  たとえば、OPECが最初の値上げを決めたときの、その当時のドイツの首相はシュミットだったと思いますが、発表された翌日に、いままで検討もされていなかった国家備蓄一千万キロリットルを直ちに決定をいたしました。議会も承認いたしました。一方、アメリカにおいては、アラスカの湿原地帯の微生物その他を、自然環境保護といいますか、環境政策でもって、確かにアラスカの北に油田があることはわかっていても、それを西海岸に運ぶということについては、議論はあっても結論は出なかったわけであります。ところが、この第一次石油ショックをやはりもろに受けたアメリカとしては、直ちに、一本建設することも議論があったんですが、それを複数以上建設してもよろしいという上院の決定が二日間のうちになされた。  このようなことを考えますと、それぞれの国家備蓄の目標は違うかもしれませんが、わが国は特別にまた生産量ゼロの国であるとするならば、ここに国策というものが日本独自のものがなければならぬと思います。その意味では、私は、民間は採算のことを考えますし、採算に合わないものは、現状の石油製品流通市場等でもおわかりのように、そういう不安定な、あるいはまた国家に対して絶対的に忠誠を誓わなければならないという国でない民間企業、わが国はそういう国でありますから、やはり政府が、政治が責任を持って三千万キロリットルの備蓄は果たしますという一つの目標、政策の設定があり得ると思うんです。これは計算を超えた問題であります。  そのために財源をどうするかという問題は、現時点では確かに石油税の引き上げとか、あるいはこれは決まってはおりませんが、代替エネルギーに課税するという、これはおっしゃるとおり、私も賛成で、そういう案は反対であります。けれども、ございます。しかし、そういうことはどうも前の方に歩こうとする人を後ろの方に押しやるような、ちょっと考えられない構想ですので、それに対しては私も明確に否定いたしますが、案があることは事実でありますけれども、それも財源としての貢献は余りない、その点も認めたいと思うんです。  そこで、後は政策をどうするかという問題でございまして、あながち石油税をすぐに引き上げなくても、来年度予算は私は組めると思います。しかしながら、将来にわたっての展望は、消費量が五ドルぐらいの値下げでそうたくさんふえるわけじゃないだろうという点も、あるいはまた代替エネその他で定着したものが、まあ十五ドルということはないでしょうが、十七ドルとおっしゃいましたですか、デッドクロスして、代替することがむしろコスト高というようなエネルギー価格というものは、たとえば石炭代替であれば二十五ドルから二十ドルというような一定の予想はできますが、そういう代替エネのスピードというものを新エネあるいはその他の努力というものが、あるいは民間の節約も含めて、一挙にそれが後退していくものでもなかろう。  私は、むだしゃべりをするようですが、福岡で、日本人の知恵と申しますか、そういうものを学んだことがあります。それは福岡で、四年前でしたか、水不足がありまして、大変な難渋をされた。その後、翌年は大雨が降って、もうことしはどうぞ御自由にと水道局は言ったんですけれども、悲鳴を上げたのは水道局の方で、民衆、家庭が使ってくれないんです。水は大切なものであるという、あの苦しみというものを二度と味わいたくない気持ちが、十分ありますよと言われても、どうしてもバケツ二杯を一杯半にする知恵というものはもうしみついたということで、水道料金が上がらないという、そういう経験を聞かされて、なるほど人間というものはするものだなあ、試練に耐えた場合にはその耐えたときのことをやはり将来蓄積するんだなあと思いました。  その意味では、やはり節約というようなもの等を含めて、石油は爆発的なまた輸入増につながる要素にはならないだろう、この点も私は同感であります。  そこで、これから先どうするかについては、それは二千万キロリットルにとどめて、そして石油税も上げないで済んで、そして後の予定されたところは取りやめてという、それでも民備を活用すればやっていけるんだからというお説も一つの説として受けとめます。それはまた傾聴しなきゃなりませんが、国家政策ということから決断をすれば、一応三千万キロへの道は進みながら、それがまた、今度は時間差というものもあってはならないという制限はありませんので、これ等も検討の一つの対象にしながら、直接には来年度予算編成は大蔵省と財源の問題で詰めますし、将来の計画については一応国が三千万キロリットルの備蓄を国家としてしておくことによって――将来、第三次石油ショックが招来するであろうということをすでに予測している国もあります。しかし、私どもはそういう乱暴な予測はしたくない、むしろこの状態を天恵と受けとめて、日本経済の活性化ということを図っていって、その結果、若干の石油使用量がふえることがあっても、次にいかような事態が来ても、われわれは国家が三千万キロリットルは持っていますからということで安心さしてあげないと――いまLPGの方は随伴ガスですから、値を上げられて数量も少なくなっているということが、すでに幸い冬は過ぎておりますから、灯油等についてはそう騒ぎにはなりませんが、末端の間にはそろそろ品不足、家庭用プロパンとか、あるいは自動車のエネルギーのプロパン、タクシーとか、品切れスタンドが出るとかなんと か、いろいろ風評が出て問題を起こしておる、そのガソリンの値崩れの最中に。  そういうことを考えますと、やはり国家としては三千万キロの目標をいつ達成するかの問題も、これはやはり検討の対象に含めていいと思いますが、国がその姿勢をきちっと持っているということが、石油資源国のわが国として必要なことであろう。  しかし、ただいま御指摘のありましたことは十分に傾聴すべき御意見として承りました。
  7. 吉田正雄

    吉田正雄君 そこで、大臣、もう時間もありませんし、るる論議をやってまいりまして、大臣も私の言い分については御理解をいただいていると思うんです。  そこで、くどいようですけれども、私は、三千万キロリットル国家備蓄の基準になった考え方として、例のIEAの平均備蓄日数というものが出されておりますが、これについても問題があるということは、この前申し上げたと思うんです。  たとえば、イギリスの場合というのは輸入をいたしておりませんから――IEAの平均備蓄日数というのは、輸入量から輸出量を差っ引いた純輸入量で割った数字なんですね。したがって、イギリスの場合には輸入がゼロですから、それでまいりますと無限大になっちゃうわけですね。  それから、カナダのような場合には輸出をどんどんやっておりますから、輸入量から輸出量を引きますと、純輸入量というのはきわめて少ないわけですね。それでもって割れば、これは一千日分くらいになっちゃうわけですね。  こういう考え方の基礎にそもそもやっぱり問題があるんじゃないか。そういう特異な国まで全部入れて平均をして、これだけだからと言っても、これは経済安保エネルギー安保という観点からすると余り問題にならないということで、私がこの前申し上げましたのは、日本というのはほとんど国内生産がありませんから、したがって輸入がストップした場合、一体どれだけもつのかということを基準にすべきではないか、そういう考え方があるんじゃないかということも申し上げ、あるいは仮にIEAの基準を用いるにしても、もう計算に入れては問題にならないような、イギリスだとか、カナダだとか、アメリカとか、こういうみずからが産油国であるところのものまで入れて平均をやるというのは、これは統計学的に考えてもおかしいので、そういうものは除外をした数字というものを考慮をすることの方がむしろ正しいんじゃないか、この方がより経済安保エネルギー安保という点からは正しい考え方が出てくるんじゃないかということですから、そのもとになる基準が誤ってとられれば、これは三千万キロになるのか、五千万キロになるのか、ここのところが問題だと思いますし、それから一体適正量というのは何なんだろうということで、仮に三千万キロを五千万キロリットルにふやしても、本当に大有事というふうな、中東大動乱なんというふうな状況になりますと、焼け石に水なんですよ。しかしまた、そんなことがあってはならないわけですから、それは国際平和という観点で外交努力を通じて、そういう有事が起きることを極力避けなきゃいかぬわけですね。避けることをむしろ前提としながら、しかし少しぐらいの経済状況とか、あるいはOPECとメジャーとの関係とか、いろんな関係で一時的な供給中断とか、減量ということがあるので、これくらいは必要なんじゃないかという、こういう考え方は私どもも納得できるんですけれども、もう最初の基準そのものの、IEAの平均備蓄日数なんという、それが非常にあいまいだというものを根底にしながら、三千万というものを打ち出してきたことにそもそも問題があるんじゃないか。  仮にそうだとするなら、もう少し定義といいますか、こういう考え方なんだということをはっきりと、準拠する基準というものをはっきりした上で、これくらい欲しいんだ、備蓄するんだということがなきゃいけないんですけれども、この前、何回やっても備蓄日数の根拠というものが必ずしも明確でないということで、デーズFCの論議でもずいぶんやったんですけれども、そういう点で、この前大臣は、確かに特異の国まで入れてやるというのはこれはちょっとおかしいんじゃないかと、確かにそういう三カ国を除いた国の平均で考えていく方がよりいいんじゃないかというふうなことをおっしゃったと思うんですけれども、そういうことでこの備蓄の量そのものをもう少し検討していただく必要があるんじゃないかというふうに一つ思います。  それと税率が三・五%という点については、この備蓄のための石油税というふうにおっしゃったんですが、それは大部分はそうでしょうけれども、しかし、当初は三・五%でも五千億余ってきたんですね。ところが、現状の財政事情からしますと、これは非常に厳しいということですし、三・五%でおさまっていくんならいいんですが、いま言った一覧表でおわかりのように、将来破産することははっきりしているわけですね。かつて財政に余裕のあるときなら、これはもう備蓄が目的だからということで、四・五でも五でも余裕財源から持ってくればいいと思うんですけれども、それが今日非常に困難なという情勢のときに、いま言ったもともとの三千万キロリットルが適正なのかどうなのかという考え方とあわせて考えたときに、やはりその辺で再検討というのがあってもいいんじゃないかという点が一つです。  それから、これはもう私はいつも、立案担当者にも要望したいと思うんですけれども、一たん決めてしまったら後でどんな問題が起きてきても、自分はさっさと二、三年でもってかわっていく、また来た人は自分のときに問題が出て大騒ぎになったんじゃ困るから何が何でもふたを閉めて次の人にバトンタッチしようと、こういうことが積み重なって今日の財政困難というものを招いている大きな原因だというふうに私は思いますので、そういう点では、決断力のある、しかも実力者であります山中大臣でありますから、そういう点では過去のそういう経緯とかにとらわれずひとつ検討していただきたいと思います。  もう一つは、民間では、先ほども申し上げましたが、季節変動値の八百万キロリットルを入れても千六百四十万キロリットルの余裕量というのがあるんですよ、民間には。これは民間から出されております各石油会社のタンク容量それから備蓄状況という一覧がございまして、これからもうはっきりと数字が出ておるんですね。それと国家基準備蓄量との差をとってみたりしますと、いま言ったように、千六百四十万キロリットルの余裕というのがあるんです。だから、民間としては、国が都合の悪いとき入れてくれとか、またこっちへやってくれということでなくて、民間としてもこれだけ現に余裕があるわけですからね。余裕のあるものを無理に遊ばしておくというのは、まさに財政上、経済上の理論からしてもおかしいのであって、民間では自分のところをできるだけ利用したいと。わざわざ民間タンクがすいているのに国家備蓄基地に入れるということについては非常に異論がある。強い異論がある。これは今度は大臣、ひとつそれぞれの民間の会社に聞いてもらいたいと思うんですよね。余っているんですよ、ものすごく。だから、三千万キロリットル認めたとしたって、国備基地をこれだけ多額の金をかけて、財政赤字承知の上で建設を強行する必要はないんじゃないか。だから、三千万キロリットル認めたとしても、この前申し上げましたように、まだ立地決定してないところはなくても、十分三千万キロリットルは備蓄できるんですよね。それでもなおかつ余裕があるんです。その辺ももう少し詰めて、事務当局が出した一方的な案とか、数字だけで、そうかそうかということでなくて、考えてもらいたい。私は、三千万キロリットル認めたとしてもあとの幾つかの備蓄基地建設は不必要だと、十分三千万キロリットルは備蓄できますということも申し上げておりますので、民間の活力、活力ということをおっしゃいますけれども、そういう点になるというと、国はどうも冷たんじゃないかという声も出てくるんじゃないかと思いますから、きょうは事務当局の答弁をいただきま せん。事務当局の答弁をいただくと、また数字が食い違ってきて、また次回へ持ち越してなんというと大変なことになって、いつまでも決着がつかぬとなりますから。大臣、もう耳がたこになるほどいろいろ論議もお聞きになったと思いますから、あとは山中通産大臣のまさに正しい政治的判断、決断というものを私は期待をして、きょうこれでこの問題は終わりたいと思いますので、とにかくもう一回十分検討していただきたい。これ要望しますが、大臣、いかがですか。
  8. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 幸い今度私はIEAの会合に出席をいたします。その際に、合意がなるかならないかは別に、すでにその当時と、OPECのカルテル崩壊の原因は、単に需給のだぶつきのみならずして、OPEC加盟国の、世界に石油の供給できる地位ですね、力、シェア、これが五〇%を割ってしまった。そうすると、カルテルの効力がてきめんには効かなくなったことも私は背景にあると思うのですね。そうすると、そういうことなどを踏まえたIEAの議論の中で、さて各国の備蓄量のあり方についてはどう考えたらいいかという問題を、先入観にとらわれないで話をする機会がありましたら、そういうことも各国の意見も聞いてみたいと思います。  それから、やはり二千万キロリットルで足りるじゃないかという御意見でありますが、たとえば沖縄であと七基残っています。そうすると、それは県知事を先頭に、その一基分ごとに基地交付金が、これも結果的にはいい悪いは別にして、あるものですから、町村長さんが、山中大臣がなったこの機会に早くあそこに入れてくれというような、タンクをつくらせるように言ってくれというような話がありますが、そういうようなことなどが現実の姿でありまして、それに引きずられるわけではありませんが、やはり余りCTSを誘致したいというところもない。ない中で、辛うじてこういうようなところが候補に挙がってきておるということを考えますと、やはりこれは長い目で見ていくということの方で、私の方は国の政策を余りぐらつかしてはいけない。ことに民間の方は、先ほども御指摘ありました。私も申しました。自分の企業にとって、そろばんをはじいてみて、いまからタンクをつくって入れたんじゃどうも先行き――という感じになりますと、途端にタンク建設そのものを、申請が出されて、許可されているものも取りやめてしまう。そういうようなことを見ますと、やはり国民に安心をさせて、未来を、大丈夫だということで、ちょっとやそっとのことでは大丈夫だよという安心感を持たしていくことが経済の再建の精神的な支えにもなり、国家非常の際もあわてふためくことのない体制になるわけでありますから、この二千万キロリットルか三千万キロリットルかという議論は、党の方では五千万キロリットルにしろという意見もありますが、そこらのことは別にして、この場では頭の中に入れながら、国家目標をそう軽々しく変えるわけにはいかない。それは少なくとも場合によっては国家目標というものについてはそろばんの外に置かなければならぬこともある。したがって、お気に食わない防衛費とか、あるいはこういうような種類のエネルギー関係費、そして海外援助、こういうものは別枠にやはりいたしておる。その政府の姿勢も、防衛費を除けば、野党の皆さんもそれはわかると言われる方面への私は配慮だと思うのですね。しかしそれに防衛費が入っているのでお気に召さないのだと思うのですが、そういうふうに、やっぱり国家の政策というものを余り、そう動かさない方がいいのではないか。しかし、それをやっていった場合にどうなるかという計算をおまえよく聞けよと、こう言われますと、これだけで財政破綻とは私は思いませんが、計算上はやはり性根を据えたものでもっていかなければならぬということは、いわゆる将来の展望については、おっしゃる数字を念頭に置いていきたいと思いますが、数量問題ここではっきりと決着つけるわけでもございませんし、いまのところ国家備蓄目標を変える意思はないということも申し上げたいと思うのです。
  9. 吉田正雄

    吉田正雄君 それではこの備蓄問題については、申し上げたいこともありますが、これで一応終わりにいたしまして、次に、原子力発電コストの問題についてお伺いをするということになっておりますので、以下それについてお伺いをいたします。  従来、原子力発電については、他のいかなる電源種別のものよりもコストが安いんだということが言われてきておったんですが、私は、当初から、できたばっかりの原発で正確なコスト計算はできないと。特に、イギリスから始まったわけですけれども、イギリスの価格というものももともとは政治価格として、つまり国策として決定をされていったという経過があるわけですね。特に電気料金というのは、この電気は幾ら、この電気は幾らというふうに電源種別に電気料金が決まっているわけではございませんので、したがって、全部一緒にして電気料金というのは決まるわけですから、そういう点ではその原価計算、コストというものがそんなに明確でなくても企業全体として成り立っていけばよろしいわけですよね。そこにまた原子力発電コストについても厳密な計算がなされずに、原発を推進するということが先行して、厳密な計算というのが従来行われてきていなかったことは確かですし、現在でも不明確な要素が非常に多いですということが書かれておるんですね。不明確な要素で算定できないと言いながら、しかしコストだけは出てきておるというところに私は非常に問題があると思うんです。  そこで、当初にお聞きをしますが、原子力発電コストの基本的な指標となる耐用年数と、それから設備利用率について、従来は耐用年数三十年、設備利用率七〇%という基本的な考え方の上に立っていろんな計算をされてきたということなんですが、また、従来説明はそうだったんですよね。ところが、今回いただいた資料では、今度は明確に原子力の耐用年数は十六年ということできちっとされたわけですね。したがって、三十年の場合と十六年の場合でも発電コストが全く同じだということでは、これは全然お話にならないわけです。発電コストというのは一体何なのかということで、従来言われてきたのは、初年度コストを言ってきているわけですね。いままでの通産説明もそうなんですよ。つまり、運転開始第一年目に発電に要した年間費用を、その年に発電した総発電量で割ったものだと、こういうことでしょう。この計算だけでいくと、これは初年度だけではそうでしょうけれども、本当の意味での原子力発電としてのコスト、これに原子力発電だけでなくて、その他の水力、火力等について、本当にそういう考え方が正しいのかどうかという点については、専門家にもそれでは問題があるということを指摘をされているんですね。これはいろんな意見があるわけです。  そこで、三十年と十六年に変わったのに、発電コストが変わらぬというのはこれはどういうことなんですか。
  10. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 三十年の場合の数字について、私、申しわけありませんが、よく存じておりませんが、十六年という数字は各原子力設備の税法上の法定耐用年数を平均したものでございます。今回のモデルで計算しておりますのは、そういう考えですべての電源を統一して計算したというものでございます。で、数字が変わらないとおっしゃいましたのは、まあ、たまたま前に計算したときと今回とでそういう結果になったのではないかと想像いたしますが、もし、ほかの諸元が全く同じであれば、当然変わるべきものだと考えます。
  11. 吉田正雄

    吉田正雄君 いや、ですから、もう基本的に全然違っているんじゃないのかというんですよね。いままでの説明では耐用年数三十年、設備利用率七〇%で十一円から十二円、今度は年度によって、いま十二円と。十一円でも十二円でもいいんですよ。しかし、耐用年数が三十年と十六年で発電コストが同じだなんというのは、耐用年数なんていうのは一切考えないでいくのなら別ですよ。これでは全く、法定上いまおっしゃったように減 価償却で十六年だということでいまおっしゃっているんだろうと思うんですがね。前の説明では耐用年数三十年、設備利用率七〇%という説明できているんですよね。これは一体どういうことなんですか。
  12. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 私どもの方で出しておる数字につきましては、初年度原価をはじくときの償却につきましては十六年、耐用年数十六年の定額法ということで計算をいたしております。三十年という数字計算はいたしておりませんので何かの誤解じゃないかと存じますが、実際上どのくらい原子力の炉がもつかといいますか、発電所がもつかという議論になりましたときには実際上は三十年ぐらいはもつと、こういうことは申し上げたかと思いますが、先ほど御指摘のコスト計算上は従来から十六年でやっておると、このようにわれわれは承知いたしております。
  13. 吉田正雄

    吉田正雄君 その説明はそれでいいですよ、もうこれは言ってみたってしょうがないですからね。しかし、一般の国民というのは三十年もつんだと、当然三十年という、税法上だとか法制上のむずかしいことなんて考えませんよね、一体この発電機が何年もつのか。その間に建設費からいろんな諸経費を含めて、そして発電量を考えれば、一体コストというのは一キロワットアワー幾らになるのかといってこれは考えていくのは普通でしょう、本来は。だから、原発の場合にはそう期間がないわけですよね、まだ耐用年数がきて廃炉になったなんというのはないわけですからね、初年度コストだけとってやっているわけです。だから、この辺は比較としてあるいは考え方としてはそれが問題だという指摘がいろいろあるわけですよね。だから、基本的にはそういう指標の考え方からして問題だと。  その次にこの設備利用率が七〇%だと、こうおっしゃっているんですけれども、これは前からも言っているように、三年前までのこれは新旧合わせた平均設備利用率というのは四〇%台、五〇%台であったわけです。六〇%台になったというのは本当にここ二、三年ですよ。その考え方も平均でいくべきではないですね。一つの発電所、一つの原子炉を考えた場合の、それぞれの平均設備利用率が幾らになるかという考え方から積み上げていかないと、正確なコストは出てこない、それはもう当然だと思うんですけれども、これは幾らになっていますか、経年設備利用率、どういうふうに区切られてもいいですがね。
  14. 松田泰

    政府委員(松田泰君) われわれが計算しています初年度コストにも用います設備利用率は、初年度ということでこれも比較のために一応各電源とも七〇%ということで計算しているわけでございますが、各発電所につきまして、これまでの設備利用率の推移という実績を見ますと、最初のころできましたたとえば美浜一号でありますとかあるいは福島一号でありますとか、そういうところは最初のころ御存じのいろいろなトラブルを起こしておりまして、六〇%台から五〇%台あるいは四〇%台と下がっているわけでございますが、それが最近はいまおっしゃいましたように六〇%台に戻っているわけでございます。  そういうわけで、各プラントによってこれまでの実績を平均いたしますとかなりの差が出てまいりますが、われわれの方としてはそういった個別ケースの特殊なこれまでの例ということではなくて、原子力発電所をほかの電源と比較するという意味におきまして、七〇%という数字で統一して見ているということでございます。
  15. 吉田正雄

    吉田正雄君 現実に数字が出ておって、これは大臣もよく聞いておいていただきたいんですけれども、たとえば七五年度の場合には四二・二%ですよ、これは平均ですよ。それから七六年度が五二・八、七七年度が四一・八、七八年度が五六・七、七九年が五四・六、八〇年が六〇・八、八一年が六一・七と、こういうふうにずっときていますけれども、設備利用率が四〇%台のときの原発の発電コストが、それから何年かたっておるといってもそのときが九円だ、十円だと言っておいて、設備利用率が上がりましたといったときの方がどんどん原発コストも高くなってきている。本来だったら安くならにゃいかぬですよ、四〇%台の設備利用率と六〇%台に入ったときというのは約一・五倍ですから、一・五倍分だけ安くならなきゃいかぬのに逆に高くなっているわけでしょう。  だから、設備利用率なんというものはほとんど考えておいでにならない。だから皆さんからいただいた資料でも「本試算は初年度原価であるため、耐用年数期間」と、耐用年数期間でなくてもいいんですよ。設備利用率なんていうのはほとんど考えておいでにならないのじゃないか。そうでなかったら数字逆にならなきゃいかぬですよ。設備利用率が上がったから初年度コストだけで考えたって下がらなきゃいかぬのに、初年度コストというのはとにかく下がったことはないですよ。横ばいでもないんだ、だんだんだんだん上がってきているでしょう。一年ごとにそれが一円も二円も上がったり下がったりしたら、これは大変な話でしょうけれども、とにかく設備利用率というものと、発電コストというものが余り比例していないというのは一体どういうことなんですか、これは。四〇%台のときの方より、いま六〇%台のときの方が高いわけでしょう、わずか何年前でもないときと比較して。どういうことになるのですかね。
  16. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 先生御指摘のように、年度別に見ますといろいろ低いときもございますが、これは御承知のように原子力発電を入れましてから、その間に初期の問題としていろいろなトラブルがあったわけでございまして、たとえば蒸気発生器における腐食とかあるいは応力腐食割れとかBWRあるいはPWRそれぞれ固有のいろいろな欠陥といいますか、故障があったわけでございます。それを克服しまして、現在六八%ぐらいの稼働率になっておるわけでございます。  それで、われわれが原子力を今後考えるときにどのくらいの稼働率で考えたらいいのかということでございまして、これはどこまでも高くなる、無限に一〇〇%になるというものでないことは御承知のとおりでございます。  現在定期検査三カ月というのをいたしておりますと、大体一年のうち三カ月あれすれば七五%ぐらいということでございますが、最近では一年間運転しまして三カ月ということですから、十五カ月のうちの三カ月休むということになりますと大体八割操業と。何ら問題がなければそこまでいくわけでございまして、われわれ目標としては七五%ぐらいまでは持っていきたいということをかねてやりまして、鋭意その努力を、もちろん事業者の努力、それからわれわれとしてもいろいろな技術改良その他でその点検期間というのを短くするということも必要かと思いますが、そういうことから見まして七〇%というのは今後の原子力発電の姿としては必ずしも高くないというふうに考えております。そういうモデルとして現在七〇ということをとっておるわけでございまして、場合によってはもう七五とか、全然故障がなければ八〇ぐらいまで持っていける、そういうことを念頭に置いての数字でございまして、過去におけるいろいろな初期のトラブルというのを乗り越えた原子力の利用ということを考えておるわけでございます。
  17. 吉田正雄

    吉田正雄君 私の言っている意味は大臣の方がよく御理解になっていると思うのですけれども、私が資料請求でも、耐用年数期間における平均設備利用率の想定はどうなのかと言ったら、「行っていない」と書いてあるのですよね、これはいただいた資料、「行っていない」と。だから、私は本当の意味での発電コストというのを出す場合には、耐用年数とそれからそこにおける平均設備利用率というものを考えて、一切の経費等を考えて発電コストというのは出すのが正しいんであって、そういうものをそれぞれ電源種別ごとに比較をしてこそ、なるほど原発は安いとか、何は安いと、こういうのが出てくるというのですよね。最初の一年間だけとって原発コストは安いなんと言ったって、安い高いなんという論議、それはもう 比較にならないと言うんですよ。だから、そういう点では多くの学者もこういう比較というのは問題があるという指摘をしておるということが第一点。  それから皆さんはそれでは計算されたことはありますか、耐用年数が幾らで、ここにいろいろ耐用年数は石炭、石油、LNGは十五年だと、それから一般水力は四十年と書いてあるから、それぞれ大体もう水力だって何十年もやっていますから、そういうことでもって平均設備利用率が幾らであったのか。石炭火力だってずいぶん前からやっていますよ。もう十五年以上たっているのがずいぶんたくさんあるわけですからね、もう廃棄まで進んできていますから。そういうもので比較をされてなるほどと、こうなるんですよ。だから、初年度だけやったんではこれは正しい意味でのコスト比較にならぬということがこれが第一点ですよ。  それからもう一つ、原子力発電というのは、水力や火力と違って昼とか夜とか、需要電力の波がありますよね。深夜になればずっと下がるわけです。そのときに原発というものは制御できないですよね。一々一日のそのサイクルに合わせて原発の出力を低下をしたり増大したりするということはできない、原発の性格上。だから、原発というのは一たんつくってしまえば、もう本当にフル回転しなきゃ、まあフルでも八〇%でもいいですがね、一定でいかないとこんなに波に合わせて調節することはできないんですよ。したがってまた揚水発電なんというものも附属につくらなきゃいけない。ところが、水力や火力の場合には調節が幾らでもできるわけですね。電気が少ないときは水をとめてしまえば水力を休めることができる。原発はそうはできないですから、原発というのは逆に言えば、つくったらもう一定の線で、それもできるだけ高い利用率でもっていかなきゃならぬという特性を持っているわけでしょう。だから高くしなかったらますますだめになることは、これは高いものにつくことははっきりしているわけですよね。だけれども、その特性を抜きにしても、私が言っているのは、いま言った耐用年数と、平均設備利用率というもので比較をすべきだと。それをやってないんじゃないですかと言っているんですが、やられたことはあるんですか。
  18. 豊島格

    政府委員(豊島格君) この計算は一つの比較を単純にするためにモデルとして初年度だけをやっておりましたが……
  19. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、そんなことはわかっていますから私の質問に答えてくださいよ、あなたたちのやったことはわかっているんだから。やってなかったらやってなかったと一言答えればいいでしょう。
  20. 豊島格

    政府委員(豊島格君) いま申し上げましたように、初年度コストだけやって経年のコストは計算いたしておりません。
  21. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは大臣、都合が悪くてやれないですよ。はっきりやったらとてもそんな原子力は安いなんという数値は出てこない。やってごらんなさいよ、それじゃ。なぜやられないんですか。本来だったら政策立案当局がそれぐらいの、コストが安いとか高いと言うからには、どこから言われても間違いのない検討をすべきですよ。意見だってあるわけでしょう、初年度コストだけで比較するのはおかしいという意見がたくさんあるんですよ。またそれは正しくコストを反映したものではないということも言われているんですから、だれもが納得できるのは――そうでしょう、人間の評価だって一生かかって評価されるので、初年度だけりっぱなことをやったからその人がいいなんということにはならぬのですよ、これは。同じでしょう。そういう意味で申し上げて――いいです。答弁はいいですよ。これ以上聞いたってないものはないんだからしょうがないでしょう、それは。  その次に、建設単価はここで「別紙の通り」ということで見ますと、一番高いのが一般水力で六十万円程度と、それから原子力の場合には二十七万円程度と、こういうふうになっておりますが、これは五十七年度運開ベースですが、現在はどれくらいになっておりますか、まあ平均してですけれどもね。
  22. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 実際の個々の発電所につきましては、それぞれ特殊事情がかなりあるわけでございますが、現在の建設単価で見ますと、大体申し上げますと、キロワット当たり二十四、五万円から高いものにいきますと三十万円、四十万円を超しているものもございます。
  23. 吉田正雄

    吉田正雄君 現在、一番高いところはどれぐらいになっています。
  24. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 運開時点に多少のずれがございますけれども、柏崎・刈羽の一号が最も高くて四十三万円ぐらいになっております。
  25. 吉田正雄

    吉田正雄君 まだ上がる見込みがあるでしょう。最終的にはどれぐらいになるというふうにお考えになっていますか。
  26. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 現在、各電力会社におきまして原子力の建設費を下げるという努力が最近かなり行われております。最近発表されましたたとえば柏崎・刈羽の二号炉につきます数字などは、一号炉と二号炉の差を外しましても安くなっております。そういうことからそれほど上がらないものと思っております。
  27. 吉田正雄

    吉田正雄君 私の質問に答えてないんですね。いま一号炉の場合には大体四十三万円くらいになるとおっしゃったでしょう。これはまだ建設途中なんですよね、完成してないんですよ。当初の場合には、通産大臣認可の際、総理大臣認可の際三千七百五十億だった。ところが七〇%完成段階で、いま四十三万円というのは四千七百三十億円ですよ。まだかかっていくんですよね。だから、最終的にはどれぐらいの見込みになりますかと聞いているというのに、二号炉は今度は安くするつもりですとか、まともに答弁答えてないじゃないですか、それは。
  28. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 現在建設中でございますので、見通しは非常にむずかしゅうございますので、明確にはお答えできない状況でございます。
  29. 吉田正雄

    吉田正雄君 だっていまの四十三万円というのはほぼ七〇%ぐらいの状況で、それは七二でも三でもいいですがね、大体どれくらいになるかというのはわかるじゃないですか、それ。おおよそでいいですよ。一万や二万違ったからどう言わぬですよ、それは。
  30. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 先生御指摘のように、一号につきましては当初よりも若干上がるということは御指摘のとおりでございます。ただ、二号炉以下について平均して柏崎どうなるかということでございますが、これはむしろ全体として見ると、四十万円ぐらいに下がるということになろうかと思います。と申しますのは、原子力発電所を何基か置きますときに、共通部門がありまして、それが一号炉には相当かかってくる、こういうこともございます。それから最近の情勢から見て、当初より比べまして、インフレ率といいますか、物価の値上がりも低いということで、結果的にはそういうことになろうかと存じます。
  31. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまここで、いただいた資料では、建設単価キロワット当たり二十七万円程度で、キロワット当たりの送電端のいわゆるコスト、これが十二円程度と書いてあるんですよね。そうすると、いま柏崎の場合には現状でも、お認めになったものだけでも四十三万円ですよね。さらにまだ上がっていくんですよ。上がりますよ、だってまだ完成してないんですから。私は少なくともこれは五十万円ぐらいにはなるだろうと思っていますけどね。そうした場合には、発電コストは、いま言った数字でいった場合のコストは幾らぐらいになるとお思いになりますか。建設単価いま二十七万円で十二円なんですよね。そうしたら五十万円ということになったら幾らぐらいになるというふうにお考えになりますか。
  32. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 現在の二十七万、十二円でございますが、先生五十万円とおっしゃいましたが、私どもはこの一、二、五号平均で大体四十万円ぐらいと把握しておりますので、五十万円の数字は手元にございませんが、四十万円ですと大 体十六円ということかと思います。
  33. 吉田正雄

    吉田正雄君 それから建設の期間が、ここでは大体六年程度と書いてありますけれども、柏崎・刈羽はどれくらいかかってますか。
  34. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 柏崎・刈羽一号は、現在の予定では五十三年十二月着工、六十年十月運開ということで、六年十カ月という建設期間が予想されています。
  35. 吉田正雄

    吉田正雄君 皆さんが言う建設の年数ですね、六年となっているんですが、一体どこを基準にして計算をされているんですか。
  36. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 着手、着工という言葉を使っておりますが、着工時点からでございます。
  37. 吉田正雄

    吉田正雄君 これも、着工からと言えば大体六年くらいでしょうけれども、しかし計画ができて、具体的な準備行動等、用地買収等から始まってずっとまいりますと、とても五年や六年でできたところなんか一件もない、少なくても十年から十五年かかっているんですよ。この間の直接的な建設費以外にも、借り入れだとか借り入れリスク等考えますともっともっと高いものにつくということになると思うんですね。これはもうちょっと聞きたいんですけれども、時間もありますから、まだきょうはたくさんありますから、きょうは主要なところだけ聞いておくことにします。  その次に燃料費についてちょっとお聞きしますけれども、核燃料費について、これも資料をいただきましたが、ここで装荷中の核燃料の合計が二千三百五十六億円と、これは北海道、東北、北陸には原発ありませんから、その他の電力会社ですね。それから加工中等というのが一兆六千五百九十五億円ということになっておりますね。そうですね、いただいた資料ではそうなっておるわけです。そういたしますと、特にお聞きをしたいのは、この加工中等の一兆六千五百九十五億円という数字はどういう中身になっていますか。契約額ですか、それとも実際に支払った額ですか。
  38. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 山元にある燃料から濃縮加工等の状態にあります燃料につきまして、実際に支払ったものでございます。
  39. 吉田正雄

    吉田正雄君 もう一回言ってください。
  40. 松田泰

    政府委員(松田泰君) いまの御質問の答えとしましては、実際に支払った額でございます。
  41. 吉田正雄

    吉田正雄君 そういたしますと、この燃料費の発電コストの割合といいますか、発電コストに占める燃料費の割合というのはどの程度になっておりますか。
  42. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 大体二割五分程度になっていると思います。
  43. 吉田正雄

    吉田正雄君 いやいや、そういう聞き方でなくて、発電コストが十二円とおっしゃってますから、どれくらいというふうに見込んでおいでになりますかと聞いているんですよ。
  44. 松田泰

    政府委員(松田泰君) ほぼキロワット当たり三円程度と見込んでおります。
  45. 吉田正雄

    吉田正雄君 三円ですね。あのね、これは大臣ね、この前私が予算委員会でもこの発電コストの中で核燃料費の占める割合その他聞いて、基本的には松田審議官の前の高橋審議官がエネルギーフォーラムの去年の五月号に書かれた「原子力発電の経済性の総合的評価」というのがあるんですよ。この中では一円程度と書いてあるんですよ、一円程度。いいですか。そういう積み上げによってさっきの十一円から十二円という数字が出てきているんです。ところがいま三円と、こういうふうに出たんですが、ここではやすでに二円違ってきているんですよね。  それからもう一つお聞きをしたいのは、このいまの一兆六千五百九十五億円というのは全部支払い済みだということでしょう。この勘定というのは、発電原価の中には二割から二割五分とおっしゃったんですかね、それは間違いないですか。そうするとそれが三円というふうに出てくるんですか。
  46. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 最初にお断りいたしますが、燃料費という言葉でわれわれがコスト計算を発表しております際に使っている燃料費の中には、俗に言うフロントエンドからバックエンドまで含めて申し上げておりましたので、そういう意味でさっき三円と一円の差が出ておるわけでございまして、いわゆるフロントエンドといいますか、天然ウランの確保、濃縮、加工等のところにつきましては大体アワー当たり一円程度というふうに試算しているわけでございます。
  47. 吉田正雄

    吉田正雄君 そんな説明おかしいじゃないですか。バックエンド費用も含めてといったら、バックエンド費用なんというのは皆さん方計算できないと書いてあるでしょう。バックエンド費用の中でも再処理費用がまた幾ら、出ておるわけですよ、それぞれ。そんないいかげんな説明ありますか。いま私が聞いているのは、装荷中の燃料は幾らか、それから加工中等の燃料が幾らかと、こう聞いて、そしてその発電コストに占める割合は幾らになっていますかと、こう聞いているんでしょう。そうしたらあなたいま一兆六千億幾らのうちの二割と幾らとかおっしゃったわけだ。これ何がバックエンド費用この中に含まれていますかね。そんないいかげんな説明しなさんなよ。全然問題にならぬじゃないですか、それ。もうちょっと明確に。そんなずさんな計算でもって原子力発電安いなんと言ったってだれも信用しっこないですよ、それは。
  48. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 言葉の内容が先生の方と私の方の答えで少し食い違っております点は改めておわび申し上げますが、二割五分と申し上げましたのは、アワー当たりの原子力の発電コスト十二円の二割五分を燃料費という名で、バックエンドの部分につきましては最終処分である廃棄物処分及び廃炉の費用を含めない形で――これは後でまた御質問あるかと思ったんですけれども、一応再処理、ガラス固化処理等の、正確に言いますとバックエンドの一部を含んだ形で計算しているわけでございます。その部分が二割五分ということでございます。  先生の御質問が先ほどの加工中等のこの金額の中の何割かという御質問、そういう御質問かどうかちょっとわからなかったものですから、そのように答弁申し上げました次第でございます。
  49. 吉田正雄

    吉田正雄君 そういう説明をされるとますますおかしくなってくるんじゃないですか。各電力会社の経理で資産の部ということで核燃料費ということでいまおっしゃったような装荷核燃料、加工中等核燃料費ということでもって出ているんですよ、これはね。出ておるわけでしょう。すでにこれは全額払い込みだといまおっしゃっているわけですよ。もちろん装荷中はそうでしょうし。  もう一回それじゃお聞きしますが、ここにいま出された一兆六千五百九十五億円の加工中等というのは全額払ってあると。じゃそのほかにもさらに契約に伴ってまだ出ておるのかいないのか、金が支払われているのかどうなのかですね。契約の段階で全額払うばかないですよ。だからこのほかにもそうすると加工中等の契約済みで支払った金があるのかないのか。いですよ。だからこのほかにもそうすると加工中等の契約済みで支払った金があるのかないのか。
  50. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 契約した場合に若干の前金が要るとすれば、これは入っておると思います。
  51. 吉田正雄

    吉田正雄君 それから、いま燃料費ということで、広く考えたらバックエンド費用の中の幾つかを除いてはそうだろうと思って答弁をしたとおっしゃっておりますけれども、ここの資産で言っているところの核燃料費の項目の中にはバックエンド費用は入っているんですか、そうすると。
  52. 松田泰

    政府委員(松田泰君) そこには入っておりません。われわれが発表した各電源種別のコストの試算のところには私が申し上げましたように燃料費という名前で入れておるわけですが……
  53. 吉田正雄

    吉田正雄君 バックエンド費用については別途聞きますよ。そんな中へ入るわけないんですから。
  54. 松田泰

    政府委員(松田泰君) 入っておりません。
  55. 吉田正雄

    吉田正雄君 入っておらないでしょう。
  56. 松田泰

    政府委員(松田泰君) はい。
  57. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、この装荷中と加工中 等を合わせれば約一兆九千億円ですよね、これ。一兆九千億円の燃料費になるわけでしょう。これは大変な金額ですよね。で、この資産の部ですが、これはあれですか、使ってないものまで入っていますよね。加工中等というのはそうなんですよ。この利息というのはどれくらいに考えられておりますか。
  58. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 経費としては金を借りておればその利息がかかるということですが、料金計算上は装荷中、加工中、これがいわゆる資産になりますので、それに対しては報酬八%を織り込んでおると、こういうことでございます。
  59. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、その金額は幾らになりますか。
  60. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 先生のお手元にございますのが一兆八千億だとすると、その八%ですと大体千四百億ぐらいということになるのではないかと思います。
  61. 吉田正雄

    吉田正雄君 一兆九千億、一兆九千億ですが、まあ大体それに近い数字ですよ、それよりちょっと多くなりますけれどもね。これはまだ現に使ってないやつなんですよね、加工中等であって。いいですか、当然電力会社は銀行からの借り入れやいろいろなことをやっているわけでしょう。したがってこの利息分というものは当然考えなきゃいかぬですよ。これは全然考慮に入れてないでしょう、その一円という中には。ないでしょうが、これは。
  62. 豊島格

    政府委員(豊島格君) いま申し上げましたこの装荷中と加工中につきまして、装荷中は当然コストに入れるわけです。それがコストになるときはどうなるかという細かいところを言いますと、それが燃えたときでコストに出るんでしょうけれども、いずれにしても加工中につきましては、実際問題としてこれを実際装荷するまでの間に相当期間がかかるわけでございまして、したがって、鉱石については大体五年分、それからいわゆる濃縮加工につきましては二年分のものがあらかじめ要るということを想定して、先ほど申しましたフロントエンドの中には入っております。
  63. 吉田正雄

    吉田正雄君 また、いまの説明を聞くとおかしくなってくるんですけれどもね、そうするとこの加工中等というのは正確に言って一体何年分を想定されているんです、これは。現に払ってるわけでしょう、単なる契約じゃないですよ。
  64. 豊島格

    政府委員(豊島格君) モデル計算上のものは……
  65. 吉田正雄

    吉田正雄君 いや、モデル計算を聞いてるんじゃなくて。
  66. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ここにございますのは、大体六年から七年分ということになろうかと思います。
  67. 吉田正雄

    吉田正雄君 まあいいでしょう、六年、七年分で。この――いや、もう一回聞きますよ。そうすると、この一兆六千幾らという加工中等というのは電気料金の中には、コストの中には、計算の積み上げの中には要素として入っているのか入っていないのか、その利息分はどうかと聞いているんですよ。
  68. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 利息分という計算は料金上はしておりませんが、まあ先生のおっしゃる利息分とお考えいただいていいと思いますが、この資産に対して八%の報酬と――この料金算定時でございますが、それは入っておるということでございます。
  69. 吉田正雄

    吉田正雄君 入っておると理解してよろしいんですね。  時間が来たようですからやめますけれども、相当ずさんな答弁ですよ、これは。もう大臣、よく聞いてておわかりのように、建設単価からしてもなかなか明確に答えない。大体わかるんですよ、わかってるんですが、いや平均すれば安くなるだろう――安くなるだろうと言ったって皆さんがおっしゃっている二十七万円よりはずうっと高くなっていくことははっきりいたしておりますし、それから建設、いわゆるリードタイムというのが非常に長い。その間の借入利息等を考えれば、皆さんがおっしゃっているような建設単価のコストにはね返る割合なんというのは非常に低目に見積もってある。それから、いまの核燃料費のコストでも本当にいまおっしゃったことが正しいのかどうか今度やりますが、こんなことをおっしゃっていいのかなと思いますよ。いいですか。だから、今度はいろいろ聞きますから、次回までにもうちょっと――この前資料請求したのは、大体私が聞きたいという項目で資料請求をやっておりまして、こんな資料じゃ余り役に立たない。役に立たぬですよ、これ。聞いてみたってだんだんだんだん違ってくるというふうな資料なんでしてね。もうちょっと隠さずに答弁をしてください、今度はね。それだけ要望しておきます。
  70. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  71. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 馬場富

    ○馬場富君 最初に、日米貿易摩擦と自動車問題について質問いたします。  三月二十一日のアメリカ商務省の発表の第一・四半期の米国GNPの実質伸び率暫定予報では、米国経済は前期比四・〇%という大幅な伸びを実は示しておるわけでございますが、これは二年ぶりの急増であり、アメリカのやはり本格的な景気回復というのが軌道に乗ったのではないかという感じを受けるわけです。  このようなアメリカの景気回復はやはり自動車の販売台数にもあらわれております。アメリカの自動車メーカーは、業界全体で昨年は三年ぶりに三億二千二百万ドルの黒字を計上しておるわけです。この結果、本年度は各社とも四年ぶりに増産計画を打ち出してきております。このような動きからアメリカは完全に景気回復したと見てよいかどうかという点と、また原油価格の引き下げ等の問題がアメリカ経済にどのような影響を与えるか、ここらあたりの見通しを御説明願いたいと思います。
  73. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 確かに指数の上では、金利低下の反映だとは思われますが、住宅と自動車について顕著な回復を示しております。この状況は、私はアメリカの底がたい力、バネというものは相当なもんだなというふうに見ていたんですが、自動車の方はその後どうも上昇カーブががくんとひざを折ったような感じになっておりまして、アメリカの景気回復というのは、まあ金利の問題とも関連をいたしますが、果たしてこれで本物になるんだろうかどうかというふうに、一応は景気回復基調にありと、政府もそういうふうに言っておりますし、しかしわれわれの見るところは、その基調にはあるが果たしてそれがずっとその基調で続くのかについては、自動車をとってみても、少しなぜだろうという問題がまだ解けていないという点があります。しかし、原油値下げについてはアメリカも一応の好感を持って迎えておりますが、アメリカ自身が石油値下げの影響を最も多く受けるものは日本だろうと、こういうことを言っておりますとおり、私どもはこのチャンスにりっぱにそれを生かさなきゃならぬと思いますが、アメリカの方はもうすでにまた国内のアメリカの石油掘削会社等でやめてしまったり、倒産したり、そういうことが始まっていまして、アメリカ自身にも全体としてはプラスでしょうが、国内産業等の配慮の上ではいろいろと苦労もしなきゃならないようだなというふうに見ております。しかし全体を踏まえては、日米経済摩擦も逐次これは解消していくべきものである。いま自動車を取り上げられましたが、先般私とUSTR代表のブロックとの間で東京で合意しました際も、三年目についてはその継続の可否を含めて検討するとなっておりましたから、アメリカの自動車産業の小 型車の市場定着まで時をかしてくれということでかした時が、いわゆる自主規制という形で協力したのが二年目でありましたから、三年目についてもなおまだ回復が終わっていないという率直なことでございましたので、それならば継続の可否については可であると、すなわちイエスである、しかし台数は、それは前年と同数とする、これは日本政府の通告である、四年目についてはやらないということが書いてあるのでやらない、これも通告であるということで、その際に、アメリカの国内自動車販売台数の伸びた分は日本車に一六・五%の上乗せをしてやるという条項があったんですが、これをあえて私が言及しなかったのは、実は三年前のその自主規制を始めますときのアメリカの自動車の生産台数の伸びの予想に比べて非常に落ち込んでおりますために、そのことに触れますと、前の年度の台数と一緒といっても、それにマイナスの一六・五%を差っ引かれるおそれがあると見たものですから、それは戦術もありまして、そのことは触れませんで一応決着いたしております。しかし、アメリカの中では、自動車産業の労働組合あるいは労働組合の全体、あるいは自動車産業経営者、そういうものの間ではまだまだ日本の自動車の規制は続けるべきであるというような声があることも事実でありますが、正式な交渉としてはいま私が申し上げたとおりの経過で終わっております。
  74. 馬場富

    ○馬場富君 ではここでアメリカにおける日本車の評価についてお尋ねいたします。  アメリカの雑誌のアンケート調査によりますと、日本車は製造技術、燃費においてアメリカの車に圧倒的にまさっておる、安全性も同じようなものであると評価されておるわけです。それで二世帯に一世帯は日本車を保有するというのがアメリカの現状だと。アメリカでは日本車の輸入制限をすべきかどうかという問いに対しても、七六・一%がノーと答えておるというのですね。このようにやはりアメリカ市民には、高性能な日本車という評価が定着しつつあると見ていいんじゃないか。特に輸入制限には反対だというのが八割という調査結果が出ておりますが、これらについての御見解をお伺いします。
  75. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) その傾向は、国家間の交渉が、ともすれば消費者不在の交渉に陥りがちである点を鋭く突いておるものだと私は思うんです。ということは、日本とアメリカの自動車、あるいは日本とECとの間のビデオテープ、そういうようなもの等についても、一体われわれはそれぞれの――私たちの国民のことはもう別でありますが、それぞれの交渉相手の立場の人たちは、自分たちの国民の消費者としてのニーズというものを踏まえた交渉であるのかどうか、そういうことは、ことにEC等については指摘できると思うんですが、いまのアメリカの、日本車を持っているし、また日本車に乗りたいし、それは理由があって、いいからだし、燃費効率もいいし、安全性が悪い悪いと言うけれども、そうでもないという、ですから私はこういうことをよく言うんです、アメリカの国民の人たちで日本の国家権力によって日本車に乗らないと承知しないぞと言われた人がおるならば一人でもいいから連れてきてくれと。しかし、それでもそっちの方はないが、アメリカは日本車をアメリカ市場に売らせたくないんだと言うんなら、アメリカの法律で日本車に乗ったら処罰するとか買うことを禁止するとかという法律をおつくりになったらどうですかと言うんですが、そういうようなことは向こうもいわゆる国民たる消費者に対してはできないんですね。ですから、国と国との間で、まあひとつアメリカの自動車産業が立ち上がるまで少しがまんをしてくれよという交渉になって、私は、口ではみんなお互いに自由貿易主義を守ろうじゃないか、保護貿易主義に反対していこうじゃないかと言いながら、実際にはそういうことを行っていると。このことについては、日本の立場からしても、私は今後の交渉においては、そういうことを考えてやらなくちゃいかぬじゃないか、その視点を欠落したままで交渉してはいけないと。ことにECなどはディジタル・オーディオ・ディスクという新しいコンパクトな音を出すあの機械、それはすばらしいものである。ところが、それがオランダのフィリップスと日本のソニーとの間で共同開発したものなのに、日本だけ先に商品開発して売っちゃうから、したがってヨーロッパには入ってこないように音響機器の二倍の一九%の関税をかけてあらかじめ日本の機械が入ってこぬように壁をつくっておくというような、そういうことをあなたたちは、ECの中の加盟国の国民のすばらしい音、画期的な音というものを聞きたいというニーズ、そういうものを踏まえて物を言っておられるんですかということで、その問題では結局日本側も業界が納得をして、フィリップスが一緒に市場に製品を出して参入できるように加勢しようということで、いま話し合いをさしておりますが、まことに個々の問題をとらえてみると、われわれとしても交渉するのに、交渉しなければ一層わめき立てられるし、交渉すれば保護貿易主義的なものが出てくるし、これからもわが国としては貿易立国であるという前提に立つと、この道を、ほかに選択する余地のない国という立場を考えると、大変今後の対外折衝はむずかしいなと。現にきのうECが日本をガット二十三条二項で提訴する用意があるということを一方的に申し入れてきたんですが、これなどは私とECの副委員長二人との間の合意を全然考慮しないで、一方的に抜き打ちにやったものであるということで、きょうじゅうに抗議の文書をECに向かって日本の通産大臣として発送することにしておりますが、いずれにしても次から次とモグラの穴たたきといいますかね、次から次とまあよく文句つけてくるものだと思っておりまして、いまの御質問に少しはみ出した答えをしたかもしれませんが、大変、幾らけんか好きの私でも、いささかほとほともてあますわいというようなそういう気がするような感じで、まあしかし貿易立国しか道のない日本でありますから、日本が経済的に世界で孤立した状態に置かれたときには、われわれは国民を生活の低下に必然的に持っていかなければならない状態になる、そのことだけは何としても避けたい、そういう願いでいっぱいでございます。
  76. 馬場富

    ○馬場富君 次に、この問題に対してアメリカのやはり理解必要性が私は起こってくるんじゃないかと思うんです。そういう点で日本においてはやっぱりマスコミを中心としたアメリカの対日強硬論というのが伝えられておるわけですけれども、やはりアメリカでも日本と同じような資本主義国でございますので、安価であり高品質の物はいずれのものでも支持されるという、これ原則があるわけです。反日感情が強いと言われるアメリカの議会でも、日本を主要な顧客とする農業地帯の選出の議員は必ずしも反日的ではない、こういうふうに言われておるわけです。このように一部の対日感情と、多数の対日観には、多少そこにずれがあるんではないか。こういう点で、政府はこのような一般市民の対日感情をやはり十分くみ上げた対米政策というのをどのように行ってみえたかということ、またこれら一般市民へのPR活動は十分であったかどうかということについて、ひとつ御見解をお尋ねいたしたいと思います。
  77. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これは実は残念ながら、私たちの、アメリカの市民、草の根、そういうところに対する宣伝あるいは周知徹底ということにおいては非常に少なかった、と言うより余り試みていなかった。そこの点が、市民はすなわち選挙民であり、選挙民はすなわち上下両院議員を選ぶわけでありますから、議会の声となる。したがって、いままで議会の声が民衆に伝わっていったのが、民衆の声が議会の声となるというような非常に顕著な状態が見えております。したがって、われわれは、まあ息の長い話でありますが、ことしの予算で日本というものを知ってもらうためのアメリカの有線テレビ網を通じた放送などもいたしておりますが、これは有線テレビと言ったって、選択は消費者の自由でありますから、視聴者の自由ですから、どれだけ見てくれるやら心細い話でありますが、私はもっとやっぱり国民の声 の集積は議会だと思うのですね。議会人との間の対話、これはむしろ与野党超えた問題になると思います。アメリカは事実与野党超えて言葉をそろえて迫ってまいりますし、今後私たちは経済外交というものは、お互いがお互いをよく知ること。基本的に言うと、アメリカはアメリカだけでやっていける国なんですね、資源から製品供給まで。そういうことをアメリカ自身が考えていないですね。自分たちの国は一国のみで資本主義経済が成立する国である。そういうことを自覚してない。ですから、アメリカの人たちは、輸出して外貨を稼ぐという気持ちが、国として、経済界としてないという感じが私はしております。ここらを今度日本の方からアメリカに、私たちはこう見ていますが、あなたたちは自分の国をどう見ているのですかというようなことも必要でしょうし、日本の場合は、先ほどちょっと申しましたように、原材料を軍事的な手段や恫喝を使わずに、平和裏にいただいて、それを私たちがウサギ小屋に住んで、働きバチと言われようとどうしようと、一生懸命働いて、より高い付加価値のもとに、高品質、そして豊富低廉というようなものを国際市場で売る、それを買ってもらっている、そういうことで成り立っている国である。自転車を踏むしか道のない、ペダルから足を離せと言われたら倒れるしかない国である、そういう国であること以外、余り外国の人は、アメリカもヨーロッパもですが、そういうふうに日本を見ておりませんです。たとえば、ECのトルン委員長には、私は個別の問題よりも、日本という国はこういう国であります、しかも島国が集まってできた国ですという話を説明しましたところ、そういう説明を初めて聞いた、日本というのは漠然と考えていたけれども、やはりそういう国であったことは初めて聞いたと言って非常に興味探そうでした。一応興味深いとだけにとどめておきますが。この間アメリカのギボンズ下院の貿易小委員長などと会いましたし、それからローカルコンテント法案の提案者であるオッチンジャー議員等を含む一行とも会ったりしまして、話の合い間にはそういうことを入れたりなどいたしておりますが、やはりもっと相手をよく知ること、相手の立場を理解すること、このことが欠けておるという点は率直に反省し、それを埋めない限りは、どうも相互に最終的な、これでめでたし、めでたし、一件落着という日は来ないんじゃないかという、そういう心配もいたしておりますから、御注意のございました点、懸命に生かしたいと考えます。
  78. 馬場富

    ○馬場富君 そこで、先ほど大臣も触れられましたが、対米輸出自主規制について、本年二月にこれ決定いたしたわけですが、これはやっぱり対米関係への配慮からもやむを得ない面もございますけれども、アメリカの景気回復あるいはアメリカの一般市民の日本車の評価などを勘案すると、そういう点ではかなり尚早ではなかったかという疑いも起こっております。それからもう一点は、やはり四年目の八四年度の自主規制枠の決定にも影響を与えることでございますので、本年度の枠の決定については、もう少し慎重さを必要としたんではないかという点ですが、この決定の背景を含めて、ここらのあたりをお尋ねしたいと思います。
  79. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) ことしの決定は私はタイムリーであったし、そしてその他の懸案も、自動車輸出台数を三年目をイエスと答えることによって、それが引き金でほとんど全部解決をしたという状態に、一応その時点においてはなったわけでありますから。しかしながら、四年目についてはやりませんと。日本側の通告ですから、これはアメリカの命令でやるわけじゃないので、そういうことについて少なくとも私の前では感謝するという言葉で終わっておりますから。ことしの場合、もしやらないと言った場合にはどういうことになったかというと、私はやっぱり総理訪米が一応は好感を持って迎えられていたけれども、その後日本政府は、それに対応する何を、姿勢を示すかと、アメリカ側からこれこれこれこれのものを不満があるんだと言っているというそのさなかでございましたから、自動車問題の三年目はやらないという、ノーという返事をした場合には、すべての問題が一挙に日本を目指して襲いかかってきただろうと。だから、その意味では三年目は私はやむを得なかったし、やむを得ないという表現の方がいいと思うんですが、やむを得なかったし、またやるならあの機会がタイムリーであったと思っております。
  80. 馬場富

    ○馬場富君 次に、いまアメリカ下院を通過必至と報道されておりますローカルコンテント法案について、上院、下院の若干の差異はありますが、年間で九十万台以上車の販売を行うためには、アメリカの部品を九〇%装着しなければならないと、きわめて重大な影響を生ずるようなことが盛られております。こういうような問題等を含めまして、この法案が通過すれば、アメリカ国内の車のコストが三百三十ドルから千五百ドル上昇するとの試算も出ておるわけでございますが、政府はこの法案の成立の可能性についてはどのように予想してみえるかという点と、万一成立した場合には、わが国の自動車業界に与える影響というのをどのようにお考えか御説明願いたいと思います。
  81. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これ一遍は下院を全会一致で通過したと。しかし、新しく選出された議員たちで構成された議会でやらなかったということで、今国会というものがどう動くかということにかかるわけでありますが、どうもここには大統領選挙を前にした、外国の政治の裏を批判をしたくはありませんが、民主党と共和党とここで戦略的な駆け引きをやっているように思えてなりません。そのことは省略いたしますが、私たちは逆転の発想というもので物を考えてみようということを作業をいたしまして、ローカルコンテント法案というものがもし通過、成立、大統領の承認ということで実行されたならば、アメリカの方から見てどうなるんだという計算をしてみたんです。そしたら、アメリカの方も、いまおっしゃったとおり、自動車のコストは二〇%以上上昇する。これは国民が迷惑を受けるわけですね。そして、じゃ雇用その他が失業率に対してどの程度貢献するのか、部品産業その他について全部調べてみたら、結局はアメリカも損をすると。日本車はもちろん、そんな部品を向こうで現地で調達するんだったら、もう現地に進出する以外には方法はないだろうと思うほど打撃を受けるわけでありましょうが、じゃ現地に進出したらそれで済むかというと、ちょうどハーレー・ダビッドソン一社を救済するために日本の進出企業が二社もあるのに、輸入車に対して四五%の関税を上乗せして四九・四%の関税を取るという信じられないようなものが成立をしちゃったといいますか、これ議会通っていませんので、日本の不公正とも言ってませんが、二百一条という通商法の根拠を利用して大統領が直接判断をするようなルートを通ったので議会の論争はしてませんが、しかしそういうものが通る国柄であるということを考えますと、日本側もローカルコンテント法案というまさに信じられないような法律がアメリカにおいて成立するとするならば、日本の自動車産業というものはもう一遍根本的に輸出規制どころではない問題として検討しなければならないと思っておりますが、これが実施されたとき日本側はどれだけ被害を受けるかというのは敗戦意識でございまして、したがって私の方はまだ日本もこれほどの打撃を受けますよということは答弁をしないということにしております。
  82. 馬場富

    ○馬場富君 そこで、こういう法案等の問題を通しまして、やはり日本の部品産業の関係に与える影響がこれからも多くなってくるわけです。その点について、自動車部品産業についての問題点について二、三お伺いしたいと思います。  こういう規制というものが行われてきた場合に、新車組み付け用が八〇%であり、完成車メーカーを中心とするピラミッド体系にある日本の自動車産業の形態からいきますと、やはり自動車部品メーカーに大きな影響を与えるということは必至だということはわかります。このような輸出面での圧力に加えて、最近の完成車メーカーは系列 外のメーカーからも部品を購入するという傾向が非常に強くなってきております。この結果、業界の競争というのはますます激化するということが考えられてくるわけでございますので、そこでまず自動車部品産業の現状及び企業体質の強化のために何らかの政策が必要ではないかと、こういうことを考えるわけでございますが、この点はどうでしょうか。
  83. 志賀学

    政府委員(志賀学君) 最初に自動車部品工業の現状をさっと申し上げますと、日本の部品工業は事業所数で申しまして約一万三千八百事業所、そこで働いている従業員の方は約四十五万人でございます。生産額は逐年増大をしてまいっておりまして、若干古い資料で恐縮でございますけれども、昭和五十六年度の生産額は五兆二千七百七十九億円ということでございまして、輸出もかなり伸びてまいっております。全体として申しまして、日本の自動車産業というのは、世界のトップクラスになっているわけでございますけれども、それを支えておりますのが自動車部品産業でございます。日本の自動車部品産業の現在の力と申しますのは、やはり世界の最高水準にあるというふうに存じます。その背景になってまいりましたところは、これは業界において海外からすぐれた技術を導入するとか、あるいは自主的な研究開発をやるとか、あるいは合理化に努めるとか、そういった各企業における自主的な努力、それが今日の成果につながってきているというふうに私どもは理解をしております。もちろん、私どもといたしましてもこの自動車部品工業に対しまして、たとえば公害の防止であるとかそういった観点からのある程度の支援はやってまいっておりますけれども、基本は各企業の自主的な努力によって現在の自動車部品産業の実力が培われたというふうに理解をしております。
  84. 馬場富

    ○馬場富君 それでもう一つは、それにあわせましてこの自動車部品産業の問題、現在、急速にエレクトロニクス化が進行しておるわけです。そういう点で、このような技術革新の波に乗りおくれないためにも、やはり企業体質の強化は急速な対策が必要だ、こう考えられます。  また、国際化時代に対応しても、部品メーカーも海外進出を迫られておるわけです。そこで、これまでのような東南アジアを中心とした関係の進出ではなくて、完成車メーカーの欧米先進国への進出に伴って、部品メーカーもこういう方面への進出の必要が迫られてきておるわけです。そういう点で、欧米諸国への進出に際しては、現地資本との提携だとか、労使関係、あるいは日本車メーカーだけの供給で採算がとれるかどうかという問題もございますし、それから、品質、納期がどれだけ守れるかというような種々の問題もやはり生じてくる可能性があるわけです。  こういう点で、政府は、完成車メーカーに比較して、体質、資金力とも脆弱なこういう部品メーカーに対して何らかの援助を行うか、または新たなひとつ対策を考えておるかどうかという問題と、それから、これがまた摩擦の火種となるおそれはないか、この二点をお尋ねいたします。
  85. 志賀学

    政府委員(志賀学君) お答え申し上げます。  先生おっしゃるように、自動車部品産業、最近海外進出がつとに進展をしてまいっております。五十七年の一月現在で申しますと、現地法人で百六十三件、うち生産会社が百十件、こういうような数字になっているわけでございまして、日本の自動車部品産業の海外進出、かなり進んでいるというのが現状でございます。  海外進出に当たりまして何か特段の対策を考えているかというお尋ねでございますけれども、海外進出に当たりまして、一般的な対策といたしまして、日本輸出入銀行あるいは海外経済協力基金からの助成、あるいは輸出保険制度、さらには税制上の措置といたしまして、海外投資等損失準備金制度、そういったいろいろな海外投資に対する支援措置がございます。私どもとしては、自動車部品産業の海外進出に当たりまして、このような一般的な助成制度の活用によってそれを支援してまいりたいというふうに存じております。  なお、自動車部品産業が海外進出してまいります際に、新たな貿易摩擦が起きないかというお尋ねでございますけれども、現在までのところ、先ほど申し上げましたように、かなり進出が進んでいるわけでございますけれども、海外からの批判と申しましょうか、そういったことは聞いておりません。いずれにいたしましても、ただ、各企業進出に際しまして、進出先の状況等を十分踏まえながらやっていただくように、私どもとしても企業にお話をしているところでございます。
  86. 馬場富

    ○馬場富君 次に、アメリカの輸入オートバイの課徴金問題について、四月一日にレーガン大統領は、この勧告案を受け入れたと報道されておりますが、これはきわめて保護貿易主義的な色彩の強いものであると思います。放置しておくと他の製品にもこういう対応の措置が考えられるわけですが、一つは、その撤回を求める措置というのをやはり毅然とした態度で私はこれを行うべきではないか、こう考えますが、これはいかがでしょうか。
  87. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) この問題は、先にちょっと話してしまいましたが、そういうような経過で、はなはだ芳しくない。自由主義を唱える大国アメリカのやることかと思うような内容になっておりますが、ただ、大統領の決定をいたしました文の末尾に、この効力を発生させるまでに日本との間で――日本という字が使ってありましたかな、使ってないでしょう、恐らく。とにかくハーレー・ダビッドソン社の再建に関する話し合いがついた場合は、この命令は撤回され得るという珍しい文章がついているんです。  それは何を意味するかといいますと、ハーレー・ダビッドソン社は決して輸入車に高い関税をかけて助かるわけじゃないんですね、その関税は政府に行っちゃうわけですから。問題は、ハーレー・ダビッドソン社の、長年の蓄積された伝統ある名車の上にあぐらをかいていたと言うしか私はないんじゃないかと思うんですが、どうも経営、技術革新等でおくれをとってきて、ついに企業内の大変な累積赤字の前に倒産の危機に瀕しているというのが裏にあるわけですから、もし、日本側が、じゃあ現地進出すればいいんだなということで、あと現地に工場を持っていない鈴木とヤマハが現地に進出したとしますと、じゃあ関税はそんなに取れませんから、そうすると、ハーレー・ダビッドソン社はそれで助かるのかというと助かるわけないんですね。  ですから、裏では八千万ドル日本のオートバイメーカー各社からハーレー・ダビッドソン社に金を貸してくれというのか何か、とにかくめんどう見てくれれば引っ込めるとか、日本の方は、たとえば本田が進出しましたときに、取得した土地から製品を出すまでの間の金額は三千五百万ドルで済んだそうですから、八千万ドルハーレーのために出すぐらいなら、残りの二社もその金で出ていった方がよっぽどいいわけで、ここらのところは、だから何が書いてあるのかというと、ハーレーの言っていた金額というものがだんだん下がってまいりまして、いまは四千万ドルと言っているやに聞こえておりますが、それでも日本側は三千五百万ドルを上回るのは絶対反対だということで、わずかの差になっておりますが、ハーレー・ダビッドソン側の言うことに合意をしていないという、ごくわずかなものがつながっていると言えばつながっている。ハーレーが八千万ドルから四千万ドルへおりてきたということを見ればあるいは合意する線に下がってくるのかもしれない。そうしたら、その命令そのものが撤回される条項がついていますから、急転直下解決することがあるのかもしれませんが、目下のところまだ両方とも裏の話でございますから、まとまるかまとまらないかは私の口からまだ言える段階ではない、交渉をもう少し見守っていようというふうに考えております。
  88. 馬場富

    ○馬場富君 最後に大臣に、このような完成車や部品等について質問をしてきましたけれども、日本の自動車産業が今後も輸出を捨てるというわけにいかないと思うんですね。そういう点で、やはりこれは日本の産業の上でも大きい影響力がある わけですけれども、こういう点について先ほどのいろんなPRや、積極的な理解等の問題については、大臣もこれから行うということをおっしゃいましたが、これを含めて今後の長期的な対米政策についてはどのようにお考えかお尋ねして、この質問を終わりたいと思います。
  89. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 日本はアメリカと離れて、これは安保条約を別にしても、防衛を別にしても、経済の面でも完全にアメリカと縁を切ることは不可能でありますし、成り立たない輸出構造になっているわけでありますから、やはりアメリカとは忍びがたきをある程度忍ぶこともあり、煮えくり返る腹を抑えることがあっても、なるべく友好裏に話し合いで片をつけていく。いまのオートバイの問題等もひどいじゃないかと思いますし、しかし、そう思いながらも、やはりアメリカと日本とは長い目で見て仲よくしていかないと、日本自身が国際経済社会で孤立して生きていけないという道に踏み出してしまうことになりますから、大変じれったく思われる点もおありでございましょうし、交渉当事者である私も、本当にしゃくにさわるなと思いながらも、一応は話し合いの道を模索しておるわけでありますから、ただいま御注意いただきましたような配慮を持ちながら、日本の基幹産業にまで成長した自動車産業及びその関連の産業、オートバイ産業、そういうものを適正に評価されるように、そして日本はまた適正な市場を確保するように努めてまいりたいと思います。
  90. 馬場富

    ○馬場富君 次に、先端技術国際協力体制づくりについて質問いたします。  昨年六月のベルサイユ・サミットで設置されることが合意されました科学技術部会の提言が三月二十五日に発表されました。各国が新しく技術協力を行うプロジェクトは、風力発電などの再生可能エネルギーからあるいは深海ボーリング、軽水炉、宇宙開発等に加えて十八テーマであるということが報道されておりますが、わが国は、軽水炉あるいは光合成あるいは太陽熱発電、先端ロボット等の四テーマについて幹事国となっておるわけですが、開発の推進力となるためにも、政府はこの目的を考えてどのようにこの体制をつくられるか御説明願いたいと思います。
  91. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) このような分野の協力というものこそ、まさに望ましいものであって、人類がお互いの英知によって未来を切り開いていく場合に、それぞれの国が密閉された中で、自分たちのものとして発展させる必要のあるものもあるかもしれませんけれども、しかし、それをなるべく広く国際的に、サミットの国々がお互いに協力し合うということに、一つ一つの問題は限界があったり、あるいは軍事的な機密性があったりするものがあるにしても、やはり人類全体に貢献すべきそのような先端技術等については、それぞれが力を合わしていく。ことに四テーマについて日本が主査と申しましょうか、国際的な主査の立場に置かれたことを、私たちは光栄と申しますか、自信を持って受けとめて、それぞれの国々のテーマというものにもそれぞれ貢献しながら、やはり最終的には世界の人類が幸せになる道、いよいよ発展していく道、交流がレベルが高くなっていく、交流が進むということのために、これはやはりじみな仕事のようですが、余り摩擦のないことであって、非常に大きく将来に貢献する仕事でありますから、これはやはり精力的な努力を続けていかなければならぬと思いますし、今度のサミットに中間報告ぐらいはするわけでしょうか、そういうようなことを区切りとしながらも、一回限りでやめないで、永続してこれやっていくべきだなと、そういうふうに思っております。
  92. 馬場富

    ○馬場富君 やっぱりこれについて、技術の先進国の独占の防止という問題が考えられるわけですが、このような研究開発段階での国際的協力体制ができれば、将来の世界経済の活性化にもつながるわけでございますし、あるいは貿易摩擦の解消にも役立つわけでございます。しかしながら、このような主要七カ国だけの連携による技術開発が成功した暁には、事実上これらの国だけの独占が行われる危険性が十分あると考えられるわけです。この結果、八〇年代あるいは九〇年代に技術をめぐる先進国と途上国間の摩擦が生ずる可能性が出てくる、こういう点で、このような摩擦の防止のためには、技術開発がある程度進んだ段階で、より多くの国々に対象を拡大していくべきではないかということを思うわけですけれども、政府はこの点をどのようにお考えでございますか。
  93. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) その危険性は、その研究をしている過程においても発生するであろうし、各国のドグマですね、いろいろな理由はありましょうが、あるいはほかには隠したいというものがあるんでしょう、軍事的なものなどは。しかし、全体的に好ましいことだと申しましたが、そういうもので成果が得られた場合に、いまそういう発展途上国やサミット加盟国以外のものに対して開かれた姿勢がなければならぬというお話、ごもってもでありますが、実際に海洋法条約におけるアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスのわがままとか、あるいは核拡散防止についてのわがままとか、どうもそういう点、理想はそうありたいし、そうなければならぬのですが、これだけのものが成果が得られた場合に、それが果たして七カ国だけで独占せよというようなことは、わが日本は言うつもりはないですが、その中で足並みが乱れてくるものがありはしないか、そういうときに一番中間的な立場に立っているのが日本であると私は思っておりますし、そういうときの調整役というものは、日本が一番しやすいのではないかというふうに考えております。
  94. 馬場富

    ○馬場富君 時間がありませんので、ちょうど経企庁長官が来ていらっしゃいますので、あと一、二問お尋ねいたします。  十一日に発表されました政府系機関の調査では、五十八年度設備投資は前年度比マイナスかあるいは小幅増という結果が発表されておりますけれども、この調査結果を政府はどのように考えているのか、お尋ねします。
  95. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 先般、各種の機関が設備投資のアンケート結果を発表いたしたことでございます。いま馬場委員御指摘でございましたが、確かに設備投資の動向は大企業には比較的かたさがありますものの、中小企業を中心として低調な面もございます。全般的に低調のように見られるところでございます。しかしながら、御案内のように、五十八年度は鉱工業生産が恐らく回復過程に向かうであろう、そしてまた金利も低下の傾向に向うことは必至であろう、さらにまた油の値下がり、これによって企業収益は回復してくるであろうと、こういうような要素を加味いたしますれば、私どもは名目で三・九%、実質で二・九%の設備投資の上昇は五十八年度には実現できるものだと、こんなふうに見ておるところでございます。
  96. 馬場富

    ○馬場富君 経済成長率の中でやはり大きい比重を占める民間設備投資が、いまの調査等では大きい上昇というのは考えられないわけですね。予定のような進行ができないわけですね。そういう状況下でこれをこのまま見ていけば、成長率ももちろん達成できなくなってくるという現象が私は起こってくるのではないかと思いますが、この二・九%の目標はいまの現状から推しまして、五十八年度これ早々でございますけれども、本当に自信がございますか。
  97. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように各需要項目の中で一番心配な点は、御指摘のように民間企業設備投資だと思うところでございます。それは多分に、いま申しましたような金利の低下傾向、さらにまた輸出の回復、さらにまた原油の値下がり、このような将来の要素がございますが、現状で判断いたしますと、委員御指摘のように心配な点があることは、もう私も十分に自覚しているところでございます。しかしながら、いま申しましたような将来の予測を考えてみますと、私は二・九%程度の民間企業設備投資の増加は、これはぜひともなければ――五十七年度御案内のように名目で〇・二、実質で二・〇%でございました。企業全体といたしましてやはり省力化投資、あるい は更新投資の意欲は大変ある、ただ利子が高い、あるいは企業収益が伴わない、こんな点があるわけでございます。このような面が打開されるならば、私はいま申しましたような設備投資の伸びは期待できると、こういうふうに考えております。
  98. 馬場富

    ○馬場富君 現在、政府でいま景気の停滞に対してやはり対策を考えていくという意向があるようですが、その考え方の内容はどんな考えですか。景気対策です。
  99. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 先般四月の五日にいわゆる景気対策と申しますか、総合経済対策という一つの方向を決定いたしたところでございます。当面の課題といたしまして八項目、そしてまた今後取り組むべき課題といたしまして三項目、決定いたしたところでございます。  まず第一は御案内のように金融政策の機動的運営でございますし、第二は公共投資の前倒しでございます。第三は住宅政策の推進でございます。第四は御案内の規制の緩和によりますところの民間投資の促進でございます。第五は中小企業の対策の推進でございます。第六は雇用対策の推進、第七は不況業種対策の推進、第八は調和のある対外経済関係の形成といたしまして基準・認証制度等の改善までを含めた対策を考えているところでございます。今後取り組むべき課題といたしまして、世界経済活性化のための国際協力に対する応分の貢献、第二は所得税の減税、第三は公共事業についての民間活力導入の方策の検討、このような十一項目について私どもは現在の経済状況に応じまして推進することといたしているところでございます。
  100. 馬場富

    ○馬場富君 もう一つ経済成長率の中で大きい位置を占めるのが個人消費です。民間企業設備というのは、長官は大変自信をお持ちですが、私は現状からいき、いろんな景気状況からいきましてかなり苦しい状況にあるのじゃないかと、こう見ております。そういう点で、成長率の中でもう一つの要素の個人消費についてはやはり大きくこれを考えていかなければ景気対策もおぼつかないと思うんです。そういう点で長官はこの点についての、個人消費の拡大のための減税ということについては、必要性をどうお考えですか。
  101. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 所得税減税が、個人の可処分所得を高めて消費を刺激することは、もう私どもも当然の好ましい効果だと、こういうふうに考えているところでございます。国会の申し合わせもございますので、政府といたしまして、財源あるいは具体的な方法につきまして検討して、所得税の減税が推進されると、これが今後の政府の大きな課題だと、こういうふうに考えております。
  102. 馬場富

    ○馬場富君 われわれ野党の要求等についても、一兆円減税必要というのが強く要望されておるわけですけれども、この点についてはどのようにお考えですか。
  103. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 経済企画庁長官でございますし、現在の厳しい環境から考えますと、所得税減税は大変好ましいと考えますし、企画庁長官としても推進したいと考えております。
  104. 馬場富

    ○馬場富君 時期について、あなたは経済運営の中心にいらっしゃるわけですが、結局いつかということになる。時期ははっきり言えなければ早い時期が必要かどうか、この点どうですか。
  105. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 国会の申し合わせで、五十八年中に必ず所得税の減税が行われていることになっておりますので、私もそのように期待いたしております。
  106. 市川正一

    ○市川正一君 政府は去る五日に経済対策閣僚会議を開いて、両大臣とも御出席だったと思うんでありますが、今後の経済対策についてという方針を決定されました。マスコミなどもこれは結局選挙目当ての景気対策、こう言っておりますが、私もその実態を明らかにいたしたい。  まずお聞きしますが、この対策は景気対策なのか、一般的な経済運営の方針なのか、まず確認をいたしたい。
  107. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) いま御指摘のように、この経済対策と銘打った政策はいかなる政策であるかというお尋ねでございますが、これはもういろいろの意味がこもっていると私は考えております。当面の経済対策というような意味もございまするけれども、その中には中長期的な経済対策の意味も含めておりますし、さらにまた現在の財政状況でございますので、いろいろの施策を総合して、特続的な、安定的な成長に持っていこうという一つの意味を持っている、このような意味を込めましたものがいわゆる経済対策を含めての、景気対策を含めての、今回決定されました経済対策の性格だと私は観念いたしております。
  108. 市川正一

    ○市川正一君 よくわからぬのですが、多目的ダムじゃないけれども、いろいろの目的がある、意味がある。ところが、今回の対策は政府が前日の四日、これは五十八年度予算でありますが、これはまさにベストのものである、こううたい文句で成立さした。その翌日、今度は手のひらを返したように、景気対策なるものを発表されるということ自体、私は国民を愚弄している、こう言わざるを得ぬのです。言いかえれば、政府原案予算では、景気浮揚には役に立たぬということをお認めになったということになるんですが、この点どうでしょう。
  109. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 政府でございますから、私は予算の執行の責任を持ち、また予算の執行を通じて、経済の浮揚、経済の何と申しますか、成長の円滑化、さらにまた景気対策の意味を持たせるということは当然のことだ、こういうふうに考えております。
  110. 市川正一

    ○市川正一君 ところが内容を拝見しますと、先ほどお読みになったんだけれども、十一項目、それから細目すると三十項目超える数だったですね。たくさんあるんですけれども、その大部分は去年の十月の総合経済対策に盛り込まれているものなんです。そのほかのものも従来からとってきている対策のいわば周知徹底とかあるいは配慮をするとか、そういうたぐいの問題でありますが、従来から実施してきても、景気対策としては実際に効果上がっとらんわけでしょう。それをまた並べ立てて、そしてまた予算が通った翌日、政策執行という名のもとにお答えになったけれども、結局そういうことにすぎぬのじゃないですか。
  111. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 私はやはり、常に真理は真理だと考えておりますし、またその重要なことは、何回もまた周知徹底させて、その実現を図ることが必要だと思います。  それから第二に、いろいろの政策も並べてありますけれども、やはり政府でございます。立法によって新しい施策を講ずることは限界がある。やはり立法により決定されたこと、そしてまた予算が成立したことによって予算の施行に伴うこと、これによって政府ができ得る限りのことを図っていくことが、私は当然の政府のなすべきことだと、こういうふうに考えております。
  112. 市川正一

    ○市川正一君 それでは伺いますけれども、政府は今回のこの対策によって、新たな財政支出をどれぐらい予定されておりますか。
  113. 田中誠一郎

    政府委員田中誠一郎君) 予算が成立した直後でもございますし、今回の対策として、特に追加的な財政措置を考えてはおりません。
  114. 市川正一

    ○市川正一君 それじゃやっぱりマスコミが言う選挙目当てのスローガンじゃないかということにならざるを得ぬじゃないですか。何にもあんた財政支出は考えていない。  もう一つ聞きますが、従来は景気対策を実施する際には、それによってGNPをどれぐらい押し上げるか試算してきていましたが、今回はどれぐらい上がりますんですか。
  115. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) いま市川委員のおっしゃったことは、政府は新たな支出をこれで図っておるかと言われましたが、私は政府でございます。予算に基づきまして施行する、これは新たな支出と申しますか、当然のことで、これは新たな支出というよりも予算に伴う、予算に基づくところの支出で、これ以上の権限は私は政府にはまだない。その中での最大限の努力が今回の対策の中に盛り込まれる、こう考えるわけでございます。そこで、それでは新たな支出がなければ、成長率は どんなになるんだというお尋ねでございますが、私どもはこの対策によって三・四%という私どもが立てました経済成長の見通しを、これによって上昇さそうという趣旨じゃございません。現在の経済情勢から見て、私どもが立てましたところの三・四%の経済成長の見通しをより確実に達成するために、予算に基づき、法律に基づき、そして行政上でき得る限りの政策を進めようとするものでございます。
  116. 市川正一

    ○市川正一君 いままでのこういう経済政策の出し方と大分違いますな。それで、政府がこう言っているんですよ、対策を打ち出した政府自身もどれぐらい効果があるかわからぬと、そこで効果を計測できないと、こうおっしゃっている。それですから、私、今回のこの対策なるものの性格がようあらわれておると思うんです。  若干、具体的内容についてお聞きしたいんですが、まず景気対策を考える場合には、個人消費の拡大が現在の重要課題だというのは、これはかねがね長官も、先ほども力説なすったところですが、そこで今回のいわば経済見通しとの関連では、実質三・四%のGNPの伸び率のうち二・一%は個人消費の伸びに期待しているというわけですが、ところが、先般本委員会で私長官にお尋ねしたんですが、個人消費を伸ばす上で所得税減税が必要不可避だということ、先ほどもやりとりがございましたけれども、今回の対策を拝見しますと、これが「今後取組むべき課題」ということで遠い将来の問題に追いやられているんですね。さっき後ろから長官に回された、これもう言いませんけれども、一体これどういうことなんですか。
  117. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) ここでも御説明申し上げましたように、私どもの三・四%の経済成長の見通し、その中での、いま御指摘のように、民間最終消費支出は寄与度二・一%でございます。しかし、その見通しの積算の根拠と申しますか、見通しの中では、私どもは所得税減税が行われるという前提には立っておりません。したがいまして、そんなような意味においても、今回の経済対策の中では、所得税減税は、今後の検討課題ということにして差し支えない、またそのことが好ましいと、こういうふうに考えたところでございます。
  118. 市川正一

    ○市川正一君 それはおかしいと思うんですよ。将来考えるべきといったって、いまやるという約束したわけでしょう、与野党合意で。政府もやると言うてお答えになっているわけでしょう。あんたもやらぬといかぬと言うて何遍も耳がたこになるほど聞いていますがな。それが将来、今後やるべき課題という、そんな先の話じゃないと思うんですよ。やっぱりいま直ちにやるべき課題にどうして入れぬのですか。それはまあよろしいが。  それで聞きますが、五十七年度税収が確定する七月に検討するのだと、こういう話をちらほら聞きますし、新聞でもそうおっしゃっている。ところが、五十七年度税収は、これはもう聞かぬでもいいんだけれども、三千億から五千億不足すると、こう言われておるんでしょう。そんならどないしますのや、仮にそうなったときには一体減税やるんですかやらぬのですか、それちょっとはっきりしてほしいんです。
  119. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 私が当面の事項というよりも検討課題だと申し上げましたのは、先般四月五日の決定の総合経済対策の中で、そのような分類をとったから申し上げておるわけでございまして、その背後には、先ほど御説明申し上げましたように、国会の申し合わせがバックになっておる。それは昭和五十八年中に実施すべきであるという申し合わせを前提としておるわけでございまして、しかもこれは政府の権限ではなくして、国会の権限でございます。立法を伴うものでございます。そのような意味で検討の課題にしたと、こういうふうに御理解を願いたいと思います。つまり、私どもは所得税減税はなるべく早くやっていただきたい。しかし、これは国会で議決されて法律で初めて実現できるものでございますから、このような表現をとって申し上げたわけでございます。  そこで、新聞紙上七月ごろにその所得税減税が決定される、そのときにまた歳入欠陥でもあったらどうなるかという御質問と承ったわけでございますが、それは私の所管と申しますよりも、言われた趣旨は五十七年度の決算状況と申しますか、租税収入の実績等を考えてこの問題もまた取り組むべきである、それが一つの大きな何と申しますか、とっかかりであろうと、こういうふうな意味で申されているのではないか。私も長らく大蔵省で税金の仕事をやっておりましたので、何と申しますか、各年度の決算は七月ごろにわかる仕組みになっております。それが一つの財政上の判断をする取っかかりだと、こういう意味だと思います。
  120. 市川正一

    ○市川正一君 判断というのは、やるという前提で判断するのか、そのときはやらぬということになるのか、ようわからぬのですが、これは通産大臣が大蔵小委員会で一年間これでやってこられて、結論としてああいうふうなことに相なったわけですな。ああいうことというのはもう言いませんけどね、もううまいこといかはったんですがね。  それで長官に聞きたいんですが、竹下大蔵大臣は、五十八年度予算が成立した四日の晩に記者会見をやって、六月の参院選挙後に、減税と抱き合わせで大型間接税の導入等、増税の検討を開始する意向というのを表明していますが、私本委員会で、三月二十三日ですが、この問題、抱き合わせでやると、言葉は悪いけども、言うたら長官は首を何か斜めに振ったはったけれども、四日の晩に大蔵大臣言うとるんですよ。また首振っているけれどもこれ事実なんです、ここにありますがな。  そこでそのときに塩崎長官は――ここに会議録がありますが、「大型間接税は消費そのものに直撃していく、消費抑制の効果がある」「減税と増税を組み合わせるならばむしろマイナスの景気効果を生む」、こういうふうにお答えなすったんです。ここにあるんですよ。私は、そういう点から言うと、経済運営に非常に大きな責任をお持ちの長官としては、こういう大蔵大臣のような明確な意思表示ですね、これはやっぱり捨ておけぬということで、こういう増税攻勢、特に大型消費税を導入するということは中止を申し入れるべきではないかと思いますが、どうですか。
  121. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 市川委員は、いま竹下大蔵大臣の、新聞の何と申しますか、お言葉を引用されたようでございますが、私はもう公式表明といたしましては、市川委員もたびたび聞かれたと思いますけれども、本会議で中曽根総理も、竹下大蔵大臣も、ともども大型間接税については全く考えておりませんし、検討の指示もいたしておりませんと、こういう御答弁がありましたし、私はそれに基づきましていろいろ心配はいたしました。いま申しましたような経済理論的に申すれば、所得は貯蓄と消費に分かれるけれども、しかしながら消費税は消費そのものに直結するから、心配だと思ったけれども私はそれは杞憂に過ぎなかった。したがって、余りこの問題は心配する必要がないということを本会議で二度ばかりお答えしたような私は気がいたします。竹下大蔵大臣の本会議の答弁も伺っておりますので、いまの新聞のような記事は私にとってちょっと理解ができないところでございます。
  122. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、四日に予算が成立した晩に本音が出たのかどうか知りませんけれども、これ一遍確かめられたらどうですか、あなたこんなことを言うているけれども本当かと。杞憂であったというんだったらそれでよろしいがな。杞憂でなかったらそれはぐあい悪い、やっぱりそれははっきりしておいてほしいのですがどうですか。
  123. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 確かめなくても、私はもう参議院本会議の総理並びに大蔵大臣の答弁を公式な意見として信じております。確かめると言ったら確かめても結構でございますが……
  124. 市川正一

    ○市川正一君 確かめてください。
  125. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 公式表明の方がより権威のあるものだと考えております。
  126. 市川正一

    ○市川正一君 それじゃ一遍確かめてもろうてそ の上で白黒つけましょう。  それで、私の持ち時間は非常に少ないんでどんどん前へ行きますが、今度は原油価格の値下がりによる電気料金の引き下げですが、山中大臣、三月十八日に参院の予算委員会でわが党の神谷信之助委員が質問いたしました。それに対して、電力会社の今回の利益はいただいたものだから、その恩恵を産業の活性化に資するとともに国民に返さなければならないと。そして、「政治の名において政府の責任で命令をすることもあり得べし」と歯切れよくこうお答えになっているわけですが、しかし今回の対策を見ますと、五千億円の金額まで明示して電力会社の設備投資を実施することにしていますけれども、電気料金の値下げは触れていないんです。私は、電気料金の値下げをするのかせぬのか、ひとつはっきりお答え願いたい。
  127. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) ここに金額としては七〇%以上という数字と電力の設備投資の前倒し五千億程度という二つしか数字がないんですね。これはたまたま電力会社が、一バレル当たり一ドルが一千億円で、五ドルならば五千億円という数字とぴたっと一致するものですからね。これはそうではなくて、既定の計画として持っている電力会社の設備投資を前倒しをしなさいということの積み上げが五千億であって、別途この五ドル下がった分についてのものは入っていませんという注釈を口頭では一応説明してございますが、誤解されるおそれがありまして、市川先生は誤解していらっしゃらなかった質問でございましたが、その設備投資と電力料金値下げの問題とは全く関係がない。言いますと、五千億もう設備投資に回しちゃったから電力料金改定には回りませんよと、そういう数字ではございませんと。したがって、電力料金の、石油の値下がりの受ける恩恵の中に、一つは電気料金値下げという直截的なものがありますと。しかし、石油会社の方は電力料金にまず反映する約四〇%のシェアを占める石油、C重油、そういうものについての値下げをしていない。値下げしたものはガソリンとか灯油とか、市況でも値崩れしてしまっておるものを追認したにすぎないというようなこともありまして、すぐにということはなかなかですが、これから幾つかの問題を、最終的には国民全体が、経済は活性化し、国民生活は再び向上の方向に向かって歩み出す糧にこの五ドルというものを、一番世界でうまく使った国としてやろうじゃないか。その中に産業政策として考えておる、そして国民に均てんする場合において、電力料金もそのファクターの一つであることについては間違いない。しかし、五ドル下がったから五ドル分全部というような計算どおりいくかどうかについてはこれからの問題だと申しまして、下げる権限があるぞと言ったのは、どうも外野がうるさいんですよね。公共料金としての電力料金値上げを申請したときには一生懸命頼みに来て、そして今度は値下げをしなければならないかもしれないときには絶対値下げしないということを九電力社長写真入りで余りにぎやかにおやりになるものですから、苦々しく思っていると言ったら、それで静かになったんですが、なおまだおさまらないような空気がありましたので、逆に私の方は値下げ命令をする権限を持っていますよということまで言いましたんで、いまは通産省にお任せいたしますという態度になりましたので、それでよろしいと。こういうことにして、これからその対策を検討しておるところでございます。
  128. 市川正一

    ○市川正一君 外野席なのか、いわばやじ馬なのかようわからないんですが、主人公はやっぱり国民なんですから。ですから、私はいまファクターとして残っていると、何か意味ありげな言い方でずるずるずるずるこう行く。前から、これは二月段階からそういうふうに大臣おっしゃっているんですね。原油値下げに伴う利益は国民に還元すべきだ、電気料引き下げは当然検討対象に含まれようとか、ファクターだとか、だからやるのかやらぬのか、そこを僕はお聞きしたかったんです。だから、それをひとつお伺いすると同時に、ちょっと論を前に進めたいんですが――いや、それ先に歯切れよく聞きましょう。
  129. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 簡単に申し上げます。  要するに、石油の値下げが何ドルで最終的に決定をして、それがどれぐらい安定するのかということが見通しがつかなければ決められないということです。ということは、私たちが一遍為替差益でもって、それを還元ということで、電力料金を下げることにこれは与野党一緒に踏み切りましたが、一年半後には五〇%値上げをせざるを得なかった。これでは政治ではない。やはり一定の見通しを立てて、少なくとも安定長期供給ということの確信を持ってやりたいということから、いまここで五ドル分をそのままという言い方を私が避けているということでございます。
  130. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、五ドル即そのままということではないけれども、ともかく値下げをするということでやるという姿勢だというふうに確認してよろしゅうございますね。
  131. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 値下げをする方向も検討しておりますが、それはその前提として前車の轍、すなわち為替差益のときのような一年たったらまた五〇%値上げをしなきゃならなかったというようなものでは電力料金というものはあってはならない。やはり安定して、しかも低料金で供給されるものが電気料金であろう、そう思ってますから、なるべく長期的な展望を持って、確信を持って、前のようなぶざまなことはしないようにということを申し上げているだけでございます。
  132. 市川正一

    ○市川正一君 しかし、私はこの対策に即して物を言ってるんですから。この対策に出てきておるのは、結局値下げの問題はないわけですよ。そして、出てきてるのは、電力会社の責任で本来実施すべき設備投資を繰り上げ発注せい、これ五ドル分をそうするとかということをイコールにはしませんけれども、そういうことをいわば電力会社には言うてるということにこれではなってるわけですね。私、九つの電力会社の役員の給与調べた。そうすると、ここに有価証券の報告書の写しがあります。五十六年の三月期と五十七年の三月期と比べますと、平均してその役員の給与ですが、千三百七十万円から三千六百四十九万円と、実に二千二百七十九万円もふえておるんです。ただ、北海道電力だけはこれは減額です。しかし、あとの八つは皆ふえておる。北海道も含めて九つを平均すると二・六六倍になっている。関西電力や中部電力はざっと四倍です。こういう大幅アップを役員給与でやってる。しかも、八一年度の収支報告書を見ますと、電力会社のこれら役員百二十九名、これが自民党、国民政治協会に千九百九十一万円、約二千万円政治献金やっておるんです。だから、私はね、電力会社はなるほど企業としての政治献金は自粛しよりました。しかし、形を変えてこういう役員による大量献金が行われている。一方では人勧凍結や言うてるさなかに四倍から給料上げておる。こういうことを通産大臣望ましいと思われますか。どうですか。
  133. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 与党自民党としては、大変かたじけない、ありがたいということでありますが、一方国税庁としては、それは高額をお取りになっても七五%の税率でちょうだいいたします。税をちょうだいいたします。最高税率では地方税含めて九三%というような税を納めるということになっておるわけでありますから、余りそんなに給料ふやしたところで手取りふえるわけではないと思うんですが、それは気は心なんでしょうか、しかし一方において公的な電力会社という性格を考えるときに、それぞれの地域、九ブロック、沖縄を入れて十、その地域の周辺にふさわしい企業のトップとしての、役員としての給与であってほしいし、いまの金額がどういうふうに周辺とつり合ってるのか、そこらのところは私はまだ点検しておりませんので、やはり電力会社の公共的な性格にふさわしい役員としての矜持も持ってほしいと、そういう気はいたします。
  134. 市川正一

    ○市川正一君 公共的な性格であるがゆえに世論の指弾も受けてついに自粛したわけですね、企業としては。ところが、実際には形を変えて役員がみんな政治献金していると。私はあえて声を荒立てて申しませんけれども、与党自民党としては結 構でございますというような、そんな答弁じゃなしに、私は大臣として、やっぱり通産大臣として、その監督下にある電力会社のこういうようなことについて、やはりもう少しまじめに真剣にお考え願いたいと思う。私は結局こういう事態は、利益隠しともう一つは、国民の電力料金値下げ要求を抑えるための、そのための政治献金だと、事実そういう薬も効いてきつつあるようですけれども、そう言わざるを得ぬのであります。  私、エネ長官にお聞きしますが、電力需要はここ数年低迷しておる、そして五十七年度も前年並みか若干落ちるんではないか、あるいはまた発電設備の利用率も落ちていて、供給予備率も高い水準にある、電力会社の当初の設備投資計画もほとんど伸びていないと、こう見ているんですが、いかがですか。
  135. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 先生御指摘のように、五十五年は電力需要というのは一・七%減、五十六年は〇・五%、ちょっとはふえましたけれども、五十七年度においてはさらに〇・三%ということで非常に伸び悩んでおると。特に大口電力等は不況の影響といいますか、特に基礎素材産業、電力多消費産業というのは非常に不況でございまして、そこは相当落ち込んでおるわけでございます。そういうこともございますが、いわゆる電力の予備率というのは普通八ないし一〇%ということでよろしいわけでございますが、大体最近では一八%ぐらいの予備率を持っておるということでございまして、そんなことで、五十七年度末をといいますか、五十八年を初年度とする十年間の電気施設計画というのは近くまとまるわけでございますが、そういう中においては、相当設備の繰り越しといいますか、後ろ倒しということをしなくちゃいけないというような情勢もございまして、現に設備投資の金額そのものも、五十五年度のときには相当伸びたわけですが、まあ最近といいますか、五十八年度については非常に伸び率も低いということは事実でございます。
  136. 市川正一

    ○市川正一君 いま全体としてやっぱり低迷しているという状況のもとで、今回のこの対策で、設備能力の増加につながらない投資ですね、たとえば配電線の補修だとかあるいは交換だとか、都市部での地下架線化だとか等々ですね、いわば苦肉の策で政府はやっぱりそこへ織り込んでおると。電力需要から言えば不要不急の設備投資をやらせる、そういうことじゃなしに、私はやっぱり購買力を高めるという立場から、長官も強調され、そして大臣も約束されておられる電力料金の値下げとして還元すべきであるということを重ねて私は強調しておきたいと思います。  内需の拡大に関して、個人消費の問題と関連して、中小企業対策でありますが、中小企業の個人消費支出への依存度が非常に高い。四五・五%、大企業が三五・二%ですから、その消費不振の影響は非常に強く中小企業にあらわれております。そういう面から、中小企業への特別の対策がいま必要だと思うんでありますが、今度の対策を拝見しますと、昨年十月の対策とほとんど変わっておらぬのでありますが、金融政策について一つだけお伺いしたいんですが、今年度は第一・四半期の政府系中小企業金融三機関の貸付資金枠を前年同期比で二五・七%増を図るとか、あるいは倒産関連特別保証の対象業種を九業種追加するというふうに聞いております。私、これらのこともちろん必要だし適切であると、こう考えますが、同時に、いまの中小企業の金融事情からいたしますと、中小企業向けの金利引き下げが切実な問題になっていると思うんです。それで、たとえば一定期間を限って、政府系三機関ですね、ここが特別低利の貸付制度を設けると、こういうような措置というものは考えられないかどうか。神谷さんかどなたか、ちょっとお聞きしたい。
  137. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 御指摘のように中小企業対策、従来いろいろ強調されておりましたことをきめ細かく講ずるということになっておりますが、金融面に関しましては、量的な確保のほか御指摘のように金利の問題が確かにございます。ただ御高承のとおり、現在中小企業金融公庫並びに国民金融公庫、これらの金利は本来でございますと長期プライムレートに準ずると、こういうことが原則でまいってきておるわけでございますが、この長い景気の低迷というものに対処するため、当面、現在のところそれより〇・二低い金利を適用しておるわけでございます。これをいつまで適用するかということは政府部内でもいろいろ議論があるわけでございますが、当然このような対策が打ち出されますような環境にございますので、われわれとしてはむしろこのような長期プライムより低いという特例をなお現在続けていくと、こういうことで政府部内では意見をまとめておるわけでございまして、御指摘のとおり金利というものはやはり利子を払うわけですからそれは安いにこしたことございませんので、もっと安くできないかと言えば、担当の者としては、いつもできるだけ中小企業のためには安い金利をと、こう考えておりますけれども、特例の上にまた特例ということを期間を限りましても次々行ってまいりますことは、中小企業金融公庫あるいは国民公庫、今回の御審議いただいた予算の中にもございますように欠損、赤字が出ておりまして、補給金を出さざるを得ないような状態になっておりますので、むしろ現在の措置をこのまま継続して、他のこの対策に盛り込まれておりますもろもろの施策が複合的な効果を上げることによって景気が上昇して、それが中小企業によい影響を与えてくるということが一日も早く来ることを期待しておるものでございます。
  138. 市川正一

    ○市川正一君 私は、なおこの検討を必要な機会にまた求めたいと思いますが、通産大臣にお伺いしますが、中小企業対策の一つとしての宮公需問題です。  これは報道によりますと、五十八年度の中小企業向け官公需発注比率は結局前年度並みの三七・二%にするという報道を聞いております。三月十一日の本院の予算委員会でわが党の沓脱委員の質問に答えて大臣が、覚えていらっしゃると思いますが、中小企業の受注率と金額を上昇させると、「総理からの命令を待ってやらなきゃならないほど行動力のない通産大臣ではございません。」と、こうまでお答えになった。私どもは従来から少なくとも五〇%程度を確保すべきだと、こう主張しておりますんですが、私はこういう状況から見て、いまこそ通産大臣の行動力を発揮される、前年度水準以上に引き上げるというときだと思うんですが、いかがでしょう。
  139. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) この問題は、昨年がゼロシーリング、今年度予算はマイナスシーリングというきつい枠をはめられた中の官公需の受注率になるわけでありますから、そのきつい率から言えば、ことしはほうっておくと低下をするというおそれがあります。でありますので、中小企業庁長官を部内の責任者として、政府全体で横の連絡の調整をさせながら、具体的にこれは山中がこの点についてはこうできないかと、省庁を挙げてそして具体的な方法等を例示しながら言っていることであるというようなことまでつけ加えましていまやらしておりますが、三七・二%以下にしちゃならない、最低はそれを維持する努力をしなければならないというのが予算の環境から生じた追い詰められた立場でございますが、さらに具体的に個々の省庁に切り込むことによって、私の意思も伝えてございますから、この受注比率を少しでも高めたいというのが私の念願でございます。
  140. 市川正一

    ○市川正一君 大臣のいまの御答弁には数学的にトリックがあると思います。だって、私が言っているのは比率の問題であって、マイナスシーリングだってマイナスシーリングの枠の中での中小企業の比率のアップということはあり得るわけですから、その点はやっぱり大企業と中小企業との比率の問題なんですから、マイナスシーリングであればあるほど、よけい中小企業に対しては配慮をすべきだということを一つ申し上げておきたいと思いますが、そういうことですね。
  141. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) そのようにおとりになって結構です。
  142. 市川正一

    ○市川正一君 ええ。数学の問題ですから、と同 時に政治の問題ですから。  次に住宅建設問題ですけれども、私は、今回の対策によって住宅建設の促進が図られるものには結局ならぬ、こう断言せざるを得ぬのです。この点は建設白書も、住宅建設が落ち込んでいるのは、地価、建築費、所得の動向から、住宅価格と国民の住宅取得能力との乖離が拡大したためだ、こう言っているんです。こうしたことからも、結局、減税を中心にした勤労者の可処分所得をふやすような対策こそが必要だと思うんですが、まずその点、長官にお伺いしたい。
  143. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 御承知のように、もう住宅の総戸数は総世帯戸数よりも多目でございまして、そんな面でいろいろの住宅対策についての限界があるんじゃないか、こういうことも言われていることは事実でございます。しかしながら、一月、二月の公的資金によりますところの住宅建設は、すでに発表のとおり、大変好調でございまして、一月には百三十万戸ペースでございましたし、二月は百十七万から六万ぐらいのペースであったと思います。このような観点を考えますと、やはり公的資金によるところの住宅建設は進めることができるんではないか。さらにまた、増改築という新しい需要をますます促進することによって、国民の願いでございますところの住宅政策は推し進めることができるではないか。さらにまた、先般来新聞にも出ておりましたが、地価が土地税制の確立等によりまして低目に安定しかかってきた、このようなことが、私は、住宅政策を進めることができる、こういうふうに見ております。
  144. 市川正一

    ○市川正一君 ところが、実際にこの対策が打ち出しているものというのは、たとえば規制の緩和等による民間投資の促進、こういうふうに打ち出されております。こういう中で、第一種住宅専用地域の適切な見直しというふうに言うておりますけれども、報道によりますと、第一種住居専用地域の高度制限を取り払って高層ビルを建てるというようなことが指摘されておりますが、こういう構想なのかどうか、政府のひとつ構想をお伺いしたいと思います。
  145. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) これらの規制の緩和につきましては、御指摘のように、いろいろの政策目的と衝突する面もございますので、慎重に検討しなければならないところでございまするけれども、たとえば都市計画法によりますれば、第一種住居専用地域は、高さが原則として十メートル以下に制限される。この十メートルを直すというんじゃなくして、第一種住居専用地域というものはどの範囲にするか、これがいま都道府県知事にゆだねられているところでございまして、これはいろいろと行政指導の形で、このような地域が第一種住居専用地域として適当である、こういうふうに言われているところでございますが、昨今の都市の発展状況から見ますと、これは第一種住居専用地域から外して、十メートルという制限を外してもいい地域にしてはどうかと。十メートルという制限を外すというよりも、地域を昨今の都市の状況に応じて見直す。そういう範囲において十メートルの限界というものを、基準というものを、何と申しますか、回避していくことができないか、こんなような研究をこれから――たとえば環状線、東京では環状線の中とか、あるいは七環の中とか、その中にありますところの住居地域を十メートルで果たしていいのかどうか、こんなような研究をこれから行おうとしているところでございます。
  146. 市川正一

    ○市川正一君 時間が参りましたので、最後に、そういう前提で私は問題を提起し、そしてぜひ御見解を賜りたいんですけれども、いまおっしゃったよううなことは非常に重大な、いわば国づくり、また都市づくり、こういう根本問題を含んでいると思うんです。特に大手のデベロッパーだとか経団連が、大都市の再開発についていろいろいわば提言をしております。私、去年の四月の経団連の意見書を持ってきましたが、その中では三大都市圏においては高層化地区の設定を義務づけ、低層建築を禁止する、あるいはまた少数の反対者のために再開発が進まない地域については土地収用制度を積極的に活用すべきである、こういうふうに言うておるわけですね。ですから私は、いま検討するとおっしゃったけれども、この対策の中を貫いている立場というのは、まさにこういう財界の要望を具体化する、そういう方向に道を開くものだ、こう判断せざるを得ぬのです。特に第一種住居専用地域というのは、都心でも、たとえば東京をとってみても、非常に数の少ない、また由緒ある閑静な町が大部分です。仮に、こうした地域でいま政府の考えているようなことが実施されるならば、居住地としての住環境の保護よりも土地の高度利用だけが優先される、先行されるということになって、資本力のある大企業などが低層住宅地を買収して、高額なマンションとか、高層の事務所ビル、これがいわば建設を競うことになることはもう自明の理であります。その結果、庶民は日照を奪われたり、あるいはまた電波障害、風害等々のために被害をこうむるというだけでなしに、地価の上昇による固定資産税の上昇などによって、結局都心から追い出される結果になるということを、私、指摘せざるを得ぬのであります。これは、かつての日本列島改造の実態からも私言い得ると思うんですが。ですから、どういう町づくりを進めるかというのは、住民の意思、これをやはり無視して進めることはできぬわけであります。だからこそ、用途地域の指定も知事の権限として地元とよく協議するような仕組みになっているわけです。  そこでお伺いしたいんでありますが、今回のこの対策にある提起は、いわば都市づくりの根本問題、言うならば国家百年の大計に立った長い視点に立っての国民的コンセンサスですね、これをやっぱりかち取るということを前提にすべきであると思うんですが、そういう立場から問題を再検討するというふうに、特に両大臣にこの問題に関して所信を承って私の質問を終わりたいと思います。
  147. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、都市計画法その他の法律は、もう当然、その法律固有の目的を持っておりますし、いまの十メートルの制限というものは一つの空閑地とか、日照権とか、静穏とか、いろいろの面を考えた結果であることは言うまでもございません。しかしながら、この法律といえども、やはり時代の変化には対応していくべきだと思うところでございますし、自然発生的にでき上がったところの日本の都市は、都市計画の点において、土地の利用の仕方において、諸外国に比べてまだまだ考え直さなければならぬ点が多々あることは、もう御案内のとおりだと思います。私は大企業が言うとか言わないとかいう問題を離れて、このように大変高い土地のところで低い建物がまだまだ大変多い。しかも、住宅が郊外に広がって、そこの往復等あるいは交通機関等においていろいろのむだがあると言われている今日、一つの都市計画を考えた場合に、また新たな観点から土地の高度利用を考えていくことは一つの方向だと。どこの外国を見ましても、日本ぐらい都市計画がまだまだうまくいっていない国はないような気がするわけでございます。こんな点はひとつ新しい観点から検討し直す。その際に、もちろんいま申されましたその法律固有の政策目的、これも十分尊重してかからなきゃならないことは当然だと考えております。
  148. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 所管は建設省でありますが、われわれ対策閣僚協においては、垣根を取り払って十分に議論しようということで議論いたしましたので、その意味において答弁いたしますが、いまの発想の根底にあるものは、現在空き家が二百六十万戸以上ある。しかも、これは既成市街地の中にある。それは地代家賃統制令とか借地借家法とか、いろんなものがあるせいもありましょうが、要するに持ち主が建てかえる意思、意欲を失ってしまって、だんだん空き家がふえていくと。そういうような関係もやはり見過ごすわけにはいかない。したがって、新しく空き家が、そこに敷地も建物もあるわけですから、それが新しい居住用として衣がえをできるような方法はないだ ろうか。そうすると、第一種居住専用住宅においては十メーターの高さの制限があるということ、それを三階をつくらせてなぜいけないんだろうか。高層ビルという考え方はありません。第一種専用住宅地域に高層ビルというのは面積から見たってそういうことはありませんし、そういう理想は、また逆にいまおっしゃったような問題を周辺の住民に思わざる、危害を及ぼすわけでありますから。しかし、二階を三階にする、あるいは建てかえようにも建てかえられないで空き家がふえていく現状というものを、それをやはり空き家のない状態にしていくというのはひとつの政治だと思う。その意味で、現在東京都においては七環以内において専用緑地地域以外は全部十メーターの高さを昨年撤廃してくれました。できればこれを東京都で例をとるならば八環以内ぐらいまで広げられないだろうかというのもその議論の一つでございますが、要は建設省がこれをどのように関係都道府県知事と御連絡をとられてやられるのかは役所の側の問題でございますが、政治的に私どもが今回概略的なそういう基本を定めましたものの背景はそこらにも存在する。そして塩崎長官が言われているようなことももちろんその下敷きにあるということを申し上げておきます。
  149. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  150. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案及び特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  まず、特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案について趣旨説明を聴取いたします。山中通商産業大臣
  151. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  特定不況産業安定臨時措置法は、第一次石油危機に起因する大幅な需給の不均衡等の経済的事情の著しい変化に対処するため、いわゆる構造不況産業について過剰設備の処理等を計画的に行うことにより、その不況の克服と経営の安定を図ることを目的として、昭和五十三年五月に制定されたものであり、本年六月末をもって廃止されるものとなっております。  同法の制定以来、対象となった業種においては、設備処理が計画的に実施され、所期の効果を上げつつありましたが、その途上で第二次石油危機が発生したために基礎素材産業を中心として再び設備の過剰が生じ、経営不安定に陥る等構造的問題が顕在化するに至っております。このような基礎素材産業は、優秀な素材を川下の加工組み立て型産業等に供給することを通じて、わが国の産業構造の高度化を支えるとともに、雇用、関連中小企業、地域経済の安定にとっても重要な役割りを果たしており、その直面する構造的な問題を解決し、経済合理性を回復していくことは、今後のわが国経済の発展、国民生活の安定を図るために緊急の課題となっております。このため、特定不況産業安定臨時措置法の廃止期限を五年間延長し、従来より実施してまいりました設備の処理等に関する措置に加え、事業提携、原材料・エネルギーコストの低減のための設備投資等の措置を計画的に行うことにより、早急に基礎素材産業の構造改善を推進する必要があり、本法律案を提出した次第であります。  次に、本法律案の要旨について、御説明を申し上げます。  第一に、題名を「特定産業構造改善臨時措置法」と改めるとともに、法の目的を「特定産業の構造改善」に改めることとしております。  第二は、法律による措置の対象となる業種の指定についてであります。業種の指定については、事業者の自主性を尊重するため、現行法と同様二段階指定方式をとっております。すなわち、まず最初に、対象候補業種として、雷炉業、アルミ製錬業、化学繊維製造業、化学肥料製造業、合金鉄製造業、洋紙製造業及び板紙製造業、石油化学工業の七業種を法定するほか、原材料・エネルギー多消費型の業種で構造改善が必要なものを昭和五十九年末までに政令で追加指定することとしております。次にこれらの対象候補業種のうち、大部分の事業者の申し出があったものについては、特定産業として政令で指定し、法律による措置の対象とすることとしております。  第三は、構造改善基本計画の作成についてであります。  主務大臣は、特定産業ごとに、産業構造審議会等関係審議会の意見を聞いて、目標年度における構造改善の目標、設備の処理等に関する事項、事業提携に関する事項、原材料・エネルギーコスト低減のための設備投資に関する事項、雇用の安定のための措置等に関する事項を内容とする構造改善基本計画を定めることとしております。  第四に、主務大臣の指示に従って行われる設備の処理等に係る共同行為を独占禁止法の適用除外とする現行制度を継続することとしております。  第五は、生産、販売の共同化、合併等の事業提携についてであります。  主務大臣は、事業者が構造改善基本計画に従って作成した事業提携計画について独占禁止法上の問題が生ずることのないよう公正取引委員会と意見を調整した上で承認をし、この承認をした事業提携計画に基づく事業提携について、税制上、金融上の特例措置を講ずることにより、事業の共同化等が円滑かつ迅速に進められるようにしております。  第六に、特定不況産業信用基金を「特定産業信用基金」と改称するとともに、その業務を拡充することとしております。  その他、特定産業の構造改善のために必要な資金の確保、課税の特例に係る規定を設けるとともに、雇用の安定、関連中小企業の経営の安定に係る規定、主務大臣と労働大臣の協力規定等について所要の整備を行うこととしております。  これらの施策は、基礎素材産業の構造改善に必要不可欠のものであり、基礎素材産業をめぐる事態の重大性及びその対策の緊急性にかんがみ、ぜひとも早急に本法案の制定を図ることが必要であると信ずる次第であります。  以上が、この法案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  152. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 次に、補足説明を聴取いたします。小長産業政策局長
  153. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) ただいま大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。  わが国の基礎素材産業は、二度にわたる石油危機を契機として、その産業構造上、生産技術体系上の特色から、過剰設備の発生、経営の不安定等の構造的困難に直面しております。特定不況産業安定臨時措置法の施行の経験を踏まえるならば、これらの構造的な問題の解決に当たっては、従来から実施してまいりました設備の処理等に関する措置に加え、事業提携、原材料・エネルギーコストの低減のための設備投資等の措置を計画的に行うことにより、経済性を喪失し将来とも回復、改善の見込みのない部分の迅速かつ円滑な縮小のみならず、今後経済合理性を回復し得る部分についての活性化を実現していくことが必要となっております。  このため、特定不況産業安定臨時措置法の廃止期限を五年間延長するとともに、措置を拡充して早急に基礎素材産業の構造改善を推進していくこととし、所要の改正を行うこととした次第であります。  本法律案の立案に当たっては、内外の諸情勢を考慮するとともに、いわゆる山中六原則の趣旨に基づき、特に次の三点に配慮したところであります。  第一に、本法律案は、あくまで民間の自主性と厳しい自助努力を前提としております。  第二に、構造改善基本計画の策定や事業提携計画の承認、設備の処理等に係る共同行為の指示等 構造改善を進めるに当たっては雇用の安定と関連中小企業の経営の安定を最重点配慮事項としております。  第三に、本法律案による対策は、開放市場体制を基本的前提とし、措置の内容もOECDのPAP、積極的産業調整政策に合致するものであり、諸外国の理解を十分得られるものとなっております。  次に、この法律案の要旨を補足して御説明申し上げます。  今回の改正の第一は、題名及び目的を改めることでありますが、これは、すでに述べましたように設備の処理のみならず事業提携等の措置を追加し、総合的な対策を講ずることにより、特定産業の構造改善を推進する趣旨であります。  第二は、法律による措置の対象となる特定産業についてでありますが、今回の対策が第二次石油危機による原材料・エネルギー価格の高騰を契機としていることから、原材料・エネルギーコストが生産費の相当部分を占める基礎素材産業のうち過剰設備の発生や生産、経営の規模、生産方式の不適当から経営の著しい不安定に陥っているものを指定することとしております。また、指定は、事業者の自主性を最大限尊重する観点から、現行法と同様指定候補業種の中から事業者の申し出をまって特定産業の指定を行う方式をとっております。  第三は、構造改善基本計画の作成についてであります。主務大臣は、特定産業ごとに、業種の実情に応じ幅広い内容の計画を適切に定めることとしておりますが、その際に、主務大臣は、関係審議会の意見を聞くこととし、特定産業の事業者団体及び労働組合の意見が十分反映されるよう措置しております。  第四は、設備の処理等に係る共同行為を主務大臣が指示する現行制度を継続することとしておりますが、本制度については、現行法の経験を十分踏まえ、今後とも適切な運用に努めていく所存であります。  第五は、生産、販売の共同化、合併等の事業提携についてでありますが、主務大臣が事業者の作成した事業提携計画を承認するに当たっては、構造改善の目標の達成、適正な競争の確保等、一般消費者及び関連事業者の利益の確保、一雇用の安定のそれぞれの見地からの基準に適切に照らして行うこととしております。また、公正取引委員会と実効ある意見調整を行い、事業提携が独占禁止法上の問題を生ずることなく円滑に進められるよう図ってまいる所存であります。  以上、この法律案につきまして、補足説明をいたしました。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  154. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 次に、特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案について趣旨説明を聴取いたします。山中通商産業大臣
  155. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案についてその提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  特定不況地域中小企業対策臨時措置法は、構造的な不況に陥っている業種に属する事業所に対する依存度が大きく、これらの事業所において事業の廃止等が行われている地域において、構造不況の悪影響を受けている中小企業者の経営の安定を図るため昭和五十三年十一月に施行されたものであり、現在、本法に基づき、特定不況業種九業種、特定不況地域四十七地域五十一市町村及び関連市町村九十六市町村を指定し、経営安定対策及び企業誘致対策を講じてきているところであります。  本法は、本年六月三十日までに廃止するものとされておりますが、最近、構造不況が地域経済にさらに深刻な悪影響を与え、これらの地域において多数の中小企業者の経営がなお不安定であり、その経済的環境の変化への適応を促す必要がある状況にかんがみますと、本法を延長するとともに、新たにこれらの地域において構造不況の悪影響を受けている中小企業者の振興を図るための対策を講ずる等施策の充実を図る必要性が高まってきております。本法律案は、このような観点から、特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正しようとするものであります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、本法が廃止するものとされる期限を昭和六十三年六月三十日まで五年間延長することであります。  第二は、題名等の改正であります。本法の趣旨に沿って、各施策のより円滑な推進と中小企業者の事業意欲の一層の増進を妨げることのないよう、題名を「特定業種関連地域中小企業対策臨時措置法」に改めるとともに、本則中において、「特定不況業種」を「特定業種」に、「特定不況地域」を「特定地域」にそれぞれ改めることとしております。また、新たに特定地域における中小企業者の振興を図るための対策を講ずることとすることに伴い、目的に「事業の新分野の開拓等を促進する措置を講ずること」を加えることとしております。  第三は、新たに特定地域の中小企業者の振興を図るための対策を講ずることとすることであります。特定地域の経済の安定等を図るためには、当該地域において構造不況の悪影響を受けている中小企業者の振興を図ることがきわめて重要であります。このような観点から、認定中小企業者等は、新商品・新技術の研究開発、需要の開拓、人材養成等を内容とする新分野開拓事業等に係る実施計画を策定し、都道府県知事による承認を受けることができることとしております。また、当該計画に基づいて行う事業に係る中小企業信用保険法の特例の規定を創設するとともに、当該計画に基づいて試験研究を行う場合の課税の特例の規定を創設することとしております。さらに、国及び都道府県は、当該計画に基づいて行う事業の適確な実施に必要な指導及び助言を行うこととしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  156. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 次に、補足説明を聴取いたします。神谷中小企業庁長官
  157. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) ただいま大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。  まず第一は、この法律が廃止するものとされる期限を五年間延長することについてであります。  本法は、本年六月三十日までに廃止するものとされておりますが、最近の経済動向を見ますと、いわゆる世界同時不況の中で、わが国もその例外ではなく、とりわけ業種別、地域別の景気の跛行性が表面化してきております。なかんずく、構造不況業種の業況は第二次石油ショックの影響を受けて一層深刻化しており、地域経済にさらに大きな影響を与えております。このため、引き続きこれらの地域における中小企業者の経営の安定を図るとともに、その経済的環境の変化への適応を促す必要があり、本法を五年間延長するものであります。  第二は、題名等の改正についてであります。  本法の「特定不況業種」及び「特定不況地域」の語は、「不況」のマイナスイメージが強く、当該地域の中小企業者の事業意欲の増進を妨げ、また、企業誘致対策の推進にも支障を来す等のおそれが強いことから、これを改正することとしております。  題名を「特定業種関連地域中小企業対策臨時措置法」に改めるとともに、「特定不況業種」を「特定業種」に、「特定不況地域」を「特定地域」にそれぞれ改めることとしております。  第三は、新たに特定地域の中小企業者の振興を図るための対策を講ずることとすることについてであります。  まず、新たに特定地域における中小企業者の振興を図るための対策を講ずることとすることに伴い、目的に、「中小企業者の経営の安定を図る」こ とに加えて、「事業の新分野の開拓等を促進する措置を講ずること」を掲げることとしております。  次に、振興対策の具体的内容でありますが、個別認定中小企業者または事業協同組合等が新商品、新技術の研究開発、需要の開拓、人材養成等を内容とする新分野開拓事業等に係る実施計画を策定し、都道府県知事による承認を受けることができることとし、構造不況の悪影響を受けている地域の中小企業者の振興を図ることを企図しております。  中小企業者が承認を受けた実施計画に基づいて新分野開拓事業等を実施する場合には、各種の助成を行うこととしておりますが、まず、当該計画に基づいて行う事業に係る中小企業信用保険法の近代化保険の適用とその付保限度額の引き上げの特例を創設することとするほか、必要な資金の確保を図ることとしております。  また、当該計画に基づいて事業協同組合等が試験研究を行う場合、負担金に係る特別償却等の課税の特例及び試験研究用資産についての圧縮記帳の適用のほか、特別土地保有税及び事業所税の非課税の措置を講ずることとしております。さらに、国及び都道府県は、当該計画に基づいて行う事業の適確な実施に必要な指導及び助言を行うこととしております。  以上、この法案につきまして補足説明をいたしました。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  158. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  159. 吉田正雄

    吉田正雄君 ただいま議題となりました特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案でありますけれども、この五年間、法の施行に伴ってどれだけ有効な対策が講ぜられたのかどうなのか、単に五年間延長するというだけでなくて、内容的にも独禁法とのかかわり等で多くの問題点といいますか、そういうものを含んでいるんではないかというふうに思います。  そこで、法案の内部に入る前に、一体現状がどうなっておるのかという認識と、それから特定法そのものが果たして有効に作用してきたのかどうなのか、有効に作用してきておれば特に延長するとか法改正をやる必要もないというふうに思われるんですけれども、結局、改正をしなければならぬというところには、従来のいわゆる特安法では対策がきわめて不十分であったというのか、肝心な点が抜けておったんじゃないかという感じがいたすわけでございます。  そこで、まず、従来の法で特に対象とされた主要産業部門において法の目的とする構造改善あるいは不況対策上、一体どのような効果があったのか、この法によって効果が出てきたのかということが第一点と、それから、対象部門ごとに合理化という名のもとに、あわせて人員整理が相当進んだと思うんです。これは設備廃棄というか、処分が行われれば、当然人員整理という結果が必然的に出てくるわけですので、その実情がどうなっておるのかということを当初にお尋ねをいたします。
  160. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) ただいま先生の御質問の点でございますが、現行特安法と申しますのは、第一次石油危機によりまして過剰設備等が発生をしたわけでございまして、そういう構造的困難に陥っております産業につきまして、過剰設備の処理等を行うことによりましてその経営の安定を図っていこうという趣旨で、昭和五十三年に制定されたものでございます。特安法の指定業種は十四業種あるわけでございますけれども、そのそれぞれの業種につきましては、各業種とも計画的な設備処理が実施をされまして、当初目標といたしました処理目標はほぼ達成したのではないかと私どもは考えておるわけでございます。処理目標率は平均二三%であったわけでございますが、それの平均達成率は九五%ということになっておるわけでございますので、ほぼ処理目標は達成したのではないかと思っておるわけでございます。  わが国経済も昭和五十五年春までは全般的に着実な回復、上昇を見たこともございまして、需給の均衡の回復とかあるいは稼働率の向上、経営状況の改善というようなことも具体的に見られてきたわけでございます。ところが、第二次石油ショックというのが、石油危機というのが発生をしたわけでございまして、五十五年の春以降、景気は一転をいたしまして、下向に転じたわけでございます。  この影響を受けまして、基礎素材産業におきましても急激な内需の減退が起こってきたわけでございまして、著しい需給の不均衡というのが生じてきたわけでございます。他方、原材量、エネルギー価格の高騰ということから国際競争力の低下が見られたわけでございまして、その結果といたしまして輸入が増大をし、輸出が減少をするという結果も生じてきたわけでございます。その結果といたしまして、再び過剰設備が発生をするというようなことになりまして、構造的困難に直面をしてきたわけでございます。  そういう第二次石油ショックの影響によりまして、全体としては特安法の成果というのは一定程度弱められたんではないかというふうに思ってはおりますけれども、しかし逆に特安法があったことによりまして、第二次石油危機による影響がある程度緩和されたこともまた事実ではないかというふうに考えておるわけでございます。  全体的な期間を振り返ってみますと、過剰設備の処理が進展をいたしまして、需給の改善が図られた業種も見られるわけでございまして、それなりの効果はあったんではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。  次に、雇用の点でございますが、十四業種の中の造船を除いた十三業種について見ますと、当初二十四万人の従業員規模であったのが、それが約二十万人に縮小をしておるわけでございます。しかし、四万人の方々が全部失業したということではもちろんないわけでございまして、これは他業種への転換であるとか、あるいは自然退職というような例もあるわけでございまして、むしろ私どもはその五年間の期間を通じまして、雇用のなだらか調整というのができたんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  161. 吉田正雄

    吉田正雄君 いま全体像としての設備処理の処理率あるいは達成率、さらに人員整理についても全体の数字が述べられたんですけれども、業種別にどの業種でどれくらいの設備処理が進んで、それからどれだけの人員整理が行われたのかということをもうちょっと詳細にお聞かせ願いたいんです。
  162. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) それでは、業種に割りましてちょっと説明をさしていただきます。  まず、電炉でございますが、処理目標率は一三・六%、それの処理達成率は九五%でございます。従業員数は五千百人の減少ということになっております。  次にアルミでございますが、処理目標率は五六・七%、処理達成率は九七%、従業員の減少数は三千三百人でございます。  合成繊維は四業種あるわけでございますが、それを全部合わせまして処理目標率は一八%、処理達成率は九四%、労働者の減少数は一万二千六百人でございます。  次に化学肥料でございますが、これは内容的に、アンモニアにつきましては、処理目標率が二六・一%、処理達成率が一〇〇%でございます。労働者の減少数は二百三十人でございます。  次に尿素でございますが、処理目標率が四四・九%、処理達成率が九三%、従業員の減少数が百三十人でございます。  次に湿式燐酸でございますが、処理目標率は二〇%、処理達成率は九二%、従業員の減少数は五十名でございます。  次に綿紡でございますが、処理目標率が六%、処理達成率が七八%、従業員の減少数が一万九百人でございます。  次に梳毛でございますが、処理目標率が一一・五%、処理達成率が九六%、従業員の減少数が七千七百人でございます。  次が合金鉄の一つのフェロシリコンでございますが、処理目標率が二〇%、処理達成率が一〇〇%でございます。従業員の減少数が五百人でございます。  その次が段ボール原紙でございます。段ボール原紙は処理目標率が一五・二%、処理達成率が九四%、従業員の減少数が三千人ということでございます。  以上でございます。
  163. 吉田正雄

    吉田正雄君 いま、この中で全部人員整理をされたということでなくて、一部は出向であるとかその他の措置がとられた部分もあるということでありますけれども、完全な失業と言ったらいいんですか、企業による計画的な再配転とかそういうものがどの程度なのか。逆に言えば完全に失職をしてしまったという人の数はいま言った業種それぞれどれくらいになっておりますか。
  164. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) いまの御質問のあれでございますが、はっきり具体的な私どもの統計資料としては持ってないわけでございますけれども、労働省のいわゆる求職手帳発給件数の推移というようなところで見てまいりますと、たとえば紡績業について申しますと、五十二年から五十七年の十一月までの累計件数で求職手帳発給件数が紡績業の場合で六千八十七人ということになっております。それから段ボール原紙製造業で五百六十六人、それから化学繊維製造業で三千七百七十人、それからフェロアロイ製造業で八百二十七人、それから平炉による製鋼圧延業、いわゆる平炉でございますが、それが四百二十八人、電気炉による製鋼圧延業が千九百八十人、それからニッケル第一次製錬精製業、これがいわゆる合金鉄に該当する部分であるかと思いますが、三百十二人というような数字になっております。
  165. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまお聞きいたしました数字では、やはり相当職員については厳しい数字になっているんじゃないかというふうな感じがするんですけれども、これはまた後ほどいろいろお尋ねいたしますが、そこで法改正あるいは前の、現行法の法制定の原因として挙げてある最大のものは、第一次石油ショックあるいは第二次石油ショックということで述べてあるわけです。確かに基礎素材産業、特にアルミ等についてはこれは大変な電力を消費をしているわけですから、石油コストの上昇に伴う、あるいは電力料金の値上げ等によって非常に経営を圧迫しているということはわかるわけなんですけれども、もう少しここのところを詳しく述べてもらいたいと思いますのは、価格の上昇が直ちに――この提案理由の説明の中では「第一次石油危機に起因する大幅な需給の不均衡等の」、こう書いてあるんですね。ここで言われております「大幅な需給の不均衡等」という内容というのを具体的にもうちょっと述べていただきたい。  それからさらに、「設備処理が計画的に実施され、所期の効果を挙げつつありましたが、その途上で第二次石油危機が発生したために」「再び設備の過剰が生じ、」と、こう言うんですけれども、石油の値上がりが直ちに設備の過剰につながるという短絡的な説明では不十分でありますので、そういう点でこの「第一次石油危機に起因する大幅な需給の不均衡」というものの具体的な内容ですね。そしてまたそれがどうなったのか、どういう原因でそうなったのかというその辺もうちょっと詳しく説明を願いたいんです。
  166. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) 業種全体を総観した感じでちょっと御説明をさしていただきまして、必要に応じまして個別業種ごと別の政府委員から説明さしていただきたいと思いますが、国内需給の不均衡の点でございますが、たとえばアルミの地金の例で見ますと、昭和五十四年の段階では国内需要は百八十五万トンというような水準であったわけでございますが、五十五年にそれが百五十二万トンに減っておるわけでございまして、五十六年に百六十一万トンということで約一割以上の需要の水準の低下ということになっておるわけでございます。  それからエチレンについて見ますと、昭和五十四年の段階で四百四十五万トンの国内需要の水準であったわけでございますが、五十五年には三百六十六万トン、五十六年には三百五十万トンということでございまして、これはもう三割方の国内需要の低迷ということになっておるわけでございます。  それから、たとえばアンモニアの例で見ますと、五十四年が二百八十三万トンの水準であったわけでございますが、五十五年に二百三十一万トン、五十六年に二百九万トンというようなことで、これも二割以上の需要水準の低下ということになっておるわけでございます。  全体として申しますと、第一次石油ショックの影響によりまして国際競争力が低下したことに伴いまして、一方において輸入がふえるということがございましたとともに、国内需要水準そのものが内需の低迷によりまして落ち込んできたというその二つの要因で国内需要水準が落ちてきておるわけでございます。
  167. 吉田正雄

    吉田正雄君 そこで、いまの御説明で、国際競争力の低下ということでの輸入減ということなんですけれども、この国際競争力という場合ですね、私は第一次石油ショックでも、第二次石油ショックでも、最もショックというものをよく吸収したといいますか耐え得たというのはむしろ日本であって、その他の国の方がこのショックというのは非常に大きかったんじゃないかということで、国際競争力の低下というのは石油価格の値上げによってといういまの説明だけですとまたすぐそこへすっと行きそうなんですけれどもね、もうちょっとそこも、何で国際競争力が低下をしたのか。もともとそういう業種についてはそういう原因を内包しておったんじゃないか。だから、それをすぐ石油価格の引き上げということになれば、むしろ日本の方が有効に対処したんじゃないかという感じがしますので、そこの説明がちょっとわからないという点と、同じく内需の減少という、いま説明合わせて二つ挙げられたんですけれども、この内需というものは石油が値上がりしたから内需が減少したというのも、これは短絡的だと思いますので、これらのいま挙げられた業種等について、石油の値上がりが直ちに内需の減少でなくて、内需そのものがなぜ減少になったのか。たとえば繊維製品等についても、洋服の値段が上がったから買い控えたのかというのと、いろいろあるわけですね。その点をどういうふうに分析をされているのか。そうでないと単に石油の値段が上がったから、石油の値段が上がったからということで、それだけを理由にしてもし設備を廃棄していくのだということになりますと、本質的な不況対策なり構造改善にはつながっていかないんじゃないかという感じがしますので、いまそこで申し上げました国際競争力の問題と内需の問題、もうちょっと詳しく説明願いたい。
  168. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) まず、エネルギーコストの関連のことから申し上げさしていただきたいと思いますが、第一次石油危機によりまして、原油の値段というのは約三倍に上昇したわけでございます。その結果、それぞれの製品におきますエネルギーコスト比率が急激に上昇したということになっておるわけでございまして、たとえば石油価格の例で見ますと、昭和四十五年、つまり第一次石油ショック以前の段階でございますと、二三・九%というのがエネルギーコスト比率であったわけでございます。ところが第一次石油危機を経ました昭和五十年の段階では、エネルギーコスト比率が五三・三%ということで、コストの中に占めるエネルギーコストの比率が倍増しておる形になっておるわけでございます。エネルギーコストそのものが、先ほど申しましたように原油価格三倍の上昇があったわけでございますから、エネルギーコストの比率がここまでなっておるということをあわせ考えますと、この段階で国際競争力の面でかなり問題を生じておるということを御理解いただけると思うわけでございます。一方、諸 外国の例で見ますと、たとえばカナダなんかの石油価格におきましては、日本のようにエチレン、ナフサという形ではなくて、向こうの天然ガスをそのまま活用しておるというような例もあるわけでございまして、これはその石油危機の価格には影響されない低い水準の価格でございますし、しかも別途国が低価格で価格助成をしておるというようなこともございまして、そこの面における国際競争力上の格差というのが非常に大きくなっておるという点が指摘できると思うわけでございます。  それから、内需の減少の点でございますが、これは、その第一次石油危機を経まして世界全体の経済の拡大均衡のペースが非常に鈍ったことになっておるわけでございます。というのは、富の再配分ということで、いわゆる先進国から産油国へ巨大な富が移転をしたということに起因をしておるわけでございますが、全体としてその先進国経済が大変な景気後退ということに見舞われたわけでございまして、その影響がLDCの諸国にも及んでいったわけでございます。日本も例外ではないわけでございまして、内需の絶対量が減少をしたというのが一つの大きな原因になっておるわけでございます。
  169. 吉田正雄

    吉田正雄君 もうちょっと突っ込んで聞きますと、いま石油化学の例を挙げられて、国としてはカナダだと。天然ガスを使っておるんで余りコストには関係ないということなんですが、    〔委員長退席、理事野呂田芳成君着席〕 いま国際競争力の低下ということの輸入増ということですから、いままでの輸入国、まあ輸入国いろいろあると思うんですが、主としてどういう国から輸入をされておって、その主要な輸入国との間の国際競争力の比率ということはどういう状況になっているのか、それちょっとお聞かせ願いたいと思うんです。
  170. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 従来石油化学の輸入先といたしましては、アメリカとかカナダとか、あるいは近傍では韓国とか台湾とかあるわけでございまして、かつてはわが国からかなり東南アジア等に輸出しておったわけでございますが、最近ではむしろ輸入超過というふうな状況になってきておりまして、これはまさに先ほどから議論になっております国際競争力の低下ということでむしろ輸入超過ぎみになっているというのが現状でございます。
  171. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、いまのお話では、アメリカとかカナダ等みずから産油国でもあるというふうなところでは影響が少ないということなんですね。  それで、いま東南アジアという言葉も出たんですけれども、たとえば台湾とか韓国というものも、これはやっぱり石油は輸入しているわけですね。だから、やはり石油値上げというのは日本と同じく影響を受けているわけです。これらの国との間の国際競争力というのはどういうことになっていますか。
  172. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 先ほど産政局長から御答弁もございましたように、国によりましては天然ガスによる安いエチレンができるわけでございますが、いま御指摘のように韓国とか台湾におきましては、やはり天然ガスがないわけでございますが、これらの国におきましては、国の政策といたしまして、政策的な価格の設定というふうなことも行われておりまして、そういうふうなことから競争力に差が出てくるということになるわけでございます。  それから、カナダやアメリカ等の天然ガスによるものにつきましては、これはエタン系の資源によりまして非常にもう安いものができるわけでございますが、そういうことで、二つの系統と申しますか、そういうのがございまして、私どもといたしましては今後のこの石油化学の立て直しにおきましては、もともと安い天然ガスにつきましては、なかなかこれは競争力をつけていくのはむずかしいわけでございますが、たとえばヨーロッパ等におきましては、やはりわれわれと同じような状況にあるわけでございますので、少なくともそういった国とは対抗できるように波打ち際で防ぎ切れるようにしていきたいというのが石油化学についての今後の方向であるというふうに考えているわけでございます。
  173. 吉田正雄

    吉田正雄君 これ聞き方も悪いのかもわかりませんけれども、いまのお話を聞いておりますと、とにかく石油の価格が上がったということが国際競争力を低下をさせ、さらには世界的に不況ということで内需も全体として減少してきたというふうな説明なんですが、そうであるならば、設備を切り捨てるだけで、じゃなぜそういうものに対処できるのかということになると思うんですね。私はたとえば鉄鋼の場合でもそうだと思うんですけれども、将来展望といいますか、生産計画つまり需要と供給との長期的な展望の中での計画的な生産量というものが過大であったんじゃないかと。鉄鋼の場合なんというのは確かにそれははっきり言えると思うんですね。したがって、現在高炉等については六割ぐらいしか稼動していないということで、もうどんどん古い設備は廃棄をしていくということですから、ここにまた資源のむだ使いとエネルギーのむだ使いということが生じておるわけですね。だから、値段が上がったから、直ちに設備を切り捨てればそれだけでもって対処できるのかと言えば、やはりコストに占めるエネルギー費の割合というのは、これは余り変わりがないわけでしょう、石油の値段というものが低くならない限りは変わりがないということですから。そういう点で私は単に設備を処分するということだけでは抜本的な解決につながらないんじゃないかと。むしろエネルギー対策上の観点が従来のこの法案では欠けておったんではないかというふうに思うわけですね。したがって、午前中の石油の段階でも申し上げたんですけれども、七九年から八一年の重油、ナフサの需要減というのが三千九百万キロリットルあるわけですけれども、そのうち石油から石炭等への燃料転換というのが大体二千万キロリットルなんですね。それから省エネ対策としてのものが大体一千万キロリットルと。それから不況による需要減というのは七百万キロリットルでしかないということなんで、これはもう備蓄の将来計画もそうなんですけれども、不況が回復すれば、石油需要というのは拡大をしていくんじゃないかという見方は、これは実際のいまの実態から見るというと、それは当たらないということははっきりすると思うんですね。したがって、単に価格が上がったから設備を切るだけでいいと言っても、いま御指摘のように、たとえば石油化学等ではコストの中での石油の割合というのが二三・九から五三・三%に上がったといまおっしゃっているわけですね。そうすると、設備切ったからといってこのコスト比率がそう変わるわけはないんでして、そういう点で私はエネルギー政策面でどう対応されてきたのかという、この点があると思うんですね。過度の石油依存体質というものを解消していくということも当然必要であるわけですね。そういう点では省エネではなくて有効的な、効率的なエネルギー消費ということになると思うんですけれども、そういう面では一体、この法案と直接関係があるなしでなくて、通産省としてはどういう対策を講じておいでになったのかという点をお聞かせ願いたいと思うんです。
  174. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) いま先生の御質問にお答えする前にちょっと一言言わしていただきたいと思いますが、現行特安法につきまして、設備処理だけでは十分ではないではないかという点はもう先生の御指摘のとおりでございまして、その反省に立脚をいたしまして、新しい法律では設備の処理を通じます撤退作戦と、それから活性化設備投資とか、あるいは事業提携とか、あるいは技術開発とかといったような活性化をねらいました前進作戦というのを並行してとるということを新法ではねらっておるわけでございまして、これは現行特安法の反省に基づいている一つの政策展開ということでございますので、この点ちょっと申し述べさしていただきました。  それから、先生御指摘のエネルギー対策の関係 でございますが、私どもはエネルギー対策につきましては、現行特安法下におきましてもできる限りの努力はしてきたつもりでございます。  具体的に申しますと、たとえば石油化学について申しますれば、原料用のナフサにつきましては、昨年四月に通産省の省議決定をいたしまして、石油化学の企業が実質的に自由に輸入できる体制をとったわけでございますし、さらに石油化学等の原料用ナフサの石油税につきまして非課税措置を五十八年度についても引き続き行うということも行ったわけでございます。さらに、国産ナフサにつきましても五十八年度から実質的に輸入ナフサと同様な扱いになるような所要の措置も講ずることとしておるわけでございます。  また電力につきましては、需給調整契約の積極的な活用等によりまして電力コストの低減に努めておるところでございます。これらの対策とあわせまして産業界自身の省原材料、省エネルギー努力も並行して行われたわけでございまして、その結果省原材料、エネルギーの効率化というのもかなり進展してきておるのではないかと私どもは思っておるわけでございますけれども、今後これらの措置を引き続き行うことにしてまいりたいと思っておるわけでございます。  先ほども申しましたように、今度の新しい法律のもとにおきましては、省エネルギーとか省原材料、あるいは原燃料転換等のための設備投資というものにつきまして、これは活性化設備投資の一環ということで、これは積極的にバックアップをしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、アルミの溶鉱炉法の新製錬技術の開発といったような新技術の開発につきましては、技術開発ということで、政府といたしましてもできる限りのバックアップをしたいというふうに思っておるわけでございます。
  175. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまアルミの製錬の新技術開発ということが出たのですけれども、アルミの場合特にもう非常に電力を使うわけですね。アルミの場合、さっきの石油化学との比較で電力料金のコストに占める割合というものがどのように変化をしているか、ちょっとお聞かせを願いたいんです。
  176. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) アルミ地金について見ますと、昭和四十五年の段階でエネルギーコスト比率は二四・二%でございました。それが昭和五十年の段階では四〇・七%ということでございまして、二倍まではいっておりませんが、かなりの上昇ということになっておるわけでございます。エケルギーコスト比率の数字はそんなところでございます。
  177. 吉田正雄

    吉田正雄君 それとじゃあついでにアルミの場合お尋ねしますが、いまどれだけのボーキサイトとかいろんな輸入ですね、資源としてはどういう形でどれくらい輸入をされておるのか、その点ちょっとお聞かせ願いたいのですが。
  178. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) アルミにつきましては、五十五年には日本の国内生産が約百万トンございまして、そのときの輸入が八十六万トンでございましたが、現在はそれが逆転いたしまして五十七年度、若干まだ推定が入りますが、国内生産がおおむね三十万トン程度、それに対しまして輸入が百三十二万トン程度という実績見込みになっております。
  179. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの数字を聞きますと、全体の消費量というのが非常に低下をして少なくなってきておるわけですね。五十五年が国内生産が百八万トンで、輸入が百八十六万トンですか。違いましたか。
  180. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 生産が百万トンで輸入が八十六万トンでございます。
  181. 吉田正雄

    吉田正雄君 それにしても微減ですけれども少しやっぱり減少傾向ですね。  これからのアルミ需要との関連で輸入、生産というものの計画が大体どんなふうになっていますか。
  182. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 最近の、短期的に見ますと、非常に世界的にも不況であり、また経済全体が沈滞しておりますので、アルミ需要も減少しておりますが、長期的には私どもは若干ふえていくんではないかというふうに考えております。これはもちろん好不況によりますから短期的には減ったりふえたりするわけでございますが、長期的にはなお少しずつふえていくだろうと考えております。  その場合に、たとえば一昨年の暮れに産業構造審議会等で議論しましたときには、大体六十年になりますと二百十万トン程度になるんではないかというはじいた数字が当時ございました。もちろん先のことでございますからぴたりとはいかないかと思いますが、そういった程度の伸びは示すと思いますが、その中で国産でどのくらいをキープするかということで、一昨年の産業構造審議会では七十万トン程度は国産で維持したい、残りを輸入にまちたいというふうに考えたわけでございます。もちろん輸入には海外で開発いたしましていわゆる開発輸入する分と、それからそのときどきの状況によりましてスポット的に輸入するものがあるわけでございますが、この辺の割合といたしましては、当時の考え方では輸入の中のほぼ半分程度は長契、あるいは開発輸入する、残りにつきましてはスポットでそのときどきの情勢に応じて応対していくというふうな議論がなされておりますが、その後、七十万トンの国産は維持できておりませんで、先ほど申しましたように、今年度でほぼ三十万トン程度というのが現状でございます。  なお、この一年来は大変世界の不況が異常でございまして、昨年のたとえば夏あたりはトン当たり千ドルを切るという状況でございまして、これは私ども聞いているところでは欧米のメジャーでも赤字になりかねない数字というふうに言われておりましたが、最近、この一月ごろからアルミの世界在庫の減少に伴いまして、市況がかなり急速に上がってきておりまして、昨年来千ドル程度であったものが最近では千三百ドルから千四百ドルの間ぐらいということでかなり急激に回復してきております。  こういった状況を踏まえまして、今後アルミの生産の見通しをどう考えるか、あるいはどういうふうに持っていくかということは今後ともいろいろと議論しながら考えていくべき問題であると。ただ、現状は三十万トン程度というのが今年度の生産の実績見込みでございます。
  183. 吉田正雄

    吉田正雄君 アルミ価格、いまお聞きをしたわけですけれども、国内生産の場合と輸入の場合、これ将来とも競争力という点ではどういうぐあいにお考えになっておりますか。
  184. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 競争力につきましてはいろいろとむずかしい問題があるわけでございますが、海外におきましても、たとえば水力発電等で非常に安い電力を使えるところもございますし、一方先進国あたりになりますと、特に新しい設備ということになりますと次等に電力も少しずつは高くなっていくということもございますので一概には言えないわけでございますが、総じて言いますと日本の電力は非常に諸外国に比べて高い状況にございますので、非常に苦しい状態にあるということは言わざるを得ないわけでございます。ただ、わが国の場合でも水力発電に頼っているものも若干ではありますがございますし、それからまた石炭に頼っているものもございまして、こういったものは事情がやや違っております。それからまた、現在国の助成を踏まえまして石炭転換をしているものもございますので、そういったところでできるだけの合理化をすることによりまして、最小限度世界の市況の回復を待って最小限度のものを維持していきたいというのが目下の私どもの考えている状況でございます。
  185. 吉田正雄

    吉田正雄君 先ほどついでにお尋ねをすればよかったんですが、各業種別の設備廃棄、処分目標達成率、それから人員の減少というのがあったんですけれども、設備廃棄を進めながら、今度は省エネというんでしょうか、まさに体質改善ということで設備投資が逆に進んでいるところも相当あるわけですね。その状況をどのようにつかんでおいでになるのか。一方で切っていく、一方でふや していくというこういう状況があるわけですが、これも各業種別にこの法案が作成された以前の段階からこの法案制定以後設備投資が逆にまたどれだけ進んだのかということをちょっとお聞かせ願いたいんです。
  186. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) いま先生御指摘の点につきまして、各業種ごとの定量的な数字は実はいま現在有しておりません。ただ、その件数で申し上げさしていただきますと、たとえば平電炉について言えば、設備更新投資件数は七件ございました。それから湿式燐酸で二件、段ボール原紙で二件ございましたが、アルミニウムとか尿素、それから綿紡、梳毛、フェロシリコンといったような業種では設備の更新投資はございません。したがって、その件数として挙げました平電炉、それから湿式燐酸、段ボール原紙、それから合繊の四品種の中で七、八件、それからアンモニアについて一件と、以上のようなのがその更新投資として件数としては挙がっております。
  187. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、いまのお話で、アルミの場合には新しい設備投資はないということですが、アルミが一番電力多消費ということで来ているわけですね。そうすると、先ほど新技術開発ということで将来計画をしていくんだということなんですが、この間あれですか、たとえばよりエネルギーを必要としない製錬の方法であるとか、そういう点ではアルミ業界の努力というものがどの程度なされてきたのかですね。
  188. 植田守昭

    政府委員(植田守昭君) 電力を必要としないアルミの研究開発につきましては、私どもでも助成をいたしまして今年度から電力各社が力を合わせまして研究組合をつくって進めていこうということでいまその緒につきつつございます。大体の見通しといたしましては、五年程度かけましていわゆるパイロットプラントのスケールで研究をやりたいということで、総額はおおむね六十億ぐらいになるのではないかというふうに予想しております。その中で国の助成を三分の二程度いたしまして、これに相当の力をつぎ込んでいきたいというのが各社の共同して行う研究への意欲となっております。
  189. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、ここの質問ではあと一、二点でやめたいと思うんですが、とにかくエネルギー価格の上昇というものが基本的な原因というふうに出てきているわけですから、そういたしますと、これはアルミ等を初めとして基礎素材産業等で基本的にそのエネルギー多消費構造というものを今後どういうふうに解消されていこうとしているのかと。たとえば先ほどは共同だとかいろんな今度の改革案の中身について若干触れられましたけれども、あの説明だけではエネルギー多消費構造の抜本的な改善対策という面はここには出ていないんですね。それはどのようにお考えになっているのかということです。これはこの法案と関係なくていいんですよ。そういう基礎素材産業、エネルギー多消費産業の構造改善という観点からどういうふうに考えておいでになるのかということです。
  190. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) 私どもといたしましては、新しい法律のもとで、先ほどもちょっと触れましたけれども、国際競争力を失っておりまして、しかも老朽化しておるような設備につきましては、これを縮小いたしまして撤退を図ると、そうして効率化設備投資、技術開発、事業提携等によりましてその活性化を図っていくということ、その活性化と撤退とを車の両輪として進めていこうというのを法の眼目としておるわけでございますけれども、いま先生御指摘のような業種の中におきましては、いわゆる国際競争力を有しておるような新鋭設備においてその集中生産をやるというようなことを事業提携の具体的な内容として考えていくというのも一つの国際競争力強化策ではないかというふうに考えておるわけでございます。それから同時に、いわゆる抜本的なエネルギー対策をどうするのかという問題があるわけでございますけれども、これは最近原油価格が五ドル下がったというようなある意味ではいい条件も出てきつつございますので、そういう条件をうまく活用しながらエネルギー対策にも取り組んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  191. 吉田正雄

    吉田正雄君 まだいまの説明ではどうも少しぴんとこないんですけれども、価格が下がれば、それはもう確かにエネルギー多消費産業にとっては、これはコストがずっと安くなっていくわけですから、これは問題がないと思うんですけれども、そうかといって、かつてのようにバレル十ドル以下なんというそんな安い石油は考えられないということですから、ほぼ横ばいか、下がっても若干二十五ドル程度くらいにまで下がるのかどうか、これはわかりません。今度大臣はサミットからIEAに出席されますから、将来的な展望というのはまたその段階でより明らかにされるんじゃないかと思いますけれども、ただ、この法案の中身でいろいろつけ加えられておるんですけれども、いままでも不況対策という点で考えますと、設備の切り捨て、それから人員整理ということで、逆に言えば、これは乗り越えてきたという感じがするわけですね、いままでの状況ですというと。そうでなかったら、そのエネルギー部分だけがこれは大きな理由だとおっしゃっているのに、これはいま言ったとおり、一次、二次と上がってきたと、そのエネルギー政策上一体どういうふうにやっていくのかと、エネルギーを使わない方向に、コストを下げるといっても簡単にはいきませんから、そういう点ではエネルギーを使わないという方向でどう産業構造改善をしていくのか、新技術を導入していくのか、まさに効率的なエネルギー消費に投資をしていくという、こういうものがやはり積極的にある中で改善ができると思うんですね。ところが、単に設備だけ切り捨てたと言ってみても、どうもそれは抜本的な解消にならないんじゃないかという感じがするんでしてね。これはもうこの産業だけでなくて、他の部分でも言えるんじゃないかと思うんですね。省エネとして日本の産業界全体でやったら、先ほど申し上げましたように、七九年から八一年というこの間でわずか千万キロリットルしか減少しないんですよね。そういうことを考えますと、また同じような結果が出てくるんじゃないかと。いろいろな政正案がありますけれども、そこに主眼点があるというよりも、むしろ中小零細企業というのは切り捨てていく、あるいは合理化でもって人員整理が進むということだけに何か終わるんじゃないかという心配がするものですからちょっとしつこく聞いているんですが、これはまた後ほどよく聞くことにしまして、これはいまここで終わります。  そこで、国際的な観点から若干お尋ねをいたしたいと思うんですけれども、実はこの前参議院において商工、外務、農林、それからもう一つ科技特と、四つの連合委員会が開かれて、国際貿易摩擦をどう考えるかということを主題にやったんですが、そのときにたしか夏目先生の方からでしたでしょうか、この新特安法に関連してアメリカの通商代表部の方に御意見を聞かれたということで、これは国内問題ですからということで、直接的な批判と受けとめるほどのことではなかったんですけれども、いずれにしてもこの国際的な保護主義が台頭しているという中で、日本がいまこの新特安法をつくることによって外国の保護主義政策というものを批判する根拠といいますか、発言力というものが非常に弱くなるんじゃないかという国際的な評価、これについてどういうふうにお考えになっておるのか、あるいは受けとめておいでになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  192. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これは本朝の新聞等でもごらんになりましたように、ECの方も、日本の産業構造そのものをやり玉に上げてガット提訴の申し入れをいたしました。その前に、ただいまお話しのように、アメリカの方では、実はどこで、どの資格で、だれが言ったかとなってもとをたどっていくと、さて、だれが言ったのかわからないようなことで、USTR代表のブロックが言ったと言い、あるいは議会が言っていると言い、確かに会うとそれらしきことも言うんですけれども、はっきり言えば内政干渉だと言うつもりですが、 それは言わないで、日本の産業政策を、いまはことに先端産業について日本が助成していることを中心にして、前提をそう置いて議論をしているようですが、どうも日本の産業保護政策、育成策というものが力をつけてきてはアメリカのあるいはECの市場を攪乱するという非難の大合唱に変わりつつある傾向にあります。でありますので、先週、まだECがこういう暴挙に出ようとは思わないときです。アメリカ側のだれにあてて物を言った形にしたらいいかわからないまま、通産大臣の反論と言うと相手がないといけませんので、見解といいますか、あるいは通産大臣の意思表明、あるいはそういうものに対する抗議というような形で何らかの――日本のとっている政策についてほうっておくと、この特定不況産業業種の問題もこれも一つの例だというようなこともちらほら聞こえたりするんですね。ですから、これは輸入を排除していないし、本当はダンピングでアメリカのアルミニウム地金をやりたかったんだけれども、ダンピング行為はないということがわかって、これは電力料金の水力、火力の差である、仕方がない。それならば日本の産業はアルミに関する限り壊滅した方がいいのか。そうするとアメリカも日本の市場には製造者としてはだれもいない市場になりますから、そのときにはいかなる値段をつけても日本は買わざるを得ない。したがって、安いはずがないんで、現に課徴金などをかけたりするのを見ると、売るときにもその気持ちがあるわけですから、日本にアルミ産業が絶えた途端に値段を二倍にして売り込んでくることは間違いないでしょう。  そういうようなこともあって、議論をするつもりで、議論は議論、一方は日本は黙っていると、そういうことをやっていると言われてもそれを認めているんじゃないのかというふうに誤解されたら大変でありますから、いま私の手元で、きょう夕方までにということで、まずECに対して、かかる措置についてはきわめて遺憾である、合意が成立していたことを一方的に訴えるというのはけしからぬという意味のまず抗議電を打ちますが、アメリカの方に対しては、見解とするか、反論とするかいろいろありますけれども、要するに、それらの問題は政府が言っているのか、議会が言っているのか、あるいは向こうの業界が言っているのか、いま一つ焦点が定まりませんので、したがってわが国の立場というようなことで、あるいは主張というようなことで、だれにともなく、世界に、日本の産業政策は公明正大であって、排他的でなく、過当に保護的でなく、そしてまた、政府がその恩恵を与えたことによって、日本の産業の特別な分野が世界市場に脅威を与えているものではない。逆にアメリカ、イギリス、ドイツ等の場合の政府助成策等もありますから、そういうものも、他方にはこういうものもあるではないかというところを入れるか入れないか、いま検討しておりますが、そういうような骨格はほぼできておりますので、そういうもので先週末に出そうかと思ったんですが、どうもそこらのところが、じゃアメリカのだれに言うんですかと言われた場合に困るので、今週に延ばしておりますが、今週中にはそういうものを整えて、わが国の主張、中身は反論ということで、日本はそういうような非近代的な、あるいは国策誘導による他国侵略的なことは何らしていない、公明正大だという主張を一遍書かざるを得ない形で、アメリカの新聞を含めて書かざるを得ない形で出さないと、ギボンズ委員長と渡り合ってやったって、帰ったって言いやせぬし、ブロックと渡り合っても、帰ったって言いやせぬし、結局アメリカの国民というものにわからないですね。わからないから議会の声がまたわからない声となってくる。ですから、一遍そういう声明みたいなものを出すと、それは現実に起こった行動ですから、それはアメリカ側の新聞も報道せざるを得ないだろう。そういうことをいま考えておりまして、まだ最終結論は得ておりませんが、何らかの行動に出るつもりでおります。
  193. 吉田正雄

    吉田正雄君 ところで、OECDのPAP、これは大臣もごらんになっておるわけですけれども、OECDの閣僚理事会に報告された経済政策委員会PAP特別グループの最終報告書というものがあるわけでして、特にその中の「競争的環境の促進」という部分で、直接いまのこの法案についてどうこうというふうな言い方ではもちろんないわけですけれども、幾つかこの法案にかかわって、あるいは今日までの貿易摩擦等ともかかわって、これらの問題点についての日本政府の考え方なり対応というものはやっぱりきちっとする必要があるんじゃないか。また、もし聞くべきところがあれば、やっぱり相手の立場に立って考えていく必要もあるんじゃないかというふうに思うわけですね。そこのところでは何か四点ほど挙げてあるわけですけれども、これらについてはどういうふうにお考えになりますかね。  特にこの二十三というところでは、「競争政策は全体的な経済政策が国内産業の国際的な競争状態を確保していれば、集中度のような構造的規準にはそれ程密接に関わらなくともよい。」というふうなことも言っておりますね。幾つか述べているわけですよ、これは一例を申し上げたんですが。そういう点で、このPAPのいまの報告に対する通産当局の見解がどのようなものであるか、お聞かせを願いたい。
  194. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) この法案を延長し、かつ独禁法との問題等もいろいろありますので、その過程の下敷きには、OECDのPAPの各条項を踏まえて、それを下敷きにして、それにもちろん背反しないよう、あるいは抵触しないよう、それで誤解を受けないよう、そういう配慮をしながら、その枠内で問われたら説明できるということを下敷きにしてつくり上げた法律であることだけ申し上げておきます。
  195. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) ちょっと補足をさせていただきますと、先ほど先生の御指摘になりました「積極的調整政策」の考え方は、五十三年六月のOECD閣僚理事会で採択されたPAPの一般方針というものと、それから昨年五月に同じ閣僚理事会で採択されましたPAP声明というものの中に明らかにされておるわけでございます。私どもが理解いたしますのに、PAPの考え方の基本と申しますのは、それぞれの国が競争力の低下した産業につきましては保護主義的な措置をとっていきますと中長期的に非効率的な企業を温存することになってしまう、その結果生産性を低め、インフレ体質を助長する、さらには他国の保護主義的対応を惹起しかねないということが基本的な前提認識になっておるんではないかと思うわけでございます。  そこで、PAPの考え方といたしましては、構造的な問題を抱えて調整を要する産業につきましては、過剰設備の漸進的な廃棄による縮小と同時に新規投資と技術開発による活性化といった面と両面から成る産業調整が必要であるというふうに言っておるわけでございます。そのような意味で、そのような産業調整というのは、積極的産業調整政策というふうに呼ばれておるわけでございます。また、その前提といたしましては、当然に開放市場体制、措置は時間を切った限時的な措置であるべきであるというようなことが強調されておるわけでございます。  私どもは、先ほど大臣の答弁にもございましたように、この法案の立案過程におきましていわゆる山中六原則というのを頭に置いてその立案に取りかかったわけでございますが、山中六原則の中には開放経済体制というのが第一の要件として高らかに掲げられておるわけでございますし、業界の自助努力が前提になるということも第二の要件として掲げられておりますし、第三の要件といたしまして対策は時限的なものであるべきであるというようなことも言っておるわけでございまして、詳細は省略をさしていただきますけれども、そのような山中六原則をベースに法案の立案に取りかかったわけでございます。したがいまして、私どもの法案の考え方はどこへ出て説明をしても十分説得的にOECDのPAPの原則には合致したものであるということが説明できるのではないかというふうに確信をしておるわけでございま す。
  196. 吉田正雄

    吉田正雄君 山中六原則、特に三つお述べになったんですけれども、こちら側の確信と相手の受けとめ方というのは必ずしも一致をしないわけですから、そういう点で、たとえばカルテルのところでいろいろPAPの方では述べておりまして、たとえば過剰設備についての問題ですね、これについてもるる述べておりますし、特に「カルテルは、必然的に大規模な企業の持っているすべての弊害を伴ないがちである」というふうなこともここで指摘をしておりますし、それから「事実、政府がカルテルを容認すれば、しばしば国内生産者を国際競争から保護するためにカルテルが導入されるであろう。」というところで、これはもうOECD等の心配がここに非常に端的にあらわされているんじゃないかと。つまり政府の介入、過保護といったらいいんでしょうかね、そういうものによって、かつて日本株式会社なんということが言われた時代もあったんですけれども、こういうものについて、いやそうではないと言うだけではなかなか理解が得られないんじゃないかというふうに思うんで、これは法案審議の段階でもう少し詳しく聞いてまいりますけれども、この辺について一応は基本的にはどういう考えをお持ちなのかお聞かせ願いたい。
  197. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) PAPの原則のところを詳細に読んでみますと、いわゆる合併とか、事業の集約化といったような前向きの対応につきましては、これは全体としてこれを容認するという考え方が出ておるわけでございます。カルテルとして特に問題にしておりますのは、いわゆる価格カルテルであるとか数量カルテルであるとかといったような後ろ向きのカルテル施策を問題にしておるのがPAPの報告書の中に出ておる考え方ではないかと私どもは思っておるわけでございます。したがいまして、私どものその法案の中で事業を集約化を進めるにつきまして、独禁当局と十分意見調整をしながら進めるというその考え方をとっているわけでございますが、そういう考え方はPAPの考え方にも合致するものではないかというふうに思っておりますし、それからまた法案の審議の段階で細かく説明をさしていただきたいと思いますけれども、法案全体の考え方が業界の自主的な努力、自己責任原則というのを前提としておりまして、甘えの構造は許さないという考え方をとっておるわけでございますので、そういう点から見ましても、このPAPの原則には合致しておるんではないかというふうに考えております。
  198. 吉田正雄

    吉田正雄君 ところで、諸外国の対策ですけれども、こちらでは特安法あるいは新特安法等によってそういうカルテルというものをある程度認めていこう、あるいは独禁法の適用除外というふうな考え方もここに一部入ってくると、それは事前に公正取引委員会との間に意見の調整をやって独禁法違反になるようなことは避けるというふうに言われておりますけれども、しかし現実にこの法案が成立をいたしますと、なかなかむずかしい問題が起きてくるのじゃないかというふうに心配するんですけれども、外国ではこういう特安法のようなものが不況対策ということで出されているところはないんじゃないかというふうに思うんですけれども、たとえばアメリカ、西ドイツ、イギリスやEC等、これは衆議院でも資料として提出をされておるんですけれども、諸外国の実情というものをどのように把握されているのか。そうでないと、先ほど理解は得られる、確信はあるといっても、諸外国ではそういうものがない、やってないというところで、日本だけが独自にそういう法律をつくっていくと、まさにカルテル結成に逆に政府が手をかしているんじゃないかという、そういうそしりをやっぱり免れないのじゃないかと思いますので、諸外国の例がどのようになっているかお聞かせ願いたいと思います。
  199. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) 先生御指摘のように、現在世界的な景気低迷あるいは二度にわたる石油危機等によります競争力関係の変化等、あるいは中進国の追い上げ等の理由もございまして、各国で構造的問題に直面した産業につきまして産業調整の問題がいま起こっておるということは御承知のとおりでございます。こういう不況産業対策につきましては、各国の実情であるとか、あるいは社会的政治的伝統などによりましてそれぞれお国ぶりというのはあるわけでございますけれども、何らかの形で政策的支援が行われておることは事実でございます。  たとえばアメリカについて申しますと、輸入増加に見舞われておる産業につきましては通商法によります輸入制限等の通商政策がとられておることは御承知のとおりでございますし、それから産業調整援助等困難に陥っている産業につきましては、その支援措置がとられておるわけでございます。  それからまたヨーロッパの例でございますが、たとえば西ドイツで見ますと、不況に悩んでおります鉄鋼産業につきまして、八二年から八五年にかけまして、グループ化等の構造改善を行う企業に対しまして、二十ないし三十億マルクの助成を行っておるということもこれまた事実でございます。  またイギリスの例でございますが、鉄鋼産業等の基幹産業につきましては、国有化の措置がとられておるわけでございます。  また、フランスにおきましても、石油化学につきましては国有化が行われておりますし、また政府による助成金といったような形の手厚い保護政策もとられておるわけでございます。また同時に設備の共同処理やあるいは合併とか事業提携につきまして、産業政策と独禁政策との調整が円滑に行われておるということもこれまた事実でございます。  このように、各国ともそれぞれ実情に応じまして、雇用や、地域経済の安定のために困難に陥った産業についての産業調整政策が実施をされておるわけでございますし、またあるいは有効な施策を模索をしておるというのが現状なわけでございます。  われわれのその新特安法でございますけれども、これはもう重ねて申し上げることになるわけでございますが、開放経済体制というのを前提といたしまして、民間活力をベースに縮小と活性化を図っていこうということであるわけでございます。これも一つの産業調整政策のパターンではないかと思うわけでございますけれども、先ほど御説明いたしました諸外国の例に比較をいたしまして、わが国の場合にはソフトな政策手段を導入しているということが言えるんではないかというふうに考えるわけでございます。ソフトな政策手段と申しますのは、また機会がございましたら細かく説明をさせていただきますけれども、税制、財投、一般会計の関係の多少の政策手段を有しておるわけでございますが、先ほども述べましたような国有化であるとか、輸入制限措置であるとかあるいは手厚い産業助成であるとかというような措置に比べますと、内容は必要最小限のものであってソフトなものではないかというふうに考えておるわけでございます。
  200. 吉田正雄

    吉田正雄君 ちょっと質問が悪かったのかどううかなんですけれども、私がいまお尋ねをしたのは、不況対策ということで新たに法案を設けて独占禁止法を緩和をするとか適用除外にするとか、そういうふうなことが行われているのかどうかと、適用除外を設けた国があるのかということをお聞きしているんでありましてね、私は産業政策上の補助金制度であるとか輸入制限という問題と、それから国内の各企業の合併だとかいろんな法案の中身のような問題とは若干違うと思うんですよ。補助金とか輸入制限あるいは国有化の問題、これといま言った問題というのはどうもちょっと本質的に違っているんじゃないかというふうな感じもするんですけれどもね。輸入制限というものが独禁法の緩和とかそういうものとはどういうふうに結びつくんですかね、これ。
  201. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) 先ほど私が御説明をいたしましたその国有化政策とかなんとかというのも、これは構造産業対策の一態様なわけでござい ます。つまり民間の形のままにほっておきますととても競争力を有する産業には立ち直れない。したがって、国が積極的に資本投入をし、また人的にもバックアップするという形、つまり国有化という形を通じましてバックアップをしていこうということでございますから、これも一つの産業調整政策あるいは産業政策と言われる分野なわけでございまして、決して全く異質ということではないわけでございまして、それぞれのお国ぶりによって対応が違っておるという一つの例としてお聞き取りいただいたら幸いではないかと思う次第でございます。  それから、輸入制限の問題でございますが、輸入制限をいたしますと、これは外との競争を遮断をするということになるわけでございますから、そういう意味では大変競争制限的な効果を持つことになるわけでございます。私どもの場合には、開放経済体制を前提といたしまして輸入制限措置はとらないということでございますから、常に海外との厳しい競争にさらされながら構造改善を進めていくということでございますので、その面から見ましても、輸入制限措置をとっておる国に比べますと対策の内容がきわめてソフトである、また厳しいものであるということが言えるんではないかと思うわけでございます。
  202. 吉田正雄

    吉田正雄君 どうもちょっとそこのところが合わないんですけれどもね。輸入制限というのは、確かに一国の産業政策として国家相互間の問題になってくるわけですよね。しかし、いまここで出されておる法案のような特定産業業種においてのカルテルの結成、そして独禁法の除外というふうな形で行われている国というのはあるのかどうなのかということをお尋ねしているんで、どうも輸入制限の問題といまの法案で考えられている内容というものが何かごっちゃで、私の質問が悪かったのかしれませんけれどもね。そういう点で、そういう例が諸外国にあるのかどうなのかということで、輸入制限ではこれと同じようなものだというふうにはどうも理解できないのでしてね、そこのところもう少し諸外国の例があったらお聞かせ願いたいということをお聞きしているんです。
  203. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) 日本と全く同じような法律体系をとろうとしている国は、私どもの調査している限りでは見当たりません。ただ、たとえばECの例で申し上げますと、合繊業界の行います設備廃棄の共同行為につきましては、独禁法上全く問題がないというふうにされておるわけでございまして、その限りにおいて独禁法との調整を新たにする何も必要がないというような事例はあるわけでございます。  それからまた、これもヨーロッパの例でございますけれども、事業の集約化について見ましても、たとえば石油化学業界におきまして、BP社とICI社の事業交換というのを行ったわけでございますが、塩ビとポリエチレンで事業交換を行ったわけでございますが、そういう事例に徴しますと、イギリス国内市場だけのシェアで見ますと三分の二以上の市場占拠率になるというようなことになっておるわけでございますが、にもかかわらず産業政策的観点にも配慮いたしまして、イギリスの独禁法、ECの独禁法から見て問題がないというような処理もされている例もあるわけでございます。したがって、こういう場合には具体的な運用で全部解決をされておるということでございますので、新たに独禁法との調整を必要とするような法律措置なり立法措置は必要でなかったというのが実情でございます。
  204. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの説明を聞いてもちょっとまだぴたっといかない点があるんですよね。時間が足りませんからまたこれは次回に譲りまして、これと同じようなものはないということはおっしゃっているわけでして、部分的に、しかし同じ部分といってもどうもちょっと違うような感じがいたしますので、これは改めて次回に譲りたいと思います。  それからもう一つ、これは立法過程の問題ですけれども、きょうはここには公取からは出席を願っておりませんけれども、報道等では盛んに立法過程でいろいろ問題があったのではないかと。たとえばこれは経済雑誌ですけれども、公取と直接というよりも、業界の要望がこの法案には九割方盛り込まれているんだというふうなことが言われておりまして、通産とそれから公取との交渉でも、まあ何といったらいいんでしょうかね、独禁法に抵触する部分というのか、違反すると思われるような部分については骨抜きをされたんじゃないのかなあというようなことがあったり、いろんなことが言われておるわけですね。特に問題なのは、通産が一応業界にかわって公取と調整をすると、法案の内容ですと、大体そういうふうなものが盛り込まれておるということで、なおさらそういうことにもなってきたんじゃないかと思うのですね。  それから、さらにこれは覚書等もございますね。これは詳細お聞きしますけれども、これはやっぱり大臣、この法案の作成過程で、公取の反対意見というものが実力大臣によって抑え込まれたのではないかというふうなことになったんじゃ、これはそういうことでは困るわけですし、そういう報道がいろいろなされておるということについては、どのようにお考えになっておりますのか。それから、なぜ覚書というものが必要であったのか、その辺の経過についてお尋ねをしたいと思います。
  205. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 現行独禁法というものは、世界で最も整備された、法文化された独占禁止法であると私は思っております。それをつくるのに私自身が三年間苦労した法律でありまして、この法律に関する限り、私は自民党の中の同調者はほとんどいないというたったひとりぼっちみたいな立場に置かれながら、やっぱり企業の公正な競争によって生ずる恩恵というものが豊富、低廉、良質の国民の生活というものを維持していくんだというようなことを信念としてやってきたわけで、よくもこれが国会を通過したものだと、自民党の中もよくも通過したものだという、私はいまでも恨まれている視線を感ずる立場の者であります。その私が通産大臣になったわけでありますから、当初から独占禁止法というものは尊重する立場、そして、しかし産業政策は生きている産業を料理をする立場であって、ナイフの刃一つ切りこぼしをやると動脈を切っちゃう、大動脈を切断してしまう、そういうことはあってはならない、それが、しかもその刃物が独禁法であってはならぬということのいわゆる産業実体法と、まあ監視法といいましょうか、そういう――高橋委員長いずれお呼びになるんでしょうが、うまいことを言いましたですから使わしてもらいますと、私どもは産業政策の交通整理の立場にあるという表現使いましたんで、そういうことも現実的にはたとえていいんでしょうが、その交通整理というものは、やっぱり産業政策の基本として踏まえていかないといけない。やっぱりその交通整理を、しかし話し合いで事前に独禁法の法律に触れることなく、法律を尊重しながら産業の実態について、公取も一緒になって相談をしてもらって、そして、それを実行していくという手段は法律上書けないものか、これはやっぱり相当考えました。基本的には産業政策で国家が必要と認めれば独禁法の適用除外とするという、いままでの延長法のもとはそうなっているわけでありますから、その手法をとって力任せにやった場合には、それはいまあなたがおっしゃったような毒をもって毒を制した山中の手法ということになるかもしれませんが、そうじゃなくて、独禁法というものはなければいけないし、あって、二、三反省点は立案者としてありますが、しかし、まあまあ世界的に評価されているわけですから、それとの整合性を図って、なおかつ産業政策が展開できる法律をつくれたならばこれはすばらしいだろうなと思って、私の意を体して役所の諸君もよく話し合いをしてくれまして、途中でそういう衝突などはございません。口論、口角泡を飛ばすというような空気もなかったです。それは公取委員長をお呼びになって一緒に私のここに並べてどうせ御審議をくださる日があるでしょうから、そのときにおわかりになると思 います。衆議院の方でもずっとそういう態度でございましたが、こういう法律は全くユニークな、いままでに例を見なかった法律であるという評価を私自身もいたしておりますし、公取もそれを否定しておりません。願わくば、やはり今後日本の産業政策と公取、あるいは通産省と公取というものが相対立するものではなく、協力し合えるものであるということの第一歩としてこの法律をつくり上げたい、そう思いましたんで、まあしかし、それでも覚書というものは、行政上の細かな問題等についてのおおよその感触を覚書で確認することによって法律上にそれをわざわざ書かなかったという点はございますから、それは後ほど必要ならば局長の方から答弁いたさせますが、私の申しました基本的な姿勢をたがえるものではないということでございます。
  206. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) また別の機会に覚書の詳細は御説明さしていただきたいと思いますけれども、特にその関係各省庁でやっております覚書のパターンと並み外れた特殊なものをやっておるものではございません。きわめて一般的な両方の認識の統一、それから今後の運用に当たっての配慮のポイントというようなところを主として決めて覚書で書いておるわけでございます。
  207. 吉田正雄

    吉田正雄君 独禁法との関係で全然心配がない、あるいは通産の役割りというものと公取委の役割りというものがどこにも疑義が出てこないという法案の内容であるならば、これはどなたも心配はなさらないだろうと思いますし、また覚書まで取り交わすこともないんじゃないかと思うんです。やはり覚書が取り交わされるということは、そこに何か一抹の不安といいますか、そういうおそれというものが出てくるんじゃないかという、これは法を実施をしてみなければわからぬということもございますけれども、そういうやはり危惧の念が感ぜられるということで、公取なりのいろんな意見もあったり、私は先ほど申し上げたように立場を変えて考えてみますとこれはよくわかると思うんですよ。そういう点でいまの山中大臣のお考えでは、もう独禁法、もちろん侵害するとかそういうことでなくて、円滑な、新しい、画期的な、ユニークなひとつ法案として産業政策との融和を図ったということで、その点は私は否定はしていないんですけれども、やはりあくまでもPAPの批判にたえ、あるいは独禁法との関係で独禁法に風穴があくとか、なし崩しにされていくということでは、これはまた大問題というか、それこそ大変な話になるわけですので、そういう点でお聞きをしたいんですが、大臣にはそういうあれはもう全然ないというふうにおっしゃっておりますが、そういう点で、私はそうであれば覚書は必要ないんじゃないかなと思ったんですけれども、その辺はどうなんですか。そういうやっぱり心配があるということなんですか。
  208. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) これは心配があるというよりも両方がどんなにうまくスキームをつくるかという問題について一応の合意線を持っていませんと、ということは、一義的に通産大臣が、この共同行為あるいは独禁法に抵触するのは合併の場合とかシェアの問題とか、高度寡占になりはしないかとか、いろんな点がありますから、そこらは、幸か不幸か私が大臣ですから、しかもこれを政令で、あと手を挙げるものはないと思いますが、念のために挙げる期間も一年半しかないわけですから、その間に妙なことが起こらなければそれでそのまま法律は五年間が終わるわけですからね。ですから、私がおる限り、たとえば特定の業種――業種までは言わぬけれども、石化業界、ですから、特定の企業名は言いませんが、こういうことで私たちはやりたいと思うという相談を、もちろん当局も一緒になって聞きました。しかし私の判断はこれは問題があるということで、これから公取にも参りますという話がありましたから、行きなさんなと、行ってもむだですよと、行ってもらってはかえってこっちが迷惑ですということを間接に――ぼくですから直接的に言ったわけですけれども、受けられた方は、ただ、いままでの法律の慣行みたいに考えておられて、まあちょっと顔出しますわというようなことで行かれたんですけれども、それ案の定私の予感どおりだめなんですね。結局は私の手元で――独禁法について私は断じて素人ではありませんので、あえて私は独禁法の権威者と思っておりますから、私の手元でつくられる計画を、私が了承したものが協議の対象となるわけでありますから、まず持っていくものが独禁法に触れる内容ではないと。ただしかし、それであっても途中経過の中でそれが高度寡占の方向に動き始めたとか、    〔理事野呂田芳成君退席、委員長着席〕 あるいはその状態を多として価格の上方硬直性を示し始めたとか、要するに独禁法上あってはならない現象等が起こってきた場合には、これは途中であっても公取は物を言う権利がありますから、そういうようなことは当然私たちは指導し監督する役所であるとしても、動き始めるとなかなか私たちの最初に見た姿と違った形で動くおそれが産業の実態としてありますから、したがって私の手元できちんとしたものができ上がって協議をしますから、ほとんど協議調うだろうと思うんです。それは私がそういう独禁法立案の苦労を三年もした経験者であるから自信を持って言えるのであって、その自信のある私がその期間中全部おれるかどうかしりませんが、ほとんどの期間は大臣の位置におるわけですから、これは安心して任せていただいていいと私は自信を持って申し上げておきます。
  209. 井上計

    ○井上計君 現在素材産業は大変な苦境に陥っているわけでありますが、今度の新法によっていま苦境に陥っている素材産業が果たしてその昔境から脱し得ることができるかどうか、これは大きな問題だと思うんですが、見通しについてはどうお考えか、まずそれからお伺いいたします。
  210. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) まず、この法律の作成に当たって最初に厳しく申し渡しましたのは、産業界の甘えの構図はいけない、産業界の甘えの構造を私は受けないよと、いわゆる民間の自主的な、自発的な、自分たちがこれだけの期間をくださればりっぱに立ち直っていきますという意思、そしてその意思のあらわれと見られる計画、そういうものを私の方で厳重に審査するということが、まず最初にこの法律の作成に当たる場合の私の指示であります。したがって、事務当局も、まず民間産業の、自主的な、自発的な、そして自助努力によるという点を前提として指導をしてまいっておりますし、この法律もその考えを貫いておりますから、これだけの国がいろいろ問題を――ただいまもOECDあたりで問題になりはせぬかというお話もありましたが、それをあえて大丈夫である、出席する私も国際会議で堂々と反論できるというだけの自信を持ってつくったものでありますから、五年後において、それだけの自主、自立、自活、そういう活性というものを持って取り組んでなおかつだめだということであるならば、それはその産業は消えていかなければならない、そしてその間に私どもの方に相談を受けながら、他業種への転換とか、あるいはもう一つ上流の方向に、下流の方へといいましょうか、あるいは異業種、他業種でなくとも新しい生きる道を別途求めて、何らかの手段で、やはり、従事する労働者もいることでありますから、労使ともに合意を得られる方向を模索するというようなことがなければならぬと思うんです。しかし最終的に、これらの掲名いたしました業種について、私どもは五年後にはりっぱに立ち直ってくれるものであるということを期待いたしております。その期待はありますが、さてどうなるかというのは、私どもでは規制を行政的にやらないわけですから、もっぱら産業界の自助努力、その結果生き延びてみせるというその決意を私たちはとうとびたい、尊重したい、その意味では五年後には、これだけのインセンティブを国が与えるんですから、りっぱになっていてくださることでしょうという期待を込めているということしか言えないと思うんです。
  211. 井上計

    ○井上計君 大臣おっしゃるように、われわれもそういうふうな期待をぜひいたしたいと思っておりますし、またそれぞれの産業界も自主的な大変 な努力、特にやはり、いわば最終的な努力というふうなことで行っていくであろうと思いますけれども、ただしかし、やはり今後新しくまた客観的な変化、あるいはそのようなまた厳しい新しい要件というのが起き得る可能性もあるわけですね。まあアルミ等にしましても、五年前やはり同じような考え方できたんだろうと思いますけれども、五年間に新しい要因によって、いわば――先ほど吉田委員の質問に対して大臣もおっしゃっておられましたが、いわば壊滅的な打撃をこうむる寸前まできておる。だがしかしその場合、これが業界の自主的な努力だけでどうにもならぬという場合に、さてそれがいま言われるような形で、その業界が完全に壊滅した場合に、じゃ他の川下といいますか、組み立て型加工産業への影響、大きく言いますと、総合的な経済安全保障という分野から、私は、自主努力に任せておくけれども、しかしその業界の自主的な努力が欠如した場合、そこでだめになった場合には、やむを得ぬということはなかなか言い切れないんではなかろうか、国際的に、というふうな懸念があるわけです。これは先のことですから、いま、その場合どうとかという仮定の問題についてどうのこうのまたお尋ねするわけじゃありませんけれども、そういうようなことを懸念を――過去の五年間の経過から見て、若干の懸念がある、こういうことを感じております。これはこれで申し上げておきます。  そこで、いま大臣のお答えの中に出ておりますけれども、新分野への転換、これは後でお聞きしますけれども、城下町法についてもあるわけですけれども、新分野への転換あるいはそういうふうな面について、全く従来から何もないような分野への転換ということになれば、これはまだいいんですけれども、これは恐らくそう簡単にはできないと思いますが、たとえて言うと、素材型産業でありますだけに、生き延びていくために、加工分野へ進出をしていくというふうなのが相当あるわけですね。すでにあるわけです。例として申し上げますと、紙パルプなんか、洋紙製造業なんかは、一貫作業という形で紙器、印刷分野まで進出しているわけですね。ということは、結局、進出をしてその分野でのまた競合を起こしておる。こういうふうなことがますます多くなっていく懸念があると思うんです。これはいま例としては洋紙を申し上げましたが、化繊にしてもあるいはアルミにしてもそういうようなことが起き得るんではなかろうか、こう思うんですが、これらについて、どのような規制といいますか、歯どめといいますか、分野の競合を防ぐ、そういうことが必要であろうと思いますが、これについてはどうお考えでしょうか。
  212. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 当然ながら、これらの掲名されました業界は、この法律というものを、自分たちが最後の命綱を与えられたということで、水面上に浮上して自力呼吸をして泳ぎ出さなければならない、その義務も私は負うと思うんです。したがって、ひたすら国家の与えるわずかなインセンティブであっても、それに対して自分たちが義務を負うということを考えたならば、先ほど私、他業種なんていうことを早々と言い過ぎたわけですけれども、余り先の話を最初に持ち出されたものですから、私としては、それらの関係業界はこの五年間の時限立法の中でみごとに再生されるであろう、またその決意を酌み取らない限りは私どものところをパスしないということでやっておりますんで、その先の話はきょうはちょっと手控えることにいたしまして、この業界はこの事業によって立ち直っていただくであろうという期待、そして業界の方は責任をとってくださいよ、義務を負っているんですよ、国家に対して、そして国民に対して、日本の産業界全般に対してですね。そういう気持ちでおっていただきたいと思うんです。
  213. 井上計

    ○井上計君 これはもう局長にむしろお聞きした方がいいと思うんですが、いま申し上げたように、その企業そのものが体質を強化するために、あるいは改善をするために、素材産業にありますから、自社製品の素材を使うことによって加工分野へ進出することによって付加価値を高める、こういうふうな、当然やはり、転換といいますか、企業の転換拡大をこれは考えられるわけですね。その場合に、私はまた新しい問題がある。素材産業でありますから、このいわば新特安法によっての助成、いろいろなある意味では保護を受けている。その保護を受けておる、助成を受けておることを有利な条件として、いえばそういうふうな分野に進出することによっての新しい摩擦、競合というものが実は事実あるんですね、もうすでに。いま例に申し上げましたけれども、洋紙製造業等については、いえば自社の製品をそのまま加工して市場に出しておる。だからユーザーと競合しておるというふうな、そういうふうな経営がすでにもう行われておるわけですが、そのようなものが今後拡大されることは、いろんな意味でやはり好ましくない、これについては、特にその面についての行政指導が私は必要であろうと思いますが、どうお考えでしょうか。
  214. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) 先生御指摘の点はおっしゃるとおりでございます。私どもも、今度の新法の構造改善基本計画の中で第二項の五号のところに設備の処理とかあるいは事業の提携とあわせて行うべき事業の転換その他の措置に関する事項というのが入っておりまして、当該その特定産業が事業の転換をするという場合どういうことを具体的に考えておるのかという点につきましては、この基本計画の中でいろいろ議論をし固めるということになっておりますので、そういう議論の過程の中で私どももいま先生の御指摘のような点をよく踏まえながら調整を図ってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、先ほど大臣の答弁にもございましたように、この法律自体が設備処理という、縮小だけではなくて、技術開発であるとか、あるいは事業提携とか、あるいは設備投資を通じましてその活性化をしていこうという新しい側面も持っておるわけでございますので、当該業種内において新たな雇用の可能性というのも現行法よりはあるのではないかという期待も持っておるわけでございます。
  215. 井上計

    ○井上計君 私はこの点を申し上げたのは、これらの素材産業がよくなっていくためには、やはりユーザー業界の協力がかなり必要だと思うのです。これは片方でユーザー業界が協力した。その業者がよくなった。あるいはよくなるために逆にユーザー業界が被害を受けるようなことであっては、やはり今後わが国の産業政策上よろしくない、こういう点であえて申し上げたわけですから、これらについては計画作成の段階で十二分の行政指導をお願いしたい。これは要望しておきます。  そこで、今後これを進めていく中で、いろんな事業の縮小あるいは転換等が行われるわけでありますけれども、この基礎素材産業に従事しておる労働者数、百九十一万人という、全体の一七・五%ですか、非常に大きなやはり労働人口でありますので、したがって、これらの労働組合と十分今後事業計画作成の段階でいわば連絡をする必要があろうと思いますが、労働組合の意向をあるいは意見を十分参酌をしていかなくちゃいかぬと思いますが、これらについてはどのようなお考えでありますかどうか。
  216. 小長啓一

    政府委員(小長啓一君) 先生御指摘のように、雇用の安定というのは、基礎素材産業の構造改善を進める際に、最重点配慮事項ということで私どもは考えておるわけでございまして、この法律にもそういう位置づけになっておるわけでございます。このため、この法案の立案過程におきましても、いろんな場を通じまして関係労働組合の方々の御意見も十分聴取さしていただいたと思っておりますし、そういう意見交換を通じまして、いろんな雇用安定や労働組合の意見反映の規定も設けることができたのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。  具体的にちょっと触れさしていただきますと、まず構造改善基本計画の策定に当たりましては、関係審議会を通じまして労働組合の意見を聞くと いうことがはっきり法律上も書いてあるわけでございます。そして関係審議会には必ず労働組合の代表にも参加をしていただくということは運用上考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。その構造改善基本計画の内容も十分雇用の安定に配慮したものでなければならないということでございます。  次に、事業者が構造改善基本計画に従いまして設備処理やあるいは事業提携といったような構造改善を行う場合には、労働組合と協議をいたしまして雇用の安定のための措置を講ずるよう努めなければならないというのが第十条第一項に規定をされておるわけでございあます。  また、国が設備処理の共同行為の指示を出す場合やあるいはその事業者の作成をいたしました事業提携計画の承認を行う場合には、従業員の地位を不当に害するおそれがないことを十分確認をするということにもなっておるわけでございまして、特に今回新たに設けられました事業提携計画の承認に当たりましては、事業者と労働組合との間で話し合いが十分行われているかどうかを確認することとしておるわけでございます。これは第六条、第八条の二の関係の規定ということでございます。  以上のように、本法におきましては、労働組合の意見を十分反映をしてまいりたいと思いますし、また、雇用の安定につきまして所要の規定の整備をしておるということになっておるわけでございます。  今後ともさまざまな場で労働組合の意見を十分に聞きまして、新法の適切な運用を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  217. 井上計

    ○井上計君 次に独禁法との問題でありますけれども、設備廃棄、設備処理の場合に、アウトサイダーの規制が、これは全くないわけですね、全くと言っていいほどないと思うんですが。もう三十年前からこれは特に中小企業関係の法律がありますが、例の調整組合、あの当時からあるいは構造改善等につきましてもアウトサイダー規制がないために、結局設備の廃棄あるいは設備の統合というふうなものが、事実上はやっぱり効果が上がらなかった。そのために逆に、一時的に設備廃棄等をしましても、反動で実は設備過剰になった、こういう業種が、あるいはこういうケースがずいぶんあるんですね。したがって、私はこの新特安法が、先ほど大臣から必ずこれ自主的な努力によって不況から脱し安定するであろうという期待をしたいと、また私もそう願っておりますけれども、やはりそこに設備処理についてのある程度のアウトサイダー規制を考えていかなければ、事実上やはり骨抜きになるんではなかろうかという懸念が依然としてするんですが、これはどうお考えでしょうか。
  218. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) この点は事務当局とまた別に、私自身が最後までどうしようかについて考え込んだ点であります。  本来、そういうような構造改善には全関係企業が参加をして、そしてみんなで話し合って再建への道をたどるのがあたりまえであって、その中でアウトサイダー、一匹オオカミというものがおって、今回の立案過程においても、そんな法律をつくったって自分は、おれのところはやっていけるということを豪語した会社があることも聞いております。  そこで、アウトサイダーについては、他のたとえば九〇%が合意したものについては反対はしてはならない、参加すべきであるというような規定を入れようかと思ったんですが、やはり今度の法律は延長法でもありますしね、あくまでも民間活力ということは民間協調、ここにまた独禁法の問題が出てくるわけですが、それを私たちが官僚的な、高圧的な態度でもってやっていくと、逆に民間活力そのものを、あるいは自主的な、自発的な意欲というものを、ある意味ではアウトサイダーを大臣がやると、加入命令を出すとか、勧告するとかということがあった方がやりやすいことは間違いないのですが、そこに安易さがまた生まれてくるのではないか。したがって、指定されたら、手を挙げたらあれが一人反対しているけれども反対できるもんかというようなことで安易な計画が出るおそれがある。そこでずいぶんどちらにすべきかに迷いました。  しかし、あくまでも民間の自主努力によって、国はこれだけの御支援をいたしますからがんばって立ち直ってください、まあ私たちとしてはある意味で民間にお願いをし、その願いをまた私どもが受けとめるという気持ちでおりますので、最終的に大臣の権力の介入といいますかね、そういうふうに結果なるでありましょうアウトサイダー規制は、私自身がそのようなことでやれない。いわゆるアウトサイダーがあばれてわれわれの構造改善が、体質ができないというところは、それは仕方ないじゃないかということで、どちらがいいかということについてよりも、この法律の性格がそれによってがらっと変わってきますので、行政権力の、国家権力の介入を避けるという方を私は採用して、アウトサイダー規制をあえて盛り込まなかったという経緯がございます。このことは果たしてよかったのか、あるいはアウトサイダー規制を持っていた方が私の方から見るとやりやすいんですけれども、それを法律に入れた方がよかったか悪かったかはいずれあらわれてくることでありますが、あくまでも私は、民間の自助努力、活力、そして共同してやろうという決意、それを尊重していくと、アウトサイダーは出ないだろうと、そういう願望を持って、国家権力の介入ということは避けたということでございまして、これは私の最終的な判断でございますから、そのことが果たして今後法の運用で経済界にどのような現象としてあらわれてくるのか、これはわからないわけでございますが、私は、願わくはみんなが一匹オオカミ的な存在で、いわゆる協調を破るというようなことが出てこないように、むしろ業界を信頼するということを前提に決断したわけでございます。まあ、ちょっと自信があるようなないようなことですけれども、どっちをとるかということで考えたということでありまして、御指摘の点は、これは間違いなく、そういうものが存在を現実に主張したならば、この業種の構造改善は挫折するおそれもある、そういう点は、私も指摘されたとおりであると思います。
  219. 井上計

    ○井上計君 いや、大臣の言われることはよくわかるんです。また理想としてぜひそう願いたいし、そうありたいと、私もそう感じますし、また、多くの人がそう思っておられることもこれまた間違いないと思うんですが、ただ残念なことには、過去いろんな業界の状況からいってどうにもならぬ人、むしろ協調を被ることに自分の企業の発展を考えておる。それをもう、何といってもそれはどうにもならぬという人が実はあるんですね、どの業界でも。それが私は、このせっかくの、いえば業界の自主的な努力を最大限に発揮する、助長するためのこの法律を破って、魂をなくする、こういう結果になるのではなかろうかという危惧があるわけです。しかし大臣がおっしゃるように、業界全体が協調し、いえばアウトサイダーがなくなることが一番理想的なわけですけれども、さて、そうならないところにまたそれぞれの業界のむずかしさ、あるいは、ある意味では過去にそういう人がいたからその業界が発展したという経緯もあるわけですけれども、まあしかし、これからどうであろうかという実は危惧がありますので、この点については、今後の経過の中でお考えいただいて、大臣のおっしゃるように、なかなかやっぱり理想どおりにはいかぬわいということであれば、またその時点でそのことについては、またお考え直しをいただきたい、またいただく必要があるのではなかろうかと考えますが、これは大臣に、いまからわからぬことですから、先のことでありますから、要望だけひとつ申し上げておきます。  それからこれももう一つやはり独禁法との問題でありますが、事業提携については適用除外だという、先ほど吉田委員とのお話の中でもこれは理解できました。理解しております。ただ、公取との間に意見を、公取の意見を聞くというような形 になっていくと、何かキャッチボールになってタイミングを失するのではなかろうか、こういう心配がありはしないであろうか、こう思うんですが、これらについては、先ほど大臣の、いえば独禁法の権威者でおられる大臣でありますから、そういう心配はよもやなかろうと思いますけれども、やはり一抹のまだ懸念があるんですが、どうなんでしょうか。
  220. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 第一の御要望の点についても、ちょっと御参考までに申し上げておきますと、業種をいろいろと考えているうちに、農林水産省関係の業界で精製糖工業会というのがありますですね。これは北海道のビートとか沖縄のキビとか、そういうものに最終的には非常に大きな影響を与えるものであって、しかも国際的な糖価の変動によって、しかも業界は設備が四割過剰、溶糖能力は八割過剰といわれているのが、一向に合意ができない。陳情書一つつくるのにも、アウトサイダーどころか、相当な大手が日本精製糖工業会という印刷をさせることを拒否して、自分はかく主張するというような別途の文書を流すような業界なものですからね。この法律の中に手を挙げてくるなら受けてもいいがと思って、内々打診させてみたんですが、全然農林水産省の反応、ゼロですね。ということは、あの業界はもう自分たちであきらめているんでしょう。つぶれるところはつぶれて仕方がないじゃないかという業界としか思えませんですね。まあ、業界を批判して大変悪いと思いますが、裏話をいたしますと、そういうふうにやってきましたが、手を挙げなかったということは、今度手を挙げてくるところは、いまのアウトサイダーの議論も含めて、自分たちの業界はやっていけるという自信のあるところしか手を挙げないなと私はそのときに感じました。やはり、だから、あとは運営に当たって実際にどういう形が出てくるか、もちろんわかりませんが、自信のないところは手を挙げてこない、計画をつくれないというところで出てこないんだろうと私は思うんです。ですから、手を挙げてきましたら、そこは確信があるところであろう。  それから、先ほども石化業界を取り上げましたので、もうどうせ同じですから申し上げますと、最初は三社構想が出てきたわけです。しかし、最初にまとまったところがそのままもし決まるとするとどういう現象が起こりかけたかといいますと、その圧倒的なシェアというものに、第二、第三のグループが、系列が全然違うのに、これはもう自分たちが生きていくためには、アウトサイダーとは別な意味で対抗の力を持たなきゃいかぬというので、二と三のグループが一緒になって、そして業界が二社ということになる計画が進んでいることを聞きましたので、これはいけないということで、やっぱり法律に書いてございます同調値上げの三社七〇%、あるいは高度寡占の三社七五%、ここらのところを念頭に置かないで計画を立てることはいかぬということで、結果は四社ということで、まあ、公取と話はするわけですが、私の意思がそのように反映して、決まったものを二つに割ったと。みずからですよ。それは無理ですよということで、公取の方の、独禁法の例を引きまして、七〇ないし七五という定めがありますから、それを二社で一〇〇%ということはいけませんということで、まず通産省をパスしない限り、公取にはいかぬわけですからね。ですから、石化業界の方は、最初の構想が思いもよらぬ分割といいますか、結合が、別な形で、本当かいなというところがそれぞれ合意して四社体制になりましたので、これならばまあ、ぎりぎり三社七〇という線は公取としても、若干のグループごとのシェアとか、とり方もいろいろありますが、そういうものがあったにしても、これなら了解を得られるであろうという確信を持っておりますが、これは一つの例ですけれども、今後はそういうふうにやってまいりますので、あえて独禁法破り、独禁法に風穴をあけるというような不逞な気持ちも持っておりませんし、むしろ先ほど申しました、われわれの産業行政上の法律、それと一般的にそれを監視する立場の法律というものとがそこで実効上かみ合っていくことの方がより望ましいということで今回の法律を出したので、決してひやかしで言われるのではなくて、私はいままでにない非常にユニークな法律である、そういうふうに自負しておりますし、これからは独禁法の運用と産業政策とは、そのような望ましい姿でいくべきである。同じ国の、同じ経済に対する行動と監視ですからね。これが事前に調整ができて産業政策が円滑に進んでいくことが望ましい、そういう確信を持って出しております。
  221. 井上計

    ○井上計君 われわれも今回の改正法については非常に高く評価をしておりますし、また、それだけに期待をしておりますので、やはりそういう期待の中で、アウトサイダー問題についてが何か障害になるんではなかろうか、こういう懸念があるものですから、再三お伺いをしたということであります。  それから、いま大臣のお話の中にちょっと出てまいりましたけれども、第二次の指定ですね。当然、現在の状況から考えて、幾つか指定をせざるを得ないというふうな業種が出てくる、あるいはすでにあるんではなかろうか、こう思うんですが、ただいまお話がありましたが、業界自体がアウトサイダー問題等を事前にやはり調整をして、自信がなければ出てこない、これはもうおっしゃるとおりだと思うんですね。ただ、それらの問題は、やはりいま大臣おっしゃっていただきまして私も安心したわけですけれども、業界がそういうふうないわば障害になるような問題を事前に処理して、自信のある業界が名のりを上げる、また自信のある業界でなければ指定しない、こういうふうなこと大変結構だと思いますので、いま大臣のおっしゃった方針を今後ともひとつ堅持をしていただくように、これは要望をしておきます。  次に、城下町法でちょっとお伺いしたいのでありますが、まあ新法の改正の目玉といいますか、目玉をどこに置いておられるか、ひとつ長官お伺いいたします。
  222. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 御承知のように、従来の城下町法は、いわゆるインパクトを受けた際の緊急経営安定対策と、企業誘致対策という二本の柱で構成されておったわけでございますが、御承知のように経済の状況、特に俗に城主様と言われております構造不況業種に属する大企業が容易に立ち直るというような情勢でもございませんし、さらに高度成長時代のように企業誘致で工場がどんどん立地するという時代でもございませんので、これらのいわゆる構造改善あるいは企業誘致の努力は引き続き継続はいたしますけれども、むしろやはり今後は地元の中小企業そのものを守り立ててその地域の振興を図ることが必要であろう、こういうことから新たに振興対策を第三番目の柱として加えて、改正、拡充の上で延長をお願いしたい、これが改正法の眼目でございます。
  223. 井上計

    ○井上計君 それで長官ね、別にあります産地中小企業対策臨時措置法ですね、これとの実はまた関連がかなりあると思うんですね。特に親企業が構造不況、そのいわば城下町、その中小企業の新しい振興対策になってきますと、先ほども申し上げたことと関連をいたしますけれども、結局また新しい分野、新事業の開拓というのが当然大きな振興対策の中心になっていくと、こう思うんです。そうすると、例の従来ありますところの産地中小企業対策臨時措置法とこれまた競合をする。新しい分野へといっても、中小企業が入り込む新しい分野というのは、その企業は新しい分野でしょうけれども、既存の分野へ入り込むというふうなことで、そのまた分野でのまた競争が激化して、過剰生産になって、またその業種が不況になる、こんなふうなことの懸念が実はあるわけなんですね。これは、それらの面についての調整を十分ひとつお考えをいただかなくてはいけない、こう思っている。時間がありませんから特にお答え結構でありますけれども。すでに従来でもあるんですね。たとえて申し上げますと、繊維産業等考えてみますと、ある地域が新しい分野、新しい分野といっても実は従来の着尺地、着物地が洋服地の分野へ進出する、これは新しい分野である。と ころが、それはそれでこちらの方でまた新しい競合を起こしておる、こういうふうなのが至るところに出ておりまして、その間の調整を私は特に中小企業の業種に対しては、これは大臣先ほどからおっしゃっておられますように、強い役所の権限といいますか、監督とか指導とかというふうなことが余り行き過ぎてはいけませんけれども、ある程度までのやはり指導というものがないと、ますます複雑になって競合して、さらにまた落ち込んでいくというおそれが多分にありますので、いわばその交通整理的な指導も十分ひとつお考えをいただきたいと思います。  若干、御見解があればお聞かせいただければ結構であります。
  224. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) 基本的に新分野と申し上げましても、全く従来なかったような新しい商品を開発するというようなことは中小企業にとっても容易ではございませんで、従来の経営資源といいますか、あるいは経験の蓄積をさらに拡充して新しくみずからの経営資源を豊富にして、いろいろな分野に出ていく、こういうことになろうかと思います。  ただ、その際には御指摘のように、従来あったいわゆる一般的なところに出ていく、こちらが左がだめだから右にいくというような形ではなくして、やはりその地域地域で独創性を生かして、中小企業の場合にはよくすき間経済と言われておりますけれども、多様化社会のすき間をねらって自分の独自性を誇示して大いにマーケットを広げていく、こういうような方向に出ていってもらうことが望ましいわけでございます。  ただ、具体的にどのような形で地元の計画が進んでいくかどうかということに関しましては、振興計画を承認いたします前提として都道府県知事に振興指針というものをつくっていただく予定にいたしております。この振興指針はもちろん頭からこういうことをやれというふうなことを盛り込むつもりはございませんで、大きなガイドライン、流れというものを盛り込むつもりでございますが、その中でその指針に沿った計画をつくっていく段階で、地方公共団体との会話を通じながら、やはりネガティブチェックといいますか、こういうようなところにいっても非常に従来のものと競合するからもう少し広くしたらどうだというような形での指導をしていただくことを期待しておりまして、私どもは関連地方公共団体に指導指針を作成するに当たってそのようなものを織り込み、あるいはそのような心構えで指導をしていただくよう所要の通達その他でお願いをするつもりでございます。
  225. 井上計

    ○井上計君 長官ね、いまおっしゃったようなそういうふうな面での配慮よくわかりますし、また、必要であるわけですが、ただ、地方自治体が振興計画を指導し、つくるわけですけれども、県内の競合するものについてはわかるんですね。ところが、私、地元愛知県ですが、愛知県と岐阜県と実は同じようなものが御承知のようにあるわけですね。その場合に愛知県ではいわばそういうふうな振興計画、県内としては競合するものがない、支障がないとなりましても、岐阜県と完全に競合するものがあるわけですね。そういう例がずいぶん各地にはやっぱり存在すると思うんですね。したがって、これは通産局単位といいますか、広域的なそのような調整指導というものが必要であろう、こう思いますので、特にこれは要望しておきます。  それから私、すっかりかぜを引いて、戦場疲れで声が出ないので実はまだ大分時間があるんですが、もうこれでやめます、しゃべることが大変つらいもんですから。私の地元の愛知県では幸いにこの城下町法案による指定はいまのところないわけなんです。しかし、これから起きる可能性はあるわけですね。したがって、今後の地域指定については、地方自治体の意見を十分ひとつ尊重していただいて反映していただく。やはりこれもタイミングの問題があると思うんですね。やはりタイミングを失すると、せっかくの法律が役に立たぬ、あるいはその効果が薄い、こういうふうな例をしばしば聞いておりますので、今後こういうふうな新しい地域指定をされる場合に、十分ひとつタイミングをお考えいただいて、必要なものについてはやはり速やかに指定をしていただく、このことをひとつお願いしたいと思いますが、何かお聞かせいただければ御見解をお聞きしておきます。
  226. 神谷和男

    政府委員(神谷和男君) まず先ほどの答弁に関連いたしましては、私どもといたしましては、新しい新規事業に関して補助事業を考えております。したがいまして、通産局あるいは私どもそれらの執行に当たりまして、いわゆる産業官庁としての経験を地方公共団体によく供給をさせていただくつもりでございます。  それから地域指定に関しましては、御承知のように業種指定、地域指定という段階を経て行われるわけでございますが、業種指定を行います際にも本当に困っている地域があるかどうかという点に着目して必要である場合には速やかに業種指定も行い、さらに必要な地域指定を行う、こういうことでございまして、政令にお任せいただいておりますので、迅速かつできるだけ効率的な形でこれを行うようにいたしたいと思います。
  227. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  228. 亀井久興

    委員長亀井久興君) ただいま議題となっております両案の審査のため、来る二十一日に参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 亀井久興

    委員長亀井久興君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会