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1983-05-12 第98回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十二日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      関口 恵造君     山本 富雄君  五月十一日     辞任         補欠選任      遠藤 政夫君     関口 恵造君  五月十二日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     高杉 廸忠君      本岡 昭次君     安恒 良一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長        目黒朝次郎君     理 事                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 対馬 孝且君                 渡部 通子君     委 員                 石本  茂君                 大坪健一郎君                 金丸 三郎君                 佐々木 満君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中野 鉄造君                 山田耕三郎君        発  議  者 目黒朝次郎君        発  議  者  渡部 通子君    国務大臣        労 働 大 臣  大野  明君    政府委員        社会保険庁医療        保険部長     小島 弘仲君        労働大臣官房長  加藤  孝君        労働省労政局長  関  英夫君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        増田 雅一君        労働省職業訓練        局長       北村 孝生君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        行政管理庁長官        官房審議官    佐々木晴夫君        行政管理庁行政        監察局監察官   竹内 幹吉君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○林業労働法案目黒朝次郎君外六名発議) ○男女雇用平等法案渡部通子君外一名発議) ○労働問題に関する調査  (パートタイマー労働条件等に関する件)  (最近の雇用失業情勢とその対策に関する件)  (特殊法人職員の給与問題に関する件)  (夕張新炭鉱における雇用問題等に関する件)  (タクシー乗務員の退職金問題に関する件)  (シロアリ駆除従事者労働安全衛生対策に関する件)     ─────────────    〔理事対馬孝且君委員長席に着く〕
  2. 対馬孝且

    理事対馬孝且君) ただいまから社会労働委員会開会をいたします。  林業労働法案議題といたします。  発議者目黒朝次郎君から趣旨説明を聴取をいたします。目黒君。
  3. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ただいま議題となりました林業労働法案につきまして、日本社会党を代表して、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  わが国森林は、国土面積の七〇%に当たる約二千五百万ヘクタールを占めておりますが、このうち人工林面積は約一千万ヘクタールに及び、その蓄積は十億立方メートルと全森林蓄積の四割を超えるまでに達しております。  この豊かな森林は、木材などを生産し、建設資材、家具、紙などの形で国民生活必需物資供給を担う等の経済的機能を果たしているほか、国土保全水資源の涵養、大気の浄化、自然環境保全保健休養等の多面的な公益的機能など、はかり知れない重要な役割りを果たしております。ことに、国土開発に伴う山地災害多発化水需要増大さらには都市への人口集中などによる生活環境悪化等から、森林公益的機能充実が一層重要となっております。  しかしながら、森林林業を取り巻く状況は近年非常に厳しく、危機的状態を強めております。すなわち、木材需要の七〇%に及ぶ外材輸入住宅建設の大幅な落ち込み等による国産材需要の不振、山村過疎化の進行による林業労働者減少等により、森林資源保全管理機能は著しく低下しております。このため、造林の育成に不可欠の除伐、間伐の立ちおくれ、脆弱な森林増加、さらには山地崩壊、水害などの国土災害危険性増大水資源の不足といった状況を現出させておるのであります。  二十一世紀へ向けて、人類が避けて通れない課題資源環境だと言われます。わが国においては、まさに林業こそが森林育成を通してこの二つ課題にこたえ得るのであります。そして、この森林育成に不可欠なのは、その生産の担い手である林業労働者安定的維持確保であります。  ところで、林業労働者、とりわけ民間林業労働者に置かれている労働実態はきわめて憂慮すべきものとなっております。すなわち、民間林業労働者は、季節的、短期的雇用が多いため不安定であり、健康保険厚生年金等被用者保険の適用はごく少数であり、賃金は他産業に比べて低い上に、出来高払い制のため労働強化を強いられ、振動病罹病者は毎年増加するという状況にあります。また、労働基準法さえ適用されないなど、まさに劣悪過酷な労働条件のもとで重筋労働に従事しております。  このような民間林業労働者労働環境のもとでは、新規学卒者若年労働者就労は皆無に等しく、労働力高齢化女子化が進んでおり、このまま推移するならば、わが国森林林業危機的状況は一層深刻なものとなることは明白であります。  世界的な森林減少による環境変化が懸念されている中で、今後わが国森林管理を適正に実行し、国産材供給能力を飛躍的に向上させ、国産材時代への展望を切り開いていくためには、何といっても、その生産労働力確保対策が重要であります。  しかるに、現行労働関係の諸法律やその運用のみでは、林業労働特質からくる諸問題は解決し得ないところであります。したがって、民間林業労働者雇用安定、労働条件改善安全衛生福祉面での施策整備充実等のためには、林業労働特質を踏まえた新たな立法が必要であります。  これが、日本社会党林業労働法案を提案する理由であります。  次に、法律案の主なる内容について御説明申し上げます。  第一に、この法律は、林業労働者雇用の安定、労働条件改善安全衛生確保福祉増進等に関する施策を講ずることにより林業労働者の地位の向上を図るとともに、山村地域振興に寄与することを目的としております。  第二は、林業労働計画の策定であります。すなわち、労働大臣は、本法の目的を達成するための基本となるべき事項について、五年ごとに全国林業労働計画を策定し、都道府県知事は、全国林業労働計画に即して、毎年市町村長が策定した市町村林業労働計画に基づいて、都道府県林業労働計画を策定することとしております。市町村長が策定する市町村林業労働計画では、林業事業の量、林業労働者雇用の安定及び福祉増進に関し必要な事項について規定し、山村経済の発展のための林業振興及び林業労働者雇用開発について配慮することとしております。  第三に、専業労働者とは常用労働者以外の林業労働者で、一年間に通常九十日以上雇用されるものをいい、兼業労働者とは常用労働者及び専業労働者以外の林業労働者で、時期を定めて一年間に通常三十日以上雇用されるものをいうこととしておりますが、公共職業安定所長は、林業労働者について、専業労働者及び兼業労働者別林業労働者登録簿に登録するとともに、林業事業体の届け出に基づき、林業事業体登録簿を作成することとしております。また、林業事業体は、公共職業安定所紹介を受けて雇い入れた者でなければ、林業労働者として林業の業務に使用してはならないものとしております。  第四に、林業労働者に対して、一年間のうち最低限の雇用確保されなかった場合及び本年度雇用実績が前年度雇用実績を下回った場合においては、雇用の安定を図るため雇用保障手当を支給することとしております。雇用保障手当費用については、一定規模以上の森林所有者林業事業体及び登録林業労働者から納付金を徴収するとともに、国が費用の三分の一を補助することとしております。  第五に、振動機械を使用する登録林業労働者等について、定期及び特殊の健康診断を義務づけるとともに、振動障害を予防するため、出来高払い制禁止振動機械の操作時間の規制等を行うこととしております。また、振動障害者福祉増進のため、国は療養施設等の設置、軽快者雇用安定のための助成、援助、職業転換希望者に対する職業訓練等について、それぞれ適切な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。  その他、政府は、労働保険及び社会保険制度について検討を加え、その結果に基づき、速やかに必要な措置を講ずるものとし、また、労働基準法労働時間、休憩及び休日に関する規定林業労働者にも適用するために、労働基準法の一部改正を行うことのほか、監督罰則等について所要規定を設けることとしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださるようお願い申し上げます。
  4. 対馬孝且

    理事対馬孝且君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ─────────────
  5. 対馬孝且

    理事対馬孝且君) 次に、男女雇用平等法案議題といたします。  発議者渡部通子君から趣旨説明を聴取いたします。渡部君。
  6. 渡部通子

    渡部通子君 ただいま議題となりました男女雇用平等法案につきまして、公明党国民会議を代表し、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  産業経済社会の進展に伴って、婦人に対する労働需要が急速に増加するとともに、婦人社会参加意識は急速に高まっております。そのような状況を反映して、勤労婦人増加は著しく、その就業分野も拡大しており、社会に果たす役割り増大しつつあります。しかしながら、職場においては男女の平等が十分に確保されているとは言えず、それが婦人就労意欲職業能力向上並びに職業意識の変革の大きな阻害要因となっております。  男女の平等については、国際連合憲章世界人権宣言のうたっているところであり、昭和五十四年に国際連合で採択された婦人に対するあらゆる形態差別の撤廃に関する条約も、第十一条で、「締約国は、男女の平等を基礎として、同一権利、特に次の権利確保するため、雇用分野における婦人に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。」とし、労働権利同一雇用機会についての権利職業を自由に選択する権利昇進雇用保障、役務に係る給付・条件についての権利職業訓練を受ける権利同一価値の労働についての同一報酬・同一待遇についての権利等を掲げているところであります。  また、欧米各国においては、昭和五十年の国際婦人年をきっかけに、男女平等政策を意欲的に進め、雇用機会から職場における待遇に至るまで平等を保障する制度が確立されつつあります。  しかるに、わが国においては、男女差別をなくすための国内法整備がおくれ、労働基準法男女同一賃金原則を定めているほかには明文の規定がなく、就業機会昇進等についてなお多くの差別実態が存在しております。  労働分野におけるこのような差別の解消を図るには、国際的視野に立った男女雇用平等法制を確立する必要があります。  以上の内外の情勢にかんがみ、雇用における男女平等取り扱い確保を図るため、使用者等による性別理由とする差別禁止するとともに、その差別を迅速かつ適正な手続により是正するため必要な措置を講ずる必要があると考え、ここに公明党国民会議は、独自の男女雇用平等法案を立案し、提出する次第であります。    〔理事対馬孝且君退席委員長着席〕  次に、この法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、募集、採用、賃金、配置、定年、退職その他の労働条件職業紹介職業訓練等について、性別理由とする差別禁止することとしております。  第二に、性別理由とする差別に対する監督機関として婦人少年室雇用平等監督官を置き、雇用平等監督官は、事業場公共職業安定所その他の施設に対して立入検査をする権限を有し、この法律規定に違反する事犯について司法警察員の職務を行うこととしております。  第三に、婦人少年室長は、差別禁止違反差別がある旨の労働者からの申告または職権に基づき調査をし、必要と認めるときは、使用者等に対して、その是正のための勧告、命令等を行うことができ、また、差別について適当な措置をとるべき旨の労働者からの申請があったときは、相当の期間内に適当な措置をとるか、とらない旨の決定をしなければならないこととしております。  第四に、婦人少年室長処分に対する不服申し立て審査機関として、中央中央雇用平等審査会を、都道府県地方雇用平等審査会を置き、それぞれの雇用平等審査会は、労働者委員使用者委員及び公益委員の三者構成とし、各側委員男女同数としております。  第五に、婦人少年室長処分に不服がある使用者労働者は、まず、地方雇用平等審査会に対して審査請求をすることができることとなっております。  地方雇用平等審査会においては、原則として公開の審理を行い、行政不服審査法第四十条に定める審査請求の棄却、処分取り消し等裁決をするわけでありますが、その際、同法によれば上級行政庁に限って原処分を変更する裁決を行うことができるのに対し、この法律案では、地方雇用平等審査会は、原処分を変更する裁決ができることとしております。  次に、この地方雇用平等審査会裁決に不服がある者は、中央雇用平等審査会に対して再審査請求をすることができることとしております。  なお、処分または裁決取り消しの訴えは、中央雇用平等審査会裁決を経た後でなければ提起することができないこととしております。  最後に、この法律の実効を確保するために所要罰則を設けております。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  7. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ─────────────
  8. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 労働問題に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 きょうは、パートタイマー労働問題について若干質問いたします。  労働大臣も、けさの各新聞に出ていますパートタイマーで働いていた婦人が、正社員と同じ仕事をしているのに、パートタイマーという理由だけで賃金差別したのは違法ということで裁判に訴えたということが出ております。ごらんになったと思いますが、こうした問題はこれからも次々と出てくるのではないかと思います。この新聞の報道によると、この代理人の弁護士は次のように言っています。「欧米では、パートといえば週二十時間くらいの短い労働時間だが、日本では一日六ー八時間、週三十五時間を超え、パートとは名ばかりで、実態正社員と変わらない。ところが、賃金は平均して女子正社員の七六%しかない。女子パートの置かれた状況は現代の「女工哀史」だ。」と、こういうふうに言っております。こうした現在パートタイマーという形で働いておられる方々労働問題という点に焦点をしぼって質問をいたします。  労働省として、ではこのパートタイム労働者というものをどのように定義をするのか、あるいはまた、この実態はどのように把握しておられるのか。まず、この点から明らかにしていただきたいと思います。
  10. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 現在のところ、パートタイム労働者について、法律上と申しますか正式な統一された定義がないというのが実際でございます。それで、パートタイマーがどのくらいいるのかということがいろんな統計でそれぞれ調査され報告されているわけでございますけれども、それを見ますと、大別二つの形があるのではないかと思います。  労働省でやっております雇用動向調査とか賃金構造基本統計調査、いわゆる賃構でございますけれども、これを見てみますと、一日の所定労働時間がその事業所一般労働者より短いもの及び一日の所定労働時間が同じであっても一週の所定労働日数一般労働者より少ないものというような労働時間の短さに着目してやりますやり方。それともう一つは、事業所においてパートタイマーまたはパートなどと呼ばれているものという名称に着目したものがございまして、これは労働省でも雇用管理調査あるいは第三次産業雇用実態調査、こういうものでやっておりますし、また、総理府労働力特別調査でもそういうような把握の仕方をしているわけでございます。  これは統計の問題でございますけれども、私どもとしましては、このいわゆるパートタイマーというのは、第一の形のような短時間の労働者を指すものというふうに考えられますけれどもわが国におきましては、所定労働時間がその事業所一般労働者と同じ労働者の中にもパートタイマーと呼ばれておるというようなものがあります。しかしながら、労働条件は別個の取り扱いというものもございますので、労働条件の問題を考えていきます場合には、私どもは、行政に当たっては、広く当該事業所におきましてパートタイマーと呼ばれているものを全体の中で見ていくということでやるというのも一つやり方ではなかろうかと思います。  御存じの、雇入通知書におきましてパートタイム労働者を対象として取り上げているわけでございますけれども、そのときのパートタイマーとは何かというときには、短時間労働者のほかに、身分あるいは呼び方等がパートタイマーと呼ばれておる、労働条件については一般労働者と異なった取り扱いを受けている、こういうような労働者も含むものとして、この雇入通知書ではパートタイマーを見ているということでございます。
  11. 本岡昭次

    本岡昭次君 先ほど私は新聞の記事をある部分は読みました。これ、労働省皆さん方も読まれたと思うのですが、これから私はこの種のものが次々と出てくると思うのですね。これは新しい一つ労働問題じゃないかと思うのですが、これについて、裁判に訴えているんですからその訴状等をよく見なければ実態は正確なものはつかめませんが、しかし感じとして、いま労働省はどう思われますか、こういう裁判を。
  12. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) おっしゃるとおり、私も訴状を見ているわけではございませんで、けさ新聞をちらりと見てきた程度でございます。  パートタイマーの中には、先ほど申しましたように、労働時間は同じでありながらほかの労働条件が違っているというようなものもございます。それからまた、いわゆる常用労働者と同じような仕事についておるというようなことで労働条件に違いがあるというようなものもございます。こういうことで、パートタイマーの問題につきましてはそういう観点からもいろいろと問題になっていることが出てくるわけでございまして、今度の、新聞に出てきました賃金取り扱いの問題につきましても、詳しいことはよくわかりませんけれども、多分そういうことから出てきておるということで裁判になっておるのではなかろうかと思います。  果たして賃金がどの程度違いがあるのかよくわかりませんけれども、ただ、一般論として私ども考えてみました場合に、日本における賃金というものはどういう決まり方をしておるかというふうに考えてみますと、能力とか、あるいはその責任の度合いとかということも賃金を決める要素ではございますし、もう一つ日本特有年功序列賃金と申しますか、会社の中における勤務年数と申しますか、あるいは勤務実績と申しますか、そういうものも背景として賃金が決まっておるわけでございまして、同じ時間働いておる、あるいは同じ種類の仕事をしておるということで直ちに同一賃金ということにはならないような面もあるのではないかと思いますが、いずれにしましても、このような問題につきましてはもう少し実際も聞いてみましてから私どもこういう問題について考えていかなければならないというふうに思っております。
  13. 本岡昭次

    本岡昭次君 確かにこのパートタイマー問題は、実態はよく調べてみなければわかりません。しかし、同じような質の労働を同じような時間やって、生産労働であれば、そこから生産されるものも同じような数量つくられていくという実態であっても、パートタイマーという雇用形態であるがゆえに賃金とか、労働条件というものに非常に格差がつけられているという事実はこれは存在をします。だから、通常考えられるパートタイマーというのは企業の側では非常に雇用調整をしやすい労働力、必要なときに求めて要らなくなったらそれを解雇していくということ、また、特に女子パートタイマーになってくるとコストの安い労働力という前提があって、この裁判でも言っているように女子パートの置かれた現状は現在の女工哀史だというふうな一つの断定をしておりますが、それに似たような経営者側からの発想みたいなものがないとは言えないわけなんですよ。  そこに婦人少年局長お見えになっておられますので、どうですか、婦人パートタイマーがこれからこういう形でさまざまな問題が提起されてくると思いますが、婦人少年局長としてのこの種の認識はいかがですか。
  14. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 近年、パートタイマーと呼ばれる女子労働者数が大層ふえていることは先生の御指摘のとおりでございまして、その方々労働条件通常労働者に比して余り恵まれていないという事実もあるように認識いたしております。  しかし、これは一方では企業の側の需要もふえており、また、婦人の側におきましても、パートタイマー就労する方が便利であるという一面もございますので、今後ともこれは減ることは恐らくない、ふえていくのではないかというように認識いたしております。
  15. 本岡昭次

    本岡昭次君 これから増大していくであろうと。現在もう年々増大しているという状況を踏まえて、これは労働省として新しい労働問題としてしっかりとらえてもらいたいということでいまから質問をしてまいります。  先ほども、その実態がつかめないということで、私もいろんな資料を集めてみました。労働省雇用動向調査によると、パートタイム労働者と言われる人たちは百四十六万というふうに統計に出てくる。総理府統計局による労働力調査であれば三百九十万いるという結果が出てくる。今度は、同じ総理府統計局労働力調査特別調査というものを見ると、二百五十五万と、こう出てくるわけですね。それぞれ、ある調査では百四十六万、ある調査では二百五十五万、ある調査では三百九十万、こういう出方をしてくるわけでして、実態がつかめないということは、パートタイマーというものの定義がはっきりしていないからいろんな調査でいろんな数が出てくるということなんです。  やはり年々パートタイマーという雇用形態でもって働く労働者、特に婦人労働者がふえていくという状態で、この段階では、何を一体パートタイムという労働者定義するのかということを統一して、そしてその実態に合った的確な労働政策というものをやっていかなければ、個々ばらばらな形で、経営者によって前近代的な労働条件あるいは差別的な賃金、そうした中で便利だからといって働かされ、また、ちょっと片手間に働きやすいからということでその労働が行われるということは、もうこれ以上放置できないと、私はこう思っているんですね。  そういう意味で、どうですか、この定義づけの統一、それからこれがパートタイム労働者の実数なんだと、そしてどういう職種にどれだけの人数が働いているというその実態像というものを早く正確につかむ必要があると思いますが、その点いかがですか。
  16. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) パートタイマー定義でございますけれども、では、ILOでどう定義しているかというふうなことで見てみますと、「世間一般の正規の労働時間よりも短い時間数を一日又は一週間単位で就業すること。」という定義をやっておるわけでございます。ただ、私ども見てみますと、その「世間一般」という概念もあいまいですし、また、これは何と申しますか、いわばニュートラルな定義でございまして、単に労働時間が短い、それを日単位あるいは週単位で見て短いということでパートタイマーということについて一定の政策を考えるときに、果たしてそのような定義で足りるかという問題が片方であるのではないかと思います。統計的に把握するときにはこういうニュートラルな定義を用いることもいいと思いますけれども、やはり定義づけをするときにはどういう政策目的で考えるかということが一つのポイントではなかろうかと思うわけでございます。先ほど、雇入通知書について、パートタイマーはこういう定義でやっておるということを申し上げましたけれども、やはり雇入通知書なら雇入通知書というような一つ制度わが国として取り入れるというようなときには、パートタイマー定義をしっかりしておかないとその政策の対象になるものがどういうものであるのかと、どの範囲のものであるのかということがはっきりしませんのでこういうことをやったわけでございます。  現在、パートタイマーにつきまして労働省としましても総合的にどういうような方向で取り組むべきかというようなことを検討しておるわけでございますが、やはりパートタイマーについて具体的に総合的な政策を出すということになれば、その政策の対象たるべきパートタイマーはどういうものであるのかという定義をすることが必要ではなかろうかと思いますが、雇入通知書につきましては現在すでに始めましたが、総合的なものについてはまだ検討している最中でございますので、そういうような政策の中身と両方にらみながら定義も考えていくということではなかろうかと存じます。
  17. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまも答弁の中にあったように、一口にパートタイマーと言っても、労働契約の中身が非常に不明確なんです。賃金労働条件福祉の問題等々多岐な状態で、さまざまな状態で皆働いていると思います。  私も、きょうの質問のためにいろんな資料を目を通しました。労働省の組合が調査しているこのパートの資料も見まして、これは一日も早く実態をつかんでこれに対する的確な対応をしなければならぬという思いをよけいしたんですが、いま答弁にあったように、労働省労働基準法研究会というものがあって調査研究をやっているということでありますが、何かそこではパートタイマー労働者の諸問題について六十年をめどに調査検討を行っているということを聞いております。その調査研究というものを、六十年というふうなことを言わずに、結論をできるだけ早めて対応策を打ち出すべきではないかと思うし、そう時間をかけて調査検討をしなくとも、もう実態ははっきりしているし、問題点ももうすでに明らかで、先ほどもおっしゃっておられるように、もう具体的な手を打っておられるのですからね。そんなのんびりしたことをやらないで、もう少し早めて結論を出して、対策を打ち出すというようにしたらどうですか。
  18. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 労働基準法研究会は、昨年始めたわけでございまして、この研究会がねらいといたしますのは、最近の社会情勢の変化ということから見まして、三十数年前に制定された労働基準法というのは、その解釈も含めまして、果たしてこれにマッチしたものであるかどうかということを検討いたしておるわけでございまして、その取り扱います範囲といたしましては、労働契約の問題、それから労働時間の問題、それから賃金の問題というのを大きく三分類しておるわけでございます。  もちろん、労働基準法の取り扱っております分野はそのほかいろいろあるわけでございますが、先生御存じのように、たとえば、安全衛生の問題につきましては労働基準法から安全衛生法が独立したとか、あるいは最低賃金の問題につきましては最低賃金法が独立したということで、大きなテーマにつきましては、いわば基準法が枝分かれして新しい法律をつくったわけでございますけれども、いま申しました三つの分野につきましては、比較的手がついていなかったわけでございます。  ところが、いま申しました契約の部分につきまして考えてみますと、いま御指摘のパートタイマーにつきましても、新しいタイプの労働者ではなかろうかと思います。労働基準法ができました当時は、多分、工場で働いておったフルタイマーというようなものがその念頭に置かれておったのではなかろうかというふうに思うわけでございまして、当時パートはあったでしょうけれども、ほんの微々たるものでございまして、現在のように、日本雇用労働者の一割近くがパートであるというような実情とはおよそ違っておった時代であったわけでございます。  そういうことで、パートタイマーにつきまして考えてみた場合に、現在の労働基準法規定の解釈が果たして実際に合っておるかと、あるいは規定も十分であるのかないのかというような点が問題になってきますし、そのほか労働契約面におきましては、たとえば労働者なり使用者なりというものを一体どう考えたらいいのかというようなものも出てきておるわけでございます。  余り具体的なことを申し上げるのは恐縮ですが、たとえばコンピューターをリースする場合に、オペレーターをつけて貸すというようなことがしょっちゅう起こっておるわけでございますけれども、一体その使用者はだれなんだというようなことがありますし、労働者は一体だれに対して労働者なのかというような問題もありまして、契約の部分というのはこういうことをやっておりますが、その一つとして、このパートの問題をやっておるわけでございます。  それで、パートだけでも早くまとめて、ひとつ考えを基準法研究会に出してもらったらどうかというお話がございました。実際に私どもとしましても、もし、その基準法の解釈の見直しだけじゃなくて、基準法の改正が必要であるということであるとすれば、やはり全体を見た改正ということが必要なのではないかと思いますんですが、しかしながら、そうかといって問題の緊急性というようなことを考えてみた場合に、しかもそれが解釈の見直しということでできるようなものである場合には、それは、そのこと自体を独立に取り上げて、そして実際にそれを現実の施策とすると、対策とするということももちろん当然でございまして、そういうことから、雇入通知書制度につきましては、現にパートの雇い入れをめぐるトラブルが非常に多いということから、基準法研究会の先生方、それから関係する労使の各団体にも諮りまして、とりあえずはこういうことでいってみようじゃないかということでやったわけでございます。  そのほかにも、パートについての問題点はいろいろあるわけでございまして、この点につきましては現在、片方を基準法研究会でやっていただいておりますし、また片方、役所の中でもプロジェクトチームを設けまして、その結論を急ごうということでやっておりますので、私どもとしましては、できる範囲で、そうしてまた、それが政策の対象となるまとまりを持つような範囲でやっていきたいというような気持ちで臨んでおるところでございます。
  19. 本岡昭次

    本岡昭次君 雇入通知書の問題は後ほど質問いたします。  いま答弁がありましたように、パートタイマーの契約上の問題ではいろんなことが起こっております。私の持っておるこの本も、これはパート110番の中で出てきたいろんな訴え、相談なんですね。ごく初歩的な事柄まで一々訴えて、だから、パート労働というのは本当にこれは労働者じゃないというふうに私は思います。  そこで、いまおっしゃいましたけれども、その中で、現在のパート労働者とフルタイム働いて、労働組合もある、労働協約もある、あるいはまた就業規則等がきちっとしておるという、そういう労働者パート労働者と比べて、一番雇用契約上問題があると思われるのはどういう点だというように認識しておられますか。
  20. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 一番契約上問題があるということでは、おっしゃいました点として、たとえばパート労働条件をめぐってどういうトラブルが出ているかということでございますが、それで見てみますと、たとえば賃金の問題では、昇給をどうするかとか、ボーナスはどうなっているのかとか、あるいは退職金はどうですかとか、こういうような賃金面での問題。それから労働時間の関係では、年次有給休暇があるのかないのか、それから時間外労働は一体どうするのか、そして割り増し賃金をどういうふうに計算するのか。それからまた、退職の問題につきましても、その退職の時点とか、あるいは解雇だとか、こういうことがトラブルの事例として、私どもとしまして監督署の窓口に出てくるようなケースになっておるわけでございます。  それでさかのぼって、それはどうしてだろうかということになってきますと、やはり先生からちょっと御指摘がありましたのですけれどもパートタイマーについて労働基準法の適用がないんじゃないかという誤った認識が、残念ながらまだ残っているわけでございまして、これはパートとして雇う方も、パートとして雇われる方にもあるわけでございますし、また、日常私どもお話ししておりまして、このような方がというような方の中にも、本当にパート労働基準法の適用があったのかというようなお話が出るくらいでございまして、私どもとしましては、やはり基準法の適用がないというような誤った認識があるということが一つ基本にはあるのではなかろうかと思います。  そしてまた、パートであるからといって、わりあいに手軽に雇ったり、また雇われたりということから、したがいまして、その際に労働条件がどういうのであるかという点がお互いの間ではっきりしてないということが一つあると思います。これはまた、先ほど申しましたように、賃金とか労働時間とか、その他いろんなトラブルの直接の原因になっておるのではなかろうかと存じます。
  21. 本岡昭次

    本岡昭次君 だから労働省としては、雇入通知書ですか、こういうものをおろして雇用という問題をひとつ明確にしなさいと、文章化しなさいという指導をされているようです。  そこで現段階で、それではこの雇入通知書、まあモデル様式でしょうが、これが有効に機能をしているのかどうかという点。あるいはまた、この措置について、パート労働者の側はそう問題ないと思いますが、経営者の側、企業の側がどういう対応をこれにしようとしているのか。あるいはまた、これは本来は、雇用主と雇用される側の労働者の間で協約を結び、そしてそれを文章化して、双方の労働条件賃金その他を明確化するという、労働基準法第十五条に基づく措置をやる前提の措置ではないかと思うんですが、そういうことを知らないからこういうものでもって指導をしていると、こう見ているんですが、いま言いましたように、現段階においてこれがどう有効に機能しているのかという点。あるいはまた、経営者側の対応。それでは将来これを労働基準法十五条に言う労働条件の明示というところに持っていくための手だてとして使おうとしているのかといったような点についてのお考えを聞かしていただきたい。
  22. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) この雇入通知書の趣旨につきましては、先生の御質問に対しまして私がお答えしましたとおり、雇い入れの際の労働条件のお互いの間の合意が不明確であるということでもって、それを明らかにしておくということによってトラブルを防ぐと同時に、また、パートタイマーとして雇われる方につきましても、何と申しますか、はっきりした労働条件を書面につくるということでもって、いわばきちんとした契約条項が確定されるという意味を持っておる、それがねらいであるというふうに私ども考えておるわけでございます。  こういうことから、先生そこにお持ちでございますので、雇入通知書につきましてどういう項目を盛り込んでおるかというのは省かしていただきたいと思いますけれども、時間につきまして、休日につきまして、時間外労働につきまして、あるいは休暇、賃金につきまして、かなり詳しい中身を雇入通知書に明記してほしいということを書いておるわけでございますし、また、このパンフレットには、パートタイマーにも労働基準法とか安全衛生法とか最賃法とか、あるいは労災保険法とか、こういうものがきちんと適用になるんですよと、当然認識してくださいということを書いておりますし、また、先ほど申し落としましたけれどもパートにつきまして就業規則が実は十分整備されていないという状況がございますので、パートにつきましてもこの整備が必要ですということを明記しまして、パートタイマーをめぐる労使、特に事業主側につきましてこういう点をはっきり認識してもらうために明らかにしておるわけでございます。  それで、その効果のほどはどうかと、こういう御質問でございますが、実はこれはことしの四月から始めたわけでございます。それで、この雇入通知書やり方を導入しますには、先ほどお話し申しましたように、労働基準法研究会の先生方の御意見も煩わしましたし、また、組合の方では、労働関係の四団体の方々にも事前に御説明しまして、こういう内容のものを考えておると。それからまた、使用者側にも、日経連その他に御説明いたしまして、こういう中身を考えておるということで、いろいろ御意見は賜ったわけでございますけれども、私どもとしましては、いわばその御意見の最大公約数として、それでは当面ここでスタートしてみたらいいということでもって、関係者からも御理解をいただいたものとしてスタートをさしていただいたわけでございます。  何しろまだ始めたばかりでございますが、対象としていま現在考えておりますのは、大都市のありますような地域、私どもそういうところはパートが多いと思いますものですから、そういうような地域で、しかも小売とかサービスとか、こういうのもパートの多い業種でございますので、こういうところを重点に考えていきたいと、そういうことで考えておりまして、いま私ども自身としては、試行と申しますかテストと申しますか、そういうつもりでいるわけでございます。  それで、そういうことであります以上、当然これをめぐりましていろんな御意見が出てくることを期待しておるわけでございます。もう少しこう改善したらいいとか、こういう新しい事項を盛り込めとか、あるいはこういうふうに修正しろとか、あるいはこれは省いた方がいいとか、いろんな御意見が出てくると思いますが、私は気になりまして、地方へ行ったときに、どんなふうになっているだろうかと聞いておりますが、何しろ現在はまだその制度の説明をやっておるという段階でございまして、いまのところ、これについて積極的にこうしたらいいという御意見は、まだ実は一月余りでございますので、まとまったものとしては出てきておりませんが、私どもの気持ちとしましては、そういうものが出てくればそのテストの結果から中身も変えていく。それからまた、そこに出てくる問題点も考えて、ほかの地域なり業種なりへの拡大も考えていくというつもりで現在やっておるところでございます。
  23. 本岡昭次

    本岡昭次君 この通知書を説明する文章の中でちょっと気にかかることがありますので、労働省にお尋ねします。  ここで、「労働基準法では、パートタイマーを含め労働者を採用する際には仕事内容賃金労働時間などの労働条件を明示しなければならないと規定し、」——これは労働基準法の第十五条でしょう。「そのうち賃金に関する事項賃金の決定、計算及び支払の方法並びに賃金の締切り及び支払の時期)については書面を交付する方法で明示しなければならないとしています。 したがって、「賃金に関する事項」以外の事項については、口頭で明示する方法でも差し支えありませんが、実際には書面で確認し合うことが、後日のトラブルの発生を未然に防止するうえで大変望ましいことです。」と、こう書いてあるんですね。「大変望ましいことです。」と書いてあるんですよ。これを見る限り、文書でもって労働条件を明示する、まあいわば労働協約を結ぶということ、雇用契約を書類で、文書で結ぶという事柄については、賃金に関することだけが義務づけられていて、そのほかは大変望ましい、そうすることが望ましいことなんだという形の理解ができる文面になっています。  しかし、通常労働組合が労働協約をする場合、文面で雇用条件を契約する場合は、賃金だけじゃなくて、雇入通知書にも書いてあるように、休日の勤務あるいは時間外労働、休暇、その他全般を含めてこれは文書でもってお互いに労働条件について確認をし合うわけですよね。だから、そういう意味で、この一面に書かれてある文面はちょっと誤解を招くんではないか。あえてこういうふうには書かずに、やはりすべての面について文書でもって明示すべきであるという指導性の方が強く前面に押し出されるということでなければならぬと、こう思うんですが、私の考え方おかしいですか。
  24. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) これは労働基準法の十五条におきまして規定していることを、その趣旨を考えましてここに書いているわけでございますが、十五条は、先生御存じのとおり、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金に関する事項については、命令で定める方法により明示しなければならない。」という規定がございまして、それではその賃金についてはどういうことになっておるかというふうに申しますと、これは労働基準法の施行規則の五条におきまして、先生がいまお聞きになったように、命令で定める際には、賃金に関する事項のうち、「賃金の決定、計算及び支払いの方法」云々について、書面でもってやるというふうに書いておるわけでございます。  つまり、労働基準法自体が賃金に関する事項については命令で定める方法ということで、書面でやるということで書いておるわけでございまして、しかしながら、この雇入通知書におきましては、パートタイマーの雇い入れの際にはいろんなトラブルがあるから、それよりは、そのトラブルの発生を未然に防止するために賃金に関する事項以外につきましても、単に口頭では足りず、書面で確認し合うのが望ましいのではないかということでそういう考え方を打ち出したわけでございまして、いわばこれは指導ベースの問題でございますが、そういうような方針で指導しようという考え方でこれをこの雇入通知書のパンフレットにはっきり書いたわけでございます。
  25. 本岡昭次

    本岡昭次君 それはわかるんですが、「口頭で明示する方法でも差し支えありませんが、」というふうな、こういうことは書く必要はないのではないかと思うんですよ。口頭で明示したって本当の明示したことにならぬですよね。後でそう言ったか言わないかということはこれはもうトラブルの原因になるんですから。  だから私は、こういう雇入通知書ということでもって契約条件雇用条件というものを明示していくということは、これは大事なことだと思っているんですよね。だから、ただ単にこれはモデル様式で、このようにしなさいという指導上の問題より、やはり法律等によって今後はっきりと労働者の身分、労働条件その他のものが守られていくという状態になるまでもう少しこれに対して重みを持たす。つまり、経営者に対して、雇入通知書というものによって文書でもって雇用しなければいけませんよという義務づけのところまでこれの意味を強める必要というものを私は感じるから言っているんですがね。法律保障ができるまでこれに対するウエートをもう少し強くかけてみたらどうかと思うんですが、いかがですか。
  26. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 私、先生の御趣旨はよくわかります。ただ、義務づけという言葉になりますと、やはり労働基準法というのはバックに刑事罰も持っておるわけでございますし、そういうことで、労働基準法としましては先ほどの十五条のような規定を設けておるのではなかろうかということも考えておるわけでございますが、労働基準法を上回って行政指導で義務づけるというのは、何と申しますか、ちょっと言葉の矛盾みたいな話ではなかろうかと思いますが、私どもとしましては、実際の指導に当たってはその趣旨もよくお話ししましてこの通知書によってやってくださいということをお願いいたしておりますので、そういうことでもってトラブルの未然防止というねらいを達成していきたいというふうに思っておるわけでございます。必ずそうしなさいといけませんよとこう申しましても、それじゃ一体その根拠は何だということでもって無用の論争を招いて、かえってそれがトラブルの原因になっては、これはまたちょっと避けた方がいいのではないかというふうに思いますので、むしろこういうことで趣旨を話しまして、お互いに納得ずくでやっていただいた方がそのねらいとするところがより円滑に達成されるのではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。
  27. 本岡昭次

    本岡昭次君 あなたの理屈はそれでわかりますけれどもね、しかし先ほどから論議しているように、パートタイマーという形で働いている人たちもこれは労働者であって、労働基準法の適用を受ける労働者だとあなたもおっしゃいました。だからその労働基準法の第一条には——いまさらここで読む必要もありませんが、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」、そして、「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、」「この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」と。だから、「労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならない」ということは、その労働条件の明示というのは賃金だけであるからそのほかは明示しなくてもいいと。しかし、その明示しなくてもいいということがトラブルの原因になり、あるいはまたその明示されていないことでもって労働条件が劣悪な状態に置かれる、こういう関係になってくるんですからね。そこのところにこだわってやるということは、まさにこの第一条に言う、「この基準を理由として労働条件を低下」させるということにつながっていくという私は解釈をしますから、先ほどからパートタイマー労働者雇用条件というものを明確化し、そしてそれを向上さしていくという観点に立っての労働省の指導性を私はお願いを申し上げているんですから、そういうつもりでこれからもやっていただきたいということを要望を、これはさしていただきます。  労働大臣、どうですか。いまそういうやりとりしておるんですが、ちょっと一言、いま私がやりとりしました問題で、御感想があればお願いします。
  28. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 先生がパートタイマーの問題についてるる御質問され、また、政府委員とのやりとりを聞いておったところでございますが、いずれにしても、パートタイマーというのは非常に多様な形態というか実態でございますので、最初先生が数字をお示しになりましたが、まあそのようなこともございましてなかなか把握しにくい点がございますことは事実でございます。  しかしながら、先ほども基準局長から答弁がございましたように、特に女子なんかはこれからますますふえこそすれ減ることはないだろうということも申し上げたところでございます。そうなりますと、こういう方々に対して、これは雇い入れ側もまた働く方々も、やはり明確にすべきものはしていきませんと、確かにけさ新聞の問題もございましたけれども新聞内容についてはつぶさに知りませんから具体的に申し上げるわけにもまいりませんが、いずれにしてもこういうようなことがあるということは、やはり労使間においてお互いに不安感があったり、また、それらのことによってトラブルが生じたことによってある意味では生産性の低下ももたらすでしょうし、また、ある意味ではそういうような労使関係ではどうもしっくりいかないというようなことで、毎日が嫌な思いをして働くというような環境では意味がございませんから、そういうようなことを踏まえて、いま労働省におきましてもこの新しい時代に対応できるようないろいろなプロジェクトチームをつくって勉強しております中に、このパートタイマーの問題も重要項目として入れてございまして、鋭意勉強をいたしておるところでございます。再々委員会等で私答弁いたしておりまするが、大体五月いっぱいぐらいをめどにその検討した中身が出てまいりますので、それらを踏まえた上でひとつできる限り御趣旨に沿うように努力いたしたいと思っておるところでございます。
  29. 本岡昭次

    本岡昭次君 いままで論議しましたこのパートタイム労働者の問題について、行管庁の方でも問題を重視してその実態調査を行い、改善勧告を行っております。また、労働省の方もそれに対応する措置についての回答も出ているわけで、行管庁に実態調査をされたその全体をここで報告をいただく時間はございませんが、重要な部分について一、二ここで御報告いただいたらありがたいと思います。
  30. 竹内幹吉

    説明員(竹内幹吉君) 行政管理庁では、五十七年一月から三月まで、「パートタイム労働者等の労働条件確保に関する実態調査」を行いまして、この結果につきましては、五十七年の五月末に労働省の方に差し上げてございます。  この中で取り上げておりますのは、先ほどからお話しがございますように、パート労働者がきわめて増大しておると、しかし、こういった労働者雇用している事業所の中には、労働関係法令に抵触していると見られるものが数多くあるものですから、三点ばかりを指摘してございます。一点は、就業規則の整備等の指導による適正な雇用関係の確立を推進すること、第二点は、パート労働者雇用しておる事業所に対して監督指導を充実すること、もう一点は、自主点検制度の効果的な推進ということで、その措置について指摘いたしております。
  31. 本岡昭次

    本岡昭次君 その調査の中で、雇用保険の適用状況のことも報告をされております。いま私がかわってその報告の部分を読んでみますが、一日の所定労働時間の四分の三以上または一カ月当たりの就労日数が二十二日以上となっているパートタイム労働者の中で、雇用保険に全員加入していない事業所が三二%、労働者の一部加入二七%で、全員加入している事業所は四〇%にすぎないという状態になっているということが問題にされているんですが、行管庁、この私がいま申し上げました部分は間違いありませんね。
  32. 竹内幹吉

    説明員(竹内幹吉君) 間違いございません。
  33. 本岡昭次

    本岡昭次君 労働省にお尋ねしますが、本来雇用保険に加入させなければならない、そうした条件を具備している労働者実態がいま言ったようなことなんですね。これを労働省としてはどう分析しているのか、今後どのように対処しようとしているのか、ここで明確な答弁をいただきたいと思います。
  34. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 雇用保険の運用につきましては、いわゆるパートタイマーにつきまして、通常労働者と同様の就労実態にある者につきましては、一定の基準を設けまして被保険者として取り扱うことといたしておりますが、これは御案内のとおりでございます。  先ほど来御指摘のございました、パートタイマーに関する行政管理庁の実態調査結果報告書によりますと、雇用保険につきまして加入していない例が相当数あるということで遺憾なことだと存じております。この報告の中で指摘されておりますように、未加入の理由といたしまして、たとえば「パートタイム労働者全員を雇用保険に加入させると保険料の会社負担が大きい」とか、あるいは「パートタイム労働者から雇用保険加入の希望がない」とか、パートタイム労働者賃金から保険料を差し引かれるため収入の減少を嫌う」というようなことが挙げられておるわけでございまして、したがいまして、私ども行政といたしまして、こういうパートタイマー方々に対します雇用保険の適用を進めるに当たりましては、実はこれは先生も御案内のように、現在雇用保険の適用自体につきまして、五十年から全面適用になりました際に、従来五人未満が任意適用でございましたけれども、全面適用になりましてからは商業、サービス業等の零細規模の事業所が非常に多いとか、あるいはそういう事業所は変動が激しいためになかなか把握がしにくいとか、また、そういう事業所の方でも事務処理能力が低いというようなこと等もございまして、全体の適用が遺憾ながらなかなか進みにくい状態にありますことと同時に、この行政管理庁の調査にもありますように、事業主なり労働者自体がこの未加入についてそれぞれ理由を持っておられるとか、そういういろんな要素を考慮しながら適用の促進を図っていかなきゃならぬということでございまして、そういう面では安定所の行政の体制等につきましても、これも残念なことではございますけれども、なかなか全部の適用把握ということで進みにくい点等もございまして、そういう点につきましては、たとえば事務組合を活用して適用促進を図るとか、あるいは適用の周知徹底につきましても、事業主団体を通じて進めるとか、そういういろんな手だてを使いながら現在の行政体制の中でできるだけの努力をしていかなきゃならぬと存じておりますし、そういう方向で全体の適用促進の問題とあわせまして、こういうパートタイマー方々の適用漏れについても、その適用促進につきましては、基準に該当して適用漏れになっておられる方々の適用促進につきましては、そういう形で努めていかなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  35. 本岡昭次

    本岡昭次君 同じことが、健康保険、厚生年金保険の問題にも実態調査として出てきております。そしてまた、「社会保険の適用及び事務手続に関する地方監察結果報告」というのが五十七年の十月、同じく行政管理庁の行政監察局の方から出ておりまして、これについても、パートタイマー増加というところから健康保険及び厚生年金の適用について問題があるという指摘があります。  厚生省、おいでいただいておるのですが、このパートタイム労働者のこうした健康保険及び厚生年金保険、そうした適用の条件を持っていながらこういうところに加入していない事業所が三五・七%あるというふうな実態の中で、どういうふうにこれを認識し、今後の対応を考えておられるか、答弁いただきたい。
  36. 小島弘仲

    政府委員(小島弘仲君) 先ほど労働省の方からお話しがありましたように、一方ではパートタイムの適用を求める労働者が多い半面、適用を嫌うということがあったり、あるいは事業所数も、非常に規模の小さいところは消長が激しいということで、なかなか指導の徹底しない面があろうかと思いますが、行管庁の御調査のような大きな数字になったのには非常に驚いておるところでございます。今後さらに、強制保険でございますので、一定の基準をつくりますればそれは全面的にその基準によって適用していかなければならないものでございますので、関係出先機関及び事業主等に対する周知徹底を図って、このような事態の解消を図ってまいりたいと考えております。
  37. 本岡昭次

    本岡昭次君 いま、行管庁の調べたこの実態を見て驚いているということがありました。労働省、厚生省、それぞれ雇用保険あるいはまた健康保険及び厚生年金保険の本来適用をされるべき、また、その保険に入らなければならない状況を具備している事業所で、どのくらいそれに入ってないのかというふうな実態をいままでつかんでいたのか、つかんでいなかったのか、これ、どうなんですか。
  38. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 雇用保険の適用につきましては、残念ながらいままでそういう把握はいたしておりませんでした。先ほども申し上げましたように、全体の適用も、非常に多い数の中で行政体制との関係等もございますが、進んでおらないところもありまして、いろいろな工夫をしながら進めておるところでございますが、そういう中でまた今後そういう実態の把握も努めなければならぬ、十分努力してまいりたいと存じます。
  39. 小島弘仲

    政府委員(小島弘仲君) 社会保険関係につきましては、適用事業所の範囲が一応法定されておりますので、常雇の労働者五人以上、あるいは職種によって飲食店のようなものが外れているというようなことがありますので、強制適用事業所についてはほぼ十分達成できるのではなかろうかと、このように考えております。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 時間が来ましたので、最後に労働大臣に所見を承って質問を終わりたいと思います。  約五十分にわたってパートタイム労働者の問題を素通りしたと、こう思っているのですね。実態は、もっとえぐり出せば具体的なものがたくさん出てくると思います。私は、これから具体的なものをこの国会へ持ち込んで、早くその対策を急がなければならないという立場で議論を展開していきたいと思います。きょうはさっと素通りをさせていただいたということなんですが。  そこで労働大臣、まず、その実態をとにかく早くつかまなければならぬという問題と、一方この世界的長期不況下において、雇用状況というものは非常に不安定な状態にあるということがあるわけなんですね。だから、フルタイマーの労働者雇用が不安定であり、一方、季節労働者等も含めながら、パートタイマーという形でいわゆる不安定雇用労働者と言われる方が数百万人も存在しているという実態で、これから労働省はこの労働問題を見ていかなければならないわけなんです。だから、そういう意味で、不安定労働者パートタイム労働者雇用秩序の正常化というんですか、その雇い入れとかあるいは解雇とか、そうした労働者基本的な生活、生命にかかわるような問題についての秩序を適正なものとして制度化をするということが私は急がれるとこう思いますし、先ほども論議したように、パートタイム労働者であっても、身分、労働条件というのはこれは一般の他の雇用労働者と同様に、労働基準法を初め関係労働法の規定の適用を受けられる条件がある、また、ない人に対してもその適用が受けられるような条件づくり、こうしたものをこれから徹底していただかなければならぬと思うし、特に、女子パートタイマー雇用環境の問題ということについては、早急にこれは法制度整備が必要である。  また、先ほども公明党の方から男女雇用平等法の問題の提起がありましたが、社会党もこの今国会に雇用における男女の平等取扱いの促進に関する法律案というものも提出をいたしております。こうした雇用における男女の平等ということを法律で確定していく、こうした問題等も非常に重要ですし、こうした全体の諸施策というものをこれから労働省が総合的に各省庁と連携をとりながら進めていただかなければならぬと思います。そうした観点について一言労働大臣の所見というか、やりますという決意を聞かしていただいて終わりたいと思います。
  41. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) パートタイマーの問題につきましてるる御質問があったわけでございますが、先ほども申し上げましたように、いずれにしても、現況、いろいろな問題が起こりつつあることも事実でございます。そこで、労基法研究会におきましても、また省内のプロジェクトチームにおきましても、鋭意勉強いたしておるところでございますが、いずれにしても、法的整備等も含めて種々労使双方で考えなければならぬこともあるかと思います。  しかしながら、何と申しますか、雇い入れる側あるいはまたパートタイマーで働こうとする方々もどうも基準法の適用であるとか、その他の関係法を熟知していない面もあるかと思います。そこで、先ほども御論議がありました雇入通知書等もつくったわけでございますが、そういうものの周知徹底、そしてまたその中に不備な点があればこれはまた直していけばいいというようなこともございますので、考えられる範囲内でいままでも努力をいたしてまいりましたところでございます。これからも、先ほど言ったようなプロジェクトチーム等を初めとしての論議の中でできる限りやっていきたいと、こう思っております。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 終わります。
  43. 対馬孝且

    対馬孝且君 先ほどの理事会で、きょうは昼食抜きで一時までということで時間を制限されましたので、はしょっていかないと時間がないものですから、ひとつ答弁も的をしぼって答えてもらいたいというふうに考えます。  一つは、総合的な雇用調整と最近の雇用情勢に対する認識と対応策、二つ目は、特殊法人の職員の賃金問題について、三つ目は、夕張新鉱対策に伴うこれからの諸対策について、時間がございませんから、ひとつこの三点に的をしぼって申し上げますから、答えていただきたいと思います。  この間も、大野労働大臣の所信表明に対して私申し上げていますが、特に四月二十八日の閣議で大臣も触れられていますけれども総理府労働力調査によりますと、相変わらず三月も高水準の失業率が報告されています。特に一月から三月の製造業の失業者の表が出ていますけれども企業内失業者だけで一—三月で約八十万を超えていると、こういう数字が出されております。これ、私持っておりますけれども、住友銀行が調査をした試算の表に出ておりますけれども、そういうことで、この前も相当厳しいと、厳しく受けとめてこれからの雇用対策雇用認識それから景気浮揚の対策を含めて抜本的な対策に踏み切るべきだということを申し上げました。そこで、このことについて、この間閣議で大臣もそれなりの認識をされて二十八日に申されていますが、総理府がはっきり出していますね、御案内のとおり。この新聞にも明らかなように二・五%、五十七年度平均百四十三万という五十七年度トータルと、それから三月の二・六%という総理府調査発表に相なっております。まさしく厳しいという情勢が相変わらずこれが克服をされていない、こういう認識を踏まえまして、現状認識と今後の対策について、基本的な態度をお伺いしておきたいと思います。
  44. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 最近の雇用失業情勢なり今後の見通しにつきましては、ただいま先生から御指摘ございましたように、非常に厳しい状況で推移をいたしております。たとえば有効求人倍率が〇・六倍程度で推移をいたしておりますし、完全失業者数は前年水準を大幅に上回る状態で続いておるということでございます。  今後の見通しにつきましても、若干欧米の景気回復の兆しとか原油価格の低下等明るさもございますけれども、まだまだ世界経済の回復の動向なり、あるいは貿易摩擦問題、構造不況業種問題など、わが国を取り巻きます諸情勢は非常に厳しい状況でございますので、楽観を許さないような状況だと思います。  ただ、少しでも明るさがあるとすれば、このところ求職者の増加傾向が若干鈍化をいたしておるとか、あるいは求人につきましても第三次産業に加えまして製造業でも機械関連の業種を中心に増加に転じておるところも一部ございます。そのほか、先ほど言いましたような世界経済の若干明るい動きとか、また、わが国におきましても、さきに政府におきまして決めました経済対策を実施することによりまして景気回復が進んでまいりますと雇用失業情勢も緩やかに改善するというふうに見ておりますけれども、総体的にはなお楽観を許さない状況で推移するというふうに見ておるわけでございます。  これに対します雇用対策といたしましては、すでに今年度の予算として雇用対策についての重点を盛り込んだ各般の施策を実施することといたしておりますけれども、やはり大きな柱といたしましては、雇用調整助成金制度をもとに業種指定を機動的に行いまして失業者の予防を重点的に進めるとか、あるいはまた、特定求職者の雇用開発助成金というような制度を活用いたしまして雇用開発なり離職者の再就職の促進を図るとか、また、昨日成立いたしました構造不況業種に対します対策としての特定不況業種・特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する法律によりまして各般の雇用安定対策充実することといたしておりますので、そういうものを活用して雇用安定に努めてまいりたいと思っております。  なお、今後ともやはり業種とか地域あるいは労働者実態等を見ながら今後の動向に対応して適切な対応をしていかなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  45. 対馬孝且

    対馬孝且君 一応一般論としていま局長からございましたけれども、厳しいという認識を受けとめながら、諸対策という一般的な見方を、いま対策をそれなりに出されましたけれども、私はやっぱり労働省として、これは通産省がこの前産業政策と相まって成長率二%ラインということをスタンダードにして検討しましたね。これはよりますと、もう日本雇用というのは、これ五百万から一千万の失業。ヨーロッパに比べて決していいとは言いがたい。そういう最悪の分析も、通産省の産業構造課の試算の中に出ておりますね。これ、検討されておりますね。そういう産業政策の立場から見てもそういう検討も、これ結論だというふうに位置づけてはいませんけれども、二%ラインに落ち込むと、この場合の失業というのは五百万から一千万と明らかに出されているんですけれども、ここらあたりを労働省はどういうふうに受けとめていますか。
  46. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいま御指摘のございました、二%成長だと五百万とか一千万の失業者が出るかというような内容の、通産省のまとめられました「日本経済の潜在成長力」という内容のものは承知をいたしておりますが、私どもも、今後の雇用の動向なり、それに対応する対策につきましては、経済計画との調和を図りながら雇用対策基本計画の見直し作業の中で進めておるわけでございます。  ただ、具体的に何パーセントでどのくらいの失業者かということにつきましては、経済成長率と雇用需要の関係というものが、そのときの成長のパターンとか、あるいは産業構造の変化の状況によっては異なります。たとえば、最近第三次産業が拡大して就業者がふえておりますけれども、第三次産業ですと雇用弾性値が高いというようなこともございますし、一概に経済成長率と雇用需要の関係を示すことはむずかしいわけでございますが、ただ、低い経済成長の状態が続きまして、労働力供給の伸びに対応した雇用需要確保されない場合は、やはり失業者は増加いたしますし、そうなりますと、特に高年齢者の再就職が一層むずかしくなるとか、あるいはまた、構造的に不況に陥った業種とか、地域における雇用情勢が厳しいものになるというようなこともあるわけでございまして、そういう面では私ども、やはり雇用の安定を図るためには適度な経済成長を維持して雇用需要確保することが重要であると考えております。  そういう観点から、経済運営を進めるということを政府の中でもそういう立場で進んでいきたいと思いますし、これにあわせて、雇用対策につきましては、先ほど申し上げましたような諸対策に重点を置いて進めてまいりたいと存じております。
  47. 対馬孝且

    対馬孝且君 大事なことは、産業政策上、経済成長率二%という最悪の事態を出して試算をしたわけですから、この受けとめ方を誤ると、私は、労働省は大変な誤りを犯すと思うんですよ。  先ほども議論があったけれども、いま日本の趨勢を見ますと、時間がないから私は触れませんけれども、これは傾向をずっと見ると、先ほどもパートの議論がありましたけれども、臨時工、社外工、それから季節労働者、こういう俗に言う臨時、パート、季節、出かせぎ、こういうつまり家内労働、不安定労働者というのはやっぱり非常に増大をしてきている。これを入れると優に三百万超えるんですよ。これは労働省の数字には、これはそのものは直接統計数字には入っておりませんけれども、私はやっはりこの認識を誤ると、先ほども同僚の本岡君が言ったけれども、百万を超える不安定労働者がいまだに存在をしている。この不安定労働者が存在をしていることに対して、もちろん単に労働政策で解決できる問題ではない。  私は、この前も大臣に所信を伺ったわけでありますけれども、この大臣の所信表明の中にも、大臣は言葉としてはなかなかなるほどという、うなずける言葉が出ておりますけれども、そのような裏づけある対策に対していま一歩やっぱり姿勢が問われていいんじゃないかと、積極的に打ち出していいんじゃないかということを言いたい。  つまり、労働者の本当に苦労のない安定した労働の道を求めていきたいと、このことでひとつ諸対策を進めてまいりたいという意欲的な文章にはなっていますけれども、私は、そこでやっぱり労働大臣の立場から、これをもう一回皆さんがはっきりしてくれと言っているのは、現状どう言ったって減税問題がまだ不透明である。それから、しばしば当委員会でも議論したけれども、定年延長の立法化という問題が、これはそれなりに努力はしているけれども、まだその方途は見出していない。時間外労働はどんどん制限をされる。ことしの春闘を見たって四%ライン。減税にはならない、春闘は抑え込まれる。これじゃ一体内需拡大につながる購買力が高まっていくのか。  こういうことに対して、これはもちろん経済企画庁あるいは総合経済閣僚会議というのがございますから、大臣もそれなりに反映をされているというふうに聞いていますけれども、私はここらあたりに、やっぱりいま一番問題というのは、どうしたら勤労者、消費者に対して購買力を高め、内需を拡大すると、そのための雇用対策というのを、どういうふうに雇用増大していくかという意味で、労働省は主管でないというような認識じゃなくて、むしろ総合経済の立場から、また総合雇用関係を、雇用を安定させる意味からも、思い切って閣議でそこらあたりを、労働者労働改善労働賃金向上、そして労働者の積極的な雇用安定、消費者の購買力の拡大という面での取り組みというものを、大臣も所信表明で「勤労者が安心して将来に夢を持てる生活を営めるようにすることが労働行政の使命だと考えております。」と、ここまで言われておるわけですから、この大野労働大臣の言葉からいくと、まさしく大した言葉になっている。  それを裏づけする、いま、一般論的には、安定局長言われることについてはそれなりに対策は手を打っているけれども、もっとその姿勢を正すべきときに来ている。これはやっぱり労働省というのは労働者を保護する立場にある省なんですから、そういう意味では、大臣もしばしば言われていますけれども、いまこそ、なお減税問題にしても不透明であり、春闘の段階では、いささか賃金はまだ本当に低賃金実態に置かれているという点について、これから公共企業体も仲裁の段階に入ってまいりますけれども、いずれにしましても、そういう意味で、大臣が言われている所信の決意、これは私も非常に高く評価するのでありますが、そのことをどうこれからお取り組みになられるかということについて、ひとつ大臣の考え方をお聞きしたいと思います。
  48. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 確かに厳しい環境下にある雇用情勢でございます。しかしながら、雇用問題を論ずる前に、やはり経済というものを考えなければ、雇用が先に行くわけにもまいらぬということで適切な経済運営と、言葉で言うのは簡単でありますが、現実になるとなかなか大変でございます。  そこで政府としても、公共事業の前倒しであるとか、あるいはまた、財政金融面からのてこ入れであるとか、また同時に、減税等も考慮しておるところでございまして、この減税問題なんかにつきましては、私がことしの初めでしたか、その問題について、いずれにしても国内の需要の喚起というようなことを含めるくらいのことをしなきゃならぬということを記者会見で言いましたら多少物議を醸しましたけれども、しかしながら、それが引き金となって、今日ここまで減税問題が非常にクローズアップされてきたと。労働省としても、私としても、自負するというような気持ちでおるくらいでございまして、非常にできる限りのことはしておると言っても過言じゃないと思っております。  しかしながら、現実面を考えると、財政がこれだけ厳しいときでございますから、なかなかいますぐというわけにいかぬ。また世界経済も低迷しておる、同時に日本の景気もおくれておる。しかし、先ほども局長から答弁ございましたように、いろいろな指標から見ていきますと、ここのところ大分経済の回復の基調というものが、兆しが見えてきたというところでございますから、これをもう一歩進めて、でき得る限り一日も早く勤労者諸君が、それこそこの所信に書いてあるような、希望の持てるような時代を築き上げるように、最大の努力を私としても政府としてもやっていく所存でございますので、いずれにしても、もうしばらくの時間をかしていただきたいと思っております。
  49. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣から、減税問題についても閣議で発言をして、それなりに一つのバネになった。これはそのとおり私はあれだと思いますけれども、むしろわれわれは、これしばしばもう予算委員会を通し、あるいは与野党国対委員長会談、書記長、幹事長会談を通し、また労働四団体が毎日のように行動を起こしてこの減税問題に立ち上がった。この背景があって渋々自民党が、政府が腰を上げたというのが実態でありましてね。しかしいずれにしましても、今国会中にわれわれは、まあここで言うべきことかどうか別にしましても、決着をつけるという、大変迫まっているわけですが、私は一般論を言っているんじゃなくて、やっぱり労働者にまつわるそういう雇用対策というのは、購買力を高めて、市場を回復をしてという、こういう景気回復につながることに対して、おれは労働省だからと、何か客観的な立場で見ればいいんだというんじゃなしに、むしろそういう積極面をここで、言葉じゃなしに、そこらあたりをひとつこれからも鋭意最善の努力をしてもらいたい。その点よろしゅうございますか。
  50. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 先ほども申し上げましたように、実際私どもは前向きにがんばっておるところでございますので、いま先生よろしゅうございますかというお話しございましたが、私どもも当然そういうつもりでやっていく所存でございます。
  51. 対馬孝且

    対馬孝且君 そういう点でひとつ、今後の問題たくさんあるんですけれども、総論に対しての大臣の姿勢を再確認という意味でこの問題を一応、一段階終わりにしたいと思います。  そこで、時間もありませんから、特殊法人の職員の賃金問題について、これはもう長い歴史的な経過があるわけですから私も率直に申し上げるんですけれども、特殊法人の職員の賃金実態というのは、六十八国会の衆議院の特殊法人問題についての質疑応答の会議録がございます。これはもう労政局長も御存じだと思いますけれども。したがって、労使双方が実情及び意見を聴取して検討するという、通称言われる五・三〇見解、五・三〇見解と通称こう言っているわけでありますが、これが十一年もたっていまだに前進的なものがない。これはどうも私は怠慢ではないかという感を深くせざるを得ないんですが、ここらあたり、どうしてこれが解決になっていかないんだと。まあ一年や二、三年、そこらのことはわかるにしても、石の上にも三年という言葉もあるけれども、十一年にもなってさっぱり結論が出されていかない。どこに一体その問題点があるんだということを含めてひとつ率直に、この五・三〇政府見解を示しておきながらいまだに解決ができない問題はどこにあるのかという点をまずお伺いします。
  52. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 特殊法人の職員の給与の問題につきましては、先生御承知のとおり、労働三権があるわけでございまして、労使の当事者間で十分な話し合いをする、自主的な団体交渉をする、そういうことによって決めるというたてまえになっておるわけでございますが、一方で、これら特殊法人については国の財政に依存する度合いが強い。あるいは、何といいますか、国民の負担に依存する割合が強い。そういうところから、その特殊法人の職員の給与というものは国民の理解を得られるものでなければならないという要請がございます。その辺で、それぞれの法律において、給与については主務大臣の認可が必要とされ、主務大臣は認可に当たっては大蔵大臣に協議するというようなことに相なっているんだろうと思います。したがって、そういうことを処理するために必要な措置としていわゆる内示というような制度も生まれてきているわけでございますが、そういう意味で、この二つの命題の調和を図るということは非常に解決の困難な問題でございます。  しかしながら、一方で当事者で団体交渉で決めると言いながら、それが形骸化しておるということでいろいろ問題がございますので、その問題を検討する場を設けようということで、先ほど先生御指摘ございましたいわゆる五・三〇見解という政府見解が出て、労働省におきましてその国会答弁を踏まえてアンケート調査、ヒヤリング等々をやってきたわけですが、先ほど言いましたように、非常に解決のむずかしい、調和を図ることの困難な問題でございますだけに、この間臨時行政調査会でもこの問題について広い視野からの検討が行われてきたわけでございますが、結果といたしまして、臨調においてもこの問題に対する明確な解決案といいますか、示唆も得られずに、なお今後の検討ということで今日に至っているわけでございます。  いずれにいたしましても、労働省としては特殊法人を取り巻く諸般の情勢というものも十分に踏まえ、また、労使を初めとする関係者の意見を十分聞きながら、現状を少しでも改善していくにはどうしたらいいか、今後さらに検討していきたいというふうに考えております。
  53. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは関労政局長ね、もう十一年になるわけですからね。しばしば当委員会でも、いまの関労政局長のような答弁は、その都度労政局長がこの委員会で答弁されて、それでその場限りになっている、失礼だけれども。私、ずいぶん聞いたんですが、政労協の皆さん方の御意見も聞いたけれども、何かその都度、労政局長がかわるたびに、鋭意そのことについては何とか改善のために努力をいたしてまいりますと。これもやっぱり十一年もたつと、これは一年や二年の問題じゃないんだから。たまたま関労政局長がいまここで当事者だったわけでありますけれども、私はこれはやっぱり非常に国会軽視もはなはだしいんじゃないかということになると思うんですね。  これは私、会議録を読ましていただきましたけれども、後藤委員と当時の塚原国務大臣とのやりとりを私全部勉強しました。やっぱり相当細かく、これは一問や二問で終わっているんじゃないんですよね。かなりきめ細かいやりとりの詰めをしている。しかもいまあなたがおっしゃるとおり、労働三権があるという基本を踏まえての詰めをやっているわけですよ。だから、どうしていままで大蔵との間に、あるいは給与関係閣僚会議等もございますでしょうし、労働省としてこれを発議をして、関係省庁との間の詰めの話し合いというものを——いま言ったように、臨時行政調査会の行財政改革という今日の段階でも改善されないということだって、これは臨調に来ていただいていますから後でお伺いしますけれども、何とか改善したいと言うなら、そこらあたり、どういうことでそれじゃ一歩でも二歩でも改善していく用意があるのか。その点について、局長ね、やっぱり改善したいと言うなら、とりあえず当面どういう形で、どういうもので改善をしていくかということを示されないと、これはもう十一年間毎回委員会で同じ答弁を繰り返しているんじゃ、国会軽視だと思うんだな、私はやっぱり。これは特殊法人で働く人間の方だって、何のためにこれ国会で審議した経過が尊重されていかないのかということは問題だと思うんですよ。どうですか、この点ひとつ。
  54. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 先ほども申し上げたように、いわゆる五・三〇見解、国会答弁を踏まえまして関係当事者間からのヒヤリング調査等をやってまいりましたけれども、そこにはやはりいろいろな御意見がございまして、なかなか共通のものを見出すことが困難なわけでございます。  繰り返しになって恐縮でございますが、労働基本権三権は保障されているわけでございまして、団体交渉で自主的に決められるべきである、そういうたてまえの中にありながら国家財政に依存しておる。そこにいわゆる内示制度のようなものがあり、したがって団体交渉の当事者能力に欠けるところがあるのではないか。団体交渉が形骸化していくというようなところに種々問題があるわけでございます。この二つの命題の調和を図るということは非常に困難な問題でございますが、要は団体交渉を少しでも実りあるものにしていくにはどうしたらいいのか、当事者能力をどうしてもう少し高めたらいいのか、そういうところがいろいろあるのではなかろうかと思いますけれども基本的にそれぞれの法律で主務大臣の認可なり大蔵大臣の協議にかかわらしめてあるそこに問題があるわけでございますので、そういう改善策についても非常にむずかしい問題がいろいろあるかと思いますが、五・三〇見解にもありますように、関係当事者の御意見というものをよく伺いながら、一歩でも二歩でも実りあるものにしていく、そういう努力を続けていきたいと思うわけでございます。
  55. 対馬孝且

    対馬孝且君 まだたくさんあるんだけれども、時間がないからね。  いま、一歩でも二歩でも改善に努力したいという、抽象的な言葉ですけれどもね。問題はやっぱり私はここにあると思うんだね。全く当事者能力がないわけだ。大蔵から内示されて、はいそれまでということでしょう、率直に言うと。それは、財政を管理しているのは大蔵だからと言うけれども、これはやっぱり国会の質疑を通して国務大臣が一つの見解を出した、それがどうして詰まらないかというのは、やっぱり僕は大蔵優先の、財政優先の方向にすべてがあるからだと思うんだね。もっと言うなら、労働省側の姿勢が弱いからだと私は素朴に思うんだ。やっぱり特殊法人で働く方々の声は、どうも労働省の姿勢が弱いんではないか、そこらあたりにやっぱり大蔵に押しまくられるという欠陥があるんじゃないのかと。私自身も、やっぱり、十一年間もたっていまだに何の手も打たれていないということ、これはいろいろ問題が残されていると思うんです。  私は、きょう臨調も呼んでいますけれども、臨調の答申の中では結論が出なかった、確かにね。出なかったけれども、ここにこういう文言がありますね。「国家公務員への準拠をより明確にする方向で改革を行うことが考えられる。」と。これは確かに結論は出なかったが、方向性としては、「国家公務員への準拠をより明確にする方向で改革を行うことが考えられる。しかし、その際には労働基本権」云々と。今回ついに結論が出なかったということがあるんだけれども、さっき言った労働三権の基本が明確であると同時に、そうであるとするならばやっぱり当事者能力として、いまいみじくも局長言われたように、やっぱり団交を通じて、労使の団交を通じて一歩でも二歩でも労働組合の要求に対してこたえていく、それが実っていくという形ならここまで出てこないと思うんですよ。ところが、どうもそれがさっぱりかわりばえしない。一発内示がばあんと出たら、それではいそれまでというようなことで、これはやっぱり当事者能力が全く失われているというところに不満がある。  まあ時間もないのでこればっかりやっているわけにもいきませんから、一つは臨調でなぜ答えが出なかったかということを聞きたいことが一点。それからいま局長から、そういう一歩でも二歩でもという気持ちが出ましたから、それじゃ、その一歩でも二歩でもということをその労使の団交の中で、そういう言葉でなしにやっぱり内容で示していただくという姿勢を堅持していただくということはどうでしょうか。
  56. 佐々木晴夫

    説明員佐々木晴夫君) 私、臨調で次長をいたしておりまして、この公務員問題あるいは特殊法人問題につきましての担当をいたしておりました関係で、私から御質問についてお答えをいたします。  御承知のとおり、臨調は期間が二年間で、当初の段階に緊急答申を一昨年の七月に出しました。その中で、給与の問題、緊急答申ですからいわば財政問題が非常に大きな問題になっておりまして、いわば公務員準拠といったような形を当面の問題として一応出したわけであります。その後、制度的な検討をしなければならぬ、特に特殊法人につきまして世上非常に批判も強い、したがって共通管理方策等も検討をいたしました。また人事問題一般としまして、これらについての制度的な検討をいたしましたわけですけれども、いま労働省からもお話しがありましたように、大変むずかしい問題が多い、わずかな期間でもってこの段階で結論を出すのにはいささか難があるということでもって、先ほど先生が言われましたように、公務員準拠も考えられるけれども労働基本権との関係あるいは国際人権規約との関係等もこれあり、いま直ちに結論を得がたかったので今後の検討課題としたと、このような答申にとどめたわけでございます。  以上がその検討の経緯でございます。
  57. 対馬孝且

    対馬孝且君 ずいぶんあんた都合のいいこと言っているんだ。これ、行管庁そんなこと言うけれども、臨調だって給与決定方式だけは検討を持ち越しだよ。たとえば配置転換の推進計画の問題、総合調整の問題、あるいは職員の管理体制の問題というのは、「新規採用を停止する。」とか、全く明快な結論を出しているじゃないか、職員管理の問題では。規則を明確にせいとか。ただし、給与のところへいったら、さっとこれは問題持ち越しであると。これは私は御都合勝手主義だと思うんだね。職員の縛りについては、労働基本権にまつわる問題、雇用問題などは採用は停止である、採用してはならない、管理規則はきちっと強化せよと、これは明確に結論を出しているでしょう、あんた方は。ところが片っ方で、給与だけは結論は持ち越しだと。これは全く私は便宜主義というよりも都合のいいところだけ結論を出して、労働者をいかに抑え込むかということだけしか結論を出さなかった。これが何で国民のための臨調かとわれわれが言うのは、そういうことを言っているんだよ。われわれはこんなことじゃ納得できませんよ。もう一回答弁、簡潔でいいから。どうしてそうなったのかという答えだけでいいよ。
  58. 佐々木晴夫

    説明員佐々木晴夫君) 特殊法人問題につきまして、臨調では、特に基本答申から最終答申に至る段階でもって、つまり昨年の七月の末からことしの三月に至る段階でもって、各特殊法人について個別の検討をいたしました。その中でもろもろの問題が出されたわけでございます。まあいわば世上特殊法人問題について大変な批判もあったわけでございますし、また、実態調査の段階にありましてもやはりいろいろな問題がございました。そこで、特殊法人につきましてのいわば統廃合問題が具体的に論じられたわけであります。その統廃合問題でありますけれども、いわば……
  59. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 要点をしぼって答弁して。
  60. 佐々木晴夫

    説明員佐々木晴夫君) はい、恐れ入ります。  その特殊法人問題のいわば活性化対策というのが非常に重要であると、国民の批判に対するために。そこで、その人員の調整も必要になってくるということから、いま申しましたように、雇用の調整を行うということが一つあったわけであります。  ただ、いまのその人事問題、給与の決定方式、これにつきましては、先ほど来一応申し上げましたような事情でもって、いまの段階で早急な結論を出すことは困難であると、このような結果になったわけでございます。
  61. 対馬孝且

    対馬孝且君 答弁にならないんだ。そんなものは答弁というんじゃないんだよ。少なくとも臨調で出した結論というのは、どう考えたってこれはやっぱり、採用の問題だとか職員の管理問題だとか、それから総合的な調整問題とか触れているけれども、やっぱり都合のいいところだけ結論を出して、労働者のことについては全く結論を出さなかったということがこれはすべての答えなんだ。もっとも、これはあなたの答弁で納得しようとは思わないですよ。だから、改めてこれはやりますから。  そこで、先ほど労政局長、現実の問題ですから一つでも二つでも前進していこうという意欲はわかりましたから、もちろんいまこれ納得できる問題ではないけれども、やっぱりひとつ労使の団交を通して、みずから当事者能力をその内容で生かしていくと、こういうルールづくりに一つでも二つでも前進をさせると、こういう努力を払うということはどうでしょうか。
  62. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ちょっと答弁する前に、委員長からもお願いしますが、委員長もこの問題、公労協の事務局長をやったり、公務員制度審議会の委員をやったり、今度公労委の会長になった石川吉右衛門先生なども含めてずいぶん関連のある問題ですから、大臣、三公社の労使関係の問題にも直接つながってくる問題ですから、やはりいま対馬理事の言うことを十分に頭に置いて、労働省が積極的にやっぱり取り組んでもらいたいということを委員長からも特別にお願いして、関労政局長と大臣の決意表明をお願いします。
  63. 関英夫

    政府委員(関英夫君) この特殊法人の給与決定方式につきましては、先生が毎回御指摘になっておりますように、労働基本権が現在保障されているわけでございます。それが形骸化していくところに問題があるわけでございますが、それは一面的には国家財政に依存しているという面からやむを得ない面もございます。どうしてもその面は調和を図りませんと、これはまた大きな非難を浴びる問題になろうかと思います。しかし、それにいたしましても団体交渉で自主的に決定するというたてまえが少しでも生かされる必要があろうかと思います。労働省で独力でできることではございませんけれども、たとえば、組合の方にはそれぞれの特殊法人別の組合を通じて、たとえば政労協という組織がある、とするならば、それに応じた経営者側の組織ももう少ししっかりしたものとなって、政労協と十分な話し合いをしていくようなこと、そういうことももう少し考えられていいのではなかろうかというふうに私なんかは感ずるわけでございます。  それにいたしましても、それぞれ担当の、関係の省庁と絡む問題でございまして、私ども独力でできることではございませんが、一例を挙げればそういうことを含めて、労使交渉というものがいまよりも少しでも実りあるものになるように私としては努力していきたいというふうに考えておるところでございます。
  64. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま、そういうことの理解になっておるわけでありますけれども、問題としては理解ができるということではないのでありまして、しかし、もう時間もありませんからね、そういうことで、大臣にひとつこういう理解で、それぞれやっぱりお互いに理解をして交渉でやろうと、こういう気構えがあるということも理解しておいてもらって、いま関労政局長が言われたとおり、ひとつこれから一歩でも二歩でも前進に努力をしてもらいたいと、この一言だけお伺いし、結論を出してください。
  65. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) いま局長から御答弁申し上げたような気持ちでやっていく所存でありまするが、いずれにしても、まあ十一年間もたっておるじゃないかとかいうお話しございましたが、臨調でもこれが決定を見なかったというようなこと、これからまだ検討しなきゃならぬというくらいむずかしい問題であると。そのむずかしいということは十二分に踏まえ、しかしながら、先ほど局長答弁にございましたような趣旨で労働省としても今後対処していきたいと考えております。
  66. 対馬孝且

    対馬孝且君 それではひとつ一歩でも二歩でも労使の団交の中で、やはり労使間の交渉の中で実りある方向で進められるように、労働省としても行政的なチェックをぜひ強く申し上げておきます。  それでは、時間もありませんから、夕張問題について、もう時間がなくなっちゃってあれですが、まず三点だけ申し上げます。  大臣、実は緊急にこの前雇用対策を申し上げましたけれども一つは、きょう実は日本石炭協会が夕張炭鉱の新会社を鋭意検討したが、再建は、採算性を問題にして非常に困難であると、こういう結論が出されつつあるという情報に接しました。もちろん最終決定となるかどうかわかりませんが。したがって、この前しばしば、初村労働大臣時代もずいぶんやっていただいたのでありますが、何といってもこれまだ千三百人残っているわけですね、——大臣、よく聞いておってください。千三百人残っておる。したがって、新会社ができたとしても、この前も私ここで申し上げていますが、最高でも五百、規模を縮小した場合は三百という数字も申し上げたこともございます。しかし、それにしても千人余ると、こういうことを私議論の中で申し上げたことがございます。  ともあれ、やっぱりもう雇用といったって、北海道がさっき言ったように、出稼ぎ労働者三十二万、素材産業、これらを含めてまさに求人倍率は、北海道は〇・二六です。沖縄県は〇・二〇、北海道、沖縄県は失業多発地帯。こういう現状の中で、ぜひやっぱり新鉱の再建をしてもらわなければ雇用の安定をすることはできない。ここにいままで願望をかけてきたわけでありまして、主管大臣ではございませんけれども、この間はまたエネルギー特別委員会で山中通産大臣は私とのやりとりで、政治決断をいたしますと、合理化臨時措置法による、つまり資金的な手当てを含めて政治決断をすると、こういう力ある山中通産大臣の答弁を私はいただいているのであります。したがって、十三日に帰ってくるそうでありますので、十六日に、いまの情報でいいますと十七日ころに石炭協会が出した結論を通産大臣に報告申し上げると、こういう手はずになってるようでございまして、前回、初村労働大臣にもやっていただきましたが、何とかこの新会社の実現のために努力を払ってほしいということの働きかけを労働大臣から、雇用安定の立場から、雇用対策の立場からひとつ山中通産大臣に要請していただきたい。これが第一点。  時間がありませんから、第二は、ぜひ大野労働大臣に、国会終了後で結構ですから、できるだけ早い機会に現地に入ってもらいたい。その理由は、これは私が五十四年に社会労働委員長をやったときに、時の栗原労働大臣はいまの夕張新鉱に入ったんですよ、坑内まで、私と一緒に。ちょうど造船不況も絡みまして、またいまのように北炭夕張新鉱が将来どうなるかという問題に懸念しまして、河本さんも二回入っています、通産大臣が。労働大臣は栗原労働大臣が、五十四年に私が社会労働委員長のときに一緒に入っています。去年は初村労働大臣に行っていただきました。だから、率直に言って、この夕張新鉱は社会的な地域経済の破壊の問題にすらなるということもございますので、大臣も多用な、公的任務もおありだと思うんですけれども、やっぱりいまや千三百人の行く先のない方々、もう自殺まで決意をしているという方々、私の手元に手紙も来ていますけれども、こういうことにならないためにも、ひとつできるだけ早い機会に、国会終了後現地を見ていただいて、そしてその上での雇用対策というものを考えてもらいたい。このようにぜひひとつ実現方を要請をしたいと、こう思います。  第三は、この前から申し上げているんですが、法案のときは時間がなくて触れなかったけれども、何とか地域指定をですね、これは安定局長にしばしば僕は申し上げるんだけれども、求人倍率、これ調べてください、きのう報告を聞きましたら、夕張管内の求人倍率は、二月は〇・〇二です。それから五十七年では〇・〇六です。きのう私は報告を聞いたんです。現地の労働組合から僕は報告を受けたんだけれども。それから、この前ここで議論したときには、室蘭の、あれだけの不況、失業多発地帯ということもございまして、鉄鋼もだめ、アルミもだめ、造船もだめということで、室蘭は一・八ですよね、御案内のとおり。それを割っているわけだ、現実に夕張の場合は。  こうなると、私はやっぱりこれは何らかの地域対策というのはあっていいんじゃないか。まあ法案は「特定不況」と、こうなっているから、これは別にして、そのために私はこの前この職業訓練延長問題等もぜひひとつやってもらいたいと、まあ促進方をしていただけるという北村局長さんの誠意あるお答えもございましたし、安定局長もそれなりの検討はぜひしてみたいという答えございましたので、もちろんここで一遍に答えが出ると思いませんけれども、この三点について大臣、何とかひとつこれにこたえていただきたいと、こう思うんですがね。  きょうは現地から三浦委員長と現地の組合員、家族を含めて、きょういま三十人来るんですよ。それでこれから行動を展開するわけでありますけれども、大変な事態になっている。これはあのとき、忘れもしない去年の十月に、当時の安倍通産大臣に私申し上げたことがあるんだけど、ダイナマイトが六本なくなったと。ダイナマイトがなくなるということは大変なことでありまして、これは当時の大沢管財人が道警本部長に、ダイナマイト六本が喪失をしてるということを届け出をしている。いまだにこれはわからないわけでありますが、まあそういう事態が大変な社会問題になるという可能性もありますので、大臣、そこらを踏まえて、ひとつ誠意ある回答というよりも、まず現地の労働者がなるほどと、労働者が、いままでもやっていただいているけれども、なるほどこれは積極的な姿勢を示していただいたと、こう思える姿を、もう一歩やっぱり踏み出してもらいたいと、このことを申し上げます。
  67. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 第一点の新会社設立の問題でございますが、これについては、私も所管でございませんのでつぶさには存じておりません。しかしながら、やはりこれは雇用問題、雇用対策についても非常に大きな問題でございますので、確かにこの新会社設立ということになれば大変結構なことでございますが、もしそうならなかったときの対応とか、いろいろ頭を痛めなきゃならない問題があることを十分承知いたしておりますので、ただいま通産大臣は海外出張中でございますから、帰り次第私からも要請をしたいと、こういうふうに考えておるところでございます。  また第二点の、夕張の北炭新炭鉱へ視察に来いということでございます。国会開会中はなかなか出る機会もございませんが、国会が終わりましたらひとつ考えさしていただこうと思いますが、いずれにしてもことしは選挙の当たり年でございまして、国会が終わるとまたすぐ選挙というようなこともございますから、初村労働大臣が昨年五月末だか六月初めに行かれたそうでございますが、どうもそのころはちょっとむずかしい。そしてまたILOにも行かなきゃならぬということなんですが、せっかくの御提案でございますので、それらを勘案しながらなるべく早い機会に参りたいと思っております。  第三番目の問題につきましては局長から答弁をいたさせます。
  68. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 夕張地区を、特定不況業種、不況地域の雇用安定法の地域指定をできないかという御意見でございます。  かねがねいろんな場で、こういう国会の場、あるいはまた関係の労働組合の方々が来られたときにも申し上げておりますが、いろいろ対策の体系がございまして、この法律は、最近の経済事情の著しい変化によりまして構造的不況に陥っている業種なりその集積地域の対策ということでございます。夕張地域は今回の閉山で大変な厳しい雇用失業情勢になっておりますということを十分承知いたしておりますが、そういう産炭地域につきましては、産炭地域振興臨時措置法とか、あるいは離職者につきましては炭鉱離職者臨時措置法というような体系で対応することになっておりますので、不況業種、不況地域の雇用安定法の地域指定というのはなかなかむずかしいことではなかろうかと存じます。  ただ、先ほど来のお話のように、非常に厳しい雇用失業情勢の中でどういうふうに対応するかということにつきましては、すでに先生御案内のように、私ども本省なり道庁なり現地を通じて職業相談なり職業あっせんの体制を組んでおりますので、個々の労働者方々とも十分の職業相談その他を通じながら各種の援護措置、まあこれはある意味では一番手厚い援護措置になっておるわけでございまして、そういうものを活用しながら就職あっせんあるいは雇用安定のために最大の努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  69. 対馬孝且

    対馬孝且君 時間も来たようでありますからあれですが、大臣、先ほど来、第一点は非常に、第二点も誠意あるお答えですから、山中通産大臣は十三日の夜帰ってくるそうですから、私らも十六日ないし十七日にお会いする段取りになっておりますので、ぜひ大臣からひとつその点、新会社の実現方要請をしてもらいたい。先ほどもお答えありましたから、ぜひ実現を期してもらいたい。  第二は、選挙もある年でありますから、それは私も承知しておりますから、選挙は選挙で、恐らく大臣だって北海道に来られるんでしょう。やっぱり応援に来られるんじゃないですか。(発言する者あり)それは別にしまして、できるだけ早く来ていただきたいと思う。坑内まで入れとは言わぬから。これは栗原労働大臣は私と一緒に坑内まで入ったんですよ。それは別にして、やっぱり早く、現状の対策を踏まえてひとつできるだけ、いま大臣もありましたから、ILO機関は公的機関ですからこれは別にして、選挙もさることながら、やっぱり夕張の労働者の生活権あるいは雇用権というものをどうするかということは急務ですから、これにぜひひとつこたえてもらいたい。できるだけ早くひとつやってもらいたい。  それから、いま安定局長ありましたけれども、それは一般論であって、もうちょっと地域対策に向けて、それなら職業訓練延長一年間きちっとやるかということも出るのであって、きょうここでまた答えは求めようとは思わないけれども、それを含めて具体的にひとつ実のある対策をぜひ、現状やっておることは承知しております。それをひとつ含めて、全体的な地域対策、総合地域対策になる雇用対策をしてもらいたいと、こういうことでございます。大臣、最後にひとつ。
  70. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 第一点につきましては、先ほど申し上げましたように、通産大臣が帰り次第話をしておきます。  それから二点目につきましては、北海道へ応援に行くかどうかは別として、それならそういう日程をつくって、自民党の応援がてら行けというようなやじもございましたけれども、それはともかく、長時間は無理かと思いますが、実は四、五日前横路知事も私のところにあいさつに来ていただきまして、北海道の雇用対策というものは非常にむずかしいし、といって大変労働省にも世話になっておるので、ひとつ北海道へ来たら遊びに来てくれという話もございましたから、それも含めて話しがてら行こうかなという気持ちを持っております。  第三点は、確かにむずかしい問題でございまして、局長から答弁したのが現況精いっぱいの答弁だろうと思いますけれども、これもひとつ勘案してやっていきたいと、こういうふうに思っております。
  71. 対馬孝且

    対馬孝且君 終わります。
  72. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私の質問のために昼休みを返上しての時間でございますので、できるだけひとつはしょってお尋ねいたしますので、また、答弁も簡潔にお願いいたします。  労働大臣の所信に対する質問は先ほどから行われておりまして、重複する点もございますので、はしょってお尋ねいたしますが、労働大臣は、現下の厳しい雇用失業情勢に適正かつ機敏に対応する雇用対策について述べられております。総理府労働力調査では、本年冒頭からかなりの失業率の上昇が報告されておりますけれども、なお企業では過剰雇用感を持つ企業体が多いわけですけれども、ことに素材産業の関連中小企業等において雇用調整の動きが広まっておる状況にあります。まず、こうした最悪とも言われる雇用失業情勢についての現状認識と今後の見通しについてお尋ねいたします。
  73. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 最近の雇用情勢につきましては、世界経済の不況等を背景といたしまして、国内の景気回復の足取りが緩やかであるというようなことによりまして、失業者の増加あるいは労働力需給の緩和等、厳しい状況が続いております。たとえば失業率はここ数カ月十万から二十万、あるいはそれを上回るような対前年の増加ということでございますし、有効求人倍率も〇・六倍台で、横ばいか、ややちょっと上向きかもしれませんが、大体横ばいの状況でございます。  今後につきましても、世界経済につきまして欧米での景気回復の兆しとか、あるいは原油価格の値下がり等若干明るい兆しもございますけれども、しかし世界経済の回復も非常に遅いとか、あるいは貿易摩擦問題、また国内の財政状況が非常に悪いというようないろんな状況を背景といたしまして、今後についてもなかなか急速な景気回復ということは望みがたいわけでございますけれども、先ほど申し上げました世界経済の一部の明るい兆し、あるいは国内におきましては、さきに政府で決めました経済対策を進めることによりまして景気が回復に向かってまいります際は雇用情勢も、楽観を許さない状況ながら、やや改善の方向に向かうのでなかろうかというふうに期待をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、まだまだしばらく非常に厳しい状況であるという認識のもとに、適切な対応をしていかなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  74. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 かつての石油ショック時において、特定不況産業などでは大量の雇用調整が行われましたが、その後引き続き、本工はふやさないで臨時、社外工と、こういう人たち増加の傾向にございまして、また、製造業から第三次産業へと労働需要が移行しておる、こういうのが現況ではないかと思います。あわせて、労働者派遣事業が急速に増加しまして、いま申しましたような社外工がだんだん拡大するといったような不安定雇用労働者の拡大が目立っておるわけです。こういう実態は、労働大臣の述べられております「勤労者が安心して将来に夢を持てる生活を営めるようにすることが労働行政の使命」だと、こういう大臣のお考えに逆行しているという結果になっております。また、次に大臣が「変化に対応した適切な施策」ということも述べられておりますけれども、その「変化に対応した適切な施策」とは一体どういうことか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  75. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 現在、労働行政が直面しております問題といたしまして、まず、労働力需要の面では、経済成長率が鈍化してきておる、それからまた、MEなどの新しい技術革新の進展が進んでおる、さらにはまた、サービス経済化の進展、こういった面が需要面で出ております一方、労働力供給面につきましては、高齢化の問題、あるいは高学歴化の進展の問題がございます。あるいはまた、女性の職場進出の問題等もございます。こういうような労働力需要供給の両面で著しく変化が進んでおる、こういう変化への適切な対応が迫られておる、こういうようなことを考えておるわけでございまして、そのために五十八年度においても、特にこういった点に焦点を当てながらの対策を進めていかなきゃならぬ、こういう考え方で申し上げておるところでございます。
  76. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 余り具体的な御答弁ではないような気がいたしますが、もう一つお尋ねいたしますけれども、「適切な経済運営により景気の着実な回復を図るとともに、」云々と、そして引き続き「雇用対策を積極的に推進し、雇用情勢改善を図ってまいる所存であります。」というようなことを大臣は述べられておりますけれども、ここらの御決意に対する具体策というものはどういうお考えですか。
  77. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 先ほどお答えいたしましたように、最近におきまして雇用失業情勢が厳しい情勢で推移をいたしております。こういう情勢に対処いたしまして、政府といたしましては、景気の維持、回復を図り、雇用の安定を確保するために機動的な政策運営を行うということで、さきの経済対策閣僚会議におきまして、経済運営といたしましては金融政策の機動的な運営とか、あるいは公共事業の前倒し執行、住宅建設の促進等の経済対策を決定し、進めておるところでございます。  この決められました対策におきましては、雇用対策について従来から実施いたしております各般の対策を前提としながら、まず幾つかの点として、一つは、昨日成立いたしました特定不況業種・特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法に基づきまして、業種なり地域の指定を機動的に行いまして、離職前訓練とか、あるいは再就職促進のための助成措置を活用して失業の予防措置の拡大を図る。二番目といたしましては、今年度の予算では雇用調整助成金を前年度に比べましてかなり増額をいたしておりますけれども雇用調整助成金制度の対象業種を機動的に指定をいたしまして失業の防止を図る。また、三番目といたしまして、特定求職者雇用開発助成金も予算を拡大いたしておりますが、こういうものを活用いたしまして、雇用開発とかあるいは就職困難な方々の再就職の促進を図るというような対策を講ずることとしておるところでございまして、今後ともこういう厳しい雇用失業情勢でございますので、動向を注意深く見守りながら、業種とか地域の実態あるいは労働者実態に応じた適切な対応をしていくこととしておるところでございます。
  78. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうしますと、新経済計画だとか、あるいは第五次雇用対策基本計画ということについてはどういうふうになっていますか。  また、昨年十月に策定されました総合経済対策だとか景気対策、こういったようなものの実効と申しますか、そういう顕著なものがあればひとつ挙げていただきたいと思うんです。
  79. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まず、経済計画の問題でございます。  最近、わが国を取り巻きます内外の経済情勢が非常に変化をいたしておりますし、一方、労働力供給の面での変化として高齢化社会の進行が予想以上に進んでおるとか、あるいは労働力供給が当初予想した以上に増加をいたしておるとか、また産業構造の変化とか、あるいはマイクロエレクトロニクス等の技術革新が非常に速く進んでおるというような、いろんな構造変化が進んでおります。そこで、経済計画につきましても、現在の新経済社会七カ年計画の見直し作業が進められておりますけれども、大体本年の夏ごろ成案を得ることを努力目標として検討が進められておりますが、これとの調和を図りつつ、雇用対策基本計画につきましても、現在の第四次雇用対策基本計画の見直しの検討を雇用審議会におきまして中長期的視点に立った政策のあり方を樹立すべく検討を進められておるところでございます。  それから、昨年なり、先ほど申し上げました今年度に入りまして決められました経済対策の効果というような点でございますけれども、たとえば雇用調整助成金制度の活用というような点につきましては、昨年の十月時点で対象業種としては二百四十八業種が指定の対象でございましたが、その後、経済なり雇用の動きとも関連いたしますけれども、逐次指定を機動的にしてまいりまして、最近の四月現在では二百八十五業種を指定をいたしておりますが、そういう各地域の雇用失業情勢の動向を早急に本省にも上げてもらい、また、関係の団体からの要請等にも応じましてこういう業種指定を機動的に行いまして対応をいたしておるところでございまして、また、構造不況業種、地域の対策といたしましては、昨年の経済対策が決められました時点で一業種の追加指定、それから十二地域の追加指定等を進めたわけでございますが、さらに、きのう成立いたしました法律に基づきまして、七月一日以降につきましては機動的な運用をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  80. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 ただいま御答弁の中にMEの問題がちょっと出ましたけれども、このことについてひとつお尋ねいたします。  かつて、ことしの二月ごろだったですか、中立労連でもって、この加盟組合のうち二百七十七支部を対象に、このマイクロエレクトロニクス技術が雇用労働に与える影響調査というものをやっておりますが、その結果によりますと、ME機器の導入に伴いまして六割の事業所で配転が行われた。そして、女子や中高年労働者がME化工程から締め出されるというような、雇用労働条件へのマイナスの影響が明確に出ているということが報告されておりますけれども、こういう事実を労働省としてはどのように認識、把握されておりますか。
  81. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 最近産業界で、産業用ロボットとかオフィスオートメーション等の導入など、マイクロエレクトロニクスの応用を中心とした技術革新が急速に進んでおることは御指摘のとおりでございまして、現時点では深刻な雇用問題とまでは至っておりませんけれども、今後につきましては、この技術革新が急速に進んでまいりますと、労働力供給との関連とか、あるいは経済成長との関連等で、雇用面への量的、質的にいろんな影響が出てくるということは懸念をいたしておるところでございます。  そこで、私どもといたしましては、雇用職業総合研究所に委託をいたしまして、マイクロエレクトロニクスの導入等によります雇用への影響について調査を進めておるところでございますが、ただいま御指摘になりました中立労連のマイクロエレクトロニクスの導入によります影響についても存じておりますが、この研究所におきます調査におきましても、昨年八月にいただいた中間報告では、やはり中高年層への影響というような問題は一つ取り上げられておるところでございます。  したがいまして、私どもといたしましても、そういう面が一方ではさらにどういう影響が出るかということの調査研究を進めていかなきゃならぬというふうに思いますが、また同時に、技術革新によりまして、危険作業とかあるいは重筋作業等を代替できるというような面もございまして、そういう面では、中高年齢者に向く作業というものも出てくることもあるわけでございまして、いずれにいたしましても、こういう調査研究を通じて、雇用への影響を量的、質的に把握いたしまして、こういうものを公益労使で構成いたしております雇用問題政策会議等を通じて関係労使の理解を進めますとともに、特に五十七年度からは、生涯職業訓練促進給付金制度というものも発足いたしておりますが、こういうものを活用いたしまして、高年齢者の技術革新への対応を促進するとか、そのような対策を今後とも進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  82. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 やはり、こうしたものの今後の普及というものは、これは時代の趨勢ですからもう当然だとは思いますけれども、それに対してやはり労働省としては、こうしたものの導入に対しては、やはり事業所で労使の事前協議というものが一番必要じゃないかと思いますが、その辺の指導についてはいかがですか。
  83. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 労使関係のことにつきましては、直接担当の局長がいまおりませんけれども、技術革新の進展は、いま御指摘になりましたように、経済の発展とかあるいは生産性を上げるとかという面からは必要なことでありますけれども、問題は、それによって起きます摩擦をできるだけ早く事前に克服して、また同時に、その成果が経済の発展とか、あるいは労働者国民福祉向上につながるような方向に持っていくことが大切なわけでございまして、雇用の問題につきましても、牧術革新による影響が、あるいは摩擦が、できるだけなくなるような形の方向で進めていくことが必要だろうと存じます。そういう意味では、関係労使が十分話し合いを進められながら、そういうことを通じて技術革新が進められていくことが重要だというふうに考えておるところでございます。
  84. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この点については、事前協議というものを今後やはり強力に指導、推進されていくことを要望しておきます。  次に、今日、中小零細企業の中には、自転車操業的経営にきゅうきゅうとしておりますゆえに、不本意ながら、その気持ちはあっても退職金制度すら確立されていない、こういう事業所もかなりあるようでございますが、労働省としてこうした事業所の数といいますか、それらをどのように把握されておりますか。
  85. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) お答えいたします。  退職金制度の普及の状況でございますけれども、これにつきましては、私どもの退職金制度調査という、五十六年でやりました調査で見てみますと、企業規模全体といたしましては退職金制度がある企業は九二%でございますが、しかしながら、これが、規模によってかなり違いますけれども、三十人から九十九人までの規模を見てみますとちょうど九〇%でございまして、一方、百人から二百九十九人までの規模になりますと九五・九%というような状況になっております。もちろん、これは業種によってかなり違いがございまして、たとえば金融・保険業などはほとんど一〇〇%というような状況でございますが、たとえば建設業などを見てみますと八六・八%ということで、九〇%を切っているというような状況になっております。
  86. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いまおっしゃるように、企業によってかなりの差があるようでして、退職金制度はあっても、二十年間勤めても退職金はわずか三百万そこそこといったような、そういう企業も多いようですね。  これは私、この一例をタクシー業に当ててみますと、タクシー業界の問題については過日NHKで大きく取り上げておりましたが、タクシーを運転される方々は朝早くから夜遅くまで神経をすり減らして客を探していかなければいけない。そういうことで非常にこれは精神的、肉体的に酷使される職業ではないかと思います。そのわりにしては給料はさほど高くない。しかも退職金は二十年勤続しても本当にわずかなものであるということを聞いておりますが、このタクシー業界の退職金、平均幾らぐらいになっておりますか。
  87. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) タクシー業界につきましては、実は先ほど申し上げました労働省の退職金制度調査でのくくりでは、たとえばタクシー業を包括するものといたしましてはこれは運輸業になるわけでございますけれども、こういうような区分でまいりますと、タクシーというようなところが入ってこないわけでございます。運輸・通信業全体としましては九〇・九%の普及率でございますが、どの程度であるかということになりますと、私どもとしての調査では直接ございませんで、東京都の乗用旅客自動車協会、こういうところで「昭和五十七年度ハイ・タク乗務員退職金調査」というものをやりましたので、これを引かせていただきまして御説明申し上げます。  ハイヤー、タクシーの会社の運転手さん、乗務員の退職金につきまして申し上げてみますと、これは「定年又は会社都合」と「自己都合」とに分かれるわけでございますけれども、二十年を例にとってみますと、これは大手四社がございますが、その「大手」と「大手四社を除く平均」というふうに分けているわけでございますが、それを「計」といいますか、全体として見ますと、二十年勤続で、定年または会社都合の場合には百四十八万円、大手四社の場合には二百三十五万円、大手四社を除く平均を見ますと百四十四万円というような状況になっておるわけでございます。
  88. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 二十年勤めてこうですからね、まあないよりましと言えばそれは言えるかもしれませんけれども。  退職金もさることながら、物の見方の基準ですが、生活保護費と比較した場合に、一級地の場合ですけれども、そういったような生活保護家庭よりも低い、あるいはまた、たかだかそれと同等である、こういったような実態が多く見られるわけですけれども、こういう実態をどのように受けとめられますか。
  89. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 先生のおっしゃるのは、これは生活保護世帯とお比べになるわけでございますから、賃金の一カ月分ということで御比較になっているんじゃなかろうかというふうに思うわけでございます。私どもとしましては、賃金を生活保護費と比べるということは、ちょっと先生もおっしゃいましたが、いろいろと生活保護の場合には世帯構成とかそれから各種の生活保護費の中身がございますので、これを賃金とストレートに比較するということは適当ではないかと思いますが、このタクシーの運転手の賃金につきましては、私どもとしましては、私、手元にタクシーの運転手につきまして、これは「賃金構造基本統計調査」によりまして、「調査産業計」と比べてみた場合にどういうふうになるかという資料を五十五年、五十六年について持っておりますけれども、「タクシー運転手」の男の人の場合を「調査産業計」の男の人と比べてみた場合に、タクシー運転手を一〇〇といたしますと、調査産業計の場合には一一二ぐらいでございまして、格差があるということが五十六年度については出てきております。
  90. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そういったような現状を認識した上で、今後こういう退職金——タクシー業界に限らずですけれども、せめて退職金の額の最低保障額、こういったようなものをやっぱり提示すべきじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
  91. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) いまお話しがございましたようなこの退職金の問題につきましては、これはいろいろな企業形態があるかと思いますけれども、いずれにしてもこれはなかなか、中小零細企業もあることでございますから、一概にそれを法制化するといっても大変な面があるかと思いますので、いま労働省としては中退金制度というものを持っておりますので、これへの加入促進方を大いに喧伝しておるところでございまして、それは確かに先ほどもお話しございましたように、タクシー業界で例をとれば、ないよりはましだろうという程度であっては将来の生活の不安ということもあり得ると思います。  ただ、ちょっと余談になるかもしれませんが、タクシー業界ということになると、私も実は若いときにタクシー会社を経営したことがあるし、それからそこに働く運転手がいろいろ言うものですから、私も若かったものだから、こんちきしょうと思って、二カ月ばかり自分でタクシーの運転をした経験もございますけれども、これはなかなか簡単にいかないというか、もう一国一城のあるじで、朝車庫を出たら翌日は朝か、まごまごしていればその日の昼ごろ帰ってくるというような、鉄砲玉のような時代もございまして、いまみたいに帰庫時間が決まっておっても帰らないとか、会社ぐるみでいろいろなこともあったり、これは実態わかりませんけれども、そういうことをいろいろ考えていくと、この労働条件改善に伴ってやはり退職金というようなものも出てくるわけでありまして、当時は固定給なんというものはなかったですし、当然退職金なんかもなかった。しかし、いまは固定給も大分ふえてきた。  私、実はきのう、先生からタクシーの実態について聞くということなので、護衛官を、あるいはまた秘書官をまいてタクシーに乗ってきました。それも、先ほどのいわゆる大手四社である大・日本・帝・国と言われておるところと、それからそうでない中小のタクシー会社の方と、両方に乗って、運転手さんから直接いろいろなことを聞きましたが、労働条件とかそういうことよりもやはり金目の問題が一番みたいな感じがいたしましたね、特に中小の方では。要するに、固定給をもう少しふやしてもらえればということが一番の問題だった。それで、退職金のこともちょっと聞きましたら、自分の会社じゃどれくらいくれるかわからないし、私なんかもまだ勤めて三年と。大体三年とか五年とかで転々とする人も多いような気がしましてね、聞いてみると。  そういうようなこともいろいろ考えると、なかなかこれ、一概には、むずかしい問題の方が多過ぎるような気がして、しかし、まあ自分も経験もあるし、ひとつ、ハイヤーというのはもう車庫から車庫、ちゃんと決められて、お客さんがあればということだし、タクシーは拾わなきゃならない。バスの運転手とかトラックの運転手は、会社でもってあそこへ行け、ここへ行けとはっきりしていますけれども、どうもタクシーだけはむずかしいんですよ。先生も経営者でおられたからわかるはずですがね。  しかし、だからといって放置しておくわけにもまいりませんから、退職金制度なんかを、ただ退職金だけを取り上げて言っても無理なんで、もっと前段から考えて初めて退職金まで物事が出てくるので、三年や五年でというようなことではこれまた、二十年勤めておる人がたまたまいたということであって、非常に少ないケースだと思いますよ、一カ所に二十年というのは。  だから、ここら辺も含めてひとつわが省も考えていこうと、こんなような気持ちできのう実はタクシーに乗ってきたところでございますので、その点どうぞ御了解賜りたいと思います。
  92. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 一つ例をタクシーにとったわけですけれども、タクシー以外でも、本当に一カ所に十年も二十年も勤めるという人たちほど実に律儀な、正直な人たちであろうと思われるわけですが、そういう人たちが報われるような退職金制度というものをひとつ確立していただきたいと思います。  次に、社会党さんからも出ておりました林業問題についてですが、林業労働者について若干お伺いします。  現在、民間林業で働く労働者が全国で約二十万人近くおられる。そして、その労働条件はこれは大変厳しい、危険が伴っておるわけですけれども、その中でも労働災害死亡者が昭和五十年度以降の七年間で八百九十三人。特にまたチェーンソー、刈り払い機使用による振動病は、五十六年度末で累計の七千二百九十七人の認定者を見ております。しかし、この認定者というのもこれは氷山の一角でありまして、つまり、ほとんどが臨時雇用労働者が多いわけでして、この振動病の認定を受けると直ちに就労の場を失うというような、そういうことになりかねないので、振動病に罹患していても隠しているというか無理しているというか、無理して就労しているというようなことが現状ではないかと思います。  こういう実態を、労働省としてはどのように認識しておられますか。
  93. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 振動病につきましては、まず患者さんの発生の件数、それから新規の発生の件数、さらに現在の振動病として認定された人の件数、これにつきましては実は手元にいま数字を持っておりませんので直接お答えするわけにはいきませんけれども、ただし全体の傾向として見ますと、振動病の新規認定は次第に減ってきておるという状況ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  それで、労働省といたしましては、職業対策の中でもこの振動病対策というものにずいぶん力を入れておるわけでございまして、たとえば振動を防ぐ工具の開発の問題であるとか、あるいは振動工具を取り扱う作業管理の仕方であるとか、こういう点につきましては総合的な防止対策の要綱をつくりまして、かねてからやってきておりますが、特に二年前にこの要綱をつくりまして総合対策を進めてきておるわけでございます。  それで、振動病対策につきましては、先ほどちょっとお話しがありました雇用形態の問題はございますけれども、しかしながら、何にしましてもいまおっしゃったような振動病の患者がわからないということであっては有効な対策を打てないわけでございまして、防止対策の一環として振動病につきましての検診につきましても、これは林野庁あるいは都道府県、それから厚生省の方とも連携を組みながら、検診の体制につきましてもその充実を図ってきておるところでございます。
  94. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この問題についてはもう少し詳しく聞きたいんですけれども、もう時間もございませんので次に行きます。  この振動病などのこうした職業病と相まって、最近新しい職業性疾患というのが非常に目立ってきております。それがつまり化学物質によるものが少なくないわけですけれども、これら化学物質による災害は新しい物質の開発増加に伴ってまた新しくふえ続けている、多様化しているというのが現況でありまして、私、過日予算委員会におきましてちょっと触れたわけですが、例のシロアリ駆除剤のクロルデンの問題でございます。  このクロルデンによる薬害と申しますか、こういうようなもののデータを私、予算委員会でも一応お示ししたわけですけれども、シロアリ駆除に従事している労働者人たちは、どちらかといえば臨時雇い的な、あるいは学生のアルバイトといったような、そういう人たちが大体大半を占めているわけですけれども、床下にもぐってクロルデンを散布をしてみたり、あるいは柱に注入してみたり、そういう作業が主なんですけれども、それだけに薬剤を吸入する。そしてこれは蓄積作用がありますから、二十数年の蓄積が。その作用があればこそシロアリに効くわけでして、そういうところから血中にやっぱりかなりの濃度として残っているというデータも出ております。こういう意味からもやっぱり労働衛生という立場から、厚生省としてもこのクロルデンについては近々毒物指定をするというお話を伺っておりますが、こういうことについての労働省としての労働衛生上の指導というものはいかがお考えですか。
  95. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 先般、当委員会における予算委員会の委嘱審議のときにも申し上げたわけでございますけれども、クロルデンを使ってシロアリを駆除する作業に携わっている人につきまして、これまでそのために健康に障害を生じたというケースは実はまだ私どもとしては把握していないわけでございます。  先ほど先生、厚生省の方で毒物指定を行うということをおっしゃいましたわけでございますが、私どもとしましては、まずこの前先生が御指摘になりましたように、いろいろと新聞紙上で労働者以外の人につきましてクロルデンによる被害というようなことも報道されましたこともありまして、それで先般、さらに何年か前にもこの報道がありましたときに関係の業界の人に集まっていただきまして、クロルデンの使用につきまして、たとえばクロルデンが皮膚感染のようでございますので、直接侵入しないようにということで防護具と申しますか、手袋などをつけて作業に携わるとか、あるいはクロルデンの濃度を一定以上に高めないとか、こういうようなことにつきまして指導をしているわけでございますけれども、厚生省の方でそういうような指定があるということでございますので、今後、厚生省の方からもよく話を聞きたいと思いますし、また、先ほど実際に健康障害を起こした事例がないというふうに申し上げましたが、私どもといたしましても、こういうような情報につきましてはその後さらに集めることに努めまして、そしてクロルデンの有害性の問題につきましては、私ども調査を進めてまいりたいというふうに思っております。
  96. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これについては、あのときも申しましたように、現在シロアリ駆除については何の認可も許可も要らない。いつでもだれでも始められるというような、そういう安易なことであるだけに、だれでも勝手にやるわけなんです。しかも、クロルデンというのはあれは本当はかなりの劇毒物なんですけれども、それを素人の人たちが見よう見まねで取り扱っているということは、一面本当に危険きわまりないことであります。  いま、これの薬害というものの報告は出されていないということですけれども、いろいろなその道のお医者さんあたりに聞きますと、長年の間には必ず肝臓障害が出てくるというようなことも聞いております。現に、シロアリ駆除をした家に住んでいる人とシロアリ駆除をしていない家に住んでいる人の血中の濃度も違うわけです。まして、作業に従事する人の濃度というものはかなり濃いというようなデータも出ておるわけですから、こういうようなことについて、日本バイオアッセー研究センターあたりにはこのことについての委託調査というものはなされておりますか。
  97. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 先生から、このバイオアッセーセンターに対する委託調査ということでお話しがございましたが、このバイオアッセーセンターというのが昨年の秋に神奈川県の秦野におきまして開所いたしました、実験動物、つまり、モルモットとかラットとかマウスとかを用いまして、そして物質ががんを引き起こす危険があるかどうか、発がん性があるかどうかということを長期の吸入試験、大体二年間ぐらいかかるわけでございますけれども、こういう長期吸入試験を行ってそれを調べるというための大がかりな施設であるわけでございます。  実は、この施設を設けましたのは、昭和五十年代の初めに、クロムとかマンガンとか、こういうことで職業がんの問題が出てまいりまして、それが一つの契機となりまして、八十回の国会におきまして労働安全衛生法を改正しまして化学物質が人の健康に与える影響について事前調査をするという制度をつくったわけでございますが、その制度をつくりながらも実際にはこういうようなことを、発がん性をテストするような施設がなくてはしようがないじゃないかということで、衆参両院におきまして、そういうような施設をつくるようにという附帯決議もございまして、それを受けまして発がん性を調べるための施設としてつくったわけでございます。  私、承知しておりますところでは、このクロルデンというものの発がん性につきましては、国際がん研究センターにおきまして各国の情報を検討しておりますけれども、人及び動物に対する発がん性は確認されていないようでございます。その毒性というのは、先生がお話しになりましたように、急性の場合には経口摂取でということで呼吸麻癖があるとか、あるいは慢性中毒で神経系に対する作用、それから肝、腎障害や肺水腫ができるということで、私専門家じゃございませんけれども、別系統であろうかと思いますので、これも先ほど申しましたようなことでできておりますバイオアッセーセンターにおきましてこの毒物のテストをするというのは、現在の施設では、ちょっとこれを使うわけにいかないので、残念ながらクロルデンを日本バイオアッセー研究センターにおきましてテストをするというわけにはまいらないわけでございます。
  98. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いずれにいたしましても、先ほどから申し上げておりますように、これはいろいろなそういう障害が出てきてからというのでは間に合いませんので、少なくとも常識的に言っていいはずはないわけですから、そこいらのいろいろな御指導をよろしくお願いしたいと思います。  最後に、はり、きゅう治療についてちょっとお尋ねいたしますが、労働省では、このはり、きゅう治療制度に関して昨年の七月一日に通達をお出しになりました。つまり、腰、頸、肩、腕等の障害、むち打ち症、有害物諸中毒、振動障害など、いわゆる労災職業病患者がはり、きゅう、マッサージ治療上重大な制限を受けるだけでなく、これは患者本人にも知らせず、主治医の診断、意見をもむしろ無視したような不当な症状調査によって、労災保険給付そのものが打ち切られるというような、そういう深刻な事態が激発しておるわけですけれども、これは国民の生命と健康を脅かすというきわめて重大な社会問題ではなかろうかと思いますが、もともとこの労災保険法というのは、御承知のように、労災職業病患者によりよい治療と生活を保障して、一日も早く社会復帰できるように、そして労働能力の回復を図っていくということを目的としているわけですけれども、この法の精神から見ましてもこれはいかがかと思うんですが、どのようにお考えですか。
  99. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) はり、きゅう及びマッサージの労災適用の問題につきましては、昨年の七月一日に通達を出しましてこの取り扱いについての措置を決めまして、そしてそれが実施段階に入ってきているわけでございます。  従来、原則は労災におきましても、健康保険取り扱いに準じまして、それで疼痛があるとか、あるいはしびれが残るとか、こういうような後遺症状についてはり、きゅうを単独で行う場合のほかに、新たに一般医療とはり、きゅうとあわせ行うことによって運動機能の回復が期待されるというような事例もあったことから、こういうものについても、一般医療とはり、きゅうをあわせて行うことを認めたわけでございますが、こういうわけでいわば健康保険取り扱いにプラスアルファをしたわけでございまして、健康保険の場合には、はり、きゅうを単独でやる場合にはこれは六カ月でございますけれども、これをさらに九カ月、また場合によっては、医師が認めた場合にはさらに三カ月延ばして合計六カ月延ばすということを認めたわけでございますし、また、はり、きゅうと医療とを併使する場合におきましても、労災保険につきましては先ほど申しましたようなことで、一定の長さについてこれを認めることにいたしたわけでございまして、私どもといたしましては、健康保険原則にプラスアルファした制度が今回のやり方であろうというふうに思っておるわけでございます。こういうようなことをいたしましたことにつきましては、原則健康保険と同じ期間見るということでございましたけれども、実際問題としまして、実は非常に長い間、何年間も、場合によっては十数年間もはり、きゅうを受けておられるということで、その間休業補償も受けられるというようなケースもありましたものでございますから、私どもとしましては、一体はり、きゅうを受ける長さというものは医学的に見てどういう長さが適当であろうかということで、医学の専門家にもお伺いしまして、そしてその労災保険の特殊性も考えてこういうように、物によっては三カ月、場合によっては六カ月延ばすということによって、はり、きゅうの効果も医学的にあらわれるということもあるであろうけれども、それ以上延ばしたからといって医学的に見て効果があらわれるというわけではないんじゃないかというような御意見もいただきまして、そういうことでこのようなことにつきまして考え方を出しまして、現在施行をいたしておるわけでございまして、私どもとしましてはこのような医学的な根拠も考えて、健康保険の上にさらに労災の特殊性も加味した特別のやり方を認めたということでもっていまこの制度の実施を行っているわけでございます。
  100. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 最後に要望しておきますけれども、いまおっしゃったように、きわめていかがかと思うような非常に悪い事例もあろうかと思いますが、実際そうじゃなくて、本当に困っている人たちもいらっしゃるわけですから、よく実情を把握していただいて、よろしく指導、御検討をお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  101. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十六分散会