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1983-04-28 第98回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十八日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  四月十九日     辞任         補欠選任      佐々木 満君     三浦 八水君      関口 恵造君     古賀雷四郎君      田代由紀男君     藏内 修治君      山中 郁子君     沓脱タケ子君      小西 博行君     藤井 恒男君  四月二十日     辞任         補欠選任      大城 眞順君     遠藤 政夫君      藏内 修治君     田代由紀男君      古賀雷四郎君     関口 恵造君      藤井 孝男君     斎藤 十朗君      三浦 八水君     佐々木 満君      宮澤  弘君     鈴木 正一君  四月二十一日     辞任         補欠選任      関口 恵造君     山本 富雄君  四月二十二日     辞任         補欠選任      鈴木 正一君     森下  泰君      山本 富雄君     関口 恵造君  四月二十六日     辞任         補欠選任      関口 恵造君     源田  実君  四月二十七日     辞任         補欠選任      源田  実君     関口 恵造君      森下  泰君     鈴木 正一君  四月二十八日     辞任         補欠選任      石本  茂君     板垣  正君      遠藤 政夫君     林  ゆう君      福島 茂夫君     山東 昭子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長        目黒朝次郎君     理 事                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 対馬 孝且君                 渡部 通子君     委 員                 板垣  正君                 大坪健一郎君                 佐々木 満君                 斎藤 十朗君                 山東 昭子君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 林  ゆう君                 本岡 昭次君                 中野 鉄造君                 沓脱タケ子君                 藤井 恒男君                 山田耕三郎君    国務大臣        労 働 大 臣  大野  明君    政府委員        防衛施設庁労務        部長       木梨 一雄君        労働大臣官房長  加藤  孝君        労働大臣官房審        議官       小粥 義朗君        労働省労政局長  関  英夫君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        労働省労働基準        局安全衛生部長  林部  弘君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        増田 雅一君        労働省職業訓練        局長       北村 孝生君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      飛田 清弘君        法務省人権擁護        局調査課長    堤  守生君        外務省欧亜局大        洋州課長     竹中 繁雄君        水産庁漁政部企        画課長      窪田  富君        運輸省船員局労        政課長      佐藤 弘毅君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  望月 三郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○労働問題に関する調査  (労働行政基本施策に関する件) ○特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案内閣提出衆議院送付) ○駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十七日、森下泰君が委員辞任され、その補欠として鈴木正一君が選任されました。     ─────────────
  3. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  日本国有鉄道経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案について、運輸委員会に対し連合審査会開会を申し入れることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 次に、労働問題に関する調査のうち労働行政基本施策に関する件、特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、以上の調査及び両法律案を便宜一括して議題といたします。  両法律案につきましては、すでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これよりこれらの件について直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず、中小企業に働く労働者の問題について、若干お伺いをいたします。  中小企業わが国経済の中で占める地位が非常に大きいものがあることは、もうこれは国民周知の事実であります。中小企業のシェアは、事業所数昭和三十五年の九九・六%から、昭和四十四年以降は九九・四%のまま今日まで推移しておりますし、従業者数においても、昭和三十五年の七八・七%から昭和五十六年には八一・四%にもなっています。このように、中小企業雇用吸収面においても大きな役削りを果たしていることがよくわかります。  しかしながら、中小企業をめぐる労働環境は、高齢化及び高学歴化の進展、あるいは女子労働の増加、労働時間短縮の要請の高まり、マイクロエレクトロニクス革命の急速な普及等、今後対策を迫られている問題が山積して、ますます厳しい状態になることが予想されます。そこで、中小企業で働く労働者労働条件改善福祉向上のために労働行政の果たす役割りは非常に大きなものがあると私は考えています。  労働大臣はどのような見解や御認識をお持ちであるのか、まずお伺いをしておきたいと思います。
  8. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま先生指摘のように、わが国経済社会を支えておると言っても過言ではない中小企業皆さん方労働条件、あるいはまた労働福祉問題等多々ございますが、いずれにいたしましても、労働省といたしましては、今日までも中小企業に対して、また、中小企業に働く皆さん方に対しも、でき得る限りの努力はいたしてきたと思っております。  しかしながら、いま御指摘のようなやはり新しい時代、技術革新であるとか、あるいは高齢化であるとか、いろんな問題がございますが、そういうものを乗り越えていきませんと、いずれにしても今後ともわが国経済というものを支えていくのは中小企業であることには間違いないので、これらに対してきめ細かい施策をいたすようにがんばりたいと思っております。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣もいま日本経済を支えていると言っても過言でないとこう言われましたその中小企業を支えているのは労働者でありまして、そういう意味では、こういう言い方は適切でないかもしれませんが、中小企業に良質な労働力、すぐれた労働者がそこに喜んで働くという状況をつくっていかなければこれはならないわけだと私は思います。そういう意味で、中小企業に働く労働者の置かれている今日の状況が必ずしもいいと言えない。したがって、よくない環境のところによい労働者が集まるということはなかなかむずかしい、私はそういう立場でお伺いをいたします。  幾つかの問題がありますが、まず、労働時間関係の問題から伺ってまいります。  まず、実態をお聞きいたします。企業規模別に見た週所定労働時間、また、週休二日制の普及状態、あるいは年次有給休暇、こうした労働時間関係について、中小企業労働者がどういう状態に置かれているのか、ここで明らかにしていただきたいと思うんです。
  10. 望月三郎

    説明員望月三郎君) 御指摘の点につきまして、昭和五十六年の統計でございますが、労働者千人以上規模を大企業といたしまして、一番下の方の三十人から九十九人を中小企業ということで比べてみたいと思いますが、労働者一人平均過所定労働時間につきましては、大企業が三十九時間二十六分でございます。これに対しまして中小企業が四十四時間五十八分ということになっております。  それから、週休二日制適用労働者割合でございますが、大企業が九五%、中小企業が四三%でございます。  それから、年次有給休暇取得日数及び消化率でございますが、大企業取得日数が九・九日、消化率五七・九%というのに対しまして、中小企業が六・六日、消化率五二・四%になっております。
  11. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまの実態の報告を聞きましても、大企業中小企業格差は歴然としております。この下に零細企業というものを加えればさらにこの格差は大きなことになってくるのじゃないかと推察ができます。  私の手元にあります全国中小企業団体中央会の「昭和五十七年中小企業労働事情実態調査」というものによりましても、週休二日制の実施状況が百人から三百人規模で五一・三%になっていますが、一人から九人規模というところではわずか一三%という状態であります。  それで、週休二日制の問題にかかわらず、この労働時間短縮全体の問題については、経済社会七カ年計画、あるいはまた第四次雇用対策基本計画、こうしたものが閣議決定されている段階においても非常に重要視されて、わが国労働時間の水準昭和六十年までに欧米主要国並み水準に近づけるよう努めようではないか、こういうことが閣議決定をされております。ことしは五十八年、あと二年ということで、まあ努力事項ですからできなければどうということではないと思いますが、しかし、こうした努力目標に向けて、まだ二年あるわけですから、どのように労働省として週休二日制の普及なりあるいは労働時間短縮の問題についてこれから努力していこうとされているのか、その点についてここで報告いただきたいと思います。
  12. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 中小企業における労働時間の短縮でございますが、先生お挙げになりましたように、週休二日制につきましてもかなり普及状況格差があるということは残念ながら認めざるを得ないということだと思います。  先ほど賃金福祉部長が申しましたとおり、千人以上と、それからもう一つ三十人から九十九人までというところで見ますと九対四ぐらいの、これは労働者の数にしてそうでございますし、また、企業の数にしましてもやはりその程度以上の格差があるのではなかろうかというふうに思われます。それで、どうしてそういうような格差が生ずるかということを考えてみますと、これはやはり、一般的には中小企業経営の体質が弱いと申しますか、生産性が低いということに大きな原因があるのではなかろうかと思っておりますが、たとえばアンケートで調べてみましても、やはり中小企業において週休二日制が実施できない理由を見てみますと、やはり生産性が低いからだとか、あるいはなかなか景気が悪くてむずかしい環境にあるとか、そういうことを指摘する声があるわけでございます。  そこで、先生御存じのように、現在の状況を反映しまして、また、先ほど御指摘のありましたように、週休二日制の推進計画におきまして総実労働時間二千時間を目標に進めるということでやってきておるわけでございますが、ここ一、二年の状況を見ましても、実は二年間で十数時間しか減らないというような状況で、いまのところ総実労働時間で二千百時間を少し切ったというような状況でございますので、目標として掲げた数字に参りますにはなかなか大変だという感じが私どもの実は率直なところでございます。  それで、どんなふうにこれから進めていくかという問題でございますけれども、実は、先生御存じのように、ことしの二月に、銀行の土曜閉店制ということでもって全金融機関足並みをそろえてやるというところまで参りまして、これは、月一回でございますが、ことしの八月の第二土曜日から全金融機関足並みをそろえて土曜閉店に入るということになってまいったわけでございますが、この決定に至ります段階を見ましても、実は、昨年の四月にこの方針を大体固めたわけですが、そこで中小企業団体の方から、やはり利用者のことももっと考えるべきではないかというようなお話が出てまいりまして、かなりその調整に手間取って、一年近くかけて本決まりになったというような経緯をたどっております。私は、これも 基本的には現在の経営情勢が悪く、また、中小企業経営が苦しいというところの状況一つ反映したのではないかと思います。  しかしながら、苦しいからなかなか進まないと言っているだけではこれはしようがないわけでございまして、実際問題としまして、この週休二日制につきまして、それじゃどうしてできないかということを考えてみますと、先ほどのアンケートでは経営状況のことを申しましたが、片方もう一つ、取引上の都合とかあるいは同業他社が実施していないとか、あるいは金融機関がやっていないとか、そういうような理由を挙げていらっしゃるところもあるわけでございます。今度金融機関が一歩を踏み出せばその理由一つも解消することにはなるわけでございますけれども、それにしましても、やはり先ほど申しましたような経営上の事情とあわせて、他との並びというような問題もあるのではなかろうかと思っております。  そこで、私どもとしましては、中小企業についてどういうふうに進めるかということでございますが、これはやはり業種として、あるいは地域として、グループでやはりこういうような時短を進めるということが、先ほど申しましたように同業他社とのつり合いとか、こういう観点からいって進めやすいのではないかというふうに考えまして、それで地域業種実情に応じたような進め方を地方の労働基準局ごとに進めるというようなことでやっております。  この進め方につきましても、率直に申しまして、現在の状況を反映してはかばかしく進んでいないというのが実情だと思いますが、何にしましても、私どもとしましては今後の問題を考えてみた場合に、やはり労働時間短縮というのは、何と申しますか大きな世の中の流れであろうかというふうに思っておりますので、地域業種実情に応じまして着実にいま指導に努める、また、企業実情に応じてやっていくというような方針で進めていきしたというふうに思っております。
  13. 本岡昭次

    本岡昭次君 先ほども言いましたように、閣議決定で、六十年までに行政指導を重ねて、欧米主要国並み水準労働時間を近づけるんだと、こうやっているんですから、その努力を一層ひとつ重ねてもらいたいということを強く要望しておきます。いまのように、周辺の状況をただ見て調整をしているだけではどうにもならないんで、労働行政としての指導性の問題を発揮するようお願いをしておきます。  労働大臣にはまた最後に総括的にお考えを伺うことにして、一応実態をいろいろ聞いてまいることにします。  次に、賃金関係でありますが、この賃金関係の問題についても、いまの労働時間と同じように大企業中小企業零細企業という格差というものが相当出ているんじゃないか。一時はそれが縮小していく傾向にあったのがまた拡大しているという報道も新聞で見るわけですが、実際この企業規模間の賃金格差、あるいはまた退職金支給状況、こうしたものは、現状どのような状態になっていますか。実態をここで報告してもらいたい。
  14. 望月三郎

    説明員望月三郎君) 最初に、賃金についての規模別格差状況について御説明したいと思いますが、規模別賃金格差を毎月勤労統計調査現金給与総額について見てみますと、五十七年には、事業所規模五百人以上を一〇〇とした場合、規模百人から四百九十九人では八四・四、規模三十人から九十九人では七六・二、五人から二十九人では六一・一となっております。  先生指摘のように、この規模別賃金格差は、高度成長期には中小企業を中心として求人難等事情がございましたので相当縮小したわけでございますが、四十年代におきまして縮小傾向に停滞が見られるようになりまして、特に最近に至っては、規模間の生産性格拡大等によりましてさらに拡大をした。すなわち、事業所規模五百人以上を一〇〇とした場合に、規模三十人から九十九人では五十三年には八二・三であったものが五十七年には七六・二というようにさらに広がっておるというのが現状でございます。  それから、退職金制度についての比較でございますが、労働省退職金制度調査という五十六年九月にやった調査がございますが、これによりますと、何らかの形で退職金制度を有している企業割合は、千人以上規模企業では九九・六%やっておりますが、三十人から九十九規模企業でも九〇・〇%となっておりまして、退職金制度は広く普及をしているというように私ども考えております。しかしながら、十人から二十九人規模の小、零細企業では、小規模企業労働条件実態調査というのを五十五年九月にやっておりますが、これによりますと、十人から二十九人では七四・三%となっておりまして、なお制度のない企業も少なくないわけでございます。  また、定年退職者モデル退職金は、企業規模が大きいほど高く、たとえば高卒の管理事務技術労働者について見ますと、三十人から九十九人規模企業では九百八十三万円、それから千人以上の規模企業では千七百八万円に比べまして約六割の水準になっております。
  15. 本岡昭次

    本岡昭次君 これもまた先ほどの労働時間と同様、大企業中小企業そして零細企業、それぞれに大変な格差があるということがはっきりいたしております。私の持っている資料の中でも同じような状況が見られるわけで、このように賃金格差が一時は大企業との間に縮まる傾向があったのが、またこれが拡大をしていっている。こういう動向をこのまま放置していたのではますますその格差はひどくなって、大臣が初め言われたように、日本経済中小零細企業でもっていると言っても過言でないという実態の中で、そこに働く労働者は非常に低賃金。結局低賃金によって日本経済が支えられている、低賃金と長時間労働によって支えられている、こういうことが言える、こうなるわけで、だから、労働省労働行政がこの部分にどのようにしてメスを入れていくのかということを真剣に考えなければ、国際的な意味で言えば貿易摩擦の根幹もこういうところにあると僕は言えると思うんです。  私は、最近アメリカに行ってあちらの労働者と会ってきましたが、貿易摩擦なんというのは、アメリカ失業者の問題がどうなるかということがその解決の基本だとはっきり言い切っていました。感情的に見れば私はそうだと思うんですね。そして、彼らの指摘するのは、長時間・低賃金、この問題を指摘し、それが日本中小零細企業の構造的な問題として現にはっきりとここにあらわれている、こうなっているんですから、ここのところに労働省がどういうふうにしてこれから対策を講じていくのかという問題。労働省は直接やる問題ではありませんから明快な答えが出るわけもありませんが、しかし、このまま放置しておいてよいものでもないと思います。労働省のそのお考えをお聞きしたいと思います。
  16. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) いまおっしゃいましたように、労働時間の面においても、賃金の面におきましても、あるいはその他の面におきましても、かなり大企業中小企業との間に格差があり、そしてまた、一時見られた格差の収縮と申しますか、縮小と申しますか、これがとまり、物によっては拡大してきているというような状況があることは、残念ながらこれは事実でございます。  私どもとしましては、このようなことが生じます基本的な背景というのは、大企業中小企業における生産性格差がやはりいま残念ながら現状においては開きつつあるということが反映しておるものではなかろうかと思います。  ただ、そうは申しましても、それではどうしたらいいのかということになってまいりますと、このような基本的状況背景にいたしまして、やはり基本中小企業生産性が上がるように中小企業経営基盤が強まるということが基本だと思いますが、しかしながら、このような産業政策面での施策充実に合わせまして、労働省としましてもやはりこれを側面的にバックアップするというようなことが重要ではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、そういう意味から労務管理面あるいは労働者福祉面という点での改 善への援助ということを、いままでもやってきてまいりましたし、これからもやっていくべきだというふうに考えております。  このようなことでどんなことを進めているかというふうに申し上げてみますと、たとえば労働条件一般指導という点につきましては、特に中小企業対象にしました相談コーナーということで労務管理相談に当たっておりますし、またさらに、労働福祉の面という点で見ますれば、退職金の面につきまして格差が、御指摘ございましたが、私どもとしましてはやはりこの点に着目して中小企業退職金共済制度普及ということに努めておるわけでございます。  また、財形の面を見ていただきましても、中小企業に対しましては貸付金利とか融資率の面で特別に大企業を上回る優遇措置を講じておりますし、また、財形におきましては、資金制度給付金制度についても中小企業について助成金を出すというようなやり方をやっておるわけでございます。  また、安全衛生につきましても、やはり健康診断健康管理につきましては、特別の中小企業対象とする助成措置を設けているわけでございまして、このようなことで私どもとしましては、直接に賃金を上げるための指導というようなことをこれはやるわけにまいりませんけれども、しかしながら、いま申し上げましたような面で福祉向上を図る、労務管理改善を図るということでもって指導を続け、また、今後ともさらに充実を期していきたいというふうに考えておりまます。
  17. 本岡昭次

    本岡昭次君 直接賃上げの問題を労働省指導するわけにいかぬということは、たてまえとしてはわかりますが、しかし、ここまではっきりした企業規模別格差の問題を、ただ自然の成り行きのままに放置するということは、これは私は労働省労働行政が無策だと言われることになると思うんです。だから、この格差拡大していく状況を逆に縮小するためにどうすればいいかという問題を、労働省が積極的に現在の政府の政策の中にしっかりと織り込んでいくという努力が必要ではないかと思いますが、ここで意見を述べ合っている時間的な余裕がありませんから、いま答弁の中で出ました、一つの例をとればということで出てきた退職金の共済制度の問題について見てみたいと思います。  いまも言われたように、中小企業退職金問題について、労働者福祉ということで共済制度をつくっているということですが、その実態は、契約事業主数約三十四万四千、労働者数三百三十八万三千人、こういうことになっています。しかし、現在の国全体の中小企業事業所数は約六百二十六万、そこに働く従業者数が約四千三十九万人、このように統計上なっています。この事業所数従業者数と比較して、先ほど言いましたように、その契約している事業主数、労働者数は余りにも少ないと私は思うんですね。だから、この委員会でこういうことをやっておりますと言えるような内容になっていない、このように考えます。また、政策推進労組会議が五十七年に行った中小企業労組のアンケートから見た労働実態というところにもこの問題が取り上げられておりまして、その中でも中退金共済の利用率は二一・四%という程度で、中小企業にとって魅力のあるものになっていないということになっています。  それから、先ほど政府の方が出されたように、退職金実態も大変な格差があるわけで、私の調査によっても、千人以上の企業規模で現業職三十年以上勤続で千二百三万円、これを一〇〇とすると、三十人から九十九人は五百九万円、割合でいくと四二%にしかならない、こういう実態。いろんな調査のとり方でこれは変わってくると思いますが、しかしはっきりしていることは、もう大変な格差がある。退職金は、これは賃金の後払いというふうな性格もあるわけで、そういう意味ではこの中小零細に働く労働者の置かれている状況というのは大変なものであるというふうに私は思います。それを改善していくのがこの中退金共済制度というふうにいまも言われたんですが、どうも現状は必ずしも労働省考えているような形でこの制度は機能していない。  どうですか、先ほどおっしゃったように、中小企業にとって、そこに働く人にもやはり退職金というのは大きな一つの魅力であるわけですから、そうした問題について、もっと利用率が高まっていく工夫とか努力、そういうものがあるのかないのかお伺いしておきます。
  18. 望月三郎

    説明員望月三郎君) 先生指摘のように、中退金制度を私ども運営しておりますが、その加入促進というのがやはり最大の問題でございまして、先生の御指摘のように、三十人以上の企業のうち約二〇%がこの中退金制度に加入しておるわけでございますが、これではまだまだ足りないわけでございまして、私ども、年々零細企業の加入促進ということを都道府県を通じまして行政指導をしてきておるわけでございますが、それでも非常に爆発的には増加しておりませんが、年々じわりじわりと、ステップ・バイ・ステップでございますが、ふえていることは間違いない傾向でございます。  いまちょうどこういう不況期でございますので、事業主もなかなか足踏みをするという面もございますが、この点につきましては、私どもやはり退職金というのは一つ日本労働慣行の中で非常にいい制度だと考えておりますので、これをやはり逐次伸ばしていくということに努力を重ねておりますし、ちょうど昭和六十年が五年目の検討の時期に当たっておりますので、これに向けてできるだけこの制度が多くの皆さんに活用され、そして普及できるように、魅力あるものにしていきたいと、こう思っておりまして、審議会等に六十年を目がけて真剣な検討をお願いするという所存でございます。
  19. 本岡昭次

    本岡昭次君 次に、労働災害の問題についてお伺いします。  昭和五十六年における労働災害による死傷者数は三十一万二千八百四十四人、これは休業四日以上ということによる統計です。死亡者数は二千九百十二人で、三千人を割ったということで、減少傾向にあるということで、それは非常に好ましいことであります。しかし、三千人という尊い人命を労働災害で失っていることには変わりないので、二千九百人だからよいとか三千人だから大変だということはない。一人でも人命を失うということが問題であるわけですから、そういうことでこの労働災害の問題を論じてはならないと、私は基本的に思います。  しかし、もう一方の統計で見ますと、労働災害による被災者総数というのは、年間約百三万人にも上っております。一方、同じように統計上問題になるのは交通災害ですが、この交通災害による被災者数は約六十一万人ということで、実際社会的には交通災害で死者が八千人をどうするとかということになっておりますが、これは社会的な問題になりますが、しかし、その社会的に問題になっている交通災害よりも労働災害の方が実態としては多いんだということ。しかし、これは社会的に大きく出ないということになっておりますね。この労働災害そのものの産業別、企業規模別の発生状況というのはどういうことになっておりますか。簡単にお話ししてください。
  20. 林部弘

    政府委員(林部弘君) お答えいたします。  先生のお尋ねの、主としては規模別の問題だと思いますが、いま御指摘ございました三十一万人の死傷者、これは休業四日以上でございますが、それにつきまして三百人未満の規模事業所における発生数と三百人以上の規模事業所における発生数を見ますというと、規模別統計では、死傷者のうち、三百人未満が二十八万五千四百人ということで全体の九一・二%を占めております。これに対しまして、実際に働いております労働者の全数に対する三百人未満の事業所の労働者数のウエートというのは八二・五%でございますから、現実には労働者の占める率よりも実際に災害の発生している率の方が、九一%と八二%ということで、規模の小さい三百人未満の方が多いという状況になっておるかと思います。
  21. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も詳しい資料を持っておりますから、これを見て実態がわかります。そして、いま言われましたように、企業規模の小さいほど災害が多いということがこれははっきりします。とにかくもうわが国の産業構造の特殊性から、この労働災害の面ではやはり親企業と下請事業所の問題でその格差がはっきり出ているということじゃないか。特に建設業なんていうものは、親企業があって、下請から子請、孫請、孫々とこういって、一番下の現場で働く労働者のところに労働災害がしわ寄せされていると、こういうことなんですね。そして、大企業のところで発生すればそれは社会的に問題になるんだけれども、小さな、五人とか十人とかという形である部分を受け持っている下請のところで死傷者が起きてもそれは社会的問題にならぬという、そのわが国の産業構造の特殊性が生み出している問題だと私は思っています。  そして、それが是正をされてきているかというと、依然としてその状況は変わらない。中小零細企業労働災害が多発をしているという状態が是正されていない。そこにまた一つの大きな問題があると思うんです。このあたりは労働大臣よく聞いておいていただきたいんですが、労働者の命と健康を守る、このことが労働福祉基本であると思います。また、労働省はそのことに一番力を割き、そして省の総力を結集してそのための施策推進していく、そのことが労働省労働省たるゆえんであろうと私は思います。だから、どうやって労働災害を起こさないかという問題にかかわる対策こそ、産業構造のゆがみのようなものを直していく、是正していく基本に触れるものだと私は思いますが、こうした労働災害の持っている構造的な問題について、労働省がどういう考えを持っているのかということについてお伺いをしたいと思います。
  22. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 中小企業におきます労働災害の防止対策の問題になろうかと思うわけでございます。  御指摘のように、中小企業集団は大企業集団に比べまして確かに労働災害の発生が多いわけでございますので、私どもといたしましても従前から重点的に取り組んできているテーマでございますが、実は、五カ年計画というものがございまして、五カ年ごとに一定の目標を掲げまして災害を減らしてまいろうということで、労働災害防止計画というものがかねてから進められているわけでございます。ちょうど五十八年度が初年度になりまして第六次の労働災害防止計画が新たに六十二年を目標に始まるわけでございますが、その中におきましても、中小企業における労働災害の防止ということを重点項目に掲げまして、自主的な労働災害の防止活動というものを活発にしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。特に、いま先生から御指摘ございましたように、親企業の下に協力事業場と申しますか、下請事業場と申しますか、そういうものがかなりたくさん系列化されているというのがわが国の特徴でもございますので、親企業を中心にいたしまして災害防止活動というものを進める、その場合に、親企業を頂点としたいろいろな災害防止のための協議組織というものがございますので、そういうものによる活動の推進を図ってまいりたい。また、地域的に、事業につきまして協同組合方式等で集団の形で安全衛生活動を推進するというような試みもかねてから進められているわけでございますので、そういうような面に特にこれからの五カ年計画の中で鋭意取り組んでまいりたいというふうに考えております。  また、零細な企業におきましては、実際に改善措置等を私どもの方から命令するなり指導いたしましても、お金の面での問題もございますので、かねてから労働安全衛生融資制度というものもございますので、ちなみに申し上げますと五十八年度の予算は百九十億円の枠でございますが、そういうものの活用も図る。あるいは中小企業に対しまして巡回安全点検制度というようなものも少しずつ拡充を図ってきておりますので、そういうような施策を通じまして中小企業対策を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  23. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣にひとつお考えを聞かしていただきたいと思います。  以上見てきただけでも、中小企業に働く労働者労働条件について、あるいはまた経営者の側から見ても大変な問題があるということがはっきりしたと思います。賃金退職金労働時間あるいは安全の問題、そのほか中高年齢化していこうとする状況、そのほかたくさんあると思うんですが、このように中小企業を取り巻く経済環境は非常に厳しく、大企業に比べて経営面でも種々の制約を受けています。しかし、日本経済考えていくときに、中小企業を抜きにして考えられない、これは大臣も冒頭おっしゃったとおりはっきりしています。だから、その中小企業が従来にも増して発展をしていくために、その企業を支えそこで働く労働者をどういう良好な労働環境に置くのか、また、優秀な人材を中小企業に集めるのかという問題についての労働省の行政上の対応が非常に私は大事になってくると、こう思います。そういう意味で、中小企業労働対策あるいは福祉事業といった問題についての労働大臣の決意を最後にお伺いをしてこの質問は終わりたいと思います。
  24. 大野明

    国務大臣大野明君) 中小企業に働く方々の問題につきまして、あらゆる面からいまるる御質問がございまして、その中身については政府委員から答弁をいたしましたが、私も、先ほど申し上げましたように、わが国経済を支えていくのは中小企業である、その体質改善のためにも、またそこに働く人たちの労働条件福祉面、これをより以上改善していくのはもう当然のことでございます。  私は、労働政務次官を十二、三年前にやって、労働行政に多少携わってまいりましたが、自来、もっともっと中小企業に力を入れなきゃならぬと思いつつも、労働省の中におるわけでなく、また、こういう立場にもなかったので、何というか、直接的にやることはできませんでしたが、先般も大臣に就任して直後に、中小企業関係はいまどうなっておるかということで質問したところ、これこれですという話があって、それでは物足りぬということで、四月になりまして、まあ予算委員会が終わらなければしようがなかったんですけれども中小企業者の方々を集めた会合をいたしました。これはまた五月にやりますが。まあ大企業と違って非常に複雑多岐な面があることも事実なんです。しかしそれはやっぱり、いま中小企業経営者の方々の日常のいろいろなことを直接聞くことが大切だ、それに対応して今度は中小企業に働く人たちからも意見を聞こう。先にまず二、三回経営者。やはり中小企業の体質というものを、たとえて言うならば、中退金の話も出ましたけれども、これは経営者ですら知らない人たくさんいるんですよ。働く人はもっと知らないわけですから、まずそこら辺、労働省もPRが下手だなと、啓蒙の仕方がよくないんじゃないかなということもちょっと感じながら第一回を終わったので、また五月の半ばに第二回をやり、数回重ねてから今度は働く人たちからも意見を聞く。そうしませんと、一方的な話だけ聞いておっても、まあ大企業みたいにパッパッとこういくわけじゃないので、中小企業は本当に職種も多いとか、あるいはまたそれに働く方々、たとえば中小企業は女子のパートが多いとか、いろいろな形で問題が複雑ですから、そういうことでいま鋭意進めておりますので、もう少しの時間をかしていただきたいと、こう思っています。  いずれにしても、前向きで取り組んでいくという姿勢には変わりございません。
  25. 本岡昭次

    本岡昭次君 次は、先日三月二十四日当社労委員会で質問をいたしました神戸精糖の労働争議問題について残った時間お伺いをしてまいります。  そのときに、退職金の問題についてお尋ねをして、それを解決をするようにという要請をいたしました。それについては労働省も承知しておられ ると思いますが、神戸東労働基準監督署の是正勧告書が四月五日に出されて解決をした模様でございます。しかし私は、丸紅という大商社を親会社にする神戸精糖という企業が、労働基準監督署の、是正をしなければ司法処分に付することがあるという文書勧告がされて初めて四月八日に重い腰を上げて、その争いのない部分の額、当然支払わなければならない額を本人に支払ったということは、どう考えても私は異常だと思うんですね。司法処分に付しますぞという、そういう労働基準監督署から最後のおどしみたいなものがなければ払わぬという、どう考えてもこれは異常なんです。さらにこの問題についても、労働基準監督署の指導に従って問題解決のためにその以前に会社と組合の合意で作成された退職のための新たな承諾書についても、三月三十日に会社側がそれを一方的に破棄をするというようなことを事前にやっております。さらに三十一日に労働基準監督署が社長と総務部長を呼んで口頭で退職金を払いなさいという勧告をしても、それも応じなかった。結局のところ文書勧告で司法処分にするぞと言えば、やっと支払うというのですね。私はこれは、この会社が異常なのか、あるいは労働省行政指導というものがその程度の軽いものなのか、このどちらなのかということを考えざるを得ないんですが、どういうことなんですか、これは。
  26. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 私どもといたしましても、労使間の問題につきましては労使の話し合いによって円満に解決できればそれにこしたことはないというふうに思っておりますが、しかしながら、問題の事案によりましては基準法に違反するというような事柄も出てきます。そのような場合につきましては、やはりこういう問題があるぞということはその当該の経営者にも申し上げるわけでございまして、そのようなことで対処いたしておるわけでございますが、先生の御指摘の事案につきましても、やはりいまこのような問題も経営者側に話しつつ、いまおっしゃられましたような経緯をたどったわけでございまして、先般の本委員会におきまして、たしか三月の下旬だったと思いますが、私といたしましては近く円満にこの問題は解決されるのではなかろうかというふうなことを申し上げたわけでございますが、その後お話し合いの末、四月八日に退職金が支払われて解決されたということでございまして、私どもといたしましては、いろんな経緯はございましたけれども、この問題につきましてのその基準法の問題というのはこれで解消に至ったのではなかろうかというふうに思っております。
  27. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、解消したこと、解決したことは結構でありましたと言うておるんですよ。しかし、最後に司法処分に付しますぞという文書勧告が出なければ応じないという、こういう会社の態度はいかがですかと尋ねているんですよ。丸紅という大商社が親会社としておって、こんなことまで労働基準監督署をわずらわさないかぬということ自身が私は異常だと言っているんですよ。どうですか。話し合いじゃないですよ、これは。
  28. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) こういう労使の話し合い、いろいろと途中経過はあったろうと思いますが、別に、終わりがよければすべてよかったと申し上げているつもりはございませんけれども、しかしながら、具体的な細かい事情についてそれぞれ両者の言い分もあろうと思いますから、この場でコメントさしていただくことは控えさせていただきたいと存じます。
  29. 本岡昭次

    本岡昭次君 こういうところでコメントができないというところに私は問題があると思うんですがね、またそれは別のところで論議させていただきます。  いま一つ同じようなことがまた起こっておるんです。この社労委員会で論議することもどうかと思うんですが、しかし私は、丸紅という大商社の系列下で起こっていることだけに問題にしたいと思っています。  今度は、三月三十一日に定年退職になった者の退職金が支払われないという、考えられないような問題がまた起こっているんですね。これについても四月二十日に労働基準監督署は社長を呼んで、そして先ほど解決したものと同じような扱いをしなさいと言って、口頭で是正勧告をしたようなんですが、どうもそれについて応じようとする気配もいまのところないようです。それで、労働基準監督署、労働基準局、ともに、組合と話しをする中で、労働基準法二十三条違反の犯罪要件を満たすには、退職日を確定しなければならないということのようなんです。労働基準法二十三条違反かどうかという問題を追及するということはもちろんこれは労働省の立場から必要です。しかし、退職金問題が、丸紅も神戸精糖も、犯罪にならなければこれを出さなくてもいいんだと、犯罪か犯罪でないかという問題で論議すること自身に私は大変腹が立つんですよ、これは。経営者なり雇用主が、三十一年七カ月も働いた人に退職金を出すということを、こんなに犯罪であるかないかのレベルの問題で論議すること自身が私は間違っていると思うんです。これは道義的な問題なんですよ。そこのところどうしても私は許せないと、こう思っているんですが、この問題についても事前に私は労働省に申し上げておりますが、どうですか、やはりこの解決の方法というのは、労基法二十三条違反、それで犯罪の要件を満たすか満たさぬかということがなければこれも解決できない問題なんですか。いかがですか。
  30. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) いま先生のお話がございましたように、また一つ新たに一人の方から退職金の不払いの申告が出ているわけでございまして、この問題につきましても会社と労働者側との間でいろいろと話が出ているようでございまして、これは、すでに以前になされた人員整理による解雇、これを労働者側が争う、そのうちにさらに定年退職の時期が到来したというようなことで、経緯としてもそのような時の経過を踏んでおりますし、また片方、労働協約の問題とかあるいは就業規則の問題とかいろいろと複雑な問題が中に入っておるようでございまして、いま先生の御指摘の点も、そのような経過、あるいはその背景の中からいろいろと会社側もそのような問題を取り上げて議論をしておるのではないかと思います。  ただ私どもとしましては、その中で、その退職金の問題について労使の間でどの点が争いのない部分であるのか。もし仮に争いのない部分があるとすれば、それについては退職金を払ってもいいのではないかというふうにも思われますので、このような部分につきましては、両方の考え方を少し整理してもらうというようなことで時間がかかるかもしれませんが、私どもとしましては、いま申し上げた、労使の間に争いのない部分については処理できますようにできるだけ指導いたしてまいりたいというふうに思っております。
  31. 本岡昭次

    本岡昭次君 その労使の中で争いのない部分という金額なんですが、それは会社が一方的に三分の二ということを言っているわけですね。三分の二は支払う、しかし三分の一はどうしてくれるんだということがこの問題なんです。この人は、三十一年七カ月勤続して、退職金を約千八百五十万というふうに計算をされるようです。しかし、会社が三分の二しか渡さぬということですから、三分の一というと約六百万という金になるわけですね。会社が一方的に解雇通告して、三分の二しか支払わぬということで、六百万というお金をこの人は損失をこうむるということになるんですね。まあ十万や二十万——それでもいいとは言いませんけれどね。しかし、その六百万の金を三十一年七カ月も働いて一方的に召し上げられるというふうなこと、これはどうあっても納得できぬ、理不尽なものだと本当に私は思います。けれども、ここでどうこうするわけにいきませんから、そういう実態であるということを大臣もよくここでひとつ聞いておいていただきたいんです。そして、もう時間が来ましたから、最後に大臣に見解をお伺いをして終わりたいと思います。私は、この問題は、直接大臣にお話しをしに行こうと思ったんですけれども、そういう機会もお互いにありませんから、この場で申し上げておきたいと思うんです。  前回の私の質問に対して、政府委員の方はこういうふうに答弁をしていただきました。この労使の不信感を払拭して円満な話し合いによって事態の解決を図っていけるよう願っていますと、また、「円満な話し合いを促進していくことはむしろ労働行政の務めであろうかと考えております。」、このように言っていただいたんです。私は非常にうれしかったです。そのとおりなんです。「円満な話し合いを促進していくことはむしろ労働行政の務めであろうかと考えております。」、このように言っていただいた。そこで、労使の信頼そして円満な話し合いを進めていくその基本になるものは、労使の間で話し合ってつくり上げる労働協約であろうと私は思っておるんです。  ところが、残念ながらこの神戸精糖の労働紛争の中には、その労働協約を会社が一方的に破棄して、そして会社が新しく就業規則というものをつくって、それによっていろいろな内部の職員に対する人事問題、その最大なものが全員解雇、そして退職金を三分の二しか支払わないというようなことをいまやったわけで、もちろん、数年間にわたるこの争議の中に、労使の間にある越えることのできない不信感というものがあることも事実ですが、しかし、そういう強権発動によってこの問題の解決に当たろうとする会社の態度については、私は納得できないのであります。それで、全体としては仕方がないので組合は法廷にその争いを持ち込んだということになってしまっております。それで地元では、兵庫県の方でも大変この問題を心配していますし、続いて神戸市の方もこの問題について地元でありますだけに心配をしまして、三月三十日に神戸市の市民局長経済局長の連名でもって丸紅、それから神戸精糖、そして労働組合、この三者に労働紛争の早期解決に関する要望というものを地元からも出しております。その言わんとするところは、兵庫県地方労働委員会から、丸紅と神戸精糖あるいは労働組合の三者に対して、一日も早く解決のために交渉をしなさいということが要請されていますから、その地労委の要望に従って早く解決をしてくださいということを神戸市もこういうふうに要望書を出しているという実態であります。  それだけに、先ほど私が申し上げた、前回のこの委員会で政府委員の方から答弁があった中身、それによって労働大臣初め労働省皆さん方で積極的にひとつこれに対処していただいて、地元の県も市も挙げてその解決を要望しているこの問題について対応をしていただきたいという要望を申し上げて、ひとつ大臣のこれに対する前向きな答弁をいただいて終わりたいと思います。
  32. 大野明

    国務大臣大野明君) この問題のみならず、いずれにしても労使間があらゆる問題で円満であってほしいということは労働省として常に考えておるところでございます。  特に、いま御指摘の神戸精糖の問題につきましては、兵庫県あるいはまた農水省等とも連携を保ちながら、いま鋭意努力をいたしておるところでございまして、私どもも、一日も早く解決できるように今後ともでき得る限りの努力をまたさしていただこうと考えております。    〔委員長退席、理事対馬孝且君着席〕
  33. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 時間的な制限もありますし、長い間手がけてきた問題が、一定の締めくくりをしよう、そういう時期でありますので、わずかな時間でありますが、要点だけ質問して政府側の見解を聞きたいと存じます。  その案件は、いわゆるヤクルト問題であります。私は、五十六年三月二十日以降、社労委員会、決算委員会などを通じ、大臣も、藤尾労働大臣、初村労働大臣、そして現在は大野大臣と、過去二代にわたる大臣との間にいろんな角度から取り上げてまいりました。いろいろマスコミやその他で言われてまいりましたが、私は、四万六千人いらっしゃるヤクルトおばさんの労働条件がきわめて悪い、しかも不明確だと。中には人権問題まで発生している。こういう問題で、執拗に二年近くにわたってこの問題を追及をしてきたわけでありますが、途中、船尾労働大臣あるいは初村労働大臣当時、ヤクルトおばさんの問題については、実態調査をしてきちっと何らかの方向づけをつけよう、そういうことで労働省が積極的に乗り出すという大臣の答弁を受けて今日までやっておるわけでありますが、この契約関係などについて、あるいは雇用関係あるいは委嘱経営などなどについて、労働省が今日まで進めてきたその締めくくりの現状についてどうなのか、そういう点で御答弁をもらいたい、こう思います。
  34. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) いわゆるヤクルトおばさんの契約関係につきましては、いま先生指摘のように不明確な面がございまして、労働省といたしましては、これまで労働者とされる者とそれ以外の者と、この取り扱いの基準を明確にするようにということで指導をいたしてまいりました。  その結果、ヤクルトの本社では、ヤクルトおばさんの実態などを踏まえまして、まず第一に、ヤクルトおばさんのうちセンターマネージャーと称されている人々の仕事及びこれに準ずる会社の指揮命令のもとに行われる仕事に従事する者につきましては、これは雇用関係があるということで取り扱うものとしまして、そのセンターマネージャーの仕事の内容につきましても、基本の仕事及び日常の仕事を明確にすること、これが第一点でございます。  第二点としまして、さらに、これにより雇用関係にあるとされる者の労働条件につきましては、就業規則が作成されていない場合には速やかにこれを作成することとし、労働社会保険については、加入要件に該当する者は加入させること。  それから、第三点といたしまして、なおそれ以外のヤクルトおばさんにつきましては、雇用関係ではなく、請負ないし継続的な取引関係にある者として契約関係を明確にすること、そういうふうにいたしますという報告を受けたわけでございます。  労働省としましては、この方針に従いまして具体的に改善が進められるようになることを期待しておるところでございます。
  35. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 いま労働省が言われた、そのヤクルトの報告の内容、それから今後の労働省行政指導、それはひとつ今後ともやってもらいたいと強く要望しておきます。  それで、第二点として、雇用関係にないいわゆる請負関係にある方々の中身についても、仕事の自由と生活の安定ということは、やはり制度的にきちっとさるべきではなかろうか、こんなふうに考えるわけであります。したがって、制度的にも、契約の面からもきちっとしてもらいたい、こう考えます。  私がたびたび指摘してまいりました、グラフを掲げて強制的に販売目標を与えたり、いわゆる未消化分については現金でその場で買い取るようなことを強要したり、制服制帽の購入や着用の強制、あるいは自転車までも強制したものを義務づける、出勤時間の指定の強要、そして話題になったヤクルトスワローズの選手の裏金づくり、こういう問題については、もうこれ以上私はやろうとはしませんが、こういういわゆる請負で従事する方々の契約内容ということも、この際、問題点を全部整理してきちっとしてもらいたい、こういうふうに強く要望しておきたいんですが、この点はいかがでしょうか。
  36. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 御指摘の点でございますが、これまでもその都度指導し、改善させてまいったわけでございますが、ヤクルト本社におきましては、今回この点につきまして、実際の販売の現場で会社がヤクルトおばさんの事業を必要以上に拘束することがないように、各販売会社が問題になる事項をきちんと整理しまして、遵守すべき十三項目というものを明確にいたしまして、ヤクルトおばさんとの契約に当たりましては、取引条件とともに、これらの事項についても明確にするようにいたしますという報告を受けたわけでございます。  労働省としましては、これらの事項の明示につきましては、契約書またはこれに準じますような 文書ではっきりさせるように要望しておいたところでございます。したがって、いまの点につきましても、今後さらに改善が進んでいくのではなかろうかというふうに期待いたしておるところでございます。
  37. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 いま労働省が基準局を中心に相当積極的に問題解決に取り組まれて、いわゆる十三項目——私もこの十三項目をもらいました。大体、私が二年間にわたって指摘した問題点はほとんど一〇〇%近くその内容に入っているということについては、私はこの十三項目までまとめた労働省努力に感謝します。同時に、いままでの大臣、たとえば藤尾大臣の香港問題、初村労働大臣のヤクルトの役員問題などなどについては私はもうこれ以上言及するつもりはないと、このように考えておりますが、せっかくつくった十三項目でありますから、この十三項目がいつから実施されるのか、そして、今後のこの十三項目の実施状況などについて、労働行政としてやっぱり一定のチェックをして、守られないやつは守らせる、そういう形のやっぱり絶えざる行政指導が必要ではなかろうか、このように考えますので、いつから実施されるのか。そして、実施状況について今後労働省はどんな姿勢でヤクルトを指導していくのか、そういう問題について見解を聞かしてもらいたい、こう思います。
  38. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 今回の新しい措置でございますが、これは四月以降から実施に移すこととされておりますし、また、各地域ごとに各販売会社に対する周知徹底が、この実施に移行するとともに徹底が進められておるところでございまして、関東地域とか東北地域におきましてはすでに私どもも周知が終わったというふうに聞いておるわけでございます。その結果といたしまして、これらの地域の販売会社におきましては、販売の強制あるいはノルマの割り当てというようなことと見られるようなおそれのある行為をすることがないように職場教育を徹底するとか、あるいはセンターの管理のあり方の見直しを開始するというような具体的な措置もすでに講じられておるというところもあるというふうに聞いております。  それから、特に一つ、問題となりました販売会社が遵守すべき事項のうち、販売地域の設定につきましては、ヤクルトおばさんの側の事情も考慮しまして、ヤクルトおばさんと販売会社が十分協議して設定するということにされておりまして、いままで御指摘いただいたような問題は今後はなくなるものではなかろうかというふうに承知しております。  それから、さきにお答えしました就業規則の整備、それから販売会社が遵守すべき事項をヤクルトおばさんに明示するための文書につきましても、現在それらのモデルを本社において作成中でありまして、近く完成を見るというふうに聞いておるところでございます。
  39. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は、この問題を二年にわたって取り上げたのは、非常に弱い立場にあるヤクルトおばさんの方々の生活なり環境整備ということは冒頭申し上げたとおりでありまして、この問題をめぐる二年間にわたる中で、会社自体の中身の問題や社長以下会社首脳陣に対するそれらの問題については、私は決して巷間で言われている個人的な恨みなどはあるわけでありません。したがって、このヤクルトおばさんの問題がきちっと解消すればそれで私の任務は達成したものと思いますので、こういう問題については私は労働大臣以下皆さんに敬意を表すると同時に、まだ問題の残っている大蔵省——きょうは呼んでおりませんが、大蔵省、国税庁、公取、法務省、この関係はまだ依然として私の提示した問題が残っておりますから、これは今後関係委員会でさらに明確にしていきたいと思っておりますが、労働省に関する限りは、このヤクルトおばさんの問題についてはもう私はピリオドを打ちたいとこう思っておるわけであります。  したがって、いま政府委員から答弁がありましたが、締めくくりとして労働大臣から、いまの十三項目の実施の問題、それから就業規則の問題、雇用関係にある方々の労働協約の適正な締結などなどについて、全般的に大臣としての決意を聞いて、私はこの問題の労働省関係のピリオドを打ちたいとこう思いますので、大臣の決意をお願いしたい、こう思います。
  40. 大野明

    国務大臣大野明君) 先生が約二年間にわたってこのヤクルトおばさんのことについてるる機会あるごとに御質問をいただいたことは私も承知いたしておるところでございます。そして、労働省がその間にでき得る限りのことをしてきたことを高く評価され、きょうでもってこの問題は労働省に限ってはということでございますので、私も非常にありがたく思っております。  いずれにいたしましても、そういうような弱い立場にある人に対して気配りをするということは労働行政基本でありますから、今後ともわれわれはその基本理念をもって行政に当たる所存でございます。特に私も、就任いたしましたときに、労働行政は心と心の触れ合いであるというところを基本にいたしておりますので、この問題が一つ解決できたことは大変にありがたいと思っております。  しかしながら、この十三項目の問題でございますけれども、いずれにしても、これは会社としても慎重に検討した結果であり、また意思も統一したことでありましょうから、今後は、これを確実に遵守徹底しているかということを見守りつつ、また、それに何かありますればその都度都度ひとつ適切な行政措置をとっていきたいということでございます。先生が多年にわたって努力してこられた結果がやはり本当によくいくように、私どもも最善を尽くす所存であります。
  41. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 最後に、法務省は来ていますか。——これだけはどうしても私、情報を提供してもらった方との関係で法務省にただしておかなきゃならぬので、時間がありますから、一点だけ追加します。  これは私は、昨年の十二月、文書をもってヤクルトの経過などについて、法務省、公取、国税庁、大蔵省などにお尋ねした際に触れておったんですが、その後何の音さたもないんですが、これは五十六年の終わりころ現職検事が、桜の咲くころ何とかすると、いわゆる五十七年の春に強制捜査をやるというようなこともにおわせながら、善良な市民から情報を提供されておるはずですね。一定のネタをもらっている、おたくの方で。そしてその方は、ヤクルト問題が解決するならばということで資料を提供されました。しかし、この問題については——ここらは推測ですが、聞くところによると、これはヤクルトの内紛であるからという上の方の指示で、どうも桜の咲くころ云々ということには全然音さたもない。もちろんおたくの方からは私のところに、問題提起者に何らの説明もない。こういうことでずっと今日に至っているんですがね。私は、まさかそういうことはないだろうと思うんですが、市民から資料をもらって、その資料を活用するからということでその情報提供者に一定の方向を与えて、それで上から言われたからといって、その情報を寝たままにさせておく。寝たままにさせておくどころか、聞くところによると、コピーをとってヤクルト側に提供する、そういううわさまで——これはうわさですが、うわさまで聞いているんですよ。  私はこれはちょっと、虚言を用いて資料を提供させて、そしてその資料を提供した人だけが要注意人物にされているというようなことは、これは国会の調査の際にも、ヤクルト本社にもいろいろあったことですが、私がここで問題提起をすると、ぱっとすぐ販売所の職制が行って、その情報を提供したおばさんをつかまえて、おまえは目黒議員に情報を提供したじゃないか、借金を返せと言って借金を取り立てる、こういうふうな全く国会の審議にブレーキをかけるというようなことをやっておった。何回か例を挙げたんですが、私は法務省も、情報を提供した方に資料を返してもらいたいと思うんですよ、もうこれ以上この資料は使わないならね。そういうことについて御検討をしてもらいたいし、御検討というよりも、使わな かったら資料を返してもらいたいということを私は要望しておりますが、これは去年の十二月にも一回うちの秘書を通じてお願いしてあるんですが、全然音さたがないということについて、法務省はこの問題にどういう取り組みなり取り扱いをしようとするのか、お答えを願いたい。これはここで答えれば、後はその答えによって対応は私が考えますから、その後どうなっているか、今日での見解だけお聞かせ願いたい、こう思うんです。
  42. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) ただいまの御質問の中には、若干捜査のあり方について誤解があるのではないかと思われるところがありますし、また、検察当局が捜査上知り得た秘密をほかの者に漏らすというようなことが前提になっての御質問のようなこともあったのでございますが、検察当局の行う捜査は非常に厳正かつ公平に、また、秘密の漏示ということは絶対ないように十分配慮して行われていることをまずもって明確にさせていただきたいと思うわけでございます。  それから次に、ただいまの御質問の中で、検察当局がヤクルト事件について捜査をやっているという前提で御質問がございましたけれども、検察当局が独自に捜査する場合——これは警察から事件の送致を受けたような場合はこれは公になっておりますし、それから市民から告訴、告発がなされた事件でもこれは公になっておりますからそういうものは別でございますが、告訴、告発がなされない、検察当局が独自で捜査する事件については、いま捜査をやっているということは申し上げたこれはないわけでございます。このヤクルト事件についても検察当局が捜査をやっているということは、恐らくいまだ、この委員会、その他の委員会でも申し上げていることはないと思います。  それはそれといたしまして、ですから、この事件について検察当局がどういうふうなことをやっているかということを前提にしてのお尋ねですと、お答えはちょっとするわけにはいかないのでございますけれども、一般論といたしまして、検察当局が捜査をする場合におきましては、いろんな方から情報の提供がございますし、その情報の提供に基づいていろいろ検事が内偵と申しますか、そういうことをする場合がございます。その場合に、関係者の方から必要な供述を得ましてそれを調書に作成することもございますし、また、必要な書面や証拠物を提出いただくこともあるわけでございます。  それで、そのような必要な書面や証拠物を提出いただく場合には二とおりの方法がございます。一つは、もうこの物は、この証拠物は私は要りませんから……
  43. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そんな一般論を聞いているわけじゃない。そんなのはわかっている。
  44. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) その問題の……
  45. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 この問題について、イエスかノーかと言っているんだよ。あったか、なかったか。
  46. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) ちょっとお待ちください。  証拠物の提出を受けた場合に、もうこれは返していただかなくても結構ですということで、提出を受けたものについてはお返ししないのが原則でございますし、それから、これは後で用が済んだら返してくださいということが前提で提出を受けたものについては、用が済めばお返しするわけでございます。  それで、いままで、このヤクルト事件について捜査をやっているかどうかは別といたしまして、関係者からぜひその証拠を返してくださいというお申し出があったものについては、検察当局といたしましてはお返しするのが原則でございますから、恐らく何かの事件で証拠を返していただきたいという方があれば、検察当局にお申し出いただければ、それはお返しすることになると思っております。    〔理事対馬孝且君退席、委員長着席〕
  47. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 きょうは、労働大臣の所信に対する一般調査並びに法案審査、これには私も三時間分ぐらい質問を用意しているのでありますが、時間がございませんから、しぼって申し上げたいと思います。  まず、時間が、午前中は二、三十分しかありませんから、駐留軍関係離職者の問題、国際協定の締結に伴う漁業離職者関係について一、二問質問を申し上げます。  その前に、基本問題としてお聞きしておきたいことは、政府が昨年の十月、総合経済政策が決定をされました。しかし、いまなお景気は低迷を続けている、雇用の先行きはきわめて厳しい、こういう状況の中で、さらにことしの四月に景気対策決定しました。この総合経済政策と、十月、四月のこの雇用改善の対応の施策がどのように違っているのか。また、それがどういう効果を生んでいるのか。この点、まず基本問題ですからお伺いしておきます。
  48. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 昨年十月に総合経済対策が定められましたが、そこにおきましては、五十五年の後半から世界的な不況を背景に景気の低迷が続き、その回復の足取りが非常に緩やかで、経済的にもあるいは雇用の面でもいろいろな問題が生じているというふうなことを背景対策が決められたわけでございまして、その後、それらの施策に基づきまして各種の施策が講じてこられたわけでございますけれども、なお、はかばかしい改善が進んでおらないということをもとにいたしまして、この四月に至りまして、今年度予算成立後新しく景気対策が定められたわけでございます。ここにおきましては、金融政策の機動的な実施とかあるいは公共事業の前倒しの実施とか、あるいは住宅対策としての一定の配慮その他いろいろな施策を講ずることとされておるわけでございます。  そこで、特に雇用対策の面から見ました場合には、昨年の十月の総合経済対策におきましては、雇用安定事業の機動的な運営ということ、それから不況業種・不況地域対策充実、これは現行の業種離職者法、地域離職者法を前提といたしまして、業種なり地域の追加指定、それから求人確保対策ということが盛り込まれておったわけでございますけれども、特にこの四月に決められました「今後の経済対策について」におきましては、雇用対策といたしまして、御審議をいただいております特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する法律案の成立を得まして、こういう関係労働者雇用の安定を従前以上にも強力に進めるための所要の施策を講ずるということと、引き続き失業の予防、再就職の促進につきまして各般の対策を講ずることによりまして効果的な雇用対策を進める、こういうようになっているわけでございます。
  49. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 これは、いま局長からございましたけれども、十月のも私は持っておりますけれども、十月も四月も何も変わっていないじゃないですか、基本的には。それは総合経済政策として、言うならば経済成長率の問題あるいは金融政策の問題、加えてこれからの産業政策等の問題に触れられておりますけれども、率直に言って、今回の通産省の特安法、つまり特定不況産業の安定法案、これを見たって、結論的にはただ設備を廃棄して共同合併して集約をしていくという、産業救済がむしろ中心であって、労働者雇用安定、雇用創出という問題は出てきていないでしょう。だからわが党はきのうの本会議でも反対をしたわけであります。したがって、私はこの二法案だけでこれからすべての雇用が強化されていくと、こういう認識であってはならないんじゃないか。当面する対策としてはそれなりの効果は出たとしても、これからの、抜本的な新経済計画、加えて第五次の労働省としての雇用計画というものをいま検討されているようでありますけれども、その段階を踏まえて、これをどうこれから強化策を考えていくのか、この点をやっぱりまず、大臣を含めて、ひとつお伺いしたいと思うんですよ。
  50. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 最近の雇用失業情勢の認識とそれに対応いたします対策についてでございますが、かねてから申し上げておりますように、なかなか景気の回復がはかばかしくないとい うことで、失業者の増加、失業率の悪化、また、労働力需給が緩和した状態で続いておるということでございますので、私ども基本的にはやはり経済運営を適切、機動的にやりまして景気回復を図り、雇用需要を安定した形で確保することが重要でございますし、そういうことを背景といたしながら雇用対策の面につきましても、失業予防のために雇用調整助成金制度等も機動的に実施する。たとえば業種の指定等につきましても、昨年十月には二百四十八職種でございましたが、この四月では二百八十五職種まで拡大をいたしておりますけれども、そういうものを活用するとか、あるいはまた、雇用確保助成金等を活用いたしまして、離職者の再就職の促進、また、地域実情に応じた雇用開発というようなものにも取り組んでいかなきゃならぬと存じますし、それとあわせて、いま御指摘のございました構造的に不況に落ち込んでいる業種なり、あるいはその集積しておる地域雇用安定の対策を講じようと、こういうことを基本的な柱として取り組んでおるわけでございますが、いま先生指摘のございましたように、そういう短期的な問題でなかなか景気の回復なり雇用改善が進まない、あるいは先行き楽観を許さないということと同時に、中長期的にも成長率が低い形での経済の継続というようなこともある程度覚悟しなきゃなりませんし、そういう中での雇用改善がなかなか進んでいかないということと同時に、労働力需給の構造的変化というようなことも進んでまいりますので、そういうものに適切に対応していきますためには、現在経済計画についても見直し作業が行われておりますけれども、あわせて私ども雇用対策基本計画につきまして見直しを行い、その中で御指摘のありましたような中長期的な問題も含めて適切に対応するような対応あるいは政策を考えていかなきゃならぬというふうに存じておるところでございます。
  51. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いまお答えがございましたけれども、問題はやっぱりこの間当社会労働委員会でも調査のあれもございましたけれども、私は実は予算委員会の調査団として北海道各地域に行ってまいりましたけれども、いまなおやっぱり鉄鋼、造船、アルミ、こういう問題を含めて、苫小牧の日軽金などは四工場の中で現在運転しているのはたった一カ所ですよ、実際現場を見てきましたけれども。そういう状況考え合わせると、何かやっぱり雇用対策というものが、景気が浮揚するということが、何か石油が五ドル下がったからすぐ何とかなるというような、なべ底というものも底入れが底上げになるんだというようなことを言うんだけれども、また、アメリカの金利が緩和されたとかと言っているけれども、総合的にはそう簡単に景気が浮揚するなんという条件はないと思うんですよ。  私は、むしろここではっきりしてもらいたいことは、これは大臣にお聞きしますが、いまも安定局長からございましたけれども、つまり、やっぱり雇用安定計画の見直しということを早急に出されるべきじゃないか。もちろんこの新経済計画とのタイアップという問題もございますけれども、これはやっぱりしっかり出さないと、これからの雇用というのは、私は率直に申し上げるけれども日本の失業状態というものは、二・七二という総理府はこの前出しましたけれども、決してそんなものではない。単純に物を言うならば、その日暮らしの大工、左官、あるいは臨時工なんというものはこれやっぱり優に三百万を超える、こう私なりにつかんでおりますけれども、だからそういう厳しさを受けとめて、ひとつ基本的な雇用創出、雇用計画というものを見直して、今後積極的な雇用創出の面で基本を据えた計画というものを出されるべきである。このことをひとつお聞きしておきたいと思います。いかがですか。
  52. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) いま御指摘ございました、今後の見通しを明確にし、そういう中で雇用対策につきましても情勢の変化に対応した適切な的確な対応をするような政策を行うべきだという御指摘につきましては、もうまさにそのとおりだと存じますし、私どもも、先ほど申し上げましたように雇用対策基本計画の見直し作業を進めておるわけでございますが、やはりこれは、先行きについての見通しにつきましては、経済の動き、それに対応する経済政策と、またそれとの関連における雇用の動向、またこれに対応する雇用政策というものはやはり密接に関連をいたしますし、具体的にも、雇用対策基本計画経済に関する施策と調和のとれたものでなければならぬということで雇用対策法にも規定をいたしておるところでございまして、そういう意味で私どもといたしましてもできるだけ早く雇用対策基本計画で先行きについての問題を明確にし、それに対応する対策についても形を示すようなものを策定をいたしたいということで進めておるわけでございまして、その中におきましてはやはり雇用の安定あるいは完全雇用の達成というものは政策の非常に重要な課題だというふうに考えておりまして、そういう観点からできるだけ早く結論を得るように取り組んでまいりたいと思っております。
  53. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま安定局長からございましたけれども大臣ひとつ、これからの雇用第五次計画に取り組む大臣の決意について、いま安定局長から出されましたけれども、私はやっぱりただ失業を防止すればいいという段階ではない。むしろ完全雇用雇用創出というここに基本を据えた対策に重点を置くべきである、こういう考え方を踏まえての考え方を、決意をお伺いしておきたい、こういうように思いますが、いかがですか。
  54. 大野明

    国務大臣大野明君) 先生指摘のとおり、雇用関係が大変に厳しいことも事実でございます。しかし、いずれにしても雇用問題というものは経済と密接な関係がございますので、いまお話しございましたように、経済計画雇用対策基本計画、これはやはり何といってもそういう関連性を持って今後とも対策を進めるわけでございますが、いずれにしても、完全雇用ということは本年の一月の経済審議会においてもそういう御指摘もございまして、しかしながらなかなか、経済というものは生き物でございますから、私ども考えておることと、いい方向へ進めば結構でありますが、悪い方へ進む日もあろうかと思います。しかし、それに対応してやっていくためにいま鋭意努力をいたしておるところでございまして、先ほども昨年と本年四月のではそう変わっておらぬじゃないかという御指摘もございましたが、やはりまず当面景気の回復、それはそれとしてやりつつ、産業構造の変化であるとかあるいはまた雇用構造の変化であるとか、もうそれはすべて日本の社会のみならず世界的な構造の変化もございますので、それに対応するという膨大なことでありますけれども、鋭意努力をいたしたいと思っております。  また、不況業種あるいは地域の問題もございましたが、こんなものがなくなるような世の中にしたいというのが念願でございまして、私も先日、自分の地元ではございますけれども、国道に歩道橋ができたから落成式に来てくれと、こんなものがない日を願っているというあいさつをしてきたように、お互いにそういう心がけでやっていくということが大切なのではないか。これはもう政治家のみならず国民全般にそういうような機運を持たしていただくようにすることが雇用対策にも大きなプラスになると考えておりますので、これからより一層積極的に進めていく所存でございます。
  55. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 積極的に進めるということですから、基本はやっぱり経済計画と相まってこれは当然のことですけれども、やはり雇用創出、完全雇用という政策にどうこの業績を上げていくかと、また実態を踏まえて対処するかということを強くこの際申し上げておきます。  時間もありませんから、駐留軍の関係と漁船法の関係、ちょっと一、二だけ簡潔に申し上げますから答えてください。  後から法案の質疑を私もしますけれども、いま、とりあえず駐留軍の関係は五年間自動延長ということになるわけでありますが、問題は、この雇用対策は、ずばり申し上げましてその後いわゆ る業種転換の資金というものを一回見直してみたらどうかと。何か駐留軍の関係はただ自動延長すればいいのだということだけでなしに、ここらあたり、やっぱり先行きの駐留軍離職者の再就職は一体どうなっているのか、それからそれに伴って駐留軍関係の転職者の転換給付金の状況というものはどうなされているのか、これ、簡潔でいいですから、どう取り組まれるのか。時間がありませんから、ポイントだけひとつ。
  56. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 駐留軍離職者の方々の雇用対策につきましては、駐留軍離職者臨時措置法をもとに逐次いろんな形で整備しながら延長を進めてきたわけでございまして、今回は、内容は従来のままで単純延長でございますけれども基本的にはやはり駐留軍従業員の方々が高年齢化されておりますので、離職者の方も年齢が高いこととか、あるいは駐留軍の従業員の方々の職種がかなり細分化されておるというようなこと等々の事情で、実際問題としても離職されてからなかなか就職がしにくい。したがいまして、雇用保険の受給後も、離職の日から起算して三年間は促進手当を支給しながら、きめ細かい職業相談なりあるいは必要に応じて職業訓練をしながら再就職の促進を図るという対応で来ておるわけでございまして、いま御指摘のように、こういう職業転換給付金だけで就職促進の効果が上がるかどうかというような点は、駐留軍離職者の方々が出られるその地域雇用需要とかあるいはそのときどきの経済の動きとか、いろんなものも関連いたしまして問題もあるわけではございますけれども、やはりいまの雇用対策の手法といたしまして、私どもはやはり職業相談基本としながら、その需要に見合った技能の開発向上を通じて就職促進を図っていくということが基本だろうと思っておりまして、そういう面ではいまの対策を十分活用して当たりたいというふうに思っておりますし、今回の改正につきましても、中央職業安定審議会にございます公労使の三者の御意見等も承りながら、こういう形で延長するということで御提案申し上げた次第でございます。
  57. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 時間がないからね、それ、百も承知でしゃべっているわけですけれども、問題は雇用対策法第一条の「完全雇用の達成」、同法第三条第一項第五号の「不安定な雇用状態」、ここがやっぱり、駐留軍労務者のきわめて不安定な雇用状態ということに問題があるのであって、この給付金制度のあり方をもう一回、僕はいますぐとは言わぬけれども、検討を、制度の見直しをやっぱりすべきではないか、こういうことが第一点です。  それから第二点は、これ水産庁関係も、運輸省でもあわせてお願いしたいのでありますが、漁船の関係では相変わらず二百海里で、特に北海道では釧路、函館、北洋船団を含めましてやっぱり減船、離職者の発生というのは非常に多うございまして、この間も函館に行ってきましたけれども、相当数に上っています。これらの問題を含めて、ひとつその取り組みについて積極的な、もちろん外交面、内政面の問題ございますけれども、やっぱり私は、はっきり申し上げますと、大手水産業の場合は沿岸漁業と違ってある程度それなりの実績があるんですけれども、沿岸漁業の場合を見ると、いま七千七百人、むしろ大手企業から見ますと二万一千五百人も減少しているんですね。確かに大手も減少していますよ。だけれども、中小沿岸漁業は二万一千人ですから約三倍の漁船の失業者が出ている。こういう問題等についてどういうふうに取り組まれるのか、また、どういう対策を持っておられるのか。これをあわせてひとつ水産、運輸関係含めてお答えを願いたい。  それから、労働省にもひとつ先ほどの前段の方お願いします。
  58. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 駐留軍離職者の方々を含めまして、いま不安定な雇用の方々、その他いろんな問題を抱えておられる方々の雇用対策につきましては、雇用関係の給付金を初め、今後適切に対処するための対応をどうするかというようなことは、中長期の問題もございますし、そういう中で考えていかなきゃならぬと思っておりますけれども雇用関係の給付金につきましては、これも先生十分御存じのように、昭和五十六年に高齢化社会とか低成長経済のもとにおきます完全雇用に資するものとなるように、各種給付金の見直し、改善等を図ってきたところでございます。しかし、経済社会は動いておるわけでございまして、そういう状況で実効ある雇用対策になりますように、そのときどきの事情に応じて、利用状況とか政策効果等を十分勘案しながら、やっぱり時代の要請に沿ったものになるように、今後とも検討してまいりたいというふうに考えております。
  59. 窪田富

    説明員(窪田富君) ただいまの御質問につきまして、水産庁の方からお答えさしていただきます。  御指摘のとおり、二百海里時代の到来によりまして、わが国の遠洋漁業というものに対する規制が非常に厳しくなっております。もちろん今後とも各般の外交努力によりまして、そういう厳しい沿岸国の規制に対して少しでも漁場を確保できるよう努力をすることはもちろんでございますけれども、一方、どうしてもやむを得ず減船をせざるを得ないという事態が起きてまいっております。この場合におきましては、まず離職者が発生しないよう労使間の話し合いによって残存漁船への吸収、あるいは他の漁業等への配置転換が行われるよう関係業界を指導しているところでございます。しかし、現実問題としては、二百海里規制下で人を吸収し得る余地のある業種というのは非常に少のうございます。そういう関係で、各般の努力によってもやむを得ず離職者が発生しました場合には、従来から労働省及び運輸省と協議いたしまして、現在延長をお願いしております漁臨法に基づく職業転換給付金の支給、就職指導等の措置が講じられるよう努めております。また、こういう措置が円滑に行われますよう、五十四年度からでございますが、漁業協同組合系統組織を通じまして、漁業労働力の需給情報を集め、また、末端まで伝達するという労働力の需給の円滑な調整事業も実施しているところでございます。
  60. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いまの駐留軍関係は、先ほど給付金の問題等について谷口安定局長の誠意あるお答えですから、これはひとつその方針で対処してもらいたい、こう思います。  それから、いまの水産庁の関係だけれどもね、これは正直に申し上げて、もう時間がないから私ははしょっているんだけれども、実際問題として、いま離職者の関係方面を含めて諸対策をやっている、こう言っているけれども昭和五十二年度の北洋漁業、これは千二十五隻の減船、昭和五十三年の北洋漁業が百六十四隻の減船、昭和五十五年以降は、これはもう底びきを含めて相当の減船が、三倍以上の減船をしてきている。それに対するそれなりの対策は打っている、こう言うんだけれども、私は、次の点は一体どう考えているのか。これはやっぱり早急にやるべきじゃないかということは、漁業に従事する者を含めて船員の雇用対策等に資するための保険事業の四事業、これはかねて私もこの前も申し上げたことがあるのでありますが、船員保険雇用安定事業雇用改善事業、能力開発事業雇用福祉事業の創設をすべきでないかということをしばしば申し上げてきましたけれども政府として、この考え方について、この保険四事業を導入することのネックになっているようなことを、技術的、制度的な事情があるということをしばしば言われていますけれども、これはやっぱり積極的に取り組むべきじゃないか、推進をすべきじゃないかと思いますが、どうですか、この点は。
  61. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 船員につきましての雇用事業問題でございますけれども、現在船員雇用促進センターというセンターもございまして、雇用の安定事業、それから能力の開発事業、こういった事業を行っておるところでございます。しかしながら、近年船員を取り巻く環境は著しく変化しておりまして、技術革新の進展等に伴います船員の中高年齢層の求職難、それから若年層の求人難という現象が生じておるところでございます。これらに対します対策充実というものが必要に なってきておるところでございまして、雇用保険法によります対策との均衡をも考えながら、新しい政策につきまして、厚生省など関係の向きとも協議しまして、現在鋭意検討中であるということでございます。
  62. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 検討しているということですが、これはこの前も同じ検討という言葉を使っているんだよ。私は、これはたしか一昨年ここでやっていますけれども、いずれにしましてもいま言ったように検討は結構だけれども、ひとつ早く実現になるように促進をしてもらいたい。この点、最後にもう一回確認の意味で申し上げます。
  63. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) そのように努力してまいりたいと思っております。
  64. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  65. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、石本茂君が委員辞任され、その補欠として板垣正君が選任されました。     ─────────────
  66. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 午前に引き続き、労働行政基本施策に関する件、特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次発言願います。
  67. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それでは、時間も限られておりますので、まず、特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案についてひとつお伺いしたい。たくさんあるんですけれども、要点をしぼって申し上げますから、それにひとつ誠意をもってお答え願いたいと、こう思います。  まず、この法案は、現行の特定不況業種離職者臨時措置法、特定不況地域離職者臨時措置法、これを総合一本化したというのが今回の提案でございますが、したがいまして、関係労働者雇用安定を目指していくということでありますけれども、新しい法案は現行二法とどのような、施策の展開においていかなる改善がされているのか、この点、要点でいいから、ポイントをひとつ回答してください。
  68. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 現行の特定不況業種離職者臨時措置法、それから特定不況地域離職者臨時措置法、この二法の施行の経緯にかんがみまして、こういう全体的な雇用の落ち込みの中で、特に構造不況に陥っております業種、あるいはその業種が集積している不況地域対策といたしましては、やはり失業の防止というようなことを一つの重点にする必要があろうということでございます。そういうような観点と、それから雇用状況、動きに応じて機動的に施策を講じようということがもう一つございます。  したがいまして、中身としては、まず業種とか地域の指定につきまして機動的に行うということで、業種につきましては、たとえば現行の産業政策の発動を要件としないで、構造的に不況に陥っているということが把握できれば指定できるようにするとか、あるいは地域の指定につきましても、現行の特定不況地域中小企業対策臨時措置法地域に必ずしも連動しないでも指定できるようにするというようなことが一つでございます。  それから二番目は、失業の防止という観点から、たとえばやむを得ず離職者を発生させざるを得ない場合におきましても、できるだけ再就職が促進されるように離職前訓練を行うとか、あるいはそういうものを通じて雇用調整をなだらかに行うというようなこと、同時にまた、どうしても離職を余儀なくされる方々につきましても、失業を防止するというような観点から再就職あっせんを事業主が行われて、それを受け入れた事業主に対する助成を新しく設けるということ、それから下請関係で影響が大きくなりがちでございますし、そういう事業主から出てこられる離職者の方々に対する配慮、それから最後に、不況地域につきましては、雇用を開発するための助成措置というような点を新しく盛り込みまして提出をいたしているわけでございます。
  69. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 総合一元化をしたという内容についていま安定局長からありましたが、私は、これは一つの前進であることは認めますけれども、やはり先ほど午前中に申し上げたように、雇用創出を拡大をするというところまではいかないんじゃないかという点が基本の問題だと思うんです。もちろんこの法案の一元化によって、後から申し上げますけれども、私はむしろ、いま言われた内容を中心に法案に盛り込まれているわけですが、さらに雇用、就業の機会の増大、雇用創出、こういう面ではいまひとつやっぱりパンチが効いていないんじゃないかと、こういう感を深くするわけでありますが、この点について大臣にひとつ、この法案を踏まえての所見をちょっとお伺いしたいと思います。
  70. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま御審議いただいておる新法でございますが、それについて、現行法よりは多少前進しておるけれども、まだまだ至らざるところがあるのじゃないかという御指摘でございます。不況業種であるとか不況地域というものは、非常に急激に何というか、その業種、また地域が加速度的にふえたという点もございまして、確かに御指摘のところまで十分に回りかねておる点があるかと存じますが、しかし、いまよりも一つでもいいことをやろうという意欲はひとつ買っていただいて、そしてまた、御指摘のような雇用問題等についてもこれから勉強もさせていただきますが、何といっても日切れ法案でございますので、今回のものを、ひとつ御審議と同時に一日も早く成立させていただいて、そこから先はまたその実情に応じ、日本経済の情勢、社会情勢を見ながらやらせていただこうと、こう思っております。
  71. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 大臣も、この法案が一応の前進はあるとしても、やっぱりこれからの課題を大きく抱えているという認識を踏まえての答弁ですからそれなりに理解をしますけれども、私は、この法案の内容だけでは全体の完全失業者雇用拡大につなげることはできないと、こういう懸念を持っている一人でございますから、それを踏まえて対処してもらいたいと、こう思っています。  そこで、法案に関する諸問題の中で、いま安定局長も言ったように、今回の法案では、不況業種、不況地域、この指定を機動的に対応すると、現行制度と違うところでありますが、これからこの指定業種、指定地域というやつの基準を定めるわけでありますが、当然これは関係審議会の議を経て一応指定基準が決められると思うのでありますけれども、この具体的基準を決める労働省考え方というものは、一体どういう考え方をお持ちなのか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  72. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 不況業種なり不況地域の指定についてでございますが、これは法律に要件がありますとおり、一つは、最近の著しい経済事情の変化によりまして製品なり役務の供給能力が過剰になっておるということ、それからそういうことのために事業規模もしくは事業活動の縮小等を行わざるを得ない、その結果雇用量が相当減少しておるか将来減少するおそれがあるということ、したがいまして、それらの関連の労働者について特別の措置を講ずる必要があるということが業種についてでございます。  地域につきましては、そういう業種事業活動がその地域で相当の割合にありますために、その地域全体の雇用情勢が著しく悪化しておる、そのためにその地域関係労働者につきまして特別の措置を講ずる必要がある、こういうことでございますが、そういう考え方自体は現行の二法と基本 的には変わらない点でございます。  先ほど申し上げましたように、業種で産業政策の発動の要件と必ずしも関係なしにしたとか、あるいは中小企業対策との関連を制度的にはなくしておるというような点はございますけれども、これらの要件については大体現行の基準と大幅に異なったものとするのは適当ではないということで考えておりまして、具体的には、いまお話しございましたように、中央職業安定審議の議を経て決めたいというふうに考えております。
  73. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 安定審議会にお諮りするという考え方をいま聞きましたが、一応従来と基本的にはそう変わりはないということですけれども、やっぱり変わらなければ意味がないんじゃないかと私は思うんですね。現在、特定不況業種が四十業種地域が四十四と、こうなっていますね。だから、この法案ができることにおいてやっぱり前進をしなければならないわけであって、そうするとどういう点がふえていくのか、どの地域、どの業種がふえるのか、今後どのぐらいふえていくのかということがなければ、安定局長、これ、法案を出し一元化して総合化した意味が薄らいでくるんじゃないですか。  この点は、何も無理してふやせと言っているんじゃなしに、やっぱり合理的に考えて、法案の趣旨から考えて、いま言った雇用縮小する、あるいは共同吸収合併をするということによって正規の労働者が余って、正規は余るけれどもパートタイマーでそれを補っていくとかというような、こういうことはあり得るわけでしょう。だから私の言うのは、そういうことを踏まえた場合に、やっぱり今後こういう地域なり業種というものはふえていかなければならないんじゃないか。ふえるということにやっぱり総合一元化した効率性、いわゆる合理性というものを考えたこの法案の趣旨が生きていくのではないか、こういう認識を持っているんですが、これはいかがですか。
  74. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 業種地域の指定につきましては、先ほどお答えいたしましたとおり、基本的には構造的に不況に陥っている業種なりその集積している地域ということですから、現行の法律による考え方と変わらないわけでございますが、具体的には中央職業安定審議会に指定基準を諮って決めまして、それに基づいて決定するわけでございますから、いまの段階で数が幾つになるとか、ふえるとか減るとかというようなことは申し上げられないわけでございますが、これはあくまでもそのときどきの状況に応じて、ここに構造不況業種がふえる、あるいはそれの関連地域がふえるということでしたら、それに対応して業種を指定するとか地域を指定するというようなことになるわけでございますが、先ほど大臣も答えられましたように、むしろ全体の経済がよくなり、また、こういう構造的な不況業種地域等がむしろ改善されるということがあればその方が望ましいわけでございまして、あくまでもその時々の状況に応じてそれに適切に対応するような指定をしてまいりたいと思います。
  75. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 なぜそれを聞くかといいますと、いま言ったように、「相当数の離職者が発生」をするというのと、今度は「雇用量が相当程度減少」する、これは同意語かどうかは別にして、雇用量ということを考えた場合には、私は先ほど言ったように、量だけの問題ではなくて質の問題を雇用量ということの意味に言っているんだろうと。だから、いま私が言った、正規の社員は合理化集中、あるいは共同合併吸収して、正規の労働者は余すけれどもパートタイマーで補う、こういう意味だということも含まれるとするならば、私はやっぱり、いままでの法律に「相当量の離職者が発生」、それを「雇用量」と変えたというのはやっぱり一つ意義があるんじゃないのか、この点を私言っているわけですよ。そういう意味で、いま数をどうだこうだと言うんじゃなくて、その点の理解がどうかということが一つ。  それから、今度は労働大臣が指定の判断基準を求めることができるわけでしょう。いままでは、中小企業庁がある一定の中小企業という枠の中でリンクしてその範囲内で指定をするということがあったけれども、今度の法案からいくと、指定期間というものが新たに出てきたわけだ。そうでしょう、指定期間という問題が。この指定期間の問題をどう出してきたかということと、もう一つは、先ほど言った雇用量という問題の受けとめ方をどういうふうに判断しておるか。それから今度は、労働大臣雇用計画で要請することができるというのがあるわけだね。この場合問題は、やっぱり労働大臣の判断基準というものが、業種あるいは地域の判断基準というものがどういうふうに考えられているのか。  ここらあたりをひとつ明確にしてもらわぬと、これらは地域でも重要に受けとめているし、これは大した前進だということをずいぶん労働省が言うものだから、前進は前進でいいんだけれども、さっぱりいままでと変わらないんだったら何もこれ前進にならぬのであって、そういう意味で私は解明をしておきたいと思うんですよ。
  76. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まあ用語の使い方として、現行法で「相当数の離職者が発生」ということを「雇用量が相当程度減少」ということで変更したということの関連で御指摘ございましたが、まさに先生指摘のように、新法におきましては離職者が一時に多数発生することに対応するというだけではなくて、構造不況業種において実施されます事業規模縮小等に基づきまして余儀なくされますいろいろな雇用調整があるわけでございますので、労働者雇用の安定を図るという観点から広範に対応しようというのがやはり今度の法律で目的といたしておるところでございまして、そういう観点から法律の題名におきましても、離職者臨時措置法というのを改めるというようなこともいたしたわけでございます。そういう観点からしました場合は、不況業種の定義につきましても離職者の発生というようなことに限定をしないで、出向とか配置転換等の種々の方法によるものも含めまして、全体として雇用量の相当程度減少するという業種を言うことにいたしておるところでございます。
  77. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そういう意味では、ずばっと私なりに言いますと、やっぱり従来よりも幅が広がる、業種なり地域が広まっていくと、こういう認識は間違いないでしょう。どうですか。
  78. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 業種を指定いたしますもとになる基準の考え方に、いま申し上げましたようなことも含まれておるという限りにおきましては、現行の基準よりも広まっておるといいますか、情勢に対応できるような考え方を含めておるということでございます。
  79. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 情勢に対応できるということは機動的に対応するということですから、抽象論になるけれども、やっぱり一応客観的には広まるという意味を持たなければ法案の持つ意味がないわけですから、そういう意味で受けとめていいかということを私は言っておるわけで、よろしゅうございますね、それで。——わかりました。  それでは、指定期間を新たに設定をしたという意味はどういう意味ですか、これは。
  80. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 現行の二法におきましては、指定解除の規定がございません。そのために、施策の効果が浸透した業種地域においても、指定がそのまま継続をしているということがあるわけでございますけれども、新法におきましては、先ほど来申し上げておりますように、雇用対策の必要性に応じて機動的に指定をしようというのがやはり新法のねらいの一つの大きな内容でございますので、そういう方針で指定をいたしますが、業種地域の指定要件を改善すると同時に、その指定期間を設けることといたしたわけでございまして、その期間といたしましては、やはり業種につきましてはその業種の構造改善対策といいますか、事業規模縮小について期間が設けられる場合はその期間に準じた期間となりますが、そういう期間が定めがない場合は一応二年を基準とするということ。それから地域につきましても、やはり地域雇用の動きを見てみますと、二年ぐらいで従来も動いてきているというのが一 つございますのと、それから業種で二年というものを決めますと、大体それとの関連が出てくるというようなこと、それから法律の期限も五年ということでございますから、そう長くするのもどうかということで、一応二年で考えておりますけれども、ただその期間経過後におきましてもこの対策を講ずる必要がある場合には、当然指定期間をさらに延ばすというような措置をとるように考えておるわけでございます。
  81. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それはわかりました。  ただ、私はこの間の参議院の商工委員会で通産省が出しました特安法、この審議状況を見まして、先ほどもちょっと申しましたが、むしろ切り捨て法案だということで、社会党は反対したわけですね、率直に言うなら。つまり、結果的には失業者をほうり出すと。それがすべてでないけれども、その基本に立って反対の立場をとったわけですが、問題は、この質疑の中を通しまして雇用対策というものについては、このいま審議しておりますこの二つの業種別、地域別の法案で完全に救われると、このように山中通産大臣も答弁しているようですね。だから、そういう趣旨を踏まえるならば、私は先ほど言ったように、従来の業種あるいは地域というものは幅が広まるというふうに理解していいかということを言ったのはそのことを言っているわけでありますが、そこで私が聞きたいことは、失業の予防と雇用安定のための新規の助成措置についてちょっと具体的に聞きたいんです。  一つは、まず離職前の訓練を実施する特定不況業種事業主に対する助成制度を設けた趣旨は一体何か。また、その要件は、どういう要件が備わればこれが適用になるのかということが一つ。それともう一つは、雇用安定事業として特定不況業種事業主のあっせんにより労働者を受け入れる事業主に対する助成制度が設けられたと。この制度が、失業という状態を経ずに就職できるという意味では効果があると言えますけれども、問題はここなんですよ。大会社から中小企業中小企業から零細企業、こういう下降異動が促進されると、そのことにおいて労働条件が切り下げられる、こういう問題が起こってくるわけでありまして、この点をどういうふうにお考えになっているか、これをひとつ具体的に聞きます。
  82. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 新法におきましては、失業の防止ということを最大の柱の一つとして考えておりまして、その内容として、一つが離職前訓練をされる場合に助成しようということであり、もう一つが、離職者が出ざるを得ない場合においても、再就職のあっせんを事業主が行い、そのあっせんを受け入れて雇用する事業主について助成をしようという、この二つになっておるわけでございますが、離職前訓練につきましては、やはり、一つは何といっても、どうしても事業規模縮小等で離職をせざるを得ない場合でも、その次の職場へ移るために必要な技能を身につけることは就職の促進に役立つわけでございまして、そういうものをできれば早く計画的に実施して、失業の期間をなくするとか、あるいはできるだけ短い期間にして再就職をしてもらうようにしたいということが一つでございますし、同時に、まあ雇用調整の中でも出向とか配置転換とかいろいろございますが、やむを得ず離職される方々につきましても、できるだけなだらかに行われることが雇用調整としても望ましいわけでございますし、そういうことも考えながら、両面考えながらこの離職前訓練に対する助成というものを考えたわけでございます。  それから、再就職あっせんにつきまして、賃金なり労働条件が下がるについてどう考えるかという点でございますけれども基本的に私どもやはり、先ほども議論がありましたように、離職者に対する対策というよりも失業を防止するという観点でこの法律を運用をしていくわけでございますので、事業主に対する一般的な指導あるいは具体的な指導の中で、いろんな助成措置等を活用しながら、失業というもののないような指導をしてまいりたいと思いますが、そういう指導にもかかわらずどうしてもやむを得ず離職者が出るという場合につきましては、やはりいろんな努力をしていただいて再就職をされるようなことを進めていくということでございますので、そういう過程で、労働条件等について変化が出てくる、あるいはまあ前の事業所よりも下がるというようなこともあり得ようかと思いますけれども基本的にやはり雇用調整をせざるを得ない、そういうどうしてもせざるを得ないという前提の中で失業を防止するというような二点からこの制度の運用を考えていきたいというふうに思っております。
  83. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 そういう考え方だとすれば、次に申し上げることをちょっと、労働省としてその目的を達成するための、努力はされたと思うんですが、結果はそうなっていなかったんだけれども、再就職あっせんの場合の助成措置、従来の雇用助成金の、出向の場合の助成措置の具体的な内容なんですけれども、再就職の場合は四分の一、中小企業は三分の一だね。これ、間違いないと思う。助成期間が一年。雇用調整助成金の出向の場合は二分の一、中小企業は三分の二、期間は一年。ところが、五十八年度予算は、労働省賃金の助成率は二分の一で要求したわけでしょう。中小企業は三分の二。それが五十八年度予算ではまあ大蔵ベースに押し切られたというか、結果的にはそこまでいかなくて四分の一、中小企業は三分の一になってしまった。これであれば、いま安定局長が言うような、そういう考え方に、まあ努力はされたんだろうけれども、結果は財政再建というか、予算措置でそこまでいかなかった。この点、できなかったことはできなかったでしょうがないんだから、今後、これからどうしていくかという、端的に一言だけ、時間がありませんからね、それだけひとつ。
  84. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まあ予算要求の段階と、それから査定後の現在の段階での内容が、助成率が下がっておるじゃないかということにつきましては、要求の段階では、できるだけこれを活用されまして再就職を促進しようというようなことで、高い助成というものも考えておったわけでございますが、だんだん詰めていく過程におきまして、一つは、これも御案内と思いますけれども、特定求職者雇用開発助成金というのが、すでに離職されている方々で高年齢者の方とか、あるいは身障者の方とか、再就職が困難な方々を雇用していただく場合の助成が四分の一で、中小企業は三分の一と、こういう一つの仕組みもあってそれとのバランスもございますし、出向の場合の雇用調整助成金との関係で、細かく申し上げますと、出向の場合は、出向元の方の事業主が助成した賃金の二分の一なり三分の二ということでございまして、その出向元が助成する賃金の額として、補助の対象になりますのは二分の一を限度といたしておりますので、そういう点から考えますと相対的にこの辺が一つのバランスであろうということで考えておるわけでございますが、まあこういう助成率でいろんな職業相談雇用開発をしながら就職促進を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  85. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 やりとりしてもあれですから、いま言った趣旨をさらに来年度以降の予算でひとつ全力を挙げてもらいたいということを要望しておきます。  そこで大臣、いまやりとりを聞きましておわかりのとおり、これは二法案ができたからといって、必ずしも十分な、雇用創出ができて完全雇用につながって、労働者の再就職が完全だということになり得ないのであって、これから大臣雇用計画に対する要請というものが発議することができるというのがこの法案の趣旨にありますから、ひとついま言ったように、やっぱり定年延長、それから時間短縮、それから今日何といっても労働賃金という、やっぱり総合的な雇用対策という総合政策の中でこれから対応しなければ、この二法案だけではとても救われるものではない。さらに、前進ではあるけれども、そこらを踏まえて今後も大臣、この法案の受けとめ方について、先ほど冒頭聞きましたけれども、いまやりとりした中 でも、かなりの者が落ちこぼれるという面もあるわけでありまして、さらにそういう意味での私の言う定年延長、週休二日制、時間短縮、こういうものがなければ、全体の雇用というものは維持できないし、拡大していかないと、こういう基本を踏まえての、これからの雇用対策というものをやってもらいたい。これいかがでしょうか、ひとつ。
  86. 大野明

    国務大臣大野明君) 現在御審議いただいておるところの新法につきまして、いまその細かい中身を、先生政府委員とのやりとりを聞いておりましたが、労働省といたしましても、総力を挙げてこれに取り組んでまいって、そうして御審議を願うように今国会提出した、しかし、その中において、先生のおっしゃるような点も確かに私どもこれからもう少し勉強しなきゃならぬということも先ほど申し上げましたが、いずれにしても、この問題のみならず、いわゆる雇用対策、それからその中には労働条件労働福祉の問題から、もういろいろ、あるいは定年延長等を御指摘でございまして、これについては現在労働省のプロジェクトチームをつくってございまして、それらでいま総合対策をやっておるところでございます。  ただ、これは前回の委員会等でも申し上げたと思いますが、五月いっぱいかかるんじゃないかなという感じでございますのでいま申し上げるというわけにはまいりませんが、いずれにいたしましても、そういう総合的に労働政策全般を考えていくという趣旨は大変に結構なことなので、私どももいまそれに取り組んでおります。  ただ、この新法につきましては、多少進歩があったということで、ひとつ御評価をいただいて、またそれに伴ってのいろいろな問題は、これまた勉強いたしていくということでございます。
  87. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま私申しましたように、一定の前進は私も認めますけれども、やっぱりこれからの対応の仕方によっては、必ずしもそうなっていかない面があるわけであります。私、なぜそういうことを先ほど強調したかというと、これも私はしばしば当委員会で三年来議論してきている定年延長あるいは時間短縮週休二日、こういうことは全体の雇用力を維持していくことになる、この基本は集中審議もしたことがあるわけですから、そういう意味でひとつ大臣に受けとめていただきたい。これ強く申し上げておきます。  そこで、法案についてはその程度にしまして、特に緊急の問題で、例の夕張炭鉱と北海道の季節労働者雇用と失業対策の問題でお伺いしたいのでありますが、夕張問題で、しばしばここでも申し上げていますから、くどいことを申し上げませんが、職業訓練局長に、北村局長にお伺いしたいんですが、あなたはこの法案の論議を通しまして、衆議院段階でも出ておりますけれども、いわゆる職業訓練の単位制度、それから科目的な拡大、質的な強化というものをして、たとえば委託訓練であるとか、単位的な職業訓練を充実するというようなことを進めてまいりたいと、これはこの法案の意味を質的に強化することである、こういうまさしく名答弁をしているのでありますが、そこで具体的に夕張の問題を私は聞くのでありますけれども、この間、二十日のエネルギー特別委員会で山中通産大臣が私にお答えになりましたのは、新鉱の会社再建は、五月の遅くても中旬から下旬にかけて私は政治決断をいたしますと、こう私に約束したんだ。政治決断をする——政治決断をするとは何かといえば、何とか新会社を実現をしますと、させるようにやるということを、非常に誠意ある答弁を山中通産大臣はしているのでありますが、そこで、仮にこの新会社ができたとしても、私もこの前申し上げましたように、現在千三百一名、仮にいま五百の新会社ができても八百名、三百から出発したら千名の失業者が出る。この問題を真剣に労働省考えてもらいたい。  そこで、具体的に申し上げるのでありますが、夕張地域の特殊性というよりも、北海道では、岩見沢、札幌、小樽、現場を私は見てきていますが、ところがここでは吸収し切れないでしょう、実際問題として。そして五月の下旬には見きわめがつくわけです。そうすると、本人の意思も固まると思うんですよ、はっきり申し上げて。そうなると、やっぱり再就職の訓練というものも、私は夕張炭鉱の地元で、夕張で、あなたが衆議院で答弁しておりますように、委託訓練もしくは科目の拡大、質的な強化——私も、五十四年に私は社会労働委員長やっていますから、当時の栗原労働大臣と一緒に行って、当時の函館の雇用促進事業団の訓練学校、道立の学校、私は全部見ましたからね。だから、内容は全部知っています。いまでも行っていますから。わかるんだが、そこらあたりをひとつ、ずばり言って考えてもらいたい。そのことなくして再就職なんといったって、これはできっこないですよ。私は断言しておきますよ、これ。そういうあなたの積極的な訓練という問題に対する受けとめ方について評価をしますが、この点を具体的にひとつ取り組んでもらいたい。どのようにお考えですか。
  88. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) 北炭夕張炭鉱の離職者の方につきましては、先生御存じのとおり、すでに職業訓練を受講しておられる方が私ども調査では百二十三名おられまして、今後におきましても職業指導、職業相談というような過程を経ました結果、再就職の希望職種がお決まりになった方で、再就職に際しまして技能の付与が必要であると判断された方につきましては、積極的に職業訓練を受講していただきたいと考えております。  そこで、私どもとしては、再就職のための訓練はできるだけ公共職業訓練施設で対応をしていきたいというのが基本考え方でございますけれども、公共職業訓練施設には離職者の希望する訓練科目がない場合がございます。あるいは、すでにもう訓練が開始されておりまして、直ちに入校することが困難だというような場合もございます。そのような場合につきましては、先生が先ほどおっしゃられましたような委託速成訓練というようなもので対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。したがいまして、今後職業相談等の過程で訓練受講希望者が出てまいりました場合には、委託速成訓練を実施することも考えていかなければならないだろうというふうに考えております。  ただ、夕張の地区に仮設の訓練枝をつくってそこで訓練をやるということになりますと、これは施設の問題とか、あるいは指導員の確保の問題がございますので、地元の北海道当局や、あるいは夕張市と御相談をさせていただきたいということで御理解を願いたいと思います。
  89. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いまあなたの答弁で、非常に前進した答弁されていますから、もちろんこれは道とそれから夕張市あるいはその他ありますけれども。  ただ、むしろ私は、先ほど来の法案の趣旨から言うならば、業種地域指定という意味から言っても、これはいま室蘭はもう御案内の造船それから鉄鋼、アルミ関係を含めて求人倍率が〇・一六なんですよ。夕張は何ぼだと思いますか。はっきり申し上げていま〇・一二ですよ。室蘭はこれ地域指定になっているんだよ。本来的に言うならば、理屈抜きで夕張地域地域指定にすべきだという私は論を持っているんだけれども、ただ時間がありませんから、特定不況というこの法案の命題がそこにあるものだからね、産炭地振興との絡みがあるものだから言っているだけであって、私がいま申し上げたいことは、それでいいから、その考え方をひとつ積極的に進めてもらいたい。そして現実に仮に五百人の新会社ができても、八百人の労働者が再就職の道につけないわけですから、やっぱりそこらあたりを踏まえて、ひとつ早急に夕張の地元での訓練委託ということを積極的に進めてもらいたい。よろしゅうございますか。——いいですか。
  90. 北村孝生

    政府委員(北村孝生君) 先ほど申し上げたとおりでございまして、検討をさせていただきたいと思います。
  91. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 大臣どうですか。この間も申し上げましたけれども、夕張地域の問題はもう言うまでもなくいまや社会問題でありますし、先行き不 安で暴動も起きかねないという今日の状況がしばしば出てきているわけでありまして、いま言われた対応ですね、ひとつ大臣としても、最高責任者として決意をはっきり示してもらいたい。
  92. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま政府委員から答弁いたしたのでございますが、いずれにいたしましてもこの問題は、北海道庁あるいはまた夕張市と十二分にお話しをいただいた上でなければ労働省としてもなかなか対応しにくい、しかし私どもは、その点についてはいまも局長答弁ございましたように十二分に前向きに検討していく所存でございます。
  93. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 それでは、いま大臣も前向きで検討するということですから、ひとつ積極的にこれは進めてもらいたいということを強く申し上げておきます。  そこで第二は、これは安定局長もしばしば昨年もこの委員会で申し上げているんですが、いま北海道に季節労働者が三十二万人いるわけです。これ、全国で一番ですね、三十二万というのは。そこでこの仕事の問題なんですよ。去年はたまたま地域不況のこともございましたけれども、私の報告に挙がっているのは、追跡調査で、三万六千ぐらい実は仕事にあぶれちゃった、そのために農村の豆拾いだとか、苗植えだとか、こういうものに行ってどうにか生活が細々とつながったと。いま北海道の季節労働者の年収は何ぼかといいますと百四十三万ですよ。この前、去年私はここで関安定局長時代に申し上げました。これはいま東京都の生活保護世帯四人家族で百八十六万三千円でしょう。これは私はまさに人道上の問題だということをこの前申し上げたことがあるんです。  私は、そういう点でいま申し上げたいことは、公共事業の、たとえば大手の業者あるいは地場産業の業者もおるのでありますが、ここにやっぱり季節労働者を積極的に雇用吸収をさせる、もしそれをしなければそういう事業には仕事を発注しない、このぐらいの基本姿勢を持って対処してもらいたい。つまり仕事を確保してもらいたい。つまり、ずばり私申し上げますと、これは前の労働大臣時代にも申し上げていますし、大野労働大臣にもこの前申し上げていますが、季節労働者に年間を通じて八カ月以上何とか仕事を確保してくれと、これは最低の考え方なのでありますが、ひとつそういう意味で、私が言っているのは仕事量を確保してもらいたい、少なくとも年間を通じて八カ月。十二カ月あるんですからね、八カ月は仕事が維持されなければならぬ。去年は実は三万数千仕事につけなかった。こういうことはゆゆしき問題であって、それじゃ全部生活保護の世帯になるかということもこれは不可能なわけであって、だからあなたその点をひとつはっきり、年間八カ月以上仕事を確保するための公共事業に積極的な季節労働者の吸収をしてもらいたい。これが第一点。  それから第二は、しばしばここでも出た講習手当、これは率直に申し上げて、安定局長などにも努力していただいてそれなりの前進をいたしています。これは私も評価します。ただ、最低いま十八万円を何とかベースに引き上げてもらいたい。受講手当をですね、十八万円に。これもひとついますぐ、来年度の問題決定されていますから、これも今後の問題としてひとつ検討をしてもらいたい。  第三は、やっぱりピンはねが多いわけですよ、この季節労働者に対するピンはねが。非常に目立っている。これ、労働基準局でもしばしば指摘しているのでありますが、ピンはねにならないように、つまり三省協定をしっかり、もちろん建設省の関係にもなりますけれども、三省協定賃金をやっぱり厳守するようにひとつ指導してもらいたい。  この三点を、時間もありませんから、ひとつ誠意あるお答えを願いたいと思います。
  94. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まず、公共事業での仕事の確保の問題でございますが、全体的に非常に厳しい情勢の中で、なかなかそういう民間を含めて仕事が少ないとか、また、公共事業につきましても、国全体の予算が伸びない中で仕事量がふえないというようなことから、各地域でいろんな影響を受けておられると思いますけれども、そういう中ではやはり季節労働者の方々への影響が強くなりがちだということは事実だろうと思います。また、御指摘のございましたような、公共事業の実施につきまして現地の作業員の吸収とかいうような問題もあろうかと思いますが、一般的にはたとえば本土の方の大手が北海道で仕事をされる場合におきましても、こちらから手持ち労働者を連れていかれるというのは一般的には非常に少ないので、何らかの形で現地の労働者雇用されておられるのじゃないかと思うわけでございますけれども、私どももその点は十分実態を把握いたしておりませんので、そういう実態把握に努めますとともに、そういう実態に応じましては関係機関とも連携をとりながら、御指摘のありましたような公共事業への吸収についても考えてまいりたいというふうに存じております。  それから二番目の季節労働者の方々に対します給付金の問題でございますが、いままでのいわゆる積寒給付金制度は御案内のように前年度限りで終わりまして、新しい形で五十八年度から三年間の暫定措置で発足いたしました給付金の額がまだ十分でないという御指摘でございます。いろいろ問題があることは私ども十分承知はいたしておりますけれども、これも先生十分御案内のように、一般の給付金がそう伸びない中でかなり私ども努力をいたしたつもりでございますし、予算が成立いたしまして、その予算に基づきまして積雪寒冷地の対策をこれから実施いたしていくわけでございますので、現行の額で実施をいたしていくということでございまして、将来どの程度増額するかということは、まだ申し上げられる段階ではございませんけれども関係者の方々からもいろんな意見を承りながら今後考えてまいりたいというふうに存じます。
  95. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 私ども労働基準局としましては、従来から出稼ぎ労働者労働条件の確保というのを監督指導の重点にいたしておるわけでございますが、特に出稼ぎの方々が過半数も就労している建設業、ここではピンはねと申しますか、中間搾取の防止と申しますか、こういうような賃金の適正な支払いというものも、建設業における監督指導の重点として取り上げているところでございます。出稼ぎの労働者労働条件、いろいろと問題のあるところにこういう中間搾取、ピンはねというようなことが生ずればこれは大変な問題でございますので、このいま申し上げたような監督指導の重点に沿って、私どもとしましては、引き続き厳正な監督指導に当たってまいりたいと存じます。
  96. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 安定局長ね、実は、開発庁の長官にもこの間話しをしまして、たとえば開発庁関係では、御存じのとおり、今後臨調の行革によってどうこれが具体化されるかは別にして、結論的に申し上げますと、建設、農林、それから運輸、これ三つが、もう出先の、開発庁の、北海道の実際やっている仕事の内容ですから、これは積極的にそういう関係には季節労働者を吸収すると、こう長官も言っていただいているんですよ。だから私ここでひとつ大野労働大臣に申し上げたいんですが、いま言った北海道の三十二万人の季節労働者が、少なくとも生活保護以下であってはならない。しかも生活保護者ぐらいの生活レベルは維持すべきものだ、こういう考え方に立つとするならば、いま、安定局長も、関係機関とも連携して積極的に努力すると言われているんですが、大臣の立場から、これははっきり申し上げますよ、開発庁、それから建設省、農林省、こういう関係にぜひひとつ、それでなかったらその会社には公共事業はやらないと、そのぐらいの僕は条件をつけていいと思うんですよ、はっきり申し上げて。そういうただもうけ主義の考えだけでなしに、やっぱりこれを救うということに意義があるわけですから、そういう点を含めて、関係省庁に対して大臣からもひとつ——加藤長官はぜひそういう方向で努力しますということを言っていただいていま す、この三十二万人のために何がしかの努力はしますからと言っていただいておりますので、やっぱり主管の労働大臣でございますので、ぜひこれを関係省庁に積極的に、季節労働者の仕事の量の拡大、仕事の確保のための協力方を関係の行政機関に対してひとつぜひ働きかけてもらいたい。いかがでしょうか。
  97. 大野明

    国務大臣大野明君) いずれにいたしましても、現在のわが国の景気の回復も大変足取りが緩やかだというようなこともございます。その影響がやはり季節労働者の方々にいくのも現実でございますし、特に、北海道は大変に季節労務者の方が多いという現実も認識いたしております。いずれにしても、中期的に見ていくと、何というか、公共事業依存型、あるいはまた建設関係ばかりに依存しておってはいかぬのじゃないかということも考えながらも、しかし短期的に見れば、やはり雇用の需給関係においても、またそういう季節労務者の方が、先ほども東京都の生保の標準世帯との格差のお話がございましたが、非常に低いという点もございまして、それらも踏まえながら、先ほど加藤長官が前向きにやると言ったというお話も承りました。私も、北海道開発庁、あるいはまた建設省、あるいは農林省等々、各省庁と連携を保ちながら、今日もやっておりますが、私からも関係大臣に御指摘の点について、ひとつそれを踏まえてやろうじゃないかということで発言をしたいと思っております。
  98. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま大臣から、特に関係大臣に強く申し入れしていただくということで、働きかけをいたしますという強い決意ですから、ぜひひとつ、もう社会問題ですからね、私はあえてこの三十二万の労働者に、労働省が常におっしゃる通年雇用、通年雇用の方向に行くことが望ましいわけですから、しかしそうならない実態がいま北海道にあるということが実態なんですから、これを踏まえていただいて、最低でもやっぱり先ほど言った年間を通して八カ月の仕事量は確保できる、やがてそれが通年雇用に広がっていく、結びつくと、こういう方向に、いま大臣からもございましたので、最善の努力をひとつ払ってもらいたいということを申し上げまして、時間が参りましたので、私の質問を終わります。
  99. 渡部通子

    ○渡部通子君 私も、法案の中身につきましてまず伺いたいと思います。多少対馬委員とダブる点もございますが、それは御了承いただいて順次お尋ねをいたします。  まず、本法案は現行の二法、これを統合したということでございますが、業種対策地域対策、この有機的な連携を図るための工夫、それはどういうふうに行われているのか具体的にお話しいただきたいと思います。
  100. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) まず、業種対策地域対策の関連でございますけれども地域の指定については、これは現行法もそうでございますが、構造的な不況業種が一定規模以上に集積をしている地域ということで地域指定を考えているわけでございますけれども、特に今回の新しい法案の中で考えております点は、従来の対策が産業別対策地域対策、どちらかと言えばばらばらであったという面を、むしろ有機的に関連づける必要があるのじゃないかということで、たとえば構造的な不況業種に属する企業で、ある程度雇用規模縮小をどうしてもしなきゃならない場合に、従来でしたらその企業だけの問題としてその雇用の減少がいいか悪いかという議論であったわけですが、今日の段階では、その地域でもともと雇用情勢が悪いところへさらに特定の不況業種企業からさらにたくさんの離職者が出るということになれば、その地域雇用情勢がさらに悪化を来すといったことも考えられますので、そうした面に配慮しての、必要ならば労働大臣の要請も企業に対して行えるような道を開きたいということで、今回の法案の中ではそういう意味の要請という規定も入れているわけでございます。そういうものを活用しながら業種対策地域対策との関連づけを有機的に図っていきたいというふうに考えております。
  101. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで、この法律の中では、特定不況業種の指定に当たっては現行法と違うんだと、産業政策が発動されている業種に限定せず、雇用量の変動等に着目し、雇用政策の必要性に基づき指定すると、こういうことになっておりますけれども、どういう理由でこうなったのか。  それから、私が懸念をいたしますのは、雇用対策、特に離職者対策が先行いたしますと、離職者の発生、これをむしろ誘発するような傾向が生まれはしないか。企業というものはやはり産業対策の保護を受けられるようにしてあげる、これが第一でございまして、これより先に離職者というようなことに余り観点が参りますと、減量経営や人員合理化のチャンスとばかりに安易な離職者を出すような傾向が生まれるのではなかろうか、これを非常に懸念をいたします。したがって、物の順序といたしましては、不況産業に対してはまず産業政策を発動する、その経営の安定を図ったその後に離職者という点で考えなければならないのではないか、そういう懸念をいたしておりますけれども、お答えはいかがですか。
  102. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 今回の法律におきまして、業種の指定につき産業政策の発動の要件を外しましたのは、従来から行われておりますような、たとえば造船ですと設備の廃棄について国が予算上、財政上あるいは金融上援助するというようなことな前提にするとか、紡績でございますと、織機の買い上げについて国が助成するというような場合を前提にする。そこまでいかなくても、供給が過剰であるから、設備の廃棄等について国が行政指導をするとか、そういうようなことを条件といたしておったわけでございますけれども、現実的にだんだん雇用調整が進んでまいりますと、もう国の関与ということよりも自主的にやる、そこになかなか国が関与できる状態でなくなってきているというような場合とか、あるいは逆に今度は業種によりまして非常にまとまりが悪い、実際にはかなり供給過剰にありながら、過当競争で国の行政指導を排除されますために、片一方で事業所が閉鎖され、離職者が出ながら業種の指定ができない。たとえば砂糖なんかがそうでございますけれども、そういうような実情等もございまして、本来構造不況対策を機動的にやるとするならば、実際にその業種が構造的に不況に陥っているという点について把握をできれば、それに基づいて機動的に指定をし、対応していくべきじゃないか、こういう考え方から産業政策の発動の要件を外したわけでございまして、いま先生の御指摘になりましたような心配の問題につきましては十分配慮しながら、私どもとしては、現実を把握し、つかまえて、的確に対応してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  103. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで、第二条にございます定義の中に、「雇用量」という言葉がございますね。いままでですと、「離職者が発生し、又は発生するおそれ」と、こういう「離職者」という表現でございましたが、そこが、「雇用量が相当程度減少しており、又は減少するおそれ」と、こう変わったわけでございますけれども、これはどういうふうに違うんですか。
  104. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 現行の法律は、必ずしも離職者が出た場合の対応ということではありませんけれども、どちらかというとそちらに力点が置かれておるような対策になっておりまして、法律の名前から離職者臨時措置法でございましたし、いま御指摘ありましたような業種の定義についても、表現になっておったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、雇用調整の形というのはいろんな形がございまして、離職者をむしろ出さない形の方が望ましいわけでございますが、そのためには、やはり出向で対応するとか、あるいはその前に配置転換等もやるとか、いろんな雇用調整の対応の仕方があるわけでございますので、そういう場合にも、雇用量として相当程度の動きがあるというようなことに着目して業種も指定し、対策も打てるようなことを考えていく必要があろうというような考え方に基づくものでございます。
  105. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで、私、またもう一つここで心配申し上げておきますけれども、いままでのように、離職者が三十人出れば指定をするとか、そういう具体的に決まっていたときはいいんですけれども、「雇用量」という漠然的なことでやられますと、企業というのは、少し成長がよろしくないと思えば、大体いまは正規の社員を減らして、そしてパートでほとんど埋めていくと、そうすると、雇用量という形については変わらないという状況というのは、これはもう現実そうなっています。どこの企業でも、やはり少し景気が悪くなるとパートに正社員をかえてしまう、こういう状況がずっと先行して行われているわけですね。そういう中で、離職者何人というのから雇用量という形に変えられますと、むしろこれは不安定雇用を抱える法律になってしまうのではないか。離職者を促進する、早目に切っちゃっておいてというふうに、離職者促進法になるのではないか、こういう懸念が重々現場としては考えられると思いますが、そういう御心配はありませんか。
  106. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 業種を指定する場合の問題と、それから、指定された業種がこの法律に基づきます対策を受けるための具体的な手続、たとえば再就職援助等の計画をつくりまして、安定所へ提出してその認定を受けますと、それに基づいて離職される方々にはいろんな手厚い手だてが行われますが、そういう業種を指定する場合の問題と、実際に不況に陥った業種雇用調整する場合の対応と、二つのことがあるわけでございまして、この再就職援助の計画の基準となります対応は、いま先生が言われました、たとえば一月に三十人以上の離職者が出るとか、あるいは出向等も含めて百人以上の雇用調整が行われるとかというような基準等につきましては、具体的にはこれから地方職業安定審議会の議を経て決めますけれども考え方は、私ども現行の考え方をそのまま踏襲する考えでございますけれども、法律の仕組みといたしましては、やはり業種の指定につきまして、先ほど言いましたように、産業政策との関連づけのために、何かそれで動きがとれなくて業種指定ができないとかというようなことでなくて、実際の雇用を含む動きに応じて機動的に指定をし、それから、そういう業種に指定された事業主が個々の手続をされます場合は、たとえば——その前に、業種の指定につきましても、関係事業主団体が労働組合の意見を聞くということも一つございますし、また、そういう業種に属する事業主が再就職援助等の計画を作成されます場合につきましても、関係労働組合等の意見も聞くというようなことを通じながら、いま御指摘になりましたような離職者促進にならないような運用を図っていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。
  107. 渡部通子

    ○渡部通子君 御答弁の趣旨はよくわかりました。私の懸念はまた懸念で別でございますので、ひとつその辺も含めて今後の運用に当たっていただきたいと思います。  それで、同じことはやはり地域の指定にも言えることでございまして、これはあえて繰り返しませんけれども、この点についても、その辺よく御配慮をいただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  それから、今度は指定の基準でございますけれども、いままでの指定基準と、今度の新しい法律における指定基準は変わるのか。変わるのでしたら、どういう点が変わるのか、その辺御説明ください。
  108. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 基準につきましては、先ほど申し上げましたような業種について産業政策との関連を外すとか、あるいは地域につきましては、今度名前が変わりましたけれども、現行では特定不況地域中小企業対策臨時措置法地域指定との連動であるとか、そういう点を外しておるところでございますけれども、その他の点につきましては、基本的には現行法の基準の考え方をもとに考えていこうかと思っておりますが、具体的にはまた職業安定審議会等で十分審議をいただきたいと存じておるわけでございます。
  109. 渡部通子

    ○渡部通子君 私はやっぱり本法案の中で、指定基準などというものは一番中核になる問題点ではなかろうかと思うのですね。そのような大事なことを法案に盛り込まない、いわゆるそれは審議会でというお話でございますけれども、こういう法案審議に対しては、そういう基準を提示していただくとか、あるいは以前にこの審議会の議を経て、業種地域のリストとか、あるいは指定の基準とか基準案とか、そういったものを提示していただいて初めて本当の意味の実のある国会審議になるのではないか、こう考えますけれども労働省の御認識はいかがでございますか。
  110. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) たとえば、先ほども指摘ございましたが、現行の法律によりまして「相当数の離職者が発生し、又は発生するおそれがある」というようなものを具体的にはどの程度で見るかということにつきましては、現在の基準では、最近六カ月の月平均値が、三年前以内におけるいずれかの年の当該期間に対応する月の期間の月平均値に比べて、おおむね一〇%以上減少しているということで運用をいたしておるわけでございますが、御指摘ございましたように、個々の基準の具体的な内容を法案に書くかどうかという点は一つあろうかと存じますが、逆な見方をいたしますと、経済事情も動きますし、そういう経済事情に応じて機動的といいますか、弾力的な対応をするというようなことも含めまして、まさに具体的な基準の内容でもございますので、関係労使の参加しておられます審議会で十分御審議をいただくということで従来から考えてきておるわけでございます。
  111. 渡部通子

    ○渡部通子君 そうしますと、法律が新しくなりましても、現行の離職者二法に指定してございます不況業種または不況地域、これはすべて今後も指定されると考えてよろしいんでしょうか。対馬委員の質問で、ふえるならば意味がある、こういうような意向でございましたんですが、ふえるのか減るのか。  それから、もう一つつけ加えますと、私どもの兵庫県の方におきましては、いま相生が地域指定を受けているわけでございますね、船舶、鉄鋼の城下町ですが。それで、その近辺の姫路市と龍野と赤穂、それから揖保川町という三市一町が指定を受けているんですけれども、これは、法律が新しくなった場合にはそのまま継続されるものかどうか。あるいはまた、お願いをして、もっとふえて指定をしてもらえるものかどうか。その辺はどういう傾向に動くのかということを教えていただきたい。
  112. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 具体的な基準の中身はこれから審議会にお諮りして決まるわけでございまして、そういう意味では、現在指定しております業種あるいは地域がそのままいくかどうかというようなことは明確に申し上げられる段階ではないわけでございますけれども業種の指定の基準なり地域の指定の基準につきましては、いま御指摘のございましたような離職者がふえるとかというよりも、雇用量の変動ということで、若干幅が出てきているといいますか、中身が変わってきている点はございますけれども基本的な考えといたしましては、経済事情の変化で供給が過剰になっておって、そのために事業規模縮小する、その結果、雇用量に相当の減少するとか減少するおそれがあるというようなところ、あるいはそれが集積している地域という点については、そういう基本的な点については現行の考え方と変えることも考えておりませんので、あくまでそれに基づいて業種を指定するとか地域を指定するということでございますから、現在指定されている具体的な業種なり地域がその後の変化等で実態としてかなり改善されているということがあればともかく、そうでなければ大体指定されるような結果にはなるのであろうかと思います。  同時にまた、考え方として雇用調整雇用量の変動というようなことで幅を持たせたというような点で若干変わる点はございますけれども、あくまでもいま申し上げておりますような基準で指定することになるわけでございまして、やはりそう いう構造不況業種がまた新しく出てくれば、これは具体的に的確に対応する、あるいは地域がふえればそういうところに対応するということでございますけれども、いまの段階で、ここは必ず引き続き指定するとか、あるいはこれだけふえるとかと言うような段階ではなかろうかと思うわけでございます。
  113. 渡部通子

    ○渡部通子君 労働省の方の見通しとして、新法になってふえるであろうという見通しをしておられますか、それとも減るであろうという見通しをお持ちなのか。どっちですか、ウエートは。
  114. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 先ほどから局長からもお答えしておりますように、一方で産業政策の発動の要件が外れる、あるいは中小企業対策での地域指定とのリンクが外れる。一方、個々の業種あるいは地域の指定についての数字、計量的な基準はそれほど従来の線をきつくするということは考えておりませんので、おおむね従来の線を踏襲するとすれば、方向としては若干の出入りはあるとしましても、現行よりはふえていくものではないかというふうに見ております。
  115. 渡部通子

    ○渡部通子君 次に、指定期間についても伺っておきたいと思います。  期間を指定することとなっておりますけれども、その期間はどのくらいの長さを考えていらっしゃるのか。もし業種とかあるいは地域により異なるのであれば、その概要を御説明いただければありがたいと思います。  また、その指定期間については、延長することができることとなっておりますけれども、期間延長の条件なり基準なり、その辺についてもおっしゃっていただきたいと思います。
  116. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 先ほど来お答えいたしておりますように、現行法におきましては、指定の解除をする制度になっておらないわけでございますが、新しい法律におきましては、業種の指定なり地域の指定を機動的に行うというのは新しい法律の一つの主要な考え方でございまして、そういうような観点からいたしまして同時に期間の指定を設けたわけでございます。  期間の長さについてでございますけれども、まず、業種についての期間につきましては、その業種につきまして事業規模縮小をすることについて期間が定められておる。たとえば構造改善計画等で期間が定められております場合はそれに準ずる期間ということになろうかと思いますけれども、そうでない場合は、一般的には二年程度ということで、二年ということで考えておるわけでございます。  地域の指定期間につきましては、それらの業種との関連も当然あるわけでございますし、また、地域雇用状況の動きを見ますと、二年ぐらいの期間でかなり動きがあるという経緯もございますし、同時にまた、この法律の有効期間が五年ということを考えますと、余り長いのも適当でないというようなことから見まして、業種の場合の一般的な場合と同様に、二年ということで考えておるわけでございます。  なお、指定期間を延長する場合の基準なり考え方でございますが、これは当然当初指定された期間が経過した時点におきましても同様な状態、すなわち、指定をするときの基準に該当するような状況が続いております場合には、その指定期間を延長する、こういうことになろうと思っているところでございます。
  117. 渡部通子

    ○渡部通子君 次に、「労働大臣の作成する雇用の安定に関する計画」という問題でございますが、法案の中では、労働大臣が特に必要があると認められる特定不況業種地域について雇用の安定に関する計画を作成すること、こういうふうになっておりますけれども、「特に必要があると認められる業種又は地域」、この判断基準ですね、これ、全部つくってもいいのではないだろうかとも思いますが、この場合、特に必要があると認める判断はどの辺に基準を置くおつもりなのか。また、この計画を策定、実施するというようなことになりますと、前提として公共職業安定所あるいは訓練施設、こういったもののかなりの強化が必要ではないか、こう考えますが、いかがですか。
  118. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 雇用の安定に関する計画を作成する場合の判断基準についてでございますけれども、私ども考えておりますのは、対象となる業種地域につきましては、雇用調整が特に大規模に行われるとか、あるいは短期間に多数の離職者の生ずるおそれがある業種のような場合、あるいは雇用失業情勢が特に急速に悪化した地域で、そういう業種なり地域でありまして緊急かつ計画的に雇用の安定に関する措置を講ずる必要があるというようなものについて計画を定めるというようなことを一般的には考えておるわけでございます。  こういう不況業種なり不況地域対策を進めます場合に、職業安定機関なりあるいは職業訓練機関の対応としてその拡充が必要であるかどうかということでございますが、いま先生指摘のように、そういう指定された業種に属する事業所から大量の雇用変動を伴いますような雇用調整が行われるというような場合にはこれに的確に対応しなきゃなりませんし、また、そういう不況地域におきまして、仮に離職者が多数発生される場合も適切に対応しなきゃならぬという意味におきましては、職業安定機関におきましてもこういう業種なり地域対策のための担当官も増員するとか、あるいは職業訓練につきましてはそういう事情に応じた多様な取り組みができるような訓練のあり方等についても検討して、体制をつくっていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。
  119. 渡部通子

    ○渡部通子君 特定不況業種事業主が作成する再就職援助等計画の実効性についても伺っておきたいと思いますけれども、再就職援助等計画をつくるというこの法律は、現行の法律から新法にも引き継がれているようでございますけれども、この計画は再就職援助その他雇用の安定のために貢献してきたという実効性をいままで評価しておられるかどうか。それとも単なる離職者等に関する届け出にすぎなかったというふうに認識をしていらっしゃるかどうか。その辺を伺っておきたいと思います。
  120. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) この再就職援助等計画のねらいといたしましては、現行の法律においてもそうですが、再就職の援助その他雇用の安定に関する計画ということで、ただ離職者が出る場合の再就職の援助ということでなくて、広く雇用の安定を図るという観点から進めていかなきゃならぬわけでございまして、そういう意味におきましてはまずこういう制度、この法律なりこの法律に基づく制度を周知徹底いたします場合におきましても、こういうものを活用して雇用の安定が図れるような事業主に対する指導というものも進めてきたわけでございまして、そういう一般的な指導を通じて事業主の方々の努力を促すというような一定の効果はあったろうと存じますし、また、この計画が出されました場合には、それに基づきまして再就職援助その他雇用の安定のねらいが達成されるかどうかというようなことにつきましても、現行の法律におきましても労働組合等の意見も聞くというようなことを含めながら運用を進めておりますので、そういう面からも一定の効果を上げてきたというふうに私どもとしては認識をいたしておるところでございます。
  121. 渡部通子

    ○渡部通子君 効果があったという一定の評価をなさっていらっしゃるようでございますので、それで結構なんですけれども、これからも離職者の再就職の促進等に役立つようにその計画の内容や認定基準等について改善すべき点には大いなる配慮をお願いしたい、これを御要望申し上げておきたいと思います。  次に、雇用安定事業の問題でございますが、今度新たに離職前訓練を実施する特定不況業種事業主に対する訓練期間中の賃金の一部助成、また、特定不況業種事業主の再就職あっせんによる労働者を受け入れる事業主に対する賃金の一部助成、これを行うとしていらっしゃいますけれども、ここで言う離職前の訓練というのはどのような訓練が望ましいと考えていらっしゃるか。実効性を見 込んでの新設と思いますので、具体的にどういうことを描いていらっしゃるのか。労働省にお聞きしておきたいと思います。  離職前の訓練については、雇用安定事業のほかに、能力開発事業、これに新たな給付金を設けるなどの対応も検討されたのではないかと思われますが、いかがでございますか。
  122. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 初めに、離職前訓練の実際の姿はどんなものが考えられるかということでございますが、企業雇用量を調整しなければならない場合に労使で話し合いをしていろんな形で雇用調整を行っていくわけでございますけれども、過去の例をいろいろ見てまいりますと、たとえば企業企業の責任において再就職先をあっせんするということは、従来からも行われてきております。その場合に、それでは従業員が、言うなら企業から離れて、つまり、雇用関係が切れた後において、たとえば公共職業訓練を受けて、それで改めてどこか第二の就職先を探すということでは非常に不安を感ずるということで、従来そうした意味雇用調整のやり方については労使の間でいろいろともめることもあったわけでございます。したがって、雇用関係がつながったままで置いて、次の就職先につき得る条件を整えるということがやはり雇用調整を円滑に行うためにもぜひ必要であるということから、考えられます形としては、たとえば、企業が従来やっておりましたような形で再就職のあっせん先を幾つか見つけてくるわけでございますが、そこの再就職先の仕事に適する訓練というものを離職の前に、雇用関係がつながっている状態において訓練をするということで、労働者の方も安心して訓練を受けた上で再就職につき得る。こういうものを一つのパターンとして考えているわけでございます。もちろん会社が再就職のあっせんをするところに限らずほかのところでも結構なわけでございますが、一つの形としてはそうしたものが考えられようかと思っております。  それから、いま申し上げましたのは、構造不況業種から失業という状態を経ないにしても一応籍を切って新しい第二の就職先へ行く場合でございますが、実は通産省の方での新特安法の中でも企業再活性化のための投資その他でいろいろ事業転換等も同じ企業の中で図っていくということも考えられております。そういう同じ企業の中で労働者の職種転換を図るという面につきましては、これは昨年四月から制度として発足さしております生涯教育訓練促進給付金制度、こうしたものの活用はまた十分考えられるところもあると思っておりまして、そういう面の適用は労働省としても従来から考えていたわけでございます。今回の離職前訓練に対する助成は、失業という期間を経ないにしても、一応前の会社から次の会社へ移るという形を想定して離職前訓練の給付を考えたわけでございますが、同じ企業内での職種転換については、いま申し上げたような従来からある制度も十分活用し得るものというふうに考えております。
  123. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで、受け入れ事業主への助成につきましては、再就職先の会社で雇用形態や労働条件などについてトラブルが生じるなどということが重々予想されるわけでございますので、労働省は、職業安定所等を通じてこれらの労働者に対するアフターケア、こういったことについても御配慮をお願いしたい、これを御要望申し上げておきたいと思います。  それから次に、法案の中では、労働大臣は、特に必要があると認めるときは、相当数の離職者の発生が見込まれる事業規模縮小等を行おうとする特定不況地域内の特定不況業種事業主に対して、雇用の安定を図るための措置を要請することができると、こう書いてございますですね。この要請でございますが、法律に規定するまでもないことで、いままでもこういったことでは労働省の職業安定に係る行政指導、こういう一環でずいぶんおやりになっていたことだし実施できるものではないか、こう思われて仕方がないわけです。あえてこれを法律に規定するということであるならば、せめてこの要請を文書で行うとか、この要請内容とか対象企業名簿等を公表するとか、そういったことにまでも踏み出してよろしいのではないかと思います。そうでなければ、安定所の方たちが行って、口頭でよろしくなどと言う程度で終わってしまうおそれも重々考えられることでございまして、その辺いかがでございましょうか。
  124. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) いま御質問のございました雇用の安定のための要請につきましては、労働大臣が特定不況地域におきます雇用に関する状況の一層の悪化を防止するために特に必要があると認めるときということでございまして、すでにかなり雇用情勢のよくない不況地域におきまして、一定の不況業種事業主、不況業種に属する事業所からまた一時に多数の離職者が出てまいりますと雇用上いろいろ問題が起きますので、そういう場合に、再就職の援助その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることを要請しようというのがこのねらいでございますが、いま御指摘ございましたように、一般的にはそれは行政指導ということでやってやれなくはないわけでございますが、これをやるということは、同時にまた具体的にはその事業経営にも及ぶようなおそれも出てくる中身にもなるわけでございまして、そういう意味で発動も慎重でなきゃならぬという両面の要素もございますので、こういう要件をしぼりながら必要に応じて、特に必要があるという場合に労働大臣がそういう要請をしようというようなねらいで設けたわけでございまして、したがいまして、そういう事業主の認定なり、また、そこでとられるべき再就職の援助その他雇用の安定を図るための措置というような中身につきましては、今回の法律で新しく考えておりますような、先ほど御指摘のございました離職前訓練とかあるいは再就職あっせんに応じて受け入れられる事業主に対する助成とか、そういうような新しく設けた助成措置も大いに活用していただくとか、そういうようなことを含めながら、この要請を進めていかなきゃならぬというふうに思っておるわけでございます。  同時に雇用する以上、これに従わない場合に何か強制力なり何なりを持たせるかどうかというような点につきましては、先ほど若干触れましたけれども、やはり、実際にどの程度の規模雇用調整あるいはどの程度の内容の雇用調整を行うかというようなことにつきましては、本来その関係の労使が一番よく知っておられることであり、また、したがって自主的に協議決定されるような内容でもございますので、そういう事項も含む内容でもございますので、やはり主体としては自主的に労使で協議しながら決めて実施をしていただきたいということもありますので、従わないから直ちに何か強制力を持たせるとか、あるいはペナルティーを科するとかというのは、現状といたしまして必ずしも適切ではなかろうかということで考えておるところでございます。
  125. 渡部通子

    ○渡部通子君 次に、関連の下請企業離職者への手帳の問題でございますけれども、これは指定される以前の一定期間以内に離職した者に限って求職手帳を発給するということで、その一定期間を三カ月と、こう予定しているようでございますけれども、これはまあどこから三カ月ということが出てきたのかという点。  それから、この場合も離職の日まで一年以上雇用されていたという条件を満たさなきゃならないことになっておりますけれども、小さな零細企業あたりで特に中高年になりますと就職の出入りが頻繁でございまして、この一年以上勤めていたかどうか、こういったことの雇用の安定というものは非常にむずかしいのではないか、こういう気もいたします。そこへ持ってきて三カ月でございますね、その辺の条件をどういう理由でそうお決めになられたのか。
  126. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 関連下請中小企業につきまして、この法律に基づきます対策を講ずる場合遡及するという規定を設けましたのは、もう十分御案内のとおり、関連下請企業の方が早くそういう影響を受けやすいというようなことで、今回新たに設けることとしたわけでございますが、そ ういう観点から考えてみた場合に、どの程度の期間さかのぼるかにつきましては、一般的に中小企業におきまして大企業に比べて雇用調整が開始される時期等について見てみますと、おおむね三カ月程度前に行われるような傾向があるということが一つございますのと、それから、この法律を適用してこの法律に基づく対策を受けるということは、一般の離職者等に比べて非常に手厚い援護措置を講ずることといたしておりますし、その根拠はやはりこの法律制定の理由であります、構造的な不況で著しい影響を受けているというようなことが根拠でございますので、そういう観点からいたしますと、やはり離職の理由がこういう不況業種の関連のものだということが把握できる必要がございますが、非常に長期にわたりさかのぼりますとそういう把握がしにくいということ、同時にまた、職業安定機関で把握できます期間というものについて考えてみました場合も、その理由に基づくかどうかを公平に把握するにつきましては、この三カ月というのも一つの基準でもございますので、そういう点から考えまして三カ月ということで考えておるわけでございます。  それから、過去一年以上継続して雇用されているということでございますが、これはこの施策に限らず、たとえば個別延長の対象にする場合の条件等でも、こういう一年以上引き続き雇用されているというようなことを考えておるわけでございますが、やはり御指摘のような、零細企業等でいろいろ出入りがあるというような事情はあろうかと存じますが、あくまでもやはり常用雇用として雇用されるということを目指しながら、そういう人たちに対する対応、対策ということで考えます場合に、引き続きやはり一年雇用されているというような者を基準として考えるのが適当であるというような考え方に基づくものでございます。
  127. 渡部通子

    ○渡部通子君 考えているところはよくわかりました。しかし、これは離職後かなりの期間が過ぎた時点で手帳を発給するわけでございますから、現実に本当に困っている人の手に渡るかどうかというような点で、非常に心配な点がたくさんあるわけでございます。もうすでに失業者が散らばってしまっているという状況も当然考えられることでございまして、手帳をもらう機会が知らされずに終わっちゃったというようなことも重々考えられるのではないかと思います。したがって、この運用に関してはかなり温い立場でお考えをいただかなければならないなと私は思います。三カ月とお決めになったのも、いまの判断の基準はよくわかりましたけれども、最初御質問申し上げた業種の指定とか地域の指定とか、そういった点については審議会に諮ってということで、こういった点では法律でパチンと三カ月とこう出てきてしまうわけでして、むしろ私はこの期間の決め方というのは、逆であってほしかったと思うくらいなんです。ですから、下請の労働者が離職をさせられる時点で、こういう道もあるというようなこともよくPRをしておいていただきませんと、周知徹底をされておりませんと、なかなか手帳をもらいたい人がもらえなかった、機会に恵まれなかったというような実情が出てくると思いますから、そういった点についての運用の御配慮をくれぐれもお願いをしたいと思いますが。
  128. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 三カ月という決め方自体につきましては職業安定審議会にお諮りする内容でございまして、三カ月というのは私ども考え方を申し上げたわけでございまして、そういう観点から関係労使には御理解を得ようというふうに考えておるところでございます。  同時に、確かに先生指摘のようにそこで適用になるかならぬかというような問題も出てまいりますので、やはり運用に当たりましては、こういう制度になっておるというようなことは、新法が施行される時期へ向けていろいろ周知なりあるいは事業主を指導する際には十分意を尽くしてわかりやすく周知をしていかなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  129. 渡部通子

    ○渡部通子君 次に、漁業離職者関係でも若干お聞きをしておきたいと思います。  五十二年度から五十七年十二月までの累計を拝見したんですが、特定漁業離職者求職手帳の発給件数ですね、これと就職件数、それから職業訓練受講者数、これを見てみますと、手帳発給件数に比較して就職件数と訓練を受けた人の数が非常に少ないということを指摘せざるを得ないわけでございます。時間がありませんからこっちでしゃべってしまいますが、労働省所管の要するに漁業離職者のうち、陸へ上がる方たち、そういう方たちの求職手帳の発給件数が七百五十九、就職件数が四百十八、五五%ですね。職業訓練を受講した方は百九十六、二六%。海から陸へ上がる方はこの程度で行われているわけですが、運輸省所管にありますいわゆる船員となろうとする者、海からやはり海で働こうとする方たち、これを対象とする手帳の発給数が六千九百三十三。そのうち就職件数が九百八十三、一四%。それから職業訓練を受けた方たちというのが二百一名でわずか三%ですね。まず、こういう資料はそのとおりであるかどうか。  それから、運輸省の方お見えいただいたと思うんですけれども、こういう問題に対して運輸省はどう対応しようとされるのか伺っておきたいと思います。
  130. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 国際漁業協定の締結等に伴う減船により離職を余儀なくされる漁業離職者の方々の手帳発給状況なり就職状況、訓練状況、これは大体いま先生が御指摘になられた数字のとおりでございます。  また、その理由につきましても御指摘ございましたが、漁業に従事されておられた方が離職されて陸上部門への就職をされるということにつきましては、職種転換だけでなくて生活環境全般が変化するというようなことからなかなか問題もあるようでございまして、その辺はやはり十分きめ細かな相談等も通じて進めていかなければならぬというふうに考えております。
  131. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 先ほど先生の御指摘なされました件数はそのとおりでございます。  それで、この法律の対象となります漁業離職者につきまして、陸上の職業につこうとする者と再び船員となろうとする者の就職件数及び職業訓練受講指示件数を比較しますと、船員となろうとする者の率が低くなっておるということは御指摘のとおりでございます。これは、漁船船員につきましては、その労働の特殊性から他業種への転換が容易ではないということがございます。漁業離職者のうち、再び船員として従前と同様に同種の漁業部門に職を求める者が圧倒的に多いということによるものであろうというふうに私ども考えておるわけでございます。一方、漁業を見てまいりますと、国際環境の変化等によりまして全般的に不振でございます。雇用の場は総体として縮小する傾向にある。このため就職件数が低くなっておるというふうに考えておるところでございます。  また、再び漁船船員になろうとする者に対します職業訓練につきましては、御指摘のとおり率がよくないわけでございます。これは、漁業におきます漁業従事者の育成形態と申しましょうか、それが特殊性を有するということが一つあろうかと思います。たとえば漁労長等によります個別的な船内におきます教育育成というものが通常の形態をなしておるということもございまして、その限りにおきましては、集団的な訓練に必ずしも適さない面も見受けられるということもあろうかと思う次第でございます。したがいまして、この辺の事情をも今後解明しつつ、職業の訓練対策をどのように進めていくかということを考えて対処してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  132. 渡部通子

    ○渡部通子君 御説明はよくわかったんですけれども、この法律はやっぱり雇用対策をやっているわけでございまして、決して失業対策ではないと思うわけですね。ですから、そういった点で格段の努力をお願いをしておきたいと思います。  次に、この漁業の離職者対策における各種給付金でございますが、これも全く実績を上げていない、これが予算上からは見えるわけでございま す。たとえば職業転換訓練費補助金、これは五十三年以降全然実績が出ていないようでございますけれども、こういう状況であったならばこの予算は要らないことになってしまいますし、これが全く活用されないネックというものをどこへ求めておられ、今後どうなさろうとしていらっしゃるのか伺っておきます。
  133. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 各種給付金の利用状況につきましては、私どもといたしましては、就職促進手当につきましては、船員保険の受給終了後なお就職できない方々の失業期間中の生活の安定のための手当ということでそれなりに活用され、また、一定の役割りを果たしておるわけでございますが、その他の給付金につきましては、御指摘のように利用状況はよくないということでございます。それにつきましては、理由は先ほどもちょっと触れましたけれども、一般的にはやはり従来漁業に従事されておられた方は、離職されても陸上部門への就職についてはなかなか積極的になりにくいという面が基本的にあろうかと存じますが、十分そのときどきの状況に応じて職業相談をしながら進めていく必要があろうかと存じます。  職業訓練関係の給付金につきまして実績がないということでございますが、実はこれは数字のとり方といたしまして、国際協定に基づく減船等による漁業離職者についてのみの実績を把握いたしておりませんために、この資料の中の実績が空欄になっておるわけでございますが、先ほどもお触れになりましたように、訓練を受けておられる方は離職者の四分の一はおりまして、そういう方々につきましては訓練関係の給付金は支給されておるというのが現状でございます。
  134. 渡部通子

    ○渡部通子君 いまちょっと私が指摘しただけでございますけれども、こういうことを考えてみますと、単に今回法律の有効期限を五年間延長することだけが法改正の内容ということではまことに不十分ということで、やはり細かな点で離職者の再就職、雇用、生活安定こういった改善策について幅広く検討していただかなければならない。そっちの方がむしろ大事なことである、こういう認識に立たざるを得ませんので、その点を最後に強調してお願いをしておきたいと思います。  大臣、いままでずっと法案の中身について——まだ駐留問題等はし残してあるんですけれども、いろいろ細かい点でも懸念される点とか、もう少し有効的にやらなきゃならない点とかたくさんあるんですけれども、それはさておいて、やっぱり全体の景気回復という点にもう少し施策を積極的に進めていただきませんとやはりこの離職者法も生きてこないということでございまして、大臣の所信に関しても一、二点だけ伺っておきたいと思うわけでございます。  特に石油ショック以降、特定不況業種産業、特にこういったところでは大量の雇用調整が行われてきているわけで、その分出稼ぎとか、パートとか、臨時とか、こういう不安定労働者というものが非常にふえてきたというのが現在の環境だろうと思うわけです。大臣は所信の中で、勤労者が安心して将来に夢を持てるような生活を営めるようにしたい、これが労働行政の使命だと、こうおっしゃってもいらっしゃるし、また、労働需要の構造の変化、こういったものに対応した適切な施策、これを行わなきゃならないというようなこともおっしゃっておられます。まさに需要の構造変動、あるいはいま社外工が非常にふえてきているというような労働者環境の変化ですね、こういったものに対応した適切な施策というものが一番望まれているときではないか。そうしないと世の中の移り変わりに労働行政がおくれをとってしまうのではないか、こういう気がいたしますが、それに関する大臣の具体的なお考えなりをお示しいただきたいと思います。
  135. 大野明

    国務大臣大野明君) 勤労者が安心して将来に夢を持てるような生活、これは労働行政全般に対しての私の目標として所信を述べたわけでございまして、もういずれにしても、いま先生指摘のように、確かに第一次、二次のオイルショック以来、世界もそうでありますが、日本の産業構造もまたそれに伴って雇用も、社会構造も非常に大きく変化しておる。これに対処していくように私ども努力いたすことは当然のことでございまして、これらの中身につきましては、高齢者社会の問題もあります。また、技術革新の問題もありますでしょう。その他いろいろありますが、いずれにしても、現在鋭意、省内にプロジェクトチームをつくりまして、現在はもとより将来に備えての勉強をいたしております。先ほども社会党の対馬先生の御質問だったですかにもお答えしたように、これは五月いっぱいぐらいをめどにやっておりますので、近い将来、そのような労働省がいかに対応していくかというようなこともある程度御披瀝できると思いますが、いずれにいたしましても、非常に何というか、多様化してきておる社会でございますので、その対応は非常にむずかしいですが、きめ細かくやっていこうということで、いま鋭意努力をいたしております。
  136. 渡部通子

    ○渡部通子君 それでは、残された時間、オーストラリアにおけるいわゆるワーキングホリデーで働く若者たちの件について、若干御質問をしたいと思います。  先般、二月の末から三月の初めでございますけれども、衆参の議員でオーストラリアを訪問いたしました際に、いろいろ要望もございましたし、そんなことも含めて、これからの日豪関係というものが非常に大事になっておりますし、行ってみてびっくりしたことは、参りました九人の議員が口をそろえて言ったことですけれども、これほど日本とオーストラリアの関係が緊密になっており、日本がオーストラリアを考える以上に向こうがこちらを考えている、これは日本にいたのではわからなかったというのが実情でございまして、そんなことから、改善の一施策にでもなればということでお願いをしたいと思うので、御質問をいたします。  ワーキングホリデーで向こうで半年なり住まっている日本の若者というのがだんだんふえてきておりますのですが、これ、簡単に御説明いただきましょうか、ワーキングホリデーというのはどういうことか。
  137. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) ワーキングホリデーでございますが、まず、経緯から申しますと、一九八〇年の一月に当時の大平総理大臣が豪州を訪問された際に、時の豪州の首相でございましたフレーザーさんと話をした結果基本的に合意を見たものでございまして、その後、同じ年の十二月に日豪両国の口上書の交換によりましてこれを実施に移しております。  内容につきましては、先生御案内のとおり、日豪双方の青年が、休暇を目的としてお互いの国を訪問する場合に、その旅行資金を補うために臨時に就業しても差し支えない、それを可能にするという制度でございまして、もちろん年齢及び期間等に若干の制限はございますが、概要としてはそういうことでございます。
  138. 渡部通子

    ○渡部通子君 これは、オーストラリアへ行こうとする青年にとっては大変ありがたい制度でございますので、発足以来二年余りの実績というものを私は高く評価されていいのではないかと、こう考えております。ただし、もう少し効果的にするためにということでいろいろ問題点も指摘されると思うのですけれども、この送り出しに少しお手当てが足りないのではないかというのが向こうに行っての実感でございます。やっぱり日本側が送り出すときに、青年に対してオリエンテーションなりあるいはオーストラリア等に対する教育等をもう少し行ってあげるべきではないか。その窓口が外務省だとおっしゃっているんですけれども、実際的に仕事をしているのは労働省の管轄下にあります日本勤労青少年団体協議会、これが実際は取り扱っているようでございますので、その辺をもう少し考えていただけないかと思いますが、いかがですか。
  139. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 先生指摘のとおり、この制度が発足しましてから二年有余になるわけでございますが、最初の一九八一年の一年間には、査証の発給件数で申しまして八百三十七件のワー キングホリデービザが、豪州に行きます若者に対して、在京の大使館及び大阪にございます豪州の総領事館から出されております。さらに、この八百三十七という数字は、次の年の一九八二年には千三百二十五件ということでございまして、御指摘のとおり拡大増加の傾向にあるということで、私どもといたしましても、若干の問題はございますが、基本的には日豪の若者、青年レベルでの交流が深まるということは非常にいいことであり、この制度はそれに大変貢献しているというふうに考えております。  先生の御指摘になりました、出発に際してのオリエンテーションということでございますが、これは日豪間で話し合いまして、基本的には、日本に来る豪州の青年につきましては、豪州にありますわが方の在外公館、大使館及び総領事館がこれを指導する、それに対して日本から豪州に行く青年につきましては、日本にございます豪州の在外公館が指導をするというのが基本的な考え方でございます。したがいまして、日本から豪州に行く青年の場合には、第一義的には私どもは豪州側がこれをいろいろと指導すべきものであるというふうに考えておりますが、もちろん私どもといたしましても、その指導が適切なものであるようにしばしば豪州側に申し入れておりますし、それから日本政府サイドに日本の若者から質問等がございますときには、できるだけ丁重に答えておるつもりでございます。  先生の御指摘になりましたオリエンテーションにつきましては、したがいまして日本から豪州に行く日本の青年の場合には、これも第一義的には豪州側がやるべきものだとは思いますが、日本の青年が豪州へ行って、いまどういう問題があるかということをいろいろ調べようということになっておりますので、そういうことを踏まえまして、その上で豪州側とも相談し、それから関係各省ともお諮りした上でどうしたらいいか検討してまいりたいと思います。
  140. 渡部通子

    ○渡部通子君 送り出す責任は、大体筋から言えば豪州側だとこう言われるんですけれども、現実に行くのは日本の青年ですし、それから行く人が必ず東京銀座にございます日勤協の事務所に立ち寄っていろんな事情を聞いたりというようなことが現実に行われているわけです。オーストラリア大使館にそれだけ仕事をしろと言ったってできない状況もあるかと思いますし、現に日本の青年が行くわけですから、それは外務省だ、労働省だと、いろいろな状況はあるでしょうけれども、ひとつここでお考えいただきたいというのが私の提案なんです。  向こうへ行ってどんなことで困っているか。もうごくごく初歩的なことを教えてあげなきゃならないという感じなんですね。向こうで濠日交流基金のオフィスにおられます女の方たちが、これはもう事務員でなくてソシアルワーカーのような形になってめんどうを見ていらっしゃるわけです。具体的に聞いてみますと、簡単なんです。向こうへ行ってみて、いきなり高いホテルに泊まっちゃうものですから、仕事が見つかるまでの間にお金をなくしちゃったとか、それから盲腸の手術をすると百万円かかるんですね。その辺、保険を何もかけていなかったとか、あるいは治安がいいというのが行き渡っておりますから、その常識で行くと、泥棒ぐらいはいるわけですね。そんなことでうっかりしてとられちゃったとか、それからやっぱりこれは世界の趨勢でホモが、非常に陥りやすいんですね。ホモなんというのは、声をかけられたときにちょっとアイ・ドント・ライクと、こう言えば、絶対それで終わりなんだそうですが、その常識がわかりませんから、御親切についていくとおかしくなっちゃったとか、そういうまことにちょっとしたことを知らずに行ってカルチュアショックになってしまうというような状況が多発しておりまして、そんなことのめんどうを見るのに交流基金のお方が時間をほとんど費やしているというような状況にあるわけです。  ですから、送り出しは豪州大使館などとおっしゃらずに、せっかく日勤協がそういった仕事もやりましょうという姿勢もあるわけですから——この日勤協が発足のときに、そういったことをやらなければ無理ではないかという意見もあったそうです。しかし、それを排除して設立をされたんだそうで、そのころの事情は私はよく存じませんけれども、そういう仕事をあわせて日勤協に予算なり、あるいは人手なりを送っておやりになっていった方がよろしいんではないかと、常識で考えればそう思います。いかがでございましょうか。これは労働省かもしれませんが。
  141. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 先生指摘のとおり、日本から豪州に参ります青年につきましては、言葉の違いないし文化的背景の問題、あるいは豪州の場合には日本と比較いたしまして失業率が高いというようなこともございまして、若干の問題があるようでございますが、基本的には全体としてはうまくいっているというふうに見ております。  先生指摘になりました宿泊の問題、病気の際どうであるかというような問題、それから治安の問題に対する指摘等、貴重な御意見でございますので、十分勘案させていただきたいと思います。私ども常時豪州側の大使館、総領事館と連絡をとっておりまして、ワーキングホリデーのビザを申請する青年たちに対するオリエンテーションの紙をどうやって現実に合わしていったらいいかというようなことで、こういう点も入れた方がいいんじゃないかというようなことをいままでやってきておりましたけれども、そういう際にもさらにいまの御意見を御利用させていただきたいと思います。
  142. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生指摘日本勤労青少年団体協議会と申しますのは、労働大臣が認可をいたしました社団法人でございまして、このワーキングホリデー制度が発足いたしましたときに、受け入れについて無料で職業を紹介する、あるいは宿舎のあっせんをしたりインフォメーションを提供するというような受け入れ側の仕事をもっぱらするということでこの制度に関与しているわけでございます。送り出しの側については、ただいま外務省の方からの御説明のあったとおりでございまして、原則としてこの団体がこれまでは関与をするということではなかったわけでございます。  しかしながら、先生の御指摘になったような問題が現実に発生し、そして豪州へ行く希望者はこちらが受け入れる数よりもはるかに多いわけでございまして、豪州の、東京にございます大使館あるいは大阪にございます総領事館の扱える能力をあるいは超えているのかもしれないということもございます。それでございますならば、もう少し現実的に考えてこの社団法人が送り出しの方の事務についてもあるいは関与した方がいいのかとも存じますので、その点につきましては外務省その他関係のところと協議をいたしまして、具体的なできる方法など私どもも一緒になって考えてこの団体にも指導するというようなことを現在考えているところでございます。
  143. 渡部通子

    ○渡部通子君 局長から、大変いい前向きの御答弁をいただきましたので、大臣にもひとつ認識と改善方お願いしておきたいと存じます。  確かに日勤協は受け入れ側だけの仕事だったかもしれません。しかし、ここの専務理事をやっていらっしゃる千葉さんあたりも、送り出しの方も本当にそれをやらなきゃならぬと、自分たちにもう少し人的にも資金的にも余裕があれば幾らでもやらしてもらうというような意欲はお持ちのようでございますし、やっぱりここに扱ってもらうのが一番いいのではないかという気が私もいたします。  したがって、大臣、これは外務省、法務省にまたがった問題でもございますし、ワーキングホリデーというのはまだ日本でも始まったばかりで余り知られておりませんけれども、これだけ海外へ勉強に行きたい青年がいて、海外を知りたい、出ていきたい青年がいて、まあ旅費ぐらいは稼げるということが保証されれば非常に魅力的でいい制度だと思うんです。ですから、今後正しく発展させるべき制度としても、この際大臣にひとつお考 えをいただいて、いま局長の言われたような線をなるべく早い機会に強化をしていただくという点で御配慮をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  144. 大野明

    国務大臣大野明君) ワーキングホリデーの問題につきましては、私もつぶさに知らなかったのでありまするが、外国と——この場合オーストラリアでございますけれども、青少年諸君が交流するということは非常に結構なことであります。いずれにしても、旅費程度を持って、向こうの国の見聞を広め、そして自分で働きながらということになれば、特に私は将来的に非常にいい結果を生み出すものと思って、大いに育成することは結構なことなので、いま御指摘のように、外務省あるいは法務省等について私からもお話しをすることはやぶさかではございませんが、ワーキングホリデーに行く若い人たちばかりでなく、海外へ行く日本人全般に対してもこういうことは大いにやったらいいという中の一環として考えたっていいわけで、われわれは、日本という国がりっぱな国になってきたと言われながらもやはりそういう点でまだまだという国際社会におけるところの地位というものについて考えると、特に青少年諸君なんかはもっとお行儀よくやってもらうというのも大切なことですから、それには私どもが教えていくことも大切なんで、大いに日勤協なんかを使ってやることをひとつ推奨したいと思います。
  145. 渡部通子

    ○渡部通子君 終わります。
  146. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、大企業における労働法令違反についてお伺いをしたいと思います。  大企業といえども、というよりも、むしろ大企業ほど社会的影響というのが大きいわけですから、関係法令を守るというのは当然のことであるし、また責任も大きいと思うわけでございます。それで、私ども地元の大阪で、大企業における労働条件調査をいたしてまいりました。やはりかなりの労働法令違反、その疑いのある事実というのがございます。昨年十二月に天満、守口、東大阪等の七つの労働基準監督署に十五企業について労働基準法違反の疑いがあり、その是正を求めて申告をしました。御承知のように、労基法百四条では労働者の申告権がありますし、ですから、この申告の結果がどうなっているか、まず最初に監督機関の対応の現状というものをお伺いをしておきたいと思います。
  147. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) お答えいたします。  いまおっしゃいましたケースにつきましては、昨年の十二月から本年の三月にかけましてそれぞれ所轄の監督署にお話がございました。それで、私どもとしましては、そのお話の内容につきまして、具体性のあるものもあるし、ないものもあるし、情報のようなものもあるしということで、十事業場の分について申告ということで受理いたしまして、それで現在それぞれ手続を進めておる最中でございますけれども、八つの事業場につきましては労働基準監督署においていまその調査を進めておる最中でございます。
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 法令違反の違いのある内容というのはどんなものが多いですか。やっぱりサービス残業とか賃金の不払いというんですか、賃金に関するものが多いですか。
  149. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 内容につきましては、現在調査をしている最中のものがございますので、その内容はどうだということを申し上げる前に、ではどのようなことについてお話しがあったかということで説明させていただきますれば、時間外労働の問題、賃金差別の問題、年次有給休暇の問題、あるいは安全衛生法違反の問題、こういうような点についての監督署への申し入れがございました。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは具体的にちょっとお聞きをいたしますが、労働安全衛生規則の第六百十八条によりますと、「事業者は、常時五十人以上又は常時女子三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男子用と女子用に区別して設けなければならない。」と定められております。この目的というのは、労働安全衛生法の「目的」に言う労働者の安全、健康のために事業主に設置が義務づけられているものでございます。もし設置要件に該当している事業所で設置されていない場合は、当然これは設置するよう指導されるのは当然でしょうね。これは安全衛生法で、二十三条でしたかね、設置が義務づけられているわけですから。それはどうですか。
  151. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 先生お話しのように、労働安全衛生法におきましては、おっしゃいましたようなこの施設につきまして、二十三条は、労働者の健康保持のための必要な措置を講ずることということで規定を設けておりまして、そして、それを受けて労働安全衛生規則におきましては、「常時五十人以上又は常時女子三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床するととのできる休養室又は休養所を、男子用と女子用に区別して」設けるという規定がございます。  それで、この件につきまして、休養室または休養所を設けるべきであるということになりました場合には、設けていない場合には、当然これはそのような施設を設けなさいということで指導をすることになるというふうに考えられます。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、具体的に言いますと、ダイハツ工業の場合は工場にも事務所にも休養室は一つもない。女子労働者は約八百人おられます。けれども休養室は一つもない。全く信じられないようなことが起こっているわけですが、これはすぐ調査をして設置するように指導をしていただきたいと思いますがね。法律でちゃんと定めがあるわけですからね。こんなばかなこと、まさかないとは思わなかったら、ないんですよ。
  153. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) この件についても、これは先ほど申しました申告があった中の一つの事案ではなかろうかというふうに考えるわけでございますけれども、この件につきましては現在調査している段階でございますので、先ほど申しましたとおり、設けるべきものに該当して、しかも一つもないということでありますれば、これは当該施設を設けなさいということで指導をすることになるものと考えております。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 こんなもの、調査中といったって、あるかないかはすぐわかるんですがね。ないんですよ。だから、これは訓示規定じゃなくて、やらなきゃならないという義務規定になっているわけですからね。これはすぐやらしてもらいたいと思います。いいですか。
  155. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) このダイハツにつきましては、私いまちょっと見ました限りでは、かなりたくさんの案件が一遍に持ってこられたんじゃなかろうかと思いますが、いずれにしても、現在調査を進めている段階でございますので、こういう先生のおっしゃいました事実関係の有無につきましては結論を出せるのじゃなかろうかと思っております。
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、同じダイハツ工業ですが、ここでは、就業規則の十五条によって男女定年年齢が違うんです。男子六十歳、女子は五十六歳。それから明治乳業も、これは労働協約で男子五十七城、女子五十五歳ですね。いまどき一流企業でこんなことがあるんですね。男女差別の定年というのは、これはもうここ十数年来大変な問題になって、裁判で四件争われて、全部労働者側が勝訴になったし、最高裁判決で確定をしているんですね。労働省でもこの数年来大変熱心に御指導をされておりますけれども、こういう状況がいまなおあるということですね。これは直ちに是正するように御指導をされるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  157. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 性別のみによる不合理な差別をした男女別の定年というものは、最高裁の判決にも言っておりますように、公序良俗に反することによって無効であるという判決があるわけでございます。したがいまして、私どもはそういう差別のある定年をなくすように、先生いまもおっしゃいましたように、一生懸命是正の行政指導をしているわけでございますが、なお、そういう事業所があるということはときどき出てくるわけでございます。これがなくなるようにぜひ指導 を続けたいと思っております。
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 前に私もちょっと触れたことがあるんだけれども労働協約とか就業規則とかというのを監督署へ出すでしょう、つくった場合にね。そういうときにチェックをして、本省との御指導の方向に反する場合には直ちにそれは指摘をして指導するようにするとこういうものが残らなくなると思うんですが、まあ小さいところでいっぱいあるというのはなかなかつかめないですけれども、これらは決して中小企業じゃないんですね。そういうところで依然として行われているというのは、これは直ちにやっぱり指導して改正をさせるべきだと思います。  次に、法務省の方来ておられますか。——法務省にお聞きをしたいんですが、御承知のように基本的人権の保障というのは憲法原則の一つの柱でございますよね。憲法十四条の法のもとの平等、それから第十九条の思想、良心の自由などが提起されておりますし、また、労働基準法第三条にもこの憲法規定の柱を受けて、差別の禁止それから均等待遇の原則というのが明記されております。これらの理念や規定というのは民主主義の根幹をなすものだと思いますし、非常に大事にしなきゃならない。今日の社会で民主主義が侵されるということはあってはならないと考えるわけです。しかし、後で具体的に指摘をいたしますが、この理念を侵すようなケースというのがかなり多くございます。  そこで、ちょっと法務省に、最初に一般論でお聞きをしておきたいんですが、大企業についてはこういった民主主義の根幹をなすような基本的人権、こういうところに遠慮なく踏み込めるような特権が与えられておりますか。あるいはありませんか。
  159. 堤守生

    説明員(堤守生君) 先生の御指摘にございましたような問題につきましては、主に労働条件について問題になるケースが多かろう、こう思うわけでございますが、その場合には、やはり第一次的には労働省御当局の御指導あるいは組合と会社の交渉によって是正措置が講じられるべきことをこちらでも願うわけでございますが、やはり人権擁護上、人権が侵されているということでございますれば、法務省の人権擁護当局としてはやはりそれなりの啓発等の是正措置を講じなければならない、かように思うわけでございます。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私、具体例はこれから申し上げるんで、ちょっと一般論として、大企業だからといってそういう特権的に憲法事項、憲法で規定されているような基本的人権という中心の柱、そういうものを侵す権利というのは大企業にだけ特権的に与えられているか、いないかと言って聞いている。ほかのことはいいですから、一般論で答えてください。
  161. 堤守生

    説明員(堤守生君) もとより、大企業といえどもそのような基本的人権を侵す特権は与えられていないと思います。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは当然のことなんですね。  それで、具体的にお聞きをしますが、この資料、委員長にも一つ差し上げますが、ちょっとお渡ししてください。委員長と法務省と大臣に。——いまお渡しをいたしました、二つに折っておりますが、裏側の近畿日本鉄道が行っておる個人面接記録用紙というのがございます。「個人面接 家庭訪問記録」という名前でございますね。これは私鉄の王者と言われている近畿日本鉄道の上本町の営業局管内で現に実施されている。管理記録責任は駅長と上司にあり、組織的に近鉄全体で実施をされているものであります。  そこで、法務省にちょっとお聞きをしたいんですが、これ、ごらんいただいたらおわかりのように、この個人面接訪問記録というところの(注)の2にこう書いてあるでしょう。「主な主眼点は、職場並びに家庭における不平不満、悩みごと、心配ごと、争い、勤労意欲、配置、対人関係、健康、交友関係、主義信条等である」という項がございますね。健康だとか心配事だとか悩みだとかという話は別といたしましてね、「対人関係、交友関係、主義信条等である」というふうに書かれているんですが、これが営業成績の向上とどういう関係があると思われますか。問題になるのは、大企業がこんな基本的人権に関することを調査して記録までするというのは、特権があるのかと言いたいわけです。対人関係とか交友関係、主義、信条を調査するというのは基本的人権侵害の疑いが非常に濃厚でしょう。その点どうですか。
  163. 堤守生

    説明員(堤守生君) まあ企業が、人事管理の必要上、社員の身上関係の資料を得るために、このように個人面接や家庭訪問等を実施する場合において、御指摘のような調査項目が含まれておりましたといたしましても、そのこと自体では直ちに人権侵害と言うわけにはまいらぬのではないだろうか。やはり、どのような意図、目的でこのような調査を行っているのか、また、その調査結果の利用状況はどうなのかといったことについて総合的に検討、判断してみないと、人権擁護機関としてはちょっと明確な御意見を申し上げることは困難でございます。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは法務省は、交友関係とか対人関係とか主義、信条というようなものを個人面接をして個々の記録をとどめるということが基本的人権の侵害の疑いがない、こういう御判断ですか。これはきわめて重要ですよ。そういうことですか。
  165. 堤守生

    説明員(堤守生君) 私どもの取り扱っている人権侵犯事件という問題になってまいりますと、やはりその調査していること自体というよりも、その調査結果によってどのような労働条件の差別的取り扱いが行われたかということに焦点を当てていくわけでございまして、そのような具体的な差別的取り扱い等が認められたら、私どもといたしましても関係者から事情聴取をし、必要があれば所要の措置をとっていくということになるかと思うわけでございます。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 きわめて重大ですよ。私、労働条件の問題について聞いていないんです。個人について、主義信条とか、交友関係とか、対人関係などについて、企業がそういうことを一律に調査をするということは法務省としては認めるということですか。これは重要なことだからはっきりしておいてください。そのことがどう使われるとか使われないとかと違うんです、全員にやっているんだから。全職員にそういうことをやることが人権侵害の疑いにならないかということを聞いているんです。そういうことなんですよ。大企業だったら、だれの信条でも、交友関係でも、私生活でも、全部調べていいんですか。そういうことなんですな。それは重要だからはっきりしておいてください。
  167. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) よく質問者の意見を聞いて答えてください。同じことを繰り返さないで。
  168. 堤守生

    説明員(堤守生君) 先ほども申し上げましたように、大企業といえども、そういった主義信条といった問題について、不必要に調査するという特権はないと思います。  御指摘調査項目につきましては、私どもといたしましても、やはりその調査項目というものの合理性等を検討の上、必要があれば所要の啓発等の措置をとりたい、かように考えておるわけでございます。
  169. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 初めからそう言うてくださればいいんですよ。  私は、企業が必要な調査等をやるのが全部いけないということを言っていない。しかし、基本的人権の侵害に当たるような、そういう疑いを持つような項目については削除をさせるように厳格に法務省がおやりにならないと、これは民主主義の根幹が崩れますよという立場で申し上げておるので、これはその疑いのある項目は取り除くように啓発なり指導なり努力をなさる必要が当然あると思いますよ。それはどうですか。
  170. 堤守生

    説明員(堤守生君) ただいまの御指摘を承りまして、本件の調査項目等につきましても、その合理性等について検討の上、必要があれば指導なり啓発をいたしたいと思います。
  171. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、具体的なことで法務 省にちょっとお聞きをしますが、ダイハツ工業の棚池正伸さん、四十一歳ですが、この人は大学を出て材料研究課配属になり、以前は高分子材料の試験研究に従事をしておりました。それが組合役員に立候補し、それから共産党員だというのを主な根拠として、十二年間にわたって教育センターという別館の全くの一人部屋に隔離をし、初めは仕事を与えなかったが、現在は技術文献の翻訳をやらせている。この方は、五十六年の十月に大阪法務局人権擁護部に人権侵害だとして申告をし、人権擁護部で調査の結果、人権擁護上好ましくない扱いがあるとして会社を啓発されたというふうにお聞きをしておりますが、それは事実ですか。
  172. 堤守生

    説明員(堤守生君) 先生指摘のとおりでございます。  昭和五十六年の十月に棚池氏から、実は昭和四十五年ごろから実験部という所属部門とは全く関係のない研修生の宿泊施設の一画の四、五坪の個室に一人で置かれ、だれとも話すことができず、仕事も情報収集、翻訳の仕事であり、精神的に苦痛を強いられているので救済してほしいという申し出が大阪法務局にございました。  大阪法務局といたしましては、会社からも事情を聴取し、本人と話し合うように勧めるとともに、人権擁護の観点から一般啓発を実施したわけでございます。このこともございまして、昭和五十七年の三月一日に棚池さんの勤務場所が工場に復帰いたしまして、七十人から八十人の部屋の一隅に勤務することになったと聞いております。
  173. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこで労働省にお聞きをしたいんですが、ダイハツ工業ではこの棚池さんのこういう経過があったわけですね。法務省のおっしゃるとおり、これは事実です。  この棚池さんと同期の人を比較してみますと、ボーナスを含めまして年間百万円以上の賃金差別、不利益を受けております。賃金差別というのは御承知のように月々だけではなしに当然のこととして年金にも及ぶわけでございますから、生涯ついて回るわけですね。こういう事態というのは明らかに労基法第三条の、信条や社会的身分を理由として労働条件を差別的に取り扱ってはならないという規定に反するのではないかというふうに思いますが、これは労働省、御見解いかがですか。
  174. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 先生のお話しの、同期に採用された、つまり勤続年数が同じということになるのでございましょうか、そういうことであるからといって、これが賃金が必ずしも一緒でなくてはならぬということではないのではないかと思います。高い低いがあっても一概に差別と言えないのではなかろうかと思います。賃金を決めます場合には、申すまでもなく、職務の内容とか、その人の能力の問題とか、責任の度合いとか、あるいはその勤務成績とか、こういうものを考えて決められるわけでございますので、その結果、仮に勤務年数が同じであろうと賃金に差が出てくるということは、これはどのような会社と申しますか企業でもあり得ることではないかと思いますので、一般論として、賃金格差が生じたということは、同時期に採用されたからといって、単にそれをもって第三条違反になると言うわけにはいかないのじゃなかろうかと思います。  こういうことで、どういうわけでその賃金に差が生じているか、果たしてそれが先生のおっしゃる信条に基づく差別であるのかというような判断は非常にむずかしいところでございますので、いま御指摘のお話だけでは直ちに三条違反であるということを申し上げかねるのではないかと存じます。
  175. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 現実に人権擁護部でわざわざ啓発指導して、そして人権侵害のおそれがあるということで長期にわたっている状況を法務省の御努力によって改善をされた、そういう事例がちゃんとあって、しかも同期の人たちとの勤務条件、労働条件、給与が年間百万円以上も違うということになれば、そういうことと無関係であったというふうに労働省考えるならば、労働者を守るという味方としての立場はないですね。    〔委員長退席、理事対馬孝且君着席〕 少なくとも調査してみなさい。そういう人権侵害に値するということで啓発されるような事態が長期にわたってあった、その間に給与が年間百万円も違うということになったら、何かなかったかということで調査してあたりまえでしょう。どうですか。
  176. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) いまお話しになりました、人権擁護局へ話が出ていったということと賃金の差別とをストレートに結びつけるということは、やはりこれは結びつけるわけにはいかないかと思います。何しろやはり基準法三条は罰則があるわけでございますので、そのような判断というのはそれは慎重にやらなければならないのではなかろうかと思っております。  本件につきましては、やはりこれは申告の中身のようでございますので、先ほど申し上げましたとおり、果たしていかなる理由によってこういう賃金の違いが出てきたのか、果たして差別的な取り扱いであるのかということにつきましては、これは実際にその信条による差別かどうかということを判断するのはなかなか困難でありますので、私ども、早速に調査をしろとおっしゃいましても、なかなか拙速の調査をやるというわけにはいかぬと思いますが、いずれにしましても、申告の事案でございますので、私どもとしましては所轄の署で慎重に調査をいたしたいと存じます。
  177. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 申告をしておられるようですが、そのほかに大竹八郎という方、上部靖彦、柴田外志明、この三名を含めて四名ですね、四名が申告をしておるようですから、これは十分調査をして、違法性があれば是正さすべきですよ。だって、せっかく労基法にわざわざ三条というのがある。しかも基本的な立場として確立をされていて、これはやるべきですよ。三条違反なんていままで申告して是正をさせた例ありますか。せっかくの武器をちっとも労働省使ってないんだから。これは三条違反で、労働者に不利益を与えてはならない。ですから、これは申告もしている事案ですから、労働省としてはひとつよく調査をして、せっかくの三条というものを活用するという立場に立って、やっぱり違法性があれば是正するという立場をおとりになってもらわなきゃ、何のための法律だということになりますよ。その点をはっきりしてくださいよ。
  178. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 手元に五十三年の数字がございますが、三条違反の申告が四十五件ございまして、違反の事業場が二件ということでございまして、これは司法処分に付されているのではないかと思います。
  179. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと一つ二つあったから助かりましたね。だけれども、非常に少ない。まあ時間がないから冗談言うていられませんがね。  もう一つ、法務省にお聞きをしたいんですが、これは住友化学大阪製造所の出来事ですが、佐々木さんという方の場合、共産党に入っているのか、態度をはっきりせよ、悪いようにはせぬ、一筆書けなどと、職制が寄ってたかって集団でつるし上げ、思想転向が強要された。保田さんという人の場合は、職場の旅行会に参加させない。積立金は突っ返される。それから蛯原さんという人の場合は、フリーテニス大会に参加させない。それから田中、森、鈴木さんの場合は、同期会から排除される等々職場八分ですね。最近、大津博子さんという物流管理課におる人ですが、この大津さんに対して、課長が、私が率先してやっているように大津とは口をきくなと労働者に徹底するとともに、運動会に参加しても競技に参加させない。朝夕のあいさつもしない。冠婚葬祭まで排除するという状態である。そこで大津さんががまんし切れなくて、明らかに人権侵害のやり方ではないかということで、本人から法務省に申告をしているということですが、これは調査をして是正措置を直ちにとらせるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  180. 堤守生

    説明員(堤守生君) 先生の御指摘のございました、大津さんが、すでに大阪法務局に申告をしておるということはないのではないかと思うわけで ございますが、まだその報告は受けておりません。  ただ、申告がございますれば、いずれにいたしましても、実際にそのようなことがあったか、どういう原因でそういうことになったかということをまずもって確定いたします。そして、いずれにしても、そういうこのようなことが事実でございますれば、職場八分という状態なわけでございますから、人権擁護上も見過ごすわけにはまいらないと思いますので、先ほども申しましたように、本人から申し立てがございますれば関係者から事情聴取をしてしかるべき必要な措置を講じたいと、かように考えます。
  181. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私聞き違いかもしれません。大津さんは申告したというふうに聞いたんですが、まだであれば、直ちにやらせます。  しかし、本人が申告をするということもさることながら、国会で問題になっているんだからね、あんた、本人が出してくるのを待ってぼつぼつやりますというようなのんびりしたこと言うたらあきまへんで。すぐ調査をしてもらわないとぐあいが悪いと思う。調査をしてもらって、適切な措置を講じていただきたいと思います。いいですね。
  182. 堤守生

    説明員(堤守生君) さっそく大阪法務局の方に連絡して事案の調査を、事情聴取をするように連絡いたします。
  183. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 次に、問題変わりますが、労働省にお聞きをしたいんです。官房長おいでですか。——労働省の場合ね、ちょっとお聞きをしたいんですが、一般職員の方々が休日を利用して全く私的な国内旅行を楽しむ場合に、大臣局長だけでなく、一般職員からも詳細な調査書といいますか、さっきお渡しした資料の表側、こういう詳しい調査書を取りますかな。出発は何時、帰宅は何時、行先、同行者、汽車は何時発、何という列車、着時間は何時、宿泊先はどこかと、こんな詳細な旅行計画書を労働省は全職員に提出をさせておりますか。
  184. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 職員が年休を請求いたします場合には、年休の承認申請書を提出させておりますが、こういった旅行計画書あるいは報告書と、こういったたぐいのものは提出をさせておりません。幹部職員につきましては、緊急時の連絡の必要性などから、旅行先の電話番号というようなものを事前に届け出をしてもらうというようなことはいたしております。  なお、職員が公務以外の目的で外国に旅行いたします場合には、海外渡航承認申請書と、こういうものを提出させております。
  185. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 労働省ではこれだけ詳しいものを取ってない。一般職員は取っていないんですね。ということですが、これはあたりまえのことだと思うんですね。  それで、この計画書というのは実に詳細でしょう。ちょっとごらんください。まず一番上に書いてあるのは、「所属長殿経由人事部長行」。それでその右側に書いてあるのは、ちょっと読みにくいんですけれども、こんなに書いてあるんです。「コピーの上、写しを提出し、原紙は所属長保管」。それから何時出発、列車は何でというようなことで、それから下の摘要欄のところね、星印の初めに、「連休を利用しての旅行等(外泊する場合)は三日前迄に必ず提出のこと。」、それからその次の「行程の記入」というのは、たとえば「ひかり」第何号でどこへ何時着ということもみんな書く。乗り継ぎの場合はどこで何に乗ると、そういう例示をしてあるんですね。それから最後の星印のところには、「所属長はスケジュールが翌日に差し支える様な無理なものになっていないか等細部指導を充分にお願いします。」と、こう書いてある。  そこに書いてあるのは、これは松下電工の全職員が提出を義務づけられているものなんですね。休日を利用してキャンプに行ったり、旅行に行ったり、海水浴に行ったりする場合。大臣、どう思いますか。大臣ならよく公務とか私用でもあちこち行かれると思いますけれども、全職員といったら、大臣のように重要人物じゃないんですよね。労基法四十一条で言うている監督、管理の地位にある人でもないわけですよ、全職員ですから。全くの一般の労働者が、休日を利用しての私的旅行の場合にまでこんな詳細な旅行計画書の提出を義務づけるというのは、ちょっと非常識に過ぎはしないかと思うんですよ。このことは全職員はもちろんのこと、下級職制、こういう人たちもみんな頭に来ている。いいかげんにしろということで頭に来ているんですよ。これは大臣、どんな御感想をお持ちになりますか、この資料をごらんになって。
  186. 大野明

    国務大臣大野明君) 御指摘のような計画書を提出させるということについては、いろいろな企業の形態、実態等もございますから、一概に感想を述べると言ってもこれはなかなかあれですけれども、いずれにしてもこういう問題は、労使間で話し合って決めてもらうということ以外ないと思います。そういう計画書を出させておるという企業もあるでしょうし、また、そうじゃないところもたくさんあると思いますので、いずれにしてもこれは一概に私から感想と言われても無理なような気がいたします。
  187. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣ね、労使間の問題だとおっしゃるんだけれども、労使間でうまくいかないから、こういう問題が起こっているから国会で取り上げている。そのことをどう考えるかと言っているんですよ。大体こんなやり方、労働者を一体何だと心得ているかと言いたいですよ。三百六十五日、二十四時間全部企業管理せぬと気に入らぬなんというのは、一体近代的な労働者の姿ですか。そんなもの、奴隷や召使と違うんですよ。前近代的じゃないですか。  たとえば、世界人権宣言の第十二条にも明確に書いてある。「何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。」とあるんです。この旅行計画書の義務づけというのは、いま申し上げた人権宣言からいいましても、憲法の立場からいいましても、労働基準法の理念に照らしても、これは理念上明らかに違反していると思いますよ。労働者をここまで拘束、干渉する権利は、いかに大企業といえどもないでしょう、実際。これはやっぱり非常識に過ぎると思うんですよ。  こういう同じようなことは、関西電力でも武田薬品でもやられております。関電の場合は就業規則第十五条。こういうことは労働組合、労使の関係でとおっしゃるけれども、すべての労働者の二十四時間、全生活を企業が掌握をし、干渉するというようなことは、私は今日の労働条件あるいは労働者としてあり得べからざることだ。大企業といえどもこういうことをやってはならないと思うんですよ。その点はどうですか、大臣
  188. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) 労働基準法の理念という先生の御質問の中のお言葉がありましたので、私からお答えさせていただきますと、確かに休日の自由な利用ということが妨げられて、有給休暇も全くとれなくなってしまうということであれば、これは問題であろうかと思いますが、しかしながら、そのようなことに至らないような場合には、これは労働基準法に違反するというようなことは考えられないというふうに存じます。  これはやはり、こういうような計画書を出させるというようなことにつきましては、いろんな企業実情ということは大臣の申されたようにあるのではなかろうかと存じます。たとえば旅行中にも緊急のことができて、たとえば家族が病気になっちゃったとか、あるいは事故が起こったとかというようなことも当然考えられるわけでございましょうし、そういうような場合には連絡の必要ということもあるわけでございましょうから、その辺の問題は、これはやはり基準法違反ということでないならば、労使の間の問題として良識的に処理するというのがその取り扱いのオーソドックスなやり方ではなかろうかというふうに私存ずるところでございます。
  189. 対馬孝且

    ○理事(対馬孝且君) 沓脱君、時間ですから、あと一問で。
  190. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣、これは基準局長がそんな余分なこと言う必要なかったんですよ。時間をとられただけなんです。そんな今日、あなた方だってあれですか、労働省の全職員の二十四時間、三百六十五日を管理しているんですか、官房長。干渉しているんですか。はっきりしましょうや。そんなことは今日の労働者にとるべき姿でないでしょう、使用者が。  だから、労使の関係で——大臣、もう一遍言うておきますが、労使の関係でやられたら望ましいんだけれども、労使間でうまくいっていないからわざわざ国会で取り上げなくちゃならないというふうなことになっているわけなんで、そういう点は労働省としても事業主に、そういった点の余りにも奴隷みたいなかっこうでの拘束の仕方というのはよろしくないではないかという点は大いに御指導なさっていいんじゃないかと思うんです。その点、ひとつお伺いをして終わりたいと思うんですが、こういう点で、局長、申告をして調査中の事案については、こういった点で全部を取り上げるわけにいきませんが、ひとつ厳重な調査をして、法令違反の事実があればやはり厳重に是正方をきちんとやっていただきたい、そのことを要望をしておきたいと思う。  そのことを含めて大臣、一言最後に。
  191. 大野明

    国務大臣大野明君) 違反があれば、それは当然私どもも対処しなければなりませんが、ただその以前の問題として、各企業においていろいろ実態も違うんですから、そこの労使間で話があって、話がつかぬから国会でやっておるとおっしゃられたら、国会でこういう答弁があったと逆に言っていただいて、そういうことから私はまた問題がいろいろ提起されるなら無理もございませんが、いま初めて聞いたばかりで労使間の問題いかんと言われても、これはどういう考え方でやっておられるか私にはわかりませんから、この問題についてはひとつそういうようなことで、これからまた論議すべきときがあったらしたらいいというふうに思っております。
  192. 藤井恒男

    藤井恒男君 時間が大分経過しておりますから、ピッチを上げて質問しますので、よろしくお願いします。  法案に入る前に、大臣に所見をお伺いしたいことがあるわけです。  実は、昨年の暮れに日大主催の高齢化シンポジウムというのがわが国で開かれまして、「二十一世紀日本の進路」というテーマで論議がなされたわけですが、ここにフィリップ・M・ハウザーという世界的に著名な社会学者、人口学者が来られまして、わが国高齢化社会についてどのような感想を持つかというインタビューがありました。彼は、まず第一に言えることは働くことだ、つまり定年を延ばすことだ。二十一世紀の日本は子供より老人が多い社会になる。私の考えでは七十歳は早過ぎる、七十でリタイアするのは早過ぎると。まあこれは多少冗談も含めて言っていることですが、とにかく日本高齢化社会を展望したとき、現在の定年制というものが全くお粗末だということを指摘しているわけです。  もう私から申し上げるまでもないことでございますが、昭和七十五年には六十五歳以上の方たちが一五・六%、実に六・四人に一人、九十五年には二一・八%、四・六人に一人。高齢化社会ということは私は非常におめでたいことだと思うので、私どもが生まれたときは人生五十年ということで生まれてきたわけなんだけれども、大変なピッチで日本高齢化社会が来る、私は非常におめでたいことだと思っているんですが、ついせんだって総理府が行った調査によると、この高齢化社会を迎えるに当たって、国民がこれは大変おめでたいことでありがたいことだという感想を持っているかといえば、そうじゃなくて、およそ三〇%近い人たちはきわめて不安であるという答えが返ってきている。近代国家のわが国でかつてのおば捨てだとかあるいは子供の間引きというようなことはよもやないとは思うが、しかし同時に、高齢者がひとしく国民から敬愛されて余生を全うするという仕組みを早急につくらなければこれは大変なことになるというふうに思うわけです。    〔理事対馬孝且君退席、委員長着席〕  先ほど別の角度から雇用の問題に触れて対馬委員から定年延長の問題、週休二日の問題、労働時間短縮の問題ということを指摘しておられたけれども、私はやっぱり高齢化社会という観点に立って、ワークシェアリングという観点から私は定年制というものを見てみなきゃいけない。残念ながら現在わが国において六十歳定年というのが半数に達していない。このことについて、大臣の私的諮問機関もあって、政労使の話し合いというのがかなり頻度を多く持たれていることと思うので、私は労働組合にも啓発して定年制延長という問題が単なる労働条件として労使間の取引あるいは獲得目標というような交渉事ということよりも、広くわが国高齢化社会を見つめた意味においてワークシェアリングという観点からこの定年制というものに取り組む。労働省では施策として定年延長に対するいろんな施策を持っておられるけれども、これはもう靴の外からかいておるようなもので、なかなかこれはああいったことでは定年延長が即効性を持って実行できるとは私は夢にも思っていない。だから広く国民の関心を呼び起こして、企業もまたわが国の産業構造というものを一遍洗い直すというような観点から、国民的な立場で高齢化社会を迎えるに当たってのワークシェアリングというものを考えなきゃいかぬ。その発想の中から、定年制の問題であるとかあるいは労働時間、年間総労働時間、あるいは年間の休業日数、週休二日制という問題もフィードバックして物を考えていくというような新たな発想を一遍やってみたらどうか。  労働省も同じような、ワンパターンで施策を追っかけるんじゃなく、発想を全く変えてしまってやるぐらいの意欲でなければ、これはピッチの早い高齢化についての産業構造、社会構造の構築という問題は、お手本はどこにもないわけなんだから、ひとつ大臣、これ、あなたの大臣在職中にでも一遍頭だけでも大きく出してみたらどうだろうということを強く感じておるわけなんで、きょうは時間がないから、このことについて大臣の所見をまず最初にお聞きしておきたいと思います。
  193. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいま藤井先生から非常に高邁な貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。  いずれにしても、この高齢化社会というのは、御指摘のように日本は急速であると同時に、世界に類を見ないということでございますので、これらの対応につきましてはこれはなかなか未知のことでもあるので非常な苦労が要ると思います。  そこで、先生指摘のように、労使間の問題であるとかということでなく、国民的課題として、これをあらゆる角度から、なかんずく労働行政の中で取り上げてやっていくということは、これはもう大変に私は結構なことなので、ひとつ大いに省内を督励してやらしてみたいと思います。いずれにしても、六十年、六十歳定年制というものを一般化させるべく、いま鋭意努力をいたしておりますが、六十年に果たして一〇〇%できるかどうかは別として、それに近いところまではいくような感じがいたしております。より努力はいたします。  ただ、人生わずか五十年というお話がございましたが、実は、人生わずか五十年の時代に定年制が五十五歳であったということになると、平均寿命が七十五歳なら定年は八十歳でもいいくらいだと。言うはやすく行うはかたいのでありますけれども、それくらいの意欲を持って事に処したいと思っておりますので、またこれからお知恵も拝借すると同時に、今日は一応目標を六十歳に出しておりますが、まあ六十歳の前半層の方々に対してもいろんな形で雇用の確保であるとか、また社会に大いに貢献してもらう。働くこともお年を召した方の生きがいであると同時に、しかし反面肉体的な衰えもあるんですから、そういうようなことでニーズもいろいろでございましょうから、こう いうものも勘案しながら、本当に高齢化社会において年をとった方々が社会に貢献すると同時に、やはり自分の生きがいとしても大いにその活力も活用できるように、また、能力も大いに発揮できるような社会をつくるということに、理想と同時にそれを現実に近いものにしていくようにしたいと、こう考えております。
  194. 藤井恒男

    藤井恒男君 仮に、定年六十とした場合、これはわが国でもまだ半数ぐらいしか六十になっていないわけなんだけれども、仮に六十としても、二十二歳まで学園生活を送り、六十から余命年数が延びて七十まで生きたとすれば、人生の半分はただで生きて人生の半分しか働かない。こんなことでは世の中がもつわけがない。しかも年々福祉というものが国民からの希望は高い、それにこたえなければならないというのに、打ち出の小づちじゃないわけですからね。結局、現役の労働者がこれを支えなければならないということになると、これは欧州あたりに見られるようなきわめて憂慮すべき社会現象が起きてくる。  だから、総理府の調査によっても、現役の労働者でも不安を感じているというのは、老後の生活あるいは自分のライフサイクルが立たないということに対する不安であろうと私は思うんだけれど、さりとて六十歳から年金で最低生活ができるからどうぞといってもその原資がないということもあるけれども、それでは人生の生きがいというものがない。結局参加するという道を開かなければいけない。そういう中で、自由競争体制の中でそれをただ単に労使の団体交渉事項として任していたならば、これはやはり自由競争の中では、各企業は有効競争をやるわけですから、だから公正労働基準というものを求めて、やはり低きに低きに条件は流れる可能性を持っているわけなんです。  こういうことを考えていくなら、私は現在のわが国の自由競争体制の中にあってもこの種の問題、つまり定年というような問題はわが国の年齢構造、余命年数その他を考えて、思い切って法的措置を講じていくというようなことが必要であろうというふうに思うわけなんです。いまの大臣の御答弁でも、せっかくこれからわが国独特の考えをつくっていかなければいけないということであったわけですから、どうぞ大きく声を出してその道に進んでもらいたい。ひとつこれは強く希望しておきたいと思います。  時間がありませんから法案に入りますが、離職者法についてですが、これまでの労働省の説明によりますと、特定不況業種の指定に当たっては、産業政策が発動される業種に限定せず、雇用量の変動等に着目し、雇用政策の必要性に基づき指定すると、こういうことになっているわけですが、この場合、一般的に構造不況業種と言われる業種であっても、業界によっては通産省のいわゆる新特安法のお世話にならないという業種もあるわけです。そして自主努力によって構造改善を図っていこうという業界もあるわけなんで、そういった業界に対して、本法の指定はどのような形をとるのか、これをお聞きしておきたいと思う。
  195. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 御指摘ございましたように、本法に基づきます特定不況業種は、現行の特定不況業種の指定要件であります事業規模縮小等につきまして産業政策の具体的な行動がとらている業種にとどまらず、産業政策としての具体的な行為がとられていない業種にありましても、構造的要因により長期にわたり不況に陥って過剰供給能力があることと、それから事業規模縮小等を余儀なくされていること、雇用量が相当程度減少しており、または減少するおそれがあることなどの要件に該当すれば対象としていくことといたしておるわけでございます。ただ、具体的な業種の指定に当たりましては、中央職業安定審議会の議を経て作成いたします指定基準にのっとりまして行うことといたしておるところでございます。
  196. 藤井恒男

    藤井恒男君 指定の基準についてちょっとお尋ねして、また希望を申し上げておきたいんですが、たとえば繊維産業などのような成熟した産業ですね、このような産業については、わが国経済が第一次オイルショック以降長期低迷にあるという状況の中で、大幅な規模縮小を余儀なくされて現在に至っているわけです。しかも、今後さらに規模縮小という形が続くと想定されるわけです。これはひとり繊維産業だけじゃないけれども、わかりやすく繊維産業という例をとって私申し上げておるんだけれども、こういったところを指定するについては、法案が示しておる指定基準、つまり事業活動を示す指標及び雇用状況を示す指標について、過去三年間と最近六カ月を対比して一〇%以上の減少があることということになっているんだけれども、それぞれの繊維産業の業種を調べて、双方を一〇%以上という形で満たしている業種はほとんどない。だから、これを厳密に適用していくと、だれが見ても繊維産業なんというものは離職法の指定業種になるということはわかっているわけだけれども、そうならない。したがってこれは、おおむね一〇%以上減少というふうにうたい込まれているわけだから、このおおむねというものを生かして、基準の適用というものをかなり弾力的に運用しなければ実態にそぐわないんじゃないかという気がするので、これらについては、長期的、そしてこれまでの何回とない不況というものを趨勢的に見て総合判断するというような考慮が必要だと思うんだけれども、この点いかがですか。     ─────────────
  197. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 委員異動について御報告いたします。  本日、遠藤政夫君及び福島茂夫君が委員辞任され、その補欠として林ゆう君及び山東昭子君が選任されました。     ─────────────
  198. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 特定不況業種の指定に当たりましては、先ほどお答えいたしましたように、中央職業安定審議会の議を経て作成いたします指定基準にのっとって行うことになるわけでございます。まあ指定基準の内容につきましてはそういうことで、現在、どういうものになるかということは明確に申し上げられるものではないわけでございますけれども、国の施策等の要件を除いた点を別といたしますと、基本的には現行法における指定基準とそれほど異なったものにすることは適当ではなかろうかと存じます。  ただ、いま先生の御指摘になりましたような、長期的に低迷しておるような業種についてどういうふうな取り扱いにするかというようなことにつきましては、指定基準の作成等に当たりまして職業安定審議会でも十分御議論をいただこうかというふうに考えておるところでございます。
  199. 藤井恒男

    藤井恒男君 指定期間についても同じことが言えるわけで、指定基準並びに指定期間について審議会は諮る折には、ひとつ局長の方から、こういった事例があると、当然国会審議というものを踏まえて、国会審議の論議経過というものを当然報告なさることだと思うので、単なる任せっきりじゃないと思いますから、十分これを入れて諮問していただきたいというふうに思うわけです。指定期間についても同じことです。これからかなり長期にわたって——一時に多数の希望退職とかそういった形じゃなくて、どちらかと言えばやはり失業の予防ということを考えていくと、まあ小幅な長期にわたる雇用調整というのが続くというふうに見なきゃならないと思うんです。だから、指定期間も同じような意味でよろしくお願いしたいと思います。  それからいま一つ、再就職あっせんにかかわる賃金助成制度の適用の問題についてですが、今度の法律では特定不況業種事業主の再就職あっせんにより労働者を受け入れる事業主に対する賃金の一部助成を新設しておるわけですが、お願いしたい向きは、不況業種の離職者も、同業種もしくは関連業種企業への再就職をするケースが相当にある。つまり、不況業種から不況業種へ渡るというケースがあるわけなんです。このことについて は、本法の趣旨に照らしていうならば非常に問題があるように事前にお聞きしているわけです。しかし、労働省の方にも政策推進労組会議などからしばしばこの問題について申し入れをしてきたところですので事情は十分おわかりだと思うわけですが、実態に即してこれは処理してもらわなければ、本法のきちょうめんな解釈だけでは実は運用上非常に問題が出てくる。このことはお聞き及びだと思うので、局長の方から答弁していただきたいと思うんです。
  200. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 先生いま御指摘の点は、私ども関係の組合の方からもいろいろ伺っておりますし、あるいは関係事業主の方からも聞いております。  考え方としましては、いわゆる構造不況業種ですから、その業種に属する企業はすべていわゆる構造不況要因の影響を受けている。そうすると、その中のある企業から同業種の他の企業へ移るというのは、ある意味では不安定雇用をまた再生産することになりはしないかといったような議論もございますので、考え方としてすべてそれでも何でもいいというわけにはなかなかまいらぬ点があるわけでございますけれども、ただ、同じ不況業種という中にも、企業によっては十分安定した雇用をふやす余地のある企業もあるわけでございますので、御指摘のように、そうした安定した雇用が得られる姿のものであればそうした実情に即した取り扱いができるような方途を検討してまいりたいというふうに考えております。
  201. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは審議官も政推がまとめた離職者追跡調査表というものをごらんになったと思うんです。これは現実問題として、不況業種の中にも成長企業、安定企業というのがあるわけですからね。そういったところにやはり移動していくというケースについて、四角四面にこれをやっていけば全部パアになってしまうわけだから、これはまあ事前に十分論議されておることと思うので重ねて申し上げませんが、どうかひとつ、いまの労働界で、不況業種を抱えた業種労働界では、一番このことについて強い希望を本法に対して持っているんです。このことをよく考えていただいて措置してもらいたいと思います。どうせ省令改正の折に、この種の問題も取り扱うことだと思うので、よろしくお願いしたいと思います。  それからその次に、兼業事業所の指定についての問題なんだけれども、結論から言うと、兼業事業所の事業主についての現行の認定基準、これを緩和してもらいたいという希望があるわけです。たとえば造船業などの業種では、他業種への転換というのが進んで、造船のみでは五〇%をキープしているというところはむしろ少ないんじゃないか。これでは造船業が仮に業種指定されてもこれらの事業所は指定を受けられないということになりかねない。このことをよく考えていただかなければならないし、認定基準、本来ならもう三〇%ぐらいじゃないかという強い希望もあるぐらいなんです。この辺の運用をどうするのかお聞きしておきたいと思うんです。
  202. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) いま御指摘になりましたような幾つかの業種に係る事業を行っている場合、その事業主が特定不況業種事業主に該当するかどうかという判断基準につきましては、御指摘ありましたように、その事業所の事業活動全体に占める特定不況業種に係る事業割合がおおむね二分の一以上であるということを要件にしておるわけでございます。  これをこの新法においてどういうふうな取り扱いにするかということにつきましては、現行の法律も、それから今度考えております法律も、最近の内外における著しい経済的な事情の変化によりまして、構造的な不況に陥っている業種労働者、あるいは地域労働者に対して措置をしようという法律でございまして、御案内のように、ほかよりもかなり手厚い対策を講ずる法律なり、その法律に基づく制度でございますので、そういう関係からいたしましたら、やはり業種を決め、それに該当する事業所であるかどうかというような判断につきましては、やはりどこまでをそれに該当するかということを決めるに際しましても、そうそう低い水準までおろすというのは社会通念上適当でなかろうというような感じがいたします。  また、いろんな業種を行っております事業主の場合には、雇用調整を実施する場合であっても、ほかの部門への吸収を図ることがほかよりもできやすいというようなこと等もございますので、現状はやはりおおむね二分の一以上というような基準が妥当ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  ただ、実際の運用に当たりましては、同一の事業所内にありましても、たとえば場所的にとか、機能的に明確に区分されておりまして、独立性を有しているというような一定の要件に該当する部門は除外して適用するというようなことの取り扱いもございますので、そういうものが活用できるかどうかという点については、個々の事業所の実情を踏まえまして適切に対応してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  203. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは実際申請は安定所に行くわけだから、安定所の窓口というのはいまおっしゃった適用除外という点についてはきわめてシビアなんですよ。これはもういままでもやっておるわけなんだから、幾つも私はその例を見て知っているわけなんです。だから、文字どおり解釈すれば、場所的区分、あるいは他部門労働者の代替が困難、指揮命令系統の区分、生産工程等の関連性がきわめて少ないこと、これらをすべて満たすとき、その異なる部分については適用除外とする、これはきわめて厳格にやっていますわ。ぴしゃっといくものだから、労働省というのは非常にりっぱだなとは思うんですが。だから、休業の実態というのを現に知っている、安定所は、見てわかっているんだ。見てわかっていつつもこの法文がある限りにおいてはそれは適用除外できない。こういうことになるんですよ。だから、この辺のところはもう本来的にいうと、産業分類上異なった業種が一事業所内に併存する場合には、その分類上によってぴしゃっとやるというのが一番はっきりしておる。それぐらいのことは安定所にフリーハンドで任したって構わぬわけですよ。インチキするためにやっておるわけじゃないんだから。だから、四角四面にそれをやると、せっかくいい法律ができても運用上では死んでしまう、こういうことになりかねない。したがって、この辺のところも明確にひとつ御記憶いただいて措置していただきたいと思います。  最後にもう一つ伺いしておきたいのは、在籍出向の問題でございますが、現行の雇用調整助成金の中でも、出向の利用がきわめて少ない。これは、雇用保険の籍を出向先に移さないと制度の適用がないということに大きな理由があると私は思うんですが、このことについては、企業側も労働者を出向させるに当たって雇用保険の籍をなかなか切れない。それは労働組合との関係においても、あるいは個々の労働者においても、財形だとか社内預金あるいは健保あるいは本人の将来の生活上の問題、完全に出向するには手続的な問題もあるということから雇用保険籍を移さない。したがって、雇用調整助成金の出向の利用が少ない、こういうことになっているんだと思うわけです。  したがって、よくこの点は労働組合との話し合いなども大切でありますが、むしろ個々の労働者に結果して犠牲を強いることのないような配慮が私は必要だろう。そういった観点から、いわゆる在籍出向の場合であっても雇用調整助成金の支給対象にできるというような配慮が、この法律にやっぱりそういった意味の温かみがなければいかぬのじゃないかという気がするわけです。それについてのお考えをお聞きしておきたいと思います。
  204. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) いま御指摘ございましたように、現行の雇用調整助成金制度におきましては、現実に企業で行われております出向の目的とか形がいろいろ多様なものがございますので、雇用調整のために行われるものを区別するという必要から、助成の対象となる出向について、いろんな要件を設けておるところでございますが、そのことにつきまして、いま御指摘になったような 問題があるわけでございます。  そこで、従来からも各方面から指摘され、これをどういうふうに改善をしていくかというような問題につきましては、現実の出向の実態をもう少しよく調査をいたしまして、いろんな形の出向とか、派遣とかいうようなこともあるわけでございますので、そういうものとの区別が明確であるとか、あるいは制度の悪用を生ずる可能性がないかとか、あるいは法的な問題点がないかとか、そういうものを含めまして、助成が可能かどうかというようなことを検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  205. 藤井恒男

    藤井恒男君 終わります。
  206. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 以上で、労働問題に関する調査は本日はこの程度にとどめ、両法律案につきましては、他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより両法律案について討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、特別不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  208. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、対馬君から発言を求められておりますので、これを許します。対馬君。
  209. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 私は、ただいま可決をされました特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び無党派クラブ各会派共同提案による附帯決議案を提出をいたします。  案文を朗読をいたします。     特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一、現下の厳しい雇用失業情勢に対応して、本法の趣旨が最大限に生かされるよう、特定不況業種及び特定不況地域の指定に当たっては、関係省庁間の連携を密にし、かつ、実情に即応して弾力的、機動的に行うこと。  二、特定不況業種の関連下請中小企業における労働者等の雇用の安定を図るため、本法に基づく援護措置が適切に活用されるよう特段の行政指導に努めること。  三、失業の予防、雇用機会の増大等のための新たな助成及び援助については、これらの施策の円滑かつ効果的な活用に努めること。  四、公共職業訓練施設の充実強化、民間各種職業訓練施設の活用等に努めるとともに、中高年齢離職者等の実情に即応した職業訓練体制の確立を図ること。  五、今後引き続き予想される内外の経済事情の著しい変化と厳しい雇用失業情勢に対処するため、新たな雇用対策基本計画の策定を進める等、総合的な雇用対策の展開に努めるとともに、行政の実施体制を充実強化すること。  右決議する。  以上でございます。
  210. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいま対馬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手)
  211. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、対馬君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、大野労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大野労働大臣
  212. 大野明

    国務大臣大野明君) ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしましてその御趣旨を尊重いたし、努力する所存でございます。
  213. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 次に、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  214. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両法律案に対する審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  215. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十六分散会