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1983-04-12 第98回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十一日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     佐藤 昭夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長        目黒朝次郎君     理 事                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 対馬 孝且君                 渡部 通子君     委 員                 石本  茂君                 大坪健一郎君                 佐々木 満君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中野 鉄造君                 佐藤 昭夫君                 藤井 恒男君                 山田耕三郎君        発  議  者  対馬 孝且君        発  議  者  渡部 通子君    委員以外の議員        発  議  者  田中寿美子君    国務大臣        厚 生 大 臣  林  義郎君    政府委員        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生省公衆衛生        局長       三浦 大助君        厚生省公衆衛生        局老人保健部長  吉原 健二君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省医務局長  大谷 藤郎君        厚生省薬務局長  持永 和見君        厚生省社会局長  金田 一郎君        厚生省児童家庭        局長       正木  馨君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省援護局長  山本 純男君        労働大臣官房審        議官       小粥 義朗君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        警察庁刑事局捜        査第二課長    森廣 英一君        環境庁水質保全        局企画課長    三本木健治君        法務大臣官房司        法法制調査部司        法法制課長    原田 明夫君        法務省刑事局刑        事課長      飛田 清弘君        文部省大学局医        学教育課長    前畑 安宏君        文化庁文化部宗        務課長      大家 重夫君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  山村 勝美君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (厚生行政基本施策に関する件) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○戦時災害援護法案対馬孝且君外六名発議) ○公衆浴場法の一部を改正する法律案対馬孝且君外六名発議) ○市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案対馬孝且君外二名発議)     ─────────────
  2. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十一日、沓脱タケ子君が委員を辞任され、その補欠として佐藤昭夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 社会保障制度に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず、大臣にお伺いします。  質問に先立ちまして、去る一月十九日の本院決算委員会では、東村山市の都病院診療報酬債権処理に関しお願いを申し上げておきましたが、大変むずかしい問題であったにもかかわらず心温まる取り扱いをいただきまして、論議をいたすに先立ちまして、まずこの点に関しまして、きょう傍聴に見えられる都病院の職員の皆さんを含め、私もお礼を申し上げたいと思います。大臣、どうもありがとうございました。  そこで、きょうも引き続きまして、委員会は変わりますがこの社労委員会で、前回の決算委員会で問題にしました都病院について質問をさせていただきますが、私は、本件につきましては、ぼつぼつもう締めくくりをする時期が来ているのではないか、このように思っています。  そこで伺いますが、先日の決算委員会では、大臣締めくくりのため東京都を通じ行政指導によって浩徳会都病院経営陣処理をされる旨述べられましたけれども、私は、これを早急にやっていただく必要があると考えています。そこで、質問通告をしておりますので、きょう私が申し上げることはもうすでに御存じであろうと思います。これからいろいろ触れてまいりますが、都病院経営者の持っている問題点、つまり事情を知らない方が次々と医療法人浩徳会都病院を舞台に被害に遭われ、そしてまた、理解に苦しむような事態が発生をしていくことを考えるときに、もうこの問題をこのまま放置できない、厚生省行政上の怠慢というふうに、社会的な批判を受けるような事態になってくるのではないか、このように私は心配しています。この辺でこの問題について締めくくりをつけるべきではないかと思いますが、以下質問をしていくに先立って、大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  5. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 本岡委員からわざわざ冒頭にお礼の言葉をいただきまして、まことに恐縮に存じておるところでございます。  先生指摘のとおり、決算委員会でもいろいろと御議論をしていただきました。私もその御議論を踏まえまして、従業員の方々にも直接お会いをいたしたりいたしましたし、事態大変急迫をしているというふうな感じを持ったわけでございまして、本件に関しましては、入院患者医療を確保するという観点から、東京都を通じ都病院に対し指導してきたところでございますが、先生指摘のとおり、早く解決をしなければならない問題だと思います。できる限り速やかに決着がつくように努力をしてまいりたい、こういうふうに考え ております。
  6. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず、警察関係の方で伺いますが、一月十九日の決算委員会都病院患者日用品費の件について、私たちは、これは業務横領ではないか、こう申し上げましたところ、警察の方ではほぼ所要捜査を終了し、送致について最終的な検討を行っている。大体、業務横領のような方向で現在検討しているというふうな回答をいただきましたが、これはその後どのようになっていますか、まずお伺いします。
  7. 森廣英一

    説明員森廣英一君) お尋ね事件につきましては、警視庁が所要捜査を遂げまして、去る二月四日付をもちまして事件東京地方検察庁八王子支部送致をいたしております。
  8. 本岡昭次

    本岡昭次君 送致後の状況についてはここでお話しできませんか、その進展状況は。
  9. 飛田清弘

    説明員飛田清弘君) 警察から事件送致を受けた後は検察庁の方の捜査になりますので、これは法務省の方からお答えさせていただきます。  現在、八王子支部におきましては、本年の二月四日に事件送致を受けまして、八王子支部においてその関係捜査をやっている、こういうところでございます。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 同じく東京地検にも都病院の組合の関係者から告発も行われているんですが、この日用品費の流用というんですか、私たち業務横領ということで問題にしましたけれども、それでは、この問題の決着というんですか、いつごろ明らかになるんですか。
  11. 飛田清弘

    説明員飛田清弘君) 捜査決着がいつごろ明らかになるかとお尋ねいただきましても、いつごろであろうということはちょっと申し上げにくいかと思います。  特に本件につきましては、ただいま御指摘がございましたように、警察から送致になった業務横領事件ばかりでなく、同じ牧山というこの都病院理事長の方でございますが、この方を相手に、東京地方検察庁告訴告発が三本出ております。一本は、この前の決算委員会で御質問がございました、牧山氏外一名を相手取った背任罪という告発が昨年の九月に東京地検に出されておりますが、それに引き続きまして、本年に入りましても三月十七日に、やはりこの牧山氏外一名に対しまして傷害及び暴行という事件告訴になっておりますし、さらに同じ日に、牧山氏外三名に対しまして、所得税法違反という事実で告発もなされております。これらは、その八王子事件をも含めましてこの都病院経営関係あるような事件のように思われるのでございまして、これらを切り離して一つ一つ捜査が終わったということで処理はなかなかできないわけでございまして、相互に関連あるところもございましょうし、経営自体からいろいろな問題が出てきているのかもしれませんし、その辺のところはその基礎捜査も含めまして十分幅広い調べをした上でなければ処分が決しがたいような、そういう状態の事件であろうと思います。  そういうふうな状況でございますから、いま東京地方検察庁は、告発があった事件につきましては特捜部で調べておりますし、それからこの業務横領の件につきましては八王子で調べておりますけれども、将来それが根元の方で関係があることになれば一括して処理することもございましょうし、また、関係がそれほど強くないということであれば個別に処理することもございましょうけれども、それらも含めまして十分捜査を遂げないと、いつごろ処理が終わるかということもなかなか言いにくい、こういう状況でございます。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 わかりました。きょうのこの委員会で、私の新しくつかむことができました事実等についていろいろ申し上げますから、やはりこの問題は早急に捜査をまとめて問題の処理に当たらないと、捜査中に次々と新しい詐欺まがい事件が発生していくというふうな心配もありますので、できるだけ早急にいまいろいろ告発されている問題も含めて捜査を終了して、はっきりとした結論を出していただくことを私はまず要望をしておきます。それで、まことに申しわけありませんが、ずっときょう私がいろいろな問題についてここで詰めていきますので、それをひとつ聞いていただいて、最終的にまた所見など伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。  そこで、いまも申し上げましたけれども、この浩徳会都病院という医療法人責任者理事たちが、宗教法人事業を通して詐欺まがい行為を繰り返していることについてこれから具体的に申し上げて、大臣なり厚生省にその所見を伺ってまいりたいと思います。たくさんあるんですが、まず二つ申します。  その一つは、昨年十月、牧山理事長の腹心である医療法人社団病院理事経理部長である山本郁夫氏も立ち会って、岡山市のA氏に対し新宗教法人東善光寺設立を依頼して、牧山理事長岡山市のA氏に対して設立に関していろいろな約束をしています。ところが牧山氏は北海道の札幌の霊園事業に失敗をし、また、岡山県当局もいろいろ事情調査された結果と思いますが、昨年十月二十九日に岡山における宗教法人東善光寺設立申請が受理をされなかったわけです。このためにA氏は東善光寺設立の準備のために牧山氏からいろいろ依頼されてその仕事をしておったわけですが、その費用は千数百万円を要し、また、牧山一昌氏が約束した金員を含めると五、六千万円にも上る被害をこうむったという状況にあるようです。そしてまたこの人は、東善光寺設立されるということで地元岡山市の中でいろいろ活動したために、設立されなかったことによっていろいろな人の恨みを買い信用も失ったということで、この方は牧山氏に対して、私はここに手紙も持っておりますけれども、二月二十四日のこの手紙ですが、いろいろあなたにお会いしようと思ったけれども居留守を使って少しも会えないと、今後、返答のないときは、民法刑法の両法に訴える手続をとりますという通告もしているわけなんです。この人も、宗教法人東善光寺設立する、都病院牧山理事長がそういうことをやるということの中で大変な迷惑をこうむっている。しかも、五、六千万円というお金を損失したんではないかという状況の方がここに一人おります。  それからまた、北海道不動産業者の一人ですが、この方も、北海道霊園事業を進めるについて牧山一昌氏に土地を売りました。それで代金都病院とそれから鈴木事業所、これは霊園事業を進める事業所なんですが、そこからその土地代金手形でもらって、最初のうちはこれが落ちていたので、約一億数千万円はその土地代金手形で落とすことができたんですが、その後、牧山氏から出る、都病院から出る手形が全部不渡りというふうなことになってしまって、それで結局、不渡り手形を落とすために自分の金を出して不渡りになることを防がなければならなかったという事態に陥っていきました。最終的に牧山一昌氏に売った土地を抵当につけましたけれども、とてもその全額は回収できないということになって、土地を売って逆に数億円にも上る損失をこうむったという方がここにあるわけです。  このようにいま二つの例だけを申し上げましたけれども医療法人信用というものを背景にして、霊園事業やあるいはまた宗教法人設立するという事柄の中で、依然としてこういうふうな詐欺行為というものが現在も次々と発覚をしてきている、こういうことなんですが、一体厚生省として、また大臣として、こういうことをどのように思われますか。その点についてひとつお伺いします。
  13. 大谷藤郎

    政府委員大谷藤郎君) 先生の御指摘のような件につきましては、厚生省といたしまして事実関係把握をいたしてはおりませんが、もし、そのようなことが事実であるとすれば、まことに遺憾なことと存じます。
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、私は前からも言っているんですが、こうしたことは、詐欺まがいのことをやっているということの以前に、医療法人責任者理事医療法人というものを背景にして霊園事業宗教法人づくりなど、そういうふうなことを次々と手がけていって、そしてそこでいろんな人 に迷惑をかけ、金品の損害を与え、あるいは詐欺的なことをやっていると、こういうことになっているんですね。だから、これは明らかに医療法人業務でないことをやって、しかも、その上で刑法に触れるような問題を起こしているということですから、これはもう文句なくこの医療法人医療法四十二条ですか、そうしたものに違反をしている、違法であるというふうにはっきりと言えると思うんですが、この点についてはいかが思われますか。
  15. 大谷藤郎

    政府委員大谷藤郎君) 宗教法人の事実につきましては、私どもとしてもできる限りその事実を把握したいと存じますが、現在のところ把握いたしておりませんので、まことに残念に存じます。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、残念に存じますということじゃなくて、いま私が申し上げましたようなことはこれは事実なんですよ。国会の場ですから私は事実でないことは言いませんよ。だから、そういうことを医療法人がやっているということについて、医療法から見て違法ではないかと言りているんですよ。やったことが刑法に触れるとか民法に触れるとかいう以前に、そういうことを医療法人が次々とやりていくということについて違法ではないかと、こう言っているんです。
  17. 大谷藤郎

    政府委員大谷藤郎君) 医療法人自身がそういうことをやっているといたしますれば、これは明らかに違反しているわけでございますが、この間の事実関係につきましては、もう少し把握をいたさなければならないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、事実関係把握といったって、私なまぬるいと思うんですよね。この問題はもう一年以上もかかって国会の中で、社労委員会予算委員会決算委員会いろんなところでこの問題を論議しておるのであって、私はいまの答弁ではこれ納得できません。  それでは、さらに具体的な問題を申し上げます。  あなた方がそのような形で、そういう答弁でこの委員会そのものを切り抜けようとする、そういうことはできないという問題を申し上げてみたいと思うんですが、それでは文化庁、お越しになっていると思いますが、文化庁お尋ねをいたします。  ごく最近の一月十五日に、医療法人社団浩徳会都病院牧山理事長岡山市の一茶堂神仏具製作所からお寺に使う仏具を購入している。その製作所東善光寺牧山氏に百一万二千五百円という請求書を出している。一月十五日にこういうふうにお寺に必要な仏具を購入しているんですが、東善光寺はその前にすでに岡山県で申請を受理されていないんですよ。にもかかわらずそういうふうなことをずっと行っているんですが、文化庁、この東善光寺というものはいま現存しているんですか。現存しているとすれば、事務所はどこにあって、また、礼拝施設というふうなものがどこにあるか。いま厚生省の方は、東善光寺なる宗教法人というのはよくわかりませんと、こう言っているんですが、文化庁、この東善光寺とはどういうものかここではっきりさせてください。
  19. 大家重夫

    説明員大家重夫君) 東善光寺なる団体は、あるとすれば任意団体であると考えられ、私どもは、そういう団体が、法人格のあるものとしては宗教法人として岡山市にあるものとは思っておりません。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 宗教法人として岡山県に申請をしてそれが受理されなかったんですから、当然それは存在していないんですよ。存在していないんですが、しかし、東善光寺ということで現在まだ活動が、岡山市内仏具を購入するとかいうふうなことが行われているということから、その東善光寺なるものは現存しているんですかとお尋ねしているんです。
  21. 大家重夫

    説明員大家重夫君) 私どもとしましては、岡山県を通して聞きましたところ、先生お話しのとおり、昨年の十月二十九日に宗教法人東善光寺設立申請がなされた。しかしながら、これにつきましては、認証申請があった際に宗教団体のその実態に疑問があったので書類をそのまま却下して返却した。したがって必ずしも定かではないわけですが、ですからいまのところ宗教法人としての法人格を持ったものはない。しかし、その実体が任意団体としてあるかどうか、その点につきましては私ども把握してはいないわけです。調査に限界があると思いますが、地元岡山県を通してなおいまできるだけの調査を行っているところでございます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 それは一日も早く調査をしていただきたいと思うんですね。都病院牧山理事長東善光寺という名前を名乗っていろんな事業を行おうとし、それに伴っていろんな問題が起こっているんですから、早急に、任意団体にしろ東善光寺なるものの実態把握していただきたい、このように要望します。  そこで、いま問題にしました東善光寺設立に絡んで問題が起こっておりますので、これは法務省の方に見解を聞きたいんですが、昨年の九月十七日に先ほどからいろいろ出ております牧山一昌氏と株式会社宗教評論社代表取締役真坂良輔氏といわれる方の間で、岡山における東善光寺設立に関する覚書が交わされています。それによりますと、同宗教法人設立に要する費用が四百万円で、着手金が百万円、中間金が百万円、法人登記日に二百万円の金が牧山一昌氏から真坂氏に渡るという覚書を交換をして、そして東善光寺設立についての活動が行われたのです。御存じのとおり、都病院が倒産して競売に付せられて、そして大変な事態がそこに現にあるにもかかわらず、一方では四百万円というようなお金を使って東善光寺設立活動をやっている。私は、宗教法人設立する手続に四百万円というような多額なお金がなければできないものなのかということについて大変疑義を持つんですが、それはまた別の問題にして……。  そこで伺いたいのはこの真坂氏の行為ですね。これは宗教法人東善光寺認証申請設立事務手続、書類作成についての約束なんですが、こうした法律行為は、原則的には弁護士法第七十二条というもの、「非弁護士法律事務取扱等の禁止」というものに抵触するのではないか。株式会社がこうした法律事務を行い、しかもその金額が四百万円という大変なお金を取得する。そして、それが本来の業務でないところがこうした宗教法人設立という法律事務業務を取り扱う。こういう事柄弁護士法第七十二条に抵触するのじゃないかと私は思うのですが、これについての見解を伺いたいと思います。
  23. 原田明夫

    説明員原田明夫君) お答え申し上げます。  お尋ね弁護士法、特に七十二条の趣旨いかんということでございますので、その点についてお答えさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、弁護士法は、弁護士でない者がみだりに他人法律事務に介入をいたしまして、それによって利益を得るということを防止するために、いわゆる非弁活動というものを禁止する規定を設けておりまして、それが弁護士法七十二条に当たるわけでございます。この弁護士法第七十二条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、かつ業として他人法律事務を行い、また、これを周旋するということを禁止する趣旨のものでございます。換言いたしますと、この弁護士法第七十二条違反が成立するためには、当該行為が、法律事務取り扱い、また、その周旋に当たり、かつ、弁護士でない者が報酬を得る目的でそのような行為を業として行ったということが必要となると解されておるわけでございます。  お尋ねの点につきましては、具体的にどのような行為がなされたのか、また、それが業としてなされたものかというようなことなど、具体的な事実関係が明確になりませんと、直ちにこの弁護士法七十二条違反が成立するかどうかについて申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、いまおっしゃいましたように、業として行っているかどうかわからぬと、業とするということはそのことを繰り返しや っていることだと、こう思うんですが、それではぜひこの場で一遍調査をしてもらいたいんですね。この宗教評論社というふうなところがそうした事務手続に四百万円も金を取るというこのことに大変疑義があるし、そして業として行っているのか行っていないのか、もしここが、そうしたことが本来の業でないものを繰り返し反復してやっていたとすればこれは私は大変だと、こう思うし、問題が、厚生省の方も大変心配をしておられる医療法人都病院とかかわっての東善光寺設立ということであって、検察庁調査をされているその事柄ともかかわってくると、私はこう見ておるんです。常識的にこうしたその手続きに四百万円の金が通常要るんだというなればそれは一つの疑点は晴れますが、多くの人に聞いてもそのような手続に四百万円というお金を要するとはだれもそんなことは信じがたいと、こういうことでもありますし、弁護士法七十二条に抵触するのかしないのかという問題についての調査をお願いしたいと思うんですが、いかがですか。
  25. 飛田清弘

    説明員飛田清弘君) 検察庁が事実関係を調べるのは、調査ではなくて捜査になってしまいます。捜査権の発動をしろと、こういうふうな御趣旨だとすると、捜査権を発動するかしないか、捜査をするかしないかということは本来極秘で行うべきことでございますから、公の場で捜査をするとかしないとか申し上げることは適当でないと思います。  いま御指摘のございましたように、それが告発になっている事件とかかわるものでございますれば、告発事件捜査の過程で出てくると思いますが、弁護士法違反かどうかということについてそれを独自に捜査するかどうかということになりますと、たとえば最高裁判所の判例でもこういうふうなことを言っておりまして、弁護士法違反というのは、弁護士でない者がいろいろなことをやっていろいろな弊害を起こすことを防止するために、私利を図ってみだりに他人の法律事件に介入することを反復するような行為を取り締まれば足りるのであって、同条は、たまたま縁故者が紛争の解決に関与するとか、知人のために好意で弁護士を紹介するとか、社会生活上当然の相互扶助的協力をもって目すべき行為までも取り締まりの対象とするものではないということを最高裁判例ははっきり言っております。つまり、こういうふうに縁故者とか知り合いの者がある特定の人のためにその一つのことだけ法律的なことをやっても直ちに弁護士法違反するのではないよということを最高裁ははっきり言っておるわけでございまして、そういう行為であればまさに合法的に行われるわけでございます。合法的に行われる可能性が非常に強いものを犯罪の疑いを持って、つまり、民間の私的関係で本来合法的に行われているそういうふうなものを犯罪の疑いの目を持って捜査当局がみだりに捜査権を行使して介入するというのもまたなかなかむずかしいところがあるということも御理解をいただきたいと思うのでございます。  そういうふうな意味で、この事件について単独で、これを個別的に取り上げて捜査するかどうかとお尋ねになりますと、それはちょっと申し上げられない、捜査するとも言えないし、しないとも言えないとしか申し上げられないのでございますけれども、もしそれが御指摘のありますように違法な事件とかかわりがあるのでございましたらば、それは当然にその捜査の過程で出てきましょうし、また、この関係で実際に被害者が出ているのでございましたらば、その被害者から告発がなされればこれはもう捜査当局は告発を受けて捜査をしなければならないのでございます。  そういうふうなことであるということをひとつ御理解いただきたいと、こういうふうに思います。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 きょうは、そこの点をいろいろ追及するのが目的ではございませんから、それはまた場を改めて議論をさせていただきます。  ただ、厚生省の方、いまの論議の中でしっかりと押さえておいていただきたいことは、いま都病院が倒産をして、そして競売に二回、三回と付されて、いわば大変な事態の中で、一方ではこういうふうに四百万円というようなお金を使って宗教法人設立をやっている。一体これはどういうことなのか、常識では考えられないことが一方に起こっているという、そういうことの一例としてこれ申し上げているんですから、ひとつ何が問題の本質なのかということを間違わないように。これが七十二条に抵触するかどうかという、それが本質じゃないということをひとつ御理解をいただきたいと思います。  それからまた新しい問題を一つ提起してみたいと思います。  先日、この都病院の労働組合に譲渡された診療報酬債権の件で、私どもはこの場でもいろいろ質問をさしていただいて、厚生省の御助言もいただきながら、皆さんの配慮のおかげで当面の問題は解決して、冒頭大臣お礼を申し上げましたように、非常に喜んでおります。しかし、この問題にかかわって妙な問題が出てきましたので、それについて申し上げてみたいと思います。  それは、昨年の五月三十一日に、医療法人社団浩徳会都病院従業員全員の健康保険料及び延滞金等の滞納金、これは昭和五十六年六月分より五十七年二月分までの分です。この支払いに充てるために、医療法人社団浩徳会都病院会長牧山一昌並びに、これは住所を書いているんですが、東京都東村山市青葉町二ノ三ノ三ノ三一、同じく牧山一昌、この牧山さんが、東京都医業健保組合常務理事の林和子さんから千七百四十七万七千八百二十八円也を借用したということなんです。つまり、都病院理事会長である牧山氏が従業員の健康保険料を滞納して納められないで五十七年の二月分まで滞納して、そして督促を受ける。督促をしたのはだれかというと、このお金を貸した林和子なる常務理事なんですが、その人が最終的にその滞納金と同じ金を貸し与えて、そしてその滞納金の滞納をなくしている。こういうことが事実として判明をしたんですが、この事実を厚生省はつかんでおられますか。
  27. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、そういうことがあったということは正直申しまして知らなかったんですが、先生から御指摘を受けまして直ちに調査をいたしましたら、そういう事実があったということでございます。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 事実があったということは、いま私が申し上げましたことを確認いただいたと、このように受け取ります。  そこで、こんなことは通常起こり得ないことだと考えます。何かこの牧山氏と常務理事の林氏の間に特別なことが、こういうことをしなければならない特別なことがあったのかどうか。あるいはまた、このお金はどのようにして用立てられたのか。一千七百万円というこの滞納金を立てかえるということですね。ここのところはどういうふうにつかんでおられますか。
  29. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども調査をいたしました範囲内だけでございますが、この金はどうも林さん個人のお金のようでございまして、健保組合の方のお金を流用したとか、そういうようなことではなさそうに思われるわけであります。  それから、都病院牧山理事長とそれから林さんとの間に何か特別の関係があるのではないか、こういう御疑念でございますが、私どもとしては、ただ、保険料を納めていない一病院理事長と、それからその従業員が属しております健康保険組合である東京都医業健康保険組合の常務理事関係と、こういうことに解しております。つまり、林さんから話を聞いたところでは、やはり常務理事としての責任と申しますか、立場と申しますか、東京都医業健保への滞納金が一千七百万円余りある、それをそのままにしておくとやはり健康保険組合の円滑な運営上いろいろ支障があるのではないか、こういうことを懸念をされまして、個人的に金を貸してでもその借金を埋めてもらう、こういう挙に出られたようでありまして、事実、その借金によって健康保険組合への千七百万円余りの借金が返済されているのであります。し たがって、私どもとしては、常務理事としての責任の遂行上の行為だったのではないか、こういうような見方をしているわけでございます。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、常務理事としての業務遂行上とった措置が適切であったのかどうか、そのことをここで問いただすことを直接目的としておりませんからそれはそれとしまして、しかし、私の判断では、常務理事としての責任から、あるいは業務遂行上から、個人の金を滞納金の穴を埋めるために貸し与える、それによって円滑な運営ができたというふうなやり方は、決して適切な常務理事の責任の遂行の仕方でない、間違ったやり方だと、私はこうはっきり思います。まあ、それが間違ったということでもってどうするかというのはこれは個々の保険組合のことですから。けれども、私は間違いだと、こう思いますよ。  そこで、御本人がおられないから、なぜ個人の預金まで取り崩して一千七百万円ものお金を立てかえたのかということはあなたの説明だけではわかりませんが、しかし、個人の預金を一千七百万円も取り崩してそれを立てかえたということについて、それでは厚生省としてその裏づけというんですか、確かにどこそこの銀行の何々口座からその日にその必要なお金が引き出されている、こうした事実をつかんでの御発言なんですか。
  31. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 急な話でございましたので、そこまで調べたわけではございません。本人から直接聞いただけの話でございます。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 疑いを絶えず持つというのはよくないと思いますが、この牧山さんにかかわる問題は、絶えず疑いの目で見ていかなければならぬという状態に私はなっています。だから、林さんが、私の預金を取り崩して滞納金の穴埋めをしたんですと、こうおっしゃられても素直に納得できません。私は、あってはならないことですけれども、健保組合の金が流用されたのではないかという疑いを持っているんです。だから、この疑いを晴らすためには、個人の預金から確実にそのお金が引き出されたという裏づけをやってもらわなければこの疑いは晴れないわけです。絶対にその流用はない、こういうふうに言い切れますか。
  33. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) ただいまの段階でそういう断言はいたしかねます。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 したがって、健保組合の金が流用されたかされていなかったのかという問題について、これは健保組合そのものの経理の調査あるいはまた本人の話を裏づける預金の引き出し、それをはっきりとひとつ厚生省の方で確認をしていただきたいと思うんですが、よろしいですか。
  35. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 個人の貯金を引きおろしたかどうかということについては、御本人の納得を得なければなかなかむずかしいと思いますが、健康保険組合に対しましての調査というのは私どもの権限でできますので、その調査をいたしたいと思います。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 御本人が身のあかしを立てるためにそれはやっぱりはっきりとそこのところは当然私はされるべきだ、こう思うんです。だから、その点も含めて調査をお願いをしておきたい、このように思います。  また、それに関連して、私たちの調べでは、健保組合の取引の口座のある銀行と林さんが自分の私的な預金の口座を持っておられるところが、私たちが調べたら、四つの銀行が全部健保組合の口座もあるし林さんの口座もあるしというふうなことで、だから直接どうだというふうに言いませんけれどもね。何か公私という問題について、明確に常務理事としての責任を行使するということについて疑点があるように思いますので、ひとつ明確にこの問題についての調査をお願いしたいと思います。  そして、いまの問題で念書が入れられているんですね。その千七百万円を借りたことについて念書を牧山氏が林さんに対して入れているんです。この念書を読んでみますと、こういうことが書いてある。   私、医療法人社団浩徳会都病院、会長牧山一昌は、五月三十一日付の貴組合に対する、従業員の健康保険料金及び延滞金等の納入に関する不祥事に対し、貴職に多大なるご迷惑をおかけした事実に対し、ここに深く謝罪し、 次の事項を約定いたします。  一、昭和五十七年五月三十一日現在(昭和五十六年六月分より、同五十七年二月分まで)当法人の従業員の健康保険料金及び延滞金等の滞納金 合計 一七、四七七、八二八円也であることを確認した。  一、右全額を個人、林和子殿より借用し、保険料金の滞納分に充当した。  一、右借用した金額の返済については、来る六月十五日に金五、〇〇〇、〇〇〇円をご返済し、残金一二、四七七、八二八円也については、東善光寺所有地(札幌市南区中ノ沢一七六四ノ一外四七筆八四、〇〇〇坪)の売却次第に金額を一括ご返済することをここに約定いたします。  一、右ご返済出来ない場合はいかなる処置をなされてもなんら異議申立をいたしません。    以上を確約し後日のために連名で念書を差入れます。 このような念書を入れておられるんですね。この念書についても厚生省御存じですね。
  37. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) いただいております。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで厚生省、この念書によると、六月十五日に五百万円返済する、こういうことになっているんですが、これは返済されていますか。
  39. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 返済されていないと聞いております。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 念書によれば、「ご返済出来ない場合はいかなる処置をなされてもなんら異議申立をいたしません。」、こうなっているんですが、それでは林さんは、この念書にあるように、東善光寺土地売却次第と、こうなっているんですが、これは売れていないんですが、しかし常識では、こういう場合に当然抵当権を設定して自分の債権というものを明らかにすべきだと思うんですが、そういうことはされておりますか。
  41. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 抵当権の設定は行われていないと聞いております。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、結局のところこれは返らないと、こう見るんですね。牧山さんがこの約束をきちっと実行するということは恐らくできない現在の状態にあると思うんです。  だから、初めに戻りますが、もともと林さんは、その都病院の現状はよく御存じだったはずです。そしてまた、いかに常務理事といえ、一千七百万円という大金を私的に貸すということは、絶対にそれが返ってくるという、いろんな意味での保証を得られなければ常識では貸せないんですが、しかし、自分のお金をこうした念書一本で貸しておられる。個人のお金ですから当然利子を請求しても構わぬと思うんですが、それは何もされていないわけで、私はこの問題について、林さんが常務理事としてやってはならないことをしたというその責任の問題が一つあるけれども、しかし、ここにはっきりしていることは、林さんは牧山さんの被害者になっているということですね、ここで。お金は返ってこないですよ、これ。こういうことがその後の事実でも判明しているということなんですね。  厚生大臣、こういうことが起こっている。これは一つの事例で、こういうふうに挙げるとこれはたくさんあるんじゃないかと思うんですが、どういうふうにお考えになりますか、この一つの問題をとりましても。
  43. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いま、本岡さんのお話を聞いておりまして、これは牧山さんというのは大変な人だなあとつくづく思ったところであります。先生も大変よくお調べになっておられるようでございますし、国会の場でこうした事件を取り上げての御発言でございますから、先生の御指摘は相当の意味を持っているお話だと思って傾聴しておったところでございます。  実は、正直申しまして私の方はまだ先生ほど、事実関係をよくつかんでいないのが残念でござい ますが、いまのお話のようなことで、たとえば健保組合の林さんというのに金を借りておったというような話になりますと、やっぱりそれは医療法人理事長としてはふさわしくない行為ではないかと私は率直に思うわけでございます。牧山理事長が、病院は破産に追い込み、実質上の経営責任は放棄している。この前もお話しがありまして、組合の方々に給料が払えないというような話もございました。そういったようなことからすると、これは経営者としては非常にまずいやり方だろうと、私はこう思うわけでございまして、その辺はやはりその責めを負ってもらわなければならないものではないかと思うんです。  ただ、健康保険組合との話は、事実をもう少し調べてみなければあれですが、お話を聞いたところでは、常務理事さんとの間の個人の間の契約になっている。個人との間の契約になっておりますから、個人でいろいろな金銭の貸借をするということになりますと、あくまでも個人間の話でありますから、どういう契約をしてもよろしかろうという話になるわけでございまして、ただそれが、その林さんというのが健康保険組合の常務理事をしておられると、こういうことで、健康保険組合という公的なものに累を及ぼすようなことがあってはこれはならないだろうとこう思いますので、その辺はさらに精査をしてみなければならない問題ではないか、こういうふうに思っているところでございます。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまの大臣の御答弁でもういいんですけれども、ただ、いま大臣がこれは個人の問題であろうからとおっしゃいました。確かに個人対個人の貸借関係になっています。しかし、その念書を先ほどわざわざ読みましたけれども、個人対個人の貸借関係なら、何月何日にこれだけのものをお返ししますということでいいんでしょう。いついつまでに返してくださいと。なぜわざわざここに、「健康保険料金及び延滞金等の納入に関する不祥事に対し、貴職に多大なるご迷惑をおかけした事実に対し、ここに深く謝罪し、次の事項を約定いたします。」と、こうやっておるんですよ。だから、これはちょっと私、個人と個人の名前になっていますけれども、はっきりここに、健康保険料金及び滞納金の納入について、貴職にひとつ力をかしてくれと。しかもこの中に、私の借りるお金は滞納金あるいは延滞金でありますよということでね。しかも、その返済については、いま問題になっております東善光寺の持っておる、霊園をやろうとした土地を売って云々とかということで、まあ言ってみれば両者が、それぞれは私的な形かもしれませんが、しかし、はっきりとお互いに医療法人社団浩徳会都病院従業員全員の健康保険料金及び延滞金等の滞納金の支払いというきちっとした公的なものに私的な関係で充当したと、こうなっておるんですからね。  ここは厚生大臣の方も、個人の問題だということではなくて、これからこうした問題について、個人がこう肩がわりしていって、それで具体的に起こっている問題を糊塗していくというようなことになれば、これは大変ですよね、実際絶えずこういうことが行われたら。だから、厚生省がそれは個人だからといって逃げたんでは、これは厚生省としてはぐあい悪いとこう思いますので、くどいようですがもう一度この問題に対する、解明に対するお答えをいただきたい。
  45. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先生指摘のことは、私もよくわかるんです。健康保険料の支払いをしなければならないというのは公的な債務でありますから、その債務を完済するために懈怠があった、こういうことでございますから、それは私はやはり公的な債務として考えていかなければならないものだろうと思うんです。  ただ、私が先ほど私人間の話だと申したのは、常務理事の林某なる人が牧山さんとの間で金銭の貸借を別にいたしました、その貸借関係については、やはりこれは一応私的な関係というふうに私は受け取れるのではないだろうか。健康保険組合に対する債権債務の関係は、まさに公的なものでありましょう。だから、その辺の関係をどう考えていくかというのは、やはりもう少しよく調べてみないとわからない点もあるだろうと、こう思いまして、いまのような御答弁を申し上げたわけでございます。  まあこうした形で借金を方々にしている、先ほどもお話しがございました宗教法人まがいのものまでやっているというような話とか、何か弁護士法の七十二条にも違反しかねまじいような話もあるとかいろんなことがあって、これはあっちもこっちも金を借りまくって、あっちからもこっちからも持ってきておると、こういうような感じを非常に受けたわけでございまして、むしろそういった形で医療法人などを経営されるということは非常に困る話ではないかと、私はこう思っておるところであります。特に、医療法人北海道土地を売買してどうだこうだということ自体は、私は、医療法人の本質論から見ましてきわめて不適切な話である、これは何とかやっぱり処置をしなければならないものだろうと、こういうふうに考えておるところでございます。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も大臣のおっしゃるとおりの考え方をしているんですが、そういう状況の中でこの都病院では牧山理事長以下理事が退任をして、それでかわって下山松蔵氏などの何人かが今度新しく理事会を構成をするというふうなことも、これは三月から四月にかけていままた起こり始めているんですね。それも通常の状態で起こってくるなればいいんですが、東京都杉並区浜田山に樺島病院という総合病院があるんです。それで、そこの院長でありオーナーである能勢勇一というお医者さんがことしの二月に亡くなられて、この病院がいろんな内部の事情もあって売りに出たんです。それで、その売りに出た病院に対して、先ほど言いましたように牧山理事長以下の理事にかわって新しく都病院理事になろうとする方が二人そこに行って、今度私たち都病院を買い取ることになりました、それでこちらの病院もとこう思っていますので、できれば私たちの法人の本部を樺島病院の方に移したい、そして、その樺島病院の方からも何人かひとつ理事として入ってもらったらどうだろうかというような話を持っていった。樺島病院の方では、どうも話がうま過ぎるということでいろいろ調べてみたんですよね、都病院実態を。そうすると、どうもこれは問題があるということで、その断りを内容証明でもって樺島病院に来られた方のところへ出したというんですね。ところが、二人来たそのうちの一人は、そんなところにその人はおりませんといって内容証明が返ってくるというふうなことがいまここに起こっています。  そして、その都病院経営について、いま牧山氏から下山松蔵さんといわれる方のところへ引き受けてもらう、引き渡していくというふうなことがいま起こりつつあるんですね。そして、その都病院の運営の問題と二十九億に上る負債の整理を下山さんが行うということになっていますし、また、都病院の未払い経費、職員の賃金とか一時金とか退職金とか、一億五千五百三十一万円を三回に分けてこの下山松蔵さんが牧山一昌氏に渡すというふうなこともその中で行われているんですね。その一方で病院が競売に付されているというような事態の中で次々と起こっているんですね。  いま私の言いました、この都病院で現在の牧山理事長以下が退任して、かわって新しい理事が出てくるというふうなことは、どうですか、厚生省の方でつかんでおられますか。
  47. 大谷藤郎

    政府委員大谷藤郎君) ただいま先生からその事実を伺いましたが、私どもとしてはいまだ把握をいたしておらないわけでございます。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあ事実をつかんでおられないなら、早急にこの事実関係をひとつつかんでおいていただきたいと思います。  都病院自身は競売に現在付されているわけなんですよね。そして、その競売の価格というのは約九億七千万円で一方競売をされているんですよね。にもかかわらず、このいまの理事会をかわって都病院なり負債を引き受けようとされておる下山松蔵さんは、九億七千万円で競売に付している ものに対して、一方では約三十億の負債の処理を引き受けると、こうおっしゃっているんですよね。こんな話を聞くと、これまた何か引き取るとかということの間に不祥事件のようなものが介在するのではないかという疑義が起こるんですよ。  だから、もうどうも猶予がならぬという気が私はいたします。どうですか。これ早速この問題についての調査をお願いしたいと思うんですが、いかがですか。
  49. 大谷藤郎

    政府委員大谷藤郎君) 都を通じまして、できる限り事実関係把握に努力いたしたいと存じます。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあ約一時間ほどにわたってあれこれあれこれと申し上げました。これもやはり私は林厚生大臣に腹を固めていただくために、もうあれこれと事実関係を申し上げたようなわけです。私たちのつかんでいる事実関係のうちの五分の一程度をいま申し上げたようなわけで、まだ御満足いただけないようでしたらまだまだ申し上げてもいいんですが、十分御理解をいただいたとこう思いますので、もうこれ以上言いません。また、幸い医療法の一部改正の問題も厚生省の方で出されてその審議もありますので、またそういうものに絡んで論議もさしていただきたいと思います。  それで、もう再々大臣の方もお考えを述べていただいておりますので、くどいようで申しわけありませんが、やはり最後の締めくくりとしてお聞きをしておきます。  要するに、いま言いましたように、被害が次々と広がって、これから何が起こるかわからぬというふうな状況でございますから、これ以上、もう少し調査をしてみなければとかいうふうなことは許されないのではないかと私は思います。この都病院の問題を論議する当初、厚生省としてはやはりこの理事会の責任者の人事の問題にかかわっても、行政勧告というふうな形ではっきりと態度を示さなければならないだろうというふうな意味合いのことをおっしゃって、そしてずっと今日まで来たわけで、事態は何ら解決をしていないし、改善もされていないという状況ですから、初めに申し上げましたように、この問題に対する厚生省としての措置についてのお約束を明確に聞かしていただきたい。それで厚生省への質問を終わりたいと思います。
  51. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 本岡先生からいろいろお話を聞きまして、これ以上の話と、こういうふうなお話もございましたが、私はいま先生が御指摘になられただけでも十分事態は深刻であるということを受けとめておるところでございまして、牧山理事長病院を破産に追い込み、実質的に経営上の責任を放棄している。のみならず、いまお話しのように、宗教法人まがいのところまでいろいろやって、土地転がしその他のようなことまでやっている、また、健保組合の常務理事さんから個人的かどうかわかりませんが相当な金を借りてやっていると、まあ大変な方だと思いますし、お話しがありましたように、またほかの病院に働きかけて金を何とか工面しようと、こういうふうなことをやっておられるということ、なかなかこれは大変なことだなと、こう思っているところでありますし、患者に対する医療の確保をしなければならないというのが医療法人の本来的な任務でありますから、そういったことに憂き身をやつしておるということはきわめて私は遺憾なことだと思うんです。  適正な医療の確保を図るという観点から、東京都が監督官庁でございますから、東京都を通じまして経営の正常化、役員の刷新などの行政勧告をするように検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、警察、検察の方もおつき合いを願ったんですが、いま厚生大臣にお約束いただきましたように、行政勧告の問題も検討するということで、まあ検討するということはやっていただくということに私は理解して質問は終わるんですが、警察あるいは検察の皆さんもこれは法の番人として、いまいろいろ告発されているこの問題等々についてひとつ時期を失しないように対応をしていただきたい、こう思うんですが、ひとつそれについてそれぞれ最後一言いただいてこの問題は終わりたいと思います。
  53. 森廣英一

    説明員森廣英一君) 警察といたしましては、すでに事件送致いたしておりますし、他の事件につきましては検察庁告訴がなされておるということでございますので、関心は持っておりますけれども、その推移を関心を持ってこれからも見てまいりたいと思っております。
  54. 飛田清弘

    説明員飛田清弘君) 検察庁といたしましては、いま捜査中でございますその事件について慎重に、かつ、できるだけ早いように、これは早くやれと言われても、いろいろな事件を持っております関係上いろんなことがございますから、時期につきましては何とも申し上げられませんけれども、できる限り早く事件捜査するというのが本来の役目でございますので、その役目を十分に果たしたいと、こういうふうに考えております。
  55. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、残されました時間、老人保健法の施行に伴う地方自治体の上乗せと言われている内容あるいはまた老人診療報酬の改定、この二つの問題について若干お伺いをいたします。  まず、上乗せと言われている問題でございます。  老人保健法が二月一日からスタートをいたしました。この日から、十年間無料でありました七十歳以上のお年寄りも一部負担金を医療機関の窓口で支払うことになりました。この一部負担金の導入をめぐっては法案審議の過程でも論議の焦点になっております。そういう中での実施ということで、地方自治体が自治体の単独事業で無料化を実施するかどうかということが注目されていました。衆議院の社労委員会でもこの問題についての論議がされておりますし、私たち調査でも、千葉県の習志野市、長崎県の西彼杵郡香焼町あるいは岩手県の沢内村、さらに大阪府の一部等では引き続いて無料化を実施をしているというふうにつかんでいます。  そこで、厚生省として、現在地方単独事業としてこの無料化を引き続いて行っているところをどのように実態把握しておられますか、教えていただきたい。
  56. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 老人保健法施行後の地方単独事業状況でございますが、まず、都道府県段階での状況を申し上げますと、従来から東京、大阪を初め多くの県で六十五歳あるいは六十七歳からというような、年齢を引ぎ下げた形での無料化単独事業をやっておったわけでございますけれども、老人保健法施行後におきましては、いま申し上げました東京、大阪、北海道その他で、二十五の都道府県におきまして、年齢引き下げの単独事業を続けております。ただその場合には、一部負担につきましては原則として老人保健法と同様の一部負担を導入した形で年齢引き下げの事業を続けるという形になっております。ただその場合にも、正確に申し上げますと、重度障害者等に対しましては老人保健法に見合う一部負担は取らないという形にしているところが多いようでございますし、それから大阪府におきましては、それとは別にさらに一部負担の免除の対象を少し広げているというようなかっこうの事業をやることにしております。  それから、次に市町村段階での単独事業状況を申し上げますと、北海道の芦別市、赤平市、歌志内市その他で十八の市町村、それから岩手県では沢内村、一戸町の二町村、それから秋田県は秋田市、茨城県は古河市その他で三市町村、千葉県の習志野市、山梨県の甲府市、長野県の茅野市、原村、和歌山県の湯浅町、串本町、長崎県の香焼町、そういった三十一の市町村で七十歳以上についても従来どおり無料化を続けるという形の単独事業を行う状況にございます。
  57. 本岡昭次

    本岡昭次君 県段階で一部負担を導入した形で六十五歳以上の単独の上乗せ——上乗せというふうに言わしていただきますが、があるという実態と、三十一の市町村で七十歳以上についての無料 化、一部負担というものがない無料化ということがいま行われているというお答えをいただきました。  そこで、二月一日にこの老人保健法がスタートをして、全国三千三百の地方自治体全体の中では、いま御報告のありましたような状況実態が地方単独事業としてあるのですが、これについて政府の態度なり方針というものはどういうふうに持っておられるんですか。
  58. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 老人保健法の中に、「地方公共団体は、この法律の趣旨を尊重し、」「適切な施策を実施しなければならない」という規定があるわけでございますが、そういった規定の趣旨に照らしましても、従来どおり都道府県なり市町村が無料化という形の単独事業を続けられることは、私どもの立場から見ますと決して好ましいことではない、適切な施策ではないという考え方を持っておりまして、そういった考え方に基づきまして、従来の単独事業の見直しを私どもからはお願いをしておったわけでございます。  今後ともそういった考え方で、やはり引き続き従来同様単独事業を進められる市町村につきましては私どもとしてはお願いをしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  59. 本岡昭次

    本岡昭次君 老人保健法の趣旨を尊重しとおっしゃいましたですが、問題は、やはりいまあなたがおっしゃったように「趣旨を尊重し」というところにかかってくると思いますね。だから、適切であるのかないのかということも、その趣旨そのものを具体的に尊重した形になっておればこれは適切であり、そうでなければ不適切だということになると思うんですよね。  そうすると、一体この趣旨というのはどういうふうに考えていったらいいんですか、老人保健法の趣旨
  60. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 老人保健法の趣旨といいますか、ねらいというものは、法案審議のときに十分御審議をいただいたわけでございますけれども一つがやはり壮年期からの予防保健事業を総合的に推進して健康な老人づくりを目指すということでございますし、もう一つが、これからも老人医療費というのは相当ふえていくだろう、そういった老人医療費というものを国民みんなで公平に負担をしていこうということでございまして、そういった費用負担の公平という考え方の中に老人の方自身にもわずかな一部負担をお願いしたいということがあるわけでございます。それをやはり国の考え方、法律の考え方として全都道府県、全市町村において同じような考え方で老人医療費というものを負担をしていこうということでございますので、法律ができた後、なおかつ特定の市町村あるいは特定の都道府県において、自分のところだけは一部負担は取らないというようなことは、やはりこの法律の趣旨に照らしまして、私どもとしては適当とは言えないというふうに思っておるわけでございます。
  61. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあ負担の公平化という問題は、抽象的に言えばそれでいいんですが、しかし負担の公平化というものが出てきたのは、やはり乱診乱療によって老人医療費に非常にたくさんのお金がかかるようになったというところから負担の公平化というものが一つの原則のように出てきたと私は理解をしているんです。だから問題は、乱診乱療、これに歯どめをかければ——負担の公平化というのは、その言葉自身の持っている意味としてそれは正しいし、意義があると思うんですが、しかしそれが独立しているんじゃなくて、それが導き出されるその大もとは乱診乱療、それが原因となって老人医療に非常にたくさんのお金がかかるということであろうと私は思んですよ。だから問題は、その老人医療お金がたくさんかからないということが現に実態としてあるかどうかということが、私は、理屈じゃなくて実態の問題としての論議が必要ではないかと、こう思うんですよね。だから、いま多くの単独事業をやっているところが、いまあなたのおっしゃったように、健康な老人づくりという最も基本になることに対してどういうことをやっているのかということですよね。  それと、それでは乱診乱療というふうなことがあるのかないのか。あるいはまた、ほかと比べて医療費そのものが非常に高額な形で保険そのものを圧迫するような状態になっているのか。むしろ上乗せをしている、単独事業をやっているところが改善をされていっているのかどうかという、そこのところの方が本当は厚生省が見ていかなければならぬところじゃないんですか。一つは健康な老人づくりを本当にそれを自治体がやっているのかどうかということと、乱診乱療を防止して、そしてできるだけ医療費がかからないように努力しているかどうか。それが私は厚生省が押さえるべきポイントであろう、こう思うんですがね。その点いかがですか。
  62. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) おっしゃるとおりだと思います。  それで、いま申し上げました、今後とも単独事業で無料化を続けていこうとしている市町村でどういった保健事業をやっているかということでございますけれども、私ども率直に申し上げまして、三十一の市町村で無料化をやろうとしているわけでございますけれども、私は、沢内村以外はそういった保健事業というものはほとんど老人保健法が考えておるような形では現在はまだやっておられないと思います。沢内村は確かに二十年も前からこういったことに力を入れてきておられまして、相当成果を上げてきておられます。老人の一人当たりの医療費というものも、岩手県のその他の市町村、それから全国的に比べましてもかなり低いという実績を上げられていると思います。その他の市町村は、必ずしもそういったところまでまだ来ていない、こう思います。  それからもう一つ、一部負担をお願いしました趣旨の中に、私どもやはり乱診乱療に歯どめをかける、行き過ぎた受診について自制をしていただくとか、あるいは御注意をしていただく、これが一部負担をお願いする一つのねらいである、趣旨であるということを申し上げてきたわけですけれども、確かにそういうねらいを持っております。しかし、それは、医療費が低ければもうその必要はないんだということではございませんで、やはりこれからますます老人人口の増加に伴いまして医療費がふえていく、そういった中で医療費の増加というものは、必要な医療はもちろん確保していかなければなりませんが、できるだけ医療費の増加というものは適正なものに抑えていくという考え方は必要だろうと思います。そういったことから、全部の市町村で同じような一部負担をお願いしようということにしたわけでございまして、やはりそういった考え方は、各市町村、各都道府県で同じような扱いにしなければいけないのではないかというふうに思うわけでございます。
  63. 本岡昭次

    本岡昭次君 国は、法律ができたから全体として一律でなければならぬという当然厚生省としての筋論を展開される。それはそれで厚生省の立場はあろうと思います。しかし、地方自治体は地方自治体としての、先ほど岩手県の沢内村の例をとられましたけれども、いままで独自の努力を積み重ねてきたところがあって、厚生省厚生省なりにその評価をされる具体的な中身を持っています。とすれば、一方では全国一つの法律のもとにという枠があったとしても、一方ではいままでの実態の中で実績を上げている。実績を上げているということは、他の市町村もこの岩手県の択内村に学んで、またその経験からいろいろ教えてもらって、自治体としての取り組みによって老人保健法の意図するその趣旨というものを実施していくことは不可能でない、こういうことを私は考えるんです。  だから、法律ができたんだから全国一律にという形じゃなくって、そうした地方自治体がその趣旨に沿ってその趣旨を具体的に実現するための方途として単独事業というふうなものが進められることについて、国が大きく制約を加えるべきでないという、私はそういう基本的な考え方をやはり持つんですが、厚生大臣、いかがでございますか。
  64. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 老人保健法にわざわざ規定がございまして、「地方公共団体は、この法律の趣旨を尊重し、」「適切な施策を実施しなければならない。」という規定があるわけなんです。ですから、地方公共団体はそれぞれの立場においていまの趣旨を踏まえてやっていただくことがわれわれとしては望ましいことである、こう考えておるところでありまして、いま沢内村のお話が出まして、沢内村は沢内村で独自の形でこの趣旨を十分に尊重しながらやっておられるものだと私は思っておるところであります。  本来、福祉の問題というのは、地方自治法にもございますように、地方公共団体の最も考えなければならない施策の一つでございますから、法律の趣旨、この老人保健法の趣旨と地方自治法の趣旨とを十分に照らしてやっていくということが私は非常に望ましいことではないか、こう思っておるところであります。ただ、私の方がお願いしておりますのは、択内村の例がいいからほかにも全部いいんだと、こういうことにはならないと思いますし、老人保健法でやっぱり全国一律にやっていただくということが望ましいことだろうと思っているんです。  一つには、老人の一部負担と、こういうことを申しましたけれども、老人に一部負担をしていただくということになっておりますが、私、考えますのに、人間本来は健康でなければならないんですね。健康が常態なのでありまして、病気になっているのは異常な状態である。異常な状態になったときに、まず家庭でいろいろと療養をする。病院に行って診てもらうというのは、それではやっぱりいかぬときに行くわけでありまして、それには相当の金がかかる。コストがかかる。やっぱり、その中でコストがかかるということを意識をしてもらわなければならないんじゃないか。そういったことで私はこの一部負担というものが入ってきているんだろうと、こう思います。ねらいは乱診乱療を抑えることであるということでありますし、さらには、やはり本当に健康というものは何かと。健康というのはお互い個人個人がやっぱりまずは基本的に考えていくべきことだ、こういう私は精神がこの中に入っているんだろう、こう思っていますので、御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  65. 本岡昭次

    本岡昭次君 考えることは私も同じなんですが、ただその方法手段が、一部負担という方法をとってそういう意識を持たせるか、あるいはそのほかでもやれるんじゃないかというところではないかと思うんですね。だから、ここでこの議論を続けても、現に法律があってというところに依拠される限り、これはもう平行線になりますが、やはりその一部負担をしなくとも、乱診乱療を防ぎ、そして老人の健康づくりというものを地域社会がつくり上げていく、地方自治体が本気になってそのことを取り上げていくということが進んでいけば、私は一部負担という、金によって制約を加えてそのことを制度的に抑制するということにしなくてもいい、こう思うんですが、これは私の意見として申し上げておきます。  そこで、それに関連しまして、五十七年度から老人保健法実施に伴って老人保健臨時財政調整補助金というものが計上されているんですが、これは地方にどのような基準で配分をされるお考えですか。
  66. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) この老人保健臨時財政調整補助金といいますのは、老人保健法の実施に伴いまして市町村の一般財源での負担が従来よりもふえるわけでございます。大ざっぱに申し上げまして、従来は大体三%程度の一般財源による市町村の負担であったものが五%ぐらいになるわけでございますが、市町村によってはそういった負担増が相当大きな額になる市町村がある。それからもう一つは、市町村の財政力によってはそれが非常にきついということも考えられるということがございまして、その総体としては大変わずかな金額でございます。五十七年度は二月実施ということで一カ月分でございますので、まあわずか二億八千万というささやかな金額でございますが、そういった財政的に非常に苦しい市町村、法律どおり実施することによって財政が非常に負担が重くなってきつい市町村に対して、わずかながら御援助申し上げたいという趣旨の補助金でございます。  そういったことから、実際に具体的にどんな要件で補助するかといいますと、四つのことを考えているわけでございまして、一つが国民健康保険事業における高額療養費のシェアといいますか支給割合がその県の平均に比べて相当高いということが一つ。それから二番目に、医療の受給対象者が、従来の老人福祉法当時に比べまして、かなり老人保健法の実施によって支給対象者がふえるということが二つ。それから三番目に、その市町村において国民健康保険における医療費の適正化対策というものが十分行われているかどうか。たとえば医療費のお知らせ、通知事業といったような医療費の適正化事業というものが十分行われているということが三番目。それから第四に、老人保健法による医療の実施が法律の趣旨に即して適正に行われているということが四番目。以上の四つの要件を満たしている市町村で、なおかつ、たとえば財政力指数というものが非常に小さい、具体的には大体一以下というような市町村なり特別区を対象にこの補助金というものを支給をするということにしているわけでございます。
  67. 本岡昭次

    本岡昭次君 五十八年度は二十二億円という予算が組まれているようなんですが、そこで先ほど論議いたしました自治体で無料化ということを単独事業として実施しているところですね。そういうところは、四番目に言われた新しい老人保健制度の趣旨に沿った運営を行っていないということになって、この支給要件から除外されるということになるんですか。
  68. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) まあ、端的に言いましてそういうことでございまして、法律の趣旨に即してきちんと医療をやっていただいているかどうかといいますと、私どもの目から見ますと、やはりどうも必ずしもそうは言えないということと、それからもう一つは、いま申し上げましたように、この補助金の趣旨というのは、やはり財政的に苦しい市町村、本当にやりたくてもできない、いろんな事業ができない、そういった市町村をささやかながら御援助申し上げるという趣旨の補助金でございまして、大体がそういった単独事業をやっておられるところは財政的に余裕のあるところでないと実際問題としてできません。そういった観点から事実上単独事業をおやりになっているところは除外されるということでございます。
  69. 本岡昭次

    本岡昭次君 実態的に除外されるということであれば納得するんですが、制裁的にやっていくということについては私はどうしても納得できないんですよね。法の趣旨に沿っているか沿っていないかという問題を、ただ国の法律どおりにやったかどうかということだけに短絡的に見ないで、地方自治体が本当に厚生省が言っているように、健康な老人づくり、四十歳から挙げて健康な町づくりというものをどう進めて、そして結果として乱診乱療をとめて、そして医療の適正化ということにどう自治体が取り組んでいるかという具体的な中身の問題で判断をしてやる、そこに地方自治体が地方自治体として、本旨に基づいて本当に活用する場があるように私は思えて仕方がないんですね。  だから、いろんな問題で制裁を加えていって、そして地方自治体を金縛りにしない、そして具体的な中身でもって指導をするというふうにやってもらいたいんですよね、具体的な中身で。そうでないと、私は地方自治体がこうしたことで地方自治体の一番中心的にやらなければならない福祉の問題に関して芽が摘み取られてしまう、私はこういう心配をしますので、その点だけはひとつ声を大にして要望しておきたいと思うんですが、ひとつ林大臣に一言いただいて次の問題に入りたいと思います。
  70. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私も、これをもって何か制裁、ペナルティーを課すとか、そういうことではないと思うのでございまして、先ほど事務当局 から御説明申し上げましたように、まあいろんなことを地方自治体でやっていただくのに、わりと財政的な余裕があればやれるんだが、もう財政的に非常に厳しいというようなところについていろいろな御援助を申し上げてやっていこうというのがこの趣旨でございますし、たかだか全体として二億八千万円と、こういうことでございますから、三千三百のところへ配っちゃったらもう大変わずかなことになる。こんなばらまきをやるより、やっぱり本当に困っている市町村に差し上げてうまく事業がやれるようにするのがこの趣旨ではないかと、こう考えておるところでございまして、これをもって、何か見つけて、こいつ国の言うことを聞かぬから何とかいじめてやれなどというようなことは全然こちらの方も考えてないということでございます。ただ、結果といたしまして、いろんなことをやっておられるところがこの補助金の対象にならないという結果が実質的に出てくるということは、私はこの制度の趣旨からしてこれやむを得ないことではないか、こういうふうに思っているところでございます。
  71. 本岡昭次

    本岡昭次君 次に、老人保健法施行に伴うもう一つの問題は、診療報酬の点数の改定に伴って、老人病院等にいろんな異変と言ったら大げさかもしれませんが、新聞紙上いろいろ問題が出ております。私もよく聞かれるんですが、入院中のお年寄りが突然退院を求められた、何とかしてくれという個人的な話が参ったりもいたします。  それで私も調べてみたんですが、それは、新しく老人診療報酬が変更されて、老人が診療を受ける場合に何か三つの部類に分けられるというところに一つの原因があるということがわかりました。その一つが、老人患者が少ない一般医療機関、二つ目が、主として慢性病の老人を入院させるねらいで知事の許可を受けた特例許可老人病院、三つ日が、許可を受けず入院中の老人比率が六割以上の特例許可外老人病院ということになって、どこに入院するかということによって医療なり診療の中身が違ってくるというところから問題が起こっているようですが、特にこの特例許可老人病院、特例許可外老人病院、こういうふうに分けられたねらいというのはどういうところにあるんですか。
  72. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 老人の病気には若い人と違ったいろいろ特性といいますか、特徴がございまして、改めて申し上げるまでもないかもしれませんが、やはり脳卒中とか心臓病といった循環器系の病気が多い。一たんかかると非常に治りにくい、あるいは寝たきりになる、入院期間も長くなるといったような慢性的な病気が多いわけでございます。  それで、今度の老人の診療報酬を定めます基本的な考え方といいますのは、老人保健法を御審議いただいております国会審議の段階で再三申し上げてまいりましたように、老人のそういった心身の特性なりあるいは病気の特徴というものを踏まえた合理的な診療報酬をつくるということであったわけでございまして、やはりそういった慢性疾患の多い老人については、それにふさわしい医療なり、あるいは医療よりもむしろケアといいますか、介護というものに重点を置いた、あるいは重視をした診療報酬というものをつくるということにしたわけでございます。  こういった基本的な考え方に立ちまして、従来の病院といいますか医療機関というものを普通の一般病院、若い人を中心にした一般病院と、それから七十歳以上のそういった慢性疾患の老人の方を主として入院さしておられる病院と分けて考えていこうじゃないかという考え方に立ちまして、そういった老人の慢性疾患を主として入院させておられるいわゆる老人病院については、診療報酬の面でもそれにふさわしい診療報酬を設定していこう。基本的には一般病院と同じでございますけれども、部分的にそれにふさわしい診療報酬というものを考えていく必要があるんじゃないかということから、こういった制度を設けまして、まず、そういった主として慢性疾患を持った老人の方を入院さしておられる病院については許可を受けていただく、医療法上の許可を受けていただくことにしまして、そういった許可を受けられた病院については医師なり看護婦の基準というものを一般の病院よりも緩めることができることにする。看護婦で言いますと、従来は四人に一人の看護婦さんを普通の病院は置かなくてはいけないんですけれども、そういった許可を受けた老人病院については六人に一人でいいようにする。そのかわりに、もっとお世話が、介護、ケアというものが十分できるように、そのための職員が置けるようにするという考え方を取り入れました。それからもう一つ診療報酬の面では、そういった介護職員を置かれた場合のことを想定をいたしまして、特別の介護料、寝たきり老人等の特別の管理料というものを設けまして、一般病院にはない点数、料金算定を認めるということにしたわけでございます。  私ども、従来いわゆる老人を主として入院さしておられる医療機関は大部分許可を受けられるだろう、また、受けていただきたいということで考えているわけでございますけれども、実際問題として、老人はたくさん入っている、大部分が慢性疾患患者である、しかしながら、どうも許可を受けるのはいやだといいますか、やはり一般病院としてこれからはやっていきたいんだと。救急もやっているし、あるいは、老人の収容比率が高いのもそれは地理的にあるいは地域的に老人の人口比率が非常に高いからだ、過疎であるがゆえに、僻地であるがゆえに高いからだ、決して老人だけをやっていこうということは必ずしも考えていないんだというような病院もあろうかと思います。そういった病院については特例許可外、必ずしも許可を受けなくても従来どおりの運営がやっていけるような診療報酬にしたわけでございます。  それからもう一つ、実際問題としてこれは余りあってはほしくないといいますか、ないはずなんですけれども、本当は許可を受けたいんだけれども、許可を受けるほど医師なり看護婦というものがまだ十分いないという病院も現実問題としてどうもあるようでございます。そういった病院についてはやはり特例許可外病院として扱っていくということにいたしまして、そういった特例許可外の病院につきましては簡易な検査、非常に基礎的な、基本的な簡易な検査なり処置については包括をするという診療報酬にしたわけでございます。  そういったことで、医療機関なり病院入院患者実態、病気の実態、そういうものに見合った診療報酬というものをつくったということでございます。
  73. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで、一番最後に言われた特例許可外老人病院というのがどの程度になりますか。条件が整えられないということになるんじゃないかと思うんですがね。どの程度になると予想されますか、この特例許可外老人病院というのは。
  74. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 実は、老人病院実態というものが、従来必ずしも私どもそれから医務局においても、はっきりした実態といいますか、数というものを掌握しておりませんで、大ざっぱに申し上げますと、医療機関が大体九千あるわけでございますが、老人の収容比率といいますか、入院患者の比率が六割以上の病院が大体五百から千ぐらいあるのではないかというふうに推計をいたしております。そのうち大部分、恐らく九割ぐらいは特例許可の対象になるのじゃないか、特例許可を受けられるのじゃないかというふうに思っておりまして、残りの一割、ですから五十から百ぐらいが特例許可外病院として残らざるを得ないのではないかというふうな推計をいたしておりますが、現在のところまだ結果が出ておりませんのではっきりしたことは申し上げられないわけでございます。
  75. 本岡昭次

    本岡昭次君 特例許可外老人病院問題については、具体的な実態をつかんで、この社労委員会でまた論議をさせていただきます。  ところで、もう一つの、一般病院としてやっていきたいというときに、七十歳以上の老人が六割を超えないようにしなければならぬということに なるんですね。そのときに、六割を超える場合にはひとつ退院をさせなければいかぬ、早う退院してくれというふうな、よく言われている老人追い出しというふうなことが具体的に起こってくるという懸念があると思うんですが、それはどういうふうに考えておられますか。
  76. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 私は、老人の入院患者が六割を超えると一般病院の扱いが受けられなくなるから、入院の必要な老人を退院させるというような措置をとる病院というのははなはだよろしくない。今度の老人の診療報酬の考え方というのは、もう一応は入院治療の必要性がなくなった患者さんを漫然と入院させておくというのはやめてもらいたい、できるだけ在宅へ、あるいは地域へという考え方に立っておりますけれども、あくまでも、入院治療が必要にもかかわらず退院してほしいというような考え方には立っておりません。ですから、今度の診療報酬医療機関側にもしそういった対応をされるところがあるとすれば、私はこれはやはり医療機関として、あるいは医師として大変残念な行為だと思いますので、そういった医療機関なり医師というものがあれば、十分そういったことのないように厳重に注意をしてまいりたい、都道府県を通じまして厳重に注意をし、指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  77. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、厳重に注意するという、それは厚生省の立場からはそうでしょうが、老人保健法を施行して、その後この老人診療報酬という問題について改正を行って、病院も三種類に分けて——私は特例外病院における診療の内容について、時間がありませんからあえて触れませんでした。次にまたやりますけれども、とにかく、どういうのですか、いろいろ説明を聞きますと、非常に合理的な、老人というものの特性にかなった診療をやるということのように聞こえるんですが、しかし実態として起こってくることは、病院経営にしても医者にしても、診療報酬によって経営が成り立っているという厳然たる事実というものにかかわって、医者だから病人を追い出してはならぬ、老人を病院から追い出してはならないというふうなことだけでは済まない病院経営上の実態というものが診療報酬の上にしっかりと成り立っているんだというその事実を見きわめてもらわないと、いまのような単純なことではいかない問題が新しく起こっているということなんですが、それはまた日を改めて論議させていただきます。  いまのような単純な答弁では老人医療の診療報酬改定に伴う措置について私は納得できませんが、それに言及している時間がありません。あと五分ですから、最後にひとつ大臣を含めていまの問題にかかわって、今後の問題について若干質問しておきます。  とにかくお年寄りが入院をしているという実態はいま言われたように、もう治療の必要はほとんどない、治療してもどうにもならないという一つの状態で、介護という形で病院にいる、病院は治療するところだからひとつ出てもらいたいと、退院してもらいたいということも現に起こる。一方では、吉原老人保健部長もこれからの老人医療の問題は地域で療養する、家庭や地域が中心になるべきだというふうに強調されている。しかし現実の実態はお年寄りを、寝たきりの老人を、治療はもう必要ないがずっと継続して介護を必要とする、そういう状況の人を家庭に引き取れない地域、家庭の状況ですね。お年寄り夫婦だけではどうにもならないわけで、また地域社会も介護としてお年寄りを引き受ける施設というものがまだまだ不十分のような状態で、治療と介護が混然一体の状態としていま病院の中にあるわけで、ここのところを法律を盾に振りかざして、余り短兵急にこの問題の対処に当たるということは、私は法の趣旨からいっても適切でない。もう少し実態との整合性というものを考えて、時間をかけて老人の医療の問題と介護の問題と、そしてそれを全体として高齢化社会に向かっての福祉の問題として支えていく基盤をしっかりつくっていくということでやらなければ、医療の面からだけばっさばっさこれを切っていったときには、受け入れる体制がない中で、結局不幸な目に遭い、そしてみじめな目に遭うのは高齢者であり、また、その高齢者を抱え、そして経済的にあるいはまた大変な苦労をしなければならない家族ということになってくるわけです。  その点について最後に厚生大臣、老人医療の問題については福祉の問題と地域社会の高齢者対策、受け入れというものをどうするんだという問題と並行して総合的に進めていかなければ、いまの厚生省医療の問題からだけ振りかざしていくやり方では、非常に地域に混乱が起こってくる。お年寄りから怨嗟の声が厚生省に上がってくると私は見ているんです。しかもそのことは必ずしも厚生省のやっていることが正しく伝えられていない側面から起こってくる問題もたくさん私は指摘しましたが、弁護もしてきました。それはそうではない面があるぞと。だけれども、いまのようなやり方で進める限り、それはおさまらないと、こう私は思っているんですが、厚生大臣のこれからの長期的なひとつ展望ですね。そして、時間をかけて実態と整合させながらやっていただきたいという要望を申し上げて、大臣答弁をいただいて終わりたいと思います。
  78. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 議員御指摘のように、お年寄りの問題を病院から出す云々という形で片づけるということは、私も間違っていると思うわけでありまして、やはり老人の持っていられるところの病気の特性というものもあるでしょう。一遍病気にかかると、一つの病気だけでなくてたくさんの病気にかかられるということもあるし、なかなか慢性的な疾患になって病気が長引くということもあります。ありますが、病院に入るということは、やはり治すということが目的でありまして、いつまでも病院におってそこで死を待つという形では私はいかぬのだろうと思うのです。病院というのはあくまでも健康な体に治してもらうというのが基本的な話でございますから、私はそれをやっていかなければならないのが病院の基本的な使命だろう、こう思います。  ただ、御指摘のように、それでは帰るところの地域社会があるかという話でございますが、やはりこれは家庭に帰るのがまず第一である。家庭に帰るときに、やはり家庭では若い奥さんがなかなか十分な介護もできないと、こういうふうなお話もございますし、いろんな問題がございますから、そういったことにつきましてはホームヘルパーの制度を今回改善いたしまして、それによって介護の方の手助けをしていくということもやるし、ショートステーというような制度を設けましたり、また、特別養護老人ホームのような形のものをいろいろと地域に配分して建設をしていくというような地域ぐるみの体制というものもつくっていくことは必要だろうと、こう考えております。そういった意味で、家庭と地域社会とが一体になって、老人というものが健全な一生が送れるようにわれわれも努めていかなければならないと、こういうふうに考えているところでございまして、ホームヘルパーその他の、いわゆる先生指摘の意味で言えば福祉の施策というものは十分にこれからも進めていくことが必要だろう、こう思っておるところであります。  特別養護老人ホームにつきましては、現在年間で百ほどつくる、こういうことになっております。年間百ということになると、百という数だから大したことないと言いますが、三日に一つずつつくっていくわけですから、大変に私は一生懸命これからやらなければならない話だろうと思います。  高齢化社会を控えまして、老人の問題というのは大変大きな問題になるということを私も十分認識しておりまして、医療の問題、年金の問題、その他の問題にわたりまして一生懸命努力いたしたい、こういうふうに考えていることを申し上げます。
  79. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時五分開会
  80. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、社会保障制度に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 田代由紀男

    田代由紀男君 二月一日より老人保健法が施行されておりますが、この法律は高齢化社会の到来に対応した社会保障制度を確立をした画期的な法律でありますが、まず、この老人保健法の実施上の問題点について一、二お伺いします。  第一に、老人保健法の眼目である保健事業についてお伺いしますが、保健事業の推進については、保健婦を初めとするマンパワーの問題、それから保健所等の施設、設備の整備等の必要性の問題がありまして、これらに国、地方が一体となって真剣に取り組まなければならないことはもちろんでありますが、そのためには地元の医師会等、各方面の関係団体との話し合いを十分にやっていく必要があります。その地域に適した最も効果的な事業の推進の方策としてどのようにこれを実施していくかという、その方針についてお伺いいたします。  もう一つ、したがって、健康診査の受診率をどのように引き上げていくかということが一つ問題点でありますが、これは保健所ばかりに任しておってもなかなか十分に行き届かない点がありまして、どうしても地元の医師会等に委託して実施させるという方途もあわせて講じながら効果を上げることが必要であると考えるわけであります。こうした保健事業の実施方式等について、厚生省はどのような指導方針によって都道府県、市町村を指導していらっしゃいますか、この点についてまずお伺いします。
  82. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 田代先生には、平素大変いろんな点におきまして御示唆をいただいておりますことをこの機会をかりましてお礼を申し上げたいと思います。  いま御指摘のございました老人保健法の施行に伴いまして、地域医療体制、地域の医師会の御協力をいただくことが必要ではないか、それをどうしてやっていくのかというのはまことにごもっともな御指摘でございまして、私どももそういった観点で各地域の医療団体と常に密接な連携をとりながらやっていかなければならないと考えているところでございますし、今回医療法の改正を出しまして地域医療計画の策定をいたすなど、諸種の施策を講じているところでございます。  また、健診問題につきましては、具体的にどうしていくのかというような御指摘もございましたが、全く御指摘のようなことが非常にこれからじみちにやっていかなければならない、またむずかしい点だろうと思いますし、せっかく老人保健法という画期的な法律を国会におきまして可決、成立さしていただいたわけでございますから、その御趣旨にのっとりまして最大の努力を傾ける決心でございます。  具体的な話につきましては事務当局より答弁をさせることをお許しいただきたいと思います。
  83. 田代由紀男

    田代由紀男君 次に、金の問題が伴うわけでありますが、保健事業に都道府県や市町村が創意工夫を生かしながら熱意を持って取り組んでいくとしましても、これに必要な予算措置がついてこなければ保健事業はかけ声倒れに終わってしまうわけであります。厚生省の予算を見ますと、五十八年度では百四十四億円、前年対比で約七割り増しとなっておりまして、マイナスシーリングの国家予算の中でも格段の配慮がなされておるわけであります。それでもなお補助単価が実勢に追いつかない面が見られます。契約単価と基準単価との格差が見られますし、こういう面について改善の必要があると思うのであります。今後一層都道府県や市町村の意見をくみ上げながら、さっき質問がありました財政調整補助金の問題等もありますので、予算の充実を図っていただきたいと思いまして、この点について厚生大臣所見をお伺いいたします。
  84. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 保健事業の総合的推進ということが老人保健法の最大の眼目でございますので、これが実施に必要な予算についても私ども最大限の努力をして確保したつもりでございます。  いま総額についてお話しございましたように、五十八年度におきましては百四十四億円、五十七年度は、老人保健法施行前の事業費を含めたものでございますが、八十六億円でございまして、六六%の増額ということになっているわけでございます。ちなみに、二年前、五十六年度は大体五十億円程度でございまして、五十六年度に比べますと、五十八年度の予算というのは大体三倍近い保健事業の予算が確保されたという状況でございます。  ただ、この保健事業の予算の内部にわたりまして、いろいろまだ問題点が決してないわけではございません。いま御指摘のございましたように、健廉診査等の単価につきましてはあるいはまだ不十分な面があろうかと思いますが、実は、老人保健法の施行に伴いまして、この健康診査の単価は大幅な引き上げをしたつもりでございます。ちなみに、胃がん検診は、これまでは大体八百九十三円という単価、九百円足らずという単価で予算を組んでいたわけでございますけれども、五十八年度からは二千八百四十二円という大体三千円近い、三・二倍ぐらいに単価の引き上げも行ったわけでございます。できるだけ実勢に合わせるようにということでこういった単価のアップを行ったつもりでございますが、今後ともこういった実勢単価に見合った予算の確保につきましては努力をしてまいりたい、そのことによって老人保健事業というものが全体として円滑に進められていくように努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  85. 田代由紀男

    田代由紀男君 次に、老人保健法による医療については、老人の心身の特性にふさわしい診療報酬が決められております。しかし、実際には内容の理解が進んでいないために、関係者の中には非常に不安の声が聞かれるわけでありまして、採算上の理由で老人を粗末にするような医療機関があってはならないわけでありますが、実際、今回の診療報酬医療機関に与える影響、たとえば、まじめな医療機関がこれを完全実施することによって大きい損害を受けるようなことはないと思いますが、そういう面について診療報酬医療機関に与える影響について大臣所見をお伺いします。
  86. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 今度の老人の診療報酬を決めるに当たりましては、やはり老人の心身の特性を踏まえた合理的な診療報酬の設定ということと同時に、いま御指摘のございましたように、従来からまじめに老人の医療に当たってこられた医療機関が、経営の面で非常に困った事態にならないようにということは同時に私ども配慮をしたつもりでございまして、いろいろ合理化なりあるいは点数の新設等をやっておりますけれども、全体としては、従来の老人医療費の総額といいますか、総枠の範囲内で合理化をし、改善をするという考え方であったわけでございます。したがいまして、医療機関全体としては、老人医療による診療報酬収入というものが減らない、マイナスにならないという考え方でやっているわけでございます。  ただ、個々の医療機関ごとに見ますと、診療科別、それから老人の多い少ない、それから考え方が、従来の投薬や検査よりも、生活指導とか在宅での療養の促進という考え方でやっておりますので、医療機関によっては、従来投薬だとか検査だとか、あるいは点滴を非常に多目にやっておられたところについては多少の収入面での影響が出てくることもあろうかというふうに思っております。
  87. 田代由紀男

    田代由紀男君 次に、先ほど本岡委員質問にあったわけでありますが、特例許可病院の問題ですね。特に新しく設けられた老人病院の許可制度 について、許可をとることをためらっておる傾向があります。今度も医師会の幹部と会ってみますと、許可をとると監督が厳しくなって、後でどうにもならぬようになりはせぬか。百人に三人の医師、六人に一人の看護婦というような制度、これを守れないことになりはせぬかという心配がありまして、医師会で同時に申請をしてやめるときは一緒にやめよう、そういうような話さえあるわけでありまして、許可制度の趣旨、内容が明確に指導されていない点がありますので、この点についてはどういうお考えか、お伺いします。
  88. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) この特例許可病院趣旨につきましては、午前中もお答え申し上げましたように、やはり慢性疾患の多い老人の病気にふさわしい診療報酬を設定する。いまの日本の医療機関、病院というのは、若い人もお年寄りも、それから急性疾患も慢性疾患も、皆ごっちゃにして入院治療を行っているわけでございますけれども先生御案内のように、よその国は、急性患者を入院させる病院と慢性疾患患者を人院させる病院と、ある程度区別して考えているところが多い。また、そういった傾向にあるわけでございますので、やはり老人の心身の特性あるいは病気の特性にふさわしい診療治療、医療というものをやっていく場合におきましては、医療機関においてもそういったものをある程度分けて考えていく考え方が必要なんじゃないかという考え方に立ちまして、七十歳以上の老人の方をおおむね六割以上入院させておられる病院につきましては、普通の病院と区別した医師なり看護婦の基準を考えていく。それから診療報酬の面でも特別の考え方を入れる。全部が全部じゃございません、基本的にはもう各病院共通のものが大部分でございますけれども、部分的にそういった老人病院にふさわしい診療報酬を考えていくということで今度の診療報酬を決めたわけでございまして、いまちょっと御質問にございましたけれども、老人病院について特に監督を厳しくしようとかいうねらいを持っているわけではございません。
  89. 田代由紀男

    田代由紀男君 次に、老人医療費の増高の原因と対策でありますが、時間がありませんので要望を申し上げておきます。  国民医療費は年々増加して、いまや十四兆円にもなっておりまして、五十八年度には老人医療費だけでも三兆二千億を超えております。こういう状態でこの十カ年間で七・六倍にもなっております。これは老人人口がふえることが原因であることはもちろんでありますが、老人の一人当たりの医療費は年間三十七万円にもなっておりまして、七十歳未満の者の四倍以上になっているわけで、こういうふうに老人医療費に特に金がかかる原因はどこにあるか。これは、老人にふさわしいよい医療を確保することは大事でありますが、それを前提としながら、国民の負担が過大にならぬように検討をする必要があると思いますので、これについて対策を早急に考えていただきたいと思います。  次に、医療法に関連する事項について、まだ提案の説明が終わっておりませんので、大臣に、みんなが心配しておる点、医師会等で心配されておる点について御見解をお伺いします。  地域の医療供給体制の計画的な整備を盛り込んだ今回の医療法の改正案についてはそれなりの意義を認めるのでありますが、計画策定の前提となる病院、診療所のあり方等、医療供給体制の根本についての検討がまだ十分でないようでありまして、これを早急に行い、医療供給体制の抜本的な改革を行うべきであると考えますが、この点についてお伺いいたします。  次に、医療法の改正案における医療計画の策定についてでありますが、わが国の医療が医師の自由開業医制によって支えられてきたという前提からいたしまして、十分にその点を配慮をされまして、医師会や歯科医師会、医療関係団体との話し合いの上、医療に対する官僚統制の弊に陥らないように十分に配慮をお願いしたいと思います。この点がみんなの心配な点であります。  次に、医療法改正案では、医療法人の事務所に対する立入検査や役員の解任勧告などを行い得るようになっておりますが、大多数の医療法人はまじめに医療に取り組んでおるものでありまして、したがって、これらの権限の発動については慎重な配慮が必要であると思います。  こういう点がみんなが心配しておる点でありますので、以上の三点について大臣見解をお伺いいたします。
  90. 林義郎

    国務大臣林義郎君) まず第一点の、医療費の高騰の問題でございますが、先生指摘のとおり、年々医療費が伸びておるということでありますし、特に、老人一人当たりの医療費は年間三十七万円、七十歳以上の方は未満の人に対して四倍以上もかかっておると、こういうような御指摘でございますが、全くそのとおりの実は数字になっておるわけでございまして、こういった点をどうして改めていくかということでございます。  ただ私、考えますのに、やっぱり病気になったならばお医者にかからなければならない、その費用は健康保険その他で見ておるわけでございますから、やはりそれはいい診療が受けられるということが一つの大前提になるだろうと思うわけでございます。金がかかるから診療を受けないというようなことではこれはどうにもならないわけでございまして、私は、そういった点で十分な診療が行われるということはぜひ確保してまいりたい、こう思っておるところであります。  しかし、十分な診療というのは一体何か。これは病気を治すためにあるわけでございまして、言われているところの乱診乱療というようなものに陥ってはならないと、こう思うわけでございまして、乱診乱療というか、むだな医療が行われないようなことを考えていくということが一番大切なことではないだろうかと思いますし、そういった点で、これからいろんな点を通じまして医療費の適正化対策というものに努力をしてまいりたいと、こう思っているところでございます。  特に、今回の老人保健制度は、先生御承知のとおり、まず老人の、予防というか、保健事業というものを中心にしまして、なるべく病気にかからないようにしていくと、こういうことを中心に考えておるわけでございまして、そうしたようなことをこれからもいろんな点で進めていかなければならない。病気にかかったならばやっはりいい治療が受けられるようにする、その前に病気にかからないようにする、病気が治ったならばなるべく後再発しないようにすると、こういったことが私は必要なことではないかと思うわけでございます。  それから、医療法改正案につきましては、まだ当院におきましては御提案の理由も説明していないような状況でございますが、私たちの方で考えておりますのは、日本の医療が医師によって行われている、自由開業医制というものを前提にして行われているわけでございますから、こうした体制というものはぜひ堅持していくのがいいことではないかと、私はこう思うわけでございます。  ただ、救急医療対策であるとか僻地の対策であるとか、地域のお医者様方が全部寄って、助け合ってやっていかなければならない点もございますから、そうした地域の医療につきましての十分な配慮をしていこうというのが今回のわれわれが考えていますところのねらいでございます。もちろん地域医療計画をつくることのみによって全部が達成をされるとも考えておりません。いろんなそのほかの問題もございますが、そういった問題はいずれ国会医療法改正案につきましての御審議をいただくときの御議論に譲りたいと、こういうふうに考えているところでございます。  それから、立入検査や役員の解任勧告を行って、官僚統制に陥るのではないかと、こういうことでございますが、この問題につきましては当委員会におきましても再三、きわめて不正なるきわめて不まじめな医療法人が多々ありまして、これに対しまして厳正な処分をすべきではないかと。処分をしようと思うと医療法がどうも不十分であるというような点もかんがみまして改正案を出したわけでございます。しかし、私は思いますの に、大多数の医療法人というのは皆まじめにやっておられるんだろうと思いますし、そのまじめにやっておられるところに対しまして、いたずらに監督権限をみだりに行使をするなどというようなことは当然にこれは避けるべきものでありますし、また、そういった性格のものとは私どもも考えていない、こういった形で医療法の改正案をお願いをしておるところでございます。
  91. 田代由紀男

    田代由紀男君 時間がありませんので、次に、医師の過剰問題について厚生大臣見解をお伺いします。  厚生省は、従来より、昭和六十年までに人口十万対で百五十人の医師を確保することを目標とすると言ってきましたが、目標は五十八年度で達成をされております。その目標達成をもって直ちに医師が過剰であるということではありませんが、しかし、現に部会での開業は非常に困難な状態であります。今後に目を転じてみましても、五十七年度には七千人の新たな医師が生まれておりますし、このままのペースでは医師がふえ続け、今後十カ年間で残りで七万人ですから、いまの十六万人を入れますと二十三万人になりまして、人口十万対で、二〇〇〇年には二百人を超える状態になります。このように医師が多くなると、不必要な医療を行うなどして医療費が高騰をいたしましたり、また、医師でありながら開業もできず勤務医にもなれずという、医師が失業するような状態も出てくる可能性があるのであります。  このことは歯科医師についても同じことが言えるわけでありまして、歯科医師の方でも十万対の五十人でありますが、七十五年には八十一人になっていきます。  こういう状態でありますが、医師の養成には六年を要するわけでありますから、前から計画的に対応しておかないと、ふえてから大変だといってもとまらないわけでありますから、この点どういうぐあいにお考えでありますか。医療の供給体制と相まって厚生大臣の所感と文部省の所見をお伺いいたします。
  92. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先生指摘のとおりの数字でございまして、御造詣の深い先生からの御質問でございますから、もう数字その他の問題につきましては全くそのとおりであるということでお答えをさせていただきます。  数字はそのとおりでございますが、医師の数は地域別とかあるいはその医者の科目別と申しますか、領域別の偏在というものもまたあることは事実でございますし、また、将来医療需要というものがどうなるか、相当多様化してくるのではないかというようなことも考えられます。そういったこともありますが、御指摘のように、総体として見ますと、医師過剰ということが考えられるわけでございますので、いまからやはり考えていかなければならない。医師の養成のあり方につきましては文部省とも相談をいたしまして対策を考えてみたい、こういうふうに思っているところでございます。
  93. 前畑安宏

    説明員(前畑安宏君) お答えいたします。  ただいま厚生大臣から御答弁がございましたようなことで、現在厚生省の御当局の方と将来の適正な医師数の問題について検討を進めさせていただいております。今後の問題につきましては、厚生省の方の御意見を十分ちょうだいをいたしまして対処をしてまいりたい、このように考えております。
  94. 田代由紀男

    田代由紀男君 どうも医師については、専門医の問題もありますし、医師の地域的な偏在や予防医学、公衆衛生の分野における不足等、こういう領域間での偏在があるわけでありまして、この点についても十二分に配慮をしながら計画をお立て願いたいと思います。  次に、中国残留日本人孤児の問題でありますが、この肉親探しの状況、これはどういうぐあいになっておるか。新聞でおおよそは存じておりますが、的確な情報をお教え願いたい。  それから、五十八年度予算における中国残留孤児対策はどうなっておるか、この点もお伺いいたします。  それから続いて、孤児問題を進めていく上におきまして、国籍の問題、日本語習得、雇用対策、こういう問題に総合的に取り組む必要がありますが、こういう問題はどういうぐあいにやっていらっしゃるか。  以上の三点についてお伺いいたします。
  95. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私から総括的なお話を申し上げて、あとを事務当局から御答弁をさせたいと思います。  中国残留日本人孤児は、さきの大戦のときに肉親と離別をして中国国内で育てられた人々でありまして、このような境遇の孤児の方々のことを考え、また、日本に帰られた御両親、肉親の方々の心情や立場というものを十分にくみ取って、肉親探し、身元解明の促進、また、帰国後の地域社会への定着対策につきましては、できる限りの努力をしてまいりたいと考えております。  日中の関係におきまして、一九七二年九月二十九日、日中共同声明が発せられました。その中に、わが国は、中国人民に対して深く反省をするという気持ちが盛られておりますが、そういった精神にのっとりまして、広く人道的な観点に立ちましてこの問題を推進をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  あと、予算の問題、国籍の問題等々につきましては、事務当局より答弁させることをお許しいただきたいと思います。
  96. 田代由紀男

    田代由紀男君 答弁をいただく前に、もう二点つけ加えます。  中国帰国の孤児センターの問題がありますね。これは五十八年度の問題ですが、この孤児センター、定着促進センターといいますか、これについてもお答えを願いたいと思います。  それから、中国に残る養父母等の扶養の問題はどうなっておるか。また、民間寄附金の援助については、財団法人をつくったと聞いておりますが、この基金の問題、それから民間からの募金の問題、これはどういうぐあいにやっていくのか、これもあわせてお尋ねを申し上げます。
  97. 山本純男

    政府委員山本純男君) まず第一点の、これまでの調査の概況について申し上げますと、私どもの方に日本人孤児であるということで自分の身元あるいは親族について調査の依頼が来ております。いままで千四百五十一人の方から調査の御依頼がございまして、いろいろな経路で身元の判明いたしました方々がこれまで六百三十五名ということになっております。ことに昭和五十五年度からは訪日調査ということを毎年やってまいりまして、その中でこれまでに百五十二人の方を日本にお招きして調査をいたしました。その中で九十四名の方の身元が判明いたしました。これは先ほどの六百三十五人に含まれております。したがいまして、今日まだ身元が判明いたさぬために調査継続中の方々が八百十六名おられる状況でございます。  なお、この中には、すでに一度訪日して身元がわからない方が五、六十名含まれておりますので、まだ日本の土を踏んだことがないという方はこの中の七百五十人程度というような状況かと理解しております。  また、五十八年度における援護施策について申し上げますと、いま御指摘の定着センターというものが一番大きな施策でございますが、身元が判明いたしましてから日本に永住帰国なさいます場合に、一番大きな障害になりますのは一つは言葉の壁でございまして、日本語が十分理解できない。また、もう一つは、社会の情勢がいろいろ違いますので、中国での技量、才能というものが日本の社会では容易に発揮できない。そういう点にございますので、センターをつくりまして、そう長期間はむずかしゅうございますけれども、そこである期間、日本語と日本の社会のもろもろの慣習、またそういう技能の訓練を受ける機会を提供しようということでございまして、予算で申しますと、建設費三億五千万ということで、十月からオープンということでいま作業を進めているところでございます。運営費につきましては、十月から半年分ということで八千七百万円の予算を計上 しております。  このほかの援護施策といたしましては、まず身元を調査いたしますためにはやはり訪日調査という手段が大変有効であるというふうにいままでの実績から見ても考えられますので、五十八年度にはこれまでよりも人数をふやしまして百八十人分の訪日調査ができる予算を計上いたした次第でございます。  また、扶養費の点についての御質問でございますが、これは従来、わが国、それから中国政府ともに、この孤児の永住帰国という問題につきましては、御本人の意思、これを優先するということで進めてまいったわけなんでございますが、その結果、私どもは孤児の方と日本における親族の皆さんとの間のこれまで不明であった関係を解明いたしまして、そういう方々が身元引受人になれば永住帰国をお手伝いするということで進めてまいったわけでございますが、一方、やはり三十何年間中国でお暮らしになった方々でございますから、中国にもやはり養父母あるいは配偶者といった親族の方が現におられるわけでございまして、これが日本に永住帰国する結果別れ別れになるという、また新しい悲劇が起こるのではないかということを、昨年来、日中両国政府でいろいろ協議をしてまいりまして、その結果、でき得ることならば現在一緒に暮らしておられる中国での家族の方も、家族ぐるみで日本に永住帰国するなら永住帰国することが一番望ましい。それができない場合には、中国の法律その他にのっとりましてきちんと必要な生活費を負担するということが必要であるということで見解が一致いたしたわけでございます。  その結果、細目についてはこれから外交ルートで詰めてまいりますけれども、大筋の合意ができましたので、またこの二月から訪日調査が再開できたという状況でございますが、その中で基本的な条件は、孤児が負担いたします親族の扶養費、そのうちの二分の一は日本が政府の負担において給付をするということで負担をかけない。さらに、残る二分の一の金額につきましても、これは民間の御好意による寄附金その他をもって充てまして、これまた孤児の方には極力負担をかけない。できるならば全面的に政府の給付金と寄附でこれに充てるということを目標にするということで合意ができておるわけでございまして、そういう線に沿いましてこの四月一日に財団法人設立を許可いたした次第でございます。これから大方の御賛同を得まして寄附金をお願いいたしまして事業を進めてまいりたいと思っております。
  98. 田代由紀男

    田代由紀男君 終わります。
  99. 渡部通子

    渡部通子君 私は、最初に厚生省の食品添加物行政についての基本的な姿勢をお伺いしておきたいと思います。  最近、日本市場開放への措置として、食品添加物が二けた台の数で一挙に認可されるのではないかといったような報道がされておりまして、非常に心ある人々の心配を呼んでいるわけでございます。そこできょうは、はっきりした厚生省の方針を伺いたいと、こういうことでございます。  御承知のように、添加物につきましては、昭和四十七年、衆参の社会労働委員会で決議をいたしまして、添加物は極力その使用を制限する方向で措置をすると、こういうことをいたしました。したがって、それ以後は十一年間に七品目が追加されただけで、削除品目とそれから加わる品目と合わせて総枠は余り変えないというような方向で今日まで来たと思うのですが、この方針を厚生省としては転換をなすったわけでございますか。
  100. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いま先生指摘のあの附帯決議は私もよく承知をしておるところでございますし、基本的には、食品添加物というのはその安全性及び有用性が確認され、国民の食生活におきまして必要なものについては使用を認めていくという基本的な考え方については変わりはないのでございます。  ただ、私は見ておりまして、昨今日本人の食生活も大変欧風化してきたと申しますか、日本でもたくさんの食べ物が出てきておるわけでございまして、私は世界化してきたと言った方がいいんだろうと思うんです。日本で見ますと、ヨーロッパ風の食べ物もありますが、中華風あり東南アジアのインド風、たくさんの食べ物が日本の国内では出てきておるわけでございますし、町を見ましても、外国の製法によるところの食品というものが非常に出てきている。食生活が非常に世界化してきた、国際化してきたという感じがありますし、それはお互いの持っておるところの食生活の中でも大変環境の変化を来しているものだろうと、こう思うわけでございまして、そうした環境の変化に応じましてやはりいろんなことを考えていかなければならないのではないかということでございます。  そうしたことで、特に五十四年に関税及び貿易に関する一般協定、俗称ガットと言われるところでございますが、ガットで条約の締結をいたしておりまして、国際的な基準をつくってやろうと、こういうふうな話でありますし、日本でもすでにその条約につきましては国会で批准をいただいているところであります。そうした国際的な趨勢というものも考えまして、やはり日本もこれから国際的に十分対応できるような国内体制というものも考えていく必要があるんではないか、こういうふうなことで措置をしたわけでございます。  先生指摘の、二けたということでございますが、実は昨日、食品衛生調査会毒性部会、添加物部会の合同部会を開きまして、十三品目について御審議をいただき、審議の結果、九品目について指定をして差し支えないだろう、毒性の問題その他の問題につきましては差し支えないというような御答申もいただいておるところであります。  厚生省といたしましては、基本的に考えなければならないのは、国民の健康を守っていくことである。そういった観点に立脚いたしまして、やはり食生活が非常に豊かになってきたということも踏まえてこれからいろんな施策を進めていく、こういうふうな考え方でございます。
  101. 渡部通子

    渡部通子君 大臣のおっしゃることは、私も一面よくわかります。確かに食生活の高度化、多様化、そういったことからいろいろ情勢が変わってきていることはわかりますけれども、衆参の決議もあったことですし、それから安全性とか許認可に関しては大変心配している大衆の目というものもあるわけですから、厚生省は、そういう状況が変わってきたからといって方向を転換するならするなりのはっきりした基本的な見解というものが要ると思うんです。  いまの大臣答弁を聞いておりますと、なるべく規制する方向でやるという国会決議できたけれども状況が変わったからそれは変わるんだと、こういうふうに受けとめますが、そうなんですか。
  102. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 申し上げましたのは、やはり客観情勢、食生活の状況が非常に変わってきておりますから、国民の健康を守るという観点についていろいろな規制はしていかなければならない。やはり多様な国民のニーズに合うような食生活の供与をしていくということは私は必要だと、こう考えておるわけでありますし、また、お話しのございました国会決議というものもございますから、そういった趣旨も踏まえてこれからの展開を図っていかなければならないだろうと、私はこういうことでお話しを申し上げているところでございます。
  103. 渡部通子

    渡部通子君 昨日食品衛生調査会が開かれて、九品目とかにつきまして認可の方向が決まったという答申を受けられたそうでありますが、そうしますと、いままで一品目でも認可をするということに対しては大変な、その前の報道もあったし、手続もあったと思うんですけれども、一挙に九品目を認可の方向へと、いままで一品目でも大変だったんですから、それを一挙に九品目をそういう方向で簡単に答申がお出になったということは、いわゆるA(1)リストならオーケーだという方向へ踏み切ったことですか。
  104. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私は、この毒性部会、添加物部会、それぞれの学界におけるところのりっ ぱな学識者、研究者の方々のお集まりでございまして、毒性の問題等につきましては問題がないと、こういうことでございまして、私は毒性も何もないものについて、いままで使っていないから抑えておくというのはちょっと余りひどいのではないか。食生活が非常に多様化してきているから、せっかくおいしいものがあるのに食べないで置いておけよというのも非常に私はいかぬ話ではないかと、こう思うわけでございまして、やはりそこは健康を守るためのいろいろな基準、スクリーンをかけていかなければならない。しかし、それが通って、いいということならば、私は認めていくというような考え方でやった方が、広く国民の皆さん方に喜んでいただけるんではないか、こういうふうに考えておるところでございます。
  105. 渡部通子

    渡部通子君 私、こういうことを伺っているんです。  いままで一品目の毒性検査をするということでも、かなりの手間と費用と年月というものが非常にかかっているわけですね。ですから、今度九品目を厚生省でアメリカから要求があったから諮問した。その間には日本の独自の自力で毒性検査をする時間はとうていなかったわけでございますね。それでも九品目をオーケーしようという方向へ答申が出たということは、世界のFAO・WHOで毒性検査が済んでいるからという理由で、日本の独自な毒性検査というものは通っていないと、こう私は判断せざるを得ないわけですね。そうなりますと、いわゆるA(1)リストに載っているものならば、日本の毒性検査を通さないでもオーケーだと、厚生省はそういうふうな判断に踏み切られたことですかと、独自規制は放棄なすったのですかと聞いているわけです。
  106. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私から申し上げますが、私もきのうこの合同部会に出まして冒頭にごあいさつを申し上げたんです。とにかく段ボールに三つぐらいの資料を各委員の方々にも差し上げて、各委員の方々に毒物学的または医学的な点についても十分な御審議をいただいてやったというふうに話を聞いておるところでございまして、外国で認めたからすぐに日本でやるとかというようなことではありません。やはり日本の学者の権威、また、この食品衛生調査会の権威にかけまして私たちは御審議をいただいているものだと、こういうふうに考えておるところでございまして、若干専門的あるいは学術的な話になりますから、担当の局長から御答弁をさせていただきます。
  107. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) ただいま大臣からお話しございましたように、十三品目につきまして、国内のデータもございますし外国のデータもございますが、大変多量なデータにつきまして種々御論議をいただいたわけでございます。相当多量の資料でございますが、なおかつ十三品目の中で四品目につきましては、この四品目はいずれもFAO・WHOのA(1)リストに載っているものではございますけれども、この四品目についてはなおさらに資料の整備が必要であるということで保留になったわけでございますので、ただいま大臣がお話しございましたようなことで、慎重に検討をしていただいたということでございます。
  108. 渡部通子

    渡部通子君 そうしますと、これは新聞報道でございますが、九品目を認めると、そしてそれを夏までに認可をするという方針だと報道されておりますがそれはそうなのか。夏までに認可をなさるのか。そして九品目とは何なのかをちょっと教えてください。
  109. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 九品目の品目名をちょっと申し上げてみますが、二酸化珪素、これはろ過助剤でございます。それからアスパルテーム、人工甘味料でございます。それから銅塩類、亜鉛塩類、栄養強化剤でございます。それからグルコン酸鉄、着色補助剤。二酸化チタン、着色料。それからアジピン酸、酸味料。プロピオン酸、保存料。クエン酸イソプロピル、酸化防止剤。この九品目が昨日の合同部会におきまして指定をしてもよいのではないかという御決定をいただいたわけでございます。  実は、これから私ども使用基準の詰めをする必要もございますし、恐らくはガットの協定に基づきます通報もしなければなりませんので、最終的にいつ省令告示の改正ができるか、いまの時点でちょっと申し上げにくいのでございますが、やはりこれから二、三カ月ぐらいの時間がかかるのではないかというふうに考えております。
  110. 渡部通子

    渡部通子君 それでもう一つ質問がもとへ戻りますけれども、そうしますとこれから日本の独自規制ですね、いままで独自に規制をしていらした枠というものはかなり緩められる、そしてA(1)リストにあるものならばいろいろな状況の変化に応じて非常にこれから緩めた方向で認可がなされていくのではないか、こういう受けとめ方せざるを得ませんけれども、そういう方向でおやりになるわけですか。
  111. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 実は、昨日の食品衛生調査会の合同部会におきまして、先ほど来申し上げておりますような、従来の基本方針を守りながらしかし新しい情勢にどう対応すべきであろうかということで御議論をいただきまして、その結果、「食品添加物の指定における当面の対応について」という意見、考え方の取りまとめをいただいたわけでございます。  この中で書かれております概要でございますけれども、従来食品衛生調査会がとってまいりました国民の健康を守る観点から、個別の添加物ごとにその安全性、有用性及び必要性について慎重に検討を行うという基本方針は守りながら、次のような点に留意をして進めていこうということでございまして、まず第一点といたしましては、調査会が、あるいは合同部会が審議を行う対象といたしましては、原則としていまのFAO・WHOのA(1)ランクに分類されているものであって、かつ国際的に広くその使用が認められるものに限って審議の対象とする。さらに、このA(1)リストの品目でございましても、たとえば評価時点が古くて現時点における科学的検討では資料が不足だというようなものについては審議対象としない。  それからまた、これに伴いまして、既存の添加物でございましても、たとえば日本独自の添加物でFAO・WHOの評価を受けていないもの、あるいは食生活の変化によりましてほとんど使用されていないもの、こういった有用性、必要性の乏しくなってきているものについては検討を加えて、場合によれば削除するということも考えていく。  それから、添加物の使用基準につきましては、FAO・WHOにおきます一日摂取許容量を踏まえつつ、国民の食品別摂取量等を十分勘案の上検討する。つまり、使用基準についてはFAO・WHOあるいは外国の使用基準をまるのみにするのではなくて、わが国の食生活に適合した使用基準を定めていく。  それからなお、全般の問題といたしまして、使用添加物の表示あるいは国民の一人当たりの添加物の一日摂取量の実態把握の精密化等、こういった問題についても検討を進めるべきである。  こういう意見書の中身でございまして、今後私どもこの意見書の線に沿いまして進めていきたいと考えておる次第でございます。
  112. 渡部通子

    渡部通子君 私、いま伺っておりますと、意見書で理屈は山ほど、幾らでもつけようがあると思うんですけれども、最初のA(1)リストに認められておるもの、そして国際的に広く使われているものについては使用を認めていこうと、そこに一番重点があるのではないかという気がいたしますね。  私もやみくもにこれは反対しているわけではないんですが、何しろこれ話が突然で、しかも多過ぎるでしょう。いままで十一年間で七品目しか認可してきていないというような添加物に対して、今回一挙に急にこの九品目というようなものを認可しようという話が出てきた。しかも、A(1)リストに載っていても日本の国としては独自規制をちゃんと行っていて、A(1)リスト三百三十九品目のうち日本で認めているのはたしかいままでは二百二十八品目だと思いますから、そうすると、まだ百十一品目が日本ではA(1)リストに載っていても 使用を認めていないという状況があるわけですね。その中の九品目を今回一挙に解禁にしようと、こういうことは、どう見ても厚生省は姿勢の上で大転換をしたと、こう受けとめられてもこれは仕方のないことではないかと、私、正直素人で、新聞情報などを毎日見ておりましてもそう思います。  ですから、AF2を追放いたしましたときにも、かなりなエネルギーをかけてAF2の使用についてはやめていただいたわけでございますけれども、一品目を認めるにしてもあるいはやめさせるにしても、一品目にこれほどの労力とエネルギー、時間をかけてきているわけですね、日本の食品添加物行政というものは。それが今回、規制の方向で来ていた厚生省が、突然、九品目も一度に認可の方向へ、それもいまから二、三カ月先というわけでしょう。その間に一体どういう手続をとって心配している人たちに説明をなさるおつもりなのか。厚生省の方向転換というのをどう徹底をなさるおつもりなのか。説明をするおつもりなのか。その辺もあわせて伺っておきたいと思うんです。
  113. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては、食品添加物の指定についての従来の基本的な姿勢を変えるというつもりは毛頭ございませんで、従来の基本的な姿勢の中で、環境への変化に多少とも対応をしていくということで考えておるわけでございます。  先ほどちょっと申し上げましたように、合同部会で御結論は九品目についていただいておりますけれども、この後、法律に基づきまして、食品衛生調査会に対する諮問、答申の手続もございますし、ガットの通報の問題もございますし、あるいは使用基準の詰めの問題もございます。その過程でまた関係団体等にも十分御説明をいたしまして、私どもの考えております内容について十分な御理解を得られるように努力をいたしてまいりたいと考えております。
  114. 渡部通子

    渡部通子君 この問題で時間をとれませんので、最後に大臣に伺っておきますが、やっぱりこれ安全性ということは大変な皆さん心配の種でございまして、それはもう添加物が必要な一面があることは私重々承知しておりますけれども、またこれ、不安というものがただごとではないんですね。特に、これほど多くなってまいりますと、相乗効果等も出てまいりますので、そういった意味で、安全を守る、特にいまは急性には出てこなくても、子供の代とか孫の代に対する心配、こういったことに対する手だてを十二分にしていただきたいこと。それから、少なくとも外圧に負けて厚生省が国民の健康をないがしろにしたと言われるような行政があってはならないと思いますので、その点だけ厳しく私ひとつ要求をさしていただきたいと、こう思います。
  115. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先ほど来申し上げておりますように、厚生省は国民の健康を守るということを最大の眼目にしていろんな問題を展開していかなければならない、こういうふうに考えているところでございますし、私は国民の健康を守る上におきまして、いろんなことを考えていかなければならないと思うんです。  毒性の問題、もしも有毒なものがあるならば、これに対しては断固として処置をしなければならないことは当然のことだと思いますし、AF2というような話がありましたときも、いろいろと国会で御議論があったところであります。しかし、同時に、私は今回の中のものでも、たとえば子供さんに、母乳の代替品としてやはり入れておいた方がよろしいというような品目も入っているわけでありまして、そういったものは、やはり積極的に取り組んでいった方がいいのではないか、こう思っておるところであります。  食生活が非常に多様化してきている。多様化してきているが、日本人の食生活はまだまだ全体のカロリー摂取その他からすれば欧米とは違うわけでございますから、そういったことは十分に配慮しながら、いろんな点を進めていくということが必要でありますし、と同時に、広く食生活が国際化してきた、多様化してきたというような点もやはり十分考えて、いたずらなる規制、いたずらなる抑え込みをするというのはやはりふさわしくないことではないかと、こう考えているところであります。私は、食物というものは、人間ですからある程度まで万国共通のものもあるんだろうと、こう思います。ただ、それぞれの国、風土、それぞれによりまして若干ずつ違うところもあります。そうした点を考えながらやっぱりやらなくちゃいかぬのかなと、こう思っておりますが、やはり国民にもそういった国際的な水準になってきているということをわかっていただくということも私は必要なことだろうと、こう思いますし、これはむしろ口で宣伝するよりは、町の中にたくさんあるわけでございますから、そういった形で、十分に御理解をこれから賜るようなことはいろいろとやっていくことが必要ではないだろうかと、こう思いますし、先生の御指摘のようなお考え、また御指摘の点もありますから、その点も十分踏まえながらこれからの厚生行政はやってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  116. 渡部通子

    渡部通子君 大変時間が少なくて残念でございますが、次に小人症問題についても一点伺っておきたいと思うんです。  五十三年に下垂体性小人症の問題を当委員会で私取り上げまして以来、厚生省の方でも大変努力をいただいておりまして、大きな成果が上がってきていることは事実でございます。最近になりまして、ヒト成長ホルモン、これが東京女子医大の鎮目教授、遺伝子工学の手法で大量生産が可能になる、その臨床試験を行ったということが報道されまして、注射を待っている小人症の方たちに大きな朗報となっているようでございます。アメリカでは試験的使用はすでに終了して、早ければことし中には使用許可が出ると、こういう見通しと伺っておりますが、わが国では、人工生産のヒト成長ホルモンが許可を出す時期というめどがございますのでしょうか。
  117. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 御質問の、ヒト成長ホルモンを遺伝子工学的な手法によってつくるという問題につきましては、御指摘のとおり、現在外国ですでに臨床試験中でございます。日本でもスウェーデンから製品を輸入いたしまして、五十七年の四月からすでに臨床試験が行われておる段階でございまして、現在そろそろ最終段階に入ろうかという、いわゆる第二相以下の臨床試験にことしの夏ごろから入れるのじゃないかという予定でございます。現在までのところ、やや抗体が出たりするということで、純度に少し問題があるようでございますけれども、さらにその純度を高めるというようなことで、現在品質の改良が鋭意行われておりまして、そういったことで、いま私どもの予測といたしましてはおおよそ一、二年後には承認申請が可能になるのじゃないかというような見通しでございます。
  118. 渡部通子

    渡部通子君 それは大変な朗報なんですが、この場合、親の会の方たち心配していらっしゃる点が、副作用についての不安、安全性の確認ということでございまして、特に遺伝子の組みかえによる薬品ということでございますからそういう危惧が多いんですけれども、この点、厚生省さん、大丈夫でしょうか。
  119. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、いままでの臨床試験の段階で多少抗体価の上昇、いわゆるアレルギーが起きるような現象が見られたわけでございまして、そういった点も十分踏まえて、先ほど申し上げましたけれども、現在品質改良という面に積極的に取り組んでおるわけでございます。  私どもといたしましては、御指摘のように、薬効に遜色がないという問題が一つ、それから副作用が少ないという、こういう二点の見地から、仮にその承認申請が出てまいりました場合には、十分そういった面からも審査をしてまいりたいというふうに考えております。
  120. 渡部通子

    渡部通子君 大体、そのヒト成長ホルモンの開 発ということで、背を高くするという目的は達成されたと思うんですけれども、患者さんの六〇%の方が悩んでいらっしゃる、第二次性徴がないという大きな悩みでございますね、この課題について研究に取り組む方針がおありかどうか、この点も伺わせていただきたいと思うんですが。
  121. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 私どもの考え方としましては、現在せっかく薬を開発中でございますので、まず優先的にその薬の開発に全力を挙げるというようなことでまいりたいというふうに考えております。
  122. 渡部通子

    渡部通子君 確かにいま男性ホルモンや黄体ホルモン投与というようなことでかなり行われてはいるようでございます。しかし、男子の場合に精子の形成まではたどりつかない、こういう状況と伺っておりますので、この点もあわせてひとつお進めをいただきたい、このお願いでございます。  それで、いろいろこう薬が開発されておりますので、それは大変ありがたいことでございますが、そうするとそちらに頼ってしまって、いままでの脳下垂体を集める努力というものが鈍るのではないか、こういう危惧もございますので、その点もあわせてひとつ啓蒙の方はお願いをしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  123. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 現在、ヒト成長ホルモンの脳下垂体の収集なり何なりにつきましては、先生も御承知と思いますけれども、成長科学協会、そういった団体を通じまして、脳下垂体についてのPRその他一生懸命やっております。まだ、薬といっても開発途中でございますし、現在の段階ではあくまでこういった自然の形での脳下垂体が必要な、また輸入も大いにやらなければいかぬというようなことでございます。その輸入をやるためにはやはり日本としても必要な脳下垂体は収集するという姿勢が必要だと思いますので、そういう意味で努力はしてまいりたいというふうに考えております。
  124. 渡部通子

    渡部通子君 最後に一点希望を申し上げて終わりたいと思うんですけれども、一番この方たちが困っているのが、働き口がないということでございます。これは労働省の問題でございますが、労働省おいでですか。——身障者手帳の交付ですね、これをしていただきたいという希望が非常に多い。まあ背が小さいだけでは身障者ではないと、こういう御意見のようでございますけれども、背が小さいということにおける雇用の機会の縮小というのはえらいことでございまして、ちょっとした軽い身障者よりは、背が小さいということによって採用されないということの方が多い、こういう実態なんです、実情が。だから、この手帳の交付に踏み切っていただけないかどうか。雇用の拡大ということについて労働省にどんなことがお願いできるか。これを最後に伺っておきたいんです。
  125. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 先生いまお尋ねの身体障害者手帳は、労働省ではなくて厚生省の方で所管をされておるわけでございますけれども、いま御指摘の雇用の面の問題は、確かにそうしたハンディキャップを負っている方であり、なかなか就職がむずかしいという面もございます。  それで労働省では、公共職業安定所で手帳を持っている障害者の方、これは登録制度をとっておりますが、同時に、手帳を持たない方でもそうした形でのハンディキャップを負っている方を登録制度をとっておりまして、一般の求職者とは区別して、ケースワーク方式による綿密な職業相談だとか職業紹介をやっております。ですから、手帳を持たれなくてもできるだけ安定所の方で就職のお世話をする、そういう姿勢でやっておりますので、今後もその点をさらに努力していきたいと思っております。
  126. 渡部通子

    渡部通子君 それでは厚生省さんの方に、手帳に関する回答をひとつお願いをいたします。
  127. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) 実は、身体障害者の範囲の問題に関しましては、昨年三月でございますが、身体障害者福祉審議会から答申が出ております。「今後における身体障害者福祉を進めるための総合的方策」という答申でございますが、この答申におきましても、その検討については提言がなされております。  この答申におきましては、小人症の取り扱いに関しましてはこういうように言われております。「小人症等、社会的不利を有するもの一般を身体障害者の範囲に含めるべしとする意見もあるが、これらについては一般的に身体障害者として取扱うべきものではなく、個別的に障害の程度によって施策の対象とすることが適当であろう」と、こういうように述べられているわけでございます。しかしながら、小人症の中には、神経症状や骨関節症状による身体障害を伴う場合もございますので、そのような場合には身体障害者手帳の交付も可能でございます。  私どもといたしましては、答申の趣旨を踏まえつつ、個別の障害に応じて施策の対象とすること等の可否について、さらに検討をしてまいりたいと考えているところでございます。
  128. 渡部通子

    渡部通子君 終わります。
  129. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 わが国の高齢化は諸外国の四倍の速さで進んでいると、こういうように言われておりますけれども、このまま進んでいきますと、高齢化から高齢社会に到達するのには、もう十二、三年後にはそういう時期が来てしまうんじゃないかと、こう思うわけですけれども、この高齢化に拍車をかけているのは、何といってもこれはやっぱり出生率の低下ではなかろうかと、こう思うわけです。わが国の場合、昭和四十一年のひのえうま以来、言うなれば、もう万年ひのえうま的出生率の横ばいが続いているわけですけれども、これにはいろいろな複合的な理由があると思うんです。しかし、やはり国家百年の大計から見ても、このまま成り行きに任せるというわけにはいかないし、かといって、かつてのような産めよふやせよというわけにもいかない。こういう現状と将来の展望を、大臣、どのようにごらんになっておられますか。
  130. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 高齢化社会になっていくのにつきまして、もう少し産めよふやせよをやったらどうかという御議論もあると思います、世の中には。私はそうは思わない。やはり自然な形で子供が生まれていくのが望ましいし、また人間は、生まれたならばやっぱり健康で一生を過ごして、できるだけ長く生命を保つというのが私は一番いいのではないだろうかと、こう思うんです。余り人為的に何かを抑えたり何かを促進したりするというのはどうも問題があるのではないだろうかなと、こう思いますから、現在持っているところの科学、その他のものによりまして、いま申しましたような人口構成になっていくということは、私は非常に望ましいことだと思っております。  ただ、御指摘のような高齢化社会になってくる、人間社会がだんだん年寄りがふえてきて活力を失うというような問題もありますが、それは要件として考えていく、その上でどういうふうな形の社会をその中につくり上げていくかということを考えるのが私は政治家の役割りではないだろうか、こういうふうに思っておるところでございます。
  131. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私は、どんどん産むべきだと言うわけじゃないんですけれども、このままいけば本当にだんだん人口は減少していく。こういうことはやっぱり世界の歴史の上から見てもこれは好ましいことではない。こういう現況から見て将来展望を、これは一過的なものであると、こういうように思われるのか、そこらをお聞きしたかったんです。
  132. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 人間社会がどういうふうになっていくか。先ほど申しましたようにだんだん老齢化していくとかいうようなことは一般的に言えるかと思いますが、出生率というのはいま相当落ちてきておりますが、落ちてきているけれどもまた少し上がってくるんじゃないかと、こういうふうなことも言われておりますし、一般的に考えるならば落ちてきているのが上がっていくというふうに考えた方が私は自然ではないだろうかと、こう思うんです。だから、めちゃくちゃに上げていくなどということをやるということは、ど うも私は余りとるべき話ではないんじゃないかなと、こう思っておるところでございます。
  133. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そういうことからというわけでもないでしょうけれどもわが国では依然としてピルの使用については規制がなされている。これについて、先ほどの食品添加物の規制の緩和ということもあっておりますけれども、それとこれとは別でしょうけれども、将来の方向としてはどういうようにお考えですか。
  134. 持永和見

    政府委員(持永和見君) お話しのように、現在ピルはいわゆる避妊の薬としては認可をしていないわけでございます。と申しますのは、現在のピルというのは、日本の場合にまだまだ副作用の問題がいろいろございまして、そういう意味で問題があるということで認可しておらないわけでございますが、ただ、諸外国その他では認可をしておりますけれども、最近ピルについていろいろと、そういった品質改良面なんかでもいろんな研究が行われておるというふうに私ども聞いてはおります。聞いておりますけれども、現在の段階では、やはり長い期間服用いたしますと女体にいろいろと副作用があるというようなことでございまして、そういう意味で現在の段階では認可をしていないという状況でございます。
  135. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では次に、老健法についてお尋ねいたします。  老人保健法ができてからまだ日が浅いわけですけれども、先ほど午前中の質問でも出されておりました、去る三月にある新聞が社説で取り上げておりましたように方々の病院で老人が追い出されている。表向きは、単に家庭の事情による入院というのはできる限りお断りするという老健法の趣旨によると、こう言われておりますけれども、その本音というか、その実態は、どちらかといえば入院患者に占める老人の比率とこれによって特例許可外老人病院にされるなど不利な点が出てくる、そういうようにならないためにという病院側の思惑ではないかというようなことが言われておりますけれども、いかがでしょうか。
  136. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 今度の老人の診療報酬の考え方は、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、老人の医療というものを、投薬や検査、点滴などよりも、できるだけ生活指導を重視したものに変えていく。もう一つが、入院での医療より地域や在宅での医療に転換をしていく、こういう考え方に立っているわけでございます。  これは、一つは、従来の老人医療実態というものを率直に見た場合に、投薬や検査、点滴が非常に過剰に行われていた面があるということと、もう一つが、率直に言いまして、本当はもう入院治療の必要はないのに、家庭の事情その他でもう少し病院に置いておいた方がいいといいますか、楽といいますか、そういうことがありまして入院をしておられたような御老人の方もいらっしゃったんじゃないかと私は思います。やはりこれからの時代を考えますと、そういったことではなしに、あくまでも入院治療というものが必要な方については病院で治療をしていただくということですけれども、もうその必要がなくなった方には家庭に帰っていただく。あるいは地域に帰っていただく。家庭でお世話が無理であれば特別養護老人ホームに入っていただくというようなことでなければならないと思います。  そういった考え方で診療報酬を決めておりますので、場合によっては、そういう入院治療の必要がない方が退院を言われるということは間々あろうかと思いますけれども、いま申しましたように、決して、入院治療が必要な方に退院を強いる、あるいは入院を拒むということがあってはならないと思います。単に、老人の収容比率が六割を超えると特例老人病院取り扱いになるからというような理由であるとか、あるいは診療報酬、収入が下がるからというようなことで、医療機関なり医師がもしそういうようなことをやられるとすれば、本来あってはならない、ありようはずがないことと思いますけれども、私は大変残念なことと思いますし、十分この新しい診療報酬趣旨というものを正しく理解をされていない面が率直に言ってあったんじゃないかと思います。診療報酬を決めましてから施行までに期間が短かったものですから、何といいますか、私どものPRの不足、周知の不足ということもあったんじゃないかと思いますので、その点はいま鋭意県を通じて正しい理解をしていただいて、医療機関にも正しい対応をしていただくようにお願いをしております。
  137. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、この老健法の各種保健事業の中の健康診査についてお尋ねいたしますけれども、各市町村ではその体制は、これが施行されるまで五カ月というような短い期間でもありますし、そういったような準備期間等が短かったというようなこともありますし、ほとんどできていないのが現状じゃないかと思うんです。特に大都市ではこの事業を円滑に推進していくということはきわめて困難じゃないかと思うんですが、現実にいかがでしょうか。
  138. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) この保健事業の実施体制でございますが、これは法律御審議の際にも申し上げましたように、いまの時点で完全かと言われますと、完全な体制はできていないわけでございまして、約五年ほどの期間をかけて体制を整備しながら事業を拡大をしていくという考え方をとっているわけでございます。  それで、すでにこの二月から事業の実施が始まっているわけですけれども、率直に言いまして、五十七年度は二月実施ということでございましたので、年度として見たら、私はまだ保健事業というものは、全国的に本格的に始まったとは言えないのではないかと思います。むしろ、五十七年度、五十八年度を通じまして、いわば十四カ月事業として、五十七年度—五十八年度を初年度として各市町村が本格的に取り組みを始めるというようなのが実態でないかと思いますので、今後の市町村の、あるいは都道府県の対応の状況、体制の整備の様子等を十分見守って必要ならばまた援助をしてまいりたいと、こういうふうに思っているわけでございます。
  139. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 ところで、この健康診査に対する日本医師会の方針がこの前発表になっておりましたけれども、いわゆる市町村との契約は地区医師会との一括契約方式として、精密検査を医療機関で実施する場合、基準で認めている項目以外の検査が必要であるとする場合は、医療保険もしくは老健法による医療給付として実施する、こういうことが打ち出されておりますが、これは見ようによっては健康診査は医療への動機づけ、つまり、予防措置であるべき健康診査がいわば病人づくりの引き金になっていくんじゃないか。こういうようなことになってくると、ますます医療費を膨張させるという結果になりかねない、こういうような懸念もあるわけでございますが、いかがでしょうか。
  140. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) あるいは御質問を少し取り違えておるかもしれませんが、保健事業のやり方につきまして、市町村が各医師会とやり方についての委託契約でございますか、そういったものを結んでやっているということは聞いております。その委託契約のひな形のようなものを日本医師会が各県の医師会に示しているというようなことも承知をしておりますが、いまおっしゃったようなことは必ずしもその契約の中に入っているようでもございませんで、保健事業の実施のやり方についての、何か、商法の取り決めのひな形を示しているというふうに聞いているわけでございます。その契約、ひな形に沿ってやるかどうかは各市町村の判断にゆだねているわけでございまして、必ずしも、日本医師会なり各県の医師会が示した契約書どおり各市町村が実際問題としてもやっているわけではないようでございます。  それから、保健事案の考え方ですけれども、保健事業というのは、あくまでも健診は健診でございまして、医療ではございません。健診の結果医療が必要な人については健康保険の事業あるいは老人保健法の医療としての給付が行われるわけでございまして、その辺の区別はきちんと実際上もされていると思います。  それから、やはり健診のねらいというのは、いまもちょっとお話しございましたけれども、病気の掘り起こし、それがねらいではございませんで、あくまでも病気の予防と早期発見ということでございますので、その趣旨に沿った事業というものを私はやっていただきたい、医師会にもそういったことで協力をしていただきたい、こういうふうに思っております。
  141. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私がお聞きしたいのは、そういうようなことで、いまお答えになったように、決して、これが病人づくりの引き金になるようなことであってはいけない。そこで、この健康診査というものはやはり指導だとかあるいは相談が確実に機能する、フォローを前提としたものでなければいけない、こう思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  142. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) おっしゃるとおりでございまして、健康診査というのは、何もレントゲンを撮って、あるいはいろいろな血液とか尿の検査をして、その検査値を出して相手に知らせるということだけが健康診査じゃございませんで、あくまでもその検査結果に基づいて、健康診査を受けた人を十分生活指導をする、健康管理についての指導をするということが大事。しかもその指導が自後継続的にフォローアップして行われるということが非常に大事でございますので、そういうやり方でひとつ健診をやってもらいたい。いまおっしゃいましたように、フォローアップというものと、それから一つは健康診査の制度管理でございますね。制度管理とフォローアップ。しかもそれをずっと生涯続けてデータを管理してフォローアップしていくというようなことが健康診査については私は非常に大事なことなんじゃないかというふうは思っております。
  143. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、フォローアップしていくというこの役割りの主役になるのがいわゆる保健婦さんですけれども、現在、この保健事業を進めていく上でどのくらいの保健婦さんを必要とし、いまどのくらい不足しておりますか。
  144. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 老人保健事業の中心的役割りを果たしていただくのは保健婦さんであるわけですが、この保健婦さんは、私ども五カ年間に、つまり昭和六十一年度までに八千人を確保しようと、こういうことで五カ年計画を立てておるわけでございまして、現在全国に、保健所、市町村を合わせまして一万五千名の保健婦さんがおりますが、このうちの二千名を老人に振り分けて、それから新規に三千名、それから雇い上げの保健婦さんを三千名、合わせて八千名と、これだけの方で、まず五カ年間その目標に向かってやっていこうと、こういうことで計画をしておるわけでございます。
  145. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それと、これはもう小さな問題ですけれども、老人保健加入者必携という健康手帳、これがありますね。この手帳の内容について、いろいろ記入事項がありますけれども、この記入は、本人または家族が記入するということになっておりますが、記入するその内容がなかなか専門的なむずかしいことではないかと思うんです。たとえば、赤血球の数値だとか、ヘモグロビンの数値だとか、総ピリルビンの数値等を書くようになっておりますけれども、果たして七十歳以上のお年寄りの人たちがこういうものを書けるかどうか、ここいら非常に疑問ですが、いかがでしょうか。
  146. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 確かに健康手帳、健康診査を受けた場合のいろんなデータを記録をする、その記録は原則として本人または家族が書く、記入をするということになっておりますが、健康手帳の表紙にもはっきり書いておりますけれども、記入の仕方がわからないときには、担当者、つまり実際に健診を担当したお医者さんなり保健婦さんということなんですが、担当者によく聞いて記入するか、または担当者の方に直接記入をしてもらってくださいということを書いております。したがいまして、いまおっしゃったような、赤血球の数だとか、ヘマトクリットだとか、へモグロビンだとか、大変むずかしい、専門的な検査の結果を書く欄がございますけれども、やはりこういった欄は、私はできるだけ健診をした人、それから保健婦さんなりに書いていただきたいというふうに思っておりますし、実際にもそういうことになっていると思います。  ただ、健康手帳、いろいろなことを書くことになっておりますが、全部お医者さんということになりますと、これまたお医者さんも大変だ、本人なり家族で書ける部分は書いてもらいたいというのが、関係団体関係者の御意見でもございましたのでこういうふうにしたわけですけれども、お年寄りの方とか、むずかしい検査のデータなどは、これはやはり直接本人というのは無理だと思いますので、保健婦さんなり何なりにごめんどうでも書いていただきたいと、そういうふうにお願いをしたいと思います。
  147. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 現実には、保健婦さんの数も足りないし、かといってなかなかお医者さんも書きたがらないといったようなこと等々で、非常に計画というものはりっぱですけれども、当分はなかなかうまくはいかないんじゃないかというような懸念があるわけですけれども、ひとつこういう点については、せっかくいろいろ御検討をお願いしたいと思います。  次に、もう時間もありませんが、地方自治体における老人保健の医療の所管についてでありますけれども、たとえば、中央でも公衆衛生局老人保健部がこれは所管していると思いますが、これから見ても、やはり府県段階でもその流れに沿うのがこれは常道ではないかと思います。ところが、大阪府だとか大阪市、あるいは群馬、長野、三重と、こういう県、市では国保の担当課が主管いたしております。これらの中には老人福祉課という老人医療を主管していた課もあるのに、なぜ国保課が主管しなければならないのか。つまり老人保健は、各種医療保健から切り離して、別建てとして資金を持ち寄って実施するというその趣旨から考えた場合、同じ保険者である国保とこんなに密着したのでは、公正さに疑念が持たれてもこれはいたし方ないんじゃないかと、こういうように思うわけですけれども厚生省の今後こうした自治体に対する指導というか、そういう方針をお聞きしたいと思います。
  148. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 老人保健法を施行するための県の体制、組織のあり方につきましては、私ども、考え方としては、予防と医療、保健事業医療というものを一体的、一元的に進めていくという立場から、一つのところで総合的に所管をするのがいいという考え方をお示ししておりますけれども、ただ、実際にそれぞれの都道府県で、どういう組織なり機構でやっていくかということにつきましては、それぞれの県の御判断に最終的には私はゆだねていいんじゃないかというふうに思っているわけです。  実際に私どものお願いしております線に沿って、衛生部が一元的にやっているところが全体としては少し多いようでございますけれども、実際問題として、いままで医療というものを民生部系統でやっておりましたので、医療は民生部、それから予防とかヘルスの面は衛生部というところで分けて所管をしているというところも現実にかなりございます。それはやはり私は絶対にいかぬとは言えない。現実にそういう進め方が一番効果が上がる、いいということであれば、それはそれでいいんじゃないかと思います。ただ、両者の連絡といいますか、連携というものは、十分とりながらやっていただきたいということをお願いしているわけでございます。  民生部で所管をする場合に、一体どこの課がいいかというのは、これはやはりそれぞれの県の御判断だろうと思います。実際を見てみますと、国保課あり、いまおっしゃいました老人福祉課、そういったところで所管をしているところが多いようでございますが、私は、大阪、三重、長野、そういった府県が国保課で所管をしているようでございますけれども、必ずしも国保課が悪いとも言い切れないんじゃないかと思います。老人保健法の医療の実施主体が市町村でございますし、国保 も、御案内のとおり、市町村が保険者になってやっているわけですから、国保の中にはヘルスの事業も国保の保健施設事業としてやっている、恐らくそういったことを考えて老人保健の仕事も国保課でやった方がいいんじゃないかと、うまくいくんじゃないかという判断で県はやっているんじゃないかと思いますが、それならそれで、私はいかぬとも言い切れないのじゃないかと思います。  あくまでもやはりそれぞれの県の判断で、一番老人保健がうまく運営できるようなやり方でやって進めていただきたいというふうに言っているわけでございます。
  149. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 終わります。
  150. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 本日は、産業廃棄物処理行政について幾つか質問をいたしたいと思います。  そこで、京都府中央部の船井郡瑞穂町、ここに京都の大企業約四十社が出資する京都環境保全公社、これが産業廃棄物の最終処分場を建設する計画を持ち、約四年ほど前から住民との間に深刻な対立が続いているわけであります。幾つかの論争点がありますが、事業主の方は国の基準どおりにやっていると言い、住民側は国の基準から外れていると主張をしている。こうした点で、以下幾つかの点をお尋ねをしたいと思うわけであります。  まず一つは、建設予定の施設が管理型の産業廃棄物処理場とされ、いわゆるしゃ水が完全に行われるかどうかが最大の問題であります。  そこで厚生省、法令、規則、通達ではどのような場合にしゃ水工が施されなければならないと定めておるのか、まず御説明を願いたい。
  151. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) しゃ水工は、廃棄物に起因します、廃棄物に含まれる水でありますとか雨水等によりまして、河川等の公共用水域かあるいは地下水が汚染されるおそれのある場合に、その汚染を防止するための幾つかの措置の一つとして講じられるものでございます。  しゃ水工の必要性があるかないかという判断は、一般に埋め立て処分をいたします廃棄物の性状でありますとか、埋立地の地形、あるいは土壌等の地盤の状況、あるいは地下水との関係、雨水等の排水能力等いろいろ総合的に勘案しまして判断をすべきものであるということになっております。
  152. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 解説的にいろいろ説明をされておるわけでありますが、具体的には、昭和五十二年三月十四日の総理府・厚生省令第一号、これと昭和五十三年二月四日の環境庁と厚生省の共同による各部道府県・政令市廃棄物主管部長あての通知、ここで定めているわけですね。
  153. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) そのとおりでございます。
  154. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、これらの法令、通知、そこで定めておりますしゃ水工を施すべきかどうかという判断に非常に重要な基礎になってきますのが、いわゆる不透水層とは何かと、こういう問題だと思うんですけれども、いまの命令及び通知、ここでは不透水層についてはどういう判断の目安を出しているんですか。
  155. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) 不透水層といいますのは、文字どおり水を通さない層ということでございますが、若干むずかしく言いますと、水理学上、土壌の中で水の移動が行われにくい状況を言っておるものでございまして、それが不透水層であるかどうかは透水係数等の土壌、岩の性状を示す指標がございますが、それが有力な一つの判断要素となり得るものでございます。そのほか埋立地と公共用水域あるいは地下水との距離でありますとか、地形条件等を総合的に判断をいたしまして、不透水層であるかどうかということを判断いたしておるところでございます。
  156. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまも、透水係数、これが判断の重要な目安の一つと言われているわけでありますが、そこで、その問題についてでありますけれども、土木工学の常識では、この透水性の問題についてはテルツアギの分類、これが採用されておって、いわゆる透水係数が十のマイナス七乗以下、これを不透水層としております。また、アメリカの開発局の分類でも、十のマイナス六乗センチメートル・パー・セカンド、これ以下をもって不透水層というふうに分類をしているわけでありますけれども、これらのことは、環境庁が昭和五十二年度に委託調査を行いました、社団法人日本廃棄物対策協会、ここの出しております「埋立処分地構造基準設定調査報告書」、昭和五十三年三月の報告書でありますが、ここにもいま触れた点は報告をされている点であります。さらに、この報告書の二百六ページ、ここに、透水係数十のマイナス五乗ないしマイナス六乗センチメートル・パー・セカンド、これ以下になるようにしゃ水を行うことが義務づけられている、というふうに明記をしているわけですけれども、環境庁、そういうことですね。
  157. 三本木健治

    説明員(三本木健治君) お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のありました調査報告書、確かに五十二年度に環境庁において委託調査という形で行っております。この中にございます、「しゃ水工を行うことが義務づけられており、」とございますが、これは現実にはそのような明確な基準が制定されたものではございません。この報告書全体としまして、そういった外国の知見をもとに調査を行ったものでございまして、この点につきましては、不正確な記述ではないかと私ども思っております。
  158. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この透水係数が十のマイナス五乗ないし十のマイナス六乗センチメートル・パー・セック以下ということが法令、規則、通知、そういったものできちっと明文化されておる、明文化をした形で義務づけられておる、そこまでは言えなくても、このことが判断の重要な目安の一つであるということは、そういうことですね。
  159. 三本木健治

    説明員(三本木健治君) 先生指摘のように、この数値につきましてはあくまで技術的指導のための一つの目安でございまして、明示された基準とはなっておりません。
  160. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、京都で問題になっております、瑞穂町に建設予定の処理場、ここにおける調査でありますが、地面下十五メートルないし二十メートル、そこにおける透水係数が十のマイナス五乗センチメートル・パー・セックを上回っていて、ルジオン値については、低いところでも一ないし五ルジオン、場合によっては五ないし十ルジオン、さらにそれを上回るところがあると、こういう調査結果になっているわけでありますけれども、径四十ないし八十ミリのボーリング孔の場合、一ルジオンというのはほぼ十のマイナス五乗センチメートル・パー・セックの透水係数にも相当すると、こう言われているわけでありますから、ルジオン値が十を超えるということは、これは透水係数が先ほどの十倍、十のマイナス四乗センチメートル・パー・セック、これを上回ると、こうなって透水性の高い地盤だと、こういうことになると思うんです。したがって、京都における事業主の方もさすがに、不透水層とは言い得ないで難透水層と、こういう表現を使っているわけであります。  それから、もう一つのこの判断の問題でありますけれども、現地の地質の調査を担当された京都教育大学の川端博教授、これは河川学の専門家でありますが、この方によりますと、断層破砕帯が複雑に存在していること、ボーリングテストによる地下水位を見ますと、短い区間で種々の流路、水位を持つ地下水が存在している、いわゆる裂罅水脈、これであるという指摘が行われているわけであります。  こうした点を踏まえて、本当に住民の生命と健康を守る、そのために万全の対策が講ぜられるべく十分な調査、科学的な調査を行うということがまず何にも増して重要になると思うわけでありますけれども、すなわち、いまも指摘しましたように、一つは地下水についての調査、流向、流量、流速、こういった総合的な調査それから二つ目には基礎岩盤についての断層の性状、規模、これがどうかということについての入念な調査、こういうものがまず前提として必要だというふうに思うわけでありますけれども、こうした点、厚生省ないし環境庁、それぞれ御意見どうでしょう。
  161. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) 埋立地に起因しまして地下水が汚れるようなことがあってはならないというのが廃棄物処理法の精神でもございますし、御指摘の、地下水の調査、あるいは岩盤の性状、あるいは断層の問題等については、当然に調査に含まれてしかるべきと考えます。  現在裁判で係争中でございますが、京都府当局から聞いたところによりますと、専門家による相応の調査をし、技術的には支障がないというような報告を受けておりまして、京都府は当然にそういうセンターの処分施設に対して審査を行うわけでありますが、そういうチェックの結果、支障はないというような報告を受けておるところでございますが、一通りのことはやられておるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  162. 三本木健治

    説明員(三本木健治君) 環境庁におきましては、現地の状況は詳細に把握しておりませんので、ただいま厚生省のお話しいただいたことで御了解いただきたいと思います。
  163. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 厚生省の方は、京都府の方が十分な調査をやっておるのじゃないかというふうに理解をしておると、こういうお話であるし、環境庁の方は、余り詳しく具体的には知らぬと、こういうお話でありますけれども、果たしてこういうことを御存じかということでなお指摘をしておきたいというふうに思います。  このいま京都で問題になっておるそこのところでありますけれども、六・九ヘクタール、この非常に広大な土地の地下水の実態把握するのに、たった五本のボーリング調査しかしていないという状況でありまして、こういうことで果たして入念、科学的な調査と言い得るのか。それから二つ目に、ダムサイトに断層が走っていることを事業者も認めているわけでありますけれども、しかし、果たしてその断層の規模、そうしてその性格が活断層であるかどうか、こういうこともはっきりしないまま事が進められようとしているという状況。それからさっきもちょっと触れましたが、この断層やあるいは破砕帯、これがある場合地下水が地形と無関係な非常に複雑な流れ方をすることが多いというのは、これはそういう専門家の指摘をする常識でありますけれども、こういった点についても点検がなされていない。  いずれにしても、現地は由良川水系の土師川の支流で猪鼻川の上流の地域でありますが、その水は上水道、農業用水、そういうものにも広く利用されておって、三和町だけでも上水道の給水人口は町全体の過半数、農業用水の水田利用面積は町全体の三分の一、こういう状況で、もし万一重金属等有害物質、これが漏れているというようなことになればこれは事は重大で、そういう意味で万一のことが起こらないような十分な事前調査、これが必要だというふうに思うんです。  環境庁の方は余り詳しく知らぬということですから、ひとつ私の指摘した点をよく念頭に置いて、今後そういう環境汚染が起こらないよう入念な指導なり見守りをしていただきたいと思うんですけれども厚生省の方は大体やっておるはずです、京都の方が入念にやっておるはずですという答弁をなさっているんですけれども、私がいま指摘をしたようなこういうことは御存じでしょうか。
  164. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) 現在係争中の課題の一つとして、そういうことがあるということは承知いたしております。
  165. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そういう係争中の課題、論争点になっているということは承知をしていると。しかし、そういうことが論争点になっているそのままに、しかし入念な調査をやって、事が進められておるはずだというふうに思われますか。
  166. 山村勝美

    説明員(山村勝美君) 京都府が専門委員会を設けて専門家の判断でやられておることでございますし、そういった経過から見ますと、報告から見ますと、技術的には問題はないのではないかというふうに考えておるところでございます。  なお、たとえばダムサイトを掘った段階でさらに地盤をよく見まして、必要があれば所要の手を打つというようなことも言っておりますので、そういうことも含めて問題がないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  167. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 必要とあれば手を打つという、まさにその必要がこの具体的事実をもって浮かび上がってきているんじゃないかということで私は問題を提起をしておるつもりなんですけれども、そうした点で、国の意見も聞きながら京都府が進めた、しかし、にもかかわらず、万が一という不測の事態が発生をしたという場合の責任は、後から後の祭りでいろいろ論じても始まらぬわけですから、ぜひその点よく注意をしてもらう必要があるということを重ねて強調をしておきたいと思うわけです。  余り時間がありませんので、さらにもう一つの角度からの問題に移ります。  次に、重金属を含む廃棄物の規制に関して、溶出試験というものを国は定めている。試験とその基準を定めているわけですけれども、これについて、今日各方面からいろいろと疑問が出されているわけであります。たとえばその一つに、奈良市が委託をしました「南部土地改良清美事業計画に関する環境保全対策の検討」という昭和五十年九月三十日に出されておる報告書、いわゆるプランド報告と言われるものでありますけれども、この中では、たとえばカドミウムについて、環境庁告示方法の十八・四倍から五十八・三倍、これに至る非常に高い結果が出ているという報告がこの報告書の中にあるわけでありますし、また、広島地裁も、昭和五十七年三月三十一日の判決で、この「環境庁告示に定める検出方法による検定の結果だけでは不十分」だというふうにはっきり判示をしているわけであります。したがって、現行の判定基準に合致したからといって決して、無害だというふうに断定し切れるかどうか、いろいろ議論を呼んでいるところであります。  さらに神戸市、ここが昭和五十三年の八月、「重金属等を含む産業廃棄物の適正処理に関する要綱」、これを定めているのでありますが、その中において、国の定めている基準を上回るより厳しい規制基準、すなわち、一つは、国の基準にはないマンガン、銅、亜鉛、これについても独自の基準を定めていること。それから二つ目には、国の定める溶出基準に合格をしても、有害物質の含有量が一定量を上回るものについては、その埋め立て方法について独自の規制をこの神戸市の要綱は定めているわけであります。  以上述べましたように、各方面からのいろいろ批判が提出をされておる問題でありますから、したがって、現行の溶出試験、これについては問題があり、改善をすべきであろうというふうに私は思うわけですが、環境庁どうですか。
  168. 三本木健治

    説明員(三本木健治君) お答え申し上げます。  先生指摘の、現行の基準といたしましては、昭和四十八年二月十七日環境庁告示第十三号によりまして、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法を定めたものがございます。  一般に産業廃棄物の溶出試験におきましては、試料を水素イオン濃度指数五・八から六・三の間に調整いたしました溶媒に重量体積比一〇%の割合で混合いたしまして、六時間の連続振とうを行うこととなっておりますが、この場合のpHの値は、自然に存する陸水におおむね合わせたものでございます。この試験の意図しておりますところは、通常は弱酸性を呈しております降雨によりまして浸出した物質がどのように変化するかということをいわば実験室で再現するわけでございますので、その結果、試料の影響自体を一定期間フォローするということを主眼といたしております。したがいまして、振とう中の混合液のpH濃度を連続して一定とすることによりまして浸出を連続して行うという判定の方法とは考え方が異なるわけでございます。  先生指摘のような考え方もあるようでございますけれども、私どもとしまして採用いたしましたものは、そういった自然の降雨によってどのようにその浸出液が変わっていくかということを再現するためのものでございますので、若干趣旨を 異にいたしております。
  169. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私が提起をした例は、直ちにそのことについて環境庁として同じ意見かということで性急に答えを求めているわけじゃないですけれども、しかし、いやしくも地方自治体が、この奈良市の場合には委託調査であるし、神戸市はみずからの決めた廃棄物についての規制要綱、この中でいやしくも地方自治体が正式に決めるからには、いろいろ専門家の意見も求めてよく議論もし研究をした末そういう結論に到達をしておるということだと思うんですよ。また、地方裁判所もそういう判断を示しているということで、いずれにしてもいまの環境庁告示に基づく溶出試験、その基準、これについてはやっぱり見直しをすべきかどうかということについての検討ぐらいはやってしかるべきですわな。  それで、環境庁としてすでに多少の検討は始めているわけでしょう、若干の。ということで、私が言っているのは、こういう奈良市なり神戸市なり広島地裁なりと、こういうことも言われている時期であるので、一遍よく虚心にこの基準についての見直しを開始すべきじゃないかということで尋ねておるわけですから、三つ挙げた例についてこれと同じ意見かと、それを性急に答えを求めているわけではない。見直しをすべきじゃないかと言っておるのですから、それは当然そういう検討をやってしかるべきじゃないですか。
  170. 三本木健治

    説明員(三本木健治君) ただいま御指摘の点につきましては、内々その作業条件等の改善についての検討は進めております。  将来の課題といたしまして、そういった御指摘の点も十分念頭に置きまして研究を進めてまいりたいと考えております。
  171. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは最後にお尋ねをしますが、私、本日二つの角度、一つはいわゆるしゃ水工、有害物質が漏れ出ないようしゃ水工をどういうふうに施すかというその基準、考え方、この問題、それともう一つは、溶出試験という形での規制基準、こういう角度からいろいろ質問をしてきたわけです。  もとより私も、産業廃棄物処理場、こんなものはやめておけとか、そういう乱暴なことを言うわけじゃない。その必要なこと、これは否定をするものではありませんけれども、しかし同時に、それがいかに適切な場所に公害の心配のないような万全の事前の対策を施してこの建設がやられるか、またこの管理運営がされていくかという、このことが大事だと、こういうことでいろいろ意見を述べ質問をしてきたわけであります。そうでありませんと、住民と事業者の間で不幸な対立、これが結局は解消されないということになるわけであります。京都府の瑞穂町に予定されておる、きょう具体的に提起をしておる問題で言えば、事業者側が住民との話し合いを拒否をしたり、科学者からの具体的な疑問点の指摘、これを無視して工事を強行した、そのことによって裁判にまでなってきているという、こういう対立を生んでいるわけでありまして、まことに遺憾なことだというふうに言わざるを得ないわけであります。  しかし、ようやく最近になって事業者側の方がなお一層の事前調査の余地を認めるような提案を住民側に行ってきていると、こういう動きも生まれてきているわけでありますが、そうした点でお尋ねをしますと、とかく裁判の案件になっているようなことについてはできるだけ国としては口を差し挟まないというたてまえになっているわけですけれども、いまもう一遍事前調査、いろいろな住民側、科学者の側の指摘に基づいてひとつそれを考えてみようかという兆しも出だしておるこの時期でありますので、適切な形で必要な国としての事が円満に進むこの目的のために指導助言、こういうことをひとつやっていただく必要があるのじゃないかというふうに私は思いますし、そういう可能なイニシアチブをぜひ国としてとってほしいということでずっと大臣にお聞きを願っておったわけですけれども、最後にその点、ひとつ大臣といいますか国としてのそういうイニシアチブを期待をしてお尋ねをしたいと思いますが、どうでしょう。
  172. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 話をずっと聞いておりまして、なかなかむずかしい問題だなというのを率直に印象として持ったわけでございます。私も話を聞いておりまして、しゃ水工の話であるとか不透水層の問題であるとか、これなかなかむずかしい問題がたくさんあるんだなと、そういった点も実際問題としてどういうふうな測定をしてやったらいいかとかどうだとかというのは、なかなか私はむずかしい問題だろうという印象でございますし、こういったものをつくるときには、一応学問的にこんなところでやったらいいだろうというような話もあるんでしょうけれども、それでは果たして国がそこまで入っていってそれでもって何か一つの基準につくるとかなんとかという話になると、これはまたもう大変にむずかしい議論がそのこと自体でも出てくるのではないかなという感じを持ったわけでございます。  ただ、いま御指摘の瑞穂環境保全センター最終処分場の建設につきましては、京都の地方裁判所において係争中の事件でもございますから、私の方としては関心を持ってその動向を見守りたい、こういうふうなことでございます。せっかくの話でございますから、いろいろな住民と京都府との間で、京都府の方も、恐らく住民のいろんな御意見は話を聞いておられるんだろうと思いますが、もしも円満な解決を図られるようなために必要なことがあれば、その場合には改めて京都府の方にも指導をしてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  173. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと、もう一点。  いずれにしましても、関係者といいますか、事業主と住民の側でよく話をする、よく話し合いをして、納得ずくで意見の一致を図って事を進めていく、このことが大事なんですね、紛争をエスカレートさせないためにも。そういう意味で、国として、私も言っているように、なかなか介入的なそういうことは避けたいというここの立場の問題もあるでしょう。しかし、よく事業主と住民との間で話し合って問題の解決を図っていくという、このことについて国がいろいろ必要な助言指導をすることについて、それは別に干渉になるわけじゃないですわね。だから、そういう点についてイニシアチブを国として今後ひとつやってもらいたいというふうに思うわけでありますけれども、重ねてその点をお尋ねをしておきます。
  174. 林義郎

    国務大臣林義郎君) お答えいたします。  この問題につきましては、大分前から厚生省としても、住民への対応についてできるだけ誠意を持って対処するように進めておったところではございますが、やはり言うなれば民事の問題であるし、お互いが話し合いができないから恐らく地方裁判所の方において裁判で決着をしよう、こういうことになったんだろうと、こう思うわけでございまして、その辺の判断にもまたなくちゃしようがないのではないか。非常に遺憾なことであるけれども、そういったことにまたざるを得ないのではないだろうか、こういうふうに思っているところでございます。
  175. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 時間ですから、終わります。
  176. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  177. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。林厚生大臣
  178. 林義郎

    国務大臣林義郎君) ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  戦傷病者、戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、各種の援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところでありますが、今回、平病死に係る遺族年金及び遺族給与金の改善を行うとともに、国債の最終償還を終えた 戦没者の妻及び父母等に対し改めて特別給付金を支給するなど、所要の改善を行うこととし、関係の法律を改正しようとするものであります。  以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。これは、恩給法の傷病者遺族特別年金に遺族加算を行うことに伴い、同様の給付である平病死に係る遺族年金、遺族給与金についても、これと同様の加算を行うものであります。  第二は、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、継続分の国債の最終償還を終えた戦没者等の妻に対し、特別給付金として、百二十万円、十年償還の無利子の国債を改めて支給すること等の改善を行うものであります。  第三は、戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、再継続分の国債の最終償還を終えた戦没者の父母等に対し特別給付金として、六十万円、五年償還の無利子の国債を改めて支給すること等の改善を行うものであります。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
  179. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ─────────────
  180. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 次に、戦時災害援護法案公衆浴場法の一部を改正する法律案及び市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  三案について、それぞれ発議者から趣旨説明を聴取いたします。渡部通子君。
  181. 渡部通子

    渡部通子君 私は、ただいま議題となりました戦時災害援護法案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、無党派クラブ及び新政クラブを代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。  すでに戦後三十七年を経て、あの忌まわしい戦争への記憶が一段と風化しつつある中で、なお、戦争の傷跡が生活を圧迫し、生命と健康を失った多くの一般戦災者が、いまなお国から何らの援護を受けることなく、戦争犠牲者として、傷病苦と生活苦はあえぎながら余命をつないでいる現実を放置することはできません。  私は、これら戦災者の心情と、報われることなく高齢で亡くなられる方々の続出する日々に思いをいたすとき、援護の手が一刻も早く差し伸べられる必要を痛感せざるを得ないのであります。  振り返ってみますと、さきの大戦では、原爆投下を含め米軍の無差別爆撃はとどまることなく、銃後と思われていた非戦闘員とその住居までも一瞬にして戦場に変え、わが国全土にわたる諸都市を焼き払っていきました。  昭和二十年四月十三日「状況窮迫せる場合に応ずる国民戦闘組織に関する閣議決定は、新たなる兵役義務により、兵として動員し、統帥権下に服役せしめ得る必要な法的措置を講ずること」を決め、昭和二十年六月二十二日に即時公布された義勇兵役法では、「国民義男隊」に参加せしむべきものは、老幼者、病弱者、妊産婦等を除くの外は、可及的広範に包含せしむるものを徴兵」し、いわゆる国民皆兵体制をつくり上げたことによっても、当時すでに平和な銃後は存在せず、戦場そのものとなっていたことは明白であります。  これによる一般市民の死傷被害は、沖縄を除いても優に八十万人を超え、罹災人口は実に一千万人を超すと言われています。中でも昭和二十年三月十日の東京大空襲は、わずか二時間余の爆撃によって全部の四割が一瞬にして灰じんと化し、炎の中で約十万の都民の生命を奪いました。その惨状は、イギリスの一物理学者が、原子爆弾攻撃による荒廃化を除けば、いままでになされた空襲のうち最も惨害をほしいままにした空襲と指摘するほどでありました。  昭和十七年二月二十四日は公布された戦時災害保護法では、昭和二十一年に廃止されるまでの間に十二万七千人の民間戦災者、傷害者、同遺族に対し、救済、補償もなされました。しかるに政府は、今日まで戦争犠牲者対策を、軍人軍属及びその遺家族など、昭和五十七年三月末現在約十二万人に限定してきているのであります。法制定後、準軍属と言われる人々など、わずかな範囲の拡大はあったものの、銃後の犠牲者に対する援護の手は、基本的に皆無に等しいまま、今日に至っているのであります。  一方、今次大戦の同じ敗戦国である西ドイツでは、すでに昭和二十五年に戦争犠牲者の援護に関する法律を制定し、公務傷病と同視すべき傷害の範囲をきわめて広範に規定したため、援護の手はあまねく一般市民にまで行き届き、その対象は昭和五十二年六月末現在においても実に二百十七万八千人にも上っています。  わが国の戦争犠牲者対策は、原爆被爆者に対する特別措置は別として、あくまでも軍人軍属等に限定しようとするものであり、こうした政府の態度は、大戦の過ちを衷心から悔い改めようとする姿勢に欠けるばかりか、その態度のよって来るところが軍事優先の思想であるのではないかとの疑念さえうかがわせるものであります。  戦後三十七年を経ていまだに放置されたままの一般戦災者に対し、国の援護措置を望む国民の声は戦災地域にとどまらず、それ以外の自治体から決議、意見書が多く寄せられている事実とともに、もはや一刻の猶予も許さないところにきています。本案はこのような国民の声を背景に、本案成立の日まで、いまだ戦後は終らないとの確信を持って作成し、再び提案するものであります。  次に、本案の要旨について簡略に申し述べますと、さきの大戦で空襲その他の戦時災害によって身体に被害を受けた者及び死亡した者の遺族に対し、戦傷病者特別援護法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法に規定する軍人軍属等に対する援護と同様、国家補償の精神に基づく援護を行おうとするものであります。ただし、遺族に対する援護については、遺族年金に代えて、一時金たる遺族給付金百万円を支給することとしております。  援護の種類別に申し上げますと、第一に、療養の給付、療養の手当二万一千二百円支給及び葬祭費十万五千円を支給することであります。第二は、更生医療の給付は、補装具の支給及び修理、国立保養所への収容並びは日本国有鉄道への無償乗車等の取り扱いであります。第三は、障害年金または障害一時金を支給することであります。以上、支給要件、給付内容はすべて軍人軍属等におけると同様であります。第四は、遺族給付金、五年償還の記名国債として百万円の支給であります。遺族の範囲は、死亡した者の父母、子、孫、祖父母で、死亡した者の死亡の当時、日本国籍を有し、かつ、その者によって生計を維持し、またはその者と生計をともにしていた者といたしております。第五は、弔慰金五万円の支給、遺族の範囲はおおむね軍人軍属等におけると同じであります。  なお、この法律による援護の水準を、特別援護法または遺族援護法による軍人軍属に対する援護の水準と同じレベルにしたことに伴い、これらの法律による準軍属に対する援護で、なお軍人軍属に対する援護の水準に達していない者については同一レベルに引き上げる措置を講ずることといたしました。  最後に、施行期日は、公布の日から一年以内で政令で定める日としております。  何とぞ、御審議の上、速やかに本案の成立を期せられんことをお願いいたしまして提案理由の御説明を終わります。
  182. 目黒今朝次郎

  183. 田中寿美子

    委員以外の議員(田中寿美子君) 公衆浴場法の一部を改正する法律案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、無党派クラブ及び新政クラブを代表いたしまして、提案理由及び内容の概要を御説明申し 上げます。  売春防止法制定より二十六年を経過した現在、政府公認の集娼制度は解体されたが、売春の形態は多様化し、潜在化して第三者による女性の搾取は後を絶ちません。  「国連婦人の十年」の起点であった一九七五年の国際婦人年メキシコ会議において、婦人の人格の尊厳及び肉体の不可侵が宣言され、人身売買及び売春の禁止が決議されています。また、一九七九年十二月、第三十四回国連総会において採択された婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約第六条においても、「締約国はあらゆる形態の婦人の売買及び婦人の売春からの搾取を禁止するためのすべての立法を含む適当な措置をとる」と規定されているところであります。この条約は、一九八〇年七月コペンハーゲンでの国連主催の世界婦人会議において、わが国も署名しておりますが、昭和五十八年二月現在では、批准、加入国はすでに四十六カ国に及んでおりますので、批准を急がねばなりません。  わが国においては売春防止法によって売春は禁止されているとはいえ、さまざまな売春の形態が存在し、社会環境は年少者の性的非行や少女売春を生み出す大きな要因となっています。また、暴力団や業者による売春の強要は、外国女性、主としてアジアの各国にも及んでおり、海外からの非難も浴びています。それらはしばしばトルコ風呂その他各種の接客業者の仲介や強制によるものであり、このまま放置しておくならば売春防止法はその意義を全く失うものとなりましょう。  中でも、個室つき浴場業の業態は売春の温床と化し、特殊浴場業の距離規制の悪用によって全国各地に集娼地域を発生させており、そこで役務を提供する女性に対して浴場業者は事実上の管理売春による搾取を行っています。また、これらの業者と結託するヒモ、暴力団などによる売春の強制、搾取など、女性の人権侵害は目に余るものがあります。  かかる実情を見るとき、売春防止法の実効性を補完するための一助として、個室つき浴場業において異性による役務を提供させることを禁止し、売春の温床を多少とも取り除く必要があります。  これが、ここに公衆浴場法の一部改正案を提出する理由であります。  次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、営業者は浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客は接触する役務を提供し、または異性の客に接触する役務を提供する者に当該役務の提供のために当該個室を使用させてはならないものとしております。  第二に、都道府県知事は、必要があると認めるときは、立入検査等を行うことができるとともに、違反した営業者には、浴場業の許可を取り消し、または営業の停止を命ずることができるものとしております。  第三に、第一の規定に違反した者は、これを六カ月以下の懲役または一万円以下の罰金に処することにしております。  なお、この法律は、公布後二カ月を経過した日から施行するものとしております。  以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  184. 目黒今朝次郎

  185. 対馬孝且

    対馬孝且君 ただいま議題となりました市町村が行う寒冷地帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  北海道等寒冷の地域の住民にとっては、暖房は生活を維持していく上で必要不可欠のものであり、他地域に比べて多量の燃料を必要としていますが、年々高騰してきた石油等の燃料費の支出は寒冷地住民の生計を圧迫し、生活保護世帯に準じた低所得世帯にとってはゆゆしい問題となってきております。たとえば、北海道における住民の石油等の暖房費の支出は標準世帯で約二十三万円にも及び、このような低所得世帯にあっては、これに何らかの援助の手を差し伸べなければ、冬期間は多数の世帯が生活保護を受けなければならないことにもなりかねない状況になってきております。  また、行政当局においても、これら地域における生活の実情について調査を行い、その実態把握に努められているところであります。  このような事態に対処して、一部寒冷地における地方公共団体は、母子世帯等に対し特別生活資金の貸付事業及び援助金等を支給する事業を行っております。しかし、現下の地方財政の実情では、地方公共団体が低所得世帯に対し実のある暖房費の援助事業を継続して行うことは困難であり、当該地方公共団体はこれら事業に対する国の援助を強く要望しているところであります。  そこで、市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業の円滑な実施を図るため、道県が当該事業につき補助する場合における当該補助に要する費用について国が補助する必要があります。  これが、この法律案を提出する理由であります。  以下、本案の内容を説明いたします。  第一に、寒冷地世帯暖房費事業とは、寒冷地の低所得世帯に対し、当該世帯の暖房費に係る経済的負担の軽減を図るため、暖房費に係る援助金、灯油等の金品を支給しようとするもので、国庫補助の対象となるのは、寒冷度、世帯構成員数に応じて通常必要と認められる暖房費の三分の一に相当する額として政令で定める額までの援助に限っております。  なお、対象地域である寒冷地は、寒冷の度がはなはだしい地域を政令で定めることとし、対象世帯は、世帯構成員全員の所得合算額が政令で定める一定の額未満である世帯に限定するとともに、寒冷地手当受給者世帯、生活保護世帯、社会福祉施設入所世帯等を除いております。  第二に、国庫補助は道県が市町村に対し補助を行っている場合に限り、その補助に要する費用の三分の二を国庫補助とするものとし、市町村事業費の二分の一相当額を限度額としております。  なお、この法律案は公布の日から施行し、昭和五十八年九月一日以降の事業について適用することとしております。  以上が本案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いを申し上げます。
  186. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 三案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十一分散会