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1983-03-23 第98回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)    午前十時三十分開会     ─────────────    委員異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      中野 鉄造君     馬場  富君      山田耕三郎君     前島英三郎君  三月二十三日     辞任         補欠選任      石本  茂君     森山 眞弓君      藤井 恒男君     柄谷 道一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長        目黒朝次郎君     理 事                 村上 正邦君                 対馬 孝且君                 渡部 通子君     委 員                 大坪健一郎君                 佐々木 満君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 森山 眞弓君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 馬場  富君                 沓脱タケ子君                 柄谷 道一君                 前島英三郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  林  義郎君    政府委員        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房会        計課長      坂本 龍彦君        厚生省公衆衛生        局長       三浦 大助君        厚生省公衆衛生        局老人保健部長  吉原 健二君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省医務局長  大谷 藤郎君        厚生省薬務局長  持永 和見君        厚生省社会局長  金田 一郎君        厚生省児童家庭        局長       正木  馨君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省年金局長  山口新一郎君        社会保険庁長官        官房審議官    入江  慧君        社会保険庁年金        保険部長内閣        審議官      朝本 信明君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        法務大臣官房参        事官       土屋 眞一君        郵政省貯金局経        理課長      山口 憲美君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について(厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫)     ─────────────
  2. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十二日、中野鉄造君及び山田耕三郎君が委員辞任され、その補欠として馬場富君及び前島英三郎君がそれぞれ選任されました。  また、本日、石本茂君が委員辞任され、その補欠として森山眞弓君が選任されました。     ─────────────
  3. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 対馬孝且

    対馬孝且君 きょうは、予算委員会委嘱審査という、今年度は第二年目を迎えました。したがって、いま委員長から提起をされました課題中心にいたしまして、政府のこれからの基本的姿勢、さらに取り組みにつきまして質問申し上げたい、こう思います。ひとつ大臣以下誠意ある答弁冒頭求めておきます。  まず最初に、臨調最終答申が出されました。去る三月十五日、臨時行政調査会最終答申政府提出されたわけでありますが、国民としては、きわめて重大な関心を持っております。したがいまして、その実施に向けて内閣全体としてどのように対処されようとしているのか。そしてまた、厚生大臣中曽根内閣のまさに実力大臣の一人でもございますから、厚生省としてどのように受けとめられているか、まず冒頭お伺いします。
  5. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 対馬議員の御質問にお答えを申し上げます。  臨調答申が去る三月十五日にありました。答申政府に対する答申でございますが、特に臨調の方からの御要望もありまして、政府といたしましてはこれを国会に同時に御提出を申し上げておるところでございます。  内閣全体といたしましては、臨調答申につきましては長い間の御苦労に感謝するとともに、その答申につきましてはこれを最大限に尊重して実現を図っていくという考え方でまとまっておるところでございますし、厚生大臣といたしましても、福祉の問題、年金の問題、医療の問題、各般にわたりましていろいろな問題の提起をいただき、またいろんな改革方向につきましての御示唆をいただいているところでございますから、その趣旨を最大限に尊重して実現を図ってまいりたい、こういうのが基本的姿勢でございます。
  6. 対馬孝且

    対馬孝且君 最大限に尊重したいといういま大臣お答えでありますが、特に厚生大臣としては、いまもございましたが、福祉年金国民生活に重大なかかわりのある、まさにこれを最大限に尊重しなければならない課題がございます。  しかし、問題は二つの柱で打ち立てられておりまして、一つは「活力ある福祉社会建設」、一つは「国際社会に対する積極的貢献」、こう言っておるわけでありますが、つまり、「活力ある福祉社会建設」という問題につきましてどのように厚生大臣として認識をしているか、このことをお伺いします。
  7. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 委員指摘のように、臨調答申の中では活力ある福祉社会を目指すべきことを提言しておりますし、私もこの点は同感のところであります。  「活力ある福祉社会」というのは一体どういうことか、こういうことでございますが、国民すべてが充実した家庭を基盤として健康で生きがいのある生活を送られることができるような社会と考えておりますし、今後の高齢化社会もそのような活力のある福祉社会としていくために、個人の自 立自助社会連帯の仕組みを生かしながら安定した社会保障制度の確立に努力することが肝要なことではないかと考えておるところでございます。  先生指摘のように、国際社会への寄与と、こういうふうな話がございました。厚生省関係におきましても、医療の問題であるとか、その他福祉関係におきましても相当日本は進んできたところがありますから、発展途上国に対しまして日本が持っているところのノーハウを提供することであるとか、あるいは医療協力医薬品協力等の問題は私はあるだろう、こう思いますし、そういったものにつきましても積極的に取り組んでまいらなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  8. 対馬孝且

    対馬孝且君 まあ今度の臨調答申一つの特徴といいますか、福祉社会ということに対する自立自助精神というのがかなり強調されていますね。したがって、私はいま大臣お答えがございましたけれども、言葉だけで、活力ある社会あるいは福祉年金というものを最大限に尊重していくという、言葉であってはならないと思うわけであります。  現在わが国環境はどういうことになっているかということを認識しますと、戦後わが国一つの目標は何といっても西欧型福祉社会ということ、それについて相違点はどういうことになっているか。この点のひとつ大臣認識。それからどういう違いがあるのか。つまり西欧型福祉社会現状日本との違いについて、ひとつ大臣認識をお伺いしておきます。
  9. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 西欧型社会日本社会の違いということになりますと、社会全体としてもいろいろと問題は私はあると思います。人種の違い、言語の違い、風俗の違い等々ございますが、福祉社会ということについて焦点をしぼって考えますと、いわゆる西欧におけるところの社会民主主義的な考え方、いわゆる共産主義国社会主義国ではない形での社会民主主義的ないろんな施策、マルキシズム的な表現をいたしますならば、改良型社会主義と申しますか、そういったような形でのことがいろいろとヨーロッパ諸国の中で行われ、そうした形での社会制度というものが定着してきているように思いますし、西欧諸国におきましては、いろんな形での福祉施策というものが、いままでずっと充実をしてきておるように思います。日本も敗戦後いろんな苦難の道を経てまいりましたけれども、この西欧型の福祉社会に対しまして、早く追いつかなければならないという形で、急速に福祉社会実現を目指してやってきたのが私はいまの現状だろうと、こう思うわけであります。  ヨーロッパの中でもう一つ問題になっておりますのは、よく言われておりますところの先進国病である。人間が働かなくなってきているのではないか。しかも、失業者が相当な数出ておる。こういうふうな状況というものが、いままさにヨーロッパの中で病根として言われておるところでございますし、それが生産性が上がらない、国際的な競争力を低下させる。ヨーロッパ全体の問題になっておるし、依然としてインフレが続いておるにもかかわらず、失業者の数が減らない。こういうふうな状況というのを、いかにして直していくかというのがヨーロッパの置かれたところの問題ではないかと思うわけであります。  一方、日本は比較いたしまして物価の上昇率というものはきわめて安定をしておりますし、失業者の数も比較すれば非常に少ないわけであります。ただ、日本としていまから考えていかなければならないのは、西欧各国がたどりましたような高齢化社会への突入のスピードが、ヨーロッパ諸国に比べまして非常に早いスピードで突入していく。いままだまだ日本人全体としては若いわけでありますけれども、今後二十年というようなことを考えますならば、非常に早いスピード高齢化社会に突入していくということでございますし、高齢化社会に突入していったときに、いろんな社会の仕組み、制度、それから先ほど申しました福祉、全体の国民生きがいのある精神を持って、自立自助精神相互扶助精神を持っていられるような社会をつくっていくかというのが私はいま日本に与えられたところの一つの大きな課題ではないだろうかと考えているわけでございまして、要約いたしますと、ヨーロッパ社会におけるところのいわゆる先進国型病というものは日本にはまだないし、日本ではむしろ別意味での高齢化社会への対応を誤ってはならないという問題がある、こういうふうな私は認識を持っているものでございます。
  10. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣からいろいろ言われましたけれども、一口に言って、西欧型福祉社会のデメリットを想起し、先進国の型を求めるということを続けるのではない、つまり、日本型の創出というものを行う中で、つまりキャッチアップをしていくんだという意味お答えでございます。  私は大臣、やっぱりここではっきりしておかなきゃならぬと思うんですが、問題は、臨調でも言われておりますように、つまり、いま社会保障租税負担というものが日本の場合は大体三五%だと。大きな政府でない、つまり小さな政府ということを言うのでありますが、租税負担社会保障負担を合わせますと、全体では、大体国民負担率は、国民所得に対しまして三五%程度である。問題は、いま大臣も言うとおり、やっぱり日本の場合はこれから高齢化社会に相当スピード的にアップをされていく。こうなった場合、一方では財政を切り詰めていく、歳出カットをしていく。しかし、社会保障というものは、これは生活に関連をするのでございますから、必要なものは当然最大限やっぱりこれは維持していかなければならない。そうしますと、現在ヨーロッパ型の水準というのはいろいろ見方はありますよ。あるけれども、今後こういう関係について高齢化社会の進展あるいは福祉社会を維持するとするならば、どういう対応でいくことが望ましいのか。つまり、財政上の見地に立ったとしても、租税負担あるいは社会保障の割合というものはどういう考え方を持って進めていこうとするのか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  11. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いま議員から御指摘のありました三五%というのは、社会保障費負担大体一一%と租税負担が二四%ぐらいと、こういうことでございますが、ヨーロッパ諸国はもっと高い水準に達しておるということでございまして、イギリス二つを合計いたしますと四八%、西ドイツが五一%、フランスが五六%、スウェーデンにおきましては六四%というような数字になっているわけでございます。私は、それぞれの国におきましてそれぞれの国の制度なり政策なり違いますから、一概にこれをどうだ、こうだということはないと思うんです。それぞれの国の政権のあり方制度あり方国民の感情のあり方等々ありますから、それを一概にどうだということはありませんが、基本として考えるならば、やっぱりこれが余り過大になる、少なくとも五〇%を超えるような話になってくると、先ほど申しました先進国病というような問題があるのではないかということが世間巷間では言われているところであります。  そういったことでございますから、私はやはり租税におきましても、また社会保障費におきましても、本当に必要なものについて税金を取っていく、必要なものについて社会保障負担をしていただくというようなことを考えていかなければなりませんし、何が本当に必要なものなのかということをやはり詰めていくことが必要なことではないかと思うわけでございます。たとえば臨調答申におきましても、現在よりも社会保障費用が増大するということはこれは当然であるというふうなことを前提とした上で考えておりますが、それではいまのままでよろしいかといえばそうではないので、徹底的な制度改革の推進によりまして負担水準が過重なものとならないようにすべきだとの御提言をいただいているところでございますし、国民全体の負担が過重となることは社会全体の活力を失わせることになりますので、社会保障におきましても今後給付負担水準バランス配意をしながらいろんな施策効率化重点化 を図っていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  12. 対馬孝且

    対馬孝且君 これはヨーロッパ北欧、私も一昨年北欧三国を見てまいりましたし、社会保障あり方調査をしてまいりましたが、問題は、これは国柄によって税で賄っているところと、それから社会保険制度で賄っているところと、国柄で違いますね。  ただ、私がいま求めているのは、後で申し上げますけれども、大幅に福祉の方をカットして、そうして三五%ではね、あるいはこれは若干上昇はあるしても、臨調答申というのはどういうことかといいますと、大きな政府は目指さないと、こう言っておるわけでしょう。大きな政府を目指さないということは小さな政府ということですから、そうなれば、全体の財政枠の中で社会保障というものは勢いやっぱりそこは切り捨てていかざるを得ない羽目に追い込まれていくのではないか。そうすると、全体像としていわゆる租税負担社会保障全体が、いま大臣のお言葉では、当然福祉というものは増大されるべきものである、一定のものは前進していかなきゃならぬと、こうお答えはなっているのだけれども、いざ実際に財政上の段階に入りますと、言葉でなしに具体的なカットカット切り捨てられるわけですよ。その点私はあるべき姿といいますか、いま抽象的に諸外国はイギリスが六〇であるいはほかは幾らだというのを私も知っていますけれども、やはり日本のこれからの高齢化社会あるいは福祉現状をむしろ守り続け、より質的に向上していくとするならば——三五%というようないますぐの問題私は言っておるのじゃない。将来像として、租税負担方式でいくのかあるいは保険方式を採用するのか、あるいは租税保険方式をミックスをしていわゆる合体をしたそういうシステムを採用していくとしても、大体何%ぐらいが将来像としては維持していくべきなのか。そのことにおいて福祉現状やはり最低プラスしていくものがこれこれのものであるといういわゆるガイドラインがあっていいんじゃないか、私こう思うのです。  ところが、いまお聞きしますと、厚生省側にはどうもその考え方はないようですな。ないというよりも、まず政府自体がそのことの考え方がどうもはっきりしていない。ここにやっぱり何か私は問題がある。というのは、いま国民がみんな心配しているのは、臨調の名のもとにまた次にばっさばっさ切られていく、こういうことを心配しているわけでしょう。将来的には十カ年なら十カ年、あるいは全体像を見渡した場合に、現行三五というラインであるけれども、やっぱり高齢化社会あるいはこれからの福祉向上ということをするならば、全体像として大体このぐらいが、四〇なら四〇ラインでもってこれだけの福祉社会を維持することができるのだと、こういったものが私はやっぱりビジョンとしてなけりゃならぬ。これがどうも不明確だから、やがて厚生年金支給年齢が六十歳が六十五歳になるというような心配が当然これは国民の間に残っている。やっぱり防衛費突出優先福祉切り捨てと、言葉でなしに実態論としてそういうことは言えるのではないか、こういうことが出てくるわけでありまして、この点もう一度ひとつ大臣にお伺いしたいと思います。
  13. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先生大変いい御指摘をいただきましたと私も思っているんです。確かにいろんな点で考えていかなければならない問題がたくさんありますし、福祉なり社会保障費負担のそのガイドラインを示すべきであるという御指摘がありまして、私も確かにそういったことを考えていかなければならないなと、こういうことでございますが、現在、政府におきましては、長期計画を少し変えていこうと、こういう形で経済企画庁を中心にいたしまして長期計画を改めて経済審議会にお願いをして御審議をいただいている、こういう段階でございます。長期的にいろいろと考えていかなければならない問題があると思いますし、特に厚生省といたしまして考えるならば、私は福祉水準切り捨てになってはならないと、こう思うわけでございまして、やはり真に必要なところの福祉水準というものは落とすことがあってはまかりならぬ、これは私ははっきりしたことだと思うんです。  それならば、一体どういうふうな形で持っていくか計算をいたしますと、福祉の方が非常に高い金にもなる。これはかつて社会保障長期展望懇談会で出しました数字の中で、紀元二〇〇〇年になりますと社会保障負担というのが一四%から一四・九%になる、二〇一〇年になりますと一八・九%から二〇・五%になるというような数字が一応出ておるわけであります。こういった数字というものが国民的な合意というものが果たして得られるものだろうかどうだろうかというふうに私は思うわけでございまして、やはり具体的にこの問題をいろいろ考えていかなければならない。特に社会保障負担ということになりますと、年金制度でございますから、この年金制度というものを来年の国会にお出し申し上げてやるときに、やっぱりその辺の議論は私たちの方も十分詰めてやっていかなければならないのではないか。国民年金及び厚生年金の統合ということのときに、やはり年金水準幾らにするか。年金水準ということになりますと、これは費用を出す方とそれから給付を受ける方とのやっぱりバランスの話でございますから、そういったものを考えていかなければならないのではないかというふうに思っているところでございまして、先生の御指摘のように、何らかの形でのその辺の方向づけをそのときまでには出さなければならないだろうと、こういうふうに考えているところでございます。  もう一つ申し上げますならば、これはいわゆる社会保障負担と、こういうことでございまして、一般会計予算の中でありますところのいろんな福祉関係、いわゆる狭義の意味での福祉関係予算というものにつきましては、私は先ほど申しましたように、真に必要なところの福祉水準というものはこれを維持していくという基本方針で貫いていかなければならないものであろうと、こういうふうに考えているところでございます。
  14. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣ね、いま言葉でただ福祉水準を維持していくと言ったって、いま大臣答弁に一貫して流れているのは、やっぱり原則自体は、小さな政府という方向の中で、現状財政を肯定した論を言っているわけでしょう。このような予算の編成の中では、どう言ったってやっぱりいまは防衛費別枠扱いでしょう。そうすると、義務的支出のウエートの大きいのは社会保障ですね、これははっきり申し上げて。したがって、好むと好まざると、そのしわ寄せが来るのではないか、現実にそうなっているんじゃないですか、どう言おうと。ことしの場合だって、当然増が七千五百億。後から申し上げますけれども、新政策手だてが五百億ちょっとありますから八千億でしょう。そこへ何ぼですか、〇・四%、四百五十億足らずでしょう。言葉ではそう言っているんだが、やっぱりばっさり七千五百億分軍事費突出によって切り捨てられている。ここにやっぱり問題がある。  だから、私が言っているのは、少なくとも将来像として、未来像として大臣も肯定されていますから、当然これからの社会保障一つの目安になる基準というものを何らかやっぱり出すべきである。というのは、間違ってもらっちゃ困るのは、年金その他の改正があるからそれをつくるのだという意味じゃないですよ、私が言っているのは。少なくとも、あなたの申されたことは西欧型ではない、日本として、日本型の福祉社会をこれから目指していくのだと、活力ある社会を目指すのだと、こう冒頭あなたは私にそのとおりだという考え方を申されているから私言うのでありますが、そうだとすればやっぱり当然これは、一方では軍事費別枠社会保障費はこれはいま言った義務的経費の枠の中でやられれば完全にこれは歳出カットカットということになって切り捨てられていく。そうではなしに、いかなることがあっても日本政策的な福祉活力ある社会という基本政策の上に立って、社会保障という姿勢はどうあるべきものか、このことをやっぱりある程度の方向というものをぜひひとつ出すべきである。これはあ なたも出すべきだとこう言っているわけですから、これは今日のことを言っているのではありません、今後そういう方向で、やっぱりあるべき姿の社会保障というものは切り捨てるべきではない、むしろ活力ある社会とは、いまの福祉社会をさらに質的に向上、前進させることである、こういう基本方針で取り組んでまいりたい、こういう方針ならそれでよろしいと、私はこう言っているわけですよ。その点どうですか。
  15. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 防衛費のお話が出ましたが、防衛費も聖域でないと、こういうことでございます。これはもう厚生大臣からお答えするような話ではない、大蔵大臣からお答えするような話だろうと思いますが、あるいは防衛庁長官からお答えするような話だろうと思いますが、やはり私は、防衛の問題にいたしましても、わが国が安全で安定して安心した社会になっていくというためには、それは相応の負担というものは、やはり金は出さなければならないというのがわれわれの党の基本的な立場でございますから、この点は御理解を賜りたいと思います。  福祉につきましても、私は先ほど来申し上げておりますのは、日本型の福祉社会というものを持っていくためにはいま申しました本当に必要な福祉水準の後退は許されない。むしろこれから新しい形への福祉をやっていかなければならないという先生の御指摘、私も全くそうだと思うのです。福祉というものはいまのままの制度でよろしいとはだれも考えていないわけでございまして、社会の変化、いろいろな諸事情の変化に伴いまして福祉施策あり方につきましても常に変更を考え、本当によりよき国民が本当に生きがいのある生活ができるようなことを考えていかなければならない。これがまさに厚生省に与えられたところの役割りだろうと、こう思うわけでございまして、そういった意味でトータルとしての福祉水準というものは落とすよりもむしろ上げていく。いろいろな形で上げていく。そのためには金の問題もありますし、同時に心の問題もありますし、いろいろな点での施策をこれから考えていくというのが私は必要なことではないかと思うわけであります。  そういったものも含めますと、そのガイドライン、金の問題はどうだという話もございますけれども、これも一応の目安に置いておく。しかし、金でない、ボランティアであるとか、いろいろなサービスであるとかというような形のものを組み合わして、私はこの福祉行政、広い意味での福祉行政というものは進めていくべきものではないだろうかと思いますし、大体先生のおっしゃることと私が申し上げていることはそんなに違わないところじゃないかというふうに思っているところであります。
  16. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣基本的方向性は、私の言っていることとそのとおりであると、こう理解しています。ただ、防衛費だけは、これ理解してくれったって、わが党は防衛費は反対なんですから、これは凍結をすべきである、反対だとこう言っているわけですから、これは理解せいと言ったって理解できない問題ですから、明確に申し上げなければならないわけであります。  ただ、ここですよ、大事なことは。大臣、ここが大事だと思うのですよ。中曽根総理大臣は記者会見で、これうそであれば別だけれども、予算の衆議院通過後の記者会見でこう言っているのですよ。重度心身障害者などの弱い人に対する点、住宅対策、科学技術などかなりめり張りをきかしたが、全体として厳しいもので国民の理解をいただかなければならないというようなことを盛んに片方ではそう強調するわけだ、プラスがん対策なんてね。これ、選挙目当てに言っているんだと思うけれども、それは別にして、結構なことなんだ。重度心身障害者、弱い人、住宅政策、科学技術、これは理解できるんだよ。理解できるんだけれども、すぐ続いて何を言っているかといったら、防衛費については国際関係と国内の調和を考えてぎりぎりの選択でありまして云々と、よってこれから防衛費予算の上積みというものは、総理としては、そういう方向に行かざるを得ないのでありますというような、これは衆議院段階答弁ではそうなっているわけだ。これは、衆議院通過後の中曽根総理大臣の記者会見ですから、これは。  だから、私の言いたいのは、そういう姿勢があるとするならば、いま林厚生大臣は、まさしく私の言う方向で、これから福祉政策社会保障というものを推進していきたいという、その流れは、方向は私と大体一致しているわけですけれども、どうも総理大臣の記者会見を見ると、一方では何かめり張りきいたようなことを言っておって、片一方では防衛費で国際調和をしていくんだというようなことを言うと、結果的には福祉の方は切り捨てられて後の方だけが生きていくんじゃないかという、そういう国民的なやっぱり受けとめ方がある。国民はそこを心配している。その点を、総理大臣の記者会見で言ったのとあなたがいま言ったことで、方向はそれでよろしいと言うならば私はこれ以上申し上げません。考え方はそれでよろしいんだ、さっき冒頭に申し上げた考え方でよろしい、福祉に対する、社会保障に対する基本姿勢はよろしいというのであればいいんだけれども、たまたま総理大臣予算後の記者会見においては非常に懸念がある。ここをひとつはっきりしてもらいたい。こういうことです。
  17. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 議員お答えしますが、先ほど申しましたのは、私の方の立場はそうであるということだけを御理解賜ればいいわけでございまして、先ほども申し上げましたように、安全で安定して安心のいける社会をつくっていくということが必要であるということで、やはり全体としてのわれわれの方としてはバランスをとっていくということが必要だろうと、こう思うんです。  予算というものは、一つの時の政権の政策を具体化するときには、やっぱりバランスして物を考えていかなければならないと思いますし、その中で国民の安心感を得るというような意味での福祉施策というものは、やはり先ほど来先生もおっしゃっておりましたし、私も申し上げておりますように、いまの水準をいろんな形で社会の変化に応じて維持しながら、かつ、それが効果的になるような形の運営を図っていかなければならないものだろう、こういうふうな基本的考え方は、これはわが内閣といたしましても一致した考え方だろうと、こう考えておるところでございます。
  18. 対馬孝且

    対馬孝且君 だから、むずかしいことは要らないんだよ、国民が素朴に聞いているんだから。 現状福祉水準を維持しつつこれから質的に向上していくんだと、こういう方向での考え方大臣としては進めてまいりますと、こういうことで確認していいですか。
  19. 林義郎

    国務大臣林義郎君) おっしゃるとおりでございます。
  20. 対馬孝且

    対馬孝且君 そういう大臣考え方はよくわかりました。  そこで、それでは五十八年度予算の枠組みについてちょっとお伺いしたいのでありますが、五十九年度の予算編成も、新聞で見ますと、またゼロシーリングというような関係が新聞報道で見る限り出ています。したがって、厚生省も概算要求の段階からいろいろ知恵を出されて苦労されると思うんですがね、これ。ゼロシーリングということはきのうの参議院予算委員会の質問でちょっと出て、新聞に出ていますけれども、どうも私はやっぱり問題の先送りじゃないかという感じがしてならないんです。  それはどういうことかといいますと、結果的にはことしの厚生省予算社会保障予算でありますが、四百四十六億円、〇・四%の伸びに抑えられているわけですね、当初の概算要求の段階からいきますと。したがって、先ほど言ったように、当然増は七千五百億円かかる。当然経費は必要だ。新規の政策増が五百七十億、こういう大枠で査定をされたわけだ。ところが、この大枠についてこういう考え方でいいのかどうかという考え方を、五十九年度の大きな枠組みについてまずひとつお伺いしておきたい。どうですか、この点。
  21. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 予算の枠組みの問題でございますので、私からお答えをさしていただき ます。  御承知のように、五十七年度予算からゼロシーリングというような非常に厳しい枠がはめられまして、五十八年度はマイナスシーリングというさらに厳しい枠になってまいったわけでございます。厚生省の場合には、いま御指摘がございましたように、非常に多額の当然増もございますし、また、年々実態に応じて政策増も考えていかなければいけない、こういうことでございまして、従来から私どもはその点強く主張もしてまいってきたわけでございます。しかし、国の財政全般との関連で非常に現実には厳しいシーリングになったわけでございますので、それに対応して各種の工夫をいたしました。実質的に福祉水準を下げずに、しかも現実に非常に厳しい中で歳出額を低く抑えるというにはどうすればいいか。先生も御承知のとおり、厚生年金の国庫補助の一部減額とか、あるいは今回の国民年金の国庫負担の平準化というように、実体上は影響を及ぼさずに、しかし歳出額は低く抑える、こういう工夫をしてまいったわけでございます。  五十九年度の問題については、まだ正式には私どもは伺っておりませんが、客観的には非常に厳しい状況にあることは予想されるわけでございまして、この予算の枠組みにつきましては、やはり私どもとしては、できるだけ福祉予算というものが必要な水準が維持できるようにいろいろな手段を講じていかなければいけないという考え方のもとに、今後最大限の努力をいたしまして、福祉予算の必要なものを確保するという方向に向けて努力してまいりたいと、かように思っておる次第でございます。
  22. 対馬孝且

    対馬孝且君 問題は、いま大臣冒頭お答えされたように、現状福祉というものを維持しながら質的に向上していくと、こういうことでしょう。そのためにあなた方が予算を組んだ。ところが、はっきり申し上げまして、いま言ったように、当然増が七千五百億、これ、ばっさり切っているわけだ、どう言ったって。そうでしょう。七千五百億。それから新規で入れてきているって、七千五百億と五百何十億で八千億だね。そうでしょう。八千億ちょっとになるわけだ。  そこで、具体的に僕は聞きたいんだ。そういうことであるとするならば、あなた方は大蔵省との間に、国民年金の国庫負担の所要額の平準化措置について大蔵省と話し合われたと思うんです。これは当初の考え方を言うと、いま年金構成というのは八つあるけれども、皆さんは専門家ですから言うまでもありませんけれども、三本柱でしょう。共済年金厚生年金国民年金、こういう流れになっているわけだ。その他いろいろ含めて八つありますけれども。ただしかし、福祉年金の場合はもうこれ二十八年間で実質的に拠出年金に全部入っているわけだ。国民年金に入るとか厚生年金に入っていこうとかという、拠出年金の方に全部入っていくわけでしょう。そうすると、福祉年金というのは、事実上、二十八年の間にはつまりこれはもう問題の平均化は決着つくと、こういう質的なものだと思うんです。  それではそれがなぜ大蔵省との間でこれが認められなかったのか。これ、私納得できないね、率直に言って。それだけあなた方が、厚生省が自信を持ってやったとするならば、しかもこれを客観的に見ると、福祉年金というのは、いま言うとおり全部拠出年金の方に加入しているんだから、これは自動的に解消されるわけだ。それがどうして大蔵との間で認められなかったのか。認めたことがいいとか悪いとかということは後からの問題だけれども、それじゃ大蔵との間でどういうことで話し合いがつかなかったのか。これ、ちょっと明確にしてください。
  23. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 五十八年度の概算要求におきまして、老齢福祉年金給付費が、先生指摘のように今後減少していくということに着目をいたしまして、資金運用部からこれを借り入れて、それで全体としてならすという予算要求をいたしたわけでございます。しかしながら、国民年金福祉年金勘定が全額一般会計負担ということでございまして、独自の財源を持っていないということから、そのような勘定を借り入れの主体とするということができない。つまり償還財源を一般会計負担に仰ぎながら借り入れを行うということになりますと、健全な財政の原則に反する、こういう形で大蔵省との話し合いがつかなかったわけでございます。  このようなことから、国民年金特別会計全体への国庫負担金の繰り入れが全体として老齢福祉年金等のために今後昭和六十四年度までは減少する、それから増加していくというような、波を打つということに着目をいたしまして、このような不規則な姿を全体として平準化をしようと、こういう整理をしたものでございます。
  24. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま言った、福祉年金というものの流れを言うと、当初、三十八年たてば自動的にこれは平準化すると、これでやったわけでしょう。やったけれども大蔵省に認められなかったわけだ、あなた方の主張が。認められなかったから次のことを考えたわけでしょう。いま、ただ言葉で端的に国民年金関係で平準化しましたと言うけれども、これは最初からわかっていることじゃないですか、私に言わせれば。当然、資金運用部というのは言うまでもなく国債なんだよ。資金運用部は国債引き受けの金でもって、これは運用しているわけだ。しかも、資金運用部それ自体の財源の余裕がない。事は明瞭なんで、あなたはいろんなことを言っているけれども、この二つの事情で大蔵当局、財政当局が認められない、こういうことになったんでしょう。違うんですか、この点は。
  25. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 御指摘のとおり、独自の財源を有しない福祉年金勘定が借り入れを行うということには無理があるということで話がつかなかった、認められなかったということでございます。
  26. 対馬孝且

    対馬孝且君 だから、いまあなたがそのとおりだと言うんだから、結果的には、最初からそれはわかっていることじゃなかったのか。それは資金運用部が当然そんな国債引き受け、あるいは余裕財源がないということは最初からわかり切ったことであって、問題は、私の言いたいのは、それじゃいまあなたが言ったように、国民年金の平準化、国民年金勘定が積み立ての余裕があるから、そっちの方からとにかく一定の金を繰り延べするんだということでしょう、いま言っていることは。これは私も試算の資料をここに持っていますけれども、大体厚生年金関係で言うと、前回の場合は二〇%の五%繰り延べしたわけだ。これが前回の一部改正ですよ。国民年金で言うと、二〇%の三分の一しか、三千二百億ということになるわけだ、そうでしょう。だから、そういうことを結果的に繰り延べをしていわゆる平準化と、こういう財政上のやりくりをした。つまり、これは特別会計ということで扱われているのではないか、この点が一体どうなんだということを私はお伺いしたわけだ。どうなんですか、この点は。特別会計で扱うということについてやっぱり問題があるんじゃないですか。
  27. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 結果的には、特別会計の中で国庫負担の額を当面減額し、将来増額するという形で調整をいたしておりますので、国庫負担制度本体に触れるものではないので、特に年金制度に対する影響というものがないという意味では整理ができているものと考えております。
  28. 対馬孝且

    対馬孝且君 いや、国民年金が、国庫負担の繰り延べしようと、その点は年金そのものに対しては問題はないということをいまあなたおっしゃったね。間違いないね。  それではちょっとお伺いするけれども、結果的に国庫負担の繰り延べでやったということは、どうしてそれじゃ最初の考え方が通らなかったのか。この考え方ができて、最初の考え方がどうして通らなかったのか。答えを言えば、予算のつじつまを合わせるというだけにすぎなかったんじゃないか。同じでしょう、これは結果論としては。最初の発想といまのあなた言うた国民年金の繰り入れと、結果的にはいまの段階での予算のつじつまを合わせたと、こういう認識にはならないんで すか。この点どうなんですか。
  29. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) 最初の案と現在御提案申し上げている平準化法案による案との相違についての御質問でございますけれども、違いは、最初の福祉年金のみについて平準化を図るというのが、一般会計に依存をいたします福祉年金が今後減っていく、したがってこれをならしていくということでありまして、それに対して資金運用部から借り入れるということが財政法の規定の趣旨に反するのではないかという疑いがあるということで入れられなかったわけでございます。  今回の平準化法案の場合、そこは全額一般会計に依存する福祉年金と違いまして、国民年金特別会計全体の中で国庫負担額を調整し、昭和六十三年度までは控除、六十四年度からは加算をいたしまして、全体としての額をなだらかにするというわけでございますので、このような財政法関連の問題が生じない。むしろ資金運用部に対する原資の預託額が減少する、こういう形になろうかと存じます。そこのところが当初案と現在の案との相違かと存じます。
  30. 対馬孝且

    対馬孝且君 それは詭弁なんだよ。あなたはそれまで気がついておって、それじゃ何で、最初からどうしてこれをやらなかったんだ。そんなこと言ったら詭弁じゃないか。  最初は、先ほど言ったように、これは資金運用部から借りるという発想を立てた。私がさっき言ったでしょう。これは資金運用部が国債の引き受けの限度にきている、余裕がない、この二つで大蔵に断られたわけだ、あなた方が。厚生省は断られたんだ。次に、国民年金の場合は余裕があるということでしょう、財源的な積み立てが。それだけのことじゃないですか。国民年金の繰り入れができたというのは、平準化ができたというのは、積立金に余裕があるからそっちの方に一時的に入れることが可能であったと、これだけのことでしょう、これは。そんな詭弁を使ったらだめよ。はっきり最初から、それでは後段の方でいくのならいくと。仮にそうであったとしても、結果的にこれはただ予算のつじつまを合わしただけにすぎない、一時的な合わせ方だけにすぎないんだ、つじつま合わせにすぎないと私がさっき申し上げたのはそのことを言っているのであって、それじゃ後年度この分は、むしろ国庫負担がどんどんふえていくわけでしょう、これはどう言ったって。  その前に問題になることは、社会保障の財源という枠が、さっきも言ったように一定枠が設定されている。そうした場合に、後年度の国庫負担の分がふえていくということになれば、結果的には社会保障予算というものは硬直化せざるを得ない状態になっていくのではないか。ここを私は心配しているんです。その点どうなんですか。それをはっきり言ってくださいよ。明らかじゃないですか。だから私は、一時的な合わせ方をしたって、そんなものは一時的なつじつまを合わしただけにすぎないんだ。それを単年度、単年度で解決していくんならいいよ。後年度国庫負担ふえていきませんか、はっきり聞きますけれども。結果的には、これは私は社会保障という財源の設定枠から言うならば硬直した結果に追い込まれてくるのではないのか。その意味ではやっぱりいま根本的なこの問題の見直しが必要ではないかというふうに私は考えているわけですよ。まず年金部長の答えを聞きましょう。
  31. 朝本信明

    政府委員(朝本信明君) ただいま国会に御提案をさせていただいております、国民年金特別会計への国庫負担金の繰り入れの平準化を図るための特例法につきましては、五十八年度から六十三年度までの控除額が明記してあり、六十四年度から七十二年度までの加算額が明記してあるわけでございます。そういう意味で将来加算額の最も多い部分は二千五百億でございますが、その分が先に予定されるのではないかということについては仰せのとおりでございます。
  32. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、いまやりとりを聞いていてわかるでしょう、私の言うことは。ただ一時的なやりくりだけでは、結果的に、あなたが基本姿勢を示したような社会保障の全体の像というものは崩れていく。そこを私は言っているわけですよ。だから一時的な、いま国民年金の方が余裕があるからそこから繰り入れしただけだなんて、最初は資金運用部から借りる、それがだめになって第二段階国民年金の剰余金があるからそっちから借りましょうと、これは便宜的な話なんだよ。  私はそうでなくて、これから後年度においては国庫負担がふえていくことはこれは当然なんだから、そうだとするならば、これは臨調が言っているように、一時的なやりくりのための措置をなくした状態で自主的な意味での特例公債依存から脱却をしなきゃならない、こう言っているわけだから、一時的なやりくりではなしに、この時点では抜本的にこの問題をやっぱり見直してみる、こういうことをひとつ検討をすべき段階に来てるんじゃないかと、こういうふうにやりとりをして、年金部長は認めたわけですけれども、この点ひとつ大臣これからの課題として、何もいま追及しようと思わないんだ、こういう問題について根本的に、一時的な平準化のやりくりではなしに、やっぱり全体の見直しをひとつ検討すべきである、こういう考え方を私は持っているんですが、この点いかがですか。
  33. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いま政府委員への御質疑を通じての話を私も聞いておりましたが、今回の平準化措置というのは、国民年金と老齢福祉年金との勘定間の調整をする、こういうことでございまして、先生指摘のように、それを資金運用部から借りたらどうだと、こういうふうなお話もありまして、財政法の関係からどうだと、こういうふうな話でありますが、平たく申しますと、資金運用部というのは銀行なわけですね、これは。銀行が貸すときに後一般会計負担をする、こういうふうな形ではどうも困るじゃないか。毎年毎年決まる話だからどうなるかわからぬというような話では困る、こういうふうな話でございまして、そこはやっぱり節度を持って考えた方がいいだろうということで、国民年金勘定の中の二つの勘定からの振替という形でやったわけでございます。  私は、経理という立場からいたしますと、やっぱりその辺の基準は明らかにしておかなければならない。それからどこもかしこもみんなもうかっているというような会社でしたらこんなことする必要ないんですよ。こんなことする必要ありません。ただいろいろと全体として、日本経済そうですけれども、大きなところでも困っているからちょっと子会社との関係を調整しておこうとかいうことが私はあるんだろうと思うんです、一般の会社でも。だから、国でもそういうことがありますが、これを予算だけで処理したんではいけませんから、やっぱり法律でその経理はこういたしましたということをはっきりわかるように残しておかなければならないというのが財政の立場だろうと思いまして、それでわざわざ平準化措置に関する法律案を別に出しまして、毎年毎年幾らずつこう出します、それから後の返済はこうします、利子分は七十二年以降にやります、こういうことでやっているわけであります。  だから、私といたしましては、そういったようなことを考えると、一応財政の方はそういった形でつじつまが合わせられるのじゃないか。要するに予算というものは、国会で御審議をいただいて国会の御承認を得る、こういうことでございますから、やっぱり国民の皆様方にそういった経理の方向が明らかであるということをはっきり示すことが必要なことだろうと思いますし、それは私は果たしてあるんだろう、こう思います。  と同時に、それではもう一つの問題としては、国民年金がおかしくなるのではないか、こういうことでございますが、国民年金の方といたしましては、これからの将来を展望いたしまして、いま申しましたように、一時こちらから借りた、しかしそれは将来必ず返しますということでやっておりますし、大体毎年三%ぐらいでずっと伸びていく、こういうことを前提に置きまして平準化をやっておるわけでございますから、私は、国民年金に対してこういった平準化措置をすることによって将来に対して重大な危険が出てくるとか、ある いは危惧が出てくるということはないだろう、こう思います。そういったことを私たちの方もはっきりとした経理をして、特に国民年金を持っておられる方々に対して不安がないように、これからも一層努めていかなければならないものだと考えておるところでございます。
  34. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、それは私も資料を持っているんだよ。これはちゃんと内容を持っていますからね。そんなことは百も承知して質問しているんだ。  私はただ、それじゃ、もし国民年金の余裕がなかったら一体どうなったかと。そうでしょう。たまたまあったからそこは便法的にやったとあなた言うが、どう言葉を返そうと、一時的な措置であることは間違いないんだ。ただし、これはいま言ったように、ここに出ているように六十三年度まで、六十三年度五百五十億ですから、それから六十四年からプラスになってスタートしていく、これは私持っていますよ。ただ、こういう一時的なやり方では、将来像としてはだめだよと。だから、冒頭申し上げたのはそういう意味で僕は言っているんだ。やっぱり将来こういうものについての全体像というものを考えていくという抜本的な、会計の平準化の扱いにしても、平準化することが法律でだめだということを私言っているんじゃないんだよ。これはやむを得ない措置だからしようがないでしょう。ただこれでは一時的なものだからよくない、それを今後あり方としてやっぱり根本的な考え方を検討すべきではないか、こういうことを言っているわけでしょう。この点どうですか。
  35. 林義郎

    国務大臣林義郎君) こういったやり方をいつもするということは全然私も考えておりませんし、これはやっぱり財政がこういうふうな状況になったときの一時的、臨時的な措置だと考えていただいていいんだろうと思います。  ですから、やっぱり将来的に年金というものが健全な形でいかなければ国民の信頼を得られないということはもっともなことでございまして、私は、これはまさに一時的な措置、いまのこの厳しい財政状況その他のときの措置だと、こう考えていただいて、本来の形としては、年金というものは、やはりずうっと積み立てをいたしまして、それで将来賦課方式になるかもしれませんけれども、そういった形での年金体系というものは、健全な形で運用していくということが一番必要なことだろう、この点、全く先生の御指摘のとおり、私も考え方はそんなに違わない、こう考えておるところでございます。
  36. 対馬孝且

    対馬孝且君 そういうことを私は今後の問題として、厚生省はただせつな的に一時やりくりすればいい、それが六十四年にはちゃんとなるんだからいいんだというのではなしに、いま大臣お答え願っているが、やっぱり将来の年金の不安のないように、国民にそういう不安感をもたらさないように、また、あるべき財源の取り方について、ここでひとつ検討をしてもらいたい。よろしゅうございますね。
  37. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 結構です。
  38. 対馬孝且

    対馬孝且君 わかりました。  それでは次に、年金据え置きの問題で御質問申し上げます。  五十八年度予算では、年金福祉関係の諸給付の額が据え置きになったことはもう言うまでもありません。われわれも反対でありますが、厚生省所管でその数は大体どの程度に推計されるのか、ちょっと内容をお伺いしたいと思います。
  39. 山口新一郎

    政府委員山口新一郎君) 物価スライド関係数字でございますが、制度ごとに申し上げますと、厚生年金保険受給者五百六十四万人、給付費で七百八億、一般会計負担分で八十四億でございます。前提といたしましては、政府の五十七年度経済見通し、物価上昇率の実績見込み二・七%という前提でございます。それから実施時期を五十七年度と同じようにしたという前提でございます。  船員保険でございますが、受給者が十一万人、給付費で十九億、一般会計負担で四億。拠出制の国民年金、受給者数七百六十万人、給付費で三百四十六億、一般会計負担分が百三十四億。福祉年金、受給者数二百九十九万人、これは給付費、一般会計負担全部同じでございまして六十六億。それから諸手当でございますが、児童扶養手当受給者五十五万人、これも福祉年金と同様に給付費、一般会計同額でございまして十三億。特別児童扶養手当受給者十二万人、これも給付費、一般会計同額でございまして三億。福祉手当受給者四十万人、給付費で四億、一般会計負担三億。それから原爆被爆者諸手当受給者二十五万人、給付費、一般会計同額でございまして十二億。合計いたしまして受給者千七百六十四万人、給付費所要額で千百七十一億、一般会計所要額で三百十九億円。  以上でございます。
  40. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、いま言われたとおり、これは約千七百万人以上の方々が今回年金の据え置きがされる、手当を含めて。額もこれ、いま言った千百七十一億という大変な額ですね。こういうことになりますと、相当家計への圧迫ということは、これは言うまでもありませんね。しかし、年金のスライドの実施については、四十八年に物価スライド制が導入をされた。以来消費者物価の上昇率五%を超えない場合でも受給者の生活を圧迫しないという配慮から特例法案が提案をされている、これは御承知のとおりだと思います。  そこで、現在高齢者世帯が、男子で六十五歳、女子で六十歳以上の公的年金だけで生活している世帯ほどの程度あると考えますか。
  41. 山口新一郎

    政府委員山口新一郎君) ちょっといま手元に数字がございませんので……。
  42. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  43. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 速記を起こして。
  44. 山口新一郎

    政府委員山口新一郎君) 御質問の数字と必ずしもぴたりしていないと思いますが、これは六十歳以上の者のいる世帯の公的年金受給者の割合でございます。お尋ねは高齢者だけの世帯だと思いますが、いま手元にございますのは、要するにお年寄りのいる世帯の中で公的年金を受けている者はどのぐらいの割合かという数字でございます。  それで、六十歳以上の方がいる世帯の場合に、総数を一〇〇といたしましてその割合が五十七年度八七・九%でございます。これが六十五歳以上の方のいる世帯ということになりますと九四・六%ということでございます。
  45. 対馬孝且

    対馬孝且君 詳しい数字を持っていないようですから、私の方から——これはあなた今後やっぱり資料をちゃんと用意して真剣に国民の不安に答えるようにしてもらわぬと。これは厳重に申し上げておきますよ。  いずれにしましても、いまあなたがおっしゃいましたけれどもね、これは私が調べたのでは、男子六十五歳、女子六十歳以上の世帯で、公的年金生活世帯としましては、大体六〇%以上の方が公的年金に依存して生活しています。これは大臣ひとつ聞いておいてもらいたいと思う。そこで、五十七年度厚生省国民生活実態調査によれば、公的年金だけで生活している高齢世帯は三二・八%、それから総所得の六〇%以上を公的年金に依存している世帯が五二・六%、こういう数字に実はなっているわけであります。したがって、高齢者の三分の一がまるまる年金ということになっていますが、前年度二六・五%から三二・八%へと、六・三のポイントの増加ということで理解をしています。こういうことになってきているわけだ。私は国対副委員長もやっているので、ここらあたりはどういう現状かということも率直に政府側に質問して解明をしようということでいま問題を出したわけですが、この点どういうふうにお考えになっていますかな。大体二千万人近い方々が凍結で犠牲になる、こういうことになるわけですから。これは大臣どうですか。
  46. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いま先生からお話しがありましたような形で、私も、いま数字がないというのですから感じとしては先生のお話のような感じじゃないかと思うのです。年金だけで生活しているお年寄りの方というのはそんな感じじゃない かと思いますが、それの年金を今回はスライドアップを見送った、こういうことでございますが、今回の五十八年度予算は全く異例中の予算を組んだわけでございまして、五十七年におきましては人事院勧告も凍結されているという厳しい財政事情にありますし、また、恩給や共済年金の改善も見送るということになりましたし、最近の物価動向を見ますと安定した傾向が続いている。こういうことで、確かにお話しのように、年金受給者からすれば一銭でも上げてもらいたい、こういうお気持ちだろうと思うのです、それは。そういう気持ちでありますが、まあそこはやっぱり全体のことを考えてがまんをしていただくということでお願いをしたような次第でございます。したがってこういうことをいつもかつも続けるということは私は余り褒められた話ではないだろう、こう思っているところでございます。
  47. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは大臣そう言ったって、厚生省みずからこういうものを出しているでしょう。五十八年一月九日付の新聞に、「厚生省五十七年調査」、「42%が「生活苦しい」年金頼る世帯増加 生活費を依存『高齢者』の3分の1」、こうばんと出しておいて、あなたどういう説明するのですか。いま大臣が言うようなことを言ったって、年金生活者は、とんでもない話だと、われわれ戦前で苦労し、戦後で苦労して戦後復興のためには稼げ稼げと生産性向上でたたかれ、戦争では犠牲になって、何言っているんだというのが率直な国民の声だよ。それをいま大臣の言うようなことを言ったってこれはあんた通らないよ。しかも厚生省みずからが、かくかくしかじかの実態になっておりますということをはっきり出しておいて、それを切らざるを得ないと。これではちょっと林大臣にしては、実力大臣にしては——体を張ってもこれだけはもうやると、それこそ弱き者に、弱者の方に温かい手を差し伸べる、ここがやっぱり私は活力ある福祉社会基本方針だと、こう思うのですが、これ、どうですか大臣。それでは国民大衆は理解しないよ。
  48. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私、いまの新聞は残念ながらちょっと見ていなかったもので、なんでしたら先生後でその新聞のコピーをいただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、国の財政が大変に厳しいということは先生もよく御承知のとおりでございますし、やはりその中で先ほど申しましたように、国家公務員の給与を凍結をいたすというような全く異例の措置をとる、これに関連して恩給、共済年金の改善も見送ると、こういうような事態でございましたから、乏しきを憂えず等しからざるを憂うと、こういうこともありますように、まあここはちょっとがまんをいただかなければと、こういうふうなことでやったわけでございます。  それは、厚生省といたしましては、先生おっしゃるようなお気持ちは非常によくわかるんですよ。これは大臣折衝でも最後の最後まで話をしたんですが、竹下大蔵大臣からも、まあ林君勘弁してくれやと、こういうふうな話でありますから、そういうふうな全体のことを考えますと、私はやはりこの際はがまんをしていただくということでしかないと思うんです。もちろん私は、こうしたことをいたしたからといって、まさに異例の措置、異例の予算を組んだわけではございますから、こういったことが長期的に長続きするようではいけないと、こう思っていますし、できるだけ早く改善、一般のスライド制ができるような状況が出てきますように、一生懸命いろんな形で努力をしなければ、これは政府として努力をしなければならないものだと考えておるところでございます。
  49. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣ね、人事院勧告はこれはスト権の代替である労働基本権の問題ですから、われわれは絶対これは許すわけにはまいりませんし、いまなお凍結されていることについては強くわれわれは反対をし、今国会、参議院段階予算の自然成立までにまだあるわけですから、われわれも政府に猛反省を促して、これはもう実現を期さなきゃならぬと、こう思っておるわけですが。  そこで、やっぱり年金生活者というのは生活の幅がないということですよ、大臣も御承知だと思うんだけれどもね。まあこれはサラリーマンだからいいという、さらに勤労者の場合いいという意味じゃないんですよ。この間大臣会ったでしょう、北海道、東北全部来てね。あの方々が言うには、この限られた年金という枠の中から生活している限り、その場合、幅がないと言うんだ、生活のゆとりの幅が。たとえばサラリーマンであれば、今月減収になっても時間外労働で稼ぐとか、他のことで収益を上げるとかということはできると言うんだよ。しかし、現実に年金生活者の場合は、どこをどうしようとこれ以上のことはできないんだと、こういうわけだ。それと、弾力性がないと。このものが据え置かれるということになると、先ほど大臣は、現行の福祉水準については維持いたしまして質的にさらにひとつ向上に努めてまいりたいという基本方針を言ったけれども、言葉で言ったって、片っ方ではばさっとこれ切って据え置かれるということは、結果的にもらえないんだから、これ。生活が犠牲になるわけだ、どう言ったって。ここを私は言いたいわけだ。  だから冒頭大臣社会保障に対する基本的姿勢というものをお伺いして、さすが林大臣、なかなか近代的姿勢を持っているなと高く評価をしたんだけれども、ここへくるとやっぱりついに、遺憾ながら全然だめですと。こうなると、言葉だけでは困るわけだよ、問題は。いま年金生活者の切実な声というのは、もう弾力性がないんだ、もうゆとりがないんだ、ここをひとつ政治の場でやってくれと。これがやっぱり訴えでありますからね。ひとつ大臣、遺憾ながら、努力したけれども大蔵大臣はどうしようもなかったというようなことでなしに、ひとつもう一回これは最善の努力を払うと。これ、大臣間違ってもらっちゃ困るよ。決して人勧決着ついたわけじゃないからね。これはもう予算が衆議院を通ったからって、参議院はまだ六日まであるわけですからね。何かもう人事院勧告あきらめたようなことを言っていますけれどもね。間違ってもらっちゃ困るよ、これ。人事院勧告は、いまなおこの問題についてはやっぱりわれわれは徹底的に追及をして実現を期すと、こういうことでがんばっているわけですから、その点を誤らずに、ひとつもう一回その点をお答え願いたいと思います。これ弾力性がないんです、大臣
  50. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 人事院勧告の問題につきましては、現在各党間で国会で御協議をいただいておると、こういうことになっておりますので、その結論に従っていくべきだろうと、こう思っておるところでございます。  いま先生のお話の中でございました、年金生活者が非常に困っていると、こういうふうな話でございますが、実は、生活保護法に基づく生活保護基準というのがございます。これは、いろいろな問題ございましたが、生活保護基準は今回三・七%ほどアップをして、そういった非常に生活に困っておられる方々に対する施策というものはやっぱり考えていかなければならない。これも言いますと、きわめて簡単に言えば、全部据え置きだから全部おいておいたらというような話もないではなかったわけですけれども、やはりそこは、生活保護基準というものは考えていかなければならないだろうという形でやったということはひとつ御理解を賜りたいと、こういうふうに思っているところでございます。
  51. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは理解はできません。これははっきり申し上げます。何であなた、生活を切り詰めて犠牲になることを理解してくれなんて言ったって理解できるわけないでしょう、そんなもの。私に言わせれば、これは理解してもらうのでなくていま一度、この人事院勧告はまだ解決の段階ではないんだから、これは予算は参議院でまだ通過をしておりません。したがって、それらを含めてひとつ今後努力するということならわかるけれども、理解してもらいたいと言ったって、大臣、理解できないですよ。  それから、あわせて次の二つのことを答えを聞 きたいのですが、もし人事院勧告が凍結解除と、何らかの今後の動きがあった場合、厚生省としてこの年金福祉、諸給付、諸手当の関係についてどういうふうに対処されようとしているのか。この点ひとつお伺いしたいということと、それから、与野党幹事長・書記長会談で合意いたしましたいわゆる所得減税問題が衆議院段階で議長の見解ということで合意したわけですが、うわさでは、一月とかあるいはいろいろなことを言われていますけれども、もし所得減税が実施をされたとすれば、これが完全実施されたとすれば——これは所得税のですよ。年金生活者というのは納税者としては全く所得はないんですから、ほとんど。そうでしょう、最小限度のものですから、これは、あったとしても。その場合、当然これは見直すべきじゃないか。つまり、所得減税と人勧が決定された場合は、当然諸手当も支給する、年金の据え置きも解除する、支給すると、こういうことは当然考えるべきでないかと、こういうふうに思うのですが、この二点についてどういうふうにお考えかということと、いまなお人勧は解決されていない、したがって、この問題については厚生大臣の立場から政府部内はもちろんでありますけれども、今後鋭意いま言った人勧のこれからの見通し、それから所得減税とも相まってこれからもやっぱり据え置きを解除する方向で努力をいたしてまいりたいと、こういう答弁であれば、さすがやっぱり林大臣基本姿勢は、冒頭に申された福祉現状を維持し質的向上に前進すると、こういう気持ちは評価できますけれども、それでなければ評価できませんね。いかがですか、この点。
  52. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 二つ問題があると思います。  一つは、五十七年の人事院勧告の問題でございますが、これにつきましては、先ほど来申し上げておりますように各党間でお話し合いをすると、こういうことになっておりますから、その結果を待ってやらなければならないと、こう思いますし、仮定の話で人事院勧告を五十七年度において完全実施というような話があったならばどうなるかと、こういうふうなお話でございますが、これは私は完全実施ということになればまたいろいろな考えなければならないものが出てくるだろうと、こう思います、それは正直に申しまして。しかし、それは仮定の話ですから、私が、こうなったらこうなります、こうなったらこうなりますということを言うのはいかがかと、こう存ずるところでございます。  それからもう一つは、所得減税のお話でございますが、これも与野党間で、やると、こういうふうなお話になっております。いつごろかということもまだ、五十八年にということになっておりますから、そのときにはいろいろな話し合いがされておりますから、その結論を待ってから考えていかなければならない問題だろうと、こう思います。それで、減税をやるということになりましたら、課税最低限を引き上げていくとか、累進税率をどうしますとか、それから扶養手当とか、控除の体系をどうしますとか、いろいろなことが私は考えられるだろうと、こう思うのでありまして、これもそれだからといってすぐに年金の方に当然に私は結びついてくるものではないと思うんです、法律上は。しかし、一般の所得税減税というものがありまして、一般のなにが成りましたならば、その下の人に対してどうするかということはやはり一つの問題として考えておかなければならないことであることには間違いはないだろうと思うんです。それがやっぱり全体としての構造をバランスよくやっていく上において必要なことではないかと、こう思うわけでありまして、それはこの所得税減税がどうなるか、どんな形でやるかということに一にかかってくる問題でありまして、私としてもいまどうだこうだということを言うことはできないと思います。  ただ、言うまでもありませんけれども、年金につきましては物価スライド条項というのがついております。ですから、この物価スライド条項ということが、消費者物価が五%以上上がったならば、また下がったならば、それぞれそれに応じて変更をしなければならないということが法律にはっきり決めてあるわけでありますから、その条項をどう動かしていくかというのも私はまた問題になってくる話ではないだろうか、こう考えているところでありまして、いろいろな問題がありますが、まだそのもとの方が決まらぬから、いまの段階で何ともこれ言いようがないなと。せっかく先生の御指摘でありますが、私も何ともちょっと言いようがないなというのが答弁でございます。
  53. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、仮定の問題じゃないんだよ。所得減税だけはこれは明らかでしょう。五十八年度所得減税は実現を期すと、こうなっているんだから。ただ、規模が幾らかと、いつの時点かということは未解決であっても、五十八年度中の所得減税はやるということだけは明らかなわけだ。だから、その時点で、いま言ったように、問題提起という考え方が出ましたけれども、これは仮定でなくて、これは減税になることは明らかなわけだ。ただ規模と時期はいつかというだけの問題で。だからその点を私は聞いているのであって、人勧はあなたと私の違いがあるけれども、私は、今後六日の予算の自然成立まで期間があるんだから、予算の成立はまだ霧の中と、こうなっているわけですから、この霧の中でどうなるかということはこれからの問題ですから、だから私はやっぱりその点を踏まえてひとつ、今日の年金の据え置きという課題国民課題である、年金生活者の非常な重要なやっぱり叫びである、これを受けとめて、やっぱりそういう所得減税の時点で、あるいは人勧の時点では最善の道を検討していくと、こういうことはひとつ答弁してくださいよ、それは。ここまで言わないと、あなたもうどうしようもないでしょう。
  54. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いろいろな問題が出てくるわけでございますから、そのときに応じまして考えていかなければならない。それは人事院勧告で国家公務員の方だけが上がって、あとはさよならよ、知りませんよというような話でもやっぱりバランスのとれない話になるという御議論は私はよくわかるわけです。それから所得減税をやって、その所得減税というものがどういう形のものになるか、私はその形の問題、やり方の問題だと思うんですね。所得減税というと課税最低限を上げていく、こういう話ですが、そうでなくて、たとえばこのごろは子供が学校に行っているようなところが非常に負担が重いというような話もありまして、そういった形にするのかもしれませんし、それから所得減税のやり方としまして、給与所得の控除部分をどうするかとかというような問題とかいろいろやり方はあるんだろうと思うんですね。  だから、そういったやり方に応じて年金の問題というようなものも考えていかなければならないんじゃないかということを私は申し上げているわけでありまして、当然社会全体として所得減税というものの効果がやっぱり景気浮揚のためにやると、こういうふうな話でございますから、そういったことになるような形のものというのはやっぱり厚生省の中でもあるのかどうかということを含めて私は検討をしていくべき課題ではないだろうかな、こう思っているところでございます。
  55. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま、いずれにしましても所得減税問題は国民的な、人勧問題というものもございますけれども、大臣のあれは、そういう時点で厚生省の内部としてもこの問題についてはひとつ考え、検討していくべきものであると、こういうことで間違いありませんね。確認してよろしゅうございますね、ちょっと大臣ひとつ。
  56. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 申し上げますけれども、お話の趣旨はよくわかるんです。お話の趣旨はよくわかりますが、私の立場といたしましては、現在政党間におきましてお話をしておられますから、その結果を最大限に尊重いたしますと、こういうことで政府としては答弁を統一しておりますから、そういう立場で、いまのお話はよくわかる、お話しのお気持ちもよくわかります、しかし政府としては、勝手に政府がどうだこうだと言う わけにこれはいかないわけでございますから国会での御判断にまちたい、こういうふうなことであることを申し上げておきたいと思います。
  57. 対馬孝且

    対馬孝且君 国会ではちゃんと所得減税は実施をするということを確認しているんだから、それを踏まえて、いま言ったように最大限尊重し、その時点で年金生活者の問題もあわせてひとつ検討すると、こういうことで、しつこい意味じゃありませんから、それ検討することはやぶさかじゃないでしょう。その点どうですか。そこまであなた否定しないでしょう。気持ちはよくわかりました、気持ちはわかったけどやりませんというんじゃ、これ話にならないんで、あなた、それは大衆を裏切ることになるからね。
  58. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先ほど申しましたようなことで、国会でいろいろとお話しをしておられることを十分に尊重しなければならないのが行政当局の立場でありまして、われわれ分際が国会の大変な偉い方々がお話しをされていることにくちばしをはさむということはいかがなものだろうかということを私は申し上げておるわけでございます。もちろん厚生省といたしましても、そういうふうなお話が決まりましたら、いろんな点について検討することにつきましてはやぶさかでないことは申し上げておきたいと思います。
  59. 対馬孝且

    対馬孝且君 やぶさかでないということは、検討すると、こういうことで、ひとつはっきり申し上げておきます。大臣、そこらあたりときどき歯切れが悪くなったらだめだよ、あなた。そこらあたりはやっぱり当初の基本姿勢を踏まえてお答え願って、十分、最大限に尊重するということは、その時点で厚生省としても年金生活者の問題をあわせ検討していただくと、私はこのことを申し上げておきます。よろしゅうございますね。  それでは、福祉灯油の問題ちょっとあわせて、この関係もございますので。この問題は、僕はしばしば、もう三年間やっているんだよ。当時障者年で、園田厚生大臣と私との間で。これは北海道という狭い気持ちじゃないですよ。あの寒冷地法ございますね、公務員の、寒冷地手当の支給対象地域、の北海道、東北、北陸。これは内地、本州でもあるんですよ。富士山のふもとだとか、いろいろあるんですよ。これは公務員法に従っての寒冷地手当の区域と、こう言っているわけですから。だから私はこれはしばしば申し上げているんだが、ひとつ大臣、この間年金代表者に会っていただいて、非常に感激して帰っていっているわけです。それはもう僕は三年、石の上にも三年という言葉があるけれども、私は法案を出していますから、私が出した法案、対馬法案にこだわるということではないんだ、これは立法府のみんなの考えですから、これは全体が合意しなきゃ成立しないわけですから、そんなことは百も承知だけれども。当時、園田厚生大臣はこう言ったんですよ。確かに北海道の現状、東北の現状はよくわかると。これは去年調査に行っていただいていますから、市町村段階でも十万から十五万、貸付金だとかあるいは一部支給とかといってやっているんですよ、これ現実に。だから、私が言っていることは、いますぐ四本。私の法案は、国が二本、道県が一本、市町村が一本と。最低北海道は十本使うわけですから。十本ということは、いま、二十三万円ということですよ、一冬。年金生活者はだからもう大変なんだ。昔は朝起きは三文の得ということわざがあったけれども、朝早く起きて灯油をたいておったんでは、年金の金を全部出しても足らぬとこう言うんだわ。そんなものは昔のことわざであって、いまそんなことは当てはまらない。いまどういうことが年金生活者の相言葉になっておるかといったら、朝起きは三文の得ではなくて、早寝遅起きが三文の得と、こういうふうに変わってきているんだ。早く寝て遅く起きよと。(「朝寝朝酒」と呼ぶ者あり)朝寝朝酒は別にして。  そういうことだから、やっぱり問題の実態を踏まえてひとつ大臣、この間お会いしたときには私が申し上げた第三者機関、何らかの機関でひとつこの問題を提起して検討していただくということを申し上げたわけですが、この点について大臣考え方をこの機会にさらに伺わせていただいて何らか、結論を何も私いますぐ求めようとは思いませんけれども、やっぱり形を変えてどうするかという、その場その場でなしに、第三者委員会にこの問題を一回提起していただいて、そして東北、北海道の現状というものを踏まえて、そして母子家庭年金生活者、身体障害者、こういう方々にはやっぱり最低ドラム缶一本程度あるいは二本程度は支給すると、こういうことの方向にみんなが念願しておるわけですよ。このことを大臣にひとつお伺いしたいと思います。
  60. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 御指摘のように、北海道で灯油が非常に使われておるし、また、北海道を含めて大変寒いところでいろいろな困難な御事情にあるということはよくわかるんです。ただ、いわゆる福祉灯油というかっこうで制度をつくるということになりますと、いろいろな問題がある。先ほど先生もちょっと御指摘ありましたように、寒冷地手当というものの関連をどうするかという問題がありまして、北海道だけにするかどうかというような問題もありますし、また、それでは寒冷地手当の区域以外のところの生活保護、母子家庭等々につきましてどういうふうな対策を講じていくかというような問題もあるだろうと、こう思うわけでありまして、もう一つは、私は、灯油ということで言いますと、これ非常にいま値段が変動する可能性はあるわけでありますね。そういった非常に価格の変動をするようなもので制度をつくることが果たしていかがなものであろうか。昨今はOPECの石油の価格が値下がりをするというような形になりましたときに引きずられて灯油の値段というものも変動をしてくるという可能性もあるわけでありますし、その辺もいろいろと制度としてやる場合には考えていかなければならないものじゃないかと、こう思います。それから、厳しい財政事情でありますから、そういったものをつくりまして新しいことをやるのがどんなものだろうかなということもございます。  先生もたびたびこの問題につきましては、当社会労働委員会やその他のところで、園田厚生大臣以下にお話をしておられていることもよく承知しておりますが、この前先生がおいでになってお話しを申し上げたときに御提案がありました第三者機関で検討したらどうかと、こういうふうな話でございますが、そういったことにつきましては、何か学識経験者等から成る研究会の形でやれるものかどうか、私も引き続き検討をさしていただいてみたい、こういうふうに考えているところでございます。  確かにこれはいろいろな問題が私はあると思います。先生のお立場もよくわかりますが、制度として果たしてやるのがどうかなということは——もう一つ言いますと、アメリカでも食料スタンプ制というのがありまして、それをやっぱり生活保護世帯にどうするかということになると、ダブルになるのではないかとかどうだとかというような話があるわけでありまして、その辺のこともよく考えながらやっていかないといけない。それから、生活保護とかというところが、たとえば北海道の方はこれだけおまえもらっているじゃないか、そうすると今度はこっちの、おれの方は何か別のものをくれよというようないろんな話が出てくる可能性があるわけでありますから、そこはもう少しよく考えてみなければならない話ではないだろうか。私もやる以上は何か相当具体的なものがあるような形で、こういったことでやったらどうだろうかと、こういう形で研究会なり何なりお話しをしてみたいと、こう思っておりますが、実は正直なことを申しまして、まだ私自身そこまで結論をよう出し得ない状況でございますので、引き続き勉強さしてもらいたい、こういうふうに考えているところでございます。
  61. 対馬孝且

    対馬孝且君 引き続き検討していただくということは結構ですからね。  それで、認識をちょっと間違ってもらっては困るので、これは園田厚生大臣との間で、試験的にやってみようと。これは障害者年の年ですから、 五十六年ですね、その九月ですよ。しかも具体的に私はいまメモを持っているんですよ。九月にこれやってみよう、そして、モデルでドラム缶一本だけ支給しよう、こういう話が出たわけですよ。ドラム缶一本だけの無料灯油券を出す、こういう話が時の園田厚生大臣と私が話し合った合意なんです。これは自民党の政権がかわったというなら私わかるんですよ。みんな年金生活者の言うことは、自民党がずっと政権をとっていて、大臣がかわったからこれができないというのは筋が通らないではないか。そうでしょう。これは社会党が天下をとったわけじゃないんだから、やっぱり自民党が政権をとっている限り、歴代厚生大臣は別にして、園田厚生大臣がそういう答えを、まあ善意で言ってくれたと思うんです、私は。それは努力してドラム缶一本だけやってみようと、その結果また判断をして、対馬さんが出している法案がいいのか、あるいはその他、他に方法があるのか。とりあえず当時の段階では対象者を母子家庭と、障害者年でもあったものですから身体障害者に限定してみようと、ここまで言ったんですよ。そしてドラム缶一本だけの無料券を発行したいと。これで実施期日はこの秋九月と。ここまで約束しているわけですよ。  だから、私言っているのは、いま言ったように、大臣がかわると答えが変わってくるということは非常に政治不信を持つわけです。だから、決して中曽根さんに政治不信を持つんでなくて、自民党政権に不信を持つわけですから、だから少なくともこの問題については、やっぱり大臣、一応いま第三者機関、学識経験者でも結構ですよ、そういう第三者機関で——答えがどうかということをいますぐ求めているんじゃないんですよ、私は。年金生活者がいま求めているものは、政府姿勢が、石の上にも三年になる、その三年の間に一つも前進していないじゃないか。たとえば積極的にこういう検討をしてみるとか、去年は調査してくれた、これは多としますよ。去年調査をしていただいたということは多とするけれども、したがって第三者でもいいし、あるいは別のあれでもいいんだけれども、政府としてやっぱり検討をしていくというひとつ前向きの姿勢を出してもらいたい。 この点、先ほど継続的に検討していきたいと、こういうことですから、第三者機関もしくはそれにかわる機関で継続的に審議をしていただく、それはよろしゅうございますね。
  62. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私も、園田さんから後ずっと歴代大臣先生からお話しがございまして、いろいろと国会でも御答弁申し上げましたり、北海道に行きましたときに御答弁申し上げましたりということはメモを持っております。おりますが、私は正直に申し上げまして、先ほど申し上げましたようなことでございまして、第三者機関で検討をするかどうかにつきまして少し考えてみたいと、こういうことを申し上げたのが、先生がこの前政府委員室にお越しになったときのお話でございますから、私はいまもその立場はちょっとまだ変えるだけのものになっていない。いろいろと勉強はさしてもらっておりますが、まだその立場を変えるところには至っていないというのが現状でございます。そういったことで、私も全部これをだめだ、ノーだと言うような気持ちもありませんが、もう少し引き続き勉強をさしていただきたいと、こういうことでございます。
  63. 対馬孝且

    対馬孝且君 引き続き誠意を持って検討されることを特に申し上げておきます。検討をしていきたいということですから、その検討する時期も、いつまでも検討というのじゃなしに、これ需要期が秋ですから、大臣、ひとつこの秋をめどに引き続き検討をしていただくと、こういうことでよろしゅうございますか。この秋をめどに引き続き検討すると。
  64. 林義郎

    国務大臣林義郎君) ことしの秋とかというお話でございますが、私が申し上げていますのは、いま第三者機関にお話しをするのにどうしたらいいだろうかということについて勉強しているわけでございまして、ちょっとそこまでまだ、ことしの秋までなどということになるとかえって拙速になるんじゃないか。私は、物事というものはやっぱり十分に練って練り上げてやらなければできないことだろうと、こう常々考えているところでございまして、余り時間を限られてやるのはまたいろんな問題が出てくるように思いますので、その辺は御勘弁をいただきたい、こう思います。
  65. 対馬孝且

    対馬孝且君 ひとつ私は、秋をめどににして鋭意積極的に検討を進めるよう強く要請しておきます。  まだほかの問題たくさんあるんですけれども、時間がもう来てしまいましたから、次に、試験管ベビーの問題につきまして、大臣認識をひとつこの機会に聞かしてもらいたいと、こう思います。  わが国初めて体外の受精児の着床に東北大学が成功しました。試験管ベビーがこの十月にも産声を上げることが報道されましたけれども、現在全国に卵管性不妊症の夫婦は三十九万人あると新聞報道でもこう報じています。子供が欲しいと切実に願っている人たちにとっては一つの朗報だと私も思います。この問題、厚生大臣はどのように受けとめていますか。
  66. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 試験管ベビーによりまして、いままで子供を産みたくても産むことができなかった方が子宝を持つことができるということは、私は科学の進歩であるし、医学の進歩の成果だと思うんです。私は素直にそのことは医療技術の進歩だということで慶賀すべきことではないか、こう思うわけでございます。  ただ、これをやるということになればいろんな私は諸問題が出てくる、こう思うわけでございまして、やはり何と言ったところで、普通の形での出産ではないわけでありまして、やはり人工と申しますか、技術によっての出産でございますから、そういったことをやっていいのかどうか、またいろんな問題が出てくるのじゃないか、こう思うんです。それは倫理的な問題について私は非常にあるだろうとこう思うんです。人類がお互い進歩してきて技術的にいろんなことをやれる、こういうことになったということは非常に一方では進歩であるが、これが発展いたしますと、遺伝子その他の問題でとんでもない、この前巨大ラットなどというのが、大きなネズミというのができたとかというようなこともある、大体同じ技術だろうとこう思うんですけれども、そういった技術の進歩とお互いの社会が持っているところの倫理の問題というのをどう考えていくかというのは、私はこれは大問題だろうと、こう思うわけでありまして、正直申しますと、事務当局ではやっぱり各界の御意見を聞いて、広く国民的なコンセンサスをと、こういうことになるんですよ。しかし私は、これは先生せっかくお話しがありましたからあれですが、やはりこの問題は、終局的に決めていかなければならないのは政治家だろうと思うんですね、お互い。やっぱり国会でこの辺の議論は少しやっていただくことが私はいいんじゃないかとこう思うんです。私も行政府の長ということになっておりますけれども、やっぱりこういった問題は単に行政府からどうしましょう、こうしましょうという話じゃなくて、一般倫理の話、広い意味での科学とそれからお互いの持っている倫理、宗教の問題でございますから、そういったことを含めて私は議論をしていただくべきものではないかなあというふうに考えておるところでございます。
  67. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣から一応の考え方が、それなりの一つ方向あるいは見解だと思います。私自身もこれ専門家じゃありませんから、いろいろ聞かれるんだけれども、まだ割り切れない気持ちでいるんですね。人間の最も大切な生命の誕生を人工的につくり出すことに対する自然な人間感情の反発などがありますからね。また将来、体外受精による医療技術の進歩がとめどもなく乱用されていくのではないか、人間の社会の混乱が起きはしないか、こういう不安があることもまた事実だと思うんです、いま大臣が言われたように。そういう問題からいきますと、この問題が出ましてから、やっぱり何といっても社会国民の合意ということが基本でなきゃならないんじゃないか。そういう意味大臣が言われる倫理というものをどう求めていくか、倫理を正しく理解するかとい うことが基本でなければならない、この認識大臣と私も一致しておるようでありますから。  そこで、私なりに論評といいますか、出ましたこの反響をちょっと読ましていただきましたが、それぞれやっぱりありますね。評論家の御意見などもちょっと出ていますけれども、やっぱり大事なことは、倫理という問題を誤ると、やっぱり人間社会に、将来に大変大きな誤りを犯すという意見が、私が読んだ限りではまあその意見が多いようであります。したがって、私は、いま時間もありませんからあれですが、この問題は、もちろん国会の場で大いに議論していくということも、われわれは結構だと思うのでありますけれども、たとえば諸外国の例なんかでも、かなりやっぱり倫理基準といいますか、こういうものはアメリカあたりでもかなり議論されているようでありますけれども、いま大臣から聞きまして、大臣考え方はわかりました。厚生省自体として事務当局の立場からどういう点が問題点か。倫理という基本はもちろんはっきりしていますけれども、この評価、つまり徳島大学あるいは東北大学という大学のベースだけでの物の見方、考え方というものが、いまの時点だけで見るとすれば、どういう評価になるかということをちょっと参考までにお聞かせ願いたいと思います。
  68. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) 医学的立場と倫理的立場とあろうかと思いますが、医学的立場から申しますならば、妊娠の成功率が非常にむずかしい、低いという問題でありますとか、あるいは奇形、染色体異常等についてのデータというものが本当にあるのかどうなのかというふうな問題等、昭和五十三年に初めてステプトーが英国でやりましてからこれが初めてで、世界で二百例くらいというふうに聞いておりますが、長期の追跡例というふうなことにつきまして、もっともっと研究がなされなければならないのではないかというふうな点がございます。  また、先ほど大臣も申されましたが、人の卵子というものを体外で操作するということにつきましてのいわゆる倫理的、宗教的立場からの御意見というふうなものがあろうかと思います。  また、さらに進みますれば、夫婦間だけでなしに他人の腹を借りていわゆる借り腹妊娠というふうなことも、これは想像としては考えられるような問題について一体どう考えるのかというふうな、そういったいろんなことが取りざたされているわけでございます。  それで、私ども事務当局といたしましては、従来不妊症、特に卵管によります不妊症につきましてはいい治療法がなかった、これにつきましては、そういった夫婦の方にとりましては大変な朗報であるということでございますが、こういったことで、実際にやられました東北大学では、医療チームで一定の規範を定めまして、それによって厳重に討論した上でお決めになったというふうに聞いているわけでありますし、昨年、日本産科婦人科学会ではこういったものにつきましての基準というものを設けまして、これを行うことにつきまして相当厳重な規制措置というものを内部で行われているわけでございます。そういった点でただいまのところは、そういったいろいろな研究者の方々、医学者の方々のやり方というものにつきましては、非常に慎重でございますので、私どもとしては、なおこういった点につきまして、十分見きわめていって考えさしていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  69. 対馬孝且

    対馬孝且君 大体時間が来ましたので、時間前ですけれどもこれで質問を終わりますが、大臣国会のレベルは当然ですけれども、いまも局長からお答えがございましたけれども、この問題が医学的に解明されあるいは進展していく中で、やっぱり厚生省自体として、学識経験者といいますか、あるいは倫理学者といいますか、こういう方々のこれに対する意見を聞く何らかの機会というものをつくって、やっぱり検討をしていくべきものではないか、こういう意見を私は持っているんですが、この機会にちょっとお伺いをしておきたいと思いますが、いかがですか。
  70. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先生のお考え、全く同感でして、実は私は総理にもお話しをしまして、優生保護法の問題等もこの国会でいろいろと議論をされていまして、その中でもそういった問題が出ているわけですね。  それから、昨日は尊厳死の問題が出ていました。尊厳死なり安楽死なりというような問題というものを含めまして、それからもう一つ言いますと、一体人間というのは何だろうか、どこまでが生きているんだろうか、こういったこともやっぱり考えていかなければいけない。私は科学技術が進歩するということは非常に喜ばしいことだと思いますが、それと倫理の関係というのは、必ずしも同じ方向にいかないものがある。そこはやっぱり考えてみようと、こういうことで実はいま人選をいたしておりまして、私の私的な形でもいいから少し学者の方に集まってもらって、単に学者でなくてもう少し幅広い意見を出せることも考えまして、私自身の考え方も少しまとめてみたい。やはりこの問題は国民的に議論してもらわなければならない話でありますから、議論しろと、国民的な議論議論と言っていてもしようがありませんから、むしろ私の方からたたき台を出して、こんなものでどうでしょうかというような話ぐらいのところまで出せるかどうか。その辺が出せれば非常にいいのですけれども、なかなかむずかしい話ですからね、そこまでやれるかどうかわかりませんけれども、少なくともそういった問題意識を持ちまして、倫理学の大家であるとか宗教学の大家であるとかその他の方々にも御参加をいただいて少しやってみたい、こういうふうに考えているところでございます。
  71. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま大臣から言われた、あらゆる階層をひとつ網羅していただいて、そういう方向で問題解決のための結論を出すための何らかの諮問機関でも結構ですから促進されるよう強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  72. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      ─────・─────    午後一時五分開会
  73. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、藤井恒男君が委員辞任され、その補欠として柄谷道一君が選任されました。     ─────────────
  74. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 午前に引き続き、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  75. 渡部通子

    ○渡部通子君 私は、いま大変論議を呼んでおります優生保護法の問題につきまして、これは婦人の人権と福祉行政に重要なかかわりのある問題でございますので、いろいろ議論が言われておりますけれども、改めて大臣基本的なお考え、それを順次お尋ねをしておきたいと思います。  人工妊娠中絶適用条項の中の「経済的理由」、これを削除する改正案の今国会提出、これについては、断念したとかあるいは流動的だとか取りざたをされておりますけれども、どのような扱いになりましたですか。
  76. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 渡部先生の御質問にお答え申し上げます。  一部新聞で断念したとかというようなことが報道されておりますが、私はそういったことを申し上げたことは一つもございません。この人工妊娠中絶制度につきましては、私は、優生保護法の十四条の経済的条項を削るとかなんとかということだけで済む、こういうふうに考えているなどということも申したことは全然ありませんし、また、そういったことでやろうということを考えたこともございません。私は、いままで国会で御答弁申 し上げておりますのは、広く国民のコンセンサスが得られるような形のものでなければならないから、そういった形で検討を進めておりますということをしばしば当委員会、また、そのほかの委員会でも申し上げておるところでございます。いままで、当委員会におきましても、また、その他の委員会におきましてもいろいろな御意見が出てまいりましたから、そういったものを踏まえましてさらに慎重に検討を続けてまりたい、こういうことでございます。  お断りしておきますけれども、政府といたしましては、国会が一月に再開されましたときに、国会提出予定法案調というのを参議院の議運の方にも御提出してお話しを申し上げております。そして、その中には提出予定法案と、そのほか検討すべき法案というのがございまして、当省関係といたしましては、優生保護法と母子保健法の二つの法案が検討すべきものと、こういうことに出しておりますから、私の方は政府が出した形のままでお願いをいまやっている、こういうことでございます。
  77. 渡部通子

    ○渡部通子君 お答えよくわかっております。コンセンサスが得られれば、得られる方向でと、こういうお話で、きわめて政治的な御発言だと思うんですけれども、国民のコンセンサスというのは、いまのところ得られそうもないんですね、なかなか。反対団体というものがこれだけ多数ございまして、今国会にはおよそ無理ではないか、その見通しも大臣ございませんですか。まだ出す方向で検討をなさるということですか。
  78. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先生そうおっしゃって、あえてお言葉を返すようでございますが、私もこまめに、優生保護法を改正すべきであるという方々の御意見も聞いておりますし、それから反対だという方々の御意見も聞いているんです。時間が許せば、いろんなところでお話を聞くということにしております。  一つには、生まれ出るところの子供というのは、やっぱり大切なものである。人類ですから、生まれ出る子供を道具のごとく捨て去るなどということはだれも考えておられないではないか。しかし、やっぱり人工妊娠中絶をしなければならないことが出てくるのは、いろんな要因があって出てくるわけですから、その点についてはやっぱりお話を十分聞いていろいろとやらなければならない問題ではないかということは私は方々でお話しを申し上げております。それからもう一つは、やはりこの問題において、国会の中でたとえば強行採決をしたりなんかしてやるような話ではないでしょう、この問題は。やはり広く国民の大多数の方々に御信頼をいただけるような形のものにしていくということが、また、そういったものでなければ私はなかなか出せないのではないか、こう考えているということを申し上げますと、これはいずれの方の方からも、それは林さんの言うとおりであると、こういうふうな話まではなっておるわけです。  ですから、それじゃその法案をどうするかなどということになりますと、それから先は幾つもまだ問題がありますから、たくさんのハードルを越えていかなければならない。しかし、これはいまの基本的考え方において一致しているならば、法律は男を女に変える以外は何でもやれるということですから、私はそういったことからすればできないというような話ではないと、こう考えているところであります。
  79. 渡部通子

    ○渡部通子君 大変歯切れの悪いお話しで、少し簡潔にお願いしたいと思います、何しろ時間を気にしておりますものですから。大臣が時間を食って答弁をしていらっしゃるというところにこの問題の本質があるような気がいたします。  この経済的理由の削除、これは六十八国会、七十一国会提出されて婦人団体や医師会と多くの反対に遭って未了になった。これは御存じのとおりです。今回も同じことを繰り返しているわけですね。仮に今国会で法案上程が見送られたとしても、生命尊重国会議員連盟などが結成されておりまして、必ずや選挙が終わったらまたぞろ出てくるのではないか。これはもう十分考えられることで、なぜこれほどまでにして経済的理由を削除しなければならないのか、その考え方の根拠をひとつお示しください。
  80. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 簡単にお答え申し上げます。  私から生命尊重議員連盟の方々のお話を申し上げるのは僣越だと存じますからお答え申し上げませんが、一般的に、先ほど申しましたように、人間というものは、新憲法の精神にも基づいて、やっぱりその生命は尊重されなければならないという基本的考え方があるというところに私は立脚しているものではないかと、こういうふうに思っております。
  81. 渡部通子

    ○渡部通子君 当然の話でありまして、そんなことはお答えをいただくまでもないんです。いま、生命尊重派のことは言えないということでございますが、大体経済的理由が乱用されている、生命軽視の風潮につながっているというようなことが、胎児の生命を尊重しろというようなことが反対理由の主なことだと思うんです。それはあたりまえのことでございますが、みだりに中絶が行われているから、だからこれを禁止しろ、これは乱暴なやり方でございまして、それならば、時間がかかってもそうならないような予防とか教育とか、そっちに力点を置いて、じわじわと国民を啓発していくという方向に政治のかじをとっていただくのが大臣です。それをすぐ法律で縛ろうと、この短絡的な物の考え方というのは非常に危険だと思うんですね。それだけ私は本質的な問題としてお願いをしておきたい。推進派の意見も強いとおっしゃるけれども、大体、生命尊重、胎児の命を大事にしましょうと言って、それに反対などと言う人はいないんです。それはもう同じであります。だから、そういう形で署名運動などやられれば、それは皆賛成するに決まっている。しかし、その次の段階というものを聞かされずに賛成をしたというのが私の知っている人たちでも、特に男性の中には多いわけですね。だから、そういった状況もよく賢察をしていただかなければならないと思うんです。  それでは逆に聞きますが、経済的理由を削除することによって弊害はどう生ずると認識をしていらっしゃいますか。
  82. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いま先生のお話しのこと、私も全く同感なんです、それは。これがあるから、広過ぎるから、すぐに削ってしまえなどというふうな短絡的な議論ではないから、私は、先ほど申しましたバリアがたくさんあります、いろんなことを考えていかなければならないし、それでコンセンサスを求めていく必要があるだろうと、こういうふうに私も考えております。  それから、いまの条項を削って人工妊娠中絶というものを非合法化してしまえば相当に問題が出てくるということは、これは社会風潮からすれば容易に察することができるところでありまして、それを法をもって処断をするか、おっしゃる教育その他社会制度でもって改めていくかというのは、政治家が考えるべき大問題だろうと私は思っております。
  83. 渡部通子

    ○渡部通子君 弊害が出てくるだろうということは容易に察しがつくということでございますから、時間がありませんのでそれを細かくお聞きすることは省きますけれども、少なくとも、やみ中絶がふえるとかあるいは未婚の母が増加するとか、いまの状況では、そういったことで母親の子殺しとかあるいは堕胎罪にひっかかる女性がふえるとか、こういう社会問題を当然大臣も御存じで、いま、容易に察しがつくと、こうおっしゃったと私は受けとめます。本当は時間があれば伺いたいのです、一つ一つね。ですから、これほど大臣も容易に察しがつくというような状況でありながら、なおかっこの経済条項を削除するという法改正をいまのところ放棄なさらない、これは私は不思議でならないのですよ。どうしてもうしばらく待つと、少なくも大臣御在任の間はやらないと、こういう御回答がいただけないかということが不思議であります。  それで、改正推進論の基盤は、宗教哲学に根差す生命尊重論、これにあるようでございます。これはもう自由であります。当然のことです。ですが、これはあくまで精神運動にとどめるべきでございまして、その理念をこうした理論に基づいて個人の基本的人権を規制するような法改正の手段に持ち込む、こういうことは行うべきではないという意見がございますが、大臣はいかがお考えですか。
  84. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 宗教的な規範とか社会的な規範とか民族的な規範とかいろいろあります。私は法律規範というものを、それと必ずしも宗教的規範があるから法律的規範をつくらなくちゃならないとは考えておりません。おりませんが、これは多分に重合する部分もあると思うのです。ですからその辺をやっぱり考えていかなければならない。先ほど先生にお話し申し上げましたように、いろんなことを考えてこれはやらなければならないから、したがって私は単に十四条の改正で済むとも考えていないんです。いろんなことを考えてやらなければならないし、また、どういうふうな形でやるかというのも総合的な施策を考えた上でこういうふうな形で持っていったらどうだろうかなということを考えていかなくちゃいけませんから、そのいろんなことの積み上げの中で、最後に法律規範としてはこうしましょう、道徳規範としてはこうしましょう、宗教規範としてはこうしましょうということの区分けをしていくことが私は一つの作業としては必要なことではないか、こう思っているのです。
  85. 渡部通子

    ○渡部通子君 まあ大臣の慎重にやるという一面、これには私は大いに期待をさせていただこうと思っているわけでございますが、午前中も議論になりましたけれども、いまほど命とか生きるとか死ぬとかという問題が大事に問われている時期はないと思うわけですね。先ほど審議会をおつくりになるということでございましたので、あえて重ねてお尋ねはいたしませんけれども、この生命の問題に関する審議会はひとつ幅広くいろんな立場の方を入れていただいて慎重にお進めいただくことを重ねて私からもお願いをしておく次第なんです。  それで、胎児の生命を大事にする、これは当然ですけれども、胎児の命をいつから生命とみなすか、これ一つとっても大事なことだと思うのですね。だから、キリスト教あたりが言うように、受精したときその卵をすでに生命とみなすというような議論があれば、体外受精に失敗すればこれは堕胎罪ですよ。ここまで議論は広げて考えなきゃならないときに、経済条項だけ削除するなんていう乱暴な話はないんです。だから私は推進派というものの気持ちがわからないのですけれどもね。もう少し慎重にやってもらわなきゃならない。  そこで伺いますけれども、どうしても、子供は大事だけれども、胎児の命もわかるけれども、母親の生命と子供の命と二者択一を迫られたとき、判断は命というものに対してどうなさるのか。産む、産まないの決定は一体だれが決めるとお考えでございますか。
  86. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 人工妊娠中絶制度と申しますのは、胎児の生命も尊重しながら母性の生命の健康を保護するためのいろんな条件を決めておるわけでございまして、たとえば先生指摘の経済条項の削除ということがいま議論になっておるわけでございますが、これは言ってみれば中絶を狭めようというわけでございまして、そのあり方について、先生の御指摘あり方についていまいろいろ議論があるわけでございまして、先ほど大臣から御答弁ございましたように、国民的なコンセンサスが得られるような方向で考えていきたいと、こういうわけでございます。
  87. 渡部通子

    ○渡部通子君 これはお答えになっていないんですわ。それはもう子供は本当に大事だけれども、避妊に失敗したとか欲せざる妊娠をしてしまったとか、そうやって産みたくない、産めないという場合に、選択を、命という問題に対してどうお考えになりますか。そのときの決定はだれがするんでしょうかと聞いております。
  88. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 一般的に申しますと、いまの体系のもとでは私はお医者さんだろうと思うんです。もちろんそれは母親の命というものを十分考えなくちゃいけませんし、それから、もしも出産することによりまして母親が生命に危険があるということになれば、やっぱり母親の命を尊重するということは医師としては当然に私は考えることではないかと思いますが、それはいろんなケースがあるだろうと思いますね。恐らくいろんなケースがあるだろうと思います。しかし、そこでどうするかということはやっぱり医師の判断ではないか、こういうふうに考えております。
  89. 渡部通子

    ○渡部通子君 その母親と子供の命を選択を迫られたときのあれは、やっぱり生命のキャリアから見ても、重みという点では母親をとらざるを得ない、それはおっしゃるとおりだと私も考えます。  それから、産む、産まないということを最終的に決定するのは医師の選択だと、医師の決定だと、いまこう言われました。私は、それも一面。それから、もちろん両親の気持ち、両親の話し合い、医師との話し合い、しかもその医師は倫理観をきちっと持った人でなければ困る、これが自然だと思うんですね。それを法律で決めてよろしいものでしょうか。
  90. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 前段の方は私も先生と同じに感じたんですね。だからそこは、本来それは倫理規範であって法律規範でないということなのか、やっぱりそこは法律で何かはっきりしておいた方がいいか、宣言的な規定で書いておくかというような話があるんだろうと思いますね。だからそこをどうするかというのも一つの問題なんです、いま私たちの方で考えておりますのは。
  91. 渡部通子

    ○渡部通子君 いまの改正という声は経済条項を削るということでしょう。そうなりますと、いま私が申し上げたもうぎりぎりの選択を迫られた避妊も、いまはこの経済条項でおろさしてもらっているんです、実を言うと。喜んでおろしている女性なんかもう一人もおりません、こんな嫌な話はね。泣く泣くおろす場合にその条項に頼らざるを得ないという、この条項は十分御承知だと思うんですよ。その判断のときに、それでも産まねばならないという規制を、国なり法律がやっていいとお考えでございますか。
  92. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私は、さっきから申し上げていますように、十四条を改正して、それだけでもって足りるなどということは一つも考えていないので、いま先生からお話しがありましたような問題を、果たして法律的な規範としてやるのがよろしいのか、倫理的な規範としてやるのがよろしいのか、そういったことも含めていま考えていると、こういうことでございまして、お話の趣旨は私も非常によくわかるんです。  それからまた、いま先生の言われた、母親をとるか、子供をとるかというような、どっちをとるかというような境目になったときにどうしますかという問題は、きわめて深刻な話であるけれども、やっぱりそこはこの問題を解決するときに避けて通れない問題であるということも十分に存じているつもりでございます。
  93. 渡部通子

    ○渡部通子君 それでは、国連の人権宣言、それから国際婦人年の世界会議における決定、こういったものを重々踏まえた上で、ひとつ世界の常識に外れないように、産む、産まないの決定を法がしてはならないと私は思います。それを女の権利だなどと肩ひじ張って言うつもりは全くないんです。これはもう本当に倫理観を持った医者と、泣く泣く両親と——その場合、男も加わってもらわなければ困るのですよ、責任者なんですからね。そこでよく話し合って人間的に判断を下すべき問題。そこに国が介入をしたり法律で縛ってはならないということは国連でも決定しているし、国際婦人年でも決めた問題なんだと、それをよく厚生大臣も事務当局も御了解をしておいていただきたい。これは重ねてお願いをする次第なんです。  それで、その子供を安心して産み育てる社会的整備をやるという、こっちをむしろ急いで、大きな声を出して進めてもらわなければなりません。 それで、生命尊重の立場に立つならばこの弊害除去、こちらにむしろ力点を置いていただきたい。  それで、その避妊法ですね、わが国では、まだ避妊法すら確立されていないわけですね。だから私はよく言うのですけれども、水道の蛇口をひねりっ放しにしておいて経済条項を削るというのは、ホースの先を詰めるだけの話だ、どこかでパンクすると、こう申し上げているのですけれども、ピルはまだ解禁していないんですね。しかし産婦人科の医者に行くと幾らでももらえるわけですよ。だから厚生省は黙って見逃しているという状況にあるわけですね。そんな暗いやり方ではなくして、むしろピルにおける安全性と副作用の危険性、あるならあるで情報を提供したらいかがか。たばこと併用しちゃいかぬとか、あるいはどのくらいの期間なら飲んでもいいとか、そんなようなことがきっと医学的にもあるんだろうと思うのですね、世界でこれだけ行われている以上は。産婦人科医が渡すのを厚生省も黙認をしていらっしゃるわけですからね。そういった意味で、むしろ避妊法をどう確立するかという方に力点を置き、ピル等についても情報をきちっと流していただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  94. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 望ましくない子供が産まれ出てくるということはやっぱり家族計画上も問題もありますし、私は、御指摘のようなことも考えながらいまの問題はやっていくことが必要だろうと思うのです。やっぱり子供は祝福されて出てこなければならないものだろうと思いますね。それで、そのためにはやっぱりいろいろな家族計画であるとか、いまお話しのようなことを、またそのほかのいろいろな方式もあるのでしょう、私も詳しいことは知りませんけれども、いろいろあるのでしょうから、そういったものをやっぱりいろいろ総合的に考えていくことが私は必要なことではないだろうか、こう思っているのです。
  95. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで、堕胎罪について私も一言伺っておきたいのですが、いまどきのお方は堕胎罪などというものがあることすらみんな知らないという状況のこれは刑法でございますが、法務省に、堕胎罪というのは簡単にどんな法律なのか。簡単で結構です。
  96. 土屋眞一

    説明員(土屋眞一君) 堕胎罪の定義を申しますと、御案内のとおり、自然の分娩時に先立ちまして人為的に胎児を体外に排出することを言うのでございまして、胎児の生命、身体、それに妊婦の生命、身体を保護法益とする犯罪でございます。
  97. 渡部通子

    ○渡部通子君 中絶は犯罪と位置づけているわけですね。
  98. 土屋眞一

    説明員(土屋眞一君) 優生保護法によります人工妊娠中絶につきましては、刑法三十五条のいわゆる法令による行為ということになりまして、したがって、それによる行為は違法性が阻却されますので刑法に言う犯罪には当たらないということになるわけでございます。
  99. 渡部通子

    ○渡部通子君 優生保護法でなくて、堕胎罪それ自体は犯罪と、中絶を見ているわけですか。
  100. 土屋眞一

    説明員(土屋眞一君) 優生保護法によるそういう適法な人工妊娠中絶以外の人工妊娠中絶は、当然刑法における堕胎罪に該当するわけでございます。
  101. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで厚生大臣に御見解を承りたいのですが、やはり経済条項をなくすことによって堕胎罪がふえる、これはもう当然考えられることでございますが、そうすると、この堕胎罪の存在自体を厚生大臣はどうお考えになるか。  あるいは優生保護思想というものをどう見ていらっしゃるか。  それから、堕胎罪それ自体の中身ですが、これは堕胎をした女性と手術者だけが罰せられるという中身、これは不平等な立法ではないかという、この三点を伺います。
  102. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 堕胎罪をどう見るかというお話ですが、これは法務省の方の御所管ですから、私からどうだこうだという話は差し控えたいと思うんです。ただ先生、戦後に姦通罪というのがなくなりましたね。だから、この堕胎罪というものは日本の法律としてちゃんといまある法律ですから、私はその法律はやっぱり守らなければならないものだろうと思いますし、これをどうするのかというのは、諸外国の事例も考え、また、社会的な状況も考えて、この問題はどうするかということを考えなければならない。現実にある刑法法規でありますから、これはやっぱり刑法法規として尊重しなければならないだろうと思うんです。  それから優生保護法でございますが、産まれ出てくる子供が、非常に困る子供が出てくるであろうということを考えて優生保護と、こういうふうなことが優生保護法の本旨だろうと思うんです。遺伝の関係その他のことがありましてどうも好ましくないというようなことが法律にも書いてありますから、そういったことをやるのが大体私は優生保護の基本的考え方ではないだろうかなと、こう思うわけでございます。  女性に対する差別ではないかと、こういうふうな話ですが、この辺はさっき先生がおっしゃいました世界人権宣言、国連の婦人年のときに設けられました権利宣言などを見ましても、私はやっぱりいろいろ考えていかなければならない問題があると思いますが、いまこの規定があるからといってすぐに女性差別であるというところまでは断定するのはどうか、まだまだいろいろと議論をしていかなければならない点があるように考えております。
  103. 渡部通子

    ○渡部通子君 私の質問とちょっとすれ違っている点があるんですけれども、大変危険なこともおっしゃったんですよ、厚生大臣。というのは、そうすると優生保護というものはやっぱり余り障害のある子は産まない方がいいという、こういうこともおっしゃった。  私が伺いたかったのは、堕胎罪というものが犯罪として中絶を見ていることですね。優生保護法というのはむしろ適用除外法ですから、ですからこれは経済条項をなくしてしまうと、中絶した女はみんな犯罪者になるんですよ。(「そうじゃないよ」と呼ぶ者あり)そうなんですよ、法律がそうなっているんだから。——そういうことになったら、堕胎罪というものにひっかかる女性が犯罪者となる、これが一体厚生大臣として認められるかどうかという、どうお考えをお持ちかということ。  それから、この犯罪に問われる人が、中絶を受けた女と中絶をした医者なり手術者なり、この二者が犯罪者になるわけです。懲役になるわけですよ。これは不平等な立法ではありませんかと伺っているんです。その見解を聞きたかったんです。
  104. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 刑法典につきまして、刑法の堕胎罪で、たしか医師が「承諾ヲ得テ」という話がありますね、これは医師は男性の医師でも女性の医師でもいいんですから私は関係ないと思いますが、堕胎をしたときに、その中絶をするところの原因をつくった男性も女性と同時に罰せられなければならないではないかという御議論かとも思うんですが、それはやっぱり一つの御議論ですが、さあそこがいまの法律では女性だけ罰せられるようになっておるわけですね、これは。だからそこは——けれども本来的にそういうものじゃないかなという考え方もあるでしょうし、私もちょっとその辺、法律論を詰めたこともありませんが、もしなんでしたら法務省の方からでも御答弁いただいたらいいと思います。それは、子供は確かに二人でつくるものだから両方だという話はそれはあるかもしれぬが、それじゃわかるのかねというような話もあるでしょうしね。その辺はなかなか私もちょっと答弁いたしかねますが。
  105. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) では、質問者の要望にこたえて、法務省の土屋参事官いまの件。
  106. 土屋眞一

    説明員(土屋眞一君) 刑法の犯罪の中には、堕胎罪であったり、あるいは強姦罪もそうでございますけれども、保護法益を考えていろいろな立法がなされているわけでございます。  御案内のとおり、先ほど申しましたように、堕胎罪についても胎児の生命身体あるいは妊婦の生命身体を保護法益にする、したがって、そういう保護の面からこれに対する違法な侵害について、 刑法上犯罪としておるわけでございます。したがって、それには相当の立法理由があると思います。  一方、刑法の基本原理といたしまして、いわゆる責任主義と言います、これは道義的あるいは倫理的な法律以外の責任というものではなくて、法律上の責任主義という大原則があるわけでございます。したがいまして、ある犯罪該当行為について故意過失がある、そういう責任がある人に対して処罰がなされるわけでございます。  それで、堕胎罪のそういう犯罪のもともとの性質上、犯罪の主体が妊婦になったり、あるいは医師等になったり、あるいはそれ以外の人になったりするわけでございますが、男性の場合も当然共同正犯ということで、お互いに共謀してなす場合、あるいは教唆する場合、あるいは幇助する場合に責任が認められる以上、当然その処罰の対象になってくる、これが刑法上のたてまえになっておるわけでございます。
  107. 渡部通子

    ○渡部通子君 ところが、現実はそうはなっていないわけですね、法律自体は。だから不平等だとは思いませんかと私がお尋ねをしているゆえんなんです。  それで、大臣余りこの問題についてお答えもございませんので、時間がなくて残念ですが、この辺でやめておきますけれども、私が言いたいことは、経済条項を削除したならば、やむなく中絶した場合にも刑法の犯罪者になるという、懲役にいかなきゃならないという、こんな昔並みの暗い話がいまに復活することになるぞと、こう申し上げたいわけです。この辺を論究もしないで、単に一宗教団体の主張か何か知りませんけれども、法規範の中に持ち込んだら危険がむしろ拡大するのではないですか、社会的混乱が大きくなりますよと、その辺を重々承知していただきたいということを申し上げておきたかったわけです。(「一宗教団体じゃないよ、これは。取り消しなさい」と呼ぶ者あり、その多発言する者あり)根本はそうです。根本はさようでございます。  そこで私は、大臣もおっしゃったように、社会的条件の整備の方に、産みやすい条件をつくることの方に政治のかじ取りをしなきゃならないという、これは大臣もそう合意をしてくだすったことでございますから、私ども長年主張をしてまいりました母子保健法、これを抜本改正をしようということは私どももずっと提案をしてまいりました。こういった産み育てる社会的条件の整備のためには大事な法律になると思うんですけれども、これについては答申が出ていますのに、改正がなかなか提案されない。やっと検討事項に上ってきたかと思うと、この優生保護法とセットであると、こういう提出の仕方をなすったのですけれども、そうではなく、もう少し単独に母子保健法というものを社会的整備の立場から早急に提案をなさるべきだと思いますが、いかがですか。
  108. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 堕胎罪にみんななっちゃって、追い込んだら大変だということは私も十分承知しておりますし、むしろそういったことを踏まえて私は社会的な、国民的なコンセンサスが得られるようなものをつくっていく努力をしなければならないということをたびたび申し上げているわけでありまして、私自身も十四条だけの改正で事足れりとするのは少し短絡的な議論に過ぎるのではないかという感じを持っているわけです。  それから母子保健法でございますが、先ほど、政府提出予定法案の中で母子保健法の改正を検討と、こういうふうに申しましたのは、いまのような話は優生保護法の中に入るんじゃなくて、むしろ母子保健法の中のジャンルに入るものではないだろうか、両方を改正してやっていかなければならない点がまた出てくるのではないだろうかということで一応検討ということにしたわけでありまして、母子保健対策はもう母子保健対策として十分に私はやっていかなければならない。先生も前から母子保健に大変御熱心でありますし、先生の党でいろいろとやっておられることも承知をしておりますし、私は、その方はその方として、これは進めていかなければならないものだろうと、こういうふうに考えております。
  109. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで、ILOの百二号条約、これは分娩給付に自己負担を認めてはいないという条約でございますが、いまは百三号条約に改正されていますので、やはり国際水準にまで社会保障水準を高めるためにもこの批准を急ぐべきだと思います。産め産めと言っておいて、それで分娩費の方の条約はなかなか批准しないというのでは矛盾があると思うんですけれども、この百三号条約の批准を急いでほしいと思いますが、いかがですか。
  110. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 百三号条約の批准に関しましては、百三号条約において対象者の範囲がすべての被用者たる女子、これを全部含むことになっておりまして、私ども、被用者保険の方ならばこれは批准できる可能性があるわけでありますが、国民健康保険も含めまして全体的に考える、こういうことになりますと、やはり対象範囲が全部をカバーしないという点が一つ。それからもう一つは、百二号条約の場合と同じように母性給付の場合には本人負担があってはならないと、こういうことになっておりまして、本人負担をすべてゼロにすべしという条件というものがなかなか達成できないということでございまして、現在のところ保険の範囲におきましてILOの百二号条約あるいは百三号条約についての批准というものはむずかしいというのが現状でございます。
  111. 渡部通子

    ○渡部通子君 もう一点伺っておきます。  児童手当です。児童手当もやはり社会的整備の中に入ると思いますけれども、御承知のように、大幅に後退をいたして存立すらも心もとないという状況にきているようでございます。行革特例期間終了後、すなわち五十九年度には直ちに制度の発展的抜本改革、これが必要だと思いますが、いかがですか。
  112. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 児童手当につきましては、先生いま御指摘ございましたように、行革関連特例法が適用になっておりまして、行革関連特例法の第十二条に、この特例期間が終了するまでに基本的な見直しをするようにという規定がございます。その期限までにということで、現在中央児童福祉審議会におきまして今後の児童手当のあり方についてせっかく御審議をいただいているというところでございます。
  113. 渡部通子

    ○渡部通子君 時間が参りましたのでこの辺で打ち切らざるを得ないのですけれども、大変短時間に大事なことを伺って、私も議論不足で大変残念でございますが、このわずかな議論の中でもおわかりだと思うんですけれども、大臣、最初から仰せのように、大変これは慎重に扱っていただかなければならない問題です。私は、推進派の方がおっしゃるように、一部生命の軽視の風潮があるとか、あるいは堕胎天国だと言われているとか、そういったことを認めないわけではありませんので、一緒にそういった風潮に対しては是正するように今後の教育やあるいは社会生活の上で努力をしなければならないことは重々承知をしております。しかしながら、短絡的にいま法律をいじるべきではないということも、短い議論でもおわかりいただけたと思いますので、重ねてひとつ、社会混乱の起さないように、これ以上婦人の母体に負担がかからないように、こういったことを配慮していただきますようにお願いをいたしまして終わります。
  114. 馬場富

    馬場富君 私は、医療法の改正の問題について若干質問いたします。  昨日の本委員会におきまして、厚生大臣は所信表明の中で、「地域医療計画の策定などを内容とする医療法改正案を今国会提出すべく、鋭意準備を進めております。」と、こういう御発言がございました。この根拠と、提出時期はいつごろであるか、御説明願いたいと思います。
  115. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 医療法改正につきましては、当委員会におきましてもしばしば法の不備等につきまして御指摘をいただいたところでございますし、今回はぜひともという形でできるだけ早い機会に国会提出をいたしたい、こういうことで、目下非常に急いで作業をやっているところで ございます。  内容といたしましては、地域医療計画の策定と医療法人の指導監督規定の整備をその柱といたしたい、こういうふうに考えております。
  116. 馬場富

    馬場富君 新聞の報道等では、大臣は十八日あたりまでに改正案は出したいという意向を述べられておったというわけですけれども、これが何かおくれているようですけれども、その点はどうでしょうか。
  117. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私は別に十八日までにと言った覚えはないんですが、それは国会提出期限というのが政府の方では三月十一日までとなっておったんです。ですから、十一日までにできるだけ間に合わせて出したいと、こういうことでやってきたんですが、なかなか各方面でいろいろな御議論がありましたから、若干おくれているということでございます。できましたならばできるだけ早く出したいという気持ちには変わりございません。
  118. 馬場富

    馬場富君 次に、改正試案について、部会の審議の中で附帯決議がなされておることを新聞等で見ました。その一つは、国家権力の介入を極力抑えるという点と、それから第二点は、医療審議会を権威あるものにするというこの二つが骨子の附帯決議だと私はとりました。こういう点で、この試案にもありますように、これ見ますと、やはり国家権力の介入による中央集権的な官僚統制の色彩が非常にこの試案の中には強いわけです。そういう点で、やはりいま国が施策基本としております行政改革の理念から言っても、もっともっと医療法の改正についても民間中心のそういう方向性でこの改正を進めるべきだと私は考えるわけですけれども、そこらあたりの基本的考え方をお尋ねしたいと思います。
  119. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私、その地域医療計画をつくることが国家権力の強化だというふうに言われるのかよくわからないわけでありまして、私たちの方は、医療計画というのはやっぱりその地域の実情に合った、しかも各方面のコンセンサスが得られるような形で策定をしていかなければならないと、こう考えているわけでありまして、地域におられるところのお医者さん、それから患者その他のいろいろな方々の御意見を聞いてつくっていくことがやはり至当だろうと、こう思うんです。  なぜ計画が必要かといえば、たとえば救急医療であるとか、あるいは僻地の診療をどうするかとかというような問題がありますし、そういった形での地域の実情というものを十分配慮した計画をやっぱりつくっていかなければならないというのが一つの大きな考え方でございまして、これをてこにして国家権力で何かやろうなどということは私の方でも考えていない。ところが、よく言われますから、この辺はどうもわれわれのPR不足かなと、こうも反省もしておるようなところでございます。
  120. 馬場富

    馬場富君 そこらあたり、大臣と私の考え方が違うわけですけれども、やはりこの改正試案を見ますと、いろんな許可についても諸問題が、内容が今度も盛り込まれておりますけれども、やはりお役所が監督しお役所がチェックしていけばいいという、こういうにおいが非常に強いわけですよ。  だから私は、医療法の改正というのはやっぱり行革の線に沿って将来的には進めるべきだ。一時いろんな問題が、医療の機関で不正問題があったから、それが全体だとみなして、それだけを取り締まる形の法律改正というのは、私は、根本からいけば国の行政の簡素化、そういうこれから進めていく行革という問題からいけば本末転倒する結果になってしまう。そこらあたりの基本の決め方をいま大臣に聞いておるんです。これ、もう一遍御意見そ聞かしてもらいたい。
  121. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 医療法人の指導監督の規定でございますけれども、やはり不正なことをした医療機関というのがあったわけですね、かつて。だから、それに対する取り締まりをいろいろと委員会で御議論をされると、やっぱりどこかに抜けたところがあるからその辺の不備を補っていこう、こういうことが今回のねらいでありまして、こんなものをてこにいたしまして医療機関をコントロールしていこうなどということは毛頭考えておりませんし、また、そういったことができる話でもない。これは規定の整備ということをする場合には、やっぱりそういったようなことは置いておくけれども、それはいよいよ不正があったときに発動なするわけでございまして、通常のようなときにそんなことをやるということは常識的に考えられない話ではないかというふうに私は思っておるところであります。
  122. 馬場富

    馬場富君 だから、それでいけば、たとえば今度の医療法改正の問題では、地域計画が立てられるわけです。そうした場合、都道府県知事の決裁等によるものがかなり出てくるわけです。そういうときに、都道府県には医療審議会なんかもつくられてくるわけですね。この意見を尊重するということは、これは大切だと私は思うんです。  たとえばこの法律の試案の中に出てくる、医療法人が法令違反をした場合には、新しく「役員の解任を勧告することができる。」という部分がございます。それからまた、医療法人の認可については都道府県知事の決裁があります。こういうような状況のときに、その一つの形として民主化を考えていき、やはり民間主導を考えていったならば、医療審議会の意見等もこの決定の場合には加味していくというような、こういうものを取り入れていくということも私はあり得るのではないか。この点はどうでしょうか。
  123. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) 先ほど大臣も申されましたように、案をできるだけ早く詰めるということでただいま作業中でございますが、先生のような御趣旨の、地域の実情に配慮して十分コンセンサスを得られるような仕組みにいたすように、できるだけ事務的に努力さしていただきたいと存じます。
  124. 馬場富

    馬場富君 たとえばいわゆる問題が起こった、違反が起こった、こういうような場合に「役員の解任を勧告することができる。」、これは結構ですが、そういう場合には、都道府県に医療審議会を置くならば、そういう機関の意見も聞くということを私は補足としてつけ加えることも最も民主的な行政だと考えるが、これはどうでしょうか。
  125. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) 先生のような御意見もあるかと存じますが、先ほども申し上げましたように、現在その作業を進めている最中でございまして、そういった点につきましても検討をさしていただきたいと存じます。
  126. 馬場富

    馬場富君 では次に、やはりこの改正に関係がありますが、現在の医療法には医療法人の設立に大変むずかしい条件が多いわけです。こういう点についても、規制よりももっともっと発展していく関係や行革の線に沿ってこれは簡素化していくという方向性の方が私はやはり大切だ。そういう点で、たとえば一つの例を申し上げれば、一つの法人に対して医師三名以上がなければならないというような条項もございます。こういうのは、一人でもりっぱなお医者さんがあれば十分医療法人は私は経営していけると思うわけです。こういうような点について、改正案の中にこういう考え方で簡素化していく、条件をなるべく緩和していくという方向性は考えておられるかどうか、お尋ねいたします。
  127. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いわゆる一人法人の問題だろうと思いますが、これは先生指摘のように、御要望もあるところでございますが、これをどうするかこうするかという話はまだ白紙の状態と申し上げたらいいんだろうと思いますが、いろいろな角度からこの問題については考えているということでございまして、いまの段階ではまだ検討中と、こういうことでございます。
  128. 馬場富

    馬場富君 時間がございませんので次に移りますけれども、最近病院あるいは開業医等の医療機関の倒産が増加しております。新聞等の報道によれば、帝国データバンクあたりの調査状況も載っておりますが、この調査状況とあわせまして、 その原因の分析等についてひとつ御報告いただきたいと思います。
  129. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) 医療機関の倒産につきましては、民間の調査機関によりますと横ばい。五十五年三十六件、五十六年二十八件、五十七年三十六件というふうになっております。  その原因については詳しくはわかりませんが、建物や医療機械の過剰投資等によって経営難に陥ることが多いというふうなことが言われております。
  130. 馬場富

    馬場富君 好況とされておった医療機関が、倒産が史上最高のペースでふえてきておるということは、私はそれだけじゃないと思うんですね。そういう点で、やはり最近の患者の伸び率やあるいは医師の供給過剰等の問題等もございますし、それから最新の医療機器の導入についての資金の増大等のこともずいぶん原因とされておりますが、この点はどうでしょうか。
  131. 大谷藤郎

    政府委員(大谷藤郎君) 患者数の伸びにつきましては、確かに診療所の方では若干鈍化しているようでございますが、病院の方ではやはり三、四%という増加率で増加を続けております。医師につきましては、先生指摘のように、昭和六十年までに十万対百五十人ということでやってきましたが、大体こういうふうになってきておる。また、高額の医療機器につきましては、たとえば頭部のCTでございますと、昭和五十三年に二百六十九カ所であったのが、五十六年には九百四カ所というふうに大型の機器が増加いたしております。
  132. 馬場富

    馬場富君 ここで私はお伺いいたしますが、このように、一般的に医療機関の経営も、従来とは違ってかなり圧迫される方向に動いておることは事実だと思うんです。五十六年の六月の診療報酬改正以後も好転の兆しというのは余りありません。臨調等の影響によりまして、国民医療費の総枠抑制等もありまして、やはり病院等やそういう医療機関を取り巻く環境もかなり厳しくなってきておると、こう思うわけです。そのために原価割れ診療報酬ということも言われておりますが、この実態についてはどのように把握されておりますか。
  133. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、診療報酬を設定する場合には、保険医療機関が全体として健全な経営ができるかどうか、そして保険診療というものが適正に確保できるかどうかというようなことを勘案して決めておるわけでございます。  最近の医療機関の経営状態が苦しくなっておるのではないかという御指摘でございますが、確かにある程度厳しい状態になっていることは確かでございます。しかしながら、私どもの統計によりますと、五十七年の六月と五十六年の六月とを比較いたしましても、大体病院で八・六%程度の医療費の伸びになっております。それから、公的病院等の経営の動向を毎月調べておりますが、最近は少し落ちつきを見せておるような統計になっております。恐らく各医療機関とも経営合理化等の努力をされておるのだろうと思いますが、一般的に経営が苦しくなっておるということは言えるにいたしましても、医療機関の経営そのものが破綻をするというようなところまではまだ参っておらないというように私どもは考えておる次第でございます。
  134. 馬場富

    馬場富君 本年一月に四・九%の薬価の引き下げが行われましたが、これは私たちも現場でよく聞いておりますけれども、これが医療機関の経営にどのような影響を与えたか、ひとつ具体的に教えていただきたいと思います。
  135. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今年の一月に薬価基準の引き下げをやったわけでありますが、全体的に考えてみますと、薬価改定の引き下げ率が四・九%でございまして、これを医療費全体のベースに換算いたしますとマイナス一・五%だと考えております。  ただ、全体的にはそうでございますが、個々の医療機関に対する影響といたしましては、やはり各医療機関でどういう薬を使っておられるか、あるいは薬剤の使用比率というものがどういう比率になっておるか、あるいは診療のパターンというものがどういう形をとっておるかというようなことによりまして個々の医療機関に対する影響というものはそれぞれ違うものだ、こういうように判断をしております。
  136. 馬場富

    馬場富君 今回の老人医療報酬の改定に伴って、若干ではございますが一般診療報酬も手直しされました。従来から薬価改定と並行して診療報酬の同時改定というのは慣例のごとくに行われておりますけれども、全体的に見ると診療報酬についての改定見直し等については、大臣はどのように考えてみえますか。
  137. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いまお話しがございましたように、二月に老人保健法の施行に伴いまして老人診療報酬をつくらなければならない、これに伴いまして、関連をしたところの診療報酬体系の改定をしたわけでございますが、私は、薬価の改定と診療報酬の改定というのは必ずパラレルで動いていくものではないと思っておるんです。薬の方は、毎年調査をいたしまして、あるべき薬の値段というものはいろんな市場価格等を参考にしながら薬価基準というものを決めるわけでございますし、診療報酬というのは、お医者さんが受け取るところの技術料を中心にしたものでありますから、そうしたものはやっぱりそれで別に考えていくべきものだろうと私は思っておるんです。  医療を取り巻く環境というのはいろいろございますから、医療費適正化の一環として、省内に設置しました国民医療費適正化総合対策推進本部におきまして検討中でありまして、中医協でも審議を進める予定になっております。こういった審議経過を踏まえてこれからの状況を決めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  138. 馬場富

    馬場富君 同時に行われるかどうかということはこれは別としまして、私、何点かの問題点を提起をしましたが、報酬の見直し等についての大臣の現段階での考え方を聞かしてもらいたいんです。
  139. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 医療というものは適正でなければならない。その中でやはり診療報酬というものは適正なものでなければならないと考えますし、そういった意味で中医協でも審議をしていただくという予定になるだろうと、こう思うんです。そういったことでやっていくというのが筋でありまして、私は、いつやるとか、またやらないとかということをいますぐに申し上げる段階ではないのではないだろうかと、こう思っておるところであります。
  140. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) 馬場君、そろそろ時間ですから。
  141. 馬場富

    馬場富君 最後にもう一点。  五十八年から税制改正で中小企業に対する承継税制が適用されることになっておりますが、この点についても大変医療関係の機関からもそういう要望が大分強いわけですけれども、やはり医療法人にもこれの適用を考えてほしいという声があるわけでございますが、厚生大臣はこの点についての税制措置を推進する考えがあるかどうか。
  142. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 主として相続税制の問題は、医療法人の持ち分に関係するところの話だろうと私は思いますが、やはりいまお話しになりましたように、医療法人と中小企業とを一緒に考える必要というのはあるのではないか、中小企業の方が相続税制をやったからこっちもやるべきだと、こういうふうなお話は、考え方としてはわかるんです。大体同じ昭和二十五、六年に中小企業もできてきた、こっちの方もそのころできてきたと、こういうことですから、大体経営者というか、お医者さんがもう年になって子供に譲るなんという話になっていますね。中小企業の方だって同じようなことだと思うのですね。だから、そういったお話はよくわかるんですが、医療法人というものについて果たしてそういったことが同じように適用できるかというのは、医療法人の性格論もありますし、また、税の体系の中で果たしてやれるかどうかということもあります。だから、そういったものはもう少し詰めてみなければならな い。御趣旨は私も非常によくわかるんですが、法律的、技術的、また税の技術的になかなかむずかしい問題があるということだけは率直にお答えをしておきたいと思います。
  143. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、委嘱審査でございますので、最初に五十八年度の厚生省予算案における若干の問題についてお伺いをいたします。  五十七年度には老人医療の有料化がやられて、続いて五十八年度の年金の物価スライドが中止をされる。お年寄りはダブルパンチを受けております。このことに端的に示されておりますように、五十八年度予算案というものが国民に犠牲とがまんを強いていることは明らかでございます。ところが一方軍事予算だけは、防衛費ですね、前年対比で伸び率においても伸びの額におきましても社会保障費を大きく上回って異常突出をすることになった。医療年金社会福祉などの国民生活に最も密着した分野を担当している厚生大臣といたしまして、こういう事態というのはまさか好ましいと考えていないと思うんですが、それはどうですか。
  144. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 沓脱先生の御質問にお答えいたしますが、私は、好ましい事態かどうかと言われてもちょっと困るんですが、やはり現在の置かれたところの状況にかんがみまして、財政状況非常に厳しいときであるから、涙をのんで人事院勧告も凍結をするし、いろんな形での厳しい中で予算の配分をいたすということで予算案をつくるし、それから老人医療費、老人はダブルパンチだと先生はおっしゃいますが、そんなことはないわけでありまして、やはり老人の健康のことを本当に考えるならば、早くから健康について、保健的な関係からめんどうを見ていく。健診をやりましたり、検査をやりましたり、そういったことを早くやって予防をしていくという考え方をし、そして本当に適正な老人医療体系をつくり上げていこう、いわゆる薬づけ診療というものを廃止していくということが私は本当の老人の医療のためにもなるんだろうと、こういうふうに考えておるわけでございまして、こういうことが好ましいと思っているかと言われても、私はちょっとお答えのしようがないところでございます。
  145. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと私の質問の仕方が悪かったんでしょうが、私は、老人の問題を引用いたしまして、端的にそういうふうに出てきているけれども、国家財政が厳しいからということで、社会福祉社会保障の面での予算はことしは切り込んでいるわけですね。厚生省も相当な額を切り込まざるを得ないということになっているわけでしょう。しかし、軍事予算だけは伸び率も伸びの金額も社会保障の伸びを上回っているというふうな状態というのは、これは厚生大臣というお立場からいうと、こういう状態というのは望ましいですかと、好ましいとお考えにはならないでしょうねと、あたりまえのことなんだけど、そういうふうにちょっとお聞きしたんです。
  146. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私は、国の運営をしていくときに、やはり安全で安定した安心のいける社会というものをつくっていくことが必要だと思いますし、そのためには必要な防衛費も出さなければならないし、また、安定したことで経済政策のうまき運営をやっていくことも必要であるし、また、安心した社会生活という形で福祉その他のものについて手当てをしていくということは必要でございます。  そういった意味から考えると、今回の予算、それは大変乏しい財政事情の中でありましたけれども、一般会計予算マイナス五億円と、こういうことでありますが、わずかでありますけれども、わが厚生省関係予算は〇・四%でもふえていると、こういうことでありますし、非常にむずかしい状況の中では、私は決して落第点をとった予算ではないと、こういうふうに考えているものでございます。
  147. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 中曽根内閣の閣僚の一員である厚生大臣にそういうことを聞くのは無理なのかもしれませんけれども、しかし、物の考え方というのはやっぱりはっきりしておく必要があるのではないかという立場でお聞きをしているんですが、軍拡のために福祉切り捨てられるという批判というのは国民的に非常に高い批判になっておりますね。そういう点について、これは予算委員会のやりとりの中で政府はいろいろと御説明をなさっておられますけれども、国民の納得を得られていないわけですね。むしろ逆にますます批判の声というのは高まってきているわけですが、これは、国民生活の実感というのは、軍拡の問題が戦争か平和かということだけではなくて、福祉切り捨てと重税の問題として、自分のふところと家計簿に響くという経済問題として受け取りつつあるという点がきわめて重要だというふうに思っているわけですよ。そういう点で厚生省年金医療は大変だからということで、今後の課題としてはいろいろと変化をさせて結果としては国民負担を多くしていくというふうなことが目指されているようですけれども、そういうままで、片方ではそういうふうにおやりになる、しかし依然として軍事費だけは大突出ということでは、これは国民のコンセンサスは得られないのではないかというふうに思うわけです。  そこで厚生大臣、いま大臣に求められているというのは、いろいろ理屈はつけますけれども、軍拡をどんどんやるために福祉切り捨てをするということは許されないんだという点は、やっぱりせめて厚生省ぐらいはしっかりとその構えというのをお持ちいただくということが非常に大事ではないかと思うんです。というのは、諸外国の実例を見ましても、大軍拡と福祉社会保障の増進、これは両方両立するということはできないんですね。そういう点を見ましても、せめて厚生省は、そういう点でこういうやり方というのは、軍事費の異常突出という事態が続くというふうなことは、厚生行政を推進していく上で望ましいことではないというぐらいのことは考え、あるいは大臣としては言えるのではないかなというふうに思うんですけれどもね。  というのは、これは単なる政治的な見解とか感情とかでそのことを申し上げておるのではないんですね。厚生省の設置というのは、本来憲法二十五条の理念に基づいてできているわけでしょう。だから厚生省設置法では、「厚生省の任務」というのは、「社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」に努めるというのが本旨ですよね。だから、それを本当に進めていくということが削られて、しかし片方では、困難な国家財政の中でも軍事予算だけは異常突出をしていくという、行政を進めていく上ではこれはやっぱり望しくないんだというふうなぐらいの政治姿勢というのは持ってもらえないですか。
  148. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 先ほど申し上げましたように、安全で安定した安心のいける社会というものをわれわれはつくっていかなければならないと、こう考えているわけでありまして、福祉切り捨てられて軍拡の方に回されたと、こういうお話でありますが、私はそうは考えておらない。たまたまことしはそういうふうな形で防衛予算は六・何%という形になりましたが、長い目で見れば、社会保障関係費というのは非常に伸びてきておるわけであります。たとえば、社会保障関係費を昭和三十年度と昭和五十八年度を比較しますと八十七・六倍になっている。防衛関係費はその間に二十・四倍になっている。それから、福祉元年と言われました四十八年と五十八年を比較しまして、社会保障関係費は四・三倍になっておりますが、その同じ時点をとれば防衛関係費は二・九倍という形になっています。いずれもいままで非常に私は福祉関係というのは伸びてきているだろうと思うんです。  そういったようなことがありますし、私はことしの予算がどうだこうだということでなくて、やっぱり金額的にも九兆一千億円もこちらの方はあるわけでありますね。社会保障関係費は。それから防衛関係費は二兆七千億と、こういうふうな話でありますから、私は絶対額からいたしましても三・五倍ぐらいだということが言えると思うんですね。だから、そういったことでこちらの方を削 ってどうだこうだという話はどうも私は当たらないんじゃないかと、こう思うわけであります。先ほど厚生省の設置法を引かれましてお話しがありましたが、厚生省の仕事というのはまさに設置法に書いてあることをやっていくわけでありますし、私たちといたしましては、いろいろ全体として乏しい中でやったわけでありますから、これは決して落第点をとっている予算ではない、こういうふうに思っているところでございます。  それは先生、もう一つ申し上げますならば、かつての高度成長の時代のようなときには、予算の規模が十何%もふえる、こういうふうな経済状況、また、それを許すような社会環境があったときにはまた私もできたと思いますが、世界的にも大変なときであるし、経済成長もそんなに期待できない、予算というものはおのずから限度があるということになれば、やはりそこはお互いがこう助け合っていくということが姿勢ではないだろうか、こう私は考えておるところでございます。
  149. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあわずかな時間ですので、余りそれをやりとりしている時間がないんですが、具体的にちょっと聞きますが、大臣もおっしゃったように、前年度対比で〇・四ですか、〇・五%の予算が伸びたというわけですが、厚生省は、午前中も同僚委員から出ました国民年金の国庫負担金の平準化措置を上げたら本当はもっと伸び率は高いんだというふうな御意見もあるようですが、しかし私は、この国民年金の平準化措置の問題というのはやっぱり、繰り延べた国庫負担が将来確実に返済される保証がないんじゃないかという点で、これは大変だなという問題の一つですね。というのは、大蔵に付託されておりますいわゆる平準化法によりますと、返済計画は確かに明記されておりますよ、御説明があったように。ところが、財政事情が好転する見通しが、それじゃ国の財政の見通しの中で六十四年ぐらいになったらよくなるということであれば、それは繰り延べて延ばして何とかというふうな話になればそれならわかるなと、法律でもちゃんと書いてあるんだからということになりますけれども、財政事情が少しも好転する見通しというものが立たない中で繰り延べをするということだけをやるというのでは、結局なし崩しに国庫負担金の削減につながってしまわないかという点が非常にやっぱり心配なわけですね。  というのは、去年も厚生年金では四分の一が延ばされましたね。確かに返済するとあれもおっしゃったけれども、いつ返済するのか、どんな形で返済するのかはついに昨年の論議の中でも明確でないわけですね。だから今度は法律でと、こうおっしゃるわけだけれども、しかし、将来制度が改廃を見通しをしていくという中で、だんごになったらそれこそどうなるかわからぬというふうなことになりはしないかという点で、これは国民の側から言いますと、年金財政を非常に不安定にして年金制度に対する国民の信頼を失うことになるんじゃないかという点で非常に気になるわけですね。同僚委員も御指摘になっておられましたように、確かに問題を先送りしただけじゃないか、問題を先送りして、一般会計の分は削減する、帳づら合わせを確かにやったというふうなことにしかならないんじゃないか、そういうやり方によって国民に不安を与えるというふうなことはやっぱりまずいんじゃないかなと思いますが、その点はどうですか。
  150. 林義郎

    国務大臣林義郎君) いわめる平準化措置の問題でありますが、老齢福祉年金がこれからだんだん減っていくからということを平準化していこうと、こういうふうなのがねらいでございます。国民年金勘定の方から一時借りてやろうと、こういうふうな話でございますが、やはり国民年金という形で各人からいろいろ拠出をしていただいている方に御不安を与えるようなことではこれはどうにもならぬわけでありますし、その平準化措置をやるということを長年にわたってやるならば、単に予算で制約をしておく以上に、法律という形式をもってやっぱり一般会計からの返済をはっきりしておくことが私は非常に必要なことではないか。大体年三%ぐらいの伸びというものを見込みまして平準化で延ばしていくと、こういうふうな形にしておりますから、事国民年金財政に対しては悪影響は及ぼさない、これははっきりしていると思います。もちろん一般会計の方がどうにもならない、大パンクだなんという話になりましたら、それはまたおかしなことになるかもしれませんけれども、私たちはそんなことはないと考えている。そんな一般会計が、法律でわざわざこういうふうに決めたものを返さないなどということになりましたらこれは大変な信用の話でありますから、国家としてはそんなことはまずない。絶対ないと私は約束をしても結構でございますが、そういった形でこれからも取り計らうべきものだろうと思っているところでございます。
  151. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 社会保障制度に対する国民の信頼を揺るがすという点で、そういうことが起こると非常に心配なわけですね。  そういうことの問題、そういうふうに思える問題点のもう一つに、社会保険事務費の保険料財源への切りかえという点がありますね。五十八年度の厚生省予算案では、社会保険の事務費百八十三億四千五百万円が国庫から保険料財源へ切りかえられているんですね。これは臨調の第一次答申が要求しておったものですけれども、昨年の八月の三日に本委員会で私この点について御質問を申し上げているんですね。そのときに厚生省は、臨調の要求ははっきりとこれは断るという立場を貫くという点をおっしゃっておられたんですが、これはそういう点では厚生省は昨年の八月のお立場と変わったんですかね。
  152. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 昨年申し上げたのは、たしかこれまで、制度創設以来ずっと事務費は国庫負担でやってきております。 それを保険料負担に切りかえるということは社会保険制度に対する国の姿勢というものの問題もありますし、これから老齢化というものを控えまして給付費もだんだんふえていく、そこへもってきて保険料率の負担増というものにつながるような事務費の保険料回しというものは慎重に対処しなければならないというふうに申し上げたかと思います。  それで、いまお話しのありました今回の百八十三億円と申しますのは、非常に厳しい財政状況の中で、要するにいままで一般会計負担してまいりました国庫負担の事務費の中身を再検討いたしまして、見直しまして、その中で、何といいますか、被保険者の福祉サービスに寄与できるような経費を国庫負担の枠から外しまして、それを福祉施設費という枠の中で対処できるものについて保険料負担にしたということでございまして、昨年からの考え方は変わっておりません。
  153. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ただね、大蔵省の主計局が作成をいたしました「五十八年度予算における臨調答申の措置状況」というのによりますと、今回の措置は臨調答申を受け入れた措置となっておるわけですよね。で、これまで全額国庫負担であったものを保険料財源へ切りかえるというのは、そういう点では社会保険の基本的性格にかかわる重大な問題だと思うので、やっぱり臨調答申に屈服をしたというのですか、ということで、態度が変わったのかと言わざるを得ないのですよね。厚生省は変わっていないとおっしゃるけれども、主計局の文書ではそう書いてありますわ。
  154. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 臨調の書き方は、事務費国庫負担の保険料財源への切りかえを図るということでございますが、私どもは、要するに事務費に対する国庫負担の原則というその原則は維持しつつ、内容によりまして、従来保険料を負担してきた事業費の枠内で見られるものについてそれを保険料負担に回したということでございますので、事務費国庫負担の原則というものは崩していないというふうに考えております。
  155. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がなくなったからそれをあんまり言うていられないのですが、具体的にちょっと聞きますが、保険料財源に切りかえた百八十三億四千五百万円、科目別の内訳をちょっと聞かしてください。
  156. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 内訳でございますが、要するに被保険者あるいは受給者のサービス向上に資する経費ということでございまして、たとえば年金相談、最近非常にふえておるわけでございますけれども、年金相談に対する回答を迅速に行う、そのために、たとえば被保険者記録を磁気テープ化するというような経費が一つございます。そのほかに、被保険者に対する保健婦等による健康相談、健康指導というような経費。それから三つ目としましては、社会保険事務所で裁定を行ったりあるいは照会に対する回答を行うことを正確確実に行えるような仕組み、要するに窓口サービスの向上を図るための経費、これが三つ目でございます。それから年金等の支払い、郵便局で支払う場合の手数料というものに関するものを保険料負担とする、これが第四点でございます。
  157. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いまの内訳の中で、最後の保険給付費の支払いを郵便局の窓口でサービスをしてもらう。これが一番大きい金額で、百八十三億のうちの百七億なんですね、手数料。ところがこの手数料は銀行は取っていないんですね。郵便局だけ一件当たり五百九十円かかっているわけです。この経費まで保険料財源に切りかえていくというのはやっぱり問題ではないか。当然こんなものは国庫で見てあたりまえではないかというふうに思うんですね。  ちょっと郵政省にお聞きしますが、郵便局のオンラインシステムですね。五十八年度中に完了するといってお聞きをしておりますけれども、そうなると一件当たりの手数料単価というのは相当減るのではありませんか。
  158. 山口憲美

    説明員山口憲美君) 御説明申し上げます。  受託業務の手数料につきましては、いわゆる郵政会計が手数料等で賄っている独立採算の会計であるということから、私どもといたしましては当該事務についてその取り扱いに要する経費についてはそれぞれいただくという考え方に立ちまして業務を行っているということでございますが、ただいま先生から御指摘ございましたように、私ども現在五十九年の三月完成を目途に全国オンライン網を進めているわけでございます。これが完成いたしますと、全国的にいわゆるただいま御指摘厚生年金の取り扱い等につきましてもサービスが可能となるというふうなことから、オンライン化になじむような取り扱い方法等につきましてもいろいろ厚生省の御協力も得ながら、ただいま御指摘の取り扱い手数料につきましても五十九年度から見直すということで、現在そういう心構えでいるということでございます。
  159. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 減るのは減るわけだね。それで、まあ減るという問題もあるんだけど、問題は、この事務費の保険料への切りかえ、こういうのはいわゆる臨調の要求でも今回でもう決着がついて、また来年余分なことが出てくるというようなことはないんだなという問題がちょっと一つ心配なんです。だって、去年の答弁と若干違う形でこうやって百八十三億が出ていくでしょう。こういうのはもう出てきませんなと、あるいは保険料に転嫁されるようなことはありませんでしょうなという点はちょっとはっきりしておいてくださいよ。じわじわふやされたらたまらぬですよ。
  160. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 臨調の一昨年の答申に対します対応といたしましては、今回できる限りの措置をとったというふうに考えておりますので、これで臨調答申に対する厚生省としての答えであるというふうに考えております。
  161. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう時間がいよいよありませんので、最後に一つお聞きをしておきたいんです。  それは、健康保険の被扶養者認定における男女差別というか、男女差別に類するようなことがあるわけです。時間がありませんから詳しいことを申し上げるのはおきますが、昭和四十三年の厚生省保険局保険課長通知によりますと、「妻の所得が夫の所得をおおむね三割以上上廻る場合」は子供を妻の被扶養者とすることになっているという、そういう通達を出しているんですね。今日社会進歩と国民の意識の多様化の中で、やはり子供を共同扶養するというふうな場合が非常に頻度も高くなっている。その中で、女性の給与の方が男性の方よりも高い、同等以上という場合はしばしば起こってきているわけですね。同じところに勤務をしているというわけではありませんから、御主人が健康保険、奥さんが組合健保という場合がありますね。それで奥さんの方が給料がちょっと高い。そうしたら子供を奥さんの方の扶養者にしたいという場合がしばしばあるわけですね。ところが厚生省の方はわざわざ、四十三年だから十五年も前の通達で、奥さんの扶養家族にしたいんやったら、御主人の収入の一三〇%以上であったらというふうな基準を示しているんですね。  私は、今日の情勢で、いかにも男女差別につながるというふうに言われてもやむを得ないのじゃないかというふうに思うんですね。恐らく決めたときにはそんなつもりで決めてなかったであろうと思いますけれどもね。その点ではやはり、同等以上であれば夫の扶養家族にするか、あるいは奥さんの扶養家族にするかということは、その御家庭の選択に任せるというふうにやるべきではないかなと思うんですが、その点はどうですか。これはこの通知書というのは撤回した方が今日の情勢にに適すると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  162. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) お尋ねの点につきましては、四十三年までその取り扱いがばらばらでありまして、被扶養者が夫の方へついたりあるいは妻の方についたりということで、各保険を通じてばらばらな扱いになっておりましたものを、社会保険関係の各省連絡協議会で協議をいたしまして取り扱いを一定にしたと、こういうことから生まれた取り扱いなのであります。  いま先生指摘の、三割以上要の収入が高い場合に妻の方の被扶養者にするというのは、男女平等の原則から言って少しおかしいのではないかと、こういう御指摘でございますが、収入というのが大体同じ場合には、仮に片一方がふえた、あるいは今度はこっちがふえたということによって被扶養者が、ある場合には夫につき、ある場合には妻につくというような、被扶養者の立場、地位というものが非常に不安定になる、こういうことがございまして、社会保険の関係というのはやはり一定の安定性を保っていくべきではないか、こういうような観点から、三割ぐらい高い場合には、三割をオーバーするというのはなかなか時間もかかると、こういうようなことで、ある程度被扶養者の立場というものの安定を図るためにそうした措置をとったわけであります。  それから、任意にすべきではないかと、こういう御指摘でございますが、社会保険の現在の法律におきましては、被扶養者たるものは、被保険者によって生計を維持されているものと、こういうようになっておるわけでありまして、生計を維持しているかどうかというのはやはり客観的に決めていかざるを得ない。任意で勝手に決める性質のものではないと、こういうように考えられますし、また、任意にすることによって保険の逆選択というような事態も生ずるという可能性があるので、私どもは任意にするという措置はとるつもりはございません。
  163. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、時間だから終わろうと思ったんですけれども、ああいう御答弁だから最後に一言申し上げておきたいんです。  「原則として夫の被扶養者とする」というふうになっているんですね。「妻の所得が夫の所得を著しく上回る場合」、一三〇%を超える場合にはというふうなことを厚生省が行政指導の内容として水準を示すというふうなことをいまごろやったら、女は三割下がるみたいな通達ですよ。こういうことになっては困るんです。これは十五年前の通達だから、私は、そのときがけしからぬとは言うてない。やっぱり社会進歩でその時代の人の意識も変わっていくわけでしょう。特に国際婦人年の世界行動計画の中でも出ておりますし、あるいは差別撤廃条約にも出ておりますように、男女差別の撤廃というのは、法律だけではなしに、習慣とか慣行とか社会通念の上でも男女の平等を図っていくということがうたわれている。そのことは 国際的な常識でもあり、国内的にも労働省の専門家会議、労働大臣の専門家会議でもそういうことはうたわれているわけなんで、少なくとも考えてみるべきではないか。一三〇%というのは何にも根拠がないのに、女は三割下がるみたいな数値をわざわざ示すというふうなことは考えてみるべきではなかろうかと思いますが、大臣、最後にどうぞ。
  164. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) まあ男女差別ではないかという御意見でございますが、私どもの取り扱いによって妻の方が特別に不利益をこうむるということは何もないわけでありまして、私どもはこういう取り扱いによって男女を不当に差別したというようには考えておらないわけであります。
  165. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣、最後に一言。それはちょっと考えてもらわなければいかぬですよ。
  166. 目黒今朝次郎

    委員長目黒朝次郎君) では、大臣最後に。
  167. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私は、沓脱さんのお話ですが、これはやっぱり保険の中でどちらでどうするかと、こういうふうな計算基準でありまして、これをもって男女差別だと言われるとこれはいろんなことが出てくるなと、どこでもいろんな問題が出てくるなと思いますし、やっぱり保険というものはある程度まで安定した体制でやっていくということが必要だと思いますし、そういった意味でいま局長から御答弁をしたんだろうと、こういうふうに考えております。
  168. 柄谷道一

    柄谷道一君 最初に、盲導犬育成事業についてお伺いいたします。  私は、この問題につきまして、昭和五十二年四月二十六日、五十三年十月十七日、五十五年十一月十三日と過去三回にわたって質問をいたしております。私は、厚生省関係各省庁と連携をとられまして、その施策が年を経るにつけて充実してきたことに対して評価するにやぶさかではございません。ただ私は、最後の五十五年十一月の質問でも指摘したわけでございますが、盲導犬事業が今後健全に発展していくというその基盤は、長い十分の経験を持つ指導員ないしは訓練士によりまして育てられ、視覚障害者と盲導犬が一体となった充実した歩行指導、訓練が行われる、その結果、盲導犬というものに対する高い信頼性が形成されていくというところにその前提があるのではないか。もしその前提が崩れるとするならば、これは視覚障害者にとって生命の危険が生ずるばかりではなくて、せっかく社会復帰という目的のために積み上げてきた政策効果そのものを崩してしまうおそれがあるということを最後に指摘したつもりでございます。  ところが残念ながら、一月末日盲導犬は約六百二十四頭が訓練を卒業いたしまして、現在三百八十六頭ばかりが実働していると、こう理解しておりますけれども、最近いろいろの問題が発生してきておるわけでございます。たとえば厚生省認可の法人でございます日本盲導犬協会の場合、九州盲導犬協会の設立に関与して、育成費に、一名につきまして百三十万円募金をして、これを九州盲導犬協会が三十万、日本盲導犬協会の責任者が二十万、そして下請けになりました栃木盲導犬協会に八十万円が支払われておる。そして、新聞報道によりますと、ここで育成訓練されました盲導犬がいろいろ事故を起こしているわけですね。たとえば五十六年十二月には、盲導犬を持っている人の命令を無視いたしましてその視覚障害者にけがをさせたとか、それから盲導犬が「ステー」、いわゆるじっとしていろという命令や、「コーナー」、いわゆる回れという命令を無視して直進する等、盲導犬としての職能を十分果たしていないのではないか。これは西日本新聞五十七年八月四日付の新聞でございますけれども、そういう報道がなされておる。  さらにまた、この盲導犬協会の責任者に牛肉の取り込み詐欺があったという報道がなされましたり、借入金の支払い請求が日本信販や城東信用金庫等からあってトラブルが起きておる。このような記事が頻々としてあるわけでございます。しかも五年以上の経験を持たなければならない指導員が、一年ないし二年の経験しかない者がその指導訓練に当たっているということも報道されております。また、これは広告なんですけれども、「格安分譲します」。盲導犬協会というのは決して犬屋ではないわけですね。こんな営利的な広告が出されている。中部盲導犬協会でございますけれども、これは年間六、七頭しか育成していないわけですが、県、市から年五百四十万円の補助金が出、さらにこれも岐阜等におきまして事故を起こしておる。盲導犬が家出をして、再三にわたって警察に保護されている、こんな記事も出ております。それから栃木盲導犬協会、これは作出数ゼロでございますけれども、県から二百万円の補助金が出されて、施設も建物も県有の施設を使っておる。そして、関西盲導犬協会については、これは盲人への配慮が足りないのではないかと思うんですけれども、出張で歩行指導をする、その場合希望者の家に協会員が泊まり込むというような運営をされている。さらに九州盲導犬協会の場合は、実体がなくてただ法人だけあって、育成は一切下請に出しておる等々、これは相当の資料を私持っているんですけれども、一々申し上げますと時間がかかりますので省略いたします。  私は、盲導犬育成事業というものが仮にも——私案態は十分調べたわけではございませんが、仮にも営利的な目的にこれが曲がって使用され、かつ、訓練不足の盲導犬がいま事故を起こしておるということは、私はこれは大きな問題ではないだろうかと、こう思うのでございます。厚生省として、このような実態をどのように把握しておられるのか、まずお伺いします。
  169. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) ただいま先生指摘いただきましたように、視力障害者の行動に当たりまして、盲導犬の存在は大変大きな助けになるものと思われます。視力障害者とよく訓練された盲導犬が一体となって初めて所期の目的が達成されるものと思われます。このためには、盲導犬の育成が視力障害者及び関係者から大変期待されているわけでございますが、これにこたえるためにも、盲導犬を育成する協会と盲導犬の信頼をさらに高めていくことは当然必要であると考えているわけでございます。  盲導犬を必要とする視力障害者の要請にこたえますために、先生ただいま御指摘いただきましたような盲導犬の訓練施設がいろいろございますが、私ども、全国で六カ所あると承っております。それぞれにいろいろ努力もしてくれているわけでございますが、たとえば東京盲導犬協会、これは非常に大きな組織でございますが、この理事長の塩屋賢一さんは三十余年にわたって盲導犬の育成、普及に努力されまして、先般点字毎日文化質あるいは吉川英治文化賞も受賞されておられます。こういう方もおられるわけでございますが、しかし、日本盲導犬協会など一部には必ずしも十分な実績が上がっていないものもございますので、実効を上げるように今後とも私どもとしては指導をしてまいりたいと思います。  また、先生ただいま御指摘いただきました、各地の盲導犬施設におきまして訓練の問題その他団体の運営等につきましてのいろいろ問題もあるようでございます。盲導犬の養成訓練は、これを必要とする盲人と各盲導犬協会との私的契約の関係で行われているものでございまして、使用の実態も個別的でございますので、全国的な事故の状況、私ども必ずしも十分把握はしておりません。しかしながら、盲導犬は盲人の日常生活に大変密着したものでございますので、こういった事故につながらないように訓練されるべきは当然でございます。各協会においても盲導犬の養成訓練には精いっぱい努力もしているものと考えているわけでございますが、御指摘のような事故が生じないよう、この業界の動向には十分私ども留意してまいりたいと思っております。
  170. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、前回、これはもう二年前の質問でございますけれども、この締めくくりは、たとえば監督責任者の資格要件、施設設備の内容、歩行指導員の資格条件、盲導犬の素質及び訓練犬時代の一つのレポート、いわゆる記録、さらに盲導犬及び歩行指導の訓練内容といったものを ひとつ網羅した指導要綱の確立ということが必要ではないかという点を強調したつもりでございます。このときの当局の答弁、これを読んでみますと、いまの答弁と変わっていないんですね。   御指摘のとおりでございまして、この事業を行いますにはそれにふさわしい知識、経験、技術を持っております指導員を中心として、それから施設、設備こういったものを保有していることが必要であるということは言うまでもないところでございます。しかも、全国の利用者の数なりあるいは育成の頭数、運営実態といったものを考慮いたしますと、乱立を避けるべきだという御意見には私ども全く同感でございますので、そのような御趣旨に沿いまして都道府県知事等の指導に当たってまいりたいと考えておるわけでございます。   なお、ただいまお話しございました訓練基準、これにつきましては私どももその必要性を感じておりまして、ただいま専門家の意見を聞いておるところでございまして、早急に検討してまいりたいと考えております。 これが二年前の答弁なんですが、私が指摘した以降こういう事故が頻繁に起きておるんですね。  私は、この育成事業に当たっておられる方で、本当に献身的に努力しておられる方を数多く知っております。しかし、一つの悪例が出ることが、いままで厚生省中心として国鉄を初め交通機関への乗車、施設の利用——これは国会にも入りましたね。さらに、育成事業としての指定、どんどん進んできたことを私はむしろ崩壊させるおそれすらあると思うんです。早急に検討すると言った訓練基準が、二年たちましてまだできておりません。私は、このせっかくの事業を前進させていくためには、いま局長も御答弁なさいましたけれども、やはりよく実態をもう一度把握していただいて、これから健全にこの事業が伸びていくためには一体何が必要か、このことに対する配慮というものがなければ、私は画竜点睛を欠く結果になるということを警告を交えてこの際申し上げておきたいと、こう思います。  そこで、五十六年一月三十日付の厚生省の環指第一二号が出されているわけですが、まだまだ末端までこの趣旨が徹底しておらずに、旅館、飲食店等でクレームをつけられる例が多いとか、それから保健所がうるさいからという理由で美容院や理髪店で盲導犬を断るところがまだたくさん残されているとか、眼科等、本人が治療を受けに盲導犬を連れていってもはいれない病院が多いとか、せっかくの厚生省通達が必ずしも十分浸透していないということを象徴するような苦情、陳情が私のところへ数多く寄せられているわけでございます。ひとつこの点に対する一層の徹底方を要望したいと思いますが、いかがでございますか。
  171. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) ただいま先生のお話しのとおり、五十六年の一月三十日に都道府県、政令市等の衛生主管部局長に対しまして、盲導犬を伴っておられる視覚障害者の方々の旅館あるいは飲食店等の利用につきまして、指導の通知を出しておるわけでございます。また、そのときあわせまして、関係業界を指導する立場にございます全国環境衛生営業指導センターの理事長に対しましても同様の趣旨の通知書を出して、十分PRをしてもらうようにお願いをいたしておるところでございますが、いまお話しのようなことがまだあるといたしますと、私ども、さらにこの点の理解が深められるように一層の努力をする必要があろうかと思いますので、その線に沿って進めてまいりたいと思っております。
  172. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま二点について要望、意見を含めて申し上げましたが、大臣、御善処いただけますか。
  173. 林義郎

    国務大臣林義郎君) お答え申し上げます。  先生、盲導犬のお話、いろいろと熱心にやっていただいておりますので、心から感謝を申し上げます。  やっぱり目の見えない方々に対しては、盲導犬というのは大変貴重なものでありますし、これの協会その他のものが適切に運営されるということは非常に必要なことだろうと考えますし、御要望ありました点は十分配慮してやってみたいと、こういうふうに考えております。
  174. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひそのようにお願いを申し上げます。  そこで次に、問題を変えますが、五十七年四月十六日に国際障害者年推進本部障害者の生活保障問題検討委員会が「報告書」を提出をいたしております。この「報告書」の「結語」の中には、「年金制度における障害年金の別建て一本化案」、「重度障害者に対する手当制度を創設する案」、「現行の障害福祉年金福祉手当等の改善を図る案」、この三つの案が提示されて、各案についてはそれぞれ問題点があるけれども、「重度障害者における所得保障の充実の必要性は看過しえない問題」であるという認識については一致をした。そこで、「欧米諸国の例をみると重度障害者に対する所得保障については、年金制度中心としつつも、さらにそれを補足する諸手当によって相当程度の水準が確保されているケースが多い。このような諸外国の事例は、その水準、しくみ等において、我が国にとっても参考となる面が少なくない。」等々を指摘いたしまして、いわゆる障害者の所得保障の充実について非常に画期的といいますか、前向きの提言がなされているわけでございます。  その後、一年をほぼ経過したわけでございますが、報告を受けた厚生省としての対応姿勢をお伺いいたします。
  175. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 御指摘の報告を受けまして、早速この問題に関する学識経験者、障害者の方々を委員に加えた障害者生活保障問題専門家会議を設置をいたしました。専門家会議は、障害者の生活保障全般にわたり幅広い見地から検討を進めておりまして、前後八回ほど会合をやりまして、現在フリーディスカッションをやっているところでございます。大体ことしの七月をめどに、望ましい障害者生活保障制度についての試案を取りまとめていただけるものだというふうに考えておるところでございます。
  176. 柄谷道一

    柄谷道一君 七月ごろを目途ということになりますと、当然概算要求提出の前ということになるわけでございます。したがいまして、ここで出されます結論を明年度予算の中で、厚生省要求案の中で十分にこれはそしゃくされるものと、こう理解してよろしゅうございますか。
  177. 小林功典

    政府委員(小林功典君) ただいま大臣から申し上げましたように、七月までに案をまとめていただくと。ただ、所得保障でございますから、年金と非常に密接に関連する、しかも片一方年金につきましては五十九年改正を目途にいま作業を進めています。そこで、ある時期に年金関係との調整をいたしますけれども、その中で順番はあろうかと思いますけれども、可能なものにつきましては五十九年度予算に盛り込みたいと考えております。
  178. 柄谷道一

    柄谷道一君 もう一点質問しますが、国立視力障害者センターの生徒さんから厚生省に対してはいろいろの陳情がなされていると理解するわけです。一々数多くの要請をここで披露するわけにいきませんが、この所得保障に関連して、現在厚生年金では被保険者期間が初診日の月の前六カ月以上必要である、六カ月以前に障害に遭って初診を受けた場合は資格を得ることができないという現在の仕組みなんですね。    〔委員長退席、理事対馬孝且君着席〕 したがって、初診日の前月までの被保険者期間が六カ月未満であっても、その後六カ月以上業務に従事した場合は受給の資格を与えることができないかという問題。それから現行の事後重症制度は、障害認定日に軽度の障害であるために障害年金の支給の対象にならないものが、初診日から五年以内に障害の程度が増進し、障害年金に該当する障害になった場合は支給を受けることができる、こういう仕組みですが、特に視覚障害者の場合、五年を経過した後で急に病状が進んでしまうという事例がきわめて多い。そこで、事後重症制度における法定年数を見直して、これを撤廃する とかないしは撤廃できないとすればせめて五年以内という法定年数を実態に合わして延長することができないか等々の切実な所得保障に関する要求が出ておるわけでございます。  ここで細部の問題はお伺いする時間がございませんので、いま言いましたようないろいろの要求もいま検討されている項目の中でそしゃくされていくと、こう理解してよろしゅうございますか。
  179. 小林功典

    政府委員(小林功典君) ただいま御指摘になりました障害年金の受給資格期間の問題、それからいわゆる事後重症制度の問題、いずれも障害者にとりましては大きな問題だと思います。そこでこの問題につきましては、専門家会議におきましては全体として障害者の生活保障はどうあるべきか、こういう問題として検討しておりますし、それから先ほどちょっと触れました現在進めております年金制度の改正作業の中におきましても大きな検討課題となっております。
  180. 柄谷道一

    柄谷道一君 最後に、いま触れられました年金の問題でございますが、これ、大臣にお伺いするんですけれども、いま年金積立金ですね、これは五十七年度末で約四十兆円に達するんではないか、こう私は考えておりますが、現在、この積立金はいわゆる資金運用部で一括運用されておりまして、預託金利は七・三%、こう抑えられているわけでございます。ところが、これから老齢化社会はどんどんと進捗してまいります。成熟するに従って保険料というものはこれは上昇の傾向を否定することができない実態になってくると思うんですね。ところが、この七・三%というのは運用率としてはきわめて低位に抑えられていると私は考えざるを得ません。そこで、自主運用によってこの運用益というものを増すことができれば、それは高齢化社会対応する負担というものを軽減するという意味で大きな私は機能を果たすことになるのではないか。  また、このお金は国のお金は入っていないんですね。いわゆる国は年金支給時の二〇%を出す。そのときに、支給時に出すわけでして、このお金は全部保険者、被保険者のお金なんです。しかも、郵便貯金の場合これは任意でございますけれども、このお金は法によって定まっておるわけですから、いわば強制して保険者、被保険者からいわゆる徴収しておる金額でございます。また、共済組合のような場合はこれは自主運用が認められているわけでありまして、公務員関係は自主運用は認めるけれども民間は認めないということは、これは見方によれば官民格差だとも言い得ると思うんですね。  しかも、私も議員になる前相当長く社会保険審議会の委員もさしていただきましたが、年金問題が審議される都度この保険審議会は必ず自主運用というものについて公労使三者一致の意見として大臣答申し続けてきたことは、もう大臣も御承知のとおりだと思うんです。これはいま財投の有力な財源になっておりますから、一挙にこの四十兆円の全額を自主運用に回せ、こう言ってもこれはなかなか大変なことであると思うんですけれども、徐々に自主運用の幅を拡大していって、保険者と被保険者のために、老齢化社会に備えるために自主運用の枠を拡大していく、そして有利な運用を図っていくということは、これは私はきわめて大きな課題にこれからなってくると私は思います。もちろんこれをやろうとすれば大蔵省当局は猛烈な抵抗をすることは必至でございますし、しかも臨調は統合運用という答申を出しておりますから、この出し方も、公務員とどうして——一方も統合運用ならばわかるんですが、一方は認めて一方はだめということもわかりませんし、答申の中には年金制度の抜本的な見直しを示唆されてもいることですね。きわめてこれは重要な問題だと思うんですが、大臣、この問題に一体どう取り組もうとしておられるんですか。
  181. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 年金積立金の運用の問題は、確かに先生指摘のように大変重要な問題だと思いますし、先生指摘のようないろんな角度から議論があるところでございます。私といたしましては、臨調答申も先ほど先生からお話しのありましたようなかっこう出ておりますが、やはり将来を展望いたしますと、年金というのは全体を一元化していかなければならない、こういうお話でございますから、そのときにやっぱり国民の持つところのその資産をどういうふうな形で運用するかというのは、制度云々ということを離れて深く考えていかなければならない問題だと思いますし、今国会では国家公務員、それから国鉄、電電、専売とこういうところの共済を統合する案を出し、また、地方公務員の統合化の法案を出し、五十九年度には国民年金厚生年金との制度の見直しを進めていこうと、こういうことでございますが、いずれにいたしましても年金問題を考えるときには将来におきましては給付水準の適正化を図る一方で、従来と同様に保険料の負担増をお願いをせざるを得ないというのが私は立場ではないかと思います。  だから、その年金財政に資するために年金積立金の有利運用ということを、その他の方策をどうするかということは、負担増をお願いするときにほっておいていいという話でもないだろうと思いますし、これがやはり国民の納得を得る上で非常に重要な問題であるということもよく認識をしておるところでございまして、いま申し上げましたような年金制度改正の中での問題としてこれを考えてまいりたいと思っております。現在、社会保険審議会等のいろいろのところで審議をしていただいておりますが、本年八月ごろまでに取りまとめる予定の年金制度全般の改正案の中で、厚生省としてのどうしたらよいかという考え方は打ち出したいと、こういうふうに考えております。
  182. 柄谷道一

    柄谷道一君 最後に、これ大臣がんばっていただきたいと思うんですが、私は、社会保険審議会、社会保障制度審議会、これは非常に古い伝統と権威を持つ審議会ですね。この審議会が答申の都度有利な運用を図るための自主運用ということを答申してきた。そのことが全然実らないまま、老齢化社会が近づいてきたからというだけの理由で保険料の値上げの国民的合意を求めようとしても、私は必ず抵抗が出ると思うんですね。したがって、これはただ現在の財投がどうだこうだと言うよりも、もっと高い次元でこの運用のあり方というものに対してメスを入れ、そしてその結論については大臣先頭に、勇気を持ってこれに立ち向かっていくということがないと、私は将来の年金制度一つの問題を残すであろうと、こう思っておりますので、大臣のせっかくの努力を期待いたしまして、私の質問を終わります。
  183. 前島英三郎

    前島英三郎君 先日予算委員会におきまして島田療育園の問題を質問いたしましたけれども、厚生省として適切な対応をするよう改めて要望しておきたいと思うんです。いまここで、個々の問題についてあれ以上は触れるつもりはないんですけれども、とにかくいろいろ調査をすればするほどいろいろな問題があります。私が指摘をする、そして厚生省調査するというのも何か妙な雰囲気のような気がするんですよね。だから、問題提起をしないと調べないんじゃ、監督省庁としてのやっぱりメンツの問題もありましょうし……。  それで、歴代の園長さんが八人ほどやめておられるんです。順繰りにやめておられるんですが、それぞれ講演をしたり書物に書いているもの、語録を拾い上げますと、あってはならない施設、こう言う園長さんもいたし、腐敗、腐臭が漂っている、命の保障ができないと、やめる際にみんなそういう言い方をしてやめていくわけですよ。そのやめる園長さんの上にも偉い方いるんです。それは、言ったように、児童家庭局長さんの、かつてそういうことの役職にあった方もおられますし、さらにその上には日本の障害者全体の施策を一生懸命やっておられる方もいるわけだし、だから、ただトカゲのしっぽ切り的に部分的にかわっていけばいいというものじゃなくて、そこに一度もかわることができずにずっとおられる子供たちのことをまず考えてもらいたいと、ぼくはもう切実にそれを思うわけです。ですから、たびたび担当課長さんにもおいでいただいていますから、私が個々の問題を幾つか指摘しますので、善処するよ うにぜひ一度やってもらいたいと、こう思うんですけれども、その辺は局長さんでいいですから……。
  184. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 島田療育園のケースにつきまして、先般の予算委員会先生から御質問いただき、いろいろ御指摘も受けたわけでございます。先生御案内のように、児童福祉施設あるいは社会福祉法人につきましては都道府県知事、厚生大臣が指導監督権を持っております。一義的には都道府県知事がいろいろ指導監督をするわけでございますが、率直に申しまして先生から御指摘を受けて把握した事実もあったわけでございます。  先生おっしゃいますように、特に重症心身障害児施設というのは入所期間も長くなりますし、要するに入所者と職員が一体となってその更生を図っていかなければならぬということで、今後とも指導監督を徹底していきたいというふうに考えております。
  185. 前島英三郎

    前島英三郎君 ぜひお願いをいたします。  そこで二点だけ、重症心身障害児施設のあり方全般を向上させてほしいという見地から提言というような形で申し上げておきたいことがあるので、この部分も積極的にひとつ前向きに取り組んでいただきたいと思うんです。  二点のうちの第一点というのは、重症心身障害児施設における医療の質の向上という点です。それで、重心施設は同時に病院であり、問われるまでもなく十分な医療が行われるはずであるというのが現在の厚生省の見解だと思うんですけれども、しかし、この前も指摘したように、なかなか重心の施設は、入所者の年長化問題、あるいは定義外の入所者が多いという障害の多様化の問題なども錯綜しておりまして、こうした状況にあって一人一人の入所者のニーズにマッチした医療という点を考えると、必ずしも十分であるとは言えないと思うんです。まあ現在の園長さんも島田には医者の来手がありませんと。こういうことをおっしゃられると僕はもうがっくりきちゃうわけですよ。ですから、そういう重心施設で医療を必要とするのは、生命の維持管理というような時代はもう過ぎたわけですね。もちろん医療的なケアが必要な入所者もおりますけれども、そういう数というのは大分減ってきていると思うんです。本当に医療とそういうケアの部分が必要というのは、島田だけをとりましても恐らく三割ぐらいだろうと私は思うんですね、絶えず必要だというのは。あとは、そういう部分ではちょっと定義から外れている部分の方々も現実には年長化の中におられる。  こういうことを考えますと、やっぱり施設というのは一過性のものだ。やがてみんなが住んでいる町の中で、健康な人も障害を持った人も一緒に生きていくような、残された能力を引き出してあげて、あなたはここで骨になって家へ帰るのじゃなくて、健康なまま社会でもって一緒に生きて、そして楽しく人生を全うするようにという、そういうリハビリテーションですね。こういう機能というような部分もやっぱりこれからは積極的に取り上げていかなきゃならないと思うんです。それにしては人が少ない。たとえば理学療法士と言われる人が、いまはどうですかね、三千人か四千人ぐらいじゃないですかね。全国には施設と名のつく部分は何か四万ぐらいあるんでしょう。そういう部分ではなかなか専門的な分野の人材が養成されていないという現実はあるにしても、これはやっぱり行政の怠慢だろうというふうにも思うんです。そういう点でもやはりリハビリテーションと別の形の医療を必要とする人がだんだんだんだんふえてきておりますし、もう十五、六で亡くなるなんていう時代じゃないわけでありますから、一生懸命やっぱり取り組んでもらいたいと思うんです。  そこで第一に、一人一人の医療ニーズを的確に把握する必要があると思うんですね。第二に、医療の幅を広げるために必要な措置を講ずる必要がある、このようにも思うんですけれども、これらを実行するために専門家のプロジェクトチームをつくるとか、あるいはそういう人たちをまた園に派遣するとか、あるいは地域の医師会の御協力なんかを得ましてオープン医療システム的なそういう方法なんかも模索すべきだというふうに思うんです。やっぱり閉ざされた施設であってはならないような気がするんですね。  それから、成人の重症者の人たちに対する療育法は、経験も少なく、学問的にも研究の余地がかなり残されていると聞いておりますから、まあ昭和四十八年、四十九年度に行ったように、心身障害研究の中で年長重症心身障害者の療育、リハビリテーションもテーマとして積極的に、書面だけの提言ではなくて中身に沿ったものが必要があるのではないかという気がするんです。  以上の点についてひとつ厚生大臣にも踏ん張ってもらいたいと思いますし、また、児童家庭局としての今後の考えもあわせて聞いておきたいと思うんですが、いかがですか。
  186. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 前島先生の御質問にお答えを申し上げます。  先般、予算委員会で私も御答弁申し上げましたし、身体障害者の対策というものはいろいろと新しいかっこうに発展をしていかなければならない、いま先生の御指摘のとおりであります。その場でもう死んでしまうということではなくて、同じ人間として、やっぱり一人の人が社会の中に早く復帰をしていく。そうしたことをいろいろなことを考えながら、医療の問題もあるでしょう。いろいろなことを私は考えながらやっていかなければならないと思います。  御指摘の中で、もう少ししっかりやれという御激励を受けましたけれども、私も意を体しまして、障害者の問題こそわが厚生省の原点ではないだろうかという気持ちでこれからもがんばらしていただきます。
  187. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 大臣からお答え申し上げましたことで尽きるわけでございますが、先生おっしゃいますように、重症心身障害児施設におけるケアというのは、個々の障害者の個別ニーズに応じたものでなければならない、まさにおっしゃるとおりだと思います。現に、重症心身障害児施設におきましては、入所者の個別的な障害の状態に応じてお医者さんあるいは看護婦さん等によって医療を行うと同時に、保母さんとか指導員等によりましていろいろな指導訓練を行っておるわけでございます。この施設は、先生の方がお詳しいわけでございますが、本当に施設の職員が汗みどろになって入所者と心を合わせて復帰訓練をやっておるというのが実態でございます。  しかし、先生も先ほどもおっしゃいますように、重症心身障害児施設につきましては、障害の多様化とかあるいは年長化というものによって新しいニーズというものも出てきているのも事実でございます。先ほど御指摘がございましたが、四十八年度、四十九年度にわたりまして障害研究を行ったわけでございますが、こういったものも生かして、その後の対策を講じておりますけれども、今後ともそういった問題について、また新たな目を向けていかなければならないというふうに考えております。
  188. 前島英三郎

    前島英三郎君 指摘しておきたい二つ目の問題ですけれども、これは重症心身障害児施設の最低基準を見直す時期が来ているんじゃないか、こういう点なんですね。医療法で定める基準となっているんですけれども、それによれば、病室の広さは成人で一人当たり四・三平米、子供の場合には二・九平米であるということでございますけれども、ところが、身体障害者施設のうち重度障害者の施設につきましては、居室の面積は一人当たり六・六平米と、こういうことになっているんですね。重症心身障害者のうち、成人で重度身体障害者と同じような体の状況にある人にとりましては、病室といえどもこれは居室であってほしいという部分もあるんですがね。ですから、むしろ居室という感覚をとらえますとちょっと狭過ぎるんじゃないかなという気がするんです。  それで、病室だけの問題ではないんですけれども、入所者の現実的なニーズに対応できるように 最低基準というものを常に向上を図るように、私はこれこそ時代のニーズだろうと思うんです。ですから、身体障害者で重度の場合には六・六平米なんだけれども今度は児童福祉法という枠の中では、非常に狭い部分に大人であっても抑え込められているという部分を考えますと、この辺も努力をしていただきたいと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  189. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 施設の最低基準についてのお尋ねでございますが、施設の最低基準は、申すまでもなく施設が守るべき最低の基準で、それを上回るようにと、これは最低基準にも努力をするようにと書かれておるわけでございますが、いま先生が対比されました、身体障害者の大人の療護施設は居室の面積が六・六平米だ。それに対して、重症心身障害児施設は医療法による医療施設になる。したがって、医療法の病院の場合には患者一人の場合に六・三平米、二人以上の場合は四・三平米と狭いじゃないかというお話でございます。  これは、若干お言葉を返すようなことになっては恐縮なんでございますが、これは居室の面積でございまして、重症心身障害児施設につきましては、居室以外に療育室であるとか、プレールームとか、そういったようなもろもろの設備をさらに設けるということになっております。そういったものを総体としてこう見ますと、現在の社会福祉施設整備費の国庫補助の基準面積で申しますと、身体障害者の療護施設は、もろもろの床面積をひっくるめまして一人当たり二十八・四平米でございます。それに対しまして重症心身障害児施設は、百人以下の場合には三十九・七平米、百一人を超しますと超える分について十九・七平米ということで、かなりゆとりを持った施設面積というものでございます。やはり施設の特性に応じましたものが考えられておるわけでございます。  そういうことで、こういう国庫補助の基準面積の増というのも、先ほどお話がございました、四十八、四十九年度に委託研究で報告を受けました、そういった報告を踏まえ、参考にいたしまして改善が図られたわけでございます。私どもとしては、今後ともそれぞれの入所者が本当に社会復帰が可能になるような施設であるようにということを常に念頭に置いていかなければならないというふうに思っております。
  190. 前島英三郎

    前島英三郎君 僕も、お言葉を返すようだけれども、重度障害者の場合はいわゆる動くという範囲があるわけ。これは無限に広がっているわけですよ。ところが、重症心身障害者の場合は、もう一定のさくの中だけ、そこが世界になっちゃうわけね。だから、ほかにリハビリテーションの体育館があるだの、あるいはそういう訓練室があるというのは、これはもう付随したものであって、これは当然ですよ。しかし、そこにさえも行けないというような人もいるわけだし、実際その大きな居室の中で友達が死んでいくのをただ見守っているというようなことで、何かこう次は、あしたはわが身じゃなかろうかというふうな部分もありますからね。やっぱりそこは患者というとらえ方も僕は余りしてほしくはないし、そういう意味での人間としての居室、確かにそこで死を迎えなければならないというような事情の人もたくさんいるかもしれないけれども、それとても温かいやっぱり一つの居室の空間は人間として最低限守ってあげるという部分が大切なんじゃなかろうかと、こういうことを僕は申し上げたかったわけです。ですから、トータルの部分では確かにそういう部分があるかもしれませんけれども、身体障害者、重度障害者の場合には、電動車いすであろうと何であろうと、そこから一歩表へ出たところには限りない空間が広がっているわけですから、そういう部分の居室の問題を私は指摘しているわけですから、その辺も含めて、今後の課題として検討していただきたいと、このようにも思うんです。  さて、次の問題に移りますけれども、障害者対策に関する長期計画につきまして、予算委員会でもこれは述べましたけれども、その実行につきましてちょっとお伺いしたいと思うのです。  私は、十年計画の実施プランといったものを各省がつくりまして、中間年を設定するなどしてその実施状況を点検していく体制を整えるべきだと、このように考えております。その方法につきましては、推進本部長が総理大臣で、副本部長が厚生大臣と総理府総務長官ですから、またいずれかの場で論議したいと思うんですけれども、ただそうした各省の動きとは別に、そうはいってもやっぱり厚生省がイニシアチブをとらなきゃならぬだろうと、こう思うんですね。そこで厚生省の責任、責務というのはこれは格別に大きいものであろうと、このようにも思うんですけれども、厚生省は各省庁のいわばお手本となる長期計画を実行していかなければならない立場だと思うので、そこでひとつ厚生省として長期計画をどのように実行に移しているのか、あるいはこれから先どのように実行していくのか、お尋ねしておきたいと思っております。
  191. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 御指摘のございました、障害者対策に関する長期計画の具体化のために、厚生省におきましては、まず、事務次官を委員長とする障害者対策推進委員会を昭和五十七年の四月に設置いたしまして、長期計画にかかわる厚生省関係施策、その他障害者に関する施策の連絡調整、推進等を図ることといたしました。第二に、障害者生活保障問題専門家会議を設置いたしまして、障害者の生活保障の問題について調査審議を行うとともに、厚生省内に障害者生活保障対策本部を設置いたしました。第三に、障害者対策予算については、厳しい財政事情の中、昭和五十八年度予算においても身体障害者対策費を五・八%増を図るなど、その充実に努めたところでございます。  今後とも障害者対策に関する長期計画の趣旨を十分に尊重し、長期的、総合的観点に立って障害者対策の推進に努めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  192. 前島英三郎

    前島英三郎君 まあ、八一年の障害者年、それからもう二年を経過しておりますけれども、どうもだんだんだんだん軍拡の部分は華々しく花火が上がっていますけれども、福祉の部分はだんだんと後退をしていくのではないかという危惧と、しかも、そういう長期行動計画が、中身はどう今後育っていくんだろうかという不安は絶えずつきまとっている問題でありますから、ぜひとも厚生省中心となって、牽引をするような立場で、しっかりとひとつかじ取りをお願いをしたいと思います。  先ほども柄谷委員からも御指摘ありましたいわゆる所得保障対策の問題、そして、在宅福祉対策に重点を置くということは、これはもう私も大賛成でございます。ただ、それらは施設対策とうらはらの問題でもありますので、私は、その巨大な生活型の施設の時代はすでにもう終わって、これからは小規模なものを地域に分散化していく、こういうこと。しかも、長期計画でもこの辺は述べているんですよね。こういう方向、巨大な施設よりも非常に分散した小規模的なものへと、こういう意向ですね。  そこで、どんなふうに小規模化、分散化を進めていくのか、その具体策なんかは厚生省にございますか。
  193. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) 障害者の施設につきましては、障害者の身近であって利用しやすいものになるよう、従来から私ども努力をしているわけでございます。  たとえば身体障害者通所授産施設の創設、これは昭和五十四年度から行ったわけでございますが、従来の授産施設では三十人でございましたが、これを通所施設につきましては二十人ということにいたしました。また、身体障害者のための地域利用施設といたしまして、身体障害者福祉センターを整備いたしております。またそのほか、精神薄弱者授産施設も整備しているわけでございます。 今後とも、これらの施策の充実に努めてまいりたいと思っております。
  194. 前島英三郎

    前島英三郎君 施設の小規模化、分散化を進めていくには、どうも厚生行政内部の縦割りの弊害を取り除く必要があるんじゃないかというような ことを感ずるわけなんですけれども、これには厚生大臣、わりあい前向きの御答弁をいただきましたので……。  そこで、具体的にお尋ねするんですが、社会局所管の身体障害者施設と児童家庭局所管の精神薄弱者施設について、その地域で必要が生じた場合は相互乗り入れができるように、これはやっぱり制度の道を開くべきではないかと思うんですね。障害者の就労対策の重要性は厚生省としても十分認識していると思うんですけれども、授産施設の配置を見ると、これは地域的にかなりアンバランスの部分もあるように思うんです。アンバランスなるがゆえに大変巨大化しまして、中には五百人、六百人というような部分がございます。しかし、国際障害者年を契機としまして各県が熱心に検討を始めておりますけれども、これもなかなか予算が伴うものですから、最低が五十人だとか三十人だとか二十人だとかというと、もうそこの部分で何か腰砕けになってしまうような部分があるんですけれども、やはり、そういう意味では身体障害者の関係精神薄弱者の関係バランスよく進めるように、厚生行政の縦割りの壁に遭ってこの辺も苦慮している部分だろうと思うんですけれども、せっかく林大臣は前向きに取り組もうとしているんですから、この辺がもし壁になるんだとしたら、勇断を持ってこの辺の壁は取り外してもらいたいと、このように思うんですが、いかがでしょうか。
  195. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 身体障害者と精神薄弱者との共用型の施設と、こういうお話で、この前も予算委員会のときにお話がありました。それは社会局と児童家庭局との調整というようなことでやらなくちゃいかぬという話ですから、私は、それは役所の中ですからできると思うんです。お互い同じ厚生省の中におるんですからできると思いますが、やっぱり身体障害者と精神薄弱者はそれぞれ障害の特性に相違があるということもこれまた事実でありまして、この点を踏まえて、やっぱり指導員等の職員の配置のあり方とか事務費のあり方とか、設備基準のあり方等の問題については、やっぱり検討をしていかなければならない。同じだということではなかなかないんでしょう。これはむしろ先生の方がお詳しいのかもしれませんが。いろいろと問題もあるようでありますから、そういったことを踏まえながら、私は方向としては前向きにやっていくことが必要だろうと考えております。
  196. 前島英三郎

    前島英三郎君 まあ相互乗り入れという部分では、心身障害児の通所援護事業の場合は、精神薄弱児と肢体不自由児が一緒にやっているわけですよね。児童は一緒にやるけれども、どうも大人は別でなければならないという理由も何か見当たらないような気がするんです。ですから、その辺も何か、たとえば身体障害者雇用促進法というと、そこに心の部分がないのはどうなんだとか、また、いやしかし身体障害者と精薄者は違うんだみたいな部分的なエゴがあったりという歴史的な経過も十分承知の上で私は述べているんですけれども、そういう点では、地方のそれぞれのところは民生局とか障害課とかいろんなところでやる、ただ、それがずっと上へ上がっていきますと途中でもって二またに分かれてしまうという部分で大変苦慮しているなんというようなこともたびたび聞くんです。そういう意味でのもっと連携をとりつつひとつやってもらいたいと、こういうことを期待しておきたいと思うんです。  続きましてもう一つ。何といいますか、いまなかなか一つ社会福祉法人の規模に到達しない部分で、それでもスープの冷めない距離で何とか生きがい対策をしていこうと、施設の中ではなくて、やっぱり社会へ出ていこうという重度の人たちもそれなりに生きがい対策として、いま全国で七百か八百ぐらいありましょうか、いわゆる共同作業所的なものですけれども、こういう部分がなかなか、社会福祉法人にするには少な過ぎるというような部分で、廃品回収をしたりあるいはチャリティーバザーをしたりしながら青息吐息で、しかもこういう景気の状況の中でありますから、ひ孫請のそのまた下請みたいなところがありまして、閉鎖せざるを得ないというような部分があるんですけれども、この辺もやはり今後の課題の中では大変重要だなというような気がするんですけれども、その共同作業所について厚生省ではどういう感覚を持って見つめておられるでしょうか。
  197. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) ただいま先生指摘の共同作業所でございますが、従来から、働く障害者の健康と安全な施設運営、この両面から一定の構造、設備、あるいは専門職員の配置が必要であるという考え方に立っております。また、先生も御承知かと思いますが、現に、社会福祉事業法におきましては、二十人未満の社会事業の通所施設は適用除外ということになっております。これもそういったことが考えられているのであろうかと思います。  私どもは、精神薄弱者福祉法及び身体障害者福祉法に基づきまして、現在、定員二十人以上の通所施設を制度化して整備あるいは運営費の補助を行っているわけでございます。私どもとしましては、できるだけ基準に合致しない小規模の施設につきましては、認可基準に合致する施設へ切りかえるよう指導してまいりたいと考えているところでございます。
  198. 前島英三郎

    前島英三郎君 その二十人以上という部分は、人口によってまたこれが違ってくるんでしょう。
  199. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) そういったことはございませんで、最低二十人あればよろしいわけでございます。
  200. 前島英三郎

    前島英三郎君 まあ本当に小規模、分散化という方向で整備していくとすれば、さっきも言いましたように、一つ一つ全部社会福祉法人にしたらこれは大変だろうと思うんです。かといって、その大きな社会福祉法人の傘下に入らなければ認めないということになると、どうも地域福祉という部分では何となくこう納得がいかないという部分もありますので、今後の問題として、小規模施設の経営主体につきまして柔軟に考えていくということをぜひ検討していただきまして、でき得れば私は十人規模まで——十人ぐらいの規模まで下がってきますと、かなり生きがい対策として、これはもう労働省にはない、私は重度障害者の一つ生きがいの働く場所がこれから育っていくだろうというふうに期待ができると思うんです。  いろんな意見を聞きますと、そういう部分が大変ニーズとして盛り上がっているんですけれども、ぜひ今後の検討課題に加えていただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  201. 金田一郎

    政府委員(金田一郎君) 私どもも、六百ないし八百あると言われております共同作業場の実態を必ずしも全部知っているわけではございませんが、中には定員も不定といいますか、必ずしも明確でないものもございます。実態は必ずしも明確ではございません。  また、先生も御承知のように、社会福祉事業は必ずしも公費の補助が出ることばかりがいいのではございませんで、ボランティアの人たちの応援なりあるいは寄附金等で運営されることによって、またそういった意味の弾力的に運営されるよい面もあろうかと思っているわけでございますが、せっかくの御指摘でございますので、これから私どももいろいろ検討を続けてまいりたいと思っております。
  202. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう点では大変これから財政が厳しくなるのはわかる部分なんですけれども、だからこそ私はマンパワーといいますか、人の心を福祉予算の下支えにすることが大切だと。そういうことになりますと、巨大な施設になっちゃいますとどうしてもその施設のカリキュラムの中でなかなか心が入る余地というのはないんですね。しかも、なかなかマン・ツー・マン的な部分が、心が通わない。そのためにも小規模化することによって国の助成の足りない部分がそれこそ向こう三軒の力で一人一人の心の財源を出し合うという部分が今後の福祉の大切な僕は予算のような気がするのですね。ですから、そういう道づくりをこれから厚生省でも積極的に共同作業場に調査をして、そしてその辺の規模の助成というような ものもあわせて前向きにがんばっていただきたいことを最後にお願いをいたしまして私の質問を終わります。
  203. 対馬孝且

    ○理事(対馬孝且君) 以上で、厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会をいたします。    午後三時四十二分散会