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1983-05-16 第98回国会 参議院 決算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十六日(月曜日)    午前十時五分開会     ─────────────    委員異動  五月十六日     辞任         補欠選任      福岡日出麿君     関口 恵造君     大河原太一郎君     村上 正邦君      仲川 幸男君     長田 裕二君      三浦 八水君     梶原  清君      北  修二君     板垣  正君      河本嘉久蔵君     江島  淳君      福田 宏一君     伊江 朝雄君      鈴木 和美君     対馬 孝且君      藤田  進君     赤桐  操君      黒柳  明君     三木 忠雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 井上  裕君                 杉山 令肇君                 内藤  健君                 降矢 敬雄君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君     委 員                 伊江 朝雄君                 板垣  正君                 江島  淳君                 岡部 三郎君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 関口 恵造君                 高橋 圭三君                 竹内  潔君                 塚田十一郎君                 村上 正邦君                 森山 眞弓君                 赤桐  操君                茜ケ久保重光君                 対馬 孝且君                 本岡 昭次君                 鶴岡  洋君                 三木 忠雄君                 安武 洋子君                 小西 博行君                 中山 千夏君                 森田 重郎君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        建 設 大 臣  内海 英男君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君         ─────        会計検査院長   鎌田 英夫君         ─────    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        人事院事務総局        管理局長     服部 健三君        内閣総理大臣官        房会計課長兼内        閣参事官     渡辺  尚君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁長官官房        会計課長     森田 雄二君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁長官        官房審議官    古橋源六郎君        行政管理庁長官        官房会計課長   前山  勇君        北海道開発庁総        務監理官     楢崎 泰昌君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        経済企画庁長官        官房会計課長   遠山 仁人君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        科学技術庁長官        官房長      安田 佳三君        科学技術庁研究        調整局長     加藤 泰丸君        環境庁長官官房        会計課長     森   孝君        沖縄開発庁総務        局会計課長    大岩  武君        国土庁長官官房        会計課長     金湖 恒隆君        法務大臣官房長  根岸 重治君        法務大臣官房会        計課長      村田  恒君        法務省入国管理        局長       田中 常雄君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房会        計課長      斉藤 邦彦君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房会        計課長      冨金原俊二君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        高倉  建君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局次        長兼内閣審議官  宍倉 宗夫君        大蔵省理財局次        長        勝川 欣哉君        文部大臣官房長  高石 邦男君        文部大臣官房会        計課長      國分 正明君        厚生大臣官房会        計課長      坂本 龍彦君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房経理課長    谷垣 孝次君        通商産業大臣官        房会計課長    鎌田 吉郎君        運輸大臣官房会        計課長      大塚 秀夫君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        郵政大臣官房経        理部長      奥山 雄材君        労働大臣官房会        計課長      高橋 伸治君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局経理局長   原田 直郎君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        会計検査院事務        総局次長     丹下  巧君        日本専売公社総        裁        長岡  實君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十六年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書内閣提出) ○昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書内閣提出) ○昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五年度政府関係機関決算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、福岡日出麿君が委員を辞任され、その補欠として関口恵造君が選任されました。     ─────────────
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十六年度決算外二件を議題といたします。  まず、昭和五十六年度決算すなわち一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書につきまして、大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書会計検査院検査報告とともに国会に提出し、また、昭和五十六年度の国の債権の現在額並びに物品増減及び現在額につきましても国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十六年度予算は、昭和五十六年四月二日に成立いたしました。  この予算は、歳出面では限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、質的内容の充実に配意しつつ、その規模を極力圧縮するとともに、歳入面においても徹底した見直しを行うことによって、公債発行額を大幅に縮減することを基本方針として編成されたものであります。  さらに、災害復旧費等について所要の措置を講ずるとともに、租税及び印紙収入の減額を見込むことに伴い、公債を増発することとし、補正予算が編成され、昭和五十七年二月十七日その成立を見ました。  この補正によりまして、昭和五十六年度一般会計予算は、歳入歳出とも四十七兆千二百五十三億六千四百九万九千円となりました。  以下、昭和五十六年度決算につきまして、その内容を御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして歳入決算額は四十七兆四千四百三十三億三千七百五十一万円余でありますが、この歳入決算額には、決算調整資金に関する法律第七条第一項の規定により、昭和五十六年度において予見しがたい租税収入減少等により生ずることとなった一般会計歳入歳出決算上の不足額二兆四千九百四十八億九百九十五万円余を補てんするため、同額の決算調整資金からの組み入れ額が含まれております。  なお、この決算調整資金から一般会計歳入への組み入れにつきましては、別途国会に提出いたしました昭和五十六年度決算調整資金からの歳入組入れに関する調書によって御了承願いたいと存じます。  また、歳出決算額は四十六兆九千二百十一億五千四百三万円余でありまして、差し引き五千二百二十一億八千三百四十七万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、昭和五十七年度へ繰り越しました歳出予算財源等に充てるものでありまして、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計昭和五十七年度歳入繰り入れ済みであります。  なお、昭和五十六年度における財政法第六条の純剰余金は、生じておりません。  以上の決算額予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額四十七兆千二百五十三億六千四百九万円余に比べて三千百七十九億七千三百四十一万円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れ予算額に比べて増加した額、五千八百四億五百十五万円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、昭和五十六年度歳入の純減少額は二千六百二十四億三千百七十四万円余となるのであります。その内訳租税及び印紙収入における減少額二兆八千七百九十四億七千三百二十七万円余、専売納付金における増加額八十六億二千四百十万円余、官業益金及び官業収入における減少額六千六百九十二万円余、政府資産整理収入における増加額五十二億九万円余、雑収入における増加額千八十五億八千八百八十万円余、公債金における減少額一億千四百四十九万円余、決算調整資金受け入れにおける増加額二兆四千九百四十八億九百九十五万円余となっております。  一方、歳出につきましては、予算額四十七兆千二百五十三億六千四百九万円余に、昭和五十五年度からの繰越額五千三百九十一億五千五百五万円余を加えました歳出予算現額四十七兆六千六百四十五億千九百十五万円余に対しまして、支出済み歳出額は四十六兆九千二百十一億五千四百三万円余でありまして、その差額七千四百三十三億六千五百十一万円余のうち、昭和五十七年度に繰り越しました額は四千七百九十二億二千八百六十三万円余となっており、不用となりました額は二千六百四十一億三千六百四十七万円余となっております。  次に、予備費でありますが、昭和五十六年度一般会計における予備費予算額は千六百四十二億円であります。その使用額は千四百十九億二千百七十六万円余でありまして、その使用内容につきましては、別途国会に提出いたしました予備費使用調書等によって御了承願いたいと存じます。  次に、一般会計国庫債務負担行為につきまして申し上げます。  財政法第十五条第一項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は一兆六千三百五十一億八千百五十四万円余でありますが、契約等に よる本年度債務負担額は一兆五千九百七十八億四千四百四十五万円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額二兆二千四十一億二千二十七万円余を加え、昭和五十六年度中の支出等による本年度債務消滅額一兆四千五百三十八億五十万円余を差し引いた額二兆三千四百八十一億六千四百二十二万円余が翌年度以降への繰越債務額となります。  財政法第十五条第二項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は一千億円でありますが、契約等による本年度債務負担額は百五十八億三千七百三万円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額百四十三億二千三百四十五万円余を加え、昭和五十六年度中の支出等による本年度債務消滅額百四十六億二千三百四十五万円余を差し引いた額百五十五億三千七百三万円余が翌年度以降への繰越債務額となります。  次に、昭和五十六年度特別会計決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  次に、昭和五十六年度における国税収納金整理資金受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は二十九兆六千百三十三億五千四十五万円余でありまして、この資金からの一般会計等歳入への組み入れ額等は二十九兆五千八百三十五億三千九百二十二万円余でありますので、差し引き二百九十八億千百二十三万円余が昭和五十六年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、昭和五十六年度政府関係機関決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  次に、国の債権の現在額でありますが、昭和五十六年度末における国の債権総額は九十二兆二千十九億四千五百五十七万円余でありまして、前年度末現在額八十一兆四千九百五十五億百五万円余に比べて十兆七千六十四億四千四百五十一万円余の増加となります。  その内容の詳細につきましては、昭和五十六年度国の債権の現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  次に、物品増減及び現在額でありますが、昭和五十六年度中における純増加額は五千六十七億九千六百三十七万円余でありますので、これに前年度末現在額二兆五千四百九億千七百十二万円余を加えますと、昭和五十六年度末における物品総額は三兆四百七十七億千三百五十万円余となります。その内訳の詳細につきましては、昭和五十六年度物品増減及び現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  以上が、昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書等概要であります。  なお、昭和五十六年度予算執行につきましては、予算の効率的な使用経理の適正な運営に極力意を用いてまいったところでありますが、なお会計検査院から、百八十四件の不当事項等について指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  予算執行につきましては、今後一層配慮をいたし、その適正な処理に努めてまいる所存であります。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  5. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書につきまして大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書を、会計検査院検査報告とともに第九十八回国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書概要について御説明いたします。  昭和五十六年度中に増加しました国有財産行政財産一兆三千二百六十九億五千九百四十八万円余、普通財産一兆四千八百三十五億八千六十六万円余、総額二兆八千百五億四千十五万円余であり、また、同年度中に減少しました国有財産行政財産三千七百九十八億四千二万円余、普通財産五千三十六億千八百五十八万円余、総額八千八百三十四億五千八百六十一万円余でありまして、差し引き一兆九千二百七十億八千百五十三万円余の純増加となっております。これを昭和五十五年度末現在額三十三兆六千八百二十六億四千二百六十一万円余に加算いたしますと三十五兆六千九十七億二千四百十四万円余となり、これが昭和五十六年度末現在における国有財産総額であります。  この総額内訳分類別に申し上げますと行政財産二十一兆二千三百一億千二百五十四万円余、普通財産十四兆三千七百九十六億千百六十万円余となっております。  なお、行政財産内訳種類別に申し上げますと公用財産十三兆五千四十四億七千七百四十八万円余、公共用財産三千七百二億五千六十八万円余、皇室用財産五千四百六十二億七千七百十三万円余、企業用財産六兆八千九十一億七百二十四万円余となっております。  また、国有財産総額内訳区分別に申し上げますと、土地十兆五千七百六十五億二千四百三十一万円余、立木竹四兆七百十億八千五百六十万円余、建物四兆五千八百十五億五千二百八十六万円余、工作物三兆七千九百十億八千二百七十二万円余、機械器具八億八千百六十七万円余、船舶七千二百七十四億七千九百五万円余、航空機五千二百二十億八千四百六万円余、地上権等十四億八千五百三十八万円余、特許権等三十九億六千六百四十四万円余、政府出資等十一兆三千三百三十五億八千二百万円余となっております。  次に、国有財産増減内容について、その概要を申し上げます。  まず、昭和五十六年度中における増加額を申し上げますと、前述のとおりその総額は二兆八千百五億四千十五万円余であります。 この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって増加しました財産は二兆三千六百九十五億三千五百二十三万円余、第二に、国の内部における異動によって増加しました財産は四千四百十億四百九十二万円余であります。  次に、減少額について申し上げますと、その総額は八千八百三十四億五千八百六十一万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって減少しました財産は四千三十九億六千七十七万円余、第二に、国の内部における異動によって減少しました財産は四千七百九十四億九千七百八十三万円余であります。  以上が昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書概要であります。  次に、昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書概要について御説明いたします。  昭和五十六年度中に増加しました無償貸付財産総額は八百八十六億四千八十六万円余であり、また、同年度中に減少しました無償貸付財産総額は七百七十八億二千二百五十三万円余でありまして、差し引き百八億千八百三十二万円余の純増加となっております。これを昭和五十五年度末現在額五千九百五十六億八千九百十万円余に加算いたしますと六千六十五億七百四十三万円余となり、これが昭和五十六年度末現在において無償貸付をしている国有財産総額であります。  以上が昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書概要であります。  なお、これらの国有財産の各総計算書には、それぞれ説明書が添付してありますので、それによって細部を御了承願いたいと思います。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  7. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十六年度決算中、日本専売公社決算につきまして大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和五十六年度日本専売公社収入支出決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、たばこ事業概況につきまして申し上げます。  昭和五十六年度製造たばこ販売数量は三千百三十七億本余、金額にして二兆四千二百三十二億四千八百四十九万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において四十二億本余、金額にして五百二十九億七千九百四十一万円余の増加となっております。  また、葉たばこの購入数量は二十二万二千トン余、金額にして三千二百八十一億千四百五十一万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において二万トン余、金額にして五百三十六億五千七百七十二万円余の減少となっております。  次に、塩事業概況につきまして申し上げます。  昭和五十六年度塩販売数量は、一般用塩百五十一万三千トン余、ソーダ用塩五百八十万六千トン余、金額にして合計八百八十四億千九百四十三万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百八十八万四千トン余、金額にして二百六億三千四百二万円余の減少となっております。  また、塩の購入数量は、国内塩百万二千トン余、輸入塩六百三十五万八千トン余、金額にして合計六百二十億四千六百十二万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百八十八万四千トン余、金額にして二百十二億八千七百三十五万円余の減少となっております。  次に、決算内容につきまして御説明申し上げます。  まず、収入支出につきまして申し上げます。  昭和五十六年度における収入済み額は二兆五千百六十五億千六百九十九万円余であり、収入予算額二兆四千八百四十二億五千四百八十九万円余に比較いたしますと三百二十二億六千二百十万円余の増加となっております。これに対しまして支出済み額は二兆四千四百二十五億五千八百八十六万円余、翌年度に繰り越した額は二百七十八億七千七百三十七万円余、合計二兆四千七百四億三千六百二十四万円余であり、支出予算現額二兆五千六百八十五億八千六百三十万円余に比較いたしますと、差し引き、不用額は九百八十一億五千六万円余となっております。  次に、損益計算につきまして申し上げます。  総収益二兆五千二百七億六千百五万円余から総損失二兆三千八百四十三億八千五百二十三万円余を控除した利益は千三百六十三億七千五百八十一万円余であります。この利益は、日本専売公社法第四十三条の十三の二第一項の規定により全額利益積立金として積み立てております。  最後に、専売納付金につきまして申し上げます。  専売納付金は、小売人等に売り渡した製造たばこにつき小売定価に数量を乗じて得た額に納付金率を乗じて得た額から、納付したたばこ消費税の額を控除した額、七千八百三億九百七十九万円余であり、予定額七千五百七十八億六千四百八十七万円余に比較いたしますと二百二十四億四千四百九十一万円余の増加となっております。  以上が、昭和五十六年度日本専売公社決算概要であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  9. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十六年度決算中、日本国有鉄道の決算につきまして運輸大臣から概要説明を聴取いたします。長谷川運輸大臣。
  10. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 昭和五十六年度日本国有鉄道の決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十六年度における日本国有鉄道の運輸成績は、前年度に比し、旅客輸送人キロは約一%、貨物輸送トンキロは約一〇%とそれぞれ減少となりました。  運輸収入においては、旅客収入は約七%の増加となりましたが、貨物収入は約六%の減少となりました。  以下、収入支出内容を勘定別に御説明申し上げます。  まず、損益勘定におきましては、収入済み額は四兆五百億七千百十万円余、支出済み額は三兆九千九百十九億三千四百五十万円余でありまして、収入が支出を上回ること五百八十一億三千六百五十九万円余でありますが、これは予算上の区分による収支決算の結果でありまして、いわゆる損益計算上では一兆八百五十八億九千百四万円余の純損失となっております。  この決算額予算額と比較いたしますと、収入は予算額四兆九百十億七千九百八十九万円余に対しまして四百十億八百七十九万円余の減少となっております。  他方、支出は予算現額四兆二千四百三十五億八千五百三十八万円余に対しまして、支出済み額は二千五百十六億五千八十七万円余下回っておりますが、そのうち九百八十一億五千九百十八万円余は翌年度への繰越額であり、残額一千五百三十四億九千百六十九万円余は不用額となっております。  次に、資本勘定におきましては、収入済み額は二兆二千九百七億五千九百十八万円余、支出済み額は二兆二千九百二十九億五千六百十六万円余であります。  この決算額予算額と比較いたしますと、収入は予算額二兆三千七百三十九億九千三百万円に対しまして、八百三十二億三千三百八十一万円余の減少となっております。  他方、支出は予算現額二兆五千七百四十四億九千九百十二万円余に対しまして、支出済み額は二千八百十五億四千二百九十五万円余下回っておりますが、そのうち二千八百九億五千三百八十六万円余は翌年度への繰越額であり、残額五億八千九百八万円余は不用額となっております。  次に、工事勘定におきましては、収入済み額は一兆一千三百七十四億八千六百五十六万円余、支出済み額は一兆二千八百四十六億六千三百四十四万円余であります。  この決算額予算額と比較いたしますと、収入は予算額一兆二千百六十八億七千百三十万円余に対しまして、七百九十三億八千四百七十三万円余の減少となっております。  他方、支出は予算現額一兆六千二百十七億三千百八十万円余に対しまして、支出済み額は三千三百七十億六千八百三十六万円余下回っておりますが、そのうち三千二百九億三千九百二十九万円余は翌年度への繰越額であり、残額百六十一億二千九百七万円余は不用額となっております。  なお、主要施策別の設備投資額内訳は、保安・取りかえ・公害四千三百五十六億七千六百九十一万円余、体質改善一千六百八十七億三千四十三万円余、輸送力増強二千四十七億一千九百六十五万円余、新幹線四千七百五十五億三千六百四十四万円余、合計一兆二千八百四十六億六千三百四十四万円余となっております。  また、特定債務整理特別勘定におきましては、収入済み額は三千四百五十六億七千百九十九万円余、支出済み額は三千四百五十六億七千百九十九万円余であります。  最後に、昭和五十六年度予算執行につきまして、会計検査院から不当事項として指摘を受けた点がありましたことは、まことに遺憾に存じております。今後は、この種の事例の発生を未然に防止し、予算の効率的運用を図るべく、より一層の努力をいたすよう指導監督してまいる所存であります。  以上をもちまして、昭和五十六年度日本国有鉄道の決算に関する説明を終わります。  なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  11. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十六年度決算中、日本電信電話公社の決算につきまして郵政大臣から概要説明を聴取いたします。桧垣郵政大臣。
  12. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 昭和五十六年度日本電信電話公決算につきまして、その概要を御説 明申し上げます。  昭和五十六年度の事業運営は引き続き順調に推移し、損益計算上三千五百五十七億六千八百八十八万余円の当期利益金を計上するところとなり、昭和五十二年度以降黒字決算を続けているところであります。  収入支出決算内訳を各勘定別に申し上げますと、まず、損益勘定におきましては、収入済み額は、四兆九百七十四億七千二百七十五万余円で、予算額に比べ一千七百七十六億二千百七十五万余円の増収となりました。一方、支出済み額は、四兆四百九十七億二千三百五十九万余円でありまして、支出予算現額四兆七百三十六億四千八十九万円に比べ、二百三十九億一千七百二十九万余円下回りました。  次に、資本勘定におきましては、収入済み額は二兆四千七百五億八千五十六万余円、支出済み額は、二兆四千七百五億八千五十六万余円であり、この中には財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律に基づき臨時かつ特例的に昭和五十六年度から昭和五十九年度までに納付する臨時国庫納付金額総額四千八百億円のうち当年度納付額一千二百億円が含まれております。また、建設勘定におきましては、支出済み額は、一兆七千五百二十三億二千三百五十三万余円であり、これにより一般加入電話百二十万九千余加入の増設を初めとする各種の建設工事が実施されたところであります。  最後に、昭和五十六年度予算執行につきましては、会計検査院から物件に関するもの一件、職員の不正行為に関するもの一件の指摘を受けたことはまことに遺憾に存じます。  今後この種事例の発生を未然に防止するよう日本電信電話公社を指導監督してまいる所存でございます。  以上をもちまして、昭和五十六年度決算概要についての説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  13. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十六年度決算検査報告並びに昭和五十六年度国有財産検査報告につきまして会計検査院長から概要説明を聴取いたします。鎌田会計検査院長
  14. 鎌田英夫

    会計検査院長鎌田英夫君) 昭和五十六年度決算検査報告につきまして、その概要を説明いたします。  会計検査院は、五十七年十月十二日、内閣から昭和五十六年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十六年度決算検査報告とともに、五十七年十二月十三日、内閣に回付いたしました。  昭和五十六年度一般会計決算額歳入四十七兆四千四百三十三億三千七百五十一万余円、歳出四十六兆九千二百十一億五千四百三万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において、三兆四千二十六億七千二十七万余円、歳出において、三兆五千百六十一億二千八百四十四万余円の増加になっており、各特別会計決算額合計額は歳入百五兆九千五百九十五億九千四百五十二万余円、歳出九十二兆三千二百九億八千百二十二万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において九兆六百九十九億七千七百五十六万余円、歳出において八兆三千七百四十五億二千百八十二万余円の増加になっております。  また、国税収納金整理資金収納済み額二十九兆六千百三十三億五千四十五万余円、歳入組み入れ額二十八兆六千七百六十一億五千六百九十二万余円であります。  政府関係機関昭和五十六年度決算額の総計は、収入は二十二兆八百八十七億二千九十四万余円、支出二十二兆千七百十五億百九十七万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において一兆千三百五億四千二十八万余円、支出において一兆四千百七十九億五千八百十八万余円の増加になっております。  昭和五十六年度歳入歳出等に関し、会計検査院が、国、政府関係機関、国の出資団体等の検査対象機関について検査した実績を申し上げますと、書面検査は、計算書二十三万八千余冊及び証拠書類六千八百九十八万余枚について行い、また、実地検査は、検査対象機関の官署、事務所等四万千七百余力所のうち、その七・九%に当たる三千三百余カ所について実施いたしました。そして、検査の進行に伴い、関係者に対して千三百余事項の質問を発しております。  このようにして検査いたしました結果、検査報告に掲記した不当事項等について、その概要を説明いたします。  まず、不当事項について申し上げます。  不当事項として検査報告に掲記いたしましたものは、合計百八十四件であります。  このうち、収入に関するものは、九件、二十二億三千七百八万余円でありまして、その内訳は、租税の徴収額に過不足があったものなどが二件、十三億五千三十三万余円、保険料の徴収額に過不足があったものが三件、八億五千九百三十七万余円、職員の不正行為による損害を生じたものが四件、二千七百三十七万余円。  また、支出に関するものは、百四十三件、十八億二千五百六十六万余円でありまして、その内訳は、予算経理に関するものとして、架空の名目による旅費を別途に経理していたものなどが二件、九百十万余円、工事に関するものとして、設計が適切でなかったため不経済になったもの、予定価格の積算が適切でなかったため契約額が割り高になったものが六件、二億三千九百四十万余円、物件に関するものとして、物品の購入計画が適切でなかったため不経済になったものが一件、六千百七十万余円、保険に関するものとして、医療給付費の支払いが適切でなかったもの、保険給付金の支給が適正でなかったものが三件、四億八千五百九十二万余円、補助金に関するものとして、補助事業の実施及び経理が適切でなかったものが百二十六件、七億四百二十一万余円、貸付金に関するものとして、共同利用施設として貸し付けた対象施設が、貸し付けの目的外に使用されていたものなどが四件、一億二千六百四十九万余円、その他、地方交付税交付金について、事実と相違した資料に基づいて交付額を算定したため過大となっていたもの一件、一億九千八百八十一万余円であります。  以上の収入、支出に関するもののほか、国有地について、国以外の者に対し不正に所有権の移転登記が行われ占有使用されていたのにこれを放置していたものが一件、四千三百一万余円、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等について職員の不正行為による損害を生じたものが三十一件、一億四千五百十六万余円ありまして、これらの合計は、百八十四件、四十二億五千九十三万余円となっております。これを前年度の百八十件、六十九億三千九百五十万余円と比べますと、件数において四件の増加金額において二十六億八千八百五十七万余円の減少となっております。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  五十七年中におきまして、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求いたしましたものは八件でありまして、その内訳は、農林水産省の輸入麦の売り渡しに関するもの、沿岸漁業構造改善事業等の実施に関するもの、郵政省の郵政事業特別会計機械器具に係る経理に関するもの、建設省の下水道終末処理場の機械設備の整備に関するもの、自治省の地方交付税交付金に関するもの、日本道路公団の潜函工事用コンプレッサ運転電気料の積算に関するもの、住宅・都市整備公団の民営賃貸用特定分譲住宅に関する業務運営に関するもの、雇用促進事業団の総合高等職業訓練校の転換計画及びその実施に関するものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について説明いたします。  これは、検査の過程で会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求すべく質問を発遣するなど検討しておりましたところ、当局において、本院の指摘を契機として直ちに改善の処置をとったものであり まして、検査報告に掲記しましたものは十九件であります。その内訳は、大蔵省の電子計算機の出力用紙のレイアウトに関するもの、厚生省の国立病院等における受託研究に係る経理に関するもの、通商産業省の中小企業設備近代化資金貸付事業の経理に関するもの、運輸省の航空保安施設等における自家発電設備工事の据えつけ費の積算に関するもの、建設省の下水道工事におけるマンホール用型枠費の積算に関するもの、日本国有鉄道の軌道整備工事における脱線防止ガードの撤去、復旧工事費の積算に関するもの、トンネル工事における労務費の積算に関するもの、新幹線用トンネル巡回車の仕様に関するもの、駅設備営業用クレーン等の稼働及び収支に関するもの、業務委託駅の営業体制に関するもの、機関車の運用表における燃料補給時期の指定等に関するもの、日本電信電話公社の街頭用ボックス形公衆電話の料金箱の取集に関するもの、日本道路公団のトンネル工事における労務費の積算に関するもの、阪神高速道路公団の道路標識柱の製作費の積算に関するもの、本州四国連絡橋公団の鋼板の一次素地調整費の積算に関するもの、住宅・都市整備公団の住宅建築工事における現場打ち鉄筋コンクリートぐい施工費等の積算に関するもの、石炭鉱害事業団の業務上の余裕金の運用に関するもの、日本中央競馬会の開催制服の貸し付けに関するもの、日本原子力研究所の業務上の余裕金の運用に関するものであります。  最後に、特に掲記を要すると認めた事項について説明いたします。  この事項は、事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図るために掲記しているものでありまして、昭和五十六年度決算検査報告には、次の三件を掲げてございます。  すなわち、農林水産省の団体営草地開発整備事業によって開発した草地に関するもの、日本国有鉄道の荷物営業に関するもの、日本鉄道建設公団の上越新幹線建設に伴い取得した併設道路用地の費用の回収に関するものであります。  以上をもって概要の説明を終わります。会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して、適正な会計経理執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう、望んでいる次第であります。  引き続きまして、昭和五十六年度国有財産検査報告につきまして、その概要を説明いたします。  会計検査院は、五十七年十月十五日、内閣から「昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書」及び「昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書」の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十六年度国有財産検査報告とともに五十七年十二月十三日内閣に回付いたしました。  五十五年度末の国有財産現在額は、三十三兆六千八百二十六億四千二百六十一万余円でありましたが、五十六年度中の増が二兆八千百五億四千十五万余円、同年度中の減が八千八百三十四億五千八百六十一万余円ありましたので、差し引き五十六年度末の現在額は三十五兆六千九十七億二千四百十四万余円になり、前年度に比べますと一兆九千二百七十億八千百五十三万余円の増加になっております。  また、国有財産無償貸付状況につきましては、五十五年度末には、五千九百五十六億八千九百十万余円でありましたが、五十六年度中の増が八百八十六億四千八十六万余円、同年度中の減が七百七十八億二千二百五十三万余円ありましたので、差し引き百八億千八百三十二万余円の増加を見まして、五十六年度末の無償貸付財産総額は六千六十五億七百四十三万余円になっております。  検査の結果、「昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書」及び「昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書」に掲載されている国有財産の管理及び処分に関しまして、昭和五十六年度決算検査報告で「不当事項」として掲記いたしましたものは、文部省の国有地について、国以外の者に対し不正に所有権の移転登記が行われ占有使用されていたのにこれを放置していて、国有財産の管理が著しく適切を欠いていたものの一件でございます。  以上をもって概要の説明を終わります。
  15. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 以上で昭和五十六年度決算外二件に関する概要説明を終わります。  それでは速記をとめてください。    〔速記中止〕
  16. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 速記を起こして。     ─────────────
  17. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して議題とし、本日は締めくくり総括質疑第二回内閣総理大臣に対する質疑を行います。  総理に対する質疑時間等につきましては、理事会において協議し、各質疑者に御通知申し上げたとおりであります。  それでは、これより質疑に入りますが、まず私が、各会派のお許しを得て、決算委員長として、総理に若干の質問をいたします。  まず初めに、決算審査に対する政府の姿勢についてであります。  国の財政に対する国会の監督は、事前の予算審査、事後の決算審査の両面によって初めて完全なものになると言えるのでありまして、そのうち、決算の審査は、政府に対し予算執行が適正であったかどうかについて反省を求め、さらに将来の予算編成に影響を与えるためのものであり、きわめて重要であります。  しかし、予算に比べて決算の審査に対する政府の姿勢は、総括質疑における総理の出席一つとってみてもはなはだ不満足なものであり、各省庁の対応においても決算審査軽視の姿勢が感ぜられることが少なくありません。特に最近、政府委員等の意識的とも思えるすりかえ答弁などが目立ち、厳しく指摘されているところであります。  決算が過去の財政処理の報告にすぎず、これを軽視しても何ら影響するところがないとたかをくくった考え方が政府側にあるように思えてなりませんが、総理はどのように認識されているのか、この際改めてお伺いをいたしたい。  総理が本当に決算審査の重要性を認識されているならば、率先して出席をされ、論議を尽くす機会を少しでも多く持つべきであるし、また各省庁に対しても進んで協力するように強く指示されるべきであります。総理の御見解を伺います。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 内閣といたしましては、予算同様、決算は最も重要な国会案件であり、結果であると心得ております。この決算委員会に対する出席等につきまして、予算委員会ほど頻度が少ないのははなはだ遺憾でございますが、できるだけ総理大臣といたしましても機会を設けるように、御要望に応ずるように努力してまいるつもりでございます。  なお、決算によって指摘されました事項は国民の血税の処理の結果指摘されたところでございまして、政府としてもおろそかにしては絶対ならない大事なポイントでございます。従来も指摘されました当該官庁等につきましては、早速その指摘に従いまして是正方を指示してまいり、また一般的な問題につきましても、各省庁につきまして戒めてきたところでございます。今後とも誠意を持って努力してまいりたいと思います。  なお、決算委員会におきましていろいろ各委員の皆様方から御提出いただきました御論議につきましては、政府といたしましてもこれを慎重に検討し、しかるべき措置をとるように努力してまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
  19. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、国費の不正不当な使用が毎回検査報告の中に指摘されているわけでありますが、いまも若干言及はされておりますけれども、ほとんど同じ型の国費のむだ遣いの事例が後を絶たない状況でありますけれども、これに対して中曽根内閣総理大臣は今後どのようにしてこの絶滅を図っていこうとしているか、お伺いを いたしたいと思います。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国費の支出、経理につきましては、御指摘のように厳正にこれを行って、いやしくも浪費するがごとく、あるいは不当事項として指摘されることがないように戒めてきておるところでございますが、委員長御指摘のように、毎年同じような経過をたどりまして惰性的になってきておりますことははなはだ遺憾でございます。われわれは各省庁を戒めまして、同じようなことが二度指摘されないように、また新しい事項も指摘されることがないように、これを絶無を期しまして今後とも努力してまいるつもりでございます。  なお、事前の予防措置といたしまして、行政管理庁を活用いたしまして、行政管理の状況をつぶさに監察させまして、会計検査院の側において指摘されることがないように予防的な努力もいたしてまいりたいと思う次第でございます。
  21. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 最後に、会計検査院法の改正についてであります。  会計検査院の権限を強化するための院法改正については、衆議院、参議院両院において警告の決議を重ねるなどいたしまして、一貫して政府にその実現方を要望してまいりましたが、依然として政府は否定的な態度をとり続けております。反対の主な理由は私企業に対する公権力の過剰介入だと言われていますが、検査院側では、この権限は伝家の宝刀であり、その行使には慎重の上にも慎重を期すると言っているのでありまして、それでもなお政府が反対する理由が理解できないのであります。先ほども申し上げましたとおりに、国費の厳正効率的な使用を痛感される現在、その実効を上げるためには検査院の権限強化がどうしても必要であります。この問題について総理が決断を下すべき時期に来ていると思いますが、この点を伺って私の質問を終わりたいと思いますが。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 検査院法の改正につきましては、従来からいろいろ御指摘を受けておるところであり、政府といたしましても部内におきまして慎重な検討を続けておる次第でございます。われわれの内部の危惧は、われわれといたしましてはいわゆる自由主義経済を基本にしている政府、政策でございますが、特殊法人からその出先に至るまでの監査という点について問題点があるというふうに聞いております。そういう場合に、ややもすれば金融という問題について、あるいは特殊法人からいろいろ金融を受けている部面等々につきまして、経済活動の萎縮を起こす危険はないであろうかと、あるいはそういうことによってさらに人員増を余儀なくせられるという問題が起きるのではないであろうか等々の問題につきまして、いまだ十分関係各省におきまする調整がとれておりませんことはまことに遺憾でございます。しかし、国費をむだ遣いしないようにという御趣旨は十分理解できますので、今後とも引き続き慎重に検討してまいりたいと思う次第でございます。
  23. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 以上で私の質疑を終わります。     ─────────────
  24. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、大河原太一郎君、三浦八水君及び仲川幸男君が委員を辞任され、その補欠として村上正邦君、梶原清君及び長田裕二君が選任されました。     ─────────────
  25. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは質疑を続けていきます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  26. 和田静夫

    ○和田静夫君 まず、けさの毎日新聞で入国警備官が摘発情報を流したという事件が報道されていますが、法務省は事実関係について簡単にちょっと述べてください。
  27. 田中常雄

    政府委員田中常雄君) お答えいたします。  けさの新聞にまことに世間に御迷惑をかけるような記事が出まして、非常に遺憾と思うと同時に申しわけないと思っている次第でございますが、事実関係を申し上げますと、東京入国管理局の警備官が、昭和五十五年十月より数回にわたりまして韓国クラブにおきまして食事をいたしまして、五十七年の七月に至ってそのたまったツケをまとめて支払いました。その後五十八年に同警備官は東京入国管理局より横田事務所に配置転換になりました。これが事実関係でございます。
  28. 和田静夫

    ○和田静夫君 私の調査も加えての話でありますが、赤坂見附にある高級韓国クラブMで酒食のもてなしを受けていた。その見返りとして摘発情報を流したということではありませんか。
  29. 田中常雄

    政府委員田中常雄君) お答えいたします。  当時情報が入管局に入りまして、入管局の職員が無銭飲食をしていると。早速入管局で事実関係を調査いたしました。同人に対しても、そのような事実があって、その摘発情報先に対してニュースを流したようなことがあるのかないのか確認いたしましたけれど、そのような事実はないということでございました。また、この問題の韓国クラブについてもわれわれとして事情聴取いたしましたが、そのような事実はないと。それから、この韓国クラブは、当時におきましても、また今日まで、われわれ摘発の対象と考えたことがございませんクラブでございました。しかしながら摘発のされるおそれがあるような場所で入国警備官が食事をしていた。しかもツケで食事をしていたということはまことに望ましくないことでございまして、われわれとしましても、本人に厳重注意して、そして五十七年の八月に横田事務所に転職させたわけでございます。
  30. 和田静夫

    ○和田静夫君 いや、私は、いわゆる摘発情報を流すということを——それでは、一般的にはどういうような問題が起こりますか。
  31. 田中常雄

    政府委員田中常雄君) 一般的でございますが、一般的な問題といたしまして、民間から情報がある、あるいは入国警備官が情報を入手してくる。それによって特定のクラブまたはレストラン等に資格外活動者が働いている、しかもそれが非常に頻繁に行われているという情報が的確につかめました場合には、入国管理局としましては、入国警備官を派遣して摘発するわけでございます。その場合、事前に入国警備官がその問題のバーないしレストランに対して情報を流すというようなことは、まことに考えられない次第でございます。
  32. 和田静夫

    ○和田静夫君 どうも国公法に基づくところの処分をされなかった。懲戒の対象としなかった。恐らく厳重注意というような形のものは内規に照らしてでありましょう。私は、その国公法に照らしたところのものの処分をすれば表ざたになる、そうすると管理責任を問われることになる。それでもう隠密裏に事を運んだ、こういうことではありませんか。
  33. 田中常雄

    政府委員田中常雄君) 委員に一体入管は何をしているんだと言われても、まことに弁解の余地のないような事態でございまして、人に疑惑を持たれるようなおそれのあるような行為があったということは、まことに申しわけない次第でございますけれども、当時、東京入管局といたしましては、この問題について慎重にまた細密に調査したんでございます。しかしながら事前に情報を漏らしたというような事実がございませんでしたんで、本人には、しかしながらあなたのようなポストにいる人がこのような摘発される可能性のあり得るようなレストランで無銭飲食をしているということは、職員の姿勢として全然好ましいことではないということで、厳しく注意いたしまして、そしてけじめをつけ、そのようなおそれを抱かれることがないようなポストに転職させたわけでございます。
  34. 和田静夫

    ○和田静夫君 この職員は公安職でありますから、私は摘発情報が流れているという関係についてはおいおい明らかにいたしますけれども、きょうはもう時間がありませんからあれですが、こういう処理の仕方というのは誤っている。東京入国管理局の当時の管理局長の責任は当然問われなきゃなりませんし、あなたのポストの前任者の責 任、いわゆる五十五、六年当時のあなたのポストにいらっしゃった方の責任も問われなきゃならぬ。そう私は考えています。と申しますのは、私が得た情報では、この韓国クラブ以外でも実は摘発情報が流れている可能性があるということであります。ことしの三月に赤坂にある東南アジア系の高級クラブでも同様の事件があったということがもたらされています。すなわち摘発情報が流れたらしいということであります。よって、法務省は全面的にもう一遍調査をされ直す必要がある。われわれが指摘をする前にされ直す必要がある、こういうように思いますが、いかが対処されますか。二つについて答えてください。
  35. 田中常雄

    政府委員田中常雄君) いま委員より、幾つかの赤坂のクラブにおいて摘発情報が事前に流れているという御指摘でございますが、私といたしましては、実はまことにこういうこと考えられないんでございます。しかしながら、私といたしましては、今日まで、今後におきましても一層綱紀を厳粛にして、ゆめゆめ人から疑惑を招くような行為がないように、また、入国管理官の責任及びその職務というものをよく理解して、一層入国管理事務の適切なる運用を図るということについては、何遍も繰り返し、今後とも関係職員には私としては伝えるつもりでございます。
  36. 和田静夫

    ○和田静夫君 総理、いまの論議をお聞きになって、世間では法務省は法の番人と言われているわけでありますが、この事件について若干のコメントをいただきます。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いやしくも疑惑の種を残すようなことははなはだ残念な行為でございまして、綱紀粛正の面からもこれは軽々に見過ごすべき問題ではないと思います。今後とも入出国等につきましては厳重に規律を守るように戒めてまいりたいと思っております。
  38. 和田静夫

    ○和田静夫君 四月二十七日に最高裁の参議院の定数是正についての判決が出ました。判決についての論評は差し控えますが、判決は国会の裁量を是認するという立場でなされています。総理、政府としてはいかなる御見解をお示しになりますか。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれは裁判の結果を論評すべき立場にございませんが、このような結果が出てきましたことにつきましては、これは妥当な考え方ではないかと政府としては一応考えておるところであります。
  40. 和田静夫

    ○和田静夫君 五月十二日付の朝日新聞「天声人語」で、逗子の逗子弾薬庫の米軍用住宅建設についての記事がありました。あの池子弾薬庫はいま二百九十ヘクタールの自然が残され、野鳥の天国になっているようであります。「天声人語」子は「なぜわざわざ緑を壊すのか」と深い疑問を呈しているのでありますが、緑を愛する総理としては何らかの手だてをお考えになるべきではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  41. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題に関して私はまだ詳細な報告を受けておりませんが、仮にもしやるという場合におきましても、十分緑の保全につきましては厳重に管理を行ってやるように処理させたいと考えております。
  42. 和田静夫

    ○和田静夫君 レフチェンコ証言について。  まず外務省、レフチェンコ・リストの中に、ナザールという外務省職員のエージェントがおって、公電その他の機密を流したとされるわけでありますが、第一に、ナザールなる職員は特定できたのですか。第二に、具体的な機密の漏洩はあったのですか。あったとすれば、具体的にいかなる資料、情報が抜けたのですか。明らかにしてください。
  43. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) ただいまの御質問でございますが、何分にも、レフチェンコの述べましたところは、自分が直接扱ったというケースじゃございません、このナザールのケースはでございますね。したがいまして、記述もおのずから漠然といたしております。私ども鋭意調査中でございますが、かなり前のことでございますので、まだ、これがだれに当たるかということ、あるいは、そういうことがあり得たのかということを含めて、特定するに至っておりません。また、当時のいろいろな徴候からいたしまして、そのような、伝えられるような大量の情報が流れておったかということでございますが、この点についても究明するに至っていない、依然として私どもなりに調査を続けておる、こういう状況でございます。
  44. 和田静夫

    ○和田静夫君 いま私の指摘した以外の調査結果でも報告ができる部分はありませんか、今日。
  45. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) 申しわけございませんが、まだいろんな角度から調査しております。ただ、古いことでございますし、そのスタートになりました情報そのものが先ほど申し上げたようなことでございますので、特に現在申し上げられるようなことを見出すに至っておりません。全体として調査中ということで御了解をいただきたいと思います。
  46. 和田静夫

    ○和田静夫君 警察庁、これまで関係者の事情聴取をやっていらっしゃるようでありますが、調査結果で発表できることございますか。
  47. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) ただいま調査中でございまして、結論はいましばらくお待ちいただきたいと思います。そういう意味におきまして、ただいまは調査結果について申し上げる段階に来ておらないことを御理解いただきたいと思います。
  48. 和田静夫

    ○和田静夫君 警察ないし公安調査庁としてはレフチェンコをどのようにマークをして、いかなる人物とみなしていたわけでしょう。
  49. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) レフチェンコ氏は在日中新時代社の東京支局長という肩書きで在日しておりましたけれども、私ども警察としては、在日当時から、KGBの政治工作担当の機関員であろうという容疑で彼を視察しておりました。そういう点からいたしまして、彼の政治工作活動の実態も把握しておったわけでございます。ただ、政治工作活動に関連して彼自身の国内法に触れる違法行為というものの発見には至っていなかったということでございます。
  50. 和田静夫

    ○和田静夫君 日本政府は、レフチェンコ・リスト、数十名に上ると言われていますが、の全体像をCIAから提供されていた。しかも、それはかなり以前のことだったとされています。CIAないしアメリカの政府機関からいつ情報提供を受けたのか明らかにできますか。
  51. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 先ほどお答えいたしましたとおり、在日当時の視察を通じまして、レフチェンコが行った政治工作活動というものの実態は警察庁としましても解明しておったわけでございますが、昨年七月の下院情報特別委員会における証言というものは、その公開された段階において承知したわけでございまして、証言内容にあらわれた事実関係で違法行為が介在すれば、これは看過しがたいというわれわれの基本方針に基づきまして、その詳細な事情を調査したい、そういう気持ちを持っておりましたが、三月下旬に係官をアメリカに出張させまして、レフチェンコ氏から直接細かい事情を聴取してまいったというのが、レフチェンコ証言についてのわれわれが詳細な事情を知るに至った経緯でございます。
  52. 和田静夫

    ○和田静夫君 総じて捜査当局、この前も御答弁ありましたが、レフチェンコ証言が捜査の端緒とはなりにくいという認識、これは依然として現在でも同じであると承っておいてよろしいですか。
  53. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 違法行為につきましての判断は、前にも御答弁申し上げましたように、古い話でもございますし、彼自身が手がけていないケースも多いわけでございますので、確定的な結果についてはいましばらくお待ちいただきたいわけですが、当面、私どもの感触としては、彼の証言の内容から捜査の端緒を得ることはかなりむずかしいと思っております。しかしながら、レフチェンコ証言にあらわれましたいわゆるアクティブメジャーズ、政治工作活動につきましては、われわれが彼を在日当時から視察しておりましたそうした実態、資料あるいはただいま調査しております内容等と照らし合わせますときには、全体として信憑性の高いものと判断しております。
  54. 和田静夫

    ○和田静夫君 総理、私は先日も官房長官に主張したのですが、いまの答弁ではありますが、私は 逆にレフチェンコ証言というのは全体としてはガセネタ臭い、そういうふうに思っています。レフチェンコ自身は昨年十二月十日の記者会見で、私はCIAの親切が忘れられないと言ってみたり、あるいは本の内容は当然CIAのチェックを受けて出版すると記者会見で述べているわけですね。つまり、彼の発言はすべてCIAのスクリーンにかけてそれから出てくると、こういう仕組みになっています。したがって、私のように考えるのが当然だというふうに思っているんですが、総理はいまの段階ではどういうふうにお考えになっているんですか。
  55. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は目下警察庁を中心にいたしまして調査している問題でございますので、その推移を見守ってまいりたいと思っております。
  56. 和田静夫

    ○和田静夫君 外務省、「KGBトゥデー」の著者ジョン・バロンですね、これはどういう人物ですか。
  57. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) ジョン・バロン氏は一九三〇年の生まれでございまして、一九五〇年代には海軍の情報将校をしておったというふうに承知しております。現在はアメリカ版のリーダーズダイジェスト・ワシントン総局主任編集員という立場にございます。御承知のように、KGBの活動についての著書、前にも「KGB ソ連秘密警察の全貌」というものを出しておりますが、そういうことで、格別の関心を持ってKGBの活動を研究している人だと、かつ、その背後にはリーダーズダイジェストが全面的な支援を与えていると、取材その他につきまして、リーダーズダイジェストの協力のもとにそういうKGBの活動を研究している人であると、こういうふうに承知をしております。
  58. 和田静夫

    ○和田静夫君 ジョン・バロン、本名はよくわかりませんが、元海軍情報将校、いま言われたとおり。一九五三年—五九年の間、対ソ諜報活動に従事した経歴の持ち主である。バロンは、昨年十一月のリーダーズダイジェストに「反核平和運動とKGB」というレポートを書いていますね。このレポートは、KGBが反核運動を操っているとバロンさんは主張をしているわけです。これはレーガン大統領の、ソ連がアメリカの核凍結運動に資金援助をしている確かな証拠は幾らでもあると発言をしている大統領発言との兼ね合いで考えてみますと、どうもその意図、目的が一つである。つまり、バロンさんはCIA情報によってこのレポートを書いた。ところが、FBIは三月になって、核凍結運動をソ連が直接操作したとは考えられないと明確にしました。総理、私はこのバロン氏のレポートはかなりいかがわしいものだと思っているのですが、総理はどのようにお考えでしょう。
  59. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私に聞かれてもそれは無理な話でありまして、本人に会ったこともなければ経歴を深く調べたわけでもございません。ただ、一応リーダーズダイジェストという本は世界的にかなりポピュラーな本でありまして、どの程度の信憑性があるかどうかわかりませんが、世界的な本としてはかなり評価のある本でございますから、そういうところに載ったという意味において、その程度の関心を持っておるということであります。
  60. 和田静夫

    ○和田静夫君 戦後、私たちも若いころ、リーダイをたくさん読む状態に日本の青年もあったと思うんですが、しかしその当時一面では、リーダイはCIAの機関誌的な役割りを担っているのではないかということも言われていて、そういう警戒心を持ちながら裏面を読むというようなことも一面ではわれわれ習ってきたわけですね。いま言われたことの関連ですが、総理御自身は、欧米あるいは日本の反核運動がKGBの操作によって動いているというようなお考えはお持ちですか。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう的確な証拠を持っておるわけではございませんから、そういうふうに断定することは差し控えたいと思います。
  62. 和田静夫

    ○和田静夫君 アメリカ、ワシントンにヘリテージ財団というシンクタンクがあります。これはヘリテージ財団が出している「バックグラウンダー」という発行物ですが、発行日は八二年の十二月、表題は「モスコーのアメリカ研究所を暴露する」、このレポートはレフチェンコ氏が書いています。署名入りであります。このヘリテージ財団とスタンフォード大学戦略研究センター、それに日本の日米安保戦略センターが共催をして日米安保二十周年シンポジウムを行った。この八〇年八月のシンポジウムは安保改定の必要性をアピールするものでありました。つまり、ヘリテージ財団とは、反ソ、軍拡路線を主張するウルトラタカ派のシンクタンクであります。レフチェンコ氏はそこで活動をしている人物であります。こういうバックグラウンドを考えますと、レフチェンコ証言というのはある種の偏向性を持っている、作為的な意図がある、そう考えるのが私は素直な理解であろうと思うのでありますが、総理、政府としてはどうお考えになりましょうか。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はレフチェンコ証言については、アメリカにおける情報特別委員会の発言、あるいはその後日本の内外の新聞、雑誌等に発表された内容等を見まして、日本のスパイ活動防止について関心を呼び起こさせられました。前からいろいろな事件が起こっておりますけれども、世界から言われるようにやはり日本はスパイ天国なのかなと、こういう点については大いに寒心しなければならぬという感じを持ちました。だと言ってスパイ防止法をいまつくろうとは思っておりません。
  64. 和田静夫

    ○和田静夫君 レフチェンコ氏が亡命する前に世界日報、これは国際勝共連合系の新聞と言われていますが、の記者と接触している事実、あるいはその記者が亡命二日前にレフチェンコと会っているという報道、レフチェンコの周辺にはあれこれとえたいの知れない機関が見え隠れするわけであります。  いまお話がありましたが、スパイ天国だと断定をされるのか、スパイ天国という問題について関心をお持ちになったと総理は述べられているわけでありますが、スパイ防止法促進論者が日本はスパイ天国だと言って、したがってスパイ防止法が必要なのだと主張されているようであります。  ところが、機密保護法を持つヨーロッパ諸国ではスパイ事件はないのかと言えば、これは逆にヨーロッパの方が大がかりなスパイ事件というのはたくさん発生をしておるわけであります。イギリスで言えば五一年の外務省スパイ事件、六二年の海軍省スパイ事件、六三年のプロヒューモ事件、いずれにも政府高官が絡んだスパイ事件でありますし、西ドイツのギョーム事件も政府中枢にスパイがいた事件、つまり、機密保護法があろうとなかろうとスパイ事件は発生する、私はそう思うのであります。  総理は機密保護法について明確な御答弁、先日の本会議で私のスパイ防止法についての見解をお求めしたのに対して、提案するつもりはないと明快な御答弁がありましたし、いまもそういう答弁がありましたから、私はそれに疑念を挟むものではありませんが、その趣旨というのはいわゆるスパイ防止法は日本国憲法の精神と相入れぬ、そのために提案をせぬ、こういうふうに理解をしておいてよろしいでしょうか。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは法律がどうできるかという内容にかかってくることで、一概に法律の内容を見ないで憲法の趣旨に合わないとは言い切れない、そのように思っております。現在は刑法あるいは国家公務員法そのほかの法律によりまして、スパイ防止のために努力もしておるところでありまして、いまにわかにスパイ防止法をつくろうと考えているわけではありません。
  66. 和田静夫

    ○和田静夫君 内閣法制局長官に念のために一問お尋ねしますが、機密保護法の論議の際に常に問題になりますのは、一つは機密が存在をするのかという問題、それから二つ目は、機密の設定はだれがするのかという点だろうと思うのです。機密など日本国憲法のもとでは存在しないと私は考えますけれども、それはともかくとして、一般論として実質秘説をとるのであれば何が機密であるか を認定をすることを法律の条文で特定することはできない。たとえば法文で防衛の方針、計画と明記をされていても、実質秘をとるならどれが秘密かということについてこれも判定しにくい。そうなりますと、罪刑法定主義に背馳するのではないかというふうに考えるのですが、この点一般論としてはどうでしょうか。
  67. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 一般論として申し上げますが、まあ仮に機密保護法を制定するというような場合においては、やはり憲法とのかかわりで機密の概念あるいはそのほかの構成要件等について慎重な配慮が必要だと思います。  ただ、現行法においても国家公務員法その他において秘密という概念が使われておりますし、また地位協定の実施に伴う刑事特別法においても機密という用語が用いられております。  そして、秘密なり機密なりにつきましては、先ほど委員も御指摘になりましたようなその意味、内容について、おのずからある一定の概念がありますし、また法文の規定の仕方によってそれを明確にすることも可能であるわけでございますから、一切機密保護法というようなものを考える場合に、機密という概念が罪刑法定主義に反することなしに規定するということは不可能であるというふうには私どもは考えておりません。
  68. 和田静夫

    ○和田静夫君 自民党のこの自主憲法期成議員連盟ですか、議員同盟ですかの憲法改正草案を読んでみますと、憲法第二十一条、集会、結社、表現の自由、通信の秘密、そこにおいて、第二項を差しかえて、知る権利に関する条項を置いていますね。何人も国の安全及び公共の秩序並びに個人の尊厳を侵さない限り、一般に入手できる情報源から情報を得ることを妨げられない権利を有する。このことを考えてみますと、この条項というのは逆に国の安全、公共の秩序を侵す情報は漏らしてはならないという禁止規定とも読めるわけですが、この辺は総理いかにコメントされましょう。
  69. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自主憲法期成同盟でいろいろな試案をいま試みにおつくりになっておるようでございますが、党議として決まったものでもなく、まだそういう試みの一つの案という程度でございますから、その問題をこういう権威のある委員会において正式に論議することは差し控えたいと存じます。
  70. 和田静夫

    ○和田静夫君 防衛計画の大綱について伺いますが、防衛力整備計画の前提となっている事項が実質上変化していると思われるのでありますが、これに関するまず総理の認識を伺いたいわけであります。  政府は、今日まで一貫して防衛計画の大綱の見直しの必要性を否定をされてきたわけですが、防衛力整備の目標もその前提となる諸事項も一切見直しの必要は現在はない、そういう意味と理解をしておいてよろしいでしょうか。
  71. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 昭和五十一年度の防衛計画の作成された際の国際情勢と現在の国際情勢を比較いたしますと、確かにソ連の軍事力の増強あるいは周辺諸国その他への政治力の影響というふうなもろもろのことを考えますと、厳しくなっているということは事実でございます。ただ、基本的な枠組みといいますか、そういった点においては変わりはないんではないかというふうに認識しております。
  72. 和田静夫

    ○和田静夫君 どうも質問通告先取りされて、答弁が先に走るもんだからあれですが、防衛計画の大綱におけるいまお述べになった国際情勢の問題を私は、私の見解を述べておかなければならないと思いますが、現在も基本的には変化してないという認識をお示しになりましたが、最近アメリカの核戦略は転換したと言われているわけですね。  一九八四年会計年度のアメリカ国防総省の国防報告、これはアメリカの核戦略については核の最初の使用の明確な否定がかえって戦争の可能性を高める。 したがって、核戦争の可能性も高めるという認識を示していますね。核戦争の可能性を高めるという認識を示している、そこのところで考えてみますと、これはまあアメリカの核戦略が、従来のカウンターバリューからカウンターフォース、すなわち核戦争遂行勝利戦略とでも言いますか、そういうものへの戦略転換の企図を示したものと私たちは見ます。戦略転換の内容は、全面報復、第二撃戦略から先制第一撃戦略への転換、こういうふうな状態であると思われるのですが、この辺の御認識はいかがですか。
  73. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) お答えいたします。  レーガン政権になってアメリカの核戦略が転換したんではなかろうか、変わったのではなかろうかという最初の委員からの問題提起でございますが、結論を申しますと、核戦略は変わっていないと。ということは、より具体的に言いますと、レーガン政権に先立つ歴代政権のとってきた核戦略の内容でございますけれども、要するに下は小規模な通常戦力による攻撃、あるいは核のブラフから、上は全面的な核戦争、その間におけるあらゆる段階の紛争というものを想定して、そのそれぞれの段階において有効に対処し得るそういう能力を体系的に持つ、それによって戦争の発生そのものを抑止する、言うなれば基本的な抑止戦略、これは一貫しております。  ちなみに、今回、先般二月でございますけれども、八四年度国防報告でも明確に記述がございますけれども、アメリカのレーガン政権のとっている基本政策というのは過去の戦略の継承であるということを明確に述べております。私どももそのように理解しております。他方、第二の問題点として、カウンターシティからカウンターフォースに変わったんではなかろうかと。この点は、何もレーガン政権になってから始まったことではないわけでございます。理由としましては、ソ連の核戦力の命中精度が非常に向上した。その結果、ソ連がアメリカの兵力を目標として攻撃をしかけ得る能力を持ってきたと。そこで、アメリカ側としては、それを抑止する報復戦力として、単にカウンターシティーの能力しか持たないということになりますと、これは非常にアメリカの報復能力のクレジビリティーが問われると。そういうことから、アメリカ側も、仮にソ連が要するに軍事目標に的をしぼって攻撃をかけてきた場合には、アメリカも同じくこれに対応して、相手方の戦力に目標をしぼって報復し得る、そういう能力を持つ必要がある、こういうことからカウンターフォースの能力の向上ということに努めていると、これは事実でございます。しかし、もう一度言いますが、これはレーガン政権になって始まったことではございません。
  74. 和田静夫

    ○和田静夫君 ソ連のアフガニスタンの侵攻は七六年。七六年の大綱が決定をされた後ですよね。そうすると、大綱の国際情勢は、やっぱりそれでも変わらないと見ておいていいんですか。
  75. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 先生もう御承知と思いますけれども、大綱においては、たとえばといいまして五つの大きな要因を国際情勢を定める大枠として述べております。一つは米中関係、第二は中ソ関係、あるいは米中関係、加えまして日米安保条約——日米安保関係でございますね、プラス朝鮮半島の状況でございます。ここで述べている記述は、現在においてもほぼ妥当していると。そういう意味におきまして、先ほど防衛局長からも大きな枠組みとしては基本的に変化がないということを言ったわけでございます。しかし、もちろんその七六年から今日までの数年間、大変至るところにソ連側のドラマチックな展開が行われてきたと。たとえば、われわれの周辺の地域につきましても、北方領土に対する師団規模の兵力の再配備、あるいはミンスクの回航、さらにはカムラン湾、ダナン等におけるソ連による基地の使用、加うるにSS20の大量配備等々、非常に国際情勢は厳しくなっているということは、客観的な事実として認めざるを得ない、そういう認識でございます。
  76. 和田静夫

    ○和田静夫君 私は、どうもこの米核戦略が大きく転換したと思っているわけでありまして、大綱における核の脅威に対しては、アメリカの核抑止力に依存するものとするという侵略の未然防止の構想というのは私は実質上変化しているのではないだろうか。アメリカの核抑止力は核戦略の先制 第一撃戦略への転換によって質的に変化をしたのではないかというふうに考えるのでありますが、いま若干の説明がありましたが、やっぱり私の疑問は疑問として相変わらず残ります。この情勢のもとでは、相手国の核兵力を先制核攻撃することも核抑止力の内容になったのではないだろうか、そういうふうに考えるんですが、先日の委員会で、本岡委員の質問に対して、日本有事の際、公海上で米軍のSSBNを護衛する場合が理論的に考えられるというような答弁がありました。米艦の識別はガイドラインに基づく共同処理によりできるとのことでありましたが、日本防衛の任務を与えられたSSBNについて艦名、位置などを日本は知っているということにそれではなるわけですか。
  77. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 先般この委員会において、米艦護衛の問題に関連しての御質問がございまして、私から、その当該米艦が、すでにわが国に対して武力攻撃が行われており、日米が共同対処をしているという前提におきまして、当該艦艇がわが国と共同対処でわが国を防衛するために行動しておるというようなときに、その米艦に対する相手国からの攻撃があったときに、それを排除できるかというふうな問題の発展から、核を装備した艦艇についてもどうかと、こういうふうな御質問であったと思います。それにつきましては、確かにその当該艦艇の行動、任務によって判断すべきであって、核を装備するからということで差異を設けるのは不自然ではないかというふうに御答弁申し上げたわけでございます。  それから、さらにSSBNについての言及があったわけでございますが、このSSBNというのは、いま御指摘がありましたとおり、この潜水艦の構造というのはきわめて秘匿度が高いということ、さらにはこの任務、目的からいってそういうことが現実的にはなかなか考えにくいんではないかということもあわせて御答弁申し上げた次第でございます。
  78. 和田静夫

    ○和田静夫君 日本有事の際、公海上の米艦護衛は集団的自衛権の発動につながるケースが起こり得るのではないかと実は思うんです。たとえば、日本の有事と中東の有事が併発するということを考えてみますと、日本近海から日本防衛のための米艦と中東出撃のための米艦が縦列で行動を起こす。両艦が個別の進路をとる前にこの日米の相手国軍艦から攻撃を受けた際に、自衛隊が前者の米艦を護衛するために相手国軍艦を撃沈した場合、中東出撃の米艦に対する護衛も行ったことになる。 集団自衛権の発動になる。これは決して私は非現実的想定ではないと思うのでありまして、リムパックの演習などで実施されているわけですがね、この辺は総理、何か御見解お持ちでしょうか。
  79. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) この議論も再三申し上げているわけですが、あくまでも一つのケーススタディーといいますか、いわゆる理論的な可能性の問題について申し上げているわけでございまして、現実の問題というのはきわめて多様でございますし、そういった一つ一つの事態についてこの場合はどうかということを申し上げるのは必ずしも適切ではございませんが、いずれにせよ個々のケースに基づきまして、当該艦艇がわが国を防衛するために行動しておる艦艇であるかどうか、わが国の個別的自衛権の範囲内でできるかどうかというふうな判断にまつべきものと考えております。
  80. 和田静夫

    ○和田静夫君 日本の防衛のために公海上で行動する米艦を自衛隊が護衛して救済した後、相手国の軍艦に反撃するために米艦が自衛隊とともにわが国の領域に入る必要が生ずる、そういうケースも十分想定されるわけですね。このときに、米艦が核を積載している場合は事前協議の対象になる。ところが、交戦中突然領海に入る必要が生じたときどうするか。事前協議は必ず行うというのであれば、その間に相手国の軍艦を逃すことがある。そういうことがあっても、とにかく反撃よりも事前協議を優先すると理解をする。しかし、交戦中とっさに領海に入る可能性は残る、こういうことはありますね。
  81. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 現実に起こり得る問題についての言及でございますが、私どもとしては、あくまでもアメリカはわが国の非核三原則という前提、考え方というものを十分認識しておりますし、われわれもこの非核三原則というのは、平時、有事を問わず堅持したい、堅持していくというふうなことを明快に申し上げているわけでございまして、理論的にはそういうことはあり得ないんではないかというふうに考えております。
  82. 和田静夫

    ○和田静夫君 私は、とにかくそういう可能性は残ると思いますね、実際問題として。  事前協議を申し出ることは、核の所在をわが国の関係者だけではなく、何らかの方法で相手国の関係者にも知られてしまうということになるのではないだろうか。絶対に相手国に知られないという保証がない限り、事前協議は行われることはないのではないだろうか。行われないのではないかというふうに、考えていけばそういうふうになると思う。  結局、日本有事の際、公海上でわが国を防衛する米艦を護衛した結果、核積載艦が領海にとっさに入り得ることもあり得る、非核三原則の一角が崩されるということもあり得る、こういうことを考えていきますと、こういう事態を防止する保証というのはどういうことになりましょう。
  83. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) これも先ほど御答弁申し上げたとおり、わが国が非核三原則というものを堅持しておると。わが国に対して核を持ち込むとき、すなわちこれは領海通過なり寄港も含めてでございますが、そういうときには事前協議をする。そうして、それに対してわが方はノーと言う。こういうことについては米側も十分に認識しておりますので、そういった事柄というのは起こり得ないんではないかというふうに考えております。
  84. 和田静夫

    ○和田静夫君 総理、限定核戦争はないと判断できますか。
  85. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 西側が抑止力を健全に確保する限り、限定核戦争はあり得ないと考えております。
  86. 和田静夫

    ○和田静夫君 ソ連に対し日本に核がないことを真に納得させない限り、現在の米ソ核戦略の関係においては限定核戦争の余地が残るのではないでしょうかね。どのようにしてソ連を納得させるのでしょうか。ただ、ありませんと繰り返すだけではどうも納得できないので、ソ連が納得しないと思うんですね。具体的な材料を出して、ないことを証明する必要がある、そういうふうに思うんですが、この辺どうです。
  87. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 一言申し上げたいわけでございますけれども、先ほど私答弁の中で若干敷衍的に説明いたしましたが、核戦力というのは、あらゆる段階を想定したその一つの体系、堅固な体系から成り立っていると。それで、その究極の目的は、一番最初のマイナーな攻撃まで抑止すると、そういう発想でございます。したがいまして、その段階のある特定の分野だけを取り出して限定戦争ありやなしやということを議論するそのものが、必ずしも核戦力の今日の実態を理解する、そういう基礎の上での議論ではないのではなかろうかと、そういう私認識を持っております。  他方、レーガン政権で限定核戦争が行われるのじゃないかということが、過去一、二年来いろいろ世上にのっておりますけれども、これにつきましても、先ほど私が引用いたしました国防報告におきまして、アメリカ側は何らアメリカとしての限定核戦争を考えていないと。この核戦争云々というのはソ連の宣伝であるということを明快に述べております。
  88. 和田静夫

    ○和田静夫君 シーレーン防衛ですが、アメリカ海軍のT・F・コールドウェル元中将は、一船団の護衛は可能であるが、間断のない船団の護衛となると適当な手段を持たないだろう、こういうふうに述べていますね。海原さんの著の百四十四ページにそう書いているんですが、これは海幕監部の「調査月報」にも出てくるわけですね。シーレーンは具体的にどこまで及び得るかについては今後の状況に応じて異なる。「防衛アンテナ」の三十五ページにそう書いていますね。  そうすると、政府の見解についてこう考えてみますと、特にASEANに及ばないと総理が表明をされたわけですね。どうも矛盾するのではないかということを総理の報道を見ながら思っていたんです。ASEAN諸国からわが国の輸入物資を有事の際に輸送する場合、アメリカが、たとえば中東に有事を構えているときにこれを守ってくれるか。日本のシーレーン防衛がASEANに及ばないとするとしり抜けじゃないだろうか。この辺のことを考えますと、総理の見解はどういうところにあったんでしょうか。
  89. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) このシーレーン防衛についての考え方でございますが、われわれは必ずしも船団を直接護衛することだけを考えているわけではございませんで、この海上交通の保護を行うに当たって、いわゆる洋上の広域の哨戒、海峡防備、あるいは航路帯を設けた場合のいろいろな間接護衛、あるいは直接船団護衛をする場合もあるでしょうけれども、そういった各般の作戦を累積して海上における交通の安全確保、すなわち船舶の安全を期するというものでございまして、必ずしも船舶を直接護衛するいわゆるコンボイというふうなことだけを考えているものではないというのが第一点でございます。  それから、あくまでもわれわれのシーレーン防衛というのは、これも再三御答弁申し上げているとおり、周辺数百マイル、航路帯を設けることありとすれば、それは千マイル程度を防衛力整備の目標として得るということでございまして、これ以上にわたってシーレーン防衛を考えているわけではございません。  そういった意味合いから、それ以遠の問題についてどうかということであれば、これは一般的にアメリカ側に依存、期待するということでございます。
  90. 和田静夫

    ○和田静夫君 宇宙開発事業団の打ち上げた実用静止通信衛星CS2、これを使って電話回線で、防衛庁は最近これを利用する方針を固めて関係省庁との調整に入ったと伝えられていますが、宇宙事業団法第一条から考えてみますと、政府の従来の見解からしても、この衛星というのは平和の目的、イコール非軍事目的のみに利用されるべきであると思うんですが、これはどういう見解をお持ちですか。
  91. 加藤泰丸

    政府委員(加藤泰丸君) ただいま先生からもお話ございましたように、宇宙開発事業団の宇宙開発は、これは平和の目的に限るというような線でこれを進めているわけでございます。防衛庁が硫黄島との間で通信を行いたいというような希望は事務的にも聞いておりますので、この件につきまして、宇宙開発事業団法並びに国会の決議等に照らしてどのような位置づけにあるかという点につきまして、目下関係省庁と鋭意検討をしている段階でございます。
  92. 和田静夫

    ○和田静夫君 総理、来年度予算編成に絡んでひとつ伺いますが、防衛関係費を聖域扱いしないということは、そういうことですか。
  93. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりであります。一応来年度予算につきましては、あらゆる部面につきまして聖域を設けることなく、厳重な査定を行いまして編成したい所存でございます。
  94. 和田静夫

    ○和田静夫君 先日も実は竹下大蔵大臣と議論をさせていただいたんですが、五十九年度予算をどのように編成されるかということで、これはぜひ総理から答弁いただきたいんですが、五兆円の要調整額が出てくるとも言われているわけです。総理は行革に大変御熱心でありますが、歳出削減といっても、これは限度があります。結局この要調整額はどのようにして埋めるのかと考えてみると、どうもやっぱり赤字国債を発行するのか間接税を増税するのかということになるんですが、総理としてはどういう方途をお持ちですか。
  95. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず私からお答えいたします。  確かに五十九年度の財政事情は、いまの場合明らかではございませんが、幾つかの仮定に基づいたとはいえ、お示しいたしました中期試算を見ますと、四兆から五兆五千億、そういう要調整額が資料としてお配りしたものに正確に載っておるわけでございます。したがって、極度に厳しいものであるという認識は私どももいたしております。  そこで、そうなりますと和田委員といつものやりとりになりますが、要は、歳出削減か負担増か、あるいは公債の増発かということに相なります。しかし私どもの場合、いま負担増とかまた公債の増発などをいやしくも念頭に置きますと、言ってみれば、臨調で増税なき財政再建と、こういう理念が示され、そして、これをてことして徹底的な守備範囲の見直し等々について指摘されておりますだけに、念頭に置くこと、それだけでもっていわば厳しさが薄らいではならぬというふうにいつも心に言い聞かしておるわけでございます。したがって、お示しいたしました財政改革に対する考え方に基づいて、やはり個人、家庭の自助努力、あるいは民間の活力、これにゆだねられるものがありはしないか、また、国と地方とのまさに役割り分担、分野調整、そういうところへ徹底的な削減合理化のメスを入れることによって、まずはこれに対応すべきものであるというふうに、非常に窮屈なお答えをいたしますが、その姿勢をまず持って対応しなければ、五十九年度の厳しい財政事情にあって、予算編成等はイージーに流れがちだと思いますので、基本的な姿勢をまず申し述べることによって、御理解をいただきたいと思います。
  96. 和田静夫

    ○和田静夫君 どうも竹下大蔵大臣、今度の大蔵大臣になられてから、かつてのような自由濶達さというか、御自分の御判断で政治を前向きに引っ張っていくというような答弁がなかなか出てこないので、苦衷のほどはよくわかりますけれども、もう少しやっぱり、せっかくみんなが期待をしているのでありますから、竹下さんという方に。もっとやっぱり政治に先見性を与えるとか、そういう意味において御答弁を願いたいものだと、何回かのやりとりを通じてひしひしと感じています。どうもやっぱり、政権の座が近づいてきたので非常に慎重なのかなとも思いますけれども。  総理、所得税減税について、額、時期についてどのような見通しをお持ちなんですかぬ。今度は戻し税方式もあり得るとお考えですか。ここのところは実は、大蔵大臣ともう二、三日前にやったばかりですから、ぜひ総理の御見解を承りたいと思います。
  97. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題につきましては、各党各派の申し合わせ、合意がございますので、これは誠実に守っていきたいと思っております。ただ、五十七年度歳入状況等は本年の七月以降にならぬとわからないものでございますから、七月以降のそれらの情勢をよく判断をしました上で、いつ、どのように行われるかという判定を検討してまいりたいと思っております。
  98. 和田静夫

    ○和田静夫君 最後に、私はまだ疑いを実は持っているんですけれども、解散問題であります。私はまだ同時選挙の可能性というのは残っていると思っているんですけれども。何か総理は、解散は九月以降と御決断をされたような報道がずっとあります。そうすると、その先はどうされようとお考えになっていますか。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 九月以降にやろうと決断したわけではありません。これは、新聞記者の皆さんと懇談をしました折に、サミットの後は参議院選挙があると、参議院選挙の後には特別国会がありますから、夏まではありませんねと、そう言いまして、そうしたら、じゃ、八月まではないということですかと言うから、そういうことでしょうと、そういう御答弁を申し上げたので、それ以上のことは何も言っておらないということであります。
  100. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、それ以上のことをここで少し、御感想を述べてください。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 参議院選挙の後は臨時国会でありますので、私の思い違いでありました。  前から申し上げるように、任期を全うするというのが政治として原則でありまして、そういうことにしていきたいと思っております。     ─────────────
  102. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、北修二君が委員を辞任され、その補欠として板垣正君が選任されました。     ─────────────
  103. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理に対する質問時間が非常に短いものですから、端的にお伺いします。  私は先ほどから質問を聞いておりまして、総理の答弁に非常に私は不満であります。  それは何が一番不満かといいますと、まず端的に言いたいのは、今回のロッキード事件の問題であります。これは総理は関係ないと思っていらっしゃるかもしれませんが、先ほど委員長から質問のありました院法改正の問題であります。院法改正の問題につきましては、もうこの委員会で何回も議論をいたしました。先般の委員会でも官房長官にも御出席をいただきまして、官房長官を時間詰めました。結局、総理が先ほどからおっしゃっておりますあの答弁は、もう何回も同じ答弁をみんなしているわけです。そうじゃなくて、やっぱり事態としてはずいぶん——きょうは院長に答弁していただく時間ございませんけれども、会計検査院の見解はもうはっきりしているわけです。総理が先ほど御懸念になっていらっしゃるような問題もすべて含めて、最終的な決断は総理にやっていただく以外ないというところまで詰まっているわけでありまして、そういうような意味では、先ほどの答弁では全く私は答弁になっていない。もう少しこのロッキード事件に対する反省を含めて、やっぱりきちっとした見解をお聞かせいただきたい、そう思います。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は前内閣以来の大事な問題でございますから、慎重に検討しておるところでございますが、前から申し上げますように、特殊法人からその先に至るという点につきまして、果たして民間の活動を萎縮させはしないか、あるいはそのために人員の増加を招来するようなことを内外にわたって起こり得ないであろうかと、そういうような点の疑問があるわけでございます。  また、私の内閣の政策一般といたしまして、できるだけ民間活動を活発にして、政府からの規制を解除しようと。いわゆるデレギュレーションということを行革の方針にのっとりまして臨時行政調査会の答申を受けて、そういう方針を持っておるわけでございます。そういうような面からも考えてみまして、私といたしましては慎重に考えざるを得ないというのが実情でございます。
  105. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、いま総理がおっしゃっている問題は、すべて私はいわゆる政府内部の問題でありまして、活力の問題にしましても、検査の中身の問題にいたしましても、民間の活力をそぐということになるという問題につきましても、検査院の基本的な見解はもうすでに出ておるわけです。それで院長自身も、もうあとは政治的判断だけだ、こういうふうにおっしゃっているわけです。同じ問題を長い間やっておりますと時間がありませんから、もうこれ以上言いませんが、これは総理、ロッキード事件のいわゆる反省も含めて、総理はこの問題についてやっぱりどうお考えか。現実の問題として昭和五十二年の五月の二十四日、衆議院の本会議、五十三年の五月の二十五日、同じく衆議院の本会議における議決、五十三年ですね。そして五十三年の参議院における議決というふうに、この決議の中身もはっきりしておりますし、それは院法改正とは具体的にうたっておりませんけれども、そのことを含んでの決議であることはわが委員会の審議の中からも明確なんですよ。  そういうような意味で、これは総理、もう一回お伺いしますが、ロッキード事件の反省というのが一つあります。これを一遍、総理の見解をもう一回聞かしてもらいたい。そして、この院法改正についての考え方、これは決断をやっぱり早くしていただきたいわけですね。検討中、検討中じゃ、これはもう毎回、五年間続いているわけでありまして、ちょっとやっぱり長過ぎるんじゃないか、そういう考えでおります。総理の御見解をお伺いします。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ロッキード事件につきましては大いに反省をし、ああいう事件が再び起きないようにわれわれは戒心していかなければなりませんし、行政機関につきましてもそれぞれ戒めてまいっていかなければならぬと思っております。  院法改正の問題はこの問題の延長線上においてできてきた問題である点もよく認識しておりますが、一方におきましては、これは日本の資本主義と申しますか経済活動に係る分野も関係してくることでございまして、それらにつきましてはただいま申し上げましたような観点から慎重を期しているという次第なのであります。
  107. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは総理、先日ASEANに行かれたわけでございますが、これは朝日新聞の四月三十日の夕刊の報道であります。この報道によりますと、ASEAN訪問に先立って、「二十九日夜、田中元首相に電話で連絡し、「今国会中に衆院解散は行わない」との首相決断について理解と協力を求めた。これに対し、田中元首相は「解散権を持つ首相がそうまでいうのなら、やむをえない」として了承、参院選に全力を挙げるよう要請した。」と、こういうふうに報道されておりますが、これは事実でございますか。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私的な会談につきましてはあったともないとも言わないことが適当であると思っております。
  109. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あったともなかったとも言わないというのが常識、それはそれで結構です。しかし否定はしませんね。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 否定もしなければ肯定もいたしません。
  111. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは総理ね、こういうふうなことはあなたは否定もしない、肯定もしない、それは結構です。しかしながら、こういうふうに少なくとも報道されておることに対してあなたは抗議も何もしてないわけですから、事実あったんでしょう。要するに中曽根内閣がいわゆる田中元総理によって動かされていると。どうしてこれこういうことを電話しなくちゃいけないんですか。あなたが電話して前もって了解を得たというので、おたくの党の田中派の皆さんは了承したということですね。これについてもそういう風評が現実にあるわけです。ロッキード事件のけじめという問題からいきますと、われわれは、そんなことはないだろう、中曽根内閣は世評、風評そういうことはいっぱいあるかもわからないけれども、総理は断じてそういうようなことはない、総理は総理として独自の判断と決断でいわゆる日本の政治を動かしていらっしゃる、私たちもそう信じたいし、国民もそう信じたいと思っているわけです。ところが裏ではやっぱり前もってですね、しかも。そういうところへ電話をしていわゆる了承を受けなくちゃならないというふうな感じ、そういうふうに国民は受け取っているわけですね。その国民の受け取りに対して——これは受け取っているのは事実です。その続きの新聞も記事いっぱい書いてますよ、全部読みませんけれどもね。やっぱりこれは全く誤解なのかどうか。そういうことはありませんということをこれは総理明確に言えますか。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総理大臣としまして、自分の専権に属する決断について人に了承を求めるようなことをやったことはありません。
  113. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしても、こういうようなことがやっぱりそういうふうにして新聞でも報道され、そういうようなことを、専権に属することを相談する、そういうことをまともにそうだと言うわけにはいかないでしょうね。しかしながら、こういうことが報道され、そしてみんながそうじゃないかというふうに理解しているということだけは、これは総理、否定できない事実だと私は思いますよ。  それから次に、国会の会期延長の問題ですけれどもね、これは総理はどういうふうにお考えなんでしょうかね。今国会は五月の二十六日までなん ですが、現実に自民党の中には行革の四法案の成立を図るために会期を延長すべきだと、そういうふうな議論もあるようでありますが、総理はその問題は幹事長、国対委員長に任せてあると、そういうふうに発言されているようでございますが、この問題について総理は実際問題としてどういうふうにお考えなのか、この際明確にしていただきたいと思います。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行革の重要法案を御審議願っており、またほかの重要法案もあることでございまして、会期内にそれらの法案成立に全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  115. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 次にもう一点、先日の官房長官の発言についてお伺いをしておきたいと思います。  総理は、先ほどの答弁もそうですが、従来ロッキード事件に関するわれわれの質問に対しましては裁判が係争中であると、したがってわれわれがその問題について必要以上に発言はしないと、そういうことで回避してこられましたですね。しかし今回の官房長官の態度というのは、これは後で釈明も行われておりますが、それにしてもやっぱり内容的には相当おかしい、私はそういうふうに思います。  そこで、総理はこの問題について官房長官とお話をされ、確認もされたそうであります。そういうように新聞では報道されておりますが、総理はその発言の内容を聞いてどういうふうにお考えになったのかというのが一つ。  それから、やっぱり係争中の事件の問題について、検察の言うことはでたらめだ、うそだなんという、たとえどういうようなかかわり合いがあったにしても、やっぱりそういうような発言というのは、これは大変むずかしい問題を含んでいる、そういうふうに私は思うんですが、その問題について総理どうお考えなのかということ、二つ。  それからもう一つ、最後に今回のこういうような問題については、ただ釈明すれば済むという問題ではないんじゃないか、そういうふうに思いますが、この三点あわせて御答弁いただきたい。
  116. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こういうようなことが誤解から起きたことにせよ、非常に遺憾でございます。官房長官の件についてはいろいろ調べてみましたが、懇談の折に、まず裁判に関与する意思はないと、そういう趣旨のことを明言して、そして自分が証人に出た、自分に関する部分については自分の考えを申し上げ、さらに弁護士がこれこれのことを言っておると、弁護士の意見を紹介したのが、あたかも自分の意見のように誤り伝えられた、そういう事の由であります。  以上のようなことでありまするから、この点につきましては、かりそめにも新聞に誤解を与えるようなことがないように、今後注意する必要があると思っております。
  117. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 行革の問題について二、三お伺いしたいと思います。  総理は臨調の発足当時から行革三昧ということで取り組んでこられたわけでございますが、最終答申ももう出まして、先日は参議院におきまして国鉄の法案も通過したわけでありますが、現在の心境はどうですか。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国鉄監理委員会設置に関する法案を早めに成立さしていただきまして、心からお札を申し上げる次第でございます。  なお、まだ重要法案も残っておることでございますから、次々に会期内に成立を期してまいりたいと思います。  行革につきましては、中曽根内閣成立の重大使命の一つは行革完遂にありと、少なくとも軌道を設定して行革がたくましく前進していくという姿を国民の皆さんにお見せする責任がある、そう考えておりまして、今後とも不退転の決意で努力してまいるつもりでおります。
  119. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 増税なき財政再建という問題でございますね、これは臨調のキャッチフレーズだけではなくて、私たちは現在臨調が指摘した一つ一つの事項をいわゆる完璧に政府が実行すれば、いわゆる増税なき財政再建というのは達成することができる、いわゆる臨調の答申を確実にやれば、いわゆる増税なき財政再建というのは達成できるんだ、そういうふうに国民は考えていいのかどうかという問題があるわけですね。現在の財政が非常に厳しいということも国民はそれなりに知っているわけです。しかしながら、臨調が言う行革を実行すれば、いわゆる少しは明かりが見えてくるのかという国民の希望的観測というのがあるわけですね。  この問題については、総理は、行革を完翼璧実施すれば増税なき財政再建というのは達成することができるんだと、こういうふうに言えるのかどうか。これは国民が非常に関心を持っておることでありますので、総理の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨時行政調査会がお示しになりました御方針はそういう御方針でございまして、これを遵守いたしまして最善の努力を尽くしてまいるつもりでおります。
  121. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすれば増税なき財政再建というのも達成できる、そう考えてよろしいわけですね。
  122. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨時行政調査会は、そういう御見解であの答申をお出しになっておるものと心得ております。
  123. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうも少し食い違っておるような感じがするんですが、政府はそう考えてないわけですか。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調側がお示しになったことを最大限尊重して実行するというのがわれわれの立場でございますから、そういうふうに実行してまいりたいと思っております。
  125. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、ポスト臨調の委員会につきまして、この法案も参議院におきまして今週審議が行われることになっておりますが、この委員会、三年間設置するようにという臨調の答申であります。したがいまして、臨調の答申は第一次から第二次、三次の基本答申、そして最終答申と、非常に大変な量の事項と指摘事項があるわけでありますが、こういうふうな問題は、これはほぼ三年で決着をつけることができる、ある面で言えば実施することができると中曽根内閣は考えておられるわけでしょうか。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行革の重要な部分についてそれで軌道に乗せる、軌道を敷き軌道に乗せるということができると、そういう考えに立って三年ということにしていると思います。
  127. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、先日の運輸委員会の審議のときにも総理同じようなことをおっしゃいましたね。いわゆる、レールを敷いて機関車を乗っけるところまではやるんだと、余りだらだらと長い間やるべきでない、そういうふうな意味の答弁が総理あったわけでありますが、実際問題として総理、指摘事項の全部を、これは総理、頭に入れていらっしゃるのかどうかわかりませんが、いわゆる大事なところを抜いてなんという考えじゃなくて、やっぱりそこら辺のところは総理の機関車論でいくと、何か目玉主義というのがありますね。これとこれとこれだけで、それで大事なところは抜ける、そんなことは考えていませんね、大臣。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おっしゃるとおり実行してまいりたいと思っております。
  129. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひ、この問題大事な問題でありますので、臨調答申の中の柱となるような問題を落とさないで完璧に実施していただきたい、そう考えております。  そこで、総理、総合管理庁というのがありますね。これも基本答申の中のいわゆる柱の一つであると私は思います。  ところが、実際問題として、去る十二日の運輸委員会の審議のときにもこの問題が出てまいりまして、総理は、検討する、そういうふうなことをお答えになっていらっしゃるわけでありますが、これは設置自体を含めて検討するということなのか。または、設置するというのはあたりまえで、細部にわたっての検討なのか、そこら辺のところはやっぱりはっきりしていただきたいというのが一つです。  それから、この問題については、やっぱりいろ ろんな問題が政府内部の反対もあるようでありますけれども、そういう点を含めて、そういうような政府内部の反対は排除してきちっとやるつもりなのか。これは三通りあると思うんですが、この点について一遍総理のお考えを明確にしておいていただきたいと思います。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総合管理庁の問題につきましては、答申の線で実行する方向で検討したい、そういうことであります。
  131. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 次に、これは総理が行管庁長官のときに私、予算委員会で一遍お伺いしたことがありますけれども、特殊法人の会計の経理についてであります。  この問題につきましては、第一臨調のときもすっきりした表現で答申をしているわけでありまして、いわゆる法人を事業経営的企業と行政的事業の法人とに分けて、事業経営的企業については、いわゆる日常業務を含めてすべて企業会計を実行せよというふうに今回の答申でもなっているようでありますが、この問題につきましては、先般の私が質問しましたときには、私は国鉄の例を引いて質問をしたのをいまでも覚えておりますが、あのときにも総理は賛成の意向だったように覚えております。今回の答申を受けまして、この問題は非常に大事な問題でありますし、第一次の臨調のときにも明確にうたっている問題でありまして、今回の法案審議等に関連をいたしまして、非常に大事な問題でありますので、総理の御見解をお伺いしたいと思うし、また、この問題は国鉄の問題が完璧あるいはそれぞれの問題が完璧に実施されるまで、それまでにこれだけでも早く実行に移せる問題ではないかと私は思うわけですが、その点も含めて総理、どういうふうにお考えか、お伺いしておきたいと思います。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 特殊法人の経理については、峯山さんからも何回か御指摘をいただいておる点でございますが、民間経理の方式を取り入れる、それから各特殊法人によって区々になっているところを整合、統一せよ、こういう貴重な御意見をいただいておりまして、その線に向かって改革をいたしたいと思っております。
  133. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 行革大綱がほぼ固まったような報道がなされております。今月の二十日前後に基本のいわゆる行革大綱案が出されるようでありますが、その答申の中身を見てみますと、いわゆる何というか、いま総理は総合管理庁については相当前向きの話をしていらっしゃいますが、それ以外のたとえば中枢の省庁の統合とか、そういうふうな問題、具体的には言いませんが、大分骨抜きになっているようであります。  それから食管制度とか補助金の問題ですね、そういうふうな問題ももう一つ立ち消えの感じのいわゆる報道があります。  それからそういうふうな問題をずっと見てみますと、いわゆるこの答申を尊重するという総理の立場から言いまして、いわゆる選択的に実施するというふうなお考えはないと私は思うわけですけれども、総理がきょうも何回か御答弁になっていらっしゃるように、臨調と心中するとかあるいは答申を政治生命をかけてやると何回もおっしゃっているわけでありますので、そういうふうな意味ではこれは具体的にがっちりやっていただきたい、そういうふうに考えます。  そこで、やっぱり総理、いまの行革大綱の中身を見てみますと、総理としては、三年間ぐらいで実際に実行できる事項とあるいは実行しない事項、そういう分類整理して、やっぱり三年間でも無理な問題もあるかもわかりませんね、しかし、最終的にはやる、そういうふうな意味もあるとは思うんですね。そういうふうな意味でこの臨調答申の中身をもう少しきちっと分類をして、そして国民にわかるように説明をする、これとこれはこういうふうな期限までに確実に実行する、ここら辺まではこれは早急には無理だから三年間ぐらいの猶予をいただきたいとか、そこら辺を多少明確にする必要があると思うんですが、そういう点も含めて御答弁をいただきたいと思います。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行革大綱をつくるにつきましては、御指摘の点は大切な点であるだろうと思います。盛られたところをいかなる手順でどういう段取りで実行するか、そういう大綱を決めるのが行革大綱でございますから、御趣旨の線に沿いまして行革大綱をつくっていただくようにいたしたいと思っております。
  135. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 臨調の最終答申の中で立法府の問題につきましても多少言及しているところがあります。これは総理も御存じだと思いますが、立法府は国権の最高機関として、行政改革を推進する立場にある。立法府も適切、有効な措置をとられることを要望すると、こういうふうな書き方で述べているわけでありますが、具体的にどういうことをということは明確に何もうたっていないわけでございますが、これは中曽根内閣としては、総理としては立法府に対してこの行革の問題と絡んで、臨調答申の問題と絡んでどういうふうに御要望をされ、どういうふうにお考えでございましょうか。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 立法府の改革は、立法府が自律主義でみずからおやりになることでございますから、行政府として何ら申し上げるべき筋ではないと思っております。ただ、立法と行政とのかかわり合いの部分がございます。こういう部分につきましてはいろいろ考えもございますが、適当な機関を通じて自民党の意見としてそういう問題は提出するのが適当ではないかと考えております。
  137. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私たちの党はこの行革につきましてはもう本当に真剣に取り組んでまいりましたし、一つ一つの問題について真剣に検討しているわけでありますが、この立法府、国権の最高機関としてのいわゆる立法府、これは行革の問題非常に大事にしなくちゃいけません。しかしながら、これどうしても行政府が出してくる法案の中身を見てみますと、立法府のわれわれのいわゆる委員会や本会議やいろいろなところにおける審査権というか立法権を侵害するような内容になっている法案がたまたまあるわけであります。  たとえばこれは具体的に言いますと、国家行政組織法なんというのの改正、これは私たちまだ賛成も反対も決めておりません、実際のところ。これは非常に私たちは参議院におきましても、私は内閣委員会で国家行政組織法を担当いたしておりましたので相当長い間検討いたしてまいりましたけれでも、内閣委員会における審査権というのが、いわゆる設置法は毎年真剣に取り組んできたわけであります。今回の法案提出に当たっては相当問題点をはらんでおります。いわゆる局や部の再編あるいは改革、そういうような問題については今度はすべて審査をしなくていい、省令でいいというふうな改正になっているわけですね。この点はやっぱり非常に私は問題ではないかと、そういうふうに非常に疑問を投げかけて、うちの党でも相当議論をしているわけでありますが、この問題については総理としてどうお考えでしょうか。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行政改革は能率主義をもって、簡素にして効率的な政府をつくり、機動的運営を図っていこう、こういうことでございますが、かつて総定員法をつくっていただきました。この総定員法で純国家公務員五十二万何千という数字、それから三行五現が入りましてたしか九十何万、その程度になると思いましたが、この総定員法をつくっていただきましたことが国家公務員の膨張抑制に非常に効いたわけであります。地方団体においてはそういうものがなかったために、かなり地方公共団体、府県市町村において人間がふえたということがありまして、過去十三、四年の結果を見ますと、昭和四十四年にやりましたこの総定員法というものは、実にいい法律を時宜に適してつくっていただいたと思うわけであります。  それと同じように、中央諸官庁におきまして局の数を今度は百二十八でありましたか凍結してしまう。これ以上は認めない。言いかえれば局の総定員法に当たるわけであります。しかし、その範囲内において各省庁の内部において自己改革を行う、そういう場合には各省庁に委任していただく、内閣に委任していただく、こういう発想で今 回、機構につきましてのいわば総定員法的発想でできておるわけでございます。もちろんその省庁の内部改革を行うという場合には、当該委員会につきましていろいろ御相談申し上げる、政府として御相談申し上げるということは十分あり得ると思っておりますが、そういう法的権限の部分につきましては総定員法的なもので凍結さしていただきまして、後は政府のイニシアティブを十分認めていただけるようにしていただくことが時宜に適したことではないかと確信しておる次第でございますので、よろしくお願い申し上げる次第であります。
  139. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 減税の問題について一問聞いておきたいと思います。  御存じのとおり減税問題につきましては四月二十八日の与野党幹事長・書記長会談におきまして、自民党の回答をさらに一歩明確にさせるということで与野党の折衝が行われております。政府は、この与野党の合意を尊重するとの見解を表明しておりますけれども、総理は、これまで二階堂幹事長が明らかにしてまいりました——三点あります。一つは、秋口までに減税規模を示すということ。それからもう一つは、規模は景気浮揚に役立つ相当の規模。そして三番目に、財源等については新規の大型増税をもって充てることはしない。——こういうふうになっているわけでありますが、総理、これは減税の問題は非常にわれわれとしても関心が深いし、何とか一日も早くばっちりした減税をやっていただきたいという要望があるわけでありますが、総理としてこの問題に対する御見解をお伺いしておきたいと思います。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、前から——もう昭和五十二年からでございましたか、所得税、特にサラリーマンの皆さんの基礎控除等はさわっていないものでございますから、いろいろ御苦労願っておる。そういう意味においては減税を実施さしていただきたいし、またやりたいと、そういう念願を持っておる人間で、国会でも言明してきたところでございます。与野党の間におきましても合意が成立しておるものでございますから、その線に沿いまして誠実に努力してみたいと考えておるところでございます。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 最後に、サミットの問題を一言、二言聞いておきたいと思います。  サミットの問題につきましては、最近新聞報道等で相当報道がなされております。これは非常にサミットそのものが回を重ねるごとにそれなりに私は重要な会議になってきていると思います。そういうふうな意味で、今回のサミット、これは今月の末から行われるそうでありますが、そのテーマ等につきましても、その準備段階、各種会合等が行われまして相当詰まってきているわけでありますが、国民も相当これはサミットに対する期待といいましょうか、いわゆるその関心が高まっております。そういうような中で、総理もいろんな階層の皆さんの声を聞いて出席されるであろうと私は思いますが、これはいわゆる各党の党首会談を行ったらどうかという声も実際あるわけでありますが、この問題については総理、どういうふうにお考えですか。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) できましたら、ASEANの御報告もあり、かつまたサミットにも参るということで、各党の党首にお目にかかりましてごあいさつを申し上げ、また御意見も承れればありがたいと思っております。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そのサミットに関連をいたしまして、今回の問題で、私はもうあんまり時間ございませんので詳しくは申し上げませんが、四極賢人会議というのがありまして、これはもう総理御存じのとおりでありますが、日本の賢人会議の代表が総理に対して「日本の見解」というのをまとめて提出されたという報道が先般ありました。それで先般は、先日は大蔵大臣にお伺いしたわけでありますが、きょうは総理に一言だけお伺いしておきたいと思います。  その提言の中で、「歯止めのない国防支出は景気の回復を阻害し、世界経済の重圧になっているとの立場から、」云々というくだりがあるわけです。そして、最後のところに、「「軍拡から軍縮へ」の提案」というところで、「軍事支出はその性格上競争原理が働かず、市場経済、自由経済になじまない。米国では構造的赤字の大きな部分を占め、途上国にとっては軍事費の負担は一層大きい。」と、こういうふうな指摘があります。  そういうふうな意味で、これは非常に現在サミットを前にいたしまして、今回のサミットのテーマを見ましても、いわゆる対ソ政策というのが相当中心のテーマになってきているようであります。そういうような意味では、私は相当重要な問題として、これはやっぱりデタントのためにいわゆる総理の果たす役割りというのがあるんじゃないか。そういうような意味で、米ソ首脳会談というようなものを開いて、やっぱりちゃんと話し合って、その両国が、両国というよりも、世界的な東西の対立というのはあるわけでありますけれども、ただ西側の結束を固めるということも当然私は必要ではありましょうけれども、それ以上にこれはやっぱり大事な問題ではないかと思います。そういうような意味で、軍縮という問題等含めまして、そういうことを頭に入れて総理の発言をしていただきたいと私は思うわけでありますが、こういう問題についての総理の御見解をお伺いして私の質問は終わります。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今度のサミットは非常に重要なサミットであると考えております。ASEANを回りましても、ASEANの首脳部からはその点に対する御要望等もございました。東西、南北ともに世界の希望がかけられてきつつあるようなサミットになりつつあると思っております。そういう点につきまして十分わきまえまして、御趣旨に沿って努力してみたいと思う次第でございます。
  145. 小西博行

    ○小西博行君 まず、総理にお伺いしたいと思います。  きょうは二十分というような非常に短い時間でございますので、一応通告といたしましては行革関連、それからASEANの総理の訪問について、そうして財政再建と、こういうような感じでおりましたんですが、まずASEANの訪問から質問さしていただきたいと思います。  ちょうど私も昨年ASEANへ行ってまいりましていろんな情勢をキャッチしてまいったわけでありますが、あれからまたずいぶん中身が最近変わってきておるような感じがいたしますので、率直な御意見をひとつお願いしたいというふうに思います。  まず第一点でありますが、わが国の外交政策上、ASEN諸国というのは非常に私は、現在もそうでありましょうが、将来にとってウエートが高くなってくるんではないか。そういう意味では重要度とか、あるいはランキングづけといいますか、これは非常に数字であらわしにくいことだと思うんですが、どの程度総理は外交政策上ウエートを置いていらっしゃるのか、その点からお聞きしたいと思います。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ASEAN諸国は、同じアジアに属する隣人の国家群でございます。また、いろいろ過去の大戦につきまして御迷惑もおかけした国々でもございます。しかるところ、世界経済全般を見ますと、いま一番ポテンシャルを持ち、エネルギーがこもってダイナミズムを持っておるのはこのASEAN及び東アジアの地帯であると。そういう歴史的な大きなうねりがいま起こりつつあるように自分は感じておりまして、そういう点でもASEAN外交を非常に重要視してまいりたいと思っております。
  147. 小西博行

    ○小西博行君 そういう意味では、このように理解してよろしいんでしょうか。まずアメリカとの関係というのは非常に第一義的に置くべきだと、その次にはASEAN諸国を重点的に置きたいと、たとえば南米に対してというようなものとはまるで質が違うんだと、このように理解してよろしいでしょうか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本はこういう貿易で生きている国ですから、全世界を相手にわれわれは善意を持って外交努力を展開していくべきも のであると思いますが、ただいま申し上げました理由によりまして、ASEAN外交というものも非常に重要視していくべき地域であると確信しておる次第であります。
  149. 小西博行

    ○小西博行君 そういう意味では、日本との関係がどういう形で進展していくのが総理としては一番望んでおられるのか、期待していらっしゃるのか、その点をまずお聞きしたいと思うんです。  特に、総理のいろいろ会談が新聞報道で出ておりましたけれども、軍事大国には絶対日本はならないと。あるいは向こうの国も、国によっては多少微妙なニュアンスは違いますけれども、それぞれの国によって大分私は表現が違ってきているなあと、そういうふうに感じておりますので、その辺の感じはいかがでしょう。
  150. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の防衛政策につきましては御理解をいただきましたものと心得ております。しかし、今後ともわれわれは戦々恐々としてそういう点につきましても誤解を与えないような努力をしていく必要があるように思っております。  しかし、それと同時にやはり互恵平等、独立主権国家相互の関係として、お互いにお互いの独立と文化を尊重し合いながら、お互い対等のパートナーとしてつき合っていくと、そういう精神が非常に大事であると思っています。  ASEANの諸国は、日本の経済力というものについては敬意を表しており、また期待も非常にしておるところでございますが、日本人がややもすれば経済力が強いというものをもって優越したような感じを持てば大間違いでありまして、私は、経済的な強さと道徳的価値は別でありますと、そういうことも言明してきた次第で、その経済的強さの幻想に巻き込まれてはいけないと、大いに戒心していかなければならない、そう思っておるわけです。
  151. 小西博行

    ○小西博行君 海外援助についてちょっとお聞きしたいんですが、ASEANといってももう全く国情が違うというように私思うんです。そういう意味で、たとえばバングラデシュに対する経済援助——米国も相当大きな金額やっているわけですが、最近どうも、余りやっても効果がないんじゃないかといいますか、自主性が余り出てこない、こういうような批判も一点聞いているわけです。  それからもう一点は、タイですが、天然ガスという問題を、何とか日本で買っていただきたいと、その予定は一体どうなんだと、それによって開発投資というのは大いにやっていきたいと。こういうことを私が参ったときにもいろいろお話を聞いたわけでありますが、この二点についてはどのようにお考えでしょう。
  152. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) バングラデシュはASEANには入っておりませんが、しかしかなり低所得の国でございまして、われわれとしては十分今後の発展について協力しなければならぬ国であると考えております。  それから、タイの天然ガスにつきましては、現地でもプレム首相にも申し上げてまいりましたが、大体一九九〇年までわが国のLNGの配給は大体もう割り当てが決まっておるわけでありまして、わが国がいま買うということを保証することはできませんと。しかし、これはタイ国内で消費したり、あるいは第三国に輸出したりするという部面もあり、わが国の将来の経済の変化によってはあるいは余剰分必要とするという面が出てくるかもしれません。そういう点につきましては、ともかくタイがみずからこれを開発していくという意味において、われわれがフィージビリティースタディーやその他で協力する。そういう面については御協力するにやぶさかでありませんと。そういうふうに申し上げてきたところであります。
  153. 小西博行

    ○小西博行君 もう一点、これは通告はしておりませんのですが、タイにAITという大学院大学というのが実はございます。これは、総理は向こうでお聞きになったかどうかわかりませんが、五百名ほどの学生が各国から集まっております。それに対して日本からも相当援助しているわけです。しかも、先生方、これは教授、助教授含めまして大体七名ぐらい派遣しているわけです。  ところが、現実問題は日本の学生というのは全くいない。なぜいないんだろうということでいろいろ調べてみたんですが、優秀な方はどうしても欧米の方へ留学してしまう。まあタイの方へはなかなか来てくれません。そういうようなのが現実ありましたので、私はこれから先の外交政策の上から見ても、何としてもこういう問題に対して積極的に私は参加する必要があるじゃないか。    〔委員長退席、理事和田静夫君着席〕 しかも、これはほとんど奨学金で賄っているという実態を見まして、特に私はその辺を強調したいと思うんですが、これからどうでしょうか、そういう問題に対して。PRも確かに不足していると思うんです。そういう意味の御意見を何かいただきたいと思います。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、青年の交流計画、それから先生の交流計画等申し上げてまいりましたが、交流というのは相互的に行われるべきものが望ましいので、そういう意味におきまして日本の青年がこれから一番未来性を持っておるASEAN諸国に行くということは非常に大事なことであると思います。恐らくPRも足りないのではないかと思いますが、積極的に日本の学徒や青年がASEAN諸国へ行くように、今後とも努力してまいりたいと思っております。
  155. 小西博行

    ○小西博行君 そして、援助の問題なんですね、ずいぶんの金額を援助しているわけですが、現実は、行ってみて驚いたのは、たとえば農業に対しては大きなトラクターあたりを援助している。ところが現実それを修理するような能力、機能が全然ない、あるいは部品が全くない。そういうことで、あるところに行きますと、そういう大型農機具が山盛りになっている、赤さびになっている、こういう問題。あるいは水道を何とか建設援助してあげたいということでやっておるんですが、タンクはできているんだけれども実際のパイピングは全然できていない、したがって、自宅では水が使えない。こういうような非常にアンバランスな現状を私は見てきたわけでありますが、現在も多分そうではないかと思います。そういう面をもう少し私は、現地の大使館あたりも相当調査しているようであります。    〔理事和田静夫君退席、委員長着席〕 しかし、現実はやはり外務省ということになりますと卓上計算になってしまうんだということを、大使館の皆さん方も大変残念がっておりましたし、その面について調査をして具体的な私は対策をとっていくべきじゃないか。同時にやっぱり相手が喜んでいただけるような援助の形をぜひしていただきたい。そしてもう品物とかお金よりもむしろやはり日本の優秀な技術者が欲しい、そしてそれも長期的な計画でぜひお願いしたい、こういうような非常に熱のあるお話がございましたので、その点もよろしくお願いしたいと思います。
  156. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先方は非常に技術交流を望んでおります。前とは非常に変わってきております。行ってみますと、青年協力隊の皆さんがかなりよくがんばっておるのを見まして非常に感銘いたしました。御趣旨に沿いまして、均斉のとれた産業発達ができるような技術交流に心がけてまいりたいと思います。
  157. 小西博行

    ○小西博行君 もう一点はシーレーン問題なんですね。総理のいろんなお話の中にはわりあい相手が喜ぶようなお話がたくさんあったと思うんですが、むしろやはりそれぞれの独立国家でありますから、堂々とやはりASEANの皆さん方も自分の海域は守っていただく、こういうことが私は非常に大切であるし、また、そのようなお話もされたんではないかと思うんですが、その面に対してはどうでしょうか。
  158. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) わが国の防衛政策をよく御説明いたしまして、いわゆるシーレーンの問題についても御理解を十分いただいてきたものと思います。各国はみんな自分で自分の国をお守りになっておりまして、国防力の充実に非常に御 熱心でございます。自分の領海、領空、領域はもとより、自分が関係する部面については自分が守る、そういうことを言明しておられました。当然のことであると思っております。
  159. 小西博行

    ○小西博行君 それでは、時間がないもんですから、行革関連で一、二点お尋ねしたいと思います。  五月二十日の閣議におきまして行革大綱が取りまとめられると聞いております。その大綱の作成に対する政府の対処方針について一、二点お聞きしたいと思います。  先ほど峯山議員の方からございましたけれども、総合管理庁の設置あるいは電電、専売公社の改革等について、政府はいつまでにこの法案を国会に提出するのか、あるいは特に専売、電電については昨年の行革大綱で今国会提案を決めていたように私は聞いておるわけでありますが、この点に対してはどのようにお考えでしょう。
  160. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五月二十日ごろを目途にいませっかく大綱を作成して各省調整をやっておる最中でございますので、それを見守ってまいりたいと思いますが、臨調答申を受けまして的確な段取りが大綱として盛られるように期しておる次第でございます。
  161. 小西博行

    ○小西博行君 定員管理についてお聞きしたいと思います。  沖縄関係の職員及び新設の医科大学の教職員については、総定員法の対象外とする現行の暫定措置を廃止するよう求めております。また、地方支分部局の定員を七%削減するように求めております。これらの措置を行革大綱にどのように盛り込むか、また、定員法の枠を見直す必要があると思いますけれども、政府の方針はいかがでしょうか。この点についてお聞きしておきたいと思います。
  162. 古橋源六郎

    政府委員古橋源六郎君) お答え申し上げます。  今度の最終答申におきまして臨調答申におきましては、定員管理につきましていろいろと御提言をいただいております。地方出先機関の問題であるとかあるいは現業の郵政であるとか、そういうような問題につきましても厳しく定員管理をやっていけ、こういうお話でございまして、これらの点につきましては現在、先ほど総理が申されました新行革大綱の中でどういうふうに取り組んでいくか、現在検討中でございます。  なお、沖縄の特別措置の問題あるいはそれ以外の病院の、国立大学の定員のそれを総定員法の中に繰り込むかどうかという問題につきましては、それぞれの特殊事情がございますので、そういう特殊事情が現状においてどうなっておるかというようなことを踏まえまして今後検討してまいりたい、こういうような現状でございます。
  163. 小西博行

    ○小西博行君 私は現実に民間の合理化ということにつきまして幾つか実際にやってきた経験を持っておるわけであります。どうも定員管理というのは大変私は属人的な要素がたくさん出てくると思うんです。各省庁の中で人数を減そうと思ってもなかなか減し切れないというのが、やはり属人的な要素、つまり、どなたがいらっしゃるかなというような要素が非常に私は大きなウエートになってきていると思うんです。  そこでひとつ提案を申し上げたいんですが、日本のいろんな合理化対策をやる場合に、必ず仕事の内容をいろいろ分析します。そして積み上げ方式でやっていきます。現在これだけの仕事があるから、こういうものをやらなければいかぬという発想でもってやってくる。ところが、実際にそういう人間をいかにして削減していくかという場合には、どうしても私は大きなデザインが要るんではないかと思うんです。現状を離れて本来省庁とはどうあるべきかという大きな観点でのデザインが私は要るんではないか。これはアメリカの学者でありますが、ナドラーという人がいまして、これは早稲田へしばらくおりましたけれども、この方がワークデザインという非常にユニークなテクニックを開発して帰ったわけです。最近の一般の企業ではそのような方式によって明確に機能を策定して、そうしてそれに合わして小人数でできる体制を組んでいく、下から積み上げるんじゃなくて、むしろ上の方から本来の目的に沿ったデザインをしていく、そして具体的なものとのすり合わせをしていく、こういう方法を私は大変いい方法ではないかと思うんですが、技術的な問題になりますが、その問題に対してはどのようにお考えになるでしょう。
  164. 古橋源六郎

    政府委員古橋源六郎君) 国の場合の行政と申しますのは、国民の皆様方からこういう仕事をやれということで、法律に基づきまして私どもはその法律の執行ということをやっておるわけでございます。したがいまして、一概に民間の場合の手法というものを私どもの場合に適用できるかどうかという問題については、いろいろと検討しなければならないという点もあると思います。しかしながら、そのような御意見等につきましては、私ども大いに謙虚に現在のあり方についても見直しをいたしまして、やってまいりたい、検討をしてまいりたい、こういうふうに考えます。
  165. 小西博行

    ○小西博行君 ぜひともそういう新しい管理のテクニックというのが当然あるわけでありますから、そういうものでぜひお願いしたいと思うんです。  この問題は、これもまた通達しておりませんが、総理にぜひお聞きしたいと思ったんですが、私は国全体を見る総理といいますか、全体の最高の責任者という立場からいきますと、大臣も非常に数が多いものですから、管理体制という面からいきますと、大体マキシマム八人までというのがこれは世界じゅうに言われておる一般常識なんですが、日常の予定なんかを見ますと、大変な予定のように見受けられます。そういう意味でこの日本を管理していくために、やっぱりもう少し何かほかに手だてはないんだろうかというような感じがいたしますんですが、いまのような体制で大体総理、総理の業務というのを十分実行できるもんでしょうか。ざっくばらんにひとつお願いしたいと思います。
  166. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだなれないもんですから、まごまごしておりまして御期待に沿い得ず、一生懸命はやっているつもりですけれども、能率が必ずしも上がっていないというのはざんきにたえないところでございます。  この点につきましては、総理府あるいは内閣のあり方という点について、臨時行政調査会でもいろいろ御審議していただきました点でございます。企画会議というような思想、発想も調査会の答申には出ております。しかし、この企画会議ということにつきましても、現実問題として屋上屋を架することになりはしないかという憂いもございまして、実際問題といたしましては慎重に検討を要するところでもあります。  いままである既存のものをいかに賦活して、そして、有効に動かしていくかということが当面一番合理的な行政改革の趣旨に沿った方向でもあるという気もいたしまして、自分の身の回りのものから、これを活力を与えていくという形で努力してまいりたいと思っております。
  167. 小西博行

    ○小西博行君 一般の企業におきましても、社長の仕事というのは、現場出身の人はどうしても現場中心型にならざるを得ない、営業出身の人はどうしても営業にみずからやっぱり首を突っ込みたい、こういうような要因がございまして、本来やるべきことというのがなかなかできないのが、私は実態だと思います。  そういう意味では、各省庁それぞれ長官、大臣がいらっしゃるわけですから、それなりに計画の実行につきましても隅々までうまくいくだろう、あるいは報告もうまく返ってくるだろうと。つまり指示、命令がどういう形で報告として返ってくるか。私は、この形が余りにも何か仕事量が多過ぎるがために雑用中心型になってしまいはしないだろうか。本来、総理のやるべきことというのは私は限られた問題にしぼってやるべきではないかなということをつくづく感じているわけであります。  そういう意味で、私は前にもちょっと提案さし ていただいたんですが、例の予算局であるとか、あるいは経済企画庁、こういうようなものはもう独立してやったらどうか、あるいはエネルギー庁あたりは一体どうなんだというような考えすら持っておるわけです。そのことに対してどのようにお考えか、私はぜひお聞きしたいんです。
  168. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 内閣が一体として効率的に、かつ機動的に運用されることが一番望ましいことでありますが、私は、現在の内閣の閣僚の顔ぶれ、党役員の顔ぶれというようなものは、自民党の中でもベストメンバーをそろえている、そう自分は感じております。このベストメンバーがいかに活躍して能力を発揮してくれるかというところにかかっていると思いまして、それは私の責任でもある、そういうふうに感じておるところでございます。  そのほかの各省庁の問題につきましては、この行革に沿いまして、大体八省庁ぐらいで内部改革の案もいまつくりつつありまして、そういうチャンスが出てきたら公表する段階にも至るのではないかと思います。これはみんな現在のこの変化しつつある動的な時代に対応し得るように、各省庁の内部改革を自律的に行わんとしておるもので、画期的な内容のものもあると思っております。できるだけそれが早目に実現できるように、今後とも心がけてまいりたいと思っております。
  169. 小西博行

    ○小西博行君 最後にもう一度お願いします。  とにかく私は、行革という非常に大きな問題について国民全体で対応していかなければいけない。政治家はもちろんだと思います。そういう中で、特に私はさっき申し上げましたように、政府そのものの姿勢もそうでありますけれども、やはり内閣の組織といいますか、機能といいますか、こういうものも私は一遍整理してみる必要があるんじゃないか、このように思います。そうしてまたせっかく大臣やっていただく方は、やっぱり最高のベストでひとつ専門家でやっていただきたい。そのことが私はこれから先のいろんな改革に対していい方向に進むのではないかというふうに、まず思います。  したがって、ぜひ総理、その辺のところから十分手をつけていただかないと、末端のいろんな改革をやってもなかなか私は大幅に変わらないし、せっかくやってもすぐもとに返るということになりかねはしないか、そういうことを一般の民間の診断、指導、設計という段階から私感じましたので、特に要望申し上げて、きょうの質問は終わりたいと思います。
  170. 安武洋子

    ○安武洋子君 総理はASEAN歴訪をなさいました際に、シーレーンを設ける場合、この問題について説明をなさっていらっしゃいます。説明をなさいました内容と範囲について、どのようにおっしゃったのかお伺いをいたします。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の防衛の要目を申し上げまして、憲法の範囲内で専守防衛に徹して行う云々というところから、もし侵略があった場合にはシーレーンを設けるということも検討している、これはアメリカとの間で研究することでありますと。もし設けるという場合には小笠原から硫黄島にかけての方向、それから沖縄列島に沿う方向というものが一応想定されるが、いずれもASEANには届かない。大体東京から千海里、大阪から南東、南西に向かって千海里、それぐらいの方向が一応頭にあることで、いずれもASEANには届きませんと、そういうふうに申し上げてまいりました。
  172. 安武洋子

    ○安武洋子君 では確認をいたしますが、シーレーンを設ける場合でございますね、御説明をなさったのは南東の方に向けては東京を起点として一千海里、それから南西の方に向かっては沖縄諸島に沿って一千海里ということで、このASEANには届かないと。こういうふうに、片方の南西でございますね、これは大阪を起点、片方は東京を起点と、こういうことで確認をさせていただいてよろしゅうございますね。
  173. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 結構です。
  174. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、このシーレーンの範囲と申しますのは憲法上の限界だと、こういうことで総理はお考えになっていらっしゃるんでしょうか。それとも、自衛隊の能力いかんによる当面のものとお考えになっていらっしゃるんでしょうか。将来、自衛隊の能力の向上に伴いまして範囲が広がると、こういうことはないのでしょうか、お伺いをいたします。
  175. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) まず、私から事務的な考え方を申し述べさしていただきたいと思います。  まず、わが国の自衛力の及ぼし得る範囲といたしましては、これも従来から再三御答弁申し上げておりますが、わが国の領土、領海にとどまらず、公海、公空にも及ぶ、しかしその範囲が具体的にどこまでかということは、そのときにおける侵略の態様なり作戦の態様によって、必ずしも数字を限定するわけにはまいらない、こういうことを従来から御答弁申し上げているわけでございます。  一方、現在、防衛庁が海上防衛力の整備を考える前提といたしまして、ただいま御答弁がありました周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイル程度をめどとして防衛力の整備を進めている、こういうことでございまして、そういうふうな両方の点から申し上げて、現在考えております防衛範囲というものを大幅に広げるということは不可能でもございますし、また憲法上も能力的に限界があろうかというふうに考えております。
  176. 安武洋子

    ○安武洋子君 総理にもう一度いまの防衛局長の御答弁を確認させていただきますが、シーレーンの範囲というのは憲法上の限界があるからもうこれ以上は広げないと。ということになりますと、今後も日米のシーレーン研究などでいまの範囲を超えて作戦研究を行うことはあり得ないと、こういうふうに確認してよろしゅうございましょうか、総理の御答弁をいただきます。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 夏目君の御答弁申し上げたとおりでございます。
  178. 安武洋子

    ○安武洋子君 私、局長の御答弁を私流に解釈させていただいて、そういう解釈で間違いないかということで総理に御確認をお願いいたしておりますので、総理の御答弁をお願いいたします。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 夏目君が御答弁申し上げたのは専門家の御答弁で、これを確認いたす次第でございます。
  180. 安武洋子

    ○安武洋子君 では夏目局長、私のいまの解釈で間違いございませんか。
  181. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 答弁を再三申し上げますが、繰り返して申し上げますが、憲法の認められたところの自衛権の行使の範囲というのは、数字的に明快に申し上げるわけにはいかないというのが第一点。  第二点は、防衛力整備として考えているのは、先ほど来申し上げている周辺数百マイルあるいは一千マイルと、こういうことでございまして、現在それ以上のことは考えておりません。  また、自衛権の範囲が千マイルを超えるかどうかについては現在考えておりませんし、また憲法の性格から言ってそれを大幅に伸ばすことは不可能であるというふうに申し上げた次第であります。
  182. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、時間がありませんので後藤田発言についてお伺いをいたします。  ロッキード裁判に対します後藤田発言について、これは先ほど総理は、官房長官は裁判に介入する意思はない、自分の裁判の証言に関して発言などをしたというふうなことをおっしゃいましたけれども、これは明らかに検察攻撃であり、そして田中弁護団の言っているのを代弁しているというふうに裁判に対する重大な介入であって、そして挑戦であると思います。総理がこれを政府の公式な態度ではなくて、官房長官の個人の見解と言うのであれば、ただ遺憾であるというので済ますのではなくて、大変重大な発言でございますから、官房長官に責任をとらせると、こういうのが私は当然ではなかろうかというふうに思いますが、いかがでございますか。
  183. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、発言の真意は官房長官がまず裁判に介 入する意思はないということを明言した上で、自分が証人として出たそのことの説明及び田中弁護団がこういう弁護をしているという弁護団の話の中身の紹介と申しますか、そういうことでありますので、裁判に干渉するというような意思はないということは明瞭でございます。  ただしかし、そういうような誤解を起こしたという点は遺憾でございますから遺憾であると私は申し上げた次第で、それ以上の措置をとる考えはございません。
  184. 安武洋子

    ○安武洋子君 今回の官房長官の発言問題というのは、これは偶然に起こったものでも、少し言い過ぎた、言い足りない、そういうもので誤解が生じたというふうな問題ではなく、起こるべくして起こったものであるというふうに私は思います。中曽根内閣の発足当時から、後藤田氏の官房長官起用に際しましては、田中角榮の言いなりの内閣になるのではないかとか、あるいは政府はロッキード裁判で田中擁護をするのではないかとか、これは国民の間から強い疑念が出ておりました。そして国会でも問題になりました。総理はその際、実力を買って起用したと強弁なさいました。今回のこの事件はまさに国民の危惧が的中をしたということだと私は思います。ですから、先ほどから弁護に立っておられますけれども、官房長官の。総理御自身の政治責任もまたこれは免れないと、私はこう思いますが、総理はいかがお考えでございましょうか。
  185. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御意見として拝聴いたしておきます。
  186. 安武洋子

    ○安武洋子君 意見として拝聴というのでなくて、やはりこれは国会でもそれから国民の間でも強い危惧が官房長官登用の際から起きていたわけです。そのことがまさに的中したような問題が、重大問題が起きていると、総理はこの問題の重要性、御認識ではないんでしょうか。総理は後藤田官房長官の弁護に私は終始されているというふうにお見受けをいたします。これでは国民の中に中曽根内閣はどこまでも田中角榮に支配をされると、田中擁護内閣だと、こういう批判が出てまいるのも当然だと思います。こういう批判にはどうお答えになるんでしょうか。
  187. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その批判は当たらないと思います。  中曽根内閣ができましてから別に指揮権発動をしたわけでもなく、また現実の裁判に干渉がましいことは一切しておらぬのでございます。そういう実績を見ていただけばおわかりいただけると思いまして、あなたとは意見を異にしますから、御意見を拝聴いたしておきますと、こう申し上げた次第なのであります。
  188. 安武洋子

    ○安武洋子君 裁判に干渉がましい発言をしていないとおっしゃいましたけれども、現にいま後藤田官房長官が裁判に干渉するというふうな重大発言を行ってなさるからこそ、これは官房長官に責任をとっていただかなければならないし、総理御自身も政治責任を感じていただかなければならない、こういう重大な問題ではございませんか。ただ単に意見が違うというふうなことで済ます問題ではないと。国民のやはり疑惑、批判に答えるべきだと思います。いかがでしょうか。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 重ねて申し上げますが、裁判に干渉がましいことを言ったことは一切私はありませんし、またいわゆる指揮権発動と言われるようなことも一切やっておりません。過去六カ月間の内閣の実績を見ればおわかりいただけるのであります。  ただいまの後藤田君の発言につきましても、ただいま申し上げましたようないきさつのもとの発言であるということを御理解していただけば、裁判に干渉する意思のないことであるということもおわかりいただけると思うのであります。
  190. 安武洋子

    ○安武洋子君 まさに裁判干渉の発言であるのに擁護をなさっていらっしゃるというふうに受けとらせていただいて、次に進みます。  防衛庁は概算要求作業に入っているようでございますけれども、総理は五十九年度予算でもGNP一%、こういう閣議決定の線を変更しないということで編成に当たられるでしょうか。お伺いをしておきます。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は国会で累次申し上げますように、一%の枠を守るべく努力をしてまいるつもりでおります。
  192. 中山千夏

    ○中山千夏君 総理にお伺いいたします。  五月九日、総理はマレーシア・クアラルンプールの昼食会において、対東南アジア政策スピーチを行われたというふうに聞いてます。その中で、防衛政策に関して次のようにおっしゃっているそうです。「わが国は専守防衛を旨とし、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならないと決意しており、」「私も」「この防衛の基本方針を忠実に守っていくべきだと考えている。なぜなら、これは単なるひとつの政策ではなく、過去への厳しい反省に立った日本人の強く変わらぬ国民感情に深く根ざしたものであるからだ。」こんなふうにおっしゃっているわけなんですけれども、この中にあります「過去への厳しい反省」というところですね。これは軍国主義による太平洋戦争で近隣諸国に日本が被害を及ぼしたと、そのことに対する反省なのだというふうに、文脈からは受けとれるんですけれども、そんなふうに理解してよろしいでしょうか。
  193. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう点も十分含まれております。
  194. 中山千夏

    ○中山千夏君 この「過告への厳しい反省に立った日本人の強く変わらぬ国民感情に深く根ざしたもの」というところで、ちょっと気になるところがあるんですけれども、過去への反省というものは人間は昔起こったことは忘れてしまうということがありますし、それから世代がどんどん変わってきますと戦争のことなんか余りよく知らないという人たちもどんどん生まれてくるわけですね。そうすると「過去への厳しい反省」というのは自然とあるんじゃなくて、やっぱり持ち続ける努力というのが日本人にとって必要なんじゃないかと思うんですが、そこはどうお考えになられますか。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民主主義国家におきましては、内閣の政策はその内閣だけが勝手に書いたり、言ったりして決められるものではなくして、国民の世論というものを背景にして行わるべきものであります。特に、過去の戦争に関する反省というようなものにつきましては、日本国民の間に非常に強い反省もございますし、その戦争の結果いかに平和が大事であるか、人権が大事であるか、民主主義が大事であるかという点については、ある意味においてはそういう確信の市民社会の岩盤ができていると私は思っておる。そういうものを背景にしてこの私の演説というものはあるのであって、単に一内閣が言葉だけで言っている問題ではないと、国民的背景のもとにこういうことは言っておるのですと、そういう意味のことをお伝えしたわけであります。
  196. 中山千夏

    ○中山千夏君 たとえば教科書の検定などにつきましては、やはり政府としても過去への厳しい反省をわれわれが持ち続けるかどうかというところに関与してくると思うんです、そういう努力にね。だから、そこのところはやっぱりただ国民の世論ということだけの問題ではないというふうに私は思うわけです。それとあわせまして自衛隊員の教育ということに関しては、ことにこの過去への厳しい反省というものがなければならないと私は思います。ところが、昨年の九月十六日にこの決算委員会で私が取り上げたように、防衛庁は非常に好戦的であって、そしてまた侵略戦争に対する反省が見えない、被害を受けた近隣諸国に対して配慮があるとは思えない「戦史叢書」というものをつくっているんです。しかもその序文には、これを「自衛隊の教育、または研究の資とすることを主目的とし」というふうに書いてありまして、私はその当時にもこれは近隣諸国の人たちが読んだら非常な誤解を受けるんじゃないかと心配をいたしました。先ほどほかの議員の方の御質問に対して、総理は、防衛政策に関しては近隣諸国に対して戦々恐々として誤解を受けぬよう努力しなければならないというふうに非常に賢明な発言 をなすっていました。そういう点から見ましても、それからこの「過去への厳しい反省に立った日本人の強く変わらぬ国民感情に深く根ざした」こういう政策をわれわれは持っているんだということを、この対東南アジア政策スピーチの中で高らかにうたっていらっしゃる、そういう姿勢に対しても、こういう「戦史叢書」というものの存在は反するのじゃないかと私は思うんです。それはどうお考えになられますか。
  197. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御質問の「戦史叢書」と申しますのは、一定の史観に基づきましてある見解を展開するとか、あるいは二次大戦なら二次大戦の評価をしているというものではなくて、当時におきます昭和十二年以来の八年間の戦争、あるいは各地の戦闘等当時におきます日本の状況というものをできるだけ正確に残しておこうというたぐいのものであります。なお、この性格というのは、各種の資料収集、整理をするという、歴史研究で言いますと第一段階の作業といいますか、大変じみな資料の整理という性格のものでございまして、御案内のように特に専門家がやったわけでございませんので、中には不十分な点とか稚拙な面もあろうかと思いますけれども、そういった大変労多くして報われるところ少ないといいますか、そういったじみな作業であるということで、戦後四十年近くたちますけれども、なおかつこれにかわるようなものが出てないということで、いろいろな歴史家がこれを御利用になる、あるいは引用されてその上でさまざまな史観を展開しておられるということでありまして、これ自身が特別の史観を展開しているというものじゃないことを、そういった性格のものであることを十分御理解いただきたいと思います。
  198. 中山千夏

    ○中山千夏君 ちょっと技術的に時間を食うのはいいかげんにしていただきたいと思います。九月の十六日に私が防衛庁の方とお話しさせていただいた点は、きょうはちょっと置いといていただきたいんです、それを踏まえて申し上げているわけですから。総理にその点を、これは防衛庁だけの問題ではなくて、総理が対東南アジアスピーチというものをお出しになって帰ってこられた後ですから、総理にこういう状態をどう思われるかということをお伺いしたいんです。お願いします。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はその「戦史叢書」というものを読んでおりませんので調べてみたいと思いますが、恐らく過去の大戦における個々の戦場、戦闘というものの詳報を集めて一つの集大成したものではないかと、ある特定の史観に基づいてそれを編集したというようなものではないんではないかと思いますが、いま初めてお聞きいたしましたので調べてみたいと思います。
  200. 中山千夏

    ○中山千夏君 九月十六日の私の質疑についてはごらんになっていただけましたでしょうか、会議録を。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 見ておりません。
  202. 中山千夏

    ○中山千夏君 「戦史叢書」自体は大変膨大なもので、お忙しいでしょうから、せめて会議録だけでもちょっと目を通していただいて、これはとても近隣諸国との関係において重大な問題だと思いますし、われわれが過去の戦争をどう反省するか、自衛隊員がどういう考えを持って防衛に当たるかということにも重大な問題だと思いますので、ぜひ御研究いただきたいと思うんです。前に防衛庁長官も、前の防衛庁長官ですが、お読みになってないとおっしゃった。こういうものはやっぱりきちんと皆さんの方でも御勉強をいただきたいと切にお願いしておきます。  それからもう一つ、先ほどほかの議員の方の答弁の中で、ASEAN諸国について過去の開戦において御迷惑をおかけした国々でもあるという表現を総理はなさいました。この御迷惑をおかけした国々という点では、北朝鮮民主主義人民共和国も例外ではないと思うんです。今後、対北朝鮮の外交方針をどんなふうにお考えになるか、ここを少し聞かせていただきたいと思います。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 北朝鮮と韓国との間はいわゆる朝鮮事変という不幸な事件がありまして、われわれの方は北朝鮮を承認もしておらないし、正式の外交関係がないと。しかし最近韓国の全斗煥大統領は北朝鮮に呼びかけをいたしまして、両者の平和会談を要望しておられます。私はこれを歓迎いたすものでございます。やはり半島の問題は第一義的には両当事国が話し合って、そして同じ民族でございますから、民族の問題としてお互いがよく話し合うべき問題であると、周りの国々はそういう平和的再統一ができるような環境を馴致すると、そういう国際的な役目にあるのではないかと、そう考えております。もとよりこの南北がやるということについて、われわれが内政干渉がましいことはできません。両当事者首脳部が独自の判断に基づいて行うことであると、そう考えております。
  204. 中山千夏

    ○中山千夏君 最後の質問ですが、財政の中期試算というのを拝見させていただきますと、どの試算によりましても、六十年前後には財政がパンクするというふうになっています。わずかにこの赤字国債の毎年の発行高を減らしても、残高の方は当分ふえ続けるなんという状態を見て私もびっくりしたんですけれども、そんな中で防衛費はふえる一方であるし、それから年金の破綻という問題もある。大変国民は不安だと思うんですね、みんないろいろ話を聞いてみましても。総理は在任中にこうした財政の基礎を立て直す自信はおありでしょうか。もし、その自信がおありだとしたら保証はどの辺にあるのか、そのお答えをいただいて私の質問を終わります。
  205. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政状況が非常に厳しい状況にあることは御指摘のとおりであります。しかし、その厳しい中にもいろいろ知恵をめぐらして最善を尽くすのが政治家の仕事でございます。臨時行政調査会からも答申をいただいて、それに対処する方針も一部いただいておるわけでございます。そういう意味におきまして、臨調の基本方針というものをわれわれは指針として、懸命なる努力を行ってみたいと考えておるところであります。
  206. 中山千夏

    ○中山千夏君 ありがとうございました。
  207. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もなければ、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認めます。  中曽根総理総理大臣は御退席していただいて結構でございます。     ─────────────
  209. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、黒柳明君、河本嘉久蔵君及び福田宏一君が委員を辞任され、その補欠として三木忠雄君、江島淳君及び伊江朝雄君が選任されました。     ─────────────
  210. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) これより昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して討論に入ります。  昭和五十四年度決算及び昭和五十五年度決算の議決案はお手元に配付のとおりでございます。  なお、議決案については、理事会において協議の結果、議決案は両年度決算を一括して作成することとし、またそのうち内閣に対する警告は、配付の案文どおりとすることに各会派の意見が一致した次第であります。  案文を朗読いたします。     内閣に対し、次のとおり警告する。  (1) 会計検査院の検査機能の充実強化については、これまで本院において数回にわたり決議を行い、その実現方につき政府の努力を要請してきたところである。    政府は、会計検査院の検査機能の充実に関し、当面の実行可能な措置を講じてきたところであるが、同院の検査の重要性にかんがみ、今後とも同院の行う検査の実施にあたつては、その目的が十分達せられるよう所要の 措置を講ずべきである。  (2) 公務員等の地位利用による選挙運動並びに政治的行為については、公職選挙法、あるいは国家公務員法等により、禁止または制限されているところであるが、近時、一部省庁において、これに違反すると疑われる事態が数多く指摘されていることは看過できない。    政府は、公務員等がその行動において、この種の疑惑を受け、ひいては行政そのものに対する国民の不信を招くことのないよう十分注意し、綱紀の厳正な保持に一層努めるべきである。  (3) 近時、福岡刑務所等の行刑施設において、服役中の受刑者が散弾銃を密造し、契約企業の作業指導員を介して外部へ搬出し、これが暴力団抗争に使用された事件、あるいは刑務所職員または作業指導員によるたばこ、甘味品などの不正物品搬入事件が発生したことは、まことに遺憾である。    政府は、行刑施設における規律の維持に努め、いやしくもこの種凶器となりうる製品の密造、不正物品の搬入を未然に防止するとともに、施設職員の職場環境の把握、作業指導員の選定、同施設への出入の際の検査の徹底などを行い、この種事態の根絶に万全を期すべきである。  (4) 公安調査庁の職員が、官名を利用して、開業医の脱税収拾工作及び裏口入学のあつせんをするなどと称して、詐欺行為を行い逮捕、起訴されるという不祥事件が発生し、同庁職員の諸活動に対する国民の不信を招いたことは、極めて遺憾である。    政府は、本事件の発生を深く反省し、同庁職員の採用時の前歴調査及び日常の公私の行動の把握等、管理監督の徹底に努め、この種事態の根絶を期すべきである。  (5) 国立琉球大学において、同大学職員により、大学用地の一部が部外者へ不正に売却され、所有権の移転登記、占有使用がなされていたのに、その事実の一部が判明した後もなお適切な措置をとらず、加えて同職員が無断で長期欠勤していたにもかかわらず、これに対しても適切な措置をとらず、国有財産の管理並びに人事管理に著しく不当な事態が生じたことは、極めて遺憾である。    政府は、当該国有財産保全等の事後処理に万全を期するとともに、このような不祥事態の再発を防止するため、国有財産の厳正な管理並びに適切な人事管理に一層努めるべきである。  (6) 日本私学振興財団が、私立学校振興助成法に基づき、経常費補助金を交付している私立大学等の一部について、毎年のように会計検査院から不当事項の指摘を受けているが、今般、九州産業大学において、事務職員を専任教員と偽つて申請を行うなどして、数年間にわたり、過大な補助金の交付を不正に受けていたことが明らかとなり、補助金の返還を求められるような事態が発生したことは遺憾である。    政府は、このような前例をみない悪質な学校法人及び当該責任者については、強く反省を求めるとともに、この種事態の発生を防止するため、私立学校の自主性を尊重しつつ、有効な方途の確立に努めるべきである。  (7) 厚生省所管の国庫補助事業のうち、地方公共団体が事業主体となって実施している簡易水道施設整備事業等において、入札にあたり、予定価格に対して、著しく高率の最低制限価格を設定したため、より低廉な価格で契約の適正な履行が可能と思われる入札者が失格として排除され、割高な価格で契約が行われた結果、国損を生じた事例があつたことは遺憾である。    政府は、当該補助金の効率的使用の観点から、地方公共団体に対し、最低制限価格制度の趣旨を徹底するとともに、その基準の明確化を図り、同制度を適用するにあたつては、適正な価格設定を行うよう指導すべきである。  (8) 住宅・都市整備公団が、土地の所有権等を有する個人又は法人にかわつて、住宅などを建設し譲渡する民営賃貸用特定分譲住宅制度については、割賦金の償還に関し、事前の審査が必ずしも十分でなかつたこと、滞納発生後の措置が緩慢であつたことなどを原因として、滞納事案が増加し、滞納総額も累増していることは遺憾である。    政府は、同公団が事前の審査を強化し、滞納発生後、迅速・的確に対処するための基準等を整備するとともに、これを厳正に励行するよう指導監督に努めるべきである。  以上であります。  それでは、御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  211. 和田静夫

    ○和田静夫君 私は、日本社会党を代表して、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件に対しまして、いずれも是認しないとともに、委員長提案の警告案に対しましては賛成の意を表するものであります。  昭和五十四年度、同五十五年度の政府の財政運営を見まして、五十四年度は、五十三年度に引き続き、公共事業を中心とした防衛力増強型の予算執行がなされてきましたが、第二次石油ショックの影響もあって卸売物価が上昇を見せ始めるや、今度は一転して抑制型に転じ、五十五年度では物価安定が第一と称して、社会保障費、教育費を抑え込んだ財政運営を行うなど、猫の目のように変わるその場しのぎの経済政策の中にあって、教育、福祉が犠牲にされてきたのでありまして、こうした財政運営は容認できません。  次に、相も変わらぬ公債依存の赤字財政体質についてであります。  五十四年度の国債依存率は、決算ベースで三四・七%と戦後最高を記録、さらに五十五年度も三二・六%という高率の国債を発行、先の見込みのないまま続けている国債依存体質が一向に改まっておりません。その結果として、国債残高は増加の一途をたどり、国債残高も五十四年度で五十七兆円、五十五年度で七十二兆円、本年度末には百十一兆円と見込まれておりますが、このような放漫な財政運営が今日の財政危機の最大の原因であります。  政府の考えている財政再建は、五十四年度、五十五年度を通してみましても、福祉・教育費の縮減を図ることであり、一方、不公平税制の是正には手をつけず、また軍備費の拡大は進めるといった国民無視の軍拡路線型の財政再建策であります。  軍事費の削減による財政赤字の縮小、消費不況打開のため大型の所得税減税を実施する一方、福祉関係費の充実を図り、福祉型成長と財政改革を両立させる財政運営こそが国民の切望しているところであり、これに逆行する財政運営に強く反対するものであります。  次に、昭和五十三年末に発生した第二次石油危機は、第一次のような狂乱物価は起きなかったものの、反面、国民大衆の犠牲によって物価安定策は進められたのであります。  すなわち、勤労者の可処分所得は、五十五年度では実質減少しており、今日まで八年間にわたって所得税減税が実施されないこともあって可処分所得は一向にふえず、これが消費行動に反映し、特に外需に支えられた大企業と異なり、中小企業は不振に陥り、その倒産は引き続き高水準にあり、看過できません。  次は高級公務員の綱紀粛正についてであります。  高級公務員の綱紀粛正については、政府に厳しく指導するよう要請してまいりましたが、最近に至り多くの問題が指摘されており、見過ごすことができません。特に行政に対する国民の期待にこたえるため、一層の反省が必要であります。  最後に、不正・不当な国費の使用について申し上げます。  毎年度会計検査院決算検査報告で指摘され た国費の不正・不当な使用が一向に後を絶たないばかりか、むしろ悪質化の傾向にあります。  ちなみに五十五年度の不当不正経理は五千百三億円、その他事業の効果が上がっていないと指摘された金額は一兆八千億円に上っています。この実施検査率は八%でありますから、この金額は氷山の一角と言わなければなりません。  わが党は、国費の厳正・効率的な使用が行われていない政府の財政執行をとうてい認めることはできません。  以上、反対の理由を申し上げました。  政府は本委員会の論議を十分尊重し、予算執行、行政運営に万全を期するよう要求して私の反対討論を終わります。
  212. 降矢敬雄

    ○降矢敬雄君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件に対しまして、それぞれ是認するとともに、委員長提案の警告案に対しましても、賛成の意を表明するものであります。  まず、昭和五十四年度決算外二件について申し上げます。  昭和五十四年度のわが国の経済は、第二次石油危機の進行する中で、景気が順調に回復する一方で、物価情勢が悪化するという状況にありました。こうした環境下において政府の行った財政運営は、従来の公共事業中心の積極的な財政運営から、物価安定を中心とした総需要抑制政策に転換し、国民生活の安定に万全を期したのであります。  こうしたいち早い政策の転換がみごとに効を奏し、物価が安定する状況の中で、しかも五十四年度の経済成長率は実質六・一%を達成したほか、税収は二兆二千三百六十二億円もの年度内自然増収に恵まれたばかりか、多額の自然増収を予想して組み直した補正予算額をさらに三千二百七十二億円も上回るに至ったのであります。  この結果政府は、補正予算において、国債の発行額を一兆七千九百八十億円も減額するなど、財政赤字の拡大を防止する努力を行ったことは、時宜に応じたものであり、適切な措置を講じた政府の施策を高く評価するものであります。  次に、昭和五十五年度決算外二件について申し上げます。  昭和五十五年度のわが国経済は、五十四年度に続き、第二次石油危機がもたらしたインフレ圧力とデフレ圧力により、物価が上昇する反面、景気にかげりが生じ、内需は思いどおりには拡大しないという状況にありましたが、これに対し政府は、機動的な経済運営により、第二次石油危機の影響を最小限度にとどめたのであります。こうした政府の手腕は、わが国と同様に第二次石油危機に見舞われた諸外国のよき手本となったことは言うまでもありません。  加えて、こうした経済環境下での財政運営の最大目標に公債依存体質からの脱却を掲げた政府は、当初予算で一兆円の国債発行減額を行ったばかりか、一般会計歳出から国債費、地方交付税を除いたいわゆる一般歳出は、従来二けた台の伸びであったのに比べ、五・一%と一けたに厳しく抑制し、小さなしかも効率のある政府機構の目標に一歩近づけたものと言えましょう。ただ、こうした中で、税収が二千八百十七億円余の減収になったことはまことに残念でありますが、その主たる要因がだれもが予想だにしなかった第二次石油危機という外的要因であったことを考えると、いたしかたなかったと言わざるを得ません。  しかし政府は、当五十五年度剰余金全額を、五十六年度に行った特別減税の財源として使用するという、国民生活安定のためあらん限りの力を注いだ努力は、国民から高い評価を受けたのであります。  以上述べましたとおり、昭和五十四年度及び昭和五十五年度における財政経済運営は、政府の懸命の努力によってまことに時宜にかなったものになったと言えるのであります。  なお、財政執行上個々の細かい事項について見ますと、本委員会の審査の過程で明らかになった事項、あるいは会計検査院から指摘された事項のように、留意すべき点があります。  政府は、この際、警告の趣旨を体して、今後一層財政運営の効率化と行政の適正化に努め、国民の信託にこたえられるよう要望いたしまして、賛成討論を終わります。
  213. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、公明党・国民会議を代表して、昭和五十四年度決算外二件、及び昭和五十五年度決算外二件に対し、それぞれこれを是認できないことを表明し、内閣に対する警告に対しては賛成の意を表するものであります。  以下、反対の主な理由について申し上げます。  まず、財政経済運営の失敗についてであります。  昭和五十四年度の財政経済運営は、物価の安定を図り、財政の健全化を期することでありましたが、折から第二次石油危機による石油価格の高騰で、卸売物価が急上昇し、それが消費者物価にも影響するようになり、これに対する政府の財政再建、景気維持の両にらみ予算は、結局中途半端な結果となりました。  次に、昭和五十五年度は、財政再建の名のもとに社会保障費、教育費を抑え込み、福祉後退、国民生活へのしわ寄せを行おうとしたのであります。しかも五十三年度以降課税最低限が据え置かれ、実質増税となった上、五十四、五十五年度には、政府は特別減税さえ行わず、その上五十五年度には公共料金の引き上げが失継ぎ早に行われ、国民は二重、三重に苦しい生活を強いられ、さらに五十五年は消費者物価の高騰で実質賃金は対前年比マイナス一・六%と、昭和二十七年に統計発足以来初めてマイナスとなり、勤労者の生活は一層厳しいものでありました。このため個人消費は伸びず、しかも社会的に弱い立場の世帯ほど打撃を受けたのであります。  長期にわたる景気停滞は、その後の税収に大きく影響を及ぼし、すでに五十五年度において二千八百十七億円の税収不足を生じ、五十六年度には何と二兆七千六百九十四億円という前代未聞の税収不足を生じて、決算調整資金、国債整理基金からの繰り入れで急場をしのいだものの、財政はまさに危機的状態に陥ったのであります。さらに明確な財政計画もないまま、五十四年度には十三兆四千七百二十億円、五十五年度には十四兆一千七百二億円という大量の国債を発行したため、五十五年度末の国債残高は約七十二兆円となり、今日の財政再建の大きな足かせとなっております。国債の利子支払いは年々増大し、五十八年度では公共事業費を上回り、財政の破綻を招いていることは周知の事実であります。これらは五十四年度、五十五年度の財政運営の失敗によるものと断ぜざるを得ません。  次に、財政資金が効率的に使用されていない点であります。住宅・都市整備公団ではたびたびの指摘にもかかわらず、六千戸を超える新築空き家があり、そのうちでも質のいい住宅を提供しているはずの分譲住宅で空き家が累増しているのは、投下した事業費が投資効果を上げぬばかりでなく、ちなみに五十五年度末の住宅建設に係る金利だけでも百九十九億円にも及んでおり、財政資金の非効率この上ない事態と言わざるを得ません。十分反省されることを求めます。  最後に、会計検査院から不当と指摘されるものの中には毎年同じような指摘が繰り返され、恒常化しているものが数多く見られることは遺憾であります。強く反省を求めるものであります。  以上、反対の理由を申し述べました。  委員長提案の警告に対しては、政府は十分に反省し、改善を急ぎ、速やかに警告の趣旨の実現を図ることを要望して、反対討論を終わります。
  214. 森田重郎

    森田重郎君 私は、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件に対して、これを是認する旨の意思表示を行うとともに、委員長提案の警告案につきましても賛成をするものであります。  まず、昭和五十四年度決算外二件について申し上げます。  私は、かねがね厳しい財政事情にかんがみ、こ れまでの古いしきたりにこだわらず、思い切った財政構造の改善を行うため、まず予算編成方針に関し従来の増分査定主義を改め、ゼロシーリングから予算の総洗いかえを行うことを提案してまいりました。しかし、五十四年度予算は当初ベースで三九・六%、史上空前の国債依存体質を露呈させたのであります。こうした安易な国債依存体質は必ずや将来増税要因を強め、国民生活を圧迫するものとして、私は五十四年度予算案に対して反対をいたしたのであります。しかし、その後の政府の財政経済運営を見てまいりますと、第二次石油危機の中で、財政・金融両面からの政策は一応効果を上げ、四十八年度に次ぐ史上第二位の二兆二千八百六十九億円の自然増収の発生、さらには一兆七千九百八十億円の国債減額を行い、財政収支バランスを多少なりとも改善させたことは、五十五年度以降財政再建の具体的実行に若干なりともその光明を見出す一つの材料と言えるものと思量いたします。それらの事実を勘案いたしまして、私はこの際昭和五十四年度決算外二件について賛成の意を表するものであります。  次に、昭和五十五年度決算外二件について申し上げます。  昭和五十五年度は、財政本来の機能を取り戻すため、財政再建元年の第一歩を印した年でありました。そのため政府は、当初予算において国債依存度を三三・五%と五十四年度に比べ六・一ポイント引き下げ、財政投融資においても八・〇%の伸びにとどめ、一般会計、財投を通じ緊縮財政を貫いたのは事実と思量をいたします。これを決算面から検討いたしますと、景気の停滞から税収が当初見込み額よりも二千八百十七億円の減少ともなりました。財政再建元年の第一歩と銘打った五十五年度予算に対しここにもろ手を挙げて賛意を表するにはいささかちゅうちょするものでありますが、しかしこうした財政状況下にあっても、当五十五年度に発生した余剰金全額を支出して翌五十六年度に特別減税を行ったその辺の努力は、何よりも国民生活の安定を第一義に考えたものとして一応評価するものでございます。したがって私は、昭和五十五年度決算外二件に対してもここに賛成の意を表するものであります。  最後に、政府は、本委員会における警告の趣旨を体して、今後一層財政運営の効率化と行政執行の適正化に万全を期するよう要望して、私の討論を終わります。
  215. 小西博行

    ○小西博行君 私は、民社党・国民連合を代表して、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件に対し反対を表明し、委員長提案の警告決議案に対し賛成の討論を行います。  以下、その理由について申し上げます。  そもそも、昭和五十四、五十五両年度会計に対しては、その予算審議の過程において、わが党は、幾つかの問題点について厳しく追及し、批判を行ってきたところであります。  その主な問題点は、五十四年度予算については、第一に、景気回復の面からも物価抑制の見地からもきわめて中途半端な性格を持っていたこと、第二に、政府が財政再建の大前提とも言うべき行財政改革の断行並びに不公正税制の是正を十分行わないままに一般消費税の導入を図ろうとしていたこと、第三に、雇用、年金、住宅対策などについて政府が抜本的な改善を図る積極的な姿勢を欠いていたことなどであります。  また、五十五年度予算については、第一に、政府・与党が野党の修正要求を受け入れたにもかかわらず、政府がメンツにこだわって予算書の書きかえを行わなかったこと、第二に、電気料金値上げにつながる電源開発促進税の増税等を行うことによって国民の負担を増大させたこと、第三に、国民的課題である行財政改革がきわめて不徹底であったこと、第四に、福祉予算等の充実、雇用対策の強化などが不十分であったことなどであります。  これらの指摘は、今日のわが国経済と国民生活の実態、財政の現状等から見ても非常に正鵠を射るものであったと考えるものでございますし、政府の現在の姿勢に対しましても同様な指摘を申し上げないわけにはまいりません。かくのごとく、五十四、五十五両年度の会計は、その当初予算自体が誤れるものであったのであり、予算執行の結果である五十四、五十五両年度決算に対し、わが党はとうてい賛成できるものではありません。  また、わが党が五十四、五十五両年度予算執行に対して格別の関心を払い、予算の効率的使用、公正な執行に注意を喚起してきたにもかかわらず、ただいま委員長御提案の決議案に示されたごとく、予算の効率的使用等、所期の成果が十分に達成されていないと思われる事項が見受けられたことはきわめて遺憾であります。これらの指摘事項につきまして今後政府が早急に改善を図る努力を行うよう強く求めるものであります。  なお、わが党は、今後の予算編成及び執行が効率的かつ合理的に行い得るよう会計検査院の権限を強化すべく会計検査院の検査対象範囲の拡大、チェック機能の充実等を図るとともに、会計検査院予算編成時に大蔵省に意見を具申することができ、予算が効率的に執行されていないときは、年度途中においても執行停止、変更の勧告ができるように制度を改善することを提案するものであります。  最後に、今後とも政府が本来の行政改革である国鉄など特殊法人の改革、公務員定数の実員大幅削減による総人件費の抑制、むだな経費の削減、行政経費の節約、補助金制度の改革等に全力を傾注するよう強く求め、五十四、五十五両年度決算についてはとうてい容認できるものではありません。  最後に、委員長御提案の警告決議案につきましては賛成の意を表しまして、私の討論を終わります。
  216. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十四、五十五両年度決算について、これを是認できないとする反対討論を行います。  昭和五十四、五十五両年度予算は、長期のスタグフレーション、国家財政の破綻、石油危機の新たな進行の中で、中小企業の倒産が増大し、雇用、失業問題が深刻化するなど、日本経済と国民生活の重大な危機のもとで編成されました。  しかし、両年度予算とその執行の結果は、国民生活の擁護と財政、経済の再建という国民的要請にこたえるどころか、大企業優先、軍備拡大によって財政を破局的な危機に陥れ、国民への大幅な負担増で購買力を圧迫し、不況を長引かせるという重大な事態を招くものでありました。  大企業に対しては従来型の景気対策を続け、産業基盤中心の公共事業を拡大し、利益確保のための減量経営を促進させる一方、国民に対しては公共料金の大幅引き上げ、福祉の切り捨て、所得減税見送りによる実質大増税など、重税、高物価、高負担の三重苦が押しつけられました。  軍事面では、防衛費が初めて二兆円を超え、中期業務見積もりによる自衛隊の増強、日米防衛協力指針に基づく日米共同作戦体制の強化を図り、西側同盟国の一員としての役割り分担を担う危険な対米追随外交と軍拡路線が推し進められました。  また、赤字国債の発行が大幅に増額された結果、国債依存度は両年度とも三〇%を大きく超え、五十五年度末発行残高は約七〇兆円にも上っており、今日国民に大負担を押しつけている財政破綻の大きな要因をつくり出しました。  一方、予算執行の上では、KDDなどの不正経理や政官界工作、入札の談合を裏づける発注工事費の積算ミスなど、不正、不当な内容が明るみに出る中で、国民の間に汚職、腐敗を許さない清潔な政治を目指す民主的行政改革を求める声が強まりました。しかし、政府はこの国民の強い願いを逆手にとり、財界による軍拡、大企業優先、国民犠牲の反動的な臨調行革にすりかえて推し進め、今日、国民の強い批判が起こっております。  以上申し上げたとおり、五十四、五十五両年度決算は重大な問題を含んでおり、これを是認することはできません。  国有財産増減及び現在額調書は、以上の両年度予算執行に伴う国有財産増減の集計であり、是認できません。  国有財産無償貸付状況計算書につきましては、無償貸し付けの制度自体の意義は否定するものではありませんが、その管理、運用の実態を示す詳細な資料が提出されていない中で、福岡市に対し無償貸し付けしている国有地内に、侵略戦争を全面的に賛美する憲法秩序と相入れない文章の刻まれた碑が建立され、大蔵省もこれを容認するという管理、運用上に重大な疑義の生じる事態が残されており、本計算書についてはこれを是認することはできません。  最後に、委員長御提案の警告決議案につきましては、賛成を表明いたしまして、私の討論を終わります。
  217. 中山千夏

    ○中山千夏君 私は無党派クラブを代表して、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件の是認に反対し、内閣に対する警告案に賛成する立場から討論をいたします。  警告案にも見るとおり、問題は多々ありますが、私が特に指摘しておきたいのは、多額の広報費と原子力発電や年金、防衛や国鉄再建に関する広報のずさんかつ不適切なありようです。正確な広報は国民の利益だが、不正確なものや政府・自民党の意見広告は血税のむだ遣いだと改めて指摘しておきます。  また、警察、刑務所、公安調査庁などの職員による不祥事が相次いだことは、行政の退廃の象徴として厳しく受けとめなければならないでしょう。  赤字国債はふえ続け、軍備費は突出し、福祉や教育費は切り捨てられ、年金の破綻は目に見えている。そんな異常な国の財政状態の中で、国民は不安を抱え、一向に下がらぬ物価とローンに追われる苦しい経済から税金をしぼり出しているのです。不正に、あるいは不当に国費が使われることは許されません。適正な予算運用を促すためには、会計検査院の機能強化のための法改正がやはり急務だと本年もまた主張しなければならないのは、とても残念です。  以上をもって私の討論を終わります。
  218. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  219. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認めます。     ─────────────
  220. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、藤田進君及び鈴木和美君が委員を辞任され、その補欠として赤桐操君及び対馬孝且君が選任されました。     ─────────────
  221. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは、これより順次採決に入ります。  まず、昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書及び昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五年度政府関係機関決算書の採決を行います。  第一に、昭和五十四年度決算は、これを是認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  222. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 多数と認めます。  第二に、昭和五十五年度決算は、これを是認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  223. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 多数と認めます。  第三に、内閣に対し、先刻朗読のとおり警告することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  224. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 全会一致と認めます。よって、昭和五十四年度決算及び昭和五十五年度決算につきましては、多数をもってこれを是認することとし、内閣に対し、先刻朗読いたしましたとおり警告すべきものと議決いたしました。  次に、昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書の採決を行います。  本件につきましては、異議がないと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  225. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって異議がないと議決いたしました。  次に、昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書の採決を行います。  本件につきまして、異議がないと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  226. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって異議がないと議決いたしました。  次に、昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書の採決を行います。  本件につきまして、異議がないと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  227. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって異議がないと議決いたしました。  次に、昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書の採決を行います。  本件につきまして、異議がないと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  228. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって異議がないと議決いたしました。  なお、これらの案件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、内閣に対する警告について、関係国務大臣から発言を求められておりますので、順次これを許します。後藤田内閣官房長官
  230. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) ただいま御決議のありました会計検査院の検査機能の充実強化につきましては、政府としまして会計検査の実が上がりますように今後とも協力してまいる所存でございます。
  231. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 丹羽総理府総務長官。
  232. 丹羽兵助

    国務大臣(丹羽兵助君) ただいま御決議のありました公務員の地位利用による選挙運動並びに政治的行為に関する問題につきましては、いやしくも国民の疑惑や不信を招くことのないよう、今後ともあらゆる機会をとらえて綱紀の粛正、厳正な保持により一層の努力をいたす所存であります。
  233. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 秦野法務大臣。
  234. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) ただいま御決議のありました行刑施設における物品の不正な製作、搬出入の防止体制の強化等につきましては、御決議の趣旨に沿い十分な指導監督を行ってまいる所存でございます。  また、公安調査庁職員の不祥事件の防止につきましても、職員に対する管理監督の徹底を図り、この種事件の根絶を期する所存であります。
  235. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 瀬戸山文部大臣。
  236. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ただいま御決議のありました琉球大学に係る事項につきましては、御決議の趣旨に沿って今後なお一層厳正な国有財産の管理及び人事管理に努め、遺憾なきを期してまいる所存であります。  また、私立大学等に交付している経常費補助金に係る事項につきましては、御決議の趣旨に沿って今後なお一層学校法人に対する指導監督を徹底するとともに、この補助金の適正な執行に努めてまいる所存であります。
  237. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 林厚生大臣。
  238. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) ただいま御決議のありました厚生省所管の補助事業の実施につきましては、御指摘の点に十分留意して、地方公共団体に対しその適正なる実施について実効ある措置を講 ずるよう指導してまいる所存であります。
  239. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 内海建設大臣。
  240. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) ただいま御決議のありました住宅・都市整備公団の民営賃貸用特定分譲住宅に係る割賦金の滞納に関する問題については、建設省においても事態を重視し、すでに督促の強化等により滞納の早期解消を図るよう公団に指示するとともに、あらかじめ一定の割賦金を前納させるなど滞納の発生を防止するための措置を講ずることといたしております。  今後とも、御趣旨に沿って、本制度の適正な運用を確保するよう十分公団を指導する所存であります。
  241. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後二時十五分散会