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1983-05-09 第98回国会 参議院 決算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月九日(月曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 杉山 令肇君                 降矢 敬雄君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君     委 員                大河原太一郎君                 岡部 三郎君                 竹内  潔君                 塚田十一郎君                 仲川 幸男君                 福田 宏一君                茜ケ久保重光君                 本岡 昭次君                 鶴岡  洋君                 安武 洋子君                 小西 博行君                 中山 千夏君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君         ─────        会計検査院長   鎌田 英夫君         ─────    政府委員        宮内庁次長    山本  悟君        皇室経済主管   勝山  亮君        大蔵大臣官房長  吉野 良彦君        大蔵大臣官房会        計課長      冨金原俊二君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        高倉  建君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局次        長        窪田  弘君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   宍倉 宗夫君        大蔵省関税局長  松尾 直良君        大蔵省証券局長  水野  繁君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        国税庁長官    福田 幸弘君        国税庁次長    酒井 健三君        国税庁税部長  角 晨一郎君        国税庁調査査察        部長       大山 綱明君        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君    事務局側        事 務 総 長  指宿 清秀君        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  西村 健一君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  青山  達君    国立国会図書館側        館     長  荒尾 正浩君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    三上 和幸君        大蔵省銀行局保        険部長      猪瀬 節雄君        通商産業省産業        政策局消費経済        課長       牧野  力君        建設省計画局民        間宅地指導室長  小鷲  茂君        会計検査院事務        総局次長     丹下  巧君        会計検査院事務        総局第一局長   佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第五局長   中村  清君    参考人        日本専売公社総        裁        長岡  實君        国民金融公庫総        裁        田中  敬君        日本開発銀行総        裁        吉瀬 維哉君        日本輸出入銀行        副総裁      藏原 千秋君        税制調査会会長        代理       木下 和夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五年度政府関係機関決算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件の審査のため、本日の委員会参考人として税制調査会会長代理木下和夫君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は、皇室費国会会計検査院大蔵省日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。     ─────────────
  5. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  7. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 和田静夫

    和田静夫君 まず大蔵大臣、増税なき財政再建について今国会予算委員会以来、あるいは本会議などでさまざまな議論を交わさせていただきましたが、五十七年度の税収の見込みでございますけれども、大体どういうような目標をお持ちでしょうか。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十八年の二月分税収につきましては、前年比五・八%で累計で六・〇%の伸びでございます。補正予算からいたしますと五・三%となっております。これの進捗割合は七四・九%、前年同月比七四・四%に対して〇・五ポイント上回りておるわけでございます。五十七年度税収につきましては、所得税確定申告補正予算とほぼ同じ伸びを示しましたのでまずまずの結果となっておりますが、まだ最もウエートの大きい法人税の三月期決算申告が残されておりますことから、確たることを申し上げる段階にはございません。したがって、今後の推移を慎重に見きわめてまいりたいというふうに思っております。  ただ、きょう私もちょっと和田委員の御質問に対してお断りしなきゃならぬと思いましたのは、五十八年の三月分の税収が実はきょう私のところへ午後報告があるようになっておりますので、したがいましてそれについてのお答えが、いまの段階でまだ不確定なものでございますからできないことをお許しいただきたいと思います。
  10. 和田静夫

    和田静夫君 五十八年度の景気見通しですが、底入れして今後上向くだろうというようなことが言われてますが、どうも読んでいると、日銀、大蔵経企それぞれの見通しに若干のニュアンスの違いがあるように思われるんですが、大臣としてはいかがですか。
  11. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まあ言ってみれば、物価が著しく安定をいたしておりますので、内需中心の着実な成長を示しておるということも言えますので、五十七年度の下方修正をいたしました三・一%の成長率は、これはまあ大体確実ではないかというふうに思っております。したがって、五十八年度一応三・四%ということを目標としておるわけでございますが、そういう状態にありますものの、輸出が一部には少しいいかなという点もありますけれども、総体的に見て一進一退ということでございますので、生産、出荷それぞれ伸び悩んでやはり厳しい対応が迫られておる分野もあるではないかと。そういう経済情勢から見ますと、言ってみれば三・四%というものをより確実にしようということで、四月の五日に経済対策閣僚会議を開いて経済対策の決定をしたところでございます。  やはり、物価安定の基調を維持し続けてきて、そして在庫の調整の進展に加えまして、言われるように若干の米国経済景気の底入れでございますとか、あるいは西ドイツも多少そういう傾向が見えるではないかというようなことのほかに、やっぱり原油価格の引き下げ、それと、ここのところ、私がちょうど留守しております間、円安是正傾向というものもかなり続いておりますので、長期的に見れば好影響を与えるものと見込まれます。ただし、いまさればそれが税収の面から見ますとタイムラグがありますし、やはり今日の時点におきましては、この三・四%成長をより確実なものにしていこうということで、息の長い持続的インフレなき成長という方向に定着するような努力を払わなければならないではないかというふうな認識の上に立っておるわけであります。
  12. 和田静夫

    和田静夫君 景気の動向と五十八年度の税収関係ですが、これは年度が始まったばかりでありますからあれですが、全く一般論として大臣としての見通しは何かお持ちですか。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに一般論でございますが、御案内のように、政府経済見通しにおきますところの諸指標や課税実績等基礎として個別税目ごとに見積もって、いわゆる議了いただきました予算歳入の見積もりを行ったものでございますので、いまのところこれが適正なものであるというふうに考えております。ただ一般論として、特に原油価格の下落に伴います、まあ直ちに従価税であります石油税なんかはそれだけ減収になるわけでございますけれども、中長期的に見れば、私は悪い方向にはいかない、ただし、かなりのタイムラグがあるではないかというふうな認識をいたしておるところであります。
  14. 和田静夫

    和田静夫君 主税局、最近のGNPに対する租税弾性値なんですが、特に法人税弾性値、ずっと落ち込んでいるわけですね。これ、どういうふうに認識をしたらいいんですか。私は租税回避活動が強まっているんだというふうに見ているんですが、よろしいですかな。
  15. 水野勝

    政府委員水野勝君) 弾性値の中でも、法人税につきましては、これは最近の経済はこの十年間に二回ほどオイルショックを挟んでおりますので、大変企業収益が乱高下しておりまして、この間におきますところの弾性値というものにつきまして、何らかの傾向的なものを見てとるということはなかなかむずかしいんではないかという気がいたしておるわけでございます。  そういう点はございますが、確かにたとえばこの二十年間をとってみますと、前の十年間に対しましては、最近の十年間というのはやはり低下傾向にあるということは、どうも否定できないようでございます。ただ、その原因としましては、ただいまも申し上げましたように、二回のオイルショックを挟んでおるということ、それをどのように評価するかという点があるわけでございます。  御指摘の、租税回避行為がそれにどのように関係しているかということにつきましては、なかなかむずかしい問題でございますが、たとえば最近におきましては、第一次オイルショック前は大体赤字法人というのは三分の一ぐらいだったのが、現在は半分ぐらいになっておる、そういった点が関係があるのかどうか。それが人件費の支払いの方に回っておって、法人利益としては残っていないというふうなところから、そういった点があらわれているのかどうか。私どももいろいろ勉強中ではございますが、どうもはっきり申し上げられるような点は、なお余りないんでございますので、御了解願いたいと思います。
  16. 和田静夫

    和田静夫君 一つだけですが、景気回復基調にいまあると言われているわけですけれども、いまの弾性値傾向が示していることは、景気が回復しても、かつてのように税収伸びないという現象があらわれている、これはそういうことでしょうね。
  17. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま申し上げましたように、オイルショック前は、大体、法人というのは三分の一ぐらいが赤字で三分の二ぐらいは利益を出しておったわけでございますが、それがどうにかオイルショックを切り抜けました現時点におきましても、大体もう半分は赤字というふうになっておる。そこらもそれに関係があるのかどうか、それは租税回避行為なのか、脱税行為なのか、あるいはいろいろ工夫されてそうなっておるのか、なお私ども勉強中の段階でございます。
  18. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、調べられた後少し教えてください。  五月四日の日経なんですがね、大臣、大変おもしろい記事が出ていまして、試算が出ていまして、粗利益が二千三百万の商店がある。経費を千五百万円とすると所得税は百二十九万円だと。これは年収一千二十五万円のサラリーマンが取られる所得税同額である。次に、粗利益は同じく二千三百万円でも、経費率を高めて、事業主と妻で所得を分散をすると、所得税は八十二万円に落ちる。この税額は年収八百三十五万円のサラリーマン所得税同額である。三番目のケースとして、店を法人化して、事業主所得給与所得とすると、粗利益同額でも支払う所得税は四十八万円となると。同じ利益を上げても、節税をすれば、支払う所得税はこれだけの開きがあるわけですよ。他方、サラリーマンはこういうような節税をやろうにもやれない。ここに税の不公平感が出てくるという根拠があるわけでありますが、こう いう事実について、大臣はどういうふうに御感想をお持ちですか。
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは確かに節税の問題でございますが、わが国税制を見てみますと、やはり、なかんずく自営業者等の税のある意味における公平と、いま一つ近代化ということから法人に移行して、その中で見込めるもろもろの要素に対していろんな研究が行われて、そうしていま御指摘になりました日本経済新聞で連載しておりました問題も確かにそのような観点からとらえることも可能な問題であると思っております。  したがって、私は所得捕捉格差というものがどれだけあるかということに対しては、これは役所の側から申しますならば、いわば所得捕捉格差というものが現実面として大変にあるという感じは持っておりませんが、ただしそういう象徴されるような事実からする不公平感というものは、現実存在しておるものであるというふうに私も認識をいたしております。
  20. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、そういうような節税に対しては何か対策をお考えになるというようなことはありませんか。
  21. 水野勝

    政府委員水野勝君) 一つの点は、節税につきまして、この日本経済新聞にございますように、いろんな事業の形態――極端な場合には個人法人でございますし、個人の場合におきましても、青色申告選択するとかしないとか、青色申告の場合におきましては、それを専従者給与をとるなり、あるいはみなし法人を適用するなり、いろいろそうした選択方法があるわけでございまして、こういった選択方法は、それ自体として税制で認めているところでもございますし、また家族なり本人が適正な労働の対価の報酬として適正なものでございましたら、それは税制上そういったものを経費として認め、あるいは給与所得控除を適用するということは、これは税制上当然のことかと考えるわけでございます。  ただ、こういった制度自体につきましても、こうした記事にもございますように、サラリーマンにとっては何ら選択の余地がないという点からして、制度的にそれが果たして批判に耐え得るものかどうかということにつきましては、私ども常々念頭に置いて勉強はしなければいけないというふうに考えておるわけでございます。  それから、こうした制度的以外の点につきましては、これは執行の問題ではございますけれども執行の前の問題といたしまして、そうしたいろんな不公平感が起こってくるような事態が少しでも解消できるような何か制度的な裏づけができないものかどうか、この点につきましては、現在税制調査会におきましても申告納税制度特別部会を設けまして、制度的な面からそういったものに対して何らか対処する施策があるかないか、どういったものがあるか、そういった点につきまして現在御検討を願っているところでございます。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 参考人、地方にお出かけのところをわざわざ出席していただいて大変恐縮であります。  二、三御質問申し上げたいんですが、まず所得税減税でありますが、所得税減税、まあ緊急の必要事であろうと私は考えますが、参考人としてどのようにお考えでしょう。
  23. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 所得税減税の問題につきましては、御承知のとおり、昨年十二月に答申をいたしました政府税制調査会答申内容におきまして、五十八年度において所得税見直しを行うことは財政状況等から見まして、見合わせざるを得ないという意見が大勢を占めたわけでございますが、しかし昭和五十九年度以降できるだけ早期に、税制全体の見直しを行う中で、所得税及び住民税課税最低限税率構造等につきまして根本的な、抜本的な検討を行う必要があるということを明記いたしております。先般与野党間で財源の確保も含めた減税の実施につきまして合意が行われまして、政府としてもこれを最大限に尊重するという見解が出されましたことも承知いたしておりますが、去る四月二十五日に開催いたしました税制調査会の総会におきましては、所得税住民税について検討するための部会を設けることを決めたわけでございます。このような税制調査会におきます審議も、目下始まったばかりでございまして、また、減税問題について本格的検討に着手できますのは、恐らく、昭和五十八年度の税収の土台となりますところの五十七年度税収というものが確定いたしますのが恐らく七月ごろとなるのではないかと思われます。したがいまして、現段階減税の時期とか、あるいはその財源とか、あるいは減税規模等につきまして、ここで明らかにお示しを申し上げるということはできないわけでございます。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 この所得税減税を行う際に、私はまず、予算委員会などでもずっと主張してきたんですが、課税最低限引き上げから手をつけるべきだと考えていますが、いかがでしょう。
  25. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 先ほども申し上げましたように、昨年の十二月の税調答申におきましては、重ねて申し上げますと、所得税及び住民税課税最低限税率構造等について抜本的な検討を行うということを明記しておりますので、御指摘の問題も当然、中に含まれると考えております。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、その課税最低限ですが、私は常々疑問に思っているのは、課税最低限というのは一体何なんだろうかということでありまして、たとえば基礎控除二十九万円という数字ですが、いかなる根拠に基づくものなのだろうか、この点については税調はどういう見解をお持ちでしょうか。
  27. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 二十九万円という具体的な数字は、従来の沿革上、引き上げてまいりまして、たまたま二十九万円という線に落ちついておりまして、なぜ二十八万円でないのか、あるいはなぜ三十万円でないのかということになりますと、実は従来の引き上げの積み重ねの結果そうなっておるという以外にお答えのしようがないわけでございます。  課税最低限につきましては、どの程度所得以上の、それを超えます人々から所得税負担を初めて求めるかという、いわば限界を定める考え方ではなかろうかと思います。各国の所得税につきましても、そういう制度を設けておるのは、まさにその意味であろうと思います。またそのほかに、課税最低限をどこに定めるかによりまして、たとえば中小の所得階層所得税負担適正化を図ることができる、あるいは納税者家族規模に応じて負担調整することができる等々の配慮が、この制度によって機能させることができますので、その点で、課税最低限という考え方については、私どもは今後とも所得税の中の措置として認めるべきであろうと考えております。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 一つの目安といたしまして、平均国民所得に対する課税最低限割合をとってみたところが、課税最低限が据え置かれた昭和五十三年度以降、当然のことながら低下しているわけです。昭和五十二年度が三七・六、五十三が三四・七、五十五が三〇・四、五十七年度で二六・二。参考人としては大体どの水準が適当とお考えになっているわけですか。
  29. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 課税最低限水準と申しますものは、そのときどきの財政事情あるいは経済事情というものを考慮いたしまして、所得税負担のあり方全体との関連で、いわば相対的に決められるべきものであろうと思います。したがいまして、御指摘のように平均国民所得水準との相関という観点は、必ずしもそれと結びつけて考えるということが妥当であるとも考えられないと私は存じております。したがいまして、課税最低限水準平均国民所得水準との関連で一義的に決めるということは、いろいろな文献を見ましても、適正な水準がどこにあるかということについては発見することができないわけでございます。したがいまして、平均国民所得水準課税最低限との比率、関係ということについて、どの程度が妥当であるかを一般原則論的に申し上げるということは私の能力を超えております。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 国会与野党合意では、景気浮揚に役立つ規模減税規模とされているわけで すが、税制経済政策の一分野として考えられておって、税制機能として成長促進的機能が付与されているというわけですから、やはり私たちとしましても、景気浮揚あるいは個人消費の惹起、そういう観点からも減税問題はとらえねばならない。参考人とされては、どの程度規模先ほど、いま触れられないと言われたのでありますが、一定の景気浮揚として考慮に値する規模というのはどの程度規模というふうにお考えでしょう。
  31. 木下和夫

    参考人木下和夫君) これは、先ほども申し上げましたように、繰り返して申し上げて恐縮でございますが、これからの税制調査会部会審議内容でございますので、私が現在の時点で何らかの意見ないし考え方を申し上げるのはまことに不適切であろうと思います。したがいまして、これから申し上げることは私見ということにさしていただきます。  景気浮揚ということは、所得税でやります場合には、恐らく直接的には個人消費水準引き上げるということではないかと思います。もっと長期で考えますと、個人消費水準が上がれば民間の設備投資がそれに誘発されて起こってくる。非常に順調にいけば、国民所得水準全体がそれにつれて上昇するということをねらう政策でございまして、これは従来、景気調整的な、あるいはケインズ的な財政政策の一環として、かねて主張されてきたところでございます。  ただ、現在のわが国時点におきまして、そのような景気調整が必要であるかどうかについても、ずいぶん税調内にも議論がございました。必要がないとする意見から、非常に必要があるという意見まで、さまざまございました。私は、それほど必要であると思わないグループの一人でございますが、といいますのは、一時的に景気浮揚をするよりも、持続的成長あるいは持続的な好況というものを期待するためには、これは所得税減税をやるということがキーポイントにはならない、政策の最も重要な中心にはならない。財政政策あるいは金融政策全部を絡めて議論をすべき問題ではなかろうか。  また、御指摘がございましたように、規模がどの程度であれば景気浮揚に役立つかということになれば、これは相当大規模減税であれば、ある種の個人消費刺激の動向が強まると私は思います。  御承知のとおり、最近は消費性向が高まりつつあります。減税をいたしておりませんけれども消費性向は次第に高まりつつあります。消費性向は何によって決まるかといいますと、物価水準あるいは可処分所得等々、あるいは将来の所得見通し等々に影響されますので、単に今期の可処分所得引き上げたということによって個人消費が急速に増大するということはなかなか期待できない。それよりも、何よりも物価の安定であり、将来にわが国が順調な安定成長の軌道を進むんだという予感といいますか、そういう国民の印象が私は個人消費を高めるのに一番有効であろうと思います。そのためには、これは申すまでもないことでございますが、財政再建を進めていき、財政の健全化を図ることこそ、やはり間接的に、あるいは長期的に景気浮揚を定着させる一つ方法ではないかという考え方を持っております。このいま申し上げましたのは全くの私見でございますので、税制調査会意見ではございません。
  32. 和田静夫

    和田静夫君 所得税減税の形態の問題ですが、戻し税という一過性的な減税ですね、これは検討の余地はないんだろうと思うんですが、そういう点についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  33. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 従来、戻し税減税の方式をとった経験がございますが、その折に、せっかく期待されました個人消費促進効果はほとんどなかったという実績がございます。私ども昭和五十九年度以降におきまして、昨年の税制調査会答申におきましては、昭和五十九年度以降におきまして所得税の手直しをする、それも基本的な、抜本的な手直しをするという考え方を盛っておりますので、戻し税的な減税というのはできるだけ避けたいというのが一般的な考え方ではなかろうかと思います。  この点につきましても、税制調査会では正面から問題を取り上げて皆さんの御意見を承っておりませんので、ただいまのところは私の私見をもってかわりとさしていただきます。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、ことの点なんですが、二段階減税論があるようなんですよね。一回目戻し税にして、二回目に本格的にと。この辺については大臣としてはどういうふうにお考えになっていますか。
  35. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまさに税制調査会であらゆる予見を持たずして御議論をちょうだいするという立場を持っております限りにおいては、それに対するお答えというものはいまの時点で申し上げる環境にはないというふうに思っております。  いま和田委員おっしゃっておりますのは、多年の経験に基づいてのお話であろうと思うのであります。したがって、一般論として考えれば、たとえば抜本的な御論議をいただいておるわけでございますが、その御論議の過程において、たまたま今度は各党間の申し合わせに基づく国会の方で、言ってみればそれをある意味において二段階にしてやった場合、法律作成の手続からすれば戻し税的にとりあえずはしなけりゃならぬじゃないかとかというような長年の御体験に基づく議論だと思いますが、そういう経過があるとすれば、全くそのことはないであろうといっていまから言うのも非礼に当たるんではないかと、これも私も同じような経験に基づいてのお話でございまして、基本的にはせっかく五十九年度以降とおっしゃっておったものを、各党間の申し合わせ等を十分承知の上で、そして国会の御論議を正確にお伝えした上で、これから税調の方で御議論をいただくわけでございますので、その税調に対していまのようなことを予見しておるというわけではございません。  ただ、お互いの長い体験の中で、いままでもそういうことが一つの手法としてあったことはあるなという感じは私も皆無ではございません。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 参考人所得税減税に関して、最高税率七五%が過酷である。勤労意欲、貯蓄意欲を喪失する超過累進税率を引き下げるべきである、そういう意見があるわけであります。  私は、課税最低限引き上げることによって各税率ブラッケットの適用所得を押し上げればよいと考えているんですが、最高税率は引き下げる必要はないと思うんですね。
  37. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 税率の見直しにつきましては、税制調査会としては現在のところ全く議論をいたしておりません。  それでは余り御返事がそっけないということでございましたら、私の意見を申し上げますと、私は先生と同じような意見でございます。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 最高税率の引き下げ論と同じ視点からブラッケットの緩和、税率の幅、これをいまのような小刻みではなくて緩めようとする、そういう議論も仄聞するんです。この議論というのは、私は所得税をフラットな比例税化の方向へ改革しようという意図、そういうことがあるように思われますが、この辺については参考人にはどういうふうにお考えでしょう。
  39. 木下和夫

    参考人木下和夫君) この問題も、今後税制調査会の特別部会で十分慎重に検討するはずでございます。  ただ、御指摘のそういう意見があると仰せでございますが、まま所得税租税負担感が非常にきついのは、社会の中堅層の、特に給与所得を中心とする社会の中堅層に一番目立つというような印象から、中位の所得層について税率のブラッケットあるいは税率の刻み方を一律にするといるような工夫があってしかるべきではないかという御意見があることも私は聞いております。しかし、税率構造の全体をフラットにするという御意見はまずなかろうと思います。  ある部分につきまして、ある程度のいわば均等 の税率で進んでいく、その上はまた累進率に進むというような形の税制は、現実に西独並びにイギリスでとっておるわけでございますから、私ども審議の過程におきましてそういう国々の税制を参考にして検討したいと思っております。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 減税財源でありますが、この所得税減税と抱き合わせで大型間接税導入というのが推測がなされております。臨調答申は直間比率の是正、こういうこと、それが根拠とされるわけでありますが、参考人としてはこの直間比率是正論については、どういう御見解をお持ちでしょう。
  41. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 御承知のとおり、直間比率をたとえば現在のところ七対三というような比率というものが直接税に余り偏り過ぎているから直せ、たとえば望ましいのは五〇%、五〇%ぐらいだという御意見もまま耳に入ってまいりますが、最初から直間比率というものを五〇%、五〇%にして税制を組めとおっしゃっても、これはできない相談でございまして、経済活動水準所得水準のいかんによりましてそれはおのずから変わってまいりますものでございますから、改めて直間比率を設定してこれに合うような税構造をつくれという御注文が出ましても、私どもはそれに十分こたえるだけの税制を組み上げることはできませんので、事後的に決まってくるものだと思います。  ただ、直間比率を間接税に少し傾けろという御意見は、これはさまざまな形で新聞や雑誌等にあらわれておりますけれども、実は直接税と申しましても所得税法人税及び資産課税であるところの財産税、相続税、贈与税が入っております。間接税の中にはいわゆる消費税に当たるもの、物品税その他から始まりまして、流通税等までも入っておりまして、普通話をいたします場合には直接税、間接税という区分はよくわかるわけでございますが、厳密に検討いたしますと実は直接税、間接税という分け方というのは、必ずしも理論的に正しいとは思わないわけでございます。  転稼の有無によって直接税と間接税を分けるという議論もございますが、最近では法人税所得税も転稼するんだという議論さえあらわれておりますので、転稼の有無で直間を区分するということも非常にむずかしいわけでございますので、私どもは一応のめどといたしまして直接税、間接税の比重というものもどの程度ぐらいが望ましいんではないかという判断を部会ではしなきゃならないと思います。  その折にはやはりわが国の置かれた特殊な租税環境と申しますか、税制をめぐるところの社会環境というふうなものも十分考慮いたしまして、わが国に適当な形のものを一応のめどとして考えるということになろうかと思います。  しかし、御指摘のように大型間接税の導入ということを直ちにそこで持ってくるというような方向議論するんではなくて、もっと広く一般的に税制全体の仕組みの中で考えていこうというのが恐らく部会が発足いたしまして議論の対象になる重大な課題であろうと思っております。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 私は、大型間接税は逆進的であって、所得の再分配機能を弱めるという論議をこの予算委員会でもずいぶん大蔵大臣ともさせていただいたんですが、EC型付加価値税の経験によっても私はそれは実証されていると思いますが、ここのところは。
  43. 木下和夫

    参考人木下和夫君) わが国のいわゆる仮称一般消費税というのを立案いたしましたときに小委員会ができましたが、私は小委員長を務めましたので、私がえこひいきで一般消費税に恋々としておるという御印象をお持ちでございましたら、必ずしもそうではないということをあらかじめ申し上げておきますが、ただ、間接税あるいは消費税と申しましてもいろいろ種類がございまして、EC型の付加価値税について一昨年OECDがその逆進性について研究をしたものが、成果が発表されております。それによりますと、付加価値税ばかりでなく個別消費税も入れまして、OECD加盟の諸国の中で付加価値税を持っておる国、持たない国も全部含めまして検討いたしましたところ、大体負担は比例的でございまして、決して逆進的にはなっていないわけでございます。これはこの資料を別途御参照をいただきたいと思います。また、税の仕組みを考慮することによりまして、少なくとも比例的な税負担にすることは私は不可能ではないと考えております。  そうしますと、問題は公平ということの意味でございますが、いわば高い所得層と低い所得層との間の公平と、それから同じ所得層間の公平と、――先ほど指摘のいわば業種間あるいは所得の種類による不公平というような御指摘がございましたが、その面の二つの公平の意味があると思いますが、私は後者の意味の、水平的という言葉を使わせていただきますれば、その面の公平にはいわゆるヨーロッパ型の付加価値税というのは貢献するという感じを持っております。したがいまして、一概にこれは逆進的だとか、あるいは大衆負担だとかというような議論というものは、まだ十分慎重に検討して、それにならないような税の仕組みを考えることが大事だろうという意味で、一般消費税(仮称)という案をつくったわけでございますけれども、これは御承知のようにお蔵入りをいたしましたので、私どもはそういうことにこだわらずに、今度はもっと広く基本的に直間比率の問題を含めまして議論を進めたいと思います。したがいまして、今日の時点で何らかのはっきりしたことをお答えすることは不可能でございます。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 ここのところだけちょっとはっきりできるのならしていただきたいと思うんですが、減税財源としてはずばりと言って大型間接税をお考えになりますか。
  45. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 減税規模もわかっておりませんし、あるいはどのような形で国会でお決めになりました線に沿うような減税をするかという中身もまだ決まっておりません。したがいまして、ましてやその財源をどこに求めるかも全く白紙でございまして、これから私どもは十分論議を尽くして検討したいと思っております。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 時間があれば、非常におもしろい御意見で少し論議を交わした方がいいんですが、二時間半の予定がここへ来てから二時間になったものですから……。  一つだけ、私はこの臨調の答申が、一方では大型間接税を想定しながら増税をすべきでないと言っている。他方では、所得税法人税等の直税の減税と大型間接税の導入を予定する直間比率の是正論を展開していて、論理的にはどうも明快ではないんですが、臨調の場合。税調としては、いま大体のことはわかりましたが、お考え、これどちらをおとりになるかという質問を私がもしした場合に、どういう答弁になるんでしょうか。
  47. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 非常にお答えはむずかしいんでございますが、お許しいただければ、臨時行政調査会は総理大臣の諮問機関で設けられまして、最終答申がもう完結いたしました。税制調査会も総理大臣の諮問機関で、主として税につきまして集中的に検討いたしております。  私は税制調査会に所属しておりますわけで、臨時行政調査会の答申について批判がましいこと、あるいは税制調査会答申の方が臨時行政調査会の答申より優先するなどというようなことを一切申すことはできません。これは両方とも総理の諮問機関でございますので、それぞれの御意見でまとめられたわけでございますから、この間の関係というものにつきましては私は積極的な御意見を申し上げる資格はございません。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、そうするとここのところ大臣にひとつ答えてもらわなきゃなりませんが、税調議論は、臨調答申をある程度踏まえつつもこの臨調の枠組みを超えた論議の展開はあり得る、そう考えておいていいですか。
  49. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいま基本的には参考人からお答えいただいたとおりであろうと私も思っております。ただ私どもが絶えず――臨調のすでに最終答申をいただいたわけでございますが、その中で税の問題についてお触れになっております。いまの御意見にもありましたように、直 間比率云々というのは、あるいは税体系の見直しというお言葉をお使いいただいた方がよりよかったかなあというような感想が皆無であるというわけではございませんけれども、やはり臨調の持たれる諮問に対する答申というものはこれは厳然として存在をしております。  やはり、いかにして臨時行政調査会はわが国の今後の行政改革の指針、なかんずくこれを行うための大きな役割りを占める財政再建、それに対する手法としてはまずは歳出の削減からやるべきであるという考え方からして、増税なき財政再建という一つの哲理が示されて、そうして個々の問題についてお触れになっておるわけでございますが、それはそれとして最大限尊重すべきものでありますが、税制そのものを一般的に、わが国の国税、地方税のあり方について諮問し、御議論をお願いしておりますのは税制調査会そのものであることには変わりないわけであります。  したがって、税制調査会の先生方に対しましては、たとえばいまのような御議論をもそのまま正確にお伝えすることによって、そういうもろもろの環境というものを理解の中に入れて税制調査会の中で税そのものについては御議論をいただき、御答申なり報告なりがいただけるものではなかろうかと。したがって、ある意味において国会の御議論等が、いわば一つの臨調というものの最終答申、それをこの国会でどういうふうに見ておるかという議論が正確に伝わることによって、税調の先生方もそのことが念頭に置かれて御議論をいただけるものではないか。  したがって、どれが優先、どれが先行というような非常に尺度のきついはかり方のない中でも、私は順当に審議が行われていただけるものであるというふうな期待をしておるというのが現実の私の認識であります。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 これは参考人にあれするよりも、大臣、私は減税財源として不公平税制の是正を正面に据えて議論すべきだと考えているのは年来主張しているとおりでありますが、クロヨンの是正についてたとえば税調に対して強い期待をお持ちになる、あるいは記帳義務、推計課税、そういうものについても何かの期待をお持ちになる、そういうことに大臣はなりますか。
  51. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど政府委員からお答えいたしましたように、税調におかれましても特別部会を設けて検討してやろうというようなことになっておりますので、そういう権威のあるところでこれらの問題が、まあ正確にクロョンとかトーゴーサンピンとかいう言葉の定義は別といたしまして、感覚的に不公平感があるという事実等を踏まえつつ、いわば環境の整備等々、特別部会等で御検討がいただけるであろうということはもとより期待をいたしております。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 赤字法人の課税というのは木下先生の方は何かお考えありますか。
  53. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 赤字法人の課税につきましては、政府税制調査会では全く議論の対象にしたことはございません。しかし、今後税制の抜本的な見直しをする、恐らくそのような非常に大きな作業の中では、多年にわたって赤字を続けておるというような法人につきましては、何らかの税負担を求める方法はないものかというような問題も議論の対象になるかと思っております。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 使途不明金の罰則を強化をすべきであろうと思うんですが、この点はいかがでしょう。
  55. 木下和夫

    参考人木下和夫君) この問題も政府税制調査会では審議の対象になったことはございません。何分これは技術的に非常にむずかしい問題でございまして、御承知のとおり、使途不明金の場合には損金算入を否認されておりますので、いわば法人税の課税対象にはなっておるわけでございます。しかしながら、それがどのような経路をたどってだれに帰着しておるかというような問題についてはさまざまの形があろうかと思います。したがいまして、この問題についても放置しておくわけではございませんので、当然これは検討の課題の中に入るものと考えております。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 マル優の廃止論についてはどうお考えになりますか。
  57. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 少額貯蓄課税制度全般につきましては、これは所得税住民税減税を取り扱います都会のほかに、小委員会を設けて検討することに決まりました。  それで、いつ発足するかはまだ未定でございますけれども、私どもは、御承知のとおり、いわゆるグリーンカード制というものを打ち出したわけでございます。それがまことに残念ながらあのような事態になりましたので、この見直し検討しろということになりましたので、これからこの問題については広く課税の適正を図りますために、あるいは総合課税の趣旨を徹底いたしますためにこの問題については積極的に検討するはずでございます。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 貸し倒れ引当金、退職手当引当金などのこの引当金、準備金、この辺について改善されてきているものももちろんありますが、なお検討の余地があるように思われるわけですが、その点はどうでしょう。
  59. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 御承知のとおり、引当金と申しますのは特定の企業あるいは企業一般あるいは大規模法人を優遇するためにつくった制度ではございませんので、これは企業会計上引き当てを認めておるというだけの問題でございまして、ただ問題はそれが過大であるか、あるいは適正であるかという問題であろうと思います。  それで、貸し倒れ引当金につきましても、退職給与引当金についても、ここ数年前から次第にそれを強化する方向で私ども答申をまとめてまいりました。この方向は変わりありませんので、いわば実態を無視しないように、実態に即してこれに手をつけていくということは今後とも必要であろうと考えております。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 宗教法人への課税は検討されますか。
  61. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 宗教法人のみならず、その他のいわゆる非営利法人の課税につきましても、税制調査会では正面から議論を進めたことはございません。ただ、現在のところは宗教活動あるいは学術あるいはその他公益的あるいは一般の営利事業ではないものについては、御承知のとおりに税制上の特別の措置が講ぜられておりますが、しかし、それらの法人といえども収益事業を営みます場合には、その部分については課税が行われております。このことが適確に執行上行われることを私どもは期待しておるわけでございます。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 いままでの論議でお答え願ったいろいろな諸問題ですが、税調としてはいつごろまでに検討結果をお示しになる予定でしょうか。
  63. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 所得税及び住民税減税につきましては、先ほど申し上げましたように、七月ごろに大体税収見通しというものが決まりましてから、積極的にお答えを出すという手はずにいたしておりますけれども、もう一方の少額貯蓄優遇制度等々に関します小委員会議論というものは、いまのところいつごろにお答えを出すかということは全く決めておりません。  ただ御承知のとおり、この秋には現在の税制調査会の委員のかなりの部分の方の交代がございますので、従来の例でございますと、三年の任期の後、中期答申というものを出すことにいたしております。その中期答申の作業もあわせて進めなければなりませんので、その間の問題は恐らく中期答申の中に織り込まれるという形でございますから、その場合には十月の末あるいは十一月の初めの段階では中期答申が恐らく全面にわたる今後の税制のあり方についての御答申を申し上げるという手はずでございます。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 どうもありがとうございました。
  65. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) どうも参考人ありがとうございました。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 大臣財政再建期間、それから赤字国債の脱却のめど、新経済計画の最終年度とされる昭和六十五年度であるということでしょうか。
  67. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これもいま赤字国債脱却のめどについて決めたわけではございません。従来とも和田委員お答えいたしておりますが、その後やはり若干の環境の変化とでも申しましょうか、そういうことからいたしますと、経済審議会が一応のめどをお決めになったということは、新しい環境の一つの変化であるというふうには理解をいたしておるところであります。可能な限りそれらと整合性を合わせつつも、財政そのものの果たす役割り等について諸般の検討を加えながら決めていくことでありまして、きょう現在、確実にそれに合わしたものを、いわば脱却のめどといたしますというところの結論に到達しておるというわけではございません。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 新たな中期試算をお出しになるわけでしょうけれども、その辺はどうなりますかね。
  69. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに従来とも財政の収支試算、中期展望、それから中期試算、こういうふうに変化をしてきたわけでありますが、この問題につきましては、国会の要請ももとよりございますし、私どももこれから予算編成の手がかりとし、あるいはまた国会で御議論いただきます際には審議の手がかりともしていただく必要があると思いますので、国会の論議等も十分に加えながら、できるだけ要望の線に沿うような、すなわち幾ばくかでも、言ってみれば精度の高いとでも申しましょうか、そういうものをお出しできる方向への努力はなお続けていかなければならない課題であるというふうに理解をいたしております。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 せんだってこの委員会でサラ金問題についてまとまった議論をいたしました。それから、きょうはサラ金規制法成立という事態の推移を踏まえまして、さらには十分にまだ読んでませんけれども、けさの日経によれば、この前の委員会の私の論議を踏まえたことのかなりの部分を取り入れた銀行局長などの通達がもうすでに出たようにも報ぜられていますので、それらを整理する意味も含んで若干の議論をさせていただきます。  金融機関のサラ金融資の問題、大手三社の有価証券報告書の中の担保欄、これはあいまいであるという指摘をこの前いたしました。金融機関がサラ金に対して信用貸しあるいは事実上の信用貸しをしているのではないかという私の疑問も吐露させていただきました。  有価証券報告書中の賦払い貸付金は、小口のローン債権であって、焦げついても回収不能なもの、または担保欄が空欄になっているもの、これはもう無担保の信用貸しではないかという点、これは調査を約束されていたわけでありますが、調査をされましたでしょうか。
  71. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 御指摘のとおり、賦払い貸付金につきましては、貸金業者が顧客に対しまして小口に貸し付けている債権を担保にいたしまして金融機関が融資をいたすわけでございます。したがいまして、小口の債権が滞りますと、その部分は金融機関の貸付金について回収が不能になるということかと思います。ただ、金融機関が貸金業者に貸します場合には、別途銀行保証であるとか、あるいは個人保証等、保証をとるようなことも多々あるようでございまして、全くそれが貸し倒れになってしまうというわけではございません。  それから担保欄が空欄になっておりますのは、御指摘のとおり無担保でございます。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、この賦払い貸付金で貸している金融機関は何行あって、総額幾らであるか。
  73. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 実はその点につきましても調査が私どもまだ不十分でございまして、きょう今日ここでお答えはできないんでございますけれども、最近におきます国会の御審議等を踏まえまして、急遽現在金融機関の貸金業者に対する実態の調査を進めておりますので、その結果が出ましたらお答えさしていただきたいと思います。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 それと、それじゃあわせて無担保の方も何行、総額幾らと、これらの調査も同時に。
  75. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 調査につきましては、貸出金額であるとか、金利であるとか、あるいは担保であるとか、詳しく内容を調査いたしてみたいと思っております。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 調査中であるということになるとあれですが、いわゆる金融機関が貸しているのは大手四社だけでしょうかね。
  77. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) これについても確かな数字はございませんが、大手四社だけかという御質問に対しましては、それ以外もあるのではないかというふうにお答え申し上げた方が正確ではないかと思います。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 せんだっても引用させていただいたんですが、日銀のこの林論文、消費者金融が数年後には飽和点に達するであろうと述べているわけですね。これはすなわち数年後にはサラ金の倒産が始まるであろうということだろうと思うんです。聞くところによると、金融機関の一部はもう三年ぐらい先を見通して引き揚げにかかっているという状態ももうすでに出ているところもあるようでありますが、その際に金融機関の融資は不良債権に転化してしまう、金融機関の経営が圧迫される。そういう事態が少なくとも可能性として私はあるような気がするのであります。ないとは言えないというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。
  79. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 御指摘の御意見よくわかるわけでございますけれども、金融機関側といたしましても貸金業者の融資に当たりましては、十分貸付先の内容等につきまして審査をいたしておるはずでございます。したがいまして、御指摘の点が全く一〇〇%正確であるというふうには受けとれませんけれども、しかしいずれにいたしましても大変担保のとり方も少ない、あるいは小口の債権を担保にしているというようなことでございますから、今後の融資につきましては十分慎重に対応する必要があるのではないかと思います。  ただ、一言申し上げておきたいんでございますが、金融機関の融資につきまして大変危険なのは、大口の融資、これが大変金融機関の経営を揺るがすゆえんになる点が多うございまして、私どもといたしましては、大口融資につきましては、かなり厳しい大口融資規制をいたしておるわけでございますが、小口の融資につきましては、非常に件数が多いものでございますから、大口融資に比べまして仮に若干の貸し倒れが出るにいたしましても、金融機関全体に与える影響は大口融資よりは危険度が少ないのではないかという意見もございます。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 保険会社のサラ金融資、これは先日法制局長官の私に対する答弁は、保険業法施行規則によれば、大蔵大任が認めればサラ金に融資できるが、それ以外はできないという明快な答弁でありました。そうすると、大蔵大臣はサラ金融資をお認めになったんですかね。
  81. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) やや技術的な点でございますので、私から御答弁させていただきますが、保険会社の資産運用につきましては、業法施行規則によりまして、資産の運用対象につきまして基準が設けられておりますこと、これは先生ただいま御指摘のとおりでございまして、その中に第十一号で、その他大蔵大臣が認めるものという項目もあるわけでございます。具体的には、こういった施行規則の規定を踏まえまして各保険会社が財産利用方法書というものを作成いたしまして、その財産利用方法書の中で自分の会社はこういう貸し付けをするんだということをそれぞれ定めて、その中で行っておるわけでございます。財産利用方法書の中におきましては、貸金業に対する貸し付けというような形でのとらえ方はございません。ただ、貸し付けを行います場合に、有価証券を担保とする貸し付けであるとか、不動産を担保とする貸し付け、あるいは銀行保証による貸し付けというようなこういう一般的な規定でございまして、無担保の貸し付けにつきましても、たとえば東京証券取引所の上場審査基準に該当するような会社に対しては無担保の貸し付けを行う、ある いは公募債適格会社に対しましては無担保でも貸し付けを行うというような規定をいたしておるのでございまして、この財産利用方法書はあらかじめ大蔵大臣審査を経て認められておるわけでございますので、この財産利用方法書に記載するような内容に沿って貸し付けを行う限りは、特に業法に違反するということにはならないものと考えておるわけでございます。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 その財産利用方法書のひな形もいただきましたし、さらにこの前の質問を受けて、その後若干もう少し細かく説明もおたくから受けました。それでまた疑問が出てきたからきょう質問しているのでありますが、この財産利用方法書に記載されていない貸し付けを保険会社が行った場合どうなりますか。
  83. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 財産利用方法書に記載してございませんものは、いわゆる包括的な承認を与えられてないわけでございますので、これは個別にその取引の都度大蔵大臣の許可を求めるか、あるいはそれもしないでいたした場合には、これは業法違反になろうかと思っております。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 そこのところがはっきりしてきました。武富士の子会社の東輝リースですね、ほとんど生保が資金を貸し付けていますね。そうすると、この東輝リースへの貸し付けというのは財産利用方法書のどのケースに当てはまりましょうか。
  85. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 東輝リースにつきましては個別案件でもございますし、また各保険会社の融資の具体的な実態については現在先ほど局長が調査中というところで私どももいま調査中でございますので、やや一般的な論として申し上げさしていただきたいのでございますが、いわゆるサラ金の子会社でございます場合にも、有価証券を担保にする貸し付け、あるいは不動産を担保にする貸し付け、さらには銀行保証による貸し付けというものもあるようでございますが、一番多いのは親会社の保証による貸し付けというものでございまして、これは財産利用方法書の中で、先ほど申し上げました東京証券取引所上場審査基準に該当する会社に対する貸し付けまたはこれらの会社が保証して行う貸し付けと、これに該当するものかと考えております。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 そういう答弁になろうと思うんですがね、それしかもう答弁のしようがないと思うんですが、ところで、この東輝リースというのは東京証券取引所上場審査基準に当てはまりますか、これ。
  87. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 東輝リース自体につきまして私何も承知しておりませんので、いまここでお答えいたしかねるんでございますが、仮にこれに該当していないと、これが先ほどの基準に該当いたしておりますれば、直ちに無担保でも貸し付けが可能になるわけでございますが、これに該当いたしてない場合でありましても、親会社でございます武富士がそういった基準に該当いたしましておりますれば、親会社である武富士の保証によって貸し付けるということは、この財産利用方法書の中に記載してございます。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 それはどこに記載してあるんですかな。
  89. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 先生のお手元にございますこちらの差し上げました財産利用方法書の記載でいまごらんいただいているかと思いますが、その中で右側のページの方に、「次に掲げる貸付」というところで、公募債格付基準に該当する会社に対する貸し付け、それから最後の方に、東京証券取引所上場審査基準のうち、こうこう貸し付けというのがございますが、その下に、「上記に掲げる会社の保証する貸付」ということで、親会社がこの基準に該当いたしておりますれば、これが保証いたします貸し付けについては貸し付けが可能でございます。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 ここのところ私、ちょっと疑問ですから、きょうはもう時間がありませんからこれ以上やりませんが、私は保険業法違反であるというふうに見ました。  したがって、私は、その前に保険会社にきちんとした行政指導をすべきだろう、いま再調査をずっと進められるそうでありますから、その調査と同時に、そういう指導は十分に進むんだと思うんですが、そう理解しておいていいんですか。
  91. 猪瀬節雄

    説明員(猪瀬節雄君) 保険会社の貸金業者に対する融資につきましては、ただいま御説明申し上げましたように、財産利用方法として認められている範囲内でこれを行っています限りは、直ちに業法違反だというふうには私ども考えられないのでございますが、ただ業法違反する、しないとはこれまた別の判断といたしまして、サラ金業者に対しまして金融機関の一つである保険会社が融資をするというようなことの是非というものは、また別途検討の必要があろうかと思っております。  この点につきましては、先ほど銀行局長からも御答弁ございましたように、全体の金融機関の取り組みの中で保険会社につきましても適切な指導をしてまいりたい、かように考えております。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 局長、金融機関への行政指導は、通達を出されたか、またこれからも出されるようですが、具体的にどういうような指導となるんでしょう、具体的な方策。
  93. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) サラ金業者への指導につきましては、五十三年に口頭通達によりまして、社会的信頼を損うことがないように、特に金融機関は公共的性格を持っておるんだから十分注意してほしいということを指導いたしておるわけでございますが、最近、資金需給の緩和というようなものが基本的には私は背景にあると思うんでございますけれども、資金の運用難という点を背景にいたしまして、またぞろサラ金業者への融資がルーズになっているのではないか、特に国会等の御審議を通じまして私ども十分自覚いたしたところでございます。  したがいまして、この口頭指導によります通達をこの際文書による通達に改めてみたらどうだろうかということで、いま考慮中でございます。  サラ金業法が成立いたしましたので、それに伴う通達の一環としてお出ししてもいいのかなということを最初は考えておったのでございますが、いろいろ国会等の御審議を通じまして、やはりそういうことであっては時期おくれになるんじゃないか、やはりこれはサラ金行政といいますよりは、まさに従来の銀行行政の一環の中で取り上げられるべき筋のものであるんじゃないかということを認識いたしました上で、新しく文書通達、実態調査を踏まえた上で文書による通達を出したい、こう思っております。  その内容につきましては、基本的には五十三年の口頭指導による考え方、総論的にはあの考え方でいいと思っておりますが、もう少し御審議の過程におきますいろんな御意見もちょうだいいたしておりますので、具体的な内容にしてみたらどうかということで、これは実態調査の結果も踏まえました上で具体的に考えてみたい、こう思っております。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 銀行局長、それは時期的にはいつごろになりますか。
  95. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 実態調査の結果がいつまとまりますかいかんでございますけれども、できるだけ早く、できれば今月中にとも思っております。遅くとも来月中には出せるように準備いたしたいと思います。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 サラ金の過剰融資規制それから店舗競争規制などについて、これも具体的方策を伺っておきたいんですが。
  97. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) この点につきましては、サラ金行政の中に入ってくるわけでございます。  したがいまして、法律が成立いたしまして、これから政省令、通達を出すべく準備をいたすわけでございますが、これ、少なくとも私どもといたしましても初めての経験でございまして、政省令、通達までになりますと、約半年近くはなろうかと思いますが、しかしできるだけ実施時期を早くいたすべく、いま申し上げましたような一連のものを早く準備いたしたいと思っております。その過程で、いろいろ御指摘いただきましたような 御意見ども盛り込みまして、通達なり何なりを準備いたしたい、こう思っております。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 先だってこの委員会で、東都信用組合がローンズ・テルミーというサラ金を実質的に経営している事実を私は指摘をいたしましたが、もう一つ、無申請のサラ金、ローンズ・ユーという会社があるんですが、これも東都信用の役員が経営をしている。  銀行局、この信用組合がサラ金を経営するということをどういうように評価されますか。
  99. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 信用組合につきましては、信用組合としての役割りというものが法律に規定されておるわけでございまして、信用組合自体がサラ金を経営することについてどうかという御質問でございますが、ただ一般的に、いわゆる金融機関が関係会社をつくりまして、いわゆる金融のノーハウの範囲内にある業務をやることについて否定されているわけではございません。  ただ、信用組合の役員なら役員がサラ金業を営むということについては、その個々のケースに応じて判断すべきかと思われるわけでございますが、そのサラ金会社が適正な業務運営を行っている限りにおきましては、全くまずい、だめというふうなことではないのではないかと思っておりますが、いまあるようなサラ金の実態から言いますと、公共的性格を持った信用組合がサラ金業を経営するということについては、問題があるのではないかという気がいたします。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 茨城県稲敷郡江戸崎町大字沼田字立通し二千六百五十から五十一番の土地三万二千五百十六・八九平方メートル、これを東京都中野区新井四丁目四番四号の桂建設株式会社が宅地分譲の目的で昭和五十年十一月十日に開発許可を受けて百二区画を開発した。そして五十二年四月二十五日に検査済みを受けて一般に販売をした。この販売に当たって、日本信販株式会社が住宅ローン融資を引き受け、六十六件の抵当権を設定しています、ここに謄本がありますが。ところが、その後そのほぼすべての融資について返済が滞った。実に五十件が競売の手続に入るに至っております。  もちろん販売した桂建設という会社が住宅ローン詐欺を働いたものと推察できるわけでありますが、本日はその観点よりも――この住宅ローン詐欺の観点というのは地方行政委員会か、その他警察関係のところでもう少し突っ込んでやりたいと思っていますが、きょうのところは大蔵省、通産省、どちらも所管になると思うんですが、大蔵所轄事項を審査する委員会がここの決算委員会でありますから、なぜこういう事態が生じたか、金融機関側に問題がなかったかという観点から若干の論議をしておきたいのであります。  まず、大蔵省に伺いますが、この区画数と融資件数と一致しているかどうか。ここのところは手元の資料でも明確ではありませんが、調査を願ってあるわけでありますからお答えを願いたい。  ともかくこの土地分譲販売について日本信販が全面的に住宅ローンを設定したわけです。これは桂建設と日本信販とのいわゆる提携ローン契約に基づくものと考えていいんですかね、これ。
  101. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 信販会社につきましては、現在のところ直接私どもの所管にはなっておりません。したがいまして、この状況につきまして私どもとしては、今日時点におきましてはちょっと実は詳しく実態把握しておりませんので、まことに申しわけありませんがよろしくお願い申し上げます。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 ここのところはちょっと調査していただきたいと思うんですが、よろしいですか。
  103. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 実は、先ほど申し上げましたように、信販会社につきましては、その出資法上の届け出、事後届け出を受けることしか現在のところございませんで、サラ金法成立後におきましてはかなりの権限がございますけれども、現在のところ詳しい調査ができるかどうか、なかなかむずかしい問題ではなかろうかと、こう思います。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 建設省に尋ねますが、桂建設の概要を説明できますか。
  105. 小鷲茂

    説明員(小鷲茂君) お答え申し上げます。  都市計画区域という区域の設定がございますが、この都市計画区域の中で一定の面積以上の宅地開発をいたします場合には、原則として知事の許可が必要ということになっております。したがいまして、県段階におきましてはしさいについて掌握をしているはずでございますが、残念ながら中央の私ども段階では一つ一つの個々の開発の内容あるいは会社の対応の仕方等については掌握を現在のところいたしておりませんので、お尋ねもございますので、県を通じまして事実につきまして調べてみたいと思っております。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 私はかなり調査したんですが、どうも擬装か何か知らぬけれども行方不明みたいな状態でありますから、ぜひ調査をして結果を教えていただきたいと思います。いずれにしましても日本信販がなぜほぼ全面的に住宅ローンを設定をしたのか、これは桂建設との関係はどうだったのかというのは、これは大蔵省、調査結果は出てませんか。後で届け出るにしたって何にしたって、調べられるんじゃないですかね。
  107. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 東京都を通じまして調査をいたしてみたいと思います。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 強制のいわゆる競売にかけるというのはよくよくの場合だろうと私は思うんです。しかも一般消費者対象の住宅ローンですから、私はあってはならないことだろうと思うんですが、そういう点は原則的にはどういうふうにお考えでしょうか。
  109. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 一般的に信販会社がいわゆる貸金業を営むことについては、業務としては禁止されているわけではございませんので、事実キャッシングサービスであるとか、あるいはこういう融資もいたしておるわけでございますが、御指摘のようないろいろな過剰貸し付けの話であるとか行き過ぎになるような点につきましては、今後私ども貸金業法に基づく指導というものができるのではないかというふうに思っております。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 住宅ローン、競売にかけられる割合はどれぐらいですか。いま、きょう取り上げている問題を除くにしても、いま問題にしているような大規模で全面的なケースというのはどれぐらいいままで生じているんですか。
  111. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 住宅ローンについての割合はちょっと把握しておりませんが、信販会社におきますいわゆる貸金業務の割合は一〇%ないし二〇%ぐらいになっているかと思います。
  112. 和田静夫

    和田静夫君 住宅ローンの場合、金融機関は当の購入物件に抵当権を設定するわけでしょう。これは言うまでもなく融資の債権を担保するためですね。言いかえれば事故が生じたとき、つまり返済がなされない場合などには、当の物件でもって貸付金を回収しようとするわけですね。そしてそのために金融機関は通常物件価格の七割以下程度しか融資しないという態度をとっているわけでしょう。そう理解しておいていいですか、これ。
  113. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 一般的には不動産融資につきましては、不動産担保を取りまして、御指摘のようにそれは金融機関によってかなり違う面もございます、あるいはまた人的な保証がある場合であるとか、あるいは相手先の先行きの見通しであるとかいろいろ違いますけれども、大体掛け目といたしまして七割程度の掛け目で融資をするのではないかというふうに思っています。
  114. 和田静夫

    和田静夫君 この江戸崎町の宅地分譲で、軒並み強制競売がかかって、実際に実行されたケースが多いわけです。落札価格というのは融資額の約三分の一程度で、残りは自宅にも強制競売をかけて、そして一部実行しておるという状態になっているようです。つまり当の物件では処理できていない。実際この土地は販売されたことになっていることはなっているんですね、調べてみると。ところが利用はされていないんですよ。売るに売れないし、融資額の価値がない。桂建設は五十年当時で三・三平方メートル当たりに三千円程度で購入した。日本信販の融資時点で、私の調査ではせいぜいよくて当たり二、三万円ですね。日本信販 は時価の二、三倍の融資をしていることになると考えられるわけです。これは異常な過剰融資であると言わざるを得ません。この点大蔵省はどうお考えですか。これも現時点でおわかりにならなければ、調べてもらう以外にないんですが。
  115. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) いろいろ事実の御指摘、私ども申しわけないのでございますが、詳しく実は把握しておらないので、確たる御答弁はできないのでございますが、一般的にそういう貸金業者あるいは金を融通する会社が過剰な融資をするという点につきましては、今度の法律成立ということで私ども慎重に対応していきたいと思っております。ただ一般論といたしまして、いわゆる私どもの従来やっております銀行行政は、預金者を保護するという見地が非常に多うございまして、その預金者を保護するという見地から、金融機関の融資につきまして健全なる融資をすべきであるというふうな一つの見方があるわけでございます。貸金業の場合には、まさに融資をするだけでございまして、その点が金融の一方通行の業務でございますので、ややその指導に強弱があるのは否めないかと思います。
  116. 和田静夫

    和田静夫君 実は一つの具体例をこれは挙げているのは、後で全般的な意見を述べたいと思うからなんですが、これは大蔵にとっては一昨々日通告をしたんですから、中、日曜日を挟んでの調査がきょう満足にいってないことについて余り文句は言いませんがね、通産に対しては、私は大変早い時期からこれは言ってあることでありますから、後ほど通産は質問しますがね、あなたの方は調査が行き届いておらぬというような答弁はできないわけでありますけれども大蔵にもう一つ伺っておくのは、日本信販は融資に際していかなる審査をしたのかという点が非常に疑問ですね。融資したものほとんどが返済されない、大部分を強制の競売にかけて回収を図る、取り立てるというのは、これは明らかに融資に問題が私はあると思うんですよ。審査が適切でなかった。こういう点はどうですか。大臣、この辺はお聞きになっておって一般論としてどうですかね。まあ局長でも……。
  117. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) いま先ほど来申し上げておりますように、信販会社等に対します指導が、従来の私どもの権限の中で全うするような権限がなかったものでございますから、ここでもってお答え申し上げるのはいかがかと思いますけれども、今後のいわゆる貸金業行政の中で十分対応してまいりたいと、こう思っております。
  118. 和田静夫

    和田静夫君 当時この桂建設が説明したところでは、日本信販の内部に住宅ローン設定に手をかす人間がいたんですよ、つまり社員がいた。実際住宅ローン設定の手続は桂建設側が一切代行しておった。本人の意思確認すら行われていない。また結果としてだれもその土地を利用していないのでありますから、日本信販側でおよそ見当がつくはずです、これは。ちょっと調べれば問題が発生するおそれがあることは直ちにわかったはずであります。私はそういうような意味もあって、実は通産には若干の注意を促したことがあるんですが、どうも不親切であったようでありまして、日本信販が、おれの方は通産関係ないじゃないかと言われて、すぐ引き下がったというようないきさつがどうもあるように思うんですが、警察庁、いわゆる住宅ローン詐欺としてこういう件というのは調査をする必要があるんじゃないでしょうかね。
  119. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) ただいま初めて聞く事案でございますので、会社所在の県警察とも連絡をとりまして、犯罪があれば捜査をいたしたいというふうに考えております。
  120. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁、住宅ローンの取り込み詐欺というのは年間どれぐらい起こっていましょう。
  121. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) 手元にちょっと数字がございませんので、後ほどお答えいたしたいと思います。
  122. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省はこういう件については、いままでは報告は受けられていないんですか。
  123. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 貸金業については報告をとっておりません。特に信販会社につきましては、いわゆる割賦販売法の方の関係で主として通産が所管いたしておりますので、私どもといたしましては情報不足でございます。
  124. 和田静夫

    和田静夫君 どうもこれ少し調べてみて、かなりこれは私年月かけて調べてきたことなんですが、日本信販は割賦販売法に基づく業務が大きなシェアを占めている、これは通産省の所轄です。一方、住宅ローンなどの融資は大蔵省の所轄と、そういうことになっていくわけですが、いわば目が行き届かないということになる。今後こういう点はやっぱりこういう実態に即して少し考えておく必要があると思うんです、後ほど一つの提案をしたいと思うんですが。  消費者金融で消費者が相談しようとする場合、通産省は、どこへ行けばよろしいですか。
  125. 牧野力

    説明員(牧野力君) 一般的に信販会社をめぐるトラブルがございますと、私の方に消費者相談室というのがございます。それからこれは通産局にもございますし、そこが一応形式的な窓口になっておりますが、私どもの課その他随時担当課にお申しいただければ処理をしております。
  126. 和田静夫

    和田静夫君 ところが、日本信販の今回のケースの場合は、通産省に行けば、まああなたのところは親切に相談室に回す、相談室に行けば所轄外であると、こう言う、結果は。どこへ行けばいいのだろう、こうなるわけですね。
  127. 牧野力

    説明員(牧野力君) 本件につきまして必ずしも私ども十分に承知しておりませんけれども、私どもに話がございますれば、法律的に私どもが権限を持っているかどうかということは別に、一応信販会社、先ほど指摘がありましたように、私どもは割賦販売法という行為規制におきまして信販会社を所管にしておりまして、必ずしも信販会社の行う全業務について責任監督しているわけじゃございませんけれども、信販会社に対する一般的な監督といたしまして、こういうクレームがあるということで、誠意を持って処理するようにということはいままでもやっております。
  128. 和田静夫

    和田静夫君 そのとおりなんです。あなたのところへ行った、相談室へ行った。相談室は日本信販と連絡をとった。日本信販のだれだれのところに行きなさい。被害者はそこに行ったって相手にされるわけがない。あなた方がやっている行政指導というのはそんな程度なんですよ。これは、あなたのところに直に行った人も私は知っているし、あなたのところから相談室へ回されて、どういう経路をたどったかということ全部知っているわけです。だが一方では、住宅詐欺ローンというようなものが私の目から見れば存在をする。そんなところへ被害者が行って相手にされるわけがない。ところがあなたの窓口はそこで切れてしまう。さてそうなると、大蔵省では、消費者金融での消費者相談、これ今後法律ができていろいろなことが考えられるんですが、サラ金の監督も所轄になったわけなんですから、一般消費者に対する窓口相談というか相談窓口、こういうものをつくらなきゃならぬのじゃないかと思うんですが、大臣どうです、これ。
  129. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) このサラ金問題は、大蔵省といたしましては、消費者金融問題として実は取り上げざるを得ない以上、別途やはり司法当局、警察当局あるいは消費者行政を扱っておられます経済企画庁あるいは割賦販売業を扱っておられます通産省、それから都道府県を監督しておられます自治省と、やはりこれも政府を挙げて取り組みませんととても解決できる問題ではございません。したがいまして、消費者相談室を置くかどうかという点につきましても、ひとつ法律成立後のこの実施までの間に各省庁十分連絡をとりまして御相談を申し上げたいと、こう思っております。
  130. 和田静夫

    和田静夫君 私は、内閣全体の問題であると、サラ金の問題などこの消費者金融問題はそこまでもう社会的な状況に行っているという意味で、この間、後藤田官房長官にもここにこの前の委員会で来てもらって、そういう視点から実はサラ金論 議というのをかなり具体的に煮詰めたんです。いま銀行局長そういう答弁されましたが、大臣、いま局長が答弁をされましたように、やっぱり政府として、こういう苦情がこれからずっとたくさん出ると思うので窓口をどこかにおつくりになる、当然大蔵どもそれに対応できる体制をつくられる、そういう点必要だと思うんですが、いかがでしょう。
  131. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先般本院でも議了していただいて、そうして衆議院へ回付され法律が成立したわけであります。この成立は、もちろんいわゆるサラ金業という側面からの法律でございますが、これが実施に当たるまでの間に私は政省令、規則等々十分具体的に検討しなきゃならぬという答弁の限界にとどめておりましたが、いまおっしゃいました、必ずしもわが省だけではない大きな問題の所在ということに対する御指摘意味は、私にも理解できますので、勉強さしていただきたいと思います。
  132. 和田静夫

    和田静夫君 信販会社の急成長が著しい。この急成長というのは信販会社に対する優遇措置が背景にあるからだとされているわけです。たとえば割賦債権の買い取りを信販会社ができるのに対して、銀行系クレジット会社ではできないわけですね。また、銀行系クレジット会社は一回払いを義務づけられていて、利用者の割賦返済ができない。通産、大蔵、全く同様のカード業務をやっている業界に、こういうような業務の差異が出てくるというのは、これは何か理由がありましょうか。
  133. 牧野力

    説明員(牧野力君) 御説明申し上げます。  御承知のとおり、割賦販売につきましては私どもは割賦販売法に基づいて所管をしているわけでございますが、クレジットカードを発行する割賦販売の金融につきましては、これは割賦販売法上の登録が必要でございます。しかもさらに、登録を行う場合に、既存のこういう業を行っております中小企業者に悪影響を与える場合には登録を拒否することができるという条項が割賦販売法上ございます。  そこで、クレジットカードを使う割賦販売、これは法律では総合割賦あっせん業と申しておりますけれども、これにつきましては伝統的に中小団体、中小企業団体、日本商店連盟でありますとか、日本専門店会連盟でありますとか、こういった団体が千団体ぐらいございます。こういった団体が伝統的にやっておったということでございます。  それからさらに、信販会社でございますが、御指摘のように非常に大手の信販会社もございますが、現在、信販会社の大多数は地方に根差した非常に中小企業でございます。こうした中小企業あるいは中小団体等は資金の調達力におきましても、あるいは割賦販売カードを使用する加盟店の開拓でございますとか、あるいはカードホルダー、ユーザーの確保でございますとか、こういった点に非常に弱体でございます。  ところで、銀行系カード会社でございますけれども、御承知のように親会社はいわゆる都市銀行でございまして、資金の調達力はもちろんのこと、支店あるいは支店網を利用して加盟店の獲得でありますとか、あるいはカードホルダーの獲得でありますとかいう点について非常に大きな力を持っているわけでございます。そういう観点から、こういった銀行系カード会社に割賦販売のカードを認めますと、既存の中小団体等のカードが非常に大きな影響を受けるということで、先ほど申し上げました登録をしないことができるという条項に基づきまして、現在のところこれを慎んでいただく、慎重にこれに対応するということで、銀行系カード会社は一回払い、これは登録の必要ございませんから一回払いにとどまっているということでございます。  ちなみに、この五十二年に中小企業と大企業の業務の分野調整、これは一般的な問題でございますが、いわゆる中小企業分野調整法が制定されましたときに衆参両院の附帯決議がございまして、そこの中で、銀行系カード会社の進出につきましては、先ほど申し上げました中小団体、中小企業への悪影響を十分に考えて必要とする措置を講ずると、すなわち慎重に対処するという決議をいただいております。私どもとしましては、こういった決議にも基づきまして、現在の状況から、当分の間、銀行系カード会社につきまして割賦カードを認めるということについては慎重に対処したいということでございます。
  134. 和田静夫

    和田静夫君 大手信販が最近サラ金業に力を入れています。これはいわゆるサラ金規制法の対象にはなりますね。
  135. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 対象になります。
  136. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、信販会社の監督官庁は通産省。銀行系クレジットもそうですが、サラ金は大蔵、都道府県。これらの会社はいずれも消費者信用業務をやっている。が、規制はばらばらになっている。これはやはり統一的な監督行政をやっていただかなきゃならぬというようなことを先ほど申しましたけれども、信販会社に対する金融機関融資も問題が多いのではないかと実は思うんです。大手七社に対する金融機関融資残高――日本信販、オリエントファイナンス、セントラルファイナンス、ジャックス、ライフ、大信販、国内信販、ここの融資残高というのは幾らですか。これは、金融機関別に報告できましょうか。
  137. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 大手、六社、実は調査いたしておるわけでございますが、六社に対します融資残高は、一兆六千約七百億でございます。
  138. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、これらの担保設定、どうなっています。
  139. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) この点については調査いたしておりません。
  140. 和田静夫

    和田静夫君 ここのところ、ちょっと調査してもらいたいし、いま金融機関別の報告は、一兆幾らのやつは後でいただきたいと思うんですが、サラ金も同様でありますが、信販の貸し倒れが急増していることは最高裁の統計でも明らかです。今後、貸し倒れ償却が急増するのではないかと危惧されるわけですが、この点どういう見通しをお持ちですか。また、どういう対処をされますか。
  141. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) この信販会社に対します金融機関の融資の実態、これはもう少しいま実態調査の中で解明いたしていきたいと思います。  同時に、それを通じまして、信販会社の債権の保全の今後の見通しみたいなものにつきましても、金融機関を通じます調査の結果解明できるのではないか、こういうふうに思っております。
  142. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、消費者信用は今後私は急増することが予想されるわけですが、住宅ローンを含め、クレジット、信販など、いま問題にしてきましたように、規制はばらばら、所轄も法律も別、一般消費者の相談もきちんと対応はできていない。そして、まさにその結果、事故が急増しているわけであります。サラ金でもそうでありますが、消費者信用も、十分に審査しないでできるだけ貸し付けて、過酷に取り立てるという事態が広がっています。全信協の小原理事長が、貸すのも親切だが、貸さないのも親切だと言っているわけですけれども、まさに貸す側のモラルが問われているし、それだけでは問題は解消しないようであります。消費者信用保護法――仮称、のような法律をつくる必要が私は出てきているのではないかと思っているんですが、この辺いかがでしょう。
  143. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私も一般論としてお答えいたすという前提に立ちますならば、確かに、このいわゆる消費者保護という立場からするそれぞれの所管別のそれなりの対応の仕方というのは、法律また行政指導等々で今日も現存しておるものもあると思っております。ただ、いまいわゆる住宅ローン等々を通じての消費者保護の立場というものが、各般にまたがるものでありますだけに、これを念頭に置いた場合、一体どのような角度でこれが法体系の中に組み込まれるのか。そして、窓口としても大中小ありますだけに、いわば都道府県等にお願いする分野がさらに広くなりはしないかと、いろんなとっさの御提言に対しても私も迷うぐらいでございますので、その一つ方向としての御示唆に対しては、私は決して否定 的な感じを持っておるものではございませんが、さてそれを具体化するにしてはどうするかという問題は、政治として取り組む課題としては重要なポイントであるという認識でこの検討をさしていただきます。
  144. 和田静夫

    和田静夫君 私は、これからしばらく将来を考えてみますと、この消費者信用保護という問題、非常に大きな問題になってくるだろうと思うので、いまの大臣の御答弁に期待をかけておきます。  私は、国会に出てきてからすぐ、富士銀行のコンピューターを操作をした不正融資問題を取り上げてから、自来ずっとこの決算委員会やあるいは大蔵委員会等を通じてコンピューター犯罪問題というのをずっと追及をしてまいりました。もっと真剣に実はこの十五年間にわたる私の論議というのを大蔵側が踏まえておってくれたら、たとえば伊藤素子さんのような事件は起こり得なかった。あるいは、山口銀行のコンピューター操作によるああいう不正問題も起こり得なかった。そういう点は、非常に私は残念に思っておるのでありますが、きょうもまた若干の問題を指摘をしておきたいと思うんですけれども、コンピューター犯罪がますます増加していますね。  警察庁、最近のこの金融機関のコンピューター犯罪の傾向について、もう時間がなくなりましたから、簡単に御報告願いましょうか。
  145. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) 御指摘がありましたように、コンピューター犯罪、増加の傾向にございます。特に、キャッシュカードの枚数が七千万を超えるというような状況になっておりますので、そういったことも反映をいたしまして、CD犯罪、キャッシュディスペンサー、これを使用いたしました犯罪でとらえますと、昭和五十年八件であったものが、昨年一年は四百七十二件ということの発生でございますので、大変な増加という状況でございます。
  146. 和田静夫

    和田静夫君 同栄信用金庫で二度にわたってキャッシュディスペンサーからの盗難事件が発生しているわけですが、この事件の経緯、捜査の状況。
  147. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) 御質問の事件でありますけれども、警察で把握しております事件は、昭和五十四年十月から昭和五十六年の二月にかけまして、未遂一回を含めまして五回にわたりまして、本店の所在が港区三田にございます同栄信用金庫、この支店八カ所の現金自動支払い機から、偽造のCDカードを使用いたしまして合計六百十七万四千円が窃取された事案であります。  この事案につきましては、五十五年の二月に警視庁において届け出がございましたので、認知後、金融機関を対象とする特異な窃盗事件であるということで重視をいたしまして、所要の捜査体制で捜査を推進をしてきているところでございます。  いずれにいたしましても、CDカードを使用しておりますし、このシステムに詳しい者の犯行ということが考えられますので、そういった面におきまして捜査をいたしておりますが、現在のところ犯人検挙に至っておりません。ただ、こういったCD犯罪、五十五年以降千三百八十五件認知をいたしておりまして、うち八百二十八件を検挙いたしております。
  148. 和田静夫

    和田静夫君 一昨年の三月でしたか、仙台の宮城第一信金で四十九万九千円がカードによって引き出された。この偽造カードが呼び出したのは東京の太陽信金の口座であった。カード偽造は、一般の磁気カード発行機を使えばコンピューター技術であれば簡単にできてしまうところに問題があるわけのようです。  この事件以後、犯罪防止の手だてが打たれてきたようでありますが、これは警察と大蔵省両方に伺いたいんですが。
  149. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) ただいまお話のありました宮城の第一信用金庫の事件でありますけれども、これは、お話のように、オフラインになっております自動支払い機から現金を窃取したということでありますが、その後いろいろな検討もされまして、いわゆるそのオフラインの場合におきます支払いというものについてのチェックポイントと申しましょうか、そういったものを充実をするといいましょうか、そういった形で対策がとられたように聞いております。
  150. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 御指摘のとおり、機械化の進展に伴いまして機械犯罪がかなりふえていることは確かで、特に一昨年大変続発いたしまして、私どもといたしましては、秋にコンピューター犯罪に関します通達を出しまして万全の対策をとるようにしてきたところでございますが、この問題、なかなか私どもの一片の通達では解決できない問題でございまして、やはり金融機関経営者がみずからの経営の課題といたしまして、真剣に取り組む必要があるのと、もう一つは非常に日々新しい形の犯罪が出るものでございますから、やはり一金融機関だけで対応できない問題が多々ございます。したがいまして、各業界が協調いたしまして、共同いたしまして研究会をつくる、あるいは十分警察当局等とも連絡の上、みずからまず真剣に取り組んでもらいたいということを通達いたしたわけでございます。同時に、さらに進みますと、これから第三次のオンライン化が進みまして、金融機関と一般の企業や家庭を結ぶ回線が通ずるというようなことになりますと、大変また新しい問題も出てこようと思うわけでございまして、現在金融制度調査会にそういう問題につきましては専門委員会を設けまして検討をお願いしている状況でございます。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 ともあれ、金融機関のカード約款には、大体どこでもカード偽造による被害には銀行は責任を負わないとされているわけですね。これ余りにもそっけないといいますか、無責任ではないかというように感じますが、この辺はどうなんですか。
  152. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 銀行取引の内容といたしまして約款が制定されているわけでございますけれども、その点につきましても将来の課題として検討してみたいと思います。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 西日本相互の普銀転換、相銀、地銀内に非常に大きな波紋を投げかけていますが、銀行局としては今後も合併による普銀への転換というものは積極的に推進をされ促進をされるんですか。
  154. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) この問題につきましては私どもといたしましては四十年代前半に制定されました合併転換法を適正に運営してまいりたいと思っております。これはやはり金融界に適正な競争原理を導入するということ、それからやはり金融機関の経営の効率化、健全化を図る趣旨にあるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、こういう合併転換問題というのは、やはり経営自体の問題でございまして、私どもが青写真を描くとか、あるいは積極的に再編をもくろむとかということはいたすのはやはりこれはぐあい悪いわけでございまして、やはり個々の経営者の自主的な判断に基づきまして、そういう合併転換のケースが出てまいりますれば、合併転換法の趣旨に従いまして適正に対処してまいりたい、こういうことでございます。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 西日本相互は地銀協に入るということでかなり問題になってますけれども、両方、この辺はどういう見解お持ちですか。
  156. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 西日本相互につきましてはかねてから健全経営の実を上げてきておりまして、普銀に転換いたしましても十分適正な業務運営が行われるということでございまして、金融界全体の効率化を促進するんではないかということで、そういう申し出があればわれわれといたしましても前向きに対処いたしたいということでございます。それが地銀協に入るか相銀協に残るかという問題につきまして、若干業界の方に意見があるようでございまして、特に相互銀行業界におきましては、次々にこういうケースが出てくることによりまして、相互銀行業界自体が動揺を来すということにつきまして非常に危惧している面もございます。したがいまして、私どもといたしましては、相銀業界、地銀業界、各業界が十分この 点につきまして話し合いをいたしまして、妥当な線が出てまいりますればその線に従いまして行政的に対応してまいりたい、こう思っております。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 相銀が地銀に転換するメリットというのは、私は銀行法改正のときの論議でもずいぶんやりましたけれども、さっぱり実は本当のところは何もわからないんです。何か銀行名から相互の二字が消えるだけのことじゃないだろうかと思ってるんですが、相銀が普銀に転換しても具体的なメリットがないという私の考え方がもし正しければ、相銀が相互の二字を落としたいと思う背景には、どうも都市銀行の中小企業金融への参入があるからではないかと思うんですね。都市銀行の参入を銀行局としてはどういうような問題として受けとめているのか、これが第一であります。  それから、もう時間がないからまとめますが、私は、中小企業金融には中小企業金融の独自の役割り、いわゆる普銀が融資するのとは違った独自の役割りがあると年来考えてき、主張もしてきました。信用金庫、信用組合は会員組織で中小企業金融の独自性を保障しているわけでありますが、相銀の場合どうも中途半端であるという気がしてならなかった。銀行行政としては、やはり相銀という存在を残すということであれば、相銀のメリットとは何なのか、その役割りとは何かを現実的にやっぱり示す必要が私はあるんではなかろうか、そういうふうに考えるのでありますが、いかがでしょう。
  158. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 都銀の中小金融への参入につきましては、確かに計数的にもふえておるわけでございます。ただ私どもといたしましては、都市銀行におきましても中小企業金融に相応の貢献をしていくということが必要であるというふうに考えておるわけでございまして、これが羽目を外すような、節度を外すような参入につきましては十分自粛を求めてまいりますけれども、適正なる参入であれば私どもはこれを前向きに考えておるわけでございます。それによりまして中小企業業界が健全に発展していくということをねらえるのではないかというふうに思っておるわけでございます。  それから、中小企業金融専門機関の独自性の問題につきましては、五十五年の十一月に金融制度調査会の答申が出ておりまして、相銀、信金、信組含めまして中小金融機関としての適正なる役割りを期待されておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、相互銀行につきましては非常に地方銀行と業務内容も大変似通ってきておりまして、その点につきましてどの点が違うのかねというふうな御質問につきましては、本当のところ、私どもといたしましてもやや同質化されつつあるんではないかという気がいたすわけでございまして、行く行く時代の推移とともに、再度金融制度調査会等にもお諮りいたしまして御審議いただきたいと思っておるわけでございますけれども、当面は五十五年の答申に従いまして、相互銀行を中小企業金融専門機関といたしまして行政的な対応をしてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 これも銀行法改正の際に指摘したところなんですが、地銀の下位行と相銀上位行がダブる、相銀下位ないしは地銀の下位行と上位信金がダブる、これは十年来こういう現象があらわれてきていながら、垣根は多少改善されましたけれども、実態には即していない感じがするんですね。銀行局は現実を踏まえてきちんとした見取り図を再構成する必要が私はあるんじゃなかろうかと思います。それぞれの金融機関の機能を明瞭にさせながら再編成を進めていく、そういう政策が私はぜひ必要だろうと思いますから、これは検討をお願いします。  それから、上位信金が他県に店舗進出をしていっていますね。最近かなり多い。関東一円の、私、一覧表をもらいましたけれども、いやもうそれは大変なものですね。そこで、地元の信金ともトラブルが発生をする、発生していないところもありますがね、特定の信金等発生をしている。これもいまの問題と私は同じ質の問題ではなかろうか。  この文書は神奈川県の信用金庫協会が昨年の四月に発した文書です。城南信金を初めとする都下信金が神奈川県に進出してきて地元信金を脅かしていることについて善処方依頼文書なんですがね、たとえば横浜市で見ますと、城南信金が預金、積立金、積み金では第二位、貸出金では第三位のシェアを持っているわけです。川崎市でも同様であります。これは銀行局としてはどういうふうにコメントをされますか。現実にトラブルが発生しているわけなんで、都下大手信金の進出は、これは埼玉でも千葉でも見られる現象ではありますが、私は、信用金庫が本来の地域金融機関としての役割りをこれでは一体果たせるのだろうか。神奈川県の信用金庫協会の会長名によるこの訴えというのは、かなり深刻だと思うんですよ。すこぶるその意味でこういうような状態を続けるのはいかぬのじゃないだろうかと、信金の原点に立った指導をきちんとされる、そういうことが必要なんだと私は思うんですがね、どういうふうに考えたらよろしいでしょう。
  160. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 信金の地区の拡張につきましては、私どもといたしましては通達を出しておるわけでございます。それに基づきまして基本的な考え方を示しているわけでございますけれども、それによりますと、その地域の経済状況、資金の需給状況、他の信金との競合関係等から見て、地縁的金融機関としての機能を十分発揮し得る程度のものといたしまして、信金制度の本旨にもとるような地区拡張が行われることのないよう十分留意してもらいたいということを言っているわけでございます。  ただ、最近におきます地区の広がりにつきましては、経済圏がかなり広範囲に広がってまいる、あるいはその取引層が広がってくるというようなことによりまして、若干他地区への進出が見られるところでございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような信金制度の本旨にもとるような地区拡張が行われることにつきましては十分配意しているところでございまして、きょうの御指摘等も十分踏まえまして、今後の店舗行政を行ってまいりたいと、こう思います。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 通産省待たせて非常に悪かったんですが、もう時間なくなりましたから明後日、十一日の総括のときに北極石油株式会社の問題、石油公団の問題その他回させてもらいます。  また、大蔵関係、天下りその他の問題も総括に回します。  終わります。
  162. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  163. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題とし、皇室費国会会計検査院大蔵省日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  164. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 非常に貴重な決算委員会の時間を、与党の私の立場として八十分ほども割いていただいて非常に感謝をいたしておるわけであります。  きょうお尋ねしたいのは、ほとんど国税庁所管の事柄に限ります。ただ、若干波及して主税局長、それから証券局長にお尋ねしたいことがあります。  実は、私は徴税行政というものは、自分自身も職業の関係もあって、現実の事務にも携わり、相当長い期間見ておる。徴税の問題については、納税者の側には何とかして脱税をしたいという強い志向があり、それをよく克服して、よく税金を取っていただくという感じが全体としては私は徴税 行政については持っておるんであります。ただその裏に、まあこれだけ専門家の人たちがおやりになるのだし、問題は国民の権利、義務に関する財産権の取られるか取られないかに関する大事な問題だから、まさか徴税側に過ちはないだろうなという漠然たる気持ちでもって今日まで私は対処してまいりました。ところが、ここ四、五年の間に私が現実に扱わしていただいた事件を見て、残念ながらそうはいっていない。それで一度はこれは決算委員会の機会に大臣国税庁長官並びに関係の方々にお集まりいただいて、現実にこういうこともございますよということを事実をもって指摘して御注意を促しておきたい。私は、わずか扱っている問題の中にこれだけ問題があるとすると、相当私は全国的にあるのではないかという残念ながら推測を持たざるを得ない。ところが、私が扱っている事件でもこういう事件は納税者の側、国民の側からは非常に扱いにくい、主張しにくい、ほとんど泣き寝入りになる、こういうケースであります。それが私が最近になって事実をもってつかんだ実情であります。  きょうは、実は三つの問題をお尋ねしたいと思って用意してきておるんでありますけれども、何にしましても時間が八十分ということでありますので、他の二つの問題はごく概略の御説明を申し上げて御一考を願うということにいたしたいと思う。一つは、ここにありますこれは、関信越国税局が新潟の某金融業者について行った査察の件であります。これは、私が告発になった段階で事件に弁護士として関与している。だんだんと調べてみますと、金融業者で手形割引を主にしておったんで、恐らく査察官の方も調べるには相当な困難をされたと思うんです。しかし幸いに本人の協力、それから関係金融機関の協力があって扱われた件数だけは大体わかっている。何月何日に幾らの手形を割り引いたと、何月何日というのはわからないんです。幾らの手形を割り引いて、その手形が何日何日に決済されたという記録だけは、これは金融機関側からあったんです。ところが脱税額を判定をしますのには、それでは手形の金額と決済日だけわかったってどうにもなりませんので、そんなことは申し上げぬでも。結局利率が幾らだったか、割り引いた期間が何日かということ、これの調べようがないのですね。やむを得ず割引を受けた相手方から聞き出す方法がとられたのです。それが反面調査という方法でなされておるのですが、大体反面調査によった部分が全体の九四%ぐらいになっている。したがって、大体反面調査で、つまり割り引いてもらった人の話を聞いて脱税額を決定されたと、こういうことだと思うんです。それは、それで私は一つの調査方法ですから結構だと思うんです。問題はその割り引いてもらった人間から答申書というものがとられたのですね。何月何日、私はこういう手形を幾らで割り引いて何日間と、そういうことの記録をした答申書を割り引いた人からとられた。法廷においてその割り引いてもらった人たちの約六人か七人が証人に呼ばれまして、――私は全部の人を証人に呼びたいと言ったのですけれども、裁判官が同じことですからまあこの辺にしておいてくださいと、余り暇が要るからというので。ところが呼んだ証人は全部答申書の主要な部分、この手形の利率及び割り引いた期間が私が書いたのではないのだと言うのです。だれが書いたのだと言ったら、それは査察官が、税務署の人が書いて持ってきて、われわれが調べたらこのとおりだから間違いないからこのとおり書いて出しなさいと言って。したがって、それはそう言われるから。この答申書に真実性がありますか。一種の文書偽造です。  ところが、私がその答申書によって向こうが認定したある事件に一つの問題を二つに扱った事件があった。これはもうもとのところの証拠を見ればわかるんですから、これは重複ではありませんかと法廷で尋ねた。そうしたらば、査察官がその答申書を見て、答申書にそのとおり書いてありますからと、こういう答弁をした。あにはからんやその答申書は自分がつくって、そうして本人、答申者に書かせて出さしたんです。残念ながら私も正確には、それではどうなるのか、自分で数字の計算ができませんのでそれ以上は争わなかった。しかし、よくここ長官も大臣も聞いておいてくださいよ。証人は法廷に出てくるときは、御承知のように宣誓をしております。事実を述べると宣誓をしております。その人間が、これは私が書いたんじゃありません、税務署の役人が書いて、こう書けと言って、だから出したんですと言ったのを裁判は全然取り上げませんでしたね。私はちょっとこれは意外だったけれども、まあそれは裁判のことはきょうは……。その問題が一つあるんです。  いま一つ、これは東京局のつい最近の査察。五十五年中にある人が株の売買で三億ぐらいの利益を上げました。五十五年中ですから五十六年の三月十五日までに申告するはずです。申告するかしないかを待ち構えていたように、申告しなかったらば、五月の二十六日に査察が入った。私はちょっと意外だった。こんな事件は調査か特別調査でまず調べる。てんから査察が入っている。査察が入るということは、皆さん方も御承知のように、次の段階は告発ですから、この事件も結局三千八百万円の罰金を取られた。ところが、公判廷の記録を見ますと、何遍も本人が、取り扱ってくれた証券業者、名前を申し上げておきます、黒川木徳証券八日市場支店、大和燈券千葉支店、これが扱った。当時、御承知のように、加藤誠備事件という問題があって、必ずこれはばれると、申告した方がいいんじゃないかと、本人が、扱ってくれた両証券業者に申告した方がいいんじゃないかと何遍も問いただしても、絶対ばれないから申告はやめなさいと言ってとうとう申告させなかった。それが三月十五日を過ぎて五月の二十六日に査察が入った。これなんかもうけた額よりも、本税、過少申告加算税、重加算税、地方税、罰金。しかもこういう事件はその翌年は必ず損をするんです。この事件の該当者も大変な欠損をしております。しかしそれはきょうは、その点について一体証券業者がそういう指示をしていいのかどうなのか。しかもあれ、満額、二十万株ですか、それを超えると必ず架空の名前もしくは実在の他人の名前を出しなさいと言って証券業者が勧めてくる。この場合には、ですから本人にはほとんどその査察になって罰金を取られるような犯意は私はないと思うんです。あれは私は査察と調査――特別調査と普通の調査とおのずから区別があってやられているんじゃないかと思うが、そうではないんですかね。まあしかしこの点はきょうはもう時間がありませんからその辺で。  最後の問題です。  これはこの間たまたま大蔵委員会で問題を指摘をしておきましたので皆さんは御存じかと思いますが、大臣もわかっていただいておりますね。長官、あのときは欠席でしたが、おわかりですな。  結局、二枚の大津税務署長が執行した更正決定通知書。更正の期日はいずれも昭和五十四年五月十一日、減額更正でした。減額を受けた人は大津市大江三丁目一四ー二七井上宗次、大津市一里山三丁目一四ー二六井上健二郎、これは兄弟であって親の財産を相続をして二分の一ずつの共有という関係になっておる。更正を受けた額、つまり税金を減らしてもらった額は井上宗次が二百五十二万九千六百円、井上健二郎が二百五十六万三千七百円、二人合わせると五百九万三千三百円ということになっておるんですが、まず最初に、これは事実かどうかをひとつお答えいただきたい。
  165. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 本件は先般の大蔵委員会でも御答弁申し上げましたが、ただいま先生の御指摘の事実はそのとおりでございます。
  166. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 もしそのとおりだといたしますと、これ昭和五十四年の五月の更正決定でありますからして、目下本委員会において審査中の五十四年度決算歳入に影響があると思うが、どうですか。
  167. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 減額更正が行われました場合に、当初の税額が納付済みでございますと、その税金は過誤納金ということで納税者に還付することになるわけでございますが、その場合 には還付の支払い決定をした日の属する年度のいわばマイナスということ、減収ということになるわけでございます。  先ほどから御質問のケースに当てはめてみますと、五月に減額更正をいたしまして、その月じゅうに還付のための支払い決定をいたしております。したがいまして五十四年度の減収と、こういうことになろうかと思います。
  168. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 そういたしますと、現在審査中の五十四年度の歳入は、このことがなかったとすればもう五百九万三千三百円だけ歳入がふえておったはずだと、こういうことでありますな。
  169. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 私どもは、この両名に対しまして減額更正をいたし還付の支払い決定をいたしましたにつきましては、客観的にそれなりの事情を調べまして、それに基づいて決定をいたしたわけでございます。したがいまして、適法に還付を行ったと、こういうふうに考えております。
  170. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 お尋ねしていることと答弁が違います。このような減額更正がなかったらば五百九万三千三百円、五十四年の歳入がふえておったはずですねと、こうお尋ねしておるんです。
  171. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 減額更正をいたしませんと、納付済みの五百九万余の税額はそのまま歳入になって残っておると、こういうことでございます。
  172. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 大体国の歳入の支出は非常に厳正に法規に従って行われ、厳重に監視されており、たとえば本委員会においてしばしば問題になりますたとえ十万円の空出張でも、また五十万円の補助金の不当支出でも、会計検査院指摘をされて是正をされるというのが、それを監視するのが本委員会の務めであるわけです。したがって、五百万円を超える税金が一たん本人らが五十年の三月十四日に申告して納付しておりますね。五十年の三月十四日に申告納付したのを大津税務署長の判断で五十四年五月十一日に還付されているということ、これは大変なことだと思うんです。いま理由があってやっているんだという、どういう理由でおやりになったかもう少し詳細に御説明ください。ただし、通知書にはこれだけの説明はあるんですよ。昭和四十九年分の所得税申告をされたが、調査の結果その事実が認められないので譲渡所得を取り消しますとあるんです。どういう調査をされたのか、それを細かく御説明ください。
  173. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) これは先般の大蔵委員会でも御説明をしたところでございますが、いま御指摘の両名に対する減額更正といいますのは、実は現在、これは昨年の九月の二十日でございますが、京都地方裁判所に提訴されております別の納税者による課税処分の取り消し訴訟に関連しておる事柄でございます。  まず、御理解を得るために一般論から入らしていただきたいと思うんですが、一つの取引について所得が発生いたしましたと仮定した場合に、ある納税者がそれは自分の所得であると申告をされたといたします。しかしながら、調査をいたしましてその所得がほかの人に帰属することが明らかになったと、そういう場合には、その別途明らかになった人に課税をするとともに、さきの申告は減額更正をする。そういたしませんと二重課税になるわけでございますから、そういう整理をいたしまして、課税の調整といいますか、正しい方に課税をすると、こういうことをいたすわけでございます。  所得税の場合には累進課税をとっておるということもございまして、一般的に申して、ある取引が名義上は甲であり乙であり丙であるけれども、実際の所得は丁であると、その場合には甲、乙、丙に分割されて申告されているけれども、調査をしてみれば丁であると、正しくは丁に課税しなければならない、こういう事態が間々発生するわけでございます。所得税の調査の場合には、それが一つの調査の重要なポイントになるわけでございます。所得税法の十二条の実質課税の規定がございますけれども、そういう規定もそのわれわれの処理の背後にあるわけでございます。  本件の減額更正でございますが、井上さんという御兄弟の方、これが実は土地を共有して持っておられたわけでございますけれども、この土地を昭和四十七年に、先ほど現在訴訟を係属中の原告のことを申しましたが、その原告の人に譲渡をいたしまして、四十七年分の確定申告を提出されておったわけでございます。しかしながら、この二人の方はこの同じ土地を四十九年に別途大津市開発公社というところに譲渡をしたとして確定申告をされたわけでございます。したがいまして、四十七年に一たん申告したものについて、さらに四十九年に申告をされておるというような事情がございまして、私ども、別途現在係属中のその方から異議申し立てがございましたので、それに関連をいたしましてこの井上さんという方に調査をいたしましたところ、四十九年分の申告については、いま原告となっている人が税金を持つから申告書を出してくれと頼まれてその申告を出したので、自分たちとしては四十七年分の申告が正しい、こういうお答えをいただいておるわけでございます。  それから銀行調査をいたしますと、現在原告になっておられる方は、この二人の人に対して四百万円その税金の立てかえ料として支払いをしておるということも確認をされたわけでございます。  私ども、そういう調査結果に基づきまして、両名の申告は実はもう四十七年に済んでおるし、四十九年についてはいま御説明したような理由で出されたものであるという確認を得ましたので、両名については減額更正をしたと、こういうことでございます。
  174. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 私が了解をするところではそうではありませんね。四十七年、両名がこの土地を売った相手方はいま原告として法廷で争っておる人物ではなくて、株式会社興人という法人のはずであります。契約書にそのとおりに載っております。その株式会社興人からたまたま四十九年に大津市が中学をつくる用地を欲しいということで土地を譲ってくれぬかということになり、株式会社興人にも別に異存はなかったようでありますが、あのときの契約は、新都市計画法に基づく許可がないと農地はもとの所有者に返さなきゃならない、こういう契約になっておる。それでその機会に前に、法沢、これが原告ですが、原告を通して興人に土地を売っておった人たちが全部土地を返してくれと、農地である土地はまだ正式には所有権が移転になってないから返してくれという動きが猛然と起こって収拾つかなくなって、学校が必要とするだけの土地は返すからそれで事態をおさめてもらいたいと。いま直税部長が答えられた原告がこの土地の買い受けの相手方になったということはありません。これは興人からの出ておる書類を見ましても、この場合代理買収人として開発予定地の代理買収を依頼したものであるというのであって、本人が買っておいて興人に売ったという関係はないと、私は調査の結果承知をしております。  いま直税部長のお話では、四十七年にこの井上兄弟が原告に土地を売ったという認定を調査の結果されておるようであります。そこは事実と違いますが、どうですか。
  175. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 先ほど御説明したところでございますが、四十七年にこの原告の法沢さんという方に譲渡をした、これは井上さんの供述からも確認をしておるところでございます。
  176. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 それはだから土地売買の常識上素人がする判断であって、法律的にはちゃんと契約書でもってこの二人から興人に移っております。いま契約書を出してみましょう。ここに土地売買契約書というものがある。これは売主法沢剛雄、買主株式会社興人という形で、京都府宅地建物取引業協会のつくっておる一般的な売買書式によってやっておるのですが、重要な部分に、新都市計画法に基づく開発申請の許可がないときは、本物件が農地の場合は契約期日にさかのぼって本契約は効力を失うものとし、甲は受領済みの金員を即時返還するものとすという、この規定に従っ て解約――契約解除が行われている。その契約解除によって興人から返ったときに、だれに興人が返したのか、そのことを示す書類がここに用意してあります。このときに、興人が大津市公社、大津市の要請に応じて返してきた土地が二十九筆二万一千三百二十二平米であって、その明細があるんです。そうしてそれには各土地はだれに返すという所有者を指定してありますよ。だからこの間にいまの原告法沢君がこの土地の所有に関与する関係はこの土地については全然ない、法沢が興人に土地を周旋したときには、法沢名義の土地は一筆もありません。それが返ってきたときに、その二十九筆の中の九筆が法沢剛雄名義、これは当然興人から法沢剛雄が所有権を返してもらったんでしょう。法沢がその中の六筆だけを公社へ売っております。これは当時の申告どおり。同じように、いまの問題の土地は売りますときも井上宗次、健二郎の所有、返ってきたときもしたがって井上健二郎、宗次に返ってきております。当然に返してもらった井上健二郎、宗次がそれを公社に売って、土地を売買契約をして土地代金をもらい、土地代金をもらったから四十九年の所得申告になったんでありましょう、五十年の。いま何かその間に雑音がいろいろあったようであります。それは今後裁判の段階で。少なくとも公の書類の上ではそういうことになっておるのです。原告がこの土地に関与したこと一度もない。本人から興人に売られ、興人から本人に返され、返してきた井上兄弟が公社へ売ったと、こういうことになっております。どうですか。
  177. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) お尋ねが現在係属中の訴訟事件で、原告が主張されておる事柄に関連をされておるわけでございますが、私どもはその四十七年にこの井上兄弟が法沢に譲渡をし、法沢氏はこのほかにもいろいろな土地を地主さんから買い集めまして、それを株式会社興人というところに売り渡すわけでございます。その後事情の変更がございまして、興人と法沢という原告の人との契約が解除になりまして、その土地が法沢氏に一たん戻ってまいりまして、それを大津市開発公社に法沢が譲渡した、こういう実態であろうという認定をしておるわけでございます。したがいまして、おっしゃいますように、井上兄弟が四十九年にこれを公社に譲渡したということは、一たん申告終了後はそうなりましたけれども、後の調査で、井上さんの方から、実はこれは法沢さんに頼まれて申告書を出したんであって、実態は四十七年に譲渡したんだという確認を得ましたので、先ほど来申し上げたような処理をいたしたわけでございます。
  178. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 この減額更正決定書には、調べたけれどもそういう事実はないと書いてありますが、どのような調査をされたのか、その詳細を聞かしてください。
  179. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 私どもは、大津市開発公社が譲渡代金を支払っておるわけでございますけれども、その金の流れ、それから公社側のもろもろの説明、そういうものを聞きまして、契約の当事者――真実の当事者はその法沢であり、それと公社との取引である、こういうふうに考えたわけでございます。
  180. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 それは考えられることは御自由です。また職権を持っておられるから、それに基づいてある税措置をされることもあれですが、もしもいま問題になっておる土地、これは明らかに書類の上ではいま直税部長も認められているように、四十九年本人二人がそれぞれ自分の所得として申告をし、納税を済ましておるんでしょう。それが返ってくるということは、そういう事実が、つまり本人らが土地を持って土地を売ったという事実はないということを、何かの調査で確認されなければあのような措置はできるわけがないんです。そういう確認をどのようにされましたか。要するに二人が四十九年の所得として申告をしておる、その裏は、あの土地は私どもの土地であります、私どもが売りました、その代金をちょうだいしました、したがって、税金をこれだけ納めますと言ったのがそうでしょう。その事実が否認されない限りはあれは取り消される性質のものではないでしょう。  ついでに聞きますが、もしも諸君の推定が誤っておった場合に、この税金をもう一度二人から取り戻せますか。二人は税金返ってきて、何で返ってきたんだろうと当惑しております。その点どうですか。
  181. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 先ほど法沢さんと興人との契約が解除になったということを申しました。私どもはその契約解除後は法沢が収得をし、それを公社にさらにまた譲渡した、こう申し上げました。原告が現在訴訟において主張されておりますのは、興人との契約が解除と申しますか、解除されて、それが法沢に戻ったんではなくて、法沢にも一部戻ったけれども、旧地主つまり法沢に売り渡したと私どもが認定をしておりますほかの地主にストレートに戻ったんだと、こういうことを原告の方で現在訴訟の段階で主張をされておるわけでございまして、そこでは私どもの主張と対立する見解が現在法廷に出ておるということでございます。私どもの事実認定は、先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、井上兄弟にその土地が戻ってくるということは、私どもの事実認定からは出てこないことでございます。
  182. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 そこが独断だというのです。もしもいろいろうわさで聞かれたような事実があって、井上兄弟があれをしなかったんだと、実際は。公社に売ったんでないんだということに想像されても、あの時点でどうして減額更正をされたんですか。この点は、さっき私が聞いたけれどもお答えがない。この減額更正は、皆さん方の想定が間違っていたという場合に、もう一度もとへ戻って金が本人らから取り戻せるんですか。それをどうぞ。
  183. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 井上兄弟に対しまして減額更正をいたしましたいきさつにつきましては、冒頭御説明したとおりでございまして、法沢に本来帰属するべき所得であると認定いたしましたので、また、井上兄弟から先ほど申し上げましたような供述も得ておりますので、井上兄弟には本来所得が発生しておりません。それについて申告をされたわけでございますから、別途、法沢氏に課税をするとともに、この二人の分については取り消しをする。これは税の執行のルールとして当然の措置でございますけれども、それを講じたわけでございます。いま仮定のお話として、この両名の譲渡が真実であり、減額更正が本来すべきでなかったものであったらどうするか、取り戻せるか、こういうお尋ねでございますけれども、長い時間を経過いたしましたので、時効の関係もございまして、新しくこの両名に課税をするということはできませんけれども、私ども処分の段階で十分調査をいたしまして、片っ方に課税、片っ方は減額という措置を講じましたので、その処理については確信を持っておる次第でございます。
  184. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 その確信を持っておるがよくないんですよ。二つの意見があるんでしょう。皆さん方が聞かれたときには、聞かれた筋では、要するに井上兄弟の土地は、四十七年の時点で原告である法沢に売ってしまっておるというのがスタートなんです。あとは法沢と興人、あるいは法沢と公社の関係、ところが記録はそうじゃないじゃないですか。いま申し上げたように、契約書でははっきりと――第一次契約書というのは四十七年七月十五日、これに、この土地は二人の親井上惣助が持っておったもの、山林千三百二十二平米をこの契約によって興人に売っております、本人らが。本人らが原告法沢に土地を売ったことはない、記録ない。あなた方の言うのはそこらから聞いてきた道聴塗説のたぐいじゃないか。証拠がない。証拠ははっきりとこの契約によって、そうして今度この契約が十二条の特例によって戻すときになれば、当然もとの所有者のところへ戻るのがあたりまえだから、興人が処理したようにもとの所有者の井上のところへ戻ってきたんです。この方がはるかに筋が通っておるでしょう。それだけ疑えば疑義のある問題を、何で簡単にその程度のことで減額更正のような思い切った措置、しか も、あと回復のできなくなる措置をしたんですか。何もあのときに減額更正をしないでも、問題として保留しておいて、最終的に決まったときに結末をつければいいんだ。ほんのそこいらから聞いた、ひょっとしたうわさでもってぽんと減額更正をして金を返してしまうから、いまごろ時効の関係もあって取れないという結果になってしまうんだ。そんなことにならぬでも、幾らでもこの問題の解決の方法はあったじゃないですか。どうなんですか。
  185. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 再三繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、本件の土地取引につきましては、井上兄弟が公社に売ったということはない、むしろ法沢という原告になっている人が公社に売ったと。両名については四十九年に譲渡所得申告すべき理由がない、事実がないということから、一方に法沢氏に課税をし、両名については減額更正をする、それがやはり税の処理としては当然講ずべきことでございます。それを仮に、片っ方には課税をし、片っ方はあやふやなままそのまま減額すべきものを減額しない状態に置くということは、税務の処理としてはいかがかと思いますので、そういうやり方はとらなかったということでございます。私どもは自信を持って法沢氏に課税をし、それから法沢氏に帰属すべきものを単に名義的に申告した二人については所得の実態がないから減額更正をした、そういうことでございます。
  186. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 部長ね、あなたが言われる本人らが四十七年に法沢に売ったというのは、これは素人の物の言い方なんです。法沢が世話をして興人へはめ込んでくれたんだ。本人らは法沢に売ったと思っている。しかし、契約的には、法律的にはそうはなってないんだ。契約書はちゃんと本人から興人へ行った。だからして、目的が成就しないで返るときには旧所有者に返るのが当然なんだから、法沢には返らずに、ここに書いてあるもろもろの人のところへ返った。井上宗次も健二郎も同じ立場だ。要するに、局の、庁の、あるいは税務署の判断、税務当局の判断は、自分の都合のいい方をなるべくいろいろうわさがあると聞く、双方の意見を対等に見て、本当に真相がどうなのかという努力をされてないんだ。大体何でこんなあわてた更正決定をされたのかという裏は皆さん方もちらちら言われるけれども、あるんです。そこで私がちょっとこれは時間惜しいけれども、大体この事件は昭和四十九年の法沢の所得申告というか、まあ買いかえ申請を出しておる。それに対して五十三年の三月まで全然ほうってあった。あれは三月八日か九日更正決定、更正決定をする二日前にちょっと税務署の役人が法沢のところへやってきて、何かごとごとと言っておったけれども、更正決定の核心に触れる話はなかった。二日ぐらいしてぽんと更正決定が出てきた。その更正決定たるや、これは多少なり税の知識を持っている者が見たら噴飯物ですよ、これは。五つか理由を並べてあるけれども、どれ一つ最後まで主張できる理由何もない。そのとおり、今度更正決定に対して異議の申請をして、異議の申請で異議の決定をする段階になったら、更正決定のときに主張した五つかの理由は全部捨てちまっている。そうして、たまたま、もしも興人から返ってきて、公社があのときに買った土地全部が法沢が一人で売ったとすれば総収入六億四千万。どういう計算をされたか、それに対して取得原価を計算された。この取得原価の計算たるや、私らのような専門家が見たらまるで噴飯物です。しかし、とにかくそういうものを比較してみたら差額が三億九千万だと。更正決定が三億七千百万でしたんだから、三億九千万と出たからこれ見ろと、本当はもっとあるんだぞというのが異議決定の真相ですよ。その異議決定に問題が出た。そういう判定をしたために、その中に井上兄弟の土地が、やっぱり法沢が売ったということにせなければつじつまが合わない。その異議決定は五十三年の十一月二十四日にしてられます。そうしてこの減額更正は翌年の五月十一日。それは異議決定を出してみたらば、異議決定では井上兄弟の土地は法沢が公社へ売ったとなっている。ところが、四十九年の申告、つまり五十年の三月十四日に出た申告では、あの土地は井上兄弟がそれぞれ売って金もらったとなっている。合わないから。――大体、この更正決定自体がなっちゃいない。そのなっちゃいない更正決定を生かすためにこの井上兄弟の土地を法沢――原告が売ったとせざるを得ない計算になったんだ。私の方から見るとそういう理論がある。だから、いろいろ考え方があるんだから、私は、いま局と原告と争っております。結果は裁判の結果で必ず出るでしょうが、しかし、その前に仮に井上兄弟があの申告どおり売っておったという決定が出てきたときに、あの減額更正はどうするんですか、一体。もう一度取り戻すわけにはいかない。どうするんですか。これひとつ長官答えてください。
  187. 福田幸弘

    政府委員福田幸弘君) いままでの御質問お伺いしながら感じましたことと、いまの御質問に対してお答えしていきたいと思うんですが、最初御質問のありました件、これは新潟地裁ですでに御承知のように実は確定判決が出ている査察事件でございます。    〔委員長退席、理事和田静夫君着席〕 その過程でおっしゃっているようなことが議論になりまして、答申書が安易につくられているんじゃないかとか、いろいろ議論がありました。私もよく内容を調べたんですが、裁判所の方の判定はそれは認めがたいということで判決が出ておりますので、これについてはその判決を尊重せざるを得ないと、こう思います。  第二の事件は、千葉地裁でやはりこれは査察事件で有罪判決が確定いたしております。これも脱税額も大きな金額でございまして、大口、悪質の事犯に対しては、証拠がとれた場合、これは査察事件として立件する、これは当然でございまして、しかも、これは確定した有罪判決でございますので、これもやはりやむを得ない処理であったと思います。  最初の件も、これは塚田議員がこの場合は被告の訴訟代理人、弁護士をやっておられたという件でございまして、それだけによく御承知だと思うんですが、判決にはやはりそういうふうに確定されておるということを前提とせざるを得ない。  それから最後に、いま御質問中の事案は、これは減額更正の問題が同時に更正決定の問題とうらはらになっていまして、したがって、その更正決定を民事事件で京都地裁の民事三部でいま扱っておる現行訴訟中のこれは事件でございます。原告側の訴訟代理人はこれは塚田先生でございますが、そういうことでございまして、この事実関係は今後法廷において原告側――先生の方、それからわれわれ国側、これが証拠を出し合いまして事実関係を説明し、それぞれ正しいというところを主張して、これを裁判が決定するということであろうと思いますんで、今後法廷での訴訟に対して影響がございますので、これ以上ここで質疑を繰り返しますと私は適当でないという感じを持ちます。いずれにしましても、それぞれ正しいところを法廷でこれを明らかにする、これがやはり司法と立法と行政のけじめだろうと思いますので、失礼ではございますが、これが訴訟中の事案で、しかも当事者でございますと非常にわれわれ答弁が適当でないという感じを持ちます。これは失礼でございますが釈明しておきたいと思います。  まあそういうことで、しかし先生もおっしゃってます、やはり査察事件について非常に慎重を要するということは、おっしゃっているとおりであります。やはり権限を、強制調査をやりますので、大口、悪質の事案をやはり証拠を十分に固めて、訴訟維持ができるように、適確に慎重に、納税者のやはり権利の擁護ということを尊重しながら、一方において社会主義ということのための査察を行うということは、これは重要なことでありますので、先生のおっしゃっておる本来の一般的な査察は人権を尊重し、適確に慎重にやれという御指摘に対しては、われわれ十分に尊重して今後やっていきたい。私も部下に対して着任以来、査察は重要であると、こう申しておりますが、その際やはり納税者の人権ということについては十分 に注意するようにと、こういうことを訓示の際に言っておりまして、件数主義にとらわれるなと、やはりそれは的確な証拠によって法的な手続を十分に踏むようにということを注意いたしておりますので、今後ともそれは徹底していきたいと思います。  それから、最後の事案はこれは調査の問題でございまして、やはりその際、減らすべきものは減すということも重要であろうと思うんです。所得税法十二条にあるような実質課税の原則がございますんで、本人が申告しましても、やはり別のところの所得であると、同じ取引もその所得が帰属がほかのところにあると、こう判断しました際には、実質の所得者に課税をいたすのが本来でございまして、したがって、その税額が少なくなるためにそれをほかの納税者の名義で申告をさせ、税金を立てかえるというようなことがございましたら、その税金についてはこれは申告としては受け取らない、これをお返しすると、そして実際の方に課税をするということが正しい処理でございまして、いまおっしゃってますのは、その減した方の問題を追及しておられるわけでありますが、本来課税すべきもっと大きなところの課税をわれわれはいたしまして、それを不服申し立て、異議審査の裁決を経まして、いまさらに裁判によってそれが争われておるわけでありまして、おっしゃっているような御議論は十分原告の立場では主張される理由があろうと思いますが、われわれはわれわれでまた課税処分が適当であったと、こう思っておりますので、これは裁判にかかった以上はやはり法廷において議論を尽くして判決を待つということであって、その結果、本来課税すべきところの税金が取れなくなるというようなことがあっても、これはやはり判決が正しいわけでありますから、仮のことを前提にするわけにいきません。やはり争いがあれば法廷まで行ってはっきりさせるということでありまして、減額をしたということはあるいは正しい、一方それを課税すべきところに課税した、それが判決でどうなるか。これはそのために歳入が還付によって穴があいたというふうに一方的に考える筋ではないと、こう考えるわけであります。
  188. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 想像したとおり、聞きもしないことをくどくどと言われただけで、私の尋ねておる核心は何も答えておられない。第一、そんなこと聞かなかったのを、立ったついでに答弁されたから。  新潟の査察事件を私は問題にしておるのは、法廷に証人に呼ばれて宣誓した証人が、これは私が書いたものではありませんと言っておるんです。それを検事や裁判官がどのような判断をされようと、これはまあ立法と司法の別の範疇だから私はあえて批判はしないが、しかし一般のこういう法律行為、証人を呼んで宣誓さして、宣誓した。そうして聞いてみたらば、この部分は私が書いたものではありません、種は税務署の役人さんが書いて持ってきて、われわれの方で調べたらばこのとおりで間違いないから、このとおり書いて出しなさいと言われたから書いて出したんだという。私はいま裁判の結果を云々してるんじゃないんですよ。そういう事実を国税当局はどういうように受け取るのか。反省がないんですか、そういう。そんな答申書を出しておりましたかと、反省がないんですか。もし本人の言っていることが疑わしいならば、本人を偽証罪で訴えればいいんです。問題は、新潟地裁の事件はそこです。
  189. 福田幸弘

    政府委員福田幸弘君) まだ質問が続いておりましたら失礼でございますが、途中で。  いまの件は、これは裁判の過程で一人の証人がそのことを申したわけでございます。これは塚田議員おっしゃっているとおりであります。しかし、われわれとしましては、やはりこの署名、押印というものがあります以上、その内容は本人が考えておったことと違うことは、当然これはいけないことであるわけでして、十分その辺は確認をした上で、その答申書を参考人からとっておるわけであります。ところが、法廷になりましてから、その答申書はいま議員がおっしゃったようなことでつくられておると、こういう抗弁があるということをどう解するかということでありましょう。それについてわれわれは、それは適法につくられておると、こう思うわけでありまして、これについて、これはやはりその判決の中で、この名前は飛ばしますが、当公判廷における供述中、同人が作成した答申書に記載の通知は自己の記憶に基づくものではない旨、また真実に反するものである旨の供述部分、これはそういうふうに争ったというか、答申書を違うものだとこう言ったその供述部分は、右の者が作成した答申書の形式、内容それ自体と証人、それから、これは名前がございますが、証人の査察官の供述に照らし、措信しがたいと。要するに、この答申書が自分の言ったことと違うんだと、こう言ったことは信がおけないと、こう裁判所の方は被告側の主張を排斥しておりますので、これはやはりわれわれの答申書の作成は適法であったというふうにこの判決を受け取っておるわけでございます。しかし、今後十分にいろんな事件に対して手続を踏んでいくということは、当然のことであります。
  190. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 ますます納得いかないですね。事実があるんですよ、事実が。答申書が出た、その答申書についておった貸借等状況表というものは、これが脱税額を計算した根拠になるわけです。大体私が見たときに、割引をしてもらった人たちがこんなことを細かくよく覚えておったろうかなと不思議に思って見ておった。しかし、本人がそのとおりですと言って書いたんならば、それもまあ一つの証拠なんだ。いよいよ法廷で宣誓して証言をして、あなたはこれは自分でこのとおり考え、書きましたかと言ったらば、それは違いますと、さっき私が言ったように、このとおり書けと言われたんだと。そんな徴税行政をあなたの子分の末端がやっておるということを指摘して、あなたの――裁判官が何と言おうと、そんなこと関係ないじゃないですか。そんなこと平気でやってもいいとあなたは考えるのか。その点どうです。
  191. 福田幸弘

    政府委員福田幸弘君) これはその参考人がそのようなことを法廷で述べたわけです。しかし、答申書を作成する段階ではそういうことではなかったわけで、われわれは適法な答申書がつくられたということ、すなわち答申書をつくる際には、その内容についてよく話を聞いてそれを書くわけですから、おっしゃっているようなことがあるとは考えられません。それで、それが法廷に出ましてからそれを争った。それは本人がそういうふうに争うというのは勝手です。しかし、その前においてはそれは答申書として作成されておる。そして法廷において、それはそうでございませんと、こう言ったのも事実ではあるでしょう。それが本当の事実であるかどうかはまた別の問題です。したがって、そこで裁判官の方はそれを調べた結果、借り主等の提出した答申書等の証拠、参考人の公判廷での証言など審理の上、答申書に証拠価値ありとして被告側の主張を排斥しておるわけでありまして、したがって、そういうふうな法廷でその答弁書がおかしいものですと言った、そのことの事実は否定されておるというのが法廷でこれが確定されておるわけでありますから、確定されておることをここで、しかも立法府のここで議論をしてもこれはいたし方ない。もしそれに争いがあるなら控訴される話でございます。われわれとしては、これがそういうふうに確信持ってつくられたものが法廷で認められた以上は、われわれが間違ったということは申し上げられないわけであります。
  192. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 先へ進まなければならないですが、要するにいままでの結論は、私は契約書、それから解除の証書、そういう書類に基づいて議論をしている。それに対して税務当局の物の考え方は、そこいらを聞き回って聞いてきた話。まあ、そういうことがあっても別に私は差し支えないと思うけれども、それくらい意見の分かれのある問題になぜ決定的な処分をされたかということです。いま言うように、仮に原告にそういうあれがないとしても、もう一度取り戻しができない。できなければ、そのまま国に欠損をおかけする、そ この判断をどうしておられるのか。ただ自分の方でそう思ったらば、ぽんとやってしまう。それは権限はおありかもしらぬが、適当だと思いますか。
  193. 福田幸弘

    政府委員福田幸弘君) いまのは法沢に対する課税のお話でございますが、これは直税部長、先般の参議院大蔵委員会でもるる御説明し、さらに本日また御答弁申し上げておるわけでありますが、十分な調査をいたしまして時間がかかったと思うんですが、やはり本人から聞く、また金の出し入れ、全体の不動産の動き、これを見て調べた結果で、その課税が実質的に法沢氏に行われるべきであるということで課税をいたしたわけでありまして、したがって、やはり税収を正しく確保する、法律を正しく執行する上において、    〔理事和田静夫君退席、委員長着席〕 実質的な所得の帰属者に課税するのがやはりこれは正しいと思うんです。一方において、それの関連で税金を低くするために分散した税額をほかの人に頼んで出してきた方は、これは減額して調整して対応する、これは当然のことでありまして、だから、減した方はやはり減したこととして正しい。一方において正しく実質課税を行ったと、その過程においてこれは議論があるでしょう。しかし、われわれとしてはいろんな調査をしたあげく課税をしたと。しかし、減すものは減すと。それに争いがあるわけでありますから不服申し立てがございまして、異議審査をやって裁決があって、さらに現在塚田先生が弁護士としていま法廷でやっておられるわけでありますから、これは十分に法廷において議論されたらよろしい問題であろうと、こう思います。
  194. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 何か言えばすぐに裁判裁判と。私は、裁判になっておるからなるべく裁判には関係しない。しかし、少なくとも私がここで議論をするのはちゃんと証拠に基づいてやっておりますよと。それに対しての答弁は、あっちへ行って聞いてきた、こっちへ行って聞いてきたという話でしょう。その程度のことならば、なぜ決定的な減額更正をしないで暫時保留をしておかれなかったか。そうすれば、最終決定ができたときにどちらへでも動けるという。国税庁のやり方は。法沢がそういうものを売った事実がないと決定したと、私が見る限りは書類の上ではそのとおりになっています。契約が本人から直接興人へ行き、興人から本人に返り、本人から、私はその書類に基づいて議論をしている。考えようはいろいろあるんだから、自分の考え方を全くオールマイティーのように、おれの方がこう考えたんだから減額更正をしたんだ、どこが悪いんだと、そういう答弁でしょう。
  195. 福田幸弘

    政府委員福田幸弘君) やはり課税処分は一義的に行わなければいけないわけで、課税するかしないか、それはわれわれが調査して、われわれのやはり調査の範囲で正しいと思ったことによって課税処分をするわけですから、それがあやふやというわけにはいかないわけです。したがって、調査した結果われわれとしてはこれは課税すべきだとして課税をすべきでありまして、それとの関連、その課税がどうも自信がないということで一方の減額の方も宙ぶらりんさせると、しかも、それが裁判の確定まで還付の方をぶらつかせるということはできないわけで、やはりある段階で課税をしなきゃいけない、するかしないかしかないわけですから、行政処分で課税をする、そのときに同じく還付についても明確なことをせざるを得ないんで、その還付が、課税処分が自信がないからというか、確定されるまでの間それをつないでおくということはすべきことではないと、こう考えます。
  196. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 すべきことではないではなくて、そうすべきなんです。結果が出れば回復つかないようになってしまっておるじゃないですか。そんなことをどうしてそうすべきでないなんですか。
  197. 福田幸弘

    政府委員福田幸弘君) それは仮の問題でございますが、いま裁判にかかっておるわけでありまして、われわれとしてはこれは正しい課税処分だと、こう思って課税処分をして、そして、それとの関連で減額すべきものは減額したわけでありまして、これはそれでわれわれとしては正しいと思います。あと裁判がどうそれは決定を下すか、これは原告側のいろんな証拠が新たに出てきたり、いろんなまた説明があるでしょう。また、われわれはそれに対して対応していきます。しかし、これは裁判でそれは決定が出るわけですから、それはそれに従う、しかし、われわれが正しいとして課税処分をし、関連において減額を確定したということはそれなりに正しかったと、こう思いますから、あとは裁判の経過を待つしかないと、こう思います。
  198. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 会計検査院見えておりますか。――会計検査院にお尋ねしますが、こういうような、あるいはこれに似通った事例がございますかどうか。
  199. 佐藤雅信

    説明員(佐藤雅信君) お答えいたします。  ただいま突然の御質問でございまして、そういう似たような事例があるかどうかという具体的なものは持っておりませんが、本件につきましては、昨年先生からも御示唆ございまして、私どもも昨年の七月に大阪国税局の検査の際に、税務当局の処理の説明は受けております。  こういう事例があるかないかということですが、観念的に考えまして、更正決定した増差税額につきまして、異議申し立てなり審査請求、あるいは提訴というようなもので増減額とも相当少からぬ件数に上っていると思います。こういう事案につきまして更正決定した年度で徴収決定が行われておりまして、その年度を越えましてその更正決定が誤りであったということが確定しました場合には、確定した年度で徴収決定の取り消しが行われたり追徴が行われたりするということは、これは当然あるわけでございまして、先ほど来お話を伺っております、減額更正を直ちにやらないで、先生が保留をしておけばいいという表現を使われましたが、先ほど長官から御説明ありましたように、一つ所得の帰属をめぐる問題で二つの課税をしておくということは私どもは理解できないところでございます。
  200. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 それは初めに、井上兄弟が四十九年の所得として五十年の三月十四日に申告をしておったことが十分知られていなかった。その後いろいろな問題が起きて、いまの原告法沢に更正決定、これも先ほど申し上げたようにこんな理由で更正決定ができるんだろうか。なるほど本人は白紙申告だから、理由なんかつけなくったってどんな更正決定でもできると法的にはなっておるそうですが、したがって異議の申請を出したらば更正決定の理由は維持できないから、全部捨てちゃって、そうして取り上げたのが、この公社に売った土地は全部法沢が売ったんだという断定になった。しかしその断定になった基礎の書類、ここにありますが、私の目から見れば穴だらけだ。こんなものがよく日本の国税当局の目を通って、不思議がられずにすっすっといったなんてこと、私はこの前大蔵委員会のときにも言いました。一体不服審判所は何しているんだ。少なくとも税務署がやった異議決定が間違っている。私の目で見てここもおかしい、ここもおかしいでしょう。そんなものが不服審判へかかっても全然直らない。全部そのままでいっちゃうんだ。  それで、大体この一連の事件では、井上宗次、健二郎と同じ立場に立つ人間がもう三人おるんです。井上芳太郎、内田彦衛、井上兵左ヱ門、これらの申告。が一体どうなっておりますか。いまわかりますか。この間私は資料を要求したら、これは守秘義務で出されないと言って、とうとう拒否されてしまった。これは全く井上宗次、健二郎と同じ立場で、売った土地は、校舎敷地でなくて住宅建設、住宅造成用地なんだ。したがって土地収用法の恩恵は受けていない。同じ条件だから同じ条件の申告があるはずですな。それからその他のもの、法沢が全部自分で所得して、自分で売ったんだというものは、各、ここにさっき申し上げた興人から返ってきた名あての所有者がめいめい自分で申告をしております。学校、校舎敷地になった 人は当然に市の公社から公共用地の証明をもらっておって申告をしております。その申告書等の写しをどうか本委員会に提出してください。もし委員会に出せないなら私に内々見せてください。できますか。
  201. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) いまの御指摘は井上兄弟のほかに、何といいますか、法沢の所得認定に関連して処理すべき者がおったんではないかと、こういうお尋ねだろうと思います。私ども異議決定までの段階において、その両名以外の関係者についても逐一調査をいたしましてそれぞれ適正に処理をしたところでございます。なお、本件は現在再三申し上げておりますように京都地方裁判所で個別の課税処分取り消し事件として審理中でございますので、その中身にわたることにつきましては法廷以外の場で御提示申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  202. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 書類の件はどうなんですか、書類の件。
  203. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) これは現在京都地方裁判所で係属中の事件の内容そのものに関連をいたしますので、訴訟の法廷以外での御提示は差し控えさしていただきたいと申し上げたわけでございます。
  204. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 そうすれば書類はあるんですな。私はもう古いから処理してしまっておられるんではないかという心配を持っておったが、裁判では見られますね。
  205. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 当時の関係書類、裁判に必要なものは整えまして逐次御提出申し上げることにいたしておりますけれども、私ども関係者の範囲についてでございますが、税務署にも書類の法定保存年限というのがございますので、保存年限を経過したものは原本としてはお出しできない場合もあるかと思います。
  206. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 保存年限言われたって事件に関係あるものはそんな年限には関係ないでしょうが。事件が済むまで保存してあるのが。  まあしかし時間がありませんので一言、証券局長呼んでおりますので、証券局長おられますね。  先ほど私がお尋ねした千葉の株の事件で、これは記録を読んでみて両証券会社とも根強く本人が申告しようとするのをとめているんです。一体そういう点はどういう指導をされているのか。
  207. 水野繁

    政府委員水野繁君) 先ほどの先生の御指摘で、一つは黒川木徳証券の八日市場営業所のこと、もう一つは大和證券の千葉支店の件ということで相手方同じ取引先の話と承っております。  この件につきましてわれわれの方もずいぶん調査さしていただきました。一般的に申し上げますと、自己売買の状況についての売買報告書や受け渡し計算書、これは渡すように指導いたしておりますし、それからこの件につきましても、先生のお言葉にはございませんでしたけれども、相手が架空であったなりには生きているところは生かしておる、したがって架空というのは実名の架空を使っておりますので、そういう先には送っているようでございます。本来的に当然のことながら申告納税なんかについて当然協力すべきだし、今後ともそういうふうに指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  208. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、大変お忙しいようでございます、最近は。五月末のサミットを前にいたしまして、先般のワシントンでの七カ国蔵相会議を初め、何かとお忙しそうでございますが、きょうは実は私も質問の準備をいろいろいたしておりましたが、多少手違いがありまして大臣に通告してない問題が大分あるようでございまして、事務局で結構でございます。それで大臣、おわかりになるところは大臣からお答えいただいて、と思っております。  初めに、これは大蔵省といいますよりも本来ならば通産省が管轄でございましょうけれども、これからの質問のいろんな問題に多少関係がございますので大蔵省としてもつかんでいらっしゃると思いますが、対米貿易収支ですね、これはどなたかおわかりになる方いらっしゃると思いますが、五十七年度までそれぞれ毎年黒字を続けているわけでございますが、本年度はどういうふうな見通しをしていらっしゃるか、これおわかりになる方いらっしゃいますか。
  209. 松尾直良

    政府委員松尾直良君) 対米貿易バランスのお尋ねでございますが、御案内のとおり、五十六年度は百四十四億ドルのわが方の出超でございます。これは私どもの通関統計をべースの数字でございます。  五十七年度は百二十二億ドルと二十億ドル余り前年度に比べて黒字幅は縮小いたしております。この縮小いたしましたのは、輸出、輸入両面にわたって縮小いたしておりまして、輸出は約九%ほど前年に比べて落ち込んだわけでございます。他方、輸入の方も約五%落ち込んだわけでございます。中身を見ますと、輸出の落ち込みの中では鉄鋼の落ち込みというのが非常に大きいようでございます。それから輸入の落ち込みはトウモロコシ、大豆といった食糧費、農産物、それから石炭、こういったものがかなり落ち込んでおるようでございます。  五十八年度のお尋ねでございますが、こういう二国間の貿易バランスというものを計数的に予測をいたしておるわけではございませんで、基本的には貿易収支というのはグローバルで見るべきものであろうと思っておるわけでございますが、今後のこの貿易バランスを考えます場合には、世界貿易あるいは世界の景気の動向、それから原油価格の推移、さらには各国の物価動向、また為替レートがどういうふうに推移するか、こういった要素が複合しておるわけでございますので、私どもとして計数的に二国間の貿易収支の予測をいたしておるわけではございません。わが国といたしましては、御案内のとおり、何度かにわたって一連の市場開放措置をとってきたわけでございまして、こういった措置を実効あらしめるべく今後とも努力をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  210. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 本当は具体的に数字を言ってほしかったわけですけれども、それはいいでしょう。  これは大臣、この貿易、日米にしぼりましてこれから大臣と一遍やってお話お伺いしてみたいと思うんですが、特にこの日米間の貿易摩擦というのが先般の予算委員会を初め、相当大きな議題になっております。しかもいま局長の方からもお話ございましたように、市場開放措置もいろんな面で日本は対応してきているわけですね。それにもかかわらずやっぱりこの日米貿易摩擦というのはどうしてもいろんな問題、摩擦がいまだに消えない。また何か、たとえばサミットが開かれるなんということになると、その前にまたそういう問題が起きてくるんじゃないかという心配も現実に起きているわけですね。そういうふうな意味で、いま局長おっしゃいましたように、やっぱりこの貿易バランスというのはグローバルな見方で対応していかないといけないと、私もそう思いますし、皆さんもそう思っていらっしゃるんでしょうが、事アメリカに限ってはちょっと違うんじゃないかと。ここら辺のところをきょう大臣からちょっとお聞かせいただきたいんですが、大臣はアメリカも日本と同じような考え方を持っていらっしゃるとお考えなのか、アメリカという国はちょっと違う考えを持っているというふうにはお考えになっていらっしゃらないか、ちょっと一遍お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  211. 竹下登

    国務大臣竹下登君) アメリカ自身も、私は政府当局者として、いまいわゆる保護貿易主義が頭をもたげてくることに対しては大変に警戒をして、やはり自由貿易の旗頭としての物の考え方は基本的なべースにおいては私は堅持されていくであろうというふうな理解をいたしておるところでございます。ただ御案内のように、いわゆる二国間で見ました場合に、確かにアメリカから見て、日本というものとのバランスの問題については、アメリカも国会も存在しておりますし、また諸般の業界からそれぞれの議論が出てくる。それが国内経済に対して不況、失業等々の現象が生じた場合には、勢いその業界なり地域から見たならば、日本の貿易、対日貿易というものに大きくその原 因が存在すると。だからこの地域については、あるいはこの業種についてはいわば保護主義的な考え方が台頭してくる可能性ははらんでおると。したがって、絶えずこれに対しては、わが国のいわゆる市場開放問題についての積極的な姿勢と具体的な措置に対して、相互理解を深めておかなければならない問題として基本的にはとらえていくべきものではなかろうかと。しかし、基調としてはアメリカ自身がやはり自由貿易のいわばチャンピオンであるという認識は存在しておるというふうに理解しております。
  212. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは局長で結構ですが、局長、実際問題として、これは仮定の問題ですからお答えにくいかもわかりませんが、たとえば長年にわたりまして対米貿易はずっと黒字が続いているわけですね。これをいわゆる完全にバランスしたとしますね、そういうふうになっても、日本とアメリカの貿易摩擦というのは消えないんじゃないかと、こう私は思うんですけれども、どうお考えですか。
  213. 松尾直良

    政府委員松尾直良君) 大変むずかしいお尋ねでございますんで、若干個人的な見解になるかもしれませんが、御容赦賜りたいと思うんでございますが、一体貿易摩擦の原因がどこにあるのかということの考え方にもよってこようかと思うんでございます。これはいろんな要因が確かに考えられるわけでございますけれども、一番大きな要因と申しますか、ただいま大臣お答えしましたように、アメリカの貿易収支が大きな赤字の中で、その主要な部分、日本とのバランスが余りにも大きな赤字であるということが一つあろうかと思います。それからまた、アメリカ国内におきましていま大きな失業問題があるわけでございます。この失業の要因というものは必ずしも貿易の問題だけから出ておるとは考えておりませんけれども、個々のアメリカの産業なり場所によりましては、日本からの急激な輸出のせいだということはとかく言われがちであると。そういった大幅な失業の存在と対日貿易赤字が非常に大きいということが、これが貿易摩擦の大きな要因であるということは、これは否定できないんではなかろうかと。  ただ、そのほかにもいろいろな要因が考えられるわけでございまして、非常に広い意味で申し上げますと、前々からよく言われますパーセプションギャップと言われるような、日本の実情に対する誤解から来る問題もいろいろあろうかと思うのでございます。そういったいろいろな動きの中で、アメリカ国内でどうしても保護主義の動きというものが非常に強く台頭してくる。そういたしますと、わが国といたしましては自由な貿易体制ということに日本の経済というものは非常に依存しておるわけでございまして、何分、資源のほとんど、資源エネルギーのほとんど、あるいは食糧の相当部分というものを輸入に依存せざるを得ない。そうして、加工した物を輸出をするということによってそういう物を輸入する外貨を獲得していくということは日本経済の宿命なわけでございますので、自由貿易経済体制の維持ということが日本にとって死活問題である。そういった中で、とかく日本は公正なことをやっていないんじゃないかというような声、これは現実にそうであるというよりはいわゆるパーセプションギャップの面もいろいろあろうかと思うんでございますけれども、したがって、日本は、フェアで自由な競争をするんだという姿勢、またその実績というものをこれ確保し、かつ、それを明らかにしていくことが必要であろうかと思うのでございます。  ただいま先生の、その仮定の問題として、貿易バランスが仮に均衡しても摩擦問題というのは残るのじゃないかというお尋ねと私なりに御質問を理解をいたしますと、つまり、現在の貿易摩擦の大きな要因である二国間バランスというものは仮に解消しても、なお残るものは、先ほど私が申し上げましたようなパーセプションギャップのようなものはなお残る可能性があるわけでございまして、先生のおっしゃった意味はそういうことではなかろうかというふうに理解をしたわけでございますが、これまた先生御案内のとおり、最近は日本の産業政策などにも誤解に基づく批判がいろいろあるようでございますが、こういった誤解を解いていくということがやはり今後とも必要なんじゃなかろうか。大変むずかしいお尋ねでございまして、余りお答えになりませんかもしれませんが、そのように考えておるわけでございます。
  214. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 おっしゃる意味よくわかるんです。私が言わんとすることも局長はよくとらえておっしゃっているわけですが、実際問題として、私たち、日米貿易につきまして当委員会でも大分議論しましたし、予算委員会でもずいぶん議論してまいりました。その都度、アメリカからの要請にこたえて、それこそ市場開放措置というものも第一次、第二次を初め、ずっとやってきました。ところが、幾らそういうことをしても対日貿易の批判というものはどうしてもあるわけですね。これはもっと言いますと、日本にアメリカの議員さんがお見えになって、私たちそれぞれ委員会に分かれて議論したことがありますけれども、あのときの様子をじっと見ておりましても、要するにあの人たちは、私たちと同じテーブルに着いて議論をしたわけですけれども、たとえば鉄鋼出身の人は初めから終わりまで鉄鋼のことを言っているわけですね。農産物の人は初めから終わりまで農産物を言っているわけです。ですから、私は貿易摩擦そのものについての基本的な考え方が、何というか、われわれと同じテーブルに着いていないのではないか。大臣、たとえば農産物の問題一つにしましても、たとえば牛肉の問題がこれ実際あるわけですね。特に牛肉とオレンジですね。これは前前から問題になっているわけです。これは牛肉、オレンジとも、金額にすればそれは日本貿易全体からすれば知れているわけです。わが日本の国としてはそれは知れておるし、日本の農業政策の上からもできる限りのことはすると一生懸命やっているわけです。ところが、幾らやっても貿易摩擦のいま局長がおっしゃった主要部分はいわゆる対日赤字だと、こうおっしゃっているわけです。その問題がたとえ解決したにしても、たとえば選挙もあることだしいろんな問題があることだから、特にミカンの問題ならミカンの問題を向こうは解決しないと、たとえば牛肉なら牛肉の問題を全部開放してもらわないと、それを開放するまではアメリカの議員はそれをかっかかっか言う。そして、いまおっしゃった保護貿易主義とかいろんな問題が台頭してくる。そういうふうになってくると、よく考えてみるとこれは日本とアメリカの農業政策の上のいわゆるそれが正面衝突しているであって、いわゆる貿易摩擦というふうな問題とは多少これ次元が違うのじゃないか、そういうふうに考えられないこともないわけでありまして、そういうふうなとらえ方というのは、一遍われわれもアメリカ人は一体どう考えているのか、そこら辺のところはやっぱり向こうから市場開放措置を、いろんな措置を言ってまいりまして、私たちもいろんな角度で大蔵省当局も検討して、それこそぎりぎりのところまでやってこられたと思うのです。そういうふうな意味では、これは実は大臣、アメリカへどんどん行かれてそういうふうなことも具体的にお話聞いていらっしゃると思うのですが、そういうふうな考えも多少はあるのじゃないか。そういうふうな問題を解決しない限り対米貿易摩擦なんというのはなかなか解決しない問題じゃないのか。たとえそれがバランスしたとしてもそこに問題が残るのじゃないかなという気がしているわけでありまして、こういう問題について一遍大臣のお考えをお聞かせいただいて、この問題はまた総括質問のときにそれぞれ専門の大臣もおいでいただいて議論をしてみたいと思いますが、最後にこの問題についてのお答えをいただきたいと思います。
  215. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 峯山先生の御意見、私も同感の部分がほとんどでございます。  われわれも、あるいは議員交流の面で参りましても、実際問題ワシントンで話しただけでは解決しないじゃないか。それぞれのローカルの利益を代表して国会議員お出になっておって、なかんずく二年が任期でございますから、毎日選挙運動を やっておると、こういう感じもないわけでもない。そこへもってきて大変に党に拘束されるとかいうような点が日本とは緩やかにできておる。そうなればまさに自分のローカルの問題を直ちに質疑として展開し、あるいは法律案として提示するということも非常に容易な関係にありますので、まさにその意味においては議員交流もそれぞれのローカルのカウンターパートをつくってやらなきゃならぬじゃないか、こういうような意見もよくあるわけであります。  そしてもう一方、わが国は自由貿易によって立たなければ立っていかないという産業構造、宿命を帯びておる。いろいろ考えてみるときに、さればアメリカから買うものがございますかと、こういうことになると、なかなかその問題もむずかしい問題がある。そして、さらに深い議論をする人は、これはたとえばオレンジにいたしましても完全な自由化をやった場合は量、質ともに良好なブラジルの方が世界の市場を制圧してしまうのじゃないかとか、あるいはまた牛肉にいたしましても、その本当の意味においてはアメリカも全体から見れば輸入国でございますから、実際問題、豪州、ニュージーランドにやられてしまうのじゃないか、あるいは落花生の問題は中国にやられてしまうのじゃないか、だから、確かにグローバルな国際貿易の中で考えますと、当面まだ数の問題で譲歩し合った方がいいのじゃないか、こういうような議論も当然出てくるわけであります。したがって、私はいわゆる二国間貿易の問題につきましては、ある意味においてはエンドレスにこの問題は続いていく問題ではないか、それだけにその都度誤解を生ずるような問題に対しては的確な市場開放措置等、またわが方でどうしても困難な問題についてはやはりそれを正確に説明していくというような努力が必要ではなかろうかということを、絶えず感じておるわけであります。  したがって、本院においてなされました議員間のディスカッション、それにとどまらずもっともっとローカルな問題についてもそれぞれのカウンターパートがこれに対して議論をして、そして、双方の理解の度合いを絶えず進めていくという努力をしていなければ、小範囲なりあるいは一つの企業なりにおいても保護貿易主義が台頭していくことは総体的にはいいことではございませんので、そういう継続的な努力がこれからも必要じゃないか、こういう感じが私も一層しておるところでございます。
  216. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから大臣ですね、サミットに向けての話が最近は非常に多いわけでございますが、大臣もその準備で追われていらっしゃると思いますけれども、今回の第九回のサミットにおきます会議の主要テーマ、これは大臣はどういうふうに考えていらっしゃるのか、どういう問題がこのサミットの中心テーマになるとお考えなのか、これはちょっと一遍お伺いしておきたいと思います。
  217. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはサミットのテーマは、今度はいわゆる議長国でありますアメリカ、これからいろいろ準備されていくわけでありますし、それは外交ルートを通じてサミットの主要テーマというものは煮詰まっていくものであろうというふうに考えております。したがって、今日の時点であらかじめ予見することは非常に困難な問題であります。  そうして先般の、私は数日前マニラにおいて、それから一週間前ワシントンにおいて、私どもはカウンターパートと言えばレーガンさんじゃなくてリーガン財務長官の方になるわけでございますが、いろいろ意見交換をいたしましたが、やはりその意見交換の中で感じましたのは、レーガン大統領は非常に何と申しますか、インフォーマルとでも申しましょうか、公式な議題を決めてという感じでなく、自由なディスカッションの中に首脳国の相互が理解を深めていくということを欲していらっしゃるような感じがいたしました。  私ども分野で申しますならば、やはりいわば南北問題が一つございます。なかんずく債務累積問題、そしていま一つは何としても先進国間の通貨の安定であろうと思うんであります。しかし、通貨安定問題につきましては協調介入の必要性等かなりの限定はございますけれども、おおよその合意に達して、これを首脳会議で報告するだけの七カ国蔵相会議のコミュニケもつくることができましたので、これらは、今後は技術的な問題が多くございますから、これについては必ずしも大きな議題にはならないであろう。その他いま一つ経済運営の問題、これは私の範囲でございますが、があるわけでございますが、経済運営につきましては、まあいわゆるインフレ征伐の方から申しますと日本あるいは西ドイツ、アメリカ、イギリスぐらいの順番で、いってみればインフレが鎮静化の方向に、日本ほどじゃございませんけれども向かっておる。フランス、イタリーはそういう状態にもございません。しかし、大筋で話が行われるであろうと思いましたのは、やはり特定国に機関車的な役割りを演ぜしめようというかつてのありました議論ではなく、それぞれの国がその自主努力によりましていわばインフレなき安定的成長と、そして金利に大変影響をもたらす財政赤字の縮小に対してそれぞれがある程度調整のとれた経済運営、そしてその中に果たすべき財政のあり方というようなことが大筋の議論になるではなかろうか、こういう感じがいたしまして、なかんずく首脳会議のテーマであります外交問題ということになりますと、私が申し上げる範疇の外にある問題でございますので、この際は私のカウンターパートであります七カ国のそれぞれの大蔵大臣との個別会談の中で感じました意見を申し上げることによって、お許しをいただきたいと思います。
  218. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これも多少大臣の管轄から外れるかもしれませんが、いつもサミットが開かれる前に、四極賢人会議というのが開かれますね。この四極賢人会議の日本の会議が、先月の二十六日の日に、総理に対しまして日本の見解をまとめて提出したという報道がなされているわけでありますが、これは特にその中で軍縮の問題が書かれているわけでございますが、これは大臣御存じでございますね。
  219. 竹下登

    国務大臣竹下登君) わが方、大来元外務大臣が、このいわゆるワイズメングループの協議に参加しておられるわけでございますが、その中で直接私に関係のありますのは、米欧日三極によるところの通貨安定の問題についての御提言が一つございます。これはュニークな発想でございますが、現実この通貨安定基金を設けるというようなことになりますと、その規模が余りにも広大、気宇広大とでも申しましょうか、そういう感じがないわけでもございません。言ってみれば、われわれとしては、先般一応の合意を見た、各国がそれぞれの経済政策というものの調和をとることを第一に置いて、そして介入というものを、協調介入も含めて、適時適切にやっていくということで対応すべきではないかというふうに思っております。  それからもう一つは、いわゆる軍縮の促進についての御意見が述べられておるわけでございます。これは要するに、今日まで日本の、結果として高度経済成長いたしまして、いまの場合、これも結果として日本人の勤勉性というものに支えられて、確かにどこの国に比べましても、物価といい失業率といい、あるいは低いなから三%台の経済成長率を維持し続けてきたところ等は、確かに他の国から見れば大変な驚異の的でございましょう。そして、それだけに議論の中で出てまいりますのは、いわゆる軍事支出が結果として少なかったから日本はそういうことができたんじゃないかと、こういう議論もあるところでございます。確かにこの軍事費というものは、いわばある意味における経済の競争原理の伴うものとかというようなものではございませんので、しかし全く関係ないわけじゃございませんが、経済発展と軍事費というような角度から議論される面もございますので、大きな見地から申しますならば、このいわゆる大来提言とでも申しましょうか、そういう提言というものは確かに一つの当を得た御指摘であるというふうに理解しております。
  220. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣がそこまでおっしゃっておりますので、重ねて聞く必要もないわけでありますが、特にこの提言の中で、軍縮という問題非常に大事な問題であります。特にこの提案の中で、「歯止めのない国防支出は景気の回復を阻害し、世界経済の重圧になっている」というくだりがありますね。それからもう一つは、これと同じくだりで、「軍拡から軍縮へ」という提案の中で、「軍事支出はその性格上競争原理が働かず、市場経済、自由経済になじまない。米国では構造的赤字の大きな部分を占め、途上国にとっては軍事費の負担は一層大きい」と、こういうふうなくだりがあるわけでありますが、いまこの面についても、これは改めて大臣のこの見解に対するお考えをお伺いしておきましょうかね。
  221. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、わが国経済は戦後の荒廃から立ち直ったわけでございます。それで、一九六〇年代には、ほぼ一〇%を超える実質成長を遂げてまいりました。それにはさまざまなことが考えられるわけでございますが、やっぱり私は、一つには、これは先ほども申しましたように、他のどこの民族に比べても、教育水準が高くて勤勉であるということだと思っております。それから二番目には、世界平和がおおむね維持されて、いわば自由な貿易、資本交流の中で順調に発展してきたと。そして三番目には、国内においても、自由主義を基本とする経済体制が、そうして適切な経済運営とでも申しましょうか、国民のそれも選択でありますが、それが機能してきたことなどが挙げられるわけでございます。したがって、やっぱり民間の活力というものが今日の順調な発展を遂げた最大の要因であると思っております。  したがいまして、端的に防衛費ということになりますと、これは防衛の必要性そのものを私どもは認めております。そうしてその予算につきましては、そのときどきの経済財政事情等を勘案いたしまして、国の他の諸施策とのバランスの上に立って今日編成し続けてきたわけでございます。  したがって、軍縮という問題については、私がお答えする範疇の外にあろうかと思うんでございますけれども、今後とも民間部門の活力というものに最大限の期待を持ちますと同時に、適切な経済、いわゆる財政運営もそれに沿っていかなければならぬ課題である。そうして、政策選択の問題ではございますが、防衛経費等につきましても、そのときどきの情勢に応じて最小限のものを計上して、国民の理解を得ていくということに基本的にはあり得るではなかろうかと思っております。
  222. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣ですね、確かに大臣のおっしゃるとおりでございまして、日本人が勤勉であったということも確かにあるでしょうね、大臣先ほどおっしゃいましたが。ところが、アメリカ人はアメリカ人で、アメリカ人もまた勤勉だと、こう思っているわけですね。  たとえば、これは私の手元に、ガルブレイス教授の「軍拡競争と経済体制」という論文のコピーを持ってきているんですが、その論文の中に、いま大臣がおっしゃったことと同じことでありますが、「近年、アメリカの競争力が西ドイツや日本と比較して、低下し続けていることは周知の事実であろう。だがアメリカ人の知性は決して、ドイツ人や日本人よりも劣ってはいない。原材料やエネルギー資源も劣るどころか、むしろはるかに恵まれている。労働者が勤勉でないという証拠もない。」と、こうありまして、ずっといろいろあるのですが、いずれにしても向こうは向こうでちゃんとしておると。これだけ落ち込んできたのは何でかと、その理由をその次に書いてあるわけでありまして、それはやっぱり、「アメリカは一九七〇年代の一〇年間に、国民総生産の五パーセントから八パーセントを軍事目的に使った。西ドイツが同じ期間に使った軍事費は三ないし四パーセントで、どの年をとっても、たいていはアメリカの半分程度にすぎなかった。日本は毎年、GNPの一パーセント以下しか軍事目的には振り向けなかった。」と、それがこの落ち込んできた原因だと、こう言っているわけです。  しかし、またその一方で、「軍事費がいかに他の公共の必要を満たすべき財源を吸い上げていたかについては、これまでも時折は、たとえば「ペンタゴンが使う金のほんの一部を回すだけでも、都市の荒廃をどんなに防げるか」とか、「大都市の青少年に職を与えるのに役立つか」などという形で言及されてきた。しかし、軍事支出がどれほどまでにアメリカの産業を衰退させたかについての指摘は非常に」少なかったと。それで私はこれから指摘するということで論文がずっと続いているわけであります。  いずれにしましても、いわゆる軍事予算というものがその国の興廃に非常に大きく影響しておるということは、これはもう間違いない事実だと思いますし、また賢人会議での指摘であります歯どめのない国防支出は、景気の回復を阻害し、世界経済の重圧になっているという指摘も、これはある面では一致しているわけであります。  そこで、この問題については、先ほどから大臣からも御答弁をいただきましたので、これはいいといたしまして、私がびっくりしましたのは、先般の憲法記念日の論争の中で、テレビでもずいぶんやっておりましたが、日本がGNPの一%以下で抑えられてきたというのは、やっぱり平和憲法の果たした役割りというのがある程度はあるんじゃないか、そういうふうに私は考えるわけであります。  御存じのとおり、一九六〇年代に日本のGNPは世界の全体の三%ですね。現在は、それが一一%にも伸びているわけでありまして、こういうふうに日本の経済が非常に強くなってきた要因の一つに、やっぱりある面では日本国憲法の果たした役割りというのがあるんじゃないか、こういうふうに考えているわけでありますが、この問題についてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  223. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、個々それぞれによって認識の差はあるといたしましても、基本的にいわば私は財政当局の立場からこれを申してみますならば、昭和五十一年でございましたか、国防計画の大綱、それから当面一%以内ということを閣議決定をいたしております。それは、やはり今日まで私は精神的にも実質的にも一つの大きな歯どめになったと思っております。  そのことが、私も先月二十五年の表彰をいただきましたが、ちょうど二十五年前の予算に比べてみまして、総予算で約四十倍、予算規模でございますが、そして福祉予算が約七十七倍でございましたか。防衛費は十八倍程度であったと思います。やはり、そういうものも一%ということが私どものこの予算編成に当たります基準として存在しておったということも、確かに他のいわゆる暮らし、そしてもちろん経済運営そのものにも影響を与えた、歯どめになったという認識は、濃淡の差は別といたしまして私も持っております。
  224. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そういうふうな中で、私たちは確かに大臣おっしゃるように濃淡の差はあると思いますね。  ところが、学者の中には、余りもう全く役に立っていないという人もおるんですね、本当に私はびっくりしたんですけれども。それはそれとしまして。  そこで、この世界のGNPの一一%を占めるに至ったわが国経済、これは世界的に、国際的にといいましょうか、果たす役割りというのはやっぱりあると私は思います。  そこで、鈴木内閣の時代には、世界のGNPの一一%も占めるに至った日本が、いわゆる国際的にどういうふうな責任を果たしたらいいのか。この問題について、特に軍縮による余剰はとおっしゃいましたね、余剰は経済再活性化に回すべきだと、そういうふうな意味の御発言もあったわけでありますが、これは中曽根内閣の大蔵大臣としましては、いわゆる日本の国際的に果たす役割りという問題について、これはどういうふうにお考えなのか、一遍これもちょっとお伺いしておきたいと思います。
  225. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、やっぱり端的にひとつ申しますと、国際的に果たすべき役割りと いうのは、いま峯山委員いみじくもおっしゃいましたように、いわば世界のGNPの一一%、そしてアメリカと足しますと三十数%になって、ドイツを入れれば四〇%、サミット参加七カ国で恐らく六〇%弱、こういうことになろうかと思うんでありますが、なかんずく私は、国際的に果たさなければならない役割りに南北問題ということが一つあろうかと思うのであります。すなわち、経済協力問題、予算で申しますならばそういうことになります。  これは防衛費を上回る対前年度伸び率、こういうことになっているわけでございますが、いま世界におよそ四十五億八百万の人間がおりまして、それの五七・六%がアジアにおります。約四十五億でございましょう。それの中で一億一千八百万の日本のGNPが、日本を除いたオールアジアのGNPよりもまだはるかに大きいわけでございます。したがって、アジア開発銀行はまだ中国が入っておりませんから、十三億ぐらいになりますか、その程度でございますけれども、その中国を含めたオールアジアで見ましても、GNPは日本がまだはるかに大きいわけでございますので、アジア地域に対して果たさなければならない役割り、ある意味においてはそれによって購買力もつけば、対米、対欧経済摩擦等もこれは少なくなっていくことでございましょうし、そういう役割りは一つ存在すると思っております。  そしていま一つは、この防衛の問題になりますと、これも私が答えるのは必ずしも適切かどうかはわかりませんが、政治家個人として申し上げますならば、いわば日米安保条約の中において果たすわが国の役割りというものは、それなりの役割りではなかろうかと思っております。これは世界経済全体の問題とは必ずしも合致する問題ではございません。  一例を端的に申し上げますと、いまペルシャ湾で日本へ大部分参ります油を運ぶ船を守っております第七艦隊の水兵さんの年俸は百六十万円でございます。ただし、これはレート二百三十五円の計算をしてみました。そうして日本の海上自衛隊の二等水兵さんはそれよりも三十万円多い百九十万円というようなことに率直に言ってなっております。ただ、軍曹さんのところから向こうがずっと多くなってまいりますけれども。まあいろんな問題でやはり果たさなければならない一つわが国の置かれた立場というものもあろうかと思います。これは世界経済全体の中の問題とはいささか趣きを異にする問題でありましょう。  そうしていま一つが、いま再活性化の問題でございますけれども、この再活性化の問題というのは、いま世界の同時不況というものの中で日本が牽引車の役割りを果たしていくという、事ほどさように大きな期待というものは、私は先進諸国の中ではいささかは低くなっておるところではなかろうか。まずはこの開発途上国等々の問題にいたしましても、原油価格が下落すれば、それだけ向こうのいわば輸入は減ってまいります。そういうような点については、南北問題はいま少し中長期的な視点に立って経済協力等においてその役割りを果たして、当面は日本の経済そのものが直ちに役割りを果たすだけの大きな牽引車の役割りを果たすことは困難ではなかろうか。しかしながら、その中にありましても、内需を中心とするインフレなきなだらかな景気回復というものに努めながら、いささかでも世界経済全体の活性化の中に果たしていかなければならない役割りはある。  いささか軽重の度合い、大小取りまぜてお話をいたしましたが、私の所見を申し述べた次第であります。
  226. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひそういう面では南北問題を初め、特に人口問題等、重要な問題がありますし、そういうところに力を入れていただきたいと思います。  これはそういう主張とかそういう考え方は何も野党の議員だけが持っているんではありませんでして、自民党さんの中にもそういうお考えを持っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるわけですね。実はここに石田博英さんのこれは論文があります。これは「国際的責任を果す道」という雑誌「世界」の八二年五月号でありますが、それによりますと、これも大臣、ちょっとお聞きいただいて大臣のお考えをおっしゃっていただきたいと思っておりますんですが、これは全部読めませんので、多少関心のあるところだけ読んでみますが、防衛問題と絡みまして、「軍事支出拡大を求めるアメリカの圧力は、いいかえればアメリカ製兵器の輸入拡大を求める圧力に他ならない。この圧力に屈することは自他を不幸な結末に導くものでしかない。日本はアメリカにとってすでに第一級の武器輸出市場である。日本がさらに大きな武器輸入国となることは、アメリカの軍需産業をはじめ産軍複合体勢力にとっては、たしかに喜ぶべきことかもしれない。しかし、果してそれがアメリカの民需部門の活性化、輸出競争力の強化に真に資する道であろうか。むしろ逆であろう。」と。それでちょっとありまして、「日本は、アメリカ製の、「安保タダ乗り論」や「ソ連脅威論」に逃げまわるのではなく、軍縮の促進こそがアメリカの経済的実力と国際政治への道徳的影響力を回復する道であることを逆提案していくべきなのである。」と。石田さんの提案であります。そして、最後のところに、「軍事支出の拡大が決して日本のとるべき国際的責任でないことが明らかであるとすれば、当面の具体的選択経済援助の飛躍的増大しかない。日本の政府援助額は、米、仏、西独に次いで四位だが、そのGNP比率は〇・三%余りで先進国中でも最低に近い。政府は五年間での倍増を公約しているが、さらにこの期間を短縮すべきである。またそれは可能である。防衛費は五七年度一八六〇億円(七・八%)の伸びであったのに対して、経済協力費は率でこそ一〇・八%であったが、額では四六〇億円の伸びにしかすぎなかった。もし防衛費を五%程度伸びに抑え、その分を経済協力費に回したとすれば一〇〇〇億円以上の伸びとすることができ、援助額はアメリカに次ぎ世界第二位になったであろう。経済援助の増額については、防衛費とちがって、はるかに広い国民的合意が存在している。」と。これはずっと続いているわけでありますが、これ論文の趣旨、読んでおりますとわれわれの考えと全く変わらぬわけでありますが、これは大臣、いかがお考えですか。
  227. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 現実問題といたしまして、いわば東西両陣営の力の均衡の中に今日のこの平和が保たれておるという認識も私は否定するものではございません。しかしながら、わが国のとるべき立場として、いまおっしゃいましたいわゆる軍縮方向への志向ということについては、私も全く異を挟む考えもございません。同感でございます。  そうして、南北問題、いわゆる経済協力問題でございますが、これについては、やはりすでに議了いただきました五十八年度予算でも防衛費を上回る伸びを示したということ。そして、ODA倍増の問題につきましても、ことしの伸び率そのもので考えますと、これはなかなか困難な点もございますけれども、それも今後の経済情勢の推移の中で、やはり国際的に宣言をしました一つの方針として貫いていかなければならない問題である。  そして、私は国際会議に出て、この開発援助問題に関していつも感じますことは、たとえば昨日帰りましたが、アジア開発銀行におきましても増資問題等々が起きますと、アメリカはときに約束をしてもそれが国会の方で否決されて、余りいいかっこう、表現は適切じゃありませんが、いわば立場上余りいい立場でないような立場をときにおとりになるのが最近の傾向じゃないか。  ところが、わが国国会におかれましては、それこそIMFの増資であれ、あるいはアジア開発銀行の増資であれ、世銀の増資であれ、そうしたものについては与野党のまさに合意のもとにこれらを進めていただけるという環境にあるということは、日本のコンセンサスというものが、やっぱり日本の国際的に果たすべき役割りの中で、経済協力問題が大きな比重を占めておるという国民的コンセンサスのあらわれではないかというふう に、むしろこの種の会議に出ますと私どもはある種のひそかなる誇りとでも申しましょうか、そういうことを感じながらこの会議に臨むわけでございます。  ときに私も感じますが、たとえばそれぞれの国際機関にかつての日本の経済力のままに加盟いたしておりますと、その出資比率は決して第二位ではございません、アジア開発銀行は別といたしまして。しかし、増資があるごとに日本に対して期待される。いささか自己矛盾を感じますのは、とは言いながらフランスを抜かしちゃいけないというような気持ちも幾らか先進諸国の中にもまだあるという矛盾も感じながら、国会の御支援というものがございますだけに、私どもの立場が正々堂々と主張できるということは、たまたま私は大蔵大臣でありますが、どなたがこの職におつきになっても、日本の国会は、ほかのことは別といたしまして大変いいなあと、こういう感じかするわけでございます。
  228. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、確かにおっしゃるとおりだろうと思います。  そこで、確かにアメリカの上院の予算委員会は国防費の伸びをレーガン大統領提案の一〇%から五%に圧縮した八四会計年度第一次予算決議案というのを先般本会議で可決したという報道があるわけでありまして、この五%圧縮によりまして、これはアメリカ政府は日本に対してさらに防衛力増強の圧力が強まるんじゃないかと、そういう可能性があるということはもう一般的にも言われておりますし、当然そういうようになるんじゃないかと私たちは心配をしているわけであります。  当然こういう問題は大蔵大臣が答弁するんではなくて、防衛庁長官なり、それなりの人が答弁すべきでありましょうが、これは五十九年度、来年の予算をいま時分議論するというのはおかしいと思うかもしれませんが、非常に大事なことでありまして、米国側からのいわゆるそういうふうなプレッシャーというのは、いろんな国際会議、いろんなところを通じて、それこそ各個撃破的にやってくるんじゃないかと実際思っております。こういう問題については大臣はどういうふうにお考えなのか、一遍この点もお伺いしておきたいと思います。
  229. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、やっぱり予算編成の最終的責任は政府一体の責任で編成いたしまして、国会の御議論を得て衆参両院を議了していただいて初めてその効力を発生するものでございます。その前の段階におきましていわば予算編成作業が行われるわけであります。大蔵大臣はいわば国庫大臣でございますので、各省庁のそれぞれの予算要求に対する調整行為を行うことによって、大蔵原案を作成する努力をしなければならないわけであります。したがって、この防衛費の問題につきましては、やはり今日までのわが国政府の方針に基づきまして、いわば他の予算との調和をとりながらそのときどきの経済財政事情に応じて最小限必要なものを編成していくという考え方の上に立って、まだシーリング枠等決めているわけのものではございませんけれども、いわゆる聖域とするというような考えで臨むべきものではないというふうに考えておるところであります。
  230. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣ですね、これはすでに大臣もよく御存じのことでありまして、私がここで改めて言う必要もないとは思いますが、これは非常に予算編成の中で防衛予算についてのいろんな問題というのはずいぶんいろんなところで言われ、書かれ、この議会でも相当議題になっているわけであります。  防衛庁長官は、この防衛予算をこれだけ獲得したことについては、わが国の独自の自主的判断に基づいてこれだけの予算を獲得したという、それはもう全く何といいますか、わが国の独自の自主的判断に基づいてと、わざわざこれだけ言わないかぬということ自体がおかしいんでありまして、本当は。これは防衛庁の「防衛アンテナ」という新年号にでっかい字で書いてあるわけです。実際はこれと相反しまして、私の手元にアメリカ議会の昨年の「米議会調査局「日本の82年度防衛予算」」という調査局の報告があるわけであります。その報告、これ大臣も御存じだと思いますが、ポイントのところだけ読んでみたいと思います。  「米国はアフガニスタンへのソ連軍侵攻までは、こうした方針を容認してきた。」、これはいままでのいろんなことを言っているわけです。  「しかしアフガン、イラン危機以後は、米軍を西太平洋からインド洋へ動かさなければならない事態に対応する必要が出てきた。現に特定の海軍力は八〇、八一年を通じてそのように配備されることになった。」、要するに米軍の軍の配備を言っているわけですね。  そこで、「このためカーター前政権とレーガン政権は二代にわたって日本に〝真空〟を埋めるよう一致して求めてきた。日本がより早いペースで軍事費支出を増大するよう圧力をかけてきた。そしてレーガン政権は、自衛隊が「日本からフィリピンへ、フィリピンからグアム島へ、グアム島から日本へ」という線でつながるコンパス状の海域における海上防衛、防空の責任を果たすための増強を行うよう要請した。」、これはもう従来からシーレーン防衛とかいろいろ言われておるやつであります。ちゃんときちっと報告をしておるわけです。しかも、この報告の中には、日本に対して圧力をかけ、要請した、こうなっているわけです。  しかも、「日本政府はこの結果、社会保障、文教、公共事業とならぶ「四大政策」の中では依然として防衛費は最も小さく抑えられているが、他の政策項目の伸びが低く抑えられている中で、防衛費は七・七五%の高い伸び率となった。このことは他の国内政策との比較において日本政府が防衛政策を優先させるという過去と違った八一年度予算以来の方針を続けたという意味で特異なものといえる。」と、これはずっといろいろありまして、要するに米国の圧力があって結局実際に日本はその防衛力の増強に努力をし、かつ予算もふえてきたと。  現実に私の手元にあります防衛予算伸び率につきましては、これも私が説明するまでもなく、五十七年度から一般会計予算伸び率を上回っているところからも現実の問題として明らかであります。  したがって、米国側から言えば、日本にかけた圧力が効いたということになるわけでありまして、決してこれ、防衛庁長官が言うように、自主的判断でふやしているという――それもそう言わないかぬわな、実際。防衛庁長官が、向こうから圧力かけてふえたなんて、そんなこと言われしまへんけれども、実際は、アメリカ側から言えば、もう圧力をかけたとおりになったと向こうは見ているわけでありまして、非常にこれはもう記述の中でも明確に一致いたしているわけであります。  したがいまして、先ほど大臣もおっしゃいましたが、これを最後にしたいと思いますが、来年度の予算編成、大分先の話でありますが、当然これはシーリングもこれから決まることであろうと思います。そういうような中で防衛関係費をやっぱり聖域扱いにしないで、しかもこの防衛関係費をふやすということは、やはり経済発展あるいは経済のいろんな原理から見てもむずかしい問題であるという議論は現実にあるわけでありまして、そういう点を含めまして、さらにもう一点言いますと、GNPの一%以内にやっぱり抑えるという決意は政府としても大事じゃないかと思いまして、そういう点を含めまして、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  231. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに私どもは国の他の諸施策との調和を図りながら、真に必要な最小限の経費を計上しておるというふうな理解の仕方を持っております。私はどっちかと言えば、予算のいわば大蔵原案に至ります調整権という立場でございますので、防衛政策そのものに対する論及をいたしますことは差し控えることにいたしたいと思いますが、したがいまして、五十九年度の予算編成に際しましても、まさにこの防衛計画の大綱に従いまして、質的な充実向上に配意して、従来の方針でもってこの編成作業に当たっていきたい というふうに思っております。  そうして、一%問題にもお触れになりましたが、GNPの一%を超えないことをめどとするという昭和五十一年の十一月の閣議決定につきまして、現在のところ変える必要はないというふうに考えておるところでございます。
  232. 安武洋子

    ○安武洋子君 まず、サラ金問題でお伺いをいたします。  サラ金絡みの凶悪犯罪、それから家庭悲劇の続発、こういうことが社会問題になっております。こういう中で、先月末に、いわゆるサラ金二法が成立をいたしております。  その内容は、悲劇を根絶するというふうなことではなくってサラ金の暴利を追認する、あるいは過剰融資とか、非常識で反社会的な取り立てへの規制も実効がないというふうなことで、利息制限法を事実上死文化させて、被害者を救済するという手段さえ封じてしまうというふうな、被害を一層助長させるような内容になっているというふうに思います。今週にも施行が予定されているようでございますけれども、法の運用に当たりましては社会の厳しい批判にこたえまして、あくまでも被害を出さない、また被害者を救済する、こういう立場に立って法の運用を行うように最初に厳しくお願いをしておきたいと思います。  そこで、サラ金の資金源になっております金融機関からのサラ金業者への融資についてお伺いをいたしとうございます。  銀行、信用金庫、保険会社を初め、政府系の金融機関の系列会社までサラ金の融資に手を出しております。そしてサラ金悲劇を生み出す背景をつくり出しております。  大蔵省としましても、全金融機関を対象に関連企業も含めましてサラ金業者への融資の実態を調査されるというふうに聞いておりますけれども、この調査の目的及び内容について御説明をお願いいたしとうございます。そして、調査をなさるなら、その調査を通じまして、大手の都市銀行などがダミーを使って融資をしている、こういう実態も捕捉をされるお考えをお持ちでございましょうか。
  233. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) サラ金法が成立いたしまして、御指摘のとおり、今週中には施行の運びになる予定でございます。私どもといたしましては、できるだけ早く実施ができますように政省令、通達などを準備いたしたいわけでございますけれども、とりあえず、最近、特に国会あるいはマスコミ等で報道されておりますように、金融機関からのサラ金業者への融資、これが大変世上いろいろと議論が高まっておるところでございます。  この問題につきましては、従来の銀行行政の範囲内で私ども処理できるものでございますので、とりあえず、金融機関のサラ金業への融資の実態について早速調査をいたして、その調査を踏まえた上で、かつ、いろいろ国会等での御審議内容等も踏まえまして、できるだけ早く金融機関のサラ金業への融資についての通達をお出ししたい、こういうことを考えておるわけでございます。  つきましては、実態調査の内容でございますが、貸出金額につきましてはこれは当然でございますが、金利であるとか、あるいは長短の別、期間あるいは担保の有無、担保をとっているとしますれば、それが物的担保か人的保証か、あるいは物的担保であればどういう内容のものか、あるいはいま御指摘の直接サラ金業者への融資以外にも関連会社等を通ずる融資もあるようでございますので、その点も含めまして実態を解明いたしたい。そういう実態を解明いたしました上で通達によります指導を実施いたしたいと、こう考えております。
  234. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま表向きの金融機関からサラ金業界への融資額だけでも二千億を超えると、こういう中で社会的批判を受けるような融資の自粛を求めております昭和五十三年の銀行局長の口頭通達、これは事実上死文化をしていると思います。この調査結果に基づきまして、社会的な良識を超えるような融資については引き揚げさせるというようなことも含めた厳しい指導、これをお考えでございましょうか、お伺いをいたします。
  235. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 御指摘のとおり口頭通達、最近の金融緩和あるいは資金運用がなかなかむずかしいというふうな金融情勢等を反映いたしまして、ややもすれば金融機関のサラ金業に対する融資がルーズになっている面も見られないわけではないわけでございますので、そういう意味におきましては改めて文書通達を出したいと思っておりますが、いま御指摘のように非常にこの社会的信頼を損なうような融資が仮に行われているといたしますれば、そういう融資につきましては早急に回収等をさせるというふうな措置も入ろうかと思います。
  236. 安武洋子

    ○安武洋子君 いままでは口頭通達に基づきまして金融機関への社会通念と良識、これに任せて融資をしてまいっているわけです。結果といたしましては、一般企業の先ほども御答弁の中にありましたように、資金需要の低迷のもとで直接、間接にサラ金業界への融資、これがふえてきております。口頭通達を改めまして文書通達、これは御検討なさっているということでございますけれども、金融機関側にのみ判断を任せるというふうなことでございますと、自粛措置が明文化されたということだけになりまして、結果的には何ら事態に変化が起こらないというふうなことになろうかと思います。サラ金業界に対する融資の適否、それから判断の材料、それから規制の基準、こういうようなものをつくれるとお考えでございましょうか。そして先ほど私が申し上げましたように、ただ金融機関側のみの判断に任せてしまうということになれば、口頭通達を文書になさってもそれは文書になっただけであるというふうな実態は変わらないというふうなことになろうかと、こう思いますが、この点も御見解をお伺いいたします。
  237. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 金融業の基本は銀行法に述べられておりますように、基本といたしましては、やはり自主的な経営者の判断というものを尊重していくところが基本でございます。特に自由主義経済国家におきます企業活動を生き生きとさせていかせるためのやり方といたしましては、余り行政介入といいますか、そういうものは基本的にできるだけ少なくしていく。信用秩序の維持、公共的な見地から最小限度のルールづくりということは必要でございますが、基本的に手とり足とりというふうなところまで進むのはいかがかと思うわけでございますが、しかし現在のサラ金融資につきましては、いろんな面で具体的な御指摘もいろいろあるわけでございますので、私どもといたしましてどの辺までこの問題につきまして行政的な指導ができるのか、その点も実態調査を踏まえ、かつ国会等での御審議もいろいろ参照にさせていただきながら、その接点みたいなものを探って通達を出していきたい、こう思っております。
  238. 安武洋子

    ○安武洋子君 融資の適否の判断材料とか、それから規制の基準というふうなものが本当におつくりになれるのかどうかという点で私は大変むずかしかろうと思うわけなんですが、サラ金というのはもともと暴利と厳しい取り立て、これから成り立っているということはこれはもう常識でございます。大手といえども武富士の例に見られますように、大変反社会的なことが行われているという実態が、もうこれは至るところにあるわけです。したがって社会的な批判を受け、こういうことを助長するというおそれのある融資というのは控えると、これが筋ではなかろうかというふうに思うわけです。ということなら、全体として金融機関からの融資を規制するというのが私はこれもまた筋であろうと思います。間接的に消費者金融に回す資金があるのなら、これは銀行を初めとする金融機関が消費者を食い物にしているサラ金の上前をはねると、これは客観的にこういうことになるわけですから、こういうことはやめて、庶民の預貯金で銀行などは成立しているわけですから、こういう原点に立ち戻りまして、自分の窓口で積極的に直接の個人向け消費者ローン、これを拡大すると、そしてサラ金にお世話にならなくても手軽 に市中の金融機関を利用できると、こういう状態をつくり出すということが必要であろうかと思うわけです。大蔵省もそのような指導を私はお強めになるべきだというふうに思いますが、御見解を伺います。
  239. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) この点につきましては、まさに金融機関側の消費者金融への対応が高度成長期、企業金融の方に、これは日本経済全体の要請としてそういう面もあったと思うわけでございますけれども、乏しい資金を産業復興のために充ててきたというふうな事情を背景にいたしまして、金融機関側が消費者金融に対しましてやや力をいたす努力が欠けておったということはこれ確かでございまして、まさに御指摘のとおり金融機関自体が消費者金融に真剣に取り組んでいくということは今後必要なことでございます。この点につきましては、ただ先ほど申し上げました口頭通達と同じように、消費者金融問題につきましてみずから積極的に努力すべきであるというふうな指導も実はいたしているんでございますけれども、いずれにいたしましても、資金需給の状況あるいは経済金融情勢等から見まして、現実問題としては余り出ていなかったという現実があるわけでございます。今後はそういうみずからが消費者金融に力をいたすように積極的な努力を要請してまいりたいと、こう思っております。
  240. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、みずからが消費者金融、これをやるようにという指導をもう少し強めていただきたい。文書通達にいたしましても、先ほど私が申し上げた趣旨を十分お酌み取りいただいて、やはり今後の大蔵省の指導というものを強めていただきたいということを要請いたしまして、次に国民金融公庫の融資の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  中小業者の間でも生業資金に困ってついサラ金に手を出す、こういうことで悲惨な結果を招いている人も少なくございません。そういう意味でも小規模な業者などを対象といたしました国民金融公庫に、本来的な役割りを大いに果たしてもらわなければならないと、こういうふうに思うわけです。そこで、まずお伺いをいたしますけれども、公庫の融資に当たっての基本的な立場でございますね、それはどういうものでございましょうか。お伺いをいたします。
  241. 田中敬

    参考人(田中敬君) 国民金融公庫の融資の基本方針と申しますのは、法律に定められておりますように、一般金融機関から融資を受けがたい中小企業者に対して生業資金等を融資するということでございます。そういう意味におきましては、中小企業者の方々の実態を十分私ども酌み取りまして、できる限り要望に沿っていくというのが基本方針でございます。ただし、最近のように経済情勢が非常に厳しくなってまいりますと、私どもの融資対象でございます中小企業等につきましても、欠損企業でございますとかあるいは債務超過企業というのが非常に多くなってまいりますので、一般的に景況がよくございません。そういう意味におきましては非常に融資判断がむずかしくなっております。一方で、そういう一般金融機関から融資を受けがたい方々に融資をするという使命を負いながらも、やはりその融資の原資と申しますのは国民からお預かりした郵便貯金等が原資でございますので、やはり金融機関としての健全性の保持というのも私どもの重要な任務であろうと存じております。その両面を兼ね合いまして、できるだけ中小企業者の資金需要に対応してまいりたいというのが当公庫の融資方針でございます。
  242. 安武洋子

    ○安武洋子君 私はやはり中小業者の資金需要にこたえるというふうなことで、一般市中銀行から融資を受けがたい中小業者に対して融資をやっていこうという、そういう立場で大いに業務を遂行していただきたいというふうに思うわけです。しかし、私のもとに寄せられている事例、これがたくさんあるわけでございますが、そういう本来的な立場から見ますと、非常に不正常でなかろうかというものが幾つもございます。  これはいずれも兵庫県内の、幾つか支店がございますけれども、その一つの支店に集中をして起こっておる事例でございまして、しかもここ二、三年の間にこういう事例がふえているという、こういう特徴があるわけでございます。幾つか申し上げてみます。  その例といたしまして、一つはスナック業で、店舗を買い受けて改築のために融資を申請したところ、前の人、これは他人でございますが、前の人の返済が滞っていたから、こういう理由で否認されました。申請者にとっては、前の人が滞らせたということはこれは全く関係がないわけでございます。  それから第二番目の例といたしましては、花を販売なさっている方ですが、支店を新たに出すために七百万を申請されました。そうしたところ、理由も示されずに否認をされております。申請者は、仕方がありませんので市中の信用金庫に申請をしたところ、これはすんなり全額融資を受けております。これでは何のための国民金融公庫かということになるわけです。  例の三番目といたしましては、飲食業、この方が店舗改装のために三百五十万申請をされました。ところが、通常十日から十四日で決定が出るところでございますが、一カ月かかって否認をされております。その理由は、売上額が低いというだけでございます。しかし、売上帳などの資料を持っていきまして、月々二十万の返済は十分可能だ、こういうことが証明できているにもかかわらずの否認でございます。  それから例の四番目といたしまして、これは喫茶店で、開業資金計画、これは総額一千五十万円でございますが、自己資金が六百万、それから公庫の融資が四百五十万、融資決定額は三百万なんです。これは奥さんが市に勤めておられます。市の職員の奥さんの上に、親も保証人として追加をして申請をしたわけです。理由というのは、担保がない、実績がない、こういうことでございますが、担保については従来八百万以下であれば要求はしなかったというふうに思います。  また、理由の一つに挙げられている実績がないというのは、これは新規開店でございますから実績がないのがあたりまえで、こういうことは理由にならない理由であろうかというふうに思うわけです。  こういう事例が出ておりますけれども、一体こういう事例についてはどのようにお考えでございましょうか、まずお伺いいたします。
  243. 田中敬

    参考人(田中敬君) 御指摘になりました四つの事例でございますが、個々に申し上げてみますと、一つは、前任者の返済が滞っておったからという理由で融資が受けられなかったという御指摘でございますが、私の方といたしましては、買い受けた前の営業者の返済滞りというものが、私どもが融資を決定をいたしますのにそれが決定的に融資を否決する要件にはなりませんし、そういうことをすべきはずはございません。  ただしかしながら、店をお買いになって事業をなさるのに前任者の返済が滞っておるということにつきましては、そこに立地条件、その他いろんな問題があるんではないかというような、融資についての判断をする重要な資料にはなろうと思いますけれども、前任者の滞りというものが融資決定に影響を及ぼすことはないものというふうに考えております。  また、国民公庫から借りられなかったけれども、信用金庫へ行ったら借りられたというお話でございますが、私も具体的によく承知いたしておりませんけれども、これはやはり信用金庫に提示された担保なり保証条項というものが、公庫に提示された担保なり保証条項と違っているという、きわめて異例な例ではないかというふうに存じております。  私どもとすれば、いま安武委員御指摘のとおりに、ある一定の金額を限りまして、保証人の有無、担保の有無というようなことを一応の基準を設けておりますが、その基準の中であればそういうふうにしたわけでございまして、このケースにつきましては、そこに何らか私どもがうかがい知 れない事情が信用金庫との間にあったんではないかというふうに考えております。  あるいはまた、一カ月たって売り上げが低いというような理由で断った、あるいはまた喫茶店の開業資金等について実績がないという理由があったということでございますけれども、単に売上額が低いとか、実績がないということがやはり融資決定についての決定的な理由になり得ることはございませんし、私どもはそういうことのないように指導をいたしております。  しかしながら、この融資につきましては、いろいろの環境条件、御本人の経営能力であるとか、資金計画、事業計画、あるいは将来の返済計画というものを総合的に判断いたしますので、どうしても金融につきましては判断という非常に主観的な要素が入ってまいります。そういう意味で、やはり私どもの判断と融資を申し込まれた方々との御判断との間にギャップが生じることがあるということもございますので、その点は御理解いただきたいと存じます。
  244. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまの事例のほかに共通している点、これを申し上げますと、担保要求される申請額が切り下げられてきております。それで、複数の保証人が要求されるということで、大変厳しくなって、窓口が狭くなってきております。  それから、二番目といたしましては、否認とか減額の理由が開示されなかったり、抽象的なもの、不明瞭なもの、妥当性を欠くものなど、こういうケースがあります。  それから第三番目は、審査の迅速性を欠くというケースがございます。  さらに、面接どきに審査に直接関係のない、たとえば婦人の申請者に対して離婚理由を聞いたり、身上調査のようなことを聞くというふうなことがございます。  私は職員の方々は一生懸命やっておられるものと思いますけれども、大筋になる店の営業方針とか、債権保全などを必要以上に強調をされますと、やはり全体として影響が出てまいります。ですから、この事例のようなことが積み重なりまして、申請者に公庫の本旨の誤解を与えるというふうなことがないように私は指導をお願いしたい。  先ほども申し上げましたように、これはある一店に非常に集中的にあらわれ、しかもこの二、三年間に集中的にあらわれている事例でございます。ですから、公庫のこういう本旨の誤解を与えないような強力な指導、私はこれをお願いしとうございます。
  245. 田中敬

    参考人(田中敬君) 安武委員御指摘の点は一々そのとおりであろうと存じます。  私どもといたしましては、中小企業者の方々に迅速、かつ中小企業者の方々の立場に立っての融資を遂行すべき使命を持っておりますので、担保の問題あるいは理由不明等の否決というようなことにつきましても、十分申込者の御意思をそんたくいたしまして、最大の努力をしての運営をしてまいりたいと存じます。  もちろん融資決定の迅速の問題とか、あるいは審査に当たって個人のプライベートなことにわたるような質問というようなものはしてはいけないというふうに私どもも指示をいたしておりますので、これらの指示を徹底いたしまして、今後とも十分に注意をしてまいりたいと存じます。  ただいまある特定一店舗についてこの案件が集中しているという御指摘でございましたけれども、私どもよくその支店の実情を調べまして、そういう事情があるとすれば十分の指導をしてまいりたいと存じます。
  246. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もないようですから、皇室費国会会計検査院大蔵省日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明後五月十一日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会