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1983-04-25 第98回国会 参議院 決算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十五日(月曜日)    午前十時四十分開会     ─────────────    委員異動  四月二十日     辞任         補欠選任      秦   豊君     中山 千夏君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 井上  裕君                 杉山 令肇君                 内藤  健君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君     委 員                大河原太一郎君                 高橋 圭三君                 竹内  潔君                 塚田十一郎君                 仲川 幸男君                 福田 宏一君                 森山 眞弓君                茜ケ久保重光君                 鈴木 和美君                 本岡 昭次君                 鶴岡  洋君                 安武 洋子君                 小西 博行君                 中山 千夏君    国務大臣        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君    政府委員        内閣官房長官  藤波 孝生君        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        科学技術庁長官        官房長      安田 佳三君        科学技術庁計画        局長       下邨 昭三君        科学技術庁原子        力局長      高岡 敬展君        科学技術庁原子        力安全局長    赤羽 信久君        文部大臣官房長  高石 邦男君        文部大臣官房会        計課長      國分 正明君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        文部省社会教育        局長       宮野 禮一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利男君    説明員        警察庁刑事局捜        査第二課長    森廣 英一君        警察庁刑事局保        安部少年課長   阿部 宏弥君        法務省刑事局刑        事課長      飛田 清弘君        外務省情報文化        局外務参事官   苅田 吉夫君        大蔵省国際金融        局企画課長    渡邊 敬之君        文部大臣官房人        事課長      大門  隆君        建設省道路局企        画課長      鈴木 道雄君        会計検査院事務        総局第一局長   佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第二局長   竹尾  勉君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五年度政府関係機関決算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  去る四月二十日、秦豊君が委員を辞任され、その補欠として中山千夏君が選任されました。     ─────────────
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略し、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 本岡昭次

    本岡昭次君 さきの決算委員会、一月二十日、社会党の和田静夫委員の方から、官僚OBの目に余る参議院選挙事前運動の問題について質疑がありました。その問題に関連して、文部省関係の問題についてここでただしておきたいと思います。  去る五十八年二月十九日の毎日新聞は、前文部省管理局長柳川氏の後援会が、全国専修各種学校などに支援要請の露骨な文書を大量にばらまいていたと報じています。文部大臣及び自治省はこの問題を承知しているのか。あるいはまた、私はいまここにその二通の文書を持っておりますが、この文書自身を入手しておられますか。さらに、毎日新聞では、この文書専修学校各種学校幼稚園等々約五千の施設に郵送されたというふうに報じておりますが、こうした問題について事実関係をどの程度掌握しているのか。お答えを賜りたいと思います。
  8. 高石邦男

    政府委員高石邦男君) いま御指摘のありました内容につきましては、新聞承知しているだけでございまして、その事実関係承知していないのでございます。柳川事務所でいろいろな活動をされていることでございまして、文部省としてそういう問題についてのかかわりをしておりませんので、その事実関係承知しておりません。
  9. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) お答えを申し上げます。  私どもも同様でございまして、新聞記事は見ましたが、それ以上の事実は承知しておりません。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、私がいま持っております二通の文書の中で、柳川後援会会長剱木さんの「参議院選挙支援についての要請」、それではこの一部を紹介をしてみたいと思います。全文を読みますと相当時間がかかりますので、「当面その党員数五万名以上の獲得柳川覚治君にも課せられてまいりました。最も有望であるといわれる柳川覚治君ですが、新人であり、教育界支援母体とする柳川覚治君にとっては大変な壁であります。もとより教育界入党問題をお願いすることは抵抗のあるところでございますが、教育行政そのものは厳然として政治と深いかかわりを持つものであり、正しい教育行政を進めるためにも諸事情御理解のうえ、党員獲得に格別の御協力を賜りますようお願い申し上げます。」とありまして、そのほかに自民党への入党申込書党費振り込み依頼書柳川氏のパンフレット、返信用封筒ども同封されていたようです。  さらに、専修各種学校に届けられた文書の中には、同総連合会大沼会長名の「柳川覚治先生参院選応援お願い」と題する要請文も同時に添えられております。この中にも、先生には昨年七月文部省を退任されるまで、専修学校各種学校振興のため言い尽くせぬ御配慮と御指導を賜りとあり、後段には、「つきましては、ここに柳川事務所からの入党勧誘書類が同封されておりますが、事情ご了察の上、会員の皆様並びにご家族、職員方々はじめ学校関係者取引先など、ぜひ入党勧誘にご尽力賜わりたく存じます。  教育界では入党という問題は大変難しく、抵抗感もあるかと思いますが、以上申し述べました経緯から、これが選挙応援に必要な条件であることをご理解いただき、ご協力賜わりますよう重ねてお願い申し上げます。」と。このような内容文書が大量に組織的に学校関係に配付されているわけでございます。  いま文部省自治省も、それは柳川後援会がやっていることで私たちは関知しないことだという答弁ですが、いま私が読みました内容、明らかに参議院選挙支援について教育関係者協力を依頼してくれと、当選のためにひとつ力をかしてくれという協力依頼が、かつての文部省管理局長であったというその力を背景として出されているという、このことはいまの文面の中から十分読み取っていただいたんじゃないかと思うんですが、いま私が読みましたこの依頼文書について、文部大臣あるいは自治省の感想も聞かしていただきたいし、警察庁の方も、事前運動の問題として公職選挙法に触れる部分があると私は思うんですが、そうした立場でこれについての状況把握等をしているのかどうか、あるいはまた見解はどうか、こうした点についてお伺いしたいと思います。これは文部大臣お願いします。
  11. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 一般公務員は、御承知のとおり公職選挙法上、公務員としての活動選挙についてはできないことになっておると思いますが、この柳川覺治君の場合は、なるほど元文部省管理局長までされた方でありますけれども、昨年ですか、七月だと思いますが、すでに退職されておりまして、その後の行動について私どもはつまびらかにしておりませんが、いま本岡さんから文書をもって示されたことは、まあそういうことがあったんだろうということをいま感じておるわけでございます。  ただ、その中に、いまお示しの書かれておりますことは、これがどういう法律に触れるか触れないかという私はただいま判断はできませんが、よく選挙等将来やろうという方々は、その経歴、学殖等国民の多くの皆さんに知ってもらいたいということで、いろいろPRといいますか、宣伝をされておられる、一つ後援組織をつくる活動をしておられる、こういうことはあるわけでございまして、いまお示し文書趣旨も何かそういうふうに私には受け取られたわけでございまして、元公務員ではありましたけれども、現在はもうすでに公務員の職を離れておる方でありますから、これをこちらでとやかく言うわけにはまいらないわけでございますが、国民に不信を抱かせないような行動をしてもらいたいという感じを持っておる、こういうことが私のいまの立場でございます。
  12. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) この文書について、いま読み上げられたところに基づいてどう思うかというお話でございますけれども、御承知のとおり、ある行為が選挙運動に当たるかどうかということになりますと、そのやり方とか、それからまた、その文書のもらう相手方との関係とか、そういったいろんな付随的な条件が一緒になります。いまの文書だけでにわかにどうこうと断定できるものではございません。一般的に承れば、いまのお話後援団体党員獲得しようとして自分と密接な支援関係にある幾つかの団体代表者文書を出した、その文書が増し刷りされてさらにその会員へ配られたというケースのようでございますけれども、そういった具体的な案件がありますので、私ども選挙管理委員会立場として、これをすぐに違反であるとかないとかというような判断は差し控えさせていただきとう存じます。
  13. 森廣英一

    説明員森廣英一君) お答えします。  まず、警察がこの事案を掌握しているかどうかという点のお尋ねでございますが、先ほど御指摘の二月十九日付の毎日新聞で読んで承知はしております。  それから、ただいまお示しいただいた内容で公選法に触れるものがあるかどうかという指摘でございますけれども、いまほど自治省の方から御答弁ありましたように、事案の全貌をつかまないで軽々に法律違反の点を断定することはできませんが、ただいまお伺いしている範囲内で申し上げますと、当該文書は直接には政党への入党勧誘文書であるなというふうに感じておりまして、直ちに公職選挙法違反のものであるというような断定はしかねると存じます。
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 自治省に再度お伺いしますが、この種の後援会要請文、実際の文書を持っておられないので非常にやりにくいんですが、事前運動ということにかかわって公職選挙法百二十九条違反に該当する場合がありますね。それはどういう場合に該当するんですか。
  15. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) 典型的な例を挙げますならば、実際には党員獲得のための活動としての実質を備えていないような場合、そのような場合は、候補者の名前が挙がっているような場合には、党員獲得ないしは後援会会員獲得に名をかりた候補者の氏名の売り込みだというように論ぜられる場合があろうかと思います。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 党員獲得文書でありますが、それぞれの文書には直接「参議院選挙支援についての要請」とありますし、その文面の中には、新しく比例代表制になったということから、この方法で当選を期するためには、所属政党が作成する名簿のランクが決定的となる。それを決定するのは党員獲得数によるのだから党員獲得してくれ、こういうことなんですね。それから一方の方も、当選も困難だ、党員獲得しなければ当選が困難なんだということで、党員獲得目的でなく、明らかに当選をさせることを目的にしてこの文書が配布されておりますが、そのことはいまあなたのおっしゃったこととどういう関係になりますか。
  17. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) その制度のもとでというのは恐らく今回の比例代表制のもとでということでございましょう。その制度のもとで、比例代表制度のもとでしかるべき順位づけを得るためということを言っていることは確かなようでございますけれども、ただ、とはいいながら、その文書そのものはそういう目的——意識をしているとはいいながら、党員獲得文書であって投票獲得文書ではないという点に問題があろうかと思います。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 この文書に対して新聞の報道するところによれば、自民党本部も余りの大胆さに驚いて注意をした、それで同後援会でもこれはまずいということになって文書をつくり直して再び公立学校以外の教育団体教材販売会社等約三十団体文書を出した。しかし、全国専修学校各種学校連合会日本私立幼稚園連合会団体には一月の違法文書約五千通を発送した後だった、こう伝えられているわけなんです。だからその後の文書も私は入手をしておりますが、後は後援会会長名とか、あるいはまた参議院選挙応援についてとか、支援についてとかいうことじゃなくって、柳川覺治後援会柳川覺治君の政治活動支援に対する御依頼書政治活動支援に対する御依頼書というふうに、ここでは危ないということで書き改められているきちっとした文書があって、ここにも同じように党員五万名以上の獲得が必要であります云々と書いてありますが、ここではもうはっきりと当選を期するためとか云々とかという選挙運動に関する事前活動についてのそういう色彩は一切なくなっております。そしてまた、それぞれ働きかけるところも、前は職員並びに教育関係者にもやってくれというようなことも書いてありましたけれども、一切そいうものはなくなっております。こういうところを見ても、やはり文書の性格上出した後援会自身も、これはまずいという一つ考え方を持って新しくこれは出されているのですが、どうですか、こういう点から考えて自治省、先ほどあなたのおっしゃった考え以上のものは出てきませんか。
  19. 岩田脩

    政府委員岩田脩君) 先ほど来申し上げましたように、前の段階の文書をもって直ちに法律違反でないとかあるとかきめつけるわけにもまいるまいと思っております。  先生指摘のとおり、新聞記事によりますれば、その後そういう文書を一部直したという話でございますけれども、それはやはり先生お話しのように、これは少しというような、何といいますか、余りにも選挙がむき出しではないかというような、そういう感触の修正をしたのではないかというように思っております。お話ではございますが、法律論として先ほどのあれを訂正する、変更するつもりはございません。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 法律論の問題は正式に文書を見ていただいて、また別のところで論議さしていただくことにしまして、官房長官にお伺いしたいのですが、柳川氏の場合なぜこれが問題になるか、こう言いますと、柳川氏の最終ポスト文部省管理局長で、五十八年度の予算を編成するについても自分の権限の範囲内にありました私大の、私立大学助成金だけでも二千七百七十億円に上る、そうした予算編成あるいはそれの配分、こうしたことを握る地位にありまして、それから専修各種学校設置認可省令などの取り扱い、こうしたことも柳川氏の立候補に照準を合わせたのではないかという感じで、五十八年度予算でも新規に初めて専修学校教育装置整備補助金として一億五千万円が計上されると、こういう経緯があって、その上で先ほどの文書のように柳川氏はそれぞれの各学校の発展のために格段の力を尽くした人だと、これからも皆さん方のそうした私立学校あるいは専修各種学校のいろんな問題について政治の場であなた方の利益代表としてやってくれる人なんだから、選挙について組織的にひとつ応援をしてくれと、こういうことなんでありまして、これは前回、和田委員の方からも、各省庁のこの問題について厳しく追及された問題であります。これ文部省だけでなく各省庁関係も目に余るものがありました。  そこで、官房長官にお伺いしますが、私は、いま言いました形の中で官僚OB選挙戦に打って出る。それは現職ではないにしても、現在公職についていないにしても、その影響力をやはり行使して、利益地位利用という立場で持ち込むだけの立場にあって立候補したというふうに思わざるを得ないのです。そういう意味で、やはり官僚OB公職への立候補については大きな弊害があると私は思いますが、官房長官、いかがでございますか。
  21. 藤波孝生

    政府委員藤波孝生君) 国家公務員の場合にその地位を利用して選挙運動をするというようなことは厳に法律禁止されておりますし、そのような疑惑を招かないようにあらゆる努力をしていかなきゃいかぬ、このように考えまして、先般来、和田議員からの御質疑もございましたけれども、昨年から回を重ねて、官房長官名で、あるいは総務副長官名で、各省庁事務次官等を通じまして、いわゆる選挙に対して疑惑を招かないように、何回も指示をしてきておるところでございます。  ただいま御指摘官僚のいわゆるOBにつきましては、先ほど文部大臣から御答弁もございましたように、立候補しようとする人が、かつて自分がこういうふうにして働いてきたというようなことをPRしたいというのは、これはまあ候補者選挙運動として当然考えられることでありまして、それが具体的に在職中その地位を利用して運動するというようなことと混同して疑惑を招くようなことのないように、やっぱり厳格に考えられていくべきだというふうに考えるところでございますけれども、しかし、官僚であった人の立候補制限等につきましても、なかなかこれは憲法上むずかしいという従来の御議論もありまして、これを禁止をするというような方向で向かうことはできません。したがいまして、まさに良識にまって、それぞれ立候補しようとする人が考え方を述べるというふうにぜひお願いをしたい、こういうふうに考える次第でございまして、在職中の場合とそのOBの場合とは立場が違いますので、なかなかお答えしにくいところがございますけれども在職中の公務員に関しましては、一切誤解を招くことのないように、さらに厳格に取り組んでいくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 いま官房長官お話にありましたことは、臨調の第三次答申の中でもその趣旨が述べられてあります。したがって、私は全面的にそれを禁止するというのはまさに憲法に抵触をしますから、そういうことはできないにしても、今回の参議院選挙だけを見ましても、文部、厚生、農水省など十三人のOBの方が出馬を予定されているわけで、それが現職OBとのそのけじめというものはつけなければならないと言いながらも、たとえば五十七年にやめて五十八年の選挙に出るというふうな関係の中では、高級官僚地位利用という問題がやはりいま言いましたような形で問題になってくるわけですから、全面禁止というふうなことは当然できないんですけれども、この臨調答申が言うように、高級公務員に対して、辞職後一定期間選挙活動制限をするとか、あるいはまた、立候補問題についての一定期間というふうなものを考えていくとか、政府は本気になってこの高級官僚選挙にかかわっていくことの問題について考えていかなければならない時期に来ているのではないかと思いますが、その点、官房長官に一言お伺いをして、きょうは一応この点についての質問は終わっておきたいと思います。
  23. 藤波孝生

    政府委員藤波孝生君) 臨調から答申の中に、先生指摘のように、触れられておることも十分承知をいたしておるところでございます。それぞれ臨調から答申が行われましたものにつきましては、一つ一つ政府としてこれを実現をしていくようにいろんな角度から検討を進めていきたい、このように考えておるところでございますが、お話の点につきましては、それがすなわちすぐに高級官僚一定期間立候補禁止というところへいけるかどうかということにつきましては、立法上なかなかむずかしい点もございまして、従来、選挙制度調査会等でも議論を重ねてきていただいておるところでございます。  しかし、法律では在職中その地位を利用しちゃいかぬというふうに明確になっておるところでございますので、退職したからといってすぐに退職したんだからいいというので非常に在職中と混同されやすいような選挙運動絡み行動があることは、やっぱり慎んでいかなきゃなるまいというふうに考えておる次第でございまして、これは法律上というよりも良識を持ってぜひ疑惑を招くようなことのないように配慮してもらいたいというふうに、政府としても考えておるところでございまして、こういった考え方がぜひ関係者にさらに徹底をしていくように、いろんな機会にそのことを心して進んでまいりたい、こんなふうに考える次第でございます。
  24. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 議事進行について。
  25. 竹田四郎

  26. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 選挙部長、それから警察庁捜査課長か、どうも僕は先生質問に対する答弁を聞いていると、最初から逃げようとしか考えていない。だれが考えてもこの案件は、これはもう世間ではそう思っている。それを何とかして逃げようということしか考えていない。けしからぬ。いま官房長官がはしなくもさように言ったけれども、だれが考えてもそれは冒涜なんだ、選挙に対する。それは法的に裁判官みたいに、ここは法廷ということはあるいはできないかもしれない。しかし、少なくとも比例代表制性質から見ても、選挙運動性質から見ても、これは明らかに冒涜している、選挙法を、国民を。先生質問に対して、最初から逃げようとしか考えていない。これは答弁にならぬですよ。私は、委員長ね、聞いていても憤慨にたえぬのだ、本当に。決算委員会を冒涜している。  したがって、議事進行だから無理に答えを求めませんが、官房長官、この点は考えてください。ひどいですよ。まあ官房長官ははしなくもさように、やや良識的に答弁している。しかし、警察庁自治省、まるでなっちゃいない。したがって、私はいま言ったこと、一言委員長にしっかりと申し上げて、しかるべき手段を講じて、徹底的にやることをやるということを申し上げて、議事進行ですから終わります。
  27. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 後ほど理事会に相談して対応していきたいと思います。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 いま同僚議員の方からありましたけれども、私はたくさん質問を抱えておりますので、一わたり全体についてここで明らかにしたにすぎませんが、最後に文部大臣に言っておきたいんですが、今後、私学あるいは各種学校、そうしたところに、元官僚OBという立場に立って一斉に組織的な選挙が行われる、あるいはまた間接的にしろ文部省が元OB選挙運動にかかわっていくというふうなことが絶対あってはならないと思うし、しかし、いままでの私のこの文書を読んだ限りにおいては、明らかに地位利用であると私は思っているんです。けしからぬと思っているんですよ。だけれども、ここでけしかるのか、けしからぬのかという問題が、法的に触れるのかどうかという追及する時間がないから、私は淡々とこう言ってるんですが、後ほど、先ほど言いました文書を具体的にそれぞれ関係者示して、その上でまた日を改めてこの問題についての論議をさしていただきたい、このように思っております。  それでは官房長官、どうもありがとうございました。  それでは次に、国士館大学問題に入りたいと思います。  昨年の九月十四日、決算委員会で国士舘大学のブラジル国教育法人ブラジル国士舘大学協会の実態について調べてみなければならないと、当時の渡辺大蔵大臣の答弁がありました。また大蔵省の方と私との個人的なこの問題についての話し合いの中でも、ブラジル、サンパウロの大使館にその事実関係の照会をしているということでありました。したがってきょうはその結果を聞きたいのであります。  ブラジル国士舘大学協会の実態並びに国士舘大学から十億百二十一万九千円が送金されたのでありますが、この金は果たして貸付金であったのか、寄附金であったのか、明らかにしていただきたい。また、その十億百二十一万円が何に使われたかという点も現地の調査で明らかになったと思いますので、その調査の結果も含めてここで報告していただきたいと思います。大蔵省。
  29. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) お答え申し上げます。  ブラジル国士舘大学協会が国士舘大学から受領いたしました資金の経理書につきましては、その当該協会が海外の現地法人でございますので、その実態は把握できないわけでございます。しかしながら本件の送金につきまして外務省を通じましてブラジルの通貨当局に照会いたしましたところ、ブラジル側からは貸付金として三億円のみ登録をされているという旨の回答がございました。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 大蔵省に再度お伺いしますが、大蔵省がこのブラジル送金として申請を受け付け、それを許可した金額は十億円であったと聞いておりますが、いかがですか。
  31. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) おっしゃいますとおり約十億円でございます。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 その内訳が、三億円が貸付金で、七億円が寄附金であったというふうに前回明らかにされておりますが、そうしますと三億円の貸付金だけが明らかになって、七億円の寄附金というものの確認が、それではできなかったということですか。
  33. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) お答え申し上げます。  いま申し上げましたその三億円と申しますのは、十億円のうち三億円というのが貸付金であるということで、ブラジルの通貨当局からはっきりしたわけでございますが、それでは詳しくブラジルの法律のたてまえにつきましてここでちょっと申し上げさしていただきたいと思います。  ブラジルでは海外から貸付金の送金がございました場合には、その当該貸付金はすべて事前に中央銀行に登録をする。そして事前の許可を得る必要があるということでございます。この登録を怠りますと、元本あるいは利潤等のいかなる名目でも海外への送金は認められないということになっております。それで、いま申し上げましたように、ブラジルの国士舘大学協会の貸付金に関します中央銀行の外資登録実績というのは三億円だけでございます。この金額は国士舘大学が日本の外為法に基づきます貸付金に関する届け出の金額と一致しているということでございます。  寄附金の場合には、海外からブラジルに対しましての寄附金と申します場合には、許可とかあるいは届け出というような行為は一切義務づけられておりませんで、そのようなチェックは何もないわけでございます。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 チェックがなしだという、そうしたブラジル側の受け入れの問題じゃなくて、その三億円は貸付金として現地の法人がそれを入金、受け入れ、残りの七億円は寄附金として受け入れたかどうかという問題についての解明をお伺いしたんですが、その点はどうなんですか。
  35. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) 先ほど一番当初に申し上げましたとおり、このブラジルの国士舘大学協会は海外の現地法人でございますので、海外の現地法人がそのお金をどういうふうに使ったのかというのはちょっと調べられないわけでございまして、それでブラジルの通貨当局がどういうふうにして受け取ったのかということを調べたわけでございます。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、通貨当局の受け入れの状態からすれば、七億円は寄附金であったと。もし、それが貸付金であればいまのように登録ということがされているというふうに理解していいんですか。
  37. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) おっしゃるとおりでございます。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、大蔵省に申請されたとおり十億円の内容は約三億円が貸付金、残りの約七億円が寄附金であるということがここで明らかになったということでございます。  そこでお伺いしますが、文部省、この問題について文教委員会並びに当決算委員会において送金した資金の性格は、これは貸付金であるというふうに答弁されてきましたし、また理事会においても貸付金としてその決定がなされているから絶対に間違いないと、このようにいままで答弁をされてきたんですが、いまの事実関係との関連でこれはどういうことになるんですか、文部省として。
  39. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 前回も御質問がございましてお答えをしたとおりでございますけれども、国士舘大学の側から事情をその後も再度重ねて聴取をいたしておりますが、ブラジルに送金をいたしました総額約十億円につきましては、国士舘大学の側及び現地法人における認識といたしましては、これを貸付金ということで認識をいたしておりまして、理事会における決議におきましても全部貸付金となっておりますし、それからまた先方の現地法人から借用証書も全額十億円について入っておるわけでございます。その送金の際に、これが一部七億円、初めのころのものが七億円でございますけれども、この金額がいわば送金手続を行うに当たりまして事務処理上の何と申しますか、ミスのような形で寄附金として送金をしてしまったと。しかし、事柄は大学の内部あるいは先方の法人との関係におきましては、これは貸付金ということで約束をしておるものであるということの説明を聞いておるわけでございます。こういった事務処理上のミスがあったということについては、国士舘側としてはまことに申しわけないことであったと、かように説明をいたしておるところでございます。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 最初の論議の中で、いまのような事務手続上のミスで、本来貸付金であったものを寄附金ということで送ってしまったんだというふうな説明は一切なかったんですよ。全額貸付金である、このように言っておられたんですが、なぜいまになってそのような弁明がなされるんですか。おかしいじゃないですか。  そこで大蔵省、どうなんですか、その事務手続上のミスで七億円が貸付金でなく寄附金ということで送られた。そうしてブラジルの受け入れ側もそれは寄附金として通ってしまった。しかし、それは貸付金であったと、こういう場合に外為法上どうなるんですか。
  41. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) お答え申し上げます。  外為法上は寄付金として申請が出てまいりまして、ブラジルの当局でも寄付金として受け取っているということでございますので、外為法上は問題なく寄付金だということであろうかと思います。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 寄付金として受け付けたから、これもまた前と同じことになるんですがね、しかし実際は事務手続上のミスであったというふうにいま文部省の方から話が出されているわけで、国士舘大学からの送金の実態と実際に大蔵省が取り扱ってきたそのお金の性格とが違うということであっても、それは大蔵省として何ら問題がないという判断に依然として立たれるんですか。
  43. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) 現在のところは寄付金として送り、また寄付金として受け取られておりますので、特に問題はないと思いますけれども、まあ先ほどから事務上の手続のミスというようなことで、貸付金を寄付金として申請をしたということでございます。それで、外為法上は、寄付金の場合には、旧法上でございますね、旧法上は寄付金の場合も許可、貸付金の場合も許可というのが必要でございますが、新しい改正の外為法では寄付金は許可でございますが、貸付金は届け出でよろしいということになっております。そういうようなことで、実態が貸付金であるということで、大学側が貸付金としての改めて処理を希望されるということでございましたならば、ただこれはブラジル側の方が寄付金として受け取っておりますので、これを貸付金として認めるかどうかということははっきりしないわけでございますが、これを見きわめました上で、外為法上の措置を検討することにしたいというように考えております。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 文部省、事務手続上のミスでというふうなことが私は通らないと思うんですよ。そんなことはミスでというようなことでね。それでいま大蔵省が言っているように、これは当然ミスであればその七億円も貸付金であったということで届け出をし直させるということを当然させなければならないんじゃないですか。
  45. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御指摘のとおりでございまして、事柄の本来の性格と外為法上の申請上の性格とが違っておったということは非常に残念なことでございまして、私どもといたしましても大学側に事柄の実態に合わせるような手続の何と申しますか、更正と申しますか、そういうような措置がとれないかどうか検討するように指示をしておるところでございますが、大学側といたしましても学内で十分検討し、関係当局の指導を得た上で、できることならば実態に合わせて修正をしたいと、かように申しておるところでございます。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 私はミスでなくて作為的にこういうことがなされたというふうに見ているんですが、文部省として一層この事実の問題について解明をしていただきたい。ここで要請をしておきます。  さらに文部省に伺いますが、貸付金ということであれば、それは当然返済をされてきます。そしてこのお金は五つの都市銀行から借りております。この前も文部省答弁にあったように、それは二年据え置いて、あと五年ないし八年かけて分割してそれを返済するということになっておるわけで、第一回の借り入れが五十五年、したがっていまは五十八年ですから、第一回に借り入れたお金の返済がもうすでにブラジルの現地法人からなされていなければならぬ、このように私は考えます。その返済がそれでは貸付金であるならば、返済がそれではどのように行われているのか。一体だれの名義でそうしたことが行われているのか。そのあたりはどうです。
  47. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国士舘側からの説明によりますと、昭和五十七年度末までに貸付金の元本四千七百万円余りと利息一億円余りと、合計いたしまして一億四千九百万円余りが返済をされるという予定になっておるわけでございますけれども昭和五十八年一月一日に千百六十四万円余りが返済金ということで入金されたということでございまして、このほかは未収ということになっている模様でございます。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 そのあとの未収ということでは銀行への返済措置がなされないと思うんですが、銀行への返済措置はそれでは未収部分はどのような手当てをしたんですか。
  49. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 先ほどの御質問一つお答えが抜けておりましたが、先方の法人の理事長名で返還がなされているということでございます。  なお、銀行に対する返済金でございますけれども、これは国士舘が銀行から借り入れた条件と、それから国士舘から現地法人に貸しました条件とが若干時間的その他でずれ等もございますので、すでに五十六年度末までに銀行へ返済をするというような経費もあったわけでございます。そういった経費については国士舘がもちろん銀行側には返済をしておるわけでございます。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 先方の理事長名でといま答弁がありましたが、念のために、先方の理事長はどなたですか。
  51. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ブラジルにございます国士舘大学協会の理事長は柳森という方でございます。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 柳森という方じゃなくて、正式にフルネームを言ってください。
  53. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 恐縮でございます。名前の読み方がちょっとわからないんでございますけれども、優良可の優という字を書く柳森優という方でございます。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで次に、このブラジルに対して国士館大学が、いままで十億円をブラジル国士舘大学協会に送金している。その後、昨年の十二月にべレンでの武道館建設に充てる追加資金として三億円をさらに送金したということを聞いているんですが、どうですか。これ、事実ですか。
  55. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 前回、昨年の九月に御質問ありまして以後、ブラジルに送金をしたという事実は承知しておりません。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 それは一度詳細に調べてください。私たちの知っている限りでは、去年の十二月にべレンで武道館建設に充てる追加資金として三億円と。現在建っているのはサンパウロに建っているわけです。べレンには武道館を建てる土地がすでに購入されてあるわけです。ところが、さらに不可解なことは、その三億円が一たん送金されたんですが、またどういう必要か、そのお金は国士舘大学に戻されたというふうなことがあって、ブラジルのベレンでは武道館が建設されるということに対して期待をしておったんですが、その金が引き揚げられたということで、これはどういうことなんだといって問題になっているということも聞いています。大蔵省、この十二月に国士舘大学がブラジル国士舘大学協会に対して追加資金を送ったということに対しての関係は、大蔵省はどうつかんでいますか。
  57. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) つかんでおりません。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 つかんでいないということは、送金がされていないということなんですか。それは調べてみないとわからないということですか。
  59. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) 実態はよくわかりませんので正確なお答えができるかどうかわかりませんけれども、たとえばサンパウロからベレンにお金を送るというような場合には、外国間におきます送金でございまして、外為法の管轄下にございませんので、その辺のところちょっとつかんでいないわけでございます。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 送金の問題は大蔵省の方で調べればわかるはずですから、この事実関係はひとつ調べていただきたいと思います。よろしいですか。
  61. 渡邊敬之

    説明員(渡邊敬之君) はい。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 その調べる際に、先ほどと同じように、どのような名目の金として申請されたのかというようなことも調べておいていただきたいと思います。  次に、カイロの問題に入ります。国士舘大学は、カイロにも国士舘カイロ武道センターという形で武道館を建設中であるということでございますが、この問題について現在どのような状態になっているのか、文部省、調査の結果を報告してください。
  63. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国士舘から事情を聴取したところによりますと、カイロの武道センター問題につきましては、昭和五十六年に柴田総長がエジプトを訪問いたしました際に、国士舘とエジプトの間で武道の交流ということで約束がされまして、国士舘の方ではできる限りの財政援助をすると、エジプト側が十五万平方メートルの土地を用意する等の協定がなされたわけでございまして、昭和五十六年の十二月に国士舘カイロ武道センターというものが設置をされたわけでございます。  国士舘の側におきましては、理事会におきまして、この武道館の建設等の経費について銀行等からの借り入れを決定をいたしまして、国内の金融機関から二回にわたりまして三億三千万円の借り入れをいたしました。現在までに三億四千万円余りを同大学の——カイロ市に国士舘大学のアラブ・アフリカ支部というのがございますけれども、そこに送金をしたということでございまして、現在、現地で武道館の建設工事が執行されている最中というように聞いておるところでございます。
  64. 本岡昭次

    本岡昭次君 そのお金は、まあブラジルと同じような立場で聞くんですが、貸付金ですか、寄附金でしたか。
  65. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ブラジルの場合とそれぞれの国の制度が違います関係上、ここのエジプトに関する送金につきましては貸付金でも寄附金でもなくて、これは国士舘大学の所有としての武道館を現地に建設をするということで、みずからの経費として送金をしたというふうに聞いております。
  66. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、九月十四日の決算委員会で、私の質問につきまして次のように答えております。文部省は、カイロの問題については、「貸し付けは好しくない。」、「私学の教育活動範囲を超えている。」、「理事会の手続不備。」という三点を挙げて国士舘大学を指導したという答弁を受けました。このことの関係では、これはどうなんですか。    〔委員長退席、理事和田静夫君着席〕
  67. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 前回お答えいたしましたように、この件につきましては先ほど申し上げましたように、昭和五十六年の十二月にセンターが設置され、すでに五十七年の一月には理事会においてその承認が行われまして、送金等も行われておったわけでございます。文部省といたしましては、ブラジルの問題、アメリカの問題その他まあいろいろな海外派遣事業があるわけでございまして、こういった海外交流事業そのものは、そのこと自体好ましくないということでは決してございませんけれども、しかしながら、次々といろいろなこういう事業を行っていくということにつきましては、国士舘大学の本体の方の教育研究との関係等から慎重であるべきだというたてまえで大学側に指導したわけでございますが、その後大学側といたしましても指導を受けて慎重に対処をするということでございましたけれども、すべに進行中の事柄でもあり、そしてまた国際的な関係ということも絡んでくる事柄でもございますので、その後昭和五十八年の二月、ことしの二月でございますけれども、さらにどうしても必要な追加の経費ということで若干の経費、八千万円ほどでございますが、追加で送付をしたという報告を受けているわけでございまして、総額で先ほど申し上げました三億四千万ほどが送付されているという結果になっておるわけでございます。
  68. 本岡昭次

    本岡昭次君 結局、文部省としてはこれは好ましくない、私学の教育活動範囲をやはり超えている、こういう立場で指導をした。しかし、すでにその金がもう送られている、そして下手をすると国際的な問題に発展するかもしれないということで、やむを得ずこの問題を追認したというふうに理解していいわけですね。
  69. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 追認したというのは少し——私どもとしてはそこまでは考えておらないわけでございまして、全体として慎重にやってくれということを先方に指導しておるわけでございます。そういう意味ではいわば従来のそういうやむを得ないケースであったにしても、なおもう少し慎重に検討すべき余地があったのではないかと思っておるわけでございますが、先方からそういう報告を受けたということを御報告申し上げているわけでございます。
  70. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあ文部省としては認めていないと、依然として慎重にやれと、好ましくないと思っておるんだという点、わかりました。  そこで、外務省も来ていただいておるんですが、また文部大臣もよく聞いておいていただきたいと思います。先ほどはブラジルの問題でしたが、いまも質疑を交わしましたように、この問題はエジプト政府として認識していることは、土地十五万平米エジプト政府が提供して、そこに三千六百四十五平米の武道館を建設しようと、その資金だけでも約十億円が要る、全体を完成するには約六十億から七十億の事業となるであろうと、こういうことで、現地でもその問題について大きな期待をかけているというような中身になっております。  しかし、現在三億三千万円が送金されて、それでやられていることというのは基礎工事程度の問題であって、一私立大学が総額六十億から七十億と言われるような事業、あるいは武道館の建設だけでも十億円要るであろうというふうなことにかかわっていくこと、私はこれ最終的には挫折をするんではないか、そして先ほども文部省が心配されておりましたように、国際的な問題にこれは発展するんではないか、このようにこの内容については心配をしているんですが、一体これまず事務的な問題としてこの全体計画そのものは理事会で承認されているのかどうか、これひとつ文部省にお聞きします。そしてさらに、いま言いましたこの問題が日本とエジプトとの国家間の問題に発展する可能性もあるという中身であって、外務省がどれほどこの問題について承知しているのか、あるいは文部大臣文部省として慎重にやれと言われている問題が、このような形で進行しているということについて一体どのようにこれ考えるのか、御答弁を願いたいと思います。
  71. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ただいまお話がございました数十億というような全体計画については、私ども承知をいたしておりませんし、そのような形のものを実施するということを理事会で承認したというようなたぐいのことも聞いておらないわけでございまして、私ども承知をし大学側から説明をいただいておりますのは武道センター、武道館の建設に関する部分についての説明を伺っておるわけでございます。いずれにいたしましても、私どもとしてはこれについては全体計画等を十分考えながら慎重に対応するようにという線で指導を重ねておるところでございます。
  72. 苅田吉夫

    説明員(苅田吉夫君) 外務省といたしましては、この国士舘大学が御指摘のように、いろんな海外各地で武道館の建設その他を進めておられるということにつきましては、このような私学による活動は基本的には民間レベルの交流に属するものである、そういうふうに認識しておったわけでございますが、その建設に際しまして、相手国の関係が出てくるとか、いろいろそういう可能性もありますので、われわれとしましても非常に関心を持っているわけでございます。  先ほど申しましたように、これは一般に各種のチャンネルを通じてのスポーツ交流ということになりますが、外務省としましては、一般的に申せばそのようなスポーツ交流その他が促進されて、そして相互理解、友好関係が深まるということは非常に結構なことであるというふうに考えております。  ただ、この問題につきましては、先ほど申しましたように、相手国の関係その他もありますので、あるいは一私学の事業として適当であるかどうかというようなことも含めまして、今後とも所管官庁であります文部省とも密接に連絡をとって、適切な交流が行われるようにしていきたい、そういうふうに考えております。
  73. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この問題については、御存じのとおり、私学には私学の学風というものがありまして、それぞれの学風に従って教学の振興を図ろうということでやっておるわけでございます。  私は、詳細を聞いておるわけではありませんが、この国士館大学は特に体育を通じて、日本武道を通じて国際親善、国際交流を図ろうという気持ちがあるように観察しておるわけでありますが、ただ文部省といたしましては、先ほど来局長からもお答えしておりますように、私立学校としての国士舘大学の本来の教育の目的を阻害するようなことになっては困るわけでありまして、国際交流、文化交流といいますか、体育を通じての親善関係を進めるということは、これは日本としては適当なことでありますが、問題は度を過ぎて逆に国際親善を害するようなことになってもいけない、また本体の学校経営そのものに支障を来すようになってもいけない、かような気がいたしますから、十分実態を聴取いたしまして、外務省とも連絡しながら指導したい、かように考えております。
  74. 本岡昭次

    本岡昭次君 度が過ぎる内容を、まだ、以下二点ほど言いますけれども、その前に、いまエジプトのカイロの武道館建設の費用の総額については理事会で決定すると言われましたが、それは理事会で何億円というふうに決定されているんですか。  それから、外務省にお伺いしますが、この間ムバラク大統領が来日されました。そのとき日本政府が百億円のスポーツ振興の援助をされるということを新聞で見たんですが、これとこの国士舘大学の現地におけるスポーツ振興のための武道館建設というのは関係があるのかないのか、この二点をお伺いしておきます。
  75. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国士館大学の理事会におきましては、当初、武道館建設の経費として、二億六千万円ほどでございますけれども、その金額を決定をし、それから昭和五十七年度になりまして、先ほど申し上げましたこの二月でございますけれども、約八千万円を武道館関係の建物建設並びに設備の追加のために必要な経費ということで議決をしたわけでございます。
  76. 苅田吉夫

    説明員(苅田吉夫君) この問題と前回のムバラク大統領の訪問における種々の話し合いとの間には直接関係ないと承知しております。
  77. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、文部省、国士館大学の理事会で決定された三億四千万円で、武道館の建設の費用はそれで完了するという決定になっているんですか。
  78. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) そこまで明確な決定があったというふうには聞いておりません。  現地で行われている事業でもございますので、これからの建設事業の経緯によりましてはあるいは追加費用がさらに出てくるというようなケースもあるかもしれないと私どもの方としては考えておるわけでございますが、総額としてこれだけであるというふうに最終的に決定したものとは承知しておらないわけでございます。
  79. 本岡昭次

    本岡昭次君 そのほか、ニューヨークあるいはサイパンでの問題も前回の決算委員会で申しました。しかし、その後具体的に幾つかの問題が明らかになっておりますので、ひとつ文部省にただし、文部省の方の見解なり調査をお願いしたいと思います。  ニューヨークなんですが、ニューヨークでも、一億二千万円の金を送って、武道館建設に取りかかったと言われております。現地の宗教法人西本願寺の所有していた土地、建物を購入して武道館建設ということのように聞いているんですが、まずその一億二千万円の金は送金されていますか。
  80. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国士舘大学から現地、ニューヨークにございます国士舘大学ニューヨーク支部に対しまして、昨五十七年七月に一億一千万円余りの金額が送金をされておるわけでございます。  なお、ただいまのお話にございましたが、必要な施設の購入費でございますけれども、施設は、日米文化交流という意味で、主として武道の指導、普及を図るためのニューヨーク支部の活動のための拠点ということであって、ここに武道館をつくるというような性格のものではない、こういう説明を受けておるところでございます。
  81. 本岡昭次

    本岡昭次君 くどいようですが、その一億二千万円のお金の性格は、これはどうなんですか。
  82. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは国士舘が自分の出先機関であるニューヨーク支部に送金をしたというものでございますので、寄附金あるいは貸付金というたぐいのものではないということでございます。
  83. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、一億二千万円の送り先というのは国士舘大学ニューヨーク支部の責任者になっている、そしてまた口座もそれでは国士舘大学ニューヨーク支部の口座というふうに理解していいんですか。
  84. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 銀行口座等についてまで確認をいたしておりませんけれども、あて先はニューヨーク支部に送った金である、こういうふうに聞いておるところでございます。
  85. 本岡昭次

    本岡昭次君 そこで、私たちが聞いている話の中身として、一億二千万円は送金された、それはいま言いますように、宗教法人西本願寺の所有物であるというその建物、土地を購入したというんですが、現地法人の国士舘大学ニューヨーク支部にその金によって買われた、すなわち移転登記がなされたというふうな事実がそこにないということも聞いています。そしてまた、宗教法人のこうした所有物を国士舘大学に、そう簡単に所有権の移転というふうなことが法人の所有物ができるのかどうかという問題についても私はおかしいなと思うんですが、そこらの関係、これはどうですか。
  86. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 恐縮でございますが、どこから購入したのか、あるいは登記がどうなっているかというところまでは現在調査をいたしておりません。
  87. 本岡昭次

    本岡昭次君 ぜひいま私の言ったことを調査しておいてください。  私も全然関係のない、事実無根のことを言っているんじゃないわけで、それはそれなりの、一定の確信があって、確証があっていま申し上げているわけですから、そこははっきりとひとつ文部省の方もその疑義を明らかにするために、その一億二千万円が一体どのように使われたのか、一体何に使われたのかという問題についてはっきりとさせて、次の委員会で答弁をしていただくことをここでお願いをしておきます。よろしいですね。  それから次にサイパンの問題であります。  サイパンとの間にも国士舘大学が文化交流協定を結んでいるということなんですが、これは事実ですか。
  88. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 国士舘側から聞いたところでございますけれども昭和五十七年の十二月に柴田総長を団長とする訪問団がサイパン島を訪問いたしました際に、国士舘と北マリアナ国との間で学術的文化交流のための協定が締結をされたということでございます。この内容は、今後とも青少年の教育環境の改善、友好関係進展のために話し合っていく合同委員会を設置しようという内容のものと聞いております。
  89. 本岡昭次

    本岡昭次君 それからさらにサイパンに国士館大学の分校をつくり——この分校というのは武道館を建設するということですでにその約束もでき、建設についての協定も結んでいるというふうに聞いています。サイパンでは分校建設については大変歓迎し、文部省にその問い合わせもあったというふうに聞いていますが、その点についてはいかがですか。
  90. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 先ほどお答え申し上げましたとおり、協定で結びましたのは合同委員会を設置しようというものでございまして、具体的に分校等の設置を約束したものではないわけでございます。なお、国士舘側といたしましては、現在のところ分校等を設置する具体的計画は全く持っていないということでございます。  それから昨年の十月ごろでございますけれども、北マリアナ国の方から文部省協力依頼要請がございまして、体育館及び寄宿舎の建設等について柴田総長と話し合っているけれども協力をしてほしいという趣旨のことが参りましたが、文部省としては、国士舘大学等に事情を聴取いたしましたところ、先ほど申し上げましたようにそのような計画は全くないということでございますので、そういう予定はないという回答を私どもの方から北マリアナ国の関係の方にお送りをいたしまして、了解したという回答をもらっておるところでございます。
  91. 本岡昭次

    本岡昭次君 現地は了解したということのようですが、事実はやはり現地でその分校をつくると、中身は武道館建設ということで空手形を発行したというふうなことになり、あるいはまた建設についての協定も業者との間で結んでいると言われている方が事実なんですよね。だから、それに基づいてサイパンの方から文部省に照会があったと、しかし文部省の方ではそういう事実を国士舘大学に聞いたところがないと言って返した。こういう事実関係の中で、このままいったら現地でサイパンの政府そのものが非常に困る立場になるんではないかと、私はこうこれは考えます。  最後にこうした全体の問題を文部大臣なり外務省に聞きますがね、ブラジルがあって、それからエジプトがあって、ニューヨークがあって、サイパンがあってと、こういう一連のこの問題、まさに文部大臣がおっしゃったように度が過ぎる、どこにも体育館、体育館、体育館、十億円——体育館を建てるのに二億や三億円でできませんよね、十億円からかかるそういうものをたくさん建てる、そして国士舘大学のそれでは学校運営は一体どうなるのか。多額のこれは私学助成金をもらってやっているんだと、そういう関係の中で、私はこのままこの問題を放置することはできない。だんだん時間の経過に従って、単に国士舘大学内部の問題だけじゃなくて国際的な問題に、信用問題に発展してくる危険を感じるんですよ。文部大臣どうですか、もうこの問題についての文部省のはっきりとした態度を出す決意をこのあたりでしていただかないと、取り返しのつかぬことになるんじゃないですか。外務省もただ関心を持つだけじゃなくて、事実関係を徹底的にひとつ調査をして解明をしてもらいたい、このように思うんですが、いかがですか。
  92. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど申し上げたとおりの気持ちを私は持っておりまして、事実関係がどういうふうになっているかもう少し明確にする必要があるんじゃないかと、かように考えます。  ただ、これは国の事業ではありませんけれども、日本の学校が海外でいろいろやられることは結構でありますが、そのために国民の信頼を失うということになりますと、将来弊害がありますから、そういう点を注意してもう少し検討してみたいと、かように考えます。
  93. 苅田吉夫

    説明員(苅田吉夫君) 外務省といたしましても、先ほど申しましたように、民間を通ずるこういった交流は基本的には非常に望ましいんでありますが、ただいま御指摘のあったようなかっこうで、実際に民間レベルで約束していたものが、次第に向こうの政府との関係でいろいろ問題になってくるというようなことがあってはならないと思いますので、それぞれのケースにつきまして、外務省としましても事実をもう少し調べてみたいと、そういうふうに思っております。
  94. 本岡昭次

    本岡昭次君 それではその事実関係は外務省、文部省あるいは大蔵省それぞれの立場で徹底的にひとつ解明をしていただきたいと思います。また次回の委員会でその結果について聞かしていただきます。  それから、なぜ国士舘大学の問題についてこのように細かい点まで聞いていくかという点、もちろん国際的な問題に発展してはいけないと、あるいは一私学の問題ではないんではないかとかいうこともありますが、いま一つの問題は、文部大臣も言われたように、国士館大学の内部の学校経営、学校運営の問題が補助金を出していくということについて好ましくない状態がある、こういうことでことしも含めて五年続き二五%カットのペナルティーをずっと連続して科しているんですよね。補助金を出すことについて好ましくない状態が国士舘大学にある、それを改善しなさい、五年間続けて言っても改善しない。改善しないから二五%のペナルティーをずっと科していくということになると、ペナルティーの意味は一体どうなるのかということです。二五%のカットさえしんぼうすれば改善命令——そんなものに従う必要がない、こういうことに実態的になってくると私は思うんですがね、これはいかがですか。これからもずっとこう続けていくんですか。
  95. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御指摘がございましたように、国士舘につきましては数年前以来種々いろいろな点について改善方を指導しておるわけでございまして、そのうち改善が実現を見ておるものもございますし、また見ていないものもあるわけでございます。今回の件につきましてもいろいろ指導しているわけでございますが、国際的な関係でもございますし、また、先回御質問等を受けました後、文部省が指導いたしまして、その後はカイロについて必要やむを得ざる部分だけとりあえず対応したということで、あとの件につきましてはいろいろ御指摘がございましたが、私どもに報告を受けている段階では、サイパン等の問題につきましては慎重に対応しているというような状況も見られるわけでございます。  いずれにいたしましても、補助金の問題をどう取り扱っていくかというのは、単に理事者側の問題ばかりじゃなくて、教職員、学生等に大きな影響が出てくる問題でもございますので、今後引き続き従来のような、さらにそれを強めて指導を重ねていくと同時に、その推移を見ながら総合的に判断をしていきたい、かように考えておるところでございます。
  96. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は海外送金の問題だけで言っているんじゃないですよ。六項目の改善指示を文部省は行っているんでしょう、だから、その六項目の改善指示というものが行われて改善されれば、二五%のペナルティーは順次解消されるということになるわけですね。しかし、ことしもまた二五%のペナルティーが科せられたということは、改善六項目が何ら具体的に進行していないということではありませんかと、いつまでこの二五%のペナルティーをずっと続けて改善要請、改善要請と、瀬戸山文部大臣の方にも教職員組合の方から要請が行っていますから、あなたも読んでおられると思いますがね、    〔理事和田静夫君退席、委員長着席〕 いつまでこれを続けるんですかということを聞いている。いつまで続けるんですか、二五%のペナルティーを。
  97. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 改善を要望いたしました点の中で改善が行われている点というのも幾つかあるわけでございます。また改善が行われていない点等もまだあるわけでございます。そういった点を総合的に勘案いたしまして改善を指導いたしました時期に二五%カットということをいたしたわけでございますので、私どもといたしましては、この改善を要望したものが、大部分と申しますか、おおむね実現を見たという判断をすることができるまでの間は、何らかのかっこうでこういった措置は講じていかざるを得ない、こういうふうに考えておるわけでございまして、その時期ができるだけ早くなるように最大限の努力をいたしまして指導を重ねたい、かように考えております。
  98. 本岡昭次

    本岡昭次君 この国士舘大学のような形でペナルティーをずっと連続して課せられている私学がほかにあるんですか。
  99. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ちょっとこういうケースは記憶にございません。
  100. 本岡昭次

    本岡昭次君 それは記憶にないどころか、こんなことがあっては困りますよね。だから、改善の兆しがあり部分的に改善できれば、二五%を二〇%にするとか一五%にするとか、さらに状態が悪くなったらこのペナルティーがさらに三〇になるとか五〇になるとかいうふうになっていくのなら具体的に動きはわかるんですが、二五%ずっと続くのなら、いまのままでいけば二五%のペナルティーで済むという現状固定ということになってしまうでしょう。ペナルティーの意味は何かということが全く意味をなさなくなっているんじゃないですか。その点を申し上げているんですよ。どう考えているんですか。
  101. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この補助金カットのやり方につきましていろいろ御意見があろうかと思いますが、私学振興財団において措置をしておりますこの仕組みといたしましては、そのレベルによりまして二五%、五〇%、七五%という三段階のレベルでこの補助金カットという措置を講じておるわけでございまして、二〇%とか一五%とかいう細かい区切りをやっていないというようなことから、二五%で固定したままのカットになっておるわけでございます。ただ、こういった仕組み全体については御意見等もあろうかと思いますので、また研究は続けていきたいと思っております。
  102. 本岡昭次

    本岡昭次君 最後に文部大臣、私がやっぱり国士舘大学の問題を言いましたのは、一方では二五%のペナルティーがずっと五年間かけられる、それは学校経営上、運営上好ましくない点があるからということで文部省がかけてきた。にもかかわらず、一方では銀行から多額の金を借りて十億、十億というふうな億単位の金を借りて海外へどんどん出していっていると。その関係の中でこの問題を私は論じているわけです、おかしいではないかと。文部省がそのことを認めていくとすればなおさらおかしい。文部大臣、この二五%の補助金のペナルティーをかけているということと関連して、今後この国士舘大学に対する指導のあり方について答弁をいただいて終わりたいと思います。
  103. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 文部省、国が私学に助成をしておりますのは、その学校の教育の改善、維持のためにやっておるわけでございますと私は考えておりますが、海外に対する助成を銀行から借りてやっておるのは、これも度が過ぎますと学校経営そのものに支障を来すという関係が出ると思います。でありますから、こういう点は先ほど申し上げましたように、もう少し実態を究明して注意すべきところは注意しなければならない、かように考えております。  それからこの二五%のペナルティーを五年間か四年間も続けておると。私はまだ経験が浅いものですから、ちょっとおかしいなと聞いておる程度でございまして、もう少し確かめてみたいと、かように考えております。
  104. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう少し文部大臣、現状をしっかりと認識していただきたいんですね。あなたがおっしゃったように本当に度が過ぎているんですよ。そしてその国士舘大学の経営そのものに影響が及ぶかもしれないから考えてみなければいかぬじゃなくて、もうすでに影響を及ぼしているという認識を持たなければならないわけでしょう、銀行からそれだけのお金を借りているんですから。私の聞くところによると、総額十六億というお金を借りているんですよ。さらにまだこれに対して次々とブラジルの方に、あるいはまたエジプトの方に、ニューヨークの方に、あるいはサイパンの方にという建設計画がある。一体どこまでこれ進むのか。そのことで私学の経営が問題が起こらないなら、ある意味では補助金なんか出す必要がないじゃないかということになると思うんですよ。それだけのことをやっても私学の経営が健全にいける、教職員にも学生にも、あるいは学校そのものの教育活動にも何ら支障を来さぬというふうなことであるならば、これは別の考え方をしなければならぬと、こう思うんです。だから、事態はいま文部大臣が考えておられるような、私はまだ経験が浅いのでというふうなことじゃなくて、この問題もっと深刻に受けとめていただいて、文部省内の間違いのない対応を最後に要望をしておきたいと、このように思います。  次に九州産大の問題について若干伺っておきます。  九州産大問題につきましては、予算委員会あるいは文教委員会等々で相当論議をされておりますので、ここで多くを言う必要がないと思いますが、まず文部大臣にお伺いしておきますが、この九州産大事件について現在どのような見解を感じ、どのような責任を感じておられますか、最初に伺っておきたいと思います。
  105. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 九州産業大学の問題は、いまお話しのように予算委員会等でも取り上げられて非常な遺憾なことであると私も考えております。そういう関係から、詳細については局長からでも御説明いたしますが、改善命令、注意等を与えまして、改善すべきところは相当改善するという点もありますが、まだまだ不十分な点があるということで、今後さらに自主的な改善を見守りたいというのが現状でございます。
  106. 本岡昭次

    本岡昭次君 警察庁に伺いますが、一月二十日に理事長初め副理事長あるいは理事の三人とそれから学校法人中村産業学園を補助金適正化法違反容疑で福岡地検に書類送検をしたと言われますが、そのとおりか。それと、どの点が適正化法違反になると考えて書類送検したのか、ひとつ簡単にその具体的な事実関係をここで報告していただきたい。
  107. 森廣英一

    説明員森廣英一君) ただいま御指摘のとおりでございまして、福岡県警察が捜査を遂げまして、本年の一月二十日に学校法人中村産業学園の理事長ほか二名合計三名並びに学園そのものを補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反といたしまして検察庁に送致をいたしております。  どういうような点が補助金適正化法に違反したのかというお尋ねでございますが、昭和五十三年度から昭和五十六年度にかけまして、補助金算定の基準となるべき専任教員の数を偽るというような不正の方法をもちまして補助金を不正に取得しておる、こういう内容でございます。
  108. 本岡昭次

    本岡昭次君 次に、法務省にお伺いします。  いまのような事実関係に基づいて一月二十日に福岡県警から書類送検されて三カ月を経過しています。福岡地検ではまだ起訴に踏み切っていないというふうに聞いていますが、そうであるならばなぜ起訴にまだ踏み切れないのかお伺いします。
  109. 飛田清弘

    説明員(飛田清弘君) 先ほど来警察御当局の方から御答弁がございましたように、一月二十日に福岡地検はただいまお尋ねの事件について事件の送致を受けて、現在福岡地検で捜査しておりますけれども、なぜいまの段階で起訴できないかというお尋ねがございましても、これは捜査の内容に関することでございますからちょっと申し上げるわけにはいかないんでございますが、福岡地検では現在相当突っ込んだ捜査をしていると、そういう段階であるということでひとつ御勘弁いただきたいと思います。
  110. 本岡昭次

    本岡昭次君 会計検査院にも伺います。会計検査院も一月二十六日から二十八日の三日間特別検査ということで、九州産大に調査官四人を派遣したようですが、その結果の概要について伺いたいと思います。
  111. 竹尾勉

    説明員(竹尾勉君) お答えいたします。  昭和五十八年一月二十六日から二十八日までの三日間四名をもって実地検査を行いました。五十二年以前は時効が完成しているということで、五十二年度から五十六年度までの分に集中して検査いたしました結果、五十一年度に大学院の開設等に当たりまして、設置基準等による教員数の不足を生ずることとなったことから、これを糊塗するため教員となり得ないものを教員と詐称するなどし、発令簿、時間割り表、学生便覧等の一連の書類を改ざんしておりました。そこで実態を明らかにしましたところ、事務職員を専任教員と偽っていた者、授業時間を持たなかったり集中講義を行ったりしている者を常時の勤務形態にあるとして専任教員としていた者が延べ八十九名ございまして、これによって補助金の過大交付額を計算いたしますると一億六千五百余万円ということに相なりました。このような状況でございます。
  112. 本岡昭次

    本岡昭次君 この私大の補助金ですね、この問題についてこうした不正事件が起こらないようにさまざまな経理のチェック体制というものがあります。私の知っている限りでも、学校法人の監査あるいはまた文部大臣、公認会計士、監査法人私学振興財団、会計検査院、それぞれ五つのチェック機関があるわけなんですね。にもかかわらず、再三にわたって昭和四十五年以来この学校法人の補助金問題について問題が起こっているわけで、学校法人に対する社会的な信用というものがそういうことで失墜をしていきつつあると思うんです。それを全部一つ一つのチェック機関についてどうなっているんだと聞きたいんですが時間がありませんので、文部省関係する問題にしぼってお伺いをしておきたいと思います。  文部省私立学校振興助成法第十三条に基づいて学校法人に対する強い権限を持っているんですが、文部省はこの権限に基づいて助成を受けている学校法人に対してどのような検査をやっているのか、その点についてお伺いしておきます。
  113. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私学に対します経常費の助成につきましては、私学の自主性あるいは私学の自治ということを尊重するというたてまえから、文部省が直接これに手をつけることなく、中間的に日本私学振興財団という特殊法人を設けまして、その特殊法人がこれに対して補助金の額を決定し、交付をし、そして適正であるかどうか等の監査をすることになっておるわけでございまして、文部省といたしましては、私学振興財団を指導してその適正化のために努力をしておると、こういうところでございます。
  114. 本岡昭次

    本岡昭次君 私学振興財団の職員百十九人のうち、文部省のかわりに補助金申請書類をチェックし、助成の問題について監視をしている人数、何人がそれに当たっておるんですか。
  115. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 常勤のもののほか、非常勤等まで含めまして約二十名程度でございます。
  116. 本岡昭次

    本岡昭次君 その二十名が七百九校ですか、それだけの学校をチェックしておるんですが、それで十分な体制だと文部省は思ってますか。
  117. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) もちろん、これだけの多額の補助金を扱い、そして多数の学校法人を対象にしておるわけでございますから、非常に十分な体制であるというふうには申しかねるわけでございますが、こういった行財政改革等いろいろな宿題を抱えている時期でございますので、そういった人数の中で最大限の工夫を重ねて努力をするようにということでしてまいっておるわけでございます。
  118. 本岡昭次

    本岡昭次君 五十六年四月十五日の参議院決算委員会あるいは同月十七日の参議院本会議においても、毎年のように私学補助金の経理について検査院から不当事項が指摘されているので、根絶のための方途を検討すべきであるという警告がなされて、決議されています。これに対して文部大臣は、決算委員会で、「ただいま御決議のございました私立大学等に交付しておる経常費補助金の問題につきましては、御決議の趣旨に沿いまして、今後なお一層指導監督の徹底を図ってまいる所存でございます。」こういうふうに答弁をしているんですね。  毎年これがあるんですよ。それがいまのような体制の中で、それでは来年はどうかという場合に、私は確信はないとこう思うんですが、文部大臣、またことしも決算委員会において指摘事項として警告がまたなされると思うんですね。どうですか文部大臣として、毎年毎年警告されて、そして、いやそのたびに努力します努力しますという事柄についての責任をお感じになりませんか。
  119. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大臣からお答えいたします前に、現在検討しあるいは実施しておりますことを御報告さしていただきたいと思いますが、文部省関係で申しますと、まず私学振興財団の取り組みでございますけれども、先般、昨年の十二月でございますが、補助金業務の適正な執行についてということで、理事長名で各学校法人の理事長に対しまして通知を出しその協力、理解を求めたということがございます。それから、こういった事柄につきまして、まずは学校法人内部の監査機能を充実していく必要があるということから、この新年度、五十八年度から学校法人の監事等を対象にいたしますいわば研修会というようなものも設けるようにいたしました。それからまた、現在財団内部におきまして検討中でございますけれども、補助金の配分の基礎となる資料につきまして、従来以上にこれに対応するべく、現在、内容の精査をする、同時に実地調査の回数等もこれをふやして不適正なものを排除するようにしたいというようなことで努力をしておるところでございます。  なお、文部省といたしましては、例年各学校法人の関係者を集めまして学校法人運営協議会というのを開催しておりますが、今回のケースにかんがみまして一月の二十七日に全国から招集をいたしまして、こういったケースのないようにといった厳しい指導を行ったところでございます。  それから、お触れになりましたように、こういった経常費助成を受けます法人につきましては公認会計士の監査が必要という措置をとっておるわけでございますが、公認会計士協会にも御協力をいただきまして、所属の学校法人監査人に対しまして、こういうケースにかんがみ従来以上に厳正に監査をするようにという通知も出していただいておるというわけでございまして、そういった諸般のことを含めまして、今後こういうことがないようにという努力を重ねつつあるところでございます。
  120. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ただいま本岡委員から御指摘の問題は、私非常に重大に受けとっておるわけでございます。  といいますのは、私は文部省を担当するようになりましたときに、特にこの九州産業大学の問題を説明を聞きまして、そのやり方はきわめて悪らつであると、率直にそういう受けとり方をしました。しかも、長年にわたって教授、助教授ごまかしといいましょうか、まさにごまかしの書類によって莫大な国費が助成として渡されておる。こういう状態を見まして、私は、私事にわたりますけれども、もと司法に関係しておりました者として非常に不思議なことだという感じを持ったわけでございます。大体、私立大学であろうが国公立でありましょうとも、教育の機関でありますから、その経営態度、運営の仕方そのものも私は教育に大きな影響がある問題であると考えております。でありますから、私学の経営者といえどもそういう点を十分に考えて、世間から指弾を受けないような経営また運営をしてもらいたいと、これはもう偽らざる私の気持ちでありまして、この問題を見まして、事務当局はもとよりでありますが、私学振興財団についても、書類審査だけでこういうことをしておったというところに問題がある。先ほどお話に出ましたように、人員、体制が必ずしも十分でないからむずかしい問題もあると思いますが、書類審査だけでなしに、実際教授であるのかどうであるか、そういう点まで見るという体制で今後やってもらいたい。こういう窮屈な、国民の負担の財政の中でも私学助成をやるというこの教育の大事さからやっておるわけでありますから、その点を十分認識をして今後進んでもらいたいと、こういうことを厳重に伝えておるわけでございまして、先ほど局長も申し上げましたように、心を入れかえて進むという体制で今日やっておることを御理解いただきたい、かように思います。
  121. 本岡昭次

    本岡昭次君 最後に、この問題について再度文部大臣にお伺いしますが、文部大臣もいま明言されましたように、きわめて悪らつであると——私も悪らつであると思います。だれかがミスをしたとか、悪意はなかったけれどもという、泥棒にも何分かの理があるわけで、幾つかそうしたことのしんしゃくはできますが、私はこの九州産業大学の経営陣がやったことは一分の理もないと、こう見ています。  そこで、文部大臣はさらに、そうしたことの起こらないように、たとえば書類審査だけでなく、もっと中へ入って調べるとかいうことをおっしゃいますが、私は私学というものの自主性を尊重しなければならぬと、こう思います。だから、書類審査でいいんですよ。だけれども、その書類審査というものを信頼してやって、それに今度のようなことをやった人間に対してどうけじめをつけるかということがあればいいと思っているんですよ。やはり私学の自主性は尊重せにゃいかぬと思います。私学の中へ次々補助金に事かけて入っていって調査するということは私はよくないと思うんですよ、こういうかかわり方は。だから書類審査でいいと、しかし、それをよいことにして今回のように悪事を働いた人間にはきちっとけじめをつけるということを文部省ができるかどうかだと思っているんです。だから、文部大臣としてやることは、きわめて悪らつであるならば、この経営陣、特に鶴岡理事長に対して文部省が退陣勧告をする、そして悪いことをした人間に対するけじめをきちっとつける、そういう関係でもって私は私学と文部省関係はあってほしいと、こう思うんです。どうですか。だから、鶴岡理事長などに対して退陣勧告を文部省はきちっとやってけじめをつければいいんですよ。そんな、体制をどんどん強めて私学の中へどんどん文部省が入るということ以前に、文部省のやるべきことはそれだと思うんです。いかがですか。
  122. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いまお話しのように、教育の中立を十分頭に置いてやっておりますし、私学の経営に干渉がましいことはできるだけ差し控える、こういう立場でやっておるわけでございまして、九州産業大学の問題は、先ほど申し上げましたような感想をもって対応しておりますが、文部省といたしましては、そういう気持ちを含めて、先ほど来申し上げましたように、各種の改善方策を勧告をしておるわけでございます。まだまだ不十分である点があると、かように先ほど申し上げましたが、そういうことを期待しながら、法令の許す範囲内で監督を進めていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  123. 本岡昭次

    本岡昭次君 状況によっては、理事長の辞職勧告というものを文部省の行政勧告権によってやるということころへ踏み切っていただくことを要請をしておきます。  それから、時間がもう十五分ばかりになりましたので、予定しておりました質問が残ることになりますが、残された時間内でできるだけ急いで質問してまいりたいと思います。  文部省が初中局長の名前で四月十五日、各都道府県教育委員会教育長にあてて、道徳教育の実施状況の調査を行われておりますが、このねらいは何ですか。
  124. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 御指摘のように、そのような通知を出したわけでございますが、これは、ことしの二月に入りましてから、特に中学校におきまして校内暴力を中心といたします生徒の非行が非常な問題となりまして、私どもといたしましても、有識者による懇談会等を招集いたしましたり、あるいは文部大臣の指示によりまして省内にプロジェクトチームをつくりまして検討を重ねているわけでございますが、その際におきまして、学校におきます道徳教育の実態について十分に調査をして、これをいかにして充実をしたらよろしいかということが課題になったわけでございまして、現在、毎週一時間の道徳の時間を中心といたしまして、学校におきましては道徳教育の指導が行われているわけでございますけれども、たとえばことしの三月の六日に発表されました総理府の教育に関する世論調査等におきましても、小学校におきましては特に道徳教育に力を入れてほしいというふうな国民の声もございますし、いろいろな観点から、この際実態を十分に把握をいたしまして、今後道徳教育のあり方につきまして検討を重ねる際の資料といたしたいと、そういうことでございます。
  125. 本岡昭次

    本岡昭次君 この調査について、修身の復活ではないか、あるいはまた、瀬戸山文部大臣が、非行は日本の古くからのいいものを否定した占領政策の影響であるというふうな発言もされていることから、非常に心配しているんですが、その修身復活、あるいはまた日本の古くからのいいものを否定した占領政策の影響ということであるならば、日本の古くからのものをここにもとへ戻さないかぬということに文脈からなりますが、そうしたこととの関係はどうなんですか。
  126. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) もし誤解があるとすればぜひ改めていただきたいと思いますが、私は、最近の学校非行等の問題を見ておりまして、学校だけじゃないと思うんですけれども、戦後の日本の社会は非常に経済発展いたしまして、国民生活も御承知のとおりいまだかつてない高い暮らしをするようになったわけでございます。きわめて結構なことでありますが、よく言われておりますように、心の面が失われつつあるんではないか、人間間のマナーが壊れつつあるんじゃないか、こういうことが言われ、私もそういう認識をいたしております。これはいろんな原因があると思いますが、第二次大戦で負けまして、御承知のような事態になりまして、あのときの占領政策は、日本の過去がすべて悪いというような立場で占領政策をやられておる歴史があるわけでございまして、その反省はきわめて結構でありますけれども、すべてが悪かったんだ、すべて否定するということの反動として今日の事態が起こっておるというふうに私は見ておる。いろんな見方があると思いますが、これが全部とは思いませんけれども、そういう転機から、今日の物質文明はなるほど栄えましたけれども、精神文明といいますか、人間のマナーといいましょうか、ルールといいましょうか、だんだん忘れがちになってきておる。これでは、せっかく経済が発展し、国民生活が豊かになっても、私は、人間社会というものは、よく言われますように物心両面にわたって心豊かな社会、これをつくるのがわれわれみんなの願いであろうと。そういう意味で、そういう点が忘れられちゃいかぬのだということを国民全部の皆さんが考えてもらいたい。小さな小中学校の子供はいろんな事情を知りませんから、そういう頭で教育をしてもらいたい。家庭教育、社会教育、学校教育、これはやっぱり指導しなければわからない時代があるわけでございますから、そういう意味で、道徳の問題ももっと気をつけるべきではないかということを申し上げておるわけでありますが、さればといって、おっしゃるように昔の修身課程を復活せよ。全然時代が違っておるんですから。時代が違っておりますけれども、歴史の積み上げというものをわれわれは忘れてはならないんじゃないか、かように考えているわけでございます。
  127. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、再度文部大臣にお尋ねしますが、古くからのいいものの中に教育勅語はどのように考えられますか。
  128. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 教育勅語も、これはあの当時の時代としてはすばらしいものとしてまいりましたが、いまや時代は違っております。  ただ、問題は、教育勅語の中に、いろいろよく言われますように、徳目とかなんとか言われておりますが、そういうものを、私は、人間社会としては適当なものは、教育勅語の中にあったから全部だめだ、こういう考えはとっておりません。よく調べてみますると、占領政策を進めます場合に、日本の諸制度を全部撤廃するかしないかという議論をGHQといいますか、占領軍の中でやっておりますが、教育勅語の中に書いてあることはいいことが書いてある、ただし、今日までの歴史的な歩みの中でこれを残すということは適当でない、こういう措置がとられておるということは私は歴史によって認識しておりますが、親に孝行せいとか、先輩を尊敬せいとか、子供を愛せよとかいうことは、私は古今東西続いている人間のルールじゃないか、こういう意味で、教育勅語にあるから中身が全部だめだという考えはとっておらない、こういうことでございます。
  129. 本岡昭次

    本岡昭次君 去る二月十一日の建国記念の日に私はテレビを見ておったんですが、山陰地方の某私立大学の附属高等学校の校長が、生徒を全部集めて、学校行事として教育勅語を昔なつかしい姿でこうして読んでおるのを私は見てびっくりしたんですが、文部省はこのことを知っておられますか。
  130. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 先生からお聞きいたしまして調べたんですが、承知をしておりませんでした。
  131. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も、その後時間がありませんでしたから調べておりませんが、一遍そのテレビの放映をずうっと各テレビ局に当たって、事実私見たんで、事実を明らかにしていきたいと思うんですが、もしこれが事実であればどういうことになるんですか。
  132. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) これは、学校におきます教育勅語の取り扱いにつきましては、すでに戦後、昭和二十三年に、衆議院、参議院におきましてこの排除、失効の決議が行われておりまして、これを学校におきます教育活動の中で取り上げるということは、そういう意味からも適当ではないというふうに考えております。
  133. 本岡昭次

    本岡昭次君 適当でないということで済む事柄ですか。
  134. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 事実関係がよくわかりませんので、そのようにお答えしたわけですが、どのような状況の中で、どういう活動の中で取り上げられたのかというふうなことも関係いたしますので、一般論として申し上げたわけでございます。
  135. 本岡昭次

    本岡昭次君 学校行事で生徒を集めて学校長が教育勅語を読む、いま仮にそういうことがあったとすれば、文部省はどうするかと。
  136. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) そのようなケースが事実であるといたしますと、やはり先ほど申し上げましたような趣旨から申しまして、学校の教育活動の中でそういう形で取り上げることは適当でないというふうに思います。
  137. 本岡昭次

    本岡昭次君 適当でないということをやった校長なり、学校はどうなるんですか。
  138. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) それは、その学校の監督の機関でございます、私立学校でございますれば都道府県の知事、公立の学校でございますれば教育委員会等の判断によるわけでございまして、私どもといたしましては、そういう実情を踏まえて、この監督の責任を持っている機関にどう指導するかという問題があろうと思いますけれども、いまお聞きした限りにおきましては、やはり問題があるというふうに考えるわけでございます。
  139. 本岡昭次

    本岡昭次君 二十三年に教育勅語は皆学校から文部省は回収しましたね。だから、学校にはないはずなんですよね。回収をしたということは、そういうものは公教育の中で使ってはならないということで回収をしているんです。だから、それが現にあるという場合はどうするんですか。
  140. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 御指摘のように、無効、排除の決議に基づきまして、文部省といたしましては、教育勅語を学校に配りましたものにつきましては回収をいたして、処置を完了しておりますので、その当該学校の校長が読みましたものがどういうものであるかわかりませんが、回収が十分でなくて残っていたというものではなかろうと存じます。
  141. 本岡昭次

    本岡昭次君 事実を明らかにしてからまた質問しますが、私は心配をしておるんですね。  建国記念の日に国立劇場で集会が開かれて、それはまさに紀元節復活と同じような形の状況がある。そして、それにあわせて教育勅語というものが朗読されている。瀬戸山文部大臣も、中の徳目一つ一つはいいじゃないか。親に孝行、兄弟は仲よく、夫婦も仲よく、そのとおりでございますが、しかし、それが教育勅語という一つの昔の天皇制のもとにおける皇国史観に基づいて「一日一緩急アレハ義勇公ニ奉シ、」というところに完結し、日本は「皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ、」という全体の中における部分なんですから、それが、これから道徳、徳育、訓育の中心になければならぬという精神的支柱にされていく。やはり道徳というふうなことになってくると、何かそういう絶対的なバックボーンみたいなものをそこに求めていくという傾向が私はあると思います。  そういう中でこの教育勅語の取り扱いというものを、文部省がこれを失効決議をしたという立場から、明確にこれに対する取り扱いの注意を各教育委員会に喚起すべきでないかと思うんですが、いかがですか。
  142. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 教育勅語が効力がないことは、すでに国会の御決議によりましても、また、その後の文部省の指導によりましても明確でございまして、ただ、当該学校がどのような形でそういうものを取り上げたのかということが詳細にわかりませんと、一般論としてだけお答えしたわけでございますが、やはり教育基本法なり、学校教育法の趣旨に従って現在の学校教育が行われているわけでございますので、そのような方針を徹底するということは心要かと思いますけれども、今回のケースにかんがみまして通知をするということは考えておりませんが、いろいろな機会に、ただいま申し上げましたような憲法なり教育基本法の趣旨に従って指導を徹底するということは、これからも徹底をしてまいりたいというふうに考えております。
  143. 本岡昭次

    本岡昭次君 最後にいまの問題に関連して文部大臣、総理府にお伺いしておきます。  いまも触れましたことしの国立劇場で行われました建国記念の集会が、これは和田委員の方からもずいぶん厳しい追及がありました。しかし、行われたその集会は非常に宗教的色彩も強く、紀元節復活というそのものの感じでありました。私も黛敏郎氏のそこにおけるあいさつの文章を持っておりますが、これについては大変な疑義を持ちます。この文章を読む限り、総理府も文部省も後援すること自身が、中曽根総理を初めとする現在の政府考え方そのものと相反してくるということで、総理が祝電を打つことすら問題がある。ましてや文部省なり総理府がこれを国民の祝日として後援していくということについては、絶対あってはならない集会にもはやなっている、このように考えるんですが、文部大臣、総理府、ことしの集会から考えて来年の後援について、それはもう来年は来年のことだと、こういうことでしょうが、ひとついまの段階でこの問題についてのお考え、所見、あるいはまた私はやめるべきだというふうな考えを持つんですが、そういうことについて、あるいはまた祝電から一歩進んで総理が出席するというふうなことはもってのほかだと思うんですが、この点についてお伺いして終わりたいと思います。
  144. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 御承知のとおり、建国記念日は法律によって決まっておるわけでございまして、いずれの国もその国の記念日を祝うということはあり得るわけでございまして、これ祝うこと自体、国民がそろって祝うということは私はきわめて結構なことである、歴史を思い将来を誤らぬということを念ずる行事でございますから結構だと思います。ただ問題は、この本来の趣旨を逸脱して行われておるやにいろいろ指摘され批判されておりますから、国民全部がそろってやれるような形式と申しますか、いわゆる宗教行事にまたがったり特定の政治行動に走る、こういうことのないことを望むわけでございます。でありますから、もういま決断すべきじゃないかというお話でございますが、ことし行われたのはややそういう嫌いがあると各方面から指摘されておる部分もありますから、まあ来年の問題は来年どういう姿でやるかということを事前に見きわめて、ことしもそういうことのないようにという条件をちゃんと示し文部省としては後援の名義を出しておるわけでございますから、そういうことを指摘されないような姿でできるかどうか、これを見きわめて後援すべきかどうかを態度を決めたい、かように考えておるわけでございます。
  145. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 建国記念の日につきましては、これが国民の祝日でもございますし、国民がこぞって祝っていただくということが望ましい、私どもはそのように考えております。この式典の後援につきましては申請主義ということでございますので、申請の都度検討をして判断をしていくということになりますが、国民の祝日にふさわしい、また次代を担う若い世代の感覚にもマッチした式典となるよう強く要請をいたしたいと考えております。先生の御意見も踏まえまして慎重に検討の上判断をしてまいりたいと考えております。
  146. 本岡昭次

    本岡昭次君 以上で終わります。
  147. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ─────・─────    午後一時四十三分開会
  148. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題とし、文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  149. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 いま国民の大多数が非常に心配していることの一つに校内暴力ということがあると思います。先ほど同僚議員もちょっとそのことに触れられましたけれども、私は私の観点から御質問申し上げたいと思います。  まず最初に、最近の校内暴力の事情につきまして警察の方で把握しておられます状況を教えていただきたいと思います。
  150. 阿部宏弥

    説明員阿部宏弥君) お答え申し上げます。  昭和五十七年中に警察が把握しました校内暴力事件でございますけれども、千九百六十一件を数えております。前年に比べますと百二十四件、五・九%の件数では減少という形になっております。しかし、本年に入りまして非常に、まだ全数を把握しておりませんけれども、大変な勢いでふえているという状況もございます。内容的に見ましても、相変わらず凶悪あるいは粗暴な事件が多いのでございまして、特に校内暴力事件のうち問題が多いと思われます教師に対する暴力事件でございますが、これが八百四十三件発生いたしております。前年に比べて七十一件、九・二%と大幅な増加を示しているという状況にございます。最近における校内暴力事件の傾向でございますけれども、このような事件に通じて見られますことは、大半が中学校で発生しているということでございます。先ほどの校内暴力事件、件数で見ますと九四%ほど、対教師暴力事件の九七・九%が中学校で起こっているという状況でございます。それから校内暴力を引き起こした生徒の大半ですけれども、いわゆる学校に不適応な生徒たちであるといったような状況も見られます。それから家庭環境ですけれども、校内暴力事件を引き起こしました生徒の多くの者が、放任家庭に育っているといったような状況も見受けられます。そのほか、いわゆる番長グループによる事件などが多いということ、背後に暴走族などの学校外の粗暴集団が存在いたしまして、これらが校内暴力を一層拡大させているあるいは悪質化させているといったような事例なども見られます。およそ校内暴力事件についてはこのような状況でございます。
  151. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 そのような校内暴力事件が起こります学校は、どのような学校が多いというふうに把握しておられますか。
  152. 阿部宏弥

    説明員阿部宏弥君) 学校関係については、私どもの方は事件それ自体を扱いますけれども学校がどういうものであるかということは把握いたしておりませんけれども、ただ、具体的な事例で見ますと、校内暴力が発生いたします一つのメカニズム的なものが一つございまして、非常に単純な事案、校内暴力に至らない単純な事案学校内で見過ごされていると、それがいつの間にかエスカレートしていって、一部の不良グループあるいは落ちこぼれ的な生徒によります暴力に発展していく。やがて学校一般生徒までも巻き込んでそれに同調していくような形になっていっているというのが、校内暴力の一つのパターンになっているわけでございます。したがいまして、初期の段階から、ひどいものになりますと、学校それ自体が荒廃の状態にあるといったようなものにまで行き着きますけれども、その間に、そういう生徒の不良行為なり非行行為、そういうものに対する学校としての対応に非常に問題があるのではないだろうかというふうに見ております。したがいまして、そういう生徒たちの非行に有効に対応できていないところでやはり問題が起きているんだろうと。  それでは、どういうものがそういう非行に対応できている学校かといいますと、この辺については、またいろいろと詳細に見なければいけない問題があると思いますので、私ども立場からはこれだけにとどめさせていただきたいと存じます。
  153. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 校内暴力の問題については、わが国では数年前から非常にクローズアップされてまいりまして、親たちを初め国民全体が非常に心配しているわけでございますが、外国ではこのようなケースはどういう状態でございましょうか。文部省の方で把握していらっしゃるかと思いますが、幾つかの国の数をお知らせいただきたいと思います。
  154. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 外国の状況につきましてはまだ十分な資料があるわけではございませんけれども、たとえばOECDの都市部の学校教育についての第三回国際セミナーが一九八〇年ストックホルムでございまして、そのレポートを読みますと、「学校と社会における暴力」という章におきましては、過去二十年間にこれらの加盟諸国におきましてその問題が非常に重要な論点となっていたというふうな記述もございますし、また最近のニューヨーク・タイムズそのほかの情報によりましても、アメリカにおきます校内暴力の状況あるいはイギリスにおきます校力暴力の状況等が把握をされるわけでございます。  概して申し上げますと、アメリカとイギリスがわが国と同じように校内暴力の中で対教師暴力を含めまして生徒間あるいは学校の器物破壊等を含む程度の重い校内暴力の多発している国でございますし、ドイツ、フランス等におきましては、どちらかといいますとバンダリズムと申しますか、学校の器物の破損というものが主とした校内暴力が典型的な例でございます。  特にアメリカの場合には家庭の崩壊でございますとか、社会の不安定な要素とかいろいろございまして、議会におきましてもこの問題の調査をいたしましたり、あるいは国立教育研究所が調査をする等でかなり詳細にわかっているわけでございますけれども、件数で申し上げますと、アメリカの教師に対する暴力は昭和五十五年で一年間約七万件を超している。被害を受けた教師が十一万三千人に達しているというふうなことが報告をされておりますし、また生徒間の暴力あるいは生徒に対する外からの暴力と申しますか、そういうもの。一般学校の中は街路よりも危険だということが報道をされております。  イギリスにおきましては、やはり対教師暴力が一年間に約七千件、これは一九七五年のものでございますけれども、達しているということで、イギリスの教員組合は教師に傷害保険を掛けているということが報ぜられております。  このようにアメリカ、イギリスにおきましては、対教師暴力を含む深刻な校内暴力問題を抱えているということが報じられております。
  155. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 いまのような例を伺いますと、このような非常に私どもにとっては大変に嘆かわしい困ったことだと思われる校内暴力も、豊かな社会の一つの病気であるのではないかという気がいたしまして、日本でもこのまま放置いたしますと、先進諸国で起こっているような状況が出現してくるのではないかと思われまして非常に心配になるわけでございますが、大臣は今日のような校内暴力の非常に大きく発生しております状況についてどのように認識しておられますか、一言お伺いしたいと思います。
  156. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いま森山さんからお話しのように、これは相当前からこういう事例が伝えられておったわけでありますが、最近は特に数も多くなるし、その質が非常に悪質化してくるといいますか、対外的になるし対人的になってくると、こういう点が非常に心配されておるところでございます。この原因はいまもいろいろお話がありましたが、私は必ずしも経済発展だけではないと思うんですが、それも大きな一つの原因にはあると思います。何というのでしょうか、私は特に、よく誤解をされる方があるんですけれども、敗戦後、これは非常に結構なことなんですけれども、自由主義社会では個人の尊厳、人間の平等、人権の尊重、非常に結構なことなんですが、特に日本の場合には従来の社会の状態から大きく転換いたしました。でありますから、その際に個人の尊厳、人間の平等、人権の尊重を指導し教育すること、これは結構なことでございますけれども、それに反動的に非常に走り過ぎたと。それにはほかの条件があるんだということを忘れておったとまでは言いませんけれども、比較的に薄らいでおった。人間もやっぱり生物でありますからある程度の反省といいますか、セーブする状態がないとどうしてもこれは突っ走るのは当然でありまして、そのために法律も道徳もいろんなセーブする制度を編み出しておるわけでありますが、これは子供だけじゃなくて大人もそういう面が私はあると思うのですけれども、たまたまお話しのように経済発展が、余りに急激な発展があった。それから国民生活が、先ほど申し上げましたが非常な急速な発展を遂げた。これは結構であります。結構でありますが、そのためにいろんなまたそういう横道にそれるというのでしょうか、適当な言葉でないですけれども、そういう機会が社会に大きく醸成されておる。一方の方においてはしつけといいますか、セーブする態度が社会ほとんど全般に広がってきておる。こういうものがいろいろ絡まって残念ながらこういう状態が——私は子供の立場といいますか、子供を見る立場から言いますと非常にかわいそうだという気がしておる、気の毒だと。もう少ししつけといいましょうか、ルールというものを教える社会、学校、家庭というものがしっかりしておれば、こういう子供たちも将来幸せに暮らせる社会に入れる、こう思うんですけれども、残念ながら、あらゆる面でというと言い過ぎかもしれませんが、各方面でそういう点が抜けておる。でありますから、私はいまこういうことを心配するわけでございますが、特に文部省としては教育面から言っての主管のセクトでありますから、文部省としてもどこに原因があるか。過去ももちろん校内暴力、非行、少年非行については文部省のみならず総理府においてもあるいは法務省においてもいろいろ対策を考えておったわけでございますけれども、それにもかかわらずだんだん激化する状況にある。どこかに欠陥がある。そういう問題を細かく分析して、一刀両断というわけにはまいりませんけれども、こういう問題は、可能なものから逐次改善をしていくと。そうしなければ日本の社会の将来が心配されるばかりでなくて、これから成長して社会人となろうとしておる青少年にかわいそうだと、こういう立場からいま現にいろいろなことを進めておる、こういう状況でございます。
  157. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 大変文部省もこのことを憂慮されまして、最近いろいろな有識者の方に意見をお聞きになるとか、その結果をまた地方の教育委員会その他に伝達されまして、十分これからもっと注意していくようにというお気持ちで取り組んでいらっしゃるように拝見いたしますので、ぜひそのような努力を強力に続けていっていただきたいと思うわけでございます。  しかし、いま大臣のお話承っておりますと、ちょっと抽象的なような感じがするわけでございます。いま大臣がおっしゃいましたようなことは、かねて教育問題に関係のある者、教育について関心を持っている者は皆同感でございまして、何とかしなければならないと思いながら今日まで来てしまったのではないかと思うのでございまして、そのような認識に基づいた上で具体的に何をしていくかということが一番大事なことではないかというふうに考えるわけでございます。  先ほど警察の方のお話を承りましたときに、このような校内暴力に走る子供たちの大半が学校に適応することのできない、俗に言ういわゆる落ちこぼれの子供たちである、そのようなことが事実であるというお話がございました。このような問題意識は、文部省にも当然前からおありになったわけでございまして、たしか五十五年十一月二十五日日付の局長の通達の中でも「児童生徒が学校教育に不適応を生じて問題行動に走ることがないよう、学校教育活動を適切に行うため十分配慮する必要がある。」ということを言われまして、その第一に「児童生徒に対する指導内容を精選し、指導方法の改善を図り、児童生徒が指導内容について十分理解し、興味・関心をもって意欲的に取り組むことができるようにすること。また、学校教育活動のあらゆる機会を通じて、児童生徒の個性や能力に応じた指導を行い、その一層の伸長が図られるようにすること。」ということをすでにもう三年前におっしゃっているわけでございます。どうもその後の様子を見ますと、この趣旨が十分徹底していないのではないかというような心配があるわけでございますが、どうもこのような抽象的な言い方では、具体的にどうしたらいいかというもう一つの壁が破れてないんじゃないかという気がするわけでございます。  五十七年の六月に出されました教育モニターの報告というのがございます。それを見ますと、校内暴力の起こる学校側の要因といたしまして、第一に、教師と生徒の間に尊敬と信頼に基づく人間関係が欠けることであるということを挙げております。そして第二に、教師に使命感が不足している。さらに、教育指導の能力が不十分であるということを言っておりまして、これらを総合いたしますと、根本的には先生方の意欲と能力に残念ながら問題があるということが言えるのではないかという気がするのでございます。  このようなことで気になりますのは、暴力事件の発生が日教組の勢力と比例しているということを言う人もございまして、都道府県別の数字などを見てみますとそういうこともあるのかなと私も心配になるわけでございますが、今日はそのことは特に申しませんけれども、特にその先生方の指導能力ということを重点に考えていきたいと思いまして、教員の養成のことについてお聞きしたいと思うんです。  学校先生になるための資格といいますのは、教職課程を大学でとりまして、その教職課程の中には教育実習というのが二週間ぐらいあるようでございますけれども、わずか二週間ばかりの経験をいたしました後で、所定の課程を終わりますとだれでも資格が取れる、これはよく知られていることでございます。しかも、資格を取りました後、今度は各県教育委員会の採用試験がありますけれども、それはほとんどがペーパーテストに限られているわけでございまして、ペーパーテストの成績がいい人が現実に学校先生に採用されるというわけでございますが、どうも私はこのようないままでのやり方は少し安易過ぎるのではないかという気がいたします。学校先生というのは紙の上の試験ができる優等生、それだけでは不十分なのではないかという気がするんでございます。そのような問題意識が文部省の中にもおありになりますでしょうか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  158. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 養成の問題を除きまして、採用と研修につきまして私の方からお答えをさしていただきますが、確かにこの教員の採用につきましてペーパーテストだけによって適性のある教員を選考するということにつきましては問題があるわけでございまして、私どもといたしましては特に最近の校内暴力に関連するということではございませんけれども、やはり使命感を持って、子供に愛情を持って接していただく教員をどうして選ぶかという見地から、教員の採用に当たりましては単にペーパーテストのみによらず、たとえば面接でございますとかあるいは大学におきます部活動のようなものとかいろいろな、この志願者の全体的な資質と申しますか、そういうものを的確に把握するような方法で選考するようにという指導をいたしております。  それから、教員の研修につきましてはいろいろな研修があるわけでございますけれども、特に最近こういう具体的な問題が起きておりますことにかんがみまして、生徒指導を中心といたします、たとえばカウンセリング、特に個々の事例に関連いたしまして教育相談とかカウンセリングとかそういうような具体的な指導を有効にするような指導を、各教育委員会でございますとかあるいは文部省が行います研修におきましてもそういうカリキュラムを取り入れまして、役に立つような研修を行うということに努めているところでございます。
  159. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 特に教員養成の問題について、具体的には教育実習の充実でございますとか実践的な指導力を身につけさせるというような観点から積極的に考えるべきでないかというお尋ねでございます。  教育実習の問題点については、これはかねて、もうすでに昭和四十七年の教育職員養成審議会の建議でもその点が指摘をされており、その後いろいろなところで議論が行われておるところでございます。私どもも、特に教員の資質能力の向上のためには、養成の段階での教育実習等の充実を図らなければならないという点を課題と考えているわけでございます。  ただ、御案内のとおり、現在の教員養成制度はいわゆる開放制をとっておりまして、一般大学における教員養成ということが基本になっているわけでございます。したがって、一般の大学における教員の免許状の取得に当たりまして、教育実習を私どもとしてはぜひとも充実いたしたいと考えるわけでございますが、一般大学の本来の専門科目の取得でございますとか、そういう大学の教育課程の編成上どうその点を調和すればよろしいかというような点が一つ問題点としてございます。それともう一つは教育実習について、特に問題点は、実際教員免許状は取得するけれども、実際に教員とならない者が相当多い。したがって、実際に教員にはならないけれども、免許状を取得するために教育実習は課されているわけでございますが、その点をどのように調整を図っていくかというようなところが現実の問題点として考えている点でございます。  教員養成制度の改善についてはかねていろいろと検討も進めているところでございまして、私どもそれらの点については今後さらに積極的にどのような改善案を考えていくべきかということを積極的に考えてまいりたい、かように考えております。
  160. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 それでは、その考えていただくときに参考にしていただければありがたいと思うんですが、私の意見を少し申し上げたいと思うんです。  教員を養成する課程、教員養成専門の大学もございますね。その大学においても大学の先生、その教員養成大学の教授の中に、現実に小学校なり中学校なりで教育をしていらした経験のある方、特に最近そういう事態を実際に自分で経験している人というのがいるんでしょうか。そういう方がいらして、現場ではこのような問題があり、そのときには、こういう場合はこういうふうに対処していくというふうな、本当に具体的な御指導がなければ、単に理屈だけを習ってもこういう仕事はうまくいかないんじゃないかと一つ私は思うわけですが、いかがでしょうか。
  161. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 教員養成学部における現実の指導体制がどうかというお尋ねでございますが、現在国立の教員養成学部におきましては、実践的な能力の涵養を図るために、教科教育、いわゆる教え方でございますが、教科教育や教育実習の充実に努めておりまして、具体的には、たとえば教育実践研究指導センターというようなものを、これは五十八年度現在で十四大学で置いているわけでございます。  そのほか教科教育に関する教官の組織の整備でございますとか、いま御指摘の点では、実際に小中学校等の教育について経験を持っておる教員を非常勤講師として採用するというようなことで、教員養成の実地指導非常勤講師手当というものを措置をしておるわけでございます。具体的には五十八年度予算額で約五千五百万、五十七年度の実績で申し上げますと、四十六大学で二千五百三人を採用しているというのが現状でございます。
  162. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 いろいろ努力はしていらっしゃるようでございますが、どうもまだ不十分のように思いますので、その点をもっと力を入れて充実していただきたいと思います。そうしてせっかくりっぱな先生方が教員養成大学においでになるわけですけれども、その先生方は、たとえば教育の歴史とか教育哲学とかそういうことについては第一人者という方ではありましょうけれども、教育技術については必ずしも経験がおありにならないし、またどういうふうにそれを説明していいか全くわからない、専門ではないという方が圧倒的に数が多くていらっしゃるように聞いておりますので、それでは本当にいい先生を養成することはなかなかむずかしいのじゃないかというふうに思うわけでございます。  さらに教育の技術の面でございますけれども、いままで教員養成大学ですでにやっていらっしゃいますことのほかに、今日の子供たち、昔とは大分変わってきた今日の子供たちの状態を頭に置いた新しい教育手法というものを次々に取り入れていくべきではなかろうかと。その一つといたしまして、今日の子供たちは漫画世代でありテレビっ子でございますので、視聴覚教育、そのようなことももちろんいままでやっていらっしゃるのは存じておりますけれども、さらにこれを強化拡充していく必要があるのではないか。  教育の近代化ということが最近大変言われておりまして、教育機器をもっと駆使して教育に役に立てようという動きがあるようでございますけれども、そのようなことについても教員養成大学で力を入れるべきでありますし、教員養成の科目の中に第一そういうことが入っているんだろうかと疑問に思うんですけれども、いかがでしょうか。
  163. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘のように教育の方法について十分習得をするということは大変大事なことでございます。私ども現在の免許基準がいわば免許状取得のための最低単位数を規定をしているわけでございますが、昨今言われております点は、免許基準を引き上げてさらに質的な充実を図るべきではないかということが言われているわけでございます。それらの具体的な内容は、私ども今後十分検討をさせていただきたいと思っておりますが、その際御指摘のような点も十分検討すべき課題の一つではないかというぐあいに考えます。  たとえば、いわゆる教育工学関係の授業課目につきまして現在具体的な課目が行われているところで申し上げますと、たとえば視聴覚教育実習というような単位の行われている大学でございますとかあるいは教育工学というような単位を置いているところ、国立の教員養成学部では相当数置かれておるわけでございますけれども、ただ、それを必修単位とするかどうかについてはなお慎重な検討が必要ではないかというぐあいに考えております。
  164. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 私は、それこそ必修にするべきではないかと思います。このごろの子供たちは学校の勉強、机のところに座って自分で字を書いたり本を読んだりすることは余り得意でない子供でも、テレビゲームなどには熱中してすぐにうまくなるというようなところがございますので、そういう子供たちの興味、関心をつなぎながら教育に効果を上げていくというためには、やはりいまの世の中の子供たちに合った教育の機器の開発、その普及ということが必要ではないかと、特に強くそう思いますので、そのことを申し上げておきます。  また、この教員養成課程で、仮にこのことを勉強いたしてまいりましたとしても、勤めた先の学校にこの機械がなければ何にもならないわけでございますが、今日学校ではこの教育機器の普及はどのようになっておりますでしょうか。少し予算もつけていらっしゃるように伺っておりますが、そのことをお聞きしたいと思います。
  165. 宮野禮一

    政府委員(宮野禮一君) 教育機器についてのお尋ねでございまするが、文部省におきましてはかねてから小中学校、義務教育諸学校につきましては義務教育機器国庫負担法あるいは公立養護学校整備特別措置法による教材費の負担金で措置いたしているわけでございます。  それからそのほかに中学及び高等学校における視聴覚機器整備の補助金により視聴覚機器の整備充実、このために補助金を出しておりますが、その二つで措置しているわけでございます。
  166. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 多少の努力をしていらっしゃるということを伺ったわけでございますが、仮にその予算によって新しい機器が入りましても、これを使いこなすことができなければ何にもならないわけですから、先生方のその技術の向上と、そして機械の普及と、両方をぜひ力を入れてやっていただきたいと思います。  たとえば、お医者さんを養成する医学部の例をとって考えてみますと、医学部の教授というのはお医者さんとしてもりっぱな腕のある人ということが普通でございます。教育の場合は、自分が経験がない、単に哲学や歴史はよくわかっているけれども、教師としては全然経験もなければそういう能力もないというような先生が教育学の大学で教えていらっしゃるというのは、お医者さんの場合に理屈だけ教えて臨床を教えないのと同じではないかというふうに思います。同じ生身の人間を扱う、しかもお医者さんの場合のように悪いところを見つけてそれを治すという、まあ単純と言っては悪いですが、わかりやすいものと違いまして、それぞれに個性、適性の違う子供たちを、その能力をそれなりに生かして伸ばしていくという教育の仕事は、お医者さんの仕事にもまして非常に重要であり、ぜひともりっぱな先生にたくさん活動してもらいたいと思いますので、特にこのことを要望いたしておくわけでございます。日本は科学技術が大変発達しているということで、どこの国からも敬意を表されているわけでございますけれども、この科学技術を子供の教育にもっと生かすということをぜひ取り入れていかなければならない。  考えてみますと、いままではよくやってきたという感じがするわけです。つまり、余り経験のない教授に教えていただいた新しい新卒の先生方は、教育機器の動かし方もよくわからず、具体的な教育の技術については、結局自分一人で周りを見よう見まねで努力し工夫していくということに結局まっていたのではないかと考えられますので、そのような試行錯誤の対象になる子供たちこそ気の毒なことでございます。  昔、職人さんや芸術家のような方々の技術の習得というのは、先生は教えないから技術を盗めというようなやり方でやっていたと聞きますけれども、この学校先生の研修、養成の仕方もややそれに似ているところがいままだあるんじゃないかという気がいたしまして大変残念に思います。  先ほど申し上げましたこの三月八日に出た懇談会の提言の中にも、教員養成のあり方を抜本的に考え直せということが出ておりますけれども、大臣はこの点についてどのようにお考えでございましょうか、一言お聞きしたいと思います。
  167. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いまおっしゃるとおりに教育は非常に大事だと。言うまでもないことで、大事でむずかしいことであります。でありますから、ただ私は学問ができるから学校先生になれるという簡単なものじゃないと。もちろんそういう学問もできなければいけませんけれども、その上に使命感を持つと、情熱を持つということが非常に大事だと思います。それと同時に、教える技術といいましょうか、そういうことを備わって、いまお医者さんの話も出ましたが、やはりこれは一つの特殊の技術、技能だと私は思うのです、しかも人をつくる技能ですから。そういう意味で私は先般文部省でも、いままでの先生の採用ではまずいんじゃないかと、不適当じゃないかと。それから養成の方法あるいは実習の期間、もう少し充実するように検討する必要があると。いま現にそういうことで検討しておるわけでございます。
  168. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 いま大臣のお言葉の中にも、情熱が非常に大切であるという言葉がございました。私も全く同感だと思います。能力のほかに情熱がまずなければこういう仕事はなかなかできないと思います。  そこでその情熱でございますけれども学校で教育問題について研究をすると、就職して先生になってからも、さらに自分の技術を、また指導能力を高めるために努力をしていくということが何より大事でございまして、こういう問題について一生懸命研究しようという情熱がなければいけないと思うのですが、教育研究指定校という制度があると聞いております。教育問題について一生懸命研究していこうという考えから、その研究を特に引き受けまして、指定されて研究していって、ほかの学校にも参考にするという制度であると考えられますが、これは全国的に幾つぐらいございますでしょうか。そうして、特にこの教育研究指定校において校内暴力事件が起こっておりますでしょうか、わかりましたら教えていただきたいと思います。
  169. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 文部省の研究を委嘱しております指定校の中には、いま先生お挙げになりましたような生徒指導を中心といたします研究推進校でございますとか、あるいは道徳教育の共同推進校とか、あるいは教育内容、教育課程の指定校などがございまして、これらを合わせますと、約五十八年度千五百校ほど指定をいたしております。この指定校は特定の分野につきまして教材の開発でございますとか、あるいは指導方法とか、あるいは指導体制についての協力を依頼しているわけでございまして、これが委嘱をされますと、学校が指定を受けたことを契機といたしまして、一致協力をして教育内容の研究に取り組むというような体制ができまして、その結果でございましょうか、いままで私どもが聞いておるところでは、やはり非常な意欲が上がってプラスの面が評価されると同時に、その中から問題が起きたというようなケースはいままで聞いていないわけでございます。
  170. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 この研究指定校を指定するのには予算がかかるんでしょうか。
  171. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) やはり教材費でございますとか、研究のための会合でございますとか、いろいろな経費がございますので、文部省といたしましては、少ない、必ずしも多い額ではございませんけれども、経費を積算いたしまして委嘱をしているわけでございまして、予算は必要なわけでございます。
  172. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 いま伺いましたような計算で出される予算であれば、それほど高いものではないんじゃないかと思いますが、大したお金がかからないで、その学校先生方が能力を高め意欲を高め、生徒のためにも大変プラスであるというのであれば、このような研究指定の、あるいは研究そのものをもっと盛んにして、そういう面から学校の体制を整え、子供のためによりよい教育がされるように努力していただきたいと思いますが、大蔵省はここにいらっしゃらないかもしれませんけれども、大蔵省の方々にも御協力をいただきたいとお願いをいたしておきます。  それから、教育の内容にも問題がないとは言えないと思います。道徳教育の充実ということが、先ほど申しました提言にも載っておりますけれども、道徳の授業、道徳の時間というのはどのように行われておりますか、お聞きしたいと思います。
  173. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) この小学校、中学校におきます道徳の教育につきましては、御承知のように昭和三十三年に毎週一時間の道徳という時間を特設いたしまして、それを中心としていたしますが、この時間のみならず、学校教育全体の活動の中で道徳的な実践力を高めるということを主眼としてやっているわけでございます。これは一週間一時間でございますから、それだけでは必ずしも成果が上がらないということもございますけれども、たとえば特別活動でございますとか、社会科の教科の授業でございますとか、いろいろ関連するものがございますので、そういう学校におきます全体の教育計画を立てまして、学校が全体としてまとまって、道徳の実践力を高めるような指導を徹底をするということが必要なんでございます。この中で、先生がお挙げになりました教育機器の活用という点が、この道徳の、特に特設の時間におきましては、小学校の低学年におきましてはこれをフルに活用いたしまして、VTRでございますとかいろんな機材を使いまして、子供の知的な興味だけではなくてやはり感情と申しますか、そういうものに訴えるような形で、いろいろな方法を使ってやっているわけでございまして、教師が限られた時間の中でございますけれども、工夫をしてやっているわけでございます。  ただ、必ずしも成果が上がっていないという指摘もございますので、私どもとしては全国的に調査をいたしまして、その実態を把握をし、今後の指導の充実に役立てたいということで、いま調査をしている段階でございます。
  174. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 その調査も一度ぐらいなさったのでは十分よくわからないのではないかという気もしますので、折に触れて十分いろいろな実態を把握されまして、内容の充実を一層努力していただきたいというふうに思います。  それから、先生方がどんなに一生懸命努力なさいましても、やっぱり子供はさまざまな子供がいるわけでございますから、学科によって得手不得手があるのはもう当然でございますので、やみくもにだれもかれも同じ内容で同じやり方の授業を受けるということから、いわゆる落ちこぼれが出てきてしまうということがよく言われます。そういうことを考えますと、科目別のあるいは能力別、進度別の学級を編制して、子供たちの本当に必要とするその能力に応じた授業を進めていくということが必要ではないかと思います。この提言にも「能力別学級編成」を行うようにというようなことが書いてあるわけでございますが、これについてはどのようにお考えになっておりますか。
  175. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) これはやはり、児童生徒の発達段階と申しますか、それによってどのような指導をするかということが考えられなければならないかと存じます。ただいまのところ、御指摘のような内容につきましては、高等学校におきましては、今般改正されました教育課程におきましてそのような習熟度別の学級の編制を取り入れるということを指導要領の総則にうたいまして、そのような指導をしているわけでございますが、高等学校におきましてはかなり能力別の学級編制が進んでまいっております。同じような考え方をそのまま中学校に導入するかどうかという問題につきましては、有識者による問題行動の懇談会におきましても御指摘がございましたけれども、やはり中学校という義務教育の中で、能力・適性に応ずる教育をどのようにするかという観点は確かに必要でございますけれども、いま高等学校でとっておりますようなものをそのまま適用するかどうかということにつきましては、十分に検討をしなければならないだろうというふうに考えております。  しかし、いずれにいたしましても、義務教育といえども、能力・適性に応ずるきめ細かな指導をどうするかという問題は、御指摘のたとえば不適応というふうなことにも直接的に関連いたしますので、十分に合理性があるだろうというふうに思いますけれども、どのような形で進めるかということにつきましては、慎重に検討さしていただきたいというふうに考えております。
  176. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 ほとんど興味もないし、自分もやる気がないというような授業を毎日必ず受けなければいけない。毎日学校へ行って六時間なら六時間、教室でじっと座っていなければいけない。聞いている話は全く何もわからないというような状態なのに、義務教育だからどうしても行かなきゃいけないというのは、私はかわいそうだと思います。むしろその子供が興味のある、あるいは自分として得手のことを伸ばすということに力点を置くべきであって、わからなくても何でもともかく座っているということが大事だというようなのは教育ではないのじゃないか。悪い言葉かもしれませんが、一種の苦役みたいなものだというふうに思います。そんな状態では、その子供を伸ばすということはおよそ不可能なことでございまして、この提言にございますように、ぜひ能力別あるいは進度別、その子供に通した教育が適切に行われるように努力をしていただきたいと思います。  最後にもう一つ、どんなに努力なさいましてもたくさんの子供の中には、どうしても学校というものそのものに適応できないという性格の者もいるかもしれません。そういう子供が暴力に走ってほかの子供たちに大変迷惑をかける、授業がもう全然できなくなってしまうというようなことがあった場合には、やむを得ないときは学校教育法第二十六条に、出席停止という制度が決められているようでございますが、この運用状況はどうでございましょうか。また、私といたしましては、これは教育委員会が決めるということになっているようですけれども、何か子供が悪いことをしたときにはすぐその場で注意するということが効果があるわけですから、たとえば校長先生にその権限を委任するというようなことはできないものかなというふうに思うんですが、その点についてお聞きしたいと思います。
  177. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 学校教育法二十六条の出席停止の規定は、これはやはり公立の小中学校におきます義務教育の保障と申しますか、そういう見地から規定しているのでございまして、ただいまの法制におきましては、市町村の教育委員会が学校を設置いたしまして、就学の義務を履行するような事務をすべて教育委員会がやるわけでございます。その一環として、どうしても学校の教育におきまして他の生徒の教育に妨げがあるというふうなことがある場合には、教育委員会がその出席停止の権限を発動いたしまして、学校から除外をするということが認められているわけでございますけれども、その趣旨は、やはりいま申し上げましたような趣旨から、義務教育の保障という見地からあるのでございまして、やはりこれを軽々に発動するということは好ましいわけではございませんし、校長に委任をした場合に、校長が慎重な配慮のもとに教育的に行うということでございますればよろしいわけですが、いろいろなケースを検討してみますと、たとえば町田市の忠生中学校におきます具体的なケースを私どもが調べたところでは、教育委員会ではなくて校長がやっていたというケースがあるわけでございます。これはいまの法制から申しますと認められない、いわば脱法的な行為をやむなくやっていたというふうに承知をされるわけでございますけれども、やはりその辺のところは、教育的な配慮と、それから教育委員会におきます就学事務、義務教育の保障というようなものの調和のとれた措置が必要でございまして、先生の御意見もございますけれども、その辺のところはもう少し慎重に実態を見て検討さしていただきたいというふうに考えております。
  178. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 時間が来ておりますから、結論を急いでください。
  179. 森山眞弓

    ○森山眞弓君 済みません。  以上、私申し上げましたように、教育というものは生きている子供を相手にしてやるものですから、ぜひ柔軟な、そして多様な対応を駆使していただきたいということを最後に申し上げまして、終わります。ありがとうございました。
  180. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 最初に、大臣に当面する問題について何点かお伺いいたします。  いまも森山委員の方から、青少年の非行化の問題、校内暴力の問題、お話ございましたけれども、毎日、新聞を見るたびに心を痛めるわけですけれども、大きな社会問題になっているわけです。大臣は、このような非行化、暴力化、こういう問題について、しかもこの非行化、暴力化が低学年化している、こういうことについて、時代の背景をどう考えておられるのか、また、この問題について、いろいろ対策はあるでしょうけれども、大臣としてどうしたらいいのか、お話をいただきたいと思います。  確かに、大臣も同じでしょうけれども、私たちの年代から見るとなぜこうなったのかちょっと常識では考えられない事件がたくさん起きております。昔はいたずら坊やであるとか餓鬼大将であるとか、そういうのはどこにでもおりましたけれども、最近の校内暴力等を見ると、集団化もしておるし、しかも悪質化してきておる。こういった状況を見ると、何かそこに大きな原因があるんじゃないか、こういうふうに思うわけですけれども、いま言いましたように、大臣としてこの時代の背景はどういうふうに考えるのか、またこの防止策をどうしたらいいのか、この点どう考えておられるかお尋ねいたします。
  181. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そのことにつきましては、先ほど森山委員のときにも、私の考え方といいますか見方を申し上げたのでございますが、これは私はずっと見ておりますと、戦後の急激な日本の社会環境といいますか、教育から何から全部日本国民考え方を急転回した。その急転回はどこにあったかというと、先ほども触れましたが、個人の尊厳、自主性といいましょうか、それから人権の尊重、一種の人間解放、こういう思想といいますか考え方というものを徹底させなければならない。極端に言いますと、極端な個人主義、これは人権の尊重といいますか自由の尊重といいますとそっちに走りがちなんですけれども、過去のわれわれが長い時代過ごしました時代と違った時代にしなければならない、これが占領政策のねらいといいますか方針であったわけであります。  私、それが全部悪いとは考えておりませんが、その反動として余りにその方に走り過ぎた、それが習い性となってきておる。さっき申し上げましたが、それに手綱をかける、注意が足らない部面があった、それは社会全般についても、あるいは教育の面でも、家庭の面でも。  それと重なって経済発展が急激に進んだ。生活環境がずっと変わってきた。家庭のしつけもやろうにもできない家庭が相当多くなってきた。核家族化されて子供のしつけがほとんどできない家庭が相当多くなってきた。それと、平等思想が非常に徹底されましたから、師弟の関係であるとか親子の関係であるとかいうことが非常に頭の中に薄らいできた。私は平等と同一というのは違うということを常に主張しておりますけれども、いずれにしてもそういうことが出てきた。  いまおっしゃったように、小学校から中学校時代まではちょうど身体も精神もいま生長期でございます。そういう時代は、だんだん成長するに従って精神的にも肉体的にも動揺するといいますか、羽ばたく前ぐらい、何とか羽ばたいてみたいという時期に来ておりますから、昔だってそのくらいの時代にはいわゆるいたずらっ子になったりすることがあったわけですけれども、少なくとも先生を殴ったりどうかしたりするなんということは想像もし得なかった。それが相当頻繁に行われておる。御承知のとおりに、中学校の卒業式も相当警察から守ってもらわなければできないような状態である。これは恐ろしい環境に私はあると思います。  いろいろな問題はあるわけでございますが、物質万能主義みたいなかっこうになって精神面がおろそかにされるといういろんな要素があると思います。でありますから、こういう点を私は、文部省も一生懸命従来からやってきてもらっておるわけでありますが、それにしてもだんだんこういうことになってくるということについてはどこかに欠陥がある。あるいは教員の養成にも欠陥があるでしょう。教育のあり方にも欠陥がある。教科書の内容にも欠陥があるんじゃないかと思う。あるいは問題の試験制度。  私は、ちょっと長くなって恐縮でありますが、いまの教科書はどんな教科書だろうかと思って、まだ全部見るいとまがありませんけれども、小学校、中学校、高校の教科書をたまに時間があるとき見るんですけれども、とてもじゃないが詳細をきわめておるわけでございます。そこまで頭へ入れば結構でございますが、これが入らなければならないような勉強は容易ではなかろう。そればかりか、それじゃ足らぬので、学校の試験を受けるために塾に通わなきゃならぬと。子供が子供らしい遊び方もできないような環境にいまなっている。私は、文部省を預かっておっても、今日まで文部行政といいますか、教育行政を非難するような感じがしておりますけれども、これでは私は朗らかな子供はできないんじゃないかと率直な考えを持って、これはまあ専門家の検討を要しますから、私ははっきりどうのこうの言うわけじゃございませんけれども、そういう根本的なところから掘り下げて、これは一刀両断にいきませんが、やや中長期にわたってもこの問題の根本的な解決に邁進しなきゃならないと、こういうことでいろいろ専門家に御研究、御検討を願っておると、これが現状でございます。
  182. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 警察庁は十九日に、サラ金からの借金を苦にした家出人を緊急調査したことを発表しております。その調査によると、昭和五十七年中に男性五千四百九人、女性は千九百七人となっております。これは大変な数字ですけれども、また朝日新聞の調査では、ことしに入って全国でも少なくとも百八十五人がサラ金に絡んでのいわゆる心中、自殺で死亡しているとの報道がなされております。サラ金規制法が成立寸前にあるわけですけれども、これが成立してもどこまでこのサラ金に対する悲劇、これが減少できるかは予測できませんけれども、心配されることは、これもサラ金で苦しんでいる人は大人ばかりではなく子供をも巻き添えを食っていると、こういうケースが非常に多いことであります。ここに新聞がございますけれども、これは三月十三日の読売新聞ですが、四人の子供をサラ金業者から逃れるために、小学校二年生、小学校四年生、中学一年、二年と、この四人の子供を学校へもやらずに自宅に閉じ込めておったと、こういうのもここに報道されております。  そこで、文部省で発表している昭和五十六年度学校基本調査によれば、一年以上居どころ不明者数の統計では全国で四百三十四人、いわゆる不就学生徒となっておりますけれども、この不就学生徒になっている理由、こういった事実をどう考えておられるのかお尋ねいたします。
  183. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) いま先生がお挙げになりましたのは、五十六年度の五月一日現在におきますこの学校基本調査における居所不明者の数でございまして、その内訳は、学齢児童が三百十三人、学齢生徒が百二十一人でございます。いかなる理由によりましてこの数が出ているかということは、私どものところでは詳細が調査できないわけでございますけれども、この一年間にともかくその学齢児童・生徒等であるにもかかわらずその居所がつかめないという者の数を市町村の教育委員会が調査をいたしまして、報告を求めたものでございます。  私どもとしては、これだけの数の者が義務教育を受けないと、受けられないということは、やはり憲法に定める義務教育の制度が完全実施をされないという観点から、きわめて問題だというふうに考えておりまして、教育委員会におきましてこの趣旨から就学指導を徹底いたしまして、この数が少なくなるように実態を把握するように指導を強めてまいりたいというふうに考えております。
  184. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いまお話ありましたけれども、私は全国でかなりの学齢児童、いわゆる小学生、それから学齢生徒、中学生が親のサラ金苦のために不就学になっているように思えますけれども、これはどうなんですかね。  憲法二十六条には、すなわち「その能力に應じて、ひとしく教育を受ける權利を有する。」と、こういうふうにもありますし、または教育基本法の第三条には、「経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」と、こういうふうになっております。文部省は事態が深刻になっている状況を考慮し、この点について早急に実態調査することと、就学についての対策を講ずべきだと思いますけれども、この点はどうされますか。
  185. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) ただいまお挙げになりましたような義務教育におきます不就学、長欠が非常に多かった時期がございますけれども、その時期に昭和三十年の九月でございますが、文部省といたしましては、その対応につきまして通知を出しておりまして、「義務教育諸学校における不就学および長期欠席児童生徒対策要綱」というものを決めまして、市町村教育委員会等におきましてその実態を把握をし、この不就学の事態が解消されますような関係諸機関の協力あるいは家庭に対する指導の徹底等をやっているわけでございます。  ただいまお挙げになりましたような不就学がサラ金によって起こっているかどうかということにつきましては、これは必ずしもその明らかでない点がございますけれども、最近お挙げになりましたような事例等を見ますと、やはり居所を隠して父兄が子供を連れて居住をするというふうなことがありまして、その際に学校に行かなければならないわけでございますが、居所が知れることを恐れまして子供までも学校にやらないということがあるわけでございます。しかし、これについては、たとえその住民登録票がないとしても学齢簿を編製いたしまして、その現住所の住んでいるところの学校に就学をするということが可能なように、学校教育法施行令の改正のときに通知を出しているわけでございますし、私どもとしては、障害があれば個々の事例につきましても都道府県の教育委員会等を指導いたしまして、住民登録がなくても学校に行けるような措置を指導しているわけでございます。これは自治省とも連絡をいたしましてそういう措置をとっておりますので、実態に即してやはり子供の教育を受ける権利を保障するように指導しなければならぬと、その指導を強めたいというふうに思っております。
  186. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣にもう一点お聞きします。  小・中学校の教科書の無償制度の問題ですけれども、この制度の見直しを審議している中教審の教科書小委員会は、この教科書無償制堅持の理由づけが不十分とのことで答申が六月以降にずれ込むと、こういうふうに言われておりますけれども、五十九年度までは無償制継続が決まっているものの、六十年度以降はまだ決まっていないわけですが、瀬戸山文部大臣、それから竹下大蔵大臣、それに自民党三役のこの五者で有償化問題について五十八年秋までに自民党内で結論を出すと、この申し合わせをしておりますけれども、この無償制度は言うまでもなく憲法第二十六条、いわゆる義務教育は無償にすると、この理念を実現する制度として過去二十年間すっかり定着してきたわけでございます。五十九年度の予算も恐らくマイナス予算、緊縮予算ということは、これは想像されるわけでございますけれども、この制度についてはいま言ったような理由でぜひとも存続すべきであると、こういうふうに思いますが、大臣としての決意はいかがでございますか。
  187. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 教科書の無償制度は、いまお話しのように憲法二十六条の義務教育は無償にするという精神からきておると考えておりまして、もう昭和三十八年からですか、二十年間ずっと続けてきております。  ただ、この問題については財政が、経済が停滞しまして、国家財政が困難になりますにつれてもう一つほかに、そのほかにもいまこの教育の荒廃とか言われている中学校、青少年等の非行問題にも、親の愛情が伝わらぬのじゃないかというような御意見等がありまして、この無償制度について異議を唱える意見も相当あるわけでございます。そういう関係から、御存じのとおり、臨時行政調査会では、この教科書無償制度を廃止することをも含めて検討する必要があると、こういう答申が出ておりますので、自由民主党としてはどうあるべきかと、この根本問題をもう少し検討してみると、こういうことでありますから、検討することはやむを得ませんので、今年度の予算編成の最終段階に先ほどお話しのような申し合わせをつくっております。文部省といたしましては、この精神は、ただ文部省予算であるからとかなんとかということでなしに、教育は非常に根本問題である、大切であるということと、いまのお話憲法の精神からいっても、それが正しい道であると、こういう考え方に立っておりますが、中教審等でもこの問題いかにあるべきかも御検討願っておりますし、そういう状況を見て最終的な考え方を決めたいと思っておりますが、文部大臣として、あるいは文部省としてはこれは現行のままで進めるのが正しいと、こういう考えでございます。
  188. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、科学万博の件について何点かお伺いいたします。  私もこの科学万博の成功には心から期待をしておりますし、またそうあってもらいたいと、こういうふうに考えている一人であります。五十六年の十二月でございましたが、当委員会でこの対策をいろいろお聞きしました。もう開催まであと二年足らずの時期に来てしまったわけでございますけれども、したがって本格的に取り組まれているわけです。まず、科学万博の公式テーマ、「人間・居住・環境と科学技術」と、こういうことですけれども長官にお伺いしたいんですが、最近は先端技術がすばらしい技術革新によって発展をしております。そういう最近の世の中ですけれども、チャップリンではありませんけれども、ある面においては科学技術の方が先行して、そして人間が置き去りにされていくと、こういう傾向も見られる最近の状況でございます。そこで、この技術の進歩と人間性回復を万博ではどう意義づけていくのか、その辺長官としてどう考えておられますか。
  189. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) いま鶴岡先生指摘のように、本当に今日の科学技術の進歩、これははなはだしい大変注目すべきものがあるわけであります。したがって、この科学技術の進歩というものと人間社会との調和をいかにするかということは、これは大変重要な課題でございますし、大きな意味を持っておるわけであります。いま例は適当でないかもわかりませんけれども、超ロボット時代に今度入ってくるでしょう。しからばこれが一体労働行政、労働市場あるいは労働安全衛生分野にどういう一体影響をもたらすのであろうか。これらとも例は適当でないかもわかりませんけれども、もうすばらしい技術の開発というものが労働市場にどういう影響をもたらすかということは、これはやっぱり念頭に置かなきゃならない調和を要する問題と、こういうことにもなるでしょう。いろいろの分野でこの研究開発がそのような影響をもたらすということはこれは必定でございますから、先生指摘のように、今度の万博におきましては幸い人間と居住、そして環境と科学技術、こういう直接人間社会にかかわりを持つそれをテーマとしておるわけでありますから、この万博の意義は非常に私は大きなものがある、すばらしいものがあると、こういうことでございますから、政府出展はこれは当然でございますけれども、国内出展もこのテーマの線によって立案、出品をしてくださいと。国外出品につきましても私たちは、ずいぶんいま国外の要路の方がお見えになりますけれども、そのことに理解を求め、外務省あるいは万博協会のおのおののルートを通じてこの趣旨に沿うようにやってほしいと。そしてじかに目で、じかにこの肌で人間と科学技術のかかわり合いというもの、そして二十一世紀、未来に向かっての科学技術と人間、居住、環境のかかわり方を示してくださいと、そういうビジョンで出してくださいと、こういうことでいま一生懸念に力を入れておるところであります。先生の御趣旨に沿うような出品をいたしたいと、こういうように思っておるわけであります。
  190. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 たくさんお伺いしたいことがありますけれども、全部お伺いする時間がございませんので、飛び飛びになりますけれども、財源対策でございますが、公営競技からの収入あるいは寄附金、競輪では九十億円ですか、競馬では十億円と、そのほかに地方債とか、寄附とか、こういう予定を立てているようでございますけれども、民間からは大体七十から七十五億円を見込んでいるようでございますし、またことしの二月には協会は財務委員会をつくってその対策を立てていると、こういうふうに聞きますけれども、この財源対策の見通しはいかがでございますか。
  191. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) この科学万博の会場建設と政府出展のために要する全体の資金規模につきましては、まず会場建設費は四百九十億円と見込まれております。また、政府出展費は三百六十五億円と見込まれておりまして、総計いたしまして八百五十五億円の規模とする計画でございます。このうち政府の出展費につきましては全額国庫負担ということになります。五十八年度の予算を含めまして全体の二八%程度に当たります百一億円を計上しているところでございます。また、会場建設費につきましては、国庫補助、それから茨城県からの補助、それから科学万博につきましての特別措置法によります収入、公営競技の収入、民間からの寄附、宝くじ等々の多様な資金を導入することといたしております。そのうち政府補助につきましては、五十八年度予算も含めまして全体の五三%に当たります百十六億円が計上されているところでございます。そのほか特別措置法に基づく資金とか、茨城県の補助、公営競技からの資金の協力、それから先ほどお話がございましたけれども、民間からの施設参加等も得たいということで鋭意努力しているところでございます。博覧会協会におきましては、民間からの寄附を集めるために五十八年の二月に財務委員会を設置いたしまして、現在活発な資金調達活動を続けているところでございます。  以上、いろいろなものを合わせますと、現在までに会場建設費の約三六%に当たります百七十五億円の資金調達の措置を終えたところでございまして、今後必要な資金を適確に確保するように、関係各方面の協力を得ていきたいということで万全を期してまいりたいと思っております。
  192. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 お話はわかりました。  五十七年度予算では、ところが、補正段階で約二億円が減額されていますね。五十七年度でやっと認められた分でさえもこれだけ減額されると、今後の準備に支障を来すんではないかと、こういう心配もするわけです。国の財政が、先ほど言いましたように、逼迫している状況でございますので、この財源の確保という問題については、これは大変な苦労が要るんじゃないかと、こういうふうに思います。地元の新聞等を見ると、地元も国も大分景気のいいことを新聞では出ております。たとえばアイデアを競い合う出展関係者とか、楽しい行事は山ほどあるとか、それから地元旅館ももう二年前で予約が満杯であるとかと、こういう記事が出ているわけです。これは成功させるためにはやっぱり基本になるのは財源でございますので、いまいろいろお聞きしましたけれども長官から見通し、間違いないのかどうなのかお聞かせ願いたいと思います。
  193. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) いま御指摘のとおり、財源措置の問題は財政事情の中で非常に苦しいということは私も理解しておりますし、財政当局も協力要請と、こういう出方をしてまいっております。ところが、この問題をよく考えてみまするというと、私は、財政当局に対してこれは義務的経費じゃないですかと、扱い方はそうですよと、それからこれは外国との協定に基づく事業であると、だからして所定の財源規模は必ず確保することと、こういうことでいま財政当局と話を詰めておるわけであります。財政当局も非常に理解を示してくれております。  あと協力関係につきましては大体所望のこれは私たちはなし得ると、こういうめどを立てておるわけであります。幸いでございますけれども、非常に業界は不況でございますけれども、この財源部会の方は積極的にこれ協力の態度を示してくれておりますので、非常にありがたいと、こういうふうに喜んでおります。  あと宝くじ、これは今後の問題であります。これも自治省との関係は話はつきましたし、あるいはギャンブル関係の財源につきましてもこれは合意を得ているわけでありますから、大体私たちは、この財政規模の中において実りある予算の執行を行って、皆さんによくやってくれたとこういう姿になさなければなりませんし、同時にそれはなし得ると、こういうめどを立てていることでございます。御了解願いたいと思います。
  194. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 宿泊施設の問題ですが、これは相当に本腰を入れなければならないと、こういうふうに私は思います。観客の宿泊についてはどう予測されているのか。それからこれに対応する民宿等の状況はどういうふうになっているのか、簡単に御説明いただきます。
  195. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 御指摘の宿泊についてでございますけれども、予測によりますと、入場者の希望は約二千万人というふうに予測しておりますが、その中で四割程度が宿泊を希望しておられます。このうちその六割程度がまた現地における宿泊を希望されておりますが、現在の会場周辺の宿泊能力というのは非常に小そうございます。また茨城県内の主要都市の宿泊能力を加えましても、きわめて限られておるところでございまして、観客に対します宿泊施設は会場から約五十キロでございますが、東京を中心に依存せざるを得ないというふうに考えておるところでございます。しかし、先ほどの希望調査にもありますように、観客の利便とか交通対策を考えますと、できるだけ会場周辺におきます宿泊者の収容能力をふやしていくということが必要であると考えております。このためには博覧会協会、地元茨城県等におきましていろんな対策を検討しているところでございますけれども、博覧会の終了後の利用状況を考えますと、恒久的な宿泊施設をつくりました場合には、種々の問題が生じてくるおそれがございます。したがいまして、現実的な対応策といたしまして、民宿とか民泊のようなものを整備していくということが考えられております。このために茨城県におきましては、現在、民宿の態勢強化とか民泊提供者の組織化とか、あるいは青少年を対象といたしました研修施設等を活用するというようなことでいろいろと努力しているところでございます。
  196. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 その宿泊の一つとして協会としては住宅・都市整備公団の団地を借り上げる、こういう話もあるようですけれども、聞くところによると大筋では貸し借りの話し合いがついているようでございますが、具体的な契約の内容まではいってないようですけれども、どういう形にするのか。また公団からたとえば借りた場合、二年後ですからいまから押さえておけばこの二年後まで保証をどうするのか。また公団側として貸した場合に、後どういう管理方法を考えているのか、その辺はおわかりになりますか。
  197. 下邨昭三

    政府委員(下邨昭三君) 従業員の宿泊対策でございますが、博覧会の準備期間とか会期中を通じまして従業員とその関係者の宿泊施設が必要でございます。博覧会協会の職員とかあるいは外国出展の要員等につきましては、住宅・都市整備公団とか雇用促進事業団等の公的な住宅の利用を中心に計画を進めております。現在これらの関係機関と協議中でございまして、先ほど先生指摘の点について具体的にどうするかというようなことを詰めておるところでございます。このほかにも民間住宅の借り上げとかあるいは仮設住宅の建設とか、そういうものを検討しておるところでございます。そのほかに民間出展にかかわります従業員等につきましても、協会でできるだけあっせんするということを考えておりまして、現在そのための、会場周辺におきます民間住宅の利用状況等につきまして調査を行っておりまして、その結果を踏まえ、また民間出展側の要望もお聞きしまして、具体的な対策をつくっていきたいということでございます。
  198. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この問題についての最後ですけれども、建設省来ておられますか。常磐自動車道の整備の進捗状況とそれから科学万博の周辺の道路の整備状況、今後の見通し、簡単にお願いします。
  199. 鈴木道雄

    説明員鈴木道雄君) 国際科学技術博覧会に関連して必要となります常磐自動車道等の関連道路につきましては、関係閣僚会議におきまして了解された事業計画に基づいて整備を推進しているところでございます。特に常磐自動車道につきましては、国際科学博覧会の開催日までにすでに供用しております柏——千代田石岡間を含む三郷——日立南間を開通させるべく工事を進めているところでございます。またその他の関連道路につきましても順調に進捗しておりまして、五十七年度末でおおむね五〇%、昭和五十八年度末にはおおむね八〇%の進捗になる見込みでございます。今後とも鋭意事業を推進いたしまして、博覧会の開催日までに必要な整備が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
  200. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 料技庁結構です。  次にお伺いしたいのは、琉球大学、土地の売り払いの件についてでございますけれども、五十六年度検査報告で不当事項として琉球大学の国有財産の管理等が適切でないと、こういうふうに指摘している事案についてですけれども、その概要をちょっと説明していただきたいと思います。
  201. 竹尾勉

    説明員(竹尾勉君) 御説明申し上げます。  これは、硫球大学におきまして同大学識員某によりまして昭和四十八年七月に三百三十三平方メートル、四十九年の八月に八百八十二平方メートル、五十三年の十二月に千百九十四平方メートルの大学用地が、学長印を盗用して作成された契約書によりまして、不正に国以外のものに売却され所有権の移転登記もなされ、これら第三者によって占有使用されていた事態でございます。  同大学では、四十九年八月の分につきましては、所有権移転登記の事実につきまして五十二年の七月に気づいたのに、これに関する某の虚偽の説明をうのみにいたしまして、事実確認を怠っておりました。また五十三年十二月の分につきましては、移転登記の事実を五十五年三月に発見し、同年五月にはさきの四十九年八月の分とともに不正売り払いの事実を確認したにもかかわりませず、同人の買い戻しによる原状回復の努力をするよう申し渡しただけでございまして、大学自身では財産保全の措置をとることなく、五十七年の四月の本院実地検査まで放置しておりました。また四十八年七月の分につきましては、本院会計実地検査の際、本院がさきの二件の分を指摘したのを契機といたしまして、五十七年五月に事態が判明するまでの間、長期にわたり大学は気づかなかったものでございます。いずれも国有財産の管理が著しく適切を欠いていたと認められる事態でございます。  また、これに関連しまして、同大学は、問題の職員某による不正売り払いの事実が判明した後、同人が五十五年八月から無断で長期欠勤いたしまして、東京都に転居して住民登録を移し、民間会社に就職して公務に従事する意思を放棄し、また、従事できる状態にはないことを承知していたにもかかわりませず、これに対して適切な処置をとらないで長期にわたって漫然と給与並びに国家公務員共済組合負担金を負担しておりまして、その処置まことに当を得ないという案件でございます。
  202. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いま御説明を伺いましたけれども文部省としてはこの案件に対してどういう措置をしたのか、簡単に御説明してください。
  203. 高石邦男

    政府委員高石邦男君) 文部省といたしましては、五十七年の四月十三日に大学の経理部長からこういう不正の事実があるという報告がありましたので、直ちにその内容の報告を詳細に求める、また、事実関係を確認するという措置をとったわけでございます。そして、五月十二日には大城を懲戒免職の処分にしたわけでございます。また、土地の保全関係につきましては、必要な訴訟手続をとる等の指示を大学にしたわけでございます。そして、その他の大学の管理責任者である事務局長関係の部局長に対して必要な懲戒処分を行い、今後二度と再びかかる不正な事件が発生しないよう、できるだけの措置を講じたわけでございます。
  204. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この事件の発端となった土地ですけれども、その当時この土地はどういう状況にあったのか。たとえば更地であったとか、家が建っていたとか、あるいは運動場に使っていたとか、どういう状況だったのか。
  205. 國分正明

    政府委員(國分正明君) ただいま問題になっております土地、三件の状況でございますが、まず、登記簿上の取り扱いでございますが、これは売却時点のものでございますけれども、農場用地一件につきましては、これは五十二年の案件でございますが、これにつきましては地目は雑種地というふうになっております。当時は農場の一部でございました。  それから、農場用地のうちのもう一件、これは事案といたしましては昭和五十三年の事案でございますが、これにつきましては、登記簿上の地目は畑ということで、当時同様農場用地となっていたものでございます。  それから、昭和四十八年の事案かかわります林学苗圃の土地でございますが、これは登記簿上の地目は雑種地でございまして、当時林学苗圃の土地の一部を形成していたものでございます。
  206. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは順次お聞きしていきますけれども、この不正売り払いの経緯というのは、いまおっしゃったこの三物件それぞれ若干内容は異なっておりますけれども、まず最初に、金城氏に売り払われた土地は、大城が四十九年の八月に売り、五十一年の十二月に移転登記を金城氏が済ましております。これはおたくの方、検査院の方からもらった内容経過ですけれども。五十二年の七月に大学当局は土地の所有権移転に気づいていたにもかかわらず、事実確認をしていなかったと。そして五十七年の検査院の実地検査で判明したわけですが、五十二年の七月から五十七年の四月、この間約五年ありますけれども、この五年間にわたり大学当局は大城となれ合いのもとに事実を隠そうとした疑いはなかったのかどうなのか、この点について文部省と検査院、両方から見解をお伺いしたいんですが。まず検査院の方からお願いいたします。
  207. 竹尾勉

    説明員(竹尾勉君) 琉球大学当局は本院に対しまして、問題の職員と買い受け人の当事者間の買い戻しによって、不正に売り払われた国有財産の原状回復を図ることが緊急の方策であると、このように判断いたしまして、その方向で努力を続けたところ、幾度か解決の兆しが見られたこともあり、大城に対して懲戒処分を行うことは当事者間の買い戻しによる買い戻しの機会を失うことになると考え、処分を一時見合わせてきたものである旨の説明をいたしております。  しかしながら、私どもといたしましては、大城が東京へ転居して就職して、大学職員として公務に従事する意思を放棄しておる。また、公務に従事し得る状態ではなくなった。こういった場合において、なお何らの措置もとらず有給休暇または欠勤として取り扱っていたと、こういうことはきわめて遺憾である、このように考えております。
  208. 國分正明

    政府委員(國分正明君) まず五十二年当時の状況でございますが、当該問題になっております土地に、那覇市から小学校用地として売り払い処分を求めたいということがございまして登記簿を調査したわけでございますが、その時点で民間人の名儀になっているということを発見したわけでございます。しかし当時、旧琉球政府から承継されました大学用地につきまして、境界の確定等が容易でなかったというような事情もございまして、また、復帰に伴う財産の承継問題も絡みまして、不正行為者から巧みな説明があって不正事実の確認と申しますか、解明と申しますかができなかったということでございます。  その後、ただいま御指摘になりましたように、昭和五十五年にこの事実が明らかになったわけでございますが、その後の措置につきましては、ただいま検査院の方から御答弁がございましたように、大学では文部省に報告することなく当事者間の買い戻しによって何とか原状回復したいということで五十七年の四月まで、遺憾なことでございますが、経緯したという実情を報告を受けております。
  209. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 その五十五年の五月十七日に大城は不正売り払いを大学当局の追及で自供しているわけです。この自供に至った背景というのはどういうことですか。
  210. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 五十五年の三月に、当時沖縄総合事務局から琉球大学に対しまして農場用地の一部について合同宿舎用地に所管がえをしてほしいという要請がございました。これで大学当局は農場用地の登記簿謄本を取り寄せましたところ、民間人の名儀になっているということを発見いたしまして、当事者にこのことを追及しましたところ、それを認めたというのが経緯でございます。
  211. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 金城氏に売られたこの土地ですけれども、大学当局はこの土地の保全についてどう対処したのか、いまどうなっているのか。
  212. 國分正明

    政府委員(國分正明君) この当時の土地につきましては、不正が明らかになりましてその後、文部省が大学当局に緊急に法的保全措置をとるようにという指示をいたしまして、那覇地方法務局にその手続を依頼いたしまして処分禁止の仮処分の決定をいただきました。その後、当事者間の話し合い等によりまして、当該土地は現在大学のものに原状回復しているという状況でございます。
  213. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一つの土地ですけれども、この土地は名嘉真氏に売った土地ですけれども、三物件のうちこれは一番大きな土地でございますし、価額も二千九百三十三万円とこういう価額で売り払わられております。この物件の売り払いについては売買契約が五十三年の十二月二十八日、この物件もさきの金城氏への売り払いと同様五十五年五月十七日大学側に、本人は自供をしております。しかし、大学は大城の買い戻しによる国有財産の原状回復を図るよう申しただけで、財産保全の適切な法的措置をしないで、五十七年の四月のいわゆる会計検査院実地検査まで放置してあったわけです。なぜこんなことをしておいたのか。大学はどうしようとしているのか。また、名嘉真氏に対し土地明け渡し請求訴訟をしているが、原状回復の見通しはあるのかどうなのか。
  214. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 五十五年当時この事実が明らかになりまして、その後の大学当局の対応につきましては先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。これにつきましても、この前の事案と同様に、文部省におきまして至急法的保全措置をとるようにという指示をいたしました。先ほどの案件と同様、那覇地方法務局にお願いいたしまして、五十七年の五月六日に一切の処分を禁止する仮処分の決定をいただいたわけでございまして、その後五十七年の七月の二十三日に所有権移転登記の抹消登記手続及び土地の明け渡しを求める本訴を提起いたしまして、現在公判中という状況になっております。
  215. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一つの土地ですけれども、順番でいくと三番目ですね。平安氏に売り払われた土地ですけれども、これは面積は狭いけれども、非常にひどいケースの土地です。四十八年の七月にすでに第三者に転売され、所有権移転登記も行われ、五十七年の会計検査院の検査まで何と九年間判明できなかった。大学側の内部監査で約九年間気づかなかった理由はどこにあるのか。また、形式的な監査に終わっていたのではないかと、こういうふうに心配するわけなんですけれども、いまの状況は何か民間の家が建っていると、こういう状況のようでございますけれども、これは三つに分割されて売られていますね。そのうち一カ所だけは民間の家が建っていると。幾ら気がつかなくても、自分の土地にいつの間にか知らないうちに人の家が建っていると、そんなことまでわからないのかどうなのか、非常に不思議にも思うんですけれども、気づかなかった理由はどういうことなのか。これはいかがですか。
  216. 國分正明

    政府委員(國分正明君) ただいま御指摘の土地につきましては、先ほど来御指摘の二件の土地にかかわります不正行為が判明いたしました後におきまして、大学当局におきまして改めて全学の土地についていわば総点検をしたわけでございまして、その過程において、当該御指摘の土地についても不正があるということが判明したわけでございます。  これについてどうして気がつかなかったのかということでございますが、当時、先ほども答弁申し上げましたように、沖縄の本土復帰に伴いまして琉球大学の国立移官という問題があり、土地問題につきましては、その承継の土地の境界線というものを画定する、あるいはその引き継ぎ事務という問題がございました。それからもう一つは、琉球大学におきまして新しいキャンパスに移転統合するという、そういう事情がございました。そのことから、いろんな面で繁忙をきわめておりました。一言で申しますと、日常の国有財産管理というものが十分でなかったと、かようなことかと存じております。
  217. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それはそれの理由があるでしょうけれども、私は非常に管理がずさんではなかったかと、こういうふうに思わざるを得ないわけです。  時間がございませんので、何回監査したのか、どうしてそういうようになったのか、私いまの答弁では理解できないんですけれども文部省の会計経理事務取扱通則、いわゆる文部省訓令、これを見ますと第五条に、大臣官房会計課長は、毎会計年度、定期または臨時に大臣官房会計課の職員をして国有財産に関する事項について実地に監査をさせなければならない、こうありますね。こういうこともありますし、実地監査を当然しているわけです。それにもかかわらず九年間ほっぽり投げておったということは、私はこれは非常にずさんではなかろうかと、こう思わざるを得ないわけです。この点についてもいろいろお聞きしたいんですが、いずれにしてもそういう状況で今日まで来ているわけです。  そういうことでございますが、この三番目の土地の原状回復、この見通しはどうなんですか。
  218. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 三番目の土地でございますが、これにつきましては、直接売却されました民間人名儀のものを除きまして、他の民間人三人に転売されておる状況にございます。  このうち、直接売却されました民間人に対するもの、これは分量的には少のうございますが、これにつきましてはすでに所有権移転登記の抹消の確定判決を受けまして原状回復している次第でございます。  また、転売されましたもの、これは三件あるわけでございますが、そのうち一人にかかわります土地につきましては、すでに保全のための処分等の禁止の仮処分の決定をいただいておりますが、本訴といたしまして所有権移転登記請求等の訴訟提起を行っておりまして、現在係争中でございます。  また、残りの二件につきましては、これにつきましても保全のための仮処分決定はいただいておりますけれども、本訴につきましては現在那覇地方法務局におきまして準備中という段階にございまして、近日訴訟提起を行う予定にいたしております。
  219. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 あなたの方では係争中とか訴訟中とかいろいろ言っておりますけれども、検査院にお聞きしますけれども、この三件については、三物件については原状回復はしていないわけです。そういうことになると、当然国有地でありますから、これは国損にならないんですか。
  220. 竹尾勉

    説明員(竹尾勉君) 先生指摘のとおり、三件の不正売り払いのうち一件につきましては、検査報告提出時期におきまして移転登記が抹消されて、原状回復しておりますが、ほかの部分につきましては係争中もしくは仮処分の決定をいただいておる、あるいは訴訟の本訴の準備を進めていると、こういうような状況でございます。したがいまして、これらの土地につきましては、当面大学における利用または処分が事実上制約されている意味におきましては被害を受けていると、そういうふうに言えるかとは存じます。  しかしながら、これらの土地の所有権につきましては、国立大学の国有財産の処分権者は学長でございまして、大城某は琉球大学の国有財産の処分については何らの権限も有していなかったものでございますので、法律上におきましてもあるいは判例の上におきましても、同人による大学用地の売り払いは無効であると、このように考えられまして、したがって国の所有権は失われていないと考えられますので、その意味では国に損害を、国損を生じてはいないものと思ってございます。
  221. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 時間が来てしまいましたので、あと一点だけお聞きしますけれども文部省にお聞きします。  検査院の方から——大城の給与の支払いですけれども、大学では五十五年五月十七日に大城の国有財産不正売り払いの事実が判明し、本人がここで自供しております。自供しているのは五十五年の五月十七日、それから懲戒免職になったのは五十七年の五月十三日、まるまる二年間あるわけです。この間給料も支払われているし、それから国家公務員共済組合からも負担をしているわけです。どうしてこういうことをしたのか、文部省はどうお考えですか。
  222. 大門隆

    説明員(大門隆君) 不正行為の発覚後の問題の職員の取り扱いについては御指摘のとおりであります。その実態は、文部省が調査しました結果、次のとおりでございます。  不正行為発覚後、昭和五十五年八月二十日から同年十月三十一日までの間は、本人の申請に基づき、休暇を承認しております。これは不正処分をされた土地の買い戻し工作が当事者間で早期に完了する、そういう判断が大学側にあったためと聞いております。  それからまたその後、同年十一月一日から懲戒免職とされた昭和五十七年五月十三日までの間は、欠勤扱いとされておりますが、これも当事者間の話し合いの成功に望みをつないでいたため、文部省側への報告並びに不正行為を行った者に対する処分を見合わせたとの報告を得ております。  しかし、いずれにいたしましても大変遺憾なことである、そのように考えております。
  223. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 最後に大臣にお聞きしますけれども、いまいろいろ細かいことまでは質疑できませんでしたけれども、土地は知らない間に売り払われると。そして、それには大学側は気がつかない。それで、本人がいないのに給料も払われる。こういう事件なんです。  大学側のこの事件に対する対応が非常に甘い、私はこういうように思うわけでございますけれども、今後二度と再びこういう事件が、不祥事があってはならない、こういうふうに思いますが、各大学に大臣として厳しい通達を出すべきではないか、こういう事件があってはならないということで、そういうふうにしていただきたいと思いますけれども、大臣の所見はいかがでございますか。
  224. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この琉球大学のこういう問題は、私はきょう初めて承ったわけでございますが、承れば承るほどまことに遺憾といいますか、けしからぬというのでしょうか、そういう感じを持って承っておりました。大学の構内というのは非常に広うございまして、いろいろな用途に使われておるところがあるわけでございます。この琉球大学がどんなところであるか私はつまびらかにしておりませんが、先ほども話が出ましたように、戦後の沖縄の状況は御承知のとおりであるし、また本土復帰の後の処理でいろいろごたごたしたんじゃないかと。その虚を突いてこういう悪知恵を出した人がおるんだろうと思います。登記の面は、なかなか普通は常識的にはこれをよくいつも見るものじゃありませんから、後になって気がついたということでまことに遺憾ではございますが、いずれにいたしましてもこういうことがあってはならないことでありますから、大学の構内はどこでも広うございますが、よく今後そういう問題に、虚を突かれないように注意を今後はしたい、かように考えております。
  225. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いま問題になっている九州産業大学の補助金の問題、それからこの琉球大学のいわゆる不正売り払いの問題、こういう問題がたくさん出てきております。いま大臣の御答弁になったように、厳重に注意をすると、こういうことでございますので、それで了としますけれども、二度と再び起こらないように、文部省として通達を出してきちっとやっていただきたいと要望しておきます。以上です。
  226. 小西博行

    ○小西博行君 まず、文部省関係から質問させていただきます。  体外受精などにおきましての医の倫理、この問題は最近、特にことしになりましてずいぶん新聞をにぎわしておりますけれども、この問題につきまして質問させていただきたいと思います。  体外受精に関する各大学の研究段階あるいは取り組み状況はどうなっているのか、その面からお聞きします。
  227. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 体外受精についての各大学の取り組みの状況についてのお尋ねでございますが、これは基本的には不妊症の治療に関する臨床研究ということで取り組みが進められているわけでございます。文部省としてはその実態を必ずしも十分に把握はしていないわけでございますが、関係者から説明を聞いたところによりますと、わが国におきまして約十程度の大学におきましてその臨床研究が進められているということでございます。  なお、この問題は大別しまして、体外における受精と受精した卵を子宮内に移植するという二段階になっていると言われておりますけれども、さきに体外受精による妊娠の成功が報じられました東北大学を除きましては、いずれも体外受精の段階にとどまっているというような状況でございます。
  228. 小西博行

    ○小西博行君 特に最近、試験管ベビーという言葉でこの問題が扱われているように思うんです。特に私が心配するのは、医者と患者の信頼関係というものが非常に大切になってくるだろうというように考えます。そういう意味で、その研究の研究実践にはどのような配慮が必要と考えておられるか、これをお聞きします。
  229. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 体外受精の研究あるいは組みかえDNAの研究等、人間の生命あるいは人間の尊厳に非常に深くかかわる研究につきましては、大学におきます研究といえども、おのずから慎重な取り扱いというのが要求されるわけでございます。  ただ、基本といたしましては、やはり研究者の良識によります自主的な規制あるいは配慮ということで進められるべきであるということでございまして、その意味でもこの種の重要問題を進めるにつきましては、倫理委員会等の設置というようなものを国際的にも要請をされておるという状況にあるわけでございます。  そういうことで文部省といたしましても、たとえば組みかえDNA実験のような遺伝子操作につきましては、実験指針というようなものも研究者の御意向、それから広く関係の分野の学者の意向等を集約しましてガイドラインを出しておるわけでございますが、その際に、昨年の秋、人体と申しますか、人間に対してはこれを対象としないということを明確にしていただいたというような経緯もあるわけでございます。  ただ、体外受精の問題につきましては現在そこまでの一般的な検討は行っていないという状況でございまして、各大学における個別の検討ということを十分にやっていただくという段階にあるというのが現状であるわけでございます。
  230. 小西博行

    ○小西博行君 その辺が非常に私はあいまいだし、むしろこの時期にはっきりと整備しておかなきゃいけない問題があると思うんですね。  いま日本の大学の中では徳島大学——徳島大学方式というふうに言われるそうでありますけれども——がやはり倫理委員会なんかを設置していると、それも非常に私どもが考えた場合に常識的であると、このように思うんでございますけれども、東北大学となりますとこれは全く内部だけで考えてやっておられる、この辺で私は非常に心配なわけですね。しかもさっきおっしゃったように、十何ぼの大学がもうすでにどんどん研究をやっていると、こういう事実を踏まえまして、徳島大学のこの倫理基準案といいますか、こういうものに対してはどのように評価しているのか、この点をお伺いします。
  231. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 今日まで御指摘のように、東北大学あるいは産婦人科学会等幾つかの場所でそのような試みがなされておるわけでございますが、そのような試みの中では徳島大学における基準の検討のプロセスから、でき上がりましたものも含めまして、最も整備した形で検討がなされ、成案が得られたのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  232. 小西博行

    ○小西博行君 もう一点ちょっと突っ込んだ御意見をいただきたいんですが、先日新聞で、アメリカですね、ルイーズちゃんというのが誕生しましたですね、そしてその下にももう一人ナタリーちゃんというのですか、こういう二人が体外受精で成功している例なんですね。私はこういう新聞を見るたびに、かなり成功率が高いかなというふうに思っておりましたら、これは大変成功率が悪いんですね。確率的にはこれ四百回やって、その失敗の後に成功したと言われているんですね。それだけに私はいまのこの倫理の問題というものは非常に大切ではないかと、特に徳島大学の場合には、医者だけじゃなくて宗教家とかあるいは児童心理学者あるいは法律家、そういういろんな方、大学以外の方も賛同していただいて、そしてしかもそれが十五人も専門のいろんな分野から来ていただいて、そしてこうあるべきというような、一つの基準案みたいなものをつくっているんですね。その問題に対して、せめて、これが最高であるというふうに私は思わないんですけれども、せめてこういう段階の程度はもう文部省の方で指導する場合に、私はこれは必要だからぜひやりなさいというような方向づけできないんだろうか、その一番早いのがこの東北大学の内部でそういうものをつくっているという問題、この辺の北較においてどのようにお考えでしょう。もう現実にいま進んでいるわけですね、研究は。
  233. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 先生指摘のように、個々のケースにつきましての取り扱いが慎重な上にも慎重でなければならないという点はおっしゃるとおりだと存じますが、それは一つの、全国共通の明確な基準という形にいつの時点でするのが適当かということにつきましては、これはいまのお話にもございましたように、技術が非常に進んでまいりますと、むしろ研究上の倫理基準というよりは、むしろ医療行為を行う上での一つの倫理性に十分注意した基準というような性格のものにもなってまいろうかとも思いますし、その技術の発達段階との相関もいろいろ考えなければならない、あるいは個々の大学における実践というものを集約をするという意味で、もう少し個々の大学に慎重な取り扱いを促すことはもちろんでございますけれども、定式化するかどうかということにつきましては、もう少し検討を深めた方がよろしいのではないかというのが、いまの時点での率直な感じでございます。私どもの学術審議会にバイオサイエンス部会というものを最近設けたわけでございますが、そこでやはりバイオエシックスと申しますか、生命科学を進めますに際しましての倫理の問題というものにつきましての御検討もお煩わせをしたいという考え方を持っておりますので、その中の重要な課題の一つとしまして、先生指摘の点も含めまして、次回の会合には本件も取り上げることをお願いいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  234. 小西博行

    ○小西博行君 そういう医学部といいますか、それ以外にも日本産婦人科学会ですか、でもかなり詳しいガイドラインというのを設定しているわけですね。現実に医者の方がそこまで詳しく、しかも条件もかなり整備をされているように見るんですね、文献では。そこまでいっているのに、大学の関係ではまだしばらく様子を見ようと、あるいはあれですか、欧米あたりの——先輩でありますから欧米あたりからのいろんな情報も十分キャッチしていると思うのですね。欧米でもこのガイドラインというのは非常に明確にされているというふうに私は聞いているんですがね、その辺の感じはどうですか。
  235. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) ただいまの御指摘のように、産婦人科学会でもこの問題を取り上げて基準を示しているわけでございますが、私ども伺っておりますところでは、さらに今後産婦人科学会においてもさきに出されたものを基礎といたしまして、さらに検討を深めたいというような動きもあるようでございます。    〔委員長退席、理事和田静夫君着席〕  それから一般に生物医学的な研究に共通する留意事項といいますか、ガイドラインというものには、ヘルシンキ宣言というようなものも出されておりまして、そういうものも踏まえて、各大学の研究者というものもその精神を踏まえた対応をする。徳島大学では倫理委員会をおつくりになったのもその精神を踏まえて対応したものであるわけでございますので、私全部存じておるわけではございませんが、国際的に体外受精に関する確立した基準案というのが現在できておるという状況ではないというふうに承知をいたしておるような次第でございます。
  236. 小西博行

    ○小西博行君 これはヨーロッパあたりの例で結構ですけれども、実際に現在まで大体二百人ぐらいが出産されて、成長されているというふうに聞いているんですがね。その結果、何か失敗した例といいますか、生まれてきた子供さんにこういうたとえば気管支が非常に悪いとか、弊害なんかっていうのは、一般の子供さんですね、これと比べてどうなんでしょうか、何か差異が明確に出ておるんでしょうか。
  237. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) その具体的な事情を私現在十分な資料を持ちあわせておりませんので、明確なお答えが残念ながらできかねますが、聞いておるところでは、一番むずかしい点は、受精をさせた受精卵を着床させるということが非常に困難であるということで、着床の失敗ということを重ねながら研究が重ねられているというふうに伺っておりまして、その結果、成功例につきましての誕生した人の身体的あるいは精神的欠陥ということにつきましては、いまの時点では私承知をいたしておりません。
  238. 小西博行

    ○小西博行君 数字そのものはちょっと定かでないかもわかりませんが、百人の中で一名だけ気管支に疾病があるといいますか、そういう方が生まれてきている。それは一般の事例に比べると、それほど悪い数字ではない、こういうふうに実際は言われているんですけれどもね、現実どうなんでしょうか、両親がそのことは了解して当然やるわけですけれども、もしそういう形で不具な子供さんが生まれた場合の後の問題ですね、この問題を私一番大きな問題としてあと残るんじゃないか。これは科学的に何か証明されればいいんでしょうけれども、なかなかされないだけに、というのは卵子を取り出すときのメカニズム、それからビーカーの中で受精する、それからさっきおっしゃった着床、それから出産と、ここまでの確率が私考えた以上に厳しいもんですからね。もしそこに何か異変があった場合にどうなんだろうと。さっき遺伝子の組みかえとおっしゃいましたが、遺伝子の組みかえということになるとちょっとまたややこしくなると思うのですね、この問題が。    〔理事和田静夫君退席、委員長着席〕 だけど、遺伝子組みかえの問題でも、P4問題が非常に大きな問題になっているだけに、私は遺伝子組みかえというのは余り一緒にしたくないんですけれどもね。その辺のところが非常に私は大変じゃないかなと。ですから、私はむしろこの際そういう実際に手術を受けたい方、あくまで治療だけということになると思いますけれども、そういうことも含めて、想定されるいろんな問題というものは当然もうおわかりだと思うので、その辺の不安要素といいますか、解決しなければいけないような要素、この問題に対してはどのように考えていらっしゃるんでしょうか、それをお聞きしたい。
  239. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 御指摘の点が、まさに技術として確率の度合いが高まれば高まるほど問題になってくるんじゃないかというふうに私ども感じておるわけでございまして、先ほど申し上げましたヘルシンキ宣言の中でも、患者の同意というのが必要であるということにさらにプラスをいたしまして、その同意というのが事実上の強制のもとによる同意というような形のものではないということを十分確認した上でやらなければならないというような一項目も設けられているように、そこはきわめて重要な点ではなかろうかと思っております。  一般論に干渉すると恐縮でございますが、その点になりますと非常に危険性を伴う治療行為、一般に対する医の倫理というものの一つの具体の適用例ということにもなろうかとも存じますので、これは厚生省の方でも御検討を開始されるというふうにも承っておりまして、医療行為の基準というか、医療行為に伴う倫理基準との関連も十分考えながら検討を深めていくということではなかろうかと思っております。
  240. 小西博行

    ○小西博行君 徳島大学でも先ほど申し上げました十五人から御意見を聞いたわけでありますけれども、そのときに結論としては、厳しい条件つきで承認しましょうと、こういうかっこうになっているんですね、厳しい条件つき。その条件とは一体何かといいますと、密室での研究を排し、公開の原則というのを一つうたってますね。ですから、こっそり研究室の中で自由にやってはいけませんということです。それから二番目は、体外受精を未完成な医療技術であるというふうにとらえなさいと。というのは、完成されているんだ、いつやっても成功するんだ、間違いないんだと、こういうような形でとらえたらいけませんと。つまり功を急ぐことなく謙虚な姿勢が大切であると。これが二点目ですね。それから三点目は、普通の子供として成長し得るような環境といいますか配慮を十分すると。つまり実験というような、もう医学の進歩のためにはどうしてもしようがないんだと。こういうところが非常に心配なんで、この三つの項目を非常に明確にあらわしているわけですね。ですから、私はこの点は非常に大切だと思うんです。この三つの条件だけでもせめて——これは間違っていないと思うんで、たとえば東北大学あるいはその他の大学、学内でいろんな基準を決める場合も、学者ばっかりが集まってそしておれはこう決めるんだというんじゃなくて、せっかくこういうように外部の方の御意見も十分拝聴しているわけですから、その辺のところを私は十分指導していただきたいと思うんですね。  それから、実際に患者の方の心配というので、これもかなりまとめているわけですけれども、たとえばさっきおっしゃいましたような着床率の低さですかね、実際に出産するまでの出産率というのは非常に低いんだという、こういう実態も相手の患者さんによく納得していただくという問題、これもう非常に私は大きいだろうと思うんです。  それから、倫理委員会なんか設ける場合も女性を必ず入れると。実際に子供を生んだ経験のある人あるいは生んでない人という形で、女性も必ずこの中に入れるべきではないか。そのほかは、さっき申し上げましたように、宗教家であるとか哲学者であるとか心理学者とか、やはりありとあらゆる分野から入れなければとんでもない方向に行く可能性もあるいは起こるかもしれないと。  それから、患者からとったいろんな手術の同意書ですね。この辺もどこまで具体的にそういう同意書を整備しておく必要があるのかという問題も私あろうと思いますね。  それから、さっき申し上げた、もしも最初の計画どおりうまく成功しなかった場合の医療補償は一体どうすべきなのか、今後。  それから報道関係。よく新聞に最近出ておりますから、こういう報道関係というのはどこまで抑えることができるのか、あるいは抑えなくて全部公開、何もかも公開するのが将来その子供さんあるいは家族にとって幸せなのかどうなのか、こういう問題もあろうと思います。  それから、いまダブりますけれども、子供さんのプライバシーの問題ですね。  こういう問題、いま私二点について申し上げましたが、こういう問題に対して私はかなり整備されていると。しかし、もう現実には実験が、実験と言ったら語弊があるかもしれませんが、治療がもうどんどん各大学で進んでいるという実例があるわけですね。そういうものを含めてこれ早急に何か対策を練っておかないと、私は問題点が出た後では大変——これは特に生命に関することですからね、もう取り返しがつかないような問題になってしまうんではないか、そしてやっぱり体外受精という治療は全然だめなんだという結論を出さざるを得ないような状況下になってしまうんじゃないか、その点がちょっと心配なものですから、いま私が申し上げたことに対してはどのようにお考えでしょうか。
  241. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 先生第一に御指摘の、徳島大学での条件の中の特に重要な点として御指摘になった点は、これは御指摘のようにいずこの大学で行うにしても重要な基準の内容となるべきものであるというふうに考えます。  それからそれ以外の点でこういう点につきまして十分検討すべきではないかと、いずれも本件を考えていきます際の重要な論点であるというふうに感じますので、部内の検討あるいは先ほど申し上げました学術審議会における検討あるいは大学への指導のあり方という際に、そのような点を含めまして検討をいたしてまいりたいと存じております。
  242. 小西博行

    ○小西博行君 もう検討というよりも早くやってほしいんですよ、もう現実進んでいるものですからね。  それから医学はわりあい単科大学というのが多いですよね。だから単科大学の場合に各種の専門家といってもなかなか一堂に会してというのはむずかしいと思うんですね。そういう場合にはどうでしょうか、今後どのような方向でいまのメンバーの結集を図られようと考えているんでしょうか。
  243. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) おっしゃいますように単科大学が多いわけでございますが、医学部の単科大学におきましても一般教育担当教員が相当数おるのは通常でございますし、それから考えようによりましては大学外の研究者、むしろ開かれた形での検討がなされるという意味では、大学外から学識経験者の参加を得るということがプラスであると考えられる場合も多いかとも存じますので、そういう学内に限らず適切な委員を求めるということではなかろうかと思っております。
  244. 小西博行

    ○小西博行君 新聞でばっと出ますと、それぞれの研究者というのは長い間それぞれ研究やってがんばってきておるわけですからね、非常に私は刺激になることはプラスだと思うんです。ところが功を急ぐといいますか、あわててやるという面が大変私は心配になってきておりますので、その辺のところをよく情報もキャッチされて文部省の適切な指導をぜひお願いしたいと思います。何か後から後から追っかけるような状態が目に見えますので、ぜひお願いしたいというふうに思います。  この問題はこれで終わりまして、科学技術関係について二、三点だけ御質問さしていただきます。  例の低レベル廃棄物、これももうずいぶん昔から議論されているようなんですけれども、現在は海洋処分あるいは陸地処分、こういう大きく分けて二つの処分方式が私あると思うんですが、しばらくこの問題について聞いてないものですから、最近はどのようになっているか、その実態について御説明願いたいと思います。
  245. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) この低レベルの廃棄物の処理処分、特に処分の問題につきましては、いま御指摘のように最終的には海洋処分あるいは陸地処分ということで両方を併用して対応するという考えでいろんな準備を進めておるわけでございます。  まず海洋処分でございますけれども、すでに先生承知のことでございますが、環境安全につきましての評価検討でありますとか、あるいは試験的にしろ海洋処分をするための法令の整備、あるいは国際条約への加盟といったことを進めてまいったわけでございます。せんだって、ロンドン条約というのがございますが、それの締約国の協議会が開かれまして、その検討の結果、当面安全評価につきまして科学的な研究グループを設けて検討を進めるということになっております。そういう状況にございますので、わが方といたしましては積極的にこれに参加をいたしまして、できるだけ早い機会に関係者あるいは関係国の理解を得まして試験投棄をできるだけ早く実施をしたいと、そういう過程を経まして本格的な海洋処分に移行したいというふうに考えておるわけでございます。  それからいま一方の陸地処分でございますが、この点につきましては最終的にはこれも実証的な試験的な処分というものを経まして、本格的な処分に移行したいという考え方は海洋処分と同様でございますけれども、その試験的な実証試験というものにつきましても、環境の分析のための環境シミュレーションと称しておりますが、そういう試験でありますとか、あるいは処分後の核放射性物質の移動に関しますモニタリング技術の開発といったことをいろいろ勉強を進めておる状況にございます。  こういった海洋処分、それから陸地処分と並行いたしまして、ここ数年の間に非常に現実的な解決策ということで考えられ、かつ検討を進めておりますのが施設貯蔵といいますか、原子力発電所その他の施設外の敷地外に低レベルの廃棄物を集中的に貯蔵するという考え方でございまして、貯蔵期間として三十年あるいは五十年という期間が想定されようかと思いますが、そういった長期的な貯蔵ということを具体的に考えてみて、その推進策を検討をしておるというような状況にございます。
  246. 小西博行

    ○小西博行君 この貯蔵の問題も非常に不明確で、実験投棄はあのような状態になりまして、私は前々から申し上げておるんですけれども、この低レベルというのはドラム缶に入れて、非常に容量が大きくなるわけですね、何十万本にもなるわけでしょう。これは昨年かその前でしたか、質問申し上げたら、三十年ぐらいは何とか敷地内に貯蔵できますなんというような答えがありまして、それは一体どうなんだと言いますと、原子力発電所の中に、いわゆる手袋だとかああいう低レベルのものを焼却する装置が全部ないんだというお話でしたね。あれを焼却してしまえば非常に少ない灰になるわけですから、それにセメントで詰めるとか、もっと容量を小さくしてうまく管理する方法はないだろうかという、これもずいぶん申し上げて、そしてそのように指導しますというお話も伺ったんですけれども、現実いまはどうなんですか、原子炉が二十一基か二十二基か大分ふえていると思うんですが、その中で実際にそういう焼却の設備といいますか、こういうものがある発電所、これ大体どのぐらいあるんでしょうか。
  247. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 発電所に限って申し上げますと、いま先生指摘ございましたように、低レベルの廃棄物の出方をできるだけ少なくする。それからできたものを減容するということは非常に大事でございます。でございますから、この面での努力をいろいろいたしております。ただ、いろんな地域との関係、その他制約がございまして、端的に申しまして、焼却をすれば効果的に減容ができるというものがかなりございますけれども、必ずしも全部の発電所で焼却設備を備えておる状況にはなっておりません。むしろ、かなり部分的にしか採用されておらないという状況でございます。これにつきましては、通産省その他ともいろいろ協議をいたしておりますけれども、できるだけその減容化を進めるという方向で努力をしてもらいたい、そういう指導をしていきたいというふうに考えております。  それから、発電所での低レベルの廃棄物の出方をできるだけ出ないようにするための技術開発ということにつきましても、政府の試験研究費も投入いたしまして研究を進めたいというふうに考えております。
  248. 小西博行

    ○小西博行君 せっかく安全局長来られておるんで、安全局長、低レベル廃棄物というのは安全なんでしょう。私は管理さえうまくやっていれば心配ないというふうに前から思っているんですよ。ただ、管理が非常に不十分な面が表へ出過ぎるんじゃないか、いつもそう思うんですよ。発電所のいろんな問題でも、よく水が漏れるとか、冷却水が漏れるとかという問題がいつも出てくるでしょう。ああいうような管理体制、ぴしっとやっておきさえすれば事前にチエックできるんじゃないかという気持ちがいつもあるんですね。その辺の指導といいますか、安全に対する指導、この辺に対してはどうでしょう。
  249. 赤羽信久

    政府委員(赤羽信久君) 御指摘のとおり、わが国の発電所で出ます廃棄物、中レベルのものと低レベルのものとございますけれども、低レベルのものに関しましては仕分けがきちんといって管理されておるものですから、かさのわりあいに非常に放射能のレベルが低いということでございます。したがいまして、これ全部ドラム缶に詰めて、ややすき間の多い状態でしまっているという点、問題がございますけれども、耐震性のしっかりした倉庫に保管しておりまして、この点では全く問題がない状態と言ってよろしいと思います。御指摘のように、上手に倉庫を建てましてきちんと並べれば今後まだ相当の余裕はある、したがって、外側の人に心配かけるということには全くならない状態になっておる、これは断言してよろしいと思います。  それから御指摘の、よそへ排水が漏れたというような件でございますが、これは処理途中の排水が敷地の中に漏れたというトラブルが過去若干ございました。それから、敦賀の発電所で起きた事象でございますが、これは中レベルのものでございまして、中レベルのものは現在ドラム缶に詰めるよりは専用タンクを設けてそこへきちんと管理しておくという方式をとっているわけでございます。たまたまそこの水をあふれ出さして、しかもそれがすぐ気がつかなかったということで問題を起こしたわけでございますが、結果としましては外側へ漏洩したものは非常に少なかったということで、外部への実害は実際なかったんでございますけれども、心理的に与えた不信感、住民に与えた不信感というのは非常に大きかったということを反省いたしまして、中レベルのタンク貯蔵につきましてもより厳重な安全確保をし、かつトラブルについても十分早く発見できるような対策をするということを、敦賀のみならず全国の発電所にさらに強化をして、現在万全な対策が進められていると認識しておるところでございます。
  250. 小西博行

    ○小西博行君 長官、いまお聞き願ったように、私は何か低レベル廃棄物につきましても、もう海洋投棄かあるいは敷地内に貯蔵するか、あるいは敷地外にやるか、大体三つぐらいの方法しかないんだろうと思うんですね。もちろん、貯蔵する場合にはできるだけコンパクトに扱いやすくしていこう、こういうことなんですね。ですから、これらのことはほとんど電力会社が自主的にやらなきゃいかぬ問題だと思うんです。しかし、事原子力関係につきましては、新しい技術といいますか、不確定要素が非常に多いということで心配される向きが私は非常に多いと思うんです。そういった意味で、私はもう少し具体的にその辺の長期的なビジョンに立って、日本の将来の原子力行政について、低レベルはこういう処理をしていきたいという一つのやっぱり指針が要るだろうと思うんですね。特にその中で敷地外の貯蔵ですね、この問題は私は一つのまた大きな問題になってくるだろうと思うんです。発電所の中はその発電所の中でやりなさいということでしょうけれども、敷地外ですね、これについての長期ビジョン、ほかの全体のやつがあれば一番いいんですが、それがなければ敷地外についてはどういうふうに具体的にやっていくのか。数字なんかというのが全然ないわけでして、あれもこれもうまくやっていきますという答弁なんですけれども、何かその辺の、科学技術庁の中でこういう方向で持っていきたいというのがもしあれば、私は教えていただきたいと思うんです。
  251. 高岡敬展

    政府委員(高岡敬展君) 長官からまた御答弁があろうかと思いますが、施設外といいますか、敷地外の貯蔵につきましてのどういう検討をやっているかということ、若干説明をさせていただきたいと思います。  この点につきましては、現在原子力局の中に外部の専門家の参加も得まして非常に具体的な検討をやっておるわけでございます。たとえば敷地外の貯蔵といった場合に、具体的にどういう貯蔵なのかといったような具体像といいますか、簡単な平屋建てをつくってやるのか、あるいはピットと申しますか、トレンチを掘って貯蔵するのかといったことの問題、それから、それに関連しての安全確保策をどうするか、それから法令の整備を要するかどうかといったような検討を具体的に進めております。具体的なイメージといたしまして、現在のところ発電所を含めまして、日本でたまっております低レベルの廃棄物が大体ドラム缶で四十三万本というような数字でございますが、一つのサイトとしまして、敷地外の貯蔵サイト一サイトにつきまして大体百万本程度の貯蔵が可能なものを考えるべきではないかということで検討を進めております。そういたしますれば、現在敷地内の貯蔵というのもかなり余裕がございます。四、五年は大丈夫でございますし、敷地内での貯蔵能力の増加ということも十分可能でございますが、敷地外に当面百万本程度の施設貯蔵ということを具体的に推進をしたいというのがわれわれの考え方でございます。
  252. 小西博行

    ○小西博行君 北海道の幌延町ですか、ここへ敷地外の貯蔵ということで計画がされておるというように聞いておるんですが、これは知事がかわりましたですね。その後の、私、どういうような方向になるんかなということで興味を持って見ておるわけですが、その辺に対して何か変更されるとか、あるいは変わるんじゃないかとか、そういうようなことをつょっとお聞きしたいと思いますが、どうでしょう。
  253. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) 小西先生いまお話ございましたが、いわゆる避けて通ることのできない廃棄物の処理、こういうことでございまして、どうしてもやはり場外集中管理という方式に移行するときがまいるであろうと。これを踏まえまして、環境整備センター等、当庁、関係者で寄り寄り相談をいたしておるわけであります。それで、そのときに北海道の地域内で云々という話題は、話は、これは進行しておることもありました。ありました中におきまして、いま知事さんがおかわりになったと。私はいま横路知事さんの考え方はまだ聞いておりません。それから、知事さんの方は選挙期間中にあることをおっしゃっておられたことは間接的に聞いておるわけであります。しかし、結論的にどうかということになりますると、われわれはやはりどうしてもこの措置を、この手法をとらざるを得ないであろうという前提に立てば住民の協力を求めなきゃならぬ、これは先生指摘のとおりであります。さっきいろいろお話ございましたけれども、初歩的なミスで、管理体制も先生おっしゃるとおりですわ。こういうことがあってはいけないことであって、やはり住民の信頼を得た上で了解をとる、御了解、協力を得なければならない、こういうことでございますから、そのためには私たちは知見を集積しなくちゃならぬ、こういうわけで一生懸命にいわゆる減量、減容、しかる後、今度処分と、こういう段階に入るわけでありますが、私は横路さんも、知事さんもいろいろ地元の住民の方がいろいろなことをこれ考えておられますからね。だから、いまここで私はどうするんだ、考え方を、軌道を修正するのか、こういうことになりますると、まず私は知事さんのお考え方をよく聞いてみたいと。私たちはやはり何としても御了解を得た上で最終の目的を果たし得るような、そういう体制で進みたい、こういうことでございますから、御了解願いたいと思います。
  254. 小西博行

    ○小西博行君 原子力の計画表を見ましても、六十五年で五千百から五千三百万という非常に大きな数字を挙げております。これはもう実際的に私は無理だと思います。三千二、三百万もいったらいいところだと思うんです。ですから、計画そのものが変更されるという、検討されるというのをこの間ちょっとお伺いしましたから、そのことには触れませんけれども、やっぱり原子力行政を考える場合には何といってもやっぱり安全性という、しかも地域住民がもう安心できるという条件づくりを私は絶対にこれ必要だと思うんです。まず、土地の問題から始まりまして、建設から、最後使った燃料とか、あるいはその後の低レベル廃棄物の処分、いわゆる出口ですね、この辺の管理が、方針が明確でなければなかなか進まないんじゃないかということを前から思っているんですよね。その面は私は、電力会社とももちろん話ししなきゃいけませんし、通産の関係もありますから、その辺を含めてもっと抜本的な対策を、話すべきところはしなきゃいかぬと思うんですが、そういうことをもう早く進めていただきたい。どうもその辺が明確でないから、一つ一つの、安全なら安全ということについても議論だけになってしまう、細かいことになってしまう。細かくなればなるほど非常に厳しい問題が当然出てくるだろうと思いますんで、その辺の全体を眺めた上での日本の将来のエネルギー対策はどうだという大きな方向づけが一番欠けているんじゃないかという感じがしてならないんです。その点の質問をして、そしてお答えいただければ一番いいんですけれども、そういう問題に対してこうなんだと、本気でやるんだということをぜひお願いしたいと思います。  私は、午前中から午後にかけてのいろんな質疑を聞きながら、本当に自分立場だけ守るような回答が非常に多いわけですね。ですから私は、自分の領域はこれだけだという何か各省庁の縦割りの世界の中でしょうけれども、やっぱり責任の範囲と権限の分野と、この辺を非常に明確にしていかなければ、これはもう一般産業でもそうですから——一般産業の場合はそういうことやっとったらつぶれますからね、ちゃんとしたシステムができております。そういう面で、私は非常になまぬるいと思うんですね。遺憾に思いますという言葉が非常に多いわけですね。遺憾に思ったら、だれが悪くてだれがやめなきゃいかぬかということまで明確にしていただきたい。そういう形に持っていかないと、恐らくこれから先の、行革もそうですが、エネルギー問題もなかなか解決できないじゃないか、本気で長官やっていただくと、その点をぜひお願いしたいと思います。
  255. 安田隆明

    国務大臣安田隆明君) おっしゃることはよくわかりました。本当に私たちが真剣に取り組んでいるということは、この財政事情のこういう厳しい中で、五十八年度、これは低レベルだけで海洋、陸上ともに合わせ百二十一億という大きなこれ、財源を使って、これだけ真剣にやっているんですから。ただ、やはり不安を解消する実証、これだけは私はやっぱりみんなしっかりこれもう皆さんに、住民に理解できるようなものをちゃんとここに持っているんですけれども、これを今度外に出していきますときに歯車が合わないと、本当に私も残念に思っております。しかし、おっしゃいますとおり、一生懸命にやることだけははっきりとここで申し上げておきたいと思います。
  256. 小西博行

    ○小西博行君 終わります。
  257. 安武洋子

    ○安武洋子君 障害児の後期中等教育についてお伺いをいたします。  一九七九年四月の養護学校義務制実施から四年がたっております。障害児の後期中等教育はいま大変切実になってきております。ことしの三月に、子供を高等部に入学させたい、こういう希望が全国各地で出されております。養護学校高等部増設の運動が大変高まってきているというふうに思います。私が知っているだけでも岡山、滋賀、島根、埼玉、青森、大阪、東京と、こういうところで運動が起こっております。大阪では、肢体不自由児校の二校に知恵おくれ養護学校の高等部二校四クラス、これが教室を借りまして入っているというふうな事態が起こっております。障害児教育の義務化によりまして、最近中等部からあるいは特殊学校から高等部に進学を希望する人がふえているというふうに思いますけれど、文部省はどのようにこの点認識をなさっていらっしゃいますでしょうか、お伺いをいたします。
  258. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 義務教育でございます特殊教育諸学校の中学部を卒業いたしまして高等部を希望する者、これは先生がお挙げになりましたように、義務制実施以来かなりふえているわけでございます。  状況を申し上げますと、養護学校につきましては高等部の進学率が現在六割強でございまして、ただその他の者の進路が、たとえば社会福祉施設でございますとか、病院の入所でございますとかあるいは職業訓練機関の入校等、いろいろと多様な実態にあるわけでございます。文部省といたしまして、特殊教育におきます後期中等教育をどうするかという問題につきましては、昨年の十月に特殊教育研究調査協力会議におきまして報告をまとめていただいたわけでございますが、その報告の際にいろいろ検討されました結果でございますけれども、心身障害児の後期中等教育につきましては、高等部という一つの特殊教育学校の体系だけではなくて、労働でございますとか、福祉でございますとか、医療関係の機関等も含めまして、多様な教育の場の一つとしてとらえるというようなお立場が示されているわけでございまして、私どもといたしましては、義務教育を修了いたしました心身障害児の進路大事でございますけれども、そのような方針に沿いまして、能力、適性、障害、そのほかいろいろ多様でございますから、これらの機関も含めて適切な進路が選択されることが必要だというふうに考えているわけでございます。
  259. 安武洋子

    ○安武洋子君 一般の高校進学率といいますのは九四・三%、そして進学希望者の九八・三%、これが高校に入学しております。まあ、事実上ほとんど入学しているということになります。障害児の進学率というのを一方見てみますと、特殊学級の卒業者は四〇%、それから養護学校全体では六三%。その内訳を言いますと、知恵おくれ養護で五三%、肢体不自由で六二%、病虚弱で三二%、こういう数字でございまして、一般の高校進学率から見ますと大変きわめて低いということになっております。障害児だからといいまして一般の高校進学率よりも低くてよいということには私はならないと思うんです。  原因といいますのは、高校に進みたいと、高等部に進みたいと思いましても高等部が大変少ないということではなかろうかと。まあ、高等部を設置している学校が少ないわけですね。兵庫県の例をとってみますと、五十七年の基本調査、これを見てみますと、知恵おくれの養護学校というのが分校を含めまして十九校です。中学部三年の在学生というのが二百九十二人です。ところが、高等部は七校で百三十九人しか入学できないわけです。ですから約四八%ということになります。肢体不自由児、虚弱児の場合も基本的には変わりません。しかも兵庫県は郡部が大変広大なわけですが、この郡部の但馬、丹波、西播、それから東播の北部、淡路、こういうところでは高等部のある養護学校がないわけです。ですからやむを得ず住所を移して都市部のところに行くとか、あるいは鳥取、京都の高等部に入学をさせるというふうなところさえあるわけなんです。こういう問題、どこに問題点があるかというふうに考えますと、やはりこれは高等部の新設、要求されるところに増設、新設、こういうことがやはり早急に行われることだというふうに考えるわけですが、文部省のお考えはいかがでしょうか。
  260. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) いま安武先生お挙げになりました数字でございますが、確かに特殊学級は三九・八%の進学率でございますけれども、就職をしている子の割合が三六・五%あるわけでございまして、高等部とか高等学校に行かないで就職をしているという割合が三割六分あるわけでございます。この数字、養護学校の精薄——精神薄弱を含めまして六二・六%という数字が、一般の高等学校に対する進学率に比べて低いと、数字だけごらんになりますとそのとおりでございますけれども、これは五十四年に、これまでともいたしますれば就学猶予、免除を受けて、教育の機会が与えられなかった心身障害児に対しまして、養護学校の義務制という形で養護学校を整備いたしまして、そのお子さんたちがもとになった数字でございまして、この数字をどう評価するかということあろうかと思いますけれども、一概に九四%に比較して云々ということではございませんで、ただいま私が申し上げましたように、特殊学級の場合には四割が進学をして三六%が就職をしているという実態もあるわけでございますし、やはりその心身に障害を持ったお子さん方の進路につきましては、義務制につきましては国は責任を持って五十四年度に義務制を実施いたしまして、いまその整備を図っているところでございます。それで、今後これを高等部の増設をして収容するかどうかというふうな問題につきましては、先ほど私が申し上げましたように、この特殊教育におきます後期中等教育を有識者によりまして検討していただきました結論としては、単に高等部に収容するということだけではなくて、いろいろな機関において多様な進路、適性に応じまして受け入れをすると、それによって社会的な自立を図る必要があるということになっておりまして、義務教育でない後期中等教育をどのようにするかという観点からの御質問でありますれば、私どもとしてはこの報告書にございますような方針に沿いまして——確かに一部におきまして高等部の設置について格差のあるところがございますから、そういう点については整備を進めなければならぬと思いますけれども、いまお示しのような九四%との格差という観点からだけ高等部の整備を進めるという考え方では、この多様な心身障害児の後期中等教育に対応し切れないというふうに考えているわけでございます。
  261. 安武洋子

    ○安武洋子君 高等部に進学の希望を持っていない子供も無理やりに私は高等部に入れろと、健常児と同じような率でなければいけないんだというふうには申し上げておりません。しかし、高等部に進学したいという希望者がいるのに進学ができないという重要な問題があるから問題を提起しております。  高等部に進学ができないというふうなしわ寄せというのが、これが重度の障害児にいっているというところに大きな問題があります。兵庫にもそういう例がございますけれども、兵庫では入学の際に、まず第一番目は、自力で通学可能な者、それから二番目には、身辺自立が可能な者、三番目には、教育内容履修可能な者、こういう三条件、これに該当しない子供というのは入学ができないで、事実上切り捨てられてしまうというふうな事態があるわけなんです。  ですから、私はここに島根県の国立療養所松江病院の重症心身障害児の親の会の皆さん、この方たちが、障害の重い子にも入れる高等部をつくってくださいと、こういう願いを込めた文集をつくっておられるんです。その一節を御紹介させていただきたいと思います。前の方を省略しますけれども、  この子達は一生懸命です。一日一日ごとに、教育の芽がのびてきた事を知りました。でも、残念なことに、この三月で中学部の卒業生です。今日まで少しづつのびはじめた教育の芽も終るのか、と思うと非常に残念でたまりません。この様な特殊学級の子ども達と健常児と同じ学年数という事に疑問を感じます。やっと芽ばえたものをここで終らせず、もう少し長く見守ってやる事ができるとしたら、子ども達はどんなに幸せだろうかと、日夜思う今頃です。   何とか、養護学校にも高等部が一日も早く出来ますよう、願っています。   もう一つ、   重症心身障害児・者にも義務教育化され、親の私さえ分からない子が、学校に行って何を教えてもらうのだろうか……。   一年、二年とたつうちに、表情が出てき、笑顔を見せてくれるようになり、うれしくてだれかれなしに「かおりが、この頃笑顔がでるようになったのヨ」と、ふれ歩いたものです。笑顔から笑声がでるようになってくれないでしょうか。母親のささやかな願望です。   何も分からない子どもに高校など…。と言わないでください。忘れられているこの子ども達こそ、光をあててください!教育の場をあたえてください!!  こういう文集があるわけなんです。  障害が重い子供たちにもやはり教育の成果が出ているということがあちらこちらでも示されておりますし、私も現場に行ってそのことをたくさん聞いてまいりました。私は大臣にお伺いいたしますけれども、大臣はこういう問題を、私がいま申し上げた立場からどういうふうにお考えでございましょうか、お伺いをいたします。
  262. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私は、先般都立の養護学校を見せていただきました。小学部、中学部、高等部そろっておるところでございました。いろいろ心身の非常に不自由な子供、よくぞここまでいろんな言葉、文字あるいは手芸その他を指導してくださったなと思って感激して見てまいりました。そういう意味で、義務教育にしたのはまだ比較的日が浅いわけでございますから、十分の対応ができておらないことは現状でございます。でありますから、高等学校、これ義務教育にまだなっておりませんし、そこまで対応がおくれておりますけれども、もう少し、先ほど局長から申し上げましたように、やっぱり心身の状況等によってあるいは他の施設でなお教養を積みながら職業訓練その他をした方がいい場合もありますから、これは好みでございますけれども、本人の状態を見ながらやらなければなりませんが、しかし、もっとこういうことを勉強したいという子供が相当おるということになれば、やっぱりそれに対応する努力をしなければならない。これはこれからであろうと思っております。
  263. 安武洋子

    ○安武洋子君 東京の場合、精薄の特殊学級、養護学校中等部、この卒業生の進学率は、特殊学級の場合、七五年三月が二六%、こういうことでした。ところが、八一年の三月では四七%にふえております。養護学校の場合でも同時期で五三%から八七%になっているわけです。まだ十分とは言えませんけれども、進学を希望する子供たちに対応して高等部を設置していったということからこういう数字が出てまいったというふうに思います。七五年五校しかなかった公立の高等部が八三年には一六校になっております。生徒数も四百二十七人から千六百十八人に四倍になっております。要するに、進学希望者の増加に対応して高等部を設置しているから進学率もふえているという数字が出ているわけです。高等部をふやしていくというこの基本的方向はいま大臣もお答えくださったので、私はこれは文部省も御異存はないというふうに思いますけれども、念のために一応お伺いいたしておきます。
  264. 鈴木勲

    政府委員鈴木勲君) 心身障害児の後期中等教育の問題については、就学前教育の幼稚部の設置とも関連いたしまして、全体としてどういう方針で臨むかということにつきましては、大臣からお話がございましたように、高等部という一つの特殊教育学校のシステムと申しますか、それもさることながら、多様な機関、社会福祉施設あるいは職業訓練、そういうようなものを全体を勘案いたしまして整備を進めるということが提言されておりますし、そのような方向で検討しなければならない。ただ、いろいろ東京都の例をお挙げになりましたけれども、県によりましては高等部未設置というふうなところもございますし、そのような整備の格差がございますから、そういう格差のあるところは充足を図るというふうな観点も含めまして、整備を進めなければならないというふうに考えているわけでございます。
  265. 安武洋子

    ○安武洋子君 こういうものをお出しになっていらっしゃいますでしょう。「障害者対策に関する長期計画」。この中にははっきりと「特殊教育諸学校の高等部の充実を図るとともに、高等学校等において教育することが適切な者については、その受入れのための条件整備に努める。」と。こういうふうな長期計画ではっきりそういうふうにうたっているわけです。ですから、増設の必要性だけは訴えておられる。しかし、それに対する手だてをちゃんととっていただかなければいけないと、こう思っているのに、まずは全体的な問題に解消されて、私は高等部に進みたいからこそ運動も起こっておりますよと、高等部に進みたいという要求もありますよと、高等部を増設すればこれだけ進学率もふえているんですよと、そういうことで申し上げているのに、それを全体の問題、私はそのことを否定はいたしませんけれどもね、高等部の問題にしぼってそれが要るということでお話ししているのに、そういう全体の問題に解消なさるということは私はやめていただきたいと思います。  一般的にこういうことを言うんではなくってね、養護学校の整備七カ年計画、この策定を実施しました際に、幼稚部の設置十カ年計画、これを立てて具体的に補助についても手厚くするというふうなことで設置促進の措置をとってなさいます。高等部の設置につきましても私は同様な財政的な措置を含めまして、促進するための具体的な計画を立てて実行することが必要だと。ただこういうふうに書いておいたからよいというふうなものでなくって、国際障害者年の推進本部でこういうふうにきちっと決めたことですからね。それは先ほど申したように、財政的な措置を含めてやはり具体的な計画を立てて進めるべきでないかと、そういうことを大臣の御所見を伺って私の質問を終わります。
  266. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど申し上げましたように、方向としてはこれはやっぱり整備する方向で進まなければならない。それから、財政その他がありますから一挙にというわけにはもちろんまいらないことでございますが、やはりその機会を与える努力をしなければならない、かように考えております。
  267. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もないようですから、文部省及び科学技術庁決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明後四月二十七日午後一時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会