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1983-04-18 第98回国会 参議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十八日(月曜日)    午前十時十一分開会     ─────────────    委員異動  四月十四日     辞任         補欠選任      中山 千夏君     秦   豊君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 井上  裕君                 内藤  健君                 降矢 敬雄君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君     委 員                 岡部 三郎君                 高橋 圭三君                 仲川 幸男君                 福田 宏一君                 森山 眞弓君                茜ケ久保重光君                 本岡 昭次君                 安武 洋子君                 三治 重信君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君    政府委員        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        職員局長     叶野 七郎君        警察庁警備局長  山田 英雄君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁次長  森山  武君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務大臣官房会        計課長      斉藤 邦彦君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        羽澄 光彦君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省条約局長  栗山 尚一君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        外務省経済協力        局外務参事官   松浦晃一郎君        会計検査院事務        総局第一局長   佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第二局長   竹尾  勉君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五年度政府関係機関決算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書(第九十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  去る四月十四日、中山千夏君が委員を辞任され、その補欠として秦豊君が選任されました。     ─────────────
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題といたします。  本日は、外務省及び防衛庁決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 まず外務大臣アルゼンチン軍事政権左翼弾圧に巻き込まれて日系人がわかっているだけでも十人、実際には二十人ほど、もちろん日本国籍を持っている人を含んで行方不明になっているという報道がございます。まあイタリアやフランスなどヨーロッパ政府関係議会調査を進めている模様でありますが、これはぜひ日本政府としても前向きに真相究明に取り組まれるべきだと考えるのですが、いかがでしょう。
  8. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまの御質問の趣旨は、アルゼンチンにおけるところのいわゆる行方不明者問題についての日系人かかわりぐあい及びこれへのわが国対応ぶりについてということでございますが、わが国としてはこれまでも機会があるごとに、アルゼンチン政府に対して行方不明になっている日系人計十名の行方調査申し入れてきております。  去る二月下旬にも在アルゼンチン日本大使館より改めて調査申し入れました。こうしたわが方の申し入れに対してアルゼンチン側は、関係当局にも照会した結果として、依然何らの手がかりもつかめてない旨回答をしてきております。また最近のわが方の照会に対しては、関係当局に対し改めて調査進捗ぶりを照会し、わが方にその結果を回答する旨を約束をいたしております。わが方としましては、本件解明に引き続き努力してまいりたいと考えております。なお、アルゼンチン側に対するわが方申し入れ及びこれに対する先方の回答につきましては、随時関係家族にこのことをお伝えをいたしておるわけであります。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 南北朝鮮クロス承認外務大臣意欲を非常に燃やされているそうでありますが、これは中国ソ連にも大臣自身お働きかけになる、そういうことと想定してよろしいですか。
  10. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いわゆる南北両鮮のこのクロス承認の問題でありますが、これはいわゆる国連への同時加盟とともに、いわゆる朝鮮半島緊張緩和という立場韓国自体意欲を持っておる問題でありまして、わが国としてもやはり朝鮮半島緊張緩和に役立つといいますか、それの環境をつくるという意味においてこういう問題が進められるということであれば、それはそれなり意味があるんじゃないかというふうに考えておりまして、そういう立場関係国との間でも話は一応はしておるわけでありますが、しかし、実際上は客観情勢として北朝鮮もこれを認めるという立場にはないようでありますし、なかなか中国もそうこれに対して積極的な考えは持っていないと、こういうことでもありますし、なかなか私はむずかしいと、先般も日ソ事務レベル会談も行われましたが、ソ連もこれに対しては否定的であると、こういうことで、現実問題としてはなかなかこれはむずかしい状況にあると言ってもいいんじゃないかと思います。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 カピッツア外務次官との会談の中でも、それじゃいまお触れになったように、具体的には何か話が出たということになりますか。
  12. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いわゆる朝鮮半島緊張緩和の問題に関連をして、具体的な一つ緊張緩和の方策としてのクロス承認問題等も話をしたわけでありますけれど、ソ連側としてはこれは認めるわけにはいかないということでございました。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 私もやはり当事国の意向を尊重することが、民族自決の原則からも重要であると考えていますので……。朝鮮民主主義人民共和国と接触をされることはお考えにはなっていませんのですか。
  14. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) わが国は、現在依然として北朝鮮との間では国交関係を持っておりませんし、直接北朝鮮との間で話をするとか接触をするという考え政府としては持っておりません。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 次の問題ですが、米中関係スポーツ選手亡命問題をめぐってかなりぎくしゃくしてきているようであります。アメリカABC放送によれば、ニクソン訪中以来最悪というような報道があるようですが、この辺についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  16. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は米中関係最悪だとは思いませんが、しかし、いまぎくしゃくしていることは、これはもう事実であります。ただ、私は両国とも基本的にはやはりこれまで積み上げてきた米中の枠組みといいますか、積み上げた一つ関係というものを、ここでもってこれを壊していこうと、こういう考えはもちろんアメリカ側にもありませんし、中国側にもないんじゃないかと、こういうふうに判断しております。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 何か具体的な、日本としてアプローチ両国にされるというようなことはお考えになっていますか。
  18. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 現在のところは、わが国として米中関係について心配はしておりますけれど、しかし、私がさっき申し上げましたように、基本的にはこういうものを壊すというふうな、両国にそこまでの考えはないように思いますし、いまここでわが国がどうだこうだという、乗り出していこうというふうな考えは持っておりません。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 三月二十四日にイーグルバーガー国務次官対ソ核弾道ミサイル迎撃システム日本技術協力を期待する旨の発言を行ったとされているわけでありますが、これにはどういうふうに対処されますか。
  20. 北村汎

    政府委員北村汎君) ただいま御指摘の発言は、私ども特に確かめてはおりません。そういう話は一切米側から日本側にあるわけではございません。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 レフチェンコ氏の証言問題で若干の意見をただしたいと思います。  私は、この問題というのは組織的かつ大規模な国際的謀略であるというふうに考えていますが、日本国内の反民主主義的な情報操作機関あるいは国際的な反共組織が仕組んで米政府機関が積極的にサポート、コントロールする、そういう恐るべき謀略であるという疑いを持っています。その政治的なねらいは、あの証言内容が発表された時期との関係をちょっと考えてみても、第一段階訪ソ永野ミッションというような時期に合わせて出てくる、いわゆる反ソ感情の鼓舞であって、ソ連との経済交流を含めた友好活動を妨害をするねらいがどうも永野ミッションに合わせてあったのではないだろうか。第二には、総選挙も予想される、参議院選挙あるいはいまの選挙、いわゆる八三年政治決戦というこの時期、わが党への集中的な攻撃参議院選挙あるいは総選挙に向けたわが党への意図的な悪質な攻撃というふうにとらえられる、こういう時期に四月二十三日号、五月二十三日号と言われるリーダーズ・ダイジェストの動きがあると。第三には、日本の良心的なジャーナリズムへの攻撃がどうもある。そして最後に、スパイ防止法という政治活動あるいは言論の自由を奪おうとする悪法の制定に拍車をかけようとするような政治的陰謀があるような感じが一連ずっとするのでありますが、そういうふうに私はとらえます。そういう立場からきょうは政府の見解をただしたいのでありますが、まず事実関係を若干明らかにしていただきたい。警察庁、これまでレフチェンコ氏並びに関係者事情を聴取されたと報道されているわけですが、その概要を説明してください。
  22. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 警察といたしましては昨年十二月にいわゆるレフチェンコ証言が公表されました。そうした政治工作活動をめぐりまして違法行為があればそれは看過しない、そういう方針で詳細な情報の入手を考えておりまして、三月下旬に係官をアメリカに派遣してレフチェンコ氏と接触させまして証言具体的内容について詳細に聴取してまいりました。ただいま、聴取してまいりましたレフチェンコ氏が行った政治工作活動実態究明、さらにそういう行動をめぐって違法行為が介在しておったかどうかということを慎重に調査中でございますので、個々の具体的内容について申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 概括的で結構ですが、これまでの調査で知り得た範囲で犯罪を構成する事実関係というのはあるわけでしょうか。
  24. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) いま調査検討中でございますので確定的なことは申し上げられないわけですが、何分古い話でございます。同時に伝聞推測に基づくこともございます。したがいまして捜査の端緒を見出すことはかなりむずかしいと考えております。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 外務省内閣、あるいは外務省職員あるいは内調関係者についての調査結果ですがね。
  26. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) ただいま警備局長からもお話がございましたところでございますが、私どもも警察から連絡を受けまして、事実とすればこれは外務省の規律の上からも重大なことであるというふうに考えまして、それなり調査を進めておるわけでございますが、何分にも外務省職員に関する部分というのはレフチェンコ伝聞によるということでございますので、内容もかなり漠然といたしておりますし、いろいろ省員の名誉にもかかわることでもあり士気にもかかわることでございますので、現在慎重に進めておる、こういうことでございます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 機密漏洩などの事実関係というのはあったんでしょうか。
  28. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) いまのところその点を含めて調査中でございまして、確定するに至っておりません。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁レフチェンコ氏の亡命のときの状態なんですがね、この辺のところがどうも経過がすっきりしていないようですが、彼はどういう理由で亡命をしたんでしょうかね。亡命をアレンジした日本人はいるのでしょうか。
  30. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 当時の状況は、彼自身決意に基づいて亡命に至ったと承知しております。それは下院証言内容につきましても、彼の勤務経歴なり情報活動なり亡命に至る決意などがかなり詳細にあらわれていると承知しております。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 レフチェンコ氏の東京における住所はどこだったんですか。
  32. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 彼はソ連雑誌社の新時代社の記者として在日しておったわけでございまして、ただいま住所がどこであるかということは、手元に資料を持ち合わせておりません。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 私の調査では、渋谷区の松濤ということになっていまして、これは後ほどの私の質問関連をしてくるのでありますが、内閣に伺いますが、四月十三日に毎日新聞リーダーズ・ダイジェストについてスクープをしたわけですね。それ以前にこのリーダイの話を載せた新聞というのはございましょうか。
  34. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 私の記憶しているところでは、レフチェンコ氏は昨年の七月に下院情報特別委員会証言をしたようでございます。秘密会でございますから、そういう取り扱い証言したと思いますが、十二月に入って毎日新聞がその情報をキャッチして一部報道して、その後下院情報特別委員会において証言記録を公表したという経緯になっていたと記憶しております。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 私はここに世界日報の写しをずっと持っているんですがね。毎日新聞が四月十三日にリーダイスクープをする、それ以前にずっと系統的に世界日報は人名を挙げましてレフチェンコ問題というのを対日工作としてずっと報道を続けているわけですね。こういう中には東京大学の衛藤教授名前が出てみたり、たくさんの名前が出てきているわけですが、この辺のことはどういうふうに御判断になっているわけでしょうか。
  36. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) いまお示し世界日報がいかなる根拠に基づいて報道しているかについては、私ども全く関知しておりません。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁長官、これも記事であり報道でありますが、山川暁夫さんという人についてのレフチェンコ証言の中に、防衛庁関係者中国軍編成に関する百ページのレポートを作成したということが出てきていますね。その記事の中では山川さんはこの事実を否定されていますが、私もそうだろうと思うんですが、よしんば防衛庁が仮に中国軍編成調査しているとすれば、どういう手段、方法で御調査になっているということになりましょうか。
  38. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 防衛庁中国のみならず関係軍事力実態というものについての調査はいたしておりますが、それは第一には公刊資料による調査、あるいは在外公館等を通じて来る調査等によっております。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 外務省亡命後のレフチェンコ氏に政府アプローチ接触されたというのはこれはいつごろのことになりますか。
  40. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 外務省に関する限り、一月にレフチェンコ証言のさらに詳細を入手したいということで申し入れたわけでございますけれども、その後米国側から外交経路を通じて差し上げる情報という性格のものでない、外交チャンネルになじまない、こういう回答がございました。外務省かかわりはその範囲でございます。レフチェンコ自身外務省員なりあるいは在外公館員なりが接触したということはございません。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 官房長官、私は、今回のレフチェンコ証言は冒頭にも申しましたけれども、きわめて確度の低いものだろうというふうには考えています。第一に、彼は亡命したスパイでもあります。しかも、病弱であったと言われているわけでありますが、亡命したスパイ証言というものはかなり割り引いて考えねばならないでしょう。レフチェンコはそういう意味では弱い立場の人間である、アメリカ政府の看視下に置かれている、こうした事情のもとであの発言があったというふうに考えますが、そういう点についてはどういうふうにお考えになりましょうか。
  42. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) この件は、予算委員会等でも何回か私がお答えしておるとおり、やはり四年半余り東京で在勤しておったという事実ですね、そして同時に、亡命者というものを受け入れる際には、亡命ということによって逆に潜入するという事態は間々あることでございます。したがって、受け入れ側としては、そういった者の受け入れ、さらには受け入れ後の取り扱い、それらについては万全の調査をするというのがこれまた世界の常識であろうと、こう思います。あれこれございまするので、私は、和田さんは国際的な謀略である、その発表の時期、永野ミッションあるいはことしが選挙の年であるとかといったようないろんな御推測のもとでの御発言のようですが、そういう見方もこれはやっぱりしておかなきゃならぬことは事実でしょう。しかしながら、それできめつけるということはいかがなものであろうかと、やはり事柄は私はきわめて日本国にとっては重大な事柄であろう、こう思いまするので、やはりそれなりの受けとめ方というものはこれは何といいますか、フランクな気持ちで、これは事実を冷厳に追及するということの方が日本国としては対応すべき措置ではないのかと、こう私自身考えております。レフチェンコ証言そのものについても、まだいま警察当局で慎重に調査しておるようですし、その結果を待たなければ何とも言えないなという、こういった席での私としてのお答えは申し上げるのは差し控えた方がよかろうと、こうは思っておりますが、今日までの段階では、やはり荒唐無稽の物語りである、あるいは謀略であるといったような決め方ではなしに、やはり相当全体としては信憑性があるのではないかというふうに考えざるを得ないわけでございます。ただ、こういった場合に、レフチェンコ自身の何といいますか、その当該協力者と彼が称している人たちへの評価の仕方と、こちら側の協力者と言われておった方の接触する際におけるその人の考え方というものの中に、食い違いがあるのはこれまた当然なことでもあろう、こういうふうに考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、いまの段階で余りきめつける考え方は私は適当でない。やはり日本国にとっては重要な事実であるということを腹において冷厳、冷静に対処をしていく必要があろうと。こういうようなことで政府としては警察等における調査の結果を待っておる、その調査の結果によって適切な処置をしなければならぬのではなかろうかと、かように考えておるのが現在の段階状況でございます。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 官房長官エージェントというのは何かということをどういうふうにお考えになっているんですかね。相手がジャーナリストの資格で情報を取りに来る、自分は知っておる情報を話す、あるいは原稿を依頼されて渡す、その対価をもらう、これは通常取材活動であるし、あるいはまあ言論活動であると思うんですけれども、これはスパイ行為あるいはスパイエージェントとしての行為というふうになるというふうにはお考えになりますか。
  44. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) エージェントという言葉の定義はひとつ専門家が来ておりますから専門家に聞いていただきたい。しかし、いずれにせよ金銭授受があるという事実が仮にあるとするならば、私はそれはあなたの言うようには理解ができない。当然受け取るべき報酬であるならばそれは結構でしょう。しかし、仮にそれが原稿料ということであるならば、これはまた社内規則がどうなっておるのか、それによっても違うんじゃないですかね。社内規則として、社内における活動に対する報酬ということで給料その他が出ておる、それ以外のサイドビジネスということについても自由にやってよろしいということであるならば、これは一向差し支えありませんね。しかし、そうでなければ社の中で了解、許可を得ておるのかといったような問題もいろいろあろうかと思いますから、一概にそれもあなたのおっしゃるようには言い得ないのではないか、かように思います。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 外務省、CIAあるいはKNSPあるいはイギリスの諜報機関員などが日本にいることは確認できますか。
  46. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) どうもこれは外務省でお答えできる事項ではないように考えます。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、どこで答えるわけですか、警察ですか。
  48. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) ただいまお示し外国機関、これが国内にいるかということについては、われわれもその事実は把握しておりません。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 外国人ジャーナリストはそれじゃ、外務省、いま日本には何人いますか。
  50. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 特派員というふうな形で駐在しておる人数、私ここに正確なデータ持っておりませんが、ざっと申し上げて数百名くらいの常駐はあろうかというふうに思っております。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁、これらの特派員行動というのはやっぱりチェックされるわけですか。
  52. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 外国特派員活動それ自体をチェックするということは、警察としてはいたしておりません。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 それ自体はチェックをしないと。そうすると、ある特定の特派員については何か基準を設けてチェックをされる、こういうことになりますか。
  54. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) レフチェンコのケースを発端にしてのお尋ねだと思いますので申し上げますると、ソ連は特にわが国において秘密情報収集活動を展開しておることは御承知のとおりだと思います。過去にも警察が検挙いたしましたコノノフ事件、マチェーヒン事件、コズロフ事件、いずれも外交官あるいは新聞の特派員を装った機関員による秘密収集活動を刑事事件として警察は立件したわけでございます。そういう観点からいたしますと、新聞の特派員にもソ連の場合は情報機関員を潜入させておるということは疑いのないところでございまして、そうした容疑が見受けられた場合には、われわれとしては必要な視察を行っているところでございます。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 官房長官レフチェンコ証言についての長官の考え方、先ほど明らかにされましたが、圧倒的部分が伝聞に基づいている。その意味で私は証言の確度は低いんじゃないかということを言ったんですけれども、現在九人の名前が挙がっているわけですが、このリーダイの編集者によってもこの九人はエージェントでないというふうに報道されていますが、新聞報道の限りでありますけれども、彼らがエージェントとして何をやったのかという具体的な事実関係というのはわからないと。そうすると、エージェントでないにもかかわらず実名を挙げられて、ある場合には売国奴呼ばわりをされている、これはまさに私は人権問題だと思うんですが、そういう側面からのコメントはございませんか。
  56. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私がいま聞いている範囲では、レフチェンコが直接運営した人と、それと伝聞といいますか、レフチェンコ自身ではないがKGBがおやりになっておったと承知をしておるという事実と、こういったいろいろございますから、それら個々の方々にとってどういう事情であったのか、これはいま警察で調べておりますから、その結果を見ないと何とも言えません。  ただ、その中に非難せられてしかるべき人もおるかもしらぬし、あるいはまた人権上気の毒な立場、つまりは、先ほど私申しましたように、相手方がエージェントのつもりかもしらぬが、こちらは無意識的におつき合いをしておったといったような人もおるかもしれませんし、そこらは事実関係が明らかにならないと具体的にこの方がどうだというお答えはできない。いずれ調査の結果それらについても適切に対処をしなければなるまいというふうには考えております。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣、このレフチェンコ証言によりましてソ連ジャーナリスト接触するのは危ないという風潮、危険だという風潮とでもいいますかね、ソ連人とつき合うのはよくないことだという風潮が出てくることは、これは私は日ソ友好のためにマイナスである、日ソの民間外交のためにマイナスであると考えなきゃならぬと思うのでありますが、そういう点についてはいかがですか。
  58. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ソ連とはこれは国交もありますし、政治経済あるいは文化、人的交流いろいろな面に広範な交流があるわけでありますし、そういう中で一般的につき合うのはこれはもう当然のことであろうと思いますし、今日もそういうことでちゃんとやっておると、こういうふうに理解しております。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣もお続みになったかと思うんですが、けさの朝日新聞の「論壇」で名指しされた杉森康二という人が、日ソの民間外交は今後も積極的に進めるべきである、日本の安全保障という観点からも必要であると思うということを主張していますし、私もそう思いますし、まあ外務大臣自身も大空真弓さんとの——ちょうどけさ届いたんですが、「時の動き」の中でそのような立場に立った御発言永野ミッションなんかを高く買っていらっしゃる御発言がありますが、いかがでしょうか。
  60. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもちろんソ連との関係は領土問題であるとか、あるいは国際情勢の認識であるとか、基本的にはいろいろと食い違いがあることは事実でありますし、あるいは経済にしても、民間の経済交流というのはこれは自由に行われておるわけでありますけれども、しかし日ソのいわゆる経済関係というのは基本的には政経一体ということでこれに対応しておるということでございますので、一応の節度というのはこれはあるわけでございますけれども、しかし、何としてもこれまでの国交の中で積み上げてきている関係は、これは持続していくということがわれわれの基本的な考えであります。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 政府としてはそういう点十分配慮をされてこの問題に対処されるように要望しておきたいと思うんです。というのは、シュレジンジャーさんなどは第二のマッカーシズムが始まったと現在の風潮をとらえているようであります。マッカーシズムの中で、いわれなき罪の汚名を着せられて職場を去ったり、国を追われた事実というものを私たちは想起することができます。なおも新しい問題としてわれわれの頭の中に描かれる、そういうふうに思うんですが、再びそういう悲劇を繰り返してはならないと思いますので、官房長官、幾つかのお答えがありましたが、いま申し上げましたような考え方も十分に配慮をされて対処をされたいと思いますが、いかがですか。
  62. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 和田さんがおっしゃるような考え方のもとに対処しなきゃならぬという一面があることは、私も了解のできるところでございます。しかし同時にまた、国の安全、独立といったような立場からするこの種の不当な外国諜報機関による日本国内における活動、これに対しては厳正に対処するという立場も加味してやらなきゃならぬと、かように考えております。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 別に念を押すまでもないことでありますが、この問題をてことして政治活動の自由あるいは言論活動の自由、そういうことが制限されるようなことが政府によって行動としてとられる、そんなことは当然ないと思うのでありますが、官房長官に念押しをさせていただきます。
  64. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) それはもちろん当然の大前提の話でございます。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 この問題の最後でありますが、スパイ防止法についてですが、私は、スパイ防止法というのは情報公開の流れに逆行するばかりか、憲法違反であるという考え方を持っています。戦前の歴史を振り返ってみましても、日中戦争のもとで軍機保護法が全面改正を一九三七年にされて、そして国家総動員法を受けて国防保安法が一九四一年に制定される、あらゆる情報に国家機密の網がかぶせられ、そして悪名高い大本営発表がまかり通る、そういう経過がありました。私たちはあのような歴史を繰り返してはならない。私はそういうような観点から政治活動言論活動、国民の知る権利を抑制するスパイ防止法などというものは制定すべきではない、そういうふうに考えているわけでありますが、官房長官のここの部分の見解を承っておきたいと思います。
  66. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) まあ東京スパイ天国だと、したがって、なぜそうなっておるのかということを考えると、やはり日本には機密保護法がないからだと、世界の多くの国で外交上の機密であるとか防衛上の機密であること、これは重大な国の法益だから、この法益を守るために最小限度の機密保護法的なものをつくるべしといったような議論があることは事実でございます。自由民主党の中にもそういうお立場で勉強なさっておるやに聞いておるわけでございます。これも確かに私は一つ考え方であろうと、かように考えるわけでございます。  しかしながら、機密保護法ということになりますと、どうしても収集探知の罪、これは構成要件の中に入れてそれを罰するという規定にならざるを得ないと思います。収集探知の罪を入れるということになると、これは運用いかんによっては民主主義の基本原則、開かれた社会という面を侵してくるおそれがある。したがって端的に言えば世の中が暗くなるおそれもあるわけでございます。ならばそういったことは適当ではあるまい、やはり社会の強靭性ということを考える場合には、そういったことはよろしくないんだという考え方も私はあると思います。  いずれにいたしましても両論あることは事実でございますから、これらについては、現段階官房長官として答えろと言われましてもこれなかなか、自由民主党の中でも勉強しているグループがあるわけですから答えがしにくいというのが現状でございますので、慎重にこういう問題には対処しなければなるまいと、かように考えているわけでございますが、私自身はどちらかといえばこういうものについては消極的な立場を従来から党内においてとっておるものであると、これだけはつけ加えて申し上げておきたいと、かように思います。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、官房長官、時間ですから。  防衛施設庁に伺いますが、三月二十二日に入札を行った横田基地通信局舎新設工事についてでありますが、落札した伊藤組土建、六合建設、石原建設、ここには施設庁の出身者がおりますか。
  68. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 防衛施設庁のOBで、いま御指摘の三社に現在就職しているのは伊藤組と六合建設、この二社でございます。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 施設庁、毎日新聞の四月七日付の夕刊ですが、十二組の企業グループが参加して指名競争入札が行われた、この入札において談合が行われた、伊藤組土建があらかじめ落札することがわかっていた、こういうふうに報道されているわけですね。この点については調査をされましたか。
  70. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 毎日新聞の夕刊の記事は承知しております。そういう報道もございましたので、私ども東京施設局におきまして調査いたしました結果、報道されておりますような事実はないというふうに報告を受けております。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 それでは、落札予定価格と落札価格の差は幾らだったですか。
  72. 森山武

    政府委員森山武君) 予定価格につきましては、従来から各省庁とも公表を差し控えるということで、入札が終わった後においても公表を差し控えておりますので、何とぞ御理解願いたいと思います。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 落札価格は。
  74. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 九億六千八百万でございます。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 現場説明が行われなかったという報道になっているわけですよ。現場説明が行われなくてよく積算ができるものだなというのが一般的に読んだ感じでありますが、どういうコメントになりますか。
  76. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 今回の場合、現場説明をしておりませんので、そういった関係報道もあったわけでございますが、こういった工事につきましては必ずしも現場説明を行うというわけではございませんで、要するにそういった必要があるかどうかということでございまして、その土地の現場に行って見ないとわからないような事情があるという場合には、あらかじめ現場説明を行うということで実施しておりますが、図面説明のみで足りるという場合もございますので、一概にすべての工事を現場説明をしておるというわけではございません。しかし、いずれの場合も、現場に行って見たいという希望がある場合には、当然これは案内をすべきものでございまして、今回も、図上説明をしました上で、現場に行きたい者には現場に案内するということは申したわけでございますが、実際には現場説明を行うことなく入札が行われたということでございます。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 施設庁から伊藤組土建に就職されたKさんが何度か施設庁を訪れてあいさつをされる、そういうことが繰り返された結果こうなっているということのようでありますが、この事実関係は。
  78. 塩田章

    政府委員(塩田章君) その点も、報道があったものですから調べてみたんですが、御指摘の人物につきましては、札幌施設局でやめた人なんですが、やめられた後、当然当庁にあいさつに来たことはあります。それからまた、年初めといったようなときに年始のあいさつというようなことはあったようでございますが、特にその人が御指摘のように特に今回の工事に絡んでしばしば当庁に参ったというようなことはないというふうに承知しております。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 施設庁からいただきましたこの資料によりますと、施設庁が行う建設工事の多くをいわゆる天下り企業が落としている結果になっているわけです。五十七年度の契約額上位二十件の工事リストをいただいたわけですが、このうち何件を施設庁出身者の企業が落としていますか。
  80. 森山武

    政府委員森山武君) 五十七年度契約額の上位二十件の資料を先生にお渡ししておりますが、その資料の中に落札業者名というのがございますが、そこに最近五年間において退職した者が就職しているものは二十件中八件でございます。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 五十六年度はどうでしょう。
  82. 森山武

    政府委員森山武君) 上位二十件中十件でございます。
  83. 和田静夫

    和田静夫君 この中にあるこの松村組あるいは仲本建設、東洋建設、これらのところは施設庁関係者はいますか。
  84. 森山武

    政府委員森山武君) ただいま先生が御指摘になりました会社に、最近五十三年から五十七年度五年間において、退職した者が就職しているという会社はございません。
  85. 和田静夫

    和田静夫君 私は、どうも施設庁、やっぱり依然として何か、横すべりというのか、天下りというのか、手みやげに建設工事を利用しているのではないかという疑念を持つわけで、去年の予算委員会でも大分問題になりましたが、やっぱりどうも続いているんじゃないだろうかということを思うんですけれども、これは長官、どうです。
  86. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 御指摘のように、去年、おととしですか、国会でもずいぶん議論があった問題でございますし、それ以前もそうですけれども、その後もそういった問題は私ども十分注意をしてやっておるつもりでございます。今回もそういう報道がございましたけれども、そういう事実はないというふうに確信いたしておりまして、今後ともそういうことは絶対にないように十分注意してやってまいりたいと考えております。
  87. 和田静夫

    和田静夫君 この伊藤組土建のKさんの場合は、割愛文書は交わされたわけですか。
  88. 森山武

    政府委員森山武君) 割愛文書がこの前の国会で問題になりまして、そういう形では、私どもは割愛文書という形ではいただかないことにしております。ただ、本人の将来の身分保証その他のものもございますので、比較的下位の者でございますが、二等級以下とか、そういう者については会社から内定通知的なものを受けまして、そこで条件等をはっきりした文書を提出していただくというふうなことはやっております。それから、本件にK氏につきましてもいただいているものと思っております。
  89. 和田静夫

    和田静夫君 人事院ですがね、一般公務員の場合も天下り規制がしり抜けになっているという批判があるわけでありますけれども、施設庁幹部の場合、隊法六十二条あるいは施行規則六十二条によって、さらに規制が緩い、ある意味ではないに等しい、すでにこういう点は何度も問題になっているわけですが、こういう点についてはどういう見解をお持ちでしょう。
  90. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 防衛施設庁関係は、原則的には人事院の所管ではございません。したがいまして、この点については防衛庁自体が中心で法の運用をやっていらっしゃるわけですから、私の口からとやかくのことは申し上げることは差し控えます。
  91. 和田静夫

    和田静夫君 長管、やっぱりどうも隊員用の規定を施設庁の高官に適用するというのは私はおかしいと思うんですよ。大変おかしいと考えるんですが、どういうふうにお考えになりますか。
  92. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 施設庁に限らないと思いますけれども、公務員を何年か勤めてやめまして、民間で新しい職場を求めていく、このこと自体は当然許されることだと思いますが、その場合に、御指摘のような疑惑の問題というようなこともありまして、法的な規制がある。これもまた施設庁に限らず、一般公務員の場合と同様であると思います。われわれの場合は、いまお話ございましたように、自衛隊法六十二条によって規律されておるわけでございまして、この自衛隊法六十二条の精神もそういうところにありますし、私どもも、この規定の精神に従って処理をいたしておりますので、今後ともその点につきましては御理解を賜りたいと思います。
  93. 和田静夫

    和田静夫君 人事院総裁、結構です。どうもありがとうございました。  この問題、引き続いて内閣のときの決算ででもやりたいと思っていますが、報道関係のすべてを否定をされたということにきょうはなっています。しかし、再調査をするように要望をしておきたいと思うんです。調査の結果、不正があれば契約は当然再検討をされるべきであろう、そういうふうに意見だけ申し上げておきます。  私は、予算委員会で、INF交渉、それから三海峡封鎖、F16の三沢配備問題、一連の外交防衛問題を取り上げたわけでありますが、どうも依然として疑問が解けませんでした。したがって、若干の論議を継続をいたしますが、まず日本周辺の極東地域、これは米ソの軍事的接点にあるわけでありますが、日本周辺において米ソの武力紛争が発生する可能性、これはないとは言えないと考えますけれども、長官、いかがお考えですか。
  94. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 近年、特に軍事バランスの観点から申しまして、ある意味で、過去の経緯から緊張があるいは高まるかもしれないと思われるような地域が幾つかあるかと存じますけれども、私は、さらばといってそのことが極東における米ソの軍事対決に発展するであろうというふうには直截には考えておりません。
  95. 和田静夫

    和田静夫君 私は、予算委員会でべッシー米統合参謀本部議長の軍事情勢報告を引用いたしまして、アメリカ軍部は米世界戦略上の観点から日本の任務を規定しているという点に注意を喚起をいたしました。べッシーは、四海峡の管理封鎖能力を日韓両国が確保することが緊急かつ可能な課題になっていると述べているわけでありますが、これは、ソ連艦隊のインド洋進出を阻むものとして想定されています。  このべッシー報告に加えて、一月三十一日のワインバーガー国防報告、あるいは三月八日の下院の軍事委員会公聴会でのロング証言、あるいは二月三日のイクレ国防次官発言、あるいは国防指針など、一連のアメリカ公文書、政府高官の発言を見ていきますと、アメリカ日本の三あるいは四海峡封鎖作戦を世界戦略、つまり中東戦時の第二戦線として考えているのではないだろうかという疑いがずいぶん私は浮かぶと思うんです。したがって、防衛庁並びに外務省アメリカは少なくともそういう作戦を展開する可能性、それは否定できないんじゃないだろうかと思うんですが、長官はどうお考えですか。
  96. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 西側の基本的な平和戦略と申しますか、平和に対する考え方は、少なくともこれを軍事の面からとらえて申せば、抑止の戦略にあるというふうに考えます。したがいまして、あらゆる紛争を未然に防止をしようというためにあらゆる努力が傾注されておると思います。そして、もしその抑止が破れるというような形から紛争が生じた場合には、これはその紛争を拡大させないということで、軍事バランスを含めまして抑止の信頼性の確保というものを常に考えておると思います。その意味から申しまして、アメリカに限って物を申せば、アメリカは確かにグローバルパワーであることは間違いございませんで、グローバルにあらゆる物事について関心を持っておると思いまするが、そのグローバルパワーであるアメリカが、極東においてこの地域の平和の維持に関心を持ち続けておるということ、これは当然のことだと思います。  それから、日本アメリカ関係で言えば、日米安保条約の締結国でございます。その一方の国がその一方の国でありまする、つまりアメリカ日本に対して日本の防衛努力、これに対して関心を持つ、これもまた当然のことだと思います。  さらに、日本周辺の問題について申せば、わが国がたまたま地理的に置かれた条件などから、日本周辺の海峡を含みます周辺海域について、やはりアメリカが関心を持っておるであろうということも、これも容易に想像もつきますし、理解のできるところである、こういうふうに考えております。
  97. 和田静夫

    和田静夫君 いま言われましたように、やっぱり米軍はグローバルに展開しているわけですね。とすると、他の地域での紛争が発生した場合に、大規模な武力紛争がある地域で発生した、そういう場合に在日米軍が緊急体制に入る、これは一般論ですが、否定はできませんね。
  98. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 具体的にどういうふうに入るかというようなお尋ねになりますと、むしろ私からお答えするというよりも、これは違った角度からお答えすべきだと思いますが、私が現在日米関係として直接責任を持っております分野は、むしろ日本攻撃を受けたときの、日本有事のときの共同対処の次元でございますので、もしただいまの御質問が、具体的にどういうようなときにはどうなるかというような御質問でございましたらば、改めてその御質問内容につきましてお答えをさしていただきたい、こう考えております。
  99. 和田静夫

    和田静夫君 在日米軍がたとえば緊急体制に入ったとした場合に、相手国もまた緊急体制に入る、これは軍事行動としては否定ができないということになりましょう。
  100. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) これは一般論として申し上げれば、アメリカ在日米軍がいわゆる緊急体制といいますか、そうした体制区分のアップというようなことを考える場合には、当然それなりきの背景なり原因があって行われると思います。したがって、どちらが先かということは別としまして、そうした相対関係が当然あるものと、ただしこれは一般論として申し上げているわけでございます。
  101. 和田静夫

    和田静夫君 つまり、極東有事あるいは日本への侵略——それはおそれがある場合を含めてですが、——がなくても、日本は米軍が緊急態勢に入れば自動的に作戦行動地域に組み込まれるということになりますか、これは。
  102. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いまの作戦行動地域に組み込まれるという御質問が、どういう御趣旨のものかちょっと理解いたしかねたわけでございますけれども、法的に申し上げれば、別にいま御質問のような事態が起こってその作戦行動地域に組み込まれるというような事態になるというふうには理解いたしておりません。
  103. 和田静夫

    和田静夫君 いま仮に在日米軍が戦闘状態に入った、相手国がそれに対して在日米軍基地に対して攻撃を行った、これはわが国に対する侵略とみなしますか。
  104. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 前提が必ずしも明確でないわけでございますが、もちろんいかなる国でございましょうとも、日本にあります米軍に対してどこかの国が攻撃を行うということがございますれば、それは当然のことながらわが国に対する武力攻撃委員御承知のように、安保条約との関連で申し上げれば安保条約五条の事態、こういうことになるわけでございます。
  105. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣アメリカはグローバルな戦略に基づいて日本周辺において軍事行動というか、軍事作戦行動を展開すると。日本はおろか極東が有事でなくても、在日米軍が存在するということは、日本をグローバルな紛争に巻き込んでいく、そういうふうに私は類推をいたしますが、少なくともそういう可能性は全面的に否定はできないでしょうね。
  106. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにアメリカ世界戦略を持っておると思います。そういう中でアメリカ行動するということはこれは当然のことだろうと思うわけでありますが、そういう中での日本との関係は、御承知のように日米安保条約という枠内においての問題でありますし、あるいはまた日本自体の問題としては憲法とかあるいは防衛の基本原則というのがあるわけでございますから、そうした中での日本の対処ということになってくるわけでありますし、いまおっしゃるようなアメリカの戦略の中に日本が巻き込まれるということは一般的に私はあり得ない、こういうふうに思います。
  107. 和田静夫

    和田静夫君 一九六〇年以来これまで、事前協議というのは何回かありましたか。
  108. 北村汎

    政府委員北村汎君) 事前協議はございません。
  109. 和田静夫

    和田静夫君 中東有事など日本以外の戦火拡大、言いかえれば第二戦線の戦端を開くための在日米軍基地からの出撃とでも言いますか、これは協議の際にノーと言われるわけでしょうね。
  110. 北村汎

    政府委員北村汎君) ただいま委員の御質問は、在日米軍が日本にある施設、区域を使用して戦闘作戦行動を行う、そういう場合の事前協議を受けた場合、政府はどう答えるか、こういう御質問であると理解いたしますが、その場合の政府回答はイエスもありノーもあるということでございます。
  111. 和田静夫

    和田静夫君 安保条約第四条にある「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威」、これに中東有事というのは含まれますか。
  112. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いまの委員の御質問にそのままお答えすることは必ずしも、何といいますか非常に断定的にお答え申し上げることはできませんが、中東有事そのものが第四条で言う「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたとき」というふうに認識することは、これは必ずしも適当ではないというふうに存じます。その中東有事、これはまあ非常に仮定の議論として御説明さしていただきたいと思いますが、中東有事が発生した結果として、その後その結果として極東における国際情勢がどうなるかというようなことは、これは当然四条における協議の主題と申しますか対象になり得ると思いますが、もし御質問のポイントが、極東有事がすなわち日本の安全または極東における、ここの四条に書いております「極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたとき」というふうに直ちに直結するかという御質問であれば、それは必ずしもそういうことではないだろうというふうに考えます。
  113. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、これは重ねて伺うんですがね、地球上のどの地点であれその武力紛争が「極東における国際の平和及び安全に対する脅威」である、そういうふうにアメリカがみなせば協議の対象となる、第四条はそう解釈をすべきでしょう。
  114. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは四条の協議は、協議すること自体は非常に広範な事項について協議をし得るわけでございますので、アメリカが、一つの仮定の議論といたしまして、そういう中東における情勢というものが極東における情勢と無関係ではないという認識に立って、四条に基づいて協議をしたいと言ってくる可能性というものは、これは全く排除されるということではなかろうと思いますが、他方、それに対しまして日本がどういうふうに、わが国がどういうふうにそういう協議に対応するかということは、これはまた全く別個の問題であろうというふうに考えます。
  115. 和田静夫

    和田静夫君 その協議において日本はノーと言う、いわゆる協議の結果とるべき措置について合意が得られない、これは当然そういうことはあり得るんでしょうね、これはまず条約上。
  116. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御質問が、日本の施設、区域を使いましていわゆる岸・ハーター交換公文に言うところの戦闘作戦行動のための施設、区域の使用ということであれば、これは四条を離れまして、いわゆる岸・ハーター交換公文に基づく事前協議の対象ということになりますので、その場合には、先ほど北米局長の方から御答弁申し上げましたように、日本としてはイエスもありノーもあるということになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、その大前提は安保条約の六条にございますように「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」ということでございますので、その枠外での日本の施設、区域の使用というのはこれは安保条約上認められない、こういうことでございます。
  117. 和田静夫

    和田静夫君 その前段の場合、外務大臣ね、政治論の立場でも同様でしょうか。
  118. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ政治論といいますか、やはりアメリカの認識とまた日本の認識というのが異なる場合も当然あると思います。たとえば中東有事においてアメリカは、いまお話しのようにこれが極東の平和と安定に直接結びついておる、こういう考え方アメリカは事前協議を求めるということもあるかもしれないし、日本日本としてのやはり情勢判断というものがあるわけでありますし、また安保条約のいわゆる枠組みというのがあるわけでございますから、それでもってやはり対応していかなければならない課題じゃないかと思います。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 安保条約の前文というのは、「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有する」ということを前提にしているわけですね。協議においてノーとするのではこの前文の「共通の関心を有する」というところに抵触してくる、論理的にはどうもそうなるんじゃないだろうか、したがってアメリカの意向に沿って合意する、そういうことになっていくんじゃないかと思うんですが、それはそういうことありませんか。
  120. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 前文に書いてございますことは、そこの字句どおりでございまして、日米両国というものがまさに極東における国際の平和及び安全の維持というものについて共通の関心を有しておるということでございまして、その極東の範囲というものがどこかということについては、安保国会以来累次御答弁申し上げておりますし、政府の統一見解というものがございますので、一定のそういう極東の域外で起こりました事態というものが、極東の平和及び安全に対してどういう影響を及ぼすかということにつきましては、これは日米両国それぞれ独自の認識なり考え方というものを持ち得ることを安保条約が排除しているわけでは全くございませんので、アメリカの認識に日本が必ずしも同調しなければならないということが条約から出てくるということはございません。  それからちょっとこの機会に、先ほど私御答弁申し上げましたときに、中東の有事が極東の平和、安全に直結するかどうかということは必ずしもそういうことではないということを申し上げるつもりで御答弁いたしましたが、そのときに中東有事というのを極東有事というふうに申し上げたかもわかりませんので、その点はちょっと訂正さしていただきたいと思います。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁、朝鮮有事の際に、在日米軍が直接発進する、日本の基地から出撃する、これは否定できないわけでしょう。
  122. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いまの御質問朝鮮半島に有事が起こりましたときに、それとの関連でそれに対応するための米軍が日本の施設、区域を使用するということはこれは十分あり得るかと思いますが、直接戦闘作戦行動の発進基地として日本の施設、区域を使おうということでございますれば、これは当然事前協議の対象という制約がかかっておるわけでございます。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 そうですね、そのときにノーと言うと、いやイエスもあるんだと。およそノーと言うのではなくてゴーサインを出すということになるんじゃないですか。
  124. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) この点は一九六九年の沖縄返還との関連でできましたいわゆる佐藤・ニクソン共同声明との関連でも、従来からたびたび御質問がありましたところでございますが、無条件で日本がイエスと言うということではなくて、イエスもあり、ノーもあり、わが国の安全と非常に密接、直接に関連した場合には、それはイエスと言う場合があるであろうということが、歴代政府が御答弁申し上げておるところでございます。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁、軍事論からしまして、相手国が出撃基地をたたく、これは想定できますね。
  126. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 一般論としてはそういうことも考えられます。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、朝鮮有事あるいは極東有事が安保条約を媒介として日本有事に転化する、そういう可能性が否定できなくなってくるんじゃないでしょうかね。
  128. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) したがって、先ほど外務省からも御答弁がありましたとおり、そういった事前協議に対するわが方の対応ぶりについては、わが国の安全、平和というものを十分考えながら回答する、事前協議に応ずる、こういうことに相なろうかと思います。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 韓国が、朝鮮有事の際に日本自衛隊が出動するかどうかということで問題にしている。韓国側の打診があったんですか。あったとすれば、どういうように答えられたわけですか。
  130. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) いま先生御指摘のような場合において、自衛隊が出動することはあり得ませんし、また、そのような韓国側からの打診というものも一切聞いたことございません。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 安保条約によって、中東有事あるいは朝鮮有事あるいはヨーロッパの有事、どれを考えてみましても、日本有事の引き合いといいますか、引き金といいますか、そういうものにどうもなるような気がするわけです。政府の言う西側同盟という言葉ですがね、日米運命共同体、そういう意味を含んでいる、ここのところは外務大臣の御見解を承っておきたいんですが。
  132. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中東有事あるいはヨーロッパの有事が直接極東の有事に関連をする、連係をする、あるいはまた日本有事につながっていくということがあるかどうかというふうなことは、全くいまの情勢から仮定の議論であろうと思うわけですが、日本日本立場というのがありますし、これは憲法あるいは安保条約あるいはまた外交、防衛の基本原則というものがあるわけでございますから、私はそれによって対処すれば十分である、こういうふうに思います。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 非核三原則でありますが、例のライシャワー発言などで明らかになったトランジットですがね、これは核持ち込みにならないという解釈。日本政府としてはトランジットであっても、それは核持ち込みである、くどいようですが、そういうふうに解釈されるわけでしょうね。
  134. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはしばしばこれまでの政府の答弁のように、トランジットは核の持ち込みである、こういう解釈であります。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、核兵器積載船が領海内に入ったら、やっぱりこれは持ち込みでしょうね。
  136. 北村汎

    政府委員北村汎君) 米国の艦船で核を積載しているものが日本の領海に入るということは、これは核の持ち込みでございます。
  137. 和田静夫

    和田静夫君 ところが、これまで原潜が寄港しても、エンプラが寄港しても、事前協議の対象にはならなかった。これらの船舶が核搭載しているのかどうか、政府の見解は常に、アメリカが事前協議を言ってこないから、してない、アメリカを信ずる、こういう一言に、予算委員会でも何回か私もやりながら、尽きているんですが、しかし、そのことを確認した日本人というのはだれ一人いないわけなんですね。これは私は予算委員会でも言いました。したがって、核持ち込みの疑惑が生ずるのは当然なのです。国民の間にそういうような疑惑がある、そういうような国民の間に疑惑があるということは、大臣はお認めになりますか。
  138. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私とマンスフィールドさんとの話の中でも、国民の中にそういう疑惑があるということを申したわけでありますし、またアメリカも、日本国民の中にそういう疑惑を持っておられることは、自分たちも承知しておりますと、したがって、われわれは、安保条約、その関連規定をちゃんと守って事前協議条項は遵守いたします、こういうことを言っているわけであります。
  139. 和田静夫

    和田静夫君 日本国民の中にそういう疑惑が生まれるのでありますから、ソ連が核持ち込みの疑惑を持つ、こういうふうなこともある意味では当然だということになってきますが、先日の外務次官会議でカピッツァソ連次官が、米艦船は核ミサイルを積んで太平洋、インド洋を遊よくしており、それらのミサイルはソ連に到達し得ると発言をしたと報ぜされていますが、これは日本政府もそういう認識でしょうか。
  140. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 詳細な、一宇一句正確には記憶しておりませんが、私が報告を受けたところでは、ソ連側としては、これはグロムイコ発言もありましたように、日本の周辺においてはアメリカの核が充満をしている、こういうことを言っておるわけであります。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 アメリカの艦船が核ミサイルを積んで太平洋を遊よくしている、そしてそのミサイルはソ連に届く、これを否定したら核抑止力は成り立たないわけでありますから否定はされないということになるんでしょうが、外務大臣、INF交渉に関して、NATOの中に表向きはグローバルな形での相互削減を支持する。しかし現実的にはソ連による中距離核ミサイルSS20の極東移転もやむを得ないと、そういう考え方がちらついてきていると、最近の報道はずっとそういう考え方報道があるんですがね。こういうことは十分予想されましたから私、予算委員会でも何遍かこの問題を取り上げたわけでありますけれども、ここのところはどういうふうに対処されますか。
  142. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、ヨーロッパ諸国の基本的な考え方も、やはりINF交渉はグローバルな立場で行うべきである、こういうことであると考えておりますし、確かにおっしゃるように、一部にはヨーロッパはヨーロッパのことを考えらいいんだと、ヨーロッパにおいてはSS20に対抗するアメリカのパーシングIIとか、そうした核基地をヨーロッパ自体に設ける、日本にはそういうものはないんだ、それだけに日本が言っていることは多少問題があるんじゃないかと、こういう言い方をする向きもないではないんですけれども、しかしヨーロッパ首脳のコンセンサスはグローバルな立場でということになっておりますし、また当の交渉相手のアメリカがINF交渉に臨む基本的な立場として、あくまでもグローバルな立場でこれを推進していくということでありますから、われわれはこのアメリカとの関係を十分密接にして、アメリカの主張を何としてもINF交渉の中へ実現をしたいと考えております。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 一月にヨーロッパを歴訪して帰国された際にも、あなたはNATOとの提携が必要だと発表されたわけでありますし、いまも同趣旨の御発言がございましたが、NATOとの協調、提携というのは具体的にはどのようなことをお考えになっていましょうか。
  144. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) NATOはヨーロッパを中心とした同盟関係でありますし、軍事同盟という形であるわけですから、日本がNATOと直接な関係というのを持つわけにはいかないわけでありますが、しかし、いわゆる世界の安全保障といった立場からは、やはり日本それなり情報を得る必要があるし、また情報の交換も必要である、安全保障という面においてですね。そういう中で、やはり情報交換といったようなことは、これ西側としての立場から、同じ西側の陣営の立場からやる必要があるというふうに考えておるわけでありますが、この点についてはNATOの諸国も、それぞれの国が日本との間には、NATOということじゃなくて、それぞれの国で日本との間で安全保障、具体的にはINF交渉等についても具体的な話し合いといいますか、情報の交換をしましょうということで、その交換は進んでおるというふうに判断しております。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 航空自衛隊が在韓米軍との共同訓練を希望しているようでありますが、これは五十年十一月の衆議院決算委員会の答弁があるわけでありますけれども、応じないということになるんでしょうね。
  146. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 現在のところ、在韓米軍のF16との共同訓練の具体的な計画はございません。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 将来はどうなんですか。
  148. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 一般論から申し上げまして、さまざまな機種と訓練をする、あるいは現在米空軍のF15との共同訓練をやっておるわけでございますが、そういった訓練が一巡をいたしまして一応終わったと、あるいは自衛隊自身がF15を十分持ってF15との訓練は自衛隊の中でできるということになりました段階になりますと、他の機種とやってさらに練度を上げていくということもあろうかと思いますが、現在のところはないということでございます。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 在韓米軍との共同訓練をやるということになった場合の、その論理的な根拠というのはどういうことになるんですか。
  150. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私どもが米軍あるいは、米軍に限りませんが、外国の軍隊と共同訓練をやるといいますのは、いずれも自衛隊の所掌事務、自衛隊の任務に必要な教育訓練のためにやるということでございまして、それがアメリカの軍隊であろうが、あるいは他の国であろうが、あるいはまたそれが在韓米軍だろうが、法的には問題はないというふうに考えております。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 核兵器の持ち込みの問題に戻りますが、F16の三沢配備について予算委員会でも私取り上げたんですけれども、大臣、F16の三沢配備によって三沢の基地の性格が大きく変わると思うんですが、いかがでしょうか。
  152. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 御指摘の、一九八五年以降F16が三沢に配備されることが予定されているわけでございますが、現在、御承知のとおり、この三沢基地には米海軍のP3Cがいるのみであって、あとは、いわば基地管理の部隊がいるというのが実情でございます。そういったところへ空対地のミッションを持った、空対地あるいは空対空の両方の能力を持った航空機でございますが、こういった戦闘部隊が二個飛行隊配備されるということはそれなり意味、すなわち米ソの軍事バランスというものの改善なり、あるいは抑止効果の向上というものに寄与し得るものというふうに理解しています。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 これも予算委員会でちょっと触れまして答弁がなかったんですが、三沢から発進したF16がソビエツカヤガバニに行ってそして帰還してくる、そういうことは可能なわけですね。
  154. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) このF16というのは、わが自衛隊が現在保有している航空機でございませんので、この航空機の性能の詳細については必ずしもつまびらかにいたしておりませんが、一般的に、交換資料によりますと、大体九百数十キロの航続距離を持っておる。しかし、この航続距離も一体どういう武装で、あるいはどういう高度で飛ぶのかということについての詳細が必ずしもはっきりしませんが、いずれにせよ、航空機の性能面からのみ申し上げれば、沿海州に届くだけの能力は十分持っているというふうに思います。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 つまり、三沢の性格というのは、いわゆる米ソ軍事対峙の際の最前線基地として位置づけられる、そういうような性格を持ってきてしまうということになるような気がいたしますね。その最前線基地に置かれる戦略要撃機が核兵器を装備していないとすると、これはアメリカの対ソ核兵器体系に空白が生ずるということになる。これ論理の当然じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  156. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) このF16が核装備可能であるということについては再三御答弁申し上げております。しかしながら、実際に三沢に配備され、三沢に核装備を持ち込むとかいうことになれば、これは先ほど来御議論がありますように事前協議の対象になりますし、事前協議があればノーというわが国の非核三原則の方針がございますので、そういうことは万々考えられないんではないかというふうに思っております。また、核を持っていないことによってアメリカのこの抑止力というか、抑止効果というものが効果が出るのかという御疑念があったやに思いますが、アメリカの核装備というものは必ずしもわが国に持ち込まなくても、それなりの抑止効果というものは十分持っているというふうに認識しております。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 現在F16が韓国の群山にいる、群山に配備されているところのあのF16というのは、これは予算委員会でも質問いたしましたが、核装備しているんでしょう、これは。していないと断言できますか。
  158. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 韓国の群山にF16が二個飛行隊、四十数機いることは事実でございますが、これが核装備をしているか否かということについては、アメリカはこれまた従来再三御答弁申し上げているとおり、核の保有については一切明らかにしないというのが米軍の方針でございまして、私どもこれを、核装備を、現に群山におけるF16が核を持っているかどうかということについての明確に申し上げることは、材料の持ち合わせがございません。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 私は、大変疑問に思って何遍も予算委員会からこのことをやっているのは、群山からいわゆるウラジオストク、ところがウラジオストクの基地はソビエツカヤガバニに移った、そこで群山から向こうへ行ってソビエツカヤガバニを攻撃をしても、群山にまで帰ってくる航続距離を持っていない、よって三沢にという危険性が非常にあるということを私は思うがゆえに、非核三原則のうちの持ち込まずというやつはそこで崩れてしまう、そのことが危惧されますから、何回かそういう論議をずっとやっておるわけでありますが、言ってみれば、群山のF16と三沢のF16、これの統合運用する可能性というのは十分にございますね、これは。
  160. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) この統合運用という言葉の意味でございますが、群山におけるF16も将来三沢に配備されるF16も、ともに米空軍の第五空軍の隷下であるという意味合いにおきまして、同一指揮系統のもとに置かれる航空団であることは間違いございません。ただ、それがどういうふうに運用されるかということは必ずしもはっきりいたしておりません。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 群山も三沢も、いま言われたとおり、第五空軍下にある、所属になっている。そうすると、軍事的な規模あるいは軍団的な規模でこうずっと考えてみて、作戦をとっていけば師団が違っても同じ作戦行動をとることはあるということに、同一航空群の中にあるわけですから、私は当然あるんだろうと思っているんです。それは一般論としてはあたりまえのことでしょう、これ。
  162. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 確かに同一指揮系統のもとにあることは事実でございますけれども、あくまでも群山にいる米空軍は韓国防衛の一環として多分いるんだろうと思います。また、わが国の三沢に配備されるF16は、当然のことながら日米安全保障条約によるところのわが国の平和と安全、あるいは極東の平和と安全ということでございますので、その間全く無関係とは思いませんが、おのずから置かれるミッション、任務というものはおのずからそこに違いがあるというふうに私どもは認識しておりますが、実際にどういうふうに有事の際運用されるかということについては、これは米軍の考え方であり、そのときの軍事情勢、すなわち紛争の実態にもよることと思いますので、一概には言えないんではないかというふうに思います。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 核装備をしているF16が三沢におりることは起こり得る、これは前にも答弁がありましたが、いいわけですね、そこのところは。
  164. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 私、核装備を持ったF16が三沢におりるというふうなことを申し上げた記憶はございませんが、韓国におけるF16が何らかの事由でエマージェンシーというか緊急着陸するようなことがあるのかと、こういう御質問でございますので、私は、一般論としては、韓国に駐留する米空軍のF16がわが国に訓練のためにしばしば飛来するとか、あるいはわが国の三沢に着陸することを前提として平時の訓練を行うとかいうふうなことは一般論としてはないんではないかと。しかし、訓練のために洋上に出たF16が何かの都合でわが国の基地に緊急着陸することを全く否定することはないというふうに申し上げたわけで、このF16が核装備をしているということを前提に申し上げたわけではございません。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 エマージェンシーでおりることはあり得るという答弁であったわけであります。その前段のところは私とのちょっと違いがあるわけでありまして。私は、韓国にいるF16は当然核装備していると思っていますから、それこそ日本海でそれを捨ててくるか何かしなければとてもだめだろうと思うんで、エマージェンシーとしてとにかく三沢におりることがあり得るという場合のその群山のF16、核装備をしているとすればそれは核持ち込みになるということにはなるわけですか。
  166. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) それは核を持った飛行機が飛行中何らかの理由でわが国に緊急着陸をするということになればそういうことになりますが、F16が常時核爆弾を積んで訓練をするというようなことは常識的にまず考えられないんではないかというふうに思います。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 そこのところは大体はっきりしてきました。  外務大臣、これまでの議論で私は事前協議制が生きていないことを実は痛感するものですから、くどく予算委員会からきょうに引き続いて論議をしてきているわけであります。いわゆる米軍の装備の変更が重要であるかどうかはアメリカの決めることです。そうするならば、日本がどう判断しようが、アメリカがトランジットは持ち込みに当たらないとすれば事前協議にはのりません、こうなりますね。
  168. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) その点がまさに従来からお答え申し上げているところでございまして、委員のおっしゃいますトランジットというのはその寄港、通過のことをお指しになっておられるんだろうと思いますが、寄港、通過については事前協議の対象になるということを従前から申し上げているところでございまして、いま御指摘のようなケースというのは起こり得ないことであろうというふうに私は考えております。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、これは条約局長との論議ではなくて、事前協議制にやっぱり著しい欠陥が政治家としてあるというふうに判断をしなければいかぬと思うんですよ。よって事前協議制を手直しする必要というようなものを外務大臣考えになりませんかね。
  170. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、やはり安保条約の非常に重要なポイントは事前協議制だと思います。これまで事前協議を求められておる例はないということでありますが、今後いまお話しのような、それは装備の重大な変更等がある場合においては事前協議の対象になるわけでありますし、これは日米両国間で合意を得て今日まで日米安保条約というのが非常に効果的に運用されてきておるわけですから、このやはり事前協議制は今後とも日米安保条約をさらに効果的に運用するための非常に重要なポイントであると思うし、これを私は変える必要はないんじゃないかと、またこれはどうしても安保条約改正のときのいきさつから見ても、これがやはりわれわれとしては守って、これを維持していかなければならない問題であると、こういうふうに思います。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 領海法で宗谷、津軽、対馬東水道・西水道、それから大隅海峡、これを三海里としている理由は何でしょうか。私はもっと、ちょっと考えてみまして、時間がありませんので二問一緒にしますが、十二海里にすれば、これは米ソ核艦船ですね、核艦船の通航をチェックしやすくなるんじゃありませんか。そこを避けているような感じがしますね。
  172. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは従来から御説明申し上げていますとおりに、新しい海洋法条約に基づきましていわゆる領海を十二マイルまで延長をした場合に、従来公海部分でありますところがなくなってしまう海峡につきましては、委員御承知のように新しい自由通航制度というものが新しい海洋法条約のもとで設けられることになっておりますが、果たしてそういう海洋法条約というものが国際社会全体に受け入れられて、そういう自由通航制度というものが多くの海峡沿岸国によって新しい法的な制度として確立していくということになるかどうか、これを見守る必要があると。そういう観点から、わが国といたしましても、そういう新しい国際制度というものが確立するまでの当面の措置といたしまして、わが国の海峡については領海を三海里にとどめておくと、こういうことで特定海峡制度というものができておるわけでございます。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 予算委員会の続きで二問だけでこれ終わりますが、二つ一緒にお答え願いたいんですが、これ外務省防衛庁どちらでもいいんですが、一つは、戦時国際法に言うところの戦時封鎖、憲法によって制限された自衛権によってなし得る行為ですか、なし得ない行為ですか。ここのところがどうもはっきり答弁が予算委員会でなされていませんのでひとつ。  二つ目は、米軍が日本有事ではないときに、日本の三海峡をある事情によって封鎖する、領海部分を含む封鎖の場合に協議の対象になりますか。それで、その場合は当然ノーだと思うんですが、ノーですね。    〔委員長退席、理事降矢敬雄君着席〕
  174. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) まず第二の御質問の点からお答え申し上げますが、日本有事でない、すなわちわが国に対して武力攻撃が行われていないときにアメリカが、いま御質問の趣旨は、アメリカがいわゆる海峡封鎖をやるということについての御質問でございますが、これは委員御承知のとおりに、三月八日衆議院の予算委員会の方に提出いたしました政府の見解によるということでございまして、これ一〇〇%ノーではないということを申し上げておる次第でございます。  それから第一点は、これは私の方から御答弁申し上げることが適当かどうかわかりませんが、その委員の御質問の戦時封鎖というものが憲法上可能かという御質問だというふうに理解いたしましたが、戦時封鎖というのは、先般予算委員会の方で私から御答弁申し上げましたように、これはいわゆる通峡阻止的な軍事行動とは全く別の概念でございまして、相手国の港なり沿岸なりの外との交通を遮断するために武力でもって封鎖をするということでございますので、これは、まず前提といたしまして通峡阻止とは全く別の概念であるというふうに御理解いただきたいと思います。  そこで、そういうものが憲法上可能であるかどうかという御質問でございますので、その点については憲法解釈の問題でございますから、私から有権的に御答弁申し上げることはいかがかと思いますが、    〔理事降矢敬雄君退席、委員長着席〕御承知のとおりに、わが国の個別自衛権につきましては、自衛権の三要件ということで、これに厳格に基づいて行使しなければならないということでございますので、一般的に申し上げれば、いま申し上げたようないわゆる伝統的な戦時国際法に基づいての戦時封鎖というようなものが憲法上許容されておる、いわゆるわが国の個別自衛権の範囲内で行い得るものであるというふうには容易に考えにくいだろうと、こういうふうに考えます。
  175. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 まず外務大臣にお尋ねをいたしますが、先ほどからの論議の中で、日本の防衛がアメリカの対ソ戦略の中に組み込まれてしまって、本来の自衛という形じゃなくてアメリカの国防上日本の防衛力を増強していくという立場に立っていくときに、懸案の北方四島の領土問題というのが非常に困難になってくるというふうに私は考えています。そこで、先日行われました日ソ協議の中で領土問題は非常に厳しい状況に置かれたというふうに新聞に報道されていますが、そのときの北方領土問題についての論議、返還についての今後の見通し、それに対する日本の対応、こうしたものについてこの場で教えていただきたい。
  176. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもう日本の基本的な主張でありますし、また当然な要求でございます。これまでもしばしばソ連に対しては強く申し入れておるわけでありますが、今回の事務レベル協議におきましても領土問題、北方四島はわが国の固有の領土であって、当然北方四島はこれを日本に対して返還をすべきであると。この領土問題を解決することによって日ソ平和条約が締結をされ、真の日ソの友好関係がここで樹立できるんだということを強く主張いたしたわけでありますが、残念ながらソ連はこれまでと同じような姿勢でありまして、すでに北方領土は解決済みだと、領土問題はありませんと、こういう答えでございます。これは、日ソの共同宣言が行われて以来、さらにまた田中・ブレジネフ会談においても、ソ連みずからが領土問題が未解決の懸案として残っておることを主張しておるわけですから、言っておるわけですから、これはおかしいじゃないかということを重ねて主張したわけでありますが、依然としてこの問題はもう解決済みだというかたくなな態度でありますが、この領土問題については、わが方としても一歩もそれは譲るわけにはいきませんので、今後とも粘り強く主張してまいりたいと、こういうふうに考えております。そういう情勢の中で、日本アメリカが非常に軍事的に結びついて、そして日本がいまおっしゃるようなアメリカのいわゆる対ソ戦略の枠組みの中で行動していると、こういうことをソ連が言っておるわけでありますけれども、これに対しまして日本も、そうした、日米は同盟国だし、日米間には安保条約が存在するけれども、しかし同時に日米安保条約というのはあくまでも日本の平和と安全を守るための条約であって、同時にまた日本の存在するところの自衛隊というのも専守防衛の立場で何らソ連に対しては脅威を与えるものではないということは、ソ連も十分これは理解をすべきであるということを主張しておるわけでございます。この点に対してはソ連とやはり日本との間に残念ながら認識の相違があることも事実でございます。
  177. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 日本が専守防衛であるという立場を貫くにしても、海峡封鎖あるいは通峡阻止、こうしたことが具体的にシーレーン防衛についての日米共同研究の中で論議される、あるいはまた中曽根総理が公にそうした発言をしていくと、こういう中ではいよいよ領土問題の解決ということは私は遠のいていくんじゃないかと思うんですが、その点ではいかがですか。
  178. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 領土問題は、これはそのときそのときの情勢によって左右されるという問題じゃなくて、これはやっぱり譲ることのできない日本の主張でありますから、粘り強く今後とも日ソの間で返還の要求をしていきたいと思うわけでありますし、ソ連は残念ながら依然として領土問題は解決しているという考え方を変えていないわけでございますが、私たちもソ連が一日も早く日ソの真の友好を確立するために、また平和条約を結ぶために、これまですでにソ連がとってきた態度、田中・ブレジネフ会談等では懸案の問題だということを言っているわけですから、ソ連自体が態度を変更して領土問題を含めた平和条約のテーブルに着くことを私たちは心から期待をしております。またこれはわれわれは譲ることのできない一線であるということであります。
  179. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 若干私は異なる意見を持ちますが、その点をここで論議する時間がありませんので、他の問題に移っていきます。  防衛庁、サハリン、北方領土四島はソ連軍のどの軍管区に所属しているんですか。
  180. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 極東軍管区に所属しているというふうに理解しております。
  181. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それはいつから所属したんですか。
  182. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) いつからという、何年何月ということは特定いたしませんが、戦後一貫して極東軍管区に所属しているというふうに理解しております。
  183. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 極東ソ連軍の日本周辺における配備状況というのはいろんな意味で非常に関心が持たれています。私は「日本の防衛」という防衛庁の防衛白書をそういう立場で見ていったんですが、この五十六年まではサハリンというところは全く空白区になっていて五十七年からそのサハリンがいまおっしゃったように極東軍管区の中に所属されているというふうな表記が見られるんですが、これは何か特別な事態の変化のようなものがあったんですか、それとも防衛庁の地図の表記上のミスなんですか。
  184. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 先ほどお答えいたしましたように、極東軍管区に従来から所属しているということは明らかでございます。ただ、五十七年度の防衛白書でその点に触れたとすれば、御承知のとおりこの数年来特にこの近辺でソ連軍の増強があったという現実を踏まえてそういう記述をしたということでございます。
  185. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それはおかしいんじゃないですかね。やはりこれはサハリンの地図の表記の間違いで——一応よく調べてください。いま私の言っていることは事実これを見て御存じですか、どういう違いが起こっているかということ。
  186. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 委員の御発言でございますので、一応私チェックいたしますけれども、私の答弁は先ほど申し上げたとおりでございます。
  187. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 地図の表記上違いがあるということは御存じの上での答弁なんですか。
  188. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) 厳密に私はその点、現在ただいまは記憶ございません。
  189. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 事実五十六年度まではサハリンはずっと空白で表記がされていたわけで、五十七年からそこが軍管区の問題として極東軍管区に所属されるというふうなことになってきているんですが、この北方領土と言われるこの問題と、それから極東ソ連軍との関係というものについても、地図の表記上ももう少し神経細やかに表記すべきでないかと、私はこう思うんです。
  190. 新井弘一

    政府委員(新井弘一君) ただ、私どもがそういうその種の記述をいたしましたときの一般論といたしましては、ある特定の地域にたとえばソ連軍の増強があったという事実を踏まえ、その点についての確認作業等々で若干前後に時間的なそごが生ずるということは十分あり得るわけでございます。これは情報活動上やむを得ないところでございます。
  191. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、それは後でよく調べてください。五十七年の防衛白書には、一方では極東ソ連軍の軍事基地ということでサハリンに、あるいはまた北方四島に軍事基地があるという記述が一方ではきちっとされてあるんですよ。だから、これは防衛庁のやはり記載上のミスだと、このように思いますから、よく調べておいてください。  それから、先ほども出ました核問題なんですが、若干シーレーンの問題にかかわって核積載艦の護衛の問題について質問をいたします。  わが国の防衛政策は五十七年度の防衛白書の七十一ページにも明確に書いてあるように、専守防衛を基本として日米安保体制によって「いかなる態様の侵略にも対応し得る防衛体制」のもとで実施されることになっています。それで、「核の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存する」というふうに書いてありますが、いま行われているこのシーレーンの共同研究は非核三原則の枠内で行うということが政府の方から答弁があるわけですが、シーレーン防衛の共同研究を非核三原則の枠内で行うと、その意味はどういう意味なのかお答えをいただきたい。
  192. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 御指摘のように、今回のシーレーン防衛の共同研究につきましても、非核三原則あるいは事前協議あるいはわが国における憲法の制約というものを前提にして研究することは御指摘のとおりでございますが、この非核三原則については、文字どおりわが国に対して核の持ち込みというものは行わない、もちろんわが国自身が持つことあるいは製造するようなことはもちろんありませんが、米側の核兵器もわが国への持ち込みというものを前提とした研究というものは一切行わないということでございます。
  193. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 その場合、非核三原則という事柄に関する制約は、わが国の領海上の範囲というふうになっていると思います。しかし、このシーレーンというのは、シーレーン防衛というのは公海上の区域についてもどのように防衛するのかということの共同研究が進められるとすれば、公海上の区域については非核三原則の問題についてはとらわれないと、領海上については非核三原則というものにのっとって研究すると、こういう形で進められるというふうに理解していいんですか。
  194. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) おっしゃるとおり、アメリカの核兵器をわが国の領海内に持ち込まないということは、これは大前提でございますが、一方アメリカのたとえば第七艦隊というのは有事の際に核を装備し得ることも、またこれは否定できない、予想されるところでございます。一般的に申し上げれば、核を装備するであろうところの米艦隊と共同対処を行うということも、またこれあり得ることでございまして、全く否定するわけにはいかない。そういうことから、公海において核兵器を持った米艦隊と共同対処の行動をすることを否定するわけにはいかないだろうというふうに思っております。
  195. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 その場合、先ほども申し上げましたように、有事の際に核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存するというわが国の方針があります。この方針で考えていけば、わが国が他国の攻撃を受けて有事が発生する、そして米国の核抑止力に依存するという必要が生じて核積載艦が出動をする、こういうことが当然あり得ると、こう思いますが、いまの論理の中で、この核積載艦が日本に向う途中の公海上で攻撃をされるという事態になった場合、シーレーン防衛という立場での自衛隊の対応は、これはどのようになるんですか。
  196. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) わが国がすでに武力攻撃を受け、アメリカと共同対処をしているという前提で申し上げますれば、先般の予算委員会でもしばしば御答弁申し上げたとおり、その米艦艇がわが国を防衛するために行動しており、自衛隊はその米艦艇が攻撃された場合に、そういう前提において米艦艇が攻撃された場合に、自衛隊は共同対処行動の一環としてその米艦艇を護衛することはあり得るということは再三御答弁申し上げているわけでございます。その米艦艇が有事の際に、もちろん有事の際でございますから核装備をしているかというふうな可能性について全く否定できないわけでございまして、そういった艦艇についても特段これを仕分けをして、区分けをして、核を持っておれば護衛することはできないということはむしろ不自然ではないかというふうに思っています。
  197. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いま公海上のことについて尋ねました。しかし、日本に向かって公海上を出動しているんですからやがて日本の領海に入ってくるわけでして、そうすると、領海に入ると事前協議、先ほども事前協議の問題がずいぶん論議されましたが、今度は事前協議ということになって、核を持っておればそれはそこで米艦の日本への領海への航行を拒否する、こういうことに、何か非常に単純な発想ですけれども、有事の際にそんなばかなことが考えられるかということでしょうが、しかし、一般論の理屈の上の考えではそういうふうなことになるわけですが、いかがですか。
  198. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 核装備を持った米艦隊がわが国の領海内に入ってくればこれは事前協議の問題になり、これは再三御答弁申し上げているようなわが国の対応になる、非核三原則によるノーということになるだろうというふうに思うわけでございます。  一方、この米艦艇は一般論として申し上げれば核を積んだ部隊というのは必ずしもわが国の港に入り、あるいは領海内に入らなくてもそれだけの核抑止効果というものは十分果たし得るものというふうに理解しております。
  199. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は一般の艦船あるいは商船であれば、一般論としての日本の自衛隊がその艦船を守るという事柄についての政府の答弁は、私は肯定はしませんけれども、政府側の理屈は理屈としてわかりますが、しかし、この核積載艦というのは、おっしゃるように核を積んでいるか積んでないかわからぬということであっても、核によって日本を守るんじゃなしに、日本攻撃している相手国、またアメリカの利益を守るために国防上必要な攻撃をする能力をその核積載艦は持っていると考えなければなりません。そういう場合にそういう能力を持った核積載艦を日本の自衛艦が護衛するということは、日本の直接侵略に対する専守防衛の個別自衛権という立場での発想から外れて、集団自衛権という形にその場合私は明確に踏み込んでしまうのではないかという心配をいたしますが、いかがですか。
  200. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まず米艦艇を護衛するということの前提には、あくまでもこの米艦艇がわが国を防衛するために行動しておる、共同対処行動をとっておるということが大前提でございます。そうした範囲内の行動をとっている米艦艇を守るということがわが国の個別的自衛権の範囲内であるという認識のもとに守るわけでございまして、このことはその米艦艇が核を装備することがあり得べしということになっても理論上変わりはないんではないかというふうに思っています。  この米艦艇がわが国の防衛と無関係行動をとっておるということであれば、これはまた話が全然別のことでございます。
  201. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 しかし、その核積載艦の能力というものとその意図というものが、必ずしもいまあなたのおっしゃったようにわが国の防衛のみというふうに限定し、そのとおりなるということもまた私はわからないと、こう思います。したがって、あらゆる場合に多様な形で攻撃し、そして核を積載しておれば核そのものでもって相手を攻撃し得る力を持つそうした艦艇を護衛するということは、そういう意味で私はもう集団自衛権に踏み込む、こういうように思うのですが、私が申し上げたいのは、このシーレーン共同研究そのものが憲法あるいは非核三原則あるいは事前協議、さまざまな枠をはめてやっておるから心配はないんだという政府側の答弁があるにしても、いまひとつ、この核積載艦の行動日本の自衛艦のそれに対する護衛の問題を取り上げてみても、具体的に非核三原則あるいは憲法に違反しないという歯どめというものがどこで行われるかなという問題については、依然としてはっきりしないのではないかというふうに思うんですね。そういう意味でこのシーレーン防衛の日米共同研究の中におけるこの非核三原則あるいは憲法の枠内というものを厳守するということについての保障というものがどこにあるかということについて、私ははっきりといまだにしていないと、このように考えているんですが、防衛庁長官、このシーレーン防衛の共同研究がこうした歯どめのもとにしっかりやれるか、間違いないのだという保障を具体的にどのように説明していただけますか。
  202. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 私の責任においてスタートをさせましたガイドラインに基づく共同研究でございます。したがいまして、これを始めるに当たりましては、日米両者で基本的な協議を十分詰めてその理解の上に成り立っておるわけでございますが、その理解は再々答弁をさしてきていただいておりまするように、わが方の憲法あるいは非核三原則あるいはその他幾つかの大筋におきまする枠をまず設定をいたして研究にスタートをいたしておるわけでございます。  なおこの研究は、今後は日本有事における共同対処についての研究でございますのでミリタリー・ツー・ミリタリーで行われてくると思いますが、それにつきましては随時報告は私のところへ上がってくるということになっております。  なお、先ほど来核積載艦の公海上における行動に対する自衛隊の問題について、集団的自衛権との絡みについて御発言ございましたけれども、私どもは集団的自衛権の発動というのは、自国が直接攻撃を受けてないにもかかわらず、自国と非常に密接な第三国に対する攻撃を、あたかも自国に対する攻撃と同じように判断してそれに対して守るという形の自衛権の発動を集団的自衛権の発動と、こういうふうに考えておりますが、そういうようなたぐいの自衛権の発動をこのシーレーン研究でいささかも考えておるんではございませんで、あくまでも私の責任においてスタートをいたしましたこのシーレーン防衛の共同研究につきましては、先ほど来申し上げておりますようにわが国有事の場合における日米共同の対処の仕方についてガイドラインに基づいての研究でございます。  それから最後に一言つけ加えさしていただきますが、公海上における日本有事のときの米艦護衛につきましては、その米艦がいかなる兵器をもって自衛しておるか、積載されておりまする兵器の種類において米艦護衛について判断を下すというものではございませんで、その米艦の行動をいたしておりまする目的においてわれわれは判断をしておるものでございまして、その意味では先ほど政府委員が答弁さしていただいておりますように、公海上行動をする、日本防衛のために行動をいたしておりまする米艦が核武装をしておる、核積載艦であるなしにかかわらず、われわれは判断としてその米艦を護衛することがわが国の防衛のために役立つかどうかという判断をもってこれについて行動をする、まあこういうことでもございます。
  203. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 シーレーン防衛の日米共同研究が始まりましてから約一カ月を経過をしておりまして、まあこれから具体的な問題が明らかになってこようかと思いますが、現在時点で何か研究の進捗状況というものの概要についてここで報告できるようなことがあればお知らせをいただきたい。
  204. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 御指摘のとおり、三月の十二日でございますか、研究を開始したわけでございまして、一月たっているわけでございますが、現在まだようやくその研究が開始されたという段階でございまして、いま具体的に御報告できるような段階にはまだ至っておらない。一般論として申し上げれば、これはもう前々から申し上げておりますが、脅威の分析あるいはそのシナリオの設定等、日米間において相当意思の統一をはかるべき問題があると思います。具体的な問題にはまだなかなか入らないんではないかというふうに想像しております。
  205. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いまおっしゃいましたように、具体的な問題に入る前にやはりずいぶん詰めていかなければならぬ問題があると思います。それはこの国会でも再三論議になっているように、シーレーン防衛ということについてのアメリカ考え方日本考え方の違いであろう、このように思いますので、そこのところに間違いのないようなひとつ防衛庁の対応をここで強く要請をしておきたい、このように思うんです。  そこで、アメリカのシーレーン防衛に対してのさまざまな要求が出てきておりますが、最終的にはアメリカとして日本の海域を防衛するんだと。まあ、シーレーンということじゃなくて、それは海域——日本のその周辺の数百マイルということにそれはすべて包含されると思いますけれども、とにかく日本の海域をアメリカの国防上防衛する力を持つようにということで、特に対潜哨戒機を百二十五機ほどやはり購入をせよとか、いろんな具体的な防衛力の増強問題が出てくると思いますが、現在、正式でないにしろ非公式の形で、このシーレーン防衛についてアメリカ日本の防衛力増強について必要な要求というものがどういう形で行われるのか説明を願いたいと思います。
  206. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) アメリカがこのシーレーン防衛の重要性についてしばしば発言をしておりますし、またわが国わが国防衛の必要性という観点から、そのシーレーン防衛能力を高めてほしいという期待感があることは、またこれ事実でございます。ただ、具体的にどれだけの兵力を持てばいいのかということについて要請がましいことを言っているわけではございませんけれども、私どもがしばしば彼らとの会議の席上等で言われることは、このシーレーン防衛に限って申し上げれば、現在の海上自衛隊の能力あるいは現在防衛庁が持っておるところの五六中業という計画が達成されても日本の安全を保障するためのシーレーン防衛能力としては不十分ではないのかというふうな見解は持っておるようでございます。しかし、そのことは彼らの考え方であって、だからこれだけのものを持てというふうなことは、一切具体的なその数字を交えた要求というものはございません。
  207. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 まあアメリカの方で五六中業におけるシーレーン防衛のための正面装備というんですか、そういうものでは不十分だ、十分守り切れないであろうと言われている、その五六中業の中におけるシーレーン防衛のための正面装備の予算というのはどのぐらいあるんですか。
  208. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) この五六中業というのは、御承知のとおり計画全体におきまして十五兆六千億から十六兆四千億円、しかしこれは一つ防衛庁における単純な見積計算でございまして、五六中業で比較的詳細に積算をしておるのは、いわゆる正面事業でございまして、これが四兆四千億から四兆六千億円、こういうことになっております。この中からそのシーレーン防衛のための経費は幾らかということはなかなか抽出することは困難でございまして、先生御承知のとおり、このシーレーン防衛能力というのはいわば海上自衛隊の艦艇、航空機、その他後方支援能力というものが、ほとんど大部分がこのシーレーン防衛能力の向上に寄与し得るものでございまして、これは再三御質問がございますが、この四兆四千億から四兆六千億の中における海上自衛隊の経費というのは、一兆七千四百億から一兆八千二百億ということで、これをシーレーン防衛能力のための経費と言うのは少し乱暴な議論だとは思いますけれども、それ以上シーレーン防衛能力だけを拾い上げて幾らかということを申し上げるのはなかなかむずかしいということもまた御理解いただけると思います。
  209. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、なかなかむずかしいとおっしゃっても、結局議論のところは、五六中業を達成したとしてもシーレーン防衛というものは不十分だという相手側のアメリカの見解があって、問題は共同研究の結果がそれではさらにシーレーン防衛のための正面装備というものについての予算を増強しなければならないという立場に、日本が追い詰められていくんではないかという危惧を国民が皆持っているのですから、いまのように五六中業の中で一体それではシーレーン防衛のための正面装備はどのぐらいあるのかと、アメリカの不十分だと言っているのは一体どういうことを言っているのかということについて、それは定かでありませんということではちょっと具体性を欠き、私も納得できないんです。
  210. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) ちょっと私から基本的な問題について申し上げさしておいていただきますが、いかなる状態に対してもこれに適切に、しかも効果的に対処するだけの能力は常に防衛を考える場合には必要でございますが、その場合に海上交通路の安全の確保という非常に困難な、しかも日本にとって大事な防衛努力をしようという場合に一番基本になります問題は、日本攻撃を受けた場合には日米共同で対処する、こういう仕組みになっておるわけでございます。その中で日本と日米安保条約を締約をいたしておりまする一方の締約国でありまするアメリカが、いろんな角度からいろいろと日本に対して日本の防衛力整備について期待を持って寄せてくるということ、これは当然のことだと思いますが、少なくともシーレーン防衛の共同研究につきましては、先ほど来申し上げておきますように、ガイドラインに基づいて日本有事のときの共同対処をする、いわばオペレーションスキームといいますかオペレーションプランというか、作戦行動計画を検討をしようとするものでございまして、このシーレーン防衛研究が今後の日本の予算あるいは法制上の問題、その他の問題を拘束するものでもなければ、ここで出てきました結論が日米安保条約の現在の枠組みを超えてのことを期待されるものでもなければ、さらにはもっと大きな枠としてはわが国の持っておりまする憲法上の諸制約とか、あるいは非核三原則だとか、こういうものを超えるものでも何でもないわけでございます。  くどいようでございますが、シーレーン防衛研究そのものは現在持っておりまする、あるいは将来わが国が自衛のたてまえとして持つであろう問題を中心に、問題といいますか能力を中心にいたしまして、日本有事の場合に海上交通の安全の確保の場合に、日米どういうような共同対処をいたすべきであり、どういうような共同対処がいたされ得るかというようなことを共同して検討を加えて研究をすると、こういうことでスタートをいたしておるわけでございます。
  211. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは、最後にシーレーン防衛上の海峡封鎖の問題もずいぶん出ましたが、この五十七年度の防衛白書の五十二ページに「わが国の地理的特性」という地図があります。いままでの防衛白書にはこういう地図はなかったように思いますが、そこに特に宗谷海峡、野付水道、津軽海峡、対馬海峡の東水道、西水道を抜き出して四つ挙げてここにあるんですが、私はそのために何か特に注目すべき文面があるのかということで読んでみました。しかし、特段この地図が四海峡を抜き出していることに必要な文章というものがありません。  そこで私が思いましたのは、いままでにないやはり防衛白書に四海峡が出てくるということ、中曽根総理の発言等々から見て、非常にシーレーン防衛という意味からも日本の国防という意味からもこの四海峡というものに対する対策が非常に重要になったのだなと、防衛庁もこの問題を非常に大きく認識し意識したのだなと、このように考えたのですが、特にこの地図の上でこういうふうに抜き出した意図はどこにあるのですか。
  212. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) この地図を掲載したゆえんのものは、わが国が四面海をもって囲まれているという国であるということ、それから大陸に沿った弧状の列島で四つの島から成っておって、それぞれ狭い海峡なり水道というもので外国と接しているというふうなことから、わが国に対する武力攻撃があるとすれば海上経由ということをやはり前提にしなければならないという、わが国の海洋国家であるところの特性をお示ししたわけでございまして、それ以上の特段の意味はないものと理解しております。
  213. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そういう認識がいま改まって起こってくるというところに、何か私は不思議で仕方がありません。いまおっしゃったように日本は島国ですし、それぞれの海峡があって、その防衛の重要性というものがいま改めてここで強調されなければならない理由は何ですかと、このようにお尋ねをしておるんです。
  214. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 地図自体についての意味はいま申し上げたとおりでございますが、わが国の置かれた地理的環境あるいは国際的な環境の中において、わが国を防衛することの重要性ということは何もこの五十七年度の防衛白書で申し上げているわけではございませんので、自衛隊発足以来わが国防衛の重要性についてあらゆる機会をとらえながら国民の御理解を得るように努めている。防衛白書というのもそういうものの一環でございまして、ただ防衛白書は毎年発行するものでございますから、そういう意味合いにおいて毎年同じものを出すわけにいきませんので、いろいろ工夫をこらしながらそのときそのときの新しい国際情勢というものを加味し、あるいは昨年度の防衛白書に対する世間の御批判というものを踏まえながら、新しいことも書き込むということもまたこれ御理解いただけることだと思います。そういう観点で、この日本の防衛の必要性についても付言しているわけでございます。
  215. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 海峡封鎖とか通峡阻止というこの問題は、単純な専守防衛とかいう事柄でない問題を含む、そこでいま国会の中で大論議になっておると、私はこう思っておるのです。だから、その問題について考えていくときに、それではこの四つの海峡があって、もし日本のいま言いました国防上非常に重要であるというランクづけをするとすれば、どういうふうにこの四つの海峡を考えておられるか。
  216. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 非常に端的に申し上げると二つの重要性があろうかと思います。  一つは、わが国、本土の防衛のためにこの四つの海峡というものが、四つというか、三つの海峡というものが非常に重要であるということが言えようかと思います。たとえば津軽海峡一つを例にとりましても、この津軽海峡というのはわが国の本州と北海道を結ぶいわば海上交通の要衝でもございます。そういった意味合いから本土と、本州と北海道との連絡の要衝としてもこれは防衛上の要衝であろうと思います。  それから第二点は、シーレーン防衛というものの観点から見て、この海峡というものはきわめて重要な位置にあるというふうに思っております。
  217. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 最後に、いま言いました海峡封鎖の問題について、シーレーン防衛上対馬海峡等は必要である、こういうことになってまいります。そこで、再々この西水道、東水道の問題が論議をされておりますが、このシーレーン防衛上の問題として西水道も対象とするということになってきた場合のこの三海峡封鎖ということは、明らかにこれはソ連という問題を意識して、はっきり言えばソ連を敵視してその西水道の問題を考えなければならぬと、こう思いますが、日米シーレーン共同研究の海峡封鎖というものが対ソ敵視論というふうなものを明確にしながらこれから日本が進めていくことになるのかどうか、最後に政府の見解をお尋ねして終わりたいと思います。
  218. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 先ほど政府委員から答弁をいたしましたごとく、わが国としてはわが国の自衛のために必要があれば、わが国に対する敵性の船舶を通峡阻止するということもあり得べしということで答弁を重ねてまいったわけでございます。しかし、いま対馬西水道のことに言及されましたが、対馬西水道にかかわらず、わが国周辺の海峡の通峡阻止という作戦行動は、沿岸国あるいは第三国に与える影響も非常に大きなものもございますので、もし、こういう作戦をとるにしましても、慎重の上に慎重に対処いたさねばならぬと、こう考えております。  しかし、こういう作戦を直ちに、われわれは特定の国を対象に置きながら現在計画を進めておるとかいうものではございませんで、わが国自衛のために、あらゆる事態を想定をしながら、それに対して適確に対処するためにはどういうことが考えられ得るか、どういうことを考えていかなければならないかということを常に念頭に置きつつ検討を加えておるところでございます。
  219. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ─────・─────    午後一時四十一分開会
  220. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を議題とし、外務省及び防衛庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  221. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 初めに、イランの原油流出事故についてお伺いをいたします。  この問題につきましてはもう新聞等で相当報道されておりますが、現在の被害の状況並びにわが国を初め諸外国の対応についてどういうふうになっているか、お伺いしたいと思います。
  222. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 現在の被害状況でございますけれども、約二十五万ないし三十万バレルの石油がすでに流出済みで、これが主としてイラン領海に流れておりまして、さらにこれが分流となりまして、カタール、アブダビ、バーレーンの方向へも流れてまいっておりますけれども、湾岸諸国にはいまだ大きな実害を及ぼすに至っておりません。  わが国といたしましては、今月の五日の日に外務省、通産省、運輸省それから水島事故によりまして経験を持っております三菱石油の担当部長の六名からなります調査団を組織いたしまして、クウェート、バーレーン、カタール、そしてアラブ首長国連邦を巡回せしめまして、各国政府関係者と意見交換いたしまして、当方からその都度先方にアドバイスを与え、先方の要求する資料等の提出を行ってまいりました。欧米諸国も、日本政府調査団派遣よりはおくれておりますけれども、日本調査団派遣の後、専門家を送り込んでアドバイスを与えているように了承しております。
  223. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今回のような事故は、これは日本としましても、いわゆる石油を相当輸入をし使っている私たちの国としましては看過できない問題が私はあると思いますけれども、中近東の非常に複雑な政治情勢も絡みましていろんな問題があると思いますけれども、わが日本として何ができるかという問題があると思うんですね。そこで、その何かできるかということの中で幾つか申し上げてみたいと思いますが、一つは飲料水の不足の問題というのが出てきているようでありますが、これに対してはどういうふうに対応されるおつもりか。具体的にいろんな話も出ているようでありますが、そういう点も含めて御答弁いただきたいと思います。  それからもう一つは、国連等の国際機関への働きかけという問題もあると思いますね。こういう問題についてどういうふうに対応していかれるのか。そういう点を含めまして日本の国の対応ですね、この点についてどういうふうにお考えなのかお伺いしておきたいと思います。
  224. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) ただいま御説明申し上げました調査団の調査目的の一つは、日本政府としてどのような貢献ができるかということを把握することにございます。そして、その調査団からはすでに資料の要求、日本が持っております経験、知識の湾岸諸国への提出方等々、意見具申が来ておりますので、こういう点についてはできる限り早急にそして前向きに対応していく所存でございます。  飲料水でございますけれども、飲料水につきましてはいまだ湾岸諸国に被害が出ていない現状でございまして、すべての淡水化装置が稼動しております。一つ小さい設備がサウジアラビアで休止しておりますけれども、これはきわめて小さな設備でございますので全く影響を与えておりませんというぐあいでございまして、飲料水につきましてはいまのところ湾岸諸国から全く要請が来ておりません。逆に、一部の国におきましては、飲料水の国内における買いだめ、パニック等を起こさないため、余り外国から飲料水を持ち込むというようなことは逆に歓迎しないということすら言っている実情でございまして、今後もしも問題があれば飲料水についても対応いたしたいと思いますけれども、いまのところは全くその必要が生じていないというのが実情でございます。  他方、第二の御質問の外交面における日本の働きかけにつきましては、すでにイラン、イラク両国政府に対しまして、石油の流出をとめるためにしかるべき停戦、休戦等の措置をとるよう協力方、外交チャンネルを通じて申し入れてございます。他方、国連におきましてもしかるべき措置をとるよう事務局と折衝を続けております。
  225. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは的確かどうかわかりませんが、先ほど流出の石油量が二十五万ないし三十万バレルというふうにおっしゃっておりましたが、これだけの石油が流出をしまして汚染をしているわけでありますが、いわゆる環境に対してはどういうふうな影響を与えるのか。現在の情勢の中ではペルシャ湾のみでとどまるのか、あるいは世界的に見てどういうふうな被害の状況になるのか。こういう点はちょっと外務省と違うかもわかりませんが、いわゆる今回の被害がどういうふうな影響を与えるのか。そういう点については、これはどこがお答えいただけますかね、環境庁が担当ですかな、こういう問題は。
  226. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 環境庁が主としてこの資料を持っておりますけれども、私が聞いておりますところではいまだ石油はペルシャ湾岸の外には流れておりませんので、問題は湾岸諸国及びイランに限られるという状況でございます。二十五万ないし三十万バレルの石油のうちの相当部分は蒸発してしまっていると聞いておりますけれども、しかし重質部分はいまだ海面下に浮留しておりまして、これが将来海洋環境に大きな影響を及ぼすことは財らかでございますけれども、現在のところその実情の把握がまだ十分でございませんで、どの程度の後遺症が今後残るかという問題については、今後関係国で協力して実情把握に努めた上で対処しなければならない問題だと考えております。
  227. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 日本の水産業に対しての影響というのは考えておられますか。
  228. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 日本の水産業に対しては、直接余り大きな影響はないと思いますけれども、湾岸諸国の漁業に対しては若干の影響があらわれ始めているように聞いております。
  229. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 次に、対米武器技術供与の問題につきましてお伺いをしたいと思います。  この問題につきましては、先ほどの予算委員会等で相当議論になった問題でありますので、いままで議論になった問題につきましてはきょうはちょっと横に置きまして、その問題に関連をいたしまして、多少議論をしていないところで質問をしてみたいと思います。  まず第一点としまして、日米相互防衛援助協定というのがあるわけでありますが、この日米相互防衛援助協定の性格といいましょうか、そういう問題についてちょっとお伺いしておきたいと思います。  それは、ことしの一月の十四日に官房長官の談話でこういうふうに発表になっております。これは談話の一部でありますが、「わが国としても、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが、日米安保体制の効果的運用を確保する上で極めて重要となっている。これは、防衛分野における日米間の相互協力を定めた日米安保条約及び関連取り決めの趣旨に沿うゆえんであり、」云々と。それで、それに続きまして「本件供与は日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みの下で実施することとし、」云々と、こういうふうに書かれているわけであります。  そこで、この日米相互防衛援助協定の関連規定によることが政府としては当然のこととして、そういうふうに判断をしているようでありますが、この点は官房長官が記者会見でお述べになっていらっしゃるとおり、外務省当局としてもこういうふうにお考えなのでありましょうか。初めにお伺いしておきたいと思います。
  230. 北村汎

    政府委員北村汎君) 対米武器技術の供与の決定に当たりましては、官房長官の談話にございますように、「日米安保体制の効果的運用を確保する上で極めて重要となっている」この武器技術を、武器技術に限って、そしてアメリカに限って出すということに決めたわけでございまして、この決定を行う場合に、政府といたしましては、先ほど委員が御指摘になりましたように「日米安保条約及び関連取り決めの趣旨」、それから、この実施に当たりましては、その枠組みとして日米相互防衛援助協定の関連規定によって行うと、こういう考えでございます。
  231. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、この日米相互防衛援助協定の性格なりその本質についてお伺いしてみたいと思います。  まず局長にお伺いをいたしますが、局長もいまおっしゃったこの協定、日米相互防衛援助協定でございますが、これは当時承認案件として国会に提出されたかどうか、御記憶はございますか。
  232. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 昭和二十九年の四月に国会の御承認をいただいて締結しております。
  233. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 御答弁のとおり、第十九回国会ですね、昭和二十九年に承認案件として国会に提出されておりますね。  そこで、中曽根さんはこの昭和二十七年の安保条約締結当時、この日米安保条約に反対されたと私は聞いているわけであります。それはそのとおりですね、御存じですか。
  234. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) よく私は覚えておりません。私は賛成しましたけれども、そこまでよく覚えておりません。
  235. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あれっ、大臣は二十七年にもう議員だったんですか。
  236. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そのときのことは私はまだ議員でありませんから覚えておりません。
  237. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大変古い話でまことに申しわけないんですが、それから、中曽根さんが日米相互防衛援助協定の承認に賛成されたかどうか、これは御存じですか。
  238. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 大変申しわけございませんが、当時の記録については手元に持ち合わせておりませんので、お答えいたしかねます。
  239. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは賛成したか反対したかどっちでもいいのですけれども、実際問題として非常に昔の話で、三十年ほどもう昔の話なんですね。そこで当時と現在とは相当状況が変わってきているということもこれは事実だろうと思いますね。それで特にまた一番変わったのは日米関係じゃないかとそういうふうに思うわけであります。要するに、日米関係立場が相当変わってきているということを言いたいためにいろいろこう言っているわけであります。  この日米相互防衛援助協定が第十九回国会に承認案件として当時の外務委員会に付託をされましてそして議論をされたのでございますが、そのときの会議録を読んでみますと、当時参考人として出席されました、いまはもうお亡くなりになりましたけれども、東大教授の大内兵衛さんが公述人としてこういうふうにおっしゃっています。いまの日米相互防衛援助協定につきましての参考人であります。本協定の内容は日米相互に資材、役務等を供与することになっており、形式上は対等となっておるが、しかし先方は世界第一の軍事力を有する国であり、わが国は敗戦国であり憲法上も戦力保持を許されないので決して対等でない。あたかも貧乏学生が金持ちから学資金をもらう契約のごとくである。こういうふうに参考人がおっしゃっているわけであります。確かにこの言葉に端的にあらわれておりますように、本協定は相互防衛援助協定という名前になっておりますし、また、規定の上では「各政府」というふうなうたい方をしておりますので、お互いに援助し合うそういうふうな形はとっておりますけれども、詳しく読めば、これはもう条約局長皆さんいらっしゃいますが、前文にも書かれておりますように、アメリカ合衆国政府アメリカのMSA協定等に基づく援助を日本に供与するその条件を規定している協定であって、決して日本から米国への供与を予想したものではないと私は考えるわけであります。これはそうですね、違いますか。
  240. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 相互防衛援助協定を当時昭和二十九年の時期におきまして締結することとなりました第一義的な理由は、いま委員が御指摘になりましたように、当時わが国が自衛力整備の一環といたしましてアメリカから各種の装備、資材というものを受け入れる必要がありまして、それを実行するためのいわば法律的な枠組み、条約上の枠組みといたしまして日米間に締結されたものであると、経緯的にはまさにそういう事情があってそういうことを第一義的な目的として締結されたものであるということでございます。  しかしながら、他方におきまして、この協定そのものが基本的には双務的なものであり、もちろん当時のわが国の国力、国情等におきまして、具体的に日本の方からアメリカに対しまして、いろんな装備でありますとか、そういうものを提供するということは予想されておりませんでしたけれども、基本的にそういう相互的な協力というものを想定してできておる協定であるということは、当時国会におきましても政府側から御説明申し上げた経緯があることでございまして、この協定が全くそういう意味での一方通行的な協定ではないということは、協定締結当時から政府考えておりましたところでございます。
  241. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはそうかもしれませんが、少なくともこの協定ができた、基本的には局長の前段の答弁のとおりだろうと私は思うんですね。したがって、米国から日本への援助を受け入れるに当たって、結局は日本政府が秘密保持、あるいは軍事顧問団の受け入れ、あるいは免税ですね、そういうようなことを一つ一つ詳しく規定をしているわけですね。しかもその協定の中に、日本国政府の防衛力増強義務規定すらいわゆる規定されているわけですね。しかも、このMSA協定のおかげで、その見返りとして——そんなことはうたっていませんがね、見返りとして、結局は防衛庁が生まれ、自衛隊が増強され、そういうことに至ったんじゃないかと、そういうふうに考えてもいいんじゃないかと私たちは考えるわけですね。  しかし、その後昭和三十五年の安保改定の際に、この日米相互防衛援助協定の効力についても、これは御存じのとおり交換公文が交わされて、そして引き続きこの協定が確認をされてきているわけですね。これはもう局長のお考えのとおり、私もそのとおりだと思うんです。しかし、この協定は少なくとも初めから言っておりますように、日本アメリカから援助を受け入れるためのものであって、これは局長は後段で、いや相互的なとおっしゃっていますが、今回のように、日本アメリカにいろんなものを供与するに際してのいわゆる協定でないことは、これはもう明らかだと私は思うんですね。  したがって、政府がこれからこの協定を盾にいろんなことを言うというのであれば、それはやっぱりちょっと問題がいっぱい出てくるのであって、要するに秘密保持とか、また逆に日本からアメリカに対しての、いわゆる民間の技術が今度は大部分ですね、そういうような立場らいきますと、これは非常にむずかしい問題がいっぱいあるんじゃないかと。要するに、この日本の技術をアメリカに今度はやるわけですから、そうする場合、この協定でそのままというのではこれは非常に困るんじゃないか。またいろんな問題が起きてくるんじゃないか。しかも、日本の技術というのは御存じのとおり、何といいますか、光ファイバーを初め、先端技術のほとんどというのは、これは日本では民間技術ですね。防衛庁が特許権を持っているようなものというのは非常に少ないわけですね。そういう点からいきますと、これは日本からアメリカへ出す場合には、やっぱりこれはいろんな問題が出てくる。私は、この技術協力をしていいという問題ではありませんが、要するに官房長官が言うように、日米相互防衛援助協定ですか、この協定そのままでは、やっぱりこれを盾というわけにはいかないんじゃないかと。逆に、もっと違う立場のいわゆるきちっとした新しい協定なり考え方が必要になってくるんじゃないか。これはやっぱり私は、そこら辺のところはもう一回練り直す必要があるんじゃないか。そうでないと、日本の民間技術がいわゆる不利益をこうむるということもあり得るわけですね。そういうような意味では、これはやっぱり日本のそういう民間技術が十分保護され、あるいは十分利益を得るような考え方、そういうふうな点に立ってきちっと処理をしていかなければいけないんじゃないか、そう実際思うわけです。  それで、したがって余り細かいことは言いませんが、これは大臣、実際問題考えてもらいたいと思うんですけれども、むずかしいことを言うつもりはないんです。しかも、これをどんどん進めてもらいたいとも言うわけではないんですけれども、実際これを進めるに当たっては、現在の日米相互防衛援助協定というのは余りにも古過ぎるし、また内容的にも問題がある。そういうような意味では、もしそれを実際にやるとすれば、やっぱり日本の民間の技術を守るためのきちっとした協定が必要なんじゃないかと、そういうことも考えるわけですが、そこら辺のところはどうお考えか。大臣は通産大臣も経験しておられますので、そこら辺を踏まえてどういうふうにお考えか、一遍お伺いしておきたいと思います。
  242. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにこのMDAができた当時は、日本の国情からいきましても一方通行的なものであったわけですが、しかし条約そのものは、協定そのものは、御承知のように相互的な立場にはっきりと立って、条文もそういう立場で規定をされておるわけでございますし、私はやはり今回の武器技術の相互交流といった場合は、このMDAの協定を通じてこれが行われることが一番妥当ではないか。その方がむしろいろいろな面で歯どめができておるわけでありますから、その方が妥当ではないかと思いますし、なおいろいろと詳細な細目については、このMDA協定に基づく細目取り決めで両国がいろいろな点で合意をして、その上に立って交流が始まると、こういうことになれば、今日のわが国立場から見ましても最も適切な武器技術の相互交流という形が貫かれることができると、こういうふうに思っております。
  243. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次の問題に移りたいと思います。サミットと貿易摩擦についてお伺いしたいと思います。  最近の新聞報道によりますと、EC委員会がわが国の市場の閉鎖性をガットに提訴すると、その報道がなされておりますが、特にガット二十三条の第二項、いわゆる第三者を交えて白黒の決着をつけるという問題が報道されておりますが、この問題についての見通し等についてお伺いしておきたいと思います。
  244. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、EC委員会、実は日本との間に昨年来かなりの二国間のガットの枠内での協議を行っているわけでございますが、それを多角的な場に持ち出して検討してもらうようにしたいという申し入れがございました。これが明後日二十日のガットの理事会に提出される手はずになっております。  理事会に提出されますと、提出したEC委員会側は、なぜこれをガットで取り上げるべきと考えるかという説明をいたしますし、日本側はそれについての日本側考え方を述べるわけでございます。最終的にはガットの場の判断になるわけでございますが、従来私どもといたしましては、これは問題の性質上ガットの多角的な、たとえばパネルとかあるいは作業部会というものを設けて、そこで検討するということは不適当ではないかというふうに考えているわけでございまして、そういう立場に即して対処すべきものというふうに考えているわけでございます。
  245. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま妹尾次長が答弁いたしましたように、わが国の市場閉鎖性特に流通機構であるとかあるいは産業構造そのものをガットの場で協議をしよう、二十三条一項で協議をしようということになっておりますが、それがさらに二項でこの場に持ち出すということは、日本としてはこれはもう基本的にガットの精神にそぐわない、ガットの条項から見ましてもこういう問題が論議されるのはふさわしくないという立場をとっております。  これまでもしばしばECに対しては反対を主張してまいったわけでございますし、特に最近では、御承知のように、日本はECの要請等も踏まえながら、市場開放を積極的にやってきておる段階でございますから、そういう時期にまた新たにこれを二項に移行するというのは全くわれわれとしては理解に苦しむといいますか、了解のできないところであるということで、今日まで抗議をいたしておるわけでございます。最終的に果たしてガットで取り上げられるかどうかということはこの数日内で決定するわけでありますが、わが国立場は十分に鮮明にいたしておるわけでございます。
  246. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題につきましては、大臣も相当本提訴の回避のための努力をいろいろやられたと思うんですが、先ほどの御答弁によると、あしたですね理事会、大体取り上げられることになったんでしょうか、これは。
  247. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはあしたの理事会を見てみないと最終的にはわからないんですが、日本のわれわれの主張というものもEC側も相当判断をせざるを得ないんじゃないかと、こういうふうに考えております。
  248. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 五月末にウイリアムズバーグでサミットが開かれますね。サミットを前にしまして、ECだけではなくて、アメリカ自身にも相当いろいろな問題が起きてきているようであります。私の手元にあります、これは新聞報道ですけれども、いろいろな米国内の、これは一つの工場の閉鎖に際しましても、工場が倒産して工場を閉鎖する、それもやっぱり自由貿易の犠牲だとか、そういうことがずいぶん言われているようでありますし、また日本の製品を投資減税の対象から除外せいとか、そういうふうないろいろな議論が高まっているようでありますが、サミットを前にしてこういうふうな問題がまたまた加熱してきますと、またいろいろな問題が起きてくるわけでありますが、サミットを前にしてのこういうふうないろいろな動きに対しまして大臣どういうふうにお考えかお伺いしておきたいと思います。
  249. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま世界全体はもちろん不況でございますが、そういう中でアメリカ経済も徐々に持ち直しておることは御承知のとおりでありますが、しかし失業がヨーロッパあるいはアメリカ依然として深刻であります。そういう中で保護主義的な動きが具体的にあることもこれは否めないわけでありますし、フランスのああしたポアチエの措置であるとか、あるいはいま二十三条二項移行への動きであるとかあるいはアメリカの、ローカルコンテスト法の国会での審議であるとか、最近はオートバイに対するああした禁止関税的な措置であるとか、いろいろと出ておることは事実でありまして、非常に心配しておるわけですが、やはりサミットでわれわれ何としてもこの方向をはっきり打ち出してもらいたいのは、やっぱり自由貿易体制を堅持していくということではないだろうかと思うわけでございます。  したがって、今回のサミットでいろいろな問題が論議されると思いますが、基本的にはマクロ経済をどういうふうに立て直していくか、あるいはまた自由貿易体制をいかにして堅持していくか、あるいは東西の経済問題、あるいは南北の経済問題、エネルギーの問題、そういう問題が今回のサミットの議論になってくるであろう。具体的にはいま個人代表がいろいろと議題を詰めておりますから、その結果を待たないとはっきりわかりませんが、いま私が申し上げたような問題が当然議論になるべきものであろう、こういうふうに考えております。
  250. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 牛肉、オレンジの問題がなかなか解決しないわけでありますが、この問題に対してどういうふうにお考えかということと、それから何か今月の末には日米間で専門家協議が行われるやにも聞いているわけですが、この問題についてはどうお考えですか。
  251. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 去る一月の日米の首脳会談におきまして、農産物の自由化の問題については中曽根総理大臣から、日本の国情からして牛肉やオレンジの自由化はきわめて困難であるということをはっきり申しております。その際、しかしいずれにしても、来年の三月三十一日に牛肉であるとかオレンジのいわゆるクォータについては期限が切れるわけでございますので——協定の期限が切れるわけでございますので、それまでの間に日本アメリカとの間で事務的にあるいは技術的に農産物、特に牛肉、オレンジの問題をどうするかということについては話し合いをしようということになっておるわけであります。そうした日米の首脳会談に基づきまして現在、両国間で話が進んでおりまして、日米の事務レベルでの協議が近々行われる、こういうことになっておるわけであります。
  252. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この五月末のサミットでの日米間の首脳会談も予定されているように聞いているわけでありますが、これはアメリカ側はやっぱり農産物のいわゆる自由化という問題が焦点になってくるんじゃないかと思いますけれども、日本側としてはどういうふうにお考えなのか。また、中心の課題ですね、テーマ、それはどういうふうにお考えなのか。いま検討していらっしゃると思いますが、そこら辺のところはどうですか。
  253. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) サミットの前に日米の首脳会談が開かれるかどうかということは、まだ何も決まっておりません。行われるかもしれませんし、あるいは行われないかもしれません。日程が非常に詰まっておりますので、その辺のところははっきり申し上げられる段階でないわけでありますが、そうした問題とは別に、確かに農産物問題がアメリカにとりましてもあるいは日本にとりましても大きな課題であることは事実であります。特にアメリカ日本に対して農産物の自由化を依然として強く主張をしておりますし、日本は農産物の自由化に対してはこれはできないということを主張しておりまして、この点は平行線でございますが、しかし来年の末には少なくともオレンジやあるいは牛肉の協定の期限が三月三十一日で切れるわけでございますから、そうした状況も踏まえながらどういう両国で妥協点ができるのか、その辺のところについてはこれから事務レベルで話をしてみないと判断がつかないわけでございますが、いずれにしても日本としては自由化ということに対しては、これはわれわれ認めることはできないというのが基本的な立場でございます。
  254. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 サミット前にはちょっと無理でしょうね、やっぱり。サミット時にということでしょうね。  それから、他の先進諸国はいわゆる大量の失業やあるいは何といいますか、石油の産油国の輸入の減少ですかね、そういうようなものやいろんな問題が絡みまして、これは各国とも非常に貿易収支は大変な状況にあると私は思います。そんな中でわが国の経常収支は、やっぱり、最近のいろんな予測によりますと、二百億ドルぐらいの黒字になると、こういうふうに予測あるいは観測がされているわけでありますけれども、このことはやっぱり相当大きな問題になってくると私は思いますけれども、この点については大臣はどういうふうにお考えですか。
  255. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに日本アメリカ、あるいは日本とECとの貿易上のインバランスは、やはり相手国としてはどうしても問題にするであろうと思います。特に最近では輸出入とも日本の場合は昨年に比べますと落ちておりますけれども、しかし全体的に見ると、油の価格が五ドルも安くなったわけでありますから、そういう面で、いわゆるバランスから見ますと、黒字が伸びるということになるわけでございます。そうした問題は確かに問題意識として各国とも出てきておるわけですが、しかし貿易の問題は全体的に各国だけの、二国間の問題じゃなくて、全体のグローバルな立場でこれは論議をしなきゃならぬと思うわけでございますし、特にいまの油が、世界日本は油の輸入国でありますから、そうした油の輸入価格が落ちたということが大きな影響となってあらわれておるわけですから、そこら辺のところは十分わが国としての立場を主張していかなければならないと思うわけでございますが、いずれにしてもそうしたインバランスというよりは、日本の市場の自由化というものをどういうふうに進めるかということで、その点については御承知のような認証制度であるとか、あるいは輸入手続とか、そうした大幅な改善も行いましたし、また今国会で関税の引き下げ等も実行したわけでございますから、そういう点で日本がこの自由貿易体制を守るための努力をきわめて精力的にしておるということを、世界各国に認めさせなければならないと考えております。
  256. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 次に、総理の今月の末からですか、ASEANの訪問の問題についてちょっとお伺いしておきたいと思います。  中曽根総理は今月の末からインドネシアなどASEAN五カ国とブルネイを歴訪されると、こういうふうに聞いておりますが、特に今回の訪問に当たりまして、やっぱり総理が日ごろから東南アジア諸国を重視するというようなことを何回かおっしゃっておりますが、総理のお考えの中身につきましては外務大臣もよく御存じだと私は思いますが、重視する政策の中身ですね、これは大体どういうようなことをお考えになっていらっしゃるのか、あるいは現在検討していらっしゃることはどういうことを検討していらっしゃるのかということ、それから最近の新聞報道によりますと、ASEAN諸国からのいろんな要望等もずいぶん出ているようでありますが、こういう点も含めまして、今回の総理が歴訪されるASEAN諸国に関する政府のお考えをこの際お伺いしておきたいと思います。
  257. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) このASEAN諸国というのは、言うまでもなく、日本にとりましては隣人でありますし、同時にまた日本と同じようにアジアの国々であります。したがって、このアジア外交を積極的に進める、特に東南アジアに対して積極的な外交を進めるというのは、中曽根内閣としての基本的な姿勢でございます。そういう基本的な考え方を踏まえて、中曽根総理のASEAN訪問ということになるわけでございます。具体的にそれじゃどういう問題を話し合うかというのは、いまいろいろと検討はしておりますが、基本はやはりASEAN諸国との間の相互理解といいますか、お互いの信頼関係をより一層高めていきたいというのが、基本の立場に立つわけでございます。私はやはり日本の総理大臣とASEANの首脳との間が相互交流によって信頼関係が高まっていくというのは、今日の非常な国際関係が流動している中において、私は最もふさわしいことであろうというふうに思うわけでございます。特に話の具体的な内容としては、やはり日本の現在の進めておるところの日本外交、いわゆる平和外交の立場であるとか、あるいはまた防衛の基本的な方向であるとか、そういうものをやっぱりASEAN諸国にも知っていただくという必要があると思いますし、また経済の面につきましては、やはりASEAN諸国は最近の経済的には非常に厳しい状況に追い込まれております。日本はASEAN諸国に対しては経済協力の中では最も重点を置いておるわけでございまして、そうした経済協力もさらに進めていくというのが今回の総理大臣の訪問の具体的な内容としてこれから煮詰まっていくものである、こういうふうに考えております。
  258. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしても相互理解を深めることが大変大事なことだと思いますし、総理が向こうに行ってされるスピーチの内容等、こういうことをお話しをされるというような中身につきましてもある程度新聞に報道されておりますけれども、ぜひともこれは東南アジアの問題につきましてはやっぱり本当に力を入れて実行してもらいたいと思いますし、また現地の市場開放の要求等についても十分御検討いただきたいと思っております。  それからもう一点だけ、外務省関係をお伺いしておきたいと思いますが、これは新聞報道によりますと、アメリカ政府がココムの高級事務レベル協議というのを今月の二十八、二十九日パリで開催することを提案したという報道がありますが、この点について、その議題の中身としましても、先端技術分野の民生用工業製品等、石油天然ガス開発関連機材の対ソ禁輸が挙げられている、そういうふうに報道されておりますが、これもサミットを前にしてやっぱり重要な問題だと思いますが、アメリカ側としては西側の結束を図るのがねらいというふうに新聞にもありますが、これはいろんな問題が私はやっぱりあると思います。この点につきましてはどういうふうに対応されるおつもりかお伺いしておきたいと思います。
  259. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 東西経済関係、特に対ソ経済措置については去年以来いろいろと問題が起こってきておることは事実でありますし、アメリカが御承知のように対ソ経済措置を強化したいという考えを持っていることもこれは事実でございます。そういう中で、ココム等の強化も一つの議題となるわけでありますが、日本としましてはやはりこうした対ソ経済問題に対しては西側の諸国がやっぱり足並みをそろえる、一致結束をするというのが大事であって、ばらばらになったんじゃこれは意味をなさない。去年もヤンブルグの問題をめぐりましてアメリカとヨーロッパが非常に先鋭的に対立したことがあるわけでございますから、われわれ日本としましてはそうした状況の中にあって、少なくとも西側の諸国というものがまとまってこれに対処していかなきゃならぬ、こういうふうに考えて努力を重ねておるわけでございますが、ココムの議題については事務当局から答弁させます。
  260. 妹尾正毅

    政府委員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  ココムでやっていることにつきましては、関係国間の申し合わせによりまして詳細公表できないことになっているわけでございますが、ただいま大臣の御答弁にございましたとおり、アメリカがそういうふうな委員御指摘のような問題に非常に関心を持っているというのはそのとおりでございます。
  261. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に防衛庁関係でお伺いをいたします。  まず、大臣にお伺いをいたします。これはいままで何回も議論をされている問題でありますが、防衛関係費のGNP比一%以内の枠という問題につきましては、これは予算委員会とかいろんなところで何回も議論になっておりますし、大臣のお考えも何回かお述べになっていらっしゃいます。そこで、この問題につきまして昭和五十一年の十一月五日、「当面の防衛力整備について」という国防会議及び閣議の決定があるわけであります。これはもう大臣も御存じのとおり、「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」と、こういう閣議決定があるわけでありますが、まあこれいろいろ議論はありましょうが、少なくともこれは広く国民のコンセンサスを得ているんじゃないかと、私はこういうふうに考えているわけでありますが、大臣はこれをどういうふうにお考えでございますか。
  262. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 五十一年の決定でございまして、すでに数年経過をいたしておるわけでございまして、その意味では国民の間にも相当この閣議決定事項というものはある意味で防衛力を考えますときの最も基本的な考え方一つとなってきておることだと思っております。  なお、この問題につきましては、いま一%という問題だけが、言うならばそこまで国民に御理解をいただいておるわけでございますが、一%という事柄について、これが決定をいたしました昭和五十一年当時は実はそういうような確たるいわばメルクマールに当たるものがなかったためにこういうものをつくることがよろしいんではないかと。ちょうど防衛力の整備について防衛計画の基本にかかわる大綱を決定をいたした年でもございましたので、その当時そういうことでこの閣議決定を見たわけでございますが、ただいま申し上げたような経過を経て国民の間に何らかの防衛力についての一つの枠のようなものがあってしかるべきであって、その枠は当時のこの決定ということが相当広く御理解いただいてきていると思っております。  なお、防衛庁長官として私は、一つにはここ最近の自由主義経済の落ち込みが相当長期にわたったということもあってか、わが国の財政のポジションが意外にこのところ厳しくなっておりまして、その意味ではついせんだって国会で御承認いただきました五十八年度防衛費におきましても、その総額においてこの一%の水準に近づきつつあるということは事実であると、こう考えて感じておるわけでございます。
  263. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣もいろいろおっしゃっておりますように、これはいろんな新聞社の世論調査によりましても、今後の防衛費のあり方をめぐっての世論調査の中で、これまでのGNP一%以内の枠を守るというのが六七%もあるわけですね。そういうような意味では私は少なくともコンセンサスを得られていると、そういうふうに思っているわけであります。  それで、これは少なくとも最近の政府の姿勢は、大臣も後段の方でいろいろおっしゃっておりましたが、GNP一%の歯どめをこれはやっぱりなし崩しにしたいというふうな、あるいは日本の経済成長も大分低成長になってきたし、安定成長というんですか、低成長になってきたんで、このままではこの歯どめでは一%の枠を突破するのがこれはもう確実になってきたと、そういうふうな感じがいろんなところでやっているわけでありますが、これはたとえば防衛局長の答弁やそういういろんな答弁が予算委員会等で何回もあったわけであります。それで、その新聞報道がなされたのが幾つかありますが、要するにGNP一%の歯どめがもう効かなくなってきたというふうな意味の答弁が、これは五十八年の二月十八日、二月二十八日等、GNP比の枠をやめるとか、いろいろな見出しの新聞報道がなされております。二月の中旬から下旬にかけて新聞に相当出ているわけであります。それに対しましていまの六七%という、いわゆるGNP比の一%以内を守れといういわゆる世論調査ですね、これは三月の二十一日ごろ行われているわけであります。といいますのは、結局国民はいま政府が何とか一%の歯どめを取り払って防衛費をもう少しふやしていきたいという考えに対して、やっぱり国民は一%以内でいいじゃないか、そこら辺で何とかやりくりをしてやっていくべきじゃないか、そういう国民の気持ちがあらわれているんじゃないかと私は思うんですけれども、こういう点については大臣どういうようにお考えですか。
  264. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) この一%に関する昭和五十一年の閣議決定は、私は現在のところ変える必要はないと考えておるわけでございます。しかしながら、反面、いまこの時点では何といってもまだ五十八年度予算が成立した直後の時点でもございまするし、したがって五十九年の防衛総費をどういう形で編成をすべきだということについてまだ確定をいたしておる時点でもございませんし、さらには経済の状況がどうなるかということについては、まだまだこれから相当の時日を要さないと——本年度後半の動きも実はつかみ切らないわけでもございます。したがって、いまここの場所で見通しを申し上げることは困難であることを御理解をいただきたいと存じております。  しかし、そのことを離れまして防衛費についての問題につきましては、国民の多くの方々の間に先ほど来申し上げておりますような、何かやはり一つの枠がある方がよろしいんではないかという考え方もございましょうし、それから日本国内だけでございませんで、国の外から見た場合には、やはり経済大国である日本の国が無限に防衛費を伸ばしていくというようなことがもしあるようなことでもあれば、やはり必要以上の摩擦というか警戒心といいますか、そういうものを特に東南アジアを中心といたしました近隣諸外国に与えることもあり得るかもしれませんし、そういう意味から申しても恐らく日本国民の多くの方々の御判断は適切な防衛費と、それがどういう意味合いになるかちょっと私自身も別に確たるものを持って申し上げているわけじゃございませんが、というようなことを期待しておられるのが大半であろうかと思います。ただ、前段に申し上げさしていただきましたように、五十九年の概算要求の時点でどういう形になるであろうかとか、あるいは政府原案が五十九年度予算に関してでき上がった時点でどういう形になろうかというようなことについての見通しは、いまこの時点で申し上げにくいということを御了解をいただきたいと、こう考えております。
  265. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣のおっしゃる意味はよくわかりますし、いまの答弁は大臣おっしゃられたとおりでありまして、一%の枠をはみ出して、また枠がなくなったりしてしまいますと、東南アジアの皆さんやいろいろな人たちから見るとやっぱり心配な点があるというのも事実だと私は思います。  そこで大臣、これはもしこの一%の歯どめがたとえば守れないと、あるいは歯どめを取り外さなければならないというふうな時点が出てきた場合、これはどうするかという問題があるわけです。それで、私はやっぱり一つは、これだけ国民からもGNP一%の枠というのがある、あるいはそれを守れという国民の声もあるわけでありまして、それを取り除くということになればこれは非常に重大な政治的な問題にもなると、そういうふうに考えますが、大臣はどうお考えですか。
  266. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 幾つかの問題でございまして、一つには、やっぱり国の独立を確保し安全を保っていくためには、防衛費というものはそのときどきの情勢によっても固定的に考えるわけにいかない要因もございまして、そういうような基本的な考え方もございますが、同時に、ただいま申し上げましたような、全くその歯どめという言葉は当たらないのかもしれませんが、全然めどのないような防衛費の無限の拡張ということも、これも現在の日本の国のとっておりまする国策から言って許されるべきものでもないし、恐らく憲法もそういうことを期待しているとは全く考えられないと思いまするし、そういうことから考えましても、おのずから一つの限度というものができてくると思います。この一%の問題に関しては、五十一年の閣議決定ではございますけれども、もしこれを何らかの形で変更を来さねばならないような状態になったときには、改めてそのときに考えるということを私は基本といたしておるわけでございます。
  267. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはちょっとつかぬことをお伺いしますが、GNPの一%枠という場合ですね、これは予算ベースですね。きょうは決算委員会ですから、決算ベースと予算ベースと考えた場合に、これは要するに大分違うと思うんですね。そこら辺のところは、もう数字の面では、時間ありませんからちょっと申し上げますが、大臣、予算ベース、決算ベースで考えた場合に大分違ってくるわけです。たとえば、きょうは昭和五十五、五十六年度の決算をやっているわけでございますが、五十五年度の予算ベースでいきますと〇・九〇ですね、それで決算ベースに直しますと〇・九四、五十六年度の予算ベースでいくと〇・九一、それで決算ベースでいくと〇・九六でございまして、決算ベースでいきますと、もうぎりぎりいっぱいのところまで来ておるわけですわ。これは本当に、ここは私の手元に五十六年度までしか資料ございませんが、五十七年度あるいは五十八年度ということになってまいりますと、大分内容的には変わってくるかもわかりません。そういうような問題もあるわけでありまして、また、先日の予算委員会における公聴会でも、これは大臣もお聞き及びのことと思いますが、この「軍事費算定方式に関してNATO方式をとるなら、すでにわが国の軍事費は〇・九%ではなく一・六%を超えている。」という公述人のお話もあるわけでありまして、非常にこれはいろんな問題をはらんでいると私は思います。  そこで最後に、この点についてお伺いしておきたいんですが、大臣の、「防衛アンテナ」の「防衛庁長官年頭の辞」というのがありますが、これもここで全部読み上げませんが、勇ましいですな、とにかくこれ。これ読んでおりますと、本当に勇ましい限りでございまして、とにかく防衛庁長官になると、やっぱり国防の基本方針とか、いままでわれわれが内閣委員会なんかでずいぶん議論をいたしましたけれども、そのときにはいつも国防の基本方針とか、たとえば、当面の防衛力整備実施上の方針とか、留意事項とかいうのがありまして、そういうようなのを読んでまいりますと、すべて国防の基本方針では国力、国情に応じ、自衛のための必要な限度においてということで、国力、国情に応じということはどういうことかということでずいぶん議論もいたしましたね。それで実際問題として、その国力、国情に応じの中身については、そのときのそのときどきにおける経済、財政事情等を勘案しというふうな問題も全部入ってくるわけですね。ところが実際問題、大臣のこれ見ておりますと、経済状態とかそんな厳しい情勢にありながら、防衛費だけはがっちり獲得していこうというふうな感じでは、ちょっとこれほんまに行き過ぎのような感じもするわけであります。そういうような意味では、大臣の立場としてはそれでいいかもしれませんが、国民が見た場合には、やはり財政事情、みんな福祉を削られ教育費を削られ非常に厳しい情勢の中にあるわけです。確かに防衛費を拡充しなきゃならないという事情も十分わかります。しなきゃいけませんが、余り行き過ぎてしまっても困るわけでありまして、そこら辺のところは十分やっぱりお考えになってこれから対応していくべきではないか、そういうふうに思いますが、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  268. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 幾つかの御指摘と御意見も含めてありがたい御判断もちょうだいいたしたわけでございますが、五十八年度予算に関する限り、まずもって申し上げさしていただきますと、実は、私はがっちりというような表現は一度も使った覚えはないんでございます。むしろ私といたしましては、ぎりぎりの努力をしたというのが真相でございまして、わが国は独立国であり、かつ、と同時に、国際社会を構成している一員でもございます。しかも自由主義陣営にも属しておるわけでもございますが、という意味でも、今日の国際情勢から言いまして、西側諸国それぞれ国内にいろいろな経済的な苦しみ、あるいは社会的な問題を抱えながらも、それぞれの防衛努力をみんないたしてきておる。それはやはり抑止の効果のためには、信頼性を回復するためにやらざるを得ない施策だとしてとっておることだと思います。そして、五十八年度、前総理のお言葉をおかりすれば、財政的には危機的な状況に立ち至ったわが国の財政の中ではございましたけれども、しかも、いまだかつて経験をしないゼロシーリングあるいはマイナスシーリングという各省庁の大変な努力の中でございましたが、特にわが国として果たすべき防衛努力の整備という意味から言いましても、実は先ほど申し上げましたようなぎりぎりの努力をしたということが実感でございまして、このことは恐らく財政当局も同じように感じておるんじゃなかろうかと思っております。  それから、今後の防衛費でございますが、先ほどNATO方式と比べたらという御意見もございましたが、それぞれの国にはそれぞれの過去の経緯もございまするし、法制上のいろんな問題もございますので、どこの制度とどういうふうに比べたらどうなるというような的確なとらえ方というのはなかなかできないだろうと私は思います。したがって、日本としてはやはり日本としてわが国をみずから守るためにどういうような体制が必要であるかという判断から、わが国の防衛費というものは当然考えるべきだと思っておりますが、そのときに、やはり国の財政的な事情、あるいは経済の情勢、あるいはそのときどきの他の国の施策とのバランスも考えながら、おのずと生じてまいりまする必要最小限度というところではなかろうかと思っております。その意味では、われわれといたしましては、これから選択の幅というのはそれほど幅は広くはないとは思いますけれども、御指摘いただきましたような無限に防衛費を伸ばしていくというような、そういうような意味合いでない観点からも、御指摘の問題につきましては心いたして予算の編成時において努力をいたしていきたい、こう考えております。
  269. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それではもう時間がなくなりましたんで、まとめて二つ、三つお伺いしておきたいと思います。  一つは、大臣、これは大臣のいまのぎりぎりいっぱいと、ここに確かに「ギリギリ」となっておりますが、これもやっぱりいろいろ問題があるわけですよ。しかし、大臣のおっしゃる、ここに書いておりますように、厳しい財政事情の中で獲得をした防衛予算である。「一艦、一機にいたるまで、国民の血税がこめられているのであって、これを大切に、大切にいたして」と、こうありますが、そのとおりでございまして、大切にしていただきたいと思っておりまして、そこで大切にしていただくためのまず第一として、瑕疵担保の問題について一つお伺いしておきたいと思います。  これは、最近非常に高い航空機を購入しているわけですね。F15とかE2Cとか購入しているわけでございますが、新聞報道によりますと、E2Cにしましても、二機導入したあれがエンジントラブルでどうのこうのとか、それからF15にいたしましても垂直尾翼がどうもおかしいとか、ずいぶんいろんな問題が出ておりますが、こういう問題と絡んで瑕疵担保の契約はどういうふうになっているのかということを一遍これはがっちり何かのときに議論をしなきゃいけませんが、聞いておきたいと思います。  これは、特に最近の技術開発によりまして材料なんかも相当よくなってきておりますね。素材の研究が相当進んでおりますし、中身が内容的には充実してきていると私思いますね。そういうような意味で、要するに従来何年になっているのかわかりませんが、この決算委員会でも、あれは航空機ではありませんでしたが、一遍ここで問題になったことがあるんです。護衛艦の「きくづき」が事故を起こしたときに、その瑕疵担保期間が一年間で云々ということで、それが過ぎた後事故があって問題になったことございますが、こういうような航空機の瑕疵担保の期間とか契約の中身とか、そういうのはどういうふうになっているのか、これ一遍ひとつ聞いておきたいと思います。それが一つ。  それからもう一つは、これは大臣、最近非常に国内の景気も冷え込んでまいりまして、御存じのとおり工作機械にしましても、たとえば自動車にしましてもそうですが、いろんなものが相当原価が安くなっています。相当切り込んでいますね。建設資材にしても、あるいは住宅、ビル、そういうふうなものにしましても、とにかく公共事業の発注状況にしましても単価がものすごく安くなっています。そういうふうな中で、防衛庁関係のそういうふうなしぼり込み、どういうふうにやっているのか。たとえば三菱重工に対して二百億——実際は三百億ぐらいあるんでしょうが、三百億発注していたら、値段が毎年同じように上がるというんじゃなくて、私はいまのいろんな経済情勢、たとえば鉄鋼とか、そういうふうなものの値段の動向からいたしますと相当しぼり込みができるんじゃないか。一割や二割なんてしぼり込みなんというのはもういまありませんね。もう三割、四割、ひどいのは五割です。そういうふうな状況の中で、いわゆる予算を大事に使うという意味では、自動的に機械的に値段が高くなるというんでは困るわけですね。そういう面からいきますと、もっともっと僕はしぼり込みがいけるんじゃないか。そこら辺のチェックは一体どうなっているのか。実際に私、具体的に資料がありませんが、これは相当しぼり込みができる。同じ予算の中でもっとたくさんのものが買えるし、もっといいものが発注できると思うわけです。そこら辺のところはやっぱり相当これは予算を大事に使うという意味からも、相当やっていいんじゃないかと思うんですが、この二点、一遍装備局長さんから一たん御答弁をいただいて、後ほど長官から返事を、御答弁をいただきたいと思います。
  270. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 最初に私、原則論のようなものだけ申し上げさしていただいて、あとは担当局長から答弁さしていただきます。  御指摘のごとくでございますが、と同時にまた現状から申し上げますと、三月三十一日をもって年度が終わるわけでございますが、特に調達に関してはもうぎりぎり——しょっちゅうぎりぎりという言葉ばかり使って恐縮ですが、ぎりぎり年度いっぱい使って、三月三十一日から四月一日にかかるぐらいまでかかって、いま先生御指摘——「しぼり込み」というお言葉をお使いになられましたが、確かに相当この問題につきまして心いたして交渉した結果に、契約というのはやっと成立をいたしておる実態だけちょっとお伝えさしていただきまして、あと担当政府委員から答弁をいたさせます。
  271. 木下博生

    政府委員(木下博生君) ただいま先生の方から航空機を例に挙げて、瑕疵担保責任についての御質問ございましたが、まずトラブルのあったことについて最初にちょっと御説明さしていただきますと、E2Cをことしの初め木更津に陸揚げして、その木更津から三沢の方へ輸送します際に、エンジンオイルの温度が上がって松島基地に着陸したということがございましたが、これは調べましたところ全く機体に異常があったものではございませんで、高空の、特に非常に寒い気象条件によって起こったということで、普通の飛行操作をやればそれは温度は正常に戻せるということがはっきりいたしましたので、そのまま三沢へ飛んだわけでございまして、これは特に購入した機体に欠陥があったということではございません。  それから、F15につきまして先日アメリカの方で点検をいたしましたので、これは水平尾翼の油圧シリンダーの部品に一部アメリカでひび割れが見つかったということもありまして、その旨米国政府から通告がありましたので、直ちに防衛庁の持っておりますF15についても点検をいたしましたが、異常は認められておりません。アメリカの場合には七百時間以上飛んだものについて点検するということだったんですが、自衛隊の場合にはまだそこまで行った飛行機は一機もございませんが、全機について現在点検して異常がないということを確認しております。それで、その際、自衛隊の場合には常時予防整備という形で重要部品については点検をいたしておりますので、もしそういう際に欠陥が発見されれば処置するということになろうかと思います。  それで瑕疵担保責任についてでございますが、まず国産で航空機をつくります場合には、先生先ほどおっしゃいましたように一年ということになっております。それから、アメリカからE2CのようにFMS契約で購入いたしました場合には、アメリカ政府アメリカの企業から航空機を購入して、それを日本に引き渡すという形になっておりますので、アメリカアメリカの企業との間で結んだ契約条件に従ってそういう責任を企業に負わせるというような形になっておりますので、その条件がそのまま日本が米国政府から購入される場合に適用されますので、購入に当たって特に欠陥のものがあったために、購入いたしました防衛庁サイドで支障を生じる。あるいは損害を受けるというようなおそれはないと考えております。
  272. 三治重信

    ○三治重信君 まず第一に、外務省の五十四年度決算について、五十五年度決算についてという説明書きの中で、経済開発等援助費の前年度からの繰り越し、これが五十四年度で前年度からの繰り越しが百八十三億二千百二十万円、五十五年度で二百六十九億三千六百二十七万円と、こういうふうにふえているわけなんですが、これはいろいろの事情があって繰り越しされたことと思うんですが、これの主な理由と、どこに支障が——支障というんですか、繰り越しをした主な理由をひとつ御説明願いたいと思います。
  273. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 先生御指摘のように、五十四年度、五十五年度の決算報告書におきまして    〔委員長退席、理事和田静夫君着席〕経済開発等援助費で大幅な繰り越しを行っております。  この経済開発等援助費と申しますのは、いわゆる私どもが無償資金協力と呼んでおります協力の形態でございまして、これは開発途上国に対しまして無償で建物を建ててあげましたり機材を供与したりする協力でございます。具体的には、相手国と予算が成立いたしましてから具体的なプロジェクトを決めまして、それから相手国と折衝いたします。それから最終的には交換公文という形で両国政府間の合意を確定いたしまして、それから具体的な建物の建設なり機材の供与を行うわけですが、どうしましても時間がかかります。したがいまして、結果といたしまして工事が、特に建物の場合そうでございますが、一年以内に完成しないという状況が生じまして先生御指摘のように大幅な繰り越しが生じているという状況でございます。特にいまの無償資金協力は大体三分の二が建物でございまして、三分の一が機材でございますが、特に三分の二の建物に関しましては、どうしてもいま申し上げましたように、政府間で合意を見まして、それから具体的に建物が完成するまで全部一年以内に終わらすということは非常な困難がございます。したがいまして、やむを得ず繰り越しをしておりますが、一言つけ加えさせていただきますと、繰り越しをいたしましたものに関しましてはほとんど全額使っております。具体的に申しますと、全体として二年単位で見ていただきますと、若干の例外はございますけれども、ほぼ予算は消化させていただいているということでございます。にもかかわらず、いま申し上げたような困難はございますけれども、私どもといたしましてはできるだけ繰越額を減少させたいと、こういうふうに考えておりまして、いろいろの事務的な検討は行っております。  以上でございます。
  274. 三治重信

    ○三治重信君 何というんですか、こういうふうな外国との関係のもので、単年度主義の予算から無理が来ているんじゃないかと思うんですよ。簡単なものならいいけれども、だんだん金額も多くなり、それからいろいろ交渉や準備に手間のかかる援助になると、それは単年度というものは無理だろうと思うんですが。それと、そういうふうになるとしても、ほかの防衛庁の予算の消化のために何年かかかるようなやつは何か債務負担行為とかなんとかいってやっているわね。そういうことは、この中にはこれらにはいまの繰り越しとは違うんだけれども、    〔理事和田静夫君退席、委員長着席〕そういう制度は、この海外経済開発の援助費の中で、債務負担行為で枠を取っておくというような、それほどまだ大きな開発援助というものを考えているということはないんですか。
  275. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 先生まさに御指摘のように、私どもも、建物でも特に大きな建物になりますとどうしても二年ないし三年かかりますので、国庫債務負担行為ということで今後やっていきたいと思っております。それがまさに先生御指摘のように繰越額を減少さすというふうに考えておりまして、先ほど私ができるだけ執行率を上げると、つまり繰越額をできるだけ少なくするようにいろいろ検討していると申し上げましたが、その一つは、国庫債務負担行為の一層の活用ということを念頭においていた次第でございます。  具体的には、たとえば中国で現在中日友好病院というものを無償資金協力で建てておりますが、これはすでに国庫債務負担行為でやらせていただいております。これは昭和五十六年度より三年間で建設をしています。それからスリランカにも病院を国庫債務負担行為でやっておりますが、これも五十六年度より三年間です。それからそれ以外にも、私ども毎年数件、特に大きな建物につきましてはできるだけ国庫債務負担行為を活用していきたいと考えております。
  276. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、もう現在でも国庫債務負担行為で無償援助をやっているんですね、予算上も実際上も。そうすると何というんですか、金額もまだ全体から見ると二百六十一億でそれほど多いとも思わぬのだけれども、繰り越しした主な国ですか、援助、建物の二、三、ひとつ挙げてください。
  277. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 私、ここに五十四年度と五十五年度に繰り越しをいたしました国の一覧表を持っておりますけれども、一言で申し上げますと、軒並み繰り越しを行っております。それは、先ほどちょっと申し上げましたように、無償資金協力の大体三分の二は建物でございまして、建物を年度末までに完成させるということは実際上は非常に困難でございまして、私どもとしてはできるだけ先ほど申し上げました政府間の交渉を早くまとめて交換公文を結んで、できるだけ早く工事を始めたいと思っておりますが、にもかかわらず、どうしてもその年度末までに建物が完成しないという状況でございまして、たとえば国で幾つか、ここに表がございますので申し上げますけれども、ほとんど軒並みでございまして、たとえば五十四年度の予算につきまして申し上げますと、ASEANなども一律にございまして、たとえばタイなどは二つの案件につき繰り越しておりまして、額としては十七億円強でございますし、それからフィリピンに関しまして十二億円弱、それからこれはASEANでございませんけれどもバングラデシュに関しましては二十二億円強ということでございまして、国の名前にいたしましてもかなりの数が繰り越している。これはくどいんですけれども、必ずしも全部相手国の責任ということではございませんで、私ども先ほど申し上げたように、できるだけ早く交渉をまとめはいたしますが、交渉がたとえば年央にまとまれば、あと半年で建物を完成させるということは残念ながら無理でございまして、どうしても翌年度に繰り越すという状況でございます。
  278. 三治重信

    ○三治重信君 大臣ですね、僕は何も繰り越しを悪く言っているわけでも何でもないんで、これは、ことに第三国や低開発国の援助については、やはりむだ遣いを省くために相当慎重にやってもらいたいと思うのです。昨年も東南アジアの国へ行って経済援助をどうだと言ったらその担当官なんかは、こちらが一生懸命やると相手の方がみんなこっちでやってくれる、全部いわゆる据えぜんでやってもらえるようなことを考えている。向こうで自主的にやるように、本当から言えば援助だからね。タイ国ならタイ国、インドネシアならインドネシアで、自分の方の国で向こうの役人なり団体がきちんと計画しこういうようにやってくれと、そしてこれでどうだと言ってきて初めていやここがまずいとか、これはちょっとむだじゃないかというふうに注文をつけて、日本の在外公館の人が言うぐらいだとわりあい楽なわけなんだけれども、いまおっしゃったように、予算を何とか単年度で消化しようとすると、一たんできると早くやれ早くやれとこういうふうになります。ところが、こちらの方の在外公館も二、三人しかいない。しかも、それは専任じゃなくてかけ持ちでやっているということからいって、急ぐというと今度は向こうでこちらが全部やらぬと仕事が進んでいかないというようなことも聞いたわけなんですが、こういうようなことは第一線の担当官の悩みなわけなんです。大使とか公使というのはなかなかそこまで通じないんじゃないかと思うのですよ。  そういうことについて、ひとつ余り急ぐとまたむだ遣いになる可能性がある。そうかといって、こちらの方でみんなおぜん立てをして事務的なことをずっとやってしまうと向こうの担当官は左うちわになり、それで成果だけはもらうというようなかっこうになって、その点が非常にむずかしいようですね。だから、この点ひとつ援助担当官の苦情もよく聞き、それから相手の国の行政官や何かの能力ですね、具体的な。向こうでも上の方の人は非常に能力があるけれども、実際の事務担当者になってくるとずっと事務レベルが落ちるようなんですね。その点の調節をよっぽどやらぬと、海外援助協力というものはどうなんですか、十分な効果が発揮できないんじゃないかと思うのですが、そういうことについて私はちょっと感じたんですが、いかがですか。
  279. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 先生御指摘の点はまさに一番の重要な点でございまして、先生まさに御指摘されましたように、援助というのは日本が一方的に全部めんどう見て相手にやってあげられるものではございませんで、やはり相手側の自助努力と日本側の援助努力が一体になりまして初めて効果を発揮できるものでございます。私どもといたしましてはそういう点を常に頭に置いて、ASEAN各国その他の開発途上国と対応しておりますけれども、やはり相手側の発展段階に応じまして、ASEANの中でも、たとえばシンガポールのようにかなり発展段階が進んだ国におきましては私どもが予期した以上な対応をしてくれる。ところが、先ほどもちょっと触れましたバングラデシュのように、これはASEANではございませんが、発展段階の非常におくれた国におきましては、なかなか私どもが注文しているような自助努力もしてくれないという差が残念ながら生じてきておりますけれども、私どもとしては、そういう相手側の発展段階も十分加味して、相手側の自助努力と日本側の援助努力が一体になって効果を上げるようにさらに努力してまいりたいと思っています。  その際の隘路は、先生御指摘のように、現地の担当官の数が足りないとか、いろいろ実は隘路がございますけれども、何につけても本省と出先の公館の意思疎通をよく図る必要があると思っておりまして、つい先日もタイにおきまして、アジアの実際に経済協力を担当しております担当官を集めまして経済協力指導会議というものを開きまして、いろいろいま先生御指摘のような注文も現地の公館からその際いただいております。私どもは、そういうふうに常に現地の実際に第一線で苦労して経済協力をやっている方々と意思疎通をよく図りつつ、問題点を克服しつつ、できるだけ有効な援助をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  280. 三治重信

    ○三治重信君 じゃ、もう少し具体的な援助の中身についてやろうかと思ったんですが、ちょっと次の問題があるものだから、後回しにします。  それで、ひとつ、つい最近第三回日ソ事務レベル協議が行われたわけなんですが、新聞にこの事務レベル協議の内容報道されたのによりますと、ソ連からはグロムイコ第一副首相が、「ソ連の指導者は代わったが、対日政策を含めたソ連政府は不変だ」というふうなコメントがあったようなんですが、実際協議をされて、その点はソ連は指導者はかわったけれども、特別ソ連の対外政策、対日政策というものは別に変わったと思わぬか、若干はともかく変わる姿勢があるのか、その点の感触ですね、御説明願いたい。
  281. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) 三治先生御指摘のとおり、今回の協議を通じまして、ソ連の対日政策には全く変化がないという印象を私は受けました。ただ、言葉遣い、表現等につきましては、アメリカに対しては従来よりも一層厳しい表現を使い、日本に対しては、もちろんこれも厳しい表現ではございますが、主として日米安保の関連日本を非難すると、こういう論法をとったところが若干ニュアンスの相違ではないかと、かように感じられました。
  282. 三治重信

    ○三治重信君 それから、ソ連から核不使用協定を結ぶ用意があるということが出て、外務省日本は当然拒否した。これはまあ当然だと思うんですが、こういうのは前の、何といいますか、善隣友好条約というような性格の関連もあるのか。こういうようなのは、善隣友好条約というのは何というんですか、アフガニスタンやそれからもう一つ中東の方で、イラクかなんかでやっておったんですね、まだほか二、三カ所。アフガニスタンは善隣友好条約を盾にされて、ソ連は軍隊を派遣する正当な権利を得たようにやっているということもあったんですけれども、そういうようなことと関連して、核不使用協定というのは、ソ連はアジアの国やほかの国とこういうような協定を結んでいる実績はあるんですか。
  283. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) 核不使用協定につきましては、昨年以来ソ連日本に対し、日本が非核三原則を維持するならば、ソ連日本に対して核の先制不使用を約束する用意があるというようなことを言っておりまして、今回のカピッツア次官の訪日の際にも同じような発言がございました。これに対する日本側立場は、御案内のとおり、国連憲章上、核であろうと、非核であろうと、武力を使わないということはお互いに約束し合っている問題である。これを改めて非核三原則というような前提条件づきで合意する必要はないと考える。しかも、核の問題につきましては、核兵器保有国がその責任を持って核軍縮を行う、そういう行動面における実態的な裏打ちのない限り、このような約束は絵そらごとに終わるおそれがある、まずソ連は核軍縮を進めるという行動でその誠意を示すべきではないかと、かような応対をしたわけでございます。  ソ連側のねらいは、ただいま三治先生の御指摘にもありましたとおり、従来からソ連が主張しております善隣協力条約、あるいは極東における信頼醸成強化措置、さらにはアジア安保構想、こういった一連のソ連の対アジア政策の一環として日本側に提示したものであると考えております。核不使用の問題につきましては、すでに国連等の場でソ連はこの問題を何度も提起しており、一種の宣言をしているわけでございます。はっきりしたことはわかりませんが、中国との間にもそのような話は進めているというようなことを申しておりました。ただし、これが現実の合意になっているかどうかは、私ども詳細は承知しておりません。
  284. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、善隣友好条約みたいに実績はないと、不使用協定というのはソ連の外交政策として持ち出されておると、まだそういうことで二国間なり何か協定をやった実績はないわけなんですね。
  285. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) 第三国同士のことについては私どもはとやかく申すべき問題ではないと思いますが、事日本に関する限り、非核三原則というのは確立された国是でございます。ソ連側のそういう外交政策の一環として非核条約と核先制不使用との取引と申しますか合意というようなものを当面日本としてはやる必要もないし、またそういうことをする立場にもないということは先ほど御説明申し上げたとおりでございます。
  286. 三治重信

    ○三治重信君 それから南北朝鮮クロス承認案の問題が報道されておりますが、これは何と申しますか、最近になってアメリカの方からの報道が若干あって、それでこれが話題になったのか、それとも日本の方で今度新しく用意して問題にしたのか。と申しますのは、何と申しますか、ヨーロッパでは東ドイツ、西ドイツで結局クロス承認が成功して現在のような安定をした状態になったわけなんですがね。しかも、これは東西ドイツの国境線と同じようにヤルタ協定で三十八度線が決められて、米ソが二つに勢力範囲を分けたわけなんですが、これに対してアメリカの方は非常に何といいますか、いままではそういうことについて何も言ってないやつが、最近そういうクロス承認の方針をアメリカの方がつくったのか、日本がイニシアチブをとってこれをやろうとしているのか、その点はどちらなんですか。
  287. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) クロス承認の問題は、むしろ韓国側から提起されたということであります。私も韓国から直接にそういう話を聞きましたし、また韓国がアメリカに対して打診をしたということも聞いておるわけなんです。しかし、これは日本としては、朝鮮半島緊張緩和に資するならばそれも一つの方向だと、こういうふうに思っておるわけなんですが、御承知のようにソ連はこれに対して拒否反応を示しておる。同時に、肝心の北朝鮮そのものが反対の意向を表明をしておる。中国も必ずしも同調する姿勢でないわけですから、情勢としては私は、韓国としても恐らく南北両鮮の話し合いということももちろん基本ですが、同時に朝鮮半島緊張緩和ということを踏まえた中での韓国の提起であろうと思いますけれども、現実性としては、具体性としては非常にむずかしいと、こういうふうに現在では判断しております。
  288. 三治重信

    ○三治重信君 大臣のおっしゃるように、事前の相当の根回しがそうなくて急に上がったような気がして、韓国の発案だということなんですが、わが国としても、これについてやはり西ヨーロッパの、東西ドイツの相互承認で一応安定をしているところを見ると、極東のこの三十八度線というのは、やはり安定化さすためには、当面こういうような相互承認というのがわが国にとっても非常に国益になるんじゃないかと思うんです。それには、ソ連中国がやはり賛成に回ってこなくちゃいかぬわけなんですが、この主な障害、ソ連がなぜに、東西ドイツのときには積極的に東ドイツを承認してもらって、両方とも国際機関に入れようというのは、あれはむしろ東ドイツやソ連側が先に主張したことで、西ドイツの方がむしろ非常に消極的だったと思うんですが、今度は逆に韓国が主張をして、ソ連中国は消極的だと。しかもこれ戦後もう四十年近くなろうとしているのに、まだ韓国と北朝鮮だけは国際機関にも入れない。これは何とか準備——事実の変更というよりか、現在の状況を安定的に認めていくということの方が平和を維持するのによりベターじゃないかという、理想よりか現実を先行さすと、こういうことで、やはり中国ソ連を日米で相当説得さす何かいい方法が考えられないものかと思うんですが、ヨーロッパの状況等を考えてみると、どこがそういう彼らがそれは嫌だという主な原因か、それらについてひとつ見解を述べていただきたいと思います。
  289. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も、いまの朝鮮半島緊張緩和ということで役立つならば、現実的な方法としての一つクロス承認というのもあると思うわけでありまして、それなり日本がもし可能性があるなら努力はしなきゃならぬ、こういうふうに思っておるわけでありますが、しかし肝心の北朝鮮が、やはりあくまでも南北両鮮の統一ということを考えて反対をしている、そうしたやはり北朝鮮考え方が、恐らくソ連とか、あるいは中国にも反映をいたしておるであろうと思っておるわけでありまして、北朝鮮があくまでもその主張しているようないわゆる高麗民主国ですか、そうした形での統一というものを目指して、そうしたクロス承認というのはかえって南北の対立といいますか、亀裂を深くして、むしろ民族の統一からほど遠くなるというふうなことを言っておるわけでございます。  それはそれなり一つの——もちろん韓国としてもそうした民族統一を願っておるわけですから、そうした理想という面においては問題はあるでしょうけれども、現実的に緊張緩和を行って、そして統一に一歩近づくという現実的な方法としては一つ考え方じゃないかと思うわけですが、何分にも東西両ドイツとは違って南北間の緊張も相当厳しいものがありまして、なかなかいまそこまでの状況には至ってないというのが今日の実態であろうと、こういうふうに判断しております。
  290. 三治重信

    ○三治重信君 それから、この極東へのSS20の配備の問題についてももう議題になっているようなんですが、これはやはり米ソの核軍縮のやつで、アメリカは極東にも配備されるSS20についても一括して討議をするというふうに言ってるんですけれども、そういうことについて何というんですか、やはり中心はヨーロッパのSS20対アメリカの新しい中距離ミサイルを配備するかしないか、配備しないで協定ができるかどうかという方が中心になってしまうんじゃないかと思うんですが、それ本当に、米ソの戦略核兵器ばかりでなく中距離、こういうふうなSS20の問題も米ソ全体としての協定になるような方向で核軍縮は進んでいるんですか。またそういく予想なんですか。あるいは西ヨーロッパだけ先、協定ができて、シベリアや極東はまだ不協定の状態になる可能性が強いと思って見ておられるのかどうか。
  291. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) ジュネーブにおきまして現在進行中の米ソ間の中距離核ミサイル交渉は継続中でございまして、今後の推移を予見することは必ずしも容易ではないと考えております。  ただ、ただいま御指摘のとおり、アメリカはこの中距離核戦力の削減交渉に当たってあくまでもグローバルに、つまりソ連全土における核兵器の撤廃、廃棄、削減ということを主張する立場であるのに反しまして、ソ連は当面ヨーロッパの問題だけに中心を当ててそれで処理したいと、かように考えているわけでございます。  ただし、日本といたしましては、ヨーロッパだけの核軍縮というのは問題の解決にはならない。その理由は、SS20等、中距離核ミサイルの移動性という点からいたしましても、ヨーロッパだけの核軍縮では問題の解決にはならない。したがって、ソ連全土、つまりグローバルな核の削減が必要であるということを主張しておりまして、この点はアメリカに対しても、それからソ連に対しても繰り返し申し入れをしているところでございます。
  292. 三治重信

    ○三治重信君 ひとつ、今度のは非常に国民の関心のあった問題が適確に報道されて、関心事が大体よく整理されて討論されていると思うんです。こういうのを年一回、たとえ事務レベルでもやっていくと、国民の事実の認識というものが非常に高められていいことだと思うんです。どうぞひとつ外交は国民のわかりやすい、理解しやすい外交を特にやっていただくよう希望いたしまして、私、ちょっと半に帰らなくちゃなりませんので、まだ若干質問時間残っていますけれども、ここできょうは終わらしていただきますので、あしからず。どうもありがとうございました。
  293. 安武洋子

    ○安武洋子君 私、まず最初に、F15戦闘機の価格の問題、お伺いをいたします。  五十三年度のF15戦闘機の単価は、ライセンス生産、それから輸入組み立て、輸入分、この三つの平均価格は六十一億円でありました。これが五十七年度では約九十六億円にもなっておりまして、五年間で三十五億の値上がりをいたしております。そして初年部品を含めますと五十三年度約七十億円、五十七年度では約百八億円、これも五年間で三十八億円値上がりをいたしております。  このF15の単価値上がりの問題につきましては、五十七年の四月の予算委員会で政府は、アメリカのインフレ率が高いので部品の値段にはね返ってくるとか、またはチタンが最近二年間に七〇%も上がる値上がりをしていると、これが響いていると答弁をなさっていらっしゃいます。  お伺いいたしますけれども、F15一機に占める一体チタンの値上がりの占める割合というのはどれぐらいになるんでしょうか。また、アメリカのインフレ率の占める割合をどれぐらいとごらんになっていらっしゃるんでしょうか、御答弁いただきます。
  294. 木下博生

    政府委員(木下博生君) F15の値段は、先ほど先生おっしゃいましたが、五十三年以来国産で生産しているものの値上がりと、それから一部輸入で、FMSで輸入しているものがありますので、それ平均しておっしゃって比較なさいましたけれども、一応私どもの方でライセンス生産をしておりますF15につきまして、五十三年度とそれから五十八年度成立しました予算の中で一応考えております単価、これは初年度部品等を除いたフライアウエー・コストというFACコストで比較いたしますと三十三億円の値上がりで、パーセンテージとしては四九%アップ、それから年率では八・二%というような額になっております。  この上がりました要因はいろいろございますけれども、もちろん日本国内におけるコストの上がりもございますが、アメリカにおきまして航空機関係の装備品あるいは材料の値上がりが多うございまして、国産化率がF15の場合には約五〇%ぐらいでございますので、アメリカの部品やあるいは材料の上がったものの影響が非常に多く出てこれだけ上がってきておるわけでございます。これは単にF15だけではございませんで、アメリカの場合には民間の商業機につきましても値段が非常に大幅に上がっておりますし、全体が上がっておりまして、その影響を受けてきておるわけでございます。具体的に材料の中でチタンの値上がり分が幾らかというような形でちょっと御説明するには資料も十分には持っておりませんし、それから生産コストの内訳を詳しく申し上げるというのは今後の商議にも差し支えますので差し控えさせていただきたいと思います。
  295. 安武洋子

    ○安武洋子君 約三十三億の値上がりと。この根拠を具体的にチタンとインフレというふうなことで御答弁なさっているわけですから、その根拠も示せないというのはおかしいと思うんです。  私はここに朝日新聞の出しました「兵器生産の現場」という本を持ってきているわけです。これによりますと、F15というのは重量が十八トンから二十五トンでございます。その四分の一がチタンであるということです。すなわち約五トンから六トンがチタンということになります。チタンは約三百万円というふうなことなので、六トンと見ましても約千八百万円の値上がりということになるんではなかろうかと。これは製品化されますので素材は通例で約その十倍というふうに聞いております。ということになりますと、チタンの素材は一億八千万円と、これぐらいの、これは見当でございますけれども、見当になるはずです。チタンの値段が仮に私の言った値段の二倍、三倍というふうな値段になったとしても、これは一機当たりわずか数億でございます。ですから、とても先ほどおっしゃいましたような三十億以上、三十三億というふうな値段、この値上がりにはならないはずでございます。おかしいではございませんか。どういうことなんでしょう。
  296. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 確かにおっしゃいましたようにF15、最新鋭の戦闘機でございますので、チタンの使用率が非常に高い航空機でございます。チタンにつきましてはアメリカで精錬いたしまして、一部加工し、まあ加工しないものもありますけれども、それを日本に持ってきておるわけでございます。その材料は実は日本から出ているというようなこともあるわけでございますが、チタンの場合には単に金属の値段の、インゴットの値段で比較するというより、むしろそれを加工いたしますのにものすごく工数がかかりまして、したがってアメリカの賃金の値上がりあるいはインフレというようなものがまともに響いてくるわけでございます。したがいまして、ちょっと内訳は具体的に幾らということは申し上げられませんが、いまおっしゃいましたような非常に少ない額じゃございませんで、相当アメリカから輸入しておりますもののチタンの材料の値上がりが大きなウエートを占めているということは言えると思います。
  297. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまの御答弁も大変おかしいわけです。いままでの政府が国会で御答弁なさっていることと大きく食い違うわけです。  これは昭和五十三年二月の十五日の衆議院の予算委員会の御答弁でございますが、当時の間淵装備局長が五十三年度から導入するF15の平均単価、これは六十一億円でございますと、そしてこの価格は、最終のデリバリーが終わる五十七年度までの物価上昇その他の要因は含まれていると答弁をなさっておられます。これに対して質問者が、そのような要因が含まれているといってもなお上げることはないのかと、F15に関する限りもう上がらない、予算追加は要求しない、このことを断言するのかと追及をされております。そうすると、間淵装備局長は、非常な経済変動、たとえば石油ショックとかあるいは円の急激な下落というようなことのない限りは、この予算でやっていく所存と答えておられます。ところが、五十七年度までの特価の上昇とかその他の要因を見越したはずでございます。見越しているんだとおっしゃっておりますからね。一機六十一億円、それがなぜ五十七年度、見越しているはずなのに九十六億円というふうなことで三十五億円も値上がりをしていくのかと、大変不思議でございますが、これはどういうことなんですか。
  298. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 五十三年度に契約いたしましたものが入ってきますのに四、五年かかって、五十七年までかかったわけでございますが、それ以降何度かにわたって契約をしております。契約をするごとにそれぞれの契約の年度における単価が上がってきているわけでございまして、五十三年度に契約したものが五十七年度に入ってくるときには非常に高くなったということじゃございませんで、五十七年度に契約したものが五十三年度に比べて値段が上がったということでございます。それでこれは日本だけではございませんで、アメリカの場合もそうでございまして、アメリカの七八年度と八三年度を比較いたしますと、アメリカでの米軍の調達機価格は八一%上がっておりまして、日本の方の国産の価格の値上がりの率の方がそれよりは低いわけでございます。
  299. 安武洋子

    ○安武洋子君 契約の二年間のズレというふうなものもすべて見越した上で六十一億円でやると、そしてもう値段は上げないということを国会答弁で断言をなさっていらっしゃるわけでしょう。だからいろんな要因はすべて見越したと。その要因以外というのは非常な経済の変動ですね。その例として挙がっているのが石油ショックとか円の急激な下落と、こういうことなんです。こういうことでないのになぜこんなに値段が上がったのかと。九十六億円と値上がりするのは、まことにどんな理由をおっしゃいましてもこれは解せませんが、どういうことなんですか。  それでさらに聞きますが、日本企業のF15の初年度の設備投資、それが三百八十億円、当時の間淵装備局長が答弁をなさっていらっしゃいます。これは変更しているのかどうか、この二点についてお伺いをいたします。
  300. 木下博生

    政府委員(木下博生君) まず五十三年度に購入しましたものと五十七年度に購入しましたものの値段が上がっておりますのは、先ほどお答えしましたとおり、アメリカの諸物価の値上がりあるいは為替レートの円安というようなものが影響して上がったわけでございまして、五十三年度に契約したものは五十三年度で契約した価格で日本は航空機を購入しているわけでございます。  それから設備投資につきましては、ちょっとただいま五十三年度以降にどのくらい設備投資かは……ちょっとただいま資料が入りましたので訂正さしていただきますと、F15を生産開始いたしましたときから現在まで約七百億円の設備投資を行っております。
  301. 安武洋子

    ○安武洋子君 七百億ということは三百八十億をふやしたということですね。じゃ、これでは三菱重工、石播重工とか、そういうところがF15を製造しておりますけれども、ここへ二重の交付をしたと、私は二重の税金のむだ遣いだということを申し上げたいわけです。  それともう一つですね、これは国会の答弁の中で、このF15の六十一億円というのはデリバリーが終わる五十七年度までの価格の上昇とかその他の要因を含んで決めた平均価格であると、こういうことになっているんですよ。おたくの答弁そうじゃありませんでしょう。
  302. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 設備投資の額が当初よりふえてまいりましたのは、国産化率を上げますために、そのための設備投資等が必要だったわけでございます。たとえば、先ほど申し上げましたチタンにつきましては、従来は向こうで全部チタンを削って加工しましたものを持ってきておったわけでございますけれども、そのうち一部を日本で加工するため、その加工のための設備投資というようなもののも一つ入っておりますし、そういう種類の形で設備投資がふえてきております。  それから、航空機の値段の点でございますが、これは先ほどから御説明しておりまして、私の御説明が十分じゃないからかもしれませんが、五十三年度に契約いたしますときには、五十七年度に航空機が入ってくるまでの間のインフレ率はあらかじめ見込んで契約しているわけでございます。したがいまして、五十七年度の予算で今度は五十七年度に契約いたしました航空機につきましては、四年後に入ってきますまでの間のインフレ率等もある程度見込んで、それで単価をはじいて出してきているわけでございまして、購入時点の違いによる違いがその二、三十億円の違いになっているわけでございます。
  303. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう五十三年度ではF15のライセンス生産というのは始まっているわけです。ですから、この後でまた企業に対して設備投資のお金を出すというふうなことは大体間尺に合わない。御答弁が合いません。それから、いまの御答弁ですと、五十八年度になりますと、これは一機の価格が百十五億円ぐらいになっておりますでしょう。さらに値段がはね上がっているわけでしょう。ですから、御答弁合わないでしょう、おたくの御答弁では。
  304. 木下博生

    政府委員(木下博生君) ライセンス生産しました価格につきまして、先ほど申し上げましたFAC単価で申し上げますと、五十三年度の契約は約六十九億円、それから五十五年度には七十七億円、それから五十七年度では九十七億円で、五十八年度予算、この前御承認いただきました予算は百三億円ということになっております。それだけの値上がりが現実にあったわけでございまして、その間特にアメリカでのインフレが非常に大きかったということが一番大きく響いておりますが、アメリカでのインフレがおさまりまして為替レートも一応安定しております五十七年と五十八年を比べますと、比較的値上がりは小さくなっているということでございます。  設備投資額は、ライセンス国産をします場合には最初から最大限度の国産化率で生産するわけじゃございませんで、国産化率をどんどん上げていきますので、その上げていく過程において設備役資が追加で行われるわけでございます。
  305. 安武洋子

    ○安武洋子君 アメリカのインフレ率とおっしゃいますけれども、一九七三年を一〇〇としますと、一九八二年で二五〇なんですよ。そして、しかもそれがすべてにはね返るわけじゃございませんでしょう。部品の一部にはね返ると。ストレートに全部が上がるなんていうことは考えられないわけです。  私はここで、会計検査院お越しでございましょうか。——会計検査院にお願いしたいんです。F15の価格というのは全く私は不明朗だと思います。しかも、国会の答弁と食い違うわけです。私は会計検査院はいままで御調査をなさったことがあるのかどうか。私はぜひ調査をしていただいて、その結果を国会に報告をしていただきたい、こう思いますが、いかがでございますか。
  306. 竹尾勉

    説明員(竹尾勉君) お答えいたします。  航空機の価格につきましては、従来からとりわけ強い関心を持って重点を置いて検査してきたところでございます。F15の価格アップの要因といたしまして、主としてこれは物価の上昇によるものと考えておりますが、先生のせっかくの御指摘でございますので、私どもといたしましては今後もなお増加原因等を含め、いろいろな角度、すなわち材料費、価格の推移、工数のアップ、個々の部品等の国産化の向上度合い、F15のための新規設備投資及びその減価償却の状況、これら等の角度から検討調査いたしまして、なお一層厳密に検査してまいる所存でございます。
  307. 安武洋子

    ○安武洋子君 その後調査結果をぜひ国会に報告をしていただきたいということを御要望申し上げまして、次に所沢通信基地の問題に移らせていただきます。私は所沢通信基地のスコープ・シグナルIIIの工事開始問題で御質問を申し上げておりますけれども、その関連でお伺いをいたします。  工事内容につきましては外務省から御答弁をいただきまして、スコープ・シグナルIII、通信施設の近代化改修計画の一環であるというふうなことで発電機を一つ取りつける、空調施設の整備ということですが、アンテナの建てかえ、これは建てかえがないんでしょうか。あるとしたら、これは新規建設なのでしょうか、建て増しなのでしょうか。それから、発電機というのは新しく入れかえるのでしょうかどうなんでしょうか。それから、工事期間はいつからいつまでなのでしょうか、お答えください。
  308. 北村汎

    政府委員北村汎君) ただいま御指摘の所沢通信施設の工事につきましては、私どもで一応照会をいたしまして、その結果を御連絡したとおりでございます。  ただいまの御質問でアンテナの取りかえということをおっしゃって、私どもが聞いておりますところでは、アンテナ問題は存じておりません。  それから、いまのその他の御質問につきましても、私どもがいま米軍から照会しております結果は先生に御連絡を申し上げただけでございまして、以上のことは存じておりません。
  309. 安武洋子

    ○安武洋子君 工事期間も御存じないわけですか。
  310. 北村汎

    政府委員北村汎君) 工事期間として私どもが知っておりますのは、昭和五十八年の二月から開始されるということでございます。
  311. 安武洋子

    ○安武洋子君 もうすでにこのように工事は始まっておりますよ。この工事がいつまでなのかということは全然御存じがない。では、私はやはり聞いていただかないといけないと思います。工事の期間とか、それからいま私が御質問申し上げたようなことはお聞きいただいて、そしてこの工事につきまして、これは地方自治体、市民に通知がしてあるんでしょうか。所沢の市長にはお伝えになっていらっしゃるんでしょうか。
  312. 北村汎

    政府委員北村汎君) そもそもこの所沢通信施設で行われております工事というのは、これは米側が、これは米軍のさっきも先生御指摘になりましたスコープ・シグナルIIIの一環としての工事でございまして、これはアメリカが自己の施設区域の中の管理権として行うところでございます。こういう工事が特に環境問題であるとか、いろんなところでその周辺に影響を及ぼすというような場合は、これは当然地元にも御連絡はいたすことは当然でございますけれども、この工事につきましては、ただいま申し上げましたように、発電機一個を取りつけたり、空調施設の設備をするということでございまして、要するに米軍の指揮統制、通信のものを改善すると、こういうことでございまして、これは言うなればアメリカの抑止力を高めるということでございまして、それ自体私ども米軍に基地を提供しております日本政府といたしましては、この工事については当然米軍が管理権のもとで行い得る工事と考えております。
  313. 安武洋子

    ○安武洋子君 影響がないと、だから住民に通知をしないということについては後で私は申し上げます。  ではね、スコープ・シグナルIIIの関連の工事だと、こうおっしゃいました。じゃあ、スコープ・シグナル関連の工事なら、これは所沢だけでなく大和田基地でもこういうふうに関連して工事が始まるんじゃなかろうかと思いますけれども、じゃあ大和田はどういうふうに始まるんですか。
  314. 北村汎

    政府委員北村汎君) 大和田におきましては、ただいま行っております工事は、これは照明器の取りかえ、それからいわゆる警報、アラームシステムの取りつけ工事、こういうものでございまして、そういうものをやる予定のようでございます。これらの工事はアメリカ側の説明によりますと、スコープ・シグナルIIIとは関係のない工事であるということでございます。
  315. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、所沢ですね、スコープ・シグナルIIIと、これの関連の工事であると、こういう御答弁でございますか。では、スコープ・シグナルIIIというのは一体どういうふうなものと認識でございますか。
  316. 北村汎

    政府委員北村汎君) スコープ・シグナルIIIとは、これは先ほどもちょっと触れましたけれども、米空軍のいわゆる指揮統制のための通信網の改善計画でございます。その中にはいろいろ通信施設、高周波による通信の設備を改善していくということも含まれると聞いております。
  317. 安武洋子

    ○安武洋子君 スコープ・シグナルIIIにつきましてはすでに昨年私がここで御質問申し上げ、その内容がどのようなものであるかということは外務省お認めになって、そしてそういうものは核抑止力として容認できるというふうな御答弁でございました。いまのは単なる通信施設じゃございませんでしょう。これは米戦略空軍の一九八四年完成をめどにいたしておりますけれども、いま全世界的に改修工事が始まっております。これは爆撃機、B52ですね、これに対して最終的な核攻撃命令を指令していく通信基地であるというふうな非常に重大な基地であるということも申し上げ、それをお認めになったと、そういうことでございましょう。それが周辺の住民に影響も与えないと、米軍基地の中で単にやられるから住民に通知をする必要もないというふうな御認識でございますか。
  318. 北村汎

    政府委員北村汎君) ただいま安武委員の御指摘になりました問題は、これはスコープ・シグナル20の中の一つのジャイアント・トーク・ステーションと申すこのステーションについての問題であります。これは米空軍によって運用されます一般的な指揮統制通信の施設でございまして、核攻撃命令のために特に設置された通信施設ではないと承知しております。先ほども申し上げましたけれども、米軍がこういうようなジャイアント・トーク・ステーションあるいは一般的に通信網を改善するということを行いますことは、これは私どもからしますればやはり抑止力の向上であるということでございまして、私どもといたしましては、これは日米安保体制の効果的な運用という面から見て望ましいことであろうと考えております。
  319. 安武洋子

    ○安武洋子君 望ましいとはどういうことなんでしょう。私はジャイアント・トーク・ステーションのこの中身、このスコープ・シグナルIIIの問題をちゃんと米軍の資料に基づいてどういうものであるかということを明らかにいたしました。これは私が先ほど申し上げたように、米戦略空軍のやはり最終的な核攻撃指令、これを与えるための基地というふうなことが全世界的にもそういう戦略の中でちゃんとやられているではありませんか。私はそういう、昨年御質問申し上げておりますけれども、私はいまのようにそれが住民に影響を与えないというふうなことを平然と好ましいというふうなことをおっしゃるということについては日本の核戦場化、これをあえて認めるというふうな立場にもなります。大変無責任で、私はそういうことではなくって、先ほど私が申し上げたぐらいの発電機は一体どういうふうになっているのかとか、工事期間はいつなのかとか、アンテナの建てかえがあるのかないのかとか、これぐらいのこともお調べになっていないわけですよね。そういうことぐらいはちゃんと調べられて、そして私の質問もう一度思い返していただいて、私はこういうふうな日本を核戦場にしてしまうような危険な基地についてはやはり調査をし、そして米軍に撤去を申し入れると、それがあたりまえの態度であろうと、そのことは強く申し上げておきます。
  320. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 安武君、時間が参りましたので結論を急いでください。
  321. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、あと二問かためて伺いますのでちゃんと答えてください。  山桜4というのね、演習が行われるという報道がありますけれども、去年の十二月、北海道で山桜3をやったばかりです。3と4の違い、それをひとつ明確にしていただきたいのと、それから規模は前回より大きいのか、どれぐらいの規模なのか、また日米それぞれの統裁官はだれかとか、それからまた何を想定しているのか、この件をお答えください。
  322. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 山桜3と申しますのは日本の千歳で行いました日米のCPXでございますが、今回の山桜4というのはアメリカのカリフォルニア州のフォートオードという基地で行うCPXであります。  このCPX、日米間の陸上部隊のCPXというのは日米交互の国に行ってやるということでありまして、なぜ交互でやるかと言いますと、日米のそれぞれの隊員ができるだけ多くの者がこの演練に参加できるようにするという意味で、どうしても行く方の側が人数が少のうなりますので交互に、日本でやり、次はアメリカでやるという形をとっておるわけであります。  今回行いますYS4は、日本側から陸上自衛隊員が六十五名、それに航空自衛隊の方がその専門的な立場から助言をするということで八名、計七十三名参加をいたしまして、米側は米陸軍が約二百五十名、それに海空軍と予備役の方が若干加わるというふうに聞いておりますが、いずれにしましても二百数十名の者が参加をしてCPX、図上演習をやるというものであります。  なお、想定等は実際の共同対処行動の手のうちを示すことになりますので公開することを遠慮さしていただきますが、内容的には日本の地図を用いた日本に対する侵略に対しての日米共同の対処行動の日米双方の調整要領その他について演練をするというものであります。
  323. 秦豊

    秦豊君 二十五分間だから、答弁側も二十五分的テンポでお願いしたい。  まず外務省、対韓経済援助問題。  いま対韓経済援助の交渉は実務的にどこまで進んでいますか。つまり、煮詰まっていますか。
  324. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 先生御承知のように、一月に中曽根総理が訪韓されました際の……
  325. 秦豊

    秦豊君 経過を簡潔に。
  326. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) はい。  共同コミュニケの発効に従いまして実務的な話し合いを進めておりますが、円借款に関しましては八二年度分につきまして今月末までに最終的に詰めまして意図表明を行うという、こういうことになっております。
  327. 秦豊

    秦豊君 そうしますと、実務的というか、実際的な中身の詰めは四月中に固まる。  では、五月には外交慣例によって交換公文の取り交わしというようなテンポで進んでおりますか。
  328. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 私ども通常意図表明を行いまして交換公文まで二、三カ月かかりますので五月はちょっと無理かと思いますけれども、できるだけ早く交換公文を結びたいと考えております。
  329. 秦豊

    秦豊君 あなたの御答弁を演繹すれば、では、五月が無理でも対韓経済援助についての交換公文は六月下旬も含め七月は大いにあり得ると、こういう理解でよろしいですか。
  330. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 私どもといたしましては六月ないし七月には交換公文を結びたいと考えております。
  331. 秦豊

    秦豊君 いま具体的に、たとえば積算基準を含めてかなりシビアな煮詰め方をなすっているんでしょうね。
  332. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 私どもといたしましては一般的な原則に、経済協力の基本方針に従いまして厳格にいま詰めを行っております。
  333. 秦豊

    秦豊君 たとえばいま決まっている年度で言うとどこまで決まりましたか。
  334. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 現在の詰めておりますのは先ほどお答えいたしましたように八二年度分でございます。八二年度分につきまして四月末までに意図表明を行うということでございます。
  335. 秦豊

    秦豊君 ならば、八二年度単年度の積算基準を明らかにできますか。
  336. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 現在、幾つかの分野につきまして、具体的に申し上げますと、多目的ダム、上水道、下水道、医療施設につきましてそれぞれ具体的なプロジェクトを詰めておりますが、まだ最終的に詰まっておりませんし、現在韓国と交渉中でございますので、詳細な積算根拠を明らかにすることは御勘弁いただきたいと思います。
  337. 秦豊

    秦豊君 交換公文に至るまでのプロセスをもう一回念のために確認しておきたいが、現在交渉はソウルか東京か、あるいは最終的に煮詰めるためにはどんな手続が必要か、念のために。
  338. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) いま現在この時点で交渉が継続中ということではございませんが、二月には実務者レベルということで私が韓国に参りまして、それから三月には円借款を具体的に供与いたします海外経済協力基金から実務者を派遣いたしまして、その結果に基づきましていま日本政府部内で具体的な案を練っておりまして、それに基づきましていまから韓国側と再度交渉するということを考えております。
  339. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、在来とかく経済援助に絡んでは、俗な用語で言うとつかみ金的な印象を払拭しなければならぬ。これが新しい日韓関係のあるべき姿ですよね。したがって、いま政府委員はあのように答えられたが、大臣の裁量とされては、説明のあった時期の、交換公文の取り交わしの前にわれわれ国会の当該委員会に対して、こういうプロジェクトでこういう積算基準で合意に達した、これは厳守するという報告をぜひ行っていただきたいと思いますが、安倍外務大臣いかがですか。
  340. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 経済協力については、これはもちろんわが国の基本的な方針がありますから、それに基づいて厳格にやるということでありますし、最終的に両国間で合意をし決定した段階においては、これは国会等においても説明はできると思います。
  341. 秦豊

    秦豊君 全然問題が変わります。  去る一月の日韓共同声明の第十一項、あれにありました、いわゆるを頭に冠する必要があると思うが、ホットラインですね、いわゆる。総理官邸と青瓦台大統領府、あれはどうですか、米ソ間にあるようなテレタイプ方式をイメージしていらっしゃるのか、ほかの方法で広範な意味のメディアを考えていらっしゃるのか、もう完成したのか、あるいはいつごろおつくりになるのか、この辺をお答えください。
  342. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 日韓共同声明の十一項にございます件でございますが、いわゆるホットラインというふうに通常言われるかもしれませんが、この点につきましてはいろいろな態様、対応があるかと思います。もちろん理論的には電話というものがございますし、それからファックス電話、ファクシミリということもあるかと思います。いずれにしましても、この共同声明にございますように大統領と総理大臣の間の直接対話を常時可能にする電話その他の適切な回線ということでございまして、現在日韓それぞれで内部でいろいろ検討中でございますけれども、日韓両国としてはいまだ話し合っておりません。
  343. 秦豊

    秦豊君 おおよその、審議官、めどを——目途のない、目標のない作業はないでしょう。大体東京・ソウルの了解では、いつごろまでにつくろうという内々の了解ですか。
  344. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) できるだけ早期に、実現可能な範囲で早期にとは思っておりますけれども、現在までのところ日韓間でいつごろまでにこれをつくろうじゃないかというような話し合いは行われておりません。
  345. 秦豊

    秦豊君 中東に対する問題ですけれども、これは秦個人ではなくて、木村俊夫元外相を会長とする日本パレスチナ友好議員連盟の共通の関心事でもありますが、人工衛星の映像によりますと、すでにペルシャ湾の汚染は二分の一以上に拡大しております。現在は小康を得ているにしても、風任せの要素もあるし、イラン・イラク戦争の戦局の推移にも関連してまいります。したがって、かなり長期化するというのが常識的な感じであろうと思いますけれども、そうなると、カタールとかバーレーンとかあるいはアラブ首長国連邦等々に次第に被害と実害が及んでくることをも想定し、外務省を中心にした各省庁とされては、特に波多野局長が主管としてなすっていると思いますが、今後どういうものをどういうふうに、いざ要請があったらすぐ即応はできるのかという問題を含めて、今後の外務省としての対湾岸中東援助、緊急援助、水等を含めたそういう方針について伺っておきたい。
  346. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 先生御承知のように、ただいま政府調査団を現地に派遣しておりますけれども、当方といたしましては、その調査報告に基づきまして、先方が要望しております資料情報等を提供しております。その内容といたしましては、まず第一に水島事故の詳細な報告、それから海洋環境に及ぼす今回の事故の影響、それから汚染防止のための新技術、こういうものに対する詳細な情報を求めておりますので、これは現地ですでに提供したものもございますし、また今後、英文で詳細報告書を作成の上提供する予定のものもございます。  他方、物につきましては、一応、湾岸諸国、十分な手当て済みであるというふうに先方は申しておりますので、いまのところは、先方の今後の要望を待って、わが方としてもできる限り速やかにこれに対応する所存でございます。これは、水を含めて、先方からもし要望があればそのように対処いたしたいと考えております。  なお、先生御指摘のように、これは非常に長期的な問題でございますので、長期的な問題といたしまして、日本政府から必要な専門家を派遣するとか、さらには研修員を受け入れるとか、そういうことについても検討いたしたいと思っております。
  347. 秦豊

    秦豊君 大変前向きな御姿勢であろうと思っております。  で、よく俗に、タンカーで水をという説もありますけれども、その後、私どもに対しまして、たとえば外洋を世界一周のヨットレースに参加した人々を含めて、ベテランヨットマンから最もリアルで最も経済的な方法としての提言が来ておりますので、ごしんしゃくください。それは、内部塗装も何にも要らない。ヨットマンがだれでもやっているように、長期の航海に耐え得る堅牢性とあれを持ったポリ袋ですね。ポリ袋に日本の真水を詰め込むんだそうですよ。一年半の長期航海にりっぱに耐え得たという実績が多々あります。したがって、大仰なことを考えないで、しかも湾岸の受け入れ設備も要らないんです。そのまま人力で積みおろしができるということを含めて、大仰なものでなくてもすぐに実行できる、リアルな、また賢い案として、そういう水平思考的なものも、ぜひ、たとえば水の緊急輸送等の場合にはお考えをいただきたい、選択肢が広がりますから。そういう点についていかがですか。
  348. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 水の輸送につきましては、ポリ袋のほか、ポリバケツに入れて輸送する可能性を含めまして十分検討を続けております。先方からもしも要請ある場合には、しかるべき対応を考えたいと思いますけれども、現在までのところ湾岸諸国は、水についてはまあ心配ない、逆に、余り騒いでもらうと国内で水の買いだめやパニックが起こるのでひとつ静かにしておいてくれというような意見もございますので、先方の要望を待ちたいと考えております。
  349. 秦豊

    秦豊君 安倍外務大臣、私はかねて考えていたことなんですが、突然で恐縮ですけれども、たとえば中東湾岸に対する援助、これはもちろん緊急性がやがて出てくると思いますけれども、アメリカの国防総省が構想しているRDF、いわゆる中東を志向した緊急展開部隊ですけれども、これはまあもちろん世界戦略の生臭い発想です、きな臭い。ところが、わが国は、今後五年、十年の長期予測をしてみると、ODAの伸び率もかなりシビアである、辛い、渋いということはわれわれ共通の認識であろうと思います。日本の国家のイメージ向上のためにも、たとえば安倍外務大臣時代、安倍外交の時代に布石を打っていただきたいことが一つあるんですが、それはたとえば、大規模な疫病、自然災害、あるいは石油汚染、ケースは問いません、多様だから。そういうときには必ずまずいち早く、民間のチャーター機で、専門家、医師、看護婦、技術者等々、専門家が、必ず、一定の必要を満たすスタッフは必らず緊急に日本から現地に到着をしてくれると、何かあれば日本が必ず来てくれると、これは日本の善意と友情だと。非常にわかりやすいし、目に見えるし、つまり、緊急展開部隊じゃなくて、緊急援助チームというか、そういうものも、谷川さんのところが購入しようとしているC130ハーキュリーズを使うときな臭さがつきまとうから、民間のチャーター機をイメージして、こういうものを安倍外交の発想の中にインプットして、やはりこれは予算に直結しますけれども、やはりODAについて誠実に対処する、あるいは緊急援助チームについても、これは単なる思いつきじゃなくて、やはり第三世界との連帯というような意味を含め、日本外交の意思のプレスティージと、あるいはわかりやすさを拡大する方向であると私は思うし、ふだんからそういう方々はボランティアでリストアップしておくというふうなふくらみのある構想として、安倍外相のときにぜひ手がけていただきたいと思いますが、突然で恐縮ですがちょっとお考えを聞かしてください。
  350. 松浦晃一郎

    説明員松浦晃一郎君) 私ども、いま秦先生御指摘のような問題意識をつとに持っておりまして、実は、一年前の昨年の三月に国際緊急医療体制というのを発足させておりまして、いま先生御指摘のように、実は登録制度も始めておりまして、現在のところ、お医者さん四十三名、看護婦十五名が登録されておりまして、ただ、緊急災害の際に直ちに行っていただくようになっておりますが、先生いま御指摘の幾つかの事態の、天然災害には対応できることになっておりますが、それ以外の災害になかなか対応しにくいという問題ございますので、残念ながらいままでのところ一度もまだ発動されておりませんが、この体制をさらに機動的にどういうふうに活用していくべきか、いま先生御指摘の点を踏まえてさらに検討さしていただきたいと思います。
  351. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまの奏さんのお考えは非常にいいアイデアだと思いますし、政府の方も大体似たような体制をつくりつつあるということですから、もっとこれ機動的に発動できるように、いろいろと体制の整備は関係各省とも連絡しながらしていくべきだと、それがまた日本の国際的責任の一つであると、こういうふうに思います。
  352. 秦豊

    秦豊君 外務省にまず伺いますが、現在、SS20の極東配備に絡みまして、アメリカ側から何か緊急に日米間の協議を持ちたいというふうな意思表示はごく最近にございましたか。
  353. 北村汎

    政府委員北村汎君) そういうようなSS20の極東配備という問題に限って緊急会議をやりたいというようなことはアメリカからございません。
  354. 秦豊

    秦豊君 日本側から、ハワイ協議をホノルルでやられておりますから、それとはパラレルに、日本側から、では特定のこのアイテムで協議したいとSS20に、必要性はお感じになっていらっしゃいますか。
  355. 北村汎

    政府委員北村汎君) もちろん、先生おっしゃいましたように、SS20の極東配備の問題は、大臣からも何度も御答弁されておりますように、私ども日本にとってもきわめて重大な関心のある事項でございますし、またシュルツ長官が一月末——二月初めにかけてこちらに来られましたときも、この問題を外務大臣との間でいろいろ話をされまして、今後ともアメリカのINF交渉の進展状況、あるいはこの問題に対するアメリカ考え方というものについては、逐一、東京あるいはワシントンで日本側に連絡をするということで、事実そういうことは行われております。
  356. 秦豊

    秦豊君 それから、この前の予算委員会ではっきりしなかったから確認の意味を込めて。今度のハワイ協議ですね、これ、結局いつごろになったんですか、なりそうなんですか、進んでませんか。
  357. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 本年予定されますところの日米安保事務レベル協議の具体的な日程については、全く白紙でございまして決まっておりません。
  358. 秦豊

    秦豊君 夏目さん、アメリカ筋から聞こえてくる一つの感触の中に、時期はいつかわからないが、今度ホノルルで日米がテーブルを挟みますと、いままではやや非公式なチャンネルでしかもたらされていなかった千海里シーレーン防衛について、かなりデータを踏まえて、たとえば、必要な兵力量あるいは装備等に関連した具体的な提言がかなりズカッと入ってくるのではないかという感触があるけれども、防衛局長としてはどういうふうな印象をお持ちですか。
  359. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まだ日程も決まっておりませんし、どういうことが話題になるかについての予想は必ずしもはっきりしませんが、いずれにしても、国際情勢を含め日米が関心のある事項を話し合うわけで、そういうこともあるいは議題になるかもしれません。ただ、具体的にいまのところそういう予定があるかとおっしゃれば、全くございません。
  360. 秦豊

    秦豊君 それから、まず、これは外務省に伺うべきでしょう、北村局長に。カール・ビンソンの横須賀寄港については、いまだ正式な要請は参っておりませんか。
  361. 北村汎

    政府委員北村汎君) この問題につきましてはアメリカ政府から何らの通報も受けておりません。
  362. 秦豊

    秦豊君 私が得た情報では、これはなるべく横須賀を特定したい意向のようであります、国防総省は。その理由は、空母ミッドウェーがことしの下半期、本国の母港で恐らく一年半以上の大改修に入るという前提があり、したがって空白をつくりたくないという一つの意思を含めて、あるいは戦略上の配慮を含めて、横須賀を特定したいというのがアメリカ側の意向であろうと思うが、外務・防衛両省庁は、それについてはどういうふうにお考えですか。
  363. 北村汎

    政府委員北村汎君) ただいま先生御指摘の情報については、私どもは持ち合わせておらない次第でございます。もちろん、米空母がたとえば横須賀に寄港したいというような通報がありました場合には、これは、何度もいままでも御答弁を申し上げておりますように、日米安保条約及びその関連取り決めを踏まえて対処するつもりでございます。
  364. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) カール・ビンソンが太平洋艦隊に配属になれば、寄港することは、可能性としてはあると思いますが、現在まだそういうふうな情報なり連絡というものは一切聞いておりません。
  365. 秦豊

    秦豊君 両省庁お調べになったらいいですよ、必ずはっきりするはずですから。  それから、安倍外務大臣と谷川長官に、これ、突然ですけれども、ちょっと伺っておきたいんですけれども、同僚議員も先輩議員も聞いておりましたが、ソビエトの最近の一連の恫喝、特に核戦略についての。パトリチェフ氏を含めて、二十分間で云々を含めたあの一連の表現というのは、外交的なエチケットにも反しているし、はなはだもって不愉快であるけれども、軍事核戦略の常識から言いますと、たとえば、いままさに話題のカールビンソンであり、ニュージャージーであり、あるいはエンタープライズの結果的には反復寄港であり、あるいは明年の六月を過ぎると横須賀をホームポートにする第七艦隊の水上艦艇あるいは攻撃型原潜を含めて新しい形、タイプのトマホークの装着が可能であるということは、アメリカ議会筋の証言で明らかになっている。これを核戦略の常識を持ったクレムリンやあるいはソ連の国防当局が、彼らの常識でこの日本をそういう状況の変化、積み重ねを見ると、やはりこれは、日本が、たとえばそういうものはすべて移動式の戦域核兵力であるという認識を持つとしても、あながち牽強付会とは言えないのではないか、軍事常識的には、核戦略の常識としては。私はそう思いますが、安倍外務大臣と谷川長官の基本認識はいかがでしょう。
  366. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういうふうに思わせるところがソ連外交じゃないかと思うんですね。ですから、私は、非常に政略的な最近の発言であるし、いま恫喝と言われましたけれども、まさに威圧を越えたような感じすら覚えるわけでありまして、私もカピッツァ次官ともその点については議論をしたわけでありますが、やはりアメリカの核戦力が極東・日本周辺に非常に増強しておる、だから極東にSS20を強化をしなきゃならぬ、こういう発言になっておりまして、まさにこれは本末転倒であると思いますし、特に、日本に関しては非核三原則というものがありますし、沖縄に核の基地がないということははっきりしておりますが、それをあえてそういうことを言っているというのは、私は、むしろ日米間の対立を非常に起こさせるとか、あるいは国内の世論に分裂を与えるとか、そういう意味発言であるというふうに私は受け取っておるわけであります。
  367. 谷川和穗

    国務大臣(谷川和穗君) 現在私どもが進めておりまするわが国の防衛力の整備というのは、あくまでこれ自衛のための防衛力の整備であることは恐らく国際的にいずれの国も信じて疑わないところであると存じます。さらに、核抑止につきましては、わが国としてはアメリカの核抑止力に依存をいたしておるわけでございまするが、しかし一方、わが国としては非核三原則を持っておるということもこれまた世界いずれの国も理解をしておる。特に、国連総会などでわが国の総理大臣のこの施策に対するアピールすらあったわけでございます。ましてや、沖縄に核基地があるとかいうようなごとき事柄については、ただいま外務大臣の述べられたとおりでございまして、それをこの時点でソビエトロシアの方からああいう形で出てくるということは、いかにも何か別途われわれは意図があるのかとすら考えるようなところでもございます。
  368. 秦豊

    秦豊君 両大臣の述べられたことは一種の虚構の形式論なんですよ。核戦略の実態は必ずしも踏まえられていない。ソ連の恫喝におびえる必要は毛頭ありませんけれども、言うべきは言うのが当然日本外交の原則です。それは国会議員も分かち持つ。だが、お二人がお述べになったことは、これは核戦略の実態は決して踏まえていないということだけは申し上げておきます。  今後安倍外交の中で検討していただきたいことがもう一つ最後にあります。それは事前協議と国民感情という点であります。一九六四年の二月十八日の衆議院予算委員会では、当時の大平外相は野党議員への答弁の中で、日米安保に基づく提案権は日米相互にあるという解釈を答弁しておられます。事前協議。ところがそれは、一九六八年三月六日衆議院外務委員会の佐藤総理の答弁によってそれは否定された。これは歴史的な事実です。私はやっぱり事前協議というのは、相互に事前協議を分かち持つというのが初めてチェックポイントをダブルに持つという意味で有効性があるんであって、一方の国からのみという片通話では、一方通行では国民感情の納得は得られない。これが古典的な命題で古典的なテーマだが、ここにもう一度日本外交が立ち返らないと、今後ますますデリケートな事態を限りなく迎える。そういうことはだから、そういう問題もありますから、ぜひこれは日本外交、安倍外交の中で検討してください。新たな対米交渉をするような僕は大きなテーマだと思うんだが、それについてはいかがですか。
  369. 北村汎

    政府委員北村汎君) 先にちょっと事実関係だけを先生に御説明さしていただきます。  先生もよく御承知のとおり、この事前協議制度というのは、アメリカが配置と装備における重要な変更並びに日本基地を使用しての戦闘作戦行動という、この三つの問題を、行動アメリカがとるときに、条約上の義務として、その前に日本政府の了解を得ておかなければならないという一つアメリカ政府が持つ条約上の義務でございます。したがいまして、そういう制度でございますんで、その義務を履行するイニシアチブはこれはやはりアメリカ側にあるというのが、その制度として当然来るところでございます。ただ、先生国民感情その他の御指摘もございますけれども、これは安保条約、これもよく先生御承知の第四条の随時協議というのはこれは行われておりまして、これはもうどちらからでも発議して協議することができるわけでございます。また、その議題についても何ら限定がないわけでございます。そういうことで、日米間においてはそういう国民感情にも適応した対応がとれるという制度になっておるということで、まず事実関係の説明をさしていただきます。
  370. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これ、いま局長が答弁しましたように、私はやはりこの事前協議制度というのが日米安保条約を有効に進める上においては、非常に大きなポイントであろうと思いますし、また、いまお話がありましたような三要件においてこのアメリカの義務が発生するわけでありますし、そういう中でやはりこの条項というものが日本の国民感情というものを踏まえた形になっておるんじゃないかと、こう思うわけでございまして、ですからこの問題は、むしろアメリカから義務として行わなきゃならぬ課題であって、日本から持ち出す筋合いのものじゃ私はないんじゃないかと、こういうふうに思います。
  371. 秦豊

    秦豊君 終わりましょう。
  372. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 他に御発言もないようですから、外務省及び防衛庁決算についての審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十五分散会