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1983-05-12 第98回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十二日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      神谷信之助君     立木  洋君  四月二十七日     辞任         補欠選任      立木  洋君     小笠原貞子君  五月十日     辞任         補欠選任      宮澤  弘君     安田 隆明君  五月十一日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     宮澤  弘君      小笠原貞子君     山中 郁子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         増田  盛君     理 事                 安孫子藤吉君                 福田 宏一君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 稲嶺 一郎君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 前田 勲男君                 宮澤  弘君                 小山 一平君                 田中寿美子君                 山中 郁子君                 木島 則夫君    国務大臣        外務大臣臨時代        理        後藤田正晴君    政府委員        外務政務次官   石川 要三君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房審        議官       宇川 秀幸君        外務大臣官房外        務参事官     山下新太郎君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁装備局通        信課長      諸富 増夫君        科学技術庁長官        官房審議官    辻  栄一君        科学技術庁研究        調整局宇宙企画        課長       吉村 晴光君        科学技術庁研究        調整局宇宙国際        課長       中津川英雄君        外務省国際連合        局外務参事官   遠藤 哲也君        運輸大臣官房技        術安全管理官   戸田 邦司君        気象庁予報部長  清水 逸郎君        郵政省電波監理        局宇宙通信企画        課長       江川 晃正君    参考人        宇宙開発事業団        理事       園山 重道君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○宇宙飛行士救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体返還に関する協定締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○宇宙空間に打ち上げられた物体登録に関する条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 増田盛

    委員長増田盛君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  宇宙飛行士救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体返還に関する協定締結について承認を求めるの件、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約締結について承認を求めるの件、宇宙空間に打ち上げられた物体登録に関する条約締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 増田盛

    委員長増田盛君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております三件の審査のため、本日、宇宙開発事業団役職員参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 増田盛

    委員長増田盛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 増田盛

    委員長増田盛君) 次に、三件について政府から順次趣旨説明を聴取いたします。後藤田外務大臣臨時代理
  6. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) ただいま議題となりました宇宙飛行士救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体返還に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、いわゆる宇宙条約内容を一層具体化するために昭和四十二年十二月に国際連合の第二十二回総会において採択された後、翌昭和四十三年四月に作成されたものであります。この協定は、同年十二月三日に発効し、現在七十六カ国が締結しております。  この協定は、宇宙飛行士事故等により緊急着陸した場合における宇宙飛行士救助及び宇宙飛行士の打ち上げ国への送還並びに宇宙物体の回収及び打ち上げ国への返還等について定めております。  わが国がこの協定締結することは、宇宙活動に関する国際協力に積極的に貢献する見地から、また人道上の観点からも有意義であると認められます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、いわゆる宇宙条約内容を一層具体化するために昭和四十六年十一月に国際連合の第二十六回総会において採択された後、翌昭和四十七年三月に作成されたものであります。この条約は、同年九月一日に発効し、現在六十七カ国が締結しております。  この条約は、宇宙物体により引き起こされる損害について、宇宙物体の打ち上げ国の責任損害賠償の請求の手続、賠償額算定基準等について定めております。  わが国がこの条約締結することは、宇宙活動に関する国際協力に積極的に貢献する見地から、また、宇宙物体により引き起こされる損害についての迅速な賠償を確保する上からも有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、宇宙空間に打ち上げられた物体登録に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、いわゆる宇宙条約内容を一層具体化するために昭和四十九年十二月に国際連合の第二十九回総会において採択された後、翌昭和五十年一月に作成されたものであります。この条約は、昭和五十一年九月十五日に発効し、現在三十一カ国が締結しております。  この条約は、打ち上げた宇宙物体について、国内登録制度を実施すること及び国際連合事務総長に情報を提供すること、宇宙物体の識別に関する国際協力を促進すること等を定めております。  わが国がこの条約締結することは、宇宙活動に関する国際協力に積極的に貢献する見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  7. 増田盛

    委員長増田盛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 松前達郎

    松前達郎君 宇宙条約に関して内容的な問題についてこれから質問さしていただくわけですが、その前に全般的な問題、特に宇宙利用に関する問題あるいは宇宙開発と言ってもいいかもしれませんが、これについて日本政府としての取り組み方、これ全般についてお伺いをいたしたいと思うのです。  人工衛星が非常にたくさん打ち上げられて宇宙は広いとか言いながら人工衛星の数は非常に多くなってまいりました。衛星だけではなくて、その衛星を打ち上げたときのブースターその他を含めた運搬手段残渣といいますかそういうものも含めると相当の数になっているのじゃないか、こういうふうに思うわけです。そういう意味からいきますときょうここで提案されました条約関連というものがあると思うのですけれども、まず最初にお伺いしたいのは、人工衛星等に関する関連を持っている省庁政府機関、これが一体どういうふうになっているのか。これはそれだけまとめたものはないと思いますけれども、それぞれの省庁関連があるのじゃないかと思うので、それぞれの省庁がどういうふうに関連しているか、まず最初にお伺いいたしたいと思うのです。
  9. 吉村晴光

    説明員吉村晴光君) ただいま御指摘わが国宇宙開発の進め方でございますが、先ほどお話ございましたように関連する省庁が非常に多いわけでございます。したがいまして、国全体として統一のとれた宇宙開発を進めるというために関係行政機関の御要望を踏まえまして宇宙開発委員会宇宙開発計画というものを策定いたしておるわけでございます。政府としてはその線に沿った形で宇宙開発を実施しておるという実情でございます。  それで、個々の関係行政機関でどういうことを御要望になっているかということはそれぞれの省庁から御説明があるかと思いますけれども、その場合に、具体的にロケットだとか人工衛星開発するという実施機関について申し上げますと、実利用分野のものにつきましては宇宙開発事業団が担当する。それから科学分野につきましては、これが学問研究と非常に密接な関係があるということで従来は東京大学の宇宙航空研究所、現在改組されまして文部省の宇宙科学研究所でございますが、そこにおいて進められておるというのが全体像でございます。
  10. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと宇宙開発委員会が全部をまとめているかっこうになると思うのですけれども、省庁として直接関係ある分野というのが、宇宙開発委員会で一本にしぼられたといいながらやはりそれぞれあるのじゃないかと思うのですね。ですからそれについて、たとえばアメリカだったらNASAみたいなところが、これは平和利用というけれども最近はどうもどの辺まで平和利用かよくわかりませんけれどもNASAが担当している分野が非常に多いわけなのです。  実際に、では各省庁がどういう内容宇宙開発に対して計画をしたり期待をしたりしているか、そういう問題についてはいかがでしょうか。
  11. 江川晃正

    説明員江川晃正君) ほとんどすべての人工衛星というのはそれを利用するに当たりましては電波を使用しております。郵政省としましては、宇宙における電波の公平かつ能率的な利用を確保するという立場から、人工衛星に開設いたします人工衛星局免許監督などを通しましてほとんどすべての人工衛星に関与しているという状態になっております。また通信放送分野について監督しているわけですが、通信衛星放送衛星開発利用ということについても関与しているところでございます。
  12. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、郵政省の場合は電波を使うというのは全部に共通した問題だと思うのですけれども、すみませんけれどもそれぞれ各省庁計画並びに関与している分野、ちょっとお願いしたいのです。
  13. 戸田邦司

    説明員戸田邦司君) 運輸省関係につきまして御説明申し上げたいと思います。  まず第一は気象庁関連でございますが、静止気象衛星、これは最初静止気象衛星でございますが、それとそれから現在使われております二号の運用気象庁が行っております。また静止気象衛星の三号につきましては、開発費の六割を気象庁が負担するということで五十九年打ち上げを目標に現在宇宙開発事業団において開発を進めております。これも将来打ち上げられましてからは気象庁においてその運用を行っていくということになっております。  それから将来の問題になりますが、衛星利用しての洋上の航空管制、それから航空機、船舶の航行援助、捜索、救難、こういったシステムの開発を現在進めております。その他測地衛星とかランドサット、そういう観測衛星利用しての将来の海洋観測技術などについての研究を進めております。
  14. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと運輸省はそういうたとえば航行関係、ナブスターといいますか、そういったような関係衛星というのを将来計画として考えておられる。その辺でどうなのですか、各省庁間のそういう計画に対する調整ですね、そういうものは具体的にさっきの宇宙開発委員会で行っておるのが現状ですか。
  15. 吉村晴光

    説明員吉村晴光君) ただいま御指摘ございました具体的な計画の問題でございますが、宇宙開発委員会は毎年翌年度の宇宙開発予算の見積もりということをやっておるわけでございまして、その際、関係省庁から来年度どういうことをおやりになりたいかという具体的な構想を伺いまして、関係省庁で協力してやればいいものは統合いたしますし、それから全体、技術的な交流が必要なものはそういうものを促進するといった形で国全体として整合のとれた形で進められるように作業をやっておる、それに基づきましてつくられますものが宇宙開発計画といったものでございます。
  16. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、大分入れかわりで申しわけないのですが、次は防衛庁にお伺いしたいのですが、防衛庁として宇宙開発に関する問題で計画、あるいはちょっと通信衛星を使うという話もありましたけれどもそういったものについてございましたらひとつ説明していただきたいのです。
  17. 諸富増夫

    説明員諸富増夫君) 防衛庁としては現在のところ独自の衛星を打ち上げるというような計画は持っておりません。しかしながら、現在打ち上げられております通信衛星二号がございますが、これにつきましては電電公社公衆通信役務の提供を受けるというような形で利用したいというような願望を持っておりまして、現在硫黄島についてこれを利用できないかということで関係省庁間で鋭意検討中でございます。
  18. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますともっぱら業務上の通信中心として今後やっていくということになりますね。
  19. 諸富増夫

    説明員諸富増夫君) 現在はまだ結論が出ておりませんで、電電公社通信サービス役務というのがございまして、いわゆる一般の方々が電話を利用しておられるのと同じような形で利用したいという希望を持っておるということでございます。
  20. 松前達郎

    松前達郎君 さっきの運輸省のいわゆる航行航海関係あるいは航空機の運航に関する関係衛星ですね、将来そういうものを開発するあるいは利用するということは考えていませんか。
  21. 諸富増夫

    説明員諸富増夫君) 将来そういうものが一般化されて一般的に利用されるようなことになりましたら防衛庁としても当然利用をしたいと、このように考えております。
  22. 松前達郎

    松前達郎君 いまそれぞれお伺いしたのですが、科学技術庁の方はさっき冒頭に内容等の御説明があったので改めてお伺いしませんけれども、この宇宙開発関係といいますか宇宙利用といいますか、これに関して各省庁それぞれいろんな希望もあり計画もありとそういう状況ですね、現在。それを宇宙開発委員会というのが取りまとめる。実施するのは、大体打ち上げその他は宇宙開発事業団中心になっていくのだろうと。これから先、恐らくこの宇宙問題というのは非常に広い範囲で各省庁関連を持ってくるのじゃないかというふうに思うのですね。  きょうも質問する前にいろいろ考えたのですけれども、どうも各省それぞれいまちょっと混乱したような、大分関係が広いものですから、これらについて今後どういうふうに統轄していくのか。さっきアメリカNASAの例を挙げました。NASAが全部とは言いませんけれどもそういったような方向で今後やっていくのかどうか。その辺、だんだんと広くなってきますと混乱はしないにしても、これちょっと言い方が悪いかもしれませんが計画に対する縄張りといいますか、そういうものが恐らく出てくる可能性もあるので、その辺に対して全体をまとめるための計画推進をどういうふうにやっていこうと考えられているのか、その辺をお知らせいただきたいと思います。
  23. 吉村晴光

    説明員吉村晴光君) 国全体の宇宙開発につきましては、現在宇宙開発委員会が定めております宇宙開発政策大綱というものに基づきましてやっておるわけでございまして、この政策大綱に基づきまして関係各省がいろんな構想検討し具体化されるということでございます。具体化されますときに宇宙開発委員会にその内容をお示しいただきまして関係省庁間でうまく整合のとれた形で進められるようにやっておるわけでございます。  先ほど運輸省からお話ございました航行援助衛星というのがございましたが、あの種の衛星と申しますのは移動体、動くものを相手にして通信をするという性質のものでございまして、従来固定している間の通信技術的に異なる点があるというものでございます。この点につきましては、運輸省だけというよりもむしろ郵政省の方にもそういう動くものの間の宇宙通信というものについての御構想もお持ちであるということで調整をいたしまして両者の協力プロジェクトという形で現在進めておるといった事例もございます。御指摘のように、今後宇宙利用が非常に広くなりますと関係省庁関係するところがまた非常に多くなるかと思いますが、宇宙開発委員会中心に国全体として整合のとれた計画として進められるようにいたしてまいりたいというふうに思っております。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 その辺が、やはり手をつけておきませんと将来非常に混乱する可能性もあると考えておるものですからいま質問さしていただいたのです。たとえば宇宙開発をやるときにわが国独自の技術でやるのか、あるいはアメリカあたり技術を導入するのか、あるいは打ち上げそのものを外国に依頼してしまうのか。わが国で打ち上げるとしてもその打ち上げの運搬手段に使うべきロケットそのものを一体どこのを使うかとかいろいろな問題がこれからあると思うのですね。しかし、恐らく将来はこの宇宙開発というのは相当先端技術も含めて非常に宇宙競争と言っていいぐらい各国で行われていくことがもう明らかですから、私はこれはわが国独自にこういうものを、お金もかかりますけれどもやるとすれば独自にやった方がいいのじゃないか、こういうふうに考えておるわけなので、その面も含めてこれから検討されていった方がいいと思うのです。これは宇宙そのもの平和利用ということが主眼ですから、わが国の場合は軍事利用を考えて打ち上げる衛星はないと確信していますけれども、平和利用を基本としてもまだ数多くのいろんな分野で活動する衛星というものがこれから続々出てくると思うのでこれの計画を立てませんと、たとえば衛星そのものの値段といいますかコストが非常に高くなるのじゃないか。製作するところもときどき注文が来て後しばらく二年も来ないとかすると、それのための特別な技術者を遊ばせなきゃいけない。遊ばせますと今度それがまた新たに製作をするときに復帰するまで多少時間がかかる、非常に能率が悪いと、そういうふうなことを私自身も聞いておるわけですね。ですからせっかくやるとすれば、いまお話ございましたような計画的な推進というものが必要だろうと私は思っておるので、それも含めて取りまとめてやれるような状況に持っていっていただいた方がいいのじゃないかと、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで、先ほどお話が出ましたが、今日までわが国の打ち上げを一番推進してこられたのが宇宙開発事業団なのですが、この宇宙開発事業団計画をされている現状といいますか今後の問題ですね。それとさらに先ほど私が質問申し上げたあるいは御意見申し上げたようなものに絡んで宇宙開発事業団の方では一体どういうふうに今後の計画を考えておられるか、それについて御説明いただきたいと思うのです。
  25. 園山重道

    参考人園山重道君) 宇宙開発事業団は御承知のように昭和四十四年に設立されたわけでございますけれども、いままでおかげをもちましていろいろな衛星開発ロケット開発、打ち上げをやってきたわけでございます。今後宇宙開発事業団といたしましては、宇宙開発事業団法第一条に示されております平和の目的に限りまして人工衛星及び人工衛星打ち上げ用ロケット開発、打ち上げ、追跡を総合的に行いかつ効率的に行うということで、宇宙開発利用の促進に資していくという目的でございますので、この趣旨に従ってやっていきたいと思っておるわけでございます。  それで現実の計画といたしましては、現在衛星を打ち上げておりますロケット、これは種子島から打ち上げておりますけれども、これはNII型と申しまして、大体静止衛星の規模で申し上げますと三百五十キログラム程度の静止衛星を打ち上げられる。すでに気象衛星ひまわり」あるいは先ごろ二月でございましたか打ち上げました通信衛星二号というものの打ち上げに成功いたしておりますけれども、ロケットといたしましては、この次は静止衛星にいたしまして大体五百五十キログラムぐらいのものを打ち上げられるHIロケットと言っておりますけれども、これを昭和六十年代の打ち上げ機としていま開発を進めておるところでございまして、大体昭和六十年にはテスト打ち上げをいたしまして六十一、二年ごろからいろいろな衛星の打ち上げをやっていきたいと思っておるところでございます。なお、その後につきましてもいろいろ計画は持っておりますけれども、現在どういうふうにロケット開発を進めていくかということを宇宙開発委員会等の御指導によりましていま検討を進めておるところでございます。  それで、具体的にどういう衛星を今後打ち上げようとしているかということでございますけれども、まずことしの八月には通信衛星二号のb、先ごろ打ち上げました二号のaの軌道上の予備機になるものでございますが、これを八月に打ち上げたいと思っております。それから来年の一—二月期には放送衛星二号、これのaを打ち上げたいと思っております。それからさらに五十九年度に入りまして静止気象衛星の三号、現在活躍しております「ひまわり二号」の後継機になるわけでございますけれども、「ひまわり」の寿命が大体三年でございますのでその後続きます気象衛星三号、「ひまわり三号」ということになるかと思いますが、これを五十九年度に上げたい。そうして六十年度に来年上げます放送衛星二号のb、やはりこれは軌道予備機になりますけれどもこれを打ち上げたい。それから六十一年度には海洋観測衛星——MOS1と言っておりますけれどもこれを打ち上げたいということでございます。これらはすべて先ほど申し上げました現在打っておりますNII型というロケットで打ち上げますけれども、その先六十年度に先ほど申し上げましたHIロケット、これの試験機を打ち上げまして、さらにこれを使いまして六十二年度に技術試験衛星V型というもの、それから通信衛星の二号の次の三号というものを六十二年度にaを上げる、六十三年度にこの通信衛星三号のbを上げる、こういう計画を持っておるところでございます。また日本種子島から打ち上げますという衛星ロケット計画のほかに、現在アメリカがスペースシャトルを実用化いたしておりますけれども、このシャトル利用いたしましていろいろな新しい材料をつくる実験、これを昭和六十二年度ごろにやりたいと思っておりまして、このときには日本人の専門家を、いわゆるペイロードスペシャリストという、シャトルに乗り込んで実験をいたします要員として乗せたいと、こういう計画が主なところでございます。このようなことを進めておるところでございます。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 計画的にずっとやっておられるので結構だと思うのです。  さて、そこで先ほど冒頭にちょっと申し上げたのですが、現在宇宙にある物体ですね、これはあえて物体ということを言わしていただきたいのですが、これについては一体どういう状況なのか、それからさらに平和利用ということをこの条約でもうたっているわけなのですけれども、果たしてその中の衛星のどの程度が平和利用目的で打ち上げられているか、これについていかがでしょうか。
  27. 中津川英雄

    説明員(中津川英雄君) それでは御質問ございました宇宙物体の数について御説明いたしたいと思いますけれども、現在宇宙空間にございます宇宙物体の数は、インタラビア・エア・レター誌というところの情報でございまして、五十六年十二月十七日現在の数字でございますけれども、総数で四千七百四十三個ございます。そのうち人工衛星が千二百七個、ロケットの燃え殻等が三千五百三十六個というような状況になってございます。これを少し国別に申し上げますと、ソ連が六百四十八個、アメリカが四百五十六個、日本二十一個、ヨーロッパ宇宙機関でありますESAが九個、こういったような人工衛星がいま宇宙にあるという状況にございます。  それで、二番目に御質問のございました軍事衛星の数でございますけれども、各国とも人工衛星宇宙物体に関して軍事用であるかどうかという区別を明らかにしておりませんので、軍事衛星の数については不明であるということでお答えができませんので御勘弁をお願いしたいと思います。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 この衛星登録のところでこれが非常に問題になってくるわけなのですが、軍事衛星が圧倒的に多いことは事実だと思うのですね。私は八〇%は軍事衛星じゃないかと思っているのです。これは軍事衛星であるか平和利用であるかという、利用の仕方によっては多少どうにでも使えるものも含めてそういうふうに境目がはっきりしないものもありますけれども、八割ぐらい軍事衛星じゃないかと思っているのですが、たとえばNASAが打ち上げた衛星の中でも、軍事目的では打ち上げていないけれども使い方によっては多少軍事情報的な面の役目も果たすと、ランドサットあたりですね。そういうふうなものもあるわけなのですが、それをどう使うかは本来の目的が違いますから、軍事用に使う使わないは別としましてこういうふうにたくさん打ち上がっているわけなのですが、さてそこで特に静止衛星に関して、静止衛星が大体三万六千キロですか赤道上の軌道に静上衛星を打ち上げるわけですけれども、これが電波を使う関係で余り接近するとお互いにインターラプションを起こすから、ある程度の距離を離していくということになれば、赤道の上の軌道に打ち上げられる数というのはおのずから制約を受けてくると、各国競って陣取り合戦をやるというふうなかっこうにまでなっているのが現状だと思うのですが、これは前にこの委員会だったと思いますが私質問もしたのですが、たとえばソビエトあたりが予約をしたいとかいうようなことも郵政省あたりに言ってきたという話もあります。こういったやはり大きく分けると宇宙に関しては宇宙戦争と言っていいぐらい非常に熾烈な争いがこれから始まるのじゃなかろうか。ですからわれわれ日本としてこの辺も十分踏まえながら今後対応をしていかなきゃならないし、また同時にその得た情報等の処理の問題とか、あるいは公開の問題も含めていろいろな問題が今後出てくるのじゃなかろうか、こういうふうに私思っております。ですからさっきのに戻りますけれども、やはりそういった面も含めて総合的に検討されていった方がいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  そこで今度条約の方に入りまして、まず最初宇宙飛行士救助送還物体返還等に関する条約ですが、これは条約が作成されたのが一九六七年ですから昭和四十二年ですか、作成をされているわけですね。いまから十六年前なので、日進月歩、非常に急速に発展している宇宙開発の面から考えますといかにも古臭い条約だということになるわけで、ただこの中で一つだけはっきりしているのは平和利用ということがうたわれているということですね。平和的に利用し探査するための国際協力のためにこういう条約をつくるのだ、こういう面がうたわれている。これが一つの特徴かもしれませんが、現実からいきますとこういう条約の時代じゃなくなったのじゃないかという感じがしてしようがないのですね。これは何もいま私が挙げました条約だけじゃなくて、もう一つの宇宙物体により引き起こされる損害責任に関する条約、これも全く同じなのですね。恐らくこれは宇宙条約の補足的な条約としてスタートしたと言われていますが、これもやはり一九六八年に作成をされていますから、相当古い時代の条約であって、現状から見ると、これについては余り効果がないような、というのは現実がこれから離れてしまっているような感じを持っておるわけなのですが、これらの条約について何年かのうちにこの条約内容検討しながら修正を加える、あるいは新しい条約に切りかえていくというふうな十年とか五年とかいうピリオドをやるようなことも書いてあったと思うのですが、どうなのですか、この二つの条約についての古さとそれから現実との整合性ですね、果たしてこれがあるものかどうか、これについて御所見をお伺いしたいのですが。
  29. 宇川秀幸

    政府委員(宇川秀幸君) 先生御指摘のように、これら条約が作成されてからかなりの時間がたっておるということは現実でございますし、それから技術自身その間日進月歩の要素があってその意味ではかなり古い内容条約だというのも一つの御見識かと存じます。一方これらの条約というものは、やっぱり国際社会で交渉の上成立したという側面がございまして、その内容自身を一歩進めるためには新たな国際合意を要するというたてまえであるがゆえに、そう簡単に内容を毎回見直しあるいは変えていくということは余り簡単な作業でないという側面もあるかと思います。その意味で特に返還救助それからそれに関連いたしまして発生し得る損害賠償、それの識別を支えます登録といった三条約一体として考える場合には、現実に非常に希有なケースでございますけれども落下事故というのは起こっておる。現にこれがカナダ—ソ連間では一つの損害賠償協定ということで処理されたという意味で、現在の一つの有効な規範になっておるということで、それら条約の作成当初は単に予想された事態であったのが現実のものになってきているという意味では、それぞれ意義は現在も十分に生きているというふうに考えます。  見直し条項につきましては、損害賠償条約につきましては十年後の見直し規定がございまして、これは昨年であったかと思いますが、関係国から改めて内容の見直しという要求は出ずに、もう少し関係諸国が参加をふやすべきであるという形で、昨年国連総会で扱われたように記憶いたしております。いろんな意味でもう少しこれら関係のものを、たとえば登録のあり方なんかについてより細目を決めていくとか、それから衛星の落下事故を事前に防遏するという意味で落下寸前にいろいろな情報の提供を求めるとか細目的には補強すべき面も多々あるかと思いますが、そういう点については今後私どもとしても努力していくという形で対処したいと考えております。
  30. 松前達郎

    松前達郎君 この三本の条約の中で、いまお話が出ました損害賠償といいますか、損害に対する責任の問題ですね。現実に何回か落下事故等が起こっていますからこれは確かにいまでも有効であろう。これは前にニュージーランドにコスモス四八二というのが落下していますね。それからアポロの五号がコロンビアにも落ちている。それからいまお話しのコスモス九五四、これは原子炉を搭載しているかどうかというので大分問題になったがこれがカナダに落下した。ですから事故というのか何というのかわかりませんが、落下に対しての損害の面では確かに有効かもしれないですね。ところが、この中には自国の過失でなくて故意に行われた攻撃等によって損害を受けるというのが考えられてくる。これは最近特に宇宙戦争だということになりますと、衛星衛星を撃墜するということも考えられますし、スペースシャトルあたりでも宇宙遊泳をやるというのは衛星をつかまえてくるとか、ちょっと押しただけで軌道が変わってしまいますからそういうための実験もやっているようですし、軍事的な意味でこの辺が非常に問題になってくるのじゃないかというふうに思うのです。この条約だと過失であるということがはっきり書いてあるのですね。ですから過失でなくて故意にやる場合、たとえばソビエトあたりがよくやっているので、コスモスのシリーズで二四九あたりが前に打ち上げた衛星を爆破する目的でもって実験が行われるとかこれはもうシリーズでずっとやっていますね、彼ら。これは自分の国のを自分で実験するのですから関係ないのですけれども、たとえばほかの国のものをレーザーとかそういうので撃破するとか、あるいは爆発で壊すとかそういうふうなこともどうやら近い将来行われる可能性があるので、そうしますと、いまのこの過失ということじゃなくて故意にというやつが出てくるわけですね。そういう問題が出ます。ですからそういう点から考えると、またこれも古いと言えばそれっきりになりますが、その点どうですか、別に何も話に出てないのでしょうか。
  31. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 条約の仕組みについてのお尋ねの点について私からお答え申し上げたいと思いますが、この三条におきましては確かに過失による場合にのみ規定してございますけれども、これは第三条が第二条との比較で置かれた条項であるということをまず御説明申し上げたいと思いますが、すなわち第二条におきまして、地表における損害については無過失責任ということでこれを厚く補償するという形になっておりますけれども、第三条におきましては、宇宙物体同士の損害につきましては、これは当然そのような危険を承知の上で上げているということであるので無過失責任を適用する必要はないので過失責任ということで、過失がある場合にはそのような責任を負うけれども過失がない場合には責任を負わなくてもいいということを定めたのが第三条の目的でございます。  そういうことで、先生御指摘のような故意の場合にそれではどうするかという点については確かにこの条約では触れてないわけでございます。当然のことながら故意の場合には過失の場合以上に責任原因というのは重大になるわけでございますので、その際にどのような形で損害賠償の問題が取り扱われるかということについては、この条約を離れて一般的な国際法の他の法原則に従ってこれを解決していくということになるだろうと思うわけでございます。そういう点では確かに先生御指摘の点はこの条約が触れていない局面であろうかと存じます。
  32. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) いま松前先生御質問の点につきまして都甲参事官の答弁を若干補足させていただきたいと思うのでございますけれども、確かに先生御指摘のように、いわゆる迎撃衛星というのが、A・SATの実験がソ連において行われているということを私ども情報で承知しておるわけでございますけれども、しかしながらこういったようないわゆる故意による相手の人工衛星への攻撃ということに対しましてはやっぱりこれは宇宙軍縮の最大の一つの課題だと私ども承知しておりまして、実は一九八一年の国連総会でも日本が共同提案国の一つになりまして、まずその宇宙軍縮の第一歩としてこのA・SATを規制すべきじゃないかと、もうできれば条約まで行きたいわけでございますけれどもそういったようなA・SAT禁止の検討というものを、ことに軍縮委員会でもって開始したらいいのではないかと、こういうふうな提案をしたわけでございます。ちなみに、まだその軍縮委員会の方はそういったような検討をする作業部会の設立には至っていないのでございますけれども、方向としては日本はそういうふうな方向で努力しているところでございます。
  33. 松前達郎

    松前達郎君 そういう時代になってしまったわけですね、もうすでに実験まで行われている時代ですから。これからこういった問題は新しい展開をしていくのじゃないかと思うのです。  いま国連の話が出ましたけれども、衛星が一体どういう行為をしているか。たとえば攻撃をしたとかあるいは衛星が墜落してくるとか、そういうものの監視はいまわが国ではできないわけですね、現状では。ですからほとんどアメリカの情報に頼る以外にない。あるいはその他の国々の情報に頼らざるを得ない。そこで国連あたりにいま提案——日本から提案されたというのは結構なのですが、そういうものの監視体制、これをやはり国連としてやる必要がある。これは国連そのものが監視をするべきステーションをつくるとか、そういうことも含めて監視体制に対する国連としての独自のシステムをつくり上げるということについて提案をされるような御意思はございますか。
  34. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) いま先生質問の点なのでございますけれども、まずいま御審議いただいております登録条約によって、打ち上げたものについては必ずしも十全とは言えませんけれどもある程度の状況を国連に登録しておる、それによって国連の関係各国がそれを知り得るという状況になっているわけでございます。しかしながら、国連の方のいまの現状はそこまででございましてそれ以上にはまだ行ってないわけでございますが、ただ原子力衛星につきましては昭和五十三年のコスモスの事故、それからまた最近の事故、こういったことを踏まえまして、原子力衛星が再突入してくる場合だけは、いわゆる原子力衛星を打ち上げてそれが落ちかかってきた国は国連にこういったようなことを直ちに連絡すべきであるということが国連の宇宙空間平和利用委員会レベルではほぼ合意を見まして、これは実は日本、カナダ、それからスウェーデンが音頭をとったわけでございますけれどもそれが決まりまして、恐らくことしの秋の国連総会ではそれが決議として採択されるのではないか、私どもそういうふうにしたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  35. 松前達郎

    松前達郎君 ある程度自分でデータを持ってないとこれに対してのいろんな規制その他の発言ができない面があるわけですから、監視ステーションをつくるというのはこれはお金がかかるので大変でしょうけれども、情報を集めることはできるわけですね。ですから、先ほども人工衛星の数とかあるいはその他の問題で御答弁いただいたのですが、これも日本独自の情報じゃないわけですね。日本が独自の情報を持てとは言いませんが、しかしそういう情報を集め得られるようなシステムを国連の中につくっていくということがやはりどうしても必要だと思うのです。これは軍備管理あるいは軍縮問題のときも全く同じことなのですね。何も知らないで行ってただ軍縮、軍縮と言ったってしようがないので、どの程度やっている、これをこれだけに減らしなさいとかそういうことがないとやはり現実性を帯びてこない。もっともそのためにまた衛星を使うという問題もありますけれども。そういった面で今後監視体制といいますか情報を収集しながらまとめ上げていくということ。これに対してぜひ国連の方にでも日本の提案として出していただいて、そういうシステムをつくり上げるということに御努力いただければと思うのです。  どうしてそんなことを言うかといいますと、実は私きのうSIPRIのある人と会ったのです。その際に、もういま必要なのはそれだけじゃないか、それが一番最初にやれる、しかもそんなに経費もかからないでやれることだが、日本は一体それについて前向きなのかあるいは消極的なのかと聞かれて困ったのですけれども、多分いまの日本政府としては前向きに取り組むであろうとは私個人の意見として言っておきましたけれども、そういった問題が非常に世界的にでも起き上がってきているという、沸き上がってきているということをちょっと御認識いただいて、それは私から申し上げる必要はないと思いますが、今後努力していただければと思うのです。  そこで、さっきの登録の問題なのですけれども、これも打ち上げ国の衛星登録というのは自国の登録簿というものに登録をする。ですからよそには登録しないわけですね。自分のところで自分で考えた方式で登録をする。そしてこれは当然やるでしょうけれども、その登録簿を設置したことを国連の事務総長に通報をするということですね。そのことまではいいと思うのです。ところがその内容ですね、打ち上げそのものの物理的条件とかそういったようなものについては、これは当然登録を自分のところではしているわけですし、その周期とか傾斜角、遠地点、近地点、こんなものは別に問題ないと思うのですね、これは情報として提供しても。問題はその意義のところにありますね。宇宙物体の一般的機能、これはさっき軍事衛星平和利用かわからないということだったのですが、これが具体的に国連に報告してないからそういうことになってしまう。これは実際にどうなのですかね、今後は恐らく一般的機能についてほとんど報告されないのじゃないか、共同利用みたいなもの以外は報告されないのじゃないかという気がしてならないわけですね。特に軍事衛星に関してはほとんど二分の一ぐらいしか——打ち上げたことすら報告がない。こういう現状だというふうに言われておるわけなのですね。そういうことからいきますと、この条約そのものもこれ意味があるのですけれども、しかしもっと強力に、先ほどの監視体制というのはこれは情報を収集してシステム化された中での監視体制、これと両方相まってやっていかないとこの条約も有効な効力を発揮しないのじゃないかと私はそう考えたものですからさっきお尋ねしたわけなのですけれども、この一般的機能については現状はどうなっていますか。
  36. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) いままで国連に登録されてまいりました状況を見てみますと、先生御指摘のように、確かに軍事、非軍事なんというのは全く触れておりません。触れておる一般的な機能としましては、これが気象であるとかあるいはこれが放送であるとか通信であるとかそういったような形での登録はなされておるわけでございます。そこで、先ほどもちょっと私から御答弁申し上げましたように、ことに原子力衛星かあるいは原子力衛星じゃないのかというようなことも全く実は触れられてないのでございまして、したがいまして、私は先生の御指摘はもっともだと拝聴いたしましたように、せめてこれは原子力衛星であるというようなこと、ぜひそれぐらいは一般機能の一つとして登録してもらいたいというようなことを、先ほど申しました国連の宇宙空間平和利用委員会等で日本の主張の一環として取り上げることを検討させていただきたいと、こういうふうに考えております。
  37. 松前達郎

    松前達郎君 原子力衛星であるかないかこれも必要なことだと思うのですがあれはどうなのですか、宇宙空間に原子力を利用した動力とかそういうものを打ち上げていいということになっているのですか。
  38. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 現在の原子力を利用するのは、エネルギー源として、電力源として原子力を利用しているわけでございますので、宇宙条約そのものにはそのようなものを禁止する条項はございません。そういうようなことで条約違反というような問題は生じていないということでございます。
  39. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと当然原子力搭載衛星も出てくるわけですね。特に最近では大電力を必要とする衛星が多くなりましたからいわゆる光発電ではとてもできない。その点、原子力を使うとかあるいは原子力の電池を使うとかいろいろなことが考えられておるわけですね。ですからそれも一つであるし、それからもう一つは、たとえばさっき私も申し上げましたナブスターといういわゆる航行衛星みたいなものですね、これも逆に使えば相手方の艦船の発見のための、特に最近ではレーダーによる衛星が多いですから、写真偵察じゃなくてレーダーでできますので気象に影響ない、そういうものも出てきているわけですね。ですから軍事利用とそうじゃない平和利用との境目というのが余り歴然としてないのが現状ですね。そういうふうにこれから非常に複雑になってくると思うのです。その辺を少し整理しながら何といいますか、国際的な取り決めというものをもっと強力なものにしていく必要があるのじゃないか。これも大分時間的に言うと古いと言えばそれきりなのですが、この方がまだ内容的には新しいかもしれませんが、この一連の条約、きょう三つの条約に関して質問さしていただいたわけですけれども、こういったものをこれからわれわれとしても後追いの形でやっていくのじゃなくて、もっと積極的にやれる立場にあると思うので、その辺はひとつよろしく御推進方をお願いできればと思っておるわけであります。  さて、三つの条約については大体そのぐらいで終わらしていただくわけですが、最後に一つだけ申し上げたいのは、衛星そのもの利用の仕方によっては非常に的確な情報を早く得ることができる、これは私だけの考えなのですが、ですからたとえば防衛問題一つ挙げても、衛星情報というものが基礎になってすべての安全保障に対するデータを提供してくれるはずであるから、ある意味で言うとこれはいわゆる軍事衛星という意味じゃなくてその辺のボーダーは非常にむずかしいのですけれども、やはりわれわれとしてもその辺も考えておかなきゃいけない時代が来るのじゃないか、こういうふうに思っておるわけです。ですから、さっきからずっといろいろお伺いしましたたとえば各省宇宙開発計画等も含めて、いまちょうど武器の輸出とかあるいは先端技術が武器に使われるとかいろんな問題をやっていますけれども、しかしその辺だけははっきりしておきませんと何だかわからないうちにずるずる——攻撃衛星をまさか日本で上げることはないでしょうけれども、その辺まで行く国もあるわけですから、その点も含めて、これは近い将来必ずそうなると私は思いますので検討しておいた方がいいのじゃないかと。ただ、情報を得るというのは私はいわゆる軍備ではないと思っているのです。情報を得るのは結構な話で、  これはたとえばこういう話がありますね。ビッグバードというアメリカの写真偵察衛星がございます。これはわりと長い寿命を持った衛星ですが、ソ連がアフガニスタンに兵を出すとき、あれはたしか二十日以上前にもうすでにわかっていたわけですね。ただ、アメリカ政府はそれを発表しなかったわけです。ところがそのときに、たとえばソ連あたりだと閣僚会議といいますか首脳が集まってそれの是非について論議をしたときに、たしかソ連にもハト派がいるのだそうで、四対六ぐらいでハト派が負けてしまったと。もしかそのときにその情報をアメリカが発表していれば国際世論が起き上がっているから、あるいはアフガン問題に手をつけないでハト派が勝ったかもしれないということをあるソビエトの要人から聞いたのですけれどもこれも一つの情報ですね。そのほか日本近海にもずいぶんいろんな艦船がうろうろしていますけれども、核戦略潜水艦も含めて、日昭丸事件もありましていろいろあったわけですが、そういうふうなことについて潜水艦探知まではできないにしても、少なくともわれわれの身近で何が起こっているかぐらいの情報はアメリカに頼らなくてもわれわれが収集できるようなそういう体制というのが恐らく将来考えられてくるのじゃなかろうか。非戦闘的防衛力といいますかそういうものに対しての考えというものをわれわれは持っておかなきゃいけないと。これは私個人の考えですが考えておるわけなのです。またそれと関連して、外務省の情報収集能力が非常に悪いということも前に申し上げたわけですね。だから電波をもっと使いなさいと言うことで各在外公館に電波通信のための施設を整えるとか——これは相互の問題ですから国内法も変えてやらなきゃいけないが、そういった情報というものを、今後の外交あるいはその他すべてを含めて機先を制した情報というのが非常に重要だと私思うものですから、大分長くなりましたけれどもこの宇宙開発関連していま意見を申し上げたわけなのですが、どうですか、そういうことについて外務省としてどういうふうにお感じでしょうか。
  40. 石川要三

    政府委員(石川要三君) ただいまの御意見を拝聴いたしまして、確かにこの三条約内容をいろいろと検討いたしましても成立過程が非常に時間的にもかなりたっている。その間に世の中というものはどんどん進展している。特に宇宙に関する科学的な開発というものは非常にすばらしい進展をしているというようなことから見てこのままで果たしていいのかというような点。それからまた平和的目的の限界というもののむずかしさ、そういった点は先生の御意見というものは確かに私ども大きな示唆を得たというふうに認識をするわけでありますが、ただ私どもは、宇宙平和利用のために各種のプロジェクトを行っているわけでありますけれども、しかし現実の面から見ると、ただいま御指摘のありましたように、大変世の中の進展とともにその内容というものは非常にむずかしくなってきておるし、特に宇宙における軍備競争というものの歯どめが非常にむずかしいというようなそういう懸念もうかがわれる今日でございますので、あくまでも私どもはそういう平和的利用のためにはやっておりますけれども、今後は国連軍縮委員会等の場におきましてもただいまの御指摘されるようなそういう趣旨に沿って私どもは積極的な働きかけをしていきたい、このように感ずるわけであります。
  41. 田中寿美子

    田中寿美子君 きょうは大臣もおいでになりませんし、そうかといってこれが会期末のあるいは最後の委員会かもしれない。それで、いま何かあわただしくなってきておりまして予算委員会の要求もされているわけです。それで毎年総理大臣がASEANを四月から五月にかけての連休に訪問されるならわしになっておりますが、帰っていらっしゃいますとそれに対して本会議質問とかあるいは外務委員会に総理大臣に来ていただいていろいろと質問するならわしでございましたけれども、ことしは夏の参議院選挙があることと、それから会期がすでに大変押し結まってきているという状況の中で果たしてそういうことが実現できるかどうか大変怪しいわけでございますね。それで、もしそういう機会があれば私自身お尋ねしたいことがたくさんあったのですけれども、きょうは別に通告していなかったことですが一言、総理がASEANにいらっしゃってクアラルンプール宣言をなさって、そして経済協力をあちこちにたくさん約束してこられた問題について触れておきたいと思います。  それは前にも申し上げたことがありますけれども、五十八年度の政府のアジアその他の途上国を中心に贈与をしている金額と借款と合計して九千六百七十八億というのがGNPの〇・三四%に当たっている、これを三年間で倍にすることができるかどうか、GNPの七%までに持っていかなければならないというようなことを言っているわけで、私はもちろん途上国への援助をするということが日本が国際的に平和に寄与する大きな方法であると思っておりますからそうすべきだとは思いますけれども、経済協力のための財源というのは非常に苦しいわけですね。経済協力基金はすでにもう赤字になりつつある。その大きな理由が、資金運用部資金を経済協力基金に使ってきた、そして〇・七三%の利率ですから非常にそれがかさんでいって一般会計からこれを補うというやり方をしていた、それではやり切れないということで経済協力基金法を改正して、これまでは半分半分——基金から半分、一般会計から半分というやり方だったのを、基金の方が一に対して一般会計から三までこれを補うことができるというような法律の改正をしたわけでなおさら今度は一般会計を圧迫してくるという状況なのですね。  それで、もう何回かこの席で申し上げましたけれども、昨年鈴木総理が軍縮特別総会で演説なすった中でも、軍縮の必要を説かれ、軍縮で浮いた金を途上国に援助する、あるいはいろいろ問題のある地域の援助に充てるということを提案していらっしゃるけれども具体性がない。だから、日本などは今度中曽根さんはASEAN諸国にいらっしゃって憲法擁護——広島、長崎の経験による日本国民の平和への意欲というようなことをフルにお使いになった。これまで憲法改正論者である中曽根さんがASEAN諸国の持っている日本の過去の侵略に対する痛み、そういうものに接触したから大変それは上手におっしゃったと思いますけれども、憲法の枠内で必要最小限の国防費しか使いませんというふうに海外ではおっしゃってきている。それならばなおさら経済協力というのをもっと具体的に軍縮委員会などで日本は提案すべきではないか。各国とも軍事費のせめて一%とか何%とかいうものを出そうじゃないか、日本は出しますと、そしてそれを援助に向けようと思いますというようなことを言うならばこれに賛同する国もあるのではないかということを私は思っているわけで、経済協力に関する今後の財源の見通しなどについても心配が相当ある。しかしそれをやらなきゃならないとすれば予算の中で突出している防衛費の中の一部、これを日本の国際的な平和への寄与という意味で拠出するならばいいのではないかというふうに私は思っております。このことについてきょうおいでの外務省の方の中で何かコメントがございますか、あるいは政務次官でも結構ですけれども。
  42. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 海外経済援助の財政的な点について今後非常に苦しくなってまいっておりますが、これがどうなるのかというような点については政府委員の方から具体的な一つの数字をもってお答えをさしていきたいと思います。  ただ中曽根総理の発言については、総理がこの席に来られるかどうかは私もまだ現在存知しておりませんが、しかし外務大臣のこの席でのいろんな国際情勢の報告等の質問の機会はあるのじゃないかというふうに拝察をするわけでありまして、そういった点でさらに具体的にはっきりそれが御報告されると思いますけれども、そういう総理のトーンダウンというものについて私はちょっと認識が先生とは違っておるわけでございまして、特に前段の国際援助、経済援助についての財政的な内容については政府委員から答弁させたいと思います。
  43. 田中寿美子

    田中寿美子君 その説明はいいです、私はもうすでに過去にやったし数字は持っておりますので。きょうはただ、ASEANへの訪問を終わられて総理が帰ってこられて後の外務委員会ですから一言その点について、本当に憲法の枠内でという意味は、言葉の使い方は幾らでも柔軟に使えますので、あちらではあっちの方を向き、こちらではこっちを向き、なるほど風見鶏と言われてよく当たっているなというふうに思っているわけです。私の意見を述べただけにとどめておきます。もし質問の機会があればまたその際にさしていただきます。  三条約に入りますけれども、先ほど松前委員が監視体制が必要ではないかというふうなこともおっしゃいました。一番もとになる宇宙条約では核兵器及び大量破壊兵器を載せてはいけないということしかないものですから、だから原子炉を積んだ衛星がほとんどたくさん飛び回っているという実情だと思います。  私は一番先にお尋ねしたいのは、松前委員もおっしゃったように宇宙救助返還協定の方はもうできてから十六年もたっている。そして登録条約の方は八年。それぞれの条約が国連で採択されたときの日本の態度というのは、救助返還協定では採択に賛成したけれども署名をしていないと。それから損害賠償条約については採択に棄権しているわけですね、署名もしていない。それから登録条約の方は採択に賛成したけれども署名をしないと。それぞれ理由がおありでしょうがそれはどういう理由であったか。そしてなぜこんなに長い間かかったのか、今日急に今度は承認することにしようということに決まったのか。外務省の方の説明を伺いますと、国内法の整備がうまくいかなくてその調整に手間取ったということですけれども果たしてそうなのかどうか。いま挙げました幾つかの点にお答えをいただきたいと思います。
  44. 宇川秀幸

    政府委員(宇川秀幸君) 各条約に対する態度でございますけれども先生御指摘のとおりでございまして、二つについては国連の場ではいわゆるコンセンサスで採択されておる。日本は署名しておらない。損害賠償条約については表決されたわけでございますが、その際日本は棄権しておるというのが実態でございます。棄権いたしました理由は、日本以外にも同様の国があったわけですが、審議過程においていろいろ論議があった中で、損害賠償の支払いの担保を行うために国際法の基準に加えて損害発生地国法を適用することを日本は当時主張しておったと。それから同時に、この条約のもとでつくられております請求委員会の決定に拘束力を認めるべきであろうという主張を当時行っておったわけでございます。それが棄権をいたしました理由でございます。  各条約に署名をしておらなかったのは、順序を追ってできてまいったわけですがこれを日本としては一体として考えておったということが一つと、その間直ちに条約に入る準備が必ずしも整っていないということを反映してまいったということでございまして、その条約自身に対するわが国の賛否の態度を非署名ということであらわそうとしたわけではないということでございます。  御指摘のように、これら三条約については早く審議ができる体制にしろということが国会の決議にもございましたし、その間非常に時間が経過しているということははなはだ遺憾であるということを率直に認めざるを得ないと考えます。御案内のように、当初その決議があった時期におきましては条約の実施を担保するために日本としてはその実施担保に万全の体制を期するというのがたてまえであることもございまして、かなり包括的な内容の国内法をもって支えるという前提で検討が行われまして、内容がかなり包括的であったことと、関係各省、先ほども論議されましたように多岐にわたることもあって、そのそれぞれの役割りの分担についての詰めも要したということで時間が経過したという経緯でございます。  この今回御審議をお願いいたしておりますのはそういう包括的な体制ではなくて、これらの三条約を国として実施する際に必要最小限の処置は何かという形から考えを進めまして、現在の法令の範囲、現行法体制の中で当面は支障なくこれらの条約の実施を図ることができるという考え方に基づきまして、かつ各省のその辺の役割り分担等についても十分申し合わせをした上で今回御審議をお願いするという形で持って上がったというのが経緯でございます。
  45. 田中寿美子

    田中寿美子君 なかなか国内法の調整がつかないということが主な理由で今日までおくれてきたのだというふうな御説明を受けたわけですが、今回は国際的な協力をしなければならないと、積極的にそれに貢献するのだと。日本もずいぶんおくれて出てきたけれども米ソに次いで三番目にたくさん衛星を打ち出している国ですから、いよいよ今度は条約採択を、一番古いのは十六年ということで遅いけれども今回はこれを承認しようということになったと。  そうしますと、別に国内法の関係では問題はないということなのですか。何と何が特に調整がとれなくて今日までおくれたのだということなのでございましょうか。
  46. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 今回特に特別な立法なしにこの条約に入ることができるという判断を下した基礎には、宇宙活動の実態が明らかになってきたので現在の宇宙活動の実態を前提とすれば当面国内法で措置できるだろうという判断があったわけでございます。  現在行われております宇宙活動は、主として国の機関あるいは国の直接の監督下にある宇宙事業団という機関がこれを行っておりますので、条約上の責任政府として担保する際には、条約に入ることによって条約の義務を履行するという形でそれを実現できるということでそういう判断に立ったわけでございます。  国内的には、将来たとえば民間が主体となって打ち上げるような事態ができます場合には、たとえば損害賠償責任の問題をどうするかということとか、それから国がその活動について責任を負うために監督体制をどうし、そうして規制をどう及ぼすかというような問題について立法が多分必要になるだろうということが予想されますので、その際には閣議了解の形でそのような活動を予見される場合には立法について措置をするということを申し合わせた上で今回の措置となったわけでございます。そういう意味で一番立法の問題となり得るというふうに私ども意識しておりますのは、民間の活動が生じた場合にそれをどう規制していくか、それから損害賠償の問題をどう扱っていくか、このような問題が中心になっていくだろうと考えております。
  47. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、将来やはり何らかの国内法の措置をしなければならないことがあり得るというふうに思っていらっしゃるわけですね。  一九七八年——五十三年にソ連の原子炉衛星コスモス九五四号がカナダに落ちたときに参議院で原子力衛星の規制に関する決議というのを、先ほどそちらからもおっしゃいましたそれをやりまして、そうしてそれに対応して国内法をつくるべきだという機運があって、政府の方でも次の八十七国会に三条約を提出すると同時に国内法として宇宙物体の打ち上げ等に関する法律案、これは仮称ですけれどもそれを用意していられたというふうに聞いております。けれども、それが先ほどの御説明のように非常に包括的であって関係各省庁間の調整がつかなかったというようなことで法律案の提案をしないで今日まで来ている。そして今回は法律がなくても条約承認には、締約国となることには妨げはないという御説明だと思いますね。それでいいのですね。それで将来は立法措置もあり得るということですね。  そうしますと、この条約の締約国になりました後は現在の国内法で対応していくと。もしその国内法で対応できないことが起こった場合にはどうするのですか。
  48. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 先ほども御説明申し上げたわけでございますけれども、この条約に入る際に閣議了解をいたしておりまして、その閣議了解の、口頭了解の第三点といたしまして、   今後の宇宙開発の展開に応じ、これら三条約及び宇宙条約を実施する上で現行法令では対処し得ない事態が生ずることが予見される場合には、関係省庁は、緊密な協力の下に一体となって取り組み、かかる事態が生ずる前に必要な立法措置をとるものとする。 というふうに明確な了解をしているわけでございます。  そういうことで、そのような事態が予想される場合には立法措置について真剣に取り組むということになると思います。
  49. 田中寿美子

    田中寿美子君 今国会でも今国会に提出する予定の法案として、人工衛星の規制及び損害賠償に関する法律案というのを考えていられたということを承知しておりますけれども、これができなかったのは、大変めんどうくさい法律になり包括的であるから困難があると、そういうことですか、法律そのものをつくることが。
  50. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 先生御指摘の法律案が一応議題にのせられましたのは、その段階におきましては法律的に詰めて、国内法が必要であるかどうかという点を詰めていた段階でございましたので、もしそのような必要だという結論になりました場合に御審議をお願いできるような状態にしておくというためにそのような法律を一応議題にのせておいたわけでございますけれども、その後詰めてみましたところ、損害賠償の問題につきましても当面、特に被害国になった場合に、民間人の方々の被害を吸い上げて、これを外国と交渉するに当たっては現行法令の中で各省庁持っている権限を使ってやればこれで十分であろうという結論になったものでございますから、法律という形ではなくて各省庁間の申し合わせという形でこれを実施することにしたわけでございます。  そういうことで、先ほど触れられました閣議了解の中におきまして第一点、第二点がその問題に触れておりますけれども、第一点におきましては、  関係省庁は、これら三条約の実施が円滑に遂行されるよう緊密な協力の下に必要な措置をとる。 ということで、この具体的な措置についてさらに申し合わせを行っております。  それから第二点におきまして、   我が国において国民等が外国等の宇宙物体により損害を被った場合に、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約に基づき、我が国が同条約上の権利を行使するための事務処理手続については、同条約の公布の際に国民に対する周知徹底を図る。 ということになっておりまして、これも具体的な手続を定めておりまして、これを周知徹底させる上に具体的な方法をあわせてとるということも閣議で了解されているわけでございます。
  51. 田中寿美子

    田中寿美子君 要するに問題は、人工衛星の打ち上げをどのように規制するかということと、それから損害があった場合のその賠償をどうするかということが一番の問題なわけなのですね。それで、これまでずいぶん長い時間かかってどうしても国内法が必要だということで延ばしてこられて、今度は、いやそうでなくて各省庁間の緊密なる連絡でできるという結論に変わられた経緯はちょっと私にはわかりにくいのですけれども、いま宇宙関係の国内の法令では宇宙開発事業団法通信放送衛星機構法といった程度のものしかないわけなのですね。ですから、いまの打ち上げの規制とか損害賠償をカバーできないと思いますけれども、しかもこれ相手国があるわけですから、そういうときに果たして現行法令のままで国内の実施が確保されるものなのかどうかということですね。
  52. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 先ほどの御説明に一言つけ加えさせていただきたいのでございますが、私どもがこのような判断に立った一つの大きな理由は、主要先進国におきまして、宇宙条約に入るときに特に国内立法をせずに入っていっている。その際に、各国の認識におきましてこれは政府が当面打ち上げについて責任を持つので、政府が自分の責任において処理をするということで十分であるという認識に立って国内法をつくっていないということでございますので、そういう意味でわが国もその観点から検討いたしましたところ、そういう観点で十分に当面対処し得ると、これは民間の打ち上げがないということを想定しての場合でございますけれどもそのような結論に至ったものでございますから今回のような処理にしたわけでございます。
  53. 田中寿美子

    田中寿美子君 何でそんならこんなに長く——各国がそうやっているのなら日本もということですけれども、時間をかけたのかなという気がしてまだ釈然としませんけれども、いわば条約だけ早く見切り発車をしていくというような感じがします。今後に問題が残るだろうと思いますけれども、いま日本の民間で打ち上げる可能性というのはちょっとないだろうという見通しもあって政府がこれに責任を負っていくということですけれども、果たしてそういうふうに考えていいですか、宇宙開発が大変無秩序になっていくという心配はありませんか。
  54. 吉村晴光

    説明員吉村晴光君) ただいま御説明がございましたように、現在の打ち上げを実施いたしておりますところは宇宙開発事業団と文部省の宇宙科学研究所でございます。宇宙技術は非常に総合的な技術でございますし、そういう意味で一民間企業でやるということはかなりむずかしい点がございますが、それに加えまして一つは射場の問題がございまして、非常に広大な敷地を自分で持っていないと打ち上げができないということになるわけでございます。したがいまして、現在のところ一民間企業がみずから大きな敷地を確保し射場を建設して、そういう衛星打ち上げを請け負うというようなことは想定されないというふうに思っておるわけでございます。遠い将来になりますと非常にいろんな動きがあるかと思いますが当面の判断としてはそれでよろしいのではなかろうか。そういたしますと、現在やっております宇宙開発事業団及び宇宙科学研究所政府関連機関でございますので、政府の事務処理で対応ができるというふうに判断をされておるものでございます。
  55. 田中寿美子

    田中寿美子君 今後どのようなことかが起こってきたときには改めて取り組みをするという御説明だと思います。  それで、原子炉積載衛星というものがいまやたくさん飛んでいるわけですが、これについての制約ということを日本としてはどういうふうに考えているのかと思うわけです。五年前にソ連の原子炉積載衛星コスモス九五四がカナダへ落ちましたとき以来、日本はカナダなんかと一緒になって原子力電池や原子炉を積んだ衛星の打ち上げを禁止するように要求しているというふうに伺っておりますが、それが本当ですか。そして、ウィーンで開かれた昨年の第二回国連宇宙会議でもこの問題が議題になったということなのですが、これにはどういうふうに取り組まれ、日本はどういう態度をとっていらっしゃるのか。
  56. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御質問の原子力衛星、ちょっとこれ御質問の趣旨からそれるかと思いますけれども、現在アメリカとソ連が原子力衛星を打ち上げておりまして、アメリカの場合はこれは原子力電池の方で原子炉の方は一個だと承知しておるわけでございますが、ソ連の方は原子炉衛星二十四個、再突入のが二個ございますから地球周回中のが現在二十二個あるというふうに私ども承知しておるわけでございます。それで、昭和五十三年にコスモス九五四号が落下しました事故を契機としまして、国連に宇宙空間平和利用委員会、それには技術委員会とそれからもう一つ法律小委員会と二つがあるわけでございますけれども、その場を通じまして日本としては原子力衛星の安全性というものに関する何かやっぱり法規則をつくるべきではないかとこういう主張をし、原子力衛星の安全性がどうも不確かなものについては打ち上げるべきじゃないのじゃないかと、こういうふうな主張をずっと続けておったわけでございますし、ことしの春に開かれました、これはこの間のコスモス衛星の落下事故の直後の委員会でございますけれどもそこでも同様の主張をしてきておるわけでございます。これスウェーデンあるいはカナダとともに主張をしているわけでございますけれども、なかなか具体的にそれではどういうふうな法規則をつくるかという点になりますとまだ若干時間がかかるのではないかと思うわけでございますけれども、これにつきましては今後とも努力をしてまいりたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから第二点に、それではとりあえずの措置としまして、実は原子力衛星が落っこちてくるというようなことになった場合にはそれを少なくともある事前に教えてくれと、それを世界の関係各国に通報してもらうべきじゃないかというような観点から再突入の通報制度というものを打ち立てようということで、これはまた日本、カナダ、スウェーデン等が旗を振ったわけでございますけども、これにつきましては比較的スムーズにまいりまして、宇宙空間平和利用委員会におきましては通報のいわゆる手続といいますかあるいは書式等々も整備というか合意されまして、ことしの秋の国連総会でこれは国連全体の決議として承認されるのではないかと、こういうふうに思っております。今後とも原子力衛星のいわゆる安全性に関する法規則につきましては先ほど申しましたように努力してまいりたいと、こういうふうに思っております。
  57. 田中寿美子

    田中寿美子君 軍縮委員会でもそういうことについては強く主張してほしいし、宇宙空間平和利用委員会でもスウェーデン、カナダなどとともに日本は軍縮に関してはイニシアチブをとる義務が私はあると思っておりますが、しかし原子炉を積んではいけないということではなくて、危険を伴うようなときにはこれを規制するというようなことのようですけれども、いま大きな出力の要るスパイ衛星——スパイ衛星というふうに私たちは呼びますけれども、その電源は原子力以外にはないということでしょうか。それでソ連などが強く反対しているというふうに聞いておりますが、そうですか。
  58. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 実は偵察衛星あるいは軍事衛星の定義自身が余りよくわからない、少なくとも一般的な定義はないのでございますけれども、スウェーデンにございますストックホルム国際平和研究所等々では一応の推定としまして幾つかこれは軍事衛星に推定されるのじゃないかというようなことを出しておりますが、たとえばその数でございますけれども、写真偵察衛星というのは、一九八一年までにスウェーデンのSIPRIの統計によりますと、アメリカで二百三十五、ソ連で五百三十八というふうな数字がスウェーデンのSIPRIの年鑑には出ているわけでございますけれども、他方、原子力衛星の方は先ほど先生の御質問にお答えしましたようにまだ二十一個等々で、したがいましてその他の写真偵察衛星等につきましては、原子力じゃない他の電源、太陽電池であるとかあるいはその他の電源を使っているのではないかと、ちょっと私素人でございますけれどもそういうふうに判断しておるわけでございます。
  59. 田中寿美子

    田中寿美子君 宇宙に打ち上げる衛星内容については米ソとも非常に秘密にしていることですからなかなかつかみにくくて、これは軍事目的であるというようなことは絶対に言っていないものだろうと思うのですね。ですけれども、こういうことについては米ソ両方に対してやっぱり宇宙軌道に原子炉を積載した衛星が打ち上げられるということについては好もしいことではないと……。  アメリカは原子炉衛星の打ち上げを中止しているのですか。それから現在地球軌道ですね、どの程度の数の原子炉積載衛星が入っているのですか。
  60. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) アメリカの場合は、これは実は先ほどちょっとお答えしましたように、原子力電池が二十一個でいま現在地球周回中が七個、再突入三個、それから地球周回外のが十一個ということでこれは原子力電池でございます。それから原子炉の方は地球周回中アメリカの場合一個というふうに、これは実はアメリカ側の国連に出しました文書でそういうふうに言ってきたわけでございます。それで、現在はアメリカにつきましては原子炉衛星の方は打ち上げていないというふうに承知しております。他方、ソ連の方は原子力電池が何個あるかちょっとわからないのでございますけれども、原子炉の方はこれまで打ち上げましたのが二十四個、現在二個落ちておりますから二十二個が地球周回中であると、こういうふうに承知しております。
  61. 田中寿美子

    田中寿美子君 最近、宇宙空間平和利用委員会の法律小委員会が原子炉積載衛星が落下する危険が生じた際に打ち上げ国が関係国に対して適時に通報する形式について合意したというふうに聞いておりますが、その内容はどんなもので、そして今回の宇宙救助返還協定宇宙物体事故等の通報義務というのがありますがそれはそういうことも含めるのですか、それを補完するのですか。これどんな関係にありますか。
  62. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 国連の宇宙空間平和利用委員会で合意されましたいわゆる通報フォーマットというか書式がございまして、その内容のまず一つは、打ち上げ国あるいはどんな機関が打ち上げたかということ、それから国際標識というのを人工衛星につけている場合にはそれも言ってこいと、それから三番目に打ち上げ日時、それからどこの場所から打ち上げたのかと、それから四番目に軌道寿命及び落下地点を最も的確に予測するための遠地点であるとか近地点であるとかあるいは軌道要素、そういった軌道要素等の必要な情報を教えてくれと、それから第五番目に宇宙物体の一般的な機能、それが第一点。  それから大きな第二点といたしまして、原子力電源の放射線の危険性に関する情報ということで原子力電源のタイプ、これがラジオアイソトープなのかあるいは原子炉なのか、それから燃料の形態、量、特性等について、こういったようなことを通報しようという通報フォーマットが合意されております。  これと先生第二の御質問の登録条約との関係なのでございますけれども……
  63. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうですね、救助返還の。
  64. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) ただいまの遠藤参事官から御説明申し上げた合意と宇宙返還救助協定との関係でございますけれども、これはむしろ宇宙返還条約の方は損害が発生したときに打ち上げ国が必要な——そのような事故が生じた後で打ち上げ機関が必要な情報を提供するという形になっておりますので、これはこの条約を離れて別な見地から行われた別途の合意であるというふうに解すのが適当ではないかと考えております。
  65. 田中寿美子

    田中寿美子君 わかりました。つまりどこかに落ちた場合に救助し、そして物体返還するようなときに落ちてからの状況を通報する義務がある、事前にもう落ちそうだということに関してはこの協定ではカバーしないというわけですね。
  66. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 特に落ちてから必要な援助あるいは資料提供ということを決めているのがこの条約でございますので、そういう意味で先生御指摘のとおりだと思います。
  67. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、先ほどの申し合わせとこれとは補完し合わなければならないということですね。  それで米ソの宇宙軍拡競争が大変私ども心配なのですね。軍縮問題を言うときに地上だけではない、それから大気圏内だけではなくて宇宙空間まで軍拡競争がどんどん広がっているという感じがいたします。ことしの初めのソ連の原子炉衛星コスモス一四〇二号のあの落下の事故ですね、これは宇宙軍拡競争の非常にすさまじい状況であるということを私どもに知らしたものだというふうに思われるのですが、いま打ち上げられている人工衛星の、先ほどちょっと遠藤参事官から御説明がありましたけれども半分以上は軍事用のものとして打ち上げられていると。最近では偵察衛星のほかに衛星を攻撃するキラー衛星だとかそれから戦闘機から発射して衛星を破壊するミサイルまでが開発中だというふうに伝えられて、つまり宇宙と地上を結ぶそういう軍拡競争も行われている。大変心配すべきことなのではないかと思いますけれども政府の認識はどうですか、それは。
  68. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 御承知のとおり時代の進展によりまして非常に宇宙そのものも危険性をはらんできていることは否めない事実であろうと思います。そういうような中におきまして私どもは宇宙における軍備競争の防止という問題につきましては非常に大きな関心を持っているわけでありまして、したがって先ほど来御答弁申し上げましたような国連あるいは軍縮委員会、こういうような中におきましてもきわめて積極的にわが国といたしましては参加をして活動している、こういう状況でございます。今後におきましてもこの状況というものはこれはますます私どもは必要というふうに認識をしておりますので、あらゆる分野におきましてできる限り広範な実効ある規制措置が講じられるように引き続き努力をしていきたい、こういう考えであります。
  69. 田中寿美子

    田中寿美子君 危険度とか危機感はどのように持っていらっしゃるのですか。
  70. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 確かに実は先ほども御答弁申し上げましたように軍事衛星の定義自身はなかなかむずかしいことなのでございますけれどもちょっとそれはさておきまして、いわゆる軍事衛星の中で一番私どもは問題があるのじゃないかと思いますのは迎撃衛星、つまり衛星を攻撃する衛星、キラー衛星と申しますかそれだろうと思うわけでございます。そこで日本は先ほど政務次官からも答弁ございましたように、国連あるいは軍縮委員会でまず迎撃衛星、アンチサテライト兵器というもの、これを禁止することに努力を払うべきではないか、こういうことの観点からこれに軍縮委員会の優先課題として取り組みたいということで日本関係国とも一緒になりまして共同提案を行い、軍縮委員会でも何とか作業部会、まだ実はできてないのでございますけれども作業部会をつくってそこでそれを取り上げていこう、こういうふうなことをいまやろうとしておる、あるいは努力中であるわけでございます。
  71. 田中寿美子

    田中寿美子君 確かにこれは軍事目的で上げたものですというふうには言わないと思います。しかしどれでもほとんどが軍事目的に使うことができるという状況にあるだろうと思うのです。SIPRIの年鑑によりますと、米ソが一九五八年から八一年までの二十三年間に合計して一千九百個以上の軍事衛星を打ち上げたということになっておりますね。先ほどおっしゃった数字がありますけれども昨年の六月末で米国が九百六十三個、ソ連が一千七百二十八個、合計で世界の人工衛星二千八百十個打ち上げている。そのうちの非常に多くが軍事衛星と見られていいのではないか。そうすると軍縮の問題は、本当に地上と空とそれからさらに宇宙のところまで及ばなければ非常に危ないのではないかというふうな私は危機感を持っております。いまでは宇宙空間が米ソの軍拡競争の場になってきている。だから、たとえば戦略兵器制限交渉だとかそれから中距離兵器の交渉を一方でやりながら、やはり宇宙における軍事競争、軍拡競争というものへの対応もぜひ日本はイニシアチブをとって地球を守るという立場をとっていただきたいというふうに思います。  いまおっしゃった迎撃ミサイルをまず禁止しよう、何もかもということには一遍にいかないでしょうからそこから始まることでしょうけれども、レーガン大統領も、昨年あたりの新聞によりますと宇宙空間での人工衛星を駆使するシステムをつくることについて非常に強い発言を何回もいたしております。ですから、人類が平和を目指す場合に非常に総合的に見なければならないだろうと思います。そうでありませんと一九六七年の宇宙条約というものの精神がもう全く失われていってしまう。宇宙空間というのは人類の共有財産で米ソが独占すべきものではない、だから宇宙を軍拡の場にするなという国際世論を喚起することが必要だと思いますが、外務省並びにこれと関係のある政府の方々、これは相当強力にこういう方向に向かって努力なさるおつもりがございますか。
  72. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 再度同じような答弁になろうかと思いますが、先ほど来政府委員からその内容について具体的な報告もされましたけれども、政府といたしましてはかなり積極的にこういう軍備競争の防止という面に対しては対処しているわけでありまして、その点は私どもむしろ胸を張ってやっているというふうに御評価もいただければありがたいと思います。
  73. 田中寿美子

    田中寿美子君 だからジュネーブの軍縮委員会だけじゃなくてあらゆる宇宙兵器に関するもの、宇宙利用に関する委員会などでがんばってもらわなけりゃいけないと思います。  ソ連のアンドロポフ書記長が、宇宙兵器配備の禁止を主張したアメリカの科学者のアピールにこたえて、米国があらゆる兵器の宇宙配備を禁止する条約の起草を始めるため直ちに交渉のテーブルに着くか、軍拡競争が宇宙にまで広がるかいまや重大な時期であると、ソ連自体がそういうことを言っているわけです。ソ連も自分の相手国であるところのアメリカ宇宙に軍拡することについて非常なおそれを持っているだろうし、アメリカアメリカでソ連の宇宙利用、軍事的な目的での利用に対して非常に警戒心を持っていると思うのですね。一九八一年に、グロムイコ外相が国連の事務総長に対して具体的な条約草案の形で提出した宇宙空間へのあらゆる兵器の配備禁止条約という案があるそうでございますね。これをアンドロポフがもう一遍思い起こさせようとこういうことでそういう問題提起をしたのだと思いますけれども、これについては日本はどういう態度をとっていらっしゃいますか。
  74. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) これは先生いま御指摘のとおり、一九八一年の国連総会でもってグロムイコ外相からこの条約案が提案されてきたわけでございますけれども、このときの総会では日本はこの決議案には棄権をしておるわけでございます。棄権をした理由と申しますのは、一つは、あらゆる兵器の配備をやめようといっても実はあらゆる兵器というのは特定化——一体どういうことなのかということと、それからもう一つの第二番目の問題としまして検証の問題をどうするのだ、こういうようなことから棄権をしたわけでございます。しかしながら、先ほどちょっと申しましたようにその同じ総会で、一番いま宇宙の平和というものにとって問題になっておる迎撃衛星の方を日本としてはより一層積極的に取り上げるべきではないかと、こういうふうな共同提案の一カ国となりましてそれを提案したわけでございまして、ソ連の方には棄権という態度を国連総会ではとっております。
  75. 田中寿美子

    田中寿美子君 何といいますかね、検証のことですけれども、軍縮に有効な方法がない限り軍縮の提案には賛成しないという態度をいつもわが国は国連総会などでとっていらっしゃるのですけれども、その宇宙での軍拡競争の状況で検証する手段というのはやっぱり宇宙衛星でしょう。それから、地上のものを見るような場合も衛星を使って検証するというのが一番やれる方法なのでしょうね、どうなのですか。
  76. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) そういったような宇宙空間における検証の問題としましてはやはり人工衛星による検証というのが一つの有力な手段かと思いますし、同時にやはりそういった前段階の開発研究等々の段階の検証ということも当然考えなくちゃいけないわけでございますが、それにつきましてはやはり現場における地上査察ということもその一つの方法ではないかと思われます。
  77. 田中寿美子

    田中寿美子君 地上査察というのはそれは非常に困難なことでしょうね。どこの国もそれを受け入れはしないだろうという気がしますがね。そういうわけで宇宙衛星によって、人工衛星によって査察するというような方法がなければ日本は参加しないとか、地上査察が実現しなければ効果ある検証がないから軍縮提案にも賛成しないという立場は私は困る。もう少し積極的な方法を考えてほしい、これは要望です、時間があれですから。  最後に、いま非常にたくさんの衛星が打ち上げられていてそして地球軌道に乗って物体が飛び回っているわけですね。一体どのくらいあってそしてそれが害を起こしはしないか、あるいは宇宙空間宇宙を汚していくということについてはどういう認識を持っていらっしゃいますか。
  78. 中津川英雄

    説明員(中津川英雄君) まず宇宙空間に飛んでおります宇宙物体の数に関してでございますけれども、最初人工衛星の数を簡単に申し上げますと、総数で二千八百十個、これは打ち上げた数でございます。それでそのうちソ連が千七百二十八個、米国九百六十三個、日本は二十三個、これは昭和五十七年六月末現在の数字でございます。  それから宇宙物体の数でございますけれども、これは人工衛星を含めました数字でございますが、四千七百四十三個飛び回っておりまして、そのうち人工衛星が千二百七個、それからロケットの燃え殻等が三千五百三十六個ということになっております。  二番目の御質問でございますけれども、このように人工衛星の数、宇宙物体の数はふえておるわけでございますけれども、宇宙にこういうものが飛び回ることによって混雑はしてくるということは確かでございますけれども、これらのものが相互に偶発的に衝突するという可能性は統計的にきわめて小さいというふうにされております。しかし、今後この数も一層増加するということもございまして、国連におきましても宇宙空間の混雑緩和の問題について関心を持って研究をしていこうというような機運もございます。  それから地上に対する危害の問題でございますけれども、これは原子力衛星コスモスの落下等の問題もございますけれども、宇宙物体が大気圏に再突入する場合にその大部分はほとんど燃え尽きてしまうというふうに考えておりまして、その残骸が地上に到達する可能性はきわめて小さいというふうに考えられております。これまでに九千程度の宇宙物体が大気圏に再突入しておるわけでございますが、人命等に直接の被害を与えた例はないというふうになっております。
  79. 田中寿美子

    田中寿美子君 昨年、第二回国連宇宙開発平和利用会議を前にして国連がまとめた報告書の中で、宇宙開発がどんどん進んでいく、宇宙のごみが地球を包んでいく、このような環境の立場から静止軌道に処理場をつくれなんていうようなことを報告書の中で勧告しているということを新聞で読みました。ですから、確かに大気圏内に入ってくると人工衛星も燃えてしまってほとんど小さなものに分けられてあちこちに飛ぶ、だから危害は少ないということだけれども、同時に原子炉などの関係で、この報道によりますと溶けたナトリウムやバリウム、ストロンチウムなんていうものが飛散する可能性もあるというふうに書かれておりますので、こういうことも十分やっぱり宇宙衛星の問題では問題にしていっていただきたいということで御注意を喚起しておきたいと思います。  最後に五、六分ありますので、前回の質問のときに私が最後に差別撤廃条約の二十一条で——婦人差別撤廃条約はすでにこれは発効していて、そして婦人差別撤廃委員会というものが発足している。その委員会に対して第二十一条で、毎年国連総会にその委員会は報告書を出すと。各国の差別撤廃条約の施行状況などについて報告をするのでしょうね。そこの二十一条では、「締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。」というふうになっておりますね。私がこの前お尋ねしたのは、もしも差別撤廃条約に著しく反するような不平等の事例などがあったときに提訴することができるかというようなことをお尋ねしまして、そしてそのお答えが必ずしも私のお尋ねしたことと一致していないような気がいたしますので、もう一遍ここはただしておきたいと思うのです、議事録に残っていることですので。  第二十九条では、「締約国間の紛争で交渉によって解決されないものは、それらの締約国のうちいずれか一国の要請によって仲裁に付託される。」というふうになっております。そしてその仲裁の日から六カ月以内に仲裁機関について合意に達しないときには「それらの紛争当事国のうちいずれの一国も、国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に紛争を付託することができる。」と二十九条でなっているわけですね。この前そのことをお答えいただいたのですけれども、私の意味しましたのは個人がそういう提訴をすることができるかということだったのですね。その辺はどういうふうに扱われているか、つまりこの委員会の機能というのはどういうことであるか。
  80. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 婦人差別撤廃条約の第十七条にございます婦人差別撤廃委員会の任務といいますのは、締約国が条約の実現のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置に関して各国が加盟しましたときは一年、その後は少なくとも四年に一回は報告書を出す、その報告書を検討するのがこの婦人差別撤廃委員会の権限といいますか権能でございまして、これは個人の訴えを取り扱う場ではないわけでございます。したがいまして個人が国際機関に、つまりこの婦人差別撤廃委員会に対して提訴するということはこの婦人差別撤廃条約では想定されていないわけでございます。
  81. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、二国間で何かそういう問題に関して紛争が起こった場合にはその二十九条の仲裁に付託されるということですね。
  82. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) そのとおりでございまして、二十九条の方は、国と国、締約国にトラブルが起こったときにはまず交渉でやり、だめなときは仲裁に行き、それもだめなときには場合によっては国際司法裁判所に行く、こういう手続で、これは国対国の関係でございます。
  83. 田中寿美子

    田中寿美子君 したがって個人が救済を求めるような委員会ではないし、ここではやれない。ではほかはどこでやれますか。
  84. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) お答え申し上げます。  当然のことながら、わが国がこの条約に入る際にはこの条約における義務を担保できる国内立法措置をとるわけでございますので、その問題は国内的な救済手段によってむしろ解決されるべき問題であるというふうになるだろうと思います。
  85. 田中寿美子

    田中寿美子君 わかりました。以上です。
  86. 増田盛

    委員長増田盛君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  87. 増田盛

    委員長増田盛君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  88. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 宇宙条約についてこれから若干質問をさしていただきたいと思います。  言うまでもなく、昨今の科学技術の長足の進歩というのはすでに天体並びに宇宙空間利用まで及ぶという目覚ましい展開を示しているわけであります。そうした経過に基づいて将来予測されるであろうというさまざまな問題を想起しながら、すでに昭和四十二年にはこれを規制するための基本法とも言うべき宇宙条約が成立を見ているわけであります。これからも時間の経過とともにさらに進歩発展がなされるであろうということは想像に実はかたくないわけであります。それはきわめて加速度的な勢いをもって進められていく可能性も含まれているであろうということが予測されるわけであります。  ここでやはり大変問題になりますのは、午前中にも若干質疑応答の中で触れられておりますようにこれが軍事的な目的利用されるというような方向に進むとするならば、これはもうイコール人類滅亡への最短距離を歩むことにつながるであろうというおそれを抱くことになるであろうと思います。その危険は全くないのかというとそうではない。すでに過去において大川さんがジュネーブの軍縮委員会においても述べられておりますし、また最近では林さんが政府代表として国連において日本の忌憚のない主張、意見というものを述べておられるわけであります。それを要約すると、いま申し上げた危険性がないどころではない、危険性を多分にはらんでいる、その疑いが濃厚であるというそういう内容を含んだ提唱を実はなされて、むしろ警鐘と言った方がいいが、それをされているわけです。警鐘を鳴らしているわけであります。  そこで、将来展望を見詰めつつ、政府としてもあらゆる問題を想定しつつこの問題に対する取り組みというものが当然これからも強力に推し進められていかなければならない。そうでなければ、場合によっては今度平和利用の方で相当落差を生ずるようなおくれをとらざるを得ないという側面も生まれるからであります。恐らく政府としては昭和四十二年の宇宙条約の精神にのっとって、あるいは昭和四十四年の国会決議というものをあくまでも貫いて将来にわたって平和利用に徹しながらこれを進めていくということになるであろう。ただ国際的ないろんな絡みが出てまいりますので、そういったことも十分踏まえつつ今後の対応というものは当然考えていかなければならない。きょうは安倍さんがおりませんので、政府を代表してやはり石川さんにその基本的な問題について述べていただく以外にはないであろうと、こう思います。
  89. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 先生が述べられましたように、宇宙利用というものがきわめて加速度的に進展をされるということは全く同感でありまして、その中にいま御指摘のような平和的利用とそうでない軍事的な利用というものの関係がさらに一層むずかしい状況になっているというふうにも受けとめられているわけでありまして、そういうような環境の中でわが国としては、先生みずから多分そうであろうというふうに御指摘されたように、この宇宙開発というものを、やはり基本的には平和の目的に限るというその基本的な姿勢の中でこの開発というものを進めていく。そして、いま申し上げました特に軍事的な側面というものの危険性が懸念されるというようなことで衆議院の本会議の決議もあるわけでありますので、私どもといたしましてはそういう国会決議というものを十分に尊重してこれからも対応していく、そういう基本的姿勢であることはこれは申し上げるまでもないわけであります。しかし宇宙空間開発利用というものは、技術的な進歩とそれに伴う利用可能性の増大に伴い拡大をしてまいり、多岐にわたってきているのが事実であります。そういうような中におきまして、打ち上げられる衛星の具体的目的から何が平和の目的に即するかを判断していくことが今後の必要なことではなかろうかと、こういうふうに基本的に考えているわけであります。
  90. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま確かに述べられたとおりでありましょう。やはり日本が平和をどこまでも貫くというその反面に、国際的なかかわり合いというものを常に考えつつこれを進めていかなければならないという宿命的なそういう役割りが当然あると思うのですね。いろいろいまこうではあるまいか、こうもなるであろうという推測を交えたときには、疑問というものが絶えず行きつ戻りつしながら明快なそこに結論が得られないままに現在に至っているというのは事実でありましょう。今後この宇宙開発その問題自体が、日本はあくまでもいまおっしゃられたような方向に立つけれども、その国際的なかかわり合いの中でいろんな問題が想定されるだろうと思うのです。そういう問題は端的に申し上げてやはり私は軍事的な利用ということが一番とらまえやすい課題であろうと。先ほど遠藤さんは軍事的利用というその定義というものは定かでないと、それはなるほどそうであろうと思うのです。しかしその活用の仕方によってはそれは軍事にもなれば平和にもなる、それは実に紙一重のそういう危険性が裏表になっていることも事実でありましょう。そういう点では、軍縮ということにまた問題の焦点がしぼられてくるのだろうというふうに思いますけれども、現在は地上における軍縮というふうに大体焦点が注がれている。しかし、やっぱりグローバルな意味において宇宙を含めてこれを考えていかなければならぬ問題が当然できてくるであろうというふうに思えてならないわけであります。そのためには、ここに宇宙条約は持っているのですけれども、ちょっと読んだ限りではこれでいいのかなあという疑問を投げかけるような問題があるわけですよね。これ自体を見ますと第四条あたりに、あくまでも月及び天体というふうに限っているというような印象を受ける文言があるわけです。そうすると、宇宙空間は一体どうなっているのだという問題がまたさらに疑問として残るわけですね。宇宙空間についての平和利用というのはここから削除されているために、軍事的にはたとえば米ソがしのぎを削ってそういう方向へいっても、ただ周りにいる国々は拱手傍観してそれを眺めている以外にないのかというようなことがすぐ出てくるように思えてならないわけですね。  この第四条の解釈については、ただ「核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと」と。軌道に乗せないということはこれはやはり宇宙空間というふうに解釈すべきなのか、あくまでも冒頭にありますように、月その他の天体を含むということに限定されたふうに解釈すべきなのか、その辺はどういう受けとめ方をされているのかというのがこれは原点になると思うのです。そうでないと議論が先に進まないというおそれがありますので、この辺は政府としてどういうふうに解釈をなされて条約締結をされたか。
  91. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) お答え申し上げます。  第四条がこの条約軍事利用との関係での根幹になる規定でございますが、この条の解釈につきましては、この宇宙条約そのものの採択のときにこの国会でも御議論をいただいたわけでございますけれども、第四条は、前段におきまして核兵器その他の種類の大量破壊兵器を先生御指摘のように地球を回る軌道に乗せないということとか、天体に設置しないこと、それから宇宙空間にいかなる形でも配置してはいけないということで、核兵器その他の大量兵器につきましてはこれを挙げましたような三つの態様において配置しないことを明確に約束しているわけでございますので、その意味では、核兵器、大量破壊兵器についての禁止はかなり広範に及んでいるということだろうと思います。  その後段におきまして、月その他の天体につきましてはこれを平和目的のためにもっぱら利用するということで、その態様といたしまして軍事基地、軍事施設、防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施は禁止するということで、その態様を幾つか例示しているわけでございます。  そういうことで、この条約の四条全体をとってみますと完全に非軍事化が及んでいるのは月、天体だけでございまして、その他の宇宙空間につきましては、第四条の前段で禁止されていること以外はこの条約の禁止は及んでいない、こういう状況になっております。そういう意味で、宇宙空間そのものに対しての非軍事化が完全でないという御批判はこの条約採択の当時もいただきましたし、またこれは条約採択の経緯におきまして米ソ間で合意できるぎりぎりの妥協点がここにあったという歴史的な事実もあるわけでございます。
  92. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにそのとおりだと思うのですよね、この条文を見る限りにおいては。これが非常に危険な要素を持つことに将来発展しはしないかというおそれを感ずるわけね。  ただ、この前文があるわけですよね。これは簡単ですからあえて読み上げますと、「平和的目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩が全人類の共同の利益であることを認識し」と。さらに「平和的目的のための宇宙空間の探査及び利用の科学面及び法律面における広範な国際協力に貢献することを希望し」と。これは希望というのですから非常にやわらかくこうなっているのかもしれません。しかし一応この前文を認識する、理解をするという大前提に立ってこの条文の策定というものが行われていったのではあるまいかというふうに思いますと、拡大解釈をすると当然宇宙空間利用についても軍事目的に使用してはならない、こうなりはしまいかと思うのですが、残念ながらいまおっしゃるように、第四条に関する限り軍事利用は外されている。そういう背景のもとにですか、最近でも米ソの間において大変激しいやりとりが行われていますね。  先々月、三月にレーガンがいわゆる核防御システムの一環として、レーザー光線と人工衛星を組み合わせたものを今後開発をして軍事的にそれを利用するのであると、簡単に申し上げればね。その構想というものはいま突如として出てきたものではない。恐らく相当長年の間科学技術者を総合して、ソビエトに対抗する一つの手段としての防御システムはいかにあるべきかというその一連の考え方の中にこういう発想があったであろうということが、専門家ならずとも理解できる一つの側面を持つ内容ではないだろうか。これは私は大変危険な思想だなあという感じがするのですね。  さらに、大統領のそういう構想を受けて三月の二十七日、ABCテレビの会見番組というのがあるのだそうでありますが、ここでホワイトハウスの科学技術政策局長のジョージ・キーワースという博士が、具体的なこの仕組みについて初めて述べているのですね。これは新聞報道等がなされておりますのでもうすでに外務省としてもそれを了承されていらっしゃると思うのです。  こうなっていきますとむしろこの条約にも歯どめがありませんので、アメリカとしてはそういう方向に向かうであろう。その背景として考えられるのが、INF交渉にいたしましてもSTARTの交渉にしてもデッドロックに乗り上げてなかなか進まぬ。それに連動しながらSS20はどんどん増強され、極東には最近また増強された、そういうことが伝えられている。  そうなると、やっぱりその一つの対抗手段として将来起こるかもしれないということを予測せざるを得ないわけでありますから、次々とこういう強烈な兵器開発がなされていくということになりますとこれは一体どうなるのであろう、この条約の持つ意味というものは一体どうなるのだろう。  本当はこの条約がつくられるときの発想というものはあくまでも月だとか天体に限らずに宇宙空間すべてを含んでという、そういう気持ちが恐らく各国の代表者の頭の中にあったのではないだろうか。どうしても妥協点を見出さざるを得ないためにといういま答弁がありましたけれども、こんな形になってしまった。ではこれを、そういう将来においての危険性を全く排除するためには一体これからどういう取り組みをしたらいいのか。新しい条約の制定というものを試みる必要があるのか。いや米ソが恐らく反対するであろうからそれは現段階としては不可能だと見るのか。しかし、ただこのままにおいておいたのではもうどうにもならない推移がこれから考えられるということをおもんぱかりますので、外務省としても当然いままでの経緯を踏まえそれを分析しながら今後のありようというものについて一応の結論をお持ちになっておるとするならばそれをお話しいただきたい。
  93. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御指摘のとおり、この宇宙条約ができましたのは一九六七年でございますからもう大分前で、それ以降のいわゆる宇宙技術の発展というものはきわめて日進月歩、目覚ましいものがありまして状況が変わってきている。そこで私どもとしましても、こういった宇宙での軍備競争が将来激化していくことは人類の将来にとって非常に懸念すべきことなので何とかしてこれを防止しなくちゃいけない、こういうことは全くそのとおりでございまして、それじゃ問題はどうしてこれをやるか、こういう問題になってくるのじゃないかと思うのでございます。そこで、実はこういった問題が宇宙における軍縮といいますかあるいは軍備管理といいますか、それが国連等の場で取り上げられてきましたのはきわめてごく新しい話でございまして、実は一九八一年になってやっとこれが耳目をそばだてるようなことになり国連でも取り上げられるようになったということで、まだ実は二年ぐらいしかたっていない歴史の浅い軍縮交渉の話なのでございますけれども、そこでその国連の場であるいは軍縮委員会の場での二つの流れというか考え方がございまして、一つはソ連の考え方なのでございますけれども、ソ連は宇宙に対して兵器を配備することを全部やめようという宇宙における兵器配備禁止条約というものを一九八一年にグロムイコが国連総会で提案してきたわけでございます。他方、これは実は日本が共同提案国の一カ国であるわけでございますけれども、ソ連の言ういわゆる宇宙における軍備競争の防止ということ自身の趣旨はわかるけれども、しかし兵器の配備を全部廃止するといってもどういうふうに特定していくのか。つまり、衛星の中にも先生御承知のとおりいわゆる査察のための衛星というのがあって、これは米ソともたとえばSALT条約でもってこれを認めているわけで、これはある意味での、ある意味でというかお互いの軍備管理の一つの有効な手段になっていることもこれまた事実であるわけで、したがいましてソ連の言うようにあらゆる兵器といっても、どういうふうに特定するのかという問題が一つと、それじゃどうやってこの条約が守られているかといういわゆる検証と申しますか、検証の問題をどうするのかとこういうことがありまして、日本はソ連の提案に対しましては棄権をしておるわけでございます。しかし、日本としましてはそれじゃどうすべきかということで、いま宇宙の軍備競争の中で非常に大きなウエートを占めていますというか危険をはらんでおりますのは迎撃衛星であって、たとえばSIPRIの情報等によりますとこの迎撃衛星につきましてはソ連はかなりの実験を繰り返しておるようでございますし、したがいまして、迎撃衛星の禁止ということを宇宙軍縮のまず第一歩の最優先事項にしようじゃないかと。これの禁止についてどうやったら禁止できかつ検証を伴って条約なり何なりが遵守できるかということから、そういったような決議案を日本が共同提案国の一国として出したわけでございます。かつ、そういったような条約につきましてジュネーブにあります軍縮委員会で議論しようということも含めた決議案でございまして、それは幸いにして国連総会で通ったわけでございます。今度いまや舞台がジュネーブに移ってまいりまして、ジュネーブにおきましてもさっき申し上げましたように宇宙軍縮問題が取り上げられましたのは実はまた一九八一年の国連総会を受けた後で、まだ本当に一年半ぐらいしかたっていないわけでございますが、幸いにしまして宇宙軍備競争の防止に関する点が一つの議題に——ことしたしか全部で六つ議題があるのでございますけれども、その六つなり何なりのうちの一つの議題として取り上げられておるわけでございます。しかしながら、それじゃこれを具体的にどう進めるかというのはちょっと手続的なことになりますけれども、やはり作業部会をつくらにゃいかぬということで、ことしの春会期は実は二週間前に終わったわけでございますが、春会期には残念ながらこの作業部会の設置はできなかったのでございますけれども、七月から始まります夏会期におきましては何とか——きわめて手続的なことでまず本当の一歩ということでございますけれども作業部会の設置に日本はコンセンサスをつくり出すように努力してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  94. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに一九八一年にそうしたような提言がなされ、日本が棄権をするという経過についてもいささか私も承知をしておるわけであります。ただ、どうなのでしょう、絶えずソビエトが提案する、それはのめない、今度はアメリカが提案をする、今度ソビエトがそれを拒否する、端的に申し上げるとそういうパターンがずっと繰り返されてきておる。しかしいずれにしてもどこかで突破口を開いて、いま作業部会という話もございましたけれども、そこに乗っけるまでの双方ともに恐らく欠陥があるのだろうと思うのですね、のめないと拒否する……。しかし、それを言い合っていたのではいま申し上げているようにこれは解決への方法には少しも役立たない。では一体どうすればいいのだろうという、これは決して米ソ間の問題だけではなくして日本としてもこれは重大な関心を持っているという先ほどの政務次官のお話もあるとおり、一体日本としてどういう役割りが果たせるのか、多少でも前進的に、それぞれの欠点を持ちながらもその欠点を十分承知をしつつ話し合いのテーブルに着くというそういうようなきっかけというものが話し合いの上でできないものかどうか、将来そういうことがやはり非常にむずかしいものなのかどうなのか。いろいろいままで苦労もされ経験も積まれ、こういうときにはこうだ、こういうときにはああだという少なからず外務省としてもそれなりの対応というものを常に頭に描きながら今日まで来ておられるであろうというふうに思うわけです。事柄がきわめて深刻かつ重大でありますゆえにこれは遅滞をさしてはならない大きな問題であろうという点について——しかもアンドロポフは先月もまた言っているわけでしょう。これは話し合いに何とか乗っけてくれと言っているわけです、いま遠藤さんがずっと説明された問題について。おれの方はこういうふうに出しているじゃないかと、それを全然検討もしない、話し合いをしようともしないというソ連はソ連としてそういう自分の立場に立っての言い分をする。これじゃもう話し合いになりませんわな。その辺、どういうふうに一体やっていいのか非常にむずかしい問題だろうとは思いますよ。
  95. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御承知のとおり、軍縮交渉というのはきわめてむずかしい問題でございまして、核軍縮一つとりましても核実験の全面禁止一つとりましても、まだもたもたというか、言葉は悪いのでございますけれどもやたらに時間がかかってなかなか進んでいない。それから、たとえばもう一つの大きな軍縮交渉のあれでございます化学兵器の禁止、これにつきましてももう相当期間やっているのですけれどもほぼ緒につきかけたという程度のことであって、核軍縮につきましてはまず何よりも始まって一年半ぐらい、ただし先生おっしゃいましたようにこれはまさに緊急を要することでもあり、そこでじゃどうしたらいいかという点でございますけれども、結局米ソ及び関係国も含めまして話し合いの場をつくるという、話し合いの場がいまのところまだなくてお互い日本も含めました意見のすれ違い交換がなされているだけなので、まず私は場をつくることがその第一じゃないかということで、私どもは何とかして軍縮委員会で宇宙空間における軍備競争の防止に関する作業部会というもの、これ確かに小さなことではございますけれども、その場をつくることにまず努力をしてまいりたいと、そういうふうに考えておるわけでございます。まだ何だと言われるかもわかりませんけれども、その具体的な場というのは私はどうしても話し合いのためには必要じゃないかと、それがやはり第一歩ではないかと、こういうふうに考えているわけでございます。
  96. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 余り悲観的に物事を考えてもいけないと私は思うのですけれども、さりとて楽観的にということもいかがなものかということは考えられる。しかし、各国ともに共通してやはり平和利用ということについては視点が定まっているであろうということを前提にしてみた場合に、やはり将来そういう危険が起きないということを考えるためにも、それは作業部会等これからいろんな問題がまだ残されております。  きわめて唐突な言い方かもしれませんけれども、この条約はやはり私は不備だと思うのですよ、はっきり申し上げてね。宇宙空間を含めなかったならばこれは何にもならぬと思うのです、はっきり申し上げて。ですからあるいは将来に向かって、衛星条約というようなそういう名称になるかどうかわかりません、そういうようなものをあるいは日本が主導権を握ってもいいのじゃないのか。こういうような方向でどうでしょうかということでやはり世界にアピールすることも私は決してむだではなかろうというふうに思うのですけれども、これは一番基本になります問題でありますだけにいまから手がけておかないとまずいのではなかろうかと、おくれをまたとるようなことになりはしまいか、この点についてはどう考えますか。
  97. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) その点に関しましては、先ほど申し上げましたように日本が共同提案国になっておりますが、特に衛星の中で将来軍備競争の一番危ないという衛星攻撃衛星、これの禁止の条約ということを日本は決議案の中でそれを意味しておるわけでございまして、そういったことを今後とも日本としては主張してまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  98. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこでいろんなチャンスがあるわけですね。ソビエトが直ちに入らないテーブルもあるわけですけれどもまず先進国が足並みをそろえるということも必要でありましょう。さまざまなそういう世界の世論というものを結集するためのやり方というものが考えられる。それでちなみに申し上げると、まあ今月末に予定されているサミットあたりも一つの足並みをそろえさせる大きな場ではないだろうか。最近はもう経済折衝というよりも政治折衝という色彩が非常に濃厚になってきたサミットを考えますとこれはやはり避けて通れない問題であろうと。当然またそうあってしかるべきであろうと。それを政治と経済を全然分離してなんということの考え方はむしろナンセンスな問題であり、むしろそういった点についても近く出発を予定されております総理なんかにこの問題をやはり提起するような、あらゆる場合をやっぱりとらまえてやることの必要性というものは当然あるのではないだろうか。決して私は場違いの会議ではないだろうというふうに思えてならないわけであります。その辺あたりは外務省、どんな思惑をいま持っていらっしゃいますか。
  99. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) お答え申し上げます。  サミットの場で確かにその都度その都度の、あるいはもうちょっと深刻な基本的ないわゆる政治問題が取り上げられてきていることは事実でございまして、今度のサミットにおきましても、議題は目下協議中だと私は承知しておるわけでございますけれども政治問題が取り上げられるということはそういうふうになろうかと思っております。その場でどういうふうな問題が取り上げられるかということにつきましてはちょっといまのところは私の立場としまして何とも申し上げられないのでございますけれども、やはりサミット関係諸国にとっての一番大きな問題の一つであるたとえば核軍縮の問題は当然取り上げられるのではないかなと、こういうふうに考えているというか、思っておるわけでございます。
  100. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはそうだろうな。やっぱり遠藤さんとしては遠慮しいしい物を言わなくちゃならぬという問題になるだろうと僕は思うのですよね。申しわけない、その聞き方がいま遠藤さんというふうに僕は指名したわけじゃないのでね。  安倍さんが、昨日かシュルツにも会っておられるようですし、OECDの会合でフランスの外務大臣なんかにも会うチャンスがある。INFの問題についていろいろ意見交換をしているような経過もあります。OECDそのものがさらに政治的なそういう話し合い、直接その会議の席ではそういうことがやりとりされないでも、あるいはサロン外交としてそういうものがやりとりされる場合だって十分考えられるわけね。そうするとやはりいま遠藤さんが言われたように、核軍縮の問題を含め当然いま世界的に課題になっているこういう宇宙軍縮の問題についても、これは話し合いをしないということ自体の方がきわめてナンセンスな話じゃないだろうかというふうに思えてならないのですが、石川さんとしてはこの問題についてどうでしょう、安倍さんに言ってもらってもいいし、総理に言ってもらってもいいし、やっぱりそのぐらいの決意を持って臨んでいただくということが必要ではあるまいかというふうに思えてならないのですけれどもね。
  101. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 私自身もサミットという会議がどういうものであるかという詳しいことはよくわかりませんし、次回のサミットがそこまでの問題に触れられるかどうかということについても未知でありますけれども、ただ、いま先生がおっしゃったように、宇宙のこういう軍備競争というような懸念のある昨今でありますので、こういう問題をやはりサミットの中で、どういう場所においてやるかということはこれわかりませんが、そういう問題をお互いに首脳が意見交換して、できるだけ平和目的利用に供するようにやはり話し合うということの必要性というものは私は同感でありますので大臣にその旨もひとつ伝達をしておきたい、こんなふうにも考えているわけであります。
  102. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題は一応ここへ置いておきますよ。ちょっと論点を変えてこれから若干お伺いをしたいと思います。  さて、衛星というものがいろいろとあるようですね、通信衛星気象衛星。いま利用されている衛星というのはどういう種類のものがございますか。
  103. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 現在利用されています衛星というものは、まず第一には通信衛星が挙げられるかと思います。通信衛星のほかに放送衛星気象衛星、あるいは宇宙空間の自然現象を観測しますところの科学衛星、それから地球の表面を観測するというためのいわゆる地球観測衛星、こういったようなものが使われているかと存じます。
  104. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃられたのは、これは日本の国が利用している衛星じゃなくて、国際的にいま活用されている衛星は全部包含されておっしゃっていただいていますか。
  105. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 国際的に一般的に申し上げているわけです。
  106. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 海洋監視衛星だとか、米海軍がこれは開発と言った方がいいのかな、海上偵察衛星だとか、そういうものは含まれないのですか。
  107. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 海洋を監視するための海洋観測衛星ももちろん一部打ち上げられておりますし、先生御指摘のような衛星もあるかと聞いております。
  108. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この衛星の燃料、それから電源、どういうものが使われておりますか。
  109. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 一般には太陽電池を使った衛星が大部分でございますが、一部先般のソ連のコスモス衛星のように原子力を電源に利用した衛星も使われておるようでございます。
  110. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 将来ですね、恐らくスペースシャトルが飛ぶような時代でありますので、衛星そのものがだんだん規模が大きくなっていくというような可能性、またそれに伴う電源というものが相当量必要とされるであろうという問題、私もそれは専門的なことはわかりませんので非常に大ざっぱな言い方になりましょうけれども、機器そのものが逐年改造され、あるいは充実されそして整備されていくというその経過の中で将来原子力というものに頼る、依存するという度合いがますますふえていく可能性というものは考えられませんか。
  111. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 人工衛星が次第に大型化してまいっておるということは先生御指摘のとおりでございます。御質問の原子力電源の問題についてでございますが、この原子力電源は小型で大出力が得られるという特性を持っておるわけでございまして、たとえば太陽から遠く離れた惑星の探査といったようなもので非常に太陽光線が微弱であるために太陽電池が十分利用できない、こういったような場合には原子力電源でなければどうにもならぬというような分野での利用分野があると考えられます。しかしながら、この原子力衛星につきましては先般のコスモス一四〇二の落下と、こういうような問題の場合にも見られましたように、たとえば国連の宇宙空間平和利用委員会の場で各国に非常な反応が出てきたというようなことからもうかがえますように、国際的にも大きな問題が生じてくるというようなことがございまして、衛星が大型化する場合にはまずは太陽電池システムの大型化あるいは高性能化によって対応していくという方向で進んでいくのが一般的な状況であろうと考えております。衛星の大型化が直ちに原子力衛星の増加と結びつくものでは必ずしもないというふうには思っております。
  112. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただね、コストの面や何かいろんなことがこれからも考えられるでしょうし、電源そのものがもう少し多量に使えるというそういう側面を考えてみた場合に果たして太陽電池によって十分賄い切れるものであるのかどうなのか。いまのお話でありますと太陽電池を使っても十分それは吸収できるのだという御答弁のようですけれども、いろんな説があるようでしてね。将来やはり原子炉を積んだ衛星というものが飛ぶような可能性というものはだんだん加速度的にふえるということが十分考えられはしまいか、その点については科技庁としては心配は全くないというふうに判断しているのかどうなのかですね、どうでしょう。
  113. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 私は原子力衛星のふえる可能性が全くないということを申したわけではございません。先ほど申し上げましたように、太陽電池の利用が十分にできないというようなケースについてはやはり原子力電源の利用という可能性はあるだろうというふうには思います。しかし先ほど私が申し上げましたのは、大型化した場合には太陽電池を大きくする、あるいは高性能化するということで相当の大量な電源も得ることができるわけでございますからして、大型化と原子炉衛星との直接の結びつきということではなかろうかという趣旨の御答弁を申し上げましたわけでございます。
  114. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただここで問題になるのは、特にコスモス一四〇二の問題がにわかに世界の耳目を集めたという、これからもソビエトが飛ばさないという保証はありませんね。あるいは、アメリカへ現在原子炉を積んで飛ばしている衛星というものは、午前のたしか答弁の中にはないというふうに聞いておりましたけれどもあり得ないということは考えられない。しかしやはりその安全性というものが確認されない限りこれを飛ばすということは差し控えるというのが常識ではなかろうかということになるのですけれどもね、その点どうですかね。
  115. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) まさに先生御指摘のとおりでございまして、昭和五十三年にまず第一回の事故が起こった。その後、国連の宇宙空間平和利用委員会でもこの点が非常に大議論になりまして、やはり何かこの原子力衛星につきましては国際的な安全基準というか法原則をつくるべきじゃないかというようなことが非常な議論の中心になりまして、日本としましてもスウェーデンそれから第一回目の事故の当事国でありましたカナダ等々と協調しましてその方向に向かって努力しておるわけでございます。それからつい最近のコスモス一四〇二号の落下事故の直後、この宇宙空間平和利用委員会におきましても、どうも安全性に怪しいような原子力衛星というのは打ち上げてはいけないのじゃないかということも主張しておるわけでございます。したがいまして、いわゆる原子力衛星の安全性をめぐる法原則につきましては、今後とも日本が何とかそういった原則なり規則なりをつくるように努力してまいりたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  116. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 なかなかその同意を得られるということはきわめてむずかしいかもしれませんけれども、やはりよく科学技術特別委員会でも問題になりましたことは、原発をめぐっての安全性の確認いかんということでなかなかその設置が推進されないという今日までの経過があることを知っているわけですよ。いわんや空へ飛ばすわけですから、また未知の世界に挑戦をしているわけですからね、地上においても非常な議論のあるこの問題についていわんや宇宙空間に安全性が確認をされないまま飛ばされるということは、これは大きなやっぱり問題であろうと。確かに出先でもって外務省が先頭に立って、安全性が確認されるまで絶対飛ばすべきではないということを林代表も国連の場において述べておられることを知っております。ただやっぱりそれを具体化しませんとね、幸い人的に被害がなかったからよかったということでは済まされないと私思うのですね。いままでカナダとかオーストラリアという非常に限定された地域にしか落ちていない。しかし日本にあるいはその他の国に落ちないという保証は何にもないであろうと。絶対ということがない以上はその危険というものも絶対あり得ないということは考えられないわけでありますから、やはり最善の策をとってこれに対応する措置というものを考える必要が当然あるのではないだろうか。具体的に進みそうですかね。
  117. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) いままでいわゆる原子力衛星というのは先生御承知のとおり二種類ありまして、アイソトープを用いた衛星——原子力電池の衛星とそれから原子炉衛星の二種類あるわけでございまして、これ両方とも上げておりますのはアメリカとソ連、いまアメリカは原子炉衛星の方は一個だけぐるぐる回っているのがございます。あとは最近打ち上げをもうやめておるというふうに承知しておるわけでございますけれども、いずれにしましても原子力衛星を飛ばしていますのは米ソだけであり、やはり先ほどちょっと申し上げましたように、核実験の禁止と同じようにこれ非常にむずかしい問題であるわけでございますけれども、やはり何分にもわれわれにとってのその安全性の問題でございますから、したがいまして、ちょっと今後宇宙空間平和利用委員会でのあれがどうなるかというのは私いまの時点で申し上げるのはきわめてむずかしいのでございますけれども、ただ日本としては努力してまいりたいと、こういうふうな決意でもって臨んでまいりたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  118. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この機会に確認をしておきたいと思いますのは、これは恐らくアメリカが飛ばしている衛星だろうと思うのですけれども、海洋監視衛星というものがどういう役割りを果たす衛星なのか、これは科技庁の方で掌握をされている問題でしょうな。
  119. 中津川英雄

    説明員(中津川英雄君) それではお答えさせていただきます。  いま御指摘の海洋監視衛星でございますけれども、この衛星アメリカが軍事衛星として使っているものであるという雑誌情報等は知っておりますけれども、正式にどの衛星がこの衛星に当たってどういう目的でどういうことをやっておるかということについては、残念ながら公式な情報もございませんし情報を把握しているという状況にはございません。以上しか答えられないというのが実情でございます。
  120. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこでまたこの基本条約に戻るのですよね。これはたしか情報の交換だとか国際的にお互いに協力するというような内容がどこかに盛られていると思うのですが、いつどういう形のものを何時何分に飛ばしたと、それはいつごろ落下の場合は落下する予定だというようなことを、あるいは国連の事務総長等にそれを通報するというようなことにたしかなっていたと思うのですが、いまちょっと探しあぐねておりますが、もしそういうような情報なり連絡なりがなされないということになれば、これは裏返しにして考えてみた場合に、軍事機密を持つがゆえに、そういう性格を持つがゆえにその報告がなされないのだというふうな判断をせざるを得ないというふうになりますけれども、その辺の解釈はどんなふうにお持ちになっていましょうか。いまおっしゃられた問題はそれはいろんな雑誌やなにかに確かに伝えられておりますよ。たとえば潜水艦探知のために飛ばしているのだというような見方がなされているようであります、簡単に一口に申し上げれば。そうすると、性格的にはこれはなるほど軍事的なそういう色彩を持った衛星なのかなと。しかしいま御答弁がありましたように全然それらについての詳しい情報が日本にも入ってきていない、あるいは締約国の間にもそういうことが恐らく入っていないとするならば、これは明らかにそういう秘密保持の上から伝えられないということにつながるであろうし、軍事的なそういう性格を持つものになりはしまいかとなりますと、まさしく軍事的な衛星というもののこれからの果たすであろうという役割りは、決して米ソ間においては軽視していないということの裏書きになるのではないだろうか、裏づけになるのではないだろうか。
  121. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 先生御指摘の条文は宇宙条約の第十一条であろうと思いますが、この十一条におきましては確かに「当事国は、宇宙空間の平和的な探査及び利用における国際協力を促進するために、その活動の性質、実施状況、場所及び結果について、国際連合事務総長並びに公衆及び国際科学界に対し、実行可能な最大限度まで情報を提供することに同意する。」ということが書いてございます。ここでですから目的が限定されておりますことと、それから「実行可能な最大限度まで」という表現で若干薄められているということでございますけれども、いずれにいたしましても月その他の天体を含む宇宙空間における活動を行う国はこのような情報を提供することに同意するということが十一条で決められているというのは条約上のたてまえであろうと思います。
  122. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 だから登録制度がありますでしょう。登録制度がある以上はその性能についても本当ならば知り得ることになるわけですね。しかし、実際にいま御答弁聞いていると知らないと、実際それは飛んでいると、この辺が非常に矛盾したような中身が重なり合っているような感じがしてならないのですよ。  そのほかにまだあるのですよね。米海軍が開発したと言われているエリント海上偵察衛星というのですか、これは御存じでしょうか。これはついでに申し上げますとすでに一九七一年から実用化されているそうです、アメリカでは。
  123. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生の御質問の前段の方なのでございますけれども、確かに現在のいま御審議いただいております登録条約にはある程度のことは打ち上げた国が打ち上げた宇宙物体について通報すると、その中に第四条でございますけれども、「宇宙物体の一般的機能」ということがあるわけでございます。「一般的機能」というのはきわめて抽象的な表現なのでございますけれども、それに基づきまして各国より若干の通報はなされておるわけでございます。もちろん軍事とか非軍事というのは先ほども申し上げましたようにボーダーラインというのがはっきりしないものですから、そういうことは一切ないのでございますけれども、たとえばこの衛星通信衛星であるとかあるいはこれは気象のための衛星であると、そういったような比較的簡単なあれでございますけれども、これにつきましてはソ連あるいはアメリカ等々も国連の方に通報して、その限度におきましてはわれわれも知り得る立場あるいは承知しておるわけでございます。
  124. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう一つ言っていますが。——ではもう一遍申し上げましょう。  米海軍がいま活用している海上偵察衛星というのがあるのだそうですね。一九七一年に打ち上げられて一九七六年からそれが実用化されているという、これなんかも恐らく正式に登録されていない性格を持つものではなかろうか。となると一体この条約そのものがどうなるのだろうなあ、軍事的というものは一応やっぱり前提に置いて考えなくちゃならぬ。
  125. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御指摘の海洋監視衛星でございますけれども、これは先生おっしゃいましたように空軍とか何とかいうそういうふうなスペシフィックな形での登録はなされていないわけでございますけれども、アメリカ登録条約に入りました時点以降の打ち上げました人工衛星につきましては、さっき申し上げたように簡単な一般的の説明でございますけれどもそれはつけて登録しておるわけでございます。しかし、それがさっき申し上げたように軍事であるとか非軍事であるとか、あるいはそのスペシフィックな細かい点につきましての状況というのは登録条約に関する限りではなされていない。  そこで、それじゃこの登録条約は余り意味がないじゃないかという点でございますけれども、確かにその点では必ずしも十分ではないわけでございますけれども、しかしながら一般的な形での何といいますか、情報としましては私どもやはり登録条約というのは現在の各国の宇宙活動を知るにつきましては非常に役立っているのじゃないか。確かに一〇〇%だとはとても申し上げられませんけれども、しかしながら相当程度、ことに日本のように追跡能力を持っていない国にとりましては非常に役に立つと申しますか、条約であろうかと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  126. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ところで日本が将来宇宙開発についていまどういう展望を持っておられるのか。日本は第三位だそうですよ、打ち上げ数においては。決してまだいばれない状況かもしれません。いままでもさんざん苦心に苦心を重ねて失敗を繰り返しながらやっと最近は軌道に乗ったといいますか、すでに二十三回打ち上げられている。しかしこれからのいろんな利用度を考えましたときに、もちろん現状で十分であるとはお考えになっていらっしゃらないはずですし、さりとて一発打ち上げれば三百六十億円もするようなものをそう簡単に毎年毎年ということもいかがなものであろうかという財政的な面も考えなければならないという問題もありましょうし、だからといっていま日進月歩している科学技術の進歩にやはり日本としても追いついていかなきゃならぬ、レベルを保っていかなきゃならぬとするならば現状としては必ずしも十分であろうとは言えないし、あくまでも平和利用という大前提に立って将来あるべき展望というものを当然お考えになっていらっしゃると思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  127. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 御質問のわが国宇宙開発、これは宇宙開発委員会が定めまするところの宇宙開発計画に沿って進められているわけでございます。すなわち具体的に申し上げますと、ことしの夏通信衛星二号bを打ち上げる、また来年度以降放送衛星あるいは科学衛星あるいはただいま気象観測等に利用されております「ひまわり二号」の後継機の打ち上げ、こういったようなもの、あるいは放送衛星、さらに六十一年度には海洋観測衛星、六十二年度にはさらに将来の技術開発の基礎を固めるための技術試験衛星V型と、こういったようなものが計画されているわけでございまして、またそれを打ち上げるためのロケットにつきましては現在のMロケットあるいはNロケット、さらにはこれより大きい衛星を打ち上げることのできるHIロケット、これは静止衛星で、約五百五十キロの静止衛星を打ち上げられる能力を持つ予定でございますけれども、こういったようなものの開発を進めることといたしております。またそのほか、米国のスペースシャトル利用いたしまして材料実験であるとかライフサイエンス実験を行うような、いわゆる第一次材料実験と称しておりますけれどもこういったものも現在検討が進められておるところでございます。  なお、これらの宇宙開発計画につきましては昭和五十三年に制定されました宇宙開発政策大綱というのをベースとして行っております。この大綱によりますれば、たとえばロケットにつきましては五百キロないし八百キロの静止衛星を打ち上げる能力を有するロケット開発するといったようなことが基本ラインとして決められておるわけでございますけれども、先生御指摘のように世界における宇宙開発状況がますます進展してまいっております、通信衛星の需要等も非常に強くなってきているという実態を踏まえまして、ただいま宇宙開発委員会におきましては二〇〇〇年ぐらいまでを見通しましたところの今後の日本宇宙開発についてのビジョンの検討を進めているところでございまして、こういったビジョンの報告に沿って今後宇宙開発推進を図ってまいる、かような展望になっておるわけでございます。
  128. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、これは大変単純な愚問かもしれませんけれども、二十数年来、スプートニク以来、聞くところによりますと一万数千個ですか、一万数千か一万三千かわかりませんけれども打ち上げられている。もうすでに機能を停止しているものがある。あるいは大気圏に再突入して燃え尽きたのもあるでしょう。さまざまなものが、素人は素人なりに考えられる問題として、全然利用価値のなくなったそういうものが宇宙に相当散在することが将来においても非常にふえていくのではないだろうか。どう言ったらいいのでしょうね、使い捨てられたいわゆる粗大ごみみたいなものがどんなふうに一体これから整理されていくものなのか、その危険性というものは全くないのか、それから同時に大気圏再突入の際落下するおそれはないのか、素人は素人なりにいろんなそういう危険の度合いというものを考える場合があるわけですね。そういうような心配というものは将来においても全くないというふうに考えてよろしいのか。あるいはそういう問題も科学的にいろいろと整理をしていかなければならない問題なのか。当然同じようにそういう問題についてもその処理の仕方について取り組んでいらっしゃるであろうというふうに私は思うのですけれども、その点どんなふうに考えたらよろしいのですか。
  129. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生御指摘の点はまさにそのとおりでございまして、まず宇宙条約にも、宇宙開発に伴って生ずる環境保全の問題について有害な汚染等を避けるように、「宇宙空間研究及び探査を実施し、かつ、必要な場合には、このための適当な措置を執るものとする。」ということですでに宇宙条約第九条——これは大分前の条約でございますけれども——にも規定されておるわけでございます。この関連で、いま先生御指摘のようにもう要らなくなって回っておるような使用済みのロケット等々がこれあるわけで、まだいまのところそれが活動中の衛星にぶつかる危険性というのは、私素人でございますけれども余り多くはないのじゃないかと思うわけでございます。しかし将来の問題としてはもちろんあり得るわけで、したがいましてそのためには、これは将来の問題でございますけれども、たとえば特定の軌道を廃棄軌道、そういったごみを集めてきて回す軌道に指定するとか、あるいはこの軌道の中から要らなくなった宇宙物体を取り除くというような措置、これは日本とか一カ国でできる話ではなくて、まさに私は国連の宇宙空間平和利用委員会の課題であろうかと思います。そこの国際協力の問題というのはこれは将来の問題でございますがそろそろ考えていかざるを得ない問題であろうかと、先生まさに御指摘のとおりだと思っております。
  130. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 科技庁として技術的にそれは可能ですか。
  131. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) ただいま外務省からの御答弁がございましたように、たとえばこの問題については、御指摘のように今後宇宙物体の数の一層の増加が予想されるというわけでございますので、必ずしも御指摘の点を全く否定し去るわけにはいかないわけでございます。しかし、現在の段階ではこれらが偶発的に衝突するとかあるいは落下してくる場合には、一般にはこれは大気圏に再突入する際に燃え尽きてしまうということで、そのために地上まで到達する可能性というのはわりと少ない。これまで約九千百個の宇宙物体が大気圏に再突入したと言われているわけでございますけれども、これまでのところそのうち幾つかが落っこってきております。コスモスなんかもその例でございますけれども大部分は燃え尽きてなくなってしまった。現実には人命等に直接の被害を与えたという例はいまのところは聞いてないという状況でございますから、その可能性は現段階では比較的低いというふうには考えられます。  先ほど遠藤参事官が申し上げました点は、実は去年の八月にウィーンにおいて行われましたUNISPACE82という国際シンポジウムがございまして、ここでやはり宇宙空間の混雑緩和の問題が取り上げられまして、将来こういった可能性について研究をしその対策について検討すべきであるという問題が現に議論されているわけでございますけれども、現在ではようやくその段階に立ってきたということでございまして、今後の研究課題ではないかというふうに私ども考えております。
  132. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 持ち時間も迫ってきましたのでちょっと話題を変えてみたいと思うのですが、「さくら二号」がついこの間も打ち上げられて成功したわけですが、せっかく防衛庁の方が来ておられるわけですので、先ほどは使わしてもらいたいというそういう印象を与える御答弁でしたね。本音はやっぱり使いたいということですか。
  133. 諸富増夫

    説明員諸富増夫君) 現在打ち上げられております「さくら二号」につきましては、硫黄島に部隊が派遣してございますが硫黄島に通信手段がないものでございますので、ないと言いますのはちょっと誤解がありますが、短波しかございませんので非常に支障を来しておるということで、今回打ち上げられました衛星を、公衆通信法、いわゆる電電公社のサービスの提供を受けるという形で何とか使わしていただけないだろうかということで現在関係省庁間で検討をしておるというのが現状でございます。
  134. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 使わしてもらうことによって得られる効用というものはどんなことが考えられますか。
  135. 諸富増夫

    説明員諸富増夫君) 効用といいますか、現在使いたいという希望といいますかその内容は、電話とかあるいはテレタイプ、これは航空管制官なんかに対する、航空管制塔に対する電話、これは運輸省との関係でございますが、こういう航空安全上の措置を考えますとやはりどうしてもこういう電話とかテレタイプという手段を使わしていただきたい、このように考えています。
  136. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 たしか衆議院の外務委員会では安田さんの答弁は大変前向きの答弁だったように記憶があるのですが、科技庁としてはどういう判断を持っているのですか。
  137. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) ただいま防衛庁からの御答弁がございましたように、防衛庁は硫黄島との間の通信を行いたいということで事務的に打診が参っておりまして、この問題につきましては目下関係省庁、具体的には防衛庁郵政省、それに私どもの三省庁の間で検討を進めている段階でございまして、まだ結論を得るには至っていない段階でございます。
  138. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 石川さん、これは四十四年の国会決議との関連においてはどんなふうに判断されていますか。
  139. 石川要三

    政府委員(石川要三君) もちろん政府としての基本的な姿勢といいますか取り組み方につきましては先ほどもお答え申したと思いますが、国会決議というものをあくまでも踏まえて平和的利用ということに基本的な姿勢を持っているわけでありますが、しかしいろいろと質疑の中にもございましたように、やはり宇宙空間開発利用というものがきわめて多岐にわたってきている現状から見て、衛星の具体的目的から何が平和の目的に即するかということを判断をしていく必要があろうかと、かように思っております。
  140. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうすると、いま防衛庁の方が御答弁されたように非常に必要に迫られているわけね、はっきり申し上げると。確かに使いたいだろうと思うのですよ、全然連絡のないところなのですから。ただ、事防衛庁ということになりますとね、それが軍事的と見なすべきなのか平和的と見なすべきなのか、非常に判断に苦しむところと違いますか。
  141. 石川要三

    政府委員(石川要三君) そのとおりだと思います。
  142. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 恐らく将来防衛庁としても——これは十六日に安保特がありますのでその際また改めてというふうにしたいと思うのですがせっかくおいでになっていますから。——通信のみならず本当ならば気象衛星についても利用さしてもらえればと、気象衛星利用しているのですか。
  143. 諸富増夫

    説明員諸富増夫君) 現在気象衛星につきましては気象庁との間で通信回線を持っておりまして、いわゆる気象庁の方からのデータをわが方に広域データとして流していただいておるという状況でございます。
  144. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ここで直ちにどうこうということを私申し上げる段階じゃないと思うのです。防衛庁としてもいろんな考え方があろうというふうに思いますし。ただ平和利用ということと自衛隊がお使いになるということが相矛盾するものではないだろうかという問題、そうするとやむを得ず自衛隊は独自の開発をせざるを得ないのかといういろんな疑問点、これは将来整理されていかなければならない問題であろうというふうに思うわけでありますが、きょうはこの程度にしておきます。  あと四、五分しかありませんので、気象庁の方おいでになっていましたね。——せっかくですので、これも「ひまわり」の関係がありますのでちょっとお尋ねをしておきましょう。十分の時間がありませんから簡潔にひとつ教えていただければ結構だと思うのです。  五十五年の十月、気象行政監察というものが行われましたね。そこで、観測資料の有効活用による予報精度の向上ということに判断の基準を置いていわゆる気象衛星、レーダー、アメダスの観測資料が十分活用されていないというようなことが実は指摘されているわけです。そういった問題がなぜ起こらなければならなかったのか。先ほど科技庁の方からも、今後将来展望に立って気象衛星のみならず科学衛星にしても通信衛星にしても放送衛星にしても、打ち上げられる計画がずっと述べられたわけです。相当莫大な費用がかかる、その莫大な費用がかかるにもかかわらずそれが十分機能していないということになりますと、これは日本にとっても非常に困ることになりますね。それらを全部含めまして行政監察を受けたときの指摘の問題点を通じて気象庁としての今後のありようについて述べていただきたいと思います。
  145. 清水逸郎

    説明員(清水逸郎君) お答え申し上げます。  当時は気象衛星が使用されました直後でございまして、監察を受けました当時には確かに御指摘のようにまだ十分気象衛星の活用というものが行き渡っていなかったということがあったかと存じます。ただ、それ以後もう数年経過いたしまして、現在では気象衛星の機能は私どもといたしましては十分、十分と申しますと語弊があるかもしれませんが、非常に有効に利用いたしておると思っております。それから、今後もこの気象衛星は非常に大事なものでございまして、特に、国際的にも太平洋地域の諸国がこの気象衛星を大変有効だと考えているという意見をすでに受けておりますし、私どもも、国内の気象情報についてこれはさらに一層この利用に習熟することでその利用度を高めていくように努力するつもりでございます。
  146. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 科技庁の方、確かに「ひまわり」が打ち上げられた直後、経験不足ということもあったかもしれない、いろんな世界との比較において、またいままで集積された知識と経験というものをもとにして日本独自の開発を行って飛ばした。やはり先ほど将来展望ということを伺った中にも述べられましたように、今後これは年々歳々開発が進んで相当すぐれたものが出ていくであろうということは予測されますね。そういう将来にわたってのいろんな方向を考えてみた場合に、やはり失敗というものは絶対許されないと思うのですね、「ひまわり」はそうであったけれども。完全を期してと言った方がむしろいいのかもしれません。事故が起きない、あくまでもそれが平和利用に徹して利用されていく、その方向だけは十分科技庁としてもそれを大前提にされていることは言うまでもないであろうし、それに十分配慮をしてお取り組みをいただきたいな、こんなふうに考えます。やっぱりスペースシャトルだって二回三回と飛ぶうちにその欠陥が見出されると同じように、だんだん改良されて非常に精度の高いそういうものになるわけでありますから、その経過の中に起こるであろうという危険というものをやっぱり除去していかなくちゃならぬわけですから、その点は十分配慮なさっておられるであろうというふうに思いますけれども、将来もそういうところに十分心配りをして取り組んでいただければなあと思いますが。
  147. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 御指摘のとおりでございまして、何分にも多額の経費を要する宇宙開発でございます。人間のやることですから一〇〇%ということは無理でございますけれども、国民の税金をむだにしないように全力を挙げて信頼性の向上に努めるということで進めてまいりたいと思っております。
  148. 木島則夫

    ○木島則夫君 まず、宇宙条約について基本的なことを教えていただきたいのでありますけれど、人工衛星を自主的で自前で打ち上げている国のうちこれまで宇宙条約に入っていないのはわが国のほか中国だけでございます。まず、日本がこの条約への加入がおくれた理由は何だったのでしょうか。この辺から説明していただきたい。
  149. 宇川秀幸

    政府委員(宇川秀幸君) お答えいたします。  独力で打ち上げの能力があって未加盟が日本と中国であるのは御指摘のとおりでございます。日本の加入がおくれました理由については先ほども若干触れさせていただきましたが、条約の誠実な実行を行うために万全の国内体制を組む、そのための準備に時間がかかったというのが実態でございまして、できることであればより早い段階で御審議をお願いに上がりたかったと考えております。
  150. 木島則夫

    ○木島則夫君 ちょっと時間がかかり過ぎている、その辺は先ほども御指摘があったと思います。  中国は、一九七〇年に第一号の人工衛星を打ち上げて以来、昨年の六月末現在で九個の人工衛星が上がっていると承知をしております。これにもかかわらず、これら宇宙条約だけではありませんで宇宙活動の基本法でありますいわゆる宇宙条約にも加入をしていませんが、中国がこれら宇宙活動を規律する国際条約にいまだに加入をしていないのはどういった理由によるものか。
  151. 宇川秀幸

    政府委員(宇川秀幸君) お答えいたします。  御指摘のとおり母体であると考える宇宙条約を含めまして中国は加入いたしておりません。その理由については、私どもの照会に対しては、宇宙条約への加入も含めて検討はしておるのだが未了である、未加盟の事態について特に理由があったわけではないという応答ぶりでございまして、詳細については私どもとしては十分に承知しておらない状況でございます。
  152. 木島則夫

    ○木島則夫君 あなた方はどういう見解を持っておりますか。あなた方から見てこれこれこういう理由によって加入をしていないのであろうというそういうものはきっと持っていると思うのですけれど、聞かしていただきたい。
  153. 宇川秀幸

    政府委員(宇川秀幸君) やや推測にわたることでございますのでお答えいたしかねるような感じもいたします。私どもは、なぜ未加入かということを、日本の加入の準備を進める際に中国も加入したらどうだというニュアンスでの照会を行ったわけでございまして、積極的な方向では検討はしているけれども結論は出していないという応答ぶりでございます。
  154. 木島則夫

    ○木島則夫君 通常の場合にはこれが領空侵犯になったりあるいは不法入国に当たるケースを、宇宙飛行士であるとかあるいは宇宙船等に限って早期返還をさせるとした理由ですね、基本理念につながると思いますけれど、これはどうなっているのですか。
  155. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) この宇宙返還条約宇宙飛行士の早期返還及び宇宙物体返還についてはもちろん宇宙条約自体が定めているわけでございまして、五条、八条に規定されておりますけれども、今回の協定はその内容につきましてより具体化する必要があるということでこれを具体化したものでございます。そういう意味では、宇宙条約前文に述べられておりますように、宇宙空間利用、探査ということは全人類の共通の利益であるということ、それから宇宙飛行士の早期返還とか宇宙物体返還は、かかる宇宙空間の探査及び利用の進歩の点で不可欠な国際協力の一つとして規定されたということでございます。  そういう意味では、このような不可抗力により他国の領域に入るというような場合、航空機の場合につきましてはもちろん緊急措置として許されるわけでございますけれども、そのような場合に、航空機については速やかに返還するというような義務が特にあるわけではないというふうに承知しております。
  156. 木島則夫

    ○木島則夫君 有人の落下物体でも当事国に損害を与えることもあり得ると思うのです。この場合の賠償については賠償条約で対処をするのかどうかということが第一点。  いままでに適用されたことがあるのかどうか、救助返還の適用例。また、損害賠償の適用例はあるのかどうか。カナダの場合は何によって処理をされたか、適用をしたか、こういうことですね。
  157. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 損害賠償条約につきましては、宇宙物体が地上において起こした損害そのものについての損害賠償の制度を定めているわけでございますので、それが有人であるかどうかというようなことについては特に区別を設けておりません。
  158. 宇川秀幸

    政府委員(宇川秀幸君) 事実関係のお尋ねもございましたので、私の方からお答えいたします。  現在までに救助返還協定が実際に適用されたという事例はございません。そういう意味での事故は起こっておりません。  それから損害賠償条約の適用があった事例としては、いま先生が言及されましたが、かつてソ連の原子力衛星がカナダに落下した事件がこれに一応該当すると考えられます。  以上でございます。
  159. 木島則夫

    ○木島則夫君 何か補足がありますか。
  160. 宇川秀幸

    政府委員(宇川秀幸君) 失礼しました。もう一点お尋ねであった点、答弁漏れになりました。  お尋ねの点は、カナダの実際のケースではどういう形で処理されたかという御質問だと了解いたしますけれども、この点につきましては、カナダは当時ソ連政府に対しまして関連の国際取り決め、なかんずく損害賠償条約及び国際法の一般原則に基づいて損害賠償の請求を行ったということのようでございまして、私どもの照会に対して回答を得ておりますのは、これに基づいてカナダとソ連との間で外交交渉が行われ、その結果損害賠償の額については三百万カナダドルの支払いということで合意が成立したというふうに承知いたしております。それ以上の細目については交渉の対象であったということで私どもは十分に承知いたしておりません。
  161. 木島則夫

    ○木島則夫君 宇宙船等の中には完全な軍事用のものもあるはずですね。その場合でもその当事国は一切調査もしないで賠償のみで返還をさせるのかどうかということです。
  162. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 先ほども御説明いたしましたように、この救助返還協定宇宙条約そのものの具体化という形をとっておりますので、宇宙条約に違反するような目的利用された宇宙物体が落下したときに、乗員及び宇宙物体返還する義務があるかというお尋ねでございますればそのような場合には返還義務はないだろうと思います。これは宇宙条約に従って行われる宇宙物体の飛行について返還救助を定めたというふうに解釈していただいてよろしいかと思うわけでございます。しかし、宇宙条約自体で禁止していないような軍事利用——宇宙条約で禁止しておりますのは月、天体の軍事利用と、それから第四条の前段にありますように大量破壊兵器、核兵器を含む大量破壊兵器を軌道に乗せたり、宇宙空間に配置したり天体に設置したりすることを禁止しているわけでございますけれども、そのような禁止に反する目的利用されたものについては先ほどのように返還義務はないと思いますが、それ以外の、宇宙条約で認められているといいますか禁止されていない軍事利用利用されたものについては、当然のことながらこの返還協定の対象になるだろうと思っております。  ただその際に、それでは何ら調査をしないで返すべきかという点でございますけれども、これは落下した場合には当然のことながらその落下国の管轄権にも服さざるを得ないわけでございますので、そういう意味で、必要な調査を落下国が行うということについてはこれは妨げられないことだろうと思います。
  163. 木島則夫

    ○木島則夫君 私素人なのでひとつ教えていただきたいのですけれど、たとえばスペースシャトルのような場合はどうなのですかね。
  164. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 当然のことながら、スペースシャトルもこの返還協定の対象になると思います。
  165. 木島則夫

    ○木島則夫君 そうですか。  国連への登録簿にはその物体利用目的あるいは民需と軍事、こういった区別等は記入するのかどうかということが第一点。  それからその第四条の(e)ですね、「宇宙物体の一般的機能」とありますけれど、どうもこれだけでは中身がはっきりしない。したがってそれが軍事用であるのか科学用なのか、あるいはまた原子炉を積んでいるのかいないのか、こういった点についてもはっきりとした情報提供をさせたらどうかというふうに思うのですけれど、どんなものでしょうか。
  166. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生いま御指摘登録条約の第四条でございますけれども、この一番問題は、(e)の「宇宙物体の一般的機能」という点でございますけれども、現在のところその「一般的機能」が具体的にどんなものかというのは実は条約に決まっておりませんで、したがいまして、いままでの各国の通報例を御参考に御説明申し上げたいと思うのでございますけれども、いままでの通報例によりますと、たとえば気象通信等の分野宇宙技術の実用とか、あるいは大気圏上層部及び宇宙空間の探査とか遠距離間通信、そういったようなきわめて概括的な機能ないし目的がいままでの例としては通報されてきておるわけでございます。したがいまして、民需と軍事の区別につきましてはこれは通報をされたケースは全くございません。これは考えますに、恐らく一体どこが民需でどこが軍事だという一般的な定義がないということ、あるいは共用の便もあるというようなことも一つの理由かと、これは私の推測でございますけれどもそういうふうに考えるわけでございます。  それから次に原子力衛星かどうかと、こういう点もいままでのところはこの登録条約に基づきましては——これはソ連とアメリカの二カ国でございますけれども通報はされておりません。しかしながら、アメリカにつきましては宇宙空間平和利用委員会で、いままでアメリカが打ち上げました原子力衛星について幾つ上げているか、現在軌道を周回中のものであるというふうな情報を、これは別途のあれでございますけれどもアメリカは通報してきております。  それで先生御指摘の今後の問題としましては、これは確かにコスモスの二回の事故等もあり、登録条約自体の問題というよりかはあるいはむしろ宇宙空間平和利用委員会の場を通して、衛星の中で特に危険度がどちらかというと大きい原子力衛星については、打ち上げたときにはそれを通報してくれということを、実はそういうふうな提案をすることを今後検討してみたいと思っておるわけでございます。
  167. 木島則夫

    ○木島則夫君 宇宙物体登録条約に加入することによりまして、わが国は今後その宇宙物体登録するための国内登録簿を設置し、そしてわが国登録国となる宇宙物体をこの登録簿に登録するとともに、登録した宇宙物体に関する情報を国連事務総長に提供する義務を負うことになるわけですね。しかしすでに一九六一年の十二月の第十六回ですか国連総会決議一七二一号によりまして、人工衛星の打ち上げ国は、打ち上げを登録するために国連事務総長に情報を提供し、また国連事務総長は提供された情報の公式の登録簿を保管することになっております。これは打ち上げ国の任意によって行われるわけでありますが、わが国はこの決議に基づいてすでに国連事務総長に打ち上げに関する情報を提供していると承知をいたしております。今回その宇宙物体登録条約に加入することによって、問題はこの後なんですけれど、わが国登録が義務化されること以外に具体的には従来とどんな違いが出てくるのだろうかということを教えていただきたいと思います。
  168. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 確かに従来もこの一九六一年の決議に基づいて国連に必要な通報は行っていたわけでございますけれども、当時と今回条約に入った後とでどのような違いが出るかという点でございますが、先生御指摘登録簿設置、それからそれを通報することが法的な義務になったという点は一つの大きな差異だろうと思います。従来は決議に基づいてやっておりましたから日本政府の任意な判断で行っていたということはございますけれども、それが法的な拘束力を有するようになったということが一つだろうと思います。それから通報内容につきましても、従来は各国の判断でその内容を決めていたわけでございますけれども、今回は条約に基づきまして一定の項目については通報を義務づけているというところが違う点であろうと思います。そのあたりが義務内容として変わってきた点だろうと思います。
  169. 木島則夫

    ○木島則夫君 ちょっとこの三条約からは外れますけれど、宇宙空間平和利用委員会の活動状況について触れていただきたいのですが。
  170. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 宇宙空間平和利用委員会、それが親委員会でございまして、その下に科学技術委員会とそれから法律小委員会の二つがあるわけでございますけれども、ここにおいていま大体一年に一回は親委員会、それから子委員会ともに会合しているわけでございます。その中で取り上げられております最近の一番大きな問題を幾つか取り上げさしていただきたいのですが、一つはリモートセンシングに関する原則案、これはちょっと砕いて申し上げますと発展途上国の意向、つまり発展途上国はやっぱりリモートセンシングで勝手に先進国にやられてはかなわぬ、したがって自分たちの意向も反映させろ、こういうふうなことから問題があるわけでございますが、リモートセンシングに関する問題が一つ大きな問題として取り上げられておる。それから静止軌道、これは静止軌道の問題は国際電気通信連合でも電波周波数の観点から取り上げられているのでございますけれども、宇宙空間平和利用委員会でも静止軌道の問題は取り上げられております。それからもう一つは原子力衛星、これはことに五十三年のコスモスの事故以降でございますけれども、原子力衛星の安全性をどうやって確保するか、そういった安全確保に対する法規則を、法原則をつくるべきではないか、こういったような原子力衛星の問題。それからもう一つは、これは法律小委員会での議論でございますけれども、宇宙空間を一体どういうふうに定義していくかというような宇宙空間の定義の問題。大きく分けますとリモートセンシング、それから静止軌道の問題、原子力衛星の安全性の問題、それから宇宙空間の定義の問題、こういったような問題が大きな問題として宇宙空間平和利用委員会で審議されておるわけでございます。
  171. 木島則夫

    ○木島則夫君 それじゃ、直接テレビ放送用人工衛星利用を律する原則に関する国際条約の成立に向けての作業が進められているというふうに聞いておりますけれど、この中身と進捗状況を伺いたいのでありますが、どんなものでしょうか。
  172. 宇川秀幸

    政府委員(宇川秀幸君) 御指摘のような国際直接テレビジョン放送のための人工衛星利用を律する原則の作成はかなり長い間国連、いまの平和利用委員会で審議されてきたわけですが、昨年の国連総会において直接テレビ放送衛星を律する原則というものが採択されているというのが現状でございます。  ポイントは何かについて簡単に触れさせていただきますと、直接テレビ放送というのは衛星から直接受信機に受容をするということから、特定の国の文化、思想が電波によって直接特定地域の国民に届くという可能性があるということから、これは主として東欧諸国、それから後進国というか開発途上国の方が何らかの規制があることが必要であるよという主張をしていた一方、日本を含む西側諸国は、こういうことは原則として自由であるべきであるということから意見の対立があったものでございます。採択された原則はやや開発途上国の主張寄りということでございますがポイントだけ挙げさせていただきますと、直接国際テレビジョン放送活動に対しては発信国は国際責任を負うのだ、それから、発信国は国連事務総長に対してその活動の性質——英語ではネーチャーでございます——を通報するのだ、それから発信国は放送を行う前に受信国と協議して取り決めに基づいた放送を設定するという原則をうたっております。  以上でございます。
  173. 木島則夫

    ○木島則夫君 この問題は細かくやると切りもないし、また非常にむずかしい問題だし現実的な問題でね、やはりきちっとこういう問題は処理していかないといけないということになろうかと思います。それは逓信委員会なり、場をほかに移した方が適当であろうと思いますから、ここではその程度の伺いようにしておきたいと思いますけれど、もう一つ月条約というのがあるのだそうですね、月条約。これについての中身と、日本がこれに入っていないのはどういうわけか、これをちょっと教えてもらいたい。
  174. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) 先生御指摘の月条約は、月その他の天体における国家活動を律する協定ということで一九七九年に作成されたものでございますけれども、この中身といたしましては、宇宙条約に定められたような月、天体を平和目的のみに利用するということの原則を再確認するとともに、月面における具体的な活動を前提としてさまざまな原則を具体的に決めているというのが大ざっぱな内容でございます。  中には、たとえば活動から得た情報をみんなに配るとか、天然資源の利用についてこれを人類の共有財産として利用するとか、いろいろな原則が定められておりますけれども、いずれにいたしましても基本的には月における具体的な活動を前提とした条約で、そのときの活動の態様、原則等についてこれを詳細に定めているものでございます。  それで、この協定につきましては現在十一カ国が署名しておりますが、批准したのはフィリピン、ウルグアイ、チリ、オランダの四カ国でございます。この条約は五カ国が批准しますと三十日目で発効いたしますので発効の見通しはわりと大きいわけでございますけれども、ただ御案内のように、現在月において活動をすることができる可能性を持っている国は米ソでございますので、米ソがこの条約に入らない以上は余り直接の意義は現在ないという条約でございますので、そういう意味では米ソが入ってこの条約が実体的な意味を持つようになれば、その際には検討するということで間に合うのじゃないかと考えております。
  175. 木島則夫

    ○木島則夫君 それじゃ一般国際情勢について少しお尋ねをしていきたいと思います。  きょうは外務大臣がおいでになりませんけれど政務次官もいらっしゃいますので、ひとつ率直に聞かしていただきたいのでありますけれど、今回の総理のASEAN訪問については私も御評価を申し上げたいと思います。さきのアメリカ訪問におきましてはちょっと進軍ラッパを鳴らし過ぎたというかそういった点がございまして、そのリアクションと申しますか、その影響も非常に大きかったわけでありますけれど、そういうことを一つの土台として踏まえて、今回のASEAN訪問においては非常に慎重でありかつ謙虚であった、そういうものがASEAN諸国にも好感を与えたのじゃないだろうかというふうに思うわけでございますけれど、わが国の外交政策におきまして対ASEAN外交というものをどの程度の重要性を持った位置づけをしていったらいいか。私は、これが大事でこれが大事でないというような言い方にとられることを恐れるわけでありますけれど、その辺は外務政務次官としてどんなふうにお考えでございますか。
  176. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 先生の御質問の中にランキングという言葉が実はございましたので、そういう意味ではランキングづけをすること自体がちょっと不自然ではなかろうか、こんなふうに思っております。そして、いま先生の御趣旨内容はわかりました。  そこで私のその点についての考えでございますが、これは先生御承知のとおり、わが国の外交方針というのはアメリカを基軸にいたしまして西欧諸国、民主主義国家との連携、協調というものと、さらにASEAN、韓国、中国等のアジア諸国とのさらに協調、連携、そしてさらにその他の多くの諸外国との協調、こういうふうなことが私どもの外交の基本路線ではないかと思います。  そういう点から見た場合に、どちらがどちらということは言えないかもしれませんがよく私ども日本人の言葉にございますように、遠くの親戚より近くの他人というようなことわざがございますとおりに、私は、やはりASEANというものはそういうきわめて近隣の友人である、こういうことから見てきわめて重要な諸国である、こういうふうに考えているわけであります。
  177. 木島則夫

    ○木島則夫君 いま外務政務次官お話で対ASEAN外交を重視する理由がわかったわけでありますけれど、そのASEAN諸国は日本にとってほかの発展途上国とどういう点で違いがあるのか、もう少し具体的に詰めてまいりたいと思いますが、この点についてのお考えはいかがですか。
  178. 石川要三

    政府委員(石川要三君) ASEANとわが国とのいろんな外交、経済、政治等の関係は先生も御案内のことだと思いますが、ちなみに一つの資料を申し上げますと、貿易の面から見まするとASEANは日本にとり米国に次ぐ第二の貿易相手国である、そしてわが国の総貿易額の約一三%を占めておる、こういう国でございます。特に商品名の幾つかを申し上げますと、ASEANの割合というものは、天然ゴムをとってみますと九九・四%、すずが九九%、その他ボーキサイト、原油、いろんな面から見てかなりのパーセンテージの関係でございます。こういう点から見てもきわめて他の国から比べますと重要なやはり関係にあるということは指摘されると思います。  それから、投資の面におきましてはこれも米国に次いで第二位のパートナーになっているわけであります。  さらに、マラッカ、ロンボク、この両海峡通過の原油の総輸入量のうち実にマラッカ海峡は七八%、ロンボク海峡が四%。鉄鉱石の総輸入量のうちのマラッカ海峡二二%、ロンボク海峡が一九%、こういう数字の量のものがその海峡を通って日本へ入ってくるわけであります。  こういう観点から見ても、いかにASEAN諸国というものが私どもにとっては生活の命の綱であるかということは想像できるわけでありますが、さらに先ほど前段でも申し上げましたように、やはりアジアの平和、繁栄と安定というものは、かかってこの諸国の平和の安定なくしては構築されないわけでありますので、私どもはそういう意味からいってもこういったASEANを重視していく、こういう基本的な考えを持っているわけであります。
  179. 木島則夫

    ○木島則夫君 ASEAN諸国は日本にどういう国家になってくれることを期待しているのか、日本は軍事大国にはなりませんよと、そのなりませんよということがむしろメインテーマになってこういうことをしていきたいのです、積極的にこういう国になっていくのですよといういわゆるASEANに対するアプローチと申しますか、イメージアップというものが軍事大国にはなりませんよと、そのことが非常に大きなアプローチなのかもしれませんけれど。もう一つ、それじゃ具体的にどういう国になっていくのですかというものが必ずしもはっきりしないように私は思う。この点はどんなふうに、もう少しこの辺を明晰にする必要があるのじゃないですか。
  180. 石川要三

    政府委員(石川要三君) ASEANから見て日本がどういう国になってもらいたいかと、これは要約いたしますと私はやはりASEAN側から見て二点あろうかと思います。第一点は、いわゆる軍事大国にならない、非軍事大国として発展してもらいたい。それから第二点は、経済大国というくらいになっておるのですから今日までもかなり経済援助はありますけれども、さらに今後とも経済援助というものを期待していると。これがASEAN側から見たわが国への一つの期待すべき姿といいますかそういうものではなかろうかと思いますが、私どもも、また総理の訪問によって最後にクアラルンプールのスピーチの中にも、これははっきりすべてを言い尽くされてはおりませんけれども、その底流にあるものはそういうふうな軍事大国にはならない、さらにASEAN諸国の経済繁栄のためにも一層のこれからも援助をしていく、こういうふうなものがやはり流れていると思いますが、私どもはASEANに対してはそういう国の姿として接していく、こういうのが基本的にあろうかと思います。
  181. 木島則夫

    ○木島則夫君 クアラルンプールスピーチでは軍事大国にならないということをはっきりと明言をされておりますものの、ではいま私が申し上げましたことをもう一度繰り返すと、日本がどういう国家となってどういう形でASEAN諸国にアプローチをしていけるか、いわゆる協力をしていけるか。軍事大国にならない、経済の面で大いに協力をする、交流をする。さっき外務政務次官が遠くの親戚よりも近くの他人とおっしゃった。他人であるからにはもうちょっと基本的な理念において非常に底の部分において、底辺の部分においてたとえば心の交流、精神の交流、文化の交流、やはりこういうものが私は欠けているように思うのですけれど、政務次官、どんなふうにこの辺は御理解をされておりますか。
  182. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 大変実はむずかしい問題だと思います。私の主観かもしれませんけれども、わが国というものは戦後一貫して平和主義、民主主義及び自由主義を標榜して国際社会の中にあって安定と繁栄の道をたどってきているわけでありますが、世界の平和と繁栄のために国力に応じた貢献を行うことは、これは相互依存関係から成り立つ今日の国際社会においてはこれは大きな責務と自覚をしているわけであります。わが国は、ASEAN諸国との関係においてはこれらの諸国重視の姿勢を堅持して誠心誠意その平和と繁栄のため貢献するとともに、今後は経済協力分野のみならず、さらにいま御指摘されましたような広い交流を求めて努力すべきであると、こういうふうに考えているわけであります。
  183. 木島則夫

    ○木島則夫君 日本の防衛力整備に関しまして、インドネシアであるとかあるいはフィリピンとタイとでは評価にかなりの違いがあるように私は受け取っているわけですね。この違いに対してどういうふうに対処をされるか、対応をされるのか。日本の基本的態度というものは変わらないとは思いますけれど、現実的な対応においてはやっぱり外交でございますからこれは変わっていかなきゃならないだろう。この辺はどんなふうに対処をされるわけですか。
  184. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 今回の総理のASEAN訪問の中でも当初からそういったような問題もいろいろととかく議論をされてきておったようでありますが、私個人の考え方から申しますと、今回の総理の訪問を通じて思いますのに多少のニュアンス、たとえばそれぞれの国の首脳の言われた言葉の表現には多少のニュアンスの違いはあろうかとは思いますが、やはり日本の防衛力等に対する考え方についてはそんなに大きな差異はないというふうに私自身は感じているわけであります。そのASEANの方々の言われることを考えると、やはり一つには日本の自衛のためには当然であるというふうなそういう考えであるし、また総理もその点についてはかなり説明をされておる。したがってそれについての総理の発言に支持をされておる、こういうふうに私は受けとめているわけであります。
  185. 木島則夫

    ○木島則夫君 ASEAN諸国は日本がサミットに出席するに当たっていろいろのことを期待をしているようでございます。これに対してわが国としてはサミットにおいてASEAN諸国の声をどう反映させていくのか、この辺をひとつ具体的にお聞きをしておきたいのでありますけれど。
  186. 石川要三

    政府委員(石川要三君) ASEANがサミットに対する一つの要望といいますか期待というもの、これは要約するとやはり二つぐらいにまとめられるのではないかと、こんなふうに思っております。  その一つは、現在のような停滞した世界経済の活性化といいますかこれが一つであるし、これはもう先生御承知のとおり、ASEAN諸国の輸出というものはやはり先進諸国の貿易の拡大とは密接な関係にあるわけでございますので、当然そういったようなことの考え方は強く出されているのは当然ではないかと思いますが、そういう点が一点。それから二点目には、やはりサミットで議論される内容が先進国の利益だけを考えるものではなくして、発展途上国の立場に立って十分に考慮してもらいたい、こういう志向は非常に強いというふうに私どもは受けとめているわけであります。したがって、そういうASEANの考え方を体してサミットに臨むということはわが国の大きな役割りではなかろうかと、こういうふうに思うわけでございます。
  187. 木島則夫

    ○木島則夫君 南の問題を出せますのは私は日本だけだというふうに自負をしております。したがって、一次産品の輸入であるとかまた世界経済の活性化、拡大のために、どうかひとつこういったASEANの声を十分に反映さしていただきたい、これは希望として申し上げておきたいと思います。  それから、ラオスに対する援助を強化したいと提案した理由は何かということと、これはインドシナ問題の解決にどんな形で役立つと考えておられるのか。それから、民主カンボジアに対する援助はどんな規模でどんな内容で実施されているのか、今後これをさらに強化をしていくのかどうか、こういった点に触れていただきたい。
  188. 石川要三

    政府委員(石川要三君) わが国が、まず第一に基本的な姿勢として踏襲しているのはインドシナ問題についてでありますけれども、これはあくまでもASEANの立場を支持すると、こういう基本的な姿勢を今日まで貫いております。したがって、これからもそういう路線を進めていくということには変わりないと思います。  第二の点につきまして、したがいましてベトナムに対する経済援助というものは、御承知のとおり凍結をしているのが現状でございます。したがってラオスに対する経済援助でありますが、この援助がこの地区の平和に役立つということならば検討しようというのが実は今回の総理と先方との間の交渉の実態であります。
  189. 木島則夫

    ○木島則夫君 もうちょっと具体的に私質問をしたのですけれども、インドシナ問題の解決にこのことがどんな形で役立つのか、また民主カンボジアに対する援助はどんな規模でどんな内容で実施されて、これをこれからも行うかどうか、こういうことであります。
  190. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) ラオスに対するいわゆる経済協力の問題につきましては、先ほど政務次官から、もしラオスに対する経済協力を行うことがこの地域つまりインドシナの地区における平和に役立つならば検討すると、こういうことを政務次官が申し上げた。全くそのとおりでございまして、目的はあくまでもこの地域に平和をもたらすためでございまして、さらに補足いたしますと、先ほども政府次官が明確におっしゃいましたとおりに、日本はあくまでもASEAN支持でございますから、ラオスに対する援助の問題につきましてもASEAN諸国と十分相談しながら検討を進めていくと、こういうことでございます。  それから、さらにお尋ねのいわゆる民主カンボジアに対する援助でございますが、これは昨年度わが国は対カンボジア国境地帯の難民あるいは被災民に対しまして、これは先生御存じのとおりに約三十億円の援助を主として国際機関を通じて供与したわけでございますが、やはりこの不幸な戦闘の結果、この被害を受けた方々に対する人道的な援助は今後とも継続していきたいというのが政府の考えでございます。
  191. 木島則夫

    ○木島則夫君 さて、その友情計画によりまして受け入れる青年には、日本においてどんな形で交流をしてもらうのか。それから、五十九年以後五年経過をした後はどうするのかということ。また、日本からASEANに派遣する青年はどういう人たちを何人ぐらいどういう形で派遣をするつもりなのか、これも具体的にお答えをいただきたいのでありますけれども、いかがですか。
  192. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 御質問が三点あると思いますが、まず第一点のどんな形で交流してもらうか、こういうことでございます。これに対しては学校の先生とかあるいは選抜された青少年、こういった方々が対象になろうかと思います。そしてそう長くない期間ですが、約一カ月ぐらいの招待で、一カ月という時間が長いか短いかというのはいろいろ問題があろうと思いますが、したがいましてそう長くはない期間でございますので民泊等の行事も取り行いながら交流を図っていく、こういうのが交流の内容というふうに理解をいただきたいと思います。  それから二番目の、では五年たったらどうするのかということでございますが、これは基本的には継続する、打ち切ってしまわないという考え方でございます。  それから三点目に、日本からはASEANにではどういう青年を送るのかということでございますが、率直に言いましてこれにつきましては目下検討中でございます。
  193. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務政務次官としては、私見で結構でございますから、アジアと日本との間というのはこれから本当の意味で細かい交流、心の交流、いろいろな意味で私は非常に大事だと思うのですね、この辺の構想外務政務次官の中にもきっとおありだと思うので、ちょっと私見でもいいから伺わしていただきたい。
  194. 石川要三

    政府委員(石川要三君) まことに私見で恐縮でございますが、そんなに私も検討したわけではございません。確かにいま先生がおっしゃったように、最も近隣のASEAN諸国と日本の交流というものはただ物と物との交流だけではいかぬ、文化、人的交流、こういったようなものがいかに必要であるかということはそれなりに私も承知をしているつもりであります。したがいまして、人的交流をする場合にどういう人たちをと言いますとこれはいろいろな意味があると思うのですね。必ずしも若くなくちゃいかぬということだけでもないと思いますけれども、今回の友情計画の中には青年というものをうたい出しているわけでありますので、そういった場合には当然向こうからも選抜されて来る青年、こちらからも何らかの物指しによって選抜された有為な青年、こういう方が、お互いにできればホームステイといいますかそういう民泊をしてお互いの国民感情というようなものを肌で感ずる、こういう交流が望ましいのではなかろうかなと、こんなふうに思うわけであります。
  195. 木島則夫

    ○木島則夫君 これで私は質問を終わりますけれども、交流ということも計画どおりの交流ではなくて後フォローですね、お互いに交流をした者同士がそれぞれの国に帰る、あるいはそれぞれの生活の場に戻る、そうした後もやはりフォローして末長くそういう人たちとの交流ができるようなシステムなりということを考えませんとなかなかむずかしいと思うのですね。一時的な計画に従ってこれこれこういう形でやったのだ、はいこれで終わりというのではこれは意味がないのであって、フォローと申しますかそういう点もひとつ御考慮に入れられて、大事なこの外交の一つの具体的な柱になるものだろうと思いますので、ひとつ政務次官もこういった点については十分にお取り組みをいただきたいというふうに私は希望を申し上げさしていただきたいと思います。何かございましたら。
  196. 石川要三

    政府委員(石川要三君) ただいまの先生の御意見、全く私も同感であります。私事で失礼でございますが、かつて私も青少年の交流の団長などで外国へ行ったことがありますが、ただ行っただけではだめなので、その後のフォローアップというものがいかに大切か。私どもは行った限りにおきましてはその後逆に今度は受け入れ側の手伝いの仕事をしたり、そういう関係でフォローアップされているようでございますが、まさしくそのとおりでございます。  この友情計画とはちょっと違うかもしれませんが、現在外務省の中にも海外青年派遣の方々がございますが、実にその後も引き続いていろいろと交流をしている。こういう姿を見たときに、先生の御指摘のようなことがいかに大切かということを痛切に感ずるわけであります。
  197. 木島則夫

    ○木島則夫君 結構です。
  198. 山中郁子

    山中郁子君 答弁者の側の御都合もあるようですので、宇宙条約の問題に入ります前に冒頭短時間ですが、外交問題といたしまして金大中氏の事情聴取のことについてお尋ねをいたします。  きょうの報道によりますと、金大中氏が事情聴取に応じるか否かの回答が十日に発送されてFBI側に十一日に届いたというふうにされておりますが、この事実、外務省は確認しておられるでしょうか。
  199. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 実は時差の関係もございまして私も実は先ほど大使館から報告を受けたばかりでございますが、正確に申しますと先生御指摘のとおりなのでございますが、正確に大使館からの報告のとおりを申し上げますと金大中さんが発信人でございます。それであて名はアメリカ司法省あてでございます。その書簡は十日付となっております。発送されたのは十一日でございます。
  200. 山中郁子

    山中郁子君 内容はどういうものか把握されていますか。
  201. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 内容につきましては、まことに申しわけございませんが、これは大変率直に申し上げますと、金大中さん御自身が先ほど申し述べましたとおりにアメリカ政府あての書簡でございますので、官僚的な答弁で申しわけないのですがやはり内容について詳細を申し上げるため、あるいはその全文につきましてはこれはやっぱり私は発信人の金大中さんとアメリカ司法当局との事前の了解、同意が必要だと存じます。それにもかかわらずせっかくのお尋ねでございますので私の印象を率直に申し上げますと、一言で申しますならばイエスあるいはノーという回答ではございませんで、日本の当局の捜査のために事情聴取をしたいというそのことに対する答えといたしましては、金大中さんといたしましては事情聴取に応じるか否かについては確定的な回答はなされなかった。つまり私の印象では回答を保留されたというのが率直な印象でございます。
  202. 山中郁子

    山中郁子君 内容につきまして官僚的でなくて、やはり日本自身の問題でありますから直ちに日本側が責任を持ってその内容について聴取をされるべきであろうということだけはまず指摘をしておきます。  それで報道によりますとその回答の中で、いま若干局長も触れられましたが、金大中氏は、自分は真相究明のため訪日を求められることを予想していたがこの点についても失望させられたと、こう述べて、自分は事情聴取に応じられるような状況ができる日本政府の反応が出ることを待つというふうに言われているようだと伝えられております。結局そのために一つとして日本政府が従来の経緯を釈明すること、それから一つとして真相究明の姿勢を誠意を持って示すこと、それから一つとして訪日を招請することが条件だというようにまとめられると思うのですね。こうしたことにどのように政府としては対応されるお考えかお尋ねをいたします。
  203. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) この問題につきまして政府としてどのように対応するかということにつきましては先ほども申し述べましたとおり、私自身も、実はここにおられる私の上司でございます政務次官にも報告する余裕がないほど数時間前に知ったことでございますし、したがいまして、しかもこれはもう御承知のことでございますので詳細は避けますが、そもそもいわゆる金大中事件というのは捜査が継続中であるというのが日本政府の公式見解、方針でございます。それで、日本の警察当局が捜査を継続するためにはやはりどうしても当事者と申しますか被害者から事情を聴取するのはこれがいわゆる捜査の常道であるということで、そういう警察側の要請を受けましてアメリカ政府を通じて金大中さんに事情聴取に応じてくださいという意向を表示したのに対して、先ほど先生が御指摘しかつ私が御回答申し上げましたような返事が来たわけでございまして、したがって受け取ったばかりでございますし、まず第一義的には、これはやはり私がいままで申し述べましたような経緯からいたしましても警察当局と相談しなければならないということで、現在警察当局を初め政府部内におきまして関係当局と相談中の段階というのが現在の偽らざる状況でございます。
  204. 山中郁子

    山中郁子君 いま局長が言われましたように、警察庁もいままでの経過の中でまさに捜査の常道であるということは当然のこととして、訪日によって実況見分しなければまずいと、それがベストであるというふうに見解を述べておられますね。それから先日、たしか外務委員会で私どもの神谷委員に対して、この金大中氏の回答を見て訪日を要請するかどうかということを考えると、その神谷委員の質問に対してそういう御答弁も出ておりました。ですから、どうしても事情聴取の実現のためには訪日要請をせざるを得ないという状況になってきていると思っておりますけれども、やはり訪日を要請するという方向でそれに伴うやはり日本政府としての誠意ある態度が明確にならなければならないという問題がついてきているわけですけれども、当然のことだと思いますが、その方向は、やはり数時間前でいろいろ打ち合わせができていないという御事情はいま承りましたけれども、日本政府として現段階において訪日を要請するという方向を明確にすべきであると考えておりますけれども、これは大臣いらっしゃいませんので次官からお答えいただくことになりましょうか。
  205. 石川要三

    政府委員(石川要三君) アジア局長からも言われましたように実はまだ私もここで初めて耳にするわけでありますので、その点についての政府としてのまだ固まりが、どうするかという対応の結論は出ていないわけでありますので、うかつに私が主観を持ってお答えするのはどうかと思いますが、したがっていまの時点であえて御答弁を迫られるならば検討さしていただきたいと、こう言う以外にはないと思います。
  206. 山中郁子

    山中郁子君 初めて聞いたというお話の部分はそれはそれとしてあるとしても、問題自体は長い問の問題になっていましてね、この外務委員会に限らず予算委員会その他でも何回も繰り返し議論になってきている問題でありますから、だから訪日の要請のことについてはいま突然判断をしなければならないような問題ではないということは申し上げるまでもないと思います。そうすると、現段階では訪日要請をしないというような態度を持っているわけではもちろんないということははっきりしていると思いますが、その点はいかがですか。
  207. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 私の上司でございます政務次官を差しおいて答弁をさしていただいて大変恐縮なのですが、実は先ほども申し上げましたとおりに、私午前中ずっと参議院の大蔵委員会へ出ておりまして、帰ってすぐ報告を聞いて、政務次官とお目にかかる時間がございませんでしたがって政務次官にも本当のところ申しわけないのですが、いま初めて申し上げるような次第でございますので、それを前提として申し上げますと、これはもう言いわけばっかりして申しわけないのですけれども、先生のただいまの御質問につきましては、金大中さんがどういう旅券を持っておられるかということも技術的な問題としてあろうかと存じます。
  208. 山中郁子

    山中郁子君 そういうことは別にして具体的な問題としてこの問題を解明していく、それから日本政府の政治責任、そうした問題についてのことを申し上げているので、あなた方のいまの範囲でのおっしゃることはわかりましたけれども、少なくとも訪日要請はしないという態度を持っているということではないですね、ということだけちょっと確認しておきたいわけなのです。
  209. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) そのものずばりのお答えになるかどうかわかりませんし、また政務次官も御答弁されましたとおりに政府の対応をどうするか現在相談中でございますが、問題はまず第一に、私がとりあえずお答えできるとすれば、金大中さん御自身が訪日される御意向があるかどうかという点がまず第一点あろうと思います。もし仮に金大中さんが来日、日本に行くということを希望をしておられてかつまた韓国政府がこれを認めるという場合、つまりこれは先ほど申しました金大中さんがお持ちになっている旅券の問題があろうかと存じますが、その場合にわが国としてどうするかということはやっぱりわが国の国内法、具体的には入国管理令でございますが、これとの関連も含めまして金大中さんから査証申請がもしも出された段階で改めて政府部内でこの金大中さんの来日問題について検討すると、こういうことになろうかと存じます。
  210. 山中郁子

    山中郁子君 これに時間をとるつもりはありませんですけれども、話が逆さまではないでしょうか。つまり先ほど御紹介しました報道によりましても、中身は、日本政府が誠意を持って真相究明のための態度を明らかにし、なおかつ訪日要請がないことに失望したと、こういう発言になっているわけですから、局長の御答弁は話が逆さまだと思いますが、いずれにいたしましても日本政府の誠意とそれから責任ある態度を表明しつつその上に立って訪日を実現する。そしてこの事件の問題を明らかにしていく。そうしなければ日本における捜査だって終わらないわけですよね、実際の直接のあれができないわけですから。そういうために積極的に日本政府が対応すべきであるということを指摘いたしておきます。  宇宙条約の問題に入ります。けさほどからの議論の中でやはりかなり集中的なテーマになったと思いますが宇宙空間軍事利用の問題です。私もやはりこれが当面する大変重要な問題だという認識をしておりますので、この点についてお尋ねをしていきたいと思います。けさほどからの御答弁の中にも若干重複はするのですが、ちょっと整理をして政府のお考えを伺いたいためにお尋ねをいたします。  まず、米ソの軍事衛星現状どういうことになっているのか、数量的な面も含めてですね、政府の把握を御説明いただきたい。
  211. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) まず、先生御質問の軍事衛星の定義が、いわゆる明確な定義がないわけでございまして、かつ日本に御承知のとおり衛星の追跡能力等々がございませんので、それからもう一つは、国連への登録自身が、軍事とか非軍事等々の分け方での登録がなされておりませんので、日本政府としましては的確に把握してないわけでございますので、私どもが承知しますのは一つは、スウェーデンのSIPRIの年鑑によりますといわゆる軍事目的と、SIPRIも推定しているわけでございますけれども推定されておる衛星は、一九八一年までにソ連が千二百七十一個、またアメリカは六百二十五個を打ち上げておると。それからその中身でございますけれども、同じくSIPRIの年鑑によりますと、写真偵察衛星であるとか電子偵察衛星、早期警戒衛星、海洋監視衛星、軍事航行衛星、軍事通信衛星、軍事気象衛星測地衛星等というふうになっております。  以上が日本政府としての把握しておるというか、これはきわめて間接的でございますけれどもそういうふうな情報を持っておると、こういうことでございます。
  212. 山中郁子

    山中郁子君 いまの御答弁にもありましたけれども、私はけさほどからの議論を伺っておりまして、まず軍事衛星の定義がどうなのであるかということがはっきりしないということが一方にずうっとあるわけですね。そのことが一つは問題だと思うのです。ということは、定義がはっきりしないで、当事者、つまり米ソに言わせればこれは軍事目的じゃないというふうなことを一つの基準にして考えるとすれば軍事衛星なんて幾らもないみたいになってくるし、それからSIPRIの調査によりますと、いまお答えがありましたように私 どもが把握しておりますものもそれだけの数、つまり八一年末まででソ連千二百七十一、アメリカ六百二十五という数字がまとめられているわけですよね。そこのところをどういう姿勢でとらえるか、認識するかによってこの宇宙空間における軍事問題の危険に対する政治的な認識、姿勢というものがやはり主体的に打ち出されてくると思うのですね。そこのところを私はぜひ政務次官にちょっとお伺いしたいと思っているのですけれども、いまお話になっているSIPRIは皆さんもよく御承知だと思いますけれども、かなり国際的にも権威のある機関として調査活動をされています。その中でそのような調査結果が報告されているわけですから、そういうものをやはり信憑性のあるもの、軍事衛星ずばりと言わないまでもそういう危険を多くはらんでいるものとしての認識に立つということが、次官も再三繰り返されております日本宇宙空間における平和維持というか、軍事利用に反対していくという立場に立つ土台になると思っておりますけれども、その点の御認識をお伺いいたします。
  213. 石川要三

    政府委員(石川要三君) いま先生が御指摘のように、権威あるそういったような立場の一つの資料でございますので、それなりに認識をすべきではなかろうかと、こういうふうに思います。
  214. 山中郁子

    山中郁子君 しかもレーガン政権は三月二十三日、レーガン大統領の国防演説の中で対ソ戦略弾道ミサイル迎撃システムの研究開発計画を明らかにいたしました。これは宇宙戦争時代の幕あげを意味する危険な構想であるということは軍事専門家指摘をしているところなのですけれども、このレーガン政権の新しい対ソ戦略弾道ミサイル迎撃システムに人工衛星利用するというようなことはとんでもないことだと思っておりますが、当然のことながら日本政府としてもこれは好ましくないという見解をお持ちであろうと思いますが、確認をしておきたいと思います。
  215. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 先生いま御指摘のとおり、三月二十三日に国防政策に関しましてレーガン大統領が演説をやったわけでございますが、その中で御指摘の大陸間弾道ミサイル防御システムが一つのアイテムとして取り上げられたわけでございます。  私どもといたしましては、この演説の中で行われたこのシステムは、レーガン大統領がきわめて長期的な観点に立ちまして、かつABM条約に背馳することなく戦略核ミサイルの脅威、その脅威自体を究極的には除去するそういう目的のための防衛システム、これを研究開発するということをうたったわけでございます。  これに基づきまして三月二十五日でございますが、国家安全保障会議に基づく決定が出されていると承知いたしております。ただし、その具体的中身につきまして私ども詳細は承知していないわけでございますが、いずれにいたしましてもこの計画は、大統領自身演説でそう言っているわけでございますが、今世紀の末まで果たしてでき上がるかどうかこれがわからないという次第でございます。私どもといたしましては、したがって今後どういうふうに動いていくのかその動向を見守りたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  216. 山中郁子

    山中郁子君 私はやはりちょっとそれは問題が大き過ぎると思いますね。四月五日にはアメリカの科学者連合が記者会見でこのシステムが軍縮の枠組みを破壊するものだというふうに非難をした。これには三名の元政府高官も参加をして危険性を強く指摘している。アメリカでさえ、そしてしかもアメリカのもとの政府高官やそれから科学者がその危険を指摘して強く批判をしている問題に対して、いま御答弁があったようにレーガン大統領の言っている言葉の一つ一つ、いろんなことがあるからまだ先の話だしもう少し見守りたいというようなことでは、日本政府として宇宙空間軍事利用の拡大には反対していって平和の立場に立ってイニシアチブをとるのだということは口だけのことになりかねないと思います。少なくとも、こうしたレーガン大統領の発言それからその構想、そういうものは好ましくないものだというはっきりした日本政府としての姿勢を明らかにして、宇宙平和利用という点からも、それからまた現実に軍拡競争に拍車をかけていくということを歯どめしていく上でもその見地に立つべきだと考えておりますけれども、この点は次官、いかがお考えでしょうか。
  217. 石川要三

    政府委員(石川要三君) ただいま政府委員からも答弁いたしましたけれども、これは先ほど来の質疑応答の中にもしばしば宇宙利用のいろいろと危険性の問題につきましては触れましたけれども、その中で日進月歩どんどん科学が進展する、ますますそういった軍備競争の懸念というものは高まってくる、このままでいいのかというような御指摘もありました。しかし、私はそういう質疑を聞きながら私自身の考えでありますけれども、確かに見方によると危険の度合いの進展とそれに対する防御のいろんな条約の成立との間にちょっと時間的なずれを感じないわけではありませんけれども、しかし一九八一年、わずか一年半ぐらいの前から急激にこういったような問題が国連並びに軍縮委員会の中で大きく取り上げられてきた、こういう時間の流れから見て私は決してそれをただ絶望的にだけは考えておらないわけでありまして、しかしその反面、いかに軍縮というものがむずかしいかということも先ほど来の質疑応答の中でいろいろと見解が披瀝されました。そういうようなことを総合的に考えてみた場合に、私はやはりアメリカの大統領の一つの行動というものを、基本的にはいまの先生の見解とはちょっと違った立場で私は考えているわけでありまして、しかしそうかといって、それでは先ほど来の答弁が単なる口先だけのことではないかというふうに言われるかもしれませんがそうじゃなく、やはり軍縮というもののむずかしさの中に人間の英知というもの、努力を重ねていくことの中に、そういう危険性が反面ある中に私は軍縮というものもさらに突き進めていかれるのではなかろうか、そういう考えで先ほど来答弁したわけであります。
  218. 山中郁子

    山中郁子君 ちょっと論弁にもならない、わけのわからない御答弁としか受け取れないのですけれども、ちょっと端的にそれじゃお伺いしますけれども、アメリカの科学者が反対し、もとの政府の高官もこぞって反対しているこの戦略弾道ミサイル迎撃システムに人工衛星利用するというような構想をまさか支持するという立場に立っていらっしゃるわけではないのでしょうね。——ちょっと政務次官に伺っているのです。
  219. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 事実関係だけちょっと御説明さしていただきたいのでございますが、これは大陸間弾道ミサイル迎撃システムということでございまして、たとえば何と申しましょうか、宇宙の中に、先ほどからいろいろ御議論ございましたような反撃のミサイル等を打ち上げてそれで防御するという、そういう具体的な形に固まっていない、まだどういう方法があるかということを検討する段階なのでございます。  それで基本的考え方は、現在の世界における要するに米ソ間の核のバランスと言われておりますが、レーガン大統領の考え方は、戦略核ミサイルによって相手を要するに攻撃をするということでおどかす、その脅威を与えることによって相互抑止を図る、それはいかにも人間の尊厳に反するといったような考え方から、そういうものがたとえあっても完全に防御できるシステムができれば、いまのようなオーバーキルといいますか恐怖の均衡といいますか、そういうものを防げるのじゃないか、そういう何か哲学的発想を基礎として打ち出された考え方であるというふうに私ども理解しているわけでございます。したがって先ほどおっしゃいましたように、迎撃ミサイルに直接かわる形で考えられているということはないのだというふうに理解をしている次第でございます。
  220. 山中郁子

    山中郁子君 それだったら一番最初にあなたがおっしゃった、いつできるのかわからない、今世紀末になるだろうみたいなことで何だかよくわからないから見守るのだというのとまた矛盾してくるわけね、勝手な御理解だと思います。政府としての責任ある見解を次官からお伺いしたいと思っておりましたけれども、どうしてもあなたが御答弁なさるから次の問題に進みます。  当然のことながら、これは宇宙空間にまで軍拡をさらに拡大することによって、あなたの議論から言ってもさらに軍拡を拡大することによって、わが国の憲法の精神から言っても当然容認できないものであり、日本政府としては断固として反対を表明すべきものであると国民がひとしく考えていることは間違いないところだと私は考えております。  しかも、三月二十四日にイーグルバーガー国務次官は記者会見で、将来日本を含む西側諸国からの同システムに対する技術的、科学的寄与を期待するのかという問いがあって、これに対して大統領は、米国の科学者だけに協力を求めたものではないと思う、いま考えられることはつまり友好国、同盟国からの助力を米国は喜んで受けるだろうということだというふうに述べていると伝えられております。このシステムの研究開発についての協力要請が、したがって日本を含む友好国、同盟国、つまり日本アメリカから公式にしろ非公式にしろ何らかの話がありましたか。
  221. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) 私の知る限りではそういう要請は一切受けておりませんです。
  222. 山中郁子

    山中郁子君 報道によりますと、六月にも日米軍事技術協力に関する協議が行われるようになっている。ここで同システムの研究開発についての協力要請がもしあったならば、ここだけでなくて今後アメリカの方は日本を含む他の国にも要請するのだということを言っているわけですから、その場合明確にこの要請を拒否すべきだというふうに思っておりますけれどもその点はいかがですか。ぜひ次官から、政治的最高責任者としてお考えを聞かせてくださいな、大臣がいらっしゃらないのだからしようがないもの。
  223. 石川要三

    政府委員(石川要三君) ただいまの御質問はきわめて仮定の質問でありますので、いまのこの段階では私としてはそれに対する明快な御答弁はいたしかねる次第であります。
  224. 山中郁子

    山中郁子君 仮定の問題とおっしゃるけれども、実際にアメリカの方でそう言っているわけよね。そういうことは日本にまた来るわけだ、当然ね。そういうことを考えるならば、単に一般的に仮定の問題というのではない重要な問題、しかも宇宙空間軍事利用といういまここの委員会でも大きな問題になって、次官も再三平和利用のためにがんばると言っていらっしゃるその中心的な焦点の問題なわけですから、その点について態度が明確にされない、しかも参事官の方からは何かそういうことも容認し得る、容認できるかのような御答弁さえあるということは大変重大な問題点だというふうに考えております。  それで、アメリカのスペースシャトル計画が、コロンビア号の四回目の飛行である種の軍事目的、機密装置が積載され実験に使われたというふうに発表されています。これはいろんな報道もあるし、アメリカ自身の発言もあるし、すでに多く議論もされてきたところですけれども、スペースシャトル宇宙軍事利用そのものであるという機能を持っているということについては外務省はどういう所見をお持ちかお伺いをいたします。
  225. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) これは先生御承知のとおり去年の七月の四日でございますけれども、アメリカ大統領が今後の宇宙政策としてアメリカは三つの柱があると、一つは民間というか民需用、それからもう一つは安全保障用、その柱になるのがスペースシャトルであると、こういうふうに言っておりまして、かつアメリカ政府の方も、スペースシャトルというのは安全保障には利用する意向ではあるけれども同時にこれはスペースシャトルを兵器体系としては使用する計画を持っておらず、またスペースシャトルが兵器を運んだりあるいは搭載することもないと言っておるわけでございます。したがいまして、私はそういったような性格を持つスペースシャトルがいわゆる即軍事利用であるというふうには考えておりませんですし、かつこれがいわゆる米ソ間の宇宙における軍備拡大、軍備競争というものを招くようなものではないと、そういうように政府としては考えております。
  226. 山中郁子

    山中郁子君 でもこれは昨年のたしか十一月五日の閣議だったと思いますけれども、亡くなられた当時の中川科学技術庁長官が、このスペースシャトルが抑止力として国防上の利用も考えているようだという発言をされていますし、また同じ閣議で当時の伊藤防衛庁長官も抑止力的なものだという発言もしているのですね。だから、この軍事利用はそういう日本の閣僚の受けとめ方からいってもはっきりしているのですよ。こういうものが、宇宙空間におけるアメリカのこうしたスペースシャトルのたとえばこの軍事利用が現在の宇宙条約上許されているということなのかどうか、禁止されていないということなのかどうか、これはけさほどから議論が多くあったところなのですけれども、改めてちょっと見解を伺っておきます。
  227. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) また繰り返しの御答弁になるかと思いますけれども、軍事利用との関係で根幹をなす宇宙条約の条項は第四条でございまして、この前段で禁止しておりますものは特定の兵器、「核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと」と。それから「天体に設置しないこと」と。いかなる方法でも「宇宙空間に配置しないこと」というこれが明確な宇宙空間全般に対する禁止でございます。それから月その他の天体についてはこれはもっぱら平和目的のみに利用するということを決めておりまして、軍事利用についてはこれを一定の例を挙げまして禁止しているということになっております。条約の課しておる禁止は以上のような明確な範囲でございますので、それ以外のものについては禁止されていないというのがこの条約の仕組みでございます。
  228. 山中郁子

    山中郁子君 そうしますと、やっぱり宇宙条約がもっと本当に実質的にこうした宇宙における軍拡に歯どめをかけ、平和利用の側面から強化し、そしてさらには軍事利用をやめさせていく、禁止していくというようにさらによりよいものになっていかなきゃいけないわけだと私たちも考えるし、先ほどから次官もそうした趣旨の答弁をされていらっしゃったと受けとめておりますが、そこで私は宇宙軍拡というこの危険をやめさせていくためにも、事はまた軍拡をストップしていく、際限ない軍拡をストップしていく上でも大事な問題で、また遅きに失してはならない問題だという考え方を持っています。そこで、宇宙条約を改正して宇宙軍事利用の全面的禁止のために日本政府は積極的に動くべきである、イニシアチブをとるべきであると考えておりますけれども、この点はいかがでしょうか。
  229. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生いま御指摘のように宇宙における軍備競争というものが懸念されますので、それを何とかして防止しなくちゃいけないという点でございますけれども、そのためにいま日本政府がとっておりますのは、国連及びその軍縮委員会において、ことにいまの段階では国連でございますけれども、国連において日本が、けさからも御答弁申し上げましたように共同提案国の一つになりまして、軍縮委員会で、ことにその宇宙軍縮の優先課題として要するに対衛星システムの禁止のための協定、しかしながらその協定というのは実効的かつ検証可能な協定でなくちゃいけないというふうな態度をとりつつ対衛星システム禁止のための協定の交渉を軍縮委員会でやれと、こういうふうな決議の共同提案国になり、かついまその軍縮委員会におきましても宇宙軍縮のための作業部会の設置に日本が動いておる、こういうようなことで宇宙軍備競争の今後の防止のためにそういったマルチの場を使いまして積極的にいままでもやってきておると思いますし——まだやっていると申しましても一九八一年以降のことでございますけれども、今後もそういった方向で努力したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  230. 山中郁子

    山中郁子君 一九七九年にイタリアが、宇宙条約第四条に、月その他の天体を含めた宇宙は平和目的のみに使われ、という条項を加えるようジュネーブ軍縮委員会で提案していますね。日本の場合には申し上げるまでもなく戦力不保持、恒久平和を基調としている憲法を持っていて、そしてしかも唯一の被爆国として多くの惨禍をなめた国民的な要望です、この平和ということについて。しかも新たな宇宙空間での核軍拡の道が開かれるというようなその危険のもとにあっての国民の切実なコンセンサスですから、これはもう疑問の余地のないところです。ですから、その意味で日本政府が全面禁止のためのイニシアチブをとるということについては、ぜひ私は、きょうこのせっかくの宇宙条約審議の場でありますので、三条約承認に関する質疑の場でありますので、政務次官から明確にお約束をいただきたいと思っております。  なお、具体的に私どもはこのように考えております。軍事目的宇宙空間利用、すべての人工衛星及び原子力衛星の打ち上げ並びに人工天体の軍事利用、その研究開発実験、これらは全面的に禁止すべきである。それから二つ目としては、非軍事目的の人工天体についても落下の危険を防止する安全対策を義務づける、これはいろいろ議論もありました。三つ目としては、軍事目的人工衛星、原子力衛星を含むすべての人工天体の実態とそれらの安全対策等について調査し公表をする。こうした問題の実現のために関係諸国と協議をし、宇宙条約を速やかに改正していくために積極的にイニシアチブを発揮していくという点での日本政府としての決意をお伺いしておきたいと思います。
  231. 石川要三

    政府委員(石川要三君) 午前中からの質疑応答の中でも再三申し上げましたとおりでありますが、この条約内容を見ても、先生御指摘のように確かに不完全な要素はかなり入っている、こういうふうに私自身も認識をいたします。しかしこういったようなものも、やはりこれは一つのそのときの歴史の所産といいますか、もっと具体的に言えば米ソの妥協の産物と言われてもいいと思いますがそういうふうなものでありますので、これはやはりパーフェクトなものではないことはやむを得ない。しかし私どもの人類の幸せの面から見ても、先ほど来いろいろと御指摘がございましたような日進月歩の技術の進展に伴いこれが結果的に人類にプラスになる、要するに幸せをもたらすものならばいいけれども逆な面もあるわけでありますから、そういう面についての防御をどうするか、これはきわめて率直に言ってむずかしい、軍縮というものはいかにむずかしいかということはきょうのこの委員会の内容を見ても十分にわかるところでありまして、しかし私どもはそういう望みを捨てないで、失望しないでそういう点についても先ほど政府委員がお答えいたしましたような、特にたとえば軍縮委員会の中に作業部会を設けるというような努力も残されておるわけであります。そういうきわめて実効性のある内容については、これはどんなに積極的にやっても過ぎるものではございませんので、政府としても基本的にはそういう考えを持っているわけであります。  言いわけじゃありませんけれどもなかなか——先ほどどなたの先生ですか御指摘がございましたように、アメリカが出せばソビエトは反対、ソビエトが出せばアメリカは反対というようなそういう一面をとってみてもいかにむずかしいかということを御理解もいただきたいし、私どもはそういうものを踏まえながらやはり最善の努力はしていくべきではなかろうか、こんなふうに思っております。
  232. 山中郁子

    山中郁子君 むずかしさというのはある意味で当然なことでありまして、私がいま問題にしておりますのは、やはり日本政府がそういう立場で積極的に働くということですね。それがすぐにできるかどうかということとはまた別問題ですよ。だから、そこのところが大事なところであるということです。その点について言うならば、先ほど私はレーガン大統領の国防演説を引用してお尋ねをした御答弁の中の姿勢に、抽象的には一生懸命がんばるよ、やってますよとおっしゃることとの懸隔があるわけですね、かなりの懸隔が。そこのところはやはり日本政府の持っている重要な問題点だと思いますけれども、きょうは時間がこれで終わりになりますので、今後引き続き時を得て追及もしていきたいし、態度も明確にしていっていただきたいというふうに考えております。終わります。
  233. 増田盛

    委員長増田盛君) 以上で三件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、宇宙飛行士救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体返還に関する協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  234. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  235. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、宇宙空間に打ち上げられた物体登録に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  236. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 増田盛

    委員長増田盛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十四分散会