○
政府委員(
松浦昭君) お答えを申し上げ
ます。
まず第一点の今後の
サケ・
マス漁業をいかに
長期安定化させていくかという問題でござい
ますが、先ほど先生は実務
交渉のパターンで今回の
交渉が妥結したとおっしゃいましたが、確かにその
面はござい
ますが、今回の
交渉に当たりましてこれが早期円滑な妥結ができましたもとは、やはり
カメンツェフ漁業大臣が
日本を訪ずれられましてその際に政治レベルでの金子・カメンツェフ会談、それからまた
安倍外務大臣と
カメンツェフ大臣との会談といったような幾つかの会談がございまして、そのもとにおきまして非常に有意義な結果が出、その雰囲気のもとで実務
交渉を行ったということが今回の結果につながっているものというふうに考えている次第でござい
ます。その政治レベルの会談の中におきまして
長期安定化の問題も取り上げられて、
ソ連側も事務的にこれを今後詰めていこうという姿勢を示したわけでございまして、今回の
交渉におきましてもこの点につきましては代表団の方から話を持ちかけ詰めたわけでござい
ますが、残念ながら今回の
交渉においてはこれを詰め切るような場ではないということで
ソ連側としては最終的な結論に達するような
状況に至らなかったわけでござい
ます。しかしながら、この問題につきましては将来ともに私
どもとしてはさらにこれを推進いたしまして
長期安定化の実を上げるということが必要であろうと考えており
ますし、
ソ側も決してこれを拒否しておるわけではございませんので外交のチャンネルを通じましていかなる形でこれを取り上げていくかということを今後とも詰めてまいりたいと思い
ます。また
長期安定化を図り
ますためにはその実態というものが非常に重要でございまして、その実態のためには
一つはいろいろな形での
漁業の
協力関係というものを
日ソの間にさらにパイプを太くしていくということが必要でござい
ますし、その中の
一つとして
サケ・
マスにつきましては先ほ
どもお答えいたしましたような共同
調査あるいは共同
ふ化増養殖事業といったようなことが非常に重要であろうと思い
ます。後者につきましては、残念ながら向こうがまだ
国別の
ふ化増養殖事業というものを推進しようということを考えており
ますので必ずしもこれに乗ってきておりませんが、その周りの形ではいろいろな形で
技術協力その他が進んでおり
ますのでさような面における
協力関係を今後とも拡大し、いま
一つは、後ほどお答えいたし
ます違反をできるだけなくしていくということによって実質的に
サケ・
マスの
操業につきまして将来安定化させていくということがわれわれの望みであり、今後ともこれを達成すべく最大の努力を尽くしたいと思い
ます。
次に第二点の違反漁船の問題でござい
ますが、先生御指摘のように残念ながら違反の水準はかなり高い
状態にござい
ますし、その
内容も船名を隠す等問題があることが非常に多うござい
ます。それからまた去年の特色としては太平洋の小型の
サケ・
マスの漁船がかなりの違反をしたという問題がございまして、このために
ソ側も非常にきつい要求をしてまいったわけでござい
ますが、いろいろ話しました結果監視員ではなくてオブザーバーという前年の形を踏襲いたしまして一名増員ということでこの問題に決着をつけたわけでござい
ますが、このような違反の問題に伴う不信感が続く限りにおいて私は
北洋の
漁業の安定はないというふうに思うわけでござい
ます。このようなことから、私
どもといたしましてはまず去年違反を行いました漁船に対しましては、
サケ・
マス漁業の一年の全漁期に相当する日数、これは九十二日間でござい
ますが、悪質なものに対しましてはこれの全期間の停泊命令、こういうものを科する、こういうことであるとか、そのほか全違反漁船に対してきわめて厳しい処分を行うということをやりまして今後このようなことがないようにいたし
ますと同時に、また本漁期におきましては、出漁前における
取り締まり指導会議というものを行い
ますことは当然のこと、太平洋の小型
サケ・
マス流し網
漁業につきましては、北海道に対しまして指導
取り締まりを強化してくれということを申しており
ます。また
水産庁の監視船の総隻数につきましてはなかなか増大しがたい
状況にござい
ますが、特に問題のある
太平洋中型サケ・
マス流し網
漁業につきましては監視船の一隻
増加を講じまして違反のないように最大限の努力を尽くしたいというふうに考えており
ます。
それから次に
漁業協力費、いわゆるコンペの問題でござい
ますが、この点につきましては昨年は四十億ということで一昨年と同様に幸い抑えることができたわけでござい
ますが、ことしは
ソ側も四千七百万ルーブル使っておりました漁場の保全、特に
産卵場の確保といったようなことに使い
ます経費を五千三百万ルーブルまで
増額してきているということもございまして、
先方もやはりこのような
経費の増高がござい
ます以上はわが方もそのメリットを受けるという実情がござい
ます。しかしながらやはりこのような
ソ側の計算のもとでまいり
ますと実に四十九億の金を払ってくれという話でございまして、これはとうてい
漁民の
負担にはたえかねるということで私
ども鋭意
交渉いたしまして二億五千万の
増額ということでこれをとどめたわけでござい
ます。ただこの二億五千万の
増額部分をいかに
負担するかということについてでござい
ますが、もちろん
関係各省と相談をいたしてみるつもりではござい
ますが、なかなか現在の
財政事情から申しましてこれを
国庫の
負担で賄うということは困難な
事情にあるということは御了解をいただきたいというふうに思う次第でござい
ます。
次に需給のバランスの問題でござい
ますが、需給のバランスにつきましては先生御指摘のように五十七年の
サケ・
マスの供給量というのは
国内生産が十三万三千トン、それに輸入が実に十万七千トンあったということで、供給量が非常に多かったということが言え
ます。これに対しまして家計消費はほぼ前年並みということで消費がやや停滞ぎみであるということは事実でございまして、このために在庫数量が五十七年十二月末で前年同期比一四二%という高水準であったことは事実でござい
ます。このような需給
状況から価格も最近低迷しているということも先生御指摘のとおりでござい
ますが、このようなことでかなり価格も落ちてきたということから若干最近は消費が上向きになってまいったことは事実でござい
ます。そこで、たとえば最近の
漁業情報サービスセンターの
調査でござい
ますが、四月に入りましてから若干価格は戻りぎみ、われわれとしては価格としては底をついたのじゃないかというふうに考えており
ますが、これはそのようなことで推移してほしいというふうに考えておるわけでござい
ます。なお、問題はやはり輸入であろうというふうに考え
ます。この点は実は、昨年十万トンという史上空前の
サケ・
マスが特にべニを中心としまして米国産が入ったわけでござい
ますが、これはボツリヌス菌という中毒菌がございましてこれが缶詰の中毒事件を起こしまして全世界的に
サケ缶の缶詰の需要が落ちてしまった、そのために冷凍に回りましてこれが
日本に回ってきたということが非常に大きな
理由でございまして、冷凍を入れる国は
日本が主力でござい
ますために十万トンもの輸入があったということでござい
ますが、これはやや異常な事態というふうに考えられ
ますので、ことしはこのような
状況ということは想定しがたいのじゃないかというふうに考えておる次第であり
ます。
最後に
北洋サケ・
マスの今後のあり方の御質問でござい
ますが、この点につきましてはやはり
北洋における長い伝統、特にこの
サケ・
マス漁業に先人たちが払ってまいりました大変な努力と汗の結晶を何とか確保してまいりたいという気持ちでござい
ますし、また国民の嗜好に合った
サケ・
マスを供給するということも非常に重要な役割りでござい
ます。それからさらに私
ども最も関心がござい
ますし重要であると考え
ますのは、やはりこの
漁業に従事している方々の雇用の問題でござい
ます。たとえ
国内で十万トンの
サケ・
マスがとれるようになりましても、この
サケ・
マス漁業に従事しておられる方が他の沿岸
漁業に転業できるというわけでもございませんし、これらの方々の職を確保する、あるいは関連産業を含めた地域経済を発展させていくということのためにもどうしても
北洋の
サケ・
マスの
漁業というものは長期安定的に継続させるべきであるというふうに考えておりまして、今後ともさような方針のもとに全力を
尽くす考えでござい
ます。