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1983-04-26 第98回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十六日(火曜日)    午後二時開会     ─────────────    委員の異動  四月十九日     辞任         補欠選任      立木  洋君     小笠原貞子君  四月二十五日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     神谷信之助君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         増田  盛君     理 事                 安孫子藤吉君                 福田 宏一君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 小山 一平君                 田中寿美子君                 宮崎 正義君                 神谷信之助君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務大臣官房審        議官       田中 義具君        外務大臣官房外        務参事官     山下新太郎君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        農林水産政務次        官        鈴木 正一君        水産庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        警察庁警備局外        事課長      吉野  準君        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全課防災環境        対策室長     岡崎 俊雄君        外務省国際連合        局外務参事官   遠藤 哲也君        運輸省船舶局検        査測度課長    石井 和也君        運輸省船員局労        政課長      佐藤 弘毅君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 増田盛

    委員長増田盛君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件、商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件、北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件及び商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件の両件につきましてはすでに趣旨説明を聴取しておりますので、北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件について、政府から趣旨説明を聴取いたします安倍外務大臣
  3. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいま議題となりました北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和五十三年四月二十一日にモスクワで署名された漁業の分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定に基づき、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域における本年の日本国サケマス漁獲手続及び条件を定める議定書締結するため、本年四月十一日以来、モスクワにおいてソ連邦政府交渉を行ってまいりました。その結果、四月二十二日にモスクワで、わが方小和田臨時代理大使先方カメンツェフ漁業大臣との間でこの議定書の署名が行われた次第であります。  この議定書は、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域における本年の日本国サケマス漁獲について、漁獲量、禁漁区、漁期、議定書の規定に違反した場合の取り締まり手続等を定めております。なお、本年の北西太平洋ソ連邦距岸二百海里水域外側水域における年間総漁獲量は、昨年と同じく四万二千五百トンとなっております。  この議定書締結により、北洋漁業において重要な地位を占めるサケマス漁業操業を本年においても継続し得ることとなりました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします
  4. 増田盛

    委員長増田盛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより三件を一括して質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います
  5. 松前達郎

    松前達郎君 まず最初にただいまの趣旨説明にございました日ソサケ・マス漁業交渉に関してお伺いをいたしたいと思うのですが、ソ連側サケマス資源の再生産及び保護のために国内で多大の費用を支出していることを理由応分負担日本側に求めてきている、こういうことでございますが、実際その根拠ですね、これに関してソ連側から何らかのデータなり何なりを持ち出してこういう説明があったのかどうか、その辺を一つお伺いしたいのです。
  6. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 今回の交渉におきましてもソ連側は、サケマスの再生産のために自国が投下いたしております経費につきまして日ソ両国合計漁獲量に占める日本側のシェアによりまし て応分負担をすべきであるという主張をいたしてまいったわけでございます。その際ソ連側といたしましては、ソ連支出経費が前年が四千七百万ルーブルということでございましたがこれに対しましてことしは五千三百万ルーブルになったということを言ってまいりました。増額があったということを申したわけでございます。当然日本側といたしましてはその具体的な内容の提示を求めたわけでございまして、ソ側もこれにこたえまして、その内訳といたしましてふ化場維持費一千二百万ルーブル、増殖費七百万ルーブル、産卵場及び産卵河川での土地改良費環境保護費三千四百万ルーブルということで日本側の問いに対しまして説明をいたした次第であります
  7. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますとこれは金額的な面で回答されたということになるわけなのですが、内容的にそれだけの金をつぎ込んだ以上それだけの施設あるいはいま土地改良まで含めてということですが、これが具体的に拡大されていっているということについてはどこにどうだというふうな内容について細かいことは言われなかったのか、その辺はいかがでしょうか。
  8. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 非常に細かい点でどのような地点にどういう経費を投下したかというところまでは先方説明をいたしておりませんけれども、五千三百万ルーブルの内訳につきましては先ほど申しましたようなことで答えておりまして、先方とのやりとり関係増額をしておることは間違いない、そのような増額をいたしましたためにわが方の漁獲量につきましてもこのような河川の改修あるいは産卵場保護といったようなことでの恩恵は受けているという実態であったというふうに考えております
  9. 松前達郎

    松前達郎君 それから漁業協力費が毎年増加をしてきている現状ですね。五十三年度以降の漁業協力費に関して増加をしているのですが昨年は四十億円である。この資料によりますとその中で国費としては十七億円をつぎ込んでいる。ですからその四十から十七引いた残り二十三億円、これは一体どういうところからどういう形で支出されているのか、それについてお伺いします
  10. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 昨年の漁業協力費は一昨年に比較いたしまして幸いに四十億ということで同額交渉は妥結したわけでございますが、今回は先方とのいろいろのやりとりの結果、四十二億五千万円ということで妥結をしてまいったわけでございます。  四十億の内訳でございますが、これは政府の補助が約十七億、四二・五%でございまして、残りの二十三億円はこれは五七・五%に当たります民間負担ということになっております民間負担と申しますのは、各漁業種類ごとにいろいろな母船式漁業とかあるいは太平洋中型漁業とか、これも全鮭連、全鮭協といったようないろいろな団体がございます太平洋小型日本海といったようないろいろな漁業種類がございますが、この漁業種類ごとに大日本水産会がただいま申しました七団体別漁種別漁獲割り当て量等を参照いたしまして負担率を決め配分を行っているということでございます
  11. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますとことしがふえているわけですね、それより多少ふえていますから。そのふえた分というのは国の方から出すのですか、やっぱりいまおっしゃったようなパーセンテージに大体割り振ってたとえば大日本水産会等でそれを調達するのかどうか、その辺はいかがでしょう。
  12. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) この増額になりました経緯を一言申させていただきますと、先方は先ほど申しました五千三百万ルーブルというものを前提にして四万二千五百トンの漁獲割り当て量日本に割り当てるということにいたしますと実はその経費は約四十九億になるということを言ったわけでございます。しかしながら私どもといたしましては、漁民負担というものはもはや限界に来ているということを十分説明いたしまして最終的には民間の顧問の方々とも御相談いたしまして四十二億五千万円ということでおさめたわけでございますが、しかしながら国庫負担関係につきましては今後は当然関係方面協議をいたすつもりでございますけれども、何分にも昨今のこのような財政事情でございましてしかも十七億円は最近三年間そのまま据え置いているということもございますので、今回の二億五千万につきましては協議はいたします国庫負担の増という形でこれに対応することはなかなか困難ではないかというふうに考えている次第であります
  13. 松前達郎

    松前達郎君 それから総漁獲尾数ですね、この表を見ますと数が昨年より増加しているところがございますね。いただいた資料の中の(a)のところですけれども、この公海部分ですけれどもこの増加している理由というのは一体どういうところにあるのか、これをお伺いします
  14. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 昨年の交渉におきましては、実は去年は不漁年に当たっておりまして、不漁年というのは特にカラフトマス資源不漁になる状態になるわけでございます。このカラフトマス資源状態不漁年でもあり余り望ましくない状態にあるということから四万二千五百トンの漁獲割り当て量は確保いたしましたもののむしろカラフトマスよりもほかのサケをとるということが前提になって、ソ連側主張によりまして公海における漁獲尾数については総漁獲尾数を削減いたしまして、一九八一年が千八百八十万尾だったものを八十二年に千六百二十万尾ということにいたしまして、それに基づいて体重としては大きいシロザケ漁獲尾数増加するという形にいたしました。この数値も八一年が三百八十万尾でございましたものが四百二十万尾に今度はいたしておるわけでございます。このようなシロザケ漁獲尾数増加するという形でカラフトマス漁獲尾数を削減した形で去年の交渉はまとまったということでございます。しかしことしは実はカラフトマス豊漁年に当たるわけでございますからよりカラフトマスがとれるという状態でございました。しかも他の主要魚種についてもいずれも資源量増加されるということが期待されましたのでむしろ今回は公海上の総漁獲尾数等は一九八一年に戻すということにいたしまして、つまり一昨年の豊漁年状態尾数でこれを決めるということが適当であろうということで日本側主張をいたしまして、今回尾数につきましては、マスノスケにつきましての新しい規制が加わりましたものの日本主張がほとんど認められまして一九八一年と同様ということに相なった、これが変わった理由でございます
  15. 松前達郎

    松前達郎君 それからもう一つ伺いたいのは、北西太平洋におけるわが国サケマス漁業長期安定化、そのために法的枠組みを考えるというそういうことが書いてありますが、この法的枠組みというのは一体どういうことを企画されているのか、その点一つお伺いします
  16. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 御承知のように現在毎年作成しております議定書日ソ漁業協力協定に基づいて行っているわけでございますけれども、この漁業協力協定が昨年の末に一応の期限が切れましてその後毎年自動延長できることになっております。理論的には各国政府とも六カ月の予告をもってこれを廃棄し得る状態になっているということでございますが、当面ソ連側にこれを廃棄する意図はないというふうに承知しておりますので安心はいたしておりますけれども、しかし法的にはきわめて不安定な状況にあるということになっているわけでございます。したがいまして政府といたしましても法的安定性観点からこのような状態に置いておくのは好ましくないということで、今回モスクワにおきましても長期的な枠組みをつくるということで話をいたしまして、しかし今回はサケマス漁業手続を話し合う場面であるのでこの枠組みについて話し合いをするのは必ずしも時間が十分ないということでこれは外交ルートで今後話を続けるということになったわけでございます枠組み内容がどうかという具体的なことについては相手方との交渉内容になりますので控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても長期的に安定した協定の形になるか、それは話し合いの結果でござ いますけれども、ある程度の期間を持った協定その他ができることを念頭に置いて交渉を進めていきたいというふうに考えているわけでございます
  17. 松前達郎

    松前達郎君 そうします国内法の問題じゃなくていわゆる協定ですね、この協定の中にそういった内容を盛り込みたいと、こういうふうなことであろうと解釈するのですがそれでよろしいですか。
  18. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 実はこの漁業協力協定を五十三年につくりましたときに、取り締まりであるとかそのような基本的な問題につきましてこれは協定の中において、具体的には漁獲量その他の話し合い議定書で定めるということにしたいということをソ連側に申し入れたわけでございますけれども、当時ソ連側海上漁獲についてこれに原則的に反対であるという立場をとっておりましたのでそのような漁業協力協定自体サケマスが長期的に可能になるような枠組みを入れることになればこれは海上漁獲反対という協定立場を捨てざるを得なくなるので当時は認められないということを言っていたわけでございますけれども、現在日ソとも漁業協力そのものについてはこれは安定的な基礎の上に続けていきたいという意向がございますのでそこの点は話し合いの結果何らかの方式が可能になるのではないかと、このように考えております
  19. 松前達郎

    松前達郎君 そこでこの種の交渉というのが毎年行われているわけですね。最近は特に漁獲量に関してはそう変動はなくて前年の同額漁獲量を踏襲するかっこうになりますけれども、先ほどのいわゆる漁業協力費という部分が毎年上がっていく、この理由は先ほど言われたような理由ソ連側から提示されていてそれをわれわれが認めたというかっこうになるわけなのですが、このような交渉が毎年行われるというのはこれはどうも大変だと思うのですね。しかも豊漁年だとかそういうふうなカーブがいままでの経験上大体わかってきているはずですからそういったデータをもとにしてたとえば二年に一度とか三年に一度とかいうピリオドを延ばすという、そういう作業をこれからやっていった方がいいような気がするのですが、これは恐らく水産庁の方もそうお考えだろうと思いますけれども、こういう交渉は今後可能性がありますか。
  20. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) わが国サケマス漁業者の経営の安定ということを考えてまいりますると総漁獲量なりあるいは先ほどの協力費あるいは操業条件等につきまして長期的なものとしてこれを定めますことは当然望ましいわけでございますし、私どもも毎年毎年交渉を繰り返しておりますのでそのような中期的あるいは長期的な安定的な話し合いの結果が出るということになればこれは望ましいことは論を待たないところでございます。ただソ側は、この五十三年において交渉いたしまして現在の枠組みが決まってきたわけでございますがその際に先方が強く主張しましたのは、沖取りサケマス漁獲というものはこれは原則として禁止するのだという考え方を持っておるわけでございまして、ただわが国サケマス漁業界の経済的な混乱を最小限にするという要請のために、特に零細な漁民に配慮して毎年毎年交渉をした結果漁獲操業条件というものを決めていくのだ、いわば暫定的なものであるという立場をとっているわけでございます。さようなことを考えますると、たとえば漁獲量とかあるいは取り締まりとかあるいは漁獲割り当て量にリンクいたしますところの漁業協力費といったようなものについてはこれはやはり毎年論議をして、また資源状態に即応しながら話し合いをしていかなけりゃならぬということになってしまうのではないかというふうに思います。ただできるだけサケマス漁業についてもこれを安定化するためにその枠組み長期化するということにつきましては私どももぜひこれは確保したいというふうに考えておりまして、二月のカメンツェフ大臣をお呼びしての金子大臣との話し合いにおいてもそのことを提起いたしましたわけでございますし、また先ほど外務省から御答弁がありましたように今回の交渉においてもこの協力協定長期化について努力をした次第でございます。その中における個別の操業条件の問題につきましては、やはり節度ある沖合い漁業であればこれは資源の保存等合理的な利用を図るという観点から継続さるべきであるという論旨のもとに交渉を続けていくということが今後の姿になっていくというふうに考えておる次第であります
  21. 松前達郎

    松前達郎君 沖取りを原則的にソ連側としてはやめるような方向に行きたいということですね。これはやはりサケマスの特性がそういった川から出ていって帰ってくるという回帰性の問題がありますから当然そういう議論も成り立つかもしれませんけれども、その反面やはり増養殖ですね、こういった再生産に関する事業というものを推進していけばある程度それは認められるのじゃなかろうか、こういうふうに私は思うわけですが、これが今後の一つの前向きの姿勢としてこの再生産事業というものを進める、その中でさらに両国協議をしながら協力体制をとっていくというそういう方向に進めれば一番いいのじゃないかと私は思っておるわけなのですが、日本側としても協力体制、これをあらわすために再生産事業に関する研究とかあるいは調査を含めたそういう発展を期待することがあるのじゃないかと思うのです。これについてはやはり日本側だけで行うのじゃなくて、ソビエトもやっていると思いますからこのような事業を含めた、もちろん研究調査も含めてこれらについて今後日ソ間で十分交流を行っていって合意に基づきながら漁獲をしていくというかっこうですね、そういうパターンが一つできてしまいますとあるいは安定化していくのじゃないかというふうに私は思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  22. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 今回の交渉に当たりましても、冒頭で必ずソ側沖取り漁業というのは本来認められるべきものじゃない、しかしながら日本の零細な漁民のことを考えて漁獲割り当て量をことしも与えているのだ、こういう立場を常にとっておるわけでございます。確かにおっしゃられますように、これが共同増養殖といったような形で日ソ双方協力によってサケマス資源増加するということをやりながらそこで沖取り漁獲も安定的に将来推移させるということは非常に重要なポイントであるというふうに私も考えるわけでございます。  そこで、現在日ソ間のサケマスに関する政府間の協力事業といたしましていわゆる日ソ漁業委員会といったような場を通じまして相互に漁獲データ生物データ等の交換を行っておりまして、昨年度は実はサケマス共同乗船調査ということをやろうじゃないかということでソ側もこれに合意をいたしておったわけでございますが、何かソ側事情がございまして残念ながら実現をするに至りませんでした。しかしこのようなことを続けております。また再生産事業に関しましては、北洋サケマス資源の一層の回復を図るというためにはわが国の高い技術を利用するということが適当であるということで、このような高い技術を使いまして日ソ両国協力してふ化増養殖の計画的な推進を図るということが適当であろうということでこのことは常にソ側に申し入れてきたわけでございます。  最近の時点で申しましても、先般金子大臣カメンツェフ漁業大臣とがお会いになりました際に金子大臣から再度ぜひ共同増養殖事業をやろうではないかということを提案いたしたわけでございますが、カメンツェフ大臣からはサケマス増養殖はそれぞれの国別に行うのが適当だという回答をいたしてまいっておりまして、これがいままでのソ側の一貫した考え方でございます。このようなソ連側の態度からその実現にはなお遠いものがある感じがいたしましたけれども、しかし何と申しましても北洋水域においてサケ資源がふえてくるということはお互いにとって有意義なことでございますしまたわれわれの技術を使ってもらうということも非常に重要なことでご ざいますから、このことは今後ともさらに何回か向こうに申し入れて実現を図ってまいりたいというふうに思います。  それから民間ベースでは、大日本水産会サケマス漁業協力事業ということで漁業協力費の大部分を使いましてサケマス人工ふ化施設先方に与えている、供与しているということになっておりますし、またさらにそのふ化施設の効果を高めるためにソ連技術者わが国サケマスふ化場への受け入れといったようなことも民間ベースでやってもらっているという状況であります
  23. 松前達郎

    松前達郎君 私もソ連へ何回か行ったのですがソ連に行ってサケマスを食べたことがないのですけれどもソ連は一体サケマス動物性たん白資源として依存しているのかどうか、この辺どうですか、お感じになったことは。
  24. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 松前先生おいでになってサケマスを召し上がらなかったというのはちょっと私も理由がわからないのでございますが、私ども参りますと必ずサケは食べさせてくれます。大体生に近い燻製のようなもので食べておりましてこれはかなりレストラン等には出ておるようでございまして私どもあちちこちらで食べたことはございます。ただ総体の漁獲量の中ではさほど大きなものではございませんし、また国内消費が中心であろうと思いますからウエートからいったらそれほど高いものとも思いませんけれども、しかしながら今回訪ソをいたしまして交渉をいたしました過程におきまして、ソ側のクドリャフツェフソ連漁業省第一次官が食糧計画ということを申しておりまして、食糧計画の一環の中で実はたん白資源としての漁業に非常に大きなウエートを置いて計画を作成中である、その中の一環としてサケマスの増殖とそれからまたサケマス漁獲量の増大ということも計画の中に入っているのだ、それゆえに自分たちとしてもいろいろな主張をしているのだということを申しておりましたので、先方の食糧計画の中ではかなりの位置を占めているものというふうに説明は受けた次第であります
  25. 松前達郎

    松前達郎君 私自身はサケマスを食べたことないというかどうも淡水魚ばかり食わされまして、余り好きじゃないものですから……。  そこで今度は日本側の実績なのですが、こうやって割り当てが来ますね、漁獲量を割り当てられる、それに対して船団が出てとってくるわけですが、現実に昨年の日本側としての実績というのはこの割り当てを一〇〇%消化したのかどうか、これをお伺いします
  26. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 昨年の漁獲割り当て量は四万二千五百トン、ことしと同じでございましたが、尾数が三千四百五十万尾でございます。これに対する実績でございますが、漁獲実績は四万二千三百六十八トン、それから尾数が三千百二十三万三千尾でございまして、それぞれ漁獲重量で九九・七%、尾数で九〇・五%でございます
  27. 松前達郎

    松前達郎君 そうすると一〇〇%にならないのにはこれはいろんな理由があると思います。とりたいのにそういう制限でとれなかったというのじゃなくてそのほかの理由があると思いますが、どうもことしあたりはサケが大分たくさん出回っていまして北海道あたりへ行ってもどこへ行ってもサケばかり、値段をたたいてだんだん安くなるというような傾向だったのですが、そういうふうな傾向の中でサケの消費の方はこれが案外伸びていないのじゃないかという気もするのですけれどもその辺はいかがでしょうか。
  28. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 五十七年のサケマス類の供給量でございますが、日本漁船が本協定のもとにとってまいります生産量、それから国内で、特に北海道、東北地方を中心にいたしまして人工ふ化増養殖事業をやりましてその結果回帰してまいりますサケを含めまして、いわゆる日本の沿岸でとる量でございますが、沿岸あるいは河川でとる量でございますが、この両方を合わせまして国内生産が約十三万三千トンでございます。これは五十六年に次ぐ非常に高い水準でございましてこれにさらに輸入が実は十万七千トンございます。大部分がアメリカでございますが主としてべニザケを輸入しております。これが大幅に前年を上回りまして実は史上最高でございました。このために全体で二十四万トンという供給量がございまして前年よりやや増加している状況にございます。前年に対して約一一〇%という状況でございます。  需要につきましては、五十七年のサケマス類の家計消費一人当たり年間でございますが、これはほぼ前年並みということで需要の方はさほど伸びていない、したがいましてやや在庫が増になっているというのが現状でございます
  29. 松前達郎

    松前達郎君 大体状況はわかりました。これは毎年毎年行われるわけで大変だと思いますけれども、比較的問題が少なく解決できたということに対して大変御苦労さまでしたと申し上げたいと思います。  それでは次に今度は商船最低基準条約に関してお尋ねしたいのですが、ILO条約との関連で国内法での同等なものがあればいいのだというふうな条項があるわけですね。これについては一体どういうふうな実情なのか、それを簡単にお願いします
  30. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおりこの条約の中の第二条でございますけれども、ILO条約を十五取り上げてございましてこのILO条約とこの条約、ことにILO条約が未締結の場合には、未批准の場合にはこの条約と未締結のILO条約が実質的に同等でなければいけない、こういうふうな規定になっております。これは実は審議の過程では全く一緒でなきゃいけないというようなこともあったわけでございますけれども、いろいろな審議を重ねました結果その内容においてほぼ同等であればいいというふうになりましてこの条約にございますような「実質的に同等」と、こういうふうになったわけでございます。この解釈につきましてはILO事務局自身も次のように申しております。  この条約締結国が諸条約の一般的な目的を尊重することに同意したことを意味するものであって、国内における基準との絶対的な一致は要求していないものと考えておると、こういうふうな説明をILO事務局自身も行っておるわけでございます。そこで私どもいま御審議いただいております条約を考えるに当たりまして、日本国内法と今回御審議いただいております条約とが果たして実質的に同等であるかどうかということを検討したわけでございますけれども、詳細検討の結果、国内法令と未締結条約とは実質的に同等であると、こういうふうな結論を得た次第でございます
  31. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと実質的だという言葉ですね。これで実質的に同じものがあると、同じものが準備されているからそれでいいということですね。
  32. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) そうでございます
  33. 松前達郎

    松前達郎君 それから外国船についてやはり条約に入りますと適用になってくるということですが、本条約の基準に合致していない外国船が入港してくる場合、これらについての取り扱いは一体どういうふうにするのか。
  34. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 外国船に対しますこの条約の適用につきましては条約の第四条に書かれておるわけでございますけれども、この第四条によります外国船の監督につきましては、日本国内法体系といたしましては船員労務官、船舶検査官、こういう人たちがその監督を行うほか海上保安官もこれらの監督業務を行うことができるということになっておるわけでございます
  35. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますとまたここで人手が要るかっこうになりますね。検査官等の数の問題とかそういうので実質的にそういうことができるかどうか。抜き打ち——抜き打ちと言っちゃおかしいですが、抜き取りでやるのかどうか、その辺はどうなのでしょうか。
  36. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) まず船員労務官につきましては、現在全国の主要な港に合計百二十八人が配置されておるわけでございます。本年十月以降、 さらに三名が増員されるということになってございます。  それから船舶検査官につきましては、現在全国に二百四十三人が配置されておるところでございます。この船舶検査官は、従来から外国政府の要請を受けましてSOLAS条約に基づきます外国船に対します条約証書の発給にかかわる検査を実施しておるところでございまして、今回の条約批准に伴います外国船の監督業務につきましても十分に対応できるものと考えておるところでございます。  また船舶の監督業務に当たることができます海上保安官は、現在全国で五千八百三十六人おるところでございます。このような体制で運輸省としましては対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。監督業務の件等につきましては、今後とも体制の充実強化に努め遺漏なきを期していきたいというふうに考えておるところでございます
  37. 松前達郎

    松前達郎君 人数的に言いますといまの計画を多少増加さしてそれでもって十分対応できるというふうに伺ったわけなのですが、さてそこで不適当な場合ですね、その結果として「安全又は健康にとって明らかに危険な船内における条件を是正するための必要な措置」とかそういうふうな項目があるわけなのですが、この不適当な場合の処置というのは一体具体的にどういうふうにやればいいのですか。
  38. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) この条約の第四条によりますれば、入港国は外国船舶に対しまして「安全又は健康にとって明らかに危険な船内における条件を是正するための必要な措置をとることができる。」というふうにされておるところでございますわが国といたしましてもこのような場合には船員法あるいは船舶職員法あるいは船舶安全法によりまして所要の改善通告を行うとともに、必要な場合には航行の停止をも命ずることができるということとされておるところでございます
  39. 松前達郎

    松前達郎君 航行の停止というのは改善するまで出港を認めないとかそういうことですね。
  40. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) さようでございます
  41. 松前達郎

    松前達郎君 わかりました。  それでは次に船舶汚染防止条約に関連してお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に、船舶等の設備あるいは構造についての条件が提示されているわけなのですが、これについて国内法との関係というのは一体整合性があるのかどうか、その辺をまずお伺いしたい。
  42. 石井和也

    説明員(石井和也君) 議定書におきましては油による汚染防止関連の構造、設備、有害液体物質による汚染防止関連の構造、設備、それから汚水による汚染防止関連の設備の設置が義務づけられております。本議定書締結に当たりまして、国内におきましては海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律並びにその関係政省令を改正することによりまして議定書の規定をすべて取り入れることにしております。すなわち、現行の海防法におきます構造、設備面の規定はビルジ排出防止装置の設置のみでありますけれども条約の批准に伴いまして構造、設備に関する規制の大幅な強化、それからそれを担保するために新たに検査制度を導入することとしております
  43. 松前達郎

    松前達郎君 ではそういう国内法との関連というのは十分検討されていてそれで大丈夫だということになりますね。
  44. 石井和也

    説明員(石井和也君) そのとおりでございます
  45. 松前達郎

    松前達郎君 そこでまたこれも違反船舶に対する処置の問題なのですが、これもやはり船舶が違反したと認められる場合には入港拒否をするということもあり得るわけですね。
  46. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) この議定書は、実は一九七三年のいわゆる海洋汚染防止条約の追加修正された限度において全部取り入れているわけでございますけれども、七三年の条約の第五条にその規定がございまして、外国の船舶に対してはこの条約に適合していないというような場合にはその入港を拒否することができる。ただしかしながらその条件一つございまして、その際にはその違反しておると思われる船の旗国であります領事官なりあるいは外交官にこの入港を拒否するということを速やかに通報するということが条件になっておりますけれども、そういったようなことを条件にして入港を拒否することができると、こういうふうになっております
  47. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと未加盟国ですね、加盟していない国の船舶の場合も全く同様に入港拒否を通告することができるということですか。
  48. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先ほど引用申し上げました第五条の最後にその規定がございまして、締約国と非締約国の間の差異をつけてはいけないというような規定がございます。したがいまして、まだこの条約に加盟していない国につきましても加盟国と同様の措置をとることができることになっております
  49. 松前達郎

    松前達郎君 そうですか。  それからたしか廃棄というか、船から海に放出してはいけないといういろんな物質ですね、これが表になってやたらに出ていたと思うのですが、これも私が見る限りまだ全部包含されていないような気もするわけですがこれはこれとして、最近、放射性物質あるいは放射性廃棄物あるいは放射性を帯びた海水、こういったようものが大分問題になってきているわけですね。これはたとえば科学技術庁あたりがやろうとしているドラム缶に詰めたのかガラス固化したのか知りませんが、海洋投棄ですね。これについてもロンドン条約でいろいろと決められたものにのっとってやっているということですけれども、しかし実際には南洋諸島からの反対があったということがありますがこういった放射性物質等ですね、あるいは放射性を帯びた海水等についてはこういう規制の対象外になっているような気がするのですがこういうものについては論議されたことがないのでしょうかね。
  50. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 私は二点に分けましてお答え申し上げたいと思うわけでございますけれども、まず第一点の、実はこの議定書自身は、船が普通の運航から生ずるいわゆる油であるとかあるいは汚物であるとかそういったものの廃棄なり流出、排出を目的にしておりますわけで、ロンドン条約の場合には「投棄」という言葉を使っておりますけれども、これはもう捨てることを目的にして物を持っていくと。こういうふうに実は投棄と廃棄と二つに、排出という概念を二つに分けてあるわけでございます。この議定書は投棄ではないいわゆる通常の船の運航から生じます自然的と申しますかそういったような排出をこれを対象としているわけでございます。  そこでこの議定書の規制対象が何であるかということでございますけれども、先生御指摘のとおりまず一つは油、これは重質油も軽質油もすべての油でございます。それから第二にこれは有害液体物質という言葉になっておりますが、この中心はケミカルでありまして、このケミカルが二つにこの議定書上は分かれておりまして、一つはバラ積みのいわゆる有害液体物質ともう一つは梱包した有害液体物質とそれが大きくわけて二つ目でございます。三つ目が汚水。これは屎尿等が中心になると思いますけれども汚水。それから四つ目がいわゆる廃物、これは主として食物のくずとかそういったものであるわけでございますけれどもこの四つに分かれておるわけでございます。  そこで御指摘の放射性物質でございますけれども、これは先生いま御指摘のとおりこの議定書の規制対象には入っていないというふうに思われます。と思われるというよりかは、この議定書の審議過程を見ましても、先生御承知のとおり放射性物質につきましては何分にも一番知識と経験を持っております国際機関というのはIAEAであるわけでございますけれども、この七三年の条約の審議のときにはIAEAの代表がオブザーバーとして出席していたわけでございますけれども、御審議いただいております七八年の議定書のときにはオブザーバーとしてもIAEAの代表が参加していないわけでございます。そういうふうなとこ ろからも判断されますように放射性物質あるいは放射性を帯びた海水等々はこの議定書の対象にはなっていないと、こういうことでございます
  51. 松前達郎

    松前達郎君 これは確かにおっしゃるとおりだと思いますけれども、投棄の問題はちょっとこれとはまた全然性格が違いますけれども、いまわが国がやろうとしている原子力船ですね、これもいつになったらできるのかわかりませんがこういうものがやはり廃水を出しますのでそういったようなものも恐らく将来は問題になってくるのじゃないか。しかしその中で一番大きいのは軍用の艦船ですね、原子力推進のものなのですが、これはすべて条約というと国際条約は軍隊をみんな除いてあるのですね。ところがそれがまた巨大な船を持ってくるわけですからそういったような問題も今後の問題として残っているのじゃないかと思うのですがこれはこれとしまして、最後に便宜置籍船の船員の問題なのですが、これはパナマとかリベリアという例が挙がっていますが船員の労働条件に関しての責任を一体実質的にどこがとるのかということですね。船の所有者がとるのかあるいは使用者がとるのか。船を使用している者がとるのかあるいは在籍国がとるのか船長がとるのか、その辺は一体どういうふうになっておるのでしょうか。
  52. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) ILOの百四十七号条約に掲げられております附属条約の中で労働条件にかかわります条約を見てまいりますと、原則といたしましていわゆる旗国主義という主義をとっておるわけでございます。旗国主義と申しますのは、当該船舶が登録をしておりますその国が立法なりあるいはその監督なりの規制措置を当該船舶に及ぼすという形になっておるわけでございます。  わが国関係について申し上げますと、この労働条件は船員法という法律で定められておるわけでございますけれども、やはり旗国主義を採用しております関係上、便宜置籍船につきましてはこれは外国籍船でございますので船員法の適用はないというふうになっておるところでございます
  53. 松前達郎

    松前達郎君 ところが実際は便宜置籍船というのは船籍だけを他国の船籍をかりるということですね、所有者は違うわけですね。ですから運航する主目的というのは、利益をどこへもたらすかというと所有者のところへもたらすようなかっこうで行われているわけですから、どうもその辺が何か責任逃れのような感じがしてしょうがないんですけれどもその辺はどうですか。
  54. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) これは条約上のたてまえでございますけれども、旗国主義といいますのは当該国が登録を受けておるというその国のコントロール、立法なり監督なりをその船に及ぼすということで、世界的にそういうことをやっていこうではないかという体系の問題でございますので、これはそういうやり方をとっておるというふうに私どもは理解しておるところでございます
  55. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますとたとえばパナマとかリベリア、例が挙がっているそういう国に置籍をしている船についてはそのパナマもしくはリベリアが責任を持つということですね。
  56. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 条約の体系上から申し上げれば原則としてそのような形になるのではないかと推測されます
  57. 松前達郎

    松前達郎君 その辺が、何かアクシデントがあったりしますと大概そういうところが問題になってくるのじゃないかと思うのですが、これはまた条約そのものの問題ですからこれが今後もっとはっきりできるような条約を結ぶ段階あるいは条約をつくる段階ではっきりしてもらった方がいいような気がするわけなのです。これは現時点ではそういうふうになっているということですね。  それでは一応船舶汚染防止に関してはそれだけにしまして、その次にこれは外務大臣にお伺いしたいのですが、今度ASEAN諸国の歴訪をされるわけですね。これに関して外務大臣としてのその主なる目的、重点ですね、一体どういうところに重点を置いて歴訪されてくるのか、これについてちょっとお考えをお伺いしたいのですが。
  58. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ASEAN諸国はわが国の隣国でありますし長い間の伝統的、歴史的な深い関係があります。同時にまた日本もアジアの一国ということでありますしこれまでも外交政策としてはASEAN重視という外交政策をとってきたわけでございますが、今回の総理大臣の訪問もこれをまさに明確に打ち出すというところにあるわけでありまして、やはり第一には首脳間の信頼関係を確立していくということではないだろうかと思うわけでございます。同時にまたASEANとの間のこれまでの経済協力関係が相当緊密に進んでおるわけでありまして、ずっと続けてまいりましたこの経済協力関係をさらに今後にわたって明確にしていくということも大きな今回の訪問の意義であろうと思います。同時にまたこれから後のASEANと日本との関係を考えますとやはりますます関係というのは深くなっていくわけでございますので、これから将来にわたっての文化交流であるとかあるいは青少年の交流であるとか、ただ単に経済関係だけでなくてもっと幅の広い交流関係を確立していくということも大事なことであろうと思うわけであります。同時にまた日本に対していろいろとASEAN諸国からも誤解が出ております。たとえば外交政策についても、あるいはまた特に防衛政策等につきましても日本の防衛政策が変わったのじゃないか、軍事大国になるのじゃないかというふうな一部で懸念も出ておるわけでありますから、今回の訪問を通じまして日本が平和外交を堅持していくのだと、同時に防衛政策についてもこれまでのいわゆる専守防衛そして他国には脅威を与えない、軍事大国にはならない、こういう日本の基本的な立場というものをASEANの政府のみならず国民の皆様にも十分知っていただくということも大事な訪問の意義になる、こういうふうに私は理解をいたしております
  59. 松前達郎

    松前達郎君 いま軍事大国にならないということで理解を求めてくるとおっしゃったわけですが、最近アジアにおける核戦略、これが大分問題になってきているわけですが、この点については何かお話し合いされるつもりですか。
  60. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アジアにおける核の問題ですか。——これは日本自体は御承知のような非核三原則というのを持っておるわけですし日本自体が核戦略の一環に組み込まれておるわけでもないわけでありますから、私はこれまでの日本の防衛、外交の基本政策というものをお伝えする、そして日米安保条約というのがありますけれどもあくまても日本の防衛のためのいわゆる安保条約であって他国に対して何らの脅威を与えるものてはないということを明確に説明をすべきであろう、こういうふうに思います。なお、日本の防衛費等が増大をしておる、こういう懸念もあくまで日本自体の防衛のための最小限度のものであってまた日本の防衛原則というものをはみ出したものではないということもこれまたお伝えをする。要するにASEAN諸国に対しては軍事大国にならないし、そして日本とアメリカとは安保条約を通じて軍事的にはつながりがあるわけでありますが、その他の諸国に対しては何らの軍事的な関係は持たないということも日本立場として明快に打ち出す必要もあろう、私はそういうふうに思います
  61. 松前達郎

    松前達郎君 それでは最後に、前の委員会でも申し上げたと思うのですが経済交流、経済援助等でいろいろとASEANとの交流を援助その他をしながらやっていくというのもこれも一つのやり方だと思いますが、基本的な問題としてやはり教育交流、教育援助というものが行われていいのじゃないかと思います。ASEANの国から若い人を呼んで日本へ半年間招待をする、これもいいかもしれませんがそれはそれとして、その地域の国、当該国の教育そのもののレベルを上げていくということですね。こういう教育交流あるいは教育援助等については今回何かお話し合いなされるつもりがありますか。あるいはまた大臣としてはどういうふうにお考えでしょうか、それを最後にお伺いします
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いわゆる教育援助、ASEANの教育文化の向上に当たって日本協力をしていくということは日本のやっぱり役割りの一つであろうと思うわけですが、これについてはこれまでも経済協力の中でいろいろと具体的にも進めてきておるわけでございますが、こうした面での協力といいますかこれは今後のASEANの関係を考えますと非常に大事になってくる。ただ経済一辺倒、経済のみといいますか何かそうした物にとらわれた援助というだけじゃなくて教育援助ということになれば心のつながりといいますかそういうことにもこれから広がっていくわけでございますので、そうした心と心のつながりというものを広げていく意味における教育の援助、あるいはまたASEANの諸国との間の青少年の交流といったものも今回の首脳の会談等においてもあるいはまた訪問等におきましてもいろいろと話も出てくると思いますし、われわれはこれに対しては積極的な姿勢をもって取り組んでまいりたい、こういうふうに思います
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 条約案件に入ります前に一、二安倍さんにお伺いをしたいと思います。  初めに、唐突でなじまない当委員会としての質問かもしれませんけれども、まあ統一地方選挙が終わりました、マスコミ等も挙げて同日選挙というようなことがしきりにささやかれているわけであります。ところが一方、外交日程も大変厳しいそういう背景があるわけです。いままで福田派に属する安倍さんとしても非常に強い同日選挙の反対を打ち出されてきたように認識を実はしております。さてそこで情勢がだんだんそういうふうに煮詰まってきます。福田派としてもやむを得ないという判断に立って同時に踏み切られるのか、福田派に属する議員の立場と閣僚というお立場がございましょうからなかなか言いにくい問題かもしれません。その点を福田派の重鎮でいらっしゃる安倍さんとしてはどんな判断を持っていらっしゃいますか。しかも今度は総理と御一緒になるわけですから十分またその話し合いなんかもなされるのじゃないかなと、まあ憶測かもしれませんけれども
  64. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) なかなか答弁のむずかしい御質問でございますが、われわれ衆議院議員というのは四年の任期を与えられておるわけでありますし、ですから解散というふうなことは大義名分がなければ行われる必要はないしそれだけやはり政治空白ができるわけですから行うべきでもないと思います。先進国等の例を見ましても大体任期いっぱい、いつも日本だけが急いで選挙をしておる、大体戦後二年半ぐらいに一回は解散をやっておる、こういうふうなことになっておりますが、私はやはりせっかく四年間の任期を国民から委任を受けておるわけでありますし同時にいまは政局も比較的安定している、与党もいわば多数を衆参両院において確保しているということでありますし、同時にまたいまお話しのように内外ともにむずかしい事態で国内においてもいろいろと懸案を抱えておりますし、また外交日程等におきましてもASEAN諸国に対する訪問であるとかあるいはまた帰りまして引き続いてサミットもあるわけでございます。その他いろいろと今後の複雑な厳しい国際情勢の中で日本が対応していかなきゃならない問題というのも幾多山積をいたしております。ですからそういう状況の中で何も急いで解散をする必要はないのじゃないか、むしろ内外の問題を解決するというのが先決じゃないかというのが私の基本的な考えでありますが、何といいましても解散権というのは総理大臣にあるわけでございますしこの点は総理大臣の判断が最後にこれを決めるわけでありますが、私は政治家といたしましては大義名分という問題が大事であるしそう急いでいま解散をすべき事情があるのかどうかということについてはいささか疑問を持っておる、こういうことであります
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 非常に含みのあるいまの御答弁であったという感じがするわけですね、なかなか言いにくいことをそこまでおっしゃるわけでありますから。筋論としてはおっしゃるとおりだと僕は思うのです。ただ大義名分が整うというのはどういう状況を大義名分が整うとするのか。あるいは環境ができ上がった、確かに解散権は総理がお持ちでしょうけれどもしかしそういう解散権行使までのいろんな状況というものの変化が当然出てくるわけでありましょうし、いまいろんなことが想定されております。これはあえて申し上げません。しかし機が熟せばこれはやむなしと。それは確かにサミットがあります。二十七日にはレーガン大統領との首脳会談が予定されている。物理的にいろいろ計算してみましてもできないということは考えられない。やろうとすればできる。しかし筋論としては確かにいまおっしゃるとおりだと思うのですけれども、重ねてですが情勢によっては解散も、いままで福田派としては従来から一貫して内外の諸情勢に対応するという姿勢を貫いてこられたけれどもやむを得ないというふうになる場合もあるというお考えになっていらっしゃるかどうか。
  66. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私が申し上げましたのは、解散権はこれは総理大臣にあるわけでございますから総理大臣が最後に決定をするわけでありますが、しかし今日の情勢、これからどういうふうになっていくかわかりませんが、しかしいまの状況から見まして解散を急ぐ必要は全くないと、こういうふうに私は考えております
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 解散の問題はこの程度にしておきましょう、余り生臭過ぎますから。  総理並びに外務大臣としての外交日程がこのところメジロ押しで大変御苦労だと思うのです。ASEAN訪問もそうでございましょうしまた帰られてから二週間後にはサミットへ出発をされる。きわめてあわただしいこういう情勢でありますけれども日本にとっては一つの大きなチャンスがやはりめぐり来ったという印象を私は受けるわけであります。特にレーガン大統領との会談、これはどのくらいの時間帯の中で行われるのかわかりませんけれども、そしてまたヨーロッパ首脳とも会えるチャンスがある。先般来から当委員会でもしばしば問題になっております特に核軍縮の問題を中心とした課題というものは依然として米ソ平行線をたどったままである。先日の委員会におきましてもできるだけ日本としては西欧諸国と足並みをそろえてと。ただ客観情勢が全くヨーロッパと日本の場合は違う。その足並みをそろえさせるということが非常にやっぱりある一面においては困難な面かもしれませんけれども、しかし足並みをそろえなければ新しい一つの道を開くための取り組みというものができないのではないだろうかというふうに感じられるわけであります。もうすでに総理御自身にもまた安倍さん御自身にも、今度訪米された場合にはこれとこれについては極力誠意を尽くして話し合うという一応の青写真というものがすでにでき上がっておられるはずだと私は思うのです。それからASEAN訪問を終えてからのいろんな成果について、それももちろんレーガン大統領との話し合いの中で述べられる場合も出てくるでありましょう。その点について核軍縮を軸にして当然いろんな話の展開というものがございましょう、貿易摩擦の問題もありましょうしその辺はどんなふうに——いまこれとこれだけは何としてもこの機会に言っておきたいということがございましたならばおっしゃっていただければありがたいと思います
  68. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日米の首脳会談が行われると思いますし、どういう問題が論議されるかこれは総理大臣の御判断にもよるわけでありますが、いま二国間の問題はいろいろとあるわけですがこれは別にして世界情勢を見るとき、やはり一番大事な問題というのはいまお話しのような核軍縮の問題、特に当面われわれが直面しているINFの交渉の問題、さらにSTARTの交渉の問題、そういう問題だろうと思います。もしこうしたINF交渉、START等が失敗をすれば世界まとどめのつかないような軍拡の時代にまた入っていくかもしれない、こういうような危機感を私は非常に持っておるわけでありまして、したがってこの際は西側が結束をして特にアメリカがソ連との間で粘り強くこのINF交渉の妥結に向かって努力をしてもらわなきゃならぬ、こういうふう に思うわけでございます。特にその交渉を進めるに当たりましては、日本主張しさらにアメリカがもちろん十分踏まえて主張されておりますグローバルな立場で、いわば全世界的といいますか全地球的というような立場でこの交渉はまとめられるべきである、こういうふうに思うわけであります。しかし何といっても相手が相手でございますからなかなかこの交渉も困難な面はあると思いますけれども、しかしソ連といえども、われわれのいろいろと感触を得たところでは軍縮に対しては決して後ろ向きではない、ソ連経済も相当悪くなっておりますから核軍縮の方向では何とか合意を見たいという気持ちは十分持っておると私は判断しておりますのでちょうどいいチャンスでありますし、日本は何といいましてもああした核の洗礼を受けたわけてありますから、そういう中で日米会談あるいはまたヨーロッパ諸国との会談を通じましてことしの最大な課題であるところのINF交渉を成功さしてそして世界全体が核軍縮の方向へ向かっていくと。そしてその余力をいま非常に不況の状況にあります世界経済の回復のためにむしろ用いるべきである、そういう方向日本は積極的な努力を傾けるべきじゃないか、私はそういうふうに思います
  69. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃるとおりだと思いますが、ただ、いまわれわれが願う方向とはなかなかそぐわない方向へ行きつつある。  きょうあたりの報道によりましても、アンドロポフが改めてレーガンのINFについての暫定提案を拒否すると。一方今度またアメリカではMXの新しい開発を進めようとする。依然として平行線がこれからも続くであろうという危惧感が増幅しているわけですね。一体どうすればいいのかということは幾ら知恵をしぼってみてもわれわれとしてはなかなか考えも及ばない。いままさに安倍さんがおっしゃったとおりだと思うのです。願うことならば早い時期にレーガンとアンドロポフが会えるようなそういうきっかけが何とかできないものかという、またそういう意欲をぜひ持ってもらいたいという提言を再びこの機会に強力に提唱していただければなあと、これは私の一つの願望を込めてせっかくいらっしゃるのですから申し上げたいと思うのでありますけれども、これも相手の事情もありましょうしそう簡単にはいかないにしてもやはりその積極姿勢というものは継続的にこれから貫いてもらいたい。できるだけ早い機会に米ソ首脳というものが会談を通じて核軍縮を中心とした話し合いに応ずべきではないかという点について、今回訪米された際、特に首脳会談の際にそういうお考えを持っておるかどうか、どうでしょうか。
  70. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもちろん中曽根総理の判断にもよるわけでありますが、いまの世界の現状から見て米ソの最高首脳が会うということは非常に大事なことだと私は思います。ただそこに至るまでの段階というのはいろいろあると思いますし、この点はやっぱり今日の米ソの関係からして一挙に実現できるかどうか客観的にいろいろと問題はあるわけでございますが、しかしそうした対話というようなものを通じましていまの局面打開ということにも一つ方向が出る可能性もあるわけですから、お互いに突っ張り合っただけでは世界の平和は実現しないわけですしこのままずるずるいけば非常に悪い結果が生まれる可能性もあるわけでございますから、どこかに打開点を求めていかなければならぬと。いまおっしゃるような案も世界が求めておる一つの案だろうと思いますけれども果たして実現ができるかどうかそれは両国の首脳の考えによるわけでありますが、これを提唱するかどうかということはもちろんこれは中曽根総理の判断にもまたなければならないと、こういうふうに思います
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう一つは、サミットの際に議題になるかどうかわかりませんけれども南北サミットの開催の件ですね。すでに外務省にはガンジー首相からもそういう要請があるということを伺っております。南としては切実なやはり一つの考えであろうというふうに思うわけです。恐らくカンクン以来絶えて久しく開かれていないという状況でありますので、やはり南北問題解消というのは世界平和につながるとだれしも心ある人が共通して認めるところでありましょうし、一方においては先進諸国のサミットも必要でございますとともにやはり一方においては南北サミットもあるいは時に応じて開催をする、そしてその南北サミットにおける会合の中で、大まかに申し上げれば南北の格差というものをどう一体是正する必要があるか。これは積極的にやっぱり日本としても取り組む必要のある問題ではなかろうかというふうに思うのですが、これは日本からむしろ提案としてお出しになる用意があるかどうか、この点について安倍さんとしてはどんなふうにお考えになっていましょうか。
  72. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今度のサミットでは恐らく南北問題というのは一つ議題に十分なり得ると私は思うわけであります。先般ニューデリーで開かれました非同盟諸国の会議におきましても、いろいろといま南の直面している経済の困難な状況につきまして議論が闘わされましていかにこの南の苦況を脱却していくかということについての建設的な提案も行われたわけでございます。また世界経済の活力を回復していくということはまずやはり先進国が回復していくということが最も大事でありましょうが、同時にまたそれとともに南北間の問題、特に開発途上国に対する協力問題というのも大きなこれからの世界経済を考えるときの先進国の役割りでもあるわけであります。御承知のようにいま債務累積国もどんどんふえてきておるという状況でありますしいろいろな面でむずかしい事態が開発途上国には起こっておるわけでございますから、これはサミットでこの南北問題は取り上げざるを得ないと思いますしまた日本は特にそういう中にあって国際責任の一つとしての経済協力、特に開発途上国に対する協力というのは日本の責任としても強く求められると、私はそういうふうに思いますしまたそれはそれなりに日本は覚悟して臨む必要があると存じます。  さらにまた南といいますか非同盟会議あるいはまた開発途上国の立場においてもガンジー首相が、いまお話のようにこれは大体国連総会のときでもいわゆる世界の首脳の会議を開きたいと、これは恐らく南北の首脳会談ということであろうと思いますがそういう要請も来ております。いま外務省といたしましても真剣にこの問題は検討をいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても南北問題、特に開発途上国に対する経済協力の問題あるいは財政援助の問題、これは私は今後の先進国の役割りとして大きな問題であろうと、役割りとして果たさなければならない課題であろうと、こういうふうに考えております
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま申し上げておることを骨格として従来から日本として果たさなければならない役割り、そういう前提に立ってサミットが成功裏にといいますか実効あるそういう方向へぜひ向いていくようにむしろ日本としては時には勇断を持って提言をしなければならぬ場合も当然あろうかと思いますので、特に核軍縮、南北サミットの問題あるいは米ソ首脳会談というものをぜひ提言をしながらそういう方向へむしろ日本が道を開くような役割りをぜひ果たしていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。  では少々条約案件に移らしていただきたいと思います、あと幾らも時間がありませんけれども。  船舶による汚染防止、これは内容を見ますと全くこのとおりなのですよね。特にどうということはないわけ。むしろ日本が今後海洋汚染というものについて積極的にやはり取り組むというその姿勢の方が問われるということの問題ではなかろうかと思います。先ほども遠藤さんから投棄と廃棄の問題についていろいろと御説明がありましたが、今回の場合は廃棄なのですね、船からの廃棄。そうあってほしいと思います。海洋が汚濁されていけば漁族保護の上からも影響が出てきましょうしさまざまな問題というものが将来においても残される。ただ最近は、先ほどの話じゃございませ んが船舶による重質油、軽質油、ケミカル等々あるいは生活汚水というものを含みますと大変汚濁されはしまいかという将来に向かっての危険がやっぱり考えられる。これはぜひその方向に立ってやらねばならない。世界がやらなければならない。それは締約国、締約国でないにかかわらずこういう一つのルールができた以上はそういう方向でやるべきであろう。そこでついででございますので、特にこれは直接船に関係する問題じゃありませんけれども投棄の問題、これは日本としてやっぱり避けて通れない問題ですから、先ほども若干同僚議員が触れられました特に放射性汚染についての問題、これは日本として頭の痛い問題なのですよね。原発から出る廃棄物というのは昭和六十年にはたしか百六十万本ですか、二十一世紀に入ると百八十万本、恐らく二百万本を超えるのではないかというそういう事態が予想される。こんな狭い日本列島にそんな数量を土の中に埋めるというのはもう技術的にも不可能であろうと。どうしても海洋投棄というものが考えられる。そこでねらい定められたところが南洋諸島ということでありました。いまでもその方針は変わってないと思いますけれども。今回ロンドン条約の第七回締約国会議ですかにおいてこの問題が一応議論の対象になった。その経緯について概括的で結構ですから、もう時間がありませんから御説明いただきたい。ポイントだけで結構です、ここがポイントであったと。
  74. 岡崎俊雄

    説明員(岡崎俊雄君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、原子力発電所等で発生します特に低レベルの放射性廃棄物の海洋投棄に関しましては、ロンドン条約の規定に従いまして国際的な非常に厳しい安全管理のもとに海洋投棄が実施し得ると、こういうことになっておるわけでございます。  先般このロンドン条約上認められておりますいわゆる条約の運用を検討いたします締約国協議会議というのがございますが、この第七回会議が先般開かれたわけでございます。この第七回締約国会議に初めて放射性廃棄物の海洋投棄の問題が議論されたわけでございますが、特に太平洋の島嶼国家でございますキリバスとナウルという国からレベルのいかんにかかわらず放射性廃棄物の海洋投棄は全面禁止すべきである、こういう条約の修正提案がなされ、またこれを契機といたしまして、即時全面禁止とは行き過ぎであろうということで北欧五カ国から一九九〇年以降は全面禁止に移るけれどもそれまでの間は現状のまま凍結しようじゃないか、こういう提案がなされた。あるいはこういった動きに対しまして現在投棄をしております国を代表しましてイギリスが、いまの厳しい国際管理のもとならば十分安全に実施し得るという対抗決議案を出したとかいろんな提案が出されたわけでございますが、審議の結果とりあえずキリバスとナウルあるいは北欧五カ国とも投棄を禁止するという条約改正そのものの提案は取り下げられたわけでございます。この主な理由は、この条約にもはっきり記されてございますけれども条約の改正そのものは科学的あるいは技術的な検討に基づいて行わなければならないとはっきり書いてございますが、今回の提案は一つのペーパは出されたわけでございますが十分検討はなされていない、こういう大方の指摘もございまして一応この条約の改正そのものの提案は取り下げられた。ただしそういったペーパーが出されておりますしいろんな国から海洋投棄に関する安全性についての懸念が表明されておるわけでございますので、こういった点からとりあえず科学的な検討をやろうではないかということが決まったわけでございます。なおその後スペインから、この科学的な検討を行っている間は少なくとも現在行っているような海洋投棄は一時停止しようと、こういうことを内容とする決議案が出されましてこの決議案が賛成多数によって一応採択された、こういう結果に終わったわけでございます
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この一時停止の期間が切れるというのはわずかな期間の措置でありますので早急にやはり日本政府としてもその対応というものを考えていかなきゃならぬ。  従来から原発設置については言うまでもなく地域住民の納得がなかなか得られない。それでスケジュールが大幅に狂っちゃうというような問題がいままでずっと繰り返し行われてまいりましたね、日本国内においても。最近は若干島根原発あたりがさま変わりをしまして公開ヒヤリングに応じるというような、それにまたいろんな方々がその公開ヒヤリングに応じるという画期的な一つの変革があることは事実でしょうけれども、しかしまだまだ全般的に言ってそういう安全性についての不安感というものが全く除去されていないわけですね。一方は専門家、それは専門的な立場からいろんなデータを集めて分析もし、後外国との比較の上においてもう絶対大丈夫である、絶対ということは科学者は言いませんのでまあ九九%は大丈夫であると。そこまでいけばまずまず安全については保障ができるであろうと。しかし一般の人の受け方というのは違うのですね、感覚的に物を判断いたしますから。その辺の格差というものは、国内ですら、非常に知的レベルの高い日本人ですらそうなのですから、ほかの国のことを指して言うわけじゃありませんけれども、全くそういうような危険がないということに対する認識の乏しいそういう方々に対して非常に私はこれからも問題があるのではないのかなあという、ナウルやキリバスもそうでしょうけれども、南洋諸島なんかについては日本に対しても要請があったわけでしょう、過去において。どうか南太平洋においてはいま日本政府が計画をしている低レベルの放射性廃棄物のものは捨ててもらっちゃ困るというような問題がまだ解消されないままに現在に至っている。それから、これが解消されないからということでただいつまでも腕をこまねいていたのでは、その時期に至って、一時停止の時期を過ぎても何ら説得力をもって相手を説得できないということになりますとまた混乱が起きる。日本にとっても大変な負担がかかってくるわけです、それはどこかに廃棄しなくちゃならぬわけですから。その辺の計画なりそういう国々に対する説得というものは十分いま用意されておりますか。
  76. 岡崎俊雄

    説明員(岡崎俊雄君) お答え申し上げます。  まさに原子力発電を進める上に当たりまして放射性廃棄物の問題は避けて通れない問題でございます。もちろんわが国の原子力委員会も陸地処分と海洋処分を並行して何とか道を開きたいということで努力いたしておるわけでございます。その海洋処分につきましても、もちろん安全性あるいは環境の保護という問題を重点に考えておりまして、この計画をつくるときに当たりましては所要の調査研究あるいは安全評価というものを十分にやった上でこれならば安全に実施し得るという確信を持っていま計画を進めておるところでございます。  他方、今回のロンドン条約の締約国会議におきまして科学的な検討の場がより国際的なあるいは広い範囲で開かれるということになったわけでございますので、わが国といたしましても積極的にこれに参加協力し、より幅の広いあるいはより客観的な安全性に対する信頼を得られるようにわが国も最大限の努力をいたしてまいるつもりでございます。幸い今回の提案がキリバス、ナウルという太平洋諸国の提案を契機にして生まれたわけでございますし、一つ観点からいきますと共通の土俵の場ができたということも言えるわけでございますので、こういった場に積極的に参加協力しあるいはあらゆる機会をとらえて説明なりあるいは安全性に対する理解を得る努力をさらに今後とも続けてまいりたい、こう考えておるわけでございます
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これは短い時間で結論を得るということは大変きょうの場合でも困難でございましょうけれども、最近ASEAN諸国なんかでも、特にフィリピンあたりでも原発計画をしていまそれを建造推進中である。そういったことが今後ASEAN地域の国々に逐次やっぱり原発計画が考えられそれを推進する、実現方向へ向かって推 進するということになりますとまたぞろ今度はアジア一帯においてそういう問題が表面化してくる。そうすると原発の先輩格である日本としては、いろんな経験豊富なデータを駆使しながら汚染防止ということについてあるいは危険がない、全く安全であるというそういうもっと幅の広い理解を今度与えていかなければならない、そういう時代が必ずやってくるに違いないであろうと。いまのところはナウルとかキリバスとかいわゆる南太平洋に散在する国々が目の色を変えてとにかくやめてくれとこう言うわけです。それはいままでもあそこでフランスあたりがいわゆる核実験をやったというそういうようなことからもそういう背景があるということがあるわけですし、そういう点についても総合的に核実験の停止を含めた日本としてこれとこれとこれだけは世界各国に呼びかけてぜひ遵守しなければならないということが一つと、それからもう一つは、いま申し上げておりますように安全性については全く心配ないのだということの説得をあるいは二国間においてあるいはそういう会議の場において十分なし得るような対応をぜひこれからもやっていただきたいということの要望を込めまして、もう答えは要りません。私の質問を終わります
  78. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私は日ソサケマス交渉のことにつきまして要点だけ申し上げて、それに対する一つずつ答えをしていただけばいいような要領で進めていきたいと思います。  最初に先ほど同僚議員からも話がありましたけれども日ソサケマス交渉の今度は実務的な交渉のパターンに定着したように、実質的には十日間で妥結点に達したということにつきましては、関係の方々大変まことに御苦労さまでございました。  この実務交渉のパターンが決まったということから考えまして、何とかこの漁業協定長期安定化を図るための交渉を持続していくべきじゃないかということなのでありますが、先ほどもお話がありましたが再生産事業の問題も出ました。それから御答弁の中には、ソ連沖取りを禁止して零細な漁民のためにこれをやっているのだというその中身のことはもう承知しているわけでありますが、北洋サケマス資源の飼育だとか習性とか回遊等の科学的な分析の調査は十分これはしてあるわけでありますので、幸いに日ソ漁業委員会、これも項目を四つぐらい挙げてお話をしていこうとしたところが発足はしなかったということも私承知しておりますが、この点なんかを取り上げまして重ねて実務交渉の範囲内で長期化していくのだということをもう一度伺っておきたいと思います。  それから今回のソ連の要求点の主なるものを考えてみますと、第一点は違反漁船の取り締りであり、第二点は漁業協力費の上積み問題であると私は思うわけでありますが、悪質な違反船操業取り締まりについてはソ連側は小型の違反は依然多いと見ておるようであります。小型船は期間中二度も越境操業が摘発されたりまた中型船は一昨年は六十件でございましたが今回は二十件もの一部の違反操業があって、中には船名を隠して越境する悪質な違反もあったと。違反操業漁船の取り締まり強化については私は昨年も、この違反がなければ監督者を同乗させることもないようなことで厳重に注意を喚起し指摘しておいたわけでありますが、こうした悪質なケースがなければ今回の交渉の妥結ももっともっとスムーズにいったのじゃないか。しかも日ソ漁業交渉も非常に友好裏に円満に終結したと私は思うわけであります。しかしソ連側が違反操業に強い不信感をいまだ持っておるということはこれはぬぐえません。その姿がソ連監督官のオブザーバー乗船隻数が四隻となった。今後もこの不信感が続く限り今回のように初めからこれで締めつけられていくようなことがあるのじゃなかろうかという心配があります水産庁は中型船区域に東光丸、千四百九十トンですかこの一隻と、あとチャーターですね、チャーターしているのが八隻、この九隻で取り締まりに当たっているというのでありますが、これだけのことでいいのだろうかどうかと。これが私は非常に疑問でなりません。二月にもベーリング海で拿捕された、これは御存じだと思いますがアッツ島の北約七百四十キロ、ソ連二百海里の中でこれは無許可操業をやって四億七千万も請求されておる。これはもう裁判で決まっておるということもあるわけであります。ともあれこうした問題が生ずる限りはほんの一部の人たちのために相当な問題が提起されてくるということ、この点についての水産庁考え方というものはどんなふうにお考えになっているのか。  それから第二点目の協力費については先ほどお話がございました。ですから省略いたしまして、ともあれ四十二億五千万と昨年より二億五千万上積みをしたことで折り合いができたということでありますが、この上積み分は全額民間負担となるのかどうなのか。先ほどのお話の中にもありましたけれども政府はとてもいまの財政困難なときには無理じゃないかと思うと。そういう逃げ腰じゃなくてこの上積み分の補助額の一部はどうしても負担していくのだというその一念のもとに私は交渉に当たっていかなきゃならないのじゃないかと思うのです。ですから考えてみますと、その協力費の上積みによる零細な太平洋小型流し網や日本海のマス流し網漁船にとってこの問題は大きな苦痛になるのは当然でありますし、太平洋の小型流し網は五十三年に御存じのとおりの不漁がございましたね。あのときの巨額の負担を抱えているケースはまだいっぱいあるわけであります日本海のマス流し網漁船も一隻当たり二十万から三十万の年間負担で大変なことは水産庁の方々は御存じのはずだと思います。また中型船の一隻の協力費は大体約五百八十万円、中型船はそのほか減船に伴う平均千五百万円の補償金も背負っておるという現状であります。これ以上の負担にはたえられないと訴えておるわけでありましてこうした事情からも上積み分の補助を考えるべきだと私は思います。この点について御答弁を願いたいと思います。  それから需給のバランス問題でございますが、先ほどもちょっと出たようでありますが、昨年サケマス国内市場で空前の約三十万トンが出回ったと言われております。消費は鈍く、報じられている農水統計によりますと三月末現在の全国の在庫は六万一千トン余り、前年度同期から比べますと五一%も上回っております。実際には七万トンとも言われておるわけでありますが、年間供給量の四分の一近い大量在庫が売れ残っている計算で、年明けからサケマス市況がすっかり軟化し鈍化しているというのが現状でありますが、この辺の点もどうお考えになっているのか。  それから価格の問題でありますが、アキザケとベニザケが米国等から——これはカナダもありますが——の輸入で押されまして、魚価形成も昨年キログラム当たりが現地で千五百円前後だったものが現在は千円前後となっている状況であります。昨年より三割安値となるとも言われているがこういうふうな市況に対する事情というものをどうとらえられてどう対応されていこうとしておられるのか、この点が一つであります。  最後に、漁家の経営者等に対する問題点と北洋サケマス漁業の将来のあり方についてお尋ねをしておきたいのですが、協力費の上積みに加えて労賃とか漁網とか漁具などの資材等の値上がりの圧迫、そこへ持ってきて漁獲量の問題もあります、魚価の問題等もあります。漁家経営関係者等は北洋サケマス漁業の将来はどうしたらよいのか、どうなるのかと訴えているわけでありますが、こういう点から考えていきましても最初に申し上げました長期漁業協定のあり方というものに対して外務省を含めて水産庁もどんな考え方をしておられるのかということを伺って、私はこの五つの問題点について御答弁を願って終わります
  79. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) お答えを申し上げます。  まず第一点の今後のサケマス漁業をいかに長期安定化させていくかという問題でございますが、先ほど先生は実務交渉のパターンで今回の交渉が妥結したとおっしゃいましたが、確かにその 面はございますが、今回の交渉に当たりましてこれが早期円滑な妥結ができましたもとは、やはりカメンツェフ漁業大臣日本を訪ずれられましてその際に政治レベルでの金子・カメンツェフ会談、それからまた安倍外務大臣カメンツェフ大臣との会談といったような幾つかの会談がございまして、そのもとにおきまして非常に有意義な結果が出、その雰囲気のもとで実務交渉を行ったということが今回の結果につながっているものというふうに考えている次第でございます。その政治レベルの会談の中におきまして長期安定化の問題も取り上げられて、ソ連側も事務的にこれを今後詰めていこうという姿勢を示したわけでございまして、今回の交渉におきましてもこの点につきましては代表団の方から話を持ちかけ詰めたわけでございますが、残念ながら今回の交渉においてはこれを詰め切るような場ではないということでソ連側としては最終的な結論に達するような状況に至らなかったわけでございます。しかしながら、この問題につきましては将来ともに私どもとしてはさらにこれを推進いたしまして長期安定化の実を上げるということが必要であろうと考えておりますし、ソ側も決してこれを拒否しておるわけではございませんので外交のチャンネルを通じましていかなる形でこれを取り上げていくかということを今後とも詰めてまいりたいと思います。また長期安定化を図りますためにはその実態というものが非常に重要でございまして、その実態のためには一つはいろいろな形での漁業協力関係というものを日ソの間にさらにパイプを太くしていくということが必要でございますし、その中の一つとしてサケマスにつきましては先ほどもお答えいたしましたような共同調査あるいは共同ふ化増養殖事業といったようなことが非常に重要であろうと思います。後者につきましては、残念ながら向こうがまだ国別ふ化増養殖事業というものを推進しようということを考えておりますので必ずしもこれに乗ってきておりませんが、その周りの形ではいろいろな形で技術協力その他が進んでおりますのでさような面における協力関係を今後とも拡大し、いま一つは、後ほどお答えいたします違反をできるだけなくしていくということによって実質的にサケマス操業につきまして将来安定化させていくということがわれわれの望みであり、今後ともこれを達成すべく最大の努力を尽くしたいと思います。  次に第二点の違反漁船の問題でございますが、先生御指摘のように残念ながら違反の水準はかなり高い状態にございますし、その内容も船名を隠す等問題があることが非常に多うございます。それからまた去年の特色としては太平洋の小型のサケマスの漁船がかなりの違反をしたという問題がございまして、このためにソ側も非常にきつい要求をしてまいったわけでございますが、いろいろ話しました結果監視員ではなくてオブザーバーという前年の形を踏襲いたしまして一名増員ということでこの問題に決着をつけたわけでございますが、このような違反の問題に伴う不信感が続く限りにおいて私は北洋漁業の安定はないというふうに思うわけでございます。このようなことから、私どもといたしましてはまず去年違反を行いました漁船に対しましては、サケマス漁業の一年の全漁期に相当する日数、これは九十二日間でございますが、悪質なものに対しましてはこれの全期間の停泊命令、こういうものを科する、こういうことであるとか、そのほか全違反漁船に対してきわめて厳しい処分を行うということをやりまして今後このようなことがないようにいたしますと同時に、また本漁期におきましては、出漁前における取り締まり指導会議というものを行いますことは当然のこと、太平洋の小型サケマス流し網漁業につきましては、北海道に対しまして指導取り締まりを強化してくれということを申しております。また水産庁の監視船の総隻数につきましてはなかなか増大しがたい状況にございますが、特に問題のある太平洋中型サケマス流し網漁業につきましては監視船の一隻増加を講じまして違反のないように最大限の努力を尽くしたいというふうに考えております。  それから次に漁業協力費、いわゆるコンペの問題でございますが、この点につきましては昨年は四十億ということで一昨年と同様に幸い抑えることができたわけでございますが、ことしはソ側も四千七百万ルーブル使っておりました漁場の保全、特に産卵場の確保といったようなことに使います経費を五千三百万ルーブルまで増額してきているということもございまして、先方もやはりこのような経費の増高がございます以上はわが方もそのメリットを受けるという実情がございます。しかしながらやはりこのようなソ側の計算のもとでまいりますと実に四十九億の金を払ってくれという話でございまして、これはとうてい漁民負担にはたえかねるということで私ども鋭意交渉いたしまして二億五千万の増額ということでこれをとどめたわけでございます。ただこの二億五千万の増額部分をいかに負担するかということについてでございますが、もちろん関係各省と相談をいたしてみるつもりではございますが、なかなか現在の財政事情から申しましてこれを国庫負担で賄うということは困難な事情にあるということは御了解をいただきたいというふうに思う次第でございます。  次に需給のバランスの問題でございますが、需給のバランスにつきましては先生御指摘のように五十七年のサケマスの供給量というのは国内生産が十三万三千トン、それに輸入が実に十万七千トンあったということで、供給量が非常に多かったということが言えます。これに対しまして家計消費はほぼ前年並みということで消費がやや停滞ぎみであるということは事実でございまして、このために在庫数量が五十七年十二月末で前年同期比一四二%という高水準であったことは事実でございます。このような需給状況から価格も最近低迷しているということも先生御指摘のとおりでございますが、このようなことでかなり価格も落ちてきたということから若干最近は消費が上向きになってまいったことは事実でございます。そこで、たとえば最近の漁業情報サービスセンターの調査でございますが、四月に入りましてから若干価格は戻りぎみ、われわれとしては価格としては底をついたのじゃないかというふうに考えておりますが、これはそのようなことで推移してほしいというふうに考えておるわけでございます。なお、問題はやはり輸入であろうというふうに考えます。この点は実は、昨年十万トンという史上空前のサケマスが特にべニを中心としまして米国産が入ったわけでございますが、これはボツリヌス菌という中毒菌がございましてこれが缶詰の中毒事件を起こしまして全世界的にサケ缶の缶詰の需要が落ちてしまった、そのために冷凍に回りましてこれが日本に回ってきたということが非常に大きな理由でございまして、冷凍を入れる国は日本が主力でございますために十万トンもの輸入があったということでございますが、これはやや異常な事態というふうに考えられますので、ことしはこのような状況ということは想定しがたいのじゃないかというふうに考えておる次第であります。  最後に北洋サケマスの今後のあり方の御質問でございますが、この点につきましてはやはり北洋における長い伝統、特にこのサケマス漁業に先人たちが払ってまいりました大変な努力と汗の結晶を何とか確保してまいりたいという気持ちでございますし、また国民の嗜好に合ったサケマスを供給するということも非常に重要な役割りでございます。それからさらに私ども最も関心がございますし重要であると考えますのは、やはりこの漁業に従事している方々の雇用の問題でございます。たとえ国内で十万トンのサケマスがとれるようになりましても、このサケマス漁業に従事しておられる方が他の沿岸漁業に転業できるというわけでもございませんし、これらの方々の職を確保する、あるいは関連産業を含めた地域経済を発展させていくということのためにもどうしても北洋サケマス漁業というものは長期安定的に継続させるべきであるというふうに考えておりまして、今後ともさような方針のもとに全力を 尽くす考えでございます
  80. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間が来ましたのでやめますけれども、その輸入問題につきましてはいろいろ私調査したものがありましたのですが、時間が来ましたのでまた折がありましたときに、いま御答弁の中にありましたように気をつけてやっていただきたいと思います
  81. 木島則夫

    ○木島則夫君 きょうはこの商船における最低基準に関する条約にしぼってお伺いをしたいと思います。  提案説明がございました。その中で「世界有数の海運国であるわが国がこの条約締結することは、船舶における最低基準実現のための国際協力に寄与する観点から有意義であると考えられる」と、こういう提案説明がありましたが、基本的な問題が非常に多いものですから私は具体的にお尋ねをしたい。したがってひとつ具体的にお答えをいただきたい。抽象論でないお答えをまず御要求申し上げたいと思うのです。  この条約わが国船舶だけではなくて諸外国の船舶についても入港国の監督を及ぼすことが重要な骨子となっております。したがってこの条約を批准することによってもっぱらわが国船舶にだけその効果を最大に求めて諸外国の船舶を野放しにしたとすれば日本船の国際競争力をさらに弱体化させる、基準以下の外国船等に対してまさに跳梁の場を与えることにもなりかねないということになります。この点を十分に認識されるとともに、外国船の監督というものが十分になされるものと確信をいたしますけれど本当にできるのか、その方策をひとつ例を挙げてお示しをいただきたいと思います。まずこの点から伺います
  82. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 海上の安全、海洋汚染防止あるいは労働条件等に関します必要な基準を遵守してないいわゆる基準未達船舶の運航につきましては、国際海運の健全な発展のためにも好ましくないものであるというふうに考えておるところでございます。このためにIMOあるいはILO等の場におきましてこれらに関する統一的な基準を設けましてその実施を図るための努力がなされておるところでございますけれどもわが国といたしましても関係国際条約の批准を進めておりまして基準未達船問題の解決に努めているところでございます。  それで、ILO百四十七号条約の第四条に基づきます外国船の監督でございますけれども、これは安全または健康にとって明らかに危険な条件について実施されるということになっておるところでございますわが国におきましては、安全または健康にとって重大な影響を及ぼし得る船舶施設あるいは設備、それから船員の資格及び能力並びに当直体制に関しましては、船員法の百二十条の二あるいは船舶職員法の第二十九条の三及び船舶安全法の二十九条ノ七で準用いたします同法の第十二条、こういった条文に基づきまして各監督機関が船舶に立ち入りまして改善の必要な場合には通告し、必要な場合にはまた航行停止等の処分を行うことができることとなっておるところでございます。これらの措置によりまして、安全または健康に明らかに危険を及ぼすと考えられる事項につきましては十分なる監督を実施できるものというふうに考えておるところでございます
  83. 木島則夫

    ○木島則夫君 もう少し私具体的にお尋ねをいたします。年間六千隻程度の外国船がわが国に入港してくるのですが、違反船について立ち入り検査をやって十分に摘発するためには現在の係官の員数と申しますか人数、そしてその外国語会話能力では全く期待できないという声が圧倒的に多いわけですね。したがって具体的に質問しますよ、いいですか。  どこの省の窓口で監督をやるのかというのが第一点、よろしいですか。具体的には船員労務官あるいは海上保安官、海運局係官の早急な人材の育成。この人材の育成については皆さん大変御苦労されている、そのことは私は認識をした上で申し上げるのだけれど、会話能力、主として英語、そして法律用語ですね、非常にむずかしい法律用語が出てくる。また労働用語なども出てくる。したがってスペシャリストということになるのでしょうか、こういう人材の育成とその増員が不可欠となってまいります。行政改革が行われていること、私どもの党が行革に取り組んでいることは御承知のとおりですけれど画一的なものであってはならない、必要なところにはやっぱり力点を置いてそこにしぼっていくということはこれはもう当然であろうと思いますけれど、そういうことを踏まえていま私が申し上げた点についてのお答えをいただきたい。まずどこの窓口でやるのか。人材確保、そして人数、いかがですか、具体的に答えていただきたい。
  84. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 条約第四条の外国船の監督でございますけれども、現在地方の海運局あるいは海運支局、そういったところに船員労務官が配置されております。それから船舶検査官も同じように配置されておるということでございます。そのほか海上保安官も要所要所に存在するわけでございます。こういった官が監督事務を行うというふうに考えておるところでございます。  それで人数でございますけれども、船員労務官につきましては現在全国の主要な港に配置されておりますけれども、合計百二十八人が配置されておりまして本年十月以降にさらに三名が増員されるということになってございます。  それで英語能力の面でございますけれども、船員労務官につきましてはSTCW条約、これは船員の訓練あるいは資格証明あるいは当直の基準に関する条約、これをSTCW条約と言っております。これは昨年批准いたしました条約でございますけれども、この批准によりまして外国船舶の監督業務が出てくるということに伴いまして英語研修を実施しておるところでございます。そのほかに外国船舶監督のための手引書も作成いたしまして、外国船の監督業務が適確に行われるように努力をしておるところでございます。  それから船舶検査官でございますけれども、現在全国に二百四十三人が配置されておるところでございます船舶検査官は、従来から外国船の要請を受けましてSOLAS条約に基づきます外国船に対する条約証書の発給にかかわる検査を実施しておるところでございまして、今回の条約批准に伴います外国船の監督業務につきましても十分に対応できるものと考えておるところでございます。  また船舶の監督業務に当たることもできます海上保安官につきましては、現在全国で五千八百三十六人配置されておるところでございます。海上保安庁におきましては海上保安庁の教育機関で従来から保安研修を行っており、また船員労務官の使用いたします外国船監査のための手引書を活用し、海上保安庁としましても外国船の監督業務が適確に行われるように努めていることとしているところでございます。  運輸省といたしましては、監督業務の遂行につきまして今後とも体制の充実、強化に努め、遺漏なきを期していきたいというふうにいま考えておるところでございます
  85. 木島則夫

    ○木島則夫君 わかりました。非常に具体的でいいのですけれど、何せ年間六千隻の外国船が入ってくるわけでしょう。いまあなたがおっしゃった人数で対応できるということはとてもむずかしい。そして人材の育成につきましても御努力はされていると思いますね、手引書などをおつくりこなってやっていると思う。こういう中に法律用語あるいは労働用語、こういう専門的なものに対応できるようなことはきちっとやられているのかどうか。あなた方が六千隻もの外国船に対応するためにはこのくらいの人数がやっぱり必要なのだというところを思い切って言ってくださいよ。これはやっぱり現実の問題として必要だと思う人数、これだけあれば大丈夫だという人数、これはやっぱり必要だと思うのだね。どうですか。
  86. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) まず法律用語あるいは専門用語でございますけれども、手引書を現在つくっておりますがその中に必要と思われますそういうテクニカルタームと申しましょうかそういったものにつきましてはその中に盛り込みまして教 育指導を行うというふうにしておるところでございます。  それから外国船舶の監督の関係でございますけれども、監督につきましては入港しました船舶を一隻一隻全部チェックするということではございません。ある一定の要するに要件に該当する場合にチェックを行うということでございまして、チェックあるいは是正措置を行うということでございまして、条約の四条によりましても、明らかにその安全あるいは健康に障害を与えるような条件を是正するという場合に限りまして監督措置を行うことができるというふうにもなっておるところでございまして、そのようなことに対応する対応の仕方といたしましては、現在の体制で進めてまいりたいというふうに考えておるところでございますけれども、なお今後の業務の遂行につきましては体制の充実、強化ということも必要でございます。その点の努力も進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます
  87. 木島則夫

    ○木島則夫君 たてまえとしてはよくわかりますけれど、たとえば船員労務官が現在百二十八人ね、来年度三名の増員。これから体制の強化ということですから全体としてはやっぱり充実をする、強化をするという方向がぜひとも必要だという認識はあなたお持ちですか。現在のままじゃだめだということはわかるわけ。だから将来絶対にこういうものは必要なのだという基本認識を聞かしてください。
  88. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 運輸省といたしましては、監督業務の遂行ということにつきましては今後とも体制の充実、強化ということに努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます
  89. 木島則夫

    ○木島則夫君 私の質問にひとつ具体的に答えてくださいね、時間も限られておりますからね。  本条約を批准することによって日本船舶が諸外国においてトラブルに巻き込まれないという保証があるのかどうか。もし不幸にして巻き込まれた場合に政府としていかに処置をするか。またどこでどのような責任を持って処置をするのか。具体的に窓口名を挙げて御答弁をいただきたい。なおもうちょっと具体的に申し上げるならば、トラブル発生の際、何省の何局が処置をされるのか。特に条約内容が各省庁にまたかっておりますので、あっちこっちに責任のなすり合いがなされては手の打ちようがなくなります。したがって窓口の一本化等具体的に措置することが必要だと思いますけれど、これは外務省いかがですか。これも私の言ったことについて答えてくださいよ。
  90. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) まず先生御質問の第一点でございますけれども、この条約に入りますということは、日本におきます商船の労働条件がこの条約に決めております国際条件に合うということを内外に示すことになりますので、私は、この条約に入りました暁には日本商船というものが外国の港でトラブルに巻き込まれる可能性はほぼないのではないかと思っております。  それから第二点の御質問でございます。しかしながら万一そういうことというのは否定できないわけでございまして、条約の第四条にございますように日本船舶が入っていた港の官憲が安全または健康にとって非常な危険が存在すると言って問題にしてくる可能性というのはもちろんあるわけでございます。その場合には第四条の規定によりましてその外国の港の官憲というものは日本の大使館なりあるいは領事館、在外公館に向かって通告が行われることになっております。かつ可能な限りその安全なりあるいは健康なりに対する是正措置等々の調査に当たりましては、日本の領事なり日本の在外公館館員を立ち会わせるということも条約の第四条で規定されておりますし、あわせてこの港に停泊を命ぜられました船舶というのは不当に抑留されまたはその出航が不当に遅延されてはならない旨を規定しておりますので、そういうことがないように日本の領事なり何なりをして先方との間に協議をすることができることになっております。  それから第三点の窓口の点でございますけれども、今回の条約に入りました場合には外国からの苦情なりそういったことは在外公館に対して通告されることになっておる。そして在外公館が通知を受けましたときにはそれはすべて本省の外務省に伝達されてくるということになっております外務省の場合の窓口としましてはこの条約を主管しております国連局、もっと詳しく申し上げますと専門機関課が窓口になってその国連局専門機関課を通じまして、特に運輸省になろうかと思いますけれども運輸省あるいは厚生省等の関係省庁に連絡するということになっております
  91. 木島則夫

    ○木島則夫君 さらにその在外公館からそれが通達をされて外務省に入る、国連局ですか、そしてそれが各省庁にまた行くわけですね。そうすると、特に条約内容が各省庁にまたがっておりますので一本化して、海外から入ってきて外務省が受けとめる。そこはいいのですがその先なのですよ、問題は。うちじゃないです、こっちです、あっちですというようなことになるとこれはやっぱり責任の所在がはっきりしなくなりますので、その辺をもうちょっと明確に確たるお答えがいただけませんでしょうか。どうなのですか。
  92. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) この条約に規定をしております十五のILOの条約でございますけれども、大半が実は運輸省あるいは厚生省に関係しておるのではないかと思われるわけで、あるいは労働省に関係しているものもあるかと思います。したがいまして、その内容によりましてその最も関係ある省庁に御連絡申し上げるわけでございますけれども、しかしながら同時に幅広く関係あると思われる省庁には全部連絡する体制をとりたいと思っております
  93. 木島則夫

    ○木島則夫君 確かにそれでお答えはよろしいのですけれど、たとえば一括する、要するにいま私が言ったように、各省庁にまたがっていてあっちこっち行って責任がぼけてしまうというようなことでは手の打ちようがなくなりますので窓口の一本化等具体的に措置することができないのかどうか、この辺をさらにお尋ねをしておきたいのでありますけれど、いかがでしょうか。
  94. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先ほど申し上げましたように対外的な窓口はこれは外務省の国連局でございますけれども国内省庁側の窓口といたしましては私は運輸省の船員局にあると承知しております
  95. 木島則夫

    ○木島則夫君 ではその運輸省船員局、外務省からそういうお話がございました。きちっとそれ受けとめられますな。
  96. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) そのように考えております
  97. 木島則夫

    ○木島則夫君 はい結構です。お答えはすべからくそういうふうにしていただきたいと思います。ひとつよろしくどうぞ。  実質的同等をもって条約を批准するという例がかつてございません。実質的同等の解釈というものは今後かかる条約批准の先例となるという意味でもこれはきわめて重要なものというふうに理解をいたしますけれど、この解釈を明確にされないといけませんね。したがってこの解釈を明確に示されたいということ、またそれは法理論上及びその法解釈上確立されたものと理解をしてよろしいのかどうか、まずこの辺から伺います
  98. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 先生御指摘のように、この実質的同等という概念はこの条約の根幹的な概念でございましていわば骨格をなすものでございます。やや敷衍して御説明申し上げたいと思います。  御承知のように、この表現自体は抽象的なものでございますので明確な定義を行うことはやや困難があるわけでございますけれども条約採択に至る経緯であるとか文理解釈であるとかあるいは条約採択のときに全員で付しました一つの具体例等を御説明して全体的な概念を御理解いただければと思っているわけでございます。  まず経緯といたしましては、この条約を採択いたしますときに、当初の草案におきましては少なくとも同等という概念を入れようということになっていたわけでございます。ところが船主側か ら、少なくとも同等という概念を入れますとこれは完全な一致を要求されることになると、それは要するに条約を批准しろということと同じになると、しかしいろいろなここで挙げられている条約をとってみるとその条約の中には社会的なあるいは経済的な民族的な環境がいろいろ異なるので、各国において遵守できない要因がいろいろとあるので要するにそれでは全く実施が困難になるという状況がございましていろいろと審議をした結果ここに「実質的に同等」という概念が入ったというのがまず経緯でございます。文理解釈の参考として英文とフランス文をとってみると参考になると思うのでございますけれども、英文ではこの実質的同等という言葉に訳されている概念が反映されております。それからフランス語におきましては、二つのものが全体として価値が等しければいいという概念がフランス語の方には反映されております。その二つの英文、仏文の両方の表現を調和してこれを解釈してみますと二つの法的な文章が、形式や表現が異なっていてもあるいはニュアンスが異なっていても両方の適用の効果が等しいということ、すなわち完全にする必要はなくて本質的な部分において等しければいいというような概念がその経緯及びいまの二つの英文、仏文の文理解釈から出てくるのではないかと思うわけでございます。  こういうことを反映いたしまして審議過程におきまして、ILOの事務局側におきましても実質的に同等という表現は、附属書に掲げられた諸条約の批准を必要とするものではなく、この条約の締約国が当該諸条約の一般的な目的を尊重することに同意したことを意味するのであるということを言いまして、国内における基準との絶対的な一致は要求されていないという説明を行っております。  以上のような経緯がございまして、もう一つだけ例示をさせていただきたいと思いますけれども、この条約の十九ページをごらんいただきますと、附属書に条約がずっと例示されておりますが、その五十三号条約に実は注がついております。この注の表現自体はかなりわかりにくい表現になっておりますけれども、平たく申し上げますと、この条約におきましては、一定の年齢及び経験に達し、試験に合格した者でなければ特定の海技免状を与えてはいけないということになっておるわけでございますけれども、インドにおきましては海軍で働いている上級将校、大尉については試験がなくて船長としての外航船舶の職務証明を与えてもいいというようなことであるとか、機関部門の大尉または中尉は無試験でそれぞれ一等機関士または二等機関士の職務証明を与えられるということになっておるわけでございます。こういうインドにおいて行われている制度をこの条約に合致するものとして承認しようと。いわば試験を行わないという意味ではこの条約の軸にそのまま該当しないわけですけれども、実質的には海軍で十分に資格を認められて働いていた者であるので、特に形式的な試験を要求する必要はないだろうということを考えまして、このような注の形で、参加者全員がこういうような場合は実質的に同等なのだということを示すためにわざわざ注を付した経緯がございます。  以上のようなことを全体として見てみますと、その経緯等と関連いたしましてわが国といたしましては「実質的に同等」というのは国内法令の規定が附属書に掲げられた条約の規定と細部において相違する点があっても国内法令の適用の効果がこれら条約の主要な義務をおおむね担保するものであると。したがって条約の目的は大体において達せられていると認められると、このような場合であるというふうに解釈すれば間違いがないであろうと考えております。  それで最後の御質問でございましたけれども、法理論上確立したものであるかどうかという点につきましては、これは審議経過の際にILO側から、先ほど申し上げましたような条約の批准を要求するものではないということが明確にされまして、それに対して関係国が全体として異論を唱えなかったという経緯もございますし、それから先ほど五十三号条約に付されました注におきまして全体の意思が確認されたような経緯もございますので、私どもとしてはいまのような政府側の解釈というのはこれは十分に法理的にも担保し得るものであろうと考えております
  99. 木島則夫

    ○木島則夫君 大体いまの御説明は衆議院の外務委員会でもなされたものというふうに私は伺っております。なかなかこの辺の問題というのはむずかしいのだろうと思いますけれども、もう一つ政府としては「実質的に同等」の適用の基準をどのあたりに考えているのか具体的にお示しをいただきたいということと、便宜置籍船の中で基準を下回る商船については実際どんなふうに適用をしていくのか明らかにしていただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。もう一回、いいですか。「実質的に同等」の適用の基準をどのあたりに考えているのか、これは具体的にひとつお示しをいただきたいということともう一つは、いま言ったように便宜置籍船の中で基準を下回る商船について実際どのように適用していくのか、これも明らかにしてもらいたい。いかがですか。
  100. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 前段につきまして私の方からお答えさせていただきたいと思いますが、先ほども説明いたしましたように、「実質的に同等」というのはある程度の幅を持った概念であることは当然でございますので、これがその後、この附属書中の条約の未締約国の国内法において確保されておるかどうかということは第一義的には当然にその締約国が判断することであろうと思います。そういうことで先ほども申し上げた点でございますが、第一に、こういう恣意的な判断は許されないと思いますけれども、大体次のような基準で考えればいいのではないかと思っております。すなわち、船舶最低基準に関する主要な義務について国内法令がおおむねこれを担保しておりそして条約の目的が大体において達成されているという必要はあると思っております。  それから第二に、条約国内法令との間に細部においての相違はあっても、たとえば先ほど注で申し上げましたようにお互いの確立された制度の差によってもたらされている差異というものは認められるのではないか。そのような条約上の一定の要求を国内法上別な形で満たしていれば、それは全体として条約上この条約の目的を達しているといいますか、条約の要求する水準を満たしているというふうに判断できるのではないかというふうに考えております。そういうことで、「実質的に同等」ということを判断するためにもちろん何らかの基準がなければいけない。その基準はいまのような形で置きかえてみるか、大体その程度を比較してみるか、いろいろなやり方があると思いますけれども、いずれにしても何らかの形でその水準が達せられているというふうに判断する基準が要求されるというふうに考えております。  これもまたわかりにくいものですから一つだけ例を挙げさせていただきたいと思いますが、特に社会保障関係ではいろいろと細かい基準等がございますのでこれを御説明申し上げますとむずかしくなりますけれども、特に九十二号条約が一番私は御理解いただくのに楽なのではないかと思うのですが、この九十二号条約内容というのは実はイギリスの国内法を参考にしてできている条約なのでございます。イギリスでは御承知のように普通のパブに入りますときでもサルーンとパブというのがあって階級意識が非常に固定している社会でございますから、その階級差というものがいろいろな国内体制に反映されているわけでございます。それを反映いたしまして、この条約におきましては食堂等の上級船員、下級船員別の設置等が決められているわけでございますけれども、これは日本の船内では非常になじまない風習でございまして、私ども承知している限りにおきましては全日本海員組合においてもこのような差別を設けるということに対しては反対しておられるということを伺っておりますけれども、この九十二号条約においては実はわが方が達成し得ないのはこの点だけなのでございます。これはむしろ同等の待 遇ということではこの条約の要求しているもの以上のものを達成しているという判断が成り立つと思いますので、そういう意味で百四十七号条約に入ることは問題がないというふうに考えている、たとえばこのような例を挙げれば御理解が容易になるかと思います
  101. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 後段につきましてお答え申し上げたいと思います。  まず、便宜置籍船の監督関係でございますけれども、便宜置籍船と申しますのは外国船ということになるわけでございまして、本条約の外国船の監督につきましては船員法あるいは船舶職員法あるいは船舶安全法に基づきまして実施されるということになるわけでございます。  それで監督に当たりましての基準ということになるわけでございますけれども、船員法それから船舶職員法におきましては先ほど申し上げましたSTCW条約、これは千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約という条約でございまして、当直の船員の基準でございますとかあるいは海技従事者の資格でございますとか能力でございますとか、そういったことにつきまして国際的な基準を決めておるものでございますけれども、そのSTCW条約に定める基準というものをメルクマールとすることといたしております。  また船舶安全法につきましては、これは船舶施設あるいは設備につきましてのチェックを行うわけでございますけれども、これにつきましては現在の船舶安全法及びその安全法に基づきます省令の定めます基準によりまして監督を行っていくというふうに考えておるところでございます
  102. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間がございませんので先に進みますけれど、外国の港において官憲の取り締まりに遭って「実質的に同等」の適用について問題が発生した場合に政府としてどのように対処をするのか。これは具体的にお示しをいただきたいのであります外務省ですね。
  103. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) お答え申し上げます。  日本船舶が外国の港に入ってその外国の官憲からどうも健康あるいは安全の基準がこの条約で定めております条件に合っていない、したがって是正しろとこういうふうな問願が起こった場合、これは先ほど御説明申し上げましたように、その場合には必ず日本の最寄りの官憲というか在外公館に通告があることになっております。可能な場合は在外公館員が立ち会う、こういうことになっておりますが、そこで果たして日本の船の健康あるいは安全に関します条件というものが条約の附属書にございます条約と実質的に同等かどうかという問題が起こるわけでございまして、そのときには在外公館の館員からの報告を受けました本省、かつ本省としましてはそれに対して在外公館に指示を与えるという形で、いわゆる外交ルートを通じまして先方説明協議をする、こういうことになろうかと思います。そこでその場合二つのケースが考えられると思うわけでございます一つは、その協議の結果あるいは説明の結果わかったと、やはり日本の方が正しかったと、したがって是正措置はとる必要なしとこういう結果になる可能性一つあるわけでございます。もう一つは、やはりどうもその協議の結果日本船舶の方が実質的な同等に合致してなかった、こういうようなことも可能性としてはあるわけでございまして、そのときは日本船舶に対して日本官憲としてもしかるべき調査かつ処分を行うと、こういうことになろうかと思います。そこで問題は、これに関係してまいりますのがまず第一義的には外国にあります日本の領事館なりあるいは大使館でございますが、この条約を御承認いただきまして加入しました暁には、私どもとしましてはこの条約内容というものを、専門家では必ずしもございませんのでこの条約内容というものをなるべく詳細にかつ平易に説明いたしまして、わが在外公館館員がそういった問題が起こったときにすぐそれに対して対応できるというような最低限度の知識は彼らに対して教えておきたい、指示しておきたいと、こういうふうに考えております
  104. 木島則夫

    ○木島則夫君 まさにそこのところが大事でして、外務省の海外の出先機関に対しましても事前に十分な、いまあなたがおっしゃったように周知を図って、特に国内法と本条約の細部の相違点について具体的に実質的同等扱いできることの理由を明確にさせておくことが必要で、特に私はお願いしたいのだけれど、担当者による解釈の違いがあっちゃならないと思いますので、ここのところをもう一度確認したいのですけれど、これは最低のやっぱり周知徹底、解釈上の違い、人による、担当者による解釈上の違いをなくしていただきたい、この点はイエスかノーだけで結構です。
  105. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) そのように努力したいと思っております。ただ一言補足さしていただきますと、実は港にありますわが在外公館というのは数が非常に多うございまして、中には場合によっては三、四人の公館がかなり多いわけでございます。したがいまして、その三、四人の公館員に対しましてなるべく平易にかつこの条約の施行に遺漏なきを期すために説明をするということはかなりむずかしいのでございますけれども、先生の御指摘のとおり努力してまいりたいと思っております
  106. 木島則夫

    ○木島則夫君 本当に時間がもうないのだけれど、ILO百四十七号条約が発効した五十六年の十一月の二十八日以降、日本船がこの条約絡みでトラブルに巻き込まれた例を具体的に示していただいて、それぞれの件で当局のとられた措置を説明していただきたい。私ども一つ聞き及んでおりますのは、トラブル発生の例としてことし三月イタリアの港で、オリエンタルパールライン所属の徳豊丸という船が船体老朽化を理由に四月一日以降の航海停止の勧告を受けたわけでございます。こういう例がございます。こういうものに対してどういう処置をとったか、これからまた起こり得るとすればそれに対してどのような政府の処置をおとりになるか、ひとつお示しをいただきたい。
  107. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) この条約に基づきますポート・ステート・コントロールにつきましては、この条約の四条第二項におきまして、入港国が外国船舶に対しまして安全または健康にとって明らかに危険な船内におきます条件を是正するための措置をとるに当たりましては、直ちに船舶の旗国の領事等に通告することとなっているところでございますが今日までこのような通告を受けたことはございません。したがいまして、本条約の関連で、日本船がそのようなトラブルと申しましょうかそういったことに巻き込まれた事例はないものと考えておるところでございます。  それからまた昨年七月一日から欧州の十四カ国で本条約を含みます七国際海事条約に関しまして統一的なポート・ステート・コントロールを実施しているところでございますけれども、この措置によりまして日本船がトラブルに巻き込まれることを避けるためにその実施に先立ちまして在外公館を通じまして各国の海事当局にわが国事情説明を行うとともに、日本船主協会に対しまして加盟船社の船舶がポート・ステート・コントロールを受けた場合には、同協会を通じまして運輸省に連絡するように依頼しておるところでございます。この結果、現在のところ同協会を通じまして、六隻の協会加盟船社の船舶が検査を受けた旨報告があったところでございますけれども、いずれも検査に合格いたしまして無事出港しているということでございます。  それから先生御指摘の徳豊丸につきましてはこの条約の関知するところではないとは思うのでございますけれども、本年三月、イタリアにおきましてポート・ステート・コントロールを受けまして、船体老朽化のために是正勧告を受けたという事例があるというふうにこれは情報として聞いておるところでございます
  108. 木島則夫

    ○木島則夫君 実際こういう問題が起こっているわけですね。船体老朽化の理由によって四月一日以降の航海停止の勧告を受けた。時間がございませんので私の方で申し上げたいのだけれど、こういう場合、乗っている方、船員がそのような状況 のときにどのような保護が受けられてそして送還されるか、そのことがやっぱり一番大事なのですね。この問題についてひとつお答えをいただきたい。実際こういう問題が起こったときにどういう措置をとるのか。
  109. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 本件につきましては、実は公式にいわゆる報告というようなことを受けておりませんので具体的な内容につきましてよく実はわかっておらないわけでございます。したがいまして、その辺はどのような措置をとるかちょっといまのところ断言できないということでございます
  110. 木島則夫

    ○木島則夫君 そういう事例がございますので、こういうものについてやはりきちっと把握をされて今後のためにも政府がどのような処置をおとりになるのか、なったのか。これはやっぱりきちっとしてもらいたい。外務省いかがですか。
  111. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) お答え申し上げます。  この条約に私ども加入した暁にはあらゆることにつきまして相手の官憲からの通報を受けることになっておりますので、したがいまして、政府全体として本件トラブルが万が一起こりましたときにはそれを把握できる立場にありますので、その状況を把握しました暁には、在外公館としましては邦人の保護というものが一つの大きな仕事でございますからそういった趣旨を念頭に置きましてしかるべく適切に対処してまいりたいと、こういうふうに思っております
  112. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間がございませんけれど、委員長、ちょっと一問だけお願いさしていただきます。  九十二号条約国内法として船舶の安全法また船舶設備規程によって手当てをされておりますけれど、これらの法令の主たる視点が船舶自体の安全性の確保にあって、九十二号条約が船員の労働保護を目的としているのと根本的な開きがございます。運輸省船舶局はどのように認識をされているか。それから昨年の船舶設備規程の改正はトン数、速度法の改正が主であって、従のものとしてこの九十二号条約の基準を取り入れられたようであるけれど、表向きはともかくとして中身が不十分でいろんな逃げ道、抜け道があちこちに設けられている。しかもその九十二号条約が一九四九年採択というまさに前時代的なものであって、現実の問題部分を盛り込んでいる一九七〇年採択のILO百三十三号条約を無視したのはどういうことか、運輸省船舶局にその理由を簡単に説明してもらいたいのと、人命の方が船体とか荷物よりも大事なことはこれは決まっているわけです。したがって、人間的な生活の場を確保するために今後見直しをやることを明確にしていただきたい。そして運輸省船舶局の方でこの労使を含めた協議の場をぜひつくっていただきたい。当局の見解を伺いたい。ことに私が最後に申し上げた運輸省の船舶局の方で労使を含めた協議の場をぜひつくっていただきたい、この辺を力点にして簡潔でいいからいまの質問に答えていただきたいと思います
  113. 石井和也

    説明員(石井和也君) 先生御指摘のようにILO九十二号条約の船員設備関係の基準につきましては、国内法上、船舶安全法に基づきます船舶設備規程により手当てされております船舶安全法の目的は第一条に規定されておりますように、船舶の堪航性を保持しかつ人命の安全を保持するに必要な設備を行わしむることにあります。したがって船舶安全法関係省令においては、船舶自体の安全のみならず人命の安全の保持のために必要な設備として救命設備とか、消防設備、脱出設備の備えつけはもちろんのこと、居住、衛生、労働安全の観点からの設備についても基準を設けて検査を実施しております。したがいましてILO九十二号条約に規定する船員設備につきましても、このような観点から船舶安全法の設備規程において手当てするのが妥当と考えております。  次にトン数法改正に伴うものではないかという御質問でございますが、トン教法改正に伴いまして附帯決議がつけられこれをもとにしたというのが一点。それからもう一方では、国際的には商船における最低基準に関する条約が五十六年十一月二十八日に発効し、欧州諸国が同条約を含めましたポート・ステート・コントロールを昨年の七月一日から実施することになりました。こういう状況を踏まえまして船舶設備規程の改正を行ったものでございます。したがいまして、この改正の中にはILO九十二号条約の実質的な規定をすべて取り入れております。  それから御指摘がございました逃げ道があるではないかということにつきましては改正省令の中にあります軽減規定のことかと思われますけれども、これにつきましては、船舶の大きさに比べ船員の定員や最大搭載人員の多い引き船、帆船等については船員設備の配置等を規定どおりに行うことがその用途や主要目的から構造的に不可能な場合が多いためにこの種の船舶について軽減規定を設けたものでありまして、一般の貨物船等にはこの規定を適用することは考えておりません。なお引き船等については条約においても適用除外となっております。  それから百三十三号条約につきましてでございますが、ILO九十二号条約では原則として総トン数五百トン以上の船舶に対しまして船室の規定、天井の高さだとかあるいは船室の環境それから寝台の備えつけ、寝台の大きさ、食堂、調理室等々につきまして要求しておりまして、船員の設備に関する基本的かつ重要な規定でございまして現在でも合理的なものと考えております。  一方ILO百三十三号条約は九十二号条約の補足条約の形をとっておりまして、総トン数千トン以上の船舶に対する追加要件を定めているということでございまして、昨年の船舶設備規程の改正はILO百四十七号条約の附属書には九十二号条約が掲げられていること。また欧州のポート・ステート・コントロールにおける検査の指針もILO九十二号条約に準拠して定められております。またわが国の外航船は労働協約等によって実質的にILO百三十三号条約を満足しておりますけれども、内航船については百三十三号条約をそのまま適用することが困難な実態にあるということから今回の改正は九十二号条約をもとに整備したものでございます
  114. 木島則夫

    ○木島則夫君 いや、もう最後に結論だけ言ってください。要するに荷物より人間の方が大事なのだと。したがって見直しをやることを明確にしていただきたい。そのために運輸省船舶局の方で労使を含めた協議の場をぜひつくっていただけないだろうか、そういう方向性だけでもきちっと打ち出していただけないか、これについてどうぞ。
  115. 石井和也

    説明員(石井和也君) 規程の見直しにつきましては、今後とも国際的な動向、社会的な認識の推移を踏まえまして必要に応じて海事関係各分野の専門家の意見を聞きまして専門的な観点から検討してまいりたいと思っております
  116. 木島則夫

    ○木島則夫君 協議の場は。
  117. 石井和也

    説明員(石井和也君) 船舶局におきます……
  118. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間がないのですからね、私の質問にわかりやすく答えてくださいよ。皆さんに御迷惑がかかるんだ。
  119. 石井和也

    説明員(石井和也君) 安全基準の策定に関しましては専門的、技術観点から行われるものでございまして労使協議によって行われるものではないと考えております。しかしながら、これらの策定に関しましては海事関係各分野の専門的知識を有する者の意見を聞く必要がございます。したがいまして、必要に応じて専門的知識を有する船員及び船主関係者に検討に参加していただくということを考えております
  120. 木島則夫

    ○木島則夫君 十分に意を尽くせないところがありましたけれど、やはり時間であとの方に御迷惑が及ぶと思いますからこの辺にしておきます。ありがとうございました。
  121. 神谷信之助

    神谷信之助君 最初に海洋汚染防止条約の問題でお聞きをしますが、外務省ですね、この条約では総トン数四百トン未満の船舶の取り扱いはこれはどうなりますか。
  122. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) この条約は海洋汚染防止が第一の目的でございますが、同時に余り小さな船について負担をかけてもいけない、こういう二つの考慮から四百トン未満の、ことに油による汚 染につきましては次のような規定になっております。  一つは、四百トン未満の船舶につきましてもやはり海洋汚染防止条約が重要でございますから、したがいまして実行可能な限りそういった設備を備えるということがまず第一点でございます。それから同時に、これは旗国の判断によってそういったような設備が備えられているかどうかを確保するための検査もすることができる、こういうふうになっておりまして、いわゆる義務的規定ではございませんけれども勧奨規定といいますか、そういうふうになっております
  123. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると運輸省、これ四百トン未満のものについては現在の措置より厳しくなるということになりますか。現行どおりでいくということになりますか。
  124. 石井和也

    説明員(石井和也君) 四百トン未満のものについては現行どおりでございます
  125. 神谷信之助

    神谷信之助君 それから非国際航海の漁船とか四百トン未満で国際航海する漁船は条約上証書の受け取りは義務づけられておりませんよね。しかし船主側の希望があった場合、これは発行できますか。
  126. 石井和也

    説明員(石井和也君) 議定書において証書の保有が要求されている船舶は、総トン数百五十トン以上の油タンカー及び油タンカー以外の船舶であって総トン数四百トン以上のものでありかつ国際航海に従事するものに限定されております。したがいまして、タンカー以外の総トン数四百トン未満の船舶が証書を受有していなくとも操業等に支障を来すことはございません。このため政府といたしましてこれらの船舶に対して何らかの証明をする必要はないものと考えております
  127. 神谷信之助

    神谷信之助君 トラブルは絶対に起こらぬからいいということになるわけですか。それとも船主側の希望があった場合には証書ではなくてもたとえば日本政府が証明する英文併記の何らかの文書を交付するとか何らかの措置、起こってからどうのこうの言うのじゃなしに、そういうことは全く必要はないということになりますか。
  128. 石井和也

    説明員(石井和也君) 条約で義務づけておりませんのでトラブルは起こらないと思います
  129. 神谷信之助

    神谷信之助君 次に、この機会に金大中事件に関連してお聞きをしたいと思うのですが、外務省にまず聞きますが、アメリカの連邦捜査局FBIがこの月の十九日ですか金大中氏に対して事情聴取に応ずるかという点について三点で文書で申し入れをしたと。一つは、日本の捜査当局に自発的にといいますか任意に証言をする用意があるかどうかということで、二番目に、応ずる意思がある場合は事情聴取は日本捜査当局が行ってFBIが立ち会うという、第三点は、その場所はFBIのワシントン事務所かあるいは金大中氏指定の場所、この三点を文書で申し入れをしたという報道がありますけれども外務省の方、この事実を確認されていますか。
  130. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 先週の初めにアメリカ政府から金大中氏に対して文書によって事情聴取を行いたいという日本の捜査当局の意向を伝達したわけでございます。その内容につきましては文書による事情聴取を行いたいという趣旨でございまして、その細かい点についてはアメリカ政府が現段階において金大中氏と話し合っている段階でございますので、詳細については現段階において云々することを差し控えさしていただきたいと思います
  131. 神谷信之助

    神谷信之助君 日本政府の方、いわゆる外務省を通じてアメリカ側に要請しているのは、日本の捜査当局が現地で事情聴取に応じてくれるかどうかということを本人の意思を確かめてもらいたいという趣旨ですか。
  132. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) そういう趣旨でございます。そのためにはまずアメリカ政府の了承をとることが第一でございます。第二は当人金大中氏の了承をとることでございます。それでアメリカ政府はその点を了承いたしましたのでアメリカ政府から金大中氏に意向を打診しましたところ、金大中氏から文書でアメリカ政府からの打診を受けたいということがございまして、先ほど申しましたように先週の初めに米政府が金大中氏に文書でいまの点を述べておるということでございます
  133. 神谷信之助

    神谷信之助君 次に警察庁に聞きますが、捜査の常道としては被害者に直接事情聴取を聞くというのは当然だというふうに思うのですけれども、同時に本件の場合は金大中氏に日本に来てもらって現場検証というか実況見分というか、そういうことに協力をしてもらうことができれば事実を調べるのに一番いいのではないかというように思うのですが、その点はいかがですか。
  134. 吉野準

    説明員(吉野準君) おっしゃるとおり被害者から事情を聞くのは捜査の常道であり第一歩でございます。とりあえずはいまお話がございましたように外務省を通じて米国において金大中氏から事情を聞くという手続を進めておるのでその結果を見守りたいというふうに考えておる次第でございます
  135. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、警察庁としてはまずアメリカにこちらの方から出かけていって事情聴取をしてその内容によっては日本に来てもらうという、そういうことも当然あり得るというわけですか。
  136. 吉野準

    説明員(吉野準君) これは、捜査はその段階段階で必ずしも予想したとおりにまいりませんので先のことについていまお答えするのはいかがかと存じますが、とりあえずはやはり、先ほどの繰り返しになりますけれどもアメリカへ行って事情を伺って、その後のことはそれからというふうに考えてまいりたいと思っております
  137. 神谷信之助

    神谷信之助君 政府の方は一応——われわれは不満でありとにかく認められないが、政治決着をしたとこう言っているけれども、警察当局としては事件はまだ捜査継続中であるという態度をとってきてますね。捜査継続中という、捜査の目的あるいはねらい、その内容にはそれは当然——首都東京で白昼公然と拉致された、したがってその事実の解明と実行行為者の解明その他背後関係、こういうことを明らかにするということが当然要求されまたそのことを求めておられるだろう。とすれば当の被害者が、事情聴取の上さらに必要に応じてどうのこうのではなしに、被害者本人ですから東京に来てそして現場も見、拉致の経路もはっきりさせるということはこの事件が捜査継続中であるとすれば当然そのことは要求されることじゃないのですか。いかがですか。
  138. 吉野準

    説明員(吉野準君) 一般論として申し上げればいまおっしゃったようなことになろうかと思いますが、この場合はまずともかくも金大中氏はいま遠く離れた米国におられてその方に対して外務省を通じてわが方が捜査員を派遣して事情を聞きたいという申し入れを行っているところでございますので、何はともあれその結果を見てということで判断いたしたい、こういうふうに考えております
  139. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは聞きますが、警察庁が捜査継続中というのは、いま私が申し上げたような犯行の実態といいますかその他私が言いましたが、そのことを明らかにするつもりなのでしょう。どうなのですか。
  140. 吉野準

    説明員(吉野準君) そのとおりでございます
  141. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、これも報道によりますと金大中氏自身は犯行の実行行為者から直接聞いてそしてそれに対する十分な根拠なり法的根拠もあるというような報道も一部ありますから、当然事情聴取されそれから被害者である金大中氏に日本においてそういうことの実況見分等もやってということが必要になると思うのですが、まさかアメリカに出かけて行って事情聴取してそれで幕引きということではないのでしょうね。あいまいにするというつもりはないのでしょうね。
  142. 吉野準

    説明員(吉野準君) これは本日ただいま現在警視庁に捜査員二十名からなる特別捜査本部を置きまして現在捜査を継続中でございます。何分時間がたっておりますので目新しい進展はございませんけれども、その特別捜査本部を置いてやっておるという形から御判断いただけるように私どもは全力を尽くしてやっておるつもりでございます。 ただ捜査にはそのケースケースによっていろいろとやり方がございます。この場合につきましても決してうやむやにするということではなくて、いませっかく外務省を通じてさらに米国も煩わして事情聴取の手続をお願いしておるところでございますので何はともあれその結果を見守りたいということでございます
  143. 神谷信之助

    神谷信之助君 外務大臣、いまのようなことですが、これから事情聴取について金大中氏から近々返事があるでしょうしそしてこれが実現をするということになれば被害者本人ですからいま私が言ったように訪日をしてもらうということも当然必要になってくる可能性がある。そういう場合にいま金大中さんはアメリカ行きのパスポートしかないですね、だから日本に来る場合には日本政府としては警察庁のそういう捜査の必要上の要請があれば外務大臣としても当然しかるべく善処をするということは当然のことだと思うのですが、いかがですか。
  144. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはどういうことになりますか、とにかくいま捜査当局で鋭意進められておるわけですから外務省もそのおぜん立てをしておりまして、ようやくアメリカ政府の文書によるところの要請が金大中さんに届けられてまだ金大中さんの返事ももらっていない段階ですからいまその後のことについて何だかんだ言う状況ではないと思います
  145. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは政治決着をしたであろうとなかろうと日本の捜査当局は事件のまだ決着はついてないということでいまもお話しのように警視庁に特別捜査本部を二十名置いていまだに捜査を継続中ですね。そして事件そのものは明らかなように、金東雲書記官の指紋もあったりそれから白昼公然とホテルから連れ去られたりあるいは日本のどこから韓国に渡りそうして自宅付近で釈放されるといいますか放たれるという経過も明らかですから、そうするとこれは捜査当局としては犯罪の内容をはっきりせなきゃいかぬしとりわけその実行行為者という問題が重要になってきますね。これが明らかにならなければ事件の捜査は完結したことにはならない。こうなってきますと、韓国の公的権力が行使をされた可能性というのがきわめて強い状況の中でこういう問題が明らかになるとその政治決着そのものは一体どういうことになるのですか。
  146. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 捜査は捜査として続いておりますが、金大中氏の事件については政治的あるいはまた外交決着というものはついております
  147. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、捜査で韓国の公的権力が日本の首都で行使をされたということが明らかになっても、もう日本政府としては政治決着がついておるのだからそれは不問に付すということになっちまうのですか。
  148. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいまの御質問につきましては、韓国側の公権力の行使が明白になったという場合には政治決着を見直すというのが政府の一貫した立場でございます
  149. 神谷信之助

    神谷信之助君 それならわかりますけれども、大臣のさっきの話だと怪しいからね。  それからもう一つの問題は判決文の問題なのですよ。その二度にわたる政治決着の中身の一つ日本における言動は問わないということが入っていましたね。それに関連して重要なのは光州事件に対する判決の中身。判決文の全文というのはすでに日本国内にも流れている。しかし外務省が正式に韓国からもらっているのは判決の要旨であってそれには日本における言動が問題になっていないのだと、背景説明にすぎないのだという趣旨のいままで答弁をされているのですけれども、そうなるとその政治決着の中身である日本における言動は問わないということが、韓国政府日本との間の約束を本当に守っているのかどうか、これをはっきりさせなきゃならぬ問題だと。そうするとこれを確かめる方法、その判決文全文が事実かどうか、本物かどうかということを確かめなきゃならぬと思いますがそれには二つの方法がありますね。韓国政府に確かめる方法が一つある。もう一つは本人自身に確かめる方法がある。そうするといま本人はアメリカにおられるのだから、今度の事情聴取の際に外務省としてはその点について警察庁に、事情聴取をする場合この点についてもひとつ明らかにしてもらいたいという要請をする責任があると思うのだけれども、この点はいかがですか。
  150. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 今回の事情聴取につきましては、警察庁の御依頼に基づきまして現在米政府を通じて事情聴取を行うか否かの意向について金大中さんに接触しておるところでございますので、その事情聴取の中身につきましては警察庁の御意向を体して今後協議の上決定していくことになろうかと思います
  151. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、この事情聴取の中身について警察庁と協議をして必要であれば外務省がいま言ったような問題も含めて事情聴取の要望をする場合もあり得るということですか。
  152. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 現段階において特定の問題が入るかあるいは入らないかということをお答えする段階じゃないということを申し上げているつもりでございます
  153. 神谷信之助

    神谷信之助君 外務大臣ね、これはいかに日韓の間で政治決着をつけた問題にしても、国際的にも明らかな犯罪行為が日本の首都東京で行われたわけで、これがいまの話で警察庁の捜査自身をうやむやにする気がないならばこれは事実が明らかになってくるのですよ。そうすると公的権力の行使の問題やあるいは政治決着の一つである日本における言動が問われていたのかどうかという問題、これは当然明らかになってくる。いま審議官からあったように、そういう事実が明らかになればそれは見直すのだということですから、これをうやむやにするということは日本の主権自身に対する国際的な批判を集中して受けるだろうし重要な問題だと思うのでこの点ひとつ外務大臣しっかりやってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  154. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 金大中氏の事件につきましては日本政府と韓国政府との間ではこれはもう政治決着、外交決着はついておるわけです。ただ一方、日本の捜査当局が捜査を続けておるというのが今日の現状ですし、そのためにいま金大中氏に事情聴取するという努力も行っておりますし金大中氏に対して米国を通じて文書でもって照会もしておる。この返事がどうせ来るでしょうしそれに基づいて捜査当局としても事情聴取のために動かれると思いますから、これは捜査当局の問題として今後捜査は続けていかれるものであると、こういうふうに考えております
  155. 神谷信之助

    神谷信之助君 その捜査を抑えたりはしませんわね。
  156. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは外務省が抑えるとか抑えないとかという権限はないですから、これはもう捜査当局の独自の判断に基づいてやられることは当然のことだと思います
  157. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ時間ですから終わります
  158. 増田盛

    委員長増田盛君) 以上で三件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  159. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、商船における最低基準に関する条約(第百四十七号)の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  160. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、北西太平洋における千九百八十三年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  161. 増田盛

    委員長増田盛君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 増田盛

    委員長増田盛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会