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1983-05-17 第98回国会 参議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月十二日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     藤田  進君  五月十三日     辞任         補欠選任      大城 眞順君     鈴木 正一君      長谷川 信君     安田 隆明君      藤田  進君     広田 幸一君      本岡 昭次君     安恒 良一君      伊藤 郁男君     柳澤 錬造君  五月十四日     辞任         補欠選任      関口 恵造君     山本 富雄君  五月十六日     辞任         補欠選任      広田 幸一君     瀬谷 英行君      黒柳  明君     三木 忠雄君      柳澤 錬造君     柄谷 道一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         矢追 秀彦君     理 事                 伊江 朝雄君                 江島  淳君     委 員                 梶原  清君                 木村 睦男君                 高平 公友君                 内藤  健君                 山崎 竜男君                 小柳  勇君                 瀬谷 英行君                 三木 忠雄君                 立木  洋君                 柄谷 道一君                 田  英夫君    国務大臣        運 輸 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        運輸大臣官房長  犬井 圭介君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        運輸省船舶局長  野口  節君        運輸省船員局長  小野 維之君        運輸省港湾局長  松本 輝壽君        海上保安庁次長  山下 文利君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。長谷川運輸大臣
  3. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ただいま議題となりました船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  船員雇用促進に関する特別措置法は、海上企業をめぐる経済事情及び国際環境変化等により、離職を余儀なくされる船員の数が増大していること等の状況にかんがみ、船員雇用促進に関して必要な措置を講ずることにより、船員の職業及び生活の安定を図るため、昭和五十二年十二月に制定されたものであります。  現在、この法律の附則第二項の規定に基づいて、事業規模縮小等に伴い相当数離職者発生している近海海運業、内航海運業はしけ運送業船舶製造修理業の四業種に係る離職船員の再就職促進するため、昭和五十八年六月三十日までに離職する者に対し、就職促進給付金を支給する特別措置を講じております。  しかし、これら近海海運業等は、国際経済の停滞による輸送需要の低迷、日本船国際競争力低下等事情に加え、国内不況業種影響も受け、今後も引き続き事業規模縮小等がなされ、これに伴って離職船員相当数発生することが予想される状況にあります。したがいまして、この就職促進給付金の支給に関する特別措置の対象となる者の離職日に関する期限を、特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案等の他の不況対策立法期限に合わせて、昭和六十三年六月三十日まで延長する必要があります。  以上が、この法律案提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。  ただいま議題となりました海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  海洋汚染防止につきましては、各国が協調して取り組むことによって初めて十分な効果が期待できるものであるため、早くから関係条約が作成され、国際的に統一された規制が実施されてまいりました。四面を海に囲まれた海洋国家であるわが国といたしましても、国際社会の一員としてこの問題に積極的に取り組み、従来から油及び廃棄物海洋への排出について厳しい規制を実施するとともに、監視取り締まり体制強化等に努めてきたところでありますが、今後とも、海洋環境保全に関する国際的な動向にも十分対応しつつ、海洋汚染防止対策充実強化を図っていく必要があると考えております。  今国会に別途提出されております千九百七十三年の舶船による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書は、近年におけるタンカー大型化、油以外の有害な物質海上輸送増大等を背景として、船舶に起因する海洋汚染の包括的な防止及び規制強化を図ることを目的として、昭和五十三年二月に採択された条約であり、本年十月二日に発効することとなっております。  主要な先進諸国は、すでに同議定書締約国となっており、世界でも有数の海洋利用国であるわが国といたしましても、早期に同議定書に加入し、これらの国々との国際的な連帯のもとに海洋汚染防止を積極的に推進するとともに、その国際的な責務を果たしていく必要があります。さらに、同議定書におきましては、各締約国船舶検査を実施し、その発給する証書を国際的に互認する仕組みとなっておりますので、わが国外航船舶の円滑な運航を確保する面からも、今国会において御承認をお願いしているところであります。  このような情勢に対処するため、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正し、同議定書への加入に伴い新たに必要となる国内法制の整備を図ることとした次第であります。  次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、新たに、軽質油排出についても重質油と同様の規制を行うとともに、一定タンカーについて構造規制を行う等、船舶からの油の排出に関する規制強化することとしております。  第二に、新たに、船舶からの有害液体物質等排出について、油と同様に規制を行うこととしております。  第三に、船舶からのその活動に伴う廃棄物排出について、一定船舶排出防止設備の設置を義務づける等、規制強化することとしております。  第四に、新たに、一定船舶またはタンカー海洋汚染防止設備等について検査を義務づけるとともに、合格した船舶には国際海洋汚染防止証書等を交付することとしております。  なお、本法の施行につきましては、それぞれの規制内容に対応する議定書の各附属書発効日等をその期日として、今後三年間にわたり順次施行していくことを予定しております。  以上が、この法律案提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  4. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 以上で趣旨説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まず、海洋汚染の問題でありますけれども、正直言って、実態がなかなかわれわれにはぴんとこないわけです。海がどういうふうに汚れているのか、何で汚れているのか、その原因は何かといったようなことは、非常に種々雑多になってくると思うんです。  そこで、とりあえず、日本近海における海洋汚染実情について御報告をお願いしたいと思います。たとえば東京湾等は、われわれたまたま飛行機で羽田に離着陸の場合には東京湾というのがよく見えるわけです。その際には、ずいぶん海とはいいながら、黒々として汚い海だなということはわかるわけです。しかし、大阪湾なり瀬戸内海なり関門海峡なり、あるいは伊勢湾、津軽海峡、紀伊水道、豊後水道といったような日本の近辺で狭くなっている地域汚染をされやすい地域実情一体どうなっているものなのかというようなことは、おかの上にいると正直言ってわからないわけです。しかし、問題は、やはり海の上の問題でございますから、それらの実情についてはこういう原因でこうなっておる、魚がすめるとかすめないとか、そこの海では海水浴ができるとかできないとか、いろんな問題があると思うのでありますが、それらの状況について、まず御報告をお願いいたしたいと思います。
  6. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 一般的な御答弁を申し上げまして、なお詳細は担当から詳しくお聞きいただくならば幸せと思います。  海上保安庁が確認している海洋汚染記録確認件数昭和五十七年一月から十二月までの間に油の排出によるもの八百十一件、そのうち船舶によるものが五百四十八件、陸上からのものが三十九件、その他五件、不明二百十九件、こうなっております。油以外のものといたしますと、たとえば廃棄物工場排水等、これが百三十八件、そのうち船舶からのものが二十一件、陸上からのものが百十四件、不明三件。ほかに赤潮によるもの百十五件、合計千六十四件となっております。  五十七年に発生した汚染確認件数海域別に見ると、東京湾が九十一件、伊勢湾が七十七件、大阪湾が百六件、瀬戸内海、これは大阪湾を除きますが、これが二百六十件、その他の海域が五百三十件となっております。  こういう実情でございます。
  7. 山下文利

    政府委員山下文利君) ただいま大臣から御答弁ございましたが、若干ブレークダウンして御報告いたしたいと思います。  日本周辺海域海上保安庁が確認いたしました海洋汚染件数は、ただいまの大臣の御報告のとおり、五十七年におきましては千六十四件でございまして、これは、前年の五十六年は千二百四十四件でございましたので、約一五%の減になっております。幸いにしまして、ここ四年間年々減少の一途をたどっておる状況でございます。  この内訳でございますが、油の排出に起因するものが八百十一件で七六・二%を占めてございます。約全体の四分の三でございます。それ以外に、油以外の排出が百三十八件の一三%、赤潮発生によるものが百十五件、一〇・八%でございます。  これを地域別に、もう一度繰り返すようになりますが、見てまいりますと、大阪湾を除きます瀬戸内海が二百六十件で二四・四%、全国の約四分の一を占めてございます。さらに、大阪湾が百六件の一〇・〇%でございますので、大阪湾を含めた瀬戸内海全国の三分の一を超す発生件数がございます。 それ以外は、東京湾伊勢湾、それを含めますと全国の五〇%以上、これがこれらの地域で集中しておる状況でございます。それ以外の地域につきましては、件数としては非常に少のうございます。  それから、発生原因を探ってまいりますと、赤潮を除きまして九百四十九件ございますが、そのうち船舶からの発生が六〇%、原因者不明が二三・四%でございます。  そういうような状況でございます。
  8. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 原因不明というのは、これは困るわけです。特に、原因不明だと対策が立たないでしょう。海のものとも山のものともわからないなんという言葉があるので、原因不明だとそのまま対策が立たないということになっちまう。  これらの汚染状況をどうやって把握をしているかということです。理屈から言うと、この種の問題は厚生省の問題でもあるし、あるいはまた環境庁の問題でもあるしということになってくるけれども、これらの省庁はそれぞれ海洋汚染状況調査する船舶やら何やら、その種の道具を持っていないだろうという気がするのですが、運輸省のほかにも、環境庁もそれ相応船舶を持って調査に当たるというようなことがあるのかどうか。もっぱら運輸省に限られているのか。運輸省の場合は、そうするとどこが中心になって責任を持ってやっているのか。その辺をちょっとお聞かせ願いたいと思うんです。
  9. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) 現在、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律ではもちろん海洋汚染防止規制をしておりますと同時に、常時それを調査し、監視するということが重要であると考えておりますので、法律の制度としてもそのような体制を予定しておりまして、一つはこの法律の四十五条は、海上保安庁長官は本邦の沿岸海域における海洋汚染状況について必要な監視をするということをまずたてまえとしておりまして、そして汚染があったことを知ったときは汚染状況について地方公共団体の長に通知するということで、地方公共団体もまた汚染問題について関心を持つ態勢をつくろう。  それからさらに、御承知のように、海上保安庁水路部というところで水路業務をやっておりますし、また気象庁海洋気象部というところでやはり海水象調査をしております。そこで、これらの水路業務気象業務による成果、資料を海洋環境保全海上災害防止に活用するということで、これらのための科学的調査をやるということもまた法律のたてまえとしております。  そして、このほか、運輸省港湾局等がやはり現実港湾の各区域において水質調査をしております。あるいは港湾管理者が、港湾法に基づきまして港湾区域内の管理ということの一環としまして水質保全に努めておりますので、やはりそういう意味での水質調査をいたしております。  そういう機関がいずれも水質調査をし、海洋汚染監視をするという体制をとっているわけでございます。
  10. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 広い海のことですから、その水質調査をするとかあるいは汚染原因を調べるとかいうことになると、これは大変な仕事になると思います、われわれがちょっと考えてみただけで も。  そこで、監視体制運輸省海上保安庁中心になっておる。それから地方公共団体に、ざっくばらんに言えば運輸省の所管ではあるけれども、海上保安庁の船が中心になって調べて、もし何か異常が発生した場合には当該の神奈川県であるとか、あるいは愛知県であるとか、静岡県であるとか、しかるべきところに連絡をする。そうすると、それらの当該の県も監視体制を駆使していろいろと調査に当たる、こういうふうにいまの御答弁では聞き取れたわけなんですが、それじゃ各県ごと海上保安庁監視体制に対応するようなそれぞれの監視体制というものは持っているのかどうか。それはいろいろまちまちだろうと思うんですけれども、それ相応のやはり監視体制というものを持ってなきゃできないわけでしょう。たとえば具体的に言うと、船とか飛行機とかいう道具がなければできぬだろうという気がいたしますが、各県がその種の監視体制を持っているのかどうか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  11. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) いま申し上げたたてまえに基づきまして、海洋全域監視というのを海上保安庁巡視船艇航空機が実施しているわけでございます。  それで、沿岸海域の問題も含めまして海上保安庁が実質的に調査をし、かつ、この場合には海上における犯罪の取り締まりということも含めまして、現実汚染実態があれば海上保安庁が出向いてやる、実際に取り調べを行っていくということで、各県の体制は、先ほど申し上げました港湾管理者がそれぞれの港湾区域を良好な状態に管理するという限度におきまして実際の港湾管理の一貫として調査をするということで、各県ごと監視体制というのは、たとえば陸上からの工場排水等監視ということを沿岸そのものでやるということで、沖合いに出て水質をチェックするというような体制はできていないのが現状でございます。
  12. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それじゃ各県といったって、県は率直に言ってそんな気のきいた体制は持っていない、一言で言えばそういうふうに聞き取れるわけです。もっとも、私どもの埼玉県なんというのはそんな監視体制あるわけないですけれども、だから長野県とか群馬県とか、そういう海のない県は原因になる工場汚水なんというものはこれは流すかもしれないけれども、その結果については今度は海に面した地域が問題を処理しなきゃならぬということになるわけでしょう。そういう場合に、海上保安庁でもって手が届くのかどうか、こういう感じがこれは常識的にするわけです。海上保安庁の船というのは、日本国じゅうで各県の沿岸を全部監視するほどの体制はないのじゃないかという気がするんですが、一体保安庁現有勢力といいますか、それらの船舶監視体制能力、その点は一体どうなっているのか、この点もお伺いしたいと思うんです。
  13. 山下文利

    政府委員山下文利君) 海上保安庁といたしましては、海洋汚染が多発する地域を重点的にパトロールするということで、常時航空機巡視船艇を重点配備して、汚染状況監視調査をやっております。ただ、全海域をすべて網羅するわけにいきませんので、どうしても重点的な汚染発生のおそれのあるところを選びまして配置しておるという状況でございます。  それ以外に、廃油ボール、これにつきましては一番影響が大きいわけでございますので、そういうものにつきましては原因究明防止策の確立に資するために、昭和四十六年以来、周辺海域、それから沿岸一定地点、これを四十二ポイント選びまして、定期的にそこで調査を行いまして、廃油ボールの漂流とか、漂着の状況調査しておる状況でございます。  さらに、汚染進行状況を調べる必要があるということで、わが国周辺海域とか、主要港湾などにつきまして、気象庁調査海域を分担いたしまして、これも昭和四十七年以来、定期的に海水とか海底の堆積物、こういうものを取りまして、その中に含まれております油分、PCB、それから重金属、そういったものを分析調査いたしまして、汚染状況を絶えず監視しておる、このような状況でございます。
  14. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まず、その廃油ボールというものですが、これも新聞で読んだ程度しか私には知識がないのだけれども、どういうところでこういうものが発生するのか、その原因は何なのか。これはちょっと取り締まるといったところで主がどこのだれだかというのはこれはわかるのかどうか。飛行機の上からこういうものを探すといっても、これまた気の遠くなるような話なんですが、実際問題として飛行機の上からその種の廃油ボールの存在というものを探して、そしてその追跡調査をするということをやっているのか。どういう地域でもってその種の廃油ボールというものが多く発見をされているのか、その点もお伺いしたいと思うんです。
  15. 山下文利

    政府委員山下文利君) 廃油ボールが現在多く発見されますのは南西諸島から伊豆諸島に至ります黒潮が走っておる地域、これはちょうどタンカールートタンカーがよく走るところでございますので、そのあたりが非常に多く漂流しておる状況でございます。それ以外に、日本海沿岸とか九州の西の方には、若干数は少のうございますが、そういうものが漂着しておる、こういうのが発見されております。  その原因は、船舶からのたれ流しとかいうのが主な原因じゃなかろうかと思いますが、ケースケースによってかなりバラエティーに富んでいる状況でございます。
  16. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 廃油ボールそのもの船舶たれ流しという話がありましたけれども、その廃油ボールそのものを拾ってきて——拾ってきてというとおかしいですけれども、やっぱり拾うことになるのでしょう。分析をすれば、どこの船が流していたものか、そういうようなこともわかるのかどうか。わかった場合に、それが日本の船であるならば警告をすることも指導することもできるかもしれないけれども、外国の船であるというような場合にはなかなかむずかしいことになるのじゃないかと思うのでありますが、その点はどういうことをやっているんですか。
  17. 山下文利

    政府委員山下文利君) 廃油ボールを採取いたしました場合には、それを科学的な分析調査を行いまして、油の性質、そういったものからどの船が排出したか、また池が流れてきた海流、潮流、風向、そういったものから大体の見当をつけたいということで科学的な調査を行っておる状況でございます。  また、それによって原因者が判明いたしました場合には、日本船の場合はこれに対して検挙したりするわけでございますが、外国船の場合には、この法律のもとになっております条約によりまして旗国通報を行いまして、その旗国によって相当の処分をしていただくというようなたてまえになってございます。
  18. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 大変処理がむずかしいと思うんです、この種の問題は。  それで、監視体制なんですけれども、海上保安庁で、たとえば南西諸島と沖縄と鹿児島の間のようなところになるとかなりの広さになるし、それから黒潮の流れる地域といったってこれまた途方もなく広い海域になると思うので、これらの海域一体どのくらいの船舶が常時監視体制をとっているのか、現状はどうなのか、ちょっとその点もお聞かせ願いたいと思うんです。
  19. 山下文利

    政府委員山下文利君) 先生ただいま御指摘のございました主としてタンカールート南西諸島から太平洋沿岸、そのあたりにつきましては常時ヘリコプター搭載巡視船初め大型巡視船を配置いたしまして、それ以外に航空機を絶えず飛ばして常時監視体制を整えておる状況でございます。  なお、これでは必ずしも十分でございませんので、ヘリコプター搭載巡視船を現在増強中でございまして、その監視密度を今後とも高めてまいりたい、このように考えておる状況でございます。
  20. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ヘリコプター搭載巡視船といったって何隻もあるわけじゃないでしょう。その船が現在何隻ぐらいいて、どこでどういうところに配 置をされて、その種の海上の——もっとも監視するのは汚染状況だけだとは思いませんけれども、監視体制をどういうふうにとっておるのか、その点もちょっと具体的に報告していただけませんか。
  21. 山下文利

    政府委員山下文利君) 現在、海上保安庁では、巡視船艇三百五十隻で、汚染監視を含めまして、種々の業務に従事しておるわけでございます。  ただいまタンカールートその他の汚染地域につきましては、それらの船艇を配置しておるわけでございますが、特にヘリコプター搭載巡視船の場合には、巡視船から飛び立ったヘリコプターでもって幅広い監視が行えるということで非常に効率的でございますので、今後このヘリコプター搭載巡視船をどんどんふやしてまいりまして整備いたしたい、このように考えておりますが、現在はなお進行中でございますので、必ずしも十分な状況とは言えないところでございます。
  22. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これは委員長提案なんですけれども、いままでの話を聞いてみると、なかなかわれわれには想像つかないんです。それで、ヘリコプター搭載巡視船がどういうふうにしてそういう海洋汚染状況監視するのか、あるいはそれらの廃油ボールなどというものは実際どんなふうに流れておるものなのか、こういうことは海の上のことなので、ここの委員会でもってやりとりをしただけではなかなかつかめないです。だから、やっぱり一度実態調査委員会としてもやってもらって、それでそれらの具体的な問題について委員が実際に検分をする、こういう機会をひとつ持っていただくように、きょうあしたというわけじゃございませんけれども、その点、ひとつ御提案を申し上げたいと思います。  それから、もう一つお聞きしたいのは、有害液体物質等による汚染防止ということで船舶からの有害液体物質排出ということがございますけれども、こういう問題が一体具体的にはどういうものなのか、どうやって見分けがつくのか、海上汚染された場合、これまた私らにはよくわからないんですけれども、その点その有害液体物質の内容と汚染状況、こういったようなことも御報告願いたいと思うんです。
  23. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 瀬谷君の提案につきましては、後日、理事会において検討いたします。
  24. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) まず、今回の法律改正におきます有害液体物質排出規制について概要を申し上げ、次いで海上保安庁から実際の取り締まりをどのような体制で行うかについて申し上げたいと思います。  今回、この法律の基礎になりました千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書に基づきまして、この附属書有害液体物質海洋への排出について規制をされたわけでございますが、今回の有害液体物質につきましては、海洋環境にとりまして有害と認められる諸物質、これは油以外のもので、かつ、とりあえずは船舶のバラ積みの貨物として輸送される範囲のもの、いわゆるケミカルタンカーが運ぶ種類の液体でございますが、このようなものが実際に多数運ばれておりますが、それを運び終わった後、荷揚げをし、そしてその後にバラスト水を積む、あるいはタンクを洗浄するということをいたしますと、また新たな荷物を積むまでにそのようなバラスト水あるいはタンク洗浄水というものを海に捨てるという事態が生ずるわけでございまして、このようなものは従来、海洋そのものにおきましては比較的全体の量が少ないというようなこと、あるいは残留性につきましては油ほどの問題がないというようなことから規制が延ばされてきたわけでございますが、しかし海洋汚染防止をさらに進めるためにはこのような有害液体物質取り締まりということをあえて条約でも規制しなきゃいかぬという国際的な合意が成立したわけで、今回そういう有害液体物質につきましては、直接廃棄するには廃棄する条件をどうするか、あるいはこれらを浄化するための設備を船舶にどのような義務づけをするかということが主たる内容になっているわけでございます。  実際に、これらの法律に違反した者に対しどのような取り締まりをするかということは、確かに船舶の航行を直接常時監視するということが非常に困難なわけでございますので、法律制度としますと、まず船舶の設備規制ということをかなり重視して、そういう形でまず第一次的なフィルターをかけていくということが条約法律を通じての考え方でございます。
  25. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 たとえば海水汚染される場合に、化学薬品とか有機物質とか、その種の有害物質でもって海水汚染をされて、そこに泳いでいる魚を今度はつかまえてきて、魚市場を通じて家庭でこれを食うというようなこともあり得るわけですそこまで考えるというと、とても魚はおちおち食べられないということになるかもしれないけれども、海水汚染というのが度を超すとそういう心配もしないわけにはいかなくなってくるという気がするのですけれども、その種の問題もこれは人体に及ぼす被害ということでは考えられることなのかどうか、そこまで運輸省では手が及ばないのかどうか、そういう点まで配慮をしていろいろとその対策を講じておられるのかどうか、その点もお伺いしたいと思うんです。
  26. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) まず、有害液体物質による海洋汚染の大きな問題の一つは、陸上で産出された廃棄物海洋投入処分の規制でございます。  現在、この規制につきましては、すでに廃棄物の処理及び清掃に関する法律ということで、環境庁及び厚生省が中心になりまして、そのような廃棄物の処理に当たりまして、特にいま御指摘のありました毒性が残留するものというものの海洋投入を厳しく規制しております。まず、これが第一次的なやり方でございます。  それから、御指摘のような、今度、毒性のあるものをケミカルタンカーで運びました場合の洗浄水あるいはバラスト水というものに含まれます毒性のものにつきましては、これは現在この条約体制では、有害と認められる液体物質をすべてA類からD類まで分類いたしまして、そしてその分類に従いまして捨て方を規制していく、こういう形になっております。  それで、たとえば一番厳しいA類に属しますものはクレゾール、アセトンシアンヒドリン、二硫化炭素等、そういうような分類をしておりまして、このような液体物質を国際的には全部格づけをするということで、そして格づけをされた物だけが一定の処理のもとに捨てることが許容されるという仕組みになっています。そして、どのような毒性があるかということが調査されていない物質につきましては、これは一切海に捨てることが許されないということでございますし、また毒性の強いものにつきましては一定の方法で事前処理をした場合に捨てることが認められますが、その事前処理につきましては、各国のそのような取り締まり機関の確認を受けてから捨てるということが認められる体制でございまして、わが国では海上保安庁がそのチェックをする、確認をする機関として指定することを予定しております。また場合によりますと、海上保安庁長官が指定する海上保安庁長官に代行する者がこのチェックを行うということもあわせて考えております。
  27. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 取り締まる機関とすれば、具体的には海上保安庁ということになるわけです。しかし、そういう毒物を海中に投棄をするというようなことは、やる方にしてみれば、夜陰に乗じて海へ行って投げてくるというと、これはやりやすい仕事じゃないかと素人考えに考えるんですが、そういうことまでちゃんと取り締まりができるものだろうか。おかの上ならば物を投げ捨てるということになると、これは穴でも掘って埋めない限りはわかるわけですが、ところが海の中だとこれは大変むずかしい。毒物を投げたのかどうか、何を投げたのかこれはわからないわけです。だから、それらの取り締まりをやるということになると、海上保安庁だけではなかなかこれはむずかしいのじゃないかというふうに考えられる。  それから、ふん尿等のそういう人間の排せつ物の投棄なんですが、現在でも海上に投棄をするといったようなことが現実に行われているのかどうか。特に、東京とか大阪とかいう人口が集中をしているところでは、そのふん尿の量だって相当なものじゃないかという気がするのでありますが、それらの投棄等についての規制あるいは行政指導等は、これまた運輸省の仕事として現にやっているのかどうか、具体的な事例はどうなのか、その点もお伺いしたいと思うんです。
  28. 山下文利

    政府委員山下文利君) 海上保安庁で把握しております屎尿とか屎尿浄化槽汚泥の廃棄物海洋の投棄量は、五十七年におきましては四百九十一万トンでございます。このうち、東京、横浜、川崎のような大きな都市を控えております第三管区海上保安本部管内での積み出しは二百十二万トンでございます。さらに、大阪、神戸のような大都市を抱えました第五管区本部の積み出しは八十二万トンでございます。  このただいま御審議いただいております海洋汚染及び海上災害防止に関する法律によりまして、廃棄物排出船による屎尿等の排出につきましては、その廃棄物排出船を登録にしてございます。さらに、自動航行記録装置の設備とか、そういったものの構造設備面の技術基準を定めまして、適正にそういったものが排出できるように確保しておる状況でございます。
  29. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 たとえば東京湾を考えてみたところ、東京湾周辺の人口は、優にこれは二千万以上になるわけです。この二千万、三千万という人たちの排出物は簡単に焼却できるというようなものじゃないと思うし、勢い海へ投げるということになると思うんです。ずいぶん前になると思いますが、やはりその種の話を聞いたことがあるんです。東京都なんかでは専用のふん尿の運搬船を持っているという話を聞きました。何でも名前が黄金丸というのでなるほどと思ったんですが、いまでもやっぱりそういうような船が使われているのかどうか、それからどういうところにそれが投棄をされているのか、その点もお伺いしたいと思うんです。
  30. 山下文利

    政府委員山下文利君) ただいま御指摘のような船を持っておるようでございまして、そういう船を使いまして日本周辺の海域で投棄いたしましてもほかの船あるいは人体に影響のないような場所を指定いたしまして、その海域に捨てるような形になっておるわけでございます。  そこで、海上保安庁では、海洋の投棄物を投棄していい海域、これを違反してそれ以外の海域で投入するようなことがあってはいけないというのでそれの監視をしておりますし、それから投棄する場合には一定の基準にまで薄めると申しますか、影響のないようにしてから投げるということになっておりますので、その違反がないかどうか、こういったことを常時パトロールしております巡視船艇航空機でもって監視しておる状況でございます。  さらに、海洋投棄物が積み出される港において随時立入検査等を行いまして、抜き取り検査で基準に合っておるかどうか、こういったこともチェックいたしまして万全を期しておるところでございます。
  31. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 品物の抜き取り検査ならわかるけども、こういうものはどうやって抜き取るのか、海上保安庁の仕事はそこまで及ぶのかどうか、これはなかなか大変だと思います。前にもこの種の話を聞いたことがあるんです。沿岸にその汚物が流れ着いた。ところが、その投げる方の船が、本当ならば沖の方まで持っていって投げる、黒潮に乗っかるようにして投げることになっているのだと。だから、本来ならば大島沖で投げるというのを、めんどくさいものだから手前でもって投げちまった。見つかってから、おお、しまった……といったような話があったということを聞いたことがあるんですけれども、現在でも黒潮へ持ってって、ここへ乗るようなかっこうで投げているのかどうか。先ほど、いろいろな有害物質等も黒潮に乗せて流すような話がありましたけれども、この種の汚物も同様なのかどうか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  32. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) 海洋汚染防止法では、これは陸上からいま言われたような積み出されました屎尿の処理を決めておりますが、これは沿岸から五十海里以上離れたところということをまず決められております。そして、捨て方としますと、これは拡散型と申しまして、まず海面下——海の上でやると広がってしまいますので、海面下から出すということと、必ず走りながら出すという、こういう要件を決めております。実際に五十海里と申しますとかなり離れた距離でございまして、伊豆七島のはるか沖の方へ出ないとこのような排出ができないというたてまえになっております。したがいまして、この近海のパトロールでそのような状況を見つけたときは直ちに違反として取り締まるということで、現在海上保安庁がやはりその沿岸海域をやっていますので、これは比較的網にひっかかるということで、取り締まりがかなり期せられていると思います。
  33. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ふん尿から、あるいは有害液体物質から海に投げて処理をするというのがずいぶんいろいろあるということをいまさらながら思い知らされるのでありますが、たとえば原子力の廃棄物といったようなことになりますと、これまた問題がむずかしくなってくるわけでありますが、この種の問題もやはり保安庁でもって規制の対象としていま処理をするようになっておるのかどうか、これは科学技術庁といったようなところとも関連をしてくると思うのでありますが、その点はどうなんでしょうか。
  34. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) 法律の制度といたしますと、きょう議題とされております海洋汚染及び海上災害防止に関する法律は、このような放射性物質の廃棄につきましては適用をしておりません。これらはいわゆる放射性物質に関します関係の三法等でそれぞれの態様によりまして規制をしているところでございまして、これらの法律ではもちろん海洋投棄について厳密な規制をしております。そして、それは内閣総理大臣の確認を受けて一定の基準に合っているということを確認を受けた場合にのみ捨てることが許されております。そういうことで、現実には実際にどういうところに捨てるかということは非常に慎重を期しているわけでございまして、現実には廃棄をしていないと聞いております。
  35. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 海というのは非常に広いし、また簡単に証拠をつかみがたいということもあるししますから、海に物を投げるというのは、考えようによっては非常に安易な方法なんです。だから、この安易な方法でもって海を汚染されるということになると、やがてその被害というものはばかにならない事態になるということをわれわれも真剣に考えなければならないというふうに思うのでありますけれども、そうすると、船そのものの構造からして相当考えなきゃならぬことになるのじゃないか。まず、船会社の設計段階においていろいろとやっていかなきゃならないということになると思うんですが、船会社の設計段階から造船所における造船の段階等においても監督をし、行政指導をしということになってくると思うのでありますが、そこまで手を伸ばすということになると、これはなかなかえらい仕事になってくると思うのでありますが、運輸省自体にその種の専門家、設計段階から造船の段階等に至るまでの指導が行い得るような体制になっているのかどうか、そこは一体どういうところが所管をしておるのか、その点もお伺いしたいと思うんです。
  36. 野口節

    政府委員(野口節君) いま御審議をお願いしております新しい海洋汚染防止法では、船舶に対しまして構造とか設備につきましてまた新しい規制が加わることになっております。  それからもう一つ、この構造設備規制の適用の仕方でございますけれども、建造の年月その他、船の種類等に応じまして若干複雑になっておりますので、私ども一九七三年にこの条約が採択されて以来、海運業界及び造船業界、それから実際 に、後で申し上げますが、船舶検査を実行してまいります地方海運局、そういうのを含めまして、十分協議を行い、その条約の内容につきまして周知徹底を図ってきたところでございます。  私どもの検査の関係では、全国約六十カ所に地方海運局というものがございまして、そこに船舶検査官というのを配置しておるわけでございますが、この海洋汚染防止法に関する関係の構造設備につきましては、やはり地方におります船舶検査官を活用して実施していくというふうに考えております。こういうことで、できるだけ円滑にこの業務が遂行できるようにこれからも努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  37. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日本は幸いにして、たとえばイラン、イラク周辺のように油が大量に流れて海上を覆い尽くすといったような、それほど大きな問題は生じておりません。しかし、油だとか廃油ボールだとか、この種のものが流れ出すと漁業にも甚大な影響を及ぼすし、環境を汚染することもはなはだしいし、また衛生上も非常に不安がある、こういうことになってくるのでありますが、これらの海上汚染をする油といったようなものを有効に使うとか、利用するとか、処理をするとか、こういうような方法はまだ現在のところ研究されていないのかどうか、そういう余地はあるのかないのか、その点もお伺いしたいと思うんです。
  38. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) ただいま、ちょっと先生の御質問の趣旨が必ずしも明確に受け取れなかったのですが、現在の廃油の処理を有効に今後もう少し活用できるかという御趣旨かと思いますが、現在、各廃油処理事業者は、そこで回収した廃油を適宜やはりそれは他の物質と分離して、できるだけ油分を取り出して、そこで再び、余り質のよくないあれでございますが、燃料として再生使用するという程度のことはしているということでございます。さらに今後、スラッジ等から有効に他の化学的な成分を抽出するということが進みますと、もう少し資源として今後活用することが開かれると思いますが、まだそのような研究が進んでいるというふうには聞いておりません。
  39. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これは素人考えで、なかなかむずかしいだろうということはわかるんです。ただ、海の上に油が出てきた、あるいは廃油ボールなんというのはぷかぷかしている。これをもてあますだけじゃしようがないので、こういうものをたとえばすくい上げて、そしてこれを活用するといったようなことを考えたならば大変に有効じゃないかというふうに素人考えで考えるものですから、そういったような研究が進んでおるのかどうか、こういうことなんです。もし、できることならば、そういう研究等も積極的にやったらいいのではないかという気がいたしましたから、その点をお伺いした、こういうわけです。必要性としてはこれはお認めになっていただけるのじゃないかと思ったから聞いたわけで、これらについて専門的な知識があるわけじゃないので、その点、もし研究機関等がその種の研究を行っているということであれば大変に結構な話だなと思ったのですが、その点はどうなんですか。なければないでいいです。しようがないです、これは。
  40. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) いまお示しのような、まだ回収した廃油ボールを有効に活用するというところまでいっておりませんが、一つの問題としてありますのは、たとえば油が大量に流出した場合に、中和させるような形でこれを乳化させる処理をいたしますが、それをもう一度もとへ戻して油として再使用するというような技術は開発されております。そういう形で流出した油を回収して再使用するというようなことがございますが、いまお示しのような、本当の廃油をどうするということはまだ研究されていないように思います。
  41. 小柳勇

    ○小柳勇君 いまの汚染の問題で、関連して一問ですが、ことしの四月にペルシャ湾に油が流出しまして相当汚染をいたしました。それで、わが国も大変影響がありますし、国際協力の関係から海上保安庁や関係省庁並びに民間からもその専門家が派遣されまして現地調査をしております。その結果、どういうことを勉強してお帰りになったか。将来、日本沿岸でそういうものが起こった場合に、ペルシャ湾のような大きな汚染が起こった場合に早急にこんな対策があるのだというような具体的なものが、勉強になって、しかも具体的に活動ができるのかどうか、そういう点を御説明ください。
  42. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) まず、今回のペルシャ湾の原油流出事故につきましての調査から申し上げますと、これは海上保安庁の担当課長、それからそのほか外務省、通産省の課長等、調査チームをつくりましてペルシャ湾の湾岸諸国を回ってきたわけでございます。  その結果、実際のこれらのクウェートからずっと南の各国におきましては、まだ、新聞で報道されましたような意味での沿岸汚染という状況は確認できませんで、一部のところでごくわずかの廃油ボールが見えたということはございますが、それも一体いつできた廃油ボールか、これも確認できない状況でございます。一部に言われましたようなデサリプラントが汚染され飲料水等に重大な影響があるとか、発電に影響があるとかいうような事態もまだなかったわけでございますが、沿岸各国ともまだ原油流出の根源が押さえられていない現状では、汚染防除のための体制づくりを一生懸命やっていたということで、具体的に日本等各国から具体的な援助を、こういうものが欲しいというような問題はなかったようでございます。ただ、わが国としますと、今後ペルシャ湾の沿岸におきます被害がもし拡大してきた場合にはその防除のための国際協力をするべく、たとえば防災の専門家、油除去のための専門家を派遣するなり、場合によりますと、もし本当に必要なら油を回収する船等、油回収のための実施について何が協力できるかということを検討している状況でございます。  今後、そのような大型の油汚染が起きました場合には、海上保安庁及び民間の油回収船あるいは配備資材等の総力を挙げてそれぞれ回収防除作業をやるということを研究しております。ただ、特に申し上げたいのは、わが国にも比較的大型の回収船もございますし、実際の事故が起きましたときには、それらの資機材を一カ所に集中して使用する等すればかなりの防除ができる、ただ状況によりましては、もちろん完璧を常に期すというわけにはまいりませんが、かなりの程度に防除ができるだろうというふうには考えておる次第でございます。
  43. 立木洋

    ○立木洋君 船特法の一部改正について若干お尋ねしたいと思いますが、雇用状況ですけれども、船員の求職者状況というのはどういうふうになっているのか、まず御説明願いたいと思います。
  44. 小野維之

    政府委員(小野維之君) お答えいたします。  昭和五十七年の十二月末現在、船員職業安定所に受け付けております求職者数が九千九百五十三件でございます。
  45. 立木洋

    ○立木洋君 その求職者の年齢別構成というのはどういうふうな状況になっておりましょうか。
  46. 小野維之

    政府委員(小野維之君) 年齢別構成は、全体はともかくといたしまして、ちょっと御質問の趣旨と変わるかもしれませんが、三年前と現在と比べてみまして、求職者数自体が外航では減少傾向にある、それから漁業はほぼ横ばいで、内航が非常に増加をしております。この増加しております内航、この中で特に増加をしておるのが四十歳以上の人たちである、こういうような傾向でございます。逆に二十歳代については求人はたくさんありますけれども求職者がほとんどいない、こんな形になっております。
  47. 立木洋

    ○立木洋君 おたくの方からいただいた資料ですけれども、確かに内航が急増しているという状況が出ております。これで見てみますと、二十代、三十代、四十代、つまり働き盛りの方々の求職者の状況を見てみますと大体五六%ぐらいです。それから五十歳代が三七・八%。大変な状況だと思うんですが、こういう大変な雇用情勢の中で現在中核六社あるいは中核六社の各系列で五十七年度の減船がどういうふうになっているのか、それか らまた五十八年度の減船計画がどういうふうになっているのか、御説明いただきたいと思います。
  48. 小野維之

    政府委員(小野維之君) 実は、ちょっと私の方の所管でございませんので、調べてまいりましたのが五十七年度中の増減でございます。五十七年度中には中核六社で増加船腹が三十四隻、減りましたのが五十二隻、これは社有船の問題でございますけれども、差し引き十八隻、船腹量にしますと五十万総トン程度の減少となっておるという程度のデータをつかんでおります。    〔委員長退席、理事伊江朝雄君着席〕
  49. 立木洋

    ○立木洋君 これは船舶局長が知っているのじゃないんですか。局長はどこに行ったのだろう。  五十七年度の状況はわかりましたけれども、五十八年度の減船計画なんかについてはおわかりになりませんか。
  50. 小野維之

    政府委員(小野維之君) まことに申しわけありませんが、ちょっと調査をしてきておりません。
  51. 立木洋

    ○立木洋君 私の方で、これは大臣、ちょっと聞いていていただきたいんですけれども、いま各系列の雇用協議会が三月以降いろいろ労使の間で交渉がされていますけれども、これは海運政策としてそれぞれの系列の船舶会社が勝手に減船をするというわけにはいかぬわけで、そういう状況については運輸省もやっぱり十分につかんでおかなければならない状況だと思うんです。これを私たちの方で調べてみましたら、日本郵船の系列では減船が十隻、それから商船三井の系列で減船が八隻、それから川崎汽船七隻、山下日本七隻、昭和五隻、ジャパンライン十八隻、合計五十五隻が五十八年度の減船計画としていま提起されて協議されているんです。これは大変な事態だと思うんですが、こういうのは当然運輸省としてつかんでおかなければならないわけですが、こういう点については運輸省がつかんでいるのかどうなのか。これはもちろん海運政策にも重大なかかわりがあるでしょうが、船員雇用の問題についてもこれは重大な問題として考えなければならないし、こういうむちゃな雇用不安をあおるような提案運輸省としてはどういうふうに指導されていくのか、その点についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  52. 小野維之

    政府委員(小野維之君) 先生がいまおっしゃいました数字というのは、船社の方から社有船の減船計画として提示をされている数字であろうかと思います。実際の系列ごとの労使協議の結果は、それ以外に労務提供船というような形での船がございまして、現在、ちょっと大まかな数字になって恐縮でございますけれども、外航船社の中でグループを組みまして全日海と協議を行っている団体が三つつくってございます。外航労務協会と外航中小船主労務協会、それから協同船主労務協会、三つございます。    〔理事伊江朝雄君退席、委員長着席〕 この船主会が持っている船と、支配下におきまして運航しておる船の合計が約七百隻前後でございます。そのうちの社有船というのは四百隻程度でございまして、残りの三百隻程度のものが労務提供船というような形で運航されておるわけでございます。したがって、私どもの方はその社有船がどういうふうに減るかと申しますよりは、労務提供船を含めた配乗隻数がどう変化するかということを船員局の方では船員雇用のサイドから気をつけておるわけでございます。  これは全日海との話し合いの中で、社有船をたとえば十隻減船すれば原則は一対一ということになっておりますけれども、今回、先生がおっしゃいますように、大変大量でございますので一対一というようなことにならないのではないかとは思いますけれども、いまそういう結論が系列ごとにまだ出ていないということで大変心配はしてございますけれども、いまのところまだ見通しが立たないという状態でございます。
  53. 立木洋

    ○立木洋君 小野さん、あなた、さっき聞いたら、状況は具体的にはわかりませんと言ったけれども、いまの状況ではそういう説明では困るんです。心配しているのなら心配しているような対策を立てないといけない。これは純減なんです、私が言った五十五隻というのは。ですから、これは非常に大きな雇用問題で影響が出てくるわけですから。  大臣、この問題というのは、御承知のように、三十数次にわたって計画造船というのが毎年やられているわけです。それによって近代化船というのがどんどん指定されて建造されてきているわけですが、この近代化船の大きな目的というのは、国際競争力に勝って、そして日本人の船員の職域の拡大を図って雇用の安定を増進するのだ、こういうふうなことになってやられてきた。だから、実際には十八名の乗組員でがまんしてくれということで、いろいろ実験などもやってきたことで強行されたわけです。しかし、定員の少ない近代化船は現在次々にふえていくわけですが、その上にいま言ったような減船計画、これがこのとおりになっていけばこれは大変異常なことになるだろうと言わざるを得ない状況なんです。こういうふうなやり方では、職域拡大どころか雇用不安をつくり出すというふうなことにならざるを得ないので、こういう失業船員を出さないような、そういうむちゃな計画というのはこれは当然きちっと指導をしてやるべきだと思いますが、大臣の御見解を伺っておきたい。
  54. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は船員雇用に多少気を配っているつもりです、専門家じゃありませんが。とにかく日本の場合は大変な時代に入ってきた。船そのものが余ってきた。そしてまた、海外の船員がふえてくる。せっかく大学やら学校を出ても自分たちの行く職場がない。これが一般論です。そんなことからしますというと、こういうものに対する船員をあっせんする団体やらいま出てもおりますし、そして、いかにまた残った諸君が効率よく、余りいま下の方のデグリーでやったやつを資格をよけい取らして給与をよくして安定させるかという形をいまとろうとしているわけです。その間のずれがいまのような話になっておりますので、問題はそのずれをどうなくしていくかということを注目しているわけであります。
  55. 立木洋

    ○立木洋君 そういう船員の求職者について十分に雇用を拡大していく、そういう施策を進めていくという形になっているわけですが、そうしてつくられた雇用促進センターがあります。これが外国船への配乗あっせんの実績の状況というのが五十三年以降どういうふうになっているのか、それをちょっとお尋ねしたいんですが。
  56. 小野維之

    政府委員(小野維之君) 外国船への雇用センターがあっせんしました状況でございますが、五十三年以降でございましたか。
  57. 立木洋

    ○立木洋君 はい。
  58. 小野維之

    政府委員(小野維之君) 五十三年が三百三十二名、五十四年が千五百三名、五十五年が千八百五十五人、五十六年は千三百四十一人、こんな状態でございます。
  59. 立木洋

    ○立木洋君 その内訳ですが、離職船員雇用船員との区別があると思うんですが、その比率、それが各年どういうふうになっているでしょうか。
  60. 小野維之

    政府委員(小野維之君) 比率をちょっと計算してまいりませんでしたが、五十三年が、離職船員が三百十六名に対して雇用船員は十六名でございますから、五%程度でございます。それから五十四年には、三百七十八名の離職船員と千百二十五名の雇用船員。五十五年には、四百七十六名の離職船員と千三百七十九名の雇用船員。五十六年は、四百七名の離職船員と九百三十四名の雇用船員。だんだん離職船員雇用船員の比率というのが、五十三年がちょっと変わっておりまして、後の方では逆転をして雇用船員の方が多くなっておる、こういう状態でございます。
  61. 立木洋

    ○立木洋君 この雇用船員の中で中核六社が占めている比重というのはわかりますか。
  62. 小野維之

    政府委員(小野維之君) 五十三年の十六名というのは全部、六社のうちのある一社でございます。五十四年が中核六社は雇用船員のうちの四四%ほど、五十五年は五〇%、五十六年は五五・八%、約五六%ということになっております。
  63. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、これもこの法の精神から言うとちょっとおかしいんです。いまお話がありまし たように、離職船員というのは、五十三年度だけこれは三百十六対十六です。雇用船員が十六名。それから五十四年、五十五年、五十六年というのはそれが全部逆転している。つまり雇用船員の方が大幅に増加している。  これは、この法案を審議したときに、御承知のように、昭和五十二年十一月二十二日、これは田村国務大臣答弁されている内容ですが、「本法案は、離職船員雇用促進が主たる目的であり、船員雇用促進センターの事業は、これに対処するため、船員雇用対策の一環として行われるものであると理解しております。」「センターの設立後の運用につきましては、」「配乗についても離職中の船員の職域の確保を優先的に考えることとしております。」、衆議院でもこういうふうに答弁されて、この法案の精神を述べられているわけです。また、五十二年十二月八日に行われた参議院での審議の席上でも、これは当然離職中の船員を最優先にする、こういう考え方で異議がないかという質問に対して、当時の高橋船員局長は、「優先的に扱うことにつきましては、さように考えております。」、こういうことになっているわけです。  ところが、離職船員が優先的に扱われたというのは五十三年だけです。そして、御承知のように、現在、先ほど求職者の状況を聞けば、一万人近い人々がいるというわけでしょう。ところが、この雇用船員というのはすでに現在船会社に籍がある人でしょう。こういうふうな精神に反したようなやり方で実際にこの雇用促進センターがやっているというようなことは、これは全くわれわれとしては理解することができないし、離職者を優先でやるというふうなやり方に戻していく必要があるのじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。
  64. 小野維之

    政府委員(小野維之君) その前に、ちょっと御説明をさせていただきます。  雇用離職者の求職状況は一般的にはそうなんでございますが、外航の中で、持っております免状の種類によりまして、大変に求人と求職の間にアンバランスがございます。たとえば外航で、甲種船長、今後一級海技士ということになるわけでございますが、この甲種船長の求人倍率は一・二倍、甲種機関長、一級機関の方の倍率に至っては四倍というような、つまり職を探している人が四人あって、職につきたいという希望を持っている人は一人しかいない、こういうように機関長の場合にはなっております。逆に、外航でも乙種一等航海士になりますと〇・五倍、二人仕事が欲しいということに対して一人しか仕事がない、一等機関士の場合には〇・七倍、こういうふうに職員間でも非常にアンバランスがございます。  そこで、離職船員の場合には、センターの話に入りますが、センターの場合に、外国船に配乗をするには、ワンクルー、一つのクルーをつくりまして、向こうの二十五名なら二十五名、十六名なら十六名、十八名なら十八名というクルーをつくって提供しませんとあっせんが成立しないわけでございますが、センターに登録されております離職船員もただいまの職安の方の比率とほぼ似たような状態になっておりまして、クルーが組めないということが非常に大きな原因になっておるわけでございます。したがって、たとえば五十六年の四百七名というのは、甲種船長、甲種機関長をそろえられた、そこのところに抑えられてそして四百六名になるというような形が出てくる、雇用船員の方にはそれがたくさん残っておるということでございます。
  65. 立木洋

    ○立木洋君 小野さん、それは技術の内容があったり、どういうクルーを組むかとか、あるいはまた本人の要求だとか、いろいろあるから、それは困難があるということはわかります。全然そういうことを無視しているわけじゃない。しかし、安易な対策に流れてしまうというのは、この法の精神からいって間違いじゃないかというのです。実際状況を先ほど言われたのは中核六社でしょう。中核六社の占めている比重というのが五十四年度が四四%、五十五年度が雇用船員の五〇%、五十六年度は五五・八%、つまり五六%近くが雇用船員の、中核六社の余剰人員のいわゆる処理機関みたいにされているわけでしょう、このセンター自身が。そういうことでは法の精神とは違ったのではないか。それはいろいろ問題があっても、十分に調べて、いわゆる自分が要求している仕事の内容等々もよく検討しながらやらなければならない。  大体、会社の状況を見てみますと、日本郵船、これは五十四年度の決算で三十九億円が純益です。五十五年度は六十八億の純益、五十六年度の決算六十五億円の純益。大阪商船三井、これでは五十四年度の決算では三十六億、五十五年度が三十七億、五十六年度が五十八億の純利益。こういうふうにして、ふやしてきている。  つまり一万人ぐらいの実際に失業者がいるわけですから、それを職域を拡大してどういうふうにして仕事につけていくかということのためにやられていくこれは内容ですから、それが中核六社のいわゆる余剰人員を消化するという形にしてしまうと、これは法の精神から違うんです。そうはならないという、最優先はいわゆる離職者、これに対する職域の拡大、これを最優先するのだということが五十二年に検討されたときのこれは精神なんですから、そういう立場でやはり法を実施していくというふうにしてもらわないと、これは法自身が事実上曲げられてしまうということになるのではないかと思うので、この点についての大臣の見解を伺っておきたい。小野さんはいいです。大臣、これは政治的な判断ですから。
  66. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 全日海の諸君とも会いまして、そういう問題については一番熱心なのが全日海ですから、その諸君がこういう状況をどう見ているのか、同時に、このデグリーの問題が大変問題になっていますから、それらとあわせつつ、いかにわが国内に腕のあるところの海員諸君が遊ばないようにするかということをやっておりますから、その中にいまのお話のやつがどんなふうに組み込まれているか、どんなふうな欠陥があるか、私の方でもまたひとつ勉強してみます。
  67. 立木洋

    ○立木洋君 外国船に乗るということは大変な労働条件の低下になるんです、本人にしてみれば。たとえば賃金が低いだとか、あるいはボーナスが出ないだとか、あるいは船員保険もきかぬだとか、失業保険も受けられないだとか、いろいろな問題が出てくるわけです。  いま、確かに船員雇用状況というのは大変な状態にある。そして、先ほど申し上げましたように、海運業においてもいろいろな問題があるから大変ないま減船の異常な事態も進行するかもしれないという状況にあるわけですから、ここらあたりでやはり運輸省がきちっとこの海運行政を見定めながら、いわゆる働いている船員の方々にそういう失業の不安を与えない、さらに失業者に対しては十分にこの法の精神に基づいてきちっと対策が立てられるように正しい実施の仕方をしていただきたいということを強く要望して、私の質問を終わります。
  68. 柄谷道一

    柄谷道一君 同僚議員の方から、ペルシャ湾におけるノールーズ油田の原油流出事故でペルシャ湾一帯が油の汚染によって重大な危機にさらされておる、この指摘はあったところでございます。  言うまでもありませんが、日本は周囲を海に囲まれた島国でございます。しかも、わが国のエネルギーは、近年、代替エネルギー、新エネルギーの開発が急速に進んでいるとはいえ、現状においては大半は石油に依存しているわけでございます。したがって、大量の原油を積んだタンカーが毎日わが国の港に入出港しておる、これが現状であろうと思います。したがって、船舶からの流出油事故対策というものはきわめて重要な政治課題であろう、こう思うわけです。  そこで、仮にわが国海域内で二十万トンクラスの大型タンカーが海難を起こしまして大量の油が流出した場合、これは沿岸漁民ばかりではなくて、臨海施設やその他国民に重大な被害を与えることが予測されるわけでございます。そこで、そうした場合の流出油防除対策は果たして十分なのかどうかというところに一つの問題が生ずるわけ でございます。  私は、本法第三十八条で、船舶からの油の排出事故があった場合、その船舶の船長から最寄りの海上保安部署に通知する義務が課せられておること、そしてその通知を受けた海上保安部署長が管区保安本部にこれを連絡して、保安庁所属の船艇及び各港湾に設置されている流出油防除連絡協議会に出動を求め、官民協同してその排除に当たるというシステム、そして本法によって設置されました海上災害防止センターにその流出油防除処置を命ずることができる、一応、体制的には整備されるわけでございます。  問題は、その防除に当たる船舶実情ということになろうと思います。本法三十九条の四で、総トン数が五千トン以上のタンカーは、東京湾伊勢湾瀬戸内海など運輸省令で定める海域を航行する場合は、一時間に四十キロリットル以上の油を回収できる油回収船を配備することが義務づけられており、現在、陸上の基地に油回収船が共同配備されておるということも承知いたしております。  しかし、これは世界に例を見ない日本だけの規制でございまして、民間負担という面からも問題があり、かつ四十キロリットル回収できる二百トン足らずの回収船では防除体制としてはきわめて不十分と言わなければなりません。もちろん、このほかに、海上保安庁は重要港湾を管轄している保安部においてオイルフェンス展張船、油回収船を配備しておりますが、これも二百トン前後の船艇でございます。各港湾建設局の方にも約二千トンクラスの油回収兼ごみ回収船を置いておりますけれども、これだけでも十分と言えません。その他石油コンビナート防災法によりまして油回収船を配備いたしておりますが、これも小型船艇でございます。このように、こう言っては失礼でございますけれども、ミズスマシ程度の小型船艇を総動員いたしましても、波が高いという場合はこれはなかなか回収がむずかしくて被害がどんどんと拡大していく危険があるわけです。  そこで、近年、大型の一万トンクラスの油回収船を国の予算で建造して、海水と油を一挙に吸い込みながら船内で油と海水を分離しつつ早急に油の回収ができるということが技術的に可能であるということが言われ、かつ全日海等でもその大型油回収船の建造とこれを重要港湾に配備する必要があるということが強く指摘されておるわけでございます。  こういう面について、運輸省海上保安庁として積極的に取り組む意欲をお持ちなのかどうか、端的にお伺いいたします。
  69. 山下文利

    政府委員山下文利君) ただいま先生から御示唆いただきました流出油の防除体制は、まずそのような体制で臨んでおるわけでございますが、数の上では十分準備しておるつもりの回収船ではございますが、まだまだ必ずしも十分とは言えないという御指摘でございます。ただいまの一万トン級の油回収船の建造はどうであろうかという御示唆でございましたので、私どもとしては勉強をして前向きに研究、検討さしていただきたい、このように思っております。
  70. 柄谷道一

    柄谷道一君 運輸大臣、国家予算非常に窮迫している現状でございまして、この実現にはいま保安庁の方で前向き検討というお答えがあったんですけれども、なかなかこれは壁は厚いと思うんです。  そこで、私はこの問題について、やはり運輸大臣自身が不測の事態に備えた油防除体制を充実するという視点から、これは国益のためにも不測の事態を防除する、このような試みは前進させる必要があろう、こう思うんです。大臣のお考えはいかがでございますか。
  71. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) おとつい、海上保安庁の記念日で、私、東京湾で船にずっと三時間ばかり乗りまして、いまのオイルフェンスの船、作業をしている模様等々を改めて現地で見たわけであります。これはやはり大事なことでございますが、油が多少いま安いと言うたって永久に買わなければなりませんし、また事故を起こしたら最後、大変なことですから、その一万トンがすぐいま必要かどうかは別として、組合の諸君なりあるいはまた技術者の諸君に模様を聞きながら勉強し続けよう、こう思います。
  72. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひ、この問題は、少なくとも来年度予算で調査費等を計上して、島国日本、しかも重油にエネルギー源を頼らざるを得ない、こういう日本実態に照らして万全の対策がとられるようにこれは強く求めておきたい、こう思います。  次に、今回の改正はMARPOL73/78の議定書附属書IからVに基づく国内法の整備でございますけれども、その附属書Vに船舶からの廃棄物排出規制が定められております。これに関連する問題でございますけれども、最近わが国港湾内に海上浮遊ごみが非常に多い。このために小型船が、あるときはプロペラを曲げましたり、あるいはビニール類が、船のエンジンを冷却させるために海水を取り入れておる取り入れ口、いわゆるシーチェストに詰まった結果航行不能になるという事故が出まして、航行安全上非常に多くの問題が出ておるわけでございます。  そこで、これらの海上浮遊ごみは船舶から廃棄されるものというよりも、むしろ大部分は大雨の後の河川から港に流れ込むもの、ないしは港湾の岸壁から不法に投棄されるものが非常に多いというふうに私は聞いておるわけでございます。したがって、船舶からの廃棄物だけを規制しても港湾内における海上浮遊ごみをなくするという対策としては万全ではない、こう思うわけでございますが、これらのごみの回収体制一体どうなっているのか、これをお伺いいたしたい。
  73. 山下文利

    政府委員山下文利君) 港湾区域内におきましては、港湾管理者管理業務の一環といたしまして、必要に応じましてみずからごみ回収船をもちましてごみの回収を行っております。さらに、主要港湾では、民間団体等から成ります清港会がございまして、これがごみ回収等を行っております。海上保安庁の船その他がごみの発見をいたしましたら、直ちに通報いたしまして、これらは回収しておる状況でございます。  さらに、先生の御指摘のように、河川等から流れてくるごみ、そういったものにつきまして原因者のところで押さえなければならないのじゃないかという御指摘もございますので、各港湾内ごとに、港湾管理者、それから河川を管理しております建設省関係者、そういった関係者が集まりまして連絡協議体制を整えまして、港湾の美化、清掃、こういったことに努めてまいりたい、このように思っております。
  74. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま御答弁のありました清港会でございますけれども、九州地方では退職船員の会に協力を求めておるという事例もあると承知しておるわけでございますが、こういう制度を全国的に育成して、退職船員というものを積極的に活用しつつ、ごみの回収、港湾の維持というものを図っていくということはきわめて有効な私は手法であろう、こう思うことが一つ。  それからもう一つは、いま御答弁にもございましたけれども、実態はキャッチボールが行われているんです。このごみの原因者一体何なのか。河川だとすれば、これは建設省になるわけです。また、これは海上保安庁ではないか、いや、これは運輸省港湾局ではないかということで、この問題を指摘いたしましても、その原因者をめぐってキャッチボールが行われて、なかなか対策が前へ進まない、これが現状だと言われておるわけでございます。  そこで、建設、海上保安庁港湾局などの関係者を網羅する連絡協議会、これはすでに設けられているところもありますけれども、これをもっと充実をいたしまして総合的施策でこれらの対応に当たる、これは縦割り行政の欠陥をそういう面でカバーしていく、こういう対策がきわめて必要であろう。この現に出たごみの回収、そして原因者というものを求めつつその大もとを断つという対策、この二つが並行しませんと、この問題の解決はなかなか進まない、このように認識するもので ございます。私の意見に向かっての前進がお約束していただけますか。
  75. 山下文利

    政府委員山下文利君) 二つの御指摘ございましたが、最初に退職船員の活用のお話でございますが、これは港ごとの清港会の実情に応じまして育成強化していきたいと思いますので、その場合に退職船員の活用というのは一つの方法であろう、このように考えております。  第二点につきましては、先ほどもちょっと御説明申しましたが、関係者間の連絡調整を緊密にしてまいる方法を考えてまいりたい、このように思っております。
  76. 柄谷道一

    柄谷道一君 全日海では、前者の方について大会等でも積極的に協力しよう、こういう方針が打ち出されているわけでございますから、大臣、全日海とよくお打ち合わせを願いまして、これら経験に富む退職船員というものを十分に活用する、こういう体制についてひとつ御努力をいただきたいと思います。  次に、船特法の一部改正法案について御質問いたしますが、九十六国会におきまして船員法及び船舶職員法の一部改正法案が可決されました。その附帯決議として、当参議院の運輸委員会においては、「船員制度の近代化に当たっては、日本船員の知識と技能をいかし、職域の拡大に努めること。」、また、「日本船を中核とする我が国商船隊の整備を促進し、日本船員雇用の安定、拡大に努めること。」、これが附帯決議として議決されているわけでございます。  また、衆参両院の運輸委員会において、「STCW条約国内実施及び船員制度の近代化を円滑に推進し得るよう既成船員及び新規船員に対する教育の充実を図ること。」も議決されております。  ところが、私はこの議決が、船員労働行政をつかさどる運輸省として、この議決に基づき着実にその施策が前進しているのかどうか、この点についてまだまだ不十分ではないかと思考します。  同時に、私は、かつて中央職業安定審議会の委員を務め、また長く社労委員会にも所属しておったわけでございますが、都度、私が主張してまいりましたのは、雇用対策として海上部門におきましては陸上部門の雇用四事業という制度に相当するものが現在存在していないのではないか、他の委員からも指摘されましたが、今後、長期の海運業界の経営低迷から生ずる船員の過剰、さらには船員の中高年化ないしは若年層の極端な不足というものが予測されるわけでございますので、私は、この際、従来の制度の上に船員雇用対策を進めていくという発想ではなくて、視点を新たに陸上との調和というものも十分配慮しつつ抜本的な雇用対策を検討する時期に至っているのではないか、こう思うのでございます。  時間がございますならば具体的に指摘をいたしたいところでございますが、私の質問が許されておりますのは四十六分まででございますので、この点は運輸大臣から今後の船員雇用に関する基本的な考え方と抱負をひとつお伺いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  77. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) これは大事な問題でございます。私の方と厚生省、労働省、皆あわせて、いまのあなたのお話の線で改めて考えていきたい、こう思っております。
  78. 柄谷道一

    柄谷道一君 終わります。
  79. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  80. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  81. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  長谷川運輸大臣
  83. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ただいま船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、慎重御審議の結果、御可決をいただきました。まことにありがとうございました。
  84. 矢追秀彦

    委員長矢追秀彦君) 本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十七分散会