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1983-03-07 第98回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月七日(月曜日)     午前九時三十分開議  出席分科員    主 査 砂田 重民君       高鳥  修君    宮下 創平君       稲葉 誠一君    小川 国彦君       川本 敏美君    大内 啓伍君       岡田 正勝君    兼務 沢田  広君 兼務 有島 重武君    兼務 斎藤  実君 兼務 玉城 栄一君    兼務 西中  清君 兼務 安藤  巖君    兼務 榊  利夫君 兼務 野間 友一君    兼務 藤田 スミ君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵大臣官房会         計課長     冨金原俊二君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵大臣官房審         議官      塚越 則男君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省理財局次         長       勝川 欣哉君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁長官   福田 幸弘君         国税庁次長   酒井 健三君         国税庁税部長 角 晨一郎君         国税庁調査査察         部長      大山 綱明君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      八木橋惇夫君         大蔵省銀行局保         険部長     猪瀬 節雄君         農林水産省構造         改善局農政部農         地業務課長   河合 正彭君         運輸省航空局飛         行場部長    栗林 貞一君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事)   山口 益弘君         参  考  人         (日本中央競馬         会常務理事)  塩田 清隆君     ───────────── 分科員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     小川 国彦君   藤田 高敏君     川本 敏美君   大内 啓伍君     岡田 正勝君 同日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     稲葉 誠一君   川本 敏美君     藤田 高敏君   岡田 正勝君     大内 啓伍君 同日  第一分科員有島重武君、斎藤実君、西中清君、  第三分科員安藤巖君、野間友一君、第四分科員  玉城栄一君、榊利夫君、第七分科員沢田広君及  び藤田スミ君が本分料兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算  (大蔵省所管)      ────◇─────
  2. 砂田重民

    砂田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算大蔵省所管について、政府から説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十八年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、五十兆三千七百九十六億三百万円となっております。  このうち主な事項につきまして申し上げますと、租税及び印紙収入は三十二兆三千百五十億円、専売納付金は九千八百七十七億七千九百万円、雑収入は三兆六千四百七億六千万円、公債金は十三兆三千四百五十億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十一兆六千五百六十二億五千三百万円となっております。  このうち主な事項につきまして申し上げますと、国債費は八兆千九百二十四億六千万円、政府出資は二千百五十五億円、予備費は三千五百億円、決算調整資金へ繰り入れは二兆二千五百二十四億九千三百万円となっております。  次に、当省所管の各特別会計歳入歳出予算につきまして申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入二百四億五千八百万円、歳出二百八億五千八百万円、差し引き四億円の歳出超過となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計歳入歳出予算につきましては、予算書等によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして申し上げます。  日本専売公社におきましては、収入二兆八千二百九十億九千八百万円、支出二兆八千八百三億五千七百万円、差し引き五百十二億五千九百万円の支出超過であり、専売納付金は九千八百二十七億六千七百万円を見込んでおります。  このほか、国民金融公庫等の各政府関係機関収入支出予算につきましては、予算書等によりましてごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。
  4. 砂田重民

    砂田主査 この際、お諮りいたします。  ただいま竹下大蔵大臣から申し出がありましたとおり、大蔵省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 砂田重民

    砂田主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────   〔参照〕    昭和五十八年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算に関する説明  昭和五十八年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、五十兆三千七百九十六億三百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、二兆八千百七十四億六千三百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、租税及印紙収入は、三十二兆三千百五十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆八千三百七十億円の増加なつております。  この予算額は、現行法による租税及び印紙収入見込額三十二兆三千八十億円に、昭和五十八年度の税制改正における租税特別措置整理合理化及び貸倒引当金見直し等による内国税関係増収見込額三百三十億円を加え、関税率改定等による減収見込額二百六十億円を差し引いたものであります。  次に、各税目別に主なものを御説明申し上げます。  まず、所得税につきましては、十三兆八千五十億円を計上いたしました。  法人税につきましては、租税特別措置整理合理化及び貸倒引当金見直し等による増収見込額を加えて、九兆四千九百七十億円を計上いたしました。  以上、申し述べました税目のほか、相続税七千九百三十億円、酒税一兆八千六百億円、揮発油税一兆六千五百三十億円、物品税一兆三千百四十億円、関税七千二百億円、印紙収入一兆三千三十億円及びその他の各税目を加え、相税及印紙収入合計額は、三十二兆三千百五十億円となつております。  第二に、専売納付金は、九千八百七十七億七千九百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、二千二百五十九億三千二百万円の増加なつております。  この納付金は、日本専売公社納付金九千八百二十七億六千七百万円、アルコール専売事業特別会計納付金五十億千三百万円を見込んだものであります。  第三に、雑収入は、三兆六千四百七億六千万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆七千八百六十一億二千八百万円の増加となっております。  この収入のうち主なものは、日本銀行納付金一兆千二百八十七億円、日本中央競馬会納付金千八百八十八億二千七百万円、日本電信電話公社臨時納付金二千四百億円、特別会計受入金七千四百五十四億五千三百万円、補助貨幣回収準備資金受入一兆千六十三億九千三百万円等を見込んだものであります。  第四に、公債金は、十三兆三千四百五十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆円の減少となっております。  この公債金のうち、六兆三千六百五十億円は、建設公債発行によることとし、残余の六兆九千八百億円は、特例公債発行によることと致しております。  最後に、前年度剰余金受入は、十七億五百万円となっております。  なお、別途、たばこ小売定価改定等のため「製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律」(案)、補助貨幣回収準備資金取崩しのため「造幣局特別会計法の一部を改正する法律」(案)並びに特例公債発行及び自動車損害賠償責任保険特別会計からの一般会計への繰入れ等のため「昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律」(案)を提出し、御審議をお願いいたしております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十一兆六千五百六十二億五千三百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、三兆六千五百八十三億千九百万円の増加なつております。  これは、国債費が一兆二千八百五十五億二千七百万円、予備費が千三百億円、決算調整資金へ繰入が二兆二千五百二十四億九千三百万円増加いたしましたこと等によるものであります。  以下、歳出予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、第一に、国債費につきましては、八兆千九百二十四億六千万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計の負担に属する国債の償還及び利子等の支払並びにこれらの事務の取扱いに必要な経費財源を、国債整理基金特別会計へ繰り入れるためのものであります。  なお、先ほど申し述べました「昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律」(案)に基づき、昭和五十八年度において、前年度首国債総額の百分の一・六に相当する額及び割引国債に係る発行価格差減額年割額に相当する額の繰入れは行わないことと致しております。  第二に、公務員宿舎施設費につきましては、二百六十四億六千四百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国家公務員に貸与する宿舎施設整備に必要なものであります。  第三に、政府出資につきましては、中小企業信用保険公庫等機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として、二千百五十五億円を計上いたしておりますが、その内訳は、中小企業信用保険公庫五百五十五億円、海外経済協力基金千六百億円であります。  第四に、経済協力費につきましては、五百四十二億九千六百万円を計上いたしておりますが、この経費は、発展途上国に対する食糧増産援助等に必要なものであります。  第五に、予備費につきましては、予見し難い予算不足に充てるため、三千五百億円を計上いたしております。  最後に、決算調整資金へ繰入につきましては、二兆二千五百二十四億九千三百万円を計上いたしておりますが、この経費は、昭和五十六年度決算不足の補てんに伴う決算調整資金から国債整理基金への繰入れに必要な資金を、一般会計から決算調整費金に繰り入れるためのものであります。  次に、当省所管特別会計のうち主な会計につきまして、その歳入歳出予算概要を御説明申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入二百四億五千八百万円、歳出二百八億五千八百万円、差引き四億円の歳出超過なつております。これは、先ほど申し述べました「昭和五十八年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律」(案)に基づき、繰越利益金のうち四億円を一般会計に繰り入れることとしていることによるものであります。  次に、印刷局特別会計におきましては、歳入七百十六億九千五百万円、歳出六百四十八億三千八百万円、差引き六十八億五千七百万円の歳入超過なつております。  以上、出し述べました各特別会計のほか、資金運用部国債整理基金外国為替資金産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計歳入歳出予算につきましては、予算書等によりまして御覧いただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、日本専売公社におきましては、収入二兆八千二百九十億九千八百万円、支出二兆八千八百三億五千七百万円、差引き五百十二億五千九百万円の支出超過となっております。  また、専売納付金は、先ほど申し述べました「製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律」(案)による改正後の「日本専売公社法」に基づいて、九千八百二十七億六千七百万円を見込んでおりまして、前年度予算額に比較して二千二百二十八億三千九百万円の増加なつております。  なお、日本専売公社事業のうち、たばこ事業につきましては、昭和五十八年度の製造たばこ国内販売数量を三千百三十一億本と見込んでおります。  このほか、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫医療金融公庫、環境衛生金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各政府関係機関収入支出予算につきましては、予算書等によりまして御覧いただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。     ─────────────
  6. 砂田重民

    砂田主査 以上をもちまして大蔵省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  7. 砂田重民

    砂田主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。まず、沢田広君。
  8. 沢田広

    沢田分科員 おはようございます。御苦労さまです。  大臣、来たばかりでありますが、予算委員会の続きでありますから、一応原則的な問題だけについて二、三雄認をしながら、細かい問題でありますがあと進めてまいりたいと思います。  減税の問題は国民的な要求で、大臣ももしあるとすればというようなことである程度その方法などについても述べられましたが、まず第一に、今年度の歳入見込みは果たして予定どおり確保できるのかどうか、その辺の見通しのほどについてひとつ見解を承りたいと思います。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる五十七年度の歳入見込みについて、補正後予算に比してこれが確保できるかという御趣旨でございます。もとより今日予算を御審議いただいております限りにおいてそのことを前提として御審議をいただいておるわけでございますが、今日までのもろもろの推移を見てみますと、必ずしも悲観的ではないという表現もできるかと思うわけでございますけれども、何分まだ三月期決算とか大物の法人税等が今後の問題でございますので、にわかに増収があるとかいうような状態には必ずしもない。普通の場合、三十兆でございますとその一%の三千億というものを私どもある意味において誤差の範囲というような考え方で当たってみるわけでございますが、いずれにしても、少なくともそういう範囲内の問題になるのではなかろうかというある種の期待を持ちながらのお答えをいたすわけであります。
  10. 沢田広

    沢田分科員 四ドルぐらい石油の値下げが行われることによる経済へのはね返りについては、経済企画庁、通産省、やってまいりましたが、いろいろ見方があるようであります。私は消費者に還元をしてほしいということを言ってきたわけでありますが、大蔵省としては、これによって得る国内での税収の増に対する見通しについてはどうお考えになっておられますか。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 この石油価格の下落は、総体的には日本経済にいい影響をもたらすという結論になろうかと思うのでありますが、当面のところ、まだ額が決まったわけでもありませんし、時期が決まったわけでもないわけでございます。ただ、私どもといたしまして、特に石油業界自体におきましては、いわば在庫の高いものの評価がえ等からいたしますと、この問題が増収という形になってあらわれてくるのはかなり先の話ではなかろうか。ただ、石油を原料として使用いたしますもろもろ企業につきましては、いずれにしても悪い影響が出るはずはないわけであります。  それにいたしましても、今日値下がりが確定をいたしまして、それが日本国内の市場に届くということになりますにはかなり時間もかかるのではないか。その段階において出てまいりますのがいま沢田委員のおっしゃった議論であって、ある意味においてそれを消費者価格として消費者に直接還元すべきか、あるいは法人税等の形において国にこれを増収として期待して、別途減税その他何らかの形において還元すべきかというところは、恐らく政策選択の問題として、はっきりすればするほどそのことが大きな課題になるであろうということは私どもも予測いたしておりますが、にわかにいま仮定の上においてどれだけが増収に期待でき、あるいは消費者にはどれだけのものが還元できるかという状況には今日なおございません。その際に大きな政策選択課題になるだろうと私は思っております。
  12. 沢田広

    沢田分科員 一つだけ念を押しておきたいのは、減税はある意味において選挙のぼり立てみたいなものであって、幻の減税という悪評もなくはございません。選挙前だけの一つの見せかけであって、そのときになれば金がないからあきらめてくれ、選挙が終わってしまえばそう言われるのじゃないかと、大蔵大臣としてみたら全くけしからぬ、冗談じゃない、こう言いたいところなんだろうと思うのでありますが、そのとおりに理解をしてよろしゅうございますか。前の方じゃなくて後の方の理解です。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり国権の最高機関たる国会を構成する各党の合意事項に基づき議長あっせん、こういうことで政府がそれを承知しておるという立場で対応するものでございますので、選挙を意識すべきものじゃないのじゃないか、また、衆議院の選挙は来年が任期でございますから、選挙から選挙へということになりますと、そういうことばかり考えてこの政策運営をやったら、将来もっと大きな意味でがつんと国民の皆さん方にやっつけられる、政権交代もあり得るということでございますから、拳々服膺まじめに対応しなければならぬ課題だと思っております。
  14. 沢田広

    沢田分科員 もう二つばかり大臣に……。  人勧の問題は、政府としてはやっと助かったな、ILOでもあきらめてくれたと思っていたら、おっとどっこい最後にはやはりこれはやらなければいかぬじゃないか、貿易摩擦その他に対する影響等を考えますと、ILO勧告はある意味において十分配慮しなければならぬ条件になってきている。これは国内政治だけの問題じゃなくて、世界の信義の問題にかかわってくるということになると思いますが、大蔵大臣としてはこれをどう受けとめておられますか。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 政府見解といたしましては、これはあくまでも五十八年度の人事院勧告が出た段階において、従来の経緯なり法のよって立つ精神等々を十分尊重しながら対応するということがたてまえでございます。ILOのこの間の意見につきましては、政府見解を十分理解した上で本報告が出されたものであるというふうに考えております。  ただ、この問題に対する正確な評価ということになりますと、これは私からいまここで申し上げるべきものではなかろうと思っております。それぞれの解釈の角度もございましょうけれども人事院勧告制度そのものが重大な意義を持つという認識ILOにもあり、そして、たとえ五十七年度見送りを決定したとはいえ、私ども認識の中にもそれは存在しておるということが私が申し上げ得る限界ではないか、こういうふうに考えております。
  16. 沢田広

    沢田分科員 もう一つ提案があるのでありますが、脱税ワーストテンとかいろいろ提起されているものがございます。この中にはいろいろあると思うのですが、一つ教育減税という意味でたとえば百万なら百万、これは五十万にするか百万を超えるか、これは提案一つの例でありますが、それを超えた場合に五万円ぐらい税金として減額をする方途を導入する、そうしますと、これはどうしても領収書を添付するということになってきます。学習塾などについては、もうほとんど領収書発行などはない、人員の把握もほとんど不可能である、しかもこの塾通いは今日きわめてはんらんをしている、こういう状況の中でそれを捕捉していく上においても、ある一種の減税を取り入れることによって父兄も喜ぶでしょうし、総枠をある程度把握することにも効果がある。これは三万であるか五万であるか、その減税額には私はそれほどあえてこだわるものでもありません。それからまた、百万であるか五十万であるか、これもそうこだわりません。しかし、そういう制度を導入することによって今日学歴社会の中であえいでいる父兄に対する一つの思いやりというものも込めながら、同時に徴収効率を上げていくという面への一つ効率、加えてその中身を把握しやすい条件にしていくということを含めて、これは一般減税とは分けまして取り入れる制度の対象になり得ないかどうか。これはいまでも国税庁が大変苦労しているわけなんでありますから、金額の多寡は一応ここは別にしまして、その制度を導入していくことが今日必要になってきているのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 これは沢田委員かねてから御主張なさっておりますが、いつも決まったようなお答えをするようでございますけれども、五十二年十月の税調答申もこの問題に触れられております。さらにそういう議論を踏まえまして、今度、御報告申し上げましたことについて、五十五年十一月の「税制上とるべき方策についての答申」という中にも盛られております。これは「教育費控除豪雪控除等新規控除創設の要望があるが、そもそも納税者個別的事情税制においてしん酌するにはおのずから限界があると認められるので、税制をいたずらに複雑にすることを避ける見地からも、これらの新規控除創設は適当でない」、こういう答申をいただいておるわけでございます。  ただ、いまおっしゃいましたのは、むしろ学習塾等々に対するいわば徴税側からの繁雑な問題等々も含められての御提言でございます。したがって、その問題は従来の問題とは別として、税制調査会へこの議論があったことを改めて御報告して御検討いただくべき課題ではないか、こう思っております。
  18. 沢田広

    沢田分科員 続いて後は事務当局関係でありますが、週休二日制は報道の関係によれば八月でしたか、その予定でやられるということのようでありますが、その事実の確認が一つ。  それからCDはとりあえず使わせないということでありますが、CDが完備できる見通しはいつごろと置いているのか、お答えいただきたいと思います。
  19. 宮本保孝

    宮本政府委員 週休二日制の実施につきましては、報道されておりますように八月の第二土曜日から実施いたす予定でございます。  それからCD機整備状況につきましては、都市銀行地方銀行等はすでにほとんど一〇〇%完備いたしておりますが、信用組合、農協、郵便貯金等々におきましてはまだかなりおくれている状況でございますので、当分かかるのではないかという気がいたしております。
  20. 沢田広

    沢田分科員 当分ではなくて、一方ではCDがないと困るという、これで元も子もなくしてしまっては何にもなりませんので、何とかそれを促進する——大臣、また後になりますから、少し休んでいて結構です。  それを当分というような表現でいくのがいいのか、ある一定の指導を強めるくらいの決意があってある程度の目標年次を設定しませんと、待ち切れなくなってくる人たちも出てくるし、それをつけている人たちも、機械を持っていて使わせないでいる、いつまでもクローズさしておくというわけにはいかなくなると思うのですね。ですから、ある一定の期間中にはとりあえず整備をしろという行政指導は当然必要になってくるのじゃないか。何か当分というのが五年になるあるいは三年になる、これではきっともたないですね。その辺の見通しをきちんとつけて、一定の大体の目標年次を、一年以内くらいには何とか準備しなさいとかそういう体制をとらないと、ぼんやりとこのまま延ばしていれば、人の足を引っ張っていればいいのだということでかえってサボタージュするところも生まれるかもしれぬ、こういうことになると思うので、その点あえてもう一回お答えいただきたい。
  21. 宮本保孝

    宮本政府委員 この点につきましては、個々の金融機関の経営状況等ございます。したがいまして、私どもといたしまして何年の間にというふうな指導はなかなかいたしにくいと思いますけれども、まさに先生おっしゃるとおり、CD機をとめて休むというのはまさに金融機関のサービスとしては邪道といいますか、反対の方向でございますので、私どもといたしましてもできるだけ早く全金融機関につきましてCD機が備えつけられるように努力してまいりたい、こう思います。
  22. 沢田広

    沢田分科員 不十分ですが、時間の関係で、一応努力を期待して次へ行きます。  サラ金法、週休二日制も含めて大変皆さんに御協力をいただきながらようやく参議院の方でも目鼻がつきかけてまいりました。サラ金の被害は毎日の報道紙に伝えられるとおりであります。お互いに借りる側の恨みあるいは貸している側の恨みつらみがいろいろと事件を起こしてまいります。だから、正規のルールの上に乗せなければならぬと思いますが、もし成立をしたならば早急にというか、ほぼ一カ月くらいの後には施行をする考えであるというふうに考えていいのか、どの程度の期間を置くつもりなのか、その辺の施行の関係についてお伺いをしておきたいと思います。
  23. 宮本保孝

    宮本政府委員 私どもといたしましても、一刻も早くこの法律が成立いたしまして、政省令通達を出しまして実施に移したい、こう考えておるわけでございます。  ただ、この問題、実は貸し金だけをやっておる企業についての指導というのは今度私どもといたしまして初めてのことであります。それから、従来は都道府県知事への届け出によりまして、ただ調査権限があるというふうな状況でございましたので、今回のようにかなりの権限を与えていただきまして内容の充実した法律の施行になりますと、相当慎重な手続なり準備が必要かと思います。  同時に、この法律は比較的文言としては抽象的な規定が多うございまして、行政にゆだねられている分野が非常に多いかと思います。したがいまして、衆参両院におきます御審議のいろいろな具体的な内容もかなり政省令通達で盛り込んだ上で実のある行政をしていかなければいけないと思っておりますので、やはり法律制定後六カ月間くらいは必要ではないか、こう思っております。
  24. 沢田広

    沢田分科員 続いて、国有財産の問題でありますが、先般決算書をいただきまして、帳簿価額で大体十兆円、これは年代別に全部現在価額に引き伸ばしてみますと、私のアバウトな計算でありますが、時価なら約四十兆円、八掛けにしても三十兆円、これだけぐらいはあるわけであります。この急場をしのぐために、減税もある、歳入欠陥もあるかもしれぬし、なかなかいろいろなものが錯綜しているときですから、ある意味において基地跡地等も含めて国有財産の三分割方針も出ておりましたけれども、思い切ってここではある程度、二〇%であっても結構でありますが、その程度の払い下げ計画、なかなか民需がありませんので買い手も少ないかと思うのでありますが、やはりその程度の方向を進めていくことが、当面はタケノコ生活に入らざるを得ない状況にあるわけでありますから、増税なき財政再建をやるとすればある程度のいままでの貯蓄を減らすということになりまして、やはりその意味においての財産処分はやむを得ない措置として進めなければならぬのではないか、こういうふうに思いますが、おおむね二割程度目標にして払い下げを進めていくという考えはないかどうか。二割であるか三割であるか、これはあえて数字を問うものではありませんが、いまの金額にして大体二割くらいをすればおおむね当面の措置は、全部なくなるまでには五年くらいかかるわけでありますから、その間は何とか財政再建のプラスになるのではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょう。
  25. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 沢田先生御指摘のように、五十六年度末の国有財産の総額は三十五兆六千億でありますが、そのうち国有地の簿価は十兆五千億あります。土地総面積にしまして八百九十七万ヘクタールでありますが、このうち土地の面積としまして八百八十四万ヘクタール、約九九%は国有林野等現に国が使っておる土地でありまして、国が現に使っておりません普通財産と申しますのはそのうちの十二万ヘクタール、簿価にしまして二兆五千億円になるわけであります。ところがこのうちの、十二万ヘクタールのうちの一般会計大蔵省所管は八万八千ヘクタールでありまして、さらにそのうち二万九千ヘクタールは米軍に貸しておるとか、地方団体、民間に貸しておるとかいうことで使っておりますし、さらにその他の大部分も実は北海道等に所属する山林等でありまして、余り処分の対象になりません。現に私たちが見込んでおります処分の対象となります宅地及び宅地見込み利用地で処分の対象となる普通財産は、実は二千九百ヘクタールにすぎないのであります。  したがいまして、普通財産の十二万三千四百ヘクタールのうちの処分可能の見込み地は二千九百ヘクタール、約四十分の一でございますので、仮に簿価にいたしましても二兆五千億の四十分の一と申しますと六百億円程度にすぎないわけであります。しかも、これもたとえばそのうちの千百ヘクタールは水戸の射爆地みたいな海浜地でございまして、国が扱うものもありますし、地方団体が買うにしましてもいろいろと減額とか無償貸し付けの条件とか優遇措置がありまして、仮に時価で売りましてもなかなか一挙に収入にならない、私どもも非常に苦慮しているわけであります。  ただ、先生お話しのように、私どもといたしましてもいろいろと国有財産の売り払いを進めていかなければいかぬ、片方で国有財産は同時に土地政策上できるだけ公共目的に使ってほしいという要望がありますので、去年の末に国有財産中央審議会に「当面の国有地の管理処分のあり方について」諮問をいたしまして、ことしの一月に御答申をいただきました。その結果、国有地は極力公用、公共用優先の原則を維持しつつもその範囲内でできるだけ財政収入確保に努めるべきであるということでございますので、たとえばいま持っております未利用国有地を地方団体にリストを提示しまして買い受けを勧奨しまして、一定期間内にできるだけ買っていただくように、そういうふうな方途を講じましてできるだけ国有地の面からも財政に寄与したいと考えております。
  26. 沢田広

    沢田分科員 その数字の根拠については若干異議が私はあるのであります。だから三分割を含めてということもあえて申し上げているわけでありまして、これは価額の面で言えば何か全然売れそうもない北海道の方だ、射爆場だと悪い例ばかりみんな挙げているけれども、問題はその考え方、発想の原点にあるのです。それは朝霞にだって調布にだって立川にだって坪当たり百万も百五十万もするところが現実的にはあるわけです。何もあなたの言っておるところだけじゃない。私は全国的な平均で言っているわけなんで、悪いところだけ挙げてあとだめなんだよ、そういう気がないところに実は問題があるので、それは探し出してそしていまの財政再建に何とか寄与しなければならぬだろう、そういう気持ちになるかならぬかというところに問題が、きょうの質問があるわけなんですから、これは一時間とか二時間で詰める話をこの二、三分の間に詰めようというのは、そういう考え方の発想を、この財政再建の中でいま国有財産をどういうふうにしたらいいのか、何でも温めていればいいという問題じゃないだろうということが出発点にあるのですから、これはあなたのそういうような発想ではだめなんです、ちょっと財政再建と違った方向を走っているのだから。  これは大蔵大臣にお伺いをするわけですが、可能な限り、それは条件は厳しいでしょう、地方団体が欲しい、小学校、中学校にやったらほとんどただになってしまう、そういうことで、むずかしい条件は私も十分承知はしておりますよ。しかし、あえてこの時期なんだからそれを進めなければならないのではないか、問題はその原点にあると私は思うのです。ですから、やろうと思えば、いま言ったようなところもなくはないのですから、その辺は考えていくべきじゃなかろうか。大蔵省としての考え方を、もう時間がないですが、たとえば自賠償の二千五百億を持ってくるのなら、これも国鉄じゃないけれども、まず自分のところを整理して、それから自賠償から二千五百億持ってくるのでないとやはり筋が通らぬのではないかという気がするのですが、大蔵大臣、いかがですか。
  27. 竹下登

    竹下国務大臣 これは「当面の国有地の管理処分のあり方について」の諮問をいたしまして、そして増収策について御審議をいただいて、本年一月二十四日に審議会から答申をいただきました。処分促進を図り、極力財政再建に資するよう、こういう趣旨でございます。  その趣旨は真っ当に受けなければなりませんが、私どもも橋本龍太郎君を中心として、党におりますときにこの問題で個々にいろいろ当たってみました。確かに地方にありますものは、地方においてそれが取得される限り、地方公共団体があっせんしたものとかあるいは中には無償で寄附したものとか、そしてまた比較的都市化現象の強いところに存在するものは、やはりこれを払い下げるならば公共用地に使ってくれ、公園とか避難場所とかということで、やってみればみるほどなかなかむずかしい問題だな、こういう感じは私どもも素直に受けとめました。私が田舎育ちでございますので、都市周辺のことについての感覚が欠如しておったかなというある種の反省も含めながらそういう勉強をしたことがございますが、やはり御趣旨の点は、とにかくみずから探し出す上にも探し出して財政再建に資するような努力をしろという御趣旨には私どもも同感であります。
  28. 沢田広

    沢田分科員 協力という意味もありますので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  29. 砂田重民

    砂田主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田正勝君。
  30. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 大臣、この新聞、質問通告していないのですけれども、これは五日の毎日新聞なんです。それで、私がちょっと意外な感がしておりますのは、こういうことを書いておるのです。三月五日の毎日新聞でありますが、「課税最低限上げる 五九年度 一世帯三万円弱の減税」という大見出しで、「所得税制、抜本改正へ 大蔵省方針」と、こうあるのですよ。  それでちょっと私がびっくりしますのは、初めの書き出しのところで、「大蔵省は四日、五十八年中の所得税減税実施についての与野党合意を踏まえ、五十九年度税制改正所得税制の抜本改革を行う方針を固め、近く政府税制調査会に諮問することを明らかにした。」こう出ておるのであります。ちょっとおかしく思いませんか。と申し上げますのは、これが本当かなという戸惑いが実はあるのです。  昨日のテレビの国会討論会なども国民は聞いたばっかりです。何かおかしな感じがしますので、これはまことかどうか、この点をまず大臣から伺いたいと思います。
  31. 竹下登

    竹下国務大臣 いま最善と思う予算審議していただいておりますその過程で、各党合意がなされ、それは議長見解というものに裏づけられたものである。そういう認識ではおりますものの、私も国会にずっとおりますし、いわば指示したこともなければ、その内容についての検討を開始したという事実もございません。
  32. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 指示した覚えもない、こういうことですから、結論的にはこの毎日新聞はうそっぱちである、全然うその報道をでかでかとこの大きな活字で流した、国民を惑わしておる、こうおっしゃるわけですな。そういうことですな。  私どもがなぜそんなことを言うかといいますと、大蔵大臣は確かに先般私が予算委員会で再開されました冒頭にお尋ねいたしましたときにも、与野党合意の線、これはきのうのテレビの国会討論会でも、各党の代表者、与党の皆さんさえお認めになっておることでありますが、五十八年中に景気浮揚に役立つ減税、すなわち国民世論及び国会の意見を強く考慮して、相当規模の大幅減税を実施することを約束する。小比木さんもしきりにこれを強調していましたよ。いままでは、ええ、最大限の努力をしますとかあるいは考慮いたしますということをしきりにやっておりましたが、今度は違うじゃありませんか、政府・与党が約束するとはっきり打ち出しておるのですから、これはいままでとは全然違いますよと言って、減税の幅それから実施時期という問題の疑問をめぐってのいわゆる討論会にいやしくも政権政党の代表者が約束すると言ったのですから、これはもう間違いありませんよと言ってしきりに強調しています。それで、もう全国の国民がきのうの九時からのテレビ討論をみんなしっかり聞いております。  そこで、その前の日になります三月五日の毎日新聞にかくもはっきりと出ておって、大臣はそれは一切知らぬ、そんな指示した覚えもない。指示した覚えもないのが、どうしてこんなに詳しく出るのでしょうかね。これは課税最低限の引き上げなんかでも、もうずいぶんはっきりと書いてありますよ。それで、これ以外に財源の問題については、酒税、いわゆる物品税それから石油関係諸税、この石油関係については、中曽根さんというのは運のいい人だなと私は思うのですがね。まさに神風が吹きましたね。まさにいま吹こうとしつつありますが、これはもう日本の国にとっても本当に大きなボーナスであり、神風だと思います。非常に運のいい人だと思いますが、こういうことなんかでも詳しく詳しく数字を挙げて書いてあるのですよ。  大臣がもし指示してないとすれば、だれか大臣以外の方でこの関係の、税制調査会関係のある方が何かやはり情報を漏らしたのじゃありませんか。どうもわからぬ。こういうところが国民にわからないのです。中曽根さんは、わかりやすい政治をするんだ、こうおっしゃった。全くこれはわからないですね。どうなっているんでしょう。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 恐らく私ども予測されるのは、五十九年度以降ちゃんとしてやれという答申税制調査会からいただいているわけです。そういう指摘がある限りにおいては、それはそれなりの勉強は、部内で、それぞれのセクトセクトによりまして進めておると思います。ただ、その際はまだ神風の問題はないときでございますけれども。  したがって、やはりこれは報道機関は報道機関とされての勉強の中で、それぞれ個々に取材をされれば、一つの推測記事というものができてくるのじゃないかなと思います。したがって、この報道機関のあり方がけしからぬとかと言うべきではなかろうと思いますが、私もそれを読みましたときに、あれえらいことが出ておるものだなと思いました。そういう勉強をまだ実際しておりませんし、しかもいま神風とおっしゃった問題についても、額も時期もいまだ決まったわけでもないし、そして実際問題石油精製等から考えれば、これの効果が出るのにはかなりある種のタイムラグがあるのじゃないかというような感じからしていかがなものだろうかなと思って、私も謹んで拝読をしておったという程度でございます。
  34. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 私は、大臣、ここでこういう大事なときにこそ政府というものはわかりやすい発言をしていただきたい。そして政府というものは、その立場を厳しく打ち出してもらわなければならぬときだと思うのですよ。日曜を挟んでのことですから、大臣の方にも御用意がなかいかもわかりませんが、しかしながら少なくとも自民党は政権政党ですからね。その自民党の幹事長の二階堂さんが各党の代表者会議にお出ましになりまして、そしてこれは検討するとか考慮するではない、約束する、五十八年中に実施する、こうおっしゃっているのです。その五十八年中に実施するということが約束事項であるとするならば、この新聞に出ておる五十九年度改正を指示したということは全く間違いですね。全く違ったことが報道された場合は政府はこれに対して訂正を求めなければならない、そのことを全然おやりになっていらっしゃらない、これが国民にわかりません。これは政府として訂正を求めることをしなければならぬと私は思っておりますが、大臣はどう思われますか。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のように、所得税減税及び住民税の減税について「確約があったことを承知しています。」こういう統一したお答えを官房長官がいたしておるわけでございます。ただ、私も指摘を受けてみればもっと正確に読まなければならぬと思いますが、まあ一国を代表する大きな新聞社に対していわゆる事実誤報であるということの訂正を求めることが妥当かどうか、それはちょっと勉強させていただきます。
  36. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 私はほかにたくさん質問を用意しておったのでありますが、こういう大きな問題が出ますと、再開予算委員会の冒頭で質問をさせていただいたという責任のある立場もございまして、これは見逃しにできないことなのです。  それで、毎日新聞のような大新聞がよもや間違った報道をすることはないと私は信じております。また一面、竹下さんのようなこんなりっぱな人格者である大蔵大臣が国民をだますなどということは絶対にないはずである、これも信じておるのです。ところが、そこに食い違いが出たら、その食い違いはただすのがあたりまえでしょう。きのうの国会討論会などでも減税の問題にほとんど時間を費しましたね。減税人勧だけでした。その減税にほとんどの時間を費して、しかも小此木国対委員長は、これは約束すると言っているのですからそれを信頼してくださいよと何回も口を酸っぱくしてテレビの前で言っていらっしゃいましたが、いま大臣が言っておることとこの毎日新聞の記事とは全然違うのですよ。だからその違いについて、きょうこの月曜日の分科会の冒頭においてはこの是非を明らかにしておきませんと、政府の対応をちゃんとはっきりしてもらいませんと、私は次の質問をするということが非常にむずかしい。  大臣、いまお答えができぬのなら五分やそこらの休憩は構いませんから、私はがまんしますから、どうぞひとつ政府の方で打ち合わせをしていただきたい。ローカル新聞じゃありませんよ、いやしくも日本を代表する大新聞ですよ。そういう新聞の記事と政府の方針、そして与党の方針が違うとなれば、これはやはり大問題ですね。国民の前に明らかにする必要がありますので、ぜひひとつ立場を明確にしてください。
  37. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私どもとして言えますことは、いま指摘を受けてみればなるほどなあとも思いますので、たとえこれが推測記事であろうとも、どういうものが端緒になったかということについては私どものサイドで調査の必要もあろうかと思いますので、この記事に対処する大蔵省としてのやり方、手段としては、訂正の申し入れとかいろいろなことがございましょう。それについてはにわかに私が申し上げる状態にはございませんが、よしんばこれが言論の自由に基づく一つの推測記事として出たものとしても、火のないところに煙は立たぬというたとえのごとく、わが方の対応についてまず調査してみるのが適切ではないかな。その調査をして、適当な機会に岡田委員に経過的な御説明を申し上げるということでひとつ御寛容をいただきたいというふうに思います。
  38. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 わかりました。これで押し問答をしても始まりませんのでもう一遍念を押しておきますが、この毎日新聞の報道は大臣の方としては、あるいは大蔵省としては指示したこともない、これはどこから出たかよくわかりません、とにかく大臣としては指示した覚えはない。一方、与野党の合意、議長見解政府見解というのは今日現在生きております、一つも曲げてはおりません、そしてこの推測記事が出ました端緒等につきましてはこれから調査を急いで大蔵省としての対策を立てて、そのことについて内容を私の方に説明をするということで確認してよろしゅうございますね。
  39. 竹下登

    竹下国務大臣 その筋で結構です。
  40. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 ありがとうございました。  それでは、次の質問に移らせていただきます。  これは厚生省の出席がなくても構わないからということが政府委員の方でございましたのでちょっと申し上げておきますが、今度人勧を凍結といいますか見送りをしたということに伴いまして、年金受給者の皆さんの物価スライドを今回見送りをいたしておりますね。そこで、そのことによって影響を受ける年金受給者の数は一体どのくらいであるか、そしてそのスライドを見送ったことによりましてどのくらい節約になるのだろうかということをまず最初にお答えいただくとありがたいのですが。
  41. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 いまの点にお答え申し上げますが、まず、各年金の受給者の総数は千六百万人でございます。具体的に申し上げます。厚年が五百四十三万人、それから国民年金が七百四万人、福祉年金が三百三十六万人、したがいまして約一千六百万人というふうになっております。  それから、先ほどのこれに伴う金額でございますが、厚生年金が約八十五億円、それから国民年金が百三十億円、福祉年金が七十億円、合わせまして二百八十五億円、こういうことになります。
  42. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 私がなぜこんな質問をするかといいますと、厚生年金、国民年金の積立金がおよそ四十兆円ぐらいに到達しておるということを承っております。時間がないから質問をちょっと圧縮して言わせていただくことにしますが、この四十兆円をいま資金運用部資金の方へ一〇〇%回して使っていらっしゃいますね。そして、資金運用部資金で使っているんだからただじゃ使いませんよ、それに対しまして七・三%ぐらいの利子はつけております、こういうことをよく承るのでございます。そこで、七・三%の利子をつけているからいいじゃないかとおっしゃいますけれども、この四十兆を運用するための審議会というのは一体あるのか、もしあるのだとすれば、いわゆるその金主といいますか株主といいますか、権利を持っておる使用者側と労働者側お二人の関係はその運用審議会の中に入れてあるのかどうか、これを御説明いただきたいと思います。
  43. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 資金運用部資金法の十条に審議会というものが規定されておりますが、学識経験者七名から成っておりまして、内閣総理大臣が任命される委員会が設置されております。それで、同法の十二条で資金運用計画の諮問をいたします。それから別途、年金懇談会というのを私的にやっておりまして、この方は、いまの資金運用審議会に入っておられる委員と別に、使用者側の代表あるいは労働者側の代表、理財局長も入っておりますが、そういう方々が入った懇談会をやっております。そういうようなところでいまの御指摘のような問題について審議をしたり話し合いをしております。
  44. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 そこで、私が非常に不思議に思いますのは、年金懇談会というのは実際には法的な権限も何もありませんね。それで、私は、資金運用部資金の中で、六割が郵便局の貯金であり、あとの四割がいまの年金の積立金という大体の構成になっておるということは存じておりますが、これだけの大口の資金に対して、使用者側、労働者側という株主が審議会の中に入らない、学識経験者の中に入ってないというのは、この運用をする面について問題があると考えておるのです。  そこで、時間がありませんから次に進ましていただきますけれども、私が思いますのは、いま承りますと、厚生年金だけ一つ例にとりますが、厚生年金で抑えられる人が五百四十三万人、それで節約できる金が八十五億円、こういうことでございます。そこで、私が言いたいことは、これを厚生省なら厚生省で自主運用させる、ほかのいわゆる公務員共済とかそういう関係の年金は三分の二がいわゆる自主運用しているのですから。厚生年金、国民年金だけが一〇〇%資金運用部資金に持っていって、全然びた一文も自主運用させないというやり方は問題がある。だからこれをもし厚生省の方で自主運用させたとするならば、一つの例でありますが、十年国債の方に回したとすればその利子は七・五%にたちまちはね上がるわけですね。そうすると、その差が〇・二%。〇・二%ということになりますと八百億円じゃありませんか。ちょっとした運用の差で八百億円も利子の差が出てまいりますよ。わずかの利子の差で八百億円も出てくるこの厚生年金に対して、その一割ぐらいにしかならない八十五億円の金を節約するためにこの年金を抑える、これは大臣、私は問題があると思うのです。  なぜならば、厚生年金などという制度は、三十年間営々と積み立ててきまして、そしてお年をおとりになったら六十歳からは厚生年金を差し上げますから、それはあなたの積み立てたものがようやく太ってきたのですから、それを差し上げるから老後をひとつしっかり生活してくださいという制度でございましょう。生活保護とは違うのですよ。そういう制度で三十年間それを本当に信じて一生懸命保険料をかけてきたいわゆる厚生年金受給者になるべき人たちから言いますと、何ともいやはや、これは納得のいかぬお話でございますね。  厚生年金をもらうような立場の人というのは、何ぼがんばったって六十歳からしかもらえない。六十歳からもらおうと思うと、もし子供やあるいは娘のことでまだ働かなければいかぬと考えてどこかでアルバイトでもやりますと、働いただけの金は今度は、いただくべき年金、三十年のモデル年金、これが大体十四万八千円ぐらい、約十五万円でありますが、その中からどんどん引かれてしまう。そして結局は、働いた金と引かれて残った年金とが合わせて十五万円ぐらいになるような、大体そういう形にしてある。これもいわゆる公務員とは大分違う。これは官民格差の最たるものですね。そういう屈辱にも甘んじながら、いまがまんして厚生年金受給者は生活しているのです。その厚生年金受給者が、それじゃまるまる厚生年金の査定どおり一〇〇%いただけるのはいつの日かといったら、その一〇〇%は七十歳のときにならぬともらえない。それで、やれ一〇〇%いただいたなと思ったら、平均寿命七十四歳ですから、あと四年もしたらころっと死んでしまうわけでしょう。もう資格者じゃなくなってしまう。  こういうことを考えてみますと、それじゃ六十歳からどこかへ再就職するかといったら、いま再就職なんかするところはありはしませんよ。労働省だって高年齢者の就職促進について六%を目標に置いて一生懸命がんばっておりますが、その目標にまだ達しません。そんなにおいそれと働くところがあるわけございません。大臣もけさのテレビごらんになったでしょう。いま不況のさ中でありまして、各企業の状態を聞いてみたら、大体各企業の約三削弱の人たちが、何とかして労働者の首を切りたい、人を減らしたいということを考えておるというのがけさのテレビに出ておったじゃないですか。そういう状態のときに、お年を召された厚生年金受給対象者が一体どこへ勤めるところがあると言うのでしょうか。  私はそのことを考えてみますと、今度の五十八年度予算で年金受給者の物価スライドを抑えつけるなんということは、これは人間のやることじゃない。温かい家庭をつくりましょうなんというようなことを中曽根総理大臣が言っておるけれども、言うこととやっていることとは違うじゃないですか。しかも、厚生年金をまるまる三十年掛けてもなおかつ生活保護の、いわゆる東京都でもらえる人よりも二千円か三千円低いじゃありませんか。こんなばかなことがあっていいのですか。私はこういうことは許されるべきことじゃないと思うのでありますが、大臣いかがでございますか。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの年金全体の問題になりますと、岡田委員それこそたびたび御質問になる、いわばその道のエキスパートとでも申しましょうか、そういう意味におきまして、将来やはり年金の統合とか一元化とかという問題が集約的に生じてきて、したがって年金担当大臣をつくってこれからそれらの総合的な政策立案をやっていこう、こういうことになっておるわけであります。  当面の問題としましての自主運用の問題につきましては、やはりこれは議論のあるところでございますが、いわゆる国の信用において集めたお金とでも申しましょうか、それはやはり国の責任において、国の諸施策のバランスなり、その都度の重点施策というものに使用されていくという意味においては一元化の方が政策目的というものは達しやすい。しかし、厚年そのものを対象に選んだ場合、自主運用の希望があるということ、そういう意見が出ておるということは私も承知しております。  そうすると、さようしからば簡保との関係が運用についてはアンバランスじゃないか、あるいは年金制度の中で見たならば国家公務員共済等とのアンバランスがあるじゃないか、それもやはり歴史的なよって立つ経過等がこうしからしめておるところでございますので、一概にかくかくしかじかすべきものと——岡田委員のお話しになっている角度からの議論は私なりに理解できたといたしましても、それは一方に厳然と存在する国の信用において集めた資金の一元的運用という問題との調和の問題になるでございましょうから、将来の課題として、年金問題全体の一環として考えるべき課題ではないかなというふうに考えております。
  46. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 時間がないのでもう一つだけ申し上げておきますが、大臣、よくわかりました。いわゆる国の信用で集めた金ですから、国の責任で一元化して重点的にこれを使わしていただくという方がより効果的であると信ずると、ですから資金運用部資金から厚生省へ自主運用させるということについてはただいまのところ同意はできない、こういうお考えのようでございます。同意ができぬならば、八十五億円くらいのことで何で厚生年金を抑えなければならぬのか、この理屈は全然合わないと思いますが、その点いかが思われますか。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題は、言ってみれば、政府側の立場から申し上げますならば、五十七年度の消費者物価の上昇率が五%を相当下回る二・七%というようなところに存在しておる、一方公務員のお方の人事院勧告見送りをお願いしておるというような財政事情等によるものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  48. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 それでは最後に、間もなく中曽根内閣にとっても日本にとっても国民にとっても大変喜ばしい神風が石油値下がりというのでやってまいります。大蔵大臣もさぞかし御満足であろうと思いますが、この石油の値下がりについて、一体、日本の国内にどういう影響があるだろうか、そして石油税、現在三・五%の税率でありますが、この問題について何か魂胆が、悪い言葉でありますが、何かよからぬかよい魂胆かわかりませんが、何かお考えがあるんでしょうか、一緒にお答えください。
  49. 竹下登

    竹下国務大臣 まあ石油、いつ、どれだけということが決まっておるわけではございませんが、長期的に見た場合に、確かにわが国の物価安定にさらに寄与するものと考えられますだけに、経済成長に対してはそれなりの効果はある。しかしながら、一方、産油国の富が逆にこちらへ移転するということでございますので、いわゆる輸出の減少等も考えられると私は思います。しかし総体的には、原料のコスト低下を通じて企業収益の改善とかあるいは設備投資によるいい影響が出てまいります。物価水準の安定等を通じて個人消費等によい影響を与えるということ等を考えますと、総じては良好な影響を与えると思われます。  ただ、これが税収面につきましては、一般的に企業部門の収益が改善されること等は期待されますけれども、一体五十八年度税収がどうなるかを具体的に判断するということは今日の時点においては、確かに、流通の過程でどうなるのか、あるいは市場の条件、すなわち備蓄の状況、価格改定の時期、需給状況等効果が及ぶ時期ということになりますとさまざまな議論がありますので、ある程度のタイムラグというものが考えられるではないかなと思っております。  そこで、この石油税をそれによってということでございますが、恐らくわれわれが観念的に考えることは、石油がかつてと違って非常に下落したという実質的な影響並びに心理的影響から、いわば省エネとか代替エネルギーとかそういう問題に対する企業とか全体の意欲が低下した場合に、やはりそれは、特に国なりの施策の中で将来を展望すれば、支えていかなければならぬ、そうすると一つの目的財源としての石油税の問題が念頭に浮かんでくる。しかしいままだオーバーフローしているのではないか、事実オーバーフローしているのですから、そういうことになるとにわかに即断できる問題ではないな、まあ勉強の課題かなという程度の認識は私にも皆無ではございませんけれども、いま直ちにどうこうするという考え方を持っているわけではございません。
  50. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 ありがとうございました。
  51. 砂田重民

    砂田主査 これにて岡田正勝君の質疑は終了いたしました。  次に、西中清君。
  52. 西中清

    西中分科員 私は、自動車損害賠償責任保険についてお伺いをいたしたいと思います。  これは幾つかの新聞社で報道がすでになされておることでございますけれども大蔵省はこの自賠責保険につきましては三〇%の値上げを考えておる、七月過ぎにも実施をいたしたい、さらにはまた、任意保険も一〇%程度引き上げたいというような意向にあるということが報道されております。この点については私は非常に疑問が多いわけでございますけれども大蔵省におかれましてはこういうお考えがいまあるのかないのか、伺っておきたいと思います。
  53. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 自賠責保険の収支状況でございますが、収支状況が一口に言って悪化しておりますことは事実でございます。これは、昭和四十四年に自賠責保険の料率引き上げがございまして、その後十三年余りにわたりまして料率は据え置かれているわけでございますが、その間におきまして支払い限度額は、五百万から一千万に、一千万から一千五百万に、さらに現在は二千万に引き上げられてきております。さらに、大体二年に一遍ずつ損害査定単価とも申します支払い基準が引き上げられてきておりますので、基本的には相当収支を圧迫してきておるわけでございます。それに加えまして、昭和四十四年をピークといたしまして低下傾向にございました自動車事故の事故率が、五十二年を境といたしまして再び上昇の傾向にございます。こういったことから、単年度で見ますと、昭和五十三年度から自賠責保険の収支は赤字になっておりまして、しかもその赤字幅はさらに拡大の傾向にございます。  しかしながら、単年度で見ますとそういった赤字ではございますが、過去の黒字でございます収支の累計で見ますと、なお若干の黒字が見込まれておるものでございますから、いま直ちに料率の引き上げを必要とする状況では必ずしもないというふうに思っておるところでございます。
  54. 西中清

    西中分科員 そうすると、これは一社ではないのですけれども、やはり誤報ということですか。先ほども大蔵大臣、毎日新聞土曜日のこの報道はつゆ知らないことだということで、一遍調査をするというお話ですけれども、この自賠責の問題についても大蔵省はつゆ知らざる問題なんですか、どうですか。要するに、この二社、私は少なくとも二社目に触れておるわけですけれども、記事も、内容も軌を一にしております。出ておるデータもきちっと一致しておる。これは大蔵省が関与しておるのですか、関与してないのですか、この問題は。
  55. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 新聞記事につきましては、私ども取材を受けたこともございませんので、その点については私ども全くあずかり知らぬことでございます。  ただ、推測いたしますと、一月二十六日に車検の三年延長に伴います保険料の改定を諮問いたしたことがございます。その際に、最近の保険収支の状況ということで資料を出し、御説明いたしましたので、あるいはそういったものが流れましてそういった記事になったということは十分推測されるのでございますが、私ども、その記事につきましては何ら関与いたしておりません。
  56. 西中清

    西中分科員 これは後でもまた議論いたしたいと思いますけれども審議会に示された資料というのも、これは自賠責の会計についてはごく断片的な、要するに単年度の収支において赤字が出ておるというだけの資料でございますね。それも三種類も出ておる。私は、これは非常におかしな話だと思っておりますが、何らかの作為があってこういうことをなされているだろうと思いますけれども、それは後でまた触れます。  ここで、こういう事実が大蔵省において考えられていないということでございますから、それならそれで、もう少し明確にしておきたいと思いますが、自動車賠償責任保険について、損保分ですね、損保会社の扱いの五十六年度末の責任準備金及び支払い備金は幾らになっておりますか、お伺いをしておきます。
  57. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 積立金についての御質問でございますが、五十六年度末で義務積立金が二千四百八十五億円、調整準備金が千四百五十億円、支払い備金が九百八十四億円、これに運用益の積立金が六百五億円、さらに付加率積立金が百六十二億円ございます。
  58. 西中清

    西中分科員 そうしますと、少なくとも五十六年度末で支払いの、いろいろ仕組みはございますけれども、一応プールされておる合計は、いま仰せのとおりでありますと五千六百八十六億円ということになろうかと思います。  そこで、同じく自賠責保険会計としてございますのは、農協扱いの自賠責共済保険及び国の自賠責保険特別会計があるわけでございますけれども、おわかりになれば、責任準備金、積立金等の金額をお示しいただきたいと思います。
  59. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 農協に関しましては私ども何らの関係もございませんので、申しわけございませんが、数字は把握しておりません。
  60. 西中清

    西中分科員 自賠責を扱っていらっしゃるわけですから、責任上の問題としては関係はないかもわかりませんけれども、全体を見る上においては大蔵省としては当然認識しておられるものと思いますが、お答えにならないなら私の方から申し上げます。  農協の共済保険では、残高合計は五十六年度で三百八十億円に上っております。それから、自賠責特会の場合は、五十六年度決算で、保険勘定、保障勘定の合計で一兆二千五百七十億円、このような残高になっておると思いますが、ほぼ間違いないと思いますが、どうですか。
  61. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 農協に関しましては、私、存じませんので何ともお答えいたしかねるのでございますが、特会につきましては、私ども銀行局としては関与しておりませんので、主計局の方からお答えいただきたいと思います。
  62. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 御存じのように二つございまして、保険勘定と保障勘定がございます。保険勘定の中で剰余金の計でございますけれども、五十七年度においては一兆二千二百十三億円、それから保障勘定の方は六百八十七億円ということになっております。
  63. 西中清

    西中分科員 私、論議の上で五十六年度末でいまお聞きをしたわけですが、五十七年度もほぼ似通った数字であろうと思います。私の方でいまこの三つの保険を計算いたしましたところ、残高総計は一兆八千六百三十四億円という巨額に上るわけでございます。私は、これは全部使えるとは思っておりませんけれども、少なくとも常時後から後から加入者があるわけですから、これに幾らか増減はありますが、ほぼこれだけの規模の金は維持されておる、こういう状況ではなかろうかと思います。  そこで、あえて私はことでもう一歩申し上げたいと思いますけれども、少なくとも法律上手をつけられない金は別といたしまして、いま申し上げたお金の中で収支改善に使える金額は一体幾らになるのかということを見てみましたが、自賠責保険の場合は、たとえば調整準備金であるとか運用益積立金というのは使われると思いますけれども、これは五十六年度末でどういう形になっておるか、お伺いしたいと思います。
  64. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 五十六年度末の積立金等の額につきましては先ほどお答え申し上げた数字でございまして、これが五十六年度末現在で現に金額としてございます。先ほど申し上げました保険収支の動向でございますが、これは当該年度の保険料に対応する損害というものは、支払いは数年にわたって出るわけでございますので、それの収支の見込みを申し上げたわけでございまして、現金ベースで申し上げますならば、先ほどの金額が積立金という形で残っておるわけでございます。
  65. 西中清

    西中分科員 私は、もう一歩細かく分けまして、収支改善に使える、自由に使えるということでしょう、少なくとも二千五十五億円、この金額になろうかと思います。自賠責共済保険、農協の扱い分でございますけれども、これはざっと八十億円でございます。それから自賠責特会においては、少なくとも積立金、利益金、これを合計いたしますと六千六百二十億円。この三つを合計いたしますと八千七百五十五億円ということになろうかと思います。大筋においてこれは間違いございませんか。
  66. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 先ほど来申し上げておりますように、私ども大蔵省銀行局の所掌といたしましては、民間の分しか存じておらないわけでございますので、民間の分だけに限定してお答え申し上げますと、先生御承知のように、義務積立金は、四年間にわたって将来支払いが生ずる場合の引当金として置かれておるものでございますから、これは将来支払いが起きますれば、そこから崩されていくことは当然でございます。  また、調整準備金は、五年以上たちました金額を一括して調整準備金という形で積み立てておきまして、単年度ベースで赤字が出ました場合には、まずこれから取り崩していくという性格のものでございますから、これも収支の改善に使われるべきものでございます。  さらに、支払い備金と申しますのは、もうすでに事故が起こりまして支払いがほぼ確定しているものでございますので、これが支払いに充てられるのは、事の性質上もう当然でございます。  さらに運用益につきましても、これは自賠責の審議会の答申にもございますように、将来の保険収支の改善のためにその財源として留保しておくこと、同時に、交通事故の防止とか救急医療体制の整備のために効率的に使うようにということでございますから、将来の保険収支の財源として念頭にあるということは、これまた当然でございます。
  67. 西中清

    西中分科員 私の先ほど申し上げたことをほぼそのまま確認されたようでございますけれども、少なくともいま申し上げたとおりに、合計いたしますと八千七百五十五億円、こういういわば余裕のあるお金があるという状態でございます。したがって、新聞でやかましく報道されておりまして、また先ほど若干の余裕というようなお話がございましたけれども、私いま挙げた数字を見てまいりますと、十分なる余裕と言っても私は過言ではなかろうと思うわけでございます。  そこで大臣、この報道、大蔵省は関知しないようでございますけれども、いまのような財政状況でございますから、まだまだ余裕がある。たとえて言いますと、五十六年度収入保険料から支払い保険金を引いた場合八百二十九億円の赤字が出る、こういうような数字が出ておるわけでございますけれども、いま申し上げたような数字からいくと、まだ何年間も余裕があると言っても過言ではないと私は思っております。この中でこういう報道がなされて、一般の国民はもちろん、タクシーやトラックや各種の業界においても、大変な負担になるということで騒いでおるわけでございますけれども大臣としてはこういう値上げは考えておらないとここで明言をしていただければ幸甚と思っておりますが、いかがでございますか。
  68. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 大変恐縮でございますが、大臣の答弁の前に、数字についての御説明を申し上げたいと思うのでございます。  ただいま先生御指摘の数字と申しますのは、要するに、五十六年度ならば五十六年度をとりまして、保険料が入ってきて当該年度に幾ら支払われているか、したがってこれだけ余っているという、いわば現金主義で計算いたしますとそういうことになるのでございますが、普通、保険収支というものを見ます場合には、その保険料に対応してそれが何年かにわたって支払われていくものが一体どうなるかという、その当該年度の収支として勘案しまして保険料率というものを計算しなければならないわけでございますので、そういった保険数理的な話で申し上げますと、最初に申し上げましたように、五十三年度以降は赤字になっている。ただし、現金ベースで申しますれば、最初に申し上げましたように、諸積立金はまだございます。ただ、これは将来の引き当てのために、すでにその引き当てが予定されておるものでございますから、そういった性格のものとして御理解いただきたいのでございます。
  69. 竹下登

    竹下国務大臣 この自賠責保険の収支は、おっしゃいますとおり昭和五十三年以降赤字に転じて、その赤字幅が拡大しておるということになりますが、先ほど来の問答の中で明らかになっておりますように、いま直ちに料率の引き上げをする状況にはないというふうに私も理解をいたしております。
  70. 西中清

    西中分科員 いろいろ御説明はあるのですけれども、少なくとも余裕があるということははっきりしているわけですから、先ほど私は数字を申し上げました。したがって、これを仮に損害率といいますか、いま五十六年度の資料が出ておりますが、一一四・七七、一四・七七の赤字だと思いますけれども、これを一三〇にしたってまだまだ五年や六年はもつのですよ、私、計算いたしましたけれども。ですから、一三〇にしてもいま直ちに保険料を上げなければならないということには絶対にならぬと思うのです。  こういう話がなぜ出てくるのかということは、私はやはり審議会における大蔵省の対応が問題だったと思うのです。あなたも先ほど、この資料が問題になったのじゃないかとおっしゃいましたけれども審議会において出された資料は、いわゆる収支の累計、損害率はお出しになっていないでしょう。それからもう一つ申し上げますと、新聞社に対しましては、五十七年度、五十八年度の推計をここにまた述べておられるような気配がございます。要するに、三種類にわたっての表が出ておるのですよ、私は二つ持っていますけれども。こういうことをされるから、審議会にはもう単純に当年度の収支だけをぽんとお出しになる。あるところでは損害率累計をお出しになる。さらには五十七年、八年の推計まで記載したものをお渡しになる。人によって使い分けをしておる。ですから、これは都合がいい大蔵省の数字を相手次第によって変えて示しているというような状況でございますから、こういうことは起こっていると思うのです。  そこで、大蔵大臣にもう一度お伺いしておきたいと思いますけれども、そうすると、五十八年度においては値上げは全く考えておらないし、またやらないと明言していただけますか。いかがでしょうか。
  71. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、自賠責保険保険料率の改定時期については、今後の保険収支の動向によって変動いたしますので、いつまでという時期を明言することはできませんが、当面引き上げる必要はないというふうに考えております。
  72. 西中清

    西中分科員 当面という意味は、五十八年度中は含まないのか含むのか、どういうことでしょうか。末までには上げることもあり得るということを含んでおるのでしょうか。
  73. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 保険料の料率引き上げにつきましては、ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、将来の保険収支の動向がどうなるか、これには自動車事故の急増の割合が、現在予測されておりますよりもはるかに急激な勢いで増加いたしました場合には、また収支は悪化するわけでございますし、さらに、現在推計いたしております損害の中には、五十八年度におけるいわゆる査定単価であります支払い基準の改定等々は織り込んでございませんので、こういった変動要因がございますので、いつの時期ということは明言できないわけでございますが……。
  74. 西中清

    西中分科員 少なくとも五十八年度においては、そういう措置は全くまずいのじゃないかと思いますが、先ほども数字を示しましたように、自賠責特会においては六千六百二十億円、五十六年度末でありますけれども、こういう積立金及び利益金が出ておるわけですね。     〔主査退席、宮下主査理着席〕 そのために、大蔵省としては、今回の五十八年度予算におきましても自賠責特会から一般会計へ二千五百六十億円の繰り入れをお考えになっておる。この自賠責特会が余裕がないという状況であれば、こういう措置は全くとれないわけです。  少なくとも、これは御承知のように、法律で決められて、車を持っておれば必ず払わなければならぬという、いわば強制的な保険でございます。これを払わないで車を走らせたら、つかまってしまうわけですよ。こういう問題で、われわれ国民がどんどんと自賠責保険というものを毎年払っておるわけです。そういう中で、本来ですと、これは審議会の答申等にもございますけれども、自賠責の運用益等につきましては、やはりそれなりに保険納入者に対して還元をするということが基本的にあるわけです。それを、法律を変えてまで一般会計に繰り入れるというような今回の措置をしておる状況でございますね。いわばこれは本当にわれわれ日ごろから聞いておった目的と変わった形で金が使われる、非常に疑問の多い措置だと思っておりますけれども、こういう状況ができるのも、やはり余裕があるのですよ。余裕がなければこういうことはできない。だから、少なくとも五十八年度予算をこういう形で編成しておるわけですから、五十八年度こういうことを値上げをするなんということは全くおかしな話だと思います。  私は、せんだって運輸委員会において質問をいたしましたけれども、長谷川運輸大臣もこれは明快に言っておる。国家財政立て直しのため税外収入の道で協力をしてほしいと総理大臣から要請され、私も国務大臣の一人として自賠責特別会計の滞留金から生じた運用益のうち二千五百六十億円を一般会計にお貸しすることを了承し、財政確保のための特別措置法案の審議をお願いしているところである、こうした国家財政を救うために自賠責運用益が使われようというとき、保険料値上げの話を聞くのは遺憾である、これは国民感情としても許せるものではないと考える、こういうふうにおっしゃっている。大臣、長谷川運輸大臣のお考えと同じでありますかどうですか。大臣に伺いたいと思います。
  75. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先生がおっしゃいました金額につきましては、五十八年度予算において一般会計に繰り入れていただくということで、現在法案をお願いしているわけでございます。  その背景といたしましては、先ほど先生がおっしゃいましたように、大変財政事情が苦しいということもございまして、これを一時的に繰り入れていただくということでございまして、後日予算の定めるところにより、これをまた一般会計から自賠責特会へ繰り戻すということになっております。そういうことで当面繰り入れていただくという措置をしております。
  76. 西中清

    西中分科員 私は、そういうことを聞いているのじゃないですよ。いまこういう措置をしているのですから、五十八年度で値上げなんということは全く考えてはならぬ問題です。三年据え置きで七年返還ということになれば、これは無利子でしょう。この保険の納入者に対して本来——この二千五百六十億ですか、これだけの金を運用していくだけで、少なくとも一千億近い金、運用益は生まれてくるわけですね、十年間も運用すれば。それは、本来ですとこの保険の納入者に対して還元さるべきものなんです。そのこともカットしてそういう措置をしながら、五十八年度ぐらいは値上げをしないということを明言できないなんということは、私は、長谷川運輸大臣の言うとおり、国民感情を逆なでするものと言っても過言ではないと思っております。むしろ、保険の限度額が二千万でありますけれども、これを二千五百万円なりというようにこの保険者に還元をする、こういう措置をとってこそ納得ができると思うのです。私は、そういう意味で、やはりこれは、一般会計に繰り入れた分は、ともかく後でまたいろいろと論議が行われると思いますけれども、少なくとも自賠責保険、これは五十八年度は上げるべきではない、当然の措置であると思っておりますが、大臣、どうでしょうか。
  77. 竹下登

    竹下国務大臣 これは長谷川さんの答弁にありましたように、財政厳しい折だ、したがって税外収入協力をお願いしよう、いろいろなところへいろいろな協力をお願いしたわけですが、これについては確かに私も、いわば金の性格から言えば積み立てた方のお金である。長谷川さん流に言えば、おまえ、多少でも助成なりそういうものの含まれた金なら別だが、全く民間の拠出したものについて協力を頼むのかというような議論、お話を二人でもいたしておりました。やはり私は、そういう意味において、十二月の何日でございましたか、総理と二時間ばかり一応税外収入についてのお話をして、これは内閣一体の責任においてまさに総理からお願いしていただくべき筋じゃないかというのでお願いをしたわけであります。したがって、長谷川さんのおっしゃっている意味もよく理解できておりますし、現在のいわゆる給付水準とかそういうようなことを前提におけば、私は五十八年値上げをしなければならぬという環境になるとは思っておりません、現実問題としては。
  78. 西中清

    西中分科員 時間も参りましたので、なおまた別の機会でもう少し質問したいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、少なくとも収支改善に使うことのできるそういうお金というものは八千七百五十五億円。しかも自賠責特会は非常に余裕が出ております。六千六百二十億円。少なくとも損保会社が若干苦しいというような情勢であるとするならば、何らかの手当てをここで考えるということで、十分まだまだ内容的に仕組みを変えれば余裕はあるわけでございますから、私は、五十八年は当然のことながら、当面これを変える必要は全くないと思います。  これはもう計算すれば簡単にわかることでございますから、こういう内容、報道されているような内容、審議会にもまたこれを示されたということでございますけれども審議会に示すなら示すで、やはり収支の決算をはっきりして全体像をきちんと審議会に提出しなければ、これは片手落ちだと思うのです。単純なる単年度の収支だけをこういうふうに示しているというやり方は、非常に私は片手落ちだと思います。こういうことも含めて、今後この問題について、当面はやはり保険の料率は上げない、こういうことで考えていくのが筋道だと思っております。  大臣、どうかひとつその点、これは新聞だけであって、大蔵省は知らぬということかもしれませんけれども、先ほどもそういう話があって、五十九年度は減税するのだ、大蔵省は知らないのだ、こういう御答弁でありますけれども、これも同じこと、少なくともキャンペーンを張られておる。  それから、私はもう一言つけ加えておきたいのは、こういう新聞がちらちら出てくるものですから、保険会社へいろいろと問い合わせをいたしました。中には、これはもう常識である、話はもう終わっているのだ、十分根回しは終わった、こういうふうにおっしゃっておるから、私はあえて、これは大蔵省は知らないと言っても、やはりその意図はあるものという疑いをいまだに解けません。どうかそういう点で、大臣も当面の収支では五十八年度は値上げする必要はない、こういう御答弁でございますので、以上で質問を終わりたいと思います。
  79. 宮下創平

    ○宮下主査代理 これにて西中清君の質疑は終了いたしました。  次に、小川国彦君。
  80. 小川国彦

    小川(国)分科員 私は、中曽根内閣の有力閣僚であります竹下大蔵大臣に質問するのは初めてかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。  最初に大臣にお聞きしたいのでありますが、いま千葉県の浦安市に東京ディズニーランドという大きな、アメリカのディズニープロと契約をいたしまして、そのプランのもとに進められている遊園地があるのでございますが、ここのことについて大臣、お聞きになっていらっしゃるか、あるいは見聞されたようなことはございますでしょうか。
  81. 竹下登

    竹下国務大臣 ディズニーランドのことについては、不幸にして私、見聞したことはございません。
  82. 小川国彦

    小川(国)分科員 それでは、これからの質疑の中で、大臣にはこういう問題もあるということをひとつ心にとめてお聞きいただきたい、こう思うわけでございます。  それじゃ、銀行局長がお見えになっておりますので……。  実は、千葉県の浦安市の沖合いに、約三十万坪の敷地に一千五百八十一億円という予算をかけました東京ディズニーランドという大きな遊園地が、この四月十五日にオープンするわけでございます。この主体の会社でありますオリエンタルランドという会社に、一千五百八十一億円の事業費が日本興業銀行以下二十二の都市銀行で金を貸し付けているわけであります。  ところが、この貸し付けに当たって担保をとっていない。普通、銀行が、個人でも中小企業でも、あるいは大企業でもそうかと思いますが、お金を貸すという場合にはまず担保をとる。たとえば大きな商店がビルを建てたい、あるいは中小企業が工場を建てたい、そういう場合には、その持っている土地を銀行が必ず担保にとって、そしてその上に建物をつくる資金を銀行から借りて工場なら工場をつくる、そしてお金を返していく。まず担保をとるというのが銀行の業務の第一歩の常識じゃないかと思うのですが、ここの場合には、この三十万坪の遊園地用地が担保にもとられずに、一千五百八十一億円という金が貸し出されている。  それからもう一つ、この資金の返済計画が十年償還になっておりまして、三年据え置き七年償還ということでこの千五百億の金を返済するようになっておりますが、事業計画の当初からこの返済が危ぶまれているということが、直接会社の首脳なり関係者から言われている。  これは銀行業務、特に都市銀行の業務を監督指導する立場にある銀行局長さんとして、この資金の貸し付けのことについてどういうような御検討をなすっていらっしゃいますか。
  83. 宮本保孝

    宮本政府委員 この件につきましては、私どもも興業銀行を初め関係銀行から事情は聞いております。  ただ、一般論といたしまして、いまの第一点でございますが、資金の融資に当たりまして担保をとるべきじゃないかという御指摘、まさにそのとおりでございます。ただ、担保によりましてもいろいろ種類がございまして、いま御指摘のような物的担保をとる場合もございます。それから人的な担保といいますか、優良企業等によります保証によりまして融資をする場合もございます。また、たとえば消費者金融等でございますと、いわゆる信用貸しといいますか、そういう貸し出しもあるわけでございますが、本件につきましては、物的担保は確かについておりませんけれども、優良な企業によります人的な保証がなされているということで、私どもとしては確実な担保がついているのではないかというふうに思っております。  それからもう一つは、本企業の先行きでございますけれども、これは融資をする側と融資を受ける側との話し合いといいますか、いろいろな検討の過程の中で先行きについての見通しがそれぞれ話し合われた上で融資がなされていると思うわけであります。先行きの見通しにつきましては、ちょっと行政的には何とも申し上げかねますけれども、私どもといたしましては、超一流銀行等参加いたしております融資でございますので、その先行きについても現在のところは不安は持っておらないような状況でございます。
  84. 小川国彦

    小川(国)分科員 本件の場合に担保をとらなかった理由というのは、どういうふうに理解されておりますか。
  85. 宮本保孝

    宮本政府委員 いま申し上げましたように、本事業の先行きの見通し及び超優良企業によります人的保証ということで、物的担保をとらなかったのではないかというふうに理解いたしております。
  86. 小川国彦

    小川(国)分科員 もう一遍繰り返して伺いますが、本悪業の先行きの見通しと人的担保がある、こういうふうに理解してよろしいですか。
  87. 宮本保孝

    宮本政府委員 そのとおりでございます。
  88. 小川国彦

    小川(国)分科員 本事業の先行きの見通しについては、数字的にどういうふうな検討をなされたのですか。
  89. 宮本保孝

    宮本政府委員 私どもといたしまして、個別の融資案件につきまして公の場で具体的にお答えを申し上げる立場にはないことを御了承いただきたいと思います。
  90. 小川国彦

    小川(国)分科員 私の方では、あなたが具体的に答えられなくても、千五百八十一億貸して三年据え置き七年償還ですから、ざっと考えてみても、年間二百億強返していけば千五百億返されるわけで、その返済計画はわかるのですが、そうすると、銀行局長さんの判断としては、この会社は一千五百億の金をかけましてこの四月十五日オープンして、年間一千万人のお客が入って、一人のお客さんが三千円の入場料と千円の食事と千円のおみやげを買ったとして平均五千円を使用すると、年間五百億の収入になる、そして千五百億の金は返せる、こういう事業計画を立てているようなんです。それを銀行局としては信頼をして、大体そういうことで金は返せるだろう、それでその事業の経営の中で返済はできるというふうに確信される、こういうことでございますか。
  91. 宮本保孝

    宮本政府委員 私どもといたしましては、銀行からの説明以上のことはちょっと判断しかねるわけでございますけれども、銀行側の融資に至りました事情等を聞きまして、現段階におきましてはそれで十分ではないかというふうに判断いたしております。
  92. 小川国彦

    小川(国)分科員 実は、この遊園地計画は三十万坪ということになっているのですが、そのわきにもう三十万坪更地の遊園地用地があるわけです。五十五年に千葉県とオリエンタルランド社の契約、あるいはそこに三井不動産、京成電鉄が保証者として入って協定を結んでいるのですが、三十万坪で千五百億円かけた東京ディズニーランドが赤字で経営が不能という困難な状態になったときには、この三十万坪の遊園地を宅地にしてもよろしい、商業用地や住宅地にしてもよろしいという協定があるわけですね。普通、千葉県の方では担保協定と呼んでいるのですが、この担保協定のお話は承っておりませんか。
  93. 宮本保孝

    宮本政府委員 そういうお話がある点についても聞いております。
  94. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、銀行局長さんとしては、事業の先の見通しの中に、もう一つ三十万坪の遊園地用地が将来宅地や商業用地として売れる、担保価値がある、だからこれも一つの保証条件だというふうに理解されているのですか。
  95. 宮本保孝

    宮本政府委員 その辺の事情等につきましては、私ども段階におきましては詳しくは承知いたしませんけれども、私どもといたしましては、主として超優良企業によります人的な保証がついているという点につきまして、本件の返済の確実性について信頼を置いているわけでございます。
  96. 小川国彦

    小川(国)分科員 人的保証というのは、具体的にどういうことになりますか。
  97. 宮本保孝

    宮本政府委員 超優良企業によります保証でございますので、本件の融資が仮に返済が滞るような場合には、その保証会社がかわって返済をしてくれるということでございます。
  98. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうしますと、一方の遊園地用地を宅地に変更してそこで弁済を求めるということは、考慮には入っていないわけでございますね。
  99. 宮本保孝

    宮本政府委員 その詳しい内容につきましては特に承知しておらないわけでありますけれども、私どもの本融資の返済につきまして確かだろうという判断は、主として超優良企業の人的な信用力を信頼いたしている結果でございます。
  100. 小川国彦

    小川(国)分科員 私が申し上げているのは、浦安の埋立地というのは海で——これは大臣にも聞いておいていただきたいのですが、日本全国国土の周りには海がある。日本の埋立地というのは、そこで魚をとったり、貝をとったり、ノリをとったりしていた漁民に漁業補償を払えば、もうその土地は地方自治体がどういうふうに処分をしてもいいという考え方があるのです。けれども、海というものは漁民だけのものじゃなくて、空気に湿度を持たせたり、陸地に対する環境保全の役割りを持つ。それから、いろいろな国民が海水浴に行って健康のために潮水につかる、釣りもする。海というのは、あらゆる国民が使用の権限を持っているわけです。ところが、従来の埋め立ての考え方だと、埋立地というのは、漁業補償を払ってしまえば非常に安い土地ができるのですね。  浦安の場合には、一万六千六百八十八円で埋立地が千葉県からオリエンタルランドという会社に売られている。そして、そこに今度ディズニーランドができるわけです。地下鉄東西線で日本橋から十五分で行けるところを、一万六千六百八十八円という安い値段で千葉県がオリエンタルランドに売った目的は、この広い三十万坪あるいはいま全部で六十万坪の土地に、過密状態にある東京都や千葉県の住民が行って、海の見える広い遊園地で楽しむことができる、そういう国民のレクリエーションの場だから一万六千六百八十八円という安い値段で払い下げたわけですね。  ところが、それが宅地転用されると、いま三井不動産がパークシティという名で売っているのは、坪五十万円なんですよ。駅まで十分、地下鉄で十五分、二十五分で日本橋へ来られるわけですからね。そうすると、三十万坪の遊園地の計画が千五百億かけて赤字になっていったら、赤字を解消するためにこの一万六千六百八十八円の土地を今度は五十万円で売れるわけですから、大変な土地転がしの利権になっていくわけですね。  ですから、銀行が金を貸したのは、千五百億かけてアメリカのディズニープロというりっぱな会社と契約をしていい遊園地をつくったと言われているのですけれども、ここはいま弁当持ちでは行けないのです。その中へ入ったら、中で全部食事をしろということになっている。谷津遊園とか、都内にも読売ランドとかいろいろありますが、弁当を持っていっていけないという遊園地は、日本じゅうでここだけじゃないか。そういう遊園地のわきに三十万坪あったら、弁当持ちで行って、海を見ながら野球をやったりサッカーをやったり、いろいろな広場がある遊園地が残されなければいけないのですが、それをわざわざこの会社が赤字を大きくしていくと、こっちを売っていいということになってしまう。五十万円で売っていいということになる。これは埋立地の目的に反するわけですね。いま日本興業銀行以下二十二行がお金を貸しているのは、遊園地だけでは採算がとれないけれども、この三十万坪を宅地として認めてもらえば、そこから金がとれるという考え方で融資をした疑いがあるのですよ。事実それで貸したのだろうと私は思うのです。  事業計画と返済計画に対する確信を関係者が持っていないのですよ。千葉県の企業庁も、銀行関係者も、あるいはオリエンタルランド社も、千五百億の金を自分の事業で返せるという確信を持っていない。確信を持っていないということは、一万六千六百八十八円の土地を国や県が、うちの会社は赤字でどうにも返せませんよ、そうしたら、じゃこっちを宅地にしてやるよと言ってもらえば、五十万円で三十万坪売れば、千五百億すぐ返せてしまうのですよ。どうもそういう政略的な政治的な融資ではないかという疑念を持っているわけです。  そういう点までやっぱり銀行局長さんのところで——都市銀行であれ大手企業が保証しているのであれ、その遊園地の土地を担保にもとらずに金を貸しているというのは、これも銀行業務の常識としては考えられないのですよね。日本全国で銀行が担保をとらずに金を貸したという例は、私ないように思うのですよ。局長さんは人的保証としきりに言うのですけれども、土地の上に遊園地をつくっているでしょう、いろいろな施設を。つくっているのだけれども、その土地を担保にとらないで金を貸しているというのは、私、少ないと思うのですよ。異例だと思うのですよ。銀行局長さん、その点ではそういう内容にまで検討されたのか。
  101. 宮本保孝

    宮本政府委員 事業内容につきまして特に私ども詳しく勉強したわけではございませんけれども、千葉県側と融資する側、あるいは融資を受ける側との間でいろいろな話し合いがあったと思うのでございますが、その結果としての事業計画を私ども聞いているわけでございますけれども、一応の返済計画も立っておりますし、事業の先行きいかんによりましては、この事業が成功の運びになる可能性もないわけじゃございませんわけでございますから、私どもといたしましては、いまおっしゃいました詳しい事業の内容までは、どういうお話があったということまでにつきましては検討はいたしておりませんけれども、全体として見た上で、本計画についての融資は、私ども銀行行政上、返済される見込みの非常に強い貸し金ではないかというふうに判断いたしているわけでございます。
  102. 小川国彦

    小川(国)分科員 公式の場で聞くのは宮本局長さんに初めてなんですが、私、一カ月ほど前に、こういう問題があるんでということで、銀行局長さんに申し上げたわけですね。そのときに私は、いまここで申し上げたような内容、いわゆる土地が担保に入っていない、わきの土地を宅地にして売ろうとする計画がある、こういうことを含めて、ひとつこういう貸し出しはいかがなのですかと伺いましたときに、局長さんは、お話のとおりだとすればそれはというようなことで、やはり問題があるんじゃなかろうかというような印象で受けとられて、私の言い分だけじゃなくて、向こうの言い分を聞いてみないとというお話だったんですね。だから、当然向こうの言い方を聞かれた中には、いま私が申し上げた後段の宅地化の問題、私は一カ月前に申し上げたことだから、もう当然お聞きくださったのじゃないか、こういうふうに判断しているのですが、この点はお聞きにならなかったのですか。
  103. 宮本保孝

    宮本政府委員 事業計画の内容自体は、そう詳しくは事情聴取いたしておりませんが、担保の点につきましては、先生御指摘のような点もないわけじゃございません。詳しく聞いてみましたところ、一応担保の予約みたいなものはしているようでございまして、現在正式に担保をとっておりませんのは、用地の一部を担保から除くこととしておるわけでございますが、この線引きがはっきり行われていないというふうな情勢もあるようでございます。  ただ、私どもは、物的担保につきましては、先ほど来申し上げておりますように、日本におきます超一流企業の保証がついておりますので、特別この点につきまして、正式担保についての要請を特にするつもりはございません。
  104. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、銀行局長さんの理解は、そういうわきの宅地化の話も聞いた、これはお認めになりましたね。
  105. 宮本保孝

    宮本政府委員 千葉県との間でそういう話がある点につきましては、事情を聞いております。
  106. 小川国彦

    小川(国)分科員 しかし、銀行局長としては、そういうことは別にして、あくまで超一流の企業が保証をしているからということで、そうすると、銀行局長さんの考え方でいけば、まず金を借りた第一当事者であるオリエンタルランド社が返済不能に陥った、そのときには超一流企業の保証会社がそれを弁済するものである、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  107. 宮本保孝

    宮本政府委員 そのとおりでございます。
  108. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、遊園地を宅地化しようということは頭にはない。
  109. 宮本保孝

    宮本政府委員 貸し金の返済についての最終的な担保といたしましては、やはり私どもとしては一流会社の信用力というものを信頼いたしておるわけでございます。
  110. 小川国彦

    小川(国)分科員 大臣、お聞きのとおり、大臣もお忙しい身で、こういう問題については初めてということを伺ったわけですが、国の銀行業務の監督指導の中では、お金の貸し方というものは、超一流企業がやる仕事であれ、一般の国民がやる仕事であれ、やはり手順というものは常識的に行われなければならないように思うわけです。担保をとらなくて金を貸して、そして会社がおかしくなったら、国の政策でこっちを変えれば、そこで金は返る。そういうことは行われてはいけないのであって、いま銀行局長の答弁されたように、まず当事者が支払う。それでなかったら、次は保証会社が払う。保証人になった会社が払う、こういう筋道で行われるべきだというふうに思いますが、大臣はこの点どのような御所見をお持ちでございましょうか。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、銀行業務を監督指導するという立場におきまして、預金者保護、そしてまた、いまのような御指摘から言えば、サウンドバンキングとでも申しましょうか、そういうことに絶えず留意はしていかなければならぬ問題であるというふうに私も心得ております。  ただ、非常に一般論としてみますと、全国銀行の担保別貸付残高の最近の実績からしますと、不動産担保が三四%、人的担保が三三%、無担保が四二%、それはそれぞれ信用力のある企業計画に対して信用力のある金融機関がなされておることでございますが、いま一般論としておっしゃったいわば本人返済不能の場合、それは一般論として保証者に債務保証が移行していくという筋道は、そのとおりだろうと私も思います。
  112. 小川国彦

    小川(国)分科員 この問題は、千葉県というのは大臣も御承知のように、金権千葉なんて言われておりまして、政治土壌が非常に腐敗しているというようなことが言われているわけで、そういう意味では、千葉県の行財政のあり方も正していかなければならないというふうに思っているのです。私は千葉県人だから言うわけじゃないですが、金権千葉なんと言うけれども、千葉県民が悪いんじゃなくて、そこにいろいろな大企業が来ましていろいろな仕事をするわけですが、その内容からいろいろな腐敗した状況とか問題点が出てくる嫌いがあるわけです。  この東京ディズニーランドは、たまたま千葉県浦安市の地籍にありますのですが、首都圏の国民から見れば、緑地の問題ですね、三十万坪の緑地を、本来の一万六千六百八十八円で払い下げられた国民の緑地としていく。大臣のお住まいのところはどういうところかわかりませんが、やっぱり過密だろうと思うのですね。そういう家族連れで行けるような遊園地の用地というのは、首都圏にとって貴重な存在じゃないか。ですから、埋め立ての目的が遊園地で払い下げられた土地であれば、それはやはり有料のところもあっていいし、無料のところもあっていいし、そういう遊園地として維持されていくように、この貸し付けを通じてこの企業のあり方というものの適正化を図っていくというのも、大蔵省の銀行行政の一つの柱じゃないか。ただお金を貸すんじゃなくて、そのお金を貸すことを通じてその企業が健全な正しい方向に進んでいくという指導をしていくのが、大蔵省の銀行行政のあり方ではないかと思うのですが、その点はいかがでございましょう。
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 千葉県は、私も物の統計で見たことがありますが、昭和五年はたしか一人当たり県民所得が日本で下から三番目ぐらいだったと思います。東京の八分の一ぐらいだったと思います。それがいまや先進県に仲間入りしておるというのは、そういういわば大企業の進出というものも大いにあったかと思いますが、千葉県県民の勤勉性がしからしめたことでもあるんじゃないかなというふうに見るわけでございます。  ただ、一般論としての銀行が預金者保護であり、そして健全な銀行業務を遂行するというたてまえにおいて、私どもが銀行を総体的な指導のもとにおいて、サウンドバンキングということは念頭に置かなければならぬ問題であるとは私も認識をいたしております。
  114. 宮本保孝

    宮本政府委員 申しわけありません。先ほど大臣の御答弁で担保別の数字でございますが、ちょっと訂正させていただきたいと思います。  全国銀行で百二十四兆貸し出しがあるわけでございますが、不動産担保で三十四兆、二七%、それから保証で三十三兆、二七%、信用で四十二兆、三四%でございます。
  115. 小川国彦

    小川(国)分科員 大臣、しっかりしたメモをやってください。  それから、時間がございませんが、それはまた大臣の今後の御指導をひとつ期待するとしまして、私は、きょうは大蔵省を激励する意味で、もう一つ短時間の間にお伺いしたいと思います。  ことしわが党は一兆四千億円の減税、野党全体では一兆円というような減税要求で、大臣もそれに対しては大型減税を考えるという自民党さんの方向も出ているわけですが、私、昨年もその前もまた予算委員会の中で申し上げたのですが、国の一般財源のほかに国の特殊法人、たとえば中央競馬会、日本船舶振興会、日本自転車振興会、日本小型自動車振興会、こういうところの財政状況、運営状況を見てまいりますと、かなりな余剰金、あるいは交付金、補助金の中に節減する余地があるんじゃないか。  私は、中央競馬会についてずっと検討してきているのですが、たとえば中央競馬会で、五十八年度予算では第一次国庫納付金が千三百八十一億円余、それから第二次国庫納付金が剰余金を含めて五百億円ということに今度特例法が出ているのですが、大体従来の決算を見ますと、三百億くらいの第二次国庫納付金を見ますと、さらに求めている新規の需要というのは二百億くらいではないか。私、中央競馬会のふところをいろいろ調べてさせていただくと、三千五百七十九億円の利益剰余金を持っている。この中には土地もありますけれども、現金預金で千百七十六億、有価証券で七百十四億、約千九百億くらいの余剰金を持っていらっしゃるのですね。競馬会の皆さんがきょうおいでになっていますが、おっしゃられると、たとえば競馬のストがあって開催不能になったときの補てんとか対策で必要なんだというのですが、どう考えても、この競馬会の余剰の中から二千億くらいは国家財政の緊急時に出してもらってもいいんじゃないかというふうに思えるわけです。  それから、船舶振興会の総売上額の中から三%受け取っている約五百億近い予算、それから日本自転車振興会や日本小型自動車振興会の補助金、交付金というのが、体育の補助金で言えば文部省、社会福祉の関係で言えば厚生省、こういうところと皆かち合った補助金になっていまして、適正な補助金になってないという感じがするのです。こういうところをずっと洗い直していくと、大まかですけれども、五千億くらいの財源が出てくるんじゃないか。  それからもう一つ、わが党の中でもまた皆さんの中でもいろいろ意見があると私は思うのですが、道路の特定財源として三兆一千億のガソリン税、重量税等六種類の税金があるのですが、道路財源も、いま行革の予算として対比してみると、かなり富裕なものではなかろうか。全国の国道、県道、市町村道を見ても、かなり整備されてきておりまして、毎日たくさんの人が使うガソリンの三兆一千億の税金が全部道路につぎ込まれているという現状は、どうもこれはかけ過ぎているんじゃないか、国全体のいろいろな行政のバランスから見ると。ことから五千億くらい思い切って吸い上げれば、一兆円減税財源は生まれてくるんじゃないかと思うのですが、減税問題に前向きの姿勢だと言われる竹下大蔵大臣、いかがなものでしょうか。
  116. 竹下登

    竹下国務大臣 これは昨年以来の経過から見ますと、税制というものは、言ってみれば、一過性の財源をもって充てるべきものではないのじゃないか、いわゆる恒久財源をもって充てるべきだ、こういうような議論、結論は議まとまらずになりましたものの、最大公約数としてそういう議論が行われて、今日に至っておるわけであります。  したがって、私どもは、およそ税外収入というものを考えます場合、ことしの場合、五十六年度の繰り戻しの問題というような財源でいろいろ各方面の御協力をいただいたわけでございますけれども減税財源として特定した場合に、いわば一過性のものを念願に置くというのはいかがなものかな、こういうふうに思っております。  それからまた、道路財源の問題につきましては、それなりの経緯をたどって、言ってみれば、国民と選択の合意の積み上げの中にできたものでございます。しかし、時に応じて、表現は必ずしも適切ではございませんが、幾ばくかの貸し借りは今日までも行われてきた経過はあると理解をいたしております。
  117. 小川国彦

    小川(国)分科員 ちょっと時間が終わりなんで、大臣にもう一問。  貸し借りがあったというのはわかるのですが、この不況の中でやはり思い切って一兆円ぐらいの減税をやって、それで国民の購買力、需要力を高めて景気浮揚して、景気回復に役立てたいというのは各界の意見としてあるわけです。その財源として、やはり一過性のものであってもそこに求めて検討して見直して、そして思い切ってやる、そういう方途を検討してみるというお考えはお持ちになりませんか。
  118. 竹下登

    竹下国務大臣 やはりいきなり減税財源として一過性のものを、あるいはいま一つは公債の増発ということを、とたで念頭に置くというのは、小委員会の専門家の皆さん方のお集まりになった議論の経緯を見ても必ずしも適当ではないな、財源問題全体としての範疇の中でとらまえるべき問題じゃないかな、こういう感じがしております。
  119. 小川国彦

    小川(国)分科員 時間が参りまして、また改めて竹下大臣と機会を得て論議を深めさせていただきたいと思います。  これで質問を終わります。
  120. 宮下創平

    ○宮下主査代理 これにて小川国彦君の質疑は終了いたしました。  次に、野間友一君。
  121. 野間友一

    野間分科員 所得税の申告。期限もいよいよ来るわけですけれども、例年のことながら頭を痛めている問題であります。ついては、憲法では納税の義務があると言いながら、それはあくまで実態面としても手続面としても適正でなければならないということは当然のことであります。  私は、きょうは大阪の国税局管内で起こりました農家に対するいわば徴税攻勢、この中での幾つかの問題を指摘いたしまして政府の姿勢をただしたい、こういうふうに考えております。  まず最初にお伺いするのは、税務行政の基本に関する問題でありますけれども、五十一年四月一日の「税務運営方針」、これはいまも行政上の基本的な指針として運用されているわけですね。
  122. 角晨一郎

    ○角政府委員 いまお示しの「税務運営方針」の基本的な考え方は現在もそのとおりでございます。
  123. 野間友一

    野間分科員 これを見ましたら、大変よいこともずっと書いてあるわけでございますけれども、たとえば「納税者に対する応接」、ここでも「納税者は、税務官庁をともすれば敷居の高いところと考えがちであるから、税務に従事する者としては、納税者のこのような心理をよく理解して、納税者に接することが必要である。」とか、「納税者に来署を求めたり、資料の提出を求めたりする場合においても、できるだけ納税者に迷惑を掛けないように注意する。」とか、「税務行政に対する苦情あるいは批判については、職員のすべてが常に注意を払い、改めるべきものは速やかに改める」云々、こういう方針もありますし、また「調査方法等の改善」のところでは、「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者理解協力を得て行うものであることに照らし、一般の調査においては事前通知の励行に努め、また、現況調査は必要最小限度にとどめ、反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」いろいろ記載がある中でこういう方針が書かれております。やはりこういう方針で税務行政はやらなければならぬという方針を決められておるわけでありますけれども、運営上、末端にまいりますとそういうことがなかなか貫かれていないというのが現状ではなかろうかと思うのです。  そこで私がお伺いするのは、まず国税庁にも資料をお渡ししておると思いますが、それをぜひ見てください。委員長にも手元に渡しておると思います。まずこの中で「農業所得についてのお尋ね」こう題する、一つは十二月二十三日付の和歌山の海南税務署長から海南の税務署管内の農家に郵送で昨年の十一月ないしは十二月に送付したものであります。それからもう一つ、粉河税務署、それから粉河町役場税務課の、各位あての五十八年一月十日付の二枚とじの書面がありますけれども、これは「昭和五十七年分農業収入等のお尋ね」というふうに題してありますが、これも粉河の税務署管内の各農家に対しまして税務署の職員を介して送付された、こういうものであります。  そこでまずお尋ねをしたいのは、これについてはいずれもその提出期限が求められておるわけでありますけれども一つは一月二十日、それからもう一つは一月三十一日ということになっておりますが、まずこういうものをいま申し上げたような方法で農家に送付しておるという事実の確認と、何のためにこういうことをされたのか、まずその点からただしたいと思います。
  124. 角晨一郎

    ○角政府委員 いまお示しの資料を私どもも拝見いたしたわけでございますけれども、照会文書の発遣者と申しますか、粉河税務署、海南税務署からこういうようなものが多分出されておるだろう、こういうふうに思います。こういう農業収入についてのお尋ね文書を出しました経緯について若干申し上げますが、従来農業所得につきましては、青色申告者の方は別といたしまして、白色申告で申告をされます方につきましては、申告の目安といたしまして農業所得標準というものをつくってやっておるわけでございます。それが、沿革的に申しますと、いわゆる反別と申しますか、耕作面積を基準にした面積標準というものが多いわけでございますけれども、農業所得の多様化の実態をよく見てみますと、近郊の野菜でございますとか特殊作物でございますとか、こういう反別の標準では必ずしも実態が合理的に反映されないというものが種々出てきておるわけでございます。そういう特殊作物、近郊野菜などにつきましては、出荷時期によって単価が違いますとか、単位面積当たりの収益にも相当の差がございますので、やはりこれにつきましては、作物ごとと申しますか、それぞれにつきまして収入金額をもとにするいわゆる収入金課税方式に移行した方がいいというふうに方向としては考えられるわけでございまして、各局それなりに、もちろん農業関係団体ともよくお話し合いをした上でそれへの移行を進めておるわけでございます。収入金課税ということになりますと、やはりそれぞれの収入の大きさというものが一つの目安になるわけでございまして、それをそれぞれいまお示しの発遣者から御照会を申し上げておる、こういうことではないかと思うわけでございます。
  125. 野間友一

    野間分科員 そうすると、この文書を出された法的な根拠ですけれども所得税法に言ういわゆる質問検査権に基づくものなのかそうでないのか、その点いかがですか。
  126. 角晨一郎

    ○角政府委員 これは相当幅広く農家の方に農業所得についてお尋ねをしておるわけでございまして、所得税法の質問検査権といったような規定をまつまでもなく、一般的な資料集収の照会ということで行っておると思っております。
  127. 野間友一

    野間分科員 そうしますと、一般的な意味での任意調査というふうになるわけですね。質問検査権前の問題ですか。
  128. 角晨一郎

    ○角政府委員 任意調査の範囲で行っておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  129. 野間友一

    野間分科員 そうしますと、出す、出さないは自由だ、出さない場合でもそれに対する不利益な措置はできない、こういうことですね、いまの趣旨からすれば。
  130. 角晨一郎

    ○角政府委員 これは、広くお尋ねを申し上げる趣旨から申しますと、できるだけ多くの方に御協力をいただきたいという気持ちが強いわけでございますけれども法律的にお尋ねになりますと、それにつきましてはあくまで任意の照復でございますので、御協力されるか否かは、お受け取りになった農家の御判断でございますが、できるだけ御協力をいただきたい、そういうことでございます。したがいまして、これに御協力いただかなくても、格別の制裁、そういうものはございません。
  131. 野間友一

    野間分科員 しかし、これは中身は大変細かいことまで要求していますね。いまの話によりますと、いわゆる面積課税から収入金課税に移行する、そういう実態を反映した上でということでありましたけれども、いま申し上げた所得税法上の問題でも質問検査権の行使、これは少なくとも罰則を伴うものでありまして、必要な場合ということで縛りがありまして、厳格にこれを運用しなければならぬ、いまの運営方針の中でも書かれておるとおりであります。しかし、これを見てみますと、非常に詳細でしょう。しかも印鑑まで押して出させておりまして、全農家が対象、こういうことですね。これは行き過ぎじゃなかろうか。質問検査権、これは事後の質問検査権ならともかくとして、全農家を対象にしてこういう、たとえば「年間作付(輪作)状況及び農作物の販売状況」、取引の金融機関まで含めて記載を要求しておる。あるいは、粉河の税務署のこの書面によりますと、果樹が中心のようでありますけれども、いずれも同じようにごく詳細な記載を要求しておるわけで、これを受けた農家は、いきなり来たとびっくり仰天しておるわけですね。しかも、海南の税務署長のものについては、その趣旨についても何の記載もなく、いきなり郵送して出てくる。あるいは粉河のものも、この文書の中にもありますように、いま任意のものだとおっしゃいましたけれども、「必ず提出してください。」こういうふうになっておるわけですね。これを受けた農家がびっくりするのは当然なんですね。先ほどの運営方針からしても、こういうものを事前に、しかも全農家を対象にするのは行き過ぎじゃないか、私はこう思うわけです。農家もこういうものはやめてほしいという強い要請がありますけれども、これはやめるべきじゃありませんか。いかがですか。
  132. 角晨一郎

    ○角政府委員 先ほどこの御照会を申し上げた趣旨について御説明をしたわけでございまして、やはり農業所得の中でも実態に即した課税方式というものを取り入れていかなければならないわけでございますが、収入金課税ということになりますと、それなりに資料、情報を基礎にして全体の申告水準というものも整備をしていかなければいけないということでございます。この照会をいたしました趣旨は、あくまでそういう前提としての資料の収集ということでございますが、私どもこういうものを進めるに当たりましては、やはり納税者の皆さん、農業団体の理解協力というものが前提条件として必要であることは十分にわきまえておるわけでございます。照会の中身が若干詳細に過ぎるという御指摘でございますけれども、農家によりまして作物の種類なども一様ではないと思います。それを、いろいろなものを集約的に同一用紙に書けるようにということを考えてやや詳細、具体的になっているきらいもあるかと思いますけれども、その辺につきましては私どもも今後とも工夫をしてまいりますが、基本的には、理解協力を得て、こういうものについて整理しながら全体として適正な課税の方向に納税者と当局ともども進んでいきたい、こういう気持ちでございます。
  133. 野間友一

    野間分科員 いま、これから工夫をしていくというお話がありましたけれども、百歩譲って、仮にこういうもので調査をされるにしても、中身については十分検討してほしい、これは再度確認したいと思います。  と同時に、粉河税務署の各位あての文書の中に「必ず提出して下さい。」こういう表現がありますけれども、税務行政のあの運営方針からしてもこれはあくまで任意のものであると同時に、その趣旨を明らかにした上でやるべきであると私は思いますけれども、中身の検討とあわせてそれに対する答えをいただきたいと思います。
  134. 角晨一郎

    ○角政府委員 先ほどから申し上げておりますが、理解協力をいただくことが必要でございますので、この資料について、お尋ねをする文面などにつきましても今後ともできるだけ工夫をしてまいりたいと思います。これは各局各署、それぞれの工夫の産物でございます。「必ず提出して下さい。」というのは、協力して出していただける方と出していただけない方でできるだけ差が出ないようにという気持ちを込めて書いたことかとも思いますけれども、全体として今後とも検討していきたい、こう思っております。
  135. 野間友一

    野間分科員 課税方式の変更、これは理解協力を得てとおっしゃいましたね。つまり、面積課税から収入金課税への移行ですね。  こういうケースが現に起こったのですけれども、たとえば課税方式の変更に伴いまして過去にさかのぼって追徴をする。これは五年とか三年とかさかのぼるぞとおどしをかけまして、結局一年あるいは二年さかのぼってやったわけですけれども、方式の変更によってさかのぼってこういう追徴をすることが国税庁として許されるのでしょうか、どうですか。
  136. 角晨一郎

    ○角政府委員 所得標準で課税する場合のお尋ねだと思うのでございますけれども、たとえば面積課税によっておりました場合に、調査の結果基礎になる面積に誤りがあったというような場合には、遡及して面積標準で訂正していただくということになるわけでございます。それが途中で収入金課税に変わったという場合についてのお尋ねだろうと思うのでございますけれども、ある年から収入金課税に移行した、その前は面積標準課税で課税済みだという場合に、遡及してすでに面積課税の時代についても収入金課税で課税し直すかどうかという点につきましては、それはそういうことはないので、収入金課税に移行した後について収入金の誤りがあれば是正するということであろうと思います。ただ、従来収入金課税方式によっているものについて収入金の漏れがあった場合に遡及して是正を求めるということは、先ほどの御説明と同じ趣旨から、それは当局として行うことになる、そういうふうに思っております。
  137. 野間友一

    野間分科員 上富田という町が和歌山にあるのですけれども、ここではさかのぼって追徴しておりますけれども、その際に納税協会に入っておる者は一年、入っていない者は二年とさかのぼって追徴しておるわけです、一律に。そういうことは許されるのですか。不公正じゃないですか。
  138. 角晨一郎

    ○角政府委員 冒頭委員も御指摘になりましたように、税務の執行の基本原則があるわけでございますけれども、これは特定の団体でございますとかその構成員であるということで差別的に適用してはいけないということは自明のことでございまして、局署を通じてそのような差別的な、区別して取り扱うということはやっていないと私ども思っております。
  139. 野間友一

    野間分科員 そういうケースがあれば私の方で別の場で申し上げたいと思いますけれども、その場合には是正をしますか。
  140. 角晨一郎

    ○角政府委員 私ども、いま申し上げた基本的姿勢で取り組んでおるわけでございまして、実際に個別の納税者間で取り扱いを区々にするということがございませんので、仮定の御質問ということになりますと答弁がなかなかむずかしいわけでございますけれども、基本的な方針が局署で一律に守られるようにわれわれも努力しておるということでございます。
  141. 野間友一

    野間分科員 別の場でまた直接申し上げたいと思います。  時間がありませんので続けますけれども、これは別の問題ですが、いま申告時期なのですね。自主検査、自主申告、つまり申告納税制度の立場上納税者がみずから申告書を書いて、そして自分はボーダーライン以下だから、これは税務署でなくて市役所だといって海南の市役所へ持っていったところ、ボーダーラインのものは受け付けずに全部税務署へ直接持ってこい、こういう指示をした、それで受理を断られたというケースが発生しておりますけれども、そういう方針で臨んでおるのですか。
  142. 角晨一郎

    ○角政府委員 いまおっしゃいました点、私どもはまだ詳細承知してないわけでございますけれども、確定申告に当たりましてはみずからきちんと計算をして期限内に申告し直していただくということで私ども対処しておるわけでございます。ただ、その場合に、申告書の書き方から始まりまして所得計算の個別の事柄につきましていろいろ御相談のあることも事実でございまして、その場合にはできるだけ御便宜をお図りして、全体として適正な申告が促進されるようにという努力は私どもなりに払っておるわけでございます。
  143. 野間友一

    野間分科員 質問に答えてくださいよ。ボーダーライン以下で、自分は市役所で手続するのが適正だといって行ったわけです。ところが、税務署からの指示でそういう場合には全部税務署に持ってこい、こう言われたというわけですよ。それは国税庁の指導なのかということです。
  144. 角晨一郎

    ○角政府委員 現在、地方税といろいろな形で協力関係を進めております。それぞれの地方団体によって若干ずつ内容に差がございます。その辺、提出窓口を私ども国税庁の方から、ボーダーラインの人についてどこへ出すようにという具体的な指示をいたしておりません。したがいまして、詳細についてはお答えができません。
  145. 野間友一

    野間分科員 時間がありませんので進めますけれども、もう一つの文書がありますね。十二月二十日付で「農作物の仕入等に関する資料の提出方の依頼について」、これは粉河の税務署長から各農協あるいは各出荷組合あての文書であります。この表題の文書にあわせて、「昭和」これは年度の数字が抜けておりますけれども、五十七年分の農作物の仕入等資料提出先名簿、それから別の用紙として資料せん、これはコピーを渡してありますけれども、これをつけて農協あるいは農業団体に配付しておりますけれども、これについても先ほどの各個人に対するお尋ねと同じようにいろいろ疑義があるわけであります。  まずお聞きしたいのは、これは法律上の根拠は一体どうなのかということ、二百三十五条の照会がありますけれども、これとの関係で一体どうなのかということ。時間の関係でついでにお聞きしますけれども、これも任意のものであって提出するかどうかについては農協あるいは関係団体の任意の意思に任せるということじゃないかと思うのですけれども、その点いかがですか。
  146. 角晨一郎

    ○角政府委員 所得税法の二百三十五条には、事業団体に対する諮問という規定がございますが、いまお示しの昨年の十二月の資料の提出依頼の照会文書、これは二百三十五条の規定に基づくものというよりも、先ほど個人について申し上げましたと同様に、任意の資料収集、こういうことでございます。
  147. 野間友一

    野間分科員 したがって、これは出す出さぬは自由である、出さない場合でもそれに対して、団体に対する不利益というのは考えられませんけれども、そういうことは一切ないということですね。
  148. 角晨一郎

    ○角政府委員 法律的な性格といたしましては任意の御判断によるものでございますけれども、私どもとしては、できるだけ御理解の上御協力をいただきたいという趣旨でお出ししたものと了解しております。
  149. 野間友一

    野間分科員 これも、たとえばこの資料せんですね、この中には振り込み先、つまり農協とか取引銀行、あるいは決済状況、決済の方法、農作物の品名、これは相当詳細に各団体加盟の個人別にこういうものをつくって、そして出させるということになっているわけですね。これまた大変なことでありまして、これはいわば事後の反面調査に該当することが要求されておる。二百三十五条、仮に二百三十五条であってもこの中には括弧書きがありまして、所得に関する事項については提出を求めることはできない、照会することはできない、こういうふうにありますけれども、そういう点も踏まえて、これはやはり事後の反面調査の脱法行為ではなかろうかという感じすら私はするわけですけれども、これはいかがですか。
  150. 角晨一郎

    ○角政府委員 昨年の十二月のこの照会文書を拝見しておるわけでございますが、基本的な性格といたしましては、任意に御照会申し上げているということでございます。  若干中身が詳細にわたるではないかという御指摘でございますけれども、やはり現在仕入れ等が一括金融取引の面まで含めて記帳されておるというようなこともあってやや詳細にわたったと思うわけでございますけれども所得税法二百三十五条の規定が所得に関する事項を除いて諮問することができるということからもうかがわれますように、所得金額そのものについての御照会じゃなくて、やはり取引の中身についてできるだけ御照会申し上げたいという趣旨でこの様式ができておると思うわけでございますが、これも御理解と御協力を得て、記載できる範囲で出していただくという趣旨のものであろうと思います。
  151. 野間友一

    野間分科員 いま記載できる範囲という趣旨で云々と言われましたけれども、実際、所得そのものでなくても、これだけ詳細に書けばこれはまさに所得そのものになるわけでしょう。出てくるわけですね。だから、本人が知らない間に、自分の所属しておる団体が決済状況全部明らかにされていく、このことは、いま申し上げたように、やはり事後の反面調査と同じことになるわけでしょう。これは任意の名においてやるわけですからぬ。これは、中身についても非常に問題があると私は思うのですね。これはしかもこのタイトルでも、これは任意のもので云々という趣旨も何も書いてない。しかも中身はそういうような非常にごく詳細で、しかも脱法の疑いがあるようなことまで記載を要求している。これも十分再検討する必要があると思いますけれども、いかがですか。
  152. 角晨一郎

    ○角政府委員 先ほども申し上げましたが、依頼の仕方それから様式につきましては各局各署それぞれ工夫してやっておるわけでございますけれども、いろいろな御意見、御要望につきましては十分検討の過程でそしゃくをして対処していく、こういう考え方でございます。
  153. 野間友一

    野間分科員 時間がありません、最後に一点だけですけれども。  収入金課税の場合のいわゆる所得率あるいは経費率の問題でありますけれども、大阪府下でのいろいろなケースも私若干は承知しておりますけれども、たとえば野菜のナスですけれども、このナスについて税務署の計算では、計算と申しますか標準では、所得率ですね、枚方の場合には七九%、あるいは吹田の場合には同じく七九%というふうに標準率を出しておったようでありますけれども、これも実態に即していろいろと交渉する中で、枚方の場合には四三%、吹田の場合には二五%、実態に即してこういうことになったやに聞いておるわけでありますけれども、一律にこういうふうに推計したものを課するのでなくて、その実態に即して、農民の納得のいくようにぜひ税務署としてもその運営上、運用上処理をするべきじゃないかというのが一つ。これから収入金課税に方式を変更される場合には必ずこういう問題が出てくると思いますけれども、この点が一点。  それからもう一点、課税方式の変更については市町村長あるいは農業団体あるいは参加する個人、そういうものの理解と納得あるいは同意、まあ同意とまではいかぬとしても、そういうものを十分に相談した上で、納得のいく上でやられるべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょう。
  154. 角晨一郎

    ○角政府委員 収入金課税の場合の経費率といいますか所得率、経費率というよりもむしろ所得率だろうと思いますけれども、それを合理的に算定するようにという御質問が第一点だろうかと思いますけれども、私どもできるだけそれぞれの地域特性と申しますか、そういうものを織り込んで、それから市場調査とか各種の統計資料、そういうもので収穫量ないしはその価格の推移、生産資材の価格の推移といったものも相当具体的に把握して合理的な算定をするように努めておるわけでございますけれども、今後ともその趣旨はさらに徹底してやっていきたいと思うわけでございます。  それから、収入金課税に移行する場合の関係方面の理解協力という点につきましては、私どももこれまでも気をつけてまいりましたけれども、今後とも一層理解協力を得るように努力をしてまいりたいと思っております。
  155. 野間友一

    野間分科員 時間が参りましたので終わりますけれども大蔵大臣、いろいろな点について私指摘をし、国税庁お答えになったわけですけれども、いま答えられた趣旨を体して、しかも私がお聞きしたことを十分そしゃくして、その上で適正に、改めるべき点は改めるというふうにぜひしていただきたいと思いますけれども最後にお伺いして、終わりたいと思います。
  156. 竹下登

    竹下国務大臣 恐らく、私も素人でわかりませんけれども、大筋で言えば、要するに、強制はいたしませんが、御協力をいただきたい、こういう趣旨のことであろうと思います。それがたまたまこのそしゃくの度合いが少ないとか、受けとめる方もそうでございました場合等、考慮すべき点はそれはあるだろう、その点においては、委員の意見を否定するものではございません。
  157. 野間友一

    野間分科員 終わります。
  158. 宮下創平

    ○宮下主査代理 これにて野間友一君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  159. 宮下創平

    ○宮下主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管について質疑を続行いたします。川本敏美君。
  160. 川本敏美

    川本分科員 私は、ベテランの大蔵大臣所得税の問題について若干お聞きしたいと思っております。  御承知のように、この間から予算委員会の最中にも国会では各党間でいろいろ話し合いをされて、景気浮揚になるような大幅な減税をするという基本的な方針で合意されました。それを受けて、官房長官も国会の、議院運営委員会の席上でも予算委員会の席上でも、ひとつ尊重したいというような御発言をされておることは御承知のとおりです。減税規模が大体幾らかということについては財源との関係もあってなかなかめどがつかないけれども、七月までにはめどがつくというような御答弁もあったやに聞いておるわけです。  そこで、現在所得税というものが大変不公平になってきておる、特にサラリーマンが不公平感をつのらしているんじゃないか。それは昭和五十二年度以来控除額が据え置かれてきた、物価調整減税というようなことが行われなかったというのが一番大きな原因ではないかと思うんです。そのことによってもたらされた影響は、データでいろいろ調査をしてみますと、五十二年度にはサラリーマンで所得税が課税されておる人が二千八百万人であった、それが今度五十八年度の予算では三千六百六十三万人、実に勤労者の八八%が所得税課税対象である、五十二年に七四%であったサラリーマンが、八八%が課税対象になっている。全体の個人所得税の課税対象四千百六十万人のうち三千六百六十三万人というのですからこれは大変なことだと思うわけです。また、金額でみますと、五十八年度の税収が三十二兆三千百五十億、そのうち源泉分が十兆八千億ということですからこれは大変なことだと思うわけです。その間五十二年以来今日まで、消費者物価の上昇率が大体二八・九%と言われていますからこれは大変なことだと思うわけです。そのことによって勤労者は大変な不公平感を持ってきておる。  そこで、今度はいよいよ大幅な所得税改正が行われるやにお聞きしておるんですが、報道等の限りで見ますと、大蔵省はもし行うとすれば基礎控除等の引き上げ、現在四人家族のモデルで二百一万五千円、こういう課税最低額を引き上げることについて検討せざるを得ないような立場に追い込まれておると聞いておるわけですが、現在大蔵省はどのように考えておられますか。
  161. 竹下登

    竹下国務大臣 いま川本委員御指摘になりましたが、確かに減税に際しては、与野党の合意、これを尊重して、そして財政改革の基本的考え方を踏まえながらこれから真剣に検討する、こういう段階でございます。そこで、税収動向についての見きわめの一つの時期が、七月に五十七年度税収が確定するということが一つの機会になるのではないか、その辺を踏まえながら検討を進めていかなければならぬわけでございます。  そこで、減税の方法についての御議論になりますと、たとえて申しますと、五十八年度の税制改正に関する答申を読むと、「税制全体の見直しを行う中で、所得税及び住民税の課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行う必要があると考える。」こういう答申をいただいておりますので、税制調査会にお諮りをいたしますならば、あらかじめ予見して税制調査会へ押しつけるというものではなくして、当然幅広く検討されるときに、みずからお出しになった答申というものが底にはあるであろうというふうに理解をいたしております。
  162. 川本敏美

    川本分科員 私は、その際に特に勤労者、サラリーマンの人たちが念頭に置いておることはいまの勤労者控除のあり方だと思うわけです。いま勤労者控除というのはたしか百五十万以下が四〇%、百五十万以上三百万以下が三〇%、三百万以上が二〇%というような形で認められておると思うのですが、これは五十二年の税制改正の際にそのように策定されたと聞いておるわけです。ところが、この問題について考えてみますと、現在新しく高校を卒業して就職した一期のサラリーマンでも百五十万はオーバーしていますよ。だから、百五十万以下というような勤労者はほとんどいない、私はこのように思うわけです。だから、五十二年以降今日までの消費者物価上昇率が二八・九%あるとすれば、最低その率に、たとえて言えば三〇%程度の引き上げがなされてしかるべきじゃなかろうかと私は思うわけですが、数字で言いますと、百五十万以下が四〇%というのであれば、二百万以下を四〇%とか、三百万以下が三〇%というのであれば、四百万以下が三〇%とか、六百万以下が二〇%というのであれば、六百五十万以下が二〇%というような形にしなければ、ただ基礎控除とか扶養控除だけを引き上げたからそれでいいんだということにはならぬのじゃないかと思うのですが、その点どう考えておられますか。
  163. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 先生お話しのように、給与所得控除の仕組みはそうなっておるわけでございますが、この仕組みは四十九年に大幅に改正され、五十五年に一部手直しが行われておるわけでございます。その中での控除率等でございますが、四十九年の改正で非常に大幅に拡充されたわけでございます。現在六百万円までは二〇%とされておりますけれども、四十九年以前は百五十万円までが二〇%というふうに、二〇%ラインが一気に四倍に拡充されておるというところから、四十九年に非常に抜本的な改正が行われたと私どもは承知いたしておるわけでございます。こうした金額、控除水準と申しますのは、給与所得控除がどういう根拠、理由から制度化されておるか、これはやはりサラリーマンの方の必要経費の概算控除という点が一番大きなウエートを占める説明であろうかと思われます。そういったところからいたしますと、現在の水準はこの制度の理由からいたしまして説明できる範囲を十分満たし、また相当な水準にあるということ、私どもそんな考え方もあるわけでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、今後減税を行います際にどういう方法をとるかにつきましては、先ほど大臣からも申し上げておりますように、全く今後の検討課題でございまして、これをする、これをしないということは現在のところは全く白紙でございます。しかし、ただいま申し上げたようなそういった事情もあるということも私ども念頭にはあるわけでございます。
  164. 川本敏美

    川本分科員 サラリーマンというのは、月給をもらっていくために必要経費は要らないのかといったら、これは皆さんも同じですけれども、やはり要りますよ。相当量要ると思うのです。特に職場における人間関係をうまくやっていこうとすれば、冠婚葬祭等のおつき合いも全部要るわけです。もちろん洋服からネクタイから靴までの消耗もありますけれども、腕時計を失うこともありますよ。だからそういう面から見ると、サラリーマンというのは、簡単に言えば法人の会社であれば仮に得意先を招待してゴルフのコンペをやっても、あるいはバーやキャバレーで宴会をやっても、それは営業費として認められるわけなんです。あるいは得意先に対して御祝儀や御香典やいろいろおつき合いをしても、それもやはり営業活動の中に認められていく性質のものです。そういうようなことを考えますと、サラリーマンとは置かれておる形が税法上大分違うと私は思うわけです。  そういう意味において、特に高校を卒業した一期とか大学を卒業した一期は独身者が非常に多いわけですね。だから、基礎控除だけでは過酷な課税になっておる。その辺に一番不公平感をつのらせておる原因があると私は思うのです。だから、次に所得税のいわゆる課税最低限を引き上げる措置を講ずるときには、あわせて勤労者控除についてももう一度検討してみる、こういう形でなければいけないのじゃないかと思うのです。  サラリーマンがよく言いますことに、御承知のようにトーゴーサンとかクロヨンとか、この言葉の持つ意味は別として、勤労者、サラリーマンは一人当たり大体二十三万四千円の所得税を払っておる、自営業者は平均十七万二千円だ、農家は七万九千円だ、これがクロヨンとかトーゴーサンとか言われる数字のもとになっておることだと思います。ともかくサラリーマンというのは残業しても、残業で働いた超過勤務に対する税金が課税されるわけですから、一〇〇%捕捉されていることは間違いないわけです。私どもは、そういう中で勤労者の不公平感をなくするために、次の税法改正のときには勤労控除を引き上げるということを前向きに検討してもらいたいと思うのですが、その点もう一度お答えいただきたいと思います。
  165. 竹下登

    竹下国務大臣 これは先ほども申しましたように、いわば必要経費に値するものとしてのことがいままでも議論されておりますし、これからも議論されるであろうと私も思います。ただ先ほど来申し上げておりますように、これを対象にして議論してもらいたいという性格のものではございません。税制調査会は三年ごとに、地方、国を通じての全体的な税に対する御答申を賜りたいという権威ある存在ということになっておりますが、いままでの経過からしても、そしてまた国会できょう川本委員と私どもとの間で問答しましたことも、正確に税制調査会へ御報告申し上げる課題として取り上げておりますので、そのようなことになるであろう。私はそうさせますという性格のものじゃございませんけれども、そのように御理解をいただければと思います。
  166. 川本敏美

    川本分科員 次に、私は記帳義務の問題について若干御質問申し上げたいと思います。  これは昨年七月三十日に臨調の方から、行政改革に関する第三次答申がなされました。その中で、いわゆる「給与所得者の多くが所得の把握差等から所得税負担について不公平感をもっている」これは先ほど私が申し上げたことです。そういうことの解消ということで、現状を踏まえて、税負担の公平確保などのために申告納税制度が適正に運営されるための不可欠の要件として、制度面で次のような改革を提言しておるわけです。「法人及び個人営業者等に対する記帳義務の導入 推計課税及び挙証責任の整備 いわゆる総収入申告制の導入」こういうようなことが言われている。  こういうことを受けて、大蔵省は税調にもいろいろ諮問をしておるわけですが、それと並行して、主税局長の私的な諮問機関として、申告納税制度研究会というのを金子先生を座長にして発足させて、いま研究会において申告納税制度改革試案骨子なるものを示しながら、いろいろ論議をしておられるわけです。  それを当時の新聞報道、これは五十六年十一月二日の毎日新聞ですけれども、それから読み取りますと、「法人及び一定の所得水準以上の個人に対して記帳義務を課する」「本人の記帳によって所得金額が計算できない場合には、推計課税ができることを明示する」こういうような一連のことが書かれてあるわけです。  私は現在、記帳義務を課するということに反対の意見を持っておるわけです。それはなぜかといいますと、私も、中小企業団体等のお世話をしながら、いろいろ納税相談等も平素私どもの協会の仕事の一部としてやっておるから、中小企業者との接点を持っておるわけですが、そういう方々を見てみますと、青色申告をしておられる方は一〇〇%全部記帳しておるのかというと、なかなか一〇〇%記帳はできていないわけです。なぜ記帳できないのかと言うと、私はもともとそういうことは全然不得手だ、そんな帳簿をつけるくらいならこんな職人になりませんよというような種類の人たちがたくさんおるわけです。  奈良県の吉野郡というところは杉の割りばしの名産地なんですが、そこの割りばしを割っておられる家庭へ行ってみますと、帳面、ノートというようなものを全然使っていないのです。平城宮跡等から出る木簡というのを大臣御存じでしょう。はしを割った板の端にいつ何日に何把のはしを問屋へ何本渡したということを書いた束を横へ置いてある。それを次々と書いて、渡したときに、書いたものをちゅちゅっと刺していくだけの話です。あなたのところは一年にはしを何本つくったんやと言ったら、そのくくってある束を持ってきて、これだけや、こう言うわけや。それさえわかっておれば、単価がわかっておるんだから、それでもうわかるわけです。きわめて原始的な原始記録しかない。そういう方もたくさん現実にはおると私は思う。  そういう人たちに一律に今度は記帳しなさいなんて言ったら、できっこないですよ。もしつけなかったら追徴金を取るぞとか罰金を取るぞとかいうことになれば、この人たちの生活権を奪ってしまうことにもつながりかねないと私は思うのです。だから、この記帳義務というのは、いまの青色申告制度でもそういう原始的な記帳というものを認めてやらなければ実情に合わないと私は思うのですが、その点どうでしょう。
  167. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 最初に先生申されました金子先生の委員会でございますが、これは一昨年、この問題が非常にむずかしい問題である、こういうものを制度化すべきであるという御意見、一方、これは非常に慎重にやるべきであるという御意見、いろいろございまして、この問題を直ちに税制調査会にお諮りするというのにはまだ煮詰まっていない面もあろうかということから、まさに局長の私的な研究機関としてつくったわけでございます。  この研究機関は、大体一年近い研究を重ねまして、昨年の六月に一応の取りまとめは終わっております。この取りまとめを受けまして、現在、税制調査会の部会で本格的に検討が行われているという事実関係でございます。  それから、ただいまの先生のお話でございますが、まさにそういういろいろなむずかしい問題があるわけでございまして、そこで、この現在の政府税制調査会の五十八年度改正答申におきましても、この問題はまさに検討に付すべき課題ではございますが、納税者の実情等を十分勘案しつつ検討を進めることとしておるというふうに昨年末の答申でも中間的な報告がされておるわけでございまして、まさに先生のお話しのそれぞれの業態の方、納税者の実態、そういったものに合わせたこういった制度が考えられないか、どういったものがそれにふさわしいか、そういった点を特に念頭に置きまして検討がされておるところでございます。
  168. 川本敏美

    川本分科員 最近物価水準がだんだん上がってきますから、いわゆる一年間の営業取引の総額が一千万を超えるとかいえばそれはもうざらにあると思うわけですが、そういう層の中ででも私は記帳そのものが経済的にも物理的にも不可能な層があるということを、この点はお認めになりますか。
  169. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 私ども普通に考えますと、一定規模の営業なり商売をしておられるという以上は、恐らくいま先生のお話しのような原始的な記録を初めといたしまして何らかの記録あるいはそれを整理したものとしての帳簿といったようなものがあるんだろうというふうな気はいたすわけでございます。ただ、先ほど先生が例に申されましたようなはしを一本ずつ立てていくとか、あるいはもう少しそれが進みますと、大工さんなんかですととにかく暦にいつどこへ行くということだけを印をつけておくということぐらいから始まって、帳簿とはいかなくても何らかの記録はお持ちではないか。そうでなければいまのお話のような一千万ぐらいの御商売をされるということもなかなかむずかしいんではないかという気がするわけでございまして、私ども、特に帳簿のないところに新しく帳簿をお願いできるかあるいはあるがままの何かの記録を保存し、整理していただくだけでもいいんじゃないかという気はするわけでございます。そこは十分実態に即して考えなくてはいけないというふうに考えておるわけでございますが、一千万円を超える御商売ですと何らかのものがあるんではなかろうかと私どもは推測するわけでございます。     〔宮下主査代理退席、主査着席)
  170. 川本敏美

    川本分科員 昭和三十七年に国税通則法が制定されたときにも記帳そのものが経済的、物理的に不可能な層が存在するということは指摘されておるわけですね。だから私は、いまおっしゃいましたけれども、一千万以上、こうおっしゃるけれども、原料代が高いですから、加工料みたいなものはごくわずかしか手取りがなくても一千万を超えてしまうような仕事はたくさんありますよ。だから先ほども申し上げたように、私の奈良の吉野の下市で一千年ほどたって遺跡を掘り返したらまた昭和の木簡が出てきますよ。そんな原始記録でも私はいいんじゃないかと思うわけです。それを、おまえのところは記帳してないからこれはいけないんだと言われても、これはとてももう能力的にもできない層がある、こういうことはやはりはっきり確認をしてもらわなければいかぬ。まして今度のこの記帳義務の議論の中で、先ほど私が読み上げましたように、局長の私的な研究機関だそうですけれども、そこでは、もし記帳義務に違反した場合にはペナルティーとして推計課税とか挙証責任の転換ということすらいろいろ議論されておるやに聞いておるわけです。私は、そういうことによっていわゆる推計課税をやりやすくしようとかあるいは挙証責任が本人の責任になるようにしようというようなところに大きな本当のねらいがあるんじゃないか、私はこのように思われてならぬわけです。現在白色申告に限っては課税処分の取り消し訴訟などで所得の認定に対する合理性の立証責任は税務当局にある、こういうふうにいままでの訴訟では大体判決が出ておると思うわけです。その挙証責任は納税者が負担するんだということになれば、もう税務署長は一方的に推計課税ができるということに連なって権利の乱用といいますかそういうことが公然と行われることになってくると私は思うわけです。その点について、私の言うておる考え方はこれは邪推ですか。やはりそういうことを考えておられるじゃないかと私は思うのですが、どうでしょう。
  171. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 先ほどの研究会におきましても、この問題もお話しのようにいろいろな角度から検討はされておったことは事実でございます。ただ、この挙証責任の問題、まさに御指摘のようないろいろな問題があるわけでございます。  確かに一般的な判例といたしましてはそういった考え方もあるわけでございますが、一方、何百万件という課税事案を大量的に処理していく国の課税債権についても、そういう従来の考え方で円滑に執行ができるかという点もたびたび指摘もされておるところでございます。しかし、何と申しましてもそういった何百万人の方の納税者の権利、地位にも関係することでございますので、簡単に理屈の上からこうと割り切ることは非常にむずかしい問題でございまして、現在の税制調査会の特別部会でもこれからその点も取り上げて検討しようとしているところでございまして、現在どういう方向でこれを結論づけようとか、そういった中身について特に詰まった点はございませんわけでございます。
  172. 川本敏美

    川本分科員 私は、やはりこの記帳義務化というのは、これはあくまでも弱者切り捨てにつながるおそれがあるということで先ほど来申し上げておるわけです。局長は先ほど、大工さんでもカレンダーに印をつけておる。このごろは大工さんでも木造住宅一戸を自分の家の近所で仕事をもらうと大体三千万円ぐらいするんですよ、私どもの方では。木造二階建てで一戸の家を、あんたこれ請け負うてんかと言って請け負うたら年間三千万円ぐらいする。その人が記帳全部しておるかと言うたら、きちんとそんなことしてませんよ。材木は材木屋さんで買うて納品書が来る。左官屋さんは左官屋さんで、建具屋さんは建具屋さんで、電気工事屋さんは電気工事屋さんでというぐあいにみんな請求書が来て、それに金払って、領収書を残しておく。あなたのところ青色申告だから帳面持ってこいと言ったら、大きなふろ敷包みかダンポールの箱に納品書と領収書を山ほど入れて持ってきて、これですねと。それを整理するだけの能力がないわけですね。また、それを整理しようと思ったら寝ないで整理しなければならぬ。事務員置くだけの力もない、そういう方々もおられるわけです。だから局長が言われるように、一千万円以上もと言われると、これは大変なことになるわけです。現在の実態をお知りにならぬからそういう発想が出てくるんだろうと思うのです。  そこで、もう時間がありませんから大臣最後、記帳義務というものに対しては大臣も慎重に対処していただけると思うのですけれども、そういう納税者の現状にあることを十分御理解いただいて、今後ひとつ青色申告制度あるいは白色申告制度等の運用についても十分御配慮、御検討をいただくことをお願いしたいと思うのですが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  173. 竹下登

    竹下国務大臣 これは確かにきちんと、やっぱりなあと思いますのは、税調の方でもそのことを、そういう納税者の実情等を十分勘案して、こういうことを特に答申の中にもお書きいただいておるというのは、まさにいまおっしゃいましたようなもろもろの事情をとらえて検討すべき課題だという意味であるというふうにまともに受けとめていいと思っております。
  174. 川本敏美

    川本分科員 終わります。
  175. 砂田重民

    砂田主査 これにて川本敏美君の質疑は終了いたしました。  次に、玉城栄一君。
  176. 玉城栄一

    玉城分科員 国有地の払い下げの問題についてお伺いをいたしたいのでありますが、沖縄県の石垣島の旧日本軍飛行場用地の平得並びに白保両飛行場用地のうち、現在農地として使用されているものがありますが、その状況について、概略御報告をいただきたいと思います。
  177. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 石垣島の旧平得飛行場跡地でありますが、これは大蔵省が引き継ぎを受けました旧海軍財産で約七十五万平米ありますが、そのうち約三十九平米を九十一名に対しまして、農地として賃貸借契約を締結しているわけであります。これらの財産は、終戦直後の食糧増産が急務であった時期に昔の地主の方々によって使用されておりまして、その後アメリカ政府並びに琉球財産管理官から許可を得て使用されてきたものを、昭和四十七年五月十五日の沖縄の本土復帰以後においても引き続き貸し付けておるものであります。
  178. 玉城栄一

    玉城分科員 いま白保の方は……。
  179. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 白保飛行場跡地につきましては、ちょっといま手持ちに資料がございませんが、同様の処理を行っておるわけであります。
  180. 玉城栄一

    玉城分科員 そこで、いまの平得飛行場用地につきましては、地元の石垣市議会からもすでに払い下げ要請が政府の方にはなされていると思いますが、大蔵省並びに農林省の方もいらっしゃっていますが、その処理の方針はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  181. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 平得飛行場跡地につきまして、確かに地元からそのような申請が出ております。これにつきましては、旧地主と現耕作者との調整が行われれば、地元の意向を十分尊重いたしまして、関係省庁とも十分協議して善処をしてまいりたいと考えております。
  182. 河合正彭

    ○河合説明員 お答えいたします。  旧平得飛行場の農地につきましては、先生御案内のように、現在地元におきまして鋭意調整が取り進められているというふうに聞いております。私ども農林水産省といたしましても、この地元の調整の結果を踏まえまして、沖縄県等関係機関との連携をさらに密接に図りまして、自作農の経営の安定を図る立場から、農地法による売り渡しが円滑にできるよう所管がえの促進に努めてまいりたい、かように考えております。
  183. 玉城栄一

    玉城分科員 地元の調整、いろいろそういうのが整備されれば、農林省もあるいは大蔵省の方としても払い下げをしていきたいという意向をいまお話しになっているわけです。  そこでちょっと問題になりますのは、問題というのはなんですが、払い下げの価格ですね。いま平得につきましても、そういう条件整備がされるならば払い下げたいということでありますから、当然その払い下げ価格算定に当たっては、昨年も同様なケースで宮古島の下地町並びに上野村が払い下げられているわけでありますから、そういう価格算定の場合は同じ仕方でもってされると私は思うのですが、いかがでしょうか。
  184. 河合正彭

    ○河合説明員 お答えいたします。  払い下げの対価、すなわち農地法によります売り渡しの対価は、所管がえの対価と同価格でございます。そうして所管かえの対価につきましては、農地法の施行令の第二条の定めるところによって算出することになっております。  そこで、この算出に当たりまして、耕作者、現地を利用なされている方が復元のためにいわゆる有益費を投下、支出されているということが認められます場合におきましては、その実情を十分考慮いたしまして対価を算定することになっております。したがいまして、本件の場合におきましても、過去にありました宮古島及びいま売り渡しを進行さしております南大東島の場合と同様に、耕作者の方が支出されました有益費の実態に即応しまして適正な対価を算定することになります。そういうことで私ども関係機関と連絡を密にしまして対処してまいりたい、かように考えておりますので、御了解いただきたいと思います。
  185. 玉城栄一

    玉城分科員 いま、昨年行われました宮古と同様に耕作者が支出した有益費も当然配慮するのだというお話でございます。  それで大臣、この国有地につきましては大臣もよく御案内のとおり、いろいろ経過がございまして、やっと戦後三十八年になりますか、昨年からぼつぼつ解決、この宮古島の下地町、上野村でも、約四十七万六千坪ぐらいだったと思いますが、農地法に基づいて耕作者に払い下げされているわけであります。そのいわゆる耕作者への売り渡し価格算定に当たっては、耕作者が支出した諸経費等も当然考慮の上ということで、私たちも、その価格につきましては大変適正な価格である。また同時に、この土地のいろいろな経過からして本当に適正、名目的と評価するぐらい、そういう値段で払い下げをされているわけであります。  それで、先ほどお伺いしております八重山石垣島の平得につきましても、同様な方式で行うのだ。それで、現在はこれは大蔵省の財産になっているわけでありますが、農林省に所管がえをするそのときの対価と同じであるということでありますから——そうですね。ですから、大蔵大臣もいま申し上げた点は十分御了解をされると思うわけでありますが、大臣の御所信を伺いたいと思います。
  186. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやっぱり地元の意向も十分尊重されて、そして関係省庁と協議して善処していくということになろうかと思います。私も具体的に余り詳しくございませんので、いまの問答を聞きながら、なるほどそれなりにいいことされているなという、表現は適切でないかもしれませんけれども、そんな印象でもって承ったわけであります。
  187. 玉城栄一

    玉城分科員 そこで、先ほど、南大東島ですね、これも沖縄県にありますが、南大東島にも同様に払い下げの決定がされているというお話がちょっとあったわけでありますが、その面積ですね。それから、耕作者に払い下げられるわけでありますから、何名の方々に、またその値段は、払い下げ価格はどうなっておるのか、実際にそれを耕作者に払い下げる場合、時期的にはいつごろになるのか、同時に、ちょっとさかのぼってその払い下げが決定された時期、簡単でようございますので御報告をいただきたいと思います。
  188. 河合正彭

    ○河合説明員 お答えいたします。  南大東島におきます所管がえを受けました面積、すなわち関係者の方に売り渡す面積でございますが、約十四・五ヘクタールでございます。そうしてここを耕作なさっておられます農家の方は七名でございます。したがって、十四・五ヘクタールを七名の方にお売り渡しする、現在耕作しておられる実態に即応して売り渡しをする、こういうことに相なります。  それから売り渡しの価格でございますが、これは平均いたしまして十アール約二万一千円程度でございます。売り渡しの期日でございますが、この三月一日に大蔵省御当局から所管がえを受けまして、いま現地農業委員会におきまして鋭意売り渡しの手続に入っております。売り渡しの期日はさかのぼってやることになっております。したがいまして、大蔵省から所管がえを受けた期日、五十八年三月一日付をもちまして売り渡すべく、現在沖縄県及び関係農業委員会におきまして所要の手続を鋭意進めている、このような実情にございます。
  189. 玉城栄一

    玉城分科員 ちょっと前に戻りますが、先ほどの石垣島の平得の飛行場用の農地は地元で調整をし——これは正式に県の方から払い下げ要請が来てからということになると思うのですが、農林省の方とされては見通しは大体いつごろというふうにめどづけをされているのですか。
  190. 河合正彭

    ○河合説明員 お答えいたします。  いま私どもの方は客観情勢が整えばできるだけ早くやりたい、このように思っております。ただ、地元の調整をまず終えていただくということが先決でございます。したがいまして、地元の調整をいつ終えていただくかということが非常に重要な要素になってこようかと思います。  ちなみに、私どものこの処理をやっておる現地機関でございます沖縄開発事務局の農林担当部局に所要の調書が沖縄県から上がってまいりまして、そして内協議を済ませかつ私どもの省と大蔵省との間で本協議を済ませるに要する期間でございますが、宮古の場合でございますと三カ月かかっております。南大東島の場合でございますと二カ月でこれを終えております。したがいまして、くどいようでございますが、地元における調整を早く済ませていただきまして、それに乗っかりまして私どもの方は早く所管がえの事務手続を終えるように鋭意努力してまいりたい。また沖縄県の方に対しましても、沖縄総合事務局を通じましてその点は十分指導してまいりたい、このように思っております。
  191. 玉城栄一

    玉城分科員 ぜひ御努力をお願いしたいと思います。  それでもう一つの問題なんですけれども大臣、この沖縄の国有地の問題につきましては、御案内のとおり戦争中に旧日本軍が沖縄全域にわたって北から南からやたらと飛行場をつくったわけです、各離島に至るまで。当然当時は農地であったわけでありますが、本来でありますと戦後になりますとその土地は当然関係農家の方々に返るべきであったと思うわけでありますが、大変残念なことに沖縄の場合二十七年間、いわゆる行政権が分離されていたためにアメリカ民政府の管理下に置かれてしまった。そして復帰して十年になりますが、復帰の時点で国有財産としてアメリカ民政府から日本政府に引き継いだ。  それで、過去いろいろこの土地の問題については関係旧地主の方々とも、所有権の問題がございまして、私たちもこれは戦後処理の大きな問題だという立場から、これを早く何とかしなくちゃならぬということで徹底して調べてみました。そうしますと、沖縄本島、宮古島、八重山両先島につきましては、当時旧軍と地主との売買行為が行われていたという事実も私たち踏まえまして、やはり農地については早急に農地法に基づいて耕作者に売り渡すのが筋ではないかという主張で、実は昨年からこの問題が解決し始めたわけであります。概略そういう経過がございまして、値段の問題から、また沖縄という非常に土地的には狭隘でありますから活用させる意味でも非常に大事なことではないかということで、実は先ほど石垣島の方、南大東もでありますが、これは全体からするとまだまだ部分的な問題であります。  そこで今度は、沖縄本島の部分につきましては、われわれも一生懸命調べてみましたけれども、当時旧軍と地主と売買されたという証拠が見つからないのです。そのことで長い間、実はこの分科会でも過去大蔵省の当局の方々とも議論もしてきたわけでありますが、それは、なぜ沖縄本島についてこの土地が国有財産になったのかということについて、いや当時そういう売買行為が行われたであろうけれども戦災によってその証拠はなくなったのだ、であろうという推定のもとに、これは国の財産だということで議論が来ているわけであります。当然地主の方々もそれには納得できないということでありますが、いつまでも議論の並行だけでは問題の解決にならぬので、現実的に何とかこの土地が関係する方々にいろいろな形で渡るような方法がないかということで、実は大蔵省当局もいろいろと御努力していらっしゃることはよく存じ上げている。  そういう背景がありまして、これはいまは大臣にお伺いしませんが、読谷飛行場につきまして、その処理方針はどのように考えていらっしゃるのか、まずお伺いいたします。
  192. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 旧読谷飛行場の返還跡地につきましては、地元における今後の振興開発にとって非常に必要なものと考えられますので、五十四年六月の参議院沖縄特別委員会において当時の三原沖縄開発庁長官がお答えし、あるいは同年十一月に参議院の決算委員会において竹下大蔵大臣が喜屋武委員の質問に対して答弁されましたように、私どもといたしましては、地元地方公共団体から振興開発計画にのっとった利用計画を出していただければ、関係省庁と十分協議し、読谷村等地元の意向も十分尊重して、沖縄振興開発特別措置法、国有財産法等現行法律に沿って、できるだけ早く地元地方公共団体に対して払い下げる等の措置をとってまいりたいと考えているわけであります。
  193. 玉城栄一

    玉城分科員 いま局長さんがおっしゃいました、地元から具体的に振興開発等にのっとって利用計画等が出てくれば沖振法とか国有財産法等にのっとってできるだけ早く解決したいというお話ですが、地元というのはどちらですか。県ですか、村ですか、それに類する団体ですか。
  194. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 直接的には県と市であります。先生よく御存じのように、現状では非常にここら辺は地主の方々と耕作者の方と入りまじっておりまして、地元の意向というものがなかなか一本化しない状況にありますので、私どもも一刻でも早く沖縄開発のためにやりたいと思っているわけでありますが、そのためにはぜひ県、村が中心になってどういうふうな利用計画をされるか、地元の意向をまとめていただければ大変ありがたいと考えているわけであります。
  195. 玉城栄一

    玉城分科員 これは読谷村ですから村ですね。そこの利用計画が早く上がってくることが大事だというのですが、沖振法の九条、国有財産の譲与等、法的にはこれに基づいてというお話だろうと思うのですが、これには「地方公共団体等」とございますね。等ですから県あるいは村だけでもないですね。そのように解釈してよろしいでしょうか。
  196. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 これは政令で指定すれば、それを行う事業者が入るわけであります。
  197. 玉城栄一

    玉城分科員 ということは、仮に関係旧地主とあえて申し上げますが、そういう方々がその法の趣旨にのっとって法人をつくりまして、そしていまおっしゃる利用計画を出す、そうするとそういう団体もこの等の中には当然含まれるわけですね。これはもうそうなっています、公共団体だけではないということですから。
  198. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 お説のような団体は現在はないわけでございますが、もしそういう事業主体ができますれば、沖縄開発庁がこれを御判断されてお決めになることだと思うのです。
  199. 玉城栄一

    玉城分科員 これは所管は沖縄開発庁になるでしょうからぬ。沖縄振興開発特別措置法第九条国有財産の譲与、これを受けて政令がございますね。土地に関する問題ですからいろいろ関係者の方々も真側に調べておられるわけですが、この土地の経過からして、そういう関係地主の方々が独自にこの法の趣旨にのっとる事業計画をつくり、またそういう精神に沿った組織をつくって出せば、いまさっき局長さんがおっしゃったように、それは開発庁長官が政令指定でこの団体はオーケーとかこれはちょっとそぐわないとか、当然施行の段階でされるでしょうけれども、そういう地主の方々だって条件さえ満たせば該当はするということですね。
  200. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 沖縄振興法にありますように、公共の用に供するというのは、「公共の利益となる事業を行なう者」とありますので、あくまでも公共の利益となる事業を行う者が公共の用に供する施設に関するものを実施するために必要であるという要件が当然沖振法の九条でかかっているわけでございますから、そういう要件にかなったものとして沖縄開発庁が認定されれば私どもとしては前向きに対処したいと思うわけであります。
  201. 玉城栄一

    玉城分科員 それはもうおっしゃるとおりですよ。公共という前提のあることは書いてあるのだから、それは承知の上で言っているわけです。そういうふうな組織であり受け皿、これは県あるいは村以外でもそういう受け皿は認められるということですね、その内容も当然この法の趣旨にのっとるということですから。そうすれば、いわゆる「無償又は時価より低い価額で譲渡」云々という条文になっていますね、できるということですね、局長さん。
  202. 勝川欣哉

    ○勝川政府委員 おっしゃるとおりであります。
  203. 玉城栄一

    玉城分科員 そこで大臣、時間が参りましたので、先ほど申し上げましたとおり、この問題は戦後三十七、八年ずっと続いてきまして、そろそろ解決を少しずつ見出してきているわけであります。いま申し上げたいろいろなことで、沖振法九条によって、公共性を持つという組織であれば認めてそういう現在の国有地は払い下げが、あるいは無償どうのということが書いてあるわけです。  そこでこれを受けて、実は沖振法の施行令なんですが、学校関係だけに指定された施行令になっているわけです。しかもこれは、地方公共団体「等」は入っていなくて「地方公共団体」、そして学校関係、教育関係に限定された施行令があるわけですが、今度法の方は「地方公共団体等」、そして公共性、教育に限定しない、こうなっているわけです。  それで、これは大臣も前お答えがあったようでありますが、当時三原長官は、その施行令を改正をしてそして該当するようにしていこうと。教育だけでなくて公共性、あるいは地方公共団体でなくてそういう公共性のある団体、そういう段階にいまあるわけでございます。それでこの土地の特殊な経過からしてこの問題は早目に解決したいと先ほど局長さんのお話もありましたし、やはりそろそろこの辺で、沖縄のこれからの産業の振興の発展のためにも、あるいは戦後処理の大きな問題の一つの解決のためにも、これは現在大蔵大臣が所管した財産でありますので、沖縄の発展のために活用させる意味でも、関係当局とももちろん御協議の上に早急に解決していただきたいということを私、強く要望を申し上げるわけでありますが、大臣の御所信をお伺いいたします。
  204. 竹下登

    竹下国務大臣 これは確かにこの前の大蔵大臣のときに、参議院の決算委員会だと思います、喜屋武さんから御質問があった問題であります。そのときの質問を通じて長い歴史的経過のお話も聞きました。なるほど、そういうふうな解決方法があるかなと思いながらお答えをしたわけであります。いずれにいたしましても、これは利用計画を出していただければできるだけその趣旨に沿うように迅速的確に措置しなければならぬことだな、私自身もいまの質問で当時のことを思い出しながら再認織させていただいたというふうに受けとめていただきたいと思います。
  205. 玉城栄一

    玉城分科員 これは大蔵省とされても——私たちもずっと議論を続けておりましてすっきりしないと思います、このいきさつ、売買されたという証拠がはっきりないわけですから。そういうことでもありますので、沖縄のそういう産業の振興のために役立つという立場から早急に解決方を強く期待を申し上げまして、質問を終わります。
  206. 砂田重民

    砂田主査 これにて玉城栄一君の質疑は終了いたしました。  次に安藤巖君。
  207. 安藤巖

    安藤分科員 これは主税局長国税庁長官にお尋ねするのが筋かと思いますが、御承知のように第二臨調が昨年の七月に基本答申というのを出しました。この基本答申の中で、税制に関する部分について「税負担の公平確保」という項がありまして、「次のような施策を含め幅広く検討し制度面での改革を図る。」という文言があって、これは記帳義務の導入とか総収入の申告の導入とかというのがあって、もう一つ「推計課税及び挙証責任の整備」というのがあるのですね。本当はこの三つについてお尋ねしたいのですが、時間の関係がありますから、「推計課税及び挙証責任の整備」とありますうちの、推計課税の整備というのはどういうようなことを臨調が考えてこういう基本答申を出していると理解をしておられるのか、まずこの点をお尋ねします。
  208. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 これは臨調の御答申でございますので、どういう点から問題点として取り上げ、またどういう考え方でもってことにお取り上げになり、さらにはどういう方向でさらに詰めるべきであるということでここでお述べになっているかについては、私どもとして十分承知はいたしていないわけでございます。ただ、いろいろ言われている点から考えますと、ここにございますように申告納税制度の適正な運営のための基盤を強化するという点からいたしますと、執行面とともに制度面においてもこれを担保するための措置について検討すべきであるということからいたしますと、この推計課税の問題あるいは挙証責任の問題、そういった点が従来から税制調査会等においても検討課題として取り上げられてきている問題でございますので、そういった点を背景として臨調でもお取り上げになったのではないか、こんなふうに私どもは推定をいたしておるわけでございます。
  209. 安藤巖

    安藤分科員 いや、臨調がこういうような答申を出したことに対して、それはどうだとかこうだとかという意見をお伺いしているのではなくて、こういう基本答申を臨調が出したということの意味大蔵省当局としては、国税庁当局としては、臨調はどういうような意図でこういう答申を出しておられるのか。どういうふうに理解しておられるか、それをお聞きしているわけであります。
  210. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 この表題にもございますように、税負担の公平確保ということでお取り上げになって、この点を勉強してみるべきである、そういうお考えではなかろうか。また私どもも、とにかく検討課題であることは確かでございますので、これを受けて勉強はしなければいけない、こんなふうに考えているわけでございます。
  211. 安藤巖

    安藤分科員 どうもようわからぬですが、結局、推計課税の整備ということですと、いろいろこれまでも問題になってきたというお話ですが、簡単に言うと推計課税をやりやすくする、そういうような方向をこの基本答申というのは考えておられるというふうに見るべきなのか、いやそうじゃないというふうに見るべきなのかという点はどうなんですか。
  212. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 やりやすくするとかあるいはどういう方向へ持っていくべきとか、そういう臨調でお取り上げになった具体的な考え方につきましては、私どもつまびらかにはしないわけでございますが、税負担の公平確保のための方策としてお取り上げになっているという点からいたしますと、税負担の公平確保のためにこういったものがどうあるべきかという観点から検討すべきである、そういう御趣旨ではなかろうかと考えているわけでございます。
  213. 安藤巖

    安藤分科員 では、大蔵当局、国税当局としては、推計課税の問題については、先ほど私は端的にお尋ねをしたのですが、推計課税をもっと制度上やりやすくするというような方向がいいのではないかというようなことをお考えになっておられるのか、いや、そういうようなことは考えていないということなのかという点についてはどうですか。
  214. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 同じようなことを申し上げて申しわけないと思うのですが、臨調がお取り上げになっているのは、税負担の公平の確保という観点でお取り上げになっておると思うわけでございます。そういう観点からいたしましてこの問題をどう考えるかということでございまして、これは執行当局の面からこれをやりやすくするということもございますし、また、何百万人という納税者を相手にする税務行政でございますので、そういった納税者の方々の権利と申しますか、地位と申しますか、そういった点も慎重に考える必要もまたあるわけでございまして、私ども、ただ一方的にこれをどうこうという観点から取り上げるのはいかがかというふうな気はするわけでございます。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、政府の申告納税制度特別部会で現在審議されておりまして、審議されておると申しますか、これからこの問題につきましては審議をされる予定になっておるわけでございますので、そういった審議状況をまず私どもとしても注視してまいりたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  215. 安藤巖

    安藤分科員 なかなかはっきりした話が聞けませんが、ところで、国税庁昭和五十一年四月一日付で発行いたしました税務運営方針というのがございますね。この税務運営方針、筋だけ申し上げますと、「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者理解協力を得て行うものであることに照らし」云々、こういうふうな規定があるわけですが、これはやはり現在も生きておって、税務の調査に当たってはこの考え方に従ってやるべしということになっていると理解してよろしいでしょうか。
  216. 角晨一郎

    ○角政府委員 税務運営方針に盛られております基本的な考え方は、現在もそのとおりでございます。
  217. 安藤巖

    安藤分科員 ところで、私がいろいろ具体的に納税者の人たちから聞いた話があるのですが、こういうことが最近行われておるというふうに聞いているのです。  税務署の署員の方が納税者のところへいわゆる調査、質問検査権に基づく調査に赴かれる。それで事前に通知が——事前の通知の問題もこの税務運営方針にちゃんとあることはあるのですが、通知がなかったとか、あるいは調査する内容がはっきりしないとか、あるいはきょうはどうしても商売上そういう対応をしていることができませんとか、こういうような理由でその調査に応ずることができなかったというようなことが一回あった。そうしましたら、もうそれでそれ以後調査には来ませんということで、その税務署の人が帰っていかれた。  そしてある日、しばらくしてから突然税務署の方から呼び出しがあって、出てこいというので出ていきますと、これは統括官かその担当の税務署の職員か、両方の場合あるいはどちらか一人という場合があるということなんですが、あなたの所得額とそれに相応する税金の額をいまから言う、だからそれをあなたは承諾するか、承諾するのであればすぐ修正申告をしてもらいたいんだ。それで、承諾しないというのであれば更正決定をする、いわゆる更正処分をする、どうだ、こういう言い方をする。そして、そんなもの教えてもらいませんのに、税額も所得額も言うてもらえませんのにオーケーというわけにいかないじゃないかと言うと、じゃ認めないんだなというんで、あなたはもう帰ってよろしい、後から更正決定の通知がぼんと来る。  こういうやり方をしているという話を聞いているのですが、こういうやり方をいま進めておられるのか、あるいは奨励しておられるのかという疑いを持たざるを得ぬと思うのですが、その点どうですか。
  218. 角晨一郎

    ○角政府委員 法律的な問題と実際の問題と二つあるわけでございますが、先生御承知のように、まず更正処分のことについて若干申し上げます。  青色申告について更正をする場合には、税法上理由付記の規定がございます。したがいまして、更正の通知書にその理由を書くということになっておるわけでございます。  青色申告でないいわゆる白色申告に対します更正の場合には、税法上その理由を付記する規定がございませんけれども、私ども税務の実際の執行に当たりましては所得なり税額、それからその背景になりました処理の概要につきまして、ケース・バイ・ケースということにもなりますけれども、できるだけこういう理由で処理をしますということを御説明をする。これはもちろん書面に白色の場合にはするわけではございませんから、あらかじめ適宜の機会に、納税者にお目にかかった機会にそういうことを申し上げるということが実際の例として行われておるわけでございます。  それで、いまのお話でございますと、白色申告者の方につきまして税務署に来署を求めて、所得と税額を言うから修正申告か更正かいずれかの方法を選んでほしいという慫慂をしたという趣旨のお話でございます。やはり所得と税額をお示しして、それで納税者の納得を得られた場合には、更正処理という手続を踏む前に自主的に修正申告を出していただくというのも、調査を円滑に処理する一つの実際問題としての処理方法でございますので、そういう修正申告をされるのならしていただきたい。それで、更正の方を選ぶなら更正通知をするということであろうかと思います。  その場合に、所得と税額だけで理由の開示が十分じゃないという御指摘かもしれませんけれども、これは先ほどケース・バイ・ケースでと申しましたが、いわゆる帳簿も記録もなくてやむを得ず推計で課税をする場合もあるわけでございまして、その場合につきまして克明に一々の事柄についてなかなか理由を御説明できない場合も事例によってはあろうかと思っておるわけでございます。
  219. 安藤巖

    安藤分科員 更正処分の理由をちゃんと付記あるいは記載すべきかどうかということは事前の話のときにはしましたけれども、私はいまそんなこと何も聞いてないのに余分なことをお答えになったという気がするのです。その関係でも、あえて質問するわけじゃないんですが、希望として申し上げておきたいんですが、納税者の皆さんは、白色の場合でも更正処分の理由の欄があるんですから、どういうことでこうなったのかということぐらい教えてほしい、理由欄にちゃんと書いてほしい、そして異議の申し立てあるいは国税不服審判所への審判の申し立てなんかの材料にもなるわけですから、そういう希望が非常に強いんですよ。法律上そういうことが書いてないからやる必要なしというお考えのようですが、そういう希望が非常に強いということを申し上げておきます。  いま、それはケース・バイ・ケースでということをおっしゃったんですが、私が申し上げたのは、これは実にひどいと思うんですね。ですから、先ほどの税務運営方針、これはいまでも生きておる、これでやっていくんだということですが、「社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者理解協力を得て行う」というのが税務運営方針だ、これにのっとってやっておるんだというお話ですが、これは私何人かの人から聞いたわけです。まず税額を説明する前に、おまえ納得するかせぬか、白紙のままで認めるか認めないかと言っておいて、認めるんだったらいまから示すからすぐ修正申告しろ、こういう言い方、これじゃ理解と納得どころの騒ぎじゃないですね。そして、しかるべく調査をおやりになって、そして税額をお決めになったのだろうと思いますが、そうなったらこれはまさに最初に問題にいたしましたように推計課税そのものだと思うのです。推計課税をのむかのまぬか、こういうやり方ではこれはもう理解と納得をではないと思うのですね。  だから、やはりそれが事実だということならそれはおかしいでしょう。税務署の方で調査をしたところこういうふうになりましたよ、そのためにはこういう調査をしてこうなったんです、こういう事実があります、こういう証拠があります、あなたは認めますか認めませんかということならわかるんですよね。それが全然なしに、示す前から二者択一を迫って、どうだ。これは本当にひどい。申告納税制度ではなくてまさに賦課課税制度ではないかと言いたくなってくるんですね。税務当局としてそういう方向でやれということを言っておられるんではないと思うのですが、だからその点はっきりしていただきたいのです。もしそういうようなやり方が行われているとすれば、これは改めていただく必要があると思うのです。その点どうでしょうね。
  220. 角晨一郎

    ○角政府委員 調査をいたしまして、調査の結果どういう処理をするか、いろいろ個々のケースによって内容も違いますし、調査の過程で納税者とどういう応接をしたかという中身も違うわけでございます。したがいまして、いまお示しのようなかっこうですべての事例が行われていると御理解になってはいらっしゃらないと思いますけれども、私ども税務運営方針にもございますように、やはり申告納税制度でございますので、納税者理解協力を得ながら処理を進めていくということを基本にいたしておるわけでございまして、今後ともそういう考え方をもとにやってまいりたいと思っております。
  221. 安藤巖

    安藤分科員 いま私が言いました事例は、一応質問検査権に基づく調査に税務署の人がお出かけになって、そこでその調査ができなかったというのが一つあるのですがね。  もう一つ、新潟県の長岡税務署の話ですが、これは税務署の方が納税者のところへ出かけてもいないのですよ。長岡税務署から納税者の農家の方々のところへこういう通知が行っているのです。五十五年分の農業所得金額のことでお尋ねしたいことがあるからといって日にちを指定して、これは税務署でなくて町役場まで出頭してくれということを連絡した、ところが何の連絡も来ないので、計算内容のわかる書類を持ってまた別の日に、今度は税務署の方へ来てくれ、来れない場合は文書で回答してくれ、都合の悪いときは日時を連絡してください、そして「何等の御連絡もないときは更正処理をする場合もありますので申し添えます。」こういうのがあって、出かけていかないのですよ、出頭命令ばかりです。そして、現実に更正処分がなされているのです。  その納税者の方々が税務署へ行って、なぜうちまで来て調べるなりこちらの言い分を聞くなりしてもらえなかったのか、一片の書面をよこして事情も何も聞かないで一方的に更正処分をやってきた、これはどういうわけだと聞いたら、税務署もいま人手が足りなくてとてもそういうことをやっておれぬという話まで交えていろいろ弁解しておった、こういう話です。こうなったら、質問検査権があるからということでいろいろ質問をなさっておられる、これはいいですが、そういうこともおやりにならないで、出てこい、日にちを特定して、都合が悪いなら連絡しろ、それも悪いなら書類を送れ、送らぬから更正処分だ、これは余りにもひどいじゃないかと思うのです。これはまさに賦課課税方式そのままやっておるんじゃないですか。いや、それも自主申告制度でやっておるんだと、もちろん申告があってからの話ですからね。となると、最初にお尋ねしました推計課税をばんと打って、更正を打って、それでそのとおりの税金を払え、これは実質的には賦課課税方式じゃないのかという気がするのですが、こういうようなことも奨励してみえるのですか。
  222. 角晨一郎

    ○角政府委員 いまの御指摘のケースは私この場で初めてお伺いするわけでございますが、一般的に申しまして、農業所得につきましては当該地域で米作その他共通的なものが栽培されておる場合も多いわけでございまして、申告されたものについて是正を要する場合もわりあいと同様な事柄が多いという傾向もあろうかと思うわけでございます。したがいまして、お答えしたように本件については詳細はわかりませんけれども、できたら共通のものについて最寄りの役場で御修正をいただきたいという趣旨も込められておったのではないかと私感ずるわけでございます。  しかしながら、質問調査のやり方につきましては、所得税を例にとりますと、現在は決して賦課課税でやっておるわけではないのでございまして、申告課税でございますので、更正なり修正なりにつきましては適正な手続のもとにやることは当然でございまして、今後ともそういう趣旨で努力してまいりたい、こう思っております。
  223. 安藤巖

    安藤分科員 いや、具体的にいま私が申し上げましたようなことで更正処分がなされてきておるんですよね。それは法律のたてまえは賦課課税方式じゃないはずですよね。しかし推計課税をおやりになって、実質的には賦課課税と同じような中身になっているんじゃないかと思わざるを得ぬと思うのですよ。だから、こういうようなことはいまおっしゃったような趣旨をきちっと守っていただいて、そういう理解協力を得てやっていくんだということをきっちりと徹底をしていただきたいと思うのです。その点についてもう一言お尋ねします。
  224. 角晨一郎

    ○角政府委員 私どもの仕事のスタンスについてはいま申し上げたとおりでございまして、今後とも努力していきたい、こう考えております。
  225. 安藤巖

    安藤分科員 自主申告納税制度の問題について、非常にこだわるようですが、いま私が持っておりますのは「譲渡資産などの明細書(兼譲渡所得計算明細書)」というものです。これは納税者が税務署長に出す「税務署長殿」という欄もあります。二つあるんですが、その一番下の欄に「必ずご記入ください。」という欄があって「確定申告の方法について」と、これはアンケートですね。どちらがどちらのものかわかりませんが、去年まではこのアンケートが五項目に分かれておって、「自分で計算して申告する。」というのが一番、二番が「税理士に依頼して申告する。」三番が「税務署の行う相談会場で相談の上申告する。」四番が「既に申告済である。」「その他」です。ことしになってから来たのは、一番の「自分で計算して申告する。」というのがなくなってしまっているのですよ。そして、先ほど言いました二番から五番までが一番から四番までにおさまっておるんですね。こういうのを知ってみえますか。具体的に一遍見てください。こういうふうに違っているのです。こういうものは国税局の方でまとめておつくりになっておられるのですか。
  226. 角晨一郎

    ○角政府委員 いま拝見をいたしました様式書類でございますが、譲渡資産などの明細書は各国税局でそれぞれ工夫してつくっておる、そういうものでございます。
  227. 安藤巖

    安藤分科員 そうすると、これは名古屋国税局管内の方から私がいただいたからそうなんでしょうね。  だから、私が問題にするのは、去年まであった「自分で計算して申告する。」という、これはアンケートですからそうごたごた言わぬでもいいじゃないかというふうにおっしゃるかもしれませんが、やはりアンケートの中の「自分で計算して申告する。」というのがなくなってしまっているということは、自主申告、申告納税制度をだんだんなくしてしまおうという方向で税務当局は考えておられるのではないのかというふうに疑わざるを得ぬ、心配になってくるのですよ。だからお尋ねしているのですが、そういうものをなくした。これはそれぞれの国税局でそれぞれ独自に創意工夫をしてやっておられるというお話ですが、それはちょっとまずいなとかなんとかというようなことはお考えになりませんか。
  228. 角晨一郎

    ○角政府委員 譲渡所得も所得税一つでございますから、申告納税制度の中に入っておることは当然のことでございますけれども、譲渡所得は非常に臨時偶発的な所得ということで納税者にもなじみがない。それから税法上各種の特例が御承知のようにございますけれども、特例は申告書を提出することが要件になって適用されるというものも少なくないわけでございまして、その辺を考えて申告に先立っていま先生御指摘のお尋ね書類なども照復をしておるというのが現状でございます。  私も名古屋国税局について若干聞いてみたことがこざいますけれども、名古屋国税局では従来「自分で計算して申告する。」という項目をつくっておりましたが、そこに丸をつける人が非常に少ない、税務署に行って相談したいという方が逆に言って多いわけでございますが、そこの欄に丸をつける人が非常に少ない。それから、その欄に丸をつけた方も実際問題としては納税相談のためにかなりの割合で税務署に来られておるというようなこともございます。そういうようなこともございまして、ほかの欄に比べて非常に適用割合が少ないということで最後の「その他」という欄にまとめたということで、決して他意はないんだということでございました。
  229. 安藤巖

    安藤分科員 別に他意はない、「その他」の中にまとめたとおっしゃるのですが、五項目のときにも「その他」というのがあったのですからね。これはアンケートですからそうあれこれと言うこともないと思うのですが、やはり「自分で計算して申告する。」これは大事なことなんですから、これが脱落しておるというのは、税務当局の姿勢というものが、自主申告制度、申告納税制度をないがしろにしていこうという大きな基本的な考え方があるからこうなるのではないかというような気がしてくるわけです。  時間が参りましたから、もう一つだけお尋ねします。先ほど最初にお尋ねしました挙証責任の整備ということ、これは私よくわからぬから最初からお尋ねしておるのですが、挙証責任を転換させるのではないかというような気もするのです。たとえば国税不服審判所に審判の申し立てをした、そのときには答弁書というのをその審判官が処分をした税務署に出させますね。それで答弁書が出されて審判、物申し立てと両方でいくと思うのですが、そういう場合に挙証責任の転換ということを考えて納税者の方に主張立証責任を負わせることになるのではないか。やはり更正処分をしたことの正当性を税務当局が主張立証しなければならぬ、これがたてまえだと思うのですが、それを逆に転換させるということを考えておられるのではないのかということを危惧するのです。その辺はどういうふうに見ておられますか。
  230. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 挙証責任をどちらに配分するなり何なりという点につきましては、非常にいろいろな議論もあるところでございますし、またそれが通常の民事訴訟の場合と課税の取り消し訴訟の場合とで一体同じでいいかどうかとか、いろいろ学説もあり考え方もあるわけでございまして、私ども直ちにこれを転換するとかどうとかというところまで、とてもそこまで踏み切れるだけの議論もまだされてないわけでございます。今後、いずれにいたしましても税制調査会の特別部会で勉強が行われると思いますので、私どもそれを注視してまいりたいということでございます。
  231. 安藤巖

    安藤分科員 時間が来ましたので終わります。
  232. 砂田重民

    砂田主査 これにて安藤巖君の質疑は終了いたしました。  次に、稲葉誠一君。
  233. 稲葉誠一

    稲葉分科員 昭和五十七年十二日に、国税庁の総務課が昭和五十六年分の「税務統計から見た法人企業の実態」というのを出しておられるわけですね。これを大臣が読まれたのかどうか、ちょっと知りませんが、読まれたとして、一体これを見てどういうふうに感ぜられて、どういうところに問題点があるか、こういうふうに聞くのが本当ならば一つの筋かと思うのですけれども、ちょっとそれは後で。  私の方から先にこれを見て感じたところを申し上げますと、私の感じたところでは、ポイントはたとえば法人税のあり方、これはこの中に直接出てまいりませんけれども法人税よりもむしろ社内留保の方が多いわけですね。私もこれを見まして、そこまでいってないと思っておったところが、社内留保の方が多いわけですね。社内留保としてこの統計に出ておるのは、四つ出ておるわけですが、それぞれがいわゆる規模別に見て、大企業の方に多いのではないか。たとえば退職給与引当金なんか、私はもっとあると思っていたら、全体から見て七・七%しかないように出ておるわけですが、このグラフを見た場合でも、その方が大企業の方に非常に大きくなっておるということは考えられる。  そこから考えられることは、前々からよく私、議論しておるところですが、いま法人の税率が一億円以上が四二%になりましたね。その四二%ということについて、それが一体妥当か妥当でないかという議論があるわけですが、そのときに考えられることは、実質的ないわゆる実効税率というものは法人税のほかに法人事業税なり法人住民税なりを加えると実効税率が出てくる。そうするとある程度の率が出てくるでしょうけれども、この引当金その他というものを換算してみると、階層別に見た実質の税の負担率というものが非常にアンバラになってきて、大企業の方が実質的には非常に低くなっておるのではないか、こういうのが私の大きな疑問になってくるわけですね。  さらに、基本的に四つの引当金が挙げられておりますが、引当金というものが一体必要なのか必要でないのかというふうなことの議論もさかのぼってする必要があるじゃないか。  なぜそういうふうなことを言うかというと、日本の場合は、いわゆる法律学の中で税法学というのはほとんどと言っていいぐらい学問的に確立していない学問ですね。日本でも一番足りないところですね、税法学。これは一部の人がおられますけれども、そういう点が足りないところがありますのでいろいろな問題点がある、そういう点をお聞きいたしたい、こういうふうに思います。  それから、きょう直接聞くというわけではございませんので研究しておいていただきたいのですが、これは商法の改正のときにも問題になりまして、いわゆる特定引当金の制度ですね。これが商法の第二百八十七条ノ二に「引当金」というのがありまして、「特定ノ支出又ハ損失ニ備フル為ノ引当金ハ其ノ営業年度ノ費用又ハ損失ト為スコトヲ相当トスル額ニ限リ之ヲ貸借対照表ノ負債ノ部ニ計上スルコトヲ得」、こういうふうになっているわけですが、この書き方はちょっと問題があるわけですよ。何々することを得という書き方はちょっと問題があるのですが、要するに利益留保性の引当金というものは認めないで、負債性引当金だけが認められるということになる。  そうすると、利益留保性の引当金というのは一体何なのだろうか。それが法務省側の見解大蔵省側というか企業会計審議会との間の議論の中でどうもうまくかみ合わない。非常にわかりにくい。学者がみんな意見が違うということもありますけれども、わかりにくい。  さしあたっての問題は、これが問題になってくるわけでしょう。たとえば何周年の記念という行事については、これは利益留保性で認められないというのだけれども、いま問題となってくるのは筑波の科学博ですね。筑波の科学博をやることについての準備というか経費についての引当金というものを認めるか認めないかというところが今後大きな課題になってくるわけでしょう。  それから、法律で認めているとすれば渇水準備金ですね。電気事業法で認めておるけれども、これは一体特定引当金制度とどういう関係になるかというような問題があるのですけれども、これは研究しておいていただくことにして、きょうの課題ではございません。  私がこれを見て非常に疑問というか、いま言ったところの問題の一つは引当金、四つ挙げていますね。貸し倒れ引当金、価格変動準備金、賞与引当金、退職給与引当金、結局その利用度が、貸し倒れ引当金が三三・五%、価格変動準備金が一七・四%、賞与引当金が一五・五%、退職給与引当金が七・七%、それぞれになっておるわけなのです。  そこでお聞きをいたしたいのは、たとえば退職給与引当金というものに限って質問いたしますと、これは七兆幾らありますね。問題は、さかのぼりますと、シャウプ勧告のときにいわゆる近代会計理論という形でこの引当金制度が認められた。こうなってまいりますと、それ以前の旧会計法理論というか、それでは認められなかったのではないかというような学者の議論などがあるのですが、なぜこの退職給与引当金というものが認められたかということが第一点。  それから、この利用が、グラフが大蔵省からもらったものには出てはいるのですけれども、グラフではわかりませんので、その資本金別に退職給与引当金がどういうふうに利用されておるか、これをこの前ちょっと聞いたこともありますけれども、そこら辺をまず御説明をお願いいたしたい、こういうふうに考える次第です。
  234. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 引当金につきましては、先生もう十分御承知のことでございまして、その年度その年度の法人の課税所得を合理的に算定するためのものとして制度化されておるというふうに私ども考え、またたびたび申し上げているところでございます。  その中の退職給与引当金につきましては、その階級別実態につきまして「法人企業の実態」に出ておりますとおりでございまして、これをたとえば便宜一億円未満、一億円以上、十億円、五十億円、百億円と、そういったふうに分類してみますと、七兆三千億円のうち、一億円未満が一兆二千億、一億円から十億円が一兆三千億、十億円から五十億円までが一兆四百億、五十億円から百億円までが六千億、百億円を超える会社が三兆円引き当てを行っておる、こういう数字に相なっておるわけでございます。     〔主査退席、宮下主査代理着席〕
  235. 稲葉誠一

    稲葉分科員 私の聞いているのは、なぜ退職給与引当金という制度が設けられたか。いまあなたがおっしゃったのは、恐らくシャウプ勧告の中に出ているのを読まれたわけでしょう。シャウプ勧告の前は、こういう制度はあったのですか、なかったのですか。
  236. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 退職給与引当金は、当時はございませんでした。
  237. 稲葉誠一

    稲葉分科員 ないですね。だから、シャウプ勧告の中で出てきた議論ですよ、これは。ですから、シャウプ勧告というものを私どもは再検討する必要があると思うのですね。これは法人擬制説の上に立っているわけですから、シャウプ勧告は。それで自主申告制度というものをここで採用したわけですから。アングロサクソンの系統は自主申告制度がいいだろう、こういうことになったわけですね。だけれども、そうでないところは自主申告はまずいからというので、フランスでもドイツでも大体間接税中心にいこう、こういうやり方でしょう。  そうなってまいりますと、私が疑問に思いますのは、この七兆幾らあるうちの、あなたが言われたのはちょっとよくわからぬけれども、百億以上が三兆円の退職給与引当金があるというふうにいま言われたように聞いたのですが、そうするとその退職給与引当金というのは、これは最初百分の幾つでしたか、二十五でしたっけ、それは有価証券や何かで持っていなければならぬというふうにしておりましたね、これを途中の段階でやめちゃったでしょう。これをやめた理由は一体どこにあるのですか。これがまたわからないのだ。それから累積限度額というのもよくわからぬ。それから繰入率というのもこれまたよくわからぬのですよ。本当にわからぬのだ、これは。私にもわからないんですよ。どうなんですか、これは。
  238. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 限度額は当初は一〇〇%と申しますか、そういう率でございました。昭和三十一年の改正におきまして百分の五十になり、それから昭和五十五年度の改正におきまして百分の四十になっておるわけでございます。  それからまた、当初は特定預金等の制度がございましたが、これは昭和四十年度の改正で廃止されておるわけでございます。この際の考え方といたしましては、引当金として当期の費用として計上すべき引当金の繰り入れという考え方から引当金の考え方を純化いたしますと、それに必要なものの四分の一を特定預金として積み立てるということは必ずしもなじまないということからいたしまして、そういったものは制度としては廃止する、こういうふうな経緯で改正された、こういうふうになっておるわけでございます。
  239. 稲葉誠一

    稲葉分科員 いや、累積限度額というのはどういうの。いま説明がありましたか。僕はこれはよくわからないのだ、これは本当に。本当にわからない制度なんですよ。だからお聞きしているわけだけれども……。  もう一つお聞きしますと、これはアメリカにありますか、こういう制度は。どうなんですか。資本主義国にありますか。
  240. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 累積限度の考え方でございますが、当期に発生いたしまして、なおその従業員が退職をいたします際に確定してそれをお払いする、そういう債務でございますので、この債務額を当期の費用としてどのように計算し評価するかという点があるわけでございます。現在の考え方といたしましては、現在の従業員が退職される、それに支払われるべき退職金の金額が幾ら幾らである、それがその従業員の、現在直ちに退職してお払いをするというわけでもございませんので、平均的な退職予定年数というのがございますので、それでもって割り引きをいたしまして計算しているというのが現行制度の考え方でございます。この点につきましては、従来からたびたび税制調査会等でも議論がされまして、現在の考え方は合理的であるというふうな答申をいただいているわけでございます。  それから、こういった制度はアメリカにはないのでございますけれども、そもそもアメリカにおきましては、わが国のような一時金的な形で退職金を払うという制度がございませんので、そういった退職給与引当金といったものが登場する場面がないのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  241. 稲葉誠一

    稲葉分科員 いまお話の中に出てまいりましたように、この退職給与引当金は七兆三千億ぐらいあるわけでしょう。そうすると、いまのように半分近くは百億以上の資本金のところが利用しているわけですね。中小企業はほとんど利用されていないのじゃないですか。それはどういうわけですか。なぜ大企業、百億以上の資本金のところがこれだけの莫大な額を留保できて、引当金として計上できて、中小企業なんかは計上できないのですか。これが第一点です。  それから第二点は、これはあなた方の方ではなくて、ちょっと法律的な質問になってあれかもわかりませんけれども、どうして法律的な保証をなくしてしまったのでしょうか、よくわからないんだな。そうすると、中小企業なんかの場合に、倒産した、では退職金をもらう、そのときの保証は一体何があるのですか。大企業の場合にはどういうふうにあるのですか。これは先取り特権がありますよ。先取り特権があるけれども、これは六カ月だけでしょう。六カ月の場合に、労働協約なり何なりにある場合には退職金が入りますな。雇い人、給料で六カ月しか入りませんけれども。だから、中小企業の場合などには退職給与引当金というのはきわめて利用されていない、また利用するだけの力がない、しかも従業員に対しては本当の恩典というか担保にならない、こういう形になってくる。これだけの結果が生まれてきているのじゃないですか、事実として。
  242. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 確かに御指摘のとおり、現在の退職給与引当金は七兆三千億円ございます。資本金百億円以上の会社の中で三兆九百億、四二%、半分弱を占めておるということは事実でございます。     〔宮下主査代理退席、主査着席〕  たとえば資本金百万円以下の会社、こういった会社は利用割合は一%程度と、中小会社の利用は非常に低いわけでございます。そういった点につきまして私ども一度実態調査もしたことがございまして、そういった結果から見ますと、中小法人につきましては、そもそもその企業におきましてはっきりした退職給与規程がないとか、あるいはございましても、それはまさに中小企業退職金共済制度に入って外部に拠出している制度を利用しているとか、そういったふうな事例でもって大体半分以上の事例が占められておるわけでございまして、やはり中小企業と大企業との間ではいろいろ退職金の制度の利用方法なりが違うところから、こういう結果になっているのではないかというふうな感じがするわけでございます。  それから、支払いにつきましての保証でございますが、法人税の上では、その期の課税所得を合理的に算定するという目的からこういった制度がございますので、言葉はなにでございますが、それの現実的な保証といった面は、これはむしろ労働政策というか雇用政策の面で配慮されるべき点ではないかというふうに考えられるわけでございます。この点につきましては、賃確法といった法律体系でも一応取り上げられております。ただ、現在の時点でこの退職金につきましても法律で強制した保証制度をつくるというところまではいってはおりませんが、一応制度の中身としては、退職金につきましても確保制度の中に取り入れられて、そちらの方で一応は対処されているというふうに考えておるわけでございます。
  243. 稲葉誠一

    稲葉分科員 そもそも全員が一度に退職をするということの前提自身が、これは本当の仮定なわけですね。仮定でこういう引当金が計上されているというふうなことになってくると、いま私が言ったように百億以上の会社が三兆九百億、四二%も占めているわけです。ほかにももちろん引当金があるのですけれども、四つ挙げていますね。そうすると、これらの百億円以上の会社の法人税というものは、いわゆる法人の実効税率としてはいま言ったように四二%、それ以上に上がりますよ。四四、五%、四五、六%になるかもわからぬけれども、こういう引当金がいま言ったようにたくさんあることから見て、実質の税負担率というものは一体どのくらいになっているのか。だから、実質の税負担率というものが資本金別に——資本金だけで判断することもいかがかと思うけれども、しようがないですね。資本金別に判断するということになれば、実質の税負担率というものは非常にアンバランスになってきて、大企業ほど低くなってきておるのではないか。実質的な税負担率はあなた方は計算したことはありますか。計算しておるとすればどういうふうになっておりますか。
  244. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 もう再々申し上げておりますように、この引当金は課税所得をまさに合理的に計算するための制度であるというふうに私どもは観念をいたしておりまして、この退職給与引当金を中心といたします諸々の引当金が法人の内部留保として行われているというふうには観念をいたしておりませんので、これを、引当金繰入額を引いた場合の実効税率がどうだといったような考え方は出てまいりませんので、そうしたものを計算するとかいうふうなことはやっておらないわけでございます。ほかの引当金の場合でもそうでございますし、さらには、では償却はどうだとかこの費用はどうだとか、いろいろな費用を足したり引いたりしてみた場合のものと実効的な負担率ということになりますと、それは、私どもといたしましては正当な適正な費用の計上であるというふうに考えておりますものを、いろいろに区分いたしまして計算することは私どもとしてもどうもなしがたい、またそういったものになじまない性格のものではないかというふうにも考えるわけでございます。
  245. 稲葉誠一

    稲葉分科員 なじまないとかなしがたいではなくて、それをやると実態がわかってくるのじゃないですか。だからぐあいが悪いのじゃないですか。実際は、実質の税負担率は大企業にいけばいくほど低くなってきているのじゃないですか。それは大蔵省として出しにくいのじゃないですか。四二%というのは税率でしょう、一億以上の。実際にはそこまでいっていないのじゃないですか。
  246. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 先ほども申し上げましたが、たとえば中小企業の場合は退職給与引当金といったものは設定していない。これは中小企業退職金共済制度に加入をしている、あるいはその他の制度に加入しているからそういうふうな退職給与引当金としては出てこない。そういった場合には、そのまま外部に拠出いたしておりますそういった加入のための金額、これはすべて費用になっておるわけでございます。そういったものとの関連も計算をいたしませんと、ただ退職給与引当金の制度によっている場合にだけこれを引いて負担率をどうというわけにはなかなかまいらぬのではないかという気がするわけです。
  247. 稲葉誠一

    稲葉分科員 私の言うのは、退給だけを考慮してその実質的負担率を計算しろということを言っているのではないわけです。いろいろな現象がありますから、あなた方の方でいろいろな現象を入れてあなた方の方で妥当だと思われるものについて計算をしてごらんなさい。そうすれば、四二%というものよりも階層的に出てくる。いま共済のことを言ったけれども、それは強制加入じゃないでしょう。加入してもいいし、しなくてもいいということになっているのじゃなかったですか。そういうふうになってくると、大企業ほど実質的な負担率というものは現実に低くなってきているのですよ。これは争えない事実なのだけれども、それはあなた方の方で、こういうふうなものとこういうふうなものとを入れて計算をするとこうなるのだというものを、いつの機会か出してごらんなさいと言うのです。いまここで出せとかなんとかということを言っているわけじゃありません。あなた方が出しにくいというか、嫌なのはわかります。それを出すと法人税の引き上げの問題になってくる可能性があるから、あなた方の方は用心していると思うのだ。  それでは、こういうふうに聞きましょうか。法人税はいま四二%になりましたね。あの当時は一%上がると大体二千三百億ぐらいのことだったでしょう。そして、いま法人税を一%上げたら一体どのくらいのものになりますか。
  248. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 現在の法人税収は大体十兆円でございますので、その上げ方にもいろいろな形態がございますので、非常に大ざっぱに申し上げれば一%当たりが二千五百億円、こんな数字が出ているわけでございます。
  249. 稲葉誠一

    稲葉分科員 大体そうですね。この前のときは二千三百億ぐらいだったのですから、いまはもっと上がっているかもわからない、こう思うのです。  この前もいろいろな議論をした中で、これは竹下さんともずいぶん議論したのだけれども、結局要領を得ないというか、私の方も詰めが甘いのでよくわからないのですが、政府税調の答弁を持ってこられてやられているわけです。  だから、法人が実在説に立っているとか擬制説に立っているとかという議論は別として、それはそれとして実在していることは間違いないわけですからぬ。第一、法人には選挙権がないわけでしょう。自然人にしか選挙権はないのでしょう。しかも、選挙権のない法人が政治献金を認められているのです。これは本当は非常におかしいのですよ。だけれども、それは法人が実在して社会活動をやっているからということが前提で認められているわけですから、そうなれば、何も法人に対して単一比例税率という形のものをやらなければならぬという理由はないわけですね。アメリカは五段階で、イギリスは三段階ということでしょう。アメリカは四六%、イギリスは五二%でしょう。だから、何もそういうふうにしなければならぬという理由はないのですよ。それは、古くは一橋大学の井藤半彌先生がそういう主張をずっとされてこられたわけですね。いまでも学者の中ではいろいろな議論があるけれども、そういう説をされている方もあるわけです。  そこで、問題となるのは、たとえば貸し倒れ引当金、これもまたわからないのですよ。三兆幾らあるわけでしょう。それで、貸し倒れ引当金の内訳、銀行や保険が大体中心ですか。貸し倒れ引当金というものをなぜ認めなければいけないのか。実際に貸し倒れが起きたときにそれを損失として認めればいいじゃないかと私は思うのですが、たしかドイツはそういうふうにやっているはずですね。  貸し倒れ引当金の階層別利用状況なり、どうして実績で、落ちたときに損失としてやるだけで済まないのかということですね。それはどうなのですか。
  250. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 貸し倒れ引当金につきましても、期末の財産を適正に評価し、その期の課税所得を合理的に計算するという考え方からいたしますと、その期末におきます貸し金につきましては経験則からいたしまして一定の割合での貸し倒れが見込まれる、そういったものを計算して期末財産を評価し、適正な課税所得を計算するのが合理的じゃなかろうかというふうな考え方から引当金ができておるということは、先生御承知のとおりでございます。  現在の貸し倒れ引当金、お話しのように三兆四千億円ございます。これを一億円のところで切りますと、一億円未満のところで九千七百億円、一億円から十億円か五千六百億円、十億円から五十億円が四千億円、五十億円から百億円が二千五百億円、百億円を超える会社が一兆二千八百億円、こういう残高になっておるわけでございます。  それから、貸し倒れにつきましての税制上の配慮といたしましては、実際に貸し倒れが生じたときに損金にするという考え方ももちろんあるわけでございますが、それは先ほど申し上げましたその期その期での適正な財産評価をする、適正な課税所得の計算をするということからいたしますと、合理的に経験側をもって見込まれるものを計上するというあたりが、現在の仕組みが適正ではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  251. 稲葉誠一

    稲葉分科員 合理的な経験則という言葉を使われたでしょう。合理的な経験則で言うと三兆四千億あるのですか。いま一体幾らありますか。一兆何千億じゃないですか。約三分の一ぐらいじゃないですか。銀行や保険が実際に貸し倒れになっているのは、三分の一以下じゃないですか。それが合理的じゃないですか、経験的じゃないですか。そういうことを言っていると話がおかしくなってくるのじゃないですか。  だからこそ、あなた方はずっと言ったわけだ。退給でも、みんなそうだ、引当金。ところが、だんだんその議論がここ二、三年変わってくるわけですよ。私は、税法というのは理論よりもむしろ政策が入る、この政策が、そのときの理論に支えられた政策と同時に、きわめて恣意的な政策も入ってくるということで非常にこんがらかってしまっておって、だからこそ日本の税法学というのははっきりしないのだ、こういうふうに思うのです。  いまあなたの言われたように合理的、経験的だというなら、貸し倒れ金は半分以下ですから、三分の一ぐらいですから、こんなに乖離しているわけですから、ちっとも合理的、経験的じゃないわけですよ。それなら実績で損失で落とせばいいわけで、そういう結論になってくるのじゃないですか。そうすればもっと利益が上がってき、結局それに対する税率を掛けていけば法人税ももっとふえてくる、実際問題としてはこういうことになるのじゃないですか。
  252. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 御指摘のように平均的にいたしますと、貸し倒れの実績率と現在の引き当て率とを比較しますと、三倍前後の開きはあるわけでございますが、私ども毎年貸し倒れの実績につきましては実態調査を行っているわけでございます。それで、一つ企業をとりましても、継続的に見ますと貸し倒れの発生率が変化いたしておりますが、また一つの時点をとりまして全部の企業を貸し倒れの実績率の順に並べてみますと、この法定の繰り入れ率に入る部分の企業が多数ございますけれども、その法定引き当て率を上回って貸し倒れが発生しているという会社も少なくないわけでございまして、どの程度の段階をとってこれを合理的なと申しますか、一般的、概算的な引き当て率にするかという点の判断でございますが、現在の貸し倒れの発生状況で発生率をどの程度までカバーできる引き当て率かといったあたりを考えまして、現時点の引き当て率が適正ではないかと考えておるわけでございます。
  253. 稲葉誠一

    稲葉分科員 いま、百億円以上の資本金のものについて、退給三兆九百億あって、四二%全体の中で占めている。貸し倒れの場合は一兆二千八百億あって、何%ですか、やはり四割近いでしょう。じゃ、百億円以上の資本金のものが貸し倒れの損失を実質的に生じていますか。どうなっていますか。それじゃ、どのくらい生じていますか。
  254. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 いろいろ業種がございますが、平均いたしまして実績はこの三分の一程度というふうな数字でございます。
  255. 稲葉誠一

    稲葉分科員 三分の一程度はわかっている。だから、実質的とあれとが非常に乖離しているということでしょう。それはわかっているわけですよ。あなたの方では合理的、経験的にこれが正しいというようなことを言うからそういう議論が出てくるので、私が聞いているのは、百億円以上のものが貸し倒れで一兆二千八百億計上されているというなら、このうちに実際損失として落ちたのがどのくらいありますか、こう聞いているわけですよ。落ちてやしないでしょう、百億円以上のものが、銀行や保険が。どうなのですか。全然ないとは言わぬけれども。いまここに資料がなければいいですけれども、どうなのですか。資料がなければ後でもいいですよ。
  256. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 これはその期の期末の債権をどういうふうに評価するかということでございますので、過去の発生率と端的に比べて議論ができるかどうかという点は、若干問題だと思います。しかし、いずれにしましても、御指摘のように三分の一程度の乖離があるわけでございますし、金融機関の場合でございますと、その乖離と申しますか開差は、平均的に見ると三倍程度というものよりもさらに大きいことは確かでございます。
  257. 稲葉誠一

    稲葉分科員 これはあたりまえなので、だから、これはいまここで聞くのじゃないにしても、銀行なら銀行、保険なら保険がなぜ利益を上げるのだろうかということを僕はいつも疑問に思っているわけです。日本の銀行ぐらい物すぐい利益を上げているところはありませんからね。保険もそうでしょう。非常に僕は疑問に思っているのですよ。一遍ある銀行の頭取と会って話したときに僕はそういう疑問を出したら、とにかく先生、二時間時間を下さい、帳簿を持って御説明に行きますからという話があったので、ゆっくりお聞きしましょうということになっているのですが、これは私、非常に疑問だと思っているのです。  それからもう一つ、これは本当にわからないのです。私自身がわからないのです。たとえば受取配当金益金不算入制度というのがありますね。これは中小法人と大法人と違うわけですが、相当な金額になっておると思うのです。これに私がどういう疑問を持っておるかといいますと、こういう疑問なんです。受取配当金を益金不算入にするということで、これを算入しろということになると、もらった方はそうかもわからぬけれども、それではやった方は損金として落とせるかという問題があるわけですね。これは私、非常に問題だと思うのですよ。学者はそこでだれも言わないのですよ。泉さんがそれを疑問として指摘されているわけですね。  受取配当の益金不算入制度というものについては、あなた方の方ではどういう理由でこれがあって、どういうふうにしたらいいかと考えているのですか。
  258. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 法人間の受取配当の扱いにつきましては、やはり法人税が支払われた配当を次の受け取った法人の段階でどのように扱うかという点につきまして、法人間の配当につきましてはそういったものとして調整すべきであるという考え方から、現在、受取配当益金不算入という制度がとられておるというふうに承知いたしておるわけでございます。
  259. 稲葉誠一

    稲葉分科員 だから、私が聞いているのは、不算入制度をやめるでしょう。もらった方は益金に算入するでしょう。そうしたときには、学者は盛んにそれをやれと言っているわけでしょう。そういう人もいますね。そうすると、やった方は損金になるのかならないのかという議論なんですよ。こっちの方の議論はだれもしていないのですよ。泉さんだけだ、その議論をしているのは。ちょっとインタロゲーションマークをつけてね。これはどうなんですか、どういうふうに見たらいいのですか。
  260. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 不算入をやめた場合には、では一方において損金算入にすべきだという議論もございますが、やはり法人、株式会社と申しますのは、一定の営業活動をいたしまして、その出てきた利益を出資者に配分する。その出資者に配分する行為というのは一体確定債務的に扱っていいものかどうかという考え方もあるわけでございまして、一方において不算入を廃止した場合に、ではこれは損金算入だという議論も直ちに出てくるのかどうかという議論もございまして、両方の議論があり得るのではないかという気がします。
  261. 稲葉誠一

    稲葉分科員 大臣、いま引当金が四つ計上されているわけですけれども、そのうちに前から問題になっておりました退職給与引当金と貸し倒れ引当金、この二つのことについて質問したわけですね。これがお聞きのとおり、資本金で言うと百億以上のものが、退給の場合は三兆九百億で四二%、それから貸し倒れ引当金でも百億以上が一兆二千八百億で、これはどのぐらいになりますかな。やはり四割近いですかな。その他にもありますけれども、こういうふうになっているわけですね。  あなた方の方では、退給制度についてもいろいろ見直したい、それから貸し倒れ引当金についても実績に近いものにしたいというふうな形の中から法人税収というものを上げていきたいと考えておられるようなことを、いままで多少言ってきたことがあるわけですね。たとえばいま私が挙げた二つのものについて大蔵省としては一体どういうふうに考えておられるのか、大蔵大臣としてはどういうふうに考えておられるのか。ことに大臣は、退給問題については前から論議されて知っておるわけですから、貸し倒れ引当金等も含めてお答え願えませんかな。
  262. 竹下登

    竹下国務大臣 これはこの前も、きょうもですけれども稲葉学説にはとてもついていけないですね。  ただ退給は、前回私が大蔵大臣のときに、花村さんと話をしてという表現は適切を欠くかもしれませんが、経団連と話をしまして、結論から言うと手をつけさせていただいた。が、そのときの議論を思い出しましても、私自身、果たしてどれだけが最も合理性があるか、結局種々議論の結果あのときに手をつけさしていただいたものが今日に至っておるという理解以上のものは、私いま議論するだけの知識を持ちません、率直に申しまして。
  263. 稲葉誠一

    稲葉分科員 いま話の出てきた中で見ると、結局大企業が、率直に言えば非常に恵まれている。これはあたりまえの話ですね、資本主義社会だから。大企業が恵まれているのはあたりまえの話なんでね。その方には非常に有利にすべてがなっていて、大企業になればなるほど実質的な法人税の負担というものは低くなるわけですよ。こういうようなものがこれだけあるわけですから、引き当てられるのだから、低くなっているのが実際の姿ではないか。そうなってくれば、法人税というものについてもある程度の段階税率というものを踏んでもいいんじゃないか、こういう議論がそこから生まれてくると思うのです。これは実在説をとるとかなんとかということだけじゃなくて、そういう点は検討に値するのではないか。ただ、あなたの方としては経団連相手にやるわけですから、やりづらいことは私もよくわかるけれども、しかし、それはやはりやらなければいけないのじゃないですか。そうでなければ国民は納得しませんよ。そう私は思うのですが、どうでしょうか。
  264. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり法人税率の問題ということになりますと、むしろ他の国の例を見ても、中小企業対策という面からこれが取り上げられておるのではないかという意味においては、私は、法人税そのものに資本金とか規模別の段階制を設けることは適当でないのではないか、こういう感じがしております。
  265. 稲葉誠一

    稲葉分科員 法人税率に段階制を設けるということについては、確かに議論は非常にあるところですね。経団連や何かが賛成しっこないですよ。えらい騒ぎになっちゃうから。そんなことを自民党が打ち上げたら、大変な騒ぎになるからね。これはできないのは私もわかりますけれども、少なくともいまの引当金がそういう状況において行われているということをわれわれはしっかり認識しておけば、おのずから問題点、ポイントがどこにあるかということはおわかり願えるのじゃないかというふうに私は思っておるのです。  もう一つ私がわからないことがあるのです。それは課税最低限の問題ですよ。二百一万五千円というのが夫婦子供二人で課税最低限と、われわれは既定事実として受け取っていますね。どうもしかし、これは考えてみると、基礎控除、所得税法八十六条、配偶者控除、所得税法八十三条、扶養控除、所得税法八十四条、これはわかりますが、この三つを足して課税最低限というものを出すのが筋ではなかろうか。あとの給与所得控除とか社会保険料控除というものを出していますけれども、これは別の問題ではないかというように私は考える。  それを計算しますと、二十九万に対して夫婦子供二人だから四を掛けるわけです。百十六万ですか、ちょっと荒っぽい計算になりますけれども、百十六万というのが課税最低限と見るのが正しいので、あなた方は、二百一万五千円で、ほかから比べれば日本の場合は課税最低限は非常に高いんだと恐らく言うに違いない。そうじゃないんだ。私が言っているように、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、この三つをもって国際的な比較をすべきものではなかろうか、こういう議論です、私の考え方は。  たとえばアメリカは、給与所得控除とかなんとかというのはないんじゃないですか。だから、計算するときにはこの三つで外国とかと比べるべきじゃないのですか。そうなってくると日本の課税最低限というのは百十六万が限度であって、アメリカが大体百六十万幾らですか、西ドイツが百五十五万になるか、これはまあ計算の方法はいろいろありますから違いますけれども、そうなってくるのじゃないでしょうか。そこはどういうふうに考えておりますか。
  266. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 お示しのような金額でもって表示するというのも、一つの計算方法かと思います。現在の計算方法二百一万五千円と申し上げているのは、御指摘のように給与所得控除、社会保険料控除、こういったものがこの中に入っているわけでございまして、これは従来からサラリーマンの方が計算いたしまして、幾らの収入から所得がかかるか、幾ら以下なら課税にならないか、そういった点が恐らく給与所得者なりサラリーマンの方の一番の認識のポイントではないか。そういたしますと、現実の給与収入金額でもってこれを世の中にお示しするというのが、サラリーマンの場合につきましては端的な手法として適当ではないかということから、一貫してこういった表示をとっておるわけでございます。  それから、御指摘のように、アメリカにおきましては給与所得者だけの控除というものはございません。イギリスもそうでございます。ドイツには若干ございますし、フランスは日本と似たような制度になっておるわけでございまして、いろいろ外国の制度と比較いたします際にも、端的に比較すべき金額としては、私どもはそういった制度も織り込んで、収入金額で課税、非課税の限界点をお示しするというのがやはり適当ではないかということから、現在のような表示方式がとられている、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  267. 稲葉誠一

    稲葉分科員 これは確かにむずかしい議論がありますね。計算の基礎になるいわゆる家庭生活費といいますか、これをどう見るかということの問題でしょう。たとえば、一番大きな問題は、東京地裁の判決などにおいては、それの一・五倍ぐらいのところの課税最低限ならば憲法違反ではないというような判例が出ていますね。これもよく読んでみないとわからない判例ではありますけれどもね。そういうふうになってきた中で、今度はレジャーならレジャーをどの程度見て一つの生計費というものを構成していくかということが問題になってくるわけです。だから、なかなかむずかしい議論であって、あなたの方で所得控除やなんか入れて課税最低限を計算しているわけですから、それを僕らの方で破るのもまずいということもありますから、わかりますけれどもね。  そこで大臣所得税減税の問題について、こういうことを言っているんですね。たとえば、きょう来ていないけれども、主計局長の山口光秀氏ですね。主計局長がこういうことを言っているんだな。  国民の税負担は妥当かというようなことで、何%ぐらいが妥当かということを、二四が妥当とか二六が妥当とか、いろいろ言われてきましたよね。それは別として、結局「安定的な間接税を考えたい」のだというようなことを言っているんですね。「一般会計の税収の三割が法人税という国は他にありません。」こう言っているわけです。これは日本は法人がめちゃくちゃに数が多いですからね。外国にはこんなに法人はありませんね。有限会社がいっぱいあるわけですから、日本は。みなし法人があるし、一人法人もできようなんという話もあるんですからちょっと違いますけれども、「アメリカは直接税中心で、直接税の比率が九割にもなっていますが、しかし個人所得税が大きいのです。日本の税収構造は、少し法人税にウエートがかかり過ぎていると思います。これを是正するためには、もう少し安定的な間接税のようなものを考えた方がよいのではないかという議論があります。」これは「公研」という雑誌で山口さんが「五十八年度予算のポイント」としてセミナーで言っていることですが、結論的に「いま、間接税をどうしようという具体案を持っているわけではありません。幅の広い間接税の研究をしないということもありません。」こう言っているんですね。  「幅の広い間接税の研究をしないということもありません。」というのは、これはどういう意味なんでしょうか。山口さんがどう考えてもいいけれども大臣はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  268. 竹下登

    竹下国務大臣 これは要するに、私が従来答弁しておりますのは、いま直間比率の見直しと言えば、前回私が五十四年の大蔵大臣のときには、直ちにいわゆる一般消費税(仮称)を連想した、そういう国民的雰囲気みたいなものがあったんじゃないかな。そこで国会決議に基づいてあの手法はとらない。それで、その後税調等に諮問申し上げた中の答申において、やはりそれぞれ見直すべきだという言葉が三回にわたって出てきます。それから臨調でも出てまいりました。したがって検討すべきだ、なるほどな、私も理解しますが、その税調の経過を見ても、税体系の見直しという言葉に変わってきております。というのは、直間比率という言葉そのものが、いわば結果として言えることであって、あらかじめアプリオリにそれを設定すべきものでないということから言葉も変わったのじゃないかな、こういうふうに思っております。  しかし、その答申を見る限りにおいて、幅広い消費を対象としたそうしたものを検討すべきであると言われておれば、やはり私は、これは勉強の課題としてはあり得る問題だな、しかし、これはそれこそ国民の代表たる国会の問答とかいろいろなところを通じて国民自身の理解もないことには性急にやれるべきものではないということは、過去の体験でも明瞭になっておるということになれば、やはり私どもは、いま勉強する環境は、なるほど以前とは違ってきております、だから勉強は一生懸命させていただきます、しかし、いまどういうものをやるかということはあらかじめ念頭にはないというのが、正直な、私の素直な答弁でございます。
  269. 稲葉誠一

    稲葉分科員 素直な答弁と言っても、いつも素直な答弁をしているから別にあれですがね。  私、いろいろ疑問に思っていることをここで申し上げたわけですが、十分解明されておらないわけですけれども、これは私どもよく研究させていただいきたいと思います。  せっかく国税庁長官の福田さんがおいでになっておられるのですが、いわゆる脱税事件、脱税という言葉はどういうふうに言ったらいいでしょうか、脱税事件について、福田さんが国税庁長官になられてからの取り組みの姿勢というものについてまず御説明を願って、現在具体的にどういうふうなものが挙がりつつある、たとえば歯科医師の問題だとかソフトウエアの問題とか、各地でいろいろ挙がっているわけですね。具体的にどういうものが挙がっており、今後国税庁としてはこの脱税事件についてどういうふうに取り組んでいきたいというふうに考えておられるのか、こういう点について御説明を願えればと思います。
  270. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 実情については担当部長が御説明しまして、また御質問があればお答えしますが、要するに税法を適正に執行するということに尽きると思います。租税法律主義で、国会でお決めになった税法を正しく執行するということに尽きる、私はこう思っております。
  271. 角晨一郎

    ○角政府委員 調査にポイントを置いたお尋ねでございます。  調査につきましては、私ども、高額、悪質重点と申し上げておりますが、業種、業態いろいろなものがございますけれども、やはり限られた事務量の中で高額、悪質重点にやってまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  272. 稲葉誠一

    稲葉分科員 近ごろ挙がった具体的な例としては、挙がったという言葉は悪いけれども、どういうふうなのがあるわけですか。
  273. 角晨一郎

    ○角政府委員 毎年の所得税法人税の調査実績、これは新聞発表もいたしておりますけれども、それで若干御参考までに申し上げますと、たとえば申告所得税の場合でございますと、ワースト業種と申しますか、一件当たりの申告漏れ所得が多いものといたしましては、病院、パチンコ業者、みやげ物小売業、建て売り業というようなものが挙がっておりますし、法人税の最近の事務年度で申しますと、貸金業、それから有機工業製品製造業、医療保健業、そういうようなものが挙がっておるということでございます。これは一般的な業種の傾向を申し上げました。
  274. 稲葉誠一

    稲葉分科員 国税庁長官、シャウプが来まして申告納税制度というものを確立したといいますか、とったわけですが、アメリカの場合のそういうものに対する処分と、それから日本における処分というものと非常に違うんじゃないですか。アメリカは非常にきついですね。とにかくうそをつくということは、アングロサクソン系は重く見る国民ですから非常に厳しい。ところが日本は、もうみんなやっているものだからということで非常に軽いということもあるかと思うのですが、これはもちろん税法の解釈が間違っておるとか、理解の仕方が違ってなったとか、いろいろな内容がありますから一概に言えないと思いますし、いま言われたように、本当に悪質なものもあるし、そうでないものもいろいろありますから、その点は区別しなければいけないですけれども、そのアメリカのやり方と日本の場合と非常に違うのじゃないでしょうか。それはどういうふうに違いますか。
  275. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 アメリカの事例は、正確ではないかもしれませんが、やはり申告納税ですから、正しい申告は尊重するというのが一方にある。また、そうでない反社会的な者に対しては厳しくやるという両面であろうと思います。  シャウプは申告納税をわれわれに言ったわけですが、彼が言ったのには三つございまして、所得は本人が一番よく知っておる、よく記録を持っておるのは本人であるというのが第一点。これが記帳義務を彼は提案した。第二点は、税務当局が適時適切に調査に来るということを前提にしておるわけです。申告納税、良心税ではありますが、やはり調査があるということによって正しい納税が担保される。申告納税といっても正しいことが基本ですから、先生御承知のようにヨーロッパは賦課課税で、租税法律主義である以上は正しいということは賦課課税でも担保されるわけで、アメリカはもっと民主的なやり方ですが、やはり調査による正しさを担保しておる。それから資料が各方面から税務当局に入るということ、この三つが彼の勧告条件となっておったんですが、その三つの条件が満たされないままで申告納税が導入された。当時の国際環境が未熟であったんでしょうが、したがってその申告納税というものに対して、アメリカの場合はその文字どおりにやられておるということなんです。  ですから、申告書をごらんになりますと、アメリカの場合、詐欺罪の処罪を受けることを前提に私は次々のことを、この内容が正しいことを今日デクレアします、こう書いてあるのですね。そして自署のサインがなければいけない。そういう意味で、非常に良心税が担保されておる。まあ税務行政の方はそれを援助するというのが基本的姿勢ですから、コンプライアンスサービスという言葉で言っております税務行政の本質は、税法を守ることは——これは納税者ですね、税法を守るというコンプライアンスを税務行政が援助するというのが税務行政である。ですから、そこがやはり納税者の自覚が必要ですし、その前提条件がそろってないと申告納税は正しくいかない。  それともう一つは、社会的にそれが担保されない形で脱税が行われますと、これは非常に厳しい査察が行われる。インテリジェンスというのですが、情報をとって厳しい調査を行って、社会的な処罰を受ける。それが公になればパーティーにも出れないというようなことで葬り去られるというようなことがあるわけでして、この両面から納税が租税法律主義のもとで正しく行われるということですから、アメリカの場合はそういうことで、申告納税を基本にしながらそれを担保する形の査察的な調査が行われるということです。  私も、やはり日本の場合は、租税法律主義を申し上げましたから、やはり申告納税は正しいと思うのですね。申告納税が民主的です。ですから、われわれは正しい申告が行われるように援助し、助言し、いろんな広報をするということを、やはりソフトに理解を求めながらやっていくというのが基本的に必要なことであろう。一方において、やはり調査を非常に限られた人間ですが有効にやる、効率的にやるということによって、不公正という社会的な感情をなくしていくということ。これによって国に対する信頼が確保されるわけですから、そういう意味で、ソフトに申告納税を育てるということと同時に、またそれに違反する者に対しては厳しく対応するということを心がけておるわけでございます。
  276. 稲葉誠一

    稲葉分科員 ただ、私の言うことが、アメリカのように厳しくやれというふうに聞こえたのでは、これは誤解されると非常に困るものですから、そういう意味で申し上げたのではありませんから、その点は御了解願いたいと思うのです。  そこで大臣、私は前にも大臣に質問したことがあるのですが、いつも疑問に思っておることは、たとえば所得税が十九段階に分かれていますね。これは日本だけですね。私、前から言っていましたね。下が一〇%で上が七五%。上の七五%は、これは無理だと私は思いますよ。これでは、何とかという南カリフォルニア大学の若い教授がいましたね、あれじゃないけれども、これは仕事するのがいやになっちゃうのは無理もないわけですから。  そこで、ただ十九という分け方は非常に細かい分け方ですね。下が一〇%でしょう。そういう細かい分け方をしておると、給料が上がるに従って刻みが細かいからそれだけ自然増収がふえてくるという形になって、それがいままで日本経済の成長を支えてきた、これは事実だと思うのですね。イギリスでもアメリカでも、全部下が非常に違いますね。もっと上のところでランクがあるわけですね。一〇%なんというのは日本だけです。だから、この十九段階制というものをやはりもっと合理的な形で——あのときは何か合理的な理由があったかどうかというようなことを言っておられましたけれども、いまの段階になってきたときに、それで減税の問題が大きく言われているときに、この十九段階の小刻みな分け方を変えていく必要があるのではなかろうかというふうに私は思いますので、これは前にも言ったことがありますが、その点についての大臣のお考えをお聞かせをお願いいたしたい、こういうふうに考えております。
  277. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、この前も御質問があって勉強させていただいたのでありますが、ずっと初めから十九というものが設定されたわけではなくて、シャウプ勧告以来の引き続いた、継続した経過の中に、結果としていま十九段階になっておる。私も言われてみて、この分け方というものが十九でなくてはならないかという理屈も、結果としてそうなっておるのであって、存在しないような気もするのでございますが、勉強させていただきたいと思います。これは言われてから、私なりにもいろいろ頭の中で作業を繰り返してみても、結果としてまさにそうなっておる。だから初めから決めたものではない。しかし言われてみれば、確かにその段階は多いなという感じがしないでもございませんので、勉強の課題として引き続き私にも提供いただいて、継続して勉強させていただきたい、このように考えます。
  278. 稲葉誠一

    稲葉分科員 これで質問を終わりますが、この問題は、私自身が率直に言ってわからないことが多いのですよ。ことに引当金のことは、私はよくわからないのだ。学者の本を読んでも、みんな言うことが違うのですからぬ。ことに、きょうは答弁求めませんでしたけれども、特定引当金、これはまた全くわからないですよ。これは恐らく法務省と大蔵省でまた違うと思いますよ。企業会計審議会の中でも、先生方の言うことはみんな違うと思うのです。何が留保性引当金なのかと言われてもわからないと思います。そこらのところをよく研究しておいていただきたいというように思います。私自身も、これからいま言ったようないろんな問題について勉強させていただきたい、こういうふうに考えております。  質問を終わります。
  279. 砂田重民

    砂田主査 これにて稲葉誠一君の質疑は終了いたしました。  次に、有島重武君。
  280. 有島重武

    有島分科員 私はきょうは歩積み両建ての問題について質問をさせていただくというつもりでおりますけれども、その前に、こうして大蔵大臣とお目にかかってお話のできるチャンスはなかなかございませんので、一つだけお聞きしておきたい。  と申しますのは、例の減税の問題でございますけれども、二階堂幹事長が景気浮揚に役立つ相当規模の大幅減税を実施をするというようなことを言われまして、その後御承知のとおり福田衆議院議長からの御発言があって、政府の方でもこれは前向きに取り組むというふうに聞いておるわけでございまして、国民はこれに大きな期待を寄せておるわけでございますし、大蔵大臣におかれましてもこれは大いに努力をしていただきたいし、財源を見つけ出すということもやっていただきたい、こう願っておるところでございますけれども、これについての御決意のほどを承れればと存じます。
  281. 竹下登

    竹下国務大臣 これは政府としても官房長官が申し上げておりますとおりでございますが、要するに各党の代表者会議におきましてある種の合意を見て、それに基づいて議長見解というものが出されたわけでございます。したがって、その重みは十分にわれわれ体すべき問題であるということは、お答えするまでもないことでございます。したがって、これからこれに対してどういうふうな考え方で対処するかということになりますと、これはその重みというものを十分に認識をして、まず、さればとて安易に赤字国債をもって充てるとかというようなことを考えてはなりません。国債の増発というものがまた金融市場に影響をもたらして、むしろ景気の足を引っ張るようなことになったら結果として御趣旨に沿わないことにもなるということも念頭に置かなければならない課題でありましょう。そしてまた、それがためにこれまた安易に増税ということを考えてもこれはいけない。それによって、別の意味における景気刺激をマイナス効果あらしめるようなことを考えてもならない。そこにこれから苦心があるところでございますので、私どもといたしましては、こいねがっておる姿というものは昨年の申し合わせ、議長見解に基づいてつくられました大蔵委員会の小委員会、あそこでいろいろな議論がなされた。たとえこれは結論的には議まとまらずに至ったといえども、不毛の議論であったとは私は断じて思っておりません。したがって、そういう議論を踏まえながら、ある意味においてはこれは御迷惑でも各党の専門家の皆様方の個々の意見も聞きながら、そしてもとより政府でございますから、税制調査会の意見等を聞いてこれに対応しなければならぬ課題だと重く受けとめると同時に、私どもはこれに対して謙虚な立場で各方面の意見を聞きながらその方向を摸索していこう、こういうことが真実の私の今日の考え方でございます。
  282. 有島重武

    有島分科員 模索の段階から、ひとつもっと本格的な、積極的な努力をさらにやっていただきたいと存じます。  それからもう一つ、公定歩合の引き下げについて、これも景気浮揚のためにもう考慮すべきときではないか、こう言われておりますけれども、これについてのお考えはいかがでございましょうか。
  283. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、これは当然のこととして日本銀行の専権事項でございますので、私からとやかく申し上げることは不適当だと思います。ただ、一般論として当然お答えしなければならぬわけでございますが、実は昭和五十五年でございますか、初めて国会の開会中、なかんずく予算案の審議中に公定歩合の操作を日銀がなさって、それが国会の方においてもよかろう。いってみれば、ある意味において予算書の書き直しにつながるという議論ができないわけでもない。にもかかわらず、それを当時二見さんでございましたかの御発言が契機となってそのことが許容されたというのは、ある意味において歴史的なことであったという意味に考えております。したがって、機動的にいつでもその条件が整えばやらなければならぬ課題であると思っております。  ただ、今日の時点で見ますと、物価は落ちついたではないかとか、いろいろな問題がございますが、やはり一つの問題としては——きょうは寄りつきは二百三十三円八十銭ですか、比較的円高基調というものがある程度定着して、できつつあるとはいえ、今日まだ円高基調、いわゆる為替レートが非常に安定しておるとは必ずしも言えないかもしらぬ、その辺が当局者としていろいろ御配慮をなすっておる点ではなかろうかな、こういうふうに私は思っておりますが、原則的にいま有島委員の御指摘になりました問題、恐らく絶えず当局者の念頭にはあるであろうというふうに私も理解しておるところであります。
  284. 有島重武

    有島分科員 それでは歩積み両建ての問題に入ります。  歩積み両建て預金に対して大蔵省の指導が、これは昭和三十九年でございましたか、出まして、もう二十年近くなっておるわけでございます。最近の公正取引委員会からの報告によりますと、五年前に六〇%程度まだ残っておったのが今度四〇%台になった、こういった報告があるわけでございますけれども、これは大蔵省からの御指導の成果というふうに高く評価してよろしいのか、あるいは二十年間かかってやっと半減のところまでこぎつけたけれども、まだまだ努力が足りないのじゃないか、手ぬるいのじゃないか、こう批判されてもまた仕方がない面があるのじゃなかろうかと思いますけれども大蔵大臣としてはこの辺どういうふうに評価をなさり、今後どういうふうにしようとなさっておられるかを承りたいと思います。
  285. 竹下登

    竹下国務大臣 これは正確を期するために事務当局からのお答えもさせるつもりでございますが、過当な拘束性預金の解消を図るように今日までも指導をしてきております。したがって、その結果といたしましては毎年低下しておりまして、昭和三十九年五月、二二・三%であったものが昭和五十七年五月には二・四%にまで低下しておる。したがって今後とも過当な拘束性預金の自粛、徹底ということは、国会のたゆまない御忠告に基づいて指導を徹底していかなければならぬ課題であるというふうに考えております。
  286. 有島重武

    有島分科員 昨年の九月にも「「歩積・両建預金の自粛について」通達の一部改正について」というようなものが出ておるわけでございますね。引き続きこれは指導を願わなければならないことでございますけれども、こういった指導の質といいますか、これはもう一工夫しなければならないのではなかろうかと思われる点がありますので、申し上げたい。  一つには、現在大分減ってきたとはいうのですけれども、減ってきたその中身ですね。これは大きな企業はもうほとんど初めから問題はございませんで、いま依然として銀行局からの通達がよく行き渡らないというのは、非常に零細な金繰りをやらなければならない、そういうような企業にだんだん限定されておるということ、この実態もよく知っていただきたいということが一つですね。  それからもう一つは、確かに法的には、定められた規則によれば、歩積みでもなければ両建てでもないという形にはなっておりますけれども、いわゆるにらみでもって働きがつかない、こういう実態がなお多い。これは公取から発表されている数字をオーバーして、実態的にはそれほど変わっておらないのじゃないかというふうに、私どもなどは身近なところでいろいろな話を聞くものですから、通達は出されるけれども一向に変わらぬのじゃないかというふうな印象を持っているわけでございます。この指導のやり方についてもう一工夫何かできないものだろうか。こういった点について何か御感想といいますかお考えはおありになるでしょうか、大臣
  287. 宮本保孝

    宮本政府委員 御指摘のとおり、私どもといたしましても二十年間にわたりまして歩積み両建て対策を国会の御意見等も踏まえまして厳正にやってきたつもりでございます。ただ、御指摘の点、よくわかるわけでございます。特に中小関係——先ほど大臣一般の平均が現在二・四とお答えいたしましたが、中小関係だけとりますと三・七ということで一般よりは中小の方が比率が高い。  それから御指摘のにらみ預金でございますが、これは公取の方の調査でやっておるわけでございますが、昭和四十年五月、一一・三%が漸次低下してまいりましたけれども、なお七・八%あるというようなことでございまして、その辺に御指摘のとおり問題があろうかと思うわけでございます。  そこで、私どもといたしましても、特に昭和五十一年には特別にまた通達を出しまして、特にみなし拘束預金、これはいま御指摘のにらみ預金でございますが、これが一番グレーゾーンみたいなところでございます。そこで、このみなし拘束預金というものを何とかしてなくさなければいけないんじゃないかというところで、現在の通達も実はその辺が大変ポイントになっているわけでございます。そこで、みなし預金につきましては、拘束するんだったら必ずちゃんと拘束の措置をとりなさい、拘束手続をとった上で、しかも金利も安くするというようなことではっきりしなさい、そうでないものにつきましては、これは拘束しておりませんということをはっきりと通知を出しなさいということをやりまして、この五十一年通達におきましては、にらみ預金、これの解消ということを主眼にして実は内容はできておるわけでございます。  そこで、去年の九月に別途通達を出しましたが、これは新しい銀行法のもとにおきまして、できるだけ自分で自己を律する、要するに自粛の措置を自分でやるべきだという観念、もう一つはやはり事務処理の簡素合理化、そういう問題も含めまして実は再度通達を出したのでございますけれども、その通達の内容におきましても「自己責任体制の強化を図り一層の自粛徹底に努めるよう、」通達を出しておるわけでございますけれども、もしもこの「自粛措置不十分と認められる事例が見受けられた場合には、従来以上の厳しい責任追及等の措置をとる」からそのつもりでいてくれということで、また特別な強化の対策を講じておるという次第でございます。
  288. 有島重武

    有島分科員 私二月にも聞いた話なんですね。ごくどく新しい話なんですけれども、ある方、Aさんということにしておきましょうか。ある金融機関に融資を依願した、当座の開設と百万円の定期を求られた、百万円の定期預金をいたしまして、十日ぐらいたってから、別に不動産を担保にして三百万円を借りた、金利は一〇%だった、最近になってそのうち二百万円ほど返済をしたのですね。不動産の抵当は解除してくれた、ところが現在も同じ金利を払って継続をしているわけであります。本来であれば預金担保処理をして金利も下げてくれるべきじゃないだろうかという話ですね。  それから、Bさんの場合ですけれども、これは歩積みの方でございまして、毎月割引は銀行に申し込んでいるんですけれども、その都度やはり一%ずつの普通預金を強制されているというのです。  それからCさんの場合ですけれども、定期預金をいたしまして、不動産を担保に割引と融資を受けておった。資金繰りは苦しいわけなんですけれども、ともかく定期預金には手をつけないでがんばっておった。ところが、ことし返済が延滞し出したのです。そうしたら、金融機関の方から定期の解除を強制されて返済に回されてしまった。それ以後、なお取引をしてもらおうと思って融資を頼むのだけれどもだめだ、こういうことなんです。こういうことがまだまだ耳に入ってくるわけなんですけれども、一体どうしたらよろしいのでしょうか。
  289. 宮本保孝

    宮本政府委員 私どもといたしましては二つの方法があろうかと思います。一つは、行政を通じます措置、対応でございます。もう一つは、検査を通じます対応があるわけでございます。  そこで、行政を通じます対応につきましては先ほど来申し上げておりますように、厳正な通達を発すると同時に、特に個別のいろいろな案件につきましては本省、財務局、財務部等に苦情処理の担当官を置きまして、個別にきめ細かく対応をいたすように努めてもございます。  もう一つは検査でございますけれども、検査につきましては原則として総合検査ということをやっておりますが、特に歩積み両建てに関しましては部分検査みたいなものも実施いたしておりまして、歩積み両建てについて重点的な検査を行うというようなことも実はかねてやってきたわけでございます。それによって、特に非常に不適当な措置が認められます場合には、担当の役員に対しまして厳しい責任の追及措置をとるということでございます。したがいまして、国民の皆さん方におかれましては、もしもそういう具体的なケースがございますれば私どもの方へ御一報いただくのも一つの手かと思うわけでございます。
  290. 有島重武

    有島分科員 このA、B、Cの方々も御一報申し上げたいと、ここまで出かかっている人たちなんでしょうな。ところが、俗に申せば、後のたたりが恐ろしい、そういう恐れを持っておるわけです。大蔵省が後々までめんどう見てくれればいいけれども、ああそうですかということで、確かにそれは解除してくれた、それからは相手にしてくれなくなるというような弱い立場の人たちがいるわけです。そういう事情は御承知だろうと思うのですが、いかがですか。
  291. 宮本保孝

    宮本政府委員 確かに金融機関が従来強い立場にあったことは十分理解するわけでございます。したがいまして、そういう強い立場に立って、優越的な地位を利用して過当な歩積み両建てを行うことに特に厳正な対応をしてまいったわけでございます。また、おっしゃられましたように、私どもへの御相談の場合にも後々のことがあってなかなか具体的なお名前を出しにくいとか、あるいは個別の金融機関名をお出しになるのをはばかられる向きがないわけではないことも承知いたしております。その点につきましても、私どもが金融機関との対応におきましては後のそういうふうなことのないように十分慎重な対応の仕方をいたしているつもりでございまして、そういう点につきまして特に御迷惑をおかけしているようなことはないのではないかと思うわけでございます。
  292. 有島重武

    有島分科員 後々までのことを気にしないでもどんどん苦情処理が持ち込まれれば、これは銀行局としても本当はその方がいいわけなんでしょう。  そこで、金融機関に対しては特に厳しく自粛を求めておる、責任追及も考えてあるということで、これは結構だと思うのですけれども、銀行に対してのこうした指導と同時に、一般に対してももう一つ親切にPRをするといいますか、これはこうなんですよと、こんなことはわかっている人たちだとは言うけれども、わかっての上でいろいろ無理算段もしておる人たちに対してのことでございますけれども、こういうことはいかがなんでしょうか。たとえば、いま金融機関に参りますと、架空名義の預金はしないでください、こう掲示が出ております。が一方、さっき局長が言われました拘束預金に関する御通知、平素は格別のお引き立てにあずかり云々と書いたこういう通知が個別には行くとありますけれども、各金融機関に、非拘束の定期預金を土台にしておる貸し付けについては〇・二五%、それから信金ならば〇・五%、信用組合ならば一%以下ということになりますか、これを当行におきましては、定期預金をもとにした貸し付けについては〇・二五%でもってやっておりますということを目につくところに表示をせよ、こういう指導を銀行にしていただけないものでしょうか。
  293. 宮本保孝

    宮本政府委員 現在銀行から取引先に対します通知といたしましては、拘束預金に関する御通知ということをさせておるわけでございまして、拘束している預金はこういう預金でございます、そしてそれ以外のものは御自由に払い出せますということを御通知申し上げさせておるわけでございますが、いま先生御指摘のような点につきましては、特別な表示はまだ出されていないと思います。今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
  294. 有島重武

    有島分科員 非拘束定期というのはまさにグレーゾーンでもってにらみをきかしているところでございますから、当行はそういうことをいたしませんというふうに、宿屋、ホテルがこれは安全ですという表示を出すのと同じように、できるならばそういうことをすべきではないか、こういう声がありますので、それは検討課題にしてくださるそうだから、ひとつ御検討いただきたい、お願いをいたしておきます。  それでは、もう時間が参りましたけれども一つだけ、国民金融公庫の貸し付けについて。これは大変各方面から歓迎されておるというか利用されておる、喜ばれておる。それで、一般貸し付けの方は予算よりもずっと実績が上がっております。広く国民に利用されているわけでございますね。特別貸し付けというのがございまして、これは金額はわずかなんですけれども予算よりも実績が相当下回っておる、ということは利用されておらぬ面があるということでございますね。ちなみに、五十六年度についての特別貸し付け一千八百八十五億に対してこの半分にも満たない七百十六億という実績になっております。五十五年はどうかというと、これも一千七百七十億に対して七百六十六億ということです。五十四年、五十三年、ずっとさかのぼってみましても大体七百億というあたりのところでありまして、予算は一千億を超えている、こういうことになっておりますね。これは、国民金融公庫としては、もっと多く、ちゃんと枠のところまでは利用してもらうための金額ですから、努力が足りないのではないだろうか。努力というのもおかしなものでございますけれども、PRが足りないのではないか。と申しますのは、PRだけではなしに、もう一つは融資の条件でございますね。このものがやや不適当になっておるのではないかということを思うわけです。  それで、この中で特別貸し付けでもって、私も以前予算分科会でもって質問したことでございますけれども、たとえば伝統的な工芸品産業振興資金貸し付けというのがございます。これは伝統的工芸品産業の振興に関する法律というのに基づいて融資が行われるわけなんですけれども、これの施行令であるとか施行規則などは大変昔つくったものなんです。私の地元の墨田区なんかに伝統工芸がいろいろ残っておりますけれども、同一地域において、たとえば羽子板なら羽子板、げたならげたというようなものの業者がたくさんあるかというと、そうはいかなくなってくるわけです。友禅のようなものは京都にはたくさんある。墨田にも友禅というものがあるのですけれども、数が非常に少なくなってしまっているから、規定の組合という数にはちょっと足りないわけです。ですから、その地域の指定というのは、時代がずいぶん変わっているのですから、もう少し広げるというようなことも工夫すべきじゃないだろうか、これが一つです。  それから業種がいろいろたくさんのものが少しずつある。いままでは同一業種についてだけ組合というものを許しておるということもございまして、もう少し業種の分け方も緩和するというようなこともしなければならないのじゃないだろうか。  時間がなくなりましたが、大蔵省からも関係省庁に、むしろいまのは通産になりますか、同じこの融資対象になりますのは建設だとかあるいは農水だとかそういったところがあるわけでございますけれども、これの施行令、規則などの見直しということを促していただけないものだろうか、そういう質問であります。
  295. 宮本保孝

    宮本政府委員 国民公庫の特別貸し付けにつきましては、特定の政策目的を実現をするためのものでございます。したがって、金利、貸付限度等を優遇するものでございますので、それに適合します一定要件はおのずから必要になるわけでございまして、そのような要件は他の貸付制度との優先度とかバランス等を勘案して定めるわけでございますので、貸付実績が少ないからといって直ちにその条件を緩和することが適当であるかどうかは問題であろうかと思います。ただ、政策目的に従った融資でございますから、経済環境の変化等に対応いたしまして、絶えずその適応範囲、適応条件等を見直していくべきであるということは、もう先生御指摘のとおりでございます。  ただ、具体的には通産大臣の認定等、具体的な各担当所管庁のそれぞれの手続がございます。そういう点につきまして、私どもとしては第一次的にそういう業種の所管をいたしておりませんので、いろいろと御意見等がございますれば、もしもそれが時代に沿った政策目的であると認められるような場合には、私どもといたしましても所管の省庁と話し合いをさせていただくということでございます。ただ、何度も申し上げますように、特定の政策目的を持ったものでございますので、実績が少ないから直ちにその条件の緩和ということに結びつかないのではないかというふうな気がいたしております。
  296. 有島重武

    有島分科員 これで終わりますけれども、いまのことは個別的ないろいろ細かい問題になりますけれども大蔵省の方からもひとつ促進をしていただきたい。大臣にお願いをいたしておきます。
  297. 竹下登

    竹下国務大臣 しかと承りました。
  298. 有島重武

    有島分科員 ありがとうございました。
  299. 砂田重民

    砂田主査 これにて有島重武君の質疑は終了いたしました。  次に、榊利夫君。
  300. 榊利夫

    ○榊分科員 早速でございますが、現在の所得税に係る減税はどうしても必要だと考えますが、本日はこの運用上の問題に限って少しお尋ねをしたいと思います。  一昨年、五十六年三月二十四日の大蔵委員会で私どもの簑輪幸代議員が内職婦人の所得控除を給与所得者並みの取り扱いにするよう求めたのに対しまして、当時大蔵省は、執行上配慮したい旨の答弁をされておられます。さらに昨年十二月二十二日の同委員会では、執行面で改善を図るよう通達しているが、引き続き努力するという答弁をいただいておりますが、この点でどのように改善がなされ、さらにどうしようとされているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  301. 竹下登

    竹下国務大臣 そういう簑輪さんの質問に対して私もそばで聞いておりましたので、たまたま国税庁は来ておりませんが、内職収入では給与の源泉徴収票か支払い明細書の提出があれば給与所得扱いとする、それから、そうでない人でも収入から控除する経費納税者が証明できればそれによるとか、それから経費を証明できない人でも三割程度の概算的経費控除を認めることとする、以上の扱いによって深刻な問題が生じている事態はない、こういうふうな報告を聞いたことがございます。
  302. 榊利夫

    ○榊分科員 そうすると、いま担当者がいないと、この点、どういう改善を図っているという問題について御答弁いただけませんか。
  303. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいま申し上げましたように執行部局の者がただいまおりませんので、具体的にどのような措置が講ぜられ、現在どのようになっているかはちょっと御答弁はできかねるのでございますが、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように問題のないように措置してまいりたい、また、現時点におきましてこういった点につきまして課税上現実にいろいろな問題、トラブルなりが生じているというふうなことは私どもとしても聞いておりませんので、適切に指導なりが行われているのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  304. 榊利夫

    ○榊分科員 いまの答弁、ちょっと不満ですね。担当者がいないと仕方がないかもしれませんが、通告はしているのですから、しかとした答弁をする責任があると思うのです。これは保留します。そして、またの機会に求めたいと思います。  次に移りますが、同じような婦人の内職、パートの問題です。  女子就業者の中で家事の傍ら仕事をする人あるいは有配偶の非農林雇用者は、最近大変大幅にふえております。国民生活白書でもそのことがはっきり出ております。ところで、家庭婦人がパートに出た場合、給与所得として七十九万円までは配偶者の扱いがなされる、職種によっては事業所得の扱いがなされる。パートの婦人が事業者扱いをされる、これがどうも不合理じゃないか、事業所得といいましても給与所得と実態の変わらないものは給与所得との整合性を図るべきじゃないか、これはきわめて常識的な見方ではないかと思うのです。ここのところは大蔵省も十分わかっていることだと思うのですが、一応整合性を図っていく、この点どうでしょう。
  305. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、源泉徴収票が出ておりまして、それが雇用契約に基づきますところの給与である、そういうふうな形が明らかでございますれば、それは給与所得として扱うというようなことにいたしておるわけでございます。
  306. 榊利夫

    ○榊分科員 この点では、もう一つ関連しますのでお尋ねしますけれども、商店などの奥さんが事業専従者になっている場合、これは四十九年の所得税改正に際して大蔵省の方も白色専従者控除の水準のあり方の検討が十分でなかったということで、五十年に三十万円から四十万円にアップされた経緯がありますね。それから八年たっております。その間に配偶者控除は五十六年に九万円アップされているということもありまして格差感が強くなっております。白色専従者の控除を是正してアップする考え、これは大蔵省の方でも検討されているのじゃないかと思うのですけれども、一体この点どうでしょうか。
  307. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 白色専従者の控除につきましては、音色専従者に対する扱いをどうするかということと関連します一方、沿革的にはこれがいわば配偶者に対する控除の一つの変形と申しますか、発展的な形態と申しますか、そういった要素も持って制度化されてきておるというような点もございますので、いずれ所得税全般にわたりまして控除、税率、その他につきまして基本的な検討が行われます際には、この四十万円につきましても検討の対象にはされるであろうと私ども思うわけでございますが、いずれにいたしましても減税の中身は今後税制調査会等でお諮りをいただくととろでございますので、私どもからここで具体的な将来の方向について申し上げられる段階にはないことを御了解いただきたいと思うわけでございます。
  308. 榊利夫

    ○榊分科員 目下のところこの点は前向きに是正する考えはないようでありますけれども、基本的にはこの問題は課税最低限度の引き上げという問題だろうと思うのですが、この水準のあり方はやはり十分配慮していただく必要があるのじゃないか、こう思うのです。したがいまして、この白色専従者の控除の点でも、他との整合性という点からもそうですし、実態に合わせて水準をアップする、そういう是正が求められているのではないかと思うのです。その点はひとつ積極的に御検討願いたいと思うのです。いかがでしょう。
  309. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 この白色専従者控除額は、ある場合には配偶者控除より下回り、ある場合には同額とされ、ある場合には配偶者控除を上回る、いろいろな考え方でいろいろな変遷をたどってきておるわけでございます。したがいまして、今後配偶者控除などの人的控除が検討される際には恐らくその一環としても検討はされることと思いますが、現時点におきましてはそこまでのところで御了解いただければと思うわけでございます。
  310. 榊利夫

    ○榊分科員 何だかわからないようでわかったようであれですが、とにかく検討される場合は整合性を図る、そういう含みだろうと思います。  もう一つ、さっきの質問に戻りますけれども、例のパートの場合、七十九万円までは配偶者の扱いがされるけれども、職種によっては事業所得扱いのままだ、その点での整合性を図るという問題、これもやはり検討するときは整合を図っていくということでやってもらえますね。
  311. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 パートの方の七十九万円の金額につきましては、先生御承知のように給与所得控除の五十万円と、それから所得があってもないものとするいわば少額不追及の金額としての二十九万円、この二つで構成されているわけでございますので、全体の所得税がいろいろ検討されます際には一つの関連する事項としても中に入ってくることは考えられるわけでございますが、私どもといたしまして、何が何でもまず五十万円を給与所得控除として最低引くという金額でございますとか、所得があってもそれは配偶者控除を認めるという金額としての二十九万円はいずれも説明のできるぎりぎりの水準の金額ではないかというふうな気もいたしておるわけでございます。  それからまた、このパートの方につきましての七十九万円が、先ほど御指摘のございました内職の方の場合とか、あるいは事業所得なり雑所得としての形態をとっておるような家庭の主婦のお働きになる場合とのバランスの問題、こういった点とのバランスでいろいろな点から議論される点でございますので、なかなか複雑な問題、なかなかの難問ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  312. 榊利夫

    ○榊分科員 難問でしょうけれども、現実にそういう不合理があるので、ひとつこれは整合性を図っていくという一方に、どうも向こうの税率と違うという気持ち等々、その不平等感、これを与えないためにも、きちっとした、見直すところは見直すということでやってもらいたい、これは要望しておきます。  次に移ります。  租税特別措置の問題で一つだけお尋ねいたしますが、離島航空路の公租公課についてでございます。  離島航空路の場合、足便、これは竹下大蔵大臣も隠岐の島を抱えておられるのじゃないかと思うのでよく御理解のはずですが、いわば航空路というのが列車だとか長距離バスみたいにもうなくてはならない、そうでなければ本土との行ったり来たりに夜を徹して、こういうことになるので、その点では離島航空路の充実ということ、あるいはより手軽に利用してもらえるようにということで各種の施策がとられておりますし、また一層充実が望まれるわけでありますが、現在でも通行税など、あるいは航行援助施設使用料などの公租公課の減免措置がとられております。しかしそれでも公租公課は、利用する人たちにとりましてはかなり大きな負担ですけれども、国の公租公課の総収入における離島線収入の割合というのはもちろん微々たるものでございます。ところが実際に航空運賃というのは島の人たちにとってかなり高い、そういう感じがあるのも事実なんですね。私ども本土の中で、たとえば大阪から東京に車でだって、あるいは小田原から東京も通勤圏になっておりますけれども、といって同じ東京都下でも八丈島と東京じゃ通勤圏になるか、なかなかなり得ない。時間としましたらもう四十分かそこらで済むわけでありますが、それは航空路の運賃という点から見ても不可能。  それで、たとえばいま東京—八丈島の場合ですと片道一万七百五十円かかっておりますけれども、その場合その中で通行税その他税金の占める割合というのは相当なものでございます。大体一四・五%ないし二三・一%、大変高い比重でございます。だから公租公課を免除するとか、あるいは相当大幅に引き下げるということになりますと、この一万円台のものが七、八千円台で東京まで手軽に四、五十分で来れる。そういう点ではこの島の人たちのそこから受けられる便益というようなものは島の人でなければわからないぐらいの大きなもので、喜びをもって迎えられると思いますけれども、そういう点で、離島航空路の持つ特別の意味という点から通行税の撤廃など、いやいま金かない、こういう答えが返ってくるかもしれませんけれども、公租公課の解消を検討されてはいかがだろうか。大したことはない。あるいは解消とまではいかなくてもこの点は大幅に減額をするとか、これは政策的な検討をひとつやってもらっていいのじゃなかろうかというのが私の質問の趣旨でございますが、その点いかがでございましょう。
  313. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 結論的に申し上げますと、やはり現在の厳しい財政事情のもとでございます。確かに離島航路、空路につきましての収入全体から見れば大きな金額ではないと存じますけれども、全体として租税特別措置につきましてこれを厳しく見直して縮減をお願いしているという段階でございますので、現在通行税につきましてこれを半分にいたしておるという現行の制度が、現在に考えられるぎりぎりのところではないかというふうに考えておるわけでございます。
  314. 榊利夫

    ○榊分科員 財政事情はもう十分に理解しているつもりでございます。またこの航空路の公租公課は大蔵省所管だけではありません。通産省であるとか都であるとかいろいろありますから、ひとつそういう問題があるということで機会をつくって関係省庁でも相談をしていただくということをこの機会に要望しておきたいと思います。
  315. 砂田重民

    砂田主査 榊君に申し上げますが、冒頭の御質問に答弁のできます直税部長が出席いたしておりますが、念のために申し上げておきます。
  316. 榊利夫

    ○榊分科員 ちょっとお持ちください。後で聞きます。  次に、政府系金融機関のあり方、具体的には商工中央金庫つまり商工中金の融資姿勢の問題で、一、二質問いたしたいと思います。  まず一般論としてお伺いいたしますが、ある金融機関からある企業の財務担当役員として派遣された人が出向先の資産を合理化と称して売却する、その大半を派遣元からの借入金の返済に充てる、一方金融機関の側はあらかたの債権の回収を終えた時点で、つまりもう債権を全部取り戻した時点で新規融資を停止をする。そうしますと会社の方は運転資金の融資先を他の金融機関に求めようとしましても、現に特定の金融機関から専務が来ている。そういう状況では融資も受けられず、結局は倒産に追い込まれる。言うなればこの場合、金融機関からの出向社員あるいは出向役員がトロイの馬的な役目を果たしたわけですね。金だけは回収されるけれども、結局相手の会社は倒産する。こういうことは通常許されるものなのかどうなのか、一般論としてお尋ねいたします。
  317. 宮本保孝

    宮本政府委員 一般的に金融機関から企業に人が派遣されます場合には、当該企業からの要請に基づきまして、当該企業への債権とかあるいは金融の円滑化というようなことを図るために派遣されるのではないかと思われるわけでございまして、この商工中金の件につきましても、商工中金に聞きましたところ、親会社等の要請によりまして同社支援のために行われたものではないかというふうに私ども聞いておるわけでございます。仮に、先生御指摘のように債権の回収のためだけに人が派遣されて、現実問題としてそのことだけのために働いたというような場合には、それはやはり好ましくない姿ではないか、こう思うわけであります。
  318. 榊利夫

    ○榊分科員 では具体的に問題を出したいと思いますけれども、東京都内の大田区の昭和重機という冷凍機のメーカーがございますが、これが一昨年の十二月に倒産したのです。このメーンバンクが商工中金でございまして、昭和五十二年から役員が派遣されて、五十五年には経理担当専務が送られました。仮にここで名前をK氏としておきますけれども、中金の方いらしていますね、ちょっとお尋ねしますけれども、このKさんという人は、昭和重機に派遣される前は商工中金ではどういう部署におられた方ですか。あるいは前にも出向経験がある方ですか。
  319. 山口益弘

    ○山口参考人 ただいま御指摘のKについてでございますが、出向の前は横浜支店の副長をいたしておりました。それから、出向の経験はございます。
  320. 榊利夫

    ○榊分科員 そうしますと、前の出向の場合もやはり倒産に遭遇されたのでしょうか。
  321. 山口益弘

    ○山口参考人 遭遇いたしておりません。
  322. 榊利夫

    ○榊分科員 このK専務が中心になりまして昭和重機に送られて以来、本社工場の売却を計画する。それに反対する人ももちろんあるわけで、そういう場合は、反対するなら商工中金はもう融資を打ち切るぞ、こういうようにおどされた。そして売却代金十二億円のうち八億三千万円を商工中金が回収した、三億三千万円を親会社が回収した。その後、二工場が売却されて四十名の希望退職という第二次合理化があるとか等々経過がありますけれども、若干の経過の末、商工中金からの融資の打ち切りが通告され、結局破産宣告となったわけであります。商工中金の場合、会社が破産した後、親会社に代位弁済をさせまして五億七千万円の債権残額の金額も回収しております。これを専務派遣後二年の間にやっておる。利子まで全部回収してしまった。これは、その点では大変みごとなものであります。多くの人たちは、これは町のサラ金以上だというふうに見ておられますけれども、債権回収のためあるいは資産を目当てに意図的に破産に追い込んだんじゃないかとしか言いようがない。こういう実態が政府系金融機関のあり方として果たして認められるのだろうかという疑問が根本的に出てくるわけでありますけれども、この点についてはどういうように政府としてはごらんになられるでしょうか。
  323. 宮本保孝

    宮本政府委員 私どもも商工中金から事情を聞いたわけでございますが、この人材の派遣は、同社の再建のために役に立てばということで会社側からの要請に応じて派遣されたものでございまして、また、その職務内容も社長及び専務の指揮下で経理部門を担当してきたというふうに聞いておるわけでございます。また、合理化計画も社長の指示によりまして会社再建のために立案、実施されたものと聞いておるわけでございまして、同社の倒産自体は業況不振のために倒産に立ち至ったということでございます。  なお、商工中金におきましては、当初の融資以来相当誠意を持ってその後の支援資金等の融資にも可能な限り当たってきたのじゃないかというふうに私どもとしても理解できると思っておるところでございます。
  324. 榊利夫

    ○榊分科員 いまの大蔵省の御答弁は、もっぱら中金側のそれを、信用してはおられないと思いますけれども、一応その話を聞いた上での御答弁と思いますが、実際はそれほどなまやさしいものじゃない。再び興すための再建というよりもお金の債権のため、むしろそういう実態になっていると思うのです、いま私、説明したことでも明らかなように。その点では、回収のためばかりに働く——支援のためというよりも回収のためにというのは好ましくないという先ほどの御答弁でございましたけれども、結論から言えば、いま好ましくないと言われたような実態ではなかったか、商工中金のこの昭和重機をめぐっての行為というのは。私は、その点では、もちろん商工中金としても自分の融資姿勢、営業姿勢、これは十分に反省を込めて、襟を正して、見直すところは見直してもらいたいと思いますし、そうしないと政府系金融機関としての社会的責任を果たすことができないと思うのであります。いろいろ係争問題あることは聞いておりますけれども、率直に言いまして、商工中金のとった態度、とりわけその派遣された役員がとられた措置、いわゆる特別背任の疑いもある、こういうように言われておるわけでございまして、私は、政府系金融機関といたしまして、少なくとも社会的な疑惑を招くようなことがあったら、それはもうその限りで責任をとらなくちゃいかぬと思うのです、少なくともその点に関しては。  大蔵省といたしましても、金融機関のあり方として調べるところは調べてきちんとさせるべきじゃなかろうか、こういうように思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  325. 宮本保孝

    宮本政府委員 御指摘のとおり社会的な責任を十分果たさなければいけない金融機関の使命があるわけでございます。したがいまして、個々の融資案件等につきましても、特別に御指摘があるというふうな場合には各金融機関からも十分事情聴取をした上でしかるべき対応をしてまいりたいと思います。なお、きょうの御指摘も踏まえまして商工中金ともよく実態の解明に努めてまいりたい、こう思います。
  326. 榊利夫

    ○榊分科員 最後でございますが、商工中金とされてはこの問題について、とりわけ社会的責任という点で、現在どういう自覚をお持ちでございましょう。
  327. 山口益弘

    ○山口参考人 この件につきましては、商工中金といたしましては、職員の派遣は同社並びに親会社の要請に基づきまして、経理部門が弱体であるということで同社の再建のためにお役に立てるということで出したものでございまして、職務の内容は社長と筆頭専務の指揮のもとに経理部門を担当してまいったわけでございます。  当金庫といたしましては、昭和五十年以降同社が二百海里の規制並びに第二次のオイルショックに伴います業況不振の中、経営上の大変な赤字を続けてまいった中でも支払い手形の決済資金であるとか赤字補てん資金等を融資いたしました。一貫して支援を続けて、倒産前日には手形の割引を行うというようなことまでいたしまして可能な限りの協力をしてまいったつもりでございます。倒産後の貸出金の回収は株式会社昭和重機製作所からではなく、連帯保証人である親会社から保証履行を受けたものでございまして、金庫といたしましては精いっぱいの努力を続けてきたということを申し上げたいと思います。
  328. 榊利夫

    ○榊分科員 精いっぱい努力を続けてきたのだったら恐らくこういうことにならなかっただろう。これからはひとつ精いっぱいの努力をして事態の改善のために誠意を見せてもらいたい、このことを要望しておきます。  先ほど答弁が残っていましたが、来ていらっしゃるようですから、答弁いただけますか。
  329. 角晨一郎

    ○角政府委員 いわゆる内職収入の税務上の取り扱い、昨年の大蔵委員会でも御議論を賜ったわけでございます。そのとき私どもの考え方を御答弁申し上げましたが、この趣旨に沿いまして改めて各局に、その趣旨で課税処理を実際にやるように伝達をいたしております。
  330. 榊利夫

    ○榊分科員 終わります。
  331. 砂田重民

    砂田主査 これにて榊利夫君の質疑は終了いたしました。  次に、斎藤実君。
  332. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、私は投資減税について大臣の所見を伺いたいと思うのです。  五十年代に入りましてから地域間で経済動向が大変ふぞろいになっておりまして、特に五十四年の第二次オイルショック以来、景気の地域間格差、跛行性といいますかばらつきが非常に多くなりまして、経済白書その他でもしばしば論議をされておるところでございます。これは四国でも山陰でも東北でも同じだと私は思うのですが、例を北海道にとってみますと、五十七年度の指数はまだ出ていないので、やや古いと思いますが、大勢はそう変わっていないと思うのですが、五十六年の主要指数を見ますと、鉱工業生産指数では北海道がマイナス三・四、関東は七・四、全国が三・一ということで、きわめて低いわけでございます。また大口電力使用量、これは生産活動の目安としてよく使われるのですが、北海道はマイナス三・二、関東がマイナス一・六、全国がマイナス〇・六ということで、きわめてマイナスが北海道は多い。それから公共工事の請負金額は、北海道は九・五、これは災害があった関係で伸びていますが、関東はゼロ、全国は二・〇ということになっています。     〔主査退席、宮下主査代理着席〕 次に百貨店の販売額でございますが、これは国民の消費をあらわしている指数ですが、北海道は五・一、関東が六・八、全国六・六というふうに北海道は落ち込んでいる。それから有効求人数、これは職業安定所への企業からの求人をあらわしているのですが、北海道がマイナス二・〇、関東が一・五、全国がマイナス一・七というふうに北海道はマイナスが多い。企業倒産を見ますと、北海道が一・五、関東がマイナス六・三、全国がマイナス五・七というふうに、景気の動向というものはこれを見ても北海道はきわめて落ち込んでおるわけですね。こういう傾向は何も五十六年だけではなくて、さきにも私が申し上げましたように、五十年代の長期的な傾向だと私は思うわけです。しかも、今後こうした傾向が続くおそれがある。こういうような傾向が長期化すれば、かつて三十年代に大きな問題となった地域格差の問題が再燃してくるだろうというふうに私は心配するわけですが、すでに地方にはそういう危機感が出始めております。  その理由は幾つかあると思いますが、その一つは、従来地域経済の均等化に重要な役割りを果たしてきました公共投資や財政支出が実質的には減少しているということです。第二には、民間の設備投資が長期的に沈滞をしてきた、企業の地方進出が進んでいないということ。これが二番目ですね。第三には、アルミ、鉄鋼、紙パルプ、化学肥料などの素材型産業が構造的な不況に陥っておりまして、地方経済は主としてこのような素材型産業に大きく依存をしているということでございます。第四には、財政の実質縮小に伴って、大都市の地域から地方へ地方交付税や各種社会保障などを通じて所得の移転が行われることが実質的に縮小していること。いま申し上げましたように、今後すぐには改善の見込みがない、こういう理由によりまして、地方経済が落ち込んでいるという現状は、私は事実だろうと思うのですね。三十年代のこうした地域格差が再び再現してはならないと思うわけですが、財政を担当する大蔵大臣はこの点をどういうふうに考えているのかお伺いしたいし、特に現在の地方経済の落ち込みをめぐる構造的な問題についての大臣の所見を伺いたいと思います。     〔宮下主査代理退席、主査着席〕
  333. 竹下登

    竹下国務大臣 いま斎藤委員は、北海道という地域を例示しながらの御発言でございますが、確かに当初わが国におきまして、それこそ均衡ある国土の発展を図るという考え方からして、企業進出という点が、工業団地でございますとか、そういう関係で推進されてきたことは事実であります。しかしながら、御案内のような二回にわたる石油ショックによりまして企業そのものが減量経営を余儀なくされたというところから、ところによってはせっかくできた工業団地がペンペン草が生えておるとかいうような地域も散見されることも事実でございます。これらに対しましてはいろいろな角度から、低開発地域、工業開発地域等におけるいわゆる機械装置についての各種の特別償却制度でございますとか、特別な法律に基づいてそういうことが行われ、また特別誘導地域とか誘導地域とかいうような制度が設けられて、それらに対して助成措置と税制面と両方から措置されておるが、それに対応するだけの実績がなかなか上がっていない、これは私も同感でございます。なかんずく素材産業の問題につきましては、御指摘のとおりであります。素材産業自体の問題については、このたびの歳出並びに税制措置においてもそれなりの、これは地域を対象にしたという意味ではございませんが、措置をとってきたところでございます。  もう一つは、そういう地域ほど公共事業依存度の高い地域でございますので、前年同額というような公共事業の中で、それが、労働力を吸収していく力がマイナスに働いておるというようなこともあろうかと思います。ただ、この点につきましては、俗に傾斜配分等の措置を行いまして、それなりには工夫をしながら、なかんずく用地費率の少ない地域がたまたまそういう地域とも一致する地域でございますので、それなりの配慮はそれぞれの公共事業担当省としても行われておるというところでございます。  そういうような総合的な中で、地域格差というものが、昭和五年でございますかに一番高いところと一番低いところは九分の一であったというようなものが、やっと二分の一弱にまで近づいてきておるわけでございますから、さらにその傾向が逆の方向に転ずることがないように、これは総合的な施策の中で財政も税制もそれに対応していかなければならぬ課題であるというふうに考えております。ただ、北海道ということになりますと、私も山陰地方でございますが、一人当たり公共事業費等を計算してみるといつでも北海道が一番だなと思うと、北海道ぐらいになりたいなという気持ちがないわけでもございません。
  334. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 いや大臣、これは山陰もそうかもしれませんけれども、四国、東北、北海道へ行ってみても、地方経済の落ち込みというのはひどいのですよ。それで、地方の自治体の首長は何とか対策を立てようと一生懸命それなりに努力をしておるわけですね。しかし大臣、いかにせん三割自治ということで、地方自治体には財政も権限も十分に与えられていないわけです。つまりわが国は中央集権の強い国ですから、地方の問題は地方で解決しろというふうに国は言いますが、地方にはその手段が与えられていないわけです。  御承知のようにアメリカでは、州政府には権限も財政も大幅に与えておりまして、企業誘致一つとっても、各州は知恵をしぼって進出企業に対しては手厚い優遇措置を講じておるわけですね。ある地方の州では工場をつくってさあいらっしゃい、こういう積極的な姿勢をとっておりますし、企業誘致に対してはひなを育てるようにえらい関心と財政的な恩恵も与えているわけですね。現状の地方経済から考えれば今後一層産業の地方分散を図ることが重要だと私は思うのですが、そのための手段について、わが国はアメリカのように分権的な国ではありませんから、国の方でいろいろきめの細かい配慮というものを考えていく必要があるだろう。これまで新産都市だとか幾つかの制度で、固定資産税であるとか特別償却なども地方税を中心に優遇措置がないではありませんけれども、その効果というのは限定されているわけですね。今日の現状からすれば地方へ進出する企業に対して、地方税だけではなくて国税の減免などという強力な措置が必要だと思うわけでございますが、ひとつその辺について大臣どうお考えになるのか、伺いたいと思います。
  335. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり各種のいままで行われております税制上の措置としての制度がそれなりに機能する能力と申しますか、機能するそういう背景は整っておる。しかしそれが今日機能してないというのは、二度にわたる石油ショック全体から来る影響ではないかな。だから今度でも中小企業の投資減税というものをぎりぎりの線で行いましたが、そういうものと従来の地域振興等に関する特別償却制度等を活用していただく方向で努力しなければならぬ。しかし基本的には、おっしゃいますようにいわゆる世界不況の中で日本だけが例外でなく、全体がそういう活力をある程度減殺されておるということは私も率直に認めなければならぬ。私自身も、少なくともそのための基盤を整備するために工場団地も結構でしょう、そしてまた交通網の整備も結構、そういう環境の整備を図っていくことの中に初めて企業の進出意欲というものも出てきて、それに伴って税制のそれなりのメリットが実行に移されるわけでございますので、日本の産業全体の中で活力を求めなければいかぬというのが基本的にはあろうかと思うのです。しかしその地域、地域の状態につきましては、やはり私もそういう地域の出身者でありますが、そこを選挙区として出ておるわれわれが絶えずきめの細かい眼をそこに注視しながら、政策手段の中にそれが移されていくような継続した努力をしなければならぬな、まあ、同じような気持ちであります。
  336. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣は山陰の島根ですが、私も北海道で、私に言わせればまだまだ後進地域ですよ。全国にそういった後進地域があるわけです。  そこで、大臣一つ提案をしたいのですが、これは山陰も含めて四国も北海道もそうなんですが、構造的に経済の伸びが見込めない、そういう構造的に伸びられない要素を持っている地域に対して思い切って投資減税を行ってはどうか。この投資減税については、先ほども申し上げましたように欧米では不況対策、投資促進政策の一環として実施されているわけでございますが、これは地方経済振興策としては非常に有効だと私は思うわけです。つまり、構造的に対策が必要な地域において新しく設備投資をする企業に対して、たとえば投資額の一割に相当する額を法人税所得税から控除する、しかも赤字企業にもこの効果を及ぼすために、繰越年度を三年ないし五年認めるということも必要だろうと思うのですね。こういうような措置をとればエレクトロニクスやバイオケミカルなどの先端産業の地方分散も促進されるだろうと思うわけでございまして、そうすることによって地域経済も構造的に強化されることにもなるし、これまでの財政支出による直接的な地域振興から民間主体の地域振興へと切りかえる契機にもなると思うわけでございます。  そこで、財政再建下では税の引き下げは無理というお答えが返ってくるかもわかりませんけれども、長期的、総合的な効果を考えれば財政的にも大きなプラスになると私は考えるわけでございます。あるデータによりますと、投資減税によって投資が五%ないし七%ぐらいふえるだろうというふうに言われておるわけですが、五%、七%投資がふえれば町の工場は仕事がふえるし、また残業もふえる、給料も高くなる、また消費もふえてくる、最終的にGNPにもはね返ってくるし、GNPにはね返れば税収にもはね返ってくるということにもなるわけでございまして、私は北海道の人間ですけれども、これは山陰も含めて特定の地域に対する投資減税の導入を実施するのが最も景気浮揚につながるし、大きな政策の手段だというふうに私は考えるわけですが、大臣いかがでしょうか。
  337. 竹下登

    竹下国務大臣 今日、私どもといたしましては、地域振興策としての目的で新たな投資減税制度を導入することは事実上困難だというふうに思っております。やはり現行の特別償却制度の中でこれを活用していくということではないかな。事実、今日までの税制措置といたしましても各種の特別償却制度が設けられております。しかも、この租税特別措置は連年厳しい見直しを行っておるところでありますが、まず現行制度をできる浪り活用していただくようにお願いすることだと思います。したがって、財政厳しい折、このたび中小企業の設備投資の促進に資するためのいわゆる中小企業税制というような特例措置を講じましたので、これらも総合して地域振興に役立つような形で税制の面からはこれに対応していくべき問題ではないか。基本的には、企業の地方分散というものが一度全国的にある意味において活気を呈したものがストップした時点にもう一遍返って考えてみなければいかぬのじゃないかなという感じがしております。
  338. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣、これは私の提案でございますので、地域振興とか景気浮揚あるいは地域間の格差をなくすという意味で御提案申し上げているわけでございますので、また御検討いただきたいと思います。  それから大臣、これは北海道の問題で恐縮ですが、北海道を初めとする豪雪地帯における地域住民は、生命を維持するためには冬季の生活でどうしても多額な暖房燃料費の支出を余儀なくされているわけでございます。しかも、二度にわたる石油ショックによりまして、灯油はもとよりその他の燃料費も数倍にはね上がっております。所得の実質マイナスの中でこれらの燃料費が生活の上で大きな圧迫の要因になっていることは、私の生活体験から言えるわけでございます。こういうような自然条件から、欠くことのできない暖房費に対して所得税の積寒控除制度創設するように私もこれまで何遍か訴えてきたのですが、最近の状況を考慮してこれを導入する考えがないのか、大蔵省見解を伺いたいと思うのです。
  339. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 特別の地域につきましての税制上の措置を講ずるということに相なりますと、積寒地には積寒地のいろいろな特殊事情がある。そのほか、いろいろな地域にはまたそれぞれの特別な事情もあるわけでございますので、税制としてはなかなかなじみにくいのではないかということで、従来からたびたび御議論はございますし、またその都度税制調査会等にもお諮りいたしまして勉強はいたしておりますが、現時点ではそういう考え方で私どもは対処しておるわけでございます。
  340. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 税制調査会見解も私は知っておりますし、大蔵省見解も知っておるわけでございますが、地域的な事情を考慮して特別な控除はできないという答弁ですが、積雪寒冷に基づく燃料費の支出は、さっきも述べましたように、生命を維持するための大きなコストなのですね。物価の格差とかいうものとは本質的に違うわけです。大臣、これは新潟の方へでも行っていただくとわかるのですが、北海道で零下二十度あるいは二十五度、この中で燃料がなければ生命にかかわるわけですよ。生存できない、こういう一つの特色を持っておるわけですね。台風の災害などとはバランスがとれないという反論もあるかもしれませんけれども、台風災害は毎年来るとは限らないわけです。一時的なものだ。積雪寒冷地域は広範な地域にわたって、しかも毎年必ず来るわけです。また、大蔵省からは、仮に控除を認めたとしても経費範囲や適用する地域の限定など法律技術の上で困難があるという見解を伺っておりますが、国みずから寒冷地における国家公務員の寒冷地手当や雑損控除の規定を設けておりますので、これらの規定をもとに制度化することにすれば法律的な技術は問題ないと私は思う。また、積雪寒冷地帯の燃料控除は扶養控除や医療控除と同じ性質のものだ。なぜかというと生命維持のコストにも等しいからだ、こういうふうに私は認識しておるのですが、大蔵大臣、いかがですか。
  341. 竹下登

    竹下国務大臣 いまおっしゃった手当という問題につきましては、手当としては現に存在しておる。その手当をいわば非課税とするということになりますと、まさに、いま委員も御指摘になりましたような特定の手当を取り出して課税対象外とするということになると、そのような手当の支給されていない方とのアンバランスの問題が出てくるということになろうかと思います。名目が仮にそれが手当であろうと給与は給与として支給されるものでございますので、それは税制上従来から同様に取り扱う、こういうことになっております。すなわち、給与の中でこの分は非課税分だ、この分は課税分だということを区分することはきわめて困難ではないかな、そういう感じでございます。  それから、積寒控除の問題は、委員も御指摘になりましたが、おのおのの地域それぞれ何らかの特殊事情がある、したがってそれが一つ一つの要望となって次から次へと出てくるのじゃないか。台風控除、いまおっしゃいましたとおり、常襲地帯はそういうことも言ってくるでありましょうし、あるいは輸送に時間のかかる、コストのかかるところは高物価地域対策とかいうような問題も出てくる。だから、それは手当として考えられるべきものであって、税制として考える性格とはいささか趣旨を異にするのじゃないか。ただ、雪おろし費用等いわゆる雑損控除制度という問題につきましては、五十六年でございましたかこれをやったわけでございますが、この問題につきましても、いわゆる足切り限度額五万円ということは、税制上他との、病気でございますとか不可避な家計出費に対する配慮としての医療控除の足切り限度額とのバランスから見ると、やはりぎりぎりのものではないか。ただ、毎年御主張なさるそういう問題が結局総合して手当となりあるいは雑損控除となっておるという意味においては、政策としてそれなりの前進は見ておると御理解いただけたら幸いであると考えます。
  342. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 これは先ほど申し上げましたように、手当としまして物価が高いとか家賃が高いとかという、そういう手当と性質が違うわけです。私が皆さんの寒冷地へ行きますと、これは手当といえども実際には収入じゃないわけです。実際必要なものなのですね。その手当が全額それ以上の燃料費にかかる、こういう性質の、しかも生命を維持するためのコストだということで、生活実態としてこれはちょっと納得しがたい問題でございますので、大臣、いまここで答弁いただこうとは思いませんけれども、積雪寒冷地帯の地域住民の実態、心情というものを少しは御理解いただいて、御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  343. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまさに斎藤さんが、むしろ生存権に関する問題だという意味において、ずっと長い間御主張なすっておる。そういう成果が、たとえ雑損控除という形であろうと、これが出てきておるということであろうと思いますので、それらの議論が引き続いて行われておるということについては、私もしかと認識をさしていただきたいと思います。
  344. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 以上で質問を終わります。
  345. 砂田重民

    砂田主査 これにて斎藤実君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田スミ君。
  346. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 関西新空港の問題についてお伺いをしたいと思います。  この関西新空港の建設については、環境問題だとかあるいは地域整備の問題などいろいろな点で疑問が残されているというのでしょうか、出されているわけなんですが、特に現在のこの未曾有の財政危機の中で、高度経済成長時代の遺物ともいうような巨大なこのプロジェクトはとうてい不可能ではないかという、そういう意見が各方面からも強く出されております。私は、こうした立場からこの関西新空港の問題について幾つかお尋ねをしていきたいわけです。  まず、来年度の予算なんですが、今年度までの一般調査費に加え、新たに関西国際空港着工準備調査費という形で三十二億が予算化されておりますが、この着工準備費というのはこれまでなかった新しい目なんですよね。なぜ従来の空港整備事業費とかあるいは空港整備事業調査費という形で処理されなかったのか、この点大蔵省見解をお伺いしたいわけです。
  347. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今回、いわゆる空港の着工準備調査費というものを計上いたしました。これにつきましては、いわゆる実施設計調査費というようなものがございますが、そういう実施設計調査費に相当する内容も含まれております。しかし、今回が直ちにその結果着工につながるものではないということでございます。なぜかと申しますと、なおその事業主体なり採算性あるいは負担のあり方、それからアクセス等の問題、いわゆる地域整備の問題等、なお多くの問題が検討される必要があるということでございます。そういうことから実施設計調査費ではなくて、着工準備調査費というものを今回計上することになったということでございます。
  348. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 実施設計調査費ということで計上できないのは、事業主体だとかあるいは採算性の問題などの詰めが残っているからだ、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  349. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この着工準備調査費といいますのは、今後国際空港をつくる場合には泉州仲にするという前提でこの予算をつけております。そういう前提の中でいま申し上げましたような問題がなお残っているので、こういう費目の調査費をつけた、こういうふうにお考えいただきたいと思います。
  350. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 実施主体だとか採算の問題など幾つか検討するべきことがあるということなんですが、宍倉主計局次長の御答弁で、直ちに着工につながるものではないということでこの着工準備調査費、いまの御答弁もそういうことですが、あの新しい予算をわざわざ設けたのだということになれば、いまおっしゃったような問題の調査の結果いかんによっては、当然このプロジェクトは中止をするということもあり得るんだというふうに考えますが、この点は大臣の御見解をお伺いしたいわけです。
  351. 竹下登

    竹下国務大臣 これは明瞭に、関西新空港については今後空港をつくる場合には泉州沖にするという前提で調査を行うということでございますので、つくるということがまず前提にあるわけでございます。したがいまして、いわゆる計画の具体的な点については今後とも運輸省と相談していくこととなっておりますので、まず泉州沖につくるという前提でございますから、現段階において中止の可能性というようなものに言及するということは適当ではないというふうに考えております。
  352. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 しかし、それはちょっと納得できないわけですがね。事業主体だとか採算性あるいは事業費の負担方法、こういうものが相互に密接に関係をしていると思うわけです。  これも、一月二十日ですが、宍倉次長が参議院の決算の答弁で、厳しい財政状況で「大規模プロジェクトを国費をもって実行していく力というのがほとんどないに等しい」、そういうことなので、事業の採算性が問題であるというふうにおっしゃっておられるわけです。私も、まさにそのとおりだと思うのです。この関西新空港の問題を考えるについては、最近では東北・上越新幹線の問題だとかあるいは赤字続きの成田空港の問題を見てみましても、採算性の問題は非常に大事な問題だというふうに考えます。もしそういうものを無視してつくっていけば、三K赤字だとか言われておりますが、もうそれどころか、四K赤字というようなことになるんだという人もいるわけですけれども、この点の見通しがつかない限り、私は絶対にこのプロジェクトは中止をしていくべきだというふうに考えるわけです。場所の問題じゃないわけです。この点については、いかがでしょう。
  353. 竹下登

    竹下国務大臣 政策選択をこのような形で行ったという立場からすれば、これは今後、運輸省との相談の中身につきましては、事業費のうち国がどの程度を負担するかとか、いろいろな検討が行われるべき課題であると思います。そしてまた、これまでのように第一種空港同様、国が全額を負担するというような財政状態にはないということも承知しておりますが、私は、中止すべきものであるという認識でなくして、これを実現すべくあらゆる工夫検討を重ねていくべきものである、こういう理解の上に立っております。
  354. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 それじゃ質問を続けますが、先ほども言いましたように宍倉次長は、「大規模プロジェクトを国費をもって実行していく力というのがほとんどないに等しい」ということを言われているわけですが、その「ほとんどないに等しい」というのは、具体的に言えばどういうことになるのでしょうか。成田の場合は建設費のほぼ二割を政府出資の形で支出しておりますが、この二割も無理ということなんでしょうか。政府出資です。
  355. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 関西新空港の問題につきましては、その規模をどうするかとか、あるいは工程はどういう工程をたどって建設していくかとか、したがってその結果、工事費はしかるべきところにどの程度要るかとか、そういう問題についてまだ検討し始めた段階でございまして、確定いたしておりません。したがいまして、総事業費そのものがまだわからない、こういうことでございますので、いまおっしゃったような意味での費用負担の問題も、現段階ではまだ申し上げる段階にはない、こういうことでございます。
  356. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 費用負担の問題じゃないのですがね。そうすると、二割も無理ということかということに対しては、まだわからないということになるわけですね。
  357. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 現段階では、具体的な数字は出ておりません。
  358. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 先ほど大臣はつくるということを前提にしてあらゆる工夫をこらしていきたいと言っていらっしゃるわけなんですが、規模も工程も工事費も何もわからなくて何でつくるということだけが前提になるのか、私はどうもそこのところがよくわからないわけです。  ただ、まず関西新空港の採算性を考える場合に成田とよく比較されるわけなんですが、開港時点での建設費を比較してみますと、関西新空港の場合は成田のおよそ三倍なんですね。ところが、成田は開港以来ずっと赤字続きで一体いつ黒字に転化していくのか、あるいは借金償還のめどというのはほとんど立ってないという状況であるかと思います。その成田の三倍もの建設費をかけてやるという関西新空港、もし成田並みに八割を借金で賄うということになりましたら、巨額の利払いでとうてい採算が合うというふうには私には思えないわけですが、大臣、どうでしょうか。
  359. 竹下登

    竹下国務大臣 つくるという前提で、それら含めてあらゆる角度からこれから検討するわけでございます。もとより私は借入金を導入せざるを得ないと思っております、当然のことといたしまして。しかしだれがどのようにして負担するのかということにも関連いたしますので、まさにこれから本当にあらゆる角度から検討していく問題であるというふうに考えております。
  360. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 借入金を否定するものではない、その何割を借入金にしていくかということが非常に採算性の問題で大事な問題だというふうになるわけなんですが、委員長、よろしいでしょうか、一枚大臣に見ていただきたい。  いろいろな条件だとか要件で採算が異なってくるということはよくわかるのです。しかし、各方面で自治体の負担がうわさされております。しかし、いわゆる三点セットではその資金計画が全く示されておりません。運輸省も資料を出してくれないわけです。これではとても国民の方も判断に困ってまいります。だから私は、成田方式、大変大ざっぱな計算ですが、公団方式を採用して事業費の八割を借り入れで賄っていくということを前提にしてお聞きするわけですが、三点セットで開港時点までの工事費、これは少なくとも当初からはどんどん額が落ちてまいりまして、これは勝手に計算しているわけですが、下がってきて、そして八千億円だというふうにこの間も数字を出されております。これはあくまでも第一期までの事業費ですが、私は八千五百億円というふうに仮定をしてみました。工期は運輸省がおっしゃったように七年で第一期を済ませる。単純ですが、毎年千二百億円ずつ均等に投資をしたとして年八%の金利を加えていきますと、開港時点で年間の利払いは実に六百六十億円に第一期分だけで達していくわけです。このほかに成田並みの業務費用二百四十億円がかかるとして年間の費用は九百億円、こういうことになってまいります。  これに対して三点セットにある、余り現実的とは思いませんけれども、需要予測を前提にして入れてみますと、業務収入は八百億円あるわけですから、結局差し引きで百億円の欠損が出てくるわけです。これでは借金はふえていくばかりです。これは私の非常に幼稚な単純な計算でございますけれども、しかしなかなか採算がとれないのじゃないかというふうに考えるわけなんですが、どうでしょう。
  361. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 一定の前提を置いていま試算いただきました数字を伺ったわけですが、こういう採算性の問題を検討します場合にはいろいろな要素がございます。たとえば将来の空港の乗降人員数がどういうふうに伸びていくかという問題もございます。その他、空港の中でのいろいろ附帯事業をやっておりますが、そういうものから上がる収益をどう見ていくか、現段階でなかなか見通しづらい不確定な要素がいろいろございますので、その試算は、おっしゃったような前提ではこういうことになるということでわれわれとしては拝見させていただきたい、こういうふうに思います。
  362. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 それではお尋ねしますが、運輸省の松井航空局長はことしの一月に大阪で講演しておられるわけです。その講演の中で、大蔵省と再三にわたり議論をして、何度も何度も試行錯誤的にコンピューターを使って計算をし、大蔵省の言う二十五年以内に償還可能という条件が満たせる結果が得られているのであります、こういうふうに言っております。しかし大蔵当局としては大事をとって、国の長期の経済見通しが出た段階でさらに詳細な見直しを行うということだと言っているんだ。これを見ますと、もう採算性については大方のめどがついた、こう言っているわけです。そうして大蔵はあとは大事をとるだけなんだ、こういう御見解なんですか。大蔵省に聞いているのです。
  363. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 いまの大阪での航空局長の話は、私は聞いておりません。しかし、いずれにしましても先ほど申し上げましたように、将来の採算性を検討していくのはいろいろ不確定要素がございますので、きちっとした数字はいまの段階では出ておりません。
  364. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 それでは運輸省に聞きますが、いい結果が得られたと局長は言っておられるわけですが、私は細かいところはいいですから、一体借入金を何パーセントにして、そして利子のつかないお金はどこからどれだけ負担するという計算でこういうふうなことをおっしゃったのか、いい結果になったのか。その点明確にしてください。
  365. 栗林貞一

    ○栗林説明員 関西国際空港の採算性の問題につきましては、前提条件としまして、航空輸送需要をどう見るかとか、あるいは工事費の問題、資金手当ての問題など幾つか前提条件がございまして、それらを組み合わせて非常に多数の場合についてケーススタディーを私ども行ってきたわけでございます。いま具体的な数字が講演の中で出ているということをおっしゃいましたが、それは私どもいろいろ勉強しております中の一端がそこにあらわれたものだと思います。  しかしいま申し上げましたように、幾つかの前提条件を組み合わせたものを全体的に総合的に私ども検討いたしまして、採算も確保できるのではないかという確信を深めているということでございまして、一つのパターンがあって、それでもうこうだと決めつけるというようなことではなくて、そういうケーススタディーをたくさんやりながら大蔵省ともなお継続して話し合いをしている、こういうことでございます。
  366. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 ちょっとわからないのです。その採算性というのは工事費と需要だけでは済まないわけでしょう。その工事費を調達するのに一体利子のつく金がどれだけ要るのか、利子のつかないお金はどれだけ出せるのか、これによってずいぶん大きく変わってくるわけです。それは、工事費と需要だけ合わせたら確かに採算は合ってくると思いますよ。しかし、大蔵大臣が言われたように、借入金はやはり要るんだということを前提にしていくならば、その借入金を何%とっていくのかということによってずいぶん変わってくるというのは、こんなもの小学校の計算でもわかるのと違うのですか。そこを踏まえて大方の詰め、計算ができて採算は合うんだと言っていらっしゃる、私は少なくとも航空局長やったらそこくらいまでは、幾ら何でも人の前で話をするときにはちゃんと踏まえて発言をされてしかるべきだと思うわけです。  だから、仮の話でいいですけれども、いまおっしゃったように、採算の見通しがつくと言うのなら、そこのところについてはどういうふうな計算を入れて大体の見通しがつくと判断されたのかということをお聞きしているわけです。
  367. 栗林貞一

    ○栗林説明員 先生おっしゃいますように、もちろん資金計画、借り入れの割合あるいは借入金利といったものが非常に重要な要素であるということはそのとおりでございます。  それで、私どもはもちろんそういった場合も考えまして、それは一つのケースという意味ではなくて、いろいろのケースを考えて勉強し、かつ工事費についても、先ほど先生おっしゃいましたように、われわれが現地でボーリングをやりました結果などによりましても相当に下がってきそうな感じでございます。そういうことを全体的に見て、採算性も確保できるのではないかということで私ども確信を深めておりますが、なお、そういう点につきましては大蔵省とさらに話し合いを継続している段階であるということでございます。
  368. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 全然話がわからないです。私は、工事費が何ぼかかるかというようなことちっとも気にしていないのです。むしろ、一番採算を左右する要素である借入金の比率がどうなっているのかということを考えるわけです。そうでしょう。これは全額政府が出資するというのやったらほとんど問題はないのですよ。しかし、現状はそうじゃないんだということになってくるならば、どれだけ借り入れを比率にとって考えたのか、いろいろなケースと言われましたけれども、いろいろなケースというのは借入金をどういうふうにはじいて採算がとれると思われたのですか。
  369. 栗林貞一

    ○栗林説明員 先生おっしゃいますように、私どもももちろん借入金というのは相当な割合になるだろうということは考えております。ただ、具体的に、たとえば出資の比率がどうであるとかということはこれから相談して決めていく問題でございますので、いま直ちに借入金の比率が何%だからどうということではなくて、幾つかのケースを考えてみて、その上で総合的にいまのところ判断して、これは借入金だけで決まるものではございませんので、ほかの要素もいろいろ含めて総合的に判断した結果である。しかしながら、なおこれは確定したものではございません。これからさらに話し合いを続けていこう、こういうことを申し上げているわけでございます。
  370. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 それでは、良好な結果が出たなんというような言葉は、これはみんなを惑わすだけなんです。そんなのんきなことを言って、良好な結果が出たと言ってこういうふうな講演をするというのは非常に無責任だと考えます。どうでしょう、責任ある話ということになりますか。
  371. 栗林貞一

    ○栗林説明員 その講演というのは雑誌で私も読んでおりますけれども、それはただいま私の申し上げましたようなケーススタディー、勉強のその中の一端が出たものであろうと考えております。
  372. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 これ以上やりとりしていてもあれですが、きわめて良好な結果が出た、大変良好な結果が出たというのは無責任だ。こういうことを軽々しく言うべきじゃない。少なくともいまの段階ではそういうことを言うべきでないし、そういうふうにおっしゃるなら、この場所でやはりその話の根拠、最も大事な根拠というものを明らかにするべきだと思うのです。  こういうふうに考えてみますと、この空港計画というのは大変無謀な計画ではないか。財政的に見ても非常に無謀ではないか。成田方式でいくということになれば、雪だるま式の赤字で将来どうにもならないような状態を招いていくのは必至の問題になってくるのじゃないかと私は思います。結局、こういうふうな島をつくる、空港をつくるということで群がってくるというのでしょうか、そういう関西財界だとか大企業、そういうところだけがもうかる。で、こうした国民の心配をよそに、何の根拠も示さずに採算がとれるということだけを宣伝しているというのは、いま臨調行革が痛みを分かち合うなどということで福祉や教育なんかを削減していっているわけですが、まさに第二第三の国鉄と同じような赤字を生み出して、そうしてこの事業にだけ携わる企業が甘い汁を吸うというのはとても納得のできないことなんです。だから、少なくとも現在いろいろ計算をしているその採算性の問題については、これはぜひ資料を示して国民の判断を仰いでいくべきだと私は考えますが、最後大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  373. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり私は、いまケーススタディーという言葉が使われておりましたが、そのワン・オブ・ゼムを対象にしたお話ではなかったかなと思うわけであります。いろいろなケースとして考えられる、そのケーススタディーというものをこれから財政当局も含めて一生懸命詰めていくわけでございますから、そして運輸省におかれましてもいわば規模とかいろいろな点を勘案しながら確信を深めつつあるという現状であるやに、かなり勉強も進められつつあるやに聞いておりますので、その勉強の推移についていって、われわれも、財政当局としても十分これを検討して、やはりこれはナショナルプロジェクトでございますので、これが達成されることを期待いたしております。その過程において国民に示すとでも申しましょうか、御検討のための資料を提出するのは、いま直ちとは言いませんが、その過程においてはこれはあり得ることであろうと考えております。
  374. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 初めに結論ありということで、数字を合わしていくというようなことは失敗の屋上屋になってまいりますので、国民の意見を謙虚に聞いていくという点からもまずわれわれに、何を聞いてもそこのところについてはさっぱりわからぬというようなことで資料も出していただけないというようなことのないように、ぜひ一日も早く大臣のお約束どおり資料は早く出していただけるよう、この点は運輸省の方もよく聞いておいていただいて、誠実にこたえていただきたいと思います。  これで終わります。ありがとうございました。
  375. 砂田重民

    砂田主査 これにて藤田スミ君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、大蔵省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分料会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の格段の御協力によりまして、本分料会の議事を無事終了することができました。ここに厚くお礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会