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1983-03-05 第98回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月五日(土曜日)     午前九時三十分開議  出席分科員    主 査 砂田 重民君       高鳥  修君    宮下 創平君       稲葉 誠一君    田中 恒利君       大内 啓伍君    中野 寛成君    兼務 土井たか子君 兼務 沖本 泰幸君    兼務 草川 昭三君  出席国務大臣         法 務 大 臣 秦野  章君  出席政府委員         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務大臣官房会         計課長     村田  恒君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省保護局長 吉田 淳一君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         法務省入国管理         局長      田中 常雄君  分科員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 小倉 和夫君         大蔵省主計局主         計官      藤原 和人君         文部省初等中等         教育局高等学校         教育課長    中島 章夫君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君     ───────────── 分科員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     田中 恒利君   大内 啓伍君     玉置 一弥君 同日  辞任         補欠選任   田中 恒利君     藤田 高敏君   玉置 一弥君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     大内 啓伍君 同日  第四分科員土井たか子君、沖本泰幸君及び第六  分科員草川昭三君が本分科兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算  (法務省所管)      ────◇─────
  2. 砂田重民

    砂田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。秦野法務大臣
  3. 秦野章

    秦野国務大臣 昭和五十八年度法務省所管予定経費要求内容につきまして、大要を御説明申し上げます。  昭和五十八年度の予定経費要求額は三千五百九十四億六千三百六十一万円でございます。前年度補正予算額三千五百三十二億五百七十二万一千円と比較しますと、六十二億五千七百八十八万九千円の増額となっております。  さて、予定経費の増減について、内容を大別して御説明いたしますと、第一に、人件費関係の増は六十一億三千三百三十一万八千円であります。これは、昇給等の原資として職員基本給増額分が主なものでありますが、そのほかに、法務事務官検察事務官等新規増員四百二十人及び部門間配置転換による法務事務官等の振りかえ増員二十四人に要する人件費が含まれております。  ここで、増員内容について申し上げますと、まず、特殊事件財政経済事件公安労働事件暴力事件公害事件等に対処するとともに、公判審理迅速化を図るため、検察事務官百人、二、登記事件、国の利害に関係のある争訟事件及び人権侵犯事件に対処するため、法務事務官百六十九人、三、刑務所における保安体制及び医療体制充実を図るため、看守百十一人、看護士(婦)五人、栄養士二人、四、非行青少年対策充実するため、少年院教官七人、看護士(婦)二人、少年鑑別所教官十三人、保護観察官十八人、五、出入国審査及び在留資格審査業務に対処するため、入国審査官十七人となっております。  他方、昭和五十六年九月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第六次)の実施について」による昭和五十八年度定員削減分として、四百四十四人が減員されることとなりますので、これを差し引きますと純増減員はゼロとなるのであります。  第二に、物件費関係の増は二億二千六百四十九万一千円であります。  これは、登記事件等事務量並び矯正収容施設における被収容者の増加に伴って増額されたもののほか、積算単価の是正、事務合理化能率化を図るため事務機器等整備充実に伴う経費増額等であります。  次に、主な事項の経費について概略を御説明いたしますと、一、法務局地方法務局において登記、供託、戸籍等事務を処理するために要する経費として三十九億一千八百四万八千円、二、検察庁において刑事事件を処理する等検察活動に要する経費として二十七億七千五百三十六万五千円、三、拘置所刑務所少年刑務所少年院少年鑑別所及び婦人補導院の被収容者の衣食、医療教育作業等に要する経費として二百三十七億五千九百四十七万円、四、保護観察に付された少年等を更生させるための補導援護に要する経費として三十六億八千百三万一千円、五、出入国審査在日外国人在留資格審査、難民の認定及び不法入国者等の護送、収容送還等に要する経費として六億八千三百八十三万八千円、外国人登録法に基づく在日外国人登録等事務を処理するために要する経費として十一億三千八百三十一万四千円、計十八億二千二百十五万二千円、六、公安調査庁における破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として十八億一千九百三十一万二千円が計上されております。  第三に、施設費関係といたしまして、法務局検察庁等の庁舎及び刑務所少年院等収容施設の新営、整備に要する経費として百七億三千六百七十万五千円が計上されております。  最後に、当省主管歳入予算について一言説明申し上げます。  昭和五十八年度法務省主管歳入予算額は七百二十六億六千八百五十八万九千円でありまして、前年度補正予算額七百十三億一千九百三十万三千円と比較しますと、十三億四千九百二十八万六千円の増額となっております。  以上、法務省関係昭和五十八年度予定経費要求内容について、その概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議を賜りますようお願いを申し上げます。
  4. 砂田重民

    砂田主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  5. 砂田重民

    砂田主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間は限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。まず、田中恒利君。
  6. 田中恒利

    田中(恒)分科員 私は、更生保護観察行政の問題について一、二御質問いたします。  いま法務大臣から予算説明がございましたが、法務省は全体の予算の中のたしか一%に満たないんじゃないかと思います。その中でまた二・八%、三%程度予算保護行政でありますが、最近、新聞などで中学生校内暴力それから非行少年の急増、こういう問題が大変大きな社会問題化しておるわけであります。この犯罪、非行をめぐって、明るい社会をつくる運動といったようなものを法務省は展開しておるわけでありますが、更生保護観察行政を通して最近の動向特徴点をまずお伺いしておきたいと思います。
  7. 吉田淳一

    吉田(淳)政府委員 私ども保護行政立場でいわゆる非行少年事件について担当している分野は、大きく言えば事件あるいは非行を犯した後の事後措置に関する部分のいわゆる施設外処遇社会内処遇と私ども言っておりますけれども、それの分野で担当しているものでございます。  具体的に申しますと、保護観察、すなわち家庭裁判所保護観察を言い渡された少年、それともう一つ少年院を仮退院いたしました少年、この二つの類型が私どもの担当している分野でございます。こういう少年でございますので、いわゆる非行進度という観点から申しますと、かなり進度が進んでいるという少年が多いわけでございます。  そこで、それらの非行少年の数を私ども非常に気にしておるわけでございますが、急激にふえておりまして、十年前の昭和四十七年で申しますと、新規受理人員で申しますと二万六千四百四十人であったのが、昭和五十六年には六万三千四百九十八人というふうに非常にふえておるわけでございます。  その中でも、十五歳以下の非行少年年間新規受理人員が、昭和五十二年のたとえば千七百六十二人から比べますと、昭和五十六年では二千八百五十二人にふえております。そのうち中学生の者に限ってみましても、昭和五十四年では千四十五人でございましたが、昭和五十六年では千三百四十二人に増加しているという実情でございます。私ども、この少年たち保護観察を行っておるわけでございますが、内容的に見ますと、先刻御承知であると思いますが、いわゆる暴走族等に加わっている少年あるいは薬物などを乱用した少年校内暴力少年、それからいわゆる家庭内暴力と申しますかそういう暴力少年、こういうふうに類型的に分かれます。  そこで、これらの非行少年あるいは少年非行の最近の特徴的なこと、あるいはその原因について、私ども保護観察実施している現実立場から感じていることをまず一般論として申し上げますと、どうもやはり家庭学校地域社会のそれぞれの非行抑止力と申しますか、そういうものが以前に比べてかなり弱体になっているという感じがいたします。それから第二の点といたしましては、学校などにおきましてかなり競争が激しくなっているということから、言葉は悪いのでございますが、それについていけない、そういう学校に適応できないあるいは社会に適応できないという者が非行に走る傾向がうかがわれるわけでございます。そのほかに、少年自身の問題としまして、いわゆる過保護あるいは放任というところから忍耐力欠如あるいは弱者に対する思いやりの欠如情操面において問題があるというような者が非常に多い、こういう感じがするわけでございます。  少し長くなりますが、もう少しその特徴動向を具体的に申し上げてみたいと思います。(田中(恒)分科員「簡単でいいです、要点だけ」と呼ぶ)要点だけ申しますと、最近東京保護観察所におきまして約二百名近い中学生につきましていろいろ実態調査をしております。それによりますと、いろいろ問題点指摘されまして、これは現実東京保護観察所が、保護観察官もしくは保護司が担当しているそれらのケースでございますけれども、やはり家庭の中にいろいろ問題が多いということが一つ、それからどうしても学校に適応ができない、成績が非常に悪い、そういう生徒に非行に走る者がある。それが、学校側がまたいろいろ努力して対処しているところもありますし、そうでない、多少問題があるんじゃないかと思われるケースもあるわけでございまして、余り長くなるからさしあたってはやめますけれども、私ども保護観察を担当いたしております者といたしましてはそれらの処遇についてよほど真剣に取り組まなければいけない。具体的には現場の保護観察所につきましてこういう一定の指導方針を立てまして、特に中学生、十四、五歳の非行少年中心にした保護観察充実を強く推進してまいりたいというふうに考えております。
  8. 田中恒利

    田中(恒)分科員 いま局長さんの方から大変ふえておる、それからその内容特徴などについて二、三御指摘をいただきましたが、その要因などについてきょうは議論する時間がございません。  この保護観察制度昭和二十四年に発足をしておりますが、これはまさに民間協力、つまり保護司は五万人いらっしゃるということでありますが、さらに更生保護婦人会が約二十万、民間BBS運動協力雇用主、こういう民間皆さんの自主的なボランティア活動と申しますか、そういうものに支えられてこの保護観察行政が進められておる。日本行政機構の中では、その限りにおいては、私は民間の活力を行政の中に注入しておるものだと考えております。  ところが、この保護観察機構に対して臨調が八管区の矯正局地方更生保護委員会を一緒にしていく、こういう答申が近くなされる、ほぼ決定的のようでありますが、こういうことを聞いておるわけであります。この官民一体の形で進められておる今日の保護観察行政、そしてその関係者の中からそれは困る、こういう強い要請が大臣のところにも届いておると思いますし、行管にもしばしば届けられておるということでありますし、私どもにも署名を添えて御陳情をいただいておるわけでありますが、大臣はこのことについてどういうふうにお考えになっておるか、法曹界の専門家で裏も表も御承知と思いますので、ひとつ大臣の率直な御所見を承りたいと思うのです。
  9. 秦野章

    秦野国務大臣 御指摘の問題は私も臨調内部状況につきましても承知しておりまするし、三月いっぱいで答申が出るわけでございますが、民間の旧来から協力してもらっている篤志家人たちからの要望も承知しておるのでございますが、いま先生のおっしゃる御意見は、私も実は大変もっともな意見だと思っておるわけです。  ただ、要するに臨調という金看板で行革を進める、そういう姿勢の中にも無論それなりの理由があるように聞いておるわけでございますけれども、まだ決まってはおりませんので、私がここでどうだというお尋ねを受けても決定的な意見を申し上げることはちょっとできないのですけれども、御意見のところはひとつ十分拝聴して、私も大変よくわかる御意見だと思っておりますので、もう少し臨調の方にも相談をしてみたいと思っております。     〔主査退席宮下主査代理着席
  10. 田中恒利

    田中(恒)分科員 法務大臣は大変豪壮な方ですが、ちょっと歯切れが悪いわけです。そんなに臨調を心配しなくても、私どもほかの常任委員会でもいろいろあれしておりますが、一口で言うたら、各省一律で、そして一番抵抗の弱い、法務省の中でも最も弱いそこのところへ目を向けられておつき合いしなさい、私そういうふうに聞いているのです。それが実態だと思うのです。  しかし、この問題は私のような素人が申し上げるまでもなく、大臣一番よく御承知のとおりで、矯正保護観察との本質的な差異があるわけで、裁判で言えば検事と判事みたいな相違がこの仕事内容にはあるわけなので、その点を全国関係者皆さんは、矯正局は大変大きいし保護局は小さいし、どんどん少年刑務所から送られてくる、こういうことでは困るということで大変心配をされていらっしゃるようであります。いますぐここで大臣はとやかく言われないでしょうが、この問題の本質を十分御承知大臣でありますから、今後十四日の臨調答申を受けて法務省内で検討する場合にひとつその辺に過ちのないように、仕事の質は質でぴしっと整理のできるような、そういう対応を最大限ひとつお考えをいただいてこの問題に対応していただく、このことについてはどうでしょうか。
  11. 秦野章

    秦野国務大臣 いまおっしゃった機能の問題が減退する、後退するというようなことがあっては絶対いけないという点については、その前提では私ども考え方を貫きたいと思っております。
  12. 田中恒利

    田中(恒)分科員 それから、やはりさっき申し上げましたように、保護司皆さんというのが中心になって大変骨を折っていただいておるわけですが、この皆さんとも、ひとつ大臣、この対応については十分に御理解をいただく、こういう処置をあらかじめしていただいて対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  13. 秦野章

    秦野国務大臣 この保護司の問題は、日本のような自由社会というのか資本主義社会というのか、要するに報酬を受けて仕事をするという原則の中で、言うならばボランティア活動篤志家行政への組み入れというか、組織の中にこういった伝統が今日まで入って来たということは、私は日本一種文化だと思うのです。鋭い、とうとい文化だと思うのです。これを大事にするということは、法務行政のみならず、政府にとっても私は重大なことだと思います。何か金を出してやってもらうんだとか、何か役所組織みたいなものをつくればそれでうまくいくんだとかということじゃない、こういうやり方というものが日本の特色のある、伝統的な、実にすぐれたやり方、方式、組織であるというふうに思いますので、これは御意見のとおり、私も非常に大切にしていかなければならぬ。そのことがますます伸長されるように、ますます協力が進んでいくように、これによって司法保護機能がますます、お上の仕事ということだけじゃなくて進んでいくところに意義がある、こう思っております。     〔宮下主査代理退席主査着席
  14. 田中恒利

    田中(恒)分科員 それは仕事のこれからの進め方ではいま言われたとおりでしょうが、この問題で役所のこれからの機構について多少の対応をしなければいけないんだと私は思いますが、その際に、この問題については保護司連盟皆さん方の大変な反対運動が起きておるわけですから、十分にひとつ御理解をいただいて処理をしていくということはよろしいですね。  私はいま大臣のお話をお聞きして、確かに保護司皆さんが無報酬で大変なお仕事をしていらっしゃる。中には、きょうこの質問をしようと思っておって、きょうの新聞を見たら保護司がどうとかという妙な記事が載っておりましてちょっとびっくりしたのですけれども、これはきわめて例外で、私は全国的にはこの保護司というのは、本当に大臣が言われるような鋭い文化とか、中曽根総理の言われるたくましい文化とか、そういうものに該当するのかどうか、私はその辺になると若干意見を持っておりますけれども、非常に身を犠牲にして、明るい社会をつくるということでお仕事を通して挺身をしていらっしゃる、そのことについて大変敬意を表しておるわけであります。  保護司国家公務員であって無報酬であるということになっておるようでありまして、実費弁償ということでありますが、これがまた途方もなく安いというか、自分の身銭を切って何もかもやればいいんだと言えばそれまででありますけれども、私は、近代国家の中で、月に三千五百円か六百円、最高幾らですか、後でお知らせいただきたいと思いますが、そんなお金で、あの非行少年を、いま法務省からいただいた資料では、たしか保護観察実施人員というのは十七万七千七十人、保護司の数が四万七千四百人でありますから、三・七人に一人受け持って、二年なり三年なりの期間お世話をしているわけですね。私が調べた範囲においても、最低月三回は会わなければいけないけれども、そんなものじゃない。月に十回なり十五回なり会っていらっしゃる。その間にバス賃から電話賃からはがき代から全部身銭を切っておるわけですよね。  これは予算審議でありますから、ことしの予算は出ておるわけでありますが、何か聞いてみたら、人勧の凍結でこれも右へならえだそうでありますが、しかし、一月に三千円や三千五百円程度でこれだけの大きな責任をかぶせていくということは、政府として、国家として、私は近代国家のさまをなしていないと思うのですよ。そこのところは何とかならないものか、これは別途に何か方策はないのか、そういう問題を日ごろ考えておるものでありますが、この点についてはどういうお考えでありますか。
  15. 吉田淳一

    吉田(淳)政府委員 保護司さんに活動していただくためのいろいろな国の予算といたしましては、私どもといたしましても現状で十分だとは考えておりません。ただいま御指摘のようないろいろむずかしい事件、特に非行少年、その数がまたふえているという実態等に即しますと、保護司さんにいろいろ活動していただかなければならない分野が非常に広くなっている、多くなっているというふうに思っております。  ただ、私ども考えておりますのは、やはり保護司のお仕事は、自発的な社会奉仕精神に根本的に立脚しているというふうに考えております。それで、保護司さん自身もそういうふうな自覚をし、それを名誉にし、そして活動していただいているわけでございます。したがいまして、現在の法律は給与を支給しないということで決められておりますが、その基本原則というのは、これは正しいものであるというふうに思います。  問題は、その職務を行う費用について、できる限り国としても十分考えるということであると思います。先ほど御質問の中に、現在はそういう費用の一番高い場合はどういうことなのかということでございますが、恐らくお尋ねは、保護司実費弁償金の中の補導費ということについてだと思います。これは現在、最高としては三千七百四十円というふうに相なっておるわけでございます。この経費単価等につきまして十分じゃないんじゃないかという御指摘だと思います。こういう点につきましては、私どもとしましては、その御指摘の点も十分実態の問題としてあると思いますので、今後とも国の財政の許す範囲内におきまして、できる限り実費弁償金充実に精いっぱい努力したい、こういうふうに考えております。
  16. 田中恒利

    田中(恒)分科員 それから全国で五十の保護観察所というのがありますね。そこへ参りますと、保護観察官というのが一名ないし二名程度いらっしゃる。それでその横に保護司の何か内勤保護司と言うんだそうですが、そういう方がいらっしゃいまして、いろいろ聞きますと、これは三百六十五日毎日お勤めになっておるわけですね。いわゆるお役所と同じ出勤時間に出て、そして五時過ぎまで、しかも何か特殊な保護の問題についての事務のようでありまして、ほとんど日勤なんですね。これは聞いてみると、この方などの給与も何か日当で二千円か千七、八百円か、そんなもので、保護司であるがゆえは三百六十五日毎日役所へ勤めて、日当二千円内外で事を済ませておる。こういうことは、何かそれこそ無報酬であるということとは別に、特別に考えなければいけないんじゃなかろうか。また、そういう皆さんの参加がなければ、管内の観察保護行政というものはストップしてしまうのですね。そういう状況にあるわけですが、こんなものもこのままに見過ごしていいのかどうか。もう少しあなたのところは大胆にその機能や性格や業務内容を見て、保護司法で適用できないということであれば、これは特別に何か位置づけをせられてその仕事に報いをしていく、そういうことをしなければ、奉仕活動奉仕活動だというその一言だけで、精神論だけでやられたのでは、これでは国として行政として責任を発揮していない、こう私は思うのですよ。どうです。
  17. 秦野章

    秦野国務大臣 お尋ねの点はごもっともな点があるのでございますけれども近代国家方向というものが、言うならば有償制度といいますか、お金を払って、そしてそれに対応する労力を提供するといったような原則が、少なくとも西側社会では一つの大きな原則になっております。しかし、そういう原則だけでいったのでは世の中はうまくいかない。ボランティアのような篤志家活動というものが非常に貴重なものだ、近代国家といっても新しい近代国家方向というのはどうしてもそういう方向というものを打ち出していく、むしろそれを育てていくということに貴重なものがあると思うのですよ。保護司の問題というものはたまたま日本制度の中ではぐくまれてきた非常に大事なものだと申し上げているのはその意味でございまして、したがいまして、給料とか実費とかいうような問題になりますと、これはもっと上げてあげればいいんだけれども、そういう原則からいけばとうていそれは不満足なものでございます。  したがって、われわれもなお努力の要はありますけれども基本の理念が一種の、私がさっき申し上げたのは、日本制度としてはすぐれた文化的な、日本的な制度なんだ、そういうふうな理解のもとにその他の方法、たとえば顕彰の問題だとか国家がこれをどういうふうに表彰していくとか、いろんな角度で、世の中にこういう貴重な労力提供というか、そういうものが必要なんだ、大事なんだ、これが新しい日本的な近代国家を育てていく一つの柱ですらあるだろう、ほかの部門にもむしろ広げていくべき問題ではないか、こう私は考えるのです。  御説のとおり、非常に事務的なことをやってくださる人たちとか、そういう問題については多少ニュアンスが違うかと思いますので、これはひとつ研究させていただきたいと思います。
  18. 田中恒利

    田中(恒)分科員 あなたがおっしゃることわかりますけれども、ただ、保護観察行政の中に位置づけられておる今日の保護司活動実態というものは、まさに国の行政そのものであると言っても過ちのないほど大きな分野を占めておると私は思うのです。あなたのところの保護局の職員は恐らく千人ぐらいだと思うのですね。この千人の人々でこれだけの、保護観察者だけで十七、八万人になっておるわけですね、しかも非常にむずかしい、これを全部末端で支えておるわけなんで、ボランティア活動というのは十人二十人の有識者がそれぞれの問題ごとに自発的、自主的にやっていらっしゃる、それはそうだと思う。そういうものは、これからの社会の中でもっとたくさんそういう人が出ていただくようにしなければいけないと思うのです。  しかし、こういう行政の仕組みの中に、食い込まれたと言ったらいけないけれども、自主的に参加をしていただいておるわけだろうけれども、しかしこれだけの大きな比重を持っておるこの体制からすれば、いま大臣言われた近代国家における有償の仕組みというものが相当大幅に入れられるということが、これからの新しい国の体制だと思うのですよ。その論理で言われると、やはりこれはいろいろ問題が出てくる、こういうふうに私は思っております。特に、内勤の保護司さんのお仕事などを見てみると、これは全く一〇〇%法務省保護局のお仕事そのものなのでありますから、しかも非常に熱心にやっていらっしゃるわけでありますから、むしろあなたのところがもっと大胆にこういう問題についての予算やあるいはその対応考えてみなければいけないのが不十分であったんじゃないか、こういうふうに私は思います。  そういう点をきょうは特に指摘をいたしておきますし、同時にそのことはさらに詰めて言えば、保護観察官というか、こういう保護観察行政を担当する皆さんが大変決定的に少ないということも間違いない。これだけ少年非行が急増しておる今日、たしかことしのおたくの予算を通しての人員は二人しかふえない。ことしはいま十七、八万観察者がおるわけですが、これが恐らく一万なり一万五千人なりふえるのじゃないか、こう言われている。ところが、それを専門的に見てくれるお役人は二人しか全国でふえない、こういう状況なんです。しかも、麻薬であるとかシンナーであるとか非常に危険な分野へ観察官というのは入っていかなければいけないわけです。私は、そういうことを言うと非常におくれておると思いますよ。そして臨調のそういう形で丸め込まれていったら、民間の活力を利用すると言うけれども民間の活力とは一体何だと言われると、いま申し上げたようなきわめて常識を下回る状態で、単なる奉仕活動だということで過ごされている分野が非常に多い。  このことをきょうは特に指摘をいたしまして、時間が参りましたので終わりたいと思います。
  19. 砂田重民

    砂田主査 これにて田中恒利君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  20. 草川昭三

    草川分科員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  まず最初に、田中議員の辞職勧告決議案が昨日議運の方に上程をされまして、非常に国民の注目を浴びておるわけでありますけれども、その件について、少し関連する二、三をまずお伺いしたいと思います。  今度の国会で予算委員会等でもいろいろな議論が出たところでございますが、まさしく本件につきましては、民主政治の根幹を揺るぎかねない政治不信を招いた原因であるということは論をまたないわけであります。いろいろと検察側の方も論告求刑をしておるわけでありますが、私ども少し疑問に思うのは、いわゆる得た金額の使途というものが少しも明確になっていないのではないかという点であります。いわゆる被告が得た金額の使途の解明こそが、まさしく今日の民主政治の根幹を揺るぎかねない政治不信を解明することになるわけでございますが、これはそれぞれの立場組織の違いがあるわけでございますからおのずと限界があると思いますけれども、その間の経緯についてお伺いをしたいと思います。
  21. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの点につきましては、捜査の内容にもかかわることでございますし、現に公判中の事件のことでございますから、詳しく申し上げるわけにはいかない点がございますが、従来すでにその点が御議論になっておりまして、すでに昭和五十一年十月十五日にいわゆる中間報告というものが出されておりますが、その中でもその点に触れておりますし、それに関連して御質疑等もあるわけでございます。  結論から申しますと、その当時申し上げておりますが、問題の金の使途につきましては、当時検察庁当局といたしまして捜査を行ったことは当然でございますけれども、その金自体がどこにどういうふうに流れたかといういわば具体的、個別的な使途というものは、判明するに至らなかったというふうに申し上げておるわけでございます。
  22. 草川昭三

    草川分科員 私ども、現に公判中の問題でございますからこそ、遠慮しながらの発言になっておるわけでございますけれども、いわゆる個人資産形成に使われたのか、あるいはまたその他の今日の政治状況の中で消費されたのかということは、非常に重要な問題になってくると私は思うのです。特に議員辞職勧告決議案が出、これからさらに議論が始まるわけでありますから、その点こそわれわれは、いわゆる議会人は議会人としての解明が必要であると思うわけでございますけれども、検察としてはその間の関係者の調書というものは存在をするわけでございますか。
  23. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 結論的には先ほど申し上げたことと同様になるわけでございますが、若干論告に関連してつけ加えて申しますと、いま申し上げましたように、具体的にどこへどういうふうに行ったかということは、結局結論的にはっきりしないわけでございます。公判でもその点が一つの問題として指摘されておりまして、論告の中でも弁護人の主張に対する反論ということがいろいろあるわけでございますが、その一つといたしまして、この使途につきまして四十九年七月の参議院の選挙との関連で使用したと推認できるというような部分が論告の中にもあるわけでございます。
  24. 草川昭三

    草川分科員 われわれは、その点こそ実にこれから議員辞職勧告決議案の中でも問題になっておる点であるわけでありますので、これはぜひ後ほど法務大臣からの見解を求めておきたいと思うわけでございますけれども、最近、榎本被告の法廷外発言ということがいろいろと話題になっておるわけでございます。裁判所の方もそれなりの対応があるわけでございますが、私は、本件に限らず、このようなことが一般的に行われるということは、今後基本的な問題になると思うのでございますが、いわゆる榎本被告の法廷外発言についての見解について検察側はどのような対応なり考え方を持っておみえになるのか、お伺いしたいと思います。
  25. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 予算委員会の本委員会でも御質問があったところでございますが、いま委員の仰せになりましたように、現在裁判進行中の事件に関しまして被告人となっている人が法廷の外でいろいろな発言をされたということでございまして、法的に言いますと、その発言というか、証言などと言われておりますけれども、その内容は裁判の判断の資料にならないわけでございます。そのこと自体については、いろいろ見方があって、適当ではないのではないかというような議論もずいぶんあるわけでございますけれども、法的な立場から言えばいま申し上げたようなことでございますので、検察当局といたしましては、今後まだ弁護人側の弁論あるいは被告人の陳述というようなこともあるわけでございますから、そこでどのような応対がなされるかということによりましてまた必要に応じた適切な措置をとる、こういう構えでいるわけでございます。
  26. 草川昭三

    草川分科員 この点について法務大臣にお伺いをいたしますが、田中議員辞職勧告決議案が昨日議運に出たわけでございますが、その点について大臣の見解はいかような考えでございますか。
  27. 秦野章

    秦野国務大臣 その点は、政府立場で私が、特に法務大臣立場でとやかく価値判断をするということは適当ではないのではないかというふうに考えております。
  28. 草川昭三

    草川分科員 もちろんその上に立って、しかし、これはお互いに、院の立場でそれぞれいま議論が始まっておるわけでありますから、大臣とはいえやはり国会議員の一人であるわけでございますから、無関心であり得るはずがないと私は思います。もちろん大臣としての立場もあるわけでございますが、これは予算委員会等でもいろいろな議論になって、何回か私も大臣に答弁を聞いておりますけれども、改めて舞台が違う場で、きのうのような提案がなされておるわけでございますから、大臣としてもう少し踏み込んだ見解が出てもおかしくないと私は思うのですが、どうでしょう。
  29. 秦野章

    秦野国務大臣 大臣として、こう草川先生おっしゃいますが、大臣としてではちょっと何事も申し上げられません。個人としてということならまた話は別ですけれども、この席で個人として物を申しても、これまた適当ではない。私もいろいろと意見があるのですけれども、それはちょっと、個人としてになってしまいますので、御理解をいただきたいと思います。
  30. 草川昭三

    草川分科員 では、個人として許せる範囲内の発言をしてください。
  31. 秦野章

    秦野国務大臣 したがって、いま申し上げたように、個人としてであっても、この席から申し上げることはどうしても法務大臣としてということになってしまうわけでございますから、その点は御了承いただきたいと思います。
  32. 草川昭三

    草川分科員 きょうは分科会でございますので、本件につきましては以上で終わります。  続きまして、いわゆるわが国への不法入国というのでございましょうか、不法入国ということが適当な言葉であるかどうかわかりませんけれども、いわゆる出入国管理令二十四条の一号に該当する不法入国者というものが統計上ずいぶん出ております。一番最近の統計では、五十六年度に総数が約四百三ということになっておりまして、その中でも一番多いのが韓国、朝鮮、これは三百八十四名でございますか、そういうような状況になっておるわけでございますが、潜在する不法入国者、これは国籍別を問いませんけれども、推定ということになりますが、法務省としてはいかように判断をなさっておみえになりますか。
  33. 田中常雄

    田中(常)政府委員 潜在する密航者は、そのほとんどが朝鮮半島から来ておると思われます。町ではその数は大体数万人という声も聞こえますけれども、実際問題として不法入国者というものは摘発された時点において初めて判明する、そういうものでございますので、当局といたしましても、潜在密航者が何名いるか、これは確実なことはわからない次第でございます。しかしながら、最近五年間において摘発された数は、昭和五十三年では六百四十六名、五十四年は六百十九名、五十五年は五百八十一名、五十六年は五百五十六名、五十七年は五百二十九名となっております。
  34. 草川昭三

    草川分科員 法務省の方々にいろいろなレクチュア等でお伺いをしますと、これも推定だが、概略三万とか四万とかいう数字が出ておるわけですが、その程度の数字は予測をしても間違いがないと言うとちょっと言葉に問題がございますが、その程度はいるわけでございますか。
  35. 田中常雄

    田中(常)政府委員 これは本当に何万いるかということは、なかなかわからないことでございまして、以前法務省で不法入国者として摘発した者に対していろいろ事情を聴取したときに、いわゆる相乗り密入国をした人がその五倍ぐらいいるという話を聞いたことがございます。したがいまして、たとえば五百名摘発されたとしたら、少なくともその五倍はいたのではないか。しかし、これもたまたま摘発された人に聞いたからその五倍という数が出たわけで、摘発されないでうまくもぐってしまった人については、何とも調べようがないと考えております。
  36. 草川昭三

    草川分科員 いま韓半島、朝鮮半島からの方々が多いというようなお話もございましたが、実は私は、ここ何年かこの問題を法務省にも問題提起をしておるわけです。一昨年、難民条約の締結ということがあったわけでございます。基本的には難民条約で、国際人権規約等の関係があるわけでございまして、非常に幅の広い人権が保護されているわけでございますが、その前に、在日韓国、朝鮮人の方々の差別をなくすることが前提ではないだろうか、あるいはまた、過去の非常に悲しむべき歴史的な経過の中から韓半島なり朝鮮半島の方々の密航者というものもあるわけですから、それを思い切って顕在化して、顕在化することによってまた新しい今日の岡際環境に適応すべきではないだろうかというのが私の基本的な考え方でございます。  でございますけれども、不法入国といいましてもいろいろな例がございますし、あるいはまた、もう十何年も日本に、一般市民の中に溶け込んで、地域からも非常に信頼されている方々もいるわけであります。たまたま交通事故に遭うと、かえって被害者の方が逃げてしまうということもあります。あるいはまた、その中で結婚をし、子供が生まれて、その子供さん自身が無登録、無国籍者になる場合もあるわけであります。法務省としても、ここらあたりでそろそろ、これらの個別的な対応については見解を変えるべき必要があるというのが私の基本的な意見であります。  それで私は、一昨年の難民条約の連合審査のときに、たまたまいまの不法入国の問題を取り上げたのです。そして、たしか当時大鷹局長の方から答弁がありまして、認めるのか認めないのか、退去させるのか退去させないのかといういろいろな議論があったわけです。私は私なりにその議論を踏まえまして、ある一人の密入国者、これは約十五年日本に働いているわけであります。そして、会社でも信頼があり、非常にまじめに働いておる人物でございましたが、私は相談がありました。私がこの問題を取り上げておることを知っておったのでしょう。私もそれなりに皆様方の御意見をいろいろと聞きながら、出頭をさせたわけであります。出頭させましたら、物のみごとに強制退去ということになったわけであります。本人はもちろん異議申請をしておるわけであります。  この在留に関する異議申し立て事件の受理及び処理人員の中で、これは多分五十六年の数字だと思いますけれども、韓国、朝鮮の方々の特別在留許可が全部で三百八十八名おりておるのですね。そして、結婚したとか子供ができたという事情変更の方々が百四名。だから、そういう方々でも許可になる例があるのですよ。十五、六年もまじめに日本で働いて、職場からも何とかしてやってくれというような方々があるならば、しかも、私どももいろいろな経過を踏まえて御相談申し上げておるわけですから、そこには情状というものがあってもいいと私は思うのです。別に、国会議員の顔をつぶしたからけしからぬという、そんなつまらぬことを私は言っているのじゃないのです。私がせっかく出頭させたことが逆の裏目になったわけですね。もちろん本人は恨んでおるわけですよ。私は、この問題については非常に内心じくじたるものがあるのです。  法務大臣は首を振っておみえになりますけれども、私ども地域でまじめに議員活動すると、こういう問題でずいぶん相談を受けるわけです。だからこそ、隣の国の友好関係もこういうものからやらなければいけません。その国が嫌になったからといってぽんと——全くの密入国というのは許すべきじゃないと私は思うのです。厳格な入国管理があったっていいと思うのですが、いろいろな個別の例を言うと時間がかかりますけれども、お父さんがいたとか、お母さんが強制連行されて一たん戻ったとか、いろいろな例があるのです、それなりの理屈が。だから、そういう点での情状があってしかるべきだと私は思うのです。その点についてはどうでしょう。
  37. 田中常雄

    田中(常)政府委員 御指摘の韓国でございますけれども日本との友好関係がある国でございますから、あらゆる面においていわゆる友好的な配慮を与えたいとは考えております。しかしながら、わが国の利益やまた公安を著しく害した外国人に対して退去を強制しなければならないのは、主権国家として堅持しなければならない考え方だと考えております。たとえば永住許可を与えられたとか十数年いたからといっても、韓国人といえどもその例外とすべきではないと考えております。  したがいまして、これらの者につきましても、みずから出頭申告をしたというだけをもって無条件に特別の配慮をすることは非常に困難ではないかと考えております。もちろん、出頭申告したということ自体は、情状酌量すべきときにおいては一つの考慮すべき要件となっておりますけれども、不法入国者に特別在留許可を与えるか否かという問題については、その人のあらゆる側面が検討されるわけでございます。したがいまして、そういうようなその人の素行、生活維持能力、密入国の時期、目的、態様その他あらゆる面を総合的に判断した上で、特別在留許可を与えるかそれとも退去強制すべきかを考えなければならないと考えております。
  38. 秦野章

    秦野国務大臣 草川先生の御趣旨の点は実によくわかるし、私も議員のとき同じようなケースがあって、同じような質問をしたのですよ。今度はこっち側へ、政府の方へ来たものだから。それならその理念が全然間違っていたかというと、間違っていないと私は思っております。いま局長の答弁したことも、これは一つ役所として間違いはない。しかし、行政処分というものは裁量といいますか、そういう領域、部分もありますから、御趣旨のところは十分私も念頭に置いて今後善処してまいりたいと思います。
  39. 草川昭三

    草川分科員 私の事件は退去させられた後の話なので、その話をもう少し前に聞いておけば、その大臣の話を持ち込んで私はやるところですが、私が一番言いたいのは、同じような事件でも少なくとも三百八十八名は許可になっているのです。それから、結婚したという例で百四名がプラスになっている。  ある人というのですか、非常に法務省に有力な人が紹介すればオーケーになって、われわれ野党議員が紹介した場合はだめだというような例が現実にはあるのですよ。私は、法務省としてはそういう態度はとるべきじゃないと思うのですが、どうでしょうか、その点は。
  40. 秦野章

    秦野国務大臣 与党だから野党だからという問題じゃないと思うのです。特に法務行政などというものは、政策官庁じゃなくて、厳密にその事案事案を客観的に評価してさばいていかなければならぬところでございますから、御趣旨の点は、さっきお答え申し上げたことになりますけれども、十分心得ていかなければならぬと思いますが、特に日韓関係あるいは朝鮮半島と日本関係は、普通に友好といっても過去の歴史がございますから、この過去の歴史の重みというものを考え行政の配慮をしていくことが非常に大事じゃなかろうかと考えております。
  41. 草川昭三

    草川分科員 では、次のところへ行きますけれども、そのほかたくさんの要望があるのでございますけれども、きょうは文部省の方もお見えになっておられますので、先にお伺いいたします。  いわゆる在日外国人の子弟の入学問題でありますけれども、特にわが国の中には韓国、朝鮮籍の方がずいぶんお見えになります。それで、三世、四世というところになりまして、社会的な地位も非常に安定してきておるわけでございますが、私立高校の入学に当たって、私立高校側で入学を拒否するというのですか、実質的に拒否でございますけれども、受け入れない場合があるわけであります。あるいはまた、そのような外国人を除くというような募集要項等もございます。各地域によって、それは問題があるじゃないかというのでそれを外した例もあるわけでございますが、中学校の進路指導の先生が、在日外国人であることを理由に無理であるというようなことを言う場合もあるわけでございますが、文部省としてこのような問題点についての対応、指導をどうされるわけでございますか。
  42. 中島章夫

    中島説明員 ただいま御指摘の点は、学校教育法令上は、外国人でありましても、法令の求めます入学資格を有する者については高等学校入学資格が認められることは御承知のとおりでございます。ただ、私立学校の具体の入学許可ということにつきましては高校長が決定するということでございまして、この場合でも、私立学校といっても公の教育を担っているものでございますから、公正妥当な方法によって入学者を決定すべきである、不合理な差別が行われてはならないということでございます。  ただいまお話がございます日本に永住を許可された大韓民国国民の高校入学資格につきましては、御承知のように、文部省としまして日韓協定の後の昭和四十年十二月に、文部事務次官通達をもちまして、各都道府県教育委員会及び各部道府県知事に対しまして、これらの者が日本の中学校を卒業したものであるときは高等学校への入学資格が認められるものである、そういう趣旨で遺漏のないように指導してもらいたいということを明確に指導しているところでございます。  ところが、一部私立高校におきましては、在日大韓民国国民の受験を認めていないという例があると聞いておりまして、まことに遺憾なことと存じております。ただ、担当の教育委員会は、先ほど申しました事務次官通達等をもちまして、繰り返し指導をしてまいっておりまして、事態は徐々に改善してきているというふうには聞いております。ただ、一方残りましたところにつきまして、さらに続けて指導をいたしておりまして、聞くところによりますと、五十九年からはそういう差別をなくしていくというふうにして答えているということでございますが、理事会等との関係もございまして、しばらく担当府県の指導を見守ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  43. 草川昭三

    草川分科員 時間が来ましたので、これで最後の質問になりますが、これは法務大臣に、入国管理の件についてもう一回戻って、たくさんの要望がありますので、ぜひ聞いておいていただきたいのでございますが、指紋押捺義務の問題等についても繰り返しいろいろな陳情が出ておることは、大臣も御存じだと思うのです。あるいは外国人登録証明書の常時携帯ということも、これまた手帳を見られるとおわかりのとおりに、登録証、証明書でございますから、夏になりますと、薄いシャツなんか着ている場合に、これを落としても大変でありますし、常時携帯ということになりますと、汗ばんでしまったり、常時携帯ということについてもついついうっかりという場合もあります。あるいは、よく言うわけでございますけれども、近所のふろ屋へ行った場合にも要るのかとか、スーパーへ行った場合はどうなのかとか、あるいは車に乗った場合に、同じスーパーだけれども、かなり遠方になるわけでありますけれども、その場合でも常時携帯義務というのは必要なのかどうか、いろいろな点がございます。  特に、指紋押捺義務の問題等につきましては、昨年の十月に二年延長になっておりまして、この期限が、五十九年の秋には再登録ということになりますので、いろいろな要望が出ておりまして、この指紋押捺等の問題についても反対運動等もあるわけでありますから、トラブルのないように、私はいまから対応を立てていくことが必要ではないだろうか、こう思っております。  私はぜひ、一度登録すれば更新手続はしなくてもいいというように行政指導をしていただきたいと思うのでございますが、ひとつ最後にその点について答弁を受けて、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 田中常雄

    田中(常)政府委員 外国人登録法は、制度の見直しをいたしまして、昨年ずっと御審議を受けまして、昨年十月一日から新たに施行されたわけでございます。その際、指紋押捺義務及び常時携帯、この問題については、十分な御審議を受けた上、今後とも維持、存続ということが決まったわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、この改正法に基づきまして今後ともその運用の適正を図っていきたいと考えております。
  45. 草川昭三

    草川分科員 以上で終わります。
  46. 砂田重民

    砂田主査 これにて草川昭三君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たか子君。
  47. 土井たか子

    ○土井分科員 きょう私は、国籍法の一部改正に関する問題で質問をさせていただきます。  すでに政府の方とされては、ただいま鋭意改正案を取りまとめる作業を急いでいらっしゃる段階でございますが、もう御案内のとおりに、社会党提案の法案は国会に上程をされておりますし、法務委員会におきましては、昨年十二月に国籍法の一部改正に対しての請願を採択されたという経過もございます。昨年は、前法務大臣にいろいろお尋ねを進めましたところ、その作業が順調に法務省としてお進めいただけたならば、ただいまもう法案は国会にかかっているというかっこうになっていたはずなのでございますが、大分作業がおくれておりますために、これはただいまの通常国会では審議をするということが残念ながらできない状況でございます。  そこで、まず最初に法務大臣お尋ねをしたいのは、この作業の進捗状況ということもるるございましょうが、これは次期国会には提案をしていただかないと、もうそろそろどうしても——これは約束がずっとずれていっているわけですから、軽々なお約束はなさらない方がいいということにもなるかもしれませんが、やはり一たんこの国会に出したいということをおっしゃった経過もあるのですから、ひとつ意のあるところをはっきりおっしゃっておいていただくことが必要かと思われます。いかがでございますか。
  48. 秦野章

    秦野国務大臣 いままでの経過からいっても、次の国会には何とか出したい、こういう目途で一生懸命検討中でございます。
  49. 土井たか子

    ○土井分科員 一年ごとにそれを言われ続けたんじゃ、これはどうにもなりませんから、もう秦野法務大臣のおっしゃったことは確定的だというふうにひとつ受けとめさせていただきたいと思うのです。  先日、二月の一日に法制審議会の方から、国籍法部会において国籍法の改正問題について続けてこられた審議の経過を、中間試案と称して発表されたわけでございます。これは中身を見ますと、二条については、試案は、確かにだれか考えましても至極当然の父母両系血統主義というものを採用されているということでありますが、中身をさらに検討してまいりますと、いろんな問題点がなしといたしません。  そこで、きょうは多くを聞く時間的余裕がございませんから、そのポイントは一点に集約してあとお聞かせいただきたいというふうに私は考えておりますが、それ以前に、ひとつこういう問題から入っていきたいと思うのです。  それは、この法制審議会というのは、やはり大臣の諮問機関でございますから、したがいまして、審議内容に対しては非公開であって、どういうことがどういうふうに進められているかというのは、ガラス張りでないために私たちにはわかりません。法案提案者ということで私も名を連ねさせていただいて、もうすでに国籍法の一部改正案というのは、これは審議しつつその途次改革をすることが必要だと思われている点も理解をいたしておりますけれども、しかし、すでに法案を提案しているという立場がこちらにございますにもかかわりませず、いろいろと法務省お尋ねをしても、これはなかなか教えていただけないという経過があるのです。非公開制と申しますか、秘密主義と申しますか、どういう方々がどのような資料に基づいて審議をされているかということがよくわからないのですが、これはどんな方々が法制審議会のメンバーであるかぐらいは公開されていいんじゃないかと思いますが、いかがでありますか。
  50. 中島一郎

    中島政府委員 法制審議会の所管は、私の方の司法法制調査部ということになっておりますので、私からお答えするのもどうかと思いますけれども、便宜申し上げますと、法制審議会は、学者、それから裁判官、弁護士などの法律実務家その他学識経験者ということで総会を組織しておるわけでありますが、その法制審議会が法務大臣から諮問を受けますと、事柄ごとに部会をつくって御検討をいただくということになっております。  で、この国籍法の改正で申しますと、国籍法関係の学者、それから裁判官、弁課士に加えまして、事柄が事柄でございますから、在外邦人についての豊富な知識をお持ちの元外交官というような方も入っておられるわけであります。  これを公開をしたらどうかというお尋ねでありますけれども審議会における自由な議論をしていただくということから申しまして、全面的な公開ということは望ましくないんじゃないかということで、議事規則におきましては非公開ということが定められております。しかし、ただいま御質問にありましたように、法制審議会の審議そのものが全く外部に知らされないで、突如として答申が出るというような形は望ましくないというふうに考えておりますので、必要な限りにおいて法制審議会の審議の進行状況などを御説明申し上げるというようなことには努めておるつもりでございます。  今回、民事局第五課におきまして、国籍法部会の審議の結果を踏まえて中間試案というものを公表いたしましたのも、一つには法制審議会国籍法部会では現段階ではこういう作業をしておる、こういうことを考えておるということを国民の皆さんに知っていただく、あわせてそれに基づいて各界の御意見を伺うということを考えたからでございます。
  51. 土井たか子

    ○土井分科員 ひとつ御答弁は簡潔にお願いをいたします。  その人物論評なんというのはさっぱり要らない。どういう方々が審議会のメンバーであるかぐらいは公開してよろしいのではありませんかと聞いておるのです。なぜかというと、他の審議会なんかは、これは審議会のメンバーというのは公開しますよ、そういうことについてどなたが審議会の委員でございますかと言った場合は。これもどうも状況からいたしますと、国会において国籍法の一部改正の請願が採択されているという状況にもありますから、そういうことからすれば、要求すればそれは名簿ぐらいはお出しになって当然なんじゃないですか。私はついにいただけませんでした。
  52. 中島一郎

    中島政府委員 私の一存でお答えするわけにもまいりませんので、帰りまして所管の局等とも相談してみたいと思います。
  53. 土井たか子

    ○土井分科員 相談相談って、相談が多いわけでありますが、大臣、こんなことぐらい、名簿くらいいいじゃないですかね。(秦野国務大臣「いいかもしれないな。大丈夫だよ、そんなことは」と呼ぶ)いいかもしれないとか、大丈夫だそんなことはとおっしゃっていますから、これはそのようにお願いをしなければならない問題だと思います。  さて、先ほど申し上げました中身について、多くこれを触れるわけにはいきませんから、一点だけ。  今度、帰化取り消し制度というのが新設されるかっこうに今回の中間試案ではなるのです。これは後にどうなるかわかりませんが、中間試案ではなる。それに従って、聞くところによりますと、日本人の男性と外国人の女性の結婚について調査を行われたということが言われているわけでございますが、どこがどういうふうな調査をおやりになったのか、あらましをお聞かせいただきたいのです。民事二課とか五課とかいろいろあるでしょうし、どういうふうなことをサンプルとしてお取り上げになったか、結婚歴は何年ぐらいということを問題になすったか、ちょっとそのあたりいかがでございますか。
  54. 中島一郎

    中島政府委員 帰化者の帰化後の戸籍を対象にいたしまして、帰化後の離婚率と申しましょうか、婚姻数に対する離婚の割合というものを調べたわけでございます。と申しますのは、仮装婚姻によって、日本人の妻という身分を仮装して帰化申請をするというようなケースがあるという声もございましたので、そういうものの実態はどうなっておるか、事柄が事柄でございますから、十分立ち入った調査はできませんけれども、一応の数字的な調査をしたということでございます。
  55. 土井たか子

    ○土井分科員 その結果、この帰化あるいは在留許可のための仮装婚姻と判断できるだけの調査結果というものは出てまいりましたのですか、いかがなんですか。
  56. 中島一郎

    中島政府委員 離婚率は、その他の場合の離婚率に比べまして若干高いという数字が出たように承知いたしておりますけれども、その具体的な内容については、先ほど申し上げましたように不明であります。
  57. 土井たか子

    ○土井分科員 しかし、いまの御答弁からいたしますと、どうも聞こえてまいります響きといたしましては、帰化取り消し制度というのは仮装婚姻対策というふうにも受け取れるのです。そのように理解してよろしゅうございますか。
  58. 中島一郎

    中島政府委員 婚姻の実態があるのか仮装であるのかということは、なかなか判断の困難な問題でございます。でありますから、それについての断定的な結論というのはなかなか出ないわけであります。私どもがこの帰化の取り消し制度の新設の際に聞いておりましたいろいろな御意見から理解しておりますところは、そうではなくて、むしろその他の偽りその他重大な不正の手段というものがございます。たとえば担当官を脅迫するというようなことで帰化の許可を受けた、あるいは日本人の子でもないのに、出生証明書を偽造のものを使って日本人の子として帰化の申請をしたとか、そういう明白な場合を頭に置いて考えられたというふうに承知をしておるわけでございます。
  59. 土井たか子

    ○土井分科員 そういう事情は、最近、民事局の検事さんであられる土屋文昭氏が「国籍法改正に関する中間試案について」という「法律のひろば」に掲載されている一文の中にもお書きになっていらっしゃるわけですが、しかし、これは考えてみますと、恐らくは改正案で男女の帰化条件というのは平等になるはずなんです。どういう取り扱いになるかということの基本としては、男女とも帰化条件については平等に取り扱うということは、これは改正案の中の大きな柱の一つになることは必定なんですね。そうすると、入管の方の改正で、日本人の配偶者が永住権を取得できる要件というものが緩和されるというかっこうになるわけです。日本に帰化して在留しようという傾向は今後減少するのじゃないかなというふうに、これは一般的に考えたら考え得るのですが、それなのに、なぜ父母両系主義の採用と直接には関係のない帰化取り消し制度というのを中間試案に新設しようとしているということになるのか、この点はなぜかということがどうも私にはよくわからないのです。なぜこういう帰化についての取り消し制度というものを新設しようとなすったわけでありますか。
  60. 中島一郎

    中島政府委員 帰化の取り消しができるかどうかということにつきましては、行政法の一般理論上から申しまして、行政処分に原始的な瑕疵がある場合には従来の法制度のもとでも一定の要件のもとに取り消しができるのだという御議論もあり、一方では、明文の規定がないからそれはできないのだという御議論があり、実は必ずしも明らかでなかったという点でございまして、この際帰化の取り消しということをはっきり要件を定めるとともに、帰化を取り消された者の保護をも図る。たとえば聴聞の規定というようなものを設けるべきではないかということで、規定が置かれたわけでございます。
  61. 土井たか子

    ○土井分科員 これは、いまのはお答えになっていないのです。なぜ父母両系主義の採用ということが主軸として考えられた今回の国籍法の改正の節に、それとは直接には関係のない帰化取り消し制度というものを新設されようとしているのか、その点がよくわからないと私はお尋ねをしているのです。よろしゅうございますか。いまおっしゃったようなことは土屋さんもその論文の中に書いておられる。  しかし、ここで土屋さんが触れておられるのは、一点これを申し上げてさらにいまの質問に対してお答えいただきたいと思うのですが、「帰化取消し制度は、慎重に運用されるべきものであり、現実にもいわば「伝家の宝刀」的な運用がなされることとなろう。」と書いてあるのですね。やはり軽々にこれは問題にすべき問題ではないということが認識の中になければならない。  これは一たん帰化について認めているわけです。帰化を認めるときのいろんな調べというものは、これは徹底的ですよ。安易な帰化というものは、いままでだって法務省としてはお認めになっていらっしゃらないはずなんです。そういうことからすれば、今度そういうものが新設されるというのはどういうことに相なるかということも問題でございます。いかがですか。
  62. 中島一郎

    中島政府委員 今回の国籍法の改正は、その大きな柱はただいまおっしゃいました父母両系主義の採用あるいは帰化条件の男女差別の廃止というような点にあるわけでありますけれども、それに限りませんで、二十五年に制定されまして以来、施行されまして以来三十年、改正らしい改正が行われておりませんでした国籍法を全面的に見直すという立場から行っているものでございます。  で、今回帰化の取り消しというものを新設することが問題になっておりますいきさつは、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、やはり気持ちの問題といたしましては、静止的と申しましょうか、閉鎖的な社会でありました日本の国がだんだん開放的になり、国際的になりというような傾向にありますために、帰化の調査が困難な点が出てきております。でありますから、そういう点、さりとていままでどおりのような確信のあるまでの調査をするということになれば、これは時間もかかります、手数もかかります、申請者に迷惑をかけるというようなこともあるわけでありますから、そうばかりも言っておれませんので、それに乗じて申請者が不正な行為で帰化の許可を得るというようなことがあっては、これは放置できないことでありますから、重大な不正手段によって帰化の許可を得た者については取り消しの手段がありますよということを設ける必要があるという御議論が強かったわけでございます。
  63. 土井たか子

    ○土井分科員 まあそれは、従来から不正な手段で帰化申請をされるということは、本来はこれはもう認められないわけであって、それでもなおかつ、帰化申請に対してそれを受理して取り扱いをなすって帰化をお認めになったという側にも問題が起こってくるのです。よろしゅうございますか、そういう場合は。したがって、それを一片の法律の規定でもってどうこうしようということに踏み切られるのには、それなりの大変な理由があったに違いないと私は思っているんです。  再度戻りますが、先ほどの仮装婚姻ということが非常に認識をされておりまして、それに対する対策として、あたかも今度の取り消し制度というのが意味があるがごとくに御答弁を受けとめられる筋合いがあるのです。  ちょっとお尋ねをしますが、このたびその調査をなすったときに、一定期間内の離婚率が日本人同士の場合よりも高かったある特定の国があったのではなかろうかと思われます。ありましたか、ございませんか、いかがですか。
  64. 中島一郎

    中島政府委員 特定の国についてそういう結果が出たというふうには聞いておりません。
  65. 土井たか子

    ○土井分科員 ああそうですか。  そうすると、この仮装婚姻ということを認識される場合に、最も日本において可能性の多いケースというのはどういう国を意識されますか。
  66. 中島一郎

    中島政府委員 私ども、帰化の事件の実務をやっておりまして、そういった仮装婚姻ではなかったかというようなことを聞くケースが時にはあるわけでございますが、私の漠然たる感想といたしましては、アジアの諸国、東南アジアその他の諸国の場合が多かったような記憶がございます。
  67. 土井たか子

    ○土井分科員 これは、法的に取り締まります範疇よりももっと政治的な意味というのが非常にある問題ではなかろうかと私は本来は思っておるのですよ。それを取り扱うのに法律の規定でどうこうしようというふうな取り扱いが果たして適切であるかどうかという問題が非常にあるだろうと思うのです。法務大臣、こういうのをどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  68. 秦野章

    秦野国務大臣 しかし、法律がないと、またこれできないしね。だから問題は、運用になるんだろうと思うのですよ。全然法律、白紙でいいというわけでもなさそうだ、いまの局長の答弁を聞いていても。そうかといって、大変むずかしい要素も政治的な背景もあるということはわかります。問題は、その運用において慎重、伝家の宝刀と申し上げましたが、そういう問題じゃないですかね。そういう点は十分留意していくということしかないんじゃなかろうか、こんなふうに思います。
  69. 土井たか子

    ○土井分科員 これはもう法務大臣には釈迦に説法のたぐいになりますけれども、人権、自由について基本的に問われる問題になりますから、したがいまして、運用にゆだねるということ以前に、やはり法律主義ということについてもっと慎重に考える必要があるだろうと私は思うのですね。  だから、これを取り上げて問題にする法律として、どういうふうな法文でこれを取り上げて、どういう規定でこれを取り締まろうとするかというときに、安易な取り上げ方や安易な考え方は禁物だと私は思うのですよ。だからこの点は、今度の中間試案を見ておりまして、なぜこれが唐突に出てくるか、なぜこれが父母両系主義と関係のない問題であるにもかかわらず今回取り上げられたか、まさにそこに政治的意味というものをかいま見る気がしてならないのです。後またこれは法務委員会の方に出かけまして、私はさらに質問を続行したいと思います。  さて本日は、先立つもう目の前の問題がございますから、これをお聞かせいただくことにいたします。  今回のこの中間試案に対して、どんな形で多くの人々の意見を聞こうとなすっていらっしゃるのか。たとえば、国籍法改正について意見を聞く会という名前を用いて三月の二十五日に東京で十五人、三月の十四日、十五日、この二日間大阪で同じく十五人ということが決められているようでございますけれども、これがどうも余り公にはなっておりませんので、関係者の方の中にも十二分に御存じの方が限られておるようであります。法制審議会国籍法部会の委員の方、幹事の方のうちでどのような方々が御出席なさるのですか。
  70. 中島一郎

    中島政府委員 委員会の議論の案をつくりますために、委員の一部の方、幹事の一部の方で準備会というものを構成しておられます。その準備会の先生方のうちからこの意見を聞く会に御出席をいただくということになっております。
  71. 土井たか子

    ○土井分科員 準備会の委員以外の方々は、全く関係がないというかっこうでございますか。
  72. 中島一郎

    中島政府委員 意見を聞く方は、準備会の先生方から御出席をいただくということになるわけでありますが、そこで聞いた意見につきましては十分に整理をいたしまして、小委員会なり部会に報告をするということになろうかと考えております。
  73. 土井たか子

    ○土井分科員 今度は、その十五人の方々の側なんですが、どのような個人、団体に意見を聞かれるということになっているのかという問題ですね。朝鮮人、韓国人、中国人、台湾人、そういう方々の意見も聞く予定がその中にございますか、いかがでございますか。
  74. 中島一郎

    中島政府委員 意見を聞く方々はあくまで個人の方というふうに考えておりますが、その選定は幾つかの団体にお願いをいたしまして人選をしていただいたわけでございます。したがいまして、私の方で決めましたのはその人選を依頼する団体でございますが、団体を若干申し上げますと、国際結婚を考える会、国籍法改正に提言する市民グループ、国際婦人年日本大会の決議を実現するための連絡会その他経済団体連合会、日本婦人法律家協会、国際法学会、それから戸籍の関係で東京戸籍事務協議会、東京都人権擁護委員連合会、これが東京会場の方でございます。  大阪の方は、ただいま申しました各団体のほかに、沖縄弁護士会それから大阪府戸籍住民基本台帳事務協議会、大阪府人権擁護委員連合会、関西経済連合会その他でございます。
  75. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると、その中に先ほど申し上げた外国籍の方々というのも入っているのですか、入っていないのですか。
  76. 中島一郎

    中島政府委員 特に外国籍の方々を対象にして意見を聞くということにはいたしておりません。
  77. 土井たか子

    ○土井分科員 特にはそれはなさらないでしょうが、その中に入っていますか入っていませんかという質問なのです。どうなのです。
  78. 中島一郎

    中島政府委員 各団体から御推薦いただいた参考人の中には、外国籍の方は含まれていないというわけでございます。
  79. 土井たか子

    ○土井分科員 これはやはり国際結婚ということの結果、その結果の取り扱いをどうするかという問題も今回の改正点としては非常に重要な問題になっているわけでありますから、こういう外国籍を持っていらっしゃる方々についても、やはり意見を聞くということは非常に必要な作業だと思われますが、大臣、どうお思いになります。
  80. 中島一郎

    中島政府委員 今回問題になっております父母両系主義ということになりますと、夫婦の一方は外国人でありますが、一方は日本人、特に母親が日本人という場合でありますから、日本人母親からの意見陳述によって十分その間の事情は承ることはできるのじゃないかというふうに考えております。
  81. 土井たか子

    ○土井分科員 それも、そういうこともあるでしょうが、直接に意見を聞くということも考えられなければならないのじゃないかなと思ったりするのです。  それから、そういう意見聴取の結果がどういうふうな取り扱いになるかは、いま御答弁の中で、後で審議会に記録を提出して審議の対象になるような形でこの意見聴取を反映させていくということを御答弁になったように私は理解をいたしておりますが、そう考えてよろしいですね。
  82. 中島一郎

    中島政府委員 具体的な形はどういうふうになりますか、はっきりしたことは申せませんけれども、書類もつくることになりましょうし、あるいは実際に意見を聞かれた委員の先生方から口頭で御報告もありましょうし、その結果は、これも審議会での御意向次第でありますけれども、いままでの例から考えましても、今後の作業部会における審議に十分参照されることになるだろうと考えております。
  83. 土井たか子

    ○土井分科員 それで審議会の審議に十分たえ得る資料にしていただきたいということと同時に、これは国民からすると、国籍法の改正について請願が採択をされているということに対して非常に期待を持っているという立場があるのです。それから、婦人の差別撤廃条約の批准に向けてこれはどうしてもやらなければならない日本の国内的措置ですから、そういうことからすると、女性は大体これに対していま注目をしているというふうにお考えいただかなければなりません。  中間試案を広く問うということで公表いたしましたという非常に意欲的なことも先ほど御答弁になりました。したがって、これから後のいよいよこの審議会での総まとめに至るまでの作業の段階ということの中に、各界各人のいろいろな意見というものが反映されていいのではないかと私は思うのです。いろいろ意見のある人が積極的にそれを法務省なりそれから担当機関に持っていく、意見を披瀝するということがあっりていいのじゃないかと思うのです。  そういうときに、法務省とされてはそれを受けとめる窓口を置いていただく必要があるのじゃないか。少なくとも中間試案について社会意見を求めるということをお考えいただいて、窓口を一つ用意していただく、そしてそういう窓口が法務省にございますよ、どうぞあなた、意見があったら持ち込んでくださいよというふうなことを国民に周知させるように、たとえばNHKなどを通じて、報道機関を通じてPRを行うということも考えられていいのじゃないかと私は思うわけです。非常に大事な段階でございますから、そこのところをひとつ思い切ってお考えいただくということを法務大臣に申し上げたいのですが、大臣、これはいかがでございますか。
  84. 秦野章

    秦野国務大臣 いまNHKで放送というお話がありましたけれども、放送というか、受け付けというか、座談会なんかを計画するということは可能じゃないかと思います。そういうことへの織り込みの中で知れて、いろいろな意見、投書その他が来るというようなことで意見を収集するというようなことは考えていいじゃないかと思います。それは窓口を余り制約する必要はないので、そういうことで一遍検討してみましょう。
  85. 土井たか子

    ○土井分科員 時間が来ましたからこれで終えますが、だれでもが、意見を持っている人が法務省に行って意見を言えば聞いてもらえるところがあるということをひとつ知らしていただくということを最後に再度申し上げたいと思うのです。意見があるけれども、行くと、いやこれはただいま法制審議会の方で作業途次でございますから、まだこれについて固まっておりませんのでというふうな法務省側の立場説明されますけれども、こっちの持っている意見を聴取していただくという姿勢がなかなかないのですよ。非常に消極的なんです。だから、そういうことも含めまして、法務省としてはこれを受けて立つ、いろいろな意見をどうぞ持ってきてくださいというふうな積極的な姿勢をひとつお持ちいただくように、再度これを申し上げておいて、私は終わりにいたします。法務大臣、それはよろしゅうございますね。
  86. 砂田重民

    砂田主査 これにて土井たか子君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  87. 中野寛成

    中野(寛)分科員 私は、在日韓国人の権益擁護の問題、また法的地位向上の問題についてお伺いをしたいと思います。  とりわけ大臣は、御就任前にこの在日外国人の大学教員への採用等について法制化がありましたけれども、むしろそのきっかけをおつくりになられた、またその実現のために努力をされたといういきさつもありまして、私どもも大変その御見識に、また御努力に敬意を表しているところでありますが、より一層これを進めまして、特にきょうは在日韓国人、とりわけ協定永住権者を中心にして、今後のあり方についてお尋ねをしたいというふうに思っているわけであります。     〔主査退席宮下主査代理着席〕  特に在日韓国人、その中でも協定永住権著と言えば、これは歴史的に見て、一たん日本の国策にのっとって強制的に日本人とされ、そして戦争が終わって、あなた方は韓国人ですよとまたもとに戻されてしまったというふうないきさつもあるわけですね。そういう歴史的な経過の中で日本に住み、そしてその国籍は政府の政策によって動かされはしたけれども、ロイアルティーは韓国にあっても、その国民意識といいますか、住民意識は日本人と何ら変わらない意識を持った中で生活をしてこられた、そういう経緯があるわけであります。そしてその後、日本において、永住権者と言うくらいですから、一生生活をしようという意識があるわけです。     〔宮下主査代理退席主査着席〕  それで、その法的な裏づけは、一九六五年、昭和四十年に締結をされました在日韓国人に対する法的地位協定、これによって裏づけがなされているわけであります。しかし、その協定が締結をされましてからすでに十八年間を経過しようとしております。  この協定の第二条には、この永住権者のまた直系卑属の子孫に対する永住の許可、これらのことを中心にして、この法的地位協定の締結後二十五年間以内に韓国政府から要求があれば再協議いたしましょう、こういうことになっているわけですね。しかし、韓国政府からの要請があるなしにかかわらず、現実に在日韓国人約七十万人の方々が日本に住んでいる。そして、自分たちの、または自分の子孫たちの将来はどうなるのであろうか、韓国に住んでいる韓国人ということでもない、そしてまた日本人としてでもない、宙ぶらりんな状態の中で結局不安定感を持って生活をしている。このことは、とりわけ在日韓国人の中の青少年に与える精神的影響というものはきわめて大きいと思うのです。ですから、そろそろこういう状態を何らかの形でけじめをつけなければいけない。いつまでも協定永住権者という何か中間的な存在のまま置いていくのかどうか。むしろ日本政府として、この多くの在日韓国人の存在を直視して、そして在日韓国人ということではなしに、むしろ韓国系日本人というふうな認識であらゆる権益を日本人と同じように、むしろ日本人として保障していく、そのような考え方が最後にはなければならないのではないだろうか。その基本的な考え方の上に立って、具体的な措置というものが積み重ねられていく、こういうことでなければ、法務省としても、いつまでもこの問題は次から次にいろんな要望が出てくるけれども、本当に切りがないというふうな印象で受けとめられる、現実にそういうことを口に出された方も法務省の中でいらっしゃいます。とめどがないという印象をお持ちになっておられる。むしろこの行き先はどこなのか、在日韓国人は永遠のエトランゼでなければならないのか。この問題について大臣として基本的な認識をどうお持ちになっておられるか、まずお聞きをしたいと思います。
  88. 秦野章

    秦野国務大臣 戦後三十七年たちまして、生活環境も年齢も高まり、子供もできるというような状況になってきて、言うならば国籍は日本ではない、韓国の国籍だ、ただ永住しているだけだという状況ですね。これに対して、このままの状況が延々と続いていくということで一体いいのかどうだろうか。もちろんその間にいろいろこの処遇の面なんかについてある程度の努力をしてきたということも私はあると思うのです。ただ、やはり国籍の帰属というのは本人の意思というものが非常に大きな要素でございますから、国籍が韓国である、あるいは日本であるというように人はいずれかの国に所属しなければ生きていけないという現実の人間の宿命みたいなものがありますね。どこかの国に属さなければならぬ、しかし、それはあくまでも韓国なんだ、こうおっしゃる方はたとえ日本に永住しても、韓国系日本人というようなニュアンスはわかるのですけれども、そこの壁にぶち当たるのですよ。極端なナショナリズムというものは人類にとって大変不幸でございますけれども、しかし国というものは消えないのですから、友好、友好と言うけれども、しかし何かのときには友好でなくなることもあるのですから、国家に対するロイアルティーを考えましても、そこのところの壁というものはついに破れ得ないだろう。しかし、それにもかかわらず、日韓の関係というものは御案内のとおり、いまお説のとおり大変長い歴史的な経過の中で、日本もまた非常に反省もし、また負うべき責任もあるような感じもするわけです。そして民族的にも、古代を見れば、われわれの先進文化として日本に入ってきた。朝鮮半島の人がいっぱい日本に来て、その血がわれわれに続いているという現実もある。  しかし、いまなお人類の世界が国家単位につくられて、国連に入るとか入らないとかという問題にまでなっているという、そういった基本的な原則みたいなものが存在する限りにおいては、韓国系日本人というようなニュアンスもわかるし、私も全くお気持ちはよくわかるんだけれども、これを法的に整備するということはなかなかむずかしいのだと思うのです。  おっしゃるように、協定でもって、韓国の申し出があれば変えていくというようなことはございますから、日韓の友好もだんだん深まっていますから、そういう点でできるだけ前進をしていくという配慮をしていかなければならぬ。われわれの方でも、これはひとり法務省だけの問題ではなくて、韓国人に対しては努力していかなければならぬ問題がまだ幾らも残っていると思います。  余り歯切れがよくはございませんけれども、韓国系日本人、実態はまさにそうだが、しかし断固として韓国なんだ、私は日本人にならぬのだ、こうおっしゃっている限りにおいては、その境界というものはまた延々と続かなければならぬ境界だろう、こんな感じを持っておるわけでございます。しかし、それにもかかわらず文化とか人の交流とかということは大事ですから、その上に乗っかって、いま仰せになった例の外国人の教授の問題でも、そういうような角度で、今度は次元のところをちょっと変えて深めていくというような努力をするのが当面日本の国の立場では大事ではなかろうか、こんなふうに私は考えて今日まで来ておるわけでございます。
  89. 中野寛成

    中野(寛)分科員 大臣がおっしゃる実態論、私も実感としてよくわかるわけです。一世の方と二世、三世の方ではこれまた大分認識も違います。そういう意味では、時が解決する部分もかなりあるのではないだろうか、こう思います。しかし、一面では法務省としてというか日本政府として、またある意味では国民みんなの意識として、将来どうするのかということの研究はやはり継続的になされておく必要があるのではないだろうか、このようにも思うわけです。  それからもう一つは、先般中曽根総理が訪韓をされました。そして韓国大統領と総理官邸とのホットラインも結ばれてきた。私は数年前からソウルを訪れるたびに、そういう時代が早く来ないかとよく演説をしたものでした。大変感慨深いものがあります。 また、今度の経済協力の問題も大変大きな前進だと思うのです。  と同時に、一方で、そういう政府サイドの努力と相まって国民意識、いわゆる本当の両国の友好関係というものは国民の意識の中で生まれなければならぬわけですね。そのかけ橋となるものが在日韓国人の皆さんではないだろうか、こうも思うのです。いわゆる韓国へ里帰りをされた在日韓国人の方々が、日本でこんな差別を受けているんだ、日本というのはこういうことで暮らしにくい、青少年にも夢を持たせることがむずかしい、そういう愚痴をこぼしてばかりおられたら、日韓両国の友好ということは国民の意識の中ではなかなか進みません。ですから私は、里帰りをされたときに、日本という国はいい国だ、韓国のことも、また韓国民のことも大変真剣に、そして親しみを持って感じてくれているということが彼らの口から率直に出るようにするということが大変大切なんではないだろうか、このようにも思うわけです。  ここで、ちょっと一点だけ外務省の方にお尋ねをしたいと思います。  この法的地位協定の再協議のことですが、まだ七年間残っていますよと言えばそれまでなんですけれども、しかしこれは、在日韓国人の皆さんにとっては、七年も残っているのではなくて、七年しか残っていないという意識の方がむしろ強いのです。それと、いま申し上げました日韓両国の友好の関係のためにも外務省としていろいろ御努力をされていますけれども、いまお尋ねを申し上げております在日韓国人の処遇のことを含めて、外務省の基本的な御認識をお伺いできればと思います。
  90. 小倉和夫

    ○小倉説明員 外務省といたしましては、この問題は、日本の外国人管理の上から見ても重要な社会問題であるという側面だけではございませんで、先生おっしゃいますように、日韓両国の間の重要な問題であって、日韓両国間の友好関係を増進する上でやはり非常に重要な問題であるというふうに認識しております。私どもは、協定が結ばれてから十八年たっておるという事実、その間いろいろな事情の変更があったということも認識しております。他方、この間、この協定のもとで在日韓国人の地位、待遇の改善のためにこの協定がかなりの役割りを果たしてきたし、また、その間いろいろな改善の努力がなされてきたということは、先生も御承知のことと思います。  そこで、協定改正の問題につきましては、確かに協定第二条にいわゆる第三世代と申しますか、孫の取り扱いの問題が書いてございます。これに取り組むに当たりましては、協定締結の経緯それから条約の趣旨を念頭に置く必要があると思っておりまして、その結果、いろいろな考え方の違いも当時あった。それから先ほど法務大臣からも御答弁がありましたけれども、個人の意思の問題もある。第三世代の方々がどういう意識でおられるかという問題もある。その当時の国際情勢かどうかという問題もあろうかと思います。したがいまして、日本社会、韓国の社会、国際情勢、そういったものを全部まとめた上で、協定の中での趣旨を生かしながらどういうふうにこの問題に取り組んでいくかということではないかと思います。先生が先ほど、要請があるのを待つのもおかしいじゃないか、むしろ日本の方から積極的にやるぐらいな気持ちでなくちゃいかぬじゃないかという御趣旨、韓国問題に御造詣の深い中野先生のお言葉として私どももかみしめたいと思いますが、その御趣旨は、恐らく嫌々ながら押されてやるという姿勢ではなくて、もっと前向きに積極的に取り組むという姿勢で外務省もやるべきではないか、こういう御趣旨だと思いますので、私どもといたしましては、形式的にどこがどういうふうに要請するかという形式論は別といたしまして、実態的には私どもの方からむしろ心を開いて対処をしていく、こういう気持ちでやっていきたいというふうに思っております。
  91. 中野寛成

    中野(寛)分科員 ぜひそうお願いしたいと思います。  それでは続いて法務省お尋ねしたいと思いますが、大臣、そろそろ三世までではなくて、四世が生まれつつあるのですね。教育の問題等々含めまして就職のことなど、本当にやはり彼らは被差別意識というのが大変強い。現実に就職をするにも、その門戸はやはり現実には狭いのです。そしてその結果、ユダヤ人にたとえると、これはまたユダヤ人に対しても韓国の方に対しても失礼かもしれませんけれども、流浪の民的な感覚というものがやはり何となく出てくる。その中で、結局金銭その他、物にしがみつくというのでしょうか、物を大事にする、物を優先的に考える、そういうことが徐々に子供たちの心の中に植えつけられてしまう。その結果、豊かな心というものが育ちにくくなったりして、結局は犯罪の発生率の高さにつながっていったりする。しかも、その犯罪の発生率を単に数字でぼんと出しますと、例の外人登録証をたまたま持っていなかったというのも犯罪の一つに数えられますから、犯罪の発生率の数字だけを見ますと、おやっと思います。びっくりしますが、しかし内容的には、数字の問題以上にもっと深刻な問題があることは、特に大臣はよく御存じだと思うのです。このようなことを考えますときに、やはりよほどの決意を持ってわれわれはその対策を講じていかなければいけないのではないかと思うのです。特に法的地位協定の中で、いま外務省の御見解もお聞きしましたけれども、この協定で永住権が保証されているのは三世までではないかと私は認識しているのですが、このことはどうでしょうか。
  92. 田中常雄

    田中(常)政府委員 在日韓国人の法的地位協定第一条第二項は、協定永住者の子についての協定永住資格を認めるにとどまっております。したがいまして、孫以下の資格については何ら触れておりません。しかしながら、現行法では、その孫以下は入国管理法第二十二条第二項、いわゆる一般永住でございますが、この条項によりまして永住資格を容易に取得することができるようになっています。先ほど大臣から御答弁いたしましたように、在日韓国人というのは、わが国に在留した特殊な経緯がございますもので、そのような経緯も踏まえて、法務省といたしましても、できる限り在日韓国人の法的地位の安定化については、過去においてもいろいろ努力してまいりました。そして先ほど申しました一般永住のときに簡易に一般永住を取得できるということは、いわゆる永住のときに必要とされている素行善良とかそれから自営能力、いわゆる自活能力でございますか、そういうものを要件として必要としないということになっております。
  93. 中野寛成

    中野(寛)分科員 おじいさんとお父さんは協定永住権者で、そしてその孫というか子供からは一般永住、いま御答弁ございましたように大変いろいろと御配慮はなされているわけですけれども、しかし、協定永住権者の子供、孫そして四世、これはやはり協定永住権の中で考えるべきことなんではないでしょうか。むしろこの協定そのものが結ばれた時点ではまだそこまでの認識はなかったかもしれませんけれども、今日この事態になりますと、やはり私は協定の中身そのものでこういうことも考えていく必要があるのではないか、このように思うのです。  ただし、これは過渡的なものだと思うのです。基本的にはやはり将来、先ほど大臣も十分御認識をしていただいておりますけれども、韓国系日本人となるのかどうか。たとえば一人一人の帰化ということになると、これは大変なんです。まして人数も多いことです。そして混乱も生じるでしょう。やはり十分在日韓国人の皆さんの認識、意識も聞きながら、むしろ積極的に、その精神的な支柱としては、おれは韓国の血が流れているんだ、おれは韓国人なんだという意識はあっても、国籍はむしろ日本人と同じ。アメリカのように、国籍とは別に市民権などという制度日本にあると大変便利だと思うのですけれども、そういうことも含めまして検討が進められていかなければならないのではないかな、こう思います。そのことがやはり日本の国際化にもつながっていくのだと思うのです。日本人の若い人たちも、言うならば先ほど大臣のおっしゃったお言葉を借りるならば、過度のナショナリズムなどというものはほとんどないわけですから、こういうことについての理解というのは十分日本人サイドもできる時代を迎えてきつつある、時代は変わりつつある、こう思うわけです。そういうことで、もう一度ひとつ大臣、積極的に今後の御研究、御検討がなされますかどうか、お聞きしたいと思います。
  94. 秦野章

    秦野国務大臣 御趣旨のところは私もよくわかります。ただ、制度の問題になって、どこまで具体的な法律化ができますか、さっきおっしゃったように、ある程度時が解決するというような、歴史をもって見なければならぬというような問題が、この日韓関係にはあると思います。そういうことで、御説のところは、十分研究さしていただきたいと思います。
  95. 田中常雄

    田中(常)政府委員 在日韓国人でございますけれども、これは日本社会に非常に定着した人たちでございますし、それと同時に、本国政府から外交的及び領事的保護を受けていることも事実でございます。したがいまして、その他の外国人と外国人性においては全く同一であると考えています。しかしながら、日本に今日までそれらの人たちが定着した経緯等々につきましては、先ほど申し上げましたように十分に考えております。そして現行法においては、一般永住を許可される韓国人につきましては、その家族状況とかわが国における定着度、そういうものも十分考えまして、今後とも、協定永住者に準じたような処遇に努めていきたい、そういうことを考えております。
  96. 中野寛成

    中野(寛)分科員 そこで、もう一度大臣にお聞きしたいと思いますが、現在、たとえば他の外国人旅行者またはそこからスタートした一般の永住者等々と同じ登録法で在日韓国人の場合にも規定されているわけですね。先ほど来認識を深めてまいりましたけれども、在日韓国人についてはそういう方々と同じ扱いというわけにはいかない、ここには当然特別の配慮が必要であろう、このように思うわけです。そういう意味で、たとえば法的地位協定の発効に伴って、当時、出入国管理特別法というのが制定されたのですね。これは出入国管理令とはまた別のものとして特別法が制定されたわけですね。これと同じ認識で、外国人登録特別法というふうなものが考えられるべきじゃないか。しかし、これも過渡的なことですよ。こういうことによって在日韓国人の皆さんの認識をよりよい方向に持っていくということにむしろ役に立つのではないだろうか、こう思いますね。  それともう一つあわせて、各論的なことで申し上げたいと思いますが、実際に日本の地域において住民として定着しておりますので、たとえば大阪の事例では、住民の選挙で選ばれる都市計画委員のようなポストに在日韓国人の方が当選された経緯があるのですよ。民生委員とか児童委員、人権擁護委員、こういうふうな幾つかの役職がありますね。在日韓国人の皆さんの場合は、社会的に大変苦労されている方々も多い。だから、こういうところへ相談をしたいという方々もいらっしゃる。そうすると、同じ仲間の中でこういうポストの方がいらっしゃると大変気軽に相談ができるのです。こういうところへの登用が考えられてしかるべきではないか、私はこのように思うのです。  それからもう一つ、指紋押捺の義務の件、これは新たな問題として、これからまた運動さえも起こりかねない状態にあることは御存じだろうと思うのです。大方の方々は、法改正がなかったとすれば去年の秋に三年間の期限を迎えて、この再登録のための指紋押捺をさせられるところだったのですね。ただ、この前の法改正で三年が五年に延びましたね。ですから、去年の秋ではなくて、言うならば二年間延びたわけです。しかし、その二年間に、指紋押捺義務制度についての見直しの要求は大変強く起こってくると思います。指紋を取られるということが精神的にどんなに大きなショックを受けるか、負担を受けるか。ましてや、十四歳から十六歳にこれまた法改正がなされましたけれども、最初に指紋を取られるときのショックは大きいと思いますね。日本人と思って育ってきた。ところが、十六歳になった。外国人登録をやらなければいけない。指紋を取られる。区役所や市役所の窓口では他の住民に見られないようなところでそれをするような配慮をしたりしておりますけれども、そういうことでこの精神的なショックをやわらげることにはならないと思うのです。これらのことについては基本的に考え直していただいてもいいのではないかと思うのですよ。たまたま大阪府下の自治体十一市では、その廃止についての意見書の採択がなされております。それから、その事務を取り扱われる自治体の協議会である外国人登録事務協議会全国連合会でもその廃止についての決議がなされたと聞いております。これらのことについての配慮が十分なされてしかるべきではないか。だから、外国人登録事項というのが二十項目にも及んでいるのですけれども、こういうのも住民基本台帳並みに簡素化してもいいのではないかという御要望も出ているわけであります。こういう一つ一つのことが解決されなければ基本的な問題に進むことはできない、抜本的な解決にもならない。せっかく今日まで金融、住宅、公務員への登用等々、ずいぶん行政的な面での配慮が進んできました。しかし、こういう肝心のその人の心に一番衝撃を与えるようなことについて問題が残っているのですね。このことについて、まず基本認識を大臣から、そして各論については御担当からでも結構ですからお聞かせいただければと思います。
  97. 田中常雄

    田中(常)政府委員 御質問の第一点であります特別法を設けたらいかんということでございますけれども、確かに、先ほど申し上げましたように在日韓国人というのは日本国において住民でございます。日本国の社会に非常に深く定着しております。しかし、それと同時に本国政府から外交的、領事的保護を受けている外国人であることも事実でございます。したがいまして、在日韓国人が外国人である、外国人性においては他の外国人と何ら変わるところがないわけであります。外国人登録法は、要するに在留外国人の身分及び居住関係を明確にし、適正な管理を行うことを目的としておりますが、日本人の場合においては申すまでもなく適正な管理をする必要がないわけでございます。したがいまして、その対応においておのずから差が出てくるのもやむを得ないことと考えております。  それから、先ほど地方における公務員の職の問題について御指摘がございましたけれども、私が理解している限り、公権力の行使に携わるとか公の意思の形成に携わるものについては日本国民でなければならないということになっております。したがいまして、その他の地方公務員の問題につきましては、地方自治体が独自の立場から御判断されるべき点ではないかと考えております。  第三の御質問は、外国人の指紋押捺義務は廃止する考え方はないか、特に韓国人について指紋押捺義務を廃止する考え方はなきやということだと思いますが、この問題については昨年の外国人登録法改正のときに国会において十分に御論議をいただいて、指紋押捺制度を今後とも存続するということで御審議を経まして、改正法が昨年十月一日から発足したわけでございます。  申すまでもなく、指紋というのは申請人の同一人性を確認する上において絶対的に必要な資料でございます。このことにかんがみまして、外国人登録法は指紋制度を採用することによって登録の正確性を維持する、また登録証明書の不正発給や偽造、変造等を防止するように努力しております。また、外国人も、指紋を押し、外国人登録証明書を携行することによって、自分が適正な、正式な在留資格を持っている者であるということを積極的に証明し得る利益があるわけでございます。御存じのように、毎年二万数千件に及ぶ自分の氏名、生年月日等々の身分事項の基本になることについての訂正申告がございます。このような時代におきましては、本人の一貫性を確保するためには指紋押捺というのは、外国人登録法を維持するために基本的な問題だと考えております。
  98. 中野寛成

    中野(寛)分科員 時間が来ましたからあれですが、こういう形式論では物事を基本的に解決することに全くつながっていかないと思うのです。大臣、どうですか。一言だけ。
  99. 秦野章

    秦野国務大臣 国籍のあかしの指紋の問題、これは何で証明するかという土壇場の問題のときに、やはり証明はしなければいけませんから、そのときに、国によってサインなんかでやるところもあるようですけれども、現在、やはり指紋でやっているところが各国の例でも多いんじゃないですか。  そういうことで、ほかにいい例があればですけれども、これを立証する手段が何かほかにないかと私も思うのですけれども、そんなものは要らないんだと言ってしまえば、そこまで一種の国際化みたいな話に素っ飛んでしまうと、これまた別の面で困ったことがいろいろできると思うんですよ。これはなお研究する余地はあろうかと思いますけれども、目下のところではほかに余りいい方法がないというのが現状なんですね。  それから、これはさっきの御質問と関連しますから、例の職業選択の問題なんかでも、いろいろと聞いてみると司法保護司なんかには結構なっていただいている人もあるようでございます。公権力の行使という概念の中に、一般論としてはそういうことが言えますけれども、外国人を教授に採用するという立法が実現した時期でございますから、解釈でも完全なる公権力の行使でなければある程度行けるという部分があろうかと思いますし、官というか民というか、どっちともつかずのような司法保護司ではすでにそういう例があるわけですから、そのほかの領域にも拡大していくという可能性はある、私は、そういう点については今後なお努力をする必要があろうかと思います。  ただ、いま先生のお話の中で私がちょっと感じましたのは、孫子の代まで、孫子どころか、ひこだ、ずっと先になってもやはり生まれて届けたときには韓国だということでショックだというお話がありましたね。しかし、どういう意味でショックなのか、やはり外国人だ、韓国人だというところにまた誇りを持つ人もいるんじゃないでしょうかね。何年たとうが、何代たとうが私は韓国で行くんだとおっしゃる人はそれなりの自信というのか……(中野(寛)分科員「これがショックなんですよ」と呼ぶ)それがショックだけれども、それをあえて乗り越えてもやはり韓国人で行くんだという方もおられるわけですな。そんなに日本に嫌なことばかりなら、くにの方がいいわけですから、自分の本国がいいだろうということもあるわけですから。しかし生活を長年築いてきて、日本のいいところもちゃんと見てこっちにいらっしゃるのだから、そして外国人として日本に住んでいる。おっしゃるようにできるだけ障害を取り除く。言うならば、言葉は悪いけれども、差別的なことはなるべく払っていこう、こういう努力だと思うのです。御趣旨のところはよくわかりますが、なかなか現実問題としてむずかしいところもいろいろあるということは御理解いただきたいと思います。
  100. 中野寛成

    中野(寛)分科員 時間が来ました。終わりますが、厚生省から山口さんに来ていただいて、年金のことをお聞きしようと思っていたのですが、こういうことですので、申しわけありません、また改めてお尋ねいたします。ありがとうございました。
  101. 砂田重民

    砂田主査 これにて中野寛成君の質疑は終了いたしました。  次に、沖本泰幸君。
  102. 沖本泰幸

    沖本分科員 いまの中野議員のやりとりの中で引き続いたようなことになりますけれども大臣、先ほど土井さんも国籍法で御質問になっていたわけですけれども、この間私のところへ、ほかの議員のところも手紙が来ていると思うのですけれども、国籍法で母系の方も男女同じようにするということにしてもらうと、日本人の血が濁ってしまう、だから断固反対だと。これは何を言おうと、どういう考えを持とうと自由なのですけれども、そういう考え方を持っている方もいらっしゃるわけなのです。いま中野さんがおっしゃっていたような事柄についても、同じように指紋の問題に関しても言えることは、特に世界人権宣言の三十五周年、そういう年にも当たっておるわけですから、そういう折をしおにして、日本人たちの人権、日本に住む人たちの人権あるいは世界のいわゆる人類の人権に関する基本的な考え方をより向上させていくということも大事じゃないかと思うんですね。  それで、私は、きょうは差別のことに問題をしぼって御質問したいと思うのです。  そこで、この間、大臣が法務委員会で所信表明をなさったわけでございますが、その中で述べておられることは、「次に、人権擁護行政につきましては、本年が世界人権宣言採択三十五周年に当たることでもありますので、国民の間に正しい人権思想をより効果的に普及徹底させるため、各種の広報手段による啓発を行うとともに人権相談や人権侵犯事件の調査・処理を通じて、正しい人権思想の普及高揚に努めてまいる所存であります。また、いわゆる差別事象についても、関係各省庁等と緊密な連絡をとりながら、積極的に啓発活動を続け、その根絶に寄与し、もって国民の基本的人権の保障をより確かなものにしてまいりたいと考えております。」これが大臣のお考えということになるわけですけれども、さて、昨年に同和対策事業特別措置法が新しい地域改善対策特別措置法に改善されて、さらに五年の時限立法という形をとったわけですが、そのときに人権擁護局長のお話は、「部落差別は合理的な理由が全くない重大な人権侵害でありますが、今日なおこのような人権侵害事件が後を絶たないということは、まことに遺憾に存ずるところであります。」人権擁護活動の強化については、「今後ともなお一層その充実強化を積極的に図って」いく所存であります、こうおっしゃっておるわけですけれども、この新法が制定されて間もない五月に人事院の局長が講演会で差別発言を行ったという事実が出ているということになりますと、局長がお述べになった事柄と現実は必ずしも伴っていないということになりますから、ただ言いっ放しみたいになっているということになるのじゃないか。さらにその後、具体的な人権侵害事件は数多く起こっているということになるわけですけれども、そういうことにつきまして、またさらに、地名総鑑事件は、わかってからまる七年たっておるわけですけれども、九種類の地名総鑑が作成され、二百十七もの購入者が存在している。明らかになった分だけで、まだわかっていないものをいっぱい入れると、いま申し上げたことは氷山の一角ではないか、こういうことになるわけですけれども、先ほどの法務省の人権擁護局長のおっしゃったこと、あるいはことし取り組まれる大臣の所信にあって、具体的に大事なこの人権宣言三十五周年というときにも当たって、法務省はこれから具体的にどういう形でこの問題に取り組んでいかれるのか、その辺を先にお伺いしたいと思います。
  103. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  自由人権思想を普及高揚し、国民のそれぞれが人権についての正しい認識を持ち、お互いに他人の人権を尊重し合うようなそういう社会にしたい、そのような見地から、法務省では各種の広報手段によるほか、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件の調査処理等を通じていろいろと啓発活動を行ってきておるわけでございますが、今後ともこのような基本的な啓発活動は活発にやっていって、国民の間に正しい人権思想が普及徹底するように一層の努力をする所存でございますが、先ほど先生もおっしゃいましたように、ことしは世界人権宣言三十五周年ということになっておりまして、国連総会等におきましてもその記念行事を行おうということにしまして、加盟各国に記念行事を行うようにということを要請してきております。それを受けまして、予算、人員等も乏しいわけでございますが、何とかこの趣旨、要請に合うようにということで、まだ具体的に煮詰まったわけではございませんが、一般啓発においても、あるいは人権相談等われわれがやる仕事の上においてこの記念行事というものの趣旨を盛り込んで、その要請にこたえていきたい、かように思っているわけでございます。
  104. 沖本泰幸

    沖本分科員 いままでの現状とか、いまおっしゃっているようなことを伺っておると、現状認識に終わっておる。極端に言えば、人権週間がありますね。そのとき何となく各区役所とか公共機関に法務省の人権擁護に関するポスターが出て、それで終わってしまっている、極端に言いますとそういう感じをことさらに受けるわけです。  たとえて言いますと、いま申し上げたようなことで、地名総鑑等についてもそういうことをしたら罰せられる、そういう図書を購入してそのことによって就職の差別をしていったり、いろいろなことをやったら、これは明らかに人権侵害であって、これは罰せられるという罰則があればもっとやりようは変わってくると思うのですが、一向にそういう問題が起こって——お互いに被害を受けた人たちとか、あるいは人権を擁護する人たちが一生懸命になってやいやい言ってみたところで、罰則はないわけですから、結局は野放しである。法務省の方も啓発という形だけで、あなたいけませんよというような言い方。こういうことはいけませんよ、人権侵害になりますよというようなことが注意だけとかいうように言葉だけで終わってしまいますから、よりその被害が広がっていく、こういうことになるわけでしょう。だからことさらに、学校なんかで落書きがある、いろいろなことがだんだんふえてきているわけですね。そういう問題に対して、ただいわゆる活字の上で、法務省の今年度事業の中にかくかくの予算を使ってかくかくのことをやっていますということになりますけれども、それはいま言ったようにポスターでお茶を濁しておるというような、あるいは各地方自治体の人権関係の担当者を呼んで話し合いをして、会議を開いて、それで終わりであるとかいうようなことで、お茶濁し的に終わっているのではないかと見られる面が多分にあるわけですけれども、そういうものを、きちっとした罰則なり何なりはっきりしたものができないものかと私は思うのです。  そこで、世界人権宣言の三十五周年、大臣も所信で銘打っていらっしゃるわけですから、そういうところから見ますと、一九七九年に日本政府が批准した国際人権規約自由権規約二十条の二項には、「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」こういうはっきりした条項が明示されているわけですね。だから具体的にそういう事例が起こっておるわけでもありますし、現実にあるわけです。それを法務省自体も、知りませんでした、そんなのあったのですかというのではなしに、前々からそういう問題をつかんでいらっしゃるわけです。ですから、そこでこの際何らかの動きがあって抑えていくため、あるいは禁止条項なり罰則なりというものをつくって、そして差別したりすればこういうことになりますよというものがない限りはポスターで終わってしまう、こういうことになりかねないわけですからね。その辺はどうしようとお考えになっておるわけですか。
  105. 鈴木弘

    ○鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  先生のおっしゃいました部落地名総鑑、これは差別を商うものでございまして、まことに卑劣な悪質な行為だと情けなく思っておるわけでございます。そういう地名総鑑あるいはその他の差別行為、こういうものを地名総鑑問題を含めまして差別行為に対する法的規制というようなことを検討いたしたわけでございます。前にも申し上げたことがあろうかと存じますが、やはり憲法に定めるところの法定手続の保障あるいは表現の白田、出版、言論の自由というようなもののかかわり合いがございまして、法的規制を行うということはきわめてむずかしい、このように思っておるわけでございます。  なお先生、人権規約の二十条の問題だと思いますが、その規定をお引きになりました。これは二十条の一項といいますのは戦争宣伝の禁止ということでございまして、先ほど先生のおっしゃいました二項につきましても、あの一項との兼ね合い、条文全部の兼ね合いから、同和問題が直接入るものとは思っておりません。しかし、さりとて同和問題に対する悪質な差別あるいは扇動というもの、そういう趣旨はやはり酌み取る必要があると思いまして、そういうものも考えまして先ほど申しましたような法的規制というようなことも考えてまいったわけでございますが、なかなか規制がしにくい、このような考えでございます。  ただ、それではどういう対応策があるのかということでございますが、差別というのは長い歴史を持っておりまして、差別意識というのが非常に根深いわけでございます。差別行為をなくすということは、そのもとにある差別意識というものを払拭しなければならない。意識を払拭するというのはなかなかに困難なことでありますが、しかし差別行為をなくするためにはどうしてもこの差別意識を払拭する。そういうことになってまいりますと、法的規制というのも、たまたま当該の差別行為というのは鎮圧できても、反面、差別意識を潜在化させるというようなものがございますし、差別意識の払拭ということに対してどれだけの効果があるのか、疑問があるわけでございます。やはり粘り強い啓発活動、相当長時日を要しますが、粘り強い啓発活動というのが結局は抜本的な方法ではなかろうか、かように思っておるわけでございます。  それで、いま先生はまだるっこいようにお感じになられるかもわかりませんが、いま申しましたような理由から、やはりこれからも粘り強い啓発活動を続けてまいりたい、かように思うわけでございます。  それで、ポスターばかり張っているじゃないか、そういうようなお話でございますが、もちろんそれも有効な啓発活動だと思ってやってまいりましたし、これからもやってまいりたいと思います。しかし、さらにほかに工夫はないか。総理府あたりでも啓発の方法につきましていろいろ考えて、地対協に対して効果的な総合的な現実的な啓発はどのようにすればいいかというようなことの具体的提言を求めておるわけでございます。私どももそれに参加いたしまして、いろいろ検討しておるわけでございますが、いい啓発方法というのが考えられましたらそれを取り入れて啓発活動を行ってまいりたい、かように思っておるわけでございます。  なお、私どもといたしましてもそれを待っておるだけではなしに、何らかのいい方法はないかと思いまして考えましたのが、一つはたとえば悪質な差別落書きが生ずる、そういう地域に対して集中的に啓発活動を行う、その地域の地方公共団体と協力して広報紙に掲載する、あるいはビラをまく、あるいはパンフレットを配る、そういうふうな方法をとりまして集中的な啓発活動を行うということで、昨年あたりからそういう方法をとっておるわけでございます。  また、大人に対する差別意識の払拭ということももとより必要でございまして、先ほど来申し上げておりますように、啓発活動を行っておりますが「やはり一度できた差別意識を払拭するのはなかなか大変でございます。そういうことで、純真な子供たちに正しい認識を持ってもらいたい、こういうところから、従前は道府県単位で人権に関する中学生の作文コンテストを行ってまいりましたが、一昨年から全国的規模のものにいたしまして、優秀なものについては総理大臣賞、法務大臣賞、全連会長賞、その他の賞を子供たちに渡して、そのようないい作文につきましては印刷物にして関係方面に配るというようなことをしておるわけでございます。それで、結局中学生の作文コンテストといいますのは単なる……(沖本分科員「もうその辺で結構ですから。時間がなくなってしまう」と呼ぶ)ただ、純真な子供たちに対する啓発、書くことは考えることであるということで、私は非常に効果的な方法ではないか、かように考えてやっておるわけでございまして、これからもやってまいりたい、そういうことであれやこれやいろいろ適切な啓発方法は考えておる、そして実行しておる、こういうことでございます。
  106. 沖本泰幸

    沖本分科員 時間もなくなることなんですけれども大臣も薄々おわかりだと思うのです。局長さん力を入れてお答えにはなっていらっしゃるわけですけれども、やはりさっきお話ししたポスター的な感じを外れないんですね。具体的にどうしたらそういう問題が前向きに解決していくかということの問題になるわけでもありますし、そこで局長さんの発言、言葉に非常に注意されて、逆に下手なこと言うとやられないかと一つ一つ選んで答えていらっしゃる、その辺も意識的に差別になるんですよ。こういう問題、自由に議論してそして前向きに取り組んでいかないと解決しないですよ。それで、特別措置法というのは事業面が主体なんですからね、物の面ではどんどん進むところもあるし行き届かない問題も出てくるから、残事業が何であるかどうであるかという問題もあるわけなんですけれども、それ以上に心の問題をいまおっしゃっているわけです。心の問題を解決するのは大変な時間もかかりますし、努力も要るわけです。時間もかかって、努力するためにどういうことをしていったらいいかということにもなるわけですから、真剣に取っ組んでいけば何かの問題も出てくるでしょう。あるいは諮問機関つくるなり協議機関つくるなり、あるいは一般から意見を聞くなり、関係人たち意見を聞くなり、そういう形で取っ組んでいただかないと、向こうを向いて進まないと思うのです。  基本はどういうことかというと、同和対策審議会の答申の中にあるように、このことは人類普遍の原理なりというのです、差別をなくすることは。それをただ——解放同盟がいろいろ運動している。国民全体であり、世界の人類的な問題でもあるわけでしょう。だから、人類普遍の原則であり、これを解決することは国民の課題であって、国の責務となっているのでしょう、原則が、原理が。だから、国の責務を果たすにはどうしたらいいかという取り組みがなかったら解決になっていかないと思うのです。差別をすることは大変なんですよということです。人権は憲法で定められて平等なんでしょう。そういう問題に欠けているから、中学生が浮浪者を殺すような事件が起こるわけでしょう。殺すことを何とも思ってない。浮浪者はごみみたいなんだ、人間に害をするネズミを殺す、そういう概念でとらえている、そこに大きな問題があるわけです。そういう中の法務省の人権担当の皆さんがおやりになることは、国民全体にかかわってくる問題でもあるわけですし、地方的なレベルの中からいろいろ問題が起こって吸い上げられてくるということになるわけですからね。それじゃ三十五周年という一つの節目をとらえながらさらに認識して、それをどういう形で本格的なものにしていくかということでなければ、大臣が所信で表明なさったって何にもならぬということになるのではないでしょうか。僕はその点を非常に問題にしたいわけです。  去年の十二月十三日の朝日新聞に載っているわけですけれども、反差別国際会議が持たれたわけです。ここで、フィリピンの元外相代理ホセ・イングレス氏と外国の差別問題を扱っている人たちが集まったわけですけれども大臣も参考にお耳に入れておいていただきたいのですが、このイングレス氏は「平等の原理が日本国憲法の中で尊重されており、その原則に違反する差別は憲法違反であって、憲法に違反する行為を防止するために、正当な訴訟が起こされ、法律が制定さるべきで、政府の側の決断が必要だ」こう述べていらっしゃるわけです。それから、レビ氏というフランスの人なんですけれども、「フランスでは反人種差別法が成立、人々の差別行為は断罪されることになっている」、こういうことになるわけです。先ほど一番最初に述べたように、国籍法を認めたら日本人の血が濁ってしまう、まるでナチ時代と同じ考えを持っている方がいらっしゃるわけでしょう。どこの国の人たちだって、どこの国へ行って住んだって同じ権利のもとに人類は生活していけるんだ、その国の法律は守らなければならないという原則はあるわけですけれども、そういう形で物事をとらえていかなければならないじゃないか、私はそう考えるわけです。なじるわけじゃありませんけれども、もう少し問題を把握してお仕事をしていただかないと、十年一日のごとく、いつまでたっても同じ文句が大臣の所信表明で並べて、それで適当な予算が使われて、それで何か変わったかというと何も変わってなかったというようなことが起こってくると思うのですね。ただ、人権局長さんの能力がないということではないわけですよ。ないわけなんですけれども、その辺をやっぱり考えていただきたいし、大臣はわりと何でも率直に御意見をぱっぱお述べになるわけですから、お感じになった面、あるいはやっぱりこうした方がいいとお思いになる面もあると思うのですね。ただ、言葉じりをとらえたりということは私はありませんけれども、そういう意味合いで、いま申し上げたことで大臣もお感じになったと思いますし、差別的な問題というものは、大臣が前に警察畑にいらっしゃったときには、数多く実際に経験していらっしゃると思うのですね。そういうものから考えながら、今後法務省はどういうふうな形でこれに対応していかれるか、その辺をお聞かせいただきたいのですよね。
  107. 秦野章

    秦野国務大臣 いま立法の話が出ましたけれども、その構成要件なんかを考えるときに、非常にこれはむずかしいのですよね。実は私は、内務省へ入って最初にやった仕事が同和事業なんです。私はその村落の中へ入っていって、いろいろ接触して話をしたり、チョンガー時代ですけれども、そういう体験を持っています、警察へ入る前でございますけれども。したがって、その長い歴史の中でなかなかこの問題が解消しないという、何というかそういういま先生がおっしゃったお気持ちは、私も全く同感なんです。  何の手段があるかというと、いま鈴木局長が言ったような方法で、今日まで大体似たり寄ったりのことでやってきたわけですね。そのほかに何か名案はなかろうか。立法問題はなかなかむずかしいが、フランスの立法があるというお話だから、私はそういうものもよく調べてみなければならぬと思いますけれどもね。  現実には、人権に関する相談なんかが数十万、全国的に見てある。そういう相談を通じて意識を改革していくということなんかは現実的には非常にいい。それから、具体的に侵犯事件があったときに、この調査を徹底するというようなことも非常に大事だと思うのですね。そういうようなこと。  あとはまあ局長が言ったようなことで、隔靴掻痒の感はあるのだけれども、なかなか名案がないので、ひとつ先生も、何か名案があったら教えてくださいよ。私どもも、これは人類普遍の大原則でございます。こんなことは近代国家でこれからそういうことがあってならぬ問題であることは、私も重々承知しておりますので、ひとついろいろ御相談させていただいて、いい知恵があったらおかしいただきたい。われわれも外国の例なんかも調べて、何とかいま少し活発にいかぬものかなという気持ちは、全く同感であります。
  108. 沖本泰幸

    沖本分科員 時間が来ましたので終わらなければなりませんけれども、いい知恵ないかとおっしゃいますが、いい知恵ないから何とかしてくれと言っているわけなんで、その辺に問題ないことはないのですけれども、やっぱり前向きに取り組んでいただきたい。いろんなところの意見をお聞きになっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  それで、最近はむしろ知らなかったとかおれは差別する考えはなかったとかいうことで同じ問題が起こってきているわけです、具体的な問題がね。そこにこの問題の根深さというものがありますし、全然憲法の平等原理がどこか浮いてしまっているのが現状なんですね。そういう点を踏まえて、やっぱり法務省は法の番人に当たるわけですから、そういうことで国民に憲法の本質をよく知らせる、それこそ啓蒙活動なり何なりというものが大事だと思うのですね。それは少年非行にもつながっていく問題じゃないかと思いますし、先ほどの外人登録法の問題も出ましたけれども、すべてに通じているんじゃないか。日本人だけ優秀だ、だからほかの者を受け入れないというような物の考え方が根っこにある。あるいはその中で、同和の人たちは何か朝鮮征伐のときの捕虜であったとか、いろいろな間違った考えがまだずっとあるわけなんです。同じ血をして同じ民族で同じような生活をし同じ日本人なのに、生まれたところが地域から生まれたら、もうそういう差別を受けているという現実があるわけです。そのほか何ら変わりがないわけですからね。その辺もよくお考えになっていただいて、今後十分に取り組んでいただいて成果が上がるような形にしていただきたいとお願いしまして、質問を終わります。
  109. 砂田重民

    砂田主査 これにて沖本泰幸君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、法務省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、来る七日午前九時三十分から開会し、大蔵省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十五分散会