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1983-03-04 第98回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本分料会昭和五十八年三月三日(木曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月三日  本分料員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       砂田 重民君    高鳥  修君       宮下 創平君    稲葉 誠一君       藤田 高敏君    大内 啓伍君 三月三日  砂田重民君が委員長指名で、主査選任され  た。 ────────────────────── 昭和五十八年三月四日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席分科員    主 査 砂田 重民君       高鳥  修君    宮下 創平君       稲葉 誠一君    藤田 高敏君       湯山  勇君    大内 啓伍君    兼務 井上 普方君 兼務 小林  進君    兼務 沢田  広君 兼務 新盛 辰雄君    兼務 渡部 行雄君 兼務 岡田 正勝君    兼務 竹本 孫一君 兼務 野間 友一君    兼務 渡辺  貢君 兼務 楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房会         計課長     斉藤 邦彦君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省中南米局         長       羽澄 光彦君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         外務省情報文化         局長      三宅 和助君  分科員外出席者         外務大臣官房調         査企画部長   岡崎 久彦君         大蔵省主計局主         計官      中平 幸典君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部企画連絡課長 内田 弘保君         水産庁海洋漁業         部国際課長  真鍋 武紀君         水産庁海洋漁業         部遠洋課長  今井  忠君         通商産業省貿易         局為替金融課長 植松  敏君     ───────────── 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     湯山  勇君   藤田 高敏君     土井たか子君   大内 啓伍君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     山口 鶴男君   湯山  勇君     中村 重光君   中野 寛成君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   中村 重光君     池端 清一君   山口 鶴男君     永井 孝信君   小沢 貞孝君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     稲葉 誠一君   永井 孝信君     藤田 高敏君   中野 寛成君     大内 啓伍君 同日  第一分科員岡田正勝君、竹本孫一君、楢崎弥之  助君、第三分科員盛辰雄君、第四分科員小林  進君、野間友一君、渡辺貢君、第六分科員井上  普方君、第七分科員沢田広君及び第八分科員渡  部行雄君が本分料兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算  (外務省所管)      ────◇─────
  2. 砂田重民

    砂田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分料会主査を務めることになりました。何とぞよろしくお願い申し上げます。  本分料会は、法務省、外務省及び大蔵省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。安倍外務大臣
  3. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昭和五十八年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、三千五百九十一億三千七百九十二万円であり、これを昭和五十七年度補正予算と比較いたしますと、百四十六億八千六百二十五万七千円の増加であり、四・三%の伸びとなっております。  一段と厳しさを増す国際情勢下にあって、近年国際社会における地位が著しく向上したわが国が、世界の中の日本として各国からの期待にこたえてその地位にふさわしい国際的役割りを果たし、積極的な外交を展開していくためには、外交実施体制を一層整備強化する必要があります。この観点から、昭和五十八年度においては定員の拡充、情報収集機能強化在外職員勤務条件改善等に格別の配慮を加えました。特に外交強化のための人員の充実外務省にとっての最重要事項でありますが、昭和五十八年度においては、定員七十七名の純増を得て、合計三千七百十二名に増強されることになります。  また、機構面では、本省においては情報課を設置し、在外においてはジェッダ総領事館を開設することが予定されております。  次に、経済協力関係予算について申し上げます。  経済協力は、平和国家であり、大きな経済力を有するわが国世界の平和と安定に寄与する主要な分野であります。中でも、政府開発援助の果たす役割りはますます重要なものとなっており、このため政府は、五十六年から六十年までの五年間にわたる中期目標を設定し、経済協力強化に努めておりますが、その一環として、五十八年度予算においては、無償資金協力予算を前年度より七十億円増の九百九十億円としたほか、技術協力関係予算、なかんずく国際協力事業団交付金を前年度補正予算比一〇・五%増の七百十九億円とした次第であります。  また、各国との相互理解の一層の増進を図るための文化人的交流予算についても、所要の手当てを講じております。  このほか、海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校二校の増設を図る等の配慮をしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に「国会に対する予算説明」とした印刷物を配付しておきますので、主査におきまして、会議録に掲載されますようにお願い申し上げる次第でございます。
  4. 砂田重民

    砂田主査 この際、お諮りいたします。  ただいま安倍外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明は省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 砂田重民

    砂田主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────   〔参照〕    外務省所管昭和五十八年度予算説明  外務省所管昭和五十八年度予算について大要をご説明いたします。  予算総額は三千五百九十一億三千七百九十二万円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費二千五百八十四億七千四百三十九万円、エネルギー対策費二十二億四千百二十一万二千円、その他の事項経費九百八十四億二千二百三十一万八千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省二千九百三十二億二千百二十六万円、在外公館六百五十九億一千六百六十六万円であります。  只今その内容についてご説明いたします。    (組織外務本省  第一 外務本省一般行政に必要な経費百六十七億一千百九万三千円は「外務省設置法」に基づく本省内部部局及び附属機関において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一、五八四名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費二十億一千三百四十二万四千円は諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三 諸外国に関する外交政策樹立等に必要な経費二十四億九十五万二千円はアジア北米中南米、欧州、太洋州、中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費財団法人交流協会補助金十億八百八十一万八千円、財団法人日本国際問題研究所補助金一億八千三十九万九千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金三千三百十五万五千円及び日中友好施設建設費等補助金一億九千五百六十四万六千円並びにインドシナ難民救援業務委託費六億五千百十万円であります。  第四 国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費八千三百五十二万四千円は国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済適確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第五 条約締結及び条約集編集等に必要な経費四千四百四十七万四千円は国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第六 国際協力に必要な経費十一億八千九百五十八万一千円は国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議我が国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会等補助金三千八百九十八万二千円であります。  第七 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費四十五億七千五百六十万七千円は国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情の紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金二十一億四千二百十二万二千円及び啓発宣伝事業等委託費五億一千九百三十一万三千円等であります。  第八 海外渡航関係事務処理に必要な経費四十五億四千二百三十六万円は旅券法に基づき、旅券発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費二十四億三千六十一万五千円であります。  第九 経済技術協力に必要な経費十七億三千五百八十一万一千円は海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに技術協力事業に要する経費地方公共団体等に対する補助金十億九千三万三千円等であります。  第十 経済開発等援助に必要な経費九百九十億円は発展途上国経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助等に必要な経費であります。  第十一 経済協力に係る国際分担金等支払に必要な経費八百七億四千五百三十四万七千円は我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十二 国際原子力機関分担金等支払に必要な経費二十二億四千百二十一万二千円は我が国が加盟している国際原子力機関支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十三 国際分担金等支払に必要な経費九億四千四百六十四万三千円は我が国が加盟している各種国際分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十四 国際協力事業団交付金に必要な経費七百十八億七千五百二十三万二千円は国際協力事業団の行う技術協力事業青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。  第十五 国際協力事業団出資に必要な経費五十一億一千八百万円は国際協力事業団の行う開発投融資事業及び移住投融資事業に要する資金等に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。    (組織在外公館  第一 在外公館事務運営等に必要な経費五百四十三億六千九百九十万一千円は既設公館百六十一館五代表部と五十八年度中に新設予定の在ジェッダ総領事館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館職員増加合計二、一二八名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費四十八億三千三百八十九万七千円は諸外国との外交交渉我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三 自由貿易体制維持強化に必要な経費四億八千四百九十六万四千円は自由貿易体制維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第四 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費三十三億二千百四十四万円は我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流の推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。  第五 在外公館施設整備に必要な経費二十九億六百四十五万八千円は在サウディ・アラビア大使館公邸事務所及び関連施設(新営第二期工事)等の建設費並びに在ネパール大使公邸土地建物購入費とその他関連経費であります。  以上が只今上程されております外務省所管昭和五十八年度予算大要であります。  慎重御審議のほどをお願い申し上げます。     ─────────────
  6. 砂田重民

    砂田主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  7. 砂田重民

    砂田主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。まず、稲葉誠一君。
  8. 稲葉誠一

    稲葉分科員 きょうは分科会でもありますし、ひとつレクチュアをしていただくというつもりで、私の方が聞くのですが、わからないので教えていただくという意味お話を願いたい、こう思うのです。  実は中曽根さんが日米安保効果的運用ということを再三言われて、それから「自由民主」という機関誌がありますが、この二月号の中でも大体同じようなことが言われておるわけですね。二月号の中ではこういうふうに言っているわけです。防衛は憲法のもとで行う、あたりまえのことですが、「そして同時に、日米安全保障条約が有効に機能するよう努力することであります。」こういうことを言っているわけであります。三月号は、竹村健一との対談の中ですけれども、結局一番自分が心配しているのはというようなことを言っておいて、もし万一のときに日米安保条約をいかに一〇〇%機能させるかという問題なのです、これが第一の仕事ですということを言っているわけです。日米安保条約が効果的に運用されるとか、それから一〇〇%機能させるというようなことは具体的に一体何を言うのか、そこら辺のところを大臣の方から御説明願いたい、こう思うのです。
  9. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米安保条約効果的運用というのは、私はこういうふうに見ているのです。これはやはり日米安保条約を効果的に機能させるためには、日米関係信頼関係が一番大事である。効果的運用というものの一つは、その信頼関係を高め強化していくということが第一である。  そして次には、やはり日米安保条約の持っておるいわゆる抑止力というものをそれによって高めていく、これが最も大事なことである。そういうことを踏まえて、私たち日米安保条約効果的運用、こういうふうに考えておるわけであります。
  10. 稲葉誠一

    稲葉分科員 私のお聞きしたいのは、具体的にお聞きしたいという意味のことを申し上げたのですが、結局、わざわざここでそういうことを言い出しておる意味が一体どういう意味なのかということですね。  たとえば、武器技術供与の問題で、国会決議がある、それとの関連供与することになった。こういうことも一つ、直接かどうか別として、安保条約効果的運用の中に入るというふうに理解をしてよろしいのではないか、こういうふうに私は思うのですがね。直接すぐ結びつくかどうかは別としまして、そういうふうに理解していいのですか。  それと同時に、これは問題になっていることなんですけれども、一月十四日、閣議了解ですか、それは日本語はいいんですが、アメリカの国務省なり何なりへ文書か何かで送ったとか説明したとかいう話ですね。これは英語で言うとそこのところはどういう形になってアメリカの方へ説明したことになっておるのでしょうか。  二つの質問ですね。前の質問大臣の方じゃないですか。後の質問の方は政府委員でいいけれども、前の質問大臣じゃないですか。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま、そうした日米関係信頼感を高めるということ、もう一つ抑止力を高める、そういう立場からいわゆる武器技術相互交流をやるということが日米間のいわゆる安保効果的運用を図ることにつながるのだ、こういうことで私たちは三原則によらないことにしたということが私たちの基本的な見解であります。
  12. 北村汎

    北村(汎)政府委員 私どもがアメリカに通報いたしましたのは、武器技術供与につきまして十四日に公表されました官房長官談話、あれを仮訳をいたしまして、そして参考に渡したということでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉分科員 だから問題のところは、英語ではどういうふうになっているのですか。
  14. 北村汎

    北村(汎)政府委員 これは要するに武器技術供与でございますので、トランスファー・ミリタリー・テクノロジーということで、それはディフェンスリレーテッド・テクノロジーのエクスチェンジの一部分として、そうしてそのミリタリー・テクノロジーを今回アメリカトランスファーすることに決定したという表現になっております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉分科員 武器技術の問題については、これはもうずっと前から国会の中で論議されていることですが、私がよくわからないのは、あれは閣議決定ではないわけなんだが、閣議了解でもないし、ただ官房長官談話というだけですか。何かよくわからない、一月十四日のあれは。そこがよくわからないのだけれども、どうなっているのですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん閣議決定ではありません、これは官房長官が言っておりますように。私も閣僚の一人として閣議に列席したわけですが、官房長官のこれまでの経過説明等聞きまして、官房長官談話閣議として了承した、こういうことであります。
  17. 稲葉誠一

    稲葉分科員 そこで、安保条約効果的運用の中でもう一つ私が考えておりますことは、考えているというか問題になるんじゃないかというふうに思っておりますことは、非核原則ですね。これについてしさいに議事録などを調べてみますと、これは書面で出ておるのは法制局長官見解だと思いますが、二つ出ているわけですね。後の方は国是とも言うべきという言葉になっているわけですよ。私ちょっとそれが気がかりになっているわけですが、まあそれはそれとして、そうすると、非核原則というものと武器技術輸出禁止関係の、技術が入るか入らないか、国会決議そのものとの関係安保条約効果的運用との関係でウエートがどういうふうになるかということですね。  質問は、結局、武器技術輸出トランスファーについては国会決議があるけれどもそれには含まれない、安保条約一つ運用として認められるというふうな意味になっているわけでしょう。それならば、非核原則国是とも言うべきということで出ているわけですから、この非核原則安保条約効果的運用ということとの関連で一体どういうふうになるのだろうか。問題は、つくらず持たずということではありませんね。向こうから入ってくるものを持ち込ませずということになるんだろう、こういうふうに思うのですが、そこのところは、安保条約効果的運用とか万一のときに安保条約をいかに一〇〇%機能させるかということがポイントだということを言っていても、非核原則はしっかり守っていくんだ、こういうことになるわけですか。そこはどういうふうになるわけですか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん非核原則国是とも言うべきものである、歴代の総理大臣もこれは国是である、こう言っておるわけでありますし、この武器輸出原則というのはわが国の重要な政策という位置づけをいたしておるわけでございます。したがって、非核原則というのは国是とも言うべきものでありますから、わが国の基本的な一つ原則ということになるわけでございます。これは変えることはできないわけです。しかし、安保条約効果的運用を行うためには、これは武器輸出原則については、その一部の武器技術について交流は認めるべきである、こういうことで踏み切ったわけであります。
  19. 稲葉誠一

    稲葉分科員 話はわかるのですけれども、結局、非核原則の最後の持ち込ませずというふうなことについては言われてもノーと答える、こういうわけでしょう。しかし、安保条約効果的運用ということになれば、言われちゃ困るわけですな。言われてノーと答えたのでは効果的運用にならないわけでしょう。  だから、日本側としても、アメリカの方から仮に一つ航空母艦なり何なりというものが核を積むこともあるし非核のものもある。こういうふうなときには、アメリカの方からいま核を積んでいるけれどもいいかい、寄港してもいいかい――いいかいというか何というか、そういう話があったら日本側としてはノーと言わざるを得ない。それじゃ安保条約効果的運用にならないじゃないかということで、そういう話をアメリカ側から持ち込まれては実際には困る。だから、結局日本としてはアメリカ側からそういう話が持ち込まれないように、その点については目をつぶっておって知らぬ顔をしておる。向こうの方もそれについてはノータッチで言わない。現実にはこういうふうになってくるんじゃないですか。それでないと安保条約効果的運用にはならぬし、それからここで言うところの安保条約を万一のときにいかに一〇〇%機能させるかという問題になってくるんじゃないですか。実際問題としてはそういうふうになってくるんじゃないですか、どうですか、そこのところは。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の場合は安保条約を結んでおりますし、安保条約効果的運用というのは日本の安全と平和のために大事なことである。しかし日本としても、安保条約を効果的に運用する上においても日本原則というものがありますから、これを超えてはできない。その原則一つ非核原則であろうと私は思うのです。ですから、おのずから日本独立国家として日本自身決定をした譲ることのできない限界というものがあるわけですから、そういう意味では非核原則というのはまさにそのとおりだと思います。  しかし、いまの武器技術については、これは政策の変更としてできる、また国会決議もありますけれども、政府の判断としてはこれにもとるものではない、こういう解釈でわれわれは決めたわけでありますから。それはそれじゃ何もかもアメリカの言うとおりやるのが効果的運用かと言ったら、そうじゃないのじゃないか。日本としては譲ることのできない一線というものがあるわけですから、それが専守防衛だとか、あるいはまた非核原則とか、あるいはまた憲法の諸原則というのが一つ日本の譲ることのできない原則じゃないだろうか、私はそういうふうに考えております。  それから、先ほどからいろいろと持ち込ませずという問題でお話がありましたけれども、これはあくまでも日本としては持ち込ませずというのが大原則日本非核原則一つでありまして、そのためには事前協議の条項がありますけれども、事前協議にかかった場合でも、この持ち込みについてはすべてノーだということは、これはアメリカに対しても、政府としては国会においても、内外に対しても、何回も言い続けておるわけですから、日米関係信頼のもとにおいてアメリカとしても当然このことは条約の遵守義務として見守っていただける、こういうふうに判断いたしております。
  21. 稲葉誠一

    稲葉分科員 私はその点は事前協議にかけないと思うのです、アメリカは。アメリカがかけたら有事のときに安保条約効果的運用その他いろいろな問題がある。だから、これはアメリカとしてはかけませんよ、知らぬ顔しているのじゃないですか。日本もそれがわかっていて知らぬ顔しているのじゃないですか。と思いますよ。しかし、いませっかく大臣がそういう答弁をしているのに、またそれを崩すようなことを質問するのはおかしな話ですから私はそういうふうに主張しませんけれども、私はどうもそういうふうに考えられますね、その点については。  話を別のことにしますが、実は去年私夏から九月にかけまして社会党の方の日ソ特別委員会の一員としてソ連へ行ったわけです。そうしてスシコフというのですか外国貿易省の次官、去年永野ミッションの一つのあれとして日本にも来ましたが、その人と会ったわけです。そのときに話が出たのは、安倍さんが通産大臣のときの話です。あれは五月かな、サミットか何かでパリへ行かれて帰りにモスクワの空港で二時間滞在をされた。それで、わが国の領土の中で二時間も通産大臣が滞在されるのだからというので、外国貿易省の方からあなたの方に表敬訪問したいという話をしたのだ。そうしたら大使館は断ってしまった、こう言うのです。それは明確に断ったのかあるいは握りつぶしてしまったのか、とにかく結論としては断ったことですね。それでできなかったということを向こうから話された。自分の方としては、こういうことを通じてできるだけのことをしたいと思っているのに、それは少しあれじゃないかというような話がスシコフさんから私どもにあったわけです。このときの実情はどういうふうなことなんでしょうか、お話し願えませんか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私は、私自身がそういう交渉をした当人でないものですからよくわかっていませんが、モスクワの空港に寄って二時間ばかりおったことは事実ですし、その間にソ連の貿易省の課長さんが出てこられまして、いろいろと接待をしてもらって、雑談をして、日本に帰ってきた、こういうことで、その間いまおっしゃるようないきさつがあったのかどうか、その辺のところは私は十分承知しておりません。
  23. 稲葉誠一

    稲葉分科員 いや、課長が何とかというのは、それは接待であって、貿易省の大臣なり次官なり、ちょっとそこのところははっきりしなかったですけれども、私も確認しなかったのだが、せっかく来られたのだからあいさつをしたい、表敬訪問ですよ、表敬訪問をしたいということを言われたわけです。そうしたら、大使館で断ってしまった。後で聞いてみたら、何か当時対ソ経済の制裁問題があったわけですね。そのことに関連してかどうかはわかりませんが、そういう話があった、こういうふうなことなんですが、僕はちょっと狭量だと思うんだな。そんなにまでやる必要はないのじゃないですか。向こうは表敬訪問をしたいというのですから、表敬訪問を受けたらいいのでぬ。これは大使館の方で何か握りつぶしてしまったらしいですよ。だから、そのときは大臣のところへ直接いかないで後からいったわけだけれども、これは外務大臣ではなかったから、通産大臣であったから、こういう意味があったのかどうかわかりませんけれども、それは僕は非常に狭量だと思うのですよ。  だから、そういうふうなことをやっておりましたね、やっていた間に、ではたとえば西ドイツとソ連との間の貿易関係はどういうふうになったかというと、日本が特にソ連との間の貿易をアメリカの言い分に従って抑えている間に、ヨーロッパの方はソ連との間の貿易をどんどん伸ばしてきたですね。西側関係では、日本がソ連との間は第一位だったでしょう。それがいまは五位ぐらいになってきているわけですね。西ドイツとソ連との場合は、西ドイツの方から言わせれば全体の大体五%ぐらいになりますね。だから、割合でいくと日中貿易より多いのですよ。西ドイツは西ドイツなりの、それからフランスはフランスなりの一つの理由があるわけですね。  一つの問題はもちろん、陸続きであって、ソ連との戦略上の脆弱性といいますか、そういうふうなものを持っていて、ソ連を余り刺激したくないという意味も西ドイツにある。二つ目は経済的ないまの問題ですね。ハンブルクがエルべ川のそばにあるわけでしょう。それからヤンブルグのあれなんかの問題があって、貿易関係で実利を図っていきたいという考え方もある。あるいは人的交流で、東ドイツとの関係で行ったり来たりしたいというようないろいろな問題があるかもわかりません。だから、日本アメリカに同調して対ソの貿易関係をずっと抑えている間に、ヨーロッパは、そんなこと関係ないということで独自のあれでどんどん伸ばしていってしまったのじゃないでしょうか。これは現実の姿としてそういうことは考えられるのではありませんか。数字の上ではどういうふうになっていますか。
  24. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 御指摘のとおり、一九六九年から七一年までの三年間、日本はソ連との貿易関係では西側で第一位を占めておりました。ところが、一九七二年以降西ドイツが第一位になっておりまして、日本はその後二位、三位、四位、あるいはまた二位に戻ったこともございますが、そういう経過を経ております。一九七九年には、御指摘のとおり、西独、アメリカ、フランス、フィンランドに続いて第五位、八〇年、八一年も同じく第五位、こういう状況になっております。  ただ、これが制裁措置との関連で落ちたのではないかという御指摘につきましては、アフガン問題が発生したのが一九七九年の末でございます。貿易統計に何か制裁措置があらわれるといたしましても、それは八〇年以降ということになろうかと思います。ただいま申し上げましたとおり、統計の数字からいたしますれば、日本が一位から転落したのは制裁問題等が発生するはるかに前であるということが指摘できるかと思います。 第二点といたしまして、ただいまの数字は輸出入を合わせた数字でございますが、日本側輸出だけをとらえてみますと、過去二年間日本は二位及び一位を占めております。これはOECDの統計とソ連側の統計とで若干違うのでございますが、一九八二年の一月―十月でございますが、OECDの統計によりますと、日本は西独を抜いて輸出の額におきましては西側で第一位を占めております。  このようなことを考えますれば、制裁をしているから日本輸出が伸びないという御指摘は必ずしも該当しないのではないか、かように考える次第でございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉分科員 それは外務省の言い分ですね。確かにそうですね。アフガンの前からのことで比較して外務省はそうだと言っているけれども、実際には、その数字のとり方その他でいろいろな議論があるわけです。  だけれども、いまの対ソ経済制裁措置、これは見通しはどうなんですか。これはことしじゅうに解除される見通しじゃないですか。それがまず第一点。これは局長の方からでいいです。  あと、大臣に聞くのは、永野ミッションが行かれましたね。永野ミッションの行く前にアメリカがやはり二百何人の経済ミッションをソ連へ送っているわけですよ。だから、口で言うのと実際とはまた別。別という言葉は悪いけれども、どんどんやっているので、それをまともに受けてやっていく必要はないのだというふうに私は思うのです。そこで大臣にお聞きいたしたいのは、この永野ミッションが行かれた意味なり、それから帰ってきて恐らく大臣に話があったと思うのですが、それを受けて今後どういうふうにしていこうと考えられているか、あるいは永野ミッションの効果といいますか、それに対してどういうふうにお考えでしょうか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 永野ミッションは二百数十人という大使節団でありまして、アメリカも大体同じぐらいのミッションを出しております。向こうでは貿易相を中心にして会議を続けられまして、チーホノフ総理大臣、それから第一副首相等にも会われて、永野さんのお話を聞きますと、会談はお互いに対立する部面も意見の相違する部面もあったけれども、全体的には非常に友好的で、貿易を伸ばしていこうというソ連の非常に強い熱意が感じられた。それをまた日本に期待する熱意も感じられたということでありました。共同声明も出したわけでありますし、また、来年は今度は第二回目を引き続いて東京でやるということの合意をしたということでございますので、こうした永野ミッションの訪ソというものは、日ソ間の対話を進める上においては非常に有意義であった、有益であった、こういうふうに私は思っておりますし、こうした訪ソを契機にして日ソ間のいわゆる民間の貿易が伸びていくことは心から期待をするわけなのであります。  ただ、御承知のように政治的な問題、領土問題であるとか、あるいはまた、制裁措置といいますか対ソ措置の問題等については、まだまだ未解決であることはいまさら申し上げるまでもないわけで、そうした国際情勢の認識等については意見の相違もあったようでございますが、全体的には非常に有益ではなかったかと私は思っております。貿易の問題も、公的信用の問題等はケース・バイ・ケースであるわけでございますから、今後ソ連のそうした強い熱意があれば民間貿易の方はこれから相当進むのではないだろうか、私はこういうふうに考えております。
  27. 稲葉誠一

    稲葉分科員 アメリカのミッションが去年の十一月に行きましたね。二百五十人ぐらい行ったでしょう。議員も行っているわけですね。上院議員が五名ぐらい入っていますね。相当大規模なものが行っているわけです。  そこでちょっと、前に出ました対ソ制裁は事実上全面解除の方向にアメリカとしても向かうのではないですか。そこを外務省としてはいまどういうふうにつかんでおられるのですか。
  28. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 西側の一連の対ソ措置の原因は、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入それからポーランドに対する介入ということでございます。したがいまして、ポーランド及びアフガニスタンの情勢に改善がない限り、一たんとり始めた措置を解除するということはきわめて困難ではないかと思います。  この措置は何も日本あるいはアメリカだけがやっているわけではなくて、西側の連帯という形で進められているものでございまして、これは国によって若干ばらつきがございますが、その目的とするところ、それからソ連に対して犠牲を求めるという基本的な態度においては共通する部面がございます。いま申し上げたとおり、原因になっているアフガンの情勢あるいはポーランドの情勢に基本的な変化のない限り、解除することは決して容易ではないと考えております。  他方、東西経済関係につきましては、一昨年以隣、先進国サミットの場で協議されております。今年も五月末にウィリアムズバーグでこの問題が討議されると思います。そこら辺の議論の進め方も検討しなければなりませんが、筋論としては、ただいま私が申し上げたとおり、現実の情勢に変化がない限り、原因に変化がない限り、制裁を解除することはきわめて困難ではないかと思っております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉分科員 形の上ではっきり制裁を解除するということを声明するとかなんとかいうことは別かもわかりませんが、それが事実上緩められる方向にどんどん進んでいるわけですよ。NATO諸国だってそれをまともに受けているわけじゃないので、そこら辺は今後の問題として十分お考え願いたい、こういうふうに私は思うわけです。  そこで、注目していただきたいのは、たとえばいまカイロに行っています中江大使がユーゴにおりましたね。ユーゴのとき、私もユーゴに行ったものですからお会いしたり何かしていますが、帰ってきまして、カイロに行く前に講演しているのです。その中で言っているのは、バルカンを中心とした情勢の中で、ユーゴスラビアとソ連との間がいま非常に密接な関係になっているのです。ということは、ユーゴでできた品物を買ってくれるのはソ連が一番多いのですよ。だから、ソ連に対する貿易関係が物すごくふえているのです。これは御案内だと思いますよ。トルコはNATO側、ギリシャは社会主義国といいますか、バルカンの情勢全体の中でもことにユーゴスラビアというのは非同盟の中立で、チトーが亡くなった後は情勢が変わったかどうかは別として、態度そのものは全然変わっていないと思いますから、そこら辺で今後十分注意していただきたいと私は思っておるのです。  そこで、別なことになるので、これはあるいはほかの人からも質問があるかと思うのですが、実は私も、去年ソ連に行ったときに質問しようと思ったのですがなかなか聞けなかったのですが、私が疑問に思っておりますことは、これは条約局長でいいですがヤルタ会談といいますかヤルタ協定といいますか、その持つ国際法的な意味一つ。  それから、それに基づいてソ連が八月九日に参戦したわけでしょう。八月六日広島、八月九日長崎へのアメリカの原爆投下、こういう形になってくるのでしょうか。そうすると、いま言ったソ連の参戦、アメリカの原爆投下は国際法的に見てどういうようになるのですか。違法なものとして見ていいのですか、あるいは当不当という形で見るのか、そこらはどういうふうになっていますか。
  30. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 世上ヤルタ協定と言われているもので、いま稲葉委員から御質問がございましたのは、ヤルタで三国間、スターリン、ルーズベルト、チャーチルの間で署名いたしました文書のことを御言及になっておられるのだろうと思いますが、これにつきましては、従来から政府が北方領土との関連で再三御説明しておりますとおり、わが国としてはそもそも何ら関知しないところであるし、いわんや国際法的に言ってこれによってわが国の領土処分というものとの関連で何ら拘束されるものでないということは、従来から申し上げているとおりでございます。  それから、御質問のもう一点の、アメリカ日本に対します原爆使用の問題につきましても、これも従来から御答弁申し上げておりますが、いわば国際法の背後にあります人道主義と申しますか人道的精神に照らせば、そういうものには反するものであろう。しかし、実定国際法で原爆の使用が禁止されているかと言えば、それは禁止されているというところまでは言えないであろうということが、戦後、原爆使用の問題に関連しまして従来から種々の機会に政府が申し上げているところでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉分科員 原爆の方の問題については、たしかカナダか何かの判例があったように思うのです。日本でも判例があったと思いますが、私が聞いているのは、ソ連の八月九日における参戦がヤルタとの関連があるのかないのかということが一つ、それからヤルタは日本のことに関連がないわけですけれども、その参戦が国際法的に見て一体違法なのか違法でないのか、こういうことです。
  32. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ソ連の対日参戦につきましては、当時存在しました日ソ間の条約関係から見て、これは明日な条約違反である、これも従来から申し上げているとおりでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉分科員 従来から言われていることは私も知っているわけですが、そうすると片方は明確な条約違反であって、片方は国際法的に見ると、もちろん実定法の規定はありませんね。そういうように予想してなかったわけですからないのはあたりまえなわけですな。だから、それも国際法違反であると理解していいと私は思っておるのです。  そこで問題になってまいりますのは、ソ連の場合、その後のこと。参戦をした、そしてそこの人たちをシベリアなんかに抑留して収容しましたね。これが法律的に一体どういうふうに見られるかということです。その後、これに対して賠償したとかしないとか、これは問題が別ですよ。それはまた後の問題ですから、そのことをいま私ここで聞いているのじゃなくて、シベリアへ抑留し、収容したことが国際法、ことにジュネーブ条約との関係で一体どういうふうになるのかということです、私が聞いているのは。
  34. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ソ連が、日ソ間におきます戦闘行為の終了後も長期間にわたりまして、わが国の軍人、民間人、法律的に申し上げますれば戦闘員、非戦闘員を含めましてシベリアにおいて抑留いたしまして、非常な苦痛、困難な環境においてそれらの方々を種々の労務に服せしめたということについては、国際法的に見て不法な行為であろうということでございます。これも従来から申し上げていることでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉分科員 話はそこまでで切っておいて、その後の日本政府の処置とかなんとかということは、これは私はここで質問するわけじゃありませんからね。  そこで、いまのソ連とのいろいろなつき合いの中で問題になっているのは、たとえば外務省が私どもの方へ配ってきてくれた書類ですよ。私の方からくれと言ったのではなくて、皆さん方の方で配った書類の中で、京都大学の高坂さんが「西側同盟の行方」というので日本国際問題研究所で講演したのがあるのですよ。これは高坂さん一流の、関西弁でなかなかおもしろい見方をしているわけですが、その中で結局、いろいろなことを言っておられますよね、ソ連についてのつき合い方で。やはりミックスド・ポリシーだ、混合政策が必要だ、とういうふうなことで言っておるのですが、結論的なことだというふうに私が見ていることは、「デタントは壊してはならないという結論が出てきます。このことは、やっぱりピーター大帝以来二百数十年間、ロシアとつき合ってきたヨーロッパ人の方が、私は感覚的にすぐれていると思います。アメリカは、日本ほど新しくはないけれども、何といったって経験不足ですから。その意味で、ソ連とのつき合い方については、ヨーロッパからわれわれは大いに学ぶことができるし、大体ヨーロッパと共同で行動しておいて、よろしいだろうという感じがするのであります。」こういうふうに言っているわけですね。  これは高坂さん個人の考え方だと言えば個人の考え方ですわね。恐らくいまの中曽根内閣の中では、高坂さんはどの程度のあれを持っているのか知りませんが、いま一番中曽根さんがあれしているのは、香山健一さんが一番多いのかな。非常にタカ派ですわな。それで、もとは全学連だったけれども、いまは非常にタカ派になっている人ですわね。ですけれども、高坂さんは別ですが。  それから、また今度は、ある雑誌に随行記と称して書いている方がおられるので、私も本当に随行したんだとばかり思っていたんだ。そうしたら、別に随行でも何でもないらしいですね。その人のせがれさんなんかは、これははっきりとした安保改定論者ですよ。それであれでしょう、いまの日本安保条約というのは片務条約だからこれを双務条約に改定するんだ、それはアメリカからも盛んに出てくるはずだと盛んに言っておられる人ですし、それから自分自身も、自分自身は安保改定論者だというふうなことははっきりは言っていないけれども、そういうふうにとれますわな。これは中曽根さんの好みですから、安倍さんの好みとは違うかと私は思うのですが。  それで、いまここで高坂さんが言っておられるような「ヨーロッパからわれわれは大いに学ぶことができるし、大体ヨーロッパと共同で行動しておいて、よろしいだろうという感じがするのであります。」という、この理解の仕方について、これはきわめて現実的な考え方だ、こう私は思うのですが、何かもし大臣のお考えがありましたら、どうでしょうかね、ソ連とつき合う場合の一つのポリシーというか問題について。     〔主査退席、宮下主査代理着席〕
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非常に含蓄のある説明じゃないかと思います。去年もやはり対ソ制裁措置について、アメリカとヨーロッパの考え方といいますかが相当相違をして対立、ヤンブルグなんかについて対立が起こったことは事実でございますし、これからもやはりヨーロッパのソ連に対する考え方、アメリカのソ連に対する考え方、日本のソ連に対する考え方、いろいろとニュアンスの相違等もあるわけですが、対ソ措置というようなことについてはやはり少なくとも西側が一致してやらなければ意味がない。アメリカだけが突出したって意味がありませんし、あるいはヨーロッパが独自の道を歩いたのではこれまた崩れてしまうわけですから、日本の立場からいいますと、やはり西側諸国が結束をするといいますか、一致してそれに対処する。     〔宮下主査代理退席、主査着席〕 ですから、コンセンサスが西側諸国に生まれない限りにおいては大きな効果は上がらないのじゃないか。そのコンセンサスのために日本としてもそれなりの努力はすべきであるということでやってきておるわけであります。私たちアメリカに対しては常に、日米が一致するとか、アメリカだけとかいうことでは本当の効果というのは上がっていかないんじゃないか、やはり西側が一致結束してこれに当たりましょう、そういうふうにアメリカも努力してください、ヨーロッパも努力してください、日本も努力します、こういうことを言っているわけですね。そういう意味においては、やはり西側の中でヨーロッパの考え方といいますか、そういうものが非常に重要であると私たちも考えております。
  37. 稲葉誠一

    稲葉分科員 実は、いつでしたか、鈴木さんがASEAN、東南アジアに行ったときにバンコクへ行かれたことがあるのです。日にちは忘れましたが、一月十七日と私も覚えているのですが、行ったときに、ちょうど鈴木さんが着かれた日に私も着いたんですが、全然別のことです、私はツアーで行ったのですから。向こうにいる連中の話をいろいろ聞いておったときに、東南アジア外交全体を通じてこういう話が出てくるんですね。  一つの問題は、たとえば日本人はうそつきだ、こう言うのですよ。私は、日本人はうそつきだというのは何を言っているのかよくわからなかった。そうしたら、福田さんが総理のときに行かれて、バンコクでいろいろな借款、援助の話を相当皆さん方にされた。ところが、ちっともそれを実行してくれないじゃないかと言うので、どうも日本人というのはうそつきだという話を盛んに私にするわけです。だから私は、どうも話はよく確かめてみないとこれは率直に言うとわからぬという考え方だったものですから、帰ってきて、外務省に聞いてみた。そうしたら、いやそれは違います、向こうからプロジェクトが出てこないんだ、かっこうなプロジェクトがなくて出てこないから、約束はしたんだけれども、率直に言って、こちらの方から協力しようとしてもできない状況で、向こう側の事情でおくれているんだ、こういうふうな話なんですね。  だから、大体話もわかってきたんですけれども、それはそうなんですけれども、とにかく、だから東南アジア全体の国に対して日本のいろいろな政策なりいろいろな協力、約束というふうなものが、よく説明をしていかないと、非常に誤解をされてくるわけですね。今度行かれる中で恐らくそういう話が出てくる、私はこう思うのです。出てくると思うのですから、そこのところはよく考えて、説明をし、日本に帰ってきても、そのことをよくわかりやすく説明しないと誤解を招きますね。日本人はうそつきだと盛んに言われるものですから、私も心外に思って、帰ってきて、いろいろ聞いたんですね。その話はわかったわけです。それが一つですね。それは答弁は要りませんけれども、十分心していただきたい、こう思うのです。  そうすると、今度五月ですか、連休にASEANに行かれますね。そうすると、ASEAN外交についての外務省、外務大臣の姿勢、同時に、彼らが一番、彼らというか、言葉は悪いのですけれども、一番心配しているというか、一番考えていることは一体どういうことなのか、こういうことですね。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり日本の場合は、日本自身アジアの一国でありますから、ASEAN外交というのは非常に大事な地位を占める、こういうふうに思います。戦争前からのいろいろの歴史的な事情もありまして、特にASEANに対してはこれを重視して外交を進めていかなければならぬ。これは経済的な面というだけでなくて、人的な面においても、あるいはまた感情の上でいろいろの長い歴史的なあれがあるものですから、ちょっとしたことが大変な事態につながっていくということですから、やはりそういう点等も注意深くわれわれは考えてつき合っていかなければならぬところでございます。そういう面でずっとやってきておりますし、特に経済協力等についてはODAで七割はASEANに集中しております。ですから、ASEANから、日本がうそをついているとか、やってくれないじゃないかと言われるのは、むしろ私たちからあえて言えば、心外のような気持ちもするわけですけれども、しかしまあやはり大事な国々でありますから、十分向こう側の考えも聞きながらこれに積極的に対応していくということが必要じゃないだろうか。  やはり大事なことは、日本アジアの一国であるという立場に立ってAS EANの方々と徹底的につき合うということである。特に首脳とか、あるいは関係の閣僚とか、議員とか、そういう交流がASEAN諸国については非常に大事じゃないだろうか。そうすることによって、いろいろと誤解もあるとすれば、これも解けてくるわけでありまして、今後に向かっての友好親善関係が進んでいくわけですから、いろいろと経済的な協力もする、あるいはまた政治的にもいろいろと情報の交換等ももちろんやると同時に、人的交流、特に心のつながりというものを高めていくというのが大事だろう、こういうふうに考えております。そういう基本的な考え方で進めてまいる考えでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉分科員 いまのお話の中で出てきましたのは、戦争前からいろいろ密接な関係がもちろんあるわけですね、いい関係であったかどうかは別として。だから、それを逆なでするような人事をやると逆効果になる可能性があるのですね。私はどこの国だということは言いませんけれども、たとえばある国の大使は、いまはやめましたけれども、そこの国での戦闘に参加していたわけですね。そこの国での戦闘に参加していた人がそこの国の大使になって行っているわけですよ。そういうようなことがあって、向こうの方としては、相当気分的にもおもしろくないというふうな感情を持っておられるというふうに私は思うのです。  それから、こういう公の席で言うのはどうかと思いますけれども、私は非常に感心しておりますのは、たとえば京都大学の矢野暢さん、あの人なんかバンコクの郊外に行って、電気のないところで小屋みたいなところに住んで、そして現地人――現地人という言葉は悪いけれども、タイ人の生活を学び、あの中へ溶け込んで、そしていろいろな東南アジア全体の問題について勉強されてこられたわけですね。いまいろいろな本を書いておられますけれども、私は話を聞いて非常に感銘を受けた。ああいうふうに現地の中へ行って溶け込んで、電気もないところに一年半くらい住んでいたのかな、そして、実情を勉強してこられているわけですから、そういうようなものを外務省としてもやられて、今後の両国というか、それらの国々との間の親善というものを図っていくというやり方を私は講じていく必要があるのではないかというふうに考えているわけです。  そこで、いまお話の中に出なかったのですけれども、一番心配しているのは、ある時期においてそれらの国々は日本がある程度軍備を持ってくれということを望んでいたところが確かにあるのです。それはいろいろな理由があるのですが、あったことは事実だ、全部じゃないかもわかりませんけれども、ところが、いまは日本の軍備がどんどんふえてきて軍事大国化をしようとしているということで、今度は逆に日本がまたアジアの一員というようなことが、日本アジアの盟主となって、またそれらの国々に対して支配というか覇権というか、そういうふうなものを及ぼそうとしているのではないかということでまた心配をしているということですから、日本が軍事大国化をしないということを約束して、実際はどんどんなりつつあるわけですけれども、しないということを約束しているなら、そういうふうなことをもっとはっきり説明をし、同時にそれが具体化、日本の中でも軍事大国化しないことを実質的に確保する必要が私はあるのじゃないかというふうに思うわけですね。だから、それらの国々が一番日本に対して心配していることはいまの点じゃないでしょうか。どうでしょうか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり過去のいろいろないきさつがありますから、アジアの諸国が心の奥底で一番恐れておることは、日本が軍事大国になるということじゃないだろうか、私もその一点じゃないだろうかと思います。ですから、日本でいろいろなことが報道されますと、非常にそういう面では敏感に反応するわけですが、今回の日米首脳会談においても十分日米間で話し合った、そして、日本の立場というものがASEAN諸国にも理解をされなければならぬ、こういうふうに考えて、私もASEANの大使を早速呼びまして、日米首脳会談の実相はこういうことである、日米が決して軍国主義の道を進むわけではないし、またそういうことに日本はなれないと私は思う、なれる状況ではないと思いますし、なろうといってもなれるわけじゃないのですから、そういう日本の実態、防衛の現状、それから防衛に対する考え方、そういうものを詳しく説明をいたしまして、大使の皆さんはほとんどこれは理解をされたと思います。  ASEANの諸国も、日本がみずからの国をみずから守るという立場で防衛力を増強するということについては、これは認めているわけです、首脳も認めているわけですから。それが外へ出ていくのじゃないかというおそれがある。これはそういうことは絶対にあり得ないことだということを説明し、こういう点については私は、首脳の皆さんも、あるいはまた大使の皆さんも皆理解をしておられる。今回中曽根総理がASEAN諸国に行かれる際に、そういう面について日本のこれから進んでいくべき道、あるいはまた日本の防衛に対する基本的な考え方、あるいは安全保障に対する基本的な考え方というものを十分説明されれば、これらの諸国は理解をしていただけるものである、そういうふうに私は確信をいたしております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉分科員 安倍さんがそういうふうに確信されるのと、中曽根さんが考えておることとはあらわれてくるところが大分違うように私は思うのですけれども、それをここで議論してもしようがないしあれだと思います。  そこで、私は最後に希望というかお願いをしておきたいのは、これは再三前から出ていることですけれども、外務省というものは非常に重要な役所ですね。安倍さんは通産大臣をやっておられたからわかりますけれども、通産と外務の間がどうもうまくいかない。いまはうまくいっているのかわからぬけれども、うまくいかないですね。前はとにかく私は恥をかいたのです。  二、三年前にアメリカへ行って、ニューヨークへ行って、メキシコへ行って、松永さんがメキシコ大使のころ、国会から行ったのですが、それからアルゼンチンへ行って、サンパウロへ行って、リオへ行ったのかな、あちこち行って恥をかく。何を恥かくと言って、日本というのは不思議な国ですねと言われるわけです。これは通産大臣が来て一週間たったら外務大臣が同じところへ来るというのだ。同じような話でそのたびにみんな集まらなければならないというわけなんです。これ以上言いませんけれども、とにかくみっともなくてしようがなかった。そのことはだんだん直ってきてはいるでしょうけれども、この点は十分今後注意をしてやっていただきたいということが一つ。  それから、私が行ったときに聞いたのですが、たとえばアフリカのリベリアという国があるでしょう。南米にいた人がこれからリベリアに移るわけだ。それで九月に行ったのですけれども、十月一日からリベリアへ移るのだという話をするわけですね。リベリアというのは一体どうなんだと聞いたら、アフリカの東海岸というものはある程度極楽だ、こっち側の西海岸というものは地獄だという話をされるわけだ。枝村さんは中南米局長なんかやっておられたからわかるでしょうけれども、アフリカの中の特に西海岸へ勤める人たちの健康管理の問題、これが一つあるでしょう。  それから、四、五年前にフランスへ行ったときも、やはりフランス語ができる人はどうしてもアフリカへ行くことになります。これからアフリカへ行くのですと言うので、いや、外交官というものは世界じゅう回って歩けていいなと私が言ったら、いや、とんでもない話ですよということを言っておられたけれども、これはノンキャリの人だったかもわからぬけれども、だから、半年に一遍ぐらいですか、一年に何回かパリに帰すというような話をしていましたけれども、たとえばリべリアなんかもひどいものでしょう。だから、そういうところへ行った人たちの健康管理の問題なんかも十分気をつけてあげていただきたい、こういうふうに思います。  いま日本人学校の問題が出ましたね。日本人学校の問題も大使館の方でいろいろ一生懸命やっておられますけれども、向こうで勉強をして、今度はこっちへ帰ってきたときに、それが何かつながらないようなこともよく私は聞くのです。いま特にそれを聞くわけではありませんけれども、いま言ったような健康管理の問題、人事の問題等について十分配慮を願いたいし、それから職員がイタリアより少ないわけでしょう。それからインドより少ないのでしょう。とてもちょっと常識では考えられないのですよ、そこら辺のところは十分考慮して拡大に努めていただきたい、こういうふうなことを申し上げます。  それについての大臣配慮というか、お答えを願って、質問を終わります。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外務省と通産省との関係、それはどこの役所でもそうですけれども、多少のごたごたというのはあるわけですけれども、しかし、少なくとも対外関係についてはやはり一本で臨むということでなければ、これは日本世界に対して恥ずかしい思いをすることになるわけですから、この点については十分気をつけてやらなければいけないと思います。幸いにして外務省も通産省も幹部の段階ではその辺についてはしょっちゅう意見の交換をしてだんだんとコンセンサスもできておりますし、これからもこの辺は余り問題が表に出てみっともない思いをしないように、私自身も通産大臣をやりました経験からそういうことのないように十分努力していきたい、こういうふうに思っております。  それから、瘴癘地で働いておる外交官、これは本当に気の毒だと思うのですが、日本のためにやってくれているわけですから、それなりの待遇をしなければならぬ。そういうことでこれまで外務省もいろいろ予算措置等に努めてまいりましたし、五十八年度は不健康地に対する手当て等についても多少のことはプラスしたわけですけれども、まだまだ十分じゃない、こういうふうに思っております。ですから、これは今後ともまさに稲葉先生初め皆さんの御協力も得ながら充実をしていきたい。予算の面もまだまだ不足しておりますし、人員に至ってはいまお話しのようにわれわれは五千人、少なくともインドぐらいの定員を持ちたいということで努力しておりますが、まだまだ三千数百人ということでほど遠いわけですが、これについてもこれから努力を積み重ねていかなければならぬと思っておるわけでございます。世界の中で日本外交というのは非常に重要な位置を占めておるだけにわれわれの責任は重いと思っておりまして、全力を尽くして御期待にこたえるように邁進したい、こういうふうに思います。
  43. 砂田重民

    砂田主査 これにて稲葉誠一君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  44. 井上普方

    井上(普)分科員 一つは、生物兵器に関する条約と同時に国内法ができたのでありますが、そのとき私、ちょうど外務委員会に所属しておりまして、政令の骨子でも持ってこいと言ったのです。ところが、それはできておりません、早速にやります、こういうお話でございましたが、いまだ政令ができたような気配がないのですが、これはどうなっておるんです。
  45. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま井上委員からお話がございましたように、前国会の外務委員会におきまして本条約が審議されました時点で御指摘いただいたところでございます。その際には、法律案を出すからには政令も添付すべきではないか、また仮にできないとしてもおおよその考えぐらいは御説明できる体制にあるべきだというふうな御叱正を賜ったと覚えております。それに従いまして、引き続き、関係省庁とできるだけ早く政令を定めることができますようにということで協議を続けております。  ただ、御承知いただいておりますように、生物剤を業とする者の範囲は非常に多岐にわたっております。また、これを監督する立場にございます省庁、これも多岐にわたっておりまして、問題が非常に複雑であるということからいまだ結論を得るに至っていないというのも事実でございます。しかしながら、繰り返し申し上げ、御理解を賜りたいと思いますのは、各省庁とも、せっかく法律お認めいただいているのでございますので、何とかして政令の制定も一刻も早くいたしたいということで、ただいまも鋭意検討しているところでございます。何とぞいましばし御猶予を賜りたいと存じます。
  46. 井上普方

    井上(普)分科員 あの法律は、御承知のように、かなり制約事項があるわけなんです。それの政令ができなければ魂の入ってない法律なんです。こういうのができなければおかしいじゃないか、考え方だけでも、政令案の骨子だけでも示せと言ったのですが、できないで今日に至っておる。  大臣、どうです。法律ができて、政令の骨子すらできていない、そういう法律案というのは、あり方自体どうです。政治家としての大臣のお考え方を示していただきたいのです。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 法律がせっかく国会で成立して、これが実際にないということになれば、行政府としての責任でもあろうと思います。したがって、それに伴うところの政令であるとか省令であるとかそういうものは、やはり法律ができて公布されれば、それとともに実行できるように行政府として全力を尽くすということは当然であろうと思いますが、いま話を聞いてみますと、なかなか各省庁間の調整が十分終わってないということであります。しかし、せっかくの法律ができたわけでございますから、ひとつ外務省としても政令が一日も早く施行できるように、鋭意最大の努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  48. 井上普方

    井上(普)分科員 これはなかなかむずかしいんだ。むずかしいんだけれども、国連総会もあることだし、かっこうだけつけておけというようなことで生物兵器禁止条約、それに伴う国内法をつくったのだと私は思う。できぬものであれば、もう少し緩やかなものにしたらいいのですよ。それはともかくといたしまして、かっこうばかりつけるなということを申したいのであります。  私は、いま予言しておきますが、あと一年たっても政令はできないと思う。できる自信ありますか。法律はともかくつくったけれども、政令がなければあるいは省令がなければ実効のない法律だ。あと一年ぐらいでできますか。自信ありますか。
  49. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 せっかく委員の方から早く定めるようにというお励ましの言葉をいただいておるわけでございますので、その方向で全力を尽くしたい、関係省庁にもこの点特にお願いをいたしまして、つまり非常に強い御要望がございますので何とかしてということでお願いをしております。全力を尽くさせていただきたい、これはただいま申し上げるところでございます。
  50. 井上普方

    井上(普)分科員 ちょっと待ってくださいよ。あなた、強い要望があるからって、われわれが要望しておるように言われたら困る。法律をつくったのはあなた方ですよ。われわれが何も強い要望をしてつくったのではないのですよ。国連総会に生物兵器の禁止条約をつくらなければかっこう悪いということで、それに伴う国内法をつくった。われわれがつくれつくれと言ったのではないのですよ。  しかも、その法律が実効あるようにするためには――これはまた外交問題になりますよ。日本は条約に伴う法律はつくったけれども、実効はさっぱり上がってないじゃないかということで、また海外からの批判を受けないとも限らないと私は思う。法律をつくるときには、少なくとも政令の骨子を出すのが普通常識だ。それはともかくといたしまして、外務省の若い諸君に会ってみますと、なかなか気負ったことを言うのですよ。外務省の仕事は国内の各省庁の調整もしながらやらなければいかぬ、いいことを言うなあ、それほど外務省は優秀な人材を集めているのだなと私も励ましたのでありますが、しかしこれ一つ見てもできないのですよ。そういうことを強くお願いいたしておきたいと思う。  それからもう一つ、私も外務委員をやっておりましたときに、明治からずっとの日本外務省の変遷を見てみると、外務省の暗号課というのがありましたな。暗号課というのはポストが非常に高い時代があったけれども、このごろになってくるとどうもポストが下がっているじゃないか。  聞きますと、このごろですと、暗号課の課長さんは技術屋だけれども、そんなことは心配ございません、こういう話。それじゃ、日本の暗号技術というのはどれくらい優秀なんだと聞きますと、当時の官房長は、絶対にともかく日本の暗号は解読できぬような優秀なものであります、こう承った。それほど優秀なんかいなと実は私、思っておりますと、英国の新聞で、わが国の暗号電報は外国に筒抜けになっているという記事が出ている。英国の週刊誌が、英国の内閣直属の電子通信情報機関、内閣通信本部GCHQの活動を暴露した。その中で、日本経済関係外交通信を熱心に傍受していることが明るみに出て、日本外務省は大あわてというような記事が出ておるらしい。  ともかく、日本の暗号は優秀だ優秀だというのは戦前から聞かされておったのですけれども、いざ日米開戦になってみると、日本の暗号というのは敵側、外国には筒抜けであった。ちょっと思い上がっているのじゃないですか。この点どうなんです。
  51. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 御指摘の点でございますが、私どもも確信しておりますことは、現在の私どもの使用しております暗号、これは解読されるということは万々あり得ないというふうに思っております。  ただ、この記事の根拠になっておりますのは、恐らくはそれよりかなり程度の低い一種のコードがございまして、こういうことでございますので説明、詳細は控えさせていただきますけれども、それはたとえばどういうときに使うかと申しますと、相手側との会談の内容、これはお互い知っているわけでございますから、別に高度の秘密じゃないわけでございます。ただ、これは一般には知らせたくない、つまり高度の暗号解読能力を持っておりますればたちまち解読できる、しかし、一般の普通の方がやられてはできないという種類のものもございます。恐らくはそれを指しているのじゃなかろうかというのが私の推察でございます。
  52. 井上普方

    井上(普)分科員 思い上がっておるのじゃございませんか。自分の暗号は絶対に解読されないと、この前も前任者の方は言われている。それは心配ございませんと言うのが普通でしょう。しかし、反省がないじゃありませんか。果たしてこういうような記事が出て、しかもオーストラリアにおきましても解読されておるというようなことも言われておる。心配ございませんと言いますが、これだけエレクトロニクスが発達した時代なんです。解説されないという自信は一体どこから出てくるのか、私らにはさっぱりわからない。それはともかくといたしまして、もう少し大事にしていただきたい。これはひとつお願いいたしたい。  と同時に、この前も何か事件がございまして、暗号解読がおくれたために、日本との間の時差の関係で非常に困ったというような事件がありました。何の事件でございましたかな、そのときにも質問をいたしましたところが、いや心配ございません。在外公館にも宿直をちゃんと置きまして、そしてやっています、こう申された。本省においても、暗号解読をしたら、重要なものは仕分けをいたしまして首脳部のところに届け出るようなシステムになっています、こう私に申されましたので、安心していました。  ところが、実際その後私が聞きまして調べたところによると、本省において宿直しておるのは、キャリアの人が一人おるだけですね。在外公館の暗号関係で宿直しておる人は、ほとんど技術屋さんじゃありませんか。キャリアの諸君はそのことについて宿直していますか。当直していますか。技術屋さんばかりじゃないですか。この点、どうなっているのです。
  53. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいま御指摘のとおり、電信官が電信の課に二十四時間体制をしいておるというのが本省の体制でございます。そのほかに宿直に一般の職員が当たっておる、こういう状況でございます。これは交代で当たっております。それから、在外公館につきましては、主要公館につきまして電信官がやはり二十四時間体制をしいております。そのほかに緊急連絡体制、私どもも常に緊急連絡先というようなものを持っておりますが、それは本省在外の間に整えている、こういうことでございます。
  54. 井上普方

    井上(普)分科員 それは電信官が二十四時間体制で宿直するのは当然であります。本省においてはキャリアの諸君が交代でやっておるということも承っておる。当直しておるということも承っておる。在外公館におきましては、二十四時間体制をとっておるのは電信官、技術屋さんだけじゃないですか。ですから、イスラエルあるいはレバノンのあの事件の当時に、日本の対応が非常におくれたということも、これまた事実なんです。  私は、日本外交――先ほども稲葉さんがおっしゃいましたように、日本で一番大事な役所というのはどこだといったら、私は外務省と文部省と言っているのですよ。一番大事なところだと思っています。ところが人数が少ない。だから、ひとつアタッシェをくれるに当て馬をつけてくれなんというような、くだらぬことをいままでもやってきておる。定員法の抜け道を考えるようなけちなことを考えながら、いままで外務省はやってきた。  これじゃいかぬと私は思っているのですよ。先ほども大臣が御答弁になっておったが、それはもう少し優秀な外交官をつけるべきだと思う。ただし優秀なですよ。優秀な外交官をともかく養成すべきだ、定員をふやすべきだ、こう思っています。  しかし、いまの話を聞いても、どうも在外公館との連絡が十分にいっておると私らには思えない。海外へ行きますと、それは私どもに対しましては非常に丁重なおもてなしを受ける。過剰接待でないかと私自身が思うぐらい接待は受ける。しかし、在外の在留邦人に聞きますと、もう大使館あるいは領事館についてはくそみそに言われる。まことに情けない話です。  それはともかくといたしまして、こういうような情報伝達の機関をもう少し整備すべきじゃないだろうか。電信官が二十四時間体制をとっておるだけで大きな国あるいは問題のある地域には、やはりキャリアの諸君というものを二十四時間当直がとれるような体制をしくべきだと思うのですが、いかがでございます。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 とにかく事務量というのは膨大にふえてきております。     〔主査退席、宮下主査代理着席〕 私も最近の電報の量なんかをずっと見てみますと、数年間の間に大変な増加であります。これはそれだけ日本というのが世界において非常に大きい役割りを果たしてきた、また外交が非常に大事になったという証拠であろうと思うのですが、それだけに、どうしても予算とか定員がそれに伴わないという憂えも確かにあるわけでございます。  こうしたいまおっしゃるようなことを完全に管理体制というものを整えるためには、もっともっと私は予算だとかあるいはまた定員等でちゃんとしなければならぬと思うわけでございますが、しかし、これもなかなかいま遅々として進まないという現状です。しかし、いまの限られた現状の中で、いまお話しのように暗号の管理体制というのはきちっとして、いやしくも外国から日本の暗号なんか筒抜けだなんというようなことを言われないように、これは今後戒めてやっていかなければならぬ。それなりにいまの体制の中でできるだけのことはやっていかなければならぬ、重点的にやっていかなければならぬと思うわけであります。そういう面でいろいろと外務省も苦心はしておりますけれども、私自身もそういう点には十分留意をしてまいりたいと思います。
  56. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、定員の足らぬということも十分存じておるのですよ。ふやさなければいかぬということも存じておるのです。優秀な人をひとつふやしてもらいたい。  暗号の問題にしましても、日本に果たしてそこまでの極秘事項があるかないかというのは、じきに外務省のお役人どもは、マル秘の判こを押してみたり極秘の判こを押してみたりしがちなんでありますが、そこまでの必要性のないものまで、秘あるいはまた極秘の判こをついておるような傾向があるように見受けられてならない。  それはともかくといたしまして、暗号につきましてももう少し慎重な態度であらなければならぬと思う。漏れておりませんなんと言ったって、事実こういうふうに出ているんだ。それは第二級品の余り重要でない暗号なんだ。暗号で組む以上は人に知られたらぐあい悪いでしょう。そうでしょう。人に知られたらぐあい悪いから暗号で組むんだ、それが筒抜けになっているというんだから。  暗号にも、極秘と秘とそのときどき取扱注意というのがあるんですか。暗号というのは、人に知られてはぐあい悪いからやるものでしょう。どうなんです。常識で私はわからぬから聞いておるんだ。
  57. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 したがいまして、ただいま御指摘の文書の中で暗号と申しておるのが恐らく正しくないんだと思うのでございまして、どこの国の外交サービスでもそうであろうかと思うのでございますけれども、一種の取扱注意的な種類のコードと申しますか、それがございます。これは先ほど申し上げましたように、たとえば相手国政府との交渉の経緯をただ打つ、自分の意見は入ってない、そういうことでございますと、相手国政府がそれを知っても、お互い知っておることでございますから、そういうことは構わない。ただ、それは確かに一般の方から見れば興味があり得ると思います。したがいまして、こういうふうにジャーナリズムをにぎわすこともあり得ることだと思います。しかし、御指摘のような点はさらに気をつけまして、こういう記事が出たということも踏まえて、そういうコードの使い方、それはあくまでも秘、極秘という通信内容であってはならぬというようなことは、私ども一層注意してまいるつもりでございます。  また、先ほど御指摘のように、暗号自体はなかなか破れないということ、それは思い上がりじゃないかという御指摘でございますが、確かにエレクトロニクスの時代でございまして、いろいろ私どもとしても考えていかないといけないことは認識しております。ただ、何分にも、この分野のことは余り申し上げにくうございますし、私どもとしては自信を持っているということを申し上げざるを得ないわけでございまして、その点は御了承をお願いいたします。
  58. 井上普方

    井上(普)分科員 自信を持っておるということを言わざるを得ない立場は、私はわかります。しかし、人に知られたらいかぬので暗号を組むのだから、そこらあたりはもう少しお考え願いたいと思うのです。現にこういうような記事出ているのです。  また、外交官の対応が果たして――電信官というのは技術屋さんでしょう。在外公館の当直しておるのは、技術屋さんがとにかく当直しておるだけの話で、そこには、教育はしておるのでございましょうけれども、キャリアの諸君との、文官との差は当然あり得ることだ。ここらあたりはひとつ御注意になって、定員が足らぬ、定員が足らぬでは済まされぬ問題だ。現にレバノン戦争のときも対応の仕方が非常におくれた。日本には何もわかってきてないというようなこともございましたし、こういう点はひとつ御注意になっていただきたいと存ずるのであります。  それから、ともかく週刊誌だの何に、外国報道によりますと、アトランタの事件であるとかあるいはマニラ事件であるとか、詳細は申しませんけれども、こういうのがたくさん起こっておるようですね。そして、現地におきましてはひんしゅくを買っておる外交官がかなりあるように思うのですが、これに対してはどういう処置をとられておりますか。
  59. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 アトランタのケースでございますけれども、これは現に本人が帰ってまいりましていろいろ事情を聴取いたしました。伝えられるところ、やや誇張されて伝えられているようなところもございますし、本人は大変職務熱心で、アトランタにおける在勤期間中、現地の地方官憲あるいは有力者の信頼も大変厚かったようでございまして、私どものところへもそういう方々から、ああいう記事が出たことは残念であって、非常によく任務を遂行していたのだというような手紙が来ておるようなことでもございます。  ただ、事の真相いかんを問わず、とにかく飲酒運転という疑いで、もちろん日本における規制とはアメリカ各州における規制の状況は若干違うと思いますけれども、トラブルを起こしたということはまことに遺憾なことでございますので、本人に対しては厳重に注意をしたところでございます。  マニラのケースにつきましては、帰朝して詳細を聞いたようでございますけれども、ああいうふうにボールを前の人に打ち込んだとかそういうことはなかった、あるいはゴルフクラブから除名されたということはなかったというふうなことを聞いております。  ただ、いずれにせよ、私ども在外職員というものは二十四時間職務、事務所を離れても常に在外職員としての責任と任務に思いをいたして、いやしくもそういう後ろ指を指されることのないようにということを改めて指示しているところでございます。
  60. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、あえてその詳細を、アトランタの事件、マニラの事件ということで聞きました。なぜかというと、外交官というのは国を代表してその国に駐在するのですから、せいぜい心意気を持っていただきたいと思うのです。特に外務省の教育の仕方において少し違った、私らの常識外れのような諸君が在外公館にいる、私らが回ってみますと。当然に人種的偏見を持ってはいけない外交官であるはずなのに、いやここの国民のレベルはとか、あるいは人種的偏見を平気で口に出すような若い諸君がなきにしもあらずであります。これは外務省の研修期間の間に十分こういうことができていないのじゃないだろうかという感じがするので、あえて私は申し上げておるのであります。  御承知のように、いまや百何カ国に百何人の大使ができてきた。戦前でございましたならば十二、三人でございましょう。こんな、特命全権大使として百人も出ていくということになると、あるいはレベルが低下するのはやむを得ぬ点もあるかと思う。それを補強する意味において、今度通産省と警察庁から大使を二人任命したようです。私はまことに結構なことだと思う。外務省のキャリアの諸君にすれば、ともかくじっとしていれば私は特命全権大使になるのだというような意識があって、御勉強にならない諸君もなきにしもあらずと思います。  しかし、日本はこういうような国でありますので、せいぜい優秀な忠実な外交官をやっていただきたいし、また人数もふやしていただきたいということを私はこいねがっておるのであります。しかし、在外公館の中には、われわれの期待に反する諸君が、全部とは申しませんが、間々あらわれるのははなはだ遺憾に存ずる。しかもそれが責任者であるということを考えますと、これは皆さん方の大使になられておる諸君は、あるいは戦争中あるいはまた占領下の外務省の採用の諸君だったと思う。そこには、日本の本当の外交というものはあり得なかった時代に育った人がたくさんおるのだろうと思う。その人たちにまた教育せられておる外交官の諸君の中には、遺憾ながらわれわれの意に反するような諸君もなきにしもあらずであります。こういう点をひとつ教育の面において十分に教育されまして、そして優秀な外交官を育てていただきたいことを、日本がこういう国であるがゆえに私はあえて申し上げておるのであります。  どうか、在留邦人にいたしましてもまた現地の国民の方々に対しましても、愛情を持って接せられるような外交官を数多く育てられんことを心からこいねがいまして、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 宮下創平

    宮下主査代理 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次に、湯山勇君。
  62. 湯山勇

    湯山分科員 私は、ユネスコの常駐政府代表わが国代表ですが、それの強化についてお尋ねいたしたいと思います。  本年の二月八日に、国内委員会の七十二回の会議におきまして、ユネスコ活動に関する法律第六条一項の規定に基づいた建議書が、安倍晋太郎外務大臣に対して日本ユネスコ国内委員会会長吉識雅夫氏から出ておりますが、これは大臣、ごらんいただいたでしょうか。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 読ませていただきました。
  64. 湯山勇

    湯山分科員 この文章には、御留意願いたいとか希望とかお願いするとかという表現もありますけれども、建議というものをどれぐらい重いものだとお受けとめになっていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  65. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  建議につきましては、ただいま委員御指摘ございましたように、ユネスコ国内委員会に関する法律の第六条一項に定めてあるわけでございまして、都度都度にユネスコ国内委員会におかれましては外務大臣に、かくあるべきであるという方向についての建議をなさってまいっております。外務省といたしましては、建議を十分検討させていただきまして、御趣旨を体してその実現に努力をいたしてまいっております。
  66. 湯山勇

    湯山分科員 このユネスコ国内委員会の委員に、外務省からはどなたが入っていらっしゃいますか。
  67. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 委員には、外務事務次官が入っておられます。
  68. 湯山勇

    湯山分科員 以上のような機関から以上のような法律に基づいた建議が出されております。実は私も、国内委員会の委員をいまいたしておりまして、これの討議に参加をいたしました。ずいぶん長時間討議をしたのですが、それを聞いておりまして、これはほうっておけないという気持ちできょうは御質問申し上げたいと思います。  まず、この「記」の最後に、「ユネスコに対する我が国の正式の代表部の設置につき配慮方お願いします。」こうなっておりますが、ユネスコにはわが国の正式の代表部というものはないのですか。
  69. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいまは、在パリ日本大使館の公使がわが国常駐代表としてユネスコに参加いたしておるわけでございます。ただし、この常駐代表は、たとえばニューヨークにございます国連に対する常駐代表のように独立した機関としての存在ではございません。そういう意味で、多分国内委員会におかれましては、将来のあり方として正式の代表を置くように、つまり将来の目標としては、たとえばニューヨークにございます国連代表部あるいはその他の機関に出ております常駐代表部、そういうものを念頭に置かれたのではないか、かように拝察いたしております。
  70. 湯山勇

    湯山分科員 よくわかっていただくために少し……。それでは、この建議から見て、現在のフランス大使館の中にあると言ったらいいのか大使館がやっておるということは、正式の代表部とは言えない、こう理解してよろしいのですね。
  71. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 正式の代表部と差異はない、実質的には独立の代表部として活動しているというふうに認識いたしております。
  72. 湯山勇

    湯山分科員 そういう内容ではなくて、いま建議に正式の代表部の設置という要請があります。いまの御答弁の中にも、国連の代表部とか、私も行ったことがあるのですが、OECDの代表部あるいは国際機関代表部とか、法律に基づく正式な代表部がありますね。そういう正式の代表部ではないことはお認めになっておられるわけでしょう。いかがですか。
  73. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  74. 湯山勇

    湯山分科員 外務大臣、正式の代表部でないものがユネスコには置かれていた、そういうようなことは御存じだったでしょうか。
  75. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 建議を拝見いたしまして、これは非常に大事な建議であるというふうな認識を持ちました。
  76. 湯山勇

    湯山分科員 最近までは大使館の参事官が常駐代表になっておった。やっと最近公使がするようになったということですが、正式の代表部を置いている国は幾つぐらいありますか。正確でなくてもいいです。
  77. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 常駐代表を置いております国は百三十六カ国ございます。このうち、大使が常駐代表になっておりますものが五十三カ国、公使が五十七カ国ということになっております。兼任をいたしている国が約七十六カ国ございます。
  78. 湯山勇

    湯山分科員 全部で百八十カ国くらいになりますか。いまおっしゃったように、その中で正式に大使、公使を専任で置いている国が百余りある。置いてない国が七十六。日本はその七十六に入っていて、まことに協力の度合いが薄いというように見られますし、そういうことに基づいての建議であることは、私は会におって感じました。  もう一つ、これは国連ではなくてユネスコの一九八二年五月の資料によりますと、代表部の部員数といいますか、常駐しておる職員の数の表ができております。これによると、日本は三名ということになっておりますが、これは間違いございませんか。
  79. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 聞違いございません。
  80. 湯山勇

    湯山分科員 ちなみにお尋ねしますが、韓国は何名ですか。
  81. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 六名でございます。
  82. 湯山勇

    湯山分科員 日本が三名で韓国が六名です。  それから、これは北朝鮮とありますが、朝鮮民主主義人民共和国、これは何名ですか。
  83. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 五名でございます。
  84. 湯山勇

    湯山分科員 日本三名に対して五名。  中国は。
  85. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 七名でございます。
  86. 湯山勇

    湯山分科員 中国が七名。  それから、近くの国では、タイは何名ですか。
  87. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 七名でございます。
  88. 湯山勇

    湯山分科員 大臣、いまお聞きのとおりなのです。日本三名ですね。それからいまの韓国が六名、北朝鮮で五名、中国で七名、タイ国で七名。  それで、行った人の当日述べられた感想によれば、この担当の人たちは夜を日に継いで本当に一生懸命働いている、全く気の毒なぐらい努力をしているという訴えが多分にありました。それがこの建議の一つの大きな要素になっております。  これだけ経済大国の日本が正式代表部を持っていない。持っている国の方が多い、そういう中で日本が正式代表部を持っていない。それから、そこで働いている部員の数も、いまのように、中国、韓国、北朝鮮、タイ、そういう国々に比べて半分程度しかない。これで本当に日本がユネスコに協力してユネスコ活動をやっているということになるのかどうか。いまのような資料に対して、大臣、どのようにお感じでしょうか。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまの日本の立場からいいますと、どうも少しバランスが合わないといいますか、対ユネスコ外交は非常に重要でございますから、それだけに少し問題があるなという感じは率直にいたします。
  90. 湯山勇

    湯山分科員 大臣、よく御理解いただいたようです。  正式代表部を置くとなれば、いろいろな手続が要ると思うのですが、どんな手続が要るのでしょうか。
  91. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 正式の代表部を設けるということになりますと、在外公館の新設になろうかと思います。したがいまして、在外公館の名称、位置法の改正を必要とする。そのほかいろいろございましょうが、一番重要な点はそれであると思います。
  92. 湯山勇

    湯山分科員 現状では正式の代表部が置かれていない。とにかく参事官がキャップであったのが、ようやく公使になったというのも最近です。他の国に比べてはるかに少ない人数でやっているというようなことで、具体的にどういう支障があるとお考えでしょうか。
  93. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 非常に限られた人数で量の多い、しかも内容的に多岐にわたります職務を遂行することは、担当官に非常に大きな負担としてのしかかっているわけでございます。しかしながら、定員あるいは予算面で与えられた条件のもとで最善を尽くしていくということで、実際の衝に当たっておられる方々は人一倍の努力をして、日本としてのユネスコ参加に遺憾なきを期するということで努力していただいているわけでございます。  この機会に一言申し上げさせていただきますと、人数は限られておりますけれども、わが国のユネスコ参加はきわめて注目すべきものがございます。分担率の点におきましても第三位でございますし、また、加盟以来執行委員を常に当選させて、執行委員会に積極的に参加いたしております。また、政府委員会あるいはその他の各種の理事会等に日本は積極的に参加いたしております。また、先般ございましたボロブドール寺院の完成につきましては、わが国は最も顕著な貢献をいたしておるということでございまして、要するに、限られた人、限られた予算ではございますが、できるだけの努力をいたして対応しているというのが現状でございます。
  94. 湯山勇

    湯山分科員 私も、よくやっていることは認めます。それを否定するものではありませんが、執行委員なんかは相当多くの国から出ておるので、それは当然だと思うのです。しかし、それだけおっしゃるような成果を上げるということについては、想像以上に無理がいっているということをしっかり頭に入れていただかないと、この建議の意味がなくなります。  私が出し上げたいのは、いまお話しのような点、執行委員会とか理事会という表向きの活動ももちろん大事ですけれども、ユネスコの活動というようなものは、それよりももっと日常的な他の国の人たちとの接触がなければ本当の成果は上がらない。いまお挙げになったような問題じゃなくて、職員の人たちが日常他の国とユネスコを通じユネスコについて接触し合う、そういう機会はいまのままではほとんどないと言うのです。これでは本当の成果を上げることはできないと非常に悩んでいます。それらの点について一体どうお考えでしょうか。
  95. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま御指摘になりましたそのとおりかと存じます。会議場内のみならず、会議場外におきましても、また事務局等とも常に緊密な連絡を保っていくことは必要かと存じます。その意味では、御指摘もございますように今後さらに人員の充実強化を図っていく必要があろうかと存じます。この点につきましては、各方面の御理解と御支援を仰いで、外交実施体制強化の一環といたしまして建議の御趣旨に沿って努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  96. 湯山勇

    湯山分科員 同じような趣旨の建議がすでに二回なされているのです。これで三回目なのです。その間ふえた人数というのは一名じゃないですか、二名が三名になっただけ。
  97. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 そのとおりでございます。二名から三名になっております。ただ、これもすでに御指摘がございました点でございますが、キャップが参事官から公使になっております。一歩一歩御趣旨に沿って努力いたしていることのあかしということで、御理解賜りたいと存じます。
  98. 湯山勇

    湯山分科員 やらないよりはいいと思います。しかし、余りにも隔たりが大き過ぎるのじゃないですか。いまのように正式な代表部を持っている国が百もあるのに、残りの持っていない七十の中に日本が入っている。それから、申し上げたように、そこの部員の数にしても、韓国の半分、中国の半分、タイ国の半分、北朝鮮よりもはるかに少ない。これでは改善のうちに入らないというくらいに私は思っておりますし、日常の接触が大事だと言いながら、その機会はほとんどとれないというような状態、そこで実際は、少しこじつけかもしれませんけれども、貿易摩擦なんかも、必ずしもこれが影響していないとは言い切れないんじゃないでしょうか。  と申しますのは、とにかく経済はどんどん成長していって経済大国になって、それでいてこのユネスコ活動の方は最低線をいっている。これではやはりエコノミックアニマルと言われる批判というのはここからも出てくる、そういうことを私は心配いたしております。まあ人によると、私は必ずしもそうだとは思いませんけれども、オリンピック誘致競争に日本が惨敗した、この辺にも原因があるのではないかという指摘をする人もあります。私がそう申し上げたというのではありません。  しかし、こういうことを抜きにして、渋々ついていく、二度も建議を受けながらわずか一名ふやす。それは確かに参事官を公使に昇格したのはいいことですが、ほかはみな大使で代表部を大部分は持っている。その中で一体日本がこれでいいかどうか。これは大臣、ひとつ重大な決意をもって臨んでいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまいろいろとお話を聞きまして、まさにそのとおりであると思います。日本も国連の活動には積極的に協力をしておりまして、協力金なんかは世界の中で最も高いランク、ユネスコに対しても同じようにやっておるわけなんですが、ただ実質的に日本は専門の職員というのが他の国と比べますと少ないということも事実であります。それだけ負担も大きくかかってきていると思いますので、漸次改善はしてきているようでございますが、今回の建議も踏まえまして、さらに財政難の状況でありますけれども、外交活動大事でございますから、なるべく外務省としてもこれを充実するように努力をしていきたいと考えております。
  100. 湯山勇

    湯山分科員 先ほど御説明ありましたように、これは法律を要します。そこで、どうでしょうか、この国会に提案というのはむずかしいと思いますけれども、次の通常国会に提案できるように御尽力願えるかどうか、伺いたいと思います。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは早速、来年度の予算のことでありますし、来年度の方針のことでありますから、しかし大事なことだと私は思いますので、検討させたいと思います。
  102. 湯山勇

    湯山分科員 お気持ちはわかるのですけれども、これは会議録に残りますから、もうちょっとはっきり言っていただく方がいいと思うのですが、いかがでしょう。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もう、一つも二つもはっきり言いたいところでありますけれども、これはやはり予算措置、法律の関係、そういうこともありますし、ほかの、まだ外務省としても実施体制を充実する上においてやらなければならぬこともずいぶんあるわけでございますから、そういう点等も踏まえながら、しかし、できるだけ努力をして、やはり諸外国がそれぞれ代表部を持っているということですから、そういう方向へ向かって力を尽くしていきたいと思います。
  104. 湯山勇

    湯山分科員 大変しつこいことを申して恐縮なんですが、できるだけ優先的に取り上げていこうというふうに理解してよろしゅうございますか。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはせっかくの叱咤激励を受けたわけでありますし、外務省がみずから進んでやるべきことであろうと思いますので、優先的に取り上げて検討してみたいと思います。
  106. 湯山勇

    湯山分科員 本来ならば、これで質問は終わっていいのですけれども、ついでにと申しますか、お尋ねしておきたいのですが、この職員ですね、現在三名、これは何らかの方法で、年度内に一名でもふやす方法は全然ないのですか。
  107. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 どうもこれは原局と官房の立場は若干異なりまして、やはりどうしても私どもは限られた人員をいろいろな要求に対して割り当てていくという立場にございますし、私どもとしては、仮に原局からそういう要求が出てくれば、ただいま御意見を伺ったわけでございますので、慎重に考えさせていただきたいと思います。
  108. 湯山勇

    湯山分科員 原局としてはそういう要望をする意思がおありになるかどうか。
  109. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 要望させていただきたいと思います。
  110. 湯山勇

    湯山分科員 それでは、まだ時間が残っておりますけれども、大変いい御答弁をいただきましたので、これで質問を終わります。  ありがとうございました。
  111. 宮下創平

    宮下主査代理 これにて湯山勇君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  112. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 最初に、国際法と日本憲法でどちらが優先するのか、お伺いします。
  113. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 どちらが優先するかという御質問でございますが、委員よく御承知のとおりに、憲法第九十八条におきまして「日本國が締結した條約及び確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」ということでございまして、確立された国際法というものは守らなければならないということが憲法そのものの中に規定されておるところでございます。
  114. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 そうすると、憲法九条の中では「交戰權は、これを認めない。」ということになっておるわけですね。ところが実際に仮に急迫の事態、あるいは不当な侵害を受けた場合に一つの自衛権の行使が出てくると思うのですが、その場合に、自分の方から攻撃をしなくとも、相手から攻撃をされたから、それに応戦をしたと言っても、これが一たん戦争状態になれば、そこから必然的に交戦権というか、そういうものが発生してくると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  115. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 従来から憲法九条との関連政府が申し上げております、憲法九条において否定されております交戦権というものは自衛権とは別の概念でございまして、交戦国がいわば戦時国際法上有しますところのさまざまな権利の総体を指すんだということで御説明させていただいておると思いますが、たとえば相手国の領土を占領いたしまして、そこに占領行政をしくというようなものも含めまして、戦時国際法上、国家が有するさまざまの権利の総体を指すんだ、そういうものとしての交戦権は憲法において否定されておるけれども、しかし、自衛権の行使の結果として現実の問題として戦闘行為を行うということ自体は、この憲法九条で否定されておる交戦権ではないということを、従来から政府の申し上げておるところでございます。
  116. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 そこで、憲法のいわゆる交戦権を認めないというのは、これは日本の国民に向かって言っていることで、実際戦闘状態になると、戦闘状態になるまでのその動機というか、一つのきっかけというか、そういうものは自衛権として解釈できるけれども、一たん交戦をすれば、これは国際法上は一つの交戦の事実によってその国は交戦の主体であるというふうに考えられないのでしょうか。
  117. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 それは、実際問題としてはそういうふうにお考えいただいても結構だと思います。
  118. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 そうすると、結局いまの戦時法規とかそういうものは、自衛権の行使であろうが、侵略した国であろうが、これはジュネーブ条約なりあるいはヘーグの陸戦法規なりに調印しておる国々は、それを守る一つの義務が出てくると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  119. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 それは仰せのとおりでございます。
  120. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 そうすると、この戦時法規やあるいはジュネーブ条約の対象になるというレベルで考えると、これはやはり交戦権の行使だというふうに解釈できるのじゃないか、私はこういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  121. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 憲法解釈の問題になりますと、私から御答弁申し上げることは必ずしも適当ではないかと思いますけれども、従来から法制局長官等から政府が申し上げております憲法解釈、なかんずく憲法九条との関連わが国として持つことができない交戦権の意味というものにつきましては、先ほど私から御説明申し上げたとおりだろうと思います。  他方、翻って、実際に自衛権行使の結果としてわが国に対して武力攻撃を行っている国と事実上戦闘状態に入った場合におきまして、その武力行使との関連で、国際法、いわゆる戦時国際法というものに伴います種々の権利義務関係というものが発生する。そういう義務については、日本としては当然その義務に従わなければならないということも委員のおっしゃるとおりでございます。
  122. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 そうすると、憲法で言う交戦権は認めないということと、一たん交戦した場合の国際法上の交戦主体というものを考えた場合に、一体交戦権を認めないということの効力というか、効果というものはどういうものを期待しているのでしょうか。
  123. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 すべて網羅的に申し上げることはなかなかむずかしいかと思いますが、先ほども申し上げましたように、わが国の場合におきましては集団的自衛権は憲法上禁止されておる。それから個別的自衛権につきましても、きわめてこれを厳格に解しまして、わが国自身の防衛のために真にやむを得ざる場合に最小必要限度の実力の行使としての自衛権、これは憲法九条の否定するところではないということでございまして、その限度内で自衛権を行使する場合に、先ほどの繰り返しになりますが、一般国際法で確立されているルールというものには従わなければならない。しかしながら、陸戦法規でございましても、その武力行使の結果、たとえば相手国の領土の一部を占領するというような場合に、占領国としてのいろいろな権利義務というものを規定しておりますが、そういう相手国の領土の一部を占領するというようなことまで憲法九条で認められている自衛権の範囲ではなかろう、そういうことになりますると、そういう部分につきましては、憲法上そういう武力行使を行うことは放棄しておるわけでございますから、そういう部分については、実際問題としてはわが国に対しては適用がない、こういう関係になろうかと思います。
  124. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 そこで、いま集団自衛権の問題が出ましたが、具体的に申し上げますと、たとえば今度のシーレーン防衛の件について、シーレーンの防衛というのは、いままではアメリカの第七艦隊なりがこれに当たっておったが、仮にインド洋等にアメリカの海軍が展開された場合には、その後をひとつ空白にしないように、日本が今度はその補てんというか、そういう役割りを果たすのだというような議論もあったのは事実でございますから、そういうふうに考えると、結局日本のシーレーン防衛というのは、アメリカの戦略を補完する意味で非常に重要だというふうに考えられているのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、その点はどうでしょうか。
  125. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 シーレーン防衛の問題につきましては、従来から政府が申し上げておりますように、これはあくまでも個別的自衛権の行使の一環としてわが国の海上交通を守る、保護するということでございまして、他国の通商路を守るとか、あるいは他国の船舶を守ることについて日本が責任を負うとか、そういう性質のものでは全くないということは、従来から政府が申し上げているところでございまして、あくまでもわが国自身が攻撃をされた場合に、憲法上認められている個別的自衛権の範囲内でわが国の海上交通の防衛に当たる、こういう概念であろうというふうに承知いたしております。
  126. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 今度のチームスピリット83という中で韓国とアメリカが大演習をやって、日本からどんどんと米軍がそれに参加していく、あるいは今度もエンタープライズなりが日本に寄港する。こうして日本は基地を提供してその作戦に貢献をしていくということになれば、これは作戦全体の観点から見れば、明らかに私は集団防衛の立場に組み込まれていると思うのですが、その点はどうでしょうか。
  127. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 法律的に申し上げますと、従来から申し上げておりますように、憲法上薬止されております集団的自衛権というものはあくまでもこれはわが国自身の武力の行使に関してでございますので、これは安保国会以来種々御議論があったところでございますけれども、わが国に米軍の駐留を認めて、その駐留した米軍が、わが国の施設、区域を使って種々の軍事行動をとる、そういうものに対してわが国が便宜供与を行う、これはわが国自身の武力行使に至らない便宜供与でございますが、そういう便宜供与を行うということは、別に憲法九条で禁止されている集団的自衛権の行使には当たらない。これは累次政府が御答弁申し上げているとおりであろうと思います。
  128. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 それは政府が申し上げているとおりには間違いないのだけれども、その申し上げていることがどうも納得できないのですよ。そうなら、いまこれからF16が三沢基地に配備されようとしておりますが、仮に米ソが衝突した場合、三沢基地からF16が飛び立ってソ連を爆撃あるいはソ連の艦船を攻撃した、ソ連の飛行機を攻撃した、こういう事態が起こった際に、ソ連はその基地である三沢をたたくということでたたいてきた場合、これは一体どういうことになるのでしょうか。日本はまだ自衛権の行使の段階に入っていないのに、そういうアメリカの行動が原因で日本がたたかれた場合はどういうふうに対応するのでしょうか。
  129. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 仮定のシナリオの問題につきまして法律的に物を申し上げるといろいろ誤解を招くかもしれませんので、私はそういう仮定の問題につきまして申し上げることは本当は控えたいんですが、純粋な仮定の問題としてこれは従来から政府がしばしば御答弁申し上げておるところでございますけれども、まず幾つかの前提がございまして、一つはこれは安保条約にも書いてあるところでございますが、アメリカ自身、当然のことながら国連憲章を守る義務がございます。したがいまして、アメリカがみずから攻撃を受けないで他国に対して武力攻撃を行うということは少なくとも法律的にはあり得ないことが大前提になっております。  その次に先生御質問の、日本の基地を使ってF16なら16というものが第三国に対して爆撃というような戦闘作戦行動をとる、その場合にはこれも委員よく御承知のとおりに事前協議制度というものがございまして、アメリカが勝手にそういうことをやるわけにはまいらない。少なくとも、少なくともというのは適当でございませんが、わが国自身の同意なくしてはそういう軍事行動というものを日本の基地から直接発進させることはできないということが第二の前提でございます。  その次に第三の前提といたしまして、これは従来から申し上げておりますが、わが国自身が事前協議を受けた場合にイエス、ノーの両方の場合があるけれども、イエスの場合というのはわが国の安全に直接密接にかかわる場合にしかイエスと言わないのだ、その他の場合はノーであるということでございます。したがいまして、全く仮定の問題でございますけれども、アメリカがF16にせよ何にせよ、日本の基地からそういう戦闘作戦行動のために施設、区域を使用することがありましても、それはわが国がまだ武力攻撃は受けておりませんけれども、わが国の安全を確保するために非常に重要な場合であるということが基本的には前提であろうと思います。  そこで、そういう前提のもとに、アメリカ日本の基地を使って戦闘作戦行動をとった、それに対して相手の第三国が日本の基地を攻撃してくることがあり得るではないか、危険ではないかということは従来からまた安保国会以後種々御議論があったところでございます。その点につきましては、少なくとも法律的に申し上げれば、そもそも当該第三国が武力攻撃を行って侵略行動をとっておるわけでございまして、アメリカの行動はその侵略を排除するための自衛権の一環である、そうなりますると、相手国がさらに日本の基地に攻撃をしてくるということは少なくとも国際法的に見ればいわば全く侵略の拡大と申しますか、違法な武力の行使になるということでございまして、当該第三国がわが国に対して攻撃する国際法的な権利が出てくるとかそういう性質のものでは全くないということだろうと思います。
  130. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 この問題はいろいろ深く掘り下げればとてもこういう短い時間ではできないと思いますが、要は日本が交戦権を否定し、あるいは国会決議等でいろいろと武器輸出原則とか、そういうものを否定しておっても、一たん戦争状態になった場合、これを国際法の位置から眺めれば、その憲法規定や国会決議というのは日本国内的な一つの自律的な意味としてしか解釈されないのじゃないだろうか。そうすると、国際法上においては、一つの戦争の形態が作戦全体の一環をなす場合には当然集団自衛権の行使というふうに解釈されていくのではないだろうか、こんなふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  131. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 集団的自衛権の解釈について私が申し上げましたことは、一方において日本が集団的自衛権を持たないということはわが国自身の憲法解釈の問題でございます。他方におきまして、集団的自衛権というものが第三国に対して種々の便宜供与、たとえば基地の使用を認めるとか、そういう形での便宜供与を与えることを集団的自衛権と国際法上観念されるかと申し上げれば、それはやはりそういうふうには概念されないのでありまして、自分が攻撃をされないのに、自分と緊密な関係がある第三国の武力攻撃に対してこちらが武力をもって援助をする、これが国際法上の集団的自衛権であるということは別にわが国の一方的な憲法解釈の問題ではございませんで、国際法上の概念としてそういうふうに確立しておるだろうと私は考えております。
  132. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 時間がありませんので、これはもっといろいろ掘り下げたいわけですが、別の機会に譲りまして次に移ります。  そこで、私は前にもただしたことがあるのですが、ジュネーブ条約は四条約日本は調印をしておるのですけれども、それに対する公知の責任を果たしていないと私は思うのです。こういう条約についてはそれぞれの条約ごとに公知させる義務という項目がついていて、中身はほとんど同じでございますから、一つだけ文章を読んでみますと、戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約の中の第四十七条、「締約国は、この条約の原則を自国のすべての住民、特に、戦闘部隊、衛生要員及び宗教要員に知らせるため、平時であると戦時であるとを問わず、自国においてこの条約の本文をできる限り普及させること、特に、軍事教育及びできれば非軍事教育の課目中にこの条約の研究を含ませることを約束する。」こういう文が皆載っているわけですが、それぞれもうほとんど同じような内容でございます。しかし、いまの日本においても、前もそうでしたが、こういう捕虜になった場合の取り扱いについてとかあるいは戦争時の国際法上の権利義務といったものについては、ほとんど一般国民は知らされていない。こういう状態では、私はジュネーブ条約に違反しているのじゃないか、こんなふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  133. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私の記憶では、一昨年渡部委員から私同じ御質問を受けまして、そのときにもお答えしたかと思いますが、確かに委員御指摘のとおりに、ジュネーブ四条約の各条約にいわゆる公知義務というものが定められておることは、御指摘のとおりでございます。ただ、その規定に基づきましてどの程度まで国内的にジュネーブ条約の中身について教育しなければいけないかということにつきましては、やはりそれぞれの国の実情等を勘案しなければ、必ずしも一律に言えなかろう。しかし、少なくとも言えることは、ここに書いてございますように、特に軍事教育の課目中にこの条約の研究を含ませることを約来するということが書いてございますので、最小限そういう軍事教育の中でこのジュネーブ条約の中身を周知せしめるということは、条約上求められておる最小限度の義務であろうというふうに理解いたします。  その関連におきましては、私から御答弁申し上げることは必ずしも適当でないかもわかりませんけれども、防衛庁の方におきまして、幹部教育の課程の中で、このジュネーブ条約を含めまして、いわゆる戦時国際法規の教育を自衛隊の幹部の方々に行っておられるというふうに承知しておりますので、その限りにおいて、このジュネーブ条約に求められておる最小限度の義務というものは履行されておるのではないかというのが私の考えでございます。
  134. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 最小限度の義務は履行されているとおっしゃられましたけれども、これは最初読んだのよりも、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約というものの第百二十七条の公知義務では、これは大体同じようですが、「締約国は、この条約の原則を自国のすべての軍隊及び住民」と書かれていますよ。すべての「住民に知らせるため、平時であると戦時であるとを問わず、自国においてこの条約の本文をできる限り普及させること、特に、軍事教育及びできれば非軍事教育の課目中に」、これは教育の一つの科目のことを言っているのじゃないでしょうか。「非軍事教育の課目中にこの条約の研究を含ませることを約束する。」と書かれているのですよ。だから、そういう点ではほとんど一般住民には知らされていないですよ。だから、この義務は最小限度果たしているとは私は言えないと思うのです。時間がありませんから……。ぜひこのことを実行していただきたい。大臣、それに対する決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。  また、これはこれから文部省でこういう科目をひとつ設置して取り扱う意思はあるのかないのか、その辺を少し明らかにしていただきたい。少なくとも国会で議論されたことがそのまま放置されるようではどうにもならないですから、責任ある答弁をお願いします。
  135. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 大臣から御答弁ある前に、ちょっと先ほどの私の答弁を補足させていただきますが、私、申し上げましたように、どの程度国民にこの条約の中身を普及させるかということは、やはりそれぞれの国の実情を配慮しなければならないと思います。少なくとも私の承知しておる限り、どのような国でもおよそ一般国民すべてにこの条約の中身を教育課程において普及しているというような国は、恐らく私の知る限りないんじゃなかろうかと思います。  しかし、どの程度やるかということは、この条約のもとで、たとえば「できる限り普及させること、」というふうに書いておりますことからも明らかなように、必ずたとえば一般の学校においてこの条約の中身につきまして教育をしなければならないというような義務まで各国に課しておるんだというふうに解釈する必要はないんじゃなかろうか。先ほど私申し上げましたように、しかしながら、少なくとも最小限度軍隊あるいはわが国におきましては自衛隊の中では、こういう戦時国際法に関する重要な条約というものは十分周知徹底させなければならないだろう、こういうことを私申し上げたわけでございます。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま条約局長が答弁したとおりであります。自衛隊においては幹部教育等において四条約の内容等について教育を行っておる、こういうふうに承知をいたしております。
  137. 内田弘保

    ○内田説明員 御指摘のジュネーブ諸条約につきましては、一九七四年のユネスコ第十八回総会におきまして、これとあわせまして国連憲章、ユネスコ憲章、世界人権宣言などとともに、これらの条約等の目的を教育を通じて達成するということを目的とする勧告が採択されております。これに基づきましてわれわれとしましては、昭和五十年度に各都道府県教育委員会及び国立大学等の関係機関へこの勧告文を配付いたしまして、その趣旨の徹底を図った次第でございます。
  138. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 最後に、私自身捕虜生活をしまして、そういう法規を知らなかったから、捕虜としての権利を主張することができない。ソ連の国際法を無視したやり方についても、ただ捕虜には何の権利もないのだというような考え方で、向こうの言うなりにならざるを得ない。こういうことを考えると、これは大変な損害を受けていると私は思うのです。  それからまた、今度のベイルートにおける虐殺事件なんかを見ましても、イスラエルがああいうことを平然としてやれるというのは、こういう国際法についての知識あるいは理解というものがないから、ああいうことができると思うのですよ。そういうものを今後防いでいくためには、こういう重要なしかも戦時中における人道上の問題に関する条約等については、やはり全国民にこれは知らしていくという積極的な姿勢が私は必要だと思います。そういう立場をひとつ大臣はどういうふうに御理解ですか、その大臣のお答えを聞いて私の質問を終わります。
  139. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど条約局長からも答弁いたしましたように、一般国民に周知徹底せしめる必要があるかどうかということについては、そこまでの必要はないのじゃないかという判断でございますが、関係の自衛隊等においては教育もしておりますし、また、教育の場においてもこういうことが広く知られるということは必要じゃないだろうか、こういうふうに考えております。
  140. 渡部行雄

    ○渡部(行)分科員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  141. 宮下創平

    宮下主査代理 これにて渡部行雄君の質疑は終了いたしました。  次に、渡辺貢月君。
  142. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 いま人類の生存、繁栄という問題がいろいろの角度から大変大きな論議の焦点になっていると思うのですね。かつての世銀のブラント報告やあるいは国連におけるデクエヤル事務総長の報告に、核戦争がなくとも地球の砂漠化であるとか食糧危機による飢餓、貧困という問題が地球上を覆っているという大変厳しい指摘があるわけなんです。昨年の十二月、ユニセフからも、特に子供の世界における現状についての報告があったと思うのですが、その内容について、まず簡単に御説明いただきたいと思います。
  143. 柳健一

    ○柳政府委員 開発途上国におきます栄養不良人口は、国連の食糧農業機関の調査によりますと、これは一九七七年に発表されたものでございまして、七四年から七六年の平均でございますが、約四億三千五百万人ぐらいだということになっております。それから、ただいま先生御指摘の国連児童基金、ユニセフの一九八二年―八三年の世界子供白書によりますと、開発途上国におきましては毎日四万人以上の乳幼児が栄養不良や伝染病で死亡しているというように了解いたしております。
  144. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 いま御説明がありましたけれども、大変な事態だと思うのですね。毎日四万人というと一年間に一千五百万の子供たちが死んでいる。飢餓線上にある人々は五億前後、こういうふうに言われていて、西暦二〇〇〇年になるともっと広がるのではないか、こういう予測もされているわけであります。平和的な、人類に貢献する外交を進めていく上で、こういう事態については外務大臣としてどんなふうにお考えか、一言御見解を聞かせていただきたいと思います。
  145. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非常に深刻な状況が続いておるわけでございまして、われわれ、やはり世界のあるいは地球のそうした状況に対しましては深刻に受けとめなければならぬ、こういうふうに考えておりますし、また、人類全体の問題として英知と努力によって解決をされるべき最も大きな課題ではないだろうか、こういうように考えております。
  146. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 いま大臣から大変ヒューマニズムの立場に立った御答弁があったわけですが、この問題、後ほどもう少し深めたいと思うのです。  日韓経済協力の問題について、若干質問したいと思います。  一月十二日に、中曽根総理大臣の訪韓によって全斗煥大統領との会談が行われて、共同声明が発表されておるわけです。この共同声明の第八項の中で、韓国の第五次五カ年計画に照応する形で経済協力を行う、こういう声明の内容になっていると思います。私どもは第四項の内容が、いわゆる安保絡みで大変問題だと思うのですけれども、それはさておいて、なぜこの時期にこうした四十億ドル、しかも中身が十分詰められていなくて、政府借款の枠組みとしてはほぼ十八億五千万ドル、こういうふうに聞いておるわけです。  一九七八年九月四日、ソウルで行われた第十回日韓定期閣僚会議で、これからの日韓両国における経済協力の問題についてのある意味での新しい合意が成立をしていると思うのですが、そのポイントはどういうことでしょうか。
  147. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 第十回の閣僚会議におきましては、両国の閣僚が韓国経済の着実かつ継続的な発展に伴いまして、日韓経済協力が民間ベース主体に移行しつつあることにつき共通の認識を深めるとともに、政府ベースの協力につきましては、経済、社会基盤施設の整備拡充等々、韓国の均衡ある経済発展ということに必要な分野を中心にいたしまして、政府間実務者レベルの協議を通じまして、適切な案件につきましてはそれを具体化していこう、こういうことが骨子でございます。
  148. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 政府関係というより民間主体に経済協力関係を移行させるというのがこの中心だったと思うのですが、そうなると、共同声明が発表された前後、政府借款がどんなふうに韓国に対して行われているか。たとえば一九七五年ですね、昭和五十年になりますか、さらに、七八年の共同声明が発表された年の韓国側とのコミット額と実際上の遂行額ですね、どんなふうに変化しておるか。この前後をちょっと御説明いただきたいと思います。
  149. 柳健一

    ○柳政府委員 コミットメントベースで申し上げます。  一九七八年は、円借款は二百十億円、それから一九七九年が百九十億円、一九八〇年が百九十億円、それから一九八一年はコミットいたしておりません。
  150. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 共同声明が発表された後の金額ですけれども、たとえば昭和五十年ですね、ですから一九七五年になるわけですけれども、このときのコミット額が二百三十四億円で、その実績、実行額というのが二百二十一億円すね、大体そのペースで前後進めてきているわけなんですけれども、ところが一九七八年以降、七九年の場合には百九十億円のコミットであって実績が三十九億円、八〇年の場合には百九十億円のコミットで実績ゼロということなんですね。つまり共同声明で民間にそのベースの主体を移行していくということが実際の経過の中でも、両国間の経済協力の内容というものがはっきりその趨勢を示していると思うのですが、なぜ今回こういうふうに十八・五億ドル、しかも一九八二年、初年度において三億数千万ドルですか、というふうなものが決まったのか。その背景、何が背景にあるのか。その点についてどんなふうに考えていらっしゃいますか。
  151. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先生御案内のとおり韓国経済は一九六〇年代、七〇年代、特に一九七〇年代に高度成長ともいうべき非常な発展を遂げたわけでございますが、第一次、第二次石油ショック、特に第二次石油ショックの後世界不況の影響をもろに受けまして、特に韓国経済は御案内のとおりにGNPの三割が輸出でございました、この輸出が非常に鈍化してきたということでございます。経済的にかなり厳しくなってきたという状況がございますが、この背景が一つ。それからもう一つは、やはり韓国が今後さらに大きく伸びるためには長期低利の借款を必要とする、こういうことで経済協力してほしいということで強く要請がございました。日本にとって一番近い大事な国であるということで、日本政府といたしましてもできる限り御協力しよう、こういうことで決めたということでございます。
  152. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 しかし一九七八年前後も第一次のオイルショックを受けた後ですからね。これは韓国だけでなくてわが国も大変経済は停滞を続けていた時期でありますから、決してそのころと状況が変わっているということはないと思うのですね、経済状況についての認識は。ただ、去年のOECDの発表によると、世界の中心国の中で韓国も債務不履行国になるのではないかというふうな予測もされていて、約四百億ドル近い債務の残があるというふうなことがありますから、それは経済的な危機は進行していると思うのですね。  ただ、根本的に違うというのは体制の違いがあったと思うのですね。つまり朴正熈大統領が暗殺をされた後、全斗煥大統領になる。しかもあのときは光州において数百名あるいは千名を超えると言われている青年の血の弾圧によって、しかも議会はほとんど形骸化される、そういう中で軍事独裁体制がつくられていく。こういう体制の違いが一つは大きく作用していると思うのですね。それからもう一つは、韓国の予算の中に占める国防費の比率でありますけれども、ほぼ今日では三〇%を超えているというふうに思うのですが、たとえば一九八二年、また八三年、確定をしていると思いますけれども、韓国の予算の中に占める国防費の比率はどのくらいになりますか。
  153. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 一番近いところで八三年で申し上げますと、一般会計に占める国防費の割合は三二・九%でございまして、その前の年、つまり八二年は三四・九%、八一年は三三・九%というように、先生御指摘のとおりに大体最近ずっと三〇%をちょっと超えるくらいなところで推移しているというのが私どもの理解でございます。
  154. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 そうなりますと、国の予算の中で三〇%余りが軍事費である。これではとても経済の正常な発展を図ることも困難になるでしょうし、特に国民生活、民生上でも非常に大きな障害、困難が生まれると思うのですね。ですから、今度の共同声明によって十八・五億ドル、その中で民生用のものだというふうなお話が非常に強いわけですけれども、つまり国の予算が軍拡、しかも予想できないような三十数%という大軍拡の予算が組まれている。そのために国民生活は相当疲弊する。国内におけるいまの政権に対する不満が増大する。一方でことしも二月からチームスピリット83が行われているわけですけれども、結局、背景にはこうした韓国の大軍拡があり、しかも全斗煥大統領が言っているように、韓国はアジアにおけるあるいは日本の防衛の第一線の役割りを果たすんだ、だから当然日本経済協力を行うべきであるという、つまり安保絡みですね。これは現実の事実や背景を見てもそうだと思うのですね。  そこで、もう少し進めますけれども、現在行われているチームスピリット83、これには韓国軍の部隊参加がどのくらいなのか、それからアメリカ軍の参加がどのくらいなのか、その中身について、在韓米軍とそれから日本から出動してこの演習作戦行動に参加をしている米軍の数について御説明をしていただきたいと思います。
  155. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 チームスピリット83におきまして参加兵力は韓国軍が十一万八千名、米軍が七万三千ということでございまして、在日米軍の参加数は――ちょっと申しわけありませんけれども、そのうち在日米軍がどのくらい参加しているかにつきましては、至急資料を取り寄せて御報告をいたします。
  156. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 とにかく二月から四月まで約二カ月間でしょう。二カ月間の大演習に、韓国軍が十一万八千もこの大演習を展開をしていく。さらにアメリカ軍が在日米軍も含めて七万三千人がこの大演習を強行するわけですね。これはだれが見ても、こういう事態の中で韓国の経済が正常に運営されるということは考えられないと思うのですよ。韓国の国民生活は疲弊する一方でありますから、私たちは、こういう事態の中で行われて、しかも七八年、民間にその援助の主体が移っていくというそういう定期閣僚会議の共同声明を受けていながら今度の四十億ドルの借款という問題は、こうしたことが背景にあるのではないか。つまり、このことが、かつての佐藤・ニクソン会談で言われているように、まさに韓国有事は日本有事であるというわが国の個別自衛権を逸脱するようなそういう解釈に近いものが出されてくる。そしてしかも軍事独裁政権の全斗煥政権が誕生するというところに今度の四十億ドルという韓国側の要求、全斗煥大統領のそういう要求を日本政府側は認めたんだ、こういう趣旨になっていると思うのですけれども、具体的な事実の進行はそうではないかと思うのですね。そういう点について、直接交渉にも参加をされた外務大臣としての御認識をひとつ承りたいと思います。
  157. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 韓国には韓国のお立場がもちろんございますが、つまり日本と韓国では置かれた国際情勢その他が多少違いますから、韓国のお立場はございますが、しかし、共同声明第八項に、わが国はあくまでも韓国の「五カ年計画を中心とする韓国の経済社会開発プロジェクトに対し日本経済協力の基本方針の下に」と明確に両者の合意として書かれておりますとおりに、「日本経済協力の基本方針の下に」ということでございます。  それから内容でございますが、上下水道、学校教育施設、医療設備、それから洪水対策その他を含む多目的ダム、こういったあくまでも社会資本の形成といいますか、韓国の人々の生活、福祉の向上に資するということに限定された協力内容でございます。
  158. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまアジア局長から説明をいたしましたのがわが国の対韓経済協力の基本でありまして、わが国としては、何としても韓国は隣国の友邦でございます。その韓国が、経済的に非常に厳しい状況にある、そういう中で経済社会発展五カ年計画を中心とした国づくりを行っておるわけでございまして、これに対して、わが国経済協力の基本方針のもとにできる限りの協力を行うということにいたしたわけでございまして、韓国側の要請も、いま説明をいたしましたように、上下水道等の社会開発部門というものを中心にしての要請でありまして、軍事的色彩は帯びていないということは明らかであります。また、わが国は従来から、わが国経済協力が相手の国の経済社会開発、民生安定、福祉向上への寄与という目的に沿うように、対象、条件を慎重に検討して実施をしてきておりまして、韓国につきましても同様に対処する方針であります。したがって、いまお話がございましたが、いかなる意味においても安保経協というふうなものではない。チームスピリットというお話もありましたけれども、そういうものとはこの経済協力は全く関係がないということをはっきり申し上げておきます。
  159. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 経済協力をやっていく場合に、当該国、相手国がどういうふうな体制で、あるいはたとえば借款を与えていく場合に国の財政がどうであるかということは、当然事前調査もするでしょうし、単に向こうがそう言ったからつかみ金でやるということではないと思うんですね。いま局長も、民生用、社会資本の充実のために充てるんだ、大臣もそういうふうに言われているわけなんですけれども、しかし現実に三十数%が軍事費であるならば、とても国民の生活安定のために財政を回すことができなくなるわけなんですよ。当然だと思うんですね。だから、本当にアジアにおける緊張を緩和させて、平和なアジア圏をつくり上げていくということであるならば、真の隣邦、友人として見れば、もっと違った意味からの積極的な韓国に対する外交があると思うのです。しかも、二十万に近い軍隊が二カ月間にわたって国内に展開するわけなんですよ。隣の朝鮮民主主義人民共和国にはどこかの外国の軍隊が駐留しているんですか、ちょっと……。
  160. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮に外国軍隊が駐留しているかどうかというお尋ねでございますが、いろいろなうわさ、情報はございますが、私どもはそのような明確な事実を把握しておりません。
  161. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 つまり、駐留していないということなんですね。してないということなんですよ。しかし、韓国では、しかも朝鮮半島の南半分の小さいところでそれだけの大演習が行われたり、軍事費が使われているということでは、本当に国民生活の安定を図ることができないと思うんです。だから、違った角度で、本来平和的な隣国としてのそういう立場に立った韓国との交流やあるいは外交が必要だと思うんです。しかも、ほぼつかみ金という内容でありまして、たとえば十八・五億ドル、五十七年度三億数千万ドルと言われておりますけれども、一月、二月両国の実務担当者が交流しておりますが、実際上は、わが国の基本方針である単年度プロジェクト主義というものが、まだ具体的に内容としては固まっていないんでしょう。その点はどうなんですか。
  162. 柳健一

    ○柳政府委員 十八・五億ドルは、先生御案内のとおりめどでございます。  それから五十七年度、初年度でございますが、これにつきまして幾らにするかは、まだ金額は一切決まっておりません。ただ、すでに二度にわたりまして実務者会議を開きまして、その結果、ただいまのところでは多目的ダム、上下水道、医療分野、この三つの分野につきまして先方の要請をいま吟味しております。ただいまOECFのミッションが韓国へ行っておりまして、これが三週間ぐらいかかると思いますが、現場も見まして、わが国経済協力の基本方針に沿いましてそういう中身をこれから固めて、できるだけ近い将来にこれをプレッジする、こういう手はずになっております。
  163. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 そうしますと、実務者会議でまだ詰め合っていくということになると思うのですが、その段階で当然FS、フィージビリティースタディーもやるでしょうし、あるいは入札、適正な価格であるかどうかということも検討の対象になるでしょうし、その上で閣議決定、交換公文の取り交わし、そしてどういうふうに履行していくかということになると思うのですね。  ですから、先ほどちょっと触れたように、七八年の共同声明以降、七九年百九十億円、実際の履行額は三十数億円、さらに一九八〇年百九十億円、実績ゼロ、そして一九八一年、これもゼロ、ゼロということでありますから、出されている額そのものというのも、ある意味では裏づけというか、そういうものもまだないということなんですね。そうなると、今後の問題としても、実際上日本政府としても国民の皆さんの税金を使うわけなんですから、慎重に今後の対応についてもしていかなければならない。場合によっては、もちろんこれは口約束という程度のものでしょうから、金額は共同声明に入っていませんからね、全斗煥大統領の腹案かもわかりませんけれども、そういうことになると思うのですね。その点が一点。  それから、時間がちょっとなくなりましたので、もう一つこの問題と関連をして、わが国の二国間援助の問題の推移なんですけれども、たとえば一九七九年、LLDCに対して、極貧国ですね、一七・二%、八一年には一二・八%というふうに低下しているわけなんです。逆に中所得国が、一九七九年度二六%が三一・九%、それからNICSですね、これが七九年が四・二%が一五・六%というふうに、極貧国やあるいは低開発途上国に対する援助より、中所得国あるいは中進国ですね、しかも、いま言ったような、私たちの観点からすれば安保絡みというか、紛争当事国などへの協力も強められてきているということを考えてみた場合に、当初申し上げましたように、ユニセフの報告など、世界における貧困の進行ですね、そういう事態を見たときに、果たしてこんな大きな額の、こんな大きなフレームの韓国の経済援助がいいかどうかというのも、そういう角度からも、安保絡みという点からと、またそういう人道的な経済協力という立場を考えてみたときに、二つの面からも検討しなければならないというふうに考えるわけなんですが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  164. 柳健一

    ○柳政府委員 ただいま御指摘のありました二つの点のまず第一でございますが、今度の新しい対韓援助のみならず、従来の韓国に対します援助も、先生のお言葉ではございましたが、全部裏づけがございまして、それを円借款といたしましてプレッジいたしますと、その後数年間にわたって支出する、こういうことにしてきております。  それから第二の点でございますが、まさに御指摘のとおり、わが国の二国間のODAのLLDCに対するシェアは、八〇年が一七・五%でありましたのが、八一年には一二・八%に減っております。ただ、この八一年は、私どものLLDC援助の中でも非常に大きな、約半分ぐらいのシェアを占めておりますバングラデシュに対する援助が、この年、たまたまいろいろな向こう側の事情がございまして支出が減ったということでございまして、恐らく次の年度にはまた相当ふえてくるのではないかと思っております。  なお、日本援助の実績でございますが、LLDC及び低所得国を含めました日本援助の中に占めるシェアは、DACの平均が五六・七%であるのに対して日本は五八・八%ということになっておりまして、それほど悪いものではない、むしろ水準よりもいいということになっております。
  165. 渡辺貢

    渡辺(貢)分科員 時間がありませんから。  いずれにしても、一九七八年が一つの境なんですよ。そしてしかも、その境を前後して見ても二百億円前後、しかも履行されていないという年が一九八〇年にはあるわけなんです。それが今度こんなにふくれ上がっていくというその背景の問題を私も指摘したわけでありますけれども、これからのアジアにおける平和、また日本の果たしていくべき役割りからいっても相当慎重に対応しなければならないと思うのです。  それから、二国間援助の問題でありますけれども、アメリカなどの場合には相手国に対する選別が非常に強いわけでありまして、アメリカの比重というのは非常に低い。そういう点からいっても、国際的な平均数値とわが国は若干二%くらい高いということで、とてもこれでいいというわけにはいかないと思うんですね。しかも、とりわけああいう極貧国や低開発途上国などは一次産品が非常に多い国なんです。そういう意味から言っても、冒頭触れましたように、ユニセフの報告などを見た場合に、もっと日本経済協力をどういう立場から進めていかなければならないか、改めていま、一九八〇年代問い直されていると思うのです。  そういう意味で、最後に外務大臣のその点についての御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  166. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 わが国が平和への貢献を果たしていくためには、やはり経済協力というのは非常に大事だと思っております。そういう意味でODA予算等につきましても倍増計画を立てまして、いま積極的に進めております。これの実施につきましてはわが国経済協力基本方針に従ってやるわけでありますが、いまお話しのように、相手の国の立場、また相手の国に喜んでもらうものでなければなりませんし、プロジェクトについては十分精査しながら、大事な資金でありますから慎重に進めてまいりたいと思っております。
  167. 宮下創平

    宮下主査代理 これにて渡辺貢君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  168. 砂田重民

    砂田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管について質疑を続行いたします。小林進君。
  169. 小林進

    小林(進)分科員 私は一般質問で、外務大臣、どうも外務省はまだ人員、機構が足りない。特に、情報時代に情報を収集する能力が非常に外務省は劣っています。だから、われわれはあらゆる面に資料を要求しても、なかなか要求するような資料が入ってこない。これは最大の外務省の欠陥だと私は思いますが、その意味においても、行政改革のときにあっても、ひとつ思い切って膨張するようにしていただきたいと思うのです。  この分科会でいろいろな注文を出しておきましたけれども、ここへ来ましたらちょっと考えが変わりましたから、思いつくままに三十分、大きな声を出していると終わりになりますから質問をいたしますけれども、やっぱり世界の緊張緩和を助長しているものは米ソの超大国、二つの国ですから、この二つの国の動きがどうかということが私どもは念頭から去りません。  そこで、お伺いしますが、第一には、ソ連のSS20、これをシベリアへ移動せしめるとか、現在もうシベリアにも幾つか置いてあるということでございますが、それに対してアメリカも今年度末には、何かパーシングⅡだとかなんとかというものをヨーロッパに配置をするということで、いまきわどいつばぜり合いをいたしておりますが、米ソのこういう中距離核の問題について、いまどこまで話が進展しているのか。レーガンがゼロオプションですか、完全にともかくソ連がSS20を廃止しなければ交渉に応じないというようなことも言っているようでありますし、これに対して西独のいまの首相等は、ソ連はそんなにかたいものじゃない、ある程度信頼をして、交渉に応じてもいいじゃないかというふうな、そういう側面からの発言があったりして、なかなか私どもは正確な情報をつかめない。そこの問題をひとつお聞かせ願いたい。
  170. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさにいまINF交渉というのはつばぜり合いそのものだと思っておりますが、なかなかその見通しは私たちも立てることは困難な情勢であります。  アメリカは、御承知のようにゼロオプションというので、SS20は、ヨーロッパへ配置しているのもアジアに配置しているのも三百四十くらいあると言われているが、これは全部廃止しろ、そうすればヨーロッパにこれからアメリカが配置するものは配置しない、こういうことで、ゼロゼロでいこうじゃないかというのがアメリカの考え方であります。日本はこれを支持しておるわけですが、それに対してアンドロポフ提案というのが出まして、アンドロポフ提案は、要するにアメリカがパーシングⅡとか巡航ミサイルをこれから配置するのはよせ、そのかわりにヨーロッパのSS20は相当削減をしよう、こういうことでしょうが、それではアメリカもヨーロッパも、本格的な対等なバランスのとれた核軍縮にはならない、こういうことでこれは拒否している。  そんなことで、アメリカの副大統領等もヨーロッパの首脳なんかに会って、いろいろと意見を聞いておられるようですが、いまの段階では、とにかくゼロゼロオプションとそれからアンドロポフ提案、そういう中で、中間的な案というのがあるのかどうかということで、ヨーロッパの中ではそういうことを言っている人もあります。ゼロゼロオプション、ゼロオプションといったところで、非現実的じゃないか。また、アンドロポフ提案というのは受け入れるわけにはいかない。だから、もっと現実的に妥協可能な方向で案を出して考えたらどうかということを言っている首脳もあるわけですが、まだアメリカ初めその他のヨーロッパの考えももちろん固まっていない。日本アメリカ、いまのところヨーロッパは、いずれにしても究極的にはゼロオプションでなければ困るというのがねらいで、その辺で動いておるということで、中間的な考えも、中間的な案も具体的には出ていないというところで、全くおっしゃるようなつばぜり合いというところではないだろうかと思います。
  171. 小林進

    小林(進)分科員 私はこういう問題で、日本経済大国だとかいろいろ世界的にも地位も高まったんだから、何か調整というか、何かひとつここら辺でやるべき役割りがあるじゃないかという気もするのでありますけれども、まだ日本はどうも国際場裏では、そういう大国間の話し合いに軍配を出すほどの実力がないのか、外交力がないのか、まだそこまでいっていないようであります。  しかし、それはそれとして、まず、どうも疑問にたえないのは、アンドロポフですか、ソ連側はゼロオプションは困ると言っているその言葉には、アメリカ側にくみするイギリスにも核がある。フランスにも核がある。NATOではないかもしれませんが、あるが、ソ連からすればそれも勘定に入れるわけですから、こっちがゼロになればイギリス、フランスが残るから、いわゆる公平な一つの形にはならないから、そこら辺も勘定して、お互いにひとつゼロからゼロへいこうという要求ではないように思うのじゃないか、私は素人ですから。  それならば、ソ連の言い分もある程度無理からずということになりますが、これについては英国もフランスも人の財産まで余分なこと言わぬでくれ、おまえたち交渉には関係ないわいというふうな、まあ反対も示しているようでありますけれども、こういうのはひとついかがなものでございましょう。  それから、時間もありませんからそれにあわせていま一つは、いまジュネーブでやっているいま一つの核交渉、これは日本の大使も何か若干発言しているようだけれども、その状況もちょっとあわせて聞かしていただきたい。
  172. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員がおっしゃられました英国及びフランスの持っておりますミサイルの点でございますが、これはいずれもいわゆる戦略核として認識されているものでございます。つまり中距離核ミサイルとは性格が違うということが一つと、それから英国が持っておりますのはポラリス、これは潜水艦でございますし、フランスが待っております九十八基のうちの八十基まではやはり潜水艦発射でございまして、十八基のみが戦略核としての地上発射ミサイルになっておるわけでございます。ですから、これらの英仏のミサイルをもってソ連が配備いたしておりますSS20と同じ次元で交渉の対象にすることは問題がある、こういうことで英仏がこれを拒否いたしております。  また、第二の点といたしまして、INFと並行的に行われておりますものがいわゆるSTARTでございます。STARTとは戦略核、大陸間弾道ミサイルの削減交渉でございまして、これは去る二月二日から並行的に開始されております。これはINFと不可分の関係にある重要な交渉でございます。
  173. 小林進

    小林(進)分科員 そういうところで一つむずかしさがあると思うのでございますけれどもね。ただ、革新社会主義陣営といいましても、十年や十五年前までは、ソ連、中国は社会主義の国家、社会主義の国家には侵略はあり得ない、帝国主義的な侵略はあり得ない、だから、ソ連のやることにはそう危険がないというふうな単純な一つの見方もあったが、最近はもはや日本にはそれはなくなって、昔の社会主義ソ連だからいいという考えはもうなくなってしまって、ソ連も非常に膨張国家だ、非常に危険な国家だ、これはまごまごすると危ないぞ、世界戦略を持ってだんだん自分の勢力範囲を拡張している、そういう見方に社会主義陣営も変わってきていることは事実です。  そういう立場から現実に即して見ているのだが、それにしてもいま米ソのこういう核の問題の交渉などを見ると、どうも少しアメリカの方がかたくな過ぎるのじゃないか、レーガンの方がかたくな過ぎるのじゃないかという感じがなきにしもあらずでございますが、何とかこの動きが軌道に乗ってくればいいということが一つです。  それに対してはヨーロッパの、特に西独あたりはソ連の出方にやや理解を示しているが、西独ばかりじゃありませんな。その西独のいまの保守的な首相なども相当ソ連の核軍縮の交渉等に賛成を示しているようですが、率直に言ってどうですか、日本の外務大臣は。ソ連はやはり信頼するに足りませんか。米ソのいまのヨーロッパ交渉について、あなたはやはりレーガン・オンリーでございますか。
  174. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もことしの初めにヨーロッパへ行ってきたのでございますが、ヨーロッパでコールさんにも会いましたし、サッチャーさんにも会いまして、非常に痛感したことは、やはりヨーロッパの首脳は安全保障の問題と経済の問題に一番悩んでおるということでありまして、特に安全保障については、ソ連の軍事力が非常に増強されて通常戦力では全くヨーロッパを凌駕した、核兵力でもまさに凌駕しようとしておる。特に戦略核は米ソが互格といいますか、まだアメリカ優位かもしれませんけれども、中距離核が、突如としてSS20というのが配置されるというようなことになって大変な不安感を持っておって、やはりヨーロッパの首脳も平和が保たれるには軍事力が平均しなければならぬ、軍事力のバランスの上に立って平和が保たれておるのだ、こういう認識でありますから、ソ連がそれだけの中距離核ミサイルを配置するということになれば、やはりアメリカとともに、たとえアメリカに基地を提供してでもそれに対抗するパーシングⅡとか巡航ミサイルというものをやらなければならぬ。しかし反面、ああいう民主主義国で反核運動もありますし、選挙もありますし、そういう国内情勢の中で、力のバランスを保つためにはやらなければならぬけれども、しかし国内においてはいろいろと反対もあるということで非常に悩んでおる。  と同時に、こういうことをやっていけばどんどん軍拡競争というのが進むわけですから、どこかの時点で歯どめかけ、そしてまたむしろバランスのとれた軍縮の方向に進めなければならぬというのが私は偽らない気持ちだろうと思うわけです。ですから、そういう中でINF交渉というものの成功を非常に期待をして見守っておるし、そしてこれに対して積極的な働きかけをしておるわけですが、ヨーロッパの諸君もレーガン大統領も、そして私もそうですが、やはり一番いいのは核がなくなることで、中距離核戦力というものがゼロになることがいいわけですから、ゼロオプションというのが一番望まれるわけでありますが、これはなかなかいまのソ連が言うことを聞かないということでありますので、それではバランスのとれた削減というものが、何か中間案というようなことでもできれば、そして合意にでも達すれば一時的にいいわけですが、しかしいまそういう見通しもなかなかない。  日本の立場からいいますと、私はヨーロッパの首脳にも強く申し上げたのですが、下手に中間的な案が出て、そしてソ連が二百四十ある中距離ミサイルを撤収する、削減する、その削減した分が極東に回されたのでは困る、いま百基あってすでにわれわれは脅威を感じているのに、さらにその上にヨーロッパの削減分が持ってこられては困るのですから、やはり軍縮というものをやっていく場合には、INF交渉を進める上においては世界のグローバルな立場でこれは進めてもらうべきだ、ただヨーロッパはヨーロッパだけのことを考えてやるということは世界の安全保障のためには決してよくないということを強く主張したわけであります。  日本の立場はレーガンさんオンリーじゃございませんが、やはり核がなくなる、ゼロオプションというのは、これはヨーロッパの首脳もそう思っておるのです。しかし、これが果たして現実的であるかどうかということは、これからINF交渉を続ける中で、われわれは一番いいと思いますが、これから努力をして何としてもこれを成功させなければならぬ。そのために日本が果たす役割りがあるならば、これは積極的に果たすべきであろう、こういうふうに思います。
  175. 小林進

    小林(進)分科員 私は対日本とソ連との話もひとつお伺いしたいと思いますが、その前に、いまヨーロッパでは、これはあす、あさってあたりですか、西独の選挙が結論が出るのは。そこへいっているのですが、緑の党が何かどうも非常にすばらしい勢いで伸びてきているということで、ともすると、社会民主党が緑の党といまのところはまだ合同とか連帯の話は出ておりませんけれども、また西独で政府がかわるのじゃないかと言っていますが、これは何といっても反核、軍縮、平和をモットーにしているわけですが、こんなのが一つでき上がってくると私はヨーロッパの空気も変わるのじゃないかと思います。あわせて、イギリスだって労働党なんか少しもめているようですけれども、これは反核、平和、軍縮の運動が草の根のようにいま出ております。それからアメリカだって、これは市民運動あるいは草の根運動が想像以上に伸びてきているし、同時に権力者の側から見ても、バンスだとかあるいは世銀の前の総裁をやられたマクナマラだとか、ケネディももちろんそのグループ、グループとは違いますが、その傾向ですけれども、やはりレーガンの軍拡競争というものに非常に危機を感じながら、彼らは軍事力を減らせとかあるいは核先制不使用だとか、さまざまな形でそういう一連の運動がいま世界的に巻き起こっている。そういうような情報を本当に外務省は細かくとっていただいて、そしてわれわれの方にも間違いないように資料を流していただく、そういう点が、人手が足りないと言われればやむを得ない、その意味でうんとふやしてもらわなければならないと私は思っている。  そういうことから見て、いまの西独の状況、いかがですか。これは来年ですか、またイギリスも近く選挙があるのじゃありませんかな。そういうことも含めてヨーロッパの情勢をひとつ外務省の分析をお伺いしたい。
  176. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、この日曜日、三月六日に西独の総選挙が行われます。ほかの国の選挙のことでございますし、責任ある政府当局からどっちが勝つ、どっちが負けるという見通しを申し上げるのは若干はばかられますが、最近の新聞報道あるいは世論調査等から見ますと、現政権、キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟の連立政権が大体四八%ぐらいの支持を集めるのではないか。それに対する社会民主党、現在フォーゲルという方が首相候補でございますが、四二、三%の投票を集めるのじゃないかという予測がございます。  御案内のとおり、西独には五%条項という非常におもしろい規定がございまして、比例代表制の中の五%をとれない場合には議席を一つもとれないということになっております。現在その五%の線上を彷徨しておりますのが自由民主党とそれからいま御指摘の緑の党でございます。ただ、最近の若干の傾向をたどってみますと、どちらかというと自由民主党の方が若干上向きであり、緑の党の方が若干下向きであるということも言われておりますが、これはふたをあけてみないと結果はわからないということでございます。  ことしは西ヨーロッパは非常に選挙が盛んでございまして、イギリスの総理挙は本来ならば明年の秋になっておりますが、いろいろの国内事情、それからサッチャー首相のいろいろな思惑等のこともございまして、本年の六月あるいは十月に繰り上げて選挙が行われるのではないかという見通しが最近高まってきております。そのほか選挙を抱えている国といたしましては、オーストリアとかフィンランドとか北欧諸国がございます。今年じゅうにいろいろ各国におきまして政権の交代のような現象が起こるのではないかと予想しております。
  177. 小林進

    小林(進)分科員 いまのお話では、西独では政権の交代もないだろう。四八%というお話ですけれども、これはあけてみなければわかりませんが、いずれにしてもレーガン的タカ派の勢力が強い一面には、やはりそういう草の根運動等も含めて新しい世界の平和を求める運動も大変起きているのですからね、そこら辺はあまねく情報をとって、あわせて日本の進路に間違いなからぬようにしてもらわなくちゃならないというのが私の希望するところであります。  それに関連しまして、いまソ連が確かに膨脹国家であることは私も否定はいたしませんが、ただ、いまおっしゃるSS20をシベリアによこすとか、あるいはまた日本の出方によってはそれ相応の対策も練るとか、半分恫喝みたいなこともちょっと口にしてみたりいたしておりますが、やはりこれには卵が先か鶏が先かは別にして、日本海から太平洋にかけて、日本自体あるいは日米安保条約に基づく日米の間で北方に対するそういう軍事力を強化する。その強化にこたえるためにソ連もシベリアや極東に軍事力を強化してきたのであって、どっちが先だか後かわからないけれども、やはりそこに原因があるのではないか。  たとえば、アメリカの第七艦隊だってだんだん強力になってきた。そこへもってきてF16を青森の三沢基地に配置するとか、北海道の日本の自衛隊も強化をするとか、いろいろそういう相手を刺激するような、やり方がどうも強過ぎるんで、それでソ連がそれにこたえる形で来たのではないかと私どもは考えている。この点は一体いかがでございますか、外務大臣
  178. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連のヨーロッパにおける軍事力の増強は先ほど申し上げましたが、極東における軍事力の増強も目をみはるものがあるわけで、私もレクチュアで聞きまして大変驚いたことです。それほど海軍力も空軍力も陸上兵力も非常な充実といいますか、強化をしておるわけで、北方領土においてももうすでにその徴候ははっきりあらわれておるわけですが、ソ連から見ると、日本非核原則、核を持たないわけですから、日本のいまの軍事力の脅威なんというのは問題にならないほど小さい国じゃないかと思っておるわけでして、ですからソ連は、日本の軍事力といいますか自衛力というものを知り過ぎるぐらい知っているわけですから、そして日本が進めておるいまの防衛計画大綱あるいはまた五六中業の実態もよく承知しておるわけですから、ソ連が何か突如として日本が軍国主義の方向に転ずるようなことを言って、そしてSS20を向けるというふうな発言をするなんということは、われわれからすると全く本末転倒といいますか、非常な恫喝以外の何物でもないとしか思えないわけでありまして、われわれは、ソ連は硬軟両方取りまぜて外交政策を進めておりますので、私どもは私どもで、ソ連に対しましても基本的な姿勢を崩さずに、一面においてはソ連に対して言うことはきちっと言わなければなりませんし、領土の返還は今後とも腰を据えて追っていかなければならない。同時にまた、対話の方も積極的にこれを進めるということも大事ではないかということで、ただ、いまの現象だけ見て一喜一憂する必要はないんじゃないか、腰を据えて日ソ外交というのは取り組んでいく必要がある、こういうふうに私は考えております。
  179. 小林進

    小林(進)分科員 それで、なるほど日本の自衛隊や軍備力なんかソ連から見たら取るに足らぬ、いまおっしゃるとおりだと思います。その答弁はひとつちょうだいしますが、ただ、私はここでこの前のときも資料を要求したな。それはワインバーガーが、昨年三月、国防長官に就任するときにレーガンと署名して誓ったいわゆる秘密文書だ、アメリカの防衛に関する指針と称するその文書を早くこちらでちょうだいをしたいと言うんだけれども、なかなか出てこない。けれども、それはワシントン・ポストだとかニューヨーク・タイムズですかに出ただけの内容を見ても、アメリカのいわゆる戦略における重点防衛地点はアメリカ本国、これはそのとおり。それからNATO、ヨーロッパ、そのヨーロッパと続いているペルシャ湾、いわゆる中近東、これがアメリカの重大なる戦略基地だ。そこを中心に一般兵器、核兵器の装備を強めている。その中には西太平洋も入っている。これが防衛の第一線なんだ。そこで米ソがぶつかったときにはその同盟軍――日本を称して同盟軍と言っている。日本は同盟軍としてソ連の弱点をついてくれ。その弱点というのは何だ。その弱点がすなわち日本海であり、朝鮮半島であり、ウラジオストクであり、千島である。ここをひとつ、日本がソ連の弱点をついて、ソ連における極東の弱点にある軍隊が太平洋を回ってペルシャ湾や中近東へ行って米ソの主戦場における新協力ができないようにやってくれ、これが日本に対する役割りだ。これがワインバーガーの国防指針の中に明らかになっている。  これは私は大変なことだと思っている。そういうことをやるからソ連も――それを、レーガンと中曽根さんがそんなことを話し合ってきた。あなたも御一緒でしたからその会談の中に入ったか入らぬか知らないけれども、これは大変だと思うときに帰ってきて、日本列島を不沈艦にします、三つの海峡を封鎖して――海峡封鎖なんて宣戦布告ですよ、あれは。旅順港の封鎖と同じだ。広瀬中佐だ、杉野はいずこなどという昔物語を思い出すような、そういう危険なことをやっているから、その秘密文書から見ると、一々肯綮に当たるんだ。北方からバックファイアが来るというような話から見ると、それが肯綮に当たるから、これならばソ連も一応やはりそれに対する体制も整えなければならないんではないかというそういう心境にならざるを得ないのではないかと私は思うわけですよ。  だから、そこら辺、いま少し問題をひとつ掘り下げて、アメリカとソ連の中における日本独自の外交を私はいま進めてもらいたいというのが、これがお願いの筋なんですよ。外務大臣はこれからだんだん伸びておいでになるんだから、やはり安倍外交というものはいまのうちにきちっと出てこなければならない。私は、いま重大な時期だと思う。どうですか、この問題。この資料くれますか。――もうすぐやめますからね、ちょっと待ってください。
  180. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 秘密文書そのものは入手しておりません。  ただ、本年度の米国防報告の記述、これは米国の国防政策の基本でございますけれども、そこから読み取れる限りにおきましては、これは実は一昨年くらいまでは、確かに先生御指摘のとおりに、一カ所に出てきたら積極的に他方をたたくのだ、そういう戦略が入っておりましたけれども、そういう表現はなくなっております。むしろ同盟国が結束して守るのだ、そういう一般的な表現に変わっております。
  181. 小林進

    小林(進)分科員 もう時間が参りましたから、残念ながらこれ一間で終わりますけれども、私が外務大臣に特に要望したいことは、あなたはグロムイコにひとつ日本に来いと言って招待されたり、あるいは中曽根さんも何か日本に来たらいいじゃないか、招待しますよというようなことを言っているが、私は、こういう重大なものはやはりみずから積極的に行動すべきだという主張なんです。もしアメリカに学ぶものがあるとすれば、私はそういう点を学んでもらいたいと思うのだね。  かつてニクソンなどというものは、あれは大統領になられるまではタカ派中のタカ派だと実は私どもは考えたのだけれども、必要があるというときになれば、どうですか、対ソ連との交渉において何も気取らない。ブレジネフが来ないからどうだとか、フルシチョフは来たからどうだとか言わないで、必要があればとんとんとニクソン自体があれはウラジオですか、ソ連へも飛んで行って、そしてそこで交渉を真剣に詰めている。四十七年の二月にニクソンは上海にだってちゃんちゃんと飛んで来た。周恩来が来ようと、あるいは毛沢東がアメリカへ来ようと、そんなことは構わない。やはりこれは人類のためであり、自分の国の生存に関する問題だと思えば、とんとんと飛んで来て、そして上海でニクソン・周恩来コミニュケというものを発表したりしている。そしてそのコミュニケがいたずらにソ連を刺激するおそれがあると彼が考えた場合には、二月に上海コミュニケをつくって五月にはすぐその足でソ連へ飛んで行って、アメリカとソ連との基本協定というものを結んでいる。それくらいの行動力があっていいと私は思うのです。  安倍さん、いらっしゃいよ、あなた。あなたがいらっしゃい。こっちへいらっしゃいじゃなくて、行きますから以下よろしくという、そういう積極的な外交をおやりになると同時に、余りレーガンのしっぽにつくのじゃなしに、安倍外交という独自なものを持って堂々と乗り込んでいくようにしてもらいたいし、それくらいの迫力を外務官僚は持ってもらいたいですね。いまの官僚は実に小ぢんまりしてしまって、昔のような、国家の運命を背負っていくような見識がどうもなくなった。古き歴史を数えれば吉田茂なんかも少し外務官僚を痛め過ぎたのではないかと思いますけれども、いまは天下動乱の重大な時期でありますから、ひとつ安倍外務大臣の特に御奮闘を祈るとともに、それを取り巻く外務官僚のさらに御奮闘を祈りまして、何か御返答をいただきまして私の質問を終わることにいたします。
  182. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、レーガン大統領が非常な軍備の増強を図っておるというのは、軍備増強というのが目的ではなくて、最終的にはやはりソ連とのバランスをとって米ソ首脳会談を実現して、一挙に軍縮の方向に持っていきたいというのがレーガン大統領の政治家としての願いではないかと思っております。  そういう中で日本の果たす役割りもあるわけでありますが、私もいまお話しのように、どこへ出ていくのにもやぶさかではありませんし、日本のためにまた世界のためになることならどんなことでもしたいと思っております。そしていま一番大事なことは、そうしたいまの世界の非常に厳しい情勢の中で、何か日本一つ役割りを果たして、バランスのとれた軍縮というものに持っていくというのが日本の大きな理想でなければならない、こういうために努力を重ねなければならぬと思います。  いまの対ソ関係、日ソ関係については、残念ながらいまソ連が日本に対して非常に厳しく当たっておりますし、むしろ日本を軽視していると言ってもいいぐらいなんであります。しかし、われわれは対話はやはり続けていかなければならない。対決よりは対話を進めなければならぬと思います。いままで何回も外務大臣が行っておりましたから、一回ぐらいはグロムイコさんも日本に来られたらちょうどいいころじゃないかということでお招きをしておるわけですが、しかしまたお目にかかる機会は必ずあると私は思っております。そういう機会を通じて日本の主張を述べ、そしてソ連との間のいろいろな面での話し合いをして、軍縮の方向へ何か一つ役割りを果たすことができたら大変幸いである、こういうふうに考えております。
  183. 小林進

    小林(進)分科員 これで終わります。
  184. 砂田重民

    砂田主査 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。  次に、竹本孫一君。
  185. 竹本孫一

    竹本分科員 内外の時局がまことに重大なときに安倍さんには外務大臣の要職につかれまして、大変御苦労さまでございますが、御健闘を祈り上げます。  本論に入る前に、一言これは外務省にお礼を言いたいのですけれども、私は櫻内さんが外務大臣のときにこの分科会におきまして、MRAというのを大臣御存じかと思うのですが、その運動にもう少し外務省が熱意と関心を持ってほしいということを実は要望いたしました。と申しますのは、あすこに出ておる人は外国、イギリス、ドイツを初めとして相当の影響力のある、しかも指導者の方々ばかりである。そして、飯も一緒に食べながら非常にざっくばらんな対話のできる最もありがたい舞台である。私が出たときには、たまたまかもしれませんが、外務省の大使も公使も来ていない。もったいないじゃないかということで強く意見を申し上げましたところが、櫻内さん早速――櫻内さん自身も河野一郎さんと御一緒で会議に出られたこともありまして、一応の理解があったものですから、その後外務省官房長にも非常な御努力をいただいて、スイスの会議にもインドの会議にも次々と非常に御協力をいただいておるようでございまして、大変ありがたいと感謝をしておりますので、この席をかりましてひとつお礼を申し上げておきたいと思います。  そこで本論でございますけれども、大臣の岳父の岸さんが「二十世紀のリーダーたち」という本を、お読みになったかもしれませんが、お書きになりましたね。あの中で私は非常に教えられることが多かったのですけれども、岸先生がアデナウアーにお会いになったときに、お年を召していて大変元気なので、健康の秘訣は何ですかと聞かれたところが、インマーカンプ、常に闘いだということを言われた。同様にシャハトさんに会われたときに、健康の秘訣はと聞いたら、今度はインマーゲシェフト、常に仕事をやっているんだと言われたということが書いてある。たまたま安倍さんは、通産大臣としてはインマーゲシェフトで忙しくやられた。今度は外務大臣ですからインマーカンプでひとつがんばっていただきたい、こう思うのですね。  ところが、そのインマーカンプの相手の問題なんですけれども、これはソビエトであるかアメリカであるか、いろいろ議論があるでしょうが、そういう問題とともに、きょう申し上げたいことは、国内の中にもやはり闘いは必要なんだということをひとつ申し上げたいのですね。  結論から申し上げますと、中曽根内閣になりましてから、御承知のように世論の支持なんかもがた落ちでどうにもならぬと思いますが、その一番大きな理由は、中曽根さんの政治姿勢、外交姿勢、防衛に関する基本姿勢だとも思うのですね。  そこで、まず一点大臣に伺いたい点は、新しい内閣になってからあるいはソ連に対しあるいはアメリカに対しても、日本外交の基本というものあるいは基本姿勢というものが変わったのであるか、変わろうとしておるのであるか、あるいは鈴木内閣以来の平和戦略路線というものを踏襲しておられるのであるか、路線はどういうふうになっておるか、大臣の感じておられるところを率直に伺いたい。
  186. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根内閣の外交方針あるいはまた防衛方針、外交の基本姿勢、そういうものがこれまでと変わったのか、こういう御質問でございますが、私も外交の責任の一端を占めておるわけでありますけれども、私自身は、やはり自民党内閣がとっておるところの外交あるいは防衛に関する基本的な方針は変わってない。総理大臣によってそれぞれの個性というものがありますし、ニュアンスというものがあることは事実でありますが、しかし、その基本というのは変わってないし、また変えるべきではない。というのは、これまでの長い間の自民党内閣の中でこうした方針というものは積み上げられてきたわけでありますから、そういうものが簡単に変わるわけでもないし、また変えるべきじゃないというのが私の気持ちであります。また、現実問題として中曽根内閣になってからもそうした基本というものは変わってないというふうに私は確信をいたしておるわけであります。
  187. 竹本孫一

    竹本分科員 基本路線が変わってないということを承りまして、大変安心をいたしました。実は、先ほど谷川防衛庁長官にも伺いましたけれども、変わっていないというお話でございまして、外交、防衛、変わっていなければ大変幸いである。しかし、それにもかかわらず、いま大臣の御答弁の中の言葉で言えば、ニュアンスは大分変わってしまった、あるいは変わり過ぎたと思うのです。  そこで、先ほども話した問題ですけれども、大臣、いまの世界政治舞台において最も尊敬すべき人はだれかということになれば、ドイツのシュミットさんだと私は思うのです。彼はわれわれと同じ民主社会主義ですから、身びいきという点もあるかもしれませんけれども、外交のあり方ということについての彼の基本姿勢というものは国際的にも高く評価されておる。もちろんドイツでも高く評価されておる。その彼が、ごく最近に世界じゅうの新聞に広告というのか訴えというのか出しましたね。大臣も読んでおられるし外務省も読んでおられると思うが、あの中に書いてある言葉は、実に適切な言葉が幾つかある。  その最初の方には、レーガンさんという名前があったかなかったか、なかったように思いますが、選挙によってアメリカの大統領ができてきた。民主的な選挙を通じてできてきたのだから、われわれはこの大統領を信頼する以外にはないということを書いてある。それはそのとおりだと思うのです。その次に大事なことが書いてある。したがって、われわれは信頼するのだから、アメリカの大統領レーガンさんもわれわれの信頼を裏切らないようにやってもらいたい、そしてその中身が書いてある。  一つは、無責任な発言や軽率な行動によってわれわれの信頼を裏切るようなことがあっては困る、こう書いてある。シュミットさんがそう決めつけたわけじゃないが、確かにレーガンさんの言動には、発言、行動の中に少し行き過ぎたところがあると私は思うのです。同様に、中曽根さんにもそれがある。特にシュミットさんが言っていることは、アメリカは軍事的にも経済的にも共産主義国の首を締め上げてやるのだというような誤った印象を与えるようなことがあってはならぬ、そういうことはできもしないことはヨーロッパの人はよく知っている、そういうことも書いてある。そういう意味において波は、シュミットさんは、ソ連に行ったと思うと必ずアメリカに行く。アメリカに行ったと思えば必ずソ連にも行く。米ソの間に立って本当にヨーロッパの平和、世界の平和を守るために粉骨砕身の努力をしておられる。これが一国の宰相あるいは今日の政治家に課せられた基本的な課題だと私は思うのです。  そういう意味で、いま大臣から御答弁をいただきましたように、日本の積み上げられてきた外交路線、特に鈴木さんが一生懸命積み上げられたこの基本路線を、鈴木内閣の政策路線を継承すると言われた中曽根内閣でございますから、とんでもない方に脱線しないようにひとつやってもらいたい。これは外務大臣としても十分かじをとって、総理にも協力をしていただいてその路線を守っていただいて、日本平和国家の理念というものが諸外国から疑いを持たれないようにひとつ努力をしていただきたい。重ねてお願い申し上げます。いかがですか。
  188. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くおっしゃるとおりであろうと思います。日本がこれまで積み上げてきました平和国家の理念といいますか、路線は、これを変えてはならないし、とれからもこの路線の上に従って、世界の中で相互信頼を深め、世界とともにその平和と安定を図っていくということが最も大事ではないか、そういう面で私も外務大臣として全力を尽くしたいと思います。
  189. 竹本孫一

    竹本分科員 そこで、永野経済貿易訪ソ団の話、一口でやるわけですが、新聞紙上で見ると、永野さんが、外務省がつまらぬ干渉をするので怒ったというような記事が出ておる。外務省アメリカに対するいろいろの政治的配慮から御心配をいただくことは当然でもあるし、もっともだと思います。しかし、永野さん自身が新聞記者に語っておられるところによると、米ソ緊密の協力関係を踏まえて、その上でソ連とも大いに仲よくしていきたい、その道をまた開きたいと言っておられる。きわめて健全なる常識であって、恐らくまじめに考える人ならば異論はないはずだ。それに対して外務省がどういう干渉というか指導というか進言というか、何を言われたかということをまずひとつ伺いたい。  それから同時にあわせて、時間がありませんから、訪ソ経済使節団が、時計や自動車の問題が何とかいうようなことも記事に出ておりましたが、時計や自動車の問題は別にして、果たした政治的、経済役割りを外務大臣はいかに評価しておられるか。この二点を伺いたい。
  190. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 永野ミッションと外務省との関係について御説明いたします。  二月の十六日に、いわゆる永野ミッションの結団式がございまして、その機会にソ連の内政、外交、日ソ関係について講話をお願いしたいという要望が先方の事務当局からございました。それにこたえまして、私から、ソ連を取り巻く国際情勢、ソ連の内政、日ソ関係等を御説明申し上げました。  その中で、日ソ関係が現在非常に厳しい局面にある。厳しい局面にある理由は、一つは領土問題が未解決で残されているということ。二番目に、最近のソ連のアフガン及びポーランドに対する介入、これが国際的な非難を浴びている。こういう二つの理由から、非常に困難な局面にある。わが国としては、一方においては領土問題を解決して平和条約を結ぶという基本方針を貫く必要があるし、他方においては西側の一員として、西側と共同歩調をとっていく、こういう姿勢で臨んでおる。日本のような国では、政府が民間、特に財界に命令を下したりこれを統制するというようなことはできないけれども、できれば政府の意のあるところを的んで、できる限り政経をばらばらの形ではなく一体として進めてもらいたい。これは私どものお願いであるということを申し上げました。それが事実関係でございます。
  191. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係が大変厳しい中に、永野さんが日本経済界のベストメンバーを集めて、二百数十人という大部隊でソ連を訪問されまして、チーホノフ首相を初めソ連の要人、経済関係の皆さんと率直に話し合いをされたということは、私は現在の日ソの情勢が厳しいだけに非常に意義があったと思います。  特にそういう中で、経済交流あるいは特に民間の貿易等を積極的に進めるということが合意されたわけですが、同時に永野会頭も、いま局長が申しましたような日本の立場というものを踏まえて、あるいは北方領土の問題等にもやはりきちっと言及されて、首相に日本の国民の立場に立った主張を述べられた。あるいは墓参問題についても触れられた。そういうことは私は大変評価をするわけでありまして、特に今回の訪ソによりまして来年また日本で日ソの経済会議が行われるということも、日ソの経済交流を進める上においてはいいことである、こういうふうに私は思っておるわけでありまして、日ソ関係が非常に厳しいだけに、そしてまた政治的には領土問題あるいはポーランドあるいはアフガニスタンという問題で、日本もソ連に対しては非常に厳しくわれわれの主張を述べておるわけでございますけれども、そうした対立は対立としてやはり対話も進めていくということが大事なことであろう、こういうふうに考えます。
  192. 竹本孫一

    竹本分科員 ただいまの大臣のお考えは一〇〇%私も賛成です。ぜひそういう基本姿勢で貫いていただきたい。  永野さんずいぶんお年を召していますけれども、日ソの間に領土問題があることや、あるいはポーランド、アフガニスタンの問題があることを忘れておられるほどぼけてはいないと思うんですね。そういう意味で少し親切が行き届き過ぎたかもしれないと思うけれども、過去の問題ですから、基本姿勢としてはいま大臣お話にありましたようにひとつ御努力を願いたいと思います。  そういう点について、私は対ソ関係ではキッシンジャーさんが言った言葉が最近非常に気に入っている。波は何と言ったか。ソ連に対しては断固として、しかし創造的にやっていかなければいかぬ。ソ連は手癖が悪いとかなんとかいう議論もありますし、共産主義の問題もありますから、警戒をするということは十分必要であるし、私も賛成である。そういう意味においては断固とした姿勢が必要である。しかし同時に、断固一本やりや頑固一本やりではなくて、かつ創造的な努力が必要だというそのキッシンジャーさんの考え方はきわめて外交の経験の深い方らしい結論だと思いますので、そういうふうに対ソ関係は断固として、しかしながら創造的な東西関係協力をひとつ構築するという姿勢で安倍外交は貫いてもらいたいと思うのです。  石橋湛山先生が書かれたものの中に、最近流行と言っては悪いかもしらぬが、ソ連脅威論等に対して、ソ連といえども鬼でもなければ蛇でもないということを言われた言葉もある。また最近のアメリカの指導者階級の中には、アメリカのレーガンさんの行き過ぎた強い姿勢に対して――私はざっくばらんに申しまして、大臣、ソ連の膨張主義というものも困るが、レーガンさんの一種の冒険主義と申しますか、力の外交も、やはりわれわれは慎重に考えてついていかないとどこへ連れていかれるかわからなくなる。そういう意味で、中曽根さんの不沈空母その他の発言が国民に大きなショックを与えたのも当然だと思うんですね。だから、国民の常識というものはある意味において健全である。永野さんではないが、緊密な米ソ協力関係を踏まえながらソ連にも十分に門戸を開いて接していくということがこれからの外交の基本姿勢ではないか。脅威脅威といいましても、確かに脅威というものは感ずれば幾らでもあるのだけれども、それを露骨に脅威論を振り回せば今度は向こうさんの方がかえって脅威を感じて悪循環になりますから、その辺は外交としてはきわめて慎重にやってもらいたい。  同時に、ソ連に対してということをいま申しましたけれども、アメリカに対しても、これは佐藤内閣時代の話ですけれども、ブレジンスキーさんが書いた「ひよわな花・日本」という本がある。あの中で日本外交路線をいろいろ論じていますね。その中で何を言っているかというと、ブレジンスキーさんは、日本がこれほど経済大国になった以上は、日本国際政治の中でビッガー・ロール、より大きな役割りを果たそうと考えることはきわめて当然であると書いておる。しかし困ったことに、とは書いてなかったが、しかしながら日本外交路線はアンビギュイティー、あいまいもことしておる、どっちを向いてどういうふうに行くのか、その基本路線がよくわからぬということを書いてある。そしてその次に、しかし強いて言うならばという意味でしょう、日本アメリカとともにスタンズ・ウイズと書いてある、一緒に進むであろう。それだけならまだいいのだけれども、その後にハイフンで、棒を引っ張りまして、アメリカの後ろについていくであろう、ビハインド・ザ・ユナイテッド・ステーツ、こう書いてある。そのアメリカの後ろという言葉が私は当時非常に気に食わなかった。敗戦ぼけももういいかげんに清算しなければならぬので、日本アメリカ協力することは必要であるが、あくまでもイコールパートナーシップでやってもらいたい。アメリカのビハインドでは困る。そういう意味で、ソ連に対しても慎重な態度で臨んでもらいたいが、アメリカに対してもわれわれはイコールパートナーとしての誇りと責任において、ひとつ外務大臣には大いに活躍していただきたいと思うのです。  たとえばこの間、イギリスのピム外相がアメリカに行かれましたときに演説をされたその演説等を見ても、アメリカに対してある程度思い切ってというほどでもないかもしらぬが、はっきりと言っておられる。ゼロオプションにばかりこだわってもらっては困る、オール・オア・ナッシングは外交ではないということを言って、最後に、テーブルについたソ連を話がまとまらないうちに席を立たせるようなことがあってはならぬと書いてある。僕はこれは外務大臣としてきわめて慎重で当然な発言だと思うのです。われわれがいまアメリカに向かって言いたいことはその点なんです。強気外交一本やりでいって、そしてソ連もそれに反発して、それでけんかになって、ますます問題がエスカレートすることのないように慎重な対処を臨みたい。したがって、アメリカに対してもこれからはイコールパートナーとしての誇りと責任において臨んでもらいたい。いかがでございますか。
  193. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま竹本先生の大変含蓄に富んだお話を聞きまして、まさに外交というものはそういうものじゃないかと思っております。  アメリカに対しても、われわれ同盟国でありますが、しかしやはり言うべきことはきちっと言わなければならぬと思いますし、また約束したことはちゃんと守るということも必要じゃないかと思っておりますし、アメリカもかつての栄光時代ではなくなったわけでございます。そういう中で悩みも大きいわけですが、しかしレーガン大統領、それなりにアメリカ国際的責任というものを果たしていかなければならぬという非常な強い決意も持っておることは事実であろう。ですから、ただ軍拡だけをやるということではなくて、最終的には米ソで話をして軍縮の方向に持っていこうというのが私はレーガン戦略じゃないかというふうに思っておるわけでございます。いずれにしても、日米関係は深い関係にありますが、それだけにやはり言うことはちゃんと言うということ、対等の立場、イコールパートナーというのが一番大事な軸であろう、それがまたアメリカのためになるし、日本のためになるし、世界のためになると思っております。  またソ連に対しても、いま言われるように、まさに日ソ関係についてわれわれが断固として主張することは主張していかなければならぬと思いますが、しかしパイプを切ってはならぬと思います。あくまでも窓口は窓口としてこれを広げていくための努力はする。外務省も、ソ連に対しては外務省の姿勢というものは一番はっきりしていると思うのですが、それはそれなりに大事なことであると思います。北方領土の問題あるいはアフガニスタンの問題、ああいうものを考えますと、やはり日本がソ連に対してきちっとした姿勢を示すところがなければなめられてしまうのではないか。ですから、やはりソ連に対しては断固とした態度をとりますが、同時にまた対話の方向というものは模索していく必要がある。四月には日ソの事務レベル会議もやりますし、今回の永野の訪ソというのもそういう意味では大変有意義であったと思いますし、今後ともそういう対話の道は模索してまいりたい、こういうふうに考えております。
  194. 竹本孫一

    竹本分科員 ただいま大臣からまことにありがたい御発言をいただきましたが、そういう基本姿勢で貫いていただきたいと思います。  私が友人から聞いた話でございますけれども、大平さんが亡くなる前、側近のある有力な方に、日本外交の基本は何かということについて話された。その聞いた人から私は伺ったのですが、非常に大平さんらしいいいことを言っておられる。日本外交の根本は米ソをして戦わしめないことであるということを言われたというんですね。これはまことに適切な言葉だと思うのです。米ソをして戦わしめないことが日本外交の根本であるということを喝破された大平さんの見識に、私は深く敬意を表しております。ぜひ安倍外交におきましても、そういう意味で基本姿勢を貫いていただきたいと思います。  時間がだんだんなくなりました。最後に一言ですが、総合安全保障という言葉があります。これにつきまして、私は先ほども防衛庁にちょっと言ったのですけれども、防衛費を総合安全保障費にして、いまGNPの一%論がよくありますけれども三%論にしたらどうか。その三%論というのは、陸軍の経験者や海軍の昔の軍人さんが言っている三%論ではなくて、防衛はGNPの一%というのは、科学の発達や技術の進歩を無視しろという意味ではなくて、結局政治的決断として平和国家の理念を貫く意味から一%ということを設定されておると思うのですね。だから最後までその路線は貫いてもらいたい、もし足りなければGNPをふやせばいいんだ、経済もだんだんよくなるでしょうから、そういう話もしたのですが、私自身としては、安保ただ乗り論というような問題も含め、日本国際協力国際的責任の果たし方が不十分だという批判にかんがみましてこれを一挙に三%にする。一%はあくまで日本自身の防衛費の問題。あと一%は海外経済協力をいまの規模より二倍、三倍にしてGNPの一%まで持っていく。さらにもう一つの一%は、三菱経済研究所では中島さんが大きなプロジェクトを持っておられますし、ほかにもパナマ運河の第二運河をつくれという意見もある、さらに大石武一さんは緑の問題に熱心ですが、世界の森林を守れ、世界に緑をふやせという運動に大いに献身しようとしておられる、私自身の言葉では世界のグリーンレボリューション、そのグリーンレボリューションのグリーンプロジェクトを推進するために一%を投入する。  そういう意味で、日本の防衛と海外経済協力とグリーンレボリューションの一%、合わせて三%が日本の総合安全保障として考えられないかということを私として夢に見ておるわけですけれども、そういう考え方はどうか、お伺いしてみたい。
  195. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 大変傾聴に値する御議論だと思います。  安全保障ということを考えますと、ただいまお話しのように自衛力の充実によるところの安全保障というだけでなくて、やはり経済外交あるいはまた科学技術、そういうものも含めた総合的な安全保障という立場を日本としては貫いていかなければならない。特に、おっしゃるような経済協力の問題、あるいはまたいま非常に地球が荒廃しつつありますが、そういうものに対して、日本がこれを防ぐための努力をしていくというようなこと等も踏まえたそういう意味の広範な努力は、日本国際責任という面からもこれからも続けていく、これがまた日本の安全保障にもつながっていく、私はそういうふうに考えます。非常にいい御意見を聞かしていただいたと思っております。
  196. 竹本孫一

    竹本分科員 大変ありがとうございました。終わります。
  197. 砂田重民

    砂田主査 これにて竹本孫一君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  198. 沢田広

    沢田分科員 外務大臣と一対一で質問するのはなかなか機会がなかったのでありますが、外務大臣も総理の候補になられましていろいろと主張なされました。今日、中曽根首相が生まれて、不沈空母と言ったり海峡封鎖と言ったり、突然躍り出したようなかっこうになったことが、外務大臣としての職責あるいは本人の意思から見ても――閣内の不統一だというふうな言葉を得ようといって誘導しているつもりは私はありません。そういう意味じゃなくて、これでよかったという気が心からしているのかしてないのかというと、してないのじゃないかという気がするのですね。  そのことがどれだけ国民に多くの不安を与え、今日その危険を身にひしひしと感じているか、外交を担当される大臣として、これは少し弱ったな、少し行き過ぎているとは言いにくいでしょうけれども、少しはしゃぎ過ぎている、これもちょっと言いにくいのでしょうけれども、少し路線が狂っているのではないかなという印象を持たれたのではないかという気がするのでありますが、外務大臣の率直な、閣内では一本でいかなくちゃならぬ、ある意味においては大変苦しい立場にあるんじゃないか、そういう気がいたしますが、いかがでしょう。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと批判はあったわけでございますが、これまで中曽根内閣になってやってまいりましたたとえば日韓首脳会談あるいは日米首脳会談、これは基本的には成功ではなかったか、日米首脳会談の結果日米間の信頼関係というものは一層高まった、こういうふうに考えております。同時にまた、これまでいろいろと国会の中で議論されたわけでございますが、日本外交政策一つをとってみましても、この外交政策の基本というのは中曽根内閣になってからも変わってはいない、また、変わるべきでもないことは当然でございます。  そういうふうに思っておるわけでございますが、総理大臣の発言でございますから、私は一々これに対して何だかんだ言う筋合いじゃないわけでございます。歴代の総理それぞれの個性がありますし、またボキャブラリーを持っておられるわけですから、それなりの発言というのはあるわけですが、しかし基本的には大きな変化というものはない、私はこういうふうに思っております。  そういう点に関して、外国なんかでいろいろ批判等もありますが、これに対してわれわれ努力をして理解をせしめれば、日本の立場は十分了解していただける、こういうふうに信じております。
  200. 沢田広

    沢田分科員 中曽根さんがあちこちでぼやを起こして外務大臣が一生懸命消して歩いているというかっこうが、いまの外務省のスタイルになっているんじゃないかという気もするわけです。  実は、それが基調になって次の質問に入るわけですが、日米の基軸をうんと太くすれば、それは確かに成功だと言えるのかもわかりません。しかし、そのことは同時に、反対に一方の線か細くなったり曲がっていったりする危険性を伴うわけですね。ですから、バランス論として、一方が強まれば一方がどうしても軽くなる、このことが、一つ外交としてはきわめて危険なことになるわけです。  私は、そういう基盤で、その辺は若干外務大臣の思想の中には、そういうバランス上日米は成功したと言えたと二歩も三歩も譲ったとしても、一方がゆがんでくるという形態まで果たして想像していたのかどうか、この辺は私もちょっと不明瞭だと思うのであります。素直にと言っては恐縮でありますが、現実的にそういう評価が出てきているデメリットの面は全然ないと言い得るでありましょうか、どうでしょうか。
  201. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米関係が同盟の再確認といいますか信頼関係がさらに確立したということは、日本外交の基軸は日米でありますから、そういう面においては私は非常な成功ではないか、こういうふうに思いますし、いままでぎすぎすしておりました日韓の関係も一応決着がついたというふうに思っております。同時にまた、東南アジア諸国につきましても、今回また中曽根総理が歴訪されるわけでございますが、アジア諸国も日本の立場というものについては大方の理解を得ておられると私は思います。中国政府もこれに対してはほとんど発言がなかったわけであります。しかし、今回の二階堂特使の訪中によりまして、日中関係が揺るぎのないものであるということが確認されたということでは非常によかったのではないか。  ただ、日ソの関係が、ソ連が盛んに日本に対して、外交路線が変わったのではないか、軍国主義路線を歩み始めたのではないかという批判をしているのでありますが、私は、これはソ連が日本に対してことさらにそういうことを意識的に発言しているのではないかというふうにもとらざるを得ないわけであります。むしろ、ソ連のそうした日本に対する批判と同時に、SS20などを日本に向けるというような発言は、まさにソ連の恫喝ではないだろうか、こういうふうに思わざるを得ないわけでございます。     〔主査退席、宮下主査代理着席〕 しかし、こうした日ソ関係についても、ただわれわれは対決姿勢を深めるということではなくて、やはり対話の方向も模索していくことは日本外交としては当然のことではないか、そういう点はこれからもいろいろと考えてみたいというふうに考えております。
  202. 沢田広

    沢田分科員 そういう基本的な問題は、若干そのとおり受け取りがたい点もあるのでありますが、それ以上は、この場で言ったからそうですと出てくる問題でもないでしょうから、若干オブラートに包んだ発言として一応承っておきたいと思うのであります。  実は、アフリカ政策といいますか、アフリカ対策といいますか、私は数年おくれてきたんじゃないかという気がしているわけです。これは三年ぐらい前に私も、外務省にアフリカに対する資料が全然ないじゃないか、しかもアフリカに対する対応がほとんどないじゃないかということを言った記憶があるわけです。当時アフリカのある国からNHKの農業のフィルムを欲しいという依願をされまして、NHKに頼んで日本の農業の紹介のフィルムをもらってあげた。行ったら、そのときは革命が起こってしまって変わっていたということでした。  現在、アフリカに対してどのような対応の仕方をしているのか。南アがありますからむずかしい点はわかりますけれども、一応の基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
  203. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 わが国のアフリカに対する政策の基本といたしまして、まず経済協力をなるべく増加するということ、それから、人事交流を深めまして相互理解を増進させていくということ、それから、アフリカのきわめて貧困な国に対しては、国際社会での尊敬、信頼をかち得るという見地も含めまして、経済協力とあわせ種々の難民対策等を含めた広範な措置を講じていくというような多岐にわたる政策を講じております。  先生御指摘のように、アフリカに対するわが国政策が過去におきまして若干おくれぎみであったという嫌いはあったかもしれませんが、最近の状況をとりますと、たとえば援助を例にとりまして、いまから十一年前、一九七二年には、わが国政府開発援助のうちアフリカの占めます分は一%にしかならなかったわけでございますけれども、それが八年後の一九八〇年には、一一%にまで増大しております。そして、その間わが国の開発援助の総量が数倍にふえておりますので、援助の絶対額といたしましては、過去十年足らずのうちに数十倍にふえているというのが実情でございまして、最近のわが国のアフリカに対する政策は、十分先方の期待にもこたえ得るものと思っております。
  204. 沢田広

    沢田分科員 念のためですが、絶対額では何億ドルですか。
  205. 柳健一

    ○柳政府委員 私の記憶で申し上げますが、たしか一九七〇年のわが国政府開発援助は四億五千万ドル程度だったと思います。それが一九八〇年、十年後には三十三億ドルになっておりますから、ODAの絶対額が約七倍ぐらいにふえておるわけでございます。そこで、先ほど中近東フリカ局長が申しましたように、アフリカに対するシェアだけで申しますと、一%が約一〇%になっておるわけでございますから、七倍と十倍を単純に掛けますと、約六十倍ないし七十倍の見当だろうと思います。
  206. 沢田広

    沢田分科員 それでとても満足する状況になっていないのが今日の現状ですね。だから、手をつけるという言葉は表現は悪いのですが、積極的な対応をする年次が若干四、五年狂った。この四、五年が大変な時期だったわけですね。だから、いまやアメリカが出、イギリスが出、フランスが出、ソ連が出、あるいは中国も出るというくらいに、もうそれぞれの国々がそれぞれの国と密接な連携を保つような状況になってきた。いま海外援助をふやしてみても、日本の出番というのはきわめて限られてきてしまっているという状況じゃないかと思うのです。  では、人的な配置からいってどういう対応をとっているのか。これも二、三年の経過で結構ですが、人的な配置についてはどういうような関係で今日臨んでいるのか、アフリカについてそれをお答えをいただきたいと思います。
  207. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 アフリカと申します場合に、北部のアラブ諸国を除きまして、サハラ以南のいわゆるブラックアフリカ、ここに十六の大使館を設置しておりまして、それぞれ少ないところで五、六名、多いところで十数名の優秀な館員を配置しております。
  208. 沢田広

    沢田分科員 この前も行ったときに、ちょうど中近東の大使会議というのがありました。アジアに行ったときには、アジアの大使館会議がちょうどありました。その人たちと空港で一緒になったものですから、いろいろ意見も聞きました。アフリカは残念ながら会わなかったのでありますが、その大使館の人たちから話を聞き、そのときは気楽な話ということですから、言挙げして私はそれを持ち出そうとは思いませんけれども、やはりアフリカに対するこれからの日本の対応の仕方というものは、いわゆる間口が大変狭くなっている中でやっていくわけですから、大変厳しいものがあると思うのです。  だから、いま大使を置いているけれども、ではどの程度の情報をつかみ、どの程度の商社が出てどの程度の交流をしているのかということになりますと、私もこれは統計資料は持っているのですが、きわめて限られた時間でありますから、その資料の内容は言いません。ただ、アフリカに対する対応をもっと積極的にやってもらわないと、これからの平和外交を進めていくという中で、特に資源の問題を含めて考えたときに、いま世界が最重点にアフリカに対して注目をしているという現実を見忘れたならば大変なことになってしまうのではないかというふうに思いますので、これからの特に希少価値を持っている資源というものを対象とした場合には、やはりアフリカ対策というものはより重点的に考えていかなければならぬだろう、こういうふうに考えますけれども、これは提言として申し上げるわけでありますが、これはいま臨調が出ている中で急に転換はできないものがあるでしょうけれども、やはりその範囲内で急激にいままでのおくれを取り戻す、そういう配慮が必要じゃないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。これは大臣からお答えいただきましょう。
  209. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフリカ諸国というのは非常に大事な国々である、日本にとっても大事な国ではないか。国連の三分の一というのがアフリカ諸国で占められておるというような関係もあることは御案内のとおりであります。そしてまた、アフリカの諸国は、日本に対しては非常に、何といいますか全体的に好意的な国々ばかりでございますし、これまでの経済協力等に対しましては非常に喜んでいただいております。ですから、まあ今後とも私たちはこうしたアフリカ諸国に対する経済協力等については積極的に取り組んでいくべきである。特にまた、難民がずいぶん出ておるわけですから、そうした難民に対する人道的な立場からの積極的な援助というものが、これは日本の今日の経済的な地位からいっても進めていかなければならない、こういうふうに思っておりますが、お話のようになかなかこの援助にも限界がありまして、どうしても日本の場合はアジアというものが中心になっていくわけでございますが、しかし同時に、いまのアフリカというのは非常に今後とも重要な諸国であるということを念頭に置きまして、これからのいろんな面での協力というものをひとつ進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  210. 沢田広

    沢田分科員 それで、あと話が変わるのでありますが、いままで政府がやっております――わが国は島国ですから、やはり徳川時代以来の鎖国的な性質というものが抜け切らないものがあると思うのです。大いに若い人たち海外に出て、そこに職場を求め、そこで生活をする、そういう雄飛という言葉がいいか協力という言葉がいいか別問題として、日本人がアフリカにしてもあるいはアジアにしても、もっと海外的に活躍をする、職場を求めて向こうで働くという援助といいますか、そういう方向がきわめて必要なことなんじゃないかというふうに思うのでありますが、その点具体的にこれから、いまある予算はもちろんそのとおりでありますが、それを積極的に進めていこうという考え方があるかどうか、その点ひとつお伺いいたしたい。
  211. 三宅和助

    ○三宅政府委員 先生御指摘のとおり、これからの諸外国との友好関係を進めます上に、人物交流というものが非常に大事でございまして、特に若い世代の海外派遣、それから日本への受け入れということは非常に大事でございまして、外務省としては大いにこれを重視している点でございます。  実際には、外務省がやっておりますのは、主に東南アジアその他地域からの青年を招聘しておりまして、それから総理府を中心といたしまして青年の船だとかその他の形で青年を諸外国に出す、それを大使館ないし外務省が側面からこれに協力しながら大いに進めるということで現在やっておりますが、残念ながら予算の面で若干の制約がございますけれども、この面につきまして予算的にも若干ながら増加させ、かつ内容的にもできるだけ充実していきたいと思いまして、今後ともこの分野につきましては外務省として一層努力してまいりたい、こう考えております。
  212. 沢田広

    沢田分科員 例としては確かによくないのですが、ソ連があれだけ生活の困窮に耐えながら、あれだけ世界に放出をしながら、みずからの権力といいますか力を守ろうとし、あるいは強めようとしている。その国内がきわめて厳しい状況なのは火を見るよりも明らかであります。日本はそこまでの状況には至っていないのでありますから、戦車をつくるよりはその方がより効果的なんじゃないかという素朴な気持ちをわれわれは持つわけです。その分だけ日本の国民の多くの人たち海外に出てもらって、海外の国民と仲間になりながらお互いに働いていく、そういう条件づくりの中に平和もあり、あるいはまたそういう力だけの平和外交でなくて本当の友好関係も生まれてくるのじゃないか、こういうふうに感ずるわけでありまして、その辺は外務省もひとつ力を入れてやっていただきたい。  大体、戦車なんというものは上陸されてから使うものですから、言うならば意味のないものでありますから、ああいうものに金を使うのなら、そういうところに金を使ってもらうということが特に必要なんじゃないのか、こういうふうに思います。これは本当に素朴にそう思うものですから、ぜひひとつ外務省も元気になって、何かおたおたしてないで、その辺は精いっぱいがんばって、その方がより価値高いのだということを、やはり国民の理解を求めながら国民の協力を得て、皆さんが行くわけじゃないのですから、国民の中から選んで行ってもらうのですから、そういう理解をもらいながらその政策を進めていくということがより必要であろう、こういうふうに思いますので、これはアフリカもアジアも同じでありますが、ぜひひとつそういう形の中から予算もとり、その人たちが十分に仕事ができるような職種の強化、こういうものもあえてやっていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  213. 柳健一

    ○柳政府委員 先生御指摘の点、まことにごもっともだと思いますが、一つの例を申し上げますと、青年海外協力隊の事業でございますが、この厳しい財政状況の中であるにもかかわらず、五十七年度予算額約四十五億九千万が五十四億三千万と、一八%の伸びを見せております。これは先ほど情文局長が申しましたように、若い青年の人たち交流をさらに活発にしていきたいという外務省の努力の一つのあらわれでございます。  なお、地域別に見ますと、青年海外協力隊は、通算ではアジアの方が多いのでございますが、最近はアフリカ地域の方により多く出ております。約四〇%ぐらいがアフリカ地域になっております。
  214. 沢田広

    沢田分科員 それから、せっかく行っても帰りたい人の方が結果的に多くなってしまう。どうもこの点は、待遇が悪いのか生活がしにくいのか、その原因はどのようにつかんでおられますか。  特に外国の言葉で、日本に来ても使い道がない特殊な言葉ばかり覚えてくるわけですね。たとえばユーゴならユーゴの言葉を覚えたって、日本に来て特別使い道があるかといったら、これはない。何かやはりその辺、結果的にユーゴに行っている者はユーゴで終わる以外にないという形が生まれてきているわけですね。  ですから、言葉の問題とあわせて待遇の問題、それからお医者さんもこれから余ってくる時代になるのでありますが、特に医師の派遣、そういうことも大いに考慮していくべき範囲内に属するんではないのか、ただもうける仕事だけではないということで配慮していく必要があろうと思うのですが、その点、三つあわせてお答えをいただいて、私の質問は終わりたいと思います。
  215. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず、待遇の点でございますが、青年海外協力隊を含めましてその他の海外派遣の青年につきましては、できるだけ待遇を改善するということで、毎年少しずつではございますが、予算面で手当てがふえてきております。  それから、言葉の関係でございますが、協力隊の場合は行く前に若干の研修をするということでございます。そして、実際に帰ってきますとなかなかその言葉は使われないということもございますが、何分若い青年でございますので、元気いっぱい現地でやっておりまして、比較的ノイローゼになるというケースは現在のところ少のうございます。しかし、われわれといたしましても、言葉の関係それから帰ってきてからの処遇も含めまして、外務省関係省庁と十分協議しながら今後ともできるだけ努力してまいりたい、こう考えております。
  216. 沢田広

    沢田分科員 じゃ、もう時間になりましたので、大臣、そういう意味でアフリカ対応については特段の配慮をしながら多くの国民がより友好関係を深めていくような対策を講じていただきたいし、この前国会でアフリカに関する資料をもらいたいと言ったら、十年前の資料が一冊出てきただけだったというようなことのないように、今後必要な書類が収集できるよう対応していただくことをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。  大臣、一言でいいです、もう時間がないですから。
  217. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどからおっしゃるように、アフリカは非常に大事な国々でありますから、いまいろいろと御注意もいただきましたので、今後ともそういう点も踏まえて努力をさせていただきます。
  218. 宮下創平

    宮下主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、野間友一君。
  219. 野間友一

    野間分科員 私は、在レバノンの米、仏、伊のいわゆる三国軍に対する資金援助の問題についてお尋ねしたいと思いますけれども、これは日米首脳会談の際、シュルツ国務長官の方からこういう要請があったというふうに聞いておるわけであります。  まずお伺いしたいのは、どういう要請があったのか、中身をひとつお知らせいただきたいと思うのです。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 正確には申し上げることはできないかもしれませんが、概要を申し上げます。  シュルツ長官から、レバノンの平和を回復するための措置として多国籍軍を派遣しておる、これは各国から来ておるわけであって、そういうような国が大変な犠牲を払ってやっておるわけであって、日本としてもひとつ応分の御協力をお願いしたいというふうなことでありました。
  221. 野間友一

    野間分科員 いわゆる駐留目的についてはどういうことになるわけでしょう。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり、レバノンであれだけの混乱が起こったわけでございますし、そしていまイスラエル軍の撤退あるいはシリア軍の撤退というのが非常に大きな課題になっているわけでありますが、そうした撤退が進む中で、レバノンの平和と安定を図っていくことが大きな目的であろうと思います。
  223. 野間友一

    野間分科員 米側の要請の中身ですが、これは要請のうち援助の対象ですけれども、三国軍全体に対するものなのか、それともアメリカ軍だけに対するものなのか、その点いかがです。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が受けとめた範囲では、これはアメリカだけではなくて、その他の国々から、たとえばベルギーなんかも出しておると聞いておるわけでございますが、そうした派遣についての応分の協力。私の方から、もちろん日本海外派兵はできないのです、しかし、レバノンの平和と安定は中東の平和と安定につながるし、それは世界のために非常に重要であるからこれは十分検討をいたします、こういうふうにお答えしたわけであります。
  225. 野間友一

    野間分科員 いまおるのは、米軍、仏軍、イタリア軍、この三国ですね、首を縦に振られましたけれども。この要請に対して日本政府はどう対応されるのかということでありますけれども、いわゆる資金援助についてすでに政府決定されたのか、あるいはアメリカにすでにそのことについての約束をしておられるのか、その点はどうでしょう。
  226. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 協力の要請があったわけでありますし、これはアメリカだけでなくてその他の国からもありました。日本としてはもちろん海外派兵はできないわけですが、資金的な協力ということになると、これは検討するということをお答えいたしております。いますぐ予算措置がとれるわけではありませんし、日本の場合どういう形で協力ができるかということ等についても、いま検討を進めておる段階であります。方向としては何とか協力したい、こういうことであります。
  227. 野間友一

    野間分科員 そうすると、政府ではまだ正式には決定していない、ただし資金援助については応ずる方向でいま検討中だ、こういうことですね。  その際、検討の中身ですけれども、新聞報道等ではいろいろ言われておりますが、予定する対象人員、これは四千百名がいまおりますけれども、千名規模云々とかいろいろ報道がありますが、対象人員あるいは金額はどの程度をいま考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  228. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 詳細全く詰まっていない現状であります。米軍より聞いております。それにあわせてレバノン政府よりも要請が来ておりますけれども、その内容といたしましては、八百名組織の一個大隊を維持するための費用は約二千万ドルないし三千万ドル程度というように聞いておりますけれども、一個大隊分について援助してくれとか二個大隊分援助してくれとか、そういう具体的な要請にもなっておりませんし、当方の対応ぶりもそこまでは詰めていない現状でございます。
  229. 野間友一

    野間分科員 詰めていないとおっしゃいますけれども、前向きに検討して、大体要請に沿うというような方向なんでしょう。
  230. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 そういう方向で鋭意検討を進めております。
  231. 野間友一

    野間分科員 いつごろ決められますか。そして、今年度中にその支出をするべくそういう方向で検討されておるわけでしょう。
  232. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 関連する問題といたしまして、多国籍軍は現在は米、仏、イタリアの軍隊がベイルート周辺の治安維持に当たっているわけでございますけれども、今後イスラエル軍、シリア軍、PLO軍がレバノンから引き揚げました場合に、その空白地域をどうやって多国籍軍で埋めて治安を守っていくかということが問題になるわけでございます。したがいまして、一番の問題は、イスラエル軍、シリア軍、PLO軍の引き揚げの時期がいつになるかでございまして、これについては目下レバノン、米国、イスラエル三国で十八回にわたる会合を重ねておりますけれども、いまだに外国軍隊の引き揚げの交渉のめどが立っておりません。したがいまして、この交渉の進捗状況を見ながら国内でどのように対応するかという問題の検討を進めていきたいと思っております。
  233. 野間友一

    野間分科員 それじゃ質問を変えますが、いわゆる多国籍軍と言われるわけですけれども、その実体は、いまベルギーの話がありましたが、実際にレバノンにおるのは米、仏、伊の三国ですね。しかもこの三国は、いずれもパレスチナの民族自決の完全承認もしておりません。そして姿勢でもない。逆に親イスラエルの立場をとっておることは明らかであります。したがって、これへの資金援助は、結局侵略と虐殺、これの元凶として非難さるべきイスラエルの現状容認につながるのじゃないかというふうに私は思うわけですけれども、いかがでしょう。
  234. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 これら三国はレバノン政府の要請に基づいて派兵をしているものでございまして、われわれとしても、もしも援助をする場合には、レバノン政府の要請に基づいて援助するということになると思います。
  235. 野間友一

    野間分科員 三国軍の性格というのはそういうものでしょう。したがって、本件中東の和平ということを達成するためには、こういうようないわば国連の傘をかぶらないような私的な性格を持ったものでなくて、イスラエル糾弾の強力な措置、これが何よりも緊要ではなかろうかというふうに私は思うのですね。虐殺等さまざまな非道なことがありました。したがって、こういうものを防止するためには、イスラエルに即時に撤退をさせるということがやはり基本ではなかろうかと思うのです。そのための行動を国連を通じてやっていく、これが真っ当な考えではないでしょうか。  私は、日本政府としても打つべき手はあると思うのです。たとえば外交関係の縮小であるとか、あるいは大使館の職員の削減、こういうものもやって、イスラエルのこういうむちゃくちゃなことはやめさせる必要があるんじゃないかというように思いますけれども、そういう点について日本政府の考え方はどうなのか、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  236. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、イスラエル軍のレバノン侵攻に対しましては、いち早くわが外務省としてはこれに対する弾劾の声明を発したわけでありますし、いまお話しのように、確かに国連においてもそういう点についてはわが国としても主張していかなければならないことは当然であります。それは国連において日本日本なりの役割りを果たしつつ、イスラエルのそうした侵入に対しては一日も早い撤退を要求し続けてまいりたいと思いますが、同時にまた、多国籍軍がレバノンの秩序を維持するということもやはり大事なことじゃないかと考えております。  そして、これは何もイスラエルのためにやっているわけじゃなくて、アラブ諸国もいまのレバノンの秩序を回復することについて、多国籍軍の存在というものをむしろ評価しておるというふうに私は受けとめておるわけでございますから、したがって、こうした多国籍軍の存在というのがイスラエルの撤兵を早め、あるいはシリアの撤兵も早めて、レバノンの秩序を回復するということにとって非常に大きな効果的な意味を持つのじゃないか、そういう意味で、私たちは平和に貢献をするという立場から協力を考えておるわけであります。
  237. 野間友一

    野間分科員 質問を進めますけれども、しかしながら、いま申し上げたように、おる軍隊というのは米、仏、伊の三国であって、しかもこれらはいわゆる国際監視軍とかいうような名称もつけるれておるようですが、国連とは何の関係もない、そういうものではないでしょうか。
  238. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 国連とは関係ございません。
  239. 野間友一

    野間分科員 しかも、これは武力行使を伴う軍じゃないでしょうか。
  240. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 私が了解しておりますのは、レバノンとアメリカの間の取り決めには、軍事行動には米国は参加しないというようなことも含まれておるように聞いております。
  241. 野間友一

    野間分科員 これは、それぞれ武器は携帯しているんでしょう。
  242. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 携帯しております。私の了解では、その取り決めの中には自衛措置は妨げないということが入っているように聞いております。
  243. 野間友一

    野間分科員 その自衛措置ですけれども、在レバノンの駐留米軍、これらがもしやられた場合には、みずからを守るという意味での自衛措置――いまうなずかれましたけれども、それ以外にレバノンの軍隊と協力して、いま言われたようなこと以上の、以外の武力行使もあり得るのではないでしょうか。
  244. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 いま申し上げましたように、レバノンからの要請自体が軍事行動には参加することを求めていない、したがって、米国も軍事行動に参加することは想定していないというふうに了解しております。
  245. 野間友一

    野間分科員 いえ、私が聞いておるのは、みずからアメリカ軍が自衛するだけじゃなくて、レバノンの軍隊と協力をして、その協力のもとに行動するというような性格のものでしょう。したがって、そういう意味での、みずから守るということ以上の、以外の武力の行使というものは当然あり得るんじゃないでしょうか。
  246. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 米国政府はしバノン政府より、レバノンの国軍の再建を別途依頼されておりまして、そういう面で米国とレバノンの協力関係がございますけれども、今回派遣されております多国籍軍がレバノン政府協力して、たとえばイスラエルに当たるとかシリアに当たるとかいうことは想定されてない。レバノン政府の軍隊が、追って将来、秩序をみずからの手で確保し得るような事態になるまで、多国籍軍がその間、間をつなぐという性格のものと了解しております。
  247. 野間友一

    野間分科員 それは違いますよ。重大な問題ですよ。  アメリカ合衆国の常任代表事務官から事務総長あての国連への一九八二年九月二十四日付の書簡があるのです。これは御存じでしょう。これを見ましたら、私がいま申し上げたように、この中に「多国籍軍の役割りは、合意した場所において干渉排除軍を配置し、それにより、レバノン政府とベイルート地区のレバノン軍を援助するよう要請された多国籍軍を配置することであります。」と書いてあります。  この派遣された軍隊の目的は、明らかにレバノンの軍と協力して援助するということになっておるわけですね。これはアメリカの国連総長に対する公式の文書の中でもはっきりしているわけです。そうでしょう。そうなりましたら、単にみずから守るのでなくて、一定の衝突があればその中へ入って軍を援助するわけですから、当然武力衝突もあり得るということになるんでしょう。
  248. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 結果的にどういうことになりますかは、その事態が米国の自衛の必要を含むかどうかということによって対処さるべきものでありまして、米軍がそこに配置されております目的は、あくまで秩序維持、治安維得ということのように了解しております。
  249. 野間友一

    野間分科員 いや、私の質問に答えてください。こういう公式の文書、知っているでしょう。軍を援助するのですよ。軍を援助するということは、トラブルがあったら当然その中へ入っていくということでしょう、違いますか。事務総長あての文書の中にちゃんと書いてあるわけです。御存じでしょう。
  250. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 紛争があります場合には、何回も申し上げておりますように、第一義的にはレバノン軍がその治安の任に当たるわけでございまして、米軍がそれに直接介入することはないということを申し上げておるわけでございまして、米軍がみずから治安維持、それから自衛の目的に沿う行動をやったことが戦闘に間接的に関与するということはあり得ないことではないかと思います。     〔宮下主査代理退席、主査着席〕
  251. 野間友一

    野間分科員 もしそういう場合でも、資金援助はやるわけですか。
  252. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 資金援助をいたします場合には、資金援助の取り決めの中に詳細、条件等どういう目的で貢献を行うかということは当然合意されなければならないものと思っております。
  253. 野間友一

    野間分科員 一般的に言って、武力行使を目的とする場合、それに対する資金援助はできないのでしょう。
  254. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 全く仮定の問題でございますが、多国籍軍自体の性格は先ほどから中近東フリカ局長の方から御説明申し上げておるとおりだろうと思いますが、たまたま武力行使をするからといいまして、そういう軍隊と申しますか武装部隊、武装集団というものを一定の地域に維持することについて資金援助をするということが、野間委員の御質問はあるいは憲法等の規定からいって……(野間分科員憲法でなくて、政治論をいまやっておるんです」と呼ぶ)政治論は別の問題で、私は法律的な御質問かと思いまして御答弁申し上げようと思いましたが、法律的には何も問題がないというふうに思います。
  255. 野間友一

    野間分科員 それでは質問を続けますが、国連軍の場合はともかくとして、この場合には安保理事会の厳重な監視のもとで、武力行使を仮にやる場合でも非常に厳しい制限がついているわけですね。ところが、いま問題になっておる三国軍というのは全くそれとは違うわけで、国連の決議もありませんし、言ってみればそれぞれが独自の判断で出兵しておる。確かにレバノン政府の要請もあることは私も承知しておりますけれども、性格が全然違う。決して中立でもあり得ないわけで、先ほどから背景を申し上げておるとおりであります。こういうようなものについてどういうことをするか、客側的にチェックのしようがないわけですね。したがって、私はこういうものについては資金援助は慎むべきである、こういうふうに思うわけでありますけれども、この点について外務大臣のお考えをお聞かせください。
  256. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま多国籍軍はレバノン政府の要請によって出ていったわけでありますが、しかし、これまで多国籍軍がレバノンの平和維持に果たした役削りというのは非常に大きいわけであります。これは世界が認めておりますよ。同時にまた、今後ともイスラエルを撤兵させあるいはシリアを撤兵させ、そういう中でレバノンの秩序の回復を図る、こういうことは中東の平和を進める上においても非常に重要なことではないかと私は思っておるわけでございます。そしてまたアラブの諸国も、いま私の知っている限りにおいては、レバノンの秩序が回復するということを非常に支持をしておる、そういう意味では多国籍軍に対する支持もあるというふうに承っておるわけでございますし、そういう見地に立って、私は、この多国籍軍に対する援助というものは、中東の平和、レバノンの平和、また世界に対する日本の平和協力という面から十分やり得ることである、こういうふうに思っております。  ただ、その援助の仕方、どういうふうなやり方でやるかというのは検討課題です。これから国内においても、政府部内においてもいろいろと相談をしてみよう、たとえばレバノン政府を通じてやるという方法もあるでしょうし、直接多国籍軍ということもあるでしょうから、そういうことはいまからいろいろな日本の立場というものを踏まえながら結論を出していこうと思います。しかし、とにかく平和のために協力するわけですから、そして戦争をするとかなんとかということじゃないわけですから、これは私はむしろ協力すべきだ、こういうふうに考えております。
  257. 野間友一

    野間分科員 平和のためとおっしゃいますけれども、先ほど申し上げたように、軍の援助というのが要請の中身だということが、アメリカ自身の国連事務総長あての書簡の中でも明らかに出ておるわけですね。そうだとしますと、これは場合によれば武力行使、そういう可能性もあり得るということは当然でしょう。  いま政府の答弁を聞いておりましたら、そういう国連の決議にも基づかないものであっても資金援助には何ら差し支えないというように私は受け取ったわけですけれども、憲法上の問題としても、国際紛争への介入は許されないというのがたてまえでしょう。しかも直接の国際武力紛争、これと不可分一体の関係になるそういう資金援助をすることも、憲法上違憲の疑いがあると私は思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  258. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 あくまでも多国籍軍の目的、性格に着目する必要があるのではなかろうか。憲法との関連におきましても、日本協力ないし資金援助というものの適否を判断する場合に、その援助の対象になります多国籍軍の性格、目的というものが重要な判断基準であろうというふうに考えます。その性格、目的につきましてはただいま大臣より御答弁があったとおりでございまして、そういう前提で考えれば、私どもといたしましては、憲法の規定あるいは憲法の精神にそういう資金援助が反する、抵触するというようなことはなかろうというふうに判断しておる次第でございます。
  259. 野間友一

    野間分科員 それじゃ、先ほどから申し上げておるように具体的に想定しますと、レバノンとイスラエルが武力衡突を起こした、レバノン軍がそれに応戦する、それに国際監視軍が協力援助してこの国際紛争の事に当たる、その場合でも資金援助すること事体が憲法に抵触しない、こういうお考えですか。おかしいじゃないですか。
  260. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私が御答弁申し上げましたことは、あくまでもレバノンの多国籍軍というものが、先ほど来御説明申し上げておりますとおりにレバノンの紛争に直接介入をして軍事行動をとるという性格の部隊ではなくて、むしろ治安維持、警察、平和維持活動を行うための、これは確かに国連決議に基づくものではございませんけれども、性格としましてはそういう国連の決議に基づいて存在しております国連の平和維持部隊というものと基本的に変わらないものであろう、そういうふうに認識しておるわけでございます。そういうものに対して資金的な協力を行うということは、憲法の規定あるいは精神に何ら反するところはないのではないか、こういうふうに認識いたしておるわけでございます。
  261. 野間友一

    野間分科員 いや、私が聞いておるのは、もし武力行使をする際に、米軍がレバノンに軍隊援助して事に当たるというようなことを考えた場合に、その場合でも条約局長は資金援助は許される、こういうお考えですか、仮定の場合ですが。
  262. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 仮定の問題としていろいろ御質問になられても、なかなか一般的にお答えしにくいわけでございますけれども、もちろん憲法の精神から申し上げまして、国際紛争に日本が直接手をかすということになるような実態がもしあれば、それはそれで慎重に考えなければならない問題だろうと思いますけれども、現在考えられております多国籍軍の目的、性格から照らしますれば、いま野間委員の御指摘のような問題はないのではなかろうかというふうに判断しておるということでございます。
  263. 野間友一

    野間分科員 そうしますと、私が申し上げたような仮定の場合には憲法上慎重に判断しなければならぬ、こういうことですね。いまあなたおっしゃったですね。これは繰り返しいたしませんけれども、そういうおそれ、可能性、危険性というのは非常に多い、そういう性格のものだと思うのです。ですから、私、申し上げているように、親イスラエル、反パレスチナ、いわばそういう性格のもので、しかも国連の傘をかぶらないいわば私兵的な性格、これは独自の判断でやっておるわけですからね。これに対して資金援助する。しかも武力行使あるいはそのおそれがある。これはアメリカ政府の書簡の中でも、そういう可能性も十分予見した上での要請に応ずるということになろうかと思うのですね。そういうものに対して援助するということは、とんでもないことだと言わざるを得ないと思うのです。  そこで、新聞報道等によりますと、その資金援助の対象が、たとえば兵士の給料であるとかあるいは弾薬、いわゆる兵たん費、こういうものは含まれない。食糧、衣料あるいは医薬品、こういうものの補給に限定して使えるようにと、そういうことをいま検討中であるという新聞報道も私は見たわけですけれども、どうなんでしょうか。兵士の給料あるいは銃弾、そういうものに使われる場合でも資金援助はいいというお考えなのか、それとも衣料とか医薬品あるいは食糧、こういうものに限定して云々、こういう考え方なのか、この点どうでしょうか。
  264. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 先ほど申し上げましたように、われわれの検討はまだそこまで具体的に進んでおりませんで、イスラエルとシリアとPLOの撤退の推移を現在見守りつつ、今後協力の内容を詰めていくという段階にあるのが実情でございます。  それから、もう一言、いま先生の言われました米、仏、イタリアが親イスラエル軍隊であるということにつきましては、少なくともそれら三国はそうでなくて、たとえばイスラエルのパレスチナ人虐殺問題を強く批判した経緯もあり、あの忌まわしい虐殺が再度起こらないようにわれわれはそこで治安を守る必要があるんだというように説明しているわけでございます。
  265. 野間友一

    野間分科員 いや、虐殺そのものはそのとおりですけれども、基本的なそれぞれ三国の対応の仕方、認識の仕方、これを私は言っておるわけで、親イスラエル、反パレスチナということを言っておるわけで、この点については争いはないわけです。  そうしますと、兵士の給料や銃弾、これを含めることができるかどうか、この点についてもいま慎重に検討中だということでしょうか。
  266. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 検討結果が出ていないということでございます。
  267. 野間友一

    野間分科員 それも含めて検討中だということのように私は承ったのですけれども、時間が参りましたのでやむを得ませんけれども、るる申し上げておるように、やはり国連とは全く関係のないこういう軍隊、しかもパレスチナに対する民族自決、こういうものを認めない、親イスラエルの立場に立ったそういう三国軍への資金援助はやはりやめるべきだ、しかも援助の要請の趣旨から見ても軍に対する援助も含まれておるわけで、こういうものを認めておりますと、憲法のいわゆる平和主義あるいは武器輸出の三原則、こういうものに対する大きな風穴をあけることになりますし、そういうことでなくて、やはり国連の場でこういうイスラエルの残虐な行為を徹底して排除していく、そういう姿勢で、しかもなおかつ日本政府としては、たとえば大使館の館員の削減であるとか、国交上の問題でさまざまなそういう制裁をとるべきじゃないか、これが基本ではないかと私は思うのですけれども、その点について、最後に外務大臣の所見をいただきたいと思います。
  268. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連の場においてイスラエルの侵入に対して大きく反駁を加えて撤兵を早からしめる、これは当然のことで、日本としてもそれなりの活動をしなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、問題は実効的にレバノンの平和を確保するということではないかと思うわけでありまして、そういう中でいまの多国籍軍というのは、国連のいわゆる精神を受け継いで、これは平和維持という大義名分の上でこれを進めておるわけでございますし、また、いま主張されるような、決して親イスラエルの軍隊でも何でもない、むしろアラブ諸国はこのレバノンの平和維持を非常に期待しておりますし、多国籍軍の存在も認めておる、こういうふうに私は判断いたしておるわけでございますので、日本も、世界の平和、レバノンの平和、中東の平和に貢献するという立場から何らかの協力をする、こういうことでいま検討しておる。まだ結論が出ておるわけではありませんけれども、先ほどから申し上げますように何らかの形で協力をしたい、こういうことで検討を進めておる、こういうことでございます。
  269. 野間友一

    野間分科員 時間がないのでやめますけれども、こういうケースは初めてのケースですね、国連軍でなくて。そうでしょう。しかもいま申し上げたように、こういうことを認めたら、憲法上の平和主義の問題とかあるいは武器輸出原則に対する大きな風穴をあける突破口になることは明らかだと思うのです。  この点について、援助はやるべきじゃないと私はその点を重ねて指摘して、質問を終わりたいと思います。
  270. 砂田重民

    砂田主査 これにて野間友一君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 海峡封鎖と安保条約関係について、総括質問、一般質問の中でいろいろと論議がなされました。私はちょっとその点を整理してみたいと思うわけです。  その前に、自衛権発動の条件として、法制局長官はしばしば三条件ということを明らかにされてきております。その三条件とは、現実に急迫不正の侵害が日本領域になされたときに、二番目に他に方法がないとき、三番目に必要最小限度の反撃をする、それでいいですね、法制局長官
  272. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 そのとおりでございます。
  273. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そこでまず、極東有事の際に在日米軍でない米軍は安保条約上は日本の承諾なしに海峡封鎖ができますね。
  274. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 安保条約の在日米軍といいますか、正確に申し上げれば、日本の施設、区域を使用する米軍のことを念頭に置かれてのことだろうと思いますが、そういう米軍でなければ安保条約に基づきます制約は受けない、その限りにおいては議員のおっしゃるとおりでございます。  ただ、一言つけ加えさせていただきますと、従来から申し上げておりますことは、安保条約の枠外の問題といたしまして、そういうわが国にあります施設、区域を使用しない米軍でありましても、いろいろ御議論をいただいております海峡におきまして通峡阻止のための一方的な行動をとることはできないであろう、またアメリカとしては当然やらないであろう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  275. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 なぜですか。
  276. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは、海峡というものの非常に特殊な水域という性格に着目する必要があるだろうと思います。沿岸国といたしましては、当然のことながら、自国に隣接するそういう海峡という国際通航の要衝の水域において一般的に通航が安全に確保されるということにつきまして非常に重大な利益と申しますか関心があるわけでございまして、そういう利益、関心というものを無視して第三国がそういう水域において一方的に武力行使を伴うような行動をとるということは、これは一般国際法の法理に照らしまして、そういうことはできないんではなかろうか。また、日米間においては安保条約というものがございまして緊密な協力関係もございます。そういう水域におきましてアメリカがそういう軍事行動をとるということは、当然のことながら、安保条約の目的でありますところの極東の平和と安全に非常に関係のある事態でございますから当然アメリカが協議するであろう、こういう二つの面から申し上げているわけでございます。
  277. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは、当然協議するであろうということをおっしゃって、私は、まず整備するために安保条約との関連だけで聞いているのです。在日米軍が極東有事の際に日本の基地を使ってその種の行動をとることは当然事前協議の対象になる、これは先日御答弁のとおりで明白でありました。  次に、日本有事の場合は、安全条約六条は日本有事に関する五条を省いておりますから、したがって日本有事の場合は、効果的運用等は別にして、安保条約上は米軍の判断でそういう行動ができる、そういうことですね。
  278. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 安保条約の枠組みとの関連で申し上げれば、いま委員御指摘のような事態というものは安保条約の第四条の随時協議、委員よく御承知のいわゆる随時協議の枠組みの中に当然入ってくる問題だろうと思います。そういう意味で、安保条約の枠外の問題では全くなかろうというふうに考えます。
  279. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは随時協議というものがあるからそこで協議されるであろうということだけでありまして、あろうというだけです。必ずしなければならないということにはなっていないでしょう。それを僕は言っているんですよ。それは間違いないですね。あなたはただ願望を言われておるので……。
  280. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 二つの点を申し上げたいと思います。  第一点は、第四条は、これも委員よく御承知のとおりに、「いずれか一方の締約国の要請により協議する。」と書いてございますから、ここに書いてあるような事態につきましてはアメリカから協議があることが当然予想されますけれども、仮に万一協議がないとしても、そういう御想定のような事態におきましてはわが方から協議をするということも条約の枠組みとしては十分予定されていることであります。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 実は、次にそのことを聞こうと思っておったんですね。五条状態の場合でも日本の方から四条に基づく随時協議で規制していく、あるいは十分コントロールできる、それは明白になったと思います。  次に、二月十九日に、これは総括質問です。共産党の東中委員質問に対して、つまり日本有事の際にそういう海峡封鎖ができるかどうかという問題に関して、中曽根内閣総理大臣はこのように答弁をされております。日本有事の場合はもちろんこれは別として、日本有事でない、極東有事の場合、これは同意を求めてくるであろう。その次に、「それから第二番目は、もし、そういう事態が起きる場合に、日本はイエスかノーかという御質問でございますが、私は、日本に対する武力攻撃が発生していない、そういう場合には原則ノーだ、」と一応ここで言われております。  その次に、「ただし、そのときの情勢によりまして、日本に対する武力攻撃の発生が非常に緊迫性を持って出てきておるというふうに判断されるような場合とか、あるいは日本の船舶が国籍不明の船等によって非常に甚大な被害を受けてき始めているとか、そういう場合には考慮を要する場合もあり得る、」局長、あなたいまこれを読んでいるんですね。ここに、たとえ日本有事でなくてもそのおそれが非常にあるとき、「あるいは」とここでなっておりますが、私は、これは総理が例を挙げられたのだと思うんですね。「日本の船舶が国籍不明の船等によって非常に甚大な被害を受けてき始めている」、法制局長官、国籍不明の船によって非常に甚大な被害をこうむっておるとき、どこの国に対してそれを防ぐために海峡封鎖、アメリカがやるときイエスと言い得るという例ですか。国籍不明でそういうことができるのですか。どこの国かわからぬ潜水艦とか艦艇がそういう攻撃をやったとき、わからぬわけでしょう。国籍不明と言っている。どうなんです、それは。
  282. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 ちょっと御質問の趣旨を十分理解しているかどうかはわかりませんけれども、国籍不明と書いてありますから、どこの国の潜水艦でやられているかはわからないということだと思いますが、それ自体はもう明らかなことだと思います。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そういう場合に、どこが敵かわからぬのに自衛権発動するのですか。どこの国に対してやるのです。
  284. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 わかりました。そういう場合にはいわゆる自衛権はまだ発動できない状態であると思います。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 日本の自衛権は発動できないですね。これはまずはっきりしている。これはアメリカに対してイエスと言う場合もあり得るという場合の例ですよ。そういうことをアメリカに許すのですか。どこの国かわからぬような潜水艦がこっそり、たとえば日本の船舶を攻撃する。そういう場合に許可するのですか、イエスと言うのですか、私はわからぬのだ。
  286. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 私の理解では、アメリカとどこかの国との間ではすでに武力攻撃に対する自衛行動が始まっている、そういう状態をここでは前提としているんじゃないかと思うのです。文章の上ではそれはあらわれておりませんが。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうじゃないのですよ。これはその前段に「日本に対する武力攻撃の発生が非常に緊迫性を持って出てきておる」ということがあるのですから、これはアメリカに対して攻撃じゃないのです。日本に非常におそれがあるというときの例に挙げておるのですから、この国籍不明の船等によって非常に甚大な被害を受けるというのは日本の船舶だ。当然文脈上そうなるのですね。恐らく総理もそうだと思いますよ。
  288. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 問題を分けてお答えしなければいけないと思いますが、わが国に対する武力攻撃は発生していない、ただ国籍不明の船によってわが国の船舶が甚大な被害を受けている。それ自体としてはわが国の自衛権を発動するという条件は整っていない、これは申し上げられる。ただし、そういう事態を前提としているわけでありますけれども、ここでわが国が米国の要請に応ずるというのは、わが国自体が自衛権を発動することとは関係ない。ただイエスと言うだけですから、その点はイエスと言うこととそれから御指摘のような事態とが、自衛権の発動ということを通じて結びついてはいないわけです。ただアメリカとどこかの国との間は同時に――同時にといいますか、すでに武力攻撃が行われていて、それに対する自衛行動が行われている状態が伴っているだろうということを申し上げたわけであります。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 よくわからないですね。国籍不明の船が――国籍不明だから、どこの船かわからぬのですよね。どこの船であってもいいわけですか、わからないでも。イエスと言う場合があるのですか、アメリカに対して海峡封鎖してよろしゅうございましょうと。ここはその問題なんですから。
  290. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これは東中委員の御質問が、アメリカが自衛権の行使上必要だということで通航阻止をやるということですから、当然にアメリカはもう自衛権を発動しておる、そういう状態である。同時に日本の側から言えば、まだ自衛権は発動はできない状態ではあるけれども、アメリカの自衛権の行使のうちの一部である海峡阻止に対してイエスというかどうかということですから、二つの問題は区分して理解できるんじゃないでしょうか。
  291. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 おたくは頭がいいから理解されておるが、私はわかりませんね。総理大臣がこういう例を出されるというのはまことに無責任なあれじゃないでしょうかね。予算委員会国会の場で、国籍不明の船からどんどんやられたときに、局長どうです、あなたわかりましたか。こんな無責任なことを言ってはいけないと私は思うのですね。要するにどこの船かわからぬのですよ。アメリカとどこかが紛争を起こしておっても、たとえばXという国との紛争が起こっておっても、国籍不明だから必ずしもXの船とは限らないじゃないですか。そうでしょう。こういう答弁は例に挙げるのに妥当なんですかね、法制局長官
  292. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 たびたび同じことを申し上げて恐縮ですけれども、わが国としては自衛権発動の要件を満たさない、しかしながら、現実にわが国の船舶が攻撃を受けてわが国の近海と申しますか、そういうところが非常に危険な状態になっている。ところが、他方その同じような状態と直接は関係ありませんけれども、アメリカの方は自衛権を発動している、そして通航阻止をやろうとしている。恐らくその通航阻止によって事実上わが国の近海の安全が確保されるという状態を想定して総理は言われたのだと思います。条件という意味で申し上げたのではないことは御指摘のとおりでございます。
  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 条件じゃなしに例として挙げられたと思うのですよ。問題は、海峡封鎖はなぜやるか、もうわかっているでしょう。三海峡封鎖をなぜやるか。ソ連との紛争の場合に、ソ連の太平洋艦隊が外に出られないようにするための海峡封鎖ですよ。だから、ソ連の船が日本の船舶なり米軍の船舶をやっつけたということがはっきりした場合は海峡封鎖ということになろうと思うけれども、ソ連の船かどうかわからないのに、国籍不明である、どうして海峡封鎖をする必要があるのです。それがわからない。ソ連ならまだわかりますよ。ずっと議論の延長線上わかるけれども、ソ連の船じゃない場合一体どうなる、何のために海峡封鎖をするのです。そこなんです。わからない。それはどうですか。幾らアメリカが自衛権があっても、海峡封鎖するというのは、国会で論議しているのは明らかにソ連の場合ですからね。それはわかっているでしょう、法制局長官。ソ連の船なら論理もわかるのだけれども、どうですかね。
  294. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 現実的な御質問でございますから、私がお答えするにはふさわしくないと思いますけれども、あくまでここでは総理はソ連とは言われないで、理論的な可能性としてそういう状態においてとしか言われておりませんから、それ以上のことは、私がコメントをするわけにはまいらないと思います。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃ、これは本人に聞かないとわかりませんね。あの方は大変無責任なことを言うので、ほかの人が答えられないようなことをおっしゃるのです。本当です。きのうかおとといか、シー・オブ・ジャパンをレーク・オブ・ジャパンにするのだとか、海峡封鎖をコンプリート・アンド・フル・コントロールする、防衛庁の方は、三〇%しかできませんと言っておるのに、その関係はどうなるのかと聞いても、答えが出てこない。防衛庁の方わからぬ。そうでしょう。それの一つの例として私は申し上げている。私はなぜ国籍不明をやるかというと、過去、日本の自衛隊の演習のときにこの言葉があるのです。国籍不明の某国何とかによって頻繁に日本の船舶がやられたときに、いわゆる自衛隊法の七十六条のおそれありとして、防衛出動をやるのだ。それがあるから、私この問題はちっとも急に出てきた言葉ではない、こういう感じがするからお伺いしたわけなんです。法制局長官もうよろしゅうございます。あなたもよくわからないということがわかりましたから。  それで、もう時間が余りなくなったですが、MDA一条の中に「装備、資材、役務」という言葉があります。おとといも私やったところです。対米武器供与をそれの枠内においてやる、MDAの枠内ということであれば、装備、つまり武器もこのMDA上はいいんですね。MDAの枠内でやるというのだから、武器供与も役務とみなして、これに基づいてやるというのだから。装備なんというのは武器とはっきりわかっておるから、役務が武器技術に入るかどうか、疑問のあるところだけれども、それでも役務に入れているのだから。ましてや、一番はっきりしている装備、つまり武器は、MDA上はやれるわけですね、政策は抜きにして。
  296. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 MDAの一条一項のいま分科員御指摘の規定の枠組みの中で、政策は別とおっしゃいましたから、全く仮定の問題として申し上げますれば、仮に武器そのものをアメリカ供与するということがあれば、これは一条一項のいまの枠内でやり得ることであると思います。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 当然だと思うのです。条約局長の解釈として、ちっともおかしくないのです。  そこで今度は、武器技術だけを引き抜いてMDAでやるというようになったその理由はなぜですか。
  298. 北村汎

    北村(汎)政府委員 これは日本技術水準が非常に高まりまして、そしてアメリカの方から日本技術に対する要請というものが出てまいりまして、武器技術についてのみアメリカからの要請があり、そういう実態が出てまいりましたので、そこでその実態といままでの武器輸出原則の適用というものとの調和をどうやって図るかということを政府で検討しました結果、今回武器技術に限って武器輸出原則並びに政府の方針というものから例外扱いとするということに決めた次第でございます。
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、もし向こうから共同生産なり武器の供与輸出を言ってきたらどうなるのですか。また、その都度検討するわけですか。
  300. 北村汎

    北村(汎)政府委員 現在アメリカの方から武器に対する要望とかそういうものは一切ございませんし、(楢崎分科員「あったらと言っているのです」と呼ぶ)そういうものはございません。あった場合は、そのときにおいて、そのときの状況その他をすべて勘案いたしまして検討することになると思います。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 MDA上はできるのでしょう。政策上の問題としてそういう要請があったときは、一つ一つ判断を下していく、こういうことですね。
  302. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 政策の問題を離れまして条約上できるかできないかという御質問であれば、これは先ほど申し上げましたように、武器もできる、技術もできる、こういうことででございます。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 だから、政策上の問題としてそこでコントロールをしておるわけですね。それは武器禁輸三原則というものがあるから、それとの絡みにおいて判断をその都度していく、こういうことなんですね。大臣、この点ひとつはっきりしてください。
  304. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはまさに政策の判断だけの問題でありまして、三原則がありますが、武器技術はこれによらない、技術だけを外したわけで、まさに政府政策判断と申しますか政策変更、こういうことでございます。
  305. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 通産省見えておりますか。――貿管令との関係で、そういう政策決定がなければアメリカであろうと輸出はできませんね。
  306. 植松敏

    ○植松説明員 武器技術関係につきましては、外為法の二十五条によりまして許可にかかわらしめられております。許可をいたします場合の運用基準といたしまして、御指摘の武器輸出原則あるいは政府統一方針に基づいて運用をいたしてきたわけでございます。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いや、武器の場合を言っているのです。
  308. 植松敏

    ○植松説明員 武器につきましても、外為法四十八条に基づきまして通産大臣輸出の承認を受けることになっております。承認申請が参りますと、これにつきましては武器輸出原則政府統一方針に照らして現在のところ処理してきたわけでございます。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 したがって、政策変更があれば通産大臣も許可する、こういう関係になるわけですね。
  310. 植松敏

    ○植松説明員 現在の武器輸出原則は、先生御案内のとおり、共産圏でございますとか、国連決議によって禁止されておる国あるいは紛争当時国につきましては武器の輸出は認めない、それから、その他の地域につきましては慎むということで運用しております。したがいまして、通常の場合でございますと、その運用基準と申しますか、三原則に照らして判断をするということになると思います。
  311. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いや、時間が短いのにそういうわかった答えを聞いているわけじゃないのですよ。アメリカに対して、いまのところは武器輸出の要請がないから、要請があった場合にはその段階で政策的に検討する、そして、もしイエスであれば、通産大臣も国の政策に基づいて、アメリカであろうと武器は輸出する、こういう関係になるんじゃないですかと言っているだけの話なんです。
  312. 植松敏

    ○植松説明員 その点につきましては、御指摘のとおりでございます。
  313. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうおっしゃらなければ……。非常に簡単なんですよ。  最後に一問だけ聞いておきます。  ちょっともう一つわからない点があるのは、今度の三原則政策変更ですね。これはその根底に、まず武器禁輸三原則国是であるということは総理大臣は認められました。――ああ、あれは非核原則ですね。いや、国会決議でそうなった、武器禁輸三原則。しかし、安保条約安保体制の効果的な運用ということがあって修正された。ということは、この国会決議よりも――安保体制の効果的運用というのは安保条約があるからの話でして、なかったら安保体制なんという言葉は出てこないわけですから。それで、安保条約が優位に立つという条約優位論の立場からこういう変更がなされたんですか。その辺がよくわからないんですね。
  314. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私も去年からずっと関連しておりまして、なかなか結論が出ないで一年、半年かかったわけでありまして、初めは安保条約の義務として生ずるのではないかということがずいぶん検討の対象になったわけですね。結局、義務ではない。しかし、安保条約の趣旨というものから言えばアメリカの要求は拒否はできないだろう。これがいわば安保条約効果的運用ということで、拒否はできないという結論になって、そこでどうするかということで、三原則から武器技術だけを外す以外にはないということになったわけでございますが、それと国会決議とは別で、国会決議についてもいろいろと――われわれも国会議員ですから、国会決議に賛成いたしましたし、非常に重要な決議であると思いますし、三原則によらないということにすると、これがあの国会決議に反するのではないかということで、これまたいろいろと検討をしたわけでありますが、あの国会決議が三原則そのものを――これは政府が解釈するということにはもちろん最終的には問題がある。有権的には国会決議ですから国会の解釈によるわけですが、政府の判断としては、あの決議は三原則そのものを移しかえた決議ではない。運用を慎重に、厳正に行う、こういうことから見て、この武器技術を外したということが必ずしも国会決議に違反するものではないだろう、こういうふうに政府としては解釈をいたしまして、そして安保条約効果的運用ということとともに国会決議の趣旨には違反するものではないだろう、こういう判断のもとに政策決定をしたわけであります。
  315. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 一問だけ。イエスかノーだけでいいですから。そうすると、たとえば憲法よりも条約が優位するとか、あるいは国会決議よりも条約の方が優位するとか、そういう優位論ではないということですね。それだけ、イエスかノーでいいです。
  316. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、もちろんそういう判断ではございません。
  317. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これで終わります。
  318. 砂田重民

    砂田主査 これにて楢崎弥之助君の質疑は終了いたしました。  次に、新盛辰雄君。
  319. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 一九七三年の十二月に百四十五カ国が参加して始められました第三次の国連海洋法会議、昨年四月に第十一会期を最終日として条約草案が圧倒的多数で採択をされて、昨年の十二月に条約採択という運びになってきたわけですが、海底資源、マンガン鉱等の関係があってか、アメリカはこの条約採択に反対をした経緯がありますね。日本は、この条約についてどういう態度でしたか。
  320. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 海洋法条約につきましては、日本といたしましては、この条約が海底開発その他の面を含めまして必ずしも一〇〇%理想的なものではないということはございましても、長年の国連におきます交渉の結果、国際社会各国の基本的な合意というものが大方できて、その上に立った条約でございますので、わが国としては海洋国家としての立場からやはりこれは基本的に支持すべきものであろう、こういう判断に立ちまして、条約採択に際しましてはこれに賛成いたしまして、さらに先般、閣議決定を経ましてこの条約に署名をいたした次第でございます。
  321. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 この条約の中で、私は漁業外交という全般的な問題で質問していきたいと思うのですが、直接関係のある領海十二海里、国際海峡、群島国家あるいは排他的経済水域二百海里、大陸棚、公海、海洋環境等、特に沿岸国に大幅にその主権を認めたということがこれからの海洋秩序という面で深刻な状況に入ってきたわけですね。二百海里というのを、もうこの条約が成立する前からそれぞれ各国々で、沿岸国は宣言を行ってきているわけです。  現在、二百海里時代も定着したと言われているのですが、何カ国が二百海里宣言を行っているか。
  322. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 二百海里と申します場合に、一つは漁業だけにつきましての、いわゆる漁業水域というものを設定しておる国と、漁業以外のほかの経済活動についても沿岸国の権利を設定いたします、いわゆる排他的な経済水域というものを設定しておる国と両方ございます。  それで、前者、漁業水域につきましては、現在二百海里の漁業水域を設定しておりますのはわが国のほか米、ソ、イギリス等を含めまして十九カ国でございます。それから国連海洋法条約が規定しております排他的経済水域、これと類似のものを設定しておりますのがフランス、スペイン、ノルウェー、その他相当数の発展途上国を含めまして五十四カ国でございます。
  323. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 これらの状況から見まして、これから考えられる新しい動向、漁業の外交でありますが、一つ考えられるのはアメリカの余剰原則を無視したフェーズアウト方式、二つ目には日ソ間に見られるお互いに入漁する相互入り会い等量主義、三つには南太平洋諸国のように入漁料による外貨獲得型、こういうふうにせんじ詰めて言えるのじゃないかと思うのでありますが、この際、たとえば日ソ間では最近のことですけれども、カメンツェフ漁業相が来られて、外務大臣もお会いになったと思いますが、非常に友好的な雰囲気の中で従来の漁業の相互等量主義といいますか、日本の側が魚をとるのならまたソ連の側も日本の海域、沿岸で魚をとることができる、あるいはサケ・マス、これはこれからまた交渉も始まりますが、大体ここ数年きわめて友好的に進んでいるし、これからもさように進めたい、こういうことは私どもも理解できますが、どうもアメリカの方は、後ほど申し上げる捕鯨の関係できわめて問題がありそうです。これは後で触れますが、最近洋上買い付けとかスケトウの割り当てとか、結局日本の水産物の貿易関係関連があるのですが、自由化あるいは枠拡大、そうしたことの残存品目に手をかけよう、それがだめならば入漁させない、いわゆる大変厳しい規制をしようとしているわけですね。そうした面での生産者側、いわゆる漁業経営をされている業者なりあるいは働いている漁船員、いわゆる従業員、こうした人たちの生活権の問題にもかかわることです。  そしてまた南太平洋フォーラム諸国の段階では、ニュージーランドなど入漁料を大変法外な額を要求する、さらには友好的な各国もありますけれども、こうしたことに対して漁業外交というのが日本の場合非常に後手を踏んでいるのじゃないか、あるいはまた余り積極的に入漁料解決のための、たとえば国際基準をつくるとか、そういう提案をされることになかなか踏み切られないこともあるようですが、こうした非常に新しい動向、漁業秩序、そうしたものを踏まえて入漁料の問題あるいはいうところのいままでアメリカあたりがやっております余剰原則、こうしたこと等も踏まえまして、漁業外交全般をどういうふうにお考えになっているか、政府見解をいただきたいと思います。
  324. 真鍋武紀

    ○真鍋説明員 二百海里以来漁業関係の環境は大変悪化をしておるということにつきましては、先生御指摘のとおりでございます。  対ソ関係それから日米関係それから南洋諸国との関係は、やはり二百海里ということで各国とも自分の二百海里の水域の資源は自分たちで利用する、あるいは利用できないものは日本なり消費国に高く売りつけるというふうなことで、御指摘のございましたように、入漁料を上げるとか、あるいはいろんな面で自国の漁業発展のために協力を要請してくる、こういう実態でございます。  これに対しまして水産庁といたしましては、やはりそれぞれの国との関係がございますので、それぞれの国に応じたようなできる限りの協力はしながらも何とか漁場を確保していくというふうなことで、積極的に漁業外交といいますか、相手国と粘り強く交渉しているわけでございます。具体的には、最近在外公館に漁業の専門家を増員していただくとか、あるいは海外漁業協力財団というのがありますが、そこからいろいろな資材供与でございますとか、あるいはそういう協力関係の事業を進めるとか、あるいは水産関係の無償援助をやるというふうなことで、その国々に応じましていろいろな協力をしながら、また外交面でもいろいろ御努力をいただいて、外務省と一緒になって努力をしておるわけでございまして、今後とも漁場確保というふうなこと、それからわが国の遠洋漁業の安定というふうな観点から粘り強くやっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  325. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 いまお話がありましたように、入漁料の問題だとか漁場の確保だとかあるいは遠洋漁業をこれから守っていくとか、通り一遍のお話はあるのですけれども、これは外交として、各沿岸国に対する二百海里の専管水域がそれぞれ設けられておりますから、そういう外交上の視点は、これは水産庁が行政としては事務的におやりになる。ただ、国と国との関係というのは外交になるわけですが、この辺どうなんですか。これは各国々はそれぞれ漁業省を設けたりやっておりますね。日本の場合は農林水産省で水産省が後についちゃったのですが、そういうような関係であって、外交的にはどうも脆弱じゃないか、現にこう言われても仕方がないぐらいですね。この点について大臣、どうでしょうね、漁業外交という全般的な問題、外務省としていま在外に設けているとかいうお話がありましたが、これらを踏まえてどうお考えですか。
  326. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も農林大臣をやった経験がございますが、日本世界の中で最も有力な水産国、ソ連とともに強大な水産国であります。それだけに日本の水産の世界における占める役割り地位というものは非常に高いわけですから、それだけに外交分野におけるそうした面での活動といいますか、役割りというものもまた大きくなっていることは事実であります。  私は、二百海里なんかが設けられまして、いろいろな水産関係世界の水産のルールが、いろいろと新しい秩序が生まれる、こういう中にあって、日本もいち早くその問題については取り組んでまいりました。私は、水産外交としては日本は決して劣っているわけじゃなくて、積極的に取り組んできたのじゃないだろうか、こういうふうに思っておりますし、また、二国間の関係でも日本とソ連の関係とか、これは定着してしまいました、あるいは日本アメリカとの関係、さらにニュージーランドだとか日韓だとか、そうしたいろいろの諸国との関係についても日本としてはいろいろと積極的な取り組み方をしておりまして、大体二百海里水域ができましてからのいわゆる新しい世界の漁業秩序の中で、ようやく何か一つの安定感というものが生まれてきつつあるんじゃないかと思うわけでございますが、さらに、日本は国民も食料は水産資源に非常に大きく頼っておるわけです。ですから、そういう意味においても水産外交というのはもっと積極的に取り組んでいって、特に協力の問題ですね、海外の水産関係の利害関係を持った諸国との水産の協力の問題等は、これからまだまだ分野が広くなっていくんじゃないか、そういう面等もこれからも進めてまいる必要がある、こういうふうに考えております。
  327. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 そうだとすると、当面の問題は、各沿岸国ばらばらだと思うんですが、入漁料の扱いですね。これは国際基準か何かつくって、一定の枠を決めてやる方法はないものかどうか、お答えいただけますか。
  328. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 いまおっしゃった国際基準という問題でございますが、現実にわが国の漁業の形態を見ますと、何しろ魚種も異なり、また入漁方法も違っておる、それから相手国の事情もそれぞれ異なるということでございまして、全世界的に一般的な国際基準を設けるということは困難ではないかというふうに判断をいたしております。個別の国々との間に粘り強くその条件、状況に応じた妥当な入漁料を交渉するということでやっていかざるを得ないというふうに考えております。
  329. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 まあ日韓もあるのですが、いま当面の緊急課題、西日本の皆さん非常に心配しておられますが、日本と朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮との民間漁業交渉、協定まで結んでおったのですけれども、国際情勢がいろいろと、また日朝間の問題でいまそれかとだえて非常に遺憾なことだと思うのです。大臣、一体これはどういう解決をしたらいいとお考えですか。もう中身は申し上げませんが、御見解をいただきたいと思います。
  330. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本と北朝鮮との間には残念ながら国交はないわけでございます。したがって、これまでの漁業もいわゆる民間の取り決めによって行われたわけです。これが昨年の六月三十日で失効してそのままになっているということで、関係の漁民の方が非常に心配をし、そしてまた苦労しておられるわけでございますので、政府が直接タッチはできませんが、われわれとしては、日朝双方の関係者の努力によって一日も早く交渉が再開をされる、そして結実するということを期待をいたしておりまして、そのために政府としては、日朝間の漁業問題を話し合うための北朝鮮の代表団のわが国入国問題については、代表団の具体的な構成であるとか訪日の時期等が示された時点で検討するわけでございますが、できる限り問題の解決に資するような形で対応したいと考えておるわけでありまして、私も何とか、これは政府がみずから乗り出すわけにいきませんが、幸いにして日朝間の議員関係でも交流もあるわけでありますし、早くこの民間漁業交渉が始まるように、心から期待をして、それに対する政府政府なりのことをしていきたい、こういうふうに考えております。
  331. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 アメリカもクロス承認の環境づくりをしきりとやっておりますし、そうした中での日本がこれから対応する姿勢ですけれども、率直に言って、日本代表団の受け入れ、これは可能ですか。
  332. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは政府として北のいわゆる代表団が漁業のために話し合いにやってこられるということであるならば、もちろんこれは十分可能である、またそれはそういう交渉が行われるようにわれわれとしても協力にはやぶさかでない、こういう考えでおります。
  333. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 事態はもうすぐそこに来ていまして、漁獲の態勢に入っている業者もおるわけですから、早急な解決を、まあ民間外交という形になりますが、政府も積極的にこれの援助をお願いをしておきたいと思います。よろしいですか。  次に、捕鯨の問題ですが、第三十四回国際捕鯨委員会、IWC、ここで捕鯨産業の日本の歴史的な文化的、経済的な事情等も全然無視されまして、そして禁止条項が明らかになったのですが、日本としては、どうも問題だというので、このIWCを脱退するというわけにはいかないが、異議申し立てをしようということで、ソ連、ノルウェー、ペルーなど日本と同じような態度を示すんじゃないかと思うのです。セーシェルが提案したと言われているモラトリアムですね、この根拠について、日米の科学者間でもっとより協議したらどうかという提案をされたのですけれども、先月の二十四日か二十五日に海洋大気庁バーン長官がこちらへお見えになっていろいろと協議された模様でありますけれども、結論は出なかったということでありますが、マグナソン法等で制裁措置をとる、あるいは漁獲割り当てに相当影響があるんじゃないか、従来アメリカとの間では前半期五十七万トン割り当てがされたのですが、これから新条約を、日米漁業条約を結ばれる、そういう際に相当強く出てくるんじゃないかとわれわれも危惧しているのです。これについては巷間新聞等でも伝えられておりますけれども、捕鯨という面ではこれからどういう展望を持てばいいのか。昭和六十年あるいは六十五年までは現在の割り当て等々含めて捕鯨業者というのは、そう当面の問題ではないんでしょうが、将来、捕鯨船が減船されたり、あるいは世界に冠たる捕鯨技術を持っているその漁業者が職を失うという問題も出て深刻なんです。これについてどういうお考えを持っているか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  334. 今井忠

    ○今井説明員 お答えを申し上げます。  先生御指摘のとおりに、米国の中におきましては、環境保護団体を中心に、日本の商業捕鯨禁止に対する異議申し立てにつきまして反発の空気が強まりまして、それで米国二百海里水域内における日本漁船に対する漁獲割り当てを削減したらいかがかという圧力が強まっているということは事実でございます。  昨年十二月に水産庁は審議官を派遣いたしまして向こうと協議いたしましたわけでございますが、引き続きまして、先月二十四、二十五日の両日、東京におきまして二回目の会議を開きました。アメリカから参りましたのは大気環境庁長官及び国務省の国務次官補代理でございます。当方からの、外務省審議官並びに松浦水産庁長官の間で意見交換が行われました。  会議の状況でございますが、まず第一番に、日本からIWCの場におきまして商業捕鯨を一律禁止することに異議申し立てしましたその事情をまず説明いたしまして、さらに日本といたしまして、一律禁止ではなくて、もっと細かく科学的な論議を尽くしてからやるべきじゃないですか、そういうことをお話し申し上げ、またもう一つ日本の捕鯨というのは古事記の中にも書いてある古くからの伝統産業だ。それからまた、ローカルの町ではございますが、日本のたとえば鮎川とか太地とか、そういう町は捕鯨を中心にしてやってきたという事実がございます。それからまた、戦後を通じまして日本の食文化に非常に深く立ち入っているということで日本の置かれている捕鯨に対する非常に深い関係説明いたしまして、日米間で捕鯨問題について合理的な理解を求めたいというふうに話をいたしました。  一方、アメリカ側では、アメリカの国内で環境保護団体の圧力が非常に強くなってきておりまして、行政庁として抑え切れるかどうかというところまで来ております。それが心配なのでございます。それで、日本として捕鯨禁止に向かいまして何らかの実質的な協力というものがなければ、アメリカの二百海里水域の中における漁獲割り当ての削減をしなければならない事態が起こるかもしらぬ、そういうことで日本協力を求めました。  これに対しまして私どもといたしましては、日米の水産関係というのは非常に深い関係にございます。それで、現に十二万トンに上るスケトウダラをアメリカの漁民から洋上買い付けしておりますし、また漁業の技術、加工の技術技術協力もしております。片やアメリカの水産物千七百億円ほども買っておりまして、そういう深い関係にある、それを度外視しましてただ捕鯨だけで一律に日本の漁船を締めつけるのはいかがなものであろうか、こういう主張をいたしました。  そういうことでございますので、今回は残念ながら日米見解が一致する点に至りませんでございましたが、私どもといたしまして漁獲割り当て等の制限がないように、今後とも努力して綿密な話を続けてまいりたいと思っております。  なお、もう一つの問題でございますが、将来捕鯨の減船、そういうものが起こるとすると、先生御指摘のとおり、船を沈めたり、またはそれに乗っておる従事者というものがいるわけでございますから、そのものにつきましては二百海里以降いろいろな場合に応じてとってきた措置を十分とってまいりたいと思っております。
  335. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 決意のほどはよくわかりましたが、具体的に対処していく場合、確かに特定民族差別の危険思想、あるいはこれから先鯨、イルカさらには海洋動物の保護運動、こうしたことに発展をしてくれば、日本の漁業界は大変なことになるだろう。その危惧を持っているのですが、環境保護団体の圧力に非常にアメリカ側も押され押されて、今日こうしたパックウッド・マグナソン方式というか、いわゆる制裁措置をというところまで来ておるわけですが、この制裁措置を何とか抑える手はないのだろうか。いま漁獲割り当て量問題とか、水産物をアメリカから相当入れているとか、そういうようなことでアメリカ側を説得しても言うことを聞かないということなんですが、一体、このIWCの決定に従わない国があれば制裁を科すよ、こう言っているのですけれども、これは国際捕鯨取締条約を無視した決定ではないか、われわれはそう思っているのです。これはIWCが決めたのだけれども、条約においては逆に問題があるんじゃないか、こう思うのですが、外務省としてはそういう外交上の問題、条約の問題としてどうお考えかをお聞かせをいただきたいと思うのです。
  336. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先般のモラトリアムの決定でございますけれども、これは単に科学的な根拠を欠いておるというのみならず、国際捕鯨取締条約の基本的な目的、これは同条約に規定されておりますけれども、「捕鯨産業の秩序のある発展を可能にする条約」だということをうたっておりまして、私どもは、先般の決定はその意味からはなはだ遺憾であると考えているわけでございます。
  337. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 遺憾であるで済まされないから、これから先のことを対処していただきたい。先ほど今井説明員のおっしゃっているように、それは具体的には相手国との関係ですからね。あるいはまた各沿岸国あるいは捕鯨に直接影響のない国まで実はIWCで捕鯨禁止に賛成した経緯がありますね。だから、そうしたことに対してまだ日本の国として、もちろんソ連もノルウェーもペルーも一生懸命コミュニケーションをおやりになると思いますが、このコミュニケーションギャップを埋めていって理解を深めていくという努力がない限りだめなんですよ。だから、やはり日本は野蛮じゃないかということ、動物愛護にもとると指摘をされて、それで下がってしまう。こうした状況ですから、外交上の問題として、外務大臣、ひとつ念を入れてこれからの対処として、捕鯨業界を守るという問題もありますけれども、やはり伝統的な文化的な経済的なという、すべてを網羅している問題ですから、一層の御努力をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  338. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 どうも私も昔からどうして鯨をとって悪いのだ、そうすると豚や牛を食って、それと鯨と一体どういうふうに違うのだ、基本的にそういうふうな感じを持つわけなんです。しかし環境保護団体がアメリカなどで非常に強くて、われわれが首脳会議に行ったときもホワイトハウスに押しかけてくるというふうな状況で、先般も異議申し立てをしまして、その後日米でいわゆる漁業協定を結んだのですが、これが議会で批准されないのではないかと心配しておりましたけれども、それはアメリカ議会で何とか成立した。しかし、いま割り当ての問題についてなかなか厳しい状況にあるということです。やはり鯨については資源保護という立場ならもちろんわかるわけですが、いま資源の状況もだんだんよくなっておるわけでございますし、そういう状況でありますから、一方的にただ環境保護とかそういうことだけで世界のそうした非常に大事な資源、特に日本にとっては大事なたん白資源、そして伝統的な産業かこういうふうに育ってきているわけですから、これからも外交交渉とそれからまたアメリカのそうした団体とか議会、政府に対しまして日本の正当な主張をよく説明理解をさせて、何とかこのピンチを切り抜けていくような努力をやらなければならぬ、こういうふうに思っております。  何か、異議申し立てで、後は日本は勝手にとるのだろうというふうなことも言っておりますが、そんなことではないのですね。条約に基づいた正当な異議申し立てで、日本としては異議申し立てはしましたけれども、あくまでも話し合いによって、資源保護という立場から科学的な調査を進めながら、何とかひとつ捕鯨の道だけは確保していきたいということでこれからも最善の外交努力をしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  339. 新盛辰雄

    ○新盛分科員 では終わります。
  340. 砂田重民

    砂田主査 これにて新盛辰雄君の質疑は終了いたしました。  次に岡田正勝君。
  341. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 大臣、三月二日の予算委員会におきまして、時間が非常に短かったのでありますが、大臣にはよく意を酌み取っていただきまして、北鮮におられる皆さん方の日本人妻のことについて、ひとつ窓口を設けて親身に相談に乗ってやろうというお言葉をいただきまして、本当に感謝をしておるものであります。  そこで、大臣は二十分にここを出なければならぬということでありまして、十分間も時間が食い込んでしまっておるものですから、意の足りた質問ができないのでありますけれども、節約をいたしまして要点だけお尋ねをしたいと思うのであります。  先般大臣のお手元へお渡ししておきましたが、代表の池田さんの方から私の方に二月五日付で参りました書簡の中を見てみましても、全く涙なくして見れないようなことでございます。三ページにあります妹からお姉さんへという手紙にしましても、「私達も羽根がなくなってもお姉さん、父ちゃんに会えるまでは死ぬない、死にきれない。なんとか会えるまでお父さんに生きていてもらいたい、生きていて下さい。無理をしないで里子が帰れる日まで生きていて下さい。」と書いてある。大臣、読みましたね。  そして四ページにありますね、めいからおじさんに。おじぎんたち日本におられるから「私達の暮しやらいろんなことわからないと思います。二十年前にお母さん、お父ちゃんが着てきた服も皆つぎだらけです。お正月だといっても、一枚の服や一つのモチも食えません。」と書いてあります。実に惨たんたる生活をしているのじゃないかと思います。  そして、今度は陳情文ですが、六十六歳の日本にいるお母さんから大臣へあてて「娘貴美子は二十三~四年前に北朝鮮へ渡りました。その間、十六年前に主人は亡くなり、私は病気で、今、毎日医者通いの身です。」あの娘に会うことができたら、私の命と引きかえでも構わないと思う、一目でも会わしていただきたい、御配慮願えませんかと書いてあります。  そして妹から大臣への陳情文でありますが、「母も年を老い、姉に一目会うまでは、死ぬに死ねないと、涙を流しながらつぶやいております。」ずいぶん御高齢だと思います。  そしてその次の七ページでありますが、お母さんから大臣へ来ております。私も八十二歳の高齢になりました。体もすっかり弱りました。頼る人もなく、老人ホームのお世話を受けております。どうにか暮らしておりますが、余命幾ばくもありません。どうぞ生きているうちに会わしてやってくださいと書いてあります。  そして、お父さんから娘に遺言書があります。これを読み上げる時間がありませんが、要点だけ申し上げてみますと、父親から、どこにおるかわからぬ北朝鮮の娘へ遺言として書いております。何度も手紙を出したが返事が来ない。死んでしまったのではないかと考えることがある。手紙が着かないのか返事を出さぬのか、返事を出すにも金がないのか、いろいろ考えておる。父母も大分年をとって弱くなりました。母は三年前脳血栓で倒れ、寝たり起きたり、便所もおかわです。父は昨年六月、また脳血栓で倒れ、半身不随となり、二人とも、お父さん、お母さんは入院をした。付き添いを雇っておる状態である。もう長くは生きてはおれないだろう。生きているうちに娘に土地は要らぬだろうからと金をつくって準備してやっておるが、送ることもできぬ。その上病気入院中だから、貯金はしてやっておるが、父母の命のあるうちに里帰りができぬか。送金して、ありがとうというお礼の手紙が来ぬものだろうかということを書いております。父も八十二歳、母も七十七歳、この手紙が最後になるかもしれぬと書いてある。  大臣、この向こうから来た手紙二通、そして大臣に対する陳情四通、そして父親の娘に対する遺書一通、これをごらんになりましてどういう御感想をお持ちでしょうか。そのことをお答えいただきたいと思います。  一問一答したいのですが、時間がありませんから、まとめて三点お尋ねします。  そのいまの感想が一つと、そして十三ページに池田さんがまとめて書いてあります五つの問題がございます。その五つの問題について、いままで長年の間政府にお願いをしてきましたけれども、なかなかいい返事が出ない。三月二日の大臣の、窓口をつくってやろうというあの返事が最大の効果だったのです。それ以外に何のはね返りもありません。いままで各大臣は、ここに書いてあるように、日赤と北朝鮮との交渉の場を設定するとか、あるいは日赤代表を北朝鮮に送るだとか、あるいは国連、赤十字国際委員会にも働きかけて国際世論に訴える、あるいは第三国を通じてでも何とか解決を図りましょう、北朝鮮と相互主義でこの問題の実現を図りましょうと答えてくれました。だが、それについての何の進展もない。ただ、この間の二日の、大臣が初めて窓口をつくってやろうと言った、それしかないのです。それに対して大臣は、これを閣議にでも諮ってでも、何とかして具体的に運動を起こしていただくということができないだろうかということであります。  第三点は、いま中国の残留孤児が日本に来ておられます。そして、本当に涙なしには見られないような毎日がテレビに映っております。だが、この北鮮に行っておる日本人妻、日本人なんですから、そしてその子供を入れたら六千七百人からおるのですから、その人たちをほっぽらかしというのは私はないと思う。やはり中国人孤児と同じように、どうしても向こうからこっちへ里帰りさせぬのなら、日本から飛行機を仕立ててでも、もう老い先の短いお父さんやお母さんを積んで、向こうが指定する空港へ着いて、外へ出てはいかぬと言うなら、空港のビルの中でもいいから、そこで一目でも会わせてやってもらえるというようなことくらいは計らってやってもらえぬものでしょうか。国交のない北朝鮮から来た人たちのあの舞踊団、文化交流と称してああいう来られる人たち、国交のないところから来る人にもちゃんと日本の国は補助金まで出しているじゃありませんか。中国の残留孤児にも、日本は一年間に一億一千万の金をかけておるじゃありませんか。日本人妻に対して、私は大臣の思い切った措置を期待するのであります。  以上三つに対しまして、大臣の心からなる答弁を期待いたしたいと思います。
  342. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、先ほどから御説明がございました手紙を読ましていただきまして、本当に涙なくしては読めないような感じでございます。特に留守家族の方々のわが子を思う肉親の情、本当に胸が打たれる思いがいたしておるわけであります。  政府としましては、何としても歯がゆいのは、北朝鮮と国交がないというところに、どうしても中国の孤児との問題のように至れり尽くせりのお世話ができない。きょうも実は中国の孤児が私のところにもやってまいりました。皆さん本当に涙を流しておりましたが、政府関係者一生懸命努力しておるのは、孤児の皆さんにも気持ちの上で伝わったと思っておるわけであります。政府としましては、そういう国交のない状況ですが、家族の皆さんの心情も踏まえまして、人道的な立場からこの五つの項目を含めまして、従来から日本赤十字を通じて安否調査を依頼する等の努力はいろいろとしてきました。この結果、一九八二年十月一日に、初めて北朝鮮側より日本赤十字社を通じまして、特に家族から安否調査の要望の強かった九名、先般もお話がありました九名の日本人妻について、安否が判明した旨の連絡を受けたわけでありますが、北朝鮮側よりの連絡によれば、今後も日本赤十字社を通じるこの種の安否調査には、通信、連絡を容易にする等によりできる限り協力するということでございます。  政府としましては、この結果を踏まえまして、まず安否調査を確かなものにすることが大事である、安否の調査がまず大前提でありますから大事であると考えておりまして、赤十字を通じまして、現在、六十七名の日本人妻につきまして、改めて安否照会をいたしておるわけでございます。これらの日本人妻の安否が判明をし、家族と日本人妻の通信が確保された段階で、さらに双方の再会につきまして本人及び御家族の御希望があれば、いろいろな手だてを通じまして、これはいろいろと方法があると思いますが、今後とも再会が実現するように努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、先般の予算委員会でもお答えをいたしました、政府の窓口はばらばらであるということにつきましては、外務省としても一本にしぼらなければならぬということで、早速相談をいたしまして、窓口は外務省の北東アジア課でやらしていただくということに決定をいたしましたので、御報告をさせていただきます。
  343. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 それでは大臣、ありがとうございました。  早速窓口もお決めいただきまして、本当にありがとうございます。どうぞひとつこの問題が前進しますようにお願いをいたしまして、お引き取りをよろしくお願いします。  それでは、続いて局長さんに今度はお尋ねをいたします。  一九八〇年の九月に自民党の皆さんがつくっていらっしゃるAA研の方が金日成主席にお会いになりまして、非常にいい返事をいただいたんですね。その返事というのは、日本人妻の訪日と日本にいる家族の訪朝を歓迎する、事務的な問題は朝鮮労働党対外文化連絡協議会と連絡をとって話を進めてほしい、ここまで発言をされた。一国の元首たるべき人がこの種の問題についてこういう発言をされたのは、私は大前進だと評価しているのです。ところが、ことしは一九八三年でございますが、その間、このせっかくの金日成主席の御発言というものが一体どう取り扱われておるのかなということが私どもにわかりません。どう対処したかということをひとつ説明してください。
  344. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先生御指摘の金日成さんの発言でございますが、先生がおっしゃっておりますのですからそのとおり私は間違いないというふうに思いますが、ただ一方、外務省の方で実際に一九八〇年の九月に行かれました方々に聞いた話を御参考までにちょっと御被露したいと思いますが、よろしゅうございましょうか。  その際に金日成主席は、日本人妻の問題については人道主義に基づいて解決すべきで、今後は対外文化連絡協議会と連絡をとるようにと述べた、こういうふうに言ったというふうに私どもは別の筋から伺っておるわけでございます。それはそれといたしまして、一九八〇年の十二月二十四日には、日本赤十字社を通じまして二百十名についてそれまで十四回にわたって行ってまいりました安否の調査並びに六名の方の里帰りということが実現するようにぜひ頼むということで、一括して北朝鮮側に要請かつ招請したわけでございます。翌一九八一年の三月二十日、おととしの三月二十日でございますが、外務省から北朝鮮帰化のいわゆる日本人妻の方々の御家族に、直接外務省から手紙を差し上げたということでございます。そこでその出した手紙の返事に基づきまして、一九八一年、つまりおととしの九月に、日本赤十字社を通じ北朝鮮の日本人の奥様の御家族に対して出しました書簡というものがございます。これに九通の返事があったわけでございます。その方々につきまして再度北朝鮮赤十字を通じまして安否調査をしてもらうように依頼したわけでございます。  それからもう一つは、さらに重ねまして、その年の十月にフィリピンでたまたま赤十字の国際会議がございました。日本赤十字としてはその場で朝鮮赤十字会に対しましてお願いした。そうしますと先方は、帰りましてから御連絡いたします、こういう返事だったわけでございます。そこでその明くる年、つまり去年になりますが、新潟に入港いたしました北鮮の帰還船に乗船してまいりました朝鮮赤十字会の代表委員日本赤十字社の外事部長に対しまして、前記九名の日本人妻の安否が判明した、今後ともこの種の安否調査にはできる限り協力する、こういう返事だったわけでございます。  それからこれを受けまして、さらに日本赤十字は現在まで安否が判明しておらない日本人妻につきまして再び調査を依頼するということで、その結果改めて六十七人の方々について安否調査及び通信連絡、手紙がちゃんと着くようにしてほしいという希望が寄せられましたので、現在朝鮮赤十字を通じまして北朝鮮当局に対しまして安否調査、それから先ほど申し上げました手紙の行き来ができるようにということを要請中というのが現在までの状況でございます。
  345. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 そこでいまいろいろとお話を聞きますと、向こうへ安否調査をお願いして九名の返事が来た、こういうことですが、実際はこの九名のうちの五名というのは自由往来の会の方でもう前から安否がわかっておった人でございまして、初めてわかったというのはそのうちの四名だけなんです。しかも、こうでしたよということを教えてもらった教えてもらい方というものがまた、お世話になっておってこういう言い方は悪いのでありますが、あんまり親切じゃないと思いますね。電話で知らせたり、それから電話のないうちでしょう、電報で打っておるところが一軒ありますね。あとはほとんど各県の日赤の支部から電話でもって連絡しておりますね。  どういうやり方をしておるかといったら、電話でたとえば、谷口さんですか、そうです、あなたのところの姉さんは元気です、ということなんです。どういうことかいなと思って新聞を見たら、新聞の方が詳しい。新聞に載っておるのもたった三行か四行ぐらいしか載っておらぬのでございますが、そういう連絡でございまして、安否調査といっても新聞に載っておる以上の内容はなく、しかもそれは本当に木で鼻をくくったような、元気、みんな元気、息子さんも元気、そういうようなことだ。それじゃ安否調査といっても、生きていらっしゃることだけはわかるけれども、どうなっておるかということはわからぬでしょう。やはり安否調査をするなら、向こうからの手紙ぐらいは家族としては欲しいのじゃないでしょうか。  それから時間がもうないですから全部一遍に申し上げますが、いまのあと六十七名安否調査をしようというので日赤が家族の人に配っているというのは、これのことですよ。これ現物ですよ。これをごらんになりましたか、局長。こんなので安否調査できると思いますか。これは日赤がつくった用紙ですから外務省としても文句は言えないのでしょうけれども、考えてみてくださいよ。何十年ぶりに、二十年ぶりとか二十四年ぶりにこっちから出す手紙でしょう。その内容が四行しか書けないですよ。書く人はおじいさん、おばあさんですよ。ほとんど老眼鏡かけなければわからぬような人が書くのですから、こんなもの一口じゃないですか。そして向こうから来る返事そのものも三行しかありませんよ。これじゃ安否調査と言えるでしょうかね。  だからそういう点、日赤さんの方で金がないから、予算がないからこんなことにしているのだとおっしゃるのなら、外務省の方で、あるいは外務省に金がなければ国の方で、とにかくそういうことについては補助金を出してでもばしっとした安否調査をしてあげませんと、さっきも大臣が言われましたように、まず安否を確かめて、その安否を確かめることができたら、その次には再会をさせていただくようにというふうに順次事を運んでいきたいと、具体的な意思をおっしゃっていましたが、その再会の運びになるにしても何にしても、全然向こうの手によらないものでしょう。それで、聞かせてもらう返事というのは、北朝鮮の何郡のどういうところで生存している、本人元気あるいは本人死亡、何のために死んだかよくわからぬ、とにかく本人死亡となっている、それで子供さん元気。わからぬじゃないですか。そんなの安否調査になりますか。  だから、外務省の方でもこの現物をごらんになっているのなら、そういう点はこれじゃ不十分じゃないかということも意見くらい言ってくださいよ。家族の気持ちになって外務省はこういうことに対して日赤と連絡をとり合っていただきませんと、私はあんまりだと思いますよ。この紙を見てください。はがきよりちょっと大きいだけじゃないですか。これで往復ですよ。こんなのないですよ、こんなやり方は。外務省本気になっているのかなと疑いたくなる。だから、この点をぜひひとつよろしくお願いしたいと思います。  時間がなくなりますので、あと二つだけまとめてお尋ねをしておきますが、先ほど大臣に私の方で注文をいたしましたが、いよいよ面会ができるという状態になりましたとき、それはあちらの国の事情もあって日本には里帰りをさせられないのもわかりません、どういう事情があるのかわからぬが、六千七百名からの日本人が向こうへ国籍を持ったまま行っておって、そのうち千八百名を超える日本人妻がおって、一人も日本へ帰れずに里帰りもできないで、親の死に目にも会えないで、墓参りもできない。  ところが、それでは国交がないから北朝鮮から一人も来ないのかといったらそうじゃないでしょう。日本は開けた国ですね。向こうからは毎年二百名を超える人が日本に来ては向こうに帰っていますよ。日本の方からは、日本に住んでいらっしゃる北朝鮮の方々は毎年四千名を超える人が北朝鮮へ行って日本に帰るんですよ。その四千名のうち三千名を超える人が、親族に会いたい、墓参りをしたい、親に会いたいという人道ケースで、その旅券で行っておるじゃないですか。どうして向こうへ行っておる日本人だけが日本へ帰れないのですか。こんな不思議な話は世界じゅうありはしませんよ。私は日本人として本当に憤慨にたえない。  だから、国交がないからということだけじゃなくて、もっと日赤さんにもどんどん働いてもらう。働きが不十分なら国連にも訴える。第三国にも通じる。そして国際赤十字社にも通じる。そうやって外務省が本気になって動いてくださいよ。電話でちょっと頼んだとか、日赤がやってくれているに違いありませんとか、そんなのでは在外邦人を守るという基本的な任務に反すると私は思っておるのです。実際、私は憤慨しているのです。その点についていかがですか。
  346. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 御本人はもちろんのこと御家族の方々につきましても、先ほどの先生御指摘のお手紙を初めといたしまして詳しく事情を伺うにつけ、私ども心が痛む思いがいたします。そこで、先生が御指摘のとおりに、そういう状況下にある方々に対しまして温かい血の通う配慮が行き届かなかったという点については、私ども反省もし、今後もう少し心の通う方法を日赤とも相談しまして、温かい配慮といいますか血の通うやり方で何とかお手伝いをしたい、こういうように思っております。  それから、外務省として国交がないとだけ言わずに大いに努力しろという御意見でございますが、まことにごもっともでございまして、今後とも日赤対北鮮赤十字の二つの当事者間の話し合いが、現在それで進めておりますが、仮にうまくいかなかった場合には、その上部構造といいますか、その上にある国際赤十字にお願いするとか、あるいは日本と北朝鮮との双方と外交関係を持つ第三国に対しまして、人道問題だからよろしく頼むというような外交上の考え得るあらゆる努力を今後続けてまいりたいと考えております。
  347. 岡田正勝

    岡田(正)分科員 局長さん、ありがとうございました。  私は、三月二日の予算委員会における質問で――実は国会ではもう三十人に近い議員が質問しているのです。それでいままでにもう七年間かかっているのです。その間に一つも進展がなかった。それが窓口を設けてやろう、それは北東アジア課だというふうに窓口をはっきりしていただきました。二日に言ってきょうですから、まことに迅速な措置だと感謝しております。そしていまの局長さんのお答え、国交がないからといって日赤だけにお任せをするというのは本当に過ちである、外務省としても国連あるいは第三国あるいは国際赤十字、そういうものを通じてでも積極的に働かなければならぬと決意をしておるという決意をお聞きしまして、本当に感謝にたえません。  これはこの議題に直接関係なかったから言わなかったのですけれども、いま家族の人たちが私どもに言います中に、局長さんも御存じでしょうけれども、北鮮との間、国交はありませんでも民間の貿易はじゃんじゃんやっているのですよ。しかもそれは昭和二十七年から始まっているのですよ。大変なものですよ。引き揚げが始まったのが昭和二十四年の十二月ですから、それから三年もたたぬうちにもう貿易が始まっている。それで今日一年間にどれくらいの貿易額があるかといいますと、輸出と輸入と両方足しましたち一年間に実に四億五千万ドルの貿易高なんです。それで、北朝鮮の方では共産国ですから民間会社というのはありません。政府機関が公社をつくりまして、その公社を通じて日本と取引をしているのです。これは、日本政府が許可しないと言えば密貿易ですね、日本政府が認めておるから密貿易じゃなくて正当な取引をしていらっしゃるわけでしょう。 そのことを考えますと、日本政府は貿易なら力はかしてやるけれども邦人の安否の問題については一切何もしないという姿だけはあってはならぬ、そんな見殺しはいけません。  きょうの局長さんの答弁は、非常にりっぱだったと私は思います。どうぞひとつ本日の答弁のとおり、大臣と心を合わせて、家族の皆さん方の便宜を図ってやっていただきますように心からお願い申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わります。委員長、ありがとうございました。
  348. 砂田重民

    砂田主査 これにて岡田正勝君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、外務省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午前九時三十分から開会し、法務省所管について審査を行うこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十九分散会