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1983-03-04 第98回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十八年三月三日(木曜日)委員 会において、設置することに決した。 三月三日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       相沢 英之君    植竹 繁雄君       江藤 隆美君    武藤 嘉文君       大出  俊君    野坂 浩賢君 三月三日  武藤嘉文君が委員長指名で、主査選任され  た。 ────────────────────── 昭和五十八年三月四日(金曜日)     午前九時三十二分開議  出席分科員    主 査 武藤 嘉文君       相沢 英之君    植竹 繁雄君       江藤 隆美君    大出  俊君       栂野 泰二君    野坂 浩賢君    兼務 池端 清一君 兼務 小林  進君    兼務 沢田  広君 兼務 中村 重光君    兼務 斎藤  実君 兼務 竹内 勝彦君    兼務 西中  清君 兼務 小沢 貞孝君    兼務 木下敬之助君 兼務 岩佐 恵美君    兼務 浦井  洋君 兼務 山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁長官官房         会計課長    森   孝君         環境庁自然保護         局長      山崎  圭君         環境庁大気保全         局長      吉崎 正義君         環境庁水質保全         局長      小野 重和君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君  分科員外出席者         国土庁土地局土         地利用調整課長 河村 勝三君         国土庁大都市圏         整備局計画課長 白兼 保彦君         外務省アジア局         北東アジア課長 小倉 和夫君         大蔵省主計局主         計官      藤原 和人君         大蔵省主計局主         計官      千野 忠男君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 瓜谷 龍一君         林野庁指導部長 鈴木 郁雄君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      赤澤 壽男君         建設省都市局都         市計画課長   城野 好樹君         建設省道路局高         速国道課長   宮原 克典君         参  考  人         (阪神高速道路         公団理事)   寺田 久彌君     ───────────── 分科員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   大出  俊君     栂野 泰二君 同日  辞任         補欠選任   栂野 泰二君     新村 勝雄君 同日  辞任         補欠選任   新村 勝雄君     大出  俊君 同日  第二分科員池端清一君、中村重光君、小沢貞孝  君、第三分科員西中清君、山原健二郎君、第四  分科員小林進君、岩佐恵美君、第六分科員斎藤  実君、竹内勝彦君、木下敬之助君、第七分科員  沢田広君及び浦井洋君が本分科兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算  〔総理府環境庁)及び農林水産所管〕      ────◇─────
  2. 武藤嘉文

    武藤主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりましたので、よろしく御協力をお願いいたします。  本分科会は、総理府所管環境庁及び農林水産省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省庁所管事項説明は、各省庁審査の冒頭に聴取いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算総理府所管環境庁)について、政府から説明を聴取いたします。梶木国務大臣
  3. 梶木又三

    梶木国務大臣 昭和五十八年度の環境庁関係予算案について、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十八年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、環境庁予算要求額は四百四十八億三千三百九十六万二千円であり、これを前年度の予算額四百四十九億八千六百二十四万五千円と比較すると、一億五千二百二十八万三千円の減額となっております。  次に、予算要求額の主要な項目について御説明申し上げます。  第一に、公害対策について申し上げます。  まず、環境保全企画調整等経費については、長期的、総合的視点に立った環境政策の展望を検討するための経費環境影響評価法制度効果的実施推進するための経費瀬戸内海環境保全対策推進する経費及び公害防止計画策定推進する経費のほか、地球的規模環境問題に関する調査環境の質の向上を目指す快適な環境づくり検討するための経費など、これらをあわせて四億七千六十五万円を計上しているところであります。  次に、公害健康被害補償対策費については、公害健康被害補償制度の円滑な実施を図るほか、水俣病認定業務を促進することとし、これらの経費として百七十九億三千六百六十五万円を計上しております。  公害防止事業団につきましては、事業団事業運営に必要な事務費等助成費として四十三億七千八百四万円を計上しております。  次に、大気汚染防止対策経費については、新たに大気汚染防止に関する各種対策の実績を把握、評価し、今後の総合的な大気環境保全対策のあり方の検討を進めるほか、従来に引き続き、石炭利用の増大に対応した大気保全対策を策定するための調査を行うとともに、窒素酸化物対策として、総量削減計画達成を図るための調査検討及び健康影響調査等実施することとしております。  また、交通公害防止対策については、新たに、交通公害防止計画を策定するための検討航空機騒音環境基準達成期間等の到来を控え現況調査実施するなど、総合的な交通公害対策検討を行うこととしております。  さらに、自動車公害騒音、振動及び悪臭についての対策推進するため所要の調査実施するなど、八億一千四十一万円を計上しております。  水質汚濁防止対策経費については、湖沼保全対策として引き続き、富栄養化に係る環境基準類型指定を行うための調査について、地方公共団体に対する助成を行うほか、湖沼ごとの特性に応じた水質管理指針を策定するための調査検討などを実施するとともに、水質総量規制実効を期するための調査等を行うこととしております。  さらに、瀬戸内海富栄養化対策強化生活雑排水対策及び赤潮防止対策推進するための調査を行うなど、九億九百二万円を計上しております。  このほか、地盤沈下及び廃棄物対策費として一億一千三百五十七万円、土壌汚染防止及び農薬対策費として一億九千八百六万円をそれぞれ計上しているところであります。  次に、公害監視等設備整備費については、地方公共団体監視測定体制等整備に必要な経費として十億八千八百二十四万円を計上しております。  公害防止等に関する調査研究推進のための経費については、科学的な調査及び試験研究を促進するため、総額四十一億六千二百四十三万円を計上しております。  そのうち、国立試験研究機関等公害防止等試験研究費として三十億七千六百四十七万円を環境庁において一括計上し、各省庁試験研究総合的推進を図ることとしております。  また、光化学スモッグに関する調査研究費及び公害による健康被害大気汚染水質汚濁自然環境保全等に関する調査研究費についても、酸性雨調査研究費など新たな経費を含め九億一千六百四十九万円を計上し、必要な調査研究を進めることとしているほか、環境保全総合調査研究促進調整費として一億六千九百四十七万円を計上し、関係省庁所管する各種環境保全に関連する調査研究総合的調整を図ることとしております。  さらに、科学的な行政を推進するため、国立公害研究所の機能を充実強化することとし、これに必要な経費として四十六億八千六百六十七万円、国立水俣病研究センター運営等に必要な経費として四億一千七百五万円、公害研修所に必要な経費として九千九百五十七万円をそれぞれ計上しております。  第二に、自然環境保全対策及び施設整備について申し上げます。  まず、自然環境保全対策及び自然公園等維持管理等経費については、自然環境保全施策を適切に推進するため、第三回自然環境保全基礎調査を初めとする調査研究実施するとともに、国立公園等保護管理強化を図るために必要な経費として十九億四千五百七十五万円を計上しております。  また、鳥獣保護については、国設鳥獣保護区の管理強化を図るほか、特定鳥獣保護事業及び渡り鳥の保護対策推進するなど、一億八千二百八十万円を計上しているところであります。  さらに、自然公園等整備を図るため必要な施設整備費として二十九億四千四百七万円を計上しております。  以上が環境庁予算案概要でありますが、このほか、建設省所管予算案として、国立公害研究所施設整備のため四億七千五百三十九万円が計上されております。  以上、昭和五十八年度環境庁関係予算案につきまして御説明申し上げました。  何とぞ本予算案の成立につきまして格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
  4. 武藤嘉文

    武藤主査 以上をもちまして総理府所管環境庁)についての説明は終わりました。     ─────────────
  5. 武藤嘉文

    武藤主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。  質疑持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は要領よく簡潔にお願い申し上げます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栂野泰二君。
  6. 栂野泰二

    栂野分科員 湖沼法案ですが、もう四国会目になりますが、当初の期待とはうらはらに、この間、通産や建設につつかれてすっかり骨抜きになってしまっていますが、その代案といいますか、応急策といいますか、先般この燐、窒素環境基準環境庁設定されて、いま中公審にその排出基準設定について諮問中であります。もちろんこれはやらないよりやった方がいいに決まっていますので遅きに失した感はありますが、その点は評価いたします。  ところで、今回の対策の骨子、それから、これからどういうふうに進んでいくか、その点をひとつまずお答え願いたいと思います。
  7. 小野重和

    小野(重)政府委員 湖沼対策といたしましては、私ども二つの柱があると考えております。  一つは、富栄養化問題が大きな問題でございますので、富栄養化防止対策をどのように進めるか。それからまた、その進め方でございますが、湖沼汚濁原因は、いわゆる産業系だけでなくて、生活系あるいは農畜水産系、いろいろございますので、総合的に計画的に進めていくという体制づくりの問題がございます。体制づくりの方の具体的な施策として、いわゆる湖沼法案を私ども検討してきた、こういうことでございます。  いまお尋ねの件は窒素燐対策のことだというふうに承りましたが、もう御案内のように、窒素と燐の環境基準設定につきましては、昨年末に告示いたしております。したがいまして、まず一つは、一切のそれぞれの湖沼についてどのような環境基準を当てはめるかという当てはめの問題がございます。  これにつきましては、これから私ども環境庁自体では琵琶湖霞ケ浦、これは環境庁みずからが当てはめをする、それ以外の湖沼については都道府県知事が当てはめるということになっておるわけでございます。琵琶湖霞ケ浦につきましては、大体ことしの夏ぐらいを目途に当てはめようということで作業を急いでおります。それから各都道府県知事の指定する都道府県知事の類型当てはめでございますが、これは私どもとしましては、大体毎年当面十湖沼ずつくらいを当てはめするように調査をするように、各都道府県に要請いたしておりますが、大体そのくらいをめどにしていきたい、こう思っております。  それからもう一つの問題は排水基準の問題でございまして、これはことしの一月に中央公害対策審議会諮問をいたしておりますが、審議会で十分に御検討いただきまして、私どもとしては大体半年ぐらい後に答申をいただきたいものだというふうに期待いたしております。また、答申が出ますれば、それに基づいて排水基準設定など排水規制実施したい、かように考えております。
  8. 栂野泰二

    栂野分科員 この環境基準というのは、五ランクに分かれていますね。そこで、どのランクに当てはめるのか。琵琶湖霞ケ浦環境庁が直接やる、そのほかはその湖沼がある都道府県知事、こういうことになるようですが、そこで私が心配するのは、各都道府県環境保全に熱心な知事さんもおられるが、そうでない県の場合、どうしても環境基準の低いところへ持っていきたいという、こういう動きが出てくる危険性があるように思うのです。そこで環境庁は、都道府県知事に一切任せっきりで、環境庁としての指導なり要望というものはしないのですか、いかがですか。
  9. 小野重和

    小野(重)政府委員 都道府県知事類型指定を行うに際しましては、あらかじめ環境庁長官に通知するということに制度上なっております。したがいまして、個別の湖沼の当てはめに当たりまして、当てはめが適切に行われるように環境庁としても関係都道府県を十分に指導してまいりたい、かように存じております。
  10. 栂野泰二

    栂野分科員 私は島根選出なんで、私のところには宍道湖中海というのがございますが、当面毎年十カ所ぐらいというお話でしたけれども、この宍道湖中海はどうなっているのか。宍道湖についてはもうことしすでに調査開始というお話を聞きましたが、中海はどうなのか。それから当てはめの調査について国が補助金を出すという話ですが、それは一体幾ら出すのか、お答えください。
  11. 小野重和

    小野(重)政府委員 宍道湖につきましては五十七年度に補助金を出しております。当然島根県でございますが。それに基づいて調査をいま行っているわけでございますが、いつ当てはめをするかということにつきましては、まだ島根県として必ずしも明確になっていない。慎重に十分に調査をしなければいけないことは当然でございますが、その調査結果に基づいていつ当てはめをするかということについては、私どもはまだ島根県から具体的なスケジュールについて聞いておりません。  それから中海でございますが、これは調査も、五十七年度の調査はしておりません。今後当然調査をする必要がございますが、これは当然のことながら島根、鳥取両県にまたがりますので、両県の協議によりまして、これはばらばらにするというわけにいきませんもので、協議が調った段階調査をするということになるかと思いますが、まだその両県の調整というものが固まっていないというふうに聞いております。  具体的に島根補助金を幾ら出したかということについては、ちょっと私いま手元にございませんので、後ほどお答えいたします。
  12. 栂野泰二

    栂野分科員 いずれにしても補助金は一回が三百万、それで三分の一ということですね。そうですか。——それでは後で答えてください。  それから環境庁としては、島根についてはもうすでに調査を開始したのだが、希望としてはいつごろまでに当てはめを完了してもらいたいと思っているのか。それから、中海については環境庁としては、希望としてはいつから調査をしてもらいたいのか。今年度はもう入っていないから来年度入れてもらいたいと思っているのか。そこの点いかがですか。
  13. 小野重和

    小野(重)政府委員 私どもとしてはできる限り早く当てはめをしていただきたいと実は思っておりますが、その前提として十分な調査が行われ、またそれに基づくいろいろな解析といいますか、検討が行われた上でなされなければならないことは当然でございますので、これは都道府県がやっておられますので……(栂野分科員めどがあるでしょう」と呼ぶ)私どもとしては五十八年度にはできれば当てはめをしていただきたいとは思いますが、どうも現地の実態等から見ますと、ちょっとずれ込むのじゃないかというふうに聞いておりますが、できる限り早く当てはめをしていただきたいと思っております。  中海でございますが、これは両県の意思が一致しなければいけませんので、それを待つわけでございますが、ただ私ども待つだけじゃいけませんので、しかもこの中海宍道湖と一体となって進めなければいけないということがありますので、できれば五十八年度にはその調査に入ってもらいたいと思っておりますが、これは両県と調整しなければいけませんので、これから努力したいと思っております。
  14. 栂野泰二

    栂野分科員 さて、そこでいま諮問中の排水基準設定ですが、環境庁としてはどういう答申を得たいという、これはあらかじめあるはずです。そのポイントをおっしゃってください。
  15. 小野重和

    小野(重)政府委員 排水基準の問題は専門的、技術的あるいは経済的、いろいろな側面からの検討が必要でございまして、そのためにこそ審議会諮問し、また審議会水質部会というところで実質的に審議していただきますが、さらに専門委員会を設けまして、そこで検討していただいているわけでございます。  そこで、どういう結論になるかということについて具体的な内容をまだ私どもちょっとお答えする段階にないわけでございますが、ただ基本的な考え方として、国が決めるのは、いわば湖沼一般を通ずる一律基準、これを決める。そして各湖沼について汚濁状況が違いますから、その湖沼実態に応じてさらに上乗せをするという場合がもちろんございます。それについては関係の各都道府県の条例で上乗せするということになりますので、各都道府県の判断にまつということになろうかと思います。  それから、具体的な内容については、ちょっとまだ申し上げる段階にございませんが、物の基本的な考え方といたしましては、従来CODのような生活環境項目がございます。窒素、燐も生活環境項目でございますが、CODのような生活環境項目についての従来の考え方などがございますし、そういうものを参考にしながら、抽象的で恐縮でございますが、やはり実効性が確保されなければいけませんし、さればといって、技術的などの観点から別の意味の実行不可能ということでもいけませんので、その辺を総合勘案して決める必要があるというふうに思っております。そういう線でこれから審議会にも検討していただき、また私ども自身としましても、さらに関係各省もいろいろ関係がございますので、政府部内においていろいろ検討いたしたい、かように存じております。
  16. 栂野泰二

    栂野分科員 その排水規制対象はどういうことを考えているのですか。  それから、たとえば事業所工場、それから一日の排水量、何トン以上の排水をするところが規制対象になるのか、そこら辺はどうですか。
  17. 小野重和

    小野(重)政府委員 規制対象は、現在水質汚濁防止法上いわゆる特定施設といっているものでございますが、要するに、いま御案内のようにCODその他規制されている工場事業所がございます。これと全く同じ対象窒素、燐についてもなるということでございます。  それから規模でございますが、これは一律基準におきましては、現在は五十トン以上の規模施設ということになっておりますが、これは窒素、燐についても同様であるというふうに思っております。
  18. 栂野泰二

    栂野分科員 そこで、今回初めて燐、窒素規制に乗り出すということで、それはそれで結構だと申し上げたのですが、これだけでは富栄養化が完全にとまるということはないし、この水質保全だけでも不十分だけれども、まして環境全般規制ということには全くならないですね。  そこで、この湖沼法ですが、湖沼法案というのはもうどうにもならない、あきらめるということで、そのかわりにいまの燐、窒素排水規制で間に合わす、こういうことですか。それともあくまで湖沼法案国会に提出する、こういうことでしょうか。
  19. 小野重和

    小野(重)政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、湖沼水質対策としては二つの柱があると考えております。  中海宍道湖どもそうでありますが、一つ富栄養化、つまり、いろいろなプランクトンが出ていろいろな問題が起こる、また水質汚濁の一番大きな原因ということでございまして、この富栄養化、つまり燐、窒素削減対策ということになるわけでございますが、これはやはり環境基準あるいは排水基準窒素、燐についても設定する、それでこれを進めていくというのが一番基本的なことだと思っております。  ただ問題は、御案内のように水質汚濁防止法ではいわゆる工場事業場——といっても下水処理施設ども入りますが、工場事業場についての規制でございます。ところが実際は——実際といいますか、湖沼汚濁原因というのは、工場事業場だけではなくて、たとえば生活排水とかあるいは畜産あるいは水産関係、幅広い汚濁原因がございます。そこで、それを総合的に進めていくことが一方では大事であるということでございまして、湖沼法案というのはそれをねらいにしているということでございます。  したがいまして私どもは、一つの柱である窒素、燐、これは当然これから強力に進めなくてはいけませんが、もう一つの柱である湖沼法案についても、なかなかこれはむずかしい状況にはありますけれども国会提出に向けて政府部内の調整にこれからも努力したい、かように存じております。
  20. 栂野泰二

    栂野分科員 そのなかなかむずかしい状況にあるというのは、どこら辺がむずかしい状況にあるのですか。時間も大分たっていますから、どこで通産と対立しているのですか、ポイントをおっしゃってください。
  21. 小野重和

    小野(重)政府委員 湖沼法案の中にいろいろな内容がございますが、そのうち湖沼の流域におきまして工場事業場を新設ないし増設する場合にどういう規制をするかという一点でございます。これは規制の手段、たとえば許可制をとるのかとらないのかというような点、それからまた具体的な規制内容について調整の努力を一昨年来やってきたわけですが、調整がつかなかった、こういう点でございます。
  22. 栂野泰二

    栂野分科員 もう少し詳しく言ってもらいたいのです。要するに当初、開発規制について環境庁許可制を主張していたわけでしょう。通産は、それはだめだ、届け出制にしろ、こういうことになったはずですね。排水の量が環境庁は一日五十トン、通産はどこまで折れたのですか。五百トンまで折れたのですか。いずれにしても、通産の言うことを聞いたらこの湖沼法案は完全に骨抜きになってしまって意味がなくなる、こういうことではないのですか。そこのところは環境庁としてはこれから先吹き抜けられるのですか、どうなんです。
  23. 小野重和

    小野(重)政府委員 この問題は一昨年来の懸案事項でございまして、その間いろいろな議論がされておるわけでございます。政府部内の調整の問題でございますので余り詳しく申し上げるのもいかがかと思いますが、いまお尋ねの件につきましては、私どもは当初確かに許可制をとるべきではないか。というのは、瀬戸内海環境保全特別措置法というのがございますが、そこで工場を新増設する場合に許可制をとっておるわけでございます。そういうものに準じて考えるべきではないかということであったわけでございますが、その許可制自体余りにも一つ規制の手段として強過ぎるのではないか。いわば許可というのは一般的に、禁止する、そしてそれを解除する、そういうことではないか、それはいかがなものであるかというような議論が一つございます。  それからもう一つ、いま先生の御指摘になりましたように、仮に許可制をとる場合でも、具体的な対象工場排水規模をどうするかというような問題もございます。瀬戸内海の法律では五十トンということになっておるわけでございますが、これではきつ過ぎる。では五百トンないし千トンということで、その間の調整は非常にむずかしい。私どもとしては、実効性が確保されないといけない。もちろん中小企業その他に配慮するということも必要かもしれませんけれども、やはり水質汚濁防止ということですから、実効性が確保されなければいけないということで、規制内容についても——そのほかにもいろいろあるのでございますが、隔たりが大き過ぎたということでいままで調整がつかなかったということでございます。  そこでその点をどうするか。相当議論を重ねた状態でございますのでなかなかむずかしいわけでございます。しかし何とか打開したい。やはり基本的には実効性が確保されなければいけないということと、一方では実行できなければいけないということがありますから、その両者をいかに総合して妥当な線を見つけ出すか、その努力をいましているという現状でございます。
  24. 栂野泰二

    栂野分科員 長官、とにかくこの湖沼法案は、当初の環境全般の保全というところから、結局は水質保全というところに矮小化されて、それしも、許可はだめだ、届け出でないとだめだ、しかも排水量は、環境庁は五十トンと言うのに通産は五百ないし千トンと言う、それ以下の工場事業場は全く規制対象にならない、これでは湖沼法案を出す意味がなくなってしまうのですね。よほど環境庁がしっかりしてもらわぬと、だんだん湖が汚れる一方です。長官、長官の在任中に本来の趣旨を生かした湖沼法案で何としても国会提出を図る、こういう御決意がありますか。
  25. 梶木又三

    梶木国務大臣 私も湖沼汚濁状況を大変深刻な問題だと深く認識をいたしております。そこで、いま局長からも答弁しましたように、関係省庁と折衝をいたしております。先生がいまおっしゃるように骨抜きになりましたら意味もございませんし、それならいつでも私どもは出せるわけでございますが、それじゃ意味がございませんので、あくまでも実効が上がる法案にして何とかこの国会中に提案いたしたい。私もいま事務当局に強く折衝方を始めよと指示をいたしておるところでございますので、そういう決意は持っておるわけでございます。
  26. 栂野泰二

    栂野分科員 まあ何とかこの国会中に出したいということでしたが、ぜひこの国会中に出すように御努力願います。  そこで、国がこういう状態ですから、各地域では待っておれないということで、すでに琵琶湖条例あり霞ケ浦の条例ありですが、私の県でもこの間住民運動が起こりまして、中海宍道湖富栄養化防止に関する県条例制定の直接請求、こういうことで法定数をはるかに超える署名が集まったものですから、いま県議会で審議中なんですね。環境庁も昨年の十一月の半ばごろにその状況調査に行かれたようであります。一部のマスコミでは、たとえば毎日新聞でしたか、要するに通産湖沼法案はだめだ、あきらめろ、そのかわりぜひ各地に県条例をつくってもらいたい、こういう行政指導に切りかえたというふうな報道も出されております。いずれにしても、地域のいろいろ特性もありますね、そういう観点からも環境庁としては、そういう琵琶湖なり霞ケ浦の条例のようなものが各地にできることを期待しておられますか。そういう行政指導をやられますか。どうなんでしょう。
  27. 小野重和

    小野(重)政府委員 いわゆる富栄養化対策としての条例でございますが、琵琶湖霞ケ浦はすでにできておるわけでございますが、これは一つには、国がまだ窒素、燐についての環境基準なり排水基準を決めていないという段階で、待っておれないということで始められたということでございます。それでおくればせながらと自分で言うのもおかしいのでございますが、いまその努力をして、環境基準設定しておりますし、排水基準も努力しておるところでございますから、それができますと、これは富栄養化防止条例という形かどうか知りませんが、いままでの公害防止条例のようなものもございますし、そういうものでさらに必要ならば上乗せをするというようなこともあり得るわけでございまして、したがいまして、これからは富栄養化防止条例のようなものが、琵琶湖霞ケ浦のような条例が各地でつくられるということ、形としてはそういうことではないかもしれませんが、いずれにしましても富栄養化対策は非常に大事でございますから、各地域地域でそういう熱意が盛り上がるということは大変結構なことだと考えております。
  28. 栂野泰二

    栂野分科員 時間が来ましたが、これは長官、報告を聞いておられると思いますが、いまも申し上げましたように、環境庁も昨年の半ばに島根の条例制定運動の調査をされましたが、環境庁としては、島根県がいま県議会で審議していますが、条例制定が行われるように期待しておられますか。どうなんですか。ひとつ感想で結構ですが、お聞かせください。
  29. 梶木又三

    梶木国務大臣 島根県で条例を県議会に上程されたことは私も承知いたしております。現在、県議会に上程されておるところでございますので、この内容につきましてお答えを私がどうのこうの申し上げることは、ちょっとコメントを差し控えさせていただきたいと思うのですが、いずれにいたしましても富栄養化対策は大事でございますので、そういうことに県全体を挙げて熱意を持っておられるということに対しましては私も敬意を表したい、かように考えております。
  30. 栂野泰二

    栂野分科員 終わります。
  31. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて栂野泰二君の質疑は終了いたしました。  次に、竹内勝彦君。
  32. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 最初に、琵琶湖実態に関して具体的にお伺いしていきたいと思います。  まず、いままで滋賀県におきまして富栄養化防止条例等を実施し、あるいは国といたしまして赤潮の調査費といったものを導入して調査をしてきたというものも含めて、いままでどういう作業をしてきたのか。それから、いまの大体の実態だけで結構でございますが、たとえば赤潮がふえているのか減っているのかということも含めて、とりあえず概略から説明してください。
  33. 小野重和

    小野(重)政府委員 琵琶湖につきまして富栄養化対策といたしまして、富栄養化防止条例が制定されましてから時日がたっておるわけでございます。その間、窒素と燐の流域からの流入量というものは明らかに減っているわけでございますが、何せ大きな湖でございますので。湖自身の窒素と燐の濃度につきましては、これは水域によって若干違うかもしれませんが、減る傾向にあるのではないかと考えられます。しかし、まだそこははっきりした数字が出るまでには至っていないということでございまして、今後さらに努力を重ね、また推移を見守る必要があると思います。したがいまして、プランクトンの発生などにつきましては特に顕著な改善はまだない。これからも息長く努力を重ねる必要があるという認識でございます。
  34. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 つまり、周辺の河川の導入、そこから流れてくるものの窒素であるとか燐であるとか、そういったものは効果があらわれてきておる、こう解釈していいのでしょうか。
  35. 小野重和

    小野(重)政府委員 そのとおりでございます。
  36. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それでは、赤潮発生のメカニズムに関してはいろいろな論議があるわけでございますけれども、現在までのところ、ここ二、三年前というものは、淡水湖に大変な赤潮が出るなんということで状況が報道もされましたし、私もこの目で確認してきましたが、その状況はどうなっておりますか。
  37. 小野重和

    小野(重)政府委員 何年かちょっと私もいまあれしましたが、数年前から赤潮が発生するようになりまして、それはその後毎年発生し、たしか去年も発生したと承知しておりますが、ことしどうなるか、大体御案内のように五月ごろ出るのでございますが、出ないことを期待しておりますが、これはそのときになってみないとわかりません。しかし、いま窒素燐対策をやっておりますから、効果は必ず出ると思っておりますが、その出方はなかなか時間を要すると思っております。したがいまして赤潮問題も、なるべく早くこれが出ないようになることを期待しますが、いつになるか、いまの段階ではちょっと見きわめがつかないことだと思っております。
  38. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 いままでの赤潮調査費はどんなふうになっていましたか。今後はどんなふうにしていきますか。
  39. 小野重和

    小野(重)政府委員 お答えします。  淡水赤潮の対策調査費ということで昭和五十四年度から計上いたしておりますが、五十七年の予算額は千四百六十五万五千円となっております。
  40. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それでは今度具体的な問題で、この琵琶湖の総量規制導入に対して調査が五十五年度、五十六年度と行われてまいりました。そしてこの琵琶湖水質汚濁機構の解明が行われ、ことしになって調査結果が出た、このように聞いておりますけれども、まずこの経緯、それから項目、どんなことをしたのか、それから費用といった面も含めて概略御説明ください。
  41. 小野重和

    小野(重)政府委員 琵琶湖についての水質汚濁に係る調査でございますが、琵琶湖水質汚濁のメカニズムを解明するために、昭和五十五年度と五十六年度の二カ年にわたって調査実施したわけであります。  その調査項目でございますが、琵琶湖においての風、湖流——湖の水の流れですが、それから水温、底質——ヘドロのようなものでございますが、それから河川の水質などについて統合的な調査を行ったわけでございます。  これらの調査のうち、風、湖流、水温の調査でございますが、これはいろいろな汚濁物質が拡散するその状況を予測するための基礎データとなるものでございます。また底質の調査は、湖の底の泥から溶出してきます汚濁物質、この量を推定するための基礎データを得るためのものでございます。それから河川の水質——水量も当然調査しておりますが、これは河川から流れ込むあるいは流れ出すその汚濁物質の量を算定するためのものでございます。  以上のような各種のデータをもとにしまして、有機汚濁——CODでございますが、その水質汚濁のシミュレーションを電算機を用いて実施しまして、琵琶湖水質汚濁の機構の解明を行ったというものでございます。
  42. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 費用と、それから特にその中でどういったものに力を入れたか、それをもう一度説明してください。
  43. 小野重和

    小野(重)政府委員 失礼をいたしました。  費用は、五十五年度の予算額が四千五百三十五万三千円、それから昭和五十六年度が四千六百五十万三千円ということでございます。  どれに力を入れたかということでございますが、先ほど申し上げましたような項目、これはいずれも汚濁機構の解明に不可欠のものでございますので、そういうものについて調べたということでございます。
  44. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 この調査の目的でございますが、私の解釈では、どうしても湖沼法との絡みもございますけれども、総量規制の導入、こういうことを前提として、いままで長官からも私に対して答弁がございましたけれども、もうそういったものに踏み切っていかなければならないのじゃないか、こういうような考え方からこの調査に当たった、こう解釈してよろしいでしょうか。
  45. 小野重和

    小野(重)政府委員 私どもCODのいわゆる総量規制、これを導入することを目途に調査を進めたということはそのとおりでございます。
  46. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それでは、まあいろいろ全部説明してもらうとちょっと大変でございますので、その中で、特にCODの総量規制というものを導入しよう、こういう趣旨からのもので、その項目の中の何点かで結構でございますが、どういう調査結果が出て、どのような特徴があらわれておるのか、いままでにわかっていない点でどういった点がわかったのか、それを御説明ください。
  47. 小野重和

    小野(重)政府委員 調査の結果でございますが、電算機によりまして、夏と冬の二つの季節につきましてCODに関する水質汚濁シミュレーションを実施したわけでございますが、これらのシミュレーションにおきまして、河川から流入する有機物それ自体の影響のほかに、湖内で生産される有機物、これはプランクトンでございますが、これについても計算のモデルに組み込んで解析いたしたわけであります。その解析結果によりますと、工場事業場などの陸から河川などを通じて流れ込んでくる、そういうものに起因します有機物、これが大部分を占めているということがわかったわけでございます。それからさらに、その中の相当部分につきましては、やはり栄養塩類、これの流入によって湖内で生産される有機物——ランクトンでございますが、これの寄与によるというものと推定されたわけでございます。  したがいまして、若干結論的になりますが、琵琶湖水質汚濁対策としては、当面こういう栄養塩類の削減が重要であるというふうに考えられるわけでございます。
  48. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 細かいデータは私も資料としてこの間いただいておりますけれども、またよく詰めていきたいと思っております。  そういう中で、どうでしょうか、そういうことから考えて、先ほども論議がございましたが、これは総量規制の導入、あるいは各府県におきましては富栄養化防止条例等、まあ滋賀県が先駆けて行っていきました。これが今後各府県にいろいろと波及していく、そういう効果というものが今後出てくると私どもは考えております。それはもう霞ケ浦でも出てきておるのはそのとおりでございます。  そこで私は考えるのですが、ここで各湖沼、いろいろ考えてみましても、府県に任しておっては、やはりそこに導入してくる河川、いろんな環境、そういったものを考えてみても、全部府県にまたがっております。そうすると、国としてやはりここで、先ほども論議があったこの湖沼法というものを早期に制定していく必要がある、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  49. 小野重和

    小野(重)政府委員 琵琶湖につきまして、御案内のような富栄養化防止条例ができておるわけでございますが、また霞ケ浦についてもできておるということでございます。これは当然のことながら富栄養化防止対策でございまして、これをおっしゃいますように、県に任せるのではなくて国自身でも富栄養化対策を進めるべきではないかという点がまず第一点ございます。  これにつきましては、昨年末に窒素、燐の環境基準をすでに設定、告示したわけでありますが、引き続きまして、排水基準設定につきまして中央公害対策審議会にこの一月に諮問いたしております。私どもとしては、なるべく早く答申をいただきまして、答申を得次第、排水基準設定をいたしたい、かように考えておるわけでございます。  それからもう一つ、国のなすべきことということでございますが、いろいろな湖沼汚濁源、これはいわゆる水質汚濁法上の特定施設といいますか、工場事業場、これ以外にも生活排水あるいは農、畜、水産関係、いろいろとまたがっておりまして、やはりこれを総合的、計画的に進める必要がある。そのためには水質汚濁防止法だけでは不十分であるというふうに考えられますので、湖沼汚濁対策を総合的、計画的に進める一つ体制づくりといたしまして、湖沼法案を私ども検討してきておるわけでございます。  その意味で、湖沼法案とそれから窒素、燐の削減対策、これは湖沼対策二つの柱であるというふうに考えておりまして、ただいま御指摘の湖沼法案につきましても、一昨年来の懸案事項でありまして、なかなかむずかしい情勢にありますけれども、私どもとしては、政府部内の調整を何としてでも急ぎたい、調整をしたいということで努力しているところでございます。
  50. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 最近、総理大臣から事務次官に対して、緑化運動やあるいは湖沼法の問題等に関して指示があったやに伺っておりますけれども、その中身を教えていただきたい。
  51. 小野重和

    小野(重)政府委員 湖沼対策強化せよということでございますが、湖沼対策としましては、ただいま御説明いたしましたように、窒素燐対策、つまり富栄養化防止対策湖沼法というのが二つの柱でございます。そういうことを事前に御説明しておりまして、それを受けまして総理から御指示があったわけでございまして、いまの二本柱の湖沼対策推進せよという御指示であるというふうに私ども受け取っております。
  52. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 この問題は、各委員会あるいは本会議等におきましても、もうずっと長い経過がございまして、この湖沼法、何とか早く成立させていきたい、こういう考え方からいろいろと論議が行われました。  そこで長官、いまの総理からも指示があって、いままで歴代の長官も、何とかこれは自分の在任中あるいはその国会開会中に何としてもこの湖沼法を提出し、成立させていきたいというような答弁が私に対してもございました。しかし、過去二回流産しておりますね。そこで今度は長官も、努力したいとか、そんな段階じゃないんですよ。長官としてのどういう真剣な決意があるのか、ここではっきりと答弁してください。
  53. 梶木又三

    梶木国務大臣 局長からもるる琵琶湖の問題についていま御説明申し上げましたとおり、琵琶湖のみならず、最近湖沼汚濁、これは大変重要な問題で、一刻もゆるがせにできない、こういう気持ちは強く持っておるわけでございます。  そこで、御指摘の湖沼法案でございますが、一昨年来いろいろ政府部内で意見調整をやっていたわけでございますが、残念ながら今日に至っておるということでございます。しかし、私といたしましては、この湖沼汚濁、これはゆるがせにできないという気持ちから、今国会におきましてどうしても早く政府部内の話し合いをつけろ、いま、このように事務当局に強く命じまして、私自身も、何とかこの国会中に成案を得て提案いたしたい、かように考えている次第でございます。
  54. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 環境庁として、いま長官から今国会中に提出したいという強力な、真剣な決意があったわけでございます。いままでの経緯もございますけれども、ひとつどういう手順で今後この湖沼法を提出していくか、その手順を明らかにしてください。
  55. 小野重和

    小野(重)政府委員 湖沼法につきまして何が問題でいままで提出できないといいますか、政府部内の調整がつかなかったのはどの点かということになるわけでございます。これは、湖沼法の中のいろいろな項目がございますが、その中で、湖沼の流域におきまして工場事業場を新増設する場合にどういう規制をするかということの一点でございます。それで、どのような規制をするかということでございますが、一つ規制の手段、制度的な手段、具体的に言えば許可制ということをとるかとらないのかという問題がございます。それからもう一つは、具体的にどのような基準規制するかという中身の問題、この二つがございます。  私ども、特に規制内容につきましていろいろと調整してきたわけでございますが、なかなか構が埋まらないということがございます。これにつきまして、私どもとしましては、一つ実効性が上がらなければいけないわけで、骨抜きでは意味がない。さればといって実行不可能というようなことでもいけない。その二点を十分総合的に検討しまして、何とか調整をしたいということで、これはいろいろと検討もし、また折衝もしている、こういうことでございまして、何とかそこを調整したいと思っておるわけでございます。
  56. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 そういうことはもう何回も聞いているのです。そうではなくて、手順。長官は、最初在任中と言ったのだけれども、今国会中にやると言っているのだから、その手順として、調整をこの辺でめどがつくようにやるとか、どういうふうにやるとかということをもう一度、もうちょっと具体的に御説明ください。
  57. 梶木又三

    梶木国務大臣 ちょっとその前に、これは政府部内の調整でございますので、いま私、やりたいという強い意思を持っておるわけでございまして、やるとは申しておりませんで、何としてもやりたい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  58. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 では、その手順をもう一度はっきりさせてください。
  59. 小野重和

    小野(重)政府委員 手順というお尋ねでございますが、いつまでに調整できるか、スケジュールというようなことでございますと、これは中身の調整がつかなければ何ともならないわけでございまして、私どもとしては、国会への提出ということになりますと期限もあるわけでございますから、できるだけ早く調整をしたい、そのために中身を詰めたいということで、いま鋭意努力しているところでございます。
  60. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 いまの答弁では前回と一緒なんですよ。やりたい、決意なんと言っていたのでは、これはいつまでたってもまた流産です。それはもう何回も行われてきているのです。では、その面で本当にいま問題になっておるのは、もうあと通産省だけなんでしょう。もっとほかにあるのですか。通産省とどう詰めるか、ちょっと具体的に、どの辺までの時期にどういうように詰めて、長官は、今国会中にそういうはっきりしたものにしたいという決意を持っているのですから、それでは環境庁としてそれだけの対応がないと進んでいきません。ずっともう何年間かやってきていることですから、その問題はこういうところで解決の見通しがあるというようなものをもう一度明らかにしてください。
  61. 小野重和

    小野(重)政府委員 この問題は、一昨年来調整の努力を続けてきているわけでございますが、先ほど調整の中身について若干申し上げましたが、いろいろな変遷がございます。政府部内の問題でございますので、くどくど申し上げません。  そこで、そういう従来の経緯を踏まえてやらなければいけませんが、従来も最大の努力をしてきたわけでございます。また、その上に立ってやっているわけでございます。お言葉ではございますが、具体的なスケジュールをいつまでというふうに、はっきり申し上げられないところが大変申しわけないのでございますが、しかし、何分にも国会の法案提出については一定の期限もあることでございますし、国会の会期ということもございますから、私どもも、できるだけ早く何とか内容の詰めをしなければいかぬということを申し上げるだけで御容赦いただきたいと思います。
  62. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 だから、今国会中に内容の詰めをして、提出への手順に持っていけるのですね。それを言ってください。
  63. 小野重和

    小野(重)政府委員 そのための最大限の努力をしたい、かように存じております。
  64. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 それでは、この湖沼法の中身、もういままでいろいろと論議が行われておりますけれども、私は、一応仮称で湖沼法と簡単に言っておりますが、湖沼というのは何もその湖沼の中の水だけが対象できれいになるわけじゃないのです。その周辺にいろいろな環境がございます。公園もあれば緑もある。それから、そこに流れてくる河川、いろいろなものを全部総合したものです。これはいわゆる湖沼水質保全ではなくして、湖沼環境保全なのです。そういう意味で、いま環境庁が考えておる一般的に湖沼法、こう言っておりますけれども、一体どっちを中心にしておりますか。名称はどう考えておりますか。答弁してください。
  65. 小野重和

    小野(重)政府委員 いわゆる湖沼法案でございますが、これは御案内のように、中央公害対策審議会答申を受けて検討いたしたものでございますが、その中央公害対策審議会答申におきましては、湖沼の水質の改善、これは当然でございますが、もう一つ、湖の水辺、湖辺といいますか、その自然環境の保全ということについても、答申では、検討すべし、こういうことになっております。これはいろいろ従来のそういう自然環境保全のための制度がございます。自然環境保全法、自然公園法あるいは都市計画関係の緑地保全の法制度がございますが、そういうものとの調整問題がございますので、そういう問題があるということで、やるべしということではなくて、検討すべし、こういうふうになっていたというのが実態でございます。  しかし、私どもはそれを受けまして、湖辺の自然環境保全ということも当初は案に入れまして、湖沼環境保全特別措置法案、仮称でございますが、これをベースに各関係省庁との折衝をしたわけでございます。ところが、先ほど申し上げましたような、特に都市関係の緑地保全の制度、そういうものなどの既存の制度で対応できるではないか、その調整をどうするかということで、関係省庁との間で非常に議論がありましたが、それに固執していますと、なかなかこの法案ができない。やはり一方では、問題は、水質汚濁ということが最大の問題でございますから、これを進めるということに法案の中身としてもしぼろう。ただ、湖辺の問題も大事でございますから、それは従来のいろいろな制度を活用するという、これは精神規定でございますが、それを中に入れるということで、名称も、仮称でございますが湖沼水質保全特別措置法案、そういうことに現段階ではなっているということでございます。
  66. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 時間でございますので、最後に長官、いまの強固な御決意よくわかりました。各長官もいままでもそういうことは言ってきておるんですよ。そこで、今度の長官として、本当に、いま局長からもるる経緯がございました、各省庁との詰めをやっていくというのは当然のことでございます。その中で、出すのは、これは環境庁なんですからね。環境庁が中心になって、長官として具体的に今後どういうふうに動いて、そして折衝をして、あるいは通産大臣とのいろいろな折衝もございますでしょう。では、具体的にどこまでどういうような動きをして今国会中の決意を実現させていくのか、もう一度その考え方を述べていただきたいと思います。
  67. 梶木又三

    梶木国務大臣 先ほど来お話を申し上げておるとおり、なかなかむずかしい経緯がございましたけれども、これを何とかこの国会中には乗り切りたいということで、いま事務的に事務当局間で、局長から御答弁申し上げたとおり、精力的にやっておるわけでございますが、ある段階に参りましたら、また直接通産大臣等とも話し合って進めてまいりたい、かように考えております。
  68. 竹内勝彦

    竹内(勝)分科員 終わります。
  69. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて竹内勝彦君の質疑は終了いたしました。  次に、岩佐恵美君。
  70. 岩佐恵美

    岩佐分科員 私は、自然の保護、特に緑の保全の問題で質問をしたいと思います。  前環境庁長官も出席をされた、昨年五月、ケニアのナイロビで開かれた国連環境計画の特別会議は、毎年六百へクタールの森林が地表から失われているという驚くべき自然破壊が世界で進行し、人類の生存も脅かされつつあることを警告をしています。日本でも国土の至るところで自然破壊が進んでいます。横浜国立大学の環境科学研究センターの調査によれば、大規模な緑の破壊だけでも全国七十五個所に上り、小規模環境破壊や汚染を入れれば、日本列島は傷だらけという状態であります。  こうした日本列島の荒廃が進む中で、乱開発から自然を守り、緑地や森林、野生生物を保護する運動が各地で起こっています。世界でも、御承知のように国連でも世界自然憲章、こういう緑と環境を守る、そういう決議が昨年され、日本でも決議に賛成するという態度をとっているわけです。私が住んでいる日野市でも、住民が、わずかに残る身近な自然を守るために〇・一平方メートル運動を呼びかけていますが、こういうふうに世界でも日本でも、また小さな町や村でも、環境を守る運動が大きく広がっているわけですが、まず、こうした中で大臣がこの問題についてどういうふうに取り組んでいかれるのか、決意のほどをお伺いをしたいと思います。
  71. 梶木又三

    梶木国務大臣 いまお話しのとおり、緑というものの重要性、これは私も十分承知をいたしておるところでございます。ただ、利用面だけではなくて、水質の涵養だとか、あるいは環境の保全、こういう立場に立ちましても非常に大事でございますから、いま政府といたしましても、緑の重要性にかんがみまして、先般総理府を中心にしまして協議会をつくりましたので、環境庁といたしましても、これに全面的に協力をしてやってまいりたい、かように考えております。
  72. 岩佐恵美

    岩佐分科員 全国的な緑地保全というのは言うまでもないことですけれども、人間が日々生活しているところの緑、言うならば東京や大阪あるいは名古屋など、都市の近郊の緑の保全にこそ、いま緊急に手が打たれなければならない、そういうふうに思うわけです。そうした観点から伺いたいと思うのですが、都市近郊の緑地は開発によってどんどん減ってきております。たとえば多摩丘陵で見ますと、樹林地が昭和二十四年に約二千ヘクタールあったわけですが、昭和五十三年には約七百九十ヘクタール、三分の一になってしまっているわけです。  建設省と国土庁に伺いたいのですが、都市近郊の自然を守るということで、近郊緑地特別保全地区、それから近郊緑地保全区域指定、こうしたことをして自然の保護を図ってきているわけですが、五十年以降からで結構ですが、地区数あるいは区域数、この面積の推移を言っていただきたいと思います。
  73. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明申し上げます。  昭和五十年以降、近郊緑地特別保全地区の地区数は十三地区、面積にいたしまして千二百四十六ヘクタール、正確に申しますと千二百四十六・九ヘクタールでございまして、現在までこの数字はそれ以降変わっておりません。
  74. 白兼保彦

    ○白兼説明員 近郊緑地保全区域の指定状況でございますが、まず、首都圏の近郊緑地保全区域につきましては、十八カ所の指定でございまして、面積は昭和五十二年九月に区域の拡大を行っております。一万三千五百八十五ヘクタールから二千百八ヘクタールを増加させて、現在一万五千六百九十三ヘクタール、こういう状況でございます。  近畿圏の近郊緑地保全区域につきましては、六カ所の区域指定でございまして、面積は昭和四十七年以降八万千二百二十七へクタール、こういう状況でございます。
  75. 岩佐恵美

    岩佐分科員 いまのお話から、地区数、区域数、全然変化がないとか、あるいはふえても多少の増ということだと思いますけれども、特に近郊緑地特別保全地区、これは全然変化がないわけですけれども、その理由はどういうことなのか御説明をいただきたいと思います。
  76. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明を申し上げます。  近郊緑地特別保全地区というのは、御存じのように非常にきつい現状変更等に関します制約がございますために、土地所有者と関係権利者の理解を得るということが大変むずかしい状況にあることが一つでございます。それから市街化区域、市街化調整区域というような区域区分によります調整区域の指定というものがかなり浸透いたしまして、その結果いろいろの行為規制の実質上の保全が果たされる場合が多いというようなことがございます。それから公共団体の方の都合といたしましては、これは地主さんの方から買い取りの申し出がありました場合には買い取らなければいけないということになっておるわけでございまして、そのための資金の用意ということを総合的に検討して保全地区を指定しなければいかぬということになりますので、現在までのところ余り伸びていないということでございます。  ただ、近畿圏でいいますと昭和四十八年、首都圏でいいますと五十二年に改定をいたしまして、緊急に指定をしなければいけないところは、かなりの部分について指定が行われたということがございます。それ以降のものにつきましては、どちらかと申しますと緑地保全地区という別の制度がございまして、そっちの方で個別の対応といいますか、ネットワークじゃなくて、やや小さい点の対応として伸ばしてきておるという実績はございまして、ちなみに、五十年にその緑地保全地区は百五ヘクタールでございましたものが、五十五年に四百五十二ヘクタールというふうに伸ばしてきておる状況でございます。
  77. 岩佐恵美

    岩佐分科員 いまの都市緑地保全法のことですけれども、この法律によって、都市計画区域内の良好な自然保全のために買い上げ制度があります。過去五年間の買い上げが一体どういうことになっているのかということで実績を見てみますと、事業費ベースで五十三年が二十九億一千八百万円、五十四年が三十八億二千四百万円、五十五年が三十八億八百万円、五十六年が三十八億九百万円、五十七年が三十六億八千五百万円と、五十四年にちょっとふえているわけですが、その後は横ばいか、減ってきているわけです。この間の状況を見てみますと、都市近郊における自然の保護のために各種の法律に基づく規制、補助、これがあるわけですけれども、それがあってもなおかつ緑がどんどんと失われていくという状況があって、規制や補助が十分効力を発揮していないのではないか、そういう面が指摘をされているわけです。  去年十一月に出されました大都市圏における人口急増府県知事会議の報告の中で「都市的地域における緑化対策について」という報告を出しているわけですが、その中で、自然環境保全法、都市緑地保全法など現行法上に問題があるんだ。その問題点として、身近な自然の保護が対象になっていない、あるいは地域指定されることによる費用負担の問題がある、そういうことが指摘をされているわけです。都市近郊の緑を守るためには、やはりこうした意見をも踏まえながら、今後新しい方法というのが積極的に検討されていかなければならないのじゃないかというふうに考えるわけです。  大臣に、ここで今度は少し都市近郊のこういう問題に限るわけですけれども、積極的に都市近郊の緑を守るという点でどういう対策があるのかということについてお伺いをしたいと思います。
  78. 山崎圭

    ○山崎政府委員 先生だんだんと御指摘のとおり、とりわけて都市近郊の身近な緑というものが失われてきている事実は認めざるを得ないと思います。関係各省庁、ただいま御説明ありましたように、いろいろと御努力はいただいているわけでございます。しかし、いろいろな努力の中でもやはり人口増、それに伴う宅地の需要、こういうものが一番緑の喪失に、何といいますか、寄与しているというのは変ですが、そういう形になっているんだろうと思うわけであります。それだけに、また逆に緑を求める声も強まっている、こういう関連だろうと思います。  そういうことで何かいい知恵を出せということでございますが、いまの手法は、自然環境保全法もそうでありますし、自然公園法もしかり、あるいはまた、いまお話しの都市緑地保全法等の法律においても、ある一定の地域を指定いたしまして、その中での一番極端な例は行為規制をする、こういうパターンでございます。それ以外に何か有効なところがあるかということでありますが、いろいろ地方公共団体でも、たとえば環境緑地条例というようなものがあるところもあります。これもやはり同じような手法、パターンを採用しているというふうに承知しておるわけでありまして、いい知恵を出せといっても、なかなかいますぐ思い浮かぶところもないのでありますけれども、いずれにしましても、私ども関係省庁あるいは地方公共団体と連絡を密にいたしまして、こういう新しい知恵でもあれば、これを参考に積極的に考えていきたい、こういうふうに思っております。
  79. 岩佐恵美

    岩佐分科員 それじゃ具体的な問題についてちょっとお伺いをしていきたいと思います。  八王子市上川町と五日市町にまたがる坂沢川上流地域に民間の産業廃棄物の投棄場をつくる、そういう計画が突然出されてきたわけです。国土利用計画法に基づく土地売買等の届け出によりますと、全体で九万六千四百二十二平米、これは八王子が九、五日市側が一という割合になっているわけでございますが、大変広い地域でございます。ここには金剛滝という名所があって、野鳥の豊庫とも言われています。更には小中学生の自然観察やキャンプでにぎわう場所でもあるわけです。ここは都立の秋川丘陵自然公園ということになっております。こうしたところに産業廃棄物の処分場をつくる。しかも、その計画たるや非常に大きなものであるわけです。  まず、細かい点で林野庁にお伺いをしますけれども、この地域は、森林法に基づく保安林の指定になっていると思いますけれども、この点いかがでしょうか。
  80. 鈴木郁雄

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  五日市町戸倉字坂沢の二千三百四十番地でございますが、これは昭和二年に土砂流出防備保安林に指定をされております。二千三百三十九番地につきましては、保安林の指定はございません。
  81. 岩佐恵美

    岩佐分科員 八王子側はどういうふうになっているのか、ちょっと説明をしてください。
  82. 鈴木郁雄

    ○鈴木説明員 八王子市上川町十三番地ほかの一団地でございますが、この地域につきましては、保安林整備臨時措置法に基づきまして保安林整備計画を策定いたしまして、現在指定のための調査を進めております。
  83. 岩佐恵美

    岩佐分科員 国土庁に伺いたいと思いますけれども、国土利用計画法第二十四条で、一定面積以上の土地売買については、価格が著しく適正を欠くとか、土地の利用目的が周辺の自然環境の保全上明らかに不適当な場合には、知事が中止を勧告できるとあるわけですが、東京都は、国土庁と相談した上で、勧告事項には該当しなかったという結論を本件について出しているわけです。周辺の自然環境の保全上明らかに不適当なものだというふうに思うわけですけれども、この点、国土庁のお考えを伺いたいと思います。
  84. 河村勝三

    ○河村説明員 お話しございましたような地区について、東京都知事に対して届け出が出ておるということは私ども承知しております。先生お話しのように、国土利用計画法に基づきまして、土地の取引についてあらかじめの届け出が出てまいりました場合には、価格のほかに、その取得後の土地の利用の目的によって、周辺の地域が自然環境の保全上明らかに不適当であるというような場合については、取引の中止を勧告できるという制度になっていることはお話しのとおりでございます。  ただ、この制度の運用に当たりまして、私ども、この制度の特殊性から、基本的な考え方を三点ほど各都道府県、政令市に指示いたしまして、それによった運用を行っておりますが、その第一点は、届け出に係る土地利用目的の審査は、それが取引段階におけるものであることでありますから、届け出事項の範囲内において行われなければなりませんし、そういう意味では、まだ取引をこれからしようとする段階でございますから、施設の配置またはその設計等、技術的な内容についてはこの段階では審査対象とはなり得ないという点でございます。  それから第二点では、自然環境の保全上明らかに不適当であるか否かについては、ただいま申し上げましたように、土地の取得前であるという性格から、その点の時点的な内容は特に配慮して審査せよ。  それから第三点目につきましては、開発等の規制に係る諸法律の運用との間にできる限りその調整を図っておくことが適当である。  いずれにいたしましても、具体的な開発等につきましては、取得後の具体的な計画に基づいて審査されることでありますから、取引段階におきましては審査はおのずと限度がございますが、その限度内においてその後の措置との間の調整も図っていくようにということを指示しておるわけであります。  東京都の方では、本件の処理につきまして私どもの方に一度相談があったことも事実でございますが、私どもといたしましては、ただいま申し上げました通達の線に沿って適正に対処するようにということで指示をいたしたところであります。東京都につきましては、ただいまの趣旨に沿って法の定める勧告要件をもとに審査いたしました結果、取引中止等の勧告をしないということにしたというふうに私ども承知しておりますが、ただ今後、処理場としての計画が具体化していく段階におきましては、関連する法令による審査が当然行われることになりますが、その際に関係市町とも十分協議の上、適切に対処したいというふうに私ども承知しております。  いずれにしても、国土利用計画法での審査は、ただいま申し上げましたような観点から行うものでございまして、東京都において今回なされた措置については、私どもの立場からいたしますれば、適正に措置されたものだというふうに考えております。
  85. 岩佐恵美

    岩佐分科員 この地域は、周辺の自然環境保護上明らかに不適当な地域であるというふうに私は思います。  八王子の市長が都知事あてに、この売買の届け出に対する意見書というのを出しておりますが、その中でも「当該地は、本市の最西北部の都立秋川丘陵自然公園内で、秋川の上流部に位置し、下流には、流域市町の上水道の取水場等が設置されている」そういう点で「特に自然環境に恵まれた地区である。」ということを言っているわけです。それから五日市の町長は「秋川・坂沢の水質汚濁により魚類に多大の影響を及ぼすと考えられる。」「産業廃棄物最終処理場建設の目的においては全面的に反対である。」こういう同じような意見書を出しているわけです。  地質的にもこの地域は五日市断層という大きな断層が走っています。私も現地に行ったわけですけれども、そこの岩石は手でさわりますと、ばらばらと崩れるような風化したそういう岩石であるわけです。そのために砂防地域にも指定をされ、砂防ダムもつくられているわけです。それから金剛滝という滝がありますが、この水は途中伏流水となって刈寄川に合流をして、そして秋川の本流に注ぎ込むというかっこうになっているわけです。この地域には百三十万の都民の方々がハイキングやら、あるいはキャンプだとかいうことで訪れる。そういう秋川の自然公園地域の一角をなしていて、ハイキングコースなども現在あって、そういう大変いい自然が残っているすばらしい地域であるわけです。  ちょっと写真をお示しをしたいと思います。ちょっと大臣に見ていただきたいと思うのですけれども——そういう地域で、秋川の漁協の皆さんも、これは死活問題だということで大反対をしているわけです。二月には五日市町では町当局初め五日市の町議会、秋川漁協など九団体で反対期成同盟をつくって反対運動に立ち上がっております。  これは林野庁にまずお伺いしたいのですが、こうした地元の反対運動があっても、会社が強引に建設をする場合には、当然保安林の指定解除、現在保安林となっているところは指定解除の申請が必要というふうに思うわけですけれども、保安林としてもっと拡大をしていかなければならない、そういう地域であるにもかかわらず、これを解除するというようなことはゆめゆめないと思うのですけれども、この点お伺いをしておきたいと思います。
  86. 鈴木郁雄

    ○鈴木説明員 保安林解除の申請がございましたら、基準に照らしまして慎重に検討いたしたいというように思っております。
  87. 岩佐恵美

    岩佐分科員 慎重に検討して、ぜひそういうことがないようにしなければ、これは林野庁としてもかなえの軽重を問われるような、そういうところだというふうに思うわけです。  環境庁長官にこれだけ御説明させていただいたわけですけれども、条例に基づく自然公園ということになっているわけですけれども、こうした自然公園の中で川の水の汚染を引き起こすし、それから景観は損なうし、あるいは都民の憩いの場である、そういうすばらしい環境を奪うという形で産業廃棄物の最終処分場がつくられる、こういうことは自然環境を守る点から許されないというふうに思うわけですけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  88. 梶木又三

    梶木国務大臣 都立秋川丘陵、これは自然公園にはなっておるわけでございますが、普通地域でございますので、施設にもよりますけれども、一般的には都の自然公園条例によりまして届け出を要する、こういうふうにやっておるわけでございます。  私ども環境庁としましては、都立の自然公園内の問題でございますから、自然保護との調整問題、これは基本的には東京都の知事さんが御判断される事柄だと思っているわけでございます。東京都でそういう事情を踏まえていい判断をされるのではないか、かように思っているわけでございます。
  89. 岩佐恵美

    岩佐分科員 直接的には確かに環境庁に権限があるとか、あるいはこれは環境庁の所轄事項であるということにはならないというふうに思います。しかし、自然の保護、環境を守るという、そういう立場から言えば、先ほど大臣の御決意にもありましたように、これは見逃すことのできない非常に重要な問題だというふうに思うのです。特に、都市近郊の自然が失われるということ、これは東京都民にとって重大であるわけですけれども、それは、都民にとって重大だということは、やはり日本全体のことにも影響してくるという、そういう重みを持っておるというふうに思うわけです。結局縦割り的にいろいろあっちこっちの省庁が主張していたのでは、こういうところが守られていかないということになってしまうわけですね。  しかし、過去に環境庁は尾瀬の道路問題については、群馬県と福島県を結ぶ道路の建設が尾瀬の自然を破壊するということで問題になった際に、自然公園法上手続はすべて終了していた、そういう建設計画であったわけですけれども、群馬、福島、新潟の知事とお会いになって、その計画の変更を取りつけるというようなこともやっておられるわけです。ですから、そういう意味では、この問題についても、これは東京都の問題だということで傍観されるということではなくて、非常に重大な問題でありますので、環境庁としてもこれは独自に調査をしていただいて、絶対に中止をさせるというようなことでぜひ尽力していただきたいということをお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  90. 梶木又三

    梶木国務大臣 自然環境を守っていく、これは大変大事な問題だと思っております。しかし、いろいろ御事情も都内であるんじゃないかと思いますから、先ほど申しましたように、やはり東京都の知事さんの御判断によるのではないか、かように思います。どういう御判断をされるかという、関心はひとつ持ちたいと思いますが、いま私どもがどうのこうの申し上げる段階ではない、かように考えております。
  91. 岩佐恵美

    岩佐分科員 いま大臣にちょっと写真をお見せしましたし、その地域もお見せしましたし、それから全体の位置づけもお話ししました。八王子市がどう考えているか、五日市町がどう考えているか。この点について、産業廃棄物を捨てても重大ではないというふうにお考えでしょうか。大臣のお考えをちょっと伺いたいと思います。
  92. 梶木又三

    梶木国務大臣 写真だけでは、局所の写真ですから全体的な関連といいますか、判断がつきませんし、私は現地を見ておりませんので、いまここで悪いとか、いいとか言うことはひとつ御勘弁願いたいと思います。
  93. 岩佐恵美

    岩佐分科員 それでは長官、これだけ大きな問題になっているところですので、環境庁として一度現地に行っていただいて、実地に見ていただく、調査をしていただく、このことをぜひお願いしたいわけですけれども、そのぐらいはやっていただく必要があるんじゃないか。環境庁はそのために存在するんだというふうにも思いますが、その点いかがでしょうか。
  94. 梶木又三

    梶木国務大臣 参ります前に、一遍よく東京都と相談いたしまして、その結果また判断させていただきたい、かように考えます。
  95. 岩佐恵美

    岩佐分科員 東京都と相談されるのは結構ですけれども、写真だけではわからないと言われるのでしたらなおさらのこと、ぜひ一度現地を見に行って、そして、一体現地がどうなっているのかということに重大な関心を寄せていただきたい。このことについて東京都と相談されることはやられるわけですね。そして、その後どうされるかはまた私どもの方でお伺いするということになると思いますけれども、その点確認をさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。
  96. 梶木又三

    梶木国務大臣 一遍東京都から報告を受けたいと思います。
  97. 岩佐恵美

    岩佐分科員 終わります。
  98. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて岩佐恵美君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  99. 沢田広

    沢田分科員 長官、御苦労さまです。環境庁というのは、私も、六年ぐらい前になりますが、あるいは県のときに見ましても、どうも靴の上からかいているような省みたいなものでして、直接何かぴしゃっとやっていけるところでもない。言うならば、国の施策と住民なり地域の衝突の緩衝地帯として存在している。両方に頭を下げ下げ適当におっつける。言葉は悪いですけれども、どうもそんなようなふうに感じるわけなんですが、環境庁は庁として存在しているわけですが、ただ、都道府県知事と市町村の長と、それから環境庁長官との権限、それから調整、これはそれぞれの法律に基づいて処理していることだと思うのでありますが、やはり国民が環境庁に期待するものも多いわけでありますから、特に指導監督の権限というものを、こういう情勢下においては強く発揮する必要があるのではないのかというような気がいたしますが、いまのままの状態で環境庁が果たしていいのかどうか。その点、率直な反省を含めての御見解を承りたい、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  100. 梶木又三

    梶木国務大臣 私どもは、公害基本法とか自然環境保全法だとか、いろいろそういうような法律を持っておりますから、それに基づいてやっておるわけでございます。しかし、いろいろ事業をやられるのは各省庁なり、ほかの関係機関が実施されるということでございます。しかし、靴の外からかいて何も感じないというものでもないと思いますね。直接かくほど敏感に響かないかもわかりませんが、靴の上からかいて何も感じなかったら、これはもう存在価値がないわけでございますけれども、そんなものでもないと思いますし、それから、いま御審議いただいておる環境アセス、これ等も早く御審議いただいて成立しまして、そして事業をやる上について未然の防止をやっていきたい、こういうことも考えておるわけでございますから。いま御指摘のように、われわれ調整機関でございますから、歯がゆいという点もあるいはお感じになるのかもわかりませんが、しかし、それ相応の効果も上げておる、かように私は考えておるような次第でございます。
  101. 沢田広

    沢田分科員 じゃ、一つ例をとりながら話を進めていきたいと思うのですが、たとえば農用地の土壌の汚染防止等に関する法律の施行については環境庁所管ですね。
  102. 小野重和

    小野(重)政府委員 環境庁所管でございます。
  103. 沢田広

    沢田分科員 これをどういうふうに具体的に調査をする機関なり、そういうものを持っていますか。
  104. 小野重和

    小野(重)政府委員 環境庁所管でございますが、具体的な農用地の土壌汚染問題は、地域の問題でもあるわけでございまして、たとえば調査あるいは調査に基づく計画等につきましては、都道府県がこれを第一次的には行うということになっておりますし、また、そのための対策事業というものもございますが、これは土地改良事業ということでございますので、それぞれの実施主体が行うということになっております。それからまた、そのような調査あるいは計画策定、あるいは事業につきまして、まあ調査、計画の方は環境庁都道府県を監督するということになりますし、土地改良事業になりますと、これは農林水産省がいろいろ助成するというような関係になっておるわけでございます。
  105. 沢田広

    沢田分科員 それはいわゆる後始末の問題ですね。いま環境庁が持っているのは土壌汚染防止に関する法律の所管なんですね。汚染後の処理をどこがやるかということを聞いているのじゃなくて、汚染防止に対してどういう機関があり、どういう調査をするというものがなければ汚染防止にはならないでしょう。あるいは水源の調査がなければ。どうなんですか、もし所管をしているというならば。そういう土壌が汚染をするというのには、そこへ排水が流れ込まなければ汚染しないのですよね。そうでしょう。そうすると、そのもとの水を調べなければ結果的には汚染原因がわからない。人が死んでから、どうして死んだのだろうか、死んだらあれはどっちが葬式をやったらいいんだろうかということを聞いているのじゃなくて、生きている間の問題。土壌汚染を防止するために、じゃ、環境庁としてはどういう措置を講じているのか、所管という以上はその任務があるのでしょうから。じゃ、どういう扱いをしているのですか、こう聞いているのです。
  106. 小野重和

    小野(重)政府委員 土壌汚染を未然に防止するということは大変大事なことであります。それで、土壌汚染といいましてもいろいろありますが、カドミが一番典型的なものでございますが、土壌が汚染するということは、鉱山などからの排水、煙、そういうものが土壌にいろいろな経路で蓄積して問題になるということでございます。  そこで、未然防止ということになりますと、排水対策をどうするかということになるわけでございますが、これは法律は違いますが、水質汚濁防止法によりまして、カドミについての排水規制をしているということで、それによって未然防止をするという点もございますし、また、一たん汚れてしまったところについて再発を防止するということも大事でございます。それについては土壌汚染防止法にも一定の規定があるということで、そういうようなことで未然防止もしたい、こういうことでございます。
  107. 沢田広

    沢田分科員 ちっとも未然防止になってない。だから、環境庁としては何をしているかということをいま私は聞いているわけですよ。これは四、五年ぐらい前になるでしょうけれども原因がなかなかつかめなかったのですが、結果的には相当なカド米が出ました。かき回してやってみましたが、結果的には検査で落ちた。井戸を掘って井戸へ切りかえをした。カドミが流れてくる原因がわからないのですから、どこから流れてくるか。そういうようなことで、結果は三年ぐらいたたなければ出てこない、自然に堆積していくのですから。ろ過装置をつくって、水を入れてろ過させて、その上水だけで米をつくるという方法をとらせるようにしてみても、それは三年ぐらいたたないと本当のカド米がいわゆる制限オーバーして出てこない。だから、ちっとも防止の役割りをしていないのですよ。  要するにその事後措置だけで地元ではきゅうきゅうとしているわけだ。なぜもっと早くそういう措置が構じられなかったのかという責任を、それぞれの関係者が問われている。市町村長なり建築指導なり、あるいは下水の問題なり、あるいはいま言った排水の問題なり水路の問題なりということで、それで結果的には農民は、カド米になればあれはのりにしかならないんだね。われわれが選挙に使ういわゆるばたのりみたいなもので、ばたばた張って歩くような、あののりにしかならないで、結局値段が六千円ぐらいにしかならない。そういうことは知っていますか。
  108. 小野重和

    小野(重)政府委員 カドミ米で特に一ppm以上のもの、あるいはこれは名前は準汚染米と普通言いますが、〇・四ないし一ppmのものについて処理をしなければいかぬということで、いわゆる工業用ののりにしている。非常にいま御指摘のように安くしか処理できないということは、私どもよく承知しております。
  109. 沢田広

    沢田分科員 この問題だけでも三十分かかってしまいますが、要するに、環境庁がもう少し自分の仕事に対して責任を持ちながら、各都道府県あるいは首長を含めて指導監督を適切にやってもらいたいということが、私のいま言わんとしているすべてなんですよ。  それから、たとえば産業廃棄物、これも環境庁ということにはならぬでしょうが、許可認可するのは知事なり市長がする。そこにはむちゃくちゃな産業廃棄物でどうにも周りの人は迷惑を受ける。だんだんくいなんかも外へ出して民地まで入っていってしまう。結果的にはそういうところの土地というものはどうにもならない。いろいろな災害が起きる。また、いろいろな汚染したものをそこへ埋設する。上へ上土を乗っけてしまう。  そういうものについて、これは警察へ告訴をしたり、衛生部へ物を言ったりというかっこうで、住民はささやかなる抵抗をしているわけです。だから、産業廃棄物に関する業者の指定等についてはもっと厳格でいいのじゃないか。要するにのれんを大切にする業者——渡り歩きみたいな人間を指定をさせない、業者の指定については、ちゃんとした経験と歴史と、そしてその結果を確認して歩くような業者を選定させる、認可を与える、こういうような措置が必要じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  110. 小野重和

    小野(重)政府委員 環境庁所管といいますか、責任はどうかという点についてのいろいろな御質問だと考えるわけでございます。  廃棄物の問題についてはいろいろ広範に仕事がございますが、環境庁所管というのは、廃案物の処理をする場合の処分基準というか、あるいは処理上の基準所管しております。それ以外のいろいろな廃棄物処理業者の監督等につきましては厚生省所管ということになっているわけでございます。  そういうことでございますけれども、いま御指摘のような点については、したがって厚生省所管ということになるわけでございますが、やはり連絡を密にして、全体としての廃棄物行政を進める必要があるということで、厚生省ともよく連絡、協議をして全体を進めていきたい、かように存じております。
  111. 沢田広

    沢田分科員 続いて次に、いまこういう指導が建設省でされているのを御存じかどうか。  いま地下水が大変重要な段階になってきた。また雨水も非常に多いし、分流方式をとりますから、雨水はどこにも行き場がなくて湛水をする。高層建築物を建てるときには地下還元方式というものを採用しつつある。これも私は一つ考え方だと思います。いまのような状況の中でどうやって水を処理したらいいのか。言うならば、これも環境庁長官一つの仕事だと思うのですが、雨水の所管はないのですよ。どこの省で所管するかといったら、ないのです。では、建設省が所管するかといえば、建設省は一級河川で、準用河川、それ以下は中小河川ということになりますし、あとは下水道は分流方式ですから、分流方式は結果的には雨水は流し込まないという方式ですから、雨水は一般の土地改良の排水路なり中小排水路というところに流れ込んでいってしまう。ですから、投資がおくれていますからどうしてもはんらんをする。そこで寝屋川にしても長良川にしても、いろいろな判決が出てきている理由はそこにあるわけです。  ですから、いま雨水の所管というのは厳格に言ってどこにもないのです。建設省はいま言ったように分流方式でやっているのですから、雨水はどこかへ流れるでしょうと。土地改良区は規定の用水時期の水だけ供給すればいいのであって、それ以上の水は受け取ることは拒否できると書いてある。土地改良法五十六条だったと思いましたが、協議して決めると書いてある。しかし、流れ込んでいるわけですから、現実的には都市化されたところの水を拒否するわけにいかないですね。これは拒否できない。そうすると、溢水するから、その責任はどうだとなってくる。市町村の管理している水路にしてもまた同じですね。これは、急に拡張するなんて言ったって、とてもじゃないが了承しっこない、金も出てこない。  ですから雨水の、たとえばこの前の台風十八号を例にとりますと、私の方で言えば秩父の方に三百ミリぐらい雨が降った。時間がないから簡単に言っていきますが、それでもAPにして八・六三ぐらいの水位になった。APの八・六三ということは、TPにしますと大体二メートル地盤が下がっていますから大体十メートル、十・二五ぐらいになる。そうすると、海抜十メートル以下のところはもう水没するという現象になる。ですから、環境庁の長官としての所管になるのかならないのか、それははなはだむずかしいところがあると思いますが、徳川吉宗が江戸を助けるために荒川に二十七の横堤をつくって、武蔵の国にはんらんを起こさせて、そこで江戸を助けようというのがいまの荒川のもう四百年続いている歴史なんですね。ですから、八・六三で、向こうへ降った水が流れ込まないうちに、片一方は雨が降るのですからいやおうなしに湛水する。これは寝屋川の判決もそのとおりですよね。長良川もそのとおり。あるいは、中小河川のはんらんで訴訟が起きているのもその例の中に入っているわけです。  若干の概略を述べましたが、その中で、じゃ、雨水というのはどこの省が管理するのか。農林省なのか建設省なのか。それとも、じゃ、その他属せざる環境保全環境庁なのか。それとも、どこなんだ。もし考えがあって、どこの省でやるんだというお答えがあったら答えてもらいたい。
  112. 小野重和

    小野(重)政府委員 雨水の所管の前に、水自体の全体の所管関係というのが、これはもう十分御案内のことだと思いますけれども、たとえば治水は建設省、利水ということになるとそれぞれの利水官庁というようなことになるわけでございますが、雨水もいろいろな水の源泉ではありますが、雨水自体についてたとえばどういう問題があるか、それが治水上の観点といいましても、都市地域では下水の問題にもなるかもしれませんし、その辺は建設省かもしれませんが……(沢田分科員「もう時間がなくなりますから簡単でいいです」と呼ぶ)いずれにしましても、環境庁は水汚濁という面でございますので、直接雨水はございませんが、ただ、地盤沈下の問題は所管しておりますので、雨水をみんな出してしまうと、地盤沈下して、地下水の涵養を妨げますので、そういう意味では非常に関心があるということでございます。
  113. 沢田広

    沢田分科員 ですから、さっき言った、建設省が地下環元方式をとっているということは知っていますか。
  114. 小野重和

    小野(重)政府委員 地下水の涵養ということが非常に大事でございますから、そういう点でのいろんな施策はしているのではないかというふうに私ども考えておりますが……。
  115. 沢田広

    沢田分科員 それは想像でしょう。知っていますかと言われたから、知っていないと言うと恥ずかしいと思ってそう答えたんじゃないの。違う。これは本音を言っておいてもらった方がいいんじゃないの。
  116. 小野重和

    小野(重)政府委員 いろいろな面があるかと思いますが、たとえば都市地域ですべてコンクリート化、アスファルト化するということは、やはり地下水の保全ということから言えば妨げになりますので、最近雨水が浸透するような舗装とか、あるいは地下に升といいますか、穴を掘って雨水を地下に浸透させるというようなことをやっていることは承知しております。
  117. 沢田広

    沢田分科員 シンガポールじゃないですけれども、それをたとえば二十年、百年も続けていったときに、現在の雨の中に持ついろいろな汚染度、それから水銀にしてもシアンにしてもカドミウムにしても、全然ゼロだとは言えないですね。私たちの方も毎年やっていて、出てくる。出ていることは事実ですからね。これは出てはならないものなんです。ところが、出ていることは事実なんです。それを還元していって、地下水に入っていったらどういうことになると思いますか。いまあそこには、関東には浦和水脈というのがありまして、その水脈がずっと今日の水源をなしているわけですけれども、その水脈の中に還元することが果たして環境保全の上においてプラスなのか。選択の問題だと思いますよ、もちろん。いわゆる地表における雨水をどう防ぐかということと、それから汚染をある程度覚悟するということとの選択であることは間違いない。  そこで、環境庁関係があるから、念のために、知っているならきちんとした姿勢を示さなければいけないんじゃないか。それは、雨水だから全然何も汚染するものはないのだという認定なのか、それとも、雨水の中にも多様なものを含めて、あるいは地表にあるものも含めて浸透していくわけですから、結果としてあらわれるのは地下水の汚染につながっていくということになりますね。いまですら地下水の、地盤沈下が進んで、抑制をしている昨今でしょう。大阪は一メートル以上下がって戻らないですね、復元をやってみても。ですから、そういう状況の中で、この地下還元方式を採用することが果たして妥当なのかどうか、きわめて高い政治的判断を必要とすると思うのですね。その点はいかがですか。いまあなたの言ったちゃらんぽらんの答えでは、これは初めてだからそういうことになるのだろうと思うのですが、もう少し見識のある答弁でないと、これは日本の将来に禍根を残す。日本の最大な特徴は水がいいということが世界の中でも言われているくらいですから、その水が汚れていったらもう何にもならなくなってしまうと思うのですが、いかがですか。
  118. 小野重和

    小野(重)政府委員 雨水の中にいろいろな物質が入ってくる。たとえば、これはいま地球的規模でも問題になっておりますが、酸性雨の問題とか、あるいはいま御指摘のようにそのほかのいろいろな有害物質があり得るんじゃないかということでございますが、これは基本的には煙から出てくるものでございますから、大気のいろんな排出規制、これをやっておるわけでございまして、そういうことで発生源対策はいろいろやっておるわけでございます。  ただ、御指摘の、いずれにせよ地下水についてその水質はどうか、どういう考えかということだと思いますが、確かにいま御指摘のように、地下水自体についての水質の規制といいますか、水質調査、そういうものは現在はやっておりません。これは……
  119. 沢田広

    沢田分科員 ちょっと、時間がないからいいですよ。答えが全然違う。  そういう浸透方式を進めていって、汚染が進むのではないか。いま直ちには計量的に出てこない数値かもしれませんよ。いまだって地下浸透はしているのですから。しかし、現在では正常な地下水として酒屋さんが使う、酒屋さんだっていま使わなくなったけれども、酒屋さんが使うぐらいの水のよさを持っていたわけですね。しかし、それがだんだん地下還元方式をとることによって目に見えない汚染が進んでいきますよ。そのことの測定なりあるいはある程度の予想なりをきちんと立てて、そしてどの程度の還元が可能で、どの程度の還元は危ない、その判断を示すのが環境庁の仕事じゃないかと思うのですよ。中の水質を調べなさいというのは、出てきちゃってから調べてももう遅いのです。手おくれなんです。だから、仕事らしい仕事をしているのかという気持ちになるのだが、ともかく建設省はどんどん進めようとしているわけですから、もっと環境庁は先手を打って、そのことが将来どういう影響を及ぼすのだろう、また、どういう地域においては許されて、どういう地域には許されないというくらいの発想は持たなければならぬのではないのかというふうに思うのですが、これは、環境庁長官、新しい課題かもわかりません。ですから、そういう事前の予防、これがやはり大切な要件なのではないのかというふうに思いますが、長官の返答を聞いて、少し時間が早いですが、御協力申し上げる意味で終わりたいと思います。
  120. 梶木又三

    梶木国務大臣 私ども、大分長い間水行政に関係してまいりましたけれども、いまのお話、大変むずかしい問題で、しかし、なかなか示唆に富んだお話だと思いますので、これから一遍勉強させていただきたい、かように思います。
  121. 沢田広

    沢田分科員 まあ、やむを得ません。
  122. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、浦井洋君。    〔主査退席、植竹主査代理着席〕
  123. 浦井洋

    浦井分科員 阪神高速道路公団、来ておられますか。——長官もよく御承知のように、大阪と神戸の間に国道四十三号線がある。その上に阪神高速道路公団の道路が二階建てで乗っておるわけです。そこで、これはもう御存じだろうと思うのですが、低周波公害が発生しておるというふうに私は思うのです。阪神高速道路公団としてはこの点についてきちんと認識をしておるのかどうか、それを最初に聞いておきたい。
  124. 寺田久彌

    ○寺田参考人 お答え申し上げます。  御質問の低周波振動の問題でございますが、御存じのとおり、五十七年の十月ごろ西宮市と尼崎市が測定いたしました調査結果を発表いたしました。その後、五十八年の一月でございますか、国土問題研究会というところが調査いたしました結果が新聞に出ておりますので、そういう問題があるということは私の方も承知いたしております。
  125. 浦井洋

    浦井分科員 そういう問題があるということは認識しておられる。逆に言えば、後で議論しますけれども、それが低周波に基づく公害だという認識ではないわけですか。
  126. 寺田久彌

    ○寺田参考人 お答え申し上げます。  この低周波空気振動でございますか、これと、公害と申しますか、人体に対する影響、この問題は非常にむずかしい問題であろうということは聞いております。たとえば、測定いたしましても測定の時間とか間隔あるいは周波数帯、それから値をピーク値をとるか中央値をとりますか、いろいろ分析の方法なり統計の方法がまちまちでございます。ひどい場合は三割、四割の誤差があるように聞いておりますので、こういう発生のメカニズムあるいは測定の方法あるいは人体への影響、そういうものは私の方では未解明でございますので、どういう公害があるかということにつきましては、私の方も不承知でございます。
  127. 浦井洋

    浦井分科員 いま言われたわけですが、西宮、尼崎、大臣によう聞いておいていただきたいのですけれども、大体神戸と西宮と尼崎の三つの市で、四十三号線の道路公害訴訟の原告団の依頼で、国土問題研究会が去年の十二月二十七、八日に調べている。四十三号線沿線の十二地点で四十八カ所測定を行っておるわけです。そして、この測定によると、確かにばらつきは多少あるけれども、最高で百八デシベルの数値を測定しておるわけです。この百八デシベルというのは、もう最高なんですね。全体として見ると、いま問題になっております西名阪の香芝地区と同じか、あるいは香芝町よりも飛び抜けておる。こういうような突出したデータが出ておるというような点でも、ちゃんと道路公団は認識しておるわけですか。
  128. 寺田久彌

    ○寺田参考人 私の方は新聞紙上でその資料を拝見いたしておりますもので、いま分科員の方から申されましたように、十二地点四十八カ所、魚崎の歩道橋の上で最大値が百八デシベルあったということを新聞紙上で承知いたしておりますが、これが果たしてどういう測定方法でどういうことをおやりになりましてやったのか、細かいことにつきましては私どもは承知いたしておりません。
  129. 浦井洋

    浦井分科員 そういう状態なんです。  事実はやはりそれだけでなしに、この調査には自治体も協力をしておるわけです。独自の調査もそれなりにやっておる。さっき言われたように、西宮では去年の十月二十日に自主測定をして、西宮の久保町で大体七十八から八十四デシベル。それから尼崎は去年の十月二十七日に分析結果を公表して、やはり七十から八十くらいの数値を出しておる、こういうことでした。  そこで、もう一方で神戸、西宮、尼崎の四十三号線公害対策連合会というのがあって、去年の十月末からその三つの市で合計二百六十二世帯、九百十七名を対象にしてアンケートを行って、体のぐあいはどうですかというようなことで、低周波による被害の調査を行っておるわけです。それを集計してみますと、たとえば四十三号線からまずちょっと列挙しますと、頭痛とか頭が重いという感じの人が九百十七名のうち二四・九%、眠れないという人が二七・〇、いらいらするというのが二二・五、肩こり、痛みが二五・〇、体がだるいというのが一五・八、考えごと等が妨害されるという人が一五・八、鼻血が七・〇、かぜようの症状が二八・一、手や足が痛いというのが一三・一、動悸がするというのが一一・三、目まいがするというのが一〇・六、それぞれそういうパーセントでありますけれども、こういうかっこうでほぼ九割を超える世帯で自覚症状を抱えておるということになったわけです。特に他の公害で見られない低周波公害といわれる被害者の特徴というのは、いま言いましたように鼻血が出るというようなこととか、あるいは頭が痛いとか重たいとか船酔いのような感じであるというところが特徴で、これがかなりの高率になっておるわけです。  公団はこういうことが行われたということは知っておるのか。知っておるとすれば、どういうふうに受け取っておるのかということですね。
  130. 寺田久彌

    ○寺田参考人 お答え申し上げます。  新聞紙上でそういう報告が出ておることは聞いております。
  131. 浦井洋

    浦井分科員 どう認識しておるのですか。
  132. 寺田久彌

    ○寺田参考人 この問題につきましては、低周波だけではございませんで、公害の問題でございますから、四十三号線訴訟等の問題もございます。私の方は、高速道路を建設すると・それ以前あるいはそれ以後、そういう防音対策、防音助成工事等をやりますが、現在そういう対策を着々と進めておるところでございますので、低周波ではございませんが、普通のいわゆる一般の騒音と申します範囲、夜間六十五ホン以上あります部分につきましてはそういう対策を行っておるところでございまして、低周波につきましては、そういう被害等につきましてはそのとおりであるかということは必ずしも承知いたしておりません。
  133. 浦井洋

    浦井分科員 いま公団から言われたように、いままでもう決まり切っておる公害についてはそこそこの調査をされておるようです。しかし、低周波が発生をしておるということはほぼ認めざるを得ないというところまでいっておるのですけれども、どういう被害が出ているのかということについては公団は認識はしておるようだが、積極的に乗り出して調査をしようということになっておらぬわけです。だから、私はまず公団に、そういうような実態を踏まえて、住民の被害があるならある、あるいはどういう対策がよいのかということについてもっと積極的に乗り出さなければいかぬのと違うのかというふうに思うのですが、公団のこれからの覚悟というか、決意みたいなものはどうですか。
  134. 寺田久彌

    ○寺田参考人 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、低周波振動によりますメカニズムと申しますか、そういう点に不明確な点が多々あるわけでございます。したがいまして、人体への影響が、報道されたような影響があるかどうかも、いわゆる因果関係と申しますか、そういうものがまだ不確定でございますので、いろいろ環境庁等でお進めになっておられるようでございますが、そういう調査研究の成果を待ちまして検討を進めていかなければならぬだろうと私の方は思っております。
  135. 浦井洋

    浦井分科員 そういうことですね。大体国の機関、公団は、特殊法人ではあるのでしょうけれども、なかなか乗り出さないんですね。いみじくも環境庁という言葉が出ましたけれども、そうしたら環境庁では一体どうなのかということに話が移るわけなんですけれども環境庁は、この場合、いろいろなもので低周波公害、低周波が発生するということについては認識されているわけですね。それで、この場合は橋げたというようなかっこうですよ。これは、低周波が発生しておる香芝町を初めとしてそれは認識されているわけなんですね。低周波公害も発生しておるわけですか。
  136. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 低周波によるとされますところの苦情が各地で発生をしておりまして、また、御指摘にもございましたように、訴訟も提起されておる例もございますので、低周波による何らかの公害というものは存在しておると考えております。
  137. 浦井洋

    浦井分科員 低周波による何らかの公害については、そう認識をして、それなりの研究をやっておるということですね。だから、それなら簡単に、どういう研究が行われてきて、いつごろその研究がまとまるわけですか。
  138. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 簡単にと仰せでございましたけれども、これは実はなかなか複雑なのでございます。大別をいたしますると……(浦井分科員「いや、簡単でいいです」と呼ぶ)人への影響、物への影響、がたがたしたりする、それからそれを加味いたしましたところの低周波の評価の仕方、防止の対策、主要な発生源周辺における実態調査、こういうものにつきまして鋭意調査研究を進めておるところでございます。
  139. 浦井洋

    浦井分科員 いつごろできるのですか。
  140. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 御理解賜りたいと存じますのは、学問の新しい分野でございますので、鋭意研究を続けておるのでございますけれども、いつ明確な答えが出るかということにつきましては、ただいま直ちに申し上げかねるのでございますが、相当長期間にわたって続けておりますので、五十八年度、明年度ぐらいでひとつ総括的に過去のことをよく検討し直しまして、また必要な新しい調査実施するなりいたしたいと考えておるところであります。
  141. 浦井洋

    浦井分科員 そうすると、五十八年度にいままでやったことを一遍まとめてみて、それでまた次の研究にかかりたいということですか。    〔植竹主査代理退席、主査着席〕
  142. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 そこは先ほども申し上げましたように非常にむずかしい学問の話でございますので、明快にお答えができないでまことに申しわけないのでございますけれども、必要な調査は鋭意続けまして解明に努力しなければいかぬと考えておるところでございます。
  143. 浦井洋

    浦井分科員 それだったら、この前、去年、おととしぐらいですか、五十七年度中には環境基準設定したいといって、前の局長の三浦さんですか、答えておられるわけですし、おたくもどこかで言われているのではないですか。それからずっと後退しているわけですか。
  144. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 どこかでとおっしゃいましたのは、たしか沓脱先生ではないかと存じますけれども、ただいま申し上げましたようにお答えしておるわけでございます。後退はいたしておりません。
  145. 浦井洋

    浦井分科員 後退はしていますよ。五十七年度中には環境基準設定したいというふうにおたくは言われておるわけです。だから、私いまここで押し問答してもあれですから、やはりこういうときには——あなたもお医者さんですか。そうですな。だから、疫学というようなメソッドがあるでしょう。やはり公害というのは、大臣、疑わしきは罰するという基本概念で出発しなければ後手後手になりますよね。だから、疫学、これはある程度科学だというふうに認められておるわけですから、こういうような低周波が発生しておる、それと因果関係がはっきりせぬとは言われておるのだけれども、被害もここにあるのだ。その関係がはっきりしないだけで、疫学的な手法を使えば、おたくらのスタッフと頭脳をもってしたら、かなり短期間にもっと実態がはっきりするんじゃないですか。いままでいろいろな公害だとか薬害だとかいうことが出るたびに、おたくはそういう手法を使ってこられたわけでしょう、厚生省におられたときにも。
  146. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 御指摘のように、疫学は科学であり、一つの基本的な調査の方法であると考えます。
  147. 浦井洋

    浦井分科員 だから、どうするんです。それを活用しなさいと言っているわけでしょう。
  148. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 低周波の研究につきましては先ほど申し上げたとおりでございますけれども、その中には、たとえば低周波空気震動の生活環境に及ぼす影響というようなことも五十六年度からやっておりまして、低周波空気震動のレベルと苦情の発生頻度を対応づける、このような疫学的手法も駆使いたしまして、適切なる評価方法を確立いたしたいとやっておるところであります。
  149. 浦井洋

    浦井分科員 それはあなた、医者なら医者でまともによく勉強していらっしゃるだろうし、疫学的な手法というのは、どんなものを対象にしてもほぼ方法論は確立しておるわけですから、それをやりなさいと私は言っておるわけですよ。それが実際の真因の解明にぐっと役立つわけですね。それをやらぬわけですからね。  大臣、どうですか。いままで話を聞いておられて、公団は環境庁の研究待ちです。環境庁は、五十七年に環境基準をつくると言って一たん約束をしておきながら、いまだに五十八年度中にいままでやってきた研究成果を一遍まとめて、それでまた次の研究に進みたい。これは、四六時中四十三号線の沿道におる住民は、その九割までが何らかの自覚症状を持って、鼻血を出したり頭が痛いとか、いつでもかぜを、夏でもかぜを引くのですからね。大臣は神戸市北区有馬町でしたか、必ずしも遠いところではないわけだし、いまの問答を聞いておられてどうですか。四十三号線の周囲の住民のために急ごうという決意をひとつ述べていただきたい。
  150. 梶木又三

    梶木国務大臣 むずかしい医学的な問題は私よりも浦井委員の方が専門で、だからいま局長が話しましたように、私も素人ではございますが、基準をつくるとなると十分な知見の集積が必要になると思うのです。むさんこに基準をつくるというわけにもいきませんので。いままで一生懸命やっておるけれどもまだそれが集積できない、こういう段階でございますから、いまの段階で人体の生理機能等への影響、これはなかなか因果関係が解明されていない、こういう段階だから、いまの段階では基準の作成はむずかしいのではなかろうか、このように思います。
  151. 浦井洋

    浦井分科員 それはだめですよ。せっかく大臣は環境庁長官になられたわけですよ。PPPの原則とか、やはり公害をかちっと見きわめて早く被害者を救うという点では、疑わしきは罰するという原則があるわけですから、知見が十分集積しなかったらいかぬ言うたら、それはもう刑事訴訟法みたいなものですよ。逆なんですよ。早くやってくれなければいかぬ。そうではないですか。もう一遍。
  152. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 仰せの趣旨はよく理解できるところでございます。先ほどもちょっと申し上げましたけれども、当面可能な防止対策につきましても調査研究を進めておりまして、実は低周波に関して苦情が一番多いのが工場事業場等なんでございますが、苦情処理も公害行政の一つの大事な分野でございますので、そういう研究成果を都道府県に示しまして、適切なる対策推進に努めるように指導しておるところでございます。これは公衆衛生学雑誌にも、やって苦情がなくなった、こういうことも報告されておりまして、できますことはやっておるということをひとつ御理解賜りたいと思うのであります。
  153. 浦井洋

    浦井分科員 そういうことを判別するためにも、きちんとした疫学的な調査をやれば、これはだれが見てもちょっとした見る目を持っておればわかるようになるわけなんですね。だから、大臣、それは大臣在任中に一生懸命下僚を——下僚と言うたら悪いですか、督励していただいて、早く環境基準をつくり上げるために努力をしていただきたい。ひとつ決意を。
  154. 梶木又三

    梶木国務大臣 事務当局には督励はしたいと思います。
  155. 浦井洋

    浦井分科員 督励はしたいじゃなしに、督励をしたいということですね。督励はしたいということと督励をするということとはまた全然違うわけなんです。督励をしたいということですね。
  156. 梶木又三

    梶木国務大臣 いまこの問答を聞いておりまして、局長もやると言うておりますから、やると思います。
  157. 浦井洋

    浦井分科員 公団はどうですか。そういうことで住民は急いでおるわけですね。言うたら、早くに原因を究明し、はっきりさせて、表現が悪いかもしらぬけれども、普通の生活に戻りたい、楽をしたい、これは当然だと思うのです。簡単にはよそへ逃げるわけにいかぬですし、私がこの間聞いたのでは、甲子園球場がありますね、甲子園球場のようなああいう丸い防壁をつくれば、あのホームプレートの辺とかピッチャーズマウンドの辺は比較的低周波が及んでこないというようなユニークなデータもあるわけですね。やろうと思えばやれるわけなんだから、ひとつ公団も急いでいただきたい。公団独自ででも調査をして研究もし、結論を出して、逆に環境庁のおしりをたたくぐらいの姿勢を示さなければいかぬ。
  158. 寺田久彌

    ○寺田参考人 お答え申し上げます。  先ほどから再々申し上げておりますように、未解明な部分が非常にたくさんあるわけでございます。私の方といたしましては、先ほど申しました防音助成がまだやり足りぬところがございます。そこら辺を全力を挙げて十分やっていきます。いろいろな研究の成果を待ちまして、こちらの方も検討していきたいというつもりでございます。
  159. 浦井洋

    浦井分科員 きわめて不満足な回答であります。段階的にやるのでなしに、防音工事は防音工事、民防工事はやらねばいかぬのだけれども、低周波公害という新しい課題も出てきておるのだから、それは急いでやっていただきたい。  もうあと五分だということなので、最後にもう一つ。  これも神戸に関係した話なんですが、灘に勝岡山というところがある。その勝岡山をボートアイランドなどで埋め立てに削って、そこが宅造されたわけですよ。そういうところに、大臣も御存じだろうと思うのですけれども、松蔭女子学院というものがある。ところが、その斜め前の片方半分に、住友不動産が手に入れて今度そこへ大きなマンションを建てようとして、神戸市も困っておるわけですよ。神戸市が都市環境保全ということでいろいろな条例をつくってかなりやっておるのですけれども、私権制限になるというような意見もあってなかなか手をつけられない。住友不動産がうんと言わなければ、そこへ非常にグロテスクなマンションができてしまって景観的にも台なしになるという問題が起こって、未解決のままずるずる来ておるわけですよ。  そこで、私が大臣にお願いしたいのは、神戸の市会でも全会一致で、やはり住民の請願を受けなければならぬ。神戸の市長も住友不動産に会ったりして、文教地区でもあるし何とか適切な値段で売ってくれ、決して住友不動産には迷惑、マイナスはかけないというようなことであるわけなのです。よくある大企業のもうけ本位の考え方に基づく環境壊しの典型だろうと思うのです。これは法規には違反していないわけですよ。だから、環境庁長官として、その立場から何か方法がないものだろうか、ぜひ知恵を出して協力してほしい。これはお願いなんですが、どうでしょうか。
  160. 梶木又三

    梶木国務大臣 お話のような場合、私ども公害関係の法令もございますし、都市関係では都市計画法、いろいろございます。こういうことで、騒音やらいまお話しの都市生活型の公害の防止に私どもも努力はしておるところでございます。  いまの具体的な問題でございますが、これは神戸市で一遍住友とでも十分話し合いをしていただきたい。まず緑地の保全、こういうことは大事でございますから、そういう制度を適正に運用して、住民の方々の不満なことを一遍神戸市と住友あるいはその辺の関係の方がお話し合い願いたい、こういう気持ちでいまおるわけなんです。
  161. 浦井洋

    浦井分科員 最後ですが、何年間にわたっていろいろ手練手管もあり、いろいろなこともやってきたわけですよ。市長も確かに乗り出されたわけです。ところが、やはり最後のところで住友不動産はなかなかがんばっておられる。だから、私はあえてここで質問に持ち出して、環境庁長官という立場の梶木さんにお願いしておるわけです。そんな、神戸市で一遍やってみてくれということだったら、私はここで言わない。最後に一言。
  162. 梶木又三

    梶木国務大臣 私も先生と同じように神戸市出身でございますから、住民の方々の快適な環境のところにいたいという気持ちはわかります。しかし、いま直接環境庁が乗り出せる問題ではないと思うのです。
  163. 浦井洋

    浦井分科員 環境庁というのじゃない。環境庁長官梶木又三ということだ。
  164. 梶木又三

    梶木国務大臣 またむずかしいですな、その答弁は。個人だ、公だとありますから、コメントはひとつ御勘弁をいただきたい。
  165. 浦井洋

    浦井分科員 終わります。
  166. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて浦井洋君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  167. 植竹繁雄

    植竹主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  主査が所用のためおくれますので、主査が御出席になるまで、その指名により、私が主査の職務を行います。  農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。金子農林水産大臣
  168. 金子岩三

    ○金子国務大臣 昭和五十八年度農林水産関係予算について、その概要を御説明申し上げます。  各位の御協力を得て御審議いただくに当たりまして、予算の基礎となっております農林水産施策の基本方針について御説明申し上げます。  言うまでもなく、農林水産業は、国民生活にとって最も基礎的な物資である食料の安定供給を初め、活力ある健全な地域社会の形成、地域住民への就業の場の提供、国土・自然環境の保全などの重要な役割りを担っており、わが国経済社会の発展と国民生活の安定を図っていくためには、農林水産業の着実な発展を図ることが不可欠であります。  翻って、今日のわが国農林水産業をめぐる内外の状況を見ますと、食料消費の伸び悩み、土地利用型農業部門の規模拡大のおくれ、就業者の高齢化の進行、木材需要の停滞、漁業経営問題などに加え、行財政改革の観点からの農林水産行政の一層の効率的な推進の要請、米国、EC諸国等からの市場開放要求の強まりなどその環境は一段と厳しいものとなっております。  このような状況にかんがみ、私は、農林水産業に課せられた役割りが着実かつ効率的に果たされることを基本とし、昨年八月、農政審議会から報告のあった「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」を踏まえる等、長期的展望に立って、各般の施策の積極的な展開に努め、総合的な食料自給力の維持強化と国民生活の安定を図ってまいる所存であります。  そこで、昭和五十八年度の主な農林水産施策について申し上げます。  第一に、農業につきましては、構造政策の推進に特に重点を置き、地域農業集団の広範な育成等を通じて、中核農家の経営規模の拡大、高能率な生産組織の育成等を進めるとともに、需要に応じた農業生産の振興、コストダウンを主眼とした技術の開発・普及、農業生産基盤の整備等を推進することによって、わが国農業の体質を強化し、生産性の向上を図ることとしております。  第二に、林業につきましては、緑資源の確保のため、森林管理の適正化を推進するとともに、林業生産基盤の整備、林産物の流通加工対策の充実強化等により、林業の振興を図るほか、国土の保全、水資源の涵養等森林の公益的機能の高度発揮に対する国民の要請に積極的にこたえていくこととしております。  第三に、水産業につきましては、諸外国の二百海里規制強化、水産物需要の低迷等の情勢に対処して、漁業生産構造の再編整備、省エネルギー化の推進等により経営体質の一層の強化を図っていくとともに、「つくり育てる漁業」を初めとするわが国周辺水域における漁業の振興、海外漁業協力推進等による海外漁場の確保、水産物の流通加工対策推進等を図り、水産業の振興と水産物の安定的供給に努めることとしております。  さらに、農山漁村の総合的な環境整備を進め、豊かで活力に満ちた地域社会の建設を促進するとともに、農林実の生産基盤である農用地、森林等の緑資源の維持培養を図ることとしております。  以上申し上げました農林水産施策推進を図るため、昭和五十八年度農林水産関係予算の充実に努めた次第であります。  昭和五十八年度一般会計における農林水産関係予算の総額は、総理府など他省庁所管分を含めて三兆六千六十七億円で、対前年当初予算比二・五%、九百四十三億円の減額となっております。  以下、この農林水産関係予算の重点事項につきましては、委員各位のお許しを得まして、説明を省略させていただきたいと思います。よろしく御審議くださいますよう、お願い申し上げます。
  169. 植竹繁雄

    植竹主査代理 この際、お諮りいたします。  ただいま金子農林水産大臣から申し出がありました農林水産関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略いたしまして、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 植竹繁雄

    植竹主査代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────   〔金子国務大臣の説明を省略した部分〕  以下、予算の重点事項について御説明いたします。  (土地利用型農業の体質強化を目指した構造政策の推進)  第一に、国土資源を有効に利用し、生産性の高い農業を実現するため、構造政策を推進することであります。  今日、土地利用型農業の規模拡大と生産性向上を実現し、その体質強化を図ることが、緊急の課題となっております。  このため、土地利用型農業の経営規模の拡大に資するよう中核農家を中心に兼業農家等を幅広く包摂した地域農業集団が行う農用地の利用調整活動等に対し助成を行うとともに、新農業構造改善事業の後期対策を発足させ、土地利用型農業の構造改善に重点を置いて実施することとしております。  (需要の動向に応じた生産性の高い農業の展開)  第二に、需要の動向に応じた生産性の高い農業生産体制の整備を図ることであります。  まず、水田利用再編対策につきましては、第二期対策を引き続き着実かつ的確に実施することとし、奨励補助金等として三千四百九億円を計上しております。  次に、耕種部門の各作目の生産対策等を統合・メニュー化した新地域農業生産総合振興対策につきましては、新たに、稲の生産性向上対策を含めるなどその内容を充実し、五百五十九億円を計上しております。  また、畜産関係の生産から流通、消費に至る各種対策を統合・メニュー化した畜産総合対策につきましては、酪農と肉用牛生産の振興合理化を総合的・一体的に推進することに重点を置いてその内容を充実し、三百二十一億円を計上しております。  (農林水産技術の開発・普及等)  第三に、農林水産業発展の基礎となる技術の開発につきましては、バイオテクノロジー等の革新的技術の発展を踏まえ、長期的視点に立って試験研究推進することとしております。また、この方向に即して、農業関係試験研究機関の再編整備を行うこととしております。  次に、普及事業につきまして、地方公共団体の自主性の発揮を促進するとともに、農林漁業をめぐる諸情勢の変化に即応した事業の効率的、弾力的な運営を図るため、制度・運営の改善を図るほか、的確な統計情報の作成、提供により効率的かつ適正な施策推進に資することとしております。  (農業生産基盤の整備)  第四に、農業生産の基礎的条件である農業生産基盤の整備につきましては、生産性の向上及び農業生産の再編成に資する事業等に重点を置いて推進することとし、九千億円を計上しております。  また、農業及び農村の長期的展望に立って、第三次土地改良長期計画を総事業費三十二兆八千億円で策定することとしております。  (食品産業対策、流通消費対策の充実)  第五に、国内生産との結びつきを持った健康的で豊かな食生活の定着促進を図るとともに、農産物の需給と価格の安定に努めることとしております。  また、食品産業の近代化と流通の合理化を進めてまいります。  (活力ある農山漁村の建設と福祉の向上)  第六に、農林漁業を基盤とする活力ある農山漁村を建設するため、生産基盤と生活基盤の一体的な整備推進するとともに、農林漁業従事者の福祉の向上に努めることとしております。  このため、農村総合整備事業、農村地域定住促進対策事業、第三期山村振興農林漁業対策事業等の推進を図るほか、農業者年金制度の適切な運営を図ることとしております。  (国際協力推進と輸入の安定確保等)  第七に、国際協力推進と輸入の安定確保等を図ることであります。  今後とも食料の相当部分を海外に依存せざるを得ないわが国としては、世界の食料需給の安定のために積極的に農業協力推進するとともに、わが国の食料輸入の安定に努めることとしております。  以上申し上げましたほか、農業金融の充実、農業災害補償制度の円滑な運営等により、農業経営の安定を図ることとしております。  (森林・林業施策の充実)  第八に、森林・林業施策に関する予算について申し上げます。  近年、林業生産活動が停滞し、森林の保育管理が十分に行われていない状況が進行していることにかんがみ、緑資源の確保に関する啓蒙普及等を行うとともに、森林の適正管理を総合的に推進することとしております。  また、国土保全対策の充実と林業生産基盤の整備を図る観点から、治山、林道、造林の林野関係一般公共事業について二千八百八十一億円の予算を計上し、これらの充実強化と計画的な推進を図ることとしております。  さらに、国産材供給体制の整備を進めるとともに、松くい虫対策の充実を図るほか、新林業構造改善事業、林産集落振興対策等を推進いたします。  (水産業の振興)  第九に、水産業の振興に関する予算について申し上げます。  漁業経営は、諸外国による二百海里規制強化、燃油価格の高水準での推移、水産物需要の低迷等によりきわめて困難な状況に置かれており、このような事態に対処するため、漁業生産構造の再編整備推進に必要な助成や融資の充実に努めるとともに、新たに、省エネルギー化、低コスト化を実現する新しい漁業技術体系の確立を図ることとしております。  また、栽培漁業の推進体制の整備、沿岸漁場整備開発事業の推進等により「つくり育てる漁業」の振興を図るほか、水産物の流通加工対策、消費拡大対策等を進めることとしております。  さらに、漁業の生産基盤である漁港の計画的整備を進めることとし、千六百五十五億円を計上しております。  このほか、漁船積荷保険の本格実施等漁船損害等補償制度の改善、海外漁場の確保、漁場環境保全対策等を推進いたします。  (特別会計予算)  次に、特別会計予算について御説明致します。  まず、食糧管理特別会計につきましては、米の消費拡大を推進するほか、麦の政府売り渡し価格の引き上げ、管理経費の節減等食糧管理制度の運営の改善合理化に努めることにより、一般会計から調整勘定への繰入額を四千七十億円に減額したところであります。  また、五十四年度から計画的に実施している過剰米の処分に要する経費として、一般会計から国内米管理勘定へ一千六百五十四億円を繰り入れることとしております。  国有林野事業特別会計につきましては、国有林野事業の経営改善を計画的に推進することとし、事業運営の改善合理化等の自主的努力とあわせて、国有林野における造林、林道事業に対する一般会計からの繰り入れを行うほか、財政投融資資金の導入の拡大を図ることとしております。  このほか、農業共済再保険等の各特別会計につきましても、それぞれ所要の予算を計上しております。  (財政投融資計画)  最後に、財政投融資計画につきましては、農林漁業金融公庫等による総額八千三百九十五億円の資金運用部資金等の借り入れを予定しております。  これをもちまして、昭和五十八年度農林水産関係予算の概要説明を終わります。     ─────────────
  171. 植竹繁雄

    植竹主査代理 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終りました。     ─────────────
  172. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  173. 大出俊

    大出分科員 しばらく魚の問題から手を放しておりますけれども、全水連という組織がございます。これは水産庁の皆さんにすればお得意様でございまして、おいでにならぬと成り立たぬわけであります。生産者側は幾ら魚をとりましても、売ってくれる人がなければ成り立たぬわけでございますから。正式には全国水産物商業協同組合連合会、こういう名前がついていまして、会長さんは、御存じでございましょうが、新橋でお店をやっておられる田島さんでございます。私も大変長いおつき合いでございます。神奈川でも、会長安田勘太郎さん、この間勲章の受章をなさいましたが、この方とも長いおつき合いでございます。また、この全水連レポートに出てまいりますが、水産流通部会長の磯さんなども、私、近くにおりまして二十年来の親友でございます。この皆さん方は、非常に零細な魚、皆さんの奥様の毎日お買いになる魚屋さんの団体でございますので、めったなことで政治家を使わないのですね。いろいろ地元のことで私も頼まれることがありますけれども、一生懸命自力で、いわゆる魚離れ、魚の消費が、肉その他はふえる、片一方は減るという中で、どうすれば零細店舗が維持できるかということで、懸命になって、田島会長さん、私、非常に尊敬しておりますけれども、また、神奈川の安田勘太郎さんも大変りっぱな方でありますけれども、みずからの仕事をぶん投げて本当に一生懸命やっておいでになる方々ばかりでございます。  たまたま流通部会長の磯さんにお目にかかった際に、ことしのごく初めでありますが、珍しく私に不満を述べておいでになりまして、どうも水産庁、農林省の考え方はわからぬというわけです。正貫取引、皆さんは正量取引、こう言っておいでになるということですが、目減りをしないで売ってもらわなければ困るということなんですけれども、これも通達を出すと言って約束をしているくせにさっぱり出さぬじゃないか。大会は昨年の九月じゃないか。皆さん来られて、そのままなんていうことがあるかと言う。二十九回の大会をやっている。こういう話でありまして、私、早速当時電話を入れましたが、相手の方のお名前を忘れましたけれども、この通達は何とか出したいと思って検討いたしておりますというわけでありまして、さっぱりそれがらちが明かない。やむを得ず私も少し承ってみたいという気になりまして、二、三日前に皆さんにお集まりをいただきましたら、いや、実は一昨日、三月一日付に出しましたという話でありまして、どうもやることが気に食わぬ気がするものでございますから……。  中身を見てまたびっくりしまして、これじゃ、とてもじゃないが正貫取引などになりゃせぬという気がするのでありますが、時間がありませんので、問題は三つにしぼりますが、一つは、商社の価格操作等もございます。そういうことも含めまして、何とかこれは抑えなければいかぬと私は思っておりますが、水産物需要の安定と魚の高騰の抑制という問題が一つ。それから、いま申し上げました正しい貫目で、キロ表示してあるものはそのキロが入っていなければ困るじゃないか、べらぼうな目減りをしているというのはどういうわけだ、それを消費者にかぶせるわけにはいかぬじゃないか、全部かぶらざるを得ぬじゃないかという問題。もう一つは、市場内における小売行為等に関して市場秩序という問題もございます。大きく言えばこの三つにしぼりたいと思うのであります。  そこで、まず最初に御提案申し上げたいのは、一つは、正貫取引に関しまして、お魚屋さんの側からの不満、これをそのままにしておく手はなかろうという気がする。産地の生産者の方々、卸その他をやっておられる方々を含めまして、小売の方がいないことには成り立たぬわけでございますから、そういう意味で、農水省が中にお入りいただいて、生産者の方々と小売の方々とをサンプル的に幾つか出てきていただいて両方の話し合いをしてもらう。そういう場所をつくって、一体何がこういうことになる原因なのかという、総納得のできる、あるいはこれによって、だからこう直そうという具体的な解決の仕方を図るべきだと思うのです。二十九年にもわたる大会で常にこれは取り上げられて、最近やっとこの三月一日になって通達を出す。しかも、中身はきわめて不満でありますが、そういうことではいけないという気がする。これをひとつ提案をしたいのであります。  もう一つ、この魚離れという問題を中心にいたしまして、全水連傘下で「一日魚教室」ということで奥さんに集まっていただいて料理をして食べていただく、魚をもっと食べてください、こういうPRをやってきておりますが、これを調べてみますと、ことしは全部全水連関係の予算がゼロになっている。ところが、大日本水産会あるいは食品流通改善協会とか、大きなところが幾つかございますが、これはそれぞれ前年並みになっている。どういうわけだと聞いてみたら、小売団体の方の資金量の関係もある。半々ということですから、千百万くらいの金でありますけれども、半分で五百五、六十万になりますか、これが骨が折れるというようなことであるとか、それしかここには書いてありませんけれども、実はこれは、その日一日魚屋さんが休んで、御近所のつき合いがあるのだけれども休んで、奥さんが集まったところへ行って、店員の皆さんも連れていって調理をして食べていただくという形になる。これがどうしても役員に負担がいってしまう、そういうところがあります。だから、非常に評判がいいんだができない、もったいない話であります。だから、これはひとつ国の行事で国がやろうじゃないか。国がいろいろなパンフレットをつくったり、ビラをこしらえたりしてそんな金を使っておられるのだから、地域的にことしはここと、ここと、ここをやるというぐあいに、国の行事で集めていただいて、そこに出てくる人が、専門屋ですから、全く店を閉めて出てくるということになるのですから、国の行事でやるとすれば、これらの方々に、本人が負担しないで国が見てあげるというようなことにしないと成り立ちません。せっかく好評を博している、これをここで打ち切るというのはまことに残念であります。そういう意味で、零細商店の団体でございますから、金もそんなにはない。大きな団体とは違うのであります。わかっておるわけでありますから、そういう意味で、ぜひこれはひとつそういう角度から御検討を願って、先々継続のできるようなことをお考え願えぬかというのが二番目です。  三番目は、市場内の小売行為等について、この大会に出られた伊藤商業課長その他の皆さんの御発言は、かつて通達を出したことがあるというようなことを言っておられるようでありますけれども、ことがあるじゃ困るので、ひとつそこらの経緯に基づいて御説明を後でいただきますけれども、これはやはり新しく通達を出すなら出すということに明確にしていただきたい。そして、いままで出したことがあるというなら、その通達はここでお出しいただきたい。  この三点を、忘れるといけませんから、あらかじめ御提案を申し上げて、三点について御検討をいただいて、そして最後に忘れずにひとつお答えをいただきたい。  そこで、第一の、先ほど申し上げました水産物の需要の安定と魚価の高騰を抑えて下げさせる、これに対する対策を、もうわかってはいるので時間がむだなような気がしますが、議事録に残ることでございますから、簡単にお述べをいただきたい。あわせて、御注文申し上げてある、庫腹物、安いときに買って冷凍倉庫に入れておいて、高くなったときに売って安定をという、こういう理屈は通るのですけれども、流通総量から見てそれは一体どのくらいのものなんだということと、本当に役立っているのかということ。かつて私が調べただけでは、まるきりこれは話にもならぬ数量でございましたが、いかがでございますか。
  174. 松浦昭

    ○松浦政府委員 ただいま先生も御指摘のように、水産物の需給と価格の安定を図りますことは、漁業経営者に対する経営の安定ということのみならず、国民食生活の安定ということから、消費者も含めましてきわめて重要な課題であるということは、おっしゃられるとおりでございます。  この需給の安定を図ります基本は、ただいま漁業を取り巻く情勢は、燃油高騰あるいは二百海里規制等で非常にむずかしい状況でございますが、できるだけ魚価を高騰させないような方策をとっていく、つまり経営コストをできるだけ下げて安定した魚価で生産ができるということが基本になるかと思います。しかしながら、それに加えまして、やはり流通加工の段階で魚価の高騰を抑制し、安定的に消費者にこれを供給するという施策をとっていくことも当然のことでございまして、そのために、水産物の調整保管事業あるいは主要水産物に関する適切な需給情報の提供あるいは流通加工施設整備といったような諸般の施策を行っているところでございます。  さらに、ただいま先生もお触れになりましたけれども、やはり消費者の方々に良質なたん白であるお魚をもっと食べていただく。ただいま小売の魚の普及宣伝のお話もございましたけれども、さようなことも含めまして、今後とも対策強化してまいりたいと思う次第でございます。  なお、お尋ねのございました調整保管でございますが、総体の量から申しますと、五十八年度の予算で御要求を申し上げておりますのは、多獲性魚が十二万一千トン、ノリが四億枚、ワカメ二千五百トン、冷凍すり身六千トン、これは一千トンから六千トンにふやしております。カツオ・マグロ五万五千トン、それから魚かすと魚粉が一万六千トン、さらに今回新しく五十八年度予算として要求をお願いいたしておりますのは、漁業用のえさ用で二万二千トンということでございまして、これは総体の漁獲の量から見ますれば確かに微々たるものというふうにおっしゃられるかもしれませんけれども、これらの非常に価格変動の大きな魚種につきまして適期に調整保管を行っていけば、その価格の短期的な変動は少なくとも調節できるという程度の量は一応確保して、御要求を申し上げているという状況でございます。
  175. 大出俊

    大出分科員 そうはいかないんですよ。どうせそういう形式的なことを言うのだと思うんですがね。それは話にも何もならぬ。  第一に、価格の安定あるいは高騰抑制という意味では、商社の価格操作というものをどう抑えるか。一つだけ例を挙げてみますと、六十年までに地方の民営市場などを公営にすると、皆さん目標を立てましたね。たとえば甲府の周辺なんかでも幾つかなっています。三崎の産地仲買人の方は、マグロを扱っていて戦後の荒廃したときからどんどんそこに送って、とれなくても販路をつくっている。長く続いている。ところが、公設になりますと、ここに途端に商社が入ってくる。マグロをどんどん安売りするのですよ。そうすると、産地で幾らがんばってついていこうと思ったって、資本が小さいからついていき切れない。あるところで手を引かざるを得ない。引いてしまうと商社独占ですよ。途端に価格操作が始まる。築地の元請五社の筆頭株主を見たらおわかりでしょう。これは残らず全部商社ですよ。ここでそれを言っていると時間がなくなってしまいますからきょうはやめますが、私は、これはかつて何遍も申し上げたことがあるのだが、特にエビだ、イカだ、サケだ、マグロだというのは皆さんはわかっているんじゃありませんか。さきおととしになりますか、べらぼうにサケが上がった時期があったじゃないですか。かずのこの例だってわかっているんじゃないですか。こういうことを放任してはいけない。ただ、ここでそれを言っていると時間がなくなるから、これは改めてどこかで物を申し上げますが、ひとつもっと具体的に価格操作を抑えて安定させるという方法を考えていただきたい。  具体的に申し上げますが、最近の総計数字を見ますと、アジ、サバ、カレイ、タイ、いずれも過去十年間の一世帯消費量がべらぼうにダウンしています。タイなんというのは八割ぐらいしかいってない。この中でマグロだけが四〇%ぐらい伸びている。理由はいろいろあります。いろいろなすし摩さんのシステムが変わったりして売れていますから、マグロは非常に多くなっていますが、だからマグロは価格操作をされて、これは逆に抑えなければ高いものを食わされることになってしまう。これは四〇%伸びています。  ところが、念のために申し上げておきますが、マグロというのはスズキ目に入るのですけれども・このスズキ目の中のサバ亜目に入るものはたくさんあるのですよ。クロマグロ、インドマグロ、メバチ、キワダ、ビンナガ、さらにカジキの類で言うとマカジキ、メカジキ、シロカワ、クロカワ、バショウ、スギヤマ。スギヤマというのは人の名前じゃないのだ。この中に、クロカワなんというのはシビの一種でしょうけれども、学名で言えばシビは入ってないのです。これだけあるのですけれども、実は八〇%以上が冷凍倉庫に入っている。商社あるいは日水だとか大洋だとかいうところの価格操作の枠の中に入っている。わかっているのですよ。  しかも、これは四つに割って売るわけですけれども、これも私最近ちょっと調べてみたら、こういうことですよ。冷凍マグロ、腹上と背だけに分けてここに書いてありますけれども、腹上というのは、四つに割った、腹側竜骨筋という筋肉なんですが、背中をこう割りますと肋骨みたいになっている竜骨がある。ここのところのこれが皆さんがよく食べる大トロですよ。下のおすし屋さんでも売っている。これなんというのは一キログラムについて八千円から八千五百円。背の方で一キログラムで約六千円から七千円。腹上というのは、大体四つに切った一つは九キログラムから十一キログラムある。これを、さて下の食堂に行っておすし屋さんで皆さんがお食べになると、大トロといって乗っかっているやつ、二百円ぐらいにつきますよ。この二百円は原価ですよ。だから、一人前といったらどうしたって二千円前後になってしまう。これはずいぶん高いものを食べさせられているのですよ。これはみんな価格操作なんです、冷凍倉庫へ入っていて。  しかも、エビを見ますと、メキというメキシコ産のエビですが、下のおすし屋さんへ行きますと、こっち側にあるやつは日本産のエビで、こっちにあるクルマに見えているやつはメキシコのエビですよ。これは大体二キログラムぐらいの箱に入っていますが、九千円。大きさからいきますと二十六の三十というのを大体おすし屋さんは使っていますけれども、この中に大体八十匹から百匹くらい入っているのですが、一匹幾らにつくかというと、原価で九十円前後です。だから、このエビなんかについてもなぜこうなるか。エビを見ても、もうほとんど冷凍で場外流通ですよ。ここにございますが、エビというのは国内産のものは比較的少ない。五十四年の統計によりますと十六万四千トンの輸入、世界で日本が一番エビを食うんですね。国内産の約三倍ある。国内のエビというのは一万五千トン、国内で栽培してつくっていますね。だから、これまたほとんどが価格操作。だから、こういう点について皆さんの方で一つ一つをとらえて手を打っていきませんと、価格の安定に役立たない。在庫がこのくらいの容量があるんだからこれだけ買っておきます、予算をこれだけ組んでいます、だから幾らか役に立っています、それで済むんじゃないんですね。  したがいまして、イカなんかについても、この十年間で価格は五倍から六倍に上がってしまっているわけです。なぜか。みんな理由があるわけですね。カレイについても同じです。タイなんかについても八〇%くらいしかいま消費量がありませんが、これもなぜそうなるかというのはわかっている。一つ一つについて皆さんが回答を与えてくれないと、価格安定に役立たない。だから、私はそういう意味で、これはきょうは言いっ放しになりますが、きめ細かな対策を立てていただかぬと、そういう抽象的なことでは意味がない。時間がありませんからその点だけ申し上げて、これは後で皆さんにひとつ委員会の外でお目にかかって、一つ一つ細かく承って回答をいただきたい、こう思っておりますから、これは言いっ放しにいたします。  それから、次は例の通達が出ておる正貫取引についての問題になりますが、この正貫取引の問題は何ともどうも私も腹に据えかねるわけでありまして、この全国大会の席上でも出ておりますけれども、サケ・マスなんというものを、お魚屋さんが価格表示のものを買ったと言うんですね。そうしたら、二十キログラムという表示のあるところを十七・五キログラム、これはべニサケです。塩マスで七・五キログラムというところを、七キロであったり六・八キロであったり、はなはだしいのは六・五キログラムしかない。それは、マグロのフレーズなんというのはわかっているんですから、パレット方式といって、こっちから風を入れて表皮に氷の膜をつくってリフトで上げていく。私は一年に九回も清水のマグロ埠頭へ行って調べたことがある。後ろの明星という倉庫に入ったことがある。細かく見ている。どのくらい減るか、わかっている。  サケだって、沿海物というのは立て塩といって塩の分量が決まっているんですよ。振り塩、みんな決まっている。基準があるんですよ。どのくらい減るか、はっきりしている。いまに始まったことじゃないんだ。立て塩のサケ。サケ・マスおのおのを原料として、そのえら及び内臓を除き、その重量の二五%以上の塩を適切に施し、約十日間以上塩漬けする。上からおもしを押すんです。そうすると液体が出てきて、塩が溶けるんですよ。水切りをし、その後の重量の五%以上の塩を合い塩する、こういう原理なんです。こんなことははっきりわかっているんです。通常の塩サケ、塩マスというのは、サケ・マスをおのおの原料として、そのえら及び内臓を除き、その重量の一〇%以上の塩を適切に施して塩漬けしたものに決まっているんだ。そうでしょう。だから、そういうことをやっているから変だという理屈は初めから成り立たない。つまり、製品規格というものの考え方が、逆に言うと皆さんの方は施策が非常におくれているということなんです。だから、正貫取引ができないなんということは初めからない。できないなんていうことがあってはいけない。  そこで、出された通達を見ると、これでできると思いますか。「水産物の取引に当たっては、既に相当数の卸売市場において、各市場の実情に応じ、開設者が主体となり、あるいは卸売業者、仲卸業者等の関係業者が主体となって計量体制を整備し、卸売前に定期的に、又は随時に荷口から抽出する等の方法により計量し、その結果に基づき量目表示を変更した上で取引を行う等の措置がとられているところである。」いまやっているんだ、やっているがだめなんだ、だから、ということなんですね。じゃ、今度はどうするかというと、この通達は、「卸売業者、仲卸業者等の関係業者と十分に連携の上、正しい量目による取引のための体制を整備するとともに、現在、既に整備されている市場にあっても計量体制及び計量方法等についてその内容の一層の充実、改善に努められたい。」これは何を言っているんですか。説明してくれませんか。これでやれると思いますか。
  176. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 先生御指摘の、昨年の七月の高知における大会に私も行ってまいりました。その後、田島会長が御自分で私の部屋にお見えになりまして、古くて新しい話だけれども、こういうけしからぬことがいま行われている、何とかしてほしい、それにしても、生産者と十分話し合うことが基本であるし、話し合うための材料としてぜひとも通達を出してくれないか、われわれはその通達をもって生産者との話し合いに入りたいというお話だったわけであります。すぐその種の通達を出してもよろしかったのでありますが、私自身がもう少し実態を知りたいというふうに思って、命じまして調査をいたしました。そのために若干時間を要した点は大変申しわけなく思っておりますが、そういう趣旨での通達の文書にしたつもりでございます。私たちも、通達を出したからこれで事終われりということではもちろんないわけでありますから、この通達をベースに生産者との、生産者もたくさんの団体がございますのでなかなかむずかしいのでありますが、話し合いの場を設けるように具体的な努力をしてみたいというふうに思っておるわけでございます。
  177. 大出俊

    大出分科員 団体、大変たくさんおありになるのを私も知っておりますから全部一覧表をお出しいただいたわけでありまして、知らぬわけじゃない。だから、さっき、とりあえずサンプル的にこういうところとこういうところというふうに指定をして出てきていただいて、皆さんが中に入って話し合いの場をつくる、そうすべきだと申し上げているので、わからぬわけじゃない。ただ、どうせお出しになる通達なら、もう少し出しようがあろうというのが実は私の言い分なんだ。これじゃ、いままでやっているのが相当な効力を持っているという前提に立っていることになるんです。いままでこういうふうにやっていますとあなたは大会に行ってお答えになっていましたね。  そこで、「計量体制及び計量方法等についてその内容の一層の充実、改善に努められたい」と言うのだが、これだけじゃどうしようもないでしょう。どういうふうに計量体制をつくるのか、どういう計量方法で基準を決めてやらせるのか、そして、結果として出てきたものについて一層の改善をするというのなら、どういうふうに改善しようとするのか。わかっているんだからそこまで触れてもらわなければ、法律だってないわけじゃないんだから、手直ししようとすればできる、規程をつくろうとしたらできる、あるいは要綱をつくろうとしたらできる、要領をつくろうとしたらできる、そこまでのものを体系的に組み立てていかなければ、これだけ規格化できないでいるいまの流通体制というものを直さなければ、かぶるのは小売店だけになってしまう。皆さんよく御存じじゃないですか。だとすると、こういう出し方はなかろうというふうに考えているのです。じゃあ、これ、追跡調査はどういうふうにおやりになりますか。
  178. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 別に言いわけをするわけではないのでありますが、この通達の出し先は市場関係者に出したのが私どもの仕事でございまして、これから生産者団体の方には水産庁生産担当の方から通達を出していただくというふうに考えておるわけであります。二重手間のようでありますが、それが役所のたてまえでもございますので、その点は御理解いただきたいと思います。  それから、具体的な中身につきましては、現物を扱っているその人たちの話し合いの中でどういう具体的な中身をセットしていくかというのを一、二回見てから突っ込んでやってみたい、御指摘の点は十分念頭に置いて措置をしていきたいと思います。
  179. 大出俊

    大出分科員 つまり、せっかく出した通達だから、それに基づいてどういうふうに動いていくかをしばらく見たい。見た結果を皆さんがきめ細かく御調査いただく。そして、さっき私、提案を申し上げているように、やはりどこかで具体的に話し合える場を、生産者の側とそれから小売の皆さんの側と長いこの問題に対する不満が累積しているわけですから、あるいは誤解があるのかもしらぬ、あるいはどういうふうにしようという話がつくのかもしらぬ、そこらのところを皆さんが親切に事前に準備をしていただいて、わかっているんだから、皆さんが考えておる方向にまとまっていくような環境づくりをまずおやりになる。会ったらいきなり角突き合わせるのじゃなくて、環境づくりをして、生産者の側にもこういうふうにやってくれないといかぬよということにして、この通達によって事後調査をなさって、そこでひとついい環境をつくっていただく。小売店の皆さんがいなくては生産者の存在も必要がなくなるんだから、そういう意味でひとつ御配慮を願いたいのですが、いかがですか。
  180. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいまの御指摘、まさにそのとおりでございます。具体的に、かつ実態に合った形で両方の話し合いの場をつくっていくというふうにいたしたいと思います。
  181. 大出俊

    大出分科員 最後の市場内の小売あるいは小売類似行為——類似行為まではなかなかむずかしいんでしょうけれども、そこらのところ、かつて通達を出したことがあるんですか。それからまた、改めてこれはきちっと整理をなさる、そういう意味の何か行政的な手をお打ちになる気はございませんか。
  182. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 卸売市場の仲卸のところに一般の消費者が買いに来るという場面が事実上あることは否定できないわけでございます。しかし、たてまえとしまして卸売市場は卸売の場でありますので、そういうことはあってはならないということは、昔のことまでは私記憶にございませんが、最近そういった通達を出した記憶はございません。しかし、会合とかそういう指導者を集めての会議とかのときには、農林省の考えを聞かれますと、はっきりとそれは卸売の場である、法律にそう書いてあるではないかと、それからたとえば東京の築地あるいは横浜あたりでも、この市場では一般の小売はいたしておりませんから御遠慮くださいという看板はあちらこちらにかけてあるわけですが、具体的に仲卸さんがわからないというかっこうで何となく伝統的に若干のそういったことがあるようでございます。
  183. 大出俊

    大出分科員 一つの方向として、場所をこしらえて一般の皆さんにもということをおやりになるところもある。しかし、全体としてながめますと、小売業の方と市場とのいろいろな争いが起こったりする。そこにおいでになる方々というのは、市場というのは離れていまして足の便の余りよくないところですから、おいでになる気がある人でも相当な骨が折れるわけですよ。だから全体として見ると、そんなに効率的になってもいない。だからもう一遍見直して、主として小売をなさっている方々の立場というものを考えてみて整理をしていただく。前におたくの方でしゃべっているこれを見ると、かつて出したことがあると言っているから聞いたんだが、出したことがないというなら、改めてどういう整理をするかを御検討いただいて、この席とは申し上げませんから、また別の場所で結構ですから、お知らせをいただきたいと存じます。  最後に「一日魚教室」の件について残っております。  私がさっきちょっと申し上げましたが、資金的には非常に楽でない団体であることは皆さんの方で御存じなんだから、国が取り上げてという方向で何としてもやっていただけぬかという気がするんですが、いかがでございますか。
  184. 松浦昭

    ○松浦政府委員 私どもも実はお魚の普及に当たりまして、ぜひ小売の方々のお力添えもいただきたいと思っておったところでございますが、私ども聞いておりましたのは負担の関係ということでございましたけれども、ただいま先生の方からさらに労働力の面と申しますか、そこに出ておいでになるその労力という点からも問題があるということはよくわかりました。私どもといたしましても、やはり第一線でお魚を売っていただく方に参加していただくということは非常にいいことだと思っておりますので、いろいろな工夫をこらしてみたいと思っております。
  185. 大出俊

    大出分科員 終わりますが、私は実は「一日魚教室」におつき合いしてみてちゃんと経験しているんです。主婦の方々は非常に喜んでいるわけですから、大変な宣伝になるのです。一軒のお魚屋さんのお得意さんというのは大体半径五百メートルしかないのですよ。奥さんの足ではそれしか歩けぬからですよ。だから、この宣伝というものは非常に効果があるんですね。下手なパンフレットをつくるよりいいですよ。とにかくいま大型、中型のスーパー、大店舗がどんどんふえていますけれども、これは頭打ちで、合併、吸収なんという問題が起こっていますが、一方、零細な商店というものは相変わらず新規参入がふえている。業種一切なべて計算をしますと、一店舗について国民七十人で支えている勘定になるのですよ、割っていきますと。いまそういう非常にむずかしい段階だから、高いところで、いまの小売店舗あるいは中、大のスーパー的なものをどう扱うかという基本的な問題まであるんですから、そこらも考えていまの問題はぜひひとつ御検討いただきたい、やっていただきたい、こういうふうに思います。  終わります。
  186. 植竹繁雄

    植竹主査代理 これにて大出俊君の質疑は終了いたしました。  次に、中村重光君。
  187. 中村重光

    中村(重)分科員 農林大臣、例の南総事業でお尋ねをいたします。  南総事業を転換して防災事業ということで進めることになっています。この事業費であるとか締め切り地点、その他施行の方法について煮詰まったんですか。
  188. 森実孝郎

    森実政府委員 従来の長崎南部の総合開発事業計画につきまして、島原半島、対岸の佐賀等の各県の漁業者の合意がなかなか得られないで……(中村(重)分科員「経過はいいです。わかっています」と呼ぶ)  そこで、今後の問題といたしましては、私どもは諫早湾の防災的な干拓事業として縮小された規模実施するという基本方針で話を進めております。  内容につきましては、まず一つは、長崎県が島原半島の漁業者との間の合意の形成に努める。これを受けて、長崎県及び農林省が協力いたしまして、佐賀県等他県との漁業者の調整に当たり、そのめどと、それからもう一つは、一方において、われわれが実施しております地質調査その他の結果を踏まえまして、現実的であり、かつ技術的にも可能な線で陸地化する部分、締め切り堤防の位置を今後決めてまいりたいと思っております。
  189. 中村重光

    中村(重)分科員 締め切り地点にもよるのだけれども、例のヘドロ対策とそれから塩害対策なんというのは防災事業です。ということになってくると、私は相当締め切り地点というのが狭められてくると思うのですね。そうすると、ヘドロ地帯になるのだから、どうしても締め切りのところは浮いてくるわけですね、いまの防災事業はみんなそうなっておるわけだから。そういうことだと思うのだけれども、防災事業に切りかえた場合も、法律的には私は南総事業の場合だって、別に同意が必要ではないと思っているのだけれども、これは実際問題として同意を求めざるを得ないということでやっているのだろうと思うのです。法律的は別として、運用の面で、やはり南総と同じように佐賀県その他関係県あるいは湾外民の同意が必要になってきますか。
  190. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、埋め立てられる部分、つまり漁業権漁場が消滅する部門とそれから影響を受ける部門については、法的な扱いはおのずから違ってくると思います。ただ、今日の社会状況のもとでは、影響を受ける範囲につきましては、もう先生も御案内のように、十分経過がある話でございますから、関係漁業者の合意の形成がやはり前提になると思っております。
  191. 中村重光

    中村(重)分科員 これは大臣からお答えいただくのだけれども、事業転換が抜き打ちだというので、県議会等でも強い批判が出ております。私は、経過からして抜き打ちだと思っていない。これは当たらざる批判であるというように思っているのです。なかなか同意を得られないから、結局行革、財政再建という中で火が消えてしまう、それではだめだからということで、実際は施行可能であるというような判断のもとに、防災事業に切りかえざるを得ないということで、火を消さないというようなことで、私は大臣は対処をしたのだろうと思っているのです。ですから、その批判、これに対する大臣の見解を聞きたいのだけれども、大臣の答弁は大演説になるから、三十分はそれで終わってしまうから、私はこの見解は恐らくそのとおりだということだろうと思うので、それはお答えをいただくのですが、この防災事業の関係県との同意問題はいまお答えがあったわけですが、湾内の漁民は、南総で決めておった補償金三百数十億、これはもう絶対に確保する、引き下げは反対であるということを言っているのです。漁民の心情わからないことはありません。これは農水省と県を信頼して、正直に言えば振り回されてきたわけだから、いまになって計画変更である、補償金を減額するんだということになってくると、漁民は納得しないということで、私はそれは理解を示しているわけです。  さて、国のお金だから、これは実際問題としてむずかしいことになるのだろうと思っているのですが、そういうことでは、五十八年度、いまのお答えでも、具体的な計画を立てるのに農水省自体が相当な期間を要するのだろう。もちろんこれは県との話し合いでやっていくのでしょうけれども、五十八年は着工は私はむずかしいのではないかと思うのです、漁民の説得という問題、またいまの具体的な計画を進めるという両面において。この点、どうなんです、できないとしたら。
  192. 森実孝郎

    森実政府委員 従来の考え方が、いわゆる技術的検討で位置を決めて、しかる後補償に入る、交渉に入るという段取りを経てきて、なかなか解決しなかったという経過があるわけでございます。今回の考え方は、県及び農水省が、県は島原半島と、また県と農水省が協力して佐賀県等と話し合いを進めて、いわば漁業者の合意を得られる現実的な線を発見していく。これと並行して地質調査等を進めて、そのおおむね近い線で技術的な可能性を検討して位置を決めるという、並行した検討を進めてまいりたいと思っております。それの方が結局は事業を現実化し、着工を早くする有効な方法ではないかと観念しているわけでございます。  それからなお、漁業補償の問題でございますが、いわゆる締め切り堤防の位置が後退します場合は、従来消滅することになる、つまり陸地化することになっておりました漁業権漁場が従来どおり漁場として一部残るわけでございます。これは漁業をやれるわけでございまして、いわば締め切られる内側については、従来と同じような考え方でいくことになると思いますが、外側については、影響の程度というものに応じて問題を考えるという段取りになるとお考えいただく必要があると思っております。
  193. 中村重光

    中村(重)分科員 大体、計画変更したのだから、どの程度かかるということだけはつかんでおられるのだろうと思うのですよ。どの程度かかるのですか、防災事業の計画は。
  194. 森実孝郎

    森実政府委員 御案内のように、現在潟化が進んでおります面積は約三分の一ございます。この部分はいわゆる複式干拓の工法による場合陸地化せざるを得ない部分、またそれをやらなければ工事も行えないし、防災上の効果もないと思っております。  そこで、結局その外側に防潮堤と申しますか、締め切り堤防をつくるわけでございます。この締め切り堤防の位置がどう動いてくるかということが着工についての合意の形成に非常に影響がある部門を持っている。と同時に、その位置によってはやはり技術上の工法も変わってまいりますし、それからもう一つは、事業費の負担というものも変わってくる点がございます、なかなか地盤がむずかしい場所でございますから。そういう意味で、いわば三分の一の陸地化が一つめどであり、その外側に防潮堤を出すということを基本に置いて考えるということは申し上げられますが、具体的な締め切り堤防の位置については、十分今後の話し合いの過程で調査を進めて、もちろんいつまでも遷延するわけにいきませんので、大臣の御指示もございまして、私どもできるだけ早いうちに一つの案を固めてまいりたいと思っております。
  195. 中村重光

    中村(重)分科員 防災事業は約二千億ぐらいかかるというので数字まで出ておることは、私は前から知っている。五十七年度の予算のときも県の方からそういうような試算をし、構造改善局の方でも、これは非公式であろうけれども、そういうような資料があったと私は思っている。だから、南総をやっても二千二百億だ、防災事業をやっても二千億ぐらいかかるじゃないか、それならば南総事業をやるべきではないかというようなことが、これは公式に出たわけじゃないのだから、私はそこまでは言わないのだけれどもね。ある意味においては南総事業をやるために——防災事業をやっても二千億程度かかるのだから、大して変わらないからというので、南総事業を推進するということに、私はそのためにある程度の数字をはじき出しておったのだろう、こう思っています。  実際問題としてその程度の事業費がかかるということになってくると、また漁業補償の問題等々から南総事業に変更してもいいじゃないかというような意見が相当強くなってくる可能性がある。もし金子農水大臣がかわったとすると、まさにその意見に拍車がかかってくるであろうと私は思っているのですが、この計画変更、またもとの南総事業に変えるということだってあり得るのですか。これは大臣からお答えいただくか……。
  196. 森実孝郎

    森実政府委員 私ども農水省の方針として、いわば防災的な干拓事業として事業規模の縮小を図るという考え方を正式に決めて予算折衝も行い、決めた方針でございます。したがって、この方針は今後当然踏襲されていかなければならないと思っております。  なお、御参考までにただいまの御質問にも関連して出ておりましたが、いろいろな防災事業のやり方とそれに応じた金額の試算ができておりますが、私ども現在の南総事業と同じような事業費がかかるとは本来の考え方では思っておりません。ただ具体的に申し上げますと、やはり軟質地盤に堤防をつくらなければならない関係上、単位当たりの、つまり造成される土地当たりあるいは単位の水当たりの造成コストは幾らか割り高になるだろうということは否めないと思っております。  いずれにいたしましても合意を形成して事業を着手する可能性を発見するということに今回の政策転換の力点があるわけでございまして、このことは客観的な事実でございますから、おっしゃったような見方も一部にはあるのかもしれませんが、そういうことはないと御理解いただきたいと思います。
  197. 中村重光

    中村(重)分科員 ともあれ私は、先ほど抜き打ちだということは、これを言う批判は当たらないということで理解を示したんだけれども、いまあなたの防災事業に対するいわゆる締め切り堤防の位置の問題であるとかあるいは事業予算の問題であるとか、それらのことをこれからやるんだということになってくると、若干場当たりであったという批判は免れないであろう。そういう意味から、費用負担をしなければならない地元の長崎県に対しての話し合いというものが十分なされていなかったということになるんだと思うのです。  今後この事業の推進は、南総事業と同じように農水省が責任を持って推進をするということになるのですか。いかがですか。
  198. 森実孝郎

    森実政府委員 事業といたしましては、直轄の干拓事業として実施する考えでございます。農水省の事業でございます。ただ具体的な補償問題の解決につきましては、懸案の島原半島をどう片づけるかという問題については、やはり県が主力になってやっていただくことになるだろう。他県との折衝については、状況を踏まえながら長崎県と農水省が、具体的には九州農政局が協力して当たることになるという方針を決めているわけでございます。
  199. 中村重光

    中村(重)分科員 いずれにしても余りにも長過ぎる。これはいろいろ計画が二転三転——かつて干拓事業という場合、水田大蔵大臣が三年間できなかったからといって予算を打ち切ったという歴史もある。それから県の知事がかわり、多目的に変わってみたり、いろいろなことでこういうようなあり方というものは全く私は他に例を見ないであろうというように思っていますから、ぜひ地元との話し合いも積極的に進めていくということで対応されるように期待をいたしておきます。  密漁船の問題についてお尋ねをするのですが、これは韓国の漁船の場合、あるいはサンゴ等採取のための台湾の漁船、あるいはつかまえてみたらわが子であったというようなこともあって、国内の密漁もある。いずれにしても深刻な問題になっているわけですが、どのような対策をお持ちになっておられるのか。
  200. 松浦昭

    ○松浦政府委員 最近の密漁の状況は非常に深刻なものがございます。おっしゃられるとおりでございまして、これに対する取り締まりを強化する必要があると思います。このために海上と陸上と両面から地元県あるいは警察あるいは海上保安庁とも密接に連絡をいたしまして、今後とも密漁の効果的な防止に努力したいと思っておるわけでございますが、特に一つの大きな問題は、密漁をつかまえましても罰金が非常に低いという問題があろうと思います。この点につきましては、昭和二十四年に制定された漁業法の当時のままでございまして、密漁の抑止に必ずしも効果的ではないという点がございますので、実は目下法令の改正を検討いたしておりまして、特に水産資源保護法と漁業法の罰金額を現在時点の物価に修正いたしまして、たとえば県の漁業調整規則違反の場合には最高現在一万円でございますので、これを少なくとも最高十万円程度に引き上げるということで目下検討を行っております。成案ができますれば、この通常国会に御提案を申し上げたいと思っております。  幸いこれをお通しいただきますならば、これを契機にさらに一層密漁の防止に当たりたいというふうに考えておる次第でございます。
  201. 中村重光

    中村(重)分科員 厳しさが足りないんじゃないですか。巡視船とか監視船なんかが密漁船より船足が遅いというようなこと、なかなか逮捕できないということもあるんでしょうが、逮捕することをちゅうちょしているというようなことがあるんじゃないか。この点はもっと強力な対策が必要だと思っているんだけれども、いかがですか。
  202. 松浦昭

    ○松浦政府委員 私ども、密漁の問題は漁業者に与える影響も非常に大きいわけでございますので、決してちゅうちょいたしているつもりはございません。ただ御指摘のように相手方が非常に高速の船を使っているというような場合もありまして、なかなかわが方の監視船がこれに追いつかないといったようなこともございますが、逐次監視船も整備をしておりますし、先ほど申し上げましたような罰則の強化とあわせまして、今回これを契機に効果的なかつ強力な密漁防止策をとりたいというふうに考えておる次第であります。
  203. 中村重光

    中村(重)分科員 海上保安庁もお見えですが、この点に対する考え方を……。
  204. 赤澤壽男

    赤澤説明員 御説明します。  対馬の周辺海域とか、九州の西方海域などにおきましては、先生御指摘のとおり、外国漁船の不法操業の問題あるいは密漁船の問題がございまして、私どもの方も監視、取り締まりのために長崎県内、先生御承知のとおりでございますが、厳原海上保安部、長崎海上保安部、佐世保海上保安部等の巡視船艇をもちまして常時配備をいたしております。そして、これらの操業実態を見ながら航空機なども飛行させまして取り締まりをいたしておりますが、今後の問題としましては、御指摘がございましたように非常に密漁船が高速であるというようなことなどもございます。そういう点で現在対応しております監視取り締まりの体制を強化してまいるのは当然でございますが、さらに高速の巡視艇による対応がかぎだろう、このように考えておるわけでございまして、今後長崎県下の海上保安部に高速の巡視艇を配属あるいは配属がえすることなどもあわせて検討してまいりたい、このように考えております。
  205. 中村重光

    中村(重)分科員 農水大臣、南総の問題は私も強いてあなたの答弁を求めなかったんですが、かといって口を開かないわけにはいかないでしょう。何かを言わなければならぬだろう。いまの密漁船の問題、あなた以上の専門家はいないわけだから。そこで、水産物の輸入依存というものが非常に強まってきた、だからこういう依存というものをできるだけ低めていく、このためにも沿岸漁業の振興というものをもっと強力に魚礁その他推進をしていかなければならないというようなこと、これらの問題点を含めて、私がいまお尋ねをいたしました密漁船の問題だとか、あるいは南総防災事業の推進の問題等々について、ひとつ見解を聞かせてほしい。
  206. 金子岩三

    ○金子国務大臣 南総の問題は、端的に申し上げますと中村先生よく御承知のとおり、この問題がいろいろ取り上げられましてから約三十年近くなりまして、いろいろな紆余曲折を経、いろいろな投資効果等を考えて議論をされてきた結果、結論は県内の島原漁協を初めいわゆる湾外の佐賀県、福岡県、熊本県、こういうような方々の漁業資源保護の意味から反対を続けられている。私の見解は、南総では永遠に実現性がないという考え方、これが私の持論でありましたので、この際、実現性のある方向で、まず、諫早に明治以来数回洪水が起こった本明川という川があります。この河口が、現状では、干潟ができていっそういう洪水が起こるかわからないようなおそれがあるので、この防災を主眼に考えて、副産物として土地ができるあるいは遊水地ができるとかいうことは工法によって決まることで設計をしてみなければわからぬことでありますけれども、いずれにしても実現性のある方法、いわゆる湾外の佐賀、熊本、福岡の同意を得ること、島原の漁協の同意を得ること、そういうことで防災を中心にしてやろう、こういう出発をしておるのでございまして、いろいろ議論があるようでございますけれども、これは実態を知らない方々が言われておることであって、中村先生は私と同じように実態はすべて百も承知しておるのでございますから、御理解をいただいて、推進に御協力願いたいと思います。  それから、密漁船が、韓国に最も近い関係で長崎県沿岸から佐賀、福岡にかけて最近、特にこの三、四年熾烈になってきております。私も、その都度海上保安庁にも水産庁にもいろいろとお話しして、この取り締まりを強化して、沿岸の皆さんの迷惑をできるだけ少なくさせるように努力を続けてまいっておりますけれども、なかなからちが明きません。したがって、この十日から松浦水産庁長官を韓国に差し向けまして、向こうの水産庁長官とよく話をしてもらって、韓国自体で日本の沿岸で密漁する漁船を取り締まって、厳しい規制をしてもらいたい、こういう考え方で臨んでおります。    〔植竹主査代理退席、主査着席〕  貿易の自由化で水産物も相当入っております。水産物のことは余り表に出ませんけれども、競合する魚をとっておる業者は輸入水産物を規制すべきだと絶えず言われております。ある程度の規制は行われておりますが、自由品目もありますし、海外から入ってくる水産物については、今後一層検討をして、国内の業者にこれ以上迷惑をかけないようにしたい、このように考えております。
  207. 中村重光

    中村(重)分科員 水田利用再編成対策について見解を伺うのですが、減反面積は五十八年度六十万ヘクタールということにされるようですが、豊作になったら減反をする、不作だとこれを緩和するというやり方はきわめて不見識だと思っているのです。ここ三年間ぐらい、食糧の不安また世界的な不安の傾向は非常に強まってきていること等を考えてみると、食糧は戦略物資ということにもなっているし、みずから食べるものはみずからつくる、やはり食糧問題は国の基本でなければならぬと私は考えるのです。したがって、食糧と飼料作物の自給率を高めるということでなければ穀物の自給率は高まってこないわけだから、そうした考え方の上に立ってどうするのかということになってくると、農業を産業として位置づけるという大前提がなければならぬと私は思います。そのためには生産組合等をつくって集約化を図る、そして大型機械を導入して生産性を高める、同時に国際競争力を強めていくということでなければいけないのだと思っているわけです。  それには日本特有の農地の状態から考えてみまして、小規模基盤整備事業の採択基準を下げて事業枠を拡大していくというようなことは重要な課題であると考えているわけです。同時に、減反政策というものはやめて、そしてえさ米であるとか加工用、工業用の米作を相当拡大していくということでなければいけないのだと思っているわけですが、それらの点に対しての考え方をお聞かせいただきたい。
  208. 森実孝郎

    森実政府委員 本年度予算の際に決定されました第三次土地改良長期計画、これは近く閣議決定されることになっておりますが、これを基準にいたしまして今後十年間計画的な基盤整備事業の推進を図ってまいりたい。その場合、御指摘のような圃場条件の整備が最大の課題でありまして、整備率七割という目標を掲げて実施してまいりたいと思っております。  また、御指摘にありましたようにその実態にかかわる問題でございますが、従来東日本に圃場整備事業の重心がかかってきた、今後は西日本にかなり重点が移行するというのがわれわれが積み上げた一つの展望でございまして、圃場整備事業の採択基準の引き下げ等の議論もございますが、今日の状況のもとではなかなかむずかしい問題もありますが、西日本に圃場整備事業を組織的に推進するための総合的な努力は、これからもいろいろな面で検討してまいりたいと思っております。
  209. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 水田利用再編対策の問題でございますが、お話がございましたように、期間中余り目標面積を変えないというのが私どものたてまえでございますが、御承知のように三年続きの不作という事態もございまして、前年産米の期末の持ち越し数量が非常に減少してきております。そういう事態を踏まえまして、五十八年度においては本来六十七万七千ヘクタールになるべき目標面積を六十万に減らしたわけでございます。  ただ、やや中長期的に見ますならば、日本の米の潜在的な生産力は千三百万トン以上もあるわけでございますし、一方消費の方は一千万トンそこそこということでございますから、放置いたしますと年間に三百万トン近い過剰が発生するという事態でございまして、こういう米の需給均衡を図るためにこの対策そのものをやめるというわけにはまいらないと考えております。  ただ、五十九年度より第三期対策ということに相なりますので、ただいま需給の枠組みの問題などを含めまして検討中でございますが、その際に御指摘がございましたような、たとえば多用途米というふうな問題は、かねての懸案事項でございますので、第三期において具体化できるかどうか、そういう問題を含めまして鋭意検討中でございます。
  210. 中村重光

    中村(重)分科員 時間が参りましたからこれで終わりますが、純米酒の生産促進の問題を含めて大臣から最後にお答えを。
  211. 金子岩三

    ○金子国務大臣 水田再編成、いわゆる減反をこのように続けていくということは常道ではないというような御意見は、私も理解できます。しかし、米の消費は年々落ち込んでいきますし、毎年平均十三万トンずつ消費が落ち込んでいっているわけです。減反しないでそのまま耕作させるならば、生産は一五%ぐらい上がっていく、こういうことで大変むずかしい政策なのでございまして、一朝一夕には結論が出しにくい。朝令暮改でことしは六十万ヘクタール減反して来年は五十万ヘクタールとか、こういうことを続けていくことは農家にとっても大変大きな苦痛でありますから、長期的に安定した水田の再編をやっていきたい、このように考えております。
  212. 中村重光

    中村(重)分科員 終わります。
  213. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて中村重光君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  214. 山原健二郎

    ○山原分科員 マグロはえ縄漁業、日本の遠洋漁業の将来につきましてお尋ねしたいと思っております。  一つは、いわゆる燃油の問題でございますが、このことについて非常に深刻な事態を迎えておりまして、燃油価格をちょっと見てみますと、昭和四十九年また昭和五十四年の二度の油の高騰によりまして、たとえば遠洋漁業はもちろんですが、農業用すべて含めまして、油の高騰が、昭和四十八年にキロリットル一万五百円だったものが五十六年には七万六千六百円と実に七・三倍になっております。コストに占める燃油費の割合を見ましても、四十八年の九・四%が五十六年には二五・四%、こういうふうになっておりまして、いわゆる燃油の値上がり問題というのは、遠洋漁業にとりましてもきわめて重大な問題になっているわけですが、この点について水産庁として、遠洋漁業の今後の発展を考えました場合に、どういうふうな認識をしておられるか、これをまず最初に伺っておきたいのです。
  215. 松浦昭

    ○松浦政府委員 漁業における燃油の問題というのは非常に深刻な問題でございまして、御案内のように、二百海里の規制とこの燃油の価格の高騰というものが漁業経営を非常に大きく圧迫させてきたということは事実でございます。過去十年間に燃油の価格が約七倍に高騰しておりますのに比しまして、魚価が二・五倍程度に上がっているということは、経営の圧力がこの点において非常に高いということが言えると思うわけでございます。これは二回のオイルショックによってこのような状況になり、特に昨年の状況におきましては、円安がこれに拍車をかけまして、非常に深刻な状況になったわけでございますが、このために漁業用の燃油価格をとってみますと、昨年十二月末までに七万九千百円キロリットル、これは全漁連と日鰹連の扱いで焼津、清水の地区の平均価格でございます。このようなところまで上がってまいったわけでございます。  ところが、最近におきまして為替レートが昨年の十一月中旬以降に円高基調に転じましたことと、産油国におきまして、世界的な石油需要の停滞等に対応いたしまして若干の値下がりの動きが生じてきたといったようなことから、漁業用燃油につきましてはその引き下げができるのではないかということで、水産庁といたしましても、特に全漁連あるいは日鰹連といったような燃油を扱っており、かつ、ある意味では漁業用燃油のリーダーシップをとれるという業界に対しまして、その値下げ方を指導してきたわけでございます。このようなことから、本年一月一日からキロリットル当たり四千五百円の値下げを両団体行いまして、一月以降は七万四千六百円という水準で推移をしてきております。  今後の見通しでございますけれども、一応きょうもOPECの会議をやっているようでありますが、需給の緩和の傾向にございますので、原油価格の値下がりということが見込まれるという現状のもとにおいて、系統団体に対しましても、今後ともこのような原油の値下がりに応じまして、その適切な価格水準の設定ということを指導してまいりたいというふうに思っているわけです。  さらに加えまして、このような、単に値下がりを待つということだけではなくて、非常に重要なことは、やはり省エネ対策ということだろうと思います。この根幹は、やはり技術開発にあるというふうに私どもは考えておりまして、特にマグロの漁業につきましては、船型をより細い形にする、これによって燃油の消費を落とすことができる、あるいは大口径のプロペラをつける、あるいはA、C重油の混焼といったようなこと、さらには、最も燃油を使いますところの冷凍設備につきまして、たとえば塩化カルシウムブライン凍結法といったような新しい方法を用いまして、できるだけ燃油の節約を図っていくということが今後肝要であるというふうに考えておる次第であります。
  216. 山原健二郎

    ○山原分科員 いま長官の方から、一定の方向を持っておられるということをお聞きしまして、さらにこの燃油の問題につきましては、いまOPECの話も出ましたが、北海石油の値下げの問題を含めまして、さらには、OPECの場合に、大体アメリカの財務長官の話でも、現在一バレル三十四ドルが二十五ドルになるであろうとか、あるいはロンドン市場の場合には二十ドルになるであろうというようなことも出ております。先ほど話がありましたように、四千五百円を下げておられるわけですね。さらに、こういう情勢にありますから、これの値下げをしていく指導、これをぜひやっていただきたい、これはまさに死活問題になっておるわけでございますから。率直に言って、大体どれだけ値下げを見込んで指導されようとしておるかということもお聞きしたいのですが、そういうおつもりがあるかどうか伺いたいのです。
  217. 松浦昭

    ○松浦政府委員 昨今の原油生産国の石油価格値下げの状況に従いまして、私どもも、先ほど申し上げましたように系統団体を指導しておるわけでございますが、系統団体で大体三割のシェアを持っております。ですから、かなりのリーダーシップをとるのじゃないかというふうに考えておるわけでございますが、業界の中でも、私どものこういった要請もあり、また生産者からの非常に強い御要望もございますので、このような方向で現在検討中であるというふうに聞いておる次第でございます。  幾ら下がるかということにつきましては、これは原油の価格の値下げが幾らであるかということがまだわからない状況でございますので、その腹づもりを申し上げられる段階にはないわけでございますが、原油価格の下がった状況に応じまして、これを適切な価格水準に引き下げてもらうというふうに考えておる次第でございます。
  218. 山原健二郎

    ○山原分科員 コストに対する燃油の値下がりによってその比率が低下するというのは非常に顕著に出ているわけですね。五十三年の場合のキロリットル二万七千円になったときのコストに対する比率が一五・六%に下がっているという、実にはっきり出ているわけでして、そのときは黒字船が六六%出ておりまして、石油価格の引き下げというものが非常に顕著に漁業関係に影響してくるわけですから、その点、ぜひさらに指導を強めていただくように要請をいたしておきたいと思います。  二つ目の問題は、遠洋漁業における減船の問題でございますが、私は高知県ですけれども、周知の遠洋漁業の根拠地である室戸の場合、この二年間に二割の減船が行われておるわけですが、百三十二隻あったものが二十七隻減船をしまして、現在百五隻という状態になっております。それでマグロはえ縄につきましては減船が相次いでおりまして、もともと昭和五十年の許可隻数九百五十一隻が五十七年には八百一隻と、こうなっているわけですが、こうした場合、漁獲量の増大あるいは操業日数の短縮というためにどうすればよいかということですね。いまお話がありましたように技術の開発の問題、いま長官が触れられましたけれども、その技術の開発をするに当たって、たとえば具体策としてこういう方法は考えておられるのかどうか、漁業経営負債整理資金の活用ですね、そういうことはお考えになっておるかどうか伺いたいのです。
  219. 松浦昭

    ○松浦政府委員 マグロはえ縄漁業が今日のように異常な苦境に立ちました原因を長期的に見てみますると、大きく申しまして三つほどあると思います。  その第一は、何と申しましても、沿岸各国におきますところの二百海里の設定によりまして、特に優良な漁場が大幅に制限されてきたという問題が一つあろうと思います。  その次は、何と申しましても二度にわたる燃油価格の高騰によりまして、特にこのような長期の航海によりまして漁獲をいたしております漁業につきましては、この燃油価格の高騰が非常に大きく響いたということが第二点であると思います。  その三は、やはり消費構造の変化、特に実質所得が伸び悩むという現在の経済の事情のもとにおきましては、このような高級な魚種でございますところのマグロのような品目につきましては、消費の低迷が生ずるといったような問題がありまして、これで構造的な不況になったと思います。  したがいまして、マグロ漁業に対しますところの対応策というのは、どうしてもこの三つにそれぞれ対応していく対応策が必要であるというふうに考えるわけでございます。  その第一は、何と申しましてもこの二百海里の漁場をこれ以上制限されないということでありまして、各国、特に沿岸国、これは発展途上国もたくさん含まれておるわけでありますが、こういった国々も含めまして、強力な外交の展開、特に経済協力、技術協力等を行いながら漁場を確保していくということが第一に必要かと思います。  その第二は、燃油価格の高騰による操業コストを低下するという問題でありまして、この点につきましては、先ほども申しましたように省エネルギー型の漁船を導入する。それからまた、その場合には単に船形だけではなくて、プロペラあるいはエンジン等につきましてもいろいろな改良を加えていくということが必要であろうと思います。  さらには、冷凍装置が非常に油を食いますので、これにつきましても省エネを実施していくということが必要であろうというふうに考えまして、これらの総合的な対策を講じていくということのために、実は五十八年度予算でお願いをいたしておるわけでございますが、今回新規の予算として三億一千万円の技術開発のための予算を計上いたしておるところでございます。この点につきましては財政当局の御理解も得まして、この技術開発の予算を計上いたしておりますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思う次第であります。  なお、これに加えまして、何と申しましても漁獲努力量が余りにも大きくなりましたために、マグロの場合には釣獲率が落ちるという問題が起こってきたわけでございまして、この釣獲率を向上して一隻当たりの年間漁獲量を増大いたしますためには、どうしても減船をやっていただくということが必要でございまして、マグロ、カツオの業界、非常に前向きにこれに対処していただきまして、いわゆる二割減船を行っていただくことになったわけでございますが、減船を行います場合にはどうしても共補償というものが必要になります。共補償を実施してまいります場合に一番大きな問題は、現在非常に多額の負債を抱えておられる、やめていかれる方、あるいはやめないまでも残っていかれる方、さらには共補償をなさる方方、こういった方々の負債をきれいにいたしませんと、なかなかこの共補償をし、減船をするということができないわけでございます。そこで、私どもとしましては、業界の自主的な努力というものを前提にいたしまして、また共補償に貢献していくということをその努力のバロメーターにいたしまして、これにふさわしい形で今度はこの残っている負債を整理していくということのために負債整理資金を三百五十億、五十七年度予算で確保させていただきまして、これが実施に当たろうという段階に来ておりまして、このような減船の計画に即応いたしまして、私どもといたしましては負債整理資金を使用していく、これをお貸ししていくということを考えている次第でございます。
  220. 山原健二郎

    ○山原分科員 いまお話もありましたが、三つ目の遠洋漁業の不振の原因としての二百海里問題ですね。これは大臣もお聞きいただきたいのですが、二百海里問題が起こったのは大分前のことでありますけれども、実際は漁場の喪失というのが深刻な事態を迎えておりまして、航海操業日数が昭和四十八年に二百三十四日、一航海であったわけですけれども、それが昭和五十六年には三百四十九日、年じゅう操業しておるという状態が出ているわけです。それでもうけておるかというと、償却後利益は、昭和五十四年に、これは油が下がったときでありますが、六六%が黒字船であったのが、五十六年には三三%に減っておりまして、まさに黒字と赤字が逆転をするという事態が起こったわけです。さらにその上にマグロ漁場が次第に狭められていくわけでございまして、たとえば日本マグロ漁業の締め出しですね、これは一体何年くらいもつのかという深刻な事態を迎えておるわけです。  たとえばアメリカの場合にしましても、八三年には許可されたものはわずか一隻、それからヨーロッパ側も危なくなっております。南マグロ漁場も締め出しにかかっておるという状態。ここも喪失の可能性がある。それからアメリカ自身も、アメリカからミクロネシアまで進出をして、米商務長官自体も日本の海域に入れよということを要求をしてきておるという状態の中で、将来を考えました場合に、本当に日本の遠洋漁業は成り立つのか。メキンコも現在マグロ船をどんどん建設をしておるという状態。前に私も取り上げました韓国の問題、さらに新勢力が進出をしてきているこの中で、日本のマグロ漁業を保全するためにどうすればよいかという点ですね。  その点について、たとえば北洋漁業の減船その他が行われましたときに、基金が創設をされましてそれに対する対応がなされたわけですが、そういったものを水産庁として考えておられるかどうか。その点を、先ほど少し触れてお話しされましたけれども、明確にしていただきたいのです。
  221. 松浦昭

    ○松浦政府委員 この二百海里の規制というものは、マグロ漁業のみではなくて、あらゆる日本の遠洋の漁業に大きな圧力をかけてきている状況でございまして、現在の世界全体の大勢を見ましても、この状況は苦しくなることこそあれ、決して楽にならないというふうに思うわけでございます。しかし、そのような中にありまして、私どもといたしましては、何とかこの漁場の確保ということのために最善の努力を払っていかなければならぬというふうに考えておりまして、これには粘り強い外交交渉の展開以外にないというふうに考えているわけでございます。マグロの漁業の面ではございませんが、先般カメンツェフ漁業大臣に日本に来ていただきまして、金子農水大臣との間に非常に腹を割ったお話し合いをしていただきまして、日ソの漁業協力関係というものを築き、北洋における漁業の安定を図っていただくということの話し合いをしていただきましたのも、このようなことからでございます。  そこでマグロのことになるわけでございますが、マグロは日本の近海の漁場のみではなくて、アメリカ周辺の東海岸の漁場もございます。また西海岸の漁場もございますし、また南はニュージーランドからオーストラリア、さらにはケープタウン沖までのインド洋の漁場というものもございます。それからまた大西洋の側におきましてはアメリカ、カナダあるいは南米の諸漁場、さらにはヨーロッパの沖の漁場まで一連の漁場がございまして、ここに日本のマグロ船が進出いたしまして漁獲を行っているわけでございますが、率直に申しまして、どこの漁場ともみな年々非常に激しい交渉の後におきまして少しずつ漁場が失われていくといったことが現実であるわけでございます。私どもといたしましては、何とかこの点に歯どめをかけまして漁場を確保したいと思っておるわけでございますが、これは何と申しましても、一つ一つの交渉を丹念に粘り強くやっていくということ以外には私どもは特効薬はないというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、このような外交交渉を進めていきます際に、やはり一つはわが方の外交の布陣というものを強化するということが必要でございまして、大臣、国会で何回か御答弁なすっておられますが、水産庁が主体になってこのような漁場確保のための外交交渉に当たれという御指示をなすっておられる次第でございまして、さような意味でわれわれも、関係国の在外公館等に水産担当官を配置する、あるいは官民一体の大型ミッションを出すといったようなことを現実にやっておるわけでございます。  それからまたマグロ漁場の確保のために非常に効果がございますのは、何と申しましても漁業の協力であるというふうに考えます。この面におきまして技術の協力あるいは経済の協力をして、当該国の協力関係を増進させながら漁場を確保していくということが、特にマグロ・カツオ漁業の場合には必要でございまして、このために五十八年度の予算におきましても、いわゆる国際漁業の振興関係、つまり海外漁業協力財団の貸付金の造成といったようなことに充てますために四十三億の予算を計上していただいておりますし、また特に、海外にいろいろな漁業の関係の援助をしていって、それで漁場を確保するといったようなことも非常に重要でございますので、五十八年度予算には七十九億のこういった海外援助の関係の予算も計上をさせていただいているわけでございまして、目下御審議をお願いしているわけでございます。これらの予算も効果的に利用いたしながらこの漁場の確保に努めてまいりたいというのが水産庁の考えであります。
  222. 山原健二郎

    ○山原分科員 二百海里の問題にしましても油の問題にしましても、こういう事態が起こっておりますのは漁民の責任じゃないわけですね。私は室戸というところを抱えておりますけれども、本当に市長の話を聞きましても、最近の遠洋漁業の不振ということで町全体がさびれておる。しかも、それが県内においても、また全国的に見ましても重要な産業であるわけですから、その浮沈というのはいわば日本の経済にも影響してくるわけです。そういう意味で、本当にこの展望をどう開いていくかということで、いま長官もおっしゃいましたが、在外公館なんかは意外に積極的でないということをたびたび聞くわけですね。むしろ漁業者の団体の方が必死になって他国との折衝もやらなければならぬというようなことでは、これはもう政府としてかなり責任を持って漁場の開拓その他をやっていく必要があると思います。そういう国際環境の変動に対して、一定の基金のごときものを設立をして、これで補完をしていくというお考えはないかどうか。お答えになったかもわかりませんが、ちょっとわかりにくかったので、その点もう一つ伺っておきたいのです。
  223. 松浦昭

    ○松浦政府委員 私がお答え申し上げましたのは、このような漁場の確保を図るために非常に重要なのは、やはり相手国に協力をしながら、そこで漁場を確保していくということが非常に肝心でございますので、そのような基金ということで海外漁業協力財団という基金がございまして、この基金から各国へ協力いたします場合の貸し付けをいたしております。あるいは、そのほかに先方の国の方々をわが国へ招聘したり、あるいは技術者の研修をしたり、それからまた、わが方の技術者を外国に派遣したりというようなこともできるようになっております。このような制度を利用いたしまして漁場の確保に努めているということを申し上げた次第でございます。
  224. 山原健二郎

    ○山原分科員 もう時間がなくなってまいりましたが、最後に、大臣にちょっとお聞きをしたい。それから、畜産局長がおいでくださっておりますので、一言お聞きしたいのです。  私のところにはいわゆる高知和牛というのがおりまして、赤牛です。これはもう頑固に赤牛を守って、今日までその伝統を守り続けてきておるわけですが、御承知のように、加工原料乳価の保証価格の据え置き、五年連続の据え置きということ、また飼料の値下げがないということ、また肉牛の生産価格の低迷ということ、また輸入の自由化の問題がちらつくということで、大変不安な状態に置かれておるわけでございます。しかし、こういう一つの県が、頑固といえば頑固ですけれども、和牛というものを伝統的に受け継ぎながらそれを守ってきておる。しかも、それが大きな不安にさらされているというような場合に、どうすればいいかということなんです。三月には畜産価格の決定がなされるわけですが、その抑制の動きもありますから、そういうことをしてもらいたくないという要求が出るのは当然のことですが、もちろん畜産局の方へもそういう要望が強く出ておるわけでして、これについて畜産局としてどういうお考えを持っているか、一応連絡してありますので、その点をお聞かせいただきたいのです。
  225. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 ただいま御指摘のございました高知の和牛でございますが、実はここ数年の動きを見ておりまして、肉用牛につきましては、国民が極力安定的な価格で肉を消費したいということもございますし、また生産農民の側としましては、極力生産性を上げて価格を上げていくという方向ではなくて、結果的に生産の合理化によって所得をふやす、そういう方向で進めるよう努力したわけでございます。その途中の段階におきまして、たとえばいま先生御指摘のような、子牛の価格が高かった場合とか、あるいはえさが非常に高かった場合に、肥育経営が比較的利益を上げにくいというような条件があります。御承知のように、昨年は負債整理とかいろいろなこともやったわけでございますが、最近の実情を申し上げますと、枝肉の価格は、特に和牛につきましては安定上位価格水準を推移しておりまして、決して悪くない価格水準でございます。  それから、繁殖農家にとりましての収入でございます。子牛の販売価格でございますが、これは黒牛等につきましてはかなり下がりましたが、子牛の価格安定基金を発動しまして、農民の所得が減らないようにということでやっております。赤牛につきましては、現在、数字を見せていただいておりますと余り値下がりしておりませんで、比較的安定的に推移しておる。これからこういう形で御努力いただきましたものをさらに伸ばす手法でございますが、何と申しましても、肉用牛生産の場合、酪農に比べてまだ経営規模が小そうございますので、やはり極力規模拡大に向かって御努力をいただくことが一点かと思います。  それと、やはり粗飼料の給養率と申しますか、購入しました高いえさではなかなか利益を上げにくいわけでございまして、私どもも基盤整備等に努めまして、この粗飼料の給養率を上げていくということが一つの大事な施策になろうかと思います。  さらにもう一点、どちらかと申しますと、わが国の和牛生産につきましては、かなり手間ひまをかけました、肥育期間も長い、したがいまして、経営費もかかる経営が多うございましたが、現在最も合理的に生産いたします場合には、先ほど言いました粗飼料の給養率を上げますと同時に、肥育期間をより短縮するとか、あるいはいろいろかかります施設費等を軽減するような諸措置、そういうことをいろいろ考えておりまして、私どもも、御承知の畜産局の持っております総合的な助成制度とか、あるいは価格決定のときに行います各種の生産支援策というようなものを集中いたしまして、いまおっしゃいましたような地域地域で御努力をいただいている肉用牛の生産農家を守って、そして、そういう経営が安定するような方向に向けてまいりたいと考えております。
  226. 山原健二郎

    ○山原分科員 もう時間がございませんが、比較的価格が安定しているようなお話です。ちょっと私実情を聞きますと、必ずしもそうでもない。かなり赤字を生み出しておるということを聞いておりますので、またそれは時間がありましたらお尋ねしたいと思っております。  最後に、漁業に詳しい大臣でございますから、一言お伺いしたいのですが、先ほど遠洋漁業の問題について、その将来についての不安を私は申し上げたのです。この点について大臣としていろいろ心配されておると思います。そのお考えを最後に、簡単で結構ですから伺いまして、私の質問を終わります。
  227. 金子岩三

    ○金子国務大臣 燃油値上がりによる漁船漁業の打撃、これは第二次オイルショックのときに、徹底的に国がこの値上がり分を補てんしなければ、日本の漁船漁業は崩壊するというようなことで、私は全力を挙げて救援活動をやりましたけれども、なかなか思うようになりませんで、ただ一千億だけ一応緊急融資があって、その後はその融資もいろいろ名目が変わって、燃油値上がりによる融資という枠はいま三百五十億ぐらいになっております。  いまいろいろお話を承っておりまして、仮に高知だけの話を承りましても、やはり二〇%強の減船が行われておりましても、やはり資源も枯渇するし、そうして、漁業に占める燃油のコストが非常に大きいので、いま多少油が値下がりする傾向にありますけれども、とても昔の値段に下がるようなことはないのでございますから、わが国の、特に燃油を使う大型の海外漁業、遠洋漁業というものをいかにして経営を安定して生かしていくかということは、やはり水産庁で積極的な政策を立てて守っていかなければならないと思うのでございます。とても自力ではやれない状態がひしひしと押し迫ってくる、こういう考えでおります。したがって、ひとつあらゆる方策を構じて、水産庁長官を中心として最善の政策を見出したいと思います。
  228. 山原健二郎

    ○山原分科員 終わります。
  229. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて山原健二郎君の質疑は終了いたしました。  次に、池端清一君。
  230. 池端清一

    池端分科員 私は、最近の韓国漁船の北海道近海における無謀操業の問題に関連をして、幾つかの問題についてお尋ねをしたいと思います。  このところしばらく鳴りをひそめておりました韓国の大型漁船が、本年一月に入ってまたもや北海道近海、渡島沖、胆振沖、日高沖にあらわれまして、自主規制ラインであります十五海里を越えて無謀な操業を繰り返す、そのためにスケソウ刺し網などの漁網、漁具に甚大な被害を与えておるわけであります。地元漁民、漁業者の怒りはまさに頂点に達していると言っても決して言い過ぎではないのでありますが、水産庁はこの被害の状況をどのように把握しておられるか、まず、その点からお尋ねをしたいと思います。
  231. 松浦昭

    ○松浦政府委員 北海道沖におきます韓国漁船の操業につきましては、昭和五十五年の十月に両国の政府間で合意をされました、韓国の漁船の自主規制というものがあることは御承知のとおりでございますが、この規制がありますにもかかわらず、特に昨年の年末から本年一月にかけまして、韓国漁船が襟裳岬以西海域の禁止区域内での違反操業を行っております。また同時に、両国間の約束でございました、わが国の取り締まり船に対し毎日正午の位置を通報すると言ってまいっておりましたのが、昨年の十二月二十六日から本年一月十八日までこれを行わないというようなことがございましたし、また、両国の民間団体間の取り決めでございますところの、わが方の沿岸漁業の漁具の設置状況を通報することにつきまして、向こう側が受信をするということになっておりましたが、この受信をしようとしないといったような事態が起こってまいったわけでございます。  水産庁といたしましては、繰り返しまして韓国水産庁に対しまして規制の徹底方を指導するように申し入れてまいりました。韓国水産庁も関係業界を指導いたしておるところでございますが、そのためにやや平静になってきておりますけれども、なおこの水域におきまして問題が生ずる可能性が非常に大きいので、現在、わが水産庁の監視船を三杯張りつけております。海上保安庁の巡視船、さらには北海道庁の監視船等、合わせまして八杯ぐらいの船がトラブルの防止に現在も当たっておるという状況でございます。  お尋ねの漁具の被害でございますが、一月以降、襟裳以西海域における韓国漁船によるものと見られる漁具被害、北海道の指導漁連から受けております報告でございますと、五十五件、一千五百万円という状況でございます。
  232. 池端清一

    池端分科員 違反操業、協定違反であるということはただいまの長官の御答弁でも明らかであります。被害件数も現在調査中ではあるけれども、五十五件、一千四百五十万円余、こういうことですね。私は、この被害というのは、単に漁網、漁具の被害にとどまらない、こう思うわけでございます。すでに御承知のように、スケソウの死魚の大量海中投棄問題というのが発生しているわけです。商品価値の高いモミジコの原料となる雌の卵巣を取るために、雌の腹を切って、そして残った身の部分は雄とともに海中に投棄をする。いまわかっただけでも卵抜きスケソウは百トン近くに達しておるのではないか、こういうふうにも言われておるわけであります。まさに目に余る操業、これが現実に堂々と行われておる。漁民の怒りはまさに爆発という状況でございます。  この一月二十六日、二十七日の両日、水産庁からも中村沖合課長、川口沿岸課長補佐が現地室蘭、登別に赴いて漁業者の生の声を聞いてきたわけでありますが、このような状態が続くならば、漁業資源にも甚大な影響を与え、漁業資源が全く枯渇してしまうおそれがある、こういうふうにも私は思うわけでありますが、資源の面から考えてどのように思っておりますか。
  233. 松浦昭

    ○松浦政府委員 先ほど御指摘ございましたように、韓国漁船ではないか、疑わしいという状況でございますけれども、御指摘のように腹を割きましてモミジコを取り、残りのがらを海中に投棄するというような行為が行われたやに聞いておりますし、それも八十八トンに達するということも聞いております。このような意味で、資源をむだに使うということは非常に大きな問題であるというふうに思うわけでございます。  それからまた、北海道周辺の水域では、この襟裳の周辺水域だけではございませんで、いわゆる武蔵堆の周辺水域におきましても、タラの刺し網あるいははえ縄漁業をわが方がやっておるわけでございますが、この沖を大きな韓国船が引いておりますので、このために今漁期におきますところの漁獲がかなり激減しておるということも聞いております。また、今年度の漁期における襟裳以西の海域のスケソウダラ刺し網の漁獲も低調に推移したということも聞いておりまして、やはりこの資源の枯渇という問題につきましても、私ども十分に配意をしなければならぬ状況はなっておるというふうに思う次第でございます。
  234. 池端清一

    池端分科員 私の住んでおるところが室蘭の追直漁港のすぐ前でございまして、私の目の前でそういう目に余る無謀操業が行われておる。私も地元の一人として、実にはらわたの煮えくり返る思いがするわけでございます。先ほどの御答弁ですと、八杯の監視船を常時張りつけていろいろ監視をしている、外交交渉でもいろいろやっておるんだ、こういうお話でございますが、事態は遅々として進展をしておらない、こういう状況でございますね。私は、こういう無秩序な協定違反の操業に対して、わが国政府はいまのような態度、姿勢でいいのかどうか、やはりもっと強力な交渉なり、あるいは具体的行動に打って出るべきではないか、そういう状況にあると思うのでありますが、具体的な対策、どのようにお考えでございましょうか。
  235. 松浦昭

    ○松浦政府委員 実は、韓国船のこのような違反操業は、単に北海道の周辺水域だけではないわけでありまして、長崎県の沖あるいは福岡県の沖におきましても、日韓の漁業協定に基づきますところの合意書中に盛られております底引きの禁止区域、これにつきましても違反を繰り返しておるという状況でございます。北も西もこのような問題が起こっておりますので、大臣の御命令によりまして、私、三月十日にソウルに行ってまいるつもりでございます。先方の金水産庁長と、現行協定を遵守してくれる、それからまた、この十月に実は現行の自主規制の協定が切れることになっておりますので、この切れる協定の今後の問題をどうするか、これについてできるだけ早く協議を開始する、この二点につきまして十分に話し合い、合意に達してきたいと考えておる次第であります。
  236. 池端清一

    池端分科員 日韓政府間漁業暫定協定は旗国主義をとっておりまして、いわば紳士協定である、したがって、法的手段に訴えることができないという重大な問題点を内包しておる。そこが重大な欠陥だ、私はこう思うわけですが、長官は、三月十日に訪韓して交渉に当たるということのようであります。  外務省にお尋ねしますが、小倉北東アジア課長も二月二十七日に現地に行かれましたね。大変御苦労さまでございました。現地では、あなたは、外交ルートを通じてこれまでに計七回、漁業被害、操業違反について韓国に対して申し入れている、こういうことを言われたそうであります。しかし、残念ながら事態は一向に解決しておらないわけであります。少し言い過ぎかもしれませんが、外交が及び腰ではないかと私には思われてならないわけであります。一体、本気で外交ルートを通じてこの問題を解決する決意がおありになるのかどうか、そういう疑問すら持つわけでありますが、外務省としてはどういう態度でございましょうか。
  237. 小倉和夫

    ○小倉説明員 この問題は、従来水産庁と向こうの水産庁の間で主として話されてきたものでございますけれども、外務省といたしましても、これは非常に重大な問題である。特にことしは、いま御指摘のありましたように、暫定措置が期限切れになりますので、そういった観点からも、日本の漁民の方々の暫定措置に対する信頼感がなくなれば、この基礎が崩れるわけでございますし、同時に、この問題が日韓関係全体に影響を及ぼすようなことがあっては、かえってこの問題の処理がむずかしくなるという面もございますので、私ども、ことしに入りましても、すでに八回ないし九回申し入れをしております。  現に、昨日もソウルで、日本大使館から直接金水産庁長に対しまして、総理訪韓で築かれた日韓新時代を、漁業問題でつまずかせるようなことがあってはならないではないか、地元の北海道の漁民の方々が、現行の規制措置を評価して信頼するようになることが必要である、にもかかわらず、ことしに入っていろいろ問題もある、まずもって、現行の自主規制措置を韓国側が遵守してくれることが一番大事なスターティングポイントであるということを申し入れまして、私どもも、そういった観点から今後も一生懸命がんばって話し合いを進めていきたいと思っております。
  238. 池端清一

    池端分科員 小倉課長は、漁民との懇談の際に、先般の中曽根総理の訪韓の際に、マスコミ報道には明らかにされていないが、中曽根・全斗煥会談で最後までもめたのが漁業問題、韓国側は反対したが、今後両国間で話し合うべき課題の一つに組み入れてきた、こうおっしゃった、こういうふうに言われているわけです。なぜ漁業問題が最後までもめたのか。今後話し合う課題の一つに組み入れたとありますが、それはいつ、どのようなことを話し合うというのか。マスコミには報道されていないというのですから、われわれもさっぱりわからぬわけでありますから、その会談の具体的中身を明らかにしていただきたいと思います。
  239. 小倉和夫

    ○小倉説明員 現地の漁民の方々の非常な意気込みと御苦心、御苦労を肌身に感じまして、私も政府も一生懸命やっているのだという気持ちを申し上げたかったということで、先般の総理訪韓のときのお話にも言及したわけでございますが、中曽根総理大臣と全斗煥大統領との共同声明、両国の首脳会談の中身につきましては、共同声明に書いてあるわけでございまして、その第七項の最後に「両関首脳は、日韓間の貿易問題、在日韓国人の待遇問題、漁業問題等についても、友好協力の精神で合理的な解決を見出すために有意義な意見交換を行った。」というところがございます。  交渉の中身の詳細にわたりまして、国会の場で申し上げるべきかどうかということはございますが、率直に申し上げますと、この条項の交渉の際に一番大きくもめました点は「漁業問題」という字を入れるか入れないかということでございまして、この点最後まで韓国側と相当紛糾いたしましたが、私どもはこの問題の重要性にかんがみて、日韓の共同声明にこの問題が言及されておることが非常に重要だということを訴えまして、深夜の交渉でこの字句が入ったという経緯がございます。これは、この問題の重要性、協議、話し合いの必要性ということについて両国首脳が合意したという意味でございますが、もちろん両首脳が直接細部にわたって議論したというわけではございません。  じゃ、具体的に今後どうするかという先生の御質問でございますが、それにつきましては、首脳会談と並行して一月十二日に行われました外相会談におきまして、漁業問題について今後実務者間の協議を行うということが合意されましたので、その合意にのっとっていろいろ韓国側と話し合っていきたいと考えております。
  240. 池端清一

    池端分科員 先ほど、松浦水産庁長官は三月十日に訪韓されるということでございます。速やかに事態の解決に当たるべく努力をしていただきたいと思うのでありますが、これには外務省等からも同行されるわけですか。
  241. 松浦昭

    ○松浦政府委員 先方の水産庁長、これは長官に当たる方でございますが、この方とお話をするつもりでございますので、日本国からは私が参るつもりでございますが、外務省からは、韓国の日本大使館の方に御一緒していただきまして、向こうと当たろうと考えております。
  242. 池端清一

    池端分科員 大臣、この問題は実に長い歴史的な経過を経て今日に至っておるわけであります。先ほどもお話がありましたように、昭和五十五年十一月から日韓政府間暫定措置が実施されたわけでありますが、これまでに至る間、漁民の皆さんの血のにじむような御苦労があったわけであります。昭和四十六年以来、韓国漁船の無謀操業によって実に七億五千万円にも及ぶ漁具被害がございました。そういう塗炭の苦しみの中からこの措置が生まれてきたわけでありますが、それにしても、十年間という長い年月を要してようやく五十五年十一月から実施された、こういうことになっておるわけであります。しかし、現実はどうか。ただいまも御答弁がありましたように、依然として無謀、無秩序、協定違反の操業が続出している、こういう現状でございます。そればかりではなく、先ほど長官も言われましたように、国内百二十四トン型オッタートロール規制ラインの内側において、一部海域においては操業している、そして漁業資源に甚大な影響を与えておりますし、特に日本海武蔵堆海域には周年、集中的に韓国漁船が張りついておって、このために資源は全く枯渇、漁場は荒廃をする、こういう状況が出ております。したがって、タラ漁船が全船休漁で、ホッケ刺し網、スケソウ刺し網もほとんど漁業としては成り立たない。減船や再編整備をせざるを得ないという状況に追い込まれているというのが今日の実情でございます。  さらに新たな問題としては、国内漁船は、イカ流し網漁業が禁止されております太平洋沿岸海域に、韓国のイカ流し網等漁船がこれまた集団操業を続け、そのための漁具被害も大きくなっておる、多発しておるという状況でございます。わが国が禁止している漁法によって韓国漁船が操業をする、そして漁具を荒らし、資源を荒らしても、現状では何らの規制がない、これが今日の状況です。  このように例を挙げれば切りがございませんが、こんなことを許しておいていいはずはないのであります。したがって、私は大臣の決断を求めたいわけでありますが、本年十月暫定措置の期限切れ、こういう機会を迎えます。この機会に、韓国漁船に対しても二百海里を適用し、資源の保護と操業の安全確保に努めるべきだ、こういうふうに私は思うのでありますが、大臣の率直な見解を承りたいと思うのであります。
  243. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの池端委員の御意見は私もよく承っておることでございます。韓国のやり方がむちゃくちゃなんでございまして、そういうことでもしなければどうにもならないなという感じでおりますけれども、この国の漁民の意欲と申しますか、そのむちゃくちゃな態度は、仮に二百海里を日本が実施しても、一方的に二百海里を侵して、こちらの方は向こうの方には入っていかないということで、全く日本が不利な状態になるのではないかという心配もあるわけですね。したがって、いまのところはやはり強力な外交交渉によって、韓国政府にひとつ十分反省をしてもらい、強い漁民の指導をしていただく方が賢明ではなかろうか。大体向こうでも、日本が強く出ると、多少その時点では西の方の違反船は非常に少なくなるわけですね。少しこちらが手元を緩めた状態になりますと、わっと押しかけてくるというような状態でございますから、外務省は当然のことですが、水産庁も海上保安庁も、関係省庁がここ当分は全力を挙げて、この韓国の密漁船をひとつ厳しく取り締まる、こういう態度に出て、そして様子を見ることがいいのではないか、このように考えております。
  244. 池端清一

    池端分科員 強力な外交交渉を否定するものではないし、積極的にやっていただきたいと思うのでありますが、しかし、それにしても、もう私はおのずと限界が見えているのではないかと思うわけであります。韓国漁民を十分指導してもらうといっても、これまで何回もやってきたわけであります。しかし一向にらちが明かない。ですから、北海道の漁民は、ともかく十月末で期限切れになる状況、何としてでも二百海里を適用してもらうのだ、そうしてもらわなければわれわれの生活は全くお手上げだ、こういう悲痛な叫びがいま上がっているわけですね。  金子大臣は長崎県の選出で、また漁業関係者でもございます。松浦水産庁長官は北海道出身なんです。北海道と長崎、これはくしき組み合わせではないかと思うのですが、この問題については北海道も西日本もないと私は思うのです。特に最近まで西日本の漁業関係者は二百海里の適用に強い難色を示されておりましたけれども、最近は状況が変わってきております。大臣のおひざ元の長崎県漁連においては、すでに総会において二百海里法適用を決議しておりますね。  さらに、日本海漁業協議会においても、目下この二百海里適用について検討中であると聞いておりますし、北海道はもちろんでありますが、青森から富山までの県漁連は、この二百海里法適用に全面的に賛成であるという立場を明らかにしておりまして、二百海里法適用を求める声は非常に大きく広まっているというふうに私は思うわけであります。したがって、従来のような消極的な態度ではなしに、確かに竹島問題というまことにむずかしい問題も抱えております。そのことは十分わかるわけでありますけれども、やはりこの際、資源保護、漁業秩序対策上からも、韓国漁船に対しても二百海里法適用ということに踏み切るべきだ、そうしなければこの問題の解決はあり得ない、私はそう思うわけでありますが、重ねてこれについて外務省と大臣の御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  245. 金子岩三

    ○金子国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、ほうはいとして二百海里を日本の沿岸漁民が期待しておる、希望しておるという声、よく承知いたしております。これからひとつ慎重に検討をしていきたいと思います。
  246. 小倉和夫

    ○小倉説明員 ただいま金子大臣が御答弁されたとおり、外務省としてもそのような考え方でやっていきたい。同時に、友好的かつ率直に日韓間で話し合う過程において、この問題を何とか解決してまいりたいと考えております。
  247. 池端清一

    池端分科員 特段の御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  248. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて池端清一君の質疑は終了いたしました。  次に、西中清君。
  249. 西中清

    西中分科員 私は、栽培漁業について若干の質問をさせていただきたいと存じます。  わが国の水産資源は、言うまでもなく重要な食糧資源でもございますし、二百海里の時代を迎えた今日におきましては、この水産業というものを、やはり何といっても食糧産業といいますか、一つの産業として重要な位置づけをしていかなければならぬ。とりわけ需要と供給といいますか、資源の動向といったものの見合う体制をつくり上げていかなければならない、その意味では、栽培漁業というものは非常に適切なる施策と言わなければならぬと私は信じて疑わないのでございます。  そこで、今日まで栽培漁業についてさまざま御苦心をいただきまして、それなりの施策推進がなされてきたわけでございますけれども、まず最初に、わが国のこの栽培漁業は、いまどういう位置にあるのかお伺いをしておきたいと思います。
  250. 松浦昭

    ○松浦政府委員 栽培漁業は、特にこのような二百海里体制が世界的に広範に設定されてきている状況から考えますと、日本の二百海里の中で、魚をつくり育てるという観点から、最も重点を指向しなければならない漁業であると考えている次第でございます。このために水産庁としてもかなり努力をいたしまして、その整備をいたしているわけでございますが、昭和三十七年度以降、国営栽培漁業センターを整備してまいりまして、有用魚介類の種苗生産等に関する技術開発を行ってまいりました。現在、全国十カ所の事業場がすでに稼働いたしております。さらに二カ所の事業場を目下建設中でございます。  さらに、技術開発の進んだ種苗の量産を行うということのために、四十八年度以降、都府県営の栽培漁業センターを設置するために、毎年度予算を計上いたしましてこれに当たってきているわけでございますが、これもかなり完備されてまいりまして、現在、海のある県、三十九道府県でございますが、そのうち三十五道府県のセンターが稼働して、二県で建設が進んでいる。この沿海道府県のセンターもおおむね完備するというところまで来ている次第であります。
  251. 西中清

    西中分科員 大変な御努力で敬意を表します。なるほど設備の整備、これは御説明のとおりに、大変な進展を見せたと私たちも評価をいたしております。しかし、これらを事業として運営し、推進をし、そして定着をさせていく、そのためにはやはりそれなりの制度というものを確立する必要があるのではないか、私たちはそういうふうに考えてまいりました。したがって、わが党におきましても、この問題にかねてより着手をいたしまして種々検討を進めました。そして五十四年には法案の要綱を発表いたしましたし、その後、五十六年五月には栽培漁業振興法案として国会に提出をいたした次第であります。  一方、水産庁として、栽培漁業の本格的な振興を図るためとか、法制度の面における整備のために、五十六年十一月に漁場管理制度研究会を設置されまして検討が行われまして、昨年十二月に研究会の報告が発表されました。そして、お聞きしますところ、近々のうちに沿岸漁場整備開発法の改正を行いたいとか聞いておるわけでありますけれども、この法改正をしなければならぬ、いまの時点で、この改正を必要とされる理由、これについてお伺いをしておきたいと思います。
  252. 松浦昭

    ○松浦政府委員 ただいまお話しのように、私ども、つくり育てる漁業というものが非常に重要であるという観点から、栽培漁業の振興を図るということが一点。それからもう一つは、やはり二千万からのふえました遊漁人口というものがございます。この遊漁の方々と、それから漁業者の方々との紛争が絶えないということがございまして、さらに、先ほども御質問ございましたが、密漁の問題、この三つの問題が沿岸漁業にとりまして非常に深刻な、また重要な問題になっているという観点から、実は沿岸漁場整備開発法そのほかの法律を改正、あるいは新しい法律をつくる場合もあると思いますが、さようなことで目下検討をいたしまして、法制局の段階で最後の案文をつくっていただいているという段階でございます。  ぜひこの通常国会に御提出申し上げ、御審議を得たいというふうに考えているわけでございますが、その基礎になります報告は、先ほども御指摘がございました、今村前長官を座長にいたします漁場管理制度研究会の報告でございます。この中で、実は今後の栽培漁業あるいは遊漁との調整の問題、これらにつきまして御報告をいただいているわけでございます。何と申しましても、そのような法改正をしても、この栽培漁業を振興したいという気持ちは、先ほど申しましたように、このような二百海里の時代に入りまして、特に日本の二百海里の中で魚をつくっていくということが非常に重要だということが基本でございます。しかしながら、その現状を考えてみますと、これを計画的にふやしていくということのためには、これから国なり、あるいは県なりにおいて計画性を持った栽培漁業の振興が必要である、これが一つ。  それからまた同時に、技術の開発面につきましても、これを計画的に推進していくという要がございます。それからまた、稚魚が放流されました場合に、この稚魚を最も適正な方法で管理をして、それをさらに大きく育てていく、そして歩どまりをできるだけよくしたかっこうで再生産に役立たせるようにするということが非常に重要でございます。これらの法制的な観点というものが非常に重要でございますので、さような内容というものをこの中に含めたい。  さらには、先ほど申しましたような遊漁の調整といったようなことから、遊漁者と漁業者との間の調整を図り得る、そういった協議の機構をつくっていく。さらには遊漁案内業者、これを届け出制にするといったようなことも含めまして、現在法制局で御検討を願っているという状況でございます。
  253. 西中清

    西中分科員 まだ最終的に決定をされておるわけではございませんし、中身も十分わかっているわけではございません。ただ、お聞きをいたした範囲、またニュース等の範囲で若干の心配な点なり、お聞きをしておかなければならぬと思っております問題について触れてみたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  一つは、いまもお話がございましたけれども、国や府県で長期計画を策定する、こういうお話がございました。具体的にどういうことになるのか知りませんけれども一つの計画をお立てになるという場合には、国が一つの長期的な方針を打ち出される、それを受けて都道府県ではまたそれぞれの状況に応じまして計画を練ると思うのです。その際、やはり効果を上げるためには、何といっても財政的な裏づけがなければ、非常にいい絵はかいても実体が伴わない、せっかくの計画も計画倒れになるというケースも十分考えられるわけでございます。  その点で、僣越ではありますけれども、わが党の提出いたしました法案、いろいろまた御批判もあるかとも思いますけれども、それなりに政府の補助ということを実は明記いたしておるわけであります。今回改正される内容の中で、この点はどういう形になっておるのか、確たる裏づけか何かあるのか、また、具体的にどの程度の助成をなさるつもりなのか、そういった面についてお伺いをしておきたい。そうでないと、都道府県に、または漁業者に大変負担がかかるということでありましたならば、この栽培漁業の成果も上がらないわけでございますので、その点について御答弁を願いたいと思います。
  254. 松浦昭

    ○松浦政府委員 これは研究会の報告にも入っていることでございますが、栽培漁業を一層振興するということのためには、従来のような試行錯誤ではなくて、国なりあるいはこれに準拠しまして県が長期的な計画を立てまして、栽培漁業を効率的かつ計画的に推進させる必要があるということで、このような計画の規定というものは今回の法案の中に入れたいというふうに考えておるわけでございます。現在、国は国及び県の栽培センターの施設整備あるいは技術の開発を進めるとともに、栽培漁業を漁業者に定着させるという事業を実施してきておるわけでございます。  このようなことで、この計画を推進するためには当然予算が必要であるわけでございますが、厳しい予算の制約はございますけれども、今後引き続き、栽培漁業の一層の発展を図りますためには、国、県を含めまして、この長期的な計画づくりが、関連予算の確保も含めまして遂行できるようにしていかなければならぬというふうに考えております。  ただ、現実の規定の問題でございますが、すでに既存の法律の中にも財政援助の規定が入っておりまして、特段の規定を今回設ける必要はないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。  なお、このような長期的な計画を推進しますために必要な施設につきましては、先ほど申しましたように、従来までもかなり整備してきておりますので、そのような既存の施設というものも十分に効果的に活用しながら、この長期計画を推進していくということがわれわれの課題であるというふうに考えている次第であります。
  255. 西中清

    西中分科員 そこで、確認をいたしたいわけでございますけれども、府県でやっております栽培漁業センター、これは何か公益法人というような位置づけをお考えではないかというように聞いておるわけでございますが、その点はどうでございましょうか。
  256. 松浦昭

    ○松浦政府委員 栽培漁業センターは現在いろいろな形で運用されているわけでございますが、センターが経営的に効率化して、また同時に、ふ化放流という非常に公益的な目的を果たすという観点から、法案の中にはこれを公益法人とすることがいいのじゃないかと考えておりまして、さような方針のもとに、現在法制当局と御審議をお願いしているという状況でございます。
  257. 西中清

    西中分科員 そうなりますと公益法人としての、一つの法人でございますから、当然これは独立採算というものを考えていかなきゃならぬ、通常そういうふうに考えられるわけですね。それでよろしゅうございますか。
  258. 松浦昭

    ○松浦政府委員 基本的にはそのような独立採算制というものになっていくわけでございますが、同時にまた、この公益法人の場合には、県のほかに市町村あるいは漁協等が事実上出資をいたしましてこれを運営していくということでございます。したがって、公益法人、独立採算制ということを申しましたが、出資者である市町村あるいは漁協等のために栽培漁業を推進していくという、きわめて公益的な要素もございますので、単に採算性のみという角度からこの事業を推進するということは考えられないと思っております。また同時に、われわれとしましては、公益法人になりましても、人工種苗の量産と放流という非常に重要な役割りを担っておりますので、このような角度から、この公益性という面につきましても十分に重視をして、この運営に当たってもらいたいというふうに考える次第であります。
  259. 西中清

    西中分科員 少しくどいようですけれども、いまの御答弁によりますと、単に採算だけ考えていくわけにいかない、公益性も重視しなければならぬ。ということは、この運営についてはそれなりの助成も考えていかなければならない、こういうふうに受け取ってよろしいのでございますか。
  260. 松浦昭

    ○松浦政府委員 現状におきましてもいろいろな形で助成を行っているわけでございますが、この栽培センターは、もちろん量産いたしまして、これを販売するという段階に至れば、当然収入も上がってくるわけでございまして、さような意味で、このセンターができるだけ事業の基礎を確立してほしいという気持ちはございますが、一方におきましては、このような公益性というものも追求していく必要がございますし、さような両面の要請というものがマッチできるような形で、この採算というものを考えていくことが必要であると思っております。
  261. 西中清

    西中分科員 なかなかむずかしい話じゃないかというふうに聞いておりますけれども、収益性の高いもの、こういう形になりますと、できる限り採算を合わしていこうという意思が働くのは当然なことではないかと思います。したがって、定着性の強い魚に要求が強くなると思います。したがって、漁業センターの事業というものも比重はやはりそちらの方にかかってくる、これは事の成り行きとして当然ではなかろうかと思います。したがって、ブリやそういった回遊性のある魚については、どちらかといえば敬遠する、もっと定着性のある魚種を選んでいくという傾向が非常に強くなるだろうと思います。いま研究はまだまだ基礎段階にあるような魚種もあり、また、そういった研究もどんどん進めていかなきゃならぬ、こういう一面もあるわけでございますけれども、この辺の調整をどういうふうにお考えなのか、伺っておきたいと思います。
  262. 松浦昭

    ○松浦政府委員 現在のセンター等で実施しておりますところの状況を見ますと、クルマエビが約六億尾、実際生産を行っておりますし、アワビで千六百五十万個、ガザミ千六百万尾といった、比較的定着性のあるものが量産されておりますが、一方で、マダイのような回遊性のあるものにつきましても、すでに千三百五十万尾の大台に達しておるわけでございます。したがいまして、これはその水域におきますところの漁民の方々が、こういう放流事業をやることによって効果が上がるということがわかってまいりますれば、こういう定着性の種苗以外にも、これを大いにやってもらいたいという気持ちが当然出てくるはずでございますし、また現にそういう方向にあるわけでございます。  特にブリのような、まだまだ試験段階のものにつきましては、国のセンターにおいて技術開発をしていくというようなことによりまして、基礎的な技術を開発し、これがある程度まで量産できるという段階で種苗センターに移していく、そういう段階的な措置をとることによりまして、一方における採算性の問題と、公益性の問題とを調和させるということは可能であると考えている次第であります。
  263. 西中清

    西中分科員 ほかの産業から見れば比較的新しい事業でございますから、何でもかんでも保護をすればいいというような考えを私は持っておりませんが、しかし、これは事食糧に関する大変基本的な問題でございますし、これを将来いい方向に育てていくということが非常に重要な問題でございます。  いままでの討論の中で私が心配いたしておりますのは、これを公益法人にすることによって、たとえば地元漁業者に負担が大きくなるというようなことがあったり、また都道府県でこれを大変な負担に感じなければならぬということがあってはならぬ。私たちは、いつまでもとは申しませんけれども、これは当面、国の施策として助成を十分考えていくのが筋ではないかと思っておりますけれども、いろいろと財政事情もございますからこういう形になったのかと思いますけれども、その点については今後の法律をおつくりいただく上でも、またその後の運用の上でも十分配慮をしていただきたい、こう思います。大臣の御決意をお伺いしておきたいと思います。
  264. 金子岩三

    ○金子国務大臣 なかなかむずかしい事業でございます。したがって、受益者に過分な負担があるということになりますと、これは成功しません。やはり国が、国家的資源を国の財政によってつくるのだという基本的な考え方に立ってやらなければ成功しない、このように考えております。したがって、できるだけそういう方向でこの事業は取り組んでまいりたいと思います。
  265. 西中清

    西中分科員 ひとつその点の御配慮を十分お願いいたしたいと存じます。  そこで、細かい問題になりますけれども、栽培漁業振興区域を知事が指定するというようなことを聞いておりますが、この際、管理上の必要性からくるのでしょうが、各種の漁民に対する規制であるとか、それから、協力金というようなお話が出ておるようでございますけれども、この点はどうなっておるのか。それから、この協力金を徴収いたしまして、後はどういうようにこの金を使うのか、そういった点について御説明をいただきたいと思います。
  266. 松浦昭

    ○松浦政府委員 この点につきましては、目下いろいろと法制当局とお話し合いをしているわけでございますが、基本的に申しまして、稚魚を育てまして、それを放流をして、それが余り小さなうちに採捕されてしまうということになりますと、これは放流の効果が上がらないわけでございまして、効果的な放流事業を行っていくためには、漁業法なり、あるいは水産資源保護法の規定に基づきまして、遊漁者あるいは漁業者を問わず、一定の採捕の規制、たとえば体長制限であるとか、あるいは放流直後におきまして採捕を一定水域で禁止するとか、そういった措置がとられるべきであろうと考えておるわけでございます。  それから、協力金のことにお触れになりましたが、沿岸の漁業資源をふやすためには、収穫する方が種をまくという考え方を基本にしていきたいと考えますので、その稚魚代を漁業者やあるいは遊漁者ができるだけ負担して、その種苗をつくるということが趣旨でございまして、このような協力金をいただきまして、これを種苗の生産の費用に充てていくということを考えておるわけでございます。具体的な方法といたしましては、この報告書にもございますように、個々の採捕者からではなくて、漁協あるいは遊漁案内業者といったような方ごとに一括徴収するという方式を考えるということでございますので、さような方向に沿って現在検討中でございます。  それからまた、協力金の性格についてもお触れしておいた方がいいと思いますが、これは一種の寄附金と考えておりまして、栽培漁業の振興に賛同する方から人工種苗の放流の継続的実施ということのために必要な経費を自発的に拠出していただくということなので、強制をするつもりはございません。そのようなことで考えております。
  267. 西中清

    西中分科員 私たち、栽培漁業の研究をしておられるところを拝見するケースがあるわけでございますけれども、これを振興していくためには、やはり技術者、技術の開発、こういったものが非常に重要なポイントになっていると思います。ただ、その体制ですね、人員、予算、こういった点でやはり不足ぎみといいますか、関係者は相当なオーバーワークぎみな気配が見えるわけでございますが、いわば私たち、よくやっているなという気持ちがいたしておるわけなんです。そういった点で、いまのままではかなり厳しいのじゃないかという心配を実はいたしております。こういった点で、人材の確保と育成、そういった面でのいろいろな配慮といった点が非常に重要と思いますけれども、これもいろいろ問題はあると思いますが、どういうようにお考えか、聞いておきたいと思います。
  268. 松浦昭

    ○松浦政府委員 この間も実は兵庫県のセンターに行ってまいったわけでございますが、そのセンターは技術者、雇っている人も含めまして約十人で生産をいたしておりまして、非常に効率的な生産をいたしております。オートメの装置も相当入っておりますし、かなり省力化いたしましたかっこうで稚魚を育てることができるような装置をつくってございます。ただ、種苗生産、放流事業というのは、時間的に八時間労働でやれるというような話ではございません。本当に一部の魚種につきましては、夜、卵を産むといったようなものもございますから、さような意味で通常の勤務状態でこの事業に携わるということはなかなかむずかしいかと思いますが、実際に携わっておられる方は本当によくやっておられまして、本当に魚がかわいい、そういう気持ちから一生懸命やっておられる姿を拝見いたしまして、私も非常に感銘を受けたわけでございます。  このような技術者の方々を今後とも十分に育てまして、そしてこの種苗生産、放流の技術が実態に即した形で根づきますように、私どもとしましてはやはりそのような面からの努力もしていかなければならぬというふうに思っている次第であります。
  269. 西中清

    西中分科員 大臣、いまの点、また十分御配慮をいただきたいと思っております。  そこで、もう一本の改正の柱であります遊漁対策でございますけれども、もう時間がなくなってまいりましたので、簡単にお聞きをしておきたいと思います。  まず、遊漁利用水面なり禁止水面をお決めになるように聞いておりますが、その際の利用料の徴収ということはあると思うのです。これは、いろいろ問題があるからきょうは置いておきますが、これの収入はどういう使途になるのか。  それからもう一つは密漁でございますけれども、岩手県や宮城県等、アワビの密漁によって被害が非常に深刻だ、こういうこともお聞きをしておるわけでございますが、中には高速船を使って組織的に漁獲をして市場で売りさばいているというようなこともあるわけですね。こういった点で、これをどういうふうにして防いでいくのか、お伺いをいたしまして、私の質問を終わります。
  270. 松浦昭

    ○松浦政府委員 遊漁の規制水面という考え方も一時あったわけでございますが、現在はむしろそのような角度からではなくて、遊漁と漁業者との調整を図りますために考えております機構は、漁業者代表と遊漁者代表等で構成します漁場利用調整協議会といったものをつくる。これを開催いたしまして、遊漁利用施設整備あるいは遊漁及び釣り舟船頭等に対する漁業関係法令、マナー等の普及啓蒙といったようなことを中心にしてやっていこうということを考えております。要するに、遊漁者と漁業者との両方の方々が話し合いまして、その結果といたしまして、たとえば一定の操業時間あるいは漁具、漁法といったようなものを制限する、あるいは専管距離等を話し合いまして、それで双方が共存し得るといったようなことでその漁場の利用の調整を図っていく、こういう観点の法体系になっていくのじゃないかということで、いま審議をいたしているところでございます。  それから、同時に考えておりますことは、マナーの徹底という角度からも、特に遊漁案内業という方々につきまして、届け出制をつくることによりましてこの方々を把握し、漁場の保全あるいはマナーの徹底を図るといったようなことを考えていきたい、これが現在の法律の骨子になろうかと思っております。  いま一つ、密漁でございますが、この点につきましては、これからも強力に、海上、陸上両面から地元の県あるいは警察、海上保安庁とも協力いたしまして密漁の防止に当たらなければならないというふうに考えておりますが、一つの問題は法制面にございまして、特に現在罰金が非常に低い。特に昭和二十四年につくりました漁業法当時のままであることが一つの問題であるというふうに考えておりまして、たとえば県の漁業調整規則違反の場合には最高一万円という状態でございますので、これを、たとえば最高十万円まで引き上げるといったようなことで罰則の規定を整備し、今回の通常国会にも提案をさせていただきたいと考えておりまして、このような法体系の整備を待ちまして一層の強力な取り締まりをしたいと考えておる次第であります。
  271. 西中清

    西中分科員 終わります。
  272. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて西中清君の質疑は終了いたしました。  次に、小沢貞孝君。
  273. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 私は、四つほど質問を申し上げたいと思います。  最初の一つは、地元の土地改良総合整備事業の他事業関連について。二つ目は、わが長野県の中南信地域の畜産生産地の形成について。三つ目は、委員長いるけれども、どうしてもやっておかなければいけない純米酒の推進。四つ目は、きょう日本農業新聞に出ておりますが、植防法の規制緩和の問題。この四つを質問したいと思いますので、簡潔に御答弁をいただくようにお願いをいたしたいと思います。  その前に、建設省。私たちのいる松本は交通の陥没地帯みたいなことになっておって、国鉄では中央本線の岡谷—塩尻間に塩嶺トンネルをということで着工してから、十年余りかかって五百億の金をかけて、あと四カ月ばかり後のことしの七月五日にようやく開業する、こういうことであります。それでも、新宿—松本間がたったの十九分短縮。だから、一分短縮するのに二十七億も三十億もかかっておるじゃないかとこのごろみんなうわさをしているわけですが、その短縮があっても三時間半、四時間近くかかるわけであります。それから、松本空港はあるのですが、米軍基地との関係で東京に飛べない、こういう制約下にあるわけです。だから、私たち長野県の松本市周辺はほかのところへ行くより一番暇がかかるじゃないか、こういうように各県からも言われているような状態であります。そこで、県民や地方の人の熱い眼は第九次道路五カ年計画の、いま関連法案の早期成立を図って審議中でありますが、中央道長野線の早期実現を挙げて熱望しているわけであります。あそこの県民性はおかしなもので、総論は賛成、各論は反対。各論となれば反対ばかりやるのですが、ようやく問題も解決して、解決をした途端に今度は急いでやれ、こういう熱気あふるるような要望であります。  そこで、建設省にお尋ねをいたしますが、第九次道路整備の計画の中では中央道長野線は松本インターまで、こういうぐあいに想定をしておったようでありますが、そう理解をしてよろしゅうございますか。
  274. 宮原克典

    ○宮原説明員 そのとおりでございます。
  275. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 そこで、内々にお聞きしているところによると、第九次はそこまでであるが、道路局としては、用地の問題その他のいろいろの条件が整えば、一気に隣の豊科インターまで施工してもよろしい、それは六十三年以降の第十次五カ年計画を、何というのでしょうか、前倒ししてやってもよろしい、こういうようなお考えがあるようですが、そう理解をしてよろしゅうございますか。
  276. 宮原克典

    ○宮原説明員 御指摘の中央自動車道長野線の岡谷—豊科間についてでございますが、昭和五十三年十二月に岡谷—塩尻北間を、また、昭和五十五年六月に塩尻北—豊科間をそれぞれ路線発表をいたしまして、現在、日本道路公団において地元との設計協議、用地買収等を進めておるところでございますが、岡谷市内におきましては、現在、岡谷高架橋等、一部工事に着手しておるところでございます。中央道の長野線の重要性については十分私どもも承知しておりまして、今後ともその整備を鋭意進めていくこととしております。  御指摘の完成の時期でございますが、地元の協力を得て事業が円滑に進捗しますれば、岡谷—松本間については、先ほど申し上げましたとおり、昭和六十二年度までには何とか供用できるということでございますし、さらに、松本—豊科間についても、地元の御協力を得て、あわせて早期完成を図りたいというふうに考えております。     〔主査退席、野坂主査代理着席〕
  277. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 ありがとうございます。ぜひ地元としては早急に豊科まで供用されることを望んでいるわけです。  そこで、今度は農林省と重要な関係がありますが、この高速道の建設に関連して、高速道関連県営圃場整備事業がこの地区では連続四カ所、塩尻の塩尻東、それから松本の島立、島内地区、それから豊科の南徳地区と、この連続四地区の県営圃場整備事業が新規で要望されているわけです。これは去年かおととし知事選もあって、知事も大公約でこれはどうしてもやらなければならないということで、県からも大変な要望が出されていると思いますが、結局、この高速道を早く完成をするためにはこの圃場整備事業にかかっているのではないか、こういうような状態であります。  そこで、お尋ねしたいのが、他事業関連の土地総の五十八年度予算はどのくらいか。対前年比どういう状態になっているのか、まずそれをお聞きします。
  278. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のございました事業は、県営の圃場整備事業でございます。県営の圃場整備事業の新規につきましては、昨年以来、従来の採択事業量の大体三分の二ぐらいを目安にして新規の採択を行うという方針を決めております。(小沢(貞)分科員「予算は」と呼ぶ)予算は、御案内のように若干は増額されておりますけれども、公共事業の予算全体としてはほぼ横ばいでございまして、土地改良の予算全体も九千億を境にして三億ぐらいふえたというところでございますので、ほぼ横ばいと御理解いただきたいと思います。
  279. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 こういう関連事業の県営圃場整備事業は、新規というものは大変個所数が少ないし、なかなか容易ではないということを私たちは十分承知しているわけですが、いまも建設省の方は、地元の要望に従って豊科までできたら六十二年までに完成をしたい、こういうように言っていただいているわけで、それとの関連では、どうしてもこの圃場整備をやらなければならない、こういう必要性に迫られて、県を挙げて、あるいは地元を挙げて関東農政局を通じて本省にお願いに来ていると思います。  それで、この四つの地域の受益面積はそれぞれ相当あるわけですが、私はこれを端的に見るならば、これは新規四つという見方よりは、関連という形から言うならば、この道路を完成するために関連してやる、こういうことになると、一つの事業と、こう一体的に見られるのではないかと思いますので、どうぞ一つも落とすことなく、どこが欠けてもこれはどうもまずい話で、これは要望にすぎませんが、ぜひそれが実現できるようにお願いをしたい、こう思うわけで、局長からどうぞ。
  280. 森実孝郎

    森実政府委員 高速道路の実施計画、工程等を伺いまして、事情は十二分に伺っているつもりでございますから、いま現在調整中でございますので、できるだけ前向きな調整を続けたいと思っております。
  281. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 ありがとうございます。  それでは、次に畜産局長にお尋ねをいたしますが、これは前座は抜きにして、いま長野県の東北信においては農用地開発公団によって開発が進められておりますが、引き続いて、中南信地域の畜産生産地形成基本調査を進めていただいておるようであります。昨年も二千万前後の予算がつき、ことしも予算がついておる、こういうことでありますが、まず第一にはその予算額、全体で一億ぐらいかかるうちの半分ぐらいは五十八年度まででつくわけですが、それで基本調査は半分ぐらい進むわけでしょうか。
  282. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘の中南信地区でございますが、五十七年度初年度で調査を開始しておりまして、ことしは二千万の調査費がついておりましたが、いまお願いしております予算では、この地区につきましては二千五百万の金をつけまして調査をさらに進めるという考え方でございます。
  283. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 私もよくわかりませんが、聞くところによると、この基本調査を済ませて、それから地区調査、こういうようなステップで進む、その後、全体実施設計、こういうように聞いていますが、そういう順序でやるわけですか。
  284. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 基本調査におきまして、そのかなり広範な地域全体につきまして、どのような家畜の飼養の形があるのか、あるいはこれをどのように今後主産地として形成するために必要かという総括的な調査をいたしておるわけでございます。これが終わりまして、今度は具体的に地域地域、御承知のように中南信というのは五十六の大きな市町村全体の計画でございますので、それの中である程度具体性を持ちまして、いわば将来事業を着工いたしますときの地区に当たるような大きさのもの、こういうものにつきまして、いま御指摘のありましたいわば基本計画に当たります畜産基地建設調査計画というのがそれに続くわけでございます。  そこで、ある程度事柄が具体性を持ち、あるいは土地の利用関係等も調整ができます段階で、今度は現実の工事の前提となります全体実施設計を行いまして、それから工事に着手する、こういう手順でございます。
  285. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 数字的なことですが、基本調査にはどのくらい時間がかかってどのくらい予算が要るか。また、全体実施設計ということになると時間はどのくらいかかるものなんですか。面積も広いのですが。
  286. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 これは、地区によっていろいろ大きさがありますし、それからまとまりぐあいが早ければ早くなるという性質を持っておりますが、一般的にいままで行われているものは、いわば畜産基地の建設調査計画におおむね三年ぐらいを経て、その後全体実施設計というのは一年間で完了するというのが大半でございます。
  287. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 そこで、私はこういうことができるかどうかと思うのですが、基本調査、それから地区調査、全体実施設計と、いまお聞きすると四年以上もかかりそうなことなんですが、すでに基本調査一年を経ております。これをシリーズにやらないで、一つ終わった、次、その次と、どこかからパラレルに、成熟度の高いというのですか、要望の強いというのですか、相当の規模の面積で、これならよろしい、たとえば私の方で言うならば木曽谷なんか広大な面積があって、また地元は大変な熱望を持っているわけで、それをパラレルに実施なり進めてもらうことはできないだろうか、こういうお願いです。
  288. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 原則的にはいま申し上げましたような手順でやるわけでございますが、これはやはり相当な金をかけまして、したがって農民負担もあるということでございますので、余りずさんに事を運んでは後々の畜産経営にも影響があるということで慎重を期すわけではございますけれども、先生御承知のように、これは何か全部の地域について全部終わるまでは一切手をつけないということではございませんで、いわば開発対象地区の権利調整が早く済むとか、それに関する関係者の同意というようなものが早く進んでいくとか、それからそういうことをしたものの面積が事業実施に必要な採択基準を充足するというような形になりますとそこから手をつけていく、よくあることでございますが、何とか第一地区とか第二地区とかいうような形で現に進めておる地区もございますので、そういう権利調整等の必要なものを進めて、熟度が高くなりましたところから順次仕事を進めていくという考え方でございます。
  289. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 それじゃぜひそういうように、それぞれの地域を、関東農政局もわかっていると思いますが、ラップさせても、実際の工事が早くできるようなぐあいに御配慮をいただきたいと思います。自由化で盛んに攻め立てられておるのだが、わが国内だって生産性を上げて、質のよい、安いものをつくらなければいけない、私はこれは農政にかけられた一つの使命だ、こういうように考えますので、また各段のお力添えをお願いをいたしたいと思います。  きょうの農業新聞に出ておりましたから、皆さんみんな御存じだと思いますが、植防法の規制を緩和して貿易摩擦のあれにこたえよう、こういうような動きがあるようで、輸入の基準や認証制度の見直し作業が進んでおる、こういうように言われているわけです。この新聞に出ているように、三月末をめどに連絡調整本部を置いてやっていこう、こういうお考えのようですが、端的に言ってこの作業はどういうように進んでいるか。農林水産関係が、この新聞にあるように十法律ぐらいに関連をする、こういうように出ております。その作業の状況説明してください。
  290. 角道謙一

    角道政府委員 いま御指摘のございました本日の農業新聞にありますのは、二つございまして、一つはいま後段でお話しの輸入の基準、認証制度検討の問題、もう一つは植物防疫の方の問題と、二つございます。  私の方から、輸入の基準、認証制度につきまして御答弁申し上げます。  対外経済摩擦の解消問題といたしまして、本年の一月十三日に経済対策閣僚会議におきまして、基準、認証制度につきましても改善を図るという観点から、一応三月末を目途に全面的に検討するということになったわけでございます。そのために、一月の二十四日でございましたか、内閣官房長官を頭にいたしまして、関係省庁十一省庁が参加をいたしまして、連絡調整本部というものが内閣にできております。  この中に、御指摘のように農林水産省からも経済局長がこのメンバーとして参加をいたしておりまして、農林省所管の法律といたしましては十二。この中には、薬事法のように、厚生省が本来所管をしておりますけれども、そのうちの動物医薬品については農林省が所管をするというものもございますし、あるいは消費生活用製品安全法というのがございますが、これについては通産省の所管でございますが、炭酸飲料びん等農林省所管物資について農林大臣が検定を行うというものがございます。こういうものをひっくるめまして、この連絡調整本部におきまして外国人供給者の直接アクセス及び内外産品の検査方式の平等について法制度的にこれを確保するという問題と、これらの基準につきましてはできるだけわかりやすく透明性を確保する、また、国際的に基準が合うものとは整合性を保つとか、あるいは外国で試験を行っているものについては、それはどの程度受け入れられるかというような点につきまして、現在作業を進めておるわけでございます。  農林水産省におきましても、先ほど申し上げました十二の関係法律につきまして、それぞれの法律ごとに関係原局におきまして、対外経済関係にも留意をしながら、制度本来の目的、安全性の確保であるとか流通の円滑な促進であるとかいう点に留意をしながら現在検討を進めているところでございまして、一応三月末がめどになっておりまして、この結果によりましては、場合によりましては法律改正というものもあろうかと思いますが、現在作業を進めておるところでございます。
  291. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 お尋ねのございました植物防疫の関係でございますが、植物防疫法の中には国内の防疫措置に関する事項のほかに、輸入検疫に関する事項、両方定められておるわけでございます。  輸入検疫につきましては、もともとこれは輸入品に由来をいたしまして病害虫が国内に侵入することを防止するという制度でございますから、ただいま官房長から申し上げましたような意味での内外無差別という意味ではちょっとなじみがたいものではないか。もともと外国だけを対象にしたものでございますから、内外無差別というたてまえから言うとなじみにくい、かように考えておるわけでございます。  ただ、新聞に出ておりました問題といたしまして、別途国内の輸入をやっております業界あるいはその団体などから、日本の制度は非常に厳し過ぎるのではないかという御要望もあるわけでございます。確かに日本は、世界で申しますとアメリカ合衆国あるいはオーストラリアなどと並びまして世界的に大変植物のクリーンな国でございまして、その意味では外国からの病害虫侵入ということに対し、人一倍神経質な国でございます。したがいまして、その運用につきましては、大変汚染の進んでいる国に比べますれば厳しいという問題がございますが、こういう扱いは国際的な植物防疫条約によっても認められておるものでございますから、無定見な緩和ということを考えるつもりはないわけでございます。
  292. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 これは大臣からもしっかり御答弁をいただきたいんだけれども、せっかくクリーンな日本を汚染の進んだ国と同じような扱い方をされて、一部の輸入業者の圧力に屈したり、あるいは摩擦を緩和するという通産か何かのそれに乗ぜられることのないように、大臣からも私はきちっと答弁をいただきたいと思います。
  293. 金子岩三

    ○金子国務大臣 外国からの病害虫の侵入防止を図ることは、国内農業を守る上で大変重要なことであります。したがって、技術的見地から改善可能なものはともかく、病害虫の侵入を許すような無定見な措置をとるつもりはございません。
  294. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 どうぞそのようにやっていただくことを要望して、最後の純米酒の推進について、これは一つやっていただけばいいわけですから、大臣か長官から御答弁いただきたい、こう思います。  大臣、ことしも予算で学校給食や何かふやしてもらって、本当にありがとうございました。ただ、消化を進めるためのコストというのですか、ことしの予算で言えば約二百二十億ばかりかけて十二、三万トン。そうすると、一トン消化を進めるために約二十万円ぐらいかかっているようになるわけです。それから、転作のためにこれまた補助金を出す。二、三年前の私の計算ですが、消化を進めるためのコストは、学校給食の場合はトン当たり二十万前後になるわけです。転作のための予算は、私は詳しく計算してみないが、恐らく十四、五万。減反するために奨励を出すものを計算して米一トン当たりに直すと、十五万ぐらい恐らくかかっているのではないか。古米処理に至っては、これは大変だ。これはトン当たり二、三十万もかかっていると思います。  こういうことを考えてみると、いまお酒は大体半分がアルコールですから、それを古来と同じように、昔からやられておったようにお酒を米だけでつくるならば、約五十万トンの消化が進むわけであります。五十万といえば十一、二万ヘクタールでしょうか。これは大きいと私は思うのです。お酒屋さんの方がお米が高いからちょっと嫌うという点がある、これは間違いない。それで、これをやるために、工業用と同じように安売りをすればいいわけです。工業用のように安売りをして一般消費者が納得するか、食糧庁はそればかり心配しているわけです。  ことしあたりは米が足りないだの何だのと言っておりますけれども、これは一時的な現象で、長期的には、日本の農政の焦点というものは米の消費をどういうふうに進めなければいかぬか、こういうことにかかっていると私は思うのです。昔百四十キロ食べたものがこのごろでは七十キロを割るような傾向ですから、農政の焦点というものは、米の消費を、最もつくりやすい、最も農民が喜ぶ米づくりをもう少しやらせるということではないか、私はこういうように考える。そういうことから、これは大臣が入っているかどうか私まだ調べてみませんが、根本龍太郎先生以下自民党のそうそうたる人もみんな入って、奇妙きてれつな名前の議員連盟をつくったわけです。米消費促進純米酒推進議員連盟、二百五十七名であります。私は実はそれを代表していま質問をしているわけですが、さっき言ったように、米の消化を進めるためのコスト、転作をするためのコスト、古米を処理するためのコスト、こういうものと対比して、アルコールを入れないで——アルコールを入れるというのは、戦争中に米が足りなかったから入れたわけです。こんなに米の余っているときですから、これをやめて日本酒は米だけでつくるような方向に誘導をする、これはいまの農政として非常に重要なことではないか。五十万トン十二万ヘクタール、それに相当するわけです。  そのネックは何かというと、一つはお酒屋さんが買う米が高くつく、純米酒は高くつきはしないか、こういうことです。このごろ純米酒の試飲会みたいなものがたくさんあってわんわんと人気があるのですから、売れる方は絶対間違いない。コストが高い、そういう問題があるわけで、このことはもう時間がありませんからくどくどは申し上げませんが、具体的にはどうしたらいいかということをわれわれはさんざん考えて、われわれ議員連盟の役員が集まって大蔵省主計局の千野主計官に来てもらったり、あるいは主税局の担当課長みたいな人にみんな来てもらったりして、いろいろ相談をしながらやっておりますけれども関係するところが多いから、税の方はたんと取りたい、食糧庁は簡単にそんな安売りはできぬ、こういう立場、お酒屋さんは高い米を買いたくない、こういう立場。極端に言えば、協和醗酵やアルコールをつくっているところはそんなことをやられてアルコールをつくるのがなくなればいけないみたいな意見まで出てくる。  だから、私は結論的に申し上げると、えらいむずかしいことは要らないわけで、大蔵省の主税局と国税庁と食糧庁と日本酒造組合中央会ですか、農協、販売の方にもちょっと関係あるから酒販組合の方も入ってもらっていいと思うから、そういう人で相談をしてやれば必ず道が開けていきます。必ず道が開けていくし、これは農政にとって一番重要な問題だと思います。そういうものを、ひとつ懇談会でもよし審議会でもよし、私えらいむずかしいことは言いません、それはみんないいことですからおのずと打開していくと思いますが、そういう機関を大至急つくってもらえないか、そういうことなんです。
  295. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 米の消費拡大につきましては各般の施策をしておりますが、ちょっと私の方からもお断り申し上げなければならないのは、学校給食につきましては、いますぐの消費の拡大というよりも、学童期からこうした米食になれていくという趣旨をもちましていたしている施策でございます。  純米酒の問題は、御指摘のようにいろいろ多くの問題を抱えておりますが、私どもも毎年酒造組合なり国税庁と御協議して需給計画を立てます際、最近では政府米なりもかなり入れてまいりまして、コスト的な面での御協力はしてきておるつもりでございます。まだ十分ではございませんけれども、白米トン当たりのアルコール使用量も、五十年度の二百六十リットルから現在では二百五十リットルを割るようなところまで、順次下がってきております。まだ十分とは思いません。基本的には米のコストなりの問題、この問題になりますと、全体的にいま農政をめぐりましてのコスト引き下げ、合理化という問題も抱えておりますし、一方では他用途米というような問題もございますが、相当程度生産者の方にも御努力をいただかなければならないという面もあろうかと思います。  御指摘の御提案の点につきましても、酒造組合の直接の監督官庁であります国税庁なりとも私ども十分協議してまいりたいと考えております。
  296. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 時間ですから終わります。  大臣、これは具体的に協議会とか審議会といってむずかしくなるといかぬが、大事な問題なのでぜひそれを発足さしていただいて、うまくいくようにひとつよろしくお願いいたします。
  297. 金子岩三

    ○金子国務大臣 大変興味のある御高説を拝聴いたしました。ひとつ前向きに検討させます。
  298. 野坂浩賢

    野坂主査代理 これにて小沢貞孝君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  299. 沢田広

    沢田分科員 では、限られた時間でありますから、簡潔に質問をしていきたいと思います。  農林大臣ももう長らく国会におられ、地元にもおられているからよくわかっていることだと思うのでありますが、まず第一に、土地改良区がいま置かれている条件というものは大変厳しい条件に置かれているんだという認識がまずあるかどうかということなのであります。  これから聞いていくところなんでありますが、若干述べれば、いわゆる下水道が分流方式になっていけばいくほど、雨水を土地改良区水路が背負っていかなければならない、あるいは中小河川が背負っていかなければならない、こういうことになるわけでありまして、どうしても従来の雨量計算あるいは排水量計算断面では、今日の、変わってはいないんでありましょうけれども、五十ミリ、六十ミリぐらいの雨でもはんらんを起こす、こういう状況が続いているわけでありまして、土地改良区としてはどうしても自己防衛的にこれをやらなければその責任を問われる、こういうことになるわけでありますが、そういう御認識はお持ちになっておられるかどうか、お伺いをいたします。
  300. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のように、宅地化の進展に伴います水田の貯留能力の低下という問題と、それから雨水の流出時間の短縮による溢水可能性の増大、こういうことはやはり都市化しつつある市街化区域等では事実として私どもも真剣に受けとめていかなければならないと思っております。  基本的には、市街化区域等につきましては、下水道整備をどう進めていただくか、あるいは中小河川として改修をどう進めていただくかという問題がありますが、農業用排水路の適正な管理なり改善という問題は、具体的な課題としてあると思っております。そういう意味で、一般論とは別に、やはり個別的に問題を受けとめる努力を続けてまいりたいと思っておるわけでございます。
  301. 沢田広

    沢田分科員 ですから、このことは市街化区域、調整区域の線引きをしたときに、昭和四十五年でありますが、農林省はこの線引きについて余り関心を持たなかった。あえて言うならば、恐らくこれは失敗するであろう、こういうような予測のもとに建設ベースだけでこの決定が行われた。そのことが、かえって調整区域の中にある水路その他が市街化区域の雨水等の被害を受けて、いわゆるはんらんという事態を招いてきている。しかも、その市街化区域には人家が密集をしてくる、こういうことになりますと、その責任はいかにも中小河川にあるがごとく責任が問われる、こういう経緯をたどってきたわけです。  以上で経緯は終わりますけれども、だからこそ、市街化から流れてくる市町村団体でありますが、流れてくるのですから、五十六条によって排水協議ができる。協議ができるからそれを拒否することができるのかどうかというと、お答えいただきますが、現実問題としてはできないと思うのですね。民法上にもできない、高いところから低いところに流れるという原則を否定するわけにいきませんから。人工的に流す場合には、これはまた一定の負担をとることは可能でありましょうけれども、一応協議事項はあるにしても、どうしても排水量の増大を招く、こういうことになるわけですが、その事実関係については御承知でしょうか。
  302. 森実孝郎

    森実政府委員 御存じのように、土地改良法の五十六条では市町村協議の規定がございます。ただ、現実の問題としては、この市町村協議の規定によってなかなか実態が動かないという事実は認識しておりまして、やはりこれにかわるべき有効に作動する具体的な施策なり指導方針が要るものと思っております。
  303. 沢田広

    沢田分科員 大体前段の話はそれで終わるにいたしまして、これは前にも言ったわけでありますが、土地改良区は自己防衛をするための管理規則を決定する権能を持っておる。ところが、全国でできていかない。県もこれを認定しない。管理規則には水質汚染を規定することも可能であるし、あるいはそれらの負担原則を決定する権能も持つということになるわけでありますから、その管理規則を決定することへの促進を農林省として図らなければならないのではないか、こう思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  304. 森実孝郎

    森実政府委員 昨年も実は当分科会沢田委員から御指摘があったことを、私も明確に記憶をしております。管理規程の制度化を図っていかなければならないということは、私どもも受けとめておりまして、現在役所内部におきましてモデル素案をつくったところでございます。これを土地改良区や市町村等の代表者の方に十分これから協議を進めていきたいとして、段取りを進めているところでございます。  釈迦に説法でございますが、御指摘のように水路の排出基準とか規制対象排水基準とかいう技術的にむずかしい問題がございますし、それぞれの市町村の地域において市町村の対応というものが千差万別でございます。率直に言いますと、理想的なものをつくる前にやはり管理規程で現実に作動する実態をつくることが必要ではないだろうか。そういう意味で、現実的な視点からこのモデル素案をできるだけ普遍的な指導案に持っていく努力を続けたいと思っております。
  305. 沢田広

    沢田分科員 このことをあえて言いますのは、土地改良区はもちろん原則は農民負担であります。今日のような物価上昇の中にあってそれを維持管理をするということは、反当たりの負担がそのままもし直接当たるとすればきわめて莫大な経費で、生産性はとれなくなってしまう。しかも、その原因は他の要因によって発生した原因によって拡幅をしたり用地買収をしたり、あるいは堤塘の補強をやったり伸長をしたり、あるいはポンプを直したりと、こういうことになるわけでありますから、当然本来の責任ではあるいはないのかもわかりませんけれども、移動するわけにはいきませんし、といって全然それを拒否してしまうわけにもいかない。とすれば、当然いま言ったような管理規則等を制定をしつつ自己財源を確保する、相手の負担の原則を決めていく、こういうルールをつくっていかなければならないのではないか。いま言葉の中にありました市町村と相談すれば、これは骨抜きになってしまいますよね。  ですから、農林省は土地改良団体の味方であるのですから、農民の味方でもあるのですから、純粋にその立場に立ってつくっていく、この基本的な立場が必要だと思うのですね。それで立って相手と交渉をしていって、この点は緩めてもらわなければ困る、ならばそこで譲歩するものは譲歩する、それはそれぞれの地域の実情に応じて対応していったらいいんじゃないかと思うのですが、やはりその立場は堅持すべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  306. 森実孝郎

    森実政府委員 私先ほど申し上げましたように、何と申しましてもむずかしい問題がありますし、市町村を説得してこれに協調してもらう条件づくりは必要だと思います。しかし、筋道としてはただいま委員御指摘のように、私どもも土地改良区として相談した、まとめた案をさらに市町村の立場で意見を聞くというふうな段取りで、土地改良区の立場というものを基本に置いて考えることは当然だろうと思っております。
  307. 沢田広

    沢田分科員 土地改良区は民法上、税法上特別にいわゆる非課税団体として指定をされております。一昨年の特殊法人に対する税法の通達も出ておりますが、土地改良区も単に農民負担でやっているだけじゃなく、たとえば暗渠にすれば地上が使えるわけでありますし、あるいは堤塘に何らかの措置を構ずれば、そこもあるいは駐車場になる場合もあり得るわけでありますが、いずれにしても、そういうようなことによってある程度の収益を得るということを可能ならしめる必要性があると思うのであります。付随事業と言われている規定の中にそれらがすべて包含すると解釈をしていいのかどうか、その点お伺いします。
  308. 森実孝郎

    森実政府委員 法律の解釈といたしましては、附帯して行う収益事業というのは、土地改良事業、つまり管理を含めた土地改良事業に附帯する事業に多くの場合入ってくるものと思っております。個別に御相談いただきまして、現実的な処理をいたしたいと思っております。
  309. 沢田広

    沢田分科員 それには定款の変更と予算書の分離が必要になってくるのじゃないかと思うのでありますが、そのように解釈してよろしいですか。
  310. 森実孝郎

    森実政府委員 それぞれの土地改良区によって定款は一律でございませんが、通常の場合は恐らく定款の変更と、それから収益事業の中身によりますけれども、事業収支の区分ということは必要だと考えます。
  311. 沢田広

    沢田分科員 そこで、結果的にこれが若干むずかしくなると思われるのは、暗渠にしました上の地上権がいわゆる目的外利用になるかどうかということが法律上の疑念になるわけですね。ですから、付随事業と目的外事業との関係は農林省としてはどういうふうに解釈をしていくつもりか。いま直ちにここで回答を求めようとは思いません。その利用の仕方によっては、目的外利用ということになる可能性もはらんでいるわけです。目的外利用になれば、これは大蔵省の普通財産になってしまう。こういうこともありますので、付随事業の含まれる範囲及び行政財産としての範囲内にとどめられるべき条件、あるいはまたそれ以外に超えて普通財産となるべき条件、これはやはり法律的に整備をしておきませんと、かえってほぞをかむことになりかねない点もあるわけです。その点は、いまお答えできれば結構でありますが、後刻この点は明確にしてそれぞれの土地改良区に伝達をしていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  312. 森実孝郎

    森実政府委員 お話は私も仄聞しております。少し法律的に詰めさせたいと思っております。結局は構築物の性格とか永久性等も関連をしてくると思いますので、そういった点も含めまして十分事務的に詰めさせまして、ケース・バイ・ケースの処理をしていきたいと思っております。
  313. 沢田広

    沢田分科員 それから、これから後土地改良区が考えなければならないことは、用排水調整というのはきわめてむずかしいわけであります。用水時期というのは台風が来るのであります。一方では用水で使いながら、住民では排水となれば、これは浸水するということで拒否反応を示す。ですから、用排水調整については調整委員会ができてそれぞれ調整することが決められているわけでありますが、それにしても法律上問題が生ずる場合も起こり得る。  そこで、あえて提案をしたいのは、たとえばせきがあってポンプで水を供給しておった土地改良区は、排水を主体にしながら井戸水に切りかえることも時代の要請上やむない、こういう判断をもしされた場合、それぞれの井戸の供給も、要すれば体質転換ということになるわけですが、それも当然その事業の中に含まれていく、こういうことになるのではないか。いわゆる時代の要請にこたえて変えていかなければならない体質になってくる。しかし、その費用負担はではどこかということになると、市側サイドといいますか、都市サイドということに割り切るわけにはいかない。一たん生んだ子は、農林の子は農林の子なのであって、おまえ少し非行になったから追い出しちゃうぞということは、法律上は許されるけれども、農林省はそう冷たくあるわけにはいかないのじゃないか、そう思うのでありますが、その点はいかがでしょう。
  314. 森実孝郎

    森実政府委員 市街化区域の中にあるか外にあるかによって違いますが、市街化区域自体の土地改良事業については、市街化区域の性格がおおむね十年以内に市街化を図るべき区域という性格づけとの関連において、調整して抑制していることは事実でございます。  ただ、たとえば湛水防除等の農用地の防災事業とか既存施設の軽微な改修等の維持管理事業に属する事業、あるいは、要するに不可避受益発生と申しますか、農用地区域等と運命をともにする不可避受益の発生があるような場合については事業を現に実施している例がございまして、特に排水改良等についてはそういう意味では一体をなして補助事業として採択している事例もあるわけでございます。さらに融資制度も同じような考え方で制限をしておりますけれども、これにつきましても、災害復旧、農地防災、既存施設の改修等維持管理にかかわるものについては特例として融資を受けております。市街化の進展の程度とか水系の形態というのは地域によって非常に違いますので、具体的な事情によって私どもは判断する必要があると思いますので、御指摘のような事案がございましたら、ひとつ実態に即した前向きの解決を両面について考えてまいりたいと考えております。
  315. 沢田広

    沢田分科員 もう一つは、水資源の再利用の問題なんであります。  今後、将来の二十年、三十年先を見ますると、日本の水、地下水はくみ上げが規制されてくる。そうしますと、ダムによるか、あるいはいまでも見沼も水資源で利用しようとしているわけでありますが、それと同じように、非常に水の問題というのは東京都を含めて重要な課題になってくる。どんな汚れた水であろうとなかろうとそのまま放流するんではなくて、ある程度再利用に利用していくというようなことがやはり農林の中からつくられていかなければならぬ時期に来つつあるんではなかろうか。ただそのまま流してしまっていいという時期ではない。あるいは一たん使った水をもう一回利用する。用水供給も同じですが、ただそのままたれ流しでやっていた時代ではなくなって、もう一回それを利用して還流するという方法を農林自身が考えなければならぬのではないか、こういうふうに思いますが、そういう予算はいまないでしょうけれども、そういう技術の振興あるいはそういう方式をとっていく意図はあるかどうか、お考えを承ります。
  316. 森実孝郎

    森実政府委員 私が申すまでもなく、農業自体が循環的な表層水、地下水を含めた水利用の体系の中にあるわけでございますが、同一水系とか同一水路の中でさらに機械的に水の反復利用、循環利用を図るということは、今後の課題としては私はあり得るだろうと思います。ただ、問題は、現状においてはそれに伴う設備と申しますか、投資の負担がかなり割り高なものにならざるを得ないということや、曝気の技術等の関係もありますが、低平地の特定の水系等においては十分今後議論が出る話だと思いますので、時間をいただきまして、少しこれは技術的に勉強させていただきたいと思います。
  317. 沢田広

    沢田分科員 そこで、最後になりますが、台風十八号の例にたとえますと、これは農林省にお願いをするわけでありますが、建設省にも言わなければならぬと思いますが、秩父に三百ミリ以上の雨が降った、わが埼玉県の場合に。荒川には横堤が二十七本ありますが、いままで私は横堤を取れという論の方の立場にあったわけであります。ところが、台風十八号の教訓で、あれは吉宗時代に、江戸を守るために、埼玉ではんらんを起こして江戸を守るというために、わざわざ水の速度を緩めさせ、堤防決壊場所も予定をして、そして上流ではんらんをさせて江戸を守ったという施工で、今日に至ってもそのままになっているわけです。あの台風十八号の被害の状況を見ると、荒川の水位が、APが八・三六ぐらいになりますと、海抜でいきますと約二メートルですから十・三六ぐらいになる。そうすると、ほとんどの人家がいま海抜で四・八から六、八メートルぐらいのところに住んでいるわけですから、当然荒川がTPで言えばもっと十メートルになるわけですが、APで八・三六ぐらいになりましたときにはほとんど水没するという条件にある。ですから、そのために私は森林を、緑樹をこの前も申し上げたのだし、さらにダムの造成が必要だろうし、あるいは横堤をある程度整理をしてみて、ふやすかもっと減らすか、そういうことを今後考えないと中小河川は維持管理できていかない、こういうことになるのじゃないかと思うのでありまして、この点は、時間の関係上いま直ちに回答は求めませんが、そういう点を配慮していただきたいということをひとつ要請します。  実は、さきの質問で牛肉の問題で申し上げましたけれども、ある一部の報道によれば、いままで、行政管理庁の指摘もあるので牛肉の安売りデーをふやすというようなことも報道されておりました。実際問題としてそういう気があるのか、いつから実施をするのか、その点御回答いただきたい。
  318. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 牛肉の消費の拡大と申しますか、極力安定した価格でということで、いままでも一つの手法といたしましては、まず指定店制度がございまして、これは全国二千三百カ所ばかり……(沢田分科員「簡単に、もっとふやすかふやさないかだけでいいから」と呼ぶ)そういうことにつきましてやっておりましたが、そういうものの内容をさらに充実する方向で現在検討中でございます。
  319. 沢田広

    沢田分科員 もっと詰めますけれども、行政管理庁の答申で行政管理庁もやってほしい、あのときの答弁でも、そういうことで考慮するような、やや前向きの返答があった。いまの答弁ではこれから検討するということだが、それでばちょっと話が違うのではないか。とにかく、牛肉とオレンジがこれだけ貿易摩擦を起こしている状況の中で、その差益を単に農林団体だけに補助するだけがすべてではないだろう。しかも、鶏から豚まで皆入っている。そうなると、消費者にもある程度還元するのが妥当じゃないか、こういうことから設問をしたわけですから、安売りデーをさらにふやすというようなことをきょうぐらいまでには結論を出していないとすれば、私も、もう一回腹をくくって物を言わなければならぬがということになるわけなので、いまのような答弁では了解しがたいのです。  われわれの言っていることや行政管理庁の——まあ言っていることが全部正しいとは思いませんよ、行政管理庁もときにはとんでもないことを言うこともありますからね。だから、すべてが正しいとは思わないけれども、あのときの空気としては、それを服膺しましょう、こういうことだったのだから、もう少し気前のいい返事をしてください。
  320. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 いま検討を始めているということではございませんで、この前御答弁いたしましたように、これはいろいろと関係者の納得を得ながら進めなければいかぬことでございますので、いま先生がおっしゃいましたようなことを重重腹に入れまして現在整理中でございます。現段階で直ちにこういうこととは申し上げられませんけれども、そういう趣旨で事柄が進んでいることは事実でございます。
  321. 沢田広

    沢田分科員 いまの回答が精いっぱいなのかもわかりませんが、それがまた一カ月もおくれないようにやってもらうことによって——これは消費者も同じなのです。もし消費者の立場になれば、肉の輸入をとめておく国会の決議なんというよりも、安い牛肉を食いたいじゃないか、そのために逆に武器を買わされたりするよりもずっといいじゃないか、そうなってしまう。だから、そういう国会の決議を生かしていくためには、そういう余剰の利益も還元しながら、国内の消費者の立場も生産者の立場も調整ができるように、そのために事業団が独占企業でやっているのだから、もっとその立場を考えながら消費者にも還元できるように配慮してほしい、こういうことを要望して、最後に、やります、結果的に何とかお答えいたします、そう返事をして——私そうすれば質問を終わらせて帰りますから。とにかくそうお願いします。
  322. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御趣旨に沿うような方向で努力をいたします。
  323. 沢田広

    沢田分科員 期待をいたしまして、農林大臣にはやる機会がなくて残念でしたが、そういう意味で今後御検討も願いますし、また御配慮もいただきたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  324. 野坂浩賢

    野坂主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  325. 小林進

    小林(進)分科員 私は、二つのことで質問をいたします。  何しろ四つの海に取り囲まれた日本ですから、平穏無事のときにはいいけれども、異常事態が起きた場合には一体国民の食生活をどうしてくれる、糧道をどうやって守ってくれるか、その問題が一点でございます。農林省も研究されているはずですから、どうぞ細かくお聞かせ願いたいと思います。
  326. 角道謙一

    角道政府委員 いま御指摘の問題につきましては、農政審議会におきまして三年ほど前に「八〇年代の農政の基本方向」というものが出ました段階で、今後の食生活の安全をどのように保障していくか、そういうことを具体的に詰めるというお話がございまして、そのために私ども専門委員会を設けまして、そこで二年余りをかけて検討いたしたわけでございます。  ただ、食糧が不足する場合の想定につきましては、前提条件が非常にむずかしいわけでございます。短期的に食糧が不足する場合あるいは長期的に輸入が不足する場合あるいはそれが途絶するような場合、どのような想定を置いてやるかということにつきましていろいろな試算を行ったことは事実でございます。  ただ、現実問題といたしまして、長期にわたりまして食糧輸入が途絶するというふうな問題としてはなかなか想定がしにくいということがございますし、またその前のエネルギー、特に現在は石油をほとんど外国に依存いたしておりますから、そういうものについてどうするかということにつきましても、余りにも仮定が多過ぎるということがございまして、むしろ現実的な問題といたしましては、短期的に輸入が変動を受ける場合これにどう対処すべきかという点が大きな議論の焦点になったかと思っております。  そこで、短期的に輸入が減少するような事態は何かということでございますが、たとえば港湾のストあるいはアメリカの五大湖の凍結等によりまして輸入が途絶する場合、あるいは軍事的な変動等によりまして、たとえばイラン戦争等がございますが、ああいうような場合にどうなるかということにつきまして、たとえば輸入が一割程度減少した場合、二割程度減少した場合、五割程度減少した場合どのような食糧状態になるかというようなことも試算をいたしております。  その結果、私どもといたしましては、国会にも御決議がございますけれども、国内におきまして常に総合的な食糧の自給力を強化していく、維持していく、そういうために平素から、農用地の確保等を初めといたしまして農業生産力を維持強化していくことが基本的に必要であるということがまず第一でございます。  それから、輸入につきましても、海外に依存しているという現状から見ますと、安定的な輸入ができるように諸外国とも友好関係を保ち、またできるならば、安定的な取り決めをしていくというような方向がございますし、また、平素から短期の変動に応じまして食糧の備蓄をしていく、これには小麦であるとか大豆であるとかいうような基本的な食糧で外国に依存しているものにつきまして備蓄をしていくというようなことを、いろいろ方策として構ずるということでございます。そういうことにつきましていろいろ検討し、現実の施策といたしましてもそういう方向で措置をしてきているところでございます。
  327. 小林進

    小林(進)分科員 いま短期あるいは長期の食糧政策をお挙げになりましたが、その前に、いま食糧というものが戦略物資になっているのじゃないですか。対ソ連の問題。アフガニスタンなんかの事件が起きてからアメリカはソ連に食糧を売るとか売らぬとか、結局レーガンもカリフォルニアにおける農民の攻撃を受けて、よその国にはパイプを敷くな、ガスを買うななどと、日本にも樺太あたりの開発をやるな、共同作業をするななどと人の国にばかり文句をつけて、自分の国は一生懸命ソ連に食糧を売っているなどという手前勝手なことをしているが、それにしても、いまもお話しのとおり、イランの問題等も含めて、食糧が戦略物資になっている。戦略物資になっているだけに非常に危険だということが考えられますな。戦略物資であるというような位置づけをしながら、短期の場合と長期の場合と、いまあなたは分けて御説明になりましたね。短期の場合には総合的に食糧の自給率を上げる、これは抽象的にその言葉は耳ざわりいい言葉だけれども、どんなぐあいに引き上げるかだね。今日の状況では、もう余っている余っていると言われたその主食の米さえもまた足りなくなっているという状況ですが、食生活に欠くべからざる大豆なんて何%ですか、五%ぐらい自給率があるのですか。そんなわけで、小麦だって五、六%、七%ということで九十何%を全部外国に依存しなくちゃならない。その中で総合的な自給率を高めると言うのは、これはもう不時の災難に対して言っていることですからね。平時のときに乱を忘れずというか、乱が始まってから総合自給率なんて言ったって、これは間に合わない、平時のときにやらなくちゃならない。平時のときにやるということは、いまからやっておかなくちゃならないのだ。いまからそういうことをお考えになっておりますか、これ以上質問は……。  食糧は戦略物資であるかどうかということが一点。  それから平時において、現在すでに総合食糧の自給率のために具体的などういう手をお打ちになっているかが一つ。  それから輸入の問題も、農林省しばしば言っているように、多方面にわたって輸入の道を確保しておいて、アメリカがしくじってもカナダ、カナダがしくじってもオーストラリア、オーストラリアがしくじってもニュージーランドというふうに、多方面に輸入の窓口を開いておくというふうな施策をお持ちになっているだろうけれども、私は、その問題についても実は疑問点を持っているのです。そんな遠くのカナダやオーストラリアより隣の、呼べばこたえる東南アジア、北東アジアの国々からそういう非常時の場合に食糧を輸入するという手を打っておいたらどうか、いいですか。後でも言いましょうけれども、しかし東南アジアは現在食糧が欠乏しておりますから、欲しくたって売ってくれるような国はありませんから。現在をもって論ずるわけにはいかないけれども、長期の展望に立てば、私は東南アジア等にみずから力をかしながら、非常時の場合にはその食糧で日本が命をつなぐというぐらいの、そういう高度の政策をお持ちになっていいんじゃないかと私は思うんですよ、この輸入の問題にもそういう考えがあります。  第三番目には、一体いま備蓄はどのぐらいなんですか。この備蓄の問題についても具体的に一つお聞かせを願いたいと思います。    〔野坂主査代理退席、主査着席〕
  328. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  いま御指摘のように、最近特に外交戦略に関連をいたしまして、食糧が外交戦略の一環に使われておるというような事実もございまして、御指摘のように私ども、国民の食糧安定供給を図るという観点からは、やはりこれは非常に重要だと考えております。  そこで、そのために私どもとしてやっておりますのは、たとえば優良農用地、これは現在約五百五十万ヘクタール弱でございますけれども、これを今後とも優良な農用地として維持をしていく、そのための施策が必要でございますし、たとえば米につきましても、現在は三年続きの不作という状況のために不足の状態にございますけれども、潜在的に生産力を見ました場合には、現在の水田約二百七十万へクタール強のものを仮に転作をやめたといたしますと、現在約千四百万トン弱の米が生産できる、こういうように優良農用地を維持していくということであれば、万一長期にわたって農作物が不作、米が不作になった場合でも食糧は十分確保できるわけでございますから、まず優良農用地の確保ということを基礎にして、私ども現在の農政を展開しているわけでございます。  それから第三番目にお話がございました東南アジアとの関係でございますが、これは先生も先ほどお話しのとおり、現在、東南アジア諸国自体が食糧不足で困っているわけでございますから、これにつきまして私どもいまの短期的に当面の問題として、これに食糧を依存するというようなことはおよそ考えにくいわけでございますが、まず東南アジア諸国に対しましては、農業を中心といたしました技術協力あるいは資金供与という形で、経済協力を中心にまず東南アジア諸国が自立をしていただく、そういう方向へ私ども大きな努力を注いでいるところでございます。  それから、最後にお話がございました備蓄でございますが、備蓄につきましては、現在食糧用小麦といたしましては、大体在庫は九十万トン程度、また飼料穀物につきましては、トウモロコシ、コーリャン等つきまして配合飼料供給安定機構におきまして約六十万トン、大麦は国が約十六万トン程度、また大豆につきましては大豆供給安定協会におきまして約八万トン程度、これは食用でございます。それぞれ一か月ないし二か月程度のものを備蓄をいたしております。  また、米につきましては、現在、いわゆる前年産米といいますか、前々年産米といたしまして、大体在庫で九十万トンそのほかにいわゆる古米、五十三年産以前の過剰米として処理するものでございますが、こういうものがまだ百四、五十万トンあるというような現状でございます。
  329. 小林進

    小林(進)分科員 私は、備蓄などというものは国家予算にも影響しますし、食管法の関係もありますから一概にいかぬと思いまするけれども、たとえば大豆一つとらえても、大豆の八万トンが自慢するような備蓄に値するかどうか。一体、日本人の一年間の大豆の消費量というのは何百万トンぐらいですか。
  330. 角道謙一

    角道政府委員 大豆の用途には食用と油がございますが、大体四百万トンだと思っております。このうち食用のものは大体六十万トンから七十万、これは豆腐だとかみそ等に使うものでございます。そういうものにつきまして、いま申し上げたような数字になっている。私ども、備蓄の対象として考えておりますのは、主として食用のものというものを頭に置いております。
  331. 小林進

    小林(進)分科員 これは苦心の作でございましょうけれども、いまずっとお述べになったのは短期の非常用ですね、短期政策だ。私はこれをお聞きしても、何だか一つのペーパープランでただお聞きしているだけの話であって、これはいざという場合になったら、私はこんなものは何にもならないというふうに考えている。非常に苦心の作でしょうけれどもね。私はそういうふうに考えて、実にはかないものだという気がいたしますが、それはそれとして、いまあなたのおっしゃったペーパープランに基づく、短期でもって大体何カ月ぐらいもつことができますか。
  332. 角道謙一

    角道政府委員 いまの備蓄の量は大体一カ月から二カ月程度でございます。
  333. 小林進

    小林(進)分科員 その後はどうしますか。
  334. 角道謙一

    角道政府委員 私の方の申し上げておりますのは、もっぱら短期の備蓄、短期の変動に備えてのものでございます。こういうものが完全に輸入してこない状態が長期に続くということは、現段階では余り考えにくいのではないかというように思っております。
  335. 小林進

    小林(進)分科員 短期とおっしゃいますのは一カ月か二カ月で、それは決して長期とは言わないけれども、三カ月目になったらどうするかと聞いているんですね。四カ月になったらどうするんですか。
  336. 角道謙一

    角道政府委員 完全に輸入がとまるというような状態については、私ども現状ではなかなか想定しにくいので、やはり輸入が一割ぐらいとまるといたしましても、年間を見ますと、大体一カ月分ぐらいあれば、それで賄えるわけでございますから、いま一カ月あるいは二カ月と申し上げましたのは、完全に国内の消費がそのまま続く場合には一カ月と申し上げましたので、輸入が完全にとまる場合を考えてもそうだというようなことでございます。
  337. 小林進

    小林(進)分科員 この議論は切りがありませんが、優良農地、水田も二百七十万ヘクタールとおっしゃいますけれども、現在これは動いておるのが二百七十万ヘクタールですな。減反をやってそれを取り除いた、現在生きているたんぼでございますか。
  338. 角道謙一

    角道政府委員 いま申し上げました水田の面積は、転作をしない場合も含めて全体としての水田の面積でございます。
  339. 小林進

    小林(進)分科員 全体の、まだ生きているわけだ。まだ活躍しているわけだ。減反して休耕している分は含まれていないわけですね。休耕分は入らない……。
  340. 角道謙一

    角道政府委員 ただいまの、転作も含めましていわゆる水田としての機能を持っておるものという意味でございます。この中から転作が約六十六万ヘクタールぐらいございますので、実際に水田として現在利用しているものは約二百二十万ヘクタール弱でございます。水田そのものは、先ほど申し上げましたように二百七十万ヘクタール以上でございます。
  341. 小林進

    小林(進)分科員 私がただお聞きしたいのは、一たんたんぼを休んでしまうと、それを復活してまたもとどおりにするなどというのは簡単にいかないということを、僕はちょっと言いたくて執拗な質問をしたわけですが、その問題も含めて、いまわが日本では中曽根内閣が盛んに日本の国防、軍事強化の面に力を入れられて、一たん緩急あった場合にはともかく日本はみずからの国を専守防衛で守るのだ、そのためには日本列島を不沈艦にするの、三つの海峡を封鎖するの、あるいは運命共同体だと勇ましいことばかり言って、非常時のことを言っているが、私ども庶民の口から言えば、そんな戦争でわが身を守ってくれるよりは、そのときの場合に食う物をどうしてくれるかというのが大衆にしては一番心配なんだ。それを中曽根さん、ひとつあなたは不沈艦で先頭でやってください、われわれはそんなおっかないところはいやだ、山の中にでも入って、穴の中にでも入って命を全うしたいが、そのときにわれわれの命をつないでくれる食糧をどう一体保証してくれるかというのが切実な国民の声です。そこの方へいまの政府の頭はちっともいっていない。残念至極です。  それで、ただ口を開けば減反だ、たんぼを減らせ、米をつくるな、何をするな、米価は据え置きだ、ちゃんちゃかちゃんちゃか言って、朝から晩までやることは全部耕作農民を痛めつける政策だけだ。もう農家へ行ってみるとわかりますよ。  私は、あなた方の下部にある北陸農政局を通じて一切の資料をもらっているけれども、見なさい、農業の年々の収入は、まさに坂に車を押すがごとき減になっている。全部が減っている。材料が上がってくる。税金その他の諸掛かりは上がる。米の値段は据え置きだ。それを他産業で補っているわけだ、出稼ぎだとか日雇いだとか。だから、農家としては収入は幾らかでも年々歳々少しふえていますけれども、その中から農業収入をとった場合には惨たんたるものですね。もはやどうですか、全国平均は、農家の収入の中の二割はそれでも農業所得で占めておりますか。二割までもいかないでしょう。
  342. 角道謙一

    角道政府委員 いま農家経済調査平均では、大体そんな数字かと思っております。
  343. 小林進

    小林(進)分科員 そんなものでしょうな。これは御承知のとおりです。農家、農家といいながら、その農家は農業で生活を支えているのはわずか二割です。あとは全部農業外のいわゆる雑収入から、出稼ぎとかそういう一つの肉体労働や何やから収入を得ているという、これは気の毒な存在ですよ。まさに日本においてもう消えなんとする状態だな。その農民に対して、非常時の場合だとか異常な状態の場合にはこういう短期決戦だなどと言って、いまさらここで総合自給体制をつくるのは何でもないと言ったって間に合いませんよ。そんなことは間に合わない。もしあなた方が本当にそういう非常時の場合を考えて、いまからひとつ平時のうちにおいて総合的な農政でいわゆる自給率を高めていくと言うなら、いまこの段階からやらなくちゃいけない。お話を聞いたって、何にもやってない。ただ農民をいじめることだけに力を注いでいらっしゃるということでございますから、それはただ言うだけの言葉で終わっている。何にも実績はない。  農林大臣、近来にない名農林大臣をお迎えいたしまして、私も非常に意を強うしているのですよ。ひとつ腹を切る覚悟でこういう問題をやってくださいよ。全く、国民に一番大事なのは、それは鉄砲をもって国を守ることじゃないですよ、のどへ命をつなぐ食糧をまず確保してもらうということが最たるもので一番重要なんですから。この問題がひとつ声を大にしてそういう政治の舞台に躍り出てこないということが、私は残念でたまらないのです。主管官庁であるあなたがひとつ大手を振って、中曽根、何者ぞ、そういう不沈艦だの、バックファイアだの、つまらないことを言わないで、まず国民の命を守ることから始めなさいと言う、こういう崇高な進言がやはり閣議の中に出てこなくちゃいかぬ。私はその声を閣議の中へ出していただく日を非常に期待をいたします。本当にこれは実行あるのみですよ。農林大臣に全幅の信頼を置いて、私はあなたの実行力を期待しております。やってください。  第二番目としては、やはり日本の農業の将来です。私はいつも言うんだ。日本の工業の舞台を見た場合に、一体日本に何の資源があるか。何の資材があるか。原料は全部外国に依存しておるのです。それをつくり上げる燃料までも、エネルギーも全部外国に依存しておきながら、ただ、頭脳ですね、勤勉と頭脳だけでそれを加工し、製品をつくって、そして優秀な品物で、安い価格で世界の市場を荒らしまくっているわけだ。日本は世界の市場を荒らし回っている。だからそういうときも貿易でもって全部、世界から非難、攻撃される。同じ日本人が一たん学業を終えて農業に従事したときにはどうだ。世界一高い食糧をつくって、世界のどこにも流通しないようなものをつくって、それで春にもなれば米価値上げといって、わっしょい、わっしょい三百六十五日政府を揺すぶって、価格を引き上げてもらってささやかに農業を維持していこうという、この形ですよ。これは大臣に言うより、私は帰っては言うのですよ。おまえ、一体高校でも、大学を出るときにも、工業製品をやっている諸君と学業を争って負けたかい、彼らよりもっと頭がよかったんだろう、それで職業についてしまったら、片一方は世界の国際競争に勝ってどんどん世界を征服して、一方は世界じゅうどこでもない高い農産物をつくって首うなだれて、それでもういわゆる日本の農業は、世界から、全部とは言いませんけれども、主たる食糧の農産物は没落している。それで政府だけを揺さぶって——まあ悪いけれども、こじき闘争ですよ、これは。そういう闘争に終始しているなんということは恥ずかしいと思わなければいかぬでしょうね。これはやはり農民が悪いわけではないのです。指導官庁が悪いのです。農水省なんというのは悪いね、これは。こういうことをやはり指導していかないといかぬ。  そこにも資料がありますけれども、農業のいわゆる過剰で輸出していく国は全部先進国です、アメリカでもカナダでも、ヨーロッパへ行けばフランスだとか。それでいま食糧が不足で一番他国に依存しているのがやはり発展途上国です。後進国が食糧に不足する。なぜかならば、農業というものは考えれば頭の一番いい者が従事しなくちゃいかぬ。気候を知り、天候を知り、土壌を知り、畜産にも精通し、この牛が男か女か、いつ子供を産んで、何カ月腹の中にいるか、あらゆる学問に精通しなければ農業というものはできないんですね。  だから、アメリカなんかは大学出て一番頭のいい者は農業をやる、その次に頭のいい者は役人になる、それで頭の悪い者はしようがない、工場でも行って技術屋にでもなりなさい、こういう順序ですね。これはアメリカばかりじゃない、ニュージーランドでも、カナダ、オーストラリアでも一番優秀な者は農業に行く。そして、天候学から畜産学から土壌学から、あらゆる知識を吸収して、そして世界の農業に太刀打ちする優秀なものをつくっていく。一体なぜ日本にそれができないんですかな。なぜそういう指導ができないんですかな。これはだれが悪いんです。日本の農業も指導によっては国際場裏に出て十分競争できる。いまでも競争できる農産物はあるでしょう。競争できないものがあればそれを区別して言ってください。世界の農産物市場でやれるものはわかっている。
  344. 角道謙一

    角道政府委員 いま御指摘のように、私どもも農業の将来につきましては、外国に競争できるようなものがあればいい、またそういうものをつくるべきであるというように考えておりますけれども、ただ、農業の中には施設利用型のものと土地に依存しているものと二つがございます。そして、施設に依存しているようなものにつきましては、養鶏であるとか養豚であるとかあるいは果樹あるいは施設栽培をやっております野菜等、こういうものはすでに世界各国とも競争できる程度の生産力を持っているかと思います。  問題は、水田等あるいは肉用牛、乳用牛等の大家畜、土地に依存して生産するようなもの、これはやはり土地が制約条件となっておりまして、なかなか生産性が上がらない。一つは、規模をできるだけ拡大することが基本でございますけれども、水田あるいは畑等農地が非常に価格が高い。また農地に対します農家の執着力が非常に強いわけでございますし、また仮に他産業に出た場合にも、これはほかの産業が好不況によりまして簡単にレイオフというようなことになった場合、生活維持をするためにはやはり農業が一番大事だということから、農地の流動化が進まない、規模拡大が進まないというところに現在の日本の農業の一番大きな問題があると考えておりまして、私ども規模拡大と生産性の向上を今後の基本的な施策にして進めなければならないというように考えております。
  345. 小林進

    小林(進)分科員 私はいまのお答えで納得するところがありました。確かに土地ではない技術の競争でいくと、やはり養鶏、養豚あるいは鶏卵の生産とか、そういうものがこんな狭い日本でも何とか国際場裏に競争してなおかつ勝っていく実績があるんですよ。しかし、いま言われるように土地利用のものだけを基盤にしてやる農業は、世界から見れば実に問題にならないくらい惨たんたる状況に置かれているんですが、それは惨たんだ、競争できないというだけで放置していくわけにはいかないと思うんですね。それは日本人の英知を傾けて解決してやらなくちゃいけない。みんな不幸じゃないですか。それで毎年毎年政府に向かってわっしょい、米価闘争ばかりやるようなことから本当に進歩した形に持っていく、その指導が大切です。確かに移動はむずかしい。アメリカから見れば百倍ぐらい土地の価格は高いそうですから、そんな高い土地の上から出た農産物が安くなろうはずがない。けれども、そういう知恵をしぼってください。私は知恵があるんです、たんとあるんですよ。けれどもここで言うと、選挙区に帰って農民に報告すると憤激を食うからここまでで私はやめますけれども、そういうところをひとつやっていただきたい。  同時に、時間が来ましたからこれでやめますけれども、農林大臣、非常時の場合には日本は食糧を最終的に外国に依存しなければいけませんよ。国内の自給体制なんてそんな一夜にしてできるものではありません。その外国に依存するときには、海のかなたの三千里、五千里よりは、呼べば答える後ろ。後ろには中国大陸あり、アジア大陸あり、インド大陸がある。そこにきちっとした食糧の基地をつくり上げておいて、常に情けをかけておきながら、非常時の場合にはそこから日本海を通じて新潟の港へどんどん陸揚げできるような遠大な構想をおやりにならなくちゃいけない。それが大臣に陳情いたしました黒龍江省の三江平原です。これは十二万平方キロでございますから、日本の全領土三十七万平方キロのちょうど三分のの一の広さがあります。そこへ大臣ひとつ力を入れていただきたい。  ちょっと一言だけ申し上げますけれども、いま黒龍江省から日本の残留孤児が来て親探しをやっています。ところがその黒龍江省には、日本人ではない中国の孤児、日本の戦争で親を殺され、子を殺され、きょうだいを殺された中国のいわゆる残留孤児が何十万人といます。この諸君が切々として私どもに訴えるのです。日本は自分の国の残留孤児、残留孤児といってお祭り騒ぎしているけれども、日本の軍閥によって荒された中国のわれわれの切ない悲しみを一体どうしてくれるんだ、忘れよう忘れようと思っていままで三十七年間過ごしてきた、日本がとうとう日本の残留孤児なんて火をつけたものだから、さらにまた私どもは三十七年前を顧みて本当に日本に対する恨みやら悲しみがよみがえってきています、本当に日本がわれわれを思ってくれるならば、黒龍江省の、いわゆる中国の孤児もいる日本の孤児もいるこの地域の産業を助長する、農業を助長する、経済を助長する、こういう温かい政治をひとつやってもらえないだろうか。私はもっともだと思うんだ。私は大臣に考えていただきたいと思いますが、どうぞひとつ大臣に御答弁をいただきたい。
  346. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御高説を拝聴いたしまして大変感銘いたしました。かねていろいろ御要望されております三江平原につきましても、中国とよく相談をして御期待に沿うように努力をいたしたいと思います。
  347. 小林進

    小林(進)分科員 ありがとうございました。これで質問を終わります。
  348. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。  次に、斎藤実君。
  349. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、農畜産物の市場開放についてお尋ねをいたしたいと思います。昭和五十八年度の畜産物についての政府の価格が今月中に決まるわけでございますが、きょうは当面する酪農問題にしぼりまして数点お尋ねをしたいと思うのです。  まず、農畜産物の市場開放問題についてでございますが、ことに牛肉の場合、これが市場開放されることになれば、肉用牛の飼育農家だけではなくて、乳廃牛やあるいは乳用牡犢の販売による副収入にも多くの影響を与えるわけでございまして、酪農農家の経営もこれによって壊滅的な打撃を受けるわけでございます。すでに肉専用の子牛のみならず、乳用牡犢の価格も下落しているのは自由化に対する不安が影響あると思うわけです。  そこで、農畜産物についての日米交渉はいつ再開されるのか、見通しについてお伺いしたいと思うのです。また次に、自由化のみならず、これ以上輸入枠の拡大を行わないという強い決意で臨む用意があるのかどうか、また米国はすでに現在の段階で、牛肉やオレンジについての完全自由化の要求を公式に取り下げる考えを示しているのかどうか、これもあわせて伺いたいと思うのです。
  350. 角道謙一

    角道政府委員 日米の農畜産物交渉の現状について御説明申し上げます。  一月十八日でございましたか、総理が訪米されました際に、レーガン大統領とオレンジ、牛肉の貿易問題について話し合いがあったわけでございます。その際、アメリカ側からは市場開放の強い要求があったわけでございますが、総理からは、日本におきましては自由化は非常にむずかしい、また現在お互いにこの問題について非常に熱したといいますか、非常にいら立った状況にございますので、少し冷却期間を置いて専門家のレベルで話し合いをしてはどうかというような御提案があったわけでございます。それに対しまして、米国レーガン大統領からは特段の回答がないままに次の議題に移ったということで、私どもといたしましては総理の御提案、つまり実務者レベルでじっくりと冷静になって話し合うというようなことについて、アメリカ側はある程度了解をしたというように理解をしているわけでございます。  次いで、二月の十一日でございますが、日本で日米欧の三極通商会議がございまして、アメリカ側からはブロック通商代表が米国代表として日本に来たわけでございますが、その際、でき得れば農林大臣と会ってこの問題について話し合いをしたいという申し出が事前にあったわけでございます。しかし、三極通商会議が非常に手間取った、また三極代表間で相互の話し合いもあったというところから、ブロック代表は時間がとれないという理由で農林大臣とのアポイントメントは取り消しをいたしまして、かわって外務大臣と全般的な話し合いが行われたわけでございます。その中で、アメリカ側からは、農産物問題について非常に強い市場開放の要求があるという事情も述べながら、その問題について日本側とも話し合いをしたいというふうな申し入れがあったわけでございますが、これに対しまして外務大臣からは、前回の日米首脳会談におきまして総理から実務者協議、実務者間での話し合いを申し入れていることでもあり、これを実現したいというようにお話があったわけでございます。これについては特段の意見はなくて、私どもの推測しておりますところは、この問題について米側としても話し合いをするということには用意があるというふうに考えております。ただ、具体的にいつどこでどういうレベルでやるかということについては現在まだ合意がございませんので、これについては外交ルートを通じましてさらにお互いの接触を図っていく必要はあろうかと思っております。  たまたま三月の五日、明日でございますが、パリにおきまして、OECDの会議におきまして、農産物問題につきまして各国の事務当局での非公式な意見交換の機会がございますが、そこに現在佐野経済局長が出席することになっておりまして、これにはアメリカ側から代表といたしまして農務省の副長官リンという方が出席されます。無論この会議は、日米欧その他主要国の豪州、ニュージーランドも含めまして農産物問題につきましての非公式な意見交換でございますが、その際、場合によっては何らかの接触があるかもしれないというふうに思っておりますが、現状ではそういうことではっきりした見通し等は持っておりません。  それから、輸入枠の拡大はどうかというようなお話でございますけれども、本来輸入割り当てなるものは、国内での需給事情を見ながら私どもとしましては国内生産で供給し得ないもの、これを国民の食糧供給という観点から不足分をできる限り輸入をしていくというのが基本であるというように考えております。そういうことで、短期的には当年の農産物の需給というものを見ながら輸入枠を決定していくというたてまえになってきておりまして、現にそういう運営をやっております。ただ、現在アメリカ側から言っておりますのは、米側の貿易事情あるいは米側の農業事情等から一方的に枠の拡大をしろというふうな要求でございますので、こういうようなわが国の実情を無視したアメリカ側の一方的な枠拡大の要求には絶対に応じられないということで、私ども非常に厳しい態度で臨んでおりまして、今後もそういう態度で交渉に臨むつもりでおります。  先ほども申し上げました首脳会談におきまして、総理からは柑橘、牛肉等につきまして自由化は非常にむずかしいということで御説明をいたしているわけでございます。アメリカ側といたしましては、アメリカ側の事情もあろうかと思いますが、その後上下両院の公聴会、議会等で、あるいはその他の場所でUSTRの代表者あるいは農務省の関係者が発言しておるところを見ますと、基本的には自由化が必要であるというような態度は崩していないようでございます。そういう意味では、基本的に自由化要求を完全に取り下げているようには私どももまだ見ておりません。  以上でございます。
  351. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 官房長の答弁はわかりますが、これは大臣、せっかくですからちょっとお尋ねしますが、いま農畜産物の市場開放措置については、酪農家だけではなくて、わが国の養豚、養鶏経営にも決定的な打撃を与えるわけでございます。そこで牛肉生産を守ることについては、わが国の食糧戦略、安全保障確保、こういう見地からもきわめて重要な意味を持っておるわけでございまして、安易に市場開放を受け入れてはわれわれは困るし、わが国の畜産が打撃を受けるわけでございます。どういうお考えを持っているか、ひとつ大臣から伺いたいと思います。
  352. 金子岩三

    ○金子国務大臣 私は終始一貫、自由化はもちろんのこと、枠の拡大についても、日本の生産が天候等の支配によってもし減産で不足した場合、消費の動向を見て輸入する場合はあるかもしれませんけれども、余る物まで輸入して日本で貯蔵するような行き方はとらないということでございますので、不足が生じた場合は輸入も多少拡大する場合があるかもしれませんが、不足が生じない場合は輸入も枠の拡大も、自由化はもちろん、これはもうお断りしておるわけです。そういう決意で取り組んでおります。
  353. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣、ぜひひとつそういう姿勢で対処していただきたい、要望申し上げるわけでございます。  次に、生乳の需給計画と限度数量についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、昭和五十七年にはバター、チーズその他の乳製品の輸入が大きく伸びたわけでございます。五十一年以降生乳が過剰であるということで、五十四年からは加工原料乳生産の酪農家は厳しい計画生産を強いられてきたわけでございますが、五十七年には計画生産のもとでバターを輸入するということになって、農家はきわめて割り切れない思いでいるわけでございます。五十八年度の需給計画については、これまでの厳しい反省の上に立って策定作業を行うべきであると私は考えるわけでございますが、いかがですか。
  354. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘がありましたように、原料乳の生産がかなりの期間オーバーしておりましたのを、生産者の自主的努力によりまして、五十七年度はほぼ均衡点に近づいたのではなかろうかと思っております。御指摘がありました三千トンの輸入でございますが、実は昨年需給計画を立てます際に、事業団がかなりの在庫を持っておりますことが価格の低迷と申しますか、なかなか価格が直らないということで、需給計画上も生乳換算で約三十万トンばかりのものを事業団から放出するという前提で組んだわけでございます。ただ、残念ながら、四月、五月ごろ北海道の牛乳生産が伸び悩みまして、その時期にバター、脱粉等比較的値段が上がってまいりまして、放出します過程で、どちらかといいますとバターの方が大量に出まして、脱粉はなお現在二万一千トンばかり持っておりますが、バターに万が一不足があってはということで、御指摘の三千トン輸入したわけでございます。現在その三千トンは事業団でなお持っております。  ただ、おっしゃいましたように、生産を調整しておりました農民としてはなかなか割り切れない気持ちがあったのではないかということで、輸入いたします際にも生産者によくその事情を説明いたしたわけでございます。  そういう意味で、五十七年度における需給はほぼ想定しました線上を行ったわけでございますが、今度は五十八年度になりますと、事業団在庫というものは脱粉についてはまだ二万一千トンばかりございますけれども、バターにつきましてはその三千トンだけでございます。したがいまして、五十八年度の需給を考えます場合には、加工原料乳の大きさについて昨年よりは違った要素があるということを頭に置いております。ただ、これも四、五月ごろ生産が停滞しましたのですが、その後生産者の協力も得まして、特に天候その他で草の条件もよかったわけでございまして、北海道等につきましては四月からことしの一月までで六%を超えるような生産の増強がまだ続いておりますので、余り刺激的なことになりますとかえってまた過去の苦い経験を踏んでもいかぬというなかなか判断をしづらい条件もございます。その辺の状況を十分踏まえまして、今月末までに適正な数量について、限度数量を定めるような方向で検討いたしておるところでございます。
  355. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 もう一遍ちょっとお尋ねをしたいのですが、五十四年度以降四年間、百九十三万トンに限度数量が据え置かれているわけでございまして、五十八年度は乳製品の需給事情から見て当然この限度数量を大幅に拡大すべきではないかというふうに私は考えるのですが、いかがですか。
  356. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御説明いたしましたように、過剰在庫と目されました事業団在庫が減っております。乳製品の需給規模につきましても若干大きな規模になっていると考えられます。したがいまして、私どもは過去四年間の百九十三万トンという限度数量の水準にこだわるような時期ではないと思っております。数量等につきましては、なお、さらに検討を要すると思っております。
  357. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ぜひひとつ検討していただきたいと思うのです。  次に、擬装乳製品の輸入について伺いたいと思うのです。  乳製品とともに脱法的な形で輸入してきている擬装乳製品についても輸入が非常に大幅にふえているわけでございます。五十七年には調製食用脂が一四・六%、無糖のココア調製品が一五・四%伸びておるわけです。中でも無糖のココア調製品については、四十八年から業界が年間一万七千五百三十五トンの範囲内に自主規制することになっているにもかかわらず、五十七年には二万七千二百三十二トンと自主規制量を大幅に上回っておるわけです。この擬装乳製品についてはより一層効果の上がる強力な行政指導を行うべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  358. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 まず調製食用脂について申し上げますと、これにつきましては、御承知のように、ニュージーランドとの間で協定を結んでおりまして、現在、先生おっしゃいましたように、去年に比べまして量は若干ふえておりますけれども、これは明らかに協定を結んでおります範囲内でございます。なお、総量につきましても、当時考えました三カ年の数量の以内におさまっておりますので、これは比較的うまくいっている部分でございます。  後で御指摘のございましたココア調製品につきましては、いまお挙げになりましたような数字の関係に現在なっております。これは御承知でございましょうが、ココア調製品と申しますのはチョコレートの原料が主力でございますが、チョコレートそのものの需要がこのところかなりのテンポで伸びてきておりまして、チココレート自身がまた輸入をされるという性質の製品でもございますので、このあたりが、先ほど申しました調製食用脂よりも少し規制のしにくい要因でございます。  私どもとしましては、先ほど先生からも御指摘のありましたように、関係業界にあくまで白粛を求めるという形での調整でございまして、調製食用脂のように輸出国との間で協定を結んで抑え込むというスタイルは現実にはとっておりませんものですから、いま御指摘のように若干この面については手ぬるいという気持ちもいたします。ただ、それじゃこれ自身ほかに回されて何かに使われているかということになりますと、これは全くチョコレートの方の原料にしか回らない製品でございますので、他の脱粉のように何にでもかわって他の分野を侵すという心配はないのでございますけれども、やはりチョコレートそのものが伸びるとはいうものの、先ほど申しましたように、一種の自粛をするという覚書もいただいていることでございますので、さらに今後とも業界に対しまして極力これが増加することのないように、私ども関係者と一緒になりまして指導するつもりでございます。
  359. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ぜひひとつ実効の上がる強力な指導をお願いしたいと思うのです。  それから加工原料乳の保証価格についてでございますが、御承知のように加工原料乳を売り渡すときの保証価格は、五十二年度以降据え置き同然の措置となっているわけでございまして、資材価格の高騰だとかあるいは生産コストが上昇していることを考慮すれば、実質的な値下げになっているわけでございますね。また従来は、価格の据え置き措置の理由として生乳、乳製品の過剰基調ということが指摘をされてきたわけでございますが、本年はこの需給事情が切迫をしてきているという事情も勘案いたしまして、酪農家の生産意欲を喚起させるためにも、酪農農家が納得できるよう五十八年の保証価格はぜひとも引き上げるべきだというふうに私は考えるわけですが、いかがですか。
  360. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 保証乳価の水準につきましては、御承知のように酪農の場合は、どちらかと申しますと経営規模の拡大、合理化に大変御努力をいただきまして、そのことによって値段は上げないけれども農家経営としてはやっていけるような体質にということで、いま御指摘がありましたようにここ数年ほとんど上げない、去年は〇・五六%上げたわけでございますが、非常に抑えられた水準の中で御努力をいただいたわけでございます。  ことしの乳価決定の際に考えるべきことといたしましては、そういう経営の合理化というものは進んでまいっておりまして、多頭飼育の方向なりあるいは一頭当たりの搾乳量とかあるいは飼育の労働の時間とかそういうものを見ますと、やはり合理化の方向に走っているようにも思えます。たとえば若干、昨年度の数字の中で購入飼料の量がふえているとか比較すべき労賃部分がどうなっているかとか、そういうことを比較する必要はあろうかと思いますが、基本的には価格というよりも極力生産性の中でやりまして、なるべく早く目指しておりますEC水準に近づくというのが日本の酪農を安定させるゆえんではなかろうかと思っております。詳細の数字につきましてはなお検討中でございますので、そういう事情をよく見まして審議会にかけて適正な水準に決定をしていきたいと思っております。
  361. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 局長、私も現地へ行ってきましていろいろ調査をしてきたのですが、酪農農家はそれなりに何とか生産性を上げようと合理化にも努力していますし、それからいろいろな面で苦労してやっておるわけですね。ですけれども、保証価格が全く上がらぬということがきわめて生産意欲を減退させている大きな要因になっていること、これはもう事実なんです。これはぜひ引き上げるべきだと私は思うのですが、大臣、せっかくですからひとつお答えいただけますか。
  362. 金子岩三

    ○金子国務大臣 いろいろ斎藤先生からの御意見、御要望がありました。御期待に沿うように努力をいたします。
  363. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ひとつよろしく。  時間がありませんのではしょって質問をいたしたいと思うのですが、実はLL牛乳についてでございます。これは現在ヨーロッパ諸国では流通の主体となっております長期保存可能な、しかもLL牛乳をわが国において普及させることは、牛乳の消費拡大を図る上で大きな役割りを果たすものだというふうに私は考えるわけでございます。  そこで、お尋ねをいたしますが、わが国においては、LL牛乳に対して、依然として乳等省令に基づく要冷蔵の規制が適用されておるわけでございまして、その理由をひとつ伺いたいのです。
  364. 瓜谷龍一

    ○瓜谷説明員 先生もよく御承知のとおり、牛乳につきましては特に腐敗しやすいという食品でございますので、食品衛生法に基づきます乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で、摂氏十度以下に保存しなければならないと規定しております。それで、いわゆるロングライフミルクにつきましても、私ども現時点ではいわゆる牛乳の一つだと考えておりますので、この規定が適用になっております。
  365. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 現在国で、国立衛生試験場においてLL牛乳の常温における保存試験等を行っているようでございますが、今年度中にその試験結果が得られるのではないかというふうに聞いておるわけですが、予定どおり試験結果が出てくるのかどうか伺いたい。
  366. 瓜谷龍一

    ○瓜谷説明員 いわゆるロングライフミルクにつきましては、その特性を勘案しまして、常温流通時におきます食品衛生上の諸問題を調査検討してまいってきております。それで、来る今月末までにそれらの調査結果が得られる予定となっております。
  367. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 もし、今月の末までに試験の結果が出て、常温流通を行っても食品衛生上安全であるという結論が出た場合に、乳等省令を改正して牛乳の要冷蔵を外すということになるのか伺いたい。
  368. 瓜谷龍一

    ○瓜谷説明員 ただいま御説明しましたとおり、今月末にいろいろ調査データがわが方の手元へ入る予定となっております。したがいまして、その結論を踏まえて判断するということでございますので、現時点では要冷蔵撤廃云々につきましては意見は差し控えさせていただきたいと思っております。
  369. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 そのことについてはまた結果が出てから伺いたいと思います。  酪農経営負債整理資金についてお尋ねをいたしたいと思います。この酪農経営負債整理資金については、五十六年度から六十年度まで五年間で三百億円という融資枠の予定で始まったわけでございますが、すでに五十六、五十七年度で当初の融資枠を消化をしてしまっているわけでございます。この整理資金に対する負債農家の需要は、現在でもきわめて切実なものがあるわけでございまして、農林省はぜひともこの期待にこたえるべきと私は考えるわけでありますが、五十八年度以降について農水省はどう対処していくのか伺いたい。
  370. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 五十六年と五十七年度に行いました負債整理資金につきましては、御承知のように、単に安い金利に借りかえるというだけではなくて、経営面でもいろいろと御努力をいただくというようなこともやりまして、それなりの成果は上がってきているように思います。  私ども、そういうことで一応はこの二カ年で三百億の貸し付けを終わっているわけでございますが、これは、そういう貸し付けました農家がどのような形で今後の資金需要が出てきて、これは必ずしも負債ということだけではございませんで、どのように資金が回転してということを毎年見直しながらやっていくということになっておりますので、五十八年以降の問題につきましては、現在そういうような農家がどのような経営状態にあるかというようなことを、道庁あるいは関係県等を通じまして実態調査をいたしております。そういうものの結果等を見まして、さらに必要なものかどうかの判断をしたいということで、なお検討中でございます。
  371. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ぜひひとつ調査検討の上、積極的な対応をお願いしたいと思うのです。  最後に、時間が参りましたが、日本の酪農につきましては、アメリカから二十年おくれていると言われておるわけですが、酪農がこれから近代産業として生き延びていくためにはいろいろな問題があると思うのです。いつも価格だとか、乳価の問題だとか、労働力の問題だとか、融資の問題だとか、いろいろたくさん問題を抱えているわけでございまして、もちろん経営の合理化対策にも力を入れなければならぬと思いますが、農水省として、日本の健全な酪農農家の育成発展のために、今後どういう施策をとられるのか、これは基本的な問題についてお尋ねをいたしたい。
  372. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 日本の酪農は、実は歴史はそう古いわけではございませんか、大変なスピードアップをしながらEC水準に近づいておりまして、平均的に申しましても、すでに二十頭の規模でございますが、北海道は御承知のように四十頭規模ということで、ECの中でもむしろ大きな国の水準にまで至っておるわけであります。  特に北海道等につきましては、かなりの草地の基盤、酪農の場合は何と申しましても粗飼料の給養が高くなければいけないわけでありますから、そういう土地基盤も整備をされておりますので、私どもとすれば、今後の日本の農業の中でかなりの地位を占めて発展できるものと思っておるわけでございますが、一つは、何と申しましても発展のスピードが大変速過ぎた。速過ぎたということは若干言い過ぎかもしれませんが、ECで百年かかったのを二十年で追いつくというようなスピードでございますから、そういう面で、いわばまだ資本の充実という面で、たとえば借入金のような他人資本の比重が高いとか、そういう経営不安要素があったわけでありますが、これも経営規模拡大の中で負債整理等やってきまして、ある程度前進をしてきていると思っております。  もう一つ必要なことは、こういう多頭飼育等になりますと、技術面、特に優秀な乳牛を集めて、搾乳その他についても省力化技術でやっていくというようなこととか、飼料栽培の省力化を図るとかいう技術面がありますが、これも相当なテンポで進みつつあると思います。  そういうことにあわせてもう一つ、日本の場合に、酪農というものと肉用牛生産が非常に峻別をされておりますけれども、たとえばEC等考えますと、実は肉を供給しているのは、酪農をやっていらっしゃる方が一緒にやっているというような事態もございます。私ども、特に肉を安く生産します場合に、購入飼料に頼らずに草地を使ってやっていくということにつきましては、酪農の方が実は先進的でございますので、単に酪農というだけではなくて、肉用牛生産も一体としてやるような、よく言われる乳肉一体生産というようなものも一つの今後の方向ではなかろうかと思っておりまして、今回、法律審議をお願いいたします酪振法の一部改正案等は、そういうことも考えて将来方向を位置づけたいと考えておるわけでございます。
  373. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 せっかくですから大臣、ひとつ締めくくりを。
  374. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいま局長が詳細に御説明申し上げたとおりでございます。ひとつ積極的に酪農の振興を図りたいと思います。
  375. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 以上で終わります。
  376. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて斎藤実君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  377. 木下敬之助

    ○木下分科員 五十五年四月八日の衆議院本会議におきまして、「政府は、食糧自給力の強化を図り、わが国農業・漁業の発展と生産力の増強に万全の施策を講ずるべきである。」という食糧自給力強化に関する決議がなされているわけでございますが、大臣は、この国会決議を現在どう受けとめておられるでしょうか。特に食糧自給力の強化とは、具体的にどういうことを目標に置いておられるのかをお伺いいたしたいと思います。
  378. 角道謙一

    角道政府委員 五十五年四月の衆議院におきます自給力強化決議というものを、私ども今後の農政の基本的な方向として尊重していくものであると考えておりまして、ちょうど農政審議会がその時期におきまして「八〇年代の農政の基本方向」につきまして審議をしておりましたので、当然この衆議院の自給力強化決議というものを念頭に置きまして、今後の農政につきましての方向についての答申があったわけでございます。私どもも、この衆議院の自給力強化決議あるいは「八〇年代の農政の基本方向」というものを今後の農政の基本といたしまして、生産性の向上を図りながら、国内で生産可能なものは極力国内で賄っていくということを基本としながら、今後とも食糧の自給力の強化に努めるということを考えておるわけでございます。  このためには、需要動向に応じました農業生産の再編成であるとか、この具体的な方策といたしましては、水田利用再編対策あるいは新地域農業総合生産対策であるとか畜産総合生産対策等をとり、また中核農家の育成確保あるいは農地の流動化による経営規模の拡大等、これにつきましては、地域営農集団であるとか農用地高度利用促進事業であるとか新農業構造改善事業、こういうような具体的な施策を頭に置いて現に運用しているところでございますし、また、農業基盤の計画的整備等、これにつきましては、明年度におきましては第三次土地改良長期計画というものを策定をいたしまして、長期的な計画性を持ちまして基盤整備に努めるというようなことをそれぞれ講じておるところでございまして、これによりまして、今後とも農業生産力というものを維持強化してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  379. 木下敬之助

    ○木下分科員 私がお聞きいたしたいのは、皆国民の願いであり、そういう方向は全体はわかるのですが、指標として自給率等をこの数字を維持したい、何年ごろまでにはこれはここまでするんだ、こういった具体的な指標を持ってやらないと、ずるずるになる面もあるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、自給率の六十五年度見通しのような数字を発表されたこともございます。その数字を達成することを目標でやっておる、こういうふうに解されるわけですが、それとも自給率というのと自給力の強化とは全然別のことであるというふうに思っておられるのか、お聞きしたい。
  380. 角道謙一

    角道政府委員 具体的に現在私ども農業生産の目標として持っておりますのは、昭和五十五年の十一月に、閣議におきまして、農産物の需要と生産の長期見通しというものを施策の目標として決定したところでございまして、これには六十五年におきます物別の国内の需要動向というものを前提といたしまして、また、国内の農業生産力を具体的に活用するという観点から、どこまで生産を伸ばし得るかということを検討いたしまして、その結果具体的な数量を目標として掲げております。  この結果といたしまして、物別に、たとえば米につきましては一〇〇%であるとか、あるいは麦につきましては一九%、ただし、これは私どもといたしましては、国内産の小麦、たとえば性格によりましてめん用等に適する、また、パンには国内産の小麦は適しないというようなこともございますので、個別に国内の日本めんというものを念頭に置きまして、それの需要をたとえば一〇〇%程度満たすというようなこと、あるいは大豆につきましては大体六割程度というように、それぞれの目標を一応持っているわけでございます。
  381. 木下敬之助

    ○木下分科員 少し注文があるのです。これは六十五年度の、わりと遠い先の目標になっておりますので、この数字が出るためには、それぞれの近い将来の五十八年、五十九年、ずっと見通しがある程度あった上で積み上げてつくられたものだと思うのですが、一体国民にとって順調に進んでいるのかどうなのか、いろいろな問題が身近に判断できる必要があるのではないかと思いますので、どうかその辺を明らかにして、日本の農業はいまどういう状況に置かれて進んでいるかというのがわかるような状況にされたらどうか、こういうふうに思います。  それが一点と、もう一つは、個別のもので、米は一〇〇%で、それ近く、現在オーバーしたりしながらやっていますからいいけれども、こういうふうに個別にいろいろ挙げられましたり、カロリー自給率ということで出されたりしましても、何か国民には、一体どの数字が満足いくように充足されておれば安心できるのかという点がはっきりしないと思うのです。大臣、できればその辺が、私どもとしましては国民の納得のいく目標というものをつくってやっていただきたいという希望を持っておるのですが、どうお考えでしょうか、ぜひお聞かせください。
  382. 角道謙一

    角道政府委員 私ども、六十五年の見通しを立てます段階におきましては、長期のトレンド等を一応前提にしながら、過去のたとえば技術の進展状況であるとかというものをとっております関係で、どうしても一つのトレンドでしか推測できないわけでございまして、農産物の常といたしまして、豊凶の変動等ございますし、これを毎年、年次別にどうであるというようなところまでは私ども持ってはおりません。そのため、毎年度毎年度どうかということにつきましては、具体的に私ども一つ一つのものについていま詳細に御説明しなければいけませんけれども、総体としては、大体の方向は現在は維持されておるのではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、この表示をどうするかというのは、自給度の手法をどうするかというのはなかなかむずかしい問題がございまして、私ども、たとえば総合食糧自給率、これは各国でわりにとられている方法でございますから、いろいろな物の性格が違います関係で、数量でこれを全部表示するわけにもまいりませんし、大体各国でとられているものは金額で、国内で生産できるものと、あるいは国内で消費しているものというものをとるのが通常でございますが、これではなかなか日本の場合には、飼料穀物等を外国から大量に輸入しております関係で、これが肉なんかに化体をしていく、あるいは牛乳等乳製品に化体をしていくという観点がございまして、必ずしも総合食糧自給率だけでは自給度の表示が適当ではないという面もございまして、この場合には、よく使われる手法としましてはカロリーベース、これで重複計算を避けてやるような方法がございます。そういうようなものがいまいろいろあるわけでございますが、総体として一番なじみやすいのは、総合的な金額表示の自給率でございますが、これは物別に性格が違いますので、必ずしもその辺は正確に自給状況をあらわす手法として適当かどうかという点については、御指摘のように問題があろうかと思います。
  383. 木下敬之助

    ○木下分科員 それはいろいろと研究しながら、計算方法等も考えながら、できるだけ国民の要求に合ったような、こういう数字が知りたい、われわれは自給力を強化するというのは、こういう数字をこのくらい維持するのを目的としているのだという、国民合意ある数字を持ってやっていただけるような方向にぜひ研究をしていただきたいと思います。  そういうことで、いまはいまで、そういう数字をある程度の目標にされておるわけですね。この見通しが六十五年にこういうふうになるだろうという単なる見通しじゃなくて、この見通しというのは、そうしたいという目標も持ったものであると受けとめているのですが、ただ、もっと先まで含めた長い将来にわたって、一体いま言われました食用農産物総合自給率、これはちょっとわかりにくい、飼料用の穀物等もあるから、そのものの数字がそう大きな意味かどうかわからないというふうに言われましたけれども、そういう事情まで含めて、この数字の六十五年は七三、七三%ということでしょうが、そういう目標を立てておられる。これで十分だとお考えですか。この数字の計算の仕方まで含めた上でこれをどういうふうにとらえておるか。それから同じように、カロリー自給率がいま千三百三十近辺ですね。そしてまた、目標も大体似たぐらいの千三百二十ぐらいを目標に置かれていますが、この目標で十分だとお考えでしょうか。
  384. 角道謙一

    角道政府委員 現在の食糧需給あるいは将来の食糧の世界の需給状況を見てまいりました場合、私どもこれで完全なものというようには必ずしも見られないかもしれませんけれども、やはり日本の場合には国土自体が非常に限られておる。特に農用地が制限がございますので、私どもといたしましては、直接口に入る主食用穀物というものを中心に考える必要があるのではなかろうかというふうに考えております。  現在、日本の自給率の低い一番大きな理由は、畜産物のえさに使用します飼料穀物、これがほとんど外国から入ってくる。また大豆につきましても、ほとんどが外国から入ってくる。また麦につきましても、現在パンということで日常生活に非常に普及しておりますけれども、これも相当量は外国に依存せざるを得ないというようなことがございますけれども、その中で一番大きいのは飼料穀物でございまして、これは国内では収量、収益の点でなかなか採算のとれるような経営が成り立たないということがございます。だから、将来を展望しました場合、日本人の食生活というものは、カロリーとしてはいま大体二千五百カロリー程度でございますが、これはもうこれ以上そう大きく伸びない反面、この中で食料消費は高級品に指向していく、特に畜産物等の牛乳、乳製品あるいは食肉に依存していく、消費量がふえていくということになりますと、やはり飼料穀物の輸入はふえてくる。その結果、残念ながら総体としての穀物の自給率というものは現状より若干落ちることはやむを得ない。ただし、直接口に入ります主食用の穀物といたしましては、現在大体七割近くでございますが、この程度のものは今後とも維持していく、でき得れば拡大することも望ましいというふうには考えております。
  385. 木下敬之助

    ○木下分科員 国会決議の趣旨を十分大事にされて、そして望むことといたしましては、できるだけ明確な数字で、毎年それに対してどういう状況であるのかということを国民にわかりやすくしていただいて、そこがはっきりしてきますと、いまのような農産物の枠拡大、自由化等の問題がありましても、国会決議によって、ここを緩めるとそれができなくなるんだと明確に言える点があろうかと思いますので、そういったことも含めて、今後の御検討をお願いいたしたいと思います。  政府もわが国の食糧自給率の向上のためには、いろいろな角度から努力をされていると思いますが、私は、大きく分けてこれを三つの角度から考えていくべきじゃないか、こう考えております。その一つは輸入を制限するということであって、二つ目はできるだけ国産品を食べるようにすることであり、三つ目が生産の効率を高めることである、こういうふうに考えます。時間は余りありませんけれども、そういう観点から幾つかの問題についてお伺いをいたしたいと思います。  まず、第一の輸入の制限についてお伺いいたしたいと思いますが、近年、特にアメリカから強く市場開放を求められております。政府の対応に対して、農家の方々は非常に敏感になっておる今日でございますが、そういう農家の声の一つに、東京ラウンドの日米農産物交渉の際の覚書について、五十九年度以降の取引枠について自由化か枠拡大で縛られているのではないか、こういう疑問の声があるのでございますが、この東京ラウンドの覚書の性格と、五十九年度以降の問題について、農家の方々に説明するようなつもりで、真実をわかりやすく述べていただきたいと思います。
  386. 角道謙一

    角道政府委員 東京ラウンドにおきましては、一九八七年、日本のあれでいきますと昭和六十二年度までに、東京ラウンドで合意しました貿易制限あるいは国境調整措置等を漸次縮小していくということで、関係国が集まりまして協議をしたわけでございまして、このうち牛肉、柑橘につきましては日本とアメリカ、牛肉につきましては日本と豪州の間で合意を行っております。そして、ここで行われました日米、日豪の合意議事録というものがございますが、この中におきまして私ども具体的に決めましたのは、一九八三年、昭和五十八年度までの輸入の数量でございます。  この際に東京ラウンドでは、先ほど申し上げましたように、五十九年度以降六十二年度までに実現をするという観点からいきますと、この五十九年度以降をどうするかという話があるわけでございまして、私どもその段階におきまして、五十八年度までの枠を決めると同時に、その後の問題についてどうするかということもその際合意をしております。これは牛肉あるいは柑橘類あるいはグレープフルーツ等で若干の表現の相違はございますけれども、輸入枠の問題が現実に五十八年度まで協定をしたということもございまして、柑橘あるいはグレープフルーツについては五十七年度の下期前後、あるいは牛肉につきましては五十七年度の未前後に両国間で協議をして、五十九年度以降の問題を取り決めよう、その際には将来のお互いの需給の見通しというものを前提にすると同時に、相互の利益になるようにということにつきまして再協議を行うということをやっておるわけでございまして、それ以上のことにつきましては私ども何ら約束はございません。  ちょうどその時期が来ております関係で、日米あるいは日豪と現在協議をしているところでございますが、今後の輸入の問題につきましては、やはり国内の農産物の需給動向というものを踏まえながら、わが国農業が健全に発展を遂げる、そういうものと調和ができるような方向で物を考えていく必要があるというふうに考えております。
  387. 木下敬之助

    ○木下分科員 この自由化枠拡大という問題につきましては、農民は政府に対して不信感をぬぐえずにおる面があるのですね。かつて、ある農林大臣のときに、主査じゃございませんけれども、その大臣が、グレープフルーツの自由化についてある県のミカン生産者大会で、アメリカも三州でしか温州ミカンの輸入を認めていない、グレープフルーツの自由化はしない、こう発言しながら、選挙が終わった後にすぐ自由化したという前例がありまして、農家は大臣発言に対して不信感を持っている点がございます。今回も、ことしの一連の選挙が終わった時点で、五十九年以後の日米間のオレンジ、果汁、牛肉について自由化枠を拡大するのではないか、こういう心配の声があるのですが、選挙が終わった後で急に変わるようなことは絶対ないという、大臣の御決意をここではっきりと聞かせていただきたいと思います。
  388. 金子岩三

    ○金子国務大臣 私はこの問題については終始一貫、自由化はお断りする、枠の拡大も困る、こういうことを主張しております。これは選挙があろうがあるまいが、そんなものは関係がないことでございまして、ただ日本の畜産農家、柑橘農家を思えば、こういう考え方で政策に取り組んでおるわけですから、選挙とは関係がないというようにお考え願います。
  389. 木下敬之助

    ○木下分科員 ぜひそういうことでよろしくお願いいたしたいと思います。  それから、先ほど申しました三つの角度があるということの二つ目、国産品の消費の拡大という問題については、日本型食生活を進めるという方針を政府はお持ちだと聞いておりました。具体的には何をやり、どういう効果があったかをお伺いいたしたいと思います。
  390. 角道謙一

    角道政府委員 私ども農政審議会答申を受けまして、日本型食生活について、これを単に国内生産と消費を結びつけるという観点だけではなしに、現在の日本人の体位、体格等から見まして、あるいは栄養上からも、穀物を中心といたしまして畜産物、魚、野菜、果実という多様な食物をとっている現在の食生活、これは無論平均的なものでございますが、これがやはり一番望ましいのではないかということから、日本型食生活を今後とも普及をさせていく必要があるというように考えまして、この具体的な方策といたしまして、まず食生活懇談会というものを現在設けておりまして、小倉武一先生を中心といたしまして、並木正吉さん、その他研究者、関係の方々にお集まりいただきまして、五十七年度予算から食生活の促進対策ということで、いまこの具体的な内容の取りまとめをいたしておりますが、今後におきましては、食生活のあり方につきまして広く国民の方々に関心と自覚を持ってもらう、まず提言があるということと同時に、望ましい食生活についてどういうものがあるか、また弊害としてはどういうものがあるか、そういう日々の食生活を営むための、その場合参考となります食生活の指針であるとか、あるいは食事の献立表あるいは栄養、食品、調理等に関します知識、情報を盛り込みました食生活ハンドブックというようなものをつくって、これを普及したらどうかというようなことを考えているわけでございます。  ただ、この効果ということになりますと、私どもまだこれから具体的に啓発事業を始めるところでございますし、また食生活そのものは、個人の自由といいますか、一番その方々の好き嫌い、そういう嗜好に依存するものでございますので、これを強制するということはなかなかむずかしゅうございますが、何らかの形で栄養面あるいは需給面等からそういう普及を図りながら指導、啓発をしていくということによって、これを確保していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  391. 木下敬之助

    ○木下分科員 非関税障壁がいろいろな点で言われていますから、こういう考え方を、日本の排他性として誤解を受けたりすることのないように配慮しながらも一生懸命にやっていただきたいと思います。  三つ目の問題として挙げました、生産効率を高めるということですが、この問題もまた、それを分けると三つに大きく分けられると私は思います。その一つが基盤整備事業の推進等のハードな面であり、二つ目が技術革新や品種改良、特に近年は、急速に発達してきております遺伝子組みかえ等による新種発掘等のソフトな面である、こう考えます。三つ目に農業に従事している人間そのものの意欲をどうするか、こういう大きな問題があると考えます。  わが党の塚本書記長が総括質問でも触れたと思いますが、後継者が年々減っている現状ですね。この後継者が減っているという状況が、将来の農業が推測できる最も目に見える警告として深刻に受けとめる必要があるのではないか、こういうふうに思っております。こういう状態の中で、将来の自給力を支えていけると思われるだろうか、大臣のお考えをお聞きいたしたいのでございます。
  392. 角道謙一

    角道政府委員 御指摘のように、私ども、農業後継者の問題または婦人の問題、特に農村で若い人たちが将来に希望を持ってやっていけるというようなことが一番大事だと思っております。そのためには、やはり農業の将来展望というものを明確にするということが必要だと考えておりまして、昨年、農政審議会におきまして農業構造の展望というものを、「八〇年代の農政の基本方向」を受けまして、これを明らかにしているわけでございます。ただ、残念ながら、私ども現在お示しできる展望といいますのはまだマクロのものでございますので、農業の場合には地域性が非常に強い関係もございますので、現在、地方農政局あるいは北海道等にお願いをいたしまして、地域別に具体的にどういう手法が描けるか、また、その場合どういう展望を持って、また、どういう経営状況になるかというようなことをまず明らかにする、そういうものに応じまして、地域地域の特性に応じた農業経営を重視しておるということと同時に、農業後継者につきましても、大学その他大学校であるとか、いろいろな改良普及、そういう方向を通じまして後継者をできるだけ育成していく。また、農村に人が帰ってくる、また、農家にお嫁さんが来るというようなことが、やはり今後の後継者確保にも重要だというように考えております。
  393. 木下敬之助

    ○木下分科員 昨年も私、田澤前大臣にも一生懸命この問題についてお願いしたのです。本気で考えてくださいということをお願いしたので、大臣、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。  いま言われましたように、未来がないからそういうことでいろいろな、何となく明るそうなことを口で幾ら言ってもだめだ。現実に身近に農業をやって努力して報いられた例というのが非常に少なく、失敗した例はたくさんある。こういう状況では幾ら口で言ってもだめだろう、こう思われます。  その失敗例を一つ申し上げたいと思います。畜産農家で高額の負債がどうにもならなくなっているという問題があります。これは畜産振興のために精いっぱい前向きに取り組んで積極的に設備投資した、その時点で、見込まれていたとおりに価格が安定しておれば十分に採算が合うはずだったところを、牛肉の輸入枠拡大で子牛価格が暴落して、借金返済のできるような畜産物の農家手取り価格ではなくなってしまった、こういうような経過をたどっているわけでございます。この問題についてはどう考え、どういう対策を講じておられますか。
  394. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 実は、子牛価格につきましては、昨年から少し下がってきておりますが、その前はむしろ大変高い水準で推移をいたしております。子牛価格の安定を図りますために、各都道府県で子牛価格の安定のための基金をつくっておりまして、昨年から価格が若干下がってまいりました段階にこれを発動いたしておりまして、現在約二割ぐらい水準が下がっているわけでございますが、下がりました場合の九割を補てんすることと、そのほかに、生産振興奨励金と称するような、一頭幾らというものをやっておりますが、それをあわせていまはやっておりますので、現在私どもが現実に調べてみますと、たとえば南九州あたりで申しますと、手取りでは三十一万円水準、これは決して悪くない水準ではなかろうかと思います。こういうことも、単に予算的な措置だけではなかなか農家の方は御信頼がならぬというようなこともございまして、今回国会にお願いしております酪振法の一部改正におきましては、この子牛の価格安定制度も法律化することを予定いたしております。  それから、畜産経営、一般に経営が大きくなりますと、どうしても借入金規模が大きくなります。ただ、これは単に規模だけでは論ぜられませんで、それだけ資産が大きいわけでございますので、やはり借り入れいたします際に、それに見合う経営のあり方、技術、そういうものが伴わなければいかぬと思っておりますので、そういう点につきましても十分に注意したいと思っておりますし、先ほどから申し上げておりますように、五十六年、五十七年は酪農関係、それから肉用牛関係につきましては五十七年度に、特に高額の方については借りかえ措置をとったところでございます。
  395. 木下敬之助

    ○木下分科員 高額負債が大変な問題になっているところがたくさんありますので、どうぞ個別によろしく御指導をお願いいたしたいと思います。かつて大分では、行き詰まって自殺したような方まで出たりしておりますので、こういうことの若い人に与える影響というのは大変大きゅうございますから、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。  まだほかにも、野菜の問題やらたくさんいろいろとお聞きしたいと思うのですが、ちょっと時間もございませんので、また農水委員会か内閣委員会等で詰めさせていただくことにいたしまして、最後にもう二問ほど御質問させていただきたいと思います。  一つは林道についてでございます。  林道は、林業の合理的経営や森林の集約的管理にとって基幹となる施設であり、木材等林産物の搬出のみならず、保育、間伐等の森林施業を実施する上からも欠かせない施設であります。また、地域産業の振興と住民の福祉のために大変大きな役割りを担うものであります。しかしながら、林道整備水準の現況は、大分県の例で申し上げますと、目標林道密度、ヘクタール当たり九・六メートルに対し、約三割の二・九メートルにとどまっております。このため、大分県では、林道網の整備促進を県政の重点事業として位置づけ、その積極的な推進に取り組んでいるところでありますが、現在の推進テンポでいきますと、その目標達成には今後五十年から六十年を要すると考えられております。  一方、わが国の森林資源は、戦後の積極的な造林推進により約一千万へクタールに及ぶ人工林が造成されており、いまやその半数が要間伐林齢に達するとともに、近い将来主伐期を迎え、国産材時代の到来が予測されています。これら森林を適正に管理し、真に資源として活用するためには、林道の早急な整備が緊要であると考えますが、ここ数年林道の整備テンポは鈍くなっていると思われますので、林野庁におきましては、林道の予算措置についてもっと積極的に取り組むべきと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
  396. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先生から御指摘ございましたように、林道につきましては、森林のきめ細かい取り扱いをするために動脈的な役割りを果たしておりますし、また、山村の経済振興にきわめて重要でございますので、いままで鋭意努力してまいりましたが、現在の整備水準は大体森林資源の長期計画の三分の一ぐらいでございまして、計画に対して乖離していることは事実でございますが、私ども、できるだけ効率的な開設をしながら延ばしていくと同時に、特に五十八年からは、比較的林業が成熟している地域につきましては重点的に林道網を整備しまして、国産材時代に対応する素地をつくってまいりたいということでやっていきたいと思っていますが、いずれにしましても、基盤整備の最重点が林道でございますので、今後とも積極的にやってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  397. 木下敬之助

    ○木下分科員 いろいろと御努力いただいておることは評価いたしております。どうぞ今後ともよろしくお願いします。  申しわけありませんが、最後にもう一問だけお願いします。  大分県は、県南地域の恵まれた漁業資源や海洋レジャー資源を有効に活用した海洋都市、いわゆるマリノポリスを建設し、これを核としてその波及効果を広く県南一帯に及ぼして、地域経済の浮揚を図ることをねらいとした構想を持っております。この構想は大分県独自の発想に基づくものであり、現在、基本計画を策定中であり、近く成案を得ることになっているわけですが、計画案によれば、半面六十五年度を目標に、漁業生産の振興、流通加工業と水産関連産業の育成、試験研究・学術研究機関の整備、海洋レジャー観光の推進、漁業基地の整備、漁村集落の整備、交通体系の整備及び水産就業者・漁協の育成の八部門にわたる施策体系と重点事業計画を設定いたしております。  この計画の中核となる漁業生産の振興部門では、すでに一部先行事業として、海域開発基幹事業を五十七年度から実施していますが、本計画の目標達成までには多額の事業費を必要といたします。本計画は、水産業が主導的な役割りを持つ全国的にもユニークな地域開発計画であり、モデル的な構想であると考えられますが、政府はこのような地域振興施策を体系化し、積極的に推進すべきであると考えますが、農林水産省としてはどうお考えになっておられますでしょうか。
  398. 松浦昭

    ○松浦政府委員 大分県のマリノポリス構想につきましては、ただいまおっしゃられましたように、県南地区を対象にいたしまして、水産業を主体として地域の振興を図るという観点から、大分県が五十六年に基本構想を策定しまして、本年度からは具体的に基本計画もまとまるということで伺っております。  私どもとしましては、この構想は、水産資源を合理的に利用する漁業生産体系を打ち立てるということだけではなくて、流通加工、あるいはレジャー施設、漁村集落、交通体系等の整備を通じまして地域振興を図ろうというお考えであると承知しておりまして、特に、北のテクノポリス、南のマリノポリスということで知事さんも何度か私どものところにおいでになっておりまして、私どももよくこの内容は承知しておる次第でございます。  水産庁としましては、五十七年度から同海域を対象としまして、沿岸漁場整備開発事業の一環としまして、大規模な生産魚礁の設置による漁業生産の拡大、あるいは大規模な増殖場の造成によるアワビ等の磯根資源の増大等を目的とする、いわゆる海域総合開発事業を実施しているところでございます。  そのようなことから、水産庁としましては、水産業振興による地域の開発を図っていくということは重要であると考えておりますので、県の構想も十分に伺いました上で、必要に応じまして、水産庁の関連する事業というものを検討しまして、この関連事業の実施に当たっていくという考えでございます。
  399. 木下敬之助

    ○木下分科員 どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
  400. 武藤嘉文

    武藤主査 これにて木下敬之助君の質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午前九時三十分より開会し、農林水産省所管について審査することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十三分散会